都市再生と日本経済再生 西村清彦 東京大学大学院教授
不確実な環境下での設備投資の理論によれば、将来の事業収益の不確実性が高いほど設備投資は抑制される。
防災対策や環境対策のビジョンと枠組みが明示されない状況は、民間、とくに海外の企業や投資家にとっては
自らコントロールできない不確実性が大きく、積極的な活動を阻害するものとなっている。
このように見ると、単に活発な経済活動を可能にすることで都市を魅力的にするだけでは不十分であることが分かる。
都市全体のシステムの中で、防災・環境保全機能の改善の道筋を示す事も必要なのである。
そのためには強力な権限の下で都市再生を図る事が不可欠である。特に防災、環境保全に特に重要な地盤調査、
建築物の危険性調査、土壌汚染調査・浄化などを地籍調査と併せ
「平成の検地」として緊急かつ集中して進め、必要な施策を進めなければならない。
基本的な情報のないところで誤った判断で作られる建築物ほど後世に禍根を残すものはない。
既に述べたように、われわれに残された時間はどんどん少なくなっている。
しかしながら、昨今の自治体首長や政府高官の発言等を見ると、
こうした危機感が著しく不足している事に愕然とならざるを得ない。
今までのやり方を若干の修正で乗り切れるほど現在の状況は生易しいものではない。
特に現在、著しい地盤沈下している自治体において、
首長の強いリーダーシップで都市再生のソフトウェアが発展しない限り、
その向こうにあるのは疲弊した都市の緩やかな衰退と死である。
http://www.skf.gr.jp/no44