平成14年4月某日
蛇は漁場の異変にいち早く気付いた。
嫌煙の食い付きが悪いのだ。
漁獲高は一ヶ月前の半分以下だった。
しかもその殆どが雑魚や外道であった。
たばこ板を漁場として生活してきた蛇にとって、
漁獲高の減少は死活問題だったのだ。
「このままでは精神の安定が保てない……」
嫌煙を煽ることに生き甲斐を見出してきた蛇は決意する。
「そうだ。他の板で嫌煙を釣ろう!」と。
極秘プロジェクトは静かに動き始めた。
平成14年4月9日(その2)
早速釣果を見るべくニュース速報板をリロードする蛇。
だが、そこで蛇が見たものは、驚いたことにレス無しという現状だった。
鯖が落ちているのだろうか? 蛇は我が目を疑った。
仕方なく蛇は撒き餌を撒いた。
自作自演の2ゲット3ゲットだった。
プロジェクトに暗雲が立ち昇る……。
蛇は慌てて鉄道板をリロードする。
10近くレスがついているが糞レス、煽りレスばかりだった。
蛇は仕方なくとっておきの自作コピペを張り始めた。
それはたばこ板で培った経験をもとに作成したFAQである。
たばこ板の共通認識としてそのFAQを張り始めた。
作業は困難を極めた。
2重カキコですか?の洗礼。
孤軍奮闘で2つの板を掛け持ちするのには限界があった。
プロジェクトが暗礁に乗り上げた。
平成14年4月9日(その3)
助けが必要だ。蛇はこのままでは釣果が望めないと判断し、
古巣であるたばこ板の漁師たちに救援を求めた。
「ただいま下記スレにて交戦中につき援軍を求む」
そう書き込んで援軍を待ったが、帰ってきたレスは冷たかった。
「交戦中ってほどでもないと思うが……どうせ喫煙者が負けんだから」
「連続カキコになって按配が良くないんだよ」
なおも食い下がった。だが……
「交戦中って…誰も相手してないじゃん。あんまり余所の板に迷惑かけるなよ>>蛇」
一刀両断である。蛇は自分がたばこ板のカリスマであると信じていた。
だからこの仕打ちを素直に受け入れることが出来なかった。
きっと嫌煙の書き込みだ。そう思うことで、蛇は心の均整を保った。
一旦引き揚げよう。
蛇は鉄道板とニュー速板に夜にまた来ると宣言し、撤退した。
「何がいけなかったのだろうか?」
蛇には自信があった。絶対に勝てる。
ついにたばこ板にも知れ渡ってしまったプロジェクト。
それでもプロジェクトはつづく。
平成14年4月9日(その4)
帰宅後、早速PCの前に腰掛けて2ちゃんに接続する。
鉄道板、ニュー速板共にレスが乏しい。
レス内容も住人同士の雑談と
>>1である蛇叩きばかりで、
折角貼り付けた持論のコピペには誰一人食い付いては来ない。
餌が難しすぎたのだろうか? 蛇はたばこ板での常識を
他板に持ってきたことの重大な失敗に気付いた。
蛇は方針を転換した。コピペに対する反論を待つのを諦め、
とにかく煽って煽って煽り倒す作戦に出た。
5レスに1レスは自分が書くという重労働をもって、
スレの活性化を推進した。
たばこ板なら一回煽りレスを入れて放置するだけで、
10や20のレスは食い付いたのいうのに、
この板の食い付きの悪さは最悪だった。
だが逃げる訳にはいかなかった。
蛇のプロジェクトはつづく。
平成14年4月9日(その5)
なかでもニュー速のレスの付き方は最悪だった。
これ以上の釣果が望めないと判断した蛇は、
ニュー速のスレを諦めた。
「ゴミレスしか付かないね、乳即もここまでか…」
そう捨て台詞を残して蛇は退散した。
認めたくは無いが、スレ立ては失敗だった。
ここまでのレス数は111、自分が書き込んだレスは33。
惨敗だった。
1つのレスに対し2つのレスしか返ってこない計算になる。
これでは赤字もいいところだった。
ニュー速でのプロジェクトは失敗に終わった……。
平成14年4月9日(その6)
もうひとつの板、鉄道板は厨房が多いせいか、
ニュー速よりはレスが延びていた。
煽ればすぐに食い付いてくるこの漁場はなかなかのものだった。
レスが180を超え、日付も変わろうかという頃、蛇は宣言した。
「天ちゃんも来ないし反論も無いから異論無しということで
蛇タンはここに鉄板嫌煙に対して圧倒的な勝利を勝ち取ったと
高らかに宣言して本日の行動を終了する」
勝利宣言だった。ニュー速で舐めた辛酸の借りは返した。
蛇はプロジェクトの成功を確信した。
平成14年4月9日(その7)
一方その頃たばこ板では、
鉄道住人が蛇に対する苦情を持ち掛けていた。
「すみません、蛇威守猛火亜という奴がって鉄板に
スレ立てて困ってます、どう対処すれば宜しいですか?」
その一報を聞きつけたたばこ板住人の反応は素早かった。
あのアホコテハンの包茎マグナムが、
「蛇は放置が一番キライ
レスがつかなかったらアホな勝ち名乗りを上げて帰ってゆくと思われ」
というレスを返す。
そのレスは、鉄道板で蛇が勝利宣言を行おうと予告した時刻とまったく
同時刻の23:15であった。それから約15分後に蛇は事実上の勝利宣言を
行っていた。
自分の行動を予測されるという恥ずかしい行為を、あの馬鹿コテハンの
包茎マグナムにされた蛇の屈辱感は並大抵のものではなかった。
プロジェクトはまだ決着を見ない……。
平成14年4月10日(その1)
夜が明けた。祭り終了後のスレの確認に向かう蛇。
ニュー速では
112:放置されてんのに気付け喫煙豚
>>111 113:吸い殻入れの横にポイ捨てするDQNが多いよな
と、二つだけレスがついていた。見事な放置っぷりである。
「この程度なら議論板に建てればよかったよ」
蛇は負け惜しみの一行レスを書き込むと、ブックマークから
ニュー速板をデリった。
「どこに立てても同じだよ、バーカ」
という書き込みを最後に、ニュー速板のタバコスレッドは死んだ。
始めて味わう敗北感を堪え、蛇は鉄道板に向かった。
プロジェクトの夜明けはまだか?
平成14年4月10日(その2)
鉄道板は別の意味で祭りが行われていた。
祭りといっても商店街の夏祭程度の些細なものだった。
182から225までの40スレ近くが、
>>1を無視した雑談と
AAによる
>>1叩きであった。
スレの中で蛇は、おもちゃのようにもて遊ばれていた。
蛇はまたもや路線を変更し、懐柔作戦へと展開した。
「寝台車には昔のカタッて上の部分をひっくり返す灰皿…
がまだ付いているよね。あの手の小物を手に入れるにはどうしたら
いいのかな?オークションなんかで手に入れられるのかな?」
などとご機嫌を取る蛇。たばこ板では見られない光景だった。
親切な鉄道板の住人に教えてもらい、
「サンクス、検索して探してみるよ」と気さくに返答する蛇に
かつての威厳や傲慢さはなりを潜めていた。
平成14年4月10日(その3)
そうして蛇からとんでもない一言が飛び出す。
「一行レスで罵倒したりコピペで叩きしてもそれは逆効果。
というより、鉄板面白そうなので暫くここに腰を据えることにするよ」
鉄道板に降って沸いた熱病は、どうやら一過性のものではなかったようだ。
鉄道板での蛇のプロジェクトは成功を収めた。
今日もまた、蛇は鉄ヲタ相手に、温い嫌煙を既得権にあぐらをかいた
状態でやりこめ、ストレスを発散する。
こうしてひとつのプロジェクトは終了を見た。
だが、蛇の飽くなき欲求は第二、第三のプロジェクトを生むだろう。
たばこ板最悪コテハン、蛇威守猛火亜は、今日も嫌煙を釣っている……。
プロジェクト×〜挑戦者たち〜 第931話 END