【邪気眼】二つ名を持つ異能者になって戦うスレ5

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1名無しになりきれ
*「ここは 邪気眼 のスレです」
*「sage や 酉 は入力しなければ意味がないぞ」
*「荒らしを構った後には 荒らし扱いになるよ」
*「おお名無しよ 版権キャラを使ってしまうとはなさけない」

*過去スレ
【邪気眼】二つ名を持つ異能者になって戦うスレ
ttp://etc7.2ch.net/test/read.cgi/charaneta2/1203406193/
【邪気眼】二つ名を持つ異能者になって戦うスレ2
ttp://etc7.2ch.net/test/read.cgi/charaneta2/1209655636/
【邪気眼】二つ名を持つ異能者になって戦うスレ3
ttp://etc7.2ch.net/test/read.cgi/charaneta2/1211555048/
【邪気眼】二つ名を持つ異能者になって戦うスレ4
ttp://etc7.2ch.net/test/read.cgi/charaneta2/1213536727/

*避難所
二つ名を持つ異能者になって戦うスレ避難所2
P C:ttp://jbbs.livedoor.jp/bbs/read.cgi/computer/20066/1211908307/
携帯:ttp://jbbs.livedoor.jp/bbs/i.cgi/computer/20066/1211908307/n

*まとめサイト
二つ名を持つ異能者になって戦うスレ@wiki
ttp://www9.atwiki.jp/hutatuna/

*これまでのあらすじ
『闘って奪い獲れ。生き残るためには勝ち残れ』。
舞台はどこにでもある地方都市、貳名市。
この街には「二つ名」を持ち、それに由来する異能力を有する『異能者』たちが存在した。
一通のメールは、異能者たちを否応なく闘いに駆り立てる。

一難去ってまた一難。異能者達に平穏は無い
病院、商店街・・・『機関』の魔の手はどこまでも
そしてついに姿を現すNо.1、城栄金剛!彼の口から語られる恐るべき目的とは!
油断ならぬ展開を見逃すな
2名無しになりきれ:2008/08/10(日) 21:12:13 0
*【テンプレ】
(キャラクターのプロフィールを記入し、避難所に投下した後、
 まとめサイトにて、自分のキャラクターの紹介ページを作成してください)
名前:
二つ名:ttp://pha22.net/name2/ ←で↑のキャラ名を入力
年齢:
身長:
体重:
種族:
職業:
性別:
能力:(一応二つ名にこじつけた能力設定を)
容姿:
趣味:
好きなもの:
嫌いなもの:
キャラ解説:

S→別格 A→人外 B→逸脱 C→得意 D→普通 E→不得意 F→皆無
U→変動 N→機能未保有 ……の九段階まで。
・本体
筋  力:
耐久力:
俊敏性:
技  術:
知  力:
精神力:
成長性:

・能力
範  囲:
破壊力:
操作性:
応用性:
持続性:
成長性:
リスク :


*【機関の説明】
・機関(組織)は総合商社や慈善団体、暗殺集団などいろいろな側面を持つ
・機関には異能力者以外もいる
・機関の異能力者は番号(NO.)で序列があらわされる
・一桁番号(ファーストナンバー)は特別な幹部
・世襲幹部が五人いる
・機関は人工異能力者を増産している
3池上 燐介 ◆qqu0tZFsYU :2008/08/10(日) 21:49:09 0
>>前スレ251
「チーン」と間の抜けた音が不意に鳴り響いた。
どうやら誰かがエレベーターに乗ってこの階に来たらしい。
俺が目の前にしている怪物を認知していないただの社員か、
それとも社長の危機を察知して駆けつけた武装構成員か、
どちらにしろ俺にとって現状を好転させるきっかけになるものではないだろう。

「また清掃員が来たのか、まぁいい、まずはこいつからかたづけよう。
君はそれからゆっくりとお相手してあげよう。
やれ、ケルベロス、『コールド・ブレス』」

重松らの言葉を聞いて、俺はエレベーターに目を向けた。
服は俺と同じものを着込んでいるが、微妙に車の中の男達とは体型が違う。
そいつはこちらに駆け寄ると、刀を抜いて俺の自由を奪う氷を断ち切り、
そのまま俺を抱えてケルベロスの攻撃をかわした。
(先程の清掃員……? いや、違う……。しかし素早いな……一体何者……)

思考を巡らす俺の横で、この謎の人物と重松らの問答が始まっていた。
すると、聞き覚えのある声が俺の耳へと飛び込むのだった。
(この声……そして今確かに『刀』が言葉を発した……。なるほど……)

謎の人物が長い銀髪を曝け出したところで、俺はその正体を確信した。
そう、つい数時間前まで俺の家にいた、あの藤堂院だと。
だが重松らは藤堂院自身ではなく、彼女が持つ刀の言葉を聞いて何やらと驚いている。
どうやらあの刀は機関と深い関わりを持っていたようだ。

>「池上、援護は任せたぞ」
藤堂院が俺と目を合わせると、軽く微笑を浮かべた。
しかしこちらの予想に反して意外な助っ人が現れるとは……やはり、人生何があるか分からん。
まぁ、利用できるものは最大限に利用する。好転しかけた流れを止めるつもりはない。
俺は藤堂院の言葉にコクンと頷いた。
4池上 燐介 ◆qqu0tZFsYU :2008/08/10(日) 21:52:52 0
「死ねぇぇぇぇぇっ!! コールド・ブレスっ!!」

重松の声にケルベロスが反応し、三つの頭の口から強力な凍気が藤堂院に向けて放たれた。
しかし、俺はそれを右手より放たれた同レベルの威力を持つ凍気によって、空中で威力を相殺した。
ケルベロスと藤堂院の間の空間で、二つのエネルギーが青白い光を発しながら弾け飛ぶ。
辺りは一瞬の閃光に包まれた。

「グガァァァァァァっ!!」
「な、なにぃ!? 前が見えん!」

瞬間、俺はすかさず藤堂院に「ケルベロスの目の前まで飛べ」と促した。

「ぐっ……おのれこしゃくな……! ケルベロス! もう一度コールド・ブレスをくらわしてやれい!」
「グッ……ガガガッ……」
「ど、どうした! 何をしておるかぁ!」

閃光の中でケルベロスの呻き声と重松らの怒声が飛び交う。
そんな中、俺は一人事態を見据えたように呟いた。

「どうせならあらゆる箇所から凍気を発するように創っておくんだったな。
しばらく口は使えなくさせてもらったよ」

光が止み、辺りを再び視認できるようになった時──重松らが驚きの声を挙げた。

「ば、バカな! ケルベロスの口が……氷によって覆われている!?」

「何を驚く。目をくらました一瞬の間でも、この程度の芸当ができんようでは異能力とは呼べまい……?」

奴に必殺の一撃をくらわすお膳立ては整えてやった。後は籐堂院に任せよう。
(……必殺の一撃、か。それで片がつけば……いいがな)

【池上 燐介:ケルベロスの口を凍りつかせる】
5名無しになりきれ:2008/08/10(日) 23:13:10 0
       {      !      ,,,,,,pxxvxxg,,,,_ |
ィ彡三ミヽ  `ヽ       ,,df(^"゛ g、    ^゚゚l |  このスレは
彡'⌒ヾミヽ   `ー    〈!   ,,dl゚゛   ./==x|
     ヾ、           ]l.__,,g[,,,,,,,,,,,,,,p4"   |  ポニョに
  _    `ー―'     ][「,,pr=t、`、  ____ }
彡三ミミヽ          g" ][_  ]!  ./「゚^゚9,,.〉 監視されて
彡'   ヾ、     __ 4゚ .。、.\イ   ゚lk ,,g[|
      `ー一 '     ]l. 〈^゚ltn4,,,,_       !  います
 ,ィ彡三ニミヽ .____ノ  ヨ。. ゚ll._   ゚"9n......../f|
彡'                  ヨ、.\q,,,,____   ,,gf.!
      __    __ ノ  ^9nnxxxxx゚゚゚゚゚゚゚゚゚゚xv|
6籐堂院瑞穂 ◆FleR8jlnN6 :2008/08/11(月) 19:36:36 0
前スレ>>251
目の前にはケルベロス。
しかし、その口は氷に覆われていて攻撃することは不可能だろう。
流石は池上といったところだろうか、ケルベロスが放ったコールド・ブレスを相殺する。
そして、エネルギー同士の衝突が生んだ一瞬の閃光の間に三首のケルベロスの口を全て塞ぐ、並大抵の異能力者では出来ない事だ。
後は私が仕留めるだけ、確実に息の根を止めてやる。
私はケルベロスの頭を踏み台に高く跳び上がり、刀を振りかざす。

「『剛剣・毘沙門天』」

落下と同時にケルベロスの首に刀を叩き込む、その一撃は骨をも砕き三首を全て切り落とした。
首を失ったケルベロスの巨体は倒れ、少しの間痙攣すると動かなくなった。
辺りに血生臭いが漂ってくる、その臭いを嗅ぐと戦場が思い出され体が疼く。
私は深呼吸をして自分を落ち着かせると、床に落ち震えながら此方を見ている重松達に近づく。

「さて、君たちのこれからの処遇についてだが二つ選択肢がある。
一つ、『機関』の本拠地の場所を言う。
二つ、死ぬ。
好きに選んでくれて構わないぞ、時間は十秒、早めに決めてくれ」
「久々だな、瑞穂のハードSモード。
二つ選択肢出しといて、結局は本拠地吐かせるまでいたぶる気だろ?」
「許してくれ、頼む金はやるから。
な、私達を殺しても良いことはないぞ、そうだ、研究所の副所長の座をやろう。
どうだ?悪くないだろう?」

私がカウントを始めると南条が頭を下げて必死に懇願する、下らない自分の不利が分かった途端これか。
対して重松の方は何やら難しい顔をして考え込んでいるようだ。
南条と違い冷静でまだ何か企んでいそうで中々に厄介そう。

「5、4、3、2……」
「くそ、死ねぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!」

南条は懐から銃を取り出し、私に向けて撃とうとする。
しかし、引き金を引く前に私の刀によって銃身が真っ二つになっていた。
そのまま刀の背面、即ち峰の部分で南条の右手を打つ、嫌な音と共にあり得ない方向に曲がる手、南条が絶叫する。

「黙れ」

私の足が南条の腹を蹴る、床に転がり胃液を吐く南条。
あまり時間がない早くしないと応援が来るかもしれない、ゆっくり拷問したい所だがそうもいかない。
そういえば何故池上がここに来たのかを私は知らなかったな、何か理由があるかもしれない。

「さて、これからどうしようか?
君が先に来たのだ、後は君の好きにすると良い。
私はこいつらが何かよからぬ事をしないように後ろで監視しているよ」

まぁ池上がどう言おうと顔を見られた以上この二人には死んでもらう。
『機関』の本拠地は吐いてもらえないかもしれないが、しょうがないだろう。
私はエレベーターの上の階層を表示するボタンの光を見たまま池上の言葉を待った。

【籐堂院瑞穂:後を池上に任す】
7廻間 統時 ◆7VdkilIYF. :2008/08/11(月) 21:01:38 0
>>238
人型の生物が俺の言葉に耳を傾ける事は無かった。
返答は無く、脇腹を抉られた太っている男を担ぎ、跳んだ。
跳んだ先はアーケードの上。返事はなかったが……
見れば、人型の生物は腕の肉を引きちぎりそこから流れ出す血を男に注ぎ込んでいる。
アレはいったい何をしている……?

「「……」」

無言で、ルナとアイコンタクトを交わす。
俺の問いに対し返ってきたのは、分からないという答えだけだった。
……事実がハッキリしていないときは深追いするべきではないと思うが、虎穴に入らずんば虎子を得ずという言葉もある……
さて、どうするべきか。

「どうする?」
「好きにしなさい」

俺に任せたという、ルナの返答に俺は内心頭を抱える。俺はそれほど頭がよくないからだ。
勉学が出来る出来ないという意味ではなく、知恵が回らないという意味だ。
俺の戦闘スタイルは斬り込む際には思考を停止し直感に身を任せるという感じが強い。
言うなれば上官や軍師などの指示を受け入れ、ただ淡々と任務をこなすだけの駒だ。
その分、一旦考えたとなると他の事は見えなくなる。今だって何かが起きているかもしれんが、それは分からない。

「……とりあえず、俺も上に行く」
「その後はどうすんのよ」
「再度声をかける。耳を貸さないようなら……俺は降りてくる」

俺も一型の生物に倣って跳躍し、アーケードに降り立った。

「再度聞く!何者だ!そして、喋れるのか!」

下で沙羅が何か叫んでいるが、そんな事は俺の知ったことではなかった。

【廻間:再度『贄(ウロボロス)』となった国崎へ正体を問う。
     正体が国崎だとは微塵も思っていない】
8廻間 統時 ◆7VdkilIYF. :2008/08/11(月) 21:06:56 0
安価ミス…
《前スレ》の>>238です。
9小村禅夜 ◆3LPMHhiq9U :2008/08/11(月) 22:01:33 0
前スレ>>234>>252>>253
「・・・・・・何のために私を連れてきたんですか・・・」
「とぼけるンじゃねぇよ。知ってンだろうゥ?」
「お前が今まで俺たち機関からにげまわっていたワケ、
 それはお前が今ここに連れてこられた理由だからじゃねェのか?」

「……ツバサァ、なんだその目は?」

目を金剛、リン達と交互にゆっくり動かし、やりとりを見ていた
(リンが連れてこられた訳・・・それは私も知りたいところだ)
金剛が企てている計画は、゛消された数字゛とされている小村には耳に入ってこない
しかしそう思いながらもそんなことは言い出せなかった
(・・アイツの逆鱗に触れるようなことはしたくないですし・・・・・アーリーの奴が調べてくるのを待つばかりか・・)


「包帯、遅いな……」
「治癒系の異能者が、何人か本部に残っているのではないか?」
「……居ない、な」
「ま、その内戻ってくるさ。それまでは唾でもつけとけや」
本部に治療系異能者はナシか
まあ、これだけ戦火を町中に広めたんだ。無理もない。
にしても金剛の前に立つのはどうも疲れる。早く開放されたいものだ

【小村・金剛達のやりとりを見ているつもり】
【金剛の計画は知らない】
10神重智&敬 ◆6eLTPQTFGA :2008/08/11(月) 22:34:18 0
あらすじ
機関に対抗するための同士を探して街に繰り出した神重と宗方
目標は桐北がいる病院。だがそこへ潜入する前に異能者、池上と出会う
そこで彼らは桐北の行方を聞き…

「なに、情報交換と言うほどでもないさ
桐北くんをみなかったか?聞きたいことはそれだけだ」

敬が質問するより前に宗方が一歩前に出て池上に情報提供を求める。
彼がかなりの使い手だったとしても同時に二人を相手にするのは流石にキツかろう。
池上がそう判断したのかは定かでは無いが…少しの沈黙のあと、彼は答えた。

「あぁ……見たよ」

曖昧な答えだ…だがそれでも病院内にいるということの確証はできた。
幻覚を蝙蝠達が見せられていたとしたら、時間の無駄になりかねない
そういう意味では曖昧ではあれ、池上の答えは敬と智の満足する物ではあった。

「さて……話は終わったな。用が済んだのなら、俺はこれで失礼させてもらう」

これ以上ここに留まっていても利益は無いと判断したのだろう。
彼は足早に病院を立ち去った。

追わなくてもいいのか?と言いたげな宗方の目を察して敬は言う

「なぁに…"こいつ"がいればアイツの動向は丸分かりだ
 それにこいつは他の蝙蝠とは違う…特別製だ」
そう言う間に手のひらには他の蝙蝠とは違う一回り大きな一つ目の蝙蝠が出来上がる

「これは特定の異能者のみを監視する、それ以外は監視しようとしないし攻撃もできない
 ただ他の異能者にコイツの存在がバレることもない…完全な監視用の生物だ」

ギギッ――
大きな目を見開いた蝙蝠が羽を羽ばたかせ池上のあとを追った

「さて…予定通り…病院に潜入しようか」
小さなナイフを取り出し、腕を切りつける
そこから流れ出る血液を霧状にし…宗方の服や髪に付着させる

「血の形を切り傷のように変形させる…少し動くな」
動こうとした宗方にそう言い、血の形を本物の切り傷のように変形させる
完璧な偽装である。名医でない限りは…見抜けまい
同じ偽装を自分にも施し――

「さて…あとは切られた一般人のように叫んで人でも呼ぶか?
 それともこのまま病院にいくか…?少し不自然だがな」

(病院に桐北を探しにいく準備は出来た…な)
(ああ…あとは俺に任せてくれ)

【神重:池上に特別製の蝙蝠を放つ 血液偽装完了
    潜入方法を宗方に委ねる】

11池上 燐介 ◆qqu0tZFsYU :2008/08/12(火) 02:05:13 0
>>6
──俺の杞憂は一瞬にして消え去った。
ケルベロスは全ての首を切り落とされ、その場へと倒れこんだからだ。
ケルベロスの体は既に亡骸と化しているのだろう、ピクリとも動く気配を見せない。

「地獄の番犬といわれるケルベロスも、案外もろかったな」

最大の番犬を失った南条らは怯えながらこちらの動きを伺っている。
そんな彼らに籐堂院が機関の本拠を話すか、死を選ぶかの二択を迫るも、
彼ら、特に南条は命乞いをするばかりで話す素振りも見せない。
まぁ考えてみれば、当然といえば当然なのかもしれない。
彼らが我々に本拠地の場所を喋り、この場で一時的に命を取り留めたとしても、
恐らくその後、彼らは機関の手によってこの世から消されることになると思われるからだ。
彼ら自身も言っていたように、二人はただの駒だ。本拠地の場所を吐いた裏切り者として
処分することに、機関が……城栄が躊躇することはないだろう。彼らはそれを知っているのだ。

>「さて、これからどうしようか?
>君が先に来たのだ、後は君の好きにすると良い。
>私はこいつらが何かよからぬ事をしないように後ろで監視しているよ」
籐堂院がそう言い、俺の後ろへと回った。
こちらの目的は内部に侵入し情報を得る。そして機関に携わる人間の抹殺。
大した情報は得られなかったが、それも想定の範囲内。
ならば予定通りにこいつらだけでも消しておくべきか。

「……話そうが話すまいが、どちらにしろお前らを待っているのは決定的な死だろう。
秘密を守り通して名誉ある死を望むのならそれもまた良し……お前らの自由だ」

俺は彼らに歩み寄ると、これまで恨めしそうな目でこちらを見つめていた重松が笑みを浮かべた。
そして懐から葉巻を取り出し、それに火をつけると口で煙を吹かし始めた。

「フゥー……確かにこのままおめおめと生き残っても、No.1は私達を生かしておくまい。
フフフッ……しかしこうもあっさりケルベロスが屠られようとはな。大したものだ……」
「社長……い、いえ、重松さん! せ、折角ここまで上り詰めたのに……なぜ諦められるんです!
この二十年で……我々はやっと……やっとここまで……!!」
「……南条。私達は機関に関わったその日から、いつかはこうなると分かっていたはずだ。
力無き者は蹴落とされる運命なのだ……私達がそうして来たようにな……」

南条は床に拳を何度も打ちつけると、その内嗚咽の声を漏らし始めた。
非異能者でありながら彼らが幹部クラスにまで上り詰めることができたのは、
恐らく頭脳を買われてのことだろう。
しかし今の地位に至るまでは、やり方はどうあれかなりの苦労があったに違いない。
まるで南条が流す涙がそれを証明しているかのようだった。
12池上 燐介 ◆qqu0tZFsYU :2008/08/12(火) 02:13:01 0
「クソッ……ちくしょう……! あの研究さえ終わっていれば……こんな奴らにケルベロスが……!!」
「言うな南条。もはや何を言っても後の祭りだ……」

「……別れは済んだか? こちらも時間が惜しいんでね。そろそろ……」

そう言い掛けた時、重松が立ち上がった。

「──君達は強い。それは認めよう。しかし、君達の手にかけられることだけは御免こうむる。
私にも意地というものがあってね。やられっぱなしというのはどうにも我慢できんのだよ」
「クックックック……そうさ……貴様達も我らと共に、ケルベロスのもとに行ってもらう!!」

「なに……?」

「この葉巻の中には爆薬が詰めてあってね。それも私が調合した特性の強力な爆薬だ。
万が一の時、敵もろとも自爆する為に作っておいたものだが……まさか本当に使う時が来るとはなぁ」
「既に火は放たれた。後10秒ほどでここは木っ端微塵だよ……
ククク……貴様達もろともなぁ! アハハハハハハッ! アヒャハハハハハハハッ!!」

南条が狂ったように高笑をあげた。
目は血走りながら涙を浮かべている。
(──チッ! 追い詰められて道連れを選んだか!)

奴らの言うことが正しければもはやエレベーターに乗って階下に戻ることはできない。
一番良いのはすぐさまビルの外に出ることだが……ここは30階だ。
(……。仕方ない……か)

俺は窓際まで走り、窓に向かって『氷雪波』を放った。
窓の強化ガラスは『氷雪波』の凄まじい凍気と風圧によって粉々に砕かれ、ビルの外へと落ちていった。
こうしてできあがあったのは一つの大きな穴。つまるところここが脱出口になるわけだが、
勿論このまま飛び降りてはただの投身自殺にしからない。

「……籐堂院、来い! 先程の借りを返してやる」

こちらに策があると見抜いたのか、籐堂院は空けられた大穴に背を向ける俺に歩み寄った。
俺は左腕で籐堂院を抱きかかえると、右手に力を集中させ、その膨大なエネルギーを
床に向かって叩きつけた。

「敵との心中は俺の趣味にはないんでね。自殺は、お前らだけでやってくれ」

言い終えた瞬間、俺と籐堂院の体はふわりと浮き上がり、猛烈な勢いで窓の外に飛び出した。
13池上 燐介 ◆qqu0tZFsYU :2008/08/12(火) 02:20:27 0
こちらの身がビル外に出たところを見計らったかのように、貳名製薬ビルの30階が爆音を挙げた。
赤い炎が窓ガラスや壁を破壊しながら吹き上げ、何もかも燃やし尽くしていく──。
あれだけの爆発では階下にも影響があるだろう。窓から飛び出して正解だったようだ。

──空中でビルを眺めながら、不意に籐堂院を抱えた俺の左腕に痛みが走る。
そうだった……左腕は岩城との闘いで骨が折れていたのだ。
ギプスを付けているとはいえ……これは正直、中々キツイものがある。

「お前……結構重いのな。刀のせいか……?」

思わず口が、この痛みの原因にはあたかも籐堂院の体重にあるかのように動いてしまう。
それを聞いて籐堂院も何やらと言い返したような気がしたが、良くは聞こえなかった。

ちらりと後ろを向くと、その視線の先には森に囲まれた大きな池が見えた。
恐らくあれは「貳名水上公園」だろう。池の上には手漕ぎ、足漕ぎのボートがちらほらと浮かんでいる。
俺はそこを着地の場所に定めると、手から放出され続けている凍気の発射角度を徐々に変え、
高度と落下のスピードを落としていった。
そして水面から十メートル程度の上空まできたところ、俺は凍気の放出を止めた。

「おい、降りるぞ」

推進力を失った二つの体は、重力に引き寄せられて水面へと落下していった。
(高度から水面に飛び込むと、まるで水面はコンクリートのような硬さになると言うが……
まぁ、この高さなら大丈夫だろう……多分)

【池上 燐介:籐堂院と共にビルから脱出して、水上公園の池に飛び込む】
【『No.12』重松、『No.14』南条、『No.15』ケルベロス死亡】
14国崎シロウ@代理:2008/08/12(火) 23:49:13 0
前スレ>>241 >>7
(くそっ……何で治らない!この程度の傷、何度も治してきたってのに、
 何で治らないんだっ……!!)

幾ら血を流しても、男の傷は塞がらない。
……いや、塞がってはいるのだ。だが、それは余りに遅々としたものであり、
普段の10分の1にすら満たないものでしかなかった。

(治れ……治ってくれ!!)

祈るように治癒を行う。だが、祈りでは現実は変わらない。
……これは、少し考えてみれば当然の結果であった。
異能の力は精神状態に大きく影響される。
例えば、攻撃系の能力ならば、怒り、憎しみ、恐怖といった感情の振り幅
が大きければ大きい程、破壊力に補正が働く。
だが、他者への治癒を行う力は特殊で、攻撃系統とは逆に、
精神が安定している状態が能力のピークであり、精神が不安定になれば
その効果は著しく減衰してしまうというケースが多いのだ。

ならばこそ、まともに力が働かない。
無論、国崎もその事は知っている。だから、精神を安定を図る為に
何とか落ち着こうとしていたのだが……

>「だいじょうぶですかーーー!!!薬とか要りますかーーーーーーー!?」
>「再度聞く!何者だ!そして、喋れるのか!」

一度目に聞こえた声が意識を外界へと強制的に向け
二度目に聞こえてきた声が、その努力を容赦なく叩き潰した。

「……廻間、か?」
驚愕。振り向き、思わず声を出してしまった。
精神の安定を図っていた故に、聞こえた――聞こえてしまった声は、
聞き覚えがある。それは、先日出会った少年。
自身の正体を晒すまいとした一人、廻間のものであった。

――――ドクン
心臓が一際大きく鳴る。
それは、日常が壊れていく音か。
国崎シロウが積み上げてきた10年以上の日常は、此処数日で、
砂上の楼閣の如く、急速に瓦解を始めている。
何人もの人間に正体を知られ、正体を明かすまいとした少年に異形の姿を見られ、
更に、一般人に攻撃を仕掛けるという人間としてあるまじき行為までとった。

だが、決定的だったのは多分この時だったのだろう。
今まで続かせてきた『国崎シロウ』に、欠損が生じたのは。

【国崎:廻間に返答を返し、更に正面から向き合ってしまう。
    外観が異形とはいえ、向き合った事でその正体はバレるだろう。
    一般人は見た目はあまり回復はしていないが、瀕死→重症にはなった】
15籐堂院瑞穂 ◆FleR8jlnN6 :2008/08/14(木) 03:07:56 0
>>6
「お前……結構重いのな。刀のせいか……?」

爆発が起こる数秒前にビルから飛び出し、池上の放つ凍気によって空中を進んでいるときそんな事を言われた。

「失礼な人だな、君は。
デリカシーは無いのか、仮にも私は女なのだぞ?」

結構な速度で進んでいるせいか、こちらの声が聞こえなかったようで池上は黙っている。
すると眼下に大きな池を持つ公園が見えてきた。
この池を狙って飛んできたのか、あの状況でここまで考えられるとは流石としか言いようがないな。
池上は凍気の発射角度を変え、池に近づいていくと凍気の放出を止めた。
当然私達の体は重力に引かれ落下する、大きな音と共に体に衝撃が走る。
あまり目立ちたくないので急いで池からあがろうとするが、そこで池上の様子がおかしいことに気付いた。
泳ぎにくそうなのだ、右手だけ使って水をかき分けるようにして進んでいるといった方が正しいか。
さっきの戦いで負傷したのだろう、私は池上を担ぎ上げ池からあがった。
突然上から人が降ってきただけあって周りの人は皆、私達に注目しているみたいだ。
このバッグは防水されているみたいなので、中の携帯電話と現金は無事だろう、私は手早く刀を仕舞うと池上の方に向き直る。
よく見てみると左腕にギブスを付けている、怪我しているのに無茶をさせてしまったな。

「さっきは助かった、ありがとう。
その左腕では私はさぞかし重かっただろう?
それと、ここでは周囲の眼が痛い、着替えも兼ねて場所を変えよう。
少し話しないか?コーヒーの一杯くらいは奢るぞ?」
「俺もお前の目的とか色々聞きたいからな、情報交換といこうぜ」

私は何故池上があの場所を狙ったのかが気になる、そして何故あの場所に『機関』の人物が居る事を知っていたのか。
『機関』に内通者が居るのか、それとも他にあるのか、何にせよ池上は何かを知っているはずだ。

【籐堂院瑞穂:池上を話に誘う】
16池上 燐介 ◆qqu0tZFsYU :2008/08/15(金) 02:51:47 0
>>15
調度池の中央に飛び込んだ俺は、籐堂院に担がれる形で岸辺へとあがった。
朝からの連戦、そしてビルからの脱出に伴い膨大な量の凍気を一気に消費したせいか、
俺は息を切らしていた。
額から池の水に混じって汗が滴り落ちているのが分かる。
やはり、少々無理をしてしまったようだ。
籐堂院は膝をつきながら肩で息をする俺に顔を向けると、話しかけてきた。

>「さっきは助かった、ありがとう。
>その左腕では私はさぞかし重かっただろう?
>それと、ここでは周囲の眼が痛い、着替えも兼ねて場所を変えよう。
>少し話しないか?コーヒーの一杯くらいは奢るぞ?」
>「俺もお前の目的とか色々聞きたいからな、情報交換といこうぜ」
籐堂院は俺の左腕の負傷に気がついていたようだ。
まぁ、だからこそ俺をわざわざ水面から引き上げてくれたのだろうが。
俺はふらりと立ち上がり、返答した。

「確かにこちらも聞きたいことがないわけでもない。……それにこちらは借りを返しただけでなく、
空中遊泳と水面落下のどの遊園地でも体験できないアトラクションを体験させたんだ。
これから何かを奢ってもらわなきゃ割に合わん」

俺は先程まで自分のいた、もくもくと黒煙をあげているビルに視線を向けた。
あのビルからここまで500……600メートルはあるだろうか。
良くもまぁここまで上手く飛んでこれたものだ。

あの時俺は、着地場所は人目につかない森の中だととっさに判断した。
そして上手い具合にビルの中から緑の地相が目についたことでそこへ向かっただけなのだが、
そこがまさか貳名水上公園円だったとは流石に思わなかった。
もっとも、池がなければ降下と着地には先程以上に高度な技術が要求されただろう。
もしかしたら余計な怪我を自らの体に増やしていたかもしれない。
今回は……いや、今回も自らの運に助けられた感じがする。

「……岩城の時といい、俺の運もまだまだ捨てたもんじゃないか」

俺は独り言のようにボソリと呟いた。
そして俺は水を吸って重みの増した清掃員の服を脱ぎ始めた。
清掃員の服の下から現れたのは、白のワイシャツに黒いズボン。朝から来ていた俺の私服だ。
周囲に人がいる状況ではかなり目につく行動だが、一度池に飛び込んで注目を集めた身だ。
今更コソコソとしても手遅れであろう。

「行き先はお前に任せる」

清掃服を脱ぎ捨てた俺は、額を流れる水や汗を拭いながらそう言った。

【池上 燐介:籐堂院の話に乗ることを決める】
17籐堂院瑞穂 ◆FleR8jlnN6 :2008/08/18(月) 00:04:47 0
>>15
「確かにこちらも聞きたいことがないわけでもない。……それにこちらは借りを返しただけでなく、
空中遊泳と水面落下のどの遊園地でも体験できないアトラクションを体験させたんだ。
これから何かを奢ってもらわなきゃ割に合わん」

池上はさっきの爆発で黒煙をあげているビルを見てから、池に目を移すと何か呟き、服を脱ぎ始めた。
そういえば私の服も随分濡れている、着替えた方が良さそうだな。
池上ならそこまで問題じゃないが、私がここで脱ぐのはいささかまずいだろう。

「行き先はお前に任せる」
「分かった。
では私も着替えてくる、少し待っていてくれ」

そう言って森の中に入ると、今朝洗濯した服を手に取る、まだ少し湿ってはいるが今よりは断然ましだろう。
私は手早く着替えを済まし、また帽子を被る、少し下着が濡れているのが気持ち悪いが我慢しよう。
今着ているのは白のワイシャツに黒のズボンという質素な服装だ、師匠は色々と文句を言ってきたが、私は結構気に入っている。
池上の所に戻ると、周囲にいた人は既に興味を失ったのか、誰一人として残っていなかった。

「待たせたな、では行こうか。
場所は近くの喫茶店でいいだろう、味もそこそこな良い場所だ」

そして、池上を案内したのは公園のすぐそばにあるこぢんまりとした喫茶店。
内装はアンティーク風の家具を使っていて、ウェイターとウェイトレスの制服も質素ながら雰囲気に合っていて中々良い。
何故こんな場所を知っているかというと、この店は私が過去にバイトしていた店なのだ。
元々笑顔が苦手で愛想が無い私は客の受けが悪く、ある日の客との口論をきっかけに自分から辞めた。
店に入ると扉の上部に取り付けられているベルが鳴り、私達の訪問を店に告げる。

「いらっしゃいませ、って瑞穂ちゃん?久しぶりっ」
「お久しぶりです、今日は彼と仕事の話をしに来たのであまり話は出来ないのですよ」

私は知り合いにウェイトレスに手を握られたまま池上の方に振り返ると、池上は軽く頭を下げた。
池上の濡れた服装を少し疑問に思ったようだが何か聞いてくることは無かった。

「つれないな〜、瑞穂ちゃん。
でもお仕事の事なら仕方ないよね、あと仕事先見つかって良かったね。
おっと、長話は駄目だったね、席はこちらです」

今、席に案内してもらっているこの人にはここの仕事を辞めてからも随分世話になった、物腰も柔らかくて上品で私の理想の女性だ。
私達は席に着きケーキにコーヒーが付くセットを頼むと、ようやく話を始める。

「いきなりで悪いが聞かせてもらうぞ。
何故君は『機関』と戦っている?それと、あの場所に『機関』の人物が居る事を知っていたのは何故だ?
答えたくないことは無理にとは言わないが後者の質問には出来れば答えてほしい」

【籐堂院瑞穂:喫茶店に着き、池上に質問する】
18廻間 統時 ◆7VdkilIYF. :2008/08/18(月) 23:30:46 0
>>14
人型の生物の正体は、俺を驚かせるには十分すぎるものだった。
正体は恐らく…声からして最近出入りした薬局の主である国崎。
見れば衣服も国崎の着用していた白衣に似ている…確固たる証拠を得たわけではないが、恐らく間違いない。

「……確かに俺は廻間だ。俺の名前を知っているアンタは……声と格好からして国崎だな。
 そうか、アンタも能力者……分類するなら変身系といったところか」

国崎が同じ能力者だったとはな。
俺は同じ異質の能力を持つもの同士のためか、妙な親近感を覚えた。

「しかし、アンタは何をやっている?その男に血を流し込んだりなどして」

俺は血を流し込まれている男を見下ろした。
漆黒の心が体内を支配している今の俺の目は、人ではなく物を見るかのように見えたかもしれない。

「まあアンタがその男に危害を加えぬと言うのならば、文句を言うつもりはない」

紅い月を鞘に収める。
そして、自分から話を切り出した。

「……あの男、何者だ?仲間がいた事、そして格好からしてただ者ではなさそうだが」

車に乗り込み、薄ら笑いを浮かべながらこの場から去ったあの男……
発言したとおり、ただ者ではなかろう。
男が乗り込んだ車はリムジン、説明する必要もない高級車の代表格だ。
それにあの逃げるときの周到さ……まるでリムジンが最初からあの場に存在したかのようだ……
俺の思考が凄まじい勢いで脳裏を駆けめぐる。そんな俺の思考を、一つの声が遮った。

「返事しなさいよー!!」
「……ぬ、すまん国崎。連れが呼んでいるので俺は下に降りる」

返事を聞くことなく、俺は下に飛び降りた。

「いきなり何だ」
「なんで呼びかけてるのに返事しないの?」
「……すまんな、少し考え事をしていた」

ルナは目を細め、非難の感情を俺にぶつけてくる……まずい、明らかに怒っている。
これ以上怒らせたら何をされるか分かったものではない、そう判断した俺は素直に謝ることにした。

「まあそれはいいとして、返事は来たの?」

表情を変え、質問を俺にぶつけてくる。先ほどの怒りはどこへ消えたのやら。

「返事は来た。その上、俺の知り合いだった」
「あらそう。それじゃあとで紹介してちょうだい」

ルナの態度がやけに淡白になったような気がする。
……まさかまだ怒ってるんじゃあるまいな……まあ、謝ったからこれ以上ひどくなるという事はないだろう。
それより、これからどうするか?あの車に乗った男を追うか、それとも当初の目的どおり店内に突入するか。
国崎と共に行動するというのもありか。

「これからどうする。沙羅の意見を聞きたい」

俺は沙羅の意見も取り入れる事にした。
今は俺一人で行動しているわけではないからな。

【廻間:これからどうするか沙羅に意見を問う。
     もし返事が無いようなら、独自で判断し行動する】
19恋島達哉 ◆KmVFX58O0o :2008/08/19(火) 00:16:58 0
>>18
―――はっ、いつの間にか視界がぼやけていた。頭がぼんやりと熱を帯びている。参ったな・・・今度は発熱か?
自己流で巻いた包帯からは先ほどのような慌しく流れていないが、細くひたひたと血が流れている
なまじ意識があることが幸か不幸か。意外と人間ってのはしぶといものらしい。・・・ここ数日で俺の体が丈夫になっただけか

気づけば路上に転がっていた男と、その男を見下げ咆哮を鳴らした化け物の姿が視界から消えていた
生々しい血痕の跡が地面を濡らしている。・・・もう少し近づいた方がいいかな。視界を覚まさなければ・・・
グッと目を閉じパッと開ける。・・・そこには何故か頭上を見上げている神野さんが居た。俺には気づいてないみたいだ
・・・俺は足音を潜めて神野さんの数メートル背後に忍び寄った。なんか声を掛けづらい。色々と

しかしどうするべきか・・・普通に病院に行きたい気分だがこんな状況下じゃ何と説明すれば良いのか
かといって警察を呼べばもっと事態が混乱しそうだ。けどここでぼーっとしてても痛いだけだしな・・・
法を介さず俺の怪我も治せて、尚且つ安全な場所に運んで・・・あぁ、やっぱ救急車呼ぶしかねえか

っと、どこからか青年が神野さんの目の前に降り立った。着地音が聞こえない・・・すげえ
忍者か・・・何かかな・・・?いかんいかん危ない危ない・・・また意識が朦朧としてきた
――神野さんと話している彼は――誰なんだ? 神野さんの友人? にしては妙な距離感を感じる
・・・はぁ・・・はぁ・・・何だろう、上手く表現できない。頭が燃えるみてーに・・・熱い

そうだ・・・神野さんに大丈夫だって事・・・伝えなきゃ・・・な
俺はぼんやりと朦朧とフラフラする頭を必死で押さえ込み、神野さんと神野さんと話している青年へと俺は足を進めた
ふと、腹と足から血を流している男が近寄ってきたら間違いなく不審者扱いされるだろうなと思いながらも、止める事はしない
――そうだ、俺は謝りたいんだ。あれほど見栄を張ったのに、厄介事に巻き込ませてしまった事に

だから・・・俺の目線が、神野さんと話している青年と合う。――君は

――理解する。なるほど・・・そうか・・・なら・・・

「・・・神野さんを守ってくれたんだな。ありが、と」

ブラックアウト。俺の意識は完全に――切れた
【現在地:商店街】
【廻間に声を掛けて再び失神。負傷+疲労から高熱を発症】
20池上 燐介 ◆qqu0tZFsYU :2008/08/19(火) 19:59:13 0
>>17
籐堂院の案内により着いた先、
そこは貳名水上公園のすぐ近くにある小さな喫茶店であった。
店に入るとすぐにウェイトレスが姿を現し、籐堂院と軽く挨拶を交わし始める。
籐堂院とそのウェイトレスの口振りからすると、どうやら互いに顔見知りであるようだが、
まぁそんなことは別に気にする必要はない。

案内された席に座ると、俺達は適当に注文を済ませた。
そして注文した品が来るまでの間に、まず籐堂院が俺に質問を始めた。

>「いきなりで悪いが聞かせてもらうぞ。
>何故君は『機関』と戦っている?それと、あの場所に『機関』の人物が居る事を知っていたのは何故だ?
>答えたくないことは無理にとは言わないが後者の質問には出来れば答えてほしい」
「……一言で言えば、気に入らんからさ。人をゲームの駒のように弄ぶ、機関の人間の存在がな。
戦う理由はそれだ。
そして……何故俺が機関の人間の居場所を知ることができたのか。
それは機関の元幹部であるという『長束誠一郎』と名乗った男の協力があったからさ」

俺は、胸ポケットの中に折りたたんであった一枚の紙を手に取った。
しかし水に濡れていた為、敢えて中を広げて見せることはしなかった。

「そいつは現在機関のNo.1の座に着いている男とイザコザを抱えているようでな。
今は猫の手でも借りたいという状況なのか、奴の方から協力を申し出たくらいだ」

そう言い、俺は再び紙を胸ポケットにしまいこむと、今度は自分から質問を切り出した。

「……先程のあのビルで、お前の持つ刀と重松や南条らのやりとりを見て分かったが、
その刀は……いや、その刀に封じられている『籐堂院神」という人物の魂とでも言った方がいいか。
その人物は生前、機関と何らかの関わりを持っていたんだろう?
そこで俺がお前達に聞いておきたいことは二つ。一つ目、お前達は一体何者か。
二つ目、お前達の目的は何か、だ」

そう聞いたところで、先程注文したケーキとコーヒーがテーブルに到着した。
運んできたウェイトレスは、笑みも見せずに向かい合う俺と籐堂院の雰囲気に
何か重々しいものを感じたのか、テーブルに品を並び終えるとそそくさと厨房奥へ消えていった。

【池上 燐介:質問に答えると、逆に籐堂院に質問をし返す】
21籐堂院瑞穂 ◆FleR8jlnN6 :2008/08/21(木) 01:25:10 0
>>17
「……一言で言えば、気に入らんからさ。人をゲームの駒のように弄ぶ、機関の人間の存在がな。
戦う理由はそれだ。
そして……何故俺が機関の人間の居場所を知ることができたのか。
それは機関の元幹部であるという『長束誠一郎』と名乗った男の協力があったからさ」
「そいつは現在機関のNo.1の座に着いている男とイザコザを抱えているようでな。
今は猫の手でも借りたいという状況なのか、奴の方から協力を申し出たくらいだ」

池上は先ほどの私の質問にそう答えると胸ポケットから一枚の紙を取り出した、池上の口ぶりからしてその紙に『機関』の要人の居場所が書いてあるみたいだ。
そういえば桐北も長束に呼び出されたと言っていたな、池上もその場に居たということか。
長束が『機関』に反旗を翻し、有能そうな異能力者を味方につけようとした。
少し腑に落ちない点もあるが、それは池上の知るところではなさそうだから聞いても意味はないだろう。

「……先程のあのビルで、お前の持つ刀と重松や南条らのやりとりを見て分かったが、
その刀は……いや、その刀に封じられている『籐堂院神」という人物の魂とでも言った方がいいか。
その人物は生前、機関と何らかの関わりを持っていたんだろう?
そこで俺がお前達に聞いておきたいことは二つ。一つ目、お前達は一体何者か。
二つ目、お前達の目的は何か、だ」

池上は紙をまた胸ポケットに仕舞うと私に向き合い、問いかけてきた。
そこで頼んでおいたケーキセットがテーブルに置かれた、仕事の話の最中だと信じているのだろう、それが済むとウェイトレスはそそくさと立ち去った。

「私の目的は」
「俺の目的は」
『復讐だ』

私と師匠の声が重なる、公共の場ではあまり喋って欲しくないのだが、今は客も少ないみたいだし大丈夫だろう。

「そうだな、私達は過去に『機関』に対抗するための組織に所属していたのだ。
師匠はそのリーダーだったのだ、あの組織は『機関』に対抗している勢力の中で最も規模が大きく、力があった。
だから、師匠の『私と私の世界』の二つ名を持つ籐堂院神の名前は『機関』内では相当有名なものになったのだ。
でも師匠がこうなってしまったから、数年前に潰された。
それだけだ、良い線は行っていたのだが最後の最後で詰めを誤ってしまった」

そこで一息つくと今度は師匠が喋り始める。
私はコーヒーカップの持ち手に指を通し、口元まで持って行き一口だけ飲む。

「一言言っておくが、お前一人じゃ『機関』には手も足も出ない。
この前金剛にこっぴどくやられただろ?
『機関』のファーストナンバーにはあんなのがごろごろ居るんだ。
だから精々気を付けるんだな、正攻法じゃ勝てないぜ」
「師匠はこんな事言っているが、実際の所私達は君に味方について欲しいだけなのだ。
お互い最終的な目的は同じなのだ、手分けするなりなんなりして倒していかないか。
今ここには『機関』のファーストナンバーやセカンドナンバーが集まってきている、一人じゃ手に余ると思うぞ?」

この話は池上にとても悪くないはず。
しかし、いまいち掴み所のない池上の事だ、何と答えるかは予想できない。
どちらにせよ敵にはだけは回したくない人物だと思う。

【籐堂院瑞穂:池上に協力を要請】
22池上 燐介 ◆qqu0tZFsYU :2008/08/23(土) 14:49:19 0
>>21
籐堂院は過去の身の上話を語り始めた。
機関に敵対する組織に所属していたが、自らの師である『籐堂院神』の死をきっかけに
その組織が崩壊してしまったこと。そして現在は復讐の為に機関と戦っていることを。
最後に籐堂院は、こちらに協力を要請するという形で話を締めくくった。

彼女の話が終わると同時に、俺は皿に置かれたケーキを食べ終えていた。
そして手に取っていたフォークを置き、コーヒーをすすり始めた。
(協力……ね)

これまで機関の異能者達と闘ってきて、一つ確信したことがある。
それは、こちらが苦戦を強いられる程の強力な実力者の存在が敵には多いということだ。
衣田、岩城、ケルベロス……10番台の番号を持つ奴らの力でさえ、確かに侮り難いものだった。
もっとも、ファーストナンバーと呼ばれる連中の全員が城栄と肩を並べる力を持っているとは思えないが、
少なくとも10番台の実力よりは上、城栄に近い実力を持っていることは間違いないだろう。
それでも俺に一人で戦い抜く自信がないわけではないが、一人だと想像以上に手こずる可能性は高い。

「今の話、悪くないな。いいさ、協力しよう」

俺は手に持ったカップを置くと、そう返答をした。
そして胸ポケットから折りたたまれた紙を取り出すと、それを籐堂院に向けて投げた。

「もう分かっているかも知れんが、それに機関の人間の居場所が書かれている。
残念なことに、その場所に機関の誰がいるとまでは記されていないが……ま、贅沢は言えんな。
あぁ……まだ広げない方がいいぞ。濡れているからな。破けてしまうかもしれん」

俺は再びカップを手に取り、中身であるコーヒーを全て飲みほすと、
この場所での用は済んだとばかりに早々と立ち上がった。

「さて、ごちそうさまでした。会計よろしく」

俺は今まで座っていた席に背を向けると、レジの前を通り過ぎて店の外へと出て行った。

【池上 燐介:協力を受諾。店の外へと出る】
23 ◆GWd4uIuzU6 :2008/08/24(日) 23:10:50 0
>>9 前スレ>>253
「―――桜庭ァ!」
金剛が叫ぶと、静かに木製のドアが開いた。
まるで影から生み出されたかのように小男が出てくる。
ドアの向こうで待機していた小男、桜庭は主人の命に従い、すぐさまその場を離れて行った。

桜庭に飲み物を注文すると、金剛はリンの言葉を待っている。
先程までの張り詰めた空気は無くなったが、それでも金剛の威圧感は変わらない。
その時一本の電話が社長室に届いた。
「しゃちょ……! ―――いえ、No.1!
 大変です、貳名製薬本社に賊が侵入しました!
 No.12、No.14、No.15共に死亡した模様っ!」
受話器越しの"草<連絡員>"の喋り方からは、極度の興奮状態に在る事が窺える。
対する金剛は僅かに相づちを返す。その声からは感情が読み取れない。
「そんな事は如何でもいいンだよ。……で、身元は割れたのか?」
「はっ! 侵入した賊は男女合わせて二名。
 男の方は不明ですが、女の方はブラックリストに載っていた死亡した筈の―――」
無表情のまま、静かに受話器を置く。
No.12、14に続いてNo.15までも……。これは由々しき事態である。

「……何かあったのかい?」
ツバサが他の者の言葉を代弁する。
「貳名製薬に賊が入った。ナンバー12、14、15の三名がやられた」
「何という事だ、まるであの時と同じだ……」
籐堂院神が機関に対して宣戦を布告した時と全く同じ構図―――。
金剛のみならず、事件の全容を知っているレオーネは目眩に襲われた。
これでは全てが水の泡になってしまう。金剛達が考え出した計画も、このままでは頓挫する可能性も出てきた。

「城栄、非常に不味い事態だ」
レオーネは城栄同様険しい目つきをしている。
「侵入者は二人。一緒に居た男は知らない顔だそうだが、もう一人の女の方は身元が割れた」
室内が今までとは違った緊迫感に包まれる。

「籐堂院……瑞穂、だね?」
ツバサは共通の、それも危険度の極めて高い"敵"を見つけ、金剛への警戒心を薄める。
このように柔軟な考え方が出来るのがツバサの強みである。

「心配には及ばねぇよ。別件でナンバー11を召喚してある。ヤツに始末させる」
「ポポフスキー家のご令嬢を呼んだというのか。
 ―――別件で、ね。ふむ……。確か、彼女の私兵部隊にはセカンドナンバーも居るな」
「絶対に勝てる算段しかしねェ主義なのは知ってンだろ?」
金剛がニヤリと笑みを浮かべる。小村達が彼に会ってから始めてみる笑みであった。

残鉄公主<ディバインマッドネス>の二つ名で知られる、セカンドナンバー……。
単純な戦闘能力だけならレオーネやツバサを遥かに凌ぐ。
世襲幹部である為、これまで自由行動を行っていたが、来るべき時の為に金剛が召喚しておいたのだった。

「小村君、ハーケン君にNo.11の説明をしてあげてくれないか。
 折角ここまで来たんだ。壁の花では勿体無い」

他人への気配りが出来るファーストナンバーは数少ない。
灰汁の強い者たち揃い、皆我が強すぎるのだ。
そんな中で、レオーネやツバサなどの比較的まともな人間は貴重な存在だった。
「お嬢さん方は知らないだろうがな、あの女は"天才"だ」

正直、刺客が外道院ではなかった事は救いだった。
あの女は何を仕出かすか解らない。
―――ツバサとレオーネは、ほぼ同時に胸を撫で下ろした。
【金剛:No.11を池上たちの所へと向わせる】
【レオーネ:小村へハーケンにNo.11の説明を頼む】
24神野 沙羅 ◆LHz3lRI5SI :2008/08/25(月) 22:18:00 0
>>18, 19

私が話しかけても怪物は返事をしなかった。
そして統時はその怪物と会話を楽しんでる(?)

「神様。何で人間は平等じゃないんですか…。」
とか思っていると上から降りてきて
>「これからどうする。沙羅の意見を聞きたい」
と聞いてきた。

「もしかしてデートのお誘い?」と聞き返したが聞いてない。
だれかを見ているようだった。

その視線を追うと怪我をしている恋島さんの姿が
「恋島さんが血だらけ…」
ショックで気が遠くなる。
転んだようだった、倒れたのかもしれない。

統時が心配するようにこっちへ走って来た。

恋島さんが気を失った。

私は突然「これからどうする。沙羅の意見を聞きたい」と言う質問を思い出した。

「…恋島さんを病院に連れて行って。あと私腰がぬけちゃって立てない…」
何とも情けないお願いだった。

【商店街】
【恋島さんを病院に連れて行ってもらう。腰が抜けてたてない。】
25小村禅夜 ◆3LPMHhiq9U :2008/08/26(火) 22:06:17 0
>>23
「……何かあったのかい?」
「貳名製薬に賊が入った。ナンバー12、14、15の三名がやられた」
「何という事だ、まるであの時と同じだ……」
金剛が驚愕の表情を浮かべ告げた
「城栄、非常に不味い事態だ」
レオーネは城栄同様険しい目つきをしている。
「侵入者は二人。一緒に居た男は知らない顔だそうだが、もう一人の女の方は身元が割れた」
(二人がかりとはいえ一度に3人のセカンドナンバーを殺れる女性といえば・・・・)
「籐堂院……瑞穂、だね?」
どうやらツバサも同じ答えに達したようだ

「心配には及ばねぇよ。別件でナンバー11を召喚してある。ヤツに始末させる」
「ポポフスキー家のご令嬢を呼んだというのか。
 ―――別件で、ね。ふむ……。確か、彼女の私兵部隊にはセカンドナンバーも居るな」
「絶対に勝てる算段しかしねェ主義なのは知ってンだろ?」
金剛が笑みをこぼした
(・・・部下が三人も死んだというのによく笑っていられるものだ・・まあ、どうでもいいことだ・・それよりNo.11といえば確か巡洋艦『カロリエヴァ号』のクイーンか)
「小村君、ハーケン君にNo.11の説明をしてあげてくれないか。
 折角ここまで来たんだ。壁の花では勿体無い」
「お嬢さん方は知らないだろうがな、あの女は"天才"だ」
(何で私がそんな面倒なことを・・・・)

「・・・No.11、カテリーナ・ポポフスキーは代々11のナンバーを守るポポフスキー家のご令嬢で、十代という異例の若さでNo.11に就任しました。
ポポフスキーの二つ名は「残鉄公主(ディバインマッドネス)」スピードに特化した身体強化が可能で、それを使っての居合い斬りを武器としてます。今は巡洋艦『カロリエヴァ号』に乗り、活動しています。・・・とこの辺までで大体分かりましたか?」
面倒と思いながらも、結構きっちりと説明した小村だった

だが、限界がきたのか、アルトにそう言いおえると返事も聞かず金剛の方をスッと向き
「・・・金g、いやNo.1。そろそろ私たちを連れて来た理由を言ってもらって欲しいのですが。
今、機関に敵対する異能者が多量にこの町に存在します。幹部数名をここにそんなに置いておく余裕はないと思いますが。」

逆燐に触れたくないと思っていたが、今は余り時間を無駄にしたくない
【金剛に質問】
【小村・時間を無駄にしたくないと考えている】
26国崎シロウ@代理:2008/08/27(水) 10:17:51 0
>>18
「何、怪我人を治そうとしてただけだ。俺は薬剤師だからな。
 困っている奴を見捨てる訳にはいかないだろ。
 ……ああ、あれは機関の能力者だろうな。多分、精神感応系だろ。
 さっき、商店街で人を襲ってたからまちがいねぇだろ」

そう言った俺の顔には、何時もの作り笑いがあった。
……いや、違うか。自分にだけは解る。あるのは、冷たい鉄の様な作り笑い。

そう、この時既に、俺の目的は決まっていた。
今のこのままでは最後まで一般人を貫けない。死ぬのはいいが、それはダメだ。
ならばどうするか。簡単だ。
まずは機関に攻め入り、関係した人間を皆殺しにして、それから目撃者を口封じしていけばいい。
手が血で汚れようが、ソレを知っている人間がいなければ結果は同じだ。
それから上手く演技していけば、俺はあいつの言った一般人でいられるだろう。
ああ、いいアイディアだ。どうして今までそれを拒んでいたのか不思議だ。
俺の手など、もともと血まみれだというのに。

クク、と自嘲を押さえてから、俺は重症の男を連れ、商店街の地面に降りた

>>19,,24
降りた先には倒れた恋島と先程の少女がいた
……そういえばこの女にも今の姿を見られているんだった。
使い終わったら二人とも始末しないとな。

「落ち着けガキ共。こんな傷負ったまま病院なんて行ったら
 すぐに事情聴取受けて掴まるだろうが。……とりあえず、俺の店運ぶぞ。
 そろそろ野次馬も集まってきそうだしな」

そう言ってから、俺は適当に自分の動脈を引きちぎり、
流れ出る血液を蹴り飛ばした男と恋島の傷口に当てた。

「かなり気持ち悪くなるが、まあ、社会勉強だと思ってくれ」
男と恋島の傷が一段階軽くなる。つまり、どうやら俺は冷静の様だ。
男の方は、多分心配要らないので、このまま放って置こう。
顔は見られていない筈だ。

【国崎:応急処置をしてから薬局へ運ぶ事を提案。どこか様子がおかしい。】
27廻間 統時 ◆7VdkilIYF. :2008/08/27(水) 16:23:14 0
>>19
沙羅の返答を待っていると、近くから一人の男が近づいてきた。
身体から血を流し、顔は青ざめ足はふらついている。恐らく出血多量の症状だろう。
俺と男の目が合う。その瞬間、俺はこの男の正体に気付く。
この男は……病院であった記者だ。そういえば名刺を渡されていたな。
俺は手元を探り名刺を探す。名刺はすぐに見つかった。名刺には「恋島達哉」と名が書かれている。

「……アンタは先ほど会った記者か。確か恋島とか言ったな?
 その傷はどうした。階段から転んだなんて言い訳は通用せんぞ。
 明らかに刺傷などが含まれている。躊躇い傷もないから自傷の線もない。
 と、いう事は他人から負わされた傷だな?
 答えられるなら答えてくれ。誰に傷を負わされた?」

畳み掛けるように質問を浴びせる。だが、相手は怪我人…それもかなりの重傷。
重傷で今は質問どころではないと気がついたのは、質問し終わった後だった。

「むっ、気絶したか」
「あんたねぇ、普通の人がこんな傷負ってて質問に答えられると思う?
 この人、どう見たって歴戦の勇士なんてガラじゃないわよ」
「それもそうだな。早く応急手当をしたほうがいい」

しかし、そうは言ったもののどうするべきか。
俺は戦闘技術はあるものの応急手当の技術など少し程度のものしか分からん。
せいぜいゴムバンドで血の流れを止めて、止血するぐらいの知識だ。
戦闘技術を持っている者がこれでいいのかといわれそうだが、何とかなってきたのだからこの有様なのも仕方ないのかもしれない。
28廻間 統時 ◆7VdkilIYF. :2008/08/27(水) 16:26:06 0
>>24
そういえば沙羅はどうした?俺は唐突に沙羅の事を思い出した。
意識を恋島から沙羅に切り替える。

>「…恋島さんを病院に連れて行って。あと私腰がぬけちゃって立てない…」

……どうやら、腰が抜け立てないようだ。とりあえず手を貸し、沙羅を立たせる。

「……個人的な理由で病院には行きたくないんだがな。救急車を呼ぶか?」

とは言ったものの、この状況で読んで良いものだろうか。
俺は時間を無駄には出来ない。だが、この状況で救急車などを読んだら間違いなく騒ぎになる。
惨状の発見者である俺は、ほぼ確実に警察で事情聴取を受けるだろう。
手荷物検査などもするかもしれん。そうしたらこの紅い月が発見され、俺も容疑者の一人になるだろう。
もちろん紅い月から恋島の血痕などは検出されないだろうが、警察に警戒されるのは目に見えている。

「やはり救急車だな……沙羅、お前が電話をかけてくれ。
 俺がかけたら後々厄介なことになりそうだから遠慮しておく」

なんだか嫌そうな顔をしたが、俺は見ていない事にした。


>>26
俺の背後から何かが落ちてくるような音が鳴った。どうやら国崎も降りてきたらしい。
……国崎の言葉にはどこか引っかかるものがある。
薬剤師は人を治すのではなく、患者に処方箋に書かれた薬剤を渡し、患者の症状を治す手伝いをするだけのはず。
人を治す行為そのものは医者の役割だ。
まあ、違和感を感じる程度のものなのでそれほど重要なものとは思わないが。

>「落ち着けガキ共。こんな傷負ったまま病院なんて行ったら
 すぐに事情聴取受けて掴まるだろうが。……とりあえず、俺の店運ぶぞ。
 そろそろ野次馬も集まってきそうだしな」

それもそうだな。事件が起これば野次馬が集まってくる。
今は俺達以外に影は見えないが、そのうち野次馬が押し寄せてくるだろう。

「……それはいいが、誰が運ぶんだ。担架でもあればいいんだが」

俺は自らの疑問を国崎にぶつけた。

【廻間:恋島を運ぶ事自体には賛成だが、服が血で汚れるのは避けたい。
    そのため、担架かなにかで運びたいと考えている】
29 ◆GWd4uIuzU6 :2008/08/27(水) 20:44:27 0
太陽が東からやや真ん中に差掛かった正午―――。
ビル郡が立ち並ぶ、貳名市の"ウォール街"。
目の前には国際企業『ナガツカインテリジェンス』の本社ビルが、
街の支配者のように聳え立っている。
いや、支配者なのだ。それを知っている者は、闇に属している者だけ。

道行く人々はその"一団"を避け、脇に逸れていく。
彼らは何しろ大人数である。二十人は居るであろう。
異国から来て土地勘の無い彼らに道を譲ったのか。―――あるいは本能的に危険を避けたのか。
モーゼの十戒を思い浮かべた人間は、そこには居なかったろう。
強面の男達、そしてそれらの先陣を切って歩く、黒いロングコートを羽織った一人の女性……。
彼女は風が吹いてもいないのに、しきりに髪の毛を手ぐしで梳かしている。
漂白剤にでも漬かったかのように、殆どの色素が抜けてしまった青い髪の毛。
心理的な衝撃を受けると、髪の毛の色素が抜け落ちると言うが、彼女はそこから這い上がった。
―――自分の方が強い、自分の方が優れている。
呪詛のように自分に言い聞かせ、今の彼女は在るのだ。
何時の間にズレたのか、眼帯の位置を直していると、
後ろを歩いていた男の一人が女性の横へと躍り出る。

「姐御<クイーン>、No.1から命令の変更がありました」

姐御と呼ばれた女性の名前は、ポポフスキー……。
カテリーナ・ポポフスキー。人は彼女をこう呼ぶ。
―――"斬鉄公主−ディバインマッドネス−、と"
機関のVIP中のVIPがこの地方都市へ赴いた理由は一つ。
No.1、城栄金剛の命による物であった。
『―――福音の時が迫ってきている。外敵から本社を守護しろ』
世襲幹部にしては珍しく"金剛派"の彼女は、待ちに待った"神"の復活に二つ返事で肯いた。
それがどうだ? 本社前に着てみれば、神のかの字はおろか、出迎えも無い。
その上命令の変更まで出される始末。―――金剛は本当にやる気が在るのだろうか?
怪訝な表情も、内容を飲み込むと直ぐに晴れた。
『籐堂院が生きている。娘共々この街に居る筈だ、探し出し、そして確実に殺せ』
ライマースの童<わっぱ>や飴菓子<キャラメル>男のレオーネなどには任せて置けない。
―――そうね。そろそろ奴には、この目の借りを返さなくちゃいけないわね。

暗い表情で眼帯を押さえる。本来在るべき筈の左目はもう無い。

「―――只今任務に若干の変更があった。各自速やかに小隊を編成しろ!
 敵は男女二人! 最低でも二人であって、以後増える恐れが在る!
 邪魔する阿呆は力で捻じ伏せろ。私は女の方を追う」

軍隊も各やというべき声で男達に命令する。
そんな中、部下の一人がポポフスキーに問いかけた。

「姐御<クイーン>、"本宮"の守護じゃなかったので?
 …暗殺任務<ウェットワーク>ですかい?」

「違う、殲滅任務だ。目標は―――。
 ……籐堂院、瑞穂。そしてその仲間の男だ。
 総員散開! 奴らを血の池に沈めてやれ!」

―――狂犬は、今まさに解き放たれた。

【NPCポポフスキー登場】
30国崎シロウ@代理:2008/08/30(土) 23:53:51 0
>>24 >>28
>「……それはいいが、誰が運ぶんだ。担架でもあればいいんだが」

「恋島の奴は俺が運ぶ。都合よく、服がそこらの店に有るからな。
 そいつを羽織って運んで、後で焼き捨てるなり何なりすればいいだろ」

そう言って俺は、適当な黒のコートを白衣の上から羽織り代金をレジに置いて、
気絶したままの恋島の手を掴み上げ、やや乱暴に背負った。
背中から伝わる恋島の体温はやや低く、それなりに危険な状態である事が分かる。
もし、何かに巻き込まれて店に戻るのが遅くなれば、死んでしまうかもしれないが……
まあ、それはそれで仕方無いだろう。正体を知る人間が消えるなら、それは俺にとって損失ではない。
そんな、ほんの一時間前には考えなかったであろう思考を巡らせながら、廻間と少女に話しかける。

「廻間、お前さんはその嬢ちゃんを背負って適当に逃げろ。
 俺は、このまま恋島を背負って上から逃げる。後で薬局で合流だ。場所は解るな?」

俺が指差したのは先と同じ天井。そこから逃げるつもりである事を、俺は伝えた。
一般人の男は此処に置いていって構わないだろう。救急車の音が近づいているのが聞こえる。
そして、集まろうと近づく野次馬の足音も……
【国崎:適当な服を羽織、自分が背負っていくと言う。あと数分で野次馬が集まる気配】
31国崎シロウ@代理:2008/08/30(土) 23:54:10 0
>>24 >>28
>「……それはいいが、誰が運ぶんだ。担架でもあればいいんだが」

「恋島の奴は俺が運ぶ。都合よく、服がそこらの店に有るからな。
 そいつを羽織って運んで、後で焼き捨てるなり何なりすればいいだろ」

そう言って俺は、適当な黒のコートを白衣の上から羽織り代金をレジに置いて、
気絶したままの恋島の手を掴み上げ、やや乱暴に背負った。
背中から伝わる恋島の体温はやや低く、それなりに危険な状態である事が分かる。
もし、何かに巻き込まれて店に戻るのが遅くなれば、死んでしまうかもしれないが……
まあ、それはそれで仕方無いだろう。正体を知る人間が消えるなら、それは俺にとって損失ではない。
そんな、ほんの一時間前には考えなかったであろう思考を巡らせながら、廻間と少女に話しかける。

「廻間、お前さんはその嬢ちゃんを背負って適当に逃げろ。
 俺は、このまま恋島を背負って上から逃げる。後で薬局で合流だ。場所は解るな?」

俺が指差したのは先と同じ天井。そこから逃げるつもりである事を、俺は伝えた。
一般人の男は此処に置いていって構わないだろう。救急車の音が近づいているのが聞こえる。
そして、集まろうと近づく野次馬の足音も……
【国崎:適当な服を羽織、自分が背負っていくと言う。あと数分で野次馬が集まる気配】
32アルト・ハーケン@代理:2008/08/30(土) 23:54:42 0
>>23
>>25

煌神リン、という少女。そしてあの男―――は、どちらにせよ変わらないか。
張り詰めた空気。慣れてはいるが、やはり息苦しいのは変わらない。
しかしまあ、口を挟めるような状況ではない、か。
と、その時だった。その一本の電話が届き、あの男が受話器を取る。
――――この距離なら、会話の内容を把握することはできる。

「しゃちょ……! ―――いえ、No.1!
 大変です、貳名製薬本社に賊が侵入しました!
 No.12、No.14、No.15共に死亡した模様っ!」

電話先の声は興奮している。―――侵入者にナンバー持ちが殺された、か。
それは大事だろう。しかも、このタイミングで、というのが気にかかかる。
まさかとは思うが、

「そんな事は如何でもいいンだよ。……で、身元は割れたのか?」
「はっ! 侵入した賊は男女合わせて二名。
 男の方は不明ですが、女の方はブラックリストに載っていた死亡した筈の―――」

……なにそれ。死んでいたはずの女ってことは、つまり。

「……何かあったのかい?」
「貳名製薬に賊が入った。ナンバー12、14、15の三名がやられた」
「何という事だ、まるであの時と同じだ……」

騒然となる室内。当然だ、あの男が行った宣戦布告の前後については、記録だけだが知っている。
つまり、この状況は――――再来、というわけだ。あの闘争の、その序幕の。

「城栄、非常に不味い事態だ」

ロンバルディーニの目付きは険しい。それも当然、なぜならば、今回の件には、、

「侵入者は二人。一緒に居た男は知らない顔だそうだが、もう一人の女の方は身元が割れた」
「籐堂院……瑞穂、だね?」

あの男の娘―――――――籐堂院瑞穂が関与しているのだから。

「心配には及ばねぇよ。別件でナンバー11を召喚してある。ヤツに始末させる」
「ポポフスキー家のご令嬢を呼んだというのか。
 ―――別件で、ね。ふむ……。確か、彼女の私兵部隊にはセカンドナンバーも居るな」
「絶対に勝てる算段しかしねェ主義なのは知ってンだろ?」

……絶対に、勝てる? bP1は、それほどの実力を持っている、ということなのだろうか。
――――ハ。やっぱり、こういう組織の中には色々いるわね。本当に興味深いこと。

「小村君、ハーケン君にNo.11の説明をしてあげてくれないか。
 折角ここまで来たんだ。壁の花では勿体無い」

ロンバルディーニの声で思考を現在に戻す。
私は別に、壁の花でもいいのだが……まあ、せっかくの好意だ。受け取ろう。
33アルト・ハーケン@代理:2008/08/30(土) 23:55:32 0
「お嬢さん方は知らないだろうがな、あの女は"天才"だ」

彼は、どこか安心した風にそう言った。
……それほど信頼できる強さなのか、あるいは性格面でのことなのか。
少なくとも、突然暴走するようなタイプではないのだろう。
そして、彼の言葉を受けて、小村さんが説明を始めた。

「・・・No.11、カテリーナ・ポポフスキーは代々11のナンバーを守るポポフスキー家のご令嬢で、十代という異例の若さでNo.11に就任しました。
ポポフスキーの二つ名は「残鉄公主(ディバインマッドネス)」スピードに特化した身体強化が可能で、それを使っての居合い斬りを武器としてます。今は巡洋艦『カロリエヴァ号』に乗り、活動しています。・・・とこの辺までで大体分かりましたか?」

スピード特化の身体強化…? そして、居合い―――タイプとしては似ているか。
彼女の上手である、と確信するだけの根拠はあるのだろうし――――だが、それが本当に絶対なのか。

「……そうですね、おおよそ把握はできました。ありがとうございます」

もちろん、礼は言う。けれど、それが絶対なのか。あれを相手に絶対と言うに足るのか?

「・・・金g、いやNo.1。そろそろ私たちを連れて来た理由を言ってもらって欲しいのですが。
今、機関に敵対する異能者が多量にこの町に存在します。幹部数名をここにそんなに置いておく余裕はないと思いますが。」

私への説明もそこそこに切り上げ、bPに対して意見する小村さん。
――――――まあ、いいだろう。おおよその概要は把握できた。bP1、カテリーナ・ポポフスキー。
その能力はスピード重視の身体能力の強化。卓越した居合いの腕を持つ、というところか。
絶対だと言われれば多少の疑問はあるが、確実な手であることに違いはあるまい。
直接戦闘能力も高く、優秀な部下も多数存在する、というのならば。
……まったく、愚かな親子だ。そして、なにより迷惑な親子だ。
あまりにも周囲を巻き込みすぎているし、その動機が個人的過ぎる。
しかし、だからこそ―――――――個人的な感情が理由であるからこそ、か。
そもそも私は個人的な感情で行動する者を否定できる立場ではないし、その資格もない。
あの時のことを考えるなら、むしろ彼らに協力するということも有り得たが――――【私】は彼らが気に入らない。
こういった苛立ちを感じるのは久しぶりで、それならば、敵対する立場になったことを喜ぶべきだ。
もしかしたら、あの親子は―――私の理由になってくれるかもしれないのだから。

【アルト:現在地 機関本部】
34池上 燐介 ◆qqu0tZFsYU :2008/08/31(日) 03:49:30 0
──温かい風が水に濡れた俺の体を乾かしては通り抜けていく。
夜風はまだ冷たいが、日中の風はもう春の到来を告げるものだ。
先程はさして気にもしていなかったが、店の外は穏やかな春晴れとなっていた。

それほどキツくはない日光に、暖かい風──。
疲れているせいか、どうにも心地よい。気を抜いたら瞼を閉じて寝入ってしまいそうだ。
だが寝てしまうわけにもいかない。俺は一つ大きく深呼吸をした。
──と、その時──俺の右手が籐堂院ではない別の力の接近を捉えた。
数にして一人……いや、二人だろうか。ともかく複数の力がこちらに接近してきているのだ。

機関の人間か、それともゲームの参加者か……
いずれにせよ、向こうもこちらの存在には気づいているようだ。
できるなら無駄な戦闘は回避したいところだが、そうもいかないだろう。
だが迎え撃つにしてもここは店の前だ。人の目が多すぎる。
俺はすぐ近くの林に駆け込むと、大木に背をつけながら身を潜めた。

──一分、二分と時が経つにつれ、力の反応が徐々に強くなっていく。
しかし、後数十メートルの距離まで迫ったという時、その反応は突如として消えた。
どうやら接近を察知されぬよう全ての気配を絶ったらしい。
(チッ……戦闘慣れしてやがる。これは機関側の人間かもしれんな)

と心の中で呟いた時だった。不意に俺の頭の上を何かがかすめ、大木に穴を空けたのだ。
するとそれを合図にしたかのように、同時に林の奥から複数の男達が姿を現した。

「驚かして悪かったなぁ。だが今のは挨拶代わりさ」
「今ので殺っちまえばよかったのに、ホントおめぇは無駄なことが好きだなぁ?」
「しっかし、こいつが標的なのかぁ? ただのガキじゃねぇか」

出てきたのはやたらガタイのいい連中。しかも、手にはマシンガンやら銃やらを持っている。
大木に深く空けられた穴の中には、かすかだが黒い塊が見受けられた。
先程は奴らの一人が発砲したのだろう。数は七人……いや、十人はいるだろうか。
どうやらこちらが林の中に身を潜めると予想して先回りしていたようだ。

「見かけで判断すると痛い目に遭うぞ? No.1直々の命令だ。何か特別な力を持っているのかもしれん」

その団体の中心にいる金髪で長身の男が言った。どうやらこいつがリーダーらしい。
35池上 燐介 ◆qqu0tZFsYU :2008/08/31(日) 03:53:05 0
          クイーン
「特別な力……『姐御』のようにですかい?
へっ、どうだか。一発ズドンと撃ちゃあ即あの世行きって顔してますぜ?」
「それならそれに越したことはない。とにかく我々はこいつを始末すればいいのだ」

どうやら俺の予想が当たったようだ。こいつらは機関が、城栄が差し向けた連中らしい。
何だか知らんが俺は余程城栄に気に入られてしまったのか。それともゲームの参加者全員に
漏れなくついてくるプレゼントなのか……どちらにしろ有り難迷惑に変わりはない。

「んじゃ俺にやらせて下さいよ。一発で仕留めてやりますぜ?」
「おいおい、それじゃ俺達が何のために来たかわからねぇだろ! 俺にやらせろ!」
「いや待て! 俺が──」
「──それじゃあこうしよう。お前ら全員で撃て。それなら文句はあるまい?」

リーダー格の男がそう言いながら後ろに下がると、
言い争いをしていた男達は笑みを浮かべて俺の周りを取り囲み、銃を構えはじめた。
話を聞いていると、どうやらこいつらには異能力はないらしい。
予想していた数より敵が多かったのは、異能者より非異能者の数が多かったからか。

「蜂の巣にしてやるぜ! 大人しくあの世へ行きなぁー」
「いっせぇーのーせぇー!」

男の一人が掛け声を掛けた瞬間、林の中を轟音が鳴り響き、
雨霰のように銃弾が俺の体に向けて発射された。
──彼らはすぐに俺が血まみれとなって横たわる姿を想像していたのだろう。
ところか、現実は予想を大きく裏切っていた。
発射された全ての銃弾は、俺の体に当たる前に空中で動きを止めていたからだ。
アイス・ウォール
「『氷壁』。銃弾程度では、この氷の壁は破れはしない」

そう、発射された銃弾は、俺の周りを覆った分厚い氷に命中したのだ。
つまり、俺の体は傷一つついていないということだ。
氷の壁を消すと、氷にめり込んでいた銃弾がバラバラと地面に落ちていった。
彼らは驚きのあまりか、唖然とした表情のまま身動き一つとろうとしない。

「さて……目には目を、弾丸には弾丸を……」

俺の周りを、今度は氷の壁ではなく小さな氷の塊が覆った。
その一つ一つはまるで透明な銃弾のようである。
36池上 燐介 ◆qqu0tZFsYU :2008/08/31(日) 03:58:40 0
それを見て、俺を取り囲んだ男の一人が叫んだ。

「ば、馬鹿野郎!! ボサッとしてんな!! 撃つぞ!!」
                          マシンガン・アイス
「おっと、お次はこちらの番だ。──受けろ、『機関氷弾』ッ!!」

俺の掛け声と共に、無数の氷の塊が高スピードで男達へと向かった。
男達はすぐさま血しぶきと悲鳴をあげて、地面へと倒れこんだ。

「やはり貴様は特別な力を持つ……そう、いわゆる異能者だったか」

そう言ったのはあのリーダー格と思われた金髪の男。見ると彼もまた無傷であった。
どうやら俺を取り囲んでいた連中の後ろにいたため、機関氷弾を受けずにすんだようである。

「銃を持った程度の非異能者では相手にならないか。氷を操る異能力とは……意外に強力だな」

「俺を殺す為に差し向けられた刺客にしては少々役者不足だったな」

「フッ……勘違いするなよ? お前は"ついで"だ。我々の本当の標的は籐堂院さ。
ついでのお前を始末するために、わざわざ真打ちが登場すると思うか?」

籐堂院が……? そういえば奴は機関に敵対する組織に所属していたと言っていたな。
機関の人間にしてみれば奴の方が要注意人物としてマークするのは当然かもしれん。
だが裏を返せばその分、俺は動きやすくなるということだ。これは却って好都合だ。

「なるほど……。それで代わりに雑魚のお前らが来たということか」

「こいつらを倒したくらいでいい気になるなよ? こいつらは異能者の前では無力も同然の戦力だ。
だが、俺は違う。機関のセカンドナンバーの恐ろしさを特と思い知らせてやろう……」

金髪男は亡骸と化した仲間の頭を、足でこづきながらそう言った。
右手に感じた複数の異能者の反応。その一つがこいつらしい。
奴は気配を絶つのを止めたのか、一度は途絶えた力の反応を再び右手が捉え始めていた。
                                           オメガペナルティ
「死ぬ前に教えておいてやろう。俺の名は『クラコフ』。ナンバーは『21』。『機甲斬鬼』の二つ名を持つ。
お前の異能力がいかに俺の前では無力かということを、その身を持って味わうがいい」

【池上 燐介:喫茶店の近くの林でポポフスキーの部下と戦闘に】
【NPCクラコフ登場】
37籐堂院瑞穂 ◆FleR8jlnN6 :2008/08/31(日) 22:07:36 0
池上は私との協力を承諾するとすぐに店から出て行ってしまった。
分かってはいた事だが、さばさばした男だと改めて思う。
私は伝票をレジに持って行き会計を済ませる。

「またいつでも来てね」
「はい、また今度遊びに来させてもらいますよ」

そう言って店から出る、昔はまた戻ってこないかとよく誘われていたが、今はもう無駄だと分かったのかそういう事はしなくなった。
池上に協力すると言った以上私も少しは手伝わなければならない。
池上から貰った紙を広げると、見覚えのある会社名や場所がいくつかあった。
商店街は先ほど事件か事故があったようなので混乱しているかもしれないが、少し立ち寄ってみるか。
辺りには暖かい日差しが降り注ぎ、そよ風が木々の葉を静かに揺らす。
何かがおかしい、静かすぎる、木々がざわめく音以外何も聞こえない。
ここは昼頃だともう少し人通りがあるはずだ、それなのに今は誰一人いる気配がしない。

「何か嫌な予感がしますね、少し暴れすぎたでしょうか?」
「あいつらは仕留めたはずだからばれてないはずなんだが………。
慎重に進んだ方がいいかもな、多分格好もばれてるだろうからな」
「ですね、商店街にはまだ近づかないどきます」

私は踵を返して商店街の方向に背を向け歩き出そうとする、そこで初めて後ろに居た人物に気付いた。
薄い蒼のショートカットに黒いロングコートを羽織った外人の女性、最も印象的なのがその左目を覆い隠している眼帯だった。
明らかに浮いている、こんな所にいそうな人ではないし、一般人が眼帯を着けているとも思えない。
考えられる答えは一つ、『機関』の刺客。

「貴様が籐堂院瑞穂だな?」

とても澄んでいて凛とした声が響く。
やはり『機関』側の人間か、こちらの動向はとっくに掴まれていたらしい。
38籐堂院瑞穂 ◆FleR8jlnN6 :2008/08/31(日) 22:08:45 0
「久しぶりだな、カテリーナ」

唐突に師匠が女性にそう声をかける、昔『機関』に居た頃の知り合いだろう、別段おかしい事でもない。
しかし、その声はどこかいつもとは違う雰囲気を感じさせた。

「籐堂院神か、刀になったというのは本当だったのだな、実に無様だ」
「今回は俺が戦えないから瑞穂、代りに頼むぜ?
本来なら俺が三秒でぶっ殺してやるんだけどなぁ、なぁお嬢ちゃん?
あの時は本当に惨めだったな、俺に能力を使わせることなく負けたんだっけ。
あらすじを説明すると俺が『機関』から脱走した時、こいつが挑んできた訳よ。
その時に少し不覚を取って、俺の駆け落ち相手を殺されたんだよ。
そいで俺が切れてフルボッコにして、お終い。
因みにこいつの能力は身体能力強化だから気を付けろ、結構速いぞ」
「過去は過去だ、もう負けはしない」

よほどの自信があるようでカテリーナと呼ばれた女性はそう言い放つ、それに対し師匠は鼻で笑っていた。
私と同系統の能力か、好都合だ、これなら純粋に技術で勝負出来る。
相手はそこそこ良識がありそうなので、私は一つ提案をしてみる。

「場所を変えないか?
あまり目立つのは好きじゃないのだ」

やはり一般人に『機関』の実態を見られるのはあまりよろしくないようでカテリーナは頷いた。
それを確認すると、私は町外れの薄暗い倉庫に向かった、ここには一度アルバイトで来たことがあった、ここを選んだのは人に見られないというのもあるが、一番の理由はあまり広くないからだ。
あまり広くなく障害物もあるこの倉庫では相手も持ち前の速さを発揮しきれないだろう。
私は鍵を破壊すると、扉を開け先に中に入る。
カテリーナもその意図が分かったのか、少し嫌そうな顔をしていたが何も言わず入ってきた。
罠かもしれないのに入ってくるとは自信があるのか、それともただの馬鹿なのか。

「では、始めようか」

私が刀を構えると、カテリーナも同じように構える、辺りは静まりかえり、私達の呼吸音以外何も聞こえない。
私がカテリーナから少し視線を外したのを合図に斬りかかってくる。
こうして戦いの火蓋が切って落とされた。

【籐堂院瑞穂:カテリーナと交戦】
39葦川 妃映@代理:2008/09/01(月) 21:16:06 0
薬局の店先、シャッターの前。
疲労と出血と、いろんなストレスのせいで散らばり気味の思考のまま
ぼんやりと空を眺めること数十分。
「貴女たちがけりをつけるべき」
いつの間にか目の前にいた白衣の少女。
いや少女の姿をしているだけで、彼女の歳は私と同じだ。
「また死んだの?あんたもいつまでたっても成長しないわね」
「足踏みしているのは貴女。またそうやってごまかして、何一つ解決しないまま自分を埋める」
抑揚の無い声に吐き気がする。
威嚇しようと腰を上げると、苛立ちからか自然に手が伸びて、その白衣の襟を掴んでしまった。
「わざわざ意味深な言いかたして楽しい?私のことを笑いに来た!?」
「名誉挽回のチャンスをあげに来た」
力なく垂れ下がる白衣の腕がポケットをまさぐると、携帯電話ほどの大きさの端末をとりだして
私の買ったばかりのシャツのポケットに放り入れた。
「そこに、組織の野望がある。天才の貴女だけが潰せる、野望が。そして、貴女の新しい力が」

「ふざけんなっ!」
衝動的に彼女の首を絞める。
「あんたなんかが私の人生を決めるんじゃないっ!」
「貴女の才能を無駄にしたくないだけ」
「私は普通の人だっ!」
「本当にそう思っているの?本当にそう思っていたの?」
「うるさっ──」

いつの間にか背後に居た大柄な男に首を掴まれ、放り投げられる。
シャターとぶつかって嫌な音が周囲に響いた。
「じゃあね。キエ。待っているから」
もはや声すらも出せずに、二人の後姿を見送る。
混乱した思考のまま、ぼんやりと、
やがて帰って来る「はず」の国崎を待った。

【葦川:薬局前 疲労 中度の出血】
40 ◆GWd4uIuzU6 :2008/09/02(火) 21:26:36 0
>>25
ハーケンへの説明を終えた小村は、彼女の返答を待たずに金剛を見据えた。

>「・・・金g、いやNo.1。そろそろ私たちを連れて来た理由を言ってもらって欲しいのですが。
> 今、機関に敵対する異能者が多量にこの町に存在します。
> 幹部数名をここにそんなに置いておく余裕はないと思いますが。」

「理由、ねェ……」

金剛は指で数回机を叩く。

「あ! それはオレも教えて欲しいなぁー」

ツバサが手を挙げた。先日からこの街へ
ファーストナンバーとセカンドナンバーが集結している事に
違和感を持っていた彼には、丁度良い機会であった。

「いつから俺に意見を言えるほど偉くなったンだ、……小村ァ?」

―――駒が意思を持つなど許せない。ただ、自分の命令に従えば良い。
"あの時"の契約、忘れたなどと言わせない。
返答しだいでは、金剛はこの場で小村の首をへし折る算段で居た。

        バーバリアン
「居るのはMr.野蛮人だけなのか?             ヤハウェ
 ここでお互いの関係を悪化させては不味い。この街での薬の実践テストの件もある。
 今は伸るか反るかの大事な時期だ」

軽く溜め息を吐くと、レオーネは席を立ち、壁に飾り付けられた絵の前に立つ。
フランスの国旗を持った自由の女神が民衆を導いている絵だ。
フランス革命を描いた"ドラクロア"の作品……。
れっきとした本物で、今"ルーブル"に在るのはレプリカである。
絵を見ながら男は更に話を続ける。

「…本部には、これまでの機関の全ての情報が集まっている。
 誰が、どのような地位にいるか、これまで、そしてこれからの作戦内容。
 金の流れもそうだ。ありとあらゆるデータがここに蓄積されている。
 本部のデータバンクが在る限り、機関は滅びない。
 ……例え我々、そしてNo.1が死ぬ事になろうとな」

だが、言い換えれば、データを潰されればそう簡単には復活出来ない。
もはや人間が管理できる情報量ではないのだ。
巨大な組織に成り過ぎた代償……。ほんの些細な傷では在るが、
それは象をも殺せる致命傷でも在るのだ。
即興のカバーストーリーにしては上出来、金剛は黙して頷いた。
もっとも、データを失えば致命的という点は本当なのだが。

「―――だそうだ。あの会社(貳名製薬)がやられたという事は、
 籐堂院たちは機関メンバーの所在地を何らかの方法で知ってるンだろう。
 真っ先にここへ乗り込んでこない所を見ると、全ての構成員を知っているワケじゃあない。
 だが、そんな事は後か先かの問題だ。いずれ本部の事もバレちまう。
 本部のデータバンクの防衛が、お前達をここに呼ンだ理由だ。
 これで満足か?」

金剛は新しい葉巻を手に取るとマッチで火をつけた。
どちらも最高級品であり、この辺に彼なりの拘りが見える。
41 ◆GWd4uIuzU6 :2008/09/02(火) 21:32:14 0
>>40

「しっかし、これだけの数のセカンドナンバーに加えて
 お次はファーストナンバーまで……。長束のババアがうるさいんじゃない?」

「―――問題ねェよ」

ツバサの言葉に金剛は煙を吐き出すと、はき棄てるように口を開いた。

「籐堂院という敵が現れた以上、長束は認めざるを得ない。
 それに、籐堂院を始末した時の作戦責任者は長束だ。
ババア
 奴の性格はよォく知ってる。自分の失態は必死で隠蔽しようとしやがる」

「あぁ……確かに。でも、既に白日に晒されている以上、
 ババアは自分でケリをつけるしかない?」

ふむふむと、ツバサが肯くと、今度はレオーネが話し始めた。

「そこへ私たちが手を貸してやろうというのさ。
 こうすれば彼女の戦力を計算の内に入れる事が出来るし、
 長束本人にも恩を売っておく事が出来る。
 籐堂院親子が生きていたのは、あくまでも奴の責任だよ」

「悪党だねぇ、オ・ジ・サ・マ。でもさ、兵隊寄こして来るかな?」

"悪党でなければ、ファーストナンバーは務まらないさ"、レオーネは小さく呟いた。

「―――いや、寄こさなければ立場が危うい。いくら奴が世襲幹部でも、
 機関の不穏分子を自分のミスで見過ごしていたとなれば、
 失脚どころか文字通り首も危険になる」

「ふ〜ん。まぁ、オレには関係ない事だし、興味ないけどね」

ツバサは面白い事があれば首を突っ込みたがる。
おまけにお喋り者ときた。今の所、金剛達の計画が彼に知られていないという事は
非常に幸いな事であった。
42 ◆GWd4uIuzU6 :2008/09/02(火) 21:38:04 0
>>41

だが、気になる事がある。一つだけ、重要な事が……。

「しかし、気に入らない話だ……」

レオーネには"その事"が妙に引っかかった。

「―――何がだい?」

ツバサは判っていない様子だが、金剛と小村、そしてハーケンも同じく気になっていた様子だ。

「籐堂院さ。何故この時期になって再び表舞台に現れたのか。
 情報は何処で手に入れたのか、そもそも機関の執拗な残党狩りを
 今までどうやって掻い潜って来たのか……」

「居るだろゥ? 俺の存在が気に食わねェ奴が」

ツバサを初め、金剛や小村までもがある一人の人物を思い浮かべた。
機関に属する者ならば、誰もが知っている犬猿の中。
金剛の目の上のタンコブである男……。

「勿論、ババアのほうじゃねェ。―――誠一郎だ」

「……それは、つまり―――
 誠一郎が籐堂院に手を貸していると?」

絵画鑑賞を切り上げ金剛へ振り向くと、訝しげな表情でレオーネは席に戻った。

「あくまでも可能性だ。だが、余りにもタイミングが良すぎる。
 ひょっとしたら、ひょっとするかもな……」

【金剛:長束誠一郎が籐堂院親子の味方をしているのでは、と疑う】
43籐堂院瑞穂 ◆FleR8jlnN6 :2008/09/04(木) 01:09:36 0
>>38
私とカテリーナには圧倒的な実力差があった、それに気付けなかった事が今この状況を作ったのだろう。
傷だらけの私と傷一つ無いカテリーナ、どちらが優勢かは誰の目にも明らかだった。

「失望したぞ籐堂院神、お前の後継者がその程度だったとはな」
「おいおい、瑞穂はまだ戦えるぞ?
勝った気になってると痛い目見るぞ」

師匠はまだそんな事を言っていたが、私はもう限界だった。
まだ致命傷こそ受けていないがこのままではそれも時間の問題だ。
廻間を呼ぶにも携帯電話は手元にない、池上とはそもそも連絡先さえ知らない。
私がカテリーナに勝っているところは力くらいで、速さと技術で上回るカテリーナに勝てる訳が無かった。
でも、師匠が望む限り私に諦めるという選択肢は無い。

「『剛剣・毘沙門天』」

私は横薙ぎにカテリーナに刀を叩きつける、しかしカテリーナはそれを難無く避け、素早く切り返してくる。
かろうじて避けるが、カテリーナの追撃は止まることを知らず、私の反撃を許さない。
私は大きく後ろに跳び、刀を構え直すと、再度カテリーナに斬りかかる。

「『瞬剣・韋駄天』」

脚で地面を思いきり蹴り、腕の力を使って刀を高速で振り抜く抜刀術。
この技もカテリーナは刀で受け流すと、私のがら空きの腹に蹴りをいれる。
大した威力では無いため、あまり痛くは無かったが、技をいとも容易く避けられた事が精神的に効いていた。

「神の技と比べると、随分キレが悪いな、確かにその技は遠い間合いでも攻撃出来る優秀な技だが、隙が大きすぎる。
一度避けられると、体勢の立て直しがきかない」
「瑞穂、落ち着け、あいつは滅多に隙を見せない、だが人間なんだいつかは隙が出来る。
それまで慎重に攻めていけ」

相手の攻めを待っていてもいつまでも勝てないし、隙も出来ない。
その時、カテリーナは唐突に刀を鞘に仕舞う、私はそれを好機とカテリーナに肉薄する。

「瑞穂、下がれ!」

師匠の言葉が終わる前に、疾風のような速度でカテリーナは鞘から刀を抜き放つ。
居合と気付いたときにはもう遅く、刹那、私の視界は赤く染まる。
私の刃は今の私を嘲笑うかのように小気味良い音と共に地に落ちた。

【籐堂院瑞穂:カテリーナと交戦中 カテリーナの居合を喰らう】
44池上 燐介 ◆qqu0tZFsYU :2008/09/04(木) 04:03:23 0
>>36
クラコフは軽い自己紹介を終えると、腰に装備していたナイフを抜いた。
ナイフといっても、刃渡り30cmはあるだろうか。分厚くもあり、まるで鉈のようだが、
刀身の形状はサバイバルナイフの正にそれであった。

クラコフは抜いたナイフを舌でペロリと舐めると、目つきを鋭く変貌させ、
同時に強烈な殺気を放ち始めた。

「まずはお手並み拝見……。──行くぞ!」

奴はそう言うと、こちらが身構えるより先に素早く距離を詰め、
手に持ったナイフで次々と攻撃を繰り出してくる。
──ほぼ「突き」一辺倒の単調な攻めではあるが、向こうはプロの軍人顔負けの動きをする。
一方こちらは実戦の体術においては素人同然である。その差は早くも如実に表れていた。

左頬をナイフがかすり、僅かだが血を流す。するとお次は左右の脇腹をかすり、シャツを刻む。
言葉通り、恐らく奴は本気ではないのだ。
にも関わらず俺は紙一重で避けるのが精一杯といった状態である。
距離を取り後退を続ければ奴は迷いなく距離を詰め、攻撃を加えてくる──。
(まずいな……このままではいずれやられる……)

「フフフ……この程度で息をあげるなよ? これから徐々にスピードを上げていくぞ。
死にたくなかったら必死でついてこい!」

──奴の言った通り、また一段とナイフの動きがスピードを増した。
もう目で追いかけるのにも限界が近づいてきている。
だが、奴の動きが追えないのなら、こちらが奴の動きを止めてやるまで。

「さぁどうした! もう少し俺を楽しませてみろ!!」

「──そう言うと思って、既に手は打っておいたよ」

「なに……? ──ッ!? あ、足が動か……」

足に違和感を覚えてか、奴は自身の足元に視線を落とすと、違和感を与えているそれに気がついた。

「──氷か! いつの間に!」

「お前の動きは捉えられそうにないんでね。足の自由を奪わせてもらった。
……さぁ、大人しくこいつをくらってくれ」

再び俺の前を、小さな氷の塊が埋め尽くした。
しかし、足を封じられ、回避することは不可能な状態であっても、奴は焦る様子を見せない。
それどころか不気味な笑みを浮かべて、余裕と言った表情をしている。

「俺の部下を殺したあの技か……。フッ、面白い。やってみせろ」
                           マシンガン・アイス
「……言われなくてもやってやる。受けろ……『機関氷弾』ッ!!」

無数の氷の弾丸が、俺の掛け声と共に発射された。
45池上 燐介 ◆qqu0tZFsYU :2008/09/04(木) 04:07:07 0
──これまで、『機関氷弾』を無傷で交わした奴はいた。
だが、それはあくまで自身の足が自由な状態であった、という条件があってこそのものだった。
……俺は今、こんな芸当ができる人間を初めて見る。
足が不自由な状態で、『機関氷弾』を真正面から放たれながらも、それを無傷で退けるとは。

「異能力による肉体強化というものを、甘く見たな。俺は十代の頃から戦場に身を置いている。
銃弾を無傷で退ける術など、とうに身につけているさ」

いつの間にか逆手に持ち替えたナイフの刃が、日光に照らされて輝いた。
奴の足元からも何かが輝きを放っていた。それは、真っ二つに切り裂かれた氷の塊だった。
信じ難いことだが、奴は向かってきた氷の弾丸を、全てあのナイフ一本で弾き落としたのだ。
恐るべき反射神経……正に異能力者であるからこそ可能な芸当だ。

「言っただろう? 俺に貴様の異能力は通用しない。……だからこいつも無意味だ」

奴は氷によって地面と引っ付いていた足を力任せに剥がすと、
再びこちらとの距離を詰めにかかった。
しかしその動きは先程までのスピードではない。また一段とスピードが増しているのだ。
奴の動きなど捉えられるはずもない。狼狽する暇も無く、瞬間、俺の両足首に激痛が走った。
傷口から血が溢れ、靴の中に流れ込んでいるのが分かる。
俺は思わず屈みこみ、傷口をおさえた。

「安心しろ。その程度の出血では死ぬことはない。今のは先程のほんのお返しだ。
もっとも、その足ではもう俺の攻撃は満足に交わせないだろうがな……フッフッフッ……」

「……クッ!」
(……いつ攻撃されたのかすら分からなかった。奴がその気であれば、俺の首など切り離されていた)

「さて……お次はどこがお望みだ? 耳か? 目か?」
                 アイス・ウォール
「……どちらも御免被る。──『氷壁』ッ!!」

俺の周りを、瞬時に分厚い氷の壁が覆った。
如何なる攻撃さえよせつけぬ氷の壁。これでは奴も攻撃はできまい。
そう、一旦これで時間をとり、作戦を練り直せば──

「聞いていなかったのか? 言ったはずだ、貴様の異能力は通用しないと──」

ナイフを逆手に持った腕を、奴は自らの後方に大きくねじると、
『氷壁』目掛けて目にも止まらぬスピードで勢いよく斬激を加えた。
その瞬間、『氷壁』に一筋の『線』が入ったかと思うと、突如俺の胸が真横に切り裂かれた。
46池上 燐介 ◆qqu0tZFsYU :2008/09/04(木) 04:16:18 0
「──ぐっ!?」

血が吹き出し、内部から『氷壁』を赤く染めていく。
まさか、『氷壁』を切り裂いて俺にダメージを与えた──?

「分かったか? そんなところに閉じこもっても、俺は貴様に攻撃できるということが」
    アイス・ウォール
(奴には『氷壁』も通用しないというのか……! まさか切り裂くとは……!)

俺は血で染まった『氷壁』を解いた。
防御も不可能。そうなれば、『あの技』を使うしか道はなくなる。
しかし、貳名製薬で脱出に使った際の凍気の消費量を考えると、体への『反動』はこれまでに
経験したことのないものになるだろう。その恐れが俺に起死回生の一手を打つことを躊躇させていた。
                                              クイーン
「どうやらお得意の氷マジックもネタ切れのようだな。籐堂院の方に向かった『姐御』も気になる。
そろそろ終わらせてもらうぞ」

額から嫌な汗が噴出し、蟀谷を伝って傷ついた頬に染み込んでいく。
『機関氷弾』は奴には通用しないとあれば、恐らく『氷柱弾』も同じはずだ。
『小晶波』を撃ったとしても、奴のあの動きでは容易く回避されてしまうであろう。
こちらは満足に動けず、尚且つ残された『あの技』を使わずに何とか勝つ方法はないものか。
それにはやはり奴のあの武器を無力化し、奴の動きさえも止めなくてはならないだろう。
(とはいうもののどうする。武器を凍りつかせるにしてもあのスピードでは……。
……まてよ、動きを止める……)

「さぁ、覚悟しろ」

「……そうしよう。このままあがいても無駄なようだ。ひとおもいに心臓をグサリといってくれ」

「フン、意外と往生際がいいな。いいだろう、苦しませずにひとおもいにやってやろう。──死ね!」

「──!」

──俺の血が、奴のナイフを真っ赤に染めた。
だが、染めたのは俺の心臓から流れ出た血ではなかった。

「……なッ……! 貴様、自分の手を……!」

ナイフを染めた血は、俺の手から流れたものだった。
奴が心臓目掛けてナイフを突き出した瞬間、俺は自分の左手を心臓部の前に差し出し、
手でナイフを受けていたのだ。だがそれによって、左手は中指と人差し指の間は大きく開かれ、
恐らく十針以上は縫うことになるであろう大きな傷を負っていた。

「お前の動きが如何に速かろうと、『どこへ目掛けて』突き出すかさえ分かれば防御も容易い……!」

「防御だと……バカな! 引き抜いて急所を刺せば終いだ……。──な、なにぃ!?
ナイフが、俺の手首ごと凍り付いて……う、動かせん!!」

「これでお前は右手を切り離さない限り動けん。『動きを止めた』……さぁ、反撃開始だ」

【池上 燐介:左手の中指と人差し指の間をバックリと開ける大きな刺し傷を負う。体のあちこちにも軽傷が多数】
47池上 燐介 ◆qqu0tZFsYU :2008/09/06(土) 02:21:38 0
>>46
「傷口からナイフを俺の腕と巻き込んで凍りつかせ、動きを封じるとは……!
しかし、これで貴様の左手は使い物にはならんぞ!」

「片手が使えないのはお互い様だろう。だが、唯一の武器を失った今、お前の方が不利なのは間違いあるまい」

「武器を失った……? フフフ、生憎だが、俺の武器はナイフだけじゃない!」

奴はそう言うと、素早く足の脛に隠されていた仕込みの銃を取り出し、
こちらに銃口を向けて引き金を引いた──。
──だが、弾が発射されることはなかった。発射の寸前、銃は突如爆音をあげて破壊されたからだ。
爆発の衝撃によって奴の左手は傷つき、多量の血を流している。

「ぐあぁッ!? ぼ……『暴発』ッ!? ば、バカな……ッ!!」

「暴発した理由を教えてやろうか? 銃口が『氷』という異物で塞がれていたからさ。
お前が引き金を引くより先に、銃口に氷を詰めておくことなど造作もない。俺の異能力を持ってすればな」

「クッ……!」

先程までの余裕を浮かべた表情はどこへやら、奴の表情は明らかに焦りを感じたものへと変わっていた。

「さて、お前の得物もそろそろタネ切れのようだな。そろそろ死んでもら──」

そう言い掛けた時、なんと奴は凍りついた自分の右手首を左手の手刀で『切り落とす』のだった。
再び自由を得た奴は、素早く足元で地に伏している部下の腰からナイフを掴むと、
俺の右肩目掛けてナイフを突き出した。──シャツの右肩部分から赤い染みが徐々に広がっていく。
奴は俺へのダメージを確認するとニヤリと笑い、こちらが反撃に転じるより早く後方へと数歩下がっていった。

「フフフ、貴様の右腕も封じたぞ……。これでもう妙な技は使えまい……!」

「フン……無駄なことを」

俺の傷の痛みなどおくびにも出さない顔つきを見て、奴は一瞬動揺するような素振りを見せたが、
直ぐに構えを直し、再び強烈な殺気を放ち始めた。

「チッ……コケ脅しか。まぁ精々平静を装っているがいい。お前の両手は使えず、もはや脅威なのは
俺の腕を凍りつかせた技だけだ。だが、俺は次の一撃で必ずお前の心臓をえぐるだろう。
その時俺の残った腕を凍らせても、勝負はつく……!」

「"えぐれるなら"……な」

「……その減らず口もこれで終いだ!」

叫びながら、奴はこちらへ真っ向からとびかかってきた。
だがその瞬間、俺は俺と奴との間の空間に氷の群を作り出し、それを奴目掛けて放った。
──『機関氷弾』だ。
奴は立ち止まると、瞬時にナイフを逆手に持ち替え、目にも止まらぬスピードで
次々と氷の弾丸を切り落としていった。全ての弾を退けるのに、一秒とかからなかっただろう。
48池上 燐介 ◆qqu0tZFsYU :2008/09/06(土) 02:27:37 0
「その腕でまだ技が使えたとは驚きだったが、最後の悪あがきも無駄に終わったな。──死ねッ!!」

俺の心臓目掛けて、奴がナイフを突き出した──。
鋭利な凶器が人間の肉を掻き分け、血を噴き出させる。
しかし、血を噴き出しているのは俺ではなく、クラコフであった。
クラコフの背中には数本の巨大な『つらら』が突き刺さり、腹部まで貫いていた。

「ゴボッ……つ、つらら……だと……? い、一体……いつこんなものを……」
アイシクル・ショット
「『氷柱弾』……。巨大なつららを空中に作り、それを自在に操作し敵を攻撃するもの。
両腕を傷めて技が使えないと考えていたお前が、背後からの奇襲に注意を払っているとは
考え難かった。だが万が一……」

「こ、氷の弾丸の攻撃は……つららの接近を気づかせぬ……カムフラージュ……か……ゲホッ」
    マシンガン・アイス
「……『機関氷弾』同様、お前には通じぬと思っていた技だが……いいところで役に立ってくれたよ。
お陰で『本気』を出さずに済み、余計なエネルギーを消費しないで済んだ」

「お、俺を倒したくらいでいい気になるなよ……機関には、まだファーストナンバーが
残っている……貴様など、あの方達の力の前には……虫けらも同然なのだからな……!!
フフフッ……精々、この先短い人生を……今の内に楽しんでおくが……い……い……」

クラコフはそう言い残すとバタリとうつ伏せに倒れこみ、二度と起き上がることはなかった。
倒れたクラコフの尻ポケットからは、タバコとライターが顔を出していた。
何を思ったか、俺はそのタバコとライターを取り出すと、傷口をおさえながら近くの木に寄りかかり、
タバコに火をつけ吹かし始めた。
タバコ……。銘柄問わず、これまで吸ったことはなかったが……吸ってみると気のせいか痛みが
和らいでいくようだ。いや、気のせい……そう恐らく気のせいなのだろうが。

「コケ脅し……か。……当たり前だ。刺されて痛くないわけがないだろうが、馬鹿野郎……」

刺された左手と右肩がズキリと傷む。
出血は患部を凍らせることで止まっていたが、痛みだけは止めようがない。
だがそんな痛みが訪れる中でも、タバコの煙、そして闘いによる疲れのせいか、
徐々に俺の意識は朦朧とし、その内深い眠りへと落ちていった──。

【池上 燐介:左手と右肩に深い傷を負い、喫茶店近くの林の中で寝てしまう】
【No.21クラコフ:死亡」
49廻間 統時 ◆7VdkilIYF. :2008/09/06(土) 14:54:27 0
>>31
「わかった、それでは後に合流しよう」

国崎薬局への道はおぼろげながらも覚えている。
遠くからは救急車のサイレン、野次馬の叫び声が聞こえる。
早くここから離れ、国崎薬局に向かったほうがいいか。

「まだ全速力はできんだろうから、担いでいく。文句は言うなよ」

俺は沙羅を背負い、その場を駆け出した。ルナは大人しく俺の後を追ってくる。
もちろん全速力ではない。全速力で駆けたら、振り落とされてしまうだろうからな。
途中で沙羅が何かを喚いていたような気がしたが、気のせいだろう。

「ねぇ」
「ん?」

国崎薬局へと向かっている途中、ルナが声をかけてきた。

「気付いてる?」
「……まあな」

人気のない路地に入った辺りから、背後に殺気立っている気配が一つ近づいてきている。
器用な事に足音は消しているが、殺気までは消せていない。それともわざと発しているのか。
いずれにせよ俺達を殺すつもりなのは間違いなさそうだ。
こっちは沙羅を背負っている……つまり、軽々しく身動きできない。だが、沙羅を下ろしアレで短時間でケリをつければ……
……国崎薬局に行くのは幾分か遅れるが、しばらく襲われる事はあるまい。
それに沙羅の安全も確保できる。

「おい、ルナ」
「?」
「あれ、やるぞ」

いきなりの宣言にルナは目を見開き驚いている。
背中にいる沙羅は話の内容が理解できていないようだ。
まあ、赤の他人が俺達の話の内容を理解していたら恐ろしいモノがあるのだが。

「ちょっ、本気でやる気?」
「いい加減、そろそろ機関の面子を仕留めた方がいいかも知れんのでな。
 恐らく、俺に機関の面子が多く来るのは今まで不殺だったからだ。
 ならばここで一人その命を散らせる。そうすれば、恐らく来る回数は減るだろう。
 それも、圧倒的な力量差を見せ付ければ…な」
「…そこまで言うならやってあげてもいいわ。
 ただし、私に責任を押し付けないでよ?」
「分かっている」

こんな会話をしている間にも背後の殺気は近づいてきている。
俺は急いで沙羅を多少はなれたところで背中から下ろし、ルナと互いの手を握った。
そして、同時に行動の鍵となる叫びを上げる。

『超・融・合!!』

瞬間、俺とルナの身体は目も開けていられないほどの光に包まれた。
50廻間 統時 ◆7VdkilIYF. :2008/09/06(土) 14:57:58 0
光の中で俺の身体が作り変えられていく。
髪の色が変わり腰まで伸び、胸部が大きく膨らみ女性特有の物に変貌、腰はくびれ、手足は細くなり、下のモノは消えてゆく。
今まで一つしかなかった心が二つに増え、二重人格といっても過言でもなくなる。
つまり俺の身体は俺ではなくなり、ルナの身体へと作りかえられていた。
精神面はほぼ変わらず相変わらず俺のものだ。主導権は俺にある。
ただ、ルナの精神も入っているので二重人格と言っても過言ではないというわけだ。
ここで言わせてもらうが、ルナと言うのは本名ではない。あだ名のようなものだ。
ルナの真名はアルテミスという。

「いきなり手を握ったかと思えば……体が変わっただと?
 何者だ、お前は」
「これから死んでいく貴様に、名乗る必要はない」

光が収まり融合を済ませた俺達の前に現れたのは、
全身を機械で覆われた人間…というよりはまるで機械人形そのものだった。
右手に機銃、左手に大きな盾を持っている、SFロボットアニメに出てくるようなスマートな二足歩行型戦闘機械。
それが、俺達の目の前に現れた。

「ふん、余裕綽々という訳か?まあいい。    ショットガンプリズナー
 俺の名前は天道潤一、ナンバーは31。 二つ名は『機甲交響曲』
 能力は……まあいわなくても分かるだろう?」
『そうね。それにしても、そんな木偶人形で勝てると思ってるのかしら?』

俺の代わりにルナが発言する。正直な事をいえばすこしムカついた。

『まっ、返事代わりに私も自己紹介させてもらおうかしら。
 私はルナ。ホントはアルテミスって名前なんだけどね』

そして、俺の意思での物の一秒の間に神速の太刀を何十回と繰り出す。

      ジェノサイドメソッド
『…私の能力は抜刀戦鬼。統時に取り付いて、能力を膨大にパワーアップさせ…
 って、もう聞こえないか』

目の前に転がっているのは何十個にも分断された機械人形。
能力を解除せず死んでいったので、死後も機械のままという訳か。
斬り落とされた部品から流れるオイルの匂いが鼻についた。

(ちょっと、やりすぎじゃないの?)
(仕方あるまい。この形態では手加減できんのだ)
(まあどうでもいいんだけどね。
 それじゃ融合を解くわよ)

俺の身体は再び光に包まれ元の男性の身体へと変化する。
ルナの意思が剥がれていき、心は一つに戻った。

「ハァ…ハァ…ゲホッ」

融合を解除した途端に襲い掛かってくる極度の疲労感。

それが俺の呼吸を荒くさせた。
思わず地面に手と膝を付ける。
「…すまん、沙羅。俺はロクに動けん。
 だから肩を貸してくれないか…道は教える」
「だから言ったのに」

まるで人事のようなルナのセリフに、またイラッときたのは秘密だ。

【廻間:極度の疲労。休息が必要。沙羅に肩を貸してもらいたい】
【NPC ナンバー31・天道潤一: 分解】
51籐堂院瑞穂 ◆FleR8jlnN6 :2008/09/06(土) 22:48:24 0
>>43
「ハハハハハ、惨めだな籐堂院瑞穂。
私に傷一つつけられずに終わるか、だがまだ死なせはしない」

カテリーナは地に落ちた刀を自分の後方へ蹴飛ばした。
そして、私の首を左手で掴み体を持ち上げる、足から血が地にとめどなく滴り落ちる。

「そこで見ていろよ籐堂院神、貴様の娘がじわじわと嬲り殺される様子をな」

私の右の脇腹に激痛が走る、カテリーナは刀が突き刺さっていた。
そしてその刀を私の脇腹に突き刺したまま回す。

「ぐ、ぐぁぁぁぁぁ」
「泣き叫べ、籐堂院神に聞えるようにな」

カテリーナは私の刀を蹴飛ばした事で完全に油断していた、もう私の武器はないと思い込んでいたのだ。
私はカテリーナの右手首を掴む。

「くっ、離せ」

カテリーナは手を振り解こうとするが、当然びくともしない。
私が力を入れるとカテリーナの右手首の骨が砕ける。
カテリーナの絶叫が倉庫に響き渡る。

「貴様ぁぁぁぁ!死に損ないのくせに調子に乗るなぁぁぁぁ」

私の傷口を思いきり蹴るカテリーナ、もの凄い激痛が私の体を駆け巡るが、もうその程度で私は止まらなかった。

「がはっ…ごほっ、ふ…カテリーナ……最後の最後で詰めを誤ったな。
私は刀が無くても力がある、お前は止まっていたらただの的だ」

いくらカテリーナといえども右手首を捕らえられたらその速さも生かせない。
もう既に私の視界はぼやけ、まだ立っていられるのが不思議なくらいだった、速く仕留めないとそろそろ持たないかもしれない。
私はカテリーナの左手の骨も砕くと、地に叩きつけ両足の骨も踏み砕く。

「何故!何故まだそんなに力が残っているのだ!お前は私の居合を喰らったはずだ」

確かに私は喰らったが、居合は片手打ちの技、急所を狙わねば威力は大したことはない、刀を使っている以上致命傷になりえる傷は負わせることは容易だが。

「ふふふ…ぐ、がはっ……残念だが……これで仕舞いだ」

最後の力を振り絞り、カテリーナの刀を拾い上げると、逃げようともがいているカテリーナの心臓目掛けて刀を突き刺そうとする、しかし、その前に私の意識は完全に途切れた。
私が最後に聞いたのは、師匠の叫び声とカテリーナの呻き声、それと倉庫の扉が開く音だった。

【籐堂院瑞穂:カテリーナを殺す前に意識が途切れる】
52国崎シロウ@代理:2008/09/06(土) 23:33:25 0

>>39,,49
廻間の言葉を聞いてから、俺は再びアーケードの上へと跳躍した。
そして、そのまま民家や小さいビルの屋上を跳んで行く。
着地の衝撃を全身で吸収しながら移動しているので、俺が乗った事に気付く
人間は恐らくいないだろう。
(……?)
と、その最中に気付いた。背負っている恋島の体温が先程と比べ
回復してきている。俺の血が効果を発揮したのかとも思ったが、
よくよく考えれば、恋島は恐らく異能者なのだ。
普通の人間よりは生命力が高いのは当然と言えるだろう。
それはつまり、店に着くまでに死ぬことは無くなったという事。
それどころか、恋島の回復力が高ければ、短時間で目を覚ます事だって
十二分に考えられる。
だが、その出来事に対しても、やはり感情は停滞したままだった。


「……!」
薬局に近づき、曲がり角に差し掛かった時、シャッターの前に
葦川が座り込んでいるのが見えた。
何をしているのかといぶかしんだ俺だが、よくよく見ると葦川には中度の出血が
ある事が分かる。瞬間、脳裏を過ぎるのは安否では無く、危険の有無。
可能性こそ低いが、暴漢に襲われたのならまだいい。
しかし、それよりも高いのは能力者の襲撃の可能性。
だとすれば、あの葦川の存在自体が罠だという事すら考えられる。
怪我をした相手軍の兵を囮に使うなど、戦場では余りに使い古された手段だ。
1、10、40……
待っている間に能力の効果が切れた。
一分間、近づくことなく周囲の気配を探ったが、ソレは無いようだ。
どうやら敵の罠では無さそうだ。

俺は、安全を確認してから葦川の元へと近寄り、シャッターの中に引き摺り込む。
そして、恋島と同時に、裏社会御用達の薬を使って治療を始めつつ聞く。

「おい葦川、大丈夫か。なんで怪我してる。誰にやられた。相手は機関の奴等か?」
『大丈夫か?』と思ってもいない事を口にしたが、それはあくまで情報を得る為だ。
それでも、今まで以上に完璧に上っ面は取り繕えているだろう。
何も感じていなければ、逆に何かを感じている振りはしやすい。
心配した振り、恐怖している不利、悲しんでいる振り。
その演技は容易い。昔、戦場で何度も、それこそ体が覚えるまでやったことだからだ。
【国崎:薬局到着。二人の治療開始】
53神野 沙羅 ◆LHz3lRI5SI :2008/09/07(日) 01:26:18 0
>>49

>「わかった、それでは後に合流しよう」
と言って。怪物さんと別れた。どうやら私は統時と一緒に行動するらしい。
>「まだ全速力はできんだろうから、担いでいく。文句は言うなよ」
「えッ?」
急に恥ずかしくなってきた。「男の子がおんぶしてくれる…。」とか思っている。
その瞬間に日常とは無縁の速さで移動した。走ってるというよりも飛んでいる。
もちろん風で服がなびくわけで…
「統時――!!私のスカートがー!てかすごく速いー!風になってるー!」
後半から楽しくなってきたからOKとした。

移動の途中、そろそろこのスピードが飽きてきたときに、
>「おい、ルナ」
>「?」
>「あれ、やるぞ」

どうやら後ろから敵が来ているらしく打ち合わせしている。

>「ちょっ、本気でやる気?」
>「いい加減、そろそろ機関の面子を仕留めた方がいいかも知れんのでな。
 恐らく、俺に機関の面子が多く来るのは今まで不殺だったからだ。
 ならばここで一人その命を散らせる。そうすれば、恐らく来る回数は減るだろう。
 それも、圧倒的な力量差を見せ付ければ…な」
>「…そこまで言うならやってあげてもいいわ。
 ただし、私に責任を押し付けないでよ?」
>「分かっている」

どうやら人を殺すらしい…。私は途中で降ろされた。どうやら激しい戦いらしい。

そしてルナちゃんと手をつなぎ、

『超・融・合!!』
と叫んだ。
その瞬間私は光に包まれた。
54神重智&敬 ◆6eLTPQTFGA :2008/09/07(日) 02:10:29 0
選択を宗方がしようとしたその時…

「神重先生じゃないですか…」

「!?」
そこにはいるはずのない、桐北の姿があった。
(…おかしいな、桐北がここにくるにしてはどう考えてもおかしい)
(それは俺も思っていた…ということは)

「お前…何者だ?」
桐北の姿を模した者に敬は言い放つ。

「……」
スチャッ―
ナイフを構えて桐北の姿を模した者が突っ込んでくる。
だが、そのスピードは非常に遅い。

「その程度のスピードで俺をやろうなんて――
 甘いんだよッ!」

模した者の背後を取り、血で作り上げた剣で一瞬で胴体を切断する。
そして切断された者は―――
水と化していた

――お前たちの行動は筒抜けだ――

周囲に声が響き渡る…
ワタシを倒すことができなければ、本当の桐北を探すことなど不可能だ。
そう言い、声は消え去った

「…つまり病院内にいた桐北も…偽者というわけか…」
(その線は非常に高いな、この周囲を宗方に任せて…私達は町へ戻ろう)
(ああ…俺もそう思ったところだ)

「宗方…悪いが病院周辺と病院内はお前に任せる
 俺たちは町のほうへ戻って桐北を探す…何かわかったら連絡をしてくれ」

そう言い町のほうへ走り出す――途中に腕を少し切り、更に偵察蝙蝠を増やして――

【神重:病院から街のほうへ戻る 宗方から離脱 偵察蝙蝠増加】
55籐堂院神 ◆FleR8jlnN6 :2008/09/07(日) 02:15:41 0
>>51
「瑞穂ぉぉぉぉぉ」

瑞穂はカテリーナにとどめを刺す前に倒れた、刀が刃を下にして落ちたため瑞穂の重みでカテリーナの体に刀は深く食い込んだ。
これなら自然と失血死するだろう、しかしそれは瑞穂も同じ事、むしろカテリーナより速く死ぬことになるだろう。
情けねぇ、大口を叩くだけ叩いといて自分では瑞穂を救うことすら出来ないなんて。
その時、倉庫の扉が開いた。
万事休すか、この倉庫に入ってくる人間なんて滅多にいないはず、居るとしたらカテリーナの増援。
あいつの性格からして一対一が良いと言ったのかもしれない。
案の定、入ってきたのは『機関』の人間だった、黒い服を身にまとった老人と青いTシャツにデニムというラフな格好をした女性だった。

「ほっほっほ、派手に暴れたな、羨ましいの若いのは」
「そうだね、あのカテリーナと相打ちなんてやるね、彼女」

ついさっき交戦した伊賀響と『機関』のNo.4北村幽玄だった。

「な、なんでてめぇがここにあるんだ?
カテリーナの増援か?」
「おぉ神よ、久しぶりじゃないか、ほほぉ刀に封印されたというのは本当なのじゃな。
儂はカテリーナも増援に来たのではない、お前を連れ戻しに来たのじゃよ」
「はぁ?今更俺が『機関』に戻らないことくらいあんたが一番分かってるんじゃねぇか?
しかも今の俺には何の価値もねぇぞ、この刀が欲しいのか」
「お前の元の器は既に用意しておる、あと精神を移せば元通りじゃ」
「下らないこと言ってねぇで失せろ、俺は戻らねぇよ」

なんて言ったが、内心俺は焦っていた、こいつは何の勝算も無しに来る奴ではない、何かしらの策があるはずだ。

「北村幽玄!そんな事より早く私を助けろ!」
「神よ、そこのお嬢さんは助けてやる。
響、運んでやれ」
「うん、分かった、カテリーナはどうするの?」
「放っておいても救援が来るじゃろうからいい」

カテリーナは何か言おうとしたが無駄だと思ったか黙り込んでしまった。
そして響は瑞穂を風で浮かすと倉庫から出て行った、よしこれで瑞穂は大丈夫だ。
こんな事で瑞穂が助かるなら万々歳だ、能力の戻った俺と瑞穂なら『機関』にから逃げるのはそう難しくないはず。
幽玄も馬鹿な奴だ、とことん甘かったな。

「分かった、戻ってやるよ」
「おぉ良かった良かった、それと今日は一人ゲストが居るんじゃ」

そう言って幽玄は指を鳴らす、するとまた扉から数人の男とそいつらに連れられた女性が入ってきた。
女性は長く艶やかな黒髪が印象的な小柄な女性だった、俺はその女性に何か既視感を覚えた。
どこか見覚えがあるその女性は顔を伏せたまま動こうとしなかった。
56籐堂院神 ◆FleR8jlnN6 :2008/09/07(日) 02:17:50 0
>>55
「桔梗よ、もっと近くに来るのじゃ、神に顔を見せてやれ」

その言葉を聞いた瞬間俺の頭の中は真っ白になる、ありえない、そんな馬鹿な。
彼女は桔梗という名だった、長い艶やかな黒髪を揺らしながらいつも笑っていた女性は、昔俺が守れなかった最愛の女性は、桔梗、水瀬桔梗という名だった。

「ハハハハハハハハ、馬鹿馬鹿しい、あいつは死んだんだよ。
姿形だけ似せた奴に俺が釣られるわけなぇだろ。
嘘なんだろ?偽物なんだろ?答えろ!」
「桔梗は確かに一度死んだが、精神だけは取っておいたのじゃ。
この体は前と同じように作り直した物じゃがな」

俺は分かっていた、この女性が本物ということくらい。
偽物を作ってもそれはその場しのぎにしかならないことくらい幽玄にも分かっているはずだ。
それでも俺はこの馬鹿げた現実を笑わずにはいられなかった。

「ハハハハハハハハ、よく分かったよ幽玄。
また俺に働いて欲しいんだろ?いいぜ、戻ってやるよ」
「やめて、神。
私は水瀬桔梗じゃない、だからもうあんな所には戻らなくて良いの。
騙されないで、私は偽物よ」

桔梗はそう言いつつも泣いていた、あいつは芯こそ強いがよく泣く奴だった。
今まで桔梗の復讐をするためだけに『機関』と戦っていたのだ、桔梗が生きていると知った今、俺に『機関』と戦う理由は一つもない。

「でも平気なのか?金剛は俺を必死で殺そうとしてるぜ?」
「お前の体さえ戻れば、後はどうとにでもなる。
儂とお前が組めば金剛なんて恐くない、そうじゃろ?」
「そうだったな幽玄、あんたはそう言う奴だ。
確かに金剛も俺とあんたに喧嘩売ろうとはそうそう思わないだろうな」
「神!駄目、私は違うの、桔梗じゃないの!」
「俺は久しぶりにお前に会えて嬉しいってのにつれないな、俺となんて会いたくなかったか?」
「そんな……酷いよ、私……嬉しいのに………我慢してるのに、そんな言い方って」

答えは決まった、瑞穂も治って、俺も体を取り戻せて、桔梗とも会える、断る理由なんて一つもない。
桔梗は戻って欲しくないようだが、少しすれば考えも変わるだろう。
しかも、これで瑞穂は平和な暮らしを送ることが出来るはず、今まで散々振り回してきたからそろそろ自由にさせてやりたい。

「一つ言っておくが瑞穂は巻き込むなよ、あいつはあんたの駒にはさせないぜ」
「分かっておる、儂はお嬢さんの意志を尊重するつもりじゃよ」

幽玄はそう言って俺を拾い上げる、結局桔梗は最後まで泣き止むことはなかった。

【籐堂院神:『機関』に戻る NPC北村幽玄、水瀬桔梗 登場】
57神野 沙羅@代理:2008/09/07(日) 11:26:14 0
>>50

光の中から出てきたのは統時でもなくルナちゃんでもなかった。
髪の色が変って、胸がでてきて、手足も細くなった
どっからどう見ても女の人だった。

敵はロボットみたいだった。しかし一瞬にしてロボットが細切れになった。
どうやら女の人は剣を使うらしい。目の前に転がっているのは何十個にも分断された機械人形。

そしてまた身体は再び光に包まれ元の統時とルナちゃんに戻る。
>「ハァ…ハァ…ゲホッ」
どうやら辛いらしい。統時は呼吸も荒く地面に手と膝を付けている。

>「…すまん、沙羅。俺はロクに動けん。
 だから肩を貸してくれないか…道は教える」
>「だから言ったのに」

仕方がなく担ぐ。意外と軽かった。顔が恥ずかしくて真っ赤になる。
会話が無いので質問する。
「…さっきの掛声突っ込み入れてもいい?」

「「だめ(だ)」」

しぶしぶ了解する、
しばらくするとまた敵が出てきた。
どうやら一人のようだ、統時はダウンしているし私が統時を守るしかないようだ。

「心配しないで。気絶くらいならさせられる」
と言い残し敵と向かい合った。

「曾壁の頼みだからきたけどよォー捕獲しろだってよー!
超笑えるよなー。普通殺すだろおーー??ははははあはははははははははははははははははは」
笑いながらおもむろにナイフで自分の腕を斬り始めた。
58神野 沙羅@代理:2008/09/07(日) 11:27:06 0
>>54
血が舞っている。
辺りは血だらけだ。
「あははははははははははははははははあああはああ」
笑っている。おかしい。尋常じゃない。
「おっと紹介が遅れたな。NO,23のキメラだ!笑えるだろ?この名前?」

突然何もない空間から壁が出てきた。赤い血の壁だ。
「はあっ!!」
壁を拡散させる。しかし効果はなく。いつの間にか壁に囲まれ部屋ができている。

「統時!ルナちゃん!」
返事はない。怖い。恐怖が思考を鈍らせる。
すると部屋の奥に画面が見える。キメラが映っていた。
「はろ〜お!どうだい?気に入った?」
恐怖で答えられない。
「彼氏さんは大丈夫♪外で見てるよ。まあ絶対入ってこれないから」
どうやら外にも画面があるらしい。
    メカニカルサイエンス
「俺の能力は静寂工作室。今から能力を見せてやるよ!まずは犬の首をもいで♪
 蛇の胴体を斬りさばいて…ライオンを…はい出来上がりーー!!」

そこにはなんとも気持ちの悪い怪物がいた。あたりには血のにおい。
目玉、牙、体どれを見ても怪物だった。
画面にキメラが映る。
「そいつを倒したら出れるよーがんばー」
勝てるはずがない。絶望と死が待ち受けている。
「統時ごめん…」
その一言だけいった。

【NO23のキメラと戦闘中。絶望的】
【他の能力者は入ってこれない】
59アルト@肉食ハーゲンダッツ:2008/09/07(日) 14:52:23 0
>>40

「理由、ねェ……」

「あ! それはオレも教えて欲しいなぁー」

先程からいた、軽い男が手を挙げる。
……しかし、その質問に答える前に、その男は、

「いつから俺に意見を言えるほど偉くなったンだ、……小村ァ?」

怒りを露にした。……ふぅん、そういう反応をするのか。
――――感情を優先するタイプでもある、か。
でも、ちょっとマズイか。このままだと……
と、悩みかけた時、ロンバルディーニが口を挟んだ。

「居るのはMr.野蛮人だけなのか?
 ここでお互いの関係を悪化させては不味い。この街での薬の実践テストの件もある。
 今は伸るか反るかの大事な時期だ」

壁に飾り付けられた絵に向き直り、話を続ける。

「…本部には、これまでの機関の全ての情報が集まっている。
 誰が、どのような地位にいるか、これまで、そしてこれからの作戦内容。
 金の流れもそうだ。ありとあらゆるデータがここに蓄積されている。
 本部のデータバンクが在る限り、機関は滅びない。
 ……例え我々、そしてNo.1が死ぬ事になろうとな」

その言葉を受け、あの男が先程の質問に答えを返す。
60アルト@肉食ハーゲンダッツ:2008/09/07(日) 14:54:37 0
「―――だそうだ。あの会社(貳名製薬)がやられたという事は、
 籐堂院たちは機関メンバーの所在地を何らかの方法で知ってるンだろう。
 真っ先にここへ乗り込んでこない所を見ると、全ての構成員を知っているワケじゃあない。
 だが、そんな事は後か先かの問題だ。いずれ本部の事もバレちまう。
 本部のデータバンクの防衛が、お前達をここに呼ンだ理由だ。
 これで満足か?」

データバンクの防衛、と来たか。――――先んじて潰す方が好みではあるけれど。
でもまあ、単なる一時雇われているだけの私が、口を出せることでもない。

「しっかし、これだけの数のセカンドナンバーに加えて
 お次はファーストナンバーまで……。長束のババアがうるさいんじゃない?」

長束、ね……。まあ、これだけ集めて文句がない方がおかしい、とも言えるか。

「―――問題ねェよ」

「籐堂院という敵が現れた以上、長束は認めざるを得ない。
 それに、籐堂院を始末した時の作戦責任者は長束だ。
 奴の性格はよォく知ってる。自分の失態は必死で隠蔽しようとしやがる」

「あぁ……確かに。でも、既に白日に晒されている以上、
 ババアは自分でケリをつけるしかない?」

「そこへ私たちが手を貸してやろうというのさ。
 こうすれば彼女の戦力を計算の内に入れる事が出来るし、
 長束本人にも恩を売っておく事が出来る。
 籐堂院親子が生きていたのは、あくまでも奴の責任だよ」

「悪党だねぇ、オ・ジ・サ・マ。でもさ、兵隊寄こして来るかな?」

「―――いや、寄こさなければ立場が危うい。いくら奴が世襲幹部でも、
 機関の不穏分子を自分のミスで見過ごしていたとなれば、
 失脚どころか文字通り首も危険になる」

「ふ〜ん。まぁ、オレには関係ない事だし、興味ないけどね」

……ああ、折込済みなのか。問題はない、と。
それに見合う相手では、あるのかもしれないけれど。
61アルト ◆lJnztBYxY2 :2008/09/07(日) 14:55:55 0
「しかし、気に入らない話だ……」

話がまとまりつつあるのを見て、ロンバルディーニがまた別の話を始める

「―――何がだい?」

「籐堂院さ。何故この時期になって再び表舞台に現れたのか。
 情報は何処で手に入れたのか、そもそも機関の執拗な残党狩りを
 今までどうやって掻い潜って来たのか……」

「居るだろゥ? 俺の存在が気に食わねェ奴が」
「勿論、ババアのほうじゃねェ。―――誠一郎だ」

「……それは、つまり―――
 誠一郎が籐堂院に手を貸していると?」

「あくまでも可能性だ。だが、余りにもタイミングが良すぎる。
 ひょっとしたら、ひょっとするかもな……」

ロンバルディーニが席に戻り、話を終える。
――――しかしまあ、不安要素が多いこと。大きすぎると、足元をすくわれやすくなるということか。
それはまあ、私としてはそこまで問題としていないことだが、しかし。

―――――――これは、大物を食べることができるかもしれないチャンスではあるか。

【アルト:現在地 機関本部】
62アルト ◆Jm4vxzroP6 :2008/09/07(日) 14:57:38 0
で、なんかもうポカやったので酉変えます
63恋島達哉 ◆KmVFX58O0o :2008/09/07(日) 16:17:50 0
>>52
――群がりだす群がりだす、蟲の様なそれが群がりだす
逃れようとするが、それは俺の体を固めようとして一切離れない。次第に呼吸が乱れだす
周囲をうねる死人の叫び、ここはどこだ、俺は何をしているんだ
気づけば片手に機関銃、俺は動かない右腕を無理やり動かす事で撃とうとする。だが撃てない
次第にそれが俺の顔に群がる。完全に閉じる視界――その時だ

――命を喰らえ

どこかで聞いた事のある、しかしそれが何かは思い出せない声が聞こえる。誰だ、お前は?

――そして殺せ。それがお前が贖罪だ

罪だと?俺が――俺が何をしたって言うんだ

――とにかく死ぬな。お前には、まだやるべき事がある

言われなくても……ここで死ねるかよっ!

俺は目を閉じ、神経を集中させる。瞬間、冴えていく意識
ふと視界に、一筋の光が映った。その光を――打ち抜く!
俺は叫び声を上げながら右腕を挙げ、機関銃のトリガーを引いた
64恋島達哉 ◆KmVFX58O0o :2008/09/07(日) 16:19:06 0
「…・・・うわっ!」
ど、どこだここ! ・・・・・・あれ、俺は確か……と、そうだ、俺は確か服屋でドンパチしてたんだ
それで神野さんを先に逃がして、曾壁とか言う奴に絡まれて、オバサンに刺されて――って腹部が! ぶっさり刺されてもう死にそう
……と喚こうとして気づく。腹部を抉っていた痛みが和らいでいる。とはいえ、触るとまだ少し痛みが走るのだが
けど、まだ包帯は巻かれてないみたいだ、というかここは病院じゃ……ない?

ふと、薬物の辛気臭い匂いが鼻を突く。俺の視界が回復していないのか、周囲が薄暗くぼんやりとしていて、認識できない
髪の毛を弄りながら、俺はここまでの状況を頭の中で整理する。確か――そうだ、俺は神野さんと服屋に入ったんだ
そしたら、曾壁と名乗る男に絡まれて、神野さんを逃がしたけど、案の定俺はボロボロにされたんだ
その後、どうにか意識を保って外に出ると、病院で出会った青年が、神野さんと一緒にいて……そこで記憶が途切れた
ちょこちょこ、変な物を見た気がするけど思い出せない。思い出せない方がいいかもしれないけど
多分神野さんは、あの少年と共に病院にでも向かったのだろう。・・・・・・多分

と、鋭い視線を感じて、俺は思わず身を硬くした。つーかなんで安心しきってるんだ、俺
ここがまだどこかもはっきりしてないのに。もしかしたらここはあの曾壁の仲間のアジトで、俺は拉致られている
・・・・・・という線も考えられない事もないのだ。つまり下手に動くべきではない
その場から動かず、俺は顔だけ、その鋭い視線に向けた。取りあえず、自分に攻撃の意思はない事を伝えなければ

が、俺の目に映ったのは全く予想していない人物だった。よれた白衣に、微妙にだらしがないけど精悍な顔つきの――
「国崎さん!」
自然のその人の名が、俺の口から出てきた。なんだか凄く懐かしい気分だ。多分初めて会ってから二日も経ってないけど
何時俺を助けてくれたかは分からないが、またも国崎さんに危機を救ってもらった訳だ

そう思うとやっぱ……だが今回は情けなさよりも、感謝の意のほうが大きい。この人のお陰で色々と助かっているんだ
思い返すと背筋が立つと言うかゾッとする場面ばかりだったが。けど今回も命辛々、危機を乗り越えられたみたいだ
そうだ、最初に礼を言わないと。俺は腹部の痛みを堪えながら、その場に立ち上がる

「危険から救っていただき、有難うございます。国崎さんが来なかったら、俺・・・・・」
そう言いながら、俺は近寄ろうとした。その時

『駄目だ、その人に近づいていけない、達哉』
耳下――違う、意識下で、その「声」が聞こえた。あれ、そういや……
あの服屋での惨事で、お前の声が聞こえなかった。どうしてだろう。どうして今になって――
ふと、国崎さんが怪訝な顔で俺を見ていた。なんだか猛烈に恥ずかしくなり、俺は耳を塞いだ

あれ? 耳鳴りの声が、子供の声から青年の声に変化している。岩城との喧嘩で聞こえた声だ
どういう事だ? 俺の思考が回転しようとした矢先
『その男は平穏を装っているが、内心では君に対して必要とあらば危害を加えようとしている
 出来るだけ離れて、可能なら逃げるんだ、達哉』

お、お前・・・・・・国崎さんを疑えってのかよ。俺の命の恩人なんだぞ
……くそ、病み上がりだから考えがまとまんねえ。取りあえず・・・・・・俺は後方に下がり、その場に座った
脳裏に浮かぶ、あの奇妙な夢、あれは何だったんだろう

【現在地:国崎薬局】
【国崎の治療もあり、怪我はある程度治る。一緒に運ばれた葦川には気づいていない。囁く少年の様子がいつもと違う】
65恋島達哉 ◆KmVFX58O0o :2008/09/07(日) 16:24:49 0
誤字・・・orzごめんなさい
×それがお前が贖罪だ
○それがお前の贖罪だ
66池上 燐介 ◆qqu0tZFsYU :2008/09/07(日) 18:01:49 0
タバコの煙が風に流され調度風下の位置で歩く俺の前を覆う。
俺が軽く舌打をすると、俺の前を行くタバコを加えた学ラン男がこちらを振り返った。

「あぁー、悪い悪い。お前タバコ吸わないんだったな。でもいい加減煙くらい慣れろよな、なっさけねぇ」

黒い毛色に短髪でオールバック。
何本かの前髪だけを前に垂らし、それを風に靡かせながらニヤケ顔をしている。
この男が人を小馬鹿にする時のいつもの表情だ。
俺は再び舌打をし気分を悪くしたとアピールしながらも、顔は笑みを浮かべていた。

「俺とお前、今日で何年の付き合いよ? そろそろ慣れてもおかしくないんじゃねぇの?」

「生理的に受け付けない顔をした人間っているだろ? それと同じだ。どーにも煙たいのが嫌でね。
てかな、制服着てんのに町をタバコ吸いながら歩いて、警官に見つかったら面倒だろ。少しは自重しな」

だが、そんな俺の忠告にもこの男は鼻で笑い返した。

「へっ、売られた喧嘩は全て買い、負け知らずのうえ怖いもの知らずな天下の池上様が言う言葉かよ?
なのにお前って昔っから変に生真面目なところがあるよなぁ? それもこれも育ちがいいからか?」

笑いながら冗談交じりに吐いた言葉。
しかし、『育ちがいい』という言葉に反応して、俺の顔から笑みが消えると、
男はニヤケ顔を止めた。

「……なぁ、親父さんとお袋さん、まだ帰ってないのか?」

「父さんは三年、母さんは四年も帰ってきてないな。今度二人して戻る時は二、三年後になるだろうよ」

「お金持ちにはお金持ちの悩みがあるってか。ま、大変だよな……」

「……なに、そのお陰で生活は楽をさせてもらってる。文句は言えんぜ、今更な……」

俺は天を仰ぎ見ながら切れの悪い言葉をついた。男は気まずい空気を変えようとしたのか、
突如声を張り上げながらジェスチャーつきで自分の家庭の自慢話を始めた。
いや、痴話話と言った方が正しいだろう。

「聞いてくれよ。俺の親父なんてな、またお袋の他に女を作りやがってさぁ。これで五度目だぜ?
お袋もお袋で何度も不倫してるから怒鳴りもせずに、息子を放置して両方とも好き勝手やってる状態よ。
ったく、とんでもねぇ家に生まれちまったもんだよなぁ〜。これじゃ息子がグレるのも当たり前ってもんで……」

この男、恐らく道行く人々には奇特な人間として映っているに違いないが、
こういう性格でなければ、俺が『親友』と呼べる男ではなかっただろう。
この男の名は『蠣崎 康平』。中学の頃に知り合ってからこの時まで、
俺を『異能者』だと認知しながらも、俺が唯一何事も本音で語り合えることのできる友人。
何故なら『蠣崎 康平』自身も、『異能者』に他ならなかったからだ。
67池上 燐介 ◆qqu0tZFsYU :2008/09/07(日) 18:04:17 0
『テメーか? 負け知らずとかとフいてる灰色頭の男女はよぉ?』
『あん? 礼儀を知らねー野郎だな、何だお前は?』
『俺ぁ今日ここに転校してきた蛎崎ってモンだ。前の学校じゃぁ俺も負け知らずでよ。
テメーの噂は聞いてるぜ? 強ぇってな。だからどっちが強ぇかハッキリさせたくてよ』
『なるほど、とことん命知らずなマヌケか。いいぜ、ソッコー潰してやるよ』

──こうした校舎の屋上での出会いから、はや三年。
この時お互い既に異能力に目覚めていながら、どちらも異能力を行使しなかったせいか
結局決着はつかず仕舞いだった。互いに『不思議な力がある』と知ったのは、
屋上での一件があってからもっと後になってからだ。

『えっ? お前もそんな不思議な力が?』
『お前もって……おいおい、まさかお前も?』

『大人は構って欲しい子供がイタズラしてんだと思って無関心だったけど、子供はそうはいかねぇ。
知らぬ間に俺はバケモン扱いされてイジメの対象よ。最初は反抗する気もなくただじっと耐えてたが、
ある時プツッといっちまってな。力使ってイジメグループの何人かを半殺しにしちまって、逃げるように転校さ。
それからは人前や喧嘩の時は力を使わねーようにしてんだけどよ……
俺ってどーにも喧嘩売られやすい顔してるらしくてな。結局、今日まで毎日喧嘩三昧よ』
『両親はなんと?』
『ただ一言。理由も聞かず「自分達の息子じゃこんなもんだ」とさ。
お前の親はどうだ? 息子がお前じゃ毎日先公に頭下げたりさぞや苦労してそうだよなー?』
『……俺の親は……いない』

俺と康平は、異能者という一種の同類意識というものを差し引いても、
何かと妙に気が合った。俺の気に入らない奴は不思議と康平も嫌悪したし、
カッとした俺を康平が諌める時もあれば、その逆もまた然りだった。

『おい、唯能高に受かったぞ! もし落ちてたら中卒で親父の家業継がされるとこだったぜ』
『少子化の最中に無謀にも今年から規模拡大した高校だろ。
問題の三割解けてりゃ受かるってもっぱらの噂だぜ。受かって当然じゃねーか?』
『お前とは違うんだよ! てか、お前勉強してるわけでもねーのに何でテストの点だけは取れるわけ?』

……人生の内、真の友になりえるのはほんの二、三人だと言う。
昔、それを聞いて俺の友には一人もなり手はいないと思ったが……今は……。

「……おい! さっきから上の空かよ! 聞けよ、必死に話してんだからよ!!」

ひたすら過去を回想し続ける俺の頭に、その中止を呼びかける声が響いた。
俺は悪びれる様子も見せずに続きを話すよう促すと、康平はご丁寧にまた一から話を始めた。
顔は不気味な笑みを浮かべている。聞いていなかったその仕返しといわんばかりだ。
しかし不快とは思わない。思わず、こちらも笑ってしまっていた。

「聞いてくれよ、俺の親父なんてな……」
68池上 燐介 ◆qqu0tZFsYU :2008/09/07(日) 18:09:26 0
────。
唯能高校に入って二年目、二年に進級したばかりの俺達にとある噂が舞い込んできた。
正体不明の謎の集団が唯能高生徒数名を襲撃し、重傷を負わせたというのだ。
いや、重傷であればまだマシであった。目撃者の話によると、重傷を負わされた連中の内
何人かは行方不明となっているという。警察は殺人の可能性もあるとして捜査を進めたが、
集団の居所はおろか、メンバーを一人として発見できていないそうだ。

最近、スーツに身を包んだ連中や妙にガラの悪い連中が街中を闊歩しているが、
そいつらの仕業に違いない。だから街中は危険だ。──校内では、そう噂されていた。
しかしそんな噂など俺と康平はさして気にも留めずに、『あの日』も街中へ繰り出そうとしていた。

「なぁ、頼むよ! お前なら呼び出しても不自然じゃないだろ!? なっ!? 頼むよぉー!」

康平は両手を合わせ、頭を下げて必死に懇願する。
だが、俺は露骨に嫌そうな顔をして却下を続ける。
先程からこの調子で平行線だったが、俺は康平の執拗な懇願に押され、ついに折れることにした。

「……どこに呼び出せばいいんだ?」

「おお! それじゃほら、あの街中の一番でけぇビルの前に頼む! インテリなんとかっつービルに7時に!」

「……『ナガツカインテリジェンスビル』な。あぁ、分かったよ」

康平は惚れた女、『掛野』に告白するために、わざわざ俺を使ってその女を場所に呼び出そうと言うのだ。
理由は、「俺じゃ下心見え見えだから来てくれない」というものだが、
人を騙して呼び出しては益々心象が悪くなってしまい、フラれるのが落ちのような気がするが、
まぁ……人生は経験だ。敢えて不粋なことは言うまい。
俺は約束どおり康平が惚れている女を呼び出し、自分もまた、その場所へと向かった。

時間は午後6時50分──。彼女の姿はまだ見えない。
午後6時55分──午後7時──午後7時15分──まだ見えない。
既に康平自身も自らが指定した場所に到着してしまっていた。

「……掛野は来ないか。俺でも無理だったな。残念」

「……いや、後10分待とう。後10分! それまで待──『テメェら……一体何モンだ!!』」

──不意に、鼓動が早くなる。
(──!? 何だ……今の声は……?)

「なっ? 頼むからもう少し待『燐介……お前は行け! 掛野を連れて……! 早く!!』」

(心臓が高鳴っていく。なんだ……これは……一体……?)

「燐介よぉ、お前本当にここに呼び出し『……へ、へへ……燐介……俺ぇ……ヘマしちまった……』
それとも掛野が別のビルに行っちまった『ちきしょう……最後まで……言えずじまいかよ……なさけ……ねぇ』」

(康平の声が二重に聞こえ……何なんだ……。景色がブレる……!
動悸も早まって……苦しい……胸が…………)
ここに来てから明らかに何かが変わっていた。一体何が起きたのか。
(俺は、確かに『あの日』この場所に来て……。──『あの日』!? そうだ、『あの日』俺は────)

全てに気付いた時、『あの日』の光景が、再び俺の脳裏に甦った。

『すまねぇ……親父とお袋には……適当に理由つけて……はな…しとい……てくれや……』
『康平……康平ェェェェーーーーッ!!!』
69池上 燐介 ◆qqu0tZFsYU :2008/09/07(日) 18:11:13 0
「康平ーーーーッ!!!」

叫びつつ、目を開いたその場所は、緑の木々に囲まれたあの喫茶店近くの林の中だった。
近くには、クラコフ達の亡骸が横たわっている。
疲れていたせいか、知らぬ内に寝入ってしまったらしい。
しかし、額には汗が浮かび、シャツやズボンには汗が染み込んでいるのが分かる。
目覚めは……最悪だ。

「ハァ……ハァ……。夢、か……蠣崎の……」

最近、めっきりと見なくった夢……それを何故、今になって見たのだろうか。
汗を拭いながら傍らに目を向けると、タバコの吸殻にタバコの箱とライターが置いてあった。
(タバコ……タバコの煙……まさかこれが……いや、気のせいだろう。)

自分にそう言い聞かせると、俺はタバコとライターを胸ポケットに仕舞い、時間を確認した。
腕時計の針は午後4時を回っていた。3時間ほど眠っていたらしい。
時間が経ったせいか、深い傷を負った左手と右肩からは痛みが消えていた。
もっとも、傷自体は大して回復していなかったが。

「……康平……か。…………」

それ以上は何も言わずに、俺はクラコフ達の亡骸に背を向けて、林を出ていった。
これまでとは違い、街中へ向かう足取りはどこか重い感じがした。

【池上 燐介:度重なる戦闘により経験値アップ。回復力が少し上昇。どこか表情が暗い】
70小村禅夜 ◆3LPMHhiq9U :2008/09/07(日) 20:25:47 0
>>40-42>>59-61
「いつから俺に意見を言えるほど偉くなったンだ、……小村ァ?」
(・・・)
確かに小村の地位はあまり高くない。
番号持ち以外の構成員には特別な幹部、としか伝えられておらず、構成員の中には知らない奴も居る。
「・・・無礼な発言をしてしまいました。すみません」
とりあえず、といった感じに小村は棒読みで謝った
「居るのはMr.野蛮人だけなのか?             ヤハウェ
 ここでお互いの関係を悪化させては不味い。この街での薬の実践テストの件もある。
 今は伸るか反るかの大事な時期だ」
(・・・・何も戦闘行為をさせろとは言っていない。ただいきなり呼ばれ、
その理由が知りたかっただけなんですが・・・)
そう言おうと思ったが、どうせ結果は変わらないだろうと思い留まった。
軽く溜め息を吐くと、レオーネは席を立ち、壁に飾り付けられた絵の前に立つ。
ため息は小村への落胆だろうか

「…本部には、これまでの機関の全ての情報が集まっている。
 誰が、どのような地位にいるか、これまで、そしてこれからの作戦内容。
 金の流れもそうだ。ありとあらゆるデータがここに蓄積されている。
 本部のデータバンクが在る限り、機関は滅びない。
 ……例え我々、そしてNo.1が死ぬ事になろうとな」

巨大組織にとってデータは大切なものだ。正確かつ、計算的に動かねばどんな大きなものも効果的には作用はしないだろう。
(しかし、話からすると逆にデータがなくなれば機関に致命傷になるという事だ。さらに組織を動かす金剛や、
ほかの機関の重鎮たちが居なくなれば機関は・・・・あの籐堂院の反機関組織のように滅ぶだろう。)

「―――だそうだ。あの会社(貳名製薬)がやられたという事は、
 籐堂院たちは機関メンバーの所在地を何らかの方法で知ってるンだろう。
 真っ先にここへ乗り込んでこない所を見ると、全ての構成員を知っているワケじゃあない。
 だが、そんな事は後か先かの問題だ。いずれ本部の事もバレちまう。
 本部のデータバンクの防衛が、お前達をここに呼ンだ理由だ。
 これで満足か?」

小村はあまり満足そうな顔をしてなかった
その後、金剛とツバサ達がNo.3の責任問題について話してた。
小村は退屈そうに会話聞いていた。会議や堅苦しい話は苦手なタイプだった。

「しかし、気に入らない話だ……」
金剛が話題を変えた
「―――何がだい?」
「籐堂院さ。何故この時期になって再び表舞台に現れたのか。
 情報は何処で手に入れたのか、そもそも機関の執拗な残党狩りを
 今までどうやって掻い潜って来たのか……」
籐道院が圧倒的に強かったか、刺客が甘かったのか、なにか隠れ蓑に包まってたか・・・・
「居るだろゥ? 俺の存在が気に食わねェ奴が」
(この町にあなたが気に食わなくて暴れてる人が大量にいますけどね)
「勿論、ババアのほうじゃねェ。―――誠一郎だ」
「……それは、つまり―――
 誠一郎が籐堂院に手を貸していると?」
「あくまでも可能性だ。だが、余りにもタイミングが良すぎる。
 ひょっとしたら、ひょっとするかもな……」
レオーネが絵画鑑賞終えてこちらを向きなおした。



・・・・これからはこの本部でいることが多くなるだろう。
こちらの準備が進めやすくていいことだが、情報がはいりにくくなるな・・・・
ならアイツを放ってみるか
【小村・おとなしくしている】
71葦川 妃映@代理:2008/09/07(日) 22:49:17 0
>>52>>64
朦朧としつつあった意識の中で、不意に身体にかかる力。
気がつけばいつのまにか戻ってきていた国崎が私の身体を治療していた。

「……ありがとう」
もっと上手い言葉をかけて励ますなり、抉るなり、探るなりすればよったのに
こんな簡単な言葉しか言えなかったのは疲労のせいか。
ぼんやりとした頭のままで周りを見ると恋島を確認。
生きているってことは、まあ私が出しゃばっただけの効果はあったわけか。

>「おい葦川、大丈夫か。なんで怪我してる。誰にやられた。相手は機関の奴等か?」
あれ?国崎ってこんなに優しかったっけ?
出合った時も私は結構怪我していたけど、何一つ心配してくれなかったような……
ま、いいか。
「機関の人間だけど、機関の崩壊を望んでいる奴と遭ってね。一応、私の」
回り始めた頭。
「親友みたいな奴だったから、多分嘘は言っていないと思う」
身体より先に動き出す舌。
だから先に、そのリークされた情報を提示しないと話にならないわけで。
上着のポケットから携帯端末を取り出す
「この中に、機関がこんな騒ぎを起こしてでも成就させようとした野望と、それを食い止めるための情報が入っているんだって」
「ま、本当に重要な物だったらしく、あとから組織の追っ手が来てね。そいつにこっぴどくやられたってワケ」
んー。われながら継ぎ接ぎな言い訳。
まあ、別にだますだませないが問題なわけじゃない。
ただ、本当のことを言いたくなかっただけだ。
「で、どうする?彼女たち曰く、これの通りに行動すれば簡単に平和な日常が帰って来るらしいわよ」
手の中の端末をもてあそびながら立ち上がると、二人の様子を見比べる。

迷いの薄くなった国崎。
呪縛を振り切ったのか、呪縛に沈んだのか。

それに少し怯えるように距離をとる恋島。
そういえばの彼の能力は「予知能力に似た物」と思ってたけど、実際どうなんだろ。

ま、今はどうでも良いか。
【葦川:薬局】
72廻間 統時 ◆7VdkilIYF. :2008/09/08(月) 23:54:47 0
>>57-58
そんなに親しくも無い女だから、正直言って肩を貸してもらえることには期待していなかった。
この場に男がいたら、間違いなくそっちに協力を仰いだだろう。
今思えばルナに貸してもらっても良かったかもしれない。
なら何故、沙羅に協力を仰いだのか?それは俺にも分からない。ただ、何となくとしか言いようが無い。

>「…さっきの掛声突っ込み入れてもいい?」
>「「だめ(だ)」」

俺とルナの声が重なる。
……やはり、突っ込みたくなるようなかけ声だったか。
ルナが俺に憑依出来ると知った時から二人で色々思案した挙句、結局今のかけ声に落ち着いた。
最初の案はスクランダークロスだの、ファイナルフュージョンだの、レッツコンバインだのふざけたモノばかり。
そのため片っ端から却下したら、その日は拗ねてまともに口も聞いてくれなかった。
この超融合も今考えてみたら、本当に馬鹿らしい。何が超融合だ……しかし、言わねば発動しない……ジレンマというやつか。

肩を借り、息を切らしながら歩く事およそ数分。
目の前から一人の男が歩いてくる。
ヘラヘラと気味の悪い笑みを浮かべているが…こいつも敵か。
やれやれ、節操のないことだ。

>「曾壁の頼みだからきたけどよォー捕獲しろだってよー!
超笑えるよなー。普通殺すだろおーー??ははははあはははははははははははははははははは」
>「心配しないで。気絶くらいならさせられる」
「……無理はするなよ……勝てないと思ったら、すぐに逃げろ。
 足手まといの俺の事は見捨ててな……」

俺は実験経験に乏しいであろう沙羅に忠告を送る。
それにしても曾壁とは誰だ……?俺と面識のある人物か?
それはさておきこの状況は不味い。明らかに俺が足手まといとなっている。
ただの足手まといならまだしも、それに加えて俺は動けない……このままではなぶり殺しだ。
そんな俺の思考を他所に、目の前の男は手にしたナイフでいきなり自分を傷つけ始めた。
瞬間。沙羅と目の前の男を囲む壁が現れた。

「なんだ……!?」
「壁……ね。それも相当硬い……
 不味いわね、能力で空間を孤立させてる。千里眼でもあっちの状況が分からないわ」
「くっ」

俺は無理矢理自らの身体を起こし紅い月を抜き、空間を斬り裂く事でこの壁を破壊しようとした。
だが……

「力が入らん……」
「無茶しちゃ駄目。
 さっきの反動が身体に残りきってる、戦えるようになるのはまだ当分先よ」
「よく……冷静でいられるな……」

嫌に冷静なルナの態度に若干の憤りを感じながら、俺は目の前の壁を殴りつけた。
今の俺の力で何とかできるはずもなく、ただ殴りつけた俺の拳が傷ついただけ。

「畜生が……こんな事なら……融合なんてするべきではなかったか……」

後悔先に立たずという言葉が脳裏に浮かぶ。
今の俺は、ただ自らの無力さを感じることしか出来なかった。

【廻間:今の自分では沙羅の救出が不可能と分かり、その場でへたり込む】
73神野 沙羅 ◆LHz3lRI5SI :2008/09/09(火) 22:17:55 0
>>58

怪物がくる。
足が恐怖で動かない。待ち受けるもの。それは、死。
血が見える。

それは私の血なの?
誰の血?
怪物の血?

どうでもいい…。
死ぬんだから…

最後は苦しまずに死にたい。

私は地面に拡散を打ち込みまくった。そうすれば気絶する事は感覚でわかっていた。
…あと3回…あと2回…1回…。意識が遠くなる。響くのはキメラの笑い声。そして私の鼓動。

「はっははははああああはははははは
傑作だぜ〜。まさか自分の能力で気絶するとかマジ笑えるぜ〜」

キメラが部屋に入り怪物に「食え」と命じる。

「ばいばい♪」
沙羅に背を向けた。

瞬間

「ぱーん♪」
女の声が聞こえた。血が舞う。キメラが振り向く。沙羅が立っている。
「お前気絶したふり?ひゃひゃひゃ〜セコーィ!!あん?」
キメラはあることに気づく。見ると怪物の右足がない。
右手に持っているのは…怪物の足。キメラにそれを見せびらかす。そして拡散させる。
肉片が飛ぶ。
「あはははははははははは!!」
笑っている。しかし今度はキメラではなく双樹だ。
「キメラだっけ?始めまして。自己紹介します!私の名前は双樹です!はいっ!りぴーとあふたーみー!」
ケタケタ笑いながら双樹は近づく。キメラは恐怖を覚える。
「小娘がッ!!舐めるな!!」
蹴りを放つ。しかしその足が拡散した。
「うわああああああああああああああああああああああ!!」
キメラが叫ぶ。
「さっきの怪物みたいだね?そろそろ本気出せば?」
キメラは這って怪物のところにいく。そして能力を使う。
「メカニカルサイエンス!!」
キメラの体が異形なものへと変換される。そして攻撃。しかし当たらない。
双樹はあくびをしながら。
「飽きた〜。」とか「疲れた〜。」とか言っている。
キメラは片膝をついて息を切らす。瞬間に双樹がキメラの腕を拡散させる。
次に足。次に内臓。その度に双樹は笑う。
   
そして頭だけで生きているかもわからないおもちゃに
「ばいばい♪」
と声をかけ拡散させた。
74神野 沙羅 ◆LHz3lRI5SI :2008/09/09(火) 22:43:18 0
>>7
〔双樹〕
部屋がなくなる。外に出れた。男の子がいる。たぶん沙羅の彼氏だろう。
「はろー!元気?名前なんだっけ?」
男の子は困惑した表情で
「統時だ…。怪我は大丈夫か?」
「怪我を心配してくれるなんて流石沙羅の彼氏だね〜!」
「?」
「簡単に言うと私は双樹でーす!でも沙羅は気づいてないの。言っちゃだめだよー?」
どうやら統時は余計困惑していた。しかし横の女の子はわかっているみたいなのでいいだろう。
「これからは私が沙羅の中で見てるから。それと…」
統時に駆け寄り唇にキスをした。一気に統時の顔が赤くなる。女の子は唖然としている。
「沙羅をこれからも守ってね…」
そういうと双樹と沙羅に交代した。
10分後…
〔沙羅〕
目が覚める。どうやら記憶はないが統時倒したらしい…。
そばには統時がいるが顔が真っ赤だ。
「統時、助けてくれたありがとう。」
しかし目をそらす…。
「ルナちゃん…」
目をそらされた…
「いったいどうなってんのよーー!!」
その声はむなしく響いただけだった。

【NO.23  キメラ  死亡】
【双樹が出現。しかし沙羅は気づいてない。沙羅に教えてはいけない】
【場がなぜか気まずい】
75国崎シロウ ◆Jd2pQO.KKI :2008/09/10(水) 01:25:14 0
>>64,,71
>「危険から救っていただき、有難うございます。国崎さんが来なかったら、俺・・・・・」
葦川に質問している最中に声がした。どうやら恋島が目を覚ました様だ。
だが、その様子はどこか妙だ。まるで俺を警戒している様な……ああ、成程。
そういえば恋島は前の戦闘で予知能力の様な力を見せていた。
恐らく、俺のまだ知らないその異能で何らかの方法で俺の行動指針を感じ取ったのだろう。
読心か予知かまでは知らないが、すぐに逃げ出さない所を見ると、完全な予測が出来るわけ
ではないのかもしれない。ならば、ここはとりあえず安心させておくべきだろう。

「おいおい、落ち着け。いくら治療したって言っても、刃物の刺し傷だ。暴れれば傷が開くぞ?
 ……ああ。もしかしてアレか?トラウマとか何とかっていう……っち。弱ったなそっちの方は専門外だ
 とりあえず睡眠薬くらいならあるから、やばそうだったら飲んでみてくれ」

心配そうな振りをしてそういってから、俺は葦川の方へと向き直る。

・・・

葦川の話を聞いた俺は、まず真っ先に聞くべきことを聞く。

「……まあ、そうだな。その端末の情報が利用できるなら、それに従った方がいいだろ。
 内部の人間の考えた破壊工作の方が、外部の人間よりは確実だろうしな。
 だだな、葦川。一つ聞きたいんだが、
 なんでお前が、機関の人間と親友なんてコネクションを持ってるんだ?」

そう。一般人として関わってきたこの葦川という女が、何故そんなコネクションを持っているのか。 
つまり葦川自体が裏切り者――――つまり、機関の人間である可能性が出てきたという事。
利用できる物は何でも利用して、機関の人間も目撃者も皆殺しにするつもりだ。が、計画の段階で
騙されていればそれは問題外だ。もし、葦川が敵ならば、処分しないといけないだろう。

「返答は慎重に頼むぜ。もしお前が俺を騙していると分かったら……」
俺は懐で拳銃を握った。
【国崎:葦川自体に警戒を示す。正当性が判明すれば情報を利用するつもり】
76籐堂院瑞穂 ◆FleR8jlnN6 :2008/09/10(水) 03:02:26 0
>>51
目を覚ますと目の前には見慣れない白い天井があった。
起き上がってみると、そこはベッドのようだった、四方を壁に囲まれた大きめの部屋。
カテリーナに負けて、相当酷い傷を負ったはずだが、その傷はもう見る影もない。
まず私が考えたの可能性は人質、私を人質に取ることによって師匠に何かさせようとしているのかもしれない。
しかし、この部屋は見たところ鉄で出来ているわけでもないし、ドアにも鍵がかかっているようには見えない。
しかも、硝子窓まである事から明らかに監禁するための部屋ではないことが分かる。
身体も拘束されていないことを考えると純粋に休ませるためにここに寝かされている可能性が高い。
『機関』に敵対する人物、若しくは廻間か池上、桐北あたりが助けてくれたのかもしれない、とあれこれ考えていると部屋のドアが開き、一人の男性が入ってくる。

「瑞穂、起きたのか。
流石『機関』の医療班だな、こんな早く治療が終わるなんて」

その男性は師匠だった、数年前に死んだはずの籐堂院神の姿をした師匠だった。
あまりに驚いたせいか、私は言葉ととれないような声しか出すことしかできなかった。

「混乱してるようだから、今まで起きたこととこれからのことを俺が手短に話してやる。
大事な話だからしっかり聞けよ」

そう言って師匠が話し出したものはとても信じられるようなものではなかった。
というよりは信じたくなかったといった方が正しいだろう。
師匠は、私達が助かった経緯、自分が『機関』に戻る事とその訳、もう私は『機関』には狙われないという事、これから私は自由だから好きなことをしていいという事を話した。

「意味が分かりません、何故ですか?
何故諦めるのですか、貴方は『機関』を倒そうと今まで、それだけのために生きてきたのではないですか!」
「桔梗が戻ってきた、俺はそれだけでもう良い。
『機関』への復讐はもう意味を為さない、止めだ。
よし、これで質問タイムは終わり、そろそろお別れだ、それとここは今日からお前が住む部屋だ、家賃は俺が受け持ってやる。
あとこれ持っとけ」

そう言って師匠が投げてきたのは、真新しいバッグと天之尾羽張と鍵だった。
天之尾羽張を手に取った私は何故かそれを凄く軽く感じた。
師匠が早々に立ち去ろうとドアに手をかける。

「待って下さい、今更私を見捨てるのですか?
そんなの身勝手です、今まで私を利用したのだからこれからも私を利用して下さい。
お願いします、師匠………じゃないと私、もう何をしていいか………」

視界がぼやける、涙だろうか、ここ数年流さなかったものなので酷く懐かしく感じた。
師匠は私の声を聞き、立ち止まる。

「お前は仮面を被らなければ恐いんだ、鎧を着ないと戦えないんだ、棒がないと立ち上がれないんだ。
だがその仮面は少し大きすぎる、些細なことで外れるぞ。
その鎧は頑丈すぎた、それなしでは戦争に行けなくなってしまった。
棒は所詮道具、いつ折れるかも、無くなるかも分からない」

師匠はそれだけ言って、ドアを開く、私は反射的に立ち上がり後を追おうとする。

「来い『私と私の世界』」

世界が漆黒に染まる、私は少し期待していた、この人物は偽物ではないかと。
だが、この漆黒の世界が師匠が本物だという動かぬ証拠だった。

「俺はお前が動く事を認めない」

師匠はこちらを振り返りもせず、そのまま立ち去っていった。
私は動く事が出来ず、ただその場で止めどなく涙を流していた。
私はついに一人になってしまった。

【籐堂院瑞穂:傷は完治 現在地 町中のアパート】
77廻間 統時 ◆7VdkilIYF. :2008/09/10(水) 19:47:41 0
>>74
俺が己の無力さを嘆いていると、壁が消え去った。
能力が消えたという事は意識が無くなった以上のダメージを与えたという事。
つまり、敵を倒したということだ。
返り血か自分の血かはわからないが、若干服を紅く染めた沙羅が俺の目の前に現れた。

「沙羅!無事だった……か?」

俺は目の前に出てきた沙羅に真っ先に感じたのは違和感。
見かけは沙羅に間違いないが、まるで中身がごっそり変わったような……
そう、まるで漆黒の心を発動している時と、発動していない時の俺以上の違いを感じる。
他人の変装か?しかし……あの状況で変装できるとは思えんが……
敵の変身能力というのも考えられるが……殺気は感じられん。
沙羅の瞳を覗いてみても、そこにも殺気は無い。

>「はろー!元気?名前なんだっけ?」

……やけに明るいな。元から暗い子だとは思わんかったが……
それに俺の名前を忘れている?自己紹介なら既に済ませた。
頭を打ち記憶喪失にでもなったか?いや、記憶喪失なら自分のことも忘れるはず。
都合よく俺の事だけ忘れられるとは思えん。
とりあえず、俺は再度沙羅に名前を告げ無事かどうか聞いた。

>「怪我を心配してくれるなんて流石沙羅の彼氏だね〜!」
 「簡単に言うと私は双樹でーす!でも沙羅は気づいてないの。言っちゃだめだよー?」

返事代わりに帰ってきたのは、自己紹介。
つまり、この女は沙羅じゃなくて双樹?だが見かけだけで言うなら明らかに沙羅だ。
いったいどういう事だ!双子の姉妹か?それとも別の人格?それとも敵の変身?はたまたクローン体?
様々な憶測が俺の脳裏に浮かんでは消えていく。
どの推測も確固たる証拠が無い……とりあえず敵の変身、クローン体というのはなさそうだが……
俺が考えていると、いきなり沙羅が駆け寄ってきた。
とりあえず今は距離をとった方がいいかと俺が決定を下し、止まれと言おうとした……のだが。
78廻間 統時 ◆7VdkilIYF. :2008/09/10(水) 19:48:30 0
>「沙羅をこれからも守ってね…」

……キス……された?
いきなりキスしやがった!?俺のファーストキスが奪われた!!
ちっくしょう……俺のファーストキスが……うぐぐぐぐ。
ハー、まさかこんな時にファーストキスを奪われるなんて。
まあ悪い気はしなかったけど……唇柔らかかったし……って待てよ。
いつの間にか俺の漆黒の心が解除されてる。口調が元に戻ってるのが何よりの証拠だ。
精神的なショックが与えられた事で俺の心が元に戻ったってのか?
やれやれ、また漆黒の心を発動するのは骨が折れるしこのままでいいか。

およそ十分後。
俺の精神も少しは落ち着き、沙羅の目も覚めたようだ。
目が覚めた沙羅は、記憶を探るように考え事をしている。
そして次に俺の顔を覗いてきた。

>「統時、助けてくれたありがとう。」

「……っ」

マトモに沙羅の顔を見れない。さっきの感覚がまだ体に残っている。
……それはともかく!今の沙羅には、さきほど感じられた違和感は感じられなかった。
つまり、俺の知っている沙羅に戻ったという事だ。さっきの沙羅が何なのか、今となってもどうでもいい。
俺が知っている沙羅が戻ってきたんだ、今はそれで十分だ。
そうだ。そういえば今は何時なんだ?
この短時間で様々な事が起きたせいか、時間の感覚が分からなくなっている。
俺は携帯を取り出し時間の確認をする。

「ん……」

メールが一見届いている。
とりあえず中身を確認すると、件名に『私だ』だけ書かれている。
チェーンメールにしては内容がおかしい。かといって出会い系の迷惑メールでもなさそうだ。
いったい誰だろうか……最近メルアドを教えた人間といえば……

(まさか瑞穂?)

俺は半信半疑になりながらも件名に『瑞穂か?』、
内容に『瑞穂なら返信してくれ、違うのだったらしなくても構わない』と打ちこむ。

(今はこれでいいか)

メールを送信したのを確認すると、俺は携帯を閉じる。

「疲れてるだろうけど、ここに止まるのは不味い。
 早く薬局に向かおう」

沙羅に再び肩を借りると国崎薬局に向かった。

【廻間:着信していた瑞穂のメールに返信。
    沙羅と瑞穂と再び国崎薬局に向かう】
79廻間 統時 ◆7VdkilIYF. :2008/09/10(水) 20:23:57 0
×【沙羅と瑞穂と再び国崎薬局に向かう】
○【沙羅と再び国崎薬局に向かう】

誤記申し訳ない。
80恋島達哉 ◆KmVFX58O0o :2008/09/10(水) 21:37:25 0
>>71>>75
取りあえず……だ。国崎さんに対し下手な事を言える訳が無いし、かといって元耳鳴りの言葉を信じる気にもなれない
のでその場に留まる事にする。幸か不幸か考えるべき事は腐るほどある。ぶっちゃけこの場から動きたくもないし
と、国崎さんとは別に人の気配を感じる。ふと国崎さんの目線が下を向いている事に気づく
誰かがゆっくりと、国崎さんの立っている方へと起き上がった。ええっと・・・…どこかで見たような……

あ、と思い出す。葦川さんだ。服屋で会った様な会わなかった様な気がしたが、頭を打った為か思い出せない
けど、葦川さんも重症ではないものの、所々にケガを負ってるみたいだ。って俺も人の事言えないんだけども
そういやけっこう腹の具合が良くなってきたな。包帯でも巻いたら完治とは言わないまでも普通に動けるくらいには治るかもしれない
……でも葦川さん、何処で怪我を負ったんだろう。とても聞くような勇気は無いけどさ
ふと、国崎さんが葦川さんと一言二言会話すると、俺の方を向き

>「おいおい、落ち着け。いくら治療したって言っても、刃物の刺し傷だ。暴れれば傷が開くぞ?
 ……ああ。もしかしてアレか?トラウマとか何とかっていう……っち。弱ったなそっちの方は専門外だ
 とりあえず睡眠薬くらいならあるから、やばそうだったら飲んでみてくれ」

それほど俺ってテンパってたのかな……かもしれない。俺は無言で頷き、また一歩下がった
睡眠薬か、寝たら色々と楽になれるかもしれない。けどなんか寝たら死にそうな気がしないでも……
いかんいかん、思考が物凄く沈下している。何でも良いからポジティブシンキングにならねば。ポジティブ……
あぁ、腹減ったなぁ。そういや。またここで食ったカレー食いたいなぁ。なんてなぁ、あぁ、ヤッパ駄目だ

俺が思考の藪の中に囚われていると、国崎さんと話していた葦川さんが俺の方にも顔を向けた
そして俺は、葦川さんから予想外の発言を聞くことになった

>「機関の人間だけど、『機関』の崩壊を望んでいる奴と遭ってね。一応、私の」
……はい? 葦川さんの知り合いが……機関の……
俺が何か考えようとした矢先、葦川さんが言葉を続ける

>「親友みたいな奴だったから、多分嘘は言っていないと思う」
親友って、マジですか・・・・・・俺の浅はかな予想を遙かに上回るような深い事情が葦川さんにはありそうだ
けど俺が出来る事今の所何も無いので沈黙を守る事にする。すると葦川さんが話を中断し、上着のポケットを探ると何かを取り出した
81恋島達哉 ◆KmVFX58O0o :2008/09/10(水) 21:39:01 0
どこにでもある様な携帯電話だ。どういう意味なんだ・・・…と思った瞬間
>「この中に、機関がこんな騒ぎを起こしてでも成就させようとした野望と、それを食い止めるための情報が入っているんだって」
 「ま、本当に重要な物だったらしく、あとから組織の追っ手が来てね。そいつにこっぴどくやられたってワケ」
な、何ですと? その、何処にでもありそうな携帯に、あの曾壁だの岩城みたいな奴らのいる 『機関』の情報が入ってるって?
整理すると……葦川さんはどこかで、『機関』に所属する親友に会って、手元にあるブラックボックスみたいな携帯を受け取った
それで……怪我か。その親友が送り出した手下に……許しえないな。俺が葦川さんの立場なら

>「で、どうする?彼女たち曰く、これの通りに行動すれば簡単に平和な日常が帰って来るらしいわよ」
葦川さんが、俺と国崎さんの顔を窺いながら、そう言った。・・・…平和な、日常。俺は小声で葦川さんの発言を反芻した
それは俺が今一番欲しかった物だ。あの駅に降りてから、俺を取り巻く世界は完全に一変してしまった
そりゃ今すぐ、この町に来る前の生活が戻るのなら何も言う事は無い。あの単調で単純で……ありふれた日常に
本当、マジであの日常に戻れるのなら、俺は……

良いのか? 本当にそれで。このまま、普通の生活に戻って。いや、良いんだ、何で迷う必要がある
俺の足は一歩踏み出していた。そうだ、迷う必要なんて無い。葦川さんに言って携帯を受け取れば
……なんで動かないんだよ、簡単じゃないか、ただ単に葦川さんの話を信じるだけ……

突然、頭にこびりつくあの夢。そしてあの声
戦う事が、俺の贖罪と言った、あの声。俺は、俺は、俺は……

>「……まあ、そうだな。その端末の情報が利用できるなら、それに従った方がいいだろ。
  内部の人間の考えた破壊工作の方が、外部の人間よりは確実だろうしな。
  だだな、葦川。一つ聞きたいんだが、
  なんでお前が、機関の人間と親友なんてコネクションを持ってるんだ?」
俺の思考を断ち切るような冷たく冴えた声が、部屋に響いた。国崎さんだ
国崎さんはどことなく感情を抑えるような音色で、葦川さんにそう聞いた。その返答には俺が聞きたくても聞けなかった事が全部入っていた
けど、正直葦川さんが素直に答えるような気は何故かしない。俺としてはその携帯の中身を見ないかぎり、半信半疑のままだ

>「返答は慎重に頼むぜ。もしお前が俺を騙していると分かったら……」
瞬間、俺は国崎さんの声にぞくりとした。同時に、元耳鳴りが、強張った声音で言った

『まずい、何か取り出す気だ。達哉、出来るだけ出口の方まで下がるんだ。悟られないように』
……嫌だ。俺は、この場から逃げ出したくない。葦川さんの持っている情報とやらを知るまで

『駄目だ。達哉、すぐにこの店から逃げ出すんだ。今の体たらくな君では、あの男には勝てない』
勝てないって、俺は国崎さんと戦う気なんてねーよ! 無い…・・・けど、本音を言うと元耳鳴りの意見も分からなくは無かった
何だろう、今までの国崎さんとは上手く言えないけど、何かが違う。そりゃあ、気遣ってくれるし怪我を治してくれるし
けど何て言うんだろう、妙に雰囲気が冷たいって言うのか……ああ、もう何でこうも語彙が少ないのかね、俺

異常に細い糸がピン、と張り詰めていて、尚且つ一瞬でぷつんと切れちまいそうな緊張感が、場の空気を支配している
腹の痛みとは別に、俺の胃がおかしくなりそうだ。国崎さんはそう答えたまま微動だにしないし、葦川さんも動かない
……俺も何か言わないと駄目なのか、でも何をどう言えば良い。国崎さんと同じく葦川さんを追及するか、それとも・・・・・・
駄目だ、何かどっちも良い結果にはならない気がする。どうすりゃ・・・・・・どうすりゃい

次の瞬間、俺の腹の虫が鳴った。かなりけたたましい声で
葦川さんと国崎さんがほぼ同時に、俺の方を見た。明らかに空気嫁と言っているような顔で
あ〜……耳鳴り? 元耳鳴り? こういう場合はどうすれば良いんだ? あの時とかあの時みたいに助言をくれ
・・・・・・シカトかよ!

「ええっと……ひとまず、何か食べませんか? それから、色々考えてみるのもいいと思います」
一体どの口でほざいているんだろう、俺

【現在地:国崎薬局】
【国崎と葦川に、軽食を取る事を薦める】
82名無しになりきれ:2008/09/10(水) 22:07:44 O
(,_´ゞ`)
>>40-42 >>59-61 >>70
我々ファーストナンバー三人が議論を交わしていると、金剛の側近"桜庭"が入出してきた。
手にはテーブルを抱え、その上には客人へのもてなしが乗っている。
桜庭はリンとツバサに、それぞれオレンジジュースと紅茶を差し出すと退出した。
恐らく再びドアの前で、この密談を他者に聞かせない為に見張っているのだろう。
まるで教会のガーゴイルである。

リンは差し出されたオレンジジュースを恐る恐る飲み始めた。
先程の答えがまだのようだが、無理に蒸し返す必要は無いだろう。
金剛もそれ程気にしてない様子だ。

「丁度、30分か。頃合だな…。おい、ツバサ!
 お穣ちゃんを応接室へ連れて行ってやれ」

金剛が、その豪胆な性格にも拘らず、世界有数の一流企業のトップに居られるか……。
その理由は時計を見ずに時間を当てるという、
超人的な(野生の感というべきだろうか)感覚から解る。

ツバサの手前、易々と研究室へ直行させる訳には行かないか。

「―――心配は要らないよ。
 なにも私たちは君を捕って食べようなんて思っては居ないさ」

私がリンを諭すと、ツバサは彼女を引っ張って社長室を後にした。

「さて…と。ピクニックは現地解散だ。
 俺は暫くここで休む。イイ機会だ、昼寝でもするさ。

 アルトの穣ちゃんはどんな報酬が望みなのか、
 後でうちの受付にでも伝えといてくれや」

……やれやれ。呑気なものだ。
だがまあ、有意義な時間ではあったな。
『記憶共有(シェアリング)』で私が金剛から得た情報で一番の収穫は、
『炎魔』の復元率は40%強まで進んだという事だ。
虐殺部隊の投入に加えてセカンドナンバーの人数増加という
金剛の判断が正しかったな。正直な話、ここまで日本で復元出来るとは思わなかった。
この街での祭りで、一気に復元率が跳ね上がった事には内心驚いている。

「昼寝の邪魔をしては不味い。
 小村君とハーケン君には申し訳ないが、先に私は失礼するよ。
 それでは"総帥"、また後で……」

洗濯物の事を心配しながら、ドアに手を掛けると、後ろから金剛の声が聞こえてきた。

「――おい、レオーネ。そろそろ医療班が戻って来ている頃だ。
 医務室にでも顔を出してみろ。それと……」

金剛は"何か"を投げて寄こしてきた。それは丁度良く私の手の中に落下してくる。
―――"何か"は機連送だった。赤い色は個人的に好きなので大変嬉しい。
機連送も戻ってきた。後は右腕の治療を行なうだけだ。

「今度は"消される"なよ?」

―――金剛の含み笑いを背に、私は社長室を後にした。

【レオーネ:現在地 ナガツカインテリジェンス本社ビル 社長室前通路】
84池上 燐介 ◆qqu0tZFsYU :2008/09/11(木) 20:37:45 0
>>69
俺は、いつの間にか人通りの全くない街の裏通りを歩いていた。
ここまでどうやったルートを辿って辿り着いたのかすら、思い出せないでいた。
全てはあの夢を見てからだ。特に何かを考えていたわけでもないのに、
あれからただぼーっと注意力だけが散漫になっていた。

俺は思わず「ふぅ」とため息をついた。──その時だった。
どこから沸いたのか、謎の一団が通りを一人歩く俺の前に立ちふさがったのだ。
数は十人ほどだろうか。

「……こいつか? クラコフさんを殺ったのは?」
「あぁ、間違いねぇよ。あの林の中からあいつが出てきたのを見たんだ」
「仲間の仇だ! テメーにはここで死んでもらうぜ!」

一団の一人が銃を構えだした。しかし、それを仲間の一人がすぐに諫めた。

「待て! もしあいつの仕業だとすると……あいつは異能者ということになる!
俺達が束になってかかったところで、勝ち目は薄い……」     クイーン
「そ、それじゃ、このまま手を拱いていろってのか!? それとも『姐御』に知らせ……」
「バカな! そんなみっともない真似ができるか!!」
「じゃあどうしろってんだよ!!」

口振りから察するに、どうやらクラコフらの仲間であり、異能者は一人もいないらしい。
死を覚悟で仇を討つのか、一度上司に相談するかで揉めているようだった。
俺は止めていた足を再び動かし、奴らに真正面から悠然と近づき始めると、
奴らは後ずさりをしながら、困惑の表情を浮かべた。

──と、その時。何かが肉を裂くような、鈍い音が俺の耳に飛び込んできた。
俺は思わず立ち止まる。
すると後ずさりをしていたクラコフ残党の一団が、血を吐き次々と地に倒れ伏していった。
一団の先頭に立っていた男が倒れながら苦しそうに振り返ると、
そこにはまた数人の新たな謎の集団の姿があった。

「うっ……あ、あんたらは……! ぎゃ……『虐殺部隊』……!!」

謎の集団の一人が、彼らを『虐殺部隊』と呼んだ男の顔を踏みつけた。
男は苦しそうにうめき声をあげたが、息絶えたのか、それも直ぐに聞こえなくなった。

「……前進するしか能のない『歩』は、前進を止めた時に存在価値がなくなる。従って処分した。
例えNo.11直属の部下であっても、価値を失えばこうなる」

新たな一団は総勢五名。そして彼らをクラコフ残党の一人はこう呼んでいた。『虐殺部隊』と。
『虐殺部隊』……その名は『山田』から聞き、貳名製薬ビルで、重松からも聞いた名だ。
確か城栄の意に背く者を消すための特殊部隊。こうしてお目にかかるのは初めてではないだろうか。
85池上 燐介 ◆qqu0tZFsYU :2008/09/11(木) 20:44:24 0
顔を踏みつけていた男が、今度は俺に向けて言葉を発した。

「貴様は異能者だな? 確か名前は……」
「──『池上 燐介』。戦いが始まってより早々に規定のスコアを満たした人物。
本来、我々が標的とする人物ではないが……」

五人は互いに顔を見合わせコクリと頷く素振りを見せると、続けて言った。

「我々の"仕事"を見られたからにはタダで帰すわけにはいかない。そうだ、見物料に命をもらっておこうか?」

五人の内の二人が、こちらに向けて大きな筒状の武器を構えた。
あれは映画などでよく見る『バズーカ砲』と呼ばれるものに違いなかった。

「貴様自身の身体能力は然程脅威ではないが、その分、自らを防御することに長けているそうだな?
なんでも氷の壁を作り出すとか……。だが、果たして氷でこいつを防げるかな?」

俺はバズーカ砲を向けられても少しも臆することなく、
ただ右手一本を奴らに向けると、再び悠然と歩き始めた。

「良く調べているじゃないか。だが、調査不足だったな? そんなもので俺は殺せない」

自信を覗かせる俺を見て、五人は一瞬だが、戸惑いの色を隠さなかった。
──その瞬間の隙を俺は見逃さなかった。瞬時に向けられた右手に膨大な力が集められると、
それから息もつかせぬ間に、渦を巻いた巨大で強力な極寒の暴風が五人に放たれた──。

ある者は無表情のまま、ある者は驚きの顔をしたまま文字通りその場に凍りついた。
痛みなど感じる暇さえなかっただろう。いや、自分に何が起きたさえ知らなかったかもしれない。
どうあれ、『虐殺部隊』の一員であった彼ら五人が、二度と動くことはないのは確かだ。

「……価値のなくなった『歩』は、処分される。お前達の言うとおりになったな」

虐殺部隊の五人が凍りついた、その後ろに続く道は街の大通りに通じる抜け道だろう。
かすかだがその奥からこれまで遠ざかっていた人や車の声が漏れている。
闘ったことで、先程に比べて少々鬱屈した気分が晴れたのか、抜け道を行く俺の顔からは
どことなく暗さが消えていた。
           アイス・ストーム
(……そういえば、『氷雪波』を放ったにも関わらず、疲れをあまり感じないな。
『力を奪い取れ』……。気がつかなかったが、確かに力は上がっているようだ)

大通りへ再びその姿を現した俺は、次なる目的地に向けて歩き出した。

【池上 燐介:街の裏通り→表通りへ。紙に記されていた住所の内の一つへ向かう】
【ノルマ達成で上昇した自分の力を確認】
【NPCポポフスキーの部下→全滅 NPC虐殺部隊五人→死亡】
86七草柴寄@代理:2008/09/12(金) 00:29:07 0

「良い夜だ」
公園でそう呟くと周りに人が居ないか見回した。
ここ最近急に物騒になったので
自分が厄介事に巻き込まれないか
少し不安になった
「ふぁ、眠い…」
突如強い睡魔に襲われた。
「柴寄」は基本的に能天気である
「う〜、まあ大丈夫でしょここで寝ても」
そう言うと人目につかない所で寝るのに丁度いい草むらを見つけると
そこに寝転がった。
「まさか襲われたりしないよな…」
そんな事を考えながら意識が閉じていった――
―――――
(本当に良い夜よね、こんなに月が綺麗だもの
面白そうな人たちもいる様だし…ね。)
――

数刻後ムクリと起き上がったが
その表情や振舞いははまるで別人のようになっていた。
「さて、柴寄、厄介事が嫌なら外に出ない事ね
まあ、今日はどっちにしろ外に出るつもりだったけれど…」
女のような口調で呟くと獲物を見るような目で遠くを見た
その先にはコートを着た3人の男がいた、
彼らは別の異能者の所へ行くつもりなのだろか、どちらにせよ彼がやることは変わらない
―機関の人間は狩る―
彼は3人の男に忍び寄った。

彼の戦闘法は暗殺
気配を殺し一撃で息の根を止める
それは彼の能力に適した戦い方であった。

気配を消し男達の背後に立つ、気付かれていない

チェックメイト
(切断) 

(カリッ)
爪から血を滴らせ男たちに襲い掛かった
――彼が書いた線はなぞるだけで
切断される、ソレに力など要らない―――
血で「線」を書き、爪で「なぞる」
バターを切るように男二人を肉片に変え
残りの男の心臓を一突きにし

辺りを血の海に変えた。

「まあ死んだことに気付かない事は幸せね」
血を払いそう呟きパチンと指を鳴らすと死体が消えていった。
「少し、遊びに行きましょうか」
異能者を求めて歩き出す
「今夜は、楽しめそうね」

【死体を隠滅し公園から移動:人格が変わっている
異能者を探している、機関の者以外なら敵意はない】
87神野 沙羅 ◆LHz3lRI5SI :2008/09/14(日) 19:03:28 0
>>78

統時が黙ってケータイを見ている。
そのあと黙って文字を打ち込んでいる…
どうやらメールなのだろう。

どうやらメールが終わった統時は

>>「疲れてるだろうけど、ここに止まるのは不味い。
 早く薬局に向かおう」

と話しかけた。確かに疲れているがそれよりも話し方がおかしく感じる。
「行くのはいいけどそれより話し方変わってない?」
「!?」
何か考えているようだ。
「…まあそれはその疲れが取れたらでいいからはなしてね」

そういって統時に肩を貸し(自分から言ったくせに肩を貸そうとするとかなり嫌がった
薬局まで行った。何でだか統時に肩を貸しているときはやな気分じゃなかった。

―なんでだろう?

【統時と共に薬局へ】
【口調についてはあとでから聞く】
88籐堂院瑞穂 ◆FleR8jlnN6 :2008/09/14(日) 23:11:34 0
>>76
どうしよう。
私の頭の中はこの言葉で一杯だった。
師匠から与えられた家に居るのも寂しかったので出てきたのはいいが、今まで師匠の敷いてきたレールを進んできた私はこれからどうすればいいのか分からなかった。
既に『機関』なんてどうでもよかった、それより師匠にもう一度拾って欲しかった。
師匠にもう一度拾ってもらえるには役に立つことを見せつけなければいけない。
今の師匠にとって役に立つこと、それは『機関』に敵対する者の排除。
私にはもう自分の弱さを隠す仮面は外れ、弱い自分を守ってくれる鎧は無くなり、立ち上がるための棒もなくなった。
しかし、まだ私には剣がある、私の身の丈に合わない大きすぎる剣、この剣さえあればまだ戦える。
その時、私の前から誰かが歩いてくる、一人の少女と少女の肩をかりて歩いている少年、少年に寄り添うように歩いている女性。
その一人は私がよく知る人物、廻間統時。
手を組むという約束だったが、今はもう違う、師匠の立場からすると統時は敵。
よって私の敵、統時には悪いがここで死んで貰う。

「私はまだ戦えます、師匠の役に立ってみせます。
だから、見ていて下さいね師匠」

師匠のためなら私はまた仮面を被れる、仮初めの強さを手に入れる。
統時はこちらに気付いたようで、軽く手を挙げた。
私はそれに応じて微笑むと、バッグから刀を取り出し鞘から抜く、素早く統時に肉薄すると、刀を一閃。
統時は瞬時に私の攻撃に反応して、少女共々横に倒れ込む。
肩を借りているくらいだから疲れているのだろう、反応こそ早かったが動きは遅かった。

「久しぶりだな、統時。
そんなに驚くな、私は何も変わっていない。
世界が変わったのだ、今の君は私の敵、だから排除する、それだけだ。
お前は随分と消耗しているようだが容赦はしないぞ、それとそこの少女は関係ないなら逃がした方が良い」

統時は信じられないような顔をしていたが、すぐにふらつきながら立ち上がる。
大丈夫、私は戦える、師匠の役に立てるなら何でも出来る、たとえそれが目の前の少年を裏切ることになったとしても。
私は薄く微笑むと再度統時に刀を向ける。

【籐堂院瑞穂:廻間統時に戦いを仕掛ける】
89国崎シロウ ◆Jd2pQO.KKI :2008/09/15(月) 01:23:38 0
>>81
葦川は沈黙を続ける。それは回答出来ないという解答に他ならない。
つまり、葦川を戦力として期待する事はもはや難しいという事。
今ここで二人共を消さねば鳴らなくなったという事だ。
ならば、仕方が無い。俺は、懐にある拳銃をゆっくりと引き抜き――――

と、そこで何か珍妙な音がなった。反射的にそちらを向くとそこには恋島の姿。
……どうやら、今の音は恋島の腹の音らしい。

>「ええっと……ひとまず、何か食べませんか? それから、色々考えてみるのもいいと思います」
一瞬で緊張の糸が緩んだ。全く、狙ってやったのなら宴会部長でも狙えるムードメーカーだ。
俺は、呆れたような表情を作った後、懐から拳銃を抜き、葦川と恋島に向かって


引き金を、引いた。


火薬の炸裂音が室内に響く。二つの弾丸は、葦川と恋島の近くの畳を貫いていた。
俺は、いつも通りの苦笑を作り、火の付いていない煙草を咥えて言う。
「ああ、驚かせちまったか。 まあ、なんだ。
 葦川、恋島。突然で悪ぃんだが、お前さん達とはここでお別れだ」

二人の返事を待たずに何時もの調子で告げる。
「あー……いや、本当だったら機関を殺戮しにいく兵隊として着いていって欲しかったんだがな。
 今の様子じゃそれは無理みたいだし、だからお前らを殺す事にしたんだわ。
 回避だけの能力者に、信用の置けない能力者なんて、どっちもろくに使えたもんじゃねぇだろ?」

葦川の動きに警戒しつつ、俺は二人に銃を向けたまま戸棚から薬を四錠取り出して、二人の前に置いた。
怪訝そうな雰囲気を放つ二人に向けていう。

「そいつは、この一週間以内に体験して獲得した記憶を丸ごと全部消し去る薬だ。
 この町を去った後にそいつを飲め。そうすりゃ、命だけは助けてやる。
 飲まなかったら……この世の果てまで逃げたとしても、必ず殺してやる」

つまり、俺のいた時間全部の記憶を殺すか、俺に殺されるか選べという事。
……そう。これでいい。何も殺す必要は無い。この二人はまだ関わったばかりの筈だ。
ならば、記憶さえ奪ってしまえば、それでいいではないか。死体の始末もいらないし、実に合理的だ。
考えるな。何故俺が、俺自身にこんな事を言い聞かせているのかなど。
考えるな。二人を殺す気で銃を向けた時、手が震えて撃てなかった事も。何もかも。
そんな事は機関の人間を皆殺しにしてから考えればいい。

俺は、店の戸棚の裏に隠してあった武装品、衣料品、血液を必要なだけバッグに詰め込み、玄関に立つ。

「俺は数日中に機関に攻め込む。だから、後数日だけならこの薬局に残ってていいぞ。
 ああ、廻間がきたら俺は暫く帰らない事、それからさっきの薬の事を伝えておいてくれ……それじゃあな」

薬の期限は一週間。もう既に数日が経っているのであまり時間は無い。
一刻も早く機関を滅ぼして、彼女と約束した日常に帰らなければいけない。
黄昏時は終わり。ここからは――――
俺は、最後に白衣を脱ぎ捨てると、夕闇に向かって歩き出した。

【国崎:薬局→道 数日中に機関に攻め込む。機関の人間とみなした相手には容赦する気は無い】
90葦川妃映@代理 :2008/09/15(月) 15:24:27 0
>>81>>85
>「……まあ、そうだな。その端末の情報が利用できるなら、それに従った方がいいだろ。
 内部の人間の考えた破壊工作の方が、外部の人間よりは確実だろうしな。
 だだな、葦川。一つ聞きたいんだが、
 なんでお前が、機関の人間と親友なんてコネクションを持ってるんだ?」

簡単だ。
「中学生のときに同じクラスだった」と事実そのままを伝えれば事足りる。
それだけだ。だが──
(予想外よね……これは…)
今朝に二人の男に誘われた時とは全く違う反応を国崎は見せた。
「争いごとに巻き込まれない」事よりも「機関を潰す」ことに重点を置いたということは
「日常を守る」事よりも「日常を阻害する者を排除する」事に方針をシフトしたということ。
というか、私はもとからせつなの情報なんか信用するつもりはなかった。
なのに、こんなに食いつきがいいなんて……
>「ええっと……ひとまず、何か食べませんか? それから、色々考えてみるのもいいと思います」
無理だ。うるさい。
何か良い言い訳は……

──銃声
>「ああ、驚かせちまったか。 まあ、なんだ。
 葦川、恋島。突然で悪ぃんだが、お前さん達とはここでお別れだ」
>「そいつは、この一週間以内に体験して獲得した記憶を丸ごと全部消し去る薬だ。
 この町を去った後にそいつを飲め。そうすりゃ、命だけは助けてやる。
 飲まなかったら……この世の果てまで逃げたとしても、必ず殺してやる」
無言のまま頷いて薬を手に取る。
>「俺は数日中に機関に攻め込む。だから、後数日だけならこの薬局に残ってていいぞ。
 ああ、廻間がきたら俺は暫く帰らない事、それからさっきの薬の事を伝えておいてくれ……それじゃあな」
白衣を捨てて出て行く国崎をそのまま見送ると、大きく深呼吸。
これはそんなに悪い状況じゃない。
何といっても、記憶を消す薬を手に入れたわけだ。国崎は解っていて私に渡したのだろうか?
──私だって日常に帰りたいと願っているということを。

「私は、国崎を助けに行くわ。「廻間」と合流して、機関を叩く」
情報が無ければ、せつなの情報を使う。戦力は廻間を頼る。
「結構世話になったのに、このままサヨナラってわけにも行かないでしょ?」
「恋島はどうする?」

どのみち、全てが終わったら目撃者には消えていて欲しかったわけで。
それでも国崎は手ごわそうだから、もう少し仲間らしくして弱みでも握りたかったんだけど。
この薬を飲ませることさえできれば私の勝ちになったわけで。
恋島も、廻間も、全てを忘れてくれるのなら私も手を汚さずに済む。
せつなは…殺さなければ気がすまない。
私の手のひらで踊っているのはお前たちなんだ。
……思い上がるな。バケモノ共め!
【葦川:薬局 待機】
91小村禅夜 ◆3LPMHhiq9U :2008/09/15(月) 21:17:58 0
>>59-61 >>83
「丁度、30分か。頃合だな…。おい、ツバサ!
 お穣ちゃんを応接室へ連れて行ってやれ」
小村はチラッと自分の時計を見ようとしたが、時計は無かった。
(・・・忘れていた。機連送以外の持ち物はそこの餓鬼に灰にされたんだったな・・・・くそ)
だが、おそらく合っているのだろう。
金剛は時間を寸分間違わずに当てられる、というのを聞いたことがある。
まるでフクロウか何かだな。

「さて…と。ピクニックは現地解散だ。
 俺は暫くここで休む。イイ機会だ、昼寝でもするさ。
 アルトの穣ちゃんはどんな報酬が望みなのか、
 後でうちの受付にでも伝えといてくれや」
(・・・解散時の先生の話は長いものか・・・・にしても疲れたな)
小村の中にはなかなか開放されなかった怒りもあったが
今は開放感の方が勝っていた
「昼寝の邪魔をしては不味い。
 小村君とハーケン君には申し訳ないが、先に私は失礼するよ。
 それでは"総帥"、また後で……」
レオーネはそういうと出入り口の方へ歩いていく
「――おい、レオーネ。そろそろ医療班が戻って来ている頃だ。
 医務室にでも顔を出してみろ。それと……」
金剛の手元から放物線を描き、レオーネへ機連送が投げられた
「今度は"消される"なよ?」

そういうやりとりをした後、レオーネは去っていった
「それで、、、小村、おめぇは体のメンテ行って来い。
 もしも、おめぇが死んだりしたらこっちが困るわけだ。」
「・・・・はいはい」
その言葉に反応して、金剛は目をカッと見開いた
「いいか、おめぇは確かに重要だ、だがな俺としては生きていれば
 それでいいんだよ。だから今度そんなとぼけた風に俺と接してみろ、その首たたき折って
 牢屋にぶち込む。虫の息にしてな!。」
それだけ怒鳴ると金剛は目を閉じた
(・・・全く、うるさいものだ。私が重要ならもっと待遇をよくしてもらいたいものですよ。
 なんたって私は復元装置のキーパーツであるのだから・・・・)
小村は部屋を出て行った
92小村禅夜 ◆3LPMHhiq9U :2008/09/15(月) 21:19:35 0
三年前 アフリカ某所 現地時間04:43
機関特殊異能研究機関<タルムード>地下5階 特別研究室内

「・・・・ええ、対象はアレを受けた後、このベッドに寝かせてあります」
う・・・・
「お、目覚めたか。どうだぁ。気分は?」
ここは・・・・
「まだ意識はハッキリしていないようです。しかしすぐ良くなるとは思います」
・・・・なんなんだ
「全く、だらしがねぇ。こんなんだから山田を逃しちまったんだよ」
山田?・・・・・
「・・・では、三分後に安定剤を投与後、日本へお送りします、城栄総帥。」
城栄総帥・・・・城・・さか・え・・・金剛!!!!
「な、なんだこの光・・・・ぬうわぁ!!・・・」



「・・・ここまでできるとはな。はっ、凄いじゃねぇか。
 見ろよ、おめぇの爆発でこのあたり一体はでかい穴になっちまった。まるでクレーターだよ。
 俺も『因果律』を発動させてなかったら灰だったな。」
「ハァ・・・・ハァ・・・・こ・ん・・ご・・う・」
「だが、勝手はここまでだ」
「ガッ・・・・・」
・・・バタッ
「はっはっは、おめぇはとてもいいぞ。おめぇならパーツになれるな、俺の計画のパーツにな・・・」
93小村禅夜 ◆3LPMHhiq9U :2008/09/15(月) 21:22:47 0
現代 日本某県貳名市 某時刻
機関本部内

「は!!!」
ガッ!!!
小村はETCの中で思いっきり頭を打った
「つ・・・・・」
「ちょっと、ETCのなかで暴れないでくださいよ」
「・・・・分かってます」
痛さに悶えながら返事をした
(・・・全く、久々にメンテナンスなんかしたから嫌なことを思い出した・)
小村は装備の補充も考えて、大人しくメンテを受けることにしたのだった
「・・・・はい、もういいですよ」
白衣を着た女性がそう言い伝え、小村はETCから解放された
ここは異能力専門の研究室で、学校の職員室ぐらいの広さだった。
周りでは白衣を着たさまざまの人たちが、忙しく歩き回っていたが、
小村がいた空間は半透明のガラスの壁があり音は静かだった。
「数値に異常は無し。脳、心臓、その他臓器も健康状態。
精神も安定していて、メタトロンの出力もいつも通りです。」
小村はついでに洗った髪を背中に流し、机に置いてある装備を入手していく
「・・・さっきは何があったんです?あんな大きな音を出して」
「・・・なんでもありません」
「そうですか・・」
小村はすべての装備を整えると早足で部屋を後にし、エレベーターに乗り込む
グーーン・・・・
順調に降りていくエレベータ、それと同じように小村の頭も正常になっていく
(まずは、行ってみるか。あそこに。・・・リンの事も気になるが、
まあ奴にはゴッドバルトのエネルギーを一粒付けておいた。金剛が桜庭を見た一瞬にだ。
あれがあればどこに居るかは分からんがどれぐらいの距離があるかは分かる。
今朝、アルト達に合えたのもそれのおかげだ。)
「ダイジョウブカ」
「何がですゴッドバルト、ってあなたが自分から話しかけるなんて珍しいですね」
「オレニハオマエガアセッテイルヨウニミエル」
「・・・大丈夫です、大丈夫」
チーン
エレベーターがつくと同時に、ゴッドバルトが小村の影に消えていった
(大丈夫だ、、、焦ってなんかいない。着実、慎重に事は進んでいる。やれる。・・私はやれる。
 だから、私は、この機関を、世界を、全てを・・・)

小村は正面入り口から外に出て行く
昼下がりの太陽は小村にはすこし眩しかった
【小村・装備万端で町へ繰り出す】
94七草 ◆O93o4cIbWE :2008/09/15(月) 21:46:57 0
「…!」
先程から視線を感じる、私をずっと付けてる蝙蝠だ。
偵察用の使い魔だろう、先程の現場を見られたかも知れない
もしこいつが機関の者なら生かしておくわけには行かない
「アァ…可愛い使い魔サンネ…」
蝙蝠に向かって飛ぶ、捕まえるチャンスは一度しかない
もし逃げられれば捕まえるのは難しいだろう
―スカ――
しかしその爪を光らせた腕は虚しく空を切る
蝙蝠は飛んでいく、キキキと嘲笑われた気がした。
「ふ…ふふふふ」
ぶるぶると拳を震わせる
「キー!!もう容赦しないわ!」
キレタ
爪に血を滴らせ能力を使う

ブラッドネーゲル
「喰らいなさい真紅の爪痕!!」

腕を振り上げると血の線が蝙蝠に飛んで行き羽を切り裂き
落ちてきた蝙蝠を捕まえた、切断した羽はくっつけると元に戻った。
「サア主人の下へ案内しなさい」
もちろん言うことを聞く筈がない。
「じゃあ…タップリ可愛がってアゲルワ」
笑みを浮かべながら持ち帰った、目つきが怖い…。

ちなみに深夜動物の悲鳴のような声が聞こえるので
周りから動物虐待じゃないかと噂されたとか…。


[現在地・街中:蝙蝠を調教中・済み次第主人の下へ案内させるつもり]
95七草 ◆O93o4cIbWE :2008/09/15(月) 21:51:51 0
チュンチュン…

気がつけばもう日が昇ってきている
少しこの蝙蝠弄りに夢中になりすぎたようだ。
「あ、もうこんな時間か…」
朝は基本的に柴寄の時間だ
本来は眠りについて人格を交替するのだが
蝙蝠弄りが楽しかったから仕方がない
いや事情を知らない柴寄に行かせられるわけがない。
「ツケは柴寄に払わせるとして
今は早くこの蝙蝠の主人と接触しなくちゃ、
さあ案内しなさい私の下僕!」

二人?の間にはすっかり主従関係が出来ていた

[神重の元へ移動開始]

96廻間 統時@代理:2008/09/15(月) 23:22:43 0
>>87-88
肩を借りて歩いていると、沙羅からこう言われた。

>「行くのはいいけどそれより話し方変わってない?」

やっぱ沙羅から見ても分かる変化だったみたいだな。
まあ沙羅も説明は疲れが取れてからいいと言ってるから、説明は後にさせてもらおう。

「分かったよ、それじゃあ後で説明する。
 ……お?}

目の前に一つの人影があった。
目を凝らしてみてみると、それは俺の知っている人物。
一度共闘した仲、すなわち戦友とも呼べなくもない瑞穂だった。
こんな所で駄弁ってる暇はないが、一応挨拶ぐらいはしておくかな。
俺は多少ぎごちない笑みを浮かべながら右手を上げた。
瑞穂からの返答は……言葉ではなく、初めて会ったときと変わらない剛剣だった。

「っ!?」

すぐさま驚きながらも紅い月を抜き去り、瑞穂の剣を受け止める。
ルナが作った紅い月はいわば神剣だ。同じ神剣でもなければ壊すは不可能だろう。
そのため紅い月が壊れる事は無かったが、衝撃が刀を伝わり、腕を伝わり、身体へ伝わり、足へ伝わる。
ただでさえふら付いていた俺は肩を借りていた沙羅ごとぶっ飛んだ。ついでに紅い月が手から弾き跳ばされた。
目が霞み、腕が震え、足がふらついていた俺は意識もぶっ飛びそうになったが、気合で何とか意識を留めた。

「こんな所でアプローチか……随分積極的なんだな……」

俺は立ち上がり口元を歪ませ軽口を叩くが、内心では随分と焦っていた。
今の俺は疲労困憊、対する瑞穂はまったくもって健康そうだ。
頭では理解できていても、身体が反応しなければ何の意味もない。
それはともかく、何故瑞穂は襲い掛かってきた?理由を聞かないとな。
97廻間 統時@代理:2008/09/15(月) 23:24:58 0
「ルナ……説得は任せた……」
「……ええとね、瑞……穂だったっけ?
 貴女と私達は共に戦った仲でしょう、それが何故今になって襲い掛かってきたのって、あぶなっ!」

聞く耳持たず、問答無用という感じで瑞穂がルナに斬りかかった。ルナはギリギリでそれを避けた。
ほぼ幽霊に近いルナは、刀で斬られようが銃で撃たれようが念仏を唱えられようが平気なのだ。
ならば何故避けるのか。それは俺には分からない。
こういうのもなんだが、ルナは策士だ。頭は切れるし口もかなり回る。
俺自身も何度か騙された事があった。
瑞穂も無意識的に、ルナの言葉に耳を傾けるのは危険だと感じたのだろう。 
つまり交渉決裂の原因は説得を任せた俺にある。情けない。

「ちょっと、話ぐらい聞いてもいいんじゃないの!?」
「無理みたいだな……説得は諦めた方がいいだろ……」

紅い月を拾い、攻撃に対応できるようにする。
拾ったところで俺が出来るのは防御のみ。
相当の疲労が残っているこの体じゃ、速度の乗った斬撃は簡単に与えられないだろう。
となれば……刺突だろうが刺突だったら確実に致命傷を与えてしまう。
瑞穂から話を聞きたい現状、刺突は出来るだけ避けたい。

「沙羅……お前は安全な所に逃げろ……実戦経験の少ないお前が勝てる相手じゃねえ。
 まあ逃げたくないなら……それでも構わない……ただ……確実に死ぬぞ」

俺は沙羅に逃げるよう諭した。
一度手合わせして分かったが、瑞穂はかなりの戦場を潜り抜けているだろう。
すなわち、人を殺す覚悟も殺される覚悟もあるという事だ。
俺だって殺す覚悟、殺される覚悟はある。
沙羅はどうだ?断言は出来ないが。恐らくどっちの覚悟もない。
だったらこの場から逃げた方がいい。今からここは凄惨な戦場になる可能性がある。
ただ、簡単に逃がしてくれるとは思えない。俺がおとりになる必要がある。
……上手く逃げてくれるといいんだが。

(……瑞穂の手から刀を離し……戦力の無効化を図れば重畳……不可能なら隙を見て逃げた方がいいか……)
「手負いの虎を……ナメんじゃねえぜッ……!」

紅い月を目の前に構え、瑞穂の攻撃を無効化できるようにする。
ハンディキャップマッチの始まりだ。

【廻間:沙羅を逃がす、話を聞く、二つの目的を遂行するため
    とりあえず瑞穂の攻撃を受け流す事に専念。
    相変わらずの疲労困憊】
98神重智&:2008/09/16(火) 18:04:39 0
ザシュウッ―――!
桐北――いや、桐北の形をした何者かを神重は何人切り裂いただろう。
「チッ…数ばかりいやがる…!」
あとに残るは水―この分身を作っている能力者は水の使い手だろう。

(イラついていては向こうの思う壺だぞ?)
(それくらいは分かっている…わかっているが…)

あと一歩というところで貴重な戦力を逃した上に妨害まで入ってしまっては苛立つのも仕方がない
寧ろ智の冷静さのほうが不自然なくらいである。

(それにしても随分街の中心に戻ってきたな…)
(ああ…俺の勘ではこういう妨害をする奴は大抵こういうゴチャゴチャした街中に潜むもんだ
 それがどこかまでは分からないが…な)
(お前の考えは間違ってはいないだろう…だが問題はどこにソイツがいるかなんだ
 敬の蝙蝠からの情報は来ないのか?)
(残念ながら発見できてねえな…それに昨夜から偵察蝙蝠がやられたり
 情報の更新がされなくなった場所もある…だがそれはただの能力者かもしれない)
(他の異能者にかまっているヒマはない…か)
(とりあえずこの近くに一つ情報が途絶えた場所がある…そこに―――)

敬が言いかけた時…何者かの気配がした

(敬…どうやら異能者がきたようだな)
(ああ…そうみたいだぜ、兄弟)

見ると手に偵察用蝙蝠を一匹…握っている…。
「なるほどな…ソイツを使って俺の位置にたどり着いたわけか」

改めて異能者の姿を見る――自分より随分と若い…恐らく学生だろう。
まさかコイツが妨害の張本人か…?

「おかしいなぁ…ソイツらに感情が出るはずがないんだが…
 それとも索敵の能力者か何かか…」

パチンッ!
敬が指を鳴らすと相手の蝙蝠は砕け散った…
そして相手の服へ血として付着する…

(相変わらず用意周到だな…敬)
(兄弟ほど俺は頭が回らないんでね、せいぜい出来てこの程度さ)

「さて…この俺に何の用かな?」

【神重:七草と対峙 偵察用蝙蝠は粉々となって七草の服へと付着する】
99神重智&敬 ◆6eLTPQTFGA :2008/09/16(火) 18:05:19 0
申し訳ありません、コテ途中送信でした
100恋島達哉 ◆KmVFX58O0o :2008/09/16(火) 22:47:26 0
>>85>>90
一瞬の閃光――俺は何が起きたかが、全く理解できなかった。撃ったのか? 国崎さんが、俺達に?
突如頭の中がぼんやりとしてくる。疑問とかそういう問題じゃない。何で? 何で国崎さん……が?
よっぽど間抜け面してるんだろうな、俺。というどうでもいい客観コメントが頭に浮かぶ。あぁ、冷静になりたいんだな、俺
もうさ、これが悪い夢だったらどれだけいい事か。背後から漂う火薬の匂いとか

>「ああ、驚かせちまったか。 まあ、なんだ。
  葦川、恋島。突然で悪ぃんだが、お前さん達とはここでお別れだ」
苦笑いを浮かべ、火の点いていないタバコを咥えながら国崎さんがそう言った。お別れ? お別れってそのまんまの意味っすか?
ちょ、困りますよ。だって何だろう、この店に暴漢だの異能者だの来たらどうするんすか、地獄絵図ですよ

すると国崎さんが呆然としている俺達(多分)に向かって言葉を続けた
>「あー……いや、本当だったら機関を殺戮しにいく兵隊として着いていって欲しかったんだがな。
  今の様子じゃそれは無理みたいだし、だからお前らを殺す事にしたんだわ。
  回避だけの能力者に、信用の置けない能力者なんて、どっちもろくに使えたもんじゃねぇだろ?」
……はい? いや、いやいやいや。殺すってちょっ、笑えないっすよ。そもそもその前の言葉も理解できないっす
兵隊としてって、どっかに戦争にでも行くんすか? なーんかおかしいっすよ、そんな酔狂で悪趣味な冗談…・・・ねぇ 
あーこれはアレでしょう、国崎さんなりのジョークでしょう
それならそんな物騒な言葉使わずに世話見れないから出て行けって言ってもらえれば

何だろう、混乱しすぎて言葉がおかしいぞ、俺。だめだ、色々ありすぎて状況整理が全く出来ねぇ
誰か寝かしてくれ、それでこれは夢だと説明してくれ。マジで
気づくと国崎さんが、俺達の前に4錠の薬を取り出した。一見何の変哲もないカプセルだけど……なんですか?これ

>「そいつは、この一週間以内に体験して獲得した記憶を丸ごと全部消し去る薬だ。
  この町を去った後にそいつを飲め。そうすりゃ、命だけは助けてやる。
  飲まなかったら……この世の果てまで逃げたとしても、必ず殺してやる」
へぇ……それもジョークですか? 凄い薬ですねー。記憶を消し去ってくれるんですかー。すげー
はぁ……あぁ、マジなんだな。この人がおかしくなったのは。そして俺達を殺そうとしたのも
信じるかよ、そんなどっかの青狸の秘密道具みたいな薬
何だろう、何か今まで酷い怪我を負ってきたけど、何か、何か一番酷いな、上手く言えないけど、酷い
別に神格化してたわけでも、ましてや心から信頼を寄せてたわけじゃないが、俺、あんたの事信じてたんだぜ
101恋島達哉 ◆KmVFX58O0o :2008/09/16(火) 22:48:32 0
国崎……いや、国崎は俺達に背を向けると、玄関へと歩いていく。そして、玄関口に立つと背を向けたまま
>「俺は数日中に機関に攻め込む。だから、後数日だけならこの薬局に残ってていいぞ。
  ああ、廻間がきたら俺は暫く帰らない事、それからさっきの薬の事を伝えておいてくれ……それじゃあな」
と言い残し、玄関を勢い良く閉めると、そのまま行ってしまった。お別れみたいだな、こんな形で

……この虚無感は何だ? 俺の勝手な思い違いか? あぁー……なんだろーねー
この数日で色々ありすぎてもう訳ワカンネ。そういや俺って何しにここに来たんだっけ
そうだそうだ、雑誌の取材で来たんだよ、それでインタビューしたり、投稿現場を周ったり……いつもと同じ仕事だ
今思うと代わり映えの無い日常って最高に幸せだったんだな。刺激が無いけど危険も恐怖もない

けどもう駄目だろ。分かってるんだよ、もう抜け出せないんだってな、この異常な世界からは
国崎、この町を去ったらって言ったけど、去れる保障なんて無いじゃん。外を歩けば異能者とか言う異常者が闊歩してる世界だ
多分、交通手段も「機関」とか言う奴らの手の中で、外部に出ることなんて出来なくなってるんだろうな
つまりだ、誰かを殺すか、それとも殺されるしかないんだろう。俺はこの考えが過剰とは考えない。実際何度も命を狙われたしな

>「恋島はどうする?」
葦川さんが何か俺に話しかけていたようだが、全く耳に入ってこなかった
今後の方針について聞いてきてくれたようだけど

……なんか、めんどくさい

「あ〜……まぁ、葦川さんの意見に賛同します。あ、悪いっすが、ちょっと自分まだ傷が治ってないのでちょっと寝ます
 誰か来たら無理やりたたき起こしてください。それじゃ」
俺は葦川さんにそう言ってその場に寝転んだ。葦川さんがどんな表情をしていたかは恐くて見れない
けどこれ以上何か考えたら、俺の頭は確実に爆発すると思う。爆発というか暴発というか発狂というか
そうなる前にクールダウンしなきゃな。もうね、眠気が酷いんだ。頭の中も散らかったまんまだし

とにかく今は休みたい。そう思うと自然に、俺の瞼が閉じた。疲労のせいか、すぐに意識が沈下していく
そうだな……なぁ、元耳鳴り。お前はどう思う? ……シカトか。ごめんな、今回ばかりはお前が正解だったわ
俺、どうすりゃ良いかなぁ。つーか今思ったけど、別に普通の日常に戻って俺には別に求めるものはないんだよなぁ

恋人もいねーし、同僚とは飯食うだけで会話らしい会話なんぞねーし、・・・…あぁ、九鬼だ。九鬼にまた絞られるな
あいつ、俺をいびるくらいしか楽しみが無いのかもなぁ。そういや携帯に何の連絡も入れてないや。どうせ心配などしちゃいないんだろうけど

……失うものが無いんだな。今の俺には。せいぜい預金程度だが、死んじまえば何の意味も無い
……すげぇ面白い事考えた。どうせ惰眠を貪る命だ。好きなようにやらしてもらおう

とりあえず「機関」の奴に接触してみねーとな。話はそれからだ

【現在地:国崎薬局】
【国崎の差し出した薬には手を出さない。体力温存と考えをまとめるため、睡眠】
102恋島達哉 ◆KmVFX58O0o :2008/09/16(火) 22:50:16 0
安価ミスですоrz
>>85>>89
103七草柴寄@代理:2008/09/17(水) 00:07:04 0
>>98

相手の一部があればそこから本体の反応を追って行ける。
反応を辿って行くと一人の男がいた。
(…見つけた)
男の後ろに立つと男は振り向いた。
気配は消していたつもりだが
男の姿を見る――男は教師か会社員と言った所か。
男が口を開く。
>>「なるほどな…ソイツを使って俺の位置にたどり着いたわけか」

「まあ、そんな所ね、可愛いわよこの子」

>>「おかしいなぁ…ソイツらに感情が出るはずがないんだが…
 それとも索敵の能力者か何かか…」

「愛情を注げばそんなことは関係ないのよ」
(まあこの子が血液で出来ていたから、その反応を追ったようなもの
なんだけどね、それにしても結構懐いた物ね)

>>パチンッ!
敬が指を鳴らすと相手の蝙蝠は砕け散った…
そして相手の服へ血として付着する…

「あっ!この子気に入ってたのに」
(この子も血液で出来ていた、そしてあいつの合図で砕け散った…
ということは、血を利用する能力?)
まずい、自分とは相性が悪い

>>「さて…この俺に何の用かな?」
(この男は先程戦闘していた、あちらが機関の可能性もあるが…どうする?)
「あなたは機関の人間?なら死んでもらうけど、
違うのなら先程戦闘してたようだけどあれは何?
事情次第なら条件付で協力してあげるわよ?
断るなら私を見たからには消えてもらうわ」

(戦うなら既に先手は打っている、が、しかし
あまり長期戦は出来ないだろう、彼女の人格が表に出すぎた
出来れば穏便に済ませたいのだが…)

[七草:神重と対峙 服はそのまま 返答次第では戦うつもり]
104池上 燐介 ◆qqu0tZFsYU :2008/09/17(水) 00:11:47 0
何かの研究室を思わせる構造の建物。中には使い捨てられた試験管や妙な溶液が放置されており、
英語だかドイツ語だか分からないような筆記体が並んだ資料があちこちに散乱している。
見事なまでの廃屋だ。しかし、この廃屋が紙に記された『シナゴーグ』と呼ばれる場所の一つなのだ。
建物の外には、三つほどの武装した人間の遺体が転がっている。
俺がこの建物に入り込もうとした時、建物の周りをうろついていた恐らく守衛と思われる連中の
変わり果てた姿だ。倒す前にこの建物について詳しく聞いたが、彼らは何も知らぬ機関の末端組織の
一員でしかないということだった。が、機関の人間がうろついているということ、
すなわち人気のない廃屋ではあるが機関が管理する建物であるということは疑いがない。

建物の中をうろついてよりしばらくして、廊下の一角に地下へ通じる隠し通路を発見した。
すると通路の先には六畳ほどの空間が広がっており、そこには『何か』のデータを記した資料が
山のように保管されていた。機関について何かしらの手掛かりを得るために、
俺は先程より、カビ臭いような空気を漂わせている埃の溜まったこの密室で資料を読み漁っていた。

読んでいて気がついたこと。
一つ。それはとりわけこの市内の歴史、特に鎌倉時代について記された文献が多く目につくこと。
二つ。ここの科学者達は、恐らくとある人間の研究を行っていたこと。
書いてある文字は読めないが、ご丁寧に水槽に浸かっている想像図まで書き残されていた。
そして三つ。つい五年前に近くの遺跡で発掘された一体のミイラが、この建物に保管されていたこと。

確かに市内に遺跡というものが存在することは知っていた。
しかし、そこからこれまでに大きな発見をしたという話は耳にしたことはない。
ミイラが出土したとなれば考古学的な発見として嫌でも注目されるはずなのにだ。

もっとも、ここが機関の管理する施設であると考えればある程度推論も成り立つ。
そう、機関は発掘したミイラを研究している。それも極秘裏に。
そのミイラが生前は何者で、機関が何に注目して研究を始めたのか、それはまだ分からない。
だが一ついえることがある。それは、どうせ禄でもないことを企んでいるに違いないということだ。

そのようなことを思いつつ、資料を次から次へと手にとり、中身を眺めている時だった。
俺は一つの文献の一節に目が止まった。

「温厚篤実にして勇猛果敢……」

ページの真ん中で馬に乗り、鎧武者の格好をしている人物のことを指しているのだろうか。
何となく気になった俺は、更に文を目で追っていった。

「手塚原にて炎魔と争ひて……此を封しめん……」

手塚原といって思い出すのは、鎌倉時代の合戦場だ。
この市内で行われた戦いとして、特にこの地域の人間には知名度が高い。
炎魔とは、湯瀬政康のもう一つの呼び名。圧政下にあった民衆は彼を地獄の閻魔と、
彼が起こす合戦の度に街が焼き払われたことを掛け合わせて、炎魔と蔑称していたという。
105池上 燐介 ◆qqu0tZFsYU :2008/09/17(水) 00:14:27 0
(確かかつてここを治めていた湯瀬政康と石田彦三郎直政の戦いだったはずだが、
何故こんな子供でも知っているような出来事を綴った文献がこんなところに……)

「炎魔……此を封じるか……」

そういえば、先程見た水槽に浸った人間の図。そこにかろうじて読めた文字。
それは『対象"E"』であったことを、俺は思い出した。

「E……炎魔……。……封じられた者の復活。……フン、まさかな」

俺は資料を閉じると、ここではもう得るものないと決めたように秘密の隠し部屋を後にした。

──建物を出て、時計を確認する。時間は午後5時を回っていた。
後、60分でメール到着から72時間……すなわち、三日目が終わりを告げる。
辺りは既に暗がりに没しようとしており、少し冷たい夜の風が吹き始めていた。
一つ大きく深呼吸をした俺は、続いて脳に記憶された多くの『シナゴーグ』の住所を引き出すと、
直ぐにここから一番近いと思われる場所を搾り込んだ。

「ここは不発だったが……次は大丈夫だろう」

場所を定めると、俺は暗がりの中で静かに佇む廃屋を背に、次の目的地へと向かった。

【池上 燐介:ほとんど使われなくなった『会堂』の中で、『炎魔』に関する情報を得る。
(機関が炎魔の研究を行っているということには、まだ気づいていない)】
【現在地:廃屋の会堂→他の会堂へ】
106神重智&敬 ◆6eLTPQTFGA :2008/09/17(水) 02:29:55 0
>>103

「あなたは機関の人間?なら死んでもらうけど、
違うのなら先程戦闘してたようだけどあれは何?
事情次第なら条件付で協力してあげるわよ?
断るなら私を見たからには消えてもらうわ」

俺の問いかけに相手はこう答えた――
(…女…男…?)
(智…落ち着け、あれは男だ…口調はどうあれ)

向こうの話しを聞く限り機関の人間ではないらしい。
と、同時に機関の存在を知っているということは…機関の人間の情報を持っている可能性がある。
向こうはこちらの動向に興味を示し――事情を話さなければ戦闘が始まるというわけだ。

(さて…どうしたものだと思う?智)
(今ここで出会った人間を信じるのは少々危険だな…それにカレが
 機関の人間じゃないと決まったわけではない)
(それもそうか…ならどうする?やるか?)
(まぁ待て、相手の能力も知らずにいきなり斬りかかるのは不利だ
 いざとなったらあの閃光弾を投げて逃走する手もあるしな…)
(ならどうする、相手の反応を待つか?)
(こう言えばいい…)
(わかった)

「話しを聞くと貴様が機関に敵対しているというのはなんとなく分かる
 だが…それを出会ったばかりの者に信じろと言われて―お前は信じるか?
 俺ならばゴメンだね、お前が機関の能力者で俺を偵察しに来た可能性がないわけではない」

相手も何か考えているようだが…二人には勿論理解できるはずがない
その考え事を遮るかのように敬は続ける

「俺の返答は以上だ…さて、そちらの返事を聞こうじゃないか」
勿論返事を聞くとは言っても相手が襲い掛かってくる可能性も0ではない
その時に備えて…敬は戦闘態勢をとっていた

(まだ奴が何をするかなんてわからん…だが襲い掛かってきたときは
 戦術のサポートをお願いするぜ、神重先生)
(お前がその呼び名で呼ぶな、だが戦術のサポートは私に任せろ)

戦闘のエキスパート、敬
戦術のエキスパート、智

不完全ではあるが二つの心は一つになりつつある…

【神重:七草の要求を拒否 戦闘態勢をとる】
107七草柴寄@代理:2008/09/17(水) 19:57:47 0
>>106

「話しを聞くと貴様が機関に敵対しているというのはなんとなく分かる
 だが…それを出会ったばかりの者に信じろと言われて―お前は信じるか?
 俺ならばゴメンだね、お前が機関の能力者で俺を偵察しに来た可能性がないわけではない」

確かに出会ったばかりで信用しろというのは無理な話である
だがどうやら機関の人間ではないようだ

「俺の返答は以上だ…さて、そちらの返事を聞こうじゃないか」

どうやらこちらの要求は飲んでもらえそうにない
それにこちらには時間がない。
なら先程の言葉通り消えてもらうしかなさそうだ。

「信用されてないのね、ショックだわ…
先程言ったわよね、断るなら消えてもらうって」

既にこのあたりの地形には線を張り巡らせてある。
―カッ――
壁を軽く叩く
――ガラガラガラ―
突如ビルが崩れ、周りは瓦礫とホコリに包まれた―

(本当に残念だわ、私達の復讐に協力して欲かったのに)

【七草:戦闘態勢 埃により視界が悪い、奇襲を狙っている】
108神重智&敬:2008/09/17(水) 20:46:45 0
>>107

「信用されてないのね、ショックだわ…
先程言ったわよね、断るなら消えてもらうって」

男は同じ言葉を繰り返し…
壁を軽く叩く…
一瞬の閃光のあとビルが崩れ始め、瓦礫が神重に降り注ぐ。

「おいおい…昼間っからまた随分と派手なことしてくれるじゃないか」
降り注ぐ瓦礫を全てかわし、敬は独り言を呟く

(これじゃあ昨日の夜と同じ状況じゃねえか)
(昨日? 一体何があった)
(昨日も…夜だがビルをぶっ壊す機関の人間…お前も途中まで対峙してただろ)
(ああ…あの人物か…)

(さぁて先生…どういった戦術をご教授いただけるのかな)
(この状況は恐らく…相手の戦法としては間違いなく奇襲
 加えてこの強力な一撃をまず我々に撃たなかったということは…
 一定の条件を加えてはじめて強力な一撃が出せる能力者の筈―
 その条件を知るためにあえて一撃を受ける必要がある
 だが――)

(だが…?)
(あえて一撃を生身で受ける必要は無い。お前の能力は勿論防御にも生かせるのだろう?)
(当たり前だな、でどうすればいい?)
(血を周囲に撒き散らせて、薄い防御壁を作り出せ。その状態で相手の一撃を受ける
 そのあとは血の量を調節しつつ…戦うんだ)
(わかった…任せろ)

ザシュッ!!
腰に携帯していたナイフで腕を突き刺し――周囲に血を振りまく――
これで防御壁の完成である。
だが敬はあえて腕の傷を再生させずに、垂れ流しで戦う。
これは更に強力な一撃がきた場合に備えてのもう一つの強力な盾である。
血が流れている限り敬を防御する…「血気盾(ブラッディシールド)」
消費は少し多いが…仕方ないことと言える。

「さあ、かかってこいよ!」

瓦礫と埃で視界が悪い中で相手に向かって敬が叫ぶ

智と敬の組むはじめての闘いの始まりである

【神重:七草の奇襲を待つ 攻撃を二重の盾で防御する】
>>83
正直、これ程までの けが人で溢れ返っているとは思わなかった。
精々、血の気の多い連中が、余分な血を抜いた分を補充している程度だろうと考えていた。
まさか、これ程とはな……。

――私を治療してくれた医師は、機関の医療班の班長を勤めている人物だ。
わざわざ怪我をさせてまで治療をしたがる、云わば治療フェチだが腕は確かだ。
事実、右腕も昨晩までと変わらない感覚を取り戻せた。
治して貰っている最中、鎖骨とか大腿骨がどうこう言っていたが、あまり気にしていないようにしている。
―――とはいえ、変人の扱いには慣れている自分に驚いた。
ファーストナンバーは変人しか居ないからな……。
私は溜め息を漏らした。ここ最近一気に老化してきた感じがする。

丁度その時、怪我人の山の中から、ひと際異彩を放つ人物を見つけた。
カテリーナ・ポポフスキー……。機関のNo.11にして最重要人物。
見れば彼女は足首に包帯を巻いている。
異能による治癒が浸透するのに時間が掛かるのだろう。
……という事は、暫く戦力には成らないという事だ。

「やぁ、ポポフスキー。世襲幹部様とこのような場所で逢えるとは……。
 世の中狭いものだな」

私の言葉が癪に障ったのか、ポポフスキーは射殺さんばかりに私を睨みつける。
この調子だと、納得のいく勝ち方をしては居ないのだろう。
眉間には皺が深く刻まれている。
日本の武術を一から十まで理解しているくせに、勝てば官軍という日本の言葉を知らないのか?

「君がここに居るという事は、少なくとも勝ったという事だと理解しても良いのかな?
 ……それで、籐堂院はどうした?」

籐堂院の名前を出すと、ポポフスキーは一瞬ムッとした表情を見せたが直ぐに収めた。

「北村と一緒にどこかへ行った。機関へ戻るつもりらしい。
 私は医療班の人間に回収されたからその後の事は知らん」

そうか。No.9め、籐堂院神を自軍に引き入れたか。
『北村のジイさんは籐堂院の野郎を手駒にしたがっている』
以前城栄が話していた事態になったな。
ここに来て、ますます不安定要素が増えてきた。
城栄のヤツは全て予定通りだと言っていたが、どこまでが予定調和なのか甚だ疑問である。
ただし、ヤツは最後にこう言った。
『ジイさんは籐堂院と組めば如何にかなると思っているようだが、それは違う。
 俺ぁ邪魔者が一箇所に纏まるのを待っているだけさ』

「ふむ、籐堂院はこちら側に入ったか。まぁ良いさ……」

「……私は最近、金剛の考えが解らなくなって来た」

ポポフスキーの表情に若干の狼狽が見える。
それは自分の想像以上の事態に恐怖するようにセットされた、人間の持つ本能的な畏怖であった。

「さてね……」

右腕が直った以上、もうここには用は無い。
ポポフスキーの質問に答えぬまま、医務室の扉を開けた。

「私は君や城栄と違って凡人だからね。天才の考える事など想像も付かないよ」

"女王"へ向けた去り際の一言は、彼女には皮肉に聞こえたかも知れない……。
>>109
医務室を出た直後、影が音も無く近寄ってくる。――"彼"を私は知っている。
影から滲み出た男――城栄のもう一人の側近、立花右近は複数のプリントを私に手渡してきた。

『・池上 燐介
 ・廻間 統時
 ・神重 智
 ・恋島 達哉
 ・神野 沙羅』

「ここに書いて在る者達は"先天性"の疑いを持つ者達ばかり……。
 この者達と直接会い、その覚醒度合いを報告しろ……。
 主からの言伝、確かに伝えた……」

黒字でプリントされた名簿、年齢、現住所、そして写真の顔―――。
それら全てを記憶すると、プリントを立花へと返した。
すると今度は黒いキーケースを手渡された。鍵が二つ入っているようだ。
そういえば、社宅の鍵は昨晩籐堂院に衣服と共に消されていたな。
一つは社宅の鍵だろう。では、もう一つの鍵は一体……。

「駐車場に在る車を使えとのご命令だ……。
 これが国際免許証、偽造だが警察では見破れまい」

なるほど、そう来たか……。送り迎えは無し、自分の足で迎え、と……。
キーケースの中身を確認すると、免許証と一緒に懐へと仕舞った。
カードケースも欲しかった所だが、贅沢は言っていられないな。
自分で調達するか。確か家に予備があった筈だ。

――私が備品を懐に仕舞った事を確認すると、すぐさま立花は影に溶け込むように掻き消えた。
……やれやれ、メッセンジャーボーイも楽ではなさそうだな。

『ヤハウェ』の鍵となる存在、『アブラハム』の可能性を持つ者たち……。
このお世辞にも大きいとは言えない地方都市に、これ程の数が居たとは……。
全く持って世の中は狭い物だ。いや、これは運命かな……?
載っていた写真は何れも盗撮したことが丸判りな、そっぽを向いた物ばかりだった。
しかし顔はハッキリと写っており、判別には問題は無いように思える。
池上燐介という青年の顔には覚えが在る。
昨晩リンを捕獲しようとしていた時に、彼女と一緒の家に居た青年だ。
後の人間は知らない顔ばかりである。良くこれだけの情報を集められた物だ。

――城栄はこの街の出来事を全て知っておきたい性質だ。
その為に街の隅から隅まで諜報部隊の工作員を忍ばせてある。
彼らから得た情報は逐一、城栄の元へと届けられるのだ。

『アブラハム』……。私としても、是非ともこの眼で見てみたいと思っていた所だ。
彼らは莫大な異能エネルギー、『メタトロン』を持っている。
『メタトロン』は『炎魔』の復活に必要不可欠な存在。
城栄が煌神 リンを、そして天音 滴を狙った理由はここに在る。
『アブラハム』の持つ『メタトロン』は、機関が創り出した後天性異能者のそれとは桁が違う。
何せ『アブラハム』は特別性……。彼らは人の可能性なのだから。
彼らから『メタトロン』を抽出する事が出来れば、
『炎魔』の復元率を一気に高める結果になるだろう。

今日は丸一日使い"人の可能性"と会う事にしよう。

【レオーネ:車で自宅まで移動中】
【骨折していた右腕は治った】
111七草柴寄@代理:2008/09/17(水) 21:46:36 0
>>108

一旦距離を取る
「さあ、かかってこいよ!」
埃の中で叫び声がする、たいした自信だ、罠か?
なら堂々と行かせてもらうとするか
私は瓦礫の中から手ごろな鉄骨を広い
男に向かって走り、棒高跳びの原理で飛び上がった
伸縮性のない鉄骨では大した高度は得られないが十分
この足場では機動力が削がれるので空を取った
男の上空を取り、頂点に達する付近で鉄骨を手ごろな長さに切断し投擲
さらにその勢いで男に接近し真紅の爪跡を放ち
自ら切りかかる
「この足場で、かわせるかしら!?」

[七草:神重の上空をから鉄骨を投擲、さらに真紅の爪跡を放つ
鉄骨の先には血を塗っている]
112神重智&敬 ◆6eLTPQTFGA :2008/09/17(水) 22:22:50 0
次に相手を確認したのは――上空――
そして飛んでくるは金属の棒
「なかなか上手い戦法だ…だが」

ガガガガガガッ!
第一の防御壁に鉄骨は阻まれて弾かれる。
そして――
「この足場で、かわせるかしら!?」
第二撃…鉄骨によって薄い防御壁は無くなってしまったものの避ける必要は無い。
ガキンッ!

男の第二撃も…血で作られた盾の前では無効化される。
相手もそれを悟ったか攻撃後、こちらからの攻撃に備えるためすばやく距離をとった。

「クククッ…いいセンスしてるな…だがこの盾の前では…」
無効化される、と言い掛けた時この盾にヒビが入っていることに気がつく
(想像以上の威力のようだな 敬)
(俺も少し相手を舐めていたようだ…異能者の出す一撃は普通のものより重いのは当然だったな)
(ああ、そしてもう盾は必要ない…何故なら…)

「お前の能力…それは血を扱うこと…
 それはこの盾についている血のあとを見れば分かる
 俺とは少々違う能力のようだが…」

今の一撃で付いている血を見る限り恐らく血を扱う能力
または血を利用して何かの攻撃に転じる能力 と智は仮定した。

ジュウウウ…

盾についた血を完全に溶かし…
その形は剣へと変貌する。

「お前の能力は少し見させてもらった…ならばこちらも芸を見せなければ申し訳ないな」
スッ――

彼から見れば正気の沙汰とは思えないだろう自分の手首を切り落としたのだから。
そしてその切り落とした手を――

ブンッ!

上空に投げ…能力を発動させると5本の指を突き破って――


ギュイイイイイン!

5本の小さな槍が5方向から襲い掛かる。



(あくまでこれは様子見だ…俺と本当に遊ぶ資格があるかのな)
(お遊びはほどほどにしておかないと、痛い目を見るぞ 敬)

「さあ、踊れ! 操り人形よ!」

【神重:盾を解除 剣に持ち替える 5本の小槍が5方向から七草に襲い掛かる】
113七草@代理:2008/09/17(水) 23:12:36 O
>>112
ガガガガガガッ!
男の防御壁に鉄骨は阻まれて弾かれる。
ここまでは想定通り、本命は二撃目
ガキンッ!
男は血の盾で防いだ。
「チィ」
この位置はマズイ、私は咄嗟に距離を取った
「クククッ…いいセンスしてるな…だがこの盾の前では…」
効かないとでも言いたいのだろうか、だが男は盾にヒビが入っている
のに気付くと話すのを止めた。
「お前の能力は少し見させてもらった…ならばこちらも芸を見せなければ申し訳ないな」
スッ――
彼は自分の手首を切り落とした、私が驚くと思ったようだが
私から見ればこの上なくそそられる光景だ…
ブンッ!
切り落とした手首を上空に投げ…
ギュイイイイイン!
5本の小さな槍が5方向から襲い掛かる。
「さあ、踊れ! 操り人形よ!」
「人形!?私は人形じゃない!」
そう、私は人形なんかじゃない……
私も手首を切り、大量の血で自分の周りに円を書いた、
そしてその円に触れると周りの地面が吹き飛び
瓦礫が私の盾になり矢を防いだ。
そして相手に血の線を飛ばした、これは圧力のある血で
触れれば切れる、血のカマイタチとでも思ってもらおうか。
[七草:槍を防ぎ、血のカマイタチで反撃]
114アルト・ハーケン@代理:2008/09/18(木) 16:57:32 0
>>83
>>91
>>109

煌神リン、という少女。どうやら、彼女を捕まえた青年と因縁があるらしい。
それは雰囲気で察せたが……それがなにかを知るのは、私にとってはあまり意味がないか。

「さて…と。ピクニックは現地解散だ。
 俺は暫くここで休む。イイ機会だ、昼寝でもするさ。

 アルトの穣ちゃんはどんな報酬が望みなのか、
 後でうちの受付にでも伝えといてくれや」

そうして、その場はお開きとなった。ロンバルディーニは医務室に行き、小村さんはメンテ。
しかし、メンテか――――なんらかの実験体、あるいは妙な機械でも埋め込んでいるのか。
……さて、私はどうするか。仕事というならここの警護だが、私はこの場所と周辺の地理に弱い。

「――――なら、少し散歩でもしましょうかね」

頼めば地図ぐらい出してくれるだろうが、こういうのは実際に見なければ意味がない。
私の能力を有効活用できる地形があるかどうか、も知りたいところではあるし。
そういうわけで、私は許可を取って出歩いている。
連絡用の通信機――どうやら特別製のようだ――も渡してもらった。
本部の周辺――まあ、基本的にはビル群なのだが、その配置の隙間を探す。
どんな場所にも、抜け道というのはあるものだ。あそこを攻めるなら、そこを突くのが定石だろう。
……どういう展開になるにしろ、知っておいて損はない。

「しかし、報酬ね。――――生活費でももらおうかしら。
 それとも、万が一の為に保留しようかしら」

この街で行われる実験とやら。今まで経験したどの実験よりも大規模だった。
だから、彼らとの接触を行ったわけなのだが――――どうやら、当たりか。

「彼ら――――機関と戦うつもりなら、相応の力は持っているはずだし。
 なにより、機関が重要視している相手が、この場に攻め込むのならば――――それはそれで、いいかな」
115アルト・ハーケン@代理:2008/09/18(木) 16:58:15 0
その場合、迎撃する権利は既に得ている。いや、正確には義務なのだが、それは権利も含んでいる。
ならば、

「当たり障りのない報酬は、やっぱりお金かな。
 あんまり勘繰られても困るし――――ああ、いや、あっちは私の力を知ってるから、何をやろうとしてるかは分かるか」

私が異能者を狙って捕食している、という事実。それを彼らは知っている。
ならば、私の目的がその捕食だ、と考えるはずだ。力を得る為か、単に食事の為か、どちらだと考えるだろうか。
――いや、そこまで考える必要はない。私のとりあえずの目的さえ知っていれば、対応には問題は出ないだろう。

「――――まあ、私に目的なんてないんだけどね」

私のソレは、目的と呼ぶに値しない。単なる手段を繰り返しているだけだ。
まあ、目的がないのに手段だけを繰り返すのは、自分でもどうかとは思っているのだが。

「でもまあ、他にやることもないしね。
 一応、娯楽にはなっているワケだし、いいか」

他人に納得させるつもりはない。自分さえ納得できればそれでいい。
あの時からそう決めて、そうやって今まで生きてきた。
今更変えるつもりはないし、変えることもできない。
それは、今までの自分を裏切ることに他ならない。それは、弱さだ。
昔、私が異能を手に入れるより以前に――――目の前で希望を折られた者達がいた。
彼らを見て、思ったのだ。ああはなりたくない、と。
だから私は他人の希望を折ってでも、自分の欲望を追い求める。
結局は自己満足。誰の為でもない、自分自身の為の殺人者。
ああ、けれど――――その欲望とは、なんだったのだろうか。
思い出せない。何か理由があったのか、それとも理由なんてなかったのか。
それさえ思い出せれば、私は、強くなれるハズなのに。

「―――――――雑念ね。今は考えるべきじゃないわ」

今の目的を思い起こす。周辺の地形を把握し、実際にこの目で確認する。
始めの理由なんていらない。私には今があるのだから、過去はいらない。
その思考が弱さだと理解しながら、私は追憶を止めて歩き始めた。

【アルト:現在地 機関本部周辺】
【地形の把握・確認中】
116神重智&敬 ◆6eLTPQTFGA :2008/09/18(木) 20:58:17 0
>>113

ドォォォン!

己の周囲を爆破して瓦礫で小槍をすべて伏せぎきった。

(これでまた一つ…相手のことがわかったな)
と智は言うが、敬には理解できていないようだった。
(ちょっとまて、今のだけで何が分かる?)
(あの程度の小槍…身体能力が優れた能力者ならばわざわざあんな派手なことはしない
 つまり能力に依存するタイプ――身体能力は一般人より若干上か同じ程度か…)
敬は驚かざるを得なかった、やはり自分とはまったくタイプが違う人間であると。
だが考えている時間はない――向こうの反撃がくる――!

相手が放つは衝撃波、さほど威力があるようにも見えない

ジャキ
「この程度の攻撃…」
剣を構えてその衝撃波を受け――

(――!! 避けろ! 敬!)

ザシュッ!
   !?

空に舞うは己の腕、そして血で作り出した剣。
さきほどの衝撃波で敬の右腕と剣は切り裂かれた。

カランッ―
ドサッ!

腕と刀身が地面に落ちる。


(敬…意識はあるか…?)
(ああ…問題ない…寧ろ…)
ニヤリと口元を歪ませて敬は相手に言い放つ
「素晴らしい、実に素晴らしいよ貴様は
 自分の技とそちらの技で手が無くならなければ拍手を送りたいところだ」

突然の態度の豹変に向こうも少し動揺を見せたようにも見えたが…すぐにその表情も消える。

「実に素晴らしい…何が何でも俺の芸術の一つにしたいね…」
キキキキキキキッ!
敬の周りに大量の紅い蝙蝠が集まってくる。
117神重智&敬 ◆6eLTPQTFGA :2008/09/18(木) 20:59:05 0
「どうした…お前たちもアイツの血が飲みたいか…そうだよなぁ…
 強い者の血は生で飲んでこそ美味いからなぁ…」

(敬…少し頭を冷やせ…)
(俺はいたって落ち着いてるぜ兄弟…だがどうしてもツワモノを見ると血がほしくなってなぁ
 俺は吸血鬼公の生まれ変わりだ。奴を串刺しで芸術に染めてやる…!)
(手法は任せる、だが最低限私が言った行動をとるんだ)
(あぁ…わかったよ兄弟)

スッ―
手首から上が無い左腕をかかげて…敬は叫ぶ

「さあ…そいつの血を奪い尽くしちまいな!
 俺のかわいい下僕達よ!」

大量の蝙蝠が一斉に相手に向かう…だがさっきのように防御を張られては厄介だ。

ジャキン!
左腕の手首から上を刃に変形させて

「そおらっ! 受けきれるかあっ!?」
斬りかかる為に相手に向かって走りだす。

――残された右腕は着々と敬に有利な地形を作り出すために血を流し続けていた――

【神重:蝙蝠との連携攻撃開始 右腕は再生せず 残された右腕は血を流し続ける】
118七草 紫寄 ◆O93o4cIbWE :2008/09/18(木) 22:39:08 0
カランッ―ドサッ!
――男の腕を獲った―しかし男は、そのことを悦んでいるように見える――
「素晴らしい、実に素晴らしいよ貴様は―――
 ――実に素晴らしい…何が何でも俺の芸術の一つにしたいね…」

「ハハッ、私も同じ気持ちよっ!是非貴方をバラバラの肉片に変えてあげたいわ!」
―――男の周りに大量の紅い蝙蝠が集まってくる―
「さあ…そいつの血を奪い尽くしちまいな!
 俺のかわいい下僕達よ!」
大量の蝙蝠が一斉に私に向かう

「そおらっ! 受けきれるかあっ!?」

これは…まずい。
前方から男と蝙蝠が襲いかかる
横にかわしても追い詰められるだろう、となると後ろ、後退か
まずは本体を止める…私は足元に陣を張り後退、男がこの位置に来たら足場を崩すつもりだ

問題は蝙蝠…アレをどうするか
そうこう考えるうちに男が突っ込んできた、陣の位置に来たので足元まで引いてきた陣の一部を踏む
―ズガァッ―
すると連鎖的に男の足元が切断され、地面が崩れ落ちた
男が切断に巻き込まれ損傷したか確認したかったが蝙蝠の対応に追われ確認できない。

「はあっ!」
血のカマイタチで蝙蝠の半数を切り落とす、そして右腕の血爪で蝙蝠を捌くが防ぎきれない
―ブシュ―
「――ック―」
肩に噛み付いた蝙蝠を掴み、爪を立て、握りつぶす、そして残りの蝙蝠を捌く。
「血が、足りないじゃない…すぐに貴方をバラバラにしてその血を啜ってあげるんだから、
待ってなさい、ふふふふふっ」
―男に一撃を加えるために接近する―

[七草:神重を足止めし蝙蝠を殲滅、(身動きが取れるかはお任せします
119籐堂院瑞穂 ◆FleR8jlnN6 :2008/09/21(日) 00:32:15 0
>>88
統時は少女に逃げるように諭すと、太刀を構える。
少女はそれに従い、私の横を通り抜け逃げていった。
元より私はその少女には興味がないので逃げたければ逃がすつもりだった。

「統時、私は気が狂ったわけではない。
私なりの信念に基づいた行動なのだ、だから説得は聞かないぞ」

私の手から銀閃が走る、それは統時を休ませることなく攻め立てる
統時はやはり相当疲労しているようで、私の攻撃を避けるのが精一杯のようだ。
迷いの無くなった私の剣筋は鋭く、速く、そして豪快。
既に体勢か崩れた統時を私の剣戟が捕らえるのは時間の問題。
次第に私は統時を殺す事よりも嬲る事に専念していた。
敢えて大きく刀を振り、ぎりぎりの所で避けさせる、万全の状態だったら手痛い反撃を受けただろうが今の統時にはそんな余裕はない。
甲高い鉄と鉄が打ち合う音が辺りに響く、そして統時の手から太刀が弾け飛ぶ。
いくら統時が脚に自信があったとしてもここまで疲労していれば私の本気の斬撃は避けられない。

「どうした?
もう終わりか、興醒めだな」

統時の腹目掛けて、鋭い突きを繰り出す。
統時は後方に跳びかろうじて避けるが、着地後のバランスすらとれていない。
私はそこで一呼吸置いてから、再度斬りかかる。
銀色の狂刃が統時を斬る、がそれはあと少しだけ届かない、届かせなかった。
私は更に剣戟を加速させる、先程の二倍近い速さと、鋭さ。
しかし、それらの攻撃も統時の肌を薄く切るだけに止まる。

「肩で息をしているぞ、少し休むか?
数分くらいなら待ってやる、それとも飲み物でも買ってくるか?」

統時は私の安い挑発には乗らなかったが、壁に手をついて荒い息を整えている。
側に居る女性も心配しているようだ、あの女性は戦えないのだろうか?
統時と私の戦いを見ていても一向に手助けする気配がない。
そろそろ仕舞いにするか、いささか飽きてきた。
120籐堂院瑞穂 ◆FleR8jlnN6 :2008/09/21(日) 00:32:38 0
>>119
「そろそろ終幕だ、幕を下ろすとしようか」

私は統時に肉薄し、鋭い蹴りを腹に叩き込む、統時は身体を曲げて咳き込む。
刀を振り上げ、統時の身体を両断すべく振り下ろす、しかし地面に転がり避けられる。
私はそこで攻撃の手を休めない、次第に刀が風を切る音が鋭くなる。
もう統時はまともに立っていず、転がったり転んだりと多彩な避け方をするようになった。
よくここまで耐えたものだ、手負いながら見事な者だ。
だが、ここまでだ、私が本気を出せば容易く仕止まる。
私の考えとは裏腹に私の攻撃は一向に統時に当たる気配がしない。
何故だ、何故まだそれほどの余力があるのだ。
息も絶え絶えで、立つこともままならないこの男が何故私の攻撃を避け続けられるのだ?
当たらない、いや当てられない。
私の攻撃は統時がわざわざ避けずとも外れていた。

「何故だ!
何故外れる、それがお前の真の能力か?それとも、この女の能力か?」

統時は何を言っているのか分からないようで首を傾げるだけだった。
再度突きを繰り出す、当たる寸前で軌道がずれ外れてしまう。

「何故?何故だ、私は………私は。
私は戦えるのだ、刀が有る限り、くそぉぉぉぉぉぉぉ!」

素早く統時の背後に回り、刀を振り上げ振り下ろす。
澄んだ金属音が響く、私の手から刀が落ちた。

「殺せない、私はもう駄目………。
師匠の役に立ちたいのに、ごめんなさい、ごめんなさい師匠。
私は剣まで失ってしまった」

私は膝をつき、地に手をつく。
生きている意味がない、これ以上生きていても意味がない。
私はそこで呆然と立っている統時を見上げ、小さく呟いた。

「殺して、私は貴方の敵、ここで殺して」
【籐堂院瑞穂:戦意喪失】
121神重智&敬 ◆6eLTPQTFGA :2008/09/21(日) 07:49:54 0
>>118


男は背中は見せないものの後退しはじめた。

(やはりこいつは…身体的に優れた能力者じゃない)
(ああ…ならばこのまま連続攻撃で――!)

相手への距離を詰めていっていたその時

カッ!
足元が切断され、地面が崩れ落ちた

「今の技も…まともに喰らったら足一本もっていかれたな…」
そう言いながら敬は足にできた大きな切り傷に目を持っていく。

崩れ落ちた際の埃などで向こうの姿はよく確認できないが―
蝙蝠の反応が薄くなっているのはわかる、つまり確実に血が付着してるということ

「ふふふふふっ」
煙の中から相手がこちらへ向かって歩いてくる、徐々に目視できる範囲まで。
その姿は――血まみれ――勿論敬の血ではあるが――であった。

(敬…お前のいう"準備"とやらは整ったんじゃないか?)
(ある程度はな…だから今からは少し遊ぶことにするぜ…いざとなれば逃げる事もできる)

メキメキッゴキッ
グチャッ!

失った右腕を再生させる敬だが、その形は人間のものを保っていなかった
異型の――そう、バケモノのような巨大で禍々しい形をした腕が創り出された――

少し力任せの攻めっていうのも…面白そうだからな
この腕ならば、かなりのパワーを持って動ける。

「さぁ…第2回戦といこうか…?」


【神重:右足負傷、再生中 異型の右腕を創り出し対峙する】
122池上 燐介@代理:2008/09/21(日) 09:03:45 0
「……ハァ! ハァ!」

人通りの少ない、薄暗い夜道を一人の白衣を着た老人が息を切らせて走る。
靴音の他に「コツ、コツ」と乾いた音がするのは、彼が持つ杖の音だ。
足腰が悪いのだろう。だが、そんな彼をそこまで急かせる理由は何なのか。
理由は簡単だ。彼は今、追われている。──彼の命を狙う、この俺に。

「──おっと、ここから先は通行止めだ。逃げることはできんよ」

俺は突如彼の眼前に姿を現した。
彼は急ブレーキをかけて、立ち止まった。なぜ先回りされたのかと言いたげな表情を浮かべている。
しかしそれはいささか心外だ。回り道であっても、足腰の弱い老人を相手に先回りできなくては
21歳の若者たる資格はないだろう。

「ハァ……ハァ……! く、くそぉ〜〜〜〜ッ!!」

彼は白衣の下から拳銃を取り出し、構えた。
が、彼が引き金を引くより早く、俺の右足が拳銃を弾き、宙に舞い上がらせた。
拳銃は空中をくるくると回転しながら、その内近くの草むらへと落ちていった。
この暗がりの中ではもはや見つけることはできないだろう。
武器を失った彼は、観念したかのようにその場に膝をついた。
      キルベクヨン
彼の名は『吉白?』。重松らと同じ非異能者でありながら、機関の『No.10』の地位に座る者。
表向きは何をしている人間なのか分からないが、機関では化学兵器の開発に携わっているという。
俺はこの老人の居た研究所、つまり『シナゴーグ』の一つを急襲したことで得た情報だ。
その場所には異能者はおらず、居たのは武装構成員だけだったのが幸いした。
お陰で余計な手間をかけることなくこうして追い詰めることができたのだ。

「こんなことをして……タダで済むと思うなよ……!?」

「分かってるさ。だが、機関の人間を生かしておくわけにはいかないんでね」

俺が手のひらを向けると、彼は必死の形相で命乞いを始めた。

「ま、待ってくれ! 望みはなんだ!? 金か!? それとも……機関の情報か!?
金ならいくらでもやる! 知っていることも何でも話してやる! だから待──」

彼がそう言い掛けた時だった。どこからともなく流れてきた笛の音が、彼の言葉を遮った。
そして驚く間もなく、すぐに暗闇の中から、音の発生源が俺達の目の前へとその姿を曝け出したのだった。

そいつは男。黒服に身を包んで、笛……いわゆるフルートと呼ばれる楽器を吹いている。
髪は黒く、短いが、どことなく女のような顔をしている。
女のようなので年齢ははっきりとはしないが、それでも恐らく30代と言ったところだろう。

「機関の『No.10』ともあろう者が、無様にも敵に命乞いか……。フッ、これだから金で成り上がった者は」

「あっ! あんたは……! な、『No.8』!!」

二人の会話を聞きながら、俺はふと妙な違和感を覚えていた。
(……? こいつどこかで……どこかで見たことが……)
吉白?は乱入者を『No.8』と呼んだ。つまり、機関の人間であるのだろう。
しかも異能者であることは右腕の感覚から明らかであった。
機関の異能者と出合ったのはここ数日の間だというのに、
なぜこの男を遥か昔に見たような感覚を覚えるのか。
頭の中を疑問が駆け抜けている俺を横目に、二人はやり取りを続ける。
123池上 燐介@代理:2008/09/21(日) 09:09:27 0
「私がここに来たのは、そこの池上燐介に用があるからだ。だが、その前に済ませておかなければ
ならない用ができてしまった……」

乱入者はギロリと吉白?を睨んだ。
吉白龍はこれから何をされるのかを悟ったように、尻餅をつきながら後ずさりを始めた。
乱入者も歩きだし、距離を詰めていく。

「機関を裏切ればどうなるか、分かっているのだろう?」

「べ、別に裏切ったわけでは……。ま……待ってくれ……見逃してくれ……!」
                                       レクイエム
「無様な敗北者の言うことなど聞く耳持たん。さぁ聴くがいい、『葬送曲』を──」

乱入者がフルートを吹き始めると、美しい音色が辺りを包んでいった。
思わず聴き入ってしまいそうになる。──だが、この美しい音色の裏に隠された
禍々しい旋律の正体を、俺は直ぐに知ることになった。

「──うっ! あっ……あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛ーーーーッ!!!」

突如として彼、吉白?が叫び声を挙げると、白目を剥き出しにしたままその場に伏してしまったのだ。
口からは白い泡が吹き出され、体をピクリとも動かそうとしない。
(な、なんだ……? 一体、何が……?)
俺の疑問を見透かしたかのように、乱入者が言った。

「彼は今、死んだ──。私の笛の音を聴いたことによってな。
彼は異能者でなかった分、抵抗力が無かった。だからこうして卒倒し、そのまま死んでしまったのだ。
貴様であれば直ぐに死ぬということはなかろう。安心するんだな」

俺は乱入者を一睨みすると、少々の距離を置いて問いかけた。

「……何者だお前は?」

「私の存在は『No.17』から聞いていたと思うが、自己紹介はしていなかったな。
私の名は『夜叉浪 稔次』。機関では『No.8』と呼ばれている。勿論、異能者だよ」

『夜叉浪 稔次』……聞き覚えはない。しかし、どこかで見覚えがある感じがするのは気のせいなのか。
それとも──。
124池上 燐介@代理:2008/09/21(日) 09:10:01 0
「私は貴様に忠告をしに来た。ここ三日で、随分と暴れたようだな?
だが、我々ファーストナンバーはこれまでの奴らとは違う。
疲弊し、体中に傷を負いながら勝てるほど甘くは無い。これから貴様が行くであろう
『シナゴーグ』は、そのどこもが全てファーストナンバーの管轄化だ。今向かえば、必ず殺される。
闘いは失った体力を回復し、傷を完全に癒した後にするがいい」

夜叉浪と名乗った乱入者は、それだけ言うと背を向けて立ち去ろうとする。
俺はそこにエネルギーを集中させた右手の平を、夜叉浪に向けて待ったをかけた。

「……甘いかどうかは、やってみなければ分かるまい。調度良い、お前もここで殺してやる」

だが夜叉浪は、そんなことに動じる様子も無い。

「フフフ……私の目的を教えてやろう。それはお前への『復讐』だ。
ここでお前を殺すのは容易いが、それでは私の気は治まらん。
万全の状態の貴様を殺すことで初めて私の『復讐』は成し遂げられるのだからな……。
──連戦続きで疲れただろう? しばらく眠るといい」

そう言うと、夜叉浪はフルートを吹き始めた。──瞬間、俺の意識は朦朧とし、
体をその場に倒れこませた。──自分の意思に反して、瞼が閉じていく。

「そうそう、これは独り言だが……現在、我々ファーストナンバーはある場所に召集を受けている。
まだ到着していない者もいるが、近いうちに到着するだろう。その場所とは、『ナガツカインテリジェンスビル』。
幹部連を一網打尽……機関の解体を目論む貴様に取って絶好の機会というわけだ。
だが一人で乗り込んでは、私と闘うまでに殺されてしまうかもしれん。強い仲間を見つけておくことを勧めよう。
貴様の殴りこみを楽しみにしているぞ、池上燐介……。フフフ……フハハハハハハ……」

(な、ナガ……ツカ………………)
夜叉浪の高笑いが頭にこだまする中で、俺の意識は落ちていった。

【池上 燐介:深い眠りへと落ちていく】
【NPCNo.8:夜叉浪 稔次、登場。 NPCNo.10:吉白龍、死亡】
125七草 紫寄 ◆O93o4cIbWE :2008/09/21(日) 18:21:08 0
>>121
メキメキッゴキッ
グチャッ!

男は右腕を再生させるが、その姿は今までのソレとは明らかに違う
異型の化け物のような巨大で禍々しい物になっていた。

「さぁ…第2回戦といこうか…?」

「…その前に喉が渇いたわ。」

―ジュル――

私は血塗れとなっている奴の返り血を―舐め取り―啜り―飲み込んだ―
同時にその血を瞬時に自分の血に還元する、

共有
私は他者の血を取り込むことで相手も私の線に触ることが可能になる、勿論私の許可で。
当然――他者の血を自らの物にすることも―
――ビチャ、ビチャ―
―この味―臭い―感覚―
それは彼女が久しく忘れていた感覚を蘇らせる

血の付いた上着を脱ぎ捨て
「ア…アハハハハ、コレよ、コレを忘れていたわ!」

彼女の目が獲物を狩る目に変わる

「サア、そんな腕と足で私に追い付けるかしら?」
―ビュバッ―
両腕を振り上げ、真紅の爪跡(血のカマイタチ)放つ、そしてそれに追い付く速さで接近、
真紅の爪跡を壁にする形になる
正面から受ければ完璧なコマ肉の出来上がり、だ

「2回戦?ココデ貴方は終わりヨ?」
そろそろ先程壊したビルに気付いた者が来るだろう
それは相手も分かっているはず、それが私の狙い、この戦いに時間制限を設けることで
短期決戦の状況を作ったのだ、相手もこれ以上長引かせはしまい、
恐らく次でひとまず決着が付くであろう。
――第三者が来なければ―だが。

【七草:真紅の爪跡を壁に神重に接近】
126神野 沙羅 ◆LHz3lRI5SI :2008/09/21(日) 18:30:20 0
>>97

統時と話しているときふと統時が目の前にいた女の人に挨拶をしていた…が
刀を出し切りかかって来た。

統時が刀で防ぐ!しかし衝撃によって私も吹っ飛ばされた。

ルナちゃんが説得をする。しかしまた切りかかって来た。

いきなり統時が私に
>>「沙羅……お前は安全な所に逃げろ……実戦経験の少ないお前が勝てる相手じゃねえ。
 まあ逃げたくないなら……それでも構わない……ただ……確実に死ぬぞ」
と言ってきた。

―これは殺し合い。

直感で理解した。どうやら私は足手まといなんだろう。私は走ってその場を後にする。
向かっているのは薬局。だれかいるかもしれない。

後ろから刀の音が聞こえる。
とにかく走る。

店に着く。店で助けてもらった女の人に会った。
「恋島さんいませんか?」
話を聞くとどうやら眠ってるらしい。
「恋島さん起きてください!起きて…」
眠い。何で? 統時が…

落ちる。意識が落ちていく。眠い。眠い。何で?

女の人が話しかける。眠い。それしか考えられない。

意識が落ちる直前に頭の中で
「沙羅―!ちょっと表に出すぎた!すいませんでしたー!だからチョッと寝てて!」
と聞こえた。

「訳分からない…」
そうつぶやいて意識が落ちる。
【薬局】
【恋島の近くで「双樹」が出てきすぎてしまったので眠りに落ちる】
127小村禅夜 ◆3LPMHhiq9U :2008/09/21(日) 23:31:50 0
>>121>>125
薄暗い路地裏で、コツコツと小刻みに音を鳴らしながら小村は歩いていた
(アーリーの奴に会うのは久々だな・・・)
少し嬉しそうにそう考えていた
が、突如
――ガラガラガラ―
と、後方にあったビルが崩れ、小村の思考を止めた
「・・・・・」
あっけにとられながら振り向いた

数分すると
ピピピピピピピ――――
内ポケットの機連送がなっているのに数秒掛かりつつも機連送を取った
「・・・もしもし特殊幹部、小村禅夜さまですか」
「はいそうですが」
「今、B-34地区でビルの崩壊があったのは知っていますか」
「ええ、そりゃもうはっきりと」
「それで、本部からの指令でその現場にいる異能者を止めていたただきたいのです」
「・・・なぜですか」
「それは機関にとってあまり異能力者が表立って欲しくないわけです。
 あまり目立つと民間人や、異能力を認知してない公共機関などが
パニックを起こしてしまいすし、またそれを利用とする他機関も存在してしま・・・」
「そうではなく、何故私なのですか」
「・・・さぁ、私はただそう伝えろと・・」

小村は通話を切った
何故自分なのかなんかはだいたい分かってる。自分はこういう厄介事係なのだ
まぁ、今は人手不足ということもあるわけだが・・・
            ブロッククロス フット
「全く・・・ゴッドバルト限定装神、脚部」
ゴッドバルトが黒き鎧と化し、小村の足に装着されていく
「パッと行って、パッと終わらせましょう」
飛翔し、現場へ向かった
128小村禅夜 ◆3LPMHhiq9U :2008/09/21(日) 23:32:18 0
ザッ――――
現場近くのビルで止まるとそこには二人の男が対峙していた
「ん?、あれは・・・」
片方は面識が無かったが、もう片方は見覚えがあった
(確かあれは昨夜に突然豹変したメガネ・・名前は確か神重とか呼ばれていたような)
「まぁ、いいでしょう。こっちとしてはここから離れてもらえばいいわけですし」
一応来る途中に近くに来ないように周辺の人には言っておいた
小村の人相と漆黒スーツが悪いのかあまり聞いてはいなかったが・・・・

ビルから降り、ゴッドバルトの装神を解くと、二人に近づいていった
「そこにいる異能者二名、いますぐ戦闘行為を中止しなさい」
気だるそうに大声もださず、普通の声でしゃべった
カンカンカンカン―――――
ゴッドバルトはその隣で こっちの話を聞け とばかりに鉄パイプで音を出していた
二人はこちらに気づいたようだった
動きを止め、こちらに視線を送っている
「えー、こちらはすでにご存知でしょうが
カンカンカン――――
「・・・・えー、機関の者です。用件は単純です。いま
カンカンカン――――
「・・・・」
カンカンカン――――
「ゴッドバルト、少し静かにしてくれませんか」
「・・・・ワカッタ」
ゴッドバルトは落ちこんだようなすぶりを一瞬見せ、通常の体勢になった
「え〜、つまりこちらの用件はここでは目立つので他のところで戦って欲しいわけです。
 戦うのは大いに結構なのですが。」
女っぽい顔した男はなんだが戦いの邪魔をして、
怒っているような感じがしたが小村は気のせいにしといた

【小村:神重、七草の戦いに乱入】
【戦いをやめてほしいが、歯向かうなら戦闘することも考えている】
129七草 紫寄 ◆O93o4cIbWE :2008/09/22(月) 00:37:15 0
――サア、そんな腕と足で、私に追いつけるかしら?――
カンカンカンカン―――――
「2回戦?ココデ貴方は終わりヨ?」
――ああ、早くアイツをバラバラにしたいわ

恐らく次でひとまず決着が付くであろう。
――第三者が来なければ―だが。

カンカンカン――――
「・・・・えー、機関の者です。用件は単純です。いま
――!!!――
異能者の気配、狙い通り第三者が来たか、しかも機関の人間と来た。
私は奴の方へ方向を変え戦っていた男と奴との対角線上に立たないように距離を取り様子を伺う
もし男と奴が襲い掛かってきても対処できるように。
カンカンカン――――
「ゴッドバルト、少し静かにしてくれませんか」
「・・・・ワカッタ」

なんだあの大男は?アレが奴の能力なのか?

「え〜、つまりこちらの用件はここでは目立つので他のところで戦って欲しいわけです。
 戦うのは大いに結構なのですが。」

奴が言いたい事は分かった、だが奴の言うことを聞く必要もないし
先程の収まりが着かない、どうする?この男で満たすか?
「フフフ、邪魔してくれたじゃないのこのままじゃ収ま…」

――ズキン――

「―ッ」
不意に思考にノイズが走る、それは彼女の人格が出すぎたせいである
本来彼女は昼間に出てくることはないのだ、その反動が今になって来た。
(どうする、存在を知られた以上消さなくては…だけどこれ以上は危険ね、
せめて彼と協力できればいいのだけれど…)
直前戦った男の方を見る、何やら殺気を感じるが気のせいだろう…
「貴方は如何するの?止める?それとも…」

【七草:神重の動向を伺う】
130神重智&敬 ◆6eLTPQTFGA :2008/09/23(火) 14:25:10 0
>>125 >>128 >>129
彼は血のついた上着を脱ぎ捨て
「ア…アハハハハ、コレよ、コレを忘れていたわ!」
と叫ぶや否や
「サア、そんな腕と足で私に追い付けるかしら?」
そう言いさきほどと同じカマイタチを放ち、同時にそれを盾にして突っ込んできた。

(敬、その腕をクッション状に変形、カマイタチの衝撃を和らげて腕が吹き飛ぶのは阻止しろ)
(了解)

グチュッ
カマイタチが腕にめり込むが…落とすことはできなかった。そして
「うらああああああっ!」
残った腕で男を掴み、投げ飛ばす。
勿論威力は考えていない。あくまでも距離をとるための投げ飛ばしである。
追撃を繰り出そうとしたその時…



カンカンカンカン―――――
鉄パイプで耳障りな音をだしていた物体の横には――


(あいつは…!)
(ああ、先生がやられた相手だな)
(…あの時は錯乱していたんだ、今の私なら…)
(それはどうかな)

「えー、こちらはすでにご存知でしょうが
カンカンカン――――
「・・・・えー、機関の者です。用件は単純です。いま
カンカンカン――――
「・・・・」
カンカンカン――――
「ゴッドバルト、少し静かにしてくれませんか」
「・・・・ワカッタ」

(…私はあんな奴にコケにされたのか…)
(そう言うな先生、実力だけで見るならあいつは相当の使い手だ)

「え〜、つまりこちらの用件はここでは目立つので他のところで戦って欲しいわけです。
 戦うのは大いに結構なのですが。」
「フフフ、邪魔してくれたじゃないのこのままじゃ収ま…」

「―ッ」

(あっちのほうの様子がおかしいな)
(異能力の使いすぎじゃねえのか?リスクがあるっていうだろ)

「貴方は如何するの?止める?それとも…」
131神重智&敬 ◆6eLTPQTFGA :2008/09/23(火) 14:25:46 0
選択を求められる…。
相手は無傷の、それも機関のかなりの実力者。
そして様子がおかしいとはいえ、さきほどまで実力を認めていた人物

自分に有利な地形ができてるとはいえ、二人同時に相手となると少し厳しいものがあるだろう。
ならば――

「俺は少し機関に借りがあってね…お前が協力するというなら機関の男と戦うが…?」

勿論信用するつもりはない、いざとなれば二人まとめて殺すまでだ。
(勝算はあるのか?敬)
(なに…いざとなったらこの体を爆破して別の場所で再生するまでだ)

【神重:小村に敵意 七草に共闘を誘い気味?】
132七草 紫寄 ◆O93o4cIbWE :2008/09/23(火) 19:05:30 0
――「俺は少し機関に借りがあってね…お前が協力するというなら機関の男と戦うが…?」

「アハ、いい返答ね、いいわアイツをバラバラにしてその血を啜ってやりましょう、
でも勘違いしないことね、別に貴方と協力する訳じゃあないんだから…
ただ機関の人間を消すいい機会なだけなんだからね…
それと…貴方を倒すのは私なんだから!……」

「サ…さあそうと決まったら早く殺っちゃいましょ、
ところで貴方、名前は?」
先程戦っていた男に名を尋ねる

そう、私は七草 ―沙夜―

「で、アイツの能力は何だと思う?先生」

【七草:神重との共闘を受けいれる】
133小村 禅夜 ◆3LPMHhiq9U :2008/09/24(水) 00:18:05 0
>>130-132
「俺は少し機関に借りがあってね…お前が協力するというなら機関の男と戦うが…?」
「アハ、いい返答ね、いいわアイツをバラバラにしてその血を啜ってやりましょう、
でも勘違いしないことね、別に貴方と協力する訳じゃあないんだから…
ただ機関の人間を消すいい機会なだけなんだからね…
それと…貴方を倒すのは私なんだから!……」
「サ…さあそうと決まったら早く殺っちゃいましょ、 ところで貴方、名前は?」
「・・・名を知りたければまず自分から、ってことを教わりませんでしたか?」
(まぁ、どうせ教える気などないが)

にしても、どうやら二人はこちらに攻撃を仕掛けるようだ
それも二人で手を組む形で
(全く面倒なことになりましたね。それより・・・)
「で、アイツの能力は何だと思う?先生」
さっきから子どものように、はしゃぐ相手に小村はすこし不愉快さを覚えた
(・・・・ゴッドバルト、エネルギー体の爆破能力を使いましょう)
精神内でゴッドバルトに語りかける
(・・・Yes. My master)
ゴッドバルトはさっきまでと違い、精神構造を戦闘用に切り替えたようだ
(じゃ、行きますよッ)

唐突に

ゴウ!!!

瓦礫が宙を舞い、砂煙が相手と小村の間を遮る
相手が会話をしている間に瓦礫の下に流し込んだエネルギー体を爆発させたのだ
ゴッドバルトの右腕が消え、小村の右腕に装神される
「・・・ハッ!!」
小村はゴッドバルトの肩を踏み台とし、跳んだ
(狙いは神重ではなく、短髪の方)
相手は砂煙でまだこちらを視認していないようだ
右腕に装神したエネルギーを刃と化させ・・・・叩き落す!!!
が、あっさりと血でガードされる
(!!・・・こいつも血を使うか)

バン!!!

小村は右手を地面に思いっきり叩き付け、舞い上がった煙を目隠しに後退する
(ゴッドバルト、あれをしますよ)
(Yes. My master)
ゴッドバルトの横まで戻り、ゴッドバルと並べるように漆黒の腕を相手に突き出し
        ナイトメア・オブ・レイン
「消し去れ!!、『神鱗雨射』」

ガッガッガッガッガッガッガ!!!!

手の平サイズはあるだろう鋼鉄の鱗を高速に撃ち出した
鱗はゴッドバルトの左手と小村の右手から生えては撃ちだし、生えては撃ちだしを繰り返す
「それだけでは、ありませんよ」
鱗は地面に着弾すると―――――爆裂した
ドドドドドドド!!!
(向こうは二人とも血使い・・・だから地面の血溜り中心にを焼却処理です)
(Yes. My master)
相手二人の周りを瓦礫と、血と、煙が乱舞した―――――

【神燐雨射によって相手に攻撃しつつ、血溜まりを蒸発させようとする】
134神重智&敬 ◆6eLTPQTFGA :2008/09/24(水) 18:25:56 0
>>133
「サ…さあそうと決まったら早く殺っちゃいましょ、
ところで貴方、名前は?」

男は…俺の要請を了承した。

「神重だ」

「で、アイツの能力は何だと思う?先生」

「アイツの能力はあの先にいたエネルギー体、あれが奴の能力だ
 あれを体に装着することで能力を高めたり武器として使ったりも――

ゴウ!!!

瓦礫が宙を舞い、砂煙で周囲の視界はゼロになった。

「チッ…またか…」

ギィンッ!
砂煙の向こうから音が聞こえる、つまり狙われたのは七草のほうだ。

「消し去れ!!、『神鱗雨射』」
ガッガッガッガッガッガッガ!!!!

かなり大きな鋼鉄が飛ばされてくる
だがこちらだけを狙っているわけではないようだ、何故か

ドドドドドドド!!!
地面に着弾した鋼鉄は炸裂し、血のあとを吹き飛ばした

(なるほど…能力者に有利な状況を消していっているな…敬、速攻が命だ)
(了解)
砂煙にまぎれて相手の背後を取る。
軽く飛翔し相手の首を目掛けて剣を振る
殺った!

血で作り出した剣を振りきろうとするが…
キィンッ!
明らかにとったと思われる位置でこの男は剣を能力で受け止めたのだ。
そしてその瞬間サングラスから除かせて眼――さきほどまでとは違う殺しの目――

ゾクゾクッ
敬に快感が走る。闘いはこうでなくてはならない
そう考えているうちに相手は足に能力を装着させ

ドゴオッ!
強力な蹴りを敬に叩き込んだのだった

「うぐっ!」

敬は受身も取れずそのまま瓦礫に突っ込んだ。

【神重:奇襲失敗、反撃を受け瓦礫に突っ込む
――結論から先に言おう。予想していた通り、パジャマはシワになっていた。
本来笑顔である筈の猫の顔が、シワの所為で残念な表情に変わっている。
今日は天気が良い。着替えたら外に干すか。

冷蔵庫から野菜ジュースを取り出すと、コップに注いでいく。
医者から禁煙を勧められ、健康に気を遣うようになってから始めたこの野菜生活だが、
今ではシャワーを浴びた後の密かな楽しみに成っていた。

ジュースの冷たさがシャワーで火照った体を中から冷ましていく。
一息吐くと、タオルで髪を拭きながら留守番電話の再生ボタンを押した。

『チャクシン、5ケンデス』

私は、この片言の如何にも機械的なアナウンスが好きではない。
髪を乾かしながらメッセージを聞く。今の所3件聞いたが、全部勧誘だ。
この勧誘の電話は何処から情報を得るのだろう、ふと気になった。
乾かし終わり、櫛で髪の毛を梳かす。髪が長いと億劫だ。

『――あ、もしもし。部長、飯塚です。
 白猫運送との商談の件につきましてお電話させて頂きました。
 流通分野での顧客のポテンシャルとニーズに対する評価を部長の方から下して頂きたいのですが……。
 また折り返しお電話させて頂きます、失礼しました』

それくらい自分でやれ、私は忙しい。
表の顔を持つのも楽ではない。正味な話、面倒だ。
悠々自適なツバサが羨ましく思えると共に、恨めしく思える。

肌と眉の手入れを行っていると、最後のメッセージが再生され、私はそれに耳を疑った。
今日の夜4時22分、つまり今朝方録音されたらしい。

『おやまぁ、留守とはのぅ。折角妾(わらわ)が電話を掛けてやったと言うのに……。
 同じファーストナンバーのお主が籐堂院如きにボロ負けしたというから、
 慰めの言葉でも掛けてやろうとしたのじゃがの。
 まぁよい。留守なら仕方がないのう。では、またどこかで……』

昼間から気分が悪くなった。外道院の奴め、何処で私の電話番号を知った。
機連送に掛けても出なかったから、こうして社宅の電話に掛けてきたのだろう。
―――通話が切れた音が聞こえない、まだ私の気分を害するつもりだろうか……。

『あぁ……。そうそう! 忘れる所じゃった。
 今日の天気は五月の陽気らしいのぅ。この街も日中の気温は24度に成るそうじゃ。
 物が腐らないように十ぅ分注意するのじゃぞ』

化粧水を吸った脱脂綿が、化粧台の上に落ちて行く。
この女、一体何を言っているんだ……? 物が…腐る……?
24度も在るのだ、腐るのは当たり前ではないか。
シャワーを浴びた後の汗ではない、今まさに掻いた汗が背中を滑り落ちる感覚がする。
――酷く嫌な感覚だ。

奴の能力の全貌は知らない。だが物を腐らせる能力だという事は把握している。

――外道院め、まさか……。

ハンガーにかけてあった予備のスーツに着替えながら、
私は最悪の事態の対策を練っていた。

【レオーネ:安物スーツから高級スーツに着替えると、車で名簿の人物に会いに行く】
【No.5は何かを企んでいる】
136七草 紫寄 ◆O93o4cIbWE :2008/09/25(木) 18:59:41 0
>>133
――ゴウ!!!

突然の爆発、瓦礫が中を舞い、砂煙が相手との間を遮る
「まだ話してる途中なのに…気が早いわねぇ」

「・・・ハッ!!」

男はこちらに飛び掛り、刃を叩き付ける様に切り掛かった

―ヒュカッ――ガランッ―

私は刃を血爪で切断、宙を舞う刃は私に届くことはなかった。

「へぇ、変幻自在?便利ねぇ」

バン!!!

男は右手を地面に思いっきり叩き付け、舞い上がった煙を目隠しに後退する

「あらあら、随分と元気ねぇ」
        ナイトメア・オブ・レイン
「消し去れ!!、『神鱗雨射』」
手の平サイズはあるだろう鋼鉄の鱗を高速で撃ち出してきた。
鱗は地面に着弾すると―――――爆裂した

「本当に便利な能力ねぇ、私も少し芸を見せようかしら」

ブラッドネーゲル
『真紅の爪跡』
男に対し血のカマイタチを放ち、飛来する鱗は血爪で切断――

      アムネジア
「ふふ…―追憶戦線――」
そして切断された鱗は誘爆するより先に文字通り消滅した

キィンッ!
神重が男と格闘している、危ない、これでは神重まで巻き込んでしまう―
137七草 紫寄 ◆O93o4cIbWE :2008/09/25(木) 19:00:49 0
そう言い男の足元や周囲の地形、男の体に向けて血を飛ばした

―ビシャッ―――
男のスーツの足と右腕の部分にに血が付着、そして地形には無数の線が張り巡らされた
「準備出来たわね、それじゃ…」
―――ドゴオォンッ!
男の足元に亀裂が走り、突如地面が――爆発した―――

爆発の正体は地下にあったガス管―それを切断、着火―
その結果炎は地表へ上り、爆発を起こした―
爆煙で姿が見えないが恐らくこの程度でやられる相手ではないだろう。

「こういう能力なの、貴方とは違うタイプよ、残念ながら」
神重だけに聞こえる様に喋り、続けて話しかける
「とりあえず私が血で描いた所を狙いなさい、分かった?」

【七草:神重に戦法を指示・小村のスーツに血が付着、辺りには線が描かれてある】
138七草 紫寄 ◆O93o4cIbWE :2008/09/25(木) 19:02:02 0
>>137申し訳ありません、書き込みミスです

―ドゴオッ!

神重は男に蹴りを貰い瓦礫まで突っ込んで行ってしまった
そして此方の攻撃は男に交わされる。

「ふふ…お早いお帰りのようね…」
神重の傍により話しかける、気に障ったか少し不満そうな素振を見せた
「それにしてもいきなり飛び掛っていかないで欲しいわね、こっちが動き辛いじゃない」
これでは真紅の爪跡が神重にも当たってしまう、それに接近戦では実質1対1になってしまう
「もうちょっと何とかならないの?こういうときは何だっけ……そう、チームワークよ」

そう言い男の足元や周囲の地形、男の体に向けて血を飛ばした

―ビシャッ―――
男のスーツの足と右腕の部分にに血が付着、そして地形には無数の線が張り巡らされた
「準備出来たわね、それじゃ…」
―――ドゴオォンッ!
男の足元に亀裂が走り、突如地面が――爆発した―――

爆発の正体は地下にあったガス管―それを切断、着火―
その結果炎は地表へ上り、爆発を起こした―
爆煙で姿が見えないが恐らくこの程度でやられる相手ではないだろう。

「こういう能力なの、貴方とは違うタイプよ、残念ながら」
神重だけに聞こえる様に喋り、続けて話しかける
「とりあえず私が血で描いた所を狙いなさい、分かった?」

【七草:神重に戦法を指示・小村のスーツに血が付着、辺りには線が描かれてある】
139アルト・ハーケン@代理:2008/09/25(木) 20:08:06 0
「……うん。一通りは見て回ったかな」

大雑把だが、まあいいだろう。あまりあのビルから離れすぎるのも問題だ。
なにより、考えるべきことは他にもある。それは――――

「ナガツカインテリジェントグループ――――話には聞いていましたが、実際に見ると違いますね。
 そして、あのビルにあるデータバンク。なるほど、確かに人員よりも重要ね」

本音を言えば、欲しい、と思っている。情報は力であり、私が欲するのは力だ。
故に、そのデータは私が欲するものではあるのだが、しかし、

「無理、かな。あの場にいたメンバーで全員ではないだろうし。
 あの場にいたメンバーだけだとしても、全員を敵に回して生き残るのは難しい。
 ……となると、襲撃者がどう出るか、ということになるワケだけど」

あまり期待はできない。数と質を併せ持った機関の戦力は、文字通りの鉄壁だ。
あれを突破できるとなれば、それこそ――――

「……いや、それは意味のない考えね。
 ま、手に入れられるようなら手に入れるとして、今は……」

どうするか。あのビルで待機する、というのならばそれもいい。
周辺の地形を確認する、という目的は達したのだし、襲撃者が来るのがいつかは分からないというのもある。
このまま戻ってしばらく休憩、というのもいいのかもしれないが、

「手近な異能者を探すことにしましょうか。
 付近の捜索も、ついでにやっておきましょう」

あの場所に留まる、というのはうまくない。あそこは少しばかり空気が濃すぎる。
与えられた通信機で連絡を送る。

『ええ、そうです。このまま周辺の捜索もさせてもらいます。
 近場にいる異能者は、機関のメンバーでないなら狩ってしまってもいいのでしょう?
……ええ、以前いただいた資料にあった重要人物がいるなら、連絡します。それでは』

今は義理がある。ある程度の食い溜めもあるし、しばらくは問題ない。
だが、万が一、ということもある。そろそろ食料を追加しておくこととしよう。

「さて――――では、もうしばらくぶらつきましょうか。
 今度は熱量探知を心がけ、異能者の発見を第一に」

【アルト:現在地 機関本部周辺】
【異能者を探す】
140小村 禅夜@代理:2008/09/25(木) 23:54:10 0
>>134>>136-138
ガッガッガッガッガッガ!!!!
鱗は神重の方は砂煙がたち、様子が分からないが
短髪の方は斬っては消滅させ、斬っては消滅させを繰り返していた
(変わった技を使う、神重とはまた違うタイプか・・・・おや)
殺気が背後に回りこむ気配がした
(・・・まったく、奇襲時は殺気ぐらい消せ、素人が)
神重の太刀を小村の右腕に装神させたエネルギーから飛び出した鎌が防ぐ
振り向き、神重の顔を見る、昨夜見たときより落ち着いた表情をしていた
(いや、どちらかというと戦闘に興奮している・・・・・か)
そう考えつつ腕の装神を脚部に移行させ
「ハッ!!!」

ドゴッ!

短髪の方に蹴り返してやる
(それだけじゃない)
ヒットした瞬間に足のエネルギーを爆発させる
神重は腹に火傷を負いながら飛ばされた

ドゴォッ!!

「・・・ふう」
(マスター、戦闘序盤での消費エネルギーが平均値より13%多いです
 もう15%エネルギーを抑えることをお勧めします)
ゴッドバルトが戦闘前と違いコンピュータのように語りかける
(気にするな。向こうもだいぶ消費している。まだいけます)
(Yes. My master)

がその気を抜いた数瞬に相手に血を撒かれた
それが右腕と足に掛かる
(チッ・・・今回は気をつけるようしていたのに)
小村は上着を脱ぎ捨て、足は適当に瓦礫で拭いておいた
が、それと同時に地面が爆裂しながらこちらに向かうのを確認する
(これは・・・・)
小村が身構える
―――ドゴオォンッ!
突如真下の地面が爆発した

141小村 禅夜@代理:2008/09/25(木) 23:54:44 0
シュンッ

小村はすぐさま装神を体全体にして炎を防いだ
(これは・・・そうか・・・全くガス官まで爆発させるなんて・・
よっぽど派手な戦いが好きなようだな)
「ならこっちもそれに応えてあげましょうか」
小村が爆煙から姿を出す
全身装神した姿は地獄の騎士と形容していいぐらいの姿だった
漆黒の色をした流線型の鎧に同色で角の様なものが飛び出した狐の顔のような兜を着けていた
そして手からランスを出現させ、
「さぁ、あまり長居はしたくないのです」
背中から翼をだし爆発させる

ドゥ!!

爆風の推進力で低空飛行し、接近する
小村は一瞬で二人の懐に入る
「ッ!?」
二人が戸惑うのも計算の内のように、その隙を狙い

ビュン!

ランスを横薙ぎに振り、二人を別々の方向に飛ばす
「・・・」
グラ――――
(こんなときに・・・)
小村に目眩が襲う
(マスター、精神状態がイエローゾーンです。即刻戦闘行為の中止を提案します)
(・・・・まだやれます)
(ですが、これ以上の・・・)
(いいじゃないですか、この不完全な体の・・・限界を超えるいいチャンスです)
そうだこれぐらいで倒れてなるものか

小村に襲い掛かっているのは神重や七草や目眩だけではなく
本部から出たときから襲われている『焦り』もだった

(早く終わらせなければ、こんなことに時間は割いていられない)
【小村:全身装神して二人を横薙ぎにする】
【すこし体力が落ちてきた】
142神重智&敬 ◆6eLTPQTFGA :2008/09/26(金) 08:04:03 0
>>138 >>140

「くっ…!」

「ふふ…お早いお帰りのようね…」
皮肉を込めた言葉を七草は話しかけてくる
少し苛立ちを覚えたがそれどころではない。

「それにしてもいきなり飛び掛っていかないで欲しいわね、こっちが動き辛いじゃない」
「もうちょっと何とかならないの?こういうときは何だっけ……そう、チームワークよ」

チームワーク…?
今まで殺しあってた人間をどう信頼してチームワークをとれというのだ。

「準備出来たわね、それじゃ…」
―――ドゴオォンッ!
男の足元に亀裂が走り、突如地面が――爆発した―――


「こういう能力なの、貴方とは違うタイプよ、残念ながら」

「とりあえず私が血で描いた所を狙いなさい、分かった?」

ジュクジュク
(腹に攻撃を受けたときにオマケをもらったな、敬)
(ああ…こんなものすぐに治るが…)

「あの辺りか…少し見えにくいが――!!

次に機関の男の姿を確認したときは、地獄の騎士を彷彿させるような姿だった。
「さぁ、あまり長居はしたくないのです」
手にランスを出現させ背中から翼を出現させ――

「おいおい、ファンタジーすぎ――

ドゥ!!

!!
(速いっ! よけるんだ!敬!)
(無茶いうんじゃ――)
ビュン!

「ぐおっ!」
ランスになぎ払われ、七草とは別の場所に吹き飛ばされる。
143神重智&敬 ◆6eLTPQTFGA :2008/09/26(金) 08:04:53 0
(敬、この作戦を使え、相手の防御力がどの程度かわかるだろう)
(了解した)
腕を切り、そこからしたたる血で大量の蝙蝠を新たに作り出す。
「いけっ!」
キギキッキキ!
百匹近い蝙蝠が機関の男に襲い掛かる。

勿論相手はランスを上手く使い蝙蝠をなぎ払い、落としていく。
蝙蝠で止めをさせるとは思ってはいない。この瞬間だ。
蝙蝠が機関の男の周囲を囲み、落とされて足元に血をまいていく
(いまだ! やれ、敬!)

「血 蝙 爆 破」(ブラッディサックボム)
蝙蝠達が閃光を放ち…

ドオオオオオオンッ!

大爆発を引き起こした

ドクンッ
「クッ…」
かなりダメージが蓄積しているのだろう 敬の体が若干ふらつく
(大丈夫か?敬)
(あ、ああ…今のでやれていれば問題はない…)

機関の男の姿は煙で確認できていない…。

【神重:蝙蝠を使い小村の周囲に大爆発を起こす 疲労気味】
144廻間 統時@代理:2008/09/26(金) 11:05:46 0
>>120
「ハッ……俺の体調が良かったら、そうさせてもらったかもしれないけどさ……
 もう立っていられてねえよ……身体に力が入らねえんだ……
 刀も握れやしない」

俺は地べたに座り込み、コンクリート状の壁に背を預けた。
……もし、俺が戦えたら戦意を喪失している瑞穂の負けだろう。
戦う意思の無い戦士など何の役にも立たない。
戦士は文字通り戦う意思を持ち、拳や武器を振るうからこそこそ戦士
故に俺の勝利。しかし、この結論は俺が戦えたらの話だ。今の俺は戦う事は不可能。
立つ事はおろか、身体に力が入らない。そのため、刀を瑞穂に突き立てる事も不可能だ。
まあ身体に力が入らないとは言っても会話は可能だ。

「まあ、殺せといっている以上は負けを認めたという事だよな?
 話してもらうぜ、何があったのかをよ」

瑞穂は沈黙を決め込んでいたようだが、俺とルナが事実を言うように諭すと
何かを諦めたように何が起きたかを語りだした。

「……つまり……刀の中に封じ込められてた人間が死ぬ前と同じ姿で現れ……
 その人間の生前の恋人も一緒に復活して……そいつと一緒になりたいから
 お前は事実見捨てられて……その人間は機関側に加わった。
 んで、お前はその人間に認められたいために俺を襲った……そんなところか」

俺の答えに瑞穂は黙ってうなずく。
どうやら正解のようだ。

「頭のネジが纏めてぶっ飛んだような話ね」
「お前が言うな」

しかし、死んだ人間が生き返るとはどういう技術を使った?
ここはルナに聞いてみよう、太古の昔から生きてる神の知識なら答えられるはず。

「ルナ、死んだ人間が蘇るというのありえるのか?」
「そうねえ、ありえない話じゃないわよ。簡単に言えば蘇るのが極端に難しいだけだから。
 あなた達みたいな人間、広く言えば生物の身体ってのは魂の容器なの。
 怪我をしていくとそこから少しずつ魂が出て行く。この場合の魂は血と捉えてもらっても構わないわよ。
 ひびわれたコップに入れた水が少しずつ漏れると言えば分かりやすいかしらね。
 んで、全部出てしまったらアウト。死亡決定。だけど、身体を直して魂を入れなおせば大丈夫。
 だから、魂が消えてなくなる前に身体を直して魂を入れれば万事OKってワケ。
 まっ、魂と身体にも相性があって相性が悪いと蘇る事は不可能だけどね。
 分かりやすく言えば、軽油の車はハイオクじゃ走らない。そんな感じよ」
「分かったような分からないような……」

理解できるような理解できないような。
そんなルナの説明に俺は頭を抱えた。
145廻間 統時@代理:2008/09/26(金) 11:06:17 0
「それにしてもよく蘇ったわね?
 いくら相性が良くても身体が新鮮じゃなきゃ、ただの腐ってるゾンビなのに。
 その人、数年前に死んだんでしょ?普通骨だけになってるんじゃない?」
「そこはどうでもいいだろ」

一々話しが逸れていくのはルナの悪い癖だ。
そのせいで時間を浪費するわけには行かない。
それにしても……瑞穂は大丈夫だろうか。
今まで信じていた人間に裏切られたんだ、そのショックは量りきれないものがある。
俺だって、兄貴や師匠……ルナに裏切られたら相当のショックに陥ってしまいそうだ。
常人ならトラウマもの、人によっては凶行に走ることもあるからな。
見たところ瑞穂のショックは……かなり大きいようだ。このショック、取り除いた方がいいだろうな。
このショックをずるずると引きずり、情けない死に様を見るなんてゴメンだ。
一度は俺を負かしたコイツのそんな姿は見たくない。
だが、どうすればいい……新しく支えとなれる人間がいるのならいいんだが、誰かいるのか?
……ここは一つ……

「……なあ、仲間として俺と来ないか。お前、頼れる人間がいないんだろ?
 だったら俺と来て、復讐してやれよ。機関に、裏切った人間に。
 お前を裏切った人間に復讐したくないってンなら、その女から力ずくで奪い取ってやんな。
 別に俺を殺したいってんならそれでいいさ。そんときゃ全力で相手をさせてもらうだけだしな」

ある一種の大博打だが、俺はそれにかけてみた。
ただ一回だけ共に戦っただけと言えばそれまでだが、人によってはそれでも十分。
だから、俺はそれにかけた。分の悪すぎる賭けといったら言い返せないが。
さて、どう返答する?

【廻間:瑞穂を仲間に誘ってみる。
    疲労困憊のためすでに自力では立てない】
146七草 紫寄 ◆O93o4cIbWE :2008/09/26(金) 18:53:47 0
>>141>>142>>143
爆煙から覗かせた男の姿は、漆黒の鎧に身を包み
騎士の様な姿をして、手にはランスを握っていた
「さぁ、あまり長居はしたくないのです」
男はそう言い翼を爆発させた――

ドゥ!!

「ッ!」

一瞬で私たちの懐に入りランスで薙ぎ払う

ビュン!

「クッ!」
ランスに薙ぎ払われ、神重とは別の場所に吹き飛ばされる
体勢を立て直す、そして

神重は私にやった様に腕を切り、大量の蝙蝠を作り出し男に飛ばした。
「いけっ!」
キギキッキキ!

男はランスを巧みに使い蝙蝠を薙ぎ払っていく、
だが落とされた蝙蝠は足元に血をまいていき―――

「血 蝙 爆 破」(ブラッディサックボム)
蝙蝠達が閃光を放ち…

ドオオオオオオンッ!

大爆発を引き起こした ―――

「皆ハデねぇ…ッ!」
――ズキン―――
(ッ!そろそろ限界ね…早く…終わらせないと…)
気配を消し爆煙に紛れ男に近づく、目的は暗殺
(見つけた)
男は爆発を受け原型は留めているようだが本体はダメージを受けてるようで蹲っている、
此方には気付いていない、後は首なり心臓なりを切断すれば終わりだ。
(さようなら、バラバラにして上げるわ)
背後から血爪が男の首に振り下ろされる――

【七草:小村に止めを刺すために奇襲を掛ける、限界が近い】
147恋島達哉 ◆KmVFX58O0o :2008/09/26(金) 22:48:03 0
――高速道路で燃え盛る乗用車を見ているガキの頃の俺を、俺は今見ている。
いつものぼんやりとした悪夢よりも、何故だかずっと明確な――夢? なんか映画でも見てる気分だ。
そうだ、俺が元――いや、耳鳴りに初めて会ったのは、14歳の誕生日記念の家族旅行。うつらうつらとしていた俺に聞こえた。
『達哉! 早く逃げるんだ!』
と言う子供の声。気づけば、俺の目の前でお袋と親父を乗せた乗用車が、化け物のような業火に焼かれていた。

14歳以前の記憶も、幸せで平凡な日常も失ってしまった。目が覚めれば児童保護施設の天井だ。
その日から、俺と耳鳴りの奇妙な生活が始まった。耳鳴りが大なり小なり、危険が迫る前と耳元で警告してくれる。
その警告だけを、事件以降一心不乱に信じてきた。事件以降、俺は異常なほどに臆病になっていた。
だからか、他人から気持ち悪がられたり、遠ざけられたりもした。酷く虐められたりもしたな。
けど俺はそれでも、耳鳴りを信じていた。信じるしかなかったんだ。どうしようもなく、非力だったから

ある日だ、どん底に落ちていた俺の横っ面を引っぱたいてくれる人が、目の前に現れた。
恋島数馬――死んだ親父の兄貴と名乗るその男は、馬鹿みたいに大雑把で、ズボラで、何よりも――カッコいい男だった。
最初こそは俺も強く警戒していた。また他の人みたいに、俺の事を奇異な目で見るんじゃないか、見下すんじゃないかと。
でも違った。あの人は――叔父さんは、俺の心の中の不安も、恐怖も、何もかも飲み込んでくれた。

「達哉、俺はお前がどんな超能力を持ってようが関係ねえ。お前は俺の息子だ!」
何時この台詞を言われたかは覚えてない。けど、この叔父さんの台詞を聞いた時、、俺は涙が止まらなかった。
初めてだったんだ。俺を俺として、人として認めてくれた人は。それから施設から出て、俺は叔父さんと暮らし始めた。
その時から耳鳴りに対しての依存心は徐々に薄れてきた。当たるが八卦、当たらぬが八卦と言う、叔父さん直々の精神論のお陰でな。

同時に人に対しての恐怖感もなくなっていった。女性運はなかったが、色んな奴と仲良くなれた。
中学を卒業する頃には、それなりに人付き合いも上手くなってきたせいか、様々な繋がりを持つことも出来た。
そして、耳鳴りの特性に気づいたのもその時期だ。耳鳴りの特性は、実は危険予測だけじゃない。

その特性は、何と言うのだろう…・・・。喧嘩の時なんかで、闘争心を露わにしてる時かな。
そういった状況下でのみ発揮される……と、はっきりと自覚したのは、一番思い出したくない高校時代だ。
思い出すのも嫌だが、一応確認の為に思い出しておこう。つーか夢の中でなにやってんだ、俺
148恋島達哉 ◆KmVFX58O0o :2008/09/26(金) 22:49:00 0
まず声が変わる。いつもの舌足らずなガキの声から、俺の声よりずっと芯が通って凛とした青年の声だ。
そして情報が危険予測に幾つかのプラスαが加わる。戦闘状況下の分析、戦闘対象の状態、近くに人がいるかどうかの確認――。
ぶっちゃけ情報は飛び込んでは来るものの、完全には把握できない。常に今の状況に良さそうな情報だけを取捨選択する。
この状態になった耳鳴りを、俺は口には出さないが第二段階と名づけている。つまりだ、第二段階になった場合――俺はマジになってるって事だ。

いつもの状態から、第二段階に変化させるのを覚えたのは高校1年生のときだったかな。ホント馬鹿だったよ。
俺は第二段階を、喧嘩の為に使う事にした。タバコを吸う前はそれなりに体力も腕力合ったからな。
実際第二段階は最高に便利だった。その場その場に応じた情報を伝えてくれるお陰で、俺は常に有利な状況で相手を熨す事が出来た。
今思うと、叔父さんに対する反抗心もあったんだと思う。その歳特有の、何の意味の無い反抗心――思い出すだけで顔から火が出そう。

それゆえに、俺は自分自身にブレーキを掛ける気は無かった。やれる所までやってやる。それだけ調子に乗ってたんだ。
けどそれは、第二段階のせいだけじゃない。その歳、俺には初めて、親友と呼べる人と、初めて恋をした人が出来た。
最低な時期だったけど、最高の青春だったと思う。全てが楽しくて、全てが輝いていて――このまま、時間が止まっちまえば良いと思った。

駄目だった。あまりにも突然に、かつあっさりとその幸せは、幕を閉じた。
細かいところを思い出すと今でも吐き気がするが、結論から言えば――親友も初恋の人も、俺のせいで死んだ。
調子に乗りすぎた俺に対する、あまりにも冷たすぎる冷や水。またも俺は全てを失った。
今度ばかりは俺自身のせいだった。若さゆえの暴走なんて言い方をすればキレイだが、事実はずっとえげつない。
完全に自信を喪失した俺は、高校卒業後は何をするでもなく家に引きこもった。今もだが、今以上に腑抜けてたな、あの頃は。

そんな俺をもう一度助けてくれたのは、誰でもない、叔父さんだった。
無理やり自室から引っ張り出された俺は、ガキの頃に書いた文章やらを見せられた。嫌々ながらも目を通して、ハッとした。
死んだ親父のような、立派な新聞記者になりたい。
ミミズがのたくってるような汚い字で、そう書いてあった。当時も今も何で泣いたかは説明は出来ないが、みっともないくらい号泣した。
俺はむりやり寝ぼけ眼をたたき起こして、その夢の為に一念発起した。たとえ叶わなくても、社会復帰も兼ねて必死に。

けど社会ってのは甘くない。何度も俺は挫折を繰り返した。あまりの駄目っぷりに死んじまおうかと思った。
そのたびに、叔父さんは俺を叱咤し、励ましてくれた。その度に立ち上がり、足掻いて諦めて……。
そんな時、俺はやっと志望していた大学に入学する事が出来た。と、言っても一般知名度なんぞ皆無の地方大学だが。
散々苦労掛けすぎて、やっと今までの礼が返せると思ったその歳に。

叔父さんは死んだ。乗用車に乗っている所をトラックに追突されて、即死だったらしい。
死に顔を見たが事故死とは思えないほど、叔父さんの顔はキレイだった。葬儀が終わった後に、全身の力が抜けていくのが分かった。
その葬儀の中で、おじさんの同級生と名乗る男が、呆然となっている俺に声を掛けた。

それが、俺が今働いている出版社の編集長である――九鬼正也だ。
九鬼……さんは、叔父さんとのある約束で、俺がもし夢を挫折した時に採用してくれと頼まれたらしい。
大学も卒業したものの、働き口が無かった上に、どうすればいいかわからなかった俺は、言われるがまま九鬼さんの出版社を面接。なんなく採用される。
それからはどうにも煮え切らない、けど仕事自体は過酷な日々だ。心で毒づきまくってるものの、俺は九鬼さんに感謝しきれないほど感謝している。

叔父さんが死んだ日から、耳鳴りが第二段階になる事は一切無くなった。いや、第二段階がなくなったのは高校卒業後からだ。
毎回子供の声で、小さい危険を警告してくれている。それを俺は鼻で笑いながらも信じたり、信じなかったり。
耳鳴りが――二段階を発動する必要が無い、平々凡々な生活を、俺は送っていくんだろう。そう思っていた――。
149恋島達哉 ◆KmVFX58O0o :2008/09/26(金) 22:49:30 0
目の前の景色が変わり、病院での路地裏――あの岩城とかいうデカブツと対峙した場面だ。
池上と名乗る青年と、不思議な黒コートの男との共闘を果たした。ここで、俺は――第二段階を発動させていた。
まさか本当に耳鳴りが目覚めるとは思いもしなかったが、そのお陰で岩城に一撃を加えることが出来た。その後は伸びてたけど。
それから、神野という少女と出会い、挙句に服屋での乱闘騒ぎだ。俺が一方的にボッコボコにされてな。

俺の疑念が、今になって――遅すぎたとも言えるが、固まった。この町は普通じゃない。
どれだけ派手な喧嘩だろうが、殺人が起ころうが、裏で蠢く何かによって隠蔽される。その何かが――『機関』という団体だ。
スーツを着ている奴らは、この町自体で人々を巻き込んでやばい事を企んでる。それが何かなんて知らないし、知りたくも無い。
最初は馬鹿にしてたチェーンメールも、今となってはタチの悪いジョークにもならない。

第二段階が目覚めるって事が何を意味してるかは、俺自身にも分からない。ただ、一つだけ明らかな事は――。
もうとっくに、俺の想像を超えた事がこの町で起こり始めている事。そして――あのスーツの連中を倒さないと、俺が死ぬって事だ。
平和ボケ? 違うね、奴らが俺の知っている日常を破壊したんだ。ならどうするべきか――以前なら俺は自衛するか、逃げると答えるが、違う。
闘うだ。立方体女子高生や、岩城、それに曾壁とか言う野郎に出会ってはっきり分かった、話し合って分かり合える連中じゃない。

もう考える時間も無いだろう。奴らは何処にでも潜んでやがる。日常の中にひっそりと溶け込み、平穏という平穏をぶっ潰す。
生憎、俺には奴らに真正面から立ち向かえる力も、テクニックも無い。度胸だけだったらどうにか渡り合えるかもな。仕事上。
さぁて、それじゃあどうするか。真正面から潰せないのなら……頼むぜ、耳鳴り、いや、新耳鳴り。
俺なりの奴らに対する復讐、手伝ってくれ。

そして、国崎。俺にこの決断をさせたのは、アンタだ。

>>126>>144
……ん、……ん? あ〜……変な夢を見てたの……かな?
淡い電球の光が、寝ぼけ眼には結構キツイ。掛けていたメガネを外して、数秒間目をこする。
のそっと起き上がり、髪を掻くと妙な気配を感じた。葦川さん……じゃないな。近くか、すぐ……
視線を下に落とす。見覚えのある顔が、俺の目に飛び込んできた。…・・・神野さん? 何でこんな所に?

寝起きだからか、さっきの恥ずかしい夢のせいか、頭がこんがらがっている。
ただ、ただ一つ分かってる事はある。振り返り、転がっているそれを拾い上げる。まだ暖かい――弾丸。
やっぱり、国崎……さんは、俺達の前からいなくなったみたいだ。あの出て行った時の国崎さんの顔――般若みたいに恐かったな。
冷静になってみると、どうして俺はあれほどまでに国崎さんにむかっ腹を立てたんだろう。

……は、はは、それにしても驚いたなぁ。マジで撃つとは思わなかったよ。あと数ミリでもずれてたらマジで穴が……。
………本気で殺そうとしてたな。ありゃあ。驚いたと言うか、本気で国崎さんがあーいう事をすること事態がビックリだわ。
言ってる事も物騒だったな。それにあの目。今までの国崎さんの柔和で茶目っ気な目じゃない。言うなれば――人殺しの目。
そうだ、俺のクソみたいな高校時代の時の――は、はは、マジかよ……マジで国崎さんは……。
150恋島達哉 ◆KmVFX58O0o :2008/09/26(金) 23:14:16 0
はぁ・・・・・・なんつうのかねぇ。一番信頼してた人が敵に回っちまったわけだ。なんだかねぇ。
つまりだ、あの夢の通り、自分で自分の身を守らないともうしょうがないんだな。ならどうするかねぇ。
取りあえず目を覚まそう。立ち上がり、俺は洗面台に向かった。どうせ主はいないんだ。好きにやらしてもらうさ。
洗面台の鏡を除くと、冴えない面が映った。・・・・・・コレじゃ駄目だな。俺は人知れず苦笑し、店側に向かう。

ここに来る時に、レジにハサミが見えた。何処だったかなぁ……と、あったあった。
結構刃の部分が長いな。コレなら髪を切れる。それとレジの前の棚に掛けられているコンタクトレンズの箱を数箱。
変な話だが、このまま盗むのも気が引けるので代金をレジに置く。欲しい物が手に入ったので、そそくさと洗面台に向かう。
大学時代から自分で髪を切ってきたため、それほど苦労はしない。数十分であっという間にスポーツ刈りっぽい短髪だ。
それとコンタクトレンズ。当分このメガネは掛けない。無茶苦茶動くだろうし、それに・・・…掛けてると甘ったれちまうんだよな、なんか

さて、ここで一つの疑問だ。どうして神野さんが薬局に飛び込んできたか。あの様子だと店に買い物の為・・・・・・は絶対無かろう。
つまり考えられるのは二つ、敵に追われてるか――疑いたくはないが、敵として来店してきたかのどっちか。
だが俺には後者は考えられない。彼女の性格からして、そんな事ができるとは思えないからだ。でだ、俺は意識化に新耳鳴りに話し掛けた。
聞く事は決まっている。――近くに俺達に対して敵対心を持つ人間の検索だ。出来るかどうかじゃない。出来るんだ。

俺は高校時代を思い出す。コイツを活用して、不良どもと渡り合ってた頃を。気を集中して、目標を察知――来たか。
『検索対象に該当する生体反応は無し。ただし周囲1kmに、特殊能力を所持する生体反応を二つ、確認』
何だと? けど、俺達に敵対心を持っているわけじゃない……。喧嘩でもしてるのか?
……一番可能性が高いのは、俺が一番会いたい『機関』の奴が、ここらへんの異能者とやらを探してる…・・・かな。
いや、それが良い。俺は新耳鳴りに、そいつらの居る場所への案内を頼んで、店を飛び出した

葦川さんには、神野…・・・というか飛び込んできた女の子を見てくれと伝えた。不満げな表情を浮かべてたな、ごめんなさい。
新耳鳴りの案内どおりに走ると、その生体反応とやらが遠目ながら見えた、俺は一軒家の角に身を隠しながら、その二つの反応を観察する。
遠めだから表情を見られないが、長髪の・・・・・・女? が四つんばいでうな垂れている。その前には、俺よりもずっとカッコいい短髪の――。 
ん? なんかどっかで見たような気がするぜ。まぁ何だ、取りあえずは、待機。何かお取り込み中のようだし、下手に動いて殺られちゃ溜まらん。

そういや、なんかこういうシチュエーション、一回あったような
【外見を短髪・コンタクトレンズに変更】
【廻間と籐堂院の会話に立ち会う。あちらからは姿は見えていない】
151池上 燐介 ◆qqu0tZFsYU :2008/09/27(土) 00:15:34 0
──俺は、ナガツカインテリジェンスビル前に来ていた。
時計の針は時間は午後7時15分を指している。約束の時刻はとっくに過ぎていた。

「……掛野は来ないか。俺でも無理だったな。残念」

残念とは言ったものの、その顔は少しも残念そうには見えない。
予め予想していたという感じだ。
康平は諦め切れないと言った感じで必死にこの場に留まろうとする。

「……いや、後10分待とう。後10分! それまで待とう!
なっ? 頼むからもう少し待とうぜ! 今度昼飯おごってやるからさ!」

「何であいつにそこまで拘るのか理解しかねるね。時間にルーズな奴は碌なもんじゃないと相場は決まっている」

「……燐介よぉ、お前本当にここに呼び出したのか? 別のところに呼び出したんじゃねーか?
それとも掛野が間違えて別のビルに行っちまったのかなぁ?」

俺は呆れたようにわざと大きく溜め息をついた。
そして再度、諦めるように説得しようとした、その時だった。
俺と康平が、ふと視線を向けた道の先、調度ビルの側面に位置する工事中の建物の近くで
三人の男に絡まれている女を、掛野を発見したのは。
俺達は顔を見合わせると、無言のまま絡んでいる男達に向かって歩き出していた。
康平の場合、もしかしたら下心もあったのかもしれない。
だが奴にはそれ以上に、絡んでいる男達に対して義憤が湧き上がっていたに違いない。
そう、俺がそうだったように。

「あっ! 池上くん……蠣崎くん!」

俺達の接近に気がついた掛野が、助けを求めるように声を挙げると、
彼女の言葉に聞いて、絡んでいた男達がこちらを振り返った。
見れば、どいつもこいつも如何にもガラが悪いといった顔つきをしている。

「よくも俺の知り合いに手ぇ出してくれたな? テメーらタダじゃおかねぇ……!」

言いながら、康平がポキポキと指の関節を鳴らす。
だが、そんな迫力にも気圧されることなく、男達はニヤついている。

「へぇ……この娘のお友達か。困ったな、これからこの娘と楽しいことをしようと思ってたのに……」

男の一人が言う。その時、康平が拳を振り上げた──。
152池上 燐介 ◆qqu0tZFsYU :2008/09/27(土) 00:18:35 0
──ゾク。
(────!?)

──得体の知れない寒気が全身を走る。俺は瞬間的に後ろへと飛び退いていた。
それは今にも殴りかかろうとしていた康平も同じだった。俺も康平も、額から嫌な汗が流れていた。
言葉にこそ出さなかったが、俺達二人は、恐らく同じことを思っていたはずだ。
「こいつらは……ただのチンピラとは違う」と。

「テメェら……一体何モンだ!!」

康平の問いに、男達はニヤついたまま静かに答えた。

「"人間"だよ……。普通とはちょっと違うがな」

康平が殴ろうとした瞬間、奴らの眼光から発せられた妙な威圧感。
『死』をも予感させるような強烈な殺気。そして、奴らに秘められた『力』の存在。
俺も康平も、それを感じたのだ。
(これは人間とは全く異質の…………。──まてよ、ということはまさか!)

「……ほう、お前ら感じたのか、俺達の『力』を。
ククク……どうやらお前らとはこの娘より、もっと楽しいことができそうだな」

用済みとばかりに男の一人に突き飛ばされた掛野は、ふらついて俺の足元へと倒れこんだ。

「燐介……お前は行け! 掛野を連れて……! 早く!!」

「お前……まさか一人で……? バカな、お前は何を考えて──」

「なぁ、燐介……。好きな女の前くらい、カッコつけさせてくれよ……。
それにお前に掛野を任せるのは、お前を信頼してるからだぜ……? 他の奴には頼めねぇことだ……。
こいつらは……俺が倒す! なぁに、俺のことなら大丈夫だ。いざとなれば俺も『力』で……!」

康平がグッと拳を握り締める。だが、顔は相変わらず汗を流し続けている。
それでも少しも弱気なところを見せないのは、生まれついての図太い肝っ玉ゆえか。
掛野を見ると、怯えたようにガタガタと震えている。
彼女にしてみれば一刻も早くこの場から去りたいに違いない。

「頼むぞ……康平!」

それだけ言うと、俺は彼女の腕を掴んで、走り出した。
同時に闘いの開始を告げる康平の叫び声が、辺りに響き渡った。

「うらあああああああああああああああああああああああ────」
153池上 燐介 ◆qqu0tZFsYU :2008/09/27(土) 00:26:07 0
とにかく人家のあるところへと走り続けた俺達が辿り着いた場所は、唯能高の校舎前だった。
焦っていたのか、どこをどう通ってここまで辿り着いたのか記憶にはない。
(まぁ……仕方ない。掛野を逃がすのに必死だったからな……)

心の中で自分にそう言い聞かせるように呟くと、今度は俺の横で、掛野が不安そうな声でボソリと呟いた。

「……ねぇ、蠣崎くん……大丈夫かな?」

「……大丈夫さ、あいつは喧嘩の百戦錬磨だ。負けるようなことはねーよ」

息を整えながら、落ち着いたような声でそう答える。
しかし、彼女にはそれが自信がないような口調に聞こえたのか、一層不安げな表情を浮かべた。

「大体、お前が遅刻したらこんな目に遭ったんだぞ? これに懲りたらその時間にルーズな性格を直すんだな。
あぁそうそう、警察には連絡するなよ? 後で「俺一人で十分だったのに」と文句を言われるのは俺だからな」

冗談を交えつつ、敢えて空笑いを浮かべてみるものの、彼女の表情は沈んだままだった。
俺は反応を見てばつが悪そうな顔をしていると、突然、彼女が声を張り上げた。

「私のことはいいから、蠣崎くんを助けに行ってあげて!」
(────!?)

「あの人達、普通じゃなかった。本当に殺されるんじゃないかって気がするくらい……。
池上くんだって気づいてたんでしょ!? あの人達の異常な目! あんな目、見たことない……。
お願い! 助けに行ってあげて! あのままじゃ蠣崎くん……本当に……」

「……大丈夫だ。あいつは一人でもやれる。俺が行かなくても──」

「そ、それじゃ、せめて警察に──」

「やめとけ!」

俺は声を荒げて制止させた。
奴らが俺達と同じような『力』を持っているとするならば、警察が出ても、恐らく解決しない。
むしろ余計な犠牲者を増やすだけで、事態を混乱させるだけになるのは目に見えていたからだ。
警察の手には負えない。しかしそう分かっているなら、尚更俺が助けに向かわなくてはならない。
では、俺は何故そもそもあの場を離れたのか。今、どうして足が動こうとしないのか。
それは康平を信じているから? 分からなかった。この時の俺にはまだ、分からなかった。

「どうして……友達なんでしょ……? 心配じゃないの……? どうして何もしようとしないの!?
私……放っておけないよ! 池上くんが何もしないなら、私一人でも蠣崎くんを助けに行くから!」

「……お、おい! 待て!」

この場を走り去っていく彼女に釣られるようにして、やっと俺の足は動き始めた。
154池上 燐介 ◆qqu0tZFsYU :2008/09/27(土) 00:30:02 0
──建設工事中の建物の敷地内。俺も彼女も、そこに向かっていたはずだった。
しかし、そこに辿り着いたのは、俺一人だった。彼女は道をどう間違ったのか、
途中で見失ってしまっていたのだ。だが、ある意味彼女はここに来なくてよかったかもしれない。
何故なら、そこは俺にとって地獄さながらの光景が広がっていたからだ。

腹部を血で真っ赤に染め上げ、血を吐いて横たわっている康平の姿──。
すぐに駆け寄り上半身を抱きかかえると、康平はうっすらと目を開け喋り始めた。
しかし傷のせいか、どこか眼光にも言葉にも力を感じない。

「……へ、へへ……燐介……俺ぇ……ヘマしちまった……。
バカだよな……『力』使ってりゃ……こんなことにはならなかったかも……しれねーのによ……ゲホッ」

口から血が流れ出し、俺の袖口を染めていく──。
もはや素人目に見ても、医者でも手の施しようがない虫の息の状態であることは明らかだった。

「なぜだ……なぜ、『力』を使わなかった……! あいつらも十中八九俺達と同じ『力』を持っていた。
それを分かっていて、なぜ……!」

「……前に、話したろ……? この『力』を使って、人を半殺しにしちまったことが……あるっ……てよ。
ハァ……ハァ……本意でないのに、人を殺める一歩寸前を経験しちま……うのは、嫌なもんだぜ……?
ゲホッ……それによ……喧嘩は……殴り合いじゃねーと、面白くねーよな……? ゴホッ!」

「……しっかりしろ。掛野は……無事だ。今度はお前が助からんでどうする……!」

「そ……そうか、無事か……。お前に任せて……正解だったな……。
へ……へへ……それにしても、ちきしょう……最後まで……言えずじまいかよ……なさけ……ねぇ」

康平はうっすらと笑みを浮かべながらも、その目には涙が溜まっていた。
俺は拳を握り締めながら、何もしてやれない自分の無力さに打ち震えることしかできなかった。

「ハァハァ……目が霞んできやがった、ぜ……。
燐介……最後に忠告しとくぜ……。"奴ら"に気をつけろよ……"奴ら"は……何かを企んでやがる……。
俺は……見たんだ……"あれ"を……。あ、あれは…………ゲボッ」

言葉の途中で康平の両腕が、急に力なくダラリと地に落ちた。
最期が近づいているのか。俺は何故か非情にも、それだけは冷静に把握していた。

「……俺は、ここまでのよう……だぜ。
すまねぇ……親父とお袋には……適当に理由つけて……はな……しとい……てくれや……」

「康平……康平ェェェェーーーーッ!!!」

康平の瞼がゆっくりと閉じられていく。そして閉じられた瞼は、もう二度と開くことはなかった。

【池上 燐介:夢の中で過去を回想中】
155国崎シロウ ◆Jd2pQO.KKI :2008/09/27(土) 01:39:41 0
『国崎!あんた何したのよ!庭の植物が全滅してアラスカの荒野みたいになってるじゃない!』
除草剤を噴霧しただけだ。安心してくれ。有毒性は無い。
『じょ、除草剤!?』
ああ。庭に植物が繁茂していては、そこから病原性の虫を繁殖させられる可能性がある。
罠を仕掛けられた場合も発見が遅れる。これは貴女の護衛をする為に必要な措置だ。
また、これを行う事で外敵の発見も容易n
『やかましいっ!晩御飯抜かれたくなかったら、今すぐ植木屋で代わりの木を買ってきなさい!』
しかし……いや、それが命令ならば従おう。

コレは……ああ、懐かしいな。この国に来たばかりの頃の、俺だ。
長束誠一郎に紹介されて、俺はこの国である家の令嬢を警護する事となった。
その少女は、特殊なエネルギーを体内に秘めており、
いづれ様々な組織に狙われる危険があるので、保険として本職の俺が雇われたのだ。
……といっても、そうそう妙な目的を持つ組織が動く事も無く、
俺は長い間、初めて戦場ではない『平和』という日々を送る事となるのだが。

正直、戦場で暮らしてきた俺にとって、ここの国は平和すぎて恐ろしかった。
といっても、敵が怖かった訳ではない。俺が全力を出して勝てない相手など、
その時の俺にとっては皆無だったからだ。
恐ろしかったのは、別の事。数年間、この少女の護衛をしていく内に、
俺は様々な体験をした。必要を求められ、学生としての生活をした。
少女の指令で、執事の真似事などをさせられ、礼儀作法というも物を学ばされた。
また、時には少女に連れられて国内の旅行なども行った。
そうしていく内に、俺は徐々にこの国の平和に馴染んでしまっていった。
それは俺が俺で無くなってしまうような感覚だったが、しかし、苦痛では無かった。
むしろ心地よかったとさえも言えるだろう。
だから、俺はいつの間にか恐怖を覚える様になった。
いつか必ず訪れる、この少女の日常が、命が失われる日を、恐れた。
だが、それでも俺は少女を守りきる自身はあった。あったのに……


「……っと。少し寝ちまったか」
周囲をコンクリートで囲まれたかび臭い部屋で俺は目を覚ました。
罅の入った窓から見えるのは――――ナガツカインテリジェンスグループ。敵の中核。
156国崎シロウ ◆Jd2pQO.KKI :2008/09/27(土) 01:40:14 0
>>139
俺は、薬局を出た後すぐ、この場所に向かうことを決めていた。
その目的は、敵地の調査。分析。つまりは破壊工作の下調べ。
ちなみに、ここが本当に敵地の中核であるのかは、宗方と神重の情報だけで
は信じられなかった為、贄(ウロボロス)としての自身が昔使っていた
コネクションを使って裏をとってある。
目的地に着いてから俺は、近くの廃ビルの最上階を陣取り、簡易なトラップを
設置してから建物の観察を開始し、そして今に至る。
眠気を集中で払ってから、特殊な双眼鏡を手に取りビルを眺める。
……警備は厳重。部外者の出入口は無いと考えてもいい。が、それでも
入口を『作る』ことは不可能では無さそうだ。

困難だ。だが、それでもやらなければならない。
そうしなければ、日常は帰ってこない。
あらゆる手段を使って、例え何を犠牲にしようとこの目的は達成させなければならない。
約束の為に。

「……!」
と、そこで背中の火傷が強く疼く感覚を覚えた。
それは、俺の双眼鏡がスーツ姿の一人の人間を捉えるのと同時。
……恐らく、あの人物は、機関の異能者なのだろう。

暫く沈黙した後に、俺は鞄から組み立て式の細い銃を取り出した。
――――スナイパーライフル。
一撃で人の命を奪うソレを窓辺で構え、その人物の頭部に照準を合わせた。
機関の警備を確認するために必要な行動。
俺は、何故か微かに震える腕を意思で押さえつけ――――撃った。
【国崎:機関本部から少し離れた廃ビル屋上で、アルトにスナイパーライフルでの狙撃】
157池上 燐介 ◆qqu0tZFsYU :2008/09/28(日) 02:49:36 0
>>154
康平の遺体に背を向けて、沈痛な面持ちでその場を後にしようとした時だった。
不意に俺の目の前に、見知らぬ一人の男が姿を現したのは。

「フッ……男同士の熱い友情を描いた感動のシーンだな。ここは観客として涙を流した方が良いかな?
ん? 私か? 私は『神楽坂 庚晋』。とある部隊の隊長を務めている者だ。
先程は私の部下と揉めたらしいな? あぁ、部下とは、君の友人……そう、
そこに倒れている者を亡骸へと変えた者達のことだよ」

「──ッ!?」

「うちの部隊には血の気が多く、理性の働かない奴らが多くてね。
よりにもよって今夜『異能者』と一悶着起こしたというから、私が出向いて事の収拾に当たることになったのさ」

「……そうか、お前が奴らの……。仇は、討たせてもらうぜ……!」

俺は『力』を解放していく。しかし、どういうわけか解放されたはずの『力』が出ない。
それどころか、体はガクガクと震え、冷や汗が止まらない。
俺はヘビに睨まれたカエルのごとく、怯えるだけで何もできなかった。
あの男達から感じた『力』の存在を、この男からも感じていたからだ。

「ほう、私と闘うつもりか? いいだろう、どこからでもかかってくるがいい。
どうした? 威勢がいいのは口だけか? 友を殺した張本人達の親玉が目の前にいるんだぞ?」

どす黒い感情が湧いてくるのが分かる。なのに、俺は何もできない。
行き場をなくした怒りと復讐心だけが膨れ上がり、俺の体はパンクしてしまいそうに思えた。

「こないなら、こちらから行くぞ!」

瞬間、男の周りから強烈な波動が広がった。
凄まじい波動の衝撃を受けて、俺の体は背後の硬いコンクリートの壁へと強く打ちつけられた。
──骨が砕けたような鈍い音が体のあちこちで発する。事実、アバラを中心にして
いくつかは折れたのだろう。加えて、打ち付けられた衝撃によって内臓も悲鳴をあげ、
口からは大量の血が噴き出された。

「──ゴボッ!」

俺は力なくその場に倒れこんだ。意識を失いそうな強烈な痛みが全身を駆け巡る。
俺はたった一撃で戦闘不能へと追い込まれたのだ。
痛みのせいで身動きは勿論、呻き声すら挙げることもできない。
158池上 燐介 ◆qqu0tZFsYU :2008/09/28(日) 02:52:33 0
「フッ、その程度の『異能力』で私を倒そうなど笑止千万。あの世で悔いるがいい、己の未熟さをな」

「……グボッ……ゲボッ……」

口からとめどなく血が流れ続けるに従って、意識も徐々に遠のいていく。
だが遠のいていく意識の中でも、俺は奴"ら"の言葉だけははっきりと聞いていた。

「隊長! 我ら三名、只今戻りました!」
「ん? 早いな。目撃者と思われる女の方を追っていたんじゃなかったのか?」
「それが向こうから現われましてね。余計な手間が省けましたよ」
「ただ気になるのは、逃げたもう一人の男の方で……って、あれ? そこに倒れてるのもしかして……」
「あぁ、お前らの言う三人の内の一人だ。確かに『異能者』だったが、口ほどにもなかったな」
「へっ、そうでしょうな。仲間を見捨ててトンズラこくような男なんざ、所詮はその程度ですわ」
「こいつまだ生きてますよ? 止めは俺が刺しましょうか?」
「いや……放っておけ。その内死ぬ。それより……例のアレは無事に運び終えたのか?」
「えぇ、どうやら無事に……。これで一安心ですな」

──そこで俺の意識はぷっつりと途絶えた。
──しかし、俺は死ななかった。次に目が覚めた時は病院のベッドの上だったのだ。
あの後奴らが去った後、たまたま近くを通りかかった人に発見されて、病院に運ばれたという。

「交通事故……ねぇ。それにしては車の破片一つ見つからないという話だけどな?」

ベッドに横たわる俺にそう呟くのは、退院までの俺を担当する医師。
彼は名を『大室』と言った。少々性格に癖があるようだが、今の俺は特に気にはならなかった。
彼の話によれば、俺は手足骨折と全身打撲により全治一ヶ月の重傷だという。

「……ま、俺は警察じゃないから詳しいことはよく分からないけど。それにしても災難だったな」

「次からは後ろにも目をつけておきますよ。車と接触しないようにね。
ところで……僕が事故に遭ってから丸一日ですか? 今日の新聞、ありますか?」

殺人事件があれば新聞に載る。昨日起こった出来事は現実なのか、確かめたかったのだろう。
大室医師は俺の診察を終えると、特に何を言うこともなく新聞を持ってきてくれた。
俺は自由の利かない手で新聞を広げ、読んでいった。
そして、一つの記事に目が止まった。この記事を探すのに、然程苦労はしなかった。
割と大きく取り上げられていたからだ。
159池上 燐介 ◆qqu0tZFsYU :2008/09/28(日) 02:56:39 0
それは、『二人の高校生男女の遺体、貳名市の河川敷で発見』というものだった。
更に記事に目を通していく。記事にはこう書かれていた。
『遺体の身元は同市内の高校に通う────
……女生徒からは暴行を受けたと思われる傷があり、警察では何らかの事件に巻き込まれた
可能性があるとして捜査を進めている』。
そこまで読むと、俺は持っていた新聞を畳んで、近くのデスクに放り投げた。

──夢と思いたかった。だがあれは、やはり現実だったのだ。
結局、俺は何もできなかった。友を救うことも、友が惚れた女を守ることも。
俺は、今こそ理解した。俺はあの時、掛野を助けるために康平と共に闘わなかったのではない。
秘めた『力』を持つ人間との戦闘という、未知の領域に入り込むのが、ただ怖かったのだ。
あいつらが予感させた『死』に対して、恐怖していただけだったのだと。
そして俺は、康平が死ぬと何となく気づいていながらも、自分の身の可愛さ故に、
敢えて康平の言葉に甘えたのだ──。

「フフフ……何が負け知らずだ……。何が仇を討つだ……。
俺は……とんでもないバカだった……! 俺に、お前ほどの勇気があれば…………!
俺は……俺は……」

── 俺ハ 卑怯者ダ ──

「くそッ……クソォォッ…………!!」

拳を握り締めて、ベッドに何度も叩きつけた。その度に、振動で目に溜まった涙が溢れていった──。
これまで幾多の喧嘩で積み重ねてきた自信とプライド、そして手にしていたと思っていた友人の資格。
それが全て、俺の中で消えていく感じがした。

──その後の入院生活の記憶は、俺にはほとんど残っていない。
残っているのは、絶望感と蠣崎康平を殺された憎悪を、如何に鎮めるかを考えていたことだけ。
そして退院後俺は、その術を模索し始めたかのように町から忽然と姿を消した。
後から聞いた話では、俺も何かしらの事件に巻き込まれたのだろうと噂されていたらしい。
だが真実は違う。失踪の間、俺は一人こつこつと復讐の牙を磨き続けていたのだ。
恐怖に打ち勝つ力を──もう、あんな無様な姿を晒すのは、卑怯者になるのは、御免だ──。
と、心に刻み込みんで……。

そして失踪から三ヶ月後──貳名市内に存在するとある建物で、一つの事件が起こった。
160池上 燐介 ◆qqu0tZFsYU :2008/09/28(日) 02:59:28 0
「な、なんだテメ──げぼぁっ!?」
「ひっ! ぎゃあああああああああっ!!」

頭部に巨大なつららが命中し、血と脳味噌を噴き出しながら絶命していく。
こうして無数の死体を作り上げていくのは、失踪されたと思っていた俺だった。

「ここに『神楽坂』という奴がいるはずだ。出せ」

死体となった人間のそのほとんどは、『異能者』と呼ばれる連中だ。
そんな彼らを苦もなく殺害し、返り血を浴びても表情一つ変えないその姿は、
もはやかつての池上 燐介とは別人のようであった。

「どうした、騒々しい! ──こ、これは!?」
「た、隊長!」

奥から現れた『隊長』と呼ばれる人物。当然、見覚えがある。
それは、俺を半殺しにしたあの男に間違いはなかった。

「久しぶりだな、『神楽坂 庚晋』サン。前の借りを返しに来たぜ」

「……貴様、あの時の小僧か! 生きていたのか……。それにしても、何の真似だ……」

「小僧? そういえば自己紹介がまだだったな。俺は池上 燐介。
お前を殺しに、わざわざ地獄の底から舞い戻ってきてやったのさ……」

「チッ……調子に乗りやがって。今度こそ息の根を止めてやるわ!」

ビリビリとした感覚。これは相手が『異能力』と呼ばれる秘められた力を解放した時の独特の感覚だ。
しかし、あの時とは違って、圧倒的な威圧感というものは微塵も感じない。
ましてや俺が恐怖するなどということは、決してなかった。

「確か、お前は俺を未熟と言ったな? では今こそ見せてやる……完成された俺の力をな!!」

右手に膨大なエネルギーが集まり、青白い光を放っていく。
以前の俺では全く考えられないほどの膨大な量の力……
恐怖を乗り越える、それだけの為に得た力が、今初めて発揮された。

(康平……お前は最期まで『異能力』で人を殺めることはなかった……。
生きていたら、お前は俺を止めるだろう。……だが、俺の流儀はお前も知っているよな?
そうだ、俺は『やられたらやり返す』男……)
アイス・ストーム
「『氷雪波』ッ!!』」
161池上 燐介 ◆qqu0tZFsYU :2008/09/28(日) 03:01:57 0
──────。
数日後、俺は蠣崎の墓の前に立っていた。葬式にも出席していない俺は、
今日に至るまで俺は一度足りとも見舞ってやったことはなかった。

「康平……いや、俺はもうお前を名前で呼ぶ資格はなかったか……。
蠣崎……お前の……いや、お前と掛野の仇は俺が討っておいた。
もっとも、これくらいじゃ許してくれないだろうがな……」

空は夏に相応しい晴天──。しかし、俺の気分は未だ梅雨の空のように湿っている。
復讐を果たして、憎悪が消えた。だがその結果、絶望感だけが残ってしまった。
俺はどうしたらいいのか? 死んであの世で詫びるべきか、それとも生きろというのか、
俺はその答えを聞きにきたのかもしれない。

「俺は……信頼に値しない男だった……。なぁ蠣崎……お前ならなんて言う?」

返事をしようもない墓に向かってそう呟いた時、俺の周りを複数の男が取り囲んだ。
学ランを着ているから高校生だろう。しかも、あれは俺が通っている学校の制服。

「よお池上ィ……久しぶりだなぁ? 相棒の蠣崎が死んじまったから、学校辞めたかと思ったぜぇ?」
「今まで何してたんだぁ? ずぅーっと泣き寝入りしてたんかぁ? ヒャハハハハ!」

顔を確認しなくとも分かる。この声は唯能高の三年を仕切ってる番格とその取り巻きの連中だ。
俺と蠣崎が生意気だという理由で、以前に囲みをくらったことがある。
その時は二人で全員を薙ぎ倒したのだが、どうやらその事を根に持っていたらしい。

「先輩……。俺は喧嘩なんて気分じゃねーんです。しばらく放っておいてくれませんか?」

「……プッ。こいつホントーに腑抜けちまったみてーだぜ?」
「こいつぁいいやぁ! 今ここで、前の借りを存分に返してやろうじゃねーのよ!」

番格の男の拳が、俺の頬に深く沈み込んだ。
以前であれば考えられないことだが、俺は殴り返す気すら起きずに、
さながらサンドバックのように一方的に殴られ続けた。
そして、痛みでもう意識も遠ざかろうかという時、一つの声が俺の頭に響いた。

『なっさけねーなぁーオイ!』
(──!?)
『それが負け知らずって言われた男かぁ? ああ?』
162池上 燐介 ◆qqu0tZFsYU :2008/09/28(日) 03:08:58 0
その声は……蠣崎の声だった。聞こえるはずのない声……そう、聞こえるはずがないのだ。
一応辺りを見回してみたが、勿論蠣崎の姿はない。

(幻聴……?)
『んなこたぁどーだっていいだろ! 俺が聞いてんのはやられっぱなしでいいのかってことだぁ!』
(それこそどうでもいいことだ……。俺は、お前を見捨てた……掛野を死なせちまった……。
お前の信頼を裏切っちまった……。なぁ、答えてくれ蠣崎……俺はどうしたらいい?)
『バカかおめー? 例え二人で闘っててもなぁ、俺達は勝てなかったんじゃねーか?
それは直接闘った俺達が、一番分かってるこったろ? 俺が死んだのはおめーのせいじゃねー。
それに掛野も言ったんだろ? 自分のことはいいから、助けに行ってくれ……ってな。
死んじまった掛野だって、おめーを怨んじゃいねーはずだぜ?』
(だが…………)
『分かんねー奴だなぁー。いいか、おめーが死んだって、俺は嬉しくもなんともねーんだよ!
すぐに誰かにぶっ殺されたり後追い自殺なんてしてみろ! そん時ぁあの世でぶん殴ってやっからな!
それが嫌ならよ……死人なんかに気ィ遣わずに、存分に生きてみせろや!』
(────!)

「ケッ、まだ立ってやがる……。しぶてー野郎だぜ。だが、こいつで終わりだ。ほらよ、お寝んねしな!」

番格の男が腕を振り上げて、拳を俺の顔面に向けて放った──。
瞬間、「パン」という切れのいい音が鳴ったが、男の拳は俺の顔には命中していなかった。
拳は、俺の手の平に納まっていたからだ。

「殿上先輩……でしたっけ? 以前と比べて、パンチが重くなりましたね……。効きましたよ……。
あんたも、特訓してたってわけですか……」

『そうだ燐介……おめーはこれくらいでウジウジするような奴じゃねーよね?』
(……フッ、死んでも出てきやがって。お前のしぶとさはゴキブリ並だぜ、全く……)

答えを求めておきながら、この言い草。苦笑いを浮かべた蠣崎の顔が浮かんできそうだった。
切れた唇から流れた血を拭うと、俺は番格の男、殿上の頬に拳を放った。
殿上は殴り飛ばされた形で体ごと後ろの取り巻き連中にぶつかる。

『まだこれくらいで済ませるつもりはねーんだろ? その調子で、俺の分まで暴れてくれや』
「当たり前だ……こいつらにはやられた分がまだ沢山残ってるからな。まだまだ俺の気は晴れてねぇ。
『やられたらやり返す』……。さぁ、まだ終わってねぇぞ! 二度と俺に逆らえねぇようにしてやるから覚悟しな!」

「ふざけやがって……やっちまえー!」

「おおぉぉらああぁぁぁぁぁぁッ!!」

俺の顔に、自然と笑顔が戻っていた。
この時以来、蠣崎の声は俺の耳には届かなくなったが、俺にはもう十分だった。
俺の心も、どうやら梅雨を明けたようだから──。
163池上 燐介 ◆qqu0tZFsYU :2008/09/28(日) 03:20:22 0
「……はっ! ここは……」

──目を空けると、そこは真っ暗な道のど真ん中だった。横には倒れている白衣の男。
そうだ、俺は『夜叉浪』と名乗る機関の人間に眠らされていたのだ。
腕時計を確認すると、時計の針は、午後6時を回ったところだった。

体を起こして、ゆっくりと立ち上がる。時間から考えて意外と浅い眠りだったようだが、
それでも眠ったせいか、疲れはほとんど残っていなかった。
しかし、そう……さっきもそうだったが、どうして今頃あの時の夢を見たのだろうか?
一度ならず二度までも……これは偶然だろうか?
それともここに来て、何かが俺に警告しているのだろうか?
……いや、答えの見つからぬことなど考えても仕方がない。今は忘れよう。

それにしても……えらく懐かしい夢だった。
あれから五年の月日が経っているとは、時間というものは随分と速く流れるものだ。
考えてみれば、蠣崎の墓、あれ以来行っていなかった。
この闘いが無事に終わったら、もう一度顔を出してみるのもいいかもしれない。

だが、夜叉浪は言っていた。「ファーストナンバーは甘くは無い」と。
確かに、その通りのようだ。俺を瞬時に眠らせたあの力……もしあいつに俺を殺す気があるなら
眠っている時に容易に殺せたはずだ。眠らされずにあのまま闘っていても、無事で済んだかどうか。
前も俺一人の力では流石に限界がある。そう判断したからこそ籐堂院と同盟を組んだわけだが、
それでも俺のファーストナンバーに対する見極めはまだ甘かったかもしれない。
つまり、もっとより多くの協力者を集めた方が良いのかもしれない、ということだ。

とはいうものの、心当たりは少ない。できれば顔見知りの方がいいが、
これまで会った機関側ではない異能者の中で、今も生きている奴がどれだけいるのか。
少なくとも俺は殺していない奴を思い返してみよう。
まず、『ブレザーの炎使い』、『国崎薬局の店長』、『妙な霧男』、『桐北』、『若宮』、
『神重』、『宗方』、『山田』、『煌神』、『籐堂院』、『天宮』、『岩城戦で共闘した長髪男』に『眼鏡青年』。
防空壕前で戦った『剣使いの男』も止めを刺したわけではないので何となく気になるが……
まぁ、ここはカウントしないでおこう。
さて、果たしてこの中でどれだけの人間が生き残っているのか。
しかも、全員の居場所も知っているわけではない。
仮に生きていても、俺と協力する気があるかどうかも定かではないのだ。
しかし、どうあれまずは見つけなくてはなるまい。とりあえず、今挙げた連中の内の
一人でも確実に居るだろうと思える場所へ、行ってみることにしよう。

「となると……まずは『国崎薬局』に……なるな」

俺はくるりと体の向きを変えて、国崎薬局に向けて歩き出した。

【池上 燐介:国崎薬局に向けて歩き出す】
【左腕の骨折、右肩の刺し傷、まだ完治せず】
164籐堂院瑞穂 ◆FleR8jlnN6 :2008/09/28(日) 21:10:55 0
>>145
私が統時に全てを話し終えると、やはり殺してくるなんて事は無かった。

「……なあ、仲間として俺と来ないか。お前、頼れる人間がいないんだろ?
 だったら俺と来て、復讐してやれよ。機関に、裏切った人間に。
 お前を裏切った人間に復讐したくないってンなら、その女から力ずくで奪い取ってやんな。
 別に俺を殺したいってんならそれでいいさ。そんときゃ全力で相手をさせてもらうだけだしな」

統時の申し出は有り難かった、だが協力関係を自ら壊してしまった私が今一度仲間になるなんて虫が良すぎる。
統時は許してくれるとは思うが、私がそれを許さない。

「有り難う、貴方の言葉は嬉しい。
でも、貴方について行ったらまたいつ迷惑がかかるか分からない。
それに私は師匠を恨んでいる訳じゃないの、師匠の選んだ道は彼にとって正しい道だった。
私がとやかく言う事じゃないの。
少し元気が出てきたみたい、これなら頑張れるかな」

私は私なりに自分の生きる道を見つけたいと思う。
今まで師匠に頼ってばかりだったから、これからは自分の足で歩きたい。
生きる目的なんて些細な物でいいのだ。
師匠を越えよう。
常に私の前を歩き、私を護り導いてくれた師匠。
娘として、そして弟子として師匠を越えたい。
そしてまた、師匠と一緒に二人、いや師匠と桔梗さんと私の三人で穏やかに暮らしていきたい。

「統時、本当にありがとう。
貴方のおかげで私が何をしたいかがぼんやりと見えてきた気がする。
私は私の道を歩く、でも時が来たらやっぱり貴方には協力して欲しい。
目指すものは違うけれど、行き先は同じみたいだから」

私は踵を返して歩き出そうとするが、統時が自力では立ち上がれない事に気が付いた。
私は統時の手を取ると、そのまま肩にかけ担ぎ上げる。

「私がした事だから、責任は取らせて。
どこか行きたいところがあれば行くけれど、どうする?」

【籐堂院瑞穂:統時に何処に行きたいか問う 恋島には気付いていない】
165小村 禅夜 ◆3LPMHhiq9U :2008/09/28(日) 23:01:37 0
>>143>>146
「いけっ!」
キギキッキキ!
神重が血で出来た蝙蝠を此方に放つ
(・・・はぁ・・・・・はぁ・・・くっ!!)
ブゥゥゥゥゥゥゥン!!!
手に持ったランスを手首を使って回転させる
蝙蝠がバシャ、バシャと血に戻り、落ちていく
(・・・・攻撃力はさほど高くない、むしろ無いに等しい・・・・いや・・これは!!)
策略に気づき、後退しようと跳んだ・・・が
(マスターの精神状態が不安定と断定。強制制御システム発動)
体が膠着し、動きが止まる。装神したゴッドバルトが関節を拘束したのだ
「なっ!!・・・」
「血 蝙 爆 破」(ブラッディサックボム)
蝙蝠達が閃光を放ち…
ドオオオオオオンッ!
大爆発を引き起こした

「・・・・かはっ」
煙の中心で膝を着く、いや着かされた
(・・・なぜ・・・ゴッドバルトが・・・勝手に・・うご・・・)
意識がスーっと遠のいていく
(・・・マスターの意識喪失を確認。これより戦闘区域からの離脱を開始。
・・・・敵の接近を確認。対処する。)
小村の体から離れ、通常体系に戻る。相手はすぐそこまで来ていた。
「ヤラセン」
相手に向かい合い、近づいて来た短髪の男に飛び掛る。
相手はそれに気づくと、攻撃をゴッドバルトに向ける。がいくら体を裂かれても
ゴッドバルトは勢いを止めずそのまま体当たりをかまし、相手ともども倒れ込んだ
(・・・これより『神の影ゴッド・ファントム』を用いて、この区域から離脱する)
突如、切り裂かれた体の一部と体当たりした体の一部が両方ともゴッドバルトになり、
ゴッドバルトが二人に増えた。今、短髪の男と倒れこんでいるゴッドバルトには目が無かった。
これはコピーであり、『神の影』はゴッドバルトのコピーを生み出せる。
コピーは短髪の男を押さえつけ、本体は小村をヒョイっと担ぎ上げる。
「・・・スマナイガ、我々ハコレデ失礼サセテモラウ。
・・・オ主ハ、アト四日間コノ町ノバトルロワイヤルヲガンバッテクレ。」
短髪の男は「何を言ってるんだ?」という顔をした。
(・・・異能力デアル、オレガシャベッテルカラ驚イテイルノカ、
ソレトモ『メール』ガ届イテナイノカ?)
土煙が晴れ始め、神重がこちらを確認する。
「・・・モシ知ラナイノデアレバ、アノ男ニ聞ケ」
そう言って、神重を指差す。
その後、背を向け走り出す。
当然それを追って、神重や短髪の男が後を追おうとするがコピーが
『神燐雨射』で二人を牽制する。
その間に本体は大急ぎで二人から姿を消した
166小村 禅夜 ◆3LPMHhiq9U :2008/09/28(日) 23:04:15 0
薄暗い路地裏、ゴッドバルトは小村を担ぎ大股で歩いていく。
もう日は沈んだろうか。出たばかりの月はここからは見えなかった
あの場所から離れてかれこれ、十数分経っただろうか。
途中でチンピラに絡まれたが拳を壁に思いっきり叩きつけたら逃げていった
(・・・流石ニ限界カ)
だんだんゴッドバルトの動きが鈍くなってきた。
異能力だけで動くにも限界が来たのだ。
(ココデ倒レタラ・・・マズイ)
ゴッドバルトが手首を空へ射出する。手首は鴉となって飛んでいく。
(アーリー殿ノ所ヘ・・・・ク・・)
すると目の前にとある看板をみつける
(・・・『国崎薬局』・・・・ココナラ・・手当テグライシテクレルダロウカ)
冷静に考えれば、その可能性が限りなく低いのだが今はそれに賭けた。
看板の下で自分は見られないようにして、小村を壁にもたれかけさせた。
(・・・・チッ)
ゴッドバルトが崩れるように、そして静かに消えていった

【小村:神重、七草に『神の影』を放ち、その間に逃亡。現在国崎薬局前】
167戦場ヶ原 天 ◆u5ul7E0APg :2008/09/29(月) 00:48:36 0
日はすっかりと落ちて宵闇が支配した街に、さらなる深い闇が形となって飛び交う。

「ギャァアああああァアああッ!!!お…俺の…俺の腕がァッ…!!!」

人影のない路地裏。悲鳴を上げて倒れ込んだ男の左腕は肩口から忽然と姿を『消していた』。
そんな無残な姿にされてのたうちまわる男に、ゆっくりと歩み寄る黒い影があった。
闇によく融ける漆黒の着物姿とは対照的に、月の光を反射して燃え盛る炎のような色をした髪の男。
その男の名は―――『戦場ヶ原 天』。
戦場ヶ原は刃物のように研ぎ澄ました目で無残な姿の男を見下ろしながら、低い声で言った。

「さぁ教えやがれ。『機関』の本拠地はどこだ。貴様も達磨になる趣味はねェだろう。」

「ヒッ…し、知らない…!!本当だッ!!お…俺だって本社から直接来たわけじゃないんだッ…!!だからッ…だからああああ!!!」

「…なら消え失せろッ!!!」

戦場ヶ原の左手から放たれた漆黒の球体が広がり、男の身体をすっぽりと飲み込んだ。
――『シンギュラリティ・ゼオレム』ッ!!!
左手が勢いよく閉じられるのと同時に球体は急激に収束し、男の体とともにその場から完全に『消滅』した。

「チィッ……!」

戦場ヶ原は焦っていた。
リンがツバサを名乗る機関幹部によって攫われて随分な時間が経過している。
あの男はNo.2だと名乗っていた。それほどの重役が直々に連れ去りに来たのだ。ならばその先は間違いなく機関の基幹部――敵の本拠地だ。
にも関わらず、戦場ヶ原の方はまるでその足跡を掴むことすら出来ていない。
こうして殺気を垂れ流し、わざと機関の刺客に見つかっては返り討ちにし、そこから情報を絞り出そうにも、本拠地の所在は出てこない。
知るべき者――つまりそれなりの地位の者を見つけない限り、その情報は手元に来ないだろう。

「猿…、まだかッ…!?」

戦場ヶ原は携帯を取り出し、その画面に目を落とす。しかし待ち望んだ者からの連絡は未だ入ってこない。
猿飛栄吉――、機関の深層に潜り込むと言って去った旧友は、無事でいるだろうか。
そんな彼の目の前、路地裏の闇の中に動く物体があるのに気がついた。
「…?」
遠目に見ればゴミのようにも見えるその黒いカタマリは、もぞもぞと不気味に動きこちらに近づいてくる。
「なんだ…?」
得体のしれない訪問者に面食らいつつ、その動きを眼で追っていた戦場ヶ原は、やがてその物体の正体を知る。

「お前……!猿ッ!?猿か!?」

黒い物体に駆け寄り、それを抱き起こす。
その物体が月光に照らされると、それが猿飛栄吉その人であることがよくわかった。
自慢の黒いスーツは擦り切れて汚れ、身体には無数の傷跡が痛々しく刻まれていた。
そして何より目を引いたのは――――…

彼の全身に刻まれた、光る『数式』だった。

「おいッ!猿!!どうした!?城栄金剛かッ!奴にやられたのか!?」

「ウ…アア………」

猿飛は苦しそうに呻くばかりで、言葉になるような言葉はとても口に出来ない状態だった。
辛そうに精一杯腕を胸ポケットに入れると、中から携帯を取り出す。
「…!?」
戦場ヶ原が驚いた表情のまま彼の行動を見守る中、猿飛はおぼつかない指つきで携帯に文章を打ち込み始めた。

  しくっちまった わりい だんな

168戦場ヶ原 天 ◆u5ul7E0APg :2008/09/29(月) 00:51:44 0
痛々しいほどに簡潔な文章で、猿飛は必死に自分の伝えるべき情報を戦場ヶ原に伝えようとした。
戦場ヶ原は切れ長の目を大きく見開いたまま、彼の行動を見続けていた。
携帯の画面には次々と文章が撃ち込まれる。

  こんごうに やられた  じょうほうが でないように おれの ことばを うばいやがった

  やられる まえに なんとか して にげ てきた  やつはいま

  ながつかいんてりじぇんす ほんしゃびる にい る

ナガツカインテリジェンス。この貳名市を象徴する巨大企業の母体。
戦場ヶ原が渇望した情報を、この男はまさに命を懸けて手に入れてきたのだ。

  やつのもくて き は  え ん ま

「ッカハッ!!」
「猿ッ!!」
そこまで打って猿飛は大きく咳きこんだ。血を吐き、その表情を苦痛に歪める。金剛の刻んだ『数式』が、どんどん彼の身体を蝕んでいるのだ。
それでも猿飛は文字を打つ手を休めはしない。
携帯を掴む手をガクガクと震わせ、霞んだ目を何度もこすりながら必死に情報を伝える猿飛に対し、戦場ヶ原はただ黙って携帯の画面を凝視していた。
金剛は、太古の異能者“えんま”を復活させるつもりであること。そしてその力を利用して世界を掌握しようとしていること。そのために異能者狩りをすすめていること。異能者の中にある“めたとろん”と呼ばれる物質を集めていること……
断片的ではあるが、それだけの情報を、猿飛は虫の息になりながら30分もの時間をかけて懸命に伝えた。そして戦場ヶ原もまた、懸命に理解しようとした。
猿飛は伝えるべきことを伝え終わると、携帯の画面に短い一文を打ち込んで、その腕を力なく地面におとした。

 ホ ウ コ ク  オ ワ リ

この7文字が何を意味しているのか、戦場ヶ原には分かっていた。
手負いの忍びは、自らの最期を悟った時、決して誰にも死を悟られることなくその生を遂げなければならない。現代の忍び――猿飛栄吉は、その自らの運命を知っていた。
――使命はもはや果たした。さぁ、早く楽にしてくれ。
猿飛は戦場ヶ原に『介錯』を頼んだのだ。
(…猿……。)
戦場ヶ原は顔を活からせて立ち上がった。
その表情には、瀕死の親友を助けようだとか、親友をその手にかけることへの戸惑いだとかの感情は一切籠められていなかった。
それは己の使命に命をささげた偉大なる一人の戦士に対する敬意―――…
戦場ヶ原はゆっくりと左手を上げると、それを横たわる猿飛へと向けた。猿飛の表情は、なんとも彼らしい、人懐っこいおちゃらけた笑顔だった。

「あばよ。」

なんともあっけない別れの言葉とともに、やがてその笑顔が闇に包まれる。
『シンギュラリティ・ゼオレム』。戦場ヶ原の生み出した黒球に呑みこまれ、猿飛の肉体は一瞬にして消滅した。
猿飛の肉体を飲み込んだ黒球は収縮して戦場ヶ原の前に小さく灯る。
(あばよ…猿。お前らしい、あっけねぇ最期だったよ。)
戦場ヶ原は泣いてはいなかった。むしろふつふつと湧き上がる強い闘志に、彼自身驚いていた。小さな黒球は、そのまま戦場ヶ原の胸に吸い込まれるようにして消えた。
(だが…お前の遺したもの、死んでも無駄にはしねぇッ……!!!)
猿飛が命を懸けて手に入れた幽かな光明。それにすがり、戦場ヶ原は前へ進む。彼の身体の奥底で、猿飛が臭ぇよバカと茶化した気がした。

「なんだ、君の仲間かと思って連れて来たが、まさか何も言わずに殺すとはな。」

「!!!」
突然路地裏の闇の中から届く澄んだ声に、戦場ヶ原は振り返る。
コツ、コツと女性特有の靴音が闇の中から響く。
「久しぶりだな。…と言っても、私と君の間ではろくに自己紹介すらしていないのだが。」
徐々に明らかになる声の主の姿を見て、戦場ヶ原は驚きを隠せずにいた。スラリとしたモデル体形の美女で、腰まで伸びる黒髪。背負った長物の日本刀には、見覚えのある意匠が凝らされていた。
そう、戦場ヶ原はこの女に、かつて一度会ったことがある。

「改めて自己紹介をさせてもらおう。私の名は、神野屡霞(かんの・るか)。安心しろ。今の私に敵意は無い。」

「貴様は……あの時のカタナ女ッ!!!」
そう。その声の正体は、二日前、港で戦場ヶ原と死闘を繰り広げた刀使いの美女だったのだ。
169戦場ヶ原 天 ◆u5ul7E0APg :2008/09/29(月) 00:53:03 0
【NPC猿飛栄吉:死亡】
【戦場ヶ原 天:NPC『神野屡霞』に接触】
170神重智&敬 ◆6eLTPQTFGA :2008/09/29(月) 06:46:07 0
>>146 >>165

「ヤラセン」

煙の中から"何者か"の声が聞こえ、同時に瓦礫に何かがぶつかる音が聞こえた

「・・・スマナイガ、我々ハコレデ失礼サセテモラウ。
・・・オ主ハ、アト四日間コノ町ノバトルロワイヤルヲガンバッテクレ。」

また"何者か"の声が聞こえる
少しずつその砂煙が晴れていき、その正体が判明する
それは、さっき機関の男が操っていた奴自身の能力
それが支配者の意思とは別に行動し、逆に操っているというのか

「・・・モシ知ラナイノデアレバ、アノ男ニ聞ケ」
こちらを指差し、能力体は答える
(何の話だ…? このバトルロワイヤルは全ての異能者にメールで配信されているはず)
(携帯持ってないんじゃないか…?)

ダッ!
能力体がこちらに背を向け走り出す
「チッ…逃がすかよ!」
敬も同じく走り出そうとするが

ガガガガガガッ!

!?
(さっきの能力体!?どうやって移動しやがった!?)
(落ち着け敬、あれは恐らくコピー体だ)
敬も落ち着いて姿を確認する…そう、コピーだ
その瞬間地面が炸裂してまた砂煙で確認できなくなる

「コピー体の癖にいっちょ前のことはできやがるのか…」
徐々に砂煙が晴れたときには…その姿は無かった
七草が倒したのか、それとも役目を果たしたために消えたのかはわからない
だがそのコピーはもうそこにはいなかった。

あとに残るは神重と七草の今まで戦ってた二人である
今から再び殺し合いが始まってもおかしくはない
だが――
171神重智&敬 ◆6eLTPQTFGA :2008/09/29(月) 06:46:34 0
ドクンッ ドクンッ
「うっ…クッ…」
能力の使いすぎか、はたまた別の何かか
それはわからないが、間違いなく今の状態は危険である

だが…それは向こうも同じ筈…
手負いの熊一匹殺せないで何が串刺し公だ…!

(敬! それ以上の戦闘は危険だ、お前にもかなりダメージが蓄積されているはず…
 奴が戦闘をしかけてきた場合…退け)
(バカ言ってんじゃねぇ…コイツくらいなら今の俺にだって…)
(そうかもしれない、だが機関の人間がまた現れたらどうする? 勝てないぞ?)
(…………………)
(奴が戦闘を行おうとしたら、ベルトに仕込んである閃光弾を使って撤退だ)
(………わかった)

七草に向き合い…奴の次の行動を待つ
さっきの男が喋ってたことを聞くか…?
それとももう一度俺と戦うことになるのか…?

さあ…どうでる…?

【神重:疲労状態 戦闘の場合速やかに撤退する予定】
172七草 ◆O93o4cIbWE :2008/09/30(火) 23:21:43 0
>>165>>171
(さようなら、バラバラにしてあげるわ…)
男の首を落とすべく右腕を腕を振り下ろす、殺った―そう確信する…だが。

「ヤラセン」

刹那、腕を弾かれる――そこには分離した男の能力体の腕があった、そしてソレは全身を分離させ私に飛び掛った。
「チッ、邪魔よ!…キャッ、こ…の放しなさい!」
大男の左半身を切断するがその勢いは止まらない、腕を掴まれそのまま互いに地面に倒れこんだ。
そして突如、切断した部分と、私を押さえつけている部分が全身を構築、つまり二人になった――
(まるでプラナリアね…ってそんなこと考えてる場合じゃないわ!離れろ!)
目の前の大男を切断し、突き飛ばす
一方の能力体は本体を担ぎ上げ、こう言った。

「・・・スマナイガ、我々ハコレデ失礼サセテモラウ。
・・・オ主ハ、アト四日間コノ町ノバトルロワイヤルヲガンバッテクレ。」

バトルロワイヤル?
彼女には何の事か分からないようでいた。

「・・・モシ知ラナイノデアレバ、アノ男ニ聞ケ」
そう言い、神重の方を指差す、
その後、背を向けて走り出した。
勿論、逃がすはずがない、男を追いかけようとした、その時、

ドガガガガッ!

先程の分体が、爆裂する鱗を撃ち出し行く手を遮る。

「もう…っ邪魔なのよ!!」

横に飛び退き、射線から外れ回避、そして2歩目で分体の懐に潜り込む――
――分体は、バラバラになって消滅した。

男は?……どうやら逃がしてしまったようだ、

「もうっ!逃げられたじゃないの!」
やり場の無い憤りを覚えた目線の先には…先程まで殺し合っていた男………
所々負傷しており、今までの戦闘での疲労も見受けられる。
対する私は肉体的には無傷だが…

――ズキン――――

(大丈夫…あと少しだけよ…いけるわ…)

先ずは先程の大男が言っていた――バトルロワイヤル―それが何なのか聞くことにしよう。
此方の出方を窺う神重を尻目に平然と歩み寄り話しかける

「逃げられちゃっわね…そうそうアイツが言ってたバトルロワイヤルって何なのかしら?
あぁそんなに身構えなくても良いわよ、今は貴方と戦う気はないから
それとも…さっきの続き…したいの?…ふふっ」

話してる間も脚は止めず、神重に近づき、目の前まで来ていた。

「冗談よ、とりあえずアイツが言ってた事教えて欲しいの、知ってるんでしょ?」

【七草:不調を隠し神重に接近し話を聞く、戦う気はない】
173戦場ヶ原 天 ◆u5ul7E0APg :2008/10/02(木) 01:12:06 0
「改めて自己紹介をさせてもらおう。私の名は、神野屡霞(かんの・るか)。安心しろ。今の私に敵意は無い。」

「貴様は……あの時のカタナ女ッ!!!」

路地裏の影の中からゆっくりと姿を現したのは、穏やかな表情を湛えた黒髪の美女。
しかし、戦場ヶ原はまったく別の表情をした彼女と、一度相まみえていた。
二日前、港の埋立地――…

(紙一重の戦いをしようぜ。生を実感しようぜ。なあ同類!!)
(てめェはただじゃ殺さねェ!俺の切れ味を、体中で体感させてやるよォ!!)

地獄の底から這い出たようなしゃがれた声で下卑た言葉を使い、端正な顔立ちを醜く歪めて笑っていた。
そんな彼女が、今、眼の前で静かな眼をして立っている。

「そう警戒してくれるな。私は君に“借り”を返しに来ただけだ。」
「…借りだと?」

覚えの無い言葉に、戦場ヶ原は一瞬呆ける。

「――そう。君はあの時、禍ノ紅に身を支配されてしまっていた私を解放してくれただろう。」

(……!)
戦場ヶ原の顔に驚きの色が滲む。
そうだ。あの時の彼女の眼の奥にうごめいていた妖しい光。
妖(あやかし)に憑依された者の眼光だ。
戦場ヶ原はあの時、彼女を解放しようとグラウンドゼロを使い、右腕を失ってまで妖を取り払ったのだ。

「フッ、よもやあの状態で私を助けようなどという行動が出来るとは、君はよほどの御人好しか、それともただの莫迦か―――…」
「うるせェよ。」

毒づきながらも戦場ヶ原の顔は笑っていた。神野は急に真剣な目つきに変わり、戦場ヶ原の今は亡き右腕に目を落としながら言った。

「…ともあれ、君にはまったく大きな借りを作ってしまったな。君を探して街を彷徨っていたところ、同じように君を探しているという瀕死の男に出くわした。
 なにかどうしても伝えなければならないことがあると言ってな。ちょうどその時、君のあの刺々しい独特な殺気を感じ取ったから、ここへ連れてきたというわけさ。」

「猿…」

猿飛は偉大な戦士だった。己の命を散らして使命を果たしたのだ。
今度は自分が、それに応えなくてはならない。
そんな決意が、戦場ヶ原の胸中を巡っていた。
戦場ヶ原の浮かない表情を見て、神野は心配そうに言った。

「しかし聞くことだけを聞いて君は彼を殺してしまった。…もしや、仲間では無かったか?」
「……いや、仲間だ。連れてきてくれてありがとよ。礼を言う。」

戦場ヶ原は自分の悲しんでいる顔を見せまいと顔を逸らした。
そんな様子を見て、神野の顔には疑問の色が浮かんだが、すぐに消えた。
174戦場ヶ原 天 ◆u5ul7E0APg :2008/10/02(木) 01:12:48 0
「…どうした?借りとやらはもう返したんだろ。さっさと失せてくれ。」
「ところがそうはいかないな。」

立ち去ろうとする戦場ヶ原のあとに、神野は当たり前のようについて行く。その手は、戦場ヶ原の右腕がついていた所に添えられた。

「君は己の右腕を差し出してでも私を助けた。ならばその右腕の役目、私が担うのが筋だろう?」
「…どういうつもりだ。」

戦場ヶ原が邪険に睨むのもものともせず、神野は続けた。

「早い話が、私も君の闘いに手を貸そう、というわけさ。
 私もこの二日間、ただうろついていたわけじゃない。この一連の騒動、黒いスーツのうさんくさい連中が裏で糸を引いていることを知った。
 そしてそれに、君が絡んでいることもな。私にはとんと関係のない話だが、『こいつ』が騒いで仕方ないものでね。」

言いながら神野は、背負った太刀に手をかけた。

(赤髪ヤローは八つ裂きにしてやりてェが、『きかん』ってとこにゃこいつより強ェ奴がウジャウジャいるんだろ?
 こいつについてけばそいつらみんな血祭りに挙げられんなら、こいつの処刑は後回しだ!なァ!屡霞ァ!!)

禍ノ紅がちっとも悪びれずに神野の脳内に喚き散らした。神野はため息をつきながらも、苦笑いで言った。

「常に人を斬らないと人格を保てなくてね。まぁ、病気のひとつのようなものさ。
 同じ人間なら、世の中のためにならない連中を斬るべきだ、違うか?」

さらりと言いのけた神野を見て戦場ヶ原は、こいつもカタナも結局は同類――そう思って可笑しくなった。
なんにせよこの女の戦闘能力は自分とほぼ互角。役に立たない足手まといを連れ歩くよりは遥かに効率的だ。
リンは囚われ、猿飛亡き今、戦場ヶ原の味方は一人もいない。城栄金剛という強大な敵を相手にするには仲間が必要だった。


「また勝手に乗っ取られて暴れ出しても、今度は助けねぇぞ。」

「その時は私を殺せばいい。そうだろう?」

物騒な言葉のやり取りをしながらも、二人の顔は笑っていた。
戦場ヶ原 天と神野 屡霞。二匹の『猛獣』が今、手を組んだ。

【戦場ヶ原:NPC神野屡霞と合流。ナガツカインテリジェンスビルへと向かう。】
175 ◆6eLTPQTFGA :2008/10/02(木) 01:39:47 0
新生局地殲滅特化型特殊作戦部隊――彼らはそう呼ばれている
No.100、鬼神の山田権六と呼ばれていた人物が率いていた部隊
離反事件によって、数多くの構成員が抜けることとなった
そこで金剛によるセカンドナンバーを投入した新たな『虐殺部隊』それが彼らの姿だ
そしてここに…虐殺部隊の緊急本部に…その部隊を統括するものがいる

「ぬりぃな…」
金剛の口癖と同じ言葉を男はため息を漏らしながら呟く
「あのお方のご命令で…せっかくこんな辺鄙な場所まできたっていうのに
 この俺が司令塔とはなあ…俺は戦地にいるほうが似合ってるんだよ
 なぁ…セルゲイ…お前もそう思わないか?」
そういいながら横にいるセルゲイと呼ばれる長髪のロシア人に短髪のロシア人が話しかける
「確かにお前は司令塔向きではない、だがあのお方がお前を信頼して隊長に抜擢したんだ
 そう文句を言うものでもないだろうが…スティクス」
長髪の男はそう言いながら本のページをペラペラとめくる
「そりゃあそうだけどな…No.11もここにきてるんだろ?
 久々に会って愛を囁いてやらないとな…あいつも寂しいだろう」
「相も変わらず…まだNo.11に恋をしているのか」
「当たり前だ、あの整った顔立ち…ルージュ…戦場で生き残った者の眼
 それに彼女の能力…俺と同じ身体能力増強系能力者…そこが運命を感じねえか?」
ため息をつきながら長髪の男は頭を抱える、どうしてここまで自信満々なのだろうか…と
その時だった…

シュンッ

機関の連絡を渡す人間、相変わらず胡散臭い格好をしているものである。
「金剛様からのご命令と我々の情報をお持ちいたしました…」
そう言いながら、淡々と現在の状況を告げる
No.11カテリーナポポフスキーの敗北、No.21クラコフの死亡…いずれも自分と同じ能力者がやられていること
その報告を聞いて怒りと、そして同時に興味の眼を短髪の男は光らせていた
「カテリーナとクラコフがやられるとは…両方とも並みの異能者じゃねえな…」
「そこで貴方にも出番が回ってきたというわけです…スティクス・ガノスビッチ隊長
 金剛様のご命令です…虐殺部隊を全投入、貴方様も、幹部の方々も全て動員してください
 場合によっては鬼の紋章の使用許可もでていますので…いつも以上の戦果を期待しております」
そう言って男は消えた
スティクスと呼ばれた男は少し軽い伸びをしながら…
「…セルゲイ…残りの4人の"幹部様"は今どこにいるんだ?」
時計を確認しながらセルゲイと呼ばれた男は答える
「早い奴で一時間…遅い奴でも五時間以内にはここに到着する予定だ」
ニヤリと笑いセルゲイは答える
「上出来だ…緊急招集したってのに…さすが俺様の部下だけある」
スティクスはゆっくり立ち上がり…機連送を使い全ての虐殺部隊員に指示を出す
176 ◆6eLTPQTFGA :2008/10/02(木) 01:40:18 0
「あー…俺だ…スティクスだ…今から全ての隊員に指令を出す
 戦闘ランクをBからSにまで引き上げる…機関に敵対する全ての者に死を
 スコアを満たしていても関係ない、異能者の数を減らせ…より優れた
 より上位の異能者だけを残して…全てを抹殺しろ…これは最高命令である
 なお…あのお方より緊急時には鬼の紋章の使用許可が出されている
 乱用はするな…だがもしもの時は紋章を使って戦え…諸君の戦果を期待している――以上」

機連送の連絡を終え、スティクスは黒い革手袋を着けながら出口へと向かう
「セルゲイ、ここの管理は一時的にお前に任せる
 "司令塔"として適切な配置を頼むぜ…それからこの周囲へ敵が来たときは…お前に始末を任せる」
フッと笑ってスティクスは外へ出た
外にはフルフェイスで黒いボディスーツを着て、朱い髑髏を胸につけた者が二人…虐殺部隊員である

「隊長のバイクはこちらに…」
そう言った先には黒く重々しいバイクが一台置いてある
「おう…すまねぇな…」
バイクに飛び乗って、エンジンをかける
同時に二人の虐殺部隊員もそれぞれ別のバイクに飛び乗る

「さあ…"狩り"の時間だ…!」

今虐殺部隊の中核とも呼ばれる部分が動き出した

【NPCスティクス・ガノスビッチ登場 街中へ繰り出す  虐殺部隊が強化される】
177神重智&敬 ◆6eLTPQTFGA :2008/10/02(木) 19:05:38 0
>>172

あちらの出方を窺っていると…七草はこちらへと平然と歩み寄りながら話しかけようとしてくる。

「逃げられちゃっわね…そうそうアイツが言ってたバトルロワイヤルって何なのかしら?
あぁそんなに身構えなくても良いわよ、今は貴方と戦う気はないから
それとも…さっきの続き…したいの?…ふふっ」

捲くし立てるように七草は喋る
とにかく今はこちらに敵対心はないということを言いたいのだろう
向こうも情報が欲しいというわけか…

(どうするよ、先生)
(恐らく彼はこの機関の仕組まれた戦いについて何も知らないのだろう
 詳しい情報は与えず、メールで受け取った内容だけを教えればいいだろう)

「あんたも情報が知りたいんだな…いいだろう…教えてやろう」

敬はメールで受け取った内容を話した
このバトルロワイヤルは機関によって仕組まれたこと、異能者がこの街にあふれていることを
期間以内に力を奪い取り自分の能力を2倍にすること
そして闘いの期間は僅か三日…のはずだったのだが何かしらの影響で一週間に延長されたこと
期限以内に目標を達成できなければ自分の能力が暴発して死ぬということ…
生き残りたくば闘いに勝利して力を奪い合え…


「俺が知っているのはこの程度だ」
勿論嘘である。だが見ず知らずの相手にそこまで有用な情報を教える必要は無いと智が判断した。
七草は何かを考えているようだが…それはこちらの知ったところではない。

「俺は別のところへ用がある…何も無いならここからは立ち去らせてもらう
 それに、あまり一般人には目撃されたくないのでな」

ドクンッ ドクンッ
少しずつ限界が敬に近づいていた

【神重:必要最低限の情報を七草に与える 何も無ければここから立ち去る】
正直、この歳でスポーツカーなんぞに乗るとは思わなかった。
機関から出された車は、フランスの自動車メーカーが販売している『ライラック』だ。
確かに良い車ではある。確かこの車と同じ青い塗装は、マニアが喉から手が出るほどの物だった筈だ。
値段は張るが、自動車マニアの多い日本でも人気の有る車だ。
しかし、もっとこう、落ち着いた車が良かった……。城栄の奴め……。
私の歳を考えろ、私の歳を……! いくら15歳は若く見えると言っても私自身が恥ずかしい。

――城栄。奴は私にこう命令した……。アブラハムの可能性が在る者達の覚醒度合いを報告しろ、と。
世界を見渡しても数人居るか居ないかの現状、疑わしいが
ここが『炎魔』の故郷である事を踏まえれば、信じざるを得まい。
果たして、彼らが我々の計画に必要な存在かどうか……。

「――確かに、確かめなければならんな」

先ずはその中の一人が確認された場所へと向っている。
シフトを変えながらウィンカーを出すと、車は大通りを逸れて民家の立ち並ぶ路地へと入っていった。

目的地の前で車を止めドアを開けると、3月とは思えない程の暖かさが私を出迎えた。
家から持ってきたクリアブルーのサングラス越しに、太陽がはっきり見える。
良い天気だ、休日なら絶好の行楽日和なのだがな。

視界の端に小さな影を捉えて振り向くと、
そこには影の持ち主らしき小さな少女が二人、こちらを向いて佇んでいた。

「思わぬ場所で珍しい人に遭ったわね。
 …もっとも、できれば遭いたくは無かったけれども……」

私は彼女を知っている……。"ヤハウェの三大天使"の一人、塚原ひかる。
機関が、城栄が長年追ってきた獲物だったが、長束の手が回っていた為迂闊には手が出せなかった存在……。
――その少女が、今私の目の前に居る。

「これはこれは……。塚原さん、お元気そうで何よりだ」

軽く会釈を交えながら、同時に二人の動きを注意深く監視する。
このもう一人の方は……。確か若宮こよみ。
長束が直接面倒を見ている少女であった筈だ。

「レオーネ……。あなたは可哀想な人。
 せっかく"アブラハム"の星の元に生まれたのに、自分で可能性を否定してしまった」

塚原の言葉に私は一瞬体をピクリと動かした。
そうとも……。私は大いなる理想の為に自らの"神"を捧げたのだ。

「あなたの記憶の中には深く、悲しい、紅蓮の記憶しかない。
 そんなあなたが世界を変えようとしても、その世界は悲しみしか創れない……」

この塚原という少女は非常に大人びている。……いや、大人びているというよりは、何かこう……。
――そう、全てを見透かしている感じがする。
やはり、彼女は特別な存在なのか……。
>>178

「私はこの薬局にこよみちゃんのお薬を貰いに来たの。
 邪魔はしないで頂戴」

年端も行かぬ少女は、無表情でこちらに命令をする。

「あうぅ……。すりむいてしまったのですぅ……」

若宮の方を見ると、確かに腕の方に擦り傷らしき傷跡が見える。
異能の戦闘に巻き込まれたか……? いや、彼女の年齢であれば、
友人と遊んでいて擦り剥いたと言うほうが適切であろう。

「私も君達と戦う意思は無いよ。別の用事が在るからね」

「そう……。でも、もういいわ。場所を変えるから。
 ――ごめんなさい、こよみちゃん。別の薬局に行きましょう。
 ――我慢できる?」

塚原の問い掛けに若宮は屈託の無い笑みを浮かべて頷いた。
――健気な少女だ。

「うん! へいきなのです!」

「ごめんなさいね。気分転換に歌でも歌いながら行きましょう?

 ――ひとつ日暮れの清雲寺、ふたつふたりでいてみれば、
 みっつ三つ眼のえんまさま、よっつ夜更けにひとくらう」

――懐かしい童歌を歌いながら、二つの小さな影は私の目の前から姿を消した。
私も昔、師から教えられた物だ。この地域に伝わる、この奇怪な歌を……。
さて……。任務に戻ろうか。
この薬局には"アブラハム"の一人、恋島達哉が入店していくのを連絡員が目撃している。
多少の誤差は有るだろうが、未だに出て行ったという報告が無い以上、ここに恋島が居る事は間違いは無いだろう。
――この『国崎薬局』の中に……。

【レオーネ:NPC塚原ひかる&若宮こよみと遭遇。二人は別の薬局へ】
【現在地:国崎薬局前】
180廻間 統時 ◆7VdkilIYF. :2008/10/04(土) 21:10:35 0
>「統時、本当にありがとう。
  貴方のおかげで私が何をしたいかがぼんやりと見えてきた気がする。
  私は私の道を歩く、でも時が来たらやっぱり貴方には協力して欲しい。
  目指すものは違うけれど、行き先は同じみたいだから」
「そうか……だったら仕方ねえな。
 俺も強制する気はねえし、行きたい道を行けばいい。
 お前の言うとおりなら、近いうちにまた会うだろうさ」

瑞穂は語ると去ろうとしたが、すでに俺が立てないほどに疲れている事に気付いたようで
俺の手をとり、肩を貸してくれた。

「……わざわざ悪いな、疲労が限界に近くて足にもだいぶ来てるんだよ。
 行き先はこの先の国崎薬局。
 ある人物とそこで合流予定があるんでね」

俺は嘘偽り無く行き先を告げる。
あまり国崎を待たせるのも悪いし、できるだけ早く向かったほうがいいだろう。
先ほどからいない沙羅も……恐らくそこにむかったに違いない。
それに……国崎薬局なら外や自宅より敵に襲われる可能性は低そうだしな。

「しかしまあ、随分と痛めつけてくれたもんだ。
 元から立つのは辛かったが、お前に蹴られてから完璧に立てなくなったぞ」

すこし嫌味っぽく俺は呟く。
経緯は分かってるが、やはり愚痴や嫌味の一つは言いたくもなるもんだ。
その後、俺は一つの違和感に気付いた。
この場の気配が一つ多い……気配がこの場に俺と瑞穂の二つ、何者かの気配が一つ。

(……物陰に気配が一つ。
 これは……見られている、という感じだな。殺気は感じられない。
 だが、殺気は感じられないとは言っても……何らかの諜報部員なら?
 敵に俺が動けないというのを知られたくない……
 ここはあぶりだしてみるか)

俺は適当な石を拾い、気配のする地点に軽く投げる。
投げられた石は緩やかに曲線を描き、狙った地点へと落ちていった。
石が気配の主に当たったかどうかは分からないが、こっちがあっちに気付いたというのは分かっただろう。

「そこのアンタ、出て来いよ。出歯亀なんて趣味が悪いんじゃないか?」

【廻間:恋島のいるところに投石。気配の主が恋島だとは気付いていない。
    出来れば早く国崎薬局に向かいたい】
181神野 沙羅 ◆LHz3lRI5SI :2008/10/04(土) 23:49:47 0
>>126

―元気?
ふと声が聞こえる。ここは夢だ。夢であることが分かる。こーゆーのなんていうんだっけ?
―明晰夢?
そうそれ!ってだれ?
―分からないほうが面白いよ!
…なら言わなくていい。で何のよう?
―これからいろいろなことがおきるけど守れる?
誰を?
―そう、貴方の意志は固いんだね!流石あたし!そこにしびれるあこがれるゥ!
いやいや、返事してないし。誰守るの?
―そろそろ目覚めるけどがんばって!ファイトあたし!

「だから誰なの!」

目が覚めて辺りは虚しい突っ込みの声だけが響く。
取りあえず今見た夢はなんだったのか?…だめだ頭が働かない

外に出て空気を吸う。風が気持ちいい
恋島さんはいない
どっかいってるのだろうか?
取りあえず店の人がいない…
「まさか私店員やっていいの!」
取りあえずカウンターに座り客を待つ。こんなに面白いことはない!

…とりあえず客が来たら
「いらっしゃいませ!」と元気に言おう!ああ、私の初「いらっしゃいませ!」
どうせなら面白く拡散を使って…

【場所 国崎薬局】【双樹と夢で漫才。しかし内容はあまり覚えてない】
【誰かが来るまで店員の真似事をしている】
【薬局に入ったお客のような人に拡散使用の大声で挨拶】
182恋島達哉 ◆KmVFX58O0o :2008/10/05(日) 00:41:51 0
>>164>>166>>179>>180
しかし動けんな……こんな事ならただ薬局で二度寝してれば良かった。走っては見たものの、あまりにも軽率すぎた。
つーか敵か味方かも今の時点で何も分かっちゃいないじゃないか。ただ単に異能者とか言うから……。
いや、いやいやいや、異能者なら誰でも良い訳じゃないんだ。「機関」に所属してる連中じゃなきゃ……
って何で俺ここにいるんだ、尚更! いきり立ったもののまーた空回りじゃないか。

どうせ前の二人は前の二人で話がついてるだろうし、俺が出る幕も無かろうて。
でもあの様子だともしかしたら国崎薬局に来るのかもなぁ……俺達だけでも満員だってのに。
まぁ良いか……どうせあそこに長居する気は無いし、体力が回復次第町に繰り出すつもりだし。
さて、帰るか……俺はゆっくりと立ち上がり、薬局に戻ろうとした。その瞬間。

『達哉、特殊能力者の反応が薬局に二つ見えた。そのうちの一つは……検索条件に値する存在だ』
突如として新耳鳴りが意識下に話しかけてきた。昔みたいに突然キンキン声が響いてこない為、不快な思いはしなかったが……マジ?
おいおい、マジで悪意を持ってる異能者が来たってのかよ。どれだけやばそうなのか探れないか?
『流石にこの位置じゃスペックは図れない。直接対面しない事には……すまない』

新耳鳴りが申し訳無さそうに言った。そう気にするな、それよりもどうすべきかを考えなきゃな。
一見袋小路な状況……前の二人は多分国崎薬局に来るだろうし、現に国崎薬局には神野さんと葦川さんがいる。
もしその悪い異能者が古典的な悪人なら、薬局の中の二人が色んな意味で危ない、いや、危なすぎる。
それに前の二人が薬局に向かえばどんな惨事になるかは目に見えている。なら今すぐ飛び込んで、薬局に行くのを止めるよう説得するか?
その間に中の二人が酷い目に会う……参ったなぁ。どっちにしろ・・・…待てよ。……これはチャンスだ。

考えてみろ、俺が今まで何に襲われていたのか。そうだ、『機関』だ。そいつらが俺に持っている感情といえば一つしかない。
悪意だ。コレは早計な考えじゃない。今、薬局の近くにいるそいつは、俺か中の二人に対して目的を持った、寧ろは俺達自身に目的があるはず。
ならやるべき事は簡単だ。俺が二人の身代わりになれば良い。そいつが話が通じるかは後で考える。
むしろ粗暴で、できれば単純な奴なら良い。……その分俺のやる事は惨めにはなるが、ここで愚痴愚痴考えていても仕方ない。
中の二人と、前の二人の命を守る為だ、とバクバクしている心臓を無理やり押さえつけて、薬局のほうへと体を向けて、成る丈足音を立てない様に走ろうとした。

後ろにコツンッと、何かが落ちてくる音がした。顔だけをちらっと背後に向けると、玉子くらいの大きさの石が転がっていた。
流石にバレタか……が、悪いが構っていられない。出歯亀しておいて本当に申し訳ない。事態は一刻を争うんだ。多分。
前の二人のどっちかは分からないが、何か俺に対して言っているのを振り切り、俺は国崎薬局へと疾走した。
183恋島達哉 ◆KmVFX58O0o :2008/10/05(日) 00:42:47 0
『待って達也。……一人は意識が無いみたいだ。察するに致命傷を負ったわけではないけど結構酷い怪我だ』
なるほど。って事はどっかでドンパチした結果、治す為にこの薬局に来た・・・…病院行けよ、おいおい。
ふと俺の中で一つの嫌な仮説が浮かぶ。その怪我をした特殊能力者を、薬局の前の悪党がボコボコにしたって仮説だ。
その負傷中の特殊能力者が、中の二人を守った挙句……ってのも考えられる。あ、なんか状況がさらに不利になっちまったな。
もし悪党がテンション上がっていて、完全に戦闘モードだった場合、俺の計画は全てパーになる。同時に全員死ぬ事になる。

頼むからただ怪我をして駆け込んできた事になっていてくれよ、負傷者さん。そして話がわかる人でいてくれ、悪党。
思考をスパークさせているうち、国崎薬局が見えてきた。新耳鳴りが言うとおり、誰かが国崎薬局の入り口の壁に背中を付けてぐったりしている。
スーツを着ているが何処でドンパチしたか茶色く薄汚れており、所々に痛々しい切り傷が見える。流石に俺には治療できなそうだ。
取りあえず負傷者は確認できた。問題は、例の悪意を持つ特殊能力者・・・・・・だ? 何時から停車していたのか、とんでもない高級車が、薬局の前に止まっていた。
名前は思い出せないが、凄ましく高い高級車だ。4桁台の金額で、俺がいくら働いても永遠に買えそうもない・・・・・・

ふと、妙な視線を感じ、俺はその視線に目を合わせた。……とんでもない美人さんが、俺に目をあわしていた
しばし俺はその美人さんの迫力にぼうっとしていたが、はっとしてその人の姿を一瞥した。目が眩みそうな高級なスーツだ。
ファッションには完全に度外視な俺でも分かる、超高級ブランドのスーツに、超絶的に端正な顔立ち。こんな場所には明らかに浮いている人だ。

『気をつけろ、達哉。そいつだ』
新耳鳴りの声で完全に我に帰る。スーツ……特殊能力者・・・・・・・店先で負傷している男……。全てが繋がった。
……いや、待て。一つだけ気になる事がある。負傷者だ。どうしてスーツを着ているんだ?
……と思ったけどたまたまスーツを着ているだけかもしれない。流石に二人そろって『機関』の連中とは考えられない。

……本当にそうなのだろうか? さっきまで俺は一つの仮説だけで話を組み立ててきた。だが考えてみろ。
負傷者が『機関』の一員で、目の前のイケメンが、その負傷者を運びに来たというのは考えられないだろうか?
むしろそれが一番考えられそうなパターンだ。俺たちに悪意を持っていたのも、この負傷者を俺達が攻撃したことに対する感情と思えば不思議じゃない。
なら……ならば、どうするべきか。・・・・・・腹、据えるか。

俺は無意識に口元を押さえていた手を離し、目線をイケメンに合わせた。そして、
「初対面から失礼だが……アンタがここに来た理由はこの人を運び出すためか? 違うかい、機関の構成員さん?」
壁に横たわっている負傷者を指差しながら、俺はイケメンに対してやや懸念を込めた言い方でそう言った。

「運ぶなら早く運んだ方が良いんじゃないか? それなら俺も手伝うぜ。救急車を呼ばれでもしたらお互い損するしな」

「その代わり条件がある。俺はアンタとサシで話したい。ここじゃない別の場所に行かないか?」
さぁ、どう動く? イケメンさん
【現在地:国崎薬局前】
【廻間の問いかけを拒否。レオーネに小村をどうするのか尋ねる。神野が起きた事には気づいていない】
184七草 ◆O93o4cIbWE :2008/10/05(日) 19:12:17 0
「あんたも情報が知りたいんだな…いいだろう…教えてやろう」

神重が話した内容によると
このバトルロワイヤルは機関に仕組まれたもので
期間内に他の能力者から力を奪い取り能力を2倍にする事
目標を達成できなければ自分の能力が暴発して死ぬ。

「俺が知っているのはこの程度だ」

この程度しか知らないと言うのは嘘だろう、だが今無理に聞く必要もない
面白い事が起きている、それだけで十分、

「あらあら、面白い事になってるじゃない」

「俺は別のところへ用がある…何も無いならここからは立ち去らせてもらう
 それに、あまり一般人には目撃されたくないのでな」

先程の戦闘のダメージが残っているのか、早く立ち去りたい様子で神重は言う、

「あらそう、連れないわねぇ、まぁいいわ…」
背を向け立ち去ろうとするが、何か思い出した様に振り返り、
「そうそう、貴方を倒すのはこの私だから忘れないでね、先生…」
それだけ言うと七草は姿を消した…

185七草 ◆O93o4cIbWE :2008/10/05(日) 19:16:53 0
人目の付かない裏路地に映る人影、
「クッ、ウゥゥ…」
影の主は、壁に肘をつき、頭を抱えている、
(流石に限界ね…無茶、させちゃったわね…この体に…)
ふらっと体勢を崩し、そのまま地面に倒れこむ、
(次に私が出て来るのは何時かしら…これから如何したものか…)
思考と共に、彼女の意識は途絶えていった…

【神重と別れ、その後意識を失う】
>>180 >>183
薬局のドアを開けようとした瞬間、何者かが文字通り疾走して来る。
距離が近づくにつれて、その人物のディティールも識別できるようになって来た。
こちらへ無心に走ってくる人物は――恋島達哉。…やはり誤差があったか。
責めている訳ではないが、困る事は確かだ。全てが後手後手に回ってしまう。
もっとも……今回は恋島が店に戻ってきたので問題は解消されたが……。
恋島達哉はこの街の住人ではない。作戦発動後にこの貳名市へとやって来たのだ。
職業はジャーナリスト。私の嫌いな職業の一つだ。
彼、恋島達哉と私の視線が交わる。何かを決意した眼だ、こういう奴が機関に牙を向く。

>「初対面から失礼だが……アンタがここに来た理由はこの人を運び出すためか? 違うかい、機関の構成員さん?」
恋島が指を指した方を見ると、N.T.D.E.の小村禅夜が店先にもたれ掛るように倒れていた。
あぁ、気が付かなかったよ。済まないね、小村君。
私の性格は知っているだろう? 興味の無い物にはとことん無関心だって……。

恋島が機関という単語を口にしたのは、別段驚くべき事ではない。
無数に機関の人間が街に放たれているのだ。存在くらいは知っていても不思議ではない。
それは漠然とした情報群に過ぎない。彼の言葉からも判る。
恋島は私の事を"構成員"と言った。真に機関の事について知っている者ならば、
おとといの少女同様に私の事をNo.6と呼ぶ筈だ。
仮にブラフだとしても、わざわざ能力の範囲内に入る必要性が無い。
ナンバーと同じく、こちらの能力も知っていて当然だろう。
それとも店の中に大切な何かがある為に、危険を冒してまで目の前に現れたのだろうか
……まさかな。
彼、恋島は機関については殆ど知らないと断言しても良い。

>「運ぶなら早く運んだ方が良いんじゃないか? それなら俺も手伝うぜ。救急車を呼ばれでもしたらお互い損するしな」

「いいや、その必要は無いよ。こう見えても彼はタフなんだ、今回は少し疲れただけさ。
 こんな傷で死ぬような人間じゃない。
 ……それに、今の私の任務は彼を連れて帰る事ではない」

私はしゃがむと小村にそっと手をかける。見た所、何か鋭利な刃物で切り裂かれたようだが……。
今の私では君に何もしてやれない。だが、計算高い君の事だ。
何か策が在るのだろう?
>>186

>「その代わり条件がある。俺はアンタとサシで話したい。ここじゃない別の場所に行かないか?」

再び立ち上がると、恋島に向き直る。今気付いたのだが、写真と髪形が違うな。
写真の髪型はミディアムだが、こちらはベリーショートだ。
サロンにでも行って来たのか? それにしては余りにも下手な切り方だ。
毛先が整ってはいない。これは素人の切り方だ。

「それは構わないが、君はそれで安心できるのか? もし私が君に危害を加えようとしている者だったら?
 その私が強力な破壊力を持った能力を持っていたら?
 ――君一人で太刀打ちできるのか?」

立て続けに言葉の放火を浴びせる事は、相手の思考を困惑させる事が出来る。
話術での基本だ。

「……冗談だよ、私はそんな大それた能力は持ち合わせちゃ居ない。
 良いとも、その条件を飲もう」

この店の中に異能者の気配は二つある。それが残る三人の内の何れかである可能性も否定できない。
それらについても調べておきたいが、時には譲歩する事も必要だ。

サングラスを胸ポケットに差し込むと、紫外線の混じった日の光が眩く光っていた。

「私の名前はレオーネ。機関でのナンバーは6。真実に近い立場の人間さ。
 今日は君とお話をしに来たんだ。……どうだい? 日本語が上手だろう?」

軽く口元を緩め、相手の警戒心を解きほぐそうとする。
自分で言うのもなんだが、私の日本語は流暢の部類に入ると思う。
昔、散々 師に鍛えられたお陰だ。今ではスラングも判別できる。

「――君の事は大体知っている。君の事が我々に知れたのは、
 君を含めた三人が病院でNo.19とやりあった時だ」

岩城は役に立たない典型的な異能中毒だったが、最後の最後で役に立ってくれたよ。

「おあつらえ向きに車がある。ドライブと洒落込もうじゃないか。
 それとも、いい歳をした男二人でお散歩かね?」

助手席のドアを開けると、さ…どうぞ、と手でジェスチャーをして恋島を車へと誘った。

【レオーネ:現在地 国崎薬局前。恋島と昨日遭った事は解らない】
【恋島が車に乗るかどうかはお任せします】
>>187の訂正

× それが残る三人の内の何れかである可能性も否定できない

○ それらが残る四人の内の何れかである可能性も否定できない

間違えました、すみません…
ネオン瞬く宵街の闇を、駆ける影が二つ。
戦場ヶ原と屡霞の二人だ。
かたや大きなガタイに特徴的な赤い髪、かたや長身痩躯の美女。奇妙な組み合わせの二人は、追い縋る数多の影の追撃に遭っていた。
二人を追う影が月の光に照らされ、その容貌をあらわにする。
フルフェースのメットに漆黒の戦闘服。―――――そう、彼等は虐殺部隊。血を求めて闘いに暮れる悪鬼羅刹の集団だ。
彼らは、ナガツカインテリジェンス本社を目指す戦場ヶ原たちの前に突如として姿を現し、往来の真ん中にも拘わらず、有無を言わさず襲撃を仕掛けて来たのだ。
人々行き交う道の真ん中に異形の戦闘集団が現れたというのに、人々は彼らを一瞥すらすることなく通り過ぎて行く。

――――城栄金剛の能力か…!?

その時戦場ヶ原は直感的にそう感じた。
『世界改竄』
因果律さえ操る城栄金剛の能力の一つだ。金剛は街レベルでの可視光線の波長を改竄した。
今、道往く人々の目に虐殺部隊の姿が写ることはない。
金剛がいかに本気で異能者を潰しにかかっているかがよくわかる。
彼らの姿を視認することのできる一握りの人間―――『異能者』の二人は、朧げながらもそれを感じていた。

「この辺でいいだろう。――女ァ!」

「やれやれ、君にとっては名前という概念すらもどうでもいいのだな。」

立ち止まって敵を迎え撃つ構えを見せた戦場ヶ原に、屡霞はため息を漏らしながらも追従した。
彼らはただ敵から逃げていたわけではない。いくら敵の姿が一般人には視認出来ないとしても、その攻撃に関しては例外だ。
より闘いやすい地形を求め、彼らは廃工場へと闘いの場を移したのだ。
すぐさまそのあとを追って現れる虐殺部隊の無機質な容貌。
数は10人あまり。その数はまだまだ増え続け、二人をあっという間に囲んでしまった。
圧倒的窮地。しかしそんな状況に置かれようと、二人の表情が絶望に染まることはない。

『おい屡霞。コイツらみんなまとめて八つ裂きにしていいか?』

「駄目。こいつらは私の獲物だ。」

「フン、さっさと片付けるぞ。こんなクズどもに構っている時間はねぇ。」

二人(と1本)の男女は迫り来る闘いの予感に胸踊らせるだけだ。
一斉に襲い掛かる黒い影に、戦場ヶ原と屡霞は、その力を行使した―――。

「押し潰す……発動、インセインオーバードライブッ!!」

「穿て!禍ノ紅ッ!!」

【戦場ヶ原:廃工場にて虐殺部隊と戦闘開始】
190アーリー・テイスト ◆3LPMHhiq9U :2008/10/07(火) 02:08:35 0
<コノプログラムヲ起動シマスカ>

モニターに無機質な文字が羅列する。
少女は、手にはめている手袋のようなコントローラーに光を送る。
ピッ、と認証する電子音が鳴り、プログラムがスタートする。
それから後は目にも止まらぬ動きでモニターが切り替わる。
黒い背景に文字群が流れ込んだ、と思ったら次の瞬間には何かの認証画面に変わる。
一度警告の字がチラついたが数秒で消え去る。
少女は目をつぶり意識を集中させる。
しまった・・・
そう感じ、操作をオートに切り替え、手袋を外した。
ヒュウゥゥゥ・・・・・
外し終える頃にモニターと、それと接続していたコンピューターが自動的に停止する。
「また失敗・・・」
残念そうに少女・・・アーリー・テイストは呟いた

アーリーは三年前からこの古びた会堂(シナゴーグ)に住んでいる。
この会堂は今現在、機関に使われてはいない。
理由はあまりにも郊外に建ててしまった、予算削減、老朽化などによる。
外見は推理ドラマにでも出そうな古びた洋館で、もともと金持ちの別荘を機関が格安に買い取ったものだった。

アーリーは館の中で一番奥の研究室にいた
(どうしても、レベル6以上の情報群に入れないなぁ・・・)
アーリーが行なっているのは機関のマザーコンピューターへのハッキング。
彼女の異能『頽廃空虚』は手から光ウィルス、通称H.V(ハーブ)を使い
相手の神経、身体を操る。だが機械内に入り込めればその機械を掌握することが可能なのだ。
だからそれを使い、機連送から逆走し、マザーコンピューターに侵入していたのだ。
元々アーリーは機関養成所の時から、機械いじりが得意で小村の盗聴器なども彼女の作品だ。
(情報は幾つか手に入れられたのに・・・肝心のアイツの・・城栄金剛の計画は分からないなんて)
どうしようか・・・
椅子にもたれて彼女は天井を見つめた

研究室を出て、別室でアーリーは早めの夕食をとった。
(そういえば、今日は小村さんがここに寄れると連絡していたはず・・・)
ジャムパンにかぶりついて、そのことを思い出す。
「6時34分・・・」
時計を見上げ、部屋の隅のモニターにも眼をやる、
そこにはこの館周辺の林がいつものように――――いや
「あれは・・・・」
木に止まっている鴉。よく見ると体を覆っているのが羽毛ではなく、なにか黒光りしたものだ。
「も、もしかして!!!」
アーリーはジャムパンをほっぽりだすと、部屋を飛び出した。
191アーリー・テイスト ◆3LPMHhiq9U :2008/10/07(火) 02:09:47 0
二階のテラスまで出ると鴉はこちらに弱々しく飛んできた。
この周辺は林といえど、歩道も少々あり、人も僅かながら居た。なので人目を避けるため、鴉を連れて館内に入る。
「一体どうしたんですか?ゴッドバルトさん」
少し焦ったように呼びかける。
「・・・・・アー・・リ・・−殿・・・迎エ・・ニ・・・来テ・・・欲・・シイ」
「わ、分かりました。で、どこに行けばいいんですかっ?」
「クニ・・・・サ・・・キ・・・ヤ・・」
ピシャ――――
ゴッドバルトが言い終える前にエネルギー体は力尽き、
「え・・・・・」
こんなことは初めてだった。
ゴッドバルトだけがここに来て、メッセージも満足に伝えられず、砕け散った。
アーリーの頭の中は混乱に陥った。

一体何が・・・小村さんは無事なのか・・・いや迎えに来てくれって伝言したんだし・・・
でも今の消えようはもしかして・・・・・
最初は絶望的な答えしか出てこなかった。だが最終的には
「・・・小村さんを信じよう。きっと生きてる・・はず」
最後は少し自信をなくした声だった。
そう決めるとすぐさま研究室に戻り、開発品を仕込んであるカーキ色のトレンチコートを
羽織って裏口から走り出す。
とにかくこの郊外から町の中心に行ってみよう。

疾走する林の中、まだ冷たい3月の風が頬を撫でた。だがそれは今のアーリーにとっては気味の悪い感触だった。

【アーリー:小村を探して、町へ】
192籐堂院瑞穂 ◆FleR8jlnN6 :2008/10/07(火) 17:35:48 0
>>180
「……わざわざ悪いな、疲労が限界に近くて足にもだいぶ来てるんだよ。
 行き先はこの先の国崎薬局。
 ある人物とそこで合流予定があるんでね」

統時はそう言って向かうべき方向を指さす。
そして、何かを考えるように黙ってしまった。
私は統時を引き摺るようにして進む、背負った方が効率は良いが統時に悪いような気がしたのでやめておいた。

「しかしまあ、随分と痛めつけてくれたもんだ。
 元から立つのは辛かったが、お前に蹴られてから完璧に立てなくなったぞ」

少し経って統時が呟いた。
そう言われると少し心が痛む、流石にあれは悪かった。
ただでさえ疲れている統時に追い打ちをかけるように攻め立てるなんて。

「悪かt」

と、私が謝罪の言葉を口にした時、統時は屈み込んで石を拾うと先の曲がり角に投げる。
そこで私はやっと第三者の存在に気付いた。
私はすぐ統時を下ろして刀を構えようとしたが、曲がり角に居た人物は走り去ってしまった。

「何?
敵にしてはやけに逃げ腰、ただの一般人かもしれないわね」

統時の目的地の方向に走っていった気がするが多分偶然だろう。
また少し進むと国崎薬局という看板が見えてきた、ここが統時の目的地か。
目の前に駐まっている車、そしてその車の前に立っている人物。
遠目にでも分かる、あれは紛れもなく『機関』のNo.6レオーネ・ロンバルディーニだ。
何故こんな所に居るのかは謎だが、今の私は『機関』の敵でも味方でもない。
見つかっても襲われることは無いだろうが、出来るだけ顔を合わせたくない。

「統時、あそこが貴方の目指していた国崎薬局でしょう?
今あそこの前に立っている男性、長髪の外人の方ね。
彼はレオーネ・ロンバルディーニ、『機関』のNo.6。
接触するなら気を付けて、私はここで失礼させてもらうから」

統時の手を離す、少しは回復したのか、立つことは出来るみたいだ。
私は踵を返して国崎薬局から遠ざかる、レオーネなら師匠の事を何か知ってそうだがあまり当てにしたくない。
私は自身の力で師匠を見つける。

【籐堂院瑞穂:廻間統時を国崎薬局の近くまで連れて行く】
193神重智&敬 ◆6eLTPQTFGA :2008/10/09(木) 22:29:46 0
>>184

「あらそう、連れないわねぇ、まぁいいわ…」
七草はそう言うとこの場を立ち去ろうとしたが…何か言うことがあったらしくこちらを向き
「そうそう、貴方を倒すのはこの私だから忘れないでね、先生…」
それだけ言い七草はこの場から姿を消した。

「…俺は智のことなど一度も言っていない…先生と言ったな…どこかでばれているのか
 それともたまたまだったのか…」

その思考中、足の力が抜け神重は地面に膝をつく。

「少し能力を使いすぎたな…一旦…あの廃ビルで休息をとるか…」
目に入ったのはさきほどの爆発などで倒れた中の一つ、さすがにこの奥までくる物好きはそういないだろう

ビルの奥にできたベンチのような部分に座り込みながら敬は一人考える

おかしい…はじめてあのサングラス男と戦ったときの力はこんなもんじゃなかった
俺の力が少しずつ…弱まっている…のか…?
俺の力を吸い取って…智にその力がいっているということか…?
少し試す価値はありそうだ…

(兄弟…)
(なんだ、敬)
(ここでの休息が終わってある程度動けるようになったら、お前に支配権を一時的に譲る)
(何…?どういうつもりだ?)
(俺の能力が…弱まっている…お前にも何か俺が目覚める前に変化があったはずだ)
(確かに…私は他の能力者よりあの話を聞いた後から再生力が増加している…)
(恐らく…俺の力があんたに取り込まれていってるってことだ…そこで支配権を譲って
 それが本当かどうかを…確かめる)
(なるほど…お前の意見はわかった…休息をとった後、体を動かさせてもらう)
(ああ…なら一旦休息をとらないと…な…)

そのまま神重は浅い眠りについた

【神重:七草と別れ廃ビルの奥で一時休息を取る】
194アルト ◆Jm4vxzroP6 :2008/10/10(金) 02:08:22 0
>>156

放たれた銃弾。人間には反応できず、できたとしても不可避のタイミングでの一撃は、しかし、
頭部に命中する寸前、溶解した。

「――――狙撃ですか」

反動から考察し、射線を判断。その方向に目を向ければ、

「……いまいち判別できませんね。すこし近づきますか」

頭を押さえながら、物陰に飛び込む。銃弾が命中する直前に溶かしたとはいえ、その衝撃は受けている。
常人とは比較にならないほどの身体能力があればこそ、頭痛程度で済んでいるのだ。

―――――――場所とタイミングを考えれば、その相手は、

「機関に敵対する者――襲撃者、ということですか」

ならば話は早い。どちらにせよ、接近しなければ話にならないのだし、

「……行きましょうか」

遮蔽物を盾として、狙撃のあった方向に少しずつ近づく。――――無論、防御の為の準備は忘れない。
全身に高熱を纏い、銃弾が命中する前に完全に溶解する熱波の壁を作り出す。

「――――さて、行きましょうか」

二撃目があれば、その位置を確定できる。失敗したのなら、場所を変えるかもしれないが。

「そこまで大きな移動をする時間を与える気はありませんから、ね」

【アルト:現在地 機関本部周辺】
【狙撃主に近づく】
195国崎シロウ ◆Jd2pQO.KKI :2008/10/11(土) 00:17:58 0
>>194
(――――!)
銃弾は、確かに必殺の一撃として敵の頭蓋に吸い込まれていった。
だが、それだけ。スコープから見た鉛の塊は、
相手の脳を貫く事も無く、煙を上げて消失してしまった。

それは即ち、相手が異能者であることの確定。
そして、もう少し練った戦略を組み立てなければ
ならないだろうという予測の喚起。
俺は、若干の驚きを内心に覚えつつ、スコープを覗き続ける。

驚きといっても、相手の能力自体には特に驚いた訳じゃない。
元々異能者である可能性は十分にあったのだし、
異能者という存在自体を見飽きるほどに見てきたからだ。
それに、相手の能力もある程度予測はついているのも、その要因だろう。
おそらく、酸か熱――――スコープで見た際に外気が揺らめいていたのも鑑みれば、
かなりの確立で熱能力が敵の能力だ。

俺が驚いたのはそこじゃない。
死角かつ急襲であったにも関わらず、銃弾に能力が反応した事だ。
能力を常時、あるいは無意識下の危険時に使用できるような異能者は、
異能者として相当にレベルが高いのだ。ならばこそ、警戒して殺さなければならない。
俺はそう考えていた。

……双眼鏡で覗くと、敵は射撃の死角に隠れつつ移動している様だ。
どうやら、俺の明確な位置までは分かっていないらしい。
だが、それでは困る。銃弾でコロセないのならば、この手で殺さなくてはならないからだ。
その為に、敵には必勝の毒蛇(トラップ)の潜む、贄の巣に入ってきてもらおう――――
【国崎:移動せず廃ビルから狙撃を三連射する。位置はそれで特定されてしまうだろう】
196恋島達哉 ◆KmVFX58O0o :2008/10/11(土) 21:57:25 0
>186-187
俺はじっとして、イケメン、及び敵であろう男の反応を伺った。どう動くかで、俺の今後が定まる。
もしも俺の返答どおり、この男を運びに来たのなら何か理由ならそのまま協力すればいい。問題は……。
俺は悟られないように視線を周囲に運んだ。逃げ道や武器があるならそれに越した事は無いが……残念ながら無さそうだ。
店に飛び込む事は一番やりたくない。けどもしも目の前の奴が瞬間移動だのトンデモ能力を持っていて、懐に入られたら……。

自然に手元が懐に入り込む。だが入っているのは携帯電話だけだ。これだけじゃ武器はおろか盾にもなりゃしない。
くそっ、新耳鳴りの助言で奴が何か攻撃を仕掛けてきたとして避けれたとして、傷は完治していないし、ましてや疲労も回復しちゃいない。
1回か2回か……その間に奴に対して攻撃できれば良いんだが、生憎俺には人一人をダウンさせる事が出来るほどの腕力は無いしなぁ。
俺の思慮などお構いなく、奴は寄り掛かってぐったりしている男の前にしゃがんで様子を見ている。
と、ゆったりと立ち上がると、俺の方を向いて意外な返答を返した。

>「いいや、その必要は無いよ。こう見えても彼はタフなんだ、今回は少し疲れただけさ。
  こんな傷で死ぬような人間じゃない。
  ……それに、今の私の任務は彼を連れて帰る事ではない」

何だって? それじゃこんな辺鄙な所に何しに来たんだ? 敵討ちなのか……な?
それならやべぇな、おい。自然に体が身構える。やれる事をするしかないか、クソッ
……ん?早計だったかもしれない。丁重な動作で奴は俺に向き直ると、柔和な表情で言葉を続けた。

>「それは構わないが、君はそれで安心できるのか? もし私が君に危害を加えようとしている者だったら?
  その私が強力な破壊力を持った能力を持っていたら?
  ――君一人で太刀打ちできるのか?」

あぁ、俺がサシで話したいと聞いた事への返答か。安心? そんなのはなっから期待しちゃいないさ。
それならそれでやり方は無様だが俺のやりたい事が無理なくやることが出来る。奴が何を考えているかは知らないが――。
俺はあくまで話し合いをするつもりだ。それが俺が進むべき道への方針となるからな、後々まで……。
だから俺は死ぬわけには行かない。どれだけ泥を塗のうが、絶対に。

ふと、奴が俺の顔が見て苦笑すると言った。
>「……冗談だよ、私はそんな大それた能力は持ち合わせちゃ居ない。
  良いとも、その条件を飲もう」
197恋島達哉 ◆KmVFX58O0o :2008/10/11(土) 21:58:00 0
さて……これで第一関門はクリアした。後は……用意してもらえるかだ。俺の能力を証明する為のアレを。
てっとり早く俺の能力を披露する為には、アレを用意してもらう以外には無い。一応薬局をくまなく探してみたがやっぱり無かった。
国崎がめぼしい物は大体持っていってしまったみたいだ……ちくしょう。奴が掛けていたサングラスを外して、また語りだす。

>「私の名前はレオーネ。機関でのナンバーは6。真実に近い立場の人間さ。
 今日は君とお話をしに来たんだ。……どうだい? 日本語が上手だろう?」

>「――君の事は大体知っている。君の事が我々に知れたのは、
  君を含めた三人が病院でNo.19とやりあった時だ」

レオーネ……俺は頭で奴、いや奴の名であるレオーネを復唱した。レオーネ・・・・・・気障ったらしい名前だ。
まぁ良い。今後色々お世話になりそうだし、覚えて置いて損はないだろう。それとNо.6、と言ったな。
確か岩城も何番かは忘れたが、自分のナンバリングを口走っていた。前も思ったが、「機関」とやらはナンバリングで階級が決まっているようだ。
一桁って事はレオーネはかなりの地位…・・・だと思う。それほどの奴が何で俺みたいなのに会いに来たかはサッパリ分からん。今考えることでもない。

レオーネは高級車の助手席まで歩むと、丁寧な動作で助手席のドアを開けた。何のつもりだ?
>おあつらえ向きに車がある。ドライブと洒落込もうじゃないか。
 それとも、いい歳をした男二人でお散歩かね?」

おいおいおい、俺の話を聞いてなかったのかよ? つか誘われてホイホイ乗る奴なんざいねーっての。
つか一度乗ったら最後、俺に逃げ場がなくなるじゃないか。もしレオーネが一撃必殺の異能力とやらを持ってたらな。
それに俺が何でいい歳をした男二人でお散歩を選んだ理由が分か……と思いかけて気づく。新耳鳴りを使わなくても何となく。
ずっと後ろに誰かが来ている。多分さっきゴタゴタしていたあの二人だろう。ちぃ・・・・・・近づかれたら厄介だぜ、色々と。
だがやすやす車に乗るのも、レオーネの術中に嵌っている気がして気持ち悪い。……ち、一か八かだ。

「わぁーったよ。あんたが譲歩してくれたんだ。乗ってやるよ」
俺はレオーネが開けたドアまでつかつかと早歩きで向かい、割と乱暴に助手席に乗った。
ここらで強気になっておかないとな、一応。レオーネからひったくるように、俺は助手席のドアを閉めた。
それと……俺は懐の携帯を取り出し、ある事をしておいた。これで少しはレオーネの攻撃を阻む事が出来る。ホンの一瞬くらいだが。

【現在地:国崎薬局前】
【レオーネの誘いに乗る】
198 ◆FleR8jlnN6 :2008/10/13(月) 21:50:17 0
国崎薬局の近くで分かれた二人の男女。
そして、怪しげな男の誘いに乗り、車に乗り込んだ一人の男性。
その一部始終を少し離れた場所から双眼鏡で観察している奇妙な二人組が居た。
その二人組、片や身長180cmを超える男、片や身長150cmくらいの少女。
二人とも黒いスーツに白のワイシャツ、サングラスに黒い帽子という見るからに怪しい格好だった。

「ねぇ、何でボク達こんなストーカー紛いのことしてるの?
さっきから職務質問されてばっかり」
「大丈夫だ、まだ三回目だからそう慌てる事はない。
娘を心配する親が娘を監視して何が悪い!」
「そんなに心配なら、手元に置いておけばいいのに、ボクにはよく分からないよ。
大体既に爺に言われた事全然してないじゃん、アブラハムの護衛がボク達の任務じゃないの?
さっきから、護衛する気がないみたいなんだけど?」

小柄な少女が、双眼鏡を男の前で持ち上げてみせる。
男はやれやれとでもいいたげに嘆息すると、少女に向かって人差し指を突きつける。

「アブラハムなんてどうでも良い、俺はあいつが立ち直ってくれるかが気がかりだったんだ。
第一レオーネに動かれちゃこちらも下手に動けねぇし」
「確かにそうだけどさ、そんな自慢げに言わないでよ。
この任務もう飽きた、ボク先に帰っていていいかな、歓迎会の準備しなくちゃ」
「歓迎会?」

少女はつまらなさげに欠伸をしながら言うと、男は不思議そうに尋ねる。

「そう神さんの歓迎会、ボクがこの部隊に来てから新人さんが来たら開くことにしてるんだ」
「俺はご遠慮願いたいね、そんな葬式みたいな宴会」
「よく分かるね、今まで何回か開いてきたけど全然盛り上がらないんだよ。
不思議だよね、皆盛り上がれば面白くなるのに」
「暗殺部隊がどういう部隊かを今一度よく考えてみることを推奨する」

男が深くため息をはくと、少女は尚更訳が分からないようで首を傾げた。
一端、話が途切れ、男は薬局前に視線を移すが、少女が服を引っ張り気を逸らせてから問いかける。

「一つ聞きたいんだけど良いかな?」
「何だ?」
「何でボク達黒スーツにサングラスなの?」
「小物っぽいから」
「あ、そう」

そして、二人の間に沈黙が流れる、いまいち盛り上がりに欠ける凸凹コンビであった。
199アーリー・テイスト ◆3LPMHhiq9U :2008/10/15(水) 02:04:48 0
この辺りで不良が良く出るという裏道がある。
そこの壁などには良くありそうなスプレーでの落書きが描かれており、いかにもな雰囲気を出していた。
その道に疾走する三つの影。追う影が二つ。追われる影が一つ。
「まてや、このがきゃぁぁぁ」
「なんでです、いやです、むりです!!」
叫びを叫びで返す両者。はたから見たらストーカーに追われてるようだ。
しかしストーカーにしては格好がおかしい。
黒のフルフェイスにボディスーツ、おまけに胸に赤のドクロまである
(あの気味の悪いのはたしか新しく出来た虐殺部隊の・・・・)
チラ、チラ後ろを向いて相手を確認する。
「おらおらおら!!!誰かに助けを求めてもムダだぁ!!
 なんたって俺たちはNo1様の御力で姿が見えねんだからよぅ!!」
「うわあ・・・」
「な、なんだ!!うわあって!!うわあってなんだよ!!!」
「す、すみません」
会話をしてる間にアーリーと男達の距離が縮まっていく。残り30メートルぐらいだ。
そろそろどうにかしないと、そう考え袖から手榴弾を取り出す。
数が少ないからあまり使いたくなかったな、と思いつつも
「えいや」
「こ、これは・・」
ボフ!!

中から飛び出たのは黒い煙と爆発・・・ではなく、大量の白煙が立ち込める。
「ええい!!!なんなんだよぅ!!」
男が手にもったサブマシンガンで煙を払う。
そこにはアーリーの影も形も無い。
「ったく、どこだよどこだよどこだよ!!どこいったんだよ!!」
「・・・落ち着け」
いままで黙っていたもう一人の男が言葉を発した
「でもよう、No.867。」
「私だってそんなナンバーを貰ってるが一応異能者だ。
相手の異能の『気』を感知する事だって出来る。」
「まだ近くにいたら・・・だろ」
「なあに、そう遠くなどに行ってはないさ」
(・・・やっぱりあの人は異能者か。最初いきなり追ってきたのも私の気を察知したから・・)
アーリーは今、すぐ近くのブルーシートで囲まれたビルの建設現場内にいる。
まだ骨組みしか建てられていない質素な空間だ。真ん中は吹き抜けになっている。
(でもいきなり女性を追い回すおとことしいいのでしょうか・・・・全く・・・)
二回からブルーシートの隙間を通してチラッチラッと様子を伺った

「・・・おい、まだかよぅ!!!」
「ええい、うるさい!!私はまだ能力が開花してまもないんです!!
鬼の紋章なしじゃあ発動も出来ないし・・・・って
 だいたいあなた少し私になれなれしくありませんか!?番号持ちでもないのに!!
 だいたい番号持ちは何万人もいる機関の構成員からたった999人しか選ばれないものすご    
 い役職で・・・」
「わぁった、わぁったから」
「全く・・・・えーと・・・わかった!!そこです」
ビシ!!っと人差し指を建設現場を指した。
「あ・そ・こ・に・居るはずです!!」
何回もビシ!!!ビシ!!!と指を突き立てた。
横から見てた男はタッチパネルを連打してる人のように見えた。
「へいへい、じゃ行くかぁ!!」
片方はいつでも異能を開放できるよう、もう片方はサブマシンガンを構える。
二人は入り口付近に近寄り、辺りに人がいないか確認する
(ああ・・やっぱり入ってくるかぁ・・・戦いたくなかったんだけど・・・)
そう思いアーリーは先ほどから準備していた作戦の開始用意をし始めた。
200アーリー・テイスト ◆3LPMHhiq9U :2008/10/15(水) 02:05:32 0
「おおし、いくぜぇ!!」
「ふぅ、なんで君はそういちいち叫ばないといけないのかね」
二人はブルーシートを開けた。
その瞬間、目の前からトラックが突進してくる
「な・・・」
「まじかよ・・・」
先に反応したNo.867はなんとか避けた。がもう片方は正面衝突を見事に当てられ、
道路の向こう側のゴミ置き場にストライクを決めた。
「全く・・・・やってくれるじゃねえか!!お・嬢・さ・ん!!!」
男は振り向き、手から鎌を顕現させるとそのまま運転席を潰す
「なかなかビックリさせてくれるじゃないか。ええ!?」
がよく見ると運転席に人影は無く、もぬけの殻だ。
「なに?」
中に入り、真ん中の吹き抜けを見上げる。
「おい!!、ここにいんのはわかってんだよ!!!さっさと出てきな!!!」
今までと打って変わり激しい口調で怒鳴り散らした
すると・・・
「・・・・え・えい」
弱弱しい声と共に上階から激しいフラッシュが降り注ぐ
「う・・・ってんなもんきかねーんだよ!!!見えるか?にはフルフェイスが着いてるんだよ!!」
そう、このフルフェイスが無ければあの二人に負われる事も無かっただろう
H.Vが体に入れば生命運動を停止させて衰弱させることも可能だし、肺を止めて呼吸困難に陥らせることも簡単だ。
もっともそういう使い方はアーリーが好まない
「ったく・・・どうせてめえはこの冥府の名を持つ、死鎌の泉谷 健梧様が殺してやるよ!!」
そういい、見上げた瞬間だ
鉄骨が一直線に落下してくる。おそらく吊るしてあったのをナイフか何かで切ったのだろう。
「こんなもん!!!」
鉄骨を両断する。するとその合間から
ボタッ・・・ボタッ・・・
セメントの洗礼だ
「・・・・この!!!!馬鹿にしてえ!!!」
セメントで汚れたフルフェイスを外し、見上げる
カッ!!!またもやフラッシュ
「おっと!!危ない」
とっさの反動で左手を目に被せる
「どうせこれ使ってさっきのトラックを動かしたんどろう!!
こういうのは目に入らなきゃいけないんだよなぁ!?」
そのとき下からも光が放たれる
「なに!!!」
見るとセメントに混じって鏡の破片が光を反射させていた
・・・まさか最初からこれが狙いだったのか!!
トラック、フラッシュは俺を中央におびき寄せる罠。鉄骨とセメントを間髪入れず
降らすことで俺をこの位置に釘付けにし、このトラックのバックミラーで光を反射させる!!
なんていう・・・
そこまで考えが至るときには完璧に体の制御を奪われた

「ふ〜、なんとか助かった」
アーリーが手の甲で額を擦る。
一応さっきの泉谷って人は肝臓の調子をわるくし、しばらく動けないようにした。
救急と警察にも電話したし、あと数分で二人は銃刀法違反で捕まるだろう。
「だいぶ時間をくっちゃったから、急がないと」
アーリーは近くのゴミ置き場の男に一瞥もせずに歩き出した

【アーリー:新虐殺部隊2名(No.867、番号無し)戦闘不能に(殺してはいない)】
【また小村を探し、歩き出す】
「アンチグラビティノヴァアア!!!」

はじける黒球に巻き込まれ、2〜3人ほどの人間の身体が5m近く宙を舞って、動けなくなった人々の山をまた一つ大きくさせる。
何人の人間を返り討ちにしただろうか。禍ノ紅も20人まではそれを数えていたが、そこからはもはや煩わしくなって数えるのをやめた。
人通りのない裏路地には文字通り山のような数の虐殺部隊が倒されていた。
しかし、彼らはどこからともなく際限なく現れ、間断なく二人を襲う。
虐殺部隊の特殊な訓練の賜物だろう。彼らには痛みという感覚がない。
たとえ腕がもげようと、脚が折れようと、任務のために人を殺し続ける狂気の集団―――…。

『手前ェらの顔も見飽きたんだよォオッ!!』

屡霞の愛刀、禍ノ紅が叫ぶと同時に、その刀身が妖しく光って虐殺部隊を3人纏めて叩き斬る。
息を整えながら屡霞は刀の血糊を払うと、独り言を呟くように背後の戦場ヶ原に声をかけた。

「『機関』とやらの虐殺部隊……。私が言うのも何だが、まったくイカれた連中だ。」
「……」
「キミがかつては率いた部隊とは聞いたが、いささかやりすぎではないのか?こいつらは『獣』でですらない。
これではただの……殺人マシーンだ。」

戦場ヶ原は屡霞の言葉に応えなかった。
(何かが違う……)
彼の頭は今、虐殺部隊への違和感に支配されていた。
3年前。自分が率いていたそれも確かにならず者の殺人鬼ばかりで構成されてはいたが、そこには確かに人としての最低限の義理や人情はあった。
ところがそれも今はいずこ。こんな部隊、俺は知らねぇ――――……
そうした想いが戦場ヶ原の脳裏を駆け巡っていた。
その時。

(イチゴ頭ァ!歯ァ食いしばらんかい!!)

突如怒声とともに繰り出される拳。
若き戦場ヶ原はそれを顔面に受け、10メートル近く吹き飛ばされた。
そこはかつて虐殺部隊の訓練場として使われていた無機質な地下室。
そう、今、戦場ヶ原の意識は6年前にまで遡っていた。

(痛っ……てェ――なクソハゲェ!!)

鼻血を垂らしながら、若き戦場ヶ原は自分を殴り飛ばした巨体に向けて悪態をついた。
その視線の先には、綺麗に剃り取られたスキンヘッドに荒々しい白髭を蓄えた巨漢が仁王立ちをしていた。
東雲 来蓬斎―――…
当時の虐殺部隊隊長であり、戦場ヶ原の闘いの師でもある男だ。

「教育的指導じゃイチゴ頭。最近のうぬの行動はあまりにも目に余るのでのう。」
「知ったことか!任務もしっかりやっただろう!俺が一体何をした!?」
「言わねば分からぬか、こやつめっ!」

東雲の拳が容赦なく戦場ヶ原を襲う。
この時の戦場ヶ原はまるで鬼そのもの。この日も、任務の枠を越えて無意味な虐殺をしたばかりだった。
東雲はそれを叱咤したのだ。

「よいか。我々は他の部隊からは鬼だ金剛のコマだなんだと蔑まれておる。
だが忘れてはならぬ。我々は『人』なのだ。人としての誇りだけは失うてはならぬ。
失えばその刹那、悪鬼羅刹と成り果てるじゃろうて。」
「人の…誇り……?」
「そう、誇りじゃ。何がために闘うのか。
金剛ずれに忠を尽くせと言うておるのではない。機関がため、世界がため、大切な御仁がため……。
イチゴ頭よ。うぬは何がために闘うておるのじゃ。」
「なんの…ために………、知ったことか!そんなこと!」
「ならば分かるまで折檻じゃァ!バカ弟子がァ!!」
今一度愛の鞭が振り下ろされるのと同時に、戦場ヶ原の意識は現在へと覚醒した。
刹那、眼の前に飛び掛かる虐殺部隊。
戦場ヶ原は反射的にそれをグラビトンハマーでたたき落とす。

「なんのために闘う…。」

ぽつり、と戦場ヶ原は眼前に立ち塞がる戦闘集団に問い掛けた。

「貴様らは今、何のために闘っている?」

顔を上げ、同じ質問を繰り返した。
しかし彼らからの返答は言葉ではなく、各々が手に持つ獲物から放たれた鉛玉だった。
「わかんねェか…………、だったら―――」
瞬時に開いたバキュームディスチャージが、飛来する弾丸をすべて弾き返す。

「分かるまで、折檻だ。」

あの時、師に言われた言葉が無意識に口をつく。
いつしか戦場ヶ原の顔は、孤高の狂戦士からかつての虐殺部隊隊長のそれへともどっていた。


戦場ヶ原の教育的指導が始まったころ、少し離れたビルの上。
闘いの一部始終を見守る巨大な影が、黒い戦闘服に身を包む者たちを引き連れて立っていた。

「小隊の3分の2が戦闘不能。これより小隊長が作戦行動に入る。」

無機質な声とともに、影はその外套を外し、鍛え上げられた肉体をあらわにした。
無数の傷が刻み付けられた肉体と、スキンヘッドに白い髭。
――そう、先ほど戦場ヶ原の記憶に現れた、あの男だ。

「…東雲 来蓬斎、戦場に罷り通る。」

抑揚のない声が響くと同時に、その巨体は爆音とともに『戦場』へと飛び降りた――――…。

【戦場ヶ原 天:路地裏で戦闘中。東雲 来蓬斎が到着】
【現在時刻:PM7:00】
203廻間 統時@代理:2008/10/16(木) 19:28:58 0
>>192
……気配の主は逃げた。
瑞穂の言うとおり、偵察にしては逃げ足に違和感を感じる。
ただの一般人の可能性が大きいか?
まあ、今となってはどうでもいいことだ……とにかく休みたい。
少し歩くと、無事に国崎薬局に見えてきた。
なんとか無事にたどり着けることが出来たか……
俺が安堵のため息をつくと、瑞穂が俺を肩から下ろし忠告をしてきた。

>「彼はレオーネ・ロンバルディーニ、『機関』のNo.6。
  接触するなら気を付けて、私はここで失礼させてもらうから」

そう言うと瑞穂は場を離れていく。
……機関のナンバー6……なるほど。
幹部レベル、それもかなり上位の存在。だったらこの場を去ったのも頷けるな。
幹部レベルを相手にして、ただですむとは思っていない。過去に戦った事があるから分かる。
今の俺はろくに戦えやしない。瑞穂が戦う……といっても、手負いの俺を庇いながら普段以上の動きが出せるとは思えない。
戦うにしろ戦わないにしろ、この場は接触をとらない方がいいだろうな。
どうやら誰かと話し込んでいるようだ。
この場は目立たず騒がず、静かに薬局内に入るとしよう。
立つ事は出来るが、まだ歩くには辛い。
肩はルナが貸してくれた。

「……最初っからこうしてればよかったな」
「……そうね」

扉を開け、店内に入る。
すると、見知った顔がカウンター内に座っていた。
その人物は外見からは想像も出来ないような大声で挨拶をしてきた。

「〜ッ!!」

み、耳が……鼓膜が……痛い。
思わず声にならない悲鳴が出てくる。
ただ、ルナは大したダメージを負っていないように見える……
神族ならではの特権か?羨ましい。

「――――――!」

見知った人物……沙羅は、慌てた様子で俺に何かを言っている。
だが、耳がキンキンしているせいで何を言っているか分からない。

「……頼むから、耳の痛みが引くまで待ってくれ……」

【廻間:沙羅の発した大声で鼓膜に軽度のダメージ。
    話は痛みが引いてからにしてほしい】
204梓川 博之 ◆acBW5xlTro :2008/10/16(木) 21:27:48 0
>>181>>203
とある通りをコツコツ歩く。
学生服の上の、薄い黒コートをなびかせる。
………あれ?ちょっと待て、この通りなんか見たことが…。

先のほうに建物が見える。
これも見たことが……って…。
看板の文字に知ってる人の名字が書いてある。
昨日知り合った人の名字が。
来たことあるぞ此処!

「………く、国崎薬局…!?
………半日歩いて休んで、結局戻ってきちまったのかよ……」
地面に手をつき、自分の土地勘の無さに絶望した。


今朝、国崎の電話に入っていた妙な留守電。
それによって、俺は分かれることを決意を固めた。
大量の包帯などを、個人経営の薬局で買うなんて如何考えても異常だろ。
二人には悪かったがもうその時点で見限った、というか。
留守電の奴によって危険が来ることを予想した、というか。
……変なことに巻き込まれたくが無いために、相手をしに行った隙に逃げたというのに。
戻ってくるとは笑止千万、間抜けっぷりもいいところだよなぁ、俺!

更に俺の心に畳み掛けるのはこの無駄に終わった半日。
『機関』についての情報を得ようとは思ったぜ!
だけど頭と格好が危ない奴らがうろついてるせいで外にはあまり人がいないし。
その辺で事故やら事件やら何やらが多発してるし。
すれ違っただけで職質してきそうな警察もかなり居るし。
これら以外にも沢山あったが…。
それら全部避けて来た結果がこれだもんな…。

今、選択肢は二つ。
薬局に行き、何か情報が無いものか聞くか。
もしくは当ても無い街をうろつくか。
…どっちも賢い選択とは言えないが……。

「………もう良いや、笑い者覚悟で訪ねてみるか」


だが、いざ薬局に着いてみると…中には国崎は居ないようだ。
中に引っ込んでるのか?
居るのは店番らしき女の子一人、買い物客らしき男女。
何やら話しているが、ちょっと邪魔させてもらうか。
「ごめんくださいーっと。お話し中悪いけど、国崎は居るかい?」

【梓川:国崎薬局を再び訪ねる。神野、廻間、ルナに国崎が居るか質問】
>>197

>「わぁーったよ。あんたが譲歩してくれたんだ。乗ってやるよ」

「すまない。話は直ぐに終わるよ」

勢い良く閉められたドア越しに、私は肩を竦めるジェスチャーをして見せた。
なかなか気張るな、この恋島達哉という男は……。
憮然とした態度に、若さという物が羨ましくなった。

運転席に乗り込むとシートベルトを締め、エンジンをスタートさせる。

「待たせたね。――さぁ、行こうか。
 ……ベルトは締めろ?」

天気の良い日だ。オープンテラスのカフェにでも行こうか。
滑るように、軽やかに、車は動き出した。
相変わらず恋島は黙っている。彼から話を聞く為に、こちらも一つ話でもしてみるか。

「始めに私から質問をしても良いか?
 君が能力に目覚めたきっかけを詳しく教えて欲しいのだが……」

未だにだんまりか……。まぁいい。これは予想通りだ。

「……フェアじゃないというので在れば、私の"きっかけ"を教えてあげよう」

城栄や一部のごく限られた人間しか知らない私の過去を……。

私が産まれたのはイタリアはミラノ…らしい。
らしいというのは、私が孤児だったからだ。

気が付けば私は孤児院で暮らしていたし、そこが私の家だと思っていた。
物心ついてから、私が孤児だと聞かされた時、大変驚いたものだ。

孤児院には大人はおらず、最年長の少女でさえ16歳という有り様だった。
くたびれた孤児院でね、しょっちゅう雨漏りしていた。
食事代は拾ったゴミを業者へ持っていく事で作っていた。
これがなかなか重労働だった。思い出すのは、ガキ大将のフェデーレが
電子レンジを持っていこうとして野良犬に尻を噛まれた時の場面。
あれは傑作だった……。
食事の時は皆で神に祈りを捧げていた、
今日も美味しい食事を与えてくださり感謝しています、と……。

冬場は暖房一つ無い孤児院で、皆で肌を寄せ合って寝ていた。
不思議と楽しい思い出しか浮かんでこない。
確かに苦労もあったが、それでも――

「幸せだったんだ……」

十字路の前で信号につかまると、私はウィンドウを半分ほど開け、
春の空気を胸一杯に吸い込んだ。
>>205

ある冬の日、私はチーズとワインを買いに街へと行った。
その日は12月25日。キリストが生まれた日、クリスマスだったから……。
最後の一切れのチーズを手に取り、レジへと進むと外で煙が上がっていた。
良く見ると孤児院の方角だった。

死に物狂いで駆けつけると、既に野次馬でごった返していた。
連中を押しのけ見た物は、真っ赤に燃える我が家の惨状だった。
咄嗟に中へ入ろうとした。直感だったが、皆はまだ取り残されていると思ったからだ。
それも直ぐに止められた。私を止めた大人は、トマトのように顔を真っ赤にしながら
"キミまで死ぬ事になるぞ! 行っては駄目だ!"と繰り返していた。
私は無力だった。目の前で業火に焼かれていく仲間達を見ながら、
なす術も無い自分を味合わされた。そしてこの世に神が居ない事を痛感した。

……傑作だろう? サンタクロースは子供達にプレゼントを与える代わりに
神の元へと連れて行ってしまったんだ。
その日から私は信仰を棄て、神を棄て、そしてこの力を得た。

「――以上が、私が能力に目覚めたきっかけという奴さ。
 面白くも無い話だがね」

恋島は静かに私の話に耳を傾けてくれていたようだ。
車は大通りを直進する。
眼を向けると街路樹の蕾が春をまだかまだかと、恋焦がれている。
色は薄紅色、これは桜だろうか?
あともう少しすれば、この街路樹にも桜の花びらが繚乱として咲き誇るのだろう。

「これから君や君の周囲の人間には大変な出来事が起こると思う。
 君には、君にしかない力が在る。その力で大切な者を守って欲しい。
 ……私は…守れなかった、君のような若い人間には同じ思いをして欲しくない」

これは偽りない私の本心だ。
若い世代の未来を暗闇で塗りつぶす事はしたくないし、させたくも無い。
その為にも早急な神の福音が必要なのだ。
世界を在るべき正しき姿へと戻すために。

【レオーネ:現在地 街中】
【恋島に自らの過去を打ち明ける】
207恋島達哉 ◆KmVFX58O0o :2008/10/17(金) 10:08:04 0
>205-206
レオーネが運転席に乗り込むのを待ちながら、薬局の方に目を向ける。誰かが出てくる様子は無し、後ろの二人もまだ来なそうだ。
早く出発してくれよ、レオーネ。二次災害が起こるのは俺にとって心が痛む。俺はやきもきしながら両手を遊ばしていた。
数秒待っていると、鮮やかな動作で颯爽と、レオーネが運転席に乗り込んできた。そして俺の方に顔を向けると

>「待たせたね。――さぁ、行こうか。
  ……ベルトは締めろ?」
と言った。言われなくても締めるよ、これでも社会人だっつーの。俺は無言のままシートベルトを締めた。
車はエンジン音を上げることもなく、静かに出発した。流石高級車ってか。俺もいつか乗り回してみたいよ、こういうの。
車は路地を出ると、商店街に向かう大通りを走り出す。時折、通行者がこの車を眺めているのが見てて面白い。

が、車内の雰囲気はまぁ悪い。レオーネは運転に集中したいのか無言だし、俺から話す意味も無い。
俺が今一度口を開けるのは、俺が求める目的地が見えてからだ。それまで奴に何か聞かれるまで俺は喋るつもりは無い。
しばらく外の景色を眺めていると、レオーネが穏やかな口調で口火を切った。
>「始めに私から質問をしても良いか?
  君が能力に目覚めたきっかけを詳しく教えて欲しいのだが……」

……耳鳴りに初めて会った時の話か? そんな事知ってどうするんだよ。レポートにでも書くのか?
多分あんたが望んでるような話は出来ないさ。ガキの頃に導かれたって事と、その耳鳴りを悪用してた学生時代なんて話してもな。
というか、レオーネの質問に俺は疑問符が沸いた。耳鳴りの詳細や俺が会った人間の事を聞くならともかく、過去の事を聞くとは思わなかった。
しかし知りたいって事はそれなりの理由があるんだよな。……なら尚更教える気はねえな。

俺がだんまりを決め込み視線を外に向け続けていると、レオーネが言葉を続けた。
>「……フェアじゃないというので在れば、私の"きっかけ"を教えてあげよう」
ほぉ、アンタがその能力とやらに目覚めた話とやらか。別に聞きたいわけじゃないが、まぁ良いだろう。
どうせその能力とやらに目覚めて、悪事に身を染めただのそうゆう武勇伝を話すんだろ? 聞く前から反吐が出るぜ。

だが、レオーネの口から出たのは意外な話だった。俺がレオーネに抱いていたイメージとは真逆の話だからだ。
俺のイメージでは、こいつは生まれて今日に至るまで、人生において何の失敗もしていない品行方正のボンボンだった。
が、レオーネは自らを孤児と話した。そして流れるようにレオーネの口から出てくるエピソード。ますます俺は固定化していたイメージを壊される。
にしても……立場は違うどころか、敵対状態だが、もしレオーネが正真正銘ただの「他人」なら、俺はレオーネの話に同情してるんだろうな。

車が十字路に差し掛かって、信号が赤になった。レオーネは車は停止線で止めると、ウインドウを少しだけ開いた。
心地良い風が車内に流れ込む。なんか空気が悪かったので助かるぜ。と、
>「幸せだったんだ……」
……やっぱな。ある程度予感はしていたが。俺は何もいわずレオーネの話を聞き続ける。
208恋島達哉 ◆KmVFX58O0o :2008/10/17(金) 10:08:38 0
>「――以上が、私が能力に目覚めたきっかけという奴さ。
 面白くも無い話だがね」
……はぁ。レオーネの能力に目覚めたきっかけを聞き終わり、俺は宙を見上げ頬杖をついた。
少しばかりアンタの事を侮蔑しすぎてたみたいだ。しっかし……俺は耳鳴りに会った時の事と、レオーネのきっかけの顛末を頭の中で照らし合わせた。
大切な物が目の前で消滅する悔しさと悲しさ……いや、それ以上の感情は、俺にもよく分かる。自分の無力さが痛すぎるほど身に染みるから。
もしかしたら、俺の耳鳴りと違いアンタの能力はその悲劇から立ち直る為に授けられたのかもしれない。何か情けねえなぁ、俺は。
そこまで聞かされたら尚更、俺のきっかけなんか話せねえよ。・・・・・・だから。

>「これから君や君の周囲の人間には大変な出来事が起こると思う。
  君には、君にしかない力が在る。その力で大切な者を守って欲しい。
  ……私は…守れなかった、君のような若い人間には同じ思いをして欲しくない」

「……俺もアンタと同じさ。いや、アンタよりも情けないな」
変に突っ張る理由も無くなった。俺はグッと背筋を伸ばし、深く息を吐いた。
「詳しく話せば長くなるし情けないから止めるけどな、俺は二回、大切な者を失った。
 それも一つは能力を使ったせいでな。笑えるだろ? 俺は自分の手で潰しちまったんだよ。俺自身の大切な者をな」

レオーネは俺の言葉を黙って聴いている。案外脳内でせせら笑っているのかもしれないが、別にどうでも良い。
レオーネの言葉を真に受けるつもりはさらさら無いが、俺は俺自身の未来を、そして俺に関わった人を守る為に動くつもりだ。
その為なら、どんな泥だって塗りたくってやる。どうせ俺の力なんて微々たるものだろうがな。
そうだ、泥を塗りたくって、俺は……。

「きっかけは残念だが話せない。だが、どうして俺があんたにサシで話したいかの理由を話すよ」

「俺を『機関』に入れてくれ。どんな役職でも構わない。俺の大切な者を守る為に、な」

【現在地:車中】
【レオーネに自らの心中を明かす】
209 ◆6eLTPQTFGA :2008/10/17(金) 12:34:01 0
>>176
俺の名前は早川 異能力者だ
能力者と戦って力を奪えというメールがきて三日…俺はそのノルマを達成していた
だが保険というのは必要だ…そこで俺は能力者を狩ることにした
人通りのほとんど無い廃墟…さっきから俺をつけている三つの力を感じる

「クククッ…わざわざここまで案内してくれたってことか」
バイクに乗った三人の男が俺の前に現れる。
胸に朱い髑髏の紋章をつけ、三人のうち二人はフルフェイスといういかにも怪しげな格好だ
顔に何も着けていない真ん中の銀髪男が恐らくリーダー格だろう。

「仲間がいるのかと思ってついきてみたら…お前一人で俺たちを相手にするつもりか」
バイクから降りながらフルフェイスの一人が話しかけてくる、その表情はほとんど確認できない。

「当たり前だ…三人ともこの俺が片付けてやる…!」
どんな能力を持っているかはしらないが、俺の能力は今まで負け無しだ。
こんな怪しい奴らに負けるはずが無い

「大した自身だな…面白い…俺が遊んでやろう」
銀髪男が前に出ようとしたフルフェイスを手で制し、こちらと向かい合う
「準備運動くらいにはなるだろう…貴様の異能力…見せてみな…」
銀髪男が挑発的にこちらに言ってくる、それが望みならば見せてやろう…俺の化け物の体を
上着を脱ぎ捨てて、異能力を発動させる

「ぬおおおおおおお!」
ボコッ
筋肉が一瞬収縮して大きく増強される
ドンッ!
「ぐおおおおお…おおおおお!」
ドンッ ドンッ ドンッ
俺の人並みの体はどんどん大きくなり、最終的には3m近い巨体となった

「待たせたな…これが俺の戦闘形態だぁ…覚悟しろよ…」
ダッ!
銀髪男に向かって拳を出す

この時早川は気づいてなかった、不敵な笑みを浮かべているこの銀髪男を

【スティクス:異能者と戦闘開始】
210池上 燐介 ◆qqu0tZFsYU :2008/10/18(土) 00:19:04 0
記憶を辿って、国崎薬局への道を歩き続けて十数分──。
俺はやっと国崎薬局前へと辿り着いていた。
しかし直ぐに店に入ろうとしなかったのは、少々の違和感を感じたからだろうか。
国崎は自分を異能者だと知られることを嫌っていた傾向があった。
にも関わらず、店の中からは複数の異能者の存在が感じられるのだ。

店内の様子から今のところ闘っている様子はないが……。
なんにせよ、少し気になる点があるくらいで引き下がるわけにもいかない。
俺は一つ深呼吸をすると、薬局のドアを勢いよく開け放った。

「ごめん下さい」

>>183>>203>>204
俺がドアを開けると、既に店内にいた数人の男女が一斉にこちらに視線を向けた。
店の外から感じた異能力は、恐らくこいつらであることは直ぐに分かった。
何故なら、数人の男女の中に、一度見た顔が二人ほど混ざっていたからだ。
一人は昨日、ビルの屋上で会った『霧男』。そしてもう一人は……。

「……意外だな。まさか生きていたとは」

残る一人は、廃校で殺したと思っていたあの『剣使いの男』だった。
止めを刺さなかったことで気にはなっていたのだが、
やはりまさかという思いが強かったのか、俺は一瞬だが驚きの表情を浮かべた。
他の顔触れには見覚えがない。店番のようなことをしている女の存在がいるところを見ると、
国崎の知人も混ざっているようだ。
いや、もしかしたらここにいる全員国崎の顔見知りなのかもしれないが。
次に言葉を発した時、俺の顔はいつもの冷たい表情へと戻っていた。

「……まぁ、お前らのことなどこの際どうでもいい。ここの店長は、国崎はどうした?
俺は奴に用があって来た。さ、出してもらおう」

【池上 燐介:薬局の店内へ。国崎が居るか訊ねる】
211神野 沙羅 ◆LHz3lRI5SI :2008/10/18(土) 00:22:57 0
>>203、204

「はぁ〜暇だな〜」
客が来ない。暇だ。
「だれかこないかな〜」
恐ろしく暇だ。あくびをしていると誰かが入ってきた。それは統時だった。
「いらっしゃいませ〜〜〜〜〜〜〜!!!!」
拡散を使った挨拶。
>>「〜ッ!!」
ちょっとした悲鳴が聞こえた…。手加減を忘れてしまった…。
「ちょっと統時!大丈夫?耳いたい?ごめんね!」
>>「……頼むから、耳の痛みが引くまで待ってくれ……」
どうやらこのまま休ませていたほうがいいみたいだ。反省。

その5分後くらいに耳が治った統時に質問しようとした。
口調のことだ。

「統時。その口調…」

その瞬間に扉が開く。
(お客さん!!!)

何か話そうとしていたが、反射的に挨拶。
「いらっしゃいませ〜〜〜〜〜〜〜!!!!」

…その数秒後。耳を押さえた統時とお客さんらしき人
それを普通に見ているルナちゃん、オロオロする私。
というなんとも薬局らしくない風景になった。

それにしてもこの制服。私と同じ学校?

【梓川に拡散の挨拶。統時も巻き添えに】
【梓川に興味を示している】
212 ◆O93o4cIbWE :2008/10/18(土) 18:43:27 0
―――そうじゃ、こちらは面白いことになりおったわ――
「面白いこと…ですか?」
――籐堂院じゃ、前に話したろう、あやつが機関に戻って来た、それも儂の元にな――
「籐堂院……」
―まぁお前はこれまで通り潜伏しておれ、直に面白い事に成る――
――そうそう、仕事がないというのも性に合わんじゃろう、
今町に居る異能者、面白そうな奴は儂の元へ連れてこい、
儂等の邪魔になる様な者は始末しても良いぞ―――
「っは、了解しました」
――ではな、精々期待しておるぞ――

―プツッ――



装備を整え、誰も使わなくなったシナゴーグから外へと駆りだす
昼下がりの太陽が、彼を照らした――

【NPC 影渓 木陰 登場】
213アルト ◆Jm4vxzroP6 :2008/10/18(土) 19:47:47 0
>>195

壁を背負った瞬間、放たれる三連射。それだけで、相手の居場所は確定された。
――――誘っているのか、あるいは場所を絞らせてから移動するつもりか。
どちらにせよ、私には近づく以外の選択肢はない。
なにより、

「誘っているのなら……ええ、いいでしょう。
 どれほどの罠があるのか。あるいは数という力を持っているのか。
 そのどちらであっても――――私は、逃げるつもりはないんですから」

それは私の敗北だ。戦いを避けるのはいい。だが、もう始まっていることだし。
そもそも機関に協力を申し込んだ時点で、この戦いは私が望んだモノになっている。
だからこそ、この戦いから逃げることはできない。そして、
機関に連絡を取り、こちらも数を揃える、というのも手ではある。
しかし、それでは機関に敵対する者と接触することができない。
それが戦闘であれ、会話であれ、どのような相手かを知ることこそ、今は重要だ。

「機関に敵対するんですから、それ相応の力はあるんでしょうね。
 ――――ふ、ふふふ。その力がどれほどのモノなのか、見せてください」

もしも本当に、機関を打ち破れるほどの力があるのなら――――その場合は、面白いことになるだろう。
まあ、それだけの力を持った者だった場合は、この貳名市がどうなるかが心配ではるが。

「もっとも、もう既に終ったようなものですかね、ここは」

駆け抜ける。一刻も早くあの場所へ――――狙撃手がいるであろう廃ビルへ向かう。
これが罠であることは分かっている。しかし、それでも、だ。

「機関の人間も、少しばかり期待外れでしたからね。
 ――――もっとも、私が高望みをしすぎているだけかもしれませんが」

白馬の王子様を夢見る子供ではあるまいし、流石に私もボーダーを下げるべきではないか。
私が敵と考える、あるいは、味方だと思うボーダーラインを。――――ハ、くだらない。
意味のないことだ。そもそも、それを下げては私の意味がなくなる。
最初に私が望んだのは、ただ単に力だ。それがどのような力かは関係なく。
そんな私が敵だの味方だのと、馬鹿馬鹿しいにもほどがある。

【アルト:誘いに乗り、廃ビルへ向かう】
214 ◆O93o4cIbWE :2008/10/18(土) 20:15:04 0
―…ガラガラガラ

大きな物が崩れる音、振り向くとビルが、崩れ去っていた――

「ほう……」

興味深げに崩れた空間を見つめる

(行って見るか…)

これがもし機関の関係者の戦いなら別に無視しても構わない、我々の目的は、違う所にあるからな
(一般の異能者同士の戦いなら…アレだけ派手な事を起こす異能力者…興味がある)

―――――

現場の近場のビルに入り双眼鏡で戦いの場を覗き込む――

(一人は、『神重 智』候補者の一人か…もう一人は、女?
事を引き起こしたのはこいつか…しかし、こんな異能力者は記録には無い…何故今まで…)

アブラハムの可能性を持つ者、その護衛、彼が北村幽玄から最低限言い渡されている任務、
だが彼は神重よりも、もう一人の異能者に興味がわいていた

(あの女…正面切っての戦闘には向いていない…適しているのは、奇襲か暗殺…まるで我々みたいだな…)

彼の戦いを見てる内に、ふとそんなことが頭を過ぎる、
手段を選ばねば強くなれるだろうに、我々のようにな、彼は皮肉めいた笑みを浮かべる。

(しかし血塗れだなこの二人…ここまで来ると後始末が大変だな…)
戦場を見れば一面が血、血、血、普通の人間なら気が狂いそうな空間だ。

その空間に居る二人を、、表現するなら、宛ら現代の吸血鬼といった所か―――


戦いを観戦している内に時間が経って来た、そろそろ人が駆けつけてくる
二人もそれを承知しているのか、決着を付けるべく、致命の一撃を加えようとしている。

(そろそろ止めるか、万一にどちらが死なれても困る…ん…?)

能力の準備をし、止めるための動作を始めて居た所、急に戦いは止まる
そこには黒いスーツを着た第三者、機関の人間が居た、戦いを止めたのはこの男らしい。

(あれは…小村 禅夜…?)

現れたのは機関の番外『小村 禅夜』知らない顔でもないが、
何故彼が現れたかは大よそ察しが着く。
――どうやら先程の二人は手を組み、小村と戦うようだ。
215 ◆O93o4cIbWE :2008/10/18(土) 20:16:52 0
これは好都合、この組み合わせなら俺の能力で何時でも戦いを止めれる
俺は小村に嫌われてるからな、ククッ。

意地の悪い笑みを浮かべ、戦いを見守る影渓、神重たちはどうにも戦い方が悪い

(まあ、先程まで殺し合っていた仲、チームワークも何もないか、だがあの能力なら
二人纏めて切り裂いてしまった方が早いな、いかん…どうもあの女の事ばかり考えてしまう)

ぎこち無い戦いの2人と、奮闘する小村、勝負は均衡していたが突然その均衡は崩れた

―――ドゴオォンッ!

突然の爆発、起こしたのはあの女、まったくこれ以上派手にやらかすな
対する小村は能力を全身に纏い二人に襲い掛かる、早い、かなりのモノだ。

戦いが小村に傾いたと思った次の瞬間

ドオオオオオオンッ!

またも爆発が巻き起こる、まったく、、派手過ぎだ、この戦いは。
あまりにも目立つ戦いに違和感を覚える、いかに目立たず、小規模で、痕跡を残さず殺しを行う暗殺者にとって
この戦いは、まるで正反対のモノであった。
(まあ、こういうのも嫌いではないがな…しかし妙だ…この程度、小村がかわせないはずが…)

直撃を受けた小村をみて疑問が浮かぶ、爆煙が晴れるころ、小村は膝を着いている、
そして、能力が勝手に動いている様に見える。

(何だ?あいつの能力は未だ判らない点が多いな…少し認識を改めるか…)

止めに入ろうとしたが、見た所その必要も無さそうだ、数分後、小村は能力体に抱えられ、去って行った。
残る二人は、何やら話合った後、分かれた、あの女の別れ際の態度が少し気になったが、さて、
興味が在るのは記録にも一切載っていないあの女、もしかすると、な。
女をつける、様子がおかしい、やがて女は近くの路地裏で、倒れこんだ。

(あの女…こんな状況で、死ぬぞ……)

虐殺部隊が総動員されている現状、こんな場所に居れば確実に襲われる、
奴らなら見つけ次第殺して仕舞いかねない、こいつの価値も判らずに。

バツが悪そうに頭を掻く、さて、如何したものか?

(とりあえずこのまま連れて行くべきか?いや…)

【影渓:倒れた七草の様子を見ている】




>>207-208
>「……俺もアンタと同じさ。いや、アンタよりも情けないな」

同じ……同じと言ったのか?
と言う事は、あの理論は核心を射ているという事か。
恋島は背筋を伸ばすと、力を抜くように深く息を吐いた。

>「詳しく話せば長くなるし情けないから止めるけどな、俺は二回、大切な者を失った。
>それも一つは能力を使ったせいでな。笑えるだろ? 俺は自分の手で潰しちまったんだよ。俺自身の大切な者をな」

それもなかなか辛そうな経験だな。
私とはベクトルこそ違うものの、激動の人生を歩んできたようだな。
この私がそうであったように、彼も心に大きな傷を負った事だろう。

「そうか……」

私にはこれしか言えない。恋島の思わぬ発言に、彼に対して掛ける言葉が見つからなかった。
目覚めた切欠こそ教えて貰えなかったが、この恋島の告白は自分の中の何かを動かした。
彼は私と似ているかも知れない……。

>「俺を『機関』に入れてくれ。どんな役職でも構わない。俺の大切な者を守る為に、な」

恋島の言葉に、不意に現実に引き戻される。
何を言っているのか良く解らない、もう一度恋島の発言を頭の中で反芻する。

「――フッ……フフフフ」

言葉の意味を理解した時、私は思わず笑ってしまった。
失礼とは解っていても、喉の奥からは止め処無く笑いの濁流が押し寄せてくる。

「いや、失礼。先程まで敵意を剥き出しにしていた君が、
 そんな事を言うとは思わなかったものでね」

咳払いをすると、ウィンドウを締め切りオーディオを作動させた。
ラジオでは丁度クラシック音楽が流れ始め、小気味の良いピアノの音が車内に静かに響き出す。
この曲はショパンの英雄ポロネーズだな、昔レコードを持っていた。

「……」

機関に入りたいと願う者は世界にごまんといるが、
その理由はどれも皆同じ様な物ばかりだ。

全体の約30%の者はこう言う。地位や名誉が欲しい、と。
そんなもの、表社会でも努力と言う条件付だが、ある程度の地位を手に入れる事が出来る。
また、約20%の者はこう言うのだ。金が欲しい、と。
それこそ、堅気で真面目に働いていた方が安定した収入を得られる。
まさか、恋島は約10%の中の連中と同じ理由なのではないだろうな?
連中の言い分は、単に人を殺してみたいからだ。偶に居るのだ、こういう阿呆が。
……いや、恋島はそういうタイプじゃないな。
残りの40%の連中は、機関に恨みを持っている奴らで、
機関に一泡吹かせてやろうという理由で入ってくる。
そんな考えを持った奴らの行く末は決まっている。
機関に入ったは良いが、直ぐにバレて簀巻きにされて川に浮かぶ事になる。

しかし、恋島の理由は何れの条件にも当て嵌らない。
彼のは全体の1%にも満たない珍しい理由だ。
確かに、そういうこの世界では珍しい奇特な考えを持った奴が入ってくる事は、
数年に一回在るか無いかだが在る事は在る。
>>216
「……君が――
 君が考えている程、機関は……この世界は甘くは無い。
 真っ先に地面に目鼻を埋める事になるのは、君のような考えを持った奴らだ」

私の言葉に対して、恋島の眼は先程にも増して決意を顕わにしている。
真摯な眼差しに負けた訳ではない。しかし、彼の告白を聞いた時、
メランコリックな気分になったのは確かだ。
或いは、自身と重ねた為か……。

私は彼に一つ条件を貸せる事にした。

「――良いだろう。ファーストナンバーの権限を使い、
 君を機関のエージェントに加えよう。
 だがな、私を裏切る真似は止せ。もし裏切ったりしたら……」

車を停止させると同時に、恋島の髪の毛を掴み、自分の目線に持ち上げる。
サングラスをずらすと、地獄の悪鬼をも震え上がらせる"ファーストナンバーのレオーネ"の眼で彼を睨みつける。

「お前はもう死ぬしかない……ッ!!」

異能力を使い、強力な念を意識ではなく深層心理に深く刻み込む。
今恋島に掛けたのは、一般には後催眠と呼ばれる催眠術の一種だ。
これを掛けられた人間は、自分では命令を思い出せないが、無意識かではそれに則った行動を行う。
それは催眠下であるトランス状態から抜け出した後も消える事は無い。
恋島が私を裏切った瞬間、この爆弾は起爆する。
そして、彼は自ら命を絶つ事になる……。

保険を掛け終わると、私は恋島を放し、再び車を発進させる。
カフェは中止だ。このまま国崎薬局へと戻る。
それに、恋島にも考え直す時間が必要だ。

「非礼は詫びよう、申し訳ない。
 だが、恋島君。君には良く考えて欲しい。
 半日ほど猶予を与えよう。それまでに自分の考えを整理してくれ。
 ……もしも考え直しても今と同じ結論に達したら、
 今日の夜九時にフタツナスカイホテルに来ると良い」
>>217
車は遠回りながらも国崎薬局へと向っている。
辺りにはアパートや地元の中小企業の物だろう建物が点在している。

「むっ……!」

それは突如として私の体を貫いた。
粘ついた、ドロリとした不愉快さ……。嫌な感じだ。酷く不快になってくる。
これは敵意でも悪意でもない。この感じは"明確な殺意"だ。
距離は……およそ300m先といった所か。
こちらの行動を完全に視界内に入れる事が出来る建築物となると発信源は……あそこか。
眼を向けると鉄筋コンクリートの簡素なアパートが建っていた。
街が栄えていたであろう時期に立てられたと思しきアパートは、
この街の栄光と没落を見てきたのだろうか。
思わぬ所で出くわすのが『落とし穴』という物だ。やれやれ……。
気を滅入らせながら車を停止させると、
恋島も気配に気付いた様子で、辺りの様子に眼を光らせている。

「……前を失礼」

当の本人よりも私は一瞬早く、恋島の顔の一歩手前でそれを掴んだ。
"それ"は"針"であった。15センチ大の針はフロントガラスに穴を開け、
恋島の眉間へも穴を開けようとしたのである。
針が恋島を目掛けて放たれた事は確実だ。
加えてもしこれが命中していれば、間違いなく恋島の命は無かっただろう。
初撃がこの私ではなく恋島であった事から察するに、
敵は初めから恋島の命を狙って針を撃った事になる。

その時、アパートから影が跳躍すると建物と建物の間を縫って、
車の前方約10m先に降り立った。

「ようやく捉えたぞ……アブラハム」

車の中に辛うじて聞こえてくる男の声。
気配は依然消えてはおらず、この男が発信源なのは明らかだった。
"アブラハム"の事を知っているとなると、やはり狙いは恋島か……。
機関の人間……それもファーストナンバーしか知らない筈の情報を持っているとなると、
それに近しい人間という事になる。
私は溜め息を吐きながら、ドアを開けると車を降りた。

「No.5からの命令だ。No.6、速やかにその男をこちらに引き渡せ」

車の中に居た時よりも、はっきりと男の喉を潰したような声が聞き取れる。
なるほど、こいつの飼い主は外道院か。
あの女、どうあっても我々の邪魔をするつもりらしいな。

「それは出来ないな。私はNo.1からの直々の命令でここまで来ているんだ。
 帰って外道院に伝えろ。悪巧みをしたければ私のいない所でやれ」

【レオーネ:現在地 道路】
【No.5の部下(NPC)と遭遇。恋島の願いは聞くつもり】
219恋島達哉 ◆KmVFX58O0o :2008/10/19(日) 23:07:31 0
>>216-218
俺はじっと、レオーネの横顔を見据えて返答を待った。レオーネは前を向いたまま、そうかと漏らした。
しばらく……レオーネは何も言わない。俺もそれ以上伝える事も無いため、黙っている。
なんとなく頭の片隅でやっちゃったかな? という感情が徐々にもたげてくる。ま、それでも良いか。
どうせ投げ捨てた命だ。ここで最終回を迎えて、人生の非情さを悔やみながら死ぬのも悪くない。痛いのは趣味じゃないがな。

どれほど走っているのだろう、俺の知らない景色がウインドウの外に映っている。流石に町を出てはいないだろうが。
すると、だ。レオーネが突如、何がおかしいのか含み笑いをし始めた。何が・・…・いや、色々理由は浮かぶけど。
ある程度予想はしていたが、ここまであからさまな反応されると悔しい上に小恥ずかしいな。
どうせ殺すなら無表情のまま殺してくれよ。散々笑われた後に殺されるなんて、馬鹿馬鹿しいにも程がある。つーか報われねぇ。
レオーネは数秒ほど笑い続けると、ピタリと止め、若干笑みを含む声で言った。

>「いや、失礼。先程まで敵意を剥き出しにしていた君が、
  そんな事を言うとは思わなかったものでね」
微妙に納得するような、バカにされているような。
レオーネは咳払いをし、開けていたウインドウを閉めると、今までつけていなかったオーディオに手を伸ばしチャンネルを回した。
ラジオから聞いた事ある様な、無い様なクラシックが聞こえてきた。軽やかなピアノの音は空気を緩和・・・・・・しない。
俺が無駄に緊張しきっている為だろう。掌は汗でべったりと滲んでいる。

レオーネの返答を待っている時間が、俺には永遠に感じられた。実際は5分も経っていないだろうが。
しっかし、一切感情を感じさせないレオーネの表情を見ていると、妙な切迫感を感じてしまう。
相当上位のランクだとは踏んでいたが、雰囲気からして俺はとんでもない奴に対峙しているのかも知れない。
けど今更引くわけにはもちろんいかない。ここで俺が信念を無下にしちまえば、俺が俺を裏切る事になる。それだけは絶対に嫌だ。

何分、いや、何時間経っただろう。そろそろ俺の体内時間が狂いそうになるほど、その時間は長く感じられた。
と、レオーネがゆっくりと、自分の発言を一句一句確かめるように言葉を発した。

>「……君が――
  君が考えている程、機関は……この世界は甘くは無い。
  真っ先に地面に目鼻を埋める事になるのは、君のような考えを持った奴らだ」
承知だ。だからこそ、俺はアンタにそんな破滅的な願いを託したんだ。
さっきの発言は少しカッコつけただけで、もしかしたら俺はただ単に死にたがっているだけかもしれない。
正直、自分自身なにを守るかなんて分かっちゃいない。これからそうゆう存在が出来るのかも。だけど、だけどだ。
このままじゃいけない事ぐらい、俺みたいな頓馬者にも理解できる。だから俺は決めたのだ。
・・・
あえて『機関』に取り入る事で、俺は俺なりに、この腐ったゲームとやらに終止符を打つ方法を。
成功率なんざ雀の涙にも満たないほど低いが、何もやらないで、何も出来ないで死ぬよりかはマシだ。
それに……俺にはどうしても問いただしたい奴もいるしな。そいつに手っ取り早く会うためにも、『機関』に入る必要がある。

>「――良いだろう。ファーストナンバーの権限を使い、
  君を機関のエージェントに加えよう。
  だがな、私を裏切る真似は止せ。もし裏切ったりしたら……」
……? 本、本気か? 俺はレオーネの発言を一回頭の中で繰り返してみた。
加えると言ったな。確かに。それにエージェ……エージェント!? 幾らなんでもいきなりステップアップしすぎないか。
最悪、俺はこのまま冷笑されて殺されると腹と括っていた。それでも殺されなきゃ万々歳だ。えらく情けないが。
が、レオーネは俺の想像を遙かに超える返答をした。『機関』に入るのを許可する上、エージェントにしてくれると言ったのだ。
220恋島達哉 ◆KmVFX58O0o :2008/10/19(日) 23:09:17 0
必ず裏には姦計や策略を巡らしているのだろうが、今はそんな事は考えない。『機関』には入れさえすれば。
しかし……逆にここまであっさりだと拍子抜けしてしまう。この段階まで行くのにかなりキツイ事を考えていたのだが。
けれど油断はしない。何故ならレオーネは最後にこう付け足したからだ。裏切るなと。

途端、レオーネが急ブレーキで車を、って危な! もう少し丁寧に止めてくれないか。他に走行中の車がいないのが幸いだ。
瞬間、俺の髪の毛をレオーネが力強く握り、無理やり自分の顔を向き合わせた。やべっ、やっぱ罠か……?
…・・・新耳鳴り! 多分もう駄目だろうが、状況を教えてくれ!

『この状況下で物理的攻撃を防ぐのは無理だ。取りあえず精神耐性は掛けておく。頑張ってくれ』
ちょ、お前……てか精神耐性って初めて聞いたぞ。・・・・・・やっぱりお前……成長、してるのか……?
レオーネが掛けていたサングラスを少しだけずらした。年齢を感じさせない端正な両目が、俺の両目と合う。
瞬間、頭の中を凄ましい電流が走った。電流というか鋭い痛みだ。頭痛とも違う。反射的に俺は頭を抱えた。

レオーネが何か言った様な気がするが、上手く聞き取れなかった。レオーネが髪の毛を手放してくれた事だけは分かる。
お陰で自由になったが、未だに頭の中を奇妙な痛みが走っている。数秒じっとしていると、微かにレオーネの声が聞こえる。
半…日・・・猶予…もう一度自分の考えを改めろって事か? …・・・変える気は無いね、びた一文。

>「……もしも考え直しても今と同じ結論に達したら、
  今日の夜九時にフタツナスカイホテルに来ると良い」
最後の言葉だけがどうにか聞き取れた。午後9時か……長いな。けっこう時間を持て余しちまう。
だけどまぁ、良いか……どうせもう後戻りは出来ない。それなら最後に、今まで出会った人に会うのも良い。
ゆっくりと、俺は頭を抑えていた両手を離し上半身を起こした。車は方向転換すると、薬局の方へと走り出した。
221恋島達哉 ◆KmVFX58O0o :2008/10/19(日) 23:10:42 0
しばらく走ると、馴染みの深い(といって2日3日だが)景色が見えてきた。心からではないが、一応ほっとする。
――出来ないな。ほっとは。神経が過敏になっていたせいか、妙に感覚が冴えている。明確なイメージを抱く事は出来ないが。
それが俺達に対して敵意を抱き、なおかつ近づいてくる。それもえらく迅速だ。それ以外の事などまるで眼中に無いほど。
新耳鳴り、察知するだけで良い。そいつは今、何処まで来ている?

『いけない! 辰や、今すぐ下にしゃがむんだ! 出来なければ腕を上げて顔を守れ!』
以上に切羽詰った声で新耳鳴りが叫んだ。俺はその慌てように驚き、思わず真正面を見てしまった。
何かが、俺の顔目掛けて飛んでくる。それは銃弾でもなければナイフでもない。――針?
速度が速すぎるせいか、異様にその針のスピードが遅く見える。この距離じゃしゃがむ事はおろか、腕を挙げても間に合わな――。

>「……前を失礼」
非情にゆったりとした動作で、レオーネが俺の顔に手を伸ばした。そして掴む。レオーネは掴んだそれを、俺の前に広げた。
針、だ。それも15p大の、先端が異様に尖った針。こんなのが刺さったらひとたまりも無いな。即死だ。
よく見るとフロントガラスに、小さく穴が開いている。それほど針の鋭さは伊達じゃないって事だ。にしてもこんな事が出来る存在って言えば・・・・・・
レオーネは針をその場に落とした、小さく針が跳ねる音が聞こえた。シートベルトを外し、溜息を吐いてレオーネが外に出た。

レオーネの前に一人の男が対峙している。恐らく、いや、確実に俺達を狙った輩だ。
黒いスーツを身に纏ったその男が、レオーネと言葉を交わしている。……スーツ? まさか内ゲバでもしてるのか、『機関』は
今までのイメージから統一された組織だと認識してたが、『機関』は一枚岩ではないのかもしれない。あくまで予想だが。
出て行ったレオーネの横顔からは、さっきまでの印象とは違いはっきり怒気が見えた。それほどの相手な……。
ふと、思いつく。まどろっこしい事をしなくても、今すぐレオーネに『機関』に対する忠誠心を示す方法があるじゃないか。

落ちている針を拾い、ズボンのポケットに入れる。それに……もう一つのポケットから携帯電話を取り出す。
先ほどレオーネ対策として行っていたアレが、敵対者に対して使えるかもしれない。車の中をぐるりと見渡すが、やはり武器らしき物は無い。
殆ど丸腰か……。だが、俺にはコイツがいる。確実に敵の居場所まで、導いてくれるこいつが。
今まではいろんな事が枷となって命を張れなかったが、もう迷う理由も無い。俺の命と、守るべき者、天秤に掛けるまでも無く、俺の命の方が軽い。

ドアのロックを外し、力を込めてドアをグッと開ける。やけに太陽の光が眩しく感じる。
どことなく重い腰を上げ、俺は外に出た。レオーネ……レオーネさんは敵対者と10m程度の距離を開けて、対峙していた。
もう恐れるものは何も無い。ここで果てるなら、俺は所詮その程度って事だ。さぁ……

「レオーネさん、自分がそいつと戦います。レオーネさんは本部の方に連絡してください。
 自分に降りかかった火の粉くらい、自分で振り払いますよ」

【現在地:道路】
【レオーネに自分が敵対者と戦う事を提案】
222恋島達哉 ◆KmVFX58O0o :2008/10/19(日) 23:14:17 0
辰や→達哉です…
誤字すみません
>>219 >>221

黒のスーツに身を包んだ男はガッチリとした体格で、
緩くパーマのかかった髪の毛は短く切られていた。
この男はNo.5、即ち外道院柚鬼に仕えている。となると、問題は奴の戦闘能力だ。
外道院の部下といえば組織内での粛清権を持つ部隊で、
城栄の管理する虐殺部隊以上、北村の統轄する暗殺部隊以下と言う優れた戦闘能力を持った連中だ。

あの針の正確な投擲を見る限り、暗殺向きだとは考えられるが……。
注意しなければならないのは、奴がまだ一回も能力を見せていないという事だ。
敵の異能力がどれ程の物かによって戦況は大きく変わってくる。

「二度は言わん。恋島をこちらへ渡せ。
 さもなくば……」

私の足元を針が抉る。それは陽光を浴びて煌びやかに光を放っていた。

「……ふっ、なるほど。お前は使いっ走りという訳だ。
 で、私はその使いっ走りに顎で指図される哀れな道化か。
 嬉しいね。感涙で溺死しそうだ」

ドアの開く音、目を向けると一呼吸空いた後に恋島は車から降りてきた。
……無謀にも程がある。蛮勇と言うべきなのか。
標的であるであろう恋島の姿を確認すると、敵はニヤリと口を歪めた。

「これはこれは……。引きずり出す手間が省けた。
              グラインドコア
 俺の名前は雲雀、『地裂領域』の紅原 雲雀。
 No.5の命によりお前の命を貰い受ける…!」

そんな男の言葉など何処吹く風な様子で、恋島は作戦…らしき物を私に話した。

「レオーネさん、自分がそいつと戦います。レオーネさんは本部の方に連絡してください。
 自分に降りかかった火の粉くらい、自分で振り払いますよ」

「正気か? これまで君が戦ってきた相手とはレベルが違うのだ。
 奴はNo.5直属の部下。組織内部の不穏分子を抹殺する権限を持っている。
 つまり、それなりに腕は立つと言う事だ。岩城の時のようにはいかないぞ」

やはり若いというものは無茶をしたがる年頃なのだろうか。
確かに恋島は先程の攻撃に反応する事はできた。
車中のように密閉された空間でなければ、回避行動を取れただろう。
しかし……。これはナンセンスだ。――そう考えた所で、一つの妙案が浮かんだ。
>>223

城栄の奴は、側近の立花右近を通じて私にこう命じた。
『覚醒度合いを報告しろ』と……。
これは考えようによっては、良い機会かも知れない。

髪をかき上げると、トリートメントの香りが鼻腔をくすぐった。

「……いや、そうだな。
 ここは一つお手並み拝見と行こうじゃないか。
 本部へは奴を始末してから連絡を入れるとしよう」

私は針を拾い上げると、紅原目掛けて投げつけた。
流石に自分の得物の事は熟知しているようで、
難なく針を掴むと、今度はそれを両手で弄び始めた。

「おいおい、イイのか? 折角見つけたのによ。
 俺は遠慮なく殺しちまうぞ?」

紅原の茶化した態度が鼻についたが、ここは私が手を出すべきではないだろう。
恋島がどれだけ異能という物を理解しているのか、
戦闘センス、そして私が信頼するに足る者かどうか……。
今はそれを確かめるべきだ。

「紅原と言ったな。殺せるものならば殺せば良い。
 ……仮に出来るのならな」

私は腕を組むと、車のボンネットに寄り掛かった。
クリアブルーのサングラスを外すと、待ってましたと言わんばかりに日光が眩しく輝く。

見渡す限り、道行く人や物は何も無い。
ここには私達、いや――恋島と紅原以外の者は誰一人として居ない。
恋島達哉……どれ程のものか。

【レオーネ:現在地 路上】
【恋島には手を貸さないつもり】
225国崎シロウ ◆Jd2pQO.KKI :2008/10/21(火) 22:42:44 0
>>213
ファンタジー漫画等では、知的と名乗るキャラクタが
相手の前に姿を現し、その特殊能力を用いた攻撃で相手を翻弄する。
そんなシーンを良く見かけられるだろう。
だが、実際に戦場に出てみれば解る通り、
そんな事をする人物は、知的でも何でもなく、唯の馬鹿だ。

そもそも、戦闘において囮以外の目的で敵に姿を晒すなど、最悪の行動だ。
自分も味方も皆殺しにされる危険性を自分で作るなど、狂人の所業だろう。
仮に異能者同士の戦闘だから姿を現したとしても、
正面から自分の能力を相手にぶつけるのもまた、下策。
異能とは、種が割れれば攻略される危険性が高くなる。
出来るだけ相手にその正体をバラさず、
出来れば、バラらさないまま仕留めるのが最良なのだ。
能力同士のぶつかり合いは、最後の切り札。
最終手段でなければならない。

俺は、狙撃銃を手から離し、接近してくる『敵』を
双眼鏡で眺める。敵は、並みの人間では到底追いつけない
レベルの速度でこちらへと接近してきている。
先の熱操作(?)といい、今のこの速度といい、やはり優秀だ。
優秀だが……あまりに無謀だ。走る敵の表情。
アレは、自分を捕食者として捉えている人間の顔――――

200m 100m 50m ……

ビルと敵との距離は、グングンと縮まっていく。
もはや、敵の姿は肉眼で捉えられる距離だ。
それを確認した俺は、手に持った双眼鏡をリモコンスイッチに切り替える。
人を殺す為の道具であるソレを手にしても、先程の様な震えはもう起こらない。

……ああ、これだ。この感覚こそ、贄(ウロボロス)としての俺の感覚。

――――ただいま。

そして、地上にいた敵の近くで爆発が起きた。

【国崎:廃ビル入り口近くのリモコン爆弾(遠隔操作で薬品が調合され、
 爆発するタイプ)を作動させ、アルトを攻撃。
 ビルの中には、他にも幾つものリモコン爆弾が、隠蔽されながら設置されている】
226戦場ヶ原&屡霞 ◆u5ul7E0APg :2008/10/21(火) 23:23:16 O
「何か……来る!」

大通りから迫る物理的プレッシャーに、いち早く感づいたのは神野屡霞だ。
彼女の中に眠る動物的本能が彼女を反射行動に移らせた。
回避でも防御でもなく、迎撃―――…
屡霞は瞬時に刀身に力を込めて妖しい光を纏わせると、高速で迫り来る『何か』に思いきり一太刀を入れた。

「表の舞…『春蕾』ッ!!」

刹那、一筋の閃光が走ったかと思えば、鈍い金属音とともに飛来した『何か』は屡霞の5m後方に着地していた。
屡霞は刀を握る手に走った違和感に、顔を歪めた。
いつもならこの技を喰らった敵は一人残らず真っ二つになっているはずだ。
しかし今、飛来した物体には傷一つついていない。それどころか、

『カァァアアアアッ!!』

禍ノ紅の甲高い悲鳴が屡霞の脳内をつんざく。
見ればなんとその刀身が、まるで鋼鉄でも斬ったかのように刃零れを起こしていたのだ。

「これは…ッ!?」

あまりの異常事態に屡霞は身を翻し、『物体』に眼をやった。

立ち込める土煙の中から姿を表した『それ』の身体の表面が月明かりに照らされた時、屡霞は初めて自分が刃を向けたものが何かを認識した。

それは、人だった。
勿論ただの人間ではない。綺麗に剃り上げられたスキンヘッド。荒々しい白髪髭。
全身に無数の傷をしたためた2mを越す巨体。
何よりも彼を『異常』たらしめていたのは、鋼のように鈍く光るその全身だった。
まるで水銀を頭から被ったような異常な出で立ちに、屡霞は思わずたじろいだ。

「…『鬼神機関(グレネイドサイクル)』東雲 来蓬斎、推して参る。」

眼の前の鉄男は、静かに、しかしよく響く低い声でそう呟くと、ゆっくりと構えを取った。
そこから放たれる威圧は尋常のものではない。
数え切れない修羅場をくぐり抜けてきた者だけに許されたそのオーラに、屡霞は気圧された。
しかし、その顔は笑っている。
『オイ…たいした大物が釣れたじゃねえか、屡霞よ』
「フッ…この時はキミについてきたことを感謝するよ、戦場ヶ原。これほどの使い手に巡り逢えるとはね。」
新たな強敵に出会えた興奮に身を震わせ、屡霞もまた静かに禍ノ紅を八相に構えた。
しかし、その対峙はそこに残った第三者によって遮られた。

「なぜだ……」

呟いたのは戦場ヶ原。
彼は周りの敵もそっちのけにただ新しく出現した鉄男に眼を奪われていた。
屡霞もそんな戦場ヶ原の異常な様子に目をとられた。

「なぜここにいる………師匠!」

227アルト ◆Jm4vxzroP6 :2008/10/22(水) 00:10:31 0
>>225

狙撃手を見据えつつ走る。向かっている途中で逃げられては意味がない。
そして、目的地である廃ビルに到着する寸前――――爆発が起こる。
入り口や、その付近に配置された爆弾は、典型的なトラップである。
故に、予測するのはそれほど難しいことではない。

「――――融けろ」

爆風が届く寸前、地面に拳を叩きつける。――――瞬間、地面が融ける。
高熱により、アスファルトの大地に穴を開け、その穴の下――――下水道へと落下する。
……無論、ダメージがないわけではない。全身に軽い火傷――――問題ない。簡易的に冷却する。
そして、先程の爆発のタイミング――――私が到達する瞬間に起爆させていた。

「……あのタイミングならば、時限式ということはないでしょう。
 内部にも配置されているのでしょうが――――そんなものには意味がない」

少し服が濡れたが……まあ、問題はない。相手の位置も、やり方も分かっている。
ならば、あちらが把握していないコースから向かう、という手がある。

「もっとも、どこまで把握しているか分からない以上、それもできませんか」

この下水道からあのビルの内部に乗り込む――その程度の道筋、把握していないハズがない。

「―――――――ふ。聞かせてもらうわ。貴方の理由と、力を」

下水道から出る。――――回り道をするつもりはない。
真正面から相対する。そう、真正面から……ビルの側面に飛び移る。

「側面の私に対して罠を仕掛けていた場合、このビルそのものが危険に晒される。
 ……さて、貴方はどうしますか? 狙撃手さん」

自らを犠牲にしてまで、私を倒しにかかるかどうか。
……もっとも、私一人を倒す為に、命を懸ける価値があると判断するかどうか。
この廃ビル一つ崩壊させてでも、という手を取るかどうか。
あと数秒もすれば屋上に辿り着く。その前に――――どのような行動を起こすのか。

【アルト:廃ビルの側面を駆け上がる】
228国崎シロウ ◆Jd2pQO.KKI :2008/10/22(水) 01:30:02 0
>>227
敵の行動は、想像以上に早く、適切な物だった。
こちらの罠を、地面を……溶解。ああ、おそらくソレが正しいだろう。
溶解することで回避し、罠の密集地帯を避け、凄まじい速度で
正面の『側面から駆け上がって』きた。

「あー……ったく。熱を操るだけじゃなかったのかよ。
 あの身体能力、相当高いな。どういう能力だ、ありゃ?」

俺は気だる気に頭を掻き、呟く。
流石に、側面から上がってくるというのは予想外だった。
多少の身体能力の高さは推測していたが、
あれは多少どころではない。身体能力強化型の能力者の芸当だ。
恐らく、後数秒程で俺のいる場所まで辿り着くだろう。
ビルの側面にも爆弾を仕掛けてはあるが……

「……まだ使うわけにはいかねぇわな。アレは。
 まあ、予想はしてなかったが、どんな状況でも対応出来る
 用意はしてある。良しとするか」

そう言って、俺は鞄から瞳を隠す為のサングラスを取り出し装着する。

そして、懐から紅いカプセル――――俺の血液の入ったそれを
取り出し、噛み砕き、飲み込んだ。

口の中に広がる鉄の味が全身の細胞を侵食し、
まだ人間の瞳である右目を、紅い、毒蛇の様な姿へと変貌させる。
異形となる際の肉体的な苦痛はあるが、精神的な苦痛は今は無い。
それは、怪物・贄(ウロボロス)と化した証明。

俺は、廃ビルの屋上。その中央辺りに立ち、
ただ敵が昇ってくるのを、何もせずに待った。罠は二重十重。

――――さあ、今からここは毒蛇の餌場だ。せめて楽に死ねる事を祈れよ、捕食者(エモノ)。


そし、。敵が俺のいる場所に最接近してきた瞬間、
リモコンを持った俺の指が動き、再び閃光と爆発音がその場を支配した。
そう、俺はあらゆる状況に対応出来る様に罠を仕掛けた。
ならば、自分がいる階層には、特に念入りに罠を仕掛けているのは当然だろう。

「よう、初めまして……まさか、これくらいで死んでなんてくれてないんだろ?
 俺の『爆弾魔(ボマー)』の能力も味わわずに死なれたら、かなり興冷めだぞ?」

【国崎:廃ビルの自分のいる階の縁のみ設置しておいた爆弾を、
 アルトの接近のタイミングに合わせて手動で作動させる】
229恋島達哉 ◆KmVFX58O0o :2008/10/22(水) 09:48:26 0
>>223-224
改めて俺は俺達の行く道を塞いでいる敵対者の顔を睨んだ。意外に厳ついイメージは無く、目つきは鋭いながらも端正な顔立ちだ。
ガタイはけっこう良く、腕力が強そうだ。正直異能力抜きでも、俺には勝てる気がしない。
だが勝たなきゃいけない。俺が今から行おうとしてる計画を成功させる為に。コイツ如き超えられなきゃ、どうしようもない。
自然に拳に力が入る。今まで頭の中で燻っていた色んな物を、無理やり押さえつける。

――そうだ、殺すんだ。目の前の――男を。俺の足は一歩一歩、敵対者へと向かっていく。
この状況が、俺があちら側へと渡るための試験であり、二度とこっち側へと帰る事が出来ない事を意味する儀式となる。
どこかで俺は今まで越えちゃいけないラインを、自ら飛び越えようとしている。全く、何処まで馬鹿なんだろう、俺は。
立方体の時も、岩城の時も、曾壁の時も、俺はどこかでまだ、一般人であろうとしていた。
逃げていたんだ。調子のいい御託を並べて。国崎のお陰ですっぱり目が覚めた。毒を消す為には、それ以上の毒を盛らなきゃいけない。

レオーネさんの肩と並ぶ所まで歩いていくと、レオーネさんが半ば呆れた様に言った。
>「正気か? これまで君が戦ってきた相手とはレベルが違うのだ。
  奴はNo.5直属の部下。組織内部の不穏分子を抹殺する権限を持っている。
  つまり、それなりに腕は立つと言う事だ。岩城の時のようにはいかないぞ」
正気だったらこんな事頼まないですよ。にしても、反乱分子を処分する為のエージェントもいるのか、『機関』には。
相当仲が悪そうだな。……これは非情にデカイチャンスだ。そこにつけ込んで上手くやれば、俺の目的達成に手早く近づける。
が、それには大きな問題がある。今の時点で俺には『機関』を掌握できるほどの太いパイプは存在しない。

それに『機関』の連中は……そうとうキてる奴らばかりだ。話術で素直に友好関係を築ける気が全くしない。
……新耳鳴り自体の能力も、俺自身も肉体言語などできる訳が無い。頭が痛くなってきたぜ。まだ入ったわけでもないのに。
が、それはそれ、これはこれだ。どうせ気が遠くなるような話だ、今は目の前の難関を突破すれば良い。
頭の中をもう一度空っぽにし、一歩二歩レオーネさんの前に出る。
230恋島達哉 ◆KmVFX58O0o :2008/10/22(水) 09:48:59 0
すると後ろから、穏便な口調のレオーネさんの言葉が聞こえてきた。
>「……いや、そうだな。
  ここは一つお手並み拝見と行こうじゃないか。
  本部へは奴を始末してから連絡を入れるとしよう」
流石、話が分かる人だ。たださっきの車中のは前もって断って欲しかった。無理やりされて髪も頭も痛いの何の。
と、後ろから俺がポケットにしまった同じ針が、頬をかすった。なかなかコントロールが良かった為、血が出る事は無かったが・・・・・・
だから言ってくださいよ、レオーネさん。奴と戦う前に息の根止められちゃ参っちゃいますよ。

てかレオーネさんにも攻撃してきたのか、奴は。こりゃあ本気で殺しに来てると見た。
にしてもレオーネさんとコイツは一体どんな会話していたのか。レオーネさんの様子からすると怒髪天を突く様な事を言ったんだ、コイツは。
それなら戦いやすいな。俺の行くべき道をジャマした事と、レオーネさんを怒らせた事と。罪悪感を感じる必要性が消えたって事だ。
――許してくれ、新、いや、耳鳴り。俺はまた、お前をひどい事にこき使うと思う。それも何時終わるか分からないくらい。

奴はレオーネさんが投げ返した針を糸も簡単に掴むと、両手で弄くり始めた。以下にも余裕って感じがして気に食わない。
>「おいおい、イイのか? 折角見つけたのによ。
  俺は遠慮なく殺しちまうぞ?」
見つけ……た? 何を見つけたんだ? さっぱり意味を捉えられん。ま、知る必要は無いって事で保留しておく。
そういやさっきから敵対者とか奴とか呼んでるけど、目の前の男の名前を俺はまだ知らない。何か言ってはいたが聞き取れなかった。

俺の疑問を察知してくれたのか、レオーネさんが目の前の男に対して言った。
>「紅原と言ったな。殺せるものならば殺せば良い。
  ……仮に出来るのならな
紅原か……覚える必要、無いな。何故なら、俺にとっちゃアンタはただの障害物に過ぎないからだ。
腰を落とし、俺は低く構えて体勢を作った。紅原が何か攻撃を仕掛けてきても、すぐに受身による回避行動が出来る為に。
それともう一つ、紅原に致命傷を与える為には、限りなく接近、いや、むしろ懐まで入り込まなきゃいけない為だ。

武器といえる物は、今の所ポケットにしまった奴の能力で作られた針、のみだ。耳鳴りを使わなくとも、使えそうな物が無い事は分かる。
岩城みたいな馬鹿力があれば立っている電信柱を折って振り回す事ができるが……そんな事で勝てるほど、紅原は甘くは無いだろうし。
いや……生身で向かっている俺自身が馬鹿でかつ、甘ちゃんなのかもしれない。だからさ……。
だからこそ、俺にはコイツに勝たなきゃいけないんだ。その場の状況下を味方に出来た、あの最低な学生時代に戻る為に。

「レオーネさん、もしも危険を感じたら、すぐに逃げてください。
 後、先に謝っときます。死んだらごめんなさい」

『達哉!』

あぁ、分かってるよ、新耳鳴り。さぁ、俺の今後を決めるための大博打だ。必ず上がってやろうぜ。
俺は新耳鳴りに心の中で微笑みながら、紅原へと走り出した。
【現在地:道路】
【紅原に真正面から立ち向かっていく】
231梓川 博之 ◆acBW5xlTro :2008/10/22(水) 17:19:03 0
>>211
そう言おうとした矢先、
「いらっしゃいませ〜〜〜〜〜〜〜!!!!」
異能の気配、耳鳴りのするほどの大声、それによってガンガン頭痛が引き起こされる!
「―――ッ!く…く……耳がッ……!!頭が…!」
突然の事態に頭の中が真っ白になる。
あーっ!頭が、耳がぁ―――っ!


数分後。

「…うぅっ、まだ耳が痛いな……」
頭痛は治まり、耳もなんとか聞こえるような状態にはなった。
なったんだけどな。
先の声を出した娘に顔を向ける。
小言くらい言わなきゃ気がすまんよ。

「…なんであんな声を出すんだよ……耳がイカれるかと思ったぜ、流石に常識ってものがあるだろうに。
本当に耳がイカれたらどうする気だったんだ?ったく…」
ホント、ありえないくらいでかい声は止めてくれよ!
耳や頭だけじゃなく俺の胃にもダメージ入るんだからな。
…おっと。流石に性格悪すぎるな…。
「だけどまぁ、元気が良い大声が悪いってわけじゃない。だから、これからはもう少し抑えて言ってくれよ?」
ちょいと苦笑しながらフォローを加える。
まぁこれでさっきよかマシだろ。

……ん?
『ありえない程の声量』、さっき感じた異能の気配。
…気のせいだろ。

そうだ、そうだ。そういえば。
「そういや、君は廻間君じゃあないか。
女の子をとっかえひっかえしちゃって、妬ましいのなんの!
…おっと冗談だ。冗談冗談…うん、冗談だ。だから睨みつけるな」
少し真剣だったがな。モテる奴って羨ましい。
そんなことは置いといて。
「本題だ本題。すまんけど、此処に国s―――」
232梓川 博之 ◆acBW5xlTro :2008/10/22(水) 17:19:40 0
>>210
背後からドアを開ける音。
俺たちは一斉に、入ってきた奴に視線を向け―――え?
灰色の長髪、冷たい雰囲気。
―――昨日のバカ野郎か!
何で此処で会っちまうのかなぁ…。
なんとなく好戦的だし、逃げる準備もしておいていいかもな。

青年は俺たちを一瞥し、廻間に視線を留めた。
「……意外だな。まさか生きていたとは」
……?さも生きているのが不思議なようだな。
戦ったのか、それとも廻間の戦いを見てたのか、倒れているのを見たのか…。
何れにしろ、廻間は『死んだだろう』と思わせる状況になったんだろう。
…大丈夫なのか?いや、よく見たらやっぱ大丈夫そうじゃないな…。

青年は視線を外すと、全体に向かって発言する。
「……まぁ、お前らのことなどこの際どうでもいい。ここの店長は、国崎はどうした?
俺は奴に用があって来た。さ、出してもらおう」
…こいつも国崎目当てか。
つか一々言葉にトゲ…というか、内容が腹立つな。
駄目だ、やっぱ腹立った。
「ハッ、俺やこいつらが教えるとでも?高圧的な態度を取る自惚れた馬鹿になんぞ小銭の在り処だって教えねぇよ。
理由も言わずただ『国崎を出せ』ってお前頭脳が間抜けか。多少なりとも理由言ってからにするんだな。
お前は人を呼ぶとき『○○を出せ』ってただ言うか?
お前は物事を頼むとき『○○をしろ』ってただ言うか?
無いよな。いや、お前ならありそうだがなぁ。
親しき仲にも礼儀あり…ってわけじゃねぇが、少しは他人に対する礼儀ってものを身に付けてから来やがれ低能野郎!」

ふぅ、こんなものか。あーやっぱこんな風に啖呵切るとすっきり爽快だ。
あ、後ろから視線が俺に刺さる。痛いよそんな視線で俺を見ないでくれ!
……死亡フラグ立てはいいとして、もし逃げるというときはどうしようか。
まさかこいつらの前で『霧ノ存在』使うわけにも行かないしな…うーむ。


【梓川:池上に喧嘩を売る。逃走方法について思案中】
【神野やルナは一般人だと思っている】
233スティクス ◆6eLTPQTFGA :2008/10/23(木) 17:38:05 0
>>209
「ハァ…ハァ…ハァ…」
おかしい…何故当たらない…!
俺の攻撃全てを…本当に必要最低限の動きで避けやがる…
それに俺は汗だくだというのに…あの銀髪男は全く汗をかいてない。
奴が避けた先に目は追いついても俺の体が追いつかない…向こうはスピードタイプの人間というわけか。
だが…こんな奴らに舐められてたまるか…!

ダッ
再び銀髪男に駆け出し連撃を繰り出す

「うおおおおおおおお!」

ズバババババババババ!

相変わらず俺の攻撃はかすりもしない…俺の最高速度での連続攻撃で、だ

畜生…!あたりさえすれば…!
「どれ…そろそろ俺の攻撃の番だな」
銀髪男が呟いたかと思うと俺の体から飛び散っている汗を拳で弾いた
その瞬間目に汗が入って俺の視界はゼロになった
「舐めたまねしやが――ごっ…」
ズドンという音と俺の「ごっ」という声はほぼ同時だったのだろうか
恐らくズドンという音のほうが早かったのかもしれない。
それと同時に俺は腹部に激痛を感じ、地面に倒れた。

「ククク…これが本当のパンチというやつだ」
銀髪男の挑発的なセリフを聞いた早川は立ち上がり、睨みつけた
「な…舐めたマネしてくれるじゃねぇ…か…!」
腹部を見るとクッキリと拳の痕が残っている、スピードだけでは残らない痕だ

「…さて…そろそろ時間かな…?」
銀髪男が言ったと思うと俺の視界が少しぼやけた…これが奴の能力か!?
いや違う、これは…体のダメージ…?
疑問を持っている俺に気づいたのかどうかは分からないが、銀髪男は言う
234スティクス ◆6eLTPQTFGA :2008/10/23(木) 17:38:52 0
「貴様の能力…それは極端に肉体を強化し、武器とすること…
 素の状態のお前の身体能力は、一般人もしくはそれ以下のはず…」

まさにその通り…恐らく素の状態の俺ではさっきの一撃で死んでいたかもしれない
いや…死んでいただろう

「そして、お前がどの程度戦ってきたかは知らないが、異能力にはリスクが発生する
 強力な技や強化、それの度合いにもよってくるが…お前の場合はその極端な強化がリスクに繋がる
 肉体を強化すればするほど…戦う時間が長ければ長いほど…体はついてこなくなる…リスクの所為でな
 お前を最初に見たときの身体能力、そして異能力と強化方法を見て大体このくらいで体にかかってくる
 負荷が大きくなると踏んだが…大当たりだったようだな…」
銀髪男はニヤニヤと笑いながらこちらへ近づいてくる…
コイツは油断している…今がチャンスだ…!
「ズアッ!!」
俺の射程内に入った銀髪男へ一撃を放つ

「おっと…不意打ちとは考えたな…それにこんな一撃を放つ元気がまだ残っていたか…」
スッと俺の一撃を避けたかと思うと俺の顔面に強烈な回し蹴りが入る

ズサアッ!
吹っ飛ばされた衝撃で地面に叩きつけられる
「ククク…悪くない一撃だったが…この俺に攻撃を当てることができると本当に思ったのか」

ぼうっとなりそうな頭で考える
おかしい…確かにこいつはパワーもスピードも異常だ
だがさっき言った奴の話が本当ならば…奴も身体能力を強化する人間のはず…リスクはどうしたんだ…?
奴にはそれらしき変化はまったく見られない…
ゴホッ

血を吐きながら立ち上がる
「貴様がさっき言った話が本当ならば…貴様のリスクは何故ないんだ…」

俺の質問に銀髪男はニヤリと答える
「当たり前だ…俺はまだ異能力すら使ってない己の体のみで戦っているからな…」
その邪悪な笑みは鬼のようにも思えた

【スティクス:戦闘中】
235織宮京 ◆9uPeCvxtSM :2008/10/23(木) 19:32:40 0
教会の中、周りの白い壁は色あせていてこの建物の歴史の長さを感じさせる。
横長の木製椅子が所狭しと並べられている、その椅子の上に立つ周りの白と正反対の黒。
つい先程の事だった、このフルフェイスのメットに漆黒の服を身につけた人物がここにやってきたのは。
何も言わずに銃を構え、目の前に居る京に銃口を向けている。
対峙する二つの黒、聖職者である神父の証である黒のスータンと戦闘用の黒い服。

「撃ちたければ撃つが良い。
しかし、忘れるな、お前が撃とうとしているのは神の子、俺を殺したらお前は未来永劫地獄を彷徨うことになるだろう」

しかし、黒服の男は躊躇わず引き金を引く、爆音と共にそれから出た銃弾は京の頬にかすり、後ろにあるイエス・キリストを模した像の心臓の部分に当たった。

「ちょ、痛い痛い、マジで撃つのかよ!
待って無理、これ死ぬ。
金あげるから許してくれ、頼む」

京は懐に手を入れ、取り出したモノを男に投げつける。
それは、大金ではなく黒い円柱状の物体、スタングレネードだった。

「金なんてやるわけねーだろ、ていうか持ってねーよ。
お前にはこれで十分だ」

突如、辺りをもの凄い轟音と共に閃光が包み込む。

「うおっ、まぶしっ。
何だよこれ、俺にも喰らうのかよ、不良品じゃねーか!」

閃光が京の視界を奪い、轟音が聴覚を奪う。
男にはフルフェイスのメットを着けていたので当然効果がない。
視界を奪われ、椅子に脛をぶつけて悶絶している京の頭部に銃口が当てられる。
236織宮京 ◆9uPeCvxtSM :2008/10/23(木) 19:33:47 0
「そのとき、主はソドムとゴモラの上に、硫黄の火を天の主のところから降らせ、これらの町々と低地全体と、その町々の住民と、その地の植物をみな滅ぼされた。ロトのうしろにいた彼の妻は、振り返ったので、塩の柱になってしまった」

京がそう呟くと、銃は塩と化し男の手の隙間から床にこぼれていった。

「ばーかばーか、これでお前に武器は無くなったな、今なら逃がしてやるぞ?」

その瞬間、京の腹に男の拳が炸裂する。
身体を折り曲げ咳き込む、男はその間も休むことなく拳を振るう。

「痛っ、え?強くね?
ごめん、ごめん許して、痛い痛い」

やっと視界が回復した京は床に倒れ込み、男の足にまとわりつく、男はそれを振り解こうと蹴りを入れた。
すると、男の靴が服ごと床と同化していった。

「くっ、何だこれは、動けない、くそっ」

男がここに来て初めて言葉を発する、それだけ焦っているという事だろうか。
京の持っている聖書が銃に形を変える。
そして、動けないで居る男のメットに触れると、また塩に変わる。

「主よ、彼は俺に銃を撃つどころか殴ってきました、赦せません。
だから、地獄に送りつけ、氷漬けにしてサタンに喰わせてあげて下さい。
この祈りを俺こと織宮京の御名によって御前にお捧げ致します、アーメン」

最後の言葉と共に引き金は引かれ、男の頭を撃ち抜いた。
男は数回痙攣すると動かなくなり、死体となった。
京の持っている銃はまた形を変え、元の聖書に戻っていた。

「ふぅ、危なかった、しかし何だったんだこいつ、教会の狗にしてはやけに強かったな。
てか、これ不気味だ、頭から血を流して立ってるとか、ま、死体だし、また塩にすりゃいいか。
今日はもう礼拝やめた、聖書売ってこよう」

京は男の死体に触れ塩にすると、中に聖書が沢山入っているトランクを取り出し、それを持って教会の外に出て行った。
外はもう暗くなり、道行く人は誰もいなかった、もっともこの教会が単に避けられているだけなのかもしれないが。
京が立ち去ったあとの教会は、塩だらけであった。
237戦場ヶ原&屡霞 ◆u5ul7E0APg :2008/10/23(木) 21:23:40 O
>>226続き
「何故ここにいる…………師匠!」
戦場ヶ原は突然の闖入者に目を丸くしていた。
それもそのはずだ。その闖入者こそ、かつて彼が師事した先先代虐殺部隊隊長、東雲来蓬斎その人だったからだ。
(歯ァ食いしばらんかァ!!)
しかし、彼の脳裏に浮かんだ豪胆苛烈な東雲と、眼の前に佇む東雲とは何かが違った。
座った目に何の感情を込めずに、ただ殺すだけの標的を見据えたその眼差し―――…
―――何かが違う。その違和感に、戦場ヶ原はいち早く気付いた。
「どういうことだ、師匠ッ!あんたは4年前、確かに俺に隊長の座を譲って引退したハズだ!……それが…!」
辺りの虐殺部隊隊員達を見回す。
彼らもまた、東雲に違わず無感情な眼差しでこちらを捕捉していた。

「…なぜこんな奴らを率いているッ!答えろッ!!」

戦場ヶ原の悲痛の叫びが夜天にこだまする。
しかし、その問いに対する答えは、非情なる一撃によってなされた。

「…東雲鉄腕術、『計都鋼魔掌』」

にび色に煌めく巨体が突然視界から消えたと思えば、次の瞬間、戦場ヶ原の視界はその掌によって覆われた。
圧倒的物理衝撃が戦場ヶ原の頭蓋を襲う。

「戦場ヶ原ッ!」

屡霞が叫ぶ。
木葉のように吹き飛ぶ戦場ヶ原の身体。まるで無抵抗に壁にたたき付けられたのち、ゆっくりとその場に膝をついた。
クリーンヒットだ。戦場ヶ原は軽い脳震盪を起こしたようでふらついた。
「馬鹿が!何故防御しない!?」
屡霞がすぐさま二人の間に入り、戦場ヶ原を叱咤する。
「師匠だとかなんとか言っていたが、眼の前を見ろッ!こいつは『敵』だッ!
感傷にでも流されたのか?お前はそんなに甘い男だったのか、戦場ヶ原 天ッ!!」

揺れる視界と痙攣する全身に耐え、戦場ヶ原は立ち上がる。
朧げな記憶の中で、東雲の言葉が蘇った。

(うぬは、何がために闘っておるのじゃ。)

闘って闘って、闘い抜いた者だけが辿り着ける境地。そこに1番近い者がそう言った。
それが今、戦闘マシーンとなった虐殺部隊を率いて眼の前に立っている。
「それが答えか……」
怒りに震えた声で呟きながら、戦場ヶ原は構えを取った。

「それがあんたが闘いの先に見出だした『理由』かッ!!」

戦場ヶ原の叫びに、東雲は答えない。
「腐った金剛の手足となって働くことが、あんたの見出だした道なのかッ、東雲来蓬斎ッ!!!」
「戦場ヶ原…」
彼は、哭いていた。かつての師匠の変わり果てた姿に。
そして迷いを断ち切ったように、屡霞へ言葉を投げた。
「屡霞……、すまねぇな。下がっていてくれ。…こいつは俺の…敵だッ…!」
「!…」
『あァ!ふざけんな!こんな上物見つけてオアズケ喰らうなん――』
パチン。禍ノ紅の喚きは屡霞の納刀によって遮られた。
「…いいだろう。奴はキミにとって浅からぬ因縁。キミ自身の手でケリをつけるがいいさ。」
刀をしまい、戦闘状態を放棄した屡霞を見て、東雲は視線を戦闘員たちへむけた。
すると戦闘員たちもまたそれに呼応するかのように、各々の獲物をしまい込んだ。
屡霞や戦闘員たちが静かに見守る中、2匹の鬼が対峙する。

「…行くぞ、師匠……いや、東雲来蓬斎!!」
238池上燐介@代理:2008/10/25(土) 18:46:19 0
>>232
俺が言い終えて直ぐに、『霧男』が怒気を込めて早口でまくし立てた。
>「ハッ、俺やこいつらが教えるとでも?高圧的な態度を取る自惚れた馬鹿になんぞ小銭の在り処だって教えねぇよ。
>理由も言わずただ『国崎を出せ』ってお前頭脳が間抜けか。多少なりとも理由言ってからにするんだな。
>お前は人を呼ぶとき『○○を出せ』ってただ言うか?
>お前は物事を頼むとき『○○をしろ』ってただ言うか?
>無いよな。いや、お前ならありそうだがなぁ。
>親しき仲にも礼儀あり…ってわけじゃねぇが、少しは他人に対する礼儀ってものを身に付けてから来やがれ低能野郎!」

つまるところ、こいつは俺の言動が気に入らないので話す気はないらしい。
もっとも、こいつとは前の経緯からも素直に喋ってもらえることなど期待していなかったので、
特に意に介すことはなかった。
店番らしき女といい、店内の状況から考えて、まず今この店に国崎はいない。
どこに出かけているのか知らんが、生きているならいずれ必ずここへ戻ってくるはずだ。
ならば、無理に体力を削ってでも探し回る必要は無い。
俺は『霧男』の言葉を冷静に流しつつ、店の棚に置かれた傷薬と包帯を適当にわしづかみして
店内奥に敷かれた畳の上に座り込んだ。

「奴はまだ生きているんだろう? なら、奴が戻るまで俺はここで待機させてもらおう」

言いながら、左腕に幾重にも巻かれた包帯を解き始めた。
今日の朝巻いてもらったばかりだが、既に度重なる戦闘であちこちに傷がつき巻きが緩み始めていたのだ。
幸いここは医療品に不自由しない。この時間を利用して少しでも傷の回復に努めるつもりだ。

傷だらけのワイシャツを脱ぎ、今日の戦闘で負った生傷に消毒液や傷薬を塗り込み、
適当に包帯を巻いていく──。それを幾度となく繰り返した時だった。
座り込んだ畳につけられた、一つの……いや、二つの傷に目が止まったのは。
空けられた小さな傷の中には、黒い見覚えのあるような丸い物体が埋まっていた。
その丸い物体の直径こそ見覚えのあるものとは異なるものの、
恐らく同一のカテゴリに属するものであるということを、俺は確信していた。
(……弾痕、か……)

埋まった弾丸はまだ熱を持ち、撃たれてから間もないものであるようだった。
なんとなく国崎の身に起こったことを想像して、俺は思わず呟いていた。

「ここに居ないのは、闘っているから、か……。なるほどね……」

そう呟き終えた時、俺は手元にあった包帯と傷薬を全て使い終え、
再び至る箇所に裂け目のあるワイシャツを着込んでいた。

【池上 燐介:傷の手当を終え、国崎が闘いに出向いていることを予想する】
239アーリー・テイスト ◆3LPMHhiq9U :2008/10/25(土) 22:30:47 0
「・・・だめ、見つからない。」
薄暗くなった公園のベンチに座り込む。
はぁ、とため息を漏らした。今ので2,3才老け込んだかもしれない。
まぁ・・・関係ないか。自分には正確な年など分からないのだし・・・。
またため息を漏らした。

「よう、お嬢ちゃん。こんなとこで何してんだよ」
「よかったら俺らとあそばないっすか」
目の前に人影が現れ、アーリーに影が被った。
いかにもナンパ好きのような顔をした男たちだ。
(・・・・。)
彼らの言葉に、特に何も感想はなかった。
「いやぁ、今日は運がいいな」
「そうっすね、さっき珍しいものも見れたし」
・・・珍しいもの?
「そうそう、あの真っ黒の大男。あれは凄かったよな」
「なんか、長髪の男担いでたけどなんなんすかねえ」
真っ黒の大男・・・長髪男を担いで・・・!!!
「そ、それって、どこでですか!?」
アーリーの目は殺気立いていた。
それに気づいたのか、男は圧倒されつつ答える。
「む、向こうの商店街でだよ。あの国崎薬局とかの近くで」
その言葉を言い終えるよりも早くアーリーが駆け出した。
「あ、ありがとうございました」
振り向きもせず、礼を言い走り去っていく。
その姿はみるみる小さくなり、夜闇に消えていく。
「な、なんだったんすかねえ」
「さぁ、知らん」
二人はまたナンパ相手を探して、公園から出て行った。

【アーリー:国崎薬局へ全速力でダッシュ】
240七草 柴寄 ◆O93o4cIbWE :2008/10/25(土) 23:04:29 0

―――ア―ハハハハハ――

長い、夢を見ていた気がする、情報が氾濫する、識り過ぎて判らない。

「――……」

何も判らない、感じられない。

今彼を支配しているのは
頭痛を通り越し、グチャグチャにかき回されたような感覚。

それからどれだけの時が経ったのだろうか、混沌とした脳からようやく思考を捻り出す。

(何…だろう…長い…間…眠ってた…気…がする)

次第に全身の神経と回路が繋がってくる、そして、体を包むは硬質の大地。

「っう……」

感覚が戻り、ようやく柴寄という一人の人物が構成される。

(っ痛…、硬いな、草むらで寝てたんじゃ無かったっけ……ん〜〜これは…俗に言う路地裏ってやつですね)

寝ぼけ眼で起き上がり、背伸びをして回りを見渡す。そこには、本来ある筈の無い光景が広がり首を傾げる。

(……何でだ…??酒…は無いな、となると……ワカラン!)

ザッ――

「ん…?」

足音が聞こえ振り向く先には、フルフェイスのヘルメットに漆黒のスーツに身を包み、銃を持った男が近づいてくる。

「んだぁ?テメエ、こんな所で……まあいいぜ、どうせ殺すんだからなぁ」

(え?何?どういうこと?これは夢か?きっとよく覚えてないけど夢の続きなんだ…)

男はそれだけ言うと、銃口を此方に向け、引き金を――

反射的に姿勢を低くし、男の懐へ飛び込む、男は予想外の動きに驚いたのか一瞬、狙いを反らし――

――バァン!!

銃声が鳴り響き、弾丸は空へと飛んでいった。
男が油断した一瞬の隙を突き、懐へ潜り込み銃ごと、男の腕を蹴り上げたのだ。
射線は上空にそれ、衝撃で引かれた引き金に連動し、銃は正確に、弾丸を空へと発射した。
「なっ!テメェ!!」
しかし男に蹴りを入れられ、地面に崩れ落ちる、そして銃口は確実に此方を捕えた。

「へっ残念だったな…アバヨ!!」
241七草&影渓 ◆O93o4cIbWE :2008/10/25(土) 23:12:50 0
――此方に向けられる銃口、放たれるは命を確実に奪う凶弾――
「へっ残念だったな…アバヨ!!」
しかし何時まで経っても弾は放たれない、突然男は、その場に崩れ落ちた。
「え?」
あっけに取られたように、崩れ落ちた男を見やる、その影から、一人の男が現れた
その男の髪は、西日に刺され青く、赤い瞳は冷静に此方を見据え、片手にはトランクを
鍛え上げられた肉体は、一般の人間とは一線を駕した風格を備えている。

「大丈夫か?」
青髪の男は此方に歩み寄り、声をかける、自分を心配すると言う事は敵では無い様だが。
「え…ええ…」

(男…?女に見えたんだが…それに…先程とは様子が違う?)

男は此方を見て、何故か驚いた様だ、何にせよ助けて貰った様だ、黒尽くめの男は死んだのだろうか?
「あの…ってああ!」
向こうから先程の男と同じ服装をした男達がやって来る、恐らく銃声を聞き付けて来たのだろう。
「…面倒だな…」
傍に居る青髪の男は呟くと、黒尽くめの男達に目をやる、先程と同じように男達はその場に崩れ落ちた。
ガッ――
突然腕を掴まれる、

「移動するぞ」
「え?ちょっと!」
それだけ言うと此方の腕を引いて走り出した。

人気の無い街道の外れにて

「はぁはぁ…何なんですかあの人達ぃ!」
「……――ピリリリリ」
返事の変わりに鳴り響く電子音、男は面倒そうな顔をして小型の機械を取り出す、

「なんだ?」
――あ、もしもし?影渓さん――
伊賀 響か、それにしてもこんな時に、面倒だ。
「何の用なんだ」
―今日ね神さんの歓迎会をやるんだ、影渓さんも来てね〜――
「……―プツッ」

「あの〜?」
軽くため息をつき此方を見つめられる、正直視線のやり場に困る、
視線を自分の体に流してやっと気付いたが、自分の体血塗れじゃないか。
「あれ?え?なんで?」
(響の奴…仕方ない、こいつを連れて帰るか…
しかし…やはり俺が見た奴と同一人物とは思えん、異能者としての反応も感じない…どういうことだ?)
そして七草の腕を再び掴み、
(多少強引だが、止むを得ん)
――――――
自分の体が血塗れで困惑している所、突然腕を掴まれ――
―――トランクの中に、放り込まれた――
「え?いや…無理、入らないよっ…――ガボゴボゴボ…――」
明らかに入る面積が無いトランクに詰め込まれる、入れるわけが無い、筈なのだ、
しかし入ってしまう、そして中には大量の水、いや水と言うよりこれは…
って死ぬ、溺れる、辛うじて息は出来るが、揺らさないで、出せ、此処から出してくれー!!
――――――――
この男をトランクに詰め込む、呼吸できるだけの空気は入れてあるから大丈夫だろう、後は本部に戻るだけだ。

(しかし…歓迎会か…俺達がどういう世界にいるのか考えてみろ…まあ、そういうのは嫌いじゃ無いんだがな…)

夕日が西に沈み、空が徐々に闇に覆われていく、彼らの舞台となる闇へ―――
242籐堂院瑞穂 ◆FleR8jlnN6 :2008/10/27(月) 19:50:21 0
私は統時と別れてから、特に行く当てもなく彷徨っていた。
道中何度か虐殺部隊らしき人物に会ったが、襲ってくることも無かったので何事もなく離れることが出来た。
あれ程目立つ服装をしているのに私以外は誰一人気付いた様子がなかったのには驚いた。
そんなこんなでいつの間にか、時刻は6時を疾うに過ぎていて辺りも随分と暗くなっていた。

「師匠、そろそろ晩御飯の時間ですね、今日の献立は何にしま……」

つい何時もの癖で師匠に話しかけてしまう、割り切ったつもりで居たがなかなか割り切れるモノではないのだな。
師匠の事はおいといて実際そろそろ晩御飯の支度をしないとまずい。
幸運なことに師匠が住居と金を提供してくれたので、あとは食材を買うだけで平気なはずだ。
過去に師匠に鍛えられたおかげで一通りの家事は出来る、金もある事だし少し贅沢でもしてみようか。
近くにスーパーを見つけた私はもう一度財布を取り出し、金があるのを確認するとスーパーに入っていった。
数十分後、スーパーから出た私はビニール袋を持って大きくため息をついた。
贅沢をしようと決めたはずだったんだ、しかしビニール袋に入っているのは野菜や豆腐などの値引きされていた商品ばかり、しかも一人で食べるには明らかに多すぎる。
肉も買ったことには買ったが、安さを求めすぎた代償か中国産であった。
中国産の肉が未だにスーパーに売っているとは、盲点だった。
返品するのも悪い気がしたので、スーパーから踵を返して帰路につく。
この食材で出来る物といえば鍋くらいか、一人で鍋をつつくというのも悲しいが我が儘は言えない。
暗くなってきた道に溶けそうな黒服を着た男が前から歩いてくる。
虐殺部隊かと思ったが、よく見ると聖書を持っているし、神父みたいだ。
この近くで教会は見たことが無い、何処か他所から来た人なのかもしれない。
失礼かと思ったが、初めて見る神父の物珍しさについつい目がいってしまう。
流石にこれ以上見ているのは失礼だな、私は神父から目を背けるとまっすぐ道を歩き始める。

【籐堂院瑞穂:織宮京と遭遇】
243アルト ◆Jm4vxzroP6 :2008/10/27(月) 20:49:39 0
>>228

屋上に到着――――また爆破。思い切りがいいのか悪いのか。
配置した場所を把握してさえいれば、危険性もそこまで高くはないが。
爆発により吹き飛ばされた瓦礫、及び鉄片……融解。熱……熱量制御により、無効化。
……失敗。閃光は防ぎきれなかったか。ある程度は熱量感知でどうにかなるが、しかし――――

「よう、初めまして……まさか、これくらいで死んでなんてくれてないんだろ?
 俺の『爆弾魔(ボマー)』の能力も味わわずに死なれたら、かなり興冷めだぞ?」

……まあ、当然か。待ち構えているというのなら、そうなるだろう。
その言葉から考えて……煙が晴れていないのか?

「当然でしょう。貴方のスキルは確かにかなりのレベルだけれど――――それだけでは対抗し得ないこともあるの。
 さっきの爆発が、なんらかの能力と絡んだものであった場合はともかくとして、ね。
 そもそも、最初の狙撃を考えれば、この爆破は貴方のスキルによるものでしょう?
 それで爆弾魔の能力と自称するのは――――なにより、貴方自身の技術に失礼だわ」

そう。確かに先程の爆破は能力によるものではない。
この男は私をここに誘い込んだが――――それは、この場における自らの優位を確保しているからだ。
そういうタイプであることは、先程のトラップで判断できた。
逆に、そう思わせる策かもしれないが――――その逆、というタイプがそんな真似をするかどうか。
しかし、どちらにせよ――――この男が異能者かどうかは判断がつかない。
自称異能者であれば、私の食事とするには問題がある。
それに、機関に敵対する者となれば、あるいは何らかの情報が得られる可能性もある。

「正直、貴方の力の種類には、あまり興味がないんです。
 私はただ、貴方に少しだけ、話を聞きたいだけなのですが――――そういう雰囲気でもありませんしね。
 いいでしょう。――――敵対するならば敵対しなさい。いきなり人を撃ち殺そうとしたんですから、覚悟はあるんでしょう?」

周囲の熱量を操作する。――――剥き出しの高熱のラインによる結界。そして、それだけではなく。
周囲の温度と変わりない温度で包み隠した、高熱のラインを作り出す。
無論、彼が用意した爆薬が引火する可能性もある。――――その場合は、高熱ではない熱量操作を行うつもりだ。

「選ぶのは貴方です。敵対するか、会話を望むか。
 どちらにせよ――――私にとっては、有益な展開になりますが」

【アルト:国崎の返答を待つ】
244スティクス ◆6eLTPQTFGA :2008/10/27(月) 23:13:23 0
>>234

「フハハハハハハハ!どうした!?この程度の攻撃も満足に避けきれないのか!
 これからどんどんスピードとパワーを上げていくぞ!耐え切れるか!」
ダメだ…こいつは鬼としか思えない…"異能力のリスク"も重なってか、満足に攻撃を避けれない
何発かは確実にダメージを喰らう…だがそれでもまだこの銀髪男は手加減をしているのだ
コイツの拳は見えない…だから俺は避けきれるはずがないのだ、だが全てかすり傷なのだ
つまり…コイツは意識して俺が避ける場所まで計算して小さな傷のみを負わせているのだ

ヒュンッ!
銀髪男が視界から消える…風の動きから察するに移動先は上空…
「や、やばい!!」
ドゴオッ!!
俺が咄嗟に後ろに飛びのくと同時に銀髪男のかかと落としが俺の元居た場所に振り下ろされる
そこを中心に直径約5mのクレーターが出来上がる…もし俺が避け切れなかったならば…確実に死んでいた

「ようし…よく避けた…それでこそ楽しみ甲斐があるってもんだ」
「ハァ…ハァ…」
奴は随分と余裕だが…俺には余裕の欠片すら残されていない…体が軋む…
手の震えを感じる…手を見るとやはり痙攣している…

ズンッ
腹に…奴の腕がめり込んでいた
「余所見している余裕が…あるのかよっ!」
ズザアアアアア!
そのままめり込んだ腕で投げ飛ばされる

「ゴホッ…ぐ…ちく…しょう…」
立ち上がることしかできない俺を見て銀髪男は冷ややかに言う

「フン…どうやら本当に終わりらしいな…まぁいい
 軽い準備運動にはなったからな…俺の技の一つを見せてやろう
 お前のような奴には過ぎた技かもしれないがな…】
男がこちらに歩きながら右手に力を込めるのが分かる
だがこのまま殺されたくは無い…!
ブンッ!
俺は男に最後の力を振り絞った渾身の一撃を顔面に放つが…
「ぬりぃな…その程度の攻撃じゃあ…一生俺には勝てねぇ」
メキメキッ
「ぐあっ…あああ…!!!!」
受け止めた拳を男が強く握る…俺の左手はみるみるうちに変形していく
骨ごと潰されているのだ…!
「なに…そう苦しむことは無いさ…今すぐ楽にしてやろう」
そう言いながら男は右腕を後ろに回し―――

『蒼 破 震 拳』

銀髪男がそう言ったと同時に俺の意識は無くなった

【スティクス:"異能者"早川を始末】
245戦場ヶ原 天 ◆u5ul7E0APg :2008/10/29(水) 01:03:35 0
>>237続き
「おおおおおあああああああァアァアアアアア!!!!!」

戦場ヶ原の雄たけびが、闇夜に包まれた路地裏に響き渡る。
無数にバラ撒かれた黒球。それに囲まれた東雲 来蓬斎は、身じろぎひとつせずその視線を戦場ヶ原に突き刺していた。
「マイクロワームホォォオーーーーールッ!!!!」
宙を漂っていた黒球が戦場ヶ原の号令とともに東雲を襲う。相乗効果がもたらす爆発的な圧力が、一斉に衝撃となって東雲を襲う。
しかし、戦場ヶ原は手を休めなかった。
「アンチグラヴィティ……ノヴァァアアア!!!!」
続けて戦場ヶ原の左手から放たれた一回り大きい黒球が東雲に直撃。直後、轟音とともに東雲を中心に大爆発が起こる。
「グラヴィトン…………」
爆発が収まったかと思えば、すでに戦場ヶ原は跳躍一番、東雲の目の前にまで迫り、振りかぶった左手には、黒い光が込められていた。
「ハぁマァアアアアアーーーーーーーッ!!!!!!」
数百キロの重圧を付加した拳が東雲の頭蓋を襲う。直撃だ。
常人ならばもはや頭蓋を打ち砕かれ、致命傷は免れないところだ。

―――しかし。

「……藪蚊が喚いておるわ。」

東雲の口からぽつりとこぼれた言葉。その言葉の意味を戦場ヶ原が悟るよりも疾く、彼の身体はコンクリートの地面に叩きつけられた。
「ごはァッ……!!?」
戦場ヶ原の頭がコンクリートを打ち破り地面にめりこむ。彼は戦闘中、常に自分の肉体全体に少量の斥力をかけて物理ダメージを軽減している。
しかし、東雲の打撃はその斥力の防御壁をも打ち破り、戦場ヶ原に多大なダメージを与えたのだ。
東雲の目の前に突っ伏した戦場ヶ原。そのまま踏みつぶそうと東雲の右足が上がったところで、戦場ヶ原は割れそうなダメージを受けた頭を抱えて慌てて後退した。
見てみれば、あれほどの攻撃を真っ向から受け止めたにも関わらず、東雲の鋼の肉体には傷ひとつつかず、むしろ輝きを増してさえいた。

(なるほどな…、師匠よ。あんたの心は腐っても、あんたの異能力は錆びついちゃいねぇようだな。)

かつての師弟時代に、いやというほど受けた鋼のゲンコツ。
戦場ヶ原は東雲の能力がなんであるかを知っていた。

『東雲鉄腕術―――』

東雲は自分の異能力をこう呼んでいた。
肉体強化能力を防御能力に特化させて昇華した、肉体細胞を金属へと変化させる『肉体変化能力』―――
鋼よりも硬く、銅よりも滑らかに動く。さらに能力操作自体はごくシンプルな構造であるため、消費する精神力も少なくて済み、それに東雲自身の人外じみた集中力により
七日間はずっとそのまま金属状態を維持していられるという。
全身が金属であるのだから、打撃は勿論のこと、斬撃、銃撃なども一切を跳ね返す。磁石などにも反応をしない特殊金属。
シンプルだが、それゆえ弱点も無い―――…
それは、かつての弟子であった戦場ヶ原自身が一番よくわかっていた。
彼を斃すたったひとつの手段。それは―――

「真っ向から鉄の鎧を……ブチ破るッ!!」

左手に新たな黒球を発現させて、戦場ヶ原は今一度駆け出す。
どうする?アンチグラビティノヴァが効かない以上、圧力攻撃は一切が遮断されてしまう。
ユニバーサルグラヴィテーションを使おうにもその重量を引き寄せることは困難だろう。
超必殺シンギュラリティゼオレムは命中率に対して消耗が激しい、東雲の眼力相手では直撃は不可能だろう。
ならば答えは一つ―――…
「!!!」
戦場ヶ原は手に持った黒球を地面へと投げつけた。地面にめり込んだ黒球はそのまま地中奥深くまで潜ってゆく。
その光景を、東雲は見逃さなかった。
そう、屡霞を破った戦場ヶ原の地震攻撃、グラウンド・ゼロ。地盤を振動させ、地面を崩壊させる広域破壊技だ。
戦場ヶ原が東雲のことを知っているのと同じように、東雲もまた戦場ヶ原のことをよく知っている。
「…足場を崩壊させ、地の底にでも突き落とす気か…。…笑止ッ!」
戦場ヶ原の狙いを瞬時に読んだ東雲は、巨体に見合わぬスピードで戦場ヶ原に迫り、強烈な一撃を叩きこんだ。
246戦場ヶ原 天 ◆u5ul7E0APg :2008/10/29(水) 01:51:21 0
>>245続き
「羅候百屠拳。」
強烈なレバーブローを受けた戦場ヶ原の体は軋み、口から胃液が逆流する。
しかし東雲の手は止まらない。瞬時に繰り出されるあまたの拳が、まるで鉄の壁のように折り重なって戦場ヶ原を襲う。
1秒間に100発の目にもとまらない鉄塊のラッシュが戦場ヶ原の身体を打ち砕く。
「ぐほァアアアアアアアアアアッ!!!!」
「所詮は浅慮。うぬの闘い方はすべてこの肉体に刻み込まれておる。」
フィニッシュブローのアッパーカットが、戦場ヶ原の身体を軽々とはるか上空まで打ち上げる。
「…足場を崩して儂を奈落に落そうともくろんだようじゃが、それならば、地面に立たねばよいまでのこと。」
いつの間にか東雲は、上空までうちあげられた戦場ヶ原に追いついていた。
「うぬではワシには勝てぬ。」
圧倒的な戦力の差を見せつけ、東雲は戦場ヶ原に勝利宣言をした。
手の内をすべて読まれる。防御は鉄壁。まるで勝ち目のないデスゲームのように、今の戦場ヶ原の形勢は絶望的だ。
戦場ヶ原は、朦朧とした意識の中でかつて師に教わった言葉をひとつひとつ思い返していた。
(絶対に勝てない敵など存在しない。もし存在するとしたら――――それは、自分自身じゃよ。)
(イチゴ頭よ。うぬのイチゴの咲いた頭でもわかるじゃろうよ。ならば自分自身に勝てさえすれば、もはやこの世に敵はいないとな。)
支離滅裂な師匠の言葉が頭によぎる。
言っていることはまるでめちゃくちゃなのだが、そのゲンコツをくらったあとに聞くと、なぜだか意味がスッキリとわかる。
それが不器用な東雲と戦場ヶ原、二人の男のコミュニケーションであったのだ。
今思えばなんとも滑稽なやり取りに、戦場ヶ原はいつしか可笑しくなってわらっていた。

「!?ごほァッ!!?」

刹那、戦場ヶ原にとどめを指そうとしていた東雲に異変が現れる。
口から血を吐き、頭を抱えて苦しみ出したのだ。
「うッ・…おおおおおおお・…薬…が・・・切れ・・…!?・・・・あああああああああ・…!!!」
うめき苦しみ出す『敵』の一瞬の隙を、戦場ヶ原は決して見逃すはずがなかった。

「うおらァアアア!!!!」

一瞬だけ鉄の鎧の解けた腹部に、グラヴィトンハマーを叩きこむ。
腹には届いた。しかしその隙間は瞬く間に再び金属と化し、なんと戦場ヶ原の左腕を巻き込んで同化してしまったのだ。
「…良い見切りじゃな・…。刹那の隙を衝くとは。じゃが・…まだまだ速さが足りぬようじゃのう!!!」
東雲は、自分の腹にめり込んだまま固定されてしまった戦場ヶ原の腕を掴んだ。
「このままうぬを地面に叩きつけて仕舞いじゃ!!くたばるがいいッ!!」
だが、戦場ヶ原はもう東雲ではなく、地面のある一点しか見ていなかった。

「俺は超えるぞ…。あんたを……!そして―――…・…」

戦場ヶ原が東雲の腹にめり込んだままの黒球に力を込めると、その密度がどんどん膨らんでゆく。
ズシンと急に重くなった戦場ヶ原の腕を見て、東雲は驚いた。

「自分の……限界をォォォオオオオオオオオオッ!!!!!」

黒球はとどまるところなくその重量を増してゆく。300キロ・…500キロ…700キロ…。
重量が増すごとに、二人の落下スピードはどんどん速くなってゆく。
(まさか―――!?)
東雲が気付いた時にはもう遅い。戦場ヶ原の左拳は、もうすでに2トンを超えていた。
悲鳴を上げる左腕を無視して、戦場ヶ原は雄たけびを上げた。

「『メテオ・インパクト』ォォォオオオオオオオオオオオッ!!!!!!!」

文字通り隕石となった二人は、すさまじいスピードで地面へと叩きつけられた。
下敷きとなった東雲の全身には、落下スピードと自分自身の重量、戦場ヶ原の黒球の重量を加算された数十トンにも及ぶとてつもない衝撃が叩きこまれたのだ。

「ぶはァアアアアアアアアアアアッ!!!!」

東雲の鋼鉄の鎧が、今砕かれた。

【戦場ヶ原:虐殺部隊幹部、東雲と戦闘中】
247名無しになりきれ:2008/10/29(水) 11:30:44 O
さすが邪気眼
248恋島達哉 ◆KmVFX58O0o :2008/10/29(水) 20:51:20 0
>223-224
俺は無我夢中で紅原へと足を速める。何も考えていないわけじゃない。ただ、ただだ。
今からやろうとしている事は普通に危険だとかそうゆうレベルを超えてる。それほどの事をする度胸が、俺に伴っているのかどうか。
とは言え、やらなきゃ俺にはもう未来はないのだ。腕一本でも持ってかれるのか、何も出来ずに未来が閉ざされるのか。

考える必要もないよな。次第に紅原の姿がはっきりと目視できるほどの距離に近づく。
「弱い犬ほど良く吼える……」
紅原ははっきりと、だが静かに通る声でそう言いながら、ゆっくりと肩を回した。そして。
『確実に針を投げてくるぞ、どうする? 達哉』

新耳鳴りの助言を受けるよりも早く、俺は滑り込むように、その場で受身をした。瞬間、背筋に走る冷たさ。
転がりながらも宙に視線を向けると、数本の針が扇状に俺が先ほど立っていた場所に、軌跡を描きながら飛んでいた。
……って、レオーネさん!? 危なくないっすか!? 俺は受身の体勢から上半身だけを起こし、車の方へと視線を向けた。
が、その時、新耳鳴りの声と、紅原の声が俺の耳に飛び込んできた。ほぼ同時に。

『縦一直線に投げられたぞ! すぐに避けろ、達哉!』
「他人の心配をするほど余裕があるのか?」

言われるが早く、俺はすぐに左方にもう一度受身を……って、くそ、何てこった!
反応が遅れた為か、俺の左足を紅原の放った針が突き刺していた。一本だけなのが幸いだが、深々と太ももを貫いている。
テンションが上がりきっているせいか、鋭い痛みで一瞬気絶しそうになるがどうにか意識を保つ。それよか見てるだけでいてえ。
思うがすぐに、俺は右足から針を抜いた。……痛いは痛いが、この程度ならもう何度も味わってるからもう慣れっこだ。

ん、あれ、立ち上がれ……ないぞ? これは痛みのせいじゃない。間違いなく、右足が麻痺している。
これは恐らく紅原の異能力の付加効果みたいなもんだろう。少しばかり、俺は紅原を舐めすぎていたようだ。
右足の感覚が次第に薄れていく。毒でも回ったのか、それともいままで蓄積された疲労がピークを迎えてしまったのか。
どちらにしろ、俺はこの場から動けなくなってしまった。左足も激しい動きをしたせいか、少しばかりガタが来ている。
紅原がゆっくりと、俺の方を振り向いて悠々と歩いてきた。そこには完全に勝者である人間の余裕が見えている。
249恋島達哉 ◆KmVFX58O0o :2008/10/29(水) 20:52:01 0
「俺の攻撃に対して反応を見せ、尚且つ回避行動を行った事は褒めてやる。少なくともお前は一般人ではない」
紅原がそう言いながら、握り拳の隙間から数本の針を作り出す。投げるのではなく、自分の手で決着を付ける気だろう。
一歩、二歩と俺に精神的ダメージを与える為か、無表情のまま握り拳に針をちらつかせながら歩んでくる。

「だが、異能者としては三流だ。闇雲に闘うだけで俺に勝てると思ったか? 笑止にも値せん。
 アブラハムと聞いて期待してみたものの……所詮まがい物か」

右足を突き、疲弊している俺の目前に、紅原が仁王立ちしている。コイツはピンチ……いや、大ピンチだ。
俺が真剣白羽取りをした所で、針が俺の額にぶっ刺さればそれでゲームオーバー、正真正銘終わりだ。
なら針が刺さる前に……それも無いわな。何故なら俺には物質的攻撃も、精神的攻撃も行える異能力が無いからね。
万事休すかもなぁ、今回こそ。今までは色々と運に助けられてきたり、助っ人のお陰で命からがら助かって来たけど。
このまま紅原の強さと、自分の非力さと無力さに打ちひしがれながら死ぬのも

って昔の俺ならまた悲観的になってたんだろうけどな。残念だが、俺にはもう振り返れる道は無いんでね。
紅原が針を挟んだ握り拳を俺へと振り下ろさんと右腕を上げた。刺さるとすげー痛いんだろうな。
つーか右腕と言うか右足を取られちまったな。ま、これくらい状況がやばいほうが勝利しがいがあるってもんだ。

「去ね、弱き者」

紅原の声が俺の耳に響く。わざとゆっくり右腕を下ろしてるみたいだな。まぁ動けないもんな、俺。
けどさ、弱き者も追い詰められると意外に奮闘するもんなんだぜ。そう……

『達哉! 今だ!』
新耳鳴りの掛け声を聞くと同時に、俺はポケットに忍び込んだ針を右手で取り出した。
ようやく近づいてくれたな。待ってたぜ……この時を。紅原の握り拳が目前、俺の顔目掛けて迫ってくる。
俺は一瞬だけ全身に力を入れて、体を硬直させた。紅原の目から見れば、完全に死を悟って諦めたように見えるだろう。
とっさに左腕を掲げて、その攻撃を防ぐ。瞬間、紅原の握り拳が俺の左腕に完全に突き刺さった。頭を駆け巡る激痛。

が、俺の口元はにやりと歪んでいた。そりゃそうだ。
俺の右腕、いや、右手に挟んだ針は、紅原の額を貫いた。紅原自身が近づいてきてくれたお陰で、ずぶりとな。
アドレナリンとか色んな物が混じいった汁が脳内でどくどくと流れていた。無茶苦茶重症なのに、痛覚が鈍い。
紅原がどさりと音を立てて、うつ伏せになって俺の傍らに倒れた。可哀相に。
どんな異能者でも、何かしら弱点はあるからな。俺はアンタのその弱点を顔だと断定したんだ。だから懐に入る必要があった。

ずりずりと俺は死んでいる右足を引きずり、レオーネさんへと向かっていた。
にしてもどうしよう。右足は動かないし、左腕はプランプランだし。けど、まぁ何だ。勝った。多分。

「レオーネさん、すみません。ちょっと怪我しすぎちゃいました」
【現在地:道路】
【紅原撃破(?)。右足と左腕が針によって麻痺状態】
250恋島達哉 ◆KmVFX58O0o :2008/10/29(水) 22:23:11 0
ちょっと修正、ごめんなさいorz
×俺の左足を
○俺の右足を
251織宮京 ◆9uPeCvxtSM :2008/10/30(木) 21:28:34 0
>>242
京はすっかり疲れ切った足取りで夜の住宅街を歩く。
聖書を売りに行ったのは良いが、全く売れず、路上で売っていたせいか警察に注意されてしまった。
(最近全然良い事無いな、変な奴に襲われるし、聖書は売れないし)
今のご時世、日本で聖書が売れることが無いくらい京にも分かっていたが、金不足のため藁をも掴む思いで売ろうとしている。
今日は諦めて帰ろうと思った時、何やら前方から靴音がした、さっきの黒服のせいで反射的に身構えてしまう。
しかし、次第に姿が見えてくるにつれて、それは勘違いだということが分かった。
長く艶やかな銀の髪が街灯の光をうけ煌めいている、その髪を揺らしながら歩いてくるその女性はこの陰湿な住宅街には不釣り合いなほど輝いていた。
(うわ、超美人じゃねぇか、銀髪に蒼い眼、透き通るような白い肌、胸はないのが残念だがストライクだぜ、これは)
などと邪なことを考えていると、その考えを見透かされたのかその女性は京の事をじっと見つめていた。
(あれ?考えてることばれた?いや、そんなことあるわけないか、まさかこれは……俺に
惚れたのか)
一番あり得ない可能性を考えた京は何か話しかけようと女性に近づいていった。
そして、口を開こうとした瞬間、女性の後ろに黒ずくめの物体が迫ってくる。
その物体、というか人物の手には光を反射して光る白刃が見える。
京は反射的に手を伸ばすと女性を押し倒した、次の瞬間、先程女性が居た場所で白刃が空を切る。
女性の手からスーパーの買い物袋が落ち、中身が道に散乱する。

「貴方はそこで待っていて下さい、このような罪人は私がすぐに裁いて見せます」

京はやっと起き上がった女性の前に立つ、よく見ると敵は忍者のような服装をしている。
女性が何か言ったが、使命感に燃える京にそれは聞えない。
(この女性は俺が護って、お礼としてディナーに誘ってくれるはずだからその時電話番号を聞いて、あわよくば………)
この緊迫した雰囲気で独りでに、にやけ始める京は明らかに浮いていた。
【織宮京:暗殺部隊に遭遇】
252名無しになりきれ:2008/10/30(木) 21:29:35 0
253国崎シロウ ◆Jd2pQO.KKI :2008/10/31(金) 15:09:30 0
>>243
「当然でしょう。貴方のスキルは確かにかなりのレベルだけれど――――それだけでは対抗し得ないこともあるの。
 さっきの爆発が、なんらかの能力と絡んだものであった場合はともかくとして、ね。
 そもそも、最初の狙撃を考えれば、この爆破は貴方のスキルによるものでしょう?
 それで爆弾魔の能力と自称するのは――――なにより、貴方自身の技術に失礼だわ」

異能では対抗し得ない現実もあるんだがな。
爆煙の中から女の声が聞こえ、次いで無傷の状態――――少なくとも
俺からはそう見える、その姿を現した。
これは、思ったよりも大きな獲物だ。
爆発を凌ぎ切るだけならば、能力者バカにでも出来るだろう。
俺が評価をしたのは、俺の仕掛けた爆弾を異能ではなく技術と見切った、
少なくともそう取れる発言をしたことだ。
それは、敵が洞察と考察が出来る人間であるという事。
殺人の技術などという評価にすら値しない物を誉めているらしい相手に、
苦笑を浮かべながら考えを巡らせる。

と、突如として生暖かい風が吹いた。
先程まで微風でしかなかったんだが……そう考えて、気が付いた。
空間に風が生じた理由。それは、恐らく目の前の女が『熱』を操作したのだろう。
急激な温度差は風を生むあの敵の周囲には、範囲こそ解らないが
高熱の域が存在している筈だ。

「……ったく、弱ったね。敵対する覚悟なんてねぇんだが」
会話によって情報を得るか戦うかを告げる敵に、俺はため息を一つ付き、
サングラスの奥に隠した毒蛇の瞳で眺めつつ、呼吸するにも等しく戯言を吐く。
嘘は付いていない。今の俺に、敵対する気などない。あるのは、あらゆる手段を用いて
相手の息の根を止めるという指針のみ。

「まあ、いいぜ。『会話』をしてやるよ。女が無駄話したがる生き物だってのは知ってるからな。
 ――――ここから3階下のフロアに、社長室がある。付いて来い」

直後、仕掛けてあった屋上中の爆弾が爆発し、ビルを揺らす。
それは、この階の武装は解除したという事を知らせる物であると同時に、
『切り札』への布石。俺は屋上の階段を気だるげに下りていく。

さあ、付いて来やがれ。
来ても地獄、引いても冥府。
テメェがいるのは蛇の腹。ここから先、お前を待っているのは『死』だけだ。

【国崎:廃ビル社長室へ階段を降りていく。実際には国崎にまともな交渉をする
    気は無いので付いてきても会話になるかどうかは不明】
>>248-249

恋島は敵、紅原に向けて真正面から立ち向かっていく。
もしも紅原がボーリングのピンであったなら、ド真ん中――ストライクでも狙えそうだ。
だが、これはボーリングではない。

>「弱い犬ほど良く吼える……」

――来るぞ、針攻撃だ。
しかし、針は恋島に当たる事は無かった。彼が何とか受身を取る事に成功したからだ。
その代わり、私の所へ針が向ってくる事になったがね……。
軌跡を描き向ってくる針を首を捻りかわした。
恋島は私の方を振り向くが、これは駄目だ。
戦いの最中に余所見をするのは良くない。

>「他人の心配をするほど余裕があるのか?」

全く持ってその通りだった……。
続けざまに撃ち出された針は恋島の右足を一発貫いただけだが、それでもダメージはダメージだ。
これで恋島は思うように動く事が出来なくなっただろう。

顔を苦痛に歪ませながら針を引き抜く恋島……。
彼は姿勢を直そうと立ち上がろうとするが、右足はまるで人形のそれのようにダラリとしている。
どうやら紅原の針には神経性の毒が塗られているようだ。
もしかすると、この毒が紅原の能力なのかも知れない。

何れにせよ、道は閉ざされたな……。
今の恋島の現状では、紅原を倒す事は難しいだろう。

紅原は動けなくなった恋島に向けて、最後の一撃を刺す為に一歩一歩だが、着実に躙り寄る。

>「だが、異能者としては三流だ。闇雲に闘うだけで俺に勝てると思ったか? 笑止にも値せん。
> アブラハムと聞いて期待してみたものの……所詮まがい物か」

どうした恋島達哉。先程の理想が水泡に帰すぞ。
最早これまでなのか……?
>>254

「ん……?」

だが、私の不安感は恋島の目を見て払拭された。
なぜなら、恋島の眼には未だ闘志の炎が爛々と燃え盛っていたからだ。
中国には『窮鼠猫を噛む』という言葉がある。
追い詰められた恋島は、見事紅原に一矢報いる事が出来るのか……。

紅原の振り上げた右手には針を挟んだ握り拳。
これで恋島に止めを刺す気のようだ。

>「去ね、弱き者」

振り下ろした拳が恋島の顔面に届く事は無かった。
恋島は左手を盾として犠牲にしたからだ。そして、右手には隠し持っていた針――
彼は先程私が車で受け止めたあの針を回収し、ポケットに忍ばせておいたのだ。
これが決定打となった。もちろん、紅原への……。

奴の額には深々と針が突き刺さり、深紅の海を作り出す。
この紅原という男が二度と起き上がる事は無いだろう。

>「レオーネさん、すみません。ちょっと怪我しすぎちゃいました」

苦笑する恋島……。
彼は麻痺している右足を引き摺り、その左腕はだらしなく、振り子のように揺れている。

「――良くやった。イタリアの諺にはこういう言葉が在る。
 爪を見ただけでライオンと知れる……。力量という物は、相手を見た瞬間に分かるものだ」

地べたに突っ伏している三流は、自分の負けも解らぬまま死んでいった事だろう。

「これで死んでいなければ、未来から来た殺人マシーンやハイチのゾンビーだな」

どんな事にも理由は在るもの……。
テトロドトキシン系の毒で仮死状態に陥った状態から蘇生した人間を、
ブードゥー教の教えではゾンビーというのだ。
それに、殺人マシーンはそもそもSFだ。
いくら異能者とは言え、頭を針で貫かれれば死ぬ。
拳銃で心臓を撃たれれば死ぬし、風邪をこじらせただけでも死ぬ。
人と異能者の違いなどほんの些細な物なのだ……。

「対策は車の中でしよう。……肩を貸そう」

私は恋島に有無を言わさず、車の助手席へと彼を放り込んだ。
やれやれ、『落とし穴』に嵌ったのはお前の方だったな……。
紅原の骸に一瞥をすると、自分も車へと乗り込んだ。

【レオーネ:現在地 道路】
【粛清部隊 紅原(死亡)】
256影渓 木陰 ◆O93o4cIbWE :2008/11/01(土) 01:19:19 0
響の言う歓迎会の会場に着く、
傍には海があり、表向きは立派な別荘に見えるがこれもシナゴーグの一つだ、

では既に食事の準備が整っており後は面子と主賓を待つだけとなっている。
そうこうしてる内に響が俺に話しかけてきた、
何でも招待状はたくさん出したが全然集まってくれないらしい
そして俺が来るのが遅いのでろそろ始めようとしていたとの事だ

「すまん、少し色々あったんでな」

響は特に興味無さそうにし、それにしてもちょっと少なくて寂しいね、と溢した

面子を聞くと俺と響、そして藤堂院 神、後は任務中だったり、来てくれなかったらしい
3人だけとは本当に寂しいな、盛り上がるのだろうか?
俺はトランクを床に置き、響をなだめた、トランクはゴトゴトと音を立て、独りでに動いている、
響は怪訝そうに俺のトランクを見つめ、また何か珍しい生き物でも捕まえてきたのかと聞いてきた、

「ああ、確かに珍しいぞ」

確かに珍しいといえば珍しい、響がどうしても見せてくれとせがむので仕方なくトランクを開けた――
中から水浸しの男か女か判らない青年が現れトランクの縁に掛かりぐったりとそのまま動かない、

気を失ってるようだ、確かにあの中は厳しいものがあったな。

響は青年を見つめかわいいなどと歓喜し、この子も参加させよう、むしろ暗殺部隊に入れようなどと言って来た
そして此方の話も聞かず能力で青年の体を運び、部屋で着替えさせてくると言い部屋に戻る
途中、此方を振り返り、それにしてもこんな趣味があったんだ、と目を細めて見つめてきた。

「っ違う、断じてそんな趣味は無い!、これは単純に興味深い異能者を連れてきただけで
断じてそんなつもりは微塵も無い、本当だ、信じてくれ!」

響は柄にも無く取り乱した俺を見て笑い、部屋に戻っていった。

(あの青年は幽玄様に見せるつもりだったのに……もういい…面倒臭い…)
海岸に行こう、まだ時間が掛かるだろうし…)

俺は疲れた心を癒しに海岸へ向かった。

【影渓・七草:シナゴーグに到着、七草は気を失っている、響が介抱中】
257戦場ヶ原 天 ◆u5ul7E0APg :2008/11/01(土) 11:21:22 O
>>246
「…勝負あったな。」
二人の闘いを傍らから見ていた屡霞はぼそりとそう呟いた。
天からさながら隕石の如く落下してきた戦場ヶ原と東雲の真下には、直径5mものクレーターが出来上がっていた。
その真ん中には、まるで壊れた銅像のように、腹部を打ち抜かれた東雲の姿と、左腕をダランとさせて立っている戦場ヶ原。
勝敗は決した。戦場ヶ原はこの闘いに勝ったのだ―――…。
「グッ………ウグ…………」
「………師匠よ。…教えてもらうぞ。あんたがなぜこんなことをしたのか……。」
息を切らせながら戦場ヶ原は、虫の息となったかつての師に言葉を投げた。
屡霞は、自分たちの隊長がやられたというのに微動だにしない虐殺部隊を警戒しながら、戦場ヶ原達の会話に耳を傾けていた。

「………ィ……クス………」

「!?」
東雲の口から息が漏れる。
戦場ヶ原はその言葉を聞き取ろうと身を乗り出した。

「……スティ…クス……ガノスビッチ………!
奴に…………ッガハァッ!!」
「師匠ッ!」

大きく咳き込み、口からにび色の血を吐き出す東雲を、戦場ヶ原は思わず抱き留めた。
「奴に……ワシは……捕らえられた……!」
断片的な情報を、戦場ヶ原は一言一句聞き漏らすことのないよう聞いていた。
「奴は……本物の……悪鬼じゃ…………!
まるで…歯が立た…なかった………。
そして…妙な薬を打たれる………思考が鈍化する…………どんな者でも羅刹と成………る……」
東雲がそこまで言ったところで、微動だにしなかった虐殺部隊の中で一人、僅かに動いた者がいたのを、屡霞は見逃さなかった。

「…『鬼の紋章』発動。」

屡霞の超人的五感が感じる。その人影はたしかにそう呟いた。

「オオオオオアアアアアアアアアアアアアアッ!!!」

その呟きに呼応するようにして、東雲が突然うめき声を上げた。
刹那、至近距離にいた戦場ヶ原にむけて拳を放つ。
戦場ヶ原は瞬時にそれをかわし、後退する。突然の変化に驚いた顔をしながら。
腹にぽっかりと穴があいたまま立ち上がる東雲。しかし、その顔は苦痛にまみれ、身体は痙攣している。まるで壊れて動かなくなった操り人形を無理矢理動かすように、東雲の身体は動いていた。
258戦場ヶ原 天 ◆u5ul7E0APg :2008/11/01(土) 11:41:32 O
「この身体は……もはや我が物ではない……。
こ……コ…ロ…セ………!」
「………!!」

苦痛にまみれた東雲の口から、断片的に言葉が漏れる。
戦場ヶ原はその言葉に、猿飛の死に顔を思い出し、胸を締め付けられた。

「うぬは儂を超えた………もはやうぬに教えることは…何も…無い……!
勝者は常に生き延び……敗者はただ滅び去るのみ……!そう教えた筈じゃ………!」

そこにいたのは今までの殺人マシーンではなく、かつての厳しい師匠、東雲来蓬斎であった。
戦場ヶ原は涙を飲んで、構えをとった。

「…東雲来蓬斎殿。……介錯つかまつる。」

かつてないほど透き通った声で、戦場ヶ原は左手に黒球――シンギュラリティゼオレムを作り出す。
そしてそれを、何のためらいもなく、かつての師匠に向けて投げた――――。
黒球が拡がり、たちまちに東雲のからだを飲み込む。
消えゆく東雲の顔には、ただただ穏やかさだけがあった。

「…生き延びた者は、死に行った者の思いを受け継がねばならぬ。我が死を以って、より強くなれ。
うぬはもうイチゴ頭の山田権六ではない。…闘いの鬼神―――戦場ヶ原天よ。」

「!!……」
師の最期の教示に、思わず戦場ヶ原は目を見開いて顔を上げた。
しかし、その先にはもう東雲の姿はなかった。
そう、戦場ヶ原に新たな名を与えたのは、他でも無い東雲その人だったのだ。

「……ウガァァアアアアアアアアアッ!!!」

また一人、自分の大切な人間をその手に掛けた男は、一人天に穿った。


「待てッ!貴様ッ!!」

一方屡霞は、虐殺部隊の中で一人動いた人影を追っていた。
「ククッ…」
人影は他の虐殺部隊と同じ黒ずくめの戦闘服を着ていた。しかし屡霞の目には、確かにそれが笑っているのがわかった。
角を曲がると、人影はたちまちに消えた。
「!?」
追っ手を振り切った妖しい人影は、闇夜に跳んで一人笑った。

「――――ククッ、スティクス大隊長に、報告を……」

【戦場ヶ原:東雲来蓬斎に勝利。現在位置:路地裏の空き地。】
【スティクスに東雲敗北の報せが行く。】
259籐堂院瑞穂 ◆FleR8jlnN6 :2008/11/02(日) 14:41:58 0
>>251
目の前に神父、そしてその神父の前には多分『機関』の暗殺部隊。
顔には目を残して覆う黒い布、胴体には動きやすいように黒い服を着ている。
暗殺部隊の特性上、防御よりも機動力を重視した装備であろう。
しかし、この神父には感謝しなければ、あのままだったらおそらく殺されていた。
今の暗殺部隊には師匠が居るはず、なのに私を狙うという事は……私を完全に捨てたと言う事か。
分かっていた事のはずなのに、視界が涙でぼやける。
それよりも今は目の前の敵を倒さなければ、刀は置いてきてしまったが何とかなるだろう。

「貴方はそこで待っていて下さい、このような罪人は私がすぐに裁いて見せます」

神父が私の前に立ちはだかって言う、成る程こいつも能力者か。
私は屈んで、道に散らばった食材をビニール袋の中に入れていく。
本来ならこのまま帰るところだが、もしこの神父が負けてしまったら流石に後味が悪い。
ビニール袋を道の端に置いておくと、私は暗殺部隊と対峙する。

「二対一だ、それでもお前はやるのか?」

そう言うと、敵は素早く私に肉薄し、手に持った刃を振ってくる。
相手が武器を持っているのに、こちらが持っていないと非常にやりづらい。
私は適度に距離を取りながら、神父に呼びかける。

「神父さん、どうにかして武装解除出来ないでしょうか?」

この神父の能力さえ分かれば、戦略の幅が広がる。
私は体術が得意では無いので、下手に接近すると返り討ちにされてしまうかもしれない。
こんな事なら、刀を持ってきておけば良かった。

【籐堂院瑞穂:暗殺部隊と交戦】
260籐堂院神 ◆FleR8jlnN6 :2008/11/02(日) 15:26:24 0
>>256
歓迎会をするからとか言われ仕方なく着いてきた俺だったが、今更ながら後悔した。
暗殺部隊の面々は集まるどころか、響と木陰とかいう奴以外誰一人として集まらなかった。
せっかく帰ってきたって言うのに、俺って実は嫌われてたのかな。
木陰が持ってきた一人の男、中性的な容姿をしているためが今一判別がつきづらい。
その男を響がえらく気に入ったようで部屋に運んで行ってしまった。
木陰が海岸の方に行ったので、俺は響を追うように部屋に入っていった。
部屋には着替えさせられた男とその男の写真を撮りまくっている響が居た。
黒いTシャツと黒いジーンズ、何故こいつのサイズの服があったのかは謎だがあえて突っ込まないでおく。

「お、中々似合ってるじゃんか、これ着させたのお前か?
どうだ響、こいつは男だったか?」

響は頷く、それにしてもこいつなら女装させてもそこそこ似合っていたかもしれないな。
しばらくして、倒れていた男が目を覚ます。
いきなり目の前が知らない場所になっていたためか、ひどく慌てている。

「おはよう、ここは『機関』のシナゴーグ、今は暗殺部隊の歓迎会の最中だよ。
で、君は入らない?暗殺部隊、今ならティッシュペーパー付けちゃうよ」
「まぁ、どちらにせよ、選択肢は二つだ。
暗殺部隊に入るか、死ぬか」

目が覚めたばっかりでこんな事言われるのも訳分からないだろうがしょうがない。
第一こいつが『機関』の存在自体を知っているかすら分からない。
まぁ暗殺部隊という、最も顔が割れてはまずい部隊に連れてこられたこいつは実に不運だ。
響と俺と木陰の顔を知ってしまった以上、こいつは暗殺部隊に入るか死ぬしかない。
逃げるとしても、俺と響が居る時点でよほどの使い手じゃなければ逃げられないだろう。

「あぁ、あともう一つあったな、俺らと戦って勝つ。
俺は新入りだし、こいつは中学生、何とかなるかもしれねぇぞ?」

【籐堂院神:目を覚ました七草に問いかける】
261恋島達哉 ◆KmVFX58O0o :2008/11/02(日) 20:34:58 0
>>254-255
何気に俺は心の中でしくじったと思った。だってそうだろ? レオーネさんが求めていたのはおそらくパーフェクトな勝利だ。
あんな奴如きにこんな状態で勝つなら、これから先どれほど怪我しちまうのか、俺には予想できない。
多分あんな……紅原並みの奴でも、「機関」じゃ三下なんだろうな。それなら、あの紅原に超ギリギリな戦いをした俺は・・・・・・。
考えただけでも全身の力が抜けそうだ。実際左腕と右足の力は抜けてるけどな。

レオーネさんの表情は微動だにしない。あぁ、こりゃあ殺されるはなくても、「期間」入りは取り消しかな・・・・・・。
鳴り物入りで入るって事は、それ相応の実力があるって事だ。だが今の俺の状態は何だ?
肉を斬り骨を断つって勝ち方にしても、あまりにも肉を斬られ過ぎてる。もといボッコボコにされちまった。
それに紅原のあのやられ方、スマートとはお世辞でも言えない。あんな状態じゃ明らかに殺されたって分かってしまう。
もっと自然なやり方で紅原を倒すべきだった。ここまでくるのに、無駄が多すぎる。寧ろ無駄しかない。

俺は諦め半分と、ふがいなさ半分で力なく笑った。レオーネさんが口を開いた。
>「――良くやった。イタリアの諺にはこういう言葉が在る。
  爪を見ただけでライオンと知れる……。力量という物は、相手を見た瞬間に分かるものだ」
……あれ? 全く予想していた反応と違い、俺はぽかんと口をあけていた。認められた……のか?
……やっぱ微妙かな。俺の爪はライオンというか雀、いや、鼠だ。レオーネさんは多分見抜いている。

レオーネさんが近づいてくる。合否を口で伝えるつもりなのだろう。俺は俯いて顔を背ける。
――が、レオーネさんは倒れている紅原に視線を向けながら、穏やかな口調で言った。
>「これで死んでいなければ、未来から来た殺人マシーンやハイチのゾンビーだな」
まぁ……確かに。でも何となくのっそりと、何事も無かったかのように立ちそうな気がしないでもないんですけど……。
俺はレオーネさんに続くように紅原の方をちらりと窺った。だが、紅原は地面に突っ伏したまま、起き上がる事は無さそうだった。

>「対策は車の中でしよう。……肩を貸そう」
え、っていててて! レオーネさんがそう言って、俺の肩を無理やり担いだ。あ、麻痺してるから感覚が無いんだ。
意外とレオーネさんは力強く、俺の肩を支えながら停車している車まで運んだ。ポケットからキーを取り出し、助手席のドアを開ける。
片手でドアを開けると、レオーネさんが俺を助手席に乗せた。未だに右足と左腕の感覚が戻らないのがキツイ。

しばらくすると、レオーネさんが運転席を開けて車に乗り込んだ。そう言えば……
いや、良いか。今まで考えていた段取りがここに来て全て気泡に返した以上、質問は無意味だ。
……どうしようかな。やっぱ本音を伝えた方がいいのかな。つうかこの状態のままなのは凄くキツイ。色々と。

「あの・・・・・・レオーネさん」

「もし差支えなければ……この怪我を治したいんですけど。後、俺の気持ちは全く変わりません。絶対」
【現在地:車中】
【レオーネに傷の治癒と、「機関」入りへの決意を告げる】
262スティクス ◆6eLTPQTFGA
>>244
「隊長、それをお付けになるのですか?」
腕に装着した装置を見て隊員の一人は言う
「あぁ…俺もアイツの実験体になるのは癪だが…少し便利そうなんでな」
正式名称は決まっていないが…虐殺部隊用別異能再現装置とアイツは呼んでいる
実験に実験を重ね、作り上げた最新傑作…その内容とはつまり、異能力の再現
元々別の能力を持つ異能者を装置を使い精神に干渉し一時的に書き換える物
この装置を使えば身体上昇能力者が炎の能力を使えるようになる、その逆も然り
その能力は機関の諜報部隊によって得た情報等によって再現される…そのため隠された能力は再現できない欠点があるが――
「フン…雑魚相手にはこの程度でいいだろう…俺の能力を使わずともこの体と擬似能力でなんとかなる」

さて、再現対象は――ピピピッ
桐北 修貴…二つ名は轟雷工作室…か…面白い
こいつに決めた

バチバチバチッ
体に電流が流れる…なるほど…こいつぁ便利そうだ

「『放電』スパーク !!」
左手から放たれた強力な電撃が廃ビルに突き刺さる
単純な能力だが…同時に使いやすい能力だ
この機械が壊れるまでこの能力を使ってやろう

「ククク…こいつはいい…このオモチャで少し他の異能者と遊んでやるとしようか」
上機嫌でバイクのほうに歩き出そうとしたその時

「………スティクス大隊長」
スティクスの目の前に虐殺部隊員が新たに一人現れる、腕には東と刻まれた文字
東雲来蓬斎部隊の情報伝達隊員である
「なんだ…東雲の奴の情報係りじゃねぇか…何かあったのか?」
東雲は時刻的には既に到着しているはずだった、奴は時間には厳しい男だったはず
だが機連送を使わず直に連絡をしてきたということは何かあったということ
「それが…東雲分隊長が敗北されました…」
「ほう…東雲の奴を殺りやがるとはな…どこのどいつだ?それは」
少なからず動揺を覚えたスティクスだったが、その感情はすぐに捨て、勝者の名を聞く
「元…虐殺部隊隊長…山田権六です…」

!!!
これには驚かざるを得なかった…山田権六がこの街にきていることは諜報部隊から聞いていたことだが
まさかそれに東雲が敗北するとは…能力的には奴のほうが優秀な筈…山田権六が成長したのか…東雲が老いたのか…
だがそんな空想情報はどうでもいい…師弟関係とはいえ、幹部が敗北することは我ら虐殺部隊には許されない

「おもしろい…このオモチャの実験データのを取るのも兼ねて…元隊長様の実力を拝見させてもらうとしようか…
 貴様は奴にそれ以上攻撃を加えるなと他の隊員にも伝えておけ…これは絶対命令だ!いいな!」
情報伝達隊員は…御意…と返事をしたかと思うと一瞬で姿が消えた、この行動の素早さも金剛に気に入られる理由の一つである
そしてバイクに跨り…スティクスは大声で叫んだ
「てめぇら!元隊長様と戦えるかもしれんぞ!主賓を待たせるのは失礼だからな…最高速度で行くぞ!」
ギュイイイイイイイイイイ
バイクを唸らせて戦場ヶ原の元へ3匹の鬼が向かう

【スティクス:東雲敗北の知らせを聞き戦場ヶ原の元へバイクで向かう 接近はかなり早い
       一時的な能力が轟雷工作室に変化している 装置を破壊すれば元に戻る】