短絡、残虐な犯行明らかに 福岡一家4人殺害 初審理
「その娘を殺さないでくれ」。人質にされた長女の首にナイフが突きつけられる。
父親は、ひざまずき必死に哀願した。3中国人は聞き届けず、キャッシュカード
の暗証番号を聞き出すと、長女の首を絞めた。ためらいもなかった。最初から
家族全員を殺害する計画だった。23日の福岡市一家4人殺害事件公判での冒頭
陳述で、検察側は金目的の犯行の計画性や残虐さを生々しく再現した。
「ベンツがあるので数千万円の預金があるはずだ。少なくとも1人100万円の
分け前がもらえる」。元留学生、王亮(22)、元私立大生、楊寧(23)両
容疑者は、松本真二郎さん=当時(41)=一家襲撃に、中国式ボクシング
経験者の元専門学校生、魏巍被告(24)を誘った。魏被告も金に困っていた。
昨年6月19日夜。台風の接近で人通りが少なかった。事前に手錠や重り以外
にも、ナイフや粘着テープ、手袋まで準備。1階仏間の窓が、網戸の状態で全開
だったため、真二郎さんの帰宅を待って押し入る計画を変更、日付が変わった
20日午前零時すぎに侵入。まず1階で入浴中だった妻=同(40)=と、
2階で寝ていた長男=同(11)=を首を絞めるなどして殺害した。長女=同
(8つ)=だけは殺さなかった。恐怖で震える少女を「声を出すな。出したら
殺すぞ」と日本語で脅す。口に粘着テープ、後ろ手に手錠を掛けて人質に。
真二郎さんが帰宅した際に、キャッシュカードを奪って暗証番号を聞き出すため
だった。同午前1時40分ごろ帰宅した真二郎さんは驚きで抵抗できなかった。
「その娘を殺さないでくれ」との願いも聞かず、現金とキャッシュカードを奪い、
用済みとばかりに真二郎さんの首にネクタイを巻き、左右から引っ張った。長女も
ネクタイで絞め殺した。3人は、福岡市内で昨年2月ごろ知り合った後、何度も
金目当ての犯罪に手を染めていた。しかし、思うような多額の現金を奪うことが
できずに計画をエスカレート。アルバイト先などを狙っていたが「関係先ばかり
では警察に疑われる」と考えた上での松本さん宅襲撃だったという。(産経新聞)