中国では、死刑判決は政治的な干渉の結果として、広範囲に頻繁にそして当局の思うがままに使われる。死刑は、銃殺あるいは致死量の薬物注射によって行われる。
2001年4月の、犯罪に対する「厳打」キャンペーンのはじまり以降死刑の執行は急激に増加したが、死刑判決を受けた人数、あるいは実際に処刑された人数は記録的な数に上る。
死刑判決を受け、処刑された人の多くは脱税や麻薬密輸などの罪によって略式裁判にかけられるようだ。
最初このキャンペーンは、組織犯罪を標的としていたが、中央政府ならびに地方政府はその領域を大きく広げた。
たとえば新疆ウイグル自治区(XUAR)における「分裂主義者の勢力に決定的な打撃を与え、分裂主義と違法な宗教活動を根絶する」ためのキャンペーンの展開などである。
今回のケースが、チベット人居住地域における政治的対抗勢力、対立者、「分裂主義者」「テロリスト」とみなされる人々への死刑の適用の動きを示すのではないか、との重大な懸念を持たずにはいられない。
執行猶予付きの死刑判決とは、中国独特の制度で、猶予期間中に作為的な罪を犯さない場合、或いは素行が良いと判断された場合に、終身刑、あるいは15年以上の懲役刑に減刑される死刑判決である。
このような基本的人権の侵害は、中国がチベット問題の解決に取り組んでいないことを示唆している。
テンジン・デレク・リンポチェの件だけでなく、チベット問題全体を解決するために、中国がチベットの最高指導者であるダライ・ラマ法王やその代表と意義のある対話に積極的に取り込むべきである