145 :
名無しさん@お腹いっぱい。:2008/05/20(火) 03:16:40 ID:obpmRAV10
>>140の続きです
龐統伝(3)
龐統はこの諸葛亮という大柄な男の前に立つと、何故か身体以上に大きく見えた。不思議な何かが彼を大きく見せている、そう龐統は感じた。
「左にいるのが弟の均、右にいるのが姉の詠です。以後お見知りおきを。」
諸葛亮が姉弟を紹介すると、ご丁寧にも龐統に二人は頭を下げてあいさつをした。
「こちらこそ、はじめまして。龐統、字を士元といいます。三人ともどうかよろしくお願いします。」
諸葛亮はあいさつを終えると、司馬徽の方を向いて
「先生、みなもお腹が減っていることでしょうし、お客さんとともに食事にしましょう。」
と言った。
「そうじゃな、それに寝かしたままの龐公を起こしてやらねば。」
「飯を口にしたら思い出したわい。お主、確か諸葛孔明だったな。いつもわしの寝どこに、かってに入って、挨拶していたな。」
龐徳が諸葛亮の姉、詠がつくった料理を口にしながらしゃべった。
「かってに入るだなんて、私が無礼者みたいじゃないですか。ちゃんと入るまえに挨拶をしますが、龐公が何も答えないのでそのまま入っているだけです。」
「ほっほっほ、龐公は来るものも、去るものも拒まずの人だからのぅ。」
諸葛亮の言い分に、司馬徽は笑った。
146 :
名無しさん@お腹いっぱい。:2008/05/20(火) 03:18:47 ID:obpmRAV10
「話は変わるが、今中原はどうなっているのだ。徳操は襄陽にちょくちょくいるからわかるだろう。」
「龐公はやはり、世俗のことに疎いの。今、中原では袁紹殿と曹操殿の決戦を行うという話題で持ちきりだ。どっちか勝った方が天下を取るのではと、見識のある人は騒いでおるよ。」
「荊州の劉表殿は、どっちにつくつもりなのだ。まあ、劉表殿なら強い方につくだろうな。」
伯父でも、さすがに自分が住む地を治める領主の動向が気になるのか。まあ、誰がこの天下の主になろうと、この伯父は変わらずあっけらかんと生きているだろうと龐統は思った。
「劉表殿は、袁紹殿に味方しておられる。別に、袁紹殿に正義を感じて盟友としているわけではない。龐公の想像どおり袁紹殿が有利と考えてのためだ。」
司馬徽は箸を置いた。
「さて、天下が目まぐるしく動くなかで誰につくか悩むのは、領主も野の士も変わらない。わしら、白髪まじりの二人は今までどおりの変わらぬ生活をするつもりじゃが、君たち二人はどうだい。若い者にはいつか巣立つときが来ると思っておるが。」
司馬徽は今、官に就いてない諸葛亮と龐統の二人に、将来の展望を聞き出そうとした。
それを聞いた諸葛亮の瞳は少しぎらついて見える。
「私は、いずれ立つべきときが来ると思っています。ですが、袁紹にも曹操にも劉表にも士官しようとは思いません。しかし、いつか現れる理想の主君を夢見て、それまでこの隆中で、自分を磨いて待つつもりです。」
この諸葛亮の実体以上に見える大きさを、龐統はこの情熱から発しているのではないかと思った。
「大きくでたな、孔明。君が私に弟子入りしたときも、そのように目を輝かせておったな。して、士元はどうじゃ。」
「私は、ただ士官の要請があるなら、その人のもとで働くだけですよ。」
「ふむ、少々ありきたりな答えじゃな。」
「しかし、一たび主君を決めたなら、主君を天下の主にするよう身命を賭けて努力するつもりです。」
その龐統の言葉を聞き終わると、司馬徽は両手で自分の膝をたたいた。
「二人の夢はなかなか、立派である。できればこの理想を追い続けるようがんばってもらいたい。」
147 :
名無しさん@お腹いっぱい。:2008/05/20(火) 03:23:53 ID:obpmRAV10
話が終わると、料理も食べつくしたので、片づけに入ろうと、孔明の姉詠が動いた。だが、それを制するように、二人の展望を黙って聞いていた龐徳が口を開いた。
「孔明は臥龍、士元は鳳雛だな。」
龐徳の突然の言葉に、一座は沈黙した。
まわりの目が、龐徳の言葉の真意を知りたいと言っている。だが、龐徳は少し間を置いた。それから、しゃべりだす。
「臥龍は、地に伏せる龍のことをいう。孔明、お主はもし、理想の君主に出会えれば、龍のように飛翔していくだろう。」
諸葛亮は、この言葉に自分の未来は壮大であると感じ、同時に過酷な一生を予感させた。龍はやすやすと天に昇って行くわけではない。
「鳳雛は、飛翔を待つ鳳凰の雛のことをいう。臥龍と似たような意味だが、少しの違いがある。鳳雛は昇って行っても、雛から鵬(おおとり)に成長するとは限らん。雛のままでは落ちてしまうやもしれん。」
龐統は、伯父が自分を評してくれるのを初めて聞いた。
その評は、龐統にとって残酷な響きがあった。そして、伯父が甥の将来を案じてくれていることも感じられた。
>>144心配ありがとうございます、少し書くのに時間がかかってしまいました
148 :
名無しさん@お腹いっぱい。:2008/05/28(水) 16:18:29 ID:n+Iia6C40
>>147の続きです
龐統伝(4)
龐統は荊州の州都襄陽に居をかまえていた。
父母とは早くに死に別れ、伯父の龐徳のもとで育てられた。今は官に就いたので独立することになった。
その就官祝いに友人たちがやってくると言うのだ。あまり、感情を表に出すことのない龐統でも、今日は嬉しそうにしている。
「士元、君が功曹になったと聞いて祝いに来た。」
龐統は家の前に出て見てみると、五人の若者が手に酒や肉を持ちそこに並んでいた。
諸葛亮、徐庶、崔州平、石トウ、孟建の五人である。
ついでに説明させてもらうと、徐庶の字は元直、石トウの字は広元、孟建の字は公威である。なお、崔州平の州平とは字であり、何故か名は伝わっていない。
龐統は隆中での一件以来、しばしば諸葛亮と会うようになった。
その際、諸葛亮の学友である四人とも会うようになり、友人となることができたのだ。
「さあ、上がってくれ。こんなに人が来たのは初めてだよ。」
「少し、狭いな。六人で酒を飲むにはつらくないかな。」
「君の家も、兄弟三人で住むにはあまり広くなさそうだったがね。」
龐統と諸葛亮のどちらの家が狭いかという話に、友人たちの笑い声が飛び交った。
「功曹の就官おめでとう、だいぶ先を越されてしまったかな。」
と、崔州平が言った。
「そんなことはないよ。もし君たちが官に就いたら、私なんかあっというまに越されてしまうよ。推薦してみようか。」
「いや、遠慮しとくよ。どうも劉表殿に魅力を感じなくってね。」
と、石トウ。
「劉表殿も、さっさと曹操殿に臣従すればいいのに。天子様を擁する曹操殿に逆らうのは下策だと思うよ。」
孟建は北の方を向いてつぶやいた。
「おいおい、公威。君は曹操と袁紹の戦に決着がついてないときには、数の多い袁紹につくべきだと言ってなかったかな。今ごろ、漢の忠臣面するつもりかい。」
「意地悪はよしてくれよ、孔明。あくまで現在の劉表殿のおかれている状況をのべただけだよ。」
149 :
名無しさん@お腹いっぱい。:2008/05/28(水) 16:20:43 ID:n+Iia6C40
曹操と袁紹の決戦、世にいう官渡の戦いは世評を裏切り曹操の勝利に終わった。
現在、曹操は病死した袁紹の息子たちとの戦いに明け暮れている。
曹操の勢いは飛ぶ鳥を落とす勢いだが、劉表は敵対する姿勢を崩さない。
「公威は中原志向が強いからね。」
徐庶はそういったが、孟建だけでなく荊州の学生ら多くが、同じ考えであろう。
荊州のような田舎でよりも、中原で出世するのが士大夫の華であるし、孟建のような中原の戦乱から荊州に避難したような人たちは、やはり望郷意識が強かったはずだ。
「そういえば士元は、曹操殿と袁紹殿のどちらが勝つと予想していたんだい。」
孟建は自分と同じ予想をしていた仲間を増やすことで安心しようと必死だ。
「残念ながら興味がなくて、どちらが勝つかなんて予想したことがなかったよ。公威以外はどうだい。」
「四人が外れ、一人だけ予想を当てた人間がいる。誰だかわかるか。」
崔州平が問いをだすと
「孔明じゃないかな。」
龐統が答えた。
「当たりだよ、士元。君たち二人とも、勘があるのか予知能力があるのかわからないが、すごいねぇ。」
「孔明、どうしてそう思ったんだ。」
「なんとなくかな。」
諸葛亮はどこ吹く風で、詳しく聞こうと思ってもこたえてくれなさそうだ。
「この思わぬ結果を予想できた孔明が、我らの未来について嫌な予想をしやがったからたまったもんじゃないよ。」
石トウは少し酔った顔で愚痴をはく。
「へえ、どんな予想だろう。」
石トウは酒を飲みながら、
「自分と、元直、公威、孔明の四人で将来どこまで出世するかを雑談していたんだよ。すると、孔明が『君たち三人は、仕官すればきっと刺史・群守にまで昇ることができるだろう。』と言ったのさ。
なに、刺史・群守でも十分な出世だって言うのか、それじゃだめなんだよ。僕たちはもっと上まで昇れると信じているのに。しかも、なら孔明はどうだと質問すると、笑って何も答えないんだから、こいつは無礼な奴だよ。」
と、龐統に言った。
「あれ、そんなこと言ったかな」という顔で孔明が笑っている。
150 :
名無しさん@お腹いっぱい。:2008/05/28(水) 16:21:33 ID:n+Iia6C40
「それじゃ、私が君たちの栄達を予測することで孔明の不吉な予言を打ち消そう。」
と、なだめるように龐統が言った。
「君たちは、全員宰相の位にまで昇ることができる。」
龐統の言葉に全員吹き出した。
「おい、士元酔っているのか。」
「叶うことのない予想を言われても、なぐさめにはならないぜ。」
「もう少し、実現可能な予測をしてくれよ。」
みな、口々に龐統の予測を笑った。
それでも、龐統は笑って、
「大志をもって生きることは素晴らしいことだ。そのほうが努力にはげむことができる。王や、皇帝になるよりはありえる未来だろう。」
と、言った。
「なら、私は宰相を目指すことにしようかな。」
と、諸葛亮が言った。
それを聞いた石トウは、
「それが君の答えか。人に、刺史・群守になると言っといて自分は宰相か。
ふざけた奴だよ。」
と、上機嫌に言った。
「孔明、宰相を志すのはいいが、その前に仕官先を見つけなくてはな。無官の者を拾って、すぐに宰相にするような君主は今の時代にはいないぞ。」
と、崔州平がしゃしゃりでた。
「しかし、そうなるとただ一人仕官している士元が一番宰相に近いことになるな。」
「それは違うよ、州平。実は自分も仕官している。」
急に徐庶がしゃべりだしたので、崔州平は驚いてしまった。
「それなら、何故早く言わなかったんだい。やはり、仕官先は劉表殿か。」
全員が、興味津津に徐庶の顔を見つめた。
「なかなか、言いだす機会が見つからなくってね。それに仕官というか、客というか・・・」
徐庶の煮えきらない言葉に、
「もしかして、劉表殿とは違うのではないか。」
と、諸葛亮は聞いてみた。
「そのとおりなんだよ。私は今、劉備将軍に仕えている。」
先日、興味深い記事読んだんだけど
今の中国人て三国志を含む昔の古典(?)の書籍、木簡なんか読めないんだそうな
文化大革命で文字が簡略化されちゃったおかげでダメになったとかなんとか
152 :
名無しさん@お腹いっぱい。:2008/06/21(土) 18:22:55 ID:2fRcTQLU0
日本でも似たようなことに、とっくになっていると思うぞ。
154 :
名無しさん@お腹いっぱい。:2008/07/15(火) 21:54:53 ID:QTnQQLLZ0
戦いは今も続いている
攻め寄せる女王連合の容赦ない攻撃の手は緩むことはなく
幾多の仲間達が狂信者の軍団によって草生す屍となり方々に散らばっていた
この世界に女王が現われたのはいつのことだったろう
最初はキチガイじみた変な女が神の使いだと騒いでるだけだった
我々は噂を聞き鼻で笑っていた
一支国が女王の傘下に入った時、一支国と関係ない我々は行動しなかった。
次に奴国が女王の傘下に入った。奴国と関係ない我々は行動しなかった。
女王は伊都国や投馬国に勢力の輪を広げ、最後に我々の住む日向にも手を伸ばしてきた。
日向に住む我々は立ち上がった。しかし時すでに遅かった。
敵陣に隣国魏の黄色い傘のような戦闘旗を発見したとき、我々の驚愕は尋常ではなかった
潜入させていた間者の報告によると魏から来た張政なる将軍率いる数万の兵が
大陸から援軍として動員されているという
敵は益々強くなり、我々はどんどん弱くなる
すでに今年の食料も底をつきかけ、村々は女王連合の兵士達により略奪、殺戮され廃墟と化していた
周辺のリーダーを集めて会議を開いてみたものの戦って滅亡するか、降伏するか
あるいは逃げるかの3択しかないことはわかっていた
敵の本拠地をゲリラ的に襲撃して敵の女王を倒してはどうかという意見を述べたが
すぐに後継者がでてくるだけで意味はないだろう
こうしている間にも敵は迫ってくる
私はある決断を下した
以前に漁師達に聞いた話によると東の果てに無人の地があるという
広大な平野が広がり、川が流れ、気候温暖な新天地があると
私は仲間達を連れ移住することにし、百数十隻の船を作らせた
156 :
名無しさん@お腹いっぱい。:2008/11/01(土) 22:20:21 ID:DbuFyA5SO
>>155の続き希望
狂信者の女王は卑弥呼で主人公は神武天皇ぽいよね
159 :
名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/12(月) 01:20:50 ID:ibQ1BJh10
なんだよ・・・途中でおわるなよな。
気になるじゃないか。
160 :
名無しさん@お腹いっぱい。:2009/04/12(日) 21:06:11 ID:3D6wlKt90
保守age
保守age
保守age
保守age
保守age
保守age
臨淄
臨(淄)
保守age
保守age
169 :
名無しさん@お腹いっぱい。:2009/11/23(月) 19:19:14 ID:9j+v+EZDO
歴代の英雄がタイムスリップした現代アメリカでメジャーリーガーになりワールドシリーズに出場!\(^o^)/
保守age
戦いは今も続いている
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ザッ ;;''';;';'';';';;;'';;'';;;
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vymyvwymyvymyvy ザッ
ザッ MVvvMvyvMVvvMvyvMVvv、
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ザッ ヘ__Λ ヘ__Λ ヘ__Λ ヘ__Λ
__,/ヽ_ /ヽ__,.ヘ /ヽ__,.ヘ _,.ヘ ,.ヘ ザッ
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/''''' 狂 ''''':::::::\/'''' 信 ''''/''''' 者 '''''':::::::\ /'''' 軍 '''':::::::\
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攻め寄せる狂信者の容赦ない攻撃の手は緩むことはなく
172 :
記憶喪失した男:2010/04/17(土) 19:32:14 ID:Wyl/nNP10
173 :
名無しさん@お腹いっぱい。:2010/04/18(日) 08:36:26 ID:wErdqI6LO
>172
乙。面白かったよ。人徳の思想を中心にうまく展開していくのが良かった
>>169 関羽や項羽、張飛、楊大眼らが
バントホームラニストとして活躍
175 :
名無しさん@お腹いっぱい。:2010/04/21(水) 16:48:41 ID:wlWXGRI20
>>172 一応全部読んだが、知識も思想も浅すぎて話にならない
呉を中心に書こうとしたことだけは評価したいが、この程度の内容でそのタイトルは不遜
176 :
名無しさん@お腹いっぱい。:2010/04/22(木) 18:45:02 ID:S3FnlppQ0
>>172 同じサイトで小説書いてるけど、まあまあな内容だからポイント入れておいたよ^^
三国志の商用版で呉を主人公にした作品て何かあったっけ
age
179 :
名無しさん@お腹いっぱい。:2010/07/02(金) 11:53:44 ID:HwqhKlu+O
人物がフィクションなので歴史小説と言っていいのかわからないけど、思いついたので書いてみる
180 :
名無しさん@お腹いっぱい。:2010/07/02(金) 12:12:55 ID:HwqhKlu+O
清の順治帝の時代、とある山中のさびれた寺に2人の兄弟がいた。兄は張福、弟は張燕といった。
二人は明の軍人の家系の出身であった。十代の頃に明の滅亡を見た。
2人の住んでいた街に清軍が攻め寄せ、市街地で戦争が繰り広げられたとき一家は散り散りになり行方も知れない。父はどうなったのだろうか。軍人だったから恐らく死んだのだろう。
清代に入って人々は弁髪を強制された。それを拒んだ二人は剃髪して寺に入ったが、無論偽装のためである。
二人は寺でひそかに武芸に励み清を倒し明を再興する計画を立てていた。寺の住職はそれを知ってか知らずか、何も言わない。
同じように清を倒そうとしている者は各地にいた。
181 :
名無しさん@お腹いっぱい。:2010/07/02(金) 15:21:16 ID:HwqhKlu+O
現実的な計画が立たないまま数ヶ月過ぎ、張福は苛立っていた。
それに加えて、明再興のためなら万死をいとわないと2人で誓ったにもかかわらず弟の燕は最近今一つ乗り気でないようだ。
のことも福は不満だった。
張家で大切に使っていた器があった。街が陥落して一家離散した時燕がこれを持ち出して、今でも使っている。
ある日武術の訓練をした後、2人がこの器でお茶を飲んでいると燕の手が滑って器を落としそうになった。
燕「危ない!!」
床に落ちる寸前に燕は見事キャッチした。
福は笑って「おい、気を付けろよ」と言ったのだが燕はなにやら呆然として、何か考えこんでいた。
その後燕は訓練に身が入らないようだった。
182 :
名無しさん@お腹いっぱい。:2010/07/02(金) 18:17:02 ID:HwqhKlu+O
それから1週間ほど経って、朝の托鉢に出かけた福は、別の地方で自分たちと同じように仏僧に身をやつした明の遺民が清を倒す計画をねっているという噂を聞いた。
ここにいても埒があかないと考えていた福は喜んで、彼らに加わろうと思った。
寺に帰って燕を探しこのことをつたえようと思ったがなかなか見つからない。寺中を捜し回ってようやく、裏庭にいる燕を見つけた。
見ると燕は、裏庭の木の下で座禅を組んでいるのだった。
福「本当に僧にでもなるつもりなのか?それより聞けよ。俺たちと同じ・・・」
そこで気付いた。燕の足元には例の器が転がっていた。粉々に砕けている。しかも燕の体には一面露が付いていた。昨夜からずっとここで座禅をやっていたようだ。
福はなんとなく嫌な予感がした。
183 :
名無しさん@お腹いっぱい。:2010/07/02(金) 18:20:31 ID:HwqhKlu+O
福「一体・・・」
燕「兄さん
僕はもう戦えません。」
福「!?」
福「一体どういう・・・」
184 :
名無しさん@お腹いっぱい。:2010/07/02(金) 19:15:54 ID:HwqhKlu+O
燕「僕はあの時明のためなら万死をもいとわないと誓いました。実際ずっとそのつもりで生きてきました。
いつでも死を恐れずに、清軍と戦って死ぬつもりでいたんです。
それなのにこの間、この器を落としそうになった時僕は確かに恐怖を感じました。この器を割るのを恐れてしまいました。万死を恐れないはずの僕がです。
自分の命には執着がないのにこの器には執着があったんです。」
福「・・・それはその器が形見だから・・・」
燕「これが足手まといになるとといけない。迷いを断とうと思って僕はこの器を壊しました。
ところがそうしたら僕はもう、自分が何のために明を再興しようとしているのかわからなくなってしまいました。
自分にとって明とは、ただこの形見の器と、この器のあったあの家のためにあったんです。
明はもう滅びましたし、あの街も張家もみんな滅んでしまいました。もうみんな終わったんです。覆水盆に帰らず。明が滅んだのは天命だったんですよ。」
185 :
名無しさん@お腹いっぱい。:2010/07/02(金) 19:46:49 ID:HwqhKlu+O
福「天命なわけがあるか!いや、たとえ天命だろうと構うものか!!それでも最期まで明のために尽くすのが俺たちの節義じゃないのか!!」
燕「いいえ。僕にはもう出来ません。僕にはその節義が無いということに気付いたんです。
この世の中は所業無常ですよ。宋も明も滅びましたし、清だってそのうち滅んで新しい王朝が立つでしょう。僕はそんな王朝にいちいち節義を立てる気にはなれません。
このまま一緒にいても兄さんの邪魔になるだけでしょう。僕は本当の僧になります。兄さんとはここでお別れです。」
福は声を震わせた
「お別れで済むと思うのか?裏切っておいてただですむと思うか?」
燕の顔は蒼白だったが、はっきり言った。
「覚悟はできています。」
そして福に背を向けた。
福は突然、かつてないほど激しい怒りに襲われた。福は懐から刀を抜くと背を向けている燕の首に斬り付けた。
燕の首はふっ飛んで、木にまで深い傷が付いた。
186 :
名無しさん@お腹いっぱい。:2010/07/02(金) 20:10:14 ID:HwqhKlu+O
福はしばらくそこで呆然としていた。
福の中で孝の心と忠の心がせめぎ合って、激しく動揺していた。
しかし結局の所、すでに燕を殺してしまったのだから悩んでも仕方ない。さすがにもうここには居られないから、早速例の同士たちの所に逃げよう。
福は燕の死体を埋めて、山を下り始めた。
例の同士たちの所に行くには何日もかかる。金も大して持っていないので、どうにかしなくては・・・
ふと下の山道を見ると、弁髪で胡服の男たちが五人、何かを荷車で運んでいた。福はそいつらを襲って金を奪うことにした。
どうせ奴らは満州人で、敵なのだから構いはしない。あるいは弁髪にした漢人かもしれないが、弁髪にしているのだからどっちにしても裏切り者だ。
福は刀を抜いて駆け降りた。一番近くの男は驚いて、刀を抜いたものの福にかなうはずもなくただ一合で斬り倒された。それを見た他の男たちは一斉に逃げたが、
もう一人残った男がいて、持っていた槍で猛然と付きかかってくる。この男はなかなか強く、両者しばらく激しく斬り結んだが遂に福に脳天を叩き斬られて死んだ。
187 :
名無しさん@お腹いっぱい。:2010/07/02(金) 20:53:52 ID:HwqhKlu+O
荷車には酒が瓶に入って並んでいた。これを持っていくわけにもいかないので、その場でいくらか飲み、瓶を一本だけ持っていくことにする。
男2人の死体を探ると幾らか金を持っている。それをもらっていき、死体は崖下に捨てた。
旅路を行くといつしか日が暮れた。宿屋を見つけたので先ほどの金で泊まることにした。個室を頼み、襲われないように戸につっかい棒をして、明かりを付けたまま刀を抱いて寝た。
何かが折れる音で目が覚めた。飛び起きると、数人の人影が戸を蹴破って手に手に武器を持って真っ直ぐ向かってくるのが見えた。
距離はわずかで、さすがに福も少し出遅れたが、抱いていた刀で相手の初撃をなんとか受け止め、返す刀で相手の喉を突き刺した。
その時気付いたが相手は昼間襲った男たちだった。刺された男の顔が苦痛に歪むのが鮮明に見えた。
そこへ横から飛び込んできた男が振り下ろした斧が、福の刀を持っていた手を手首から斬り落とした。
福「うおおおおおお!!」
続けて斬り掛かってくるのをかわして蹴り倒し、もう一人をかわすと残った片方の手で殴り倒し、壁を蹴破って外に逃げた。
すると目の前に仏僧の姿をした男がもう一人立ちふさがっている。
(味方か!?)
一瞬そう思って気がゆるんだ福の脳天に、その男は重い剣を深々と打ち込んだ。
最期の瞬間、福は頭をたたき割られる自分の姿を第三者視点で見た気がした。
完
>>179-187 おもしろかったよ、ありがトン
順治帝の時代とかも商業作品が無い時代だよね
日本だと歴史小説というジャンルの文学作品があるように
中国にも同じようなのがあるんだろうと思って職場の中国人に聞いたことあるんだけど
向こうにはそういうジャンルは存在しないんだってね
三国志や水滸伝ですら向こうではあまり読まれていないらしい
各地にいある彫像や古戦場跡の石碑とかも日本人観光客が喜ぶから作ってるだけで
向こうの人はまったく関心がないんだって
向こうで歴史小説に相当するのは武侠小説で龍がでてきたり人間が空飛んだりするファンタジー小説で
日本人がイメージするような作品は存在しないんだってさ
190 :
登竜門:2010/09/20(月) 15:22:36 ID:kGbuZvLw0 BE:3489923579-2BP(791)
191 :
名無しさん@お腹いっぱい。:2011/01/21(金) 04:26:38 ID:XUB+V3rO0
>>109 蒼天のイメージが元ネタだと思うけど、なかなかうまい
今のオレにはここまで上手に書けん
192 :
名無しさん@お腹いっぱい。:2011/01/21(金) 04:32:29 ID:XUB+V3rO0
>>126 文体いい加減だけど、ネタとしてなかなか面白かった
平家に国を追われた源氏の末裔がトルコで
活躍する小説を書こうと思ってる。
主人公の名前は「源玄叡」。
源玄叡は、国を追われて海を渡り、中国大陸に行った。
金、宋、東南アジア、印度、ペルシャなどを経由し
トルコまで流浪して、セルジューク朝トルコに仕官。
トルコ国軍に従軍し、北方から攻めてきた十字軍を撃退する。
【ストーリーの流れ】
1 十字軍との交戦のさなか、1人の女騎士と出会う。
2 その女騎士は錬金術で強化された強化人間
3 玄叡は女騎士を捕らえて、懐柔させて自分の嫁にする。
4 再び十字軍の第二波が襲来。玄叡は防戦のため出陣。
5 懐柔し、味方になったはずの女騎士が十字軍司祭の
魔法で洗脳され、再び玄叡に襲い掛かる。
6 洗脳され暴走した女騎士を何とか止めようとする玄叡。
しかし止めることはできず玄叡は斬られて死ぬ。
7 女騎士は玄叡の死によって洗脳から醒めてトルコ軍に寝返り
十字軍を撃退する。
作れた?