◆前回のあらすじ
武中さん朗報です、前スレでエレメントに関する重要な情報を入手しました
以下はエレメント怪人の大まかな特徴です
「金」→引きこもり 「水」→漂う小者臭 「雷」→潔癖症 「地」→高慢 「風」→自称クール 「炎」→空気
専門的な知識はともかく「地」はすぐ舐めた発言し腐るベレッタをぶっ殺すため部下を放ってきました
ドゥンドゥン鈴原を苦しめようじゃねえかって最中に自称未来人のデロリアンまで乱入する始末
色々と切迫した状況なのが、分かるだろう?
>>1 乙です!笑いました
さすが俺の作った怪人、まともな奴が一人もいない…
迫る怪人の凶刃に対し、デロリアンの取った行動は
「てぃ」
まるで木の葉を払いのけるように左へ受け流す。
それと同時に怪人の右側へ回り込んだ。
「一流にそんな杜撰なフェイクが通用すると?」
刹那、そう囁きかけると怪人の右肩に掌底を叩き込み、力の流れを左に向ける。
この瞬間で怪人の上半身は左に捩れ、骨格の稼動範囲外逃げたデロリアンに
本命の左で切りかかることは不可能になった。
「お前の未来は…ねぇよ!!!」
安全圏から渾身の力を込めた拳で怪人を殴り飛ばした。
「その腕、便利そうだけどよ…一人で立ち上がれんの?なんなら手伝ってやろうか」
倒れる怪人にそう軽口を吐いた瞬間、視界の隅にベレッタの姿を確認する。
>「こちら警察所属、異能犯罪捜査課の鈴原です。状況は把握できていますか?
> 現在敵は人質を取っており目的は一切不明です。俺は……人質救出を最優先に行動します。
> 尚、敵は既に幾人ものヒーローを葬っており、非常に強力ですので無理だと感じればすぐに撤退してください」
通信を聞いた瞬間、デロリアンは明らかに動揺したそぶりを見せる
「鈴原だって…マジかよ」
すぐさまデバイスでとあるリストを確認する
>「では、健闘を祈ります!」
「ちょっとま…クゥ」
確認を済ませ、鈴原をとめようとするが、間に合わず人質救出に向かってしまった。
そうこうしている間に怪人は立ち直っている。
「お前に構っている場合じゃねぇんだ…さっさと片させてもらうぜ
〔システム起動〕〔アクセルライド〕」
そういうと、デロリアンの胸部アーマーが割れ、そこから淡光が漏れる。
「悪いな…未来が呼んでいるんだ!!!」
【START UP】
システムボイスと共にクロックアップに匹敵する速度で近づき、怪人を蹴り飛ばし
壁に叩きつける。そして、反撃の間を与えずに追撃を加え、壁を突き破った。
神速で放たれたデロリアンの攻撃に壁の向こうに吹っ飛ばされる刀のヴィラン
壁の向こう…鈴原が侵入した部屋にもやはり園児の姿は無く、そこにいるのは柄の異様に長い槍を装備し、鈴原に構えを取っている長髪で目が異様に大きい改造人間だけだった
長髪のヴィランは壁を壊して侵入してきたデロリアンに舌打ちに、両者に構えを取る
構えには全く無駄が無く、すきも見当たらない
又、無視して逃げようとして意識をこの怪人から外せば、一瞬にして刺し貫かれてしまうような凄まじいオーラがたっていた
更に、デロリアンに蹴られたヴィランがまだよろよろおと立ち上がる
同時にボロりと両手の刃が折れて、地に落ちた
このヴィラン、クロックアップ並みの速度に反応し、雪駄に両手でデロリアンの攻撃を防いだのだ
武器である両手の刃が折れて尚、折れた刃でデロリアンに構える刀ヴィラン
刀が立ち上がると同時に、槍が鈴原にのみ意識を集中させ、次の瞬間、神速の突きをべレッタ目掛け放ってきた
意識を集中してかわすか、はたまた受け止めるかしなければならない一撃
それを前にして、また、真横から針の連打がべレッタに襲い掛かり、動きを妨げる
そして救援にデロリアンの意識がべレッタに向いた刹那
刀ヴィランも一気にデロリアンの懐に踏み込み、両手の折れた刃で突きかかってきた
更にデロリアンがそれに反応すると同時に両手の刀に凄まじい電流が流れ、激しいスパークが起こって目をくらまし、かつ電流攻撃がデロリアンに襲い掛かる
このヴィランは両手の刀に電流を流し、切れ味を増していたのであり、それが折れた事で即席の強力なスタンガンとなったのだ!
>デロリアンさん
【避難所の方に「デロリアンは未来人なんだからエレメントの正体や目的や能力を知ってなくちゃおかしい」時用のエレメントの設定を載せておきました
いや別に知らなくても問題ないしってんなら俺はこのまま進めますが、必要で使うなら、A〜Dまでエレメントの正体と目的の候補がありますんでそこからすきなの選んで教えてください
…俺が何をしたいのかわからないor俺が何を言ってるのかわからない場合は素直に言ってください
自分でもこういう状況は初めてなんでまともに説明できてる気がしません】
こっち来てから毎回コテ間違ってた事に今気づく俺…
開け放たれた年少の部屋にも人質はいない。
居たのは、一縷の隙もなく達人が如く槍を構えた長髪の怪人であった。
一瞬でも敵から目を離せばすぐさま刃が閃くだろう──逃げることは許されない。
ベレッタも止むを得ず迎撃の用意を見せた瞬間、壁に亀裂走り。
先ず剣のヴィランが倒れる形でこちらの部屋へ。
次いでデロリアンが敵方に攻撃を加えた形でやってきた。
(………やった、のか?)
長髪の怪人の意識はデロリアン達へ傾き、ベレッタも同様に視界の端に彼らを映す。
剣のヴィランは両手の刃折れてなお敵対の意志を折らず、立ち上がろうとしていた。
交差する視線。両者の思考は同じ。
二対一ではなく二対二。対決開始の合図。
槍はその長い間合いゆえに他の近接武器と比べ圧倒的有利だ。
例えば、ベレッタの拳が迫る前に薙ぐなり払うなり突くなりして必ず先制できる。
しかし同時に槍の射程より内に入ることができれば、事実上防御の手段はないため勝機はある。
さりとて長髪の怪人は歴戦のヒーローを殺せるだけの実力。
ベレッタといえど敵の懐に潜り込むのは至難の業だろう。
初手は必然リーチで勝る怪人が速かった。
巧みな手捌きで槍を操り線となって高速の突きがベレッタに迫る。
加えて、突入時と同じ針が今度は真横から無数に飛来。
針の雨にベレッタの足の動きが鈍る。
それそのものに装甲を貫く威力はないが、身体が条件反射で避けようとしてしまう。
「しゃらくせえぇぇえええぇぇッッッッ!!!!」
迷うな。進め!
鈴原の脳裏に言葉が走り、咆哮し、一歩踏み出す。
針が装甲に突き刺さるのをものともせず。
迫る槍をも避けようともせず、また一歩刺殺へと近づく。ベレッタは進む。
「がぁぁぁあ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あぁぁぁああああーーーーーっ!!」
直後に、穂先が鈴原の左腕を間違いなく貫いた。
穿たれた腕部装甲から血が溢れ出して床へ零れ落ちていく。
筆舌に尽くし難い痛みが左腕を支配する。腕を通して全身が麻痺しそうになる。
しかし、ベレッタはそこから倒れるわけでも怯むわけでもなく。
むしろ腕から穂先が抜けないように、左手が穿った槍の柄を掴んだ。
「こっちは、こんなもんで退いてらんねえんだよ………!」
懐に潜り込むのは容易ではない。だが、こうして負傷覚悟で槍を掴んでしまえば。
敢えて腕を貫かせてがっちりホールドしてしまえばわざわざ潜り込む必要もない。
とはいえこの戦法は鈴原のような命知らずな性格と、頑丈さあってのものなので。
加えて以後の戦闘にて左腕を用いて敵を殴ることなどできないだろう。
ベレッタは腰からファブリカを抜き、怪人が槍から手を離す暇なく強化弾を連射する───!
【戦闘を早く終わらせるため“多少”強引な手段を用いて大型拳銃を連射】
【以後の戦闘で左腕を自由に使うのは難しいと思います】
残念ながら一週間が経過しましたので、デロリアンさんの番をスキップします
ですがいつもで、戻っていただいて構いません
>>9 ファブリカをもろに喰らい、槍のヴィランは死のダンスを踊りながら後方に吹き飛ばされ、倒れ付す
如何に強化された怪人であっても、防御もせず対装甲服用の強化弾を至近距離から連射されればひとたまりも無い
槍のヴィランは青い血を吹きながら、動かなくなり、バラバラの肉塊へと変わった
安心するのも束の間、姿を隠していたヴィラン…針を飛ばして来ていた個体がべレッタの横で突如姿を現し襲い掛かってきた
緑色の皮膚で、マントの様な物を羽織った黒目の無い黄色い吊り目の妙に口のでかいヴィランは隙だらけのべレッタの頭部に掴みかかり、眼部に爪を立ててくる!
メインカメラを潰そうというつもりのようだ
『鈴原、聞こえるか、こちら天堂寺だ、現在年長組の部屋の窓の前にいる…。中に園児たちの姿が見える、突入して救出活動を行う、お前はその他のヴィランを引き付けていろ』
不意に通信機から天堂寺の声が聞こえてきた
ようやっと、天堂寺らも現場入りしたらしい
周囲の警官も、相手が天堂寺とあらば阻む理由は無いし、仮に阻んだとしても突破されてしまうだろうから通したのだろう、救出活動を申し出てきた
更に、天堂寺は言葉を続ける
「貴様の単独行動は褒められたものじゃない、これが終わったら俺からも一言言わせてもらう」
ガラスの割れる音共に、天堂寺からの通信は途絶え、隣の部屋から戦闘音が聞こえ始めた
「クソッまだいやがったのか」
隣の部屋にいた槍の怪人の姿を確認し、デロリアンは舌打ちする。
「(時間は…まだあるか)」
デバイスで時間を確認し、次に再び立ち上がった刀の怪人に視線を戻す。
「まだ未来が残ってたか…しぶといというかなんというか」
と減らず口を叩いて見せるが、焦りの感情を隠しきれてない
「(アクセルライドだけで仕留められると思ったんだが…予想よりもマズいな)」
と自身の見立ての甘さに反省した瞬間、槍のヴィランが動く
>意識を集中してかわすか、はたまた受け止めるかしなければならない一撃
>それを前にして、また、真横から針の連打がべレッタに襲い掛かり、動きを妨げる
「あぶねぇ!!!」
とベレッタの救援に意識が向いた瞬間
刀の怪人が再び自身に襲い掛かる。
完全に先手を取られてしまった状況下で辛うじて反応しようとするが
スパークと電流がそれを阻む
「ッ…コンチキショウ!!!」
往なす事もかわすことも出来ない状況で、デロリアンは怪人の折れた刃を両手で鷲づかみにした
半ば、自棄、そう思われる行為だが意味はある。それは
「お前が…痺れろ!!!」
デロリアンは掴んだ両刃を接触させ、怪人内の回路をショートさせる
直後、怪人は激しく放電し、刀の怪人は倒れた。
腕に刺さった槍を引き抜くと、ダムが決壊したように腕から血が溢れ出す。
馴染み深い痛みに顔を顰め長髪ヴィランだったものにあらためて視線を移した。
動き出す気配はない。怪人の肉体からは青い血液のようなものが銃創から零れ床を汚していく。
鈴原にこれといった嫌悪感はない。
むしろ、怪人を殺さずに制圧できなかった自分の能力不足に嫌気が差した。
(……早く園児達を助けないと………一分一秒の、刹那が惜しい。)
左腕を庇いながらよろよろと扉へ向かおうと足を根性で動かしたとき。
敵を倒した直後ゆえに意志がたわんでいたのだろう。
ベレッタは横からの不意打ちに気付かず、頭部をあっさり掴まれてしまった。
「ぐッッ!?」
突然頭部装甲を掴まれた鈴原は態勢を崩し、思わず顔を歪ませた。
怪人が機械の双眸に爪を突きたてようと腕に力を込める。
しかし、一拍速くベレッタの右腕が敵の腕を掴み、抵抗することでカメラの破壊を防ぐことに成功した。
さりとてこのままでは直両目に怪人の鋭い爪が刺さってしまうだろう。
(一人で待ち構えてるかと思えば不意打ちかよ……しゃらくせえ……ッッ)
そんな最中ガサッという雑音と共に通信回線が開かれ、必然鈴原は舌打ちした。
敵との取っ組み合いの最中に悠長に話し合いなどできるものか。
しかし相手はどうやら天堂寺らしい、となると一方的に切るわけにもいかない。
返事こそできないものの、鈴原は耳を通信機に傾ける。
>『鈴原、聞こえるか、こちら天堂寺だ、現在年長組の部屋の窓の前にいる…。中に園児たちの姿が見える、突入して救出活動を行う、お前はその他のヴィランを引き付けていろ』
>「貴様の単独行動は褒められたものじゃない、これが終わったら俺からも一言言わせてもらう」
そうか。
園児達は助かるのか。
良かった。 良かった。 良かった。
回線を閉じると同時に、鈴原は深く。深く。安堵の息を漏らして。
対決の渦中であることも忘れて屈託ない笑みをつくる。
そうだ。園児達は助かるんだ。『理不尽な死』から救われるんだ。
余裕のない、焦燥に包まれた表情が霧散した。
「こうしちゃいられない……くれてやるよ、ヘルメットの一つ二つッッ!だが覚悟は済ませてもらう!」
何を思ったのか?掴んでいた怪人の腕を離し。代わりに右腕を構えて。
必然怪人の爪が機械の両目に突き刺さり、カメラ部がぐしゃりと。無残に砕けた。
目の前が暗闇に包まれ、即座にカメラをメインからサブに切り替える。
ただ視界はメインと比べ劣悪な上、視力補正や照準補正といった重要な機能を失ってしまった。
左腕の使えない今までは、防御に右腕を割いていた以上反撃ができない。
というのも左腕は先の戦闘の負傷でろくに使い物にならないからだ。
例え足を使ったとしても怪人の残った片腕で防がれ態勢を崩す可能性がある。
そこで鈴原はセンサー類の詰まった頭を捨て、代わりに反撃を選んだのだ。
「メインカメラってのはッッ!!潰れても“たかが”で済むって相場が決まってんだろーーーがぁぁぁあああああぁぁああッッッッ!!!!」
腕部装甲が展開し、排莢────……
全センサーを代償にした指向性エネルギーが唸りを上げ。
拳から放たれた翡翠の輝きが、至近距離で怪人に炸裂すべく迫った。
【まだだ!まだたかがメインカメラがやられただけだ!←たかがじゃない】
【とりあえずセンサーとメインカメラを犠牲に一撃必殺のガントレットぉぉぉ】
ぐぬぬ。一文すっ飛ばしてた
>目の前が暗闇に包まれ、即座にカメラをメインからサブに切り替える。
例えメインを潰されても予備のサブ・カメラを起動させることで視界の確保はできる。
>ただ視界はメインと比べ劣悪な上、視力補正や照準補正といった重要な機能を失ってしまった。
に脳内修正よろしくお願いします
一撃必殺の光の拳が、ダメージ覚悟の感電戦法が、怪人達に凄まじい断末魔を上げさせ、「針」を四散させ、「刀」を焼け焦がす
とりあえずこれで、目下の所の脅威は去った
後は隣の部屋にいる天堂寺の下へ向かうだけ…
のはずだが…
施設の外
激戦続く保育施設へ向け、歩みを進める一つの影があった
「おい!現在この近辺は立ち入り禁止だ!すぐ戻れ!」
鈴原からの注文通り、保育施設を囲み侵入者を阻む対ヴィラン特殊部隊の精鋭達がそれに気づき、強い口調で警告するが、歩みを止める気配は無い
再度警告をしようとした隊員は次の瞬間、思わず武器を構えた
迫り来る謎の人物の姿は蜃気楼の様な物と共に目が赤く、土気色の肌の怪人へと変わり、隊員たちへと駆け出してきたのだ
「敵だ!敵の応援だ!撃て!撃てぇ!」
隊員達の構える銃器が一斉に火を吹き、ショットガンが、アサルトライフルが、次々怪人に着弾するが怪人は物ともせずに前進する
と、そこに横から飛び込む黒い複数の人影
片手に機関銃を、もう片手にチタン製のダガーで武装した、不知火重工のメタトルーパー部隊である
「どうにか間に合ったか…怪人の一体ぐらいメタトルーパーでしとめてみせる」
天堂寺と共に現場に到着していた武中は指揮車の中からメタトルーパーのカメラに映る迫り来る怪人を睨みつける
メタトルーパーは人間以上の速度でダガーを振るい、怪人に斬りかかるも、両手が鋏のように変形した怪人に次々と撃破されていく
が、メタトルーパー群は全く怯まず、怪人の両手の鋏を2体が胴体を貫かれる事で封じ、別の一体が怪人の体目掛け背後からナイフで襲い掛かる、が、怪人の強固な皮膚はナイフの一撃にもびくともしない
「ランチャーだ!メタトルーパーが抑えている間に四方からランチャーを見舞え!」
どこからか叫びが聞こえ、何人かの隊員がバズーカを手に怪人を囲み、貫かれているメタトルーパーごと打ち倒さんとバズーカを構えた
が、次の瞬間、上空から凄まじい速度で刀の刃の様な物が急降下してきて、囲む隊員達を胴なぎにしてしまう
「新手だ!上から来るぞ!気をつけろ!」
見れば上空に、マントを広げたやせ細ったやはり赤目の怪人がおり、ブーメランの様に戻ってきた刃を片手で受け止め、再び投擲せんとしている
「応戦!怯むな応戦し…ぎゃあああああああああああ」
反撃せんと空に銃口を向けた隊員たちを、今度は地上の鋏腕の怪人が両手の鋏から高熱火炎を噴出し、隊員達を次々火達磨へと変えていく
怪人二体はそのまま取り囲む警官達やメタトルーパーを次々蹴散らしていくが、保育施設へ向かう様子は無い
周囲を囲む警官達の殲滅がどうやら目的のようだ
「武中だ、警察側指揮車、どうする!一旦べレッタか天堂寺君を戻すか?」
次々増える被害に、切羽詰った武中の声が大仲の下に響く
保育施設内、廊下
年長組教室と、外から戦闘音が響く中、廊下にも又、職員室から出てきた新しい怪人が年中組の教室から出てくるだろうデロリアン達を待ち構えていた
「………」
ひたすら無言で気配も無く立つその怪人は、一見すると2足歩行する巨大な蟲のようだった
長い触覚、指の無い腕、腹から生えた脚の様な物、光沢を放つ体、真っ赤な赤い目…
おおよそ人間には見えないそいつは、己が殺すべき敵が現れるのを、ただ待つ
改造のレベルが全身に及んでいるため、こいつもまた一筋縄ではいかないだろう
今まで感じたことがない痛みと絶望感の中
確実な喪失感と共に死のイメージが刻々と強みをましていく
このまま自分は死んでしまうのか…とそんなことを考えた瞬k…
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「はぁッ!!!」
倒れた刀の怪人を目の前にし呆然と立っていたデロリアンが
狼狽したかのような声をあげ、再び動き出した。
「(なんだ今のは…白昼夢?走馬灯?いや…そんなことは…)」
すぐさま現状を確認する。どうやら昏睡していたのは一瞬だけらしい
と安堵しかけた瞬間、隣の部屋から戦闘音が聞こえた。
「どうやら…天堂寺にさき越されたようだな」
無線を傍受せずにデロリアンはそう呟くと鈴原に近づいた
「悪い!あんたの手伝いをしに来たってのに毛ほどの役に立ってねぇ」
そう一言謝罪し、鈴原を立ち上がらせる。
「だからよ…これから役に立つ!…んじゃ先に行ってるぜ」
そう一言残し、デロリアンは先に教室を後にした。
教室を出た瞬間、廊下で待ち構えていた怪人の姿を確認した。
「…なるほどな」
何かに対し納得したかのようにそう呟く
「さぁ絶望しろ昆虫野郎…お前の未来はここで終わる」
そう告げ、デロリアンは一気に間合いを詰める
一瞬、フェイントを加えた後、拳を突き出す。
「喰らえ!〔フィストレイ!〕」
突き出した拳の先からリアクターレイに似たエネルギー波が怪人に襲い掛かる
【虫怪人と交戦開始、パンチだと思った、残念レーザーでした】
「敵を囲むな、前に出ても的になるだけだ!各自散開してメタトルーパーの後方支援に徹しろ!」
特設車両内から一人でも死傷者を減らすべく必死に大仲は武装警官達に指示を飛ばす。
巨漢・黒崎も車両内のライフルを持ち出しメタトルーパーや対ヴィラン部隊と共に戦闘を繰り広げていた。
しかし状況は未だ芳しくなく、好転する様子はない。
>「武中だ、警察側指揮車、どうする!一旦べレッタか天堂寺君を戻すか?」
車両内の通信回線が開かれる。
このまま戦闘を続けてもおそらく勝ちの目はない。
それは客観的事実であり、ベレッタか天堂寺をこちらに戻すのは当然の判断である。
しかし敵の戦力が不明な以上、こちら側に戦力を割いて園児の救出に失敗……という可能性も出てきてしまう。
かといって警察側の現場指揮である以上無駄な犠牲を増やすわけにもいかない。
何より、もしここが攻撃されでもしたら指揮系統に乱れ戦闘もくそもなくなってしまう。
今現在、大仲には選択を迫られていた。
「………天堂寺氏は現在救出活動に当たっています。戻すなら、ベレッタです」
足手まといとなってしまっている現状に大仲は歯噛みするしかなかった。
自衛に戦力を割きわざわざ作戦の成功確率を下げてしまう、そんな状況に。
※ ※ ※
「………っはあ、はぁ…………背中の裂傷と左腕、スーツの損傷を代償に敵二体ってのは……金星、か?」
四散した針がそこら中に突き刺さった景観を眺め、鈴原は独りごちる。
幾人ものヒーローを葬った敵達の二人を倒してこの程度で済むのは幸運なのか。
それとも人質も救出できずに大怪我を負った愚か者でしかないのか。
思考は二つは矛盾なく同居していると結論しそこでそれ以上考えるのを放棄した。
鈴原はもう一人の剣の怪人と戦っていた──未来人を自称するデロリアンに一瞥くれる。
どうやら敵の攻撃で意識を少し失っていたものの、目立った怪我やスーツ自体の損傷もない。
良い病院を紹介したくなる発言はさておき実力は本物らしい。
やおらにデロリアンが怪我の影響で膝をついていたベレッタに近づくと、手を差し伸べる。
鈴原は黙ってそれを受け取り、立ち上がった。
>「悪い!あんたの手伝いをしに来たってのに毛ほどの役に立ってねぇ」
鈴原は歪んだフェイスヘルメットの中で眉を少しだけ寄せる。
手伝い?何の目的で?
心の呟きが言葉になる前にデロリアンは二の句を継いだ。
>「だからよ…これから役に立つ!…んじゃ先に行ってるぜ」
意味深な言葉だけを残して、デロリアンはさっさと教室の外へ出て行ってしまった。
「一体何者なんだ?………わけがわからない」
ともかく救出が完了していない以上他の怪人達が天堂寺の妨害をしないよう敵を引きつけなければならない。
次々と浮かぶ疑問符を取っ払い、ベレッタはよろよろと満身創痍の身体を動かして教室を出た。
廊下では既にデロリアンと昆虫型怪人との戦闘が始まっていた。
ベレッタも加勢しようとした瞬間、タイミングよく通信回線が開かれる。
「大仲だ、現在警察とメタトルーパー隊がエレメントと思しき二体の怪人に襲撃されている。
至急ベレッタはこちらの援護に回って敵ヴィランを制圧してくれ。以上だ」
(園児を人質にとったら次は警察と不知火の部隊を襲う……?一体どうなってんだ!?)
敵の総数が不明かつ、救出が完了していない以上ここでベレッタが戻るのは得策ではない。
もし今以上に切羽詰った状況なら鈴原は間違いなくどちらへ行くべきか葛藤していただろう。
しかし今の鈴原には少しの不安感はあるものの信念と命令の間で揺れ動くような、そんな葛藤はなかった。
何故なら、デロリアンという強力な戦力が自分の代わりに敵怪人を引き付けてくれているからだ。
(役に立つ、って………まさかな。それだとまるでこの状況を知ってたみたいじゃないか)
もしかして未来人なのは本当かも知れない。そんな考えが鈴原の中で生まれだしていた。
「悪い………ここは任せた、“ヒーロー”!!」
ベレッタはデロリアンの方をちらと見やると、背部のジェット噴射で跳躍し保育施設の外へ向かう。
警察側の特設車両前に到着したベレッタは状況を確認するため大仲に連絡を取ろうとし──……
「うわぁっっ!?」
突如、鈴原が叫び声を上げた。
視線の先には大仲が立ち。拳を振り上げ。
幾度となく堅い装甲で覆われたベレッタを殴りつけた。
「何故指示を待たず勝手に突っ込んだ!?」
怒りの形相で何度も何度も拳をベレッタにぶつけ。
鈴原はあまりの気迫に押し黙るしかなかった。
「“戦えない全ての人の代わりに戦う”……確かにお前は自分の信念を通しただろう!
一秒でも早く助けたい気持ちも理解できる!だがな!お前は同時に『組織』という集団の一人なんだッッ!」
展性複合チタン合金製の装甲を何度も殴って拳を赤く滲ませながら。
「忘れたのか?戦っているのはお前だけじゃない!俺達は、全員で戦っている!!
そんなことも忘れ、冷静さを欠き負傷するようなお前が!この先どうしてヒーローとして戦える!?」
大仲の叫びが、鈴原に突き刺さった。
意志を持たず流されるがままの歯車でいてはいけない。
だからといって自分の考えだけを優先し統率や指揮を乱していいという道理はない。
鈴原は過去のトラウマによる怒りから大切なことを一つだけ忘れていた。
自分だけで戦うのではない。自分は警察官皆と共に戦っている。
……そうだ。皆必死に戦ってる。皆あいつらに対して怒ってる。
なのに俺は自分一人で戦ってるみたいに突っ走って、何やってんだ?
「……すいませんでした。クビにでもなんでもしてください。
でもあいつらだけは!目の前にいるあの野郎だけは絶対に!
俺の────………いや、“俺達”の手で倒させてください!」
振り向き。地面を蹴り。駆け出して。向かう。突き進む。
やがて跳躍し、メタトルーパー隊と怪人二人の間を割るように着地した。
二体の怪人と対峙し、鈴原は大声で想いを叫び散らした。
「…………俺って馬鹿で、弱くて、直情的で……こんなヤツだけど!
昔のこと思い出して、忘れてた!皆頼む………俺の背中を支えてくれ!俺と───戦ってくれ!」
ああそうだ、俺は一般市民の代わりとなって戦うだけじゃない。
俺は警察官皆と一緒に戦ってるんだ。
そしてベレッタは皆の思いがこもった、最弱で最高の相棒だ!
「警察側は不知火のメタトルーパー隊を残して全員一旦後退しろ!
あの馬鹿の無茶苦茶な戦い方で巻き添えを食らいたくなかったらな!」
大仲の指示が警察側に行き届き、警察の対異能特殊部隊達は速やかに後退していく。
「鈴原、不知火の隊員や警官に被害が及ばないようにまずは飛ぶ方を優先して倒せ。
ただしあくまで『制圧』に留めろ。エレメントの重要な情報源だからな、分かったか?」
大仲の指示が再び飛び、ベレッタは右拳を左掌にぱしんと打ち付け。
「了解!さあ………対決開始だッッッ!!!」
背部のジェットを噴射し、跳躍。
空中を飛行する細身のヴィラン目掛けスラスターの勢いを乗せたキックを放つ!
【警察側、駆けつけたベレッタを残し後退】
【ジャンプからのキックで飛んでるヴィラン攻撃】
デロリアンから放たれたリアクターレイの一撃が、見事に昆虫ヴィランに命中する
「ギャーーーー」
寄声を上げて苦しむ昆虫ヴィラン
しかし、次の瞬間、大きな爪の様な両手をふるってデロリアンに殴りかかってきた
砲弾以上の破壊力を持つリアクターレイに耐える恐るべき装甲と耐久力、生命力をこのヴィランは持っているのだ!
又、振るわれた昆虫ヴィランの爪の一撃は軽くコンクリート…いや鉄板を貫く威力を持つ
勢いの良い鋭い爪の一撃が、デロリアンに襲い掛かる
細身のマントヴィランはべレッタのジャンプキックをひらりとかわし、逆にその背中目掛けて手にした刃を振りかざさんとする
が、そこに地上の警官隊から援護射撃が入り、体制を崩してしまった
それでも刃は振りぬかれ、急所こそ外れているもののデロリアンの右肩に背後から襲い掛かっていく
地上の鋏のヴィランは背中から鋏のついた尾の様な物を出現させ、両手の鋏と合わせて三つの噴射口を作ってメタトルーパー目掛けて火炎放射を浴びせかかってくる
だが、べレッタと言う反撃の要ができた事で積極的に攻勢に出る必要がなくなったメタトルーパーは不知火の対ヴィラン部隊が使っていたミサイルランチャーにも耐える盾を構え、炎を防ぎ、壁を作って攻撃に耐えた
鋏のヴィランは更に両手と尾の火炎を噴射し続けながらメタトルーパー隊に突進してくるも、盾の壁は怪人の突進を受け止め、しっかりと食い止めている
べレッタさえ勝てば、十分逆転の兆しはある!頑張れ!べレッタ!負けるな!デロリアン!
19 :
リキッド:2011/10/30(日) 07:28:43.01 0
なにこれ?
ベレッタの放った蹴りは果たせるかな命中せず空を切った。
隙をついてヴィランはベレッタの背中に刃を突きたてようと迫り。
「ぐっ………おおおおおおおおおおおおおお!!!!」
走った刺突が確かにベレッタの右肩に刺さり、紅い血が白い装甲を染め刃を塗らす。
しかし幸いにもその刃は地上の警官隊により急所へ向かうことはなく。
つまり一撃で仕留められないということは、ベレッタに反撃の機会を与えるということ。
「後方支援がこのチャンスを生んだ!それを掴んで離してたまるかぁッッ!!」
右肩の痛みで泣き叫びたくなる。怯みたくなる。
だが今ここで痛い痛いと叫んだら。自由落下と敵の離脱で攻撃を加えられない。
仲間が生んだ好機をふいにしてしまう。
だから鈴原は、右肩に走る激痛に怯むことなく敵の腕を掴もうと右腕を動かした。
このままヴィランが腕を掴まれればベレッタは力任せに敵を地面へ投げ飛ばすだろう。
背中から鋏状の尾を生やし、より凶悪に力を尖らせた敵ヴィランの一人。
メタトルーパー達に火炎放射と突進で猛攻を仕掛けるが、メタトルーパーも負けじと盾で突進を受け止める。
「冷凍弾、用意!!」
そんな一進一退の攻防の中、後方で援護をしていた黒崎他警官隊がバズーカのようなものを構えて。
しかしメタトルーパー達に阻まれヴィランにはそんな様相を視認することなど叶わぬだろう。
「放てぇっ!!」
幾つものバズーカから放たれた冷凍弾は放物線を描きハサミヴィランへ落下する。
もし命中すればヴィランは身動きを取ることが困難になるだろう。
細身のマントヴィランは腕をつかまれ、勢いよく地上へ落とされる
コンクリートの地面に叩きつけられ、衝撃で苦しむマントヴィラン
そこに警官隊がグレネード弾の雨を降らせた
「ギャああああああああああああ」
悲鳴を上げて苦しむマントヴィランだったが、それでも例の刃を念力で呼び寄せて自分の手元に戻すと、警官隊目掛けて投擲の姿勢をとる
「グるるるるる」
一方、メタトルーパー隊に押さえ込まれ、冷凍弾を喰らったサソリヴィランは寒さとメタトルーパーの盾の壁の包囲に多少疲れの色を見せる
が、次の瞬間、渾身の力を振り絞ってサソリヴィランは尾をぶちかまし、メタトルーパーの一隊を吹き飛ばした
更に警官隊に向けて火炎放射の構えを取るが、冷凍弾の冷気の影響で体力が低下しているのか、そこで怯んで膝をついてしまう
そこに立ち上がったメタトルーパー隊が盾をもって再び突進する!
「おおりゃあ一本背負いぃいぃぃぃいいッッ!!!」
ガッ、と怪人の腕を掴んで空中で背負い投げ。
この時空中なのだから一本背負いもくそもないということに、鈴原は気付いていなかった。
そもそも力任せにブン投げるだけなので柔道など関係ない。
身体能力補正の動作アシストによって腕力を強化、エレメント怪人は飛行能力を働かせる暇なく地面へ投げ飛ばされた。
べちゃっと地面に叩きつけられた敵は少々の怯みをみせ、動きは緩慢だった。
「今だ!因果応報、ありったけブチこんでやれ!」
これも日々の訓練の賜物であろう。
警官隊はその隙を見逃さず、グレネードを雨霰とヴィランに降らせた。
>「ギャああああああああああああ」
落下衝撃とグレネード群のハムエッグにマントを羽織ったヴィランは苦しみの叫びを上げる。
されど戦意衰えず、刃を呼び戻すべく念力を働かせる。
地面へ無造作に転がっていた刃はふわりと浮き、怪人の手元へ収まるように戻っていく。
「くどい!そろそろまともな日本語を喋れってーの!」
着地、瞬時に地面を蹴る。
ベレッタは右拳を構えてとどめの一撃を叩き込むべく大きく振りかぶって。
「出力30%減、目的敵対戦力の制圧及び捕獲!」
右腕の装甲が展開し、出力調整を施す。敵は末端に過ぎないだろうが貴重な情報源だ。
最大威力にて殴ってぶっ倒さず、捕獲した方が後々のためになる。
何よりこちらは警察官だ。いくら超法規的活動が許されるとはいえ、殺さず倒すに越した事はない。
ベレッタは翡翠の光りを纏った拳を、刃投擲すべく振りかぶる怪人へと叩き込む!
蠍タイプのヴィランは多少の疲れをみせ、防御に徹する不知火・警官隊陣との持久戦に持ち込まれた。
そして持久戦に持ち込んでのジリ貧とはいえ多少なりとも強力な敵ヴィランに立ち向かえるということは。
メタトルーパーを導入すれば警察も今よりもっとヴィランと戦えることへの証明でもある。
「!!!」
メタトルーパー隊を吹き飛ばしたサソリ怪人は警察へ火炎放射の砲を向ける。
しかし、そこから炎が出る事は遂になく。むしろ、怪人は膝をつき大きな隙を見せた。
「こっちは炎が武器って理解しててスティール社謹製冷凍弾使ってんだよ頭パープリン!」
不知火と警察がパワードスーツなしで成し遂げた快挙に、少路は思わず罵声を飛ばした。
低温に弱いリアクター相手でなくとも、冷凍弾は敵を凍りつかせある程度動きを封じる効果がある。
それこそ何十発と撃ち込めば怪人氷像ができあがる程度には強力だ。
加えて今の敵は火炎放射がメインウェポン。
火炎放射器としてはかなり長射程で対人殲滅兵器としては優秀だがそこが仇となった。
冷凍弾で可燃性液体なり可燃ガスなりが詰まった部分を凍らせてしまえば炎は発射できなくなり、敵の武器を封じることができるのだから。
とはいえ動きや武器を封じれてもサソリ怪人を倒すほどの能力は今の警察やメタトルーパーにはない。
撃破にはやはりベレッタの力が必要だろう。
「対異能部隊隊長の少路だ、警官隊はこのまま防御と支援を維持!隙あらば冷凍弾をぶちこめ!」
無線から指示が飛び、警官隊はメタトルーパーの突進を固唾を飲んで見守る。
手にはジュラルミンの盾や冷凍弾の詰まったバズーカを構えて。
【マントヴィランに必殺パンチ、サソリヴィラン相手にベレッタがくるまで時間稼ぎ】
べレッタの放った拳をモロに喰らい、マントヴィランはうめき声を上げ、昏倒する
「後は任せろ!」
そこにここぞとばかりに手枷や足枷を持った警官が駆けつけ、マントヴィランにソレを取り付けて完全に動きを封じていく
一方、メタトルーパーと戦うサソリ怪人は、炎を封じられて尚、鋏と尾を振りかざして頑強に抵抗し、遂にメタトルーパーを全滅させんとしていた
はさみの強烈な一撃が銃撃を物ともしないはずのメタトルーパーの頭部バイザーをぶち抜き、百キロ以上あるメタトルーパーの体を警官隊目掛け投げつけ、更に尾を振って盾に叩きつけてミサイルに耐える盾をへこませ、大暴れする
更に激しい動きで血行でも良くなったのだろうか、再び片方の鋏から炎が復活し、近くにいたメタトルーパーが火達磨になって沈黙してしまう
【最近文章短くてごめんなさい】
「いかん、後退!後退ー!」
最後のメタトルーパーが破壊されんとする光景を見、後退命令が飛ぶ。
再び炎が発射され始めると形勢は再び逆転しまたもやヴィラン優勢となった。
だが。
「人がいないからって好き勝手してんじゃあねえ!」
マントを羽織ったヴィランを倒し、漸くベレッタが駆けつけたことで。
その優勢もいよいよ雲行きが怪しくなってきた。
「悪いがアンタが勝てる道理なんてねえぜ!2vs1+警察&不知火重工の俺達の方が───」
跳躍し、装甲が展開し、輝きが拳に伝播する。
放つは三発中最後の一撃。持ちうる限りで最強の一発。
「百枚上手なんだよぉぉおおおおおおおおおぉぉぉぉおおぉぉぉおおぉぉおおーーーーー!!!」
決殺の拳がサソリヴィランに真っ向から迫った。
【大変長らくお待たせしました】
最後のメタトルーパーを沈黙させたサソリヴィランは、低い雄叫びを上げると、警官隊へと鋏を鳴らしながら前進していく
まだ火炎を完全に使えるわけではないとはいえ、このヴィランの能力は警官隊を蹴散らすには十分だ
生身の警官隊は数分で全滅させられしまうだろう
しかし
>「人がいないからって好き勝手してんじゃあねえ!」
颯爽!一人の熱血漢がようやっとそこに駆けつけてくる
応戦せんと鋏を向け火炎放射せんとしてくるサソリヴィランに、しかしべレッタはそれより早く、必殺の拳を叩き込む!!
閃光と共に響く鈍い炸裂音
そして光が晴れた次の瞬間、警官隊は凍りついた
べレッタの拳は、サソリヴィランの尾と両手の鋏でもって受け止められていたのだ!!
「い…いかん!援護!援護を…」
慌てて援護射撃せんとする警官隊
しかし、その前でサソリヴィランはゆっくりと倒れていき、同時に両手と尾の甲殻がボロボロと砕け散っていく
やがて、サソリヴィランはその場に崩れ落ちた
誰もが安心しかけた、次の瞬間、ゆらりと再びサソリヴィランが立ち上がる
が…
「……痛い…痛いょ……どこだ?ここ…俺……何して…痛い…寒い…」
寒そうに体を震わせながら、先ほどまでアレほど凶悪に、無慈悲に、機械的に人を殺し、物を破壊していたヴィランとは思えない弱弱しい台詞が口から飛び出してくる
「何で俺…囲まれて……何?俺は……どうなったんですか?……ひい…ひいいいいい…」
ガタガタと震えながらその場に再び崩れ落ちるサソリヴィラン
その口から緑色の血液がどばりと吐き出される
「おい…ど…どうする?」
「指揮車、指揮車、指示…指示を!」
その光景に、しかし取り囲む警官隊は迂闊に近寄る事も出来ず、ただうろたえて眺める事しかできない
そうこうしている内に、更に事態は悪化した
『うわあああああああああああああああああああああああああああああ』
全ての通信機に、突如木霊する断末魔
その声は…天堂寺宗司郎の物だ!
同時に年長組の窓ガラスが吹き飛び、灰色に染まった天堂寺のパワードスーツが吹き飛んでくる
慌てて盾を構えて隊員達が年長組の窓の前を包囲し、天堂寺に駆け寄って、隊員達は仰天した
「い…石に…石になっている!!」
そうだ、恐るべき事に、超合金のパワードスーツが、鍛え上げられた天堂寺の体が、無機質な石へと変化しているのだ!
同時に薄暗い室内から不気味な光が発射され、盾で防がんとした隊員を包み込む
「ぎゃあああああああああ…あ…あ…」
不運な隊員は光に包み込まれ、あっという間に石に変わった
更に光は連射され、隊員達は慌てて後退を余儀なくされる
「ヒーローさーん、いらっしゃーい、どうしたのー?」
警官隊が後退した後、年長組み室内からあの最初に聞こえてきたどこか間の抜けた声が聞こえてくる
しかし、真正面から突っ込めば、あの謎の怪光の餌食になってしまうだろう
だからと言って中の様子がわからない状態では、狙撃する事もままならない
名前:デューティ(変身者:石黒 誠司)
職業: 傭兵
勢力:市に雇われた傭兵ヒーロー
性別: 男
年齢:32
身長:190
体重: 98
性格:大雑把、明朗快活
外見:モヒカンに髭、紺色のジャケット
外見2:緑と銅色のパワードスーツ
特殊能力:コールバスター(弾丸を射出する射撃装備)、エンブレムシステム
(状況に応じて装備を変更する)
備考:市に雇われた傭兵。ヴィランの排除及び、警察とヒーローへの
援護を任務としている。
(はじめまして。よろしくです)
うっすうっす。よろしくっす!
「おおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!!」
放った拳が命中し、轟音と共に閃光、次いで衝撃が走った。
指向性エネルギー波は三発と使用回数に限りがあるものの、その威力はリアクターレイさえ凌ぐ。
事実、防御能力に特化したエレメントの「地」を除き悉く一撃必殺の威力を発揮した。
だが。
眼前の蠍のヴィランはそれを受け止め、確かに“立って”いるのだ。
マントを羽織ったヴィランと違い手加減をした訳ではない。
間違いなく全力全開のラストショットだったはずだ。
警察一同に動揺が走り、鈴原の額に汗が伝る。
鈴原は既に必殺の三発を全て使い切り、連戦の上、多量に出血し満身創痍。
一方蠍ヴィランは冷凍弾を食らいベレッタ必殺の拳を食らった。
両者どちらが敗北してもおかしくない状況下。
しかし勝利の女神は、やがてヒーローに微笑んだ。
「………!」
纏っていた甲殻がボロボロと砕け散りヴィランは地面に伏し。
警察側は訪れた勝利に、歓声を上げた。
「か、勝った……良かったぁ………」
ベレッタはその場にへたり込み、鈴原もまた安堵の声を漏らす。
>「……痛い…痛いょ……どこだ?ここ…俺……何して…痛い…寒い…」
歓声が水を打ったように消え、皆一様に音源へ振り向く。
声の主は蠍の怪人だった。
さきほどの残虐性や暴力性などとは微塵もかけ離れた声で。
まるで悪に脅える被害者のような声で。
痛い、痛い、と悲痛な声を漏らしたのだ。
被害者のことを考えれば怒りさえこみ上げてもおかしくはない言動──
しかし周囲にそういった感情はなく、ただ表情を曇らせただけだった。
彼らはまがりなりにも警察である。
腐るほど法から逸脱した者を見たし、反吐の出る悪を見てきた。
だからこそ可能な理解。可能な推測。
────彼は“ただのヴィランではない”かも知れない、と。
>「何で俺…囲まれて……何?俺は……どうなったんですか?……ひい…ひいいいいい…」
緑色の液体が口から溢れると、怪人は再び崩れ落ちた。
>「おい…ど…どうする?」
>「指揮車、指揮車、指示…指示を!」
やがて警察に動揺が走り、ベレッタもまた同様だった。
蠍怪人の目の前でただ呆然と事を見詰めるしかできなかったのだから。
「落ち着け!敵怪人は保護する、暴れないよう迅速に拘束し救助隊を呼べ!」
保護といっても相手は改造人間だ。
最早人間とは異なる構造の彼らに、生命維持装置や医者の力でどうにかなるのだろうか。
訪れたはずの勝利に翳りが見え始める中、大仲は通信機で指示を飛ばした。
「何がどうなってんだ……?」
鈴原は釈然としない様子で、ただ忙しく動く同僚達を見つめていた。
それは決して疲弊していただけが理由ではないのだろう。
この案件はきっと少しの消化不良のまま終わる。皆がそう思っていた。
だが、戦いはまだ終わっていなかったことを告げる───あの、天堂寺総司郎によって。
>『うわあああああああああああああああああああああああああああああ』
通信機から響く断末魔と共に、保育施設の窓ガラスを突き破って石灰色の何かが飛来した。
隊員はどさっと地面に放り投げられた“何か”を確認すべく近寄り。
>「い…石に…石になっている!!」
それは紛れもない、パワードスーツだったもの。年長組に突入し、園児救出を行っていた男。
二十代という若さでありながら巨大企業の社長にまでなった天才。
刹那、唖然とした様子で事態を飲み込めない隊員達を怪光線が包んだ。
年長組の窓──石へ成り果てた天堂寺がぶち破った窓から放たれたそれによって、隊員達もまた石造へと変わり果てた。
>「ヒーローさーん、いらっしゃーい、どうしたのー?」
「や、野郎……!ふざけやがって……!」
間の抜けた、ともすれば人を見下しているともとれる声に、鈴原は怒りで足を支えよろりと立ち上がる。
だがその足で年長組へ突っ込むことはしない。
今突っ込んでもあの光線の餌食となり、天堂寺の二の舞となるのは明白。
それぐらいは鈴原とて十分に承知していた。
「大仲さん、策を!突入して……俺が、園児達を助けます!」
「突入法なら任せろ。だが、そこから不利な戦いを強いられるのは覚悟してくれ」
分の悪い戦いになるのは必至。
しかし、その程度の逆境で鈴原が動じることはない。
「了解!」
むしろ覚悟を強く決め、快活に返事をしてみせた。
「よし黒崎、スタングレネードを用意しろ!3、2、1の合図と共に教室へ投げ込み、ベレッタが突入する!」
3分の熟考を経て通信機越しに大仲の鋭い指示が飛んだ。
敵の石化能力(異能か最新兵器かは不明だが)は光を媒介にしている。
ならば対抗策は単純だ。それよりもっと強力な光でかき消してしまえばいい。
これならば石化光線を浴びることなく安全に突入できる。
「3、2、1!行けッッ!!」
日本警察の室伏こと黒崎の超遠投で窓にスタングレネードが投げ込まれる。
発光と音を伴ってベレッタは窓から突入し───
「目が!目があ!?」
ヘルメットが壊れ、対閃光能力を失っていたベレッタもとい鈴原は。
…………スタングレネードの影響を、モロに受けていた。
「人のことを見下したよーな言い回ししやがって!お縄ちょうだいしてやるからチト待ってろ!」
強がりがただただ滑稽であった。
机の影に隠れることに成功していたのが唯一の幸いだろうか?
【教室に突入!スタングレネードの影響で目がああああああ】
「何…!?そんな馬鹿な!!」
警察幹部の震えるような声がモニター越しに聞こえる。
対策本部では現状の確認の為、怒号にも似た声が行き交っていた。
その部屋に1人の男がノックもせずに入ってくる。
長身に、筋肉質の体。短髪と髭が精悍さを醸し出している。
「ありゃ……こいつはマズいね。相手も相当なもんだわ。」
飄々とした面持ちながら、その目は現在の状況を
確かに捉らえているようだった。
男は本部の人間に紹介状を手渡すと、ニッコリと口元を緩ませた。
「市の命令で到着しました、石黒誠司です。
まぁ、傭兵みたいなもんですけどね。」
石黒は持っていたトランクケースを机の上に置くと
その中からベルト状のアイテムを取り出した。
「こいつは試作型ですけど、まぁまぁ役に立つと思いますよ。
でもいまいち使い方がわかんねぇんだよなぁ。まぁ、どうにかなるっしょ。」
本部の人間が差し出したコーヒーを飲みながら、石黒は画面の中に迫る
影を見つめていた。
放たれたスタングレネードの閃光の中から、「きゃひ!」とどこと無く幼い少女の様な悲鳴が聞こえた。
しかし、それは監禁されているはずの幼児達の悲鳴ではなく、女子高生位の年齢の声だ
そして、おかしな事に…
凄まじい閃光と音響が襲ったにも関わらず…
幼児の悲鳴は全く響いてこなかった
机の下に避難したべレッタは、ふと伸ばした手の先に何か固い…2本の棒の様な物に触れる
手探りでその形を確かめればすぐにわかる、それは…石化した足…
それも一つ二つではない、いくつ物石化した足が…いや、幼児達が、冷たい石像になってべレッタの周囲にたたずんでいた
「やーん…もうライオン2匹、何であんな物の爆発許しちゃったの〜?目、超痛いんだけど」
「愚問だな、こいつが俺の獲物だからだよ。超加速の出来ないこいつなんぞ、お前にやらせたらすぐ終わっちまう」
「兄さーん、俺のじゃないだろ?俺達の、だろ?」
「ふざけた理由でチームワークを乱してくれるな…。協調無くして貴様等に勝利は無いぞ」
視界が段々と元に戻ってきたべレッタの耳に聞こえる「複数」の声
最初のふざけた声、荒々しい2つの声、低く不気味な声…
4種の声の内2つ、低い声とふざけた声はスタングレネードのダメージがあるのかどこかつらそうな調子だが、残りの2つの声ははつらつとした調子であり、まるでダメージを感じない
「やいヒーロー気取りのポリ公、勝負してやるからさっさと出て来いよ。ほら、こちとら今までの奴等が歯ごたえ無さ過ぎて退屈してんだ、遊ばせろや」
「もう視力何かとっくに回復してるだろ?君の能力、再生系だもんね」
そういいながら、べレッタのいる机に近づいてくる二つの影…
次の瞬間、机は真っ二つに裂ける
目の前の影の一つが強烈な手刀を放ったのだ
「おう、まだ元気じゃねえか。こりゃ楽しめそうだ」
間一髪避け、ぼやける視界の前に姿を現すのは、真っ赤な体と、鬣の様な銀色の頭、そして赤い単眼を持つ2体のヴィラン…
更にその後ろにも、真っ黒いマントに帽子を被った人型のヴィランと、白いドレスに長い髪の女のヴィランの姿が見える
「さあ、おっぱじめようか!!」
兄弟らしい単眼の赤いヴィランの兄らしい方の叫びと共に、弟が狭い室内でビュンと横に向かって跳躍する
そう思った瞬間、前方から兄の方の嵐の様な拳の連打が襲い掛かってきた
かと思えば、背後からも弟の拳が放たれ、注意がそちらに向かった間に…
「エイヤーーーー」
いつの間にか飛び上がっていた兄のとび蹴りが、べレッタの頭目掛けて突っ込んできた
赤く発光するこの脚の一撃は、不知火製のシールドも軽くぶち抜く破壊力を持っている
何やら室内にやってきた怪しげな男に、警察幹部たちはしばらく黙って聞いていたが、やがて紹介状を読み、なるほどと言って、立ち上がった
「君が何者かはよくわかった。
今現在現場は切迫した状況にある。
直ちに現場に急行し、事態の収集とヴィランの殲滅を行ってくれ」
ヒーローに頼り切って腑抜けた幹部達は、もう今更部外者に頼る事に躊躇ったりしない
くつろいでないではよ現場行けと追い払う様に石黒に命令する。
何もしない上に安全地帯にいるくせに口ばかりは一人前…。
どうしようもない連中である。
「君が何者かはよくわかった。
今現在現場は切迫した状況にある。
直ちに現場に急行し、事態の収集とヴィランの殲滅を行ってくれ」
「りょーかい。まぁ、ギャランティはしっかり貰いますからね。」
石黒は巨大なバックを担ぎ上げると部屋の外へと出て行く。
彼らは自分達が安全圏にいると思っているのだろう。
しかし、危険な場所など今や何処にでも存在しうるという事を
石黒は理解していた。
彼らの怠慢が、いずれ大きな犠牲を生むかもしれない。
しかし、石黒には関係ないことだった。あくまでこれは仕事なのだ。
与えられた任務をこなすだけでいい。無駄な事をする必要など無い。
現場へ急行する間、変身アイテムを手渡された時に伝えられた言葉を少しだけ
思い出していた。
〈この変身システムは、市にばら撒かれた黒い石とそして
数々の異能者から収集したデータで構成されている。
たとえば……この瞬時に掌で奇跡を起こすようなシステム。
これは、かつてこの街にいたヴィランが使用していたものだ〉
到着した石黒の目の前では警察官達が目まぐるしく動き回っていた。
どうやら、年長組の部屋で事が進んでいるらしい。しかも、良くない方向に。
「まぁ、魔法の玉手箱みたいなもんでしょ。このベルトも、銃も。」
バックから取り出した巨大な筒状の銃器を担ぎ上げると、石黒は
颯爽と部屋のほうへと歩き出していった。
「あー、あーテストテスト。そっちに行きますけど、敵じゃないんで
撃たないでね。いや、マジで。」
警察から渡された専用無線機を片手に、部屋の周囲にいる
隊員達に小さな声で伝える。
(クソッ、誤算だ……!メット取り替えてりゃよかった……!)
ごしごしと目を擦り、鈴原は己の愚かさに思わず舌打ちする。
いや。今に始まったことではないのだが………
とにかく周囲の状況を確認しようと地面に手を這わせ様子を探ろうとして。
何か棒状の、硬質の物体が手に当たった。
スーツ越しに確かに伝わった感触を確かめるべく鈴原は撫でるようにそれを掴んで。
(〜〜〜〜〜〜ッ!)
それは間違いなく足だった。
それも───天堂寺と同じく、石化したもの。
徐々に視界を取り戻しつつある目で周囲を見渡せば、それが何人も横たわっているのが分かる。
予想はできていた。
おそらく人質は石化しているだろうと……頭では想像していた。
原因が異能ならば助かる。敵を倒し、能力を解除させることができれば。
希望はある。冷静さを失うことなんてない。
だが、それは自分の過去と重なって。耐え難い苦痛へと変化し怒りへ変貌する。
「よくも……」
よくもこんな真似を。と短絡的に怒りを吐き出し、無謀にも突っ込もうとした、そのとき。
>「やーん…もうライオン2匹、何であんな物の爆発許しちゃったの〜?目、超痛いんだけど」
>「愚問だな、こいつが俺の獲物だからだよ。超加速の出来ないこいつなんぞ、お前にやらせたらすぐ終わっちまう」
>「兄さーん、俺のじゃないだろ?俺達の、だろ?」
>「ふざけた理由でチームワークを乱してくれるな…。協調無くして貴様等に勝利は無いぞ」
ベレッタの集音装置が教室内に響く四つの声を拾い、鈴原に届いた。
届いたその声のお陰で、鈴原はなんとか冷静さを取り戻し、膨張した怒りを押し込めることに成功した。
>「やいヒーロー気取りのポリ公、勝負してやるからさっさと出て来いよ。ほら、こちとら今までの奴等が歯ごたえ無さ過ぎて退屈してんだ、遊ばせろや」
>「もう視力何かとっくに回復してるだろ?君の能力、再生系だもんね」
「ぐだぐだ、ぐだぐだと……!今までの奴らはイヤに寡黙だったが、今回は随分饒舌なん……」
鈴原が言い終えるより早く、壁の役割を果たしていた机が断ち切れる。
ゆっくり後ろを振り返ると二人のヴィランがそこにいた。
体色は派手もとい情熱の赤で、鬣のような顔に単眼×2がこちらを見つめている。
手に武器をもっていないあたり、先程の攻撃は手刀によるものだと推察できた。
後ろにもドレスに身を染めた長髪の女の子と黒マント黒帽子変態ルックの二人がいたものの、鈴原の気はそこまで回らない。
恐らく天堂寺もこの物量差でやられたのだろう。
いくら超加速能力を有しているとはいえ相手がエレメントの怪人、猛者が四人では些か分が悪い。
>「さあ、おっぱじめようか!!」
「上等!四対一だろうが百対一だろうが、いくらでもかかってきやがれえぇぇええぇぇえぇぇぇえええッッッ!!」
鈴原の叫び声と共に二人のヴィランは息の合った連携攻撃を仕掛けてきた。
弟が撹乱、兄が攻撃し、兄に注意がいけば弟がまたベレッタの注意を逸らす。
威勢だけは良いものの、既にダメージが累積しているベレッタは二人の連携に踊らされるがままで。
>「エイヤーーーー」
そして放たれた兄と思しきヴィランのとび蹴りがベレッタに炸裂した。
ひび割れたメットは完全に破砕し、ツインアイの欠片が床に飛び散った。
「ぐっ……おぉ……!」
素面を晒したベレッタは頭から大量の血を噴出しながら後ろへよろめく。
二歩三歩と足を後方へ動かし、身体を揺らして遂には膝をつくこととなった。
「結構じゃあねえか……!こっちゃあとっくに許容量がオーバーフローなんだよ……!
こんぐらい血が出てた方が逆に頭が冷えるってもんだ……なあ、おい!」
ヴィランを睨むようにカッと目を見開き、鈴原は敵対の意志を示す。
無垢な幼児達が毎日遊び歩く床に滔々と血が流れても、そんなことは歯牙にもかけずに。
既に常人ならば失血死してもおかしくない量の血が流れている。
「心臓を握り潰されようが、脳みそを針で掻き乱されようが、石になっちまおうが……アンタらだけは、必ず倒すッッ!!」
しかし鈴原はゆっくりと立ち上がり、ゆっくりと構える。
だがまったくダメージがないわけではない。
止まらない出血に鈴原の表情は青ざめ、苦悶に歪み、息も切らしている。
鈴原は不屈の男だが、決して不死身ではないのだ。
体力が限界に近づきつつある今、二人を同時に相手取って勝つ見込みは薄い。
「さあ、俺は不屈のポリ公だぜ!お前ら曰く再生系なんだろぉ!?俺は!
ならそんなしょっぱい蹴りでやられるわきゃねえーーーだろぉぉぉがぁああああああーーーーッッ!!!」
ゆえに。鈴原の脳みそでひねり出せる策は一つ。
負傷を顧みず、一人だけを集中してぶん殴る。殴って。殴って。殴り倒す。
それで駄目ならもう最後のジョーカーを切るしかない。
素面のベレッタは“兄”へ突進すると右ストレートを繰り出した。
次いで左、右。右右左フック右アッパー。殴打殴打殴打殴打殴打殴打殴打。
連続で、捨て鉢ともいえる怒涛の連続攻撃。
当たろうが当たるまいが関係ない。とにかく腕を前に突き出し攻撃。ただひたすらに。愚直に。
拳のキレは鋭いが、足は既にガタがきているらしくフラついていた。
少し攻撃を加えてやれば鈴原は容易く体勢を崩すなり怯むなりするだろう。
>「あー、あーテストテスト。そっちに行きますけど、敵じゃないんで
>撃たないでね。いや、マジで。」
場違いに呑気な石黒を隊員一同は冷ややかな視線を浴びせた。
残念なことに石黒と隊員・警官達では温度差がありすぎたのだ。
そんな中、石黒の前に人間山脈こと異能犯罪捜査課の黒崎が現れた。
2メートル巨漢に似つかわしくない穏やかな顔も今はやや険しい。
理由はお察しの通り。何故、というクエスチョンに事態が切迫しているから、と付け加える必要はないだろう。
「えー、と……石黒さんでしたか。
現在救出活動に向かった天堂寺氏が戦闘不能状態へ陥り、代わりにベレッタが急行、敵と応戦中です。
石黒さんにはベレッタと協力して救出活動を行ってもらいます
当然、銃を無闇やたらと使用して園児を傷つけるのは避けてください」
黒崎は二リットルのペットボトルよりもデカイ銃器に一瞥くれるとクギを刺した。
いきなり実力もよう分からん傭兵が現れれば訝しむか、不安になるのは当然だ。
ただ“上”の意向がそうだから大仲が渋々従い、黒埼もまた従っているというだけの話である。
しかし、戦力不足な現状助っ人はありがたいのもまた事実だった。
「敵は強力ですのでくれぐれもご用心を。……健闘を祈ります」
ぴっと敬礼すると、黒崎は仕事がまだ山積みなのか巨体を機敏に動かし去っていった。
【なんかもうボロボロ。誰かはやくきてくれー】
『不知火重工の武中だ、情報を捕捉すると敵はパワードスーツや物理装甲の防御力を無視した石化光線を武器にしている、注意されたし。』
忙しい黒崎に代わり、武中が石黒に追加の情報を伝える
これで、突入前にその場にいる者達が伝えられる事柄は全て伝えた
後は…デューティの実力次第である
「は!ははは!いいぜいいぜいいぜもっと踊れ!もっとぉおおおお!!」
放たれるべレッタの拳の雨を、獅子ヴィラン兄はかわし、受け、弾き、無効化してしまう
戦車並みのパワーのメタルボーガーよりも強いべレッタ、その拳の一撃は戦車砲に相当する
だが、対峙するこの獅子ヴィランはそのメタルボーガーと同等か、それ以上の身体能力を与えられており、力では強行突破は敵わず
更に運が悪い事に、多大なダメージを受けている鈴原のガムシャラの攻撃では、技での打開もできない
そして、戦う相手は目の前の獅子兄だけではないのだ…
「そぉら、背中がお留守だぞ」
黒帽子ヴィランの声がして、星型の巨大手裏剣がべレッタの背を思いっきり斬りつけてくる
更にそちらに反応したべレッタの腹に、今度は獅子兄の拳が襲い掛かった
露出した顔面を狙わないのは、このヴィランが遊んでいる証拠である
それでも…
ボロボロになり、絶望的な戦況でそれで尚
諦めず、弱い物のために、痛みに耐え、苦しみに耐え、べレッタはヴィランに立ち向かってくる
「はっはっは、おもしれぇ!ガチでおもしれぇよ!お前よぉ!」
本当に楽しそうに高いテンションで叫びながら、べレッタに応戦する獅子兄
ふと彼は、何故か先ほどから弟が戦い…いや、リンチに参加していない事に気づいた
まともに攻撃をもらえば改造されているとはいえ生身の自分には大きな痛手を与えるべレッタの猛攻を捌きながら弟の様子を伺う事はできない兄は、しかし何故弟が参戦できないか、察しはついている
「見ない面だけど…ヒーローかい?」
迫り来る石黒を見据えて、獅子弟はさりげなく迎撃の構えをとりながら、軽口を叩く
この獅子兄弟、軽い言動に騙されそうだが、相当な武芸の使い手であり、それはいかに数で勝っているとはいえ、あの天堂寺を相手にこの2人が大した傷もなしに勝利している事からも伺えるだろう
並大抵のヒーローやパワードスーツや…まして傭兵等に…倒せる相手ではない
並大抵、ならばの話しだが
>>39 「えー、と……石黒さんでしたか。
現在救出活動に向かった天堂寺氏が戦闘不能状態へ陥り、代わりにベレッタが急行、敵と応戦中です。
石黒さんにはベレッタと協力して救出活動を行ってもらいます
当然、銃を無闇やたらと使用して園児を傷つけるのは避けてください」
巨大な体躯を誇る黒崎の前では、石黒も流石に華奢に見える。
黒崎の忠告に対し、茶化したような笑みを見せたかと思うと
石黒はすぐさま冷静な視線で園児やベレッタ達がいる方を向いた。
「はい、任せてください。必ず、無事に連れて帰ってきます。」
石黒が歩いていく中、腹部にベルトを巻きつけ臨戦態勢に入る。
自動的に装着されたベルトが電子音を鳴り響かせ始めた。
『不知火重工の武中だ、情報を捕捉すると敵はパワードスーツや物理装甲の防御力を無視した石化光線を武器にしている、注意されたし。』
不知火重工の武中と名乗る男から敵の詳細な能力が伝えられる。
石黒はバックから取り出した黒色の鉄のディスクを手にしながら
その内容を把握していく。
「なるほどね……相手はメデューサ顔負けの怪物ってわけか。
まぁ、やるしかないっしょ。」
>「はっはっは、おもしれぇ!ガチでおもしれぇよ!お前よぉ!」
>「見ない面だけど…ヒーローかい?」
「ヒーロー?まぁ、そんなもんか。さぁて、始めますか……」
石黒は指でディスクを弾くと、それをベルトの中央部へ装填する。
《CALL》
電子音声で承認音が鳴ると同時に、石黒の体を生体装甲が包んでいく。
銅と緑色のスーツに包まれたヒーロー、デューティがその姿を現した。
「あの天才社長がやられた相手ねぇ……面白そうじゃないの。」
デューティは一気に飛び上がるとその両足で開戦の合図、すなわち
ドロップキックを獅子弟へ向け繰り出した!
「コメディアンじゃねええんだよぉおおおお!!!」
必死に拳を振るい、攻撃しても鈴原の打撃は二人には全く届かない。
戦いというよりは嬲り殺し。タフなだけに尚辛く痛みは身体を貫く。
「がああああああっっ!!!」
黒帽子と獅子兄の猛攻に鈴原は吹っ飛ばされ、遂に装着すら解除されてしまう。
うつぶせに倒れ、ピクリとも動かないその姿。誰もが考えるだろう、もう虫の息だと。勝ちは確定しただろうと。
しかしそのイメージに断固として鈴原は否をつきつける。
幽鬼の如く立ち上がり、血反吐を吐きながらも獅子兄と黒帽子を睨み、言う。
「……いいさ。なら、やってやろうじゃねえかとことん……!
辞職覚悟で……何処まで突き抜けてやるよ、そうさ、こんなとこじゃ終われない……!」
天を仰ぎ、拳を天井へ。天へ突き出して。
地面が抉れ机が消失し、刻まれた傷は悉く塞がっていく。
「終われないよなああああああああ!!!」
虹色の光が膜の様に鈴原を包み、男の輪郭を変える。
現れたのは細身の、白い馬のような異形。
再び床の一部が抉れると、白馬の怪人の右手に一振りの剣が形成される。
「改造人間であり、異能者であり、パワードスーツの装着者でもある。それが俺だ。俺なんだよ!」
白馬の怪人は疾駆し、獅子兄へ剣を振るう。
直線的で、剣の軌道も単純───獅子兄の技量ならば受け流すことも躱すことも容易。
しかし狙いはそこではない。
狙いは獅子兄ではなく黒帽子の男。
もし黒帽子が隙だらけだ、と背中や横から接近すれば。
白馬の怪人の身体から無数の刃が伸び、黒帽子を突き刺すだろう。
【お待たせしました】
【怪人態へ変身、第二局面へ。デューティには気付いていない模様
警察や不知火にはまだ鈴原が怪人に変身したことを知られていない様子】
「ケッ……隠し玉もってやがったか…」
変身した鈴原に、獅子兄は油断無く構えを取る
曲りなりにもパワードスーツヴィラン、「風」を倒した男
一筋縄でいくとは獅子兄も思っていない
(…だがいいさ、これで相手の戦力は完全に出尽くした)
天堂寺倒れ、不知火の対ヴィラン部隊のメタトルーパーは全滅し、警察の特殊部隊ではエレメントのヴィランには及ばない
そこでべレッタの切り札と、警察の奥の手のデューティを引きづり出せた
エレメントに未だパワードスーツヴィランが4人も控えている状況で、単なる劣兵の獅子兄や黒帽子がここまで出来たのだ
後は、『勝つ』か『後に繋ぐ』だけである
「さぁ、遊ぼうぜ!続きだ!続き!」
ニヤニヤ笑いを浮かべながら、しかし獅子兄は黒帽子に目配せする
『俺が気を引いている隙に、背後から仕留めろ』
調子に乗っている不利をして実は冷静な獅子兄の視線に黒帽子は無言で答え、マントの中で一振りの刀を用意した
これは今まで念動力で操っていた手裏剣や輪よりはるかに切れ味のある黒帽子必殺の一振りである
黒帽子の念力によって増幅された刃のその切れ味は、特殊装甲すら容易に両断するのだ
獅子兄の目配せに従い、さりげなく鈴原怪人体の背後に回った黒帽子は攻撃の機会をうかがい…
その獅子兄への鈴原の攻撃にあわせ、鋭い居合いの一撃を放った!
次の瞬間、鈴原の首が宙を…
「な…」
獅子兄が単調な鈴原の一撃を横に受け流した獅子兄が、思わず驚嘆の声を上げた
黒帽子は喋れない
上半身に無数の刃が突き刺さり、高速で振られようとした腕は串刺しにされ、力強い踏み込みは、そのまま自らの心臓に刃が突き刺さる力を増して、黒帽子を即死させていたからだ
「……」
獅子兄の笑いが止まり、彼が数歩後づさる
そのまま戦闘が再開されんとした時、横から例の石化光線が鈴原へと襲い掛かった
「…ゲン、こいつは私がやるわ、弟の方を片付けなさい」
そういう長髪女ヴィランの口調も、目つきも、先程よりもはるかに真剣みを帯びている
既にヴィラン側は理解したのだろう
彼等が敵の切り札と奥の手であるのならば、相応の実力を持っているのだと言う事に
獅子兄は無言でそれに従い、ばっと素早いフットワークで弟の救援へと向かった
後に残った長髪の女ヴィランは、それを確認せず、鈴原目掛けて瞳から例の石化光線を発射し攻撃する
「…遊んでられる相手じゃない、みたいだね」
距離を置いていたにも関わらず、一瞬で詰められ放たれたドロップキック
獅子弟はそれをかわしきれず、わき腹を軽くえぐられていた
「本気をださなきゃならないみたいだな」
言うが早いか、獅子弟の拳の連撃がデューティに襲い掛かる
その拳の速度と数は凄まじく、とても鈴原に注意を向ける余裕は無いだろう
更に、真上に凄まじい殺気が起こった
獅子兄だ
跳躍した獅子兄が真っ赤に輝く手刀を構え、獅子弟の拳の連打に見舞われているデューティ目掛け天井から振り下ろさんとしているのだ
赤い手刀にモロに当れば鋼鉄も真っ二つにされてしまう
TRPGは何時でも楽しいジャンルですよねー。
>>44 鈴原の異変にも気付く暇すら与えられず、デューティの攻撃を受けた
獅子弟が反撃の拳を放つ。
「……ちょ、おま。って、喋ってる余裕なんて無いみたいだな…ぅうぉ!!
ハッ……やるじゃないの。」
拳の連突を両腕で必死に捌きながら後方へ回転するデューティ。
その手にディスクを手にすると、ベルトへと瞬時に装填する。
《call 1……》
間合いを空けたはずのデューティへ、獅子弟の追撃が迫る。
そして、その攻撃に乗じるように彼の兄であるヴィラン、獅子兄が
真紅に輝く手刀を振り下ろしながら迫る。
「マニュアルなんざ見てないが――案外、やれば出来るもんじゃないの。」
《− Chain hand -》
電子音声が響くとディスクを装填したベルトから、光が浮かび上がり
右腕に鎖を巻きつけたアームパーツが装着される。
その鎖で、迫り来る獅子弟を相手の勢いに任せ一気に捕縛する。
「おっ……似たようなお仲間さんか。物騒なもん手にしてんな。
いや、手自体が物騒かよ!?」
手刀を放つ兄へ向け、捕縛した弟を投げつける。
果たして、どうなる?そしてどうしてそんな事をした?
デューティこと石黒はこう答える。
「お仲間同士、仲良くしてな!!そーれっ……とぉ!!」
【1週間たったので俺の番…なのですが、次がちょっち浮かびません、明日まで待ってください】
「な!?何!」
「そんな!兄さ…」
突如現れた鎖に対応できず、成すすべなく上に飛ばされる獅子弟
その体に、兄の放った手刀が突き刺さり、鈍い音と共に一刀両断にしてしまった
「う…うああああああああああああああああああ」
とんでもない事をしてしまった動揺に、デューティの存在も忘れ、大声で叫んでしまう獅子兄
それに対し、真っ二つになった獅子弟は何も反応しない
どうやら即死だったらしい
「お…あ…」
頭の中が真っ白になっているのだろう、着地している獅子兄は隙だらけだ