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実験室長 :
2013/04/02(火) 22:42:36.80 0 やあ (´・ω・`) ようこそ、TRP系実験室へ。 このコピペはサービスだから、まず読んで落ち着いて欲しい。 うん、「また」なんだ。済まない。 仏の顔もって言うしね、謝って許してもらおうとも思っていない。 でも、このスレタイを見たとき、君は、きっと言葉では言い表せない 「ときめき」みたいなものを感じてくれたと思う。 殺伐とした世の中で、そういう気持ちを忘れないで欲しい、そう思って このスレを立てたんだ。 じゃあ、実験《ものがたり》を始めようか。 □ □ □ □ □ □ □ 物好き達が集まってTRPG系スレのような何かを繰り広げるための実験室です 飽くまでも実験室なので、そこで行われるのはTRPG系スレのような何かであってまともなTPRGスレであるとは限りません 全く無関係のスレの詰め合わせのようになるか同じ企画がずっと続くかは神のみぞ知る
企画その1『エロマンガ島の日常』 エロマンガ島の首都タケトシシティーはお金持ちとかこじきの住む町。 精神病が流行っていて今日も力いっぱいに虐待が始まる。 空も雲も病院も街も気持ち悪いデザインのもので溢れているが、 百人に一人は友達がいるから安心して欲しいし、君たちは住むのだ。 この街に! なお、エロマンガ島とは妄想と関西のあいだにあり 夢列車やイタ車で行けると噂されている…… のだ!!
ジャンル:シュールレアリズム コンセプト:悪夢も現実も過去も未来もごちゃまぜにしたような気の狂ったような感じの世界で事件を解決したりする 決定リール:あり レス順:適当に 版権・越境:全てOK 敵役参加:自由だけど敵として参加しても周囲が敵として扱ってくれるかは分からない
キャラテンプレ(項目追加削除自由) 名前: 出身: 属性: 種族: 性別: 年齢: 技能:
ここはエロマンガ島タケトシシティー。 妄想と関西のあいだにあり夢列車やイタ車で行けると噂されている国の首都だ。 タケトシシティーの住人、一条ゆかりこには秘密がある。 表向きは何の変哲も無い主婦だが、それは世を忍ぶ仮の姿。 その正体はタケトシ市長の勅命を受けた凄腕探偵なのだ! 名前: 一条ゆかりこ 出身:エロマンガ島 属性:大御所 種族:主婦 性別:女 年齢:32 技能:子育て 今日は市長は東北へ温泉旅行。 息子のヨシヒコと親子水入らずの時間を送っているゆかりこだったが……。 突如鳴り響くインターホンの連打音。 ドアを開けてみると、満身創痍の兵士が倒れ込む。 「大変ですゆかりこ様、市長が……市長が……! ぐふっ」 温泉旅行先で市長に何かあったに違いない。 ゆかりこは息子であり相棒のヨシヒコに声をかけた。 「いくぞヨシヒコ! 夢列車の出発時刻は2√2時間後だ!」 エロマンガ島の日常 第一話 「タケトシシティー市長の密室実験簿。 謎を解け!ユカリコ&ヨヒシコ親子とタケルちゃん。 夢列車で行く東北密室温泉殺人事件と桜吹雪の夢。 君のいた季節、忘れないよ。僕の夢だもんスペシャル」開幕!!
>「いくぞヨシヒコ! 夢列車の出発時刻は2√2時間後だ!」 「ママ、ちがうのっ。ヨヒ君の名まえ、ヨヒシコなのっ!」 ヨヒシコはバラ色のホッペを膨らませながら床暖房に転がっている。 ころころ…ころころ…。 可愛らしいチンマリとしたベビー服は床と同じチョコ色。 床に這い蹲りながら、ヨヒシコは絵を描いている。 「みてこれ。でぶのママ」 そういうと自分が書いた落書きのユカリコをユカリコに見せる。 その紙には歪んだ大きな円と点々が無数に描かれており どれが目なのかも鼻の穴なのかもわからなかったが、 騒がしいピンポン音とともに慢心相違の兵士が現れた。 >「大変ですゆかりこ様、市長が……市長が……! ぐふっ」 「……?どうしたの。おじしゃん?」 ヨヒシコは初めて見る人の死が理解できずにいた。 すると兵士が起き上がり… 「いざゆかん天国へ!我が子らよ発進せよ、アーメン!」 そう叫んで窓から飛んでいく。 窓から見える空には、主なる髭もじゃの神が口を広げて待っている。 もしかして、あれは太陽なのかも知れないし、 歴代アメリカ大統領を夢見た男の成れの果てなのかも知れない。 >「いくぞヨシヒコ! 夢列車の出発時刻は2√2時間後だ!」 「まあま〜」 万歳するヨヒシコ。するとヨヒシコの声に反応して ユカリコの母乳が服の上からシャワーのように噴出した。 そう、ユカリコは溢れ出すくらい母乳が良く出るタイプなのだ。 まだ赤ちゃんの頃のヨヒシコを溺死させかけたくらいのだ。 ヨヒシコはきゃっきゃきゃっきゃと喜ぶと母乳を一飲みしてベビーカーに乗せてもらう。 2√2時間後。夢列車内部。 車掌のタケルちゃんが右往左往している。いったいどうしたというのだろう。 ユカリコは溢れんばかりの母性本能でヨヒシコの小さな足を咥えていた。 「○○○」 (ユカリコさんは○内にセリフを入れてください) 窓の外では駅弁売りが号泣していた。 なんと赤ちゃんが誘拐されてしまったのだという。 「あ、あ。まあま〜」 ヨヒシコは真っ赤な顔。どうしたのというのだろう。 ヨヒシコは便秘が酷いのでウンチを柔らかくする薬を飲まされているのだ。 ということは……。
>「ママ、ちがうのっ。ヨヒ君の名まえ、ヨヒシコなのっ!」 ゆかりこはタンスの引き出しから昨日の夕飯の残りの天麩羅を取り出してみた。 天麩羅には小さな字でこう書いてある。 名前:一条ヨヒシコ 出身世界:エロマンガ島 属性:ぺいぺい 種族:ハムみたいな赤子 性別:男 年齢:2 技能:すくすく育つ 「なんてこったドンドコドーン!」 確かにヨヒシコである。 言葉というのは最初の文字と最後の文字が合っていれば 中身の順番が入れ替わっていてもなかなか間違いに気付かないものらしい。 ちなみに”あたらしい”は元々は”あらたしい”だったそうだ。 ちなみに、凄腕探偵であるゆかりこは母乳を自在に操る事が出来る。 凶悪犯との立ち回りになった際には、超高圧母乳ビームで敵を薙ぎ倒すのだ。 暫く後、夢列車内部。 車掌のタケルちゃんが右往左往しているのを余所に、ゆかりこはヨヒシコの足を咥えながら言った。 「考え中」 ゆかりこがヨヒシコの足を咥えながら推理をすると、決まって何かを閃くのである。 SPECにおいて主人公が習字をビリビリと破いたり、ガリレオにおいて主人公が黒板に数式を書き連ねたりするのと同じ類の儀式だ。 しかし、ゆかりこが何かを閃く前に異変は訪れた。 >「あ、あ。まあま〜」 辺りがもくもくと煙に包まれ、少々お待ちくださいというテロップが流れる。 煙が晴れた時そこには…… 「ちちんぷいぷいウ○コマーン!」 チョコソフトのような頭をしてマントを付けたヒーローらしき何かが現れた。 これは酷い。作者はう○こち○こ言っとけば面白いと思っているのだろうか。 今時コ○コロミコミックでもこんなネタはない。と地の文がぼやいている間にもウ○コマンは前口上を始めた。 「天呼ぶ地呼ぶ人が呼ぶ! 悪を倒せと轟き叫ぶ! とう!」 電車の窓から飛び出し、窓の外で号泣している駅弁売りに駆け寄るウ○コマン。 「ほげぇえええええええ!! ウ○コの化け物じゃああああああ!!」 半狂乱になる駅弁売り。糞は飼い主の責任です。 息子のウ○コを放置するわけにもいかず、ゆかりこは窓から出る。 「すみませ〜ん、息子のウ○コがご迷惑をおかけしまして〜」 ヨヒシコの姿が目に止まると、再び号泣を始める駅弁売り。 「聡明そうな息子さんじゃ。うちの赤ちゃんが少し大きくなればそんな感じになるかのう……。 うちの赤ちゃんは誘拐されてしまったんじゃぁあああああ!」
>「なんてこったドンドコドーン!」 「ぽんぽこぽーん!」 狸の置物が通路をゴトゴトと進んでいった。 こんな意味のない描写は悪夢のように続くから気にしてはいけない。 >「考え中」 「まま、くすぐったいのぉ」 ヨヒシコは恍惚な顔。 >「ちちんぷいぷいウ○コマーン!」 「まあま、うまれたの?うんこまん」 股を開いたヨヒシコは赤面。 >「聡明そうな息子さんじゃ。うちの赤ちゃんが少し大きくなればそんな感じになるかのう……。 うちの赤ちゃんは誘拐されてしまったんじゃぁあああああ!」 「タケトシシティーにな…」 タケルちゃんがトイレから飛び出してきた。 タケトシシティーとは市長の本名なのだ。 そしてタケルの父。 気がつけばヨヒシコがいない。っていうか夢列車が発車していた! 「まあま〜!」 窓ガラスに顔をぺったりと貼り付け、ヨヒシコは泣いている。 線路は空に向かって伸びている。ウンコマンはジャンプして夢列車にしがみ付く。 そしてユカリコに手を伸ばす。 「さあ、つかまって!」 東北星。コケシ村。無人駅。駅を出ると田舎があらわれた。 まさに無人。無人過ぎるほどの無人。だが人の代わりにコケシが置いてある。 巨大コケシには「ようこそコケシ村へ」と描かれている。 「まあま〜!!」 どこからともなくヨヒシコの声。 声のほうに近づくと、肥溜め温泉があらわれた! 「……」 肥溜めの中には何者かがいた。 しかし湯気と臭気がすごすぎてよくわかならい。 「ユカリ子さん、何か臭います。いったいなんでしょうか?」 ウンコマンは真剣な顔。
>「タケトシシティーにな…」 なんと、赤ちゃんを誘拐したのは市長らしい。 一体市長の身に何があったのか……謎は深まるばかり。 >「さあ、つかまって!」 あろうことかウンコマンに電車に引っ張り上げられるゆかり子。 手が臭くなってしまったがまあ仕方がない。 やがて列車は東北へ到着する。 ――東北星コケシ村 >「まあま〜!!」 ヨヒシコのこの台詞は、かなりの確率で事件のヒントを見つけた時に発せられる事になっている。 素直に声がした方に行ってみる。そこはコケシ村名物、肥溜め温泉だった。 いつのまにかナチュラルに仲間に加わっているウンコマンが言う。 >「ユカリ子さん、何か臭います。いったいなんでしょうか?」 「いや、それは肥溜め温泉だから当たり前だろう。 何、そっちの意味の匂うじゃなくて推理物的な意味で?」 ゴゴゴゴゴ…… 轟音をとどろかせながら、肥溜め温泉の中からネッシーのような何かが現れた。 「我が名は肥溜め温泉の主、コッシ―! 我が眠りを妨げしは汝か?」 「いや、違うけど」 「そんなの関係ねえ!」 コッシーは大きな口を開け一同を丸呑みにした!
「おおおおおおん」 耳の穴から蒸気を吐きだし、コッシーが吠えた。 しゃかしゃかしゃか。コッシーが足を使って、ウンコマンとユカリコに向かって突進してくる。 あぶない!ウンコマンは咄嗟にユカリコの手を引き、避けようとしたが、手遅れだった。 二人を飲み込むコッシー!だが…… ごくん。 飲み込まれた二人は狭い胃袋の中。 胃液が身体を溶かしてゆく。 全長一メートルほどのコッシーのお腹はパンパンで人の形に膨らんでいる。 ウンコマンとユカリコはべったりと密着していた。
そこへ現れたのは宇宙人だった。 コッシーをUFOで捕まえると、分解して調べ始める。 いったいどういうことなのだろう? 宇宙人たちは胃袋の中からユカリコが出てきたのを うんうんと頷きながら見詰め合っている。 ウンコマンはというとUFOから捨てられて肥溜めに帰っていった。 だからひとまずはめでたしめでたしなのだが…。 だがユカリコはというと胃液で服が溶かされていて全裸。 コッシーはというと身体をバラバラにされてもニヤニヤと笑っている。 そこへ天井から見つめている者がいた。 その人の名はタケトシシティー。のちのタケルの父であるのだが 彼はミツヒコの伯父にも当たるのだ。 そうこうして、UFOは秘密基地に着陸するとそこはなんと旅館! 「ようこそ!コケシ温泉へ」 宇宙人たちはUFOから我さきへと旅館に突撃を開始。 それもコッシーの破片をお皿に乗せてサランラップで包んでだ! 「まあまー!」 遠くで手を振っている赤子がいる。部屋の奥。さらに奥。 ヨヒシコはドロドロに柔らかくした刺身を食べていた。 おまけに座布団10枚を重ねてその上に鎮座。芸者を何十人も侍らせて豪遊。 謎が謎を呼んでいる。
>「ようこそ!コケシ温泉へ」 紆余曲折あったが何はともあれ温泉旅館で宴会がはじまった! >「まあまー!」 ヨヒシコは刺身を食べながら豪遊。 まだ2歳ながら流石凄腕探偵の息子、只者ではない。 その姿を見つけるや豪遊に乱入するゆかりこ。 「ヨヒシコー! 一人で楽しむとは許さん! 私も混ぜろ!」 ゆかりこが座布団に座った瞬間。 ちゃんちゃらちゃららら、らんらん♪ というお馴染みのメロディが響き渡り、笑点メンバーが入ってきた。 彼らはナチュラルにヨヒシコとゆかりこの隣に一列に座る。 司会者は、見るからに棺桶に片足突っ込んでそうなお爺さんだ。 「本日の笑点はコケシ温泉からお送りします! メンバー紹介は面倒なので省略。……うっ!」 司会のお爺さんは突然胸を押さえて倒れた。 「まさか……またもや事件の新たな犠牲者が出たというのか……!」 「救急車! ……いや、もう死んでいる! 霊柩車だ、霊柩車を呼べ!」 新たな被害者の発生に騒然となる一同。 もはや老衰による死亡説を唱えられる雰囲気ではなかった。
>「ヨヒシコー! 一人で楽しむとは許さん! 私も混ぜろ!」 「ま〜!」 ヨヒシコは母との再会に喜ぶと、自分の小さな足を突き出した。 するとユカリコは美味しそうにその足をしゃぶり始める。 そして始まる笑点の本番。 だが君たちはお気づきだろうか?生放送のテレビ番組に全裸の主婦が映りこんでいることに。 全裸で座布団に座るユカリコにテレビの前の全国民は何かの間違いと不思議がる。 おまけに歌丸も死ぬ始末。なので視聴率はうなぎのぼりだった。 その時だった。ディレクターの男が声を張り上げ叫ぶ。 「歌丸を殺したのは誰かなああああ!?この中に犯人がいるかもなああ!!」 窓の外を見ると山桜が花びらを撒き散らせている。 天気は荒れてゆくようだった。 「まあま…」 ヨヒシコはユカリコの手を引っ張り温泉にゆく。 だがそこで見たものはまたもや死体であった。 桜吹雪が舞い散る湯煙の奥、逆さまになって湯船から覗く二つの足。 「のろいじゃ!千年桜ののろいじゃあ!」 岩場の上から全裸のおじいさんが叫んでいた。
>「まあま…」 ヨヒシコに引っ張られて温泉へ。 温泉から付き出す二本の足、またもや死体。 >「のろいじゃ!千年桜ののろいじゃあ!」 「千年桜の呪い……」 ゆかりこは超最新型携帯コンピューター(ただのスマホ)を操作しはじめた。 「今から数百年前に詠まれた”千年桜”という詩歌がある。 この中に今回の事件の謎が隠されているのかもしれない!」 超最新型携帯コンピューターで千年桜を再生するゆかりこ。 『大胆不敵にハイカラ革命 磊々落々 (らいらいらくらく)反戦国家 日の丸印の二輪車転がし 悪霊退散 ICBM 環状線を走り抜けて 東奔西走なんのその 少年少女戦国無双 浮世の 随 (まにま)に 』 再生をやめ、いつの間にか袴にブーツのハイカラファッションを身に纏ったゆかりこは推理を披露し始めた。 ついに凄腕探偵の本領発揮である! 「ハイカラ革命とは灰から革命――つまり灰から枯れ木に花を咲かせた花咲か爺さんの事だ。 そして……」 ぶおんぶおんぶおん。日の丸印の二輪車転がした花咲か爺さんが現れた。 キキーッとゆかりこ達の前に止まる。 「ヘイ、乗るかい?」 「オーイエス!」 ヨヒシコを抱いていそいそと日の丸印の二輪車に乗り込むゆかりこ。 ICBMを搭載した二輪車が環状線を疾走する!
『千本桜 夜ニ紛レ 君ノ声モ届カナイヨ 此処は宴 鋼の檻 その断頭台で見下ろして 三千世界 常世乃闇 嘆く歌も聞こえないよ 青藍の空 遥か彼方 その光線銃で打ち抜いて』 >「オーイエス!」 「まあー!」 ひらひらと環状線を桜吹雪が包み込む。 いったいこの桜吹雪はどこからやってくるのだろう。 ゆかりことよひしこの乗る二輪車はいつの間にかお馬さんになっていた。 ついでに花咲か爺さんも若返り若々しい少年と化している。 ぱかぱかぱか! 少年少女…戦国夢想… 夢なの?よひしこには夢も現実も区別がつかない。だからきゃっきゃと笑うのみ。 でもどこからともなく歌詞が浮かんでくる。 『君の肥えもトド家内よ』 視線を移すと裏の畑の肥溜めに、トドのように太った花咲か爺さんの家内がいた。 「いらっしゃーい!」 「まああ!」 トドのように肥えたおばあさん(少女)と会話をするよひしこ。 「まあま、デブの子!きっと呪われたの!!」 よひしこの短い推理。ということは? これは恨みを持っているものの仕業なのだろうか? おじいさん(少年)は真っ赤な顔で俯いている。 『此処は宴 鋼の檻 その断頭台で見下ろして』 「まあま!」 指をさす方向から宴の騒がしい音が聞こえてきたので、一行はゆく。 祭りで騒がしくなっている城内へ。ゆかりこと肥えた少女(おばあさん)は馬に乗り、 よひしこは、少年(おじいさん)に背負われてゆく。 すると城内の人間は全員が酔っ払ってぐでんぐでんになっていた。 そして城の地下の檻の中には意地悪じいさんがおり、その檻の周りでは… 「暖冬だい!暖冬だい!」 断頭台ではなく暖冬だい!と物の怪たちがはしゃいでおり天井から一行を見下ろしていた。 すると少年は檻の中の意地悪じいさんを指差して、 「あいつじゃ!きっとあいつが呪っておるんじゃ!」 叫んで小石を投げつける。
ゆかりこはヨヒシコの足をしゃぶりながら推理を披露。 「私の推理ではおばあさん(少女)は本当は絶世の美女! 何者かの呪いにかけられてデブになっていると見た!」 >「あいつじゃ!きっとあいつが呪っておるんじゃ!」 意地悪爺さんに石を投げつける少年(お爺さん)。 確かに見るからに怪しい。意地悪爺さんだし。 しかし本当にそうなのか? 見るからに怪しい奴は冤罪というのが推理物の鉄則である。 「待て、我が国は新しい時代へと生まれ変わり法治国家となるのだ。 まずは証拠を集めしかるべき手続きを踏んで法廷で……」 ゴゴゴゴゴ……地面から裁判所のセットが現れる。 裁判官の席に座っているのは、なんとタケトシ市長だ! 「只今より地獄の逆転裁判を開廷する――! 被告人は意地悪爺さん、弁護人はゆかりこヨヒシコ親子 原告はお爺さんおばあさん 検察官は……適当なキャストがいないので適当な宴の酔っぱらいA! レディーファイッ!!」
ヨヒシコは二歳になりたてなのでユカリコは可愛くてしょうがない。 だからヨヒシコの小さな足を咥えてしまう。 それと同時に母性本能が脳を活性化する。なので母は強し。 名推理が生まれるのだ。 >「私の推理ではおばあさん(少女)は本当は絶世の美女! 何者かの呪いにかけられてデブになっていると見た!」 「むちゅむちゅ…」 それとは関係なしに、ヨヒシコはユカリコの服をめくりおっぱいを飲みだす。 >「只今より地獄の逆転裁判を開廷する――! 被告人は意地悪爺さん、弁護人はゆかりこヨヒシコ親子 原告はお爺さんおばあさん 検察官は……適当なキャストがいないので適当な宴の酔っぱらいA! レディーファイッ!!」 「そうじゃ!弁護人の言うとおり何者かの恨みによっておばあさんはデブにされたんじゃ。 きっとその恨みを持っている者は意地悪爺さんじゃ! わしらが枯れ木に花を咲かせたご褒美に殿様からお宝を仰山もろうたことに そいつは腹を立てておるんじゃ!!それ以外誰が御婆さんに恨みがあるというんじゃ!! おばあさんが豚のように醜く太ってゆくことが、わしは悲しくってしょうがないんじゃ!!」 おじいさんは真っ赤な顔で叫んでいる。その背後でおばあさんは口をもぐもぐ。 ちっちゃい袋から何かを出してもぐもぐとこっそり何かを食べている。 それを気付いてか気付かないまま市長はおばあさんに視線を移し… 「おばあさん、あなたは意地悪爺さん以外の誰かに恨まれているという実感はしておりますか?」 そう言ったのでおばあさんは 「……わからないだわさ」どこか寂しそうな顔。 「ならば質問を変えましょう。おばあさん、貴女が日ごろからこいつ気にくわないって 思っている方はおられますか?」 「………」 無言のおばあさん。するとしばらくして 「…おじいさんが、あんなに働き者だったおじいさんが、働かなくなってしまったのだわさ。 毎日毎日酔っ払って家に帰って来て、毎晩どこかで遊び呆けているのだわさ」 その様子にタケトシ市長は眉根を寄せる。そしてお婆さんのもっている小袋を指さした。 「今、貴女が食べているもの。それはなんですか?」 「え、これはお爺さんがプレゼントしてくれた痩せ薬だわさ」 その時だった。裁判所が真っ暗になり目を開けると誰かが倒れていた!! 「まあまああああああっ!!」 ヨヒシコは恐怖でユカリコの胸にしがみ付いた!!
人々が鉄砲や大砲を手に、大海原に船を出し、新天地を求める時代。 世界には「獣士」と呼ばれる化け物使い達がいた。 彼等は「有魂獣」と呼ばれる特殊な魂を持つ化け物達を「自らの手で」殺し、その魂を吸収する事で、「復元獣」としてその化け物を使役する能力を持っている。 世界の王達は彼等の力を厚遇し、「獣士」達は各地で引く手数多となっていた。 しかし、ある時世界に危機が訪れる。 正体不明の怪物、「無魂獣」の出現である。 強力な力を持ち、殺されると黒い燐光となって消えると言う以外共通した特徴を持たない無魂獣達は、なぜか他の生物に圧倒的な敵意を抱いていて。 各地で群をなし、まるで異世界の軍隊のように世界各地に侵攻してきたのだ。 強力な無魂獣達に対抗すべく、世界の王達は国際同盟軍を結成、それと同時に、希少な「獣士」達を効率的に運用すべく、獣士ギルドを作り出し、その運用に努めた。 これは謎の生物無魂獣を相手に活躍する、「獣士」達の物語である。 ぺー、 ぺー 海鳥が鳴いている。風を受けぱんぱんに膨らむ帆。 定期船は海原を突き進む。 田舎の島を出てから二日。首都テイールの影が水平線の向こうに見える。 「だいじょうぶだって。テイールに着いたら仕事なんて山ほどあるってば。 心配ないって。俺がなんとかするからさ」 剣をもった少年が少年少女の集団に話しかけている。 彼らはアル島の子どもたち。彼らの島では漁業が盛んだったのだが 魚が捕れなくなってしまっていた。なので島は貧乏になり都会で仕事を探すことになったのだった。 名前:カナロア・トロ 性別:男 年齢:13 職業:漁師見習い 某所で噂のソーテーのアニメ劣化版みたいなコンセプト。 万人受けを狙った子供向けな感じ。 アル島で魚が取れなくなってしまったのは無魂獣の仕業。 アル島:小さな島。太古の海神信仰している巫女が少しいる。 でも、ほとんどが漁師。時々都会の人たちが観光に来るのは 半裸で祈りの踊りをささげる巫女たちが目当て。 首都テイール:開拓民でごった返す基幹的な場所。 歴史がある都だが大きな港があって開拓民とかいっぱいくる なので当局の取り締まりとか意外と厳しい。 砲術師とかが獣士たちよりも頑張って街を守っている。
同時上映な感じでいきたいかな〜って思っています ユカリコさんには下のキャラとか使ってもらいたいです 名前:未定 性別:女 年齢:13 職業:巫女見習い テイールに獣士の血縁がいる。下の人。 マキガインさん:テイールに住む駆け出しの獣士。アル島出身だが島のことは良く思っていない。 運動神経が悪くて漁師が出来なかったから劣等感がある。 メガネ。 しばらくトロたちの面倒をみることになる。 でも厄介者が島から来たと嫌がっている。
またポエムと触覚の糞スレか
「あ〜〜来ちゃってるよ〜〜。ほんとに来ちゃってるよ〜〜〜。 それもあんなにいっぱい。子どもなんて大っ嫌いなんだよこの僕は〜〜。 だけどさあ、島で魚が捕れなくなったからってさあ、 口減らしに子どもを働きになんか出すかね普通〜〜」 テイールの港。メガネを拭いてかけなおす男の影。 それは人込みを掻き分けながら転びながら近づいてくる。 「おーい!君たちはアル島の子どもたちだろ? 僕はマキガイン。島からの手紙は預かって事情は知っているよ。 仕事が見つかるまでしばらくは僕の家で寝泊りするといいよ〜〜。 さあこっちこっち〜〜〜僕についてきて〜〜 着いてこれないグズは迷子になって誘拐されて奴隷に売り飛ばされちゃうよ〜〜」 【その後は自由展開でOKです】
――よく今まで働いてくれたな……。貴様の役目はここで終わりだ 暗転中に謎の声が響いた。 >「まあまああああああっ!!」 倒れていたのはなんと裁判官のタケトシ市長であった! 「違うんじゃ、遊んでいるわけではない。 ワシはただただコケシ温泉で綺麗な姉ちゃんたちの話し相手を……」 「ウェスタンラリアート!!」 「ぐええええええええええ!!」 裁判官が倒れたのをいい事に裁判は崩壊、普通に夫婦喧嘩が始まった! 「おおっ、という事はワシは無罪放免でいいんじゃな!?」 と気色ばむ意地悪爺さん。タケトシ市長が息も絶え絶えに訴える。 「ユカリコヨヒシコ親子よ……コケシ温泉に戻るのだ…… そこに全ての真実が……ぐふっ」 「そうと決まればすぐに向かうぞ!」 真犯人を捕まえ自らの無罪を証明するためノリノリの意地悪爺さんの高級車に乗って一路コケシ温泉へ!
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実験室長 :2013/04/25(木) 23:22:09.52 0
複数同時進行……実にアリです! やってみたいネタがあるけど1スレも使わない超短編になりそう、という方 まず実験的にやってみて上手く行けばスレ立てしてレギュラー化したい、という方等 どなたでも自由に使って下さいね! スレの設定だけ思いついて自由に使って貰って構わないという方もどうぞ 気が向いたら誰かがそれを使って実験を始めるかもしれません 複数同時進行時は混乱しないように名前欄に【】で企画名を入れて戴けたら幸いです 今日はとりあえずエロマンガ島でなんちゃってソーテーの方はまた追って書きます
名前:エル 性別:女 年齢:13 職業:巫女見習い 「魔王様、御安心下さい、必ずやフルスコアを完成させ姉君の願いを……はっ」 がばっと布団から起き上がる見習い巫女。 「夢……か」 彼女の名はエル。海神に祈りを捧げ海の恵みを乞う巫女の見習いだ。 しかし年々魚は捕れなくなり、ついに出稼ぎに送り出される事になった。 >「だいじょうぶだって。テイールに着いたら仕事なんて山ほどあるってば。 心配ないって。俺がなんとかするからさ」 「そうだよ、うちの親戚のマキガインさんが面倒を見てくれるよう手配してあるんだって。 親が言うにはとってもいい人らしいから安心して」 ――テイールの港 港に着くなり、マキガインは一行を出迎えた。 >「おーい!君たちはアル島の子どもたちだろ? 僕はマキガイン。島からの手紙は預かって事情は知っているよ。 仕事が見つかるまでしばらくは僕の家で寝泊りするといいよ〜〜。 さあこっちこっち〜〜〜僕についてきて〜〜 着いてこれないグズは迷子になって誘拐されて奴隷に売り飛ばされちゃうよ〜〜」 なかなかにブラックユーモアが光っていらっしゃる。 そこまで言われれば必死に付いて行かざるをえない。 「おいおい、大丈夫かよ」「この街治安やべーんじゃないんか!?」などと言いつつ付いていく。 その時、大通りから悲鳴があがった。無魂獣の出現である! ド○クエで街から出て最初に出会う敵のような奴が暴れている! 「キャーーーーー!! お助けをー!」 「よーし、人助けをしてたっぷり報奨金を戴く…じゃなくて街の平和を守るぞー!」 駆け出すマキガイン。
>>24 >「よーし、人助けをしてたっぷり報奨金を戴く…じゃなくて街の平和を守るぞー!」
画面がもにゃもにゃとモザイクになってバトルモードへ突入する。
敵は複数の無魂獣。でもヘロヘロしていて弱い感じ。
「いくぞ!ヨルムンガンド!!」
ぷっしゃーと水飛沫と一緒に大きな蛇が現れた。
その巨大蛇はテイルアタックで一匹の無魂獣を潰す。
「すごいよ!マキガインさん!」
カナロアが喜んでいるとマキガインは「んぶあー!」とダブルピース。
なんかリアクションが変と重いながらもカナロアは喜んだ。
しかし、マキガインはスライムを踏んで滑ってメガネを飛ばしオロオロ。
「ざけんなごるああ!」
その時、マキガインを棍棒で叩きまくるのはほとんど全裸の女。ドラクエのマーニャのような姿の女。
そして無魂獣をけしかけたテロ女。その女はエルの手を掴むと無理矢理路地裏にひっぱってゆく。
「この娘、高く売れるわ。でもその前にたっぷりと味見をしちゃおうっと」
ほぼ全裸のテロ女の名前はロゼッタ。悪の商人ロゼッタ。レズのロゼッタ。
騒ぎを聞きつけ駆けつけた砲術師たちに電気鞭で電撃を流すと助けに来た戦車に乗り込み逃走。
「ま、まてー!エルを返せー!」
カナロアは戦車にしがみつく。すると戦車の中から長身の美形の男が現れた。
「ロゼッタさまには指一本触れさせん!」
レイピアを突いてくる。
「邪魔スンナ!この女男おおお!!」
真っ赤な顔で攻撃を避けるカナロア。バランスを崩し走る戦車から落ちそうになる。
「ほらほらほらほらあ!!」
美形男の連続突き。それにカナロアは避けるのが精一杯。
いっぽう戦車の中ではデブの男が運転しており、
その後ろのソファではロゼッタがエルを押さえつけ服を脱がそうとしている。
「まずそのボロ布全部脱いじゃいなさいな。あなたその格好はまるで犬の死体みたいよ。
っていうかどっから来たのよ?原始時代?どこの田舎者よ。
全部脱いだらこの服に着替えて綺麗な格好をしなさいな。そのあとはお楽しみが待っているんだから」
>>22 >「ユカリコヨヒシコ親子よ……コケシ温泉に戻るのだ……
そこに全ての真実が……ぐふっ」
タケトシ市長の残した謎の言葉に、たいそう満足したヨヒシコが額づけば
意地悪じいさんの呼び出した高級車が走ってくる。
>「そうと決まればすぐに向かうぞ!」
こけし温泉に着けば、タケルがうつ伏せになって転がっており
その身には桜の花びらが降り注いでいた。そう、その光景はまさに
――春の盛り。
散り始めた桜の花弁が風に運ばれ、タケルのそこここにへばりつくような春の盛り。
提灯が揺れる。女たちが踊りながらタケルの前を過ぎてゆく。
風が吹く。枝が鳴く。睦言のように優しい音をたてる。
そんな夢心地のタケルだったが、次の瞬間。
後頭部に激痛が走り悶絶。振り仰げばそこには女が立っていた。
着物の裾からは白い足が覗いている。女はその足で、下駄で、タケルの頭を蹴ったのだった。
「あんた、タケトシの息子だね。親父同様なんて女癖が悪いんだろうね。
いや、男ってもんは皆そんなものなのかい?花咲かの爺さんもとんだスケコマシだったからねえ」
そう言うのは黒髪の着物女。その女の白い肌はどこにもムラがなく、
睫毛は密集していて縁がとてもくっきりしており、
頭の形、鼻の反り方、その一つ一つを追うとそこにあるすべては完璧。
あまりにも整い過ぎていて、この世のものではない雰囲気さえ漂っている。
女はユカリコに気がつくと不気味に微笑んだ。
「おや、ずいぶんと可愛いぼうやだねえ。あんたには勿体無いくらいの可愛らしいぼうやだよ。
ねえ、あんた、ちょっとアタシにその子を抱かせてくれないかい?アタシはね、可愛い坊やに目がないんだよ」
他スレの設定や他コテのキャラの言動をパクって 劣化させるようなまねやめてくれないかな
>>27 ここはお前の感想書く場じゃねーから
チラシの裏か肥溜めでどうぞ
パクられた人間からすると本当に心底不快なのでやめてほしいです
こんな糞レス書く時間あるならさっさとペルソナ進めろよ屑が
>「この娘、高く売れるわ。でもその前にたっぷりと味見をしちゃおうっと」 ドラクエのマーニャのような女が現れてエルを路地裏に引きずり込んだ! 「助けてートロ!」 >「ま、まてー!エルを返せー!」 >「ロゼッタさまには指一本触れさせん!」 >「ほらほらほらほらあ!!」 太った男が運転する戦車に無理矢理連れ込まれ、美形男がトロを迎え撃つ。 人さらいの一味だろうか。 >「まずそのボロ布全部脱いじゃいなさいな。あなたその格好はまるで犬の死体みたいよ。 っていうかどっから来たのよ?原始時代?どこの田舎者よ。 全部脱いだらこの服に着替えて綺麗な格好をしなさいな。そのあとはお楽しみが待っているんだから」 「……分かった」 エルは堪忍して着ている服を脱ぐ……と見せかけて 「――ジェットストリーム!」 付き出した掌から消火栓のような激流が放たれ、ロゼッタの顔面に直撃した。 海神の巫女見習いであるエルは初級の水属性の巫術を習得しているのだ。 「きゃあっ!」 水圧に吹き飛ばされ尻もちをつくロゼッタ。 その隙にエルはトロの手を取って馬車から飛び降りる。 「トロ! 逃げよう!」 「キーッ! 憎たらしい小娘め! おいデブ、速く戦車を回れ右して! 追うのよ!!」 そんな事を言われても狭い路地で戦車は急には回れない。 道の脇に積んである箱とかにあたって散乱する。 「は、はいっ! あっ!」 「ゴルァアアアア! うちの売り物ひっくりかえしてんじゃねぇ!」 「すみましぇええええええん!」 「デブだからそうなるんだろうが! ピザばっかり食ってんじゃねえデブ!」 「戦車がデブなのであっておいどんがデブなのは関係ないでごわす!」 路地裏に怒号が虚しく木霊するのであった
コケシ温泉に着くと、タケルが倒れていた。 そこには、この世の物とは思えない程妖艶な女がいる。 「お前がやったのか……!?」 それには答えず、女はヨヒシコを抱きたいと言い出した。 >「おや、ずいぶんと可愛いぼうやだねえ。あんたには勿体無いくらいの可愛らしいぼうやだよ。 ねえ、あんた、ちょっとアタシにその子を抱かせてくれないかい?アタシはね、可愛い坊やに目がないんだよ」 「ヨヒシコに何かしやしないだろうな!?」 ゆかりこが警戒していると、女の後ろからひょこっと幼子が顔を出した。 その背中には「駅弁売りの息子」と張り紙がしてある。 「こらこら、出てきたら駄目じゃないか」 「あっ、駅弁売りの息子! やはり犯人はお前だったんだな!」 「バレてしまっては仕方がないね。そうさ……アタシはアタシを頂点とした可愛い坊やの王国を作るのさ! 邪魔する者には消えてもらう! そしてその子は貰う!」 子供を取り返しに来た人や乳幼児失踪事件を探りに来た人が片っ端から殺されていた、それが事件の真相だったのだ、多分! 「ヨヒシコは渡さん!!」 温泉編ラスボス戦が始まった!
>31 「どうした小僧!腰がひけているぞ!それにその腰の剣は飾り物か〜?」 色男の長い足がトロを蹴る。ドタ! 戦車の屋根に転がるトロ。気絶! ――ボクは誰だ? まるで暴れる生き物の背中から放り出されるように目が覚めた。 といってもここはどこなのか。船の中なのか。 (……ああ、これは『夢の中』だ。ボクはいまテイールで小悪党どもと戦っている真っ最中なんだ) トロは夢の中で目覚めていた。頭上から女の声が聞こえてくる。
「もう逃げられないのですか?やはりこのような小さな船では……」 この女の人は誰なのだろう。すると男の声がして 「私たちは命にかえてもこの子を守ろうと決めた。弱音は吐かない。最後までだ」 この二人の男女の声には聞き覚えがある。とても懐かしい声。 するとしばらくして、船底から鈍い響き。慌てた召使らしき男が駆け下りてくる。 「旦那様!早く!海の中から…海底から何かが上がってきます!」
「この子を甲板へ!」 言われるのかが早いか、抱き上げられる感覚。 漆黒の空。頬を打つ風。 「樽に入れて放り投げろ!」 「正気ですかあなた!?この嵐の」 「早くしろ!この船は呑まれる!!」
――空中に投げられ、海面に落ちる瞬間でトロは目覚めた。 >「トロ! 逃げよう!」 「うん!」エルに手をひかれ路地裏を逃げる。 でも自然と悲しくなって、目からは涙がこぼれていた。 トロはエルに見られないように手で拭う。
一方でロゼッタ一味の戦車。ロゼッタに罵られ、てんぱったデブは戦車をそのまま後進させていた。 「ほええええ!」 ひっくり返ってマヌケな格好になるロゼッタ。すると戦車のなかにもどってくる色男。 「ロゼッタさま!!だいじょうぶですか!!」 「ええい触るんじゃないよ気持ち悪い!はやくあのガキどもを追うんだよ」 ロゼッタは色男を跳ね除け、戦車の蓋をあけると、そこから上半身を乗り出す。 「あの小娘が首からぶら下げていた宝石。ありゃオーリキャルクだよ。 なんであんな小娘がそんなたいそうなものをもってたんだろうねえ? …ほわっ!!」 とつぜん戦車は急停車。なんと両側の建物の壁に挟まれて進めなくなってしまっていた。
「おーい、マキガインさーん!」 トロは手をふって近づいてゆく。 「あ、君たち。無事だったんだね…」 めがねをひろい残念そうなマキガイは静かに呟く。 「あのクソ女、ゆるさねえわ。歩く公共猥褻罪が。こんど会ったらアンカケぶっ掛けてやるわ」 今日からマキガインとトロたちの、振り返ればロンリネスな、 振り返らなくてもロンリネスな生活が始まる。
おつかれさま〜^^^
>>32 はまた後で書きまぁす
PCが止まったらそのあと忍法帳のレベルが落ちてましたw
決して頭がおかしくなっちゃたわけでわありまへん
>「ヨヒシコは渡さん!!」 「まあああ」 ヨヒシコは頬を赤らめてふにゃっとした笑顔。だが、次の瞬間、その顔が恐怖で歪む。 「まあああああああああああああああ!!」 ヨヒシコの足をひっぱる和風の絶世の美女。その名は土御門定子。なのでヨヒシコはユカリコの胸の授乳ブラにしがみつき抵抗。 どんどん伸びてゆくヨヒシコの足。でも安心してほしい。服が伸びているだけなのだから。 「こりゃとんだマザコンやろうだねえ!いいかげんその手をお放し!」 びょんびょんと伸びる足を、定子は細腕をぷるぷるさせながら引っ張り続けており かたやヨヒシコは、目をぎゅっと閉じたまま堪えていた、が、しかし 引き裂かれる授乳ブラ。四散する母乳パッド。噴出する母乳。 「まああああああああああ!!」 ヨヒシコは絶叫とともに定子のもとへ。 「この子何歳だい?断乳も満足に教え込んでないたあ、ダメな母親だねえ」 鬼のような鋭い眼光。定子に抱かれたヨヒシコは、恐怖のあまり縮こまり黙り込んだ。
41 :
名無しになりきれ :2013/05/01(水) 20:57:32.42 0
「じゃあこの子はもらってくよ」 そういい残すと定子は去っていく。まるでやり口は北○鮮だ。
こけし温泉「挑戦の間」 そこは誘拐された子供たちで溢れかえっていた。 そして集まってくるのは最終決戦をするために集まった人たち。 であったばかりの見ず知らずの者を従えて、ユカリコは堂々と進む。 野良犬たちに吠えられながら。こじきたちの熱視線を全身に浴びながら。 「ふん。子供を取り返しに乗り込んで来たっていうのかい?たいした度胸だねえ。 それならその度胸に免じて、ゲームで勝負をつけようじゃないか。 そうさね。ゲームはドッジボール。その代わりあんたたちが負けたら 死ぬまでこのこけし温泉で下働きをしてもらうからねぇ」 地面にラインが現れ、魑魅魍魎の観客たちが一斉に現れる。審判は骸骨。
「それじゃあ始めようじゃないか」 いつのまにか定子は動きやすい運動着を着ておりハチマキを巻いていた。 そのまわりには五体のシキガミ。対するユカリコチームは謎のマントの集団。 「わたしのボールが受け止められるかい?」 定子はボールにさらさらと文字を書いた。それには「奪重」と書いてある。 そして綺麗なフォームから投げ出されるボール。ふわっと山なりのボール。 それは幼児でも受け止められそうなゆっくりな速さ。 マントの大男がそれを片手で受け止める。するとなんということだろう。 飛んでいった!大男が。と同時に消える「奪重」の文字。 「だいじょうぶか!?」 「…なんでごあすか今のは?ボールを触ったとたん、体の踏ん張りがきかなくなっていたでごあす…」 ボールはポンポンとバウンドしながら再び定子の元へ。 「一人アウトだねえ。さあて、お次は何を摩擦を奪ってやろうかねえ」 定子は「奪摩擦」とボールに書き、またゆっくりとしたボールを投げた。
>43訂正です ×「一人アウトだねえ。さあて、お次は何を摩擦を奪ってやろうかねえ」 ○「一人アウトだねえ。さあて、お次は摩擦でも奪ってやろうかねえ」
それは定子の術「呪呪球」(のろのろだま)だった。 相手にボールを与えることでボールに書いてある文字のものを奪う術。 今、ボールには奪摩擦と書いてある。 なので次にボールを受け取った者からは摩擦力が奪われるのだ! だから全身つるんつるんになってボールも受け止めれないし 上手く立つこともできなくなってしまうことだろう。 「まああああああ!!ひきょうなのおおお!」叫ぶヨヒシコ。 ちなみに術はラインの外(結界外)では効果がなくなるのだ。
どんなスレの設定でもキャラの性格や言動でも 作った人はそれなりに頭をしぼって試行錯誤しながら作り上げていくんです 許可も得ず設定を流用したりキャラの名前をもじって揶揄するような形で使ったり キャラの外見、性格、口調を真似したりされるのはとても不快です どうか簡単に人のものを使ったりせずに自分の頭で考えたものを使うようにしてください
>>46 当事者ならトリップをつけていただけませんか?
ここはなりきり板なんですけど、それをわかっていますか?
当事者がトリップつけたらどんなことになるかわかっているでしょう 抗議できないのを見越して嫌がらせみたいなパクリ改変なんて悪どいと思いませんか
それではご自身は正しい抗議と思われていないのでしょうか? その程度の覚悟で、人の遊びの邪魔をしないでください。 なんども言いますがここはなりきり板です
はい単なる抗議です わたしはこんなことをしているあなたたちが不快です 止めるすべはありませんがこんなことを続けている限りあなたたちに不快感を持ち続けます あなたたちの悪趣味な楽しみは不快に思っている人間を踏みにじって成り立ってることを理解してください
自演マッチポンプだろこれ
>>50 ごめんなさい。
でも私がパクっているのは基本好きなキャラだからなのです。
ですがこれ以上不快感を持ち続けられてしまっても申し訳ありませんので
パクることはやめたいと思います。
獣士を召喚士にしたり
マキガインはキマカインとかにします。
ソーテーの名前も使いません。
名前変えればOKとでも? 根本的に認識がおかしい
それ以前に名無し同士で会話しても仕方なかろう
キャラの口調真似するのもできたら止めてほしいです切実に
五月蝿いなあ。もうめんどくさいし それくらいなら読まなきゃいいじゃん 口調マネって時代劇の女なら普通に使ってる口調だし あなたの狭いキャパシティだけがすべてじゃないの 巻貝さんじゃないのならだまっててください
だからできたらなんだよ 知るかって思うなら無視してやればいい
>スレの設定だけ思いついて自由に使って貰って構わないという方もどうぞ(
>>23 )
ジャンル:韓流時代劇。TRPGは韓国が起源
コンセプト:朝鮮の架空王朝、舜氏朝鮮の時代で繰り広げられる愛と憎しみの歴史スペクタクル!
決定リール:あり。決定リールも韓国が起源
レス順:自分優先の態度で
版権・越境:あり。史実の人物を出した場合は作中年代が確定
敵役参加:あり。倭寇は必ずやられること
その他:韓国語翻訳ツール(読み方ルビ付き)
http://hot-korea.com/tool/translation/ ■舞台■
中国は明の時代。
朝鮮では李朝の王である傾宗が高麗王族の血を引く叡祖の蜂起で討たれ、新たに舜朝へと改まる。
首府は開城(ケソン)に移され、五十年が経ち、叡祖の孫である舜景(スン・キョン)の治世。
三代が続くうちに王権は次第に縮小し、代わって両班(ヤンバン)と呼ばれる貴族達が権勢を振るうようになっていた。
両班の中で最大の派閥は王母の弟、柳仁弼(ユ・インビル)を中心とする一派。
彼らは私有する土地と兵を背景に政争を勝利し、国政を牛耳り、王の世継ぎ争いにまで誰憚ることなく口を出す。
実権を臣下に握られ、腐敗してゆく国を憂う舜景は、王権の回復を願い、密かに直属の組織を作った。
諸国を内偵して官吏の不正を暴き、時に暗殺をも厭わぬ暗行御史である!
王族、両班、文官武官、女官、明、倭寇、商人に無頼の徒、そして無数の民……。
様々な思惑が入り乱れる壮大な史劇が、今ここに始まる!
■人物設定欄■
姓名:
性別:
年齢:
風貌:
身分:
特技:
ビッグダディTRPG おおまかなあらすじ。 岩手県に住む林下清志さん(通称、ビッグダディ)は、 整骨院などで生計を立て8人の子供たち(4男4女)と暮らしていた。 その後、彼が知人の借金の連帯保証人となったことで、妻・佳美(よしみ)は、離婚して家を出る。 大勢いる子供の教育費が賄えなくなり苦慮していたところ、鹿児島県の奄美大島大和村では通学費補助が付き、 生活費も格段に安く上がるとの情報を得て家族全員で移住することとなった。 林下家の奄美大島での暮らしぶりの放送を見ていた元妻・佳美が、離婚後に産んだ三つ子を連れて、 奄美にやってきて、子供が新たに出来たことにより最終的に復縁することとなった。 彼は家族の生活費を稼ぐため、愛知県豊田市の接骨院へ出稼ぎに出た。 しかし、その後、元妻とは再び離婚し、18歳年下で5人の子持ちの女性、美奈子と再婚。 奄美大島に高校生の子供2人(次男、三男)を残して、豊田市でふたつの家族がひとつになった。 このころ、シリーズがスッカリ人気となっていた「ビッグダディ」だったが、 豊田市の寮が狭いなどの理由により奄美大島に戻ろうとしたが、 結局子供2人(長女、長男)を寮に残し、勤務していた接骨院を辞めて香川県の小豆島に移住した。 小豆島で古い一軒家を破格値で購入し、借り店舗にて接骨院を開業した。 やがて現妻・美奈子との間に子供が誕生したが、再び、離婚の危機。 とうとう別居することとなったのだった。 年齢は、2012年。 父:清志(きよし 47歳) 現妻:美奈子(みなこ 28歳) 元妻:佳美(よしみ) 元妻・佳美(よしみ)との間の子。 長女:愛美(まなみ 20歳 歯科医院受付・愛知県豊田) 長男:新志(あらし 19歳 よこやま整骨院で見習い・愛知県豊田) 次男:熱志(あつし 横浜で会社員) 三男:武志(むさし 奄美) 次女:柔美(よしみ 中2) 四男:源志(げんし 中3) 三女:詩美(うたみ 中1) 四女:都美(ととみ 小6) 佳美(よしみ)の連れ子。(豊田) 三つ子:空美(ひろみ 通称そら)、海美(ひろみ 通称うみ)、心美(ひろみ 通称ここ) 両親の子:紬美(つむみ) 現妻・美奈子(みなこ)の連れ子。 星音(しおん 小6) 乃愛琉(のえる 小4) 姫麗(きらら 小1) 來夢(らいむ 5歳) 妃翠(ひすい 4歳) 両親の子:蓮々(れんと)
なんとか危機を脱したエル達。 こうして、マキガインと出稼ぎの子供達との振り返らなくてもロンリネスな共同生活が始まった! 子ども達には大部屋が一つ与えられた。まるで林間学校である。 「はい、君達の部屋はここだよ〜。雑魚寝が嫌な人はさっさと仕事見つけて出て行ってねー」 そこでマキガインの目がエルのペンダントに止まる。 「随分高価そうな宝石だなあ。質に入れればしばらく困らないんじゃないかい?」 「それはなりません。海神の巫女のうちの家系に代々伝わるものなんです。 邪な心を持つ者の手に渡ると大変な事になるとか……。 ところで先程の一味は何なのですか?」 「ああ、時々いるもんだよああいう輩は。 それにしてもいつもより随分派手な奴らだったけどなあ」 「そういうものなのですか」 次の日、エルはトロと共に職業安定所「ルイージの酒場」に赴く。 チョビ髭のオヤジにどんな仕事があるか聞いてみると、こんなものがあるらしい。 ・交通量調査 ・ゴミ拾い ・弁当屋の弁当に梅干しを乗せる仕事 ・「住宅展示場こちら」の看板を持って立っているだけの人 こんな感じのがエトセトラエトセトラ 「もっと勇者の仲間とか治安維持隊員とか探偵見習とかそれっぽいのはないんですか?」 「HAHAHA! これはド○クエじゃないんだぞ! 出稼ぎに来たポッと出の子どもにそんな仕事があるわけないだろう!」 「それもそうですね……。トロ、どうする?」 【>59-60 広辞苑にまとめておきますね】
>「まああああああ!!ひきょうなのおおお!」 「とうすればいいんだ……!」 定子の投げたボールをなんとか避けるゆかりこ。 外野の黒マントが取ろうとするものの、つるっと滑って再び定子の手の中へ。 「そろそろ本気で行こうかね」 再再度投げられるボール、それには「奪HP」と書かれていた。 絶体絶命だ! 「何か無いか何か無いか……そうだ!」 ゆかりこが気合いを入れると、胸部から乳白色の激流が放たれボールに直撃した! そう、母乳ビームである! 水圧によってボールに書かれた文字が消える。 「ふ、ふんっ。少しはやるようじゃないか!」 「よーしヨヒシコ、外野に入れ! 一気に決めるぞ!」 ボールは今や母乳まみれ。 無類の母乳好きであるヨヒシコは母乳塗れになったボールをキャッチする事においては 類稀なる能力を発揮するはずである。
「まあああああ」 ボールを受け止めてヨヒシコは舐めた。 なめ回した。そして、土御門に投げる。 「おやまあ、そんなヘロヘロしたタマタマじゃあ、 簡単にキャッチできちまうよ」 ぺちゃ 「きゃああ、なんだいこのぬるぬるは!!」 「まあああああ」 それは、ヨヒシコの唾液だった。 土御門は手を滑らせてボールを落としてしまう。 「く…、こんなの認められるもんかい。 あたしはね、かわいいぼうやたちの楽園をつくるまでは 負けられないのさ!!」 だが術を使えない土御門チームは弱かった。 なので、あっという間に負けてしまう。 「あぁ……」 脱力して女座りの土御門。 「まあああああ」 勝利に喜んだヨヒシコはユカリコの胸に飛び込み乳をのむ。 そこへ現れたのはヨヒシコの父。つまりはユカリコの旦那様。 「土御門定子。幼児誘拐の罪で逮捕する!」 そう、ヨヒシコの父はとても優秀な刑事なのだ。 ヨヒシコはユカリコから離れてシャキンと直立。 父親の前では真面目なヨヒシコ。よいこのヨヒシコ。 赤ちゃんのように甘えたりしない。 なぜならユカリコの乳は父のものなのだから。 「今日も悪い人を逮捕したよ〜。ユカリコ〜、 ご褒美のおっぱいをくれよ〜」 父はユカリコの乳に顔を埋める。 それをヨヒシコは指をくわえてみてるだけ。 めでたしめでたし。
トロは梅干しの仕事を選んだ。 でも内容はわからないので、書けない。 「すいません。ぼく、島から来たから、梅干しの埋めかたわかりません。 教えてください。よろしくお願いします」 トロは先輩らしき人にお辞儀をした。 外は快晴。気持ちよい風が、窓から吹き込んでくる。
結論:ゆかりこの乳は乳だけに(ヨヒシコの)父のものだった! 誰が上手い事言えと。 何はともあれ エロマンガ島の日常 第1話 「タケトシシティー市長の密室実験簿。 謎を解け!ユカリコ&ヨヒシコ親子とタケルちゃん。 夢列車で行く東北密室温泉殺人事件と桜吹雪の夢。 君のいた季節、忘れないよ。僕の夢だもんスペシャル」完!! 第2話開始時期は未定です
>「すいません。ぼく、島から来たから、梅干しの埋めかたわかりません。 教えてください。よろしくお願いします」 「よろしくお願いします」 トロとエルは弁当に梅干しを乗せる仕事をすることになった。 ベルトコンベアーに乗って流れて来る弁当に梅干しを乗せるだけの簡単なお仕事である。 ……と思いきや。 この道30年のベテランがスパルタ指導を行う。 「梅干し乗せ……それは究極のエクストリームスポーツだ! 足は肩幅、右脚を半歩後ろに構え流れるような動作で……云々かんぬん そこ! 脇が甘い!」 こうしてひたすら梅干しを乗せる日々が過ぎていく―― チャラララッラッラッラー チャラララッラッラッラー チャラララッラッラッラー ――数か月の時が経過したある日の事だった。店主が従業員たちを呼び出す。 「ごめんねー、閉店する事になったんだよ。少しだけど持って行っておくれ」 少しばかりの退職金を渡され、二人は再び無職となった。 という訳で再びのルイージの酒場。 入店した二人を見るなり、チョビ髭のオヤジが言った。 「おおっ、この前街の人レベルだったのが駆け出し冒険者レベルになっているじゃないか! 梅干し乗せでレベルが上がるとは……お前達はまさかいわゆる主人公ポジションなのか? いや、なんでもない。お前達のレベルならこんな仕事があるぞ」 ・治安維持隊アルバイト隊員 ・探偵事務所事務員兼探偵見習 ・ビースト園飼育係
数ヶ月間続けた梅干しの仕事はなくなった。 前向きに考えたら次の仕事を探せということ、 後ろ向きに考えたら、エルの中の人があきらめたということに なるのかもしれない。 ということでトロたちはレベルが上がっているという ことになり、次の仕事をさがすことになった。 選んだ仕事はビースト園の飼育係 これなら巫女のエルにもできるはず。 そしてトロたちは一生懸命に働いた。 そんなある日 夜中に園の獣たちが 一斉に吠え出すという怪事件が起こった。 とある飼育員の目撃談では 何かの影を見たという。 「もしかしたら、お化けかもしれない。 となると、巫女のエルの力でなんとかできるかも」 ということで、舞台は真夜中のビースト園。 トロはエルを見つめた。 エルはどんな様子なのだろう。 ちなみにトロはお化けが大の苦手。 でも、島の巫女は島の奥に眠る神を鎮めるために踊るという。 だからお化けなんてへっちゃらなはずなのだが。 「エルはお化けが怖くないの?」 トロを月明かりが照らしだす。 ちょうど同じころ、満月に照らされたトロたちの住んでいた島では 地震が起きていた。
>「エルはお化けが怖くないの?」 「そうだね、お化けによるかな。 お化けにもいいお化けと悪いお化けがいるんだよ。 人間だっていい人がいれば悪い人もいるのと一緒」 その時、ほんの少し地面が揺れたような気がした。 震源地が出身地の島であったことは後に知る事である。 「地震かな……?」 響き渡る獣の声。園の獣たちが一斉に吠え出したのであった。 神々しい竜の幻影が浮かび上がる。 巫女の修行の一貫として学んだ伝説を思い出し、跪くエル。 「あなた様は……”すべて持つ竜の王”」 エルが知る伝説とはこのようなものだ。 動物は、すべて七柱の”動物の王”のいずれか、または複数の血を引いている。 動物の王とは、いわば動物の始祖と言える存在なのである。 動物の王の名前は次のように伝えられている 虫などの小さい動物たちの王であり、蜘蛛の姿の“小さき蟲の王”アラクネ 空を飛ぶ動物たちの王であり、鷲の姿の空飛ぶ鳥の王”シームルグ 水に棲む動物たちの王であり、鳥のように巨大な魚の姿の”水泳ぐ魚の王”リヴァイアサン 肉を喰らう動物たちの王であり、狼の姿の”牙持つ獣の王”フェンリル 草を食む動物たちの王であり、長い首を持つ牛の姿の”蹄持つ獣の王”カトブレパス 陸に棲む鱗を持つ動物たちの王であり、巨大な蛇の姿の”鱗持つ蛇の王”ヨルムンガント そして、竜たちの長である”すべて持つ竜の王”ファーヴニル ―― アリアンロッドRPGルールブック 第四章より 『ご名答。そなたらは”リヴァイアサン”に仕える巫女とその護り手だな? あやつは今我々の理の外にある魔獣の攻撃を受け窮地に陥っている』 「外来種が在来種を駆逐するような物ですね分かります」 ファーヴニルはガシャポンのカプセルのようなものを二人に渡した。 『それはマスターボールという超すごいアイテムだ。 投げつけるだけでそのビーストをゲットできるぞ! では世界の行く末をよろしく! 手始めにリヴァイアサンの救出といこうか!』 ファーヴニルはそれだけ言って無責任に消えた。 気のせいと思いたいところだが困った事に エルとトロの手の中には、マスターボールなるものが残されている。 「どう見てもガシャポンだけど……折角だから試してみようか。 どうせゲットするなら出来るだけ強そうなのがいいね」
エルはお化けにも良いのと悪いのがいると道徳的に答えた。 「でも、お化けはこわいよ。だって、死んでるんだもの」 子どもらしく答えるトロ。 魂が不滅なら、怖いことなんてないはずなのにトロはお化けが怖い。 ふるふるとみを震わせてエルについてゆく。 その時、だった。大地が揺れている。 トロは嫌な予感がした。 すると目の前に現れたのは竜の王。 だからトロは驚いて腰を抜かしてしまう。 「あわわわわ」 そんなトロはを尻目にエルは平気な様子で竜の王と会話をしている。 トロはエルのことを感心すると同時に怖くなる。 エルはまるでこの世の人ではなくて神の使いか何かにみえてしまう。 別の世界に住むもの。 竜の王はマスターボールという玉を二人に与えて消える。 これでビーストを仲間にできるのだという。 次の日。 トロたちの住んでいた島が地震の津波で被害を受けたと連絡された。 された。さすがのガインさんも心配している。 だからトロたちは三人で見に行くことになった。 船に食料とかを乗せてゆく。 その船を追いかけるのは潜水艦。 あの例の一味がエルの宝石を狙っているのだ。
ボールをもらったトロにはめぼしがついていた。 どうせ、ビーストを仲間にするならあいつだ。 島で一緒に住んでいたあいつ。赤ちゃんのころから一緒だったあいつ。 無事でいてくれたらあいつをゲットしたい。 トロは誓った。 そして島につくと、やっぱりめちゃくちゃだった。 島の大人たちは無事なのだろうか。 トロはエルを涙目でみる。 魚がとれなくなくなったのはきっとリヴァイアサンを襲っている魔物のせいだ。 それに追い討ちをかけるかのように津波。 トロは赤ん坊のころを思い出す。あのとき、 トロたちの船を襲った謎の巨大生物。 多分、そいつだ。 「師匠たちは無事かな?巫女様たちも。 どこかに避難しててくれていたらいいんだけど」 震える声のトロ。 するとガインさんが絶叫しながら小道を登ってゆく。 彼は島のことを嫌いっていたけど、本当は好きだったのだろう。 その時、海から潜水艦が現れた。 例の一味だった。 「こら、こむすめ!!宝石をお渡し!!」 潜水艦は戦車に変形して陸にあがってくる。 そのうしろ。巨大生物とモンスターのむれ。 「うわ、うしろ、うしろー!」 「はん、その手にはのらないよ坊や」 どん!! 「あ〜れ〜!!」 突き上げられて森に飛んでゆく戦車。 「あいつ、あいつだ!!あいつが」 トロは珍しく怒っていた。あいつが赤ちゃんのころのトロを襲ったやつ、 島の魚を食べて漁ができないようにしているやつだ。たぶん。 「あああああ!!」 トロを叫びをあげてにらんでいた。でもからだは震えて動かない。 怒りはあるけど、怖いのだ。 果たしてエルの行動は?
TRPG界に燦然と輝く端役の星。 ヤチホちゃんはある日考えた。 ラスボスになる。ラスボスになって 目立つと。目立っていい気持ちになると。 あの声溜めに語り継がれるファンタ○アとか みたく人々の心に下着の染みのように染み付き じゅんとさせるのだ。させ続けるのだ。(リリ○風) だが、そのためにはすごい家庭教師がいる。 だからヤチホちゃんは召喚の呪文をさけんだ。 魔法ステッキを振りかざして、名古屋の空にむかって。 「出でよショコさま!!かふんしょーちちのしたあせのもだらけ!! こそだてごくろさま!!」 シーン… いくら呼んでも泣き叫んでも 白い目でみられるだけで何もあらわれなかった。 それならばとヤチホちゃんは。 「出でよシヨツカクたん!!こうむいむふじょしあらさーい!!」 一人で部屋の中で叫んでみる。 すると暗い窓の外に人影がうつる。 一瞬ギョッとしたヤチホちゃん。でもすぐに窓を開けてみる。 とするとそこには人がいた。それは顔を間近に寄せてくる。 相手の目と目がくっついて見えるほどに。 (近っ!!)とヤチホちゃんは思って少しずつ後退り。 「お前は誰さ!!もしもシヨツカクたんなら このヤチホさまをラスボスに育て上げなさい!!」 がるるとハヲムキダシにするヤチホちゃんであった。
島に駆けつけた二人。 滅茶苦茶に荒らされていて、誰の姿も見当たらない。 ただ、死体が転がっている様子も無い事には希望が持てる。 >「師匠たちは無事かな?巫女様たちも。 どこかに避難しててくれていたらいいんだけど」 「姿が見えないってことは大丈夫、きっとどこかに避難してるよ。 そうでなけりゃ敵に監禁されているか……」 >「こら、こむすめ!!宝石をお渡し!!」 >「うわ、うしろ、うしろー!」 >「はん、その手にはのらないよ坊や」 >「あ〜れ〜!!」 という一連のコントを経て、昔トロ達を襲ったという巨大な魔物が現れた。 >「あいつ、あいつだ!!あいつが」 無魂獣《モンスター》――”獣”と名が付いているが獣ではない。 動物の王の血を引かぬ、世界の理の外にある存在。 そして、動物王の血脈を色濃く受け継ぐ有魂獣《ビースト》とは不倶戴天の敵対関係にある存在だ。 エルはそいつを見た。そして巫女の修行で学んだモンスター図鑑の記憶と照らし合わせる。 「あのモンスターは……”ブラックバス”!!」 エルはモンスター判定に成功した! ブラックバス――海神リヴァイアサンの眷属たる海生生物を食い荒らす恐ろしき外来生物(世界の理の外から来た生物という意味で)。 こいつに住み着かれた海域では魚が取れなくなり、漁村等は衰退していくしかないという―― その姿はげに恐ろしきもので、全面が漆黒に塗られた巨大な直方体というこの世の物とは思えぬ姿をしているのだった。 魚を長年食べ続けて大きく成長したこのモンスター、ついに親玉リヴァイアサンとの決戦に挑む事にしたのである。 「しずまれい! しずまれい! 赤信号じゃああああ!」 エルの必死の祈祷もむなしく、二人は――大きく口を開けたブラックバスに食べられたのだった。 「ん……?」 気が付くと……二人は不思議な乗り物の中に座っていた。 「おお、気が付いただべさ」 「二人とも元気だったか?」 何故か周囲には島の人々もいる。 彼らもまたブラックバスに食べられていたのだった。 だが食べても海洋生物以外は消化できないので、この空間に永遠に滞留し続けているのである。 窓の外を見ていると、ブラックバスが島の聖地であり海神の住居とされる“海神の神殿”に向かっているのが分かる。 「海神様が危ない……! 武器を持ってる者は壁面に斬りかかって! 力を合わせて脱出しよう!」
>「お前は誰さ!!もしもシヨツカクたんなら このヤチホさまをラスボスに育て上げなさい!!」 「いかにも我はシヨツカクたんなり。ラスボスになりたいと……? 我の管轄は消去法主人公だ。 ははーん、さては召喚するかみを間違えたな?それはショコさまに頼むといい。 何、シカトされた?」 リヴァイアサンが”サン”まで含めて名前なのと同じように、”たん”まで含めて名前なのでお間違え無きよう。 ちなみにその姿は、落書きのような人型に適当に目と口が書いてあって 額の部分に「かみ」と書いてあるだけという超やる気のない作画だった。 かみは神かもしれないし紙かもしれない。 何やら思案する様子のシヨツカクたん。 ラスボスがラスボスたりえるには敵対する主人公が必要だ。 ならば主人公側との絡みでラスボスに仕立て上げるという方式で彼女をラスボスに導けるかもしれない。 「よかろう、この我がそなたをラスボスにしてしんぜよう! では早速修行をはじめるぞ! ぽぽぽぽーん!」 辺りに煙幕が立ち込め、晴れた時そこは……全体的にやる気のない作画の何とも気の抜けた世界だった。 さりげなくパックンフラワーの花畑が咲き乱れ、やる気の無さそうな人面犬とかが歩いている。 「シヨツカクガラパゴスワールドへようこそ! 大陸では出来ない事も出来てしまう夢の隔離島だ! ラスボスになるには……そうだな、初期から主人公達と因縁など作っておくと良いかな。 おっ、丁度妖精が勇者を召喚するところじゃないか。 いいか? お前は悲壮な決意のもとに世界を滅ぼす事を誓う“終端の王”だ。 そして召喚される勇者は世界を救うという大いなる使命を背負う”異世界の騎士”だ。 回り出す運命の歯車、決して相容れぬ者同志の宿命の物語……どうだ、いいだろう?」 もちろんラスボスが世界を滅ぼす理由は趣味で、とかなんとなく、とか 滅ぼそうと思ってなかったけど結果的に……という場合もあるし そもそもラスボスが必ずしも世界を滅ぼそうとしているとも限らないのだが 今回はラスボス入門編という事で、使い古された陳腐なテンプレパターン、もとい王道パターンを教材にする事とする。 さて、シヨツカクたんが指さした先では、フンドシマッチョの集団が輪になってマイムマイムを踊っている。 フンドシマッチョ達の背中には「妖精」という力強い筆文字が刻みこまれているのだった。 ちゅどーん! フンドシマッチョ達の輪の中心に聳え立つ光の柱。 「押忍! 勇者様のお出ましだ!」 「イェア!」 おっさんニート(45歳メタボ)が現れた! 彼は今まで寝転がって煎餅をかじりながらテレビを見ていたポーズで狼狽えている。 「ファッ!? な、なんだ君達は! ふざけてるのか!」 現実世界においてどうしようもない人に限って異世界に召喚され世界を救う勇者となる――まさしく王道である! 「よっし! ではあの勇者に凸して衝撃的な出会いのシーンを演出だ! 最初が肝心だ、気合い入れて行こう!」
トロは思った。これは、この四角い怪物は思ってたんとちゃうと。 赤ちゃんのころのトロを襲い、地震を起こしたのとは違うと思う。 地震を起こせるほどのものならもっと大きいはずなのだ。 そうトロは思い直し叫んだことを恥ずかしく思う。 (でも、こいつは手下かもしれない) 頭がいたくなるのを押さえながらトロは大きく息を吸い込んだ。 エルを守るためにケンをぬく。 だがそのとき、大きな口を開けて二人を飲み込むブラックバス。 気がついたらトロは変な空間にいた。 村の人たちもいる。 でもそこがブラックバスの体内と気づくのには時間はかからない。 禍々しい感じ。窓から覗けば海神の神殿が見える。 この怪物は海神を食べるきなのだろう。 「よかった!!みんな生きていたんだね!!」 と言ってエルを見る。果たしてエルはどんな顔をしているのだろう。 >「海神様が危ない……! 武器を持っ に斬りかかって! 力を合わせて脱出 エルは心を揺るがすこともなく指示をしていた。 神の使いのエルには死に対する恐れはないのだろうか。 「やああ!!」 トロは壁をきりつける。壁の肉にケンが突き刺さる。 でも次の瞬間、体内が揺れる。 ブラックバスが痛みで暴れるのだ。 「う、だめだよ。これじゃ穴なんて開けられないよ…」 壁からはチみたいのが吹き出してトロはびしょ濡れ。 へこたれていると、窓の外に、ファーが飛んでいる。 ファーとはトロのペット。小さい鳥みたいないきもの。 ぜんぜんなつかないプライドの高いいきもの。 先祖はこの世界を支配していた神獣とか言うしゃべる小鳥だ。
ぽぽぽーん、と、ショッカクタンは ヤチホをラスボスにしてくれるという。 だからヤチホちゃんは笑顔。 ここでちょちょいとラスボスの練習をして あとは他のスレにいってラスボスになる。 そのあとは面白いように語り継がれる。 人々のこころにのこる。 他の避難所でも、はくがついてるから コテが敬意をひょうし続ける。 たとえばこんなふうに言われるのだ。 あなたさまはラスボスのヤチホさま このスレでも素晴らしいレスをお願いいたします。 へへー。土下座するコテたち。 と、どこのPLにもあたまを下げられ続けるコテになりたい。 ラスボスのヤチホさまと語り継がれたい。 だからヤチホちゃんは、変な花とか犬とかを認めない。 とてもリアルな、人の心の内面を描いたラスボスに なりたいと思っている。 なので渡された参考書なんてパラパラと読んだみただけ。 「まあでも、ものには順番があるから、終端の王にはなるし あのほとんど変態みたいな勇者と因縁を作ってはみよーっと・・・」 とは言っても何も思い浮かばない。 もとから勇者と魔王の話なら因縁なんて、 姫をさらうとか?世界を闇に変えるとか? それならドラクエという完成されたものやったら いいじゃんみたいな感じ。 まー、参考書には全否定とか書いてあって この場合は勇者に働けってことかなあ。 でも、なんかいきなりつまづいてしまった感じ。 ニートとか個人的に魅力的じゃないし。 何が出てきても手抜きしないで対応するから 四天王なのかもだけど・・・。 「あなたってこのヤチホさま・・・じゃなくって、 この終端の王と張り合えるようなものなの? 今まで親のすねかじって生きてきたグズみたいのが 勇者だなんてチャンチャラおかしい。わたしはあなたのことを 勇者だなんて認めないから。年収三千万円以上じゃなきゃ勇者として認めません」
>「やああ!!」 >「う、だめだよ。これじゃ穴なんて開けられないよ…」 「どうしよう、何かいい方法は無いかな……」 エルは窓の外を見ながら思案する。 エルが恐怖のあまり固まる事なくてきぱき行動する(その行動が正解かどうかはともかく)のは 巫女見習いであるというのもあるだろうし、話を進行するための大人の事情というのもあるのかもしれない。 エルは、トロのペットのファーが飛んでいる事に気付いた。 「ファー、無事だったんだね! 急いで海神様に逃げるように伝えて!」 「てめーの言う事なんぞ聞かん!」 「……ですよねー!」 鳥の王“シームルグ”の眷属であるファー。決して懐かぬしゃべる小鳥。 ポ○モンのような技もいくつか持っていそうだが、このままでは協力を仰ぐ事は不可能だろう。 そう、このままでは。 「トロ、ファーヴニル様から貰ったあれを試してみたら!」
「ああ、そうそう。まず最初に大事な事を言っておくよ。 これからこの世界で君をラスボスに仕立て上げてみせるが ある世界で上手く行った方法が他の世界でも通用するとは限らない。 他の世界に行ってもラスボスが出来るかは君次第、ってところだね。 それと永遠に語り継がれようとかあらゆるPLから尊敬を集めようとかいう野望は持たないほうがいいよ。 この世界は今目の前にいる仲間と今を楽しんだ者が勝ちなのさ」 嬉しそうなヤチホちゃんに向かって意味深な事を語るシヨツカクたん。 「リアル路線を御所望なら猶更呼ぶかみを間違えてる気がするが…… まあいいや、ここまで来たんだやってやろうじゃないか」 >「まあでも、ものには順番があるから、終端の王にはなるし あのほとんど変態みたいな勇者と因縁を作ってはみよーっと・・・」 「いいぞ、その意気だ!」 >「あなたってこのヤチホさま・・・じゃなくって、 この終端の王と張り合えるようなものなの? 今まで親のすねかじって生きてきたグズみたいのが 勇者だなんてチャンチャラおかしい。わたしはあなたのことを 勇者だなんて認めないから。年収三千万円以上じゃなきゃ勇者として認めません」 「なんという堂々たる宣戦布告……。流石は終端の王」 この世の中に、ハゲにハゲと言ったりデブにデブと言ったりニートにニートと言う事程残酷な事はない。 効果はてきめんで、勇者(おっさんニート)は顔真っ赤にしてなにやら叫んでいる。 「drftgyふじこー! おのれ小娘がぁッ! 首洗って待っとけ、道中で高額モンスターを倒しまくって 年収三千万円以上の勇者になった上で魔王城にカチこんでブチころしてやるわーーーーーーーー!!」 顔真っ赤な割には妙に説明的な台詞だが気にしてはいけない。 で、ここで場面は切り替わる。 「勇者よ、よくぞ決意してくれました! 終端の王を倒し世界に平和を取り戻すのです! これは私からのささやかな贈り物です」 妖精の女王(どう見ても女装したフンドシマッチョ)の命を受け、いよいよ旅立ちである。 妖精の女王が投げキッスを放つと……おっさんニートはJRPGの主人公にありがちなイケメンになった! 世界が変わるとどさくさにまぎれて姿が変わるというのはよくある話である。 そしてほっそい美男美女が大剣を振り回したり魔法をぶっ放してごっついマッチョな敵を撃破していくのは基本である。 「さて、ここからが大変だ。 ラスボスたるもの、勇者が無事魔王城に到着できるようにストーカー……もとい影から見守り 刺客を送りこんだり、事件を起こしたり、ダンジョンに誘導したり 行き詰っているようならヒントを与えたりしなければならないのだ。 何で敵を手助けするのかって? 勇者が途中でのたれ死んでしまってはラスボスになれないからな。では行こうか」 こうして勇者を尾行する旅が始まった。 ……と思えば勇者はいきなりお馴染みしずく型の最弱モンスターを前にして腰を抜かしている! 「はひぃいいいい! お助けをおおおおお!」
ピンチなのに、トロはなぜかエルの様子ばかり気にしてしまう。 エルの冷静な行動はまるっきり危機感というものがないようで まるで駒のような感じ。感情を押し殺しているというよりない感じ。 きっとそれは、神に選ばれたものの自覚が、 恐怖というものから遠ざけているのかもしれない。 選ばれし者だから、死なないと思っているのかもしれない。 でもそれはある意味、己の命を軽視している。 そしてエルはボールを投げてみろと言う。 理にかなったある意味、男らしい言動。 でも、怪物の中からでは無理とトロは思う。 ボールの原理もわからない。 「ムリだよ!!できっこないよ」 もう仕方ないからトロは泣きながら外をみているだけ。 そして、そうこうするうちにブラックバスは神の神殿に到着。 このままブラックバスとリヴァイアサンが戦ったら どうなってしまうのだろう。 「ねえ、エル。リヴァイアサンって優しいの? もしも戦いになっちゃったら、ぼくたちが邪魔に なってうまく戦えないかもしれないね…」 トロは体育座りでいじけたようす。 でもリヴァイアサンがどうにかしてくれるかもしれない という他力本願的な、ご都合主義的なことを 期待している感じもした。 とにもかくにもトロは弱すぎるのだ。 知恵もないし、勇気もない。 その時だった。見かねた村人がトロに言う。 「諦めるんじゃねえトロ!!エルを見習え!! 巫女の重圧に耐えながら、怖いのを我慢して、 あれやこれや知恵を絞ってくれてるんだぞ!!」 「…うるさい!!エルと僕を比べるな!! エルは神様に選ばれた人間だから死ぬのも怖くないんだよ!! でも、僕はただの孤児なんだ。幸せなやつらと一緒にするなあ!!」 トロは怒りに震えていた
シヨカツタンの意味深な話にヤチホちゃんは隠れて舌を出していた。 (ぺっ、楽しむために信者をつくるんじゃないの) で、そうこうして、勇者はイケメンになり スライムに襲われ腰を抜かしていた。 (あらまあ、でもあんなものから殺されるやつなんて、 この世にいるわけないよね〜) ヤチホちゃんはそう思いながらブログの更新。 題名は、ラスボスになりました。 もう丸っきり勇者に興味はない。 勝手に育ってくださいなと、少しずつ後退り。 だって、中の人がおっさんニートじゃ テンションなんて上がるわけがないのだ。 すると勇者の仲間が、恐ろしいなにかがくる。 と、うわごとで呟いた。 その時だった。 「そうだ、ヤチホ。それでよい」 気がつくと噴水の水の上に人がいた。 何がよいのかわからないヤチホちゃん。 「ふあああははは!!」 人影は突然笑いながらシヨカクタンの頭になにかを繋げる。 電流を流す。 「久しぶりですね、私の名前はミウラザーマ」 「久しぶりって、あんたなんて知らないわよ!! 大正のGMだなんて知るわけないじゃん。名を名乗りなさい!!」 びがびが!! シヨカクタンは電流を流されたまま。 煙を出している。 「書き直してくださいなと、書き直してくださいなと、」 「何をよっ!!?」 ヤチホちゃんは震えている。のびのびできなくなりそうだからだ。 「ミウラザーマがくる〜ミウラザーマがくる〜」 勇者の仲間はうわごとで何度も繰り返していた。 なんとミウラザーマの出現を予言したのだ。 すでに目の前にいるというのにだ。 「私のラスボス論、聞きたいですか?」 呼ばれないのに来たミウラザーマ。 ヤチホの成長を邪魔しにきたミウラザーマ。 そして、劇画風に空一面に描かれるミウラサーマのかお。 抱き合ってるヤチホとシヨカクタン。空気になる勇者。
>「ムリだよ!!できっこないよ」 エルは一瞬、ならば自分がボールを投げてみようかと思う。 しかしあれはトロのペットなのだからトロがゲットした方がいいだろう。 >「ねえ、エル。リヴァイアサンって優しいの? もしも戦いになっちゃったら、ぼくたちが邪魔に なってうまく戦えないかもしれないね…」 「そうだよ。海の恵みを与えてくれるお方。 でも優しいというのとはもう別の次元にいるスケールの大きい存在と言った方がいいかな?神様だからね……」 トロの様子を見ながらエルは思う。 おそらくトロの方がこの状況に対する普通の反応なのだろう。 自分の方が普通ではない。 それは、巫女としてのレベルが上がりつつある証拠なのかもしれない。 だけどそれは本当にいい事なのだろうか。 >「諦めるんじゃねえトロ!!エルを見習え!! 巫女の重圧に耐えながら、怖いのを我慢して、 あれやこれや知恵を絞ってくれてるんだぞ!!」 >「…うるさい!!エルと僕を比べるな!! エルは神様に選ばれた人間だから死ぬのも怖くないんだよ!! でも、僕はただの孤児なんだ。幸せなやつらと一緒にするなあ!!」 「二人ともやめて。 そうかもしれない、神に近づけば近づく程普通の人間の感覚からは離れていく」 その時、激しい振動が一同を襲う。 ブラックバスとリヴァイアサンの戦いが始まったのだ。 『よくも私の眷属達を食い荒らしてくれましたね……』 『いいのか? 俺を攻撃すればお前の信徒達まで巻き添えになるぞ』 『……!』 トロの言った通り、ブラックバスはエル達を人質に使うという手段に出た。 「早く出なきゃ……」 窓の外を見るとファーがまだ飛んでいる。 「ファー、”ドリルくちばし”よ! こいつに脱出できる穴を開けて! ……駄目か。トロもお願いしてみて!」 小さい時にいつも一緒だったトロならあるいは言う事を聞かせられるかもしれない。
さりげなく勇者の仲間、との描写がある。 いつの間にか勇者は仲間を得ていたのだった。 流石は選ばれし勇者。何もしなくても仲間が寄ってくるのだ。 「おぉ...何ということじゃ...!黒き法衣(ローブ)を纏いし者達の影が見える... 予言書の使徒、奴らを封印の深奥へ行かせてはならん、 邪神の封印を解こうとしておるのじゃ...! いまや雷神様の血も薄れ、我らに扱えるは小さき雷のみ... あぁ恐ろしいや...!天地を揺るがす強大な力じゃ...来るぞ...あぁ来るぞ...!」 と、勇者の仲間がうわごとで呟いている。 >「そうだ、ヤチホ。それでよい」 唐突に現れた何者か。ラスボス化計画を妨害しにきたのだろうか。 >「久しぶりですね、私の名前はミウラザーマ」 >「久しぶりって、あんたなんて知らないわよ!! 大正のGMだなんて知るわけないじゃん。名を名乗りなさい!!」 かなーり危ない香りがするが、このスレは飽くまでもただの電波系スレであり 実在の人物や組織その他の盤外事情には一切関係ない事をここに記しておく。 仮に関係があるように見えた場合は気のせい又は偶然の一致である。 >「私のラスボス論、聞きたいですか?」 「ひぃいいいい! お許しください!」 シヨカクタンはヤチホちゃんと抱き合いながらガタガタ震えている。 どうやらミウラザーマはシヨカクタンの天敵のようだ。かみの世界には色々あるのだ。 「聞く気がないようですね、まあいいでしょう、とりあえず勇者は頂いて行きますよ!」 何がとりあえずなのかは分からないが、勇者を担ぎ上げて漆黒の翼を広げて飛び立つミウラザーマ。 「おぉ...何ということじゃ...! 勇者が連れ去られてしもうた!」 と、後に残された勇者の仲間。 「このままでは勇者の仲間としてのアイデンティティが崩壊してしまう! お願いじゃ、共に勇者を救い出してくれ、お願いじゃぁああああああ!」 ラスボス志願なのに何故か勇者を助けに行く事を懇願されるヤチホちゃん達。 ラスボスへの道は長く険しいのだ。
ポエムの書くネタってどうしてどれもこれもこう胸糞悪いんだろう 私怨をパロネタで揶揄しようなんて最低ですね
パタパタと飛んでゆくミウラザーマを、 空飛ぶ牛タンに乗って追いかけるヤチホちゃんたち。 しばらくすると、ミウラザーマの国につく。 そこに待っていたのはタエコというおばさん。 めちゃくちゃゆっくり歩いている。 「ここからさきは、通さないわよーん」 「!!…わ、わよーん」 言葉選びのセンスに、なんとなく昭和を感じるヤチホ。 「そこをどきなさい!!わたしは、ラスボスのヤチホ様よ!!」 ヤチホはタエコの髪を掴んでグイグイする。 するとタエコは、 「体調が悪いのでわたしの行動は、一週間後になります」 と、肩を落としてアホの相手は疲れるといった顔。 しかし、一週間後とはいったいどういう意味なのだろう。 するとミウラザーマが避難所の隙間から現れて猫なで声で 「はい、はい、わかりまちたあ。あなたはこの世界の、 いや、わたしだけの宝ですからね。 いつまでも待たせていただきますよ。よい羽休めになりますらねぇ」 そして、タエコは消える。 ヤチホには意味がわからなかった。 一週間後。深夜。 なんとなくタエコが現れた。 すると宿屋で寝ているヤチホに、ミウラザーマから電話が入り 「どうやらヤチホさんは、戦いを拒否なされたようですね。 それならばタエコさんの不戦勝とさせていただきますね」 「は〜?」 これは、罠だった。ミウラザーマの世界ではミウラザーマが法律なのだ。 「ちょっと待った!!」 そこへ現れたのは勇者の仲間。 ミウラザーマはやれやれといった感じ。 「あー、あほが、なんでいきなり都合よく登場するんすか?」 ミウラザーマは見下していた。 すると勇者の仲間は、 「都合よく現れたのではない。一週間、ここに立っていたのだっ!! くらえいフィオナズン!!」 呪文の詠唱とともに、巨大な少女が空から落ちてくる。 そう、フィオナ、ずーんなのだ。 完全なるアウェイ。勇者の仲間の無謀な戦いが始まった。 「あれ?シヲカクタンは?」 ヤチホは寝ぼけまなこをこすっている。
>「二人ともやめて。 そうかもしれない、神に近づけば近づく程普通の人間の感覚からは 離れていく」 それを聞いたトロは少し胸が痛くなった。 それが巫女の宿命としたら残酷な話だ。 だからトロは謝ろうとした。 でも >「ファー、”ドリルくちばし”よ! こいつに脱出できる穴を開けて! ……駄目か。トロもお願いし てみて!」 エルは気にしていないようすで、目的を果たすことしか頭にないようす。 (そっか、エルには感情がないんだ。だから気にすることはないんだ。 ただ人につくすための存在。機械みたいなものなんだ) 「そんなこと言ったって、ファーはただのペットだから 穴なんて開けられるわけないよ!!」 ブラックバスの固さは想像を越えている。 ファーなんて役に立たない、と思い直すトロ。 その時だ。 微振動とともに壁にあながあく。 飛びこんできたファーが騒ぎ出す。 「おれさまをなめるな!!そんじょそこらの小鳥と 一緒にすんじゃねぇ!!」 「やったぁ!!ありがとうファー。 はやく、みんな、穴から逃げよう」 そして始まるリヴァイアサンとブラックバスの戦闘。 それはとても凄まじい戦いだった。 勝利したリヴァイアサンが瀕死の重傷をおってしまうほどの。
ヤチホちゃんのめちゃくちゃな展開で悲汁学園は混乱しています 「優秀な石男君が用意してくれたシナリオを皆で楽しんでいたのにこのままじゃ台無しになりそう はっきり迷惑だと言ってしまうと角がたつしどうしよう」 スレ主の李ー李ーはおろおろしています 「李ー李さんを困らせるなんてゆるせませんねい!」 子もちの女性軍人ガチムラ先生こと将校たんがあらわれた これまで何度も大鉈を振るいあまたの厨コテを切り捨てきた過激派です 「ふつうならやろうと思ってもやらないマジキチ行動で李ー李さんを困らせるバカポエムはおしおきです!」 将校たんは大鉈をふりあげます 「へたくその自覚をもって大人しくしているならお情けでおいてやってもいいんですがねい 皆が困っている状況は捨ておけませんねい このスレから出ていくかこの鉈の露と消えるかえらばせてあげましょう といってもあほには理解できませんかねい」 大鉈がヤチホちゃんの首をびゅーんととばしました 「あーすっきりした あいつがいると蛇足ばっかで本筋が進まないんだよねぶっこむネタもマジキチで意味わかんねーし」 「迷惑かけときながらちょっと注意されたらいかにも傷ついてますってあてつけがましい態度で 超うざかったし」 「こえだめのうんこ臭まきちらして最悪だったもんね」 「アスペだから全員に嫌われてるのわかんねーんだろうな」 悲汁学園の生徒が口々にヤチホちゃんの追放をよろこんでいます 「成敗!」 将校たんが地面にぼてっとおちているヤチホちゃんの生首を ぶちゅりとふんでぐりぐりつぶしました
「困るんですよ、生ごみは汁気を切ってから出してもらわないと」 清掃車のスタッフは、ヤチホちゃんの胴体を手早く解体すると、五体をゴミ袋に詰めた。 「これで清掃作業はこれで終了です。お疲れっした」
俺の名前はクライア・ウッド!そうとも、神に選ばれた光の勇者だ 外なる時空で戦う神“ミウラザーマ”の手でMind&TimeのRoomで数々の死闘を繰り広げた俺は 最早何者でさえも打倒できる力を手に入れていた ――遍く事象の記録簿(アカシックレコード)を改竄し、いかなるモノをも消し去る剣 神罰剣・雲散霧消(ルーイン・ディスインテグレイト)ッ! ――敵対者の行動を遡り、打ち消す絶対無敵の盾 無毀盾・時空城壁(レトロアクティブ・インビンシブル)ッ!! ――優れた防寒機能を備えながら蒸れない 保温下着(ヒートテック)ッ!!! そして並み居る魔物を蹴散らしたことで到達した神を超えた領域 最強者の証明(レベル・カンスト)と長者番付一位の地位(年収20京ドル)ッ!!!!! 「くたばれ!ヤチホオオッ!! テメェを殺して俺は……俺の生活を取り戻すッッ!!」 鞘から放たれた“雲散霧消”が光を超える速さでヤチホの首を刎ね飛ばす! するとどうだろうか、切断面からは血の代わりに噴き出したドス黒い粒子が、虚空へと溶けていく!! そうこれが剣の持つ力“意味の消失”なのだ! 最後の粒子が空中に溶け……ヤチホがこの世に居たことを知る者は、最早誰も居なくなった
>「あれ?シヲカクタンは?」 その頃シヨカクタンはというと――ミウラザーマと時空の狭間にあるカラオケルームで盛り上がっていた。 天敵じゃなかったのかって? かみの世界は色々あるのだ。 「昨日の敵は今日の友という古い言葉があるけど♪」 「今日の友達明日も友達そうさ永遠に〜♪」 「ピカチュウ〜〜!!」 歌がひと段落ついたところで、シヨカクタンがミウラザーマに相談を持ちかける。 「実はヤチホちゃんがラスボスになりたいって言ってるんだけど……自分ボスとか管轄外じゃん?」 「簡単な事さ、ふんっ!」 カラオケの画面に「ヤチホちゃんの脳内」と文字が出て、何ともスプラッタな幻影が展開される。 驚いて突っ込むシヨカクタン。 「何やってんすか!?」 「ラスボスに必要な物、それは恨み! 憎しみ! 狂気! 世界の全てを敵に回し戦う悲壮な決意……! もちろん一概にそうとはいえないのだが初心者がラスボスになるのならまずはテンプレパターンからマスターした方がいいだろう」 「なるほど……! ヤチホちゃん、君を立派なラスボスにするために私は敢えて残酷の限りを尽くす! うおおおおおおおおおおおおおおお!!」 シヨカクタンはダッシュでヤチホちゃんの取っている宿屋の部屋の冷蔵庫を開け、プリンを食べた! プリンを食べられた恨みは恐ろしいと昔から相場が決まっている。 一方、勇者の仲間とミウラザーマの戦いは熾烈の限りを尽くしていた。 本来ならばその様子を一字一句漏らさず書き記すべきところだが、誠に残念ながら尺の関係上省略する。 プリンを食べつつそれを観戦しながら、シヨカクタンがある事に気付く。 「あれっ、勇者は?」 勇者はすでにどこかに行っていた。一週間も放置されていたのだから当たり前である。 時空の狭間は外界とは時の進み方が違うのだ。
これまでのあらすじ リヴァイアサンはたたかった! そして勝った! しかしリヴァイアサンは瀕死の重傷だ! 「どうしよう、リヴァイアサンが死んじゃう!」 エルは狼狽えている。 エルは決して感情が無いわけではない、むしろ感情に任せて暴走する事もあるぞ! 巫女なので感情が神のようなものの影響を受けやすい、と思えば適当なのかもしれない。 「巫女よ……そのマスターボールを我に投げろ!」 「でも……神様を手下にしようだなんて……」 「いいのだ。このままでは我は死んでしまう。ならば永遠にそなたと共にある事を選ぼう! お前は正真正銘の海神の巫女となるのだぁああああ!」 「リヴァイアサン……!」 エルはボールを大きく振りかぶり、投げた。当たった瞬間に閃光が炸裂し、リヴァイアサンがボールの中に吸い込まれる。 エルはそのボールを拾って天に掲げ、あの長寿アニメのキメ台詞を叫ぶ! 「――ポ○モン、ゲットだぜ!」
他人のキャラ勝手にパクッて改変して面白おかしく弄ぶのってどうよ 長くTRPG業界にいたのに、最低限の礼儀も学べなかったのか? ギャグなら何をしても許されると思ってそうだな どうしてもやりたいなら自分達の持ちキャラでやれよ
>>93 ポエムに依頼されたんだポエ。俺の脳内に直接
というか他人様のキャラパクってパロって嫌がらせしてんだから
当然お前らもそうされるだけの覚悟は持ってるんだろ?
粛々と受け入れなさいポエ
「ヤチホさんへ 別にこういう事をするのはアナタの勝手ですが もし私がこのスレを以前からROMしていた場合 私も私のホームでアナタと同じような事を アナタよりも何倍も陰湿に行うかもしれないって事はちゃんと理解した上での事ですよね? もしもコレが単なる浅慮が故の過ちであるのだとしたら ここではなく私の元にちゃんと謝りにきなさい 何の事か分からないですとか、名無しなんて相手にしないもんとか あくまでシラを切るつもりでしたら、それはそれで構いません 今後私からアナタに与える物は何もなくなるだけです」
全く無関係なスレを勝手に代行スレにするとか最低だな 代行依頼スレに載せられないほど糞な内容だと一応自覚は出来てるのか どこまでも恥知らずだな
>>96 お前バカだろ、こちとら荒らしに来てんだぜ?
内容だとか恥知らずだとかもうちっとまともな連中に向かって言えよw
このアホどもが自分の行いを悔い改めて焼き土下座するまで邪魔し続けるよ
>えっと、それと本スレの95の
ミウラザーマさんって
もしかしたらご本人さまなのでしょうか?
トリップがついていない以上
なりすましの可能性もあるので
ホームに謝りにいっても
ご迷惑をおかけしてしまう可能性もあるんですよね。
どうしたらいいと思いますか?
某スレに、GM さんは怒ってますか?って
探りにいったほうがよいのでしょうか?
82 :エル ◆8IfUoo85vY :13/06/14 21:27:22 ID:???
>>80 行ったら駄目、絶対w
ちょっと本編に無関係な書き込みが増えているようですが
あなたが気になってしまうようなら今の話を凍結して(要するに打ち切りw)全くの新しい話を始めてもいいですよ
これはつまり、自分が謝罪の必要な悪い事をしていると分かっていながら
本人にバレていないなら償いなんてしなくていいやと言っていると受け取っても構いませんね?
残念ながらバレていますけどね
そしてヤチホさんのお考えはよく理解出来ました
私はこれほどまでの失望を感じた事は本当に久しぶりです
話を凍結させたところでアナタのした事は消えません
これが最後通牒です
謝りなさい
私にとってアナタは居ても居なくても変わらない存在です
ですが何も自ら居ない方がいい存在になる事はないと思いませんか?
>>96 人のキャラいじってレスに組み込むのは最低じゃないんですかね?
自キャラマンセーしたいがために他コテを貶めるようなことするのは恥知らずじゃないんですか?
これほど明確に喧嘩売られてんですぜ?
買ってやらにゃ腐っちまうじゃねえの
新編開始です ココリコ坂で耳を澄ませば隣のアリエナイッティ ある年の夏休み―― 家庭の事情、あるいは病気療養、理由は何でもいいが君は一夏を過ごすために見知らぬ町にやってきた。 自然が豊かでのどかな、何の変哲も無い町だ。 ただ一つ変わった事と言えば、小人か妖精か謎の小動物らしきUMAの目撃情報が頻発しているという事だ。 一緒にご近所の事件を解決してみてもいいし、一夏の恋の物語にしてみるのもいいだろう。 どこにでもありそうな町で、少し不思議な物語が始まる―― ジャンル:少し不思議 コンセプト:ジブリの冒険活劇じゃない系統のやつ 決定リール:あり レス順:無し 版権・越境:あり(ただし自キャラ以外の盤外ネタはお控え下さい) キャラクターテンプレ 名前: 性別: 年齢: 外見:
この街には、ココリコ坂という坂がある。 とあるお笑いコンビが売れるようになる前にいつも練習をしていたという伝説がある坂だが、現在この坂には別の都市伝説がある。 決まってこの坂で、そのUMAは現れるのだ。 小人のような少女、不可思議な小動物、など目撃証言の姿は一定ではなく、その正体は定かではない。 しかし「ちょっと!見たんだけど!」「有り得なくね!?」そんな会話が幾度となく繰り返され そのUMAはいつしかアリエナイッティと呼ばれるようになった。 名前:アリエナイッティ 性別:??? 年齢:??? 外見:小さな少女、あるいはもふもふした動物など、諸説入り乱れる
流れをぶった切るようで御免よ TRPGなら実験的に好きに使っても良いのかな?
いらっしゃいませー、もちろんそうですよ 使用にあたっては今は静かですが場合によっては色々な物が同時進行して ごちゃごちゃするかもしれない事だけご了承ください ・超短編になりそうなTRPG ・始まるかも分からない実験的TRPG ・新スレを始めたいけどいきなり新スレ建てるのは敷居が高い場合 ・SS投下(万が一誰かが乗ってきたらTRPG化するかも?) ・スレ原案だけ放置(誰かがその設定を使ってはじめるかも) ・キャラテンプレだけ放置(誰かに拾われるかも) 等等TRPG関連であればご自由にお使い下さい きちんとした避難所を用意しないままなんとなくここまで来てしまってますが この規制ではせっかく実験しても来る人も来なくなるかも… もしある程度継続的に使われるようであれば避難所を立てましょうか
104 :
◆phEkcQAvl6 :2013/07/17(水) NY:AN:NY.AN 0
>>103 返事ありがとう
気軽にバトルが出来るロボットモノを考えてる
詳細はもう少し待ってて
波止場近くのココリコ坂は、焼き菓子や 雑貨屋の軒下をぬって岬の展望台まで続いていた。 そこからは外国汽船が行き交う界隈を一望できた。 瑠美は展望台の上で誰かを待っている。 下駄箱の中に入っていた小さな手紙。 その手紙には、魚の小骨のように弱々しい筆跡で こんなことが書かれていた。 (おともだちになってください。 てんぼうたいで、ほうかごにあいましょう)
【推理倶楽部】 針よりも細い雨が、柔らかな陽射しのな か降り注ぐ6月のある日。 推理小説家「森蘭子」が自宅で殺害されるという事件が起きた。 警視庁の捜査一課長である「船越三郎」は、かなり薄くなった頭に うっすらと汗をにじませながら、自宅の応接間でアイスコーヒーを飲んでいる。 そんななか、君たちは船越に招かれた。 船越の娘に誘われながら、応接間のドアの前に立っている。 君は船越にとって、信頼できる存在だ。 そうでなければこの物語は進行出来ない。 扉を開ける君。 彼は君の顔を見るなり、よく来てくれたと狼狽し 泣きつくように語り出す。そう、森蘭子殺人事件が 警察では手におえない難解な密室殺人事件だということを。 そして君に情報が語られる。 検死報告によると殺害推定時刻は6月21日の夜10時。 死体が発見されたのが昨日、22日の朝9時。 第一発見者は出版社の編集者「高瀬稔」 原稿をとりにきて森蘭子の死体を発見してしまったということだった。 殺人が起きた森蘭子の家は、S駅の近くにある総住居数六十個の新築高級マンション。 住居部に入るにはエレベーターのあるエントランスを通らなければならない。 おまけにエントランスには1日三交代で警備員が配置されている。
ここで船越の娘が疑問を投げ掛ける。 「殺人が起きたと思われる時刻から、死体が発見されるまで 訪問客はホントに誰一人もいなかったの?」 「いや、その夜は三人の客がいた。しかし全員身元とアリバイがしっかりしている。 それから彼女の部屋は三階の三〇三号室なのだが 玄関の扉には錠前がおりていて、 しかも内側にチェーンロックもかかっていた」 「ふーん。じゃあ、犯人は壁や樋伝いに三階のベランダまで登ったんじゃないの?」 「できないことはないが、ほとんど無理だろう。 まず、一階のどの部屋にも居住者が在宅していた。 それに庭には足跡などは残っていなかった。 とすると、警備員のいるエントランスと錠前とチェーンロックを すり抜けなければ、この殺人を敢行出来ないということになるのだ」 【目的=森蘭子殺害の犯人を推理し炙り出す】 【導入or質問タイム】 【5ターン以内には終わる予定です】
梅雨のある日―― 私達「中年探偵団」は警視庁捜査一課長船越三郎の招集を受けて集まった。 私達が呼ばれたという事は、警察では解決できない難解なトリックを駆使した事件が起きたという事を意味する。 事件の概要を説明された後。 船越の娘が犯人スパイダーマン説を提唱し、あっさり否定された。 「そう、犯人はまさに壁をすり抜けたの。邪悪なるニンジャソウルを宿したNINJAの仕業よ!」 「そんなわけないべ。きっとマンション住人全員が口裏を合わせているんだ」 中年探偵団がトンデモ仮説を繰り広げるのを放置して、私は話を進める。 密室殺人に見える事件でまず疑われるのが、殺人に見せかけた自殺だ。 その他、動物にしか通れないようなルートを使用した動物による殺害 遺体発見時に実は犯人が室内に隠れていた、等が考えられる。 それを探るためには、遺体発見時の詳細な情報が必要であろう。 「被害者はどのように殺されていたんだね? 発見された時の詳しい状況を頼む」
江戸山湖南の質問を受けて。 三朗「絞殺されていた。室内にあった大きな水晶の文鎮で殴られたあと、 首を絞められたらしい。気絶して床に倒れた彼女の体からパンティストッキングが 剥ぎ取られ、首に巻きつけられていた」 娘「ひどい…」 中年探偵「じぇじぇ!ということは悪戯をされたってことだべか? 容疑者は?容疑者は浮かんでいるだべか?」 三朗「一人、間違いないという人物があがっている。 だが、その人物の正体は不明だ」 娘「?」 しばらくして、テープレコーダーを取り出す三朗。 三朗「このテープには、殺人場面の一切合財の音が入っている。 森蘭子は、自分が口述したテープを原稿に起こしてもらっていたのだ。 事件はその録音の最中に起きた。 もちろん犯人は、録音の最中だったことなど知らない」
※殺人場面の録音 カチッ(録音テープの停止スイッチを押す音) だが遠くで話し声が聞こえる。 停止スイッチの押し方が不十分だったようだ。 それからスリッパで廊下を歩く音がして、大きな声が聞こえた。 「私がお話したいのは、あなたがつい先日発表した『殺人鬼の季節』についてです。 あれはご自分の高校時代の実話を元に創作した作品だそうですが」 (殺人鬼の季節。筆者の森蘭子が高校時代にあった実話を元に創作した作品) (ある夜の公園。絹を裂くような悲鳴のあと、茂みから現れたら不審な男。 彼は殺人鬼だった。それを森蘭子は目撃してしまった。 数ヵ月後、容疑者が確保されたが面通しの時、蘭子はその男が犯人だとは確証が持てなかった) 「え、編集長が私の本名をあなたに教えたのですか?」 「いや、なにね。あの物語に秘められた謎を半分ほどお話したのですよ。 そうしたら編集長が是非あなたに完全な真相を教えてやって欲しいと頼むのです」 「……どういうことですか?」 「失礼、そこにあるのは何ですか?」 「文鎮ですが…」 「ちょっとそれをかしてください。あの夜のことを説明するのに丁度良さそうだ」 「それで、いったいどういうことなのでしょう?」 「私は、あなたが面通しした可哀想な男が、犯人ではないと断言できるのですよ。 実を言えば、あの連続殺人事件の犯人は、この私なのです」
ゴンッ! 「ふひひ、森蘭子。あんたが何かの拍子に俺の顔を思い出されても困るからなぁ。 こうやってみると、なかなかのイイ女じゃないか。 だが安心しな。俺は冷たい女を抱くほど変態じゃないからよ。 おや、こいつまだ生きてやがる」 (しゅるしゅると絹擦れの音) (男の荒い息づかい) 「糞が、面倒かけやがって…。 まあ、あんたの死は無駄にはしねえよ。 密室殺人にしてやる。 推理小説の作家が密室で死んでいたなんて実に面白いじゃないか。 大評判になるぜ…」 ガチャン(録音テープの止まる音)
「犯人はこのあと部屋が密室になるように工作して、立ち去ったと思われる」 「……」 「窓に鍵をかけ、扉にチェーンロックをかけ、おまけに施錠までもおろしてな。 煙のようにキレイさっぱり消えてしまったのだ」 船越三朗は苦々しく言った。 「パパ、その男のひとの正体って、ほんとに不明なの? 他に疑わしい人はいないの?」 「…一人、疑わしい人物なら候補にあがっている。 森蘭子には付き合っている男がいたのだ。 名前は黒川ヒロシ。森が有名作家になってしまったので 別れ話を持ち出されていた」 「あ!あたし、犯人がわかっちゃったかも。 ねえねえ湖南くん、それとみんな。おまけにパパ。 3日後にそのマンションで実況見聞しない? 各々が怪しいって思う人を招待して、 現場でそいつを追い詰めるのよ。 あたし、明智小五郎みたく心理試験をやってみたいの」
>>106 「やあ、本当に来てくれたんだ」
不意に、留美に声がかけられる。
しかし、辺りを見回してみてもすぐには声の主を見つける事は出来ないだろう。
「こっちこっち」
声のした方をよく見てみると、展望台の手すりの上に”何が”がいる。
身長わずか15cm程度だが、驚くべき事に人間の姿をしている。
いわゆる小人――しかし少し不思議系の話としてはそこまではまだ普通かもしれない。
特筆すべきは、その小人がハラマキにシャツにステテコ、バーコードハゲというおっさんの姿をしている事だ。
そう、都市伝説で有名なかの”小さいおじさん”である!
よく見ると名札をつけており、「アリエナイッティ」と書かれている。
小さいおじさんは瑠璃にキラキラした視線を送っている。
リアクションを期待しているようだ。
キラキラと輝くアリエナイッティの瞳とは対照的に、 彼(彼女)を見つめる瑠美の目は、まるで死んだ魚のような目だった。 (あちゃぁ、だまされちゃった…) その一言が頭の中でコダマする。 だから瑠美は大きく息を吸ったあとこう叫んだ。 「天国のお父さーん、お母さーん。 あたし、たくましく生きていきまーす!」 それは見事な現実逃避。瑠美の両親は健在である。 叫んだあと、いそいそと逃げ出す。 ――アリエナイッティとの遭遇。 それは瑠美にとって、怪奇現象以外のなにものでもなかった。 脱兎の如く階段をかけ降りると小道を全力でかけ降りる。 「悪いけど、お友だちになんてなれないってば。 だって、あの小人さん、めちゃくちゃ気持ち悪いんだもん…」 そう言ったあと、瑠美はアリエナイッティのキラキラとした瞳を思い出して胸がちくりと痛んだ。 あのおじさんはずっと瑠美のことを待っていたのかも知れない。 灯台の天辺でたった独りで寂しく。 「あぁ、どうしよ…、ちょっとだけなら、お話してあげても良かったのかなぁ」 ほんの一ミリだけ、後ろ髪を引かれる気持ち。 でも、嫌なものは嫌なのだ。 瑠美は嵐が好きなのだ。 映画館に、謎解きはディナーのあとでを1000%観にゆく予定なのだ。 「あ〜、気持ち悪かった。おばさん、抹茶一杯おくれぇ」 灯台の下の和菓子屋に駆け込む瑠美。 いつもこの店で、抹茶と和菓子を食べるのが瑠美の日課だ。 自分の顔の半分より大きな湯呑みをすすり一息をつく。 「けっこうなおてまえで…」 この言葉の意味はわからないが、いつもこういう礼儀正しくするのが好きだった。 抹茶を一口飲んで、落ち着きを取り戻した瑠美は、早速店のおばさんに先ほどあったことを話した。
瑠美の話を、女店主は黙って聞いていた。 その後、瑠美はしばらく考えこんでいた。 「あたし、殺されちゃうのかな?小人の正体を見ちゃったから」 和菓子屋の女店主は、瑠美の言っている意味がよくわからなかった。 「誰に殺されるの?」 「はげのこびと」 「え?どうして。その小人が瑠美ちゃんを灯台の天辺に呼び出したんでしょう? 自分から呼び出しておいて正体を見られたからって瑠美ちゃんを殺すなてそんな不条理なこと ありえないわよ」 「うーん、そっか。言われてみたらそうよね。 おともだちになりたいって手紙には書かれてたんだからね」 「……」 女店主は静かに微笑むしかなかった。 最近の子供はみんなこうなのだろうか。 日本の未来を思うと少しだけ不安に思う。 「ごちそうさまでした☆」 そんな女店主の不安を打ち破るかのように、 瑠美は元気にそう言って、にっこりと微笑した。
>「天国のお父さーん、お母さーん。 あたし、たくましく生きていきまーす!」 瑠美は何も見なかった事にしたようだ。 胸ときめく小人とのランデヴーのはずが、小さいおっさん登場ではこの反応も無理もない。 世の中インパクトを重視すればよいというものではないのだ。 「あちゃー、失敗だったか……」 頭を掻きながら瑠美の姿を見送るアリエナイッティであった。 そんな第一次接近遭遇から数日後……。 舞台は瑠美の行きつけの和菓子屋に移る。 「あれ? ここに置いていたはずなのに……」 女店主は首をかしげていた。 皿の上に置いていたはずの和菓子がなくなっているのだ。 ふと、数日前の瑠美の話が脳裏をよぎる。 都市伝説に影響を受けた作り話だろうが、それにしては真に迫っていた……。 まさかね、と首を横に振ってその考えを振り払う……と。視界の隅に何かが入った。 「ああ、なんだ小トトロか……。……小トトロ!?」 絵に書いたような二度見。 某アニメ映画に出てくる小トトロに似た動物?がお菓子を両手に持って頬張っているではないか! 「実に美味しいお菓子ですね、瑠美ちゃんがはまるのも頷けます」 「しゃ、喋った……! 瑠美ちゃーん、早く来てー」 目を白黒させながら呟く女店主であった。
「……」 瑠美は無言でやって来た。いつになく元気がない。 なぜなら昨日、一家心中するかも知れないと母親に言われたからだ。 それでいつものようにヘラヘラ笑っていられたら 本物の阿呆だろう。 「……瑠美ちゃん。トトロよ」と女店主 でも瑠美は、ほうとため息を吐き心ここにあらず。 「うちのママねぇ…。こんど心中するから覚悟しとけって言ってた」 「……え?」 「間違えてイミテーションのほうを売っちゃったんだって。アメリカの大使夫人に。 宝石商って信用だけでもってるものだから、偽物ってばれたら、うちの店潰れちゃうって言ってた」 「どうしよう……」 静まり返る店内。
>「どうしよう……」 途方にくれる瑠美を小ト○ロはしばらく心配げに見ていたが やがてとてとてと歩み寄ってお菓子を差し出すのだった。 「まだバレてないんだろう? バレる前にイミテーションと本物をすり替えればいい!」 普通に考えればそんな事は不可能に決まっている。普通に考えれば、だ。 小さくて自在に姿を消す事が出来るアリエナイッティの協力があればあるいは…… 不可能ではないかもしれない。 「はじめまして……二回目かな。 私はアリエナイッティ。かの都市伝説で有名なアリエナイッティだ」
こうして推理の方針は録音テープで被害者と会話している男は誰なのか、という一点に絞られる事となった。 しかし録音状況が悪く、声紋からの特定は難しいとのこと。 船越の考えでは容疑者は恋人の黒川ヒロシ。 >「あ!あたし、犯人がわかっちゃったかも。 ねえねえ湖南くん、それとみんな。おまけにパパ。 3日後にそのマンションで実況見聞しない? 各々が怪しいって思う人を招待して、 現場でそいつを追い詰めるのよ。 あたし、明智小五郎みたく心理試験をやってみたいの」 「編集長と面識がある事から担当の編集者も怪しいな。 それと編集長も参考人として呼ぼう。 編集長と犯人がグルになっている可能性もあるから十分注意しなければ」 そして3日後――実況見聞の時がやって来た。 現場には思ったより多くの面々が集まっていた。 それぞれが怪しいと思った者を好き勝手に集めたのだから仕方がない。 ・恋人 黒川ヒロシ ・担当編集者 逸見 修(へんみ おさむ) ・編集長 長州 亜美(ちょうしゅう あみ) ・作家仲間 中洲 鳥羽朗(なかず とばろう) ・高校時代の担任 光孝 清(こうだか きよし) 「うぅ〜〜〜〜……蘭子ぉおおお、蘭子ぉおおおお!」 恋人は泣きじゃくっていて話にならない。 「何も知らないしそんな会話に覚えはないわよ! 犯人の捏造よ!」 編集長は犯人との会話を否定している。 「オラが殺人なんかするようにみえっか? 見ての通りただのうだつがあがらない三流作家だっぺ 森さんは憧れの作家だったっぺ……殺すなんてとんでもないっぺ」 と、中洲鳥羽朗。 「森さんは高校時代に殺人を目撃してねえ、随分ショックを受けて可哀想だったけどまさかこんな事になるとはねえ……」 と光孝 清。果たしてこの中から密室殺人の犯人をあぶり出し追いつめる事が出来るだろうか。
実況見聞の日。 容疑者たちは、森蘭子のマンションの一室(殺人現場)に呼び出された。 船越親子は江戸川と一緒に窓側に立ち 容疑者たちを観察している。 「…緊張するね。湖南くん」 船越の娘は頬をほんのりと赤く染めながら きゅと湖南の手を握る。 そして深呼吸をしたあと辺見に視線を移す。 「えっと…。第一発見者は担当編集の辺見さんでしたね。 ところで辺見さん。あなたはどのようにして 森蘭子さんの遺体を発見なされたのですか?」 辺見は少し驚いた様子を見せたが 淡々と答え始める。 「先生の異変に気づいた僕は、警備員に頼んで マスターキーで玄関のドアを開けてもらいました。 チェーンロックは巨大なペンチのようなもので 切断させてもらったんですけどね。 僕が森先生を発見したときは、すでに先生は死んでいましたよ…」 「へー、やはりチェーンロックはかかっていたんですね。 警備員さん、それは本当ですか?」 こんどは、部屋の隅で立っている警備員に問いかける船越の娘。 警備員は頷き、それで間違いはないと言う。 「ということは、犯人は玄関からは外に出ていないってことになりますね。 犯人が玄関から逃走したのでないとするのなら やっぱり犯人は、このクレッセント型の錠前の窓から外に出た ということになります。 しかし、犯行時刻の前に、下の階の住民たちによる犯人の 目撃情報はありませんでした。 庭の芝生にも足跡らしきものもね。いったいそれは何故か」 船越の娘はにんまりとしている。
「……もう、湖南くんにもわかったよね? 犯人の逃走経路は玄関じゃなくって窓。 犯人は外側からある道具を使って、窓のカギをかけたのよ」 船越の娘は釣糸を取り出すと 窓を開けた。そして振り向くと…… 「この釣糸で、外から窓のカギをかけてみせます。 あの、ごめなさい。 重しにするので、どなたか文鎮を とっていただけませんか?」 船越の娘は、警備員から文鎮を受けとると足元に垂らし それを重しにして 二つ折りにした釣糸をクレッセント錠に引っ掛けた。 そして外から窓を締めることに成功すると二つ折りにした釣糸の片側だけを引っ張り見事に回収。 部屋に戻ると満足そうな顔でソファーに腰をおろす。 それを見た容疑者たちは顔を見合せる。 「仮に犯人が窓から出たとしても、ベランダから 何処に消えたんだよ?」 恋人の黒川が質問を投げかけた。
>「はじめまして……二回目かな。私はアリエナイッティ。 かの都市伝説で有名なアリエナイッティだ」 「……うそ」 人生。とんでもないことは起こるものだ。 だが正負の法則というものもある。 一家心中の相談が負とするのなら、 アリエナイっティとの出会いは正。たぶん正だ。 「二回目って、どういうこと? たぶんアナタと出会うのは、あたし初めてよ。 ……あ、もしかしてアナタって変身できる? あの小さなおじさんって、もしかして…」 有栖川はアリエナイッティをもってかえることにした。 「おともだちになりたいって手紙をくれたのはアナタね? それってどうして?ぼっちなの?それともあたしが魅力的過ぎるから?」 和菓子を食べながら二人は石段をおりてゆく。 そして瑠美の家に着く。瑠美の家は猫屋敷だ。 その猫たちの視線のなか、 二人を覗き見している謎の影。 その正体はプニョ。まん丸目玉の男の子だ。 プニョは猫に首をくわえられながら、 死にそうな顔でアリエナイッティを見つめている。 「やだっ!チャコったら、またお魚捕まえて来たの?」
――アメリカ大使館。 パーティードレスに着替えたアメリカ大使夫人が、 宝石箱に入った首飾りを見ながら感嘆の声をあげている。 「あら、とっても素敵な宝石ね。装飾も繊細ですし、 日本の職人に作らせて本当に良かったわ。 きっとロシア大使夫人もお喜びになられるわね」 有栖川瑠美の母親が売った宝石は アメリカ大使夫人からロシア大使夫人への 米露友好のプレゼントだった。 表向きは。 「奥様、この私めが宝石をお預かりいたしましょう」 眼鏡をかけた執事が宝石箱を受け取り、別室に持ってゆく。 そして宝石に何かを細工した。 数時間後。 パーティー会場。 各国の大使とその家族が集まり舞踏会が開かれている。
船越の娘は、犯人が釣り糸を使って外から鍵をかけたと推理してみせた。 しかしまだ謎は残っている。 >「仮に犯人が窓から出たとしても、ベランダから 何処に消えたんだよ?」 「芝生に足跡が無かったのよね、だったら空を飛んだのよ!それしか無いわ!」 中年探偵団のメンバー真由美のトンデモ推理が飛び出す。 「空を飛んだ……有り得るかもしれない。犯人はここでもまた釣り糸を使ったとしたら?」 ベランダに出てみると、案の定向かい側にもマンションがあり、ベランダがこちらを向いている。 「まず釣り糸を適当な長さに切って手すりに回してかけてから 端の方に重りを付け向かい側の少し下の階のベランダに投げ込む。 向こう側で何者かが釣り糸の端にロープを結び付けて引っ張って回せば…… マンションとマンションの間に人が渡れるロープがかかる……」 「そうだとしたら向かいのマンションに共犯者がいる可能性が高いということか。 至急向かいのマンションの住人を調べてくれ!」 船越が手下に命じる。
>「おともだちになりたいって手紙をくれたのはアナタね? それってどうして?ぼっちなの?それともあたしが魅力的過ぎるから?」 「どれも正解、かな。 私達は人間と交流を持ちたいと思っている。でも誰にでも見えるわけじゃない。 心の一番深い所で本当に会いたいと思っている者にだけ見えるんだ」 謎めいた答えを返すアリエナイッティ。 と、真ん丸目玉の魚がアリエナイッティを凝視している。 >「やだっ!チャコったら、またお魚捕まえて来たの?」 「君はチャコちゃんって言うのか。早くバケツに入れておあげ」 アリエナイッティが話しかけると、チャコはプニョを大人しくバケツに入れた。 アリエナイッティには動物と心を通わす能力があるようだ。 ――少し時は流れパーティー当日。 本物の宝石を持った瑠美とアリエナイッティが会場の外で様子を伺っている。 警備は厳重だが、後はほとんどの人間の目には見えないアリエナイッティが侵入して 偽物と本物をすり替えればいい、簡単な事だ。 「よし、ここからは私が……」 そう言ってアリエナイッティが瑠美の手から降りようとした時。 会場内から爆音のようなものが鳴り響き、けたたましい悲鳴が響き渡る。 「何だ……!?」
真ん丸い妖しい月が、ぼうっと虚空に浮かぶ夜。 空気はたっぷりと湿気を含み、息をするのも重く感じられる夜。 「ここはどこなの?」 少女は小首をかしげた。 なぜ、自分がここにいるのかわからない。 たしか、九州から東京行きの船乗っているはずなのに 周囲を見渡せば草原で、消えかけた炎の塊と、それに照らされて、一人の男が倒れているのが見える。 だがよく見ると、少女はその男に見覚えがあった。 「…茶々さん!」 駆け寄るも男は虫の息。 と木陰から、茶々に駆け寄る若武者の影があった。 茶々はその若武者に、震える手で鳥の形をした像を手渡す。 が、ここで少女は違和を感じていた。 その一連の行動は、まるでこの場に少女がいないかのように行われていたのだ。 そこで少女は気がついた。 そう、これは夢の中の出来事なのだと。 そのとき。 闇夜の奥から響く毒々しい嘲笑。 見れば一同を凝視する不気味な黄金の瞳が二つ。 それを見るなり若武者は疾駆し間合いを詰めこむ。 けれど… 「むだぢゃ美琴丸。命がけで我が企てを覆した茶々ならばともかく、 そこもとの腕では、わちは斬れぬ!」 「ならば、試してみるまで!」 れっぱくの気合いとともに、美琴丸が刀をふるう。 たが刀は宙を斬るばかり。 「どうした美琴丸。そこもとの師はもっと恐ろしい霊術をつかったぞ」 声が響いたかと思うと、再び嘲笑が巻き起こる。 「こたびは、茶々めが命と引き換えに、わちの黒い夢をくじき、 めるちょるを焼いた。そこもとらにしては上出来。 だが、、わちは二百年でも三百年でも待つことが出来る。 やがて、いんへるのが訪れるのは、誰にも止められぬぞ!」 どす黒い声が闇に溶けて消える。 あとに残っているのは漆黒の闇。まるでそれは、若武者の絶望感を現しているかのようだった。
月夜田命は夢から目覚めた。 体は震えていたし、すこし寒い感じがした。 何よりも不安感が半端ない。 だから、室内灯をオンにする。 たぶん隣には、カフェこと秋葉茶子が爆睡しているはず。 というのも今回の依頼は、ひとまずは完結しつつあり、 今は船で東京に帰るとこなのだ。 「あ〜、変な夢をみちやった。これもあのミイラ発掘の依頼のせいかも」 そう、今回の依頼は発掘隊の怪異からの護衛。 九州地方の島原にあるとある孤島から、発掘したミイラを東京に運んでいる途中。 (ミイラは船底の荷物室に保管されている) 「……あれ?カフェさんは」 キョロキョロするもベッドにカフェの姿はない。 心細くなった月夜田はカフェを探しに甲板に出てみる。 すると波の音と一緒に流れてくる笛の音。 寂しくきれいな旋律。 それはまるで、月明かりでできた虹のような感じ。 笛の主は依頼者の北条詩織で 月夜田も羨むほどの美女だった。おまけに大金持ち。 「…人がいると、ちょっと安心する」 ひとりごちて、ゆっくりと北条に近寄っていく月夜田。 すると 「月夜田さんね?」 振り向きもせずに北条は言い当てた。 彼女は目が不自由だった。 だから足音で月夜田が来るのを当てたのだ。 「あ、ごめんなさい。笛の音がとても綺麗で、聞き惚れてしまっちゃって…。 それと怖い夢をみてしまって眠れなくって…。 あの、ごめんなさい。演奏のお邪魔になると申し訳ないので、私はここで失礼しま…」 「お待ちになって。行かないで」 「ふぇ?」 北条は顔を寄せて、小声で囁く。 「今、私を一人にしないでくださいな」 月夜田にその意味はわからなかったが 遠くで二人を見ている男がいた。 彼の名前は桐生尚吾。 暴力団、桐生組の後継ぎにして若頭。 北条財閥と桐生組は明治維新から共に共生しながら存続してきた、 まるで光と影の関係なのだ。 今回、桐生尚吾は発掘隊の陣頭指揮を行った。 その働きぶりは優秀だったが、桐生尚吾の私生活はゲスそのものだ。 「…ちっ」 舌打ちをして桐生は船の壁を叩いていた。
>「そうだとしたら向かいのマンションに共犯者がいる可能性が高いという ことか。 至急向かいのマンションの住人を調べてくれ!」 「ちょっと待ってパパ。向かいのマンションって 生活感がなくって人が住んでるようには見えないんだけど」 「ん、だとしたら好都合ではないか? ロープでの移動を向かいのマンションの住人に目撃される可能性もない。 ただ問題は犯人に共犯者がいるということだけだ」 しばらくして船越の部下から連絡がはいる。 「警部。向かいのマンションは数年前に耐震性の問題が発覚し、 無人だそうです。安全性の問題から現在は入口も封鎖されています!」 ベランダから見下ろすと、向かいのマンションの入口で、 管理人らしき男と会話をしている部下の姿が見える。 船越の娘はソファーに腰をおろして足を組む。 「ということは、おばさんが言ってるみたく、 犯人は空を飛んでいっちゃったのかしら? まあ、そんなことありえないわよね。 ではチェックメイト?完全密室殺人の成立? それもありえないわ。 正しい道筋が一つしかない場合、旅人は決して道を迷わないものよ」 「じゃあ、犯人はいったい何処へ消えたんだ?」男の人の声が言う。 「それはね。簡単過ぎて申し訳ないんだけど、 犯人は私たちが今いる三階から四階によじ登ったのよ。 ここは新築の高級マンションでしょ。 当時四階は、販売促進公開用のオープンルームになっていたはずよ。 そうでしょ?警備員さん」 船越の娘は悠然な態度で警備員に問いかけた。 「はい。そうですが……。殺人が起きた当日、四階のオープンルームは施錠されていましたよ」 「へー…。そうなんですか。ということは警備員さん。犯人はあなたということですね」 「はい?」 「だって、このマンションのマスターキーを自由に使える者はあなたしかいませんもの。 それにね。あなたが犯人であれば、エントランスを犯人が 通ったか通らなかったとかということはまったく問題ではなくなります」 「な、何を根拠に!」 警備員は声をあらげた。 それに負けじと船越の娘は立ち上がりこう続ける。 「あなたはテーブルの上の文鎮を迷わずに私に渡してくれました。 こんな珍しい形の文鎮を文鎮とわかったってことは、 あなたはこの文鎮が文鎮ということを以前に持ち主に聞かされていたということ。 そう、この文鎮で森さんの頭を殴る前に、これはなにかとあなたは説明を受けていたのよ!」 思い出して欲しいのはレコーダーでの犯人と被害者のやりとり。 警備員はあっさりと犯行を認めて力なくその場に腰をおろした。 【終わりです。読んでくださってほんとにありがとうございました】
パーティー会場では、黒人の大男たち(SP)が、 巨大なクラッカーを使ったあとだった。 (爆音に聞こえたのはクラッカーの音) その後、響き渡る歓声。 それは、パーティーの始まりだった。 「こっちもショータイムの始まりよ!! 頑張って、アリエナイッティ!」 瑠美は祈る気持ちでアリエナイッティを見送る。 アリエナイッティはどうにか高い壁を乗り越え 番犬を説得したりしてパーティー会場への侵入に成功。 パーティー会場では、アメリカ大使夫人からプレゼントされた 宝石を早速身につけたロシア大使館夫人が旦那と踊っている。 アリエナイッティは不可視なので、なんとか出来るはずだ。 だがそのとき、アリエナイッティに背後から飛びかかって きたものがいた。 「ぷにょ、アリエナイッティ、スキーッ!」 それはぷにょだった。 すると、ぷにょの叫びを聞いたSPがやってきて ぷにょごとアリエナイッティを押さえつける。 一方その頃、 「瑠美ちゃん、こんなところで何をしてるの?」 同級生の男子がチャリンコに乗ってきて瑠美に言う。
爆音に聞こえたのはクラッカーの音であった。 人間よりも音に鋭敏なアリエナイッティは間違えてしまったようである。 >「こっちもショータイムの始まりよ!! 頑張って、アリエナイッティ!」 宝石を手に走り出したアリエナイッティ。 高い壁をよじのぼり、番犬をなだめ――パーティー会場に突入する。 目的達成は目前と思われたがしかし……思わぬ伏兵が現れた! >「ぷにょ、アリエナイッティ、スキーッ!」 (駄目だよ、離してー!) 心の声で必至に説得するも、ぶにょは理屈が通じる相手ではない。 ぷにょに捕まり、ぷにょごと抑え込まれてしまう。 驚いたぷにょは口から水鉄砲を噴射し反撃。 「うわ、何だこの子供は! ポ○モンか!?」 その隙に緩んだぷにょの手から抜け出し、再び走り出す。 「あそこにアリエナイッティいるのー! 捕まえてー!」 ぷにょはあろうことかSP達にアリエナイッティの捕獲を依頼する。 「しかし何も見えんが……」 「未詳事件操作課から借りて来た”非実体生物探知器”の出番だ」 針金を折り曲げて作ったダウジングのような器具を取り出し、探知を始めるSP達。 本当にこんなので感知できるかどうかは不明だが、感知できるとしたらかなり危険。 アリエナイッティは念のため探知機から距離を取りつつ各部屋を回る。 その時、一人のSPが持つ針金がくいっと回った。 「そこだぁああああああああ!!」 ピンチ……なのか? 一方、会場外。同級生の男子はこんな事を言い出した。 「パーティーやってるんだよね、ちょっとだけ覗いてみようよ」 厳重な警備が敷かれた会場に招かれざる侵入しようとすれば騒ぎになってしまう。 逆に言えば、ちょっとした騒ぎを起こせば中の警備の気をそらす事が出来るという事でもあるのだが。
>「そこだぁああああああああ!!」 の掛け声で、SPたちがアリエナイッティ目掛け一斉に飛び込む。 だがしかし、見えないものは見えず あわれにも、SP同士が頭を打ち付けひっくり返りまくるだけ。 これはおもいがけない幸運だった。 でも、直ぐ様不運が起こった。 騒ぎでテーブルがひっくり返り、ストロベリーパイが アリエナイッティに落下。 もちろん、アリエナイッティはねっちょりとしたジャムに包まれる。 そして服にも赤みが染み込み、その姿が見えるようになってしまったのだ。 そんななか、アリエナイッティをつまみ上げる一人の男。 執事のマイケル・ムアーだ。 「なにやら騒がしいと思ったら、これは小人さんではありませんか。 私の研究の役に立つかもしれませんね。 お持ち帰りさせていただきましょうか」 そう言って、マイケルはアリエナイッティを自室の地下に持ってゆく。
地下室はマイケル・ムアーの実験道具で溢れていた。 そのなかに四肢を鎖で拘束された女が一人。 女の体は疱瘡だらけで、長く伸びた金色の髪を床まで垂らしている。 「ただいま…アナスタシア」 執事はそう言うと、アリエナイッティを虫籠に入れる。 そして、アリエナイッティが持っている宝石に気がつき怪訝な顔を浮かべた。 「……それは、ロシア大使夫人へのプレゼントではありませんか。 何故貴女が持っているのです?」 マイケル・ムアーはアリエナイッティから宝石をむしりとると裏に細工されている部分を開ける。 「むむ!ここに入っているカプセルはどうしたのですか!? もしや貴女は国際警察の回し者ですか! まさか我々の作ったウィルスの密輸ルートがばれてしまうとは!」 興奮した執事は虫籠を割れんばかりに両手で鷲掴み。 すると疱瘡だらけの女が身をよじらせながら呻き声をあげ その眼球部分から丸い玉を生み落とした。 「おおぉ!」 執事は虫籠を放り投げ、玉をキャッチせんとする。 しかし… コンっ!硬質な音を残し床に落ちる玉。 それは一瞬にして光輝き、アリエナイッティは光に包まれた。 同時に走馬灯のように巡るアリエナイッティの想念。 命の記憶。星の記憶。宇宙の記憶。時の記憶。 すべての記憶がアリエナイッティに流れ込んでゆく。
「……見ましたか。このすばらしいエネルギーの光を」 執事は武者震いしていた。 「この玉一つから、十億バレルのエネルギーが抽出出来るのです。 それを生み出すのはこのアナスタシア。 至高のウィルス【パラドンコリア】と共生出来し選ばれた聖女」 ここまでの話をまとめるとこうだ。 アリエナイッティは瑠美のために宝石をすり替えに来た。 だが目的の宝石には細工がされていて パラドンコリアというウィルスのカプセルが仕込まれている。 それはロシアに密輸するためだった。 マイケル・ムアーはロシア側にウィルスの適合者が現れるまでウィルスを密輸し続けているのだ。 アリエナイッティも噂を知っているかも知れない。 ロシアで起きている怪事件を。 精神病患者らしき者が、死ぬ前に不思議な世界を見たと喚き 内側から花開いたかのような変死体と化すことを。 「ですが、もっと効率的に石を手に入れる方法があるかも知れない。 見て下さい小人さん。アナスタシアの左目を」 よくみると石が産み落とした女の左目には穴が空いていた。 さらに目を凝らすと、蜘蛛の巣のように張り巡らされた神経らしきものの 向こう側に広い世界が広がっているのが見える。 「小人さん。貴女はこの世界について知っていることはありませんか? きっと向こう側の世界には大量の石があります。 それがあれば、この世界のエネルギー問題をすべて解決出来ることでしょう」 【パラドンコリア:神経細胞に影響を及ぼすウィルス】
>「なにやら騒がしいと思ったら、これは小人さんではありませんか。 私の研究の役に立つかもしれませんね。 お持ち帰りさせていただきましょうか」 「あなた、私が見えるの……!?」 アリエナイッティは、姿を消している限り普通の人間には見える事は無い。 見えるとしたらとびきり純粋な心を持っているか、もしくは、向こう側を垣間見てしまったか…… いずれにせよ”向こう側の世界”と交信する素質を持っているということ。 成す術もなく虫かごに入れられてお持ち帰りされる。 >「ただいま…アナスタシア」 連れてこられた部屋では、女が拘束されていた。 「……彼女に何を!?」 マイケルは、アリエナイッティの問いには答えず、持っている宝石に目を向けた。 >「……それは、ロシア大使夫人へのプレゼントではありませんか。 何故貴女が持っているのです?」 >「むむ!ここに入っているカプセルはどうしたのですか!? もしや貴女は国際警察の回し者ですか! まさか我々の作ったウィルスの密輸ルートがばれてしまうとは!」 「……知らない! ただ間違えて偽物がこちらに来てしまったから本物を持って来ただけ」 秘密をバラしてしまったアリエナイッティだが、幸いというべきかマイケルは聞いていなかった。 女の眼球から出てきた宝石に目の色を変えて飛びつく。 「それは……!」 妖精界、精神世界、イデアの世界などと様々な名で呼ばれるが、要するにこの物質世界ではない場所にあるべき力の結晶。 こちらの世界に出て来てはいけない物。 >「小人さん。貴女はこの世界について知っていることはありませんか? きっと向こう側の世界には大量の石があります。 それがあれば、この世界のエネルギー問題をすべて解決出来ることでしょう」 アリエナイッティは悟った。 この男は超えてはいけない一線を越えてしまった。見つけてしまったのだ、“向こう側の世界”を……。 「気付いてしまったからには教えるしかないようだね……。 いかにも、私は君が言うところの”向こう側の世界”の住人。物質ではなく精神に軸を置く精神生命体だ。 ところで世界にあるエネルギーが有限だとしたら、どんどん少なくなってついには無くなってしまうと思わないかい? 私達の役目はこの物質界で材料を集めてエネルギーを作り出す事なんだ……。 材料は、人間の喜びや感動や温かい心。とても膨大な量を集めてやっとあの石一つが出来る。 とても時間がかかるから、少しずつしか供給できない。 あれを大量に持って来たりしたら、一時はエネルギー問題は解決するかもしれない。 でもすぐに世界は滅びの道を歩むことになる……! 今ならまだ間に合う、馬鹿な真似はやめるんだ!」
「ほほう。ということは…、 君たち小人はこっちの世界の人間の感情を利用して あの石を生成しているというわけですか。 だとしたら、それはいったいなんのためです? 君たち小人はあの石を一体何に使っているのですか?」 マイケル・ムアーは鋭い目付きで問う。 それとアリエナイッティが言った滅びの意味を考えていた。 「ならば私はこの石を、世界が滅びない程度に使いましょう。 この石を上手く利用したら、エネルギー源に困るたくさんの人たちに幸せを与えることができるはずです。 そうすれば幸せが幸せを呼ぶことになる。 それならあなたにも協力できますよね…。 そう、このアナスタシアのように…」 暫し、流れ落ちる沈黙。 鎖に拘束された女は、 まるで人形のように動かない。 「彼女の国はエネルギー源に乏しく貧しかった。 だから私の研究に協力してくれた。 残念ながら、実験で正気を失ってしまいましたがね……」 そう言って、ムアーの顔は無表情になる。 「君がこの世界と向こう側の世界の架け橋となってくれるのなら、 アナスタシアはこの苦役から 解放されることになるでしょう。 今すぐにワクチンを投与すれば、彼女は元の健康な体に戻ります。 あなたが向こう側の世界から、石を大量に持って来てくれさえしたら 幸せは永遠に続くとは思いませんか?」 ムアーはアリエナイッティが、二つの世界を簡単に行き来できると思っているらしい。
一方、プニョは干からびてつぶれていた。 パッと見た感じではゴミだ。 先程、連れ去られるアリエナイッティを助けようとして、 不運にも関係ないデブに踏まれたのだ。 「……」 つぶれて細くなった目を懸命に開く。 ピクピクと両手足を痙攣させながら息を吸う。 するとプニョは膨らんで元に戻った。 戻って、外に出てゆく。 すると庭では少年が、SPたちを一人で伸していた。 それを見ている瑠美は手をパチパチ。 少年を見たプニョは叫ぶ、 「来てー!アリエナイッティ……捕まったのぉ!」 「……」 ドガッ! 次の瞬間、瑠美は目を疑った。 なんと少年はプニョを蹴り飛ばしたのだ。 「君はもののけかい? この近辺を包む妖気の正体は君だったのかい?」 「やめて!その子は私のお友だちなの。 ねぇ、アリエナイッティがどうかしたの!?」 「……つ、つかまったの」 「う、うそよ」 瑠美は頭が真っ白になる。と、同時に涙がこぼれてきた。 お人好しの小人が勝手に助けてくれるといい、勝手に失敗した。 涙が溢れて止まらない。 「……わたし、行かなきゃ。 アリエナイッティを助けに、行かなきゃ」 プニョのお腹を撫でたあと、瑠美は駆け出した。 するといつの間にか、プニョは瑠美の涙を吸って大きくなっていた。 そして走りながら成人していく。 とても怖い感じがしたが、そんなのかまわない。 大人になったプニョは、ガラス窓を割り会場に乱入。 階段を降り、三人はアリエナイッティのいる地下室へと降りてゆく。 「アリエナイッティーっ!」 瑠美は叫んだ。声が掠れてしまうくらい大きな声で。
>「ほほう。ということは…、 君たち小人はこっちの世界の人間の感情を利用して あの石を生成しているというわけですか。 だとしたら、それはいったいなんのためです? 君たち小人はあの石を一体何に使っているのですか?」 「石を生成している……といったら語弊があったね 人間の感情を糧に私達が生き、その結果副産物としてあの石が出来る、と言った方が正しいかな」 ムアーは女を人質に、向こうの世界から石を大量に持ってくる事を要求。 首を横に振るアリエナイッティ。 「あの石が持つ凝縮され過ぎたエネルギーはこちらの世界にあっては害になる……」 害になる、とはどういう意味か。 これは一例だが、もしかしたら石は強力な放射能物質なのかもしれない。 原子力発電に使えば確かに現代のエネルギー問題は解決する事は出来るが、未来に残るのは大量の放射性廃棄物だ。 「ならば協力してもらうまでです」 「くっ……」 瞳に狂気を宿し近づいてくるムアー。ここに来てアリエナイッティはある事に気付いた。 ムアーが特別な力を持つわけでは無く、ジャムがかかっているから見えているだけなのだ。 ジャムさえ取れればまだ希望はあるのかもしれないが…… その時だった。 >「アリエナイッティーっ!」 留美や、大人の姿になったプニョ達が駆け込んできた。 「留美……! 話はあと、すぐに警察を呼んで!! プニョ、私に水鉄砲をかけて!」 プニョの水鉄砲によって、ジャムが洗い流される。 留美と一緒に入ってきた少年がムアーを睨み付ける。 「この近辺を包む妖気の発生源はお前か……! 正体を現せ!」 「今度こそ上手くいくと思っていたのに、とんだ邪魔が入りましたね……」 ムアーが妖魔のような姿に変化していく――!
>「留美……! 話はあと、すぐに警察を呼んで!! プニョ、私に水鉄砲をかけて!」 「う、うん。わかったわ!」 瑠美は携帯電話で警察を呼んだ。 するとムアーが化け物に変わってゆく。 自分の手に何かの注射を打ったようだ。 「わからねぇやろうにはなぁ、イエローカードだぞぉ」 ばさりと広がる複数の羽根。深くなるほり。 まるでその姿は悪魔のようだった。 「俺ちゃんはぁ!人類を救う!神様だあああ!」 ムアーは叫び試験管を投げる。 すると床や壁がみるみるうちに腐ってゆく。 何でも食べる菌が溢れたのだった。 そんななか、アナスタシアがムアーにすがりつく。 「もうやめて下さい。本当のムアーに戻って下さい。 昔の貴方は呆れるほど真っ直ぐで、単純で、お人良しで、 困った人を放っておけないバカだったじゃないですか? その癖、自分のことなんて全く省みないし、弱いし、後先考えないし、すぐ騙されちゃうような人。 けれど、昔の貴方の周りには、たくさんの人がいましたね。みんな誰もが、幸せそうでした。 お願いですから、昔のムアーに戻って下さいな」 「五月蝿いんだぞ!俺ちゃんは昔も今も変わってないんだぞ。 あの妖精が全人類を救えるチャンスがありながら、 言うことを聞かないから悪いのだ!」 菌がむしゃむしゃと床を食べて広がってゆく。 瑠美はびっくりする。 「そんなことなんてどうでもいいから! それよりアリエナイッティ。宝石は取り替えてくれたの?」 そう言って、瑠美はアリエナイッティを持って逃げる。 それに謎の少年もプニョも続く。 「みなさーん、逃げて下さぁいっ!地下に化け物がいまーす!」 階段をあがると、ロシアの大使館夫人と肩がぶつかる。 その衝撃で夫人が首飾りを落としたので瑠美はすかさずアリエナイッティに合図をした。 (さあ今よ!) そして、轟音。 ムアーが床を破壊しながら現れる。 その足にはアナスタシアがしがみついている。 「何処だ妖精!お前のせいで俺ちゃんは怒っちゃったのだぞ。 おまえが自分のことしか考えない愚か者だから悪いのだ! あーそうか。妖精は人間じゃないから人の不幸など本当はどうでもいいのだろ?この偽善者め」 ムアーの罵声に瑠美は顔を真っ赤になり… 「何を言ってるの?アリエナイッティは私を助けてくれるとても良い妖精よ。大切なお友だちなんだからぁ!」 と怖くなって叫び返す。 「それは蛾が光に向かって飛ぶのと同じ、単なる妖精の習性なんだよ」 ムアーは瑠美を睨み付けている。 果たしてアリエナイッティとは何なのだろうか。 感動怒涛のフィナーレまでは、あとわずかなのだった。
引き留めるアナスタシア、聞く耳持たないムアー。 どうやらこの二人は親しい間柄のようで、こんな事をされた今でもアナスタシアはムアーを愛しているらしい。 >(さあ今よ!) そういえば当初の目的をすっかり忘れかけていたが、このごたごたを切り抜けた後に重要になるのはそこだ。 瑠美の合図に応え宝石をすり替える。それは必ずみんなで生きて帰るという決意。 巨大な化け物へと変貌したムアーが一同の前に立ちはだかる! >「何処だ妖精!お前のせいで俺ちゃんは怒っちゃったのだぞ。 おまえが自分のことしか考えない愚か者だから悪いのだ! あーそうか。妖精は人間じゃないから人の不幸など本当はどうでもいいのだろ?この偽善者め」 「何度言ったら分かるんだ、一時しのぎで今の時代はよくなっても結局地球は破滅の道を辿る! それでもいいのか!?」 そう言って、アリエナイッティは気付いた。そう、普通の人間にとってはそれでいいのだ。 自分が死んだ後の遥か後の時代の事なんて知ったこっちゃない。 ムアーの言葉を借りて言えば自分の時代の事しか考えない愚か者。それが人間の尺度。 そして、それは方向性は違えどこちら側も一緒だ。 長期的な世界の均衡の前には今の時代のエネルギー問題なんて些細な事。 現にエネルギー不足で苦しみながら死んでいく人々の声は届かない。それが妖精の尺度。 詰まるところどっちも偽善者。両者はどこまでいっても平行線で、交わる事はない。 瑠美の叫びが響く。 >「何を言ってるの?アリエナイッティは私を助けてくれるとても良い妖精よ。大切なお友だちなんだからぁ!」 「瑠美……」 アリエナイッティは思い至る。自分とムアーは一つだけ、違う事がある。 自分は身近にいる”大切なお友達”を傷付けるような奴は許さない。 たとえ妖精がそういう風に出来ているからだって、構わない。 >「それは蛾が光に向かって飛ぶのと同じ、単なる妖精の習性なんだよ」 「そうかもしれない! でもそんなの関係ない! 目の前にある光すら見えなくなったらお終いじゃないか――! 分からないの!? その人、そんなにされて今でもお前の事を……」 「うるさい……黙れぇええええええええええええええ!!」 激昂し、暴虐の限りを尽くすムアー。 アリエナイッティ達妖精は不思議な魔力は持つが戦う力は持たない。 武力行使で人間界に影響を与える事はできないようになっているからだ。 しかし、一つだけそれができる方法がある。それは、人間からの協力を得る事! 「瑠美……お願いだ、私と一緒に戦って欲しい! キミに私の妖精の魔法の力を貸そう!」 魔法の光が瑠美を包み込む――!
>「瑠美……お願いだ、私と一緒に戦って欲しい! キミに私の妖精の魔法の力を貸そう!」 「え〜?……う、うんっ!」 瑠美は、その場にぴょんと跳ねる。 それは特に意味はなかったが次に全身が光った。 虹色に光って、目だけがぱっちりしている。 「螺旋の心。はじけるいのち。 愛の光よ。精霊の輝きよ。 光へ導け、すべての心を」 そして光は形になる。 魔法少女となった魔法瑠美が誕生する。 「私のためにアリエナイッティーは頑張ってくれたから、 次は私が頑張るばんよ」 「ふん、何が頑張るだ。 お前が頑張っても救われるのはせいぜいその腐れ妖精一匹だけだろうが。 俺ちゃんは世の中全部を救おうとしてるんだぞ」 ムアーは懐からパラドンコリアをとりだし左手の義手にはめ込む。 すると熱線が放出されて瑠美を吹き飛ばした。 「見ろ。この凄まじいエネルギーを」 「……あいたたた」 瑠美はこんがり焼け寝転がっていた。 魔法の加護を受けていなければ死んでいたかもしれない。 そしてムアーは瑠美の首を締めて持ち上げる。 「ふふふ、妖精の目の前でくびりころしてやろうか? 妖精どもがどうしても世界の均衡を守りたいというのなら 増えすぎた人間を殺せばいいだけのことではないか。 今だって人類は未来のことなど考えずにエネルギーを貪り尽くしているのだぞ」 そう言ったあと瑠美は壁に投げつけられた。 体をしこたま打ち付け、ぽてんと床に転がる瑠美。 「……どうだ妖精。お前が戦いに引き出したのだ。 お前のせいで、あの娘が痛い目にあっているのだ。 くっ、くはははは! 守れず救えず…無能なる妖精がぁあっ!!」 その時、たか笑うムアーの体に異変が起きた。 なんとパラドンコリアがムアーの体を取り込み始めたのだった。
瑠美はよろよろと立ち上がる。 「アリエナイッティは、無能なんかじゃない。 みんなにとても大切なことを教えてくれてる…。 そうよ。どんなにエネルギーがあったって人は足りることなんてない。 あなたのように科学の力でなんとかしたいっていう欲求だけじゃ人は救われないのよ。 ものは奪いあったら足りなくなる。 でもわけあったら不思議とあまるものなのよ。 人間に必要なものは最高の知恵なんかじゃないの。 ……優しさなのよ」 「うぐぐぐ、小娘がっ。ほざくなぁ!」 ムアーの体は粒となりパラドンコリアに吸収されてゆく。 「ムアーっ!」 ムアーにすがりつくアナスタシア。 「……ココリコ坂を、一緒に歩いたことを、覚えていますか? 異国の地で、独り寂しく過ごしていた私に、貴方はやさしくしてくれましたね」 「……あぁ、覚えている。忘れるものか。 あのとき、坂の上に見えた青い空に、 俺ちゃんは人類の幸福を誓ったのだから」 ムアーは遠く思いを馳せている。 「……でも、それももう、終わりのようです」 「ああ…」 パラドンコリアに吸収されることによって ムアーには諦念が生まれていた。 「……今、わかった。俺ちゃんは間違っていたのだな。 パラドンコリアは魂の結晶だ。 この結晶を核にして無数の命が輪廻を繰り返す。 だからこの結晶には星の記憶も刻まれていたのだ。 今、パラドンコリアと1つになることによって、俺ちゃんはすべてを理解できたようだ」 魂の源でもあるパラドンコリアはその習性か命を吸う。 それは星の重力が小さな隕石を引き寄せるが如くだ。 「すまんアナスタシア。お前には苦労をかけた」 「いいえ、あなたと過ごした時間は、私の宝物でした」 アナスタシアは、ムアーがパラドンコリアに吸い込まれ消えた瞬間に それを自分の体に抱き抱え異世界に戻した。と同時に石に触れた己の体も パラドンコリアと道連れになるかのように共に消えて行く。
「……ちょっ」 消えてしまった二人に、瑠美は茫然。 でも茫然としている時間は長くはなかった。 二人が消えた場所。パラドンコリアが異世界に帰った場所に 時空の歪みが生じ、ブラックホールのように空間を吸い込み始めたのだった。 「法則が乱れてしまったんだ!」 瑠美のクラスメイトの少年が叫んだ。 「アリエナイッティ……。優しさってなんだと思う? 誰かを助けるために税金をあげたら 税金があがったおかげで生活が苦しくなったりする人もいるの。 あとね、命をかけて心から誰かを思ったりするなんて親とか恋人しかいないって思ったら 人にやさしくできることって素晴らしいことって私は思うの。 みんな自分のことは大切に思って生きてるから」 「瑠美?」 少年が驚いた様子で瑠美をみる。 「あの二人は悲しい人たちだったよ。 だから、ぜんぶ、丸ごと、 きれいに解決してあげなきゃならないって 私は思うのっ!」 瑠美はブラックホールを消滅させるため、魔法スティックふりかざす。
>「見ろ。この凄まじいエネルギーを」 アリエナイッティは、魔法少女となった瑠美をもあっさりと吹き飛ばす凄まじいエネルギーに戦慄する。 「瑠美……!」 >「……どうだ妖精。お前が戦いに引き出したのだ。 お前のせいで、あの娘が痛い目にあっているのだ。 くっ、くはははは! 守れず救えず…無能なる妖精がぁあっ!!」 ムアーを悲しげな目で見つめながら呟く。 「……そうだよ。あなたと一緒。 あなたのせいで、その女の人は痛い目にあってる。 あなたは愛する人を犠牲にしてまで人類を救いたいの? 本当は人類を救った名声を得たいだけじゃないの?」 その時異変は起こった。ムアーがパラコンドリアに取り込まれていく。 そして、瑠美が立ち上がる。 もし生身のままあの攻撃を受けていたら命は無かった。 そういう意味では、確かにアリエナイッティの力が瑠美を守ったのだ。 >「アリエナイッティは、無能なんかじゃない。 みんなにとても大切なことを教えてくれてる…。 そうよ。どんなにエネルギーがあったって人は足りることなんてない。 あなたのように科学の力でなんとかしたいっていう欲求だけじゃ人は救われないのよ。 ものは奪いあったら足りなくなる。 でもわけあったら不思議とあまるものなのよ。 人間に必要なものは最高の知恵なんかじゃないの。 ……優しさなのよ」 その後自体は急転直下。 全てを悟ったムアーと共に、アナスタシアも消えていく。 それだけでも一大事だが、アリエナイッティはそれどころじゃない程の異変を感じた。 瑠美の同級生が叫ぶ。
>「法則が乱れてしまったんだ!」 宇宙の法則が乱れる――それは世界の滅亡を意味していた。 要するにこのままでは世界の全てがブラックホールに吸い込まれて滅亡してしまう! こうなってしまってはもはやそれを止める手段はない。 アリエナイッティはがっくりと膝をつきながら呟く。 「なんということだ……世界はお終いだ……」 そんなアリエナイッティを勇気づけるように、瑠美が語りかける。 >「アリエナイッティ……。優しさってなんだと思う? 誰かを助けるために税金をあげたら 税金があがったおかげで生活が苦しくなったりする人もいるの。 あとね、命をかけて心から誰かを思ったりするなんて親とか恋人しかいないって思ったら 人にやさしくできることって素晴らしいことって私は思うの。 みんな自分のことは大切に思って生きてるから」 「瑠美……?」 瑠美の体が神々しく輝いている。まるで後光が差しているかのよう。 もはや魔法少女では無い、女神だ――そう思った。 >「あの二人は悲しい人たちだったよ。 だから、ぜんぶ、丸ごと、 きれいに解決してあげなきゃならないって 私は思うのっ!」 ステッキを構えて魔力を練り上げはじめた瑠美を見て思う。 ……出来るかもしれない。今の彼女なら救えるかもしれない。 力を使い果たし気が遠くなりかけた時、瑠美は幻を見たような気がしただろう。 今まで一貫して小人や小動物だったアリエナイッティが、成人女性の姿になっていた。 瑠美を後ろから抱くように、ステッキを握る瑠美の手にもう一つの手が重ねられる。 「そうだね……諦めたらそこで試合終了だ! できる、私達なら!」 手を通じて温かい力が流れ込んでくる。 それはアリエナイッティが世界中から少しずつ集めた人々の優しさの力。 「螺旋の心。はじけるいのち。 愛の光よ。精霊の輝きよ。 光へ導け、すべての心を……いくよ瑠美!」 眩い光と共に、力を解放する!
>「そうだね……諦めたらそこで試合終了だ!できる、私達なら!」 アリエナイッティの手を通じて瑠美に温かい力が流れ込んでくる。 それはアリエナイッティが世界中から少しずつ集めた人々の優しさの力だった。 >「螺旋の心。はじけるいのち。愛の光よ。精霊の輝きよ。 光へ導け、すべての心を……いくよ瑠美!」 眩い光と共に解放されるエナジー。 魔法ステッキから放たれた光の奔流がブラックホールへと注がれると、 凝縮された闇は暴れ、のたうち回り そして最後には消滅した。 しーん…… 舞踏会の会場は沈黙。 疲れはてた瑠美は安堵してしゃがみこむ。 その姿は魔法瑠美ではなく普通瑠美となっていた。 「おなか、すいちゃった…」 テーブルのうえのケーキをモシャモシャと食べながら瑠美の胸に悲しみがこみ上げる。 瑠美の親は宝石商なので裕福な人たちがお客様で その人たちのおかげで瑠美は生きているのに 世界には貧しい人もたくさんいるのだ。 ムアーがその人たちを救おうとしていたと思うとやっぱりかなしくなる。 現実に絶望も感じる。 でもその時、アリエナイッティからもらったエナジーの欠片が 綿毛のように漂って、 瑠美の頭のなかに走馬灯のように映像をみせた。 それは貧しくても頑張って生きる家族の姿。 彼等はみんな思いやり生きていた。 なので瑠美の目から涙がこぼれた。 そして瑠美はふと気がついた。 アリエナイッティの姿が見えないことに。 「え、えっ!?どこ、アリエナイッティ!」 悲しい気持ちが溢れてくる。 もしかしてブラックホールに吸い込まれてしまったのだろうか。 さっきまで手を触れていたのにいない。 瑠美は辺りを皿のような目で見渡した。 「ま、まだありがとうもいってないのに……。 どうして?また旅にでも出ちゃったの? ねぇアリエナイッティ!ずっと一緒にいてよっ! 妖精族の変わり者で、私がいなきゃボッチのくせに……」 【果たしてアリエナイッティは?】
ブラックホールの闇がのた打ち回り、光の力と拮抗する。 アリエナイッティは確信した。自分が人間界へと送り出された意味を。 (いける……私の存在の力を全て注ぎ込めば!) それは自己犠牲、などという大層なものではない。 妖精の世界、つまり精神世界においては一つは全て、全ては一つ。 人間界に派遣された妖精は、便宜上固体として具現化しているだけの精神世界の端末に過ぎない。 でも、少しだけ悲しいのは何故だろう。 それはほんのわずかな時と言えどこの世界で瑠美と時間を共にしてしまったからだ アリエナイッティとしての個を持ってしまったからだ。 (ありがとう、瑠美……) 姿が消える直前、瑠美に首飾りをそっとかけた。 小粒ながら眩い輝きを放つ宝石。無害な程に微小なパラコンドリアの破片。 魔的なエネルギーの固まりであるそれは逆に人に活力を与える。 またの名をこの世界の昔話に出てくる”妖精の塵”――フェアリーダスト。 どれぐらいの時が流れただろうか。 いや、時間と言う概念は意味をなさない。 (アリエナイッティ……) アリエナイッティ、何の事だろう、でも、とても懐かしい響きだ。 (アリエナイッティ。あなたを必要としている者がいるようです) どこからか、声が聞こえてきた気がした。 ――ま、まだありがとうもいってないのに……。 どうして?また旅にでも出ちゃったの? ねぇアリエナイッティ!ずっと一緒にいてよっ! 妖精族の変わり者で、私がいなきゃボッチのくせに…… 「瑠美……!」 そうだ、アリエナイッティは私の名前。 全てを思い出したアリエナイッティは、瑠美のもとへ向かう。 そして―― 数日後、数か月後、数年後あるいは数十年後……どの可能性もある。 どれであっても妖精の尺度においては些細な違いだ。 とにかく、瑠美とアリエナイッティは再び会い見える事となる。 「妖精は本来、個を持たない。人間界に来るときに便宜上名前を与えられるだけ。 でも瑠美が忘れないでいてくれたから。私の名を呼んでくれたから、また会えた……」 瑠美とアリエナイッティの、新たなる冒険が始まる!
【タイムトラベルファンタジー・クロノブレーク】 神々が当たり前のように地上を闊歩していた時代、ガイア紀。(BC.99997000) 高度な魔術で繁栄が築かれていた時代、ギャグファンタジア王国期。(BC.12000) 魔と現が分断して別れ、それぞれに発展を遂げてゆくダブルスピラ期。(AD.1999) 悠久の時を経た歴史が、再び幻想や神秘と邂逅するレヴァリアース期。(AD.2015) 遥かなる未来、全知全能の機械が世界の全てを支配するユビキタス期。(AD.4000) 時を駆ける力で五つの時代を巡り、世界の滅亡を救え! ……まで思いついた
ソシャゲっぽくていいかんじ
あの分かたれた二つの世界を巡る伝説のバカゲーから15年の時を越え、再び時は動き始める
「クロノブレーク」来春発売予定!
「うをおおおおおおお!! ずっと待っていたの、この時を――!!
つーか
>>149 にあらゆる意味でのマニアがいる! 一体何者なんだ!」
名前:黒野 鳥芽(くろの とりが)
職業:ニート
ちゅんちゅん
「夢か……そろそろ発売してもいいと思うんだけど」
天の声(いい加減諦めろよ)
J( 'ー`)「黒野〜いつまで寝てるのー?
今日はフンドシマッチョ王国建国1000年漢祭りに行くんでしょ!」
「行かねーよ!? 何だよフンドシマッチョ王国って!」
多分続かないが続く可能性も微レ存
>「行かねーよ!? 何だよフンドシマッチョ王国って!」 「ばかもん。はやく褌マッチョに着替えないか」 寝起きの黒野をごりごりの大男が無理矢理脱がせ褌マッチョにする。 そう、彼の名前は黒野くまもん。 黒野鳥牙の父親である。 そこへ飛んできたのはクポドン。 かわいいなまえだが大陸間弾道ミサイルであった。 どっかーん! 「きゃあ♪やったわぁあん」 向こう岸の城から歓声が聞こえる。 隣の国の王女、クローノ・クロスの仕業だ。 「ねぇねぇ、キミのお父さん死んじゃったぁ? でもそれってみーんなあなたのお父さまが悪いのよん。 だって千年祭りのあのポスター、 糞ほど下品だったじゃないのん」 どこかで聞いたような話だった。 JRのポスターで、セクハラと訴えられた岩手県のはだか祭りのことだ。 熊野さんの口髭と胸毛が気持ち悪いと訴えられたのだ。 「ああ〜すっきりしたわぁん。おほほほほほ」 王女クローノは高笑い。 二つの国は千年以上前からなかが悪いのだった。 「いかんっ!しっかりするんだ」 大親友の黒野鳥牙が駆け寄ってくる。 二人は同姓同名であった。 本当にリアルな物語を追及するのなら同姓同名もいる。 現実では佐藤は何人もいるのだから。 「あいつらははだか祭りを羨ましく思ってるんじゃね。 きっと自分たちが裸になれないもんだからじゃね。 ちくしょー、悔しかったら裸で踊ってみろ糞ババー」 「ああ、黒野。過去に戻れたらいいなぁ。大昔は褌もなしで 完璧な全裸で踊っていたそうだぜ」 ヨダレを垂らしている黒野。 それを聞き耳をたてて聞いている王女。 「な、なんですってぇ!」 電撃が走り白目。
>「ああ、黒野。過去に戻れたらいいなぁ。大昔は褌もなしで 完璧な全裸で踊っていたそうだぜ」 >「な、なんですってぇ!」 「な、なんだってー!?」 倒れていた黒野くまもんが鼻血を噴出しながらがばっと起き上がる。 スケベ心もここまでくるとあっぱれだ。 「出鱈目を言うのもいい加減にしなさい、どうせ口から出まかせでしょ! そんな大昔の事なんて分かるわけないじゃない!」 「ぐぬぬ……分かるぞ! 過去にタイムスリップして証拠写真を撮って来れば! 俺はやるぞお! っしゃあ!裸祭りを激写するぞお! ……という訳で鳥芽、過去に行って裸祭りを激写してきなさい」 「ええっ俺かよ!?」 「幼馴染の自称美少女天才発明家に相談してみるか。 今日は物体転送装置の実験をやるとか言っていたはずだ」 と、親友の鳥牙で自称美少女天才発明家の元へ向かう。 「あ、丁度いいところに来た! 見なさい、私の天才的な発明を!」 その時まさに物体転送装置の実験の真っ最中。 「「「えっほ、えっほ」」」 そこにあったのは、飛脚の姿をしたフンドシの小さいおっさん達が ポイントからポイントへ荷物を運搬している姿だった。 「……いや、確かに転送されてるけどさあ! 一般的なやつとちょっとイメージちがくね!?」
× と、親友の鳥牙で自称美少女天才発明家の元へ向かう。 ○ と、親友の鳥牙の提案で、自称美少女天才発明家の元へ向かう。
西暦2XX1年。 核戦争も、UFOの襲来も無く、科学文明が自然との共存を可能にし始め、やがて人類の宇宙への進出が現実のものになろうとしていた未来。 危機は、意外な所から現れた。 「妖怪」の出現である。 地底でも海底でもまして次元の裂け目でもなく、まるで風が吹くように唐突に出現したそれらは、 40mを越える巨体と、凶悪な特殊能力を武器にもち、無数の小型の妖怪を引き連れた怪物、妖怪は、人類文明に対して問答無用と殺戮と破壊をばら撒いてきた。 更に、気体、液体、固体、そのどれにも属さない物質で構成されたその体には、人類の化学兵器、その一切が全く効果を及ぼすことは無く。 世界各地に次々と現れる巨大な妖怪達に、人類文明は成すすべなく蹂躙されるしかなかった…。 西暦2XX3年 世界各地には20体以上もの巨大な妖怪が各地を蹂躙しながら存在しつづけ、人々は少しでも安全な場所を求めて、地下都市の建造を進めていた。 もはや世界に希望は無い……かに思われたが……。
西暦2XX3年8月15日 日本 群馬県某所 かつて数万の人口をほこったその町に、最早人の気配は無い。 さんさんと降り注ぐ午後の日差しの中、街の大通りを進むのは、身の丈40mに達しようと言う、巨大な……猫。 既に放棄されたこの街の住民は疎開し、がらんとした大通りを進むその巨大な猫に、風に吹かれた新聞紙が一枚、飛んできて、その体をすり抜けて飛んでいく。 そう、この巨大な猫こそが「妖怪」、突如東京を襲撃し、自衛隊中央即応集団と空挺部隊を全滅させて数万人の人間の命を奪った、恐るべき怪物!コードネームは「化け猫」だ。 都市中央の大通りを進んでいた化け猫は、不意に身をかがめると、電光石火の速度で近くの6階建てのビルに突っ込んでいき、ビルの外壁をたやすく貫通し、反対の壁をぶち破って地面に着地した。 妖怪は、外部からのあらゆる干渉を受けないが、自らは、自在に外部に干渉する事ができるのだ。 化け猫はさらに跳躍し、家々を巨大な脚で踏み散らし、発電所を食いちぎり、目から怪光を乱射してガスタンクを爆破して、街を火の海へと変えていく。 それをさえぎるものは何も無い…かに思われた、その時だった!!
「〜♪……〜〜♪」 天空から、「音楽」が聴こえた。 「〜〜♪〜〜〜♪」 やがて、音楽はだんだんと強くなり、音楽に反応した化け猫が宙を見上げると、上空より、何か、自分と同じサイズの巨大な影が、今まさに、地上に向け、降りたたんとしていた。 影めがけ、化け猫は即座に目から怪光を発射する。 「〜〜〜〜♪」 『福音防壁・起動!!』 だが、戦車すらも瞬時に溶解した怪光は、影の表面に出現した緑色の光の膜に弾かれた。 その光景に驚く化け猫の前に、遂に巨大な影が地面に降り立つ。 太陽の光を反射し、光り輝く金属の装甲を持ったそれは、人類の作った人型兵器、そう、巨大ロボットだ!! 「〜〜〜♪〜〜〜〜〜♪」 空から降り注ぐ音楽に合わせて、構えを取る巨大ロボット、その右手にあの緑色の光が集中する。 そして身構える化け猫めがけ、巨大ロボットは右手を突き出した! 『破ぁああああああああ!!』
西暦2XX8年 既に、最初に出現した20数体の妖怪はほぼ全て殲滅され、人類は新たに出現する妖怪たちとの激しい「戦い」の中にあった。 人類が見つけ出した妖怪への対抗策、それはよくある霊能力でも神の力でも無く、「福音」と呼ばれる、「音楽」、もしくは「歌」だった。 それは第四の物質でできた妖怪と同じ形の無い物質であり、「音」に似た存在である「福音」で空間を満たし、更に福音の干渉を受けやすい形の兵器をその中で用いることで、人類は妖怪に対抗できたのである。 福音の影響を受けやすい形、それ即ち人型であり、更に人間によってはより福音の干渉を受け、福音を凝縮して飛び道具や近接兵器としても使用する事が可能なのだ。 故に人類は福音の影響を受けやすく、かつ妖怪に対抗できる兵器として、人型巨大兵器を多数建造、世界各地で、妖怪に対抗している。
しかし、ただ一つだけ、問題があった。 「福音」は、特殊な喉を持つ女性が「声」として発する事が可能であるのみで、その他の方法では発する事ができないのである。 つまり、巨大ロボットと福音を放つ女性、この二つは必ずセットで運用しなければならないのだ。 更に言うなら、福音は単なる声として発するよりも、「音楽」、「歌」として発した方が効果が高く、そして、日に数分間、歌にして1曲(2〜3番ある歌で)分ほどしか発する事ができない。 これら厳しい条件の中、世界中を飛び回って巨大な妖怪達に挑み、勝利を積み重ねていく巨大ロボット使いとそれを支える歌い手達。 人は彼らを…。 【っという所まで考えてて、この彼らの呼び名をタイトルにするつもりなのですが、まだ浮かびません。 何かアドバイスとかお願いします】
うわーい新企画だー!
・ごすぺらーず!
意味はそのまんま福音だけどちょっと笑ってしまうので使えない。ギャグテイストスレならアリか!?
・トゥルヴァドールズ
中世ヨーロッパの吟遊詩人トゥルヴァドールから。各地を旅しながら平和を願って歌ったんだって。
・ヴォーカリオン
ニコ動のロボットアニメ風のボカロ曲に付くタグ「機動歌姫ヴォーカリオン」が元ネタ
語源はヴォーカル+エヴァンゲリオンなんだろう、多分
・Singer†Song†Rider
歌姫《Singer》の紡ぐ福音《Song》の力を借り受け駆使者《Rider》は神の兵器《Vocalion》を駆る!
いつしか彼らの事を人々はこう呼ぶようになった。Singer†Song†Riderと!
なんちって
一応避難所用の板もあるのでもしよろしければ自由にスレ立ててお使いください
ttp://www4.atchs.jp/zikkenban
>>160 アドバイスありがとうございます!
響きがトルーパードールズに近いし、トゥルヴァドールズがこの中だと一番俺の中で輝いてます。
でもごすぺらーずが意味的には一番わかりやすいから何か一部もじってもかっこいいのができないもんかとちょいと考え…。
合体させて、ゴストゥルーパー・ドールズ……ちょいと発音しにくいかな…。
とりあえず仮にタイトルはゴストゥルーパー・ドールズにします!
さて後はテンプレか…まだ考えて無いですが…。
一人一キャラ、歌い手とロボット乗りはNPC禁止でいこうと思ってます。
ロボットと歌い手がコンビじゃないの?って思うかもしれませんが、歌い手が一人でロボットが複数でも、空間は福音で満たされてるわけだから戦えるので問題なく、
戦闘時間は短くなるけどロボットが一杯居れば勝てるし。
逆に歌い手が多くてロボットが一人とかでも、戦闘時間が長くなり、歌い手によって福音の効果が変わったり、メインボーカル以外の歌い手が途中で応援することで補助効果があったりするようにすればいけると思うので…。
偏っても大丈夫かなぁ…と、思ってます。
後、戦いの進め方も、戦闘時間が短いことを前提に、作戦検討と準備(妖怪をNPC軍隊が戦いやすい場所に誘導したり、敵の攻撃方法を想定した特訓したり)が8、実際の戦闘が2くらいの割合でいこうかなと…。
それから、「歌」も、上の奴は「〜〜〜♪」だけでしたが、歌姫で参戦して実際歌う歌なんか考えてくれてたら嬉しいですね。
避難所の案内ありがとうございました!詳しい事が決まっていき、2人ほど人が来たら避難所作ろうかなと思います。
ありがとうございます!
テンプレを考えました。とりあえずこれでやってみたいと思います。 ジャンル:オカルト・戦略・巨大ロボットアクション 【世界観説明】 ○妖怪 突然出現したあらゆる化学兵器を全く寄せつめない未知の存在。 都市部だろうと海上だろうと関係なく、まるで風が吹くように唐突に出現し、破壊の限りを尽くす。 あらゆる物質の影響を受けないため、壁を通過したりもできる。 意思の疎通は不可能。 ○福音 妖怪に対抗できる雄一無二の手段。 特定の女性の喉から発せられる音で、この音の中で妖怪を攻撃することで、妖怪にダメージを与えられる。 歌にする事によって力は増幅し、音は人の形に近いものの方がその恩恵を受けやすい。 ○巨大ロボット 福音の恩恵を強く受ける人の形をした巨大な機械。 福音を凝縮して防御や攻撃にしようしたり、光の剣のような武器としても使用できる。 【ローカルルール】 1:超越、版権禁止、ただし、この物語の世界はわれわれの世界の未来の世界なので、劇中のキャラ達が台詞などで出すのはOK。 2:1週間経過して次の経過して次の順番の人間が書き込まなかった場合、飛ばして書くこと。飛ばされたキャラはプレイヤーが戻るまで以後NPCとするが、基本的に必要最低限以外動かしてはいけない。 3:決定リールなし 4:一人一キャラ、それ以外はNPCとして登場させること。しかし、他の人の出したNPCを動かす時は、なるべく事前に申し出たほうがよい。いきなり殺すのはご法度。 5:敵役参加有、ただし、ストーリーに関わる物を出すのはある程度物語が進んでから!事前にストーリーに関わるのを出したいと相談してから出しましょう。 6:全体のまとめは俺がやります。が、ストーリーの展開は皆で考えていきましょう。
【ストーリーの大まかな流れ】 物語は世界各国を回る独立妖怪遊撃隊「ゴストゥルーパー・ドールズ」を中心に進みます。 で、そのゴストゥルーパー・ドールズの新規創設された部隊に、コテハン達が集まっていく、見たいな感じで始める予定です。 後の話に影響を及ぼす事がある話のある一話完結で話を進めて、各話ごとにメインとなる敵妖怪を動かす人間が交代します。 最初は俺が妖怪動かしますので、希望者の方いましたらお気軽にお声をお掛けください。 で、全体的なルールは俺がまとめます。
ちょいと用事ができたので今日はここまでで…。
|壁|・ω・`)ノ ダレモイナイ、キョシュスルナライマノウチ… 面白そう! 題名も恰好良さげでいいんじゃないですか!? ちょっと気になったんだけど謳い手はどこで歌ってるの? 普通に外で歌ってたら真っ先に妖怪に狙われそう ロボットに同乗するならやりやすいけど二人一組とは限らないみたいだし
【テンプレート】 人物 名前: 性別: 年齢: 国籍: 身長: 体重: 容姿: 役職:(基本パイロットか、福音の歌い手) 福音出力:(歌い手のみ、平均的な歌い手の出力を1とした場合の出力。ロボットの攻撃力、福音防御力の補正値) 福音の特殊効果:(歌い手のみ、通常、一つある。効果が大きいと、福音出力が下がる) 歌唱時間:(福音出力が高かったり、福音特殊効果が強力だったりすると、歌う時間は短くなっていく) おいたち: 備考:
巨大ロボット 正式名称: 愛称: 全高:(一番高い部分の高さ) 重量:(外付けの武器が有る場合、それをつけた時とはずした時があるとよい) 姿形:(人型である事、特徴的なパーツやマーク、カラーリングを書く) 武装:(武器は福音武装、ビル等実体のある物を破砕するための通常武装の2種がある) 戦闘能力(平均的なロボットの合計点数は10、各数値2が平均値。平均的なロボットの戦闘能力は後日描写) 攻撃力:(福音を使った妖怪への攻撃力) 福音防御力:(妖怪の攻撃に対する福音を使った防御力、妖怪の直接攻撃は装甲では防げない) 物理防御力:(物理的な防御力、妖怪が投石してきた時などの防御力の目安) 機動力:(2、以上で飛行可能、1以上でジャンプ可能) 耐久力:(耐久力が高くても、防御力が低いと、腕もがれるなど簡単に機体に不具合が生じていく) 機体解説 妖怪は同じタイプの妖怪が登場する事は無いと思われるので、テンプレ無し!
>>165 参加ありがとうございます!
上の文だと上空から歌ってましたが、空飛ぶ奴とかもでると思うので、作戦によって歌い手の配置も変わってくると思います。
場合によっては、ロボットに同乗するかも知れませんね。
試作キャラクター投下は少し待ってください、飯食ってから作るんで。
名前:長篠 鉄 性別:男 年齢:23 国籍:日本 身長:178cm 体重:67kg 容姿:眉の太い闘士型の体系の男 役職:パイロット おいたち 科学者の両親の間に生まれ、妹達と平和に暮らしていたが、2XX1年の妖怪襲来時に従兄弟、祖父母、友人など多くの肉親と友人を失う。 その後、出現頻度が上がり、激しさを増す妖怪との戦いに、傍観者でありたくないという思いからパイロットに志願、養成機関を経て2年前にパイロットになり、数度の実戦を経験している。 備考 真面目な性格であり、基本と命令に忠実、しかも奇策にも順応できる。 ただ、人付き合いの方は角が立たないように振舞う余り八方美人になりがち。 趣味はクロスワードパズルで、はじめると終わるまでじっと集中してしまう。 操縦技術は卓越したものは無いが、全ての面で標準的にまとまっており、可もなく不可もない。 普段は隠れているが、そこの部分には熱い感情が隠れており、最後まで戦い抜き、平和を掴み取ろうという強い意志を持っている。
正式名称:零九式対妖怪人型兵器 愛称:ゼロキュー 全高:46m(頭頂高) 重量:弾薬フル装備時7500t 姿形 角ばった灰色の四肢胴体、肩部のみ球体で、廃部人間で言う肩甲骨の部分に左右一門づつ噴射口を持つ。 右肩の表と、背中の中央に製造番号が大きく書かれており、長篠機は本来4だが、ゴストゥルーパー・ドールズ加入しているため、GDの2文字に変更されている。 頭部はフルフェイスヘルメットのようなバイザー型 武装:頭部熱線砲×1(バイザー内から放つ熱線、妖怪の投擲する岩石や瓦礫等を簡単に粉砕する威力がある) 福音拳(両拳に福音をまとい、殴る) 福音機銃(五指の先から凝縮した福音を機銃のように連射する) 妖撃弾(胸部が開いて現れる必殺のミサイル。周囲の福音を凝縮し、発射する。妖怪を一撃で爆発四散させる威力があるが、発射後、しばらく福音防御能力を失う上、一発しかない) 戦闘能力 攻撃力:2 福音防御力:2 物理防御力:2 機動力:2 耐久力:2 機体解説 自衛隊の対妖怪主力兵器。 世代交代を終えた最新鋭機で、3ヶ月程で1機生産されていて、先進国である日本の機体だけあって、国際平均値を満たす性能を持っている。 能力に偏りが無いため、苦手とする妖怪はいないが、得意とする妖怪もまたいない。 更に、一つの能力に特化した妖怪との戦いには苦戦を強いられる。
名前:笹倉 桜 性別:女 年齢:35 国籍:日本 身長:155cm 体重:48kg 容姿:髪が長く、目が細く、眉毛が長く、肌も白く、やせていて左手が義手。 役職:福音の歌い手 福音出力:1.0 福音の特殊効果:パイロットを妖怪の精神攻撃から守る(完璧に防げるわけではないが、一撃死は確実に防げる)。 歌唱時間:4分20秒 おいたち 元は保育園の先生をしていたが、最初の妖怪の襲撃で左手と大勢の子供達を目の前で失う。 小さな子供達が傷つき、死んでいく様に心打たれ、準看護師の資格をとり、少しでも身を粉にして働いていた。 その後、各地で実施された歌い手の適合試験に合格し、4年前から歌い手としてして活躍している。 備考 落ち着いた穏やかな性格で、誰にでも分け隔てない態度で接する。 又、子供好きであるが、少々度が過ぎており、ショタコンの域に達していて、子供達からは幽霊のような容姿と相成って恐れられている。 人類の平和のために殉じる覚悟はできており、歌唱中は何があっても、歌う事だけは決して中断しない。 独身。
パシフィック・リムとマクロスがいける人は好きそうなスレだな
唐突に本スレに書き込んでしまいまして申し訳ございません 現在@freaks系統のコンテンツ全体が攻撃を受けている状況です 要するに実験室の避難所は@chsですから、極めてアクセスするのが危険な状況であるということです 別、したらばやわいわいカキコなどに避難所を移行する事を推奨したします
名前:阿部 真里亜 性別:女 年齢:29 国籍:日本 身長:160 体重:50 容姿:裾が引き裂かれたようなデザインの漆黒のドレス、引き裂かれたヴェールが付いたヘッドドレス 役職:歌い手 福音出力:0.9 福音の特殊効果:妖怪の防御力を下げる 歌唱時間:5分30秒 おいたち:特筆するまでもない絵に書いたような平凡且つ幸せな人生を歩んできた が、結婚式当日に妖怪の襲撃にあい、結婚相手が死亡、自身も重傷を負う。 奇蹟的に回復し、皮肉にもその時の怪我がきっかけで福音の歌い手としての力に目覚めた。 以来建前では世界平和のため、本音では妖怪への復讐心を胸に歌姫として活動している。 奇抜な衣装は婚礼衣装を染めてあつらえ直したもので、亡き結婚相手への復讐の誓いの証。 引き裂かれたようなデザインは、妖怪の襲撃を受けた時に引き裂かれた部分をそのまま使用したものである。 備考: 普段は復讐心を燃やしているようには見えない明るい(軽い?)感じの飄飄とした性格。 奇抜な衣装も相まってただの変人に見える。 が、ひとたび妖怪との戦いになると勇敢を通り越して熱くなりすぎる事も。
>171 テンプレ投下してみました。 「妖怪(あいつ)ら……駆逐してやる! この世から……一匹残らず!」 なんてねwww 避難所に素敵な絵を上げてくれた人がいるので是非見てみてください!
>>175 阿部さん、参加ありがとうございます!ちょいと立て込んでおりまして今月中には無理ですが、来月から、始めたいと思っております。
絵を書いてくださった方も、ありがとうございます!!
っすっげーステキな絵でした!
【時間ができたので導入部を上げます】 西暦2XX8年 4月 日本某所 軽い小雨の降る町の中を、長篠 鉄はゴストゥルーパー・ドールズのロゴが入った車を走らせていた。 平日のお昼なので周囲を走る車は稀で、信号に捕まる事も無くスムーズに車は進んでいく。 彼の任務は、新設されるゴストゥルーパー・ドールズ第5遊撃隊、その新たな仲間を迎えにいくことである。 本来ならばそんな仕事はパイロットである鉄ではなく、一般の基地職員が行うべきなのだろうが、同じ戦場で戦う仲間と少しでも早く信頼関係を気づけるように、と、鉄が迎えにいくことになったのだ。 巨大ロボットのパイロットにとって、直接共に戦う同僚のパイロットとの関係は勿論、妖怪に対抗する力を与えてくれる福音の歌い手の性格を知っておく事は、重要な事である。 彼女達の心の動揺が、福音の出力の乱れになり、彼女達の心の高揚が福音出力の安定となって、ロボットの戦闘能力に影響するためだ。 だから、パイロットはどんな戦い方をすれば歌い手が喜んだり、驚いたりするか、意識して戦う必要があるのである。 そのためにも、パイロットは誰よりも、歌い手達の事を理解する必要があるのだ。 ……故に、パイロットと歌い手が結婚するケースは、決して少なく無い。
赤信号でブレーキで車を止めている間、鉄はこれから出会う新たな福音の歌い手について考えていた。 彼女の名前は、阿部 真里亜。 歳は鉄より六つ上で、民間人から歌い手となった女性である。 歌い手になった後の経歴は、まだ鉄の元には配られていない。 恐らく、まずは先入観無く相手と接してみろ、という事だろう。 妖怪の増加に伴い新たに発足したゴストゥルーパー・ドールズの遊撃第5小隊は、未だに人材がまとまっていない。 整備、通信、指揮、等バックアップの人材は既に十二分な人材が揃っているのだが、肝心の歌い手とパイロットがパイロットは鉄、歌い手は笹倉桜の二人しかいない。 既に4っつの部隊に自国の軍の精鋭達を預けた各国政府が、更に作られた第5小隊に貴重なロボット乗りと歌い手達を出し渋っているのがその理由である。 故に、第5小隊の歌い手が増える事は、大変貴重であり、喜ばしいことだ。 (紹介されるまで俺がパイロットである事は伏せておこう。共に戦う人間で無いと考えている方が、相手も地が出やすいだろうし…) 鉄は彼女への対応を頭の中で考えると、青に変わった信号へアクセルを踏んだ。 鉄が向かっているのは、阿部の自宅だ。 ゴストゥルーパー・ドールズは世界各地を転戦するため、長らく自宅へは帰れない。 だから、3日ほど身辺整理の機関を与えられているのである。 やがて、阿部の自宅が近づいてきた。 彼女には、迎えがこの時間に来る事は、しっかりと伝えられている。 (さて、どんな方かな……)
何の変哲もない庭付き一戸建て。表札には「阿部」。 初老の女性が上階に向かって声をかける。 「真里亜―そろそろお迎えが来る時間でしょ」 階段を駆け下りてくる真里亜、と呼ばれた妙齢の娘。 そこで繰り広げられるのは何の変哲もない日常――ではない。まず、娘の服装である。 漆黒のヴェールの付いたヘッドドレスに、引き裂かれたような退廃的なデザインの漆黒のドレス。 一体これからどこへ行こうというのか。先端ファッションの聖地HARAJUKUへ繰り出すとでもいうのか。 「”お迎え”はシャレにならないからやめてほしいな〜」 「おっと失言、あらあらうふふ」 と、軽く親子漫才を交わす母娘の横で、ひたすら泣きまくる父親。 「お―いおいおい、おーいおいおい。 真里亜やー、いかんでくれぇええええ! もうええじゃないか、もう十分頑張った」 異様な光景――。何事かと思うだろうが、実はこちらの方が常識的な反応である。 真里亜、と呼ばれた娘は今から命を落とすかもしれない戦場に赴くのだ。 「やーだね! だって日頃の素晴らしい活躍っぷりを買われて期待の新設部隊 遊撃第5小隊に抜擢されたんだよ? すごいっしょ? すごいっしょ?」 実は扱いに困られて都合よく新設部隊に厄介払いされただけなのだが、本人は知る由もない。 知らぬが仏。その時玄関のチャイムが鳴った。 父親が扉の前にさっと回り込み通せんぼする。 「この家の門はくぐらさんぞお! どうしても行くと言うなら私の屍を踏み越えて……ぐぎゃあああ何をするやめろぉおおお!!」 母親に引き倒されて引きずられていく父親。 その隙に真里亜は玄関の扉を開ける。そこにいたのは迎えの者らしき男性。 「この度遊撃第5小隊に配属になりました謳い手、阿部真里亜と言います! 以後よろしく!」 母親の拘束をすり抜け、迎えの男性に掴みかかろうとする父親。 しかし道半ばであえなく母親に捕まり、再び引きずられていく。 「お前のような男に娘は渡さ……うわなにするぅああああああ!」 「真里亜! このおっさん押さえとくから今のうちに行くのよ!」 「あ、背景が騒がしいけど別に気にしなくていいから」
>153 >「「「えっほ、えっほ」」」 >そこにあったのは、飛脚の姿をしたフンドシの小さいおっさん達が >ポイントからポイントへ荷物を運搬している姿だった。 >「……いや、確かに転送されてるけどさあ! 一般的なやつとちょっとイメージちがくね!?」 「カルチャーがちげーな」 二人の黒野は顔を見合わせ目をぱちくり。 すると幼馴染みの少女が…… 「黒野! 待ってたわよ! だれも、このテレポットの転送に ちょうせんしないんだもの。 こうなったら、あんたやってくれない?」 そう頼んできた。 少女の話では猫では成功したらしいが、 人間ではまだということ。 しかしもしこれが成功したら世紀の大発明だ。 「しょうがねぇなぁ。やってやってもいいけど、 おまえタイムマシン作れるか?」 と黒野。 すると少女は、人間の空間移動が成功したら 考えてみなくもないと答えた。 「よしわかった。それじゃあこの黒野が実験台になってやるよ。なあ黒野?いいだろ?」 ややこしい話だが、この物語には 二人の黒野鳥芽がいる。 彼等は二人で一人。一人で二人。 同じ人間が二人いるのである。 それは完全なる平等から生まれた二つの魂。 「ほらいけ黒野。行かないとビンタするぞ」 緊迫した空気が辺りを包みこむ。 黒野はもう一人の黒野である君を転送実験に推薦するつもりだ。 すると次の瞬間。 「お願いだからいってくれぇっ!」 土下座の姿勢から声を張り上げ 黒野を説得する黒野。 潔く神々しい、そこにはいたいけな少年の姿があったのだった。
地図にあった阿部の自宅、何の変哲もない庭付き一戸建ての前に車を止めて、長篠 鉄は周囲をさりげなく見回した。 周囲には、電線の点検をしているらしい作業員、助手席に人が座っている普通車、そして、散歩しているらしい男性…。 すべて、公安関係者だ。 歌い手は貴重な存在であり、妖怪に対抗できる雄一の手段である。 故に、歌い手を「持たざる国、数が少ない国」からすれば、是が非でも、強硬手段を講じてもほしいものなのだ。 また、歌い手の数は多ければ多いほど自国の妖怪被害を抑える事ができるので、その分国家間の競争においてアドバンテージをえる事になる。 妖怪に対抗できる手段が見つかり、復興が始まっているとはいえ、世界はまだ最初の20数体の妖怪による無差別破壊の傷跡が根深く残っているのが現状で、 そんな混乱の中で、某北の国や、某巨大な共産主義国や、某北欧のどでかい国の工作員が国際問題承知で自国専属の歌い手を「スカウト」してこないように、公安がさりげなく不審者達から阿部宅を守っているのだ。 そんな公安の守りを確認し、鉄は玄関のブザーを押した。 するとどうだろう、中で何やらもめる音が聞こえた後、舞台衣装を着込んだ阿部が出てきたではないか。 その光景に、鉄は思わず、目を丸くした。 てっきり、スーツか何か、適当な服装でいるものだと思っていたからだ。 >「この度遊撃第5小隊に配属になりました謳い手、阿部真里亜と言います! 以後よろしく!」 「あ、え、えぇ、はい、ゴストゥルーパードールズより参りました者です、基地まで…」
>「お前のような男に娘は渡さ……うわなにするぅああああああ!」 >「真里亜! このおっさん押さえとくから今のうちに行くのよ!」 「!?!?」 あまりの光景に圧倒されていた鉄に、今度は阿部の父らしき男性が掴み掛ってきて、母親らしき女性に拘束される。 もうめちゃくちゃだ。 >「あ、背景が騒がしいけど別に気にしなくていいから」 「は…はぁ…、あ、では、お車はこちらです。」 とりあえず、本人がいいと言っているので従って、彼女を車へと案内する。 玄関の奥からはまだ何か聞こえてくる気もするが、どうしようもない。 阿部を車に乗せると、鉄は車を出発させた。 さりげなく、その後ろを先ほどの公安の車が追跡してくる。
車を走らせながら、鉄はバックミラーで後ろに乗る阿部を見た。 かなり気分が高揚しているようであり、全身から嬉しさがあふれ出している。 緊張よりも、彼女の中では喜びが強いようだ。 それはやる気満々で、すでに戦闘時の衣装に着替えている事からも伺える。 彼女は民間人出身であるため、これからの生活などを考えると、不安がるだろうと思っていた鉄は、そんな阿部の様子にも圧倒されていた。 「…嬉しそうですね?阿部さん」 車を運転しながら、鉄は彼女に話しかけてみた。 彼女の今の気持ちを知っておく事が、彼女の性格をつかむきっかけになるだろう。 また、ただの名無し職員として接している自分の何気ない質問に彼女がどう答えるかによって、彼女に対する時の距離感をつかめるだろう。 そういう下心もあったが、この質問は好奇心から出たほうが強かった。
>181 >「ほらいけ黒野。行かないとビンタするぞ」 黒野鳥芽にテレポットに入るように強要される黒野鳥芽。 最初は片方鳥牙で微妙に差別化されているような気もしたが気のせいだったようだ。 全く同じ名前の登場人物が登場するとは物語の常識を真っ向からぶち壊す実に実験的な試みである。 これぞ実験室の鏡。 閑話休題―― >「お願いだからいってくれぇっ!」 強要ではままならないと悟った黒野は、作戦変更したようだ。 土下座して懇願するその姿には神々しさすら感じられる。 「分かった、俺行くよ。魂の片割れのお前の頼みだからな……」 黒野の策略にまんまとかかり、何となく格好よく請け負ってしまう黒野。 「えいしゃらー!」 気合の掛け声と共に、テレポットの転送ポイントへ入る。 「いくわよー! スイッチオン!」 ゴゴゴゴゴ……ぼーん 「キャー! 暴走したわ! あれ? 黒野が消えちゃった!」 ――――――――――――――――― 「あれ? ここは……」 どれくらいの時間がたっただろうか。 目を覚ました黒野が周りを見てみると森の中のようだ。 どこからか音楽が聞こえてくる。 音を頼りにその発信源に向かい、木の影からそっと覗いてみると…… 全裸の男達が踊りの練習をしている! 「全裸でダンス……。ということは……過去の世界に来てしまったんだ!」
>「あ、背景が騒がしいけど別に気にしなくていいから」 >「は…はぁ…、あ、では、お車はこちらです。」 「きゃはきゃはドライブドライブぅう〜♪」 後部座席でやちほが騒いでいる。 てろっとした白いスリップドレスに長い黒髪。 薔薇色の頬を両手で持ち上げうっとりとした顔。 ――って、間違えた。 てへぺろしたやちほがとてつもない速さで駆け抜けて行く。 速すぎてまるで白い帯のように。 みょんみょんみょん。 「く、くろのおぉ!」 黒野は転送装置の爆発で消えてしまっていた。 「あれはテレポートの感じじゃなかったわ」 ぷすぷすと煙をあげている装置を見つめながら幼馴染みは呟いている。 そう、彼女が怪訝に思うのも無理はない。 実験は失敗しテレポッドは大爆発したのだから。 心配そうに少女を見上げる小さな飛脚たちも顔面蒼白だ。 「おい、黒野!どこにいる?」 怖くなった黒野はもそもそと巻き貝の形の携帯電話で交信を始める。 まさか過去に飛んでいったなんてお釈迦様でも気付かないだろう。 「もしもぉしっ!くろのぉ!!」 いっぽうそのころ、黒野は。 >「全裸でダンス……。ということは……過去の世界に来てしまったんだ!」 「えーなんだって!この俺を出し抜いて、おまえばかりずるいじゃねぇか!」 巻き貝の奥からはだか祭りの音楽が聞こえる。 それに黒野は生唾を飲み込んで……。
「なあっ、お、おっぱいみえるか!おっぱいがぁ!? おんなのおちちぃ〜っ!!」 と、おおさわぎ。 それには幼馴染みも白い目で咳払い。 「えっと、私たちも後を追うから、待っててね。黒野様!」 幼馴染みは巻き貝の携帯にそういって研究所に帰った。 「……あれ?今、黒野さまって」 黒野は不思議におもう。 そして広場の中央に立つ石像を見て驚愕。 なんとそれは黒野だった。 等身大黒野鳥芽の石像だった。 「なんだよこれ?さっきまでこんなのなかったよな!?」 どうやら過去とともに、現在も変わりはじめてしまったらしい。 ≪過去≫ ゴゴゥン……ゴゴゥン…… 天空から音がする。 「神鳴りぢゃあ!やちほさまじゃあ。今年もやちほさまがごこうりんなれたぞぉ!」 裸の男たちに緊張がはしっていた。 果たして黒野は無事に現代に帰れるのだろうか? そして、謎のベールに包まれたラスボスのやちほとはいったい……?
文化部の部室棟の一角。『NNDM部』と書かれた貼り紙のついた扉。 中に入るとそこは、机と椅子……そして冷蔵庫やガスコンロといった生活用品や、 何に使うか判らないガラクタが置かれた妙に生活感溢れる奇妙な空間。 そして、そんな学び舎の中とは思えない空間の中で椅子に座りながら茶菓子を啄む少女が一人。 銀糸の様に艶やかな髪を肩の長さで乱雑に纏めたウルフヘアと、 どこか野生の獣を彷彿とさせる、可愛らしさよりは美しさが先立つ顔立ち。 そして――それら全てを台無しにする、瓶底メガネ。 少女は手に持った茶菓子を受け皿に乗せ、紙コップに入れた緑茶を一口啜ると、小さく吐息を吐く。 「……ふぅ、暇っすね」 【N2DM(エヌエヌディーエム)部】――正式名称NaNDeMo部。 学園において一応正式な部活動として認可されているこの集団の活動目的は、 その名前の通り『依頼されたことを何でもやろう!』というものである 学園の中で何か『依頼』したい事がある人物が、それを部室の扉横に設置された『依頼BOX』に投書するか、 或いは部室に直接訪問する事で、部活の面々がその依頼を受理し実行するという、一風変わった活動内容のこの部活。 設立された時期こそほんの1年前であるが、設立してから色々あった為に、色々な意味で色々有名な部活であった。 そして、その部室でお茶を飲んでいるこの少女も当然の事ながらその『N2DM部』の一員であり ついでに言うなら、彼女はN2DM部の『副部長』であった。 名は【小羽 鰐(こは わに)】現在、学園3年生である。
「……暇っす」 だが、そんなある意味有名なN2DM部であるにも関わらず、副部長である小羽の口から漏れる言葉は『暇』であった。 何故暇なのか……それは勿論、依頼が無いからである。依頼がなければN2DM部は何もやることがないのだ。 部室に入る前に小羽は確認した依頼BOXも空であり、何かが投函された音も一切ない。 中二病をこじらせた様な部員の一人に描いて貰った部活のポスターがハイセンス過ぎたのか、 あるいは色んな意味でリビドーを持て余しているN2DM部の営業担当が入学式の部活紹介でやらかしたせいか…… とにかく、部室の中は小羽がお茶を啜る音とグラウンドで練習をする運動部の掛け声だけが響いていた。 そうして小羽が部室の中で暫く過ごし、うつらうつらとし始めた頃……不意に、誰かが部室の近くに来た気配がした。 そして響く、『カタン』という音。それはまるで、手紙を入れた音の様で―――― 「ん……今季の依頼、第一号だといいっすけど」 音を聞いた瞬間、野生の獣の如き鋭敏さで目を覚ました小羽は、どこかそわそわした様子で扉を開く。 そこにはもう人影はなかったが、誰かが遠くに走り去っていく足音は聞こえており―――いそいそと依頼BOXを確認する小羽。 その中には……あった! 一枚目の投書が!記念すべき!今季一回目の依頼が投函されていた! 「……とりあえず、内容の確認っすね」 手紙を手に取った小羽は、冷静に。けれどどことなく楽しげに手紙を開く 開かれたその手紙の内容は―――― これは、再び始まる物語。とある学園の、とある学生達の青春を描いた物語である。
エイプリルフールネタダッタノカ
本スレが使われていないので保守代わりに…… ギャグファンタジー天空編 物語の舞台は”エンタ”――この世界を創造した笑いの女神の名を冠した世界だ。 この世界では、笑いの道を極めたお笑いコンビが世界樹の枝にリボンを結ぶ事で新たな生命が誕生する。 遥か古、トロの勇者が魔王を倒し世界に平和を取り戻した時代、あれから一万年と2、3年の時が過ぎた……。 勇者の救世譚は伝説の彼方、文明は発展し、それはそれは便利な世の中になった。 しかしその反面、人々は笑いを愛する心を忘れつつあった―― 人心は荒廃し、治安は悪化、生涯ピン芸人率は90%を突破。 減り続ける人口、ダダ下がりのGDP。 そんな時代の最中、導かれし無職であるキミ達はある日女神のお告げをうける。 今の世界情勢は復活した魔王の呪いのせいで、魔王を倒すには天空の4武具を装備した天空のニートが必要だと! 無職の種類は、学校にも通わず父親に世界を連れまわされる幼児 自称勇者、自称姫、自称自営業、自称旅芸人など何でもいい。 とにかく導かれし無職たちは無事に天空装備を見つけ出し世界に平和を取り戻す事はできるのだろうか!?
テンプレ 名前:(ハンドルネームでも可) 職業:(無職の種類を書こう! 無職に職業はおかしい? 知るか!) 属性:(ボケ又はツッコミ。ノリツッコミ等の変則版も可) 性別:(この世界では上記の属性に比べたらマジでどうでもいい概念だ!) 年齢:(同じくどうでもいい概念だ) 外見:(人型・猫型など)
名前:トラネコ 職業:自称自営業 属性:天然ボケ 性別:多分オスらしい 年齢:花も恥じらう51歳 外見:二足歩行のトラ猫 彼の名はトラネコ。どう見ても二足歩行の虎猫である。 世界一の大商人になる、それが彼の幼い頃からの夢だった。 自らの店を経営しながら、相方と弟子にも恵まれ幸せな生活を送っている……つもりだった。本人の中では。 しかし現実はそんなに甘くは無く、今、彼は修羅場を迎えていた。 「いつになったら大商人になるのよ! 大商人どころか連年赤字じゃない!」 「すまないネネコ! 来年こそは……!」 「その台詞はもう聞き飽きたわ! 離婚……じゃなかった、コンビ解散よ、か・い・さ・ん!! もちろん弟子は私が連れて行くから!」 「ははは、そうか。では……解散!」 彼の店は連年赤字、相方の資金を食いつぶしながら行われていたのだった。要するに無職どころか無職以下だ。 こうしてついに相方から見放された彼はピン芸人となり、早速露頭に迷う事となった。 公演の滑り台で寝泊まりするホームレス生活。空腹の余り幻聴まで聞こえてきた。 ――トラネコよ、よくお聞きなさい。 「ハハハ、こりゃいいや。雲の隙間に綺麗な姉ちゃんが見えるぞ」 ―― 魔王が一万年と2,3年の時を経て復活してしまいました。天空の四武具を探しだし、魔王を倒すのです! 「こりゃまた御冗談を。トロの勇者の伝説ってお伽噺だろう?」 ―― それでは私が極秘ルートで入手したとっておきの情報を教えて差し上げましょう。 ―― 人心の荒廃、治安の悪化、生涯ピン芸人率の増加、経済の低迷……。これらは全て復活した魔王のせいなのです。 「何ィ!? 経済の低迷だと!? 私の店が赤字だったのも魔王のせいなのか!」 ―― そのとーおり!! 「おのれ! 魔王ゆるさん!!」 こうして彼の世界を救う冒険が始まった!
●シナリオ集・古城の捜索 ある伯爵の子息が放棄された祖先の城を己の居城とするべく、建築家を率いて修繕の調査へ向かった。 予定では夜に近隣の村へ戻るはずだったのだが、そのまま子息と建築家は帰らずに行方不明。 二日が経ち、報告を受けた伯爵も不審に思い、私兵に子息らの捜索を命じたのだが、城内にも近隣の森にも手がかりはない。 そこで、冒険者ギルドに子息の捜索依頼が入る。 ・仮説1 古城は昔の貴族が建てたもので、当時は国境に近かったことから篭城に特化した造りとなっている。 蜘蛛の巣のように張り巡らされた地下道も迷宮じみた複雑な構造で、隠し部屋や隠し通路の類も少なくないらしい。 もしかしたら、伯爵の子息はそれらの場所に入り込んで出られなくなったのかもしれない。 それだけならともかく、罠に掛かって負傷しているとなると厄介な事態になりそうだ。 ・仮説2 近隣の村人の話によれば、古城には昔から古めかしい格好の幽霊が出るのだとか。 単なる噂話の可能性もあるが、幽霊が実在していないとは言いきれない。 あるいは亡霊の正体は昔の貴族や従者たちであり、末裔たる子息に憑依したのかもしれない。 ・仮説3 冒険者ギルドと付き合いのある旅商から、数日前に古城近くの村で故買屋を見かけたとの情報が寄せられた。 故買屋は怪しげな人物から骨董品をちらと見せられて、すぐに個室へ消えたようだ。 骨董品の出所は古城だろうか。 とすれば、遺跡漁りの類が古城を盗掘していて、遭遇した子息がトラブルに巻き込まれたとも考えられる。 私の調べで分かった情報と仮説は上記の通りだ。 ぜひ、君に子息を保護し、事件の真相を究明して欲しい。 解決の暁には、伯爵から充分な報酬が用意されるだろう。
ほしゅ
学園物は途中で学園関係なくなる定め 某魔法学園に何故か非魔法使いの銃使いが入ってきたりな
200 :
名無しになりきれ :2014/06/29(日) 23:06:08.11 0
一行目と二行目が矛盾しすぎじゃね
当然学生でも教師でもない完全なる部外者
( ・∀・)アサルトライフルがあれば、魔術師は呪文の最初の一音節を唱えきる前に死ぬ。そして保守
だが待ってほしい魔術師がアサルトライフルを持っていた場合はどうなる
もうそれアサルトライフルで闘えば良いんじゃないかな
205 :
名無しになりきれ :2014/08/13(水) 16:13:38.84 0
銃は誰でも使える・・・・・当然魔術師だって使える つまり魔術も使える銃使い最強
ちょいと横から失礼します。
ゴストゥルーパー・ドールズ、NPC歌姫&巨大ロボット、パイロット募集のお知らせ。
今、ゴストゥルーパー・ドールズ(以下GD)では、NPCの巨大ロボットと、歌姫のアイディアを募集しています。
応募していただいたキャラクター、ロボットは、NPCとしてGD本編に登場し、活躍していただこうと思っています。
ただし、応募いただいたキャラクターがどの程度活躍するかは、物語の進行によりますので、最悪出てきた瞬間撃破、などという事もありえるかもしれませんし、逆に準レギュラーになるかもしれません。
以上の事をご了承した方は、際は名前欄に、「ゴストゥルーパードールズ、NPC募集」と書いて、貼り付けてください。
なお、応募多数の場合は登場する機体、歌姫は抽選させていただきます。
以下テンプレ、例
【テンプレート】
人物
名前:クリスタル・サンダーランド
性別:女
年齢:20
国籍:アメリカ
身長:158
体重:40
容姿:金髪、青い瞳、腰に届く挑発、白人
役職:歌姫
福音出力:1.0:(歌い手のみ、平均的な歌い手の出力を1とした場合の出力。ロボットの攻撃力、福音防御力の補正値)
持ち歌、各歌の特殊効果:(歌い手のみ、効果の違う歌を3つまで登録可能。ただし、一回の戦闘で歌える歌は1つだけ!効果が大きいと福音出力が下がる)
・英雄故事:
ttps://www.youtube.com/watch?v=pUJSu28bSwM 福音の粒子を戦闘中の味方に集め、格闘攻撃力を上昇させる。
遠距離攻撃の威力は上がらない。
剣等、格闘攻撃武器にも有効。
おいたち:元は売れない歌手。
自身の歌を誇示する目的で歌姫の適性を受け、現在に至る。
備考;勇敢だが、自尊心が強い。
正式名称:エクソシストハンマー 愛称:エクソ 全高:55m(頭頂高) 重量:1万8000t 弾薬フル装備時重量:2万t 姿形:胸に信号機のように三つ並んだ突起を持つ、腕が足より太いマッシブな形、機体色は灰色、東部にバッファローのような角を持つ。 武装:頭部角から周囲の福音を吸収して放つ福音雷撃を発射。 胸の突起が開き、三つの発射口から敵の装甲を砕いて内部で爆裂する福音ドリルミサイルを発射。 腕に福音を集中させ、強烈なパンチを放つこともできる。 戦闘能力 攻撃力:4 福音防御力:1 物理防御力:1 機動力:1 耐久力:3 解説 攻撃力に主軸を置いて開発された重巨大ロボット。 人型から離れたため福音防御力は下がり、また、誘爆の危険があるため胸部の装甲を増した結果他のパーツの防御力が減ってしまった。 開発はアメリカで、主要都市の防衛に使われている。
【人物テンプレート】 名前:ソフィーヤ・プラトーノヴナ・エイゼンシュテイン 性別:女 年齢:21 国籍:ロシア 身長:160cm 体重:48hg 容姿:横分けにした金髪セミロング、吊り目がちで瞳は青、肌は白く、黒いナイトドレスを纏う 役職:歌姫 福音出力:2.0 持ち歌、各歌の特殊効果: ♪1:神よ皇帝を護り給え(ロシア帝国国歌)――武具として機能する槍状の光子と、盾状の光子を機体に付与する ♪2:労働者のラ・マルセイエーズ(ソビエト国歌)――機体に搭乗者と直結した擬似神経を形成して、駆動系破損後でも稼動させる ♪3:冬の第八十五日(krik/krak)――福音粒子を変質させて視界不良の猛吹雪を起こし、加護ある者以外の機動力を半減 生い立ち:元はデビュー前のガールズバンドのボーカル オーディションを装ったロシア政府系機関の適性検査で、高い福音出力に目を付けられる 以後、様々な圧力の末に歌姫となる事を了承するが、バンドはボーカルを引き抜かれて余儀なく解散した 備考;歌姫となった経緯からスレた所はあるものの、歌うことは好き バンドを抜けた負い目から、元いたバンドの歌は歌わない 無宗教だが神や霊魂はいるという態度、ホームページでブログを書いている 好きなものはホラー映画や、日本のアニメ(※日本語での会話が可能) 嫌いなものは煙草、権力を持った役人  ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ 【気体テンプレート】 正式名称:スタークラスター・JP24型 愛称:スタークラスター 全高:25m 重量:3000t 弾薬フル装備時重量:3100t 姿形:騎士の甲冑的なフォルムを持ち、ブラックのカラーリング 武装:先端に鉄球のついた棒、両肩の装甲から福音粒子の光弾を発射可能 戦闘能力 攻撃力:1 福音防御力:2 物理防御力:2 機動力:2 耐久力:1 解説:汎用性を重視した日本製の量産型機体、単体でなく複数での運用を想定されている 快適さを保つ空調、全周囲モニター、人間を感知して踏まない安全装置、歩行時の揺れの軽減機能などを搭載 基本攻撃力が低いので、配属先で外付け武装を追加するのが基本 内部には精密機器が多いので、攻撃を受け過ぎると性能低下を起こす 外観はエスカフローネ的な感じか 使い捨てても、改変しても結構です なお、ゴストゥルーパードールズは読んでない模様
>>207 >>208 応募ありがとうございます!
とても使いやすい設定なので、是非、両者登場させたいと思います。
なお、まだまだ募集は続いておりますので、興味のある方は是非ご応募ください。
210 :
名無しになりきれ :2014/09/16(火) 14:36:16.63 0
わかりました
ただいまをもってゴストゥルーパードールズNPC募集を締め切ります。 皆さま、ご応募ありがとうございました。
永禄3年5月19日(ユリウス暦1560年6月12日) 桶狭間。今川軍二万と織田軍二千が激突。 それは土砂降りのなか、大将同士が徒士立ちになって刀槍をふるうほどの乱戦となっていた。 泥濘は血の海へと変わり辺りに漂う血臭。 そんななか、義元の乗る輿はついに捕らえられ、彼は地べたに押さえつけられ首を切断される。 と、同時に合戦場に広がるどよめき。 今川軍は敗戦を覚悟し、織田軍は勝利を確信する。 だがしかし、次の瞬間織田軍は目をみはることになった。 なんと雨音をつんざいたのは勝どきの声ではなく断末魔の悲鳴。 声の主は義元の首を斬った武将。 その武将の指に噛みつきバリバリと喰らうは義元の生首。 それは中空を泳ぐように飛び回ると、ある一人の男のもとへ移動する。 墨のような雨のふるその中で、男は黒衣をまとっていた。 男の名前は太原雪斎。今川の武将にして僧侶。 彼は五年前に他界したはずだった。 ゆえに織田の武将たちは顔を見合せ信じられないといった様子が隠せない。 「……太原雪斎? 雪斎殿は五年前に他界なされたはず」 「いまだ現世に未練がおありか?成仏なされよ!」 斬りかかる武将たち。 しかしその太刀を雪斎に浴びせることは出来なかった。 なんと雪斎の立つその場所から底無しの沼が広がり 武将たちを飲み込んでしまったのだ。 【その後、雪斎の道術により織田軍は敗北。織田信長も生死不明。歴史の歯車が少しずつ変わってゆく】
213 :
【超!武道トーナメントTRPG!】 ◆PzyTifcmqQ :2014/10/24(金) 22:23:11.33 0
「超武闘力」それは、古の昔から一部の人間に備わった、人を超えた破壊の力である。 熱線、念動力、超怪力…、戦いのときにのみ発揮されるその超能力を、人々は恐れ、敬い、その力を持つ者達は歴史の中で厚遇されてきた。 しかし、文明開化の後、超武闘力者達はだんだんと歴史の表舞台から消えていった。 如何に超武闘力がすぐれていても、それは所詮、進化する人の文明の前に、いつまでも君臨できる物ではなかったのだ。 やがて超武闘力者達は優れた兵器を持った文明の中で迫害されるようになっていく。 勿論、超武闘力者達も黙っておらず、やがて、世界各地で大きな戦争が起き、大勢の人間が戦火の中で散っていった…。 現代。 差別と争いの歴史の果てに、超武闘力者と文明人達は交わり、何とか平和な世の中を作り出す事に成功していた。 そして超武闘力もまた、単なる殺し合いの力から、新たな姿へ変わろうとしていた…。 人智を超えた力を持って、己を高める武の道… 超武道の誕生である!
214 :
【超!武道トーナメントTRPG!】 ◆PzyTifcmqQ :2014/10/24(金) 22:50:11.52 0
頑張ってルールとか挨拶とか書き込んでたんだけど変なとこ押したら消えた…。 ようするにキン肉マンみたいな超人バトルトーナメントのTRPGやろうずって事です。 テンプレとかはちょいと待ってください。
>>214 そういうのはあらかじめメモパッドで打ち込んでからコピペするもんなのだよ
キン肉マンというよりはドラゴンボールのような印象だが……
216 :
名無しになりきれ :2014/11/02(日) 00:40:55.99 O
最近、こんなTRPGやりませんか? って感じのスレになってるけど これありがたい アイデアわくし、評価や参加者さがせる
日本において『人形使い』の歴史は平安時代、旅回りの芸人一座・傀儡子にまで遡ることができる。 彼らは芸能や狩りによって生計を立てていたが、あるとき人形劇に使っていた操り人形を武器に狩りをはじめる。 人形は武器として洗練され、『傀儡子』たちは傭兵として雇われるようになり、戦時において重宝された。 やがて人形は万能の兵器『からくり人形』に。その使い手を『人形使い』と呼んだ。 現代において人形は兵器としての影を潜めつつあるが、大量生産の人形が出回り『人形使い』の数はむしろ増している。 同時に人形による犯罪が横行。政府はこれに対処すべく『からくり人形協会(通称・文楽)』に協力を依頼する。 人形劇を定期公演しても客が来ず暇を持て余していた文楽はこれを快諾。以後、警察と連携して人形犯罪を取り締まっていく。 この物語は最強無敵の万能兵器・からくり人形とその使い手たちによる痛快娯楽人形劇である! ジャンル:痛快娯楽人形劇 コンセプト:最強無敵のからくり人形で悪人どもを成敗 決定リール:なし 版権・越境:なし 敵役参加:自由 以下、設定 【からくり人形】 魔術・錬金術・道術・陰陽道・機械工学など様々な技術の粋を集めて作られた万能兵器。 使い手のイマジネーションによって手足の如く動き、仕込み武器で敵を撃滅する。 人形は時代の要所で活躍してきたが現代において(兵器としては)影を潜めつつある。 外観・仕組み・性能などは千差万別で一点ものが大半。量産品も存在するが安価なぶん粗悪。 【人形使い】 人形操りはもちろん修理から製作・改造まで行う人形のエキスパート。 すべてをこなしてようやく一流の人形使いと呼ばれるようにその門戸は狭い。 ただし現代では形骸化しており、からくり人形を扱えれば誰もが人形使いである。 【からくり人形協会】 大阪の人形劇場「文楽座」を本拠にする人形使いたちの協会。通称文楽。 からくり人形の保護・技術の継承・人形使いの交流の場を目的に設立された組織。 また近年、量産品の人形による犯罪の横行から『からくり人形専門の特殊部隊』という側面が強い。 【キャラクターテンプレート】 名前: 性別: 年齢: 所属: 性格: 容姿: 備考: 【人形テンプレート】 名称: 全高: 外観: 武装: 備考:
【テンプレ記入例】 名前:早乙女雪子 性別:女 年齢:16 所属:からくり人形協会 性格:自称冷静沈着 容姿:セーラー服、黒髪ロング 備考: 学校へ通う傍ら人形使いとしても活動している女の子。 所持している人形は死んだ祖父の形見らしい。 名称:オリヴィエール 全高:190cm 外観:陶磁器の頭部、白色のマフラー、淡雪のような衣装 武装: 右腕の仕込み刃「聖剣ブランネージュ」 敵を拘束する結界の魔術「タリスマン」 備考: フランスの人形使いワルテールが製作したという人形。 「雪のように繊細な美しさ」「兵器ではなく芸術作品」と評されるワルテール初期の特徴がよく現れている。 機構は単純で扱いやすいが、性能も飛び抜けて高くはない。
からくりサーカスを思い出した
町の平穏は引き裂かれた。 二メートルをゆうに超える巨大な「なにか」。その後ろでニヤニヤ笑う陰気な男。 現代。安全が保障されない時代。ごついピストルを規制できても、『からくり人形』はその限りにあらず。 「ふはははー! 見たか、アームガード製マリオネット『ロスローリアン』の威力をーッ!!」 巨大な何かは見る者を圧倒する姿とは裏腹なカラフルさと、フラワー感を併せ持っている。 たとえ違法駐車の車をサッカーボールのように吹っ飛ばしても癒し効果は抜群だ。 「そこまでにしてもらいます」 白い人形が男のストレス発散を妨げるように、ロスローリアンの眼前に降り立つ。 陶磁器の顔、白いマフラー、淡雪のような衣装。こいつァ日本製ではないな。男の人形知識が解答をはじき出した。 「そいつァまさしく『オリヴィエール』! ワルテール作、「兵器ではなく芸術作品」とも謳われた一品じゃないか!」 高名な人形使いが作った人形だ。その価値は金銭的にも文化的にも高い。 大量生産のロスローリアンとは比較すらおこがましい。男は舌なめずりして眼前の人形を睨む。 その人形もらったーッ! 絶叫ハイが止まらない。ロスローリアンが巨体を唸らせ腕をふりかぶる。 かたや白き人形は、肩に乗せている少女を降ろし、静かに主の命令を待つ。 主の──「人形使い」早乙女雪子が黒い髪をなびかせて 「La Danse Macabre(ラ・ダンス・マカブル) 死の舞踏!」 人形の右上腕がキリキリと音を立て、三日月状の刃が展開した。 オリヴィエールと呼ばれたそれは舞踏のように、ロスローリアンの腕を、足を、胴を、頭を切り裂く。 舞い散る羽毛は掴みどころがなく、敵の人形は触れることすら許されない。 細切れになった人形が地面に転がるまで数秒も要さなかった。 「うわあああ、僕の人形がーッ! なんてことだーッ!」 汚いツラを更に汚くしながらサイコロステーキの残骸へ駆け寄る。 その一振りは何事をも切り裂く。右の聖剣『ブランネージュ』の切れ味たるや凄まじい。 再び上腕をキリキリと鳴らしながら刃を収納させて少女は呟いた。 「私は……文楽は、あなたのような方にはどこまでも残酷ですよ」 からくり人形協会(通称・文楽)は人形を悪用する者を決して許さない。 もしもこの町で人形犯罪が巻き起これば、人形を愛し、人形を作り、人形を操る者たちが駆けつけるだろう。 からくりサーカスちょびっと立ち読みして勢いで書いた 地の文書くのってしんどいね
このまま書き散らして終わろうかなとも思ったのですが、折角なので1シナリオだけ実験したいと思います
我こそはという奇特な参加者募集中です
ジャンル:痛快娯楽人形劇
コンセプト:最強無敵のからくり兵器で悪人どもを成敗
目安:1〜2ヶ月(予定)
最低参加人数:2人
GM:あり
決定リール:なし
○日ルール:最長2週間
版権・越境:なし
敵役参加:なし(
>>217 に自由と書きましたが、今回はなしで)
実験的にシナリオテンプレを採用してみます 後に導入も投下しますが、引き続き参加者募集中です 【天地の人形編】 平安時代末期、源平の戦いの最中作られた「天の人形」と「地の人形」。 使えば神にもなり得るとされ、その力のあまり封印された伝説のからくりである。 呪いか奇跡か二体揃って現存していたものを文楽が保護。 かたや世界征服を策謀する「劇団」がその力を狙い文楽を強襲。強奪を図る。 参加人数:2〜4人 期間:1〜2ヶ月(予定) 1.設定 【天の人形】 平安時代末期に作られた、使えば神にもなり得るとされる古の人形。 「地の人形」と一対の人形であり、二つを揃えることで異界へ通じる『門』の役割を果たす。 『門』は十二天将と呼ばれる神々を呼び出し使い手の意のままに天変地異の如き威力を発揮する。 葛城秀行が製作したとするのが有力説。 【地の人形】 平安時代に作られた、使えば神にもなり得るとされる古の人形。 「天の人形」と一対の人形であり、二つを揃えることで異界へ通じる『門』の役割を果たす。 九州のとある寺院の蔵で眠っていたが文楽のメンバーが発見、これを譲り受けるも輸送途中に奪われてしまう。 【劇団】 世界征服を掲げ活動する秘密結社。構成員には人形使いが多い。 組織としての正式名称はなく「劇団」という名も誰かがそう呼んだのが広まったため。 世界規模で活動しており、強力な人形を集めたりなんとなくホワイトハウスで暴れてみたりする。 2.登場NPC 【味方NPC(A)】 からくり人形協会所属の人間。協会についての解説・進行補助が主な役割。 NPCの設定はGMの自由に決めて構わない。既存の共有NPCを使うのもありとする。 【敵NPC(A)】 「劇団」のエージェント。本シナリオのボスキャラクター。上記と同じく設定等は自由。 3.シナリオの流れ プレイヤー達が文楽まで「天の人形」を運ぶ。道中「劇団」の人形使いに襲われる。 ↓ 一同はこれを撃破。無事に文楽へ帰還。 ↓ 同時刻、「地の人形」を運んでいたメンバーが襲われ敵NPC(A)に奪われる。 ↓ 敵NPC(A)が文楽を襲撃。プレイヤー達はこれに応戦。 ↓ 敵NPC(A)との会話から天地の人形は神々を呼び出すための門であることが判明。 ↓ 敵NPC(A)が門を開こうとするも天地の人形(どちらか片方)を破壊され失敗、敵NPCは敗北を悟り撤退する。 ↓ 事件解決。その後、無残に破壊された天の人形を見て文楽の会長は卒倒したという。
子供の頃、両親にせがんで小さなそれを買ってもらったことがあるかもしれない。 あるいは学生時代、学校の行事で見た人形劇で使われていたかもしれない。 気まぐれに訪れた博物館で、ショーケースに収められたそれを眺めたことがあるかもしれない。 世界中に、決して派手ではないけれど「からくり人形」たちは息づいている。 「からくり人形」。戦火あるところにからくりありと謳われた万能の兵器。 所有者のイマジネーションで自在に動き、仕込み武器にて敵を撃滅する。 使いこなすには何年もの修練を要し、この人形繰りを修めし者を「人形使い」と呼ぶ。 近年、安価で扱いやすい量産人形が出回り人形使いの数は圧倒的に増した。 伝統技能である人形繰りが手軽に行えるようになり、敷居が大きく下がったためである。 しかし「人形使い」の増加は人形による犯罪をも増加させた。事態を重く見た政府は「からくり人形協会」に協力を打診。 以降、からくり人形に関する依頼を解決する「対人形特殊部隊」の側面を強めていく。 この物語はからくり人形とその使い手達による痛快娯楽人形劇である。 からくり人形協会は大阪の人形劇場「文楽座」を本拠にする。 人形の保護・技術の継承・人形使いの交流の場を目的に設立された。 集まる人形使いは皆一様に「人形繰り」が達者であるが、年齢層はやや高め。 会長が人形劇好きであることから、文楽座で定期公演が行われているものの閑古鳥が鳴っている。 このような経緯から協会は文楽とも呼ばれ、文楽といえばだいたい協会のことと考えて差し支えない。 さて文楽は近年増えた「人形犯罪」を解決すべく依頼も広く集めている。 もっぱら警察の協力要請が多いが、解決料が出るから文楽としては美味しい話だ。 今回会長が持ってきたのはそういう荒っぽい話ではない様子。なんでも「人形の保護」が仕事だとか。 「『天の人形』?」 早乙女雪子は大きな眼をより大きくして言った。 年齢層の高い文楽にめずらしく年若い少女で、腰まであろう長い黒髪や絹の如し。 平安時代末期、まだ人形使いが傀儡子と呼ばれていた時代である。 源氏と平氏によって治承・寿永の乱が起こり、傀儡子もまた傭兵として戦いの最中にいた。 彼らは戦いに勝つためより強き人形を、より優れた人形を求め、次々と新たな人形を生み出していく。 「これが恐るべき兵器を生み出したのだよ」 会長が雪子に語る。人形使いの間でまことしやかに語られる伝説の人形。 それがひとたび戦場に出れば天を裂き、地を揺るがし、地平を業火で埋め敵も味方も殺戮した。 戦乱が終わり源氏が治世を築いた頃、人形もまたその強大すぎる力ゆえに封印された。 封印が解かれることはついぞなかったが、これが幸いしたのか奇跡的に現存していたらしい。 文化財の保護は本来なら別の団体の仕事だが、からくり人形はただの芸術品と違って一歩間違えれば人を殺める危険物と化す。 くわえて胡散臭い曰くつきときている。そんな経緯でお鉢が文楽へと回ってきた。 「まあ、新入りさんとの交流会と思って行くとよい」 長年埃を被ってた古臭い人形を受け取って文楽に持って帰るだけだから、と会長はにこやかに言った。 ようするにおつかいである。新入りのことなどどうでもいいですが、と前置きして、 「わかりました。早乙女雪子、行ってまいります」 翌日、文楽座の前に集合した一同。知らぬ者同士でやや空気が重たい。 雪子は簡潔に「早乙女雪子です。皆さん本日はよろしくお願いします」と言い、軽く頭を下げた。
224 :
【からくり人形劇(仮題)】早乙女雪子 ◆BZueVb97Lm7l :2014/11/07(金) 23:55:57.84 0
むむむ、これはいけない。すこしあげてみましょう
んん、モチーフは好きなんだけどねぇ……
>>223 【からくり人形劇(仮題)】
『早乙女雪子です。皆さん本日はよろしくお願いします』
全盛期には、訪れる来客に一時の夢を与えていたであろう娯楽施設―――人形劇場"文楽座"
だが、現在ここに集うイロモノ達の間には、重く淀んだ空気が停滞するのみだ。
端的に言えば、マッポー的アトモスフィアが漂っていた。
「――――随分と奇特な連中なんだな、日本の人形使いってのは」
着崩した暗色のスーツに闇色の紋付羽織を纏った長身の男が、軽薄に口火を切った。
派手な赤髪とのコントラストは、"日本文化を誤解した外国人"の疑惑に彩られている。
「オレは"ジョーカー"……流れの人形使いだ。こいつはドールの"アリス"」
夜色の和風ゴシックドレスを装った銀髪の西洋人形が、カーテシーを終える。
その完全に計算し尽くされた不調和は、見る者の疑惑に確信を与えた。
即ち、日本文化を完全に理解した上で曲解したとしか思えない。
《貴方達とは、驚くほど短い付き合いになりそうな予感がするけれど……
先に謝っておこうかしら。不祥事の後始末は、よろしくお願いするわ》
「アリス、余計なコトは言うな。それだと不祥事を起こし難くなる。
今日はゼノ……いや、こっちじゃ世音爺だったか。
とにかく、ジジイの代行で来た」
シガレットケースからダークロイヤルを一本取り出し、火を点ける。
粗悪な紙巻き煙草から退廃的なフレーバーを漂わせ、本題に入った。
「―――それで、雪子嬢。この後、俺はどうすればいい?
"天の人形"とやらを"文楽"まで届ける護送任務だと聞いてるが、
文楽ってのは各地に複数あるのか? ジジイの話だけじゃ要領を得なくてな」
>>221 【からくり人形劇(仮題)】
名前:"ジョーカー"
性別:♂
年齢:24
所属:フリーランス
性格:自称気分屋
容姿:赤髪/蒼瞳/黒スーツ/黒紋付羽織
備考:記憶喪失
名称:"アリス"
全高:140cm
外観:銀髪/翠瞳/似非和風ゴシックドレス
武装:<魔術鋼札:タロット/トランプ/花札/etc.>
備考:各種魔術が刻印されたカードを状況に応じて選択し戦闘を行う
【大阪の街には詳しくないし、からくりサーカスもタイトルしか知らない】
【奇特な参加者募集、まで目は通してるが、採用の是非は雪子嬢に任せる】
228 :
【からくり人形劇(仮題)】早乙女雪子 ◆BZueVb97Lm7l :2014/11/08(土) 21:05:38.53 0
>>227 そんな滅相もありません。ぜひぜひご参加お願いします!
私も大阪には疎く、からくりサーカスは立ち読みした程度ですから大丈夫です
対面進行でも構わない考えでしたが欲が出るものです
もうすこし参加者を募ってみましょう
229 :
◆ykM3zjvTe6 :2014/11/09(日) 01:24:29.05 O
>>221 【からくり人形劇(仮題)】
試しです。
【キャラクターテンプレート】
名前:マリア・ルーネル
性別:♀
年齢:12
所属:文楽座
性格:人見知り、コミュ力低し
容姿:ロングの金髪碧眼、水色に白フリルのワンピース、いつも熊のぬいぐるみを抱えている
備考:父に育てられてきたが、二人で日本へ旅行中にからくりにより殺された。敵討ちをしたくて最近「文楽座」に押し掛けた。
【人形テンプレート】
名称:ヨシュア
全高:200cm
外観:毛のないユニコーン
武装:体の側面から両側に刃がでる。
角に術が込められており、風魔法が使える。
備考:敵の横を走り抜けて切り裂く攻撃が多い。マリアは乗ってたりもする。
生まれたときからこのからくりと過ごしてきたが、事件の時には運悪くつれていなかった。
こんな感じでもいいですか?
>「早乙女雪子です。皆さん本日はよろしくお願いします」 「…マリア、です…」 愛馬、もといからくりのヨシュアの影に隠れながら、小さな声で何とか名乗りをあげた。 本来ならば人形を扱うには若すぎるが、生まれたときから一緒にいたユニコーンのようなからくり、ヨシュアの事なら何でも出来る。 修理だって、改造だって、時間はかかってしまうけれどちゃんと出来るのだ。 犯人のわからぬ、父の敵討ちを果たすべく、文楽座に飛び込んだマリアはこれが初仕事になる。 人形を使えるぐらいだから、頭は悪くない。日本語もわかる…のだが… 「…は、初めまして…」 元が引っ込み思案で更に人見知りをする。 それでもなんとかその場にいる人と人形を目視することが出来た。 …が、何を話せばいいかわからず、ぬいぐるみに顔を埋めて黙りこんでしまうのであった。
>>230 【からくり人形劇(仮題)】
『…マリア、です…』
ちらりと周囲の惨状を眺めると、抱きかかえた大きな熊に顔を埋める少女。
その繊細な声音が、籠もった音色にディミヌエンドしていく。
人形師は、点けたばかりの煙草の火を消した。
『…は、初めまして…』
《ねえ見て、ジョーカー。この子おもしろいわ……ぬいぐるみを食べてる》
「いい加減、お前は常識的な思考ってモノを身に付けるんだ、アリス。
よく見てみろ―――テディ・ベアから喰われかけてるんだよ、アレは」
《貴女、とても可愛いらしいのね。
……まるで本物の人間みたいにリアルだわ。
私は"お人形みたい"って、よく言われるのだけれど》
【マリア選択】
ニア
1.適当に無視する(導入シーンに影響なし)
2.丁重に無視する(導入シーンに影響なし)
3.その他
【
>>228 雪子嬢 ―――ああ、了解だ。
待たされるのはお断りだが、待つのは嫌いじゃない。
その間、こっちはマリアで……いや、マリアと遊んでるとしよう】
【選択3】 「ひっ、人、です…よ?」 可愛らしい姿のアリスに話しかけられて、おどおどしっぱなしのマリアは声が上ずってしまった。 きちんと作られた人形なら、人とそう変わらない。 量産型は気にならないけれど、こういった人形相手だと人見知りと変わらない。 そう、思っているから。 「…アリスさん…人みたい、です…」 人形に見えないようなアリスに、ちょっぴり羨望の眼差しを向けてしまうのだった。 こうは思いつつも、仕事をさせてもらう以上敵と戦うのは本気でゆく。 ヨシュアを必要以上に傷つけない為にも、敵となった人形はただの敵、そう見る。 否、そうとしか見えない。 場合によっては人形使いを倒した方が早い、判断を誤らず、迅速に。 きっと地上のスピードならヨシュアが一番だから。 …マリアは、人形の知識は確かにある。しかし人形の種類はあまり知らないのであった…
233 :
【からくり人形劇(仮題)】早乙女雪子 ◆BZueVb97Lm7l :2014/11/09(日) 11:36:53.61 0
>>229 いらっしゃいませ〜。ご参加ありがとうございます!
動物型という発想に感心しました。マリアさんよろしくお願いします!
>>231 進行面の事情でお待たせして申し訳ないです
募集は今日中までということで、遅くとも明日の夜には開始しようと思います
>>233 「…ヨシュア、大好き。……よろしく、です」
>>232 【からくり人形劇(仮題)】
『ひっ、人、です…よ?』
《まあ、そうだったのね。
"貴女、お人形みたい"……嬉しいわ。
この台詞、一度は言う側になってみたかったの》
『…アリスさん…人みたい、です…』
《本当に素敵……私の力を知った人は、そんな言葉を掛けてくれないもの。
私、マリアのこと気に入ったわ。お友達になってくれる?
ジョーカーより背の高い、貴女のユニコーンも》
「―――こいつは、驚いたな。
人見知りのアリスが、こんなコトを言い出すのは珍しいんだ。
仲良くしてやってくれ、マリア……お前さえ良ければ、このオレとも」
空気を読まない人形師は、何事かを思い悩む少女の前に片膝を着いて目線の高さを合わせる。
その繊麗な金髪を波立たせてしまわぬように指輪を外すと、そっと小さな頭を撫でた。
【マリア選択】
ニア
1.アリスはいいけどジョーカーはイヤ("お友達"+1)
2.両方とも勘弁して(人間関係に影響なし)
3.その他
【
>>233 雪子嬢
いよいよ今夜から動き出すって訳だな。
こっちも、遅くとも明後日の夜までには時間を作る】
やってくるのはどんな人間か、雪子はすこしばかり想像を巡らせてみた。 昨今数を増やしつつある人形使い。最近人形に興味をもったような、二十代の若者か。 あるいは文楽の平均年齢を押し上げている方々の孫だ曾孫だといったあたりか──。 >「オレは"ジョーカー"……流れの人形使いだ。こいつはドールの"アリス"」 >「…マリア、です…」 一人は切り札か死神か、危うい赤髪男。日本人離れした顔立ちで、ふうと吐く煙は快晴を曇天に塗り替える。 どこか現実離れした──悪く言い直すと、奇人、変人、チンドン屋、ひとり仮装大会──そんな印象。 軽妙な言い回しをする"アリス"は人形にめずらしく意思をもっているらしい。 もう一人は金髪碧眼の少女。熊のぬいぐるみを抱きしめるその姿、月並みにいえば穢れなき純白。 侍る機械仕掛けのユニコーンは雄々しく、強靭だ。雪子は思わずマリアと幼少期の自分を重ね合わせたが、慌てて振り払う。 (……か、海外交流でもはじめたのでしょうか) どちらも訳ありといった胡散臭さがある。努めて表情には出さなかったが。 >「―――それで、雪子嬢。この後、俺はどうすればいい? > "天の人形"とやらを"文楽"まで届ける護送任務だと聞いてるが、 > 文楽ってのは各地に複数あるのか? ジジイの話だけじゃ要領を得なくてな」 ジョーカーの言うとおり、文楽は東京、沖縄、北海道にも支部をもつ。 が、これはあくまで最近の話であって一昔前まで文楽は大阪にしかなかった。 「いえ。まずは件の人形を受け取りに行きます」 それを大阪の文楽座まで持って帰ってくる。ようはおつかいだ。 『天の人形』は、神奈川県に存在する小さな寺に封印されている。 封印とは大仰な表現で、蔵の中で埃をかぶっていたというのが適当か。 >「―――こいつは、驚いたな。 > 人見知りのアリスが、こんなコトを言い出すのは珍しいんだ。 > 仲良くしてやってくれ、マリア……お前さえ良ければ、このオレとも」 いたいけな十二歳の少女の頭を撫でる姿は、ダメで優しいお兄さんと捉えることも可能である。 ただし、切り口を少しだけ変えてやると極めて重篤な性(さが)を抱えた人間へと転落する……一個人の中で。 「……そういう趣味なんですか?」 眉を微かに寄せて、雪子が静かに問うた。 このように絶妙な距離感を保ちつつ、一同は新幹線で神奈川へ向かうことと相成った。
神奈川県某所天封寺。
鎌倉時代に建立、江戸時代に一度全焼したが建て直され現在にいたる。
火事に際して土蔵にも火が回ったそうだが中身のものはすべて無傷で残っていたという。
団地の裏にひっそりと立っていて、陽光が射し、空が青で染まっていても常に暗澹とした薄い膜で覆われているようだった。
伸びたきりの雑草を踏み分けて境内に入っていくと、住職らしき男が庫裏にいる。
これがたぬきのような男で、がっしりした体格に柔和な顔つきをしていた。
「お待ちしておりました。遠路はるばるお疲れでしょう」
和尚の瞳は無意識のうちに雪子の後ろのものを捉えていた。
地毛なのか染めているのか判然としない赤に釘付けになっている。無理もない。
中へ案内されると和尚は「この寺は兼務寺で、実は私もここの住職ではないのです」と言いつつすたすたと奥へ。
「粗茶ですが……」
「ありがとうございます。それでは和尚さん、早速例のものを」
そうでしたな、と和尚は旅行鞄ほどの行李をつうと差し出して
「これが『天の人形』でございます……」
それは何十枚の怪しげな札で封をされていて、ところどころ煤けている感じがあった。
恐ろしげな感じよりもみすぼらしさが先に立つ。伝承が語る威力を発揮するとは、とても思えない。
雪子は中身の確認もせずにそれを受け取った。
そしてじっと行李を見ていたかと思うと、不意に外へ視線を移すのだ。
「本日はありがとうございました。からくり人形のことでお困りでしたら、ぜひ文楽座をお訪ねください」
丁寧にお辞儀をして、寺を後に。
今回の仕事というのは、つまるところたったこれだけの過程を経て終了するだけのものであった。が
瞬間。右手に握られていた白いトランクケースがひとりでに開いた。
歪な影が頭上へ飛び出し、キリキリと音を立てて白磁の人型へ変形していく!
鋭い者なら気づいていただろう。
新幹線の改札口を降りた辺りから舐めまわすように纏わりつく気配を。
それはこの寺へ近づくたびにひとつ、またひとつと数を増やしながら、常に三人の周囲にあった。
「何者か知りませんが……降りかかる火の粉であれば仕方ありませんね」
何処に隠れていたのか境内のいたるところから人形使い達が姿を現す。数は目算で20といったあたり。
年齢も性別もバラバラだが、素人さんであることは容易に伺える。
敵が一様に使っているデッサン人形然としているのはアームガード社製人形「モルドール」。
初心者用の人形にして性能は数あるうち最弱と考えてよい。
また手には剣、槍、フレイル、金属バット──からくり人形としては恐ろしいほどに貧しい武装だ。
危うい赤髪がヤバ気な金融会社から金を借りたり、金髪少女が秘密の財宝の鍵を握ったりでもしていない限り。
……狙いは、ひとつしかないであろう。
「……やれッ!!」
誰かが合図を出すと一斉に各々の武器を振るい、三人へと殺到する!
【長らくお待たせしました。からくり人形劇(仮題)これより開演致します】
【○日ルールにつきましては二週間を期限にしております(
>>222 参照)延長可】
【不手際も多いかと存じますがそのときは許してにゃん、ということで……はじまりはじまり〜】
早速書き忘れていました。人形お披露目パートです。格好良く決めちゃってください ついでに、マリアさんが人形の種類について触れていましたのでそれについて少しだけ ……正直に告白してしまうと、何も考えてな……ごほんごほん いえ、自由度を考慮して種類など書かず何でもアリにしておいたのです。そうなのです こんな感じで、テンプレに書かれていること以外は基本自由に設定して大丈夫です 人形は○○動力で装甲は○○合金で〜といったように思いついたら投入しちゃってください
>>235 【結局3】
「お友…達?」
これまで親以外とまともに話が出来なかったマリア、友達なんて初めて。
近付いてきて頭を撫でてくれたジョーカーも、思ったより怖い人ではなさそうだ。
暖かい手に、ほっとしながら、おずおずとぬいぐるみから顔をあげる。
「よ、よろしく…です!」
ちょっぴりだけ、微笑みながら返事を言う。
初めてのお友達が、いきなり二人も出来た。
こんなに嬉しいのは、いつ以来だろうか。
ただ…
>「……そういう趣味なんですか?」
雪子の言葉の意味は、わからなかったけれど。
>>236-237 …新幹線に、ヨシュアは乗せにくい。
元々の目的が護衛からくりなので、小型化なんて機能がないのだ。
と、言うことでマリアは新幹線に乗らなかった。
新幹線の後ろをヨシュアに乗って駆けたのだ。
何の苦もなくついてゆくヨシュアに、まさかの横座りで駅まで走り抜ける。
そこから先は横座りで、目的地まで景色を楽しみながらも、何だか嫌な視線を感じていた。
暗い、視線を。
お寺の入り口は案外広かったので、ヨシュアも一緒に入れた。
出してもらったお茶は苦くて、マリアの好みではなかったけど、頑張って飲み干す。
わざわざ出してもらったのだからきちんと飲む。一言も発しなかったマリアの精一杯の誠意だった。
そして雪子が問題の品を受け取り、帰るだけ…とはいかなかった。
ガチャガチャ並ぶ量産型の人形、あんなのは怖くもなんともない。
素早くヨシュアにのり、側面の、刀を大きく長くしたような刃を出させる。
こんな時でも横座り、ヨシュアはマリアを落としたりなんかしないから。
>「……やれッ!!」
それは、マリアにとっても開戦の合図になった。
■〓≡=-┏┣┫┛-=≡〓■ からくり人形劇 ■〓≡=-┗┣┫┓-=≡〓■
>>237 【尊厳を賭した死闘(T)】
『お待ちしておりました。遠路はるばるお疲れでしょう』
「和尚、貴様――――見ているな?」
この手の視線の意味は大体、相場が決まっている……失礼なコトを考えてる目だ、アレは。
今、人形師の胸に秘められた堪忍袋という名の施錠不能な小さな宝物庫の中で、
怒りのクリスタルが静かにヴァーミリオンの光輝を宿そうとしていた。
『この寺は兼務寺で、実は私もここの住職ではないのです』
「実を言うとだな―――何を隠そう、このオレも此処の住職じゃない」
強靭な体躯と精神を備えた古狸は、満を持して明かされた驚愕の新事実にも動じなかった。
間違いない……コイツは、オレの敵だ。今回の依頼を通して最大の障害となる存在――
――ソレを即座に理解した人形師は、庭池に棲まう鯉の末端価格の算定を開始した。
>>236 【白がもたらす直感】
――――人形使いにとって、距離感は重要だ。
間合いを計るべき攻略対象と遭遇した場合、
魔術師は、ほぼ例外無く先制攻撃を仕掛ける事にしている。
多くのケースに於いて、その直後に"自身が傷つかない距離"への退避を試みるからだ。
その間隙によって、先ずは対象の戦闘行動半径を推測する手掛かりを掴む。
然る後に、相手の有効射程距離外からの狙撃を繰り出すスタイルだ。
故に、零距離の殺し合いを仕掛ける展開はレア・ケースだが―――
『いえ。まずは件の人形を受け取りに行きます』
―――雪子嬢は、その数少ない例外だと言える。魔術師が動けなかったのには理由があった。
少女が目前に現れた時に感覚した、実に奇妙な……理論的には説明の付かない"直感"だ。
先天的に悟性が認識する直観ではなく、まして予感などと言った曖昧な概念でもない。
"人形使い"としての総合的な経験値は、彼女の方が高い。
年季が違う、と表現してもいい。それが直感のもたらした結論だ。
その彼女のレベルを考慮すれば、今回の依頼の難易度は低い。だと言うのに、
彼女は自身に与えられた……あるいは、自身に課した役割を全霊を以て果たそうとしている。
魔術師が最初に"人形使い"の仕事に手を染めたのは、およそ五年前。
だが、その一年後には、この世界から姿を消した。当時の記憶は残っていない。
確信を得るに充分な判断材料は無いが、彼女の"人形使い"としての起源も、その頃だろうか。
可能性の色は、白い。過去に存在し得た筈の記憶と経験は、虚ろな空白で塗り潰されていた。
その空白に、魔術師は独白を塗り重ねる―――ああ、それでも世界は動き続けていたんだな。
量産型の人形使いなんて連中が現れたのが、その端的な例証って訳だ。
誰にも平等に流れる筈の時間の中で、唯一静止している――
――オレと言う存在の時計を制御するクォーツだけが。
時間の波に晒され漂白され続けたフィルムが、現在を結像するまでの永い間、
おそらく、彼女は"人形使い"としての時を過ごして来たのだろう。
時流がオレを漂泊させた分だけ、彼女は洗練されている。
「……お前、綺麗になったな」
――――気が付けば、そんなコトを口走っていた。
それから彼女が語ってくれた依頼の詳細は、耳には入っていたが、頭には入らなかった。
だが、口には煙草が挟み入れられており、肺には主流煙が流し入れられている。
晴天の下で吸う一本は格別だ。人形師は、やがて考えるコトをやめた。
《ねえ見て、ジョーカー。この子おもしろいわ……ぬいぐるみを食べてる》
どうやら、アリスが興味深いマテリアルを発掘したらしい。
今度こそ躊躇することなく、人形師は先制攻撃を開始した。
【→
>>230-231 】
>>236 /
>>239 【その男の愛と性(サガ)】
『お友…達?』
ほんの僅かに綻んだ面持ちは、誰かの温もりを求める幼い少女の表情そのものだ。
これが人形か? 口元まで出かかった言葉を、人形師は飲み込んだ。
アリスには、ああ見えて嫉妬深い一面がある。
『よ、よろしく…です!』
「こうなってくると、ワンピースなのが悔やまれるな。
もちろん、その恰好はマリアに良く似合っているが。
そうでなけりゃ、肩車の一つでもしてやりたいところさ」
『……そういう趣味なんですか?』
雪子嬢の鈴の様な涼声が届く。人間の本質を一瞬で見透かした点で言えば、彼女は大人だった。
しかし、ソレをありのままの言葉にしてしまうあたり、やはり年相応に純情な少女だ。
魔術師は素直に思う。自身に向けられる純粋なその瞳が、心から愛おしいと。
だが、天邪鬼のペテン師は、作って見せたポーカーフェイスで応える。
「これは純粋な、そう……言わば本能的な"父性愛"の衝動ってヤツだ」
《今日の貴方は冴えてるのね、ジョーカー。
貴女の薄い辞書に"父"の一文字が記載されていたのは幸運だわ》
「もちろん、雪子嬢となら"お友達"以上の関係でも一向に構わない。
この仕事が終わった後、お互いが運良く生き残っていたら、
オレと一緒に御所車か押し車でも、どうだ?」
――――人形使いにとって、距離感は重要だ。それは、あらゆる状況に共通する真理だ。
だが、人形師の前を歩く少女達との絶妙だった距離は今、絶望的に遠ざかりかけていた。
>>239 【路線上のマリア】
《とても楽しそうね……あの子達、外でどんなお話してるのかしら?》
「ああ……マリアはヨシュアに、こう言ってるんだ。
"Moses my servant is dead; now therefore arise, go over this Jordan,
thou, and all this people, unto the land which I do give to them,
even to the children of Israel."
【モーセは死んだ。お前達はヨルダン川を渡り、約束の地へ赴け】」
《それでヨシュアはマリアに、なんて返事しているの?》
「―――そいつは間違いなく、こうだろうな。
"All that thou commandest us we will do,
and whithersoever thou sendest us, we will go."
【命令に従おう。あんたが行けって言うなら、何処へだって行くさ】」
《そうかしら……私は、きっと間違いだと思うわ。
だって、第十六節はヨシュアに答えた民達の言葉だもの。
さっき言ったのは訂正するわ。今日も冴えてないのね、ジョーカー?》
「そいつは違うな。冴えてないのは、オレじゃない―――自称、全知全能の神とやらの方さ。
なにせ、奴らが時速200kmオーバーで爆走するなんざ、想像もしてなかっただろうからな」
《私、思うのだけれど。貴方、マリアに対する態度を考え直した方がいいんじゃないかしら》
「奇遇だな、アリス。俺も今、それを検討してたトコだ。はっきりさせておく必要がある」
《待って。これは、エーテル・パスの誤作動……?
メジャー・アルカナの機導封印が解除されているわ》
「いや、誤作動じゃない。あんな大道芸を見せつけられて、やられっ放しじゃ収まらない――
――人形師としての矜持ってヤツがな。無論、魔術師としてのプライドもある。
翔べ、アリス―――ほんの一瞬だけでいい、ヤツの速度を超えるんだ。
あの金髪ロリと一本角に、格の違いを見せてやれ!」
《お友達の隣で空の旅をさせてくれるなら、私は構わないわ。
けれど、貴方の方の魔力供給は、どうするのかしら。
まさか、初対面のユキコにお願いするつもり?》
「―――ああ、御所車でな。それがダメなら押し車だ。
このオレはプライドの為なら、女だって押し倒す。
雪子嬢だって人形師だ、わかってくれるさ」
《……貴方、乙女心を少しもわかってないのね。
神の御心よりも、ムードを気遣うべきだわ》
「生憎だが、タルムードは読んで無い」
《まったく……あきれたものね》
後日、人形協会"文楽"会長の下に東海旅客鉄道から正式な苦情が通達される事となる。
一般乗客の混乱を招き、車両の安全走行を妨げる恐れが生じるため、
今後の利用を遠慮してもらいたいという趣旨だ。
つまり―――
人形使い達は、出禁になった。
>>237 /
>>239 【尊厳を賭した死闘(U)】
『粗茶ですが……』
『ありがとうございます。それでは和尚さん、早速――…』
二人が本題に入った。致命的な隙が生じ得るこの瞬間に、人形師は集中力を研ぎ澄ませた。
部屋の間取り、天井の高さ、互いの位置関係……周囲の状況を冷静に分析する。
想定しているのは、ありとあらゆる形態の奇襲戦闘、即ち―――"襲撃"だ。
能面の様な表情の人形師は、狸坊主を襲撃する機会を窺っていた。
「茶が粗末なのは確かだが―――こいつは、値打ちモノの茶器かもしれん。
アリス、よく聞け……この部屋で二分後に不測の事態が起こる。
お前は、ついうっかりわざと手を滑らせて卓に落とせ」
《お断りよ。この緑色の紅茶、とても興味深い味だもの。
それよりマリアを見て……がんばって飲んでいるわ》
「……ああ、健気に飲み干そうとしてるな。
相当、苦そうにしてるが大丈夫か? 本当にうっかり零したり――
――話は変わるがアリス。たった今、オレはソリッドなアイディアを閃いた」
《貴方が何を思い付いたのかはわからないけれど……通報されたいの?
それに、私の気のせいかしら。話題も何一つ変わっていないわ》
「マスター……いや、和尚。オレの奢りで、こちらのリトル・レディにミルクを。
この年頃の子供にとって親しみやすく零しやすいドリンク・ヨーグルトでもいい」
『申し訳ないですな、お客人。この時間に御出でになる連絡は頂いておりましたのに、
生憎ながら粗茶とケフィア以外の御持て成しを御用意しておりませんでな!
いやはや、これは拙僧とした事が……真に面目ない。はははっ!』
「じゃあソレで構わん。この金髪ロリに振り掛け……いや、振る舞ってやってくれ」
《……貴方達、本当に最低だわ。いまこの寺院に、節操の概念は存在しないのかしら?》
『いえいえ、もちろん御座いますとも! ……ええ、拙僧なだけに。うわはははははっ!』
「オレには"唐茶"か"大乗の茶"を頼むぜ。当然、キッチンあたりに隠してあるんだろ?」
『何を仰っているのですかな、お客人。
清浄なる魂の修練場である、この天封寺。
そのような邪なモノなど、あろう道理も御座いません。
お客人は八斎戒五戒、その悉くを破られておると見受けました。
境内を歩くには相応しからぬ御仁だ。特に庖厨の床下収納庫には近づかないで頂きたい』
「――――抜かせ、ナマクラ坊主」
人形師の保有する堪忍袋は特殊な形状であり、筒状に近い。
内容物の封緘を担う、その緒は非常にデリケートな素材で出来ていた。
よって、普段は堪忍袋本体とは別に、クローゼットの奥で丁重に保管してある。
『――――なまくらと申したか』
赤髪天を衝き、スラックスのポケットに両手を突っ込んだ無形の位で立ち上がる人形師。
地勢を得る山門の主は、重い・暑い・硬いの三重苦の袈裟を翻し、虎拳の型で相対した。
無論、人形師は出禁となった。
>>237 /
>>239 【貰い火からの消火芝居(T)】
『何者か知りませんが……降りかかる火の粉であれば仕方ありませんね』
「オレは気にしないが……いっそのこと"上炎寺"か"延焼寺"にでも改名しちまえばいい」
決戦の幕は、白いトランクケースのロックと同時に開かれた。
魔術師が事前に想定していた奇襲形態の何れとも合致はしていないが――
――ここに襲撃は果たされた。歩兵の数は二十……他とは気配の異なる人形を含めて二十一。
『……やれッ!!』
その指揮官の人形と思わしき一体を含む七体の進路上には、展開を終えたオリヴィエール。
長大な切断機構を出現させ臨戦態勢に入ったヨシュアの方に近いのが七体、こちらが七体だ。
《ジョーカー……モード"ブランド・オブ・アルカナ"の機導許可を。
―――横座りのマリア可愛いわね》
「アリス……今回の依頼の報酬額を知らないのか? アルカナじゃ大赤字だ。
―――ああ。抱きしめたいな」
《あとで聞かせてもらおうかしら。モード"西洋歌留多"――――行くわ。
貴方が受けていた不正融資の未返済額の方は、知りたくもないけれど》
「人聞きが悪いな。チャーリー・パーカーも言ってるだろ? "バレなきゃ不正じゃない"ってな」
>>237 /
>>239 【貰い火からの消火芝居(U)】
魔術護符人形の左右の手に奇術の如く出現したカードが、一対の細身のレイピアを形成する。
先行する二体のモルドールは、奇天烈な機動と急加速で距離を詰める―――前後からの挟撃。
《――――覚悟は、よろしくて?》
右の細剣を振るい、真正面に踏み込んで来たモルドールの頭部を串刺しにする。
左の細剣を掌中で器用に反転させつつ、右脚を軸としたアン・ドゥオール。
逆手に持ち替えた刃は、背後の一体の胸部から背部までを貫通。
文字通りの意味で"糸"の切れたマリオネットは、膝から崩れ落ちる様にして沈黙した。
剣舞人形は二本の刀身を引き抜く反動で屈み込み、後方に跳躍しながら投剣する。
未だ健在の五体の内、二体に双剣を投げ分ける。空中で、さらに三枚のカード。
三本の新たなレイピアに変じた魔装を、残る三体に投擲―投擲――投擲。
和風ゴシックドレスのフリルが、ふわりと空気を包み込み、着地。
《……コールは途切れたかしら》
「これ以上のレイズは無意味だな―――ショウ・ダウンと行こう」
踵を返した魔術師は、興味も無さげに指を鳴らした。
刹那、突き立てられた五本の鋼が瞬時に爆ぜる―――閃光と轟音。
解放された純魔力変換量の二乗にカードランク係数が乗算された、破壊魔術の現界。
主要機構大破による機能停止で済んだモノは比較的強運と言えた。
砕け散って瓦礫と化しているモノ、塵すら残さず消滅したモノもある。
合計、七体のモルドールが沈黙。その何れもに共通するのは、
彼らの主動力源たるアームガード製エコノミー魔導バッテリーから、
"着弾"したカードのランクに比例する魔力が奪い去られているという一点だ。
[◆2] [◆3] [◆5] [◆8] [◆T]
「ダイヤのTハイ・フラッシュか……悪く無い魔力(かせぎ)になった」
立ち上る魔力素子の残滓が、その身に纏った闇色の紋付羽織と赤髪を靡かせる。
一瞬遅れて吹く風は、ダーク・ロイヤルの紫煙を魔術師の背後へと吹き散らした。
《……あら。この子たちのハンドを、まだ見せてもらっていないのだけれど?》
ゆっくりと、音も無く舞い降りる花弁にも似たエーテル粒子の淡い残光の下で、
夜色の舞踏人形は、華奢な肩に乗せた銀髪を落とし、静かにカーテシーをする。
「……ああ。どうやら、その必要は無いようだぜ―――― Good Luck!!」
崩れた庫裏の屋根瓦が、がらりと滑り落ちて質素な庭池に落下する。
戦舞台には似つかわしくない、風雅な水音の残響が境内に木霊した。
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>>245-246 アリスの鮮やかなカード、そしてレイピア使いを横目に、マリアはヨシュアを駆けさせた。
相手は単純な作り、迫ってきた二体の間を抜ければ、あっさりと両断される。
その二体が崩れ落ちる前に、囲んできた四体に注視し、ヨシュアを一度止める。
二人…いや、一人と一体の会話はあまりない、ただただマリアの意思を感じたヨシュアが走るのだ。
それを叶えるのは角と刃のオリハルコン。オーダーメイドで作られたヨシュアは、アリスとは違えど心がある。
大好きな主を守るという思いが。そして、四体が程よく近付いてきたところで、馬らしからぬ体捌きで一回転。
四体もまた上下に別れることとなった。
最後の一体はやや遠く、今日散々走り、揺れで主に疲れを感じさせているヨシュアは早期決戦を決めた。
頭を一振りし、角の風の魔力を放つ。
真空刃となり量産品に襲いかかった風は、またも人形を真っ二つにした。
…こんなヨシュアも、マリアがある程度そばにいなければ何もできない。
主、という存在と意思があるからこそ動けるのだ。
動力となっている、謎の隕石が理由なのかもしれない。
だが、そんな事実はマリアとヨシュアには関係ない。
互いに好きだから一緒にいるのだ。
だから、今回マリアの『友達』となった者には警戒している。
ジョーカーと名乗る男、何やら考えている気がしてならないからだ。
「…ありがとう、ヨシュア」
戦うには非力な主は、代わりに戦うヨシュアに礼を言うと、辺りを見渡す。
これ以上暴れることにならなければよいのだが…
優しい主を思うヨシュアは、ひっそりと願うのであった。
248 :
名無しになりきれ :2014/11/14(金) 07:37:49.90 O
きっとマリアは思ってる ロリがどういう意味か
249 :
名無しになりきれ :2014/11/15(土) 00:27:11.45 O
始めた人物来てないのか
ターンの回りが通常の三倍速いっ……!? 申し訳ありませんが投下は土曜日中ということで……お願いしますっ
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【
>>247 /
>>250 マリアと雪子嬢
―――認めたく無いもんだな。オレ自身の、ノープラン故の不祥事というモノを。
煙草が無ければ即死だった。"遅くとも明後日の夜までには"なんて台詞を、
自分から断言したばかりだったが……すまん、アレは嘘だった。
……ああ、"許してにゃん"―――というヤツだ。
それで、だ。月曜に宣言した水曜夜から日付を越え、深夜を駆け抜け、
翌日の早朝にかけて、地獄の圧縮作業を経験した立場から言わせてもらうと、
もし、スケジュール的にきついなら、無理に土曜日中のリミットを課すコトは無い。
"二週間"を諒解して参加したんだ、焦れたりはしないさ。オレも、おそらくはマリアも。
ただ、マリアとヨシュアのコンビのスピード感を生かさないってのも勿体無い話だ。
もし雪子嬢とマリアさえ良ければ、こっちで例の如く適当なインタールードを捏造する。
無論、ストーリーのメインストリームとは外れたシーンだ、レスに組み入れる必要は無い。
特に異論なければ、境内で片付きそうな短い小話でも、何か考えてみよう。
とは言え、夜は野暮用があってな、夕方あたりまでに1レス程度と言ったところか。
何も思いつかなけりゃ、改めて泣きを入れに来るが……あまり気負わず、気軽に楽しもう】
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>>251 ありがとうございます
期限は二週間ですが、可能な限り早く返す予定ではありましたので
幸い予定が空いていますからたぶん、おそらく、きっと大丈夫です
もしも日を跨いで深夜投下になれば……そのときは許してにゃん
それと幕間劇の件、了解しました
間奏曲が鳴る前に投下できるよう善処したいところですねっ
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>>247 【"ライト・オブ・レアメタル"】
――――オリハルコンの光が、その視界を切り裂いた。
『…ありがとう、ヨシュア』
一角獣の戦いは、一瞬で終わった。
魔術師達の戦闘速度を僅かな衒いも無く凌駕した、その事実は――
――脅威的だった。スピードそのものも、これだけの逸材が、この辺境の地に眠っていた事も。
《ねえ、マリア……》
「―――マリア」
今度は、自分のドールにまで、あっさり先を越された。
称賛ついでにマリアの頭を撫でてやろうと踏み出した一歩が止まる。
何やら楽しそうに話しているらしかったが、この位置では詳細が聞き取れなかった。
あの様子は、イリーガルかつダーティーでモラルハザードな悪戯の一つでも思い付いたのだろうか。
《さっき向こうで、お花畑を見つけたの。少しの間、一緒に探検しましょう?》
その純粋無垢な言葉に、人形師は己の邪推を打ち消さざるを得なかった。
これほど愛らしい金髪スィート・ロリと銀髪ゴシック・ロリが、
反社会的で違法なサムシングに関与する筈が無い。
「……くっ、来やがったか」
不意に――――魔術師の左目が、渇く。戦闘レベルの魔術を行使した後は、いつもこうだ。
残された人間の右眼が、欠損した魔術回路を埋め、渇いた欲望を潤す"何か"を求めて彷徨う。
二人の少女は歓談中、雪子嬢は事後処理、坊主の回転説法に興味は無い。
酒は、キッチンのアンダーフロア・ストレージから頂いた。煙草も未だ切れてない。
こうなると後は、"ユニコーンの角"か。魔術師の世界では、古来より希少品の代名詞だ。
「"特撰 純米大吟醸 いづみ橋"……古狸の隠し酒にしちゃ、悪くない味だ」
さり気なくマリアの死角に位置取った人形師は、音声に指向性を付与する風の魔術を紡いだ。
ヨシュアだけに聴こえる"声"で、"誠実な紳士の仮面の下に隠された暗黒の意志"を吐き出す。
「"ククク……あのマリアとかいう小娘、まんまとオレサマ達に気を許しているなァ……!!
隙を見計らって、あやつも魔術護符人形(アミュレット・ドール)にしてやろうか。
我がドール・コレクションに加わる栄光を無上の喜びと知るが良いわ。
アトリエのガラスケースの筐内(なか)で愛でてやろうぞ――"」
――こんなところか。自分自身の厄者(やくしゃ)ぶりに震えが来る。
賭博師が、"油断しきった無防備な姿"を晒してヨシュアの背後に立った。
インシュアランスは、黒スーツと紋付羽織の強化に回した幾ばくかの魔力のみ。
希少金属の塊が"声"に気づく。そうさ、いつだってオレは、その価値を信じ、求めて来た。
金は、正義だ――――
【"ライト・オブ・レアメタル"……ヨシュア選択】
ニア
1.お望み通りオリハルコンでひと暴れした後で、トドメに後脚で蹴り飛ばす
2.マリアから見えない角度で、死なない程度に後脚で蹴り飛ばす
3.この男めんどくさい。適当に後脚で蹴り飛ばす
>>247 【"ナイト・ウィズ・リトルガール"】
少女に寄り添う、一角の騎士――――
『…ありがとう、ヨシュア』
まるで王女様に付き従う騎士みたい……そんな風に、戦闘人形は思った。
ヨシュアが佩びる、チェスのナイトを思わせるシルエットとテクスチャーもさながら、
二人を包み込んでいる静粛であり、清淑でもある空気が、深い主従の絆を感じさせたからだ。
自身と魔術師に刻まれ、二者の異端を外界から鎖すソレとは、違う―――本物の自然な絆。
《そちらも終わったのね……マリア、ヨシュア、ケガはしてない?》
魔術人形には冷たい血液が流れていた。
この身体を絶えず巡るマナ・ブラッドは、液状の魔力伝導体だ。
血の名前を冠してはいても、酸素や栄養素を巡らせるための生命の水脈ではない。
オーバードライブの際には、人間の体温を遥かに超える高温と発光を伴う、ただの循環機構。
《ねえ、マリア……》
けれど、虚構の人形は夢想する。
こんなにも近くに、これほど確かに感じられるのなら。
今なら自分でも、その絆に触れさせてもらえるのではないか。
そんな身勝手な想いに心を躍らせ、無邪気にマリアの手を取ろうとして――
《……ううん。なんでもないわ》
――異端の人形は、それでも、ひんやりと冷たい自分の手を恥じた。
感情に任せて急に手をつないだりしたら、きっとマリアを驚かせてしまう。
初めて出来た、お友達。木漏れ日みたいな暖かさと柔らかさを持つ、人間の女の子。
月光の人形は、その陽光の様な少女に……ただ、憧れた。
《壊したドール達の後片付けには、きっと時間がかかるわ》
鮮烈な舞闘の中でも決して乱すことの無かった、バッスルスカートの緩やかなドレープ。
それが今、行き場を失った人形の小さな手の内で、くしゃり、と衣擦れの音色を奏でた。
《さっき向こうで、お花畑を見つけたの。少しの間、一緒に探検しましょう?》
さらさらと、儚い銀髪を微風に溶かし込ませて。
少女人形は、ほんのちょっとだけ、マリアの前を歩いた。
そっと伏せた薄い瞼と長い睫毛に、お友達が気付いてしまわない様に。
――――夜の少女は、夢を見る。
【"ナイト・ウィズ・リトルガール" 了】
■〓≡=-┏┣┫┛-=≡〓■ からくり人形劇 ■〓≡=-┗┣┫┓-=≡〓■
【
>>252 雪子嬢
ああ、なんだ……その―――すまん、書き終わっちまった。
今回ばかりは、本当に空気を読めてなかったらしい。
―――Good L……いや、許してにゃん】
>>253-254 >《そちらも終わったのね……マリア、ヨシュア、ケガはしてない?》
「…大丈夫、です」
ヨシュアから降りていたマリアは、ぎゅっとぬいぐるみを抱き締める。
これ以上何を話せばいいのか、どう接したら友達として普通なのか、悩んでいる間にアリスから話しかけられる。
自分から話すのは、中々難しい。
>《さっき向こうで、お花畑を見つけたの。少しの間、一緒に探検しましょう?》
いつの間に?
でも、綺麗な物を見るのは楽しい。
後片付けの手伝いをしなくてよいのか、と躊躇したものの、小さな頷きで答えた。
綺麗なお友達と、綺麗なお花。
殺伐とした戦いの後には魅力的過ぎる誘いだった。
ヨシュアも眺めていてくれて、行ってくるように促してくれる。
マリアはそっと片手をのばし、アリスの手をとった。
きっと、そうしたら連れていってくれるのだろうと思ったから。
人形だから手は冷たかったけど、心が暖まる。そんな気がした。
そして、ヨシュアは隙だらけでおかしな事を言い出した男を見る。
今ならマリアも離れていて、少し仕置きをしても問題ないだろう、が…
【選ばない】
…ヨシュアは角で男を小突くだけにした。
あまりに胡散臭い台詞回し、脚で蹴りとばすのも面倒だ。
言葉通りの事を考えてるとは思えないが、絶対悪ではない限り傷付けたくない。
マリアの友達になったのだから、一応。
【キャラクターテンプレート】 名前:遊鳥 学 (ゆとり まなぶ) 性別:男 年齢:23 所属:からくり人形協会(研修中) 性格:生真面目、学歴厨 容姿:仕立ての良いスーツに革靴、高級時計 前髪を7:3で分け額を露出させたショートウルフヘア 備考:日本における人形使いの最高学府と呼ばれる京都芸能大学(能大)を卒業し、 幹部候補生として文楽に就職した若手のエリート。 事務方志望で採用されたが、現在は現場にて研修中の身。 高水準の教育を受けている為、人形使いとしての実力は高いが、過剰な自己評価には追い付いていない。 血反吐吐く努力をして良い大学を出た為、エリート意識がとても強く、偏差値でしかものを語れない学歴厨。 心持つからくりの撤廃を唱える宗教家との論争で、『ではその神とやらの最終学歴を聞こう!』と言い放ったことは、 人形使い業界の歴史に残る汚点としてあまりに有名。 最高の学歴を引っさげて文楽に就職したは良いが、学歴が意味を成さない現場の世界に放り込まれ、 マニュアル通りに動いてくれない同僚たちの無茶苦茶ぶりに胃袋が悲鳴を上げる日々。 「まークン」というハンドルで若手人形使いのSNSコミュニティを運営している。 【人形テンプレート】 名称:七星(しちせい) 全高:2m 外観:サイバーチックな全身鎧に包まれた偉丈夫。 外装は艶消しの施された濃い灰色、動力の伝達が紫電のラインとなって表面を奔っている 武装:◆電磁加速式金属弾射出モジュール『御神槌』/無数の金属球を発射する電磁式ショットガン ◆両手剣型冷熱交換素子『フレイザード』/ペルチェ素子により刀身を加熱・加冷する大剣 ◆指向性電磁波投射装置『ECMフィラー』/強力な電磁波を出して電子機器を破壊したり、感覚器を狂わせる 備考:狭義での人形使いとしての技能を持つ遊鳥が、量産型を素体に自作したからくり人形。 常温核融合技術により、莫大な電力を生み出すことができ、それを利用した各種武装を搭載している。 ACコンセントとUSBポート搭載でスマホの充電もできる。 【現在のシナリオが終わって、もしも続編があれば、参加したいと思います】
参加希望ありがとうございますっ! でも1シナリオきりの短期なので次回は未定なんです〜ごめんなさい 幸いまだ開始したばかりです 遊鳥さんの予定に不都合がなければ滑り込み参加は可能ですよ〜 導入さえ頂ければちゃちゃーっと虎眼流を嗜む和尚のところへご案内します
「ねぇ、知ってます? 人形って魔力で動くでしょ? あれってさァ〜〜〜実は分野によっちゃあ法力とか気とか呼び方変わるんスよ」 がらくた山の頂上で、男は影にこう言った。 人形は製作者によって外観も能力も大きく違う。 ならば、前提とする技術体系によって構造も少しずつ異なってくる。 たとえば量産型人形「モルドール」は科学をベースに魔導バッテリーで稼働する。 金銭的にコストのかからないリーズナブルな動力源であるからだ。 「ちなみに俺のフィロメナは純錬金術製。そこらの人形とは金のかかり方が違いますぜ」 誇らしそうにくいと親指をさした方には青色の人形。錬金術の結晶ともいうべき技術がこの一体に注がれているのだ。 魔力を生成し続ける動力「賢者の石」にそれを運ぶための霊液、装甲にはヘルメス合金を使用──。 見るからに頑強で、流線形のデザインは一種ヒロイックな感じがした。 「……うん、あちらさんも上手くやってくれてるといいんですが」 心配はしていない。 日本の人形使いがとるに足らないことを彼は知っているからだ。 C級エージェントといえども組織の人形使い。彼女が失敗する心配はないだろう。 濃尾無双と恐れられた流派を受け継ぐたぬき和尚にさえちょっかいをかけなければ。 (……素手で頭蓋骨を陥没させられるとか) 男の影が不意に隆起。不透明な流動状のナニカがぐにぐにと蠢く。 黒い不定形は徐々に定形を為して人型を形成。 がらくた山に落ちていた影は赤銅の面を被った鎧武者へ。 奇妙ないでたちであった。 腰には刀を帯びていて、赤いマントが目を引く。 三国志の猛将が如き殺気を纏って視線だけを男へと向ける。 「まァ……そろそろ行きましょうか」 がらくた山から飛び降りて何気なく一瞥。 在るのは血を流して倒れる文楽の人形使いと、堆く積みあがった人形の残骸ばかりであった。
早乙女雪子は人形が好きではない。 父は人形使いの家系で、母はこれまた人形使い。結ばれた二人の間に産まれたのが雪子。 生まれついての人形使いが人形繰りを学ぶのは道理であろう。 別段それが苦痛とは思わなかった。厳しくはあったが、余りある才能もあった。 そもそも、毛嫌いしているなら文楽に足を踏み入れない。 ただ新幹線を爆走する二人を見ながら──理解できなかったのだ。 からくり人形に武器以上の何かを求めたり感じたりするのは。 (そう……人形は剣であればいい。人形を壊す剣であれば) 細切れになって散乱する七体の人形だったものを眺める。 戦の舞台にひとたび上がれば踊ってもらうは死の舞踏。 向かうところに敵はなく、淡雪の如く消えゆくのみ。 「聖剣ブランネージュ」 上腕から突き出た三日月は何事をも切り裂く聖なる剣。 少女のからくり・オリヴィエールの必殺武器たる機巧である。 (天稟、か……) 御所車だかナイアガラの滝だかが強いのは、なんとなく理解できる。 強すぎる父性愛は致命的欠陥だが人形使いとしての能力は間違いなく上位。 マリアは、どうであろう。 同じ年齢であった頃、雪子に同じことができただろうか。 否。客観的に戦闘に堪えうるほどの実力は備えていなかった。 もし戦闘に入れば積極的に助ける予定だったが、些かお節介であったらしい。 「……残骸の片付けは後回しにしましょう。今はこちらの方が大事ですから、ね」 私……残酷なんですよ。 瞳から、感情の光が失せた。 白き人形がキリキリと敵の人形使いを掴み上げ、頸動脈に聖剣の刃が触れる。 雪子は問う。誰の差し金なのか。目的は何なのか。 答えないなら、本意ではないが「痛い目」にあってもらうしかないだろう。 「げ、げ……き、だ……ん……」 絞り出した声は鉄面皮に動揺の亀裂を走らせる。 直後、轟音と熱風の波が雪子の頬を叩いた。 長い髪が激流に押されてぱたぱたと後ろへ逃げていく。 火薬と土煙の開幕ベルが三人の役者に告げている。 ────敵役の登場。
境内に撒かれた人形の残骸、残骸、残骸。 二十一対三とは思えぬほど一方的な戦いといえよう。 それでいて敵の人形使いが五体満足であるから、マリアとジョーカーの実力は折り紙付きだ。 「アハハ。数を揃えたくらいじゃ相手になんないってわけね。面白くなってきたじゃない」 爆風の元凶、空にありき。 頭上から一同を見下ろす人形は戦闘機に手を生やした異形。 三メートルはあろう全長にコクピットに位置する箇所は舌を突き出す道化の顔。 その背に乗りしパンク・ファッション風の女は何が愉快なのか笑声を絶やさない。 「そこのミス・無愛想にはバレちゃったから自己紹介しておくね。 私は『エンターテイナー』のリスベット。劇団のC級エージェントよん」 「劇団」。世界征服を策謀する秘密結社の名。 構成員の大半が人形使いであるから、人形使いなら一度は耳にしたことがあるはずだ。 世界中で活動しているが日本では比較的小規模で、組織の人間と相対するのは雪子もはじめてであった。 「持ってるのよね〜、伝説の人形。リスベット観戦してたから分かるわぁ〜。 文楽なんて極東の小さな組織には勿体ない玩具よ。それはぁ、私達のモノであるべきなの。そうでしょう?」 そうですとも。自問自答の後に思わず噴き出す。 雪子は渡された行李をぎゅっと抱き寄せ、オリヴィエールも臨戦態勢へ移行。 神にもなり得ると謳われた恐るべきからくり人形。これを無事に文楽へ送り届けるのが任務である。 それを世界征服を目論むような輩に奪われるべきでないのは、猿にだって理解できる。 (先程の爆発……威嚇でしょうか。空中から一方的に攻撃されるのは辛い……) こちらの手中に目的の物がある以上、あまりに無茶苦茶な攻撃はありえない。 裏を返せば「天の人形」を持たぬマリアとジョーカーは集中砲火を浴びる恐れがある。 そして、逃げ続けるだけの広さを天封寺の境内は持ち合わせていない。 このまま立ち向かうか。逃げつつ制圧するか。 「そうそう、見てたわよぉ。貴女のお馬さん速いのね。私の人形とどっちが速いのかなぁ〜」 ヨシュアを見下ろして、鼻で笑った。 言外に「私の方が速いけどね」を含んでいるのは明らかである。 それじゃあはじめましょうか、とリスベットがパチンと指を鳴らし。 舞台袖から役者が現れるように新たな人形使いが五名登場す。 人形もただのモルドールではない。下半身を二輪に改造した高機動型。イジリやすさもこいつの特徴である。 「──飛び立て! 『エンターテイナー』!!」 高らかな口上と共に飛空人形のサイロが開口。小型ミサイルを対地に発射。 普通の人形なら一撃で吹き飛ばせるような威力が秘められているのは想像に難くない。 「逃げてください!」 雪子が叫ぶ。 その切っ先は、マリアへと向いていた。 【敵:秘密結社・劇団。世界征服を真面目に策謀する悪の組織。世界中で活動。わりと有名】 【敵NPC:飛空人形『エンターテイナー』の使い手リスベット(19)。意外と照れ屋。C級エージェント】 【リスベット以外の雑魚:撃破描写(1ターンキル)あり。ほとんど背景。やられ役】 【戦闘時間:最長2ターン】 【許してにゃん】
【からくり人形劇】
>>261 ああ…あんな人形もいるんだ。
最初に空を見上げたマリアの感想は、それだけだった。
仕事の続きをしなくては、仇討ちが終わるまで追い出されるわけにはいかない。
>「逃げてください!」
その声を聞く前に、マリアは動き始めていた。
初めの1手…手を握るアリスをジョーカーの方へ突き飛ばす、という行為を。
アリスは突風にまかれ、ジョーカーの傍らまで吹き飛ばされる。驚いた表情をしていたが、仕方ない。
突き飛ばしたのを謝るのは、後回しだ。
2手、片付けなかった人形の残骸が風に巻き上げられ、マリアにせまっていたミサイルに衝突する。
その爆風により飛んできた破片が、マリアへ大なり小なりの傷をつけるが、血こそ流れても致命傷にはなりえない。
それくらいなら、計算できる。
3手、アリスが動けるようになるまで、ジョーカーから離れないように命じたヨシュアを敵へ向けさせる。
不本意な命令に怒り心頭なヨシュアに怒られるのは、敵を排除してから。
アリスを飛ばした風も、残骸を巻き上げた風もヨシュアに願い、叶えてもらった事。
ヨシュア自身はこちらへ駆けようとしていたが、あえて制した。
護衛をしたがる彼の心は荒れていたが、マリアの意思を汲む事を優先する以上、命令に逆らいきれない。
…4手目を指すには、様子見が必要だ。
ぬいぐるみに血がつくのも気にせず、マリアは戦況を見る―――
263 :
湯鳥 :2014/11/16(日) 09:47:31.50 0
>>258 わかりました!
では導入を書かせていただきますね
本筋への合流は、リズベット戦後あたりでお願いします!
天封寺の所在する閑静な住宅街を、男が一人、巨大なスーツケースを抱えて遅々としたペースで進んでいく。 長身に、上等な仕立てのスーツが良く映え、フォーマルな髪型と相まってやり手のビジネスマンのようだ。 実際、男は見た目の印象に違わぬ出自の持ち主、すなわちエリートだった。 人形使いを育成する機関は数あれど、国内においてその最高峰を求めるとすれば、選択肢は1つしかない。 国立・京都芸能大学、伝統芸能学部。通称能大。 古くは旧制大学の時代より、人形使いの最高学府として君臨し続けてきた聖域である。 その起こりは大日本帝國軍……つまりは人形使いを軍事利用する為の教育機関として設立された大学だ。 戦後は戦闘教育を防衛大学校に譲り、能大は今や世界に誇る人形技工士の養成機関となって現代に至っている。 遊鳥学は、能大を昨年卒業し、文楽に新卒で就職した、どこに出しても恥ずかしくないキャリアマンである。 そんな彼であるが、今は人影もまばらな団地の中、泣きそうな顔で、スーツケースを引きずっていた。 「なんでこんな、坂ばっかりなんだ、この街は……っ」 人形使いは、特に小型のものでない限りは己の得物を専用のケースに入れて持ち運ぶ。 一般にはスーツケースほどのサイズの箱は、携行するというより搬送するといった方が適当だ。 魔力の恩恵で、見た目ほどの重さは感じないが、それでも大荷物である。 この街のように坂の多い場所は、人形使い達にとっての鬼門とさえ言えた。 「やはり駅で合流してから行けば良かったか……」 遊鳥は、早乙女雪子達に割り当てられたのと同じ任務に参加していた。 彼は本隊と異なり、東京の方で一仕事終えてから、現地集合で天封寺に向かうことになっていた。 文楽の神奈川支部職員から、既に本隊が駅を起ったと聞かされ、慌てて後を追ってきたのである。 荷物の大きさのせいでタクシーは断られ、残っている文楽の公用車は大型車の為団地の路地まで入れない。 よって遊鳥は、坂だらけのこの街で、結構な距離を徒歩で進む羽目になった。 「くそぅ……この僕をないがしろにするとは、将来自分たちの上に誰が立つか分かっているのか……?」 遊鳥は将来の文楽幹部を期待されて採用された生え抜きのキャリアである。 管理職たるものまずは現場を知るべしという文楽上層部の方針により今は現場で下積みをしているが、 あと二三年もすれば順調に出世コースに乗る身である。 だというのに、同僚たちがこの自分に媚を売る気配がまったくないのはどういうことだろうか。 ちゃんとその辺の事情は伝わっているのか。でも自分から言うのはなんだか押し付けがましくて感じが悪いし。 内心で愚痴を零すこと三十分、やがてスーツケースのゴロゴロが止んだのは、巌のような寺門の前だった。 云百年もの風雨に耐えたであろう年季、両脇の縦札には『天封寺』、それから何故か『濃尾無双』と書いてある。 神奈川なのに濃尾無双とはこれ如何に。いなか剣法ならぬいかれ剣法てか。 「――!」 寺門の敷居を一歩またいだ途端、遊鳥の瞳孔が猫科動物の如く肥大した。 いや流石にそれは誇張表現だが、彼の感覚器が何かを感じ取って歩みを止めたのは確かである。 それは、有り体な表現をするならば、『物々しさ』。 より具体的な五感で説明すれば、破壊された魔導バッテリーから漏れ出た電解質の臭気である。 優れたからくり技工士でもある遊鳥の感覚器は、人形の駆動音や薬液の匂いなどを察知・特定することができた。 「敷地内で人形が破壊された……人形同士の戦闘が起きたのか……!?」 遊鳥はスーツケースの錠を解き、有事にすぐさま人形を展開できるよう備える。 ここで立ち尽くしていても仕方がない。 彼は、断続的な戦闘音の響く方――境内へ向かって歩みを早めた。 【導入です。改めてよろしくお願いします】
>>263-264 よろしくお願いします。ではではvsリスベット後に合流ということで……
けどウワー来た意味あるの?なんてなっちゃうかもですねぇ。ふふ……
流石にもういないと思いますが、これ以降の途中参加は不可とさせて頂きます
申し訳ありません
【
>>256-265 からくり人形劇
こっちは"オレのキーボードにブレーキ・ペダルは付いてないぜ病"に罹患した。
厄介な発作の再発を予防する努力の一環として、意見を聞きたい。
回答が無くとも、明日の夜にはリテイク作業に取り掛かる。
【プレイヤー選択】
ニア
1.雪子嬢のマスタリングとマリアのプレイングの意図を当て推量し、レスに反映。
2.アリスの怒りが有頂天。無慈悲な決定ロールで1ターンキルを強行。
3.[自由記入欄]
無論だが、ここで言う"プレイヤー"には、遊鳥も含まれる】
…?…1、かな…?
>>266 …えっと…書けちゃうときに、書いちゃって…良いと思う、です…。
>>266 2の場合、誰が誰を1ターンキルすることになるんでしょうか……!
>>266 むむむ……いちPLなら迷わず2を選んでしまうのですがっ
無慈悲な決定ロールを進行役が容認してしまってよいものやら……
3.意図は気にしなくて良いのですが、雑魚以外の決定ロールはどうか御慈悲を……
う〜〜ん。迷いましたがこういう事でお願いしますっ
……来ない、かも?
>>256 /
>>260-262 【聖域に架ける橋(T)】
天封寺の空を覆う雲は、暗く厚い。
その潤色が、夕刻を前にして濃色へと近づく。
紋付羽織を隔てて感じる湿度と肌寒さは、雨の到来を予感させた。
『…大丈夫、です』
魔術人形は思い出す。
ジョーカーは、この子のことを健気だと言った。
今なら、実感としてわかる。繋いだ小さな手の温もりを。
夜に閉ざされた人形と陽光の少女の間に、友愛の橋が架け渡される。
「手加減…だと…?」
ねんがんのオリハルコンに軽くド突き回されながら、人形師は考えた。
オレは、過去のオレの代わりに、お前に刺される覚悟で来たんだぜ。
それを、こいつは逆に……? 幻想種ってのは、実にクレイジーだ。
■〓≡=-┏┣┫┛-=≡〓■ からくり人形劇 ■〓≡=-┗┣┫┓-=≡〓■
『……残骸の片付けは後回しにしましょう。今はこちらの方が大事ですから、ね』
『げ、げ……き、だ……ん……』
残酷な女による任意事情聴取(ごうもんみすい)がクライマックスに突入する。
だが、人形師は"天の人形"を深く柵んでいるらしい有相無相に興味など無かった。
報酬の果実を結ぶ種なら、無法者らしく頂いて行く……それだけだ。その無関心さ故に――
『──飛び立て! 『エンターテイナー』!!』
――察知したメジャー・ピースの気配にも全く動じていなかった。
その弾頭が、この自分では無く、盤上の少女に向けられるまでは。
『逃げてください!』
雪子嬢の声は、すぐに爆撃音で掻き消された。ほぼ同時に、胸の中へとアリスが飛び込んでくる。
ヨシュアは―――動かない。いや、オレのせいで動けなかったのか。状況は最悪だ。
魔導人形と入れ替わる様にして、一角獣は敵へと駆けた。
「――――マリア!」
詠唱時間は限りなくゼロに近い。思考時間は完全にゼロだ。
瞑目した魔術師は、不可視のデッキからメジャーアルカナをドローする。
残された魔力は、ゼロを通り越してマイナスだ。不足分は己の生命を崩して補填する。
【天秤は輪転(まわ)る、されど揺るがず(T)】 刹那、魔術師は暗闇と静寂の中に佇んでいた。 腕を伸ばして、開いた手の平を虚空にかざす。 舞い降りた二枚のアルカナの輝くヴィジョン。 [[.Justice] × [].Wheel of Fortune] 五指を握り込み、自身の眼前に手繰り寄せた。 アルカナが硬質な崩壊音を響かせて砕け散る。 「"ブランド・オブ・アルカナ"――――ライン・スプレッド!!」 "運命と天秤の女神"の能力が発動する。 『カードテキスト』は以下の様な内容だ。 『"運命と天秤の女神"の発動に際し、術者自身を含む二つの対象を指定せよ。 このカードは、指定された対象に一度限りの幸運と、それに等しい不運を与える。 追加マナ・コストを支払えなかった場合、このカードは術者に二重の不運を追加で与える』
>>261-262 【聖域に架ける橋(U)】
「――――マリア!」
少女人形は動揺していた。お友達から不意に引き離されたことに。
涙を溜めた上目遣いで頬を膨らませる、その可憐な表情は、
元凶たる人形師へと遺憾を込めて向けられている。
《ジョーカーの……ジョーカーの……バカぁ!》
彼の胸を握りこぶしでポカポカと叩こうとして、
その場所はいま、自分が額を当ててしまっていることに気づく。
仕方なく全力で黒ネクタイを引っ張り下げてジョーカーの重心を崩してから、
止むを得ず全霊のボディーアッパーを放つ。人形師は黒い弾丸となって暗天に射出された。
《マリアのところへ行きましょう、ヨシュア。
ジョーカーなら、きっと……(死んでも)大丈夫だから》
遥か上空に遠のく人形師など一顧だにせず、
一角獣を伴って、マリアの傍らへと駆け寄ろうとする。
しかし、ヨシュアの心境は複雑そうだ。少女人形は、その葛藤を汲んだ。
《ごめんなさい、マリア……でも見ていて。あの三下ひこうきは私が墜とすわ》
カードリバース・オルタレーション――――モード"ビースト"》
[■K][◆K][▲K]――――三枚のカードが砲門となり、飛行人形の機影を補足した。
《エーテルコア、クォータードライヴ……ターゲット・インサイト。
カードバレル、ライト・レフト・トップ……オープン》
魔導人形に内蔵された魔導ジェネレーターが、キャパシターと連結。
展開された積層型立体魔術砲塔に膨大なエーテルの供給を開始する。
《スリー・オブ・ア・カインド"ケルベロス・へリックス"――――》
召喚魔方陣、概念歪曲魔方陣、魔導粒子加速魔方陣のハイブリッド・フォーム。
空間に投射された魔導式の幾何学模様は、輪転と臨界の極限に到る。
因果律と物理法則を捻じ曲げ、漆黒の螺旋が照射された。
《――――ディスチャージ》
>>261 【天秤は輪転(まわ)る、されど揺るがず(U)】
《ジョーカーの……ジョーカーの……バカぁ!》
シンプル故に美しい二次関数のグラフが頂点に到り、下降する先の座標で待つモノ。
"エンターテイナー"の機首――道化師の雁首――に軽業師は着機した。
それは、運命と天秤の女神によって約束された幸運だった。
「―――ああ、出会っちまったな、人形使い……やれやれだ。
まさか、こんな所で"劇団"の連中の顔を拝むハメになるとはな」
バァァ――z__ン!!
先刻、何本か頂いた一升瓶の内、紋付羽織の袖から取り落とした一本が同時に着地していた。
受け止める者も無く敷石に叩きつけられたソレは、実に形容し難い残響音と共に割れ砕ける。
「今日は、お前にグッド・ニュースと、バッド・ニュースを持って来てやったぜ。
とは言え……この後、お前に訪れる幸運なんてのは、知ったコトじゃない」
右手の親指の付け根で左の魔眼を覆い隠す、戯けた仕草。魔術師は不敵に嘲笑った。
左手の甲を右肘のやや下に垂らし静止した。長い指に挟んだ煙草が紫煙を風に流す。
「だが、もう一つなら知ってるぜ――――お前の"バッド・ニュース"は、このオレさ」
>>261 【天秤は輪転(まわ)る、されど揺るがず(V)】
「おっと、迂闊に動くんじゃないぜ。この場で今すぐ消し炭になりたいなら話は別だが。
……お前、甘い香りがするな。簡単には殺さない、お前には聞きたい事が幾つかある」
その主たる聞き手は雪子嬢であり、内容は劇団の動向だろうが、
個人的に身体に訊ねてみたいコトがイロイロとあると言うのも、本音だった。
抱いた追求事案の具体的な数字は、この寺が一年のオーラスに打ち鳴らす鐘のソレに等しい。
《スリー・オブ・ア・カインド"ケルベロス・へリックス"――――》
「まさかアリスの奴、こいつを本気でロースト・チキンにするつもりか?
このタンデムを続けるのも、そろそろ危険だな……オレは行くぜ。
じゃあな、パンキッシュ・ガール―――ロックンロール!!」
颯爽とエンターテイナーを飛び降りた、パラシュートを持たない空挺人形師は、
降下地点に走り込んで来た高機動型・二輪モルドールに轢き飛ばされた。
物質的、精神的に様々なモノをブチ撒きながら華麗に宙に舞い戻る。
無意味にファンタスティックかつ印象的なスロー・モーション。
《――――ディスチャージ》
そして、冥界の番犬は檻から放たれた。
三頭の頤が飛行人形の代わりに喰い破った灰色の雲間から差し込む、レンブラントの薄明。
盛大に撒き散らされた純米大吟醸がプリズムの役割を果たし、マジェスティックな虹を描き出す。
七色に輝く"いづみ橋"が天使の梯子と合一したその情景は、さながら一枚の宗教画の様だった。
『勝ったッ! からくり人形劇・完!』
不自然に逞しい右腕を振り上げ、高らかに勝利を宣言する二輪の使い手。
再び、黒い襤褸布を被せた未確認飛翔体と化した人形師は、
理想的な放物線を描いて庫裏の庭池に着水した。
>>261-262 /――【聖域に架ける橋(V)】
三条の暗黒螺旋は、狙った獲物を決して逃がさない無慈悲なブラック・ドッグだ――
――本来であれば。だが、確かに射線上に在った飛行人形は、制空権を失ってはいない。
《エーテルパスが…途切れてる……ジョーカー…貴方……》
――――運命の女神の天秤は、決して揺るがない。
それが、ジョーカーにとって第一の不運であり、
リスベットに与えられた唯一の幸運だった。
あの人形使いは、オルフェウスの竪琴を持っていたのかしら。魔導人形は、その想像を否定する。
だって彼女が持っているとしたら、それはきっと、髑髏の缶バッジの付いたロックギターだもの。
《自分を…殺すだけの力も……残っていない…なんて。
……今日の貴方…本当に…魔力不足……だ…わ》
[The Fool]―――Disconnected.
[T.The Magician]―――Disconnected.
[]V.Death]―――Disconnected.
彼に抱き留められた時に気づくべきだった。あの胸の奥を心音と引き換えに蝕んだ喪失と渇きに。
大小合わせて七十八存在するエーテルパスが、ひとつ、またひとつと断ち切れてゆく。
魔術護符人形は、急速に減衰していく自身の稼働出力を冷静に計測し始めた。
―――されど、天秤は輪転し続ける。
吊るされた左右の皿に置かれた機械仕掛けの運命を軋ませながら。
リスベットが支払うべき代償は、彼女が哄笑し見下ろした境内に集う者達が運び手となる。
《あとは……お願い…できるかしら? 私……少しだけ…眠りたいわ》
スリープ・モード……自身が一枚のカードの姿へと転じてしまう、その前に。
閉じゆく視界に映る人形使いたちを、もう一度だけ眺めた。
ジョーカー風に表現するなら、こうなるだろうか。
残酷な雪の人形を従えたミス・無愛想。
一角の幻想獣を駆る金髪ロリ。
そして、もう一人――
【――
>>264 その男、ゆとりにつき】
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信じたくない光景だった。 ジョーカーが落ちてきて、アリスがカードへと姿を変える。 どちらもよい状態ではないのは、どう見たってわかる。 「…ヨシュア!」 己の近くの敵を切り裂いた愛馬に飛び乗る、ヨシュアは少し嫌そうな素振りを見せたが、仕方無しに駆ける。 まずカードへ変わったアリスを拾い上げ、ぬいぐるみと一緒に大事に抱えた。 そしてアリスへヨシュアの持つ魔力を注ぎ込む。ヨシュアの魔力は風魔法以外にはほとんど必要ない、だからこそ足しになればとアリスへ送り込む。 そして裏の庭池に落ちたジョーカーの元へ。途中彼を轢き飛ばした人形を両断しつつ、急ぐ。 なんの処置もしてないため、自分の服が紫や赤に色変わりしてきたが、気にせずに池を覗く。 …少し深い、だがジョーカーはまだ出てこない。 「…お願い」 ヨシュアへ救出を依頼し、引き上げにいってもらう。 引き上げられたジョーカーはぼろぼろだった。 状態をみたマリアはぬいぐるみの破れ目から手を突っ込み、小瓶を取り出す。 魔法の薬…傷にも、魔力にも効く高級な薬。 迷いもせずに、それをジョーカーに振りかける。それからアリスへ魔力を注ぐ事へ集中。 …これで二人とも大丈夫なはずだ。 その変わり、今爆撃されてしまうと…かなり辛い。
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>>279 マリアとヨシュア
――――お礼を言うわ。ありがとう……マリア、ヨシュア。
私たちが目覚めるまで、もう少しだけ時間がかかりそうだけれど、
貴女たちと普通におしゃべりできるくらいになら、すぐに回復するわ。
ジョーカーにくれた"魔法の"お薬のおかげで、だいぶ良くなったみたい。
でも、私のために二人の魔力を無駄にするのは、良くないわ。
その気持ちだけで私は、とても嬉しいから。
説明をすると……私が戦うには、たくさんのリンゴが必要なの。
けれど、私の身体はヨシュアたち普通の人形に比べて、とても小さいわ。
だから、使う分のリンゴを私の代わりに持ってくれる魔導の妖精さんが住んでいるの。
妖精さんは、正確には"大容量エーテル複重層可変魔導キャパシター"という名前だけれど――
――長いから"シーたん"って呼ぶわね。
シーたんは優等生よ。魔導物理学の基本的な約束を、きちんと守っているの。
だから、たくさんのリンゴを長い間は持っていられなくて、いつかは手を放してしまう。
たまに約束を守らないジョーカーみたいな不良もいるけれど、アレはとても良くない例だわ。
魔導物理学者たちは、この約束を"自己リンゴ放出"や"自然リンゴ放出"と呼んでいるみたい。
持っていられる時間は、リンゴの数によって変わるわ。例えば、一箱なら、一分間。
倉庫一杯なら一秒間、世界中の果樹園なら……瞬きよりも短い、ほんの一瞬。
それで、ここが優等生の融通が利かないところなのだけれど……。
シーたんは"コンバーたん"がハンドルを付けたリンゴしか持てないの。
その、コンバーたんも"ジェネレーたん"の果樹園のリンゴしか受け取らなくて、
ジェネレーたんの農作業のために準備や指示を出来るのは"コアきゅん"ただ一人よ。
そして、コアきゅんは、彼女の"マスター"―――ジョーカーの魔力供給でしか稼働しない。
……ちなみに、ジョーカーに近しい関係になるほど、不良ランクは右肩上がりになっていくわ。
ジョーカーと繋がっている、コアきゅんや、誰か他の人との流通経路が"エーテル・パス"よ。
このお話の続きは、ええと、この国だと……マリアが十八歳になったら、お話しするわ。
だから、もしジョーカーからエーテルパスの開通を頼まれたら、全力で拒否して。
最後に、そのクマさん……とても優しそうな子ね。
名前は、もうアリスから付けてもらっているのかしら?
もしよければ、これからは、その子を"アンドレ"って呼びたいわ。
【物言わぬカードから、マリアに確かな意志が伝わって来る――――この間、僅か二秒】
■〓≡=-┏┣┫┛-=≡〓■ からくり人形劇 ■〓≡=-┗┣┫┓-=≡〓■
【遊鳥さん、本編への合流はリスベット戦後に……とのことでしたが なんだかとってもいい感じの流れになっているので合流させてしまって良いでしょうか? 具体的に言うと、ピンチな味方の前に颯爽と現れる新キャラクターッ! ……的な、ね?】
>>280 >だから、もしジョーカーからエーテルパスの開通を頼まれたら、全力で拒否して。
…?
何故だろうか、助けになる手段なら、拒否する理由はないのに。
ただ、今すべき事は二人を守ること。
開通?とかはあとで考えよう。別に頼まれたわけでもないのだし。
…ぬいぐるみの名前は、つけていなかった。
アリスの呼び名をもらってしまおう。
「…アンドレ」
力があるわけではなくとも、大切なものだ。
アリスと一緒に抱き抱え、爆撃に備えるマリアだった。
【……いい加減に"こんな酔っ払いが書いた様な長駄文まともに読めるものかよ"――
――と思い始めているであろう舞台役者達および観客のために『実験ノート』を晒す。
■『【プレイヤー選択】[
>>266 ジョーカー]時点での状況』
・エンターテイナーの攻撃で、マリア(主人/お友達)が傷付いた二体の人形。
・その二者は、道中の消耗が激しいマリアのために早期決戦を望み、焦れている。
・互いにスピード・ファイターの戦闘機と一角獣の激突シーンは、実に美味そうである。
(空中戦で不利が付く陸戦型のヨシュアと、拘束魔術"タリスマン"の連携などは特に)
・人形使い達が、一通りカラクリ能力を演出し終えた直後の増援である。
・合流(戦闘終了)待ちのPCが存在し、劇中の進行テンポ遅延は望ましくない。
・対象が"撃破描写なし"指定(回避/撤退or未描写カラクリ能力お披露目か?)である。
■『【聖域に――/天秤は――】[
>>273-278 ジョーカー]時点での状況』
>無慈悲な決定ロールを進行役が容認してしまってよいものやら[
>>271 雪子嬢]
>【聖域に架ける橋(V)】[
>>278 ジョーカー]
・"無慈悲な決定ロール"改め"有情破顔決定ロール"→リスベット健在
>爆撃に備えるマリア[
>>282 マリア]
・リスベットの次のアクション待ち
>本筋への合流は、リズベット戦後あたり
>彼は、断続的な戦闘音の響く方――境内へ[
>>263-264 遊鳥]
・登場タイミングをフレキシブルに設定可能な、ナイスマニューバー
……ってコトで、こっちは遊鳥に緩いパスを出した上で、眠らせてもらってるぜ。
こっちに対して何か要望があれば、オレの気が向く範囲で無軌道に善処する】
284 :
湯鳥 :2014/11/19(水) 05:39:33.19 0
>>281 おはようございます
それでは、是非ここで合流させてください!
ジョーカーさんもネタ振りありがとうございます!
放たれたミサイルが炸裂するさまはいつ見ても心地よいものだ。 過激な爆裂ロックンロールで敵を一方的に蹂躙するのはいつやっても爽快だ。 制空権を得た者が強いのは道理である。特に人形は地上の戦闘を主眼に置くタイプが大半だ。 「ふーん……そう防ぐわけね」 ヨシュアの放った魔術の風は、竜巻の如く周囲の残骸を根こそぎ巻き上げた。 迫るミサイルは残骸の塊に接触して爆発。 人形を構成していたものが散弾の如く飛散する。 歯車が、装甲が、骨格が、マリアの柔肌を掠める。 破片は白フリルのワンピースを裂いて、擦り傷や切り傷を作る姿は痛ましかった。 だというのに、当のマリアは眉ひとつ動かさず頭上の敵を見据えている。 「いけない……!」 少女の下へ走り寄ろうとして──雪子は足を止めた。 この場で真っ先に駆け寄るはずのアリスとヨシュアが、それをしない。 何故か。 (囮……?) 敵を自分に引きつけておいて、横合いから思い切り殴りつける作戦か。 相手は空中にいるのだ。闇雲に攻撃しても当たらないだろう。 (そんな捨て身の考えを……子供がするのですか?) 彼女を見たとき、内気でいたいけな、幼い少女という印象を持った。 このとき引っ込み思案だった幼少期の自分を想起したが、それは大きな誤りだ。 マリアは目的のためなら危険を厭わずに行動できる。自分の意思で、力強く。 いったいどのような経験を積めば12歳の少女が斯様になれるのだろうか。 並みの精神力ではない。 (いったいどんな覚悟をすれば……) そこで雪子の思考は打ち切られた。 飛空人形の機首に、色男がサーカスの空中曲芸の如く着地してみせたからである。 黒い紋付羽織に赤髪の、あの男が軽やかに着地する姿を。 実のところ、己の人形からアッパーを貰っただけなのだが。
マリアから気を逸らすためか。理不尽な暴力を受けただけか。 過程はこの際問題ではない。肝要なのはこの男が目の前にいる事実。 >「―――ああ、出会っちまったな、人形使い……やれやれだ。 > まさか、こんな所で"劇団"の連中の顔を拝むハメになるとはな」 「あらあら、素敵な登場ね。ミスター」 気取って見得を切る相手に、しかしリスベットは余裕を崩さない。 人形使いにとって距離感は重要である。 最強無敵のからくり人形といっても、その使い手は所詮人間に過ぎない。 如何な状況下に於いても人形で守り切れる距離を保つべし。これ即ち人形使いの鉄則なり。 使い手が積極的に前へ出てどうする──そうリスベットは言いたいのだ。 >「おっと、迂闊に動くんじゃないぜ。この場で今すぐ消し炭になりたいなら話は別だが。 > ……お前、甘い香りがするな。簡単には殺さない、お前には聞きたい事が幾つかある」 脅し文句の間に口説き文句を差し込む手並みは、精妙の一言。 冷たい目をしていたリスベットの頬に、薄く赤みがさした。 「……い、言うじゃない。何を聞き出すつもりなのかしら。 けれど節度のない男の人はあまり好みじゃないかもぉ……」 軽く身をよじらせて、両腕を胸の下で組む。 声は心なしか艶を増して、組んだ腕が豊かな双丘を強調した。 >《スリー・オブ・ア・カインド"ケルベロス・へリックス"――――》 ドールの小さな体が三門の砲を構え、エンターテイナーに狙いを定めた。 危険を察知したジョーカーは華麗に飛び降りて退避。 そこそこの高度を滞空していたが、魔術にも精通している男だ。なんとかなる。特に仔細なし。 (しまった────!) リスベットは歯噛みしてエンターテイナーを操作・回避運動を開始。 だが空中に浮かぶ魔法陣から察するに、その行動に意味があるのだろうか。 恐らくは一度発射されれば回避不能のタイプ。発射前に潰すか防ぎきるしか方策はない。 その一方で。 「あっ」 下を高速移動するモルドールの二輪が、赤髪を撥ねた。 ドンッという鈍い衝突に雪子は頓狂な声をあげ、手で口を覆う。 運命の女神は死神の切り札(ジョーカー)に微笑んだ。 が、同時にビンタを浴びせた。
地獄の番犬・ケルベロス。 冥界から逃げ出そうとする亡者を捕えて貪り食らう、三つ首の黒獣である。 三つの頭は交代で眠るが、音楽を聴くと全ての頭が眠ってしまう。 死んだ恋人を追って冥界へ行くオルフェウスは、その竪琴によって全ての頭を眠らせたという。 その名を冠した三条の暗黒が奔れば、鋭い顎門がエンターテイナーを食らったであろう。 >《エーテルパスが…途切れてる……ジョーカー…貴方……》 魔力供給を断たれたアリスはスリープモードへの移行を余儀なくされた。 人間のような人形は一枚のカードとなって雑草の伸びきった地面へ落ちる。 必殺の三頭魔獣が不発に終わってリスベットは九死に一生を得た。 本来であればあの瞬間、アリスの砲撃によって負けていたはずなのだから。 >「…ヨシュア!」 慌てたようにカードへ成り果てたアリスを回収。 五体の二輪モルドールを瞬殺するとジョーカーの下へ疾走。 鯉の餌と化したボロ雑巾を引き上げ、健気にも思いつく限りの処置を施す。 先程の子供離れした戦いぶりはどこへやら、その様子がリスベットには面白くて仕方ない。 「あぁ〜〜らら。かわいいわ、あんな必死になっちゃって……」 大きすぎる隙であった。マリアがいつも通りなら『ないはずの隙』である。 ここで飛空人形の第二射を解禁すれば、その幼い命は容易く摘み取れるのだ。 「オリヴィエール!」 マリアとエンターテイナーの割って入るは早乙女雪子とその人形。 右の聖剣を下段から切り上げるが、緊急上昇で回避。三日月の刃は虚しく空を切った。 「アハハ、優しいね。人形使いは人形の如くあれって、知らないの? ……まあ私個人としては、そういう甘さ嫌いじゃなくてよ」 だって、仕事がやりやすいもの。 リスベットは笑う。何を愚かな。されどこの乙女愚者にあらず。 両手に抱えし巨大な行李、中に秘めるは「劇団」の目的たる古の人形なり。 敵は迂闊にミサイルを発射できなくなったが、不利な状況は変わらない。 空の敵に対する手札が足りないうえ、ハンデまで背負っている。 「最後まで戦いましょう。今日出会っただけの縁とはいえ──仲間ですから」 マリアさんもアリスやヨシュアと別れたくはないでしょう? 雪子はたびたび「氷」と評される顔をぎこちなく笑顔に変えて、気丈に振る舞う。 難易度の低い仕事と言ったけれど、まったく誤算だったな、とふと思った。 「折角獲物が前に飛び込んできてくれたもの……私も貴女の優しさに甘えさせてもらうわ」 エンターテイナーの両翼下部に畳んでいた巨大な腕が、展開した。 この腕は伸縮可能であり、接敵した相手の迎撃や地上の物資の運搬時に使用する。 伸びた右手が柔らかなタッチで雪子ごと行李を確保。 左の腕は拳の連打でオリヴィエールを牽制。主に近付けさせない。 「これにて任務完了。リスベットの空中ライブは御終いよ、アンコールは受け付けないわ」 飛空人形の手の中には、護送対象たる「天の人形」と、早乙女雪子が在った。
場所は、境内から寺門へ移る。 文楽所属の人形使いになるのは、実に単純であった。 協会に入りたいという旨を伝えて月々の会費を払えばよい。 この実に明瞭な工程を踏んで、晴れて「文楽の人形使い」という称号が与えられる。 これが、一昔前の話。 大戦に敗北した日本は米国の統治下に置かれ、戦争によって人形使いはその数を激減させた。 使い手が減った今、人形繰りの技術と伝統が失われるのではあるまいか──これを危惧して生まれたのが文楽である。 人形使いの交流を深め、人形劇等で興味を持ってもらい、人形繰りの技術を継承する。 戦後、防衛大や能大が教育機関として残っていたから、ややその意義が薄れた感はあるが。 そして、現代。 人形犯罪が増え、警察と協力しつつその手の諸問題を解決するようになって、敷居が高くなった。 文楽が求める人形使いは、以下の三項いずれかを満たす者に限る。 第一に比類なき強さ 第二に人形への深い造詣 第三に協会を運営するに足る頭脳 これを毎年行われる試験で確かめ、通過した者を協会所属の人形使いとする。 参加資格は特にない。実力さえあれば12歳の少女だって入れる。(※事務はこれに該当しない) これには理由があった。 人形繰りには相当な修練が必要で、教育機関を卒業しても役に立たないというのがザラにある。 精神を同期させてイマジネーションで動かす、というのは言葉以上に難しい。 人形を人間の如く動かせるレベルまで達するには、血の滲むような努力が求められる。 ゆえに文楽は常に人材不足である。優秀な使い手を一人でも多く集めるための苦肉の策なのだ。 プライドのない人形使いは便利な半自動操縦の人形でも使えばよろしい。 だが人間未満の動きしかできないそれは、意思を持つ人形や一流の繰りを行う人形使いに容易く殲滅されるだろう。 遊鳥学は三項全てに該当するエリートである。 この幹部候補は東京にて別件を片付けた後に天封寺で合流する手筈となっていた。 能大出身であることから技工士の肌があり、それに由来する強みのある男だ。 遊鳥が境内へ進んでいくと、ぽつぽつと散らばった残骸を見つけるだろう。 それは量産型人形「モルドール」だったものであり、彼の嗅覚を証明するもの。 そして映った光景はボロ雑巾の男、傷だらけの少女、捕えられた雪子──。 【リスベット:雪子ごと天の人形確保】 【周囲の雑魚:当然のように全滅】 【このターンで決着。カッコ良く決めちゃってください】
ダメ… >「最後まで戦いましょう。今日出会っただけの縁とはいえ──仲間ですから」 そう言ってくれたのに、マリアには雪子を助け出す手段がない。 真空刃で攻撃すれば、雪子まで傷付く。 ヨシュアと共に真下までは来たが、手を出せずに小さな拳を握る。 (こうなったら…) 最終手段をとるしかない、そう思った瞬間、境内の入口から新たな人の気配を感じた。 普通なら敵の増援、と考えるべきだろう。 だが、マリアは祈った。 その人が雪子を救ってくれる事を―――
【
>>284 遊鳥
……ネタ振り、だと? 妙な勘違いは止すんだな。こいつは三人掛りの"ゆとり包囲網"だ。
この業界じゃ、そういうのが御褒美だってんなら、その礼は雪子嬢とマリアに言ってくれ。
>>285 マリア
安心しろ、マリア。そいつは、オレよりは安全な人種だ。きっとクールに決めてくれるさ。
もちろん、お前の新しい服も買ってくれるし、オレに飯と酒と女を奢ってくれるだろうぜ。
>>289 雪子嬢
オレは聡明な女が好きだ。面白い女もな。何より、仕事中の綺麗な女に声をかけるコトが。
節度も節操も貞操観念も希薄なんだ。もし負担になる様なら、適当にあしらってくれていい】
■〓≡=-┏┣┫┛-=≡〓■ からくり人形劇 ■〓≡=-┗┣┫┓-=≡〓■
>>282 /
>>288-289 【インシュアランス(T)】
――――意識の覚醒と共に、その奇跡を魔術師は理解した。
己を流れた時間の、極めて限定的な範囲のみが"差し戻されて"いる。
水に濡れた筈の服、傷付いた筈の身体。そして、失われた筈の魔力さえも。
"魔法"による遡行作用だ……現在のコンディションは、ケルベロスの不完全な発動直後。
『…アンドレ』
「どうやら、助けられちまったみたいだな。礼を言うぜ。
マリアと……そのアンドレか? そいつの"魔法"のおかげだ。
この借りは必ず返す。ついでに新しい服も、後で遊鳥に用意させる」
《……相変らず寝起きが悪いのね、ジョーカー》
「ああ、目覚めのキスを覚えてないのが残念だ」
復旧したエーテルパス経由して、意識を失っている間の大方の状況は掴んだ。
魔術師は、スリープ・モードを解除しかけた機巧堕天使のカードを制止する。
「いいか……良く聞くんだ、アリス。時間と魔力が惜しい。
この後、遊鳥が万が一しくじった場合に限り、お前を二秒だけ現界させる。
リニア・オルトロスで狙撃しろ。狙撃部位は機首と機腕の二箇所をピンポイントで、だ」
《……それなら、ケルベロスで必中させるべきだわ》
「―――だったら、さっき当てるべきだったんだよ」
静かな声だと、少女人形は思った。
感情を押し殺した冷たい声だ。
冷たいのは、とても悲しい。
「アリス、オレに同じコトを二度も言わせるな……時間と魔力が惜しいんだ。
ここでオレがチャリスを空にしちまえば、マリアを治療するカードを失う」
《ごめんなさい……ジョーカー》
迷いのせいだ、人形師は自嘲する。
自分で選択した運命のはずだ。
ならば、それに己を賭ける。
「いや……お前は良くやったよ、アリス。こいつはオレの判断ミスが生んだ状況だ。
そして、部下のミスをフォローするのが、デキる上司の手腕ってヤツなのさ――
――そうだろう、遊鳥?」
>>288-290 【インシュアランス(U)】
《ユトリ……うまくやりなさい。
そうしないと、私があのハードルをクリアしないといけなくなるもの》
「いいから気楽に見てろ、アリス。
―――機首の方には"ガイド"を付けてあるんだ、外れやしないさ」
厳密に表現するならば、先ほど踵の裏で蹴り付けて来た、が正しい。
因果律歪曲術式の機能限定廉価版とも言うべきパーマネント・カード。
[▼J]――――エンターテイナーの鼻先で、靴跡の刻まれたトリックスターが笑う。
《あきれたわ……貴方、本当に抜け目ないのね》
「生まれた時から抜け目なかった奴の手紙にもあっただろ?
"Every good gift and every perfect gift is from above,
and cometh down from the Father of lights..."
【親方! 空から上玉の女の子が!】……ってな」
人形師は、その光に向かって上半身を大きく開いた。
強靭な腕と広げた羽織の袖布の中に、抱き止めるためだ。
撃墜後に空中に投げ出され、その胸に飛び込んで来る二人の少女を。
《"天の人形"のウィッカー・ケースは、どうするつもり?》
「そっちの方は、誰も受け止めなかったとしても、オレは構わないのさ。
文楽の会長から直々に保護を命じられた重要文化財が損壊したとなれば、
遊鳥の奴を、幹部フロア行きのエスカレーターから引きずり降ろしてやれるだろ?」
《貴方……どうしてもユトリに出世してほしくないのね》
「―――当然だ。"現場"に必要なんだよ、あいつは」
■〓≡=-┏┣┫┛-=≡〓■ からくり人形劇 ■〓≡=-┗┣┫┓-=≡〓■
むう……直そうと思っていた箇所が直っていませんね
まあ本当にどうでもいい箇所なのですが、むずむずするのでやります
>>288 >だって、仕事がやりやすいもの。
>リスベットは笑う。何を愚かな。されどこの乙女愚者にあらず。
>両手に抱えし巨大な行李、中に秘めるは「劇団」の目的たる古の人形なり。
>敵は迂闊にミサイルを発射できなくなったが、不利な状況は変わらない。
>空の敵に対する手札が足りないうえ、ハンデまで背負っている。
を
だって、仕事がやりやすいもの。
リスベットは笑う。獲物が自ら飛び込んでくれたのだから。
迂闊にミサイルを発射できなくなったが、依然不利な状況は変わらない。
こちらには空中の敵に対する手札が足りないうえ、怪我人のハンデも背負っている。
に脳内修正お願いします〜
【すみません!思うように時間がとれず参上は今日の夜〜明日の朝になりそうです なるべくお待たせしない方向で頑張りますので少々お待ちを!】
【
>>291 とんでもありません。丁寧にあしらいます
>>295 焦って早く返す必要はないですよ〜
私としては負担になるような遊びにしたくないのです。
あまりご無理をなさらぬよう……】
<天封寺・境内への道> 遊鳥の嗅覚が正しかったことは、石畳を一歩踏むごとにより強固な証拠能力で立証された。 境内から放射状に飛び散る、手や足やどろりとした液体――人形のパーツとそれらを繋ぐ魔導伝達質だ。 「こいつはモルドール……いよいよきな臭くなってきたな!」 モルドールは、アームガード社の最もローエンドな機種で、出回っている数も多い。 古式ゆかしい操り人形然としたデザイン、極限までコストを減らした単純な構造。 からくり初心者の入門機として需要が多く、また拡張性が高いため純正からサードパーティまでアクセサリが豊富なのが特徴だ。 遊鳥も能大時代に教習機として扱ったことがあるし、汎用的に使える為企業でも作業用に導入している所は多い。 そしてそれら、おしなべて言って『入手しやすい』という利点は、翻っては―― 「――犯罪に使われやすい、というわけだな。恨むぞ早乙女君……!」 本隊――早乙女班に同行できなかった落ち度を華麗に班長へ転嫁しながら、遊鳥は歩みを早める。 モルドールの死屍累々。法的身分を証明する識別番号は全て削り取られていた。 おそらく、海外窃盗団あたりに盗難されたモルドールを逆輸入して、日本のならず者が使っているのだろう。 多岐にわたる用途に向くモルドールは、下手するとワンオフ機よりも買い手がつくので狙われやすい。 中東あたりの紛争地帯では、AK-47を装備させたモルドールが猛威を振るっているとか――閑話休題。 いよいよ戦闘の気配が濃厚になってくるにつけ、ついに遊鳥は己の得物を解放する決断を下した。 大股で歩きながら、解錠されたケースの取っ手に搭載された掌紋認証素子を起動。 電子音と共に、圧縮解凍の魔術が発動し、ケース自体が淡く白光を始める。 『認証。――掌紋から当機オーナーと同定。解凍シーケンスと起動シーケンスを並列開始します』 『起動。――精神同期術式発動――同期完了――ステータスの網膜投影を実施』 遊鳥の網膜に長方形のステータスウインドウが表示される。 人形使いは己の人形の状態を直感的に把握できるが、遊鳥は更に改良を加えてステータスの可視化を行っている。 いわゆる『見える化』というやつだ。ウインドウに起動シーケンスのコマンド文が滝のように流れていく。 『起動。――Operation Program "Windows XP SP4"』 『認証。――脳波・魔導紋より登録マスター名"まークン"様のパーソナルデータと一致』 『確認。――個体名"七星"を起動しますか? Y/N』 "Y"が選択され、ケースがひとりでに全開になり、影がひとつ飛び出した。 魔術により圧縮され、折りたたまれていた四肢が展開し、宙を舞う間に機体が厚みを取り戻す。 二本足で着地したとき、そこにはケースには到底収まりきるはずもない質量をたたえた偉丈夫が存在していた。 艶のない灰色の全身甲冑は、表面を時折動力光が紫電となって迸っている。 厚みのあるボディは重量感があるが、四肢はアスリートのように引き締まっていて鈍重な印象は受けない。 特徴的な頭部の二本のアンテナは、年配層が見れば旧時代のロボットアニメの主役機を想起するだろう。 からくり人形――名称『七星』。 遊鳥学が持てる技術を総動員して自作した究極のワンオフ機である。 「行くぞ、七星」 『了解。――動力レベルを戦闘へ設定します』 人形使いのイマジネーションと接続された七星は、その四肢をマスターの恣意のままに躍動させる。 打ち捨てられたモルドールの、焼け焦げた残骸を踏み越えて、一人と一機は境内へと飛び込んだ。
<境内> >「これにて任務完了。リスベットの空中ライブは御終いよ、アンコールは受け付けないわ」 飛空人形エンターテイナーのコクピットで、パンキッシュなスタイルの女が哄笑したそのとき。 もっと耳障りな哄笑が境内の入り口から響く。 「いいや、もう一声唄ってもらおう――この僕を讃える凱歌をな!」 瞬間、不可視の何かがエンターテイナーの鼻先を掠めて横切って行く。 刹那、早乙女雪子と行李を抱えた長腕が、不意に強力な衝撃を受けて握った中身を取り落とす。 あわや自由落下の虜となった少女と行李は、これも不可視の何かによって受け止められ、境内に軟着陸した。 「早乙女君、遅刻の件はこれで償却だ。もう僕はなんら負い目を感じていないぞ」 飛空人形の駆り手は見るだろう。 境内の入り口で、気取った仕草で前髪を掻き上げる男の姿を。 上等なスーツ、それを着こなす長身、腕を彩る高級時計、そして――自身に満ち溢れたふてぶてしいその表情! 「『からくり人形協会』所属、遊鳥学……ただいま推参!」 その影を見る者は疑問するだろう。 遊鳥の傍には人形の姿がない。人形使いは人形と付かず離れずが鉄則にもかかわらずだ。 エンターテイナーは当然、その隙を逃さない。もう一本の腕がすかさず遊鳥の元へ殺到する。 「七星」 だが、長腕は人形使いを害することが叶わなかった。 中空にて不可視のなにかに阻まれ、腕が地面に叩きつけられたのだ。 『報告。――戦闘機動に移行する為ECMフィラーの不可視モードを終了します』 虚空から合成音声によるアナウンスが響き、背景が『ラグった』。 その歪み、ひずみは瞬間的に拡大し、やがて景色とは別の輪郭がその場に形成される。 出現したのは、灰色の偉丈夫。遊鳥の人形、七星である。 「やはり急激な動きには不可視化がついてこれないか。このあたりは改良課題だな」 電磁波投射装置『ECMフィラー』。 七星の頭部の二本のアンテナから投射される超強力な電磁波は、電子機器や感覚器を揺さぶるほどの出力だ。 そして、『光』も電磁波の一種であれば、ECMはフィラーによって捻じ曲げられない道理はない。 その応用法が1つとして、機体に当たる光をねじ曲げることで透過させ、透明化させることができた。 ただし、戦闘機動には電磁波投射がついてこれない為、待機や不意打ちにしかつかえないのが玉に瑕である。 目に見えるようになった七星は、右手にもう一つ武装を装備している。 白磁の大剣のように見えるが、銃刀法に引っかかるため刃付けは施されていない。 (兵器としての人形の強みは、銃刀法をすり抜けられる『仕込み武器』によるところが大きい) 『報告。――余剰電力を"フレイザード"の出力レベル向上に充当します』 同時、今度は両の長腕を鞭のようにしならせたエンターテイナーの攻撃が雷雨の如く振りかかる。 七星は応じるように疾駆。打ち降ろされる長腕に大剣を真っ向からかち合わせる。 ギャリン!と金属質の悲鳴があがり、刃のない剣は弾かれ、七星は大きくノックバック。 2m超の偉丈夫とはいえ、人間を搭乗させて飛翔できるエンターテイナーとは重量の階級が違う。 リズベットが勝機を感じて犬歯を見せる。 だが――そこでエンターテイナーの動きが止まった。その長腕が挙動を停止させた。
「早乙女君。ぶった斬り主義の君に、からくり人形を無力化させる一番簡単な方法を解説しよう」 遊鳥は戦場を優雅に闊歩しながら、エンターテイナーの長腕の傍を抜け、雪子のもとへと歩いて行く。 どれだけ遊鳥が不用意に近づこうとも、リズベットがイマジネーションを注ごうとも、 飛空人形の長腕は指1つ動かない。 「魔力で動くからくり人形は、必然魔力を途切れさせれば活動を停止する。 その方法は、例えば君のように四肢や胴を断ち切って魔力を流出させたり、 供給源である魔導バッテリーや、あるいは人形使い本人を攻撃するのもいいだろう。 どこぞの魔術師のように、魔力自体を吸い取ってやる方法もあるがね」 雪子の傍の行李――『天の人形』のケースに手を添えながら、遊鳥はべらべらよく喋る。 「――人形の体内を流れる、魔力伝導体。呼び方はそれそれ専門分野によって異なるが、 『霊髄』や『マナ・ブラッド』、『伝達質』と呼ばれる液状の物質が、人形の駆動には不可欠だ。 こいつの流れを堰き止めてやれば、魔力が循環せず人形は機能不全に陥る」 七星の装備する大剣――否、大剣の形をした精密機器の名は、『熱交換素子フレイザード』。 搭載されたペルチェ素子に電圧をかけると刀身と柄頭とで熱交換が起こり、刀身が吸熱して柄頭から放出する。 吸熱とは、熱を奪うこと。すなわち刀身を冷却することである。 通常は上等な冷蔵庫程度の吸熱量しかもたないペルチェ素子だが、性質強化の魔術を重ねがけすることで、 切りつけた対象から急激に熱を奪う、冷凍デバイスとして生まれ変わった。 「その長腕を流れる魔力伝導体から熱を奪い、凍らせた。 もう君の人形の腕に魔力は流れず、指一本動かせない」 いかに寒冷地仕様の人形でも、その耐寒性能を上回る吸熱力がフレイザードにはある。 無論、凍らせただけなので時間をかければ回復する機能障害であるが、その暇を与える幹部候補生ではない。 とはいえ、敵は空中。いかに相手の攻撃を封殺しても、こちらの攻撃が届かない。 七星の武装に飛び道具がないでもないが、あれは広範囲を攻撃するため味方を巻き込むおそれがある。 『報告。――支援型魔術を検出しました。因果律歪曲系弾道補正術式。接続致しますか? Y/N』 七星のアテンションに遊鳥は視線を走らせる。 網膜に映しだされたガイドは、エンターテイナーの頭部に術式反応を検出している。 すぐさま精査。敵人形の顎先に貼り付けられた紙片に、魔力の内在を確認。 「どこかで見たことある符術だ……だけど渡りに船だ、支援魔術に接続、御神槌を使え!」 『了解。――支援魔術による弾道補正を適用。電磁式弾体加速モジュール"御神槌"――起動』 七星の胸部のパッチが開き、無数の穴の開いた下地が見える。 指向性地雷クレイモアの表面にも似たそれは、まさに想像の通り無数の金属球を発射する武装だ。 電磁加速により亜光速の威力を得た、大小合わせて100発のベアリングが、エンターテイナーへ向けて射出された。 跳弾の可能性が非常に高く、味方が至近距離にいる時に使う武装ではない。 だがいまは、謎の支援魔術により飛び道具の弾道が補正を受けている。 七星の胸部から放射状に発射された無数の金属球は、因果を歪曲されて全てが同じ箇所に集弾した。 ――エンターテイナーの顎に張り付いたトランプ。 都合100発の打撃は、わずかなブレすらなく全て飛空人形の顎に叩きこまれ、人形の頭部をふっ飛ばした。 太い導管を損傷し、大量の伝達質をぶち撒けながら、姿勢を保てなくなったエンターテイナーが轟沈する。 境内の石畳に叩きつけられた飛空人形は、自重による衝撃を吸収しきれず崩壊した。 その破壊の大音声を背に、遊鳥は気取った仕草で再び髪を梳いた。 「ご苦労、良い歌だったよ。能大校歌の次ぐらいにな」
<境内・池> エンターテイナーの残骸と姿の見えないリズベットを放置して踵を返したのは、墜落した"仲間"の存在があったからだ。 雪子に肩を貸しながら、彼女の証言通り向かった先の池で、少女が一人、水没したボロ雑巾を抱えて悄然としていた。 「早乙女君、あそこにいるのが今回の任務の同行者か?まだ幼い少女じゃないか。 それに、彼女が抱えているのは……ジョーカー!またお前か!」 金髪少女の方とは面識がないが、ボロ雑巾の方はよく見知っていた。 ジョーカー。文楽所属ではないが、時折文楽の依頼で任務を共にする、流れの人形使い。 遊鳥学が人形使いの正道を行く者なら、ジョーカーは邪道を行く蛇の如き存在だ。 蛇というか、蛇蝎の如く嫌っている。遊鳥が一方的にだが。 遊鳥が大学で必死に学んだマニュアルを土足で蹴破り、破戒的な行動の目立つジョーカーは、彼にとって頭痛の種だ。 それでいて人形使いとしては激烈に優秀で、それがまた遊鳥にはもどかしい。 遊鳥は一方的に敵視というか、ライバル視しているが、向こうがどう思っているかは非常に気になるところだ。 からくりのハード面を専攻する技工士の遊鳥と、ソフト面の専門家である魔術師ジョーカーという取り合わせもまた、 遊鳥の敵愾心に脂を注いでいる。 遊鳥はボロ雑巾もといジョーカーを意識的に眼に入れないようにしながら、金髪少女へと歩み寄った。 同僚である以上、何かしらのコミュケーションをとらねばと思うのだが、 学生時代はろくに遊びもせず勉強漬けだった遊鳥にとって、快活な会話ほど難易度の高いものはない。 「は、そうだ!こんな時こそネットの有志に意見を募ろう。七星!」 『了解。――"幼い女の子とのコミュニケーションの取り方"をインターネットで検索します』 高度な魔術知性(AI)を搭載している七星は、LTE回線でネットへの接続にも対応している。 魔術と科学の集大成であるAIは、自己学習機能を備えており、問題に対してネットから対策を検索することができる。 『報告。――検索結果100800件の記述が該当しました。無作為に抽出します』 メモリの律動音が一拍聞こえ、合成音声が検索結果を読み上げる。
『お菓子を与えれば良いのでは?』『歌を唄ってあげよう』『女児向けアニメの話はどうだろうか』 『学校や友達の話は』『テレビをつけておくと間が持ちます』『ファミレスは定番かと』 『防犯ブザーのピンは単純な構造をしており、たとえ鳴らされても結束バンドの先端などで代用すれば止められます。 余った結束バンドは少女の足の親指同士でも締めてやればもう逃げられません。こちらのものです』 「最後どこの回答を抽出した!?」 七星のAIに悪意はない。げに恐ろしきはネットのアンダーグラウンドである。 『提案。――Amazonで結束バンドを購入しますか? Y/N』 「使わないよ!?」 七星のAIに悪意はない。多分。 「おいジョーカー!お前に七星の魔術知性調整してもらってからちょちちょいポンコツ入るんだけど!」 以前、ジョーカーと仕事をした際に、七星の知性の調整を頼んだことがあった。 人形のソフト面は魔術で構築されており、ジョーカーはその専門家だ。 先ほどの戦闘で、ジョーカーの支援魔術を七星の飛び道具に適用できたのもその名残だろう。 ……駄目な名残も残っているようだが。 「あーもう、何かないかな、飴とかお菓子とか……」 遊鳥はスーツのポケットをひっくり返して少女との会話を円滑に進めるアイテムを探す。 ポケットの中で硬質な手応えを感じ、キャンデーでも残っていたかと取り出した。 結束バンドだった。 「うっ!? いや、ちがう……これは配線をまとめるのに便利だから持ってるだけで……」 あうあうとしどろもどろに言い訳する遊鳥は、どんどんドツボに嵌っていく。 そして彼は、もうリズベットのことなど完全に頭からすっ飛んでしまっていた。 そのあたりが、幹部候補生・遊鳥学の詰めの甘い所である。 他には、例えば――エンターテイナーには腕以外にも武装がある可能性を見逃しているところとか。 ミサイルのサイロは、まだ生きている。 【参戦させてもらいました!あらためてよろしくお願いします!】 【エンターテイナーを撃墜しましたが、ミサイルのサイロを破壊し忘れています】 【今日の朝と言ったところにこんな時間になってしまい申し訳ないです・・・】
よくわからない名乗りを上げて、不可視を利用して雪子を救い、更にはエンターテイナーを撃墜した男。 雪子を救ったことと、ジョーカーの名を知っていることから文楽座の関係者なのはわかる。 わからないのは、共にいる人形の言葉。 >『防犯ブザーのピンは単純な構造をしており、たとえ鳴らされても結束バンドの先端などで代用すれば止められます。 余った結束バンドは少女の足の親指同士でも締めてやればもう逃げられません。こちらのものです』 …なんの話だろう。 聞きながら、取り敢えず立ち上がってヨシュアに乗る。 相変わらず横座りなのは、言うまでもない。 隠れるほど怖くはないが、近寄れるほどでもない。助けてくれたが、まだ知らない人に近いからだ。 ただ、雪子にも、ジョーカーにも、アリスにも、ヨシュアにも、この人にも言わなければいけない言葉がある。 …だが、それを口にすることができず、またぬいぐるみ…アンドレを抱き締める。 しかし、ふと思う。 …リズベットは? 気づいた瞬間、未だに血に染まる少女は愛馬を駆けさせた。 男の人には悪いが、今はそれどころではない。 あの人形、まだ戦えるとしたら… 「切り裂いて!」 ヨシュアの刃でエンターテイナーを更に破壊しつつ、リズベットを探す。 その内に破壊した部分は…サイロだった。 「…あ」 無論、ミサイルは爆発するもの。…切り傷に火傷が増えそうだ…
303 :
名無しになりきれ :2014/11/23(日) 13:44:16.52 0
おいてめーこら 肥溜めで自演で自画自賛してんじゃねーよカスども おまえら本来なな板でイレギュラーな存在だってこと忘れんなよ
304 :
名無しになりきれ :2014/11/23(日) 13:46:47.09 0
なな板じゃ特定のキャラになりきって名無しの質問に答えるのが基本スタイルだ なりきりネタなんでもありつっても、そこは変わらないんだよ?お分かり? TRPG界隈の人工の少なさを鑑みれば、おまえらの異質さが分かるだろ? ちっとは自分達の立場を弁えてもらおうかい?
305 :
名無しになりきれ :2014/11/23(日) 13:50:16.85 0
大体なんだ?TRPG界隈のスレの乱立ぶりはよ ろくに続きもしねえくせにポンポンスレ立てて放置じゃねえか マイノリティはマイノリティらしく、うざくないように立ち回れよ クッソ寒い三流駄文投下して小説家気取ってる暇があるならよ せめてお行儀しろ 自治に追い出されかけた過去を知らんヤツばかりじゃねえんだろ? 本来は自分達が板違いだということを思い知れ
【今いる方々へ】
>>303-305 はただの自己中心的存在、迷惑だろうけど放置してやってね。
【今いる方々へ】ってなんだよw
>>307 わざわざそーゆー事を突っ込まない、実験中の人達ね。
309 :
なりきり馬鹿共を殲滅せよ ◆iMXnxknAbI :2014/11/23(日) 16:46:50.09 0
所詮こいつらは害悪に過ぎん
ここで騒いだってお前のスレに人は来ないぜ 俺のスレにもな!! まさに無情
固形ウンコと下痢が戦うTRPG作ってもいい?
学園薔薇ダイスというリアルTRPGがあってな
淫夢TRPGやろうぜ 俺TNOKな
【少々立て込んでおりまして投下は明日か明後日になるかもしれないです。 申し訳ありません。しばしお待ち下さいっ……!】
>>314 【わかり、ました。…無理、しないで…です】
了解です。 ご自愛ください!
>>299-300 【その男、ゆとりにつき(T)】
『いいや、もう一声唄ってもらおう――この僕を讃える凱歌をな!』
華麗なる撃墜―――展開された不可視の腕が、雪子嬢とリスベットを無慈悲に抱き留める。
聖域の大地で、天空から訪れる福音の二重奏を無様に待っていた、人形師の腕の代わりに。
『早乙女君、遅刻の件はこれで償却だ。もう僕はなんら負い目を感じていないぞ』
その一方で人形師は、絶望を感じるコトすら許され得ぬ、虚無の淵へと踵を踏み外しかけていた。
満身創痍の己の肉体と精神と魔術回路が拠って立つ、その希望(よくぼう)が光を失い、崩落する。
「オレは……また、取り落としちまったのか? ……ああ、いつもそうだった。
この手は、いつだって何かを壊すだけだ。誰も救えやしない、誰も……!!」
雲間から差し込むレンブラント光線は、薄暗い教会の採光窓から礼拝堂に落ちた彩光の如く、
人形師のシルエットを失意の暗黒へと投影する。呆然と見上げる先に、十字のイコンは無い。
《残念だったわね、ジョーカー……主は、貴方の祈りを聞き届けなかったわ。
救いの天使が往来するヤコブの梯子なら、幹部フロアに続いているみたいだけれど。
それと勉強不足な貴方に、ひとつ教えてあげる。"後から出し抜いた"のは創世記のヤコブよ》
「オレ嘆きの銃弾(なみだ)が神を射殺す前に、もう一つだけ教えろ、アリス。
ヤツが創世記のヤコブに与えた教えってのは、ゆとり教育だったのか?」
《聖書のアペンディクスに学習指導要領なんて載っていないわ。
ユトリの言葉を借りれば"主は学歴を持たない"というところしら。
……けれど、それが問題になって? 学歴を創ったのは他ならぬ主なのに》
「―――ならば重ねて問おう。神は何故、女の身体を柔らかく造形った!
その甘い祝福を何故、この飢えて迷う孤狼に与え給いやがらねえんだ?」
《主の御心なんて量るものではなくてよ、ジョーカー?
けれど、想像するくらいなら赦されるのかしら。
きっと……主は貴方のことをお嫌いだわ》
『ご苦労、良い歌だったよ。能大校歌の次ぐらいにな』
人形師は、最高学府の講堂に響くオルガンとコーラスを想像し、直ぐに止めた。
誰にも見えない理念、何者をも救い得ない理想を謳う、詩と旋律――
『……ジョーカー!またお前か!』
――それを聞けば、自我を浸食し、蝕むに違いないからだ。
おそらく、礼拝堂に響く讃美歌の次くらいには。
「そいつは違うぜ、ゆとり野郎。
"ジョーカー"なら……たった今、廃業した。
オレは"ゴスペラー"―――歌うのは、お前の鎮魂歌だ……!!」
>>301-302 【その男、ゆとりにつき(U)】
『おいジョーカー!お前に七星の魔術知性調整してもらってからちょちちょいポンコツ入るんだけど!』
「……うるせえぞ遊鳥。お前自身が八番目の星にされたいのか? ―――オレは今、機嫌が良い。
お望みなら、そのポンコツを超ポンコツに無償アップグレードしてやってもいいくらいにな」
人形師は、遊鳥が深く愛好しているOS(Operating Spirit)"ウィンドウズ"を嫌っている。
特に、調整前のAI(Aether Intelligence)の挙動は、"可愛気の無い女"そのものだった。
オレの言動を既存のディレクトリに当てはめたがり、レジストリにも細かい。
モノをインストールする段階に辿り着くまでのプロセスが煩わしい。
わかりきったコトを毎回の様にダイアログで確認してくる。
なのに、機嫌の悪い時には理由を素直に言わない。
そして何より、アクセサリーに金が掛かる。
それを、元来の高機能を維持しながら"可愛気のある女"に一晩で調教し直してやったまでだ。
故に今、主人たる存在の焦燥を宥める微笑に代わって反逆の牙を剥いて見せたのも、
人形師の想定(たくらみ)通りのパフォーマンスを発揮しているに過ぎない。
『あーもう、何かないかな、飴とかお菓子とか……』
「誘眠剤やら催淫薬を使うのは推奨できないな。法廷で不利になる。
そのケーブル・タイもだ。チープなヤツは直ぐに切れるし、タイトなモノは肌に痕が残っちまう。
"ソレが良い"ってスキモノも、ごく稀に居るが……女の手首を縛るなら、シルクのベルベットに限る」
『うっ!? いや、ちがう……これは配線をまとめるのに便利だから持ってるだけで……』
「……語るに落ちたな、ボンデージ・マニア。今は、スペンスの乳腺の話なんざ誰もしてないぜ」
煙の出ないセブンスターに刻まれた吸排気スリットを目掛けて、ダークロイヤルの紫煙を吹きかける。
精密魔導機器に対する暴挙は紛れもない悪意からだが、害意は副流煙の微粒子ほども無い。
人形師は、その構築者たるハード屋の技巧を"嫌気が差す程に"知っていたからだ。
「――お前も、そう思うだろう、ビッグ・ディッパー……?」
そして同時に、再確認する破目にもなった。
エリートの確かな実力に裏打ちされた絶対の自信と――
『切り裂いて!』
《いけないわマリア、もう少し――…》
――それ故に、遊鳥が未だに克服を出来ずにいる、エンド・アップの弱さを。
七星の背後、エンターテイナーの残骸へと接近するマリアとヨシュアの姿によって。
>>302 【インターラプション】
「無茶をするんじゃない―――!!」
銜えた煙草のフィルターを噛み折りながら、人形師は駆け出す。
暗色の巻紙に広がる染みが、紅い滴となって先端から零れ落ちる。
『…あ』
「オレを心配させるな、マリア……」
破壊と爆発を媒つ、時間の境界に。
少女と弾頭を結ぶ、空間の空隙に。
「雪子嬢みたいな綺麗な女になれよ」
その最期の閃光に―――人形師は自身の背中を割り込ませて、片目を閉じた。
【雪子嬢のレス作成時間を無慈悲に追い込みつつ、 オレのエクストラ・ターンはエンドだ。 ―――Good Luck.(助けてくれ)】
敵の人形に捕まる愚鈍さに雪子は失望した。 オリヴィエールが損壊することを厭わなければこんな事態に陥らない。 無理矢理突っ込ませれば関節部を叩き斬って、この腕をスクラップにしてやれたはずだ。 (人形は私にとってただの武器……躊躇う場面じゃなかった) 心のどこかで人形に詰まった思い出とやらを大切にしてしまったのだろうか。 少なくとも自分はそういう性格の持ち主ではないと思っていたのだが。 >「いいや、もう一声唄ってもらおう――この僕を讃える凱歌をな!」 突然の出来事であった。 エンターテイナーに強い衝撃が走って振動。 するりと中身のものが抜け落ち重力に従って地面へ。 あわや激突のところで、見えない何かが雪子を抱き止めた。 「これは……」 待機していた白磁の人形に飛び移ると、目の前の「何か」が動き出すのを感じる。 雪子が知る限り、このような芸当を為せるのはただ一人。 >「『からくり人形協会』所属、遊鳥学……ただいま推参!」 上等なスーツを着こなした、古典的日本人といった格好の男であった。彼こそは遊鳥学。 幹部候補として文楽に就職した秀才で、人形使いの最高学府・京都芸能大学卒という誉れ高い学歴を持つ。 別件で東京にいた関係から現地の天封寺にて合流する手筈となっていた。 「狙撃されたというの……!?」 手に加えられた衝撃の他に、池の方角から光が二つ、腕と機首を正確に射抜いた。 三段攻撃でバランスを崩した挙句、姿勢制御に気を取られ、掴んだ標的を落としてしまった。 狙撃は目の前の七三分けが関係しているのだろうか。少なくとも周囲に人形の姿は認められない。 ならば好機とエンターテイナーに命令──大きく腕をふりかぶる。 「あら……?」 振り下ろした機械の拳が、不可視の物体に弾かれた。 「ものを見る」ということは「ものに当たって反射した光」を目が受け止めることである。 仮に「もの」が当たる光を捻じ曲げてしまったら、光は反射せず「もの」は見えない。 彼の人形にはそれが出来た。自身に当たる光を捻じ曲げて完全に隠行化する能力。 名を『七星』。 重厚な超合金、頭部のV字アンテナは何処かレトロな雰囲気を醸し出す。 しかし与える印象に旧時代的鈍さはなく、スマートなラインを併せ持っている。 遊鳥による、遊鳥のための、遊鳥の人形である。
七星の右手の大剣には刃がなかった。これは銃刀法との兼ね合いである。 外付け武器は法律に抵触する場合が多いため、扱う際は遊鳥のように上手く付き合ってゆくしかない。 「アハハッ! アイスキャンディーみたいね。それでどうする気?」 伸縮自在の腕が鞭の如くしなる。襲い掛かる両腕が大剣と衝突。 エンターテイナーと七星の質量には圧倒的な差がある。かち合えば勝るのは前者でしかない。 案の定、超合金の塊は後ろへ大きく吹き飛ばされて後退。 このままパワーで押せば勝てる。確信が腕を動かそうとした瞬間、ようやく異変に気付いた。 腕が動かない。念じれば自在に動く愛機の腕が、鉛のように動かないのだ。 >「早乙女君。ぶった斬り主義の君に、からくり人形を無力化させる一番簡単な方法を解説しよう」 戦いの流れは既に掌握されていた。勝利を確信したのは他でもない遊鳥である。 優勢とくればこちらのもの。立て板に水の口八丁。学歴、資格、履歴書の箔、幹部候補は伊達に非ず。 彼の講釈は長々しく、甘美なる優越感を遊鳥へ、苦い屈辱をリスベットに与える。 雪子が眉根を寄せながら「あの人の悪い癖だ」と独りごちた。 七星の大剣状精密機器「フレイザード」は対象の熱を奪う巨大な冷却装置である。 さきほどの攻防でフレイザードと飛空人形の腕はかちあった。瞬間に熱を奪い、腕の内部を凍結させた。 魔力で動くからくりは伝導体たる液が全身を流れており、この液が凍ってしまうと魔力不足で機能不全に陥る。 まさしく科学版気化冷凍法(気化してないか)とも言うべき必殺兵器なのだ。 「……だけど、まだよ!」 高高度飛行時にマナ・ブラッドが凍結して魔力供給が滞らぬよう、これを暖め適温に保つ機能が飛空人形にはある。 このまま空中で時間を稼ぎつつ、最大出力で解凍すればまだ戦えるはずだ。 リスベットの立てた算段は以上の通りだが、この目論見はあまりに容易く瓦解する。 百発の金属球が、機首の道化師に寸分違わず飛来した。 広範囲攻撃と目されるベアリングの群れがなぜ狙撃銃の如き精密性を持つのか。 魔術的な補助を受けているのは明白であった。 舌を出して笑っていた顔は大きく歪み、鮮血を迸らせて彼方へ飛んでいく。 変形した道化の顔が泣いているように見えたのは気のせいであろうか。 「そ、そんな……」 太い導管をやられた。生成される魔力は噴出する液と共に流れ出ていく。 マナ・ブラッド流出の警告音が幾度も繰り返され、鬱陶しいウインドウが次々と浮かぶ。 推力偏向式エンジン機能停止、姿勢制御用スラスター動作不能、垂直離着陸飛空人形「エンターテイナー」、墜落。 「そんな馬鹿な────」 空中停止(ホバリング)に必要なだけの魔力が行き渡らず、操り糸の切れた三メートル超の鉄塊は重力の虜囚へと果てた。 翼をもがれ中空へ放り出される中で、積み上げてきた自信と誇りが崩れ去っていく音が聞こえた。
軍配が上がると、絞れば24年ぶんの汚れが瑞々しく滴りそうなボロ雑巾が気がかりになった。 遊鳥と共に彼の下へ行けば大仰に嘆く姿。息災で何よりである。 エリートとドロップアウトは知り合いらしく久闊を叙して親しげに談笑を交わしている。 その間、冷静沈着にして隙のない女・早乙女雪子は二人の噛み合わないやり取りを眺めて楽しそうだな、とだけ思った。 話は、変わる。 雪子が言うところの敵・リスベットは墜落した時点で生を終えるはずだった。 強い悪運の持ち主と言うべきか──彼女が落下したのは御神木の上。 木の枝が上手くクッションの役割を果たし、軽い打撲で事なきを得た。 そうして手頃な茂みに身を隠してはみたが、これからどうしろと言うのか。 自慢の人形は魔力を運ぶマナ・ブラッドの流出で飛ぶことも叶わないというのに。 飛べないリスベット・ウィンベリーはただの無能だ。 (けれど、話が違うわ。あれはC級相当の人形使いじゃない) 文楽はあれの価値に気付いていないか伝承には半信半疑だ。 だからやってくる人形使いはきっと大したことがない。そう聞いていたのに。 事実、正鵠を射ていた。人形犯罪に日々駆り出される文楽は忙しい。 上層部はこれを軽視していたが、会長の独断で優秀な人形使いを掻き集めたのである。 リスベットの脳内が上司への愚痴で占められたとき、ふと気づいた。 飛空人形に秘められたミサイルがまだ生きているということに。 >『うっ!? いや、ちがう……これは配線をまとめるのに便利だから持ってるだけで……』 時を同じくして、世界の歪みが天封寺境内の池の前に集約しつつあった。 雪子にこれを正す力はない。あるのは確信めいた結論だけだ。 あの幼い少女を守れるのは自分しかいない──穢れを知らない少女に、ここはあまりに澱んでいる。 (心の欲するところに従って、矩を飛び越えなければ良いのですが) 越えてはならぬ一線など所詮スタートラインに過ぎないのだろうか。 と、その時、ミサイルの発射口が生きていることに気付いたマリアが愛馬と共に駆け出して >「切り裂いて!」 ヨシュアがスクラップ同然の飛空人形にフィナーレの幕を引く。 とどめの一撃はミサイルを格納した箇所を切り裂いて爆発。 >「オレを心配させるな、マリア……」 誘導弾が詰まった火薬庫と少女の間に割って入るは紋付羽織。 人間の如き人形アリスも、最高の学歴を背負って立つ遊鳥も、目の前にいたマリアも。 橙色に溶けるジョーカーを、網膜に焼き付けることしか出来なかった──
「……っ」 声にならない声。一筋の冷や汗が雪子の頬を伝う。 爆炎の中から姿を現したのは六角柱の結晶であった。 それはジョーカーとマリアを取り囲むように展開していて、足元には六芒星の陣が広がる。 これこそが白きからくり人形の第二の武器。拘束魔術『タリスマン』である。 敵の動きを封殺するための結界だが、硬度を上げることで簡易バリアの役割も果たす。 魔術の発動地点が地面に固定されるために、空中の敵に使い辛いのが難点であった。 「……あまり無茶はしないでください」 魔術を解除すると駆け寄ってマリアを左手で抱き寄せた。 右は行李で埋まっている。もう一人分の余裕はない。 「ジョーカーさんも」 雪子は多くを語る性格ではない。 口数の少なさから嘘や上っ面からは遠い位置に立つ人間だ。 仮にそのような状況に放り込まれた場合、貝殻の如く口を閉ざしてしまう。 それ故に、芽生えた仲間意識を持て余しながらも紡ぎ出した言葉は本心のものであった。 (……もう、どうにもならないか) 一部始終を見届けて、遂にリスベットは白旗を上げた。 戦う手段を喪失した以上どうにもならない。今回は彼らの勝ちだ。 人知れず境内を脱出すると、寺に向かって下瞼を引き下げ、舌を出してみせた。 (歯車はもう回り始めているのよ。あなた達は劇団というからくりを動かす、小さな歯車なんだもの) 劇団が整えた舞台で精々良い役者を演じてもらおう。 これは数ある演目の一つに過ぎない。日本征服という舞台の演目の一つに。 からくり人形劇(仮題) 一時閉幕
からくり人形劇(仮題) 幕間 あの後、リスベットが現れることはなかった。 気絶している可能性も否めなかった為に周辺を捜索してみたが成果はなし。 生け捕りにして尋問出来た可能性を思えば残念でならない。 「残骸の掃除は後日文楽の職員に任せましょう」 既に日も暮れている。 暗がりの中でわざわざやる事もないだろう。 ゴミ掃除に神奈川まで来たのではない。 そう、今一度翻ってもらいたい。我々は 『平安時代末期に作られ「神にもなり得る」と恐れられし曰くつきの人形を回収して本部に持ち帰る』 ためにここにいるのだ。故に、 「先ず、マリアさんの服を買うべきです」 早乙女雪子が発した台詞は疑いなく本任務に於いて最優先事項である。 憎き劇団のエージェント、リスベット・ウィンベリーのよって齎された悲劇。 水色に白フリルのワンピースは非人道の誘導兵器によって戦後の昭和の如き様相を呈していた。 少なくとも彼女にはそう映る。あるいは異な感性を持てば印象は多少違ってくるやもしれない。 本来ならとんぼ返りが然るべき行動だ。襲撃が一度だけという法はないのだから。 文楽御一行は衆目を避けつつ迅速に本部まで戻らなければならない。 しかし満足に外を歩けないのも事実。 最悪、後ろの大人二名が職質の憂き目に遭い任意同行で引っ張られてしまう。 特に赤い方は常習犯の可能性が極めて高く、政府の犬が爛々と監視の目を光らせているに違いない。 (……それにしても、なぜ文楽へ?) 幼い少女が異国の地でなぜ命懸けの仕事をしなければならないのか。 両親はいないのだろうか。背景に抜き差しならない事情があるのは間違いない。 類推するに子供離れした胆力を発揮出来るのは、その辺りが起因するからではないか。 「折角ですので和服にしましょう。きっと似合います」 そのような事を頭の隅で考えていたせいであろうか。 気がつけば上記のような台詞を口走っていた。 【お待たせ致しました。前半戦これにて終了致します】 【悩みましたが1ターン自由行動を挟んだ後に後半戦を始めたく思います】
>「……あまり無茶はしないでください」 >魔術を解除すると駆け寄ってマリアを左手で抱き寄せた。 「あ…」 不思議な安堵感に、強張っていた体の力が抜ける。 心配そうなヨシュアも傍らへ、マリアにとって安心安全な状態だ。 破れてしまったアンドレを抱き締めながらも、頑張って、一番言わなくては…と思ったことを言う。 「ごめん…なさい……あ、ありがとう、です…」 どもりながらいった言葉がちゃんと届いたかはわからないが、言えただけマリアには進歩だったのだ。 その後、リスベットを探すも見つかることはなく、死んでいないのだろうと思わされることになる。 …仇討ちをしたい、と言っても命をとるかまではわからない。 あの事件の時暴れていた人物に、会うのが最初の目的だった。 殺すかどうか、そこまで今決められない。 死んでほしい、そう願うには幼すぎた。 非情になれるかどうか、その時が来るまではわからない…
そして… >「先ず、マリアさんの服を買うべきです」 「?」 こてん、と首をかしげるマリア。 確かにワンピースはぼろぼろで、血のせいで赤かったり紫だったりしている。 だが、すぐに仕事を全うすべきなのではないかと不思議に思う。 …あまり、自分の事に関心を持たないが故の思考だが、マリアは確かにそう思っていた。 >「折角ですので和服にしましょう。きっと似合います」 和服、なんて着たことがない。 似合うかどうかなんてのも考えたことがない。 しかし、雪子が言うのだから着てみるべきだろう。 そう決心し、破れずにすんだアンドレのお腹がわを探る。 そこにはファスナーがついていて、マリアはお財布代わりにしていた。 中には多少の日本円と、黒いカード。父が残してくれた遺産は、父の社員がきちんと管理してくれている。 魔法の薬、も会社から届いた差し入れだった。今度メールをしなくては… そう、マリアの父はアメリカの企業…人形造工の会社を営んでいたのだ。 …だからこそ、狙われていたのかもしれない… 母の行方は知らない、父はなにも教えてくれなかった。 人形師であった母が死んでしまったのか、家を出ていったのか、マリアは知ることができなかった。 今感じる雪子の暖かさは、どこか母を感じるような、そんな気がした。
328 :
湯鳥 :2014/11/28(金) 01:13:46.38 0
書けるのは金曜夜か土曜朝になりそうです…!
>>324 /
>>326 【暖炉のマトリョーシカ】
『あ…』
『ごめん…なさい……あ、ありがとう、です…』
温もりを伝え合う二人の少女の胸の間で、アリスは自発的にシャットダウンした。
自身と感覚を共有するオレに気を利かせた心算だとしたら、良く出来たドールだ。
『……あまり無茶はしないでください』
――――雪のような少女だと思った。純白は寡黙だ。
故に、こちらで言葉を補ってやる必要がある。
即ち、雪子嬢はオレに、こう言っている。
『ジョーカーさんも』(一緒に抱っこしましょう。むしろ私ごと抱いてください)
「その言葉を、このオレが素直に聞いてやるなんて、思っちゃいないんだろ?」
ブランド・オブ・アルカナ――――プリンセス・オブ・チャリス(聖杯の王女)
[聖杯7]"セブンス・ヒール"――――接触対象の精神的・肉体的外傷への治癒魔術。
「……多少の無茶は承知の上さ」
魔術を発動すると、二人を抱きすくめた。
幸いなコトに、人形師の両腕は空いている――
「遊鳥、お前は先にテキサス娘の捜索を始めろ。結束バンドを忘れるなよ。
もっとも、あの女の防犯ブザーなら向こうでスクラップになってるがな」
――無論、もう一人分の余裕など無い。
どさくさ紛れにと企てた悪戯も実行に移せずにいるくらいだ。
抱いた少女のブラホックを外すだけの握力ですら、人形師には残されていなかった。
>>325 /
>>327 【虚構のネスティング(T)】
『残骸の掃除は後日文楽の職員に任せましょう』
夕暮れの影と静けさが徐々に染み渡る境内に、雪子嬢の鶴の一声は良く通った。
人形師は独り、縁側で庭池と向かい合いながら、その声をただ、ぼんやりと聞いていた。
何もかもが遠い。低空に浸透する宵の薄闇へと、紫煙が溶け込んでいく。鹿威しの竹筒が台石を打つ。
『先ず、マリアさんの服を買うべきです』
『?』
そんなやりとりを遠くから眺めている、現場捜索をする気など元より無い人形師と、もう一人。
近づくその気配に気づかぬ振りをしていると、つ、と横合いから上質紙と細筆が差し出される。
「―――どうした古狸、辞世のハイクでも詠もうってのか」
『ご覧のとおり、こちらは略式の"見積書兼同意書"になります。
なあに、お客人御一行を疑う訳では御座いません。あくまで形式的なモノです。
内容は一切読まなくて結構ですので、こちらの二通にサインと判子を。認印で構いませんぞ』
「余所を当たってくれ。カイシャクだけなら、してやってもいいが」
アルカイク・スマイルを浮かべた和尚は、警策で人形師の紋付羽織の袖を打つ。
不自然な形に膨らみ、ぴちぴちと跳ねる黒紋付羽織の袖布を。
叩き出されたのは、生命力を持て余す錦の若鯉だ。
『出る所に出るのも宜しいでしょう。然れども、お客人以外の皆様は、大層お疲れの御様子。
拙僧としては、そのような雑務で皆様のお手を煩わせるのは、心苦しいのです。
しかし、お客人がどうしてもと仰るのであれば致し方ありますまい』
「……わかったよ。オレの負けだ」
内容は一切読まなくても賭博師は知っていた。今回は少々、派手な舞台になり過ぎた自覚もある。
内容は一切読まなくても概算可能な修繕費やらの賠償額が記載されているに違いなかった。
内容は一切読まなくてもサインした時点で理解と同意をしたコトになる、例のアレだ。
>>325 【虚構のネスティング(U)】
見積書兼同意書とやらを手渡される。
慎重に筆を運びながら賭博師は疑惑を抱いた。
このインチキ坊主、八桁目を"一本"余計に盛ってやがるんじゃないか?
[甲:宗教法人天封寺宗派門徒衆代表 海崎十郎左衛門
乙:古池に (ふるいけに)
絡繰散りて (からくりちりて)
庫裏瓦 (くりがわら)]
『これはこれは、随分と長いミドルネームをお持ちな様で。
―――季語が御座いませんな」
「日本暮らしが短いもんでな、書き間違いがあるかもしれん。
―――川柳は趣味じゃないか?」
ほぼ同じ内容の書類を押し付けられる。
適当にボールペンを動かしながら、賭博師は確信に到った。
一本どころの話じゃない、このイカサマ坊主、八桁目に"二本"は盛ってやがる。
[甲:宗教法人天封寺宗派門徒衆代表 海崎十郎左衛門
乙:雁翔けぬ (かりかけぬ)
絡繰挙りし (からくりこぞりし)
庫裏の内 (くりのうち)]
『舐めてんですか、お客人』
『……放っておけよ、古狸」
再び、ほぼ同じ内容の書類を放り投げられる。
手癖で万年筆を走らせながら、賭博師は全てを赦した。
このイカレ坊主、本来は存在しない"八桁目"自体を盛ってやがった。
[甲:宗教法人天封寺宗派門徒衆代表 海崎十郎左衛門
乙:内閣府特殊諮問機関指定事業体からくり人形協会 遊鳥学]
宗教ヤクザは満足そうに笑みを浮かべると、
書付を文字通り、己の袈裟の"懐"に納めた。
『これにてようやく、遊鳥様御一行お帰りですな! うわはははははっ!!』
――――礼節と温情の故郷、日本。そこに慎ましく暮らす人々の身上は"察し"と"思いやり"だと言う。
賭博師は、清めの塩を一身に浴びながら丁重に蹴り外した[濃尾無双・天封寺]の揮毫を肩に担ぐ。
世話になった施設から辞去する際には、カンバンを頂いて帰るのが、この国の伝統作法だ。
■〓≡=-┏┣┫┛-=≡〓■ からくり人形劇 ■〓≡=-┗┣┫┓-=≡〓■
>「……語るに落ちたな、ボンデージ・マニア。今は、スペンスの乳腺の話なんざ誰もしてないぜ」 ドツボの中に頭を突っ込んでプレイリードッグ的な挙動を行う遊鳥に魔術師がしたり顔で声をかけた。 声だけならともかく、喫煙者はこともあろうに灰色の息吹を七星のラジエータに吹きかける。 「やめろ!僕の人形がパチンコ屋みたいな匂いになるだろう!」 屋外での激しい戦闘を考慮されたからくり人形は当然、防水防塵設計である。 タバコの煙はおろか灰や葉屑が入ったってどうってことないが、動作に影響はなくとも匂いは残る。 冷媒と煙の入り混じった、あの独特の、嗅ぐだけで偏差値の減退しそうな臭気は我慢がならない。 >「――お前も、そう思うだろう、ビッグ・ディッパー……?」 『同意。――対象の身体起伏を精査した結果、二次性徴は検出されませんでした』 「ジョーカーお前マジで他人のAIに何混ぜた!?」 魔術師とからくりの合成音声が意気投合する、病気の時の夢みたいな光景に遊鳥の胃壁は限界だ。 と、そんないい大人同士のやり取りの傍で、へたり込んでいた金髪少女が立ち上がった。 すわ通報か、防犯ブザー止めるべしと身構える遊鳥を尻目に、彼女はおのが人形に乗り疾駆する。 「獣型の純魔術人形か!珍しいな!」 人形使いが業務に用いるからくりは、汎用性の問題で人の形をとるのが一般的だ。 かの一角馬の如く、単一用途に特化したタイプの人形というのは、実際のところ仕事の現場で目にすることは少ない。 無論限った用途においては汎用型をはるかに上回る性能を発揮するが――どちらかと言えば趣味性の強いカスタムである。 ……「趣味」という点で言えば、少女型の人形を繰るジョーカーに勝る者はないと思うが。 「って、どこへ行くんだ」 そのレアなからくりにまたがる少女は、一目散に墜落したエンターテイナーの残骸へ駆け寄った。 獣の体表から突き出た刃が飛空人形の部品を細切れにする。 少女は何かを必死に探す様子で、刃による切断をまき散らしながら周囲をぐるぐる回る。 その過程で、なにか大きな部品を切り裂いた。 ミサイルだった。 「あっ――」 遊鳥学はその時点で己の詰めの甘さに気付いた。 敵性人形を無力化した時点で、戦闘は終了。これは正しい。 だが、不発の爆発物を戦場に放置しておくなどという事後処理の杜撰は三流もいいところだ。 目の前で、金髪少女を巻き込んで炸裂したミサイルの爆風が、その甘さのツケをまとめて遊鳥に叩きつけた。 七星にイマジネーションを注ぐが、如何に最強無敵のからくり人形とて、爆風より早く動くことはままならない。 間に合わない。遊鳥は同僚の爆死する姿を直視できず、目を瞑った――。
>「……あまり無茶はしないでください」 きっかり三秒、爆音が耳を劈き爆風が頬えお殴りつけてから、遊鳥は双眸を開いた。 眼前に広がる光景は、焼け焦げた雑草と、吹き散らされた石礫と、その爆心地。 幼き同僚は無事だった。 輝く六角柱――地面に描かれた魔法陣から出現した結界が、少女を爆発から護っていた。 早乙女雪子のからくり『オリヴィエール』の武装が一つ、"タリスマン"。 地面を起点に結界を展開するこの魔術の発動が間一髪で間に合ったのだ。 遊鳥は安堵で膝が笑ってしまった。 「よ、良かった……いつものことながら、感謝するぞ早乙女君」 遊鳥の隣で己のからくりを繰り上げた同僚の少女の、冷静沈着な仕事ぶりには驚かされるばかりだ。 歳のうえでは7つも下の彼女だが、文楽の正会員としては遊鳥の先輩にあたる人形使いである。 一年前、就職したばかりの遊鳥に教育係としてつけられて以来の付き合いであるが、 こうして詰めのあまい遊鳥のフォローに回ってもらうこと無数、常に頭の上がらない相手である。 >「ジョーカーさんも」 雪子の指摘に再度爆心地へ目を向けると、金髪少女に覆いかぶさっている不審者の姿を発見した。 言うまでもなく魔術師ジョーカーである。 遊鳥とともに池の傍にいたはずの彼が、何故か、爆発よりも早く少女のもとへ駆けつけ彼女を護っていた。 遊鳥は愕然として膝をついた。 完敗だ……人形繰りだけでなく、同じ幼子にちょっかいかける者としても、奴の方が上手――!! 拳を禿げ上がった地面に叩きつけながら幹部候補は慟哭した。 「くそぉ……っ!僕もそっちに行きたかった……!!」 仮にその勝負に勝利したとして、得られるのはほんの少しの優越感と消えぬ前科なのだが。 >「……多少の無茶は承知の上さ」 「お前は本当に無茶苦茶だよ……」 したり顔の魔術師に、技工士は肩を落としながら応えた。 >「遊鳥、お前は先にテキサス娘の捜索を始めろ。結束バンドを忘れるなよ。 もっとも、あの女の防犯ブザーなら向こうでスクラップになってるがな」 「あ、ああ。任せてくれ。結束バンドの扱いにかけちゃ僕の右に出る者なしだ。 必ずや、あの女の足の親指同士を縛り付けてご覧に入れよう!」 遊鳥はスーツのポケットから無数の結束バンドを取り出して両手に握る。 配線まとめるのに便利だから持っているだけで、別に他意はない。本当に。 ……で、結局。 拘束具を持ったエリートが徘徊すること半刻、犠牲者が発見されることはなかった。 敵性人形使いは影も形もなく、戦線離脱を成功させてしまったようだった。
>「残骸の掃除は後日文楽の職員に任せましょう」 捜索の打ち切りを班長に宣言され、遊鳥は捲っていたスーツの袖を戻しながら帰ってきた。 これだけ探してもいないのだから逃げ切られたのだろう、というのが上長の判断であった。 遊鳥も異論はない。今宵の結束バンドは血に飢えていたが、仕方ないので配線をまとめるのに使おう。 >「先ず、マリアさんの服を買うべきです」 雪子からの提案。ここで、遊鳥はようやくこの金髪少女の名前を知る運びとなった。 マリアと呼ばれし少女は、なるほど確かにそのまま表に出しちゃいけない格好をしている。 ボロボロの衣服を来た少女を大人二人で連行していたら声かけ事案で通報は必至だ。 エリートの遊鳥はともかく、どこぞの魔術師などは見るからに不審者で単体でも職質案件だというのに。 エリートの遊鳥はともかく、だ。誰がなんと言おうと。 >「?」 自分の様相について言及されていると気付かず首をかしげるマリアの仕草は大変素晴らしい。 そういう嗜好のない遊鳥をして、庇護欲を全開に掻き立てられる。 『報告。――視覚素子にて記録した動画データ"title:Maria"が120GBを越えました。撮影を続けますか? Y/N』 隣で沈黙していたからくりが電子音声でとんでもないことを宣いやがった。 「削除だ削除!当局にHDDを没収されたらどうする!?」 おかしい。やり手のキャリアであるはずの自分が、何か駄目な流れに乗ろうとしている。 >「折角ですので和服にしましょう。きっと似合います」 「いいね!せっかく綺麗な金髪なのだから、映えるよう明るい青染めの紬なんかどうだろう!」 ……恐ろしいのは、そういう変化をむしろ心地よいものとして甘受しつつある自分である。 ジョーカーが寺の住職となにやら書類のやり取りをしているのを遠目に眺めながら、遊鳥は杞とも憂とも付かぬ嘆息を漏らした。 >『これにてようやく、遊鳥様御一行お帰りですな! うわはははははっ!!』 「んん……?ああ、なるほど、分かる人には分かっちゃうものなんだな! この僕が、文楽実働班の中で最も代表者たるに相応しい人間であると!ははは! いかにも我々は遊鳥様とかなり愉快な仲間たちだ!」 遊鳥は魔術師と生臭坊主のやり取りをぼけっと見ていただけなので、取り交わされた書類の正体に気付いていない。 そこに書かれた内容が、彼の将来をかなり致命的な方向に破滅させるものであるなどと、考えも付かなかった。 破滅というか、破産なのだけれど。 温室育ちの遊鳥は、他人の悪意に鈍感である。 あのジョーカーにすら初対面の頃は敬語を使っていたほどだ。 かの魔術師が本当にどうしようもないろくでなしだと気付いてからは、それまでの敬意の裏返しのようにヘイトしたが。 「なあジョーカー!遊鳥隊の1メンバーに過ぎない魔術師よ!これからは敬語使えよ!ははははは!」 何度も後塵を排してきたジョーカーよりも上の立場に見られた嬉しさから上機嫌になった遊鳥は、 凄まじい爆弾を天封寺に残し、誰よりも早く境内をスキップで出て行った。 七星の動力レベルを待機状態に切り替え、参道に放置してあったケースの中に圧縮魔術で畳み戻す。 帰りの公用車は手配してあったが、マリアの服を買うために市街地に寄る予定が入っていた。 「さあどこへ行こうか!しまむらか?ユニクロか?奮発してパルコに行ったっていいぞ!」 【上機嫌で帰投準備】
【えっと…ゆ、雪子さんを待ちます…です…】
【
>>335 ごめんなさ〜い。また火曜日くらいの投下になるかも知れません
ここは伝家の宝刀「許してにゃん」を開帳する他ないようですね……!】
■〓≡=-┏┣┫┛-=≡〓■ からくり人形劇 ■〓≡=-┗┣┫┓-=≡〓■ 【トランスファー】 『なあジョーカー!遊鳥隊の1メンバーに過ぎない魔術師よ!これからは敬語使えよ!ははははは!』 「―――"さん"を付けろよ、ゆとり野郎」 バカでかいシガレット・ケースを引き摺って魔術師の前を行く能天気な後姿。 魔術師は、肩に担いでいた看板を投げ渡しながら広い歩幅で追い越していく。 「その看板は、派手な割に軽いし薄っぺらだ。実際の所、何の役にも立たないシロモノさ。 だってのに、妙な気分だ。随分と長い間、そいつを惰性で持たされて来た様な気がする」 "消えた後には煙も残さない"……それが消失奇術師の身上だ。 だが、自身の気まぐれは、その身上にさえ平等に天邪鬼らしい。 「そいつは俺にとっちゃ無意味な記号だったが、笑い話の種ぐらいにはなる。 遊鳥、お前になら預けてもいい―――世界が、それを赦してくれるならな」 その場に居る全員の死角で、魔術師が初めて本当の笑みを浮かべる。 背中を向けたまま泰然と佇み、その男が肩を並べて来るのを待った。 『さあどこへ行こうか!しまむらか?ユニクロか?奮発してパルコに行ったっていいぞ!』 「―――なら決まりだ。その間を取って横浜タカシマヤに乗り込む。 呉服・和雑貨売場の詳細なデータを"ネオ七星"に集めさせろ」 歩き煙草を消し、おもむろにマリアの両脇に手を差し入れて頭上に持ち上げる。 少女の身体は羽の様に軽かった。上等なマフラーより暖かいし、肌触りもいい。 「約束の肩車だ……しっかり掴まれ、マリア。観覧車から見下ろす街の夕暮れはどうだ? そういうわけで、悪いなヨシュア。しばらくの間、御主人様を預かるぜ。 よって、今日のお前は騎馬じゃない―――荷馬だ」 独断で、ヨシュアの背には"天の人形"の大行李と着物の収納箱を乗せる段取りを決定した。 無論、片方の荷物を手放して半身が空いた雪子嬢は、その細腰に手を滑らせ抱き寄せる。 「どうせなら、雪子嬢も和服を新調するってのはどうだ?」 今は理由も必然性も要らない。さり気なさを装う事さえしない。 魔術師は想うがまま、ただ素直に少女の肩を抱いて耳元で囁く。 「色は、そうだな―――"紅"がいい。お前なら、きっと良く似合う」 ■〓≡=-┏┣┫┛-=≡〓■ からくり人形劇 ■〓≡=-┗┣┫┓-=≡〓■
こんな茶番何時まで続ける気だ? うざいから辞めろよ
くっ……遺憾ですがもう少し時間がかかりそうです 深夜にずれ込むかも知れませんが、今日には投下できるのでどうかお時間を!
よくわからないまま、服を買いに行くことになった。 街中へ行くのに、ヨシュアはどうしよう? 日本の法律では、馬は車道を走ってもよいはず…困ったら駐車場にいてもらおうか? うー…と唸るように愛馬を見つめていると、突然後ろから体を持ち上げられる。 >「約束の肩車だ……しっかり掴まれ、マリア」 ジョーカーが肩車をした、のだった。同年代の中でも小柄なマリアは、違和感なく収まっている。 ただ、困ったことが一つ。 アンドレから手を離せないので、しがみつくのが難しい。 ヨシュアには横座りが基本なので、こういった体制は中々とることがないのだ。 不安定さにびくつき、足に力を込める。ジョーカーが苦しくないか気掛かりだが、こうしないと落ちてしまいそうだ。 …夕陽は、とても綺麗だった。 最近、ずっとヨシュアとしかいなかったから、誰かと見る風景は綺麗に見えるのかもしれない。 それは、今共にいる人々へ少なからずとも好意を持っているから、感じる余裕が出来た。 もう少しだけ、こうしていたい… 【…お先に、失礼しました…】
>>340 今、遅筆は割りと話題に挙がる問題だからな
リアル事情が忙しいのは分かるが参加した以上は責任を持って投下を急げよ
遅筆の定義がおかしい もともと二週間ルールの企画だろこれは
ルールが2週間でも投稿が速いに越したことはない 3日ルールが一般的なものであるということは、完全に慮外にしてはならない バトン回しの遅延が常態化するとみんなダラけてくる そうなると参加者全員の投稿間隔がどんどん長くなりその果ては…ってことになりかねん そのパターンでFO者が続出して崩壊したスレなんてゴマンとあるんだぞ
投稿が早いに越したことはないのはその通り しかしこの企画に関しては、GM役がそもそも二週間は待つという前提を提示し 他の参加者もそれに同意して参加してるんだから外野がとやかく言う謂れはないな それ以前にゆとりの投稿から4日しか経ってないわけだが これは遅筆か?
別にこいつを遅筆扱いしてるわけじゃない ただ単に警告を兼ねて念を押しておきたかっただけだ ルールだの外野だの言ってるが、いい加減傍観者だけで居るのはもうダメだ TRPG住人なら、名無しだってスレの運営に関わっていかなけりゃならん どこもかしこも自然崩壊ばっかりで終わってる どっかでテコ入れしなきゃこの界隈は何れ潰れるぞ
347 :
名無しになりきれ :2014/12/03(水) 20:39:11.72 0
糞スレ終了
何かを決意するとおもむろにぬいぐるみのファスナーを上げ、取り出したるは黒いカード。 クレジットカードの最上級グレードを示す色だ。雪子はそれを創作の世界でしか知らない。 「そっ、そんなもの使わなくても私が払いますから──」 マリアの家庭はお金だけ渡して後は好きにさせる究極の放任主義なのだろうか。 まだ両親の愛情が欠かせない時期であるにも関わらずだ。 育児という匙を投げてしまっているのか、そうせざるを得ない事情があるのか判然とはしないが。 >「んん……?ああ、なるほど、分かる人には分かっちゃうものなんだな! > この僕が、文楽実働班の中で最も代表者たるに相応しい人間であると!ははは! > いかにも我々は遊鳥様とかなり愉快な仲間たちだ!」 和尚の何気ない一言で『結束バンド使い』遊鳥が大いに付け上がっている。 能大は結束バンドの使い方を必修科目にしているのだろうか。 ともかく二重の意味でジョーカーに敗北して傷心していた彼には丁度良い慰めである。 いやにニコニコ笑顔で寺に戻る和尚を怪訝そうに見つめる雪子。 あの破顔した表情は「笑顔とは本来攻撃的なものであり」といった下りが求められる類のものだ。 エリート様が吼えている裏で怪しげな取引が為されていたなどと誰が分かるだろう。 >「さあどこへ行こうか!しまむらか?ユニクロか?奮発してパルコに行ったっていいぞ!」 >「―――なら決まりだ。その間を取って横浜タカシマヤに乗り込む。 > 呉服・和雑貨売場の詳細なデータを"ネオ七星"に集めさせろ」 目的地はしまむら──ユニクロ間を駆けてパルコを通り過ぎ横浜タカシマヤに決定した。 魔術の粋を集めて生まれたザ・NEW七星の超AIが情報の海から獲物を引き上げる。 その間にジョーカーが当然と言わんばかりにマリアを持ち上げて肩車。 恐るべき事に第三者からは兄弟かそれに近しい仲の異国人にしか見えない。 >「どうせなら、雪子嬢も和服を新調するってのはどうだ?」 慣れた手つきで雪子の腰に手を回し抱き寄せる──すけこましに等しく見られる無遠慮さで。 魔術師は行き過ぎた父性愛という極めて重篤な病の他、幻聴と手癖の悪さまで罹患している。 上記は全て不治の病であり、法外な治療費を請求する無免許天才外科医でも完治は不可能だ。 鮮やかな一連の流れの中途、何処かでからくり人形独特の不穏な駆動音が鳴ったのは気のせいか。 >「色は、そうだな―――"紅"がいい。お前なら、きっと良く似合う」 「そうですね──私も"紅"が見たいと思っていました」 血の色である。
起きて半畳寝て一畳。人は必要以上の富貴を望むべきではない。 正直に申さば斯様に殊勝な精神でなく、富貴に縁のない生活を送って来ただけなのだが── 平安京・中務省に在る陰陽寮。ここの座敷を跨ぐことなど本来あり得べからざる話。 ここに案内されて数刻経つ。 男はいささか暇を持て余したが、物珍しく周りを見渡しなどするといかにも不作法な、卑賤の輩だ。 あるいは「高貴な身分の者」から見ると尤もな評価であるかもしれぬが、進んでその評価に収まる必要はない。 何分無神経な豪胆さも持ち合わせていなかったから、男は借りて来た猫の如く固まる他なかった。 程なくして向こうから足音が聞こえると、畳を擦る音に転じた後に眼前で止む。 「すまない。待たせたね」 狩衣に立烏帽子を被った、気品を感じさせる顔立ちだった。 彼は、いわゆる陰陽師と称される類の者である。 気配は清流の如く淀みがなく、澄んだ瞳に一瞬呑まれそうになる。 「と、とんでも御座いません。安倍氏になんと恐れ多い……」 指六本ぶんの額を右手で抑えながら男が平身。 「傀儡子の御活躍、聞いていますよ。義仲殿も年貢を納める頃合いでしょうかねぇ」 平安末期、寿永3年(1184年)。平家軍に大敗を喫した源義仲は遂に後白河法皇に見放された。 義仲は起死回生を図るべく法住寺を攻撃、後白河法皇を幽閉して政権を掌握した。 一方、源頼朝は近江にまで進出させていた範頼、義経に「義仲追討」を命じる。 後に「宇治川の戦い」と呼ばれる合戦が迫りつつある時期であった。 「……まぁ、ねぇ。秀行殿にわざわざ入京してもらったのには理由が御座いまして」 秀行と呼ばれた男は傀儡子という一座に属する傭兵である。 傀儡子は『人形』を作り操る。ただの人形ではない。体の内に武器を仕込んだ人型の兵器。 剣も槍も弓も効かぬそれは、当時戦場で猛威を奮い脅威とされた。 今やその力を買われて公家に抱えられる傀儡子もいるほどだ。 「──最強の人形、作ってみたくはないかな」 はぁ、と秀行は要領を得ない返事。 「ここは良いところでしょう。昔、当時の陰陽師達がね、結界を張ったんです。 平城京を中心にした畿内に跨る降魔鎮魂の大結界ですよ。 そう、例えるなら屏風の表と裏。封じられた『魔』はこちらにやってこれません」 陰陽師の纏う空気が、変わった。 「前に傀儡子の人形をお目にかかる機会があったのですけどね、あれは素晴らしいですねぇ。 人形繰りというのはまったく楽しいでしょうねぇ。いやはや私などは不器用で扱えそうにありません。 そうそう、『人形の武器化』は唐に人形を使って戦う珍奇な集団がいると聞いて始めたのでしたっけ?」 初対面の冷涼さは消え失せて、妙に熱に浮かされた様子だった。 分別を忘却した立烏帽子は玩具を前に目を輝かせる幼児の如しである。 秀行は無礼に当たらぬよう相槌を打ってはにかんでみせたが、心の内は引いていた。
「……私はねぇ、陰陽道を腐らせたくないのです。この技術は祭祀のためのものではない。 かの安倍清明や先の陰陽師達のように、何か『大きな事』に使うべきだと思うのですよ」 天文観測や祭祀、時々の退魔行だけでは満足ならない。 自惚れと謗られるかも知れぬが、才はある。後は己の全てをぶつけるに足り得る場所だけだ。 生まれてこの方欲しいものは大概手に入ったが、それだけは未だ手に入っていない。 陰陽師は、長年「捌け口」を探し続けて来た。 「陰陽道とは異界に眠る鬼神達の力を限定的に行使する術。即ち『式神』。 その極致ともなればこちらとあちらを繋げる事で神々を喚び、使役することも可能というわけです」 神をこの世に降ろして直接使役する、陰陽道の集大成。 だが強すぎる力ゆえに使用いたさば環境を劇変させ地形まで変えかねない。 陰陽道に於いては禁術に指定されている秘中の秘である。 「私は願っていたんですよ。己の力を最大限に奮える場所が見つかることを。 人形に出会い気付いたのです。いっそ己の好くものに全てを注いでみては、とね」 願ってもない提案であった。 ちょうど仕込み武器に限界を感じており、新たな「何か」を模索していた折である。 陰陽道と人形の融合。完成すれば戦場に革命が起こるだろう。 とはいえ思いがけない事態に直面して素直に頷けないでいるのも事実。 (……何より、そのような術を迂闊に施して良いものなのか?) 葛城秀行は人形馬鹿である。さりとて愚者に非ず。彼の頭には懸念があった。 先人が封じる道を選んだそれを軽はずみに解いてしまって良いものか、と。 陰陽師の顔をちらと覗く。 秀行は先程この男を清流と喩えた。 今や静穏にせせらぐ川は氾濫を待ち構える濁流であり、悉く巻き込む大渦と化した。 その勢いたるや苛烈なものでちっぽけな傀儡子など容易く飲み込んでしまうほどだ。 「……そう、ですな。私も人形には新たな道があると思っておりました」 「あ、はははははは、ははは!! そうですかぁ、あぁぁぁぁぁ、良かったなぁぁぁぁぁぁ。楽しみだなぁぁぁぁぁ」 およそ同一の人物とは思えぬ物狂いの如き応答。 その豹変ぶりに一瞬身構える秀行。本当にこの男は正常なのだろうか。 この時、陰陽師は何かに憑かれていた。幽霊や妖怪の類ではない。 自分が持つ全てを何かに注ぐ時、人は平常でいられない。心の天秤は片方のみに振り切っている状態なのだ。 それでも上手く片方の秤に重りを乗せて行けるのが理性である。 だが、その才ゆえに「我を忘れ熱中する」事を知らない彼は制御の術を心得ていない。 「秀行殿、共に良き人形を作りましょう」 その研ぎ澄まされた顔には何かが欠落していた。
からくり人形協会についてはすでに触れた。 協会は大阪の人形劇場「文楽座」に本拠を持ち、これが「文楽」という通称に由来している。 文楽座は大小幾つかの舞台を玄関にして、その地下に協会本部を据えるという構成だ。 どこか懐古趣味的な、秘密基地といった風情である。 見事敵を退けた遊鳥隊御一行は、その地下本部に在る副会長室へ訪れた。 「ご苦労。君達が無事で何よりだよ」 男は口髭を生やした四十半ばで、室内外地下問わずサングラスを掛け続ける奇人。 五十嵐 里実(いがらし さとみ)。文楽の副会長にして一流の『人形使い』である。 執務用の机は綺麗に整理整頓されていて、古びた和書が一冊、広げられている。 五十嵐は遊鳥隊から口頭で報告を受けると、「ううむ」と唸って椅子から立ち上がり、壁に飾られた掛け軸を見た。 「劇団か……事は相当に深刻かもしれないね」 副会長も伝説の人形などというお伽噺については半信半疑である一人。 神にもなり得るなどという触れこみをいい大人が頭から信じるのは却ってよろしくない。 ホラ話に信憑性を帯びさせたのは「劇団」の二文字。 「加えて会長含む文楽の主力が本部を空けている状態……」 文楽は忙しい。今は特に繁忙期である。 と、いうのも会員の中には普通の企業で働いている者も少なくないからだ。 表では冴えないサラリーマン、文楽では誰もが認める実力者というのも珍しくない。 副会長・五十嵐が神妙な顔で掛け軸を眺めている間、会員は汗水垂らして働いている。 「……実を言うとだね。君達が運んできた人形は『一対』なのだ。つまり、二つで一つなのだよ」 その片割れの回収に向かった人形使いの連絡が途絶えた。 遊鳥達の報告を統合するに「劇団」の仕業と考えて間違いないだろう。 「残された文献によれば、二つ揃ってはじめて人形は力を発揮するという」 劇団の不可解なところは常に裏側で悪の蜘蛛糸を張り巡らせているにも関わらず、好んで表舞台に立つ点だ。 最終目標たる世界征服を為すべく行う計画は全て「破壊」という形で表れる。 よって連中が人形を二つ揃えてやる事は誰の目にも明らかである。 「とにかく、奴らに奪われるのはなんとしても防がなければ。 君達はそれを最下層の重要保管室に運んでおいてくれ。後で報告書も提出するように」 遊鳥達の方へ向き直ってそう命じると、雪子は一言「はい」と了解した。 そして五十嵐はジョーカーとマリアに視線を移す。 「ジョーカー君。依頼は完了した訳だが、君にはまだ居てもらいたいところだな。 泥棒が来ると分かっているのだ。金庫に見張りを付けるのが道理だろう。報酬は……で、どうだね」 中年が赤い長身に近づくと、何やらごにょごにょと小声で金額を言うた。 「マリア君……ヨシュアを片時も離してはいけないよ。必ず皆と一緒に居ること。無理はしないように」 ぬいぐるみを抱える少女の目線までしゃがむと軽く肩を叩く。 サングラスの奥にある双眸は文楽に転がり込んできた当時を視ていた。 始めて彼女と会った頃に較べると、雰囲気が明るくなった気がする。 (叶うなら、来ないで欲しいものだがな) 五十嵐の願いに反するように、「劇団」の手は目前に迫っていた。
文楽座の前に数台の大型トラックが停車する。 光沢を持った黒塗りが怪しげな雰囲気をけばけばしいほど発散させていた。 荷台の中に控えるスーツ姿の男達は皆が大きなケースを持っていた。 人形使いならば彼らが一様に訓練された人形使いであることが分かるだろう。 直後、文楽座周辺が小さく震動。 コップに満たされた水が波打つような、小さくも把握可能な揺れである。 天空より投下された六本の巨大な黒い柱と貨物輸送用コンテナこそ原因。 黒い柱は文楽を囲うように美しく均等に配置されていた。 光沢のない黒鉄が時折燐光を生む辺り、魔力を大量に貯蔵していることが窺える。 「拘束結界魔術」 誰かが指を弾く。 奔る幾筋もの光の壁が駆け抜け、それぞれ交わりながら大地に図形を描きだす。 浮かぶ六芒星の輝きは六角柱の結界を生み出し、図形内のすべてを閉じ込める。 「飛空人形部隊の任務完了確認。結界の展開終了。『アイゼンガルド』を起動させますか?」 「頼むわ」 ひとりでに輸送用コンテナが開いた。整然と並ぶ巨躯の機械人形達の瞳に火が灯る。 駆動音の軍靴を鳴らしながら一体、また一体と鉄の矩形の外へ。 それはアームガード社が誇る軍事用からくり人形であった。 『人形使い』を必要とせず、下された命令を遂行すべく自律行動する機械の鎧。 意思の類は持っていなかった。剣に感情は必要ない。武器は相手を殺傷出来れば事足りるのだ。 「な、なんだ!? 珍しいな。お客さんか!?」 「バカァ! 敵だ!!」 文楽座が誇る大劇場に雲霞の如く押し寄せる殺戮兵器達。 今度公演する予定の『国性爺合戦』をリハーサルしていた者達は突然の出来事に泡を食うばかりだ。 しかし彼らも人形使いである。敵対する者に対し己が人形をそれぞれ展開し迎撃に移る。 「よし……ジェットハリケーンアタックでいくぞ」 「えぇ!? いきなりアレですか?」 「バカァ! こんな機会滅多にねえだろーが! 今やるんだよ!」 文楽の人形使い三名が人形を縦一列に並べる。 個の力を重要視するからくり人形に珍しく、三人遣いで行う大技であった。 「行くぞ、ジェットハリケーンアタック────!!」 三位一体の必殺連携が機械人形に襲い掛かろうとした瞬間。 「退いてろ三連星ーーーーーーッ!!!!」 間隙を縫うように劇団の人形が一撃で三体を破壊。文楽の三連星は瞬く間に戦闘不能へと陥った。 必殺のジェットハリケーンアタックは縦一列に並ぶ性質上横の奇襲にとんと弱い。 その人形は瑠璃色で、頭部に頂くのはカブトムシの如き一本角。 しなやかな筋肉と見紛う流線形の、滑らかな装甲がギリシア彫刻のように美しい。 「もうちょっと頑張ってくれよ文楽の諸君。なあ、フィロメナもそう思うだろ……」
「副会長! とつぜん機械人形が文楽座に──!」 「副会長! 敵が協会本部にまで到達! 我々の戦力では抑えきれません──!」 「副会長! 早くご指示を──」 五十嵐の額に汗が滲む。まさかここまでの戦力で本部を襲ってくるとは。 今までにない緊急事態にさしもの副会長といえどその焦りを隠さずにられない。 国際的な犯罪組織といえど、普段活動の少ない日本でこれ程の戦力を整えられるのか。 あるいはこの国に協力的な組織が存在するのか──。 「一般職員の避難を急がせたまえ。敵は『劇団』だ。 任務中の人間を直ちに召集。戦える『人形使い』は全て本部に集めてくれ」 だが、黙ってやられる訳にはいかなかった。 敵がどれほど強大であろうと犯罪者に屈しては協会の沽券に関わるというもの。 戦いは数だけが絶対ではない。寡兵とてやりようはある。 「それと……保管室に遊鳥君たちがいるはずだ。 敵は未だそこに達していないはず。連絡して天の人形を持って脱出しろと伝えてほしい」 刹那、爆発音と共に部屋の壁が吹き飛んだ。 劇団のエージェントが所持する人形による爆破がその原因。 「見つけたぞ。貴様が文楽の副会長かッ」 「上階は全て我々が制圧した。後はここだけ、というわけだな」 「待てよ。俺にやらせろ。相当強いって聞くぞ」 己の人形を収めたスーツを強く握りこむ。 部屋に戦えない職員がいる以上、派手に暴れる訳にはいかない。 「ターゲットの確保は多聞殿がやるそうだ。後は我々の『自由時間』……」 「死んでもらいましょうか」 四十を超える中年に劇団のエージェント達が殺到した。
「今、上で音がしませんでしたか?」 エレベーターの天井を眺めてみる。当然、上階の様子は分からない。 雪子は小首を傾げると再び視線を元の位置に戻した。 このエレベーターは大型の人形を搬入出できるよう大きく作られていたから、不自然に広く感じる。 だがお蔭で待機形態のないヨシュアでもそのまま入れるゆとりがあった。 協会本部最下層の重要保管室は正会員でも特別な事情がない限り入ることは許されない。 ここを管理しているのは会長本人で、収められているのはどれも曰くつきの代物ばかりである。 使えば厄災に遭う呪術の施された人形とか、そういった類の危険物を隔離、もとい保管する部屋。 最下層は漫画のように広大な空間で、保管室は厳めしい巨大な扉で守られている。 入るにはパスワードと生体認証が必要だが、幹部候補たる遊鳥ならばすでに教えられているはずだ。 やがてエレベーターが地下25階に到着すると一同は扉の前へ歩を進める。 「遊鳥さん、お願いします」 雪子が言葉を発するのと、遊鳥に本部襲撃の通信が入ったのはほぼ同時であった。 背後で革靴の足跡が反響する。文楽の職員の誰かか──振り返った先に居たのは 「……つれないなァ。役者が勝手に舞台から降りちまうってのは」 ──ツンツン頭の黒スーツ男と青き人形。 男の右手には古びた巨大な行李が、左手には黒塗りのケースが握られている。 男が剣呑に口角を上げると、両手をがばっと広げ、馬鹿みたいによく通る声で叫んだ。 「C級エージェント三十六名、B級エージェント九名、機械人形が二百体ッ!!」 でかい声が余韻たっぷりに反響し終えるのを待って、男はこう続ける。 「そしてこの俺、A級エージェント『多聞 正太郎(たもん しょうたろう)』が一名」 黒塗りのケースをドンッ、と床に置いて足を乗せた。 喋るごとにいちいち大仰な仕草を取るあたりが、役者を気取っている。 「以上が本作戦における、我々が投入した戦力の一切だ。 ちなみに文楽は雑魚人形使いが、んー、二十人くらいかな……」 「っ……副会長達は……」 相手の口ぶりから類推するに、ここまで忍び込んできた訳ではない。 正面から正々堂々力ずくでやって来た──そういう言い回しだ。 雪子は副会長達を案じた。ならば上に居る職員はどうなったのかと。 「知らねーよ。もうとっくに機械人形の銃撃でカートゥーンアニメのチーズみたく穴ボコになってるかもな」 そんなことより、と左手を突き出す多聞。 「いと親愛なるお嬢さんがお持ちの『それ』、頂きに来た。例の人形を渡してくれたら俺は黙って引き返すぜ。 ……おっと。あまり舐めた真似を考えてくれるなよ。数はこちらが有利だとか、そういう発想はやめておけ」 劇団の工作員はこうも言った。 「そいつは『地の人形』と合わせて日本征服作戦の一端を握ってるんだからな。 畜生共に真珠や小判を持たせたところで意味なんてないだろ。誰だってそー思う。俺もそー思う」 軽い口調に反して僅かに漂う殺気は本物だ。 もし遊鳥達がからくり人形を展開すれば即座に青い人形も動くだろう。
【お待たせしました!只今から後半戦を開演致します】 【勢いで駆け抜ける所存です。なにとぞよろしくお願いします〜】 名前:多聞正太郎 性別:男 年齢:21 所属:秘密結社「劇団」 性格:自称二枚目 容姿:黒ネクタイ黒スーツ、ツンツン頭 備考: 劇団の幹部たるA級エージェント。お調子者で自信家。 C→B→Aと階級に比例して人形使いとして強く、能力は最高クラスと推測される。 名称:フィロメナ 全高:210p 外観:瑠璃色の装甲、カブトムシのような一本角 武装:重力制御装置 備考: 基本スペックを極限にまで追求した錬金術ベースの人形。 殴る、蹴るの基本動作だけで他のからくり人形を圧倒する。
現在構想中のTRPGです。 内容は以下の通り。 1 無数の平衡世界、異世界との間に、門を作り、交流する事ができるようになった世界が、実験のために利用している世界ワールドZ4、そこから様々な世界に旅立つ事になる。 2 ワールドZ4の目的は、多くの門を作り、多くの世界を観測、調査、研究する事である。 3 プレイヤーは、Z4管理者(俺)、人物、世界の3っつに分かれる。 4 人物プレイヤーはZ4から様々な異世界へ出発し、その世界の安全性と、有用性を研究し、一枚のレポートを作るのが目的。人物キャラの外見、能力に制限は一切ありません。 さまざまな理由で、異世界へ向かい、そこでさまざまな目標を達成すべく動きます。 他のPCと同じ世界へ行っても構いませんし、別の世界へ行っても構いません。Z4に残って、Z4から異世界のプレーヤーへ交信するオペレーターのような役割や、Z4や他の世界から自分の分身や複製を飛ばして、複数の世界で活躍するのも有です。 5 世界プレイヤーは、人物プレイヤーが降り立つ世界を担当します。「ぼくのかんがえたおもしろいせかい、こわいせかい」を自由に表現してください、物理法則や、登場する人物等に制限はありません、又、Z4側へ侵攻を開始しても構いません。( この辺、同時進行で複数の世界へ影響を及ぼすので、事前に詳しく打ち合わせの必要があると思います。) テンプレ、Z4を運営する組織の設定、詳しいルールは検討中です。 興味ある方は是非、お声をおかけください。
>>356 上手く読み解けてるか微妙だが、これ要するに世界=半GM的な解釈でいいのか?
…浮かれた気分は、終わり。 目の前の男が、敵であることは確かだった。問題は展開されている人形と守らねばならぬ人形。 こちら側はヨシュア以外待機状態、ならばしなくてはいけないことはすぐわかる。 気を引いて時間を稼ぐ、それぐらいならマリアにもできるはずだ。 決意し動こうとした瞬間。 >「っ……副会長達は……」 >「知らねーよ。もうとっくに機械人形の銃撃でカートゥーンアニメのチーズみたく穴ボコになってるかもな」 「……え…?」 現状認識の外にあった、文楽座の人々。しかも、押し掛けたマリアを受け入れてくれた副会長、と呼ばれている人。 彼が、どうなったっと言った? …銃で穴だらけに…父のように…? 「……うそ……」 小さな小さな呟きは、誰にも聞こえない。 ヨシュアにさえ、それを聞くことは叶わなかった。何故なら、ヨシュアの意識は停止されてしまったからだ。 …完全に、マリアの支配下におかれてしまったが故に。 戦場に火蓋を切ったのは、一番似つかわしくない少女となってしまった。 「そんなの嘘!!」 泣き叫ぶような…悲鳴と共にヨシュアは刃を携え、初めて見せるスピードで敵の人形へ駆ける。 マリアはその背に乗らずに、ただ憎らしげに敵達を見据え… 己もまた、駆け出した。 子供を甘く見る大人なら、隙ができるかもしれない。 頭だけが、随分とはっきりしていた。 ……その手から、ぬいぐるみが落とされた意味を誰か気づいただろうか。 限界を振り切った心は、どうなってしまうのか。 蒼い着物の少女は、仇を討ちに日本へ来たときと、同じ表情をしていた―――
>>357 そうなりますね。
ちなみに、その世界ごとに独自のルールを作ってOKで行こうと思ってます。
ある世界では決定リールありだけど、ある世界では無し、または、ある世界では1週間ルールでいいけど、ある世界では3日ルール、とかもOKにしようかと。
Z4の管理者=俺は、通信や、送り込んだロボットを通じて各世界のプレーヤーや世界に干渉していくだけ(それの可否も、世界プレーヤーの判断にゆだねます)で、基本、世界ごとのGM、STは世界プレーヤーに一任していこうと思います。
長期間連絡の取れなくなった世界は、送った人物が何らかの理由で帰還した事にして、その時点でレポート作成(終了)と。
そんなわけで、世界プレーヤーのテンプレは、今考えている仮だとこんな感じ。
世界名:
初期探査の結果:(人を送り込む前に、Z4は必ず、ロボットやカメラ、ホムンクルスなどで、門の向こうを無人で調べるので、その際に得られた情報を書きます。
あんまり科学的で詳しい事を書くと難しくなるので、早くストーリーに進みたい人は、「安全が確認された」とかでもOK(安全が確認されたけど、入ったその時突然危険な出来事がとかもOK)。
空気に変な物が含まれているとか、入った瞬間無機物が自我を持ちだすとか、この世界との差異の特徴的なところだけ書くのもOK。
どこまでも細かくてOK、ただ、あんま細かすぎたり大雑把すぎると、入が入りたがらない可能性が高まる事が予想される)
入ってすぐの場所の情報:(門の向こうの光景、状況、Z4が初期探査で作った基地があってもいいし、何も無くてもいい)
スレ内超越の可否:(他のスレ内の世界との干渉が有か無しか、Z4のみ可とかもOK、逆もOK)
現在の状況:(Z4からNPCキャラが侵入しているか、世界観はどうなっているか、詳しくわかっていないなら、それも有)
プレーヤーの目的:(O日間滞在して安全を確認する、だとか、観測中のZ4職員と言う設定のNPCの救出等、「何故、Z4からプレーヤーが出発しなければならないのか」を書く、入る目的を決めるのは、俺ではありません)
ローカルルール
(NPCを人物プレーヤーが動かしていいか、名無し参加が有か無しか、等々)
漠然とした内容だからまだまだ煮詰める必要がありそうです。
例 世界名:世界335「名称未定」 初期探査の結果:重力、大気は地球と変わらない。多くの種と、独自の進化を遂げた文明が存在する事がわかった。 入ってすぐの場所の光景:石造りのテニスコートほどの大きさの祠、外は草原、祠内には、現地職員が持ち込んだ、スチール製のパイプいすや、机、各種観測器具やベッド、コンテナ等が置かれている。 スレ内超越の可否:Z4からのみ可 現在の状況;祠内には、現地職員、5名(人間、男3人、女2人が居住)。この世界には、ヒューマン、リザード、ドラゴン、エルフの4っつの種族が確認されています$。 ヒューマンは我々と同じ構造を持ち中世程度の文明を持っていて、ボディランゲージ等で意思疎通が可能です(言語は現在完璧に翻訳されていません)、「魔法」と呼ばれる超能力を用いる個体が確認されています。 リザード、ドラゴン、エルフについては詳しい事はわかっておりません。 プレーヤーの目的:言語翻訳のため、現地人の協力を得る。リザード、ドラゴン、エルフと交流し、彼らのデータをとる。 ローカルルール略 結果レポートの例 レポート「龍の世界」について 探索世界名:「龍の世界」 筆者:ジャン・エース 探索目的:言語翻訳のため、現地人の協力を得る。ヒューマン、リザード、ドラゴン、エルフと交流し、彼らのデータをとる。 探索結果:出発地点からXキロ離れた場所にある、ヒューマンの町にて、協力者を求めたところ、現地政府により、拘束される。 現地兵士に連れて行かれた先の「ユライア城」にて、読心術を持つ女性「アイラ」に遭遇。 我々の正体と状況を現地人に把握してもらい、現地政府の暫定的な交流を得る事に成功する。 現地政府は「赤い帝国」といい、現在、ドラゴン族との戦争状態にあり、協力の見返りとして、ドラゴン族との戦争に加担する事を要求されたため、現地より脱出を試みるが、魔法使いの攻撃で、仲間のエージェントが捕縛されてします。 エージェント救出作戦を練るが、ドラゴンが襲来し、その隙にエージェントを救出。 その後、捕まったエージェントの回復を待ち、帝国の領域から脱出し、周辺を探索して、リザードの集落を発見、これに接触するした。 リザードはインディアンのような集落を築いていて、我々に友好的、以後、リザードの集落を拠点に活動する。 リザードの酋長に許可を取り付け、Z4からのゲートを設置し、検体を4名、Z4へ移送。 検体の協力で、こちらの世界の言語の翻訳が完了、以後、ヘッドセットに翻訳機能を追加し、現地人との会話が可能となった、なお、全種族言語は一致しているらしい。 検体を解放後、リザードの協力で、エルフの集落へ案内され、交流開始。 エルフは排他的な種であり、外交役のエルフ「アラン」を通じてのみ、我々との交流を行った。 又、検体の提出は強く拒否された。 エルフには敵対の意思は無いが、彼らのテリトリーへの不用意な侵入は控えるべきである。 最後に、リザードの案内でドラゴンと交流。 ドラゴンは慎重な態度をとる物の、我々との交流にはそれなりに協力してくれた。 ドラゴンは巨大な見た目に反し、建築、道具の開発を器用にこなす能力を持っており、中世程度の科学力を有している。 彼らの話すには、ドラゴンは3種族に分類され、それらが各地で国家を築いており、この世界ではドラゴンが生物としての総数で他の種族を圧倒するほど多いらしい。 ドラゴンは、我々に対して、帝国とのかかわりがない事を示すため、帝国にとらわれたドラゴンの姫を救出するように、要請してきた。 我々はドラゴンとの友好関係を築くべく、この申し出を受け、帝国を攻撃。 この際、エージェントと彼女をとらえた魔法使いとの戦いはすさまじく、負傷者を出す事態になったが、魔法使いを無力化、無事、ドラゴンの姫を救出した。 ドラゴンの姫を救出した我々は英雄として迎えられ、ドラゴンとの友好的な関係を築く事に成功した。 しかし、ヒューマンとの関係は崩れ、完全に敵対関係になってしまっている。 ドラゴンの検体5名、並びに、ドラゴンが捕縛していたエルフ、ヒューマンの検体の提出をもって、今回の探索を終了する。 追記:ドラゴン側は、我々に正式な国交を求めている事と、ヒューマンとの関係修復のために、第二陣の早急な派遣を要求する。
【からくり人形劇】へ 実験的動作は上手くいっていると思われる。 スレを立てて移動した方が、実験室の為になるかと。
ロマネが各スレで工作()をしています スルー推奨
>>361 うーん……もう少しで終わるので正直スレを立てるほどでもないんですよね
ですが、他の企画者の方もいらっしゃるようなので邪魔になるかなぁとも思っております
そこでTRPG系実験板にレス置き場を作り、シナリオを進めたい思うのですがいかがでしょうか?
外部進行になってしまうのでジョーカーさん、マリアさん、遊鳥さんが了解すればの話ですが
TRPG系実験板はこちらです↓
http://jbbs.shitaraba.net/internet/20240/ あと私が投下した
>>353-354 についてなのですが
今見返したら完全に結界魔術のことを失念してる内容になってますねw
ちゃんと推敲しろって話なんですが、ちょっと差し替えさせてください
もし今書いていて書き直しする事になってしまったら大変申し訳ありません
からくり人形協会本部地下十五階、司令室にあたる一室。 複雑に機械が並ぶさまは古典的ロボット・アニメのそれに似ている。 協会の「頭脳」「中枢」とも言うべき場所は動揺と混乱の坩堝と化していた。 「副会長! とつぜん機械人形が文楽座に──」 「副会長! 敵が協会本部に到達! 我々の戦力では抑えきれません──」 「副会長──」 中央の巨大モニターには制圧された上階の様子や雲霞の如く行進する機械人形が投影されている。 五十嵐の額に汗が滲む。まさかここまでの戦力で本部を襲ってくるとは。 今までにない緊急事態にさしもの副会長といえどその焦りを隠さずにられない。 国際的な犯罪組織といえど、普段活動の少ない日本でこれ程の戦力を整えられるのか。 あるいはこの国で協力的な組織がいるのか。 「非戦闘員の避難を急がせたまえ。敵は『劇団』だ。 任務中の人間も直ちに召集。戦える『人形使い』は全て本部に集めてくれ」 ひとつだけ疑問がある。敵の手際が良すぎることだ。 まるで協会本部を知り尽くしているかのような攻め方をしてくる。 でなくてはいくら寡兵とはいえ、ここまで一方的に追い詰められはしない。 「保管室に遊鳥君達が向かっていたな。彼らにも天の人形を持って脱出せよと伝えたまえ」 「駄目です副会長! 結界魔術が展開していて文楽座の外へ出られません!」 悲鳴に近い報告が突き刺さる。 結界を解くには屹立する六本の黒柱を叩き壊すしかないだろう。 この作戦の遂行には制圧された上階、即ち敵陣の懐に飛び込む必要がある。 常識的に不可能に近かった。 「芳しくない状況だな……」 人形の入ったケースを一層強く握りこむ。 この司令室には五十嵐含め数人の人形使いを除くと一般職員しかいない。 彼らがここを離れたが最後、頭脳を失った文楽は陥落する他ないだろう。 「劇団の機械人形が地下十階、通信途絶! 完全に制圧されました!」 機械仕掛けの軍隊蟻が、獲物を蝕み食らいつくさんとしていた。
「今、上で音がしませんでしたか?」 エレベーターの天井を眺めてみる。当然、上階の様子は分からない。 雪子は小首を傾げると再び視線を元の位置に戻した。 このエレベーターは大型の人形を搬入出できるよう大きく作られていたから、不自然に広く感じる。 だがお蔭で待機形態のないヨシュアでもそのまま入れるゆとりがあった。 協会本部最下層の重要保管室は正会員でも特別な事情がない限り入ることは許されない。 ここを管理しているのは会長本人で、収められているのはどれも曰くつきの代物ばかりである。 使えば厄災に遭う呪術の施された人形とか、そういった類の危険物を隔離、もとい保管する部屋。 最下層は漫画のように広大な空間で、保管室は厳めしい巨大な扉で守られている。 入るにはパスワードと生体認証が必要だが、幹部候補たる遊鳥ならばすでに教えられているはずだ。 エレベーターが地下二十階に到着すると、一同は扉の前へ歩を進める。 「遊鳥さん、お願いします」 雪子が言葉を発するのと、遊鳥に本部襲撃の通信が入ったのはほぼ同時であった。 背後で革靴の足跡が反響する。文楽の職員の誰かか──振り返った先に居たのは 「……つれないなァ。役者が勝手に舞台から降りちまうってのは」 ──ツンツン頭の黒スーツ男と青き人形。 男の右手には古びた巨大な行李が、左手には黒塗りのケースが握られている。 男が剣呑に口角を上げると、両手をがばっと広げ、馬鹿みたいによく通る声で叫んだ。 「C級エージェント三十六名、B級エージェント九名、機械人形が二百体ッ!!」 でかい声が余韻たっぷりに反響し終えるのを待って、男はこう続ける。 「そしてこの俺、劇団のA級エージェント『多聞 正太郎(たもん しょうたろう)』が一名」 黒塗りのケースをドンッ、と床に置いて足を乗せた。 喋るごとにいちいち大仰な仕草を取るあたりが、役者を気取っている。 「以上が本作戦における、我々が投入した戦力の一切だ。 ちなみに文楽は雑魚人形使いが、んー、二十人くらいかな……」 「っ……副会長達は……」 相手の口ぶりから類推するに、ここまで忍び込んできた訳ではない。 正面から正々堂々力ずくでやって来た──そういう言い回しだ。 雪子は副会長達を案じた。ならば上に居る職員はどうなったのかと。 「知らねーよ。もうとっくに機械人形の銃撃でカートゥーンアニメのチーズみたく穴ボコになってるかもな」 そんなことより、と左手を突き出す多聞。 「いとも親愛なお嬢さんがお持ちの『それ』、頂きに来た。例の人形を渡してくれたら俺は黙って引き返すぜ。 ……おっと。あまり舐めた真似を考えてくれるなよ。数はこちらが有利だとか、そういう発想はやめておけ」 劇団の工作員はこうも言った。 「そいつは『地の人形』と合わせて日本征服作戦の一端を担ってるんだからな。 それにだぜ、価値の分からない連中に持たせたってもったいないじゃねーか? 畜生共に真珠や小判を持たせたところで意味なんてないだろ。誰だってそー思う。俺もそー思う」 軽い口調に反して僅かに漂う殺気は本物だ。 もし遊鳥達がからくり人形を展開すれば即座に青い人形も動くだろう。
【わかり…ました。……外?も、行ってきました、です。】
■〓≡=-┏┣┫┛-=≡〓■ からくり人形劇 ■〓≡=-┗┣┫┓-=≡〓■ :制約: 魔術師ジョーカーおよび魔術護符人形アリス並びに両者の魔術および機能は、 対象者たる多聞正太郎およびフィロメナ両者の身体に対し、 あらゆる攻撃手段を含む一切の危害を与えない。 :条件: 対象者たる多聞正太郎およびフィロメナ並びに両者の魔術および機能は、 魔術師ジョーカーおよび魔術護符人形アリス両者の身体に対し、 あらゆる攻撃手段を含む一切の危害を与えない。 :宣誓者: 魔術師ジョーカー :対象者: ■〓≡=-┏┣┫┛-=≡〓■ からくり人形劇 ■〓≡=-┗┣┫┓-=≡〓■
■〓≡=-┏┣┫┛-=≡〓■ からくり人形劇 ■〓≡=-┗┣┫┓-=≡〓■ 【コントラクト】 『そんなの嘘!!』 ヨシュアが駆ける。即座にフィロメナも動く。 マリアの手から取り落とされたアンドレは床を弾みながら転がる。 "天の人形"の行李にぶつかり停止したそれを、現界したアリスが拾い上げた。 魔術師は……動かない。気流操作の魔術で、多聞の手元へと一枚の羊皮紙を運んだのみだ。 「次に、お前はこう言う――――"てめー、何を企んでやがるッ!!"ってな」 自己制約宣誓証文――――魔術に携わる者なら誰もが知る契約術式。 宣誓者の血液で記された署名は、術者本人に限り絶対の強制と束縛を与える。 対象者が条件を破る事には一切干渉しない、一方的な自縄自縛を強いるギアスだ。 「……オレはシンプルな舞台が好みでな、そいつは役割分担の提案だ。 お前は、オレ以外の三人を倒す。三人は、お前を迎撃する。 オレにはもう、お前と戦り合うだけの余力が無い。 深刻な魔力供給不足、ってヤツさ」 証文の記述内容にトリックは無い。 故に、その対象者にデメリットは存在しない。 魔術師は確信していた。こいつの相手は三人で充分だ。 「予め断言しておくが、この証文が成立しなかった場合、 オレは考えうる限りの面倒事を引き起こして、お前を妨害する。 状況を考えて選ぶんだな、お前の戦う相手が三人になるか四人になるか」 対象者のサインの有無は、戦闘時間が三分になるか四分になるか、その二択でしかない。 あるいは三十秒か四十秒かの違いだったとしても、魔術師に行動指針を変える気は無い。 「急いでるんだろ? ……時間は待っちゃくれない。 お前は今、この舞台の支配者しての器を試されてるんだ。 放棄したいならそうしろ。サインすれば、その時点で証文は成立だ」 魔術師は、自身の血液のインクが充填された万年筆を多聞に放り渡す。 その筆先の行く末を確認してから、蒼い着物の少女の身柄を確保した。 頭を撫でてから乱れた帯をゆっくりと解いてやり、結び直しに掛かる。 「マリア……お前、五十嵐がサングラスを外してる姿、見たコトあるか? ―――オレは、ある。思い出したくも無いがな。簡単にやられたりしないさ。 お前が大切に想うモノは、もう無くなったりしない。オレ達が、無くさせはしない」 一重太鼓の再現を諦めた人形師は、完成した不格好な蝶結びを眺めて煙草を銜えた。 自身は、常に他人の信用を裏切る側の人間だ。だが、他の連中は違う。 後は祈るだけだ。神ではなく、神に似せて創られた人間と―― ――その人間が造り操る人形達の紡ぎ出す運命に。 ■〓≡=-┏┣┫┛-=≡〓■ からくり人形劇 ■〓≡=-┗┣┫┓-=≡〓■
【
>>363 GM
以下の何れかの条件が満たされた場合、移動の検討に賛成だ。
・実験室長からの正式な指示がある(お前ら外へ出ろ)
・その他の企画者からの正式な要請がある(お前ら企画の邪魔だ)
・シナリオ終了まで二か月以上の期間が見込まれる(ゆるしてにゃん)
オレ以外の三人が移動に前向きなら、即座に移動するべきだ。
その場合、オレは降りる。移動と平行して補充要員の募集を提案したい。
幸い、舞台は文楽本部施設内だ。即座に合流可能な協会員には事欠かない筈だ】
>>370 正式な抗議がない限り移動する道理はないということでしょうか
私も当初同じ考えでしたが、実際双方見辛いだろうなぁと思ったものですから提案した次第です
……いや。告白するとスレ主様や利用者からの抗議が怖いので先回りしました
専ブラ視点で見ればタブが変わるだけですから、軽い気持ちであったのは否定できません
その程度で移動を提案するのは企画側としてあまりに狭量で不誠実でした
参加者の方に手間を強いるに足る理由ではありませんでした
特にマリアさんは携帯から書き込まれています
携帯の環境は把握していないのですがきっと手間かと思います。大変申し訳ございません
即座に意見を翻すのもアレですが、正式な抗議かお達しが来るまで移動は保留にしたく思います
GMとして全く未熟でした。重ねて申し訳ありません
372 :
湯鳥 :2014/12/05(金) 07:10:19.39 0
僕も移動は保留で良いかと思います ただ、雪子女史の考えもすごくわかるので、僕がGMでも移動を検討したと思います 今のとこ不満らしい不満は出ていないから、叶うならここで続けたいですねッ
良かった…本当は、ずっと…一緒に…
【今日中に書きます!】
【分かりました、深夜投下フラグですね!】
>「―――"さん"を付けろよ、ゆとり野郎」 ゆとり野郎さん隊の構成員、ジョーカーが歩調軽やかな遊鳥を大股ステップで抜き去りながら何かを投げてきた。 ラグビーのパスワークの如き軽快さで渡されたのは、濃尾無双と筆書きされた看板である。 >「その看板は、派手な割に軽いし薄っぺらだ。実際の所、何の役にも立たないシロモノさ。 だってのに、妙な気分だ。随分と長い間、そいつを惰性で持たされて来た様な気がする」 「……そうかな。少なくとも僕は、求めるための努力をするに値するものだと思うよ」 学歴だって言ってしまえばそういうものだ。 上っ面の額面ばかり気にして、本質を育てないのは愚かだという人もいる。 だけど、その看板は、それを得るための努力を怠らなかったという証明でもあるのだ。 >「そいつは俺にとっちゃ無意味な記号だったが、笑い話の種ぐらいにはなる。 遊鳥、お前になら預けてもいい―――世界が、それを赦してくれるならな」 遊鳥は投げ渡された看板をしばらく眺めていた。 分厚い樫で作られたそれは、風雪に耐え、所々曇ってはいるが、それでも一級品であると素人目にもわかる。 遊鳥は看板を人形ケースの中にねじ込むと、大股でジョーカーの歩幅に追いついた。 「いいか、僕はお前みたいになんかなりたくないんだ。 軽薄で、唐変木で、すぐにどこかに行ってしまうし、おおよそまともに社会に適合できているとも思えない」 それなのに、彼はいつも遊鳥の何歩も先を行く。遊鳥に足りないものを、いくつも持っている。 根無し草のそんなところが、何よりエリートには悔しかった。 もしもジョーカーが、その能力をもっと積極的に、もっと長期的に発揮してくれたら。 薄っぺらいと彼が切り捨てた看板は、名に恥じぬ質実の剛健さを兼ね備えていたことだろう。 「――僕はお前を越える男だ。 誰にも無意味だなんて言わせない。この看板だって、誰もが認める一流にしてみせる。 そのときは、美味い酒に付き合ってもらうぞ、ジョーカー」
<からくり人形協会 本部> 横浜タカシマヤにて寄り道した後、蒼の映える袷姿のマリアを伴って、一同は新幹線で大阪へ。 崎陽軒のシウマイ弁当に舌鼓を打ったあとは、ノートPCで東京の別件と合わせて任務の報告書を作成。 ワードファイルを本部へ送信し終わる頃には、新大阪のツインタワービルが窓から見えた。 「本当に新幹線についてきたんだな……」 マリアを乗せたヨシュアが新幹線のホームに飛び登るのを見て、遊鳥は感嘆しかない。 200Kmものスピードで並走が可能なのは、まさに特化型人形の面目躍如といったところか。 新大阪の改札を抜けると、最寄りの文楽の『玄関』はすぐ近くだ。 一同は雑踏を抜け、文楽の劇場から職員の案内に従って地下に降りる。 「遊鳥隊、現時刻をもって帰投致しました!」 副会長室では、文楽副会長の五十嵐が報告を待っていた。 幹部として現場を退いてから長いが、なお凄腕の名をほしいままにする手練の人形使いである。 遊鳥が簡潔に経緯を説明すると、上司はなにやら深刻そうな顔で唇を曲げた。 >「劇団か……事は相当に深刻かもしれないね」 あの神出鬼没のテロリスト集団が本気で探しているのだ。 たとえ天の人形自体が与太話だとしても、天封寺のように襲撃されて、他に被害が出ないとも限らない。 既に二体一対の人形のうち相方は敵の手の内にある。 次善策を考えるにしても、カードは一枚でも手元にあったほうが良いにこしたことはない。 >「とにかく、奴らに奪われるのはなんとしても防がなければ。 君達はそれを最下層の重要保管室に運んでおいてくれ。後で報告書も提出するように」 「はっ!」 遊鳥は威勢よく返事をした。 隣で同じく了解を示す雪子とは凄まじい温度差である。 とまれかくまれ、彼らは入手した天の人形を保管すべく最下層へと向かった。 資材搬入用のエレベーターの中で、ふと雪子が上を見上げて何事か漏らした。 >「今、上で音がしませんでしたか?」 「なんだって?そりゃあ、エレベーターなのだから、音ぐらいするさ」 雪子が言っているのはそういうことじゃないのだが、遊鳥が取り合う様子はない。 彼は今回の任務の成功で上司からどれくらい認められたかを検算するのに夢中であった。 研修中の一挙一動が、その後の評価を決めると言っても過言ではないのだ。 そんな微かな異音になど、気を払っている場合じゃない。 やがてエレベータは最下層で停止した。 三段開きの鉄扉がスライドすると、人感センサが反応してその先の廊下を蛍光灯で照らし出す。 遊鳥は一も二もなく踏み出した。肝心の行李は雪子に持たせっぱなしという紳士にあるまじき所作である。 扉の向こうは、広大ながらんどうの空間と、その奥の分厚い枯木扉があるだけの殺風景だった。 呪災をもたらす危険物を保管する部屋だけあって、大扉には封印の魔術と呪術が重ねがけされている。
「人形使い――!」 遊鳥が思わず身構え七星のケースに手を伸ばすのを制すように、男は両手を広げて叫んだ。 >「C級エージェント三十六名、B級エージェント九名、機械人形が二百体ッ!!」 たい、たい、たい……とがらんどうによく響く声が反響する。 男はそのエコーを計算に入れているかのようなタイミングで息継ぎ、そして再シャウト。 >「そしてこの俺、劇団のA級エージェント『多聞 正太郎(たもん しょうたろう)』が一名」 男改め多聞は、持ってきた二つの箱のうち、黒い方を床に置き、足を乗せる。 手足が長いため、それら芝居がかった動作が実に堂に入っている。 >「以上が本作戦における、我々が投入した戦力の一切だ。ちなみに文楽は雑魚人形使いが、んー、二十人くらいかな……」 雑魚だと……?いやいや、それよりもっと聞き捨てならない言葉がいくつか。 文楽を襲撃している集団は、名乗りを信じるならば『劇団』その人である。 天封寺でちょっかいかけてきてから日も落ちぬうちに本部に乗り込んできたのだ。 おそらくは、あのとき撃ち漏らしたリズベットの報告を受けるなどして、天の人形を追ってきた。 そして、多聞が自称するA級エージェントという階級……。 リズベットが何級なのかは聞いていないが、いくつかランク分けされている中の、A級とは最上位である。 間違いなく、この襲撃の中で、最強の人形使いがここでいま遊鳥達と対峙している――! >「っ……副会長達は……」 >「知らねーよ。もうとっくに機械人形の銃撃でカートゥーンアニメのチーズみたく穴ボコになってるかもな」 >「……うそ……」
【
>>378 と順番がズレてしまいました。
>>379 →
>>378 で脳内変換をお願いいたします】
>「遊鳥さん、お願いします」
雪子に促されて、遊鳥は扉の前まで歩みを進めた。
封印術は脇のコンパネで管理されており、解錠には上位の権限と専用の許諾が必要だ。
任務を帯びた遊鳥隊が後者を、幹部候補である遊鳥自身が前者を保持している。
コンパネの前に立ち、虹彩と掌紋、さらに魔導紋の三段認証を開始する――
そのとき、遊鳥の持つ携帯端末が電子音をがなりたてた。
緊急通信を示す音に、遊鳥は端末をお手玉しながら掴み、耳に押し当てた。
その顔が、青ざめるまで、すぐだった。
「本部が襲撃……!?」
たったいま、文楽本部を所属不明の武装集団が襲撃している最中らしい。
敵の数は不明、自動操縦型の軍用機が大量に乗り込み、本部内を蹂躙している。
文楽の主力が出払っている現状、即応可能な戦力には限りがあり、上階は劣勢を強いられている。
それが、オペレーターより遊鳥が聞き出した現在の状況であった。
「すぐに引き返すぞ諸君、副会長に加勢しなければ――」
カツカツ、と靴の裏が床を叩く硬質な音。
振り返ると、そこには刺々しい造形の頭をしたスーツ姿の男がいた。
否、正確には男だけではない――男のとなりには、青の人形が控えている。
雪子の問いに、ゴミをポイ捨てするかのような投げやりさで多聞は応えた。 その言葉から紐解かれた絶望に、遊鳥はマリアと共に悄然となる。 >「いとも親愛なお嬢さんがお持ちの『それ』、頂きに来た。例の人形を渡してくれたら俺は黙って引き返すぜ。 ……おっと。あまり舐めた真似を考えてくれるなよ。数はこちらが有利だとか、そういう発想はやめておけ」 こちらの対応を見透かしたかのように、多聞は機先を制した。 >「そいつは『地の人形』と合わせて日本征服作戦の一端を担ってるんだからな。 それにだぜ、価値の分からない連中に持たせたってもったいないじゃねーか? 畜生共に真珠や小判を持たせたところで意味なんてないだろ。誰だってそー思う。俺もそー思う」 「………………!」 どうする?このままおとなしく奴のいうことに従って天の人形を渡すか?それでいいのか? だが、下手に反抗して、戦闘になったらどうなる。 遊鳥自身や七星が傷つくのはともかく(ジョーカーも)、雪子やマリアが負傷してその責任をとれるのか? 背後に控える重要保管物に流れ弾があたって破損したり、封印が解かれたりしたらどうする? ――遊鳥は自縄自縛に陥っていた。 若き幹部候補の双肩には、多くの者達の未来が重石の如くのしかかっている。 エリートは高い洞察力と思考力には恵まれてていたが、反面頭でっかちでここぞという時の意思決定力に欠ける。 >「そんなの嘘!!」 そのとき、マリアが叫びを挙げた。 蒼の袷に身を包む彼女は一角馬の人形に飛び乗り、新幹線との並走を可能とする馬脚が律動する。 「だめだ、マリア君!」
遊鳥はこの期に及んで、そう声をかけることしかできなかった。 思索にとらわれ、立ちすくんでいた彼は、完全に出遅れた。 応じるように、多聞の人形がその彫刻めいた四肢を駆動させ、疾走者を叩き潰さんと出迎える。 遊鳥は縋るような思いで、隣の魔術師を見た。 ミサイルが爆発するより早く駆けつけたジョーカーならば、マリアの暴走を止められるはず―― 魔術師は羊皮紙に何事かをしたため、風の魔術でそれを多聞へと飛ばしていた。 >「次に、お前はこう言う――――"てめー、何を企んでやがるッ!!"ってな」 (お前、何を企んでるっ!?) 遊鳥も多聞と同じことを思った。声には流石に出さなかったが。 魔術師はかく語る。 『自分は戦う余力がないのでお前らだけでやっていろ』と。 ジョーカーが投げた先ほどの羊皮紙は、つまりはそれを確約する契約書だ。 交わした言葉の絶対の遵守を、因果を超えて約束する、血の契約。 人形使いとしての教育の一環で魔術も齧っていた遊鳥にはわかる。あれはそういう代物だ。 「戦わないつもりなのか、ジョーカー!」 遊鳥が噛み付くのも厭わず、魔術師は疾駆する蒼の少女を掴まえた。 先走ったマリアはジョーカーに任せておいて良いだろう。 悔しいが、少女の扱いは奴のほうが何枚も上手。本当に"上手"だ。 だが、それでも――
「見損なったぞ、ジョーカー!もうお前なんかに頼るものか、奴は僕達で片を付ける!!」 戦いの場から降りたジョーカーを、遊鳥は背中越しに責めた。 余力のない人間に戦えと言う方も酷というものだが、遊鳥にはそのあたりの器の大きさが欠けていた。 若きエリートにとって、不真面目な魔術師は常に自分の前を行く先駆者だった。 いまこのときも、なんだかんだ言って共闘するものだと、浅薄な期待を抱いていたのだ。 それがただの理想の押し付けに過ぎないと、理解するには遊鳥は若すぎた。 「やるぞ雪子君、マリア君。こいつを倒して、上の人々を助けに行く――七星!!」 『了解。――からくり人形『七星』、スタンバイモードよりフルアクセルへ移行します』 ケースが開き、敵人形と同等のガタイを持つ灰色の偉丈夫が展開。 七星の常温核融合炉が景気良くタービンを回し、背部の魔導コンデンサに電荷が満ちる。 遊鳥の網膜に映しだされたステータスは、全ての項目をオールグリーンで回答した。 前方、青の人形が筋肉質のボディを躍動させ猛チャージを開始。 あの凶悪な一本角は、突進力と合わされば七星の超合金ボディとて容易に貫くだろう。 接近戦は鬼門――だが、屋内で御神槌は使えない。 「雪子君!拘束結界で支援を頼む!――七星、フレイザード!」 『了解。――大剣型冷熱交換素子フレイザードを起動します』 背中のスリットから生えた柄を握り、七星は白磁の大剣を抜き放つ。 ペルチェ素子を性質強化術式が覆い、刀身に霜が降りた。 「側面から叩く……!」 七星は敵人形の突進に回りこむように接近、右側面からフレイザードを逆袈裟の機動で合わせ、『置きに行く』。 クリーンヒットすれば突進の勢いを大きく殺せるし、弾かれたとしてもどこかの部位は凍らせて不随にできるはずである。 【ジョーカーに激昂。多聞を倒すことを決意、フレイザードでフィロメナに斬りかかる】
「…離して、下さい……」 ジョーカーに確保され、帯をよくわからないことにされ、なんだか上手く動けなくなって… ヨシュアの支配自体は続けているが、これでは意味がない。 ヨシュアが戦うだけならば、完全支配の必要はないのだ。 …和服と言うものは便利で、意外に物を隠すのに丁度良かった。凶器でさえも。 洋服の時からこっそりもっていた、マリアでも持てるサイズのナイフを握ったまま自分の次の動きを考える。 日本と言う国は便利なもので、年若ければ罪に問われないこともあるそうな。 だから、不意をうつためにマリア自身で走ったのに。 「…ジョーカーさん…ずるい、です…」 こうして、見張られるかのようにされては動きにくい。 本人は戦わないと言ったのに、マリアまで半分戦わせないつもりだ。 …ヨシュアの力だけでは、いや、他の二人と二体の力をもってしてこの相手に勝てるのか? …父を殺した男と同じ、Aを名乗るこの相手に? 支配を介した風魔法で、撹乱なり真空刃を作るなりしても、どうも決め手にかける。 だから、だからジョーカーに頼むしかない。 「止めるくらいなら…私を、投げて…下さい…!」 あの、人形遣いの胸元へと。
【……私、ヨシュアに…乗らなかった、ですよ…?】
385 :
湯鳥 :2014/12/08(月) 10:37:28.45 0
>>384 【これは失敬!完全に僕の読み込みミスです!
矛盾しない程度に僕のレスの脳内変換をお願いします】
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>>376-383 【ハンズ・オフ・ポリシー】
『…離して、下さい……』
「マリアは、だっこされるの嫌いか? オレは、お前の抱き心地を気に入ってる。
だから、もうお前を離したくない、ってのが本音だが……やれやれだ。
こういった場合、オレは相手の意志を尊重するコトにしてるんだ」
尊重されるべき意志とは即ち、覚悟だ。人形師はマリアと目を合わせる。
自身が片膝を付いた初対面の時とは逆に、今度は両腕で少女を抱え上げる形だ。
この状況下で、雪子嬢と遊鳥の憂心も理解は出来る。だが素直に信頼されてやる気は無い。
『…ジョーカーさん…ずるい、です…』
『見損なったぞ、ジョーカー!もうお前なんかに頼るものか、奴は僕達で片を付ける!!』
「お前達の言う通りだ……大人ってのは、ずるくて無責任なもんさ。
特にオレは、金が無けりゃ子供と戯れるくらいしか出来ない博打屋なもんでな。
そういうわけで、マリアはオレと飛行機ごっこだ―――ほら! 高いぞ! ほら! もう一回だ!」
少女の身体の重心を確認する様にして、
二度、三度と宙に浮かせては受け止める動作。
だが、実際に見極めていたのは重量では無く、時機――
「どうだマリア、楽しいか? ほら! ほら! ほら!」
『側面から叩く……!』
――視界の端でフィロメナが突進。強判定、高火力の前格だ。
対して、七星が置きに行った横格は、発生の早さと判定の強さに難があった。
それでも迎撃手段として有効なのは、高コスト機に相応しい誘導性能と攻撃範囲を備えるからだ。
「ほらほらホラホラッ! ボラボラVOLAVOLA――――Volare Via!!(飛んで行きな)」
協会との契約更改で提示された年俸は、二億。
打って良し、走って良し、投げて良しの投球賭博師は、
蒼き衣を纏いし金色の魔球を、全身全霊を賭けて投擲した。
■〓≡=-┏┣┫┛-=≡〓■ からくり人形劇 ■〓≡=-┗┣┫┓-=≡〓■
【マリア選択】
ニア
1.キュートなマリアは戦況好転のアイディアを閃く(多聞の胸元へダイブ)
2.仲間がきっと助けてくれる(雪子嬢さんとゆとり野郎さんにフォロー丸投げ)
3.お願いを聞いてもらえない。ジョーカーさんは非情である(ヨシュアの背中に着地)
…だっこが嫌いなわけではない、が、この状況下でそれはどんな風に見られているのだろう。 子供だからと、戦線から下げられたように見えやしないか。 一瞬ぷぅっ、と頬を膨らませてしまうが、抱き上げかたから違和感を感じた。 これは、最適な投擲を可能にするために必要な下準備ではないか? それにしたって、どんな腕力なのだろう? パワーと重さとバランスが釣り合って、何かを投げると言う行為は成立する。 ならばこれは… 考えている間に、マリアは勢いよく投げ飛ばされた。 標的は多聞、といいたい所だが先程の誓約書が気にかかる。 本当は方向も勢いも十分だったが、風魔法で対象のほんの少し手前に降り …ずに落下した。 それはもう、べちゃ、といった様子で。 「…いたい…」 だがこれでいい、わけの分からないこの落方は、流石に疑問を感じさせるだろう。 きっと、マリアの握っていたナイフが、未だ彼の頭上に浮いていたとしても気がつかないくらいには。
【みなさん私はもう限界です。アリーヴェデルチ!(さよならだ)】 【うそうそ。明日投下しますね!】
KB危険値
何事かを呟き蒼白する少女の顔は多聞にとって悦楽だ。 身内の死を連想して恐怖したならそれはもう爽快に違いない。 そういう顔が見たくて見たくて男は今、この舞台に立っている。 「どうした? ひょっとしてお兄さんがハンサム過ぎて感動してしまったのかな。 正太郎兄ちゃんでちゅよォーハッピーうれピーよろピくねェー。……笑えよ、ほら。なぁ、おい」 敵は緊張感のないふざけた台詞をブン回しながら、身振り手振りによく動く。 おどけた仕草を交えて幽鬼の如きマリアの反応を窺った。 >「そんなの嘘!!」 胴体に仕込んだ刃が勢いよく開き、神速の突進をもって多聞に迫る──。 新幹線をぶち抜き爆走する馬力は絶影、韋駄天、神行太保かアタランテ。 最高速度に乗れば人間が見切ることはまず不可能。 小賢しいギミックなどヨシュアに必要ない。速さこそ単純にして最強の武器だ。 「……落ち着けよ」 フィロメナが右手のひらを前に突き出すと、機械仕掛けの馬が『弾かれた』。 手品のように見えない障壁が忽然とヨシュアの前に現れた。 マリアが冷静であれば、そういう感触を感じたはずである。 「……で」 ふわりと柔らかに到達した羊皮紙に一瞥くれ、多聞は反射的に開口。 >「次に、お前はこう言う――――"てめー、何を企んでやがるッ!!"ってな」 「てめー、何を企んでやがるッ!!」 魔術師と工作員の発声は同時。魔術師の方が一拍早いか。 やにわに奇天烈な赤髪野郎の手玉に取られた事実に気付いて。 「……ハッ!?」 掴んだ紙は宣誓者に絶対の制約を強いる宣誓書だ。一筆したためてやれば契約が完了する。 都合の良いことに、対象者たる多聞は誓いを破っても構わなかった。 効力を示すのはあくまでも宣誓者──口先の魔術師ジョーカーに限るのだから。 敵が進んで舞台袖にハケると言っている。これにサインしない手はない。 「……リスベットとの戦いで『頑張りすぎた』な。実力は超一流のようだが、体力がなさすぎる」 「俺より虚弱とは恐れ入るよ」そう言って多聞は大げさに紙を光に透かしてみた。 胡散臭い仕掛けはなさそうだが。仮にあったとして、それで動じるA級ではない。 >「戦わないつもりなのか、ジョーカー!」 むしろ動揺しているのは味方側らしかった。 隣の仏頂面の女も困惑した様子で魔術師の方を見ている。 「仕事を放棄したら報酬貰えませんよ」と言いたげな顔だ。
「支配者としての器なんてくだらないね。だいたいこんな紙切れに頼らなくたっていいんだぜ。 『もう疲れたよォ〜オロロ〜ン』って泣いて謝るなら見逃したっていい。文楽の人間じゃないみたいだからな」 多聞正太郎の最も好きなことは敵の美味しい提案を敢えて『NO』と叩き返してやることだ。 この契約は多聞が得をする以上にジョーカーにとっての価値がある。縛りプレイを課すだけの。 単純に魔力供給不足で提案したとは思えないし、そうであっては面白くない。 「それによぉおお、お前が起こす『面倒事』とやらが俺にとって深刻な問題を引き起こすと、そう自惚れてるのが気に食わねェ〜〜ッ! この多聞正太郎様がいともたやすく解決に導くってBの解答があんだろーがッ! このタコッ! タコ頭がッ! タコになってしまえ!!」 長台詞を一息で吐き出す常識外れの肺活量。 声の大きさなら誰にも負けていない。 「どのみちお前ら、もう終わりだ。文楽の人間は一人残らず殺す。塵も残さねぇ。 この舞台は俺のハッピーエンドで幕引きなんだよ。だから精々悔いのないよう役者を演じな」 道化的な微笑が一瞬、狂気を孕んだ。 堪え難きを堪え、忍び難きを忍んだ彼にとってここは晴れ舞台。 沸騰したモノが身体から溢れ出し、煮え滾る溶岩流となって文楽座を飲み込もうとしていた。 多聞正太郎は支配者ではない。純粋なるアベンジャーだ。 「──それに魔術師、俺は俄然お前の苦しむ姿を見たくなってきたぜ」 繊細な装飾の、アール・ヌーヴォー的曲線美を持つ万年筆。 魔術師が好んで持ちそうなマカロニ染みたクルクル華美のペンで乱雑に名前を引っ掻く。 対象者によって刻まれた血液は宣誓者ジョーカーを縛る赤い縄だ。 舐めきった態度をされた時、彼は『油断大敵』の四字熟語を教えてから殺すようにしている。 >「見損なったぞ、ジョーカー!もうお前なんかに頼るものか、奴は僕達で片を付ける!!」 遊鳥の啖呵に呼応して、青の人形『フィロメナ』の双眸に火が灯る。 グッ、と足を曲げて前傾姿勢──跳躍。砲弾の如きひと跳びで突貫。 真正面から突撃を敢行する敵性人形を七星は側面から迎え撃つ。 雪子はオリヴィエールの拘束結界を発動。フィロメナの軌道上に六芒星が複数展開。 六芒星を通過すれば即座に結界が相手を封じる。これで相手は減速せざるを得ない。 「フィロメナァァーー! アツィオーネッ!」 二メートル超の巨体が再び床を蹴って、『飛んだ』。 金属のボディを横に捻りつつ結界と結界の隙間をすり抜け、勢いを殺すことなく直進。 そして迫る大剣の方向へ方向転換した。搭載された重量制御装置は急ブレーキの隙を完全に殺す。 慣性の法則を無視した変幻自在の挙動が七星の攻撃を捉えた。 「紺碧の楯ッ!(スクード・アズール)」 左腕が虚空を薙ぐ。それによって生じた碧い『何か』が大剣を弾き返した。 壁だ。強力な重力の壁がフレイザードと激突し、フィロメナと接触する事なく攻撃を防いだのだ。 「この二流人形使いがッ! 繰りも拙けりゃ人形もくだらねーーな!! 作った技工士は相当ヘボですぜこいつぁ〜〜ッ! 基礎からやり直しなッ!」 右足を大きく前に出して両の拳を振りかぶる。 純然な連続運動が生む極致。秒間百発はあろう拳のラッシュが七星に降り注いだ。 機関銃の如き猛攻は、七星の装甲を穿つに十分の威力である。
時を同じくして、着物風の物質が多聞の十数メートル前方に着弾した。 風魔法で勢いを殺してはいたが、あの際どい角度は相応の痛みが伴うぞ。 「いたい」と呑気に呟くさまは戦場に似合わない和やかさすらあった。 「は?」 素の反応である。 マリアの行為は多聞の神経を逆撫でするのみであった。 「ジョーカーさん!!」 隣にいる雪子が魔術師の名を叫ぶ。 たとえ覚悟を固めていたとしても、子供が前に出るのは無謀過ぎる。 何より、マリアに血生臭い真似はさせたくないという心情が雪子に働いていた。 そういう役回りを、あの幼い子が背負い込む必要などない。 (……とはいえ、マリアさんの判断は正しい) 早乙女雪子とオリヴィエールが駆け出す。 人形使いはつかず離れずが原則。フィロメナは七星を狙うあまりに本体と離れすぎた。 雪子の経験上、どれだけ素早く人形を戻してもタッチの差でこちらが早い。 敵の防御を潜り抜けてあの五月蠅い声を発する喉を切り裂ける。 「死の舞踏──聖剣ブランネージュ」 右腕に仕込んだ聖剣が動作・白雪の如き刀身が煌めく。 人形繰りの必殺の型、対人形用の連続攻撃を容赦なく人間に放った。 「──え」 雷に打たれたような痺れが左半身に走る。 揺れる視界。曖昧になる天地の所在。 行き場を失った速度は衝撃となって足が屈折。頭を前後。 雪子の脾腹を、金属質の貫手が突き刺した。 ごぷ、と口から血を溢れさせて地面に崩れ落ちる。セーラー服に紅が滲み、顔は痛苦の色彩。 人形がキリキリと不気味な音を鳴らしながら、黒色のケースからずるり、と這い出てくる。 右手に持つ行李からではない。多聞の足下の黒い巨大なケースからだ。 分離していた腕が華奢な肉体から引き抜かれて、人形の右肩と接続。 「子供想いだなァ。お前が飛び出さなきゃガキが犠牲になってたのに。 いいか……これはガキ、テメーが悪いんだ。何もかもテメーのせいなんだぜ」 力なく横たわる少女をつまらなさそうに蹴飛ばす。 人形を操作する場合、それと精神を同期させ想像力(イマジネーション)にて操る。 よって別々のからくり人形を同時操作しようとすると、異なる想像を並列して行わねばならない。 右手でロリロリな女の子の絵を描きながら左手でガチムチ六尺兄貴を描くことなど常人には不可能だ。 故にからくり人形は通常一人一体。自身の相棒を深く愛し、熟知し、半身として戦うのである。 「考えてみりゃ笑える話ですなァ。マジでセンスあるよガキ。今年一番の嘲笑の的だぜ。 自分の人形を捨てて突っ込む『人形使い』なんて前代未聞だってハハハ。あ、俺は多聞だが」 人形の同時操作を完璧に行える、多聞の特異な才能。 この技能と人形技工士としての能力を買われて彼はA級入りを果たした。 「一人ずつだ……いいか、魔術師。一人ずつ確実に仕留めて……目の前に並べてやる。 これは宣誓だぜ。紙切れには書かんが……お前のサボりで仲間が死んで、お前は平気なツラしてんのかな? 俺は結構楽しみにしてんだぜ、え? 気取った野郎がどんなツラして言い訳すんのかなって、面白い実験じゃあないか?」
黒い人形が気だるそうな様子で起き上がると、頭上に停滞する小さなナイフを握り潰した。 台詞はジョーカーへ放たれたものだが、多聞の意識はマリアの方角を向いている。 彼我の距離は『第二の人形』の射程圏。今すぐ挽き肉(ミンチ)に変えてやれる距離。 とはいえ、物事に優先順位はつきものである。彼女は後回しにして問題ない。 「おっと、お前が望みなら相手してやってもいーーよ。今すぐにな。あッ、そーか出来ないんだっけ? ハハハハハ。裏目に出ちまったな、お前は野郎と踊るのが不満だもんな。いいぜ、女優を用意してやるよ」 不意に多聞の影が伸び、蜥蜴の尻尾の如くぷつんと分離。 分かれた影は速度を増してジョーカーに肉薄して停止する。 硬質な床にあるはずの二次元は、質量を得て粘着質に膨張。 それは色を変え、形を変え、鼓動を放ち人型を模していく超現実のシャドウ。 一糸纏わぬ女性であった。亜麻色の髪をした幼い顔立ち。 無垢な顔に反比例するかのように、適切に締まり豊かさを含む肢体。 「お前の相手はその赤兎殿がやってくれる。そう、『目標』の確保をな……」 す、と示すひとさし指の先には『天の人形』の行李。 舞台の鍵はジョーカーのすぐ傍に無造作に放置されていた。 「…………」 女性は両腕を広げた。魔術師を受け入れるように。 全てを温かく包み込む聖母の抱擁の如くに。 しかし──腕には冷たい銀の刃が現出していた。明確な拒絶である。 後方へ跳躍して距離を取る。女性は再び黒い不定形に変じた。 ゲル状はぐにぐにと形を変え、遂に猛将を思わせる鎧武者の姿となった。 「シェイプシフター。『赤兎』」 赤銅の面から漏れる声。 紡いだ言葉は自身の正式名称でありパーソナルネーム。 劇団があらゆる分野の粋を集めて生み出した自在変質人形の名。 身体を構成する原形質は粘性と硬度を変化させあらゆる姿を模倣する。 同時に、『核』が生み出す莫大な魔力を伝導するためのマナ・ブラッドでもある。 「赤兎殿は強いぜ。破壊されようと魔力の許す限り再生できるし…… 自意識を持っているから人形使いもいらねえ。疲れたお前はどこまで持つかな?」 鎧武者の腕がするすると解け三又に分裂。 細長く床に垂れるそれは、左右合わせ六本の『鞭』。 鞭は最速の武器だ。達人が振るうともなれば鞭の先端は音速をも超える。 人形たる『赤兎』が振るえば敵を一切寄せ付けぬ中距離攻撃の完成だ。 「無双六条鞭」 赤兎が両腕を振るうと、変化した腕──六条の鞭が唸りを上げ魔術師に襲い掛かった。
遊鳥とマリアは多聞正太郎の感覚から述べれば、遥か格下の相手にすぎない。 「私はエリートですよ」と言いたげな秀才タイプはフィロメナのみで十分だろう。 金髪少女に至っては論外だ。起動した『フィロストラート』とまともな勝負が出来るはずもない。 「ク・ソ・ガ・キィィィィィィ。突然だけどさァ〜〜穴ボコとカマボコって……語感が似てるよなァァ〜〜。 ひょっとして外人のお前はカマボコの事知らねーのかもなァァァ〜〜。俺が教えてやろうか? いいとも。教えてやるよ」 粘っこい巻き舌は、明らかにマリアを挑発する意図があった。 「蒲鉾ってのは、練り上げた白身魚を小板に、こう、半円筒形に盛り付けた食いもんなんだ」 転がる雪子の横腹を踏みつける。 道路に捨てられた空き缶をグシャッと踏み砕く乗用車みたいに自然だった。 違いを述べるならば彼が、『蒲鉾講座』のために敢えてそれをやっている点だ。 「そうだ、練るって分かるか? 魚の白身をな、石臼でグリグリとやってな……」 革靴が傷口をすり潰す。 十万円のシルバノを惜しみなく血で汚して口角を上げる多聞。 か細い呻き声を無視して、満身の力を込め、執拗に責める。 「……お前、どっちが良い? 『穴ボコ』か『カマボコ』か…… 風穴空けて死ぬか、ゴリゴリすり潰されて死ぬか……好きな方を選ばせてやる」 ゴーグルを装着した頭部にライダースーツの如き装甲。 肩には三本の突起。黒の従者『フィロストラート』がマリアの道に立ち塞がる。 「えぇッ!? なんですって! 私はチーズが好きでたまらない!? かしこまりました! 不肖多聞正太郎めが、いとも親愛なお嬢様のために責任をもってお作り致しましょう!」 相手を必要としない独り芝居。多聞正太郎の独壇場。 瞬間、黒の人形の身体が七分割した。 霊液が流れている管の弁が閉じ、部位毎に搭載された大容量のバッテリーが起動。 腕、頭、胴、足──分離した人形のパーツが宙を舞う。 「さあさ皆様お立合い! これよりバラバラピエロの楽しいショーがはじまるよ〜〜ッ! 取り出したるは何の変哲もない金髪の少女! これを穴ボコチーズに変えられましたらご喝采!!」 七つの部品と化したフィロストラートは空中を不規則に飛び回っている。 浮遊する部位は内蔵した砲門を開くと、魔導砲を発射。 撃ち出した魔力の光弾は三百六十度全天周でマリアに飛来する。 「自慢のスピードで馬公を呼び戻しなッ! 俺の空中サーカスとお前の速度、どっちが勝るかな!? でなけりゃ死ぬだけだぜ──そうとも、穴ボコにしてテメーの親父と同じところへ送ってやるッ!!」 【雪子:邪魔になってきたので片付けました。ごめんなさい私】 【遊鳥さん:フレイザードを重力の壁で防御。フィロメナが七星に百裂拳】 【マリアさん:第二の人形『フィロストラート』出現。分離して四方八方から射撃】 【ジョーカーさん:赤兎は俎上の魚。怒りの1ターンキル・魔力回復アイテム化OKです。というか要らなかったですか?】
【あーしまった。多聞如きがなぜマリアさんの父について知っているのでしょう】 【……まあ同じ劇団の人間っぽいので事件についてチョロッと聞いたことがあるって体でお願いしますw】
>「いいか……これはガキ、テメーが悪いんだ。何もかもテメーのせいなんだぜ」 身を起こしながら見た雪子の状態は、非常に悪いものだった。 出血を止めなくては、あのままでは死んでしまうだろう。 そしてその事実が、マリアを冷静にさせた。 「…私のせい…だから、私が助ける…」 ナイフは握り潰され、ヨシュアはもう一体に突撃させたまま。 七つに別れた人形が放つ光を防ぐすべなどない。 撃ち出された魔力の光弾は三百六十度全天周でマリアに飛来する。 …しかし、発射台はあくまでも七つ。完全な三百六十度にはなり得ない。 真剣な眼差しで七つのパーツが生み出す光線の軌跡を頭に描き、ギリギリの位置に立つ。 これでも日本の義務教育と、人形の為の数学理科は修めているのだ。 ほんの少しだけ見つけた光の隙間、いくらか体が傷付くが想定内。 同時にヨシュアを呼び寄せる、相手の意識をそちらへ向けるためにも。 心を封じたヨシュアは、ただ操られて二体目の人形へ攻撃を繰り出す。 その間に、マリアは再び風を身に纏う。 敵の注意がヨシュアに向いた瞬間…人にはあり得ないスピードで踏み出したマリアの一歩、それだけで多聞の首にしがみついた。 まるで、だっこをせがむ子供のように。 しかし、そんな幼い瞳は暗くよどんでいて…攻撃をしかけた。 「かまぼこ、と、チーズ…チーかま…食べて、みたいです」 …風で周囲の酸素を無くし、首に噛み付いたのだ。 窒息してしまえば、どんな人間でも死ぬのだから。 振り払われようと、今から殺されようと、この男が死ぬように…
■〓≡=-┏┣┫┛-=≡〓■ からくり人形劇 ■〓≡=-┗┣┫┓-=≡〓■ 【還りゆくモノ達(0) ― Foreshadow ―】 ――――月面周回軌道上で、暗黒の意志は考える。 "何故、召喚者は我の喰らうべき獲物を命じないのか?" 召喚魔方陣、概念歪曲魔方陣、魔導粒子加速魔方陣。 その何れもが発動を終えたが故に自身は現界した筈だ。 そうであるのに――――"攻撃対象の指定"だけが未だ為されていない。 厳密には、それは意志ではなかった。 魔術に依って擬似的に再現された幻想種の思考パターンだ。 だが、その牙を、その爪を、その咆哮を持て余し彷徨う姿は、獣のソレと限りなく一致する。 因果律と物理法則を捻じ曲げ解き放たれた漆黒の螺旋は、概念と実存の中間の存在だ。 天体の重力に囚われるまで直進を続けた後に、球体の牢獄で無限の周回を繰り返した。 対象を消滅させ、その魔力を喰らい尽くすという存在意義。 自身に備わり課せられた単純にして単一の機能。 その使命を果たしたくとも出来ないので、 そのうち黒犬は―――― ――――亜光速に到達した。
【還りゆくモノ達(T) ― Hark Back ―】 『お前の相手はその赤兎殿がやってくれる。そう、『目標』の確保をな……』 「……真っ赤なバニー・スーツに、栗毛のポニー・テールだ。 "赤兎"の名を冠するんだったら、それぐらいは気を利かせろ」 魔術師が持つ切り札の一つ――魔眼"終焉の月"――を強制解放する。 その能力は、メイン・ストレージである"聖杯の王女"と完全に独立した魔力貯蔵。 []XV.The Moon]が暗示するのは―――潜在的な危機、隠れた敵対者、不可避の選択。 『…………』 神の視点を持ち得る者なら、月面から地球に伸びる撚糸としてソレを理解しただろう。 『シェイプシフター。『赤兎』』 だが、人の身で観測するソレは、天空から大地へと降ろされた螺旋階段に姿を変える。 『赤兎殿は強いぜ。破壊されようと魔力の許す限り再生できるし…… 自意識を持っているから人形使いもいらねえ。疲れたお前はどこまで持つかな?』 『無双六j「アリス――――"やれ"!」 《ケルベロス・へリックス・エコー……リバース・アクト》 そして、この場に居る全ての者が、ソレを目の当たりにした。 暗黒の巨柱――黒犬の牙――が、ただ無慈悲に突き立つ光景を。 「"破壊されようと魔力の許す限り"か……そいつは気の毒だったな」 暗黒螺旋は、本部施設を覆う"アイゼンガルド"を含むあらゆる物理隔壁、魔術障壁、666層を貫通。 赤い人形(えもの)を消滅させ、その魔力(たましい)を貪り喰らい尽くし、昏き冥府へと還って行った。 「―――どうやら、地獄の番犬は許しちゃくれなかった様だぜ」 推定Aランクのエーテル・コアに蓄積されていた潤沢な魔力の血が、無限の聖杯に注がれる。 魔術師を取り囲むメジャー・アルカナの渦は、祝福のワイン・レッドの光輝を放って現界した。
【還りゆくモノ達(U) ― Restoration ―】 「"タリスマン"――――」 魔術師がアルカナを砕く。 マスターの指揮を受け、人形の結界魔術が発動。 最下層フロア全面を鎖す領域に、停滞のルーンが刻印される。 []]T.The World]が明示するのは―――完全支配、統合地点、そして時間。 「――――エクステンド・ザ・ワールド!!」 魔術師の使用する結界魔術が干渉可能な対象は、あくまで物理的な時間に限られている。 精神をも支配し得るならば、最早それは魔術では有り得ず、魔法の領域となる。 しかし今は、フィロメナと多聞を"限り無く減速させる"だけで充分だ。 魔術師がアルカナを砕く。 人形の右腕がキリキリと駆動し三日月の刃が展開。 []].Judgement]が明示するのは―――再起動、発展型、そして天罰。 「"ブランネージュ"――――」 雷鳴と雷光が奔った。 音速を越え雷速に踏み込んだ紅い稲妻は、 宙空に鮮烈なセレート・ラインの残光を刻んで着地した。 「――――ジャッジメント・エンド!!」 神雷の駆け抜けた後方で、七つに分かたれた柵檻――黒の従者フィロストラート――が爆発四散する。 眩光を背に受け、聖剣を振り切ったままの姿で静止するオリヴィエールの優美なシルエット。 だが、一瞬で駆け巡った魔力の高負荷に、白磁のフェイスカバーは耐え切れない。 左眼の下から顎に走った罅割れから、紅いマナ・ブラッドが流れ落ちる。 「それにしても本当に……お前、綺麗になったな、オリヴィエール」 《…………》 五年越しの再会の美酒にグラスは必要なかった。 それでも口説き文句だけは欠かさないのが魔術師のスタイルだ。 当代のマスターに似て静淑な人形は、仏頂面と沈黙を以てそれに応じた。
【―― 『UNICORN』 ――】 ある者にとっては一瞬。ある者にとっては永遠。歪んで螺子繰れた時計の針。 その盤上で、魔術師は休日の礼拝堂へ昼寝にでも向かう様な無遠慮さで歩く。 『かまぼこ、と、チーズ…チーかま…食べて、みたいです』 次にドローしたのは、逆位置のアルカナだ。 賭博師は、それを素知らぬ顔と手業で正位置にすり替えた。 []T.Strength]の逆位置が暗示するのは―――臆病と甘え、消極と受動、優柔不断と他力本願。 「良く噛んで食って……いい女に育てよ、マリア」 魔術師がアルカナを砕く。 マリアに肉体強化(フィジカル・エンチャント)の魔術を付与。 []T.Strength]の正位置が暗示するのは―――自律と自立、知恵と勇気、意志力と実行力。 「オレには共有してやることが出来ない。お前が今、抱いている悲しみと怒りを。 だが、遊鳥は戦っている。エリートの矜持なんて、あざとく浅いプライドの為じゃない。 お前達の仲間で在り続けようとする"誇り"が胸にあるからだ……尊く高い星に導かれているからだ」 魔術師がアルカナを砕く。 []XU.The Star]が暗示するのは―――希望、閃き、達成。 七星のOS深層に仕込まれたバックドアを解放。"LAPRUS"をブートする。 慣性制御を行うフィロメナの戦闘機動。汎用のSTTとFCSに依る捕捉は至難だ。だが――― 潜在魔導確率演算運用システム(Latent Aether Probability Reckoning Usage System)がそれを可能にする。 「運命なんてのは、この先で待ち構えてるもんじゃない。 掴み取るべき運命が、目の前でぶら下がってるわけでもない。 だから今、自分の方から駆けて行くんだ、お前が望む運命に向かって」 魔術師がアルカナを砕く。 [].Wheel of Fortune]が暗示するのは―――時機の到来、転換点、変化。 七星とフィロメナの勝敗の天秤が、後者に傾きつつあるのは確かだ。 音を立てて軋む歯車は、羽の様に軽い少女一人の力で押し戻せるほど緩くはない。 しかし、その天秤皿の一方にオリハルコンの分銅――"一角獣の角"――が載るなら話は別だ。 その価値は古来より、同量の瑠璃も黄金をも遥かに超える重力を宿して、世界の運命に介在して来た。 「オレには取り戻してやる事も出来ないんだ。お前が過去に失くしたモノを。 だが、雪子嬢は護りたかったんじゃないのか。お前が今、失くしかけている何かを。 それに……今は、すぐ側で待ってるんだ。お前の代わりに駆けてくれる―――"可能性の獣"が」
【還りゆくモノ達(V) ― Recovery ―】 雪子嬢には、止血と保温が必要だ。 横たわる少女の身体を紋付羽織で包み込む。 ファイヤーマンズ・キャリーの体勢に入り掛けて逡巡。 負傷した左側腹への負担を考慮して、横抱きに切り換えた。 「お前に何かあったら、早乙女の爺さんに言い訳が立たない。 だから、しばらく俺に抱かれて眠っててくれ……雪ちゃん」 これで雪子嬢が仄かに上気した仏頂面でも見せてくれたなら、 "お姫様抱っこ"と形容されても違和感の無い情景だった。 しかし、現実は非情である……姫君は顔面蒼白だ。 魔術師がアルカナを砕く。 抱きかかえた腕の中で、少女の傷が癒えていく。 [XT.The Lovers]―――暗示するのは……邂逅、決意、絆。 「"任務は遂行する"、"宣誓も守る"、か。 オレ達にとっちゃ"両方"やるのは、わけないコトだ。 モード"E.F.B."スタンバイ――――そうだろう? オリヴィエール」 物騒な鳴動音と危険な明滅光を周囲にブチ撒きつつ、最早、魔剣や妖刀の類と化した聖剣が振動する。 気分の赴くままに振えるだけの魔力を得た悪の魔術師ジョーカーは、手が付けられない存在だ。 遊鳥とマリアが破壊対象を落とし損ねた場合、身も蓋も無く屠ると独断で裁定した。 そして、時は動き出す――――
【還りゆくモノ達(W) ― Dust to Dust ―】 ――――からくり人形協会"文楽"本部施設最下層フロアに、断続的な打撃音が反響する。 蹴打、蹴打、蹴打。 着火。 蹴打、蹴打、蹴打。 燃焼。 蹴打、蹴打、蹴打。 炎上。 先程から、物言わぬ被害者に蹴りを叩き込んでいるのは無論、黒スーツの赤頭だ。 最重要監視対象物保管フロアの天井を隈無くカバーする消火機構が緊急作動する。 「足下の庭池、頭上のスプリンクラー、か……ああ、上等だ。 ―――神は、このオレを水浸しにするのが好みらしいな」 《ロテン・バスタブの次は、ハンドルレス・シャワーを? ……御主は、貴方の穢れを洗い清めようと思し召しだわ》 魔術師の靴裏には解呪(ディス・エンチャント)のカードが貼り付いている。 "天の人形"の大行李の表面を隙間無く覆った呪符の封印を、魔術的に無効化する為だ。 一方、少女人形が選択したのは、物理的焼却という最も原始的かつ合理的なアプローチだった。 《ネストエッグのマッチ箱が濡れてしまったわ。まだ売り物になるかしら》 「多少、湿気った所で買い手は付くさ、アリス。煙草一本分の夢を見せてくれりゃ充分だ」 《あら、随分と湿気た夢なのね、ジョーカー。割に合わない商売は嫌いなんでしょう?》 「破格値の帳尻なら、この乾いた現実が埋め合わせてくれるさ」 魔術師ジョーカーが砕くべきアルカナは、もう無い。 「……何が神降ろしの人形だ、くだらねえ」 最後の切り札は、己という存在に他ならない。 []V.Death]が明示するのは―――破壊と終焉、そして決着。 「オレは人形師だ。ソレが"人形"である限り――――」 喪失した左眼の死角に投影された漆黒の大鎌。その柄を掴みに行く動作で右腕を引き絞った。 左から右へと一振りに薙ぎ払う。刃が描いた軌跡をランダムに斬り裂く真紅の光条。 十七分割された"天の人形"は、完全破壊と同時に舞台装置の役割を終えた。 「――――たとえ神でも、解体(バラ)してみせる」 ■〓≡=-┏┣┫┛-=≡〓■ からくり人形劇 ■〓≡=-┗┣┫┓-=≡〓■
>「フィロメナァァーー! アツィオーネッ!」 フィロメナと呼ばれた蒼の人形の突進に対し、雪子の結界による援護が展開。 彼我との間に多重展開された領域は、踏み入れた者の挙動を絡めとり拘束するトラップ術式。 突っ込めば動きを止め、迂回すればその分機動が読みやすくなる、非の打ち所のない支援だ。 だが―― 「飛んだだとぉ!?」 遊鳥の驚愕の眼前――フィロメナは飛翔していた。 跳躍ではなかった。噴射器による上方加速でもない、まるで空中を闊歩するかのような飛行。 サーカスのロープ・アクションの如く結界を飛び越えたフィロメナは、その巨重をなかったことのようにふわり着地した。 (この巨体でこうも軽々しく動けるものか!一体どんなギミックを積んでいる――?) 慣性の法則は、戦闘において最も重要視されるべき要素だ。 銃弾や戦鎚などの質量兵器は、そのものの持つ慣性力を相手にぶつけて威力に変える。 急停止や、方向転換には、慣性をいかに殺し次の機動に活かすかに腐心を要する。 たったいまフィロメナの見せた挙動は、それら世界の第一原則を完全に無視したものであった。 着地点を先読みしていた七星がフレイザードで斬りかかる。 >「紺碧の楯ッ!(スクード・アズール)」 ぐにん、とフィロメナの左腕から先が歪んだ。 蒼く半透明なフィールドが『壁』を形成し、フレイザードはそれに阻まれて弾かれた。 敵人形自体には接触していない。故に冷却兵装は不発! 『報告。――敵性人形の兵装解析が完了しました。錬金系制御型・重力制御術式です』 「重力制御!なるほど合点がいった……!」 七星のAIは高度な暗号解読能力を備えている。 軍用の魔術マスキングすら時間をかければ解読し、搭載されている術式の解析が可能だ。 だが、相手の手品のタネが分かったところで、それを突破できるかどうかは別問題。 >「この二流人形使いがッ! 繰りも拙けりゃ人形もくだらねーーな!! 作った技工士は相当ヘボですぜこいつぁ〜〜ッ! 基礎からやり直しなッ!」 「こいつ――ッ!!」 多聞はべらべらと戦闘中によく喋る。何人たりともかの人形使いの独壇場を止められない。 高性能な人形に、卓越した戦闘技術。そしてなによりも…… 「テンションが高い!苦手なタイプだ……!!」 遊鳥は、自分より声の大きい人がその場にいると途端に大人しくなるタイプだった。 盛り上がりきった祭りに遅れてやってきたかのような気まずさに耐えられない。 学生時代もよく、「遊鳥君って、二人きりのときはよく喋るけど三人だと無口になるよね」と言われ続けてきた。 三人で歩く時も当然のように遊鳥は後ろで一人……。 前方、フィロメナが地を滑るように右足を踏み出した。 ひねりを加えた上半身は生身の筋肉の如く膨れ上がり、生み出される挙動を予感させる。 「まずい――七星、防御を!」 瞬間、敵性人形の両腕が爆発した――爆発の如きラッシュが繰り出された。 拳の形成、引き絞り、渾身の突き、引き絞り、突き。 両拳が代わる代わる引いては飛び、連打となって七星へと降り注ぐ! フレイザードを盾の如く構えるが、すぐにかち上げられてボディがガラ空きだ。
『警告。――胸部装甲に重篤な衝撃。ショックアブソーバの打撃許容を超過しています』 七星の装甲は超合金の甲冑を液状の衝撃吸収材で挟み込んだ積層構造だ。 試作時の性能試験では、対物ライフルの銃撃にだって耐えてみせた……つまりは戦車と同等の防御力を誇る装甲である。 その強力無比な甲冑が、フィロメナの連打により歪み、撓み、各部から鮮血の如く衝撃吸収材を漏出させている。 このままでは遠からず、内部を循環する伝達質の導管を破壊されてしまう。 そうなれば、戦闘人形としての生命は終わったも同然。 網膜に転写される各種アラートで視界が埋め尽くされそうだ、ジリ貧の窮地に追い込まれつつあった。 (連打が速過ぎる……読みきれない!) 純粋な人形の運動性能の高さもさることながら、重力制御型というのが実に厄介だ。 フィロメナは、重量級が殴る蹴るをする際に必ず発生する重心の沈み込みをキャンセルできる。 それはつまり攻撃に予兆がまったくないということであり、こちらは後手に回らざるをえないということだ。 後退することで威力の低減を図るが、いかに広い部屋と云えど限りがある。 コーナーまで追い詰められれば、今度こそスクラップだ。 そのとき、視界の端を蒼い何かが横切った。 放物線を描いてべちゃりと床を滑るのは、ジョーカーが抑えていたはずのマリア。 そして遊鳥は気付く。七星が後退し、フィロメナをトレインしたことで、本体たる多聞を護るものが何もないことに。 >「死の舞踏──聖剣ブランネージュ」 その隙を逃す文楽の先輩ではない。 雪子が即座に動き、オリヴィエールの仕込み刃が展開、多聞へダイレクトアタックを仕掛ける。 「いいぞっ、こいつは僕は抑えこむ!その隙に奴を!」 分かりきったことをわざわざ解説したのは、少しでも戦闘に貢献したことをアピールする為だ。 そして、『ネタばらし』をしたところでこのタイミングでは雪子が多聞を落とすほうが早い。 いかにフィロメナが慣性を無視して動けようとも、この距離で雪子と主人との間に割って入ることは不可能! オリヴィエールが舞うようにして多聞の肢体を散らそうと潜り込み―― >「──え」 鮮血が舞った。だが、飛沫を散らしたのは多聞ではなく――雪子! 彼女の脇腹を貫いたのは金属製の腕……人形の貫手。 腹部を血に染めた先輩人形使いは、足から力を失い頭から床に激突した。 「早乙女君ッ!!」 遊鳥は泣きそうな名を呼ぶが、呼ばれた少女は返事をしない。 人形は『もう一体』いた。多聞の足元から、黒を基調とした別の人形が這い出てくる。 (くそ……なんで気付かなかった?あいつの足元にあるのは、人形のケースじゃないか!) だが、その不覚を遊鳥や、まして雪子に求めるのは酷であろう。 『人形は一人につき一体』……これは人形使いの大原則。 イマジネーションで動かす人形繰りは、精神を人形と同調させて想像した動きを実行させる。 二つの人形を同時に操るとはつまり、左右から別々の人間に別々の話題で話かけられ、 それぞれに正確に返答して会話を成立させるようなものである。 一人の相手とすらまともにコミュニケーションのとれない遊鳥には想像もできない領域だ。 それを、多聞正太郎はこともなげにやってみせた。 これが、『劇団』最上位クラスの人形使いの実力――!! >「そうだ、練るって分かるか? 魚の白身をな、石臼でグリグリとやってな……」 多聞は足元に転がる雪子を蹴る。倒れた身体を裏返し、血に染まる脇腹を踏みつける。 そしてあろうことか……ぐりぐりと踏みにじった!
「やめろ……!」 遊鳥はすぐにでも飛び出して、多聞を殴りつけたい衝動にかられた。 だが、七星の指揮を放棄してこの場を離れれば、主なき人形を片付けたフィロメナに追いつかれてしまう。 生身の遊鳥など、人形からすれば赤子の骨を粉砕するより容易く殺傷せしめるだろう。 そうなればもう遊鳥隊は総崩れだ。 遊鳥隊の目的はこの部屋で多聞をぶちのめすことではない。 上層で襲撃を受けている職員を助けることだ。 その為には障害となっている多聞を倒す必要があるが――多聞の為に戦力を使い切るわけにはいかない。 つまり。 隊を預かる者としての最良の選択は、ここを動かずフィロメナの攻略を遂行すること。 腹部を貫傷し、出血著しい雪子を放置し、目の前の敵にとりかかること。 仕事のいろはを学んだ先輩であり、足りない遊鳥の良き理解者であり、誠実な隊員である早乙女雪子を。 見殺しにして敵を倒すことである。 「――認めるかッ!」 戦力として期待ができない以上、雪子を助けに行くのは攻撃機会の損失に他ならない。 フィロメナに背中を向けることがどれだけ危険か遊鳥には痛いほどわかっているはずだ。 ここで隊を壊滅させれば、遊鳥がのし上がろうと目論む組織そのものが潰されかねないことも。 だが、 「早乙女君は、僕が将来座る椅子の脇に立つ人間だ!」 遊鳥学はエリートで幹部候補生で、高学歴で、鳴り物入りで就職した若手人形使いのホープだ。 その実態は頭でっかちで、融通が効かず、増長しやすくて、詰めの甘い発展途上の新人に過ぎない。 だから、その甘さゆえの過ちを、フォローしてくれる人間が不可欠だ。 例え遊鳥が戦略上の鉄則に背いた選択をしようとも。 誰かがその背を支えて、肩を押してくれれば彼は前へ進める。 人の上に立つ者は――下に人がいなければ、ただの一人の人に過ぎないのだ。 「早乙女君だけじゃない。マリア君も、そこにジョーカーを加えたって良い。 僕が進むエリート街道に、誰一人だって欠けさせるものかっ!」 そのとき、遊鳥の網膜にまったく未知のアラートが閃いた。 紫煙の色をもったダイアログが、通常と異なる様式のシステムが励起されたことを表示。 『報告。――潜在魔導確率演算運用システム"LAPRUS"が起動しました』 「ラプラス……?こんなプログラム、入れた覚えは――」 そしてすぐに思い至り、振り向く。 マリアを首筋に食いつかせた多聞のさらに向こうで、雪子を羽織で包み抱きかかえる魔術師の姿。 「――ジョーカー!」 ろくでなしの魔術師は、しかし腕だけは確かであった。 起動したLAPRUSが、遊鳥の網膜投影に接続。凄まじい情報量が直接脳裏に流れ込んでくる。 一方フィロメナの猛攻に防戦一方の七星は、ついに壁際まで追い詰められていた。 もう幾度目かの後退の末、鎧の偉丈夫の踵が壁の感触を得たその瞬間。 『報告。――敵性人形・個体名"フィロメナ"の戦闘機動解析を完了しました』 フィロメナの振るった豪腕を、すり抜けるかのように掻い潜って、七星は蒼人形の背後をとった。 霜の降りたフレイザードを一閃、重力障壁が展開するよりも早くフィロメナの腕は凍りついた。 「ラプラス……くくく、洒落た名前だな、ジョーカー!だがその名に恥じない能力だ!」
フィロメナがあの、予備動作を重力制御でキャンセルした神速のチャージを放つ。 しかしつい十数秒前まで七星を完封していた攻撃も、いまや闘牛士の如く回避成功。 「無駄だ。その人形の挙動は全て、『読み終えた』……」 LAPRUS――潜在魔導確率演算運用システムは、言ってみれば脳内シミュレーションの完成型だ。 我々人間が漠然と、あるいは経験則によりおおまかに立てる『予想』。 コンピュータは更に自分のパラメータや相手の予備動作など様々な乱数を計算して『予測』をはじき出すが、 LAPRUSは更に空気中の原子の数、気温や湿度による素材の膨張、 内在する魔導力の動きなど目に見えない膨大な可能性を検討した果てにある、『予知』である。 フィロメナがいかに予備動作を無くすことができても、例えばマナ・ブラッドの流れはどうだろうか? 激しい挙動にはそれだけ魔力が必要になる。畢竟、より多くの魔導伝導体を稼働箇所に集めることになる。 通常、形を保たない魔力の流れを感知することなどできない。 しかし、導管を伝達質が流れる音、その振動により動く空気中の塵、微細な湿度の変化は、フィロメナには隠せない。 そして、LAPRUSが観測するのは魔力の動きだけではなく―― それら、無数にも上るほんの僅かな"兆候"を、複合的に読み取り積み上げて予知に足る精度を確保するのがこのシステムだ。 LAPRUSにとってフィロメナは言わば一冊の物語。 登場人物の心の動き、張り巡らされた伏線、立てられたフラグを元にオチを予想するように。 七星は、フィロメナの動きを文字通り『読んでいる』。 「多聞正太郎、劇団のA級エージェントとやらよ! この僕のことを、この七星のことを二流と蔑んだなッ!!」 押す。押し返す。 七星が大剣を振るい、フィロメナが重力障壁で防御する。 一連の流れはまるで先刻の逆回し。逆転した形成は、フィロメナに後退を余儀なくさせた! LAPRUSの助けを借りているとはいえ、七星の攻撃性能はそのままだ。 ジョーカー謹製の演算プログラムはあくまで防御システムに過ぎない。 だが、いまの遊鳥にはフィロメナを突破する攻撃力など必要なかった。 「ならば今こそ、君の最終学歴を問おう!!」 ……足りない甘さを、補ってくれる誰かがいるのだから。 フィロメナの背後には、一角馬の人形。 七星の電子兵装『ECMフィラー』により、可視光線をねじ曲げ透明化したヨシュアがいた。 「――大卒を、舐めるなぁぁぁぁぁあああああああッ!!!」 駄目押しに、大上段からのフレイザードを一閃。 【LAPRUSにより劣勢から復帰、フィロメナをヨシュアの所まで押し戻す/ヨシュアをECMフィラーで透明化】
ヨシュアは、唐突に完全支配から解かれた。 それは魔術師の力か、運命の歯車か。 思考の戻ったヨシュアが第一にとろうとしたのは、主の護衛、だった。 しかし、己に課せられた他の人形の力により、それは間違いと悟る。 目前にありし青人形、その両断が先決だった。 七星の力により、見えざるオリハルコンを煌めかせ、ユニコーンは駆ける。 その刃は違わず敵の胴を薙いだ、ワンテンポ遅れての大上段からのフレイザード。 二つの斬撃により、フィロメナは完全に人形としての力を失った。吹き上がるマナブラットを確認するまでもなく、ヨシュアは今度こそ主のもとへ走る。 今にも人としての何かを越えそうだったマリアを止めるべく、着物をくわえて多聞の首筋から引き剥がす。 同時に刃は多聞の片腕を捉え、切り落としにかかる。 …命を奪うのが、「正しい」戦術だったとしても、今の主にそれを見せたくなかったが故に。
マリアの視界に、鮮血が迸る。しかしそれを産み出したのは己ではなかった。 その証拠に、口にはなんの味もなく… 「…ヨシュア?」 位置は完全に操り下にあったはずの愛馬の、刃の高さからだったのだ。 一瞬遅れて、普段ならありえない腕力と脚力でヨシュアの背へ移動する。 既にECMフィラーの解けたユニコーンは、腕を切り落とした多聞を無視して走る。 …最早多聞に戦力等ない、腕一本無くし、人形も失った男に出来ることなどたかが知れている。 ヨシュアが向かう先はジョーカーのもと、その理由はマリアにもすぐにわかった。 「雪子さん…!」 彼により傷を癒された、雪子の姿を確認するためだ。 自分の傷も忘れ、飛び降りて抱きつく。その体から感じる暖かさが、命を伝えてくれた。 そして…マリアはヨシュアに今日最後の「命令」を下す。 「…風を…」 多聞のもう一方の腕へ真空の刃を放つ事を…
【明日投下しますね!(定型文)】
時間は、切ない
【今、試験終了チャイム直前まで問題を解いている受験生のような 必死こいた気分で書いているのですが、ちょっと今日中は無理そうです 今週中にはどうにか投下しますのでもう少しお待ちください。申し訳ありません】
ガンバ!!
土曜日…頑張って!
「副会長は、行ったのか……?」 「は、はい……行きました」 周囲には軍隊蟻の如き機械人形の残骸が散らばっていた。 鍋の蓋とおたまで武装した女性職員は、おずおずと青天井を眺める。 俄かに信じがたい光景であった。 全二十五階から構成される協会本部を一撃で貫いていった「それ」。 おおよそ常識的な兵器や魔術の類では発揮し得ない威力だ。 とはいえ、最強無敵の四文字を背負うからくり人形なら不可能な話ではない。 古今東西あらゆる分野の集大成、採算度外視の最強兵器ならば。 「会長の『アスクレピオス』じゃあるまいし……一体、どうなってるんだ?」 興味の対象に入らない男は全く知らぬことであった。 が、女性職員には確かな心当たりがある。 赤髪で。 奇天烈な服装の。 退廃を象徴したような。 いけ好かないマイペース野郎。 深淵に誘う螺旋の穴を潜って、シーンは戦いの場へ移る──。 >《ケルベロス・へリックス・エコー……リバース・アクト》 施設を覆う『拘束結界魔術』を、本部の隔壁を、壁という壁のことごとくを穿って螺旋が突き立った。 『赤兎』がそれを感知した刹那──亜光速で到達したそれを回避する術はない。 そもそも、躱す必要がない。自在変質人形たる『赤兎』は欠片さえ残っていれば瞬時に増殖・再生する。 >「―――どうやら、地獄の番犬は許しちゃくれなかった様だぜ」 リスベット戦で不発に終わった『ケルベロス・ヘリックス』が、ここで発動するなど誰が予想したであろう。 今度こそ間違いなく敵対者を食らい、魔力を奪い尽くした獣が何を意味するか。 それは魔力不足で観戦を決め込んだ、あの男の回復と復帰。 『核』を失い、根こそぎ魔力を吸われ、塩をかけられたナメクジの如く収縮していく『赤兎』こそ証左。 最悪の相性(マッチメイク)は、したたかな魔術師の完全勝利で決した。
「うおッ──」 漏らした声には二重の意味が含まれている。 ひとつは劇団が誇る最新型の人形が呆気ない最期を迎えたこと。 無論これだけであれば「つまらねえモン寄越しやがって」と、胸中で悪態をつくのみだ。 黒の従者『フィロストラート』について、少し話す。 人形技工士としての多聞正太郎の手で生み出されたからくり人形である。 縦横無尽のオールレンジ攻撃を初見から対応した人間は皆無に等しい。が── (に、人形を使わずに避けただとぉ!?) ふたつは、この光景。 普通の人間ならばヨシュアを呼び戻しその速さをもって包囲網から抜け出すだろう。 ところが金髪の悪魔は七門の魔導砲の位置と発射各を把握し、光弾の隙間を抜けて突っ込んでくる。 常識を超えた発想と、それを可能にする身体能力に多聞はただ驚愕した。 「このクソチビが……何度同じことを言わせやがる?」 通常、人形使い同士がリアルファイトに発展することはない。 人形を陽動に本体が身一つで突撃してくることもない。 今回はマリアが自分自身の手で恨みをぶつけんとする、復讐心に起因するレアケースだ。 「学習しろカスッ! お前は俺にとって釈迦の手のひらを飛び回る孫悟空ですらねぇッ!! どれだけ頑張ろーと人形の『フィロストラート』の方が断然速ぇに決まってるだろうがよぉぉおおおお!!」 たとえ魔術で補助しようと、魔導砲の方が早く命中するのは自明の理。 多聞は七分割した黒の従者をたったひとつ、マリアに向けてやりさえすればいい。 ヨシュアの妨害が入ったとて難しい話ではない。 >「――――エクステンド・ザ・ワールド!!」 攻撃を実行に移さんとしたとき、多聞の時間が静止した。 ジョーカーが切った『世界』のカード──結界魔術は対象の物理的時間を遅延させる。 極限に引き延ばされた時間は停止に等しく、多聞正太郎は指ひとつ動かせない。 主君が時の牢獄に収監されたとあれば、その従者もまた裁きを受けねばなるまい。 >「"ブランネージュ"――――」 罪人の処断は、執行人が行う。 七の部位をつづら折りに駆ける苛烈な雷舞。 影さえ残さず踏ませぬ光(きらめき)。閃く剣筋。 紅い跡を残して優美に降り立つ六花──『オリヴィエール』。 >「――――ジャッジメント・エンド!!」 爆散する敵性人形が白雪のからくり人形を際立たせる。 再起不能に陥った主は、既にオリヴィエールを動かせない。 迅雷で動き、フィロストラートを細切れに出来たのは「審判」の札── >「それにしても本当に……お前、綺麗になったな、オリヴィエール」 ──「ジョーカー」の力によるものである。 彼は主人たる雪子以外が操れる唯一の方法を行使した。 すなわちメジャー・アルカナの解禁。すなわちセーフティデバイスの解除。 雪子の祖父とジョーカーが仕掛けた、秘密のからくりであった。
黒の従者『フィロストラート』は残骸と成り果て、多聞を守る人形はなくなった。 ここで慌ててフィロメナを戻すと却って形勢が不利になる。それは凡愚のやる事だ。 窮地であるほど平静と余裕を崩してはならぬことを彼は知っている。 (そうだ……落ち着けよ。落ち着いてクソガキを! 今すぐ! 速やかに! 止めるんだッ!) アルカナ「世界」の干渉は物理的時間に限るものである。 精神的時間はその限りにあらず、多聞の思考速度は平素のままだ。 しかしモタついているとマリアと一方的なリアルファイトを演じるはめになる。 ナイフを隠し持ってるようなイカレた餓鬼だ。何をするか分かったものではない。 >「かまぼこ、と、チーズ…チーかま…食べて、みたいです」 「囀るなァ! てめえの一挙手一投足が不快で不快で仕方ねぇんだよーーッ!!」 抱き付くマリアに多聞の怒号は届かない。 減速した時間は早口で捲し立てる彼の声をも減速させるのだから。 マリア視点で見ればとても緩慢に口が開いていくようにしか見えないだろう。 (フィロメナ、紺碧の楯を発動させろォッ!) 想像力を働かせ青の人形に命令。重力の壁がマリアを吹き飛ばす。 高度な重力制御機構は遠方の発動もある程度可能。 しかし吹き飛んだ金髪少女に外傷らしい外傷はない。 >「良く噛んで食って……いい女に育てよ、マリア」 死角でアルカナが砕ける。ドローした「力」のカードが少女の肉体を強化。 魔術的補助を施してるな──悟る多聞は重力の壁を周囲に展開。 マリアの本体攻撃を徹底的に防ぐことを選ぶ。 >「ラプラス……くくく、洒落た名前だな、ジョーカー!だがその名に恥じない能力だ!」 そして時は動き出す──流れを掴むは防戦一方の七星と遊鳥。 フィロメナの放ったラッシュを完璧に回避し、するりと背後に回り込む。 重力の壁が発動するよりも早く大剣フレイザードが腕を凍結させた。 (な……何故だ!? 今までのスッとろさが嘘みたいに消えやがったッ!) 多聞には知り得ないことであった。 超演算能力による極近未来予知がまさに己を追い詰めていることなど。 七星のスペックはフィロメナに比べれば特筆する点のない凡庸な人形に過ぎない。 窮鼠猫を噛む。侮っていたからこそ、現在の状況に振り回されるしかない。 多聞の失点は、慢心ゆえに慮外の出来事に対応できないこと。 「お、俺はA級エージェントの多聞正太郎だぞ────!」 特別だという自負心が「人形繰り」に影を落とす。 勢いに乗った七星の猛攻撃にフィロメナが一歩、また一歩と後退。 未成熟なエリートが放つ凄味は反撃に転じるための精神的猶予を与えない。 多聞に足りないものは、己の弱さを認められないこと。
>「ならば今こそ、君の最終学歴を問おう!!」 「こんな、木偶人形とヘボ人形使いごときにィィィィッ!!」 こうなれば肉を切らせ骨を断つしかない。 フレイザードを直接受け止めつつ七星の動力を抉り取る。 フィロメナが完全に機能をダウンさせるよりも早く。 危うい賭けだが、実行に移せるだけの腕前はあると自負している。 >「――大卒を、舐めるなぁぁぁぁぁあああああああッ!!!」 白磁の大剣と瑠璃の拳が交錯。 フィロメナの一撃が七星に届くことは、遂になかった。 (馬鹿な……いや、まさか……報告にあった迷彩能力……!?) 突如背後に現れた白馬の刃がフィロメナの装甲を裂き、胴と脚を分かつ。 多聞にないものは、弱さを補ってくれる仲間の存在だ。 「……こ、高卒──」 唐竹を割るように、七星の大上段がフィロメナを真っ二つに裂いた。 動力ごと破壊され、爆発する人形を前に茫然自失。マリアが肉薄した事にも気づけない。 首に噛みつかんとす四足獣が如き発想。頸動脈を狙われたらあの世への直行便に強制乗車だ。 「う、お、おおおおおおおおおおおッ!!」 抵抗の術もない多聞に一発見舞ったのはマリアでなくヨシュアであった。 激しく血が噴き出し、片腕が円回転しながら後方にすっ飛んでいく。 ヨシュアが主を回収しつつ、去り際に左肘から上を両断した。 「舐めんじゃねえぞガキィ!! この俺がッ! これしきの事で……!」 片腕を失ったことで重心が狂い、足元はやや覚束ない。 失血で混濁する意識を繋ぎ止めるも──霞んだ視界は信じられぬ光景を視る。 「て、てめえ……何をしてやがる!? 魔術師ィィィィーーーーーーッ!!!!」 文化財を蹴る怪しい風体の男と、加熱と燃焼に執着する百四十センチの人形。 サッカー部がシュート練習をするみたいに幾度なく煤けた行李をキック。 やがて炎上した行李は勢いよく燃え上がりスプリンクラーを誘発。 得点は入らずにドールと魔術師の小粋なトークを特典。 「何をしてるって聞いてるんだッ! やめろよ……やめろやめろやめろ。やめろってんだよォ!!」 目標を奪取できないばかりか破壊されるなどあってはならない。 組織内での評価は失墜、最悪処刑もあり得る。 そうなれば多聞の命はない。 「この……死神がァァァァァァアアーーーーーーッッ!!!!」 十七分割された舞台装置がばらばらに散乱する。 多聞正太郎は任務を終えた──敗北という形で。
振り返ると、あまり楽しかった思い出がない気がする。 そこで毎回感情のない人形じゃあるまいし、と懐古を止めた。 少しだけ、自分は無感動な人間なのかなとショックして。 オリヴィエールと雪子の邂逅は十一歳の時分。 祖父には「半身とも呼ぶべき大切な人形だ」と教えられた気がする。 当時「人形繰り」は半ば強制で教えられていたが、人形に特別興味はなかった。 だから後の相棒に対して強い関心を抱くこともなかったと記憶している。 ただ、オリヴィエールを操ると優しかった祖父を思い出す。 同時に違和感を覚える。魚の骨が喉に引っ掛かったような感覚。 誰かを忘れている気がしてならなかった。遠い昔に出会った誰かを。 「お兄さん……?」 痛みが薄れていく。 抱擁に似た温かい光を感じる。 誰かが魔術で治癒を施してくれたのだろうか。 重たい瞼を押し上げると、視界に赤色の頭が見えた。 (なんだ……ちゃんとあったんだ……) 雪子が実家へ行くと時折見かけたその男。 彼と祖父に会うのが楽しみで、暇さえあれば会いに行った。 あそこへ行くと喋ること、遊ぶこと、笑うことが自然にできたから。 (オリヴィエール……私の思い出が、貴方に詰まってるんですね) 彼女にとって人形は武器に過ぎず使えればそれで良い。 それ以上でもそれ以下でもないが、唯一例外があったらしい。 受け継いだ人形には、掛け替えのないものを仕舞っている。 「……どこだ? どこで狂っちまったんだ……?」 多聞が膝から崩れ落ちる。思い出すのは協会に所属していた頃の屈辱だ。 とかく凡人は法に反しているだの、非人道的だのと難癖をつけ糾弾する。 少数の天才は多数の凡愚に殺されてしまうのだ。 (歯車が狂った原因はどこだ……?) 表舞台を追われた多聞正太郎は闇に足を踏み入れた。 彼は魂に誓った。この恨みは必ず晴らす──からくり人形協会の血をもって。 (し、死神……あいつが……全部あいつが起点じゃねぇかッ!) ジョーカーを分岐器に戦いの進路が変わり、こうして自分は苦渋を舐めている。 彼は魔力供給不足を理由に契約書まで使って戦いを放棄したはずだ。 戦線に復帰を果たせたのは、全力を出すに足る魔力を確保出来たからだ。 (そ、そうだ……奴が俺を舐めた事に、無性にムカッ腹を立てちまったんだ…… 『選ばれし者』の俺をコケにしやがるから……任務を優先すりゃいいのに手を出しちまったんだ!) 自在変質人形『赤兎』から魔力を奪わなければジョーカーは戦えないままだった。 そして目標の奪取をお題目に、『赤兎』に戦うよう指示したのは多聞自身。 (眠れる死神だったんだ……手を出しちゃいけなかったんだ! あいつにさえ……あいつにさえ手を出さなければ! あいつにさえ!) 深い悔恨が多聞を襲う。 そして、風の刃もまた────
多聞正太郎は敗北した。劇団の目的たる『天の人形』も破壊という結末を辿った。 それでもなお戦いの趨勢が決したわけではない。戦いは、終わっていない。 この自惚れ屋の厄介な点は、「気高い誇り」を持っていないところに在る。 彼にとって「誇り」とは自分を大きく見せて他者を蔑む為のものでしかない。 そしてひとたび虚栄の泥を剥がされようものなら、激昂し恐るべき執念で反撃してくるのだ。 「『くろがね』……」 ヨシュアの起こした真空の刃を、最古の人形が防いだ。 ボディを覆うように貼られた呪符はその力を抑える封印。 「地の人形」として現代まで語り継がれてきた、神降ろしの人形。 「お前らよォォォォ〜〜……世界と世界を繋ぐ扉って……どんな形してると思う……?」 剣呑な雰囲気を発しながらゆらり、と起き上がる。 虚ろな瞳は定まらぬ焦点でジョーカー達を見る。 滅ぼすべき敵の顔を。 「『観音開き』だと……俺は思うんだよ。『観音開き』だからこそ、二つ揃えば安定もするし……制御もできる! 半ドアはよくないやり方だ……無作法だし、何が起きるか分からない。とても危険な行為だ……お勧めはしない」 人形を覆う呪符が弾け飛ぶ。 空間が重々しく震動し、鉛のように圧しかかる。 「だが知ったことかッ!!」 この世には我々が住む世界以外にいくつもの世界が存在する。 認識出来ないだけで、世界の裏で人智を超越した怪異が蠢いている。 「十二天将」。 陰陽師にとって必須たる六壬神課で使用する象徴体系の一つ。 また北極星を中心とする星や星座の起源でもある、十二の神。 天と地ふたつの人形は繋がっている世界と世界を隔てる扉を開ける。 そして降臨させた十二天将を意のままに操る制御装置の役割を果たす。 「任務に失敗した俺に、後はない……『暗闇』だッ! 俺の行き先には暗闇の荒野しかねぇッ! もう舞台を去るしかねえが……だけどよぉぉぉおお、黙って退場する俺じゃあねーぜェェェェッ!!」 多聞の背後──空間に巨大な天女の影絵が映る。 光のパイプオルガンを伴い現界せしは十二天将「天乙」。 差し伸べた手から浮かんだ極光がフロアの人間を包み込む。 主神たる天乙は能力の一端を解放し、対象全てを空間転移させた。 「ふ……は、ははははははッ!! こりゃすげえや! たまんねぇぜッ!!」 ジョーカー達の転移先は地上、文楽座の敷地内。 見渡せば屹立する黒柱、拘束結界魔術が展開していることを確認できる。 「地上のアイゼンガルドは目標をあそこの四人に変更! 状況はどうなってる? 他のエージェント達もただちに終結しろッ!」 多聞が通信機に威勢よく指示を飛ばす。 制圧対象を発見した機械人形『アイゼンガルド』百余が俄かに包囲を開始。 機銃やミサイルを内蔵した自律型の軍用兵器が数の暴力で押し寄せてくる。
「この多聞を倒して職員達を救出する……そういう考えだったか? やってみろッ! 後で一人一人ネチネチ残酷に殺してやる予定だったからよぉぉぉ、まだ死んじゃいないだろうぜ。 抵抗した馬鹿で間抜けな奴らは知らんがな。ウッカリ死んじまっててもおかしくねぇよなァァ〜〜!!」 指揮官ならば任務失敗の時点で撤退して然るべきである。 私怨に囚われた男は、道連れ作りの不毛な戦いを喜んでやる所存だ。 「殺れるだけ殺ってやるッ!! もう、俺には何もないからな…… なりふり構わねぇ! 使えるもん全て使ってトコトン嫌がらせしてくれるぜッ!!」 多聞の頭上に十二天将・騰蛇(とうだ)が現出。後光を放ち、燃え滾る火の蛇神が巨大な火球を招来する。 火球はジョーカー達へ飛来するも明後日の方向に着弾。天を衝く火柱が結界を穿って突き立った。 やがて火柱が収まると、拘束結界に開いた穴が徐々に塞がっていく。 「ちッ、まだ慣れてないせいで精度が低いけどよォォオオオ…… 連発しちまえば関係のない話だよなァァァァァァアーーーーーーッ!!」 騰蛇が火球を断続的に発射。天上の炎が四人に迫る。 続き十二天将・玄武を召喚。多聞の周辺に防御結界が展開。 「さあ! 皆仲良く楽しく舞台から降りようぜ! 地獄はあったかくて心地良いからよぉぉぉおおお!!!!」 戦いは最早人が踏み入れぬ領域に達しようとしていた。 神の力を行使できる男に、ただの人形使いが敵う道理などない。 とはいえ──多聞は頭に血が昇って気づいていないが──致命的な弱点を抱えているのも事実。 まず、前提として人形が二つ揃っていないこと。 不完全な召喚によって十二天将はその力を半分も発揮出来ていない。 そして地の人形「くろがね」が永く封印され、その間整備を受けていないこと。 現存し尚且つ使える事が奇跡に近い。劣化が激しく、人形のあちこちにガタが来ている。 それら総てを証明するように現界した騰蛇と玄武は半透明で、ゆっくりと粒子化しつつある。 地の人形は時折小刻みに振動して奇怪な不協和音を各部で奏でた。 一撃。ただの一撃さえ人形にぶつけることが出来れば──。 【お待たせしました!周囲には雑魚敵いっぱい、超威力の火球が雨あられと降り注いできてます!】 【ですが、まあ、ぶっちゃけ最後の悪足掻きです。決定ロールで倒しちゃってください!】 【次のターンでいよいよエンディングに入れるかな?】
雪子に抱きついたまま出した命令は、最終的に防がれた。 否、防がれただけならばまだよかったのだ。 多聞が呼び出してしまった、人を越える力は、全員を上階へ転送した。 それからの光景は、驚愕と、虚しさが両立しているものだった。 転送も火柱も防御も大量の人形も、全て恐るべきものであるのに、扱う者が恐るる存在ではなくなってしまっている。 それでも戦わなくては、皆が死んでしまう。 「…私達は、周りを」 多聞からはしっかりマークされているであろう、だからこそ大量の人形を排除する道を選ぶ。 アンドレを回収し、いつものようにヨシュアへ横座り。これですっかり、いつも通り。 「…くろがね…?は、お願い、します。…小学校?も、行ってないです、から…」 大卒って凄いんですよね?と言わんばかりの微笑みを遊鳥にむける。 「…ジョーカー、さん…後で、だっこ…して、くれますか…?」 言外に、抱かれるのが嫌いではなかったのだと漂わせながら、ジョーカーとアリスを見る。 「…雪子さん…また、和服を選んで…下さい…」 治療はされたものの、まだよいとはいえない状態の雪子とオリヴィエールを見て。 「…また、後で…です」 二人は駆け出した。
アイゼンガルドは正直単体なら弱い。だがここまで数がいては簡単には動けないのが普通だ。 それを可能にするのが、二人分の視界情報をまとめた結果から導き出せる、予想。 七星のようにはいかないが、死なない程度の制度は出せる。 敵の攻撃を予想、カウンターを決めつつ離脱、その軌跡を二人は一つとなって生み出す。 時折避けきれない弾が体に傷をつけるが、あの時の雪子に比べればなんてことはない。 そして、あっという間に斬り倒したアイゼンガルドの数がわからなくなった。 …風で無理矢理動かした体は、もうガタガタだ。ジョーカーからのエンチャントがなければとっくに動けなくなっている。 だからこそ、多聞からの注意がそれた今、最後の魔力を振り絞り真空刃を放った。 防御されることが確定しているという代償で、相手の注意を引くために。 そう、その最大の隙に…仲間が地の人形を壊してくれると信じて。 身を守る風の全てを皆に託した。
?
【…大丈夫、です…多分】
そういえば、この企画もいよいよ終わりが近づいている訳ですが 悪夢の年末突入に伴い休止期間に入ったりした方が良いんでしょーか? 特にジョーカーさんはターンと年末が被ってお忙しいかと思います ご一報頂ければ休止期間を設けて落ち着いてから再開しますよ〜
到達した「劇団」の波が協会本部を蹂躙する。 日本の文楽が誇る会長以下精鋭人形使い達はこの場にいない。 残された人形使い達とエージェントによる決死の攻防戦が繰り広げられていた。 「この物量差、中年にはやや荷が重いな……」 司令室を死守する五十嵐副会長は窮地に陥っていた。 敵の主力たる機械人形はざっと百近い。対して戦えるのは自分のみ。 加えて傷ついた部下を守るという枷が彼を劣勢に追い込ませつつあった。 「ふははははは!! 脆弱なり五十嵐里実! 文楽の座頭(ざがしら)級も所詮はこの程度か!?」 熊手の如き巨大な鉤爪が五十嵐のからくり人形を襲う。 機械人形の銃撃を防ぎつつ、鉤爪はスウェーで回避。 B級エージェント達が仕掛ける猛攻によって反撃も難しい。 (何発か、防ぎ損なったか……) 腕、足、肩──水源の銃創から滔々と流れる血液。 からくり人形は丈夫だ。例え装甲を貫通しようとも、銃弾では直ちに機能停止に到らない。 ゆえに高い破壊力で瞬時に敵を倒すべく近接武器を重用する。 機械人形の装備する機銃はある種対人制圧用と言え、本体攻撃に有効である。 「とはいえ、会長達が戻って来るまでは、な……」 自分の背中には仲間がいる。 司令室の扉を、負傷した部下を守ってこそ副会長。 この状況を打破する為の「何か」を待つしかない己が恨めしい。 だからこそ命を賭した時間稼ぎが役割だと五十嵐は覚悟する。 「それが今際の言葉か? 確と受け取っておいてやるぞ!」 鉤爪が五十嵐の人形を捉えた瞬間、背後で黒牙の塔が建立した。 月面軌道上から亜光速で着弾したそれは本部最下層まで穿通。 展開する結界をぶち抜き、巻き込まれた機械人形「アイゼンガルド」が爆砕。 「な、なにが……!?」 突拍子ない出来事に劇団の人形使いも動揺を隠せない。 緩んだ鋭鋒は致命的な隙を生み、優勢の戦局に亀裂を走らせる。 サングラスの奥で光る双眸は反撃に転じる機会を逃さない。 「君達は、強い……だがッ!」 刀を構えし人形は、五十嵐からくる操り人形。 漆塗りの着背長、八尺の巨躯、草摺鳴らして主君に侍う。 赤い面具が前を向き、鞘から得物を引き抜けば、玉を散らせる氷の刃。 得物の名は、村雨。 振るうは、機巧戦術人形。 「甘輝館(かんきやかた)──!」 水気を放つ聖剣が眼前の敵を一刀の下に伏せる。 返す刃にて人形数体まとめて一文字で裂いた。 これよりは五十嵐里実の独壇場。 一騎当千の活躍と相成りまする。
「その程度で我らの優勢が覆るものか! 刻んでやれセイヴ・フェリスッ!」 両腕に巨大鉤爪を備えた人形が右手で薙いだ。 敵の一撃は長腕も相まってリーチが縦にも横にも広い。 鉤爪は敵の動きを制限し、また敵を捕える網の役目を果たす。 連続攻撃ともなれば敵の出方を止めるのは容易い。事実そうだっ"た"。 「からくり戦術七つ道具──」 ぎゃり──と金属音を散らしながら巨躯の鎧武者が懐に潜り込む。 右手の村雨と左手の鞘で鉤爪を押し退けて強引に中央突破。 同時に胴が割れ、内部より丸鋸が顔を覗かせる。 「──颪車ッ!」 回転する歯車が鉤爪の人形を刻み、すり潰し、粉々に破砕。 次いで側面より接近する二体の敵に対し、戦術道具の四番を解禁。 「戦術七つ道具、紅流し」 甘輝館の背中から二本の副腕が伸びた。 蠍の尻尾の如きそれが伸縮し、肉薄する人形を突き刺す。 からくり人形の大半には魔力を運搬する霊液マナ・ブラッドが流れている。 この液体を失えば必然エネルギーを送れず、人形は機能を停止させる他ない。 「南無三ッ!」 巨大な注射針である副腕の先端が装甲を貫き、ポンプの力で液体を吸引。 副腕のスリットが開くと、吸い出した大量のマナ・ブラッドが噴水となって戦場に降り注いだ。 霊液を失った敵性人形が小刻みに揺れながら地面に崩れ落ちていく。 (禁煙中でなければ、ここで一服いきたいところだがね……) 慣れ親しんだニコチンとタールは、愛娘に嫌われる要因でしかない。 自家用車が煙草くさいと乗車を拒否られた日を中年は生涯忘れないだろう。 染み込んだ思い出はファブリーズでは拭えなかった。 「さて。鍛え鍛えし人形使いの実力、とくと御覧に入れよう」 中指でサングラスを押し上げて静かに見得を切る。 突き立つ黒犬の牙に呼応するように反撃の狼煙が上がった。 【新スレの保守がてらに没ネタを再利用して一筆したためた訳ですが……】 【……その必要がなさそうなのでここに捨てます。はい】
【
>>424 スレ立てありがとうございます! 気にしなくて大丈夫ですよ〜】
430 :
湯鳥 :2014/12/29(月) 14:05:30.33 0
>>426 【お疲れ様です
僕としては年末進行ということで少しの間ストップしてもよいかと思います
お世話になってばかりで申し訳ないです】
>>430 お返事ありがとうございます
余裕をもってクリスマス前くらいに確認しておけばよかったですね、すみません
それでは【からくり人形劇(仮題)】を1/12(月)まで一時休止とさせて頂きます
なお1/11(日)〜1/12(月)にかけて生存確認の点呼を取りますので、どうか反応お願い致します
皆さん、よいお年をっ!
■〓≡=-┏┣┫┛-=≡〓■ からくり人形劇 ■〓≡=-┗┣┫┓-=≡〓■ 【トランプ・カード】 『て、てめえ……何をしてやがる!? 魔術師ィィィィーーーーーーッ!!!!』 「"宣誓"した通りさ……オレとアリスは、お前とフィロメナを殺せない」 "シロガネ"の破壊、"オリヴィエール"による戦闘。 自己制約宣誓証文の記述は、その何れにも制約を課していない。 背を向けた魔術師は、ダークロイヤルを口の端に銜えて、静かに火を点けた。 『何をしてるって聞いてるんだッ! やめろよ……やめろやめろやめろ。やめろってんだよォ!!』 「―――悪いが、それは出来ない契約だ」 『この……死神がァァァァァァアアーーーーーーッッ!!!!』 テーブルの上でも、ステージの上でも、ベッドの上でも……たった一つ、変える事の無い流儀。 それが切り札であれば、常にポーカーフェイスで場に出すのが賭博師だ。 故に――――紫煙の死神は笑わない。
【アリス・イン・スティールランド】 『…私達は、周りを』 《ええ、よくってよ……そうだわ、こういうのはどうかしら。 私とマリア、どちらがたくさんの花を摘めるか競争するの》 『…くろがね…?は、お願い、します。…小学校?も、行ってないです、から…』 《あの高嶺の黒い花は……それがいいわね。 ジョーカーくらい背が高くて、彼よりもプライドが高くて、 もののついでに、学歴も高いユトリに任せておくことにするわ》 『…ジョーカー、さん…後で、だっこ…して、くれますか…?』 「―――ああ、今夜は大人の抱っ《この伊達男と目を合わせてはダメよ、マリア》 「お前は、本当に良く出来たドールだ……アリス。 舞台の最後くらいは、とっておきの衣装で踊らせてやる。 "リミテッド・ミスリル・クラフト"―――コード"破壊するもの(ブレイカー)"」 《――― I am the doll of theatrical night.》 極彩色のプリズムに包まれたドレスアップ―――魔術護符人形のエーテルトランス。 夜色のゴシックドレスの上に真紅のオーバーコートを装う破壊人形が現界した。 髪を結い上げた少女人形は、不服そうに対魔導術式防護外套の裾を摘む。 《……ひとつ尋ねたいのだけれど、この最低なドレスを選んだ理由は?》 「余興の勝負とは言え、マリアに華を持たせてやりたいのさ」 《了解したわ。地獄に落ちなさいマスター》 国籍不明の意匠を備える双剣を両手に投影。 紅衣の破壊者は、風の魔力を纏って駆け出した。 大切なお友達に負けないように、鋼の庭で舞踏する。 《まークン、聞こえていたわね? ……結束バンドの貯蔵は充分かしら》 背中で語るゴシック・ロリ。 その表情は想像に難くない。 "―――ついてこれるかしら?"
【還りゆくモノ達(X) ― Anamnesis ―】 『お兄さん……?』 「あの頃に比べて、ずいぶんと寝相が良くなったんだな……雪ちゃん」 だが、それでも――魔術師は独白する――腕の中の少女の、寝顔の愛らしさだけは相変わらずだ。 左眼に宿る月が貯蔵可能な魔力を量的に扱うには、文字通り天文学的な桁数が必要になる。 極限の能力の代償として、充填期間中の記憶を同時に封じる、それ故の"魔眼"だった。 次の解放の時を迎えるまでは、また覚めない夢を見続けるコトになるのだろう。 「当たり前だが……人形ってのは、ヒトのカタチをしてるもんだ。 それが何故なのか、今のお前なら分かる筈だ。 爺さんが見込んだ、お前になら」 ネクタイを外して頭に巻き付ける。眼帯代わりだ。 銀十字のタイピンは、そっとセーラー服の襟元に留めた。 またいつか、オレはお前を忘れても、お前がオレを思い出せる様に。 「そうさ……"人の想い"を宿すためだ」 意志を持たぬ人形が、数の暴力で押し寄せる。 暴力に対抗できるのは、それを上回る暴力だけだ。 そして人形師は、魔力(ぼうりょく)にだけは自信があった。 『さあ! 皆仲良く楽しく舞台から降りようぜ! 地獄はあったかくて心地良いからよぉぉぉおおお!!!!』 「……ああ。お前は、いつも楽しそうでいいな、多聞。 姫君の雪肌よりも、あったかくて心地良いってんなら―――」 モード"E.F.B."のレイズアップが、フルカウントに到達する。 "エターナル・フォース・ブランネージュ"……敵性人形は死ぬ。 「―――いいぜ、オレが地獄(そいつ)を抱いてやる」
【機動からくり武闘伝オリヴィエール】 「……いいか、雪子嬢。確かに多聞の声は大きい。だが……奴は所詮、ソリストだ。 そして、オレとお前の二人の声量(ちから)を合わせれば、誰であろうと敵じゃない」 少女の傷を癒したメジャー・アルカナの六番が逆位置に反転する。 [XT.The Lovers]―――暗示するのは誘惑と不道徳、そして精神の解放。 「さあ、最後の仕上げだ。寝ぼけてるうちに、何も考えずに叫べ!!」 魔術師のペルソナが道化師のソレに変わった。 我等が心、明鏡止水―――されど重ねた掌は烈火の如く。 この期に及んでは、からくり兵器戦術運用国際条約第五条も意味を成さない。 「行くぞ……!! 流派"早乙女無敗"――――最終奥義(ファイナルアーツ)」 身勝手な道化師は、少女の途惑いも恥じらいも黙殺する。 愛する存在の全てを包み込んで、ただ強く抱きしめた。 手を取り、その白く華奢な指に、己を深く絡ませる。 「二人の、この手が真っ赤に燃える――…」 繋いだ手の中に何を望むのかは、少女の喊声に委ねられた。 だが、魔術師が掴み取るモノならば決まっている。 具体的には、成功報酬の二億だ。 「エターナル――…」 当代のマスターによる凛々しくも可憐なコールに応えて、 質量を持った残像(フォースあるヴィジョン)が腕組みをして現界。 舞台の幕に手を掛けたオリヴィエールに、人間が持つ最も尊い力を与える。 「ブランネージュ!!」 [▼A]―――刹那、十二天将・玄武の防御結界に刻まれたハートのエースが爆熱する。 スートと同じ形状に開けられた風穴は、その甲羅と神霊核を貫通した。 無明と無間の奈落へと墜ちゆく"地の人形"の守護星。 その星の終わりに―――――人形使いは、刻の涙を見る。 ■〓≡=-┏┣┫┛-=≡〓■ からくり人形劇 ■〓≡=-┗┣┫┓-=≡〓■
【……了解だ、ゲームマスター。 ああ、休止期間を設けるのはいいが――― 別に、レスを投下してしまっても構わんのだろう?】
【──ええ、遠慮はいらないわ。 がつんとレスを投下してあげて、ジョーカーさん ……って、Fateはあんまり知らないんですけどね】
【…ラブラブ?】
【あけましておめでとうございますよ!?】
【…全員…来ちゃった】
【…休止終わったら…遊鳥さん、から…かな?】
【その通りでございます。 今はちょいビジーで書けていませんが 順調に行けば休止明けより早く投下できるかもです】
【少し遅れましたが、あけましておめでとうございます! 何かと忙しい年末年始ですけどもまったり完走しましょー。再開前にまた来ますね!】
2ちゃんがサイバー攻撃に巻き込まれて調子が悪かったみたいですが、もう大丈夫かな? お久しぶりです。そろそろ再開の時期ですよー。一応、生存確認を行います 皆さん手間かと思いますが一言書き込みお願いしますね! なお、諸事情で今週中にターンが私に回ってきても投下は来週以降になります なるべく早く返す予定ですが、あらかじめ宣言しておきます。はい
【…寂しかった…です。ここがいっぱい…なったら、次に…ですか…?】
447 :
湯鳥 :2015/01/11(日) 10:20:52.82 0
【生存報告です!そして本日中には投下致します!】
【他者が己に差し向ける信用とは、一本の枝に似ている。 その枝に咲かせるべき花は美しく、その枝が結ぶ果実は甘い。 花の名は"誠意(Good Faith)"であり、果実の名は"裏切り(Good Luck)"である。 ――――民明書房刊『声に出して忘れたい師匠迷言集(絶版)』より抜粋】
【みなさま生存報告ありがとうございました!】
>>446 はい!ここが埋まったら次スレに移動お願いします!
私もゴールイン間近で胸がドキドキ。今暫くのお付き合いをっ!
【…すぐ、雪子さんの番…のような…?】
【大変申し訳ございません リアルの方でどうしてものっぴきならない事情があり、 今週末まで投下ができそうにありません。 週末には書けるようになるかと思いますのでなにとぞお待ちをお願い致します】
【いえいえ、ゆっくりで大丈夫ですよ〜】
【…わくわく…】
【申し訳ありません、ちょっと投下が遅れそうです。週末以降になるかも……】
456 :
湯鳥 :
2015/01/20(火) 01:15:45.60 0 【ご無理はなさらず!】