【邪気眼】二つ名を持つ異能者になって戦うスレ9

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1名無しになりきれ
*「ここは 邪気眼 のスレです」
*「sage や 酉 は入力しなければ意味がないぞ」
*「荒らしを構った後には 荒らし扱いになるよ」
*「おお名無しよ 版権キャラを使ってしまうとはなさけない」

*過去スレ
【邪気眼】二つ名を持つ異能者になって戦うスレ
ttp://etc7.2ch.net/test/read.cgi/charaneta2/1203406193/
【邪気眼】二つ名を持つ異能者になって戦うスレ2
ttp://etc7.2ch.net/test/read.cgi/charaneta2/1209655636/
【邪気眼】二つ名を持つ異能者になって戦うスレ3
ttp://etc7.2ch.net/test/read.cgi/charaneta2/1211555048/
【邪気眼】二つ名を持つ異能者になって戦うスレ4
ttp://etc7.2ch.net/test/read.cgi/charaneta2/1213536727/
【邪気眼】二つ名を持つ異能者になって戦うスレ5
ttp://changi.2ch.net/test/read.cgi/charaneta2/1218369923/
邪気眼】二つ名を持つ異能者になって戦うスレ6 
ttp://changi.2ch.net/test/read.cgi/charaneta2/1225711769/
【邪気眼】二つ名を持つ異能者になって戦うスレ7
ttp://changi.2ch.net/test/read.cgi/charaneta2/1229691027/
【邪気眼】二つ名を持つ異能者になって戦うスレ8
ttp://changi.2ch.net/test/read.cgi/charaneta2/1235132485/

*避難所
二つ名を持つ異能者になって戦うスレ避難所4
P C:ttp://jbbs.livedoor.jp/bbs/read.cgi/computer/20066/1232545359/
携帯:ttp://jbbs.livedoor.jp/bbs/i.cgi/computer/20066/1221605457/

*まとめサイト
二つ名を持つ異能者になって戦うスレ@wiki
ttp://www9.atwiki.jp/hutatuna/

*これまでのあらすじ
『闘って奪い獲れ。生き残るためには勝ち残れ』。
舞台はどこにでもある地方都市、貳名市。
この街には「二つ名」を持ち、それに由来する異能力を有する『異能者』たちが存在した。
一通のメールは、異能者たちを否応なく闘いに駆り立てる。

―――オオオオオオオオオオオオオオオオ!!!!!

死を覚悟した『鬼神』戦場ヶ原 天率いる鬼どもの最後の咆哮――─
それに呼応すべく、機関の中枢、ナガツカインテリジェンス本社ビルへと集った仲間達。
しかし、城栄金剛の目論む炎魔復活は目前に迫ろうとしていた。
炎魔への生贄として捕えられた『ヤハウェ』桐北修貴、そして煌神リンの運命は!?
数日が何ヶ月にも感じられた修羅の刻を経て……
交差する運命が今、異能者達を戦いの地へといざなう―――…
2名無しになりきれ:2009/06/28(日) 20:04:32 0
            おらおら!清潔で 美しく すこやかな毎日を目指す 花王様が2ゲットだぜ!
.      ‐、‐-.,_   
      ヽ  ヽ、   >>1 あるある大辞典は単独提供だ!うらやましいか(プ
         'i   'i,   >>3 2ゲットもできねーのか?ビオレで顔洗ってこい(ゲラ
       ,ノ.,_   |   >>4 資生堂ばっか買うなよ(w
     < ‘`  !   >>5 お前もしゃくれアゴ(プ
      ,'=r  ,/    >>6 ライオン製品でも使ってろよ(ゲラ
  、.,_,..-'´   /    >>7 P&Gには負けんぞ!
  `"'''―'''"´     >>8 ヘルシア厨必死だな(ププッ
3池上 燐介 ◆ICEMANvW8c :2009/06/28(日) 23:45:13 0
最上階へと近付くにつれ、空気がこれまでものとは明らかに変わってきていた。
階段を一つ一つ駆け上がるたびに体の表面を襲う、細かい針が突き刺さったような感覚。
高揚しきった精神をものの見事に萎縮させるような、圧倒的な雰囲気──。
怒りに震えた高山も、迷いを振り払った籐堂院も、このような感覚に耐え切れずか
額に細かな汗を浮かび上がらせていた。

「クソ! 進むにつれて、この精神を圧迫するような感覚が強くなってきやがるぜ……!」
「それだけ俺達が奴に近付いているという証拠だ。……奴は近いぞ」
「──見ろ! 階段が途切れた! 最上階だ!」

籐堂院が最上階へ続く階段の終わりを告げた。
瞬間、俺は残りの階段を三段飛ばしで駆け上がり、最上階のフロアの床に足を踏み入れた。
ガツカインテリジェンスビル50階──そこは不思議なほどの静寂に包まれていた。
前を見ると、一本の長い通路が一直線にフロア奥の『社長室』というプレートが設置された部屋に
続いているのが見える──しかし、どういうことか周りには守衛の影もその気配もない。

「見張りは無し……誰でもウェルカムってか?
へっ、流石ドでかい会社の社長さんだけあって、器が大きいじゃねーの」

高山が皮肉混じりに呟いた。

「あの扉の奥から強力な気を感じる……。間違いないぞ、あの男はあの扉の中にいる。
……下がれ二人とも」

いわれるままに俺と高山は距離をとる。
籐堂院はそれを確認すると刀を抜き、やがて刀身に炎を纏わせ始めた。
どうやら彼女は扉を開こうと迂闊に近付くのは危険と感じ、
まずは近付かずに扉を破壊すべきと判断したようだ。

「出てこないなら燻り出してやるまでだ……! 『滅剣・神滅劫』──」
「──この部屋の扉は割と値が張るシロモンなんでな。つまんねーことで破壊されるわけにゃいかねぇ。
俺の顔を拝みたいってなら、望み通りにしてやるぜ……」

突如としてフロア内に響き渡った声──
その声に、籐堂院は振り抜きかけた刀をピタリと止めた。

「……フッ、おでましか」

俺は目を細めながらどこか笑みを零すように呟いた。
──通路奥の扉が「ギィィィ」という音を立てながら、ゆっくりと開いていった。
4池上 燐介 ◆ICEMANvW8c :2009/06/28(日) 23:49:35 0
扉が開かれた──。
その瞬間、張り詰めていた空気が、更に一層緊張を増したような気がした。
そう、俺達の前に、あの男が姿を現したのだ──。

「また会えたな……城栄 金剛!」

左目に傷を持ち、顎鬚を蓄え、そして何より、体全体で放つような他者を圧倒する迫力。
男は機関No.1の城栄 金剛に間違いはなかった──。

「こいつが……城栄……!」
「……ッ!」

高山と籐堂院は城栄の発する雰囲気に圧されまいと、歯を噛み締めた。
城栄は俺達をねめまわすように一瞥すると、
やがて葉巻をくわえていた口から「ふぅー」と盛大に煙を吐き出した。

「ひーふーみー……思ったより少ねぇな。
ん……? 一番右にいる長髪君は確か……あぁ、そうだそうだ、池上とか言ったっけな?
前に会った時も何人か仲間を引き連れてたと思うが、その時は顔ぶれが違うな。
んで、何て名なんだァ? お前ェらは」
「俺の名は高山 宗太郎! テメーの野望を打ち砕く者だ!」

高山が力強く吠える。しかし、城栄はそれを流すように視線を高山から籐堂院へと移した。

「ほぉほぉ、威勢のいいことで。……そこのお嬢さんは?」
「籐堂院 瑞穂……。この名を知らないとは言わせないぞ」
「……へェ、お前さんが瑞穂だったか。
レオーネの言うとおり、確かに雰囲気が変わっちまってて分からなかったぜ。
しかし、お前さんといい、こちらに寝返りながらあっけ無く殺られちまった神といい、
ったく、お前ら親子にはつくづく頭を痛めさせてもらうぜ……」

ニヤケながらおどけたように頭を抱える城栄からは、とても困ったような感じは受けない。
その態度に、籐堂院が怒気を含んだ眼光を叩きつけながら刀を抜いた。

「そうか。なら、二度とその苦痛を味あわせぬようにしてやるまでだ……!
師匠の魂がこもった──この、『新・天之尾羽張』でな!」

籐堂院は威嚇するように鈍く光る切っ先を城栄へと向ける。
しかし、城栄はおどけた態度を崩すどころか、やがて大きく口を開けて笑い始めた。
5池上 燐介 ◆ICEMANvW8c :2009/06/28(日) 23:55:40 0
「ククク……ハーハッハッハッハッハ!」
「な、何がおかしい!」
「そんな鉄の棒一つを持ったくらいで得意になるたァ、これが笑わずにいられるかァ?
──甘ェんだよ。お前ェが俺に闘いを挑むのは100年早ェッ!!」

不意に城栄が声を張り上げる。
その大声は振動なって空気を伝わり、体にビリビリとしたものを走らせた。
籐堂院も高山も、そんな迫力に圧されるように、再び顔中に汗を浮かばせた。

「フン……まぁいい。どちらにせよ、ここまで来られた以上もはや部下に任すわけにはいかねぇし、
たまには運動もいいだろう。──さぁ、死ぬ気があるならかかって来いや」

城栄は羽織っていたコートを脱ぎ捨てた。
途端に、顔付きが変わり──フロア内に強烈な殺気が漂い始めた。

「……」

俺の背筋に嫌な汗がツゥーと流れるのを感じる。
城栄は仁王立ちしながらこちらをジッと睨み付けているだけなのだが、
俺も籐堂院も高山も、無言で身構えたまま動けないでいた。
(──構えているわけでも武器を持っているわけでもない。しかし、まるで隙がない……!)

こうして互いに睨み合う体勢を何秒、何十秒続けた頃だろうか。
しびれを切らしたように、城栄が一歩足をこちらへ近づけた。
それを見た高山が意を決したように突っ込もうとするが、俺はそんな彼の肩を掴んだ。

「な、なぜ止める!」
「奴の異能力は他人の異能力を封じ込めるもの……しかし、奴はまだ謎の力を隠し持っている。
……迂闊に近付かず、まずは距離をとって闘うぞ。……いいな」

言いながら、二人を見る。高山は納得できないように一度舌打ちをしたが、
籐堂院が素直に頷くのを見るとやがてこくりと頷いた。
まだ見ぬ城栄の真の力──それを見破り対抗策を講じぬ限り、勝ち目は無い。
俺の頭の中を、城栄と闘った時の記憶が、鮮明に蘇っていた──。

【池上 燐介:ナガツカインテリジェンスビル最上階にて戦闘開始】
6レオーネ@代理:2009/06/30(火) 00:48:05 0
〜これまでのあらすじ〜

異能の師長束公誠の墓を弔う為、炎魔山と伝えられる山へと赴いたレオーネ。
しかし、そこに現れたのは彼の理想の世界を阻む障害、長束誠一郎と塚原ひかるだった。
意見の違いから刃を交える三人。朝の山を舞台に、お互いに一進一退の攻防が続いていた。

>>245
敵が視界内に入っていなければ、幻覚を投影する事は出来ない。
レオーネの額に汗が流れる。今回ばかりは技に頼る事は不可能だ。

「えぇい……!」

レオーネは大道芸もかくやというバク転を見事成功させて、即座に身を屈める。
結果として二本は避けたものの、着地の時に一本は左腕の肉を切り裂き、もう一本は頬を霞めた。
そして最後の一本は、レオーネが咄嗟に身をそらした所へ、
まるで予想していたかのように、彼のわき腹を切り裂いて行った。

「流石に……あれを無傷でと言う訳にはいかんか……!」

右の頬から赤い線が、レオーネの白磁の肌に映える。
それは、白人特有の極め細やかな白い肌を一層引き立てる、素晴らしいコントラストであった。

流石、腐ってもファーストナンバーか……。
レオーネの心中はその場を吹きぬける風のように穏やかではなかった。

「君の場合、降参はしないだろ? だから一思いに楽にしてやろうと思ったのに……」

レオーネから少し離れた地面――草も何も無い荒れ果てたその大地が、
先程までと全く同じように、割れたガラスのようにひび割れると、
そこからまるで土筆が生えて来るかのように宿敵長束誠一郎がその姿を現した。

余裕の誠一郎に対し、深紅のレオーネ。どちらが優勢かなど見るまでもなかった。
だが、しかしレオーネの顔から切羽詰った様子は見られない。
何故なら、彼の計画通り事は進んでいるからに他ならなかったのだ。

「誠一郎……。必ず止めは自分の手で刺しに来ると思ったよ。
 フ、フフフフフッ……」

何が可笑しいのか、この男は……。誠一郎の眉間に僅かに皺が走る。

「最後に答えてくれないか、レオーネ。
 お前たちに炎魔が御せるとでも思うのか?」

いくら金剛とレオーネでも所詮は人の子。人外の者と相対すれば、たちまち脆く崩れ去ってしまうだろう。
だが、この二人なら何か策を思案しているに相違無い。
その企みを見抜かなければならない。長束家の長として……。


「あぁ……勿論だとも。
 準備は万端、後は大量の異能エネルギーを送って炎魔を蘇らせるだけだ」

レオーネからはハッタリである様子は無い。ならば、やはり何かの策を講じているのか。
誠一郎の胸中に妙な胸騒ぎが起こった。

「姿を……姿を現して止めを刺すと踏んだのは間違いなかったようだな……。

 おかげで対策も万全だったよ」

レオーネが何を言っているのか誠一郎には理解できなかった。
だが、彼の顔から深刻さが見受けられないと言う事は何かがおかしい……。
7レオーネ@代理:2009/06/30(火) 00:51:15 0

「ほら……そろそろ戻ってくるぞ。
 ……誠一郎、頭の良いお前ならばデ・ヌォーヴォの意味が解るだろう?」

「……! 『再び』か!」

初めからレオーネには解っていた。例え誠一郎が姿を空間の隙間に隠そうとも、
彼の攻撃を避け続けていれば、最後の詰めで誠一郎が本体を現す事を。
――投げた物は落ちてくる。それが自然の摂理だ。
そして、その自然の摂理を当然と思っていれば、思い込みによって創り出された魔槍もまた例外ではなく……。

――落ちてくるのである。レオーネの操作によって彼の元へ引き寄せられるかのように。

「この化かし合い、私の勝ちのようだな誠一郎……」

不適に笑うレオーネ。全て予測されていたのだ。誠一郎が今から行動に移しても遅かった……。

――最初に風きり音が聞こえた。次に背中を起点として全身の隅々に衝撃が走った。
これは一体どうした事だ? 体が言う事を利かない。
誠一郎の脳は自身の思い込みによって、槍に体を貫かれたと錯覚して、
自分の腹部に大きな窪みを作ったのであった……。

【レオーネ:現在地 裏山】
8宮野 光龍 ◆O93o4cIbWE :2009/06/30(火) 22:06:11 0
―あらすじ―

アーリーの住む、シナゴーグでの姫野与一とアーリーとの出会い、
その最中、行動を共にしていた鳳旋は姫野の放った刃の前に伏し、そして光龍は姫野の過去を知ってしまう。
人を殺めすぎた姫野の過去に恐怖し逃げ出した光龍。
そして銀水苑統治との邂逅、彼は光龍の心を見透かすかのように
様々な事を話す。彼の一言一言全てが、光龍の中に刻まれていった。
そう、宮野光龍という人間そのものを変えてしまう程に――――

>>256-257

「お前は迷いと恐怖が有るだけましだ。本当に狂った異能者は迷わない。
話がそれたが……俺の経験上只一つ言える事は
異能を何の為に使うか、自分が何の為に戦うかハッキリしておかないと
絶対に後悔するという事だ。
自分の本性と欲望の為に戦うか、あるいは譲れない己の信念の為に戦うか。
それとも誰かや何かを守る為に使うのか……人それぞれだがな」

光龍は、統治の言葉を黙って聞いていた。

―――俺は、どうすればいいんだろう?

統治の言葉が終わり、光龍は、考えていた。

――信念のため……守るため…?

統治の言葉で、宮野光龍という人間は大きく揺らいでしまった。

―――どうする、どうするんだ……、こんな事、知らなければ、よかった…

   変わりたくなかった――、変わらなければ―――よかった――

光龍は放心状態で、暫くこの沈黙が続くと思っていた、だが―――


―――「うおおおおおおおい!!」


懐かしい様な、声、バカの声。ああなんだ、あのバカか……

あの…バカ…?

「こーりゅぅぅぅっ!!いま助けるぞーーっ!!」

館に響く大きな声、鳳旋が、二人の下へ駆けつけて来たのだ。
「あ……おい…待て…」
統治の背後から走って来て。あろうことか、飛び上がり、統治にドロップキックを仕掛けたのだ。

「チェストオオオオオオ!!」

【鳳旋が統治へ向けドロップキックを放つ】
9銀水苑 ◆TF75mpHiwMDV :2009/06/30(火) 23:07:54 0

統治は静かに、光龍の言葉を待っていたが
そこに闖入者があらわれた。
「こーりゅぅぅぅっ!!いま助けるぞーーっ!!」
館に響く大きな声、鳳旋が、二人の下へ駆けつけて来たのだ。
「あ……おい…待て…」
光龍の制止も聞かず、統治の背後から走って来て。
あろうことか、飛び上がり、統治にドロップキックを仕掛けたのだ。
「チェストオオオオオオ!!」
ドロップキックを放つ。
気合も速度、そしてタイミングも十分な不意打ちだが……
まともに喰らってやるほど統治はお人よしではないし……
これを喰らうようなら何年にも渡り機関の一部隊の長を務める事などできはしない。
語りかけているときでも警戒は怠らない。
統治は眼だけではなく、異能の気配や『熾火』による温度探知により相手の位置や気配を探る。
(あれは誰だったかな、抹消部隊の隊長は後ろにも眼が有ると形容したのは)
軽やかなステップで静かに横に飛ぶ。
鳳旋は一瞬前まで統治が居た位置を通り越して床に転がるが、直に態勢を整え起き上がる。
「ふ、ははは」
それを見た統治の冷ややかな態度に、初めて剃刀のような笑みがうかぶ。
10銀水苑 ◆TF75mpHiwMDV :2009/06/30(火) 23:09:37 0
「光龍、お前の仲間は本当に面白いな。
何の計算も打算もなしに何も考えずただ救いに来たぞ。
――殆ど揺らがない、真白に輝く心の炎。
己に確固たる物を持ち、シンプルが故に恐ろしく真っ直ぐだ。
まるで珍しく貴重なダイヤモンドのようだ、故に仲間なのか……
……こういう手合いに言葉は虚しいな。俺が何を言っても信用すまい。
行動はその場のノリ次第、見たところ考えるよりも直感を信じるタイプと見た。
言葉を交わすよりも殴り合う事で相手を理解するだろう」
鳳旋にクルリと向き直り、言い放つ。
「そして……お前の顔写真には覚えが有る……確か鳳旋希一だったな。
お前は戦いの中で生きる喜びを見出し、
生死はあくまで闘争の結果であってそれ自体が目的ではない。
戦いの結果自らが死ぬ事になっても相手も自分も恨まない。
ただひたすらに流れと闘いに身命を置き限りなく清らかだ
お前は異能に飲まれず、異能が拳と同列の物なのだな。
そしてそのどちらもお前の喧嘩(ことば)以上の物では無い。
……相手をするしかねえな
任務の途中で他の奴も気になるところだが少し時間も有ることだ。
鳳旋、お前の遊びに付き合ってやる」
11銀水苑 ◆TF75mpHiwMDV :2009/06/30(火) 23:16:02 0
(……ただひとつ気に掛かるのは覚えの有る気配が此処に向かっている事だ。
だが奴の気配、以前とは感じが違う。炎の揺らめき、波長が三つになっている。
多少離れていてもはっきりと分かる。此処まで多く、且つ強いメタトロンを持っている奴だったか?)
疑念が浮かぶが、とりあえずは目の前の二人に集中する。
光龍は驚愕を浮かべ、鳳旋を制止する様なことを言う。
統治が苦笑と共に、どこか温かみの有るまなざしで光龍に言った
「ま、大丈夫だ光龍、お前と戦えば恐らく【殺し合い】になるが
この直情型の馬鹿との戦いに俺が合わせるなら間違いなく【喧嘩】か【殴り合い】になる。
――仲間なら戦いに対する互いの考え方の差は知っておくことだな」
統治は鳳旋に向かい静かに構えを取った。
片手だけ、拳法でいう抜き手のような形に指を揃えて拳を作る。
「……此処に着てから驚くばかりだ。
ふ、くく。殺し合いはひたすらに面倒だが……
それでは無く異能を使った只の喧嘩をするなど何年ぶりか。
只の喧嘩なら……そういうのは嫌いじゃない」
「――長話が過ぎたな。面倒だが殺し合いではなく喧嘩なら相手をしてやる
俺は二人係りでも構わんが、鳳旋、お前さんの方は一対一が好みだろう?
本当の理想は異能を交えないノーガードの殴り合いだろうがそこまでは合わせんぞ。
漢の心は拳を交えなければ分からないと思うのなら
拳と異能を言葉にして聞いてみろ。掛かって来い!」
【鳳旋に対し、殺し合いではなく喧嘩なら相手をするという】
12廻間 統時 ◆7VdkilIYF. :2009/07/01(水) 20:02:15 0
>>221
>>251

「…くっ!」

目の前のゾンビを切り払い、紅い月に付いた血を振るい落とす。
大量のゾンビも、リースの援護もあって大分片付いてきた。
途中にリースがゾンビの波に飲み込まれるという事もあったが
それもリースの能力で解決した。

(こんなところで留まっている暇は無いってのに…!)

そう、俺たちは悪魔でも時間をずらして侵入するのだ。
いつまでも、ビルの周辺に留まるわけにはいかない。
こんなことをしている間にも、味方は俺達みたいに敵に襲われているかもしれない。
…だが、何分相手が悪い…ツバサは未だ本気で戦っているわけではない。
たしか、蒼鬼と呼ばれていた鬼が未だに残っているはず。あの鬼を呼び出していないという事は…
温存しているのか、それとも呼び出せないのか。
単純に考えるなら、蒼鬼がいない今はある意味チャンスとも言える。
早急にこの闘いを済ませたい…だが、焦るわけにはいかない。
俺の持ち味を生かし、その上で戦った方がいいだろうな。足は十分に溜まっている、いける筈だ…!

「…!」

俺は出来る限りのスピードで、ツバサの背後に回りこみ…
紅い月を背中へと突き立てた。

【廻間:ツバサの背後に回りこみ、背中を突き刺そうとする】
13ツバサ=ライマース ◆O93o4cIbWE :2009/07/01(水) 23:22:24 0

あらすじ―――

機関の中枢、ナガツカインテリジェンス本社ビルへと向かう統時達の前に、機関の幹部、ツバサ=ライマースが再び現れる。
以前統時に放った言葉、"次に遭った時俺は完全に敵だ" その言葉通りに、ツバサは統時達に牙を剥く。
亡者を呼び出すツバサの能力に統時達は苦戦を強いられる。
戦いの最中、統時の新たな仲間、リース・エインズワースは亡者の群れに捕まり、飲み込まれてしまった――――

>>12

―――亡者の波に飲み込まれた少年は、そのまま、有象無象の一塊となり朽ち果てる―――筈だった。
しかしその刹那―――、白い龍が、有象無象を掻き分けて姿を現し、龍は亡者達を蹂躙して行く、

「なるほどねぇ〜。トージはヤハウェ様だったのか」

亡者達を蹴散らした龍はその水晶の様な身体に光を反射させ幻想的に輝く。あの龍の身体は、氷によって形作られて居るようだ。

「大事な友達を俺のおふくろのようにさせるワケには行かないんだよ!

 かかって来な、機関の兄ちゃん」

白き龍を従えた少年はツバサと対峙する。

「――チッ…」

統時の付属品だと思っていた少年の異能は、かなり高等な部類に属した。
予想外の戦力の登場により、ツバサは舌打ちせずには居られなかった。
氷龍は、続く亡者達をその顎で砕き、少年の放つ氷弾もまた、亡者達の頭部を的確に穿ち、触れる事を許さない。
かたや統時の方も、次第に体制を立て直し、ツバサに迫りつつあった。

そして、一瞬の隙を突いて、風のように統時は走り、飛んだ。壁面を蹴り、多角的な軌道を描きながらツバサの背後を取り、剣を突きたてた。
14ツバサ=ライマース ◆O93o4cIbWE :2009/07/01(水) 23:23:18 0

「…!」

さすがのツバサも、統時のこの動きには対応出来なかった。無理も無い、ツバサ自身の身体能力は、人のそれを上回る物では無いのだから。
そしてツバサの異能は、即効性のあるものとは呼べず、接近戦になればどうしても対応に遅れてしまう。
統時の接近を許してしまった事は致命的といえる―――

しかし、ツバサも機関のファーストナンバー、身体強化の異能者や達人のそれに及ばなくとも――
統時の放った突きは、ツバサの腋を掠めた。スーツが裂け、赤いモノが噴出す、ツバサが苦悶の表情を浮かべる事は無い、痛みは後から付いてくる。
ツバサは、咄嗟に横へ飛び、突きを紙一重でかわした。そのまま一回転し、大鎌を統時に向け、横になぎ払う。
遠心力により加速した大鎌は、統時に触れる事無く、かわされた。

すかさずツバサは弧を描く軌道で大鎌を上段に構え、二の太刀を放つが、これもかわされる。だが、これは統時を狙ったものでは無かった。
上段から放たれた二の太刀は、大地を割り、其処からは生者を冥府へ誘うように大量の亡者の腕が現れ、統時を冥府へ引きずり込もうとする。
「っくそ…」
亡者の腕により、反撃の機会を失った統時にツバサの大鎌が襲い掛かる。だが、

「俺も忘れちゃこまるぜぇ!!」

少年の放った氷弾が、ツバサの右肩を撃つ。ツバサは大きくよろめき、その隙を統時が突く。
「グッ!クソが!!」
ツバサの左の掌から、無数の亡者が塊をなした異型の腕が飛び出した。
人間の腕の一回りも二回りも在るその腕は、統時の防御を気にも留めず、統時を反対側の道路へと突き飛ばした。

「…ハァ…ハァ……、ックク、ハハハハ……」

ツバサは自嘲的に笑い、少年へと向き直る。

「…ジャマだよ…オマエ…」

そう呟くと少年にゆらり、ゆらりと歩み寄る。そうしている内にもツバサの前方から亡者が次々と現れて行く。

――…いいぜ、そんなに死にたいなら…お前から殺してやる…。精々苦しんで―――死ね―――

ツバサの狂気が今、リースへと襲い掛かる。

【統時を突き飛ばし、リースを狙う】
15鳳旋 希一 ◆O93o4cIbWE :2009/07/04(土) 21:38:35 0
>>9-10

ワシの放つ渾身のドロップキック――、

「ふ、ははは」

かわされた!!
光龍は戸惑っておるが安心せい、この悪党はワシが倒してやる。

「光龍、お前の仲間は本当に面白いな。
何の計算も打算もなしに何も考えずただ救いに来たぞ。
――殆ど揺らがない、真白に輝く心の炎。
己に確固たる物を持ち、シンプルが故に恐ろしく真っ直ぐだ。
まるで珍しく貴重なダイヤモンドのようだ、故に仲間なのか……
……こういう手合いに言葉は虚しいな。俺が何を言っても信用すまい。
行動はその場のノリ次第、見たところ考えるよりも直感を信じるタイプと見た。
言葉を交わすよりも殴り合う事で相手を理解するだろう」

そうじゃ、ワシらは仲間じゃ、それにしても…長々と話すヤツじゃのう…

「そして……お前の顔写真には覚えが有る……確か鳳旋希一だったな。」

な、なんでワシの名前を知っとるんじゃあ!?これが機関とかいう奴等なのか?
光龍がワシを止めようとしてくるがワシはこんなヤツには負けん。

ヤツはまた長々と話をしだした…あぁ、やっと構えた。あんまり長々と話すもんで途中からよく聞いとらんかった。

「――長話が過ぎたな。面倒だが殺し合いではなく喧嘩なら相手をしてやる
俺は二人係りでも構わんが、鳳旋、お前さんの方は一対一が好みだろう?
本当の理想は異能を交えないノーガードの殴り合いだろうがそこまでは合わせんぞ。
漢の心は拳を交えなければ分からないと思うのなら
拳と異能を言葉にして聞いてみろ。掛かって来い!」

「おお!ワシは鳳旋希一!!オヌシの様な悪党は成敗してくれる!いくぞ!!

 そおりゃああああ!!」

鳳旋は統治に殴り掛る。
掛け声と共に、迷いの無い一撃が統治に放たれた。

【正面から殴り掛る】
16銀水苑 ◆TF75mpHiwMDV :2009/07/04(土) 22:18:05 0
>>15

「おお!ワシは鳳旋希一!!オヌシの様な悪党は成敗してくれる!いくぞ!!
 そおりゃああああ!!」

鳳旋は統治に殴り掛る。
掛け声と共に、迷いの無い一撃が統治に放たれた。

(先ほどから見ていたが良い動きだ。しかも
異能も使わずに正面から殴りかかってくるとは勇敢だな)
「……古天明平蜘蛛(こてんみょうひらぐも)」
統治の左腕に歪な形をした炎の盾が出現する。
まるで丸い蜘蛛が這い蹲ったような形の禍禍しい形状の炎。
ゴッ!と鈍い音を立て、攻撃を受け止める。
(なかなか重い一撃、だが…)
「――生憎これは只の炎の盾じゃない、捕らえろ、平蜘蛛」
統治の手に絡み付いていた炎の足が 攻撃してきた鳳旋の拳を掴む
「古天明平蜘蛛とは……日本の歴史上初めて爆死した戦国武将が愛用した茶器。
その戦国武将は敵方に追い詰められ平蜘蛛に火薬を詰めて自爆したと伝えられる……」
統治が合図をするかのように指を弾く。
いや、これは合図なのだ。『起爆命令』の。
平蜘蛛の名を冠する、蜘蛛を象った炎の盾も例外ではなく……
高熱と炎気を押し固めて構成された炎の盾が制御から開放されて……爆発した。
17銀水苑 ◆TF75mpHiwMDV :2009/07/04(土) 22:25:10 0

統治の攻撃は終わらない。
爆発自体はそう大した物ではないが……
鳳旋の殴り掛かってきた腕が上に跳ね上がる。
そう、これは相手の攻撃を防ぎ、近接攻撃してきたのならついでに態勢を崩す技なのだ。
戦闘は嫌い、と統治は語っているが無駄の無い技にその技量が垣間見える。
「異能を用いた打撃とはこうやって打つものだ……!」
統治の右掌にはテニスボール大の火珠が握られており
それをそのまま鳳旋に掌底と共にぶち込んだ。
鳳旋は残った腕で辛うじてガードすることが出来た。
(ほう……態勢を崩されながらまともに喰らう事だけは辛うじて避けたか。
中々の反応だがまだ甘い!)
『微塵!』
鋭い裂帛の気合と共に、押し付けられ圧縮された火珠が爆ぜる。
――衝撃と、熱風。
一拍遅れてシナゴーグを微かに震わせる鈍い爆音が響く。
爆破の余波の振動が離れた光龍にもはっきりと届く一撃だった。
鳳旋の身体が中に舞う。
一撃を食らわせたのにも関わらず統治の反応は冷ややかだ。
その冷たい眼光は発する炎と闘気の熱さとは真逆に凍りつくように冷たい。
機関の戦闘員にありがちな欠片の油断も
己の力を誇る傲慢も一片たりとて存在しない。
衝撃を少しでも逃がすように受身を取りながら床を転げ、
壁にぶつかってようやく止まった鳳旋に言い放つ。
「立て。火加減は温めにしておいた。大して効いちゃいないはずだ。」
統治は無慈悲な事を言うが恐ろしい一撃だ。
炎を抜きにしても掌底と爆撃の相乗効果は肉体強化した異能者にすらダメージが通るだろう。
普通の人間がまともに喰らえば良くて内臓破裂。
統治が本気でやっていれば技名どおり焼き尽くされながら『微塵』に砕ける。
「本気を出して異能を使って来い。『悪党』を倒すのだろう?
……その程度の力が本気なら何一つ守れんぞ」

その眼も言葉も冷たいが、まるで、相手を鍛えるように戦っている。
【鳳旋に立ち上がるように言う】
18鳳旋 希一 ◆O93o4cIbWE :2009/07/05(日) 00:19:41 0
>>17

「……古天明平蜘蛛(こてんみょうひらぐも)」

統治が呟くと、彼の左腕に炎で形取られた、異形の盾が姿を現す。
鳳旋の拳は現れた異形に阻まれ、鈍い音を立てた。

っなんじゃと―――!!

「――生憎これは只の炎の盾じゃない、捕らえろ、平蜘蛛」

鳳旋が驚く、その隙に、異形は腕を伸ばし、蜘蛛の様に鳳旋の腕を捕えた。

「古天明平蜘蛛とは……日本の歴史上初めて爆死した戦国武将が愛用した茶器。
その戦国武将は敵方に追い詰められ平蜘蛛に火薬を詰めて自爆したと伝えられる……」

統治が指を鳴らす、それを合図蜘蛛を象ったそれは小規模な爆発を起こし、鳳旋の腕を跳ね上げた。

「異能を用いた打撃とはこうやって打つものだ……!」

体制が崩れた所へ統治の追撃が来る。
手の平程の大きさの火の球を右の掌に収め、それをガードの空いた懐に打ち込んだ。
「ぐっ…!!」
空いた腕で行った咄嗟の防御が間に合った、しかし。

『微塵!』

空気を裂く様な、統治の鋭い声。同時に火の球は爆ぜ、熱風と衝撃が鳳旋を襲う―――

「――っがハッ!!」

たまらず声を上げる鳳旋、その衝撃は、すさまじい、彼の身体はそのまま宙を舞う。
彼は勢いを殺すため転がりながら受身を取る。
そして壁へと行き着き停止した所に統治は言い放つ。

「立て。火加減は温めにしておいた。大して効いちゃいないはずだ。」

統治は無慈悲な事を言う。

「鳳旋!!」

光龍は鳳旋の身を案じ、自然と感情も昂って来る。

「本気を出して異能を使って来い。『悪党』を倒すのだろう?
……その程度の力が本気なら何一つ守れんぞ」

統治はあくまで冷厳な態度でこの戦いに臨んでいる。
だがまるで、鍛えているようにも、二人に何かを伝えようとしてる様にも見える。
19鳳旋 希一 ◆O93o4cIbWE :2009/07/05(日) 00:20:30 0

「ぐッ!くそ!やるなあオヌシ!!」

そう言ってよろよろと立ち上がる鳳旋、だが先の一撃は常人ならば再起不能になりかねない一撃だった。
それを受けてなお鳳旋が立ち上がれるのは、彼の能力(チカラ)の影響なのかも知れない。

「こんなに手強い相手はじめてじゃ!見せてやろう、ワシの異能力を!!」

鳳旋の拳が炎に包まれる、この炎は統治の炎では無く、鳳旋自身から湧き上がる炎。
鳳旋の炎は身体の到る所に灯り、その姿は神話に観る魔人の様にも見える。

「…これをやると後でヤケドが酷いんじゃがな…仕方ない…行くぞっ!!」

一気に駆け出す鳳旋、足に灯った炎が唸りを上げて一気に燃え上がり、爆発的な勢いで噴射される。
噴射される炎は鳳旋に圧倒的な推進力を与え、統治との距離を一瞬で詰める。

―――鳳旋の炎は、己の身を焦がす、それは彼が未熟なのでは無く―――

接近する鳳旋を迎撃するべく、炎が放たれる。鳳旋は放たれた炎に自ら突っ込む。
だが、炎の中から現れた鳳旋の姿は、何一つ変わり無かった。

   ―――それが。自らの身を焦がす程の大きな炎だから―――

「そんな炎が効くかあああああぁ!」

まるで自分には炎は効かんと言わんばかりに、叫びを上げる。
考えてみれば、先の攻撃を受けた時も、衝撃による損傷は在っても、炎による損傷は無かった。

「はああああああっ!」

接近し、中段から、胴を狙った蹴りを放つ、しかし先程の様な盾で防がれる―――が、
接近時の加速度に鳳旋自身の力を乗せ、さらに噴射される炎の推進力を乗せた蹴りの力は、純粋に統治を壁まで押し飛ばした。

―――ガァァァァン!!

刹那、轟く爆音、このシナゴーグを震わせるに十分な爆発が、今統治と鳳旋が居た場所に起こった。

『言ったじゃろ、そんな炎は効かんと…』

煙が晴れた先、鳳旋は静かに立っていた。
鳳旋は再び距離を詰め、壁際で体勢の崩している統治へ一足による飛蹴りを放った。
鳳旋の身体は加速し、一本の靡く炎の矢の如く統治を捕えた。

「成敗!!」

【統治を壁際へ押し飛ばし、飛び蹴りを放つ】
20姫野与一 ◆N8yTRtOcY2 :2009/07/05(日) 19:58:31 0
>>15-19

どこかで響く爆音、直後に来る会堂を揺らす振動。これで二度目だ。
私は、一人で光龍さんの所に向かった鳳旋さんを探して廊下を走っていた。

私は"異能の気"という物を感じ取る事は出来ない。けど、異常な"熱気"が館内に蔓延している事は嫌でも感じられた。
おそらく侵入してきた異能者の能力の影響なのだろう、まるで巨大なサウナのようだ。
私はその熱気と響く音だけを頼りに彼を探していた。

「急がなきゃ……鳳旋さんが――ッ!?」

長い長い廊下が終わり、一つの曲がり角へと行き着く。そこで突然、熱気が一段と強くなった。
おそらく此処を曲がったところに彼らが居る……私は左の道に曲がり、歩き出そうとしたその瞬間――

―――ガァァァァン!!

目の前で、"誰か"が吹き飛ばされて、爆音と共に会堂内を大きく揺らした。

反射的に槍を左手に創り出して武装する。
今、吹き飛ばされていたのは鳳旋さんではなかった。じゃあ侵入者が?

角から頭を出して覗くと、なんとそこには体中を炎で纏った鳳旋さんが立っていた。そしてその傍らでは光龍さんがしゃがみ込んでいる。
向かい側には、おそらく鳳旋さんに吹き飛ばされて、壁に体を打ち付けている侵入者と思われる男性。
これは……鳳旋さんが勝っている?あれほどまでの炎を操るなんて……彼は一体何者?

>『言ったじゃろ、そんな炎は効かんと…』

鳳旋さんが一言、吐き捨てるように男性に呟く。彼にしてはひどく落ち着いた声だ。
直後、彼は走り出し、まるで弱っている彼に止めを刺すかのように飛び蹴りを放った。

>「成敗!!」
「……ッ!?させない――ッ!」

―――ガキィィィィィン!

私は鳳旋さんの前に飛び出し、炎を纏った飛び蹴りを槍で防ぐ。
重い一撃……衝撃で槍を持った両腕が麻痺しかけている。だけど「強度」だけを集中的に高めた槍だ、充分に耐えられる……!
槍に阻まれた鳳旋さんの脚はやがてその勢いを弱めていき、彼はその場から飛び退き体勢を立て直す。
私は片手で槍を鳳旋さんに向けて怒鳴った。

「あなたは一人だけ先走って何やってるんですか!勝手に出て行って、光龍さんを助けるどころか殺しあっていて……
物騒な物の考えしか出来ないのはあなたの方なんじゃないですかッ!?」

【鳳旋と銀水苑の間に阻むように立つ】
【片手には高硬度の槍を装備している】
21鳳旋 希一 ◆O93o4cIbWE :2009/07/05(日) 20:35:39 0

―――ガキィィィィィン!

ワシの蹴りが、阻まれた!?
よく見ればさっきの娘がワシの蹴りを阻んどる。
こりゃイカンと、ワシは蹴りを止めて飛び退く。

「あなたは一人だけ先走って何やってるんですか!勝手に出て行って、光龍さんを助けるどころか殺しあっていて……
物騒な物の考えしか出来ないのはあなたの方なんじゃないですかッ!?」

ワシに槍を向けて怒鳴ってきた。あ、あ〜〜、……スマン………。

「…スマン、ワシも熱くなりすぎた…。
 これは殺し合いじゃなくてじゃの………」

「同じ事です!!」

また怒鳴られた。どうもこうも…なぁ光龍〜。
光龍は何だかポカンとしてて何も行ってくれん……。

「へ…?、コイツ……悪い奴…じゃろ…?」
22銀水苑 ◆TF75mpHiwMDV :2009/07/05(日) 21:28:49 0

「ぐッ!くそ!やるなあオヌシ!!」
そう言ってよろよろと立ち上がる鳳旋。
(タフな奴。この程度では終わるとは思って居なかったが)
「こんなに手強い相手はじめてじゃ!見せてやろう、ワシの異能力を!!」
(ようやく出すか……)
鳳旋の拳が炎に包まれる、この炎は統治の炎では無く、鳳旋自身から湧き上がる炎。
「…これをやると後でヤケドが酷いんじゃがな…仕方ない…行くぞっ!!」
(コイツ俺と同じ炎使いか!)
一気に駆け出す鳳旋、足に灯った炎が唸りを上げて一気に燃え上がり、爆発的な勢いで噴射される。
噴射される炎は鳳旋に圧倒的な推進力を与え、統治との距離を一瞬で詰める。
(炎を推力に!?炎使いの発想は似通ってくる物だが……
驚いた!衣田のような技を使いやがる!)
「っ!――尖炎弓!」
咄嗟に迎撃のための火の矢を放つ。
接近する鳳旋を迎撃するべく、炎が放たれる。
しかし、鳳旋はそれを意に介さず突っ込んでくる。
鳳旋は放たれた炎に自ら突っ込む。
炎の中から現れた鳳旋の姿は、何一つ変わり無かった。
「そんな炎が効くかあああああぁ!」
(なに!レジストした、だと!炎使いには炎熱に対する耐性がある…だが!)
まるで自分には炎は効かんと言わんばかりに、叫びを上げる。
考えてみれば、先の攻撃を受けた時も、衝撃による損傷は在っても、炎による損傷は無かった。
「はああああああっ!」
(なんというクソ度胸!耐性があると頭で理解していても
普通迎撃されれば防御か回避に意識が殺がれるもんだが全くひるんでねえ!)
瞬く間に接近し、中段から、胴を狙った蹴りを放ってくる。
先程と同じく古天明平蜘蛛で防ぐ、しかし……
(ぐっ、さっきとは比べ物にならない重さ!)
接近時の加速度に鳳旋自身の力を乗せ、さらに噴射される炎の推進力を乗せた蹴りの力は、純粋に統治を壁まで押し飛ばした。
(まずい、このままだと壁まで押されて蹴りの威力をもろに喰らう!
平蜘蛛を爆破して方向を逸らし推力を殺さないと……!)
23銀水苑 ◆TF75mpHiwMDV :2009/07/05(日) 21:29:33 0

―――ガァァァァン!!
刹那、轟く爆音、このシナゴーグを震わせるに十分な爆発が、今統治と鳳旋が居た場所に起こった。
「ゴハッ!」
背中に重い衝撃を受けて思わず呻く。
平蜘蛛を爆破する事で直撃は防いだが
蹴りの衝撃を殺しきれず壁に背中を強打した。
『言ったじゃろ、そんな炎は効かんと…』
煙が晴れた先、鳳旋は静かに立っていた。
壁にぶつかり思わずよろめいた隙を逃すような相手ではない。
鳳旋は再び距離を詰め、壁際で体勢の崩している統治へ一足による飛蹴りを放った。
鳳旋の身体は加速し、一本の靡く炎の矢の如く統治を捕えようと向ってくる。
「成敗!!」
統治も黙ってやられるつもりは無く。
(平蜘蛛じゃ止められねえ!奴の攻撃は速く、重いが、動きは直線的!)
よろめきつつも両方の掌に火珠を発生させる。
(カウンター気味に微塵を……!)
そう思った瞬間、飛び込んでくる影が在った。
「……ッ!?させない――ッ!」
24銀水苑 ◆TF75mpHiwMDV :2009/07/05(日) 21:31:18 0

―――ガキィィィィィン!
何者かが飛び出し、炎を纏った飛び蹴りを手にした槍で防ぐ。
槍に阻まれた鳳旋の脚はやがてその勢いを弱めていき、鳳旋はその場から飛び退き体勢を立て直す。
その、覚えの有る人物は片手で槍を鳳旋に向けて怒鳴り始めた。
「あなたは一人だけ先走って何やってるんですか!勝手に出て行って、光龍さんを助けるどころか殺しあっていて……
物騒な物の考えしか出来ないのはあなたの方なんじゃないですかッ!?」
その人物は怒りをあらわにしている。
「…スマン、ワシも熱くなりすぎた…。
 これは殺し合いじゃなくてじゃの………」
「同じ事です!!」
「へ…?、コイツ……悪い奴…じゃろ…?」
ポカンとする鳳旋に答える。
「つつっ……なかなか効いたよ鳳旋。
最初あったとき人の話も聞かず飛び蹴りをかましてきたのはお前だがな。
仕方なく喧嘩に付き合ってやったんだ。
だが、まさに横槍が入ったから戦いは一次お預けだ」
掌の炎を消し、服の埃を払って態勢を立て直す。
…統治は彼女に尋ねる事があった

「……まあ、考えようによっちゃ神懸った最高のタイミングで
止めてくれたのかも知れんが……
まさかあんたが助けてくれるとは思わなかったよ。二十番の姫野与一さん。
……仕事の種類が違うから俺の事知らないかもしれんから名乗っとくぞ。俺は二十五番の銀水苑統治。
他にも聞きたい事は色々有るんだが…そっちが先で良い」

【警戒しつつも、戦闘態勢を一次解除】
25池上 燐介 ◆ICEMANvW8c :2009/07/05(日) 22:47:50 0
「どうした? 早くかかって来いよ。さもねぇと、絶好の先制のチャンスを逃しちまうぜ?」

金剛は淡々と距離を詰めてくる。
それでも、こちらとの距離はまだ七メートルほどはあるだろうか。
既に俺は勿論だが、高山や籐堂院の攻撃の間合いにも入り込んでいるはずである。
金剛の言葉に触発されたように、一瞬、高山がこちらをチラリと見た。
その目は「行くぜ」──と一斉攻撃の合図をしているようだった。
俺と籐堂院は意を察したように小さく頷く。と、その直後、全員が一斉に異能力を発動させた。

「うおおぉぉぉぉッ!! くらえッ!! 『フレイムスロワアアァァァァァァ』ッ!!」
「我が剣に宿る雷神よ、今こそその力を示せ!! 『神技・天裁雷之轟』!!」
「……!」
                                      イカヅチ
高山の拳からは灼熱の劫火が、籐堂院の刀からは閃光と共に雷が、
そして俺の手から極寒の凍気の渦が──勢い良く放たれた。
城栄は仁王立ちしたまま避ける気配を見せない。この時、誰もが直撃すると思っていただろう。
──しかし、次の瞬間、俺達三人は予想だにしない光景を目にするのだった。

「な、なにィ!?」
「こ! これは……!」

高山が目を丸くし、籐堂院がわなわなとしながら声をあげた。
いつの間にか城栄の周りを謎の『文字』が──いや、『数式』らしきものが浮かび上がっており、
それが三人の攻撃をまるで吸収するかのように瞬時に掻き消したのだ。
無論、城栄がダメージを受けた様子は無い。

「──『フラームスの歪関数』」

城栄がぽつりと呟くと、今度はその『数式』が俺達の体を囲み始めた。
その直後、俺の脳裏に、異能力を封印されたあの時の記憶が過ぎった。

「気をつけろ! 何かするつもり──」

かつての経験からすぐさま二人に注意を促した。しかし、それは既に手遅れであった。
体を囲んだそれら『数式』は、なんと次々と『炎』や『電気』や『凍気』の塊に姿を変えながら、
俺達の体に刻みつくように一斉に襲い掛かかってきたのだ──。

「「「うわあああああぁぁぁぁぁぁぁぁーーーーッ!!!」」」

体のある部分は焼かれ、ある部分は凍らされ、ある部分には電気ショックを流されたような衝撃を
次々と受け、俺達三人は一瞬の内に大ダメージを負ってその場に倒れ込んだ。

「──中途半端な攻撃は俺には通用しねェって、言っとくべきだったかァ?
もっとも、お前ェらが全力で何をしようが、俺には傷一つつけることはできねェだろうがなァ」
26池上 燐介 ◆ICEMANvW8c :2009/07/05(日) 22:58:15 0
「くっ……!」

俺は床に手をつくと、ダメージを負った体を何とかして起き上がらせた。
やがて高山と籐堂院も立ち上がったが、俺と同様に、二人は既にその脚にふらつきを見せていた。

「ま、まさか、今のは私達の……!」
「あぁ……俺達の攻撃をそっくりそのまま『跳ね返し』やがった……」
「こ、これが奴の"謎の力"ってやつなのか……? しかし、どうやって跳ね返したのかまるで分からねぇ……!」
「いや……俺には一つ分かったことがある……」

二人は「え?」というような顔を見せた。
俺はそんな二人からこちらを悠々と見据える城栄に視線を移すと、更に言葉を続けた。

「奴の異能力は『数式』だ……」
「『数式』……? どういうことだ……?」
「異能力の封印も、俺達の技を跳ね返したのも……それを可能とさせたのがあの『数式』だ。
奴のそんな『数式』を操る……恐らく、そういう異能力なんだ」

そこまで言ったところで、城栄が不敵な笑みを見せながら言い放った。

「──おい、何くっちゃべってやがる。お前ェらにはそんな余裕は無ェはずだぜェ?
これで終わりだってんなら、このまま終わらせてやるまでだが……どうするンだ?」

俺は右手に力を込め、手の平の上に凍気球を出現させた。
そして視線を城栄に合わせたまま、二人に言った。

「……奴が言うように、恐らく奴には物理的攻撃は通用しないだろう。
だが、強力な異能力には、必ず大きなリスクが伴っている……」
「つまり、それが奴の弱点……ってわけだ。                ヤ
いいぜ……それを見つけるまで……いや、奴を倒すまでは、何回でも闘ってやらぁ……!」

そんな高山の言葉に呼応するように、籐堂院も再び刀を構えていた。

「……行くぞ!」

俺は右手の上で滞空させていた凍気球を、城栄に向けて勢い良く撃ち出した──。

【池上 燐介:ダメージ強。現在戦闘中】
27池上 燐介 ◆ICEMANvW8c :2009/07/05(日) 23:02:24 0
訂正
×奴のそんな『数式』を操る
○奴はそんな『数式』を操る
28レオーネ ◇GWd4uIuzU6 代理:2009/07/05(日) 23:03:33 0
>>7

実体こそ在るものの、その実この世には存在していない魔槍――
その一撃を受けた誠一郎であったが、倒れそうになるのを何とか踏み止まると、
抜き身の剣を作り出した。
それを杖のように使ってガタのきた体を支える。その姿勢はまるで老人のようである。
無理も無い、レオーネの『パーシアスの矛』をまともに食らったのだ。
普通であれば立っていられない程の筈だ。

未だ立ち上がるのは、彼の信念による所が大きかった。
絶対に炎魔を復活させはしない。金剛になど世界を支配させはしない。
その思いが、今の誠一郎を突き動かしていた。

「無駄な足掻きを……。見た所私よりも誠一郎……。
 お前の方が若干ダメージが大きそうだ」

剣を軸に姿勢を正すと、痛みの残る体に鞭を打って再びレオーネに挑みかかる。
間合いを詰めながら、今度は接近戦の構えを呈した誠一郎に、レオーネは心底呆れ返った。
手に持つ剣で切りかかって行くが、体の不自由さが仇となり思うように剣を振るう事が出来ない。
一撃、二撃と次々にかわされて行き、
しまいには剣を持つ右手を背中へ向けて捻り上げられてしまう。

            CQC
「――おいおい、近接格闘なら私の方が上だ」

そう言ってレオーネは誠一郎を引き寄せる。
誠一郎もレオーネの拘束から何とか抜け出そうとするが、
どうにも"固められている"ようで、抜け出す事は出来なかった。
これ以上の足掻きは体力の無駄と判断した誠一郎は、
背後で右手の自由を奪っているレオーネへと顔を向ける。

両者共に目を逸らそうとはせず、睨み合いによる攻防が始まった。
いや……正確には信念のぶつかり合いといった所だろうか。

―― 一人は、ありのままの世界を残す事を。
もう一人は無理矢理にでも世界を変えようとする事を理想に、これまで戦ってきた。
それはまるで、在りし日の長束公誠とアンジェラ・エインズワースのようであった。

睨み合いの中、唐突に走る銃声が二人の均衡を、そしてその場の静寂を打ち砕いた。

29レオーネ ◇GWd4uIuzU6 代理:2009/07/05(日) 23:04:24 0

「旦那様、不肖ながらこの葛野美弥子、この者の相手をさせて頂きます」

すぐさまレオーネは誠一郎への拘束を解き放ち、勢い良くその場に叩きつける。
これは拘束している事で、自身の行動にも制限が生まれる事を危惧した結果であった。
勿論、剣を杖代わりにしていた誠一郎に、
すぐさま起き上がるだけの体力は残されていない事を見越した上である。

「葛野君……。そうだな、そうだったな。
 ――誠一郎が来ていれば、君も来ている筈だからな」

レオーネは失念していた。
誠一郎の侍女である(というよりも、彼の秘書といった方が正しいのだろう)葛野美弥子が、
主人である誠一郎とセットで現れるのは当たり前だという事を……。

「だが、私としては分の悪い勝負は好きじゃあない。
 この辺が潮時だな……。

 悪いがそろそろ失礼させてもらうよ」

歩く武器庫と亜空の支配者を相手にして打ち勝つなど、
さしものレオーネでも限りなく不可能に近い。
とは言え、手ぶらで返るのも惜しかった。
直ぐ目の前には、あれ程機関が欲しがったヤハウェの三大天使の一人が転がっている。
レオーネが彼女に目を付けるのは、至極当然の結末だった。

「塚原くんは貰っていくよ。
 何、案ずる事は無い。直ぐ会えるようになるよ。

 ――『カッシーニの狭間』」

倒れたままの誠一郎の静止も聞かず、レオーネはその場の人間の知覚に一瞬の空白を空けると、
すぐさま血まみれで倒れている塚原ひかるを目指して駆け出していく。

美弥子は手に持つ銃身の長いリボルバー式の拳銃を、
一発、二発とレオーネ目掛けて撃ち込んでいくが、
その度に彼は『カッシーニ』を断続使用してかわしていく。
正確には、弾丸が撃ち出される前に空白を空ける事で、かわしているのだろう。
右に、左に……。金色の髪をした魔人は、まるでコマ送りにしたようにその姿を瞬間的に移動させて行く。

そして……。とうとう、ひかるは魔の手に落ちてしまった。

「目的の物は手に入った。長居は無用だな……」

弾丸の最後の一発もかわされ、美弥子は次の武器を取り出そうとする。
最後まで諦めないのが葛野美弥子という女性なのだ。
美弥子の必死の迎撃も虚しく、レオーネは誠一郎と美弥子から距離を取ってしまった。

「――阻止限界点、だな。

 今日は有意義な時間を過ごせた。ありがとう」

最後にカッシーニを使って一気に野を越えていく。
先程通ってきた道を、今度は麓へ向けて……。

【レオーネ:現在地 裏山】
【塚原ひかると連れて車へ】
30小村 禅夜 ◆3LPMHhiq9U :2009/07/06(月) 00:01:53 0
〜あらすじ〜
アーリーの『愚行/悪戯/混乱』によってナガツカインテリジェンスビルの地下階全てのシステムを停止させた小村。
彼の目的はメインサーバールームに潜り込み、今回の計画の全貌を暴くこと。
危険な賭けであるこの単独作戦の行方は――――――

前スレ>>172-173
ナガツカインテリジェンスビル地下七階研究材料収容独房―――――

もとより薄暗い地下七階は停電により完全に光を失った。ここ『B7F 管理室』も例外ではなく。
「どうなってるんだ、非常電源は!?機連送で地上の階との連絡は出来ないのか!?」
息を荒げて叫んだ白衣を着た中年男性。その胸元には『B7F 最高責任者』と書かれたカードがピンで留められていた。
「どちらも応答なしです。現在、B4Fの構成員が非常階段を使って地上階との連絡を試みているようです。」
応答したのは同じく白衣を着た男性。彼は、灯りのついた懐中電灯を手に持ち、機連送で他の構成員と連絡を取っていた。
「くそ、これも現在地上の階で暴れている侵入者の仕業なのか……どうして、こんな時にNo.2は居ないのだ!!
 あの若造は何してる!!あいつの妹とその他のヤハウェケースの護衛が任務な筈だ、やつは!!」
研究部門総括 城栄金剛――現No.1が世襲幹部を邪険にしているのは彼が頂点の座に着く以前からだ。
その為か、No.1の下に長くいる構成員はNo.1同様世襲幹部を毛嫌いする人物も多い。
もっとも、いまのような乱暴な言葉を本人に聞かれたら左遷は免れないだろうが……
「そ、それが突然この階を出て行かれ…ライマース家のメイドの話によると車で街に出て行かれた、と。」
「〜〜〜っ!!だから世襲幹部など当てにならんのだ。やつらはNo.1のおこぼれを狙う寄生虫に過ぎん。」
本人がこの場に居ないからか、今までに無い異常事態のためか。男の発言はどんどん激化している。
「……ところで、メインサーバールームには誰か向わせたのか。あそこはこの独房と同じく第一級特別区域だぞ。」
「そ、それが……今はいった情報によりますと、地上の階との通路が接触を試みたB4Fの部隊が敵と交戦、苦戦中。
そしてメインサーバールームに向おうとしたB12Fの者も敵と遭遇。現在、交戦中だそうです。」
「敵だと!?地上にいる侵入者の仲間か。」
「いえ、正体は不明ですが…情報によると変幻自在に攻撃してくる『黒い怪物』だと…」
「黒い怪物だ〜〜?」
31小村 禅夜 ◆3LPMHhiq9U :2009/07/06(月) 00:03:21 0
同ビル地下十三階メインサーバー室前通路―――――

暗闇の中、錆びた金メッキのライターを灯りに照らされた『黒い怪物』――魔神ゴッドバルトの隣に私は立っている。
「いいですか、アーリー?今から網膜チェックの装置にリモコン挿しますよ?」
『は、はい。こっちは大丈夫です。……多分』
最後の言葉に少し疑問を覚えたが、その返事を受け取ると装置にリモコンから伸びている電子パルスを適当に差し込んだ。
アーリーによるとリモコン自体の電気を対象の電子回路に流せば大丈夫、だそうだ。
だから今はアーリーに任せ、現状について少し確認をしてみる。

「ゴッドバルト、ちゃんとこの最下階と一般の人間が使う地下三階以上より上には誰も行き来できないようにしましたね。」
(アア、一桁番号クラスノ者ガ来ナイ限リ相当時間ハ稼ゲル筈ダ。チャント俺ダト分カラナイヨウ姿ハ変エテアルシナ。)
H.Vで地下の階全てのシステムは停止させたものの、それだけでは隙は生まれにくい。
なので撹乱その2として、ゴッドバルトの『神の影』で創った分身を使い他の階の人間をこの階近づけないようにしている。
本来ならこの本体も上階に赴き、数体がかりで地下七階にいる筈のツバサを足止めする予定だったが…
「なぜかは分かりませんが、幸いな事にツバサは行方知れず。当初の予定より大分時間が稼げた…か。」
といっても上からの増援、更にこの階からバレないよう出る事も考えて…二十分…といったところか。

今回のメインサーバーへの直接接触によるハッキング作戦は、危険な賭けだがこうするしか他に方法はない。
『愚行/悪戯/混乱』を発動させられるならそのままデータをH.Vでコピーすればいいと思うのだが、アーリーによるとそれは「絶っっ対に無理」だそうだ。
メインサーバーからデータを引き出すには直接メインサーバールームに行かなければならない、というルールは絶対らしい。
データを操る端末が特殊な暗号でサーバーからデータを呼び出すらしく、アーリーでもその暗号は解読できないらしい。
だから、直接メインサーバールームに潜り込みその端末を介してではないとメインサーバーのデータを閲覧できないのだ。
全く、めんどくさい。

約三分が経過したとき、扉が開錠した電子音を確認するとさっさと扉を開けて中に入った。
部屋の中はライターなんかじゃ、到底全体は見渡せないほどの広大な白い空間が広がっていた。
今は停電で動いていない排熱用ファンを横目に、さっさと奥に向って足を進めるとそれはあった。
全長三メートル以上。大量に埋め込まれたランプと差し込まれたコード類がそれが機械であることを示していた。
「久しぶりに見ましたね……といっても見るのはこれで二回目か。それじゃ、さっさとデータを拝借して退散しますよ、アーリー。」
卵形のズッシリとしたリモコンの電子パルスを、端末の部品と部品の隙間から無理矢理差し込んだ。
あとは待つだけと……

―――――――っ!!

「……アーリー、ちょっとの間通信回線を閉じますよ?」
『え?――――――――プツン
返事を待たず、すぐさまリモコンを操作して回線を閉じ、リモコンを端末の上に置いた。
「はぁ、ツバサが居ないからラッキーと思っていたのに……とんだアンラッキーですよ。」
心底ゲンナリした溜息をつきつつ、この部屋の入り口方向に振り返る。
“彼ら"は既にライターの光で見える範囲にまで接近をしていた。
「なんや、なんや。久々に同僚が会いに来てやったっちゅうのに人を見るなり『アンラッキー』やなんて、そりゃ酷いで。」
最初に口を開いたのは金髪ロン毛の優男だった。
黒いニット帽を眼が見えないほど深く被り、まだ三月だというのに黒いタンクトップ、そして大量にポケットのついた深緑のズボンを履いていた。
「忘却数字No.N.T.D.E 小村禅夜。貴方の現在行ってる行為はNo.1の意に反するもの。
 即刻その行為を中止するよう勧告します。これを聞き入れない場合、武力による強制停止行動に入る。」
次に口を開いたのは黒髪短髪の精悍な顔つきの男性だ。
黒い修道服に金の刺繍という目立つ服、そして髪は後ろの十数本だけは腰ぐらいまで伸ばして金の髪留めで留めてある。
「本当にあの通路は悪い夢の中に続いてましたか。とりあえず…なんでここにいるんですか?忘却数字の1番と2番さん?」

【小村 禅夜:メインサーバールームで忘却数字二人と遭遇】
32ケルメス・カーロイス ◆O93o4cIbWE :2009/07/07(火) 22:40:35 0
前スレ268の続き

――「下級雷防御兵、下級雷弓兵。」――

目の前に盾を持った兵士が出てきやがった…、ジャマなんだよっ!!

「はああっ!」

ガギィィン

防がれた!?ッチイィ!結構硬いな。だけどよ…

次の瞬間、大きな盾の陰から、弓を持った兵士が現れ、弓をこちらに構えている。
構えた弓には、次第に光が収束し、矢の形を象る。

「うっ!?」

次の瞬間、ケルメスに電流が走った。ケルメスはよろめき方膝を突く。

「な…」

撃たれた…のか?
見えなかった。むしろ、何をされたのか分からなかった…

「じょ、冗談じゃ…!」

慌てて逃げる、弓兵に狙われないように、、弓兵の、射線に入らないように……
答えは、すぐ其処にあった。
「…へっ…この位置なら狙い打てないよなぁ?」
単純なことだ、自分が盾兵の後ろに隠れれば良い。そうすれば自然と射線は盾兵に阻まれる。

「今の俺のとっておき!、、くらえっ!!」

ケルメスを纏っていた火は、さらに激しく燃え上がる。そして、燃え上がる右手を振りかざし、盾兵達に突っ込んだ。

「ダァァクネス!フィンガァァアアア!!」

陽炎を纏った右腕を、盾兵に突き立てる。
盾は、融解するようにポツリと穴を開け、それを起点に穴は広がってゆく。
もとより形の無いモノだ、綻びが出来ればすぐに崩れ去る。
盾を破り去り、その勢いで本体の兵士おも抜く。
そのまま弓兵に肉迫し、顔を掴み強引にねじ伏せた。

「残りはテメェだけだくたばりやがれっ!!」

距離を取っていた才牙へと再び走り出す。しかし、彼の身体が、才牙に届く事は無かった―――

「いっ…!?」

足は空しく踏み外し、身体はふわり宙を舞う、グラリと傾き、体はそのまま床に滑り込んだ。

「い゛い゛いでえええ!!な、なんじゃこりゃあぁぁ!!!」

痛いのだ。全身が、それも戦いを忘れる程に。
彼の身体が現在どうなってるのかは解らないが、恐らく、身体に相当な負荷が掛かっているのだろう。
それが自身の異能力による反動だと気付く時間を、彼には与えられていなかった―――

【自身の異能力の反動によって自滅する】
33才牙 ◆vpAT/EK2TU :2009/07/08(水) 00:05:39 0
弓兵の放った矢はケルメスに直撃する。
すぐに一瞬麻痺し、方膝を付く。

>>「…へっ…この位置なら狙い打てないよなぁ?」

そう言いケルメスは盾兵の陰に隠れ弓兵の斜線から遠のいた。
なるほどな、ただの猪突猛進馬鹿ではなく、思考能力もなかなかだったのだな。

>>「今の俺のとっておき!、、くらえっ!!」

>>ケルメスを纏っていた火は、さらに激しく燃え上がる。そして、燃え上がる右手を振りかざし、盾兵達に突っ込んだ。

なんだ、必殺技か?そうなのだとしたら、さっきのこともある、破られるだろう。
準備はしたほうがいいか?

>>「ダァァクネス!フィンガァァアアア!!」

そして盾兵が消滅し、弓兵もすぐに壊される。
なん…だと?下級兵とはいえ一瞬で?
その思考を邪魔するように声が聞こえる。

「残りはテメェだけだくたばりやがれっ!!」

次の兵を用意する間もなく、ケルメスが猛スピードで近づいてくる。
しまった!兵を出すのを忘れるとは何てことだ!
慌てる様子は表に出てはいないが、思考が止まり負ける覚悟をする。

>>距離を取っていた才牙へと再び走り出す。しかし、彼の身体が、才牙に届く事は無かった―――

>>「いっ…!?」

>>足は空しく踏み外し、身体はふわり宙を舞う、グラリと傾き、体はそのまま床に滑り込んだ。

なんだ?何が起こった?兵を壊したことによる麻痺はまだ時間が足りないはずだ。
まさか?

>>「い゛い゛いでえええ!!な、なんじゃこりゃあぁぁ!!!」

その声が聞こえ、ケルメスに目を向ける。
そうすればケルメスを覆っていた陽炎が消え去っていた。
そのことに気づきやっと納得がいった。奴は自分の能力に副作用があるという事を知らなかったのだ。

「ふ、お前は自分の能力に副作用があるという事を知らなかったようだな。
 ふん、興が冷めた。中級拳兵、そいつを気絶させろ。」

そして、武器を持たない兵士が現れ、首の後ろを叩き気絶させた。

「こいつは牢にでも入れておくか。実験材料としてはまだ使えるだろう。
 さて、戻って次の奴を決めるか。今度からは油断しないようにしなければならないな。」



そして、才牙はケルメス以下3人を倒し、ノルマを達成した。

「ふぅ、しかし、油断していたとはいえ殺されかけるとは思ってもみなかったな。
 二人目からは上級兵を使ってやったが、少し疲れたな。
 地上に出るのは明日からでいいか。
 取りあえず明日に備えて眠ることにしよう。」

【ノルマ達成。眠りに付いた。明日は4日目】
34姫野与一 ◆N8yTRtOcY2 :2009/07/08(水) 16:46:26 0
>>21-24

>「へ…?、コイツ……悪い奴…じゃろ…?」

「それはあなたの勝手な思い込みでしょう!!まったく……」

両手を腰に当て、呆れた様子でため息を吐く与一。
この後も彼女が言葉を続けようと口を開こうとした時――

>「つつっ……なかなか効いたよ鳳旋。
最初あったとき人の話も聞かず飛び蹴りをかましてきたのはお前だがな。
仕方なく喧嘩に付き合ってやったんだ。
だが、まさに横槍が入ったから戦いは一次お預けだ」

壁に体を預けていた男の人が"掌の炎"を消し、自らの体に付いた埃を払って、立ち上がった。
この様子だと今は戦う意思は無いように見える。
私も手に持っていた槍を消失させる。私は鳳旋さんと侵入者の二人に挟まれるような形で立っていた。

>「……まあ、考えようによっちゃ神懸った最高のタイミングで
止めてくれたのかも知れんが……
まさかあんたが助けてくれるとは思わなかったよ。二十番の姫野与一さん。
……仕事の種類が違うから俺の事知らないかもしれんから名乗っとくぞ。俺は二十五番の銀水苑統治。
他にも聞きたい事は色々有るんだが…そっちが先で良い」

二十番……やはり機関の関係者だったか。
自らを二十五番と名乗った――銀水苑統治という男。
アーリーは確か、機連送の消滅を図る為に抹消部隊がやって来ると言っていた。
とても彼がそうとは思えないのだが……人を見た目で決め付けてはいけないけど、あの瞳はどうも信用出来ない。
多少警戒しつつも、私は彼の言葉に返す。

「……分かりました。では幾つか質問をさせてもらいます。
一つ目、此処に来た目的。機関の仕事、それとも私情?
二つ目、どうして鳳旋さんとこんな事になったのか。
そして三つ目、あなたに今も敵意はありますか?

……あなたが仕掛けてこない限りは私は手を出しませんが、
まだ鳳旋さんと闘うと言うのならば――同じセカンドナンバーであろうと容赦はしない」

三つの質問を銀水苑さんに繰り出す。
私が彼を欺けるのも時間の問題。もし抹消部隊がやって来て機連送の事がバレたら彼は私やこの洋館の事を疑い始めるだろう。
出来れば、アーリーの事を知られずに話を終わらせたいんだけど……
そう簡単に終わるはずが無い、と私のどこかでそれは予感した。

【銀水苑に三つの質問】
【武装は解除しているが、すぐに創り出せる】
35銀水苑 ◆TF75mpHiwMDV :2009/07/08(水) 19:44:29 0
>>34
「……順を追って説明させてもらおう。
先ず一つ目。此処に来たのは仕事だ。調査を命じられた。
上の意図は図りかねるが。…心当たりがないわけでもないがな」
統治は、姫野に静かに、良く通る落ち着いた声で状況を説明しはじめた。
「二つ目は、さっき言ったとおりそいつがいきなり攻撃してきたのが事の始まりだ
人の話を聞かない奴ってのは、あんたもすぐ分かっただろ?
説得するにしろ相手をする必要があり、成り行きで戦闘になった。これでいいかな?」
さて、肝心の三つ目の質問に入る。
(まあ、警戒しているのは当然だが……何か隠していることでも有るのか?)
「……三つ目の質問は状況による、だな。
俺はあんたと揉めるつもりは無い。
そいつ等は本当に運が良い。必要以上の殺しをする主義じゃなくてね。
俺の邪魔をせず大人しくしているなら、戦う理由は無い」
ポケットから煙草を取り出し、火をつける。
姫野に向って更に言葉を紡ぐ。
「……姫野さん、あんたの評判と活躍は色々聞いてる。
『機関一のスナイパー』とか『神の眼』とか無数の二つ名と一緒に。
一見冷たそうに見えるが実の所根っこは友達思いでおっとりしたお人よしと見た。
随分こいつらに肩入れするね。ま、人の事は言えないがね。
まあ俺は正直、そのお陰で余計な殺しをせずにすみそうでほっとしてる。
此処の所は姫野さんの顔を立てておくよ。
あんたの任務の協力者なら、これ以上邪魔をするつもりも危害を加えるつもりも無い」
そういうと、統治は今度は質問を投げかけた。
「で……俺の任務と行動は説明したが……
会議の招集に応じず、定時連絡もよこざず
あんたは此処でこいつらと何をしていたのか説明して欲しいがね」
【姫野からの三つの質問に答え、そして今まで何をしていたのか尋ねる】
36レオーネ@代理:2009/07/10(金) 01:52:24 0
>>29

一台の車が山道の急カーブを猛烈なスピードで駆け抜けていく。
黒塗りのそれは日本車の中では、取分け中年男性に好まれる車種であった。

――それにしても、思わぬ所で収穫があったな。
私は後部座席に横たわらせた塚原ひかるを、ルームミラーでちらりと確認した。
顔色は……余りよくない。大量の血が流れ出た事による血液不足だろう。
彼女には時間が無い事は確かだ。
ジャケットの内側から携帯電話型の機連送を取り出すと、すぐさま本部へと電話を掛ける。
程なくして通話は繋がり、若干声の高い男が私の相手をする事となった。

「No.6だ。No.22は本部に居るのか?」

No.22、香坂織重……。今は彼女の助力が必要だ。

「No.6、No.22は現在出動中です。何か問題でも?」

えぇい、このような時に何て運の無い。
素直に機連送の番号を聞いておくべきだったな。

「今すぐNo.22にこちらに連絡を寄こすように伝えろ。
 用件はそれだけだ」

それだけを伝えると、用件を飲み込んだ男の返事を待たずに通話を終わらせ、
機連送を助手席のシートに放り投げた。
37レオーネ@代理:2009/07/10(金) 01:53:13 0
ここから病院へ行っても構わないが、それでは彼女の命が間に合うまい。
一番近いのは私の自宅、か。ならばそこで合流するか。
算段を建てていると、機連送が"ドナウ"を奏で出した。
すかさず発信源を取り寄せて画面を開く。そこには見知らぬ番号が表示されていた。

「No.6、何か用でしょうか?」

電話の相手は本部から連絡が行ったのであろう香坂であった。
多少ダルそうな声で話をしてくる。

「怪我人が出た。君の能力で治してもらえないか?」

単刀直入に用件を切り出す。本来ならば軽いジョークでも交えながら話をしたい所だが、
塚原ひかるの件が在る。

「アンタ、アタシを都合のいい道具か何かと勘違いしてないかい?
 怪我人ならそこら中に溢れかえってるんだ。アンタだけ特別扱いって訳には行かないんだよ」

キツイ口調ではっきり物事を言ってくるのは変わらずか。
確かに彼女の言うことは正論だ、それが普通の人間ならばな……。
塚原ひかる、ヤハウェの三大天使の一人。機関が執拗に狙った人間が、
今その命の輝きを消そうとしている。他の人間ならば、私だってこんなにも急いじゃいない。

「君の良く知る人間が重体だ」

「……アンタ、翠にどんな無茶をさせたの?」

受話器越しに香坂の怒気が明確に伝わってくる。
無理も無い。香坂にとって永瀬は親友というより、気の置けない妹のような存在だった筈だ。

「君らの繋がりの深さには感心するよ。だが、相手は永瀬じゃない。

 ……塚原ひかる、だ。あのヤハウェの三大天使は今私の手中に在る」

香坂は息を呑んだ様子だった。そういえば、知り合い同士だったな。
永瀬と香坂、そして塚原ひかるは……。

「ひかるが、そこに?」

「色々在ってね。ともかく、病院まで移動している時間は無い。
 すぐさま私の自宅まで来て欲しい」

大木南川に架かる橋を超えると、地元の中小企業のビルに混じり、様々なテナントが目に映り始めた。

「……今エレミアの近くに居るの。アンタの家に向うから場所を教えて」

聖エレミア女学院か? ならばすぐ近くだな。
これなら香坂の方が私よりも早く着くだろう。

私は香坂に自宅の場所と目印となる建物を伝えると、
アクセルを力一杯踏みつけた。

……若い頃を思い出すな。
38レオーネ@代理:2009/07/10(金) 01:57:47 0
路地を曲がりきれるギリギリのスピードで駆け抜けていく。
途中、何度か人間を轢きそうになったが、無事我が家に辿りつく事が出来た。

自宅の前に一台のバイクが止まっている事に気付く。
敵か、それとも香坂か……。何れにせよ、このまま車の中に留まる訳には行かない。
家の中に入る時は注意しなければ。

助手席から塚原ひかるを担ぎ上げると、そっと玄関のドアを開け中へと入っていく。
勿論、私の家には鍵が掛かっていない。

玄関を出て直ぐのリビングには誰も居ない。だが、人の気配はする。

「鍵が掛かってなかったから勝手に上がったよ。
 いくらNo.6が腕に覚えがあるって言っても、ちょっと無用心じゃないの?」

ソファーに塚原ひかるを寝かせると、香坂がキッチンの方から現れた。
水を滴らせたその手には濡れたタオルと洗面器が持たれていた。
準備でもしていたのか。私はテーブルを挟んだ向こう側にあるもう一つのソファーに腰を下ろした。
最近、バク転や派手な事をすると腰が痛み出す。歳なのだろうからしたくは無いのだが……。

「私は鍵を掛けない主義なんだ。
 ……それで、治せそうか?」

いや、治してもらわなくては困るのだが……。彼女とて人の身だ。
限界が在るのは確かだ。治せないとなると、もう後が無い。
タオルでひかるの顔に浮かび上がった汗を拭き取りながら、香坂はひかるの容態を診察する。

「――大丈夫、治せるよ。
 そこに置いたクーラーボックスから輸血用の血液パックがあるから、
 それを取ってちょうだい」

やれやれ、人使いが荒いのはお互い様か。
立ち上がると、キッチンへ向うドアの前に置かれた青いクーラーボックスの中から、
ひんやりと冷たい血液パックを取り出して香坂に手渡した。

香坂の能力は"元に戻す事"であって、厳密には治す事ではない。
彼女には失った物を元に戻す事は出来ないのだ。だから、輸血が必要なのだろう。
ひかるを見つめる私の視線と、香坂の視線が重なった事に気付く。
まだ何か用でも在るのか?

「No.6、女の子の裸を大の大人が見るのかい?」

患部は腕なのだから何も服を脱がす必要は無いだろうと思ったが、
ここは主治医の言う事に素直に従うとしよう。へそを曲げられでもしたら大変だ。

「それは済まなかった。私はシャワーでも浴びてくるよ。
 塚原君が終わったら私の傷も治して貰えると助かる」

気だるげな返事を背に私は浴室へ向って行った。

【レオーネ:現在地 自宅】
【香坂織重と合流】
39七草 柴寄 ◆O93o4cIbWE :2009/07/11(土) 22:58:17 0
前スレ>>64の続き――

―――見えるもの全てが紅い、どうしてだろう?

見渡せば辺りには人の手足が散らばっている きっと、地面は真っ赤なんだろう。

僕は、誰かを抱きしめていた。

腕の中には 真っ赤に染まった "彼女" がいた。

彼女は何も言わなかった。

彼女は誰だろう? 思い出せない。

とてもだいじなひとだったのに――――――

景色がぐらりと傾いた。

もう、僕には起き上がる気力もないらしい。

空も、月も、紅かった。

でも、すぐに目の前はまっくらになった。

からだはもううごかない。

―――ああ――この世界は――――

――――さむくて――くらいよ――――


「―――沙…夜………」


「ん………」

目が覚めた。

ひどい虚無感に襲われて、僕は状況を判断する事が暫く出来なかった。
その後、ようやく自分がベッドに寝かされている事がわかった。
真っ白な部屋で、格子の掛かった窓が一つ、空を映していて、僕にはこの部屋が鳥かごの中の様に思えた。
夢を見た。僕は大切なものを失って、そしてそれから視界が真っ暗になった。
あの夢は何だったんだろうか?ひどく現実的な―――…
――働き始めた思考をそちらに傾けていると、キィ、と扉が開く音が聞こえた。
40七草 柴寄 ◆O93o4cIbWE :2009/07/11(土) 22:59:25 0


「――…あ、気が付いたんだね――」

聞いた事のある声が聞こえた。
そこには赤い林檎と皿、そして果物ナイフを持った"あの娘"が立っていた。

「……瑞穂…ちゃん…?」

「よかった、心配したんだよ? あんな所で倒れてたから

 あっ! まだ動いちゃダメだよ、身体の麻痺が抜けてないんだから…」

彼女は起き上がろうとする僕を止め、傍に腰掛けて林檎を剥き始めた。

「大木南川の辺りでガス漏れ事故があって、キミはそれで倒れてたんだ。
 あのヘンなおじさんが、キミを運んでくれたんだよ」

変なおじさん…? あぁ思い出した。そういえばあの川で男の人に絡まれたんだ。
そこで、人の腐った死体を見たんだ、それで気分が悪くなって、それから。

「はい、剥けたよ」

彼女はそう言って、切り分けた林檎を爪楊枝に刺して、僕の口に近づけてきた。
僕は上手く動かない左手でそれを制し、彼女に言わなければいけない事を言った。

「瑞穂ちゃん…」

「ん? どうしたの?」

彼女はひょうきんな仕草で顔を傾げる。

「君に、言わなきゃいけない事が在る――」

――昨夜のアレは夢じゃない、現実の事なんだ、だから、君に――

「僕は…昨日の夜――君を…こ  ―」

「はいストップ! そこまで――」

開いていた口に林檎を押し込まれた。

「ん……」

「――何も言わないで………
 
 七草君は……昨夜の事、知りたい―――?」

僕の口に林檎を詰めた後、彼女はすっと立ち上がる。
彼女は胸に手を当てそう言った。
僕はそれに、コクリとうなずいた―――

ポトリと、林檎が零れた―――
41七草 柴寄 ◆O93o4cIbWE :2009/07/11(土) 23:00:20 0

――それから彼女は昨夜の事を話してくれた。
僕の中に、もう一人の人格が居て、その人格が、人を殺している事。
彼女自身も襲われたけど、何とか追い払ったそうだ。
それを話している間の彼女は、なんだか、とても大人びていた。

「そう…なんだ…」

その話を聞いても僕は平然としていた。
自分でも驚いている。あんなに恐かったものが、真実を知ったらすんなりと受け入れてしまった。

「ごめん…僕は…」

彼女に、とんでもない事をしてしまった。

「大丈夫だよ、ボクは 生きてるから……

 ……もうわかってると思うけどボク達は機関の人間なんだ……
 でも安心して、機関に入れなんて言わない。
 それと、今度キミが暴れだしたら、ボクが止めてあげる、
 もうキミに人を殺させたりなんかしない

 だから、しばらくここで休んでて」

「どう…して…」
 
君に、殺されても仕方ないと思った。でも―――

「いいからいいから、ゆっくりしていって。
 あ! それと、、ボクの名前は響って言うんだ、伊賀 響。
 瑞穂は偽名だったんだ、ごめんね」

ガチャリと、扉が閉まった―――。
42七草 柴寄 ◆O93o4cIbWE :2009/07/11(土) 23:01:15 0


「―――お前から彼が見付かったと連絡が来た時は慌てたぞ…」

「え? なんで? それはそうとじいさんから彼の保護命令が来たよ」

「そうか…お前には振り回されたな……
 今頃本社ビルは大変な事になってるというのに…こんな所で油を売っている暇があるのか…?」

「あ〜ひどいな影渓さんは! だいたい、"ボク達には関係の無い事" 、でしょ?」

「…まあな」

「だいたいじいさんはどこでなにやってんのさぁ!?
 タイミングよく連絡よこすだけで全然姿みせないじゃないか!」

「しらん…ああ、それと…」

「ん? 何? 影渓さん?」

「それにしても、だ、随分と彼に入れ込んでいるな……

 ……お前、昔の自分と彼を重ねて見て無いか……?」

「そんな事無いよ、保護しろって言われたから保護してるだけ…」

「そうか…」

そう言い残し、彼は廊下を後にした。

「……」

響は、先程彼に言われた事を思い出していた。

――……お前、昔の自分と彼を重ねて見て無いか……?

「……そんな事… 無いよ……」

彼女はポツリと呟いた――――…

【現在地:海岸沿いのシナゴーグ】
43池上 燐介 ◆ICEMANvW8c :2009/07/11(土) 23:51:48 0
──俺の目の前で、籐堂院と高山が宙に舞った。
いや、舞ったというよりは、吹っ飛ばされたといった方がいいだろうか。
二人は悲鳴とも呻き声ともつかぬ声をあげながら壁に叩き付けられ、
そのまま力なく床に伏していった。

「まだ分からねェのかァ?
お前ェらが何万回攻撃しようが、俺にはダメージを与えられねェってことがよォ……」

城栄がこちらを冷たく見据えながら言い放つと、
床に伏した二人はその言葉に反応するように、肩を震わせながらふらりと立ち上がった。
──服は既に至る所がボロボロになり、顔や腕などの露出部分からは血が滴っている。
正に満身創痍といった感じであるが、それは横目で彼らを見る俺とて同様であった。
これまでに放った技のことごとくは城栄の異能力の前に跳ね返されるか無力化され、
更には彼の超人的な動きとパワーの前に為す術なく一方的にダメージを蓄積するだけであったからだ。
挙句、こちらは未だ弱点ともいうべき、異能力の欠点を見つけられないでいた。

俺は二人から視線を外し城栄を見た。
俺と目を合わせた城栄は何か気に入らないものでも見たかのように軽く舌打ちをすると、
直後に、その場から「フッ」と姿を消した。
(──消えた!? ──ッ!!)

瞬間、俺の腹部に鋭い痛みが走り──体を後方に飛ばされていた。
その時、視界には右拳を俺の腹部にヒットさせる、城栄の姿があった。

「池上!!」

壁に直撃する寸前、籐堂院が声をあげ、自らの体をクッションにするように俺をキャッチした。
お陰で二重にダメージを受けることはなかったが、
内臓が裏返るような腹部の痛みだけでも俺を苦しませるのには十分だった。

「気に入らねェぜ……。これだけの力の差を見せ付けられておきながら、
生意気にもまだ戦闘意欲を失っていねェのテメェの目がな!」

苦しみながら血混じりの唾液を口から吐き出す俺を見て、城栄が怒気混じりに叫んだ。
俺は、キャッチした体勢のまま俺の両肩を掴み続ける籐堂院の腕を払うと、
口元に垂れた血を拭い、ゆらりと立ち上がった。

「……どうしてだ? 立ち上がったところで結果は分かってんだろ?
潔く諦めりゃ楽になれるものをよォ……何を考えてンだか全く理解できねェぜ。
それともあれか……?」

城栄は余裕たっぷりの笑みを持って言葉を続けた。

「俺を倒す何らかの策でも思いついたか? ……クックック」
44池上 燐介 ◆ICEMANvW8c :2009/07/11(土) 23:58:58 0
俺は誰にも聞こえないように小さく舌打ちをした。
城栄は既にこちらには"策など無い"ということを見抜いている──
だからこそ余裕たっぷりに言い放ってみせた、ということを悟ったからだ。
(超人的な身体能力に、針の穴ほどの小さな隙もない異能力……!
ファーストナンバーの中でも別格の実力だ……。まいったぜ、まさかここまでとは……!)

予想の更に上を行く異能力を持つ男を如何にして倒すか──
それはこの闘いの中で幾度と無く俺の脳みそをフル回転させた難問であったが、
その答えは未だ導き出されるには至らず、半ば放棄状態を余儀なくされていた。
かといって、再起を図る為に『逃げる』という一手に踏み出すことも、
城栄から逃げることができるのか──という疑問を前に、躊躇わずにはいられなかった。

「……フン、所詮テメェらもここまでか。
目の覚めるようなビシッとした作戦も無ェようだし、そろそろ終いにするか……?」

城栄の顔から笑みが消し飛び、殺気を放ちながらゆっくりとこちらに向けて歩き始めた。
俺達はその圧倒的なまでの迫力に改めて圧されるように、思わずたじろいだ。

「おい……! どうする……!?」
「どうするも何も……一か八か、玉砕覚悟で一斉に立ち向かうか。
それとも、この場から離脱するか……。もはや俺達に残された選択肢はその二つだ……」
「攻撃続行によって攻略の望みを見出すか、撤退によって今後の闘いへ望みを繋げるか……
いずれにしろ失敗したら終わりだな……。……池上、君はどっちを選択するつもりなんだ?」
「おいおい、ここまで来て逃げるとは言わねーだろうな……? 俺は御免だぜ!
折角、城栄のもとまで辿り着いたんだ! この機をみすみすフイにしちまうなんて真似はできねぇ!」
「……高山、君の言うことも尤もとだ。
しかし、このままでは嬲り殺されるのも時間の問題だというのもまた確かだろう……」
「け、けどよ!」
「──悪ィが、続きは後でじっくりやってくれや。そう、あの世でなァ!」

城栄はそう言うと、自身の体の周りに再び謎の数式を舞わせ始めた。

「これで終いだ!! ククククク……ハーッハッハッハッハ!!」

勝利を確信した高笑いがフロア内に響き渡った。
だが、その時──そんな高揚した城栄に水を差すように、
突如、「ピリリリリリ」という携帯の着信音がフロア中に鳴り響いた。
着信音は俺の携帯のものではなかった。
即座に二人に目を向けると、二人も違うというように頭を横に振った。

「……チッ! いいところで……」

城栄は出現させた数式を消しながら呟いていた。そう、鳴ったのは彼の携帯だったのだ──。

【池上 燐介:全身に傷を負い、体力を著しく消耗。城栄の携帯が鳴り、戦闘が停止される】
45姫野与一 ◆N8yTRtOcY2 :2009/07/12(日) 10:55:30 0
>>35

>「……三つ目の質問は状況による、だな。
俺はあんたと揉めるつもりは無い。
そいつ等は本当に運が良い。必要以上の殺しをする主義じゃなくてね。
俺の邪魔をせず大人しくしているなら、戦う理由は無い」

銀水苑さんは煙草に火をつけて話を続ける。

>「……姫野さん、あんたの評判と活躍は色々聞いてる。
『機関一のスナイパー』とか『神の眼』とか無数の二つ名と一緒に。
一見冷たそうに見えるが実の所根っこは友達思いでおっとりしたお人よしと見た。
随分こいつらに肩入れするね。ま、人の事は言えないがね。
まあ俺は正直、そのお陰で余計な殺しをせずにすみそうでほっとしてる。
此処の所は姫野さんの顔を立てておくよ。
あんたの任務の協力者なら、これ以上邪魔をするつもりも危害を加えるつもりも無い

で……俺の任務と行動は説明したが……
会議の招集に応じず、定時連絡もよこざず
あんたは此処でこいつらと何をしていたのか説明して欲しいがね」

私の質問に全て返し、銀水苑さんはこちらに質問を投げかけてきた。
当然と言ってもいい内容の質問か。機関からの召集も全て無視した
人間がこんな古びた会堂で一般人と一緒に居たのだから。
私は彼の質問に切り返す。

>「……会議には間に合わなかったと言うか……朝方起きたらなぜか教会の茂みで寝ていて……
その、すいませんでした。連絡については異能者と戦っていて、出来ませんでした……
で、戦いで疲れた私はこの会堂――シナゴーグに休みに来たんです。そこで知り合ったのが鳳旋さん達というわけでして。
彼らと会ったのはさっきの話なんで、特にこれと目立った事は何にも。これくらい……ですね」

私の回答にやや疑問を持っているようだが、一応は納得してくれたようだ。
しかし彼がここに来たのはここの調査だと言った。このままだとどうしても彼女が見つかってしまう。
どうにかして時間を稼がないと……

「そういえば……さっきから外で咆哮が聞こえたりするんですけど、何かあったんですか……?」

【銀水苑に外で何があったのかと質問】
46銀水苑 ◆TF75mpHiwMDV :2009/07/12(日) 14:45:11 0
「……会議には間に合わなかったと言うか……朝方起きたらなぜか教会の茂みで寝ていて……
その、すいませんでした。連絡については異能者と戦っていて、出来ませんでした……
で、戦いで疲れた私はこの会堂――シナゴーグに休みに来たんです。そこで知り合ったのが鳳旋さん達というわけでして。
彼らと会ったのはさっきの話なんで、特にこれと目立った事は何にも。これくらい……ですね」

(おかしい。前半はおそらく本当だろうが
後半のその話が本当ならそこまでの感情移入をするのか?
『同じセカンドナンバーであろうと容赦はしない』とまで言った。
本当に何にも無いのなら、こいつ等はどうでも良いはず。そこまで激烈な反応はしない。
何かあったのだ。心を、心火を塗り替えてしまうような出来事があったのだ。
それも『黒』から『白』に。
これと似たような、心の炎をどこかで俺は見た。
……まさか!)

統治の脳裏に一つの予感めいた確信が浮かんだ。

「そういえば……さっきから外で咆哮が聞こえたりするんですけど、何かあったんですか……?」

姫野が事情を尋ねてくる。
表面上は冷静に受け答えをしながら、記憶を探ろうと頭をフル回転させている。
47銀水苑 ◆TF75mpHiwMDV :2009/07/12(日) 14:45:55 0

「咆哮?ああ。それは恐らく……三年前に起こった『離反事件』で
機関を裏切った元虐殺部隊隊長…戦場ヶ原天とその部下数十名の雄たけびだ。
今、本部はそいつ等と、バトルロイヤルの参加者がどうやってかしらないが嗅ぎ付けてな。
離反して襲撃されてる。
他にも『殲滅結社』ってのが襲撃してくる事が予想されてる。
結構上まで攻め込まれているみたいであちらは修羅場になってるぜ」

(そう!あれは確か三年前。『白』から『黒』に山田 権六が変わったように……
色は違えど形と揺らめきと大きさの特徴を忘れもしない。
これは、『裏切り』の心火だ)

「……敵さんも相当に手練みたいでな
俺より上のナンバーはもう十三人しか居ない。
ファーストナンバーは7人。
セカンドナンバーで今現在生き残ってるのは6人。
虐殺部隊の隊長と幹部のスティクスとセルゲイ、医療課の香坂織重、特殊実験部長の13番オマエ、世襲幹部のポポフスキー。
そして姫野さん。あんただけだ」

(多分、更に一人減る)
48銀水苑 ◆TF75mpHiwMDV :2009/07/12(日) 14:47:01 0

「……このタイミングでは本社の防衛が優先される筈なのに……
何故か下っ端でも出来る調査と清掃に
わざわざ抹消部隊の隊長である俺が駆り出される……
……上は一体何を調べて俺に清掃させたがってるんだろうな?」

言い終えたその途端、彼の纏う雰囲気が変わる。
強力な異能者は一目で本能的な警戒を引き起こす独特の気配を持っている。
圧倒的な威圧感、纏わり付く瘴気じみた殺気。様々な種類の気配が有るが
統治の気配はそういうのとは違う。
彼の気配は『粛』なのだ。
粛然―厳かで静かな気配。
静寂で静謐。細波一つ立たない真冬の夜の湖面。
油断も傲慢もない、触れれば冷たすぎて火傷するひたすら静かな殺気。

(これを言えば、恐らくは……)

統治の声色は穏やかだが
漆黒の氷の結晶を嵌め込んだ様な凄まじく冷たい瞳が、姫野を見据えている。
最後の一人の居る場所に向って歩を進めると、
姫野の身体が行く手を遮る様に動いた。

「このシナゴーグに俺が感じた気配は五つ。
バトルロイヤル参加者の宮野光龍、鳳旋希一、十六夜美月。
そして姫野さん。
……あと一人足りない。あんた何を隠している?
……やましい所が無いのなら、黙ってそこを通してくれないか」

確かめる為に、言葉を問う。

【姫野の裏切りに薄々感づく】
49七草 柴寄 ◆O93o4cIbWE :2009/07/13(月) 21:28:23 0
>>39-42

林檎、せっかく用意してくれたのに、たべられないな、、、

――依然変わらず腕は上手く動かない、加えて内臓器官までやられたらしく
どうにも消化できそうに無い。そんな事でとまどってると、彼女が戻ってきた。

「あ…」

「ごめんね、なるべく消化し易そうな物を選んだんだけど、
 やっぱり…食べられなかった…?」

「ごめん…」

「いいよ、七草君が悪いんじゃないもの。
 それより水くらいは飲める?」

「うん…」

僕はそれに頷く。

「そう、よかった」

彼女は小振りの筒のような物を逆さに取って、中から小さな黒い粒を手のひらに取り出した。

「これ、一言で言うと秘薬…きっと良くなるよ……
 ………ぃ、ゃ……毒じゃ…無いよ?
 そんな疑り深い目で見ないでよ…え?見て無いって?」

丸薬、か、毒だなんて、考えてもいなかった。
彼女は僕の身体をそっと起こし、僕は薬を受け取ろうと彼女に手を伸ばす、
けど彼女は僕の手を無視してその手をそのまま僕の口に運んできた。
彼女の手のひらが僕の唇に触れる。僕は運ばれてきた二粒ほどの薬を口に含んだ。
口の中に薬独特の刺激が伝わる。不思議と、僕にはそれが不快には感じなかった。

「はい、お水」

今度は水の入ったコップを差し出された。これくらいは自分でしたいのに、何だか悲しい。
僕はコップの中身を含み、薬と一緒に喉の奥に流し込んだ。
固形物が喉を通り、妙な爽快感を得る。そうして、なんだか気が楽になった気がした。
50七草 柴寄 ◆O93o4cIbWE :2009/07/13(月) 21:29:14 0

「大丈夫…きっと良くなるよ…」

まじないの様に、そう彼女は繰り返す、

「…ありがとう、響ちゃん」

そんな彼女を僕は、名前で呼んだ。

「うん! えへへ…」

彼女の様子が変わった。どうしてだろう?

「七草君に名前で呼ばれてうれしいな、なんて……
 
 そうだ! 七草君が良かったら何か話さない? ………ダメかな?」

名前で呼ばれたのが嬉しかったのか、僕には良く分からない。
罪悪感は残るけど、僕は彼女と話す事にした。

「うん…いや…いいよ――」

漫画の話は、よく分からない、そう言うと彼女は少し残念そうにした―――

「――でね、それで――」

「うん…」

お互いが分かる話を探して、折り合いを付けて話していると、窓からパタ、パタと音が聞こえた。
窓を見ると水玉が窓を叩いていて、それが水音を立てている。
どうやら雨が降ってきたみたいだ。


「――、涙雨かも知れないね……」


彼女はポツリとそう呟いた――――。
51アーリー・テイスト ◆3LPMHhiq9U :2009/07/14(火) 03:04:26 0

「なんと!」

真っ先に大声を上げたのは以外にも鳳旋さんの方だった。

「そいつは敵じゃな!!よし倒そう!!わしが行って来るッ!」
「ちょ、ちょっと待ってください!」
突風のように部屋から飛び出そうとした彼の手を掴んだ。
そのまま引きずられそうになるが、全体重をかけて何とか彼の突進を止めた。
「なんでじゃ!?、このタイミングで来るヤツは悪者と決まってるじゃろうが?」
「そうかもしれませんけど、もう少し様子を見てから…」

この人の異常なまでの状況の飲み込みの早さはすごいが、この人はまだ機関をちゃんと理解していない。
恐らく私や、姫野さんの話から何となく 【機関】=『悪』 の図式が出来上がってるだけでその恐ろしさを分かってない。
そんな軽薄な考えで突っ込んで戦って、無事に済むほど機関はあまい人間で構成されていない。
第一鳳旋さんが異能者ではない可能性もある。まず『戦う』こと自体が無理かもしれないのだ。
とりあえずその事を彼にどう説明するか、出入り口で悩んでいる時だった。

薄暗い廊下の奥から人影がこちらに近づくのに気づいた。

「なんか……変な人が……」
「美月!?」

光龍さんを追いかけたはずの十六夜さんが一人で帰ってきたのだ。
彼女は少し焦った様子で自分が光龍さんを追いかけた先で何があったかを話した。
光龍さんの誤解を解いた後、ここに帰る途中で怪しい男性に声を掛けられ、光龍さんにその場を任せてきた、と。

「なんじゃと!!こうしておれんすぐ行くぞまっとれ光龍!!」
十六夜さんの話が終わると鳳旋さんはまたもやダッ!! と部屋を飛び出していった。
「あっ」と小さな声を出して、今回は彼の腕を掴み損ねたことを後悔した。
52アーリー・テイスト ◆3LPMHhiq9U :2009/07/14(火) 03:05:06 0
「と、とりあえず、私は鳳旋さんが心配だから追いかけてくる。ここもちょっと心配だけど……
うーん……ゴメン!やっぱり行ってくるね。美月、アーリー!」

「は、はい。気をつけてくださ……ぃ?」
今『アーリーさん』じゃなくて『アーリー』て……
なぜかその言葉は懐かしい響きを持っていて、胸は温かい何かを感じた。

(…小村さん以外で初めてかな。機関に入ってからあんな風に親しく呼ばれるなんて…)
そして、視界がぼやけて目に涙が溜まっていることに気がついた。
溢れる前に拭ったが、十六夜さんに見られており、彼女は心配そうにこちらを見つめていた。
「あ……いや、これは…その…あはは…」
もごもご、と口を動かすが言葉がちゃんと繋がらない。
それから十六夜さんは私が落ちつくまで待ってくれて、それからさっきまでここで何が起こったかをすべて話した。

話し終えた後、H.Vを通じて私の脳に『メッセージ』が入った。
これは小村さんが機関のメインサーバーに潜り込む作戦の開始を呼びかけるサイン。
「…十六夜さん。これから私は、私のしなくちゃいけない事をしなければなりません。
 ごめんなさい。詳しくは、今は時間が無くて話せません。
姫野さん達が機関の戦闘員と接触しているのに薄情な奴だと思うかも知れませんけど……行かなくちゃいけないんです。」
十六夜さんはさっきのも合わせ、あまりに一度の事を聞かされて少し混乱していたがコク、と頷いてくれた。
私は「ありがとうございます。」とだけ言い残して、廊下を飛び出した。
向かう先は姫野さんたちでは無く、地下の自分のコンピュータールーム。
この作戦が成功すればこのバトルロイヤルの裏が分かる。
そうなれば、これからの作戦の細かいことも決められるし、それに。
……姫野さん達の役に立てる。

【アーリー:一階の事は姫野達に任し、作戦に取り掛かる】
53レオーネ ◇GWd4uIuzU6 代理:2009/07/15(水) 20:33:11 0
>>13-14
いいねぇ、トージは次第に体勢を立て直しているようだし、
なにより敵さんの攻撃が大鎌一辺倒なのも幸いしているな。
よくわからんが、ゾンビを生み出す能力なのかな?

お! トージの奴、壁を蹴って一気に敵さんの懐まで踏み込んだぞ!
こりゃイケる……か?
トージの渾身の刺突が機関の幹部目掛けて放たれた。

――いや、駄目だ! 浅すぎたか!
敵は傷もなんのその。大鎌を横へとなぎ払い、トージを牽制する。
間髪入れずに放った敵の攻撃。それは初めからトージを狙った物ではなかった。
上段からクワで畑仕事をするように大地を割った鎌……。
そこからは大量の亡者の手が現れ、トージを冥府へ連れて行こうとし始める。
こりゃいかん! 俺の氷でなんとかしなくちゃ!

「俺も忘れちゃこまるぜぇ!!」

氷弾は敵さんの右肩にクリーンヒット、これでトージがその隙を突けるってもんよ。
そして、それを見逃すトージじゃない。俺達のコンビネーションに、敵さんは次第に圧倒され始めた。
こいつ、本当にファーストナンバーか? ははぁ〜ん、さては世襲幹部のボンボンだな。
長束のおじさんが言ってた。機関には生まれた瞬間から将来が決まっている連中が要るって。
決まっているからこそ、どんどん腐敗していってるって。

>「グッ!クソが!!」

苦し紛れの攻撃。そう見なした俺が甘かった。
敵の左腕から飛び出した異形の腕……。それはゾンビを丸めて捏ねて、それでもって圧縮したような、
とても気味の悪い腕だった。
それ自体が悪かったわけじゃない。そいつがトージを刀のガードを気にも留めずに、そのまま反対側の車道へと突き飛ばした事だ。
54レオーネ ◇GWd4uIuzU6 代理:2009/07/15(水) 20:34:01 0

「しまった、トージ!」

>「…ハァ…ハァ……、ックク、ハハハハ……」

何がおかしいのか、男は狂おしく顔を歪ませる。
こいつ、ちょっと病院行った方がイイんじゃないのかねぇ?
鉄格子の付いた病院にさ。

>「…ジャマだよ…オマエ…」

俺はさっき、"こいつはボンボンだ"と考えた。前言撤回――。
こいつはやはりファーストナンバーだ。
全身の身の毛がよだつ。このままこいつとやりあえば、トージも俺もかなりヤバい。
勝てる気がしないっつーのは悔しいが、正直格が違いすぎる。
今の俺達二人では勝てない。

敵は糸の切れた人形のようにゆらりと、一歩ずつ近寄ってくる。
何とかしないと……! と、俺は一つの妙案を浮かび上げる事に成功した。
それにはまず、敵の動きをなんとか押さえ込む必要性が在る。

袈裟切りの要領で切りつけてきた鎌をなんとか避ける。
しかし、それもまたフェイントだったみたいだ。
遠心力を利用して今度は強烈な風きり音をたてて胴体と腰を泣き別れにさせようとして来る。
こんなのに当たってられるか! 俺は後ろへ飛び退くと一旦奴と距離を離した。
今のコイツに近寄るのは不味い! なら、これで攻めていくか。

「オッケー、ご使命に預かりましょうかね。

 ドラゴンファング
 『氷竜牙』!」

中距離でこいつと戦うにはこの技を使うしかない。
俺の両腕に、二の腕から氷が纏わり付くと氷で出来た竜の首が形成された。
同時に背中のドラゴンランスが水蒸気となって大気に溶けていく。
さすがの俺でも、この二つの技を同時には無理ってもんだ。

とりあえず、距離を取りつつ戦うか。

【リース:ツバサと戦闘中】
【背中の竜の首は消える】
55才牙 ◆vpAT/EK2TU :2009/07/16(木) 13:13:35 0
ん、うん、もう朝か。久しぶりに寝たな。これならあんな状態になったのも仕方なかったかもしれんな。
一眠りして体力も回復した。
今考えるべきは、この後どうするか、だ。
研究サンプルを手に入れに外に出るもよし、今ある発明を完成させてそれの実験をしに行くのもよし。

「しかし、完成させるとなると、時間が掛かるな。それでは目ぼしい能力者がいなくなってしまうかもしれない。
 ならやはり今完成しているものを持ち、サンプルを手に入れに行くのがいいか。」

そう自分に確かめるようにつぶやきながら顔を洗ったりだとかの朝の準備を終わらせた。
ちなみに朝飯はしっかりと和食を作り食べた。曰く、今日のはなかなかいいできだったな。だそうだ。



とりあえず持って行くものを決めようか。
まずは…いや、やめておこう。
持って行けば何かしら警戒されるかもしれん。このままで行こう。
…この白衣は脱いだほうがいいのだろうか?…まぁいいか。白衣だけで警戒されるとも思えん。
白衣に自転車の医者もいるらしいしな。

「これで準備は整ったか?まぁこれといった準備は全くしていないが。
 ん?そうだ!あれがあった。確か地下においていたはず。」

何かを思い出したかのように、左手を皿のようにしてポンと叩く。
そして地下室に向かい駆け出した。家の中だがな。

「これだこれだ、これがあれば能力者の居場所が分かりやすい。」

そういって持ち出したのは携帯電話のような形をした何かだった。

「これで準備は整ったな。では、油断せずに行こう。」

家を出て歩き始めた。

【携帯電話のような何かを見ながら歩き始める】
56池上 燐介 ◆ICEMANvW8c :2009/07/17(金) 00:30:37 0
「──あぁ、俺だ。ったく、こんな時に何の用だ!?
あぁン? 被害報告だとォ? バカが! そんなものは後でまとめて報告すりゃァいい!」

城栄は俺達の止めを刺す寸前で横槍を入れられたせいもあるのだろう。
電話をかけてきた人物と会話を始めるなり、いきなり怒鳴り散らしていた。
だが、そんな彼も、次の瞬間には驚愕の声をあげていた。

「──なに、虐殺部隊が旧虐殺部隊と共に壊滅!?
何やってやがる! スティクスやセルゲイの野郎はどうした!
……死んだだと!? ……おい、どういうことだ! 説明しろ!

……何だと、スティクスは旧虐殺部隊の隊長と一騎打ちした挙句、相討ち……
セルゲイはそいつの仲間と思われる刀を背負った女と闘って、これまた相討ち……。
なるほど、そういうことか……ケッ!
流石に最低限の働きはしてくれたみてェだが、相討ちが精一杯たぁ情けねェ奴らだぜ」

そう話す城栄の声を聞いていた俺達も、一堂に顔色を変えていた。

「旧虐殺部隊の隊長……? 池上、まさか……!」

籐堂院が俺に目を向けると、俺は「あぁ」というように頷いた。
(そうか……山田に、そして神野の奴も死んだのか……)

「一階の防衛に回っていた隊員は旧虐殺部隊と共に全滅。
スティクスやセルゲイを除く幹部どもの死は確認されていないが、生存は不明か……。
確かに、こりゃ文字通りの壊滅だな。だが、まぁいいさ。また創ればいいからな……ククク」

城栄がニヤリと笑みを浮かべた。
それは、思わず背筋がゾッとなるほど不気味なものであった。

「あ、あの野郎……テメェの部下が死んだってのに、何とも思ってねぇのか……!」
「あの男は自分の部下さえ躊躇わずに殺すことができる男だ。そう、昔からな……!」

怒りを滾らせる高山に、籐堂院が昔を思い出すように言った。
考えてみれば籐堂院は昔、父の組織に加わり城栄と闘ったことがある身だ。
城栄の性格というものは熟知しているのだろう。

「ああン? もう一つ報告があるだと? フン……ついでだ、言ってみろ。

──なにっ!? 炎魔の復元率が80%に達した!? それは本当か!!」

「「「────ッ!」」」

突如、城栄の口から飛び出した思わぬ言葉に、俺達は体を硬直させた。
(まさか……炎魔の復活の時はもうすぐそこまでに迫って……!)
57池上 燐介 ◆ICEMANvW8c :2009/07/17(金) 00:35:21 0
「クククク……まさか四日目にして80%に達するたぁな……。
このビルでの犠牲も、まんざら無駄では無かったってことか……こいつぁ朗報だぜ。
よし、俺は今すぐ研究所へ向かう。その間に捕らえた例のヤハウェ二匹から、
全ての『メタトロン』を搾り出す準備をしておけ! いいな!」

城栄は携帯に向かってそう叫ぶと、伝えることを終えたのか携帯を仕舞った。
そして一つの間を置いた後に、俺達の存在を思い出したようにこちらをギロリと睨み付けた。
俺達は即座に構えたが、城栄の興味は既に俺達にはないというように、
「フッ」と鼻であしらってみせた。

「……命拾いしたな。俺にはもうテメェらと遊んでやる時間はなくなった。
他にやることができちまったんでなァ……俺はこれで失礼させてもらうぜ」

城栄はくるりと背を向け、社長室へ向かって歩き始めた。

「ま、待て! まだ俺達との決着がついて──」

高山が言いかけると同時に、何かを思い出したように城栄は進めかけた足を止めた。

「──あぁ、そうだ。下の階に配置させておいた部下のほとんどは殺られちまったようだが、
直にここには最上階の異変を察知した生き残りの部下達が殺到してくるだろうぜ。
いいのか? グズグズしててよ? 無理せず尻尾を巻いて逃げたっていいんだぜェ……?
ククククク……ハーッハッハッハッハッハ!!」

城栄はこちらを振り返りもせずにそう告げると、最後には勝ち誇ったように高笑いしながら、
社長室へと消えていった。

「あ、あいつ……!! ナめやがって!! 待ちやがれ!!」
「高山待て! 君が行ったところで返り討ちに遭うだけだ!!」
「うっ……クソッ……!!」

こみ上げる怒りを抑えるように高山が立ち止まるのを見ると、
籐堂院はこちらを見て訊ねてきた。

「しかし、この思いも寄らぬ展開は喜んでいいのか……。池上、どうする?」
「……さっきの奴の話、聞いていたか?」
「あ、あぁ……戦場ヶ原が殺られ……そして、炎魔が復活しつつあるというようなことを言っていたな」
「捕らえたヤハウェというのは間違いなく煌神と桐北のことだ。
話を聞く限りでは、奴はこれからその二人を使って炎魔を完全に復活させるつもりらしい。
俺達としてはそれを止めなくてはならないが、城栄の強さは先程体感した通りだ。
少なくとも今の俺達では、"城栄を倒すことで復活を阻止する"ということはできないだろう」
58池上 燐介 ◆ICEMANvW8c :2009/07/17(金) 00:49:34 0
そう言うと、高山が掴み掛からんばかりの勢いで詰め寄り、叫んだ。

「じゃあ、どうすんだよ! まさか本気で逃げるって言うつもりじゃねーだろうなぁ!?
このまま何もせずにいたら、炎魔が復活しちまってますます手がつけられなくなるぜ!」
「そんなことは分かってる。だから……」
「──もういい! オメー達がやらねぇってなら、俺一人でやる!!」
「待て! 待つんだ高山!」

高山はそう言い捨てると、籐堂院の静止も聞かず城栄が入っていった社長室へ駆け込んでいった。
見捨てるわけにもいかないので、俺と籐堂院も直ぐに彼の後を追った。

──これで部屋の中に居る城栄との戦闘は確実。籐堂院もそう覚悟したことだろう。
しかし、俺達二人が部屋の中に飛び込んた時には既に城栄の姿はなく、
あったのは不思議そうに辺りを見回す高山の姿だけであった。
                                 ヤツ
「へ、変だぜ。俺が入った時には既に誰もいなかった。城栄は……どこに消えたんだ……?」

シーンと静まり返った部屋を、俺はじっくりと見回した。
部屋は高級そうな毛皮や絨毯、沢山の絵画で彩られてはいるものの、
人が隠れるような場所はどこにもない。

「どうやら研究所とやらに向かったらしいな。
この部屋にはそこへ通じる隠し通路のようなものがあるのかもしれん」
「……そのようだな。見ろ、二人とも」

籐道院が壁に掛けられた額縁の絵をくるりと反転させた。
──すると、突然壁が二つに割れ、それは扉のようになって開かれていった。
そうして開かれた壁から出てきたのは、小さなエレベーターだった。

「エレベーター!? って、おい待てよ……このエレベーター、上の階にしか通じてねぇみてーだぞ。
ここ最上階だろ? これより上の階なんて……どういうことだ?」

高山が怪訝な顔をして言った。
俺は数秒の間を置いた後、その疑問に静かに答えた。

「このビルの屋上に立つ大きく細長い塔があったろ。
最初、あれは電波塔か何かかと思っていたが、恐らくあの塔の中に研究所があるんだろう」
「奴はこれに乗ってそこへ向かったってわけか……。逃がしゃしねぇ! 俺は行くぜ!」

高山はそう言い、一人エレベーターに乗り込もうとするが、
俺は「待て」というように彼の肩を掴んだ。
59池上 燐介 ◆ICEMANvW8c :2009/07/17(金) 01:05:56 0
「さっき言ったばかりだろ。奴を倒すことで炎魔復活を阻止することは、今は不可能だと」
「……じゃあ、何もせずにいろってのか!?」
「いつ俺がそう言った。俺が言いたいのは、別の方法で復活を阻止するべきだということだ」

俺の言葉は二人にとって思いもしなかったものだったのだろう。
二人はキョトンとした顔を見せた。

「別の方法……? 池上、何だそれは?」
「炎魔復活にはヤハウェが必要。逆に言えばヤハウェがいなくては復活もできないということだ。
このビルには現在、捕らえられたヤハウェ──煌神と桐北がいる。
俺達の狙いはその二人……つまり、炎魔の生贄となる前に二人を救出する。
それが成功すれば後は再起を図るためにこのビルから脱出する──」
「……し、しかし、肝心の二人の居場所が分からなくては……」

俺は二人に背を向け、無言で社長室のドア前に立った。
そして遠くから聞こえる無数の足青に耳を傾けながら、答えた。

「多分、これから来る連中が知っているだろうよ」

足音に気がついた二人も素早くドア前に駆けつけた。

「チッ! 生き残りの奴らか! ……おい、もし連中が一人も知らなかったらどうするつもりなんだ?」
「その時は、知っている奴のところまで案内してもらうまでだ。──勿論、城栄以外の人間のところにな」
「──ッ! 二人とも、お喋りはここまでのようだ。……来るぞ、残党共が!」

──ナガツカインテリジェンスビル50階で、再び戦闘が開始された。

【池上 燐介:ビルに居たナンバーの残党と決戦。城栄は研究所に向かうため戦線離脱】
【戦場ヶ原 天、神野 屡霞:スティクス、セルゲイと決闘し、相討ちとなって死亡したことが判明する】
60姫野与一 ◆N8yTRtOcY2 :2009/07/18(土) 14:14:04 0
>>48

>「咆哮?ああ。それは恐らく……三年前に起こった『離反事件』で
機関を裏切った元虐殺部隊隊長…戦場ヶ原天とその部下数十名の雄たけびだ。
今、本部はそいつ等と、バトルロイヤルの参加者がどうやってかしらないが嗅ぎ付けてな。
離反して襲撃されてる。
他にも『殲滅結社』ってのが襲撃してくる事が予想されてる。
結構上まで攻め込まれているみたいであちらは修羅場になってるぜ」

離反事件……なんでも機関に反感を持った精鋭部隊の隊長が部下を引き連れて
その名のとおり機関から離反したという、大事件。
尤も私が機関に加入する以前の話なので噂程度でしか知らないのだが。
そんな人たちがこんなタイミングで本部を襲撃してくるなんて……

>「……敵さんも相当に手練みたいでな
俺より上のナンバーはもう十三人しか居ない。
ファーストナンバーは7人。
セカンドナンバーで今現在生き残ってるのは6人。
虐殺部隊の隊長と幹部のスティクスとセルゲイ、医療課の香坂織重、特殊実験部長の13番オマエ、世襲幹部のポポフスキー。
そして姫野さん。あんただけだ」

これで私が裏切ったと機関が認識した場合、五人。
なるほど確かにここまで機関が消耗していれば、離反者達が攻め入って来てもおかしくない。

>「……このタイミングでは本社の防衛が優先される筈なのに……
何故か下っ端でも出来る調査と清掃に
わざわざ抹消部隊の隊長である俺が駆り出される……
……上は一体何を調べて俺に清掃させたがってるんだろうな?」
61姫野与一 ◆N8yTRtOcY2 :2009/07/18(土) 14:15:01 0
(――――!)
突然、頭が本能的に危険を知らせてきた。体はガチガチに強張っているけど震えている。
これは……殺気だ。冷たく恐ろしいまでの殺気、それが目の前の銀水苑という男から発せられている。

銀水苑さんはその殺気を放ちながら、その冷たい目で私を睨みつけたあと、背後の通路に向かって歩き出した。
私はそれとほぼ同時に動き出し、反射的に銀水苑さんの行く手を遮った。

>「このシナゴーグに俺が感じた気配は五つ。
バトルロイヤル参加者の宮野光龍、鳳旋希一、十六夜美月。
そして姫野さん。
……あと一人足りない。あんた何を隠している?
……やましい所が無いのなら、黙ってそこを通してくれないか」

銀水苑さんは落ち着いた口調で話し掛けてくる。
鳳旋さんも光龍さんも黙ったまま動かない。彼らも銀水苑さんから放たれている殺気を感じ取ったのかもしれない。
私は短く後ろに跳び、銀水苑さんとの間合いを開く。
この男には美月の事は愚か、アーリーの事まで知られていた。
私が必死に隠し通そうとしても意味は無かったという事か――でも

「……あなたは駄目です」

銀水苑さんは怪訝そうにこちらを睨みつけてくる。
私は動じず、怯えず話を続ける。

「この先に行っても私の連れである美月と、浮浪者の女の子が居るだけです。
まぁ何がしたくてここを通るのかは知りませんが――」

与一は右手を静かに上へと掲げた。
すると虚空から、一本、また一本……――と銀水苑を取り囲むように、計十二本の刀身が出現した。
剥き出しの刃は銀水苑を貫かんとばかりに輝きを放ちながら、主の号令を待っている。
そして与一は静かに、だが微かに怒気を含みながら銀水苑に言い放った――

「そんなに殺気を露にした人間を簡単に通すと思いますか?」

【銀水苑を通す気は無い】
【十二本の刀身を創り出し銀水苑の行く手を阻む】
62銀水苑 ◆TF75mpHiwMDV :2009/07/18(土) 22:55:45 0
>>61
「ふふ、正義の味方のような事を言うな。
個人的にそういうのは嫌いじゃない。
だが意図的な任務妨害、機関員への異能攻撃――
造反確定、だな。やれやれ、嫌な予感ばかり当りやがる。
今本部は襲撃に会って混乱している……
裏切るタイミングと言うものが有るのなら今を置いて他に無い。
そう、戦場ヶ原が離反した時も丁度こんな感じだった」

何か懐かしむような口調で語りながらも
油断無く、統治を取り囲む12本の刀の檻を見ている。

「剣の結界……成る程、あんたは物体生成系異能か……
だがこっちも仕事だ、押し通らせてもらおうか。
――あんた相手に手加減したら間違い無く此方が死ぬ。
久しぶりに全開で行かせて貰う」

統治の袖からシャリン、という涼やかな音が響き渡る。
服の袖に鞘が仕込んであったようだ。
「『縊』と懐刀『墨染』」
漆黒のナイフと墨染めの短刀が抜き放たれる。
ナイフは炎を宿し炯々とした光を放つ。
短刀は鋭くキラキラと輝いている。
一方は現代科学の粋を凝らした特注品と思しき
数多くの軍隊や特殊部隊で正式採用されている近接戦用ナイフの傑作、グルカナイフ。
もう一方の短刀も一目で業物と分かる。
恐らくは忍者や隠密が使用したと思われる実用一点張りの代物――。
どちらも鈍い金属光沢を照り返す、不吉な黒の色に染められているのは
短刀は夜間戦闘や暗所で目立たなくするためと、ナイフは能力の併用に耐える為の耐火素材で出来ているからだ。
63銀水苑 ◆TF75mpHiwMDV :2009/07/18(土) 22:57:26 0
そして統治は静かに目を閉じ、精神を集中させた。
「心頭滅却……眼を閉じてこそ見えるものあり――
纏ろう炎の中にて力を研ぎ澄ます……『止水』」
あえて五感の一つである視覚を閉ざすことを代償に、技術や反応、異能の力を研ぎ澄ます技。
周囲の情報は温度感知で補う。むしろそれゆえに感覚は鋭敏に研ぎ澄まされる。
そして統治はナイフを上に、短刀を下にした構えを取った。

ゆらり、と姫野への距離を詰める。
その瞬間、12の刀が統治に殺到する。
此処で統治は静から動へ転じる。
――迎撃。

「……小太刀二天一流『薄刃陽炎!』」

何時の間にか墨色だったナイフと短刀が、眼の覚めるような紅に変わっている。
炎気を帯びて熱されているのだ。
それが火を吹き上げて超高速で振り抜かれる。
そう、鳳旋のやったことの腕バージョンだ。
ナイフの軌道――朱色の弧が空間に描かれる。
一太刀で飛来した三本の刀身と言う弾を『弾く』のではなく『両断』した。
この馬鹿げた切れ味の秘密は、熱だ。
よくみると両断されて地に落ちた刀身の切り口は溶けている。
氷に熱した包丁を当てるように。発泡スチロールを熱した鋼線を押し当てれば容易く切れるように。
鉄すら溶かす高温の炎気をナイフの一点に集束し相手の防御や剣などの武器ごと叩き斬る……
統治がわざわざ耐熱加工のナイフを使うのはこのためだ。
因みに日本刀は刃物の中でも熱に強い。
活路を開いたかのように見えたが……
残りの9本、回避したはずの刀身が軌道修正しつつ再度襲ってくる。
「ちぃっ!微塵!」
統治は緊急回避のため躊躇わずナイフの先に火珠を灯し自らの至近距離で爆破。
このまま刀身弾に貫かれるか。それとも威力を加減した微塵を食らって自分で吹き飛ぶか。
選択肢は無い。それでも避け損ねた肩や足、腕を切り裂かれてパッと紅い血が飛び散る。
最弱に加減したとはいえ微塵の衝撃も馬鹿に成らない。
並の異能者なら姫野の攻撃を避けられずこの時点で串刺しだ。
「つうっ!!……誘導性あり、か……」
即座に態勢を立て直す。
64銀水苑 ◆TF75mpHiwMDV :2009/07/18(土) 23:02:19 0
そして統治は姫野の攻撃を分析しつつ、舞うように、廻る様に――飛来する刀を捌いている。
緩急と虚実、そして静と動が有る、変幻自在の動き。
まるで夏の火に揺らめく『陽炎』のようにつかみ所が無い。
どちらも高レベルな異能力戦闘だ。
しかし、端から見れば統治は受ける事に精一杯で姫野が優勢に見える。
そして、統治の動きに変化が混じりだした。
姫野の攻撃を捌きながらも、炎の灯ったナイフを大振りに、振る。
当然、姫野と統治の間にはかなり距離が有り、間合いが空いているので
攻撃が届くはずが無いのだが……
ただ、姫野は統治の斬撃の射線上にいる、と言うだけなのだ。
だが姫野は何か薄ら寒い予感を感じて回避行動をとり、
それが結果として彼女を救った。
つっ――と姫野の頬に一筋の切り傷が刻まれ、血が流れる。
「頚動脈を狙った『風炎』を避けるか……!!良いカンしてるぜ……!」
風炎は炎の能力による副次効果を利用した技だ。
炎の燃焼に伴う空気の吸収作用を用いて気圧差を発生させ、空気をかき乱すことにより空気の溝を発生させる。
高熱原体のナイフを用い、高速で移動させる事によってカマイタチを飛ばす。
本職の風使いには威力で劣るが……当たり所が悪ければ当然無事ではすまない。
統治も姫野の刀身弾を全て迎撃し……お互いに軽い傷を負ったが
傷の程度と数では統治が負けている。
姫野が守る通路の先にこれ以上進む事が出来ない。
統治は初めて、引いた。戦闘の中に有る、間。
剣で言う鍔迫り合い……お互いに相手の隙をうかがう硬直状態になった。
『止水』を解いて眼を開き先に口を開いたのは統治だ。

「正直、これほどとはな……
無理に押し込めば只ではすまないのはこっちか……
小太刀二天一流や風炎まで出させるとは……
姫野さん、あんた強いな……どうしたもんかね、こりゃ」

統治のその声からは酷薄な殺気が幾分か薄れ
純粋に相手を賞賛する感嘆の響きが混じっていた。
そして、顔にはこのまま無理に押して機関に義理立てするかどうかを迷う表情が浮かんでいる。

【一進一退の異能力戦を繰り広げ、統治に迷いが生ずる。そして再び硬直状態に】
65鳳旋 希一 ◆O93o4cIbWE :2009/07/18(土) 23:44:37 0
>>60-64

ふむ、ふむ、ふむ、
コヤツらの話を聞いてると機関ってのも色々大変な様じゃの
裏切りがどうとか物騒じゃ…

おい光龍、いつまでボーっとしとる?

「……このタイミングでは本社の防衛が優先される筈なのに……
何故か下っ端でも出来る調査と清掃に
わざわざ抹消部隊の隊長である俺が駆り出される……
……上は一体何を調べて俺に清掃させたがってるんだろうな?」

……――――ッ!!

!!、ゾクっと来たぞ、こやつ、、やっぱり悪い、、、そしてヤバイ……
ヘタに動いたら光龍も姫野も巻き込まれる……

「このシナゴーグに俺が感じた気配は五つ。
バトルロイヤル参加者の宮野光龍、鳳旋希一、十六夜美月。
そして姫野さん。
……あと一人足りない。あんた何を隠している?
……やましい所が無いのなら、黙ってそこを通してくれないか」

「……あなたは駄目です」
「この先に行っても私の連れである美月と、浮浪者の女の子が居るだけです。
まぁ何がしたくてここを通るのかは知りませんが――」

おお、ヤツの回りに次々と剣が現れおった、便利じゃのう、

「そんなに殺気を露にした人間を簡単に通すと思いますか?」

「ふふ、正義の味方のような事を言うな。
個人的にそういうのは嫌いじゃない。
だが意図的な任務妨害、機関員への異能攻撃――
造反確定、だな。やれやれ、嫌な予感ばかり当りやがる。
今本部は襲撃に会って混乱している……
裏切るタイミングと言うものが有るのなら今を置いて他に無い。
そう、戦場ヶ原が離反した時も丁度こんな感じだった」

ヤツは冷静じゃ、この状況が恐くないんか?
66鳳旋 希一 ◆O93o4cIbWE :2009/07/18(土) 23:45:22 0

「剣の結界……成る程、あんたは物体生成系異能か……
だがこっちも仕事だ、押し通らせてもらおうか。
――あんた相手に手加減したら間違い無く此方が死ぬ。
久しぶりに全開で行かせて貰う」

「な…ワシとは本気じゃなかったのか!?」

そんなことはどうでも良いか、ヤツは何か袖から刀をシャキンと出しおった、かっこいい…と言ってる場合じゃないの。

「『縊』と懐刀『墨染』」

この状況…相当ヤバイ気が……

――統治が構え、ゆらりと姫野へと距離を詰めた、瞬間――、統治を中心に敷かれた十二の刃の結界は統治に向かって殺到した―――

「うおっあぶなっ!!」

慌てて鳳旋は光龍の手を掴んでその場を離れる。
「よしワシは姫野に加勢してくる心配するな正義は勝つ!」
そう言い光龍を置いて再び先程の場所へ戻る。

――戻ってみれば随分派手にやっとる。
壁とか床が煤焦げて…また爆破しおったんか…
さっきの剣の殆どが二つになってころがっとる、よく見ると切断面はガラスを焼き切った見たいになっとる、……使える……。

「正直、これほどとはな……
無理に押し込めば只ではすまないのはこっちか……
小太刀二天一流や風炎まで出させるとは……
姫野さん、あんた強いな……どうしたもんかね、こりゃ」

ま〜たワシの出番は無いのかえ?
悪もんじゃろコイツは?、よし、卑怯とは言うまい。
ワシはヤツの後ろから話しかける。

「…おいおいオヌシ、こっちは二人がかりじゃぞ」

姫野がヤツを止め、ワシがヤツの後ろにいる、つまり、、、挟み撃ちの形じゃな。

【統治と姫野の戦闘に入る、挟み撃ちの形】
67七草 柴寄 ◆O93o4cIbWE :2009/07/19(日) 21:42:50 0
>>50

「――、涙雨かも知れないね……」

「――え?」

「…ううん、なんでもない、
 
 ねえ、七草君ってどんな子だったの?」


「どんな子って…おじいちゃんと、おばあちゃんに育てられて……それだけだよ……

 ……それだけだって…思ってた………」

学校から帰って、食事をして、少し勉強して、僕の家は早く寝てたから、それくらいの毎日、そう思ってた。
あの頃は自分がこんな人間だなんて知らなかったから―――

「ご…ごめん…、子供の頃の話とか…聞きたかったんだ…」

子供の頃―――? ……思い出せない、僕には子供の頃の記憶が無いから。

「…ごめん、僕は七年前に事故に遭ったらしいんだ、
 その時のショックで記憶喪失になって、その…子供の頃の記憶が無いんだ……」

そうだ―――、子供の頃の記憶が無いんだ。
今まで普通に生きて来たと思ってたけど、記憶を無くす前はどんな人間か知らないんだ。

「そう…なんだ…」

「…うん、―――ア、レ?」

―――先程見た夢が再び脳裏によぎった。
あれはなに――――? 僕の―――記憶…?

真っ赤に染まった彼女。
彼女は誰――? ワカラ――ナイ―――、オモイ――ダセナイ――…
とてもだいじなひとだったのに―――

――アタマ―――イタイ――――
68七草 柴寄 ◆O93o4cIbWE :2009/07/19(日) 21:44:10 0

「―――ぁああああああ……」
「ねえ大丈夫!? ねえっ――!!」

「――ハア…ハア……」

頭の中に鉛を埋め込まれた様な感覚。
思考はぼんやりと霞掛かって考えがまとまらない。
そしてズキ、ズキと鉛が頭を刺すように鋭い痛みが止まない。
どれだけ時間が経ったか分からない、それから、誰かが僕の肩を揺すっている事に気が付いた。

「――」

正気に戻った僕は頭を抱えていた手を降ろし、暫く何も無い空間を見つめる。
今のが僕の記憶だとしたら、僕はいったい何者なんだろうか。

「――大丈夫…?」

此方を心配そうに見つめている響ちゃんに、「大丈夫だよ」と返す、それから…

「…ごめん、少し、一人にしてくれないかな…?」

少し間を置いて響ちゃんは頷いて部屋から出ていった。

それからまだ痛みの残る頭で考えていた。
自分の中に居るもう一人の自分はいったい何者なのか?
思えばそれを確かめる為に外へ出たんだった。
69七草 柴寄 ◆O93o4cIbWE :2009/07/19(日) 21:45:10 0

「―――」

シーツを捲り、ベッドから足を下ろす。
身体はもう動くみたいだ、確かめるために身体を少し動かしてみる、大丈夫、動ける。
足を踏みしめ、立ち上がる。長い間自分の足で立たなかった様な、不思議な感覚に見舞われた。
いつまでも寝てはいられない、それに、これ以上彼女に迷惑を掛ける訳にも行かない。

改めて自分の体を見てみると、まっしろな服を着ていた。
袖口は肩の辺りで切り揃えられ、服の裾は膝まで伸びていて、足の動きを邪魔しない様に腰の辺りまで切り込みが入っている。
腕と足が露出していてこの服装はあまり好きじゃない、着ていた服は何処へ行ってしまったんだろう?
問題は此処から出られるかだ、扉の取っ手に手を掛ける。外側から鍵が―――、
掛けられていたりはしなかった、キィ、と音を立てて扉が開く。

部屋から出てみると白を基調とした壁に木目の床材が敷かれた廊下に繋がっていた。
廊下は左右に伸びている。左手は此処と似たような扉で、右手には広間が見える。
僕は広間へ向かうことにした。

廊下の角に差し掛かり、広間を覗くと、響ちゃんがテラスに繋がる窓から外を眺めていた。
彼女は気が付いたのか此方を振り向く。

「――ん、もう動ける様になったんだ」
「…うん、おかげさまで、ありがとう…」
「そう、よかった…」

僕は外に出たい旨を彼女に告げた。

「ん? 外に出たいの? いいよ、心配だからボクも付いてくけどね…」

以外にも彼女は二つ返事で承諾してくれた。
それから仕度を始めた。

「…そういえば…僕の着ていた服は?」

そう聞くと彼女は、

「汚れてたので洗ったよ?」

とだけ返し仕度をしに部屋に入る。
どうやら外へ行くのはこの服装になるみたいだ。靴も靴下も無い、
そう思ってると戻ってきた響ちゃんから黒い靴下を渡された。
70七草 柴寄 ◆O93o4cIbWE :2009/07/19(日) 21:46:03 0

「――そう言えば…靴は…?」

靴下を履きながら聞く、流石に靴まで洗われたという事は無いだろうと思って聞いた事だ。

「あるけど…こっちの方が良いよ」

彼女はそう言って玄関前まで行き、下駄箱から靴を取り出し此方に見せる。
黒くて、実用性の高そうな靴だ、艶やかな表面が光を反射している。
少なくとも僕の履いていたスニーカーよりは防水性も高そうだしそちらを履く事にした。
渡された靴は寸法が少し小さかったけど足に馴染んだ。
よく見れば響ちゃんも同じ形の靴を履いていた。

「傘、こんなのしかなくてさ」

渡された傘は黒くて大きめで、傘にしては凄く重たかった。

「…重いね」

「まぁね、それより何処へ行く気なの?
 町なの? ゲームセンターなの? 漫画喫茶なの?」

「…いや、そうじゃなくて……」

僕の知らない単語が飛んでくる。僕が行きたいのは…

「…昨日僕が倒れてた場所に行きたいんだ……
 あそこに行ったら何か分かる気がするから…」

「分かった、影渓さんが七草君を拾ってきたあそこだね?」

頭に霞掛かった記憶がある。其処へ行けば何か思い出せそうな気がする。
思い出してどうする? もう自分がヒトゴロシなのは確定しているんだ。

「そうと決まったら早くいこうよ」

彼女に手を引かれ外へ出た。
降りしきる雨の中、海岸の砂を踏み抜き、歩みを進める。

だけど知らずに済ます事は出来ない、全てを知らないと罪を背負い、罰を受ける事が出来ない。
償いが出来ない事はとても悲しい事、そう教えられた―――
71ツバサ=ライマース ◆O93o4cIbWE :2009/07/19(日) 23:12:27 0
>>54
「オッケー、ご使命に預かりましょうかね。

 ドラゴンファング
 『氷竜牙』!」

腕に氷を纏い始め、やがてそれが竜の首を象った。
竜の牙の様な二対のそれを生成すると共に背に従えた竜は水蒸気となって昇華した。
「――フン」
ツバサが左手で壁を叩く、するとリースの傍の壁がゴポリ、と音を立てて歪む、
禍々しくなった其処からリースめがけて亡者が飛び出した。リースはそれを危なげにかわす、
リースを掴みそこない地面に落ちた亡者は下半身の無いからだをドロリ、とさせその場でもがき出す、
肌色の絵の具を溶いたようなそれは見る者に生理的な嫌悪感をこみ上げさせる。

「…うェ―――」

胸の奥から沸いてくる嘔吐感を抑えるリースに横薙ぎの大鎌が襲い掛かる。

―――ガッ――!

大鎌はリースの体には届かなかった。
左腕の竜の首が大鎌の支点を押さえ鎌の動きを止めたのだ。

「もらったぁ!」

右腕の竜の牙を大鎌を押さえられ無防備なツバサに突き立てる―――

「――ガァッ!」

ドッ、とリースの体が浮く、ツバサが右足で蹴りを入れたのだ。
そして、竜の牙がツバサに届く事は無かった。

                 ファング
「――グフッ……の、伸びろ牙ッ!!」

鳩尾に蹴りを入れられたのだろう、呼吸のままならない肺で声を捻り出す。
その言葉と共に竜の首が伸びツバサに襲い掛かった。
ツバサは大鎌を竜に向かって投げ捨て、接近する。
竜の牙は大鎌を捕え、ツバサはそれを掻い潜ってリースに近づいた。
リースの迎撃よりも先にツバサの右手が彼の顔面を掴み、肩部を打ち抜かれたとは思えない力で彼を地面にねじ伏せた。

「ガハッ!!」

ツバサは鎌を虚空に構える、すると先程投げ捨てた筈の大鎌が彼の手の中に現れた。
そして仰向けに地に伏したリースの額目掛けそれを振り下ろした。

「死ねええええええ!!」

リースは竜の牙でそれを振り下ろされたそれを食い止める。
両者の力は拮抗している。しかしリースは見た。
いま自分の命を奪おうとしている大鎌は大量の亡者が固まって出来ていたのだ。
リースの瞳には水晶の竜越しに鎌の表面を蠢く亡者達が映っている。
そしてそれが低い唸り声を上げると共に彼の視界に亀裂が走る。
竜の牙が砕けて行っているのだ、亡者達がオロ、オロ、と唸り声を上げてリースを誘う度に氷の竜は砕けて行く。

「―――ロロロォォォオオオオオオオオオオオ!!!」

【リースを追い詰める、統時の方はほぼノーマークの状態】
72レオーネ ◆GWd4uIuzU6 :2009/07/21(火) 22:35:51 0
>>38

パンドラの箱……。
神話の時代、一人の女が開けた箱の中からあらゆる厄災が飛び出してきた。
炎魔という究極の厄災……。我々に扱えるだろうか?
それは人という種をも食い潰してしまうのではないだろうか?
――否。それはこの私が許さない。
私の望む世界は、全ての人間が平等に幸せになれる世界なのだ。

決意の眼差しで、鏡に映った自分を睨んだ。

――着替え終わり リビングに戻ると、未だ目を開けないひかるがそこに居た。
一仕事終えた香坂は、値打ち物である革張りのソファーに腰を下ろしている。

「出来るだけの事はやった。……あとはこの子の目覚めようという意思だけが望みだね」

目覚めても悪夢は続くがな……。
私は濡れた髪をバスタオルで拭きながら、リビングに置かれた化粧台の前に座った。
ドライヤーの強さを弱にして髪型をセットしていく。

「――う……ぅん」

ようやく、ひかるがその意識を取り戻した。
何とも重たそうに瞼をこじ開ける様は、生まれたばかりの子猫のようだな。

「お目覚めかね、お姫様」

私の言葉に、はっと息を呑む音、その音に続いて勢いよく起き上がるひかるだったが、
香坂によって制止された。

「おっと、動かない方がいいよ。
 筋や神経をくっ付けたばかりだからね」

そう言われたひかるは、少しムッとした表情であったが、素直にこれに従った。
実に聞き分けの良い娘だ。才能も在る。

「レオーネ、一つだけ聞かせて……。どうして炎魔にこだわるの?」

「……。人々の幸せの為だ」

神の創る平和な世界の為――と言っても、彼女は信じないだろうな。
全ては人々の幸福の為だ。彼女にはこれから炎魔復活の為の生贄となってもらう。
私は必ず地獄へ落ちるだろう。だが、その前に世界を変えてみせる。
どんなに汚い事をしてでも、どれだけ人から忌み嫌われようとも……。
73レオーネ ◆GWd4uIuzU6 :2009/07/21(火) 22:39:47 0
>>72

「貴方の世界は悲しみしか生まないと、先日教えたはず……。
 ヤハウェを持っている貴方が、どうしてこんな事を」

「私は、もうヤハウェを持ってはいないんだ」

途端にひかるの顔が青ざめていく。
それはそうだろう。彼女の今考えている通りの事を私は行ったのだから。

「まさか……レオーネ、貴方……」

「炎魔に捧げた。当然だろう、私の理想の世界の為には必要だったのだ」

ヤハウェの話題が出てくると、先程まで我が物顔でソファーでくつろいでいた香坂が身を乗り出してきた。
なんだ、香坂の奴話を聞いていたのか……。

「ちょっと良いかい? そのさっきからヤハウェ、ヤハウェって言ってるけど、
 そもそもヤハウェってのは何なんだい?

 以前、ウチのスタッフが任務中に、
 "対象者はヤハウェだから傷一つ残すな"って上から念を押されたらしい。
 気になって調べてみたら、No.6の作った異能力覚醒薬の事みたいなんだ。
 でも、仲間が治したのは明らかに人間だった……。
 調べようにもセキュリティクリアランスに引っかかって、それ以上の事は解らないんだ」

この汚れの無い白いシャツにデニムのジャケットとホットパンツを穿いた、
凡そ医療関係者らしからぬ服装の女には、
自分が知って良い事と知ってはいけない事の区別を教えてやりたい所だな。

……私は押し黙るを貫き通したかった。この項目は彼女に教えて良いレベルの事柄ではない。
そんな私の考えを嘲笑うかのように、ひかるが重く口を開いた。

「ヤハウェは神に等しい力を持った異能力者。
 異能力に得意・不得意は在るけれど、通常強弱の概念は無いわ。
 その普通の概念を打ち破る存在――。

 それがヤハウェと呼ばれる異能力者。

 貴女が調べたのはヤハウェの名前を付けられた粗悪品」

人が苦労して作った薬を粗悪品呼ばわりか……。
まぁ、理論を作っただけで、実際に私が作った訳ではないがね。
『アブラハム』とはヤハウェになれる素質を持った異能力者の事。
私はアブラハムとしてこの世に生を受けた。だが、私にはやらなければならない事が在る。
その為には、己の中のヤハウェがどうしても必要だったのだ。
74レオーネ ◆GWd4uIuzU6 :2009/07/21(火) 22:41:38 0
>>73

「――メタトロン、即ち異能エネルギーが通常よりも桁違いに多いのが特徴だ。
 ……正直、セカンドナンバーには必要な情報とは思えないが、君には恩義が在る。
 だからこの際仕方が無い」

異能エネルギー……そう呟いて香坂は俯いた。あれは何か頭の中で思案を張り巡らせている顔だな。
ひかるは唯々ぼうっと窓に流れる雲を見つめている。
――あぁ、あれは一雨降りそうだな。好くない雲だ

「それで、私をどうするつもりなの?」

ん? すっかり忘れていたな。
そうだな、本社へ連れて行って"若しもの時の保険"にするか。
桐北少年とリンだけでも十分間に合うだろが、
万が一でも、不確定要素が混じってしまった場合、塚原ひかるのメタトロンで代用出来る筈だ。

「これから少々付き合ってもらうよ。
 なに、心配は無いさ。君に危害は加えない」

今の所は……だがね。
私の言葉に少しの間何か考えた様子のひかるだったが、
いつもの凛とした表情を取り戻すと多少よろめいてソファーから腰を上げた。

「いいわ……行きましょう、レオーネ。
 どの道、貴方の望む世界は永遠に訪れない。
 悲しみしか生めない世界なんて……」

相変わらず覚悟が良い。素質もそうだが、私は彼女のこの覚悟の良さが気に入っている。

「香坂君、本部へ戻るようだったら気をつけて行きたまえ。
 また殲滅結社の連中が襲ってくる可能性も在る」

彼女は一回連中に敗れた時の苦い思い出を思い出したのか、その顔を歪める。

「……あれは不覚を取っただけさ。もう遅れは取らない」

それで良い。そう言って私はひかるの手を引きながらリビングを後にする。
玄関のドアを開けると、空には若干雲が多くなり始めていた。

――何処へ行くの? そんな怪訝そうな表情で私の顔を見つめるひかる。
多少は不安なようだな。少々彼女の未だ残る幼さが見えた気がした。

「そうだな……。この街に水上公園と言う場所が在る。
 そこへ行ってみるかい? なに、君をどうにかしようなんて思っちゃ居ないさ。
 さっきも言っただろう?」

エンジンのキーを回すと、3000ccの日本車は重い駆動音を起て始めた。

【レオーネ:塚原ひかると共に車で水上公園へ】
【AM:10:20くらい】
75木崎 あやせ ◆N8yTRtOcY2 :2009/07/22(水) 19:49:39 0
>>55

――ギギィ、ガチャリ――

誰も居ない家に外出を告げ、鍵を閉める。
両親は当の昔に死に、私を引き取ってくれた祖母は病に倒れて入院している。
私の家ではこんな状態が既に半年も続いていた。けど寂しくなんかない。一人の生活はもう慣れたから――

さて今日、私の通う学校は開校記念日という事で休みだ。
でも折角の休日なのにやりたい事が全くと言っていいほど見つからない。
だけど一人で一日家に居る、ということもつまらないので私は街へ散歩に出る事にした。
外に出ていれば絶対に面白い事が起きる。……そう考えていると、私の視界にほっそりと痩せた若い男の人の姿が写った。
その人は揺ら揺らとこちらに向かって歩いてきて……私に話し掛けてきた。

「ヘ、ヘヘヘヘ……嬢ちゃんも能力使いか……なら知ってるよなあ?この戦いのルールをよぉ……」

いきなりお兄さんの細く痩せた体が一瞬のうちに筋骨隆々の逞しい肉体へと変貌する。
……幸いにも、辺りに人らしき物影は見当たらず、この怪現象を目撃した者は私を除いて誰も居なかった。
こんな昼間から仕掛けてくるなんてただの馬鹿としか思えない。

「ってことで嬢ちゃんは俺のために死んでくれや。これでな……あんたでな、三人目なんだよぉ!」

お兄さんは勢いよく走り出してこちらに向かって、猛牛の如く突進してきた。
その一歩一歩で地面が陥没し、ひび割れて行く。――前言撤回――猛牛どころかこれでは戦車だ。
私は口を小さく開いてニヤリと笑った。

――男は拳を振り上げ、あやせ目掛けて横に大きく薙いだ。
少女の体は無残にも吹き飛ぶ、そう男は思っていた。が、現実のそれは空を切るだけ。
標的の少女の姿は何処にも無く、代わりに"彼女の声"だけが背後から聞こえた。

「ゴメンねお兄さん。私はこれで七人目なんだ」

ペタリと、男の強靭な肉体に脆弱な少女の小さく冷たい手が触れる。
――すると手の平が触れた部分を中心にして、男の体に波が起きた。
それは水面に垂らした雫のように静かに静かに拡がっていく。

「お兄さんの戦いはこれでお終い。今までお疲れ様でした。バイバイ」
「え?な、なんだこれ、波?俺の体が波打ってる!?」

男は己の体に起きた異変にただ戸惑い立ち尽くしている。だがそれも一瞬
波が人体の末端である頭部まで辿り着いた瞬間、男の体内であらゆる血液体液が轟々と唸りを上げ、激しい音を立てる。
そして男の全身は小刻みに震え始め、声にならない断末魔と共に爆ぜた――

「人を見た目で判断するからこうなっちゃうんだよ?それに女子供を見境も無く襲うなんて人間としてどうかと思うけどねー」

既に人ではないモノを見据えて言う。目の前にはただ赤い赤い肉塊だけが散らばっていた。
ふと上を見上げると空を暗い雲が覆いかけている。やがて雨が降り出してこの血を洗い流してくれるだろう。

私は視線を前に戻し歩き出す――と、いつから居たのか、白衣を着てる怪しい男の人が立っていた。
なにやら携帯電話と私を見比べている。失礼だとは思わないのだろうか?
だけどそんな事より――

「もしかして……見られた?」

【現在地:自宅前】
【異能者の男を殺害、才牙に遭遇】
76才牙 ◆vpAT/EK2TU :2009/07/23(木) 10:26:37 0
レーダーを見ていると、ある一箇所でとても多くの異能力者が戦っていることが判明した。

「何なんだ?この数は。この感じかすられば、これの場所はあのビル群の中の一つなのだろうな。」

それを考えたところで少し足を止める。
異能力者がこれだけ多いということは、何かの組織か何かなのだろうか?
そして、これだけの量の異能力者が戦っているということは、襲撃でも受けているということなのだろうか?
組織ということは何かの目的があって、それを邪魔しに行った、もしくはただ目障りなのか、そんな理由で襲撃されているのだろう。

そこまで考えたところで、もう一度レーダーを見る。
そうすると、どんどん数が減っているように見える。

「この様子じゃ、戦いに慣れていない私では、この場所に行っても無駄死にする可能性があるな。仕方ないか。他を探そう。」

それを決め、少し歩きながら次の標的を探そうとレーダーを見ると、目の前に二つ反応があり、そして、一つの反応が消えた。
どういった者が戦っていたのか確認するため顔を上げると、そこには一人の少女が立っていた。
そんな少女が相手の異能力者を倒したと思えず、何度かレーダーと少女を見比べる。

>>「もしかして……見られた?」

呟いただけであろうその声が、やけに大きく響いた。
私はこの場で必要な言葉を思考する、そして相手の返答を想定し、声に出す。

「え、何かしてたのかい?って、君!血まみれじゃないか!僕はこれでも医者なんだ。手当てをしよう。」

【木崎 あやせと遭遇、血まみれのあやせに手当てをしようと言う】
77小村 禅夜 ◆3LPMHhiq9U :2009/07/24(金) 15:38:51 0
>>30-31
「一番二番やなんて、ワイら芸人ちゃうんやから。
 この作戦中はワイには『ランバージャック』、こっちには『ジャッジメント』っちゅうコードネームがあんねん。
  ルージュ
『血まみれ』みたいにな。」
親指で自分を指し、次に隣の黒修道服の男に指をむけ、紹介を済ませた。
「それとさっきの質問やな。なんでワイらがここに居るのか……って、んなもんお宅も薄々感じてるやろ。
この計画の”最後”が近いって事ぐらい。」
「最後……あのミイラを使って何を始めるつもりなんですか。」
まぁ、なんとなく予想は付いているが……まさか…ねぇ。
「そやな……どうせ、もうちょいでお宅の役割も終えるんやし、教えたろ。」
顎に手を付け、暗いこの空間でもクッキリと見えるほどの白い歯をニヤっと露出させた。
「あのミイラはこの貳名市を数百年前治めていた記録上最古の異能力者、湯瀬政康や。
 No.1はそいつを復活させるつもりなんや。」
はぁ、溜め息が漏れた。別に話の内容に呆れた訳ではない。
逆に予想していた中で一番確立が高いと考えていた作戦内容だった。
しかし、それは一番阻止をするのが面倒な作戦内容だった。
(ミイラは三年前と同じ場所に安置されてるとしたら、このビルの頂上の特別研究所ですかね…機関で最も厳重なあそこに。)

「ま、そういう訳でワイら忘却数字もその炎魔様の生贄になるっちゅうことや。理解できたか?」
ロストナンバー
忘却数字――異能力者強化の研究から派生し、ヤハウェにどれだけ近づく事ができるか、という研究の【結果】。
三年前の神器の儀とかいうのも私もこの【結果】の中に放りこまれたってわけですか。
神器の儀は神の器に投じし者を生み出す儀式……という所か。
「…ふ、地獄の炎魔様を神に仕立てて、それで世界を征服でもするんですか。」
「そりゃあ……」
「それ以降はあなたも私達も知る必要は無い。全てはNo.1のお考えすることです。」
会話に割って入って来たのは今まで沈黙していた『ジャッジメント』だった。
「もう時間がありません。すぐに我々はB7Fに収容中の本物を持って研究所に運ばねばならない。」
「んじゃ、ワイは小村サンの相手をしとけばいいんやな。邪魔できへんように。」
目で「そうだ」と告げるとジャッジメントは闇の中に消えていった。
「それはちょっと、待って頂けますかね。」
小村のその声に呼応して、二人を囲むように八体もの黒き魔神が出現した。
                            ナイトメア・オブ・レイン
現れると同時に魔神達は一斉に両腕を二人に向け差し出し、「『神鱗雨射』!!」の掛け声とともにその腕から鉄板のような鱗を射出した。
鱗は地面に突き刺さると同時に爆裂し、その爆音がこの空間全てに反響した。

ドドドドドドドドド―――――――!!!!

爆音が鳴り終わると爆裂した鱗の黒い煙が霧のように辺りを漂った。
流石に無傷という訳は……
「……不意打ちなんて容赦無いわ〜。全く”普通”なら死んでるで、こりゃ。」
再びライターの灯りで照らし出されたのは爆音が鳴る前より容姿が寸分と変わっていないランバージャックだった。
「私はこれより本物を連れ、研究所に向かいます。あなたもお遊びは程々にしてくださいね。」
その忠告の声が聞こえたのは暗闇の遥か向こう、恐らく出入り口付近だった。
突然に、明かりがパッと点いてその憶測が事実であることを示した。
「さて、明かりが点いたことやし。一戦やりますか。」
手首を柔軟体操のように振りながらランバージャックは言った。
「……全く、面倒くさい…」
ライターを消し、胸にしまいつつ、心の底からくるような声でそう呟いた。

【小村:ランバージャックと戦闘開始】
78姫野与一 ◆N8yTRtOcY2 :2009/07/25(土) 17:37:33 0
>>64-66

>「ふふ、正義の味方のような事を言うな。
個人的にそういうのは嫌いじゃない。
だが意図的な任務妨害、機関員への異能攻撃――
造反確定、だな。やれやれ、嫌な予感ばかり当りやがる。
今本部は襲撃に会って混乱している……
裏切るタイミングと言うものが有るのなら今を置いて他に無い。
そう、戦場ヶ原が離反した時も丁度こんな感じだった」

銀水苑さんは過去の事件を自分の思い出のように語る。
だがそれでも一切の隙を見せず、自分を囲っている刃を見ている。

>「剣の結界……成る程、あんたは物体生成系異能か……
だがこっちも仕事だ、押し通らせてもらおうか。
――あんた相手に手加減したら間違い無く此方が死ぬ。
久しぶりに全開で行かせて貰う」

涼やかな音が辺りに響き、銀水苑さんは服の袖から二本の刃物を抜き出した。

>「『縊』と懐刀『墨染』」

片方は刀身から柄まで全てが漆黒に塗り潰された名前の通りククリ型のナイフ。
もう一方は小太刀のようだ。どちらも魅入られそうなくらいに艶やかな輝きを放っている。

そして、手に持った両の小剣を構え、銀水苑さんは目を閉じた。

>「心頭滅却……眼を閉じてこそ見えるものあり――
纏ろう炎の中にて力を研ぎ澄ます……『止水』」

張り詰めた殺気が一層強まる。
直後、彼は静かに動き出し、私との距離を詰めようと動き出した。
瞬間、体の硬直が解け、即座に全神経を『弾』の操作に集中させる――

「――――行けッ!」

十二方から向かう刃は拘束を解かれた獣のように肉薄する。
だがそれとほぼ同時に、異常な熱気が彼の小剣から吹き上げた。

>「……小太刀二天一流『薄刃陽炎!』」

直後、恐ろしい速さで彼の手からナイフが振り抜かれた。紅の軌道が空を切り、

向かい合う刃と刃が激突する――はずだった。
79姫野与一 ◆N8yTRtOcY2 :2009/07/25(土) 17:39:33 0
振り抜かれたナイフは彼の前面から放たれた三本の刃を易々と切断し、全てを地に叩き落とした。
鉄をも両断するナイフ――見ると落ちた刃の切断面は全て"溶けていた"。さらに断面の周りは赤く発熱している。
おそらくナイフの刀身に熱を纏わせて焼き切った、のだろう。
いつの間にか彼の二刀は漆黒から、炎の如き紅に染まっている。

だが、残り九本。
避けられた刀身は反転し、再び銀水苑さんに刃を向ける。

>「ちぃっ!微塵!」

ナイフの先端に炎が灯り、彼の至近距離で炸裂した。
爆発の衝撃で刀身の軌道がずれ、数本が弾き飛ばされて地面に落ちる。
だがそれでも、残りの刃は勢いを弱めることなく彼を切り裂いていく。
肩や手足など、様々な箇所から赤い血が飛び散り、態勢を崩した。

>「つうっ!!……誘導性あり、か……」

銀水苑さんは即座に態勢を立て直し、残りの刃を捌く。
残り五本。彼の動きがだんだん鈍くなっている。決定的な致命傷は与えられなくとも、刃は確実に傷を与えている。
これなら後数分もしないうちに銀水苑さんは動けなくなるだろう。

――だが、その油断が死を招く事になる。

一太刀だけ、彼のナイフが大振りになったように見えた。

一瞬、頭に痛みが走り、脳内に走り書きのようなメッセージが浮かび上がる。ただ一言、キケンと――
咄嗟に顔を横に動かす。と紙一重の間隔で頬を刃物のような物が掠り、そこから赤い血が流れはじめた。

「クッ――!」
>「頚動脈を狙った『風炎』を避けるか……!!良いカンしてるぜ……!」

銀水苑さんはこちらをジッと睨みつけながら剣を構えている、お互いにお互いを睨み合い、硬直状態が続く。
刃は彼の剣技によって全て叩き落された。今の私には彼の技を防ぐ術がない。だが幸いにも彼の体は既に満身創痍の状態だ。
やがてこの硬直を解くかのように銀水苑さんが重く口を開いた。

>「正直、これほどとはな……
無理に押し込めば只ではすまないのはこっちか……
小太刀二天一流や風炎まで出させるとは……
姫野さん、あんた強いな……どうしたもんかね、こりゃ」
80姫野与一 ◆N8yTRtOcY2 :2009/07/25(土) 17:56:21 0
彼の考えは相変わらず分からないが、その表情はどこか複雑そうな感じがする。
両者の間に張り詰めていた空気が薄れていく時、銀水苑さんの背後に強い気配を感じた。

>「…おいおいオヌシ、こっちは二人がかりじゃぞ」

彼の後ろから聞こえた声。その声の持ち主はなんと鳳旋さんだった。
あっちが状況を理解しているとは思えないが、これでこちらは二対一、それも挟み撃ちの形だ。
銀水苑さんへの警戒は解かず、彼に問い掛けるように私は話し掛けた。

「この状況でも続けますか、銀水苑さん?これ以上やると言うのなら、私も容赦しませんよ?」

もう一度右手を振り上げると、先ほどの刃を圧倒的に超えた数の槍が唸りを上げて次々と出現し、背後の空間を覆い尽くした。
そして銀水苑さんに考える暇も与えず、さらに言葉を続ける。

「私はもう機関には戻らない。本部に戻る事も指令を受ける事もしません。
お願いします銀水苑さん。この洋館の調査を中止して今すぐここから立ち去ってください。
ここには何もない。一人の少女が住んで居るだけ。私はその少女の住処を奪ってほしくないだけ……」

瞬間、熱気に包まれていた空間が、禍々しい殺気に包まれる。
その殺気に共鳴するように与一の創り出した槍が咆哮を上げ、回転を始める。
殺気を放っているのは与一。彼女の目は温厚な時とは対照的に冷たく鋭い光を放っていた。

「……でも、あなたが忠実に機関からの任務を実行しようとするのなら仕方がない。
その時はあなた……本当に……本当に殺すわ――」

感情も篭っていないまるで他人のように冷たい声で、そう言い放った――

【銀水苑にここから立ち去るように警告】
81銀水苑 ◆TF75mpHiwMDV :2009/07/25(土) 21:02:50 0
>「…おいおいオヌシ、こっちは二人がかりじゃぞ」

俺の後ろから響くのは鳳旋の声。
(……厄介なときに乱入してきたな)

>「この状況でも続けますか、銀水苑さん?これ以上やると言うのなら、私も容赦しませんよ?」

姫野が右手を振り上げると、彼女の背後の空間に槍が出現する。
十、二十、三十――五十近い数だ。
(予想はしていたが…凄まじい力だな)
姫野は畳み掛けるように言葉を紡ぐ。

>「私はもう機関には戻らない。本部に戻る事も指令を受ける事もしません。
お願いします銀水苑さん。この洋館の調査を中止して今すぐここから立ち去ってください。
ここには何もない。一人の少女が住んで居るだけ。私はその少女の住処を奪ってほしくないだけ……」

瞬間、熱気に包まれていた空間が、禍々しい殺気に包まれる。
「っ――!」
(これが彼女の殺気か!月の秘める狂気の如く禍々しい殺気……!)
その殺気に共鳴するように与一の創り出した槍が咆哮を上げ、回転を始める。
冷たく鋭い光を放つ姫野の瞳を逸らさずに見据えていた。
(コイツ……月光のように怜悧で酷薄な眼光をしてやがる……)
統治の額に一筋の熱の無い汗が浮かぶ。

>「……でも、あなたが忠実に機関からの任務を実行しようとするのなら仕方がない。
その時はあなた……本当に……本当に殺すわ――」

姫野は冷たい声で、そう言い放った――

(二対一、熟練の物体生成系異能者に、炎の効かない格闘馬鹿……)
両方を相手にするには骨が折れる。間違いなく只ではすまない。
戦力の分析が出来ないほど愚かではない。

「ちっ……戦力的に不利、か……分かったよ
負けを認める潔さや引くという決断も大事だ」
82銀水苑 ◆TF75mpHiwMDV :2009/07/25(土) 21:09:07 0
キンッ、と乾いた音と共に、二振りの刀が再び袖に納められる。
統治の殺気が失せ、
あたりの熱気が急速に平穏を取り戻していく。

「給与分以上の仕事をする気はなくてね。
戦ってみてあんたの力と本質が分かったが……
命張ってまで人と神と獣が一つに調和したモノと戦う義理はない」

姫野に向ってそう言い放つ。
分かっていて戦う統治の怖いもの知らずも相当なものだ。
統治の態度は堂々としたものであり、引き際を心得ている。
凡百の異能者ではこうはいかないだろう。

「それに、俺は強者や高潔な心を持ったものは敵味方問わず尊敬する。
姫野、鳳旋。なかなか面白い戦いだった。
お前たちは心も異能も共に強かった。
今回は俺の負けだな……素直に敗北を認めよう」

統治はシナゴーグの窓側の壁の方に向って歩き出し。
どっ、と壁にもたれかかった。
ニ連戦で思ったよりも体力を消耗している。
傷は浅いが数が多い。

「……機関に離反して生きるのは茨の道だぞ。
其れだけの力があるのは判ったがな……」

【戦闘態勢を解除する】
83七草 柴寄 ◆O93o4cIbWE :2009/07/26(日) 21:36:06 0
――朝方は静かだった大木南川も、正午になると降りしきる雨により水位を増し、
その流れも穏やかなものでは無くなって来ていた。
柴寄達は大木南川を傍目に都心部へと歩みを進める。

都心部の賑わいは雨が降っても衰える事は無く、たくさんの人々で溢れかえっていた。
アーケード下に車を待たせ、様々な品々を求めて行き交う人々。
亭主であろう運転手の男性達は誰も彼もが憂鬱そうな表情を浮かべて雨空を眺めている。

勿論、町を行き交うのは大人達ばかりではなく、若い男女達もこの繁華街での営みを楽しんでいる様子だった。
そう見て見れば柴寄達もその男女の一組に見えない事も無い。

柴寄の方は膝まで伸びた純白の生地から白磁の様な肌を覗かせ、傍から見れば女性的な雰囲気を漂わせる。
一見すると質素で不釣合いに見える服装だが、柴寄が着てみると不思議なまでの一体感を見せていた。

対する響の着ている服は柴寄の白とは対照的な黒のワンピース、
裾は膝からやや下まで伸びていて、いかにも最近の女の子といった風情だった。

「ねぇ、お腹空かない?」

前を歩いていた響が振り向き柴寄にそう尋ねる。
柴寄は人の賑っている場所にいる事が不安で、雨音や町の雑踏も重なり今の彼女の言葉を聞き逃してしまった。

「…ねえってば!」

響は少し不機嫌そうに柴寄の服の裾を引き、むっとした表情で振り向いた柴寄に問い直す。

「…え…うん…」

柴寄は彼女の問いに頷く、すると彼女は、

「じゃあ良い店知ってるんだ、そこ行こうよ」

と言い柴寄の手を引き案内を始める。
アーケード下を抜け、傘を差し、彼女に手を引かれて行くと町の雑踏は次第に薄れて行き、開けた場所へ出た。
辺りは静かで、目の前には湖沼が見え、それに沿う形で緑地が広がる。
貳名水上公園と案内板に書かれてあるこの場所はかつての大木南川の名残で在ると言われ現代でも多くの人々に親しまれている。
案内板にはこの池についての言い伝えが記されているのだが、それはまた別の話で今は柴寄達の方へと話を戻さなくてはいけない。
繁華街では人々の熱気も伴い雨天特有の肌に張り付くような空気だったが此処ではそれは木々によって浄化され清浄な空気を保っている。
肌を撫でる三月の風は冷たすぎる事は無く雨であっても心地の良い風が流れていた。
84七草 柴寄 ◆O93o4cIbWE :2009/07/26(日) 21:37:40 0

「え〜とこのあたり…」

そんなことを言う響に付いて行く柴寄、
二人はそんな調子で水上公園の外周を歩き始めた。
柴寄としては食事を取る事は気が気でなかった、人殺しで在る自分がこんな場所で食事をとるなどと……否定的な感情は無限に沸いてくる。
しかしそれでも食事を取ろうと思ったのは、彼女がそれを望んでいる様子だったからだ。
そうやって、柴寄は他者に合わせる事でこの七年間を生きてきた。
自己が極端に薄い彼にとって回りが望む存在になる事はさほど難しい事ではなかった。
彼が一人では何も出来ないという訳ではない、
回りが望む存在になれるという事は何にでもなれるだけの能力を持っている証であり、
祖父母が病に掛かり一人暮らしを余儀なくされても彼が不自由する事は無かった。
生活費については柴寄の家には宛先人不明の振込みが毎月送られているのだが、
祖父母はそれに頼る事無く自分達で稼いだ生活費で生活をして来た為その仕送りはまったく手付かずの状態である。
何かあったときの為に…と祖父母が残しておいた仕送りはこんな時に役に立った。
金銭面で言えば柴寄の生活はそれなりに豊かな物にはなるのだが柴寄は質素を旨として生きる為に必要最低限の物しか望まず、
柴寄の通っている学校では回りから「柴寄は欲が無さ過ぎる」と逆に心配される程であり、その実彼の中には欲と呼べるものは存在しなかった。

「アッ!!」

と、突然響が素っ頓狂な声を上げた、
何事かと思えば彼女は着ている黒のワンピースをまさぐっている。

「…ア、アハハ、お金が無い…」

外食を取るというのならば当然先立つもの、、、即ち金銭が必要だ。
どうやら彼女はそれを忘れてしまったらしい、
彼女の腰回りにはポーチが、服の下の腿部にはバンド付けされたホルスターが付いており、
其処も探ってみるが見当たるのは物騒な獲物ばかりで、"財布"といった現代文化的な物は何処にも存在しなかった。
彼女はどうしよう、どうしよう、とその場でオロオロし始めた。

【現在地:貳名水上公園周辺】
85木崎 あやせ ◆N8yTRtOcY2 :2009/07/26(日) 21:55:41 0
>>76

>「え、何かしてたのかい?って、君!血まみれじゃないか!僕はこれでも医者なんだ。手当てをしよう。」

(気付いてない……?でもこの姿を見られちゃった……)
白衣のお兄さんは自分の事を医者と称し、私のことを手当てすると言う。
私は彼の言葉に笑顔で返す。

「あ、いや私は大丈夫だから。ちょっと演劇の練習をしてただけでね、全然怪我してないから大丈夫。
でもこの格好は誤解されちゃうよねー……心配かけてゴメンね、お兄さん。あ、ちょっと待ってて」

軽く頭を下げて謝り、身を翻す。
そして閉じたばかりのドアに手を掛け、もう一度お兄さんの方を向く。

「ここ、私の家なの。すぐに出てくるからちょっと待っててねー」

鍵を開け、最後にお兄さんを一瞥して中へと入る。

家に入ると、すぐに血塗れになった制服を脱いで外出用の私服へと着替える。
お兄さんはかなり不思議そうにこちらを見ていたけど、多分あの人も自分を偽っている。
あんなに若い医者が居るわけない。失礼な話だけど見た目は高校生か、それより少し上と言った感じの青年だ。
ナイフを腕に付け直して部屋を出る。

「なんで私に話し掛けてきたかなー……こりゃ、気をつけないとね……」

最後に血がベットリとついた顔を洗い
テーブルの上に置いてあったアンパンを二つほど手に取り外に出る。
外にはさっきと同じようにお兄さんが立っていた。手には相変わらず携帯電話。

「変な心配かけちゃってゴメンなさい……簡単なものだけどこれ、食べれるよね?」

再び家の鍵を閉めて簡素な袋に包まれた物をお兄さんの手に渡す。中身は何でもない『ムッシュイノウ』のアンパンだ。
おいしい事で評判なので不満はないと思うけど、お昼用にたまたま買い置きしてあったものとはこの人には言えない……
私は自分の分の袋を開け、小さく被り付き飲み込んで、お兄さんに話し掛けた。

「ング……そういえば、名前教えてなかったね。私は木崎あやせ。
ところで、答えたくないならいいんだけど……お兄さんはそんな服着てどこに行くの?」

【才牙に質問】
【服装を普段着へと変える】
86池上 燐介 ◆ICEMANvW8c :2009/07/27(月) 01:14:58 0
──このフロアに辿り着いた残党は30人はいただろうか。
数の差と、体力、異能力共に消耗しきっていたということもあって、
俺達は予想を上回る苦戦を強いられたが、敵の中に一人も異能者が存在しなかった
ということが結果として幸いし、何とか勝負をものにしていた。
しかし、その30の敵のことごとくは異能力を持たない末端の構成員であった為か、
彼らは煌神や桐北の居場所はおろか、二人が捕らわれたという事実さえ把握しておらず、
結局有益な情報を何一つ得ることができなかったのは誤算という他はなかった。

「計算が狂ったな。さて、どうしたものか……」
「どうしたもこうしたも、こうなりゃビルの中をしらみつぶしにするしかねぇだろ?」
「どアホ。そんな時間と余裕があるならとっくにそう判断している」
「じゃあどうしろってんだよ? えぇ?」

俺と高山でそうしたやり取りを続けていると、
不意に誰もいないはずの階段から男の声が鳴り響いた。

「──地下七階だ。多分、二人はそこにいる」

「誰だ!」──俺達がそう反応するより早く、その声の主は階段からぬっと姿を現した。

「七重に……織宮か……。随分と遅かったな」
「いやぁ、遅れてすいません。ここに来る途中で敵に見つかってしまいまして。
しかし……そのお陰で良いことが分かりましたよ」

そう言う織宮に、俺は怪訝な顔をしてみせた。
すると、今度は織宮に代わって七重が口を開いた。

「俺達の倒した敵が、お前達が探す煌神リンと桐北修貴の居場所を言っていた……。
どうやら地下七階の『収容独房』という場所に監禁されているらしい……」
「──なに! それは本当か!?」

思わず声をあげた高山に、七重は表情を崩さぬまま無言で頷いた。

「そうか、確かにこのビルには地下があったんだったな。まさかそこに監禁してやがるとは……。
織宮、お前は移動しながらでも他人を回復させることはできるのか?」
「え? え、えぇ、基本的に体に触れさえしていれば可能ですが」
「なら頼む。もはやこれ以上もたついている時間は無いからな」

俺は全員を一瞥すると、「行くぞ!」とその場に一言残し、先頭を切って走り出した。

【池上 燐介:七重、織宮と合流し、最上階から地下七階へ向かう】
【七重&織宮:No.60〜69を倒す】
87レオーネ ◆GWd4uIuzU6 :2009/07/27(月) 23:34:00 0
>>74

はや一時間近く経ち、貳名市名所巡りもそろそろ佳境へと突入しようとしている。
残す名所は博物館と水上公園のみとなった。
助手席のひかるの手には、先程繁華街で買ってやったチョコチップアイスがしっかりと握られている。
念の為に言っておくが、彼女が食べたいと言ったのだからな。

一心不乱に黙々とアイスを舐め取っていくひかる。
偶には父親をやってみるのも悪くは無いな。

「……レオーネ。一つ聞いていいかしら?」

アイスを中断し、ひかるは私の方へ顔を向けた。
本来ならば彼女の顔を見つめ返すべきだろうが、なにぶん今は運転中の身。
失礼ながら、このまま返事だけ返させてもらおう。

「何か用かい? お姫様」

「シスター・アンジェラの事よ。彼女はその……。
 どうして亡くなったの?」

まさかひかるの口からアンジェラの事が飛び出してくるのはな。
正直、心底驚かされた。

――あの時の出来事は、思い出すのも苦痛だ。
助からない命……。生まれる命……。どちらを切り捨て、どちらを生かすか。
その選択を、私はしなければならなかった。
……今でも夢に見る。

「子供の知る事ではないな。
 誠一郎に聞いたのか? あいつめ……」

舌打ちをして沈黙を保つ。無言の重圧は、逆にひかるの口を軽快にしたようだった。
間も無く水上公園に差し掛かる所だというのに、車内の雰囲気は重い。
空気を入れ替えたい所だが、雨が止む様子は無いな。

雨は小一時間ほど前から急に降り出してきて、
今ではワイパーを動かさなければならない位になっていた。

「長束さんから彼女もヤハウェと聞いて、自分なりに調べてみたわ。
 出生記録から死亡した病院のカルテには彼女の名前は無かった。

 ……既に貴方たち機関が消し去った後みたいね」

彼女に関する全てのデータは最早『モノリス』の中にしか現存しない。
あとは一部の人間が記憶に留めているのみ。
アンジェラ・エインズワースという女性は、居なかった事にされたのだ。

「存在を無かった事にしてまで、貴方たちは何を隠そうとしているの?」

ひかるの感情を感じさせない冷たさが、私の中のトラウマを呼び起こす。
古傷を抉られるというのは苦しい物だな。
88レオーネ ◆GWd4uIuzU6 :2009/07/27(月) 23:38:16 0
>>84>>87

「――彼女は……。彼女は出産の最中に出血多量で意識不明に陥った。
 そのままにしては、子供の命が危ない。
 子供を助けるか、それとも……」

私は……子供の命を優先した。
勿論、アンジェラに了解を取った訳ではないが、彼女もそれを望んだ事だろう。

「城栄が炎魔に捧げる高濃度のメタトロンを欲していたのは知っていた。
 だから、奴の異能力を使ってアンジェラのメタトロンを全部抽出して、炎魔に……」

結果として、アンジェラは死に、私は思い出したくも無い過去を一つ増やしてしまった。
無論、それは誠一郎も同じ事だろう。あいつはアンジェラの事を好いていたから……。

案内標識に従って水上公園への入り口を目指す。
人も割と多く歩いているな……。雨だというのに奇特だな。

「レオーネ……。どうして貴方は悪者でいようとするの?
 誰も貴方を責めはしないわ」

このひかるの言葉に私は急激に感情が昂ぶっていくのを感じた。
私が……悪ぶっているだって? 何を勘違いしているんだ、ひかるは。
許すとか、許されるとかそんなんじゃあない。
私には使命が在る。世界を変えるという使命が。

「――貴方は許されたいのよ……」

「黙れぇッ!」

チィッ! 私とした事が! つい感情的になってしまった。
冷静に深呼吸だ、レオーネ……。とにかく落ち着くんだ。
ふと、バックミラーを見て、私は車のブレーキを軽く踏みつけた。
私がサイドミラーを見つめているのを見て、ひかるも後部座席から後ろを覗く。
どうやら私の車が水溜りを走った所為で、歩行者に水しぶきが跳んでしまったようだった。
ふむ、流石にこれは気の毒だな。
車を降りると、私は降りしきる雨の中、被害にあった若い男女二人へと歩いて行く。

「――汚れただろう? すまなかったね」

男の方は見た事が無いが、女の方は何処かで見た事が在る。
この日本人形のような少女……。北村の所の……暗殺部隊の奴か。
彼女の着ている黒のワンピースには汚れは見受けられない。
いや、汚れはしたのだろうが、色が色だけに目立たないだけかも知れないな。
問題は、相方の少年の着ている服であった。
この女装すれば少女と見られなくも無い少年の服は、純白と言って良い程汚れの無い白であった。
その白のを汚すように、薄茶色い点が細かく付いている。

「こちらの女の子の方は比較的軽症で済んだが、
 少年……君の方は見るも無残な物になってしまったようだ。

 クリーニングに出すなら早めの方が良い。その汚れでは染みになる」

思い出した、暗殺部隊の伊賀響だ。彼女がこのような所で何をしているのか気にはなるが、
今は他人の振りをするべきだろう。余計な揉め事は起したくない。

【レオーネ:現在地 貳名水上公園周辺】
【七草紫寄と伊賀響と出会う】
【時刻は昼過ぎ】
89廻間 ◆7VdkilIYF. :2009/07/30(木) 20:54:13 0
>>14
結果から言えば、俺の攻撃は大したダメージを与えられなかった。
俺の突きは脇を掠めたものの、直撃はせず横へと避けられる。
そしてツバサは避けたときの勢いを活かし、鎌を薙ぎ払い俺へ一撃を見舞おうとする。

「っ!」

あの大きさの鎌の攻撃に当たったら、流石に無事とは思えない。
俺は下手に受けようとせず、さっきの突きの突進力を活かしてそれを避ける。
続いて上段から鎌が振り下ろされたが、これも避ける。
だが…二回目の振り下ろしは俺を狙った物ではなかったというのが分かった。

「っ!? 足が…!」

いや、足どころでは無く下半身がまるで固まったかのように動かなかったのだ。
見下ろしてみると、数えるのも面倒な程の数のゾンビの腕が俺の下半身を掴んでいる。
不味い、これじゃあ回避どころか移動すら出来ない…!

「クソッ、放せ!」

紅い月を振り払い、ゾンビの腕を切り払う。
多少の数の腕は断ち切れたものの、依然として俺は動けない。
そして、何度も何度も斬り払う間に生まれる隙を見逃すリースじゃあなかった。
目前へと迫る鎌は、確実に俺の命を刈り取ろうとしていた…が。
突然ツバサがよろめく。
何が起こったのか確認すると、リースの放った氷弾がツバサの肩に当たったようだ。
俺のほうもやっと全ての腕を斬りほどく、足が自由に動くようになる。
よろめいた隙に、俺が一撃を見舞おうとしたその時。

「ぬぐっ!?」

突き出されたツバサの左の掌から、巨大な『何か』が飛び出す。

(不味い!)

俺は咄嗟に紅い月を護るように構えるが、その防御を無視するかのようにそれは俺にぶつかる。
殺しきれない衝撃に俺は突き飛ばされる。
90廻間 ◆7VdkilIYF. :2009/07/30(木) 20:55:19 0
>>54>>71
「ぐっ…痛ってぇー…」

身体の隅々まで衝撃駆け巡った時に生じた痺れに、俺は若干身動きが取れなくなり膝を突き顔を下げる。
だが、喉元過ぎれば暑さ忘れるとでもいうのか…少しの時間で痺れは消え、すぐに動けるようになった。
しかし、絶好のチャンスともいえた今のスタン状態に攻撃が来なかったのはどういうことだ?
顔を上げ、状況の把握を行うと…

「っ!?」

リースの背中の龍が消え、代わりに龍が両手に纏われている。
だが、それは驚くような要因じゃない。
そのリースが、地べたに押さえ込まれ鎌を突き立てられようとしている。
それは、つまり…

「リィィィィィッス!!」

気付けば叫んでいた。
感情が昂り、紅い月が煌き、一本の炎の太刀と化す。
紅い月が変貌したのと同様に、俺自身も身体能力が著しく向上する。
そして、俺は駆け出した。

「うぉらぁっ!!」

繰り出した飛び蹴りは突き飛ばすのを目的としていたため、ダメージそのものは少なかった。
だが、目的自体は果たせたようでツバサをリースから突き放すことには成功する。
そして突き飛ばされたツバサ目掛けて再び駆け出し、紅い突きを振り上げる。
だが、流石に幹部格と言うべきか…すぐさまに体勢を立て直し、紅い月を鎌の刃で受け止めた。
その時、俺は鎌の構成物質に気付く。
鎌を構成している物質…それは、大量のゾンビ。
見てみれば鎌の色もどことなく人間の肉の色に似ている…しかし、今となってはそれもどうでもいいことだ。
今は…こいつを倒す!!

【廻間:紅い月が炎を纏った太刀に変貌。
    それに伴い、廻間自身の身体能力も著しく向上。
    現在、ツバサと鍔迫り合いの形に。】
91才牙@代理:2009/07/31(金) 19:06:28 0
>「え、何かしてたのかい?って、君!血まみれじゃないか!僕はこれでも医者なんだ。手当てをしよう。」

そう私は言葉を紡ぎ、さらに彼女の次の言葉を想定する。
彼女は笑顔で軽く頭を下げながら返事をしてきた。

>「あ、いや私は大丈夫だから。ちょっと演劇の練習をしてただけでね、全然怪我してないから大丈夫。
でもこの格好は誤解されちゃうよねー……心配かけてゴメンね、お兄さん。あ、ちょっと待ってて」

まぁ、そんなものだろう。相手の異能力者を殺した返り血だ、なんて言える筈もない。
少しため息をつきながら言葉を返す。

「はぁ、それはよかった。でも演劇の練習とはいえ、早く着替えたほうがいいんじゃないかな。
誰か来たら僕みたいに、また勘違いされるよ。」

そう言うと、彼女はすぐそばの民家のドアに手をかけ、こちらを向き言う。

>「ここ、私の家なの。すぐに出てくるからちょっと待っててねー」

そう言い、鍵を開け家の中に入っていく。待っててね、ということはもう一度出てくるのだろう。
私は彼女が出てくるのを待つことにした。
しかし、誰にも見られなかったのは幸いだったな。見られでもしたらすぐに警察に通報されるだろう。
それはいいとして、さっき彼女は触れただけで敵を倒していた。何の能力なんだ?
だがあれだけではまだ何も分からないな。とりあえずは様子を見ることにしよう。
能力しだいでは研究対象として連れて行くことにしよう。
あぁ、他の異能力者が来ないか見ておくほうが良いかな。そう考えもう一度レーダーを出す。

いろいろと考えていると、ドアが開き彼女が服を着替え袋を片手に出てきた。

>「変な心配かけちゃってゴメンなさい……簡単なものだけどこれ、食べれるよね?」

鍵を閉め、中のパンを出しながら彼女は言う。
異能力者が近づいてくる様子もないので、レーダーをしまい、パンを受け取ることにする。

「貰って良いのかい?ありがとう。少しおなかがすいてきたところだったんだ。」

彼女が自分の分の袋を開けるところを見てから、受け取った袋を開ける。
彼女がパンを一口食べ、話しかけてきた。

>「ング……そういえば、名前教えてなかったね。私は木崎あやせ。
ところで、答えたくないならいいんだけど……お兄さんはそんな服着てどこに行くの?」

彼女の名前は木崎あやせ、というらしい。
しかし、やっぱり白衣はやめた方が良かったか?
貰ったパンを一口食べ、返事をする。

「ん、あぁ、この白衣のことかい?これは普段着用に家においている白衣でね、結構暖かいから冬場に使ったりしているんだよ。
その証拠にズボンは普通だろう?
どこに行くのか、って言われると散歩としか言いようはないんだけど、こんな答えで良いかい?
あぁ、僕の名前は才牙だよ。」

そう返すと、あやせは納得をしたのか軽くうなずく。

ポタ、ポタ、ポタ

ん、雨が降ってきたみたいだな。

【あやせの質問に対して返事をする】
【雨が降り出した】
92木崎 あやせ ◆N8yTRtOcY2 :2009/07/31(金) 20:25:51 0
>>91

「ん、あぁ、この白衣のことかい?これは普段着用に家においている白衣でね、結構暖かいから冬場に使ったりしているんだよ。
その証拠にズボンは普通だろう?
どこに行くのか、って言われると散歩としか言いようはないんだけど、こんな答えで良いかい?
あぁ、僕の名前は才牙だよ。」

白衣が普段着……? なるほど、多分この人はどこかの科学者さんなんだろう。
普通の人がこんな格好で街中を歩くわけもないか。でも何で医者だって嘘付いたんだろう?

「えっと、キバさん……でいいのかな? 散歩って当てもなく歩き回るだけでしょ? 一緒に行っていいかな?
私もこれから散歩に行こうかなって思ってて……あ、雨か……」

地面に落ちた水滴に気付く、空を見上げると曇り空からポツポツと雨が降り出していた。

細くて少ないけど、とても冷たい雨。また、どこかで誰かが誰かの為に悲しんでるのかもしれない――あの時の、私のように――

ふと、キバさんが心配そうにこちらを見ているのに気付く。いけない、こんな事でつい感傷に浸ってしまった。

「ゴメン、私は大丈夫だから、ちょっと待ってて。今傘持ってくるから」

と、もう一度家の中に入って自分用ともう一本、二本の傘を手に取り表に出る。

「はいこれ。キバさん大きいから入るか分からないけど……」

実際、彼と私の身長差はパッと見て20cmくらいはあると思う。年齢差はあまりないように思うんだけどなぁ……
キバさんは傘を広げて、自分の頭を覆った。ただ真っ黒いだけのシンプルな蝙蝠傘だけど、それは異常に大きかった。
彼を覆っても、まだ中に二人は入れそうだ。そして私も自分の傘を差してキバさんの横に立つ。
私の傘は白地に黒い水玉があしらわれた小さい傘。友達からはパンダ傘とか言われてるけどこれがなかなか気に入ってる。

「それじゃっ、どこにでも行こうか――」
「おいちょっと待てやコラ」

私の言葉を遮る第三者の声に気付き、後ろを振り向く。
そこには、三人の男の人が怒りを露にしながら立っていた。中央の、高そうなスーツを着た偉そうな人に並んでやや後ろにもう二人。
三人とも鬼のような形相で私たちのことを睨んでいる。見た目もかなり怖いので本当に鬼のようだ。

「テメェかぁ……ウチの奴をぶっ殺したって能力者はよぉ……」

なんとなく思い当たる節は有ったけど、男の人は私なのかキバさんなのかちゃんと言わず、どちらに向けて言ってるのか分からない。

「あいつから吹っかけて来たたぁいえ、俺らの仲間をぶっ殺した罪はデケェ……さて、どう責任取ってくれようか……佐方ァ!浦田ァ!」
「ハッ!!」

佐方、浦田と呼ばれた二人――おそらく中央の男の人の部下と思われる――は、その場から跳び、私たちを挟み込むように立った。
私たちはこんな状況でもお互い黙ったまま喋らない。いざとなったら、この場の人間を皆殺しにして逃げよう――

「死んでアイツに詫びいれて来い……連れの奴にゃあ可哀想な話だが、恨むんならテメェがここに居合わせた事を後悔するんだな」

「どうしよう、キバさん……」

……さて、本当にどうしようか。

【才牙に一緒に行動していいかと聞く】
【異能者三人、大川・佐方・浦田に遭遇】
93池上 燐介 ◆ICEMANvW8c :2009/08/01(土) 23:56:26 0
41階、37階、22階、10階、1階──
数々の死闘を繰り広げてきたフロアを一気に駆け抜けてきた俺達は、
ついに地下の階に突入していた。
しかし、そんな地下の階は、地上階の戦闘の影響の為かどういうわけか分からないが、
灯りもない暗闇に支配されていた。
そして、そんな暗闇の中から時折響いてくるのは、銃声と荒らげた人間の声──
この地下の階で何が起こっているのかは知らないが、
少なくとも何か異常な事態が発生しているということだけは間違いなさそうであった。

「エレベーターが動かない。
やはり電灯がつかないのも、電力の供給がストップしているからだと考えた方がよさそうだ」

エレベーターのボタンを押しながら、籐堂院が言った。

「この銃声はやっぱ地上階からのものじゃねぇな。この下から聞こえてくるぜ。
俺達以外に侵入した奴らがいるのか、それとも仲間割れか……」
「いずれにしても、このまま進んでいけばそのゴタゴタに私達も巻き込まれてしまいそうですね。
……どうします?」

と、高山と織宮が続いて言った。

「……正規のルート以外から二人のもとへ行くしかないだろうな。
ただ、問題はそんなものがあるとは思えんところだが……」

と言うと、急に七重が屈み、右拳で床を軽くコンコンと叩き始めた。
何をしているのかと思っていると、不意に彼はぼそりと呟いた。

「なければ、作ればいい……」

彼は右腕を大きく振り上げると、勢い良く拳を床に叩きつけた──。

──「バゴン!」という音と共に、拳を打ちつけた床の部分が
調度人ひとりが通れるくらいの穴を空けて、綺麗に抜け落ちていった。

「……こうやって俺が穴を空けていく。お前達は、後に続いてくれ……」

そう言うと彼はひょいっとその穴に飛び込んでいった。

「馬鹿力を持つ人間ならではのやり方だな。……お前にもできるか?」

籐堂院を見ながら言うと、彼女は「失礼なことを言うな」といわんばかりに顔をしかめてみせた。
俺はそのリアクションに軽く失笑しながら七重の後へと続いた。

【池上 燐介:現在地、ナガツカインテリジェンスビル地下。床をぶち抜いて更に下へ進んでいく】
94鳳旋 希一 ◆O93o4cIbWE :2009/08/02(日) 21:39:42 0
>>82

―――、戦いは終わった。ワシと姫野の挟み撃ち、そして姫野のダメ押しで、悪党は降参した。

「ちっ……戦力的に不利、か……分かったよ
負けを認める潔さや引くという決断も大事だ」

言うや否や統治は刀を仕舞う、途端に、辺りを包んでいた殺気が薄れて行く。

「給与分以上の仕事をする気はなくてね。
戦ってみてあんたの力と本質が分かったが……
命張ってまで人と神と獣が一つに調和したモノと戦う義理はない」

その言葉の後半の意味は鳳旋には分かりかねるが、辺りを包む空気の色からして、とにかく、戦いは終ったのだと鳳旋は思った。

「それに、俺は強者や高潔な心を持ったものは敵味方問わず尊敬する。
姫野、鳳旋。なかなか面白い戦いだった。
お前たちは心も異能も共に強かった。
今回は俺の負けだな……素直に敗北を認めよう」

おう、今度は一対一 (サシ) でやりたいもんじゃのう。
ヤツはよろよろと窓際へ行き、どっと壁にもたれ掛かった。大分消耗しとるようじゃの、
……まぁ大丈夫じゃろう、三日飯抜きに比べればの……そいじゃあワシは光龍を呼んでくるとしよう。
ワシは廊下を走って光龍の元まで行った。廊下を走るなと言うモンは何処にもおらんからの、そりゃあ走る。
けれども、走れど走れど光龍の姿は見えて来ん、道を間違えたかと思ったがそんなワケは無い。
…とうとう入り口まで来てしまった。ホールを見渡して見るがおらん、一体どこへ行ったんじゃ?

「お〜い、こ〜りゅ〜〜……」

ワシの呼び声は館に響いて山彦みたいに帰ってきた。なんかむなしいのう、
そう思ってると玄関口が空いているのに気が付いた。
ヘンに空いていたので外を覗いて見ると雨じゃった。これから強くなりそうじゃの。
それだけならよかったのじゃが庭に足跡があるのに気付く、
土が濡れてるので足跡が付いたワケじゃな、つまりだれかが出て行ったワケじゃワトソン君。
雨が降ってから出て行く人間となると……この館にはワシらしかおらんし……、
ハッ!!まさか屋敷の幽霊!?ワシらの騒ぎで逃げ出した……わけないか……。
え〜と、光龍が、出て行ったのか?………たっ、大変じゃあ!!

それから、鳳旋は壁を蹴って方向転換するほどの、物凄い勢いで来た道を戻り、
壁にもたれる統治と、統治と話していた与一に大声で叫んだ

「たっ!大変じゃあ!!光龍がおらんくなったあ!!!!」
95宮野 光龍 ◆O93o4cIbWE :2009/08/02(日) 22:33:12 0

光龍が割り込んできて、それから、あの女も来て、それから、どうすれば良いのか分からなくなった。

「よしワシは姫野に加勢してくる心配するな正義は勝つ!」

鳳旋は俺を安全な所に避難させて行ってしまったしまった。

鳳旋――悪いけど俺はもうだめだ。お前達とは一緒にいられねえ、俺自身、どうしたら良いのかわからないんだ。


だから――、ここでお別れだ―――。




――――――――――――――――――――

―――館を出て行くと雨が降っていた。それを見てると余計に感傷的な気分になった。
だけどそれで良い。雨に打たれる位が今の俺には丁度よかった。

――――沙羅。

空を見上げる。天を仰ぐというのはこんな気持ちだろうか。
何も答えは返ってこない。帰ってくるのは雨粒ばかりだ。
でもそれでいい―――。

――庭を越え、館の門を押す。ギィ、と軋む音と共に門が開いた。
辺りには誰も居ない。そもそも此処はどこだったか…無我夢中でどうやって来たのか分からなかったな―――。
そう思いながら、門の外を歩き始めた――――――
96 ◆O93o4cIbWE :2009/08/02(日) 22:34:58 0
誤字修正
>光龍が割り込んできて―ではなく―鳳旋が割り込んできて、でした
97銀水苑 ◆TF75mpHiwMDV :2009/08/02(日) 22:51:02 0
>>94

戦いが終わった後、俺は暫く黙って姫野の言葉に耳を傾けていた。
鳳旋のやつは光龍を探しに行ったのだろう。
せわしない奴だ。

>>「たっ!大変じゃあ!!光龍がおらんくなったあ!!!!」

ドタドタと騒がしく走りながら、鳳旋は慌てて戻ってきた。
「……奴は動揺していた。俺が見た時は既に
異能とともに目覚めた殺人の衝動に慄いていたからな……
きっとこれ以上お前たちに迷惑を掛けないよう飛び出していったんだろう」

何を呑気で冷静に言う取るんじゃと言う鳳旋に対し
まあ落ち着け、とばかりにけれんみが有る動作で
片手を上げて制止させるジェスチャーをとった。

「まあ、慌てるな……
炎の使い道は熱い拳や物を燃やすだけじゃない。
火の灯りで闇を照らして物を探す事も出来る……
だが、俺は今傷と疲労の回復と治療にメタトロンを割いているからな……
鳳旋、お前が筋が良さそうだ。早い話、奴を探したいのなら異能を使った探知のやり方を教えてやる……
ま、勝った景品のようなもんだな……」

そっけなく統治がそういうと
鳳旋は了解の言葉と共に頷いた。

「闇の中で松明や火の灯りを掲げる自分をイメージしろ。
そして、光龍の姿形、雰囲気さ仕草、纏う空気、異能の気配を思い出しながら
頭の中で闇を見渡せ……お前が一番光龍の気配を覚えているのなら出来るはずだ」

【鳳旋に能力を使った探知系の技のやり方を教える】
98七草 柴寄 ◆O93o4cIbWE :2009/08/03(月) 22:16:58 0
>>88

「あ〜、どうしようどうしよう」
響がそうやって慌てふためいていると彼女の後方の道路から一台の車が走って来る。
普段なら別段気にも留めない出来事だが、それを見ていた柴寄は嫌な予感がした。
車は、シャアアと水を切り、二人の横を走り抜けて行く、跳ねられた水は段差を越え、歩道に居る二人に飛んで行く。
「きゃっ!」
響はその場で小動物の様に飛び跳ねた。
柴寄の方は呆然とその場に立ち尽くしている。パタ、パタと泥の混じった水が柴寄の服に斑を付けて行った。
「あ〜もう!なんなのさ!!」
彼女は、明らかに不機嫌な様子で濡れた服を摘み上げて、車の方を見た。
僕も、彼女の目線を追いかけるように振り向く。車は少し走った先で減速して止まって、中から運転手の人が出てきた。
車を運転していたその人は、降りしきる雨の中、傘を差さずに此方へ歩み寄って来る。
金色の髪をした、とても綺麗な人だった。

「――汚れただろう? すまなかったね」

透き通る様な、それでいて重々しい、声。
僕は、雨に打たれるその人の姿に不思議な感覚を覚えた。

「こちらの女の子の方は比較的軽症で済んだが、
 少年……君の方は見るも無残な物になってしまったようだ。

 クリーニングに出すなら早めの方が良い。その汚れでは染みになる」

そう言ってその人は謝ってくれた。
傍で響ちゃんが「クリーニング代…」と言っている。
確かに、このままでは外を歩くのに都合が悪い。だけどどうしよう、起きてしまったものは元に戻せないから。

「む〜〜〜!」

響は、先に増して不快感を露にし、怒気を孕んだ声色で唸る。
泥が掛かった事に腹が立つのではなくて、泥を避けれなかった事に腹が立つ。
本当に、どうしてくれようか? 男も告げているが、私よりも、彼の被害が大きい、
コレでは外を出歩くのに不都合だ。それにしても、彼はなんとも無いのだろうか?。
前から感じていたが、彼は何だか、おかしい。単に優しかったり、余裕の在る人間だといえばそれまでだけど…。
―――ああ、お腹が空いてきた…。

響は無言の抗議を続けていたが、やがて肩を下ろし、ふう、とため息を付く。
その後彼女は「お腹すいた…」と、独りごちる。運転手の男は、何か思考を巡らす様子でそれを見ていた―――。
99 ◆GWd4uIuzU6 :2009/08/03(月) 23:46:49 0
>>95

雨の降り出した広大な敷地の中を、微かな声で歌を歌いながら歩く影が二つ。
ここは貳名市の一等地。その中でも人里離れた洋館……。
機関では既にうち捨てられた『シナゴーグ』と呼ばれる施設である。
人影の大きさは小さく、明らかに子供の背丈であった。
時折、手に持つ真っ黒な傘から覗かせる顔は、西洋人形のようであったが、
一番印象深いのは、"彼ら"の顔が全くの瓜二つであるという事だろう。

「野いちご赤い実だよ。木蔭で見つけたよー」

傘と同じ真っ黒なドレスを着た少女が、ここまでで五回目になる歌の先頭を歌えば――

「誰も知らないのにー小鳥が見てたー」

子供用の紳士服を着込んだ少女と全く同じ顔の子供が続きを歌う。
この歌は彼らがまだ幼い頃に両親から聴かされた母国の民謡。
両親はもう居ないし、二人にとっては不要なものだ。
彼らにとって、家族は自分達二人だけで良いのだ。

もうそろそろ目的の洋館にたどり着く。
二人がここへの目的は唯一つ。裏切り者の処分……。
そんな彼らはこう呼ばれていた――『粛清部隊』と……。

ようやく門が見えてきた所で二人は同時に歩を止めた。
二人はきょとんと目を丸くした。人が……粛清対象以外は居ない筈の建物から人が出てきた。
容姿、服装共に西洋人形のような二人の子供は、今しがたシナゴーグから出てきたばかりの少年――
宮野 光龍を見てその歩みを止めたのだった。
そんな二人を少年は訝しげに見つめる。

「あれれぇ? こんな人、手配書には書いてないよぉ?」

二人は今度も同時に首を傾げる。奇妙なまでに行動がシンクロしている。
タキシードの――恐らく少年だろう子供が、首を傾げながら美しいソプラノの声を奏でた。

「どうしよう? クローディア?」

クローディアと呼ばれたドレスの――こちらは少女だろう子供は、首を斜めに傾げたまま
黒髪の少年を見つめ続ける。

「んー。目撃者は全員消しちゃう事になってるよね?
 いい? オズワルド。この人はシナゴーグから出てきた。
 当然アーリー・テイストさんを見ているはずよ」

あぁ、そうか、と紳士服の少年オズワルドは、
同じく首を傾げたままクローディアの答えに納得の返事を返す。
ここでようやく二人は首を正すと、傘を折り畳んだ。

「ねぇねぇ、お兄ちゃん。楽しいことしようよぉ」

オズワルドが花のような笑みで微笑んだ。それは網に掛かった獲物を見つけた蜘蛛のような笑みである。

二人は顔を見合わせ、そして笑みを浮かべた。
邪悪な笑みを……。

【オズワルド&クローディア:光龍と対峙中】
100才牙 ◆vpAT/EK2TU :2009/08/04(火) 10:54:11 0
>>92

>>「えっと、キバさん……でいいのかな? 散歩って当てもなく歩き回るだけでしょ? 一緒に行っていいかな?
私もこれから散歩に行こうかなって思ってて……あ、雨か……」

「本当だね、雨みたいだ。一緒に行くのは良いけど、傘持っていかないと風邪ひくよ。」

ん、返事をしない。聞いてないようだ。何か感傷に浸っているようにも見える。
少し経って気が付いたのか一度頭を下げて謝ってくる。

>>「ゴメン、私は大丈夫だから、ちょっと待ってて。今傘持ってくるから」

そう言いもう一度家に入っていく。
雨が降っていても付いてくる気のようだ。
別に良いのだが、戦闘狂の能力者には会いたくないな。
結構な数の能力者がいて、かなりの数の能力者が戦っている状況だ。そんな奴がいても不思議ではない。
少し待っていると、あやせが二本の傘を持って出てきた。

>>「はいこれ。キバさん大きいから入るか分からないけど……」

ん、ありがたいな。私も傘を持っていなかった。
いざとなれば能力の応用でどうとでもなると思ってしまっていたようだな。
この考え方は直さないといけないな。これではいつ能力者だとばれてもおかしくない。

「ありがとう。ありがたく使わせて貰うよ。」

そう言って長いほうの傘を受け取り、広げた。
私が受け取った傘は、ただ黒いシンプルな傘で、
あやせが広げた傘は、白地に黒い水玉の傘だった。
なかなか良いセンスをしていると私は思う。

>>「それじゃっ、どこにでも行こうか――」
>>「おいちょっと待てやコラ」

あやせの声を遮る第三者の声。私たちはすぐに後ろに振り向き、その声の主を確認した。
そこには、三人の男が怒りを露にし立っていた。中央に高級そうなスーツを着た男。そのやや後ろにもう二人。
三人とも鬼のような形相で私たちのことを睨んでいる。
あやせの方を見ると少し怯えているようにも見える。

>>「テメェかぁ……ウチの奴をぶっ殺したって能力者はよぉ……」

……殺した?俺は最近誰も殺していない。昔のことならもっと早く来るだろう。
私のことではないと考え、それならばあやせが殺したということなのだろう。
もしかすると、さっき殺していた奴かもしれない。

>>「あいつから吹っかけて来たたぁいえ、俺らの仲間をぶっ殺した罪はデケェ……さて、どう責任取ってくれようか……佐方ァ!浦田ァ!」
>>「ハッ!!」

中央の男が言うと、佐方、浦田と呼ばれた二人が私たちを挟み込むように位置をとった。
私たちを逃がさないつもりのようだな。まぁ、別にかまわないか、いざとなったらすぐに倒せる。

>>「死んでアイツに詫びいれて来い……連れの奴にゃあ可哀想な話だが、恨むんならテメェがここに居合わせた事を後悔するんだな」

こいつら、私が能力者だということに気づいていないのか?
それはそれで良い。奇襲にもなる。

>>「どうしよう、キバさん……」
101才牙 ◆vpAT/EK2TU :2009/08/04(火) 10:56:14 0
あやせも私が能力者だということに気づいていないようだな。
とりあえず……倒すか。

「なに黙っていやがる!佐方!浦田!かかれ!」
「ハッ!!」

浦田が日本刀を抜き、炎を纏わせて上段に日本刀を構え突っ込んでくる。
炎を纏っているから紙一重で避けようとすると食らうな。
これは大きく避けるしかないな。

「あいつの敵だーー!!死ねーー!!」

切られる直前にあやせを抱えて後ろに大きく跳ぶ。

「いきなり何をするんだ!能力者だとか、誰かを殺したとか、意味が分からないんですよ!
「そんなの知るかよ。」

佐方が攻撃してこないで何かをやっていると思ったら、いきなり少し遠くから何かを振るように腕を振ってくる。

ビュンッ!

そんな音が聞こえたと思ったら私は壁に打ち付けられていた。
不可視の武器、それを作り出す能力か。
面倒くさいな、もう良いか、倒すか。
そう考え、すぐに兵を出すための力を溜め始める。

「ごめんね、あやせちゃん。」

上級兵、行ってこい。

《上級雷弓兵》・《上級雷拳兵》

二体の雷兵が現れ弓兵は佐方に、拳兵は浦田に対峙する。

【戦うことを決め雷兵を出す】
【大川は後ろで見ている】
102ツバサ ◆O93o4cIbWE :2009/08/05(水) 23:34:01 0
>>89

「リィィィィィッス!!」

ツバサの大鎌は、今にもリースに届こうとしていた。
それに待ったを掛ける様に、統時の叫び声が路地の壁面に反響する。

「うぉらぁっ!!」

先の声は遠くから聞こえた声だった。間髪を容れずに次の声が聞こえてくる。それはツバサの耳元から聞こえてきた。
統時は、一瞬の内にツバサに手が届く間合いまで接近したのだ。
次の瞬間。ツバサの身体に衝撃が襲い掛かる。統時の放った蹴りは、押し退ける為の様な蹴りだったが。
それでも加速と重量が乗った一撃は十分な威力で、左手に大鎌を持ったままツバサの体は弓なりになって飛ばされた。
ゴロ、ゴロ、、と、ツバサの身体は二、三度地面を転がるが。すぐに右手で地面を叩いて受身を取り、体制を立て直した。そして追撃を仕掛けて来る統時を迎撃した。

――――!!

互いの刃がぶつかり合い、音を立てる。
何時の間にか統時の刀は紅く燃え盛り雄叫びを上げる真紅の剣と化していた。
対するツバサの大鎌は、大鎌を構成している亡者達が、禍々しい、悲鳴じみた声を上げて鳴いていた。

「グ……」

統時と鍔迫り合いの形になり、ツバサが声を漏らす。自身の右腕に、今まで以上の異変を感じたからだ。

右腕が…、完全に逝ってやがる……。
さっきの受身の時か…。
駄目だ…、このままじゃ…。

―――リンを助けられない―――

「――ッ!」

大鎌の曲線部分に刀を滑らせ、右へ受け流す。
受け流された刀はツバサの右腕を裂いたが、今のツバサには苦痛を意に介する様子も無い。
そして、もつれる様な形になった所でツバサと統時の視線が合い、ツバサが叫んだ。

「俺が負けたら―――

 ――リンを助けられないんだよっ――!」


「なっ! それはどういう……」

統時が驚きの表情を示す。ツバサはそれには答えず、統時の腹部に膝蹴りを入れる。
統時はよろめき、距離が空いた所でツバサは大鎌の柄を横にして目の前に突き出し、合図をした。
するとその合図に従い、地底から対の亡者が這い出て来て、統時の両足首を掴んだ。

「大人しく捕まってくれよッ!!」

そのままの姿勢で近づき、間合いに入った所で左手に持った大鎌を右から左へ振るった。
統時の左肩から胴に掛けての袈裟掛けの一振り、この状況ではかわす事は出来ないだろう。

【亡者が統時の両足を捕え、ツバサが大鎌を振るう】
103レオーネ ◆GWd4uIuzU6 :2009/08/07(金) 21:30:02 0
>>98

私が泥を跳ねてしまった少女、伊賀響は確か北村幽玄の子飼いの組織『暗殺部隊』の一員だった筈だ。
戦闘能力はセカンドナンバーに勝るとも劣らない。
いや……それ以上かも知れない。北村がこの少女を特別視していた背景には、
奴のある実験が関係していたと思う。
……私にはどうでも良い事か。彼女が敵になるなら相手をしてやれば良い。
今は、知らない振りを決め込むのが吉だ。

私は雨の降りしきる灰色の空を見上げた。
何処までも続く曇り空……。こんな天気は、人を陰鬱な気分にさせてくる。

>「む〜〜〜!」

多少顔を膨れっ面にして、伊賀は声を上げた。
まぁ、怒られても仕方ないな。悪いのは私だ。
しかし、この少年……。何者なのだ?
見た限りでは伊賀と親しい様子では在るが、暗殺部隊の人間というには隙が在り過ぎる。
では、個人的な付き合いという所か? 幽玄が許すまい。
少年の服装は白で統一されており、それが余計に"被害"を大きくしてしまったようだった。
……白か。確か日本古来の死に装束は白であった。
――やや不吉だな。

伊賀の肩から力が抜け、同時に溜め息が漏れ出した。
いや、実際には溜め息と共に「お腹すいた…」という言葉が出てきたので在るが……。
ふむ。二人を詮索するのは後回しだ。そこまで興味の在る事柄じゃない。
ひかるにも何か食べさせなければならないと思っていた所であるし、
なにより私も食事を摂るべきだろう。誠一郎との戦いで異能エネルギーを多く使ってしまったからだ。

――私は顎に当てていた右手を離して、ズボンのポケットに入れた。

「宜しければ食事をご馳走させてくれないか?
 お詫びという訳ではないが……。

 丁度私も食事でも摂ろうかと考えていてね。
 君達の都合さえ良ければ一緒に如何かな?」

――私はチラリと伊賀の方を見て、僅かに口元を吊り上げた。

「自己紹介がまだだったね。私は……レオーネ。

 レオーネ・ロンバルディーニ。
 わざわざイタリアからこんな辺鄙な片田舎に呼ばれた しがない会社員さ」

【レオーネ:現在地 水上公園付近】
【七草&伊賀を食事に誘い、自己紹介】
104宮野 光龍 ◆O93o4cIbWE :2009/08/07(金) 22:06:09 0
>>99

――服はずぶ濡れで、肌に張り付いて重い。濡れた髪が顔に張り付いて、目の前をちらつかせる。
水を吸った前髪が水滴を運んできて、それが目に入りそうになる。
不意に、声が聞こえた。

「ねぇねぇ、お兄ちゃん。楽しいことしようよぉ」

高い声だ、女だろうか?
だが生憎それは俺には関係の無い話に聞こえた、そう、関係ない……。
俺はソイツの方を見ないで、無視して行きたかった。
だけど行く当ても無く、此処が何処か分からないので俺はソイツの方を見た―――。

「…」

ソイツは二人居た。綺麗なガキだな…。
双子なのか、兄と妹なのか分からないけど、
とにかく二人はソックリだった。顔はなんというか…、不気味な笑みを浮かべている。
コイツ等は、俺みたいに傘をさしてなかった。
なのに…服が全然濡れていない。
雨が二人の体を避けて行ってる様に見える。
目を凝らして見てみると、二人の周りをドーム状の膜が覆っていた。
それが雨を二人の体から逸らしているみたいだった。
いや、逸れていってるからこそドーム状に見えるのか?
そんな事はどうでもいい。コイツ等は能力者だ。
なんで此処に居るのか? そんな事―――、決まってる―――。

――けど俺はもうそういうのに関わりたくなかった。

「…わりぃが楽しいことなら二人でやってくれ…」

そう言って俺は二人から離れようとした。
そんな事が通じない相手なのは分かりきっていた――――。

「――――― …」

後ろから二人の声が聞こえてきた。なんて言ったのかは分からない。ただ、楽しそうな声だった。

【光龍:この場から立ち去ろうとする】
105 ◆GWd4uIuzU6 :2009/08/11(火) 22:45:38 0
>>104

>「…わりぃが楽しいことなら二人でやってくれ…」

関り合いになりたくないとばかりに、光龍はオズワルド達の横を通り過ぎていく。
彼らは傘を差していなくても濡れていない……。それは明らかに不自然だった。
その不自然さが、光龍に警戒心を持たせたのかも知れない。

「鬼ごっこ? 楽しそぉー」

――クローディアの顔から笑みが消える。

「ねーねー、クローディア。僕、得意だよ。すぅぐ捕まえちゃうからね」

――オズワルドの顔からも笑みが消える。

そうして二人はまた顔を見合わせてヒソヒソと、まるでイタズラをする時の童子のように呟く。
二人の"イタズラ"が凡そ子供のする事ではない事を、未だ光龍は気づいていなかったのかも知れない。
そこまで読みきれていなかったから、何もせずに通り過ぎるという選択をしたのか。
彼ら粛清部隊の事を少しでも知る人間で在るならば、遭遇した時点で問答無用の攻撃を加えた筈だ。
何故ならば、粛清部隊が目の前に現れるという事は、即ち自分の命が危ういという事に他ならないからだ。

「いーちーにーさんーしー……」

オズワルドは両手で顔を隠し、数を数え始める。
光龍への運命のカウントダウンを……。

その光景と立ち去りいく光龍の背中を交互に見ながら、嬉々とした表情を浮かべるクローディア。
どうやら最初はオズワルドに楽しみを譲ったようだった。

「はーちーきゅー……いっくよー!」

――途端、歩いていた光龍の体勢が不自然に傾いた。
いや、傾かざるを得なかったのだ。彼の足を"何か"が抉ったからだった
一瞬遅れて体を襲う痛みや深く、そして広く抉り取られた足の脹脛から流れ出る血は、
それらが幻覚や催眠術の類ではない事を指し示していた。
正真正銘の出来事なのだ。

「『オディール バイ ウォーター』(水責めの刑)。
 これで逃げられなくなっちゃったね、お兄ちゃん」

再び顔に笑みを浮かべる小さな死神達……。

「すぐには死なないでね、お兄ちゃん。だって私の番まで回ってこないんですもの。
 うふふふふ……」

クローディアの嘲笑が当の光龍に届いているか、甚だ疑問であった。

【オズワルド&クローディア:戦闘開始】
【光龍のふくらはぎを攻撃】
106七草 柴寄 ◆O93o4cIbWE :2009/08/12(水) 22:59:14 0
>>103

―――どうしよう、響ちゃんは怒った様子で、僕の方を見て同意を求めてくる。
確かに、こういう時は怒っても良いのかもしれない。けど、僕にはそんな気持は沸いて来ない。
怒ったところで元に戻るわけじゃないし、男の人も謝ってくれたのだから、それでよしとするべきだと思う。

――男の人は、何か考えていた見たいで、一つ提案をして来てくれた。

「宜しければ食事をご馳走させてくれないか?
 お詫びという訳ではないが……。

 丁度私も食事でも摂ろうかと考えていてね。
 君達の都合さえ良ければ一緒に如何かな?」


そして、まだ名乗っていなかった為か、自己紹介へと繋いだ。


「自己紹介がまだだったね。私は……レオーネ。

 レオーネ・ロンバルディーニ。
 わざわざイタリアからこんな辺鄙な片田舎に呼ばれた しがない会社員さ」


気のせいだろうか? その自己紹介が、何か含みを持った物の様な気がしたのは。

「………レオーネ」

彼女は、小さい声でそう呟いた。

彼女の方を見ると、一瞬、その瞳が、まるで仇でも見るような目をしていたように見えた。
けどそれは僕の見間違いだった様で、彼女は、いつもの調子の彼女だった――…

ともかく、名乗られたら、名乗り返さなければいけまい。僕は口を開いた。

「…僕は――」

そこで彼女が、割り込むように入ってきた。

「わぁ素敵! 実はお金を忘れてどうしようかと思ってたところだったんです。
 怪我の功名…、というやつですね。
 ボクは伊賀 響といいます、折角だから、お言葉に甘えさせてもらいますね。
 
 よろしくお願いしますね……レオーネさん――…。

 ―――ほら、行こ、柴寄君――」

彼女に引っ張られて付いて行く。
どうしよう、名乗る機会を完全に失った。
話の流れで分かってくれてるかもしれない。
そんな事を期待しつつ、先に行って扉を開いて待っててくれている、レオーネさんの所へ急いだ。

傘を、荷物置きに入れてもらい、後ろの右側の席に座った。隣には響ちゃんが居る。

―――前の、左側の席に、女の子が居るのに気が付いた。

――そして、その子と目が合った――――
107池上 燐介 ◆ICEMANvW8c :2009/08/13(木) 01:22:42 0
白衣に『B7F 最高責任者』と書かれたカードをつける男が、
懐中電灯の光で大きな分厚い扉を照らし出し、こちらをチラリと振り返った。

「こ、ここだ……。ここに我々が捕獲したヤハウェが収容されている……」

俺は「開けろ」というように扉を顎でしゃくると、彼はしぶしぶとノブに手をかけた。
しかし、彼は扉を開こうとせず、やがてブルブルと震えながら眉を吊り上げて叫び始めた。

「き、貴様ら……何が目的か知らんが、こんなことをしていいと思っているのか……?
ヤハウェを連れてここを脱出したとしてもいずれ捕まる……! そうなれば待つのは死だけだぞ!」

彼の言葉に、俺は平然として答えた。

「安心しろ。これから死ぬのは俺達じゃない。管理責任を問われるお前だ」
「きっ、貴様──うぐっ!?」

激昂し、俺に掴みかかろうとしたその瞬間、「ドン」という音が鳴り、彼は地面に倒れ込んだ。
彼の後ろには手刀を構えた籐堂院の姿。どうやら急所を叩き、失神させたらしい。

「これ以上問答を続けている時間は無い。池上、君が開けてくれ」

俺は小さく頷くと、床に転がった懐中電灯を拾い、扉を開いた──。

地下七階の収容独房──そこは、通路の両サイドに鉄格子がはめられ、
狭い個室が無数に並んでいる良く見る収容所の光景が広がっていたが、
ふと懐中電灯の光をある独房の中に向けた瞬間、全員が息を呑んだ。
懐中電灯の光に反応するように何やら奇怪な物体が蠢き呻いているのだ。
しかもそれは一つではなく、どの独房に光を向けても似たような異形の物体が、
奇妙な呻き声をあげていた。
     モルモット
「機関の実験体か……。どうやら元は人間らしいな……」

俺の後ろで高山が歯軋りしながら呟いた。

「ひ、酷ぇことしやがる……!」

他の三人はこの異様な光景がショックであったのか何も喋ろうとはしなかったが、
流石にその顔は不快に歪んでいるようであった。
108池上 燐介 ◆ICEMANvW8c :2009/08/13(木) 01:36:20 0
「……ハッ! 池上、ここに光を向けてみてくれ!」

不意に籐堂院が直ぐ隣の独房を指差した。
言われるままに光を向けると、そこにはこれまでの異形とは違い、
人間の形をしたものが二体横たわっていた。
そしてそれは、気絶している煌神と桐北の二人に間違いはなかった。

鉄格子はカギがかかっていたが、それは籐堂院の刀で破壊され、
二人は七重の両脇に抱えられる形で救出されることとなった。

「煌神と桐北の二人は救出した。後はここから脱出するだけ……と言いたいところだが、
どうやらもう一人救出してやらなきゃならんようだ」

三人は怪訝な顔をしながら一斉に俺を見た。
俺は持っていた懐中電灯をスーッと真横に移動させ、
二人が横たわっていた独房のその隣の独房に光を当てた。
その時、この空間に足を踏み入れてから全くの無言であった七重が、初めて口を開いた。

「──国崎!」

そう、光に照らし出されたのは、全身傷だらけで気を失い、
両手両足に拘束具をはめられているあの『国崎シロウ』であった。

「やれやれ、どこに行ったかと思ったら、まさか捕まってやがったとはな……。
それにしても七重。お前が国崎と顔見知りだったとは知らなかったぜ」
「……俺も、お前が国崎を知っていたとは知らなかった……」
「まぁ、とにかくこいつを放っておくわけにはいくまい。誰か運んでやれ」

そう言うと、籐堂院が素早く鉄格子を破壊し、一人独房の中へ入っていった。
そして彼女が出てきた時、その背中には国崎が背負われていた。

「こういうのは"馬鹿力"を持つ私が適任だと、はっきりと言ったらどうなんだ? ん?」
「……なんだ、気にしてたのか」
「私も女だ。……君に悪気はなくても、傷付く言葉だってある」
「……次からは気をつけるよ」

俺は「やれやれ」というように軽く髪の毛をかきあげながら、扉に向かって歩き始めた。
こうして俺達は煌神、桐北、国崎の三人を救出し、ついにビル脱出を決行するのであった。

【池上 燐介:機関に捕らえられた煌神、桐北、国崎を救出し、ビル脱出のため一階へ向かう】
109鳳旋 希一 ◆O93o4cIbWE :2009/08/13(木) 21:52:04 0
>>97

「……奴は動揺していた。俺が見た時は既に
異能とともに目覚めた殺人の衝動に慄いていたからな……
きっとこれ以上お前たちに迷惑を掛けないよう飛び出していったんだろう」

「な、なにを呑気な事を…」

迷惑じゃと? アイツ、そんなに悩んでいたのか―――

「まあ、慌てるな……
炎の使い道は熱い拳や物を燃やすだけじゃない。
火の灯りで闇を照らして物を探す事も出来る……
だが、俺は今傷と疲労の回復と治療にメタトロンを割いているからな……
鳳旋、お前が筋が良さそうだ。早い話、奴を探したいのなら異能を使った探知のやり方を教えてやる……
ま、勝った景品のようなもんだな……」

「何? よ、よくわからんが凄そうじゃ。ぜひ教えてくれ!」

鳳旋はコクコクと頷いた。

「闇の中で松明や火の灯りを掲げる自分をイメージしろ。
そして、光龍の姿形、雰囲気さ仕草、纏う空気、異能の気配を思い出しながら
頭の中で闇を見渡せ……お前が一番光龍の気配を覚えているのなら出来るはずだ」

………――――――――――――――

光龍の気配――――…それにしても、光龍も悩んでたんじゃな―――…
アイツとは昨日今日出会った仲じゃが、それでも一緒に居て楽しかった。
光龍のおかげで退屈な日常から抜け出せた――
―――まさか光龍がそんな事で悩んでいたとは、短い付き合いじゃが、それでもアイツの為に何か出来る事が在る。
姫野の奴だって、ああやって吹っ切る事が出来たんじゃ、光龍もきっと出来る―――――

――――見えた――――

――そのとき光龍の後姿の様なものが、見えた気がした。
なんて悲しげな姿なんじゃ、、、早く行ってやらねば!!
ワシはその影を追いかける事に決めた。

「おお! 礼を言うぞ、、、……名前なんじゃったかのう?」

統治は、簡潔に、自分の名を述べると、再び自己の治療に専念し始めた。

「わかった、、と、と、……えーと………ま、また今度喧嘩しようぞ、一対一での!!

 姫野、ワシは光龍のヤツを追いかける。…すまん…何か嫌な予感がするんじゃ……
 …一緒に、来てくれんか?」

【姫野に同行を求める】
110宮野 光龍 ◆O93o4cIbWE :2009/08/13(木) 22:55:40 0
>>105

―――「……いっくよー!」

掛け声。なにをして来るかは予想が付く、だけど、それに気付いた時はもう、遅かった。

急に景色が傾く。

――光龍はまだ気付かないが、今"何か"が彼の脹脛を抉り取った。
そして遅れて来る痛みが、残酷にも彼を生死の世界に引き戻した。

「え――」

――痛い。

痛い痛い痛い痛イタイイタイ。

「…ぅぐぁぁあぁ……!
 …っはッ…はっ…ぁ……」

イタイ、イタイ、それしか考えられない――。


―――「『オディール バイ ウォーター』
    これで逃げられなくなっちゃったね、お兄ちゃん」


なんだ? 何を言ってるんだ? 逃げられ…ない…?

「……ぅ ア―――!!」

――逃げようとした俺の身体は、言う事を聞かず崩れ落ちてしまう。
振り返ると、其処には――――。

――!!

赤黒いものが、だらだらと流れている。なんだこれは?
――俺の、足? 真っ赤になって血を流している、俺の足があった。そして――――

「すぐには死なないでね、お兄ちゃん。だって私の番まで回ってこないんですもの。
 うふふふふ……」

悪魔が居た。

「―――ああああぁあアアアアアアア!!!」

光龍の叫びは、灰色の雨空の中に飲み込まれた――――
111姫野与一 ◆N8yTRtOcY2 :2009/08/17(月) 01:39:40 0
>>82>>94>>97>>109

>「ちっ……戦力的に不利、か……分かったよ
負けを認める潔さや引くという決断も大事だ」

銀水苑さんは得物である二本の短刀を鞘に納めた。
彼から溢れ出ていた殺気は薄れていき、会堂内には徐々に元の静けさが戻った。

>「給与分以上の仕事をする気はなくてね。
戦ってみてあんたの力と本質が分かったが……
命張ってまで人と神と獣が一つに調和したモノと戦う義理はない」

嗜骨断片の事も彼女の事も知っている? なんで……?
息も整え、落ち着いた声で銀水苑さんは言葉を続ける。

>「それに、俺は強者や高潔な心を持ったものは敵味方問わず尊敬する。
姫野、鳳旋。なかなか面白い戦いだった。
お前たちは心も異能も共に強かった。
今回は俺の負けだな……素直に敗北を認めよう」

そう言うと、私たちに背を向けて歩き出す、だがすぐに壁に倒れるようにして寄り掛かってしまった。
多分、今ので相当な体力と力を消費したのかもしたんだろう。見ると体には何箇所も切り傷が出来ている。
だけど彼は私の敵だ―――助ける義理は無い―――

>「……機関に離反して生きるのは茨の道だぞ。
其れだけの力があるのは判ったがな……」

「……覚悟の上です。それを承知でこの道を選んだのだから―――」

>「たっ!大変じゃあ!!光龍がおらんくなったあ!!!!」
112姫野与一 ◆N8yTRtOcY2 :2009/08/17(月) 01:40:27 0
いつの間にかどこかに立ち去っていた鳳旋さんが大声を上げながら慌てて走ってきた。
光龍……?そういえばさっきから彼の姿を見ていない。

>「……奴は動揺していた。俺が見た時は既に
異能とともに目覚めた殺人の衝動に慄いていたからな……
きっとこれ以上お前たちに迷惑を掛けないよう飛び出していったんだろう」

>「な、なにを呑気な事を…」

焦る鳳旋さんを銀水苑さんは片手で静止させた。

多分その殺人の衝動、最後の後押しをしたのはきっと私だ―――

>「まあ、慌てるな……
炎の使い道は熱い拳や物を燃やすだけじゃない。
火の灯りで闇を照らして物を探す事も出来る……
だが、俺は今傷と疲労の回復と治療にメタトロンを割いているからな……
鳳旋、お前は筋が良さそうだ。早い話、奴を探したいのなら異能を使った探知のやり方を教えてやる……
ま、勝った景品のようなもんだな……」

>「何? よ、よくわからんが凄そうじゃ。ぜひ教えてくれ!」

銀水苑さんの思わぬ助言に鳳旋さんはコクコクと頷いた。

>「闇の中で松明や火の灯りを掲げる自分をイメージしろ。
そして、光龍の姿形、雰囲気さ仕草、纏う空気、異能の気配を思い出しながら
頭の中で闇を見渡せ……お前が一番光龍の気配を覚えているのなら出来るはずだ」

>「おお! 礼を言うぞ、、、……名前なんじゃったかのう?」

どうやら探知に成功したようだ。
この銀水苑という人は並の炎使いではない、まさに自由自在に力を使いこなせている。
ここまでの能力者はそういない。
そしてなによりすごいのはそれをたった一回、しかもあれだけの助言で使えた鳳旋さんだ。
彼もまた並大抵の異能者ではないということ。実際本人は力を理解していないようだが、かなりの才能を秘めている。

>「わかった、、と、と、……えーと………ま、また今度喧嘩しようぞ、一対一での!!
 姫野、ワシは光龍のヤツを追いかける。…すまん…何か嫌な予感がするんじゃ……
 …一緒に、来てくれんか?」

彼の様子に普段のような軽い態度は無く、真剣に私に頼み込んでいる。
私は彼の言葉に頷いた。

「……もちろんです。この事は私にも責任がありますから」

今更誤った所で許されるとは思ってない。けどどうしても一言だけは言っておきたいから―――

「そうとなれば急ぎましょう! 早く行かないと、光龍さんがまた異能者にでも襲われていたら……」

鳳旋さんは頷き、私たちは外へと向かった。

【鳳旋と共に光龍を追う】
113木崎 あやせ ◆N8yTRtOcY2 :2009/08/17(月) 01:41:22 0

>>100-101

>「なに黙っていやがる!佐方!浦田!かかれ!」
>「ハッ!!」

浦田と呼ばれた男は携えていた刀を抜き、その刀身に炎を纏わせて上段に日本刀を構えて
がむしゃらに叫びながら突進を仕掛けて来た。

>「あいつの敵だーー!!死ねーー!!」

浦田と私たちの距離が間近まで迫った所で、キバさんが私を抱えて後ろへ回避した。
私たちが立っていた所は赤く焼け焦げ、深く抉れていた。

(あの炎の刀、とんでもない火力。それにあの男の力も尋常じゃない……)

キバさんは地面に着地して私を降ろし、そして男達に怒鳴った。

>「いきなり何をするんだ!能力者だとか、誰かを殺したとか、意味が分からないんですよ!
>「そんなの知るかよ。」

キバさんの怒りを一蹴して浦田は体勢を立て直す。
一方でもう一人の男――佐方は直立し、ただ手でよく分からない動きを繰り返していた。
だが突然それは止まり、左足を後ろに動かし、構えた。

「不可視の糸(インヴィジブルスパイダー)」

そんな声が聞こえたのと同時、佐方は"見えない何か"をキバさん目掛けて力任せに投げた。
風を切る音が場に大きく響く。直後ドンッ、という音と共にキバさんは壁に打ち付けられていた。

「キバさん!!」

まるで見えない糸で縛り付けられているかのようにキバさんは手足が使えない状態になってしまった。
かろうじて手首、そして首から上だけが動くだけだ。
どうする? おそらく彼らの狙いは私だ。私のせいで彼が巻き込まれる形になっている。
どうにかしないと―――そう思い右手を開き、波動を集中させようとした、その時だった。

(これって……もしかして!?)

キバさんから強い力を感じとった。
私の波動にも良く似た強い力。これは――異能力!

>「ごめんね、あやせちゃん。」

キバさんは私に軽く頭を下げると、溜まっていた力を外に解き放ち、束縛を強引に破った。
そしていつの間にか佐方と浦田、二人の男の前にはそれぞれヒトガタが立ち憚っていた。
どちらも体は宝石? に良く似た黄色い結晶体でできている。

「ほう――まさか異能者たぁなぁ。手は抜かなくていい。本気でいけ、浦田、佐方ァ!」
「ハッ! アレをやるぞ佐方!」
「任せろ、浦田!」
114木崎 あやせ ◆N8yTRtOcY2 :2009/08/17(月) 01:43:23 0
浦田と佐方は再び、挟撃するような形で両側にそれぞれ跳ぶ。
そして、佐方は手を素早い動きで動かしていた。いけない、あれは能力が発動する為の――!

「拡散束縛(イネスケーパブルネット)!」

佐方は両手を大きく広げ、あの見えない糸のような物を放った。
辺り一体に、何かが張り付く。それは私にも付着した。特に痛みなどは感じられないが全身が何かに引っ張られているような感じがする。
そこに離れた所から見ていた浦田が行動を起こした。手に持った炎を纏った刀を上に向けている。

「その糸は並大抵の刃物は弾いちまう程の強靭性を誇った空気の糸だ! てめぇらはこの炎から避けられねえ!」

浦田は炎の刀を地面に勢い良く突き刺した。

「火炎地獄(バーニングディバイダー)!」

浦田が高らかに叫ぶと、私たちは信じられない光景を目にした。
浦田の刀から放たれた炎が何も無い空間を走っているのだ。

(もしかしてこの体に付いているのは……糸? なるほど。網のように張り巡らされた糸の上を炎が走っているのか)

だけど、分かった所でどうしようもない。糸は恐ろしく強靭で私の力ではとても引き剥がせない。
このままでは……私もキバさんも炎に焼き尽くされてしまう。

「ハッハッハ! そのまま燃えちまえぇ!」

【浦田と佐方の連携攻撃】
115廻間 ◆7VdkilIYF. :2009/08/17(月) 13:17:06 0
>>102
鍔迫り合いをしている最中、気づいた事が二つあった。
一つ目はツバサの鎌がゾンビで構成されているため、炎を纏っている紅い月とは相性が悪いという事だ。
炎が揺らめくたびにゾンビが悲鳴をあげている、これはすなわち…火葬に似ているという事…だろうか。
このまま押し続けていれば、鎌そのものを破壊する事も可能かもしれない。

二つ目は、ツバサの押しが若干弱くなっている事。
さっきの蹴りでどこかを取ったのか、それとも何かの反動なのか。それは定かではない。
まあ、事は有利に流れている…!このまま押し込むッ!!

ツバサが刃を滑らせ、俺の攻撃を受け流す。
受け流した際に多少右腕を斬ったが…それは悪魔でも多少だ、大したダメージにはならないだろう。
このぐらいで喚いているようじゃ、幹部クラスは勤まらないからな。
そしてもう一押し…と思ったその瞬間。

>「俺が負けたら―――
  ――リンを助けられないんだよっ――!」

(!? リン…煌神のことか!?)

突然出てきた聞き覚えのある声に、俺は一瞬動きを止めてしまった。
もちろんその瞬間を見逃すツバサではない、ツバサは膝蹴りを俺の腹に打ち込み体勢を崩してくる。
まあ、膝蹴りそのものは大したダメージにはならなかったのだが…
体勢を崩してしまった僅かな瞬間に、ゾンビがまた俺の足首を掴み動きを止めてくる。

「くそ、しつこい…!」

動きが早いのなら、止めてしまえばいいという事かよ!
しかもこの状況じゃあ、足元のゾンビを斬り崩している余裕はない…!
ツバサが詰め寄り、鎌を振るう。この状況じゃあ避けられない…だが!

(避けられないなら、受け止めればいいんだろ!)

紅い月の刀身で鎌の動きを止める。
さっきと同じで多少力が弱まっている…だが、足元にまとわり着いているゾンビのせいで上手く力が入らない…!
その時だった。

(! 足元が軽くなった…)

足元をチラリと見てみると、掴んでいたゾンビはツララで粉砕されておりそ
こからまた新たなゾンビが出てこないよう地面が凍結されている。
視線をリースの方に変えてみると、してやったりという顔で笑みを浮かべていた。
このチャンスを無駄にするわけにはいかない…!
俺は左から受け止めていた鎌の力の向きを下へと変え、ツバサの体勢を崩した。
普段のツバサなら体勢を崩されるなんて事はなかったのだろうが、冷静ではないツバサだとそうもいかなかったようだ。
瞬間、俺は回り込み背中を叩き地面へと叩き伏せる。
そして、俺はツバサのクビ元に紅い月の切先を当てこう言った。

「これで、終わりだ…と言いたいところだが聞きたい事がある…
 お前がさっき言っていた『リン』ってのは煌神リンの事か?」

何故ツバサからリンの名前が出てきた…?
とりあえず俺の知っているリンなのかそうじゃないのか、確かめないとな。

【廻間:地に倒れているツバサの喉元に紅い月を当てながら質問。
    ツバサに注意が向いているため、それ以外に対してはほとんど無防備】
116銀水苑 ◆TF75mpHiwMDV :2009/08/17(月) 21:04:29 0
鳳旋と姫野の二人が去り、シナゴーグの中に静寂が訪れた。
残された銀水苑は自らに治療を施す。
「……あいつらも甘いな。敵に止めも刺さずに立ち去るとは、な
せめて拘束するなり気絶するなりさせればよいものを。
俺がこのまま奥に向ったらどうするつもりだったんだ」
そう呟く物の、彼にその気は無い。
敗北は事実であるし、見逃された借りは大きい。
それを破る事は統治の信条に反する。
「さて、任務は失敗、こっからどうするかな……」
身体に力を入れたり、軽く跳躍したり、
グッ、ぐっと手を握ったり放したりする。
「痛っ……OK。痛みはともかく致命傷や戦闘不能になるほどの傷は無い
内臓、筋、神経、骨、どれもイカれていない。
無数の裂傷は活炎でふさいだ」
統治にも微弱ながら回復の術が有る。
メタトロンは大目に使ってしまうし、致命傷や重症は治せない。
本業の治癒能力者には劣るものだが。
生命には体温が有る。生命体は体内で熱エネルギーを作っているのだ。
風邪や病気になった時にも、ウィルスなどの活動を抑制し
免疫力や自然治癒力を発揮するため熱が出る。
……炎は生命力にも例えられる。身体が冷たくなる、とは死ぬということだ。
統治はメタトロンと炎気の割合を調整することで
治癒を促進し細胞の働きを活性化させる緩やかで暖かい「炎」を作り出せる。
長年の戦闘経験で、最弱に出力を絞った炎気とメタトロンを混ぜる事で、治癒能力者の出す
回復の波動と、能力の波長を似せる気が出来る事に気が付いた為である。
かなりの高等技術だ。能力を最小に弱めて出すことは能力を全開にするより難しい。
「残ったメタトロンは四割程度、体力の方はベスト時の六割ってとこか……
血の不足はたまんねーけどな……外の車に薬品や増血剤か緊急用輸血パックがあったはずだ……」
統治の車のトランクには、緊急時用の治療キットや予備の武装も収められている。
ふらつく足を気力で抑えつつ、統治はシナゴーグの外へ向う。
「これからの事は治療してから考えるか……」
【統治、治療のためシナゴーグの外へ】
117ツバサ ◆O93o4cIbWE :2009/08/17(月) 21:39:23 0
>>115

統時はツバサの振るった大鎌を刀で受け止めた。
片腕の効かないツバサと、両足を捕えられて踏ん張りの効かない統時、両者の力は、ほぼ拮抗しているようだった。
途端、統時の押しが強くなる。統時は大鎌を受け流し、ツバサはその勢いで体勢を崩す。
その隙を統時は見逃さず、ツバサの背後に回りこみ、背部に当身を加える。当身を受けたツバサは地に崩れ落ちた。
そしてツバサの首筋に刀の切先が充てがわれた。

「…ハァ…ハァ………」

「これで、終わりだ…と言いたいところだが聞きたい事がある…
 お前がさっき言っていた『リン』ってのは煌神リンの事か?」

「………ああ、そうだ。
 リンは今、機関のある計画の為の生贄になろうとしている……
 ………ッ!機関じゃないっ!城栄ッ!ヤツの…、城栄金剛の野望の犠牲になろうとしてるんだッ!!」

話を続けろと云わんばかりに、統時は刀を引く。
ツバサは統時とリースを見比べた後、よろよろと立ち上がり、壁に向かいながら語りだした。

「………、『炎魔』を知っているか……?
 …最初の異能者で絶大な力を持っていたらしい。
 炎魔は既に死んだ身だが金剛はソイツを復活させようとしている、
 ………ハァ、ハァ……、
 …早い話が、リンはソイツの生贄にされようとしているんだ…。
 炎魔の復活にはヤハウェという特殊な異能者が必要で、その為にリンが……。
 俺はリンの変わりにお前を生贄に捧げようとしたわけさ…。」

話しながらツバサは壁にもたれ掛り、再びツバサとリースの二人を値踏みするような目で眺めた。

「――まぁ、負けちまった訳だけどな…、お前達…、本社ビルに行くつもりなんだろ?
 …リンは地下七階に囚われているんだ」

ツバサはスーツから一枚のカードを取り出し、二人に見せる。

「…コイツを使えば本社の中央エレベーターから地下七階まで直行でいける。
 まぁ…、エレベーターが壊れていなければ、だけどな……
 其処にはもう一人ヤハウェが囚われている。
 …お前達、リン達を助けてやってくれないか?」
 
先程まで殺しあっていたというのに、
二人にこんな事を頼むツバサの言葉の真意は二人には分からない様だ。
だがツバサの言っている事が真実だという事は二人には伝わった。

「…さあ、どうするんだ…? つっても俺はもうお手上げ状態だけどね…」

【ツバサ:統時達にリンの居場所を教え、カードキーを二人に掲示する】
118才牙 ◇vpAT/EK2TU 代理:2009/08/18(火) 21:27:57 0
>>113-114

こうして二体の雷兵を出したわけだが、どうするかね。
ただ普通に攻撃させてもそれなりの攻撃にはなると思うが。

>「ほう――まさか異能者たぁなぁ。手は抜かなくていい。本気でいけ、浦田、佐方ァ!」
>「ハッ! アレをやるぞ佐方!」
>「任せろ、浦田!」

その声に相手の位置を確認する。
先ほどと同じように私と雷兵を中心に両側に立ち、さらに次の攻撃の準備をしているだろう佐方がいた。

>「拡散束縛(イネスケーパブルネット)!」

佐方は準備が終わったのか何かを広げるように両手を広げ、何かを放った。
雷兵達は難なくそれを避け、攻撃の準備をする。
だが、私は避けきれずにそれを受け、何かが体に付着したような感覚がした。

そこで佐方が技名を叫んでいたことに気が付いた。
「拡散束縛(イネスケーパブルネット)」 つまりは束縛するための網、ということだ。
つまり、これは布石。この後に続く攻撃が有る、ということである。
先ほど浦田という男が「アレをやるぞ」と言っていたことも覚えている。
それならこの網のような能力で束縛し、あの炎の刀で攻撃するということだろう。

>「その糸は並大抵の刃物は弾いちまう程の強靭性を誇った空気の糸だ! てめぇらはこの炎から避けられねえ!」

並大抵の刃物、ね。
上級兵の剣なら切れるだろうか。とりあえず試すか。
この状況で使えない拳兵を回収し、上級剣兵を作り出すため力を溜める。
そして弓兵に溜めていた矢を佐方に向かって放たせようとしたとき浦田が次のアクションを起こした。

>「火炎地獄(バーニングディバイダー)!」

そう叫びながら地面に炎の刀を突き刺したのだ。
その炎は何かを伝うように私に向かってくる。その理由は分かっている。佐方の網を伝ってきているのだろう。

>「ハッハッハ! そのまま燃えちまえぇ!」

その声に気付いた私は上級雷剣兵を出し私に付いていると思われる網をことごとく切り裂き、さらに矢に更なる力を溜め続けていた弓兵にその矢を放たせる。
そして矢が命中した佐方は気絶したのか麻痺したのか崩れ落ちた。
だがその時叫び声が聞こえあやせのことを思い出す。

「キャァーーー!!」

あやせの方を見るとまさに炎が迫り当たろうとしていた所だった。
すぐに剣兵を向かわせ直前のところにて断ち切る。
しかしその時剣兵が離れ護衛がいなくなった私に向かって浦田が刀を構え飛び込んできた。

「これでお前の負けだ!!」

また油断してしまっていたようだ。しかしその時空気が震え、浦田が吹き飛んだ。

【佐方KO・浦田吹き飛ぶ・大川静観】
119レオーネ ◆GWd4uIuzU6 :2009/08/19(水) 00:14:08 0
>>106

>「………レオーネ」

伊賀響をただの体の小さな子供だと思って舐めて掛かってはいけない。
彼女は立派な狩猟者だ。相対する者は等しく風刃によって切り刻まれるだろう。
彼女の殺気――それを己の殺気で掻き消しながら、私はニヤリと笑った。

この間が一瞬である事は理解できたが、それでもこのやり取りは
時間という概念を私の中から消し去ってしまうには、十分なインパクトだった。

>「…僕は――」

う……む。忘れていたな、この少年の事を。
伊賀と一緒にいたというのは気になる所だ。見た限り気配や動きは一般人のようだが……。
いやいや、まだ実戦に不慣れな"新人"かも知れない。
いずれにせよ、この少年の動向には留意するべきだな。

>「わぁ素敵! 実はお金を忘れてどうしようかと思ってたところだったんです。
> 怪我の功名…、というやつですね。
> ボクは伊賀 響といいます、折角だから、お言葉に甘えさせてもらいますね。
 
> よろしくお願いしますね……レオーネさん――…。

> ―――ほら、行こ、柴寄君――」

彼女の言葉に、私の予想は見事に裏切られる結果となった。
この少年は機関とは無関係だ。それは今の彼女の言葉で証明されている。
伊賀はこの少年に暗殺部隊の事を悟られたくないのか、
私と対峙しても尚、その明るい少女という仮面を脱ぎ捨てようとはしなかったからだ。
だがね、伊賀響。君はまだ解っちゃいないのさ。
仮面を着けていると、何れ本当の自分が解らなくなってしまうものだ。

何にせよ、やはりこの場は知らない振りを決め込むのが得策か。
申し出を承諾してくれた伊賀と少年――名前はシヨリと言ったか……、
二人を食事に連れて行く為に、私は先に車へ向って歩き始めた。
二人よりも先にドアを開く為だ。紳士たる者には当然の行いだ。

少年と少女は仲睦まじく――いや、若干少女の方がリードして、車へと乗り込んでいく。
途中、シヨリ君から傘を受取った。……二人で一つの傘、か。
本当に仲が良いようだな。そういえば、私はそんな事をアイツに――アンジェラにしてやった事が在っただろうか?
……願わくば二人の仲が続く事を。そんな事を考えながら、トランクのドアを閉めた。
中にはすっかり濡れた一本の傘。彼は次の活躍を待ちわびながら、暫しの休みを得たのだった。
二人がそれぞれ、私が予め開いておいた後部座席へと乗り込んだのを確認すると、
私は後部座席のドアを閉めて運転席へと戻った。

「随分待たせたね、ひかる君。これからこの子達を食事でも連れて行こうと思うんだが、
 君もおなかが空いているだろう? 食事でもどうだい? 丁度もう直ぐランチタイムだ」

「……勝手にすれば」

ひかるにそっぽを向かれた私は、やれやれと溜め息を吐いてから車を発進させた。
――どうも私は父親には向いていないらしい。

「あぁ、そうだ。二人とも食べたい物があれば遠慮しないで言って欲しい。
 シヨリ……君だったかな? 名前が間違っていたらすまない。
 こういう時は素直に好意を受け入れるべきだよ。悪く言えば利用するという事だがね。
 これは君の倍以上生きている人間からのアドバイスだ」

【レオーネ:七草と伊賀を連れて車で移動開始】
120名無しになりきれ:2009/08/19(水) 19:04:38 O
おいクソ共VIPの魔法戦記スレ荒らすなクズ
121池上 燐介 ◆ICEMANvW8c :2009/08/20(木) 02:14:30 0
「──このため、県内では東部を中心に、明日の明け方まで雨となることが予想されます。
さて、続いては今日これまでに入った──ブツン」

突如、テレビに映ったキャスターの姿が消え、画面が黒一色に染まった。
同時に、窓から稲光が差し込み、「ドドドォーン」という大きな雷鳴が轟いた。

「……停電か」

俺は空を包む雨雲と停電のせいで薄暗くなった室内で一人呟きながら、
何気なく腕時計に目をやった。発光機能がついているので時間は確認できる。
時計によると時間は午後二時。既にビルを脱出してから一時間が経過していた。
時計から目を離し「ふぅ」と小さく息を吐くと、不意に後ろから声をかけられた。

「池上」

振り向くと、そこには籐堂院の姿があった。

「織宮さんの見立てでは三人とも命に別状はないらしい。
ただ、体力を消耗していて、しばらくは目を覚まさないだろうとのことだ」
「そうか」
「……ところで、誰か戻って来た者はいるのか?」

その問いに首を横に振って答えると、彼女もその答えは分かっていたのか、
「やはりな」というように小さく溜息をついた。

ビルから脱出した俺達が向かい、辿り着いた場所。そこはあの国崎薬局であった。
この行動は、ビル戦で別行動をとった他の仲間達も良く知る薬局であれば、
互いに連絡先も不明な彼らとであっても、
いずれは合流を果たせるだろうという判断からくるものであったのだが──。

「既に最初の闘いが始まってから三時間。
未だ闘い続けているのか、それとも捕まったか、あるいは山田のように殺されたか……」
「悪い方に考えるな。今は、彼らが生きて帰ってくることを信じよう……」
「……そうだな」

俺はすくっと立ち上がると、玄関に向かって足を進めた。
122池上 燐介 ◆ICEMANvW8c :2009/08/20(木) 02:21:31 0
「どこへ行くんだ?」
「ちょっと気になったことがあるんでな。文献を探しに図書館まで行ってくる。
ここで何もせずに待っているよりは有意義な時間が過ごせるはずだ」
「機関も今頃奪還された二人の行方を追っているはずだ。外を出歩くのは危険じゃないのか?」
「奴らは俺達がこの町から離れないことを知っている。焦って闇雲に探そうとはしないさ。
本格的な捜索は打撃を受けた本社の戦力をある程度立て直してからになるだろうよ」
「では、私も一緒に──」
「いや、俺だけでいい。織宮達には夕方までに戻ると伝えておいてくれ」

俺はそう言い残して、玄関をくぐった。
途端に相変わらず降り続ける雨粒が、俺の体を叩き、濡らし始める。
「さて──走るか──」。そう思い、駆け出そうとしたその時、
透明なビニール傘をさした手が、ぬっと背後から差し出された。

「私も手が空いてないわけじゃないんだ。少しは仲間を頼りにしたらどうだ?
それに、一人で探し物をするよりは、二人で探した方が効率的なはずだろう?」
「まぁ、そうだが……」
「それとも、君は私と一緒に行動するのが嫌なのか?」

真面目な顔をしてそう訊かれては断るわけにもいかず、
俺は「やれやれ」と頭を二、三度掻いた後に、彼女がさした傘の中へ入り込んだ。

「……お言葉に甘えるよ」

俺の言葉に、彼女は一瞬口元を綻ばせると、続いて道路の先を顎でしゃくった。
俺はそれを合図に、図書館へ向けてゆっくりと歩き出した。

【池上 燐介:織宮らを薬局に残し、籐堂院と図書館へ向かう。現時刻、PM3:00】
123池上 燐介 ◆ICEMANvW8c :2009/08/20(木) 02:32:40 0
訂正
×PM3:00
○PM2:00
124七草 柴寄 ◆O93o4cIbWE :2009/08/20(木) 23:10:51 0
>>119

女の子は何か言いたそうな顔をしたけど、結局何も言わずに前に向き直った。

「随分待たせたね、ひかる君。これからこの子達を食事でも連れて行こうと思うんだが、
 君もおなかが空いているだろう? 食事でもどうだい? 丁度もう直ぐランチタイムだ」

レオーネさんが話しかけると、女の子は不機嫌そうにそっぽを向いた。

「……勝手にすれば」

澄んだ声だった。そして、車は走り出した。勿論、シートベルトは付けている、

「あぁ、そうだ。二人とも食べたい物があれば遠慮しないで言って欲しい。
 シヨリ……君だったかな? 名前が間違っていたらすまない。
 こういう時は素直に好意を受け入れるべきだよ。悪く言えば利用するという事だがね。
 これは君の倍以上生きている人間からのアドバイスだ」

「…あ、はい」

僕は人の好意というものに疎いらしい、以前よく言われていた。
悪く言えば利用する、、 それが真実だとしても、僕はそういうのは、嫌だ。

「ねぇほら見て、あのビル」

信号待ちで止まっていると、響ちゃんが傍まで来て窓の向こうを指差す。
さっきまで黙り込んで、冷や汗まで流していた彼女は段々いつもの調子に戻って来たみたいだ。
彼女は意外と緊張しやすいのかもしれない、そう思いつつ指差す方を目で追う。
ビルの周りに、警察車両が多数見受けられ、黄色い帯が辺りに張られている。
何かあったんだろうか、それは言うまでもない。間違いなく有事の事だ。
響ちゃんが、上、上、と指を上げる。上を見てみると、一番上の階に、真っ黒な穴が空いている。
無残に空いた穴は事の凄惨さをありありと示していた。

「何があったんだろう?」

「…分からない、でも、誰も傷ついて無ければ良いね…」

「うん…そうだね…」

窓枠から見る景色は別の世界の様に見えて、それを遠くから眺めているだけの僕には何の感慨も持てない。
自分の言葉が本心から出たものなのか、それとも偽善から出たものなのかが分からなかった。
彼女はそんな僕を見て何処か悲しげにしていた。

【場所:貳名製薬前】
125鳳旋 希一 ◆O93o4cIbWE :2009/08/22(土) 21:55:54 0
>>112

「……もちろんです。この事は私にも責任がありますから」

「すまん…」

「そうとなれば急ぎましょう! 早く行かないと、光龍さんがまた異能者にでも襲われていたら……」

「おお! 頼もしいぞ、
 また戻ってこれたら皆でカレーでも食おう、その時はワシが最強のカレーを作ってやる。
 期待してまっとれ」

通路を駆け抜け、扉を叩き、降り注ぐ雨を物ともせず庭を走り抜ける。
今の鳳旋には、雨にも負けない強い炎が燃え上がっていた。
門を一足で飛び越え、洋館を出る。
彼の場合は直感に近いものではあるが、光龍の気配を感じた方向へ向かう。
灰色の空、右手にはそれに同調する様に灰色の建物が立ち並ぶ。
アスファルトの地面は大小の水溜りを無数に作り、際限無く波紋を描き続けている。
鳳旋が向かう先に、ぽつ、ぽつ、と二つほどの小さな人影が見える。
彼がそれを凝視すると、その手前にもう一人、蹲っている人間が見えた―――、

「―――ああああぁあアアアアアアア!!!」

断末魔じみた叫びが木霊する。

「――――光龍ゥッ!!!」

絶叫をかき消す様に鳳旋の声が響き渡る。
光龍の叫びはそこで途絶え、静寂の後、光龍は鳳旋の方へ振り向いた。

「…え どう、し て……」

声になるか成らないかの弱々しい声で、
それは光龍の前に居る二人の子供達にすら届かなかった。
しかし、その言葉は、駆けつける鳳旋に間違いなく届いた。

「――どうしても何も、ワシらは仲間じゃろ!!
 ッ!!どうしたんじゃその傷!!!」

蹲る光龍の足からドクドクと赤い血液が流れ出ていた。
驚愕する鳳旋を、二人の子供はまるで動物園で面白い動物でも見るかの様にクスクスと、笑い声すら立てている。

「……キサマ等か―――」

水溜りに、赤い、揺らめく炎の像が映る。
途端、水面は勢い良く弾け飛ぶ、鳳旋の足が溜まった水を踏み抜いた為だ。
弾けた後になお映る像は真っ赤に染まり、ついには水面は沸騰し、蒸発すら始めた。

「…許さん……、許さんぞキサマ等ァ!!」

二人の子供と光龍の間に、燃え盛る魔人が立っていた。
126 ◆GWd4uIuzU6 :2009/08/23(日) 23:59:51 0
>>125

>「―――ああああぁあアアアアアアア!!!」

灰色の空の下、少年の叫びが周囲に木霊する。その絶叫を断末魔のものにするにはまだ早い。
小さな悪魔達はこれからどう光龍と遊ぼうかと思いあぐねた。
一思いに殺すのは面白くない。遊びには順番というものが在る。
ならば肺を潰そうか、いやそれよりも体中風穴を開けるのも面白いかも知れない……。

>「――――光龍ゥッ!!!」

光龍の声を掻き消すかの如く、若々しく力強い声が響き渡った。
オズワルドたちの前に現れたもう一人の少年――。
髪は赤く、立てられた前髪と束ねられた後ろ髪……。
鳳旋希一の事を知らないオズワルドとクローディアは、まだ人が居たのだと喜々としていた。
遊ぶ相手が増えたのだ、二人にとってこれほど嬉しい事は無い。

未だに雨は降り続けていた。それが涙雨と日本で呼ばれている事を、
オズワルドとクローディアは知らなかった。

>「――どうしても何も、ワシらは仲間じゃろ!!
> ッ!!どうしたんじゃその傷!!!」

赤髪の少年はあの黒髪の少年の仲間らしい。
何れにせよ、猛獣よりも凶暴な二人の子供たちは、
自ら進んで檻の中に入ってきた遊び道具を見逃す事は無い。

>「…許さん……、許さんぞキサマ等ァ!!」

赤髪の少年の異能力、それは炎を纏う事。
高濃度のメタトロンが炎となり、体から吹き出しているのか……。
彼が踏みつけた水溜りは沸騰、蒸発していった事。それが、彼の纏う炎の高熱ぶりを現していた。
ひしひしと伝わってくる怒り……。その怒りを受けても尚、オズワルドとクローディアは笑っていた。
ただただ、ニヤニヤ、ニヤニヤと……。

「嬉しいね、クローディア。まだ人が居たんだ。
 ほら、今度はクローディアの番だよ」

「そうね、オズワルド。ねぇ、お兄ちゃんも遊んでちょうだいな。
 だってそこのお兄ちゃん、あまりにもあっけなかったんですもの……」

多少興が冷めたかのように、冷たい目で光龍を見るクローディア。
それは、屠殺場に連れて行かれる牛や豚を見るような、
ゴミを見るような、恐ろしく凍える目だった。

「まずは……そうねぇ、踊ってもらっちゃいましょう」

クローディアの周囲に野球のボールほどの大きさの物体が浮かび上がってくる。
魚雷――。実物を見た事が在る人間が、この場に居るとは思えないが、
少女の生み出したであろう物体の形を一目見れば、
本物が未見の者でもすぐに"それらが"魚雷の形をしているという事が解る。
合計で五つ生み出されたそれは、フワフワと宙に浮びながら次から次へと順番に消えていった。

「あ、ほら、お兄ちゃん。下からくるわよ」

クローディアがクスクスと笑い、鳳旋の直ぐ近くの水溜りを指差す。
すると、その水溜りから鳳旋目掛けて、一直線に先程の小型の魚雷の内の一つが飛び出してきた。

【オズワルド&クローディア:鳳旋と対峙中】
【クローディアが異能力を展開】
127銀水苑 ◆TF75mpHiwMDV :2009/08/25(火) 00:21:45 0
――シナゴーグにほど近い路上。
そこに一台のワンボックスタイプのライトバンが止まっている。
車体には貳名クリーンアップサービスの文字。
ただ、窓ガラスにはスモークシールドが張られている。

傍目からは只の清掃業者の車。
だが、これが完全に「始末屋」仕様であり
抹消部隊の小規模な移動可能拠点で有ることを知る物は更に少ない。
隠しスペースの中には予備の武装と緊急用の輸血パックや薬品が常備してある。
スモークシールドは……運ぶ代物が外から見れないように。
抹消部隊の荷物とは機関による戦闘で出た死体だからだ。
万が一……一般人や警察に荷物を見咎められても問題は無い。
統治は冷静に事情を説明するだけだ。法的な辻褄あわせは完璧に行われている。
警察が上に問い合わせれば単なる「特殊清掃」の請負業者で有ることが説明させる手はずになっている。
「………」
統治は車の中で失った血液を補充していた。
「さて、この一件、どう説明するかな……」
まともに考えれば任務は失敗の範疇に入るのだろうが……
暫し考えた後、ためらいも無く機連送に手を伸ばした。
ナガツカインテリジェンスグループの一企業の受付嬢が応対に出る。
ただ、統治は端的に名乗った。
「……No.25,銀水苑だ」

そう、統治が連絡したのは表向きは一企業。
裏では機関の諜報部隊に。
128銀水苑 ◆TF75mpHiwMDV :2009/08/25(火) 00:24:42 0
『――任務の進行状況について報告をお願いします』

「……シナゴーグの調査と清掃は終わった」

統治は馬鹿正直に任務の失敗を告げない。
清掃は必要がないし調査を行った事は一応本当である。

『それでは貴方の任務は完遂ですね、おめでとうございます』

「ああ、だがしかし重要な報告が一つ有る。上に繋いでくれ。
俺の上のセカンドナンバーじゃない。ファーストナンバーにだ」

『ええっ?し、しかしファーストナンバーは現在多忙で……
……桜庭さんにでは行けませんか?」

途端に受付嬢の様子が動揺する。
ファーストナンバーは基本、機関員にとっては雲の上の存在。
平時はともかく今は緊急時だ。
下手に連絡して不興を買いたい機関員などいない。
城栄金剛の秘書である桜庭さんに話した方がまだ楽だ。
断る代わりに統治はこう言った。

「……報告が新しい【離反者】についてでもか?
しかもセカンドナンバー上位だ。
早く上に伝えないと不味いだろう。
――裏切っている事を知らない奴等が不意打ちで討ち取られると洒落にならん。
緊喫時(差し迫って大切な事)の情報伝達の遅れについて
諜報の服務規程では…………言っとくが俺は責任を取らんぞ」
129銀水苑 ◆TF75mpHiwMDV :2009/08/25(火) 00:25:28 0

統治の口調は重大な事を語るには余りに平静かつ、穏やかな物――
しかし血の気の引く音と言うものが有るのなら
今の機連送の向こうがそうだろう。
離反者――裏切り者についての報告が遅れて被害が広がった場合
何時ものように此処で報告をたらい回しにしようものなら間違いなく責任を取らされる。
要するに統治は「上に繋がず、あんたがこの件の責任を取って殺されても知らん」といっているような物。
意味としては殆ど恫喝だ。
ふと、受付嬢――いや諜報部隊員はの女性は
『No Quarter Joker』(容赦なき無慈悲な鬼札)
統治の【火焔自在】以外の二つ名を思い出していた。

状況を説明してくれるだけ慈悲は

『り、離反者についてのほ、報告ですか……
今、お繋ぎできるファーストナンバーはレオーネ様か……げっ、外道院様のどちらか……
でも離反者の事についてなら粛清部門の外道院様が……』

受付嬢は明らかに凄く嫌そうな声色で返答してきた。
気持ちは分からないでもない。俺だって凄く嫌だ。
うん、外道院に連絡するのは機関の任務的に考えればそれが妥当だろうさ。
外道院柚鬼は覚えてなかったけど
あいつとその一族との因縁はなにも単なる仕事上だけじゃないのが嫌だ。
【俺と同じく】あの忌まわしき血族に仲良くしたがるのは愚か者か自殺志願者あるいは狂人か鬼畜外道だ。
一番上司にしたいファーストナンバーランキング一位のレオーネさん
関わりたくないファーストナンバー一位の外道院……
上司に報告という「義務」をクリアしつつどちらが良いか選べといわれたら
選択の余地は無い。
「レオーネさんに繋いでくれ……ASAPで」
(As Soon As Possible (米)「可能な限り早く」の意)

【統治、治療を完了し、任務の報告のためレオーネに連絡】
130レオーネ ◆GWd4uIuzU6 :2009/08/25(火) 23:08:49 0
>>124 >>129

車を走らせる事、十分足らず。昼だというのに往来は少ない。
人も、車も……。それら全てが、現在のこの街に起こっている
非常事態を物語っているようだった。

その象徴とも言うべき建物が、今私の見ている貳名製薬だ。
ナガツカインテリジェンスの傘下企業の一つで、
一般用医薬品の開発・製造、販売を行っているが、
裏では機関の命を受けて異能力研究を行っている。
――いや、正確には行っていたというべきか。
というのも、現在最上階部分である30階は、社長を務めていたNo.12重松の自爆によって彼ら諸共吹き飛んでいるからだ。
当分、ここでの研究は望めそうもない。
No.12め、余計な事を……。

警察が実況見分をしているようで、日本語で立入禁止と書かれた黄色いテープが引かれていた。
車両数台に警官がパッと見渡すだけで5,6人は居る。
連中が来る前に全て機関の手の者によって関係する文章やデータは持ち去られているのだろう。
機関の証拠や異能力の存在を示す物的証拠を抹消する部隊……。
それが抹消部隊である。彼らが居るから我々構成員は安心して異能力を行使する事が出来るのだ。
もっとも、私は自分の異能力の特性から、痕跡を残さずに任務を終わらせて来たがね。
家族の見ている前で、自分からマンションの手すりを飛び越えて身を投げた人間が、
他殺だなんて誰も思いやしない。
……横道に逸れてしまったが、抹消部隊は云わば機関にとって縁の下の力持ち的な存在なのだ。

信号が青に切り替わった事を確認すると、私は静かに運転を再開した。
日本車は静かで良い。昨日乗ったライラックはエンジン音が煩かったので余計にそう思う。
丁度その時であった、私の機連送がけたたましく青く美しきドナウを奏でだしたのは……。
すぐさま内ポケットから取り出すと、通話ボタンを押す。

「レオーネだ……何か用か?」

電話の主は若そうな声をした女であった。彼女は多少緊張した声で話を切り出してくる。

「お忙しい中、大変申し訳ございません。No.6に取り次いで欲しいとのNo.25からの要請です。
 ……その、如何致しましょうか?」

話が見えてこない。どのような用事で私にこの電話が掛かってきたのだろうか?
その所を詳しく聞く必要性が在るな。
131レオーネ ◆GWd4uIuzU6 :2009/08/25(火) 23:10:38 0
>>130

「No.25の報告を聞く限りでは、セカンドナンバー上位に離反者が出たとの事で……。
 ファーストナンバーの方に報告をするべきかと……」

何故私なんだ、ファーストナンバーなら他にも居るだろう。
……この諜報部の女の話を聞くに、ファーストナンバーはほぼ全員が現在多忙にあり、
報告できる状態ではないという。そこで比較的マシな私に白羽の矢が立ったという訳らしい。
なるほど、私は暇そうに見えた訳だ。……暇じゃあないんだがな。
ただ、私の他にもう一人暇している女が居たらしいが、"彼女"を選ばなかったのは正解だ。

「ふむ……わかった。取り次いでくれ」

そうこうしている内に市街地から外れ、多少住宅が目立つようになってきていた。
その中で、人で賑わっている店舗を発見した。
テーブルに椅子、そして客が頬張っているのは、サンドウィッチのようだ。
どうやらあの店は軽食も扱うカフェテラスらしい。
カフェならば美味いコーヒーも在るだろう。伊賀とシヨリ君から特に要望も出なかったようだし、
このカフェで食事を摂るとするか。
私は通話中の機連送を持ったまま、店の前の駐車場へと車を止めた。

他の三人に先に店に行くように伝え、私は車中に留まっていた。
小雨と呼ぶに相応しい天気の中でも繁盛しているようだな、この店は。

「それではお取次ぎいたしますので、暫くお待ち下さい」

こんな小さな電話機に、そんな機能が付いていたとは……。
機械はあまり得意じゃないから知らなかったな。
永瀬や香坂なら使いこなせるのだろうが、私のような古い人間にはさっぱりだ。

一人口元を綻ばせていると、受話器から低く若そうな男の声が聞こえてきた。
この男がNo.25だろうか? 正直面識が無いので解らないな。

「初めましてかな、No.25。No.6だ。取り次ぐ際に、私に報告する事が在ると聞いたが……。
 セカンドナンバーの上位から離反者が出たという事だったね」

【レオーネ:現在地 カフェ前】
【伊賀・七草・塚原を先に降ろして銀水苑と会話中】
132銀水苑 ◆TF75mpHiwMDV :2009/08/26(水) 02:47:08 0

>>「初めましてかな、No.25。No.6だ。取り次ぐ際に、私に報告する事が在ると聞いたが……。
 セカンドナンバーの上位から離反者が出たという事だったね」

「初めまして。俺はNo.25、抹消部隊隊長銀水苑統治です。
ご多忙の所申し訳ありませんNo.6……
緊急性の高い案件で有るが故挨拶はこの位にして本題に入らせていただきます。
――兼ねてから消息のつかめなかったNo.20姫野与一が離反しました」

続きを促す声が、機連送から響く。

「ええ確かです、俺がシナゴーグの調査中……遭遇しました。
事情を知っている者なら
廃棄されたシナゴーグは潜伏するのに最も都合の良い場所です。
俺はNo.20に任務の説明して勧告しました。
そして交戦しました。
意図的な任務妨害、機関員への異能攻撃――
そこまでやっておいて裏切っていないはずは無いです。言質もとりました」

多少編集して在るが、機連送から記録音声の一部が流れる。

>「……機関に離反して生きるのは茨の道だぞ。
其れだけの力があるのは判ったがな……」
『……覚悟の上です。それを承知でこの道を選んだのだから―――』

レオーネから更に詳しい状況の説明を求められる。
133銀水苑 ◆TF75mpHiwMDV :2009/08/26(水) 02:58:10 0
「……始末及び捕獲していればそう報告しています。交戦後、逃げられました。
元々姫野は「神の眼」「機関一のスナイパー」の異名をとる手練の異能者。
交戦した感触ですが……
悪い事にここ数日でメタトロンの最大値が急上昇しています。
もう機関に有るデータで判断しない方が良いです。
並のセカンドナンバーを下手に送れば返り討ちにされますよ」

此処までを説明した後、統治は補足を加える。

「本来なら粛清部隊の長のNo.05に伝えるべき事案ですが……
あの女……いえ彼女とは不本意ながら知り合いで……」

上司の手前、乱暴な言葉遣いになったのを慌てて言い直す。

しかし、その口調に篭った嫌悪と敵意の言霊は
普段氷のように冷静な始末屋で有る統治には相応しく無い物。
…受話器の向こうのレオーネに伝わるくらいはっきりとしていた。
それが、精神系の能力を持つレオーネの興味を引いた。
No.05を目の敵にするのか、その理由をレオーネに尋ねられた。

統治は最高に不機嫌な表情で吐き捨てた。
「同族嫌悪って奴です。能力には遺伝子が関係します。
そして先天性能力者の家系などこの国にそうそう多くは無い・・・・・・
俺もまた忌まわしき一族の一人です。
銀水苑家は護摩の炎……火で穢れを清める千年以上続く宮司、神主の家系。
――巫女の一族外道院家の分家なんですよ。
その炎の力も今では――しがない始末屋です。
No.05は分家の俺の事など覚えて居ませんでしたがね……
本家の異常性と残虐性についていけずにもう随分前に縁を切りました」
134銀水苑 ◆TF75mpHiwMDV :2009/08/26(水) 03:00:53 0
暫しの後、沈黙。

「話を戻しましょう……彼女の性格上、大義を与えて先行させてしまうと
現実問題として余計な人死が派手に出すぎます。
その隠蔽は抹消部隊かNo.01の世界改竄で行われる事になります。
隠蔽自体は問題無いでしょう。
しかし機関の人員かNo.01のメタトロンのどちらかが裂かれます。
そうなると……離反者や殲滅結社に付け入る隙を与えます」

軽く呻きの声色が混じる声色で了解の相槌が入る。
気持ちは分かすぜレオーネさん。
無用の犠牲が出る数が、虐殺部隊の比じゃない数だからな……

「……この大事な時期にそれは少し不味いでしょう。
同じファーストナンバーの貴方から
やりすぎぬようやんわりと釘を刺して欲しいのですよ。
……俺ではナンバー的に止められませんからね。
――無論、こちらの方もいざNo.05の動くとなれば準備、態勢は整えておきます」

統治は淀みなく言葉を紡ぐ。
彼は単純に好悪だけでレオーネに連絡したわけではない。
好悪も理由に含まれるが
機関の任務上の都合、全体の戦略の観点からも考え発言している。
機関内の上下関係に配慮しつつ、いざNo.05が動くとなれば
仕事に私情を挟まず証拠の抹消や後始末をやると言っているのだ。
冷たい論理と戦略はそれなりに有能であることを示している。
でなければ抹消部隊隊長など勤まるはずが無いのだが。

「……心中お察しします
無理なお願いとは承知ですが……ファーストナンバーの派閥の掣肘も
機関の任務の一部。大事な時期には必要な行為です……
無論、こんな事をお願いする以上No.05だけには苦労はお掛けしません
個人的な私情を言わせて頂ければNo.05の戦闘後の後始末は二度とやりたくないんですがね……
多少負傷はしていますが……離反者、姫野与一の追跡と監視。
命じていただければ俺がやりましょうか。
No.05の部下がやりすぎないよう、目付けは必要だと愚考しますが……」

【レオーネに報告。姫野与一の監視と追跡の任務を申し出る】
135銀水苑 ◆TF75mpHiwMDV :2009/08/26(水) 03:05:58 0
誤字の訂正→
誤 無論、こんな事をお願いする以上No.05だけには苦労はお掛けしません
正 無論、こんな事をお願いする以上No.06だけには苦労はお掛けしません
に訂正です。
136池上 ◇ICEMANvW8c 代理:2009/08/27(木) 21:14:28 0
──図書館。いつもなら、平日でも多くの人間が集まるこの場所も、
外では雨が降っているということもあってか、人の姿はほとんど確認できない。
図書館奥の読書席周辺に至っては、俺と籐堂院以外の人間は一人も見られない。
そんな中で俺達二人は、途中、コンビニで買ってきたオニギリとお茶で
遅れた昼食をとりながら、本棚から引っ張り出してきた古い本に目を通していた。

「──ついに両軍は手塚原にて激突する。
後に手塚原合戦と呼ばれるこの戦いは、領主・湯瀬政康軍の敗北に終わり、
長きに渡る圧制に終止符が打たれることになる……。
この本も教科書通りだな……まるで役に立たん」

俺は持っていた本を大量の書物が散らかった机の上に無造作に放り投げ、
イラつきを抑えるように残りのオニギリにかぶりついた。
そうしてせわしく口を動かしていると、隣に座っていた籐堂院が溜息混じりに本を閉じ、
紙パックのお茶をすすり始めた。

「こっちもだ。書いてあることは知っていることばかり。
……池上、恐らくここには、"炎魔をどう封じたか"具体的に書かれたものはないぞ」

俺は咀嚼したオニギリを飲み込み、続いてお茶一気に飲み干すと、
一つ息を吐いた後に空中を見上げて言った。

「よくよく考えてみれば……そんなものがあったら、とっくに機関がこの世から消しているか。
封じた手段さえ分かれば、もし炎魔の復活を許してしまっても、
最悪な事態だけは避けられるかもしれないと思ったが……甘かったな」
「……そう気を落とすな」
「……分かってるさ」

空になったパックとオニギリの包装紙をまとめてゴミ箱に投げる。
彼女はそれが見事にゴミ箱に収まるのを見届けると、ぽつりと呟いた。

「……封じられた炎魔を復活させる為に機関はヤハウェを欲す。
しかし、なぜ、ヤハウェなのかと疑問に思う自分を見ていると、
今の私達が分かっていることなどほとんどないということを改めて思い知らされるな……」
137池上 ◇ICEMANvW8c 代理:2009/08/27(木) 21:15:47 0
その言葉に「あぁ……」と言い掛けた瞬間、突然俺の頭にとある仮説が浮かび、思わず口をつぐんだ。
「どうした?」というような不思議そうな顔をする彼女に、俺は静かに独り言のように言った。

「もし……石田彦三郎直政がヤハウェだったら……」
「え……?」
「ということは炎魔はヤハウェに封印された。
機関はヤハウェの力をもってその封印を解こうとしているのだとしたら……」

そこまで言うと、俺は椅子から立ち上がった。

「もし炎魔が復活しても、もしかしたらあの二人が炎魔を倒すカギになるかもしれん。
……戻るぞ、薬局に」
「あ、あぁ、それはいいが、その前に読んだ本くらい片付けて……」
「それはお前に任す。俺は外で傘をさして待っててやるよ」
「待て、私に力仕事を押し付け……って、お、おい! はぁ……しょうがない奴だな……」

呆れたように深く溜息をつく彼女を背にして、俺はそそくさと図書館の出入り口をくぐって行った。

【池上 燐介:図書館から再び薬局へ戻る。現時刻:PM3:00】
138鳳旋 希一 ◆O93o4cIbWE :2009/08/27(木) 22:20:16 0
>>126

「嬉しいね、クローディア。まだ人が居たんだ。
 ほら、今度はクローディアの番だよ」

「そうね、オズワルド。ねぇ、お兄ちゃんも遊んでちょうだいな。
 だってそこのお兄ちゃん、あまりにもあっけなかったんですもの……」

クローディアと呼ばれた少女はゴミを見る様な目で光龍を見る。
それは最早子供が見せるような目では無い。
鳳旋は光龍を庇う様に前に出てクローディアの視線を遮る。
憤怒の炎に燃えながらも、彼は自分を見失う事無く仲間を守ろうとしていた。

「まずは……そうねぇ、踊ってもらっちゃいましょう」

その言葉を皮切りに、少女の周りに野球ボール程の物体が浮かび上がる。
"魚雷"の形をしたそれは、合計で五つ生み出され、暫し宙を漂いながら、次々と消えていった。

「あ、ほら、お兄ちゃん。下からくるわよ」

クローディアがクスクスと笑いながらそう言うと、
鳳旋の近くの水溜りから、"魚雷"の一つが鳳旋目掛け飛び出してきた。
鳳旋は咄嗟に上体を反らしそれを避ける。
そして素早く姿勢を戻し、クローディア目掛けて一直線に走った。
それを阻む様に水溜りから魚雷が次々と飛び掛る。
鳳旋はそれらを巧みな足捌きで回避して行く。
しかし回避に専念せざる終えなくなり、接近する事が出来なくなってしまった。
魚雷は足元から次々と執拗に襲い掛かる。
埒が明かなくなった鳳旋は己の異能によって纏っている炎を推進力に、
先程洋館内で統治との戦闘中に行った爆発的な跳躍を行う。
サイドステップの形で見せたその跳躍は凄まじく速く、長い。
一瞬で魚雷を全て振り切って見せた。その瞬発力はクローディアとオズワルドの二人を少なからず驚かせた。
鳳旋はがら空きのクローディアの側面へ一気に飛び込もうとした。
だが虚しく空を舞っていた魚雷が忽然と姿を消したと思えば、次の瞬間には再び鳳旋の周囲の水溜りから魚雷が襲い掛かるのであった。
「ッ!」
どうする事も出来ず、鳳旋は防戦を強いられる。

【鳳旋:クローディアの異能力の前に防戦状態】



139名無しになりきれ:2009/08/29(土) 02:47:49 0
ここも頑張っているの
140レオーネ ◆GWd4uIuzU6 :2009/08/30(日) 23:31:51 0
>>132-134

>「初めまして。俺はNo.25、抹消部隊隊長銀水苑統治です。
>ご多忙の所申し訳ありませんNo.6……
>緊急性の高い案件で有るが故挨拶はこの位にして本題に入らせていただきます。
>――兼ねてから消息のつかめなかったNo.20姫野与一が離反しました」

銀水苑統治――抹消部隊の隊長を勤め上げるこの男の言葉に、嘘は今の所見受けられない。

「姫野与一が……君の事を疑うという事ではないが、
 裏づけは取れているのか?」

だが、言葉だけならどうとでもなる。
物的証拠を掲げなければ、話は平行線になるだろう。
しかし、その点においてもNo.25に抜かりは無かった。
言葉を録音した物が在るという。私はそれをただ静かに聞くより他無かった。

>「……機関に離反して生きるのは茨の道だぞ。
>其れだけの力があるのは判ったがな……」

>『……覚悟の上です。それを承知でこの道を選んだのだから―――』

改ざんした音声に見受けられる不自然な音や声は聞こえてこない。
間違い無く姫の本人の声だろう。
という事は、つまりあの姫野君が機関を裏切った事を認める他無いようだ。
しかし、あの姫野君がそう易々と捕まる訳が無い。
実際問題、No.25も捕縛に失敗したようだし、
異能エネルギーの絶対値が増しているという話だった。
これは異能者同士の戦いにおいて、勝利しなければ絶対値は増えはしない。
つまり、姫野君は今の所勝ち続けているという確かな証拠だろう。
No.25の言う通り、並みの連中では太刀打ち出来ん筈だ。

>「本来なら粛清部隊の長のNo.05に伝えるべき事案ですが……
>あの女……いえ彼女とは不本意ながら知り合いで……」

ここでNo.25銀水苑は不可思議な発言をした。彼は確かにこう言った――"あの女"と。
その言葉から滲み出てくる嫌悪感と憎悪のない交ぜになった敵意を私は見逃さなかった。
彼の言葉の裏の事実を紐解くべきなのは明らかであった。
No.25が何故外道院に対してそこまでの敵意を持つのか……。

「君からは、外道院に対する並々ならぬ敵意を感じる……。
 それは何故だ? あの女と言った時、確かに君の言葉から彼女への憎しみを感じた」

>「同族嫌悪って奴です。能力には遺伝子が関係します。
>そして先天性能力者の家系などこの国にそうそう多くは無い・・・・・・
>俺もまた忌まわしき一族の一人です。
>銀水苑家は護摩の炎……火で穢れを清める千年以上続く宮司、神主の家系。
>――巫女の一族外道院家の分家なんですよ。
>その炎の力も今では――しがない始末屋です。
>No.05は分家の俺の事など覚えて居ませんでしたがね……
>本家の異常性と残虐性についていけずにもう随分前に縁を切りました」

なるほどな……。古の昔に赤々と燃えていた炎も、今では下火となってしまった訳だ。
しかし、外道院に分家があったとは……。初耳だったな。
141レオーネ ◆GWd4uIuzU6 :2009/08/30(日) 23:32:50 0
>>140

>「話を戻しましょう……彼女の性格上、大義を与えて先行させてしまうと
>現実問題として余計な人死が派手に出すぎます。
>その隠蔽は抹消部隊かNo.01の世界改竄で行われる事になります。
>隠蔽自体は問題無いでしょう。
>しかし機関の人員かNo.01のメタトロンのどちらかが裂かれます。
>そうなると……離反者や殲滅結社に付け入る隙を与えます」

「う……む……、確かに。今それは非常に不味い」

これは城栄と私にとっても、機関にとっても都合が悪くなってしまう。
離反者は最悪どうとでもなる。だが、殲滅結社の連中は弱体化した時を見逃すほど阿呆ではあるまい。
それにだ、外道院が動くとなれば、奴子飼いの粛清部隊が本格的に出張る事になる。
そうなれば、堅気の人間にも相当数の被害が出る事になるのは明白だ。
No.5を動かす事だけは避けなければならない。
この銀水苑という男が何を言いたいか、何となくだが解ってきた気がする。
つまり、彼は外道院に動いて欲しくないのだ。そして、それを防ぐ手段が――

>「……この大事な時期にそれは少し不味いでしょう。
>同じファーストナンバーの貴方から
>やりすぎぬようやんわりと釘を刺して欲しいのですよ。
>……俺ではナンバー的に止められませんからね。
>――無論、こちらの方もいざNo.05の動くとなれば準備、態勢は整えておきます」

やはりそうきたか……。私に外道院を食い止めろと……。
確かにナンバーが同列の私ならば可能な事だ。逆にセカンドナンバーである銀水苑には不可能な事である。
しかし……この私を巧く利用するとは。この銀水苑という男、なかなか侮れんな。

>「……心中お察しします
>無理なお願いとは承知ですが……ファーストナンバーの派閥の掣肘も
>機関の任務の一部。大事な時期には必要な行為です……
>無論、こんな事をお願いする以上No.06だけには苦労はお掛けしません
>個人的な私情を言わせて頂ければNo.05の戦闘後の後始末は二度とやりたくないんですがね……
>多少負傷はしていますが……離反者、姫野与一の追跡と監視。
>命じていただければ俺がやりましょうか。
>No.05の部下がやりすぎないよう、目付けは必要だと愚考しますが……」
142レオーネ ◆GWd4uIuzU6 :2009/08/30(日) 23:33:54 0
>>141

「君の考えは良く解った。確かにこの報告は重要な物だ。
 私自身、現場を見ていないのでどのような状況になっているか全てを把握している訳ではない。
 現時点での最適な指令を下すだけの判断材料が不足している。
 よって、姫野与一に関しては君に任せよう。現場の判断で対処しろ。
 付かず離れず……だがしかし、常に確実にこちらがイニシアチブを取れるように動くべきだろう」

問題は未だある。外道院とその一派だ。
外道院本人をを食い止めるのは私がやれば良いが、素直に聞き入れる女ではない。
裏で部下達を使って何らかのアクションを起させる筈……。それを食い止めるのには、体が一つでは足りない。
ここからが本題だな。

「現在の一番の問題点は外道院か……。
 あれはいつ何時、どのような事が原因で暴走をするのか検討も付かない。
 今回の姫野与一の離反が外道院を刺激するであろう事は明白だ。
 堅気の人間への被害を鑑みれば、彼女の動きを封じるのは至極当然の事……。
 しかしながら、外道院が素直にそれを善しとするとは思えん。
 今以上に大々的に粛清部隊を使い始めるかも知れん。
 それが機関にとってどのような不利益をもたらすか、見当も付かん」

部下達は動いたが、自分は言われた通り手出しはしていない――
外道院ならば、そんな子供のような屁理屈を平気で使う筈だ。
No.3にも言えた事だが、この屁理屈が私を苛つかせるのだ。

「……No.25、君は粛清部隊と交戦して勝てる自信は在るか?」

体が一つしか無いのであれば、二つに増やせば良い。
受話器越しの銀水苑の答えを待たずに、私は自身の見解を述べた。
それは――

「――単刀直入に言おう。粛清部隊員が機関にとって不利益になる行動を取るならば、
 君の手で抹消して欲しい。私が許す。
 君の言う通り、今は大事な時期だ。あの無法者達に邪魔をされる訳には行かん。
 No.25、君は事態の収拾に努めてくれ。外道院本人の事は私に任せろ」

――外道院が私の理想の邪魔をするというのなら容赦はしない。
勿論、それは姫野与一にも言えた事であった……。

【レオーネ:現在地 カフェ前】
【銀水苑と会話中】
143銀水苑 ◆TF75mpHiwMDV :2009/08/31(月) 01:09:30 0
>>140-142

「――了解しました。
姫野与一の追跡と監視。
粛清部隊の抹消も視野に入れた事態の収拾。
その任務、確かにお受けいたします」


何故統治は機関に身を投じたか。家系や環境も在るがそれは決定的ではない。
統治は知ってしまっている、不可能なのだ。完全に悪を滅ぼしつくす事は。
人間の闇は人間の一部。悪意も、闘争本能も、殺戮衝動も。
『機関』を潰したところで裏世界も異能者も消えない。
また誰かが巨大な闇を作るだけに過ぎないということを。
自分の事しか考えない異能者や裏で生きる人間のクズを踏みつけにする一方で
秘密を守る為に愛してやまない何の罪も無く日々をひたむきに生きる普通の人間を斬って捨てる。
何故そうまでして統治は戦うのか。
統治は正確には機関の為に戦っているのではない。
統治は誰にも弔われぬ人間を弔うため、そして『異能者が居る』と言う秘密の為に戦っている。
それは歴史の闇に埋没してしまった銀水苑家の真の使命である。
その家訓は皮肉にも機関が創設された最初の理由にも似ていた。
長い時間の内に権力と力が理念を歪め
機関は只弱者を犠牲にして栄える裏世界の闇と化してしまったが――
異能者が居ると言う秘密が世界に漏れれば先ず間違いなく普通の人間は疑心暗鬼に陥る。
人知を超えた力を持つものが隣にいる。しかも異能者は人間の獣性を呼び起こされやすく、
いつ警察にも軍隊にも太刀打ちできない最悪の殺人鬼と化すか分からない。
そんな恐怖に何時までも耐えられるわけが無い。
その先は――戦争だ。異能者と一般人との。
むしろ異能者を知る事の出来ない一般人が魔女狩りで何の罪も無い普通の人間を
何千何万と殺してしまうことの方が多いだろう。
魔女狩りの炎に投げ込むのは統治の信条に反する。
また、秘密を守る事は、息を潜めて人間の世界で普通に暮そうとしている異能者を守る事にも繋がる。
機関にも、表の世界にも気がつかなれければ彼らは普通の人間に混じって平穏に生きていける。
144銀水苑 ◆TF75mpHiwMDV :2009/08/31(月) 01:10:19 0

「先ほどの質問――粛清部隊と交戦して勝てる自信、ですか」


統治は傲慢にも有るとも、卑屈にも無いとも答えなかった。
静かに、言葉を紡ぐ。

「裏には裏の。闇には闇のルールがあります。
彼女らが裏切り者の始末によって裏世界の秩序を守る
と言う自らの任務を都合よく曲解し、殺人欲と快楽の為だけに行動する――
そして、その過程で出た罪無きの一般人の膨大な犠牲を抑えようとも努力しない。
いやむしろ自らの快楽を満たし力を振るうためだけの
目撃者の始末と敵性対象以上の殺戮を進んで行っておきながら
『裏切り者の始末には仕方ない』と言い逃れ虚言を弄するようならば……それが判断の一線となるでしょう」

統治がわざわざ語るのは、機関の規定を踏まえつつ抹消の基準をレオーネに確認しているのだ。

「今まではそれで許されたかもしれませんが
だが――今この時より、それは機関に対する裏切りです。
異能と機関の秘密が外に漏れれば、世界は魔女狩りの再来。
一般人と異能者の終わりなき戦いの様相を呈します。
機関はあの女の尻拭いの道具では有りません。
……この重要な時期にそんなことで機関の人員や資金、とNo.1のメタトロンを無駄遣いする様なら……」

運命の皮肉は、機関内部に存在する政治力学と家系の問題があって
統治が世襲幹部ではなかった事か。
もし、統治が粛清部隊を率いていたなら
任務にかこつけた粛清部隊によって普通の人間が無駄に殺されることは四桁を越す事も無かっただろう。
だがそれは詮無き事か。
145銀水苑 ◆TF75mpHiwMDV :2009/08/31(月) 01:12:21 0
「俺は自らの務めを達成し、その全てを斬って焼き捨てるだけです」

自信が有るか無いかではない。それは実行の断言だった。
その裏に秘められた決意や理由が、言霊に乗るような。
言霊は神官神職の名残なのか――レオーネにも伝わる、微かな、精神波を含んだ言葉だった。

統治は自ら闇の中に足を踏み入れ、理不尽な裏の世界の犠牲となる者を少しでも減らそうとしているだけなのだ。
必ず犠牲は出る。凄惨な惨劇は起こる。
ならば只ひたすらに己の心を殺し――秘密を守り余計な犠牲となる者を減らす事に勤める。
これすら欺瞞に過ぎない事に気が付いているが己は人間だ。出来る事をやるしかない。
統治の本性は悲劇からも犠牲からも眼を逸らす事が出来ず
闇の内側に自ら入り少しでも減らそうとしたが―
それは腐乱した深い汚泥と涙で濡れた塵の山をマッチ一本の炎で焼き尽くそうとする試みにも似ていて―
皮肉にも気が付けば機関に埋没した、哀しき、悪の徒花。

「……此方の現場は姫野の監視も平行して上手く事を運びます。
あの女の掣肘、よろしくお願いします。
――無理な頼みを聞いていただき、ありがとうございます」

最後に、静かだが、礼儀正しく真摯な言葉がレオーネに渡された。

【レオーネの任務を受ける】
146木崎 あやせ ◆N8yTRtOcY2 :2009/08/31(月) 14:12:33 0
>>118

炎は見えない糸を走りながら私に向かって走る。
その炎が私に触れる直前―――横から振り下ろされた剣が炎の進行上にある糸を断ち切り、炎は地面に落ちて消えた。
そして私を助けた剣の使い手は私の前に着地した。

「……これは―――」

目の前に立っていたのはキバさんの能力で作り出されたあのヒトガタ。
不本意ながらも私は彼の行為に助けられたという事か……
しかし、自分の守りが手薄になったキバさんは、浦田の標的にされていた。

>「これでお前の負けだ!!」

炎を放ち、次の行動に移っていた浦田は刀を構え、キバさんに斬りかかろうとする。
私は何か使える物はないのか、と周囲を見渡す。
そして見つけたのは気絶している佐方と……傘!

私はその場から跳び、開いたまま転がっていた自分の傘を掴む。
そして傘を閉じて腕をグッ、と引き構える―――!

「……この感じ!? 浦田避けろぉ!」
「―――投波弾ッ!」

あやせは腕を前に向けて一気に突き出し、傘で虚空を突く。
瞬間、才牙に飛び掛っていた浦田は横腹を強く殴打されたように吹き飛んだ。

「ガッ!? なに……が……」           
「波動で空気を振動させて飛ばしたの。大丈夫。"今ので"は死なないから」

あやせは傘を一振りして、浦田を見据えニヤリと微笑んだ。
だがすぐにその顔からは笑みが消え、氷のような冷たい声が彼女の口から放たれた。

「でも―――白昼堂々と力を使ったあなた達を私は許さない」

彼女の突然の豹変にこの場にいる誰もが息を飲んだ。
あやせはその場から跳躍し、一瞬で浦田の前に降り立つ。
そして彼の胸元に傘を突き立て、その冷徹な目で男を睨みつけた―――

「ひ、ひぃ……っ!」
「大丈夫、痛みはないから。すぐに楽になれるよ」

浦田の体内で波が拡がり、ざわめき、―――爆ぜた。
だが血飛沫はあやせに当たる事はなく、目の前で"拡散"して散っていた。
その身が血に染まる事のない殺人者は、大川へと身を向け、口を開いた。

「もう嘘つくのはおしまい。あまり知られたくなかったけど、キバさんも能力者だったしね。今更隠す必要はないかな。
そこの人。大川……って言ったっけ? 用があるのは私―――でしょう?」

あやせは大川に指を突き立て、挑発するように笑う。

「! ……分かってんじゃねえか……ああそうだ、てめぇだ。てめぇが俺の部下どもをぶち殺しやがったんだ……ッ!」
「……アホくさ。仲間意識だけのその自己中心的な考えが他の人に迷惑掛けてるのに」
「正義の味方ぶってんじゃねぇぞ偽善者が……所詮はてめぇも殺人者だろうが! もう言葉は要らねえ、出ろ、黒龍ゥゥゥッ!」

大川が声高に叫ぶと、背中が黒い炎で覆われる。するとそこから、黒い龍の首が二本伸びて大川の前に立ち憚った。

【浦田死亡、大川が黒龍を呼び出す】
147神野 沙羅 ◆LHz3lRI5SI :2009/09/02(水) 19:55:30 0
>>62
「ガラス工場に来いってメールがあった」のは真実。
しかし来てみれば誰もいない・・・・
「・・・・・・いないジャン!」と怒るがその声は拡散を使わない限り工場の音にかき消されてしまった。
「何であたしこんなに不幸なの・・・?」
ふらふらしながらガラス工場の入る。すると向こうで男が二人騒いでいる。
ここの従業員だろうか?
なんにせよ統時ではないのでそろそろ帰るかな・・・

       ―――バァン!!――――
「「えっ?」」
ルナちゃんと同時に振りかえる。

銃声。

これはこちらに向かって撃った?それとも威嚇のためなのか?
なんにせよ「敵」であることは確かだ。戦闘を予想し戦闘態勢をとる。
「来るならかかって・・・・ってあれ?」

そのままダッシュで逃げる男二人。
残ったのは唖然とする二人。
どうするかな・・・・?
「どうするルナちゃん!走って追いかけようか?」
【現在地: ガラス工場】
【ルナにどうするか聞く。ルナが戻りたければ戻る】
148レオーネ ◆GWd4uIuzU6 :2009/09/02(水) 22:53:46 0
>>143-45

>「先ほどの質問――粛清部隊と交戦して勝てる自信、ですか」

私の問い……それを銀水苑統治は静かに答えた。

>「裏には裏の。闇には闇のルールがあります。
>彼女らが裏切り者の始末によって裏世界の秩序を守る
>と言う自らの任務を都合よく曲解し、殺人欲と快楽の為だけに行動する――
>そして、その過程で出た罪無きの一般人の膨大な犠牲を抑えようとも努力しない。
>いやむしろ自らの快楽を満たし力を振るうためだけの
>目撃者の始末と敵性対象以上の殺戮を進んで行っておきながら
>『裏切り者の始末には仕方ない』と言い逃れ虚言を弄するようならば……それが判断の一線となるでしょう」

ふむ……。なるほどな。
ならば、粛清部隊の全員がその範疇に入る訳だ。
次いでNo.25の口から告げられた魔女狩りという言葉……。
それは私の懸念する物と同じであった。
人々は自分の常識の範囲の中でしか物事を見る事は出来ない。
そして、その範囲を少しでもはみ出してしまった者を、全力で排除しようとする。
古来から続けられてきた人間の負の部分――。
こんな事が何千、何万回と繰り広げられても尚、人は他者を虐げる事を止めようとはしない。
だからこそ、世界を変える必要性が在る。人の価値観を一つに統べるのだ。

>「俺は自らの務めを達成し、その全てを斬って焼き捨てるだけです」

今のこの言葉で解った。
どうにもこの銀水苑という男、自分の命など安い物だと思っている。
それも、他人を守り、助ける為に……。
未だにこんな奇特な考えを持つ者が機関に居たという事に、嬉しくなると同時に妙にその事に苛ついていた。
私は……私は機関のファーストナンバー。そんな人間らしさは捨てた筈だ。
捨てた筈なのに苛つくという事は捨て切れていないという事に他ならず、
その事が一層私を苛つかせるという、一種の悪循環に陥ってしまっていた。

>「……此方の現場は姫野の監視も平行して上手く事を運びます。
>あの女の掣肘、よろしくお願いします。
>――無理な頼みを聞いていただき、ありがとうございます」

「最後に一つだけ言わせてくれないか。
 焼き捨てた後はどうする? これまでの罪を受け入れて自分も焼き捨てるか?
 ――すまない、今の失言だった。忘れてくれ……。
 そちらは頼んだ」
149レオーネ ◆GWd4uIuzU6 :2009/09/02(水) 22:59:09 0
>>148

電話を切りNo.25との通話を終えると、深い溜め息を吐いて両手で顔を塞ぎ込んだ。
何を今更、こんな事で……馬鹿馬鹿しい。愛で世界は救えないじゃあないか。
アンジェラは死んでしまったんだ、それで解っただろう?
レオーネ……。お前はもう人間としては生きられない所に居るのだよ。
怪物は怪物らしく、日陰で生きていけば良いのさ。
……自己嫌悪で嫌になってくる。今は考える事は止めだ。
カフェに行こう。ひかるとシヨリくん達が待っている。

ともかく、粛清部隊の方はNo.25に任せるとしよう。
どのような力が在るか分からないが、悪いようにはならんだろう。
後は私が外道院に軽く釘を刺すだけだ。

頬を数回叩いて自分に喝を入れると、黒塗りの高級車から雨音のする外へ向う。
ボタン一つで車の鍵が掛かるなんて、技術は進歩しているのだな。

カフェへと入ると、数人の客と目が合うが取り分けて気にする事ではない。
シヨリ君たちは……。私は彼らを見つけると、座っているテーブルへと向っていた。

「待たせて悪かったね。注文は頼んだのかい?」

伊賀とシヨリを交互に眺めながら、私はにこやかに笑みを浮かべた。

ひかるから徐に手渡されたメニューを開く。む、エスプレッソの文字が在るではないか!
これは食事の前にこれを注文するべきではなかろうか?
コーヒーランチという物も悪くは無い。コーヒーとパン。それだけで生きていける。
いや、そもそもエスプレッソだけで十分ではないだろうか?
エスプレッソの起源を辿ると――

「……なにをひとりでブツブツ言っているの? レオーネ」

ひかるの言葉にハッと我に返った。つい一人で興奮してしまったようだ。
気が付くと、伊賀とひかるはあからさまに怪訝げな表情を浮かべていた……。

【レオーネ:現在地 カフェ】
【銀水苑と会話後、七草達と合流】
150廻間 ◆7VdkilIYF. :2009/09/03(木) 22:54:40 0
>>117
結論から言えば、リンというのは俺が知っている『煌神リン』だった。
話からして、リンとは親密な関係にあるらしい。
どうも恋人とは違うようだからな…親戚か家族というところか?
とにかく、見捨てるわけにも行かないだろう。
俺はツバサからカードキーを受け取り、ポケットに入れる。

「分かった、手遅れにならないようなら…出来るだけ助けに行く」

紅い月についた汚れを振り払い、鞘に入れる。
リースもどうやら動けるようだ、身体の調子を確かめるように軽く動かしてから俺に近づいてきた。

「じゃあな。まあその怪我じゃあ死にはしないだろう。
 救急車を呼ぶなり自分で手当てするなり、好きにしたらいい」


その後、俺達はリースが『少し休んだ方がいいと思う』というので
少しだけ時間をずらして、ビルに向かうことになった。
こうやってツバサが出向いて来た訳なので、別の機関のメンバーも向かってきている可能性があったからだ。
この疲弊した状態で連戦は避けたかったため、少し休んでから向かう事にしたというわけだ。
もちろん今いる場所は大声さえ出さなければ、誰にも見つからないような場所だ。

「しかし、もう池上たちは突入したのか…?」
「かもな。俺達みたいに足止めを食らってなかったら、もう突入しているじゃあないか?」

リースが俺の問に答える。
今言ったように、足止めをされてさえいなければ今頃俺達もビルにたどり着けたはず。
その上、俺たちは少し送れて出てきた…足止めを食らってなくても…
俺達が行く…前には…突入して…る…はず…
151廻間 ◆7VdkilIYF. :2009/09/03(木) 22:55:55 0

……

「…はっ!」

どうやら眠ってしまっていたようだ…時計を見れば…
…午後3時!?

不味い!時間が経ちすぎている!
周りを見渡してみると雨まで降っている…池上たちは大丈夫か!?
そう思ってビルを見てみる、ここからビルの位置は近いため様子は確認できるのだが…
音が小さい?音は確かに聞こえるが、戦闘音のようなものは聞こえない…
…見てみればリースまで寝ているようだ、とりあえずリースを起こさないとな。

「リース、起きるんだ」
「…ん?あれ、俺寝てた…?」
「ああ、寝ていた。俺も寝ていたんだけどな」

リースは寝ぼけ眼をこすりながら立ち上がる。
そして時計を見ると驚いたような顔を見せた。

「3時!?おいおい、時間大丈夫なのか!?」
「…そのことなんだが、闘いは終わってるみたいだ…」
「終わってる?それじゃあどうするんだ?」
「…薬局に戻ろうかと思う。
 もし、池上たちが戻ってるようなら…謝らないとな」

そういって俺達は雨の中を駆け出した。

【廻間:国崎薬局に向かう。
    現在午後3時近く】
152宮野 光龍 ◆LHz3lRI5SI :2009/09/04(金) 01:06:29 0
光龍は思った。

なぜ俺だけこんな目に?

沙羅に会いたいだけで来たのに足を怪我してるよ。ざまぁねえな。

「神」なんてやつはちゃんと見てるんだな。人の行いをちゃんと見てる・・・・

人を殺したら当然裁かれるものだ。死んだらたぶん地獄か・・・

閻魔さまが美人だったらいいけどな・・・沙羅みたいな・・・

「ってBADENDするかぁぁぁぁぁぁぁぁああああああああああ!!!!!」
突然の咆哮。誰もが戦闘を止めこちらを振り返る。
立ち上がろうとする
「・・・・っちぃ!!!」足が痛ェ、しかしそんなことを気にしている暇はない。

フラフラになりながら立つ。もういろいろ吹っ切れた。頭もはっきりしてる。

「今雨だったよな・・・・・?そうだろ?鳳旋!」
ポカンとなっている鳳旋が
「雨・・・・じゃがそれが・・・?」と不思議そうに返してくる。まるで「頭でも打ってアホになったか」みたいな目で見てくる。大丈夫、お前よりアホにはならねぇよ。

―死屍累々―

「出て来いイモ山」

いつもより早くイモ山が現れる。いい感じだ・・・
こいつは確か電気を使ってたよな?攻撃させれば能力使うだろうし返り討ちにあえばなおさらいい。ダウンすれば雨で感電する。見た感じ相手は水?に関係するようだし・・・
これを試さない手はない!!!!

イモ男に命令を与える
「やつらをぶっ殺せ!!!」これだけで十分だ。
イモ男は計画通りに能力を使ってあいつらに突っ込んでいった!
その瞬間二人に
「跳べ!!」と叫ぶ。無事二人に伝わったようだがひとつ問題が発生した・・・・
「俺足痛かった!!!!!ヤバイ!!!!」
こいつはかなりヘヴィな失敗だぜ・・・・さらば俺の人生・・・
【イモ男召喚・能力を使って攻撃する】【足が痛むので跳べない】
153神野 沙羅 ◆LHz3lRI5SI :2009/09/04(金) 03:23:01 0
>>147
ルナちゃんが「追ってみよう」と言ったのでさっきの二人をダッシュで追いかける。
―お姉さま〜
「・・・・・ルナちゃん呼んだ?」ルナちゃんを見るが首を横に振る。
気のせいか・・・
―お姉さま〜!    
気のせいだよね!うん!
―お姉さま〜!!
「ちょっと・・・・」とルナちゃんが何か言いたげだ。アー何も聞こえなーい
―お姉さま〜!!!
おお神よ!なぜ私に試練を・・・・
―お姉さま〜!!!
ついに私の怒りが有頂天になった。このままだったら私の寿命がストレスでマッハ何だが・・この声はあいつしかいない・・

「うっさい!!小柳!!!」と言って後ろを振り返る。いない。と、次の瞬間

いつの間にか前にいた女の子から抱きしめられていた。

「お姉さま〜!!会いたかったですわ!今日もご機嫌麗しゅう・・・」
「離れなさいよ!小柳!服が伸びる〜!それより何であんたここにいるのよ!?」
「お姉さまを捜しに来ました!だって私のお姉さまが新しい学校になじめなかったら・・」
「そんな心配はいいのよ!さっさと家に帰りなさい!!」
「私の家は お姉さまの家ですわ!」
「何分からんことを言ってるのよ!!」

それを見ているルナはため息をついてその少女の紹介とこの騒動が終わるのを待っていた。

【場所 ガラス工場近く】【小柳と接触?している】
154才牙 ◆vpAT/EK2TU :2009/09/04(金) 10:42:22 0
>>146

>しかしその時剣兵が離れ護衛がいなくなった私に向かって浦田が刀を構え飛び込んできた。

>「これでお前の負けだ!!」

>また油断してしまっていたようだ。しかしその時空気が震え、浦田が吹き飛んだ。

何が起こった?今のは。
浦田が吹き飛んだ逆の位置にはあやせしかいないはず。
では?

>「ガッ!? なに……が……」           
>「波動で空気を振動させて飛ばしたの。大丈夫。"今ので"は死なないから」

やはりあやせか。
とりあえずは礼を言っておくべきか。

「ありが「でも―――白昼堂々と力を使ったあなた達を私は許さない」

その言葉と雰囲気の変化に驚き礼の言葉が止まった。
だが、戦闘中に思考を止める事はない。なぜなら何度もそれで死に掛けたことがあるからである。
あやせの言葉に固まっている浦田と大川。固まっている隙に剣兵を近くに戻し、弓兵には矢を溜めさせる。

>あやせはその場から跳躍し、一瞬で浦田の前に降り立つ。
>そして彼の胸元に傘を突き立て、その冷徹な目で男を睨みつけた―――

>「ひ、ひぃ……っ!」
>「大丈夫、痛みはないから。すぐに楽になれるよ」

>浦田の体内で波が拡がり、ざわめき、―――爆ぜた。
>だが血飛沫はあやせに当たる事はなく、目の前で"拡散"して散っていた。

なん……だと……?
先ほどこいつらの仲間を殺していたのは見た。
しかし全員が異能力者とはいえ、人が見ているときに殺すことができるとは驚きだな。

>「もう嘘つくのはおしまい。あまり知られたくなかったけど、キバさんも能力者だったしね。今更隠す必要はないかな。
>そこの人。大川……って言ったっけ? 用があるのは私―――でしょう?」

>あやせは大川に指を突き立て、挑発するように笑う。

>「! ……分かってんじゃねえか……ああそうだ、てめぇだ。てめぇが俺の部下どもをぶち殺しやがったんだ……ッ!」
>「……アホくさ。仲間意識だけのその自己中心的な考えが他の人に迷惑掛けてるのに」
>「正義の味方ぶってんじゃねぇぞ偽善者が……所詮はてめぇも殺人者だろうが! もう言葉は要らねえ、出ろ、黒龍ゥゥゥッ!」
155才牙 ◆vpAT/EK2TU :2009/09/04(金) 10:43:38 0
>大川が声高に叫ぶと、背中が黒い炎で覆われる。するとそこから、黒い龍の首が二本伸びて大川の前に立ち憚った。

「打て」

が、その声が響いた瞬間、弓兵の矢が片方の黒龍に命中し爆散した。

「なんだと……!?」

ふむ、一撃で倒せたが少し硬いようだ。が、上級兵なら壊せるな。
気をため上級雷槍兵を繰り出す。
そしてあやせの横に立ち、

「ありがとう、さっきは助かった。」

大川と黒龍から目を離さず礼を言う。

【大川+黒龍×1VSあやせ+剣兵、槍兵、弓兵】
156銀水苑 ◆TF75mpHiwMDV :2009/09/04(金) 17:11:16 0
>>152

『――火祭円輪之結界』(ひまつりえんりんのけっかい)

ガスバーナーのような火の柱で出来た、八角形の立ち上る炎の環。
それが光龍の周囲を囲うように出現し周りの水溜りや雨粒を蒸発させ、焼き払っている。
電気を伝導する雨や水を蒸発させて飛ばせば、それなりの指向性を持つ異能の雷の
余波で感電することは無い。

「よう……どうやら、間に合ったみたいだな。
ちょっと見ない内に吹っ切れた顔してるぜ。
雷に目をつけるまでは良かったが、この水だらけの状況じゃ自分も巻き込むぞ」

そう光龍に語りかけると
統治は光龍の背後に有る路地から、静かに歩んでくる。

「――まあ、さっきまで敵だったんだ。色々言いたいことも有るだろうが……
状況が変わったんだ。あいつらが相手なら……鳳旋、光龍、助太刀してやるよ」

【鳳旋、光龍達に加勢】
157七草 柴寄 ◆O93o4cIbWE :2009/09/05(土) 23:19:34 0
>>148-149

突然けたたましく音楽が鳴った。
何事かと思うとレオーネさんが携帯電話を取り出している。
仕事の話だろうか?
そうこうしているうちに市街地から離れてきた。
目に付いたのは人で賑っているお店で、お客がサンドウィッチを食べているのが見える。
レオーネさんはそこで食事を取る事に決めたみたいで、
駐車場に車を止めて、僕達三人に先に行っている様に告げた。
どうやら仕事の話はまだ長引くようだ。

「いらっしゃいませ、三名様でしょうか?」

店員さんは愛想笑いでは無い本当の笑顔で接してくれた。

「いいえ、四人よ、一人は後から来るわ」

「はい かしこまりました。 それでは此方の席へ――」

女の子のおかげで手続きは滞りなく進んだ。
案内された席は露台の傍で、雨が降っていなかったらこの席は外に出ていたんだろう。
晴れていたならどれだけ快適だっただろうか。その光景を少し想像してしまう。
そういえば、雨が少しだけ小降りになっている様だ。

「それでは、ご注文がお決まりしましたら声をおかけください」

僕達は席に着いた。献立表を開き品目を確認する。

「ねえ、何にしようか?」

隣の席に居る響ちゃんは、僕に献立表を見せながら顔を合わせる。

「……好きなものを選んだら良いと思うわよ。
 あの人の奢りなんだから。

 あ、私は――」

女の子はそう言って目当ての品を決めていく。
僕はこういう所では紅茶を頼む事にしている。
珈琲の方がこういう所では普及的なんだろうけど、珈琲は体質的に合わないみたいだ。
紅茶と、ささやかなパン、僕はそれだけで良い。
自由に選んで良いと言われると、逆に選び辛くなってしまう。
三つの中から一つを選べと言われたら、僕だって選べるけど……。
自由な選択肢は、広すぎる故逆に選択肢を奪ってしまうと僕は考える。
158七草 柴寄 ◆O93o4cIbWE :2009/09/05(土) 23:26:02 0

「じゃあボクはこれ、Aセット、柴寄君は?」

暫く真剣に悩んでいると響ちゃんが注文を決めたみたいだ。
丁度良い、僕も響ちゃんと同じ者を頼んでしまおう。

「…じゃあ僕も響ちゃんと同じ、Aセットにしようかな」

そう言って何だか体が軽くなった気がした。

「後はあの人を待つだけ…」

少しして、レオーネさんが此方を見つけ、向かってきた。
 
「待たせて悪かったね。注文は頼んだのかい?」

レオーネさんはにこやかに笑みを浮かべている、けど、僕にはレオーネさんが疲れている様に見えた。
けど、献立表を見るといきなりレオーネさんの目の色が変わった。
額に手を当てて、なにか口走っている。
159七草 柴寄 ◆O93o4cIbWE :2009/09/05(土) 23:26:49 0

「……なにをひとりでブツブツ言っているの? レオーネ」

ハッと我に返ったレオーネさんは、少し気まずそうにしていた。
それから少ししてレオーネさんの注文も決まった。
注文を頼み、食事が届くのを待つ間、女の子が最初に口を開いた。

「そういえば、まだ名前を言ってなかったわね。私の名前は、『塚原 ひかる』
 あなたはシヨリ君って言ってたわね。
 そちらの女の子の名前は?」

「ボクは伊賀 響…」
「そう…響ちゃんね…… それで、あなた達はどういう関係なの?」
「え……」

心臓が脈打つ、僕達の関係、それは。

「……友達だよ、ね、…七草君?」

響ちゃんがそう言う。僕はそれに肯くしかなかった。

「……友達、違うわ、貴方は彼女にとても大きな引け目を感じている…。
 それはどちらかというと罪悪感の様なものね…」

ひかるは冷たく言い放つ。賑わいの中、彼等の席だけがシンと静まり返った。
レオーネもすぐには状況を理解する事が出来なかったらしい、困惑の表情を浮かべていた。
柴寄達は凍りついた様にそれを聞くだけだった。

「貴方は…、いえ、貴方も贖罪を求めているのよ。
 たとえ貴方が赦されたとしても、貴方自身が貴方を赦さないのでしょうね。
 ……それはとても悲しい事。なにが貴方をそうさせたのかしら…」
  
その言葉は、あるいはレオーネに向けられていたのかも知れない。
それを破る様に、けたたましく卓を叩く音が鳴り響いた。

「――ッ……」

卓を叩いたのは響だった。
彼女は立ち上がり感情を露にひかるを見つめ、次にキッ、とレオーネを睨み付ける。
口から出そうなものを、理性で堪えて、その表情には、なんともいえないものがあった。

「……」

それ以上は、ひかるも何も言わなかった。
レオーネが、間も無く食事も来る為、その話は後にするべきだ、という旨を伝えた為、この場は治まったが、
代わりに雨音と沈黙が四人の間に流れ続けた。

【現在地:カフェ】
【食事待ちの状態】
160池上 燐介 ◆ICEMANvW8c :2009/09/07(月) 04:37:47 0
再び薬局へと戻った俺達を待っていたのは、シーンとした静寂だった。
店には桐北、煌神、国崎の容態を見守る高山達三人がいるはずなのだが、
彼らの発する生活音というものがまるで聞こえてこない。
「どこかへ出かけたのか?」と怪訝に思いながら奥の部屋の戸を開けると、
そこには未だ布団の中で目を覚まさない桐北達を囲むように、
畳の上にゴロリと横になって静かに寝息を立てている高山達の姿があった。
俺は「やれやれ」と溜息をつき、惰眠を貪る三人を蹴飛ばし叩き起こそうとしたが、
それを籐堂院はやんわりした口調で止めた。

「無理もないさ。そっとしておいてやれ」

無理もない──。確かに考えてみれば、ビルの50階まで二本の足で駆け上がり、
その間幾多の強敵を蹂躙し、最終的には地下に捕らわれた桐北達を救出して薬局まで来たのだ。
体に蓄積された疲労は多大なものだろう。
俺は舌打ちするように「フン」と鼻を鳴らすと、続いて辺りを見回しながら言った。

「……この様子では、やはり他の連中は戻っていないな」
「……ああ。だが、いずれにしろ今の私達がここを早々に発つ理由はない。
もうしばらくは彼らの生存を信じていてもいいはずだ……」
「まぁ、そうだな……って、おい。大丈夫か?」

見ればいつの間にか籐堂院は眠そうに目をとろんとさせ、立ったまま壁に寄りかかっていた。

「す、すまない……私も……もう……」

彼女は途切れ途切れにそう言い残すと、壁に背をこすらせながら畳に座り込み、
やがてその体勢のまま寝息を立て始めた。

「残ったのは俺だけか……ま、別にいいがな」

呟きながら隣の部屋に行き、おもむろにテレビのスイッチを入れる。
スイッチを押した瞬間、先程停電があったことを思い出したが、
停電は既に復旧していたのか、テレビは中年の男の顔を度アップで映し出した。
良く見ればそれは有名な俳優で、番組はどうやら昔のドラマの再放送らしい。

俺はそれを何を思うとはなくゴロリと横になって見ていたが、
体を横にしたことでこれまでの闘いの疲れがじわじわときたのか、
いつの間にか瞼は閉じられ、深い眠りへと落ちていた──。

【池上 燐介:薬局へ戻った後、眠ってしまう】
161 ◆GWd4uIuzU6 :2009/09/07(月) 23:59:20 0
>>138 >>152 >>156

小さな魚雷の姿をした死神が鳳旋の姿を捉えると、
その鎌を一直線に振り下ろす。

結果から言うと、一発目の魚雷が当たる事は無かった。
鳳旋は動物的な反射神経でこれをかわしたからだった。
すぐさま体勢を立て直すと、彼は自身の性格の如く一直線にクローディアへと向って走り出す。
しかしながら、これが幸か不幸かは直ぐに解った。
彼の接近を拒むかのように、次々と周囲の水溜りから"死神"が飛び出してくる。
鳳旋はその巧みなステップで魚雷を次々に避けてみせる。
さながら、踊っているかの如く……。

回避が疎かになったのを見計らったかのように、魚雷は足元から際限なく湧き出てくる。
このままでは埒が明かないと本能で覚ったかは定かではないが、鳳旋の取った行動は奇策と呼ぶに相応しい物だった。
自身の異能の炎を推進力に、まるでロケットの様に一気にクローディアとの距離を詰めたのだ。
これにはオズワルドとクローディアも驚いて見せた。
口ばかりが達者な男かと思ったら、なかなか如何して。
先程の少年よりは面白い。
二人にとって鳳旋は、十分に興味の対象になったようだった。

がら空きの懐……クローディアの側面へと飛び込もうとした鳳旋の意図を嘲笑うかのように
魚雷は再び彼を捕捉していく。

「クスクスクス……残念ねぇ。すごく楽しいわお兄ちゃんって。
 でも、そろそろ限界かしらね」

クローディアが魚雷を一斉に鳳旋の元へ集結させようと、
そのか細い右手を上げたその時であった。

>「ってBADENDするかぁぁぁぁぁぁぁぁああああああああああ!!!!!」

突如として上がった、最早絶叫ともいえる叫び声。
声の主は、オズワルドの異能力『オディールバイウォーター』を受けて倒れ込んでいた光龍であった。
痛むであろう足を庇うでもなく、フラフラと立ち上がる光龍……。

>「出て来いイモ山」

光龍の声に呼応したかのように、地中から何かが這い出てくる。
それは薄汚い浮浪者のような姿をした人間であったモノ――
光龍の異能力によって死せる戦士と化した哀れな男の成れの果てであった。

イモ山と呼ばれた頭に風穴の空いた死人は、文字通りの猪突猛進でオズワルド達目掛けて突進してくる。
162 ◆GWd4uIuzU6 :2009/09/08(火) 00:02:25 0
>>161

こんな状況でもオズワルド達は嘲笑を止めようとはしない。
イモ山目掛けて水溜りから魚雷が次々と発射される。
手応えはあった。しかし、イモ山は突進を止めようとはしなかった。
以前変わらぬスピードで肉の壁は迫ってくる。ここで初めてクローディアは気付いた。
このイモ山と呼ばれた男は、もう既に死んでいるのだと。
痛覚というものが無い死人に対してクローディアは、死人の足だけを狙っていく。
即ち、機動性を奪ってしまおうというのだ。
狙いは成功し、死人は地面へと突っ伏した……。

途端、彼女達を包み込む強烈な衝撃。
それは二人を体の芯から焼き尽くさんばかりの勢いであった。
――電撃。そう電撃である。イモ山の突進はこの電撃を
オズワルド達に浴びせる為の云わばブラフであったのだ。
だが、電撃を食らって尚、二人は薄気味の悪い笑みを消す事は無かった。

自分達は勘違いをしていた。最初の少年は遊び相手としては面白くないとばかり思っていた。
ひとしきり遊んでから、二人目の少年と共に殺そうと考えていた。
だが、今の機転で考えを改めざるを得なくなった。
最初の少年、宮野光龍はオズワルド達の御眼鏡に適う存在だったのだ。
二人にはその事が面白くて仕方が無いのである。

「そうだね……クローディア。今のは楽しかったぁ。
 おもしろかったよね、お兄ちゃん」

所々焼け焦げた子供用の礼服を手で払いながら、オズワルドはクローディアの方を振り向く。
クローディアの方もまた、同じように所々焼けたドレスを
手で払いながらオズワルドの方を振り向いた。
彼女の方はドレスだけではなく、雪のような白い肌にも火傷の痕が見られる。
もっとも、彼女はそれを全く気にする様子は無い。痛みでさえも面白いからであった。

彼ら二人を支配するエモーションはたった二つのみ。
"面白い遊び"か"つまらない遊び"か、その二つしか無いのだ。

「クスクスクスクスクスクス――。
 あの黒い髪のお兄ちゃんとはまだまだ遊べるのね、オズワルド」

ここでオズワルドは人間がまた一人増えている事に気付いた。
黒の短髪に一房混じった灰色の髪の毛……。
この人も自分達と遊んでくれるのだろうか?

「あれれ? そこにいるのは誰かなぁクローディア。
 ほら、あそこの黒い髪のおじちゃん」

オズワルドが指差した先をクローディアは見つめ、そしてまた例の如く二人同時に首を傾げる。
しかしながら、あまりに可愛らしいその人形のような仕草と顔立ちに
騙される者はこの場には居なかった。
彼らの仕草はただ只管に不気味さしか醸し出していない。

「機関の人よ、オズワルド。話したことはないけど見たことはあるわ。
 ――ねぇ、おじちゃん。わたし達と遊んでくれる?」

オズワルドとクローディアは同時に首を正す。
肉食の猛獣よりも性質の悪い死神二人組みは、新しい遊び相手を見つけた事により一層嘲笑するのであった。

【オズワルド&クローディア:銀水苑を攻撃対象に入れる】
163廻間 ◆7VdkilIYF. :2009/09/09(水) 20:09:17 0
「ハアッ、ハアッ」

雨の中を駆け抜けたせいか、リースの息が上がっている。
俺はそれに対したように息は上がっていない。
過去の修業生活がものを言ったということか…?
…国崎薬局の看板が見えてきた。

「リース、ついたぞ」
「え、ああ」

びしょぬれになった顔や体を袖で必死に拭うリース。
だが、傘などさしていないためにまたすぐに雨粒で濡れてしまった。

「…寒いぜ〜…風邪引いたかな」
「雨の中走ってりゃ寒くもなるさ」

そう言って俺はドアを開けた。
ドアを開け、聞こえてきたのは…テレビの音声だけ?

「なんだ、テレビがついてるなのに誰もいない…?」

不思議に思ったがそんなことになってる理由はすぐに分かった。

「なんだよ〜、みんな寝てるのかよ…」

後ろから出てきたリースがボソリと呟く。
俺もそれに返事をするかのようにため息をついた。

「とにかく、風呂でも借りるか…」
「あ、先に入ってもいいか」
「いいぞ」

そう返すとリースは風呂場に向かった。

「とりあえず身体拭かないとな…」

俺はバスタオルが置かれているであろう洗面台に向かった。

【廻間:国崎薬局で身体を拭いている。
    リースはシャワーを浴びている】
164鳳旋 希一 ◆O93o4cIbWE :2009/09/09(水) 22:43:56 0

「ハァー、ハァー…」

鳳旋は焦っていた。
クローディアの異能力を前に、近づく事が出来ないこの状況。
次々と迫る魚雷を何とかかわし続けているが、いつまでも持つ自身が無かった。
更にクローディア達がいつまた光龍に狙いを変えるか分からない。
「なんとかせねば」、そんな思考が脳裏に浮び、それがさらに鳳旋の焦りを助長させる――

「ってBADENDするかぁぁぁぁぁぁぁぁああああああああああ!!!!!」

――突然の咆哮じみた叫び。
声の主の光龍はフラフラになりながらも立ち上がる。
次に自身の異能力を発動し、昨夜殺した"イモ山"をゾンビとして蘇らせた。
そしてゾンビに命令を下し、ゾンビは命令の通りにクローディア達に攻撃を仕掛けた。

――結果から言うと、イモ山の攻撃は電撃を帯びていた様で見事クローディア達を感電させる事に成功した。
しかしながら天候は雨のこの状況、電撃は無差別に襲い掛かり、逃げそこなった光龍に襲い掛かる。
突然、光龍の周囲を炎が包み、またたくまに水を蒸発させ、光龍を電撃の余波から救って見せた。
鳳旋が炎を扱う異能力者とはいえど彼は其処まで器用な芸当は出来ない。

「よう……どうやら、間に合ったみたいだな。
ちょっと見ない内に吹っ切れた顔してるぜ。
雷に目をつけるまでは良かったが、この水だらけの状況じゃ自分も巻き込むぞ」

光龍を救って見せた人物は、先程洋館内で戦った『銀水苑 統治』その人だった。
光龍の背後の路地から現れ、そう語りかけた後、

「――まあ、さっきまで敵だったんだ。色々言いたいことも有るだろうが……
状況が変わったんだ。あいつらが相手なら……鳳旋、光龍、助太刀してやるよ」

統治は鳳旋達に加勢してくれると言う、鳳旋は、

「おお!!助かる!恩に着るぞ」

そう言って光龍達の元へ駆けつけた後、

「お、おい光龍大丈夫なのかその足…いや、聞くだけヤボじゃった」

そして三人は足並みを揃える。

「よし行くぞ!!」

【鳳旋:統治の加勢を受け入れ、光龍達の元へ合流する】
165銀水苑 ◆TF75mpHiwMDV :2009/09/12(土) 16:20:54 0

「ブラッドプール(血の池)のオズワルドとクローディア、か・・・・・・」

考えても見ればこいつらも哀れな子供だ。
親に捨てられ、施設から闇に売られ、行き着いた先が機関の粛清部隊・・・・・・か。
彼らの心火を見る。
異能の闇と裏世界の狂気に純粋で無垢であった心を食われ
そして何時しか全てを受け入れてしまった。
こいつら、こいつらは、もう・・・・・・
銀水苑の表情に例えようの無い哀れみがふっと浮かんだ。

「――ああ。遊んでやるとも。
ただ・・・・・・お前達は少々やりすぎた。
遊んだ後の子供はおねんねの時間だ――永遠のな」

躊躇いを振り切り苦りきった物を吐き出すようにいった。
止めなくてはならない。こいつ等の殺戮のお遊戯を。
哀れなこの子達をいい加減に眠らせてやらなきゃならない。

「鳳旋、子供だからって下手に手心を加えているから攻撃の意図が読まれている。
自慢のスピードも心のどこかに躊躇いがあれば容易く読まれる。
相手の背景は考えるな。相手を殺す気で行けないのなら
せめて技と攻撃に全意識を集中しろ。さもないと殺されるぞ。
光龍、よく覚えておけ、これが殺戮のゲームの行き着く果てだ
それに付き合いすぎれば『俺』か、『あいつら』かどちらかになるしかない」

統治が小太刀とナイフを構える。
166銀水苑 ◆TF75mpHiwMDV :2009/09/12(土) 16:22:27 0
「相手は水使い・・・・・・・・・天候は最悪な事に雨。
だがこんなときだからこそ出来る技がある。
――龍神の灯火に近付く事あたわず!」

裂帛の気合と共に炎気を開放した。

『――不知火(しらぬい)』

統治の構えた小太刀が揺らめきと彼の周囲に五つの小さな火珠が出現し、統治の周りを旋回しだした。
それに伴って統治は相手を幻惑するような動きを取る。
まとう炎気が周りの雨や水溜りを蒸発させ、統治の周囲に霞や霧を作り出した。
霧の中の統治の姿が歪み、火珠がぽん、と微細な紅蓮の火の粉を撒き散らして弾ける。
その瞬間、統治の姿が一瞬だけ霧と水蒸気に遮られたが―
すぐに霧が晴れる。
だが、霧から現れた統治の姿は一人ではなかった。
六人もの統治の姿が現れたのだ。さながら分身の術のように。

「多少の環境の不利は物の数ではない・・・・・・
炎使いなら雨天などの状況は想定してしかるべきだ」

不知火とは日本に伝わる怪火。龍神の灯火とも呼ばれる。
暑い夏の夜、海岸から数キロメートルの沖に、始めは一つか二つ炎が出現する。
それが左右に分かれて数を増やしていき、最終的には数百から数千もの火が横並びに並ぶ。
また不知火に決して近づくことはできず、近づくと火が遠ざかって行く。
不知火の正体とは側方鏡映の蜃気楼。
大気に熱い空気と冷たい空気の温度差が有ると光が屈折する。
村の炎の明かりが熱せられた大気によって乱反射すること幾つもの幻が生まれる。
いわば【水上】で起こる蜃気楼……
統治は水を熱することで出来た霧をあえて発生させ
その中で炎によって温度差を生み出し、
そして自分の幻影を作り出したのだ。
苦手とする雨や水を逆に利用して幻を作る・・・・・・
数年を掛けて編み出した神懸った精度の炎の妙技。
炎の弱点である水を何とかして制しようとする統治の苦心の結晶だ。
167銀水苑 ◆TF75mpHiwMDV :2009/09/12(土) 16:23:46 0

火珠を核とする幻に攻撃力は無い。
メタトロンの消費量を抑えるため炎の温度自体は高くない。
最低限、幻を維持するための温度差が作り出せればそれで良いからだ。

普通なら温度や大気の状況で容易く幻像が歪み見破られてしまう。
本物と見分けの付かないクオリティの幻。
その炎の幻を維持、制御し、かつ実戦で使えるようにする。
それを実現するためには文字通り血を流す実戦と訓練の繰り返しがあった。
しかしその結果、その技を自分の物としている。

「さて、手数が多いようだが……お前らに本体が分かるかな?」

わざと挑発したような口調を取る。

これで相手の攻撃の癖が読みやすくなるし回避率も上がる。
ダミーが増えれば自然に光龍や鳳旋への攻撃密度は下がる。
闇雲に幻を攻撃してメタトロンを無駄に使ってくれればなお良い。

【雨の状況を逆利用し、五つの自分の幻を作り出す】
168池上 燐介 ◆ICEMANvW8c :2009/09/12(土) 22:20:58 0
俺は、どこからともなく突然聞こえてきた男の声で目を開けた。
瞬間、目に飛び込んできたのは、若い男がカップ麺をすすりながら何やらと
叫んでいるシーンを映し出したテレビの画面だった。
初めはこれは何なのか、ここはどこなのかという疑問がボーっとする頭に渦巻いたが、
画面を10秒ほど見つめ続けたところで、俺は全てを思い出して「ふぅ」っと息を吐いた。

「……そうか、テレビをつけたまま寝てしまっていたのか」

良く見れば若い男は有名なタレントである。
どうやらカップ麺のCMの音で起こされてしまったらしい。
軽く舌打ちしながらテレビの電源を切り、起き上がって隣の部屋に行くと、
そこでは相変わらず高山達がすやすやと寝息を立てていた。
「やれやれ」というように頭をかきながら腕時計を見ると、時間は午後の四時を過ぎていた。
図書館を出たのは三時だったから、四、五十分ほど眠っていたと見ていいのだろう。

「おい、そろそろ起き──」

>>163
そう言いかけたところで、俺は眠っている高山達から、視線を廊下の奥へと向けた。
高山達とは違う、別の気配が感じられたからだ。
だが、それが敵のものではないということは分かっていた。
敵であったら、俺もこの部屋で寝ている連中も、今頃生きているはずがないからである。
俺は通路奥へと進み、その気配のある部屋前で止まると、勢い良くドアを開けた。

「やっとお戻りか……随分時間がかかったじゃないか」

中にいたのは、急な俺の登場で驚いたのか、バスタオルを持って目を丸くしている廻間であった。
俺が感じた気配は二つ。その一つが廻間であれば、もう一つも自ずと想像できるのだが、
俺は敢えて廻間に訊ねた。

「で、お前と後誰なんだ? 死なずに生きて帰れた奴は」

【池上 燐介:目を醒まして洗面台のある部屋へ行く。現時刻、PM4:00】
169レオーネ ◆GWd4uIuzU6 :2009/09/13(日) 21:42:46 0
>>159

流石にコーヒーランチという訳にはいかんか。
まぁ、在ったら頼んでみたい気もするがな。
私はメニューの中からサンドイッチとエスプレッソを店員に注文すると、
出された使い捨てのナプキンに手を伸ばした。

>「そういえば、まだ名前を言ってなかったわね。私の名前は、『塚原 ひかる』
> あなたはシヨリ君って言ってたわね。
> そちらの女の子の名前は?」

私とひかるは知った仲であるが、伊賀とは顔見知りなのだろうか?
そもそも伊賀たち暗殺部隊の人間と出くわす程の前線には出ていないだろう。
誠一郎ならそうする。子供を無理に戦わせる程、奴は愚かではない。

>「そう…響ちゃんね…… それで、あなた達はどういう関係なの?」

ひかるのこの言葉からは初対面という感じはするが、
それがフリなのかそれとも実際の事なのかは解らなかった。
しかしながら、その言葉の中からある種の異質な冷たさを感じざるを得なかった。
苗字はナナクサというらしいシヨリ君と伊賀も、その冷たさを感じ取れたようだった。

>「……友達、違うわ、貴方は彼女にとても大きな引け目を感じている…。
> それはどちらかというと罪悪感の様なものね…」

――途端、静まり返るテーブル。それは夜の森が煩く感じ取れる程であった。
やれやれ、ひかるの悪い癖が出たのか。確かに彼女は洞察力や感受性に優れてはいるが、
それで物事が旨く運ぶほど世の中は甘くは無い。

>「貴方は…、いえ、貴方も贖罪を求めているのよ。
> たとえ貴方が赦されたとしても、貴方自身が貴方を赦さないのでしょうね。
> ……それはとても悲しい事。なにが貴方をそうさせたのかしら…」

シヨリに向けて言い放ったひかるの言葉には、シヨリの他に私も含まれている気がしてならない。
先刻私に向けて言い放った言葉の続き……。それが今のこの言葉なのだ。
赦されたい……? この私が?
一体何を? 一体誰に?

――突如鳴り響いた食卓を叩く音が、私を思考の世界から現実の世界へと引き戻してくれた。
だが、なにやら怪しい雲行きのようだ。伊賀はキッと鋭い視線で私を睨みつけている。
一線を越えないのはシヨリが居るからか、それとも理性が止めているのか……。
恐らく両方…というよりシヨリが居るから理性をフルに働かせているのだろう。
表情を作るのを忘れていた私の顔には、部屋で一人で居る時と同じく、
何の感情も見受けられない程の無表情が張り付いていた。
絵画の中の人間のような無機質な伊賀と見つめ合う。様々な意味で"同類"なのだ、私たちは……。
伊賀響、お前は何を望むのかね?

「もうすぐ料理が運ばれてくる。話はその後でも構わんだろう」
170レオーネ ◆GWd4uIuzU6 :2009/09/13(日) 21:49:03 0
>>169

この言葉は伊賀を座らせるだけの力を持っていたようだった。
今、彼女はこの行き場の無い怒りを何処で晴らそうか?等と思案しているのかも知れない。
取り敢えず、ひかるには釘を刺しておくか。また伊賀の怒りを買ってしまっては適わんからな。

「ひかる君。人にはそれぞれ、触れて欲しくない部分がどんな人間にも少なからず在る。
 君が聡い娘だという事は解るが、それで世の中が円滑に進むとは限らない」

むしろ、他人の心の内を探るなど必要ないのだ。
もし仮に人に他者の心が読めるという能力が備わっていたなら……。
人間という種は当の昔に絶滅している筈だろう。お互いに殺しあって……。
異能者の中でも、機関のメインターゲットの中でも取分けイレギュラーな存在であるひかるには、
その事が解らないのかも知れない。結論から言えば、彼女は未だ子供なのだ。
どれ程背伸びをしようと、どれ程大人の雰囲気を漂わせようと、未だ世間という物を、
舐めているという訳ではないが甘く見ているのだ。
私も昔はそうだったから良く解る。

――程なくして店員がシヨリ君たちが頼んだであろう料理を運んできた。
なかなか美味しそうじゃないか。ひかるの方にも料理が運ばれ、
まだ来ていないのは私のみとなってしまった。
仲間がいないのは少々心もとないな。

「三人とも、美味しいかい?」

各々の反応に満足した所へ、店員が私が注文した料理を運んできた。
この店のサンドイッチはトーストの表面を焼いてあるようで、
ほのかに狐色に染まっている。
おもむろにナイフとフォークを手に取ると、その狐色の部分にメスを入れる。
食べやすい形に整形するのだから、この表現は間違っていないな。
――具はシンプルではないがポピュラーな物ばかりだった。
ハムにレタスにチーズ……。それらが合わさって一つのハーモニーを奏でている。
その中で見慣れぬ食材が一つ、不協和音を奏でていた。
"それ"を見つめていると、私の不思議そうな顔に反応したのかひかるが"それ"の正体を教えてくれた。

「それ、きんぴらごぼう。珍しいわね、パンにきんぴらごぼうって……」

あぁ、これが噂に聞くきんぴらごぼうか。ひかるの説明から察するに、
流石に日本でも普通はサンドイッチの具財に使わないらしい。

――食べながら思う。私は赦されたいのか、と。
どうも先程からひかるのあの言葉が頭に引っかかる。
私は一体誰に赦されたいのだ? そもそも何を赦して欲しいのだ?

――私の自問自答の旅は、未だゴールが見えて来ない。

【レオーネ:現在地 カフェ】
【全員に食事が運ばれてくる】
171 ◆GWd4uIuzU6 :2009/09/15(火) 23:51:51 0
>>162 >>165-167

>「――ああ。遊んでやるとも。
>ただ・・・・・・お前達は少々やりすぎた。
>遊んだ後の子供はおねんねの時間だ――永遠のな」

「あそんでくれるって、よかったねクローディア。
 そうだ! 遊んでくれる人が三人になったし、順番にするのはやめようよ」

銀水苑から遊戯の了承を得たオズワルドとクローディア――。
手に持つ小太刀とグルカナイフを構えた銀水苑に、二人が異能力を行使しようとした丁度その時であった。
二人の視界に五つの火球が映し出された。それはゆらゆらと不思議な動きで銀水苑の周りを旋回し、
それに合わせるかのように銀水苑自身も緩急をつけた幻惑的な動きでオズワルド達を翻弄し始めた。
すると、銀水苑の周りの水分という水分は蒸発し、彼の周囲一帯が霧で覆われたのだ。
不思議そうにその様子を覗き込むオズワルド達であったが、
霧が晴れると共に彼らは初めて花火を見た子供のように歓声を上げた。
何故ならば、霧の中から二人の目の前に五人の銀水苑"達"が現れたからだった。

「わぁー! 機関の人ってやっぱりすごいんだねー」

言い終わる前にオズワルドが水を地中から呼び寄せると、"銀水苑の一人"を刺し貫く。
振り出した雨は地中から吸収されて、地面の比較的浅い層に留まっていたのだ。
それを呼び寄せたまでの事。周りに水が無くなったのならば別の場所から持ってくれば良い。

だが、攻撃が決まった様子は無い。
これは銀水苑が先程施した『不知火』で作り出した蜃気楼に他ならなかったからだ。
ここでオズワルドは一つの違和感を感じ、攻撃を一旦中断する。

「すごい、すごーい! お兄ちゃんたちもまだ遊べるよね?」

続いて嘲笑から歓声へと変わったクローディアが、すぐさま体を翻しその伸ばした右腕から魚雷を生み出す。
しかしながら、この魚雷は周囲に水が無ければ敵に近づく事はおろか、移動する事もままならない――筈であった。
恐らく銀水苑も、その事に気付いたのだろう。だからこそ、周囲の危険物――即ち水を取り除いたのだ。
鳳旋と光龍は先程より多少緊張を解したが、銀水苑自身は未だ周囲への警戒を怠っては居なかった。

――ミシリ、と鳳旋たち三人は何か途轍もなく不吉な音を耳にした。
172 ◆GWd4uIuzU6 :2009/09/15(火) 23:54:13 0
>>171

「――ばぁん」

突如としてクローディアが指鉄砲で近くの大木を狙い打つ。

――木はその巨体の中に幾重にも水分を張り巡らしている。
その水分……ほんの微量でささやかな水分に魚雷を移動させ炸裂させる事で、
周りの立木よりも一回り大きな樹木を三人に向けて倒そうとしたのだ。

注意深く周囲を警戒していた銀水苑は他の二人よりも早くその事に気付き、
同時に倒木を防ぐ為に異能力を行使しようと――同時に不敵な声を上げるオズワルド。

「みーつけたぁ……。おじちゃんがホンモノだね」

地中からの水による奇襲を間一髪の所で回避する事に成功した銀水苑の前に、
すぐさま次の水が押し寄せる。

オズワルドは蜃気楼による幻惑の温度が、予想した銀水苑の温度よりも著しく低い事に気が付いたのだ。
確かに全く熱が無いという訳ではない。
だが、仮にも銀水苑は周囲の水を蒸発させるだけの熱気を持つ炎系の異能者だ、
それだけの高熱を身に纏って自身の温度が低いはずは無い。
ならば、温度の高い方が本物だ……。このオズワルドの仮説は本体を攻撃する事で証明され、
雨の中の蜃気楼を打ち破ったる事に成功した。

オズワルドの異能力は水を操る事。
そして、その水は温度を感知し熱量の多い人間の、熱量の多い部分を狙う――
云わば熱源追尾式だったのだ。

バキバキと嫌な音を立てながら、立木はゆっくりと傾き始めている。

「ああほら、はやくなんとかしないと木が倒れちゃうよぉー」

クローディアは再び嘲笑を、オズワルドは歓声を上げ、
"その瞬間"を今か今かと待ちわびていた。

【オズワルド&クローディア】
【大木はもう間も無く倒れる】
173名無しになりきれ:2009/09/16(水) 18:10:10 O
お、面白そうなスレがあるぞ!
174名無しになりきれ:2009/09/16(水) 18:17:39 O
邪気眼見せろよ、邪気眼
175Flugel:2009/09/17(木) 19:22:09 0
フフフッw
ヒーローは遅れてやってくる


ブラックバーニング!!!!
176七草 柴寄 ◆O93o4cIbWE :2009/09/18(金) 23:33:29 0
>>169-170
それから、柴寄は俯いたまま黙り込んでしまう。
響は心配そうに柴寄を覗いている。
しばらくして、レオーネを除いた三人に、注文していた料理が運ばれて来た。
柴寄と響はそれを受け取り、黙々と料理に手を付け始める。
「三人とも、美味しいかい?」
二人はレオーネの問いに会釈し、程なくレオーネの元にも料理が届く。
出された食事は満足のいくものだった、しかし柴寄はその余韻にひたる事は無かった。
「ごちそうさま…」
食事が終った後もなお無機質なままでいる柴寄の代わりに、響が礼を述べた。

【食事を終える】
177廻間 ◆7VdkilIYF. :2009/09/19(土) 22:42:07 0
>>168
俺が洗面所で身体を拭いていると、ドアがいきなり開いた。
いきなりのことで少し驚いたが、何てことはない。
池上が起きて俺達の存在に気付き、確かめに来ただけのことだ。

>「やっとお戻りか……随分時間がかかったじゃないか」

確かに単純に戻るだけ、というのなら時間がかかりすぎたな。
しかし違う場所で寝ていたというのも何だか気が引ける…

>「で、お前と後誰なんだ? 死なずに生きて帰れた奴は」

聞かなくても分かるだろうに、案外意地の悪いヤツだな。
まあ本当に分からなかった時や勘違いしている可能性も零じゃあない。
一応ちゃんと答えるか。

「言わなくても分かるだろ?リースだろ」

俺は身体を拭き終えると、入り口付近に立っている池上を通り越しタンスのある場所へと向かう。
濡れた服を着続けていたら、流石に風邪を引くかもしれない。
とりあえず上半身だけでも着替えるとするか…ワイシャツの一枚や二枚ぐらいあるだろうからな。
俺はタンスの中を探し、ワイシャツを探した。

「…お、あった」

ちょうど二枚って所か。
リースのために風呂場の前にでも置いといてやろう。

【廻間:上だけワイシャツに着替える、ちなみに下も着替えたい。
    リースは未だに風呂場でシャワーを浴びている】
178鳳旋 希一 ◆O93o4cIbWE :2009/09/20(日) 21:35:03 0
>>165-167>>171-172
「鳳旋、子供だからって下手に手心を加えているから攻撃の意図が読まれている。
自慢のスピードも心のどこかに躊躇いがあれば容易く読まれる。
相手の背景は考えるな。相手を殺す気で行けないのなら
せめて技と攻撃に全意識を集中しろ。さもないと殺されるぞ。
光龍、よく覚えておけ、これが殺戮のゲームの行き着く果てだ
それに付き合いすぎれば『俺』か、『あいつら』かどちらかになるしかない」
「わかっとる! …そんなことは」
そう、解っている、頭では解っているのだ。

「相手は水使い・・・・・・・・・天候は最悪な事に雨。
だがこんなときだからこそ出来る技がある。
――龍神の灯火に近付く事あたわず!」

『――不知火(しらぬい)』

統治が炎気を開放し、辺りに霧が立ち込める。
霧が晴れると其処には六人の統治がいた。
勿論統治が六人兄弟だったとか、そんな事は断じて無く、
六人の内のいずれかは幻影によって生み出されたものだ。
それは高度な技術と理論に裏打ちされた、まさに神業の域に達する物だったのだが、
鳳旋はその仕組みが全く理解できず、味方に混乱させられる形となってしまった。
混乱している鳳旋を余所に統治達とクローディア達との戦闘が繰り広げられている
「すごい、すごーい! お兄ちゃんたちもまだ遊べるよね?」
クローディアが歓声を上げ、右腕に魚雷を生み出す。
発射と同時に魚雷は何処へと姿を消した。
クローディアの生み出す魚雷は水から水へと瞬間移動する性質があるようだ。
魚雷と接触してその事に本能的に感づいていた鳳旋と、
その様子を観察していた為にその性質に気付いていた光龍は辺りに水が無い為にいきなりの奇襲は無いと気を緩めていた。

――ミシリ、

途端、不吉な音が背後から聞こえてくる。

「――ばぁん」

おどけた様子でクローディアが指鉄砲で樹木を狙い打つ。
鳳旋達が振り向くと、他よりも一回り大きい樹木が彼等の方へ倒れ掛かっていた。
「…ヌぉ………」
頼みの綱の統治は幻影の種を割られたのか、本体が攻撃に遭っている様子で、光龍は足を負傷している。
鳳旋だけならその場から逃げ出す事は容易だった。だが彼には足を負傷している光龍を捨て置く事は出来ない。
「ぬぁー!! 面倒臭いことしおって!!」
止めてやる、といわんばかりに樹木へ突っ込もうとした鳳旋、だがすぐにそんな事は無理だと言う事に気付き踵を返す。
「やっぱ無理じゃ!おぶされ光龍!!」
咄嗟に光龍をおんぶしその場を離れる鳳旋、樹木がピシピシとその体が割れる音を連ねながら鈍い音と共に地面に倒れこむ。
長い年月を経た樹木はクローディアの遊びのためにあっけなくその生涯を終えてしまった。
鳳旋達はその場から離れる事に夢中で統治の姿を確認する事が出来なかった。
「あ、あのガキども…とんでもないことしよる…

 大丈夫か統治ーー!!」

【光龍をおぶって大木を避ける】
179銀水苑 ◆TF75mpHiwMDV :2009/09/21(月) 07:46:27 0
>>171-172 >>178

「くっ、微塵――」

注意深く周囲を警戒していた銀水苑は他の二人よりも早くその事に気付き、
同時に倒木を防ぐ為に異能力を行使しようと――同時に不敵な声を上げるオズワルド。

「みーつけたぁ……。おじちゃんがホンモノだね」
オズワルドの暗い愉悦に満ちた歓声が響く。
「つっ!」
(何れ見破られるとは思ったが此処まで早いとは!)
地中から細い水の奔流が襲い来る。
その危険性を一目で統治は看破した。
水と言って侮れない。
これの原理は工業加工に使われるウォーターカッターと同じだ。
微細な口径より水流を超高速で噴射させる「水の剣」
ウォーターカッターの威力は包丁の薄い刃さえも二枚にスライスしてしまう。
切るための道具でさえ、まるで魚のように斬られてしまうという恐ろしく精緻な切れ味なのだ。
それを回避しようとした統治の動きにあわせて水が曲がる。

「誘導っ!?そうかこいつら、俺の温度を……」

統治の判断は早かった。左手に握り締めていたククリナイフを離す。
能力で熱せられたナイフをデコイとしたのだ。
死の水剣のロックオンが統治から外れ
放った熱を持ったナイフの方を弾き飛ばした。

(ちっ!……折れちゃいないが拾ってる暇はなさそうだ)
180銀水苑 ◆TF75mpHiwMDV :2009/09/21(月) 07:48:41 0
地中からの水による奇襲を間一髪の所で回避する事に成功した銀水苑の前に、
すぐさま次の水が押し寄せる。
しかも此処で踏みとどまれば倒れこむ大木に押し込まれる形の攻撃だ。

(こいつら遊んじゃいるが敵を殺すための攻撃はきっちり織り込んでくる!
下がるか?いや……今下がって受ければ後手に回ってしまう。
古天明平蜘蛛で捌くか?いや、他の異能ならいざ知らず相手は弱点の水…・・・水の刃の貫通性に負ける公算が高い!
ならば……敵を打倒するための活路は九分九厘、自らの前方に有る!)

「前へ!」
躊躇わず前に踏み出す。
背後の空間に巨木が倒れこむ気配を感じ、鳳旋の声が響くのはほぼ同時だった。
先ほどの戦闘で自らの炎を物ともせず踏み込んだ鳳旋の姿が脳裏によぎった。
(前に足を踏み出す事を恐れていたら死んでいた……強敵から学ぶ事の何と多いことか!)
目の前に押し寄せる水の奔流。その数七本。
それに怯まず、炎熱を帯びた小太刀を右手で振るう。
熱を帯びた小太刀が紅い火の尾の軌跡を引いて神速で閃く。
「水に【楔】を打ち込む!」
硬い岩を容易く貫く水の奔流も、その貫通力の源は速度と集中。
炎を纏った小太刀で水の流れを蒸発させながら斬り散らしてしまえば只の水だ。
オズワルドの水流の刃の三本が、瞬く間に威力を殺されて霧に代わる。
統治とオズワルドの間の視界が一瞬不明瞭になる。
だが霧に包まれるその刹那、オズワルドは笑みを崩さなかった。
後続の水流の剣は正確に統治を付けねらう。

「余り大人を舐めるな、見えなくても攻撃できるのはそっちの専売特許じゃない」
181銀水苑 ◆TF75mpHiwMDV :2009/09/21(月) 07:50:51 0
統治も相手の温度で位置を探る事には長けている。
彼の左手がポケットに突っ込まれる。
そこから出された指の間には小さな刃物が四つ握りこまれていた。
刃物と言ってもナイフでは無い。
刃渡りは五寸(約15cm)。小太刀はおろか短刀より短い。
小さいものだが確かに日本刀のようなつくりをした刃……
小柄(こづか)あるいは刀子(とうす)と呼ばれる小刀だ。
小さいとはいえ玉鋼を卸して、鍛え、焼き入れする等、刀鍛冶が刀を作るのとほとんど同じ工程で作られている。
平時では刀の手入れや装具に使われるものだが
戦国時代の戦闘時ならば恐らくその使用方法は・・・・・・投擲である。

「流星が齎す天の回廊に吹き荒れる龍の炎!」

四つの小柄を握りこんだ左手に火珠を発生させる。
思い切り異能の力を込めて、炎気と炎熱を握りつぶさんとするかのように。
炎を圧縮する。
目の前には四つの水流の剣がもう間近に迫っている。

『飛刀術……天尊龍炎!』

水の刃が統治の肩を軽く抉った瞬間。
水の刃とオズワルドを結ぶようにして、統治は左手を開放した。
必殺の水流が、統治の掌から放たれた爆発で消し飛ぶ。
だが、それだけではない。爆炎で防御しただけではないのだ。
これは「カウンター」だ。
爆発で飛ばされた小柄が四つ。
少量の水など意に介さない炎気を纏った刃が
弾かれたような凄まじい速度でオズワルドに向う。

【攻撃を喰らいながらもオズワルドにカウンター。四つの刃を飛ばす】
182レオーネ ◆GWd4uIuzU6 :2009/09/21(月) 22:17:59 0
>>176

私が最後の一切れを口へ運び食事を終えると、
丁度ひかるも食べ終えたようだった。
勿論、シヨリ君たちは既に食べ終わっており、それぞれ重い面持で我々の食事を待ってくれていた。
なぜ彼らがこのような表情をするのか、それはまだ解らない。
だが、先程のひかるの言葉の中にキーワードが隠されているような気がする。
私と同じで赦されたい、か。

「それで、これからどうするね?」

ナプキンで口元を拭きつつシヨリ君たちにこれからを問うてみる。
今後の予定を考えているのか、返答はすぐには返ってこない。
仕方が無いといえばそれまでだ。すぐに返事を貰えるとは思っては居ない。
何れにせよ、クリーニング代は払わなければならんし、場合によっては乗せて行ってやらなければならん。
彼らの動向を聞くのは重要な事だった。

――突然のクラシックの音色が沈黙を破る。
携帯のように偽装した機連送を取り出すと、私は席を立った。

「――すまない、失礼するよ」

少し離れた所でひかるに小さく手を振りながら話を始める。

「No.6、今チョイといいかい?」

電話の主は香坂か……。何か問題でも発生したのだろうか?

「No.7とNo.8が医療部の方に運ばれてきたんだ。……残念ながら死亡が確認されたよ」

No.7とNo.8が……? そうか……。
一日でこれだけの成果をもたらすとは……。この街の異能者、流石だな。
素晴らしい成果だ。そうでなくてはな。
全く相槌の一つもしなかった私に不審を抱いたのか、香坂が名前を呼んでくる。
その声を多少鬱陶しそうにして近く似合った窓から外を眺めてみる。

「あぁ、聞いている。解かった、報告をありがとう」

通話を一方的に終わらせると右手で口元を覆い隠す。自然と漏れる笑みを隠す為だった。
そうか、夜叉浪とブリキ君は潰えたか……。
それでこそ、ファーストナンバーを分散させた甲斐があったというものだ。
集結させて一網打尽にしてしまうのは簡単だ。しかし、それでは我々の理想実現は遠退いてしまう。
より多くのメタトロンを欲する炎魔にとって、大量のメタトロンを持つ一桁番号は格好の餌なのだ。
まぁ、最初にこの計画を練ったのは城栄だがね。平時ならばこのような作戦に了承などしないのだが……。
殲滅結社の件も在る。事は慎重に、かつ大胆に運ぶべきだろう。
それに、だ。夜叉浪はともかく、ゴールドウェルの方は私の憎むべき存在である世襲幹部の一人。
世襲幹部が滅んでくれれば私と城栄にとってごの字だ。

席へ戻ると、頼んでいたエスプレッソが運ばれてきていた。
何時の間に……。いや、それよりも冷めない内に飲まなければ。
ソーサーごと手に取り、カップに注がれた黒い水面に口付けをする。
そうだ。シヨリ君たちの今後を聞いて置かなければ。

「それで……どうする? 私たちはこれから中央区に行くが……。
 そこまでならば送っていくよ」

中央区……。ナガツカインテリジェンスのそびえる、街の心臓部。
ひかるの言葉を考えるのは後回しだ。今は自分の使命を果たす、それだけだ。

【レオーネ:現在地 カフェ】
183木崎 あやせ ◆N8yTRtOcY2 :2009/09/24(木) 00:30:53 0
>>154-155

>「打て」

キバさんの号令で弓を持った兵士が構え、雷の矢を放った。
突然の号令で大川は身構え、龍頭は自身の主を守らんとその身を盾にしようと動く。
が、その首が動くよりも迅く雷の矢が龍の首を貫き、爆散した。

>「なんだと……!? クッ!」

一つの龍頭が消滅した事で大川自身もダメージを受けたのか、彼は片膝を付き倒れた。
そしてキバさんは好機とばかりに新たな兵士を作り出し、私の横まで移動してきた。

「ありがとう、さっきは助かった。」

「――ッ! 調子に乗らないで……! 一度は助けたけどキバさんに仲間意識を持った覚えは無いよ……!」

突然の私の言葉にキバさんは驚き黙り込む。
そう、異能力者と仲間意識など持たない、持ってはいけない。
私に近付いた人はみんな騎士に殺されるんだから……―――

「てめぇらは絶対にぶっ殺してやる……! 俺に黒龍の力をォォ!」

―――ゴオオオオォォォォオオオオオオ!

大川の叫びに共鳴した黒龍の咆哮は衝撃波となり、周囲の塀や地面を破壊していく。
私は波動で身を包み、キバさんは独自で盾を持った兵士を作り出しそれを防ぐ。
そして大川の背中から伸びた龍の首は大きく、禍々しい物となっていた。

「ゼェ、ハァ、ハァ……! ここで死んでも……アイツらの敵は取るゥゥゥ!」
「もう、見苦しいだけだよ……」

私は傘を放り投げ、大川に向かって一直線に走り出す。
だが、それを阻むかのように巨大化した黒龍が轟々と風を切りこちらに突進してくる。

「邪魔だよ……。一撃で終わらせる――!」

瞬間、あやせは上に跳躍し、左手の袖に手を滑り込ませる。
そこに忍ばせているのは鞘が付いた小型のナイフ。彼女はナイフを握って身体を捻じり―――

「―――第一技・抜刀術『円弧・三日月』―――」

その場で身体を回しながらナイフを振り抜いた。
勢いよく振り抜かれたナイフの切先から三日月型の刃が飛び、黒龍を切断する。
(障害は排除した! 次で最後―――!)
だがあやせは止まらず、着地と同時にナイフを納め一気に大川へと駆け出す。
だが大川は構えもせず、ただあやせを待ち構えていた―――

「畜生……。ハッ、こんなガキ如きに殺られるなんてなぁ……」
「最近の女子供を舐めちゃいけないな。その事を、仲間と後悔するんだね。

―――第二技・無銘刀『漣』―――」

あやせはナイフを抜いて両手で持ち、大川の腹部を突き刺し、横から切り抜けた。
大川はその姿勢を維持しながら、無念の表情を浮かべて倒れていった―――

「ふぅ……さて、これで大体片付いてあとはそこで気絶してる男を殺すだけでここに用はなくなるけど。
これからどうするの? キバさん。私はこれ以上あなたと行動する気は無い―――」

【才牙に質問】
184池上 燐介 ◆ICEMANvW8c :2009/09/24(木) 02:32:24 0
>>177
>「言わなくても分かるだろ?リースだろ」
廻間はそう答えると、そそくさと俺の横を通り過ぎ、皆が眠る部屋へと向かった。
予想通りの廻間の返答に、俺は「やはりな」というように無言で頷きながら
その後に続いて部屋へと戻り、今後について思いを馳せながら床に腰を下ろした。

(廻間とリースは戻ってきたが、さて……宗方や神重は……。
いずれにせよ……この場所が知れるのも時間の問題、恐らく明日までだろう。
そうなる前に再び闘いを挑みにいくか……)

こうして無言のまま、一人でどのくらいの時間考えを巡らせた頃だろうか。
不意に聞こえてきたか細い声が、俺を思考の迷路から引き戻した。

「……池上……さん? ここは……?」

直ぐに声のした方向に目を向けると、そこには目を開いて意識を取り戻した煌神がいた。

「俺の知り合いの家だ」

そう答えるが、煌神はまだ何が起こったのか理解できない様子で、目をぱちくりしている。

「機関の独房に閉じ込められていたお前と桐北を、俺とその仲間が救出したのさ。
勿論、簡単なことではなかったがな。お前の周りで寝ている連中がいるだろ。それが仲間だ」

これまでの経緯を単純かつ簡潔に説明すると、煌神は顔を動かして辺りを見回し始め、
その内納得したように呟いた。

「そうだったんですか……」
「眠ければまだ寝ていたっていい。
起きていても、どうせもうしばらくはこの場に留まるしかないんだからな」
「はい……。でも、あの……その前に一つ、いいですか……?」
「なんだ?」
「天さんが、今どこで何をしているか……知りませんか?
多分、私を探しているんじゃないかと思うんですけど……私、心配で……」

俺はその問いの回答に躊躇するように、一瞬彼女から視線を外した。
答えが、彼女にとって酷なものになるということは、理解っていたからだ。
だが、同時に隠してもいずれは知れる、ということも理解していた俺は、
無表情のまま彼女の目を見つめ直して、直ぐに事実を告げた。

「──あいつは、死んだよ」

俺の口からあっさりと飛び出た死亡宣告に、彼女は体を硬直させた。

【池上 燐介:目覚めた煌神リンに、戦場ヶ原が死んだことを告げる】
185ルナ ◆7VdkilIYF. :2009/09/24(木) 22:34:19 0
>>153
私と沙羅は男二人を追いかける。
正直放っておいても害は無さそうだが、確かめるに越した事はないだろう。
それにしてもさっきから聞こえるお姉さまという声は一体?

>「うっさい!!小柳!!!」

…いきなり沙羅が切れた。
名前を知ってる事から、どうやら越えの正体を知っているようだ。
沙羅はキレながら振り返る…あ、誰か来た。

「…えーと、知り合い?」

この子は一体誰なんだろう…沙羅は知ってるみたいだけど。

【ルナ:小柳と呼ばれた少女の事を沙羅に聞く】
186ルナ ◆7VdkilIYF. :2009/09/25(金) 12:42:34 0
誤字
越え→声
187 ◆GWd4uIuzU6 :2009/09/25(金) 22:54:18 0
>>179-181

銀水苑の右手に握られた小太刀が、まるで闇夜に輝く蛍の光のように煌めくと、
オズワルドの異能力『オディール バイ ウォーター』によって形作られた水の奔流は霧へと昇華した。
成分はただの水でしかない『オディール バイ ウォーター』は、
小太刀の熱によってその収束を分散され、結果として脆さを露呈したのであった。

霧に包まれるその瞬間、オズワルドは笑っていた。
――こんなにも楽しい遊びは久しぶりだ。この人にももっと楽しんでもらわなくちゃ……。

今まさにオズワルドの命を受けた水たちは、銀水苑の体温を――正確には彼の纏う熱気を探知し、
その動きをトレースしていく。

>「余り大人を舐めるな、見えなくても攻撃できるのはそっちの専売特許じゃない」

しかし、見えない敵を狙えるのはどうやらオズワルドだけではない様子で、
迫り来る水の刃に物怖じする様子も無い。
こんなにも長く立っていられる人がいるなんて――
これだから、機関の人間と遊ぶのは止められない。普通の異能者はすぐに遊べなくなってしまう。
その点、機関の人間はなかなかしぶといのだ。
オズワルドの高揚はピークに達し、嘲笑はいつしか高笑いに変わっていた。

>『飛刀術……天尊龍炎!』

銀水苑の左手が爆ぜ、その反動を推進剤とした短刀が音速とも言えるスピードでオズワルドを捉えた。

――おかしいな……。血が…血が止まらないや……
――変だ、頭がぼうっとする。白く、霧が掛かったような……。そんな感じだ。

ゆっくり自分の胸を見てみる。そこには短刀が四本、根元まで突き刺さっていたのであった。
オズワルドはそれを引き抜く事もせずに、フラリフラリと糸の切れた人形のように力なく地に伏した。

徐々に霧が晴れ、立っていたのは銀水苑統治その人であった。
彼はこの不明瞭な視界の中での戦いを見事制したのだ。

「ア…アハハハ……おかしい…な、ぁ……。
 ま、まだ、あ…遊び……たりないのに……」

うつ伏せになったオズワルドの顔からは血の気は失せ、
今尚笑みを湛えた口から勢い良く真っ赤な血を吐き出した。
銀水苑を見据え、血を吐きながらも水を操ろうとする。
しかし、その力も最早底を尽きており、雨はしとしととオズワルドを濡らすだけであった。

「ゲホッ、ゲホッ……お、おじちゃんも、楽し…かったよね?
 ハハハハハ……ハ、ハハハ………」

……やがて、その瞳孔から光が失せた。

最後の瞬間まで歪んだ笑みを崩す事は無かったオズワルドの死は、
見る者にこう知らしめるのだった……。

―― 一度狂気の扉を開いてしまった者は、最後まで狂ったままなのだ、と。

【オズワルド&クローディア:オズワルド死亡】
188才牙 ◆vpAT/EK2TU :2009/09/28(月) 12:22:06 0
>「――ッ! 調子に乗らないで……! 一度は助けたけどキバさんに仲間意識を持った覚えは無いよ……!」

突然のあやせの言葉に私は驚き考え込む。
ふむ、彼女はただ一匹狼を気取っているわけではないようだ。
もしそうしているのならば、私が異能力者だと知らないにしても私とともに散歩に出るなどとは言い出さないだろう。

>「てめぇらは絶対にぶっ殺してやる……! 俺に黒龍の力をォォ!」

―――ゴオオオオォォォォオオオオオオ!

考えていると状況が進行したようだ。
その大川の叫び、そしてそれに共鳴した黒龍の咆哮。
黒龍の咆哮は周囲の物を破壊していく。
それは自分にも向かってきているはずだと思い、剣兵と弓兵を回収し、盾兵を作り出し防御する。
あやせもしっかりと自分でガードしているようだ。
そして大川の背から伸びた黒龍の容貌が大きく禍々しいものに変わる。

>「ゼェ、ハァ、ハァ……! ここで死んでも……アイツらの敵は取るゥゥゥ!」
>「もう、見苦しいだけだよ……」

大川の怒りに燃えた発言、それにものともしないあやせ。
それどころか貶している。
その時あやせは傘を放り投げ大川に向かい一直線に走る。
それを拒むように巨大化した黒龍が風を切りあやせに向かってゆく。

>「邪魔だよ……。一撃で終わらせる――!」

あやせはそう言い上に跳躍し左の袖から何かを取り出し、

>「―――第一技・抜刀術『円弧・三日月』―――」

その場で身体を回しながらそれを振り抜いた。
勢いよく振り抜かれたそれの切先から三日月の形をした刃が飛び出し黒龍を切断する。
その時やっと取り出した物の正体が分かった。振り抜いた瞬間に見えた物はナイフだった。
そしてあやせは止まらずに、着地と同時にナイフを納め大川に向かい一気に駆け出す。
その時大川は構えもせず、あきらめたようにただあやせを待ち構えていた。

>「畜生……。ハッ、こんなガキ如きに殺られるなんてなぁ……」
>「最近の女子供を舐めちゃいけないな。その事を、仲間と後悔するんだね。

―――第二技・無銘刀『漣』―――」

あやせはナイフを抜いて両手で持ち、大川の腹部を突き刺し、横から切り抜ける。
大川はその姿勢を維持しながら、無念の表情を浮かべて倒れていった―――

「ふぅ……さて、これで大体片付いてあとはそこで気絶してる男を殺すだけでここに用はなくなるけど。
これからどうするの? キバさん。私はこれ以上あなたと行動する気は無い―――」
189才牙 ◆vpAT/EK2TU :2009/09/28(月) 12:23:21 0
そしてあやせは無表情に私に問いかける。
私はその言葉に返す言葉などないのだが……どうするかな?
戦っても互いに利はないだろう。そしてただ逃げれば私は臆病者になる。
私は問いかけから数秒もしない内に答えを返す。

「とりあえずその男を殺すのはやめてもらえるかな。僕にとってはとても良い実験材料になるんだ。
もう分かっているとも思うが、さっき僕は医者と言ったそれは嘘だ、だが間違いでもない。
僕はこういった異能力持ちの人間をどうやればなくすことができるか研究しているんだ。人の身体のことを知っているという意味では医者と同じかそれ以上だからね。」

少し長くなってしまったか?まあそれぐらいはどうでも良い。
そして彼女が話そうとした瞬間次の言葉を話し出す。

「ああ、君と戦うつもりはないよ。君と戦っても僕に利はない。
有るとしても君を実験材料にできると言ったものだけになるし、それはこの男だけでも十分だ。
僕は利のない戦いはできるだけしない主義なんだ。
まあ……それでも戦うと言うのなら、容赦はしないけどね。君はかなり強いみたいだし。」

そう言い槍兵を近くに寄せる。

【質問に答え、質問を返す】
190七草 柴寄 ◆O93o4cIbWE :2009/09/28(月) 21:52:35 0
>>181-182

やがてレオーネ達も食事を終え、柴寄達にこれからを問う。
直後、クラシックの音色が沈黙を破る。レオーネは自分の携帯電話を取り出し席を立つ。

「――すまない、失礼するよ」

暫くして、彼が戻ってきた。

「それで……どうする? 私たちはこれから中央区に行くが……。
 そこまでならば送っていくよ」

先程の問いの続き。彼は柴寄達を中央区まで送ってくれるという。

「いえ、結構です、私達はちょうどこの辺りに用が在るので…」

響がそう答えるとレオーネはそうか、と頷いた。
その後会計を済ませ、店を出る。

「ご馳走様でしたレオーネさん、それでは私達はこれで…」

車の荷物入れに積んでいた傘を返してもらった後、彼等は別れた。

「……七草君…」

ひかるの言葉を真に受けた柴寄を心配そうに見る。
響が「大丈夫?」と声をかけると力の無い返事が返ってくるだけだった。

「…あまり、考えすぎない方が良いよ…」

【レオーネ達と別れる】
191ルージュ ◆3LPMHhiq9U :2009/09/29(火) 23:35:51 0
前スレ>>209-210
ビルに突入したルージュは一階の惨状を無視し上階へと移動した。
能力を使い「跳べ、跳べ…」と呟きを繰り返しまるでスーパーボールかのように壁を跳ね、ビル内を上っていく。
「死体ばっかで、つまんなイ…」
その【神野屡霞】という仏教面と【ルージュ】という子供のような声は相変わらず一つの存在に噛みあわなかった。

殴り倒された機関の下っ端達にも眼もくれず(時折跳躍の足場として遊んだが)何事も無くビル内を進んでいた。
(…あ〜あ、なんだよ〜死体しかないじゃん…ハズレ引いちゃったかな)
何事も無いため、当初の興奮もすっかり冷めてしまいだらだらと歩きながらフロアを移動していた。
「こんなことなら街に居たほうがよか…」


「うおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!!!!」


突然鳴り響く爆音のような声にルージュは足を止める。
軽く身構えて耳を澄ましてみると、どうやらその声の主は上の階に居ることと同時に戦闘音も混じっていることに気付いた。
            ヤ
「お、ラッキー!! だれか闘ってるみたいじゃん。さっそくボクも…」
足を動かそうとした、その瞬間だった。
突如”自分の右手が自分の体を押して”受身も取れず後頭部から床に倒れた。
「ったーーい!!一体なんなの!!」
(まさか……屡霞…か?)
今までずっと黙っていた背中の刀――『禍の紅』が驚きの声をあげ、質問する。
それに返事するかのように”勝手に動く右手”は背中の刀を抜き、振り上げた。
(戦場ヶ原……の…ところへ…)
微かに脳に響くこの声は確かに神野屡禍本人のものだ。
「嘘だ、ボクが血を使った融解で体の支配を奪われるなんて…ありえない!!」
右手は刀の刃の部分を握り、短く構えると手首を利かせてその輝く刃を一閃させた。
「な!!!」
(ふ、屡禍の腕前をなめるんじゃねーぜ。屡禍が俺を使えばどんなモノだって斬りさせるのさ……例え実体が在ろうとも無かろうともな。)
「そんな…嘘だよネ?……こんなんじゃ…ダメ……金剛様に…嫌われ……あ、ああアアアアアああああアアああ!!」


“神野”が立ち上がると切り裂かれた赤いマフラーが首から滑り落ちていった。
それはまるで呪縛が解けたのを現すかのように。
そして戦友のもとへ走り出した。

【ルージュ:意識が消滅】
【神野:体を奪還。戦場ヶ原の援護に行く】
192池上 燐介 ◆ICEMANvW8c :2009/10/02(金) 10:03:11 0
俺は煌神に、何故山田が死んだのか、
そして何故俺がそれを知っているのか、その理由を説明した。
だが、煌神は彼の死にショックを受けているのか、あるいは説明されるまでもなく
大方察しがついているのか、どこか俺の言葉を上の空で聞いているようだった。

「──奴は自分の命と引き換えにしてでもお前を救おうとした。
だからこそ、囮という危険な大役を自ら買って出たのさ。
奴は死んだが、一先ずお前は生き残れた。この結果にはあいつも納得しているだろう」

そう話を締めくくると同時に、懐から取り出したタバコを銜えて、ライターで火を点ける。
吐き出された煙が俺と煌神の間の空間に舞い、一瞬互いの視界を遮った。
その時、煙の向こうで今まで押し黙っていた彼女が、消え入りそうな声で呟いた。

「納得……? 私は納得なんて……。
……こんなことになるなら、いっそ私も死んでしまえば……」

煙が晴れ、視界が戻る頃には、彼女は俯いて肩を震わせていた。
俺はまた煙を吐き出しながら、淡々と言った。

「死ぬのはお前の勝手だ。だが、死ぬのはこの闘いが終わってからにしてくれ。
今、お前に死なれたら、俺達は困るんだよ。
……城栄の野望を阻止することのできる、重要なカードかもしれんのだからな」

顔を上げ、怪訝な表情を見せる彼女に、俺はこれまでに打ち立てた推理を全て話して聞かせた。
彼女はその推理に概ね納得していたようだったが、
やがて何かの違和感に気がついたのか、眉にしわを寄せて訊ねた。

「炎魔復活にはヤハウェが必要で、その為に機関は私達を連れ去ったいうことは分かりました。
けど、炎魔の餌である私達を、逆に生かしておくことで対炎魔の切り札になるように考えているのは、
一体何故なんですか?」
「万一、炎魔が復活した場合……それを止められるのはお前らヤハウェしかいないと思ったからさ」
「え……? それはどういう……」
「言っただろ。炎魔はヤハウェに封じられたのではないか、と。
そうであれば、復活した炎魔を再び封じることができるのも、また……」
「──!?」
「野望を阻止することのできるカードとは、そういう意味だ」

俺は、タバコを近くにあった灰皿にギュッと押し付けた。

【池上 燐介:炎魔を倒すにはヤハウェが必要と説く】
193銀水苑 ◆TF75mpHiwMDV :2009/10/02(金) 21:03:19 0
>>187

決着は刹那。
狙いは誤らなかった。
死の苦痛を長引かせるつもりは毛頭ない。
だが、銀水苑の表情に勝利の喜びは無い。
例えようの無い哀しみと苦りきった苦悩が滲み出ていた。
「……許せとはいわない。もう……眠れ。
遊びの続きは煉獄で付き合ってやる。
じきに俺も行く」

オズワルドにそう呟くと十字を斬った。
放っておけばこの子の殺戮のゲームは何時までも続いただろう。
救いの無い狂気から開放する。
誰かがやらなければならなかった。
そのためとはいえ……後味は最悪だ。

「光龍、鳳旋……お前たちまで
こんな血みどろで救いの無い修羅の道についてくることは無いぞ。
再三に言うが俺のようにはなるな」

そして、気を緩めることなく
クローディアの方に向き直る。
屍山血河と憎悪に塗れるのが俺の宿命かつ選んだ道だ。
迷いを振り切り、予断を許さぬ次の戦いに備える。

【オズワルドに刹那の黙祷を捧げ、クローディアの攻撃に備える】
194鳳旋 希一 ◆O93o4cIbWE :2009/10/02(金) 21:46:10 0
>>193

やがて統治とオズワルドの戦いにも決着が付いた。
轟く爆音。そして――、オズワルドの胸には四本の短刀が深々と刺さり、やがて彼はその場に崩れ落ちた。
オズワルドは最後までその歪んだ笑みを崩す事は無かった―――

「光龍、鳳旋……お前たちまで
こんな血みどろで救いの無い修羅の道についてくることは無いぞ。
再三に言うが俺のようにはなるな」

「………」

鳳旋達はその光景を前に唯立ち尽くすだけだった。

【統治と同じくクローディアの攻撃に備えるが
 オズワルドの死を前にして二人はそれぞれ動揺を抱いている】
195レオーネ ◆GWd4uIuzU6 :2009/10/02(金) 22:49:06 0
>>190
>「いえ、結構です、私達はちょうどこの辺りに用が在るので…」

「そうか……」

シヨリ君たちとはどうやら目的地が違うようだな。残念だが、彼らとはここまでだ。
私のミスとは言え、良い時間を過ごせた。
願わくば、彼らの行く先に光が在らん事を……。

――会計を済ませて店を出ると、車の荷物入れに仕舞っておいた傘を彼らに手渡す。
ナナクサ…シヨリか。そう遠くない内にまた会えそうな気がするな。
伊賀を一瞥すると、彼女らに向って一度深く頭を垂れた。
車に乗り込んだ私を、ひかるは上の空で出迎えてきた。
エンジン音が低く唸り、後ろのシヨリ君たちが小さく遠ざかって行く。

「……シヨリという少年は異能者だったな。彼らはこの街で生き残れるだろうか?」

「ええ――心配なの?」

今まで上の空だったひかるが不敵に笑う。その笑みは子供のそれとは程遠く、
どこか魔性さを感じさせる笑みであった。

「そういう訳ではない。だが、この街の状況を見れば彼らの事が気がかりになる」

この混沌とした街の状況も、宇宙が生まれる時のビッグバンのようなものだ。
創世記はここから始まるのだ。

先程も通った交差点を抜けると、カフェへ向う時とは別の世界に迷い込んだような錯覚を覚えた。
なんだ、これは……。妙な――。
信号機、街路樹に道路の反射板……。先程も在った筈の物が、まるで別のモノと入れ替わったような感覚。
――違和感。何かがおかしい。全体としてみれば、確かに何も変わりは無い。
だが、単体としてみると明らかに変だ。

私は後続車にクラクションを鳴らされるのを覚悟で車を停車させた。
案の定、後ろを走っていたワゴン車は勢い良くクラクションを鳴らしてくる。
ルームミラーから後続車を見ると、家族連れなのだろうか、
大きな影と車内をはしゃぎ回る小さな影、合計で5、6人の影が見えた。

止まったままの私に業を煮やしたのか、ワゴン車は対向車線にはみ出してまで私達を追い越して行く。
妙だな……、あの信号機。
さっきは横にライトが並んでいたのに、今は縦に並んでいる。
これが違和感の正体……?
196レオーネ ◆GWd4uIuzU6 :2009/10/02(金) 22:50:53 0
>>195

――ドオォォン
突如響く爆発音、甲高い人の悲鳴……。
シンフォニーと呼ぶにはあまりに不細工なそれは私の目の前で起こった。
私達の乗る車の追い越して行ったあのワゴン車が、信号機の所に差し掛かった途端爆発したのだ。
道行く人々は余りにも突然の出来事に言葉も出ず、ただ呆然と炎を見詰めている。
運転席のドアを開け、外に身を乗り出す。あれじゃ誰も助からんな。
子供の影も見えた。気の毒に……。

「よぉく気付いたな、ナンバーシックスゥ。そぉおでなくてはぁ」

変に間延びした女の声が私の裏の顔を呼ぶ。誰だ? 通行人の中に居るのか?
それとなく周りを見渡すが、異質さを醸し出す人物は見当たらない。
だが、声の大きさから察するに近くには居るな。

「狩りの対象はぁオマエとぉ、塚原ぁひかるだったがぁ……。
 妙にカンのいい男だぁ。イハハハハ!」

「貴様、外道院の手の者か……!」

外道院の部下、つまり粛清部隊か。
なるほど、連中なら白昼堂々異能力を使う事に躊躇いを持つ事は無いだろうし、
堅気の人間の命を奪う事も何とも思わないだろう。

しかし、奴の狙いはあくまでも私と、そしてひかるのようだ。
私が違和感を感じて車を停車させたから、先程の親子連れが代わりに……。

「次はぁ、はぁずさないぞぉ……。オマエの異能はぁわたしには効かない。

 わたしの能力はぁ、"透明になれる事ぉ"。だがぁ、透明なのはぁ、わたしだけではないのさあ」

――女の笑い声が聞こえた瞬間、至る所で爆音が響いた。
人も、車も、空を飛ぶ鳥でさえも、その爆音と共に細切れになっていった。

【レオーネ:現在地 市街地中央区】
【粛清部隊隊員 水口 理世(みずぐち りよ)と遭遇】
197廻間 ◆7VdkilIYF. :2009/10/05(月) 13:40:55 0
>>184>>192
俺が部屋へ戻るとそこには、リンが既に目覚めて立ち上がっていた。
とりあえず何か声をかけようとすると、池上がそれを遮るかのように喋りだす。
タイミング的には今二人で何かを喋り始めたから、お前は黙っていろという感じで遮られた…

>「──あいつは、死んだよ」

戦場ヶ原が…死んだ…だって!?
あいつは相当な実力者のはず…それを倒すとなると…それもまた別な実力者にでも…

>「──奴は自分の命と引き換えにしてでもお前を救おうとした。
  だからこそ、囮という危険な大役を自ら買って出たのさ。
  奴は死んだが、一先ずお前は生き残れた。この結果にはあいつも納得しているだろう」

…いや、囮だったのか…あいつらしいような、らしくないような…
戦場ヶ原には、自分の目的のためになら手段は選ばないといった感じが、していなかったわけじゃあない。
しかし、大事な物を奪い返すために自分の命すら捨てるなんて…なんてヤツ…
…こういうのを男っていうのか…?こういうのが男っていうなら、俺は男にはなれるのか…?
リンは肩を震わせて泣きそうになっている、ここは下手に触らない方がいいだろう。
ツバサと俺が戦ったというのは、もう少し後で伝えたほうがいいか。
しかし…何故ツバサは俺を狙ったんだ…?

>「言っただろ。炎魔はヤハウェに封じられたのではないか、と。
 そうであれば、復活した炎魔を再び封じることができるのも、また……」

ヤハウェ…そういえば聞いた事がある言葉。
そしてツバサは…

(――ヤハウェケース――『廻間統時』ッ!貴様には機関の計画の為の生贄になって貰うッ――!!)

こんなことを言っていたな。
つまりこれは…俺がヤハウェだってことだよな?じゃあ俺にも炎魔が封じられる可能性がある…
なるほど、だからツバサは俺を殺そうとしたわけじゃなくて捕まえようとしたわけか。
単純に敵対しているだけ、なら大群を差し向けて殺せばいいだけの話だからな…
…にしても、実感わかないな。何かが変わったわけでもないしな…

「…あれ?みんなどーしたの?」

風呂から上がったのかリースが部屋に入ってくる。

「…ちょっと、な」

リンに同じ説明を聞かせるのも酷だろう…
俺は黙っている事にした。

【廻間:休憩中。 
    自分がヤハウェだと勘付く】
【リース:風呂から上がって部屋に来る】
198 ◆GWd4uIuzU6 :2009/10/05(月) 22:41:42 0
>>193-194

「あれれぇ? オズワルドは終わっちゃったのー?
 じゃあ、わたしがオズワルドの分まで楽しめるね」

この世でもう唯一となってしまった肉親。その死を目の当たりにしても尚、
歪に歪んでしまった"少女"の心は正される事はなく――

「それじゃあ、続きをやろうよー。今度はおっきいのいくよー」

地面に再び貯まり始めた雨水に暗い影を落とす……。
それは再開の合図、そして"少女"の最後を埋めるピース。
クローディアの目が狙うのは仇である筈の銀水苑ではなく、
手負いの光龍でもなく、ただ一点……鳳旋のみ。
傷を負った光龍と一緒にいれば、それだけ手数が減っていく。

鳳旋の周囲の真新しい水溜りから、"噴水"が湧き出てきた。
否――それは噴水などではない。魚雷がまるで噴水が湧き出てくるかのように、
勢い良く、垂直に、飛び出してきたのだ。
攻撃目標を指定された魚雷たちは、連続的に鳳旋目掛けて襲い掛かって行く。

次で全てが決まる――
途端、クローディアは走り出す。距離を取る為ではなく、詰める為に。
詰める相手は――

「どーして? どーして機関の人が民間人のカタを持つの?」

短刀を前転で避けると、銀水苑の懐へと潜り込む。
目くらましとした鳳旋への攻撃で精神力はほぼ底を尽いた。
一発、多くて二発が限度だろう。だが、クローディアはそれだけあれば十分だった。
……なるほど、彼の熱は雨を寄せ付けない程熱いのが解かる。
これでは周囲に水溜りが出来ない訳だ。
だが、それでも倒す術は在る。

クローディアの魚雷は水から水へ瞬間移動が出来る性質を持っている。
だが、水分は水分でも血液にはワープさせる事は出来ない。
これはどういう原理か解からない。世の中そう上手くは回らないという事なのかも知れない。

――しかし、体液ならば話は別だ。体の中の水分、即ち汗や唾液……。
それらへ魚雷をワープさせる事は可能なのだ。
そして、その為には体が直接触れ合える距離まで接近しなければならない。

その結果、機関という闇に飲まれた者同士が、今完全に拮抗したのである。

「楽しくやりましょうよ……ねぇ? アッハハハハッ!」

猫を思い出させる笑顔は、この世の不純に塗れてしまったクローディアに、
最後に残った良心なのかも知れない。
これさえも失ってしまえば、もはやそれは只の殺人機械でしかないのだ。

魚雷をワープさせるのが先か、銀水苑の小太刀が閃くのが先か……。

【クローディア:鳳旋へ陽動攻撃・銀水苑の零距離へ】
【異能力を仕掛ける直前】
199鳳旋 希一 ◆O93o4cIbWE :2009/10/08(木) 22:54:02 0
>>198

見た所、オズワルドとクローディアの二人は姉弟だった。
肉親の死を前にして彼女が言う言葉は嘆きの言葉では無く――。

「あれれぇ? オズワルドは終わっちゃったのー?
 じゃあ、わたしがオズワルドの分まで楽しめるね」

「な……」

鳳旋が思わず声を漏らす。
歪んでいる…この子もまた……。機関に居る少年や少女は皆こうなのだろうか。
何とかして救ってやりたい、そう思うもそれが叶わない事を知ると鳳旋は己が歯痒くなった。
これ程までに己の無力を悔いた事は無かった。
そして、彼の中で沸々と怒りが込み上げて来る。
生まれた怒りは先程の様なクローディア達への怒りではなく、機関に対する怒り、
その怒りを胸に閉じ込め、鳳旋は深く息を吐いた。

「鳳旋…」

光龍が呼びかける。

「……ああ…解ってる……。

 …これで、終らせる――」

鳳旋が構えを取る。
何が楽しいのか? これはゲームではない、こんな事は、速く終らせる。
誰の為でも無いクローディア自身の為に。
200鳳旋 希一 ◆O93o4cIbWE :2009/10/08(木) 22:55:12 0

「それじゃあ、続きをやろうよー。今度はおっきいのいくよー」

クローディアの狂気が混ざった歓声が静寂を打ち切る。
それを皮切りに、鳳旋の周囲の水溜りが雄叫びを上げた。
勢い良く吹き上げた水の奔流は、まるで間欠泉を連想させる。
降りしきる雨の中に上がった間欠泉は、それら全ての構成物質が"魚雷"で出来ていた。
クローディアの異能力は鳳旋に狙いを定め、それらは全て鳳旋に向けて襲い掛かる。

―――!!

息を呑む暇も無い。
圧倒的な密度のこの攻撃を凌がなければクローディアを救う事すら出来ない。
ならば――。鳳旋は覚悟を決めた。
拳の炎を更に燃え上がらせ、先頭を立つ魚雷に拳を叩き付けた―――

バァン――、そんな音がした。
不明瞭な視界の中、微かに浮かぶ鳳旋のシルエットには、確かに腕が付いていた。
クローディアの魚雷を殴ったのだ、本来ならば腕が吹き飛んでいた所だろう。
高密度のメタトロン同士の衝突は、互いに相殺し合い、その結果、鳳旋の異能力が勝る形になった。
弾ける様な音が何度も連なる。その度に視界はますます不明瞭になって行く。
鳳旋が魚雷を落とし続けているのならば、視界は既に魚雷を目視できる様なものでは無くなっていた。
連なる破裂音は、死神の歓喜の声か、それとも鳳旋の命が轟く音か―――。

「――ぉらぁあああアア!!」

真っ赤に染まる霧の向こうで、鳳旋の雄叫びが聞こえた―――。

【鳳旋:クローディアの魚雷を拳で相殺し続ける。周囲は蒸発した霧に覆われている】
201池上 燐介 ◆ICEMANvW8c :2009/10/09(金) 00:58:34 0
「で、でも……私の異能力は結界を張ったり、火炎を操るものです。
封印だとかそんな真似は絶対に……」
「かもしれん。だが、お前らは持っているはずだ。俺達にはない、特殊な"何か"をな。
恐らくそれが炎魔に──」

「──そんなもの、ない。──あるわけない!」

突然の声に俺は言葉を止め、煌神はくるりと首を後ろに向けた。

「き、桐北……さん? 良かった、気がついたんですか」

そう言う煌神の視線の先には、布団に横になりながらも、
はっきりと目を開けている桐北がいた。
ただどういうわけか、彼は眉を顰めて天井をジッと睨み付けている。

「……どうしたんですか? 気分でも……」

煌神が桐北の身を案じるようにそう言い掛けた時、
突如桐北が上半身だけを起き上がらせ、叫んだ。

「いい加減にしてくれ!! 俺には、そんな力はないんだ!!」

耳をつんざくような怒声に、煌神がビクリと体を硬直させる。
彼は、今度は俺を睨み付けていた。

「俺は、臆病で力もない、ただの高校生なんだ……。
それが、気がついたら殺し合いに巻き込まれて、変な連中に捕まって……
助かったと思ったら、今度はワケの分からない怪物と闘えだって……!?
……嫌だ、もう嫌なんだよ! 俺をこれ以上、闘いに巻き込まないでくれ!」

俺に向けて、彼は一斉に怒りをぶちまけた。

「なら、座して死を待つか?」

だが、俺は彼の迫力に動じることなく、淡々と言った。
彼は、その言葉で沸騰しかけた頭に水を差されたか、
一瞬戸惑うような顔をするとやがてうつむき、ポツリと答えた。

「……戦場ヶ原さんが死んだって聞きました。
あんな死にそうに無い人が死ぬ程の相手じゃ、自分なんかが闘ったところで結果は見えてます。
怖い目に遭って無駄死にするくらいなら、座して大人しく死んだ方がマシです……。
池上さんは理解できないだろうと思いますけど、自分も理解してもらおうとは思いません。
自分は……池上さん達とは違いますから……」
202池上 燐介 ◆ICEMANvW8c :2009/10/09(金) 01:02:55 0
言い終えると、桐北は疲れたように何度も溜息を吐いた。
眼はどこか虚ろで、生きることを諦めてしまったかのようにさえ感じられた。

「生きる為に闘うよりは、闘わずして死を待つ……か。……その意思は固いようだな。
──腑抜けのお前を生かしておけば、いずれ炎魔の餌とされるだろう。
そうなっては困る。だから……」

手袋がはめられた右手をグッと握り締めて、俺は立ち上がった。
だが、それを見た煌神は、俺の前に両手を広げて立ち塞がった。

「待って下さい……! 他にも何か、解決法があるはずです!
人を殺めてしまうより、そっちを考える方が重要ではないんでしょうか!?」
「どけ」
「どきません! 私は……もうこれ以上、仲間を失いたくないんです……!」

体を張って止めようとする煌神。
しかし、そんな彼女をどかせたのは、俺ではなく意外にも桐北であった。

「……煌神さん、いいんだ。
死んで、機関やヤハウェのしがらみから解放されるのであれば、それもいいのかもしれない」
「桐北……さん……。そ、そんな……」
「短い間だったけどありがとう。
これかからも厳しい闘いが続くと思うけど、君は頑張って生きて……。
──池上さん、ここだと寝ている人達の迷惑になります。場所を移しませんか?
人気のないところ、知ってるんです……」

そう言うと、彼は俺の横を抜けて未だ雨の降りしきる外へ出て行った。

「廻間と、あとリースだっけか? お前らはここに残って、煌神や寝ている連中を頼む」

言いながら時計を確認すると、時間は午後四時半になっていた。

「六時までには戻ってくる。
……あぁ、そうだ。それまでに、籐堂院でも叩き起こして飯の用意でもしといてくれ」

俺は煌神、廻間、リースの三人にそう言い残し、店を出た。

【池上 燐介:桐北の後を追って薬局を離れる。現時刻PM4:30】
203海道 翔 ◆vpAT/EK2TU :2009/10/09(金) 09:24:03 0
「あいつら、何だったんだ?」

そう呟いたのは黒髪で眼鏡を付けた高校生だった。

俺はたまの空中散歩をしていた。
その時何かが爆発したかのような音を聞き遠くから見てみることにした。
そこでは水や炎が空に浮きぶつかり合っているようだった。
俺はそれを見てすぐに地面に降り駆け出した。

俺も確かに普通とは違う能力を持っている、空を飛べると言う能力。
だがあんな攻撃的な能力、他人の能力を見たことはない。

そう考えながら駆けて進んでいると見覚えのある場所に出た。

「ここは。
ここに来るのも久しぶりだな。桐北と遠縁になってから一度も来ていない。」

そう、ここは桐北と共に見つけた秘境のような場所だった。
山を少し登り道をそれた場所にあるそこは町を見下ろせる高台のような場所である。
天然の芝生が敷き詰められここで寝そべるととても気持ちが良い。
さらに夜ここにきて町を見下ろせばかなりの絶景が見える。

またあの頃のように遊べないものか?
そう考えながら芝生に寝そべり昔のことを考えることにした。

【桐北と見つけた秘境で休憩をする】
204銀水苑 ◆TF75mpHiwMDV :2009/10/10(土) 20:55:09 0
>>198

「どーして? どーして機関の人が民間人のカタを持つの?」

「その通りかもな!だか重ねて言うがお前達はやりすぎた!」

(解ってるさ……俺もどうしようもなく汚れてるってことは……だが、だがな!)

「……只愉悦の為の殺戮は機関の意に反するんだよ。
目的達成に必要以上の犠牲が如何して要る。
故に粛清部隊を抹消するよう司令が下った!
だから――俺はお前達の全てを抹消する」

首を狙った小太刀は懐に潜り込まれる様な前転で回避された。

欺瞞だってことは分かっている
それでも――未来を、思って、いる。

「楽しくやりましょうよ……ねぇ? アッハハハハッ!」

クローディアが俺に向って手を伸ばしてくる。
統治の戦闘経験と勘が告げる。
水を操る異能……ならば効果は体内水分に干渉する類。
なぜ遠距離から血液や体内などには干渉が効き辛いかは知っている。
異能者の体内のメタトロンが他者の能力に対する抵抗作用を発し、レジストするからだ。
但し、触れるほどの近距離やメタトロンの絶対量に差がありすぎる場合はその限りではない。
接触発動の異能は、基本的には致死の一撃。
一撃で勝負が決まる類の物であることが多い。

レオーネの言葉が、脳裏に木霊する。
《焼き捨てた後はどうする? これまでの罪を受け入れて自分も焼き捨てるか? 》
……それに対する答えは、もう出ている。
(俺を裁くのは俺ではない。戦いがいつか俺を裁くだろう。
死するなら戦闘戦斗の業火の中で、信念に殉じて。
俺は、俺自身が真っ白に燃え尽きるのを待ち続ける)

「罵れ!憎め!恨め!呪え!お前達にはその権利がある!
――けれど、お前達の未来は、燃えて、堕ちる!」

小太刀が哭いている。
遥か古より穢れを焼き尽くす焔が悲鳴を上げている。
例えようの無い哀しみを纏った逆袈裟の一刀が閃くのが先か。
それともクローディアが触れるのが先か。
勝敗は揺れている。
何かきっかけがあれば、即座に運命の天秤は傾くだろう。

【逆袈裟の一撃を繰り出す】
205池上 燐介 ◆ICEMANvW8c :2009/10/12(月) 18:36:16 0
薬局を出て調度二十分が経過した時、ふと、桐北の足が止まった。

「──ここです」

彼は静かに目的地に到着したことを告げた。
周りを見回せばそこは鬱蒼とした木々に囲まれた山の中。
雨が降っているせいもあるのだろうが、辺りは妙に薄暗い。
一見すると、確かに人が好んで近寄るような場所ではなさそうである。
しかし、意外にもこの場所が、貳名市を一望するにはうってつけな、
正に穴場ともいうべき場所であることに気がつくには、そう時間はかからなかった。
彼は、背を翻して俺と目を合わせると、苦笑交じりに言った。

「ビルの展望台とは違って人気はないから、一人で眺めたくなる時はよく来るんですけど、
まさかこういう形で利用する日がくるとは……ハハ、思いませんでしたよ」
「……」

俺は無言で手袋を外す。
途端に周囲の空気がガラリと変わり、桐北の顔から笑みが消えた。

「時間をかければ、それだけ敵に発見される確率も高くなる。すぐに終わらせてやるよ」

言いながら、人差し指を立てる。
俺はその指の上に、一本の細長いツララを出現させた。
桐北が俺の異能力を見るのは初めてのはずだが、
これまでに様々な異能力を体験していて今更といった感じなのか、驚くことはなかった。

「今からこいつをお前の心臓に突き刺す。
お前が微動だにしなければ、苦しむ間もなく一瞬であの世行きだ」

桐北は分かったというように小さく頷いた。
それを見て、俺はツララを撃ち放とうと、指に力を込めた──
だが調度その時、背後からした突然の物音が、発射を寸前で止めさせた。

>>203
すぐに後ろを振り返る。そこには制服を着、眼鏡をかけた少年が立っていた。
少年はたまたまここに居合わせていただけなのか、
こちらへの敵意は感じず、きょとんとした様子でこちらを窺っている。
しかし、俺はその少年から、確かに異能力の存在を感じ取っていた。

「なんだ、おま──」

何者かと、そう訊ねかけた時、突然無言だった桐北が声をあげた。

「海道──!」

【池上 燐介:海道 翔と遭遇】
206レオーネ ◆GWd4uIuzU6 :2009/10/12(月) 22:34:01 0
>>196

敵の異能力は保護色……。確かに姿が見えなければ幻覚を投影する事は出来ない。
だが、私の能力はそれだけじゃない。"声"は確かに届いている筈なのだ。
にも拘らず、水口と名乗った粛清部隊員に、意に介した様子は無い。
これは一体……!?
――屈み込んで爆風から身を守る。顔を覆った腕の隙間から、逃げ出そうとする車が爆発していくのが見えた。
それも次々に……。それが何を意味するのか、深く考えなくても解かる。

「ブービートラップか……! 陳腐なネタだな」

使い古された陳腐なネタでは在るが、タネが見えてこない。
糸やコード類などの起爆させる為の道具はおろか、爆弾自体も見当たらないのだ。
見えない爆弾。水口の性格を分析すれば、既に私の周囲をトラップが囲んでいる事だろう。
勿論、奴の性格分析は簡単な物であるし、的中しているとは限らない。
しかし、見えない爆弾が存在するのは確かな以上、あまり派手に動けはしないのは間違いなかった。
再び立ち上がって周囲を見渡す。呻き声を上げるのがやっとの青年や全身血だらけの老婆が事切れている。
建物付近には、体中にガラス片が突き刺さった少年が倒れている。
恐らくビルのガラスが爆発の影響で飛び散った拍子に少年に突き刺さったのだろう。
……辺りは一瞬にして地獄と化していた。

「陳腐ぅ? イハハハァ!
 その陳腐なネタに引っかかったのはぁ、どこのどいつだぁ?」

水口の声に私は不快感を隠そうともしなかった。
こいつら……。やはり、粛清部隊は堅気の人間を巻き込むのを何とも思っちゃいないようだ。
機関にとって不利な状況が生まれるのが何故解からんのだ。
今日を懸命に生きる人の幸せを奪う権利は誰にも無い筈だ。
それは私の"世界中の人間を幸せにする"という理想を踏みにじる行為に他ならない。
どれ程外道に落ちようと、踏み外してはならない一線が在る。
粛清部隊の連中はそれを越えてしまっているのだ。

――バタンと車のドアを閉める音で、私はハッとなった。
ひかるが外へ出てきたのだ。

「ひかる、止すんだ。君は車の中に入っていろ」
207レオーネ ◆GWd4uIuzU6 :2009/10/12(月) 22:37:19 0
>>206

「イハハハ! 恐怖に慄いてぇ、わざわざ殺されにぃきたのかぁ?」

水口の言葉に耳を貸そうともせずに、ひかるは道路に落ちている茶色い物体に向って一直線に歩いていく。
馬鹿な、彼女には見えているのか!? こんな何処にトラップが在るか分からない道を?
茶色い物体を抱きかかえると、こちらへと戻ってくる。
やはり彼女には解かるのだ。流石はヤハウェというべき所か……。
茶色い物体は、猫だった。茶色一色だと思っていたが所々赤黒くなっている。
良く見ると猫には胴体から下が無かった。

「ごめんなさい猫さん。災難だったわね。
 あなたはこの世の悲しみの一つ……」

そう言ってひかるは足の無い猫の頭を優しく撫でる。
もし猫が生きていれば、ゴロゴロと喉を低く鳴らして頭を摺り寄せてきているだろう。
猫を撫でるひかるを馬鹿にした様子で水口は笑い声を上げる。
そんな水口の行動に、私の不愉快さはピークに達した……。

「――ひかる、その子を連れて少しの間離れていなさい。
 コイツは私が始末する」

「勝てる見込みがあるぅ、そう思っているのかぁ?
 お前の異能力は全て知っているぅ。
 タネが知られた異能者などぉ恐れるに足らんのだぁ」

確かに異能力の仕掛けを知られる事は異能者にとって致命的だ。
自分の手の内を知られる事に等しく、軽々しく他の異能者に見せるべき物ではない。
だが――

「――それが如何した? お前はまだファーストナンバーの真の恐ろしさを知らない。
 まぁ良いさ。今から教えてやる。

 お前は"オレ"を本気で怒らせた……!!」

こいつは知らなければならない。誰に拳を振り上げたのかという事を……。
そして、誰を本気で怒らせたのかという事を……。

――爆発の影響で耳鳴りがするが、文句は言っていられない。

【レオーネ:現在地 市街地中央区】
【水口と戦闘開始】
208鳳旋 希一 ◆O93o4cIbWE :2009/10/13(火) 00:13:11 0
>>199-200

霧の中で炎の放つ光が乱反射し、霧を赤く灯していた。
内部の視界は最悪で、とても内部の物を見る事は出来ない。
既に鳳旋は目で物を見てはいなかった。
統治に教わった炎による探知法、その発展系。
クローディアの放った殺気を己の炎で照らし出し、魚雷を見ていた。
ならば最早視覚は不要…。
視界を失った事でその事に気付くことが出来た。
偶然の産物ではあるが、鳳旋の感覚を考えると、それは必然だったのかもしれない。
殺気はありありと魚雷の軌道を教えてくれる。たとえ魚雷が自動追尾だろうと植えつけられた殺気は消えはしない。
後はクローディアの異能に対し鳳旋のメタトロンと気力、体力が持つかの勝負だった。

「――っ!! ぐぁッ!!」

不意にそんな呻き声が聞こえ、鳳旋の身体が霧の中から飛び出した。
鳳旋の身体は地面を転がり、やがて止まる。
彼の身体に目立った傷は見られないが、右手の皮が捲れ真っ赤になっていた。
相殺の衝撃に耐えられなかったのだろう、いかに異能を纏っているとはいえど、所詮は生身の身体なのだ。
鳳旋は辛そうに起き上がる。

「……痛……、なにが…どうなった……?」

「大丈夫か鳳旋!!」

「ああ…、撃ち洩らしたのを防いだのは良いが…、吹っ飛ばされてしもうた…

 ――ハッ!!そうだアイツは――!?」

ふと気付き、クローディアを探す。

【鳳旋:魚雷を撃ち落し、統治とクローディアを探している】
209海道 翔 ◆vpAT/EK2TU :2009/10/13(火) 11:30:59 0
桐北・・・か。
またここでいろいろなことを話したい物だな。
そろそろ帰ろう、雨も振っているしこのままでは風邪を引く。

そしてその場所を動こうとしたその時、桐北の声が聞こえたような気がして動きを止める。

「時間をかければ、それだけ敵に発見される可能性も高くなる。すぐに終わらせてやるよ」

なんだって!
この声は桐北の物じゃない、そしてさっき桐北の声が聞こえたと言うことは・・・・・・っ!!
どこだ、どこにいる。

「今からこいつをお前の心臓に突き刺す。
お前が微動だにしなければ、苦しむ間もなく一瞬であの世行きだ」

戦いじゃ・・・ない?
それじゃあ桐北は・・・死ぬ気なのか?

そんなことを考えながら声のした方へ近づいていく。
そして少し高い草を掻き分けると、そこには桐北と見知らぬ男。
草を掻き分けた音で二人とも俺に気付いたようだ。

「なんだ、おま「海道――!」

見知らぬ男が話そうとしたとき、桐北が遮り俺のことを呼んだ。

「桐北、久しぶりだな。」
「ああ、久しぶり・・・」
「桐北、そのツララを持ってる人は?なんか警戒されてるみたいなんだけど。」

【海道 翔:池上 燐介、桐北 修貴と遭遇】
210七草 柴寄 ◆O93o4cIbWE :2009/10/15(木) 22:57:49 0
>>190

「…僕は普通じゃない、狂っている」

柴寄は力なくそう言い放った。

「違う。本当に狂った人間は迷わないし、痛みも無い…。
 七草君は今こんなにも痛みを覚えているじゃない……それに―――」

――………ドオォォン
突如、遠くからの爆発音が柴寄達の耳に入る。

「……何?」

響も柴寄も、爆発音の聞こえた東の空を見る。
少しして、先程よりも大きな爆発音が、幾重にも重なって轟いた。

「――!、一体何が?……七草君!!」

柴寄は東へと足を進める。その理由は本人にもわからない。
現場は九分九厘地獄となっている。
人の死にも実感の沸かない柴寄にとって、現場に行く理由など無い筈だった。

「ダメだよ……、そっちに行っちゃ駄目…」

響は柴寄を引き止める。
向こうの世界を彼に見せてはいけない。
だって、彼は、こっちの世界とは関係無い筈なんだから。

「…ボクが行くから…、七草君はここで待ってて……」

そう言い柴寄に傘を預け、彼女は中央区へと駆けて行った。

【響:中央区へ向かう】
211池上 燐介 ◆ICEMANvW8c :2009/10/16(金) 02:30:04 0
>>209
突如現れた少年は桐北が『海道』と呼んだ。
その彼も、桐北の名を呼び、二人は俺を横目に会話を始めた。
どうやら二人とも、互いに顔見知りであるらしい。
クラスメイトか、あるいは学友と言ったところだろうか。

>「桐北、そのツララを持ってる人は?なんか警戒されてるみたいなんだけど。」
「あ、あぁ…………」

桐北は返事を躊躇するように、俺をチラチラと見る。
自分の口から真実は言えないのだろうと悟った俺は、
桐北に代わって堂々と言ってのけた。

「俺は、これからこいつを殺す者さ」

それを聞いて、海道は目を丸くしながら、桐北を見た。
桐北は無言ながら、その通りと言うように彼からサッと視線を外した。

「見たところ機関の異能者ではなさそうだな。そして俺達に対する害意もない。
たまたま近くに居合わせ、俺達の気配に気がついたからここまで来たと言ったところか。
だが、俺はこれ以上、お前とつまらん問答をする気はない。
用がなければさっさとここから消えろ。さもないと──」

俺は海道に向けて、素早く人差し指を振り下ろす。
するとツララが放たれ、それは海道の足元へと勢いよく突き刺さった。
それを見て、一瞬、体をビクリと震わせた海道に、俺は言い放った。

「お前も死ぬことになる……」

瞬間、周囲の木々から、何かの危機を感じたように一斉に鳥が飛び立った。

【池上 燐介:ツララを放ち、ここから立ち去れと告げる】
212レオーネ ◆GWd4uIuzU6 :2009/10/18(日) 22:08:56 0
>>207
「ハハハハ! 怒らせたからどうだと言うんだぁ?
 言うに事欠いてわぁたしを始末するときたぁ!
 これが笑わずにいられるかぁ」

そうやって笑っていられるのもあと僅かだ。
これが人生最後の笑いだ。精々笑っておけば良いさ……。

「お前の周りはぁ、既にトラップが張り巡らされているぅ。
 一歩でも動いたら……ボンッ! イハハハハァ!
 こんな状況でぇ、どぉうやってわたしを始末するって言うんだぁ?」

……どうやら水口は耳が聞こえるようだ。
なら簡単だ、こいつ自身にトラップを解除させてから殺せば良い。
仕掛けた本人ならば場所も、解除の仕方も知っているだろう。

オレがヒトという種の精神に干渉するまでに掛かる時間は、
およそコンマ6秒。発動までの極めて短い時間で水口が攻撃してくるとは考えられない。
だが……こいつがオレの事を外道院から聞かされていると考えれば、何らかの対策を練って――

「ボォーッと突っ立ってるだけかい? なぁら、こっちからいかせて貰うぞ!」

――少しはゆっくり考えさせて欲しい物だ。
電柱の上から何かが降ってくる。足元に転がってきた、その"何か"を見つめる……。
それは俗にパイナップルと揶揄される型の手榴弾だった。反射的にひかるを抱えて飛び退く。
その瞬間、ここまでオレ達を運んでくれた日本車は爆炎に飲み込まれていった。
跳んだお陰で足元に在ったであろうトラップを回避できたのは幸いだったが、
逃げた先にトラップが無かったのも幸いだった。
映画では、こういう時は相手に投げ返すなり蹴り返すなりして窮地を脱する物だが、
現実はそう上手くは運ばない。

「おぉーっスゴイぞぉ! スタントマンにでもぉ転職した方がいいんじゃあないかぁ?
 次はどうだぁ!?」

今度は電柱ではなく別の場所から声が聞こえる……。どうやらさっきの爆発と同時に移動をしたようだ。
確かに爆発に気を取られれば、それだけ周囲の警戒も薄れる。水口という女、慎重深い性格のようだ。
だが、危機的状況でも呼吸を乱してはいけない。常に冷静に注意深く……。

「御託はいい。貴様に一つ聴きたい事が在る。
 簡潔に言ってやる、トラップを解除しろ。今すぐに!」

これでいい、後は簡単に運ぶ。オレの『思考強制』から逃れる術は無い。
死んでいった人間たちもこんな三下に殺されたんじゃあ浮ばれないな。

「思考強制…生物の精神に直接作用する精神攻撃……。
 そう言えばぁ、ナンバー6の十八番だったなぁ、クックックッ……」

何……? 水口は平然と、押し殺したような笑いを上げている。
これは……聞いていないのか? 不発という事は在りえない。
やはり、対策は済んでいた訳だ。

「驚いたかぁ!?何重にも催眠による精神防壁を組んであるのさぁ!
 そぉんなちゃっちぃ技がぁ、聞くと思うのかぁ!?」

チッ! なるほど、厄介なプロテクトだな。
この手法は政府の要人や大企業の重役が、情報を漏らさぬように掛ける一種の暗示だ。
基本的にピンからキリだが、奴の施された防壁は強力な物らしい事は解かる。
オレの『思考強制』が通用しないのだから……。

【レオーネ:現在地 市街地中央区】
213廻間 ◆7VdkilIYF. :2009/10/20(火) 00:55:11 0
>>202
先輩と池上は何らかの用事が出来たらしく薬局から出て行く。
3人となったこの部屋には気まずい沈黙が流れる。

「…池上が言ったように…メシにでもするか?」

俺がその沈黙を切り裂くように発言する。

「…ごめんなさい、今はちょっと…」

リンは俯きながら答える。
戦場ヶ原に続いて先輩まで離れていったので、食欲を失ってるのだろうか。

「そうは言っても、少しでも食べておいた方がいいんじゃないか?
 いざって時に倒れるんじゃ大変な事になるよ」

リースが後ろからこう言った。
その声の中にリンを励まそうという気が入っているのは、リースなりの優しさだろう。

「…池上は瑞穂とかを起こせって言ってたが…疲れているだろうし少し気が引けるな。
 しょうがない、俺が作るか」
「えっ、料理とか作れるのか?」

リースが驚いたような表情を俺に向ける。

「まぁ、一応自炊生活だしな。
 目玉焼きとか簡単なものなら作れる…まあ、これならお前でも作れると思うけど」
「そっか、じゃあ頼むよ」

卵の数を確かめるため、冷蔵庫をあける。
卵の数は…1パックちょうど、か。
それで、今ここにいるのは…俺、リース、リン、瑞穂、国崎…そして、えーと、確か高山…だから、6人か。
目玉焼き6人分ね…ちょっと面倒だがやりますか。

【廻間:調理開始】
214パンドラ ◆vpAT/EK2TU :2009/10/20(火) 12:30:55 0
「ぐっ!
はぁ、はぁ、はぁ。
ふふふふふふふふ、
ふはははははははは!!
封印が解けた!やっとだ!また戦える!!」

そう叫んだ者は髪や髭が膝ほどまで伸び、赤い眼をし、凶暴という言葉がこれほどまでにあっている者はいない。そう感じさせる男だった。

男はそばに倒れていた者の服を剥ぎ取り身に着けた。

「ふははははははは、これで準備は整った。
強い奴はいるか?まあ居なくてもいい、片っ端からぶっ殺すまでだ!」

そう言って壁を壊し周りのビルなどを足場に駆けて行った。



「ん?この気配。
ふはははははははは、待っていろ!俺がぶっ殺しに行ってやる!!

何かを見つけたかのように一瞬止まり、瞬間それまでよりも速いスピードで山へ向かい走っていった。

【強者が居ることを感じ山に向かう】
215海道 翔 ◆vpAT/EK2TU :2009/10/20(火) 12:31:55 0
>「桐北、そのツララを持ってる人は?なんか警戒されてるみたいなんだけど。」
>「あ、あぁ…………」

俺がそう聞くと桐北は返事を躊躇するかのように、ツララの男をチラチラと見る。
何か自分の口からいえないようなことをしているとでも言うのか?

「桐き「俺は、これからこいつを殺すものさ」っ!」

桐北に返事を促そうとしたその時、ツララの男は桐北を殺すと言った。
その言葉に、俺は混乱しているのかと思いながらも、確認をするために桐北の事を見る。
桐北はそれは本当のことだと言わんばかりに、無言でサッと視線をはずした。

>「見たところ機関の異能者ではなさそうだな。そして俺達に対する害意もない。
たまたま近くに居合わせ、俺達の気配に気がついたからここまで来たと言ったところか。
だが、俺はこれ以上、お前とつまらん問答をする気はない。
用がなければさっさとここから消えろ。さもないと──」

ツララの男はそう言いながらすばやく人差し指を立てた腕を振り下ろす。
するとツララが放たれ俺の足元に勢い良く突き刺さる。
それを見た俺は、一瞬恐怖で身体を硬直させる。
そんな俺に

>「お前も死ぬことになる……」

そう言い放った。
瞬間、周囲の木々から何かの危険を感じたかのようにいっせいに鳥が飛び立つ。
そのことを考えてしまった俺は現実逃避でもしていたのだろうか?
そして何も言えないうえに、動こうともしない俺を尻目に、ツララの男がもう一度ツララを作り出す。

「池上さん!そいつを、海道を逃がしてやって下さい!お願いします!」

死を覚悟したその時そんな桐北の声が聞こえてきた。
自分が死のうとしているこの時に、俺をきずかうような言葉。
その言葉に俺は恐怖による硬直がとける。

「桐北、すまないな。
俺は離れていたほうが良いのか?」

桐北に謝り、ツララの男・・・池上と呼ばれていたか、池上に確認する。
返答は離れて何も言わないでいろとのことだった。
そして離れようとしたその時、

・・・ズガン!!

近くで大きな音が聞こえてきた。

【何かが落ちたような大きな音を聞く】
216天弦朧 ◆chy4E0OMdA :2009/10/20(火) 17:44:44 0
「おばちゃん、hi-lite2つ」
昔ながらの煙草屋に足を運び、いつもの様にいつもの煙草をいつもと同じ量買う。日常生活の中で、至極有り触れた一コマである。
「いつものね、お兄さん」
皺の刻まれた手で煙草を手渡す。それは何よりも美しいと天弦朧は思う。歴史を感じさせる、見た目の美麗さよりも、内面から滲み出る本質的な美しさ。それは歴史の重みと言い換えてもいいだろう。
「お兄さんも物好きだねえ。こんな寂れた商店街で買い物するなんてさ」
煙草屋の店主であろうお年を召したご婦人が話しかけてきた。
「いやぁ、この町は綺麗だよ。歴史と、そこにある生活は何よりもさ。―――――少なくとも俺はそう思っているからね」
購入したばかりの煙草を開け、火を灯しつつ答える。紫煙が宙を舞い散る。
「そうかい?こんな場所でもお兄さんみたいな若い人に好かれてるなら本望だろうねぇ」
店主はそうにこやかに返した。
「この町は美しいね。それは生活の中でしか味わえない様な美しさだと思うよ。―――勿論おばちゃんもさ」
「こんなおばちゃんを口説くくらいならもっとイイ人を口説きなさいな」
微笑を交えての会話。
「んじゃ、俺はそろそろ行くよ。仕事サボってるしね」
「えぇ、またどうぞ」

人が疎らな界隈を抜け、廃ビルに平然と入っていく。
好景気な時代に乱立し、不景気となった途端に捨てられ、主を失ったビルのひとつを事務所兼家として利用していた。
知る人しか知らない、内容と報酬が見合ったのならば、善悪、裏表を問わず引き受ける何でも屋。
脱走したペットの捜索からボディーガード、果ては暗殺までも。

「いらっしゃい。―――――何がお望みだい?」


【宜しくお願いします。】
217 ◆GWd4uIuzU6 :2009/10/21(水) 22:51:21 0
>>204

>「罵れ!憎め!恨め!呪え!お前達にはその権利がある!
>――けれど、お前達の未来は、燃えて、堕ちる!」

「こんなに楽しいのは生まれてはじめて!」

伸ばしたか細い手が掴もうとするは命――。屠るは眼前の裏切り者。
銀水苑の小太刀が風を切る音が聞こえるが、クローディアは気にしない。
代わりに左手を差し出す。それは何も受け止めるつもりの事ではない。
生身の腕で、それも子供の腕で受け止めきれる程刃物は軽くは無い。
案の定左手の人差し指から薬指までが白刃によって吹っ飛ぶ。
だが、この左手の犠牲に見合うだけの価値はあった。

左手を差し出した目的、それは小太刀の威力の減衰にあった。
いくら鋭い刃物でも、どれ程それが素早かろうとも、一旦クッションを置けば僅かながらも威力は鈍る。
傷は浅くは無いだろうが、即死を免れればそれで良い。
痛みは後から来るから問題は無い。そして、その痛みにも慣れている。
何も問題は無かった。この男さえ葬れば後は貧弱なスキルしか持って居ないような連中だ。
如何とでもなる。

(もっと! もっと! もっと愉しませてよ!
 過去を忘れさせてくれるくらいに!)

斜めに切り上げられた刃は、クローディアの首筋を切り裂いた。
右手が銀水苑の腹部に触る直前、僅かなタッチの差であった。
クローディアの首から血しぶきが上がり、その体はよろよろと力無く揺れる。
右手は既に銀水苑を掴むのを止め、地に向って垂れ下がっていた。
残った左手……それも欠損した状態の左手は、首筋を押さえている。
だが、それでも流れ出る血の奔流を押さえる事を出来ず、
隙間から止め処無く血液が流れ出てきていた。

「おじさんは……これから楽しくなるよ…うふふふ…。
 ボクはそれをお空の上から見てるんだ……」

命に幕を降ろす時は誰しも必ず来る物だ。
遅いか早いかの違いはあるが、皆平等に逃れる術は無い。
オズワルドとクローディアは平均よりも早かった……それだけの事なのだ。
十分に楽しかった……。忌まわしい過去の元は十分に取った。

「の…野いちご…赤い実だよ。…こ、木蔭で見つけたよー。
 誰も知らないのにー……小鳥が……見てたー……ふふふ……」

仰向けに崩れ落ちたクローディアの口からは故郷に伝わる民謡が口ずさまれる。
果たしてクローディアは人間に戻れたのだろうか?
それを知る術を持つ者はこの場には誰一人としていなかった……。

【オズワルド&クローディア:両名とも死亡】
218鳳旋 希一 ◆O93o4cIbWE :2009/10/22(木) 00:01:30 0
>>204>>217

鳳旋がクローディア達を見つける頃、彼等の戦いは既に終焉を迎えようとしていた。
統治の持つ小太刀がクローディアの指を吹き飛ばし、そのまま首筋までを切り裂く。
統治を掴もうとしていた右腕はダランと垂れ下がり、糸の切れた人形の様に見える。
関節を失った左手は、それでもなお首筋を押さえようとしていた。
恐らくは動脈まで届いただろう首の傷、失った指の隙間から、止め処なく赤い液体が流れ出している。
クローディアはゆっくりと崩れ落ちる。ゆっくり……ゆっくりと……。

「 …    ……    。…   …ー。
    ー……  ……  ー……   ……」

仰向けに倒れたクローディアは何かを口ずさんでいる。
ここからは遠くて聞こえない。

オズワルドとクローディア――、血に染まりすぎた双子。
雨が、血に染まった二人の身体を洗い落とす。果たして彼等は、最後に人間に戻れたのだろうか――?

「――……あ…、あ……」

クローディアの最後を見た鳳旋はワナワナと震えている。
二人を救えなかった事への憤り。自分の無力さへの怒り。
そうしたものが鳳旋の中で爆発した。鳳旋は二人を殺めた統治の胸倉に掴みかかろうとしていた。

「っ!! 何故! 何故殺したぁ!! 他に方法があったかも知れんだろうがァ!!」

本当は救いたかった。そう、死なせたくなかった。
姫野や光龍みたいに、救えると信じたかった。
だけどそんな理想とは裏腹に現実は残酷で、殺すしかなかったという現実を、彼は認めたく無かった。

【鳳旋:統治の胸倉に掴みかかる】
219銀水苑 ◆TF75mpHiwMDV :2009/10/22(木) 19:14:36 0
>>218

「っ!! 何故! 何故殺したぁ!! 他に方法があったかも知れんだろうがァ!!」

「っ……他にどんな方法があるというんだ!
死と狂気の絡まない純粋で綺麗な喧嘩と戦い以外知らないお前に何がわかる!」

胸倉を掴みかかられたその刹那、統治の拳が振るわれていた。
その拳は重く、素早いが、何処か――酷く哀しい。

統治は無自覚に、その拳に自らの見えない心火を乗せていたのだ。
これは統治すら気が付かなかったことである。
他人の心火を読めることを疎んじており、
知らなかったのだ。拳に心火を宿せば精神系異能者のように
テレパシーのように自分の感情をダイレクトに伝えてしまうなどとは。
拳が哭いている。拳ががヒュウ、ヒュウとばかりに泣いている様に聞こえる。
相対する鳳旋には攻撃の衝撃と共に、鳳旋に統治の抱える悲しみが伝わってくる。
この世ならざる炎を纏ったその一撃に哀しみが響いてくる。
異能者としての哀しみ。故に戦わなくてはならない哀しみ。
戦いのみが全てを解決する世界で生きなければいけなかった哀しみ。
強くなければ生きられなかった哀しみ。
闇の世界に棲む者とはいえ、命を奪う哀しみ。
罪も無いものを秘密を守る為に殺さなくてはならない哀しみ。
統治が失っていく体温を前に感じる、絶望に似た深い悲哀と慟哭を。
闇に囚われ狂ってしまった双子を殺めなくてはいけなかった苦しみ。
馬鹿だけれども正しいと信じる物を疑わない、鳳旋に対する一欠けらの尊敬と羨望も。

「お前ならもっと上手く出来たとでも言うのか!」

鳳旋から反論と共に殴り返されるがそれを避けず、あえて殴られた。
血を拭い、言葉を紡ぐ。
220銀水苑 ◆TF75mpHiwMDV :2009/10/22(木) 19:17:21 0
「良いかよく聞けよ……!光龍は負傷し、お前は心に迷いが在った!」

自らも連戦で消耗して本調子ではないという言葉は飲み込んだ。
言えば良い訳になってしまうから。

「そんな状況で、幾ら子供とはいえ
人を殺める事に微塵の躊躇も無い程に闇に飲まれた熟練の異能者と相対し
その上相手を気遣い、あまつさえは無力化して救う余裕なんざあるわけ無いんだ!
相手は打ち倒されるその瞬間まで俺に致死の一撃を打ち込もうとしていた……
下手を打てば、俺達が全滅していた!」

統治の作った握り拳は、力の込めすぎで白蝋の如く白くなり、
掌に食い込んだ爪からは血が滲み出していた。

「俺はヤハウェじゃない!相手を殺さずに無力化できるような絶対の異能者じゃないんだ!
生かして止める力が俺には無い!無論、お前にもだ!
血と戦いの定めだ!殺されてやるわけにはいかない。なら……選ぶしかないだろうが!」

統治もまた、好きでやったわけではないのだ。
生きていれば未来のある子供を殺したいわけではなかったのだ。
救えるものなら救いたかったのだ。
しかし、無情にも雨が、生き残った三人を冷たく打ち据える。
決して最善の結果などではない。しかし、現実と言うのは得てしてこういう運命をも齎すのだろう。
無力感を噛み締める結末、勝利と言うには余りにも虚しい。

「……殴って悪かったな……この子達を荼毘(だび:火葬の古語)に伏さねばならない。
放って置けば騒ぎになる……墓も墓標も無いが……な……」

【図らずも異能の作用で拳を介して統治の感情が伝わる】
221鳳旋 希一 ◆O93o4cIbWE :2009/10/22(木) 23:26:55 0
「っ……他にどんな方法があるというんだ!
死と狂気の絡まない純粋で綺麗な喧嘩と戦い以外知らないお前に何がわかる!」

統治の拳が鳳旋に振るわれる。
途方も無い哀しみがこめられた拳が伝えたのは衝撃だけでは無い。
拳は統治の背負った哀しみをも鳳旋へと伝えていた。
唯一度振るわれた拳だけで統治の悲しみが伝わってくる。

(これが……、統治の哀しみ…?)

「お前ならもっと上手く出来たとでも言うのか!」

鳳旋は言葉を失った。

「………っ!!」

反論は言葉にすらならない。身体だけが先行して動き統治を殴り返していた。
統治は抵抗せずに唯殴られ、そして言葉を紡ぐ。

「良いかよく聞けよ……!光龍は負傷し、お前は心に迷いが在った!」

(くっ…、だがそれでも……!!)

「そんな状況で、幾ら子供とはいえ
人を殺める事に微塵の躊躇も無い程に闇に飲まれた熟練の異能者と相対し
その上相手を気遣い、あまつさえは無力化して救う余裕なんざあるわけ無いんだ!
相手は打ち倒されるその瞬間まで俺に致死の一撃を打ち込もうとしていた……
下手を打てば、俺達が全滅していた!」

統治の悲しみを感じてしまった鳳旋には返す言葉が見付からなかった。
自分自身が甘いと言ってしまえばそれまでなのかも知れない。

「俺はヤハウェじゃない!相手を殺さずに無力化できるような絶対の異能者じゃないんだ!
生かして止める力が俺には無い!無論、お前にもだ!
血と戦いの定めだ!殺されてやるわけにはいかない。なら……選ぶしかないだろうが!」

悔しいが統治の言う事は正しい。自分には止める事が出来なかった。止める力が無かった…。
雨が身体を打ち据える。無力感が身体を包んで行く。なんて虚しい、、、結末。

「……殴って悪かったな……この子達を荼毘(だび:火葬の古語)に伏さねばならない。
放って置けば騒ぎになる……墓も墓標も無いが……な……」

火に葬られる二人の前で鳳旋は膝を付いて崩れ落ち、その灯火と共に打ちひしがれている。
その姿はまるで泣いているようにも見えた。
それからどれ程の時間が経っただろうか、二人の灯火が尽きるまで、鳳旋はずっとそうしていた。
そして鳳旋が最初に思った事はこうだった。

―――もっと力が欲しい、皆を救えるような力が―――

【鳳旋:自身の無力に打ちひしがれる】
222伊賀 響 ◆O93o4cIbWE :2009/10/24(土) 21:49:31 0
>>212

―――ドオオォン…

また爆発…。

彼女の脳裏には最悪の光景しか浮んでこない。

急がないと…更に犠牲者が増える。…それに…。

彼女は地を蹴って飛び上がり、中央区へと向かう。
其処は、彼女が着く頃には地獄と化していた。
惨劇の舞台は今なお続いている。
見下ろす光景は彼女に最も見たく無い物を見せ、同時に最も思い出したくない物を思い出させた。
彼女はわずかに顔を顰め、現場の状況を確認する。
立って居る者は、僅かに二人。地に伏す者の殆どは既に手遅れになっていた。
何故こんな事が出来る? 無関係な人達を、、、何故、殺す事が出来る?

「……レオーネ、敵は何処?」

立って居る二人の人間の内の一人、レオーネの傍に降り立つ。
そして間髪入れずに声が聞こえてきた。

「イハハハハ!
 
 ……んん、なんだぁおまえはぁ?」

声は聞こえるし、気配も感じる。
だが身辺に居るはずなのに姿が見えない。
そう考えてる内に、放物線を描いて此方に飛来する物体が一つ。
拳大の大きさを持った物体、彼女がそれを榴弾だと認識すると同時に、彼女は榴弾の手前に局地的な暴風を発生させ、それを跳ね返した。
軌道の変わった榴弾はそのまま投げた主の元へと帰って行き、そして、爆発した。

「…なるほど保護色。あるいは、姿を消す異能力…」

声は聞こえるが姿は見えない、けれど敵は近くに居る。
その事から踏まえ、彼女は"敵"の異能力を姿を消す異能だと判断した。
確かに厄介な異能だ。敵の察知を視覚情報だけに頼るとすればの話だが。

「…はぁ…、こんなものは、"彼"には見せられないなぁ……」

彼女は不意にそう漏らす。

「うおおぉ! 危ないじゃぁないかぁ、なんなんだぁ? おまえはぁ?」

また何処からか声が聞こえてくる。敵はあの爆発程度ではやられてくれないようだ。
彼女は声の聞こえる場所をキッと睨み静かに言い放つ。
その声には、とても少女の物とは思えない重みがあった。

「…何でも良い…、あなたはやり過ぎた…。
 
 だから――私はあなたを許さない――

 …レオーネ、手を貸すわ…」

この際味方がレオーネでも関係無い。こんなものは、彼には見せられないから。
今は唯、敵を――…。

【響:現在地、市街地中央区】
【レオーネと水口の戦闘に介入】
223池上 燐介 ◆ICEMANvW8c :2009/10/25(日) 04:45:15 0
>>214>>215
いまいち現状の整理がつかないで混乱しているのか、
海道は忠告を受けたにも関わらず、この場を離れようとしない。
俺はそんな海道を威嚇するように、再び空中にツララを出現させる。
だが、それを見た桐北が、すかさず「逃がしてやってくれ」と口を差し挟むと、
その言葉を聞いて、海道はやっと我に返ったのか、俺に行動の再確認を求めた。

>「桐北、すまないな。
>俺は離れていたほうが良いのか?」
その問いに、俺は小さく頷き、
最後に「ついでに俺の存在も忘れておくことだ」と付け加えた。
彼はわかったというように、再度俺と目を合わせると、くるりと背を翻した。

だが、彼がそうしてこの場から立ち去ろうとした時──
不意に、直ぐ近くの場所から、「ズン」というような低い衝撃音が鳴り響いた。

「────!」

俺は思わず、言葉にならない言葉を吐き、眉を顰めた。
桐北や海道も、突然の出来事に目を丸くしている。
しかし、俺が眉を顰めたのは、突然発生した音に驚いたからではなく、
衝撃音が響いたその方向から"異能力"を感知したからである。
しかもそこからは、明らかに俺達に向けられている鋭い殺気も感じられた。
つまり、敵に見つかってしまった──俺は直ぐにそう判断し、小さく舌打ちをした。

「チッ……厄介なことになったな。やはり、お前は薬局で殺っておくべきだったようだ」
「え……?」

未だ事態が呑み込めていない桐北は、怪訝な表情で俺を見る。
俺はそんな桐北に視線を向けると、彼の疑問に溜息混じりに答えた。

「敵さんのお出ましだ。
やれやれ……こういう事態は避けておきたかったんだが、な……」

【池上 燐介:パンドラを迎え撃とうとする】
224レオーネ ◆GWd4uIuzU6 :2009/10/27(火) 00:05:48 0
>>212 >>222

戦闘に入ってからの敵との会話で解かった事は――。
敵の名前は水口理世。No.5外道院柚鬼の臣下で、彼女が束ねる粛清部隊の隊員であるという事だ。
それらの情報は、今は必要無い。こちらはこの状況を打破するだけの情報に乏しく、
逆に敵にはこちらの情報はブリーフィング済みと来た。正直事態は芳しくない。
だが、水口の性格が解かっただけでも収穫だ。

「なぁんも策が無いようだから、そろそろ終わりにしようかねぇ。
 もう少し遊んでいたかったがぁ、
 上司の指定したぁタイムリミットが近づいてきているぅしなぁ。
 あの人はぁ時間にぃ、ぅ煩いからなぁ」

上司、だと……? あの女が時間に煩いと聞いた憶えは無いが……。
では仕方が無い。こちらも最大最高の技で貴様を葬ってやろう。
こんな三下相手に使いたくは無かったが、さっさと殺してひかると脱出せねばならん。

「夢幻――」

「待って。その必要は無いわ」

技の発動寸前でひかるに静止させられる。何故待つ必要が在るというのだ?

「人が来る。その人は貴方の味方でもないけど、敵でもない……」

人? その後に続く言葉が意味深だな……。味方でもないが、敵でもない。
これは即ち、オレの言動次第でどちらにでも転ぶ可能性が在るという事か。

そして、すぐにその時はやって来た。
天から舞い降りた小さな影……。伊賀響……彼女であった。
ひかるは伊賀が来る事を予知していたのだ。

さしもの暗殺部隊でもこの悲惨な状況に顔をしかめるようだ。
まぁ、無理も無いだろうな。オレだって嫌だ。

>「……レオーネ、敵は何処?」

伊賀の言葉に肩を竦めて見せる。見えないのは厄介だが、
異能の探知と気配の探知を駆使すれば簡単に見つけ出せる。
問題はオレ達の周囲を取り囲んでいるであろう罠の数々だ。

……待てよ? オレ達? 一人だけ罠に囲まれていない人間が居るじゃないか。
これは使えるな。

>「イハハハハ!
> 
> ……んん、なんだぁおまえはぁ?」

ふんっ、流石三下だ。この伊賀響を知らんとはな。
彼女は暗殺部隊の中でも一、二を争う実力者だ。
225レオーネ ◆GWd4uIuzU6 :2009/10/27(火) 00:10:29 0
>>224

無謀にもその伊賀に対してオレの時と全く同じ要領で手榴弾を投げつける。
しかし、弧を描いたそれは伊賀に届く事は無く、再び水口の元へと舞い戻っていった。
恐らく自分の前で風の層を作り出して手榴弾を弾いたのだろう。
伊賀響……風を操る事に長ける少女か。それに比べて水口の何と芸の無い事だろうか。
少しは別の方法で殺しに掛かって欲しい物だ。

>「…なるほど保護色。あるいは、姿を消す異能力…」

流石に状況判断が早い。暗殺部隊と戦う時は苦戦を強いられそうだな。

>「…はぁ…、こんなものは、"彼"には見せられないなぁ……」

……聞かなかった事にしよう。レディには秘密がつき物だ。
まぁ、話の彼とは十中八九 シヨリだろうが。

>「うおおぉ! 危ないじゃぁないかぁ、なんなんだぁ? おまえはぁ?」

ここに来て漸く水口の声が上ずった。不測の事態に多少なりとも冷や汗をかいている筈だ。

>「…何でも良い…、あなたはやり過ぎた…。
 
> だから――私はあなたを許さない――

> …レオーネ、手を貸すわ…」

この場で未だトラップに囲まれていない人間――。それは彼女、伊賀響。
水口の性格と奴の現在置かれている状況からして確実を求める筈。
奴は時間に追われている。即ち迅速かつ確実に攻めてくるだろう。
その為にはブービートラップを伊賀の周りに対して施す筈だ。
その時がチャンスか……!

異能力の波動を探知する事に専念すると、
我々三人以外の四番目の波動が徐々にこちらに近づいてくるのが解かる。
これが水口だろう。徐々に、徐々にだが確実に近づいて来ている。
チャンスは……今かッ!

オレは当の伊賀本人が反応するよりも素早く、その波動目掛けて蹴りを放った。
蹴りといっても空手で言う所の"胴回し回転蹴り"という奴だ。
遠心力を付けて放たれたそれは、木の板はおろか、瓦も叩き割るという。
まともに入った感触は在った。案の定汚い悲鳴を上げて水口は吹っ飛……んだのだろう。
見えないから解からんが……。
                ワン
「ここに来て漸くのダメージ1、か。伊賀響、力を貸してくれる事には感謝する」

敵の敵は味方……。意固地にならずにここは一つ共同戦線を張るべきだろう。
勿論、気を許した訳ではない。伊賀の出方にも留意しておく事にしよう。

「ぐぅううぅむむむ!! なぜ、なぜバレたぁ!」

阿呆が……。三下で阿呆とは最早救いようが無いな。
オレは肩を竦める。ひかるもそれにつられて小さく溜め息を漏らした。
226レオーネ ◆GWd4uIuzU6 :2009/10/27(火) 00:12:37 0
>>225

「響さん、レオーネ。貴方達が私の願いを聞いてくれるというのなら力を貸してあげる」

ひかるに視線を移す。無理な願いは聞けないが、
彼女の助力を得る事が出来るのならば、それに越した事は無いだろう。
現状を打破する為に必要な物は何でも使うのがプロだ。

「……言ってみろ」

ひかるは抱いていた猫の亡骸をそっと地面に横たわらせる。
服は猫の真新しい血で汚れているが、ひかるがそれを気にする様子は無かった。

「後でこの子のお墓を作ってあげる事……。
 それが私の望み――」

オレは構わんが……。伊賀の方はシヨリが待っていそうだ。
余り時間を取らせる訳にはいかんな。

「良いだろう」

オレが承諾し、伊賀の方もそれを了承した事で、ここにひかるとの契約は完了した。
機関が捕らえる事に躍起になったヤハウェが、一時的にでは在るが我々の味方となったのだ。
ひかるはそっと両手をオレと伊賀に差し出す。

「さ、手を繋いで頂戴。そうすれば仕掛けられた罠が見えるようになるわ」

ひかるの小さな手を握る、すると不思議な事に辺り一帯のトラップが赤く光って見えたではないか。
トラップだけではない。それらを起動させる為に張り巡らされた線すらも見える。
この形は……設置型のクレイモア地雷か。触れれば細かい鉄球によって漏れなく蜂の巣になるという寸法だ。

「人間の脳は目というカメラに映った物しか認識しない。
 そんな物質的な視点からではなく、
 アストラル的な視点からならばあらゆる事柄を見通す事が出来る……」

……彼女の口から心霊現象を肯定する言葉が出てくるとは思わなかったな。
オレも昔は機関の超常現象研究部門に席を置いた身。ひかるの言葉が何を意味しているのか理解出来る。
これで先程ひかるが周囲のトラップを物ともせずに猫を拾いに行ったのか解かった。

つまり、彼女は異能力を使って死者から周囲の状況を教えて貰っているのだ。
そこには下手な小細工は通用しない。例えそれが異能による保護色だろうと何だろうと。
死者の目は誤魔化せないという事だ。そして、今回はそれをオレと伊賀に共有させたのだろう。

「もう手を離しても大丈夫。ビジョンの共有は少しの間だけど、
 それだけあれば十分でしょう?」

手を離しても継続するという事はつまり、暫く自由に動ける訳だな。

――さぁ、ここからが本番だ……!

【レオーネ:現在地 市街地中央区】
【ひかるの異能力でレオーネと響に周囲の罠が見えるようになる】
227銀水苑 ◆TF75mpHiwMDV :2009/10/28(水) 01:16:12 0
オズワルドとクローディアを荼毘に付した後、負傷した光龍と鳳旋に活炎を掛ける。
暖かく柔らかな炎が灯り、物を燃やさない、癒しの生命の焔が二人の負傷を徐々に塞ぐ。
「……痛みは我慢しろ。それと体力や失血は完全には戻らんぞ」
回復は結構消耗するのだが、疲労はそれほどでもない。
(……粛清部隊の二人を倒したせいか)
メタトロンの絶対量が増えたことを感じたが気分は重い。
その時、統治の機連送が気だるげに洋楽のバラードを紡ぎ始めた。
どうやら、抹消部隊の副隊長からだ。
「……更紗(さらさ)か。どうした?」
鈴を転がしたような、澄んだ少女の声が機連送から聞こえてくる。
『どーしたじゃないですよ隊長ー!こっちは現在進行形で修羅場ですよ!修羅場!
インテリジェンスビルの中は下級構成員の死体の山です!』
「……やはりか」
『予測済みだったんですか……
相変わらず嫌味なほど冷静でテンション低っくいですねー』
「……戦場ヶ原とその部下、あの藤堂院の娘や
ファーストナンバーを打倒した池上が乗り込んでくれば
こうなる事は有る程度予測できた」
『こっそり観察してましたがあいつらガチでやばかったですねー。
やり合いたくないですよ……で、この忙しいときに隊長は何をやってたんですか?』
「……No.06からの勅命で粛清部隊員を二人ほど抹消していた。
まだ子供だったよ……酷く気分が重い。
――恐らく続きが有る。忙しいというなら仕事、代わるか?」
『ぶっ!私以上の修羅場だった……遠慮しときます……
さらっと言ってくれてますけどちょっとそれまずくないですか!』
「確かに面倒になりそうだ……だが多少身体や心が痛んでもやらねばならん。
と言うわけでそっちには応援にいけそうも無い」
『なるほど、そういう事情じゃしゃーないっすね。こっちで部下を纏めときます』
「……宜しく頼む、ビル内の粛清部隊にも十分気をつけ……」
言い切らないうちに、更紗が言葉を遮った。
228銀水苑 ◆TF75mpHiwMDV :2009/10/28(水) 01:17:16 0

『居ないですよ』
「なに……?」
『だから、ビルに居ないんです、粛清部隊。街中で絶賛暴走中です。
外回りの抹消部隊員がオーバーワークで悲鳴上げてますよ。
あと、現場から上がってきた報告では、現在座標12.88で粛清部隊員とNo.06が交戦中です』
「……奴等本気だな。恐らくは粛清部隊の後詰が来ると踏んだ方が良い」
『行くんでしょ?露払いに。
ジャーンジャーン伏兵!なんて洒落にもなりませんからね。
それに、部屋を汚す人が居ると何時まで立っても【掃除】が終わりませんからねー』
「ああ、そうするよ」
『わたしも粛清部隊にはイライラしてましたからねー。良い機会で大義名分もあるなら……
遠慮なく奴等をこの世から退けて来て下さいな』
銀水苑は押し黙った。
「…………」
『あちゃー。子供達の事、気にしてるんですかたいちょー。
――仕方ないじゃないですか。こんな裏稼業なんですし。
哀しみ背負いすぎですよ。北斗の拳じゃあるまいし』
「この街は世紀末と化してるがな」
『おっ、やっと乗ってくれましたね』
「……気を紛らわせてくれたのだろう?」
『……さあ、どうだか。たいちょーが気負いすぎです。
部下の命令は【いのち だいじに】なのに。たいちょーがいのちだいじにですよ。
その二人は救えなかったかもしれませんが的確な判断で私達は助かりましたよ。恐らく減俸は免れませんけど。
それでいいじゃないですか』
「もう、大丈夫だ…………」
『それはそれは』
「更紗、減俸がどうとか言っていたが……この数日後には機関があるかどうかがわからん。
念のため一段楽したら【リサイクルバザー】や【洗濯機】とかのルートを抑えとけ。任務に戻る。後はよろしく頼む」
統治は機連送を切った。
そして、鳳旋と光龍に話しかける。

「奇縁から協力することになったが……俺はそろそろ行く。
まだ、この街にはこの子達が歪んだ原因である下衆と外道どもが居るからな。
……これからどうするかは自分たちで決めろ」

【光龍と鳳旋に応急処置をほどこし、機連送で連絡を取り、行動方針を確認】
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