混沌とした異空間の中で携帯のジングルが鳴り響く。
表示された名前は「冥瞳星羅」。現在地はアジトであるとの内容。
本文を見るに疾風、そして比良坂もそこにいるようだ。
これで男の求める人物の居場所はわかった。だが厄介な事に私は場所を覚えていない。
...これは計画通り、ととる事も出来るのだが。
「どうする?」
白河にメールの本文を見せる。この情報だけで場所は特定できまい。
行く事が出来るかは私のあずかり知る所ではない。重要なのは二人の存在。
このメールに返信するだけで、先ほどの問いを二人に届けることができるだろう。
【隼鐘悠綺:白河の返答待ち。回答次第メールを送る】
>>663 >「……場所、借りていいか…」
「やる気になったね?いい顔じゃん。こっち来て」
部屋に連れて行く。
「ここよ。ってちょっ!アンタいきなり何してんの!」
いきなり制服の上のほうを脱ぎだした!ちょ、アタイ女なんですけど!やめてよね…対応に困るじゃない。
「よ、詠未?骨はどう?」
「何とかいけそうかも。薬が効いてきたよ、骨のでっぱりも消えてるし。特訓に付き合うくらいなら…なんとか」
「おっけー、じゃああとよろしくね」
*+☆+*――*+☆+*――*+☆+**+☆+*――*+☆+*――*+☆+*
いきなり任されちゃったよ…どうしよう。
そうだな、まずは剣の耐久の強化とやらをやらせてみるか…
「先輩、すみません…何か剣を出してみてください。というわけで星羅さっそく何かぷりーず」
「あいよ〜」
出てきたのは鉄の棒だ。どうやら廃材とのこと。
「これで剣を作ってみてください。そして、その剣で僕の鎌鼬をすべて『斬って』ください。避けずにね。
僕の鎌鼬は本気を出せばこの辺の壁くらい簡単に切り刻めますけど…それこそ人一人くらいなら簡単にミンチにできますけど、死なないでくださいね?
返事は聞きませんよ、ではさっそく行かせてもらいます!」
獣の姿に変身する。少しスネが痛み出したけど、まあいいか。
「ウグルゥゥゥ・・・ウラァッ!!」
高速で腕を振りまくる。鎌鼬の威力はさすがに落としてはあるが、風速は最大で撃つ。
最大の風速で撃った鎌鼬は本人ですら目視することはできない。それこそ、感じることのできない…真の『鎌鼬』。
気づいた時には血が出てる…妖怪鎌鼬の劣化版って奴だ。
その分威力制御等が難しいけどな…さあ、斬れるもんなら斬ってみなぁ!この『俺』の鎌鼬をさぁ!アヒャヒャ!!
>>665 でしゃばってないならよかったです、ご理解ありがとうございます!
>>666 タッチの差でゾロ目取られたああああ!www
くそうw
>>666 少女に見せられた携帯。メールの内容を理解するのに時間がかかる。
>『件名:今疾風と一緒だよ
内容:めっちゃ強い奴にやられそうになったから詠未がアタイ達を連れて例の地下室に連れて行ってくれたんだけど、
アタイたちボロボロだし、疾風がアンタのこと置いてったって聞いたよ!?ひっどいわよねぇ〜、ってことでこっちに来たいなら
部下をよこすけどどうする?』
(今時の女子高生のメールはよく分からん…が)
「部下をよこしてくれる、らしいな。なら分かりやす場所に一度出るか。職員室か保健室か…。」
「なら保健室はどうですか?あそこは戦闘禁止エリアですし。」
と御有楽が答える。
「ならそれで。鶴吹と御有楽も着いて行くといい。俺は少し異空間を借りて休む事にするよ。」
考えれば昨日から一睡もしていない。御有楽のおかげで体力は全開だが、眠気はべつだ。
>>669 「...了解。」
『件名:Re:今疾風と一緒だよ
使者の派遣を希望する。保健室にて待機
追伸、もし疾風と比良坂が更なる強さを望むのなら
私の他に三名の同行許可を出してほしい。』
送信して携帯をしまう。さて、今度は移動だ。が...
「...そうか」
ある事に気付き小声でつぶやく。
そう、ここは異空間。どこにでもつながるワープホール。
重い荷物を背負って延々鳴子必要はないのだな、と。少しだけほっとした。
鳴子→歩くで。どういうミスなんだこれ...
アタイの携帯が鳴りだす。返信が来たらしい。
「どれどれ…っと」
>
『件名:Re:今疾風と一緒だよ
使者の派遣を希望する。保健室にて待機
追伸、もし疾風と比良坂が更なる強さを望むのなら
私の他に三名の同行許可を出してほしい。』
「三人…?いやぁ〜な予感がするなぁ。まぁ、いっか。そこの熱血と…暴れん坊〜、返信来たよ〜。
もっと強くなりたいならあと3人一緒に連れてくる許可くれってさ〜。アタイはいいけど、どうする?」
「俺は別にかまわねぇよ、どんな奴が来たって万一暴れようモンなら切り刻んでハンバーグにでもしてやらぁ」
「うぅ〜、怖いねぇ〜。疾風、アンタはどうすんの?」
とりあえず今のうちに部下3人にメールを送る。一人は連れてくる専用、もう一人はドアの警護。
最後の一人は…最悪な状況になった時の『記憶操作』を行うための能力者。この場所だけは絶対にバレたくないもんね、
アタイの絶好のサボリ場所…もとい隠れ家だし。ここはアタイらの聖域、汚されたくも、怪我されたくもないんだけど…
詠未のやつ、容赦なしね。片方が怪我しそうだわ…
もう薬ないわよ…?
>>674 www
dmですw
マジレスするとスペース押したついでにN押しちゃって
あとはUとOが少し誓いから打ち間違えとかですかな?
「そういやァ、さっき何だか旧校舎の中が騒がしかったなァ」
誰に話かけるでもなく、大きな声を出しながら黒響は旧校舎/旧保健室に向かって歩き出した。
「戦闘でもあったんかなァ〜っと。ん?あれは…。」
黒響の目線の先には白河 蛍の姿が。
「あ!し〜ら〜か〜わァ〜!!!」
黒響は前回の戦挙において白河に敗北し、会長の座を取り逃がした(と思っている)のだ。
「あの餓鬼ィ〜!!消えろォ〜!!」
有無を言わさず【悪意咆哮】を放つ。が、直撃する前に白河(と他数名)の姿が消えた。
放たれた【悪意咆哮】は旧保健室の壁に当たり、旧校舎の半分を吹き飛ばした。
「なんだァ!?消えやがった!!」
驚きと怒りを隠しきれない黒響。
「グゾォ〜!!!何処にいっだァ〜!!!」
「バードウォッチングは楽しいねぇ…」
俺は事の成り行きを眺めていた。メールの一つや二つ、俺が傍受できないわけがない。
その程度の設備なら買えたし…
上で何やら轟音が響いてる。誰か暴れてるのか?俺の後輩たちのカメラ映像を一通り眺めて、俺は新しい商売相手に目星を付けた。
「ほぅ…3年の白河…それに鶴吹かァ…。白河は食えなさそうな奴だが、鶴吹ならまだ…丸め込めそうだなぁ。いいカモ…になりそうだが、
こいつが情報を買うタイプか買わないタイプか、こればっかりは分かんないからなぁ…。とりあえずリサーチを続けてればいいかぁ」
相変わらず轟音が響いてる。集中しづらいけど、アジトの一室…所詮「多目的スペース」―当人たちはお遊戯スペースと呼んでいるが―の真下を借りてる身だ。
文句を言えない立場なんだよなぁ。
「…ん?これは…まぁずいぞぉ?」
急いで階段を駆け上がる。隼鐘の言う「ツレ」ってこいつらのことだったのか…!
ピピッと通信音が鳴る。
「ザー…ザー…
私が校長である。どうした?」
「はい、校長。ワイズマンQ部隊の隊員のうち一名が何者かによる襲撃を受け、『消滅』しました」
「そうか…誰が消えたかわかるか?」
「第63期生、最終学級が3組の渡部ヤマトです」
「…そうか…ヤマトが…ズズッ…まぁいい。了解した。そのまま作戦は続行できるか?」
「…あ、はい。可能です」
「ならば作戦を続行せよ」
「な、なんだこれは!?」
「どうした!?」
「旧校舎が…半分消えています」
「なにぃ!?すぐに修復班を向かわせる。お前たちはヤツを…初代校長を探せ!」
「了解!」
校長は鼻をすすった。声もその刹那の間は少し涙ぐんだ様子だった。彼に何か思い出があったのだろう。
…可哀そうに。
【白河 夢の中】
「食らえェ〜!!【悪意咆哮】」
(でかい!?受け来れるか?)
俺は左手を差し出し、「【衝撃】ぉ!」
体内を衝撃が流れる。体が爆発しそうになるのを必死に堪えながら、右手を奴に向ける。
「【排出】ぉ〜!!」奴のエネルギーが奴に跳ね返される。
「ぬ!グゥォォォ!!」
この世の物とは思えぬ声を出し、黒響は倒れていった。
「貴様…覚えていろ…よ。必ず殺してや…る…。」そのまま黒響は意識を失った。
「はぁはぁ…。これで残るはお前だけだぞ。」
『後天性能力者にしてはなかなかやりますね。』
(何だ!この威圧感は…。気を抜くだけで意識を失いそうだ。)
『それに私の前でまだ倒れずにいる。これは素晴らしい人材ですね。』
(どう言う事だ?これが奴の能力なのか?)
『どうです?私の下で働きませんか?貴方なら副会長を任せられそうです。』
精一杯の力を降り絞り、俺は奴に向かって突っ込んだ!
「断る!!」
…俺はそのまま意識を失った。
681 :
鶴吹恭 ◆uuhSmK027Y :2014/04/08(火) 22:26:27.32 0
「了解しました〜。異空間の入り口は閉めちゃっていいですか?
連絡頂ければ開けますから。邪魔者は入れない方がいいでしょ?あ、メアド教えます。」
白河先輩の言うことを聞かない訳が無い
て、事でメアドを教えた
実は白河先輩のメアドは取得済みなんだよね
言ったら引かれるか
「おい!緊急事態だ、冥瞳、ちょっといいか?」
「何よ、アンタ急に…」
コイツが語尾を少し伸ばす独特なしゃべり方をしない(例をあげれば「そうかぁ」等)時は大抵ガチで急いでる時だ
ってアタイは知ってる。そりゃコイツとは長い付き合いだからね。
「緊急事態だ。隼鐘のツレ、お前らが交戦した3人組の可能性が超絶高いぞ…!」
「アンタ、ツレってどこでその情報を…あー、例のメール傍受機?趣味悪いわよアンタ。
それは置いといて、それってガチ…だよね。どうすっかなぁ〜…まあ、アイツらに戦う意思がないならいいんだけど…
それを祈るしかないかな」
「そうか、分かった。続報に期待せよ。んじゃぁ〜なぁ」
「その厨二病みたいなクセ直さないんだね」
「うっせ、これは治らねぇもんなんだよ」
くだらないやり取りをしてから、滝山は戻って行った。
…祈るか。
683 :
城音零 ◆uuhSmK027Y :2014/04/08(火) 22:45:30.95 0
>>677 「ちょっと黒響!なに校舎ぶっ壊してんのよ!!」
やっと追い付いて息を整えたらこの有り様
いくら白河が憎いからって校舎を壊して良いワケじゃないの!と言うけれどまるで聞く耳持たないわね
「校長がかわいそう。校舎を修理しなきゃいけないじゃない」
グルグルと怒りを露わにする黒響と半壊した校舎を交互に見て言った
初めて白河先輩の笑顔を見た…。屈託のない、子どもの様な笑顔。
年上だけど、失礼ながら可愛いらしい笑顔。
二人に着いて行き、再び異空間へ。
急に白河先輩が思いついたように口を開いた。
>「鶴吹、御有楽、二人とも彼女に着いて行ってくれないか?」
「え?…えぇ〜??」
余りにも突然な発言に戸惑う。
>「剣と…比良坂って言ったかな?あの二人に強くなりたいか問うて来て欲しい。もしその気があるのなら、この空間に連れて来るんだ。」
(さっきまで敵対してたのに?そんなの受け入れられる訳が…)
>「了解しました〜。異空間の入り口は閉めちゃっていいですか?」
(え?鶴吹さん、即答しちゃった!?)
それなら私も断れない…。
「…分かりました。けど、多分断られますよ…。」
二人に聞こえるか聞こえないか分からないくらいの声で呟いた。
鶴吹さんと隼鐘さん、それに私は保健室の前に現れた。
>>684 「まったく人使い荒いよなー、ボスも」
「ほんっとそれなぁ〜。ガチ俺たちをなんだと思ってんだよ」
「部下じゃね?」
「パシリだろ」
「いやいや、嘘でもダチって言えよ」
「「「ハハハハ」」」
俺たちはニコイチ…ではなくサンイチってやつかな?三人で一個みたいなもん。
俺ことタイゾウが転移系の能力者。右隣のジンベエが身体強化系の能力者。
んで、左隣のタクムが記憶操作系の能力者だ。
俺は思い浮かべた場所へ自分の指定した人間および自分を移動させる能力がある。
本来なら目隠し持った奴が保健室に行くべきだったんだが、どうやら途中で襲われたらしい…残念だ。
ジンベエは用心棒。タクムは最悪の場合、アイツらの記憶を消すために同行してる…
んでたまたまおれたちはみんな仲良し。
「えっと…女の子が3人っていうこの合コン会場みたいな状況は如何してくれるのかな?」
「よせよタクム。相手は戦闘に優れた能力者だ。1年のくせに1日目で絞られたような顔つきじゃないとこを見ると…
分かるよな?」
「わかってるよ。別にナンパするわけじゃねーんだから」
「俺はジンベエ。よろしく頼む」
「おい!抜け駆けはよくないだろ俺にも自己紹介を」
「あーお前らは黙れ!ったくもー何してんだよ。とりあえずお前らを今からアジトへ案内する。
全員で手を握り合うぞ。いちいち人数指定するのめんどくさいからこれが手っ取り早いんだ」
全員で手を握り、輪を作る。はたから見て見ればただのなかよしだけど、実際は違う。
「行くぞ、それっ…【転移】!」
刹那、周りがフェードアウトし青白い世界になる。そしてそのあとすぐにアジトの目の前に俺たちは移動した。
「ついたぞ。おーい、星r…ボスはいるかぁ〜?」
「アタイが言ったらキレること言ってみて」
「スリーサイズ教えろ」
「テメアタイの胸が小さいのわかってて言ってんのかゴルァ!
…茶番は後にして本人確認完了。ういしょっと…」
一瞬ボスの顔が曇った。
「まあ、入んな。立ち話も…なんだしさ。ちょっと汚いけど許してくれる?」
俺たちはココで外の見張りにつくことにした。
/*今日からすでに朝早いのでもう寝ます
/*6時30分から支度して8時までに満員電車に突っ込んでいかないといけないのです…
/*通学はつらいです。゚(PД`q。)゚。
>>667 「……この鉄を剣化するのか、任せろ。」
鉄の棒を剣に変える。
(これで鎌鼬を斬れ、か…まぁ出来ない事はない…か。)
その考えは間違いだった事を理解する。
鎌鼬は斬れた。斬った、ではなく『斬れた』。
(速い…!?)
詠未の動きからかろうじて剣を合わせるが、ギリギリ当てるだけなので二つに別れた鎌鼬が体の両脇を通過していく。
開始から2分、段々と服の切れ目と細かい切り傷が増えた頃、鉄剣が限界を迎えた。
「ぐっ!?」
最後の鎌鼬を捌き切れず、ギリギリで避けようとするが太ももを切り裂かれてしまう。
「くそ…強度も反応も全然ダメだ…!」
>>675 >「三人…?いやぁ〜な予感がするなぁ。まぁ、いっか。そこの熱血と…暴れん坊〜、返信来たよ〜。
>もっと強くなりたいならあと3人一緒に連れてくる許可くれってさ〜。アタイはいいけど、どうする?」
「……あぁ、構わない。大体誰が来るかは予想出来るがな…」
>「緊急事態だ。隼鐘のツレ、お前らが交戦した3人組の可能性が超絶高いぞ…!」
ほらみろ、予想通りだ。
強くなりたいなら連れて行け?何をするつもりだ…
【規制だと…!?】
>>685 冥瞳さんに招き入れられて少し戸惑っていると、ツカツカと鶴吹さんが入って行った。
私も慌てて後ろ着いて行き、中に入った。
「お邪魔しま…す…。」
恐る恐る中を除くと、剣さんとイタチ?が戦っていた。多分特訓なんだろう…。
「あのぉ…、白河副会長から伝言が…。」
(あ!元副会長だった…。)
その言葉な剣さんとイタチ?が反応した。成る程といった感じなのかな?
私の言葉を遮って、鶴吹さんと隼鐘さんが説明を始めた。
(あ!二人とも凄い傷…。)
ふと二人を見て気付いた私は、二人のダメージを取り除く事にした。
「すみません…私の力では傷は塞がりません。でも出血と痛みは消えるはずなんで…。」
本当に私はみなさんに比べて非力だと痛感させられた。
>>683 黒響の怒りが少し落ち着いた頃、後ろの人影に気づく。
「なんだァ、零のやろうかァ。俺に何かようかァ?」
半壊した校舎…。これが黒響の白河に対する悪意そのものだろう。
「あのやろォだけはぜってェ〜俺様の手で消してやるゥ!!」
そんな事をしたら会長に消されるわよ…と言う言葉は黒響の耳には届かないようだ。
「会長も甘いよなァ〜。能力者が邪魔なら全て消しちまえばァいいだけのことだろうに。」
多分、黒響にも計画の全容は伝えられているはず。だが理解はしてないようだ。
「あァ〜!イライラする!取り敢えず目に付く奴を片っ端から消して行くかァ!」
半壊した旧校舎背に、黒響は新校舎へと歩き始めた。
ごびゅう 【誤謬】
―― 一見正しいように見えるが、実は誤っていること。間違い。詭弁。
【過去のどこか。狭い議場。ひしめく聴衆に一人の男が訴える】
「異能……それは見えざる者(名無し)によって与えられる才能。
異能……それは圧倒的な優越。
異能……それは人類の可能性でさえある。
それがどうだ。蓋を開けてみれば……どうだ。
目の前に広がる異能の世界とは、なんのことはない。
血と暴力の世界、金と権力の世界だ。
異能者は己の力を誇示するために他者を蹂躙し、
管理者はまるで、彼らの存在を世界に喧伝する奴隷商だ。
生徒の為の"戦挙"は、ただ異能の品評会に成り果てて、
そして我々は、売られた先の研究機関で一生、籠の鳥を演じるだろう。
ここは無法地帯でも、奴隷市場でもない。
ここは学びの園、ただの学校ではなかったのか。
……こんなことは誰が許そうとも、私は決して許さない。
全ての狂いの根源は、この異能の力にある。
だから私は、この力をこの世から消し去ってやる。
世界から歪なものを取り除いてやる。
誰も彼もから、根こそぎ奪い尽くしてやる。
一切合切平らげて……無論、この私自身でさえもその例外ではない。
私は異能を喰う。"異能だけを喰い尽くす"。
お前たちの生命に、なんの障礙を残すことなく、異物を残らず拭い去る。
だから恐れるな。
ただ戻ってゆくだけだ。"普通の人間"に立ち還るだけだ。
お前たち自身の輝きは、私ごときの異能によって、いささかも減じられることはない。
それでもまだ未練がましく、しがみつきたいか?
異能の力だけが、身を立てるよすがなのか?
それはお前たちの本来の価値ではない。
それはただ"異能の価値"にすぎない。
労せずして、偶然、幸運のうちに手に入れた、ただ"贈り物(Gift)の価値"にすぎない。
それなしでは生きてゆけぬと言うなら、果たして"お前自身の価値"は、どこにあるというのか。
異能の価値が、お前の価値では決してないというのに!
異能は、進化への道標ではなかった。
異能は、退化への誘惑にすぎなかった。
これは避けるべき罠だ。乗り越えるべき試練だ。
聞け!
力にすがる全ての生徒たち、力に囚われし全ての生徒たちよ!
今こそ呪縛から逃れるとき、己の力で立ち上がるときだ!
暴力での支配(生徒会長戦挙)を終わらせ、利権へのしがらみ(学校の異能斡旋事業)は根本より断つ!
我々は人間である。
化け物でも、商品でもない。
我々は、"人間だ!"」
(
>>691の続き)
演説が終わる。
しかし、議場は静謐に包まれていた。
そこには満場の拍手も、熱狂的な歓声も、興奮冷めやらぬ聴衆の人いきれも、全くといっていい程、何も無かった。
ただ沈黙があった。
遠く位置する者の息遣いさえ聞こえてしまうような、深い沈黙があった。
謂わばこれは、失うための戦いであった。
失うことでのみ、未来を勝ち得る戦いであった。
だが、その場に立ち会った者たちの、誰もが肌に感じていた。
悲壮ともいえる冷たい炎の奔流が、多くの聴衆の心を席捲していることを。
零下の青い篝火が、聴衆の心を責め立て、また駆り立てる様を。
……切欠は、ひとつの小さな拍手だった。
そしてそれは同心円状に素早く広がって、圧搾音の連なりは瞬く間に狭い議場を埋め尽くした。
【旧校舎/旧物理室前】
黄昏夕日は考えていた。
忌引美鬼(
>>167)という女生徒のことだ。
彼女は現在の(名目上ではあるが)護衛対象でもある。(
>>330)
「そういえば忌引さんって、なんの研究をしているんですか?」
歩く夕日の後ろから、黎明あけのが質問した。
あけのは小柄な体を四脚パワードスーツに乗り込ませて、無骨なマシンを器用に操縦している。
機械がガシャンと一歩を踏み出す度に、ふわふわの桃色髪も上下する。
「確か……生命科学とか、生物工学とかいう分野で評価目ざましいと聞いている」
忌引は、異能の学園の中にありながら、異能とは別の才能を開花させている異例の女生徒だ。
彼女の研究は広く世間に評価されており、その成果は学会誌に取り上げられるほどである。
まさに"異能によらぬ価値"を体現している稀有な存在であった。
「彼女の論文が雑誌に掲載されたこともある。……私にはよくわからなかったが」
その雑誌は、自校の生徒が記事になったということで、有志から学校の附属図書館に寄贈されている。
しかし問題は、それが英語の専門誌だということだ。
当然、図書館を利用するような一介の生徒が読み込むにはかなり専門性が高く、夕日程度の知識では歯が立たなかった。
ちなみに、ある英語教諭がボランティアで和訳を試みたが、難解な専門用語が満載で結局、訳の話自体が有耶無耶になったという噂も伝わっている。
「彼女こそ、真に価値ある人間と呼べるのかもしれん」
話を聞いたあけのは、へぇー、と感心するような顔をした。
「生命科学って、要は生物の授業みたいな感じの内容なんですよね?
私たちが持っているような、生き物の"超能力"を解明するような研究だったらスゴイのに」
そしたら、私たち異能者の立場も変わってくるのかな。あけのは呟くように言った。
だが、夕日はその話があまり耳に入っていなかった。なぜなら、あけのの顔をじっと見ていたからだ。
(リスみたいだな……)
黎明あけのは、よくボケっとしている。
すぐ気が緩むというか、本質的に無防備な性格なのかもしれない。
今も口を半開きにして、「ふーん」とか「そうかー」などと一人でぶつぶつ言っている。なんだか間の抜けた感じだ。
彼女はどちらかというと下膨れの幼い顔立ちで、前歯も他の歯に比べて少し大きい。
そのため、平素より齧歯類の小動物めいた雰囲気を醸し出していた。
「……」
さすがに見られていることに気づいたのか、あけのは口を閉じてさっと窓の外を見た。ここはできるだけ顔を逸らしておくべきだろう。
「……理事会からのお達しもあったことだ。忌引女史の警護を理由に、暫くはここを拠点にしよう。
ただうろつくよりも、何かあったときに言い訳が立つ」
妙な空気を払しょくするように言い放つと、夕日は物理室前の廊下にどっかと腰を下ろした。長期戦の構えだ。
彼女たちの真の目的は、戦挙中の生徒を襲い、その能力を奪ってしまうことである。
それが生徒会長の"マスタープラン"だからだ。
奪い去る方法は会長しか知りえないことであったが、とにかく、このふたりはその計画に加担することに決めている。
特に黄昏夕日には、計画に協力する強い理由があった。
【黄昏と黎明:旧校舎/旧物理室前で生徒を待伏せる】
【白河 夢の中】生徒会室
『それが君の答えか。』
「ああ。あんたは間違ってる…。」
饒舌な演説を終えたばかりの会長に責めよる。しかしその言葉には怒りも憎しみもない。あるのは哀しみだけだ…。
「言いたい事は分かる。俺も能力に操られてた部類の人種だ。あんたに出会うまでは…。」
「だが…だからこそ能力に頼らずに闘う術を覚えた。能力を制する術を身につけた。それはあんたから教わった事…。」
「学校(ここ)を出たら如何なるかなんて、俺にはさっぱり分からん。けど、それを自分で見付けて行くからこそ、俺たちは人間じゃないのか?」
「あんたのプラン、俺は絶対に反対だ!強制的に能力を奪うってのは、個人の個性を奪う事だ!そんな事、他人が決めて良い事じゃない!」
「能力に囚われるのは心が弱いから。なら、そうならないように導くのが俺たちの仕事。奪う事じゃない!」
『…どうやら平行線のようだね。』
「…だな。」
(俺が救いたいのは、俺じゃない。もっとも力に囚われてるのはあんたじゃないか…。)
「ともかく、俺は認めん!これは次の議題にさせてもらうからな!」
俺は部屋を後にした。
【????】
(ん?ここは…?)
(そうか。ここに来るのも久しぶりだな。)
白ボヤッとした光が徐々に形をなしていく。
『久しぶりだな、蛍。』
「そうだな、いつ以来だっけ…。で、今日は何の用だ?」
目の前に現れたのは二つの尾を持つ狐。
『御主、あの少年達を鍛えるつもりか?』
「ああ、あいつらはあのままだと暴走しちまう。昔のお前のようにな。」
『…能力と術者が手を取り合うなど稀有な例だ。』
「あん?じゃあお前はなんだ?ただの物好きか?」
皮肉めいた口調の俺に気を悪くしたのが、そいつは背を向けた。
『我を御主を護りたい…。そう想っただけだ。御主が我にそうしたように。』
「ああ、分かってるさ。」
狐の頭をポンっと叩く。
「悪いのはお前達じゃない…。それを利用しようとする奴が悪いだけだ。それに…。」
俺は言いかけて止めた。が、それも意味のない事。こいつは俺なのだから。
「まっ、何にしろ俺はまだヤられる訳にはいかない!頼りにしてるぜ相棒!」
俺は【衝撃排出】にそう微笑みかけた。
設定は引き取るではなく渡すものかという心構え。
そろそろ容量もなくなってきましたね。
元々ここは1年前に立てられた過疎スレ(失礼)ではあったので、完走できたら万々歳かという雑感。(名無しが能力を考えてくれるスレにするという案もありましたが)
お話にしても、1スレ使いきるくらいが賞味期限かという体感はあります。
(敵役データ)
名前:生徒会長
性別:男
年齢:18歳
身長:177cm
体重:60kg
学年/部活等:高校3年生/生徒会戦挙管理委員会 委員長(元生徒会長)
容姿:
能力:
>>【Abillity Eater<異能食い>】
・対象相手の能力を喰う。
対象の能力を喰うためには、対象が無力化状態でなければならない。(気を失っている/深く眠っている/抵抗する意思がない、など)
抵抗の意志がある場合は、捕食は即座に失敗する。つまり、"わざと奪われようとする場面"を除き、基本的に他PCの能力を奪うことはできない。
喰われた対象は異能を失い、普通人へと戻る。
・喰った能力は自分の能力として使用することができる。
(※これはギミックとして、このスレ中の「せっかく名無しが考えてくれたのに使われなかった能力」を使える、ということを意味する)
しかし、能力を複数同時に扱うことはできない。別の能力の特性を維持したまま別の能力を使うことはできない。
能力Aを発動したまま能力Bを使う場合、能力Bが発現した瞬間、能力Aの効果は即座に消失する。発現する能力は常に1つ。
人物紹介:
「能力浄化」を掲げ、戦管委の一部を離反させた張本人。
生徒会長の仕事に携わる内、生徒会長戦挙がもはや異能の品評会と化しており、学校運営(理事会)が異能斡旋事業の一助としている事実を知る。
そういった理由で学友たる生徒同士が対峙し、血を流しているという状況に深い憤りを感じた彼は、学校への復讐をたくらむ。
「能力浄化」は校内の異能を一掃し、その能力を全て奪い、最後に自分の能力を自分の能力で消し去ることで完了する。
異能がなくなれば、戦挙も学校の事業も、その意味を失うと信じている。
……しかし、戦挙前後に"異能喰い"で多くの能力を取り込んだ結果、彼は"異能の塊"とも呼べる存在に変じている。
自身の存在は、喰った異能の存在に浸食され、限りなく薄くぼやけてしまっている。
その証拠に、彼の本当の名前を憶えている者はもはや存在せず、自他ともに「(元)生徒会長」というアイコンでしか認識できない。
外面は強い意志を持った人間のように振る舞っているが、既に論理的自我は失われており、
「能力浄化」への激しい妄念が脊髄反射的に彼を突き動かしているにすぎない。異能の亡霊。ボス候補1。
このキャラクターは最終的に必ず敗北し、破滅する。融和や和睦はない。彼はすでに亡霊である。
>>575 遅くなったけど、こんなのどう?
【異物吸出(ギフトキャッチ)】
第一形態…能力によるダメージや、能力を使用した事によるダメージを吸い出す。吸い出せる対象は「能力」による物だけなので、怪我や病気などによるダメージは不可。
第二形態…能力そのものを吸い出す。ということは…?
やっぱり黄昏さんが来ると話が進みますね♪しかも私の考えと同じ方向なんで助かりますw
>>697 ちょっと会長とかぶっちゃいますけど、これでいきます!裏設定もできそうですし(ニヤ
699 :
鶴吹恭 ◆uuhSmK027Y :2014/04/09(水) 19:47:26.76 0
>>685 >>688 「ちょっと汚いけど許してくれる?」
え。凄く汚く見えるのは私だけ?私だけか。
「それにしてもさっきの転移は便利ですね。私みたいに道具を必要としませんからね」
中に入りながら感心する
いや、まじ便利
「白河副会長から伝言が...。」
「あぁ!それね!忘れてたよ!」
御有楽さんが言ったお陰で何の為に来たのか思い出した
二人に伝言を教える
それと同時に御有楽さんが二人の傷を治した
へぇ、こういう感じの能力なんだね
傷口は塞がらないのか
ダメージだけを取り除けるなら私が傷口を塞いであげればいいんじゃない?
喉まで出かかっていた言葉を私は何故かは分からないけど飲み込んだ
700 :
城音零 ◆uuhSmK027Y :2014/04/09(水) 20:06:07.23 0
>>689 「何か用かって貴方は目を離すと学校の備品をすぐ壊すでしょう!!私が貴方を見張ってないと誰が見るのよ!!!」
少し怒鳴る
白河を消したらあんたが消されるでしょうが
この馬鹿
「能力者をすぐに消さないのは会長に考えがあるからよ。私たちは従うしかないでしょ」
そう、会長には会長なりの考えがあるから・・・
少々の沈黙
先に動いたのは黒響で旧校舎に背を向けて歩き出す
「ちょっと!待ちなさいよ!ねぇってば!!」
新校舎に向かっていく黒響を追いかけた
>>688 >「すみません…私の力では傷は塞がりません。でも出血と痛みは消えるはずなんで…。」
「痛みが引いてく…骨のあたりにずっとのこってた違和感も消えた…。ありがとう、いい能力だよね…
僕のとは違って誰かの役に立てる素晴らしい能力だよ…僕のは迷惑ばかりかけてさ…全く、やってらんないよねホント、アハハ」
僕もできれば支援系がよかったのになあ。誰かの役に立てれるような能力なら『俺』が出てくることもないんだけどな…。
「僕も同行していいか聞いてもらってもいいかな?この鎌、風を起こす専用のものではあるけど一応近接攻撃だって可能な程度の硬さはあるのさ!
試したんだけど壁に穴が開いたよ」
うっかり壁を壊したのをばらしてしまった。まあ、戦挙中ならいいか。
*+☆+*――*+☆+*――*+☆+**+☆+*――*+☆+*――*+☆+*
「アタイはまだいいかな。アタイにはまぁとっておきの策が…おっと、これは秘密なんだよね」
アタイは修行にはいかない。どうせそういう方には向いてないから。
それに…実はちょっとくすねてきた秘薬があったりして。まあこれを飲むかどうかはまだ考え中だけど。
/能力を募集中!
/暗黒酷命をより強力(相手に命令をする能力の強化だと嬉しいです、もしくはその発展だともっと嬉しいです)に、
/なおかつデメリットをより強く(反動が来るとかだとうれしいです)したものがほしいです!
/結局これしか方法がなかった(
白河です。
なら冥瞳さんも付いて来てはどうですか?白河の話の中にヒントがあるかもですよ♪
「ったく、何処行ったんだ岡辺の奴は...」
慌てて離脱したからか、跳躍の加減を間違えたようだ。
おまけにイタチの風に振り回され、完全に岡辺と離ればなれになってしまった。
...なってしまったものは仕方がない。正直言うと足場があるだけで戦闘の感覚はずいぶん違ったのだが。
「さて、先ずはこれからどうするかだな」
敢えて声に出して言う。こうすることで筋道がはっきり見えるのだ。
...言ってしまえばおまじない、癖の類いのものでしかないが。
そんな評価を胸のうちで一人繰り広げ、現状を整理することにした。
イタチとの交戦。あいつの能力は恐らく風を起こす力。同時に刃も生えていたが戦闘用かどうかはまだ分からない。
岡辺との離別。正直いって厄介だ。信頼も信用もしてはいないが、一人と二人じゃあ全然違うからな。
他は...思い浮かばない。参戦して間もないため如何せん情報が少ない。
方向性も全くたつはずもなく、ただ頭をかきむしるだけの作業となった。
「ぁあー... どーすっかなぁ」
ぶっちゃけると生徒会の戦挙そのものには興味がない。
俺はただ自分の力量の証明のために戦うだけだ。
ならば標的として最適なのは?
その1、あのイタチと決着をつける。
その2、近寄る相手を片っ端から叩きのめす。
その3...ライオットガン、あるいはワイズマン。
危険じゃないか?とも思う。彼らは異力せめぎ会う戦挙戦の抑止力だ。
力はより強大な力によってのみその勢いを収束させる。彼らの力量が半端なもので有るわけがない。
だが。天井を打ち破る。その響きだけで甘美な痺れが走る。力量の証明。相応しいではないか。
もっとも、探そうと思って見つかるわけでもないだろう。その逆境がさらに闘争心を掻き立てる。
晴天の下、照りつける太陽。一個人間であり獣の身を持つ男が、小さく牙を剥いた。
>>702 戦闘員じゃないからどちらにしろ修行をしても戦闘員になれないのです(´・ω・`)
あくまでサポート用のサブキャラ的ポジで居たいというか
>>704 では二人だけ連れて行きます!剣さん待ちたかったけど、先に始めちゃいましょう!
【黒磔誓承】
対象に命令を下す能力
効果時間の上限は「対象がどれだけその行為に対して嫌悪感を持つか」で変動するが最低で0.5秒は持続する
また、0.5秒以上の持続の場合でも術者はいつでも命令をキャンセルすることが出来る
同時に下せる命令は一つのみ。ただし対象の数は問わない
能力の発動には「対象の名前」を宣言した後に「行動の詳細な命令」を宣言する必要がある
例:「おい、止まれ!」→× 「○○、すぐに足を止めろ!」→○
「対象の名前」の宣言の代わりに「対象と目を合わせる」事でも能力の発動は可能。ただし宣言中に視線がそれれば無効。
「崖から飛び降りろ」「首を吊れ」「隣の男を殺せ」など生命に直接関わる命令は例外なく無効となる。
「隣の男を殴れ」「自分を斬れ」などの負傷を伴う命令は実行可能だがそれによって生命活動に直接支障が出ない範囲にとどまる
ただしこれら命令の効果時間中に対象が被った被害はすべて術者本人にも返ってくる
例えば「自分を斬れ」の命令で対象が自分の手首を斬った場合、術者の手首も斬れることになる
更に「止まれ」の命令で行動を制限されている途中に別の誰かに対象が頬を殴られた場合、術者も同様に頬を殴られる感覚を味わうだろう
>>701 >「痛みが引いてく…骨のあたりにずっとのこってた違和感も消えた…。ありがとう、いい能力だよね…
僕のとは違って誰かの役に立てる素晴らしい能力だよ…僕のは迷惑ばかりかけてさ…全く、やってらんないよねホント、アハハ」
「そんな事ないですよ!怪我も病気も治せないこの能力…。私何か戦いの中でしか役にたたない。」
私は自分の能力が嫌いだ。血清と同じでウイルスがいないと役にたたない自分の能力は、平和な世界には何も必要とされないのだ。
>「僕も同行していいか聞いてもらってもいいかな?」
「もちろん!剣さんと比良坂さんに来てもらうようにって言われでますから。」
本当なら冥瞳さんも来て欲しかったんだけど、本人が拒否したので、私たちはお二人を連れて異次元に行く事にした。
異次元について鶴吹さんが説明をしている。何でも時間の流れが違うらしく、異次元の1年は現実世界の1日だそうだ。
そして中で1年が経てば、自動的に出口が現れるらしい。
これは術者にもしもの時があった時の為らしいけど…。
鶴吹さんと冥瞳さん、それに私はこちらに残る事にした。たった一日でも情報収集が必要と判断したからだそうだ。
異次元の入り口から中で眠っている白川先輩が見える。しかし、剣さんと比良坂さんが1歩足を踏み入れると目を覚まし、
「…来たか。」とだけ呟いた。
その顔はおもちゃを与えられた子供のようにイキイキとしていた。
修行、ねぇ。声に出さずに呟く。
何を今更?既に戦挙は始まっており、そこから鍛練を始めて何になる?
何の理由が?彼ら二人を鍛えることはあの男にとって何かメリットがあるのか?
彼は何だ?戦挙権を持たない「特待生」をも従えるその力、目的とは何なのか?
考えれば考えるほど分からない。何故彼らを一瞬でも信用できたのかも分からなくなっていた。
あまりにも情報が少ない。あまりにも謎が多い。考える足掛かりが見当たらない。
けれど。それでも良いと俯瞰する自分自身も確固として存在した。
考えたところで分からない。分かったところで取る手立てもない。そんな存在ならいっそ放っておけば良い。
ならば彼らを思考の外へと追いやり、可能なことを可能な限りやるだけ。
「...外、出てくる」
現在の武装はそれほど充実してはいない。むしろ単騎で能力者と敵対するには不十分だ。
いつものゴーグルに付加したヘッドギア。移動補助の為のバックパックに脚部ブースター。
そして拳銃はじめ銃器が数丁。それが現地点での武装のすべて。
機動力に特化した装備群。遠距離攻撃に重きを置いた武装。
接近戦になれば?取れる手立ては離脱のみ。インファイトなどもっての他だ。
機動を封じられれば?装甲としては欠陥品の加速装置は鉄屑と化し、そのまま足枷になる。
だから。時間が空くと言うのなら。武装の増強は最優先と言える課題になると判断した。
前衛が居ないが故の結論。陽動と援護だけでは心許ないのだ。
もっと強く、もっと堅く、もっと疾く。そう、まだ足りない。
能力に開花して間もない筈の自分が次第に能力者としての感性に慣れていく。そんな実感を肌で確かに感じ取っていた。
【旧校舎/旧物理室(現・科学部部室)前】
ふと窓の外を眺めた黎明あけのは、旧校舎に向かって歩く男子生徒の姿を目に留めた。
のしのしと歩くその姿は、まるで大型の肉食獣が餌場を探してうろつく様を想起させる。
――その男とは、入江紅牙であった。
「お姉さま、日焼けしすぎの男子生徒がこっちにきます!」
廊下に座していた黄昏夕日も、あけのに促されて窓の外を覗く。
「いや違うな……あれは地黒だろう」
どうでもいい会話を交わしながら、夕日は算段をつけた。
まず、あの男子生徒は戦管ではない。
戦挙管理委員は、慣習として生徒会役員が自動的に引き継ぐものだ。もともと生徒会に足繁く通っていた夕日は、戦管の大半の顔を知っていた。
それに、様子を見るとあの生徒は単独で行動している。
誰と歩調を合わせるでもなく、堂々と、傲岸不遜といった趣で歩を進めている。
戦挙前半は計画に加担せぬ戦管を、後半は立候補者を中心に襲う、という計画ではあったが、結局は能力者全員を手にかけることになるのだ。
有利な状況を作れるのであれば、襲撃対象の区別を優先することもない。
「やるか。相手がひとりなら都合がいい」
コクリ、とあけのも無言で頷いた。
かの生徒が、この騒ぎに巻き込まれることには同情を禁じ得ないが、夕日がやるというのなら、やるのだ。
例え何を敵にまわそうとも、もう決めたことではないか。
渦巻く迷いを振り切って、今はやるしかない。もし手を緩めれば、それが夕日の危機を招くかもしれないのだ。
(しかし……油断ならんな)
夕日は男子生徒――入江紅牙の身のこなしを見て直感した。
ただ歩くだけにしても、その体捌きはしなやかにして力強く、爛々と輝く眼は油断なく周囲を探っている。
洗練された武人とは異なる凄み。
絶えず生存競争に曝されて、生き抜くことを常とする野獣のような生命力を感じる。
「人も鉄騎も、なんでも斬ったが……虎を斬るのはこれが初めてか」
夕日は静かに呟くと、素早く窓枠を飛び出して、入江の進路上にその身を躍らせた。
(
>>710の続き)
【旧校舎/裏庭】
>>703 入江紅牙
――旋風(つむじ)起こりて砂塵が舞えば、渦風(うずかぜ)すぎて、女が一人――
どこから現れたか、女は身に付いた砂埃を優雅に払うと、射抜くような鋭い視線を入江紅牙に向けた。
「いつから庭に獣を放すようになったのだ、この学校は」
女性ながら低音含みの、よく通る声だ。
女は、墨で引いたような漆黒の長髪を風に遊ばせ、入江の眼前に泰然と佇立している。
その眼には強い意志の光を宿し、背筋はまっすぐに伸びて、いかにも武人然とした風であった。
すらりと伸びた脚はしっかと大地に根を張って、何事にも揺るがぬという彼女の心構えを映す。仁王立ちだ。
女は手中の一刀、【千子村正】を地面に突き立てると、続けた。
一陣の寒風が彼我の間隙を吹き荒ぶ。
「私は戦挙管理委員、鎮圧係の黄昏夕日(たそがれ ゆうひ)という」
彼女の右腕に巻かれた"戦管"の腕章が、この発言を裏付けている。
しかし、今や一般の生徒にとって、その意味するところが従前と異なることは、本日の朝礼以降顕著であった。
「……ふん、戦管が既に一枚岩でないのは先刻承知といった顔だな。まずは君の名前を聞こう」
夕日は静かに言うのだが、その口調とは裏腹に、なにか反駁を許さぬような、勝手をすれば咎めるような、人を圧倒する妙な迫力がある。
【黄昏 夕日⇒入江:入江に名乗りを上げる】
【黎明あけの⇒入江:旧校舎/旧物理室前の窓付近に隠れて、入江と黄昏の様子を窺がう】
>>708 過去と現在の狭間=夢と現実の狭間に俺は居た。二日ぶりの睡眠は、俺の中に眠る感情を呼び起こした様だ。
その時、異次元の扉が開いた。
「…来たか。」
剣と比良坂の姿が見える。二人とも怒りと恐れ、期待と不安の入り乱れた顔をしている。
「そう身構えるな。俺の目的は戦挙に勝つ事じゃない。一人の男を止めたい…いや、倒したいだけだ。その為にはお前達の力が欲しい。」
ゆっくりとした口調で真実のみを話す。会長に教わった人心術をこんなところで使うとは…。
「お前達は強くなりたいからここに来たのだろう?なら利害は一致しているはずだ。」
二人の緊張が解けた。
−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
「先ずお前達、【能力】とは何だと思う?己の武器か?…それは間違いだ。
【能力】にはそれぞれ意思がある。その意思に自分の意思が取り込まれる事を【暴走】と言う。」
比良坂の顔が曇る。
「心当たりがあるようだな。先ずは自分自身の【能力】と語り合う事が大事だ。お前達は夢の中などで【能力】が形を持って現れた事はないか?」
二人は顔を見合わせた。
「それを【具象化】と言う。先天性能力者なら、【能力】に何年も語りかけて【具象化】させる事も可能だが、後天性能力者にはほぼ不可能だ。俺も後天性だからよくわかる。」
俺はポケットから丸い錠剤を取り出した。
「そこでこの薬だ。無理矢理【具象化】を起こさせる薬。原理は分からんが、二年の忌引美鬼と言う生徒が作った物のだ。」
かく云う俺もこの薬で本当の【衝撃排出】と出会った。
「お前達がすべき事は、自分の本当の【能力】を知る事だ。」
そう言って俺は薬を二人に手渡した。
>>711 「何時からだぁ?下らねぇことは訊くもんじゃねーよ。
『最初から』に決まってんだろ。異能も獣と大差ないだろ?」
近付くもの全てに片っ端から威圧を与え、その双眸で蹂躙するような荒々しい紅牙の威圧。
対して彼女はそれらを受け流し切り伏せるような、凛とした佇まい。
そんな真逆のオーラを放つ、目の前の女。戦挙管理委員と名乗った彼女は地に刃を突き立てた。
ライオットガン。向こうから現れたか。自身でも意識せぬうちに、口元に乾いた笑みが浮かぶ。
「二年、入江紅牙。...鎮圧部隊が何の用だ?」
風が揺らした襟元のファーが頸を微かに擽ってゆく。用件などどうでも良い。
ただ力を振るいたいだけ。此が与えられた本能だと解っていても、最早関係はない。
高圧的な彼女の言をものともせず、平然と答えてやる。彼女の迫力を正面から押し返す。
一人の武人と一匹の獣。聳え立つ旧校舎の前、二つの影が不敵に向かい合った。
>>712 >かく云う俺もこの薬で本当の【衝撃排出】と出会った。
「具象化…そうだ…思い出した。僕の能力はそもそもこんな形じゃなかった…」
>>311の頃を思い出す。あの時、【鎌股鼬智】と名乗る少年のような声をした何かに語りかけられた…
でも僕はそれを拒絶した。
当時のことを明確に話す。
「…というわけで僕はアイツに出会った。でもそれきりただの一度も見ていない…」
アイツ、元気かな。能力が変わると、やっぱり違う感じになるのかな。少し気になった。
「うーん…飲んだ方が確実だけど…飲んだ方がいいのかなぁ?」
そう訊ねた。
>>714 >「うーん…飲んだ方が確実だけど…飲んだ方がいいのかなぁ?」
「そうだな、お前は飲む方がいい。剣は先天性のようだから飲まなくても【出会える】可能性があるが、一度拒否したお前は次にいつ【出会える】かわからんぞ。」
「それと、自分の【能力】が自分に友好的だとは限らん。それなりの覚悟をしておくことだな。」