⇒香乱記の韓信
自分が読んでみた分には「救いがないような悪い書かれ方」には思えない。
その意味で完璧に期待外れだった。
個人的には、彼の保身の希薄さとか他人への節義に欠ける卑しさとか、
それゆえの指揮官としての天才を先生は正確に捉えているように思う。
「婦人の仁、匹夫の勇」と股夫は羽を評したが、
それは自分自身に対しても適用できるし、彼が完全性を求めた高祖にも言えること。
あの素晴らしい知性をどうして敵を倒すこと以外に使えなかったのか?という私の疑問は
「股夫は丸暗記系の似非国士無双だったから」という結論で氷解した。
田横の死に様は見事だと思ったが、私は真似する気にはならない。
そして、散々作中で貶しておきながら、
「田横の見事な死に素直に反応出来る高祖」を描写するあたり、
先生はこの時代も人間も良く理解してるなあと深く歓心を覚えるのです。