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名無しは20歳になってから:
赤ラーク
昔からクルマが好きだった。
国産、外車を問わず、惚れたさきから乗り継いだもんだ。
おまえは「この浮気者め」と笑うけれど
クルマの数ほどタバコを変えないのが俺のいいところさ。
おまえに出会った頃に吸い始めたのが赤ラーク。
この味と香りには飽きることがない。
とりたてて甘くも辛くもなく、キツ過ぎず軽くもなく。
クルマの趣味に関しちゃ変わり者だった俺に
「スタンダード」の良さを教えてくれたような気がするほどさ。
仕事とクルマに明け暮れる俺に愛想をつかして
おまえがここを出ていってから、もう3年になるんだな。
赤ラークを吸い続けながら、顔も性格もとりたてて美人って訳じゃなかったおまえを
なぜだか俺は忘れかねているんだ。
どこか似てるのかもしれないな、このタバコの味と。
知ってるかい?
タバコをコロコロ変えない男ってのは、結構一途にできてんだぜ。