【TRPG】フィジル魔法学園にようこそ!8thシーズン
統一基準歴355年。
魔法文明は隆盛を極め、あらゆる場所、場面に魔法が活用されていた。
そんな栄華の果てにいつしか異変が起きる。
確認されたのは20年前にもなるだろうか?
ある属性の魔法に異常なまでの適性を示す。
ある魔法を生まれつき能力として有している。
未知なる力に開眼する。
今までは天才と言われて来た種類の子供たちが続々と生まれ始めたのだ。
このことに世界は大いに恐れ、憂慮した。
なぜならば、本来数十年単位の修行と研究の果てに身につけていく力を僅か数年の学習で身につけてしまうのだ。
あるいは以って生まれてくるのだ。
修行と研究は何も力を得るためだけの時間ではない。
力を振るう為の経験や知識をも身につけるための時間でもあるのだ。
そして大きな力を当たり前のように使える事への危惧は現実のものとなる。
世界各地で引き起こされる悲劇に、統一魔法評議会は一つの決定をなした。
魔法学園の開設!
魔海域を回遊するとも、海と空の狭間にあるとも言われるフィジル諸島に魔法学園を開校し、子供たちに学ばせるのだ。
己が力を振るう術を。
―――― 【TRPG】フィジル魔法学園にようこそ!8thシーズン ――――
■舞台はファンタジー世界。謎多きフィジル諸島にある全寮制の魔法学園です。
フィジル付近は気流や海流が乱れがちなので、島には基本的に、転移装置を使ってくる場合が多いです。
■学園が舞台だからといって参加資格は学生キャラのみではありません。
参加キャラは生徒でも、学園関係者でも、全く無関係な侵入者でも可。敵役大歓迎。
また、舞台が必ずしも学園の敷地内で起きるとは限りません。
いきなり見知らぬ土地に放り出されても泣かないで下さい。 貴方の傍にはいつも名無しさんと仲間がいます。
■当学園には種族制限はありません。お好きな種族と得意分野でどうぞ。
■オリジナルキャラクターでも版権キャラクターでも参加できます。
完走したスレのキャラを使ってもOKですが、過去の因縁は水に流しておきましょう。
また版権キャラの人は、原作を知らなくても支障が無いような説明をお願いします。
■途中参加、一発ネタ、短期ネタ大大大歓迎。
ネタ投下の場合、テンプレは必ずしも埋める必要はありません。
ただしテンプレが無い場合、受け手が設定をでっち上げたり改変したりする可能性があります。ご了承を。
■名無しでのネタ投下も、もちろん大歓迎!
スレに新風を吹き込み、思いもよらぬ展開のきっかけを作るのは貴方のレスかも!
■(重要)
このスレでは、決定リール、後手キャンセル採用しています。
決定リールとは、他コテに対する自分の行動の結果までを、自分の裁量で決定し書けるというものです。
後手キャンセルとは、決定リールで行動を制限されたキャラが、自分のターンの時に
「前の人に指定された自分の未来」を変えることが出来るというシステムです。
例:AがBに殴りかかった。
その行動の結果(Bに命中・ガード・回避など)をAが書く事が可能です。
これを実行すると、話のテンポが早くなるし、大胆な展開が可能となります。
その反面、相手の行動を制限してしまう事にもなるので、後からレスを書く人は、「前の人に指定された行動結果」
つまり決定リールをキャンセル(後手キャンセル)する事が出来ます。
先の例に当てはめると、
AがBに殴りかかった→Bはまともに喰らって受けては吹き飛んだ。
と決定リールで書いてしまっても、受け手(B)が自分の行動の時に、
「Bはまともに喰らったように見えたが紙一重で避けていた」
と書けば、先に書いたレスの決定書き(BはAの拳をまともに受けては吹き飛んだ。)をキャンセル出来るのです。
ただし、操作する人の存在するキャラを、相手の許可無く決定リールで喋らせるのは歓迎されません。要注意です。
※参加に関して不安があったり、何かわからないことがあったら(説明が下手でごめんね)、どうか避難所にお越しください。
相談、質問、雑談何でもOKです。気軽に遊びに来てね。
テンプレは以上です。
では、新シーズンをお楽しみください。
【とある生徒の昼下がり】
入学してからしばらく経ち、私達もようやくこの学園での生活になじめてきました。
今日は授業も午前中で終了。今はちょうど3時頃、一番眠くなる時間です。
そんな私が食堂で優雅なティータイムを楽しんでいると、異国風の髪形をした男子生徒が、来る人くる人に何かを訴えています。
・・・・・・・・。
あの男子生徒は、昨夜実験棟から、「トリフィード」が逃げ出したことを警告しているようです。
あ、トリフィードっていうのは、結構グロテスクな外見の大型食獣植物らしいです。
「らしい」というのは、私はとりフィードという生き物を、直接見たことが無いのです。
だって・・・・・実験棟の手前にある植物園には、幽霊が出るってもっぱらの噂なんですもの。
ああ、ごめんなさい。話がそれました。
でも・・・・・・あの男子生徒の話は本当なのでしょうか?
そんな危険な生き物が逃げ出したのなら、先生方から何らかの警告があってもおかしくないでしょう?
でも、今のところ学園は至って平穏、平和なものです。
平和・・・・・・・。
残念ながら、そうでもないようです。
ほら、男子生徒から警告を聞いた人達が、あちらのテーブルで楽しそうに盛り上がっていますよ。
どうやってトリフィードを捕まえてやろうか、そんなことを話しているようです。
学園内で騒ぎになっていないところを見ると森に逃げ込んだ、と考えるのが妥当でしょう
でも、大丈夫なのでしょうか?
森にはいろいろな生き物が住み着いています。
(入学時、自力で森を抜けて学園に到着するというミッションがありましたが、モンスターたちのせいで大変な目にあいました)
その上、トリフィードです。
実験のために捕獲されたらしいですが、本来はジャングルの中で、大型の獣や巨大トカゲを食べているような生物です。
魔法が発動できない生徒が遭遇でもしたら、大変なことになると思うのですが・・・・・・。
そのうち夜になってしまいます。森に行く命知らずは、それなりの準備が必要でしょうね。
あら?あちらでは、先生が掲示板にお知らせを貼ろうとしています。先生では手が届かないでしょうから、私がお手伝いましょう。
何が書いてあるのかしら・・・・・・あら。総代のエンドウって男性、どうやら本格的に行方不明のようですね。
一番に見つけた人には、何かしらのご褒美が出る・・・・あら、素敵。
トリフィード探しは危なくて無理だけど、総代捜索なら私でも気軽に参加できるかもしれませんね。
うーん、探すとしたら、どこから行こうかしら?
小柄な金髪少女が、大きな鞄を抱え廊下を急いできた。
背中には、背丈ほどもある箒を担いでいる。
おまけに肩から提げた鞄が重いのだろう、あちこちでよろけては、人にぶつかりそうになってぺこぺこ頭を下げていた。
そんなメガネ少女の名前はリリィ。今期の新入生だ。
彼女は箒で空を飛ぶこと、テレパシーで言葉を伝えること、そして怪我などを癒す程度の力しかない。
特別な力を持つ生徒が集まる学園中では、どちらかといえば中の下の実力である。
さて、そんな落ちこぼれ寸前のリリィが先を急いでいるのにはわけがある。
それは、新入生総代で彼女の友人でもある「エンドウユウキ」が行方不明だからだ。
「エンドウユウキ」の婚約者であるマコトは、エンドウはきっと何か面倒ごとに巻き込まれたのだと心配している。
(実際、昨日遠路はるばるやってきた婚約者に何の書置きも無く、姿を消す男がどこにいるだろう?)
結局マコトの捜索は空振り、また校内放送を入れても何の反応も無かった。
(食堂で聞き込みをすると言っていた友人のエンカも、きっと空振りだった可能性が高い)
こうなるとマコトの推理どおり、エンドウは森に消えたと考えるのが妥当だろう。
そんなわけでリリィとマコト、そしてその友人達は、エンドウ捜索のための準備をし、森に入ることになったのだった。
リリィは仲間達と、食堂前におかれた掲示板のところで待ち合わせをしていた。
各自準備出来次第、ここに集合、という約束をしていたからだ。
だがリリィは、少し準備に手間取ってしまった。
もしかしたら、皆はリリィを置いて先に行ってしまったかもしれない。
そんなリリィの耳に、廊下で談笑する生徒達の話が切れ切れに届く。
漏れ聞こえてくる言葉から察するに、どうやらもう、「総代行方不明」とトリフィードの話は「ここだけの話」では無くなったらしい。
(おっかないトリフィードはともかく、エンドウ君捜索は人手があったほうがいいよね!)
そんなことを考えていると、ようやく食堂前の掲示板が見えてきた
「すみませーん、すみません・・・・・ちょ、ちょっと通してくださぁい」
掲示板の前の人だかりをかきわけながら、リリィは約束した場所に到着した。
「ごめん皆、遅くなった!」
皆はまだ、リリィを待っていてくれるだろうか?
エンドウを死ぬほど心配していたマコトは、とっくに森に入ってしまったかもしれない。
いくら強いとはいえ、彼女もまたか弱い乙女である。一人で大丈夫だろうか?
まあ、仮に皆から置いてけぼりにされたとしても、掲示板に何らかの書置きがあるだろうから問題ないのだが。
「そういえばエンカ、エンドウ君が食堂に来たかどうかを聞き込みしてくれたはずだよね?結局どうなったんだろ?」
>6
「荷物、重そう…ですね?よろしければ、少しお持ちしましょうか?」
一人のおとなしそうな女性がリリィにそう声をかけてきた。
彼女はリリィよりずっと年上のようだったが、
学園で女子生徒に支給されるセーラー服の制服と、
指にはめられた指輪が、学園の生徒の一人であることを示していた。
東洋系の黒い髪を彼女がそっと掻き上げると、甘い梅の花のような香りがした。
「あぁ…あなたですね?さっきエンカさんがバラバラになったと、テレパシーを発信したのは。」
リリィの返事を聞いた彼女はそう言った。
「先ほどエンカさんに会いました。あなた達のおかげで、体が元に戻ったと、そう言っていましたよ?
それにしても、大変な荷物ですね。どこか街にでもお出かけするのですか?」
彼女はリリィにそう聞いたが、そういう女性の方こそ大きなトランクを手にぶら下げていた。
「…申し遅れました。私はトモエ、トモエ・ユミと申します。」
名前・トモエ・ユミ
性別・女
年齢・28歳
髪型・黒のポニーテール
瞳色・黒
容姿・白いセーラー服姿。胸元に菖蒲(しょうぶ)の花のワッペンが付いている。
備考・魔法学園の女子生徒の一人。女子生徒の一人。大事なことなので(ry
物静かでおとなしい物腰をしている。しかしその本性は・・・
好きなもの・子供。正義。
苦手なもの・笑うこと。空気の読めない人。寒さ。
>5-7
図書館から出たメイド長は、そこで昨日の客人達がどこにいるのか、
行き先などの当てが自分にはない事に気付いた。気が急いていたが故の
失策であるが、後悔しても事態は好転しないのだ。最悪虱潰しに探すしかないと
自身に言い聞かせ、周囲に目を配りながら歩いていく。
そしてメイド長は、途中で耳に飛び込んできた『総代・炎道勇気行方不明』と言う
情報を確かめる為食堂の掲示板までやってきていた。そこに貼られていた学園側からの
知らせには確かに書かれている。決して幸先のいいスタートを切れたと言えないメイド長には
炎道勇気の消息不明は運命の神とやらの悪意でしかなかった。
(「……何と言うこと。すぐに見つかると楽観していたわけではないけれど
こちらはこちらで問題が発生していたなんて……落胆している場合ではない。
可能な限り早く探し出して連れて行けばいい、手順が一つ増えただけよ」)
ネガティブな思考を無理やり断ち切り早速森に向かおうとして……
>「ごめん皆、遅くなった!」
聞こえた声にハッとなって顔ごと視線を向ける。
そこには、パズルのピースの一つである少女がいた。その近くにはいくらか見た顔もいる。
『昨日裏図書館を訪れた一行』を探していた、メイド長にとってこれは嬉しい誤算であった。
「……少々よろしいでしょうか。昨日は突然の来訪の為満足におもてなしも出来ず。
私は小用があってこちらに来たのですが、あの赤い髪の殿方が行方不明と今知りまして。
お邪魔でなければ私もお手伝いいたしますが、よろしいでしょうか?」
落ち着いた調子で協力を申し出るメイド長だったが、周囲の彼女を見る目は
どこかおかしかった。まぁ、少なくともリリィはメイド長の格好を見て唖然とするだろう。
何しろメイド長は、何故かバニーガールの衣装を纏っているのだから。
ご丁寧に兎の耳飾り付きのカチューシャにふかふかの尻尾まで着けていらっしゃる。
……しかし、歩き辛くバランスの取り辛いピンヒールを履いているのにその姿勢に乱れは見られない。
素人目で見てもこの手の装いに慣れているのだろう事が嫌でも分かってしまう。
……これでもかと言うほどのナイフやダーツを収めたレザーベルトを二の腕や太股に巻いていなければ
ただの気合の入ったコスプレで済んだのだろうが。
ふとメイド長は、リリィの傍にいる幾人かの初顔に意識を向ける。
管理者と傍仕え達は、あまり多くの学園関係者に自分達の素性を知られたくない理由がある。
その為、つい無意識に一期一会で済まなそうな余人には警戒心を抱いてしまう。
「ところで……そちらの方々とお会いするのは初めてですね。
私は……見ての通りちょっと危険なバニーですわ」
そんな内面を笑顔で隠し、メイド長は挨拶と自己紹介を行った。
自分の3倍ぐらいの大きさのリュックサックを背負った猫が一匹
それだけでも普通ではないのにさらに二本足で歩いていた
猫の名前はグレン、フルネームはグレン・ダイザーである
「にゃあ」(やっぱ人間サイズのリュックはでかいや)
彼の背負っているリュックの外側にはメッシュのポケットが着いており
そのポケットには奇妙な瓢箪が収められていた
瓢箪の中には怪我をした彼の主人フリードリッヒ・ノクターンが
魔法の力で中に入っており瓢箪の効力でその怪我を癒している
魔法で治せばすぐではないか?という疑問もあるだろうが生憎彼らは癒しの魔法というものを習得していないのだ
>6-8
彼らの目指す目的地は食堂前の掲示板
そこには失踪してしまった彼らの友人を探すためのメンバーが集まっているのである
「にゃにゃあ」(来たわよ)
『わよ?』
何故かオカマ口調で到着したことを伝えるグレン
別に深い意味は欠片もない
>「そういえばエンカ、エンドウ君が食堂に来たかどうかを聞き込みしてくれたはずだよね?結局どうなったんだろ?」
「にゃー」(僕知らないよー)
>「先ほどエンカさんに会いました。あなた達のおかげで、体が元に戻ったと、そう言っていましたよ?
それにしても、大変な荷物ですね。どこか街にでもお出かけするのですか?」
>「…申し遅れました。私はトモエ、トモエ・ユミと申します。」
「にゃあん」(知らないお姉ちゃんだ)
どうせ自己紹介しても相手がケットシー語を習得しているか定かではないため
とりあえず見ているだけのグレン
『こんな姿で申し訳ございませんフリードリッヒ・ノクターンです』
と瓢箪に入ったまま挨拶をするフリード
まさか今回怪我が治るまでずっと瓢箪の中なのか?
>「……少々よろしいでしょうか。昨日は突然の来訪の為満足におもてなしも出来ず。
私は小用があってこちらに来たのですが、あの赤い髪の殿方が行方不明と今知りまして。
お邪魔でなければ私もお手伝いいたしますが、よろしいでしょうか?」
「にゃん」(仲間が増えるよやったねフィー坊)
『それは死亡フラグですよグレン』
>「ところで……そちらの方々とお会いするのは初めてですね。
私は……見ての通りちょっと危険なバニーですわ」
「んにゃあ!」(危険なのかよ!)
『危ないのは保健医の幼女趣味だけにしてください』
ついカッとなって突っ込みを入れるグレンとフリード
「うな〜ご」(まあ猫の森を探索するんなら僕が道案内するからドロブネに乗った気分で付いてきてよ)
『ドロブネじゃ沈んじゃうじゃないですかグレン』
まあ実際問題猫であるグレンが一番ガンダ・・・・もとい猫の森に詳しいのだから仕方がないだろう
アザトースユニバースフォースブリザード!?♪。
真は皆と一度分かれた後、勇気の部屋へと向かった
まだ正式な部屋が決まっていないということで、真の荷物はまだ勇気の部屋にある
そもそも、朝から勇気を探していた真にとっては部屋の移動をしている時間はなかった
真は部屋には伊織がいて、荷物の整理をしているものだと思っていた
しかし、朝に部屋を出たときと同じ景色を見たとき、伊織が今日一日、暇を貰っていることを思い出す
「そうや、伊織もおらんかってんな……」
誰もいない部屋、荷物が散乱した部屋
目に入った光景は、真は心の片隅に一抹の不安がわき上がらせるには十分だった
だが、それを言葉にするとその不安が一気に支配されてしまうと思い、口に出すことはしない
しかし、彼女は別に不安だけが彼女の行動原理というわけではない
勇気は一体どこに行ってしまったのか? 伊織が見つけた面白い物とは?
不安とは余所に2人の動向にたいする好奇心もまた彼女が勇気を探す動機でもあった
真は2人から一体どういう話が聞けるかを楽しみにしながら、彼女は普段着の着物から戦闘用の改造巫女服に着替え、颯爽と部屋から飛び出した
「勇気はどこに行ってもうたんやろ?死んでなかったらええねんけどな。伊織は伊織でおもろいもんってなんやろ
明日聞いてみよ」
真は実際には勇気が死んでいるなど、微塵も考えていなかった
自分が好きな人に対する信頼が彼女を心の中に強大な柱となって存在している
だから彼女は希望を持っている
学園内 食堂前掲示板前
「みんな揃ってるみたいやね」
真がやってきたとき、リリィとグレンがいた。
あとは初めて見る人間が二名が2人の周りに居る
やってきたとき、ちょうどバニー姿の女性が自己紹介を始めるときだった
>「ところで……そちらの方々とお会いするのは初めてですね。
私は……見ての通りちょっと危険なバニーですわ」
「もしかしてこれが噂のクビチョンパウサギちゃうん!?」
大量のナイフを持っているメイド長の姿を見て狼狽する
>「…申し遅れました。私はトモエ、トモエ・ユミと申します。」
見たところ、同郷の出で立ちの女性
すこしおっとりした印象を感じさせる話し方は良家のお嬢さんを連想さした
「私は天海 真や。この掲示板に行方不明で捜索届けが出されてる炎道勇気の許嫁や」
簡単に自己紹介をすます
「ところであんた達も勇気の創作に協力してくれんの?」
ここに居るなら当然そうなんでしょ?といった感じの様子
>「うな〜ご」(まあ猫の森を探索するんなら僕が道案内するからドロブネに乗った気分で付いてきてよ)
『ドロブネじゃ沈んじゃうじゃないですかグレン』
「しょうもない漫才してんと、とっとと勇気探しにいこうや!」
真は前置きなどいらんといった様子でさっさと森にレッツゴーしたい様子だ
「猫の森ってガンメンヒッカキネコとかメンタマエグリカラスとかけったいな動物が居そうなきがするわ〜」
猫とカラスとの関係性は謎です
>7-11
>「にゃにゃあ」(来たわよ)
「わーっ!!リュックが喋った!!!・・・・・・って、グレンじゃない!
どうしたのその大荷物!って、そっか。フリード君まだ回復してないから、代わりにがんばってるんだね。グレンはおりこうさんだねぇ!」
リリィはグレンの頭をなでなでした。
>「荷物、重そう…ですね?よろしければ、少しお持ちしましょうか?」
「あ、ありがとうございま・・・・・・」
振り向いたリリィは、相手の姿を見てそのまま固まってしまった。
そして女性の頭のてっぺんから足先までたっぷり眺めた後、彼女の指輪に目を留めた。
そして女性の顔を見て、ごしごしと目をこすった後、もう一度指輪を確認などしている。
・・・・・・リリィが今何を考えているのか、きっと相手の女性には筒抜けだろう。
そして、失礼極まりない話である。
相手の外見と実年齢が必ずしも合致しない、という魔法使い間の常識に、いまだ慣れていないリリィであった。
「い、いえ・・・・・・私は、お気持ちだけで十分です」
そう言ってから、気づく。自分ではなくグレンに言ったのだと。
彼女がつややかな黒髪をそっと掻き上げると、甘い花のようないい香りがした。
リリィは再び彼女と目を合わせた。
なんとなく、レベッカやメイションと似た雰囲気を感じるのは、東方系の顔立ちのせいだろうか?
>「あぁ…あなたですね?さっきエンカさんがバラバラになったと、テレパシーを発信したのは。」
「ええっ?!な、何でわかったんですか?」
リリィは飛び上がるほど驚いた後、今までの自分のぶしつけさにはっと気づき、一人赤くなった。
だが女性はそれほど気を悪くした風でもなく、先ほどエンカと会ったことを話してくれた。
(エンカったら、聞き込みのついでにちゃっかりナンパなんかしてたんだ・・・・・)
リリィは「女性に声をかけるのは男の礼儀だろ!!」と言いながらポーズをとるエンカを勝手に想像し、一人ムカムカした。
(もう!!女難にあったばかりなんだから、ちよっとはおとなしくしてればいいのに!)
>それにしても、大変な荷物ですね。どこか街にでもお出かけするのですか?」
「いえ。私達は・・・・・・」
リリィは女性に、総代が行方不明になったことなど、今から探しにいくことになったいきさつなどかいつまんで話した。
>「…申し遅れました。私はトモエ、トモエ・ユミと申します。」
「私はリリィです。この子はグレン。フリード君は瓢箪の精なんかじゃなくて、美人さんで、グレンの主さんだよ!
ところでトモエさん、あなたもすごい荷物ですが、今からどちらかにお出かけなのですか?」
トモエが森に行くと聞いたら、リリィはきっと飛び上がってこう止めるだろう。
「だめですよ!すっごく危ないんですから!一人で森に行くなんてとんでもない!」と。
リリィが何か言おうとしたところで、ふと、その場にいたギャラリーの視線がいっせいにこちらを向いたことに気づく
「?」
否、正確には、リリィではなく、リリィの背後のようだ。
背後から、聞き覚えのある声が聞こえてきた。
リリィは声の主を知っている。
学園の七不思議、裏図書館の管理人。
その管理人の右腕とも言える、有能(だがちょっと変)なメイド長のものだ。
彼女はすでにエンドウが行方不明だということを知っており、助力を申し出てくれている。
「本当ですか?!一緒に探して下さるなんて、すごく心強・・・・・・・・・・・・・・・・・・」
心強いです!!と言おうとしたリリィだったが、振り向いたとたん、がくんと顎が落ちてそのままフリーズしてしまった。
その間にマコトが到着し、バニーちゃん@メイド長の自己紹介は続く。
(・・・・・・うーん、つまり今は、メイド長さんじゃなくバニーちゃんと呼んだほうがいいってことかな?)
考えるべきところはそこではない。
マコトはメイド長の姿から、バニーちゃん=クビチョンパウサギだと勘違いしたようだ。
「ち、違うよ!・・・・・・・・・ち、違うと思う・・・・・違うんじゃないかな・・・・・・どうなんでしょうバニーちゃん」
メイド長は肯定とも否定ともつかない笑顔を湛えている。
「よ、よろしくお願いします。
それはもしかして、メ、じゃなかった、バニーちゃんの私服、ですか?
に、似合ってますけど・・・・・・森の中歩きにくくないですか?夜寒かったり、虫にさされたり、変質者がついてきたりとか・・・・・・。
あっ、こちらのセーラー服の女子生徒は、女子生徒のトモエ・ユミさんです」
大事なことなので二度言いました。
>「私は天海 真や。この掲示板に行方不明で捜索届けが出されてる炎道勇気の許嫁や」
「そうそう、エンドウ君の写真がないと困ると思って、がんばって似顔絵描いてみたんだよ!どうかな?」
リリィは、満面の笑顔でマコトに絵を差し出した。
「すごくよく描けたと思うの。そっくりでしょ?捜索願と一緒に貼ってもいい?」
貼れば、いらぬ混乱を招く結果にあるだろう。
>「しょうもない漫才してんと、とっとと勇気探しにいこうや!」
「えー、道案内は大事だよ〜?トモエさんだってそう思うよね?」
リリィは声を潜め、マコトに耳打ちする。
「猫の森ってガンメンヒッカキネコとかメンタマエグリカラスとかけったいな動物が居そうなきがするわ〜」
「えー、なにそれ、なんかかわいい。グレンはどんな生き物か知ってる?」
リリィはグレンのリュックを持ち上げると、よろよろと歩き出した。
以前森の中にある、総裁宅を見学しに行ったとき、リリィ達は夜の森に入ったことがある。
今はまだ日が高いが、そのうち森は漆黒の闇に落ちるだろう。
そうなる前に無事エンドウを助け出すことができるのだろうか?!
「あーっ!!しまった!!!」
森の中をしばらく歩いていると、急にリリィが大声を出した。
「どうしようどうしよう!そういえば私、アリス先生のお部屋訪ねるのすっかり忘れちゃってた。
ねえ、どんな話だったか知ってる人いる?」
・・・・・・・ところで、森の中を歩きながらの大声は、敵に見つかるリスクがあり大変危険です。
よい子は真似しないでね。
>8>9>11>12
>『こんな姿で申し訳ございませんフリードリッヒ・ノクターンです』
>と瓢箪に入ったまま挨拶をするフリード
「…私、疲れているのでしょうか?瓢箪が口をきいたように聞こえましたが…?」
トモエ・ユミはごく一般的な反応を返した。
>「私はリリィです。この子はグレン。フリード君は瓢箪の精なんかじゃなくて、美人さんで、グレンの主さんだよ!
> ところでトモエさん、あなたもすごい荷物ですが、今からどちらかにお出かけなのですか?」
トモエ・ユミは改めてグレン達に挨拶した後、リリィに話をした。
「あなたが、何を考えてらしたか、よくわかります。
私、小さい頃に学校へ通うことができませんでした。
だから、今こうして学校へ通って、皆と一緒に勉強ができること、嬉しく思っています。」
トモエ・ユミは自分の行き先を話さなかった。言葉とは裏腹に、トモエ・ユミは一切笑わない。
「…ですので、あなたが私を“大人っぽすぎる”と思ったこと、私、気にしてませんから。」
トモエ・ユミは気分を害しているわけではなく、ただ笑うのが苦手なだけである。
しかし、無表情でこういう言われ方をすると、なんだか話しかけづらく感じることだろう。
少しすると、どうやら食堂に集まってきたメンバーの知り合いらしい女が話しかけてきた。
>「ところで……そちらの方々とお会いするのは初めてですね。
> 私は……見ての通りちょっと危険なバニーですわ」
「…トモエ・ユミです。」
トモエ・ユミはバニーにそう名乗った。バニーの格好はトモエ・ユミの感覚からすると淫乱に見えたが、
きっとそういう文化なのだろうから変な目で見てはいけないと思い直すことにした。
今自分が着ている服だって、太股が見えるのだから正直恥ずかしいのだ。
>「ところであんた達も勇気の捜索に協力してくれんの?」
天海真と名乗った少女は自分とバニーが天海真達の手伝いをしてくれるらしいと思っているようだった。
なんでも、炎道勇気という男子生徒がいなくなってしまったらしい。
バニーの方は知らないが、トモエ・ユミには彼女達に協力する気は無い。
むしろ炎道勇気を探すために森に入ろうと一行が考えているのなら、それはトモエ・ユミにとって好ましくないことだった。
「あなた達はエンカさんから聞かなかったのですか?森には今学園から逃げ出したトリフィードが潜んでいます。
とても危険な怪物です。退治されるまで、森に入ろうだなんて考えないでください。」
トモエ・ユミはペコリと頭を下げた。
「すみませんが、私、急ぎの用がありますので、これで失礼します。
いいですか?トリフィードが退治されるまで、森には入らないでくださいね。」
トモエ・ユミはそう言って一行と分かれ、そそくさとどこかへ行ってしまった。
揺れる彼女の髪から、再び梅の花のような甘い香りがひろがった。
森の中の木から木へ、枝から枝へと颯爽と移動する多数の影もあれば
森の要所を抑え じっと待ち構える影の姿もあった
「こちら捜索班、 現在、目標は発見できず 捜索を続行します」
「こちら警護班A分隊、森の中の各ポイントへ展開完了、警護対象到着まで待機」
一方、学園校舎にも同じような影は現れていた、屋上や渡り廊下 通気孔など至る所に彼らは居て生徒達を監視しているだろう
「ご苦労様、では各員任務を続行なさい」
ブレは部下からの報告を聞き、通信に使う趣味の悪い金ぴかの鏡を懐にしまった
「野獣探しと子供の護衛…
お膳立ては済みました…誰一人“まだ”死なれてはならない…」
吐き捨てるようにブレはそっと呟き、コートの襟を正した
「では行くとしましょう、もうじき戦いはやってくる」
いつのまにか その場所から大男の姿は消えていた
>11-14
>「猫の森ってガンメンヒッカキネコとかメンタマエグリカラスとかけったいな動物が居そうなきがするわ〜」
>「えー、なにそれ、なんかかわいい。グレンはどんな生き物か知ってる?」
『そうだね僕らの種族はもちろんアダンダラに猫又にリュンクスと猫系いっぱいいるよ』(猫語)
とグレンは言う・・・・だがケットシー語を習得していないと意味が分からないよだろう
『一番危険なのは土星からの猫・・・・正直あれを猫族とは認めたくないけどね』(猫語)
土星からの猫(出典:クトゥルフ神話)
虹色の蔦が絡まって唐草模様のように猫に似たシルエットを形作った生物
すべての猫族の敵で月の裏側で猫族と戦争を繰り広げているらしい
親類に冥王星からの猫がいてそれはもっとマッチョである
『それ見たら正気度が下がっちゃうあれじゃないですかやだぁ!!』
とフリード
もちろんこれはグレンのキャットジョークである・・・・・
だよね、クトゥルフ系モンスターなんていないよね
>「すみませんが、私、急ぎの用がありますので、これで失礼します。
いいですか?トリフィードが退治されるまで、森には入らないでくださいね。」
トモエの言葉はなんだったのかとツッコミを入れたくなるほどナチュラルに森を進んでいく一行
>「あーっ!!しまった!!!」
>「どうしようどうしよう!そういえば私、アリス先生のお部屋訪ねるのすっかり忘れちゃってた。
ねえ、どんな話だったか知ってる人いる?」
『つまりかくかくでしかじかという事なんですよ』
とアリスとの会話内容を話すフリード
『かくかくしかじか四角いムーブだよ』(猫語)
「まてい!ここから先は通さん!!」
その一行を妨げる3つの影
「レッド!ゴブリン!!」「ブルー!コボルト!!」「イエロー!オーク!!」
「「「我ら正統派ファンタジー3悪党!!!」」」
なぜか色の着いたドミノマスクを着けたゴブリンとコボルトとオークが現れた
『雑魚だね』(猫語)
『雑魚ですね』
余りにも絵に書いたような雑魚敵だったので油断しまくる一人と一匹であった
『っていうか猫の森にはゴブリンは居ないんじゃ?』
と当然の疑問をぶつけるフリード
『猫の森はもうちょっと向こうだよ』
どうやらもっと奥に行かないといけないらしい
>13 >16
森の中、普通の人間なら歩きにくいであろう獣道を、ミクは普段と変わらぬ足取りで歩いている。
時々木の幹等に軽く手で触れているのは、蜘蛛糸を張って周囲の状況を把握するためだ。
それは癖のようなものであって、なにか意図があっての行動ではない。
現にブレの配下や、トリフィドや炎道を探す者たちが森に入っているのをある程度は把握している。
してはいるが、自分に関係してこない者をどうこうするつもりはミクには無かった。
以前屋上であった戦いの時、ミクは本来の姿である大蜘蛛の足を数本失う深い傷を負っている。
今の姿では確認できないものの、傷が癒えるまでは荒事は避けてじっとしていたいのが偽らぬ本音なのだ。
ではなぜ、ミクは森の中をうろうろと出歩く羽目になっているのか。
それは少し前にミクの自室にやってきた、アリスと名乗る教師の依頼によるものだった。
『総代の炎道くんを探してほしいの〜』というアリスの依頼を、義理も義務もないミクはすぐに断った。
それでもアリスはお願いを続け、断る事7回お願いされる事8回目についにミクも依頼を受ける事になる。
根負けしたのではない。
見えない傷の心配をされた上に、総裁との協力約束を知っているような素振りを見せるアリスの詮索を嫌ったのだ。
以前、ミクは総裁の館でベッドフォード総裁に協力すると言っている。
知られたからどうという事でもないのだが、無駄に教師達に目を付けられるのをミクは望まない。
それが見えない傷に気づくような相手ならなおさらである。
そんなわけで、嫌々炎道捜索に参加したミクのやる気は限りなく低い。
森には肉食植物が逃げ込んでいるし、元々危険な生き物が何種類も潜んでいる。
炎道という総代がまだ生きているかどうかも怪しいものだ。
>「あーっ!!しまった!!!」
リリィの大声を聞いたのは、ミクが散策は適当に切り上げて帰ろうかと思っていた時だった。
以前何度か会ったことがあるため、リリィの声はよく知っている。
リリィが真と一緒に炎道を探しに来たであろう事も、食堂での真やフリードとの会話から推測できた。
ミクはほんの少し楽しそうに微笑んで、それから糸を使ってするすると樹上に登り始めた。
他の危険な生物が近寄ってくる前に、急いでリリィ達と接触するために。
>「「「我ら正統派ファンタジー3悪党!!!」」」
急いだのだが、すでに目的地には先客がいた。
まだ森の奥深くからは離れているためか、木陰から確認した限り危険な相手ではなさそうだが。
私は雑魚敵ですと全身で主張しているような3体を見ながら、ミクは“挨拶”の方法について考えた。
ミクは身を潜めたままごく細い糸を操り、赤いマスクの小鬼に巻きつけて空中に釣り上げる。
細くても強い蜘蛛糸は、小鬼が暴れた程度で切れたりはしない。
しばらく空中でぶらぶらと振り子運動をさせた後、ミクは糸を操って小鬼をリリィに向けて放り投げた。
一同の中で一番よく知った相手であるリリィへの、再開を祝したちょっとした“挨拶”だ。
代理投稿お願いしますね。以下本文
ぐしょぐしょに濡れたも着替え、それなりにそれなりな装備で万全を期しているロロだが、待ち合わせの時間には少し遅れてしまった
それも偏にキラーチェーンへの罠を解除し忘れていたのを思い出した結果なのだが……
という訳でロロは森を走っている。そしてようやっと皆を見つけられた
しかし見えているのは顔。どこをどう動いたのかは定かではないが、どうやらロロは回り込んでしまったらしい
「ごめん。遅れちゃったみたいでっ!?」
ヒジョーに胡散臭い笑顔で爽やかに合流しようとした時、何かに蹴っ躓いてその場で派手に一回転
どうもオークを蹴ってしまったらしい
一体学内でキラーチェーンの虚を突き善戦した男はどこへ行ったのか?
>「すごくよく描けたと思うの。そっくりでしょ?捜索願と一緒に貼ってもいい?」
「リリィ、絵めっちゃ上手いやん!!そうそう、まっかな髪の毛つんつんで目つき悪いねんな
でなんか凶悪そうなかおしてんねん……って、これやったら手配書やないの」
書いて来た絵はどことなく犯罪者顔だった
>「あなた達はエンカさんから聞かなかったのですか?森には今学園から逃げ出したトリフィードが潜んでいます。
とても危険な怪物です。退治されるまで、森に入ろうだなんて考えないでください。」
「なんや、そんなもん。私も炎極殺で炭に変えてやるわ」
真はケラケラと笑っていた
>「すみませんが、私、急ぎの用がありますので、これで失礼します。
いいですか?トリフィードが退治されるまで、森には入らないでくださいね。」
「勇気を探すん手伝ってくれるんやないんや……」
真は寂しそうにトモエの後ろ姿を見送った
>『一番危険なのは土星からの猫・・・・正直あれを猫族とは認めたくないけどね』(猫語)
『めちゃめちゃ危険そうやな。なんやねん、お月様の裏で戦い続けてるって。うさぎさんは大丈夫なんか?」
月のうさぎさんがつくお餅が猫族の食料なんだとかなんとか
>「「「我ら正統派ファンタジー3悪党!!!」」」
森を奥に進むとなにか変なのが出てきた
「なんなんあれ?ぶっ殺してもいいん?」
このこはデンジャラスんあんであしからず
全員余裕で小鬼を眺めていたら、赤い小鬼が宙に浮いてリリィの胸に飛び込んでいった
「とんだエロ鬼さんやな」
真は少し呆れた顔をしつつも笑いをこらえていた
>14 >16-19
「ねえ、メイ・・・・・・じゃなかった、バニーちゃん。
やっぱりさ、『ちょっと大人っぽすぎるんじゃない?』って感じの視線向けられたら、気分害しちゃう?」
リリィはメイド長の返答を聞き、はあー、っと大きなため息をついた。
「あーあ。何で私ったらこう、考えなしなのかなぁ?魔法使いの外見ほど、あてにならないものは無いっていうのに」
どうやらリリィは、食堂で別れたマミのことを考えているようだ。
急ぎの用があると言っていたが、あんな荷物を持って、どこに行くというのだろうか。
>16
リリィは、既にアリスの部屋を訪れていたフリード達から、どんな話があったかを聞いていた。
「へえー、そうなんだ。ところでグレン、しかくいむーぶって、なあに?」
グレンの説明はとてもわかりやすいのだが、時々よくわからない単語が飛び出してくるので困る。
>「まてい!ここから先は通さん!!」
その一行を妨げる3つの影
リリィはぽけーんと大口を開け、3人の見得を眺めている。
>「「「我ら正統派ファンタジー3悪党!!!」」」
「悪党なんだ・・・・・・」
>『雑魚だね』(猫語)
>「なんなんあれ?ぶっ殺してもいいん?」
「いやそこはもっと素直に驚こうよ!じゃなくて!さりげなく挑発なんかしないでよ!
ほらあ!3悪党がすっかり怒ってるじゃないの!!」
リリィは持っていたカバンに片手を突っ込み、中をがさごそかき回し始めた。
あーでもない、こーでもないとぶつぶつ言っていたリリィが、突然顔をぱあっと輝かせる。
「あ、あった!今のピンチを回避してくれる便利な道具!
そうよ、どれほど危険な相手でも、血を流すことなく、その場を収め話し合いのテーブルにつかせる事のできる伝説のアイテム!!
じゃーん!これだよ!見て!!」
リリィは白い布をつかみ出した。
幅30センチ強、長さ1メートルほどの白布の端には、同じ色の紐が伸びていた。
「時間が無かったから、友達の引き出しにあったのを借りてきたんだ。あ、ちゃんと借りますって書きおき残しといたから大丈夫だよ!」
見るものが見れば、白布には明確な使い道があるとひと目でわかっただろう。
だがリリィ気づかなかった。
気づかないまま、紐で白布を自分の箒の先に手早くくくりつけている。
(少々幅は狭いものの)白布がついたリリィの箒は、まるで白旗のような姿になった。
「落ち着いてくださーい!私達戦う気なんかありませんー。ここを、通り抜けたいだけなんですぅー」
ぱたぱたー、ぱたぱたーとリリィが白旗を振っている。
そうしていると、三悪党のリーダーらしき赤いマスクの小鬼が、突如宙を舞った。
赤い小鬼はまるで振り子のように空中で左右に揺れた後、リリィ向かって一直線に飛来した。
「きゃあああああ?!げふっ?!」
赤い小鬼は、リリィに激突した。
ゲスッ、ともバスっとも違う、何か痛そうな音があがった。
胸に直撃したとはちょっと考えられないような擬音である。
>「なんだこの娘の胸はっ?!どこまでもまっ平らで、まるで鶏がらではないか!・・・・・・はっ、もしや女装趣味の男かっ?!
「ひどっ?!女の子に決まってるじゃない!それより離れなさいよ!何胸に顔をうずめてるのよ変態変態へんたーい!!」
>「埋められる程のぼりゅーむなどどこにも無いぞ!!お前こそとっとと離れろおー!!」
ミクの使ったくもの糸は少々長かったらしく、リリィと赤い小鬼を見えない糸で絡めてしまっている。
>「とんだエロ鬼さんやな」
「マコトちゃん、笑ってないで何とかしてー!!」
そのとき、マコトの背後の茂みが音を立てて揺れた。
>「ごめん。遅れちゃったみたいでっ!?」
「ロロ君!ロロ君助けに来てくれたの?!って、あれ?!」
爽やかな笑顔で白い歯を光らせながら登場したロロは、オークに足を引っ掛けられてしまいその場で派手に転んだ。
ロロに足を引っ掛けたオークは、電光石火の速さでバニー向かって突進する!
「バニーちゃん逃げて!ロロ君っ?ロロ君、ちょっと大丈夫?!」
リリィはまだ蜘蛛の糸に絡まったままで、起き上がれないようだ。
今までにミクの放つ糸を体感した彼女だったが、過去の経験に学ぶ、ということは無いようだ。
「グレーン、バニーちゃーん!マコトちゃーん。フリードくーん!神様ー!!
もう、誰でもいいからお願い助けてー!!」
>17-21
>「なんなんあれ?ぶっ殺してもいいん?」
『首根っこへし折って脊髄ぶっこ抜いちゃって良いんじゃないですか?』
「なんて残虐な瓢箪なんだ!?」
『赤ん坊をさらって氷の人形と入れ替えるような邪悪な奴らが何を言うんですか!!』
『フィー坊は瓢箪じゃないよ』(猫語)
フリードには生まれたばかりの従妹が居たがゴブリンにチェンジリングされ行方不明になり
その代わりに全く可愛くない氷の人形が残されていた
その過去にあった出来事のせいでフリードはゴブリンを憎むようになったのである
「欲しいと思ったものを奪って何が悪い?俺は欲しいものは持ってる奴から奪う主義だ」
まさに悪党であるが別に攫ったのはこいつじゃなくて別の個体である
>「なんだこの娘の胸はっ?!どこまでもまっ平らで、まるで鶏がらではないか!・・・・・・はっ、もしや女装趣味の男かっ?!
『うぇ?う、嘘ですよね!嘘だって言ってください!!』
『当たり前だろ、ねえよ』(猫語)
あからさまに動揺をするフリード
女装少年にはチョットしたトラウマがあるらしい
>「ひどっ?!女の子に決まってるじゃない!それより離れなさいよ!何胸に顔をうずめてるのよ変態変態へんたーい!!」
>「埋められる程のぼりゅーむなどどこにも無いぞ!!お前こそとっとと離れろおー!!」
『女の子にそんな暴言吐くとはやっぱりゴブリンは下賎な種族なんですね』
『種族差別は良くないよ、あいつ個人(?)が下衆なだけだよ』(猫語)
>「とんだエロ鬼さんやな」
>「マコトちゃん、笑ってないで何とかしてー!!」
>「ごめん。遅れちゃったみたいでっ!?」
>「ロロ君!ロロ君助けに来てくれたの?!って、あれ?!」
メイド長に向かって突進していくイエローオーク
『黄色い豚がそっち行ったよ』(猫語)
「ウサギなんてカレーの具にしてやんよ」
やはり黄色だけにカレーが好きなようだ
だがカレーの具は豚肉の方ではないだろうか?
>「バニーちゃん逃げて!ロロ君っ?ロロ君、ちょっと大丈夫?!」
>「グレーン、バニーちゃーん!マコトちゃーん。フリードくーん!神様ー!!
もう、誰でもいいからお願い助けてー!!」
『僕はコボルトと戦うのに忙しいから無理だよ』(猫語)
猫パンチでブルーコボルトと殴り合っているグレン
「コボルパンチ!!」
『キャットパンチ!!』(猫語)
完全に互角である
ちなみにコボルトは犬扱いされることが多いが実は爬虫類タイプのヒューマノイドである
だから猫であるグレンが平然と殴り合っても平気なのだ
『背中がまだ痛みますがそろそろ僕が出て戦うべきでしょうか?』
フリードリッヒが出て戦列に加われば憎いゴブリンに対し容赦ない足殺し技を仕掛けるであろう
むやみな殺生はいけないが3分の2殺しまでなら大丈夫がフリードの主義である
>>16-22 「警護対象と未確認勢力が遭遇 警護対象の1人が捕縛された模様」
「警護対象に未確認勢力と思われるオークが突進していきます 少尉!」
木の上で生徒達と小鬼のやり取りを見ていた特務隊の隊員達は見る者が見れば微笑ましいかもしれない光景をシリアスに報告していく
「奴らは本来の目標ではないが ここで死人を出せば大尉の命令も遂行できなくなる
我々の存在に気づかれるのは不本意だが仕方ない
各員、まずは俺が突進するオークの動きを止める、その後 貴様等は周辺に制圧射撃を行い 小鬼共を牽制しろ
捕縛された警護対象を救出する時間を彼らに与えればいい」
別の木の枝から双眼鏡を覗き、少尉と呼ばれる屈強な男は部下達に指示を下す
その屈強さはブレに負けずとも劣らない程だ 少尉は魔導銃を構え オークとバニーの間に氷の弾丸を撃ち込んでいく
「制圧射撃 開始!!!!」
少尉の号令と共に小鬼達と生徒達の周辺へ氷の弾丸が次から次へとばらまかれる
いつのまにか木という木の枝の上には明らかに場違いな戦闘服を着た集団が現れ氷弾を乱射しているのだ
「諸君!早く体勢を立て直せ!我々が時間を稼ぐ!」
少尉は生徒達に良く通る整然とした声で呼びかけた
>18-23
> もう、誰でもいいからお願い助けてー!!」
放り投げた小鬼と一緒に糸に絡め捕られたリリィの姿を、しばらくミクは微笑みながら眺めていた。
が、絡め捕られた獲物の暴れる様を見る楽しみは、長くは続かない。
隠れていたブレの部下達が木々の間から姿を現し、敵に向かって弾を撃ち込み始めたからだ。
>「諸君!早く体勢を立て直せ!我々が時間を稼ぐ!」
どうすべきか一瞬考えた後、ミクは素早く隠れ場から出てリリィに近づいた。
「静かにしてくださいましね。 今、糸を外して差し上げますから」
人差し指を唇に当てて見せてから、リリィにまとわりつく糸を外してゴブリンから引き離す。
糸を操るミクからすれば、粘着性の糸といえどうという事もない。
無論ゴブリンを助ける理由は無いので、そちら側の糸はそのままである。
リリィから外した糸もついでとばかりに巻きつけてから、ミクはゴブリンに絡みつけた糸を操った。
ゴブリンは悲鳴を上げながら糸に引っ張り上げられ、宙吊りになる。
「皆さんこの場はこの方達に任せてこちらへ!」
ミクは周りにそう呼びかけてから、リリィの手を引いてそこから逃げ出した。
場をうやむやにして、炎道捜索隊にさりげなく合流する気になったのだ。
ミクはブレの配下達の意図は知らなかったが、用事があるなら追いかけてくるだろうと考えている。
わざわざ最初は隠れていたのだから、何の用か自分達から言いにくるかはわからないのだが。
しばらく走って雑魚3匹とブレの配下との戦いの場から離れてから、ミクはようやく立ち止まった。
ただ、リリィを引くために握っていた手はそのままだ。
「ここまでくればもう大丈夫でしょうね…皆さん、お怪我はございませんこと?」
向き直って一同を見回し、それからようやくミクはリリィと繋いでいた手を離した。
自己紹介の演出のために、リリィには近くにいて欲しかったのだ。
「まだ自己紹介をしていない方もおられますわね。
私、初音美紅と申します。
リリィさんのお友達で、森にはアリス先生の頼みで炎道総代を探しに来ましたの
以後よろしくお願い致しますわね」
ミクは、以前真に自己紹介した時と同じように自分をリリィの友達として紹介する。
仮にリリィが異議を唱えても、またまたご冗談をと笑って聞き流すだけだ。
自分に今は敵意は無いし、糸を外してリリィを助けたのも事実である。
さらにアリス先生の頼みという大義名分があるのだから、ミクとしてもあまり反発されるのは心外だ。
ちなみに糸と自分の関係を指摘されれば、驚かせようとしたちょっとした悪戯だったと答えるだろう。
元々そのつもりだったのだから、これも事実である。
そういえば。と、ミクはリリィの箒を手にとって、結びつけられた白い布をよくよく観察する。
念のためにひっくり返して裏側を確認しても、特別な物も文字も何もない。
どう見てもそれはミクの知っている褌、要するに男性用の下着にしか見えなかった。
「こちらの島では、男性用の下着を箒の先に結びつけて振るのに、どんな意味があるのかしら…」
ミクは別にリリィを困らせようと意地悪で聞いているのではない。
本当にわからないのである。
その後、自己紹介を済ませて疑問を解消した所で、ミクはようやく本題に入ることにした。
「所で、炎道総代の捜索の件ですけれど、どなたか総代の行き先をご存知の方はおられるのかしら。
婚約者の真さんは、彼の持ち物か行き先が把握できるとか?
森には危険な肉食植物が逃げ込んでいるようですから、出来るだけ早く助ける事をお勧めいたしますわ」
誰かが行き先を知っていると言えば、ミクは協力を提案して一緒についていくだろう。
知らないと言えば、糸と蜘蛛の目を使った捜索の協力を申し出る事になる。
>23-24
>「諸君!早く体勢を立て直せ!我々が時間を稼ぐ!」
>「皆さんこの場はこの方達に任せてこちらへ!」
見知らぬ人達による大袈裟ではとも思える支援のおかげでピンチ(?)を逃れた一行
遠くの方から”畜生覚えてろよ”という負け犬の遠吠えが聞こえてくる
『結局彼らは何しに出てきたんでしょうか?』
『そんなの追い剥ぎに決まってるじゃない
いうなれば奴等は自分の畑を耕すより他人の畑から野菜を奪うことを選んだんだよ』(猫語)
『実力もないのに馬鹿ですよね』
『うん僕もそう思うよ』(猫語)
確かに子供にも関わらずオーガやデビル、ヌエなどの強敵と渡り合ってきた彼らにとっては雑魚であろう
だが普通の一般人にとってはそれなりの驚異のはずである
何故ならあんなのでもそれなりに鍛えた人間の成人男性より強いのだから
周りが化け物だらけだとそれが普通であると錯覚してしまい自分も化け物だということを忘れてしまう
私はそれを逆井の中の蛙現象と呼んでいる
>「まだ自己紹介をしていない方もおられますわね。
私、初音美紅と申します。」
と自己紹介をする美紅
>「所で、炎道総代の捜索の件ですけれど、どなたか総代の行き先をご存知の方はおられるのかしら。」
『かくかくしかじかで森に消えたらしいということぐらいしかわからないんですよ』
とフリードリッヒは美紅に語る
『猫の森よ!私は帰ってきたぁ!!』(猫語)
とは急にしゃぎ出すグレン
ふと上を見ると”おいでませ猫の森”と”猫語”で書かれた看板が木に打ち付けられていた
森には何故か二本足で立つ猫がそれが当たり前のように沢山たむろしていた
『よく来た余所者くつろいでいけ余所者』(猫語)
リーダーらしき老猫が無駄に尊厳な態度でそう語る
『なんだかよくわかりませんが歓迎してくれてるようです』
とフリードリッヒ
誰かが炎道のことを聞けば
『ぶっちゃけ人間族はみんな同じ顔に見えるから分かんね』(猫語)と答えるだろう
人間が来たか?と聞けば
『回転式穴掘り器みたいなのを頭に二つ着けた女なら毎日来る』(猫語)と答えるだろう
フリードがそれを聞けば
『姉さんだそれぇ!?』と反応するだろう
人間の男が来たかと尋ねれば
『確かに来たがそれが尋ね人かどうかは分からない』(猫語)と答えるだろう
赤い髪の人間を見たか?と聞けば
『ああ確かに見たけど今はどっかに行ってしまった』(猫語)と答えるだろう
> 『僕はコボルトと戦うのに忙しいから無理だよ』(猫語)
「わーん!わかってるわよー!!ってか素手で殴り合ってるの!?いつもの武器はどうしたのよ!」
グレーンは(リリィには良くわからない魔法(?)で)ネコにしか使えない武器を呼び出すのだ。
>『背中がまだ痛みますがそろそろ僕が出て戦うべきでしょうか?』
「いやそれは・・・・・・」
個人的にはぜひともお願いしたいところであるが、あいにくフリードはけが人である。
リリィの口から「出てきて助けてくれ」とは、口が裂けてもいえない。
「あーもう!は、な、れ、な、さいってば!!」
リリィが芋虫よろしく、ごろごろ小人と一緒に転がっていると・・・・・・。
>「制圧射撃開始!!!!」
「?!」
思いもよらない方向から、彼女達に救いの手が差し伸べられたのだった。
「わっ、うわっ?!」
>少尉の号令と共に小鬼達と生徒達の周辺へ氷の弾丸が次から次へとばらまかれる
いつの間にか、そろいの制服らしきものを着込んだ「いかにもプロらしい」人達が援護射撃をしてくれているのだ。
ゴブリン達にすれば涙目である。
>「諸君!早く体勢を立て直せ!我々が時間を稼ぐ!」
「立て直せといわれても・・・・・なんかよくわからない魔法で拘束されちゃってま
すー。たすけてくださーい」
いい加減もがき疲れたリリィは、情けない声を上げた。
ちなみに拘束しているのは魔法ではなく、物理的な「糸」である。
しかも小鬼相手にこのていたらく。
上からの命令とはいえ、こんな小娘まで警護対象としなくてはならない彼らがあまり
に気の毒なほどの無能ぶりである。
>「静かにしてくださいましね。 今、糸を外して差し上げますから」
「ひぃっ?!そ、その声は・・・・・まさか!!」
リリィは恐る恐る振り向き、そして声にならない悲鳴を上げた。
背後に忍び寄っていたのは、ミクという少女だった。
リリィの友人の、ユリという少女の友人である。当然リリィとも面識がある。
あるのだが。
ミクは人差し指を唇に当てて見せると、リリィは蛇ににらまれたカエルよろしく硬直した。
彼女から引き離されたゴブリンが、身動き取れない状態で木に宙吊りになったところで、リリィもようやく察することができた。
「もしかして、今まで私が動けなかったのって、ミクさんの使う糸のせいだったの?!」
>「皆さんこの場はこの方達に任せてこちらへ!」
ミクはリリィの手を掴んだ。
「え、ちょっ!ぅええええええ!!」
ほっそりとした手は少し冷たく、リリィは背中から心臓をわしづかみにされたような気分になった。
ミクはリリィの動揺など歯牙にもかけず、手を引いてその場から逃げ出す。
「やだー!グレーン!マコトちゃーん、ロロくーん!フリードくぅうん!離れないでえええええ!!」
小鬼と対峙していたときよりも必死な声を残し、リリィはミクとともに、その場から姿を消した。
「ここまでくればもう大丈夫でしょうね…皆さん、お怪我はございませんこと?」
向き直って一同を見回し、それからようやくミクはリリィと繋いでいた手を離した。
リリィはひざに手を当ててぜいぜいと息を切らしている。ほうっておいてもしばらく動けないだろう。
息も絶え絶えなリリィと対照的に、ミクは息ひとつ切らしていない。
そして涼しい顔で、リリィの友人だと自己紹介をした。
「ちょ、と・・・・友達・・・と・・・違・・・・・・」
リリィの切れ切れな抗議を、ミクは笑って聞き流した。
さらに抗議しようとしたものの、本能的な危険を感じて彼女それ以上の言葉を慎んだ。
「きょ、今日は、本当にアリス、先生、の、頼み?総裁のお使いで捕まえにきた、とかじゃない、よね?」
以前リリィは総裁のお宅を破壊した容疑で捕まりそうになったことがある。
その際、リリィを捕まえに来たのがミクだったのだ。
幸い誤解が解けたのか、その後は何事も無かったように毎日を過ごしている。
が、ミクからは、時折ありもしない総裁との裏繋がりを指摘されたりするので、どうしても身構えてしまう。
(リリィ本人には全く心当たりが無いのだから、単なる言いがかりだと思っていても仕方の無いことである)
まして、彼女と関わると、今回のような不幸に見舞われることが多々あるのだから、なおさらである。
「さっきは、なんであんなことしたの?!」
あんなこと、とは、小鬼と一緒くたにされて糸で縛りつけられたことである。
かなり恥ずかしい思いをした彼女としては、抗議のひとつもしたいところだ。
だがミクは、彼女の抗議を、「ちょっとしたいたずらだった」と軽く流してしまった。
うそをついている様子は全く無いのと、それで助けられたのは事実なので、それ以上何も言えるはずがなかった。
(わーん!!でもなんか納得いかないわー!!あのゴブリン達、一発くらい天誅見舞いたかったかもっ!!)
リリィが次の言葉をぐるぐる考えていると、ミクはひょいとリリィの持っていた放棄を取り上げた。
「なにするのミクさん、大事な箒なんだから返して!!」
リリィがぴょんぴょん飛び上がって取り返そうとするのを、ミクはあっさり片手でいなした。
そして、箒と結ぶ付けた白布とまじまじと観察した後、
>「こちらの島では、男性用の下着を箒の先に結びつけて振るのに、どんな意味があるのかしら…」といった。
「知らないの?これは白旗といって、戦う意思はありませんよーっていう合図で・・・・・・え?下着?
どういうこと?これ、ただの布じゃないの?」
説明を受けたリリィは不気味なほど静かだった。
が、突然顔が真っ赤になり、ぼぼんっ!と頭から湯気が立ちそうなほど動揺しだした。
「男子トイレに押し入った挙句、下着を箒にくくりつけて振り回してただなんて・・・・・・・
変態だわ、完全に変態さんだわ・・・・・・・も、もう・・・・・・お嫁にいけない・・・・・・・」
>「所で、炎道総代の捜索の件ですけれど、どなたか総代の行き先をご存知の方はおられるのかしら。」
>『かくかくしかじかで森に消えたらしいということぐらいしかわからないんですよ』
>とフリードリッヒは美紅に語る
「肝心のマコトちゃんとははぐれちゃったのかな。一応ネコの森に行くって話をしてたから、後で合流できるよね。
ロロ君は・・・・・・・きっと私が下着を振り回してるのを見て、危ない人だと思ったんだわー。
そうよね、最初に会ったのは男子トイレの中だもん・・・・・今度こそきっと、学園中で痴女呼ばわりされちゃうのよ!
もう私の学園生活おしまいだわー!!」
わあっと泣き伏すリリィをスルーし、ミクはグレーン達と一緒にさくさくと今後の方針を立てている。
結局、一度猫の森に行くことに決定したようだ。
ネコの森への道すがら、リリィは離れた位置から、おずおずといった様子でミクに話しかけてきた。
「あ、あのさ・・・・・・昨夜、屋上でのバトルのとばっちりで魔法攻撃受けてたでしょ。
その・・・・・か、体の方、なんともないの?」
大きな荷物を抱えてふうふう言いながら、リリィはあわてた様子で付け加える。
「べ、別に心配なんかしてないからね!ひどい目にばっかり合わされてるんだから!
ただミクさん、あんまり表情変わらないから・・・・・その・・・苦しいんだか、絶好調だか、良くわかんないのよね!
一応今は同じ目的で動いてるんだから・・・・・・えと・・・・あ、あんまりつらかったら言ってよね!休憩入れるから!!」
どちらかといえば、休憩が必要そうなのは、真っ赤な顔で荷物を担いでいるリリィのほうだろう。
>『猫の森よ!私は帰ってきたぁ!!』(猫語)
「え、もうついたの?!」
ふと上を見ると、よくわからない言葉で書かれた看板のようなものが木に打ち付けられていた。
「かーわいい!!二足歩行で歩くネコちゃんがいっぱい!!」
リリィが歓声を上げた。
>『よく来た余所者くつろいでいけ余所者』(猫語)
『なんだかよくわかりませんが歓迎してくれてるようです』
「フリード君、声震えてる震えてる。そりゃ抱っこしたいよね。大好きな猫がいっぱいだもん。
まだ怪我の治療にもう少しかかるのかな?
うふふ、私だけ一足先にもふもふしちゃってごめんねー」
といいながら、グレンをもふもふする。
そして耳元で
「フリード君瓢箪から出さないのは、もしかして、ご主人様を取られたくないよーっ
ていう独占欲?」などと囁いてみる。
もっとも、猫好きのフリードをここで外に出せば、収拾がつかなくなる事態に陥るからかもしれないが。
「いいのよ、みなまで言わなくても!うふふ、フリード君ったら愛されてるぅ!
あ、ミクさん、いくらかわいいからって、お持ち帰りは駄目ですからね!
カップリングは相手の許可をちゃんと得てから、なのです!」
とはいえ、なんとなくだが、ミクは猫には遠巻きにされているような感じである。
もっともそれは、リリィ自身が(今までの経験上)なんとなくミクを苦手だと思っているせいかもしれないが。
「あ、あのう・・・・・長老様?エンドウユウキっていう生徒を探してるのですが、何かご存じないですか?」
>『ぶっちゃけ人間族はみんな同じ顔に見えるから分かんね』(猫語)
「ええ?!人間は皆同じ顔に見えるからわかんないって?!
・・・・・はっ!もしかしてグレーン、あなたも、私とフリード君が同じ女の子に見えたりするの?」
リリィはその返答を聞くと
「つまりグレーンがフリード君を主にしたのは、顔で選んだわけじゃないって事ね!
そうよ、人間、見た目じゃないんだわ」
リリィはじーんと感動しているが、今はそんな場合ではない。
長老への質問は続く。
猫語のわかるリリィは、感動をひとまず横においておいて、通訳に徹することにした。
「えっとね、『回転式穴掘り器みたいなのを頭に二つ着けた女なら毎日来る』んですって。
回転式穴掘り機・・・・・・って何だろ?」
『姉さんだそれぇ!?』
「え?お姉さんって、あのすごくお綺麗なフリージアさんのこと?」
回転式穴掘り器で、「くるくる回転するシャベル」を想像していたリリィは、ドリルのような髪との関連性が
わかっていないようだ。
「あ、あと人間族は来たけど、それが尋ね人かどうかは分からない』んだって。
・・・・・・・はっ!そうだ!」
リリィは懐から、先ほど書いたエンドウの似顔絵を取り出した。
先ほどマコトに見せた絵の下書きで、本物よりも出来は荒いが、一応の特徴は掴んでいる。
「えっ、見た?!皆、エンドウ君のこと、見たんだって!
あ・・・・・・・でも、今はどこかに行ってしまったそうよ。ここにはいないんだって」
一通り通訳を終えたリリィは、ふう、と息をついた。
「ここを通ったっていうのはわかったけれど、今後の手がかりが無くなっちゃったね。
ああ、さっき私達がゴブリンに襲われたところまで戻ったら、さっきの部隊?の人に会えるかな?
あの人たちにもう一度会えたら、エンドウくんのこと、一緒に探してもらえるかなあ?」
リリィ達がピンチになるまで姿を現さなかった事を考えると、その可能性はかなり低そうだ。
「でもあの時は、そんなお願いできるような余裕無かったもんね・・・・・・。
っていうか、あの人達誰なんだろうね?もしかして今学園に来てる、例の偉い監察官の護衛さん、とかかな?」
リリィはうーん?と腕を組んだ。
「皆、他にネコの長老さんへの質問は無い?」
無ければ、今後どうするかを考えなくてはならないだろう。
「日が暮れる前に、私が一度空からエンドウ君を探してみようか?
テレパシーで呼びかけながらだと効果あるかな?」
もっとも、校内放送で一度呼び出しをかけている以上、仮にテレパシーが届いても
返事が出来ない状況になっている可能性も捨てきれない。
「ミクさんは何か情報持ってないの?アリス先生だけじゃなく、総裁からも何か情報貰ってるのよー、とか無いの?」
とりあえずエンドウの情報交換も重要だが、それ以上に大切なことがある。
ネコの皆さんには、「トリフィード」という食獣植物が逃げ出した事を伝えることだ。
30 :
名無しになりきれ:2011/10/09(日) 05:10:07.72 0
きのこの化け物
>25-29
>『かくかくしかじかで森に消えたらしいということぐらいしかわからないんですよ』
「そう…それは探すのに苦労しそうですこと」
手がかりが少ないと聞いて、ミクは顔色を曇らせる。
森で人を探すのは簡単な事ではない。
炎道総代が呼びかけに答えない理由はわからないが、答えられないならなおさらだ。
「ともかく猫の森とやらに行ってみるのがよろしいでしょうね」
下着がどうとか痴女がどうとか言いながら泣いているリリィを横目で見ながら、フリードにはそう返事した。
着ていない下着などただの布と同じだろうが、多感な頃には色々あるのだろう。と思いながら。
>「あ、あのさ・・・・・・昨夜、屋上でのバトルのとばっちりで魔法攻撃受けてたでしょ。
> その・・・・・か、体の方、なんともないの?」
猫の森に向かう道中、リリィが話しかけてきた内容にミクはちょっと驚いた。
【屋上でのバトル】の時に、ミクはリリィに怯えられるような事はしても心配されるようなことはしていないのだ。
それが離れた場所からでも気遣いを口にするのは、彼女が根っからのお人よしだからだろうか。
>「べ、別に心配なんかしてないからね!ひどい目にばっかり合わされてるんだから!
> ただミクさん、あんまり表情変わらないから・・・・・その・・・苦しいんだか、絶好調だか、良くわかんないのよね!
> 一応今は同じ目的で動いてるんだから・・・・・・えと・・・・あ、あんまりつらかったら言ってよね!休憩入れるから!!」
「ふふ…御心配かけてごめんなさいましね。
見てのとおり、今は普通に動けておりますので大丈夫ですわ。
リリィさんこそ、お顔の色がよろしくありませんわよ?」
ミクはリリィに近寄ると、リリィの荷物の一部を持ってあげる事にした。
軽くはない怪我をしている身でも、この程度の荷物ならどうという事もない。
「今は同じ目的で動いているのですもの。ね?」
恩というものは、売っておくに越したことはないものだ。
相手に無理難題を押しつけるかもしれない時は特に。
>『猫の森よ!私は帰ってきたぁ!!』(猫語)
>『なんだかよくわかりませんが歓迎してくれてるようです』
猫の森なる場所は、単に猫の集まる所と考えていたミクの想像とは違って二足歩行する猫が闊歩する場所だった。
ミクの知る化け猫は、尻尾が2本あったり油を舐めたりしていたものだ。
が、ここにいる猫たちにそんな事をしている気配はない。
所変われば化け猫の様子も違うものだと感心しながら、ミクは猫観察を始めた。
蜘蛛神であるためか猫語の雰囲気は解するミクは、本当に歓迎されているのか疑わしさを感じた。
ついでに言うなら、どうも自分は避けられているようだとも感じた。
無論そんな事に頓着するようなミクではない。
嫌われようがなんだろうが、ミクは猫が好きなのだ。
見て良し撫でて良し食べて良し。
さらに皮は楽器になって骨は工芸品になるというのだから、猫は実に有用な生き物である。
> あ、ミクさん、いくらかわいいからって、お持ち帰りは駄目ですからね!
> カップリングは相手の許可をちゃんと得てから、なのです!」
「…そうですわね。食事も済ませてきた事ですし」
カップリングが何を指しているのか理解していなかったが、ともかくミクは猫達から視線を転じた。
情報を得る前に猫を敵に回してしまっては、何をしにきたのかわからない。
>「えっ、見た?!皆、エンドウ君のこと、見たんだって!
> あ・・・・・・・でも、今はどこかに行ってしまったそうよ。ここにはいないんだって」
猫語を理解するリリィの通訳と似顔絵によって、炎道が森の近くに居ることは確実になった。
少なくとも、森に来たのが完全な無駄足となる事態は避けられたのだ。
>「ここを通ったっていうのはわかったけれど、今後の手がかりが無くなっちゃったね。
> ああ、さっき私達がゴブリンに襲われたところまで戻ったら、さっきの部隊?の人に会えるかな?
> あの人たちにもう一度会えたら、エンドウくんのこと、一緒に探してもらえるかなあ?」
「あなた達を守るために動いていたようですから、頼めば探していただけるかもしれませんけれど。
わざわざ身を隠して行動していたのですから、もう一度会うのは難しいかもしれませんわね」
>「でもあの時は、そんなお願いできるような余裕無かったもんね・・・・・・。
> っていうか、あの人達誰なんだろうね?もしかして今学園に来てる、例の偉い監察官の護衛さん、とかかな?」
「監察官の護衛なら、監察官を御守りしているはずでしょう。
真さんは付き人がおられたはずですし、彼女の護衛だったのかもしれませんわね。
あるいはまた危ない目に会えば、もう一度お会いできるかもしれませんわよ?」
ブレの思惑を知らないミクは、思ったままにそう言った。
>「日が暮れる前に、私が一度空からエンドウ君を探してみようか?
> テレパシーで呼びかけながらだと効果あるかな?」
>「ミクさんは何か情報持ってないの?アリス先生だけじゃなく、総裁からも何か情報貰ってるのよー、とか無いの?」
「残念ですけれど、何も聞いておりませんの」
頭を降って否定した後、ただとミクは言葉を続ける。
「先ほどの猫との会話ではフリードの御姉様が毎日来られている、との事でしたから。
その方にお会い出来れば、また別に詳しい話が聞けるかもしれませんわね。
また炎道総代は誰かに連れさられたのではないようですから、何か目的がおありなのでしょう。
森を上からでは人を見つけるのは難しいでしょうから、トリフィードに注意しながら探すしかありませんわね。
…この近くに建物か、そうでなくても変わった場所は無いのかしら?」
最後の一言は、猫の長老に向けての質問だ。
ちなみに、ミクはトリフィードの危険性について猫達に伝えるつもりはなかった。
怪植物はトリフィードだけではない。
顔見知りに化けて獲物を誘う植物やきのこの化け物など、森には危険が一杯なのである。
謎の武装集団に武力介入されて、真はなにがなんやらわからず走り出した
「ふう、ここまでこれば大丈夫やね」
周りを見渡せば、誰もいなかった
「お〜い、誰か居らへんの?」
呼んでも返事はない。どうやら森の奥に迷い込んでしまったようだ
いきなりの出来事で思わず、走り出したが皆の姿を確認することなく森の中に入っていってしまった
困った
困った、困った困ったぞ。迷子になってしまった
真は困り果てた。誰かの持ち物でもあれば、さっきのミクがいったように魔法でなんとかなる
「人体探知の術!!」
周囲に人間がいるかどうかを探す魔法、割と基本的な魔法
真の効果範囲は2m、目でみたほうが速い
自称天才魔術士でも、苦手な魔法ぐらいある
それが何かを探すと言う魔法だ。
「勇気なら愛の力で一瞬で探せんねんけどな〜」
などと愚痴りながら森の中を当てもなく歩く
暗い森の中を1人で歩くのはなんとも心寂しい
「みんな〜どこいったん?」
「おい、真。こんな森のなかで何してんだ?」
耳に飛び込んで来たのは真が一番聞きたかった声
「勇気!!」
真は声のほうに振り向く、そこには暗い森が広がっているだけだった
こんなところにいるはずがない
「ははっ探しても無駄だぜ?おれはここにはいないからな。頑張って探してくれよ
この先の……よくわかんねぇけどどこかの室内にいるぜ!!」
「ちょ、ちょっと勇気!なんで、なんで!?」
そのなんでにはいろいろな意味が含まれてる
どこにいるの?なんでいなくなったの?どうして話しかけてこられたの?と
いくら、叫んでもそのあと勇気の声はいっさい聞こえてこなかった
散々叫んだあと、ふと猫の声がするほうに足を向けるとそこは猫の森だった
猫の言葉を聞くと今しがた人間が来たということで案内してもらう
そこには、リリィとフリードとミクがいた
「なんや、みんな先行っとんたんか、なんや走っとったら、迷子なってもうたわ」
笑っているが目は真っ赤にはれていた
>28-33
>「つまりグレーンがフリード君を主にしたのは、顔で選んだわけじゃないって事ね!
そうよ、人間、見た目じゃないんだわ」
『うん美味しいもの食べさせてくれるからだよ』(猫語)
とグレンは言う・・・・色々と台無しである
>「え?お姉さんって、あのすごくお綺麗なフリージアさんのこと?」
『ええ、僕と大体同じ顔だから見た目だけ綺麗な姉さんですよ。ガチ腐ですがね!』
まさにナルシー
>「あるいはまた危ない目に会えば、もう一度お会いできるかもしれませんわよ?」
『危ない・・・・目?』
果たしてあれは本当に危ない目だったのだろうか?はなはだ疑問である
>「…この近くに建物か、そうでなくても変わった場所は無いのかしら?」
猫の長老はこう答える
『変わった場所ならいっぱいある
妖しげな術の使い方を人間に教える恐ろしい施設とか』
『それ学園のことじゃないですかぁやだぁ!!』
確かに近くにある建物だけど違うそうじゃない
『北の方にあるあからさまに怪しい邪神の神殿とか』(猫語)
『邪神って・・・・・』
『まあ猫にとっての邪神だから犬の神様(アヌビス)の神殿ってだけだけどね』(猫語)
猫にとって犬の神様は邪悪な存在らしい
『なんでフィジルにエズフィトの神様の神殿が・・・・・』
『ちなみに南には猫の神様(パステト)の神殿があるよ
あそこの猫神官が僕のパパにゃだよ』(猫語)
とグレンは言う
だがそんなことは今はどうでも良かった
『あと超古代猫文明の遺跡とかブラックファラオの逆ピラミッドとかあるぞ余所者』(猫語)
『それナイアさん関係じゃないですかやだぁ!!』
それを出してしまうと学園モノの枠組みを超えかねないので今回の事件とは関係ないだろう
>「なんや、みんな先行っとんたんか、なんや走っとったら、迷子なってもうたわ」
『それは大変でしたね、まあ森は広いから仕方ありませんが』
『そういえばさっきからきのこの化け物戦ってる人間ぐらいあるでかいハエトリ草はなんでしょうか?』
げぇ!トリフィード!!
『きのこの化け物がほかの植物と喧嘩するのは猫の森じゃ日常茶飯事だよ』(猫語)
軽く流そうとするグレン
だが明らかに軽く流せる状況じゃない
『危ないからとっとと焼き払ってしまったほうがいいんじゃ?
グレン冒険者セットから火をつける道具とランタン用の油を・・・・・』
『きのこの化け物は火が着くと爆発して胞子まき散らして
きのこ人間が増えるよやったねTAEちゃんだから駄目だよ』(猫語)
図書館での経験は無駄じゃなかったらしく知識を披露するグレン
ちなみに前回のきのこ集めの時に混ざっていた洗脳きのこの正体があれの子供である
『じゃあとりあえず逃げましょうか?』
戦っても利益がでないと思うのならば逃げるのも手である
『じゃあむこうの超古代猫文明の遺跡に逃げ込むよ』(猫語)
とグレン・・・・・だが猫サイズの遺跡に人間は逃げ込めるのだろうか?
>31-34
森の中で助けてくれた謎の一団は、結局正体がわからないままだった。
「監察官の護衛なら、監察官を御守りしているはずでしょう。
真さんは付き人がおられたはずですし、彼女の護衛だったのかもしれませんわね。
あるいはまた危ない目に会えば、もう一度お会いできるかもしれませんわよ?」
『危ない・・・・目?』
「めちゃくちゃ危ない目にあってたでしょうが!乙女のてーそーの危機だったのよ?!大変だったのよ!!
だからいくら再会のためとはいえ、「もう一度」なんてごめんよ!」
小鬼と一緒に縛られて転がされていたリリィは、先ほどの災難を思い出したのか、一人ぷりぷり怒っていた。
「先ほどの猫との会話ではフリードの御姉様が毎日来られている、との事でしたから。
その方にお会い出来れば、また別に詳しい話が聞けるかもしれませんわね。
また炎道総代は誰かに連れさられたのではないようですから、何か目的がおありなのでしょう。
森を上からでは人を見つけるのは難しいでしょうから、トリフィードに注意しながら探すしかありませんわね。
…この近くに建物か、そうでなくても変わった場所は無いのかしら?」
>『変わった場所ならいっぱいある
> 妖しげな術の使い方を人間に教える恐ろしい施設とか』
「えー、なにそれ怖っ!!」
>『それ学園のことじゃないですかぁやだぁ!!』
「恐ろしい施設とか言ってる割りに、猫さん達、学園の食堂前や中庭にめちゃめちゃ入り浸ってるじゃないのよー!」
どうやら猫達にとっては、食欲がすべてにおいて優先されるようだ。
猫長の話によると、猫の森の北に犬の神様の神殿、南には猫の神様の神殿があるらしい・
「ってことはつまり、猫の森に対して犬の村とかもあるわけ?えー、何それ会ってみたい!!」
リリィがどうでもいいところに食いついていると、グレンの口から驚きの事実が飛び出した。
>『ちなみに南には猫の神様(パステト)の神殿があるよ
> あそこの猫神官が僕のパパにゃだよ』(猫語)
「なにそれすごい!あ・・・・・そっか、やっとわかった!
だからグレンは猫の神様と話せたり、食べ物をささげることで、猫の神様から武器を借り受けることができるのね!かっこいい!」
猫長の話では、他にも、いろいろな遺跡が森の中にはあるらしい。
>「なんや、みんな先行っとんたんか、なんや走っとったら、迷子なってもうたわ」
>『それは大変でしたね、まあ森は広いから仕方ありませんが』
「無事でよかった!まあ、マコトちゃん強いから、そんなには心配してなかったけどね」
リリィは笑顔でマコトを迎え入れたが、彼女の顔をみるなり顔を雲らせ
「どうしたの?何かあった?・・・・・・・はっ!もしかして、あのゴブリン達にセクハラされたとかっ?!」
と勢い込んで問いかけたが、すぐにはっとして口をつぐみ、何かを考えるような素振りを見せた。
そして。
「ごめん。話したくても話せないことだってあるよね。マコトちゃんが話したくなったときでいいよ、また聞かせてね」と小声で付け加えた。
・・・・・・何か、とんでもない勘違いをしているようだ。
>『そういえばさっきからきのこの化け物戦ってる人間ぐらいあるでかいハエトリ草はなんでしょうか?』
>げぇ!トリフィード!!
「待って、前にちらっと実験棟で見たときには、もう少し大きかった気がするんだけど。
もしかして逃亡した間に株分け?っていうの?いくつかに分裂したんじゃないの?!
ということは、トリフィードは1体じゃないかもっ?!猫の長さま、早く逃げないと!!
トリフィードは、ジャングルに棲んでいる、動く食獣植物なんですよ!」
だがグレンの話では、きのこの化け物が他の植物などと喧嘩するのは日常的に見られる光景らしい。
しかもトリフィードと戦っているきのこの化け物は、火をつけると爆発して胞子を飛ばす上に、胞子をかぶった相手をきのこ人間にするらしい。
『じゃあとりあえず逃げましょうか?』
『じゃあむこうの超古代猫文明の遺跡に逃げ込むよ』(猫語)
「そっか・・・・・・そうだね、こんな場所で戦ったら森がめちゃくちゃになっちゃうし!
きのこの化け物がトリフィードとつぶしあっているうちに逃げよう!猫さん達はどうするの?」
リリィは長老の返答を聞いた後、
「エンドウ君がどこにいるかわからない以上、いたずらに戦力を浪費するのは得策じゃないわ。グレン、遺跡に案内して!」
リリィは外に飛び出す前に立ち止まり、
『フリージアさんへ、トリフィードときのこの化け物がきたので、超巨大猫文明の遺跡に一時避難しています。
フリード君と愉快な仲間達より』
と走り書きをして、小さな猫用テーブルの上に書きを残した。
これで、(今日はまだ猫の森に来ていないらしい)フリージアが訪れた時に誰もいなくても猫の森で何が起こったのか知ることが出来るだろう。
踏み固められた獣道の上に、白い石畳がぽつぽつと残っている。
潅木を押しのけ必死で走っていると、不意に目の前が開けた。
「これが遺跡?超巨大猫文明の遺跡のわりには、意外と小さい・・・かも?」
石造りの門の手前は、木々が切れ狭いながらも開けた場所になっていた。
そして門の向こう側には、門と同じ石で作られたらしい洋館サイズの白い建物が小さく見えた。
何本か崩れている柱の横には、ところどころ風化した奇妙な石像がいくつも並んでいる。
・・・・・猫にとってはかなり大きな建物なのだろうが、窓や扉の大きさから考えると、外から見た限りでは少し手狭かもしれない。
もっとも古代文明の遺跡である。外観だけで判断するのは早計かもしれない。
ただ、全力で撃退するのなら、壊れたり崩れたりするかもしれない遺跡の中よりも、外のほうが適しているだろう。
37 :
名無しになりきれ:2011/10/15(土) 23:10:54.03 0
高速化
>33-37
>『変わった場所ならいっぱいある
> 妖しげな術の使い方を人間に教える恐ろしい施設とか』
>「えー、なにそれ怖っ!!」
> 『それ学園のことじゃないですかぁやだぁ!!』
>「恐ろしい施設とか言ってる割りに、猫さん達、学園の食堂前や中庭にめちゃめちゃ入り浸ってるじゃないのよー!」
「……そこから来た事をお話していませんでしたわね」
猫の手も借りたいとの言葉は実に名言である。
こんなものまで借りたいと思うほどの切迫感が良くあらわせている、的な意味で。
その後聞き出せた、猫の神殿の他に犬の神殿がある。という情報は、ミクとしてはわりとどうでも良かった。
猫がこれなら犬の村とやらがあったとしても、役に立つとはとても思えないからだ。
重要そうに思えたのは、猫の神殿の方にグレンの父猫がいるという情報の方だ。
神の力を借りて超常的な力を振るう神官は、探し人には適任であるようにミクには思えた。
最初から神殿に案内すればよいものをこれだから猫は。
という内心を巧妙に押し隠して、ミクが神殿に向かうように言おうとした時だった。
はぐれていた真が、猫の森に居場所を探り当ててやって来たのは。
>「なんや、みんな先行っとんたんか、なんや走っとったら、迷子なってもうたわ」
>『それは大変でしたね、まあ森は広いから仕方ありませんが』
>「ごめん。話したくても話せないことだってあるよね。マコトちゃんが話したくなったときでいいよ、また聞かせてね」
グレンとリリィが話しかけていた時は、ミクは何も言わずに黙って真の顔を眺めていた。
その代わり、2人の注意が怪植物同士の戦いに向けられているうちに、真に話しかける。
「なにか悲しい事でもおありでしたかしら。
……急にこんな事を言ってごめんなさいましね。
泣いておられるように見えましたので」
以前会った時は、ミクは真に勝気な娘だという印象を持った。
だがそんな娘ほど、内面に脆いものを抱え込んでいたりするものだ。
真の場合は炎道の事となると見境が無くなるようなので、何か状況に進展があったのだろうとミクは考える。
それも(真にとっては)良くない進展が。だ。
「ふふ…リリィさんも言われていましたけれど、話したくなりましたらいつでもご相談くださいましね。
お力になれることがありましたら、お手伝いさせていただきますから」
炎道の状況について断定するには情報が少なすぎるが、無理に聞き出して逆に話す気を無くされても困る。
押して開かない扉は引いてみるもので、心の扉も同じくだ。
たまには変わる状況の波に身をゆだねるのも悪くは無い、とミクは思う。
何か利用できる情報が集まれば、それから進む道を考えても遅くは無いのだ。
>『じゃあむこうの超古代猫文明の遺跡に逃げ込むよ』(猫語)
>「エンドウ君がどこにいるかわからない以上、いたずらに戦力を浪費するのは得策じゃないわ。グレン、遺跡に案内して!」
「あちらも相談がまとまったようですわね。
私たちも場所を移動いたしましょう。
この村には、炎道総代はおられないようですから」
聞きたい事は聞いた以上、ミクも猫の村にもう用は無い。
リリィ同様、美味しくもなさそうな怪植物同士の戦いに興味も無い。
ミクは真に一緒に行くように誘ってから、グレンやリリィの後を追いかけた。
猫の村からミクが予想していたほどには離れていない場所、森の中の少し開けた場所に、猫文明の遺跡はあった。
>「これが遺跡?超巨大猫文明の遺跡のわりには、意外と小さい・・・かも?」
「猫のすることですから、人には理解できない構造だとしても無理もありませんわね」
若干の皮肉を込めてそう言いながら、ミクは建物に近づいた。
両側を狛犬ならぬ狛猫のような像に守られた扉に無造作に手をかけ、軽く押してみる。
扉は開かない。
力を込めてみても、引いても左右に動かそうとしても、扉はびくともしなかった。
「……どうやら立ち入り禁止のようですわね」
あきらめて引き返そうとした時、ミクは扉の両脇の猫の像が左手を上げているのに気づいた。
「私の故郷では、猫が左前足を上げるのは人を招く時。でしたわね。
こちらの土地では何か別の意味がないか、どなたかご存知かしら?」
ミクがそう言うと、猫の像は言葉が聞こえているかのように手を動かして手招きした。
ミクが戯れにその動作を真似すると、猫の像は招く前足をさらに早く動かし始めた。
さらに、先ほどまで何も書かれていなかった扉には、はっきりくっきり【高速化】の文字が浮かび上がる。
ミクは手招きの真似を止め、半目でリリィたちの方を見据えた。
「こちらの土地では何か別の意味がないか、どなたかご存知かしら?」
先ほどと同じ質問を繰り返したのは、理解できなかったからではない。
理解するのが嫌だったからだ。
>36>37>39
>「これが遺跡?超巨大猫文明の遺跡のわりには、意外と小さい・・・かも?」
>「猫のすることですから、人には理解できない構造だとしても無理もありませんわね」
誰も古代だとは突っ込まない状況
ツッコミ役が不在だとこうなってしまうのか?
>「私の故郷では、猫が左前足を上げるのは人を招く時。でしたわね。
こちらの土地では何か別の意味がないか、どなたかご存知かしら?」
『そんなことはどうでもいい!もっとだ!もっと早く!!』(猫語)
お前に足りない物は、それは!!情熱思想理念頭脳気品優雅さ勤勉さそして何よりも!!速さが足りない!!!!
とばかりに手招きの高速化を催促するグレン
そういうグレンの手(?)も高速に振られている
『うなー!!』(猫語)
完全にトランス状態のグレン
しばらく手招きを続けているとゴゴゴゴゴ・・・・・という怪しい音をたて扉が開き始める
『さあ中に入りましょうか?』
だがはたして本当に入ってしまって大丈夫なのだろうか?
行きはよいよい帰りは怖いという言葉もあるだろうに
『フリージアさんへ、トリフィードときのこの化け物がきたので、超巨大猫文明の遺跡に一時避難しています。
フリード君と愉快な仲間達より』
かちこちに凍ってなんだか白くなっているきのこの化け物を尻目に手紙に目を通す特徴的な髪型をした少女
「情けないですわねぇ・・・・あんなものとっとと凍らせれば一発ですのに」
と言いつつ猫の長老をフルもっふするツインドリルヘアーの少女
猫の長老は猫の長老で『美味しいきのこの食べ方』という料理本を一生懸命に読んでいる
ってあんなもんを食う気かよ!!
はて?きのこの化け物はともかくトリフィード(量産型)はどうしてしまったのだろうか?
多分ではあるがフリージアさんの無駄に偉そうな気配に怯えて逃げてしまったのであろう
それもフリード達がいる遺跡の方面に
「まあそんなことよりも猫ちゃんたちにおしいいお料理を作ってあげますわよ」
と実弟よりも猫が大事なフリージアさんであった
『入ったは良いんですけど出るとき大丈夫なんでしょうか?』
とフリードリッヒ・・・・・遅いよ
『なあにいざとなったら僕の都合のいい偶然を引き起こす程度の能力を使うよ』(猫語)
都合のいい偶然を引き起こす程度の能力とは招き猫系がデフォルトで持っている能力である
その能力をもっていれば例え洗脳されても偶然何もないところで蹴躓いて頭を打って洗脳が解けたり
色々と本人にとって都合のいい出来事が起こるのだ
『グレン・・・・あなた招き猫じゃないじゃないですか』
だがグレンは別に招き猫でも何でもないのでそんな能力は無かった
ブレの部下達は小鬼達を牽制しつつ、その場から徐々に離脱していき比較的安全な区域でミーティングを行っていた
「警護対象は?」
警護班の指揮を執っている少尉は隊員の一人に質問をした
「警護対象は戦闘区域から脱出完了
現在、別動隊が追跡中 目下、報告を待っております」
「“野獣”の動きはどうだ?」
また別の隊員へと質問を投げかける
「捜索班からの定時報告では今だ発見できず 任務を続行するとの事です」
部下達の答えを纏めれば警護対象は見失いかけており、別の目標もまだ見つかっていない つまり進展は全く無しという事だ
その時、少尉の持つ通信機の役割を果たす極めて小さな鳥“オハナシスズメ”が叫び始めた
「こ、こちら別動班!!遺跡付近にて警護対象を発見しました!ですが、トリフィード達とキノコの化け物が我々を…ぎゃぁああぁぁぁぁ!!!!!」
“オハナシスズメ”は悲鳴のみならず向こうで放たれている銃声すら忠実に伝え 殺された兵士の断末魔を響かせると すぐに目を閉じ眠ってしまった
「大尉に損害状況と所定座標並びに作戦経過を報告の後 速やかに遺跡へと移動する」
特務隊の隊員達はまた影となり この場から姿を消した
42 :
名無しになりきれ:2011/10/21(金) 14:15:08.37 0
KASO
>『それは大変でしたね、まあ森は広いから仕方ありませんが』
「無事でよかった!まあ、マコトちゃん強いから、そんなには心配してなかったけどね」
遅れて来た真にみんなは優しく声をかけてくれた
猫となにやら神殿だのキノコの化け物がどうのといっていた
そんななかリリィは真の心配をして声をかけて来た
>「どうしたの?何かあった?・・・・・・・はっ!もしかして、あのゴブリン達にセクハラされたとかっ?!」
「いや〜セクハラやったら氷漬けか炭にしてやんってんけどな〜」
あっけらかんとしている
単純にいやなことがあってないているわけじゃないとリリィもわかるだろう
マイペースに話をすすめる
真はそんなリリィに正直に答えようとなぜか思う
そして、小声で彼女にだけ言い返した
「なんかしらんねんけど、勇気の声が聞こえて来てんやん。なんやどっかの部屋んなかにおる言うてんねんけどな
神殿の中とかちゃうかな〜
私が泣いとったんは勇気の声を聞いたからやねんや」
爽やかな笑顔を貼付けている
実に幸せそうな顔をしている
「いまの私ならキノコお化けなんて2秒で瞬殺やわ〜」
しかし、戦ってしまうとなにかまずいらしく、真は「ちょっと残念やわ〜」といって超古代神殿とやらにやってきた
と、そのまえにミクも心配して声をかけて来ていた
>「なにか悲しい事でもおありでしたかしら。
……急にこんな事を言ってごめんなさいましね。
泣いておられるように見えましたので」
「そんなんちゃうはちょっといいことがあっただけや」
>「ふふ…リリィさんも言われていましたけれど、話したくなりましたらいつでもご相談くださいましね。
お力になれることがありましたら、お手伝いさせていただきますから」
「あんたはなかなか、やりおるようやからせいぜいたよりにさせてもらうわ」
>「あちらも相談がまとまったようですわね。
私たちも場所を移動いたしましょう。
この村には、炎道総代はおられないようですから」
「そうやね。勇気はここにはおらんわ。居ったらわかるわ」
そんなこんなで超古代猫遺跡
「いそうやわ〜ここに勇気がいそうな。雰囲気ビンビンやわ〜」
真はちょっと楽しんでいる
なんだかんだで冒険好きな少女だったりする
「じゃあ、早速奥に進むで」
真が元気よく足を踏み出すと床がカチリと音がしてスイッチのように押し込まれている
「なあ、みんなこれってもしかして・…・」
真はちょっとはにかんだ
「罠ちゃう?」
>37-43
「……どうやら立ち入り禁止のようですわね」
「えーっ、このままじゃきのこやトリフィードに追いつかれちゃうよ!!」
>あきらめて引き返そうとした時、ミクは扉の両脇の猫の像が左手を上げているのに気づいた。
「あれ?いつの間に?」
>「私の故郷では、猫が左前足を上げるのは人を招く時。でしたわね。
> こちらの土地では何か別の意味がないか、どなたかご存知かしら?」
リリィは首を横にぶんぶん振った。
>ミクがそう言うと、猫の像は言葉が聞こえているかのように手を動かして手招きした。
>ミクが戯れにその動作を真似すると、猫の像は招く前足をさらに早く動かし始めた。
>さらに、先ほどまで何も書かれていなかった扉には、はっきりくっきり【高速化】の文字が浮かび上がる。
「な、な、何?なんなの??」
>「こちらの土地では何か別の意味がないか、どなたかご存知かしら?」
「う・・・・・ウェルカム熱烈大歓迎ですよって事じゃないかな?あはは・・・は」
>『そんなことはどうでもいい!もっとだ!もっと早く!!』(猫語)
「わーっ、フリード君大変!グレンがおかしくなっちゃった!!」
>『うなー!!』(猫語)
完全にトランス状態のグレンを相手におろおろしていると、目の前のドアが開いた。
(・・・・・・あれ?)
背後の緑の木々の向こう側からは、誰もいなかったはずなのに人の怒号や悲鳴が聞こえたような気がする。
だがそんなはずは無い。
先ほど通ったときには、人っ子一人いなかったのだから。
「は、早く中へ入ろうよ!グレン、中を案内して!」
だが、リリィは勘違いしている。
ここはグレンの父親が神官を務めるという神殿ではない。
過去の巨大猫・・・・・・否、古代猫遺跡なのだ。
グレンが遺跡の中の様子に詳しいかどうかは、はなはだ疑問である。
「マコトちゃんの話では、神殿の中かどこかの部屋の中に閉じ込められてるってテレパシーが届いたのよね?
でも、神官であるグレンのお父さん達が、学園の生徒らしきエンドウ君を閉じ込める理由が無いのよね・・・・・・。
もしそんな事があったのなら、さっきたずねた猫の長老さんから何らかの話が出てるはずだし。
うん、まずは遺跡の捜索だよね!!」
普通は、ミクが考えていたように、猫や犬の神殿を訪ねるのがセオリーなのだろう。
だがマコトはこの遺跡を「猫の神殿だ」と勘違いしているし、リリィは遺跡が怪しいという先入観を持っている。
グレンはそういう細かいことを気にしないし、ミクがわざわざ彼女達の思い込みを解くことは無い。
ゆえに、彼らが遺跡に足を踏み入れてしまう、というのはごく自然の成り行きだった。
>「じゃあ、早速奥に進むで」
「そうね!トリフィードはうまく撒けたようだし、早くエンドウ君を見つけて学園に帰ろう!」
おー!とリリィは拳を振り上げた。
さて。
リリィがいつもに増して馬鹿丸出しでにぎやかなのには、一応理由があった。
猫の森で合流を果たしたマコトの様子がおかしかったのは、森で遭遇したゴブリン達のせいではなかった。
学年総代で、現在捜索中の、エンドウユウキの声を聞いたからだという。
マコトが受信したという、『エンドウからのテレパシー(?)』では、彼はどこかの部屋に閉じ込められているらしい。
>「いそうやわ〜ここに勇気がいそうな。雰囲気ビンビンやわ〜」
マコトの目はまだ少し赤くはれている。
ああやって明るく振舞ってはいるが、婚約者が行方不明で監禁されているのだ。不安でないわけが無い。
見知らぬ土地で大切な人が消えたのだ、どれだけ心細く、心配でいることだろう。
(ここは私がしっかりして、マコトちゃんを支えてあげなくては!)
リリィはぐっと拳を握り、決意を新たにした。
『入ったは良いんですけど出るとき大丈夫なんでしょうか?』
「・・・・・えっ、ええええええ?!でも、グレンは神官の息子さんなんでしょう?
ここに入ったことくらいあるんでしょ?・・・・・・え?違うの?」
どうしよう、とあからさまに動揺をするリリィ。
>『なあにいざとなったら僕の都合のいい偶然を引き起こす程度の能力を使うよ』(猫語)
「すごーい!グレンがそんな力なんかもってるなんて!
はっ、もしかしてこれって、幸運を招く招き猫能力ってやつ?さすがは神官の息子だけあるわね!!」
これで勝つる!とばかりにリリィが手を叩いている。
小躍りしてよろこんでいたせいで、その後「グレンは招き猫ではない」という重要なフリードの突っ込みを聞き逃してしまった。
先にたって歩き始めたマコトが、ぴたりと歩を止めた。
「マコトちゃん?どうしたの?・・・・・えっ、何、この音?!」
ゴゴゴゴゴ・・・・・と、どこからとも無く不吉な作動音が聞こえてくる。
>「なあ、みんなこれってもしかして・…・」
>真はちょっとはにかんだ
>「罠ちゃう?」
「な、なんだってー!!グ、グレン何とかしてよー!!」
リリィはグランにしがみついて、がくがくと揺さぶった。
ドン!と音を立てて、突然リリィの足場が消えた。
リリィだけではない、全員の足場が消えたのだ。
落下する先には、槍のように鋭利な石がびっしりと生えている。
無策のままに落ちてしまえば、串刺しになる運命は免れないだろう。
「わー!!落ちる落ちるよミクさん助けてー!!」
>40-45
>「う・・・・・ウェルカム熱烈大歓迎ですよって事じゃないかな?あはは・・・は」
>『そんなことはどうでもいい!もっとだ!もっと早く!!』(猫語)
>お前に足りない物は、それは!!情熱思想理念頭脳気品優雅さ勤勉さそして何よりも!!速さが足りない!!!!
リリィの反応はともかく、グレンの言葉はミクの機嫌を損ねるのに十分のものであった。
情熱やら理念やら速さはいい。
しかし、頭脳気品優雅さが足りないと言われてはいい気持ちにはなれない。
猫の言う事の上にグレンに悪意はないだろうとわかってはいても。
だがそんな気持ちは、実際に扉が開いたのを見た脱力感と一緒に抜け落ちてしまう。
ミクとしては、重要そうな場所の扉が高速手招きで開くというのは理解の範疇を超えていたのだ。
なんとなく頭痛を感じながら、もう帰ろうかとミクが考えていた時。
森のほうから銃声や悲鳴が聞こえてきた。
何者かが(おそらくは怪植物に)襲われたのだ。
>「は、早く中へ入ろうよ!グレン、中を案内して!」
「そうですわね。 早く中に入りましょう」
見知らぬ誰かの不幸による足止めに感謝しながら、ミクも遺跡に向かって足を進める。
こんな時にも、やっぱりミクには助けに向かうという発想は無かったので。
>「マコトちゃんの話では、神殿の中かどこかの部屋の中に閉じ込められてるってテレパシーが届いたのよね?
> でも、神官であるグレンのお父さん達が、学園の生徒らしきエンドウ君を閉じ込める理由が無いのよね・・・・・・。
> もしそんな事があったのなら、さっきたずねた猫の長老さんから何らかの話が出てるはずだし。
> うん、まずは遺跡の捜索だよね!!」
リリィの言葉を聞いて、ミクはちらりと真に目をやった。
そんな話は聞いていなかったからだ。
話をしなかったのは、自分を信用していないからだろうかとミクは考える。
それはそれで、賢明な判断だろう。
なにしろ自分はバケモノなのだから。
>「いそうやわ〜ここに勇気がいそうな。雰囲気ビンビンやわ〜」
「そう……」
真に言われてミクも遺跡の中の気配を探ってみたが、人らしき気配は感じられない。
気配を感じるのは自信があるのだが、これが愛(あるいは妄執)の力なのだろうか。
>『入ったは良いんですけど出るとき大丈夫なんでしょうか?』
「閉じ込める理由があるとは思えませんから、出て行くときも手招きでよろしいのではないかしら」
>「じゃあ、早速奥に進むで」
言いながら先に進む真が、何かを踏んづけた。
わざとらしい作動音を聞きながら、ミクは罠に対応するための安全策を張り巡らす。
>「罠ちゃう?」
「そのようですわね」
落ち着いて真にそう言った時、足下の床が消えた。
落とし穴の罠は、ミクにとっては楽に対応出来るものだ。
糸を張る時間は十分にあったのだから。
対応策のある者なら、この罠で致命傷を負うなど有り得ないだろう。
対応策のある者なら。
>「わー!!落ちる落ちるよミクさん助けてー!!」
真っ逆様に落ちていくリリィの腕に、ミクは糸を伸ばして絡みつけた。
「ふふ……あなたもよくよく、落ちるのが好きなようですわね」
スルスルと自身を支える糸を伸ばして降りながら、ミクはリリィにそう言った。
以前校舎から落ちるリリィを助け出したのを思い出しての言葉である。
リリィを抱き寄せて再び上がろうとした時、ミクはネズミの鳴き声を聞いた。
見上げれば、毛皮の代わりに燃え上がる火をまとったネズミ……火鼠の姿が見えた。
数匹の火鼠が、ふんふんと鼻を鳴らしながら穴の近くをうろちょろと歩き回っているのだ。
ミクの張った糸のうちの一本が、近くを歩く火鼠の熱に耐えきれずに焼き切れた。
「……鬱陶しい鼠だこと!」
短く呪詛の言葉を吐いてから、ミクは言葉の調子を変えてリリィに話しかける。
「少々面倒な鼠がいるようですわ。
私たちは安全な場所に移動して、あの鼠は他の方に始末していただきましょう」
ミクは体を支える糸を天井にまで伸ばし、ネズミの近づけない部屋の上方に移動する。
安全が確保されさえすれば、ミクは下に降りてくるだろう。
始末を誰かに頼まないのは、火の敵に攻撃するのは苦手と自分から言いたくないからだ。
>43>45>47
>「罠ちゃう?」
ぽっかりと空いた落とし穴に思いっきり落ちる一行
>「わー!!落ちる落ちるよミクさん助けてー!!」
グレンは石と石の間にうまく落ちたようである
体の小さい子猫であって本当に良かった
フリードの入った瓢箪はリュックサックからこぼれ落ちそうだ・・・・あ、落ちた
ざっくりと石槍に突き刺さる瓢箪
中のフリードは(間抜けなポーズで)石槍を全力で回避したようで
「ふう・・・死ぬかと思いました」
などとのたまっている
「これじゃあ瓢箪は使い物になりそうもありませんね」
と瓢箪から脱出するフリード
脱出したはいいが石と石の間が狭く動きづらいフリード
「なにこれ狭い」
仕方が無しに腰の刃のないサーベルを抜き
魔力で氷の刃を生み出し
バッサバッサと石槍を切り倒し
身動きを取るスペースを確保するフリードリッヒ
5か6本ぐらい切り倒す度に刃に限界が来るので新しい刃を生み出し
さらにバッサバッサと切り倒していく
「何故でしょう?すごく久しぶりに魔法を使ったような?」
「さあここなら落ちても打撲で済みますよ?」
と上の人に話しかけるフリード
いや石の地面に落ちたら尖ってなくても危ないだろう
>「……鬱陶しい鼠だこと!」
上を見れば体が常に燃えているという火鼠が何匹か
『それよりあの燃えてるネズミを何とかしようよ』(猫語)
とグレン
「あなた猫なんですから自分で何とかしたらどうなんですか?」
とフリード
『フィー坊こそ氷の魔法使いなんだから燃えてる敵には出番じゃないの?』(猫語)
とグレン
「フリーズアローとか遠距離攻撃は有るにはありますが・・・・・」
と指をピストルの形に構えて味方に当たらないように慎重に氷の矢の魔法を放つフリード
『攻撃するには登らないと駄目だけど間に合うかな?』(猫語)
と石で出来た壁を登り始めるグレン
木登りが得意なグレンはいいがこの後フリードはここから上がれるのだろうか?
姉であるフリージアと違い空を飛ぶ魔法は不得意なフリードリッヒは
背が低く登るのに苦労するのではないだろうか?
「で、ですね落とし穴がありそうなところはそこだけ塵が積もってなかったり
土の色が違ったりとですね・・・・・・」
となんとか脱出に成功し落とし穴がある所の特徴を話すフリードリッヒ
まあ図書館の本で得た知識なのだが・・・・・
それはそうとして落ちた後ではその説明は意味がないのではないだろうか?
「他にもトラップとしては何もないように見えて透明でキューブ状のスライムが積み重なって道を塞いであるとか
それに気がつかないで突っ込むと食われるんです
まあ金貨とか骨とか空中に浮いてればすぐにそれだって解るんですけどね」
某竜の探索では雑魚扱いだが基本的にスライムは物理攻撃の効かない強敵であり
ましては服だけ溶かすなんて都合の良い生物では無いのだ
『たとえばあんなふうに?』(猫語)
目の前には宙に浮く金貨が何枚か
「そうそうあんなふうに・・・・って!?
誰か火を!火を放って焼いちゃってください!間違っても物理攻撃はしちゃ駄目です!!」
『なんで火鼠と同じところに火に弱いスライムがいるの?』(猫語)
「そんなこと僕が知るもんですか!!』
「何とか、遺跡には侵入できたが…トリフィードやキノコの化け物は姿を消していたとはな…それに部下の姿も見当たらない…」
少尉以下、十数名の隊員達は遺跡内部へと辿り着いたものの、外でトリフィードやキノコに襲われたはずの部下の亡きがらはおろか 血痕すら無かったのだ
「全く、予測の斜め上を行く事態ばかりだ、大尉に何と説明すればいい」
思わぬ事態の連発につい愚痴が漏れる
「少尉!前方に敵発見 警護対象と接触しています」
「隠密行動のはずが作戦は大露わですな 少尉」
隊員の一人が軽く失笑気味に呟いた
「そう言うな兵長 彼らに死なれるよりは何千倍もマシだ」
隊員の鋭い指摘に少尉も苦笑いの他無い
「各員、前方の火鼠に対し射撃開始!
警護対象と火鼠を引き離せ!」
号令と共に森の中と同じく氷の銃声が遺跡へと響き渡った
真が間抜けにも罠を作動させてしまったことで床が開き、真を始めとした一行は穴に吸い込まれてしまう
「あかん、あかん、これはあかん!!」
真っ逆さまに落ちながら、考える『どうすればいいのだろうか?」
「そうや!私は飛べるやんか!」
そう登場したとき空を飛んでリリィの元にいったのは遥か前のような気もするがまだ24時間も経っていない
しかし、本来、自由に空を飛ぼうと思うとそれなりの詠唱が必要であるがそんなことをしている時間はない
「それでもやるしかないんや!」
端から見たらとても難しいことをしているようにみえるが無詠唱呪文なので対して難しくはない
背中から翼をはやし、空を飛び穴から脱した
無詠唱なので効果時間はほんの数秒といったところだ
上でみんなが上がってくるのは待っていた
「いや〜みんな悪かったな〜堪忍な」
笑顔で許してもらおう作戦
>「……鬱陶しい鼠だこと!」
ミクが張った糸を火鼠が燃やしているのがお気に召さないよう
フリードは氷の魔法しか使えないからということで火鼠にはノータッチ
リリィはそれどころではない様子
「仕方あらへんな〜今回は特別やで」
火鼠を素手触るわけにはいかないし、そもそも手が届かない
「どうしょうかな……そうや!こういうときは火には火をや!炎の神様を呼んだらええねん」
真は懐から呪符を取り出すとぶつぶつと呪文を唱えはじめた
「火の神ちょっとおいでなすって私をちょっとお助k……ファックション!!」
鼻がムズッとしてくしゃみが出てしまう
そのせいで加減が出来なくなり炎の神様(リリィ達にとっては精霊、ランクは低い)は思っていたより遥かに火力が大きい状態で出現してしまった
「あ、ミクの糸、全部燃えてもうた」
そもそも火鼠だからといって炎の神様を召還してしまったのがそもそもの原因なのだが
真は特に難しくかんがえてなかった
「スライムは……グレンとフリードで頑張って!!」
とりあえず丸投げ
>「わー!!落ちる落ちるよミクさん助けてー!!」
真っ逆様に落ちていくリリィの腕に、ミクは糸を伸ばして絡みつけた。
「ふふ……あなたもよくよく、落ちるのが好きなようですわね」
ぶらーん、ぶらーんと振り子のように揺れるリリィの側まで降りてきたミクがそう言った。
「あはは・・・・・・。な、何ででしょーねー」
リリィも引きつった笑いを顔に貼り付け、ミクに追従した。
今、彼女の機嫌を損ねて食べられたり、落とされて串刺しになったりするのはごめんだ。
ミクは荷物を扱うように、何の感慨も無さげにリリィを引き寄せた。
一方のリリィは、石化魔法を食らったかのようにカチカチに固まっている。
リリィを抱えているミクから苛立ちの波動を感じ、リリィも彼女と同じ方向を見上げた。
そして息を飲む。
「カ・・・・・カソ?」
>見上げれば、毛皮の代わりに燃え上がる火をまとったネズミ……火鼠の姿が見えた。
>数匹の火鼠が、ふんふんと鼻を鳴らしながら穴の近くをうろちょろと歩き回っているのだ。
「わっ、ちょ、ちょ・・・・・ミクさん顔近いかも・・・・・・・ギャッ?!」
頑丈な蜘蛛の糸が一本切れ、がくん、とバランスを崩れる。
ミクの張った糸のうちの一本が、近くを歩く火鼠の熱に耐えきれずに焼き切れた。
「……鬱陶しい鼠だこと!」
「(ひぃいいいいいいい!!!)」
落下するのも恐ろしいが、ミクの怒りはもっと恐ろしい。
ミクの本質的な部分についての記憶は多少あいまいでも、恐怖はきっちり刷り込まれているようだ。
>「少々面倒な鼠がいるようですわ。
> 私たちは安全な場所に移動して、あの鼠は他の方に始末していただきましょう」
ミクは体を支える糸を天井にまで伸ばし、ネズミの近づけない部屋の上方に移動する。
「はっ!そうだ、マコトちゃんは大丈夫・・・・みたいだね、グレン、グレンどこにいるの?」
さほど夜目が利かないリリィでは、黒猫グレンの姿を見つけることはできなかったようだ。
だが、フリードとの会話が聞こえてきたことで、とりあえず元気なのだと安心する。
ガンガンと何かを叩き壊すような音がした後、フリードは
>「さあここなら落ちても打撲で済みますよ?」 とのたまった。
「さりげなく恐ろしいこと言わないでよ!普通の人は打ち所が悪かったら死ぬっての!!」
怖い怖い怖いよーと小声でぶつぶつ呟く。
そしてふと、リリィは今回はちゃんと魔法の箒を用意してきたことを思い出した。
そう。魔法の箒をちゃんと握っていれば、彼女も一応空を飛ぶことができるのだ。
(んしょ・・・・・んしょ)
不自然な体制ながらも、鞄に差し込んである箒をなんとか引っ張り出そうと悪戦苦闘する。
火鼠に対処するべく、慎重に氷の矢の魔法を放つフリード。
氷の矢を受け、火鼠達はさくさく倒されていく。
「おおー!!ミクさん、そろそろ降りても大丈夫じゃないかなーなんて思っちゃったりしたりして・・・・・・ははは」
ミクの横顔を間近で見ながら、リリィは恐る恐る進言した。
>「どうしょうかな……そうや!こういうときは火には火をや!炎の神様を呼んだらええねん」
一方のマコトは、呪文の詠唱が終わったようだ。
てっきり、スライムを焼き払ってくれるのだとばかり思ったのだが・・・・・・・。
>「火の神ちょっとおいでなすって私をちょっとお助k……ファックション!!」
「わーーーっ?!」
マコトが呼び出した炎は、ミクが入念に張り巡らせていた糸を焼き払ってしまった。
>「あ、ミクの糸、全部燃えてもうた」
「飛べ!」
リリィは何とか後手で引っ張り出していた魔法の箒に、自分の両足を絡めた。
「ミクさんしっかり掴まっててね、今・・・・きゃー!!」
そこまでは良かったのだが、不自然な体勢ではミクの負荷を小柄な彼女が支えきれるはずもなく。
箒から落ちることこそなかったが、両膝を箒に引っ掛けた体勢で、逆さまにぶら下がる形でミクを支えることになる。
「マコトちゃんのばかぁ!フリード君、今こっち向いたら泣くから!!」
もっとも、フリードはスライムと対峙していてそれどころではないのだが。
「火鼠は?火鼠はどうなったの?」
何とか体勢を立て直し、フリードがいる場所へ着陸したリリィ。
幸い、火鼠は炎の魔法を食らったからといって復活したりはしなかった。
「さっすが・・・・・・フリード君の氷の矢って強力だったのね」
箒の下にぶら下がっていたため一人パニック状態だった彼女は、自分達への援護射撃に気づかなかったようだ。
「それとマコトちゃん、危ないじゃないのよ!
こんな狭い場所で炎ぶっ放したら、みんな丸焦げになっちゃうかもしれないのよ?!」
> 誰か火を!火を放って焼いちゃってください!間違っても物理攻撃はしちゃ駄目です!!」
>「スライムは……グレンとフリードで頑張って!!」
「えーっ!!そんなぁ!!」
リリィは情けない声を出した。
「言い過ぎたのは謝るよ、このとおり!だから、ご機嫌直してよぉ」
リリィはエンカが良くやる東方式の謝罪をしてみた。
「フリード君、スライムって物理攻撃は効かないんだよね」
じゃあ、かちかちに凍らせたら、スライムって無効化されたりしないのかな?
ミクさんはどう思う?
あ、ミクさんはスライムが好物なんてことは・・・・・はははないですよね。
やだな、冗談ですよほんとに冗談冗談ですからごめんなさいごめんなさい」
キジも鳴かずば撃たれまい、を地でいくリリィだった。
「攻撃手段がないなら、私が一皮ぬぎましょー!おー!!」
リリィはおやつの包みとランタンの油瓶を取り出した。
今から何をするつもりなのか?と問われれば、リリィは目をきらきらさせながらこう答えるだろう。
「スライムキューブの前に、このおやつを仕掛けておくの!
そしたら火鼠がえさを食べに来るでしょ?スライムが逃げるって寸法よ!
それでだめだったら、この油壺をスライムに投げつけるの!火鼠の炎に引火してぼーって燃えるわよきっと!!」
ちなみに、火鼠用に準備したおやつはリンゴである。
このリリィの計画は、誰の目から見ても穴だらけであり、成功するとはとても思えない。
だが、リリィはなぜか自信満々だ。
良識ある誰かが止めるよう忠告するか、現状を改善しない限り、このアイディアを実行してしまうだろう。
>50-53
>「スライムは……グレンとフリードで頑張って!!」
>「えーっ!!そんなぁ!!」
「氷の魔法使いが炎が弱点だって分かってる相手と戦うとか
不適財不適所じゃないですかやだぁ!!」
フリードリッヒはその特性により氷の精霊には好かれているが炎の精霊には嫌われている
いわゆる氷属性特化型の魔法使いなのである
故に相手が炎が弱点だとしても炎で攻撃できないのだ
魔法が関係ない松明でも持っていたならば別なのだろうが
今回それら一式を持っているのはリリィなのである
>「フリード君、スライムって物理攻撃は効かないんだよね」
「ええ何しろ液体状の生物ですから斬っても分裂するだけです
スライムは酸性ですのでもし運動場に線を引く石灰があれば中和できるんですけど・・・・・」
学園物なのに学園外に出てしまったのが仇になったのか今はそれは手に入らない状態である
>「じゃあ、かちかちに凍らせたら、スライムって無効化されたりしないのかな?」
「一時的には無害化できますが・・・・・・」
時間が経ったら復活して帰りにまた同じスライムと戦うはめになるだろう
だが・・・・とフリードは考えた
今の目的は敵を倒すことではなく炎道を助け出すことではないかと
敵を殺すことは手段であって目的ではない
別に殺さないで無害化できるのならそれで良いのではないかと
>「スライムキューブの前に、このおやつを仕掛けておくの!」
とリリィは自分の考えた作戦を皆に語る
「どうせだったら始めから炎の付いた何かを投げつけたほうが早いのでは?」
スライムと火鼠がそう上手く動いてくれるとはとても思えないフリードは
始めから燃やしてしまえばよくね?と氷の魔法使いらしからぬ感想を述べた
「そうだ僕にいい考えがあるスライムに向かって火鼠を蹴るんだ」(猫語)
とグレン
だがそれをやって靴が燃えないのだろうか?
それにすばやい鼠を上手く蹴ることなんて本当に出来るのだろうか?
いい考えという言葉が上手くいったためしがあっただろうか?
「とりあえずやってみましょう」
フリードは火鼠を蹴ろうとした
だが鼠はすばやく避けた
「うにゃぁぁぁぁぁごぉ!!」
グレンは鼠の動きを止めようと雄たけびを上げた
一部の鼠は動きが止まった
「今です!鼠を蹴って宙に浮いた金貨(スライム)に当てるんです!!」
はたしてこの試みは上手くいくのだろうか?
>48-54
>『攻撃するには登らないと駄目だけど間に合うかな?』(猫語)
「……氷を操れるのなら、氷の階段でも作ればよろしいのでは?」
思わずそう言ってしまってから、ミクは少し顔をしかめた。
相手の進め方に上手く乗せられている事に気づいたのだ。
どうにもこの師従組は苦手だと内心ぼやきながらも、火鼠への対処法の少ないミクとしては事態の進展を見守るしかない。
ともかくフリードは火鼠の数を氷の矢で減らしてくれているのだから、文句ばかりも言えないのだ。
>「おおー!!ミクさん、そろそろ降りても大丈夫じゃないかなーなんて思っちゃったりしたりして・・・・・・ははは」
「……そうですわね。 鼠の数も減ってきたようですし……」
リリィの言葉に賛同したミクが蜘蛛糸を伸ばして床に下りようとした時、真がくしゃみで呪文の詠唱に失敗した。
>「わーーーっ?!」
>「あ、ミクの糸、全部燃えてもうた」
元凶の真は気楽なものだが、事はそう簡単ではない。
焼けた糸には、当然ながらミクたちのぶら下がっている糸も含まれる。
結果的に墜落は免れないし、うっかりすると味方に焼き殺される一歩手前だったのだ!
>「飛べ!」
墜落への対処は、意図せずとはいえ事前に準備していたリリィのほうが速かった。
箒を使って空を飛ぶリリィに捕まる形で、ミクも墜落は免れる。
「今回はあなたに助けられましたわね。 感謝しますわ」
空中で礼を言うミクだが、肝心のリリィのほうはそれどころではない。
>「ミクさんしっかり掴まっててね、今・・・・きゃー!!」
バランスを崩してパニックを起こすリリィに捕まりながらミクも、緊急時には糸で箒を絡め取る準備はした。
だが幸いリリィは無事に着陸したので、ミクも一安心である。
着地した後の言動を見るに、リリィたちは新しく遺跡に侵入した一部隊による援護射撃に気づいていないようだった。
あるいは気づいていないふりをしているだけかも知れないのだが。
ミクは珍しく、彼らに声をかけるべきかどうか迷った。
彼らの会話は耳の良いミクには聞こえていたが、警護対象との言葉からしてその内容はどう考えても敵対的なものではない。
加えて、彼らは自分達の存在を隠しておきたいようでもある。
果たして声をかけるべきか否か。
>「フリード君、スライムって物理攻撃は効かないんだよね」
> じゃあ、かちかちに凍らせたら、スライムって無効化されたりしないのかな?
> ミクさんはどう思う?
> あ、ミクさんはスライムが好物なんてことは・・・・・はははないですよね。
思案中にリリィの冗談が聞こえてきて、ミクはじろりとリリィを睨む。
> やだな、冗談ですよほんとに冗談冗談ですからごめんなさいごめんなさい」
慌てて平謝りするリリィの様子が面白くて、ミクはくすくすと笑った。
元々本気で怒っていたわけではないのだ。
「ふふふ……こちらも冗談ですわよ。
そんなに恐縮しないでくださいましね」
>「攻撃手段がないなら、私が一皮ぬぎましょー!おー!!」
そう言ったリリィは、【リンゴが駄目なら油壺を使えばいいじゃない計画】を自信満々に発表する。
自信満々なのに穴だらけのザル計画である。
>「どうせだったら始めから炎の付いた何かを投げつけたほうが早いのでは?」
「そもそも火鼠がリンゴを食べるかどうか疑わしいですわね」
フリードだけではなく、ミクもこの作戦には懐疑的である。
残念ながら、リリィの計画は却下される事になりそうだ。
>「そうだ僕にいい考えがあるスライムに向かって火鼠を蹴るんだ」(猫語)
「……猫の首に誰が鈴をつけるか相談する鼠の話をご存知かしら」
だれがそんな危険な事をするのだという点を指摘する話を持ち出して、ミクはグレンを止めようとした。
しかしフリードとグレンの主従は、どこまでもミクの考えの上を行っていた。
例えそれが斜め上であっても、上は上である。
>「とりあえずやってみましょう」
燃える火の塊を蹴るなどと正気の沙汰ではない事を、フリードは(信じられない事にとりあえずだ!)実行する。
足は空を蹴ったが、それは火鼠も蹴られるまで大人しく待っていてくれなかっただけであり。
火鼠がじっとしていたら火傷してでも蹴っていたであろうことは疑いの余地もない。
>「うにゃぁぁぁぁぁごぉ!!」
天敵であるのか、猫であるグレンの雄たけびを聞いた火鼠たちが竦みあがって動きを止める。
あるいは火鼠は、古代猫たちの餌として飼われていたのかもしれなかった。
>「今です!鼠を蹴って宙に浮いた金貨(スライム)に当てるんです!!」
言われる前に、ミクは近くにいた火鼠に素早く近寄っている。
スライムは無視して帰るという選択肢も取れたミクだが、今回はそうはしなかった。
真にまた火の神を呼ばれてスライムごと丸焼きにされるのは嫌だったのだ。
もしかしたらミク自身にも気づかない理由があったのかもしれないが、聞かれたらミクはそう答えるだろう。
ともかく蹴鞠の要領で火鼠を蹴飛ばしたミクは、体が焼ける感覚に顔をしかめた。
一方、蹴られた不幸な火鼠の方は、金貨に当たる事もなくしばらく空を飛んで地面に落ち、
悲鳴のように鳴き声を上げながら遺跡の奥に逃げていく。
だが感覚が常人より鋭いミクには、スライム退治が成功した事がすぐにわかった。
どんなに鈍感なものでも、しばらくすればそれがわかるだろう。
スライムの体の中に閉じ込められていた金貨が、ゆっくりと床に落ちていくのだから。
構成していた体の核を焼かれたスライムは、溶けてしまったのだ。
「これで、奥に行けるようになりましたわね」
ふう、と息を吐いて、ミクは火傷した足に力を込めた。
痛みはあるが、歩けないほどではない。
履いていた靴は溶けてしまっているので、ミクは糸を使って靴を作り出す。
どのみち着ている衣服は彼女が糸で作り出したものだ。
「少々時間がかかってしまいましたけど、総代を探しに向かいましょうか。
あちらでも私たちの事をお待ちでしょうから」
57 :
名無しになりきれ:2011/11/09(水) 02:04:01.26 0
もけもけ
火鼠やその他諸々の障害に秘密裏かつ隠密に対応していた特務隊であったが姿を隠し護衛の任にあたるのには少々 手厳しい状況へと移っていった
「敵!後退を開始!制圧射撃を続行します!」
「側方より更に火鼠の群れが接近!牽制を開始!」
火鼠の群れの撃退を試みるもその数に加え炎も侮れない、氷の銃弾と銃声は更に勢いを増して遺跡中へと響きわたる
「少尉!遺跡深部への一時後退を提案します!
屋内下での牽制はこれ以上無理だ!」
特務隊は十二分な働きを果たしているが多勢に無勢 徐々にではあるが戦況は不利な方向へと傾いていく
「…!…捜索班とも連携がとれない今 隠密作戦の継続は困難か…
総員、遺跡深部へと後退する 警護対象と接触しても構わん!」
その時、遺跡の入り口より恐ろしい咆哮と共に何者かが遺跡を壊さんとばかりに地震を思わせる揺れを起こし疾走してきたのだ
「少尉!トリフィードです!!」
部下の慌てふためんばかりの叫びが振動と共に響きわたった
「総員退却!!陽動班は制圧射撃を展開の後 後退しろ!」
トリフィードは氷の銃弾を物ともせず 特務隊を追い 遺跡深部へと突入していった
>54-58
>「どうせだったら始めから炎の付いた何かを投げつけたほうが早いのでは?」
>「そもそも火鼠がリンゴを食べるかどうか疑わしいですわね」
せっかく立てた「かんぺき!わたしのスライムこうりゃくさくせん」を即却下され、リリィはしゅんとなった。
「いいアイディアだと思ったのになぁ・・・」
>「そうだ僕にいい考えがあるスライムに向かって火鼠を蹴るんだ」(猫語)
「えーっ!熱くないの?それとうろちょろ動く火鼠を蹴るのって難しくない?」
火傷ももちろんだが、すばやい動きの火鼠を足でコントロールするのは至難の業だろう。
>「……猫の首に誰が鈴をつけるか相談する鼠の話をご存知かしら」
「そんなのフリード君に頼めばいいんじゃない?・・・・・え、違うの?」
>「とりあえずやってみましょう」
>フリードは火鼠を蹴ろうとした
>だが鼠はすばやく避けた
「せめて動きが止まればいいのに・・・・・火鼠、りんご嫌いなのかな?ちちちち、ちちちち、こっちおいで」
リリィはりんごを手に、火鼠を呼び寄せようと無駄な努力をしている。
>「うにゃぁぁぁぁぁごぉ!!」
>一部の鼠は動きが止まった
>「今です!鼠を蹴って宙に浮いた金貨(スライム)に当てるんです!!」
「蹴るって言ったって・・・・・そうだ!」
リリィは魔法の箒を振り上げると、フルスイングで火鼠を打ち出そうとした。
だがしかし!
「わーっだめ!箒に火が!私のおんぼろ箒が燃えちゃう!!」
魔法の箒はぶすぶすと煙を上げ始め、リリィは慌てふためいて火種を踏み消しはじめる。
その間に、ミクはすばやい動きで火鼠に走りよったかと思うと、すばらしいフォームで蹴りだした。
>一方、蹴られた不幸な火鼠の方は、金貨に当たる事もなくしばらく空を飛んで地面に落ち、
>悲鳴のように鳴き声を上げながら遺跡の奥に逃げていく。
「あっ!金貨が落ちてきた!もしかして、スライム退治完了?」
リリィは床に落ちたスライム金貨を、消し止めた箒の先でつんつんしながらそう呟いた。
>「これで、奥に行けるようになりましたわね」
ふう、と息を吐いて、ミクは火傷した足に力を込めた。
「そうだ!火鼠思いっきり蹴ったけど、もしかしてやけどしたんじゃないの?ちょっと見せて!」
ミクが履いていた靴は、火鼠の熱で溶けてしまっていた。
「フリード君、冷やしてあげて。ミクさん、あんまり無理しちゃ駄目だよもう!・・・・・・助かったけど」
リリィは大急ぎで簡単な応急手当をした。その後すぐにミクは糸を使って靴を作り出す。
まるで魔法のようだと、リリィは思わずため息をついた。
「でもちょっと意外。
ミクさんが私達やエンドウ君のために、やけどしてまで道を開いてくれるなんて思わなかった。
・・・・・・ありがとね」
>「少々時間がかかってしまいましたけど、総代を探しに向かいましょうか。
> あちらでも私たちの事をお待ちでしょうから」
「うん。行こう!」フリード君、もう体は大丈夫なの?
ミクさんもちゃんと歩けてる?もし無理なら、私の箒に乗っていいよ。大丈夫、ゆっくり飛ばすから!
グレン・・・・・・はちゃんと見えるから大丈夫だよね。
マコトちゃん、居る?ちゃんとついて来てね!
こんな薄暗いところで迷子になったら、合流するのも大変になっちゃうんだから・・・・・ぎゃんっ!!」
スライムの残骸に足をとられ、見事にしりもちをつく。
「もー!!スライムのばか!こうしてこうして!こうしてやるんだから!!」
リリィは落ちていた金貨を拾い集めると、持っていた袋に詰め鞄にしまった。
「さっ!行こうか!」
リリィの一歩先を、カンテラがふわふわ浮いて足元を照らしている。
青白い光で、先ほどよりはっきりと遺跡内部を確認することができた。
今居る場所は、通路を抜けた先にある少し開けたホールのような場所だった。
ホールの壁らしき場所にはいくつか扉があり、どこかへと通じているようだ。
「マコトちゃん、エンドウ君のテレパシー、また聞こえてきたりしない?ここに居るぜとか言ってない?」
表情から伺うに、残念ながら新たな「愛のメッセージ」の受け取りは期待薄なようだ。
「そういえば、エンカも学園に入学する前、この森の中でおっかない植物と出会ったって言ってたっけ。
キノコ人間といい、トリフィードといい、スライムといい、本当に森の中って危険でいっぱいだね!
トリフィードは何とかまいたけど、みんな、気を引き締めていこうね!おー!!」
リリィが握りこぶしを振り上げて気勢を上げていると、先ほど通ってきた入り口の方角がなにやら騒がしい。
>遺跡の入り口より恐ろしい咆哮と共に何者かが遺跡を壊さんとばかりに地震を思わせる揺れを起こし疾走してきたのだ
「・・・!トリフィードです!!」
「えっ、何?何なに?!今誰か、トリフィードって言わなかった?!」
破壊音と怒号にかき消されよく聞こえないが、入り口付近で何かあったのは間違いない。
「わっ、どうしよ、どうしよう!!」
リリィは慌てふためき、目の前の扉に飛びつくと、周りの言葉にも耳を貸さず扉を開けてしまった。
「・・・・・・・・・・・・・・・!!」
中に飛び込もうとしたリリィは、ものすごい勢いでドアを閉めた。
中を見た彼女は真っ青な顔で、ぶるぶる震えている。
「な、なんか中に居た。何あれ、全身もけもけで・・・・・。
キノコ人間に良く似てるけど、なんかほんのり光ってるの!何あれ!!」
どんっ!と分厚いドアの向こう側から、何かが体当たりする音が聞こえてきた。
「わーん、怖いよ!!でもあれエンドウ君じゃないよ!良く見えなかったけど、きっと違うよ!
どうする?入り口の方の人達と合流する?それとも、このまま先に進む?」
入り口のほうには戻らなくても、向こうから来てくれそうだ。
先に進むにしても、リリィがあけた扉には入らない方がよさそうだ。
>55-60
>「これで、奥に行けるようになりましたわね」
「ありがとうございます!おかげでスライムを撃退することが出来ました」
ミクに感謝の言葉を述べるフリード
「そんな火傷で大丈夫なのか?」(猫語)
とグレン
こんな言葉だが一応心配しているようだ
>「フリード君、冷やしてあげて。ミクさん、あんまり無理しちゃ駄目だよもう!・・・・・・助かったけど」
「僕にまともな治癒魔法が使えたら良かったんですけどねえぇ」
と簡単な応急措置を取る一行
フリードは一応治癒魔法を使えるが直せるのは自分のそれも顔部分だけである
ゆえに回復という意味ではほぼ役に立たないのだ
「炎道さんを助け出して学園に帰ったら二学期からの選択科目に治癒魔法を選ぶ事を考えないといけませんね」
「でも担当教員は例の変態な保険医だよ?本当に大丈夫なの?」
グレンは保険医に影響されてフリードが変態になってしまうのではと心配しているようである
>「少々時間がかかってしまいましたけど、総代を探しに向かいましょうか。
あちらでも私たちの事をお待ちでしょうから」
>「うん。行こう!」フリード君、もう体は大丈夫なの?」
「ぶっちゃけるとまだ痛いですよ
物語の勇者ですら宿屋で一晩寝ないと回復しないんですから
一日も経ってないのに怪我が直るわけがないんです
ですが友達を助けるのに痛いとか無理とか言っている場合じゃありませんから我慢しますよ」
フリードは我慢強さの特徴を持っているので怪我をしても能力値が下がらないのだ
>「さっ!行こうか!」
「そうですね急いで向かいましょうか」
と氷の10フィートほどある棒を生み出し地面を突きながら歩くフリード
「なにその棒?」(猫語)
「10フィートの棒はダンジョンでの必需品ですよ?常識でしょう?」
10フィートつまり約3メートルの棒である
ダンジョンでの罠の有無を確かめる為に床や壁を叩くのに使われる
石橋を叩いて渡るのに使われるのもこれである(嘘)
さて目の前にはたくさんの扉
たぶん炎道に繋がっているのはそのうちの一つのみだ
リリィが開けた扉にはへんなもけもけした生き物が居たらしくすぐ閉めてしまった
「この場合一人一人別の扉に入ったほうが効率的ですが・・・・・・
アタッカーじゃない人が入って何かあったら大変ですよね?どうします?」
「トリフィードが居るって聞こえたよ?止まってたら危険だよ」(猫語)
「とりあえず僕も一つ扉を開けてみましょうか?」
ガタン!
楽しいゴブリン一家が家族団らんしていた
フリードは見なかったことにしてそのまま閉めた
「はずれですね」
とりあえずフリードは氷の剣でペケ印を扉につけた
「何処にでも居るねゴブリン」(猫語)
「一匹見つけたら30匹は居ますよね」
さあ次は別の扉だ
火鼠を見事な連携で突発した一同
>「マコトちゃん、エンドウ君のテレパシー、また聞こえてきたりしない?ここに居るぜとか言ってない?」
残念ながらそんな都合よく勇気からのテレパシーなどなかった
その事は表情からリリィは察してくれたのか、追及はなかった
真も特になにも言えなかった
そんなこんなで無数の扉がある場所にたどり着いた
リリィが開いた扉の先にはもけっとした生命がいた
「なんや、かわいい奴がおるやないか」
リリィが恐怖する存在を、かわいいという真の感性はどこかずれているといえるかも
西洋と東洋の違いと言えるかもしれない
フリードが開いた扉の先にはゴブリの一家が家族団らんの図
団らんのらんが変換できないのはなぜでしょう?
これだから、スマホは……
メタな乗りもたまにはいいでしょうよ
地の文だし
さてさて、リリィ、フリードと扉を開けて好奇心旺盛の真ちゃんが扉を開けないわけがない
どじっ子属性が、とあるステータス風だとA++ぐらいあるであろう真ちゃんがだ
「私の愛の力で一発で勇気への道を当ててやるわ!」
真が扉が飛んでいきそうな勢いで、扉を開く
「真っ暗やわ。一寸先は闇どころちゃうぐらい真っ暗やわ」
真が試しに指先を突っ込んでみると指先がすぐに見えなくなる
「アイタッ!」
悲鳴をあげる
どうやら、闇の向こうでなにかに噛まれたようだ
反射的に指を引き抜くと歯形がついていた
そこからはうっすらと血が滲んでいた
「ぶっ殺したる!!!」
逆上した真は今まさに正体もわからぬままに極大爆笑魔法で吹き飛ばそうとしている
この暗闇の正体は?
この先になにがあるのか?
正直、ノープランなのか?
こうご期待
逆上した真の目の前で闇が突然蠢いた!
闇、否、それは黒だった
蠢く黒は入り口から一気に溢れ出す!
その正体は蟻だった!
体長5センチほどの軍隊蟻が数十万という数で部屋を埋め尽くし闇のように見せていたのだ
部屋から溢れ出た無数の軍隊蟻が一斉に真たちに襲い掛かる!
モンスターデータ
・クリーナーアント
・迷宮に生息する軍隊蟻
・数十万の大軍で群れを成し、迷宮内のあらゆるものを貪り食らう
・その貪欲さから迷宮の掃除人、クリーナーアントと名付けられる
・体長5センチ、甲殻に覆われ、疲れや恐怖を知らない
・強力な顎と蟻酸で得物に群がり牛ですら数分で骨も残さずに食らいつくす
・群れの中に女王蟻がいて、命令を出しているらしい
>57-63
>ミクさんもちゃんと歩けてる?もし無理なら、私の箒に乗っていいよ。大丈夫、ゆっくり飛ばすから!
言われてミクは、何回か足を動かして状態を確かめる。
高温で焼かれたやけどは、幸い歩けないほどには痛まなかった。
フリードの冷却治療が威力を発揮したのだろうか。
「フリードに冷やしていただきましたから、痛みはそれほどでもありませんわ。
でも……そう、ですわね。 それではお言葉に甘えて乗せていただこうかしら」
それでも少し考えてから、ミクは箒に乗せてもらうことを選んだ。
楽は出来る間にしておくに限るのだ。
リリィがカンテラを飛ばし、フリードが罠がないか確認しながら歩く。
その後ろを、ミクはリリィの箒に横座りで乗ったまま進んでいく。
道々他に罠がないかと意識はしていたが、幸いな事に通路にそれ以上罠はなかった。
リリィはミクの手助けを意外に感じたようだが、不本意な始まりではあっても今は運命共同体だ。
乗りかかった船が沈みそうなら、沈まないよう手を尽くすのは当然である。
通路を進んだ先は少し開けた広間になっていて、複数の扉が進路を塞いでいる。
望むにしろ望まないにしろ、先に進むためには扉を開けなければならない。
>「マコトちゃん、エンドウ君のテレパシー、また聞こえてきたりしない?ここに居るぜとか言ってない?」
リリィの問いに、回答はなかった。
表情からするに、そんな答えはなかったようだった。
もしかすると、総代は探し出して欲しくはないのではないかという考えが、ミクの頭をよぎる。
離れていても声を届けられたのに、近づくと何も言わないというのもおかしな話ではないか。と。
>「・・・!トリフィードです!!」
>「えっ、何?何なに?!今誰か、トリフィードって言わなかった?!」
「どうやら、こちらを追いかけてきたようですわね」
あるいは先に侵入してきた者たちを追いかけてきたのかも知れないが。
理由はどうあれ、後戻りが難しくなったという状況になにも変わりはない。
扉を開けて先に進むか、戻ってトリフィードと対決するかの選択肢なのだ。
>「わっ、どうしよ、どうしよう!!」
「リリィさん。 あまり慌てて扉を開かないほうが…」
ミクの警告は少しばかり遅かった。
リリィは扉を開け、中にいた光る人型のそれと遭遇してしまったのだ。
>「・・・・・・・・・・・・・・・!!」
リリィは開けたのに倍する速度で扉を閉めたため、【それ】が外に放たれる事はなかった。
>「な、なんか中に居た。何あれ、全身もけもけで・・・・・。
> キノコ人間に良く似てるけど、なんかほんのり光ってるの!何あれ!!」
「カビ人間か人間カビの類のようですわね」
闇を見通せる分リリィより詳しく分析できたミクだが、リリィもそんな答えは望んでいないに違いなかった。
>「わーん、怖いよ!!でもあれエンドウ君じゃないよ!良く見えなかったけど、きっと違うよ!
> どうする?入り口の方の人達と合流する?それとも、このまま先に進む?」
「そうですわねぇ……」
扉の中の怪物がかわいいと言う真に賛同すべきか否か考えながら、ミクはリリィに返事を返す。
「扉を開けすぎて、前門の虎と後門の狼に挟み撃ちを受けるのもどうかと思いますから。
まずは後から来た方と合流して…」
>「とりあえず僕も一つ扉を開けてみましょうか?」
またしても、ミクの提案は遅すぎた。
フリードが扉を開けた先では、子鬼の一家が仲良く暮らしていた。
>「何処にでも居るねゴブリン」(猫語)
>「一匹見つけたら30匹は居ますよね」
扉を閉めて何事もなかったように会話を続ける主従に、ミクは軽くめまいを覚えた。
深刻なつっこみ不足である。
>「私の愛の力で一発で勇気への道を当ててやるわ!」
真がさらに扉を開ける時は、もうミクは何も言わなかった。
止めても無駄だと悟ったからだ。
>「真っ暗やわ。一寸先は闇どころちゃうぐらい真っ暗やわ」
すぐの脅威はなさそうだと考えて、ミクも真の背後から扉の中をのぞき見た。
中は真っ暗で、先は見通せなかった。
その闇がうごめいたように思えて、ミクは違和感を感じる。
自分は何か大事な事を忘れているのではないかと、眉をひそめたとき。
何かに噛まれた真が叫んだ。
>「アイタッ!」
その声を聞いて、ミクは違和感の正体を理解する。
魔法ではない闇なら自分にも見通せるはずだし、そもそも本当の闇なら動くはずがないのだ!
>「ぶっ殺したる!!!」
逆上した真に糸を巻きつけたミクは、その糸を思い切り引っ張った。
同時に集まって闇のように見えていた蟻の群れが、雪崩のように一気に真の頭上に襲い掛かる。
「急いで糸の上にお乗りなさい!」
素早く頭上に蜘蛛糸で足場を組んだミクは、箒から足場の上に飛び移って他の者にそう呼びかける。
目で見えるほどには太い糸だが、一般人が足場にするには少々心もとないだろう。
だが、あまり糸を太くしすぎるわけにも行かなかった。
「少々足場が狭いのはごめんなさいましね。
あまり糸を太くすると、それだけ余計に蟻も登ってきますから」
足場に上がるのは自分達だけではない。
床や壁との接点から、糸を太くすればそれだけ早く多く蟻たちも足場に這い上がってくるのだ。
足場自体は十分の強度があり、入り口付近の糸から後続の侵入者も上る事ができるだろ。
それで満足してもらうほかはない。
「それにしても、数の暴力とはよく言ったものですわね。
他の扉を開いて数を減らす事にいたしましょうか」
蟻に埋め尽くされた床を見下ろしながらそう言って、ミクはまだ開けられていない扉に向けて糸を操る。
扉を開けて少しでも広間の中の蟻の量を減らそうとしているのだ。
「……どうやら、当りを引いたようですわね」
開いた扉の先が当たりかはずれかは、見る者によって意見が異なるだろう。
扉の先に見えていたのは外の光景。
つまり出口だったのだ。
まだ目的は達成できていないものの、非常出口または室内の蟻を減らすという視点では大当たりだ。
しかし、蟻たちはミクの思惑通りには動いてくれなかった。
出て行く蟻の数はごくわずかで、室内の蟻が大幅に減ることは無かったのだ。
それどころか蟻たちは外に通じる扉付近に群がり、盛り上がり、出口を塞ぎ始めたのだ。
まるで外には出られないようにと、誰かの意志が働いているように。
もし誰かが外から見たなら、蟻で出来た扉にさぞかし驚く事だろう。
「……虫けらの分際で随分と統率のとれた動きですこと。
どなたか、焼くなり凍らせるなりまとめて蹴散らしていただけると嬉しいですわ。
ここもいつまでも安全というわけにはいかないでしょうから」
蟻は小さくて数が多いので、点や線より面による攻撃が有効となる。
範囲攻撃はミクには苦手な分野なのだ。
"人"が"夢"を見ると書いて、儚い。
ルナ・チップルの頭にはそんな言葉が浮かんでいた。
あれからどのくらい森を彷徨ったのだろう。
黒のロングコートが重い。ベルトだらけのブーツも。
だけどこれを身に着けていないと、肌に棘が刺さったり、鋭い葉っぱで足が切れてしまう。
天を仰げば、鳶が雲に歌を聞かせている。
森は怖いところ、後悔先に立たず。そう思ったら自然と涙が零れ落ちた。
少し前までは学園であんなに皆と笑いあっていたのに、
こんな恐ろしいところになんかトリフィードを捕まえに来なければ良かった。
「うぅっ…ここはどこなの…?」
きょろきょろと周りを見回しても一人。ルナは迷子で一人ぼっち。
なぜなら彼女とその仲間達(>5で談笑していた人達)は株分けし増殖したであろう無数のトリフィードに襲われ、
散り散りバラバラになってしまっていたからだ。
しばらくしてルナはとても小さな声で歌い始める。
「……き、き、きのこ。き、き、きのこ。のこのこあるいたりしないー
のこのこあるいたりしないけど、銀のあめあめふったなら
背がのびて、くるるるる るるるるるー…」
これは学園でリリィたちと一緒に歌った「きのこのうた」という不思議な歌。
遠い東洋の子供たちが歌う「かごめかごめ」と同様、昔から子供に伝わる謎の歌。
「リリィさん…たすけて…」
学園での楽しかった思い出に再び溢れ出す涙。
涙でぼよぼよに変わる森の景色。
そのときだ。風に乗って微かにリリィの声が聞こえたような気がした。
ルナは声の方角に視線をむけると涙をハンカチで押さえ木々の間を凝視する。
なんと視線の先にはリリィたち。それも姿が一回り大きくなって見える。
いやそれは錯覚で、よく観察すれば、まわりの風景がミニサイズなのだ。
そう、彼女達が今いる場所は超巨大猫文明の遺跡。
目を凝らしてみると小さい生き物が高速で手を振っていて
それに連動するかのように遺跡の扉が開いていってる。
「たすけてぇー!リリィさーん!!」
叫んでも、扉の開くゴゴゴの音のせいで、リリィたちは気づいていない。
慌てたルナは、追いかけようと茂みに入って窪みに落ちる。
「わぁ〜ん!!」
泣きながら這い上がって遺跡の入り口へ駆けたけど、もう誰もいなかった。
ルナは恐る恐る遺跡に入る。その前にコンパクトミラーと化粧ポーチから
化粧道具一式を取り出してお色直し。
猫のように闇でも目が見えるようになる魔法のアイラインを引く。
「うん。いこ…」
深呼吸をして遺跡の中へ入ると開いた落とし穴。
「ふっ…こんなのに引っかかってるなんて、バカな人たち」
ルナは落とし穴に落ちないように通路の端っこの壁に背中をつけながら蟹歩き。
それも異様に早い。蟹歩きではなく蟹走りと言えた。黒のロングコートのせいかゴキブリにも見える。
そして滑ってこける。スライムの残骸を踏んでしまったらしい。
「あいたたた…」
起き上がると薄暗い闇の奥に明かりが見えた。それはリリィのカンテラだった。
(や、やっと追いついたみたい)
安堵したルナは明かりにむかって歩いてゆく。
そのときだ。心臓を破るかのような破壊音が後方で鳴り響いたかと思うと、
無数の声が遺跡内にこだました。
>「・・・!トリフィードです!!」
>「えっ、何?何なに?!今誰か、トリフィードって言わなかった?!」
>「どうやら、こちらを追いかけてきたようですわね」
破壊音と怒号にかき消されよく聞こえないが、入り口付近で何かあったのは間違いない。
「お、追いかけてきたッ!?」
ルナは走る。リリィのもとへ。
そして驚く。扉だらけの部屋に無数のクリーナーアントたちがいたからだ。
「きゃあぁ!!ありよ、あり!!いやー!きもちわるいっ!!」
>「急いで糸の上にお乗りなさい!」
ミクの言葉にルナは慌てて蜘蛛の巣によじ登る。
糸の上は細くて不安定。恐怖でルナがぶるぶると震えると蜘蛛の巣全体が揺れるくらい。
「や、やあ。リリィ。ひさしぶり。オレのこと、覚えてる?
まさか、大親友の名前を忘れたなんて言わせないぜ」
ルナはビジュアル系。臆病なのを隠している。
>62-67
>「アイタッ!」
>「ぶっ殺したる!!!」
蟻蟻蟻蟻蟻蟻蟻蟻蟻蟻蟻蟻蟻蟻蟻蟻蟻蟻蟻蟻
蟻蟻蟻蟻蟻蟻蟻蟻蟻蟻蟻蟻蟻蟻蟻蟻蟻蟻蟻蟻
蟻蟻蟻蟻蟻蟻蟻蟻蟻蟻蟻蟻蟻蟻蟻蟻蟻蟻蟻蟻
蟻蟻蟻蟻蟻蟻蟻蟻蟻蟻蟻蟻蟻蟻蟻蟻蟻蟻蟻蟻
蟻蟻蟻蟻蟻蟻蟻蟻蟻蟻蟻蟻蟻蟻蟻蟻(ry
真の開けた扉の向こうから数え切れないほどの蟻の群れが扉から現れる
「蟻が7で地面が3ですよどうするんですかこの状況!!」
「いいから蟻がこれ以上出て来ないように蟻の出て来た扉を閉めようよ!」(猫語)
>「急いで糸の上にお乗りなさい!」
そうミクに言われ急いで糸に乗るフリードとグレン
>「や、やあ。リリィ。ひさしぶり。オレのこと、覚えてる?
まさか、大親友の名前を忘れたなんて言わせないぜ」
「そんなこと言ってる場合じゃありません!このままでは蟻に食べられてしまいますよ!!」
「自分より小さくてもいっぱい居ると凶悪だね」(猫語)
「アドラスさんとの戦いとは逆の状況と言えますね」
>「少々足場が狭いのはごめんなさいましね。
あまり糸を太くすると、それだけ余計に蟻も登ってきますから」
「いえありがとうございます・・・・さてこの場合どう行動するのがベストでしょうか?」
フリードは考えたもし自分の姉だったら広範囲攻撃呪文で問答無用で吹っ飛ばすに違いない
ただし味方も纏めてである
強すぎる攻撃呪文は味方も巻き込んでしまうためこの狭い遺跡内では大変危険なのだ
攻撃呪文の巻き添えならまだ何とかなるが下手すれば遺跡自体が崩壊し生き埋めもありえる
>「それにしても、数の暴力とはよく言ったものですわね。
他の扉を開いて数を減らす事にいたしましょうか」
「ちょ!おま!また別の怪物が扉から出てきたらどうするんですかやだぁ!!」
最悪の災厄を創造するフリード
ここが想像が創造される場所でなくて本当によかった
「でも大丈夫みたいだよ?」(猫語)
とグレン
>「……どうやら、当りを引いたようですわね」
どうやら上手くいったようで扉の向こうには外の景色が広がっている
だがその開いた扉も蟻の群れが覆い隠していく
このままでは出口を塞がれてしまうだろう
「こうなったら(敵に氷の破片が突き刺さったビジュアルがグロいから)封印していた氷結散弾脚を使うほかありません」
「その技って僕らが居る糸まで切り裂かない?」(猫語)
氷結散弾脚:それは魔力で生み出した氷塊を蹴りによって粉砕し敵に向かって飛ばすと言う技である
基本的に敵味方判別なしの扇状に広がるMAP兵器のため射程内に味方が居ると使えない技なのだ
ちなみに元かある氷塊を利用する場合氷塊散弾脚となる
「足場の一番下ギリギリなら問題ありません!だって糸が繋がっているのは上なんですから!!」
フリードは目の前にサッカーボール状の氷塊を生み出しそれを蹴り砕く
「氷結散弾脚(フリージングショットキック)!!」
はたしてどれぐらいまで蟻を減らせるだろうか?
「こっちの扉に…うわぁぁぁ!!!!!」
「扉は不用意に開け…ぎゃあぁあぁああ!!!!!」
扉を開けた特務隊の隊員はキノコ人間の餌食に 開けてない隊員も急に開いた扉から伸びてきた得体の知れない巨大な腕によって奥へと引きずり込まれていく
開けるも地獄 開けぬも地獄 まさに八方塞がり 極めつけにはトリフィードが背後から追ってくる始末である
だが、まだまだ受難は続く 今度は蟻の大群がわらわらと這い出してきた まさに黒い絨毯と形容できるほど蟻で遺跡は覆い尽くされた
「総員!蟻に構うな走れ!!!」
少尉 以下残りの隊員達は必死に蟻の絨毯に包まれる事のないよう全力で走り続ける
「蟻が!蟻がぁぁぁぁぁぁ!!!!!」
「ぎゃあぁあ!!!助けてくださ!!!!!」
だが隊員は一人また一人と黒い塊になり地面へと転がっていく
万事休すと思われた矢先 頭上に糸が張り巡らせれていた 罠かと思われるが助かるには糸にしがみつく他、道は無かった
「糸に掴まれぇぇぇ!!!!!!」
少尉他生き残った数名の隊員達は命からがら蜘蛛の糸へとよじ登り、命を繋いだ
「何とか助かったか…しかし この糸は一体誰が…」
70 :
名無しになりきれ:2011/11/24(木) 22:15:01.90 0
兄貴ぃもう、ダメだ!
「ぶっ殺したる」そう思ったときすでに行動は完了している
ならず者の論理といえば言い方は悪いけど、生きるか死ぬかの瀬戸際は決断の早さで分かれる
そう考えると素晴らしい言葉だと思いませんか?
真が瞬時に極大爆裂呪文を詠唱しようと矢先に、体を糸で巻かれつり上げられる
ミクが張った糸の上にポスンと落とされる
「なにすんねや!!」
ミクがせっかく、助けてあげたのに真はぷんすかと怒ってる
しかし、でもしかし、真がなにやらざわつく床を覗き込むとそこにはびっしりと蟻、蟻、蟻
「なんやなんや!なんやあれは!!」
思わずなんやを連発してしまいました
>「蟻が7で地面が3ですよどうするんですかこの状況!!」
「蟻か!蟻なんか!そんなんありなんか!」
この状況でなんと、しょうもないことをいっているのでしょうか?
>「……虫けらの分際で随分と統率のとれた動きですこと。
どなたか、焼くなり凍らせるなりまとめて蹴散らしていただけると嬉しいですわ。
ここもいつまでも安全というわけにはいかないでしょうから」
「派手な攻撃と言えば私や!勇気をお仕置きするためにいろんな魔法が使えるんや!」
真はミクの糸で簀巻きにされていますが、器用にピョンピョン跳ねている
>「氷結散弾脚(フリージングショットキック)!!」
フリードの必殺技が炸裂します
結構な数の蟻が圧死しました
しょせんは蟻、簡単に潰せます
「その技カッコいいな!私に今度、教えてな!」
正直、真は今の状況をそれほど危険とは思ってはいません。なぜなら……
「蟻なんてかわいいもんや、私の魔法にかかればちょちょいのちょいや
だから早く私をこの糸から解放するんや!」
ぎゃあぎゃあ騒いでいます
真の生まれた地方ではこんな強力な蟻は見たことも聞いたこともありません
噛まれたらちょっと痛い程度です
だから、余裕綽々です
あと、下で騒いでる変な人たちがいます
「ついでにあいつらもぶっ飛ばしたらええんちゃう?」
>61-71
>「はずれですね」
他の扉を開けたフリードは、何事もなかったかのように扉を閉め、氷の剣でペケ印を扉につけた
>「何処にでも居るねゴブリン」(猫語)
>「一匹見つけたら30匹は居ますよね」
「ええええええ!!ゴゴゴ、ゴブリンっ?!30匹もいたの?嫌ー!!
ちょっとちょっとグレン、もしかしなくても、ここはモンスターのすくつじゃないの!!
巨大猫の遺跡なんだから、グレンが何とかしてよ!!」
リリィの言いがかりをさくっと無視して次の行動に移るフリードとグレン。
マコトはマコトで、リリィ、フリードに続いて扉を開けてしまった。
>「アイタッ!」
どこかに引っ掛けたのか、マコトが小さな悲鳴を上げた。
箒にまたがったミクは何も言わなかったが、多分苦虫を噛み潰したような顔をしているだろう。
後ろの方から来る人間と合流した後で、とミクは考えていたからだ。
何時だって割を食うのは、常識人である。
>「ぶっ殺したる!!!」
リリィが何か言う前に、マコトが開いた扉から「闇」があふれ出してきた。
否、正確には闇ではない。あれは
「きゃああああああっ!!闇が噴出して・・・・・・・マコトちゃん危ない!」
今まさに、黒い何かがマコトを飲み込もうとしたその瞬間、彼女の体が不自然に後ろへと飛んだ。
ミクだ。彼女がマコトを一本釣りよろしく吊り上げたのである。
>「少々足場が狭いのはごめんなさいましね。
> あまり糸を太くすると、それだけ余計に蟻も登ってきますから」
「ミクさんありがと、助かった!!」
>リリィは、ミクが飛び降りた箒を拾いまたがり浮き上がると、ミクが作った足場の高さまで浮き上がった。
「皆無事?しっかし、何なのあれは」
皆の話では、それは、危険なアリの一種らしい。
>「蟻が7で地面が3ですよどうするんですかこの状況!!」
「蟻か!蟻なんか!そんなんありなんか!」
>「それにしても、数の暴力とはよく言ったものですわね。
他の扉を開いて数を減らす事にいたしましょうか」
ミクがそう口にするやいなや、突然別の扉が開いた。
「……どうやら、当りを引いたようですわね」
「やったあ外だ!!これで、アリは外へ出て行くよ!
今ならトリフィードも居ないみたいだし、私達も外に出て・・・・・・うそっ?!」
アリの大多数は住まいの遺跡から出て行こうとはしなかった。
>それどころか蟻たちは外に通じる扉付近に群がり、盛り上がり、出口を塞ぎ始めたのだ。
「もしかして、私達を食べるために逃がさないようにしてるの?!」
>「……虫けらの分際で随分と統率のとれた動きですこと。
> どなたか、焼くなり凍らせるなりまとめて蹴散らしていただけると嬉しいですわ。
> ここもいつまでも安全というわけにはいかないでしょうから」
「わ、私は無理だよ?空を飛ぶくらいしか出来ないし、アリの扉に体当たりして血路を開くなんて無理だよ!
聖水とか虫除けの薬は一応準備したけど、この数じゃ焼け石に水だよ!!」
>「きゃあぁ!!ありよ、あり!!いやー!きもちわるいっ!!」
「えっ?!ねえ、そこに誰かいるの?!」
リリィはすこし警戒した。こんな所で、聞き覚えのある声がするとは思わなかったからだ。
以前友達のエンカに、森の中で遭遇した「幻覚を見せる植物」の話を思い出したから、かもしれない。
(ちなみにその植物は、エンカの知り合いの姿で言葉巧みに誘った挙句、彼を餌食にしようとしたらしい)
>「急いで糸の上にお乗りなさい!」
>ミクの言葉にルナは慌てて蜘蛛の巣によじ登る。
恐怖でルナがぶるぶると震えると、蜘蛛の巣全体が揺れはじめた。
それを見てリリィは、やっと彼女が幻覚ではなく実体なのだと分かって安心した。
>「や、やあ。リリィ。ひさしぶり。オレのこと、覚えてる?
>まさか、大親友の名前を忘れたなんて言わせないぜ」
「もちろん!ルナちゃん、久しぶり!
ここのところ全然姿を見なかったけど、どこかへ実習にでも行ってたの?
あっ、もしかして、ここの遺跡探索で篭ってたとか?」
カンテラの灯りは今別の方向を照らしているため、ルナの顔はぼんやりとしか見えない。
それでもリリィには、声と雰囲気で、彼女が入学当初よく世話になったルナだと分
かった。
ルナがここにいるのなら、他にも遺跡に入り込んだ者は他にもきっといるだろう。
>「そんなこと言ってる場合じゃありません!このままでは蟻に食べられてしまいますよ!!」
「はっ、そうだ!どどどどうしよう?
そ、そうだ!フリード君、氷の魔法でぶわーっと凍らせたり出来ないの?」
「フリードくん、やっちゃってください!アリどもをぶわーっと凍らせちゃって!
!」
リリィは知る由も無かったが、それはフリードではなく、彼の姉の得意技であり、味方殺しの魔法でもある。
「蟻が!蟻がぁぁぁぁぁぁ!!!!!」
「ぎゃあぁあ!!!助けてくださ!!!!!」
「あっ、また人が!ミクさん、あの人達も何とか助けてあげて!」
>「こうなったら(敵に氷の破片が突き刺さったビジュアルがグロいから)封印していた氷結散弾脚を使うほかありません」
「えっ、それは一体どんな技なの?」
>「その技って僕らが居る糸まで切り裂かない?」(猫語)
>「足場の一番下ギリギリなら問題ありません!だって糸が繋がっているのは上なんですから!!」
>「氷結散弾脚(フリージングショットキック)!!」
フリードが技を放つと、ミクが作った足場が盛大に揺れた。
先ほどのルナが起こした揺れなどと比べ物にならないそれは、ヘタをすると振り落とされてしまうだろう。
「うわーッ!!揺れてる揺れてる!グレンにルナちゃん、飛ばされないようちゃんと捕まって!!」
>「蟻なんてかわいいもんや、私の魔法にかかればちょちょいのちょいや
>だから早く私をこの糸から解放するんや!」
「焼き払ってくれるのはいいけど、天井を壊したり私達まで焦がしたりしないでよ!
蜘蛛の糸を燃やしたら足場がなくなっちゃうんだからね!死んだらエンドウ君にあえないんだから!」
ミクがいいと判断すれば、マコトは開放されるだろう。
だが今度下手を打てば、一同全滅である。ミスは許されない現状で、ミクがどう判断するかは不透明だ。
「ルナちゃん、あなたの魔法で、『蟻が詰まってる』場所を吹っ飛ばせない?
ほら、あの扉状態になってしまった蟻の集団とか」
怯えるルナに、リリィは無茶な事を言った。
一方、先ほど突然現れた大人達は、ミクの蜘蛛の糸へとよじ登り、命を繋いでいた。
>「何とか助かったか…しかし この糸は一体誰が…」
「大丈夫ですか?危なかったですね」
リリィは高度を下げると、糸をのぼって来た隊員たちにカンテラを移動させた。
そしてカバンの中から虫除けの薬が入った瓶を開くと、えいとばかりに皆へ振りまく。
「もしかして、遺跡を探索していた人ですか?あっ、もしかして、トリフィードがどうとか叫んでたのって・・・・・・」
>「兄貴ぃもう、ダメだ! 」
リリィはきっとなった。
「ダメじゃないです!
ミクさんの糸はすごく丈夫だから、ちょっとやそっとじゃ切れたりしません!」
>「ついでにあいつもぶっ飛ばしたらええんちゃう?」
「こらー!マコトちゃん聞こえてるよ!っていうか何て事言うのよ、ミクさんがせっかく助けた人達なのに!!」
そう、ミクが嫌なら彼らは蜘蛛の糸を登るどころか、触る事すら許されない。
彼らが糸に救われたということは、ミクが生存を許したという事に他ならないのだ。
「私はリリィ。学園の生徒です。
マコトちゃん・・・・・彼女はああ言ってはいますが、危害を加える気は無いので安心してください」
リリィは隊員達を見て、ちょっと困った顔になった。
「えっと・・・・・あの、もしかして、学園の警備員の方・・・・・・とかですか?
さっきトリフィードがどうとか叫んでいたのは、あなた方とは別の人達ですか?
状況が全然分からないのですが、教えていただけますか?」
そう言いながらも、リリィの目は蟻達に釘付けだ。
フリードの魔法で半分以上は退けられたが、まだ数が残っている。
(数が減った今のうちに、ここから逃げる?それとも・・・・・・・)
「ね、ねえ!フリード君が空けたあのゴブリンのいる部屋、あそこに一度逃げ込むっていうのはどう?
だって家族で住んでいるってことは、あそこには過去アリが近寄らなかったってことでしょう?
何か来ないだけの理由があるのかも!!」
追い詰められたリリィは、焦ってとうとう馬鹿なことを口走り始めた。
そう。リリィは箒で空を飛べるので、アリが居る床を歩く必要は無い。
だが、他の人間はそうは行かないだろう。
誰かが蟻を何とかするか、この場から移動するいい方法を考えつかない限り、
彼らはこの場に足止めを食らう事になる。
そして、何も脅威は、足元だけとは限らないのだ。
>69-74
>「ええええええ!!ゴゴゴ、ゴブリンっ?!30匹もいたの?嫌ー!!
ちょっとちょっとグレン、もしかしなくても、ここはモンスターのすくつじゃないの!!
巨大猫の遺跡なんだから、グレンが何とかしてよ!!」
だがそんなこといわれようがどうにもならないだろう
所詮はちょっと二本足で立てて人間語を理解できる・・・・・・・ぜんぜん所詮じゃない気がしてきたが猫である
>「その技カッコいいな!私に今度、教えてな!」
「足首を骨折する覚悟はありますか?だったら教えて差し上げてもいいですよ」
と少々大げさに言うフリード
「そう簡単に覚悟とか言っちゃ駄目だよ言葉が安くなる」(猫語)
そんなどうでもいい突っ込みをするグレン
さんざん殺す覚悟という言葉を否定してきたフリードが覚悟とか言っちゃうのはどうなのだろうか?
「いいんですよ実際僕もこれを習得する為の特訓で骨折しましたから
やはりいきなり岩を蹴砕こうなんて無茶だったんです」
最初は岩で試したらしいフリードリッヒ
元ネタでも壷なのにいきなり岩じゃそりゃ骨折するわ
ちなみにフリードの父親は箪笥の角に足の小指をぶつけて
箪笥のほうが抉れたという逸話の持ち主である
まあどうでもいいのだが
>「ついでにあいつらもぶっ飛ばしたらええんちゃう?」
たぶん彼らは味方だろうと思われるが・・・・
>「こらー!マコトちゃん聞こえてるよ!っていうか何て事言うのよ、ミクさんがせっかく助けた人達なのに!!」
>「うわーッ!!揺れてる揺れてる!グレンにルナちゃん、飛ばされないようちゃんと捕まって!!」
言われたとおりにしっかりと捕まるグレン
「なんだかべとべとするよ」(猫語)
まあ蜘蛛の巣だからね
>「ね、ねえ!フリード君が空けたあのゴブリンのいる部屋、あそこに一度逃げ込むっていうのはどう?
だって家族で住んでいるってことは、あそこには過去アリが近寄らなかったってことでしょう?
何か来ないだけの理由があるのかも!!」
「逃げ込むのはいいですけど受け入れてもらえますかねえ?」
だがフリードリッヒは乗り気ではないようである
「邪魔なゴブリンなんか殲滅すればいいじゃない」(猫語)
とまさに外道な事を言い始めるグレン
お前神官の息子だろうが
「それじゃあ僕たちがワルモンじゃないですかぁやだぁ!!」
フリードリッヒは心底ゴブリンが嫌いである
普段の言動からしてゴブリンとコボルト以外は差別しない
つまりゴブリンとコボルとは差別すると言い切っているぐらいだ
だがそれでも何も悪い事をしていないゴブリンをこちらの都合で一方的に殲滅し
住処を奪うという行動はとても出来なかった
「よし!最後の手段です!!」
「フィー坊の最後の手段は108まであるよ」(猫語)
それは全然最後の手段ではない
「助けて!ねえさぁぁぁぁぁぁん!!これで5ターンぐらい後で姉さんが増援に来てくれるはずです」
ターンってなにさ
「五分も持つのこの状況?」(猫語)
「さあどうだか?」
>「助けて!ねえさぁぁぁぁぁぁん!!
フリードの叫びに呼応するかのように、広間の中心の空中に突如として黒い炎が巻き起こる。
さすがに早すぎるし、何よりも黒い炎は氷の女王とはかけ離れすぎているので、呼応したわけでないことは誰にでもわかるだろう。
それは広間の空気を震わせる微振動を伴い徐々に広がり、やがて一つの形を成していく。
知識か経験のあるものはそれが何かわかるかもしれない。
この振動は時空震であり、炎が幾何学的な広がりを見せるのは転移魔方陣を形成しつつあるのだ。
しかも黒い炎からは禍々しい気配を感じるはずだ。
そして直感する。
これは通常の転移魔法ではなく、異界からの…おそらくは(そしてその予感は正しいのだが)魔界からの門が開こうとしているのだ、と。
瞬く間に黒い炎は積層型魔方陣を形作り、その中心に黒い球体が顕れる。
ゲートの出現である。
それとともに急速に黒い炎の魔方陣は色と存在感を失っていき、ゲートは透明度を増していく。
そこから現れた者は…
灰色の短い髪を上げるカチューシャが光る。
細身の体とは対照的に巨大な、いやもはやアンバランスですらある大きな胸。
それを強調するかのようなチューブトップ。
下は手袋が大量につなぎ合わされたようなロングスカート。
腰のあたりからは僅かに離れ、黒い光の翼が噴き出ているかのようだ。
更に腰に抜き身でぶら下げられているのは水晶でできたシャムール。
細く歪曲したその刀は美しいが、それが振るわれた時、刀身を目で追うのはほぼ不可能であるという凶悪さも醸し出している。
しかしそれらの特徴はこれに比べればほんの些細なことでしかない、と洞察力が鋭いものや、よく目を凝らしたものは気づくだろう。
顕れた人らしきものには、あるべきところの顔だけでなく、額、胸元、両手の甲、項、背中の計七つの顔がついているのだから!
明らかに人間ではないゲートから現れたソレは、艶美な魅力を漂わせながら第一声を発した。
「フィジルのみなさーん!初めてお目にかかりゃーす。
魔界からの留学生、ササミ・テバサコーチンだで、よろしゅうたのんますなも…てっ!!??
ほぎゃあああ!地獄絵図うぅ!??」
高らかな自己紹介を終えた瞬間、同じ口から悲鳴にも似た驚きの声が発せられた。
ササミは七つの顔の視覚や聴覚を共有している。
そして正体は魔界の怪鳥であり、空中を生活の場としているために、三次元的な空間認識力が発達している。
故にササミの視界は前後左右天地のほぼ360度をカバーし、目の良さは折り紙つきだ。
だからこそ、地下広間の状況が文字通り一望できてしまったのだ。
蜘蛛の糸に捕まるフリードたち、床を埋め尽くすクリーナーアントの群れと潰れた一角。
何よりも…普通ならばただの黒い塊にしか見えなかっただろう。
その方が幸せだったはずだ。
しかしその視力の良さ故に見えてしまったのだ。
全身クリーンアントにたかられ生きたまま貪り食われる隊員たちの姿を。
「ひぃいいい!なにこれっ!?おそがっ!*」
事情は分からなくとも状況はわかる。
全身に鳥肌を立てながらも宙を走り、うずくまる隊員たちに石化ガスを吹きかけていった。
この状況で助ける事は不可能。
ならばクリーナーアントごと石にしてしまえばこれ以上貪られることはないだろう。
その後、広間中央に舞い戻ると、七つの口が大きく開かれる。
「なんや知りゃせんけど、耳鳴りくらいは許してちょでーよ!」
その言葉の後、何の声も発しられなかったが、何かが発せられたことは誰もが知ることになるだろう。
七つの口から発せられたのは可聴域を遥かに超えた怪音波。
広間中に響き渡る怪音波は耳鳴りを引き起こし、聴覚や感覚の鋭いものには眩暈や吐き気を引き起こすことになるだろう。
人間大の生き物でこの影響であり、体長5センチほどで、神経節で活動する虫類であるクリーナーアントには更に大きな影響を与える。
床埋め尽くすクリーンアントの群れがもがく様に蠢く。
その中の小さな変化をササミは見逃さない。
腰の枝分刀を抜くと、滑るように宙を駆ける。
途中、枝分刀を持つ手の甲についた顔の口がパクパクと動き、それに連動するように水晶の刀身の輪郭がぶれた。
水晶の刀身が怪音波と共鳴することで刃は超振動を起こし、鉄をも泥のように切り裂く切れ味を得る!
ササミが宙を駆け抜けた後、クリーンアントで埋め尽くされた床に一筋の切れ目ができていた。
怪音波で全体攻撃を受けたクリーンアントの女王は自分を守る為に衛兵蟻を周囲に呼び寄せ守りを固めようとする。
その動きを見逃さず、ササミは女王の居場所を察知し両断したのだ。
「みんな今のうちだなも!
女王を失ったクリーンアントは混乱してるでよ、新しい女王が選定される前に逃げるぎゃ!」
その言葉通り、クリーンアントの動きは先ほどとは変わり、統一性を欠いている。
外へ通じる扉を埋め尽くしてたクリーンアントの壁も崩れ始めていた。
*おそがい=怖い
【ゲートから出現】
【蟻にたかられる隊員たちを石化】
【怪音波を発し、女王蟻を両断】
>66-77
>「わ、私は無理だよ?空を飛ぶくらいしか出来ないし、アリの扉に体当たりして血路を開くなんて無理だよ!
> 聖水とか虫除けの薬は一応準備したけど、この数じゃ焼け石に水だよ!!」
「そうですわよねぇ……」
状況が状況だけに、決定打が打てる人間はどうしても限られる。
対策を思いつかないでもないミクだが、幾つか考えた方法は最善の手とは言い難かった。
なんとか出来るのなら、なんとかしてもらうに越した事はない。
>「や、やあ。リリィ。ひさしぶり。オレのこと、覚えてる?
>まさか、大親友の名前を忘れたなんて言わせないぜ」
>「もちろん!ルナちゃん、久しぶり!
> ここのところ全然姿を見なかったけど、どこかへ実習にでも行ってたの?
> あっ、もしかして、ここの遺跡探索で篭ってたとか?」
「ああ、確か、ルナさんでしたわね。
こうやってお話するのは始めてかしら。
私は初音美紅と申しますわ。
以後お見知りおきを」
リリィと違って暗闇も見通せるミクだが、ルナの顔も名前も覚えていなかった。
面倒だからと、なんだかんだ理由をつけては授業をさぼりがちだったのだから仕方がない。
リリィが彼女の名前を呼んでくれたのは好都合というものだ。
>「そんなこと言ってる場合じゃありません!このままでは蟻に食べられてしまいますよ!!」
>「派手な攻撃と言えば私や!勇気をお仕置きするためにいろんな魔法が使えるんや!」
「お仕置きも結構ですけれど、お二人だけになられてからゆっくり仕置きなさいな。
こちらにまでお仕置きが暴走されては、たまりませんもの」
ぴょんぴょんと芋虫のような格好で飛び跳ねる真に、ミクは釘を刺す。
暴走魔法の巻き添えなど、何度も体験したいものではない。
>「蟻が!蟻がぁぁぁぁぁぁ!!!!!」
>「ぎゃあぁあ!!!助けてくださ!!!!!」
>「あっ、また人が!ミクさん、あの人達も何とか助けてあげて!」
「……少々手遅れのような気もいたしますけれど、やってはみますわね」
群がる蟻から助けるには、糸では無理がある。
少し考えてから、ミクは糸を蟻に襲われる者たちの近くにたらす事にした。
自分で捕まるだけの力があれば助かるだろうし、無理なら手遅れだろうから。
現に、何人かの者は自力で糸によじ登ろうとしているのだから。
>「こうなったら(敵に氷の破片が突き刺さったビジュアルがグロいから)封印していた氷結散弾脚を使うほかありません」
フリードの魔法(物理攻撃のような気もするが)は、少なからぬ量の蟻を減らし、ついでに網全体を大きく揺らした。
結果、人はともかく、網に登ってきていた蟻の多くを振り落とす事にも成功する。
>「蟻なんてかわいいもんや、私の魔法にかかればちょちょいのちょいや
>だから早く私をこの糸から解放するんや!」
>「焼き払ってくれるのはいいけど、天井を壊したり私達まで焦がしたりしないでよ!
> 蜘蛛の糸を燃やしたら足場がなくなっちゃうんだからね!死んだらエンドウ君にあえないんだから!」
「…背に腹は変えられないとは、良く言ったものですこと。
開放してあげるのはよろしいですけれど、くれぐれも魔法の暴走には注意してくださいましね」
先ほどからの言動から、真を糸から開放するのは不安だったが仕方がない。
ミクの言葉と共に、真を縛っていた蜘蛛糸が解け消える。
真は自由になったのだ。
>「何とか助かったか…しかし この糸は一体誰が…」
>「大丈夫ですか?危なかったですね」
「先ほどから援護してくださっていた皆さんですわね?
私は初音美紅と申します。 以後お見知りおきを。
蟻に襲われたお仲間の近くに糸を垂らしていますから、救出をお考えならいつでもご自由に。
必要ならもう少し本数を増やして差し上げますから」
糸を這い上がってきた男達に近づくリリィと違い、ミクは巣の中心から動かずに声をかける。
その内容を聞けば、この蜘蛛の巣はミクが張ったものだと誰もが気づくだろう。
>「助けて!ねえさぁぁぁぁぁぁん!!これで5ターンぐらい後で姉さんが増援に来てくれるはずです」
ゴブリンの巣穴に逃げ込むというリリィの提案に消極的なフリードは、大声で姉に呼びかける。
5ターンがどれくらいの時間なのかミクにはわからなかったが、ともかく増援は期待できそうにないと思えた。
声が届く範囲にいればとうに助けに来ているだろうし、聞こえなければ助けにもこれないではないか。
が、確かに反応らしきものはあったのだ。
広間の中心に広がる黒い焔と、異界との接点の出現。
そして、常とは異なるその現象の後に登場した、自称魔界からの留学生が。
>「フィジルのみなさーん!初めてお目にかかりゃーす。
>魔界からの留学生、ササミ・テバサコーチンだで、よろしゅうたのんますなも…てっ!!??
>ほぎゃあああ!地獄絵図うぅ!??」
「随分とけたたましいお姉様の御登場ですこと。
フリードは魔界出身でしたのね。 私、存じ上げませんでしたわ」
姉ではないのは分かるが冗談めかしてそう言ってから、ミクは乱入者を観察する。
七つの顔を持つその姿からして、魔界から来たという言葉に間違いはないだろう。
だが、魔界から来たにしては、この程度の事に悲鳴をあげるのがミクには意外であった。
鶏の肝は小さいと聞くが、あの女の胆力も鶏並なのだろうか。
>「ひぃいいい!なにこれっ!?おそがっ!*」
鶏女の方は、空を飛びながら蟻に襲われる隊員たちを吐息で石に変えていく。
網に使っている糸はある程度太くしているが、それでも糸を避けながら飛び回るのは簡単ではないはずだ。
石の吐息と共に、その能力も覚えておかなければとミクは思った。
いつ何時誰が敵に回るかもしれないのだ。
情報は多いに限る。
>「なんや知りゃせんけど、耳鳴りくらいは許してちょでーよ!」
広間の中心に舞い戻ったササミに、なにをするつもりかとミクはいぶかしむ。
そして、何をしたのか感じ取る前に、怪音波の影響をまともに受ける事になってしまったのだ。
「…………っっ!!!」
ただでさえ感覚が鋭いところに、蜘蛛糸を伝わる振動までまともに、構える暇もなく受けてしまったのだ。
耳鳴りどころの影響ではない。
反射的に手で両耳を押さえるがそんな事でどうにかなるはずもなく、ミクは網から真っ逆様に落ちる。
それでも、ミクは意識だけは失わなかった。
落ちる途中、なんとかリリィに糸を結びつける事に成功したのだ。
いきなり落ちてきたミクを受け止めさせられたリリィには災難だろうが、それでも下には落ちずに済んだのだ。
「あの…鶏女……! よくも……!」
身体の自由が完全に戻らない中でも、ミクは怒りに満ちた目でササミの姿を探し求める。
身体の自由が戻り次第即座に報復するつもりなのだ。
>68-79
>「もちろん!ルナちゃん、久しぶり!
ここのところ全然姿を見なかったけど、どこかへ実習にでも行ってたの?
あっ、もしかして、ここの遺跡探索で篭ってたとか?」
「ふぇ?篭ってた!?(毎日元気いっぱい登校してたんですけど!私の存在感はどこ!?)
えっと、…じ、実習!そう、実習に行ってたんだけどトリフィードの噂を聞いて帰って来たんだ。
ちょちょいと退治しちゃおって思ってさ。
そしたら遺跡に入るリリィたちを見つけてね。危ないなって思って助けにきたってわけ…だぜ」
見栄っ張りのヴィジュアル系もどきのルナの言葉には嘘が混じっている。
>「ああ、確か、ルナさんでしたわね。
こうやってお話するのは始めてかしら。
私は初音美紅と申しますわ。
以後お見知りおきを」
「ふっ…こちらこそ。オレの名前はルナ・チップル。
蜘蛛に捕まった蝶のように、神に罪の血を捧げたい」
>「そんなこと言ってる場合じゃありません!このままでは蟻に食べられてしまいますよ!!」
「くすっ…、いくらなんでも蟻が人間なんて……」
>「蟻が!蟻がぁぁぁぁぁぁ!!!!!」
>「ぎゃあぁあ!!!助けてくださ!!!!!」
「……ひぅ!んん〜!!!!!」
ルナは蟻に食べられる隊員たちを見て、目と口を真一文字にして叫ぶのを堪える。
(×)みたいな顔になってる。
>「氷結散弾脚(フリージングショットキック)!!」
>フリードが技を放つと、ミクが作った足場が盛大に揺れた。
>「うわーッ!!揺れてる揺れてる!グレンにルナちゃん、飛ばされないようちゃんと捕まって!!」
「うんわかったわ!わかったリリィ!」
>「蟻なんてかわいいもんや、私の魔法にかかればちょちょいのちょいや
>だから早く私をこの糸から解放するんや!」
「えっ!?」
声のほうを見たら真がミクの糸に縛られていた。
事情はわからなくても状況はわかる。みたまま芋虫。
「……(こわい。なんなのぉこの状況ぉ……)」
>「…背に腹は変えられないとは、良く言ったものですこと。
開放してあげるのはよろしいですけれど、くれぐれも魔法の暴走には注意してくださいましね」
そして真は糸を解かれ自由になる。もしかして悪い子?と思うと、ルナの恐怖は更に膨らんでいく。
>「ルナちゃん、あなたの魔法で、『蟻が詰まってる』場所を吹っ飛ばせない?
ほら、あの扉状態になってしまった蟻の集団とか」
「え?え?う、うん!ま、まかせて。よ〜し!まかせろぉー!」
慌てて懐からタクトと紙を取り出すと呪文の詠唱。
>「フィジルのみなさーん!初めてお目にかかりゃーす。
>魔界からの留学生、ササミ・テバサコーチンだで、よろしゅうたのんますなも…てっ!!??
>ほぎゃあああ!地獄絵図うぅ!??」
「……っっ!!!」
突然現われたササミ・テバサコーチン。耳がキーンとしたかと思うと落ちるミク。
リリィに糸を結んで落ちずには済んだみたいだけどなんか凄いことになってきた。
ルナは気を取り直して詠唱を再開するつもりだったけど部屋の入り口を見て腰を抜かしそうになる。
最悪なことに部屋の入り口からトリフィードが一匹飛び出してきたのだ。
株分けされた子か親かはわからなかったが戦っていた隊員たちがここにいるということは
トリフィードも何時ここへ入って来てもおかしくはない。
「あわわわ…!!ワディワジーっ!!!」
涙目になりながらも得意魔法の『逆詰め』を使えば
蟻の扉が崩れて、キャシャアと口を開いたトリフィードの胃袋に詰まっていく。
「やったあ!!!外へ出れる!!みんな逃げよう!!」
蟻を詰められてパンパンに膨れたトリフィードは動かなくなっていた。
【外への扉を塞いでいた蟻をトリフィードに詰めて扉を開く】
>76-81
「姉さ・・・・・誰?」
だが現れたのは姉ではなかった
「誰でもいいから助けてよ」(猫語)
>「フィジルのみなさーん!初めてお目にかかりゃーす。
魔界からの留学生、ササミ・テバサコーチンだで、よろしゅうたのんますなも…てっ!!??
ほぎゃあああ!地獄絵図うぅ!??」
「はっはーこんな情景ロスじゃ日常茶飯事ですよ♪」
ちなみにこの場合のロスとはロストワールド
恐竜と原始人の同居するリアルに考えるとありえないファンタジーならではの失われた世界
の略であり某国家の都市とは全く関係ありません
「死ぬとか生きるとか最初に言い始めたのは誰なのかしらっていう状況なのに余裕だねフィー坊」(猫語)
「それはハムレッドでしょ?ブルー以下が居るかどうかはしりませんが」
フリードがくだらない冗談を言うのは冗談でも言ってないと心が参ってしまうからである
>「随分とけたたましいお姉様の御登場ですこと。
フリードは魔界出身でしたのね。 私、存じ上げませんでしたわ」
「なんでですか!僕は腕が六本あったり魔界のプリンスだったりしませんよ」
「カーッカッカッカッカ!そういえばあの人も初期は蜘蛛の化身だったね」(猫語)
なぜお前がそんなことを知っている
「まあ姉さんじゃなくてある意味安心です
姉さんだったら今頃みんな吹っ飛んでますし」
じゃあ何故呼んだし
「ひぃいいい!なにこれっ!?おそがっ!*」
あまりのグロさに鳥肌を立てるササミ
「グロイザーじゃなかったグロいよねこれ(猫語)
とグレン
>「なんや知りゃせんけど、耳鳴りくらいは許してちょでーよ!」
と超音波を発っするササミ
「び、美形キャラが吐くわけにはいきません・・・・でも気持ち悪いです」
>「みんな今のうちだなも!
女王を失ったクリーンアントは混乱してるでよ、新しい女王が選定される前に逃げるぎゃ!」
「ええとフォアグラさんでしたっけ助かりました」
「違うよターキーさんだよ」(猫語)
ふたりとも間違ってるぞ
>「やったあ!!!外へ出れる!!みんな逃げよう!!」
ルナの魔法によりアリは別の場所に移動させられたようだ
「では先に進みましょうか僕らには炎道さんを救い出すという目的がありますからね
こんな所でグズグズしている暇はありません」
「そうだね胸のエンジンに火を付けないとね」(猫語)
はたして扉の向こうには何が広がっているのか?
本当にそこは炎道の見る場所に繋がっているのか?
それはまだわからない
5分後
「私参上ですわ満を持して!」
だが誰もいなかった
「あら?確かにフリードちゃんの声が聞こえたような・・・・・
気のせいでしたかしらね?」
とふと周りを見渡すと・・・・・
「妙にリアルな石像ですわねぇ・・・・・リアルな石像!?
大変ですわこの近くにゴーゴンかバジリスクかメデゥーサが居るってことですわ!!」
いいえササミさん(味方)です
「早く先生方に知らせなくては!!」
そう言ってダッシュで学園に戻るフリージアさん
フリージアさんのザ・勘違いにより古代猫文の遺跡には凶暴な石化生物がいるという新しい噂が増えたようです
>「焼き払ってくれるのはいいけど、天井を壊したり私達まで焦がしたりしないでよ!
蜘蛛の糸を燃やしたら足場がなくなっちゃうんだからね!死んだらエンドウ君にあえないんだから!」
>「…背に腹は変えられないとは、良く言ったものですこと。
開放してあげるのはよろしいですけれど、くれぐれも魔法の暴走には注意してくださいましね」
「やったー!解放されたで!無敵や!ひゃっはぁぁ!」
世紀末救世主伝説の雑魚的な喜びの声を年頃の少女が叫んでいるのは大丈夫なのでしょうか
>「フィジルのみなさーん!初めてお目にかかりゃーす。
魔界からの留学生、ササミ・テバサコーチンだで、よろしゅうたのんますなも…てっ!!??
ほぎゃあああ!地獄絵図うぅ!??」
「次はこいちゅを殺ればいいんか!」
噛んだのはご愛嬌
見敵必殺が家訓なんでしょうか、この子は好戦的過ぎます
ササミの超音波が耳に響きます
「うっさいねん!やっぱりぶっ殺す!」
そうこうしていると見ず知らずの人間(ルナ)が蟻をどこかにやったので溜めてた魔力が暴走しそうです
いつ溜めてたかって?縛られてる間ぐらいから
「ぶっ殺す」って言ったぐらいから
「あかん、出さなアカン、爆発する」
切羽詰まった顔で皆に告げる
「というわけで、極大爆裂呪文的なやつ!!」
ミクやリリィがあとで怒るかもしれないから、謎の兵隊達に使うのはやめて、特に意味なく床にぶっ放しました
びっくりするぐらいの大爆発です
よほど溜め込んでいたのでしょう
床に大穴が空きました
「なんや、階段があんで、これが正解なんちゃう?なんとなくやけど?」
床の大穴があくと同時にそこから巨大な猫の手が出てきた!
半透明の猫の手は一度、招くようなしぐさをして消えていった。
それを見た者には不可視の力が働く。
強力な引力とそれ以上に抗えぬ誘惑によって穴へと招かれる、かもしれない。
86 :
名無しになりきれ:2011/12/06(火) 08:58:17.31 0
もけーれべむべむ
モケーレ・ムベンベとは体の大きさはカバとゾウの間ぐらい、体長は5〜10mで、ヘビのように長い首と尾を持ち、4本脚で、直径30cm以上の丸い足跡には3本の爪跡があるとされる
草食動物なので無害
>75-87 ゴブリンのお宅に逃げ込もうという提案は、フリードにやんわり拒否された。
少なくとも今のところ、何の落ち度もないゴブリンを追い出したり退治したりすることは、フリードの美学に反するようだ。
>「助けて!ねえさぁぁぁぁぁぁん!!これで5ターンぐらい後で姉さんが増援に来てくれるはずです」
「えっ!ねえさん?今ここにいらしてるの?どこどこ?ところで五ターンってどのくらいの時間?」
>フリードの叫びに呼応するかのように、広間の中心の空中に突如として黒い炎が巻き起こる。
さすがに早すぎるし、何よりも黒い炎は氷の女王とはかけ離れすぎている。
普通は呼応したわけでないことは誰にでもわかる・・・・・・はずなのだが
>「フィジルのみなさーん!初めてお目にかかりゃーす。
>魔界からの留学生、ササミ・テバサコーチンだで、よろしゅうたのんますなも…てっ!!??
>ほぎゃあああ!地獄絵図うぅ!??」
>「随分とけたたましいお姉様の御登場ですこと。
> フリードは魔界出身でしたのね。 私、存じ上げませんでしたわ」
「そうだったの?ごめん、私田舎者だから、ジルベリアが魔界だなんてぜんぜん知らなくて。
あ、そっか!だからジルべりアの人は、みんな超人ばっかりなんだね!
ところであのササミさんは、何番目のお姉さんなの?って・・・・・・うそ・・・すごく・・・・・・おおきいです」
主に胸が。
>「なんでですか!僕は腕が六本あったり魔界のプリンスだったりしませんよ」
「カーッカッカッカッカ!そういえばあの人も初期は蜘蛛の化身だったね」(猫語)
動物で勘の鋭いグレンは、気づいているのかいないのか。
蜘蛛の化身はフリードではなく、行きがかり上、糸で皆の窮地を救ったミクの方であると。
>「ひぃいいい!なにこれっ!?おそがっ!*」
鶏女の方は、空を飛びながら蟻に襲われる隊員たちを吐息で石に変えていく。
「えええええええ!!人が石に!石に変わってるぅううぅぅぅ!!」
だが落ち着いて考えれば、リリィにも分かるだろう。
蟻に襲われている隊員は石化状態になった方が、危険が少ないことに。
>「なんや知りゃせんけど、耳鳴りくらいは許してちょでーよ!」
「わ・・・・・・うわあああっ?!」
そう叫んだ後、突如上の蜘蛛の巣からミクが転げ落ちてきた。
隊員達がいる位置まで下降していたリリィは、体ごとぶつかるような形で何とかミクを受け止める。
「だ、大丈夫?ミクさん」
>「あの…鶏女……! よくも……!」
「え?ササミさんに何かされたの?!でもあの人、何もしてないじゃない?
ミ、ミクさん?な、何をそんなに・・・・・・おおお、お怒りなのでせうか?」
リリィはぐったりしたミクを箒の前に乗せ支えると、ふらふらと上昇する。
なんだかミクは足をやけどしたり失神寸前になったりと、今回は受難続きのようだ。
「なんかよく分からないけれど、助けてくれたみたいだし、喧嘩はだめだよ?」
リリィはもう一度ササミの方を見て
「魔界の人って、下着つけてないのかな?めちゃくちゃ揺れてるんだけど・・・・・・」
リリィが目を凝らすと、ササミの体のあちこちには、顔のようなものが見えた。
(刺青か何かかな?変わってるかも)
まさかそれが刺青ではなく顔だとは、この時のリリィが知る由もなかった。
「お洋服といい、刺青といい、変わった人かも・・・・・・」
ミクの受けたダメージなど知る由もないササミは、女王蟻を倒し皆に呼びかけている。
>「みんな今のうちだなも!
>女王を失ったクリーンアントは混乱してるでよ、新しい女王が選定される前に逃げるぎゃ!」
「よし!逃げよう!」
「ええとフォアグラさんでしたっけ助かりました」
「違うよターキーさんだよ」(猫語)
「ササミさんって言ってたよ!ありがとうササミさん、助かりました!」
そこに現れたのは、新たな脅威、トリフィードだ。
慌てふためくだけのリリィと違い、ルナはあわてながらも冷静だった。
>「あわわわ…!!ワディワジーっ!!!」
ルナが得意魔法の『逆詰め』を使えば、蟻がトリフィードの口の中にどんどん詰まっていく。
「キャー!すごいよ蟻でふさがれてた扉が消えたよ!
しかもトリフィードまで動けなくするなんて、さっすがルナちゃん!!」
>「やったあ!!!外へ出れる!!みんな逃げよう!!」
「うん!」
ルナの声に応じ、ミクごと遺跡の外へ脱出を図ろうとしたリリィだったが、
>「では先に進みましょうか僕らには炎道さんを救い出すという目的がありますからね
>
>
> こんな所でグズグズしている暇はありません」
という、冷静なフリードの声にはっと我に返った。
そして、「だめだめ」と言わんばかりに首を左右に振る。
「そうだね胸のエンジンに火を付けないとね」(猫語)
そういってミクごと外に出ようとしたリリィだったが、途中で動きを止め、「だめだめ」と首を振った。
「あのねルナちゃん、あんまりびっくりして忘れてたけど、実は私達、神隠しにあった新入生総代を探してるの。
「エンドウユウキ」って名前なんだけど、知ってる?。
どうやら彼、ここにいるみたいだし、こんな危険な昆虫や植物がうじゃうじゃいる遺跡に放っておけないよ。
ルナちゃん、私達、彼を探し出すまで帰れないのー・・・・・・って、あれ?!」
出口から漏れてきた光に照らされたルナを見て、リリィは明らかに動揺している。
「?!あれれれれっっ??
すすすすみません、私、人違いしてましたです!
わわわわたし、ちょっと友達と間違えて話しかけただけなので、怒らないでください!!
あれっ?ルナちゃんはどこ?どこに消えちゃったの?今までここにいたはずなのに!
ルナちゃーん、ルナちゃーん!!どこ行っちゃったの?もう外に出ちゃったの?!
トリフィードもこれ一体とは限らないし、一人歩きは危ないよー!!」
もしも目の前の怖い女の子=ルナだと知ったら、リリィは激しく驚き、「どうしてそんな姿に?!」と聞くだろう。
そしてルナの返答がどうであれ「きっと失恋でもしたんだ」と思い込み、深く追求はしないはずだ。
「ところでグレン、『むねのえんじん』って何?カンテラの一種?」
リリィがどうでもいいところに突っ込んでいると、突如マコトが
「あかん、出さなアカン、爆発する」
と、切羽詰った顔で叫んだ。
へ?と思うまもなく、
>「というわけで、極大爆裂呪文的なやつ!!」
マコトは兵隊達ではなく、床に魔法をぶっ放した。
「わあああああっ?!」
いくら床に向けていたとはいえ、爆風もちょっとやそっとのモノではない。
女王を失った蟻達は、トリフィードに詰め込まれたもの以外は吹き飛ばされたり、焼き払われたりした。
「わーん!マコトちゃんの馬鹿ぁああ!!!」
煽られ、再び盛大に揺れ動く巨大蜘蛛の巣。
爆風が収まった後には、床に巨大な穴が開いていた。
>「なんや、階段があんで、これが正解なんちゃう?なんとなくやけど?」
リリィはマコトに食って掛かりたかったし、謎の部隊の男性に話も聞きたかった。
そしてササミがどうしてこの場に現れたのかを問いたかった。
だが、穴の中から垣間見えた巨大な猫の手を見たとたん、それらのことはどうでもよくなった。
「みんなー、穴の中へれっつごーだよぅ」
リリィは箒にミクをのせたまま、ふらふらと巨大な穴の中に入っていこうとする。
穴の中には、モケーレ・ムベンベをはじめ新たな脅威が待ち構えているかもしれない。
(たとえおとなしくても、巨大というだけで、弱っちいリリィにとっては強敵だ!)
だが、そんなことはお構いなしだ。
だがおそらく出会ってしまったとしたら、みっともなくうろたえ、慌てふためいて逃げ惑うに違いない。
その5分後到着したフリージアさんの件は、また別の話。
「羽根蟻の季節じゃにゃーて助かっなも。それにしても…」
女王蟻を切って捨てて人心地した後、ササミはあたりを見回して小さくため息をついた。
蟻の統率はなく、ルナの魔法により脱出口も見えた。これで一安心、だが…
薄暗い部屋。
そこを埋め尽くすクリーナーアント。
部屋中に張り巡らされる糸。
そこにぶら下がる人間たち。
しかも猫を連れた美少女(フリード)によると、こんなもの日常茶飯事だそうだ。
「あーあ。人間界ってこー暖かこうて、穏やかで、明るうて、平和な世界って聞いとったのに、いうほどにゃーね。」
明らかに失望の色が見える声でひとり呟いていた。
そしてそれと共に疑念が一つ。
自分は魔王によってフィジル魔法学園の転送室に送られたはずだ。
初めての人間界でフィジル魔法学園の転送室がどういったものかも知らないが、それにしても出迎えの教師らしき者も見当たらない。
思考が疑問に集中した瞬間、真の声が飛び込んでくる。
>「というわけで、極大爆裂呪文的なやつ!!」
それと同時に巻き起こる大爆発に、宙に浮いたままで一安心して気の緩みもあり、まともにその衝撃波を浴びる事になった。
視界が回転し、錐もみ上に吹き飛ばされながらも壁に叩きつけられなかったのはミクの張った蜘蛛の巣のおかげであった。
怪音波を浴びて落ちた主の代わりにササミが巣の中心に受け止められ壁のシミになるのを回避できたのだ。
「あっ!あぶっ!…でら物騒やが!この網のおかげで助かったけど…!?」
ギッシギッシと巣を揺らしながら我が身の無事を確認するが、すぐに自分を救った網が蜘蛛の巣である事を理解した。
糸が体中にくっついて動けないのだ!
暫くもがくが想像した以上に糸は頑強で粘着力が強い。
「こ、これが、これが憧れの人間界…!?」
思えば登場直後からクリーナーアントの溢れる巣で、大爆発に挙句に身動きが取れなくなってしまっている。
憧れが失望に、そして怒りへと変わるのも仕方がないことだろう。
蜘蛛の巣に絡め取られたササミを灰色の雲が覆い隠した。
雲の正体はササミの石化ブレス。
頑強さと柔軟性、そして粘着力を合せ持つ蜘蛛の糸も石と化してしまえば細く脆い石細工に過ぎないのだ。
パキパキという音と共に雲から細い糸が零れ落ちる。
そして蜘蛛を突き破りササミが飛び出てきた!
「くぅおの・・・どたーけー*!!場所も考えのーてぶっ放すだけの三流魔法使いがあああ!!」
怒りの叫びを引きずりながら宙を飛ぶ先は極大魔爆裂呪文的なものを放った真だ。
高速機動剣術を得意とするササミの放つ飛び蹴りは一瞬で間合いを詰め真の顔面に叩き込まれる。
お転婆とはいえ運動神経×な真の避けられる代物ではない。
が、ササミの足の裏が真の視界を占領した瞬間、不可視の力によって激突は避けられることになった。
爆発によって空いた大きな穴から現れた巨大な猫の手の力により、蹴りの推進力は打ち消されてしまったのだ。
360度の視界を持つ故に背後の猫の手も視界に入り、その視力の良さ故に影響も強く受けてしまったのだ。
>「みんなー、穴の中へれっつごーだよぅ」
「ほないこまいか〜」
飛び蹴りから一転、真の手を引き箒でふらふらと巨大な穴の中に入っていくリリィの隣に並び進む。
リリィが巨大な山脈を越えて視線を巡らせるなら、胸や手、額や項、背中につく顔が刺青ではなく本当の顔だとわかるだろう。
なぜならばそれぞれの顔の目が動き、そのうちのいくつかは自分を凝視しているのだから。
*どたーけー
たーけ→たわけ→田分け
広い田を分割することで作業効率と収穫量を減らす愚か者の意
どは弩級
意訳すると「とってもおばかさん」
>「ところでグレン、『むねのえんじん』って何?カンテラの一種?」
「つまり心じゃよ」(猫語)
「じゃよ?」
>「なんや、階段があんで、これが正解なんちゃう?なんとなくやけど?」
>「みんなー、穴の中へれっつごーだよぅ」
>「ほないこまいか〜」
「そういえばあれって刺青じゃなくて本物の顔なんでしょうか?」
「ここはマナーとしてひぃばけものって言うべきかな?」(猫語)
「魔法を使う僕たちも人によっては化け物に見えるかもしれませんね
まあそれは良いとしてそろそろあの穴に飛び込みましょうか?」
そこでフリードたちが見たものは
明らかに怪しげな招き猫の像であった
「え〜とササミさんでしたっけ?あれお知り合いでしょうか?」
「いやたぶん神様だから魔界出身の人は知らないんじゃ」(猫語)
像の周りには大きな松明の様なものが燃えている
「燃やせ燃やせ真っ赤に燃やせいたる所に火をつけろ♪」(猫語)
意味不明の歌を歌っているグレン
「・・・・・火が燃えているということは誰か火を着ける人がいるって事ですね」
「要るし居るって事だね」(猫語)
「炎・・・・人・・・炎の魔法使い・・炎道さん!?」
果たしてこの松明の火を着けたのは炎道なのだろうか?
そしてムケーレモベモベは実在するのか?
>80-92
>「え?ササミさんに何かされたの?!でもあの人、何もしてないじゃない?
> ミ、ミクさん?な、何をそんなに・・・・・・おおお、お怒りなのでせうか?」
落ちてきたミクを受け止めたリリィは、ふらふらはしながらも落ちる事はなかった。
感覚がミクほど鋭敏ではなかったので、怪音波の影響をあまり受けなかったのも幸いしたのだろう。
>「なんかよく分からないけれど、助けてくれたみたいだし、喧嘩はだめだよ?」
「……」
すぐに怒りが収まったわけではなかったが、リリィのとりなしをミクは無言で受け入れる。
報復したくても、体の自由が完全に戻っていない状態では難しいのだ。
>「魔界の人って、下着つけてないのかな?めちゃくちゃ揺れてるんだけど・・・・・・」
>「お洋服といい、刺青といい、変わった人かも・・・・・・」
「そうですわね。 人を食べる。くらいの事はしかねない様相ですわね。
リリィさんも、頭から食べられてしまわないようお気をつけくださいな」
ササミを観察した感想を述べるリリィに、ミクは(自分のことは棚に上げて)軽口を返す。
怪音波の影響が身体から抜けると共に、精神の余裕も戻ってきたようだ。
>「?!あれれれれっっ??
> すすすすみません、私、人違いしてましたです!
> わわわわたし、ちょっと友達と間違えて話しかけただけなので、怒らないでください!!
> あれっ?ルナちゃんはどこ?どこに消えちゃったの?今までここにいたはずなのに!
蟻の群れが塞いでいた道を開いたルナに現状を説明していたリリィが、急に慌ててルナの姿を探し始めた。
いつもと違うルナに驚いたからだが、ミクは普段のルナを良く知らない。
それに、暗闇も見通すミクには、リリィが話しかけていた人物が別人と変わってはいない事は良くわかる。
「大丈夫ですわリリィさん。 この方は確かにルナさんで間違いありませんから」
>「あかん、出さなアカン、爆発する」
「また…ですの?」
なんとなく、真が何をしたいのかミクにも予想は出来た。
そして、その予想は(当たって欲しくはなかったが)大正解だった。
>「というわけで、極大爆裂呪文的なやつ!!」
>「わーん!マコトちゃんの馬鹿ぁああ!!!」
肉体にではなく精神に受けた打撃の痛みに、ミクは片手で頭を抑えた。
ろくに魔力を制御できないのでは、まだ魔法を使えない方がましではないか!
ミクの脳裏に、フィジル魔法学園の創設目的が思い浮かぶ。
大きな力を当たり前のように使える事による悲劇をおこさないよう、力を使う方法を学ばせる学校。
まさに真のためにある学校のようにミクには思えた。
>「こ、これが、これが憧れの人間界…!?」
また真を縛り上げてやりたい衝動に駆られたミクを止めたのは、網に絡め取られたササミの姿だ。
自分に無差別攻撃を仕掛けた相手が、網に絡まってじたばた暴れている姿は愉快なものである。
人を傷つけなかったとか、隠し階段を見つけたとかいうミクにとっては些細な理由ではなく。
ササミの間抜けな姿が見られたとい一点に免じて、今回の暴走を見逃してやるつもりになったのだ。
しかし、さすがにササミもいつまでも捕まってはいない。
石化の吐息で戒めから逃れたササミは、怒りのままに真に飛び蹴りを食らわせようとする。
だが、その飛び蹴りが真に当たることは無かった。
穴から出現した、謎の招き猫の手の吸引力によって。
>「みんなー、穴の中へれっつごーだよぅ」
>「ほないこまいか〜」
「そんなに簡単に中に入ってよろしいのかしら……」
疑念を抱くミクではあったが、なにしろ今はリリィの箒に同乗中の身だ。
簡単に離れられるものでもない。
そのうえ招く猫の手を見ていると、自分まで中に入りたくなってきた。
結局疑念は消えないまでも、積極的に反対の声をあげるわけでもなく。
箒に乗ったまま、ふらふらと階段を降りていく。
ちなみに、ミクはササミの顔が本物である事は知っている。
知ってはいるが、驚くことはない。
世の中には目が百あるバケモノも存在するのだ。
目の数だけ見ればまだ少ないくらいである。
階段の下には、自分達を招いた招き猫であろうか。
怪しげな招き猫の像が置かれていた。
>「え〜とササミさんでしたっけ?あれお知り合いでしょうか?」
>「いやたぶん神様だから魔界出身の人は知らないんじゃ」(猫語)
他の招き猫の像とは雰囲気が違うところをみるに、この神殿の御本尊なのかとミクは考える。
「この神殿に祭られた神像…と考えるのが妥当でしょうけれど。
私達を招き入れたのもこの像なのかしら。
…リリィさん、そろそろ普通に歩けそうなので、降りさせていただきますわ。
今日は随分とあなたに助けられてばかりですわね。 ふふ」
リリィに笑いかけながらミクは箒から降り、謎の像に近づいた。
>像の周りには大きな松明の様なものが燃えている
>「・・・・・火が燃えているということは誰か火を着ける人がいるって事ですね」
>「要るし居るって事だね」(猫語)
>「炎・・・・人・・・炎の魔法使い・・炎道さん!?」
「そういえば、ササミさんは私達がここに来た目的はご存知ないでしょうね」
ミクは手短に、自分達がなぜこの遺跡に来たかについてササミに説明する。
仮にミクたちの目的を知らない者が他にいても、その説明を聞けば理解できるだろう。
「見たところ総代はいないようですけれど……こちらははずれでしたかしら?」
像の前には古ぼけた台座があり、そこにはモケーレ・ムベンベなる生物の情報が記されていた。
「もけーれべむべむ……? なんですのこれは?」
ミクが見たことも聞いたこともない生き物だった。
だがその説明文から、もけーれ某なる生物が招き猫の像を差した言葉ではないのはわかる。
そして、この場所に関係のない生物の情報が、こんな所に記されているはずはないのだ。
「真さん。 総代が近くにおられるかどうか、知ることは出来ないものかしら。
私、先ほどからどうにも嫌な予感がいたしますの。
そう……この もけーれ という生物が近くにいそうな…ね? ふふふ…」
95 :
名無しになりきれ:2011/12/17(土) 11:27:48.44 0
うもー
1
7
5
ミクくっさ
100 :
◆IgQe.tUQe6 :2011/12/17(土) 16:11:02.57 0
s
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>「あのねルナちゃん、あんまりびっくりして忘れてたけど、実は私達、神隠しにあった新入生総代を探してるの。
「エンドウユウキ」って名前なんだけど、知ってる?。
どうやら彼、ここにいるみたいだし、こんな危険な昆虫や植物がうじゃうじゃいる遺跡に放っておけないよ。
ルナちゃん、私達、彼を探し出すまで帰れないのー・・・・・・って、あれ?!」
>出口から漏れてきた光に照らされたルナを見て、リリィは明らかに動揺している。
>「?!あれれれれっっ??
すすすすみません、私、人違いしてましたです!
わわわわたし、ちょっと友達と間違えて話しかけただけなので、怒らないでください!!
あれっ?ルナちゃんはどこ?どこに消えちゃったの?今までここにいたはずなのに!
ルナちゃーん、ルナちゃーん!!どこ行っちゃったの?もう外に出ちゃったの?!
トリフィードもこれ一体とは限らないし、一人歩きは危ないよー!!」
「えぇ!?(私がいない?どこいったのッ!?ってここよー!)」
>「大丈夫ですわリリィさん。 この方は確かにルナさんで間違いありませんから」
「そ、そうだぜ!オレはルナ!正真正銘のルナ・チップルさ!!」
リリィは激しく驚いた様子で、「どうしてそんな姿に?!」と聞いてきた
「どうしてって……」とルナは言葉を濁し、視線を逸らす。
>「みんなー、穴の中へれっつごーだよぅ」
「聞いちゃねーし!つか、炎道を助けるならオレも手伝うし……」
招き猫の不思議な力で、皆と一緒にふらふらと下へ移動。
階段の下には、自分達を招いた招き猫であろうか。
怪しげな招き猫の像が置かれていた。
>91-101
巨大な猫の手に誘われるかのように、地下への階段を降りていく一行。
「ルナちゃん、入学当時からずいぶん服の趣味変わったみたいだねー。
だけど、・・・意外だったというか何というか・・・その・・・見慣れればなれると思うし、意外と似合ってるんじゃないかな?」
語尾が疑問形なのは、リリィが密かに前のルナの方が好ましいと思っていたからだ。
まあ何があったかは知らないが、イメージを一新したいようなことがルナにはあったに違いない。
話したくなったらきっとそのうち語ってくれるはずだ。
「ルナちゃんは、ササミさん?とはお洋服の趣味が合うかもしれないね。
あ、自己紹介がまだでしたね。私はリリィ、学園の生徒です。
ササミさん、その服ってやっぱり魔界で流行ってるんですか?手袋のスカートなんて・・・・・ざ、斬新ですね」
リリィがぺらぺらとよく喋るのは、箒に乗せている「恐怖の爆弾」のせいだ。
そう、箒に同乗しているミクは、今は静かに怒っている。もちろん、怒りは直接リリィに向けられているものでもない。
だが、普通にしていても畏怖の対象であるミクである。
今までもほんの気まぐれや利害の不一致(?)で、イロイロされちゃっている身の上である。
リリィにとっては、耐え切れないほどの緊迫した状況であった。
そして階段を下りたところで一同が目にしたのは、明らかに怪しげな招き猫の像であった。
>「え〜とササミさんでしたっけ?あれお知り合いでしょうか?」
>「いやたぶん神様だから魔界出身の人は知らないんじゃ」(猫語)
>「この神殿に祭られた神像…と考えるのが妥当でしょうけれど。
> 私達を招き入れたのもこの像なのかしら。
> …リリィさん、そろそろ普通に歩けそうなので、降りさせていただきますわ。
> 今日は随分とあなたに助けられてばかりですわね。 ふふ」
「あはははは・・・・・・お役に立てて何よりですぅ」
リリィは引きつった顔で微笑み返した。
>「炎・・・・人・・・炎の魔法使い・・炎道さん!?」
>「そういえば、ササミさんは私達がここに来た目的はご存知ないでしょうね」
ミクは手短に、自分達がなぜこの遺跡に来たかについてササミに説明する。
どうやらリリィの箒に乗って移動している間に、多少なりとも心境の変化があったようだ。
(よかったよー、本当によかったよー)
こんな場所で、「学園一おっかない女子生徒頂上決定戦」などごめんである。
>像の前には古ぼけた台座があり、そこにはモケーレ・ムベンベなる生物の情報が記されていた。
>「もけーれべむべむ……? なんですのこれは?」
「すごいね、ミクさん読めるんだ!もけーれむべんべなんて初めて聞いたよ。
ふーん、巨大猫文明では文字も使われてたんだね。
今の私達が使ってる文字によく似てるみたいだけど、・・・・・縦書きだから違うのかぁ」
暗号のような文章を見ながら、リリィはそんな感想を漏らした。
「もしかしたら、この招き猫モドキのお使い様だと信じられていたのかもね!
まあ、きっとこの招き猫みたいに、想像上の生き物なんだろうけれど・・・・・あれ?」
リリィは台座のそばに落ちていたものを、なにげなく拾い上げた。
「見て!パンよ!しかもジャムパンだわ!まだやわらかいし、腐ってもいない。
もしかして誰かのお供え物だったのかな?はっ!それとも、これこそがエンドウ君のダイニングメッセージかも!!」
マコトにこの場で処刑されても仕方のない類の誤用であるが、本人はまったく気づいていない。
>「真さん。 総代が近くにおられるかどうか、知ることは出来ないものかしら。
> 私、先ほどからどうにも嫌な予感がいたしますの。
> そう……この もけーれ という生物が近くにいそうな…ね? ふふふ…」
「やだー!!、ミクさん不吉なこと言わないでよ!フリード君、もっとこっち来て来て。
ほ、ほら、フリード君だって怪我完全に治ってないんでしょ?
サンニンヨレバモンジュノチエっていうし、不測の事態に備えて複数で警戒してた方が安全だわ」
微妙に間違えている気がするが、相変わらずリリィ本人は大真面目であった。
さて。
ミクと話しているササミの背を見るともなしに見ていたリリィだが、ふと、背中を向けているササミから視線を感じた。
「んんんんん?ねえフリード君にルナちゃん。ササミさんの刺青の目・・・微妙に動いていない?」
返答を待つより先に、リリィは手元の箒を持ち上げ、左右に大きく振ってみた。
すると、ササミの刺青だったはずの顔が右に、左にと微妙に動きを変えた。
「ええええええ!!!ササササササミさん、項になにか顔がついてるううう!!しかも動いてる!生きてりゅ?!」
最後噛んだのは、驚きすぎて後ろにすっ転んだからだ。
>「そうですわね。 人を食べる。くらいの事はしかねない様相ですわね。
> リリィさんも、頭から食べられてしまわないようお気をつけくださいな」
この期に及んで、ようやくリリィはミクの言葉の意味を理解した。
「さっ・・・・・ササミさんひゃ、その顔は魔界でのオシャレのいっかんですか?」
人の外観にはあまりこだわらないリリィだったが、さすがに顔がいっぱいついている、というのはちょっと想定外だったようだ。
声も上ずり、完全にテンバッてしまっている。
初対面で、相手の肉体的特長について踏み込んで質問しているリリィの行為は、お世辞にも褒められたものではない
その上、そもそも今は、危険でいっぱいの遺跡の中である。
魔界の住人ササミ嬢の目に、リリィの行動はどう映るのだろうか?
>94-95>101-103
>「聞いちゃねーし!つか、炎道を助けるならオレも手伝うし……」
「僕もここで顔だけいい男じゃないってことを証明するために頑張らないといけません」
>「もけーれべむべむ……? なんですのこれは?」
「僕知ってるよ学園の図書館で見たよ」(猫語)
どうやらグレンはその存在について知っているようである
「やたら記憶力がいいですねグレン、さすがは僕の相棒です」
とフリードリッヒ
どうやらグレンの説明によると
>87
カバと象の間ぐらいの大きさで(ry
ということらしい
全容はわからないがとにかく大きいということは分かったフリードリッヒであった
「まあつまりUMAってことだよ」(猫語)
と締めくくるグレン
「幻の生き物ですか・・・つまり幻獣、ドラゴンとかグリフォンの仲間ですね」
何か勘違いしているフリードリッヒ
だがしかしこの世界ではドラゴンもグリフォンも普通に生息しているのだから
幻獣という呼び名はおかしいのではないだろうか?
「・・・・・まあ二本足で歩く猫とか普通にいるんですから
どんな生き物がいたってそんなに驚きませんけどね」
慣れというものは本当に恐ろしいものである
周りに変なのが多すぎるとちょっとやそっとで驚けやしないのだ
「僕は人間という種族が一番変だと思うけど」(猫語)
ゴブリンに殴り倒されるものからドラゴンとタイマンして勝つ者まで
個体によって千差万別すぎる人間が一番変だとグレンは主張する
>「さっ・・・・・ササミさんひゃ、その顔は魔界でのオシャレのいっかんですか?」
「そんな細かいことはどうでもいいんです
早く炎道さんを見つけて学園に帰らないと!
まだ鈴木土下座衛門先生に出された宿題が終わってないんですからね!!」
「なんで明らかに人じゃないビ○ルダーが教師出来るんだろうね?」(猫語)
「ビホ○ダーを差別しちゃいけません!
たとえ空飛ぶ眼球でも共通語を話す以上の知性を持つ知的生命体は人なんですから!!」
>「そう……この もけーれ という生物が近くにいそうな…ね? ふふふ…」
>「うもー」
「まさかこの声は・・・・・むけーれむべもべ!?」
「いや普通牛の鳴き声で洞窟ならミノタウルスでしょ?」(猫語)
慌てるフリードに冷静に突っ込むグレン
どっちかというとミノタウルスのほうがやばい気がするが?
はたしてそこにいたのはUMAかそれとも牛頭魔人か!?
床の大穴から現れた階段を下りるとそこは神殿のような場所であった。
松明らしきものが明かりを提供し、怪しげな招き猫。
それを前にしてササミは考え込む。
階段を床で塞いであったこと、巨大な猫の手の幻に込められた強力な催眠効果。
この二つが意味している事は…
>「え〜とササミさんでしたっけ?あれお知り合いでしょうか?」
>「いやたぶん神様だから魔界出身の人は知らないんじゃ」(猫語)
フリードの声に思考が中断し、慌てて招き猫を見ながら応える。
「ここは神殿のみてーだてし、そうなるとこの招き猫は神の類だぎゃ?
魔界出身だてぇからそういった知識には疎ぉてわかりゃーせん」
決してグレンの予想に被せたわけではない。
ササミは猫語がわからないのだから。
グレンの予想っぷりを褒めるべきだろう。
その後フリードからエンドウなる単語が飛び出たが、それについてはミクがわかりやすく説明してくれた。
ここがどこなのか、なぜここにいるのか、を。
「ふんふん、なるほどねえ。つまりここはフィジル魔法学園の召喚室ではないって事な。それで合点がいったわ*1」
話を聞きながらササミは顎に手を当てながら色々納得していた。
ササミの目的は留学生として人間社会、そしてフィジル魔法学園に入り込み、人間の強さの秘密を探る事。
魔界からのゲートが到着予定だったフィジル魔法学園の召喚室ではなく、この遺跡にズレたのは、いや、ズレたのではない。
意図的にこの場に出現させたのだ。
危険に立ち向かう人間たちのパーティーを目の当たりにできるように。
「魔王様もちゃっかりしとりゃーすわ」と小さくつぶやいた。
任務そっちのけで暫くは人間界を満喫しようとしていた目論見を看破されていたのだから。
その説明にルナが協力を申し出る。
随分と化粧が濃いが、見たところそんなに戦闘力が高いタイプには見えないルナが迷わず協力を申し出たことにササミは驚いた。
「どうして手伝うのだてか?対価の交渉はしにゃーの?」
不思議そうに首をかしげながら聞いたところで、後ろからリリィの驚きの声とすっころぶ姿が目に入った。
>「さっ・・・・・ササミさんひゃ、その顔は魔界でのオシャレのいっかんですか?」
「おしゃれじゃなーて。」と項の顔の口から声が流れる。
「今は人の姿をしとるけど、正体は七面鳥だなも。」と背中の顔が続ける。
「だてー顔が七つありゃーすよ*2」そう右手の顔が締めくくった。
混乱を防ぐために今まで顔の部分の口でしか喋っていなかったが、全ての顔が同じ機能を有することを知らせる為に各所で答えて見せたのだ。
驚くリリィを面白そうに見たササミは、更に続ける。
「おみゃーさんらとは初対面だけ気になるだろけど、私はオシャレにはうとーてな。
この服装も全部かんこー*3したもんなんよ?」
そういいながらゆっくりと水晶のシャムールを振るうと、振るわれるに従い分裂し、14本が宙に浮く。
それらは重力に任せ落ちる事はない。
スカートから切り離された手袋がそれぞれの柄を掴み、ササミを中心に二刀流の剣士が7人いるかのように刃の陣を組む。
「顔が七つあるとこーゆー事もできるんだぎゃ。
この水晶のシャムールは枝分刀ゆうて、私の周囲10M以内なら何本にでも分かれるんだわ。
あとは念動の魔法でそれぞれの顔が手袋を左右二つ操作すれば14刀流の出来上がりだわね。
これ以上はダダクサ*4になるからやりゃせんけど、私に死角はこの胸の下くれーのもんだわ。」
手の内を明かすのは敵意がないことの意思表示でもある。
デモンストレーションが終わると、今度は自分の番と言わんばかりにリリィを覗き込んだ。
暫く観察するように見た後。
「おみゃーさん、なんでここにおりゃーすの?*5」
純粋な疑問はこれから始まった。
「見たところ、あっちの子(ミク)を100とすると、おみゃーさんは2くらい?
さっきのクリーナーアントもやけど、でらあぶなー*6遺跡にいられる戦力じゃあらせんやろ?
ほだけどさっき自分の周りに怪我人集めよーとしとったやんね。
どうしてだぎゃ?」
枝分刀を重ね一本に戻し、手袋がまた組直りロングスカートになりながらも、額、顔、胸元の六つの視線がリリィに集まる。
「300年以上昔、魔王ナラシンハを倒した闇払いパーティーの中にも似たようなのがいたそーだげな。
戦闘力は桁違いに弱かったけど、最終決戦ではその女が鍵となったってゆーし。
あんたさんもその類なんかもしれんねー。」
しばらくじっと見つめたのち、全ての顔がにっと笑ってその視線を外した。
「ほなら決めたわ。私も連れて行ってちょーせ。
人間の強さてゆーのが見れるかもしれせんしなも」
満足そうに同行を申し出た。
そして真をちらりと見ながら。
「それにしてもエンドウユウキゆうのはどえりゃあええ男なんやろね。
女の子ばっかしこれだけ探しに集まるゆうんやで」
うんうんと頷きながらつぶやいた。
そう、ササミの中ではフリードは当たり前のように女の子として見られているのだ。
当のフリードは「うもー」という不気味な鳴き声に件のむけーれむべもべを想像する。
「いや、この鳴き声で洞窟だらミノタウルスだぎゃ?」
とまたしてもグレンと被るが、しつこいようだがササミは猫語はわからない。
猫と鳥、意外と気が合うのかもしれない。
*1合点がいったわ=納得したわ
*2ありゃーすよ=あるのですよ
*3かんこー=勘考、試行錯誤し考えた結果
*4ダダクサ=いい加減、精度が落ちる
*5おりゃーすの?=いるのですか?
*6でらあぶなー=とても危険
目の前に大きな穴があきました
爆風に皆さん非難囂々のようです
「けつの穴の小さいやつらやなぁ、あと三流魔法使い言った奴!あとでぶっ殺したる」
真が穴を覗き込む、階段の先は何もみえないが、今はここを進むしかないだろう
リリィの提案に乗っかり真も奥へ進む
「篝火かいな……?たしかにミクの言う通り勇気の魔力が臭うけどな……」
いつまなら、キャー勇気の魔力や、ヤッターと馬鹿みたいにはしゃぐのだけど、なんだか真剣な顔です
「なんや、この異臭は?勇気以外の匂いがしおる……」
鼻を近づけて炎の魔力の匂いを感じている
ちなみに勇気の魔力の匂いがわかるのは真だけ
「もけーれ・むべんべ?しらんわ、さすがに万の魔獣を召還出来る超天才召還術士の私も知らんわ」
間抜けな猫の像をぺしぺしと叩いてみる
と、なんだか甘い匂いが……
>「見て!パンよ!しかもジャムパンだわ!まだやわらかいし、腐ってもいない。
もしかして誰かのお供え物だったのかな?はっ!それとも、これこそがエンドウ君のダイニングメッセージかも!!」
「そうそう勇気はジャムパンが好きでなぁ死ぬ前にはジャムパンを食って死ぬってよう言ってたわ……ってなんでやねん!
勇気は死んでないわ!その内ひょっこり出てくるに決まってるわ!」
真は涙目である
>「それにしてもエンドウユウキゆうのはどえりゃあええ男なんやろね。
女の子ばっかしこれだけ探しに集まるゆうんやで」
ササミが勇気を褒めたので真の顔がぱぁっと明るくなる
「宇宙一いい男に決まっとるやんか
魔界出身やのにようわかっとるやんけ」
真はすこぶる機嫌がいいようだ
うもーという鳴き声がする
「なんや、なんや!……え、ミノタウロスやってそりゃ厄介な奴やで!
それにあいつ気持ち悪いから嫌いやねん!」
さてさて、ミノタウロスがやって来た
「やっぱり!気持ち悪いわぁ!助けて勇気!!」
「ふん!!」
せっかく出てきたミノタウロスを一刀両断してしまいました
一体誰でしょうか?
「勇気……勇気やんか」
そう行方不明の炎道勇気です
その彼がついに出てきたのです
>101-107
>「やだー!!、ミクさん不吉なこと言わないでよ!フリード君、もっとこっち来て来て。
> ほ、ほら、フリード君だって怪我完全に治ってないんでしょ?
> サンニンヨレバモンジュノチエっていうし、不測の事態に備えて複数で警戒してた方が安全だわ」
「それは確かに、固まっていた方が安全かもしれませんわね」
草食動物には群れるものが多いのを思い出して、ミクは適当にそう言った。
実際、数の力で力量が上の相手を撃退できる場合もあるだろう。
仲間がやられているうちに自分は逃げる事も可能だ。
まとめて焼き払われでもしない限り、群れるのも重要な防御手段なのだ。
>「ええええええ!!!ササササササミさん、項になにか顔がついてるううう!!しかも動いてる!生きてりゅ?!」
リリィが(今更)驚いたので、今まで気づいていなかったのかとミクは軽くため息をついた。
考えようによっては、気づいただけましと言えるかも知れない。
フリードなどは、顔が沢山あることより先生から出された宿題の方が心配と断言しているくらいなのだから。
鈴木土下座衛門なる先生の事はミクは知らなかったが、よほど凶暴な怪物先生なのだろう。
どうやら問題児の多い学校には、問題教師も多いようだ。
一方、驚かれた方のササミは気を悪くした風もなく、自分の正体と能力についてあっさり種明かしして見せた。
敵意の無さを示したとも取れるが、もっと重要なものを隠すための言動とも見て取れる。
少なくともミクは後者だと感じた。
自分が正体を隠しているだけに余計そう感じるのだ。
>「うもー」
>「まさかこの声は・・・・・むけーれむべもべ!?」
>「いや普通牛の鳴き声で洞窟ならミノタウルスでしょ?」(猫語)
>「いや、この鳴き声で洞窟だらミノタウルスだぎゃ?」
>「なんや、なんや!……え、ミノタウロスやってそりゃ厄介な奴やで!
「みのたうろす……?」
聞こえてきた牛の鳴き声に騒ぎ立つ他の面々とは違い、ミクは内心首を捻った。
日常的にいる生物のようだが、残念ながらミクの頭の中の辞書には【ミノタウロス】は載っていなかったのだ。
奥からのそりと表れたのは、筋骨隆々な男の身体に牛の頭の怪人であった。
力は強そうだが、搦め手には弱そうである。
白黒のぶち模様なのも、あまり強そうに見えない理由なのかもしれない。
>「やっぱり!気持ち悪いわぁ!助けて勇気!!」
今まで散々魔法を暴発させてきたくせに何を今更と、ミクが内心呆れた時だった。
>「ふん!!」
炎道勇気が、ミノタウロスを一撃で打ち倒したのだ。
>「勇気……勇気やんか」
現れたのは、確かに探していた人物だ。
だが、なんとなくミクは違和感を覚えた。
態度は遭難者のものとは思えないし、堅い床の下にどうやって入ってきたのだという疑問もある。
ミクはルナにそっと近づいて、小声で話しかけた。
「ルナさんは荒事に自信はおありかしら?
もしかしたら少々騒動になるかもしれませんから、御油断はなさらないでくださいましね。
ふふふ……」
ミクとしては、騒動になってくれた方が楽しいと思っている。
もちろん巻き込まれるのが楽しいのではなく、他人が巻き込まれるのを見るのが楽しいのだが。
ともかく真と炎道を見ていれば、異変があればすぐにそれとわかるだろう。
>「僕もここで顔だけいい男じゃないってことを証明するために頑張らないといけません」
「おー、がんばって。みんなを守ってくれー」
>「ルナちゃん、入学当時からずいぶん服の趣味変わったみたいだねー。
だけど、・・・意外だったというか何というか・・・その・・・見慣れればなれると思うし、意外と似合ってるんじゃないかな?」
「そうでしょー!」
胸を張ってピース。
ルナはもともと大人しい子供なので、ボキャブラリーも少なく会話のキャッチボールも得意ではない。
みる人からみたら、演技しているようにもみえるかもしれない。
「……」
すぐ真顔に戻り、リリィに促されてササミに視線を移す。
>「んんんんん?ねえフリード君にルナちゃん。ササミさんの刺青の目・・・微妙に動いていない?」
「えー!?」
ルナは白目になって、ガラスの仮面風に驚いた。
>「どうして手伝うのだてか?対価の交渉はしにゃーの?」
「な、何語さ!?」
突然ササミに話しかけられて目を見開き口を真一文字。
それは内心、怖かったから。
でも、怖かったけど表には極力ださずに
「お、お、お、おともだちだだもん。リリィは大切なおおお友達なんだから…」
逃げるように吐き捨てると、すっ転げたリリィを元に戻そうとがんばりはじめる。
>「うもー」
>「まさかこの声は・・・・・むけーれむべもべ!?」
>「いや普通牛の鳴き声で洞窟ならミノタウルスでしょ?」(猫語)
>「いや、この鳴き声で洞窟だらミノタウルスだぎゃ?」
>「なんや、なんや!……え、ミノタウロスやってそりゃ厄介な奴やで!
>「みのたうろす……?」
「みの…たろう?」
>「ルナさんは荒事に自信はおありかしら?
もしかしたら少々騒動になるかもしれませんから、御油断はなさらないでくださいましね。
ふふふ……」
「わ、わたし…じゃなくって、
お、オレは荒事には自信があるぜ。任せろー!」
目の前には炎道勇気っぽい人。
「はっ!!」
ルナは閃いた。
炎道の口にジャムパンを押し当てぐちゃっとする。
意味はよくわからない。けど何かが起こる気がした。
ミクッサ
111 :
◆IgQe.tUQe6 :2011/12/27(火) 00:15:18.75 0
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>105-109
>「勇気……勇気やんか」
出落ち担当のミノタウルスを一撃必殺する炎道
「そう言えばミノタウロスって食べられるのかな」(猫語)
「肉食の動物の肉は美味しくないらしいですよ
イメージ的に肉食ですし多分不味いんじゃないでしょうか?」
一体何しに出てきたんだミノタウロウス?
「そんな事よりも・・・炎道さん!炎道さんじゃないですか!心配しましたよ
今まで一体何をやられてたんですか!!」
と無防備に炎道に近づいていくフリードリッヒ
「ちょっと!洗脳とかされてていきなり襲い掛かって来るかもしれないのに
そんな簡単に近づいちゃうの?」(猫語)
「大丈夫ですよ♪炎道さんも魔法使いなんだからそう簡単に洗脳魔法なんかには・・・・・」
「魔法使いって言ったって所詮学生じゃない」(猫語)
そうであるいくら天才と呼ばれていようが所詮学生であり子供である
強力な大人の魔法使いの手に掛かっては一溜まりもないであろう
「その時はその時で死なない程度にボコって洗脳を解くだけですよ・・・・真さんが」
丸投げした!?
「そういえば何で炎道さんは名前で呼ばないの?」(猫語)
「・・・・・そういえば何ででしょう?まあなんとなくですね
特に伏線とかはありませんよ」
>「はっ!!」
何故故ジャムパン!?
「僕はどっちかって言うとジャムパンよりアンパンのほうが好きですね
男だったらアンパンでしょう」
「よろしく勇気だね」(猫語)
「・・・・で結局炎道さんは何でこんな所にいたんでしょうか?」
「ク・リトルリトル関連なら話さないでいいよ」(猫語)
何故そんなにクトゥルーネタにこだわるのか?
113 :
リリィ:2011/12/29(木) 12:36:43.66 0
>「そんな細かいことはどうでもいいんです
「えええええええ!!これ、細かい・・・・・・事、なの?」
さすがは逸般人で名高いジルベリア出身者、フリードは凡人リリィとは一味もふた味も違った!
そんなフリードが師事している『スズキドザエモン』と出会ってしまったら、リリィは驚きのあまり(良くて)石と化すだろう。
>「おしゃれじゃなーて。」
と項の顔の口から声が流れる。
>「今は人の姿をしとるけど、正体は七面鳥だなも。」と背中の顔が続ける。
リリィが驚きと衝撃でひっくり返ったままだ。腰が抜けているのかもしれない。
そばではガラスの仮面風に白目になったルナが固まっていた。
ミクはあきれた様に軽くため息をついた。
「だてー顔が七つありゃーすよ*2」そう右手の顔が締めくくった。
だが、ミクはさも当然といった顔をしているし、人外に師事している逸般人フリードが、その程度で驚くわけも無い。
(マコトはマコトで、松明に顔を近づけ何かを調べている)
リリィの気持ちを理解してくれるのは、同じくらい驚いているルナくらいだろう。
ようやく立ち直ったリリィが最初に発した言葉は、
「・・・・・・シチメンチョウ?」だった。
(シチメンチョウって何だろ?チョウって言うんだから・・・・・・・はっ!魔界の蝶か何か?)
とんだチョウ違いである。
今のササミの周囲には、羽根ではなく水晶のシャムシールが浮いていた。
蜻蛉の羽根のように透明な刀をまとったササミは、まるで薄い花弁に包まれた花のようにも見えた。
だが、それはとても美しく、危険な花だ。
敵としてあの間合いにひとたび入れば、リリィの体など一瞬でばらばらにされてしまうだろう。
だが、当のリリィは、瞬きもしないでササミの姿をじっと魅入っていた。
それは今のササミからは全く敵意は感じられなかったからだし、ササミの技があまりにすばらしかったからだ。
「・・・・・・きれいだねぇ」
驚きのあまり失態を演じてしまったが、これは、彼女の偽りざらぬ本心だった。
そして下から見上げる形になっているため、馬鹿の呟きを聞かされる羽目になったササミの表情は窺えない。
寝転がったままじっとササミを見つめていたため、リリィを心配したルナが助け起こしにきてくれる。
「あ、ありがとうルナちゃん。大丈夫、腰は抜けてないから立てるよ!ちょっとびっくりしすぎて立てなかっただけ」
それを、腰が抜けたと人は言う。
「心配してくれてありがとね、ルナちゃん」
服の趣味は変わっても、やっぱりルナはルナだとリリィは感じていた。
114 :
リリィ:2011/12/29(木) 12:37:26.49 0
自分の秘密をひとしきり話してくれたササミは、リリィの顔を覗き込んできた。
隣のルナが緊張したのが肌で感じる。
>「おみゃーさん、なんでここにおりゃーすの?*5」
リリィの怪訝そうな顔をよそに、ササミはさらに続ける。
ササミの言葉は魔界の言葉が混じっているせいか良くわからない部分もあったが、
「弱いのにこんなところで何してるの?あと弱いくせに、怪我人集めてどうするつもりだったの?」
ということだった。
「わ、私は、友達が行方不明になったから、皆と一緒に探しに来たんだよ。
エンドウ君は友達だもん」
奇しくもリリィが口にしたのは、先ほどのルナと同じ言葉だった。
「そ、そりゃ皆と比べたら弱いかもしれないけれど、い、一応回復魔法使えるもん!
ほ、ほら!武器だってあるし!」
とリリィは古びた箒をかざした。(ちなみにこれは飛行用の箒であって、打撃以上の能力は無い。)
ササミの額、顔、胸元の六つの視線がリリィに集まる。
リリィの顔が僅かに紅潮した。
「確かに、私にはろくな力は無いです。 けど、こんな私も、友達のために出来ること、きっとあると思ってます。
わ、悪い?・・・・・・です・・・か?」
じっと見つめられて、リリィは居心地悪そうに身じろぎした。
確かに、リリィはミク達だけでなく、ササミの戦闘力の足元にも及ばない。彼女が疑問に思うのも当然だろう。
リリィは口を一文字にひきむずびながらも、ササミから目を逸らすことはしなかった。
しばらくじっと見つめたのち、ササミは何かつぶやいた後、全ての顔がにっと笑ってその視線を外した。
>「ほなら決めたわ。私も連れて行ってちょーせ。
>人間の強さてゆーのが見れるかもしれせんしなも」
「あ、ありがと・・・・・・ササミちゃん」
リリィは肩の力を抜いて、はっと思い出したようにぺこりと頭を下げた。
「でも、そんなたいしたもんじゃないよ・・・・・・」
>「それにしてもエンドウユウキゆうのはどえりゃあええ男なんやろね。
女の子ばっかしこれだけ探しに集まるゆうんやで」
>「宇宙一いい男に決まっとるやんか
>魔界出身やのにようわかっとるやんけ」
真はすこぶる機嫌が良くなった。
「違うよササミちゃん!女の子ばっかりじゃないよ!
ちゃんと男の子だっているよ!ほら!よく見てよ!」
リリィは友達の名誉のために、ササミの『大いなる勘違い』をこの場で訂正しなくてはならない。
リリィはフリード達を指差し、こう続けた。
「いくら可愛くても、れっきとした男の子だよ、グレンは!」
115 :
リリィ:2011/12/29(木) 12:37:43.20 0
>「うもー」
>「まさかこの声は・・・・・むけーれむべもべ!?」
>「いや普通牛の鳴き声で洞窟ならミノタウルスでしょ?」(猫語)
>「いや、この鳴き声で洞窟だらミノタウルスだぎゃ?」
>「なんや、なんや!……え、ミノタウロスやってそりゃ厄介な奴やで!
>「みのたうろす……?」
>「みの…たろう?」
「ミノとタロウ?なにそれ、おいしいの?」
>さてさて、ミノタウロスがやって来た
「うわあああ、ムッキムキの牛だあああ!!
ちょ、ミクさん、なんでそんな嬉しそうなのよおおお!!」
>「わ、わたし…じゃなくって、
>お、オレは荒事には自信があるぜ。任せろー!」
ミクが二言三言話しかけると、突然ルナが気勢を上げた。
「そうよ!一緒にフリード君を助けようね!!」
リリィも手に持った箒を握りなおす。
>「やっぱり!気持ち悪いわぁ!助けて勇気!!」
>「ふん!!」
ミノタウロスを一刀両断したのは、捜索中だったエンドウだった。
「うわああああっ?!ミクッサ危ないっ!」
振り下ろされた刀から発せられた余波を避けるため、リリィは噛みながらもミクを突き飛ばすようにして自分と仲間を射線上からずらした。
だが足がもつれ、逆に自分が巣っ子論でしまった。
「あっ、危ないじゃないのよー!!
危うく牛さんのとばっちりで、こっちまでさっくり逝っちゃうところだったじゃ無いのよー!!
いつもだったら、絶対エンドウ君こんなヘマしないのにぃ!愛しのマコトちゃんが迎えに来てくれたからって、気をそらし過ぎだよ!!」
床で転がったままぷんぷん怒っているリリィをよそに、フリードは無防備にエンドウへと歩み寄っていく。
>「そんな事よりも・・・炎道さん!炎道さんじゃないですか!心配しましたよ
> 今まで一体何をやられてたんですか!!」
と無防備に炎道に近づいていくフリードリッヒ 。
危険じゃないの?とグレンが窘めるが、漢は細かいことは気にしないのだった。
>「その時はその時で死なない程度にボコって洗脳を解くだけですよ・・・・真さんが」
「ええええええ!!丸投げなの?覚悟の上なの?!
っていうか、フリード君の高度な回復魔法は顔しか効かないんでしょ?!危ないよ!!
・・・・え、ルナちゃん?!」
>「はっ!!」
ルナは、炎道の口にジャムパンを押し当てぐちゃっとする。
飛び散るジャム。
「何?何がどうしたの?!」
>「僕はどっちかって言うとジャムパンよりアンパンのほうが好きですね
> 男だったらアンパンでしょう」
「ルナちゃん、なんてアグレッシブなアプローチ方法なの・・・・・・・やっぱり、ちょっぴり変わったかも」
愛ってなんだ? くやまないことさ♪
「でもルナちゃんがエンドウ君好きになったら、マコトちゃんとどっちを応援したらいいんだろう?」
>「・・・・で結局炎道さんは何でこんな所にいたんでしょうか?」
「そ、そうだった!エンドウ君、もしかして、何か用事で来たの?
遠くから婚約者のマコトちゃんが来てくれたのに、書置きも無く消えたらだめじゃない。
友達のルナちゃんや、編入したばかりのササミちゃんだって心配して探してくれたんだよ?
マコトちゃんなんか心配しちゃって、そりゃもう大変だったんだから!
もうここに用が無いのなら、早く学園に帰ろうよ。ここ、いろいろモンスターも出るし危ないよ!」
リリィはそわそわしながらエンドウを促した。
「・・・・・・・エンドウ、君?」
真はついに念願の炎道勇気に会えました
さあ感動の再会でフィナーレです
……と言いたいのはやまやまですが、そうはいかの塩辛です
皆は勇気の様子がおかしいと言います
もちろん、勇気にゾッコンラブな真がその違和感に気付かないはずがありません
「勇気……?なんかいつもと違うで?どないしたん?」
真は心配そうな顔で勇気に近づいていきます
勇気にもうすこしで手が届くというところで真の足が止まります
「勇気とは違う魔力の匂いがする……さっきの火と同じ匂いや
あんた誰や!!勇気はどうしたんや!」
ビシッと勇気に向けて指を指す
指の先にいる勇気はどういう表情かすら読み取れません
部屋の中が暗いからでしょうか?
それだけではないような気もしますけど……
「ふふ、はっはははは」
突如、勇気が笑い出します
なんと不気味な高い笑い声でしょう。部屋にこだまして、その不気味さはより一層といったところでしょうか
そして口を開く勇気
勇気「なにを言ってるんだよ。真、俺はどう見たって炎道勇気じゃないか?なあ、リリィ?フリード?ミク?あとは見ない顔だな
まあ、どうでもいいや、みんな俺のことを心配してくれてたのか?ありがたいねぇ、こんなに仲間思いのやつらに囲まれて俺は幸せだよ
なあ、真、お前もそう思うだろ?伊織の姿が見えないけどどうしたんだ?ま、いっか。それにしても仲間とは素晴らしいものだ
うんうん、こんなところにまで俺を捜しに来てくれてありがたいねぇ
なんで俺がここにいるかって?さあ、なんでだと思う?そうだねぇ頼まれたんだよ。頼まれたんだ
もう少しでそれも終るんだ。あとほんのちょっぴりさ、そうそう邪魔はしないでくれよ
邪魔をするようだったら、俺はちょっと過激な手段を……」
べちゃり……なにかを潰したような、いや、実際にジャムパンが潰れた音がしました
勇気の顔から
「ふふふふふふっはははははははははははははあははははははははっはははははははははははははははははははははははははは」
再び、勇気の笑い声が響きます
勇気「そうか、そうか、お前達、俺を捜しに来たんじゃなくて、俺を邪魔にしに来たんだな
よーくわかったぜ。うんうん、お前もそう思うか……ならぶっ殺すしかねぇな」
ぶわっと勇気の刀から黒いもやのようなものが立ち上ります
「ゆ、勇気にいきなりなにを言っとんねんや。殺すって誰をや?私も含めて全員か?
そんなこと言うような奴じゃないやろ?」
勇気「そんなことはないぜ、邪魔をする奴がいればぶっ殺す、それは仕方がないことや
なあ、真?真は俺のことが好きだろ?婚約者だろ?じゃあ、一緒にこいつらをぶっ殺すのを手伝ってくれるよな?」
勇気はもはやなにを言っているのかわかりません
そんなことを言っても真ちゃんが手伝うはずがありません
「ええよ。勇気の言うことやもん。それが絶対に正しいに決まってる。勇気は操られてるんちゃうやろ?
ただ、その人のお願いを聞いてるんやろ?言わんでもわかる。勇気が私以外からいやいやなお願い聞くわけないもん
勇気は正気や、正気に決まってる」
さて真ちゃんは状況を受け入れきれなくて、暴走してしまいました
愛故の暴走です。この2人は本気で殺しにかかって来ます
皆さん気をつけてくださいね
「みんな悪いけど死んでな!!勇気のために!!!」
>「・・・・・・きれいだねぇ」
「……!?」
リリィの口から零れた何の加工もされていない、偽りざる本心の呟きにササミは一瞬思考が停止した。
今まで戦力分析や罵倒、虚勢の態度を取られた事はあっても、このように純粋に感想を述べられた事などなかったから。
空白ののち戸惑い、そして胸の奥から湧き上がる名状し難き理解不能な感覚。
リリィからは見えなかったが、ササミの七つの顔が赤く染まっていく。
自分を落ち着かせるために距離を取ると、ルナがリリィを引き起こそうとし始めた。
ルナへの疑問に応えながら。
「お、お、お、おともだちだだもん。リリィは大切なおおお友達なんだから…」
吐き捨てるように吐かれた答えにササミはきょとんとする。
魔界に友達の概念がないわけではない。
だが、友達であることと、自分の実力を超える問題に手を出すことは別だと考えているから。
リリィも同様な応えをササミに返す。
支配されている訳でもなく、恐怖に駆られている訳でもなく、利害があるわけでもない。
おおよそ行動原理となるものがないにもかかわらず二人は異口同音に応えたのだ。
自分の理解できないこの行動こそが人間の強さの秘密の一端なのであろう。
リリィは「そんなたいしたもんじゃないよ」と付け加えたが、ササミにとっては大きな手がかりだった。
そして最後にリリィは一つササミの思い違いを指摘する。
女ばかりのパーティーだと思っていたが、それは間違いで、グレンは男…いや、雄である、と。
思わず吹き出すササミ。
猫を数に入れていなかった自分と、しっかりと数に入れているリリィの違いが可笑しかったのだ。
その後、勇気の話に至った際、真の機嫌がパーッとよくなる。
>「宇宙一いい男に決まっとるやんか
>魔界出身やのにようわかっとるやんけ」
無邪気に喜ぶ真を見ながら、ササミは冷笑を浮かべるのだった。
一人の男のために女ばかりこれだけ探しに集まる。
それは勇気に好意を抱く女がそれだけ多いという事を言葉に込めたのだが、真は全く気付いていない。
真は何の疑問もなく周囲が自分に協力してくれていると思ってそれが当然のことだと思っているのだろう。
それはササミに言わせれば幼稚な幻想でしかない。
女がこれだけの人数動くのであるから、勇気がいい男なのは間違いない。
火力だけ強く、思慮も教養も気品も優雅さも戦術も何もない真は、自分が勇気に相応しい女だと思っているのだろうか?
少なくともササミはそうは思わない。
だが、それは友達の概念が人間と異なる為に導き出される相違であるとササミ自身も考えもしていなかった。
迷宮に鳴り響く牡牛の鳴き声にミノタウロスを想像したが、ミクの反応はミノタウロスを知らない者のそれであった。
「ミノタウロスゆーのは可哀想な奴だがね。
元は父親が神を怒らせたせいで、何の罪もない子供が牛頭人身にさせられたんやね。
そんな事する神もたいがいやけど、父親も負けとらずに酷くて迷宮に放り込んで育児放棄したげな。
牛で草食系やったのに、そんなことされりゃー凶暴になりゃーすわ。
その末裔が迷宮を徘徊するミノタウロスなんだわ。」
解説が終わると同時にミノタウロスが出現。
ササミは羽を広げ、天井の穴付近に移動して距離を取った。
ササミの目的は人間たちの観察。
登場当初は状況もわからずとりあえず手助けしたが、今は違う。
ミノタウロスと戦闘になり、勝つにしろ負けるにしろ、それは貴重な観察材料なのだから。
どうなることかと注視していたら、戦闘はあっけなく終わってしまった。
いや、始まりすらしなかったのだ。
突然現れた男がミノタウロスを一刀両断。
真の言葉を聞くに、この男が探し求めていたエンドウユウキその人だというのだから。
戦闘は始まらず、あっさりと目的も達成。
残っているのは女同士の男の争奪戦くらいのもので、それは観察材料にはならない。
と、拍子抜けして肩を落とすササミだったが、事態は終わっていなかった。
メンバーは勇気に違和感を覚え、フリードは無防備に近寄り、ルナはなぜかジャムパンを勇気の顔に押し付けるという暴挙に出ている。
この暴挙が引き金になったのだろう。
勇気の持つ刀から黒い靄が立ち上がった。
狂気を含んだような笑いとともに、全員抹殺宣言をするのだった。
「あはっ!」
距離を取り観察していたササミから小さく笑いがこぼれてしまう。
挙動不審に言動の脈絡のなさ、刀からの黒い靄。
本来の真の姿は知らぬササミですら明らかに操られているのが判る。
にもかかわらず真は勇気とともにこの場の全員を殺すと宣言。
思わぬ展開に驚き、そして喜びの笑いが出たのだ。
ミノタウロスを一刀両断するだけあって、勇気は高い戦闘力を持つのだろう。
が、個人の戦闘力には興味はない。
それより、救出目的である対象が操られており敵対的な存在になっていた。
その上、依頼者的人物が敵となった。
この状況で残された人間たちは何を思いどう動くのか。
特に戦闘力が劣るであろうリリィとルナはどうするのか?
ササミは距離を取りつつ状況の推移を注視している。
>113-118
>「そうか、そうか、お前達、俺を捜しに来たんじゃなくて、俺を邪魔にしに来たんだな
よーくわかったぜ。うんうん、お前もそう思うか……ならぶっ殺すしかねぇな」
ぶわっと勇気の刀から黒いもやのようなものが立ち上る
明らかに剣が原因ですどうもありがとうございました
「そういえば近くにアヌビス神殿もあるんでしたっけ?」
「剣とアヌビスの何が関係してるか知らないけどあるよ」(猫語)
と白々しく言うグレン
>「あはっ!」
「たぶんこういう事態に遭遇した場合
姉さんなら攻撃呪文で問答無用でふっとばすでしょうね・・・・・・死なない程度に威力を抑えてですが
ですがさすがに僕は友達を傷つけるような真似は出来かねます
故に”武器破壊”それを狙っていきましょう」
「そうだね明らかに持ってる武器が元凶だね」(猫語)
そう言いつつフリードは刀の壊れやすいポイントを考える
同じ箇所を攻撃されたならばフリードのサーベルもぶっ壊れるのだが
元々魔力の氷で作った刀身なのだからまた新しく作り直せばいいだけである
「・・・・・・・よく考えたら僕は北欧出身だから刀の弱点とか知らないじゃないですかぁ!
ミクさんあなた東方出身ですよね!何か知りませんか?」
だがフリードは出身地的に東方の剣の弱点なんて知らなかった
「とりあえず腕を凍らせて刀を振れないようにするしか!」
フリードの属性は氷である・・・がしかし炎道の属性は炎
相殺されるのではないだろうか?
「で、つい奪い取っちゃって今度はフィー坊が操られるんですねわかります」(猫語)
>「みんな悪いけど死んでな!!勇気のために!!!」
「だが断ります!僕が死んだら国際問題に発展しかねませんからね!!」
それは真も同じ条件であるだろう
「行きますよグレン!ソウルユニオンです!!」
ソウルユニオン!それは魔法使いが使い魔と合体することによりパワーアップするという
とても分かりやすい能力である
猫であるグレンと合体したフリードは猫耳猫尻尾が生え猫の特徴を得ることが出来るのだ!
「YES MY MASTER!!」(猫語)
光とともに合体し猫耳猫尻尾が生えるフリードリッヒ
首には当然鈴のついた赤い首輪が装着されている
「最初に言っておきます!僕は微妙に弱い!」
だがそれは身内に対しての相対的なものであり
そんなに弱いキャラでないはずだ
「ですが大切な友達を守るには十分です!フリージングサーベルすい!」
と腰のサーベルを抜き刃を無くした氷の刀身を生み出す
すいとはカキ氷の砂糖水味のことであり
透明で間合いが分り難いのが特徴である
欠点は柄だけ振ってるように見えてちょっと間抜けなことだ
だが今はそんなことを言ってる場合ではない
炎道の剣を破壊しようと剣を狙い攻撃を仕掛けるフリード
はたして炎道を救い出すことは出来るのだろうか?
>109-119
「いやだわ本当に……。 どうしてこうなってしまうのかしら……」
地面にうつ伏せに突っ伏したまま、ミクはそうぼやいた。
リリィに思わぬタイミングで突き飛ばされたので、踏みとどまれなかったのだ。
すでに今日何度も行った自身の運のなさを再度呪いながら、ミクは顔だけ向けて感動の再開を見た。
ちょうど、支離滅裂な事をしゃべりだした勇気の顔に、ルナがパンを押し付けた所だった。
>「はっ!!」
それは少なくとも、勇気にとって腹の足しにはならなくても、こちらを攻撃する口実にはなったのだろう。
勇気は高笑いと共に邪魔者の皆殺しを宣言し、真はあっさり寝返りを決意する。
ミクとしては、真に腹を立てる気にもならなかった。
今までの言動から、そんなことではないかと思っていたのだ。
ミクはよいしょと立ち上がると、手で軽くスカートの埃を払った。
これから戦いなのだから埃などいくらでもつきそうではあるので、意味は別にない。
何事も気分の問題である。
>「あはっ!」
我関せずとばかりに早々に高みの見物を決め込むササミに、ミクは内心苛立ちを感じた。
ササミは本来関係のない部外者なのだから当然なのだが、自分も見物とはいかないのが苛立ちの原因だ。
こんな時こそ真が、魔法でササミを撃ち落してくれれば良いのだが。
>「・・・・・・・よく考えたら僕は北欧出身だから刀の弱点とか知らないじゃないですかぁ!
> ミクさんあなた東方出身ですよね!何か知りませんか?」
「刀の弱点……ね。 心当たりがないわけではありませんけれど」
ミクは、以前友人のユリという少女が演舞で見せた刀を折る技を2つ、思い出しながら説明した。
1つは横からの回し蹴りで相手の持つ刀を叩き折る技。
もう1つは相手が上段から振り下ろす刀を両手の平で挟み込んで受け、そのまま捻り折る技だ。
「無刀取りとか、真剣白刃取りとかいう技でしたかしら? フリードならきっと出来ると思いますわ」
たぶん無理だろうと思いながら、ミクは白々しくそう付け足した。
要するに方法は何でもいいが、横からの衝撃に弱いということが伝われば良いのだ。
なにやら怪しげな魔法と共に合体する主従を援護する意味合いも込めて、ミクはするりと糸を伸ばした。
粘性の糸で勇気と真を縛り合わせ、動きを封じようとしたのだ。
勇気が炎を使えば真に被害が及び、真が魔法を使えば勇気が被害を受けて脱出し難いであろうとも思ったのだ。
被害を気にせずぶっ放なら、労せず敵の戦力を削ぐことになるのでそれもよし。 の一石二石の作戦だ。
「魔刀を折るのもよろしいですけれど、労多く益少ない作戦ですわね。
別に殺してしまってもかまわないのでしょう?」
投げかけた問いは、ミクの偽らぬ本心でもある。
2人の言葉が冗談ではないのは殺気から見て取れた。
殺そうとするからには、殺されても文句はないだろう。
総代を見つけはしたが、乱心の末に襲って来たのでやむなく返り討ちにした。
で済む話ではないか。
>「あ、ありがとうルナちゃん。大丈夫、腰は抜けてないから立てるよ!
>ちょっとびっくりしすぎて立てなかっただけ」
「うん、腰が抜けちゃったら背が短くなるもん。だるま落としみたいに」
>「心配してくれてありがとね。ルナちゃん」
「うん」
ぐちゃ…。
ジャムパンを勇気の口に押し当てルナは微笑んだ。
悪意はなかった。ただ脊髄反射で閃いた悪ふざけ。
勇気がパクッとジャムパンを食べ、皆で笑って学園に帰る。
それで終わると思っていた。でも――
>「ルナちゃん、なんてアグレッシブなアプローチ方法なの・・・・・・・やっぱり、ちょっぴり変わったかも」
「そうかな、変わった?」
>「でもルナちゃんがエンドウ君好きになったら、マコトちゃんとどっちを応援したらいいんだろう?」
「え!?そ、それはない!エンドウ君を好きになるなんて絶対にないよ!だって…」
>「ふふふふふふっはははははははははははははあははははははははっはははははははははははははははははははははははははは」
勇気は高笑いと共に邪魔者の皆殺しを宣言し、真はあっさり寝返りを決意する。
刀から黒いもやがぶわっと出たので、ルナは後ろにジャンプして足がもつれて尻餅をついた。
おまけに恐怖からか、ジャムパンを思いっきり握り締めている。それは手を振っても離れない。
>「あはっ!」
ササミの小さな笑い声にルナは眉根を寄せる。なんて不謹慎なのだろうと。
そして立ち上がり、もう一度勇気を見つめれば、フリードとミクが刀のことについて語っている。
勇気はあの刀に操られているらしい。
>「ですが大切な友達を守るには十分です!フリージングサーベルすい!」
「がんばれー!」
透明な刀を構えるフリード。糸を伸ばすミク。
皆必死で、ルナに出来ることといったらワディワジ(逆詰め)の魔法しかない。
「え、えっと…。詰まっているもの詰まっているもの…」
ワディワジは詰まっている物を別の場所へ詰めるという地味な魔法で
キョロキョロするルナの目に飛び込んだのはササミの魔乳。
(……だめだめ)
かぶりをふるルナ。確かに服の中には殿方の夢と希望が詰まっている。
ていうか、こんなことを考えているルナは軽いパニック状態なのだろう。
でも、信じられない言葉がルナの気持ちを変えた。
>「魔刀を折るのもよろしいですけれど、労多く益少ない作戦ですわね。
別に殺してしまってもかまわないのでしょう?」
「えー!?それはダメ!だってエンドウ君はお友達でしょ!?」
とは言っても他に何の作戦もないのに反対だけすることは出来ないわけで
ルナは一か八かササミの魔乳にワディワジをかけることにした。
詰め込む先は勇気の口の中。うまくいけば窒息させて気絶、なんてこともありえるけれど
その効果は使ってみなくてはわからない。
ただルナは、蓋のない水風船的なものに使用すれば入れ物ごと飛んでゆく、そう考えていた。
「リリィ…。見ててね。わた…オレのかっこいいところ…」
ルナはタクトの先をおでこにつけ精神集中。
「ワディワジーッ!!」
タクトを振り下ろす。魔力が青白い雷となってササミに迫る。
気合いの入りすぎで自分でも驚くほど目映い光りが辺りを包む。
「あれれ?」
息を飲むルナ。目がチカチカして、視界のなかに緑っぽい巨大な盲点が浮遊している。
果たして結果は?
戦闘開始の段になり各人の動きを観察するササミ。
使い魔の猫と合体するフリードを見ながら感心しつつ、意外に思った。
本人は微妙に弱い!と言い切っているがササミの見た限り戦闘力はかなりのものだ。
魔力で生成したフリージングサーベルすいも武器理念の根本が自身の持つ水晶の枝分刀と同じところにある。
これが感心した部分。
意外に思ったところは自分を微妙に弱いと評しているところ。
いや、これはある種の戦術とも取れる。(本人的にはそうではないのだが)
ササミにとって不要にしか思えない鈴をつけるという非合理的な部分もソウルユニオンによる代償か何かの効果がある、かもしれない。
それらも意外ではあったが、やはり一番は、この期に及んでも勇気を傷つけないように武器破壊を狙っているところだ。
操られているのが明白な以上、救出という条件下ならばそれも選択肢に入るだろう。
しかし、それを依頼した真があっさりと勇気のもとにつく。
そして殺意をもって殺すといった以上、既に救出という条件は破綻している。
そうなれば選択肢は一つしかない。
ササミはミクの提案に全面的に同意する他に考えが浮かばない。
いや、ただ一つミクの提案に異を唱えるとするならば「かまわないのでしょう?」などと、提案や示唆、同意を求めるなどの必要もないと考える。
殺意を持ち言葉にし、行動に移した者を前に何を躊躇うことがあるのだろうか?
だがこれこそが人間の特徴ともいえるのかもしれない。
二人の割れた意見にもう一人。
ルナが殺害反対を表明した。
大勢の意見が『友達』だから相手が自分を殺そうと向かってきても殺さずに対処する、という事なのだろう。
フリードの戦闘力をもってしても殺さずに武器破壊など至難の業であろうに。
ましてやルナはどんな方法を持っているというのだろうか?
注意深くルナを注視するのだが、それが大きな隙となるとはササミも考えてもいなかった。
>「ワディワジーッ!!」
振り下ろされ叩くとともに青白い雷が発せられる。
唱えたルナ本人すらも驚くほどの眩い光を発して。
自分の機動力と全方向に展開する超視力をもってこの距離を保てばあらゆる攻撃を回避できる。
そんな自信があったのだが、超視力が裏目に出た。
閃光に対して完全に無力というわけではないのだが、必要以上にルナを注視していた為に、まともに光がササミの目を直撃したのだ。
常人ならばまぶしく目が眩むところだが、採光能力過剰のササミの視力は完全にホワイトアウトする。
そして視界を共有しているがゆえに、全ての位置の目も影響を免れることはない!
結果、閃光は闇にも等しくササミの視力と思考を奪い、一瞬の硬直とともに青白い雷がササミを包み込んだ。
「えっ!?」
ぐいっと引っ張られる感覚に襲われた直後、ササミは天井付近から忽然と姿を消した。
「あだだだだ!な、な、なにしてくれやーすのーーー!!!」
ササミが現れた場所は勇気と真の間。
チューブトップのカップに詰め込まれた魔乳が露わになり、左の乳房は勇気の口に詰め込まれている。
もちろん全てが詰め込まれる程のスペースもなく、あふれた部分は勇気の顔全体を押し潰している。
右乳房は勇気の頭と真の顔に挟まれている、
その上、『詰め替え』が行われるときに引っかけたのだろう。
離れようにもミクが伸ばした粘着性の糸が三人に絡みつき離れられない!
「ぎゃーーー!!人のおっぱいに吸い付かんとってえええ!!って、来たららめええええ!!」
三位一体のくんずほぐれつな状態で混乱しながらも、ササミの項と背中の目は回復し、攻撃を仕掛けるフリードの姿を捉えていた。
高みの見物のはずがこのままでは自分ごと斬られてしまう危機にササミの声が響く。
スカートの手袋に分裂させた枝分刀を持たせ防御することすら、おっぱいに吸い付かれていてはとてもできる事ではなかった!
【詰め替え魔法でササミのおっぱいは勇気の口の中に】
【勇気・真・ササミが糸に絡まり三位一体状態】
【おっぱいを吸われて集中できずに無防備状態】
超究極限界突破超越凌駕克服スターライトブレイカーじゃん。
>116-123
魔法学園の生徒といっても、皆が皆超人揃いというわけではない。
中には、「何で君こんなところにいるの?」と首を傾げたくなるような者だって混じっている。例えば・・・
>「ええよ。勇気の言うことやもん。それが絶対に正しいに決まってる。勇気は操ら
れてるんちゃうやろ?
>ただ、その人のお願いを聞いてるんやろ?言わんでもわかる。勇気が私以外からいやいやなお願い聞くわけないもん
>勇気は正気や、正気に決まってる」
「いやいやいや、どう考えてもエンドウ君操られてるし、普通じゃないでしょうよ!」
>「みんな悪いけど死んでな!!勇気のために!!!」
「うわーっ!ちょっとストップ、ストップー!!」
・・・例えば、ここで必死に叫んでいる、ぐるぐるメガネの小娘。
>「だが断ります!僕が死んだら国際問題に発展しかねませんからね!!」
「ちょ、マコトちゃんだってどこぞのお姫様でエンドウ君はその許婚じゃない!
それはつまり、二人の身に何かあっても、国際問題に発展しちゃうって事じゃないのよー!!」
輝くばかりの才能や、潜在能力ををもった他の生徒達に比べ、この小娘ことリリィは、
一般人に毛が生えた程度のヨワッチイ能力しかありませんでした。¥
何でそんな「ほぼ一般人」が、こんな逸般人の皆様に混じって危険な遺跡に足を踏み入れたのかというと・・・・・・。
「やっと発見したエンドウ君と、殺し合いなんて出来ないよ!
マコトちゃんもしっかりしてよ!
少なくても私の知ってるエンドウ君は、情に厚くて友達に手を上げるような人じゃ無かったよ!
仮に彼が正気で、誰にも操られてないとしてもよ?!
大事な人が横道にそれた時には、体を張ってでも正しい道に連れ戻すのが愛でしょうが!!」
愛、ではなく、大事な友達が行方不明になってしまったからだ。
そして無事発見したはいいのだが、なぜかリリィ達を敵視して攻撃しようとしていたのだった。
ササミは高みの見物を決め込み、フリードはミクのアドバイスを受けつつ、エンドウを止めようとしている。
>「ですが大切な友達を守るには十分です!フリージングサーベルすい!」
「フリード君、そのなんちゃら「すい」って刃が無い剣?!
・・・・・はっ!もしかして、体ではなく心の邪を祓う剣?!悪の心を断ち切る魔法剣なの?!」
>「がんばれー!」
「フリード君にグレン、二人を止めてー!!」
主従合体を終え、ラブリーながらも強力な姿に変身したフリード。
だが彼の氷の剣に刃はあるし、都合よく魔を祓う剣をフリードが出せるわけもなかった。
そうこうするうちに、ミクがエンドウとマコトを見えない糸で縛り上げてしまった。
>「魔刀を折るのもよろしいですけれど、労多く益少ない作戦ですわね。
> 別に殺してしまってもかまわないのでしょう?」
>「えー!?それはダメ!だってエンドウ君はお友達でしょ!?」
「そうだよ!友達だよ!
考えてみて、ミクさんだって、友達のユリさんが同じ状況になったら、そんな間単にあきらめられるの?!」
リリィはミクの表情を見て、あわてて他の理由を探した。
「そ、それにフリード君が言ってたみたいに、二人の身に何かあったら国際問題モノだし!
今は正気に戻れなくても、学園に連れ帰れば何とかなるよ!
保険医か、無理なら呪術科の先生に見せれば、きっと元のエンドウ君に戻してくれるはずだし!」
まあ変態保険医に見せたら、再び『ラブリー幼女ユウキちゃん』としての人生を送る事になりそうだが。
この場で殺されるよりはマシだろう。
「そもそもエンドウ君とそのどす黒い魔剣は、この遺跡で何がしたかったの?
事と次第によっては、私達、魔剣さんに協力したっていいのよ?
ささ、魔剣さん、ここは一つ穏便に、エンドウ君の口を借りて何がしたいのか話してみてよ
言っておくけれど、あなたのマスターだったアドラスって人の行方は、私達も知らないの。
だから、聞いても無駄よ?」
エンドウもマコトも、まだ闘志を燃やしているように見える。
リリィの言葉に応じて、答えてくれるかどうかは分からない。
>「リリィ…。見ててね。わた…オレのかっこいいところ…」
「えっ、ルナちゃん、何か良い考えがあるの?!」
ルナはタクトの先をおでこにつけている。ものすごい集中力だ。
>「ワディワジーッ!!」
「わーっ!!って・…えええええ?!」
ルナの魔力が放たれた。青白い雷が目指したのは、エンドウ達ではなく傍観者を決め込んでいたササミ。
そしてその直後、真昼の太陽のように眩い光がこの場に出現した。
「目が・・・・・目があ!」
まともに光を見てしまったリリィは目を押さえて蹲った。
>「あだだだだ!な、な、なにしてくれやーすのーーー!!!」
ちかちか痛む目を擦りつつ、何とか周りの状況を確認するまでに回復した。
「なっ・・・・・・」
だがそこには、とんでもない光景が広がっていた。
>「ぎゃーーー!!人のおっぱいに吸い付かんとってえええ!!って、来たららめええええ!!」
・・・・・・「ぽろりもあるよ!」・・・・・・どころの騒ぎではなかった。
ササミの胸は露になり、エンドウの口に押し込まれている。
片胸はエンドウの口に、もう片方はエンドウとマコトの顔の間に。
更に悪いことに、ミクが使った糸が絡み付いて、そのまま身動きが取れないようだっ
た。
男の夢と希望が今ここに!などといっている場合ではない。
マコトは、婚約者についた悪い虫を見逃すほど寛容ではないのだ。
このままでは、すぐに血の雨が降るだろう。
>「ぎゃーーー!!人のおっぱいに吸い付かんとってえええ!!って、来たららめええええ!!」
「この変態魔剣!これが、あなたがエンドウ君の体を使ってまでやりたかった事なの
?!
魔界住人の留学生にセクハラするなんて、何て悪い奴なの!」
おっぱいを口に詰め込ませたのはルナなのだが、リリィはそこまで考えが及ばなかった。
「マコトちゃん、やっぱりエンドウ君は正気じゃないわ!
もしも正気なら、こんなイケナイ事、婚約者の目の前でしようだなんて絶対思わないわよ!
諸悪の根源は、このどす黒いオーラを放った魔剣なんだわ!
そういえば、前の持ち主もこんな感じだったし!」
・・・・・リリィはこういっているが、前の持ち主は復讐に燃えてはいたが、立派な剣士だったことを補足しておく。
「この変態魔剣!ササミちゃんとエンドウ君から離れなさい!
くらえ、超究極限界突破超越凌駕克服スターライトブレイカー!えいえいえい!!!」
凄い技名を叫びながら、リリィは箒で、魔剣を持ったエンドウの手首をぱしぱし叩lきこんだ。
だがこの位置ではエンドウの間合いでもあり、マコトの射程距離でもあった。
「さあ皆も手伝って!エンドウ君から悪い魔剣を祓って、皆で学園に戻るのよ!」
リリィはあたりをぐるりと見渡すと、ぶるっと身震いした。
「なんだか私、嫌な感じがするの。早くここから出ようよ!」
案の定と言うべきか、炎道勇気は操られ、その許嫁天海真は混乱して狂気に駆られた
昨日の敵は今日の友と言いますが、昨日の友は今日の敵と言い換えられます
操られている勇気が牙を剥く、傍観を決め込むもの、勇気を助けようとするもの、逆に殺そうとするもの、活躍しようとするもの
そして、訴えかけるもの
>「やっと発見したエンドウ君と、殺し合いなんて出来ないよ!
マコトちゃんもしっかりしてよ!
少なくても私の知ってるエンドウ君は、情に厚くて友達に手を上げるような人じゃ無かったよ!
仮に彼が正気で、誰にも操られてないとしてもよ?!
大事な人が横道にそれた時には、体を張ってでも正しい道に連れ戻すのが愛でしょうが!!」
「リリィになにがわかるんや!
私には勇気が全てなんや!私の勇気は強くてカッコ良くて最高の男なんや!そんな勇気が操られるわけなんかないんや!
嘘をつくんやない!リリィ!」
真ちゃんの言葉はただの強がりです
本人は口ではこう言ってますが、自分の中の絶対が揺らいでしまいました
そうなってはただただ混乱するしかないのです
リリィの叫びはいまの真ちゃんには無駄でしかないのです
そうこうしているとフリードがグレンと合体して、勇気に切りかかります
フリードは自分では弱いと言っていますが、実際はそういうわけではないでしょう
しかし、勇気は魔法よりも剣術が得意な男の子、フリードの刀を狙った攻撃は勇気にものの見事に避けられました
刀は衝撃には弱いので刀で受け止めるということは避けたのです
避けたのが仇となったのかミクの糸にかかってしまう、勇気と真
>「魔刀を折るのもよろしいですけれど、労多く益少ない作戦ですわね。
別に殺してしまってもかまわないのでしょう?」
「ほら見ろ!やっぱりミク、あんたはそういう人なんや!」
真はそう叫ばずにはいかなかったのです
ミクのそういうところは真は嫌いではなかったからか、こうなることも予想通りだったのです
一戦を交えることも覚悟していたのです
まあ、間抜けな真は警戒していたわりにはあっさりとミクの糸に引っかかってしまいました
勇気「ちくしょう!うごけねぇじゃねぇかよ!くっそ!邪魔しやがる!」
この邪魔はいったいなんのじゃまなんでしょうか
勇気は魔法や刀を使わないでじたばたしているだけです
「そもそもエンドウ君とそのどす黒い魔剣は、この遺跡で何がしたかったの?
事と次第によっては、私達、魔剣さんに協力したっていいのよ?
ささ、魔剣さん、ここは一つ穏便に、エンドウ君の口を借りて何がしたいのか話してみてよ
言っておくけれど、あなたのマスターだったアドラスって人の行方は、私達も知らないの。
だから、聞いても無駄よ?」
勇気「やりたいこと?封印を解くことだよ
この遺跡に封印されてるあぶないあぶない狐さんを解放するんだよ!!」
あぶない狐さんと言えばあの狐さんでしょう
さてさて、炎道くんがなんやいっていると突如当たりが閃光に包まれました
勇気&真「うお!まぶし!」
そして、そのあと真ちゃんは想像絶する光景を目にするのです
婚約者の顔面に魔乳がつっこまれています
「なんでやねん!」
思わず突っ込んでしまいます
「マコトちゃん、やっぱりエンドウ君は正気じゃないわ!
もしも正気なら、こんなイケナイ事、婚約者の目の前でしようだなんて絶対思わないわよ!
諸悪の根源は、このどす黒いオーラを放った魔剣なんだわ!
そういえば、前の持ち主もこんな感じだったし!」
「いや、どう考えてもあのアホのせいやろ!」
とルナを指差す
「この変態魔剣!ササミちゃんとエンドウ君から離れなさい!
くらえ、超究極限界突破超越凌駕克服スターライトブレイカー!えいえいえい!!!」
バシバシと叩かれて怒り心頭な勇気君
「いい加減にしやがれ!まずはてめぇの友達から地獄に送ってやる!!」
勇気の手から真っ黒い焔が溢れ刀を包み込み、勇気はそれを振り上げ、刃がリリィを襲う
リリィはどうなってしまうのか!誰かが決める!!
ミクが拘束するために使っている糸は、火に弱い。
マコトが火の魔法を使えばそう長くは持たなかっただろうが、場と精神的な混乱がマコトの閃きを邪魔していた。
そして、エンドウこと魔剣の望みは、この遺跡に封印されている狐を解放することらしい。
「なんかいかにも胡散臭い話ね。グレン、あなた猫なんでしょ?何か聞いてる?」
ソウルユニオンで猫耳猫尻尾が生えたフリードは、鈴のついた赤い首輪がとてもチャーミングだ。
だが外見の愛らしさとは裏腹に、とても強い。
(本人は微妙に弱いと言っているが、それは比較対象である家族が反則並みの強さだからだ)
そのまま攻撃できれば、ミクによって動きを封じられたエンドウはかなり苦戦を強いられたに違いない。
だが、今のフリードの心中を図るのは難しい。
彼の目の前では、胸がはだけたササミ、エンドウ、マコトが団子状になった上、
戦闘能力がゼロに等しいリリィまでがでしゃばって、のこのこエンドウの魔剣の射程距離に入り込み無駄な攻撃をしているからだ。
「さあ、フリード君今よ!やっちゃってください!」
今よ!ではない。
リリィがこんなところをうろちょろしていては、フリードがやりにくいのは火を見るより明らかなのだから。
>「いい加減にしやがれ!まずはてめぇの友達から地獄に送ってやる!!」
「えっ・・・?!キャー!誰か助けて!!」
>勇気の手から真っ黒い焔が溢れ刀を包み込み、勇気はそれを振り上げ、刃がリリィを襲う
>120-130
「14歳の子供とガチで戦って負けた人が使ってた剣風情が!!」
アドラスは自滅しただけで別にガチで負けたわけではない
「僕の友達を操っていいわけがないでしょうが!
身の程をわきまえなさい!!」
と剣を一括するフリード
>「なんかいかにも胡散臭い話ね。グレン、あなた猫なんでしょ?何か聞いてる?」
「狐のことなら狸にでも聞いてよってグレンは言ってますね」
とフリードリッヒ
この形態はフリードが主体のためグレンは直接しゃべることは出来ないようである
まあ狐で怖いのって言ったら白面だろうが
そんなことは白人であるフリードが知っているわけが無かった
>「さあ、フリード君今よ!やっちゃってください!」
「いえリリーさんそんな所に居られては攻撃が出来ないんですけど」
だがフリードはリリーのせいで攻撃が出来ない
>「いい加減にしやがれ!まずはてめぇの友達から地獄に送ってやる!!」
>「えっ・・・?!キャー!誰か助けて!!」
「やらせはしません!やらせは!!」
とリリーを突き飛ばし剣を受けまた怪我をするフリード
スフィンクスとの戦いと同じ状況である
今日のフリードは怪我ばっかしている気がする
というより出てくるたびにどこか怪我をするのがフリードなのか?
スフィンクスとの戦いからまだ一日も経っていないのに
だがそんなフリードリッヒはニヤリ・・・・と笑った
「僕の血を浴びましたね・・・・・」
どうやらフリードリッヒはわざと斬られたようである
「これはほんのちょっとした使い魔契約の応用です!!」
と自分の血を利用して魔力を流し込み剣を支配しようと試みるフリード
フリードは以前グレンと契約するのにも血を媒介にしている
それを応用したということだろう
じゃあ対スフィンクス戦でもやれよと突っ込まれそうだが
それはそれこれはこれである
「僕程度の魔力であなたを支配できるとは思いませんが隙を作ることは出来るでしょう
さあどなたでも良いですから剣の横っ面を硬いもので砕いてしまってください」
覚醒の影響で伸びに伸びた髪の毛がほんの少しずつ短くなっていく
これが元の長さに戻ってしまった時フリードの影響は終わり剣は通常運行可能となるだろう
だがそんな剣を破壊できるようなものを持っているのはササミさんぐらいではないだろうか?
ミクの糸なら絡め取れそうだが彼女は殺る気マンマンだしルナの能力でどうしろと言う状況である
ましてやリリーの箒が仕込み箒ということは無いだろう
グレンは思った・・・・自分がメインになれば怪我の影響とか無くなるんじゃね?と
>121-132
>「ほら見ろ!やっぱりミク、あんたはそういう人なんや!」
「先にこちらを殺そうとしたあなたに、そんな事を言われる筋合いはありませんわ」
殺してしまっても構わない発言に反応した真の非難にも、ミクは涼しい顔だ。
もちろん非難は敵側からだけではない。
普通に考えて、操られた仲間をいきなり殺すと言うのが乱暴すぎるのは、重々承知しての発言である。
>「えー!?それはダメ!だってエンドウ君はお友達でしょ!?」
>「そうだよ!友達だよ!
> 考えてみて、ミクさんだって、友達のユリさんが同じ状況になったら、そんな間単にあきらめられるの?!」
「悲しいですけれど、仕方ありませんわね」
ミクがさらりとそう返すと、リリィは慌て別の理由を口にした。
勿論その理由も、ミクには考える必要もない理である。
普通なら、自分の身を守るためなら、ほとんどの問題は考える必要もないものとなる。
当然今は反対している人も、切羽詰まれば考えを変えるだろうとミクは思っている。
つまるところ、誰しも一番可愛いのは自分の身なのだ。と。
>勇気「やりたいこと?封印を解くことだよ
>この遺跡に封印されてるあぶないあぶない狐さんを解放するんだよ!!」
「狐?」
リリィの質問に答えた勇気の言葉に、ミクは首を傾げた。
つい先ほどササミに聞いた【みのたうろす】の話が、ミクの頭をよぎる。
>「ワディワジーッ!!」
>「ぎゃーーー!!人のおっぱいに吸い付かんとってえええ!!って、来たららめええええ!!」
ミクは、もう少し事態の進展を見極めようと考えていた。
だが、事態はミクの予想をはるかに超える方に進んでいた。
誰が、ササミの胸が勇気の口に飛び込む。などという事を予想できただろう。
事実は小説より奇なりとはよく言ったものだ。
「ぷっ……!」
思わず吹き出したミクは、笑いを堪えるのに苦労する羽目になった。
当事者たちは笑っている場合ではないだろうが、ミクからすれば良くできた喜劇である。
高みの見物を決め込もうとしたササミまでその喜劇に巻き込まれたのだから、まさに拍手喝采もの。
さんざん苦労させられたのが報われたような気持ちなのだ。
>「この変態魔剣!これが、あなたがエンドウ君の体を使ってまでやりたかった事なの?!
笑っていなかったのは、当事者だけでも無かった。
怒ったリリィが手にした箒で勇気に殴りかかるが、これは効果的とは言えない方法だ。
フリードの攻撃の邪魔になるだけでなく、自身勇気の攻撃範囲に入る事になるのだから。
>「さあ皆も手伝って!エンドウ君から悪い魔剣を祓って、皆で学園に戻るのよ!」
>「なんだか私、嫌な感じがするの。早くここから出ようよ!」
リリィと同じく、ミクもぐるりと周囲を見回した。
「なるほど……ここは、みのたうろすの迷宮…ですのね」
伝説の場所がこの地だと言っているのではない。
だが、まさにここは、ササミが言っていたミノタウロスの迷宮と同じではないか。
危険な生物を閉じ込めているという意味において。
>「いい加減にしやがれ!まずはてめぇの友達から地獄に送ってやる!!」
>「えっ・・・?!キャー!誰か助けて!!」
>「やらせはしません!やらせは!!」
戦いの場においては呑気と言っても良い感想を抱くミクだが、その間にも戦況は次々に変わっていく。
叩かれて怒る勇気がリリィに切りつけようとし、フリードがリリィを突き飛ばして代わりに傷を負う。
こちらは大体ミクが最初予想していた、ついでに言うなら待っていた展開である。
「あまり不用意に近寄っては危ないですわよ。 リリィさん。
フリードも間一髪助ったようですけれど、毎回そう上手く行くとは限りませんから」
すっとリリィに近寄ったミクは、助け起こしながら引っ張って勇気達から距離を取らせた。
フリードの言葉からするにどうやらわざと切らせたようだが、それには触れるつもりはない。
怪我をしてくれていた方がミクもありがたいのだ。
ササミと似たような考え方を持つミクが、勇気を殺す事に同意を求めた理由はただひとつ。
他の人間も同じ結論にたどり着かせる為なのだから。
助けに来たはずの友達を自分の手で殺さなければならないとは、最高の見世物ではないか!
「そろそろリリィさんもお分かりかしら?
総代を助けるのは、危険が大きすぎますわ。
仲間を助けたいお気持ちはわかりますけれど。
そのために、自分や他の方が命を落としては意味がありませんもの。
仮に総代を正気に戻せても、自分が友達を殺した。などと知らせるのは残酷な事でしょうに。
もし総代が正気なら、友達を殺すくらいなら、自分が殺されたいと言われるでしょう。
ルナさんも、そうは思われなくて?」
重要なのは本当に殺して欲しいと思っているかではなく、言うかもしれないと思わせる事だ。
できれば(姉の性格からして誘いに乗りそうな)フリードにも誘いをかけたい所だが、そちらはあきらめた。
フリードにはもう少し勇気の動きを制限していてもらわなければならない。
武術の素人でも一撃を加えやすいように。
ミクの手の中に、するすると糸が集まりだした。
糸は集まり、束ねられ、固まって槍のような形状でミクの手に握られる。
実際それは、並みの槍よりもはるかに堅く、軽い槍なのだ。
その糸の槍を、ミクはリリィとルナの間の床に突き立てて手を離した。
> 「僕程度の魔力であなたを支配できるとは思いませんが隙を作ることは出来るでしょう
> さあどなたでも良いですから剣の横っ面を硬いもので砕いてしまってください」
「硬い物ならここにありますわ。
軽いですから扱いやすいでしょうし、しばらくは火にも耐えるでしょう。
この槍で、総代を自由にしておあげなさい。
ただし、時間は少ないですから、どこを狙うかは十分お気をつけなさいな。
刀を狙って失敗し、フリードが自分を傷つけながら作った機会が無駄になれば目も当てられませんから。
腕に自信がないなら、ここはもう少し大きな的を狙う事をお勧め致しますわね。 ふふふ……」
涼しげな笑みを崩さずに、ミクはリリィとルナを代わる代わる見比べる。
どちらが槍を手にして、どこに一撃を加えるかが楽しみで仕方がないのだ。
>>121-
>>134 もはや特務隊は戦う力を完全に失い ただ戦いを呆然と眺める他無かった
既に弾薬の手持ちは尽いた為戦う術を失い 人員はほぼトラップやこの戦いの巻き添えで戦死
残った隊員数名も満身創痍となった。辛うじて生き延びた隊員は比較的安全な場所に避難し、命を繋いでいた
「我々がここまで追い込まれるとは…」
指揮官である少尉は息をするのもやっとの状態で作戦継続が不可能である事を滲ませている
だが次の瞬間 半死半生だった隊員達は黒い影に包まれて瞬く間にその姿を消した
いや 何者かによって強制的に空間転移させられたのだ
「なかなか面白い展開になっていますわね…
大方、彼女の差し金かしら?」
隊員達を包んだ黒い影が消えるのと同時に、また一つの新たな黒い影が現れると瞬時にミクの影へと入り込む
「これは一体どういう事でしょう?雛型同士を争わせるなんて…
まさか貴女の仕業ではないでしょうね?」
ブレは、この戦いが明らかにミクの仕組んだ物である事に気づいている
詰問するような口調ではあるが、実に淡々とした物で単純に現在の状況説明を求めているだけだ
「本来であれば総裁との約束を反故にするような出来事ではありますが
総裁は、お考えを改めました そう貴女の行っている事と同じのようです」
ブレはミクの極めて近くに居るがミクの影に同化し入り込んだ為 姿は見せない
ただブレの声だけがミクのみに聞こえるのだ
>「ぎゃーーー!!人のおっぱいに吸い付かんとってえええ!!って、来たららめええええ!!」
「きゃー!ごめんなさーい!」
ルナは自分のおこないが怖くなって、不良系のキャラをつくるのも忘れ両手でペケをつくる。
と同時に解除されるワディワジ。
そんなルナを真ちゃんがアホと指差せば、
刀を振り上げた勇気がリリィに襲いかかった。
>「いい加減にしやがれ!まずはてめぇの友達から地獄に送ってやる!!」
>「えっ・・・?!キャー!誰か助けて!!」
>「やらせはしません!やらせは!!」
「キャーー!!だめぇー野蛮人!」
響く絶叫。リリィをかばい斬られるフリード!
驚いたルナはその場にへたり込む。するとミクが――
>「そろそろリリィさんもお分かりかしら?
総代を助けるのは、危険が大きすぎますわ。
仲間を助けたいお気持ちはわかりますけれど。
そのために、自分や他の方が命を落としては意味がありませんもの。
仮に総代を正気に戻せても、自分が友達を殺した。などと知らせるのは残酷な事でしょうに。
もし総代が正気なら、友達を殺すくらいなら、自分が殺されたいと言われるでしょう。
ルナさんも、そうは思われなくて?」
「え…。たしかに…私が総代でもそう思う。けど…」
> 「僕程度の魔力であなたを支配できるとは思いませんが隙を作ることは出来るでしょう
> さあどなたでも良いですから剣の横っ面を硬いもので砕いてしまってください」
血を流しているフリードを見ているとやっぱり心が痛む。
覚醒の影響で伸びた髪の毛が少しずつ短くなっていく。
それがちょっとツボに入って、ルナは両手で顔を隠しながら肩を震わせ笑いを堪えた。
それでも涼しげな笑みを崩さずに、ミクはリリィとルナを代わる代わる見比べるていたので
ルナもミクとリリィの顔を代わる代わる見比べたあとリリィのグルグル眼鏡の奥の瞳を見つめる。
そして深呼吸したあと槍を手に持ち、リリィへと差し出すのであった。
「総代を助けることが大きな危険なら、みんなで小分けして小さな危険にすればいいと思うの!
槍は任せたわ!信じているからねリリィ!!」
ルナは優しいお友達を誰一人失いたくない。
リリィに槍を託し、ワディワジを使うべく再びタクトを構える。
上着のポケットにはどさくさに紛れて詰めておいた遺跡の砂。
魔剣の力がフリードの魔法でどのくらい抑えられているかはわからないから油断は禁物。
「ちょっとちょっと魔剣さん。私たちを襲うのと狐の封印を解くのとなんの関係があるっていうの!?
もう、いいかげんにエンドウ君を解放しなさいよ!!」
じりじりとエンドウとの間合いをつめれば、視界に入るあられもないササミの姿。
「あはっ、ササミさーん。たすけてもらいたいんですけど…。やっぱりムリ?」
今さらだけどなんとなく言ってみた。ルナは上着を脱ぎササミへと放り投げる。
だけどそれはフェイント。
「――ワディワジー!!」
同じ手が二度通用する相手とは思っていなかったので、
今度は空中を舞う上着のポケットに詰め込んだ砂へ魔法をかけ、エンドウの顔に上着を飛ばした。
上手くいけばそれはエンドウの鼻の穴を目指し顔に張り付くかもしれない。
その間にルナは魔剣を持っている手に掴みかかり、隙あらば手に噛み付こうとする。
ワディワジが解除されると同時にまたしてもササミは引っ張られるような感覚に襲われる。
おっぱいを咥えられ、糸で三人がんじがらめになっている状態から脱することができた。
フリードや勇気、真からは五歩ほどの距離で間合いからは離れており、そこへ上着を脱いだルナが駆け寄ってくる。
いきなり男におっぱいをダイレクトに咥えられた羞恥や怒り。
その元凶たるルナへの怒り。
ふつふつと湧き上がる怒りは戦いに介入せずに観察するという目的を吹き飛ばして有り余るものだった。
対象は二人だが、七つの顔を持つササミは同時に怒りをそれぞれにぶつけることができる。
「乙女のおっぱいに吸い付いとーてタダで済むと思ってんのきゃ!阿っ!」
「吽っ!」
項と背中の顔が怒りを込めて同時に二つの声を叫んだ。
これは怪音波ではあるが、それぞれ単独では何の害のない発音に過ぎない。
しかし、二つの音の波が重なり合う場所では強い衝撃となっるピンポイント攻撃。
波長を重ねる座標を計算しなければいけないので普通では使えない。
今のようにフリードが血を利用して魔剣を支配しようと牽制をしているような場合でない限り。
かくして阿と吽の怪音波は勇気と真の顔間で重なり乾いた音とともに衝撃波が発生した。
重ねる音の波が二つなので真と勇気の二人はせいぜい思いっきりビンタされた程度だが、兎にも角にも一発張っておかなければ気が済まなかったのだ。
本来勇気を操っている魔剣が対象となるべきなのだが、羞恥と怒りに燃える乙女にそこまで考える余裕はなかった。
とばっちりともいえるが諦めてもらうしかない。
「お風呂に入ってマッサージ30分!」
「朝晩の筋トレ1時間!」
「合うブラがないから形崩れないように必死にケアしとりゃあすに…!」
「詰め込んで引っ張られて垂れたら取り返しがつかーせんだぎゃ!」
「ごめんなさいだですみゃあすか!!」
>「あはっ、ササミさーん。たすけてもらいたいんですけど…。やっぱりムリ?」
カップからあふれてしまった魔乳を元に詰め直すのはかなりの手間。
投げられた上着でとりあえず急場を凌ごうと手を伸ばすが、各所の口から溢れ出る怨嗟の言葉と表情は怒りに満ち満ちている。
手助けしてもらいたいという意味でも、ルナの命を助けて欲しいという意味でも完全に無理!と雄弁に物語っている。
>「――ワディワジー!!」
再び唱えられるワディワジーにササミは反射的に手をひっこめ、全力で天井付近に逃げた。
またおっぱいを勇気の口に詰め込まれてはたまらなから。
そしてこれは完全にササミに対する宣戦布告。
いや、今さら宣戦布告もないのだが、ササミも枝分刀を分裂させ十刀流で戦闘態勢を取っていた。
が、360度全天に展開するササミの視界はルナの一連の動きを捉えていた。
ワディワジーは上着にかかり、そのポケットに詰め込んであった砂を勇気の顔に飛ばす。
そしてルナ自身は勇気の手に掴みかかり、噛みつこうとしている。
完全に自分に向かってくると思っていたので、あまりに意外な行動にササミの怒りが急速に醒めていった。
怒りが収まったのではない。
もちろんルナに対する怒りはあるが、それ以上に状況が見えてきたのだ。
フリードは己の身を切らせながらその血を利用して動きを牽制し、ルナに至っては目晦まし程度の牽制で身一つで向かっていく。
『友達だから傷つけたくない』という言葉通りの行動にあっけにとられてしまったのだ。
今の状況で勇気と真を殺すべきだというササミの考えは変わっていない。
フリードやルナを見ながらそこまで殺したくないのなら勇気の腕一本きり飛ばしてしまえば早いのに、と思う。
人間とはどこまでも不合理な生き物だが、だからこそそれを観察する意味もあるだろう、と。
そう思いながら天井付近で臨戦態勢を取りつつ、あふれた魔乳をチューブトップのカップに詰め込む作業に勤しむのであった。
【ワディワジー解除で糸の拘束から抜け出す】
【勇気と真にまとめて怪音波ビンタ】
【天井付近で戦闘態勢のまま様子見しながらおっぱい詰め込み作業】
>「やらせはしません!やらせは!!」
とリリーを突き飛ばし剣を受けまた怪我をするフリード
「フリード君しっかりして!あ・・・あ・・・!どうしよう、私をかばったから・・・・・。
私のせいでフリード君が・・・・・!」
フリードがリリィをかばったのは事実だが、傷を負ったのは彼なりの計算があってのことだったらしい。
彼は自ら流した血を利用して、魔剣の支配権を奪い取ろうとしているのだから。
だがあえてその策をとったのは、自分のせいでフリードを傷つけたと感じるリリィのショックを和らげるためだったのかもしれない。
こんな方法が楽に行使できるのならば、フリードはきっと昨日のスフィンクス戦で手札として使っていたはずだからだ。
>「あまり不用意に近寄っては危ないですわよ。 リリィさん。
> フリードも間一髪助ったようですけれど、毎回そう上手く行くとは限りませんから」
音も無く近づいてきたミクはリリィを助け起こすと、引っ張って勇気達から距離を取らせた。
ただし、引っ張ったのは手ではない。
襟首だ。
> 「そろそろリリィさんもお分かりかしら?
> 総代を助けるのは、危険が大きすぎますわ。
> 仲間を助けたいお気持ちはわかりますけれど。(略)」
>「え…。たしかに…私が総代でもそう思う。けど…」
「げほっ!げほげほっ!!」
床に座り込み、盛大にむせるリリィの頭上から、ミクは淡々と彼女なりの事実を告げた。
ルナは面食らいながらも、それに答えを返す。
リリィが身をこわばらせたのは傍目にも分かっただろう。
そう、ミクの言葉には「そうかもしれない」と思わせるだけの重みがあった。
確かにエンドウは、友達を傷つけて平気でいるような男ではない。
実際、先ほどはフリードが庇ってくれなかったら危なかった。
魔法学園には優秀な保険医がいて、けが人は多くても死人が出ることはまず無い。
だがこの場でリリィの手に負えないようなけがを負うことになれば、学園内に運び込むまで時間がかかる。
措置が遅れれば、命にかかわるだろう。
エンドウも、それ以外の者も、だ。
「硬い物ならここにありますわ。
軽いですから扱いやすいでしょうし、しばらくは火にも耐えるでしょう。
この槍で、総代を自由にしておあげなさい。」
リリィははっとしてミクの顔を見た。信じられなかった。
ミクは微笑みを絶やさず、さらに続けた。
> ただし、時間は少ないですから、どこを狙うかは十分お気をつけなさいな。
> 刀を狙って失敗し、フリードが自分を傷つけながら作った機会が無駄になれば目も当てられませんから。
> 腕に自信がないなら、ここはもう少し大きな的を狙う事をお勧め致しますわね。 ふふふ……」
ミクを睨みつけていたリリィの顔が、くしゃりとゆがんだ。
「どうして、そんなこと言うの」
ルナは顔を覆っている。肩が小刻みに震えている。リリィの目には泣いているかのように映った。
フリードもそうそう長く魔剣を抑えてはいられない。かといって、フリードの言うようにピンポイントで狙える自信も無い。
大きな的、という言葉が、ひたひたと現実味を帯びてくる。
そしてルナは深呼吸したあと、槍を手に持ち、リリィへと差し出すのであった。
リリィは震えながら首を大きく横に振ったが、ルナはリリィに槍を渡した。
ミクは「軽い」と話していたが、リリィには途方も無く重く感じた。
「無理だよ。私なんかには出来ないよ。選べないよ・・・・・・」
叫びだしたくなるような罪悪感が、リリィを苛んでいた。
それは何も今目の前で起こっていることだけが理由ではなかったが、ブレに記憶を改竄されている彼女には分からない。
だがそんなリリィの心中を知る由も無いルナは、ないていたとは思えないほど明るい声でこう言った。
>「総代を助けることが大きな危険なら、みんなで小分けして小さな危険にすればいいと思うの!
>槍は任せたわ!信じているからねリリィ!!」
「えっ?!ええっ?!」
そういってルナは、もう一度魔法を使うためにタクトを取った。打って出るつもりなのだ。
(何とか・・・・・・何とかしなくちゃ)
リリィにはろくな力が無い。
なのに、ルナとフリード、そして(内心はどうあれ)ミクは信頼して、戦うための力を託してくれた。
(ササミも思わぬハプニングで気を悪くしたようだが、、とりあえず今彼らの邪魔はしないでくれるらしい)
成功の可能性が低いなら、それを補うだけの何かをしなくてはならない。
何とか知恵を絞って、みんなの期待に応えなくては。
「・・・・・・そうだ!」
リリィはミクの背後に身を隠すと、鞄から聖水のビンを取り出し、1本だけ残して後は全部槍へと振りかけた。
細い糸を束ねて作っただけあって、槍は聖水をしっかり含んでいく。
「ミクさん、私、がんばってみるよ。
だって、どっちの友達も大事なの。どっちかなんて、選べない。
それに、ルナちゃんは信じてるって言ってくれたもの。フリード君だって・・・・・・だから、もう裏切りたくない」
これは、賭けだ。
フリードは「魔剣を砕け」といったが、リリィの腕力でやり遂げられるかは分からない。
それでも、魔が宿るものならば、聖水は有効なはずだった。
砕けないまでも、エンドウの手から引き離すだけのダメージは与えられるかもしれないとリリィは考えたのだ。
万が一避けられた場合でも、エンドウに聖水がかかるかもしれない。操っている魔剣も無傷とは行かないだろう。
もっとも、これは諸刃の剣だった。
もしも失敗すれば、聖水でフリードの血が薄められることになり、魔剣への影響力を下げることになるからだ。
だが、迷っている暇など無い。
>「――ワディワジー!!」
この呪文に天井付近に逃げたササミは、枝分刀を分裂させ十刀流で戦闘態勢を取っていた。
だが、あくまで牽制であって、こちらを攻撃するつもりは今のところ無いらしい。
ルナのワディワジーは、上着のポケットに詰め込んであった砂を勇気の顔に飛ばす。
「飛べ!」
リリィは箒に跨ると、エンドウめがけて突進していった。
『手を貸す気が無いなら、せめて邪魔しないで!』
これはエンドウ以外の者に向けて放ったテレパシーだ。
リリィ自体はマコト宛のつもりだったが、ササミやミクは自分宛だと思ったかもしれない。
箒を飛ばすリリィは、弧を描いて上からエンドウの魔剣を狙う気らしい。
箒の加速と落下する力を利用して、自分の腕力以上の力で魔剣へ槍をたたきつけるつもりなのだ。
勇気が刀を振り上げたとき、真は目を逸らします
この刃が振り下ろされれば、リリィの致命傷といえる傷を与えてしまいます
勇気のためとに彼女は一緒にここまで来た仲間を裏切りました
それでも友達の血を見るというのは耐えられません
真はお嬢様、そんな覚悟など期待出来る者ではないです
>「やらせはしません!やらせは!!」
リリィを庇い傷を負うフリードから血が出ています
とても痛そうです
>「僕の血を浴びましたね・・・・・」
ニヤリと不敵な笑みを浮かべるフリード
勇気「なにがおかしい!!」
完全に小物の発言である
>「僕程度の魔力であなたを支配できるとは思いませんが隙を作ることは出来るでしょう
勇気は確かに契約まではいかないけれど、その動きを大幅に制限されてしまいました
真は迷っていた
友達を取るか、恋人をとるか
さっきはとっさに勇気を取ったが、真は正直に迷っていた
というよりかは混乱していた
自分がどうしたらいいかわからない
(私はどうしたらいいんや……)
>「ちょっとちょっと魔剣さん。私たちを襲うのと狐の封印を解くのとなんの関係があるっていうの!?
「邪魔をしやがるからだ!今さら謝ってもどうにもならない!もう、お前らの死は決定事項だ!!」
>「――ワディワジー!!」
飛んでくる上着をとっさに刀で防ぐ、しかし、ポケットの中の砂が顔面に襲いかかる
「勇気!!」
糸に絡まりながらも身を呈して勇気を守る真
「う・・・・・・あいたっ!」
その後にやってくる衝撃、頬を思い切りぶたれたような衝撃に真は文字通り面食らう
「え、え!!」
なにが起こったかわからず、混乱してしまう
勇気を見ても同じような状況でした
あきらかな隙
「飛べ!」
リリィが叫ぶ、箒にまたがって一目散に勇気の魔刀をめがけて
その姿を見た真はとっさにリリィに雷撃呪文を放とうとするが……
>『手を貸す気が無いなら、せめて邪魔しないで!』
真はそのテレパシーで動けなくなる
そして、いくらリリィでも箒のスピードと槍の堅さに助けられ槍が魔刀をへし折った
勇気「うぉぉぉぉぉっぉぉっぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ」
勇気の叫びがあたりに響き渡りました
魔刀から再び黒い靄が吹き出します
それこそ魔刀の意思そのものなのです
それが次の宿主としてリリィの槍を選んだのです
さあ、リリィ大ピンチ、彼女も操られてしまうのか!
ミクが糸をより合わせて作った槍は思いのほか強靭だったようで、エンドウを操っていた魔剣をへし折ることには成功した。
(やった!・・・・っ?!)
だが、へし折ったまではよかったが、リリィも無事というわけにはいかなかった。
体当たりする勢いで降下し、突っ込んだのだ。
無事エンドウの魔剣刃が折れたとしても、その加速が全て相殺されるわけもない。
「ぎゃふっ!!」
床に激突したリリィは二、三度バウンドした後勢いよく転がり、祭壇の近くでようやく止まった。
右足が折れているようだが、うめき声ひとつあげるでもない。
我慢強い、というわけではなく、意識が完全に飛んでしまっているようだ。
>「うぉぉぉぉぉっぉぉっぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ」
エンドウの叫びがあたりに響き渡り、折れた魔刀から黒い霧が噴き出す。
黒い霧はなぜか、変幻自在のシミター使いであるササミではなく、ミクが作ったかりそめの槍を持つ素人リリィを宿主に選んだようだ。
『・・・・・・なるほどなるほど。思ったとおり、この娘の能力は、封印にも直接干渉できる類のものらしい』
黒い煙がリリィの上に移動した。
倒れたリリィが握ったままの槍は、穂先から黒い煙のようなものが立ち上がり、色を変えていく。
すぐに槍へ憑依出来ないのは、特攻する直前振りかけてあった聖水を無効化しているせいだろう。
『これは実に好都合だとは思わないかね?
この娘の身体を使えば、儀式の完成を待つまでもない。あの狐の封印をすぐにでも解けるのだからな』
見えない糸に引きずり起こされるようにして、リリィが起き上がった。
折れた足がおかしなほうにねじ曲がっているが、全く痛みを感じてすらいないようだ。
『おっと、余計なことはするなよ?ヘタに動かれると操る力k減を間違えて、この娘の首をへし折ってしまうかもしれない。
この身体はとても便利そうだが、何、代わりなど、いくらでもいるのだからな』
そう言ってリリィは、がくっと首を90度曲げて上空のササミへと視線を向けにやりと笑った。
『さあ、友達が乗っ取られるさまを、そこで指をくわえて見ていたまえ』
【リリィ、地面に激突後意識不明。右足骨折。ミクお手製の槍に、魔剣の意思が取り付きリリィを操ろうとしている。
聖水を無効化しながらじわじわ侵食中。 特に妨害がなければ、次ターンで完全憑依完了】
>「ぎゃふっ!!」
「リリィー!!」
気がつけばリリィが黒煙に支配されかけている。
魔乳をつめることに夢中のササミ。合理的な思考のミク。
それとルナよりも遥かに上の戦力を持っているエンドウにフリード、ブレの特務隊。
これってもしかして何にもしなくってもいいかも…。ルナはそう思った。
リリィの鞄から一個だけ残った聖水を持って、壁際をそっと移動。
存在感を消して祭壇の後ろへ。
>『さあ、友達が乗っ取られるさまを、そこで指をくわえて見ていたまえ』
「赤ちゃんじゃあるまいし…」
祭壇の魔方陣の文字を砂で消したりして細工した。
>133-143
魔刀から再び黒い靄が吹き出す
フリードリッヒは残念ながら非物理的な存在に直接攻撃する手段は持っていない
だが・・・・・
「何も出来ないのと何もしないのは別です!」
フリードの中のグレンは”別にリリーさんが操られても大したこと無くね?”
と考えていた
「そういえばここであの槍が消滅したらどうなるんでしょうか?」
多分憑依対象を失い黒い霧は宙に浮く事になるだろう
「あれは元々ミクさんの糸・・・・・つまり燃えやすいんですよね?」
だが肝心の炎使いはまともな状況に戻ったのだろうか?
そもそもリリィも手に火傷を負うのじゃないだろうか?
燃えやすいといったら植物系の魔物トリフィードはまだ完全に倒したわけではないのではないだろうか?
色々な考えが頭の中をグルングルンと回る
グレンは考える
元々魔力出来ている武器には憑依出来無いのでは?と
だからフリードやササミの武器には憑依しようとせずリリィの持っている糸の槍
物理的な存在に憑依をしようとしているのでは?と
じゃあ自分がダブルクレッセントハーケンを召喚すれば憑依される可能性があるの
神の武器とはいえ物理的なものには変わりないのだから
「炎道さんの体を乗っ取りさらにリリィさんまで乗っ取ろうとする黒い霧!ゆ”る”さ”ん”」
とりあえずてつを風に怒ってみたはいいがどう対処すればいいか思いつかないフリードリッヒ
所詮天才と言われようが学生風情である
>135-144
>「どうして、そんなこと言うの」
>「無理だよ。私なんかには出来ないよ。選べないよ・・・・・・」
リリィの泣きそうな顔にも苦しげな顔にも、ミクは表情を変えなかった。
どう答えるかと決定を苦しむ姿と、導き出された答えを見るのがミクの楽しみなのだから。
>「総代を助けることが大きな危険なら、みんなで小分けして小さな危険にすればいいと思うの!
>槍は任せたわ!信じているからねリリィ!!」
苦悩するリリィとは対照的に、ルナは明るくそう言ってリリィに槍を託す。
楽観的な性格なのか恐れ知らずな性格なのか、怒るササミに近づくのも気にはしていないようだ。
恐れ知らずが必ず良い結果を生むとは限らない。
だが、時にその行動は仲間を鼓舞するものとなる。
今回のリリィがそうであるように。
>「・・・・・・そうだ!」
リリィは何かを思いついたようで、ミクの背後に回って槍に水をかけだした。
その事にどんな意味があるのか、ミクにはわからない。
だが、リリィがもう迷っていないのは明らかだった。
>「ミクさん、私、がんばってみるよ。
> だって、どっちの友達も大事なの。どっちかなんて、選べない。
> それに、ルナちゃんは信じてるって言ってくれたもの。フリード君だって・・・・・・だから、もう裏切りたくない」
「そう……。 なら、お好きになさいな」
リリィの性格からして、炎道ではなく刀を狙うつもりなのは間違いない。
危険な賭けだが、大博打を見るのはミクは嫌いではなかった。
博打打ちは、大抵破滅するものだから。
>「なかなか面白い展開になっていますわね…
>大方、彼女の差し金かしら?」
飛び出していったリリィを見ていたミクの耳に、聞き覚えのない声が入ってきた。
ミクは笑顔を消して目だけで声の主を探すが、それらしき人物は見当たらない。
>「これは一体どういう事でしょう?雛型同士を争わせるなんて…
>まさか貴女の仕業ではないでしょうね?」
2度目の接触で、ミクは声の主の正体を察した。
以前ミクは、学園総裁に協力するとの約束をしている。
雛型云々と言っているこの声の主は、その総裁の関係者でなのだ。
姿を見せずに影から声を出すあたり、こちらの様子を監視でもしていたのだろう。
食えない年寄りだとミクは思った。
>「本来であれば総裁との約束を反故にするような出来事ではありますが
>総裁は、お考えを改めました そう貴女の行っている事と同じのようです」
「総裁も先見の明がおありの用ですわね。
寛大な御処置に感謝いたしますわ」
ミクは小声でブレにそう返事したが、あるいは人外の能力を持つササミには聞かれたかも知れない。
だが、ミクにとってはそれはどうでも良いことだ。
総裁は聞かれて困るかも知れないが、ミクは別に困らない。
>『手を貸す気が無いなら、せめて邪魔しないで!』
リリィのテレパシーを、ミクは自分へのものだと考える。
もとよりミクに邪魔立てするつもりはない。
どのみち失敗する可能性が高そうな作戦だ。
下手に手出しして失敗した時にこちらに責任転嫁されても困るのだ。
>勇気「うぉぉぉぉぉっぉぉっぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ」
だが、ミクの予想に反してリリィの賭けは成功した。
代償に勢い余って床に激突したようだが、ミクからすれば幸運な部類に入るだろう。
外していれば命を失っても不思議はない状況だ……足一本折れただけで済めば十分ではないか。
ただ、魔刀の意志はなかなかに往生際が悪かった。
次の宿主にリリィとその槍を選んだのだから。
>『・・・・・・なるほどなるほど。思ったとおり、この娘の能力は、封印にも直接干渉できる類のものらしい』
黒煙となった魔刀の意志はリリィの体を操るだけでなく、その能力を使うこともできるようだ。
「あの刀の意志は、リリィの身体を操ろうとしているようですわね。
私、魔法の事はあまり存じ上げませんのですけれど。
総裁が操っていたリリィが、他人に操られますとどのようになりますのかしら。
興味深く拝見させていただきますわ。 ふふふ……」
影の中のブレにそう語りかけたミクは、少し考えてからフリードに歩み寄る。
ササミがどう動くか見たい所であるし、ルナは魔法陣に細工するのに忙しそうだ。
手助けしたくないが邪魔もしないように……とすると。
当面何もしていないフリードに近づくのが最善であろう。
>「炎道さんの体を乗っ取りさらにリリィさんまで乗っ取ろうとする黒い霧!ゆ”る”さ”ん”」
「とはいえ、リリィさんが人質に取られているのは困りものですわね」
姿勢だけは“絶対に許さない姿勢”なるものを取りながら、ミクは内心別の計を案じていた。
「私は色々と借りがございますから、リリィさんが命を落とすような事は避けたいですわね。
どうでしょう、ここは1つ交換条件を出す。というのは。
すなわち、あの魔刀の意志を果たして狐は解放する。
代わりに、事が成った時にはリリィさんは解放してもらう。 というのは?
友達を人質に取られているのですもの。
危険な狐の封印が解かれるとしても、仕方がありませんわね」
心にもない事をミクが言う理由は2つある。
1つに、封印された狐とやらに興味が出てきた事。
もう1つは、自分のために危険な狐が解放されたと知ったリリィの様子を見たい事だ。
多少危ない橋を渡るかもしれないが、虎穴に入らずに虎の子を捕まえることは出来ない。
リリィがそうしたように、楽しみのために賭けに出るのも悪くはないだろう。
>『手を貸す気が無いなら、せめて邪魔しないで!』
リリィのテレパシーにササミがビリッと震える。
その拍子に魔乳の詰め込み作業が完了したのだが今は関係のないお話。
同じことを戦闘力の高いミクやフリードに言われたとても平然と聞き流せていただろう。
しかしこれが最も戦闘力が低く、槍を携え勇気に突っ込みゆくリリィだからこそササミに衝撃を与えたのだ。
まさかの啖呵に、その覚悟の大きさを感じて。
その覚悟に応じた結果が得られ、魔剣は折れ黒い靄が立ち上る。
勢い余って床に激突し、祭壇近くまで転がったのはどうでもよくササミの興味はひかない。
人間の覚悟と行動による結果が得られた時点で満足できたのだ。
だが事はこれで終わっていなかった。
立ち上った黒い靄、魔剣の意思はリリィの槍に纏わりつき、次なる宿主にしようと蝕み始める。
>『さあ、友達が乗っ取られるさまを、そこで指をくわえて見ていたまえ』
「手を貸す気がないならせめて邪魔しないでってー言われた身やから邪魔する気はありゃせんわ」
言い方に腹は立ったが、観察者である立場を崩すつもりはない。
というのともう一つ。
自分が戦うとすればどうするかを分析していた。
リリィが乗っ取られても殺すか槍を持つ手を切り落とせばいい。
だが黒い靄は思念体なのだろう。
物理攻撃のきかない相手への対処法を持たないササミは負けはしないが勝てもしない、という結論にたどり着いていた。
その間も部屋のすべての動向に注意を向けていたのだが、ミクとブレの会話に気づくことはなかった。
視力は全方向に向くが、聴力はそこまでいいわけではないのだから。
ミクがフリードの側によりネゴシエーションを始めるのに任せ、自分もフリードの頭上に舞う。
「もともと見物だし、観察対象に死なれても困るから回復させてもらうけど。
それに他にやりたいこともあるしなも」
そういいながら自分の掌を切って、フリードの傷口に血を垂れ流す。
「あんまり怒ると血圧上がって血が噴き出るでよ。死んでしまうよ?
多頭種のモンの血には再生酵素が含まれとるんだぎゃ。これで傷は治るてー。」
ヒドラに代表される頭が複数あるモンスターの再生力の強さは周知の通り。
顔が七つある七面鳥のササミもご多分に漏れず強い再生力を持つ。
その血をかけることである程度の傷は塞がるのだ。
そういっているうちに掌の傷も塞がり傷すら残らずにいた。
フリードの傷を治すと、真の元へと移動する。
「あっちはあっちで忙しいけど、こっちが終わったってわけやあらせんよね。
なあ、あんたさん、殺気込めて殺すって言ってたのになんもせーへんかったのはなんで?」
真に首筋に刃を当てながら質問をする。
裏切った割には結局何もしなかった真の行動が不思議でならなかったのだった。
そういいつつ真はもちろん、勇気や邪魔しないと言い切ったリリィやそれに対峙するフリード、ミクの一挙手一投足を視界に収めている。
だが一人。
ササミの超視力をかいくぐるものがいる。
その見た目の派手さを持ってもしてもササミの視界から逃れるルナの存在感のなさは脅威と言えるだろう!
勇気は叫び声を出し切った後、床に倒れてしまいました
「勇気!」
真は悲痛な叫び声をあげます
リリィが盛大にクラッシュして、その痛々しい姿をちらりと見てその痛々しい姿に思わず顔を背けてしまいます
心の中で『ごめん』と呟くと真は勇気に駆け寄ります
「勇気……ごめんな。ほんまは私があんたを助けなあかんかったのにな……
私、わけがわからんようなって……友達まで傷つけてもうた
……アカンわ私はただ勇気を探してただけやねんけどな」
そのだけが原因でいまの事態を引き起こしたことを彼女はもっと反省するべきだろう
フリードが決意し、ミクが交渉し、ルナが暗躍する
そして、ササミは……
>「あっちはあっちで忙しいけど、こっちが終わったってわけやあらせんよね。
なあ、あんたさん、殺気込めて殺すって言ってたのになんもせーへんかったのはなんで?」
冷たいものが首筋に押し当てられる
真の表情はかわりません。ただ悲しそうな顔をしているだけです
「友達は殺されへんわ。私は口だけの女や
口で好きな男の名前を言わなわからへんようなアホな女や
殺すんなら殺し、それでみんなが気がすむんならな」
それでみんなが納得するとは思っていない
「でもな、そんなんでええわけない。この落とし前ぐらいはつけさせてくれや
殺すんはそれからでも遅うないんちゃうか?」
真はササミに対してリリィを助けるのからそのひかりもんをどけてくれへんかと付け加えた
出来るかどうかはわからない。でもやらなければならないと真は覚悟を決めた
>145-148
>「もともと見物だし、観察対象に死なれても困るから回復させてもらうけど。
それに他にやりたいこともあるしなも」
ササミの血のおかげで怪我が治ったフリードリッヒだが・・・・・
「元気百倍アンポンタン!!」
色々と駄目駄目である
グレンは思った”駄目だこりゃ使い物にならねえ”と
まあ怪我が治ったからといって使った魔力が回復するわけでもないし仕方が無いかもしれない
某緑色した元魔族の外という意味を持った人も怪我は治せても体力まで回復しなかったし
>「危険な狐の封印が解かれるとしても、仕方がありませんわね」
ミクが言うにはリリーを助けるには狐を蘇らせるしかないようだ
「さて困ったことにリリーさんを救うにはどうすればいいのかわかりません
かと言ってミクさんが言うようにこのまま狐を復活させたら”かつてフィジルという島があった”って
フィジル島の存在が過去形になってしまう恐れがあります」
フリードリッヒが想定している狐の能力は大袈裟過ぎる気がするが・・・・
「まあいざとなったら陸海空のジルベリア自衛隊が・・・・・ってここ他国じゃないですかやだぁ!!」
どうやらジルベリアの軍は軍じゃなくて自衛隊らしい
すなわち自国を守る以外の目的では出撃できないのだ
そしてここはフィジル島・・・・ジルベリアでは無い
そもそもフリードリッヒがいくら公爵家の長男とはいえ勝手に自衛隊を動かせるわけが無いだろう
常識的に考えて
「もうこうなったら大人に丸投げしましょう!
大人なんですから僕らよりも強くて頼りになるはずです!
あのアドラスさんだって僕らよりずっと強かったんですから
普通に平常心でやっていれば勝てた戦いで勝手に自滅しましたけど」
それ頼りになって無いじゃん
つまり狐を復活させて後で大人に倒してもらおうという事らしい
”でも総裁が本気を出したらどちらにせよ島が消えるんじゃないの?”
とグレン
グレンの想定する大人・・・・すなわち総裁の力は島を消すほどらしい
どっちにしろ”かつてフィジルという島があった”になりそうである
「これが世界のインフレか・・・・ただの人間じゃあもう着いていけない世界かもしれませんね」
だがフリードもジルベリアを除く世間から見れば立派な化け物であるし
フリードリッヒとグレンの想像は大袈裟すぎである
「ええと皆さんもし狐さんが復活してフィジル島が地図から消えたらジルベリアに住んでも良いですよ?」
”あそこ寒いらしいじゃないですかやだぁ”とフリードと合体しているグレンは叫ぶのであった
>「炎道さんの体を乗っ取りさらにリリィさんまで乗っ取ろうとする黒い霧!ゆ”る”さ”ん”」
「なぜお前に許してもらわなければならない?」
>「(略)あの魔刀の意志を果たして狐は解放する。
代わりに、事が成った時にはリリィさんは解放してもらう。 というのは? 」
「ふふ、そうだな。それがお互いのためだな」
リリィはにやりと笑った。
エンドウは倒れ、フリードとミクは仲間を人質にとられ身動きが取れない。
ササミがフリードの傷を回復させたが、リリィが手の内にある以上、彼が仕掛けることはまず無いだろう。
そしてササミとマコトは仲間同士でもめている。
それで全てだ。
伏兵がいることを、魔剣はまだ気づいていない。
ミクの作った槍を全て黒い煙が覆うと、リリィは口元をゆがめ嘲笑した。
「手に入れた、手に入れたぞ!新しい体を!はははははっ!!」
リリィになったものは手を何度か握り締め感触を確かめた後、あちこちに手を滑らせた後、ふんと鼻を鳴らした。
「さて諸君、協力に感謝する。
おかげで私は新たな体を手に入れ、あの狐を解放することができる。
それにしても、いつの世も人とは不便な生き物よの。
心などという、触れることも見ることも出来ないものに、どこまでも縛られ揺らぐ」
魔剣は面白そうに、ミクとササミを見比べ
「そして人ならざるものは、自ら動くためには理由がいる」
といった。
>「さて困ったことにリリーさんを救うにはどうすればいいのかわかりません
> かと言ってミクさんが言うようにこのまま狐を復活させたら”かつてフィジルという島があった”って
> フィジル島の存在が過去形になってしまう恐れがあります(略)
>「もうこうなったら大人に丸投げしましょう!
「あはははは !傑作だ、それはいい!!」
リリィになったモノは、腹を抱えて笑っている。
>「ええと皆さんもし狐さんが復活してフィジル島が地図から消えたらジルベリアに住んでも良いですよ?」
「君達は、そんなくだらない心配をする必要は無い。なぜなら、ここで『おしまい』だからだ。
そうそう、身体をのっとるために協力してくれた君達には、こころばかりの礼をしなければならんな。
喜べ、お前達は、一番最初にあの狐の血肉になる栄誉を与えられた。
未熟ながらも才能と魔力に満ちた君達だ、あれの餓えを少しは癒してくれるだろうよ。ははっ、あははははははっ!」
ひとしきり笑ったリリィは槍を構えなおすと、一同に向き直った。
「お前達には今しばらくおとなしくしてもらおう。何、死ぬのはほんの一瞬だ。
・・・・・・おや、この娘の戦闘能力が低いと侮ったか?そうだな、確かに槍を使った戦闘では素人かもしれん。
だがな、この身体にはこんな使い方もあるのさ」
リリィは槍を構えると、踊るようにそれを一閃させた。
直後、その場にいるものは、耳を覆いたくなるような呪詛の声を聞くことになるだろう。
だがそれは、耳を塞ごうが鼓膜を破ろうが、遮断することは難しい。
なぜならそれはリリィの肉声ではなく、彼女のテレパシーで直接頭の中に送り込まれている呪詛だからだ。
テレパシーに対抗能力や耐性が無い者は、過去のトラウマを刺激されたり、幻覚や幻聴に悩まされたりするかもしれない。
これで命を奪えるなどという事は、魔剣も考えてはいない。
封印を解く、それまでの足止めになればそれでいいのだ。
「・・・・・・さて」
邪魔者を排除したと確信した魔剣は、悠々と祭壇に近づいた。
そこには、エンドウを使って描かせた魔法陣が描かれている。あとは発動させるだけだ。
「さあ、お目覚めの時間だ!」
リリィは魔方陣の中央に立ち、槍を突き立てた。
魔方陣から赤い光の筋が放たたれ、発動する。
「ふふふ、あはははは!!やった、ついにやったぞ、ははははは!」
狂ったように笑っていたリリィだったが、魔方陣から垂直に立ち上っていた波動が大きく揺らぎ始めた。
「こ、これはいったい・・・・・・誰も魔方陣に近づけなかったはずなのに・・・・・・はっ!」
ぱん!と風船が割れるような音がして、陣からの光が消えてしまった。
壊れた魔方陣に施されていた細工に気づいたリリィは、鬼のような形相で辺りをうかがい、ついにルナを発見する。
「お前か!お前がやったんだな!おのれ・・・・」
リリィは獣のように四つんばいになり、槍を口にくわえて魔方陣から飛び出した。
そして勢いのまま跳躍すると、口にくわえた槍を右手につかみルナへと振り下ろそうとする。
「狐に食わせるまでも無いわ、お前は私がじきじきに殺してやる!!
お前の血と臓物を使って、魔方陣を元に戻してくれるわ!死ね!」
【憑依完了。テレパシーを使ってジャイアンリサイタル開催中
(効果:認識している相手に呪詛を聞かせる。呪詛の効果がなくてもとても騒々しい)
その隙に封印を解こうとするが、魔方陣破損で失敗。犯人のルナに気づき襲い掛かろうとする。】
真の首筋に枝分刀を当て反応を観察するササミ。
虚勢か、命乞いか、反撃か。
どのような反応であってもこの間合いでこの体制であれば何かをする前に殺すことができる。
首に当てた刃だけでなく、周囲を取り囲む九本の刃もまた真を切り裂かんと用意してあるのだから。
>「友達は殺されへんわ。私は口だけの女や
だが真の口から出たのは諦観だった。
この反応はササミの想定を大きく外れたもの。
であってまだ一日もたっていないが、自分の間違いを認めるようなタイプなどとは思ってもみなかったからだ。
そして殺されることを受け入れたうえで、落とし前をつけさせてくれてから、と付け加える。
その言葉に真の首筋に当てた枝分刀を持つ手の甲の顔の口が開かれる。
流れ出すのは言葉ではなく、可聴域を超えた怪音波。
刃がついているとはいえ枝分刀は水晶でできたシミターである。
水晶の刀身が怪音波と共振することにより人の首もバターよろしく切り落とす切れ味を得る。
そして今、刃は超振動の切れ味を持ち当てただけの状態であってもその首を傷つける。
真の首に一本の赤い線を引きササミは枝分刀をひいた。
「あんたさん、なんでこうも変わるかわからせんけど、面白いがね。
今さっき会ったうちがどうこうするもんでもあらせんし、好きに落とし前つけてこやーせ。」
そういいながら浮遊し、真から離れていく。
真を解放した後、注意は再びリリィと魔剣に注がれる。
フリードはどうすることもできず観念し、ミクの交渉は成り立った。
いや、正確には成り立たなかった。
なぜならば魔剣は狐復活を邪魔しない対価を拒否したのだから。
>「そして人ならざるものは、自ら動くためには理由がいる」
リリィの体を完全にのっとった魔剣は鼻を鳴らしながら嘲笑するが、ササミにはその意味が分からない。
「動くに理由が必要なのは当たり前だがね。」
なぜそんな当たり前なことを言うのか、ササミにはまだ理解ができないのだ。
そして同様に、心などというものに縛られ揺らぐ人間の不便さも同じように不便だと思うのだから。
しかしなんにしても、狐の復活の対価としてのリリィの解放はなく、それどころか皆殺しを宣言。
今日というか、一時間の間に二度も別のものから皆殺し宣言をされるのも珍しいものだ。
しかしササミの対応は変わらない。
あくまで観察者として距離を取り、事態の成り行きを見守る。
自分の身を守りはするが、あくまで対処するのはミクやフリード、そして落とし前をつけるといった真なのだから。
……視界だけでなく認識からすら姿を消したルナの存在感のなさは一体どれだけなのだろうか???
もちろん認識できないササミがそれに思いを巡らす事すらないのだが。
リリィの体を操り魔剣、いや今は魔槍だろう。
槍を一閃させた。
ササミの動体視力はコマ送りのようにその動きを把握できたが、素人のそれであり、全く話にならないのだが、本当の攻撃は別にあった。
テレパシーによる呪詛の強制送信!
まともに受けた呪詛にササミの脳裏にトラウマが甦る。
・・・・・・・・抉れ胸!・・・・・・・・もりもりパットでも買ったら?・・・・・
・・・誰よりも速く飛べるのに!・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・・・ここがホルスタウロスの迷宮・・・・・・神の乳!・・・・・・・
方向感覚が?・・・・・・・強烈な磁場・・・・・・・
・・・・・・・・よるな!よるなヒンヌー教徒ども!・・・・・・・たどり着いた!ここが中心部!・・・・・
・・あれって奇形レベルなんじゃね?・・・・・・どうして?なぜ?・・・・・
・・・・・・・・・あそこまで行くとキモいよな・・・・・・・・そんな!・・・・・・・
・・・・・・ねえ、垂れたらどうするの?・・・・それつけてから明らかに遅くなったよね・・・・・・・
・・・・・・・・・・・・・・次期魔王候補もこうなったらおしまいね・・・・・・・
・・・高速起動剣術やるのにメリットあるの?・・ちがう!そんな今更!・・・・・・
「うううううくっくううううう……」
かろうじて叫ぶことはなかったが、空中で身悶えするササミ。
その隙に魔法陣は発動したのだが、ルナの細工によって不発に終わった。
怒り狂ったリリィがルナに襲いかからんとするとき、ようやくフラッシュバックから抜け出たのだが、まだ行動できるような心理状態ではなかった。
結論から言えばミクの交渉は成り立たなかった。
ササミに回復してもらったフリードに、リリィを助けると心変わりした真。
ルナの細工で失敗に終わった狐の復活と、事態は二転三転。
>「狐に食わせるまでも無いわ、お前は私がじきじきに殺してやる!!
お前の血と臓物を使って、魔方陣を元に戻してくれるわ!死ね!」
魔槍がルナの体に振り落とされ血が噴き出す。
左肩口から入った切先は肋骨にガチリと食い込んでいて
あと数センチで心臓というところで止まっていた。
リリィは右足を骨折している。踏み込みが甘かったのだ。
ルナは歯を食いしばって左手で柄をしっかりと握る。
――本当に臆病な娘なのだ。だからこそ魔槍をその身で受けたのだ。
黒い霧に支配されたリリィの瞳は狂気と憎しみで溢れており
ルナにはそれが悲しかったし許せなかった。
リリィは、ルナをまともに見てくれる人の一人だから。
黒い霧にその心を…、純粋な眼差しを奪われるくらいなら……
聖水をリリィにふりかけて、お腹を蹴る。
魔槍はルナに刺さったまま。
その時、突如空間が波打つ。再起動する魔方陣。その様相にルナは目を細め微笑する。
得意魔法のワディワジは逆詰めと言う意味。
学園でルナは、あらゆるものを「逆転」「反転」させる勉強を専門としていた。
密かに魔方陣に細工していたのは、召喚の「逆」
つまり召喚する者と召喚される者を逆転させていたのである。
風船が割れるような音がしたのは向こう側の空間で何かが破裂した音で
無効化されて消滅した物質はその代償として、召喚術を使った黒い霧と
その宿り主をあちら側に逆召喚するのだ。
もちろん、これは最後の手段。
こうなる前にミクやフリードや真の力で敵を倒すことが出来ていたら万々歳。
最大の誤算は魔槍がリリィの体を解放してくれなかったこと。
「手を…、手を離してリリィ!!」
魔槍を持つリリィとルナの二人は魔方陣の中央の空間の歪みに引きずられていく。
>145-154
>「未熟ながらも才能と魔力に満ちた君達だ、あれの餓えを少しは癒してくれるだろうよ。ははっ、あははははははっ!」
「ですがジルベリアにはこんな言葉があります”人食い熊を食う”
常に食う側と食われる側が一定とは限らず逆転する場合もあるという意味です
狐って美味しいんでしょうか?
そして食べたら逆に僕らがパワーアップできるんでしょうか?」
グレンは思ったこの人犬科には容赦ないな・・・・と
>「だがな、この身体にはこんな使い方もあるのさ」
「ちょ!おま!?僕のトラウマは108までありますよ!?やめて母さん!女の子の服なんて着せないで!僕は男の子ですよ!!」
「きれいな方ですね・・・え?男の人なんですか!?ウゾダドンドコドンン!!」
次々と過去のトラウマを抉られていくフリードリッヒ
「この子が僕の新しい従妹ですいか・・・・・・ゴブリンじゃないですかやだぁ!?」
これはどうやらフリードの従妹がゴブリンにチェンジリングされたときの記憶らしい
「え?一人で山に篭って熊倒せですって!?無茶言わないでくださいよ!!
・・・・・・・・案外簡単に勝てるもんですね熊って
え?次は魔法抜きでやれって言うんですか姉さん」
トラ・・・ウマ?
「熊五郎!今日こそ決着を着けますよ!あなたの熊昇竜拳はもう見切ったんですからね!!」
どんどん可笑しな方向へ
さてグレンのほうは・・・・・・
僕まだ生まれて1年も経ってない子猫だよ?トラウマなんてフィー坊に血をぶっかけられて無理やり使い魔にされたことぐらいだよ?
どうやら平気そうである
>「お前の血と臓物を使って、魔方陣を元に戻してくれるわ!死ね!」
ルナに突き刺さる槍
「槍を破壊するなら今がチャンスです!」
フリードは自分と同じように体を張ってリリィを止めたように見えたらしく
今がチャンスだと宣言するだがそれをやったらまた別の武器に憑依しなおすだけではないだろうか?
「早くしないとルナさんのダメージが無駄になってしまいますよ!!」
いや自分でやれよと合体中のグレンは突っ込んだ
「本当は炎の武器が一番適してる状況だと思うんですけど・・・・・
誰もやらないのなら僕が・・・・フリージングサーベル!ストレートスラッシュ!!」
フリージングサーベル!それは氷で出来た剣・・・・ではなくてでかくてやたら丈夫なアイスキャンディである
すなわち厳密に言えば武器ではないのだ
「・・・折れ・・・・無かった!!」
はたして折れなかったのはフリージングサーベルか?はたまた糸の剣か?
もしフリージングサーベルのほうだとすればリリィは救えたのだろうか?
>147-155
>「ふふ、そうだな。それがお互いのためだな」
「打てば響く良いお返事ですこと。 話が早くて助かりますわ」
狐を解放すればリリィを放すとの魔刀の返事に、ミクも笑って応じた。
ミクはそうは言ったものの、他の者が魔刀を攻撃するのを止めるつもりは欠片もない。
そんな約束はしていないからだ。
もちろん、リリィを解放するよう言ったのもいわば大義名分を得るためであり。
別に解放されなくてもどうという事もない、とも思っている。
そもそも自分なら解放しないような気もするほどである。
>「あんまり怒ると血圧上がって血が噴き出るでよ。死んでしまうよ?
>多頭種のモンの血には再生酵素が含まれとるんだぎゃ。これで傷は治るてー。」
「随分と便利なものですのね」
交渉中に近くに来ていたササミが自分の血でフリードの傷を治すのを見て、ミクは感心した。
頭が多い奴は刺しても切ってもなかなか死なない。
これは覚えておいて損のない情報だ。
殺すだの落とし前をつけるだのといった交渉をササミが真と始めるうちに、フリードは(身体は)回復したようだ。
そしてその短い時間の間に回復したのは、フリードだけではない。
魔刀となって炎道を操っていた”それ”もまた、回復を果たしている。
砕かれた刀を槍に替え、乗っ取る相手をリリィに替えて。
わざとらしく一同に礼を言った魔槍は、今度はササミとミクに対して語りかける。
>「そして人ならざるものは、自ら動くためには理由がいる」
>「動くに理由が必要なのは当たり前だがね。」
ササミには意味がわからなかったようだが、かつて人間であったミクには魔槍が言う事の意味がわかった。
だから、魔槍に返事は返さなかった。
かつての自分は、心に縛られていた。
では今はどうだ。
人をやめ、人を捨て、人の道を外れて、それでもまだ時に心に縛られるように感じるのはなぜだ。
それはただの習慣か、あるいは失ったものへの未練なのか。
胸中で自身に問いかけてみてから、ミクは馬鹿馬鹿しいと鼻先で笑った。
失ったものはもう戻りはしないのだ。
習慣であれば、そのうちに忘れ去るだろう。
同じ事を言われても、意味がわからない程度には。
>「さて困ったことにリリーさんを救うにはどうすればいいのかわかりません
> かと言ってミクさんが言うようにこのまま狐を復活させたら”かつてフィジルという島があった”って
> フィジル島の存在が過去形になってしまう恐れがあります」
>「あはははは !傑作だ、それはいい!!」
ミクが自問自答しているうちに、フリードの魔槍は腹を抱えて笑っている。
なぜか、この2人(?)は気が合いそうにミクには思えた。
>「これが世界のインフレか・・・・ただの人間じゃあもう着いていけない世界かもしれませんね」
「話題の方も、ただの人間にはついていけない世界ですけれど……ね」
無駄に壮大な話になっているフリードに皮肉を込めてそう言ったが、皮肉が通じたかはわからない。
フリードの出身地はジルベリアなる場所らしいが、そこがどんな国なのかはミクには想像もできなかった。
>「ええと皆さんもし狐さんが復活してフィジル島が地図から消えたらジルベリアに住んでも良いですよ?」
>「君達は、そんなくだらない心配をする必要は無い。なぜなら、ここで『おしまい』だからだ。
魔槍にそう言われても、内心少々不安なミクであった。
とりあえず、フィジル島が消滅するような事態は(常識的に無いと思うが)避けたほうが良さそうだ。
> だがな、この身体にはこんな使い方もあるのさ」
弩素人の身体にどういう使い方があるのだというミクの疑問は、すぐに解消する。
魔槍は、呪詛の力を使って一同の精神をかく乱したのだ。
それも、リリィのテレパシーで直接呪詛の言葉を脳内に届かせることによって!
闇に近い存在となっているミクは、呪詛には耐性がある。
それでも、魔槍の呪詛に抵抗するにはそれなりに精神力が必要だった。
ミクは、溜め込んでいた息を大きく吐き出して、農耕具を手に迫る村人達の幻影を振り払う。
いつの世も、弱いものはさらに弱いものを叩いて心の平安を得る。
相手が自分より強いとわかれば、尻尾を振って媚びへつらう。
今の自分は強いのだ。
人は皆恐れて近づくことも無いのに、襲われることなどあるはずもない。
テレパシーによる攻撃は、ミク以外の者にも向けられている。
なかでも人目を引く発言を連発しているのはフリードだが…ミクは聞かなかった事にした。
世の中には知らない方が幸せなこともあるのだ。
>「ふふふ、あはははは!!やった、ついにやったぞ、ははははは!」
邪魔を排除した魔槍は、床に描かれた魔法陣に自身とも言える槍を突き立てる。
あふれ出る赤い光は、封印された狐に対するミクの期待をも高めるものとなった。
だが、そんな期待を裏切るように、陣から出る力は揺らぎ、弱まり、やがて大きな音と共に消えてしまう。
>「こ、これはいったい・・・・・・誰も魔方陣に近づけなかったはずなのに・・・・・・はっ!」
>「お前か!お前がやったんだな!おのれ・・・・」
「……なんともお粗末な結末ですこと。 期待はずれ、ですわね」
魔槍ほどには期待していなかったからか、ミクの落胆はそれほど大きくはなかった。
魔方陣に細工していたルナを見ていた事も、期待が大きく膨らみすぎなかった原因の1つかもしれない。
魔法のことに疎いミクはルナを過小評価していたが、評価を上方修正する必要がありそうだ。
「先ほどササミさんに、落とし前うんぬんの話をしておられましたわね。
ちょうど、お友達が落命の危機にお会いのようですわ。
落ちた信頼を回復する、好機到来だと思われませんこと?
失敗したら……そうですわね。
それこそ炎道総代に、切腹でもしていただかなければなりませんわね。
誇り高い総代が、まさかこの上、生き恥を晒されるはずがありませんものねえ?……ふふふ。」
ミクは真に近寄ってそう声をかけると、視線を魔槍に操られるリリィのほうに向けた。
魔槍は獣のように四つんばいになり、ルナに飛び掛ろうとしている所だった。
「なるほど…狐憑きというものですわね」
場違いにも聞こえるだろう感想を、ミクは小声で口にした。
> お前の血と臓物を使って、魔方陣を元に戻してくれるわ!死ね!」
ミクは魔槍と化した糸を操ろうとしたが、黒い霧はその干渉をはねのけた。
リリィの手にした魔槍がルナの身体に突き刺さり、血が吹き出す。
致命の傷ではないだろうが、軽傷とも言い難い。
>「槍を破壊するなら今がチャンスです!」
言われた時には、ミクはすでに槍を破壊するために糸を放っている。
四方の壁、床、天井から伸びる糸の槍が、魔槍を打ち壊そうと伸び、そして当たらなかった。
ミクの糸から生まれた魔槍は、同じ物質でできた糸をある程度操れたのだ。
>「・・・折れ・・・・無かった!!」
フリードの氷棒の一撃で折れなかったのは、双方共に。だった。
ただ、魔槍の方は完全に折れはしなくとも、大きく折れ曲がっている。
あるいはリリィへの支配力が落ちるかもしれない。
ミクには原理はわからなかったが、リリィとルナは共に魔法陣の中心に引き込まつつあった。
糸で槍を壊すのを諦めたミクは、代わりに糸でルナたちの身体を壁や床につなぎ止める。
ただし、それは一時しのぎでしかない。
糸が千切れるたびに新しく補充しているが、魔法陣の引き込む力はそれ以上に強かった。
ルナとリリィは、じわじわと歪みの方に引きずられていく!
>「手を…、手を離してリリィ!!」
「槍を手放させなさい! 早く!」
普段は出さない大声をミクが出したのは、それだけ状況が切羽詰まっている証拠でもある。
このままだと、魔法陣の歪みは魔槍と共に人を飲み込む事になるだろう。
>「あんたさん、なんでこうも変わるかわからせんけど、面白いがね。
今さっき会ったうちがどうこうするもんでもあらせんし、好きに落とし前つけてこやーせ。」
「人間変わるのに時間はいらん。ただ、覚悟を決めたらいいだけや
ありがとうな」
解放された真はゆっくりとリリィの元へと向かう
真はただリリィだけを見据えていた
そのときにはすでにリリィはすでに操られていた
「リリィ……すまん」
真は心の中で呟くと走り出す
しかし、その足はすぐに鈍くなる
……自分勝手な女だ……
………何でも思う意通りにいくと思ってる……
……そんな女が愛される?……なにが覚悟だ、また独りよがりじゃないか……
……………………いまさら友達のため?いい面の皮だね?……………
頭に響き渡る呪詛の声、いやこれは真の心の声であると言ってもよかった
その声は真の心を潰そうと容赦なく襲いかかる
裕福な家に生まれ、甘えられて育てられ、いままでの人生で自分の思い通りにならなかったことはない
その代償がいま、彼女の心に深い影となっている
だがしかし!
「うっさい!!」
真は怒号とともに強く一歩踏み出した
いまの真にとってその言葉は蚊の羽音と同義
「リリィ!あんたはいま助けたる!」
>「先ほどササミさんに、落とし前うんぬんの話をしておられましたわね。
ちょうど、お友達が落命の危機にお会いのようですわ。
落ちた信頼を回復する、好機到来だと思われませんこと?
失敗したら……そうですわね。
それこそ炎道総代に、切腹でもしていただかなければなりませんわね。
誇り高い総代が、まさかこの上、生き恥を晒されるはずがありませんものねえ?……ふふふ。」
そこに水を差すかのようにささやくミク
「好機も勇気もなんも関係ない
私の心は決まってる。リリィを助けるだけや
いまの私は勇気のことをどうこう言うことは出来へん!」
真はミクを突っぱねるとリリィ、そしてルナの元にたどり着いた
「リリィ、ごめんな……ルナもそんな怪我させてもうて」
真は小声で謝ると呪文を詠唱しだした
場の魔方陣はルナの魔法の効果で逆召還の魔方陣
真は優秀な召還師
「私はこの槍と悪霊を逆召還する!!」
つまり真はこのどこへ繋がっているかわからない魔方陣へ自ら吸い込まれようと言うのだ
その代償としてルナとリリィを召還対象から外そうとしている
そして魔方陣の光はさらに増し、ついに逆召還が始まる
魔槍を振り落とされたルナの体からは血が噴き出し、リリィの顔を汚した。
致命傷には至ってないが、手ごたえは確かにあった。
だからこそ、ルナが槍を掴む力の強さに、魔槍は驚愕せざるをえない。
「こ、こいつ:、どこにこんな力が・・・・・・!
肋骨に当たった穂先をずらし、後ほんの少し力を込めれば、ルナは絶命する。
だが、そのほんの数センチの骨と肉を、魔槍は貫くことが出来ないでいた。
「虫けらのくせに!お前達、私の邪魔をするな!・・・・・・っ!」
>至近距離から聖水を掛けられ、鳩尾に蹴りを入れられる。
よけることもできず、まともに食らったリリィは、獣のような悲鳴を上げた。
「ぐああああ!焼ける!体が焼けるぅう!!おのれ、おのれええ!殺してやる小娘!」
だが魔槍は、それ以上深くルナを抉る事ができない。
見えない何かが邪魔をしているからだ
・・・・・・くそ、出てくるな虫けら、これはもう私の体だ!お前など・・・・・・ぐああああ!」
咆哮のような叫びの後、怒りと憎しみに険しくつり上がっていた眦が下がり、人間らしい光が目に戻る。
「ル・・・・・ナちゃ・・・・・・・」
リリィは事情が飲み込めていないようだ。
「え・・・・何・・・・・私・・・私いったい何を・・・・・?」
ルナの傷から槍を伝って落ちてくる鮮血が、リリィの手をぬらす。
手を伝って床に落ちる血の感触に、リリィはようやくこれが現実だと悟る。
だが、それはあまりにも受け入れがたい事実だった。
「ああああああああああ!!嫌!嫌!何で!エンドウ君を助けるはずだったのに!
何で私、ルナちゃんにこんな事を!!」
一時的に体の自由を取り戻したかに見えるリリィだが、実際には聖水の力で一時的に魔槍からの干渉が弱まっているだけだ。
時間がたてば、再び魔槍にのっとられてしまうだろう。
半狂乱になりながらもリリィは魔槍をルナから抜こうとしているが、突き刺した槍はなかなか抜けなかった。
むしろルナの命を絶てとリリィに強制してくるが、聞けるはずも無い。
>「本当は炎の武器が一番適してる状況だと思うんですけど・・・・・
誰もやらないのなら僕が・・・・フリージングサーベル!ストレートスラッシュ!!」
フリージングサーベル!それは氷で出来た剣・・・・ではなくてでかくてやたら丈夫なアイスキャンディである。
このままフリージングサーベルが槍を直撃したら、折れる前にルナの体が傷口を始点に縦に裂けてしまう
(ダメ!!)
リリィは全精神力を使って、ルナの体から魔槍を引き抜いた。
その直後、フリージングサーベルが槍の中ほどに直撃する。
だが槍が斜めになっていたことと、蜘蛛の糸でできていたこともあって、魔槍は拉げながらも折れなかった。
もっとも、ダメージを受けたことにより、リリィへの干渉はさらに弱まることになる。
ルナは傷口から血を流しながらも、リリィの持つ魔槍を掴んで離さない。
そしてどういう理由かはわからないが、リリィ、ルナ、魔槍は、狐召還のための魔法陣だったものへと引き込まれようとしていた。
ミクが二人の体をつなぎ止めようとしてくれているが、彼女の操る強靭な糸をもってしても難しいようだ。
>「手を…、手を離してリリィ!!」
>「槍を手放させなさい! 早く!」
「だめなの!この槍は、今はルナちゃんに憑依したがってる!!
あなたの魔法を使えば、簡単にここに封じられた魔物を復活させることができるからって喜んでる。
今私が槍を手放したら、今度はあなたが乗っ取られる!」
>真はミクを突っぱねるとリリィ、そしてルナの元にたどり着いた
>「リリィ、ごめんな……ルナもそんな怪我させてもうて」
リリィは大きく首を横に振った。マコトのせいではない。悪いのは魔槍に乗っ取られたリリィなのだ。
>真は小声で謝ると呪文を詠唱しだした
>「私はこの槍と悪霊を逆召還する!!」
「バカッ!何考えてるの!」
リリィはかすれた小さな声ながらも、マコトの決意を一蹴した。
「ルナちゃんもマコトちゃんも、封印を完全に解くことなく向こう側に干渉することが出来るのよ!
そんな人が、向こう側に引きずり込まれた上に魔槍に憑依されたらどうなると思うの?
魔剣どころか、狐の魔物まで封印を解かれることになりかねないでしょう!!」
反転魔法にも召還魔法に明るくないリリィは、自分の僅かな知識から結論付けたようだ。
実際には違っていたとしても、マコトがどこかわけのわからない所へ飛ばされるのは嫌だ。
まして自身もルナも、『向こう側』にご招待されるなどごめんである。
そんなに狐の魔物にあいたいのなら、魔槍だけ行けばいいのだ。
(どうしよう・・・・・・どうしたらいい?)
魔槍と思考を共有してるとわかっていながら、リリィはそれでも考える。
無駄な努力をと魔槍にあざ笑われながらも、最善の策を巡らせることをやめるなど出来ない。
でなければ、ここにいる誰かの身の破滅を招くことになるのだから。
「ルナちゃん、槍から手を離して!・・・・・・フリード君、ルナちゃんのことをどうかお願い!」
致命傷ではないにしろ、槍に刺されたのだ。傷が深くないわけが無い。
リリィが槍の意思をねじ伏せることが出来れば、ルナの手から魔槍を引き抜くことが出来るに違いない。
そして、幼い頃から厳しい修行(?)をこなしているフリードだ。
強力な回復魔法は自身の顔以外使えなくても、止血などの応急手当ならきっと出来るはずだ。
「エンドウ君!起きてよエンドウ君!そして、その炎でこの槍を燃やして!
今起きないと、マコトちゃんが手の届かないところへ行っちゃうのよ!いいの?それで!」
逆召還を止められるのは、おそらくマコト自身だけだ。
そして彼女は、リリィ達の説得などきっと取り合わない。
そうだとしたら、憑依している対象物・・・・・この場合魔槍だが・・・・・・・を燃やして、一時的に寄る辺が無い状態にすればいい。
そうリリィは解釈した。
もしも、エンドウが動けないとしたら・・・・・。
リリィは自分を支えてくれているミクと、天井近くで落ち着きを取り戻したササミに視線を移した。
『もしもエンドウ君が動けなかったら、魔槍を握っている私の手首を切り落として』
こんなことは、二人のどちらかにしか頼めない。
否、ミクはリリィやルナを支えるので精一杯だ。おそらく動けるとしたら、ササミだろう。
そして彼女なら、何の躊躇も無く斬れるだろう。
それが一番効率がいいからだ。
頭の中で魔槍がガンガン叫んでいるようだが、リリィは無視した。
閉じた眼を開き、『彷徨者』は再び『世界』を見る。
……幾度眼を閉じ、そして開いても変わる事の無い光景。
自らの『選択』によって生まれた『死の世界』は、静かにそこにある。
そして『彷徨者』は一行の様子を空間の隙間から確認するが―――
「……この事態はこちらの予想と違うな……今が動く時か。
遅かれ早かれ、彼らには『この世界』を見せる必要があったのだ……
少々危険な賭けだが、仕方あるまい」
そう呟くと、『彷徨者』は再度眼を閉じ意識を飛ばす……『壊れた人形』を、動かす為に。
そして、時間は遥か遡り―――――
ここはフィジル島、魔法学園に程近い街の一つ。
大破したシャイナは、ルイーズによってこの街に住んでいるゼベットと言う
機械技師の老人の元へと持ち込まれた。フリードの話によれば、ゼベットは
名の知れた技師であり彼ならばシャイナを修理できるのではないかと―――。
しかし、持ち込まれたシャイナを見るゼベットの目は険しい。
……ゼベットは、シャイナに使われている技術を『知らなかった』のだ。
間接部分の伸縮及び曲げ伸ばしを再現する為であろう太さの違う筒状のパーツが、
ゼベットの知識には無かった。その他の部位も、精密すぎて手に負えない状況である。
下手に弄るわけにもいかず、数十分物言わぬ人形を睨み付けていたゼベットは、
気分転換のために茶を淹れに席を外していた。
……『シャイナ・ムーンリング』が目を覚ましたのは、丁度この時だった。
「……ここ、は……?」
あくまでもシャイナを演じる『彷徨者』。
『目を覚ましたか』
「……あなたは、だれ、だ?」
『ワシはゼベット、からくり弄りが趣味のタダのジジイじゃ。
学園生徒の猫娘からお前さんの修理を頼まれたんだがのう、
はっきり言うぞ、ワシには無理じゃ。お前さんに使われとるからくりは
どれもこれも見たことが無いわい。設計図でもあれば、応急処置くらいは出来るとは思うんじゃがな』
ゼベットは諸手を挙げて降参のポーズをとる。
見た目からして偏屈者の気難し屋だろう老人が臆面もなく出来ないと言うのだからできないのだ。
……が、それを聞いたシャイナは訥々と
「……設計図、なら、ある。
私が、指示をする。その通りに、動いて、ほしい」
自分の事だからなのか、設計図は自分の頭の中にあると言う趣旨の旨を伝える。
ゼベットはそれを聞いて露骨に顔をしかめた。
『ふん、随分と用意がいいんじゃの。こうなる事は予測済みか? バカにしてくれよる。
……まぁええわい、これでもちったぁ名が知れちまってる身、設計図があって
直せませんでしたなぞと触れ回られた日にゃあメシの食い上げになっちまうでな』
そうして、シャイナの指示通りにパーツを組み上げ繋げていくゼベット。
……集中が必要にも拘らず、ゼベットは作業しながらシャイナに疑問をぶつけた。
『しかし、お前さんを作った奴が誰かは知らんがこれだけは分かるぞい。
紛れもなく天才じゃ、それも……相当に頭のイカレた、な。
お前さんは、自分が何の為に作られたか知っとるのか?』
「……さぁ。私が、『私』に、なった時、既に、マスターの姿は、なかった。
それに、知りたいと、思った事も、ない」
『……そうかい。 さて、こんなもんかの。
じゃが、結局応急処置レベルじゃ。動くだけでいっぱいいっぱいじゃぞ』
「大丈夫だ、問題、ない。手間を、掛けさせた」
礼を言い、ゼベットの店から出ようとするシャイナを、ゼベットは呼び止める。
『待たんかい。自分の名前ぐらい言えるじゃろ、それともそれも知らんのか?』
「……失礼、した。私は、シャイナ」
『定期的に顔を見せい。完全修復は無理でも、メンテぐらいはしてやれるでな。
弄るだけ弄って、どこぞで壊れちまわれちゃあワシの沽券に関わる、よいな』
「了解、した。感謝する」
そうしてゼベットの店から出たシャイナ、否『彷徨者』は空間に切れ目を入れ
一行がいるであろう遺跡へと急ぐ。自身の企てのため、全てはその布石なのだから。
――――一方、バニーはと言うと――――
デンジャラスバニーもとい、メイド長は今白一色の男性の前にいた。
途中まで一行と行動を共にしていたのだが、気力体力の限界を迎えてダウンしてしまった。
……そこを目の前の白一色の男性、『オセ』と名乗る人物に助けられたのだが……
メ「……あなたは何者なのです?」
オ『ボクは明言しないよ。確証なんか無くても、君は理解してるんじゃない?
つまりはそれが答えさ、そういう事にしておいてほしいなぁ』
メ「……納得は出来ませんが、今は緊急時。助けて頂いた事には感謝いたします。
では私はこれで。やらなければならない事がありますので……」
オセに恭しく一礼し、メイド長はその場を去ろうとする。
オ『ちょっと待って、これをあげるよ。きっと役に立つ』
メ「……これは、魔力結晶? ここまで純度の高い物は初めて見ました。
一体何故これを?」
オ『必要だからさ、君にとってもあの子達にとってもね。
お礼はいらないよ、代わりに一つ、言伝を頼まれてくれるかな
初音美紅って子に会ったらって前提付きだけどさ。
「あまり調子に乗ってると、裏世界でひっそりと幕を閉じる by貴女の未来の旦那様、オセちゃんより」
一言一句違わず伝えてね、その方が……キく、からさ』
メ「素敵なお言葉ですね、承りましたわ。それでは、失礼いたします」
オ『うん……急いだ方がいい。向こうは危険な状態になっている。
君の存在が明暗を分けるやもしれない。失敗は許されないよ』
今一度恭しい一礼を返し、メイド長は森へと駆けていく。
一人場に残ったオセは、紅茶を一口すすり後姿を見送った。
メイド長は世界の理に干渉し、世界の時の流れを極限まで遅くする。
止まったも同然の時の中を冷静に、しかし全速で駆け抜けていく。
……気絶している間にオセが何かしたのか、魔力は完全に回復していた。
疲労はまだ残っているが、多少なりとも休息を取れた為か体は軽い。
もう何も怖くない、とメイド長は思わない。それはマミるフラグだ。
そして、事態は急展開を迎える、のか?
リリィの持つ魔槍を、『何も無い空間から突然出てきた手』が掴んだのだ!
……よく見ると、その『手』には包帯が巻かれている。掴んだ部分からメキッ…メキッ…と嫌な音がする。
そして、『手』はもう一本あり今度は魔槍を持つリリィの腕を掴んだ。
強く握られていないにも拘らず、その手を振り払う事は何故か出来そうに無い。
ここでようやくその『手』の正体を周囲は知るだろう。腕を掴む手の先を見やると、
そこには剥き出しのカラクリがギギッ…ベキッ…と危なっかしい音を立てながら駆動していたから。
「まったく、どこまでも、甘いなぁ。リリィ嬢?
さっき、私に説教、しておいて、このザマ、とはね」
唐突に現れた『空間の切れ目』から出てきたのは、修理中だった筈のシャイナだった。
……破損した部分のカラクリはどこも剥き出しであり、また動かそうとする度に
軋んだ音を立てており動きそのものもぎこちなさと言うか固さが伺える。
そんな中、槍を掴む右腕だけが異彩を放っていた。破損していないとは言え、
全体的に本調子に程遠いシャイナのどこにこんな力があると言うのか?
相変わらずの包帯姿も、今の状態だと痛々しさしか感じられない。
「結局、私達は似た者同士……厄除けの、『人形』なのだな。
……知ってる、かね? 東の国の、文化風習に、人形を、川に流し、
その年の、無病息災を、願う……流し雛、と言うものが、ある事を。
今が、正に、厄を吸い、退ける、時なのだろう。さて、どうする、かね?
……私は、『空っぽの人形』、だ。空っぽ、なのだ、から、厄を溜めるには、丁度いい」
シャイナの槍を握る力が一層強まる、がそれでも魔槍は砕けない。
が、魔法陣に引き摺り込まれるリリィの動きが止まる。互いのひく力がつり合った状態なのだろう。
「……やるなら、早く、してくれ。
万全ならいざ知らず、今の私では、長くは、耐えられない」
そんなシャイナの言葉を裏付ける様に、破損し露呈した関節部の軋みは
収まるどころか益々強まっている。その様は、まるで体が悲鳴を上げている様だった。
シャイナに遅れること数秒、メイド長も現場に到着した。
……が、メイド長は動かない、否動けないでいた。
『……遅ればせながら、ただいま到着いたしました。申し訳ありません。
申し訳ないついでに、指示を下さいませ……どこから手をつけたらいいのか、
優先順位を決められないのです。負傷者の救助、術の解除、元凶の排除……』
メイド長は、予想を超えた緊急事態に混乱している様で、普段の様子は微塵も見られなかった。
優先度は全て同格、故に動きあぐねてしまっている。誰かが筋道を立ててやらないと、
ただのバニーのコスプレしたねーちゃんでしかないのだ。
……その分、道が定まればそれに全力を傾けるだろう。
トラウマの幻聴から回復したササミは事態の推移を一望して驚愕していた。
その驚愕の理由はルナだった。
自分の視界から逃れられる者はいないと自負していた為、ルナが己の監視下から完全に逃れていた事に。
そして、槍を己の体で受け止め、そのまま反転魔法を使い自分もろとも封印されようとしている事に。
なぜこのような方法を選んだのか。
ササミにはまったく理解ができない。
リリィは確かに観察対象として有用ではあるが、それでも身代わりになる理由がない。
ルナは自分とリリィを天秤にかけ、どのような傾きを見たのだろうか?
そう疑問に思うこと自体すでにズレているのだが、そのことに気づくのはまだ随分と先のことだろう。
驚愕が収まらぬまま、事態はさらに加速していく。
聖水をかけられたため、リリィは意識を取り戻し、フリードは槍を砕かんとフリージングサーベルこと氷の棒で強打した。
これにより槍は折れ曲がったが、破壊はされていない。
支配が完全に説かれたわけでなく、壮絶な綱引きはリリィの中でまだおこなわれているのだろう。
綱引きが膠着状態のまま二人の体は魔法陣が作り出す歪んだ空間に引きずり込まれていく。
ミクが糸で二人を引っ張っているおかげでその速度は遅々たるものだが、時間の問題に過ぎない。
リリィに言葉によれば、このまま封印されれば内部から封印がとかれてしまうらしい。
ルナのその能力故に。
そこに駆け寄ったのは落とし前をつけると駆け出した真である。
真は逆召喚の魔法を使い、ルナとリリィを空間の歪みの引力から外し、自分が槍とともに封印されるつもりなのだ。
だが、それもまたルナと同じこと。
槍と真が封印されても同じく内部から封印はとかれる。
リリィの指摘以前に、リリィを殺してしまえばそれで完了であるものを。
どう考えても戦力的に真がリリィの代わりに犠牲になることはありえない。
にもかかわらず、これが真のいうおとしまえ、なのか。
ササミの状況を見る目が険しくなっていく。
リリィが叫ぶ。
エンドウに炎で槍を焼き、憑代をなくすように、と。
確かに憑代をなくした槍は誰かを操り内部から封印を解くことはできなくなるだろう。
だがそれでも最低、真は逆召喚により封印の内部へと消えてしまうだろう。
ササミは事態の推移を見ながら七つの顔全てがあらゆる情報を取り込みながら考えていた。
周囲の状況、細工された魔法陣、反転魔法、逆召喚魔法。
槍を持つリリィ、胸から血を流しながら槍にしがみつくルナ、新たにルナを憑代に定めた魔槍。
曲がったフリージングサーベルを持つフリード、似合わない声を上げるミク、そして、覚悟を決めた真、倒れている勇気。
そして突如空間を引き裂き現れた人形の腕。
左腕はリリィの腕を、そして右腕は槍をそれぞれで掴む。
その為、空間に引きずり込まれる事は止まったが、その動きを見ればそれも時間の問題だろう。
更に部屋の入口に現われたバニーの女。
思考が錯綜する中、七つの思考が並列処理をはじめ、ササミの内部に八つ目の統合思考とでもいうものが発生していた。
他の活動を一切遮断し、集中して並列処理をすることにより演算能力は飛躍的に上がり最適な結論を弾き出すのだ。
これこそが魔界の数多くの魔王候補生の中から人間界への留学の決め手となったササミの思考能力、八門思考陣である。
『もしもエンドウ君が動けなかったら、魔槍を握っている私の手首を切り落として』
リリィのテレパシーを受けると同時に第八思考は結論を弾き出した。
その速度と等しくササミの体も弾かれたように残像すら残さず天井付近から消えていった。
「い・や・だがね。
そんなにまっとれーへんもん(まっていられないもの)」
リリィの耳元でそっと囁かれるササミの言葉。
直後、魔法陣付近のリリィとルナ、そして真とシャイナはササミの姿を捉えるだろう。
その顔の近くに浮くリリィの手に握られた曲がった魔槍と、同じくリリィを掴んでいたシャイナの左手と共に。
超高速移動の加速を乗せた抜刀術はリリィとシャイナに斬られたことすら感じさせぬうちにそれぞれの手首を切り飛ばしていたのだ。
「阿!吽!」
額と胸元の顔が発すると同時に槍を握るリリィの手付近に衝撃波発生し、リリィの手が開く。
あまりに乱暴な方法ではあるが、切り離されたての切り口に衝撃を与える事で、筋肉や神経節を刺激し強引に開かせたのだ。
「あとでくっつけるから、大事に冷やしといてちょーよ!」
宙に浮いた手をフリードに投げ渡すと、そのまま真の背後に回り、肩から首元へと手を回す。
まるで優しく抱きかかえるかのように。
「揃いも揃って身代わりになろうとするなんて、ほんとにわけわからんわ。
しかも弱そうなの下から三人が我先に体張るんやから。
この謎を解明するまで誰も死なせるわけにゃいかにゃーて。
どっから湧いたかしらん人形も、時間稼ぎはもうえぇよ。全部詰んだから」
楽しそうに発すると、、ササミの七つの顔は異なる呪文の詠唱を始める。
真の逆召喚の呪文詠唱を主旋律とすれば、異なりながらも交じり合い、一つの大きな歌のように。
ササミを囲むように七対の手袋が呪文の詠唱に合わせて複雑な印を結ぶ。
「全天視野と高速機動剣術だけで魔王候補になれるほど魔界は甘くないぎゃ。
単体ではできえぬ集団儀式魔法を一人で操る、≪ワンマンオーケストラ≫ササミ・テバサコーチンの力をみやーせ!」
ルナの反転魔法、真の逆召喚、この二つの魔法により改変された魔法陣を完全制御し、魔槍と黒い靄のみを封印対象にしたのだ。
ルナとリリィは魔法陣から弾かれ、真とササミは強大な儀式魔法の中心となって槍の封印を行っていく。
>156-167
>「ルナちゃん、槍から手を離して!・・・・・・フリード君、ルナちゃんのことをどうかお願い!」
自分の袖をびりびりっと破り包帯の替わりにするフリードリッヒ
今フィジルでは包帯が不足しているのだから仕方が無い
別にシャイナが大量に包帯を使っているからという訳ではない
そもそも傷口を消す治癒魔法があるのにわざわざ包帯を買うのだろうか?
魔法があるから必要無いと判断してあまり買わなかったのではないだろうか?
どうも原因はその辺りに由来しそうである
「今傷口の応急手当をしますからね、動かないでくださいよ」
はたしてフリードリッヒはファンブルせずに応急処置を完了できるのだろうか?
フリードの中にいるグレンは少々不安を感じた
「大丈夫ですよ!傷口を凍らせて無理やり血を止めたりはしませんから
ジルベリア人とは違う人にはやっちゃいけないってちゃんとわかってますからね」
治療する人間がこんなので本当に大丈夫か?
>「あとでくっつけるから、大事に冷やしといてちょーよ!」
「僕は別にどっかの誰かみたいに手首フェチじゃないですから安心してくださいね」
と氷の中に手首を閉じ込め懐に仕舞い込むフリード
いやそういう問題じゃないだろう
まあ例の手首フェチも女の子の手首になんて興味ないだろうし・・・・
”無くしたら大変、リリィさんの手首が緑色になっちゃう”とフリードの中にいるグレン
例のガチレズでロリコンでマッドな保険医はトカゲの尻尾再生を応用した組織再生医療を開発した
性格と性癖に難はあるがやはり彼女も天才の一人である
だがその技術で再生された場所はトカゲの表皮のような緑色になってしまうという重大な欠点を持っていた
ゆえになるべく使いたくない技術なのだ
「さてどっちにせよこれが終わったら怪我人の本格的な治療をし無ければいけませんね
僕が施したのはあくまでも応急処置に過ぎませんから」
フリードと合体中のグレンはこう尋ねる”炎道さんは見つけたけどロック先生はいいの?”と
「大丈夫ですよ、大人なんだから自分で何とかするでしょう」
フリードは大人を信用しすぎているようだ
>470
ああ、非常に分かりにくい文章ですみません……
メイド長はあくまでも長生きしてる魔族の女性でありその超大物ではありません。
……メイド長が仕えてる主、『姿なき大図書館の管理者』が大物……と言うか……
『ササミ』が気付けるのは、メイド長や管理者が魔族であると言う事だけと言う事に……
互いの設定を摺り合せたら、カルチャーギャップも真っ青な時間の開きが浮かび上がってしまったので……
ササミから今の魔界の事を聞かされたら管理者は大層驚くでしょう。
失礼を承知で言いますが、実を言うと元々使わなくても問題ない設定だったのです。
と言うのも、冗長になってしまうと判断した場合に投げ捨てられる様
この分に関する情報はほとんど出さない様にしていたのと、相変わらずの
無駄に大きなスケール、そして魔界関係者の参加を考えてなかった己の不明ゆえなのです……
なお、例のササミさんの魔界に関する情報は楽しみながら目を通しましたが、
認識がずれてる可能性もありますのでその時は遠慮なく言って下さい。
こちらの設定を混ぜ込むとこうなったのですが……不都合があったら
仰って下さい、こちらが見落としているかも知れませんので。
ナラシンハの侵攻よりもはるか昔、
『旧神』が存在していた神世に七柱の神があり、彼らもまた旧神の例に漏れず
自らの力を誇示する為、一つの世界を創り上げる。しかしその世界はひどく不安定で、
大きな力を持つ者が支えなければすぐに崩れてしまう失敗作だった。
しかし、その神達は苦心して創り上げたその世界を捨てる事が出来ず……
自らを石に変え、世界を支える柱とした。『魔界』の誕生である。
魔界の一般知識
『魔界創世記には『七柱の神が魔界を創り上げ、そして柱となった』と記されている。
しかし、現在発見されている柱……石となった神の数は『六つ』しかなく、
存在しない神については『巨獣』の名を持つ事だけが分かっていて、
どんな姿かとか、性格やら司るものなど、ほとんどの部分は伝わっていない。
最後の神が意図的に消したのではないか? となっている。』
結論を言うと、『管理者』は『知るものなき七柱の魔界神の一柱』なのですよ……
大元のプロットの時点で管理者の正体は決めていました。
もっとも、これに限らず自分の設定は、世界観を共有する可能性を
一切考慮していなかったので、いざ形にしてみると完全な独り善がりです。
謎にしているのは、こっそり廃棄出来るようにする為の小細工であり
わたくし個人の趣味ではございません……多分。
……質問に対する回答や説明になっているかどうか怪しいです。
引き続き分からない事などがあったら仰って下さい。
>471
ありがとうございます……どこのメイドガイ、あれはオカマじゃなかった。
……テンプレは次に投下します。自分の中で諸々の設定を
もう一度整理しなおす必要があるのと、今回の設定の見直しに
予想以上に時間を取られてしまったので……
シャイナ「私は別におあげさんが好きだったりはしないぞ?
それに、基本的に人造人間は食事を必要としないからな」
まぁ、『彷徨者』は分かっているのですがあくまで『シャイナ』を演じていますからね。
……もっとも、全部が全部演技と言うわけでもないのですが。
ええ、そうさせて頂きます。根を詰め過ぎるとまたドツボに嵌ってしまうでしょうから。
そう言えば、あの青い狸も一応浮いてる設定でしたね……
どちらでもいい、では話が進みませんよね。
我々系に馴染みが深いのは千夜万夜なので、個人的には千夜さんの方がよいかな?
テンプレの代理投稿スレも、千夜さんの所にあるので……
逆に一緒の場所だと混乱してしまうかも知れませんが。
……誤爆……orz
上の一レスは避難所に投下するものなのでスルーして下さい……
ミクの糸は命綱となって、リリィとルナを現世に繋ぎ止めていた。
胸の出血から、薄れていく意識にまどろんで、ルナは幼いころのことを思い出していた。
かくれんぼをして迷子になったルナを探すために行方不明になってしまった兄のこと。
その日から両親はルナのことを見てくれずに、兄を探すことに夢中になって
寝ても覚めてもずっといなくなった兄のことだけに思いを巡らせていた。
だからルナは孤独だった。誰にもみてもらえないことはいないと同じこと。
ただ誰かにみてもらいたい。ルナのビジュアル系の格好は、クラスメートに。
男言葉は神隠しにあってしまった兄のように親に興味を持ってもらいたかったから。
>「リリィ、ごめんな……ルナもそんな怪我させてもうて」
「べつにいいの。体の痛みだから…」
>「ああああああああああ!!嫌!嫌!何で!エンドウ君を助けるはずだったのに!
何で私、ルナちゃんにこんな事を!!」
「……ち、…ちがうの」ルナは視線を落とす。
ただ、リリィを助けなければ自分の心が死んでしまうだけ。
すべて自己愛で友情も愛情もぜんぶただの自己満足。
(なんて醜いの…なさけない…)
ササミは颯爽と現れリリィの右手を切断し
真と一緒に儀式魔法の中心となって槍の封印を行っていく。
結局それなら、今までの迷いや悲しみや葛藤なんて無意味だった。
もとからササミやミクのように心がなかったら何にも苦しむ必要もない。
自分のやってきたことはただの道化芝居。
魔方陣から弾かれて転げて、暗い天井を仰ぎみる。
今のルナは、熱く沸いてくる胸の痛みにだけに自分の生と存在を感じていた。
【魔方陣から弾かれて、仰向けでヒクヒクしてる状態】
>159-175
>「私はこの槍と悪霊を逆召還する!!」
>「バカッ!何考えてるの!」
危機的状況にありながら、リリィは真の言葉を一蹴する。
その選択は、魔剣と狐の封印をとく結果になるから。と。
狐の封印解除くらいは許容範囲内のミクは、この一徹者がと内心舌打ちするしかない。
>「エンドウ君!起きてよエンドウ君!そして、その炎でこの槍を燃やして!
> 今起きないと、マコトちゃんが手の届かないところへ行っちゃうのよ!いいの?それで!」
>「まったく、どこまでも、甘いなぁ。リリィ嬢?
> さっき、私に説教、しておいて、このザマ、とはね」
その声は突然に、唐突に、何の前触れもなく現れた。
何も無かったはずの空間から、突如現れたからくり仕掛けの人形。
それが、声の主なのだ。
ミクには見覚えはなかったが、会話から察するに人形はどうやらリリィたちの知り合いのようだった。
人形は流し雛について語り、自身に厄。 つまりは黒い靄を移すように提案する。
流し雛についての知識があり、”人形”に愛着の無いミクにとっては願ったり叶ったりの申し出だ。
ただ、”人形”が黒い靄に乗っ取られないとは限らないのが問題ではあるが。
>「……やるなら、早く、してくれ。
> 万全ならいざ知らず、今の私では、長くは、耐えられない」
現れたのは、人形だけではなかった。
ミクから見れば着ている者の感性を疑わざるをえない服装の女性……メイド長もその場に現れたのだ。
>『……遅ればせながら、ただいま到着いたしました。申し訳ありません。
> 申し訳ないついでに、指示を下さいませ……どこから手をつけたらいいのか、
> 優先順位を決められないのです。負傷者の救助、術の解除、元凶の排除……』
元凶を排除なさいとミクが言おうとした時、リリィの声が、頭の中に響いた。
>『もしもエンドウ君が動けなかったら、魔槍を握っている私の手首を切り落として』
背に腹は変えられないとの言葉にあるように、ミクの思考も、やむなしとの結論を下す。
だがササミの行動は、決して遅くは無いミクの決断よりさらに早かった。
>「い・や・だがね。
>そんなにまっとれーへんもん(まっていられないもの)」
言った時には、すでに人形とリリィの手首は切り飛ばされている。
ミクも抜刀術の速さは知っていたが、ここまでの速度を出す達人は記憶の中にもそうはいなかった。
電光石火の神業である。
切り取った手をフリードに投げ渡したササミは、堂々と詰みを宣言して呪言を唱える。
>「全天視野と高速機動剣術だけで魔王候補になれるほど魔界は甘くないぎゃ。
>単体ではできえぬ集団儀式魔法を一人で操る、≪ワンマンオーケストラ≫ササミ・テバサコーチンの力をみやーせ!」
「船頭多くして船山に登る、とならないのはたいしたものですわね」
複数の顔がそれぞれ違う言葉を発し、それぞれの発した言葉が合わさって1つの魔術となっているのだ。
魔法の技術や知識は無くても、ササミが剣術だけでなく魔法についてもかなりの腕前なのは一目瞭然である。
しばしササミと真の共同作業を眺めてから、ミクはそちらは任せて別の事をすることにした。
機に臨んでその変に応ずる。
つまり、負傷者の手当て(一応)を行うことにしたのだ。
糸を引っ張って軽々とルナとリリィを手繰り寄せ、ミクは二人の顔を覗き込む。
「ご機嫌はいかがかしら?
いくら仲間が大事とはいえ、命を代償にする賭け事など褒められたものではありませんわよ」
引き寄せたものの、ミクは応急処置以上の医療知識は持ち合わせていない。
回復魔法が使えるわけでもないので、ミクにできることはそれほど多くは無かった。
とりあえず、ルナの治療はフリードに任せ、ミクは無造作にリリィの切られた方の腕を持ち上げてしげしげと眺めた。
素人だと切断面が潰れるものだが、ササミの切った後には何の乱れもなかった。
「……見事な切り口ですこと。 やはり剣術も並みの腕前ではありませんのね」
感想の言葉を述べてから、ミクは切り口に何重にも糸を張って包帯の代わりにする。
糸を張り終えたミクは、興味を失ったように握っていたミクの腕を離した。
「フリードも、血止めが必要ならおっしゃってくださいましね。
糸くらいならいくらでもご用意できますから。
それから……そちらのウサギ耳を頭に乗せた方。
負傷者の救助がこちらで必要ですわ。
ついでに、あちらで倒れている総代の様子も確認していただけると助かりますわね」
フリードとメイド長に声をかけたミクは、もうこれくらいで良かろうと数歩後ろに下がった。
何にしても、今のミクにはこれ以上できることは何も無いのだ。
>「さてどっちにせよこれが終わったら怪我人の本格的な治療をし無ければいけませんね
> 僕が施したのはあくまでも応急処置に過ぎませんから」
「そうですわね。 ようやく厄日が終わると思うと、気持ちも爽快になりますわ」
傷の養生に当てるはずの時間に引っ張り出され、いろいろと災難にあったのだ。
ミクにとっては文字通り厄日としか表現できない体験である。
不思議と、思い返しても嫌な気持ちはしなかったのだが。
「そちらは、問題なく終わりましたかしら?」
ミクは、専門外の分野の専門家、真とササミに声をかけた。
あれだけ大口を叩いておいて、失敗していたら笑い話にしかならない所だ。
もちろん失敗は厄日が終わらない事につながるので、笑っている場合でもない。
>「バカッ!何考えてるの!」
逆召還の段階でリリィがその力を振り絞って叫んでいます
>「ルナちゃんもマコトちゃんも、封印を完全に解くことなく向こう側に干渉することが出来るのよ!
そんな人が、向こう側に引きずり込まれた上に魔槍に憑依されたらどうなると思うの?
魔剣どころか、狐の魔物まで封印を解かれることになりかねないでしょう!!」
真はかぶりを振る、真はそんなことにならない確信があったのです
「大丈夫や!!そんなことにはならへん!だって……」
そこで言葉が詰まる
それ以上の言葉を口に出すとリリィは命をかけて止めようとするでしょう
「逆召還に自分の全魔力、命全てを注ぎ込む」などと口に出せるわけがない
逆召還と同時に自分の魔力を全てかけた自己犠牲呪文により物理的にすべてを破壊しようとする
それは無駄なことかも知れないけど、真はそれ以上の冴えたやり方というものを思い浮かばなかった
>「揃いも揃って身代わりになろうとするなんて、ほんとにわけわからんわ。
しかも弱そうなの下から三人が我先に体張るんやから。
この謎を解明するまで誰も死なせるわけにゃいかにゃーて。
どっから湧いたかしらん人形も、時間稼ぎはもうえぇよ。全部詰んだから」
「く……」
言葉が出ない、逆召還から封印への変換は見事なものだった
真の術式と魔力を上手い具合に誘導し儀式を完成させた
「そうか……落とし前はおあずけやな」
完敗としか思えなかった
いまは黙ってササミに従おうとそう思った
さてさて、いまは呑気に意識のない男、炎道勇気
彼の救出劇もその幕を下ろそうとしている
リリィの叫びに呼応してカッコ良く再登場と言うわけにもいかず
ササミと真の儀式魔法の余波でなんとなく意識が戻り始めた始末
正直、なにが起こってるのかわからない
部屋で寝てたのになんでこんな冒険活劇のフィナーレのごとくなっているのは誰だろう
我が美しき許嫁がなにか得体の知れない鶏の化物(ササミさんごめんなさい)と一緒にいるのはなぜでしょう
薄目を開けて事態を見守っていても出来事が複雑になりすぎてなにがなんやら
もう少し黙って寝ておこうと勇気は思った
>165-169 >171-179
時間は、少々遡る。
>真はかぶりを振る、真はそんなことにならない確信があったのです
>「大丈夫や!!そんなことにはならへん!だって……」
>そこで言葉が詰まる
「ほら、やっぱり私のいったとおりじゃない!
もしそんなことしたら、邪魔者がいなくなったとばかりに誰かが・・・・私がエンドウ君とくっついちゃうかもよ?
いいの、それでも?!」
私が、と付け加えたのは、より現実味を増すためであって本気ではない。
ただ、マコトに思いとどまって欲しかっただけなのだ。
>「まったく、どこまでも、甘いなぁ。リリィ嬢?
> さっき、私に説教、しておいて、このザマ、とはね」
「シャ・・・・・・シャイニング・ムーンライトさん?!動けるようになったの?」
リリィは、相当動揺しているようだ。
正しい彼女の名は、シャイナ・ムーンライト。ひょんな事で知り合った、人外の存在だ。
ちなみにリリィが驚いているのは、何も彼女の体が破損しているせいばかりではない。
(シャイナさんの体は、ルイーズが、職人さんのところへ診せに行ったんじゃなかったの?)
職人の店から森の中にある地下遺跡までは相当な距離があり、ルイーズはここにいない。
では、なぜ今シャイナがここにいるのか?
「はっ!もしや、あなたが封印された狐さんだったんですか?」
リリィのぼけた言葉をあっさり流し、シャイナは語る。
>「結局、私達は似た者同士……厄除けの、『人形』なのだな。
的を射た彼女の言葉に、リリィはうっすらと笑みを浮かべて「そうだね」と囁く。
>「(略) 今が、正に、厄を吸い、退ける、時なのだろう。さて、どうする、かね?
> ……私は、『空っぽの人形』、だ。空っぽ、なのだ、から、厄を溜めるには、丁度いい」
リリィは目を瞑った。
>「……やるなら、早く、してくれ。
> 万全ならいざ知らず、今の私では、長くは、耐えられない」
「そうね、あなたが本当に空っぽのお人形だったら、それでも良かったかも」
リリィは歯を食いしばった後、叫んだ。
「でも・・・・・・答えは、ノーよ!私はあなたと違ってバカだから、諦めが悪いのよ!」
そしてリリィはテレパシーで、エンドウが動けないなら腕を切るよう人外の二人に呼びかける。
刹那。
>「い・や・だがね。
>そんなにまっとれーへんもん(まっていられないもの)」
リリィの耳元でそっと囁かれるササミの言葉の後、ふっ、と手の重みが消えた。
ありえない位置に移動した槍には、ぶら下がった自分の手首が見える。
手首を切り飛ばされたとわかったのは、この時になってからだった。
>「阿!吽!」
「!!!」
切り落とした手首へ向けた衝撃波は、当然そばにあるリリィ側の切り口にも十分すぎるほどの影響を与えた。
それ以降ササミの言葉は、全く彼女の耳に入ってはこなかった。
苦痛が覚めやらぬうちに魔法陣から弾き飛ばされた後は、ルナのすぐそばの床の上に落ち、衝撃にさらに悶絶する。
おそらくシャイナもそば似るに違いない。
だが、白目を向き血まみれで床を転げまわっているのは、何も痛みだけが原因ではない。
「ううう・・・・ぐあああああ!!」
最後に大きく痙攣した後、リリィの体から黒い霧が引き剥がされていく。
どうやら魔槍からの干渉は、完全に断ち切れたようだ。
床の上を少しの間引きずられた後、霞む視界に写ったのは、ミクとフリードの心配そうな顔だった。
(事実誤認だとミクからは大いに反論が来そうだが、リリィはそう感じたようだ)
>「僕は別にどっかの誰かみたいに手首フェチじゃないですから安心してくださいね」
>と氷の中に手首を閉じ込め懐に仕舞い込むフリード
「ロゼッタちゃんは・・・・・好きな子の左手首にしか興味が無いじゃない」
リリィは蒼白の顔で、口元を微かに歪めた。本人は笑ったつもりなのだろう。
>「ご機嫌はいかがかしら?
> いくら仲間が大事とはいえ、命を代償にする賭け事など褒められたものではありませんわよ」
「ごめん・・・・・・心配かけ・・・・・あうっ!!」
ぐい、と怪我をした腕を持ち上げられ、痛みにリリィは身を硬くした。
傷口を一通り観察した後、ミクは無造作に大量の糸で傷口を塞ぎ包帯代わりにする。
「お、怒ってるの?」
糸を張り終えたミクは、興味を失ったように握っていた腕を離した。
ミクは、裏地下図書館に住まう管理人に仕えるメイド長に、けが人の治療を頼んでいる。
血が足りないせいか、頭がぼうっとしてきた。
とても寒い。
リリィは震えながら、傍らでぐったりと倒れているルナを見つめた。出血のせいでリリィ同様寒いのかもしれない。
「フリード君、ルナちゃん・・・・・大丈夫、だよね?」
致命傷ではないし応急手当は済んでいるとはいえ、早く治療しないと危険な状態には変わりない。
手首が無く、なけなしの魔力も根こそぎ魔槍に持っていかれたリリィは、ルナに寄り添い、少しでも暖めるくらいしかできなかった。
「私本当に・・・・・・だめな子だ」
だんだん遠ざかっていく意識の中、マコトとササミの使う封印の呪文が遠く聞こえてきた。
それがなぜか、遠い昔に聞いた懐かしい子守唄のように思えて、リリィはそのまま目を閉じた。
「・・・・・・・・・・・・・・・・あれ?」
次にリリィが目を覚ました時には、きっと飛び起きこう叫ぶだろう。
「ルナちゃんとシャイナさんは?あ、そうだ封印はどうなったの?!マコトちゃんはどこ?!」
>166-168、>172-181
>「シャ・・・・・・シャイニング・ムーンライトさん?!動けるようになったの?」
>「はっ!もしや、あなたが封印された狐さんだったんですか?」
リリィはまた名前を間違えた。この状況で冷静でいられるはずも無いので仕方ない事だが。
その上、何か途方もない勘違いまでしている。
「見ての、通りだよ。動くので、精一杯、だがね。
……狐、はて何の、事やら。封印、されているなら、学園で会う、道理が無いだろう。
君は混乱しているね? 少し、落ち着いたら、どうかな」
無理難題とはこの事である。分かった上で言っているのだから性質が悪い。
>「そうね、あなたが本当に空っぽのお人形だったら、それでも良かったかも」
>「でも・・・・・・答えは、ノーよ!私はあなたと違ってバカだから、諦めが悪いのよ!」
シャイナの提案すらリリィは一蹴した。『死ぬのは怖い』と言っていたのに、
他人の為に自ら死にに行こうとする……こういう人間だったな、と『彷徨者』は声なく嗤う。
「君は、もう少し、他人を信用、すべきじゃないのかね?
今の、君の、行為は、悪し様に捉えれば、『誰も信用していない』のと、変わらんよ。
……そう、あの化け物、今の『太陽のかけら』と、同じだ」
『彷徨者』は、抜き差しならぬ状況下で唐突に『クリス』の話を持ち出した。
事態が打開してから話せば良いだろうに……真意はやはり闇の中である。
>「揃いも揃って身代わりになろうとするなんて、ほんとにわけわからんわ。(中略)
> どっから湧いたかしらん人形も、時間稼ぎはもうえぇよ。全部詰んだから」
そんな益体の無い話をしている内に、場は大きく動いた。
……パッと見では人に見えるが、よくよく見ると全然人じゃないもの。
『シャイナ』がまだ知らない存在、ササミ・テバサコーチン。
彼女の決断と行動はとても素早く、そして迷いが無かった。
お陰で、リリィとシャイナは仲良く手首を切り落とされそして吹っ飛ばされた。
「……やれやれ、もう少し、丁寧に、扱ってほしかった、ね。
まぁ、いいさ。どうせ、怒られるのは、私じゃない」
もしゼベットがこの事を知ったら、それはもう酷い癇癪を起こすだろう。
精密ゆえにデリケートなからくりを手荒に扱うなど、彼の感性からすれば論外だからである。
>「ううう・・・・ぐあああああ!!」
弾き飛ばされ、苦痛とそれ以外の何かによって悶絶するリリィ。
最終的に取り付いていた黒い霧が剥がれ、宙を漂う。
「……痛いかね、苦しいかね。その感覚を、そう感じられているなら、
君は、まだ生きている、生きられるという証拠、だ。喜ぶといいよ。
君は、『正常』だ……そして、『異常』だ」
全身を文字通り軋ませながらシャイナは立ち上がり、黒い霧に向かって右手を突き出す。
当て所なく宙をさ迷っていた黒い霧が、右手からシャイナの中に吸い込まれていく。
「『空っぽの人形』の、中に収めるに、してはいささか濁っているが……
まぁ、二度と悪事は、働けない。煉獄の炎に、焼き尽くされるが、いいよ」
そのまま、シャイナはおぼつかない足取りで、ササミによって切り落とされた
自分の左手を拾いに向かう。腕側の切り口を見ると、実に見事な切断面だった。
(「レイヴンのそれよりも、はるかに上か……ふむ、なるほど。
……ククッ、見ただけで力量を測れる様になったとは、喜んでいいのやら」)
張り付いた薄ら笑いが特徴のシャイナだったが、この時だけは
まるで自嘲する様な笑顔だった。まぁ、包帯で分かりづらいんだけどね。
「……それで、総代が見つかった、のなら、後は帰る、だけかね?
そうなら、私が、学園まで送ろう。疲れているのに、帰りも、徒歩は
さすがに嫌だろう、しね。さてさて、どうするね?」
何とか立ってはいるが、バランスを取るのも一苦労の様で、
ちょっと横に揺れるだけで関節から軋む音が立つ。分解しないのが
信じられないほどボロボロなのに、やはり口元には薄ら笑いが浮かんでいる。
> それから……そちらのウサギ耳を頭に乗せた方。
> 負傷者の救助がこちらで必要ですわ。
> ついでに、あちらで倒れている総代の様子も確認していただけると助かりますわね」
封印の術式、その全てが終わるまでメイド長は動けなかった。
ここまで大掛かりな術式が発動している中、下手に自分の術を行使して
悪影響を及ぼしてはいけないと――――その空いた時間で、メイド長はようやっと
心を落ち着ける事が出来た。長生きしているだけあって、大抵の事には動じないメイド長だが
今の彼女にはどうしても解決せねばならない問題があり、その為に一行に深刻な被害が出る事は
何が何でも避けたかったのだ。
『……畏まりました。まずは負傷者の傷を治す事から始めさせて頂きます。
もっとも、ここまで重傷ですと私だけでは完治させられませんが……』
メイド長はミクの言に従い、まずはルナの怪我を治癒させる事にした。
一歩間違えば致命傷だったその傷を、軽傷レベルにまで回復させるには
かなり高度な治療魔法を使う必要がある。他の面々の事も考えると、
自分だけの魔力では保ちそうに無い。
(『これを見越して、あの方は魔力結晶を持たせたのでしょうか……』)
ルナの治療と炎道の様子の確認、どちらもこなす為にメイド長は暴挙に出た。
なんと、ルナを抱きかかえて傷口に魔法をかけつつ炎道に近づいていくではないか。
その間も、施術に変化は見られない。複数の事柄を同時に解決する、メイド長としての
日々の職務の賜物なのだろう。それが褒められた事かどうかまでは分からないが……
『……旦那様、起きて下さいませ。
もうご起床のお時間ですよ? それとも……いつもして差し上げている、
目覚めの接吻を、此度もご所望なのでしょうか?』
……メイド長は、炎道が狸寝入りしている事に気付いてしまった。
その理由までは分からないが、現状炎道を運ぶだけの余裕は無い。
身体的に異常が無いなら、早く起き上がってほしいのだ。
じゃあなんでこんな言い回しをしたかって? メイド長は基本ドギツいピンク脳だからである。
寝言の真似事でも、炎道がしろと言ったら容赦なくする。
その結果許婚にどんな目に遭わされるか、メイド長は考えない。
……だって、両方とも(性的な意味で)食べちゃおうとか考えてるんですもの。
ご丁寧に、そんな精神状態には無いであろう真の方を横目で三回連続で見つめる始末。
―――――そして時間は過ぎ―――――
>「ルナちゃんとシャイナさんは?あ、そうだ封印はどうなったの?!マコトちゃんはどこ?!」
「ようやく、お目覚めかね。まったく、寝坊すけも、程々に、したまえよ。
……ルナ、とはあそこの、ウサギさんが、抱えてる子で、いいのかな。
彼女なら、ウサギさんの術で、一命は取り留めた、様だよ。
私は、見ての通りだ」
リリィの耳に飛び込んできたシャイナの声、そちらを向くとやはり酷い状態だと分かるだろう。
『皆様、ご無事で何よりです。肝心な時にお傍にいられず……
そして……厚かましい事を承知で、皆様に一つお願いがございます』
ルナへの施術が一段落した様で、メイド長は他の負傷者にも治療魔法を使っている。
そんな中、これもまた唐突にメイド長からお願いという言葉が。
大騒動で疲弊した状態、普段のメイド長ならこんな時に言い出したりはしない。
……一行の中にはそのお願いを聞く義理など無い者も何人かいるし、そもそも
お願いと言っても何をさせるつもりなのか……
>171-183
>「フリードも、血止めが必要ならおっしゃってくださいましね。
糸くらいならいくらでもご用意できますから。」
というので足りない部分を用意してもらうことにしたフリードリッヒ
>「フリード君、ルナちゃん・・・・・大丈夫、だよね?」
「大丈夫ですよ僕だったらこれぐらいの怪我じゃ死なないですしルナさんも同様でしょう」
フリードはいまいちジルベリア人とその他の人間の生命力の差というものが理解できていないのか
あまり心配していないようである
”そうだね心臓が止まっても超人心臓を動かせばいいだけだもんね”
グレンはフリードのことを人間じゃないかのごとく言う
「さすがに僕にだって心臓はひとつしか無いですよグレン」
いくら天才といわてていようがフリードリッヒは人間である・・・たぶん
なんか変な異種族の血が入っていようが戸籍の種族欄に人間と書いてあれば人間なのだ
むしろこんなに多種族な世界で純血を保つ方が難しいのではないだろうか?
オークがエルフを性的な意味で襲うなど日常茶飯事だろうし
まあオークに言わせればオークの女に相手されない情けない奴らがやる行為だそうだが
”それはともかくそろそろ分離してもよくない”とグレン
「そうですねもう出るとしても植物系の魔物ぐらいでしょうし
ユニオン(合体)が必要になるような強敵も出ないでしょう」
もし植物の魔物が出たら炎使いである炎道に何とかしてしてもらおうという算段である
>「……それで、総代が見つかった、のなら、後は帰る、だけかね?
そうなら、私が、学園まで送ろう。疲れているのに、帰りも、徒歩は
さすがに嫌だろう、しね。さてさて、どうするね?」
「そうですねロック先生が帰ってきてるかもしれませんし一旦学園に帰りましょう
帰っていなかったとしても探すのはまた明日ですね」
ここに居なかったということはロック先生が居なくなったのはまた別の原因なのだろう
フィジルでは何が起こっても不思議ではないからだ
>『皆様、ご無事で何よりです。肝心な時にお傍にいられず……
そして……厚かましい事を承知で、皆様に一つお願いがございます』
「内容によりますけど一体なんですか?」
『皆さんに今から殺し合いをしてもらいますだったら断るよ』(猫語)
とグレン
彼は冗談を交えないと喋れない病気か何かなのだろうか?
「当たり前…だがね」
ミクの問いかけにササミがにやりと笑いながら応える。
だがその笑みはひきつっており、明らかに余力がないのを伺わせるだろう。
術の問題ではない。
この一連の流れは全てできるという結論が出てからの行動なのだから。
だが、問題は魔力容量であった。
ササミの行った魔法は本来七人で行うべきもの。
七つの異なる旋律の呪文。
七つの異なる魔法動作。
これらは怪鳥七面鳥という種族特性で解決できる。
しかし消費魔力も七人分という問題は解決できていない。
一度儀式魔法を行う事でササミの魔力はほぼ全て消費していたのだ。
完全に枯渇しなかったのは真の術に乗せた為に、その分多少の余剰ができたというだけ。
それでも余裕があるとは言い難いのだ。
しかし術は正常に行使され、魔槍は魔法陣にできた空間のゆがみに吸い込まれていった。
ほどなくして魔法陣の光も静まり、そこには静寂が戻る。
「人間というもんを見せてもろーたわ」
真の頭をくしゃくしゃっと乱暴に撫でると、ササミはフラフラとリリィの元へと飛んでいく。
まだ『詰み』切っていないのだから。
倒れているルナとそれに寄り添うようなリリィ。
二人を見ながらササミは考える。
結局二人そろって戦闘不能の瀕死の状態になっている。
こうなるのは火を見るより明らかであっただろうに、なぜあのような行動に走ったのか。
そしてルナを見ながら、好都合だという考えも頭をもたげる。
今ここにいるメンバーでササミにとって最大の脅威はルナなのだ。
絶対的な自信を持っていた全天視界から軽々と逃れる隠密術(天然)の持ち主。
今ここで殺しておいた方が……
そこまで考えたところで頭を大きく振った。
自分は人間と戦いに来たのではない。
あくまで人間の力の秘密を見て、学びに来たのだ。
そしてこのルナはリリィ同様にそれを学ぶ鍵となる存在なのだろうから。
小さく息をつき、リリィに視線を移したところで突然起き上がった。
>「ルナちゃんとシャイナさんは?あ、そうだ封印はどうなったの?!マコトちゃんはどこ?!」
その叫びにメイド長が答えている間に後ろに回り、その細い首筋に手刀を見舞う。
「まだ寝とりゃーせ!せっかくくっつけ易い様に斬ったのに暴れられたらかなわせんわ」
暴れられてはこれからの処置が面倒なのだ。
気絶させながらもその舌を巻いていた。
この状態で最初に出る言葉が他人の心配だとは。
驚きを通り越して呆れるほどに。
「人間ってみんなこうなのか、この子が変り種なのか、しっかり調べんといかせんね。あ、そうそう、手首くっつけるからくれ…へ、んんん????」
リリィの手首を受け取ろうとフリードの方へ向きかえって思わず言葉が詰まった。
間近で見て、そして袖を破いで露わになった腕の筋肉や骨格からフリードが男だとわかってしまったのだから。
今の今まで女の子、しかも美少女だといってもなんら支障がないと思っていたので驚きも大きかった。
さすがにこれを口に出すのは憚られるという判断はつく。
だが、口には出さなかったが、フリードが男でびっくりと顔に書いているような状態でリリィの手首を受け取ったのだった。
自分の両掌を切り、血塗れた手でリリィの手首の断面に切り取られた手の断面をくっつけ握りしめる。
その間数分といったところか。
ゆっくりと手を離すと、すでにササミの掌の傷は塞がっていた。
ササミの血には再生酵素が含まれており、その血をかければある程度の傷は塞がる。
だが、切断された手首と掌の切り傷とではもちろんどちらが塞がるかは決まっている。
ので、ある程度手首がくっついたところでササミハ自分の胸に爪を突き立てた。
切り離した手首をくっつけるにはそれなりに大量の血が必要なのだ。
緻密な固定が必要なくなれば掌よりももっと大量に血が流せる場所で治癒した方が効率的である。
その結果が、リリィの腕を傷つけた魔乳に挟むという形として現れるのだ。
>『皆様、ご無事で何よりです。肝心な時にお傍にいられず……
> そして……厚かましい事を承知で、皆様に一つお願いがございます』
「厚かましいてゆーより状況が見えてへんのも大概にしやーせ。
見ての通り何人も倒れて動けへんし、お願いどころの話もあらせんわ」
倒れているルナはもちろん、リリィはこの状態のまましばらく動かせない。
自分も魔力の消耗が激しく、貧血状態でもはや飛ぶことすらままならない。
真や勇気、フリードも消耗が激しいだろう。
まともに動けるといえばミク位なものか。
このような状況でお願いするというのはもはやお願いではなく脅迫に等しい。
「そこの人形。そのなりで稼働できるんならありがたいわ。
テレポートで現れたっぽいし、それで学園まで移動させてくれるならしてちょーよ。
私も今動けへんで。
あんた(メイド長)もお願いがあるなら一週間くらいあと、ちゃんと回復してからにしやーせ」
リリィの横に座り込み、その腕を胸に挟みながらという結構間抜けなポーズでシャイナとメイド長にそれぞれ注文を付けるのだった。
>178-186
>「当たり前…だがね」
「そう。 その言葉を聞いて安心いたしましたわ」
さすがのササミも大技の影響で疲弊したか、笑みにも今までの余裕はなかった。
が、大事なのは儀式の成功であり、ササミの容態ではないのだ。
自分にこれ以上の面倒が降りかからない事がわかれば、それで十分である。
叫びながら飛び起きるリリィに、手刀をお見舞いして静かにさせるササミを見ながら。
ふとミクの脳裏に、手負い相手の今なら”狩り”も容易いのではないかとの思いがよぎった。
が、少し考えてから、ミクは頭を振って自分の考えを否定する。
第一の理由として、自身の怪我のためかあまり気乗りがしなかったため。
第二に、総裁の部下らしき男(ブレのことだ)の声を聞いていたために。
以前ミクは、学園の総裁に協力するとの約束を取り付けている。
そして総裁は、少なくとも今は人死にを願っていないようなのだ。
総裁の影響の及ぶのが明らかな状況で意向を無視するのは、賢明ではないだろう。
>「……それで、総代が見つかった、のなら、後は帰る、だけかね?
> そうなら、私が、学園まで送ろう。疲れているのに、帰りも、徒歩は
> さすがに嫌だろう、しね。さてさて、どうするね?」
>「そうですねロック先生が帰ってきてるかもしれませんし一旦学園に帰りましょう
> 帰っていなかったとしても探すのはまた明日ですね」
「帰っていなかったとしても、探すのは別の方々にお願いいたしましょう。
これだけ努力してまだ働けと言われては、学生というより小間使いですもの。
それから、満身創痍の怪我人が多いですから、送っていただけるのならぜひお願いしたいですわね」
見た所ぼろぼろの人形にまだそんな力が残っているのかと内心疑問に思いながら、ミクはそう答える。
元気そうだから担いで帰ってなどとお願いされるのも嫌だったのだ。
>『皆様、ご無事で何よりです。肝心な時にお傍にいられず……
> そして……厚かましい事を承知で、皆様に一つお願いがございます』
兎耳のメイド長の言葉にフリード主従は冗談を返し、ササミは後にしろと言う。
「…気を失っている方もおられますから、今すぐというのもいかがなものかしら。
重要な用件でしたら日を改めて、急ぎの用なら移動してから手短に。
というのがよろしいのでは?」
折衷案を示したミクは、別にメイド長に気を使ったのではない。
他言無用程度の理由で煩わされないようにと考えての言葉である。
ちなみにミクは、学園に戻ったら素速く寮に戻るつもりでいた。
報告だの謝罪だので煩わされるのはまっぴら御免なのだ。
>184-187
>「そうですねロック先生が帰ってきてるかもしれませんし一旦学園に帰りましょう
> 帰っていなかったとしても探すのはまた明日ですね」
>「帰っていなかったとしても、探すのは別の方々にお願いいたしましょう。(中略)
> それから、満身創痍の怪我人が多いですから、送っていただけるのならぜひお願いしたいですわね」
>「そこの人形。そのなりで稼働できるんならありがたいわ。
> テレポートで現れたっぽいし、それで学園まで移動させてくれるならしてちょーよ。
> 私も今動けへんで。
分かり切っていた事ではあるが、とりあえず意識のある面々は
学園に帰るべきだと口を揃えた。まぁ、無理も無い。本来これほどの仕事は
教師や専門の術者が行うもの、成り行きとは言え学生だけでどうにかすべき物ではないのだから。
「……特に、反対意見は、無いね?
じゃあ、学園までの『道』を、開けるとしよう」
そう言ってシャイナは無事な右手で手刀を作り、何も無いところに突き出す。
……指が、手刀が『空間』を裂いて何かに刺さった。そのまま右手を握ると、裂けた空間が広がり
人二人分ほどの幅の『黒い裂け目』が出来上がる。先を見通す事は、出来そうも無い。
「さ、行きたまえ。私は、最後に、入るよ。
……ドアを開けたら、ちゃんと閉めないと、いけないだろう?」
シャイナはもっともらしい理由付けで殿を務めると言った。
……『彷徨者』は、この機に乗じて一行をある所へ連れて行く腹積もりなのだ。
>「内容によりますけど一体なんですか?」
>『皆さんに今から殺し合いをしてもらいますだったら断るよ』(猫語)
>「厚かましいてゆーより状況が見えてへんのも大概にしやーせ。(中略)
> あんた(メイド長)もお願いがあるなら一週間くらいあと、ちゃんと回復してからにしやーせ」
>「…気を失っている方もおられますから、今すぐというのもいかがなものかしら。
> 重要な用件でしたら日を改めて、急ぎの用なら移動してから手短に。
> というのがよろしいのでは?」
面々の反応は予想通りであった。『管理者』側の事情を知らない以上に、
現在の状況と引き比べればどちらを優先すべきかなどHでも分かるというもの。
しかしメイド長にも引けない理由がある、口を開きかけたところで……
意外にも、シャイナが横槍を入れたのである。
「当然の、反応だねぇ。揃って満身創痍、そんな時に、何言ってるんだ……
状況が、分かってない様には、見えない。だのに、そんな切り出し方。
つまり、それだけ、急を要する上に、重要な、案件、なのだろう。
……内容に関わらず、私は協力しようと、思う」
シャイナは、いつ壊れてもおかしくない状態なのに
内容もろくに聞かず協力を約束すると言う……メイド長にとっては完全な部外者である。
平素ならば裏を勘繰る事も出来たのだが、今のメイド長に勘繰れる余裕は無かった。
『……殺し合い、になるかどうかは分かりません。
ただ、一つだけ言える事は、猶予は保たせられて一日…と言う事。
一週間後、ほぼ確実に、少なくとも、この島とそこにいる者は、消えている』
話している内に負の感情が湧き上がってきたのか、徐々に声が小さくなるメイド長。
ともすれば心にも無い事を言い出しかねない、それを制したのはやはりシャイナだった。
「それは、困ったね。私は、まだ消えるわけには、いかない。
……万全、じゃなくとも、関係ない。やらずに、後悔するよりは、
やって後悔した方が、まだ有意義だよ。たとえ、壊れて、しまっても、ね。
……勝てない勝負は、しない。何事にも、万全を、期し、臨む。
実に合理的だ、非の打ち所が、ない。だが、それ故に、機を逃す。
分が悪くとも、賭けなければ、ならない時も、あるんだよ。
……『世界』は、常に選択を、強いる。望んだ、選択肢が、なくともね」
……シャイナの発言は、ボロボロな状態を理由に及び腰になっている面々を
批判している様だった。メイド長の言っている事が事実かどうかは分からないが、
そこまで大事でないならよし、本当に大事だったらいくら悔やんでも遅いのだ。
「……とは言え、辛うじて、一日は、時間があるん、だろう?
なら、ウサギさんには悪いが、ギリギリまで、保たせておいて、もらおう。
限られた時間だ、有効に、使うべきだと、私は思うのだよ」
あれだけ煽っておきながら、最終的に折衷案をシャイナは口にする。
……シャイナを操る『彷徨者』は、メイド長の『お願い』の内容を知っている。
もちろん、今はあくまで『シャイナ』なのでそれを明かす事はできない。
『彷徨者』にとって、メイド長のお願いは一つの大きな分岐点なのだ。
彼ら一行がこれに関わらないと、その時点で『結末』が見えてしまう……
だからこそ、不審に取られる事を承知の上でメイド長の擁護をしたのだ。
もっとも、万が一彼らが手を貸さなかったとしても……その時は『彷徨者』が
自ら手を下すだけである。目先の結果は変わらない。
『失敗』したのならやり直すだけ……何度も繰り返しているのだ。
一回増えたくらいで憤る様な感性は、『彷徨者』のどこにも残っていない。
>189
>『……殺し合い、になるかどうかは分かりません。
ただ、一つだけ言える事は、猶予は保たせられて一日…と言う事。
一週間後、ほぼ確実に、少なくとも、この島とそこにいる者は、消えている』
「ゲェーまさか世界の危機!?」
『それ学生風情で何とかできんの?』
と激しく疑問を持つグレン
「まあそれが本当なら大人が出張る事態ですよね
それも最強レベルの」
『いやそれほどまでじゃなくね?』
だったら最初から大人の助けを呼ぶだろうとグレンは突っ込んだ
「まあ世界の危機なんて割と日常茶飯事ですからね
何とかなるでしょう」
『あれ?ここってそんなにデンジャラスな世界だっけ?』
「毎年のように侵略者が襲ってくる・・・・地獄ですよ地球は」
いやそれは別の世界だ
「まあともかく体力が持っても魔力が持たない状況なんですよ
何しろ連戦連戦また連戦ですからね
前の戦いからもう何ヶ月も経ってるような気もしますが実際は一日も経ってないんですから」
何しろアドラス、キラーチェーン、なんか黒い霧と連続で戦っているのだ
そうなんとアドラスとの戦いは昨日の出来事なのだ!!
「二日でボス戦3連続って何だよって状況ですよ!これ以上無理ですってば!!」
珍しく本気で弱音を吐くフリードであった
メイド長の【お願い】に立っている者は皆、【後で】と応える。
今の状況を見れば至極当然の反応だろう。
それに伴いシャイナは手刀で空間を切り裂き黒い裂け目を作る。
転移魔法を空間を切り裂くという手法で成す事は驚くべき技術ではあるが、それに目を見張る余裕はない。
それほど消耗していたのだ。
促されるままリリィを抱きかかえ、フラフラと飛んで裂け目に向かうササミ。
ルナもまだ意識を戻していないが、フリードかミクが運ぶだろう。
真はきっと勇気を運ぶだろうから。
なおも食い下がろうとするメイド長にシャイナが横槍を入れる。
それに対して、メイド長が応えた言葉はある意味衝撃的だった。
>『……殺し合い、になるかどうかは分かりません。
> ただ、一つだけ言える事は、猶予は保たせられて一日…と言う事。
> 一週間後、ほぼ確実に、少なくとも、この島とそこにいる者は、消えている』
それを聞きシャイナは及び腰になっている面々を批判するような言葉を並べる。
聞きようによっては挑発しているようにも聞こえるような言葉を。
そして最後に、一日の猶予を有効的に使い【お願い】を聞くというところに落ち着いた。
この流れに不自然さを感じるほど余裕はないが、その余裕のなさは癇気をむき出しにしていたともいえる。。
悲鳴のようなフリードの声を合図にしたかのように、ササミの足が素晴らしい速さで繰り出された。
それはもはや人間の脚ではない。
膝から先は黄色いうろこに覆われ、足は四つに枝分かれしてシャイナの顔面を文字通り鷲掴みにしていた。
「自立式か紐付きかは知らせえへんけど木偶風情が一端に煽るんじゃなーでよ!」
鷲掴みにされたシャイナの顔面からミシミシという締め付けられる音がする。
ササミの足は歩いたり走ったりすることには向かないが、掴むことに関して言えば恐るべき力を発揮するのだ。
人形はしょせんは人形。
目的の為に作られそのために消費されるものだ。
紐付であればなおのこと。
操者は安全なところで人形という代役を立て危険に触れることなく対処できる。
それが人形遣いの最大の利点ではあるが、それを生身の者にも人形と同等の消費を強要するシャイナの言葉が逆鱗に触れたのだ。
「ゲートとじにゃならんからこれ以上はせえへんけど、とろくしぇこと言っとたら握り潰すぎゃ!」
乱暴に突き飛ばすようにシャイナを解放した後、メイド長へと向きかえる。
「あんたさんもどっから湧いてこれらとどんな関係かはしらーせんけどな!あんまり理屈に合わんこといっとりゃーすなよ!
こんなのびてりゃあす連中に何ができるゆうんだがや。
この状態から一日やそこら休んでできるようなお願いやったら、他の人んたでも十分できるお願いだろうて。
これらしかできん事なら諦めやーせ。
島がなくなるんなら学園関係者にでもいやーて。
一週間もありゃあ全員他に移れるわ。
瀕死の学生如きが阻止できるようなとってつけたような滅亡の危機なんてたーけらしーてきいとれせんわ!
そんな脅し文句考えるより状況見てものいやーて!」
フリードの言葉と意味合いはほとんど同じだが、けたたましくまくしたてる。
それと共にササミの目が鮮やかな黄色に染まり、猛禽類のそれとなる。
ササミは魔界の怪鳥とはいえ、本質は鳥である。
リリィの傷を癒す為に、魔乳に腕を挟み固定することで、抱卵のような感覚に陥っているのだ。
それは母性の目覚め。
威嚇の鳴き声をメイド長に向けるササミは消耗してはいるが、全快の時よりも強くあるだろう。
体力や戦闘能力は劣っていても、母性に目覚めた親鳥は強いのだ。
【管理者】や【彷徨者】の思惑も知らず、消耗し母性に目覚めているササミのヒステリックな反応にそれぞれの代役であるメイド長とシャイナは驚くだろう。
だがササミはもはや話すことなしと言わんばかりにカッ!と威嚇の声を上げた後、空間の割れ目の中へと消えていった。
今のササミの第一の目的は観察ではなく、リリィやルナの治療と自身の回復なのだから。
>190-191
>「ゲェーまさか世界の危機!?」
『……そう捉えて下さって結構です。
滅びこそしなくとも、いくつかの国も不毛の荒地になると思われます。
それは、私達の望む事ではありません』
そう、そんな事は誰も望んでいないのだ。
……世界を滅ぼそうとしかけている存在が、
もう一つ学園にある事をメイド長は知らなかった。
>『それ学生風情で何とかできんの?』
グレンの言う事は至極もっともである。今メイド長達が抱えている問題は
本来なら学生が手を出すレベルではない。それどころか、世界中の人が
一丸となれる程の大問題なのだ。だのに、メイド長は一行だけに助力を願っている。
事情があるのだろうが、その事情を何故メイド長は話さないのか?
『私達は、人々にその存在を知られたくないのです。
……詳細は、事が解決した時とさせて下さいませ。
ただ……今回の問題のそもそもの発端は――――』
しかしメイド長の言葉は最後まで続かなかった。
……またしてもシャイナが割って入ったのである。
「ここで、話していても、埒が明かない、だろう。
……さっさと、入ってくれないか。これの維持も、楽じゃないんだ。
もう一度、開けと、言われても、多分出来ん。
……ウサギさんは、一度、様子を見に、行く事を、勧めるよ」
シャイナは、メイド長の失言を未然に止めたのである。
滅多な事で弱音を吐かない輩(フリード)まで無理と言っている現状で、
琴線に触れるような事を言われて無駄な軋轢を作られるのは困るのだ。
……もっとも、既に手遅れだったのだが。
>「自立式か紐付きかは知らせえへんけど木偶風情が一端に煽るんじゃなーでよ!」(略)
そんな思惑など露知らず、鳥っぽい何に顔面を思いっきり掴まれた。
『シャイナ』の顔面から、今にも砕けてしまいそうな嫌な音が響く。
そして向けられた内容と言えば、如何様な心情の動きがあったか分かりかねるが
人形であるシャイナの言に腹を立ててるものだった。
「……ク、ク。そんなに、その娘達が、大事かね」
『彷徨者』の記憶に刻まれてゆく『ササミ』と言う存在を確かめながら、
ただ一言だけ言い、そして突き飛ばされた。バランスを取る部位が更に歪んだが無視し立ち上がる。
そしてササミの癇癪は、シャイナだけに留まらなかった。次の鉾先はメイド長である。
>乱暴に突き飛ばすようにシャイナを解放した後、メイド長へと向きかえる。(略)
けたたましくまくし立てるササミの言を、しかしメイド長はきちんと聞けていなかった。
ちゃんと聞いてはいるし理解も出来る、がそれらを瑣末な事にしてしまうほどメイド長を揺さぶったのは……
なにあろう、ササミの種族だった。
(『魔族……! それも、かなりの力を持った……何故この様なところに!?
……まさか、ご主人様を……いえ、そうならこんな面倒事に手を出さない筈。
別の目的がある、のでしょうね……まだ、私の事には気付いていない。
しかし、状況が動いてしまったら隠し通す事は出来ない……そう、『ここまで』、なのですね』)
ギャアギャアと喚くササミをよそに、メイド長の顔から焦燥感が消えていく。
焦点が定まりきらず、どこか危うさを湛えていた瞳はしっかりと一点を見据えていた。
『私としたことがお見苦しいところを。ご容赦下さいませ。
……そもそもが身内の不祥事、それを他の方に手伝わせるなどただの恥晒しですわね。
私は学園に着いたらすぐに……『母』の所へ行きます』
先程までの狼狽振りがウソの様に恭しく一礼する。
手の平を返したとしか思えない姿は益々気分を不快にさせるだろう。
……しかし、メイド長はその可能性に一切考えを及ばせなかった。
メイド長はササミの後を追う様に空間の裂け目へと身を投じる。
……『覚悟』を強要する事を妹達に詫びながら――――
そして一行は、総裁の管轄下にある医療棟に出た。その場にシャイナとメイド長の姿はない。
彼らにとって彼女らは招かざる客であり、彼女らにも彼らの懐に飛びこむ気など毛頭ないのだ。
両者の思惑が一致した結果、一行だけがその場へと呼び込まれたのである。
……ササミのスカートに、いつの間にか一枚の紙切れがついていた。それはメイド長の書置き。
『縁あれば、いつか、どこかで』
まるで今生の別れの様な内容もまた、ささくれ立ったササミの神経を逆撫でするに違いない。
……たとえ、事実だったとしてもだ。そんな事を気に掛けられるほど、一行に余裕は無いのだから。
一方シャイナは、図書館の片隅に転移していた。
言う事を聞かない体を無理やり動かし、裏図書館への扉を探す。
メイド長は既に向こう側にいるのだろう。
……薄暗い図書館でもはっきりと分かるほど、シャイナの瞳は剣呑な輝きを放っていた。
(「……期待でも抱いていたのか? 馬鹿馬鹿しい、何度彼らに失望させられた?
そして、これで何度目かねぇ……人が、救いを望んだ者の手を払ったのは。
……私は、彼女にかつての自分を重ねたのだろうな。
迫真の演技と言えば聞こえはいいが、ね……しかし、容赦の無い。
そろそろ使い物にならなくなる……また、巻き戻しが必要だ」)
>182-193
>「まだ寝とりゃーせ!せっかくくっつけ易い様に斬ったのに暴れられたらかなわせんわ」
一度は目を覚ましたものの、ササミの手刀で強制的に意識を飛ばされてしまったリリィ。
魔剣憑依に加え、両腕切断というダメージを受けていたこともあり、ササミの介抱を受けてもぴくりともしなかった。
もっとも、意識があった場合、ササミの犠牲を強いる治療など、断固として拒否していたに違いない。
ササミの選択は、ある意味非常に正しかった、と言えるだろう。
ただその結果、リリィはメイド長の懇願や場に居合わせながら、何もしなかった。
その後に起こった、ササミとシャイナとの軋轢も知る由もない。
彼女は何も知らないまま、ササミに抱きかかえられ、シャイナが開けた転移の扉をくぐった。
この分水嶺が、後にどのような結果を招くのか・・・・・・今の彼女が知る由もなかった。
(寒い、寒いよ・・・・・)
夢の中、リリィは身震いして、さらに身を縮こまらせた。
傷はある程度ふさがったものの、受けたダメージと失血の影響はまだ残っていたのだった。
すると両腕を取られ、何か暖かいものにくるまれた。
氷のように冷えた両手に、ゆっくりと血が通っていくのがわかる。
そのまま抱き上げられ、ゆらゆらと揺れる感覚。
その腕はとてもやさしくて、暖かくて、まるで・・・・・・。
「お・・・・かあさ・・・・」
その顔を一目見ようと、リリィが重いまぶたを無理やりこじ開けた。
そして、彼女の至近距離にあったのは、血まみれになったササミの顔のドアップだった。
「・・・・・?!・・・・・・!!!」
リリィは悲鳴を上げたつもりだったのだが、実際には息を吐き、またわずかに身じろぎしただけに終わった。
そして動いたせいで、至近距離のササミの顔に自分の顔をすりつける結果になる。
しかもよく見れば、自分の両腕はササミの胸の谷間にすっぽり押し込まれているではないか!
しかも抜けない。
『なっ、なっ?!何やってるの私!!ああ!!何?何が起こったのいったいどうなったの?
セクハラ?!無意識にセクハラしちゃったの私?!っていうか、何で切断された腕がくっついてるの?!
はっ!まさか保険医の先生が?!でも緑色の手じゃないし、なんだか私の手っぽい気が・・・・・・!!』
パニック状態のまま、声の代わりに無差別テレパシーを送ると言うのも、大変迷惑な話である。
「皆、迷惑かけた。本当、ごめん。・・・・・・ササミちゃんも、ごめん。手、ありがと」
ようやく落ち着いたリリィは、ガラガラ声ながらも一番最初に言いたいことを言った。
「人、足りない?・・・・・私、夢、見てた?」
遺跡の中でメイド長とシャイナに会ったはずなのだが、この場にはすでにいない。
それにシャイナの体は、知り合いが街で修理してもらっているはずである。
もしかして再会が夢の中の出来事だったのか思ってしまうのも、無理のない話だった。
「ここ・・・・・・どこ?学園じゃ、無・・・・・・―――― 」
もしも、まだササミがリリィに密着していたとしたら、彼女の体が強張ったことに気づいただろう。
「っ・・・・っ・・・・・!!」
リリィは大きく目を見開き、何度か身じろぎをしたが、やがて静かになった。
リリィは生気の無い視線を、一同をこの場に招いた『主』へと向けた。
主―――― そう、総裁と、総裁の意を得たもの全てが彼女の主だった。
今の彼女にリリィとしての意思は無い。今は、ササミのいうところの「紐付きの人形」だからだ。
そう、彼女はそうと自覚が無いまま、総裁と、その意を受けたものの僕として動いているのだ。
本人も知らない秘密を知っているのは、総裁と交流のあるミクだけだ。
総裁がどのような意図で一同をここに招いたとしても、リリィは彼の意を汲み、事がうまく運ぶよう動くだろう。
真は封印の儀式に多くの魔力を使い立っているのがやっというほど疲労してしまいました
「この超天才の私がこんなに魔力を消費してまうなんて、不覚やわ……」
悪態にもなんだかキレがありません
>「人間というもんを見せてもろーたわ」
「……うるさいわ」
小さく言い返す言葉はササミなら聞き取ることもできるかどうかというほど小さかったのです
あと、真の顔を赤くなってしまいました
そこへメイド長が……
>『……旦那様、起きて下さいませ。以下略
プチンと何かが切れるような音がしました
おおらくその場にいた全員が聞こえたでしょう
真の血管が切れるであることは誰もがうたがわなかったでしょう
「おらぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ勇気!こらぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁあぁぁぁぁぁぁぁしねねぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ」
さっきまで立ってるだけで精一杯の真が大地を蹴り、倒れている勇気にいわゆるサッカーボールキックを決めようと猛ダッシュをしています
これには勇気もたまらずネタばらし
「真!やめろ!そんなことあるはずがねぇだろ!俺はお前一筋だ!信じろ!頼む信じて!信じてください!お願いします」
たまらず跳ね起きてこちらも猛ダッシュで壁際まで逃げる
「よう……みんな、こんなところでどうしたんだ?」
血祭りに上げられても勇気は文句いえないだろう
しかし、みんなに血祭りにされるまえに真とに血祭りにさせられ
彼女に引っ張られながら転移の門をくぐっていった
しかし、その前に彼女はみんなに謝罪している
「皆様方、この度を我が婚約者が騒がした件、平にご容赦くださいませ
これからも変わらぬおつきあいをお願いいたします」
真はすぐに戻ってくると三つ指をついて皆に深々と土下座した
「そんでここはどこなん?」
抜けた先は学園ぽくないところだったのです
部屋で寝てたのになんでこんな冒険活劇のフィナーレのごとくなっているのは誰だろう
我が美しき許嫁がなにか得体の知れない鶏の化物(ササミさんごめんなさい)と一緒にいるのはなぜでしょう
薄目を開けて事態を見守っていても出来事が複雑になりすぎてなにがなんやら
もう少し黙って寝ておこうと勇気は思った
最後を間違えてしまいました
正しくはこちらです
そして皆がいなくなったあと……
誰もいなくなった部屋に風が吹くといままで姿を現さなかった彼女が現れる
伊織「なんや残念やわ〜私の体が帰ってくると思いましたのに
まあ、ええですわ。この体でも不自由はしませんしね
それにここまでこれるようになったんは前進ですわ」
伊織は再び姿を消した
>188-196
>「……特に、反対意見は、無いね?
> じゃあ、学園までの『道』を、開けるとしよう」
>「さ、行きたまえ。私は、最後に、入るよ。
> ……ドアを開けたら、ちゃんと閉めないと、いけないだろう?」
人形に作り上げられた『道』を見て、ミクは眉をひそめた。
わざとらしく残る理由を言いだしたシャイナの言葉に、違和感を覚えて。
それは野生の勘だろうか、それとも女の勘だろうか。
うまくはミク自身にも言えなかったが、とにかく”なにか”きなくさいものをミクは感じたのだ。
>『……殺し合い、になるかどうかは分かりません。
> ただ、一つだけ言える事は、猶予は保たせられて一日…と言う事。
> 一週間後、ほぼ確実に、少なくとも、この島とそこにいる者は、消えている』
>「ゲェーまさか世界の危機!?」
>『それ学生風情で何とかできんの?』
「世界かどうかはともかく、島の危機ではあるのでしょうね」
島とそこにいる者が消える。 と聞いても、ミクは比較的冷静でいられた。
余人とは違いミクは、学園の総裁は生徒の死を今は望んでいないのを知っていたので。
学園の総裁が持つ力も情報も、生半可なものではないはずだ。
ならば、少なくとも逃げ出せる程度に事前情報は入手できるだろうとミクは楽観的に考える。
>「自立式か紐付きかは知らせえへんけど木偶風情が一端に煽るんじゃなーでよ!」
>『私としたことがお見苦しいところを。ご容赦下さいませ。
もう少し詳しい情報が聞けるかと考えたミクだったが、ササミの怒りでメイド長は落ち着きを取り戻してしまう。
こうなっては、メイド長も容易に口を滑らせたりはしないだろう。
ミクとしても、さらに情報を引き出すのは諦めるしかない。
「……それではフリード。 ルナのエスコートはお任せいたしますわ。
総代は先ほどの騒ぎでそれどころではないでしょうし、美味しい所をお持ちくださいましね。
私はこれで失礼しますわ。
少々気になることもできましたし。 ……ね?
他の方には、よろしくお伝えくださいな」
美味しい所というより、損な役回りと思われそうな所をフリードに押し付けて。
ミクは作られた『道』ではなく、来た道を戻り始めた。
シャイナを信じなかったのではなく、自分の直感を信じたのだ。
特に何事もなければ、ミクはのんびり歩いて学園まで帰る事だろう。
>191-197
>「……それではフリード。 ルナのエスコートはお任せいたしますわ。」
「もうちょっと体のサイズ差というものを考慮してほしいんですが
・・・・まあ良いでしょう」
フリードの身長は130cm未満でありホビットから同類と間違われるようなちびっ子である
ホビットの同級生(30)曰く”やけにでかいホビットだな”だそうだ
そんなフリードがルナを持ち運ぶのだからどうしても引き摺る形になってしまうだろう
>「ここ・・・・・・どこ?学園じゃ、無・・・・・・―――― 」
「さあ?少なくとも変態ロリコンガチレズ保険医の巣窟じゃないことは確かですよ」
『ある意味安心だね』(猫語)
とグレン
そのガチレズ変態保険医は自分の好みの美少女を自分で作るという
壮大な計画を発動するための準備に忙しいはずである
一応怪我人の治療もするだろうがそれは遺伝子サンプルを収集するついでであろう
とにかくマッドで変態なのであまり関わりたくないという意味では
ここが保健室でないということは幸運であったかもしれない
「そんなことよりも僕は眠い!眠いんです!!」
とフリードリッヒ
血と魔法の使いすぎである
『そういえば此処から出発して明日の授業に間に合うのフィー坊?』
「そもそも此処が何処に在るのか分かりませんから何とも言えませんが
たぶんフィジル島の何処かである事は確かでしょうし何とかなるでしょう」
とフリードリッヒ
フリードの知っている限り転移魔法もそんなに万能ではないはずだ
一瞬で外国に飛ばされたということは無いだろう
”さあ異次元に飛んで行けバミューダトライアングル!”なんてことは無いはずである
故に此処はまだフィジルの何処かであるとフリードリッヒは判断したのである
ちなみに一向は知る筈も無いがここは総裁の管轄下にある医療棟であり
変態の巣窟では無いまともな医療施設である
すなわちフィジル島のどこかである
よってフリードの考えは当たりである
「そんなことはどうでもいいですから空いているベットを貸していただけませんか?
僕は眠くて仕方が無いんですよ。だいぶ魔力も使っちゃいましたし」
大事なことだから二回言うフリードリッヒ
魔力の消費もそうだが流した血の補充はいいのだろうか?
フリードリッヒのことだからレバーでも食べれば補充できそうだが?
『じゃあ今夜の夕食は肉料理だね』
何がじゃあなのかそんなことを言うグレン
ただ単にお腹がすいているだろうか?
「残念ながらトリフィードのサラダです」
いつの間に食用化に成功したんだかあまりにも嫌過ぎる事を言うフリード
『もうトリフィードは懲り懲りだよ』
とお約束のようなことを言うグレンであった
>「私本当に・・・・・・だめな子だ」
沈む意識にぽとんと落ちて溶けたのはリリィの言葉。
ルナにはまわりの声が夢と混じって聞こえていた。
リリィを抱き語りかけているササミの声はまるで子守唄。
安心してしまったルナは完全に意識を失った。
そして、うさぎに抱きかかえられていたと思っていたら
フリードに引きずられていて意味不明。
「寝ぼけてんじゃねー!はなせバカ。大人しく寝ていやがれ!……はあ…はあ」
フリードがちびっ子とわかったルナは強気に戻っていて、彼の手を振りほどくと寝ていたベッドに戻る。
ここは怖い遺跡でもなく安心できるであろう場所っぽいので強気のキャラは復活。
ていうか、フリードに当たるのもお門違い。自分の意識がおかしいのかも知れないのだから。
「…けほ。けほ」
咳が出て胸に痛みが走って苛々するし微熱もある。
症状はニキビに口内炎に肩こりと酷すぎて息苦しい。
「先生いるの?風邪ひいたかも」
喉にへばりつくようなカラカラの声を搾り出しつつ室内を見回せば、
カーテンに仕切られて死角になっているベッドが無数。
窓際のカーテンは風で静かに揺らめいている。
>『そういえば此処から出発して明日の授業に間に合うのフィー坊?』
>「そもそも此処が何処に在るのか分かりませんから何とも言えませんが
たぶんフィジル島の何処かである事は確かでしょうし何とかなるでしょう」
「最低。明日授業ってハードスケジュール過ぎ!
こちとら出席日数が足りないかも知れないから休めないってのに……シャー!」
グレンを猫のまねで驚かして、またけほけほとむせ返る。
ルナは事情が把握できていなかったけど、常識的に考えて
この建物がフィジル島のどこかであると思っていた。
空間の割れ目をくぐり出たところはベッドが並ぶ部屋だった。
カーテンに仕切られ死角があるが、窓からは穏やかな風が流れ込みカーテンを揺らめかせている。
本来ならば初めての人間界の風と空気を満喫するところであるが、今はそんな余裕はない。
魔力の消耗と大量出血のお蔭で意識が朦朧としているのだ。
それでも何とか動けているのは胸に抱えたリリィの存在があったからだといえよう。
であればこそ、その一言は胸を打つなどというどころではなく、心臓を鷲掴みにするような破壊力を持つことになったのだ。
>「お・・・・かあさ・・・・」
身を縮こまらせギュッと抱き着きながらのその言葉は芽生えた母性に直撃する。
卵からかえったばかりの雛は初めて見たものを親と思い込む。
これを刷り込み現象というのであるが、逆刷り込み現象とでもいうべき事がササミの中に生まれていた。
身じろぎしたリリィがササミの顔に自分の顔を擦り付けたことがトドメとなったのは言うまでもない。
この後、人間を観察するという目的のためになんだかんだリリィたちと行動を共にするのはこの事が起因するのだが、それはまた別のお話。
七つの顔がすべて真っ赤に染まった直後、リリィのテレパシーによって我に返ったのだった。
「な、あ、んんん!もう手もくっつきゃーしたろ。
あとは大人しく寝とりゃぁせ。」
手近なベッドにリリィを降ろすと、顔を背けて室内を見まわした。
とはいっても、各所に七つも顔がついているので、頭についている顔だけ背けてもどこかしらの顔がリリィを見ているのは本人も自覚していない。
ササミの目はよく見えるが、心の中まで見えるわけではない。
ササミの血は傷を治すが、失われた血や体力までは回復させられない。
リリィの目に生気がなく、宙を見ているのも出血の為としか思わずその変化に気づくことはなかった。
それよりも今はここがどこか、という事が問題なのだ。
フリードや真、ルナの言葉から察するに、学園ではないらしい。
だが、フリードやルナは既に眠ろうとするくらいだからそれほど危険な場所ではないのだろうか?
学園どころか人間界がはじめてなササミには何とも判断の付きかねるものだった。
ササミとしても転入手続きをしたいところなのだが、部屋には他に人の気配がしない。
【道】を開いたシャイナに説明を求めようにもシャイナもメイド長、そしてミクまでも姿が見えない。
胸の傷は既に塞がっているが、消耗著しく思考もまとまらないササミは考えるのを止めた。
「誰かおりゃあせえへんの?
血が足りないんだわ。味噌!
味噌カツでも味噌煮込みうどんでも何でもええわ!何でもいいからじゃんじゃん味噌を持ってきてちょーせよ!」
適当なベッドに座り込み声を上げるササミ。
スカートに紛れ込んだメイド長の手紙に気づくのはまだ先のことになりそうだった。
201 :
ベッドフォード ◇k4Jcxtcjwo:2012/03/09(金) 17:57:34.55 0
「諸君等は実に良くやってくれた、 多少の被害はいた仕方ないと思っていたのだが…いやはや良い意味で期待を裏切られたよ…」
皆の視線は急に現れた老人へと一斉に向けられる、老人は皆の事などお構いなしに杖を手にし、一歩一歩、歩を進めていく
傍らに護衛の姿は無い、病室に居るのは"雛型"達と1人の老人のみだ
「さて、此度の騒動は実に御苦労だった。諸君等の無事に私も胸を撫で下ろしたよ
だが、厄介な事象も動き始めてしまった…これでは私の思い描いた結果から大きく外れてしまう…これだけは何としても食い止めねばならん
そこで私が諸君等をここに招かせて貰った訳だ」
老人は身近にあった椅子へと腰掛け、見た者を吸い込むような不気味な瞳で皆を一瞥する
「傷や疲れはここで癒したまえ、この空間なら誰も手出しは出来ない、例え、神であってもな」
総裁が椅子に腰を下ろすのと同時に、リリィは寝かされていたベッドからむくりと起き上がった。
>「傷や疲れはここで癒したまえ、この空間なら誰も手出しは出来ない、例え、神であってもな」
「ありがとうございます、お言葉に甘えて、休ませていただきます」
仮に、この場にいる皆が全員学園に戻るといっても、リリィはこの場に残るだろう。
雛形とのの対面を、総裁が望んでいるからだ。
リリィが去らなければ、この場に残ろうとする者も出るからだ。
ガラスがはめ込まれた引き扉の中には、本の中でしか見たことが無い高価な薬が並んでいる。
リリィはふらふらとベッドから足を下ろした。
折れて腫上がった足を引きずりながら、ふらふらと薬品棚へと歩み寄っていく。
しばし棚の中をあさっていたリリィだったが、やがて何本ものガラス瓶を抱えて戻ってきた。
彼女が見つけたのは、回復薬や増血剤の類だ。
学生にとっては目玉が飛び出るほど高価な品々だが、満身創痍の一同には必要なものだった。
リリィは操り人形のようにぎこちない動きながらも、この場に残ったけが人それぞれに、必要な薬の瓶を配っていく。
仮に礼を言われたといても、リリィにしては珍しく、無表情のまま何の反応も返さないだろう。
この後特に総裁からの指示が無ければ、リリィは再びベッドに戻り、体力の回復に努めるだろう。
誰もいなかった病室に現れた一人の老人。
一斉に向けられる視線をお構いなしに言葉を並べながら歩くベッドフォード。
その言葉の意味はよくわからず、ササミは口を開きかける。
爺ちゃん何者だてか?
医者を呼んできてちょーよ
味噌を持ってきてちょーって聞こえんかったでか?
吐き出しかけた言葉が喉で止まる。
>そこで私が諸君等をここに招かせて貰った訳だ」
この言葉の為に。
消耗していたとはいえ、落ち着いて座れるベッドの上で少しは思考能力が戻ってきたのだ。
招かしてもらった。
つまり、シャイナの空間移動に干渉し、呼び寄せたという事なのだ。
シャイナやメイド長、ミクがいないのもそれが理由だろう。
何よりも、空間移動に干渉できるというのは只者ではないと思わせたからだ。
驚きと共にベッドフォードを見直し、思い出した。
「あ、あんた!ベッドフォードぢゃにゃーきゃ!
フィジル魔法学園理事だかで出資しとるゆー。」
人間界に来る前、人間界に適応するために様々な学習を受けてきた。
中にフィジル魔法学園に関する重要人物のファイルや人間界に重要人物ファイル。
その両方に画像付きで名を連ねていたのを思い出したのだった。
疲れを癒せというのが学園関係者、しかも大物ならばその言葉に従っていいだろう。
「ちょーどええわ。私ササミ・テバサコーチン。
知っとるとは思やーすけど魔界からの留学生だなも。
何の因果か転送先がちごてここにいるけど、先生方に伝えてくれせんですか?」
自己紹介のつもりが伝言の使いっ走りにしてしまうのはササミの残念な由縁である。
決して自覚してベッドフォードを使いっ走りにするほど無礼でも身の程知らずでもない。
が、自覚できない分たちが悪いといえるかもしれない。
微妙に自分でも何かやっちゃったか?と首をかしげたが、リリィに増血剤を渡されその思考も有耶無耶に。
結局のところ、そのまま休むことになるのだった。
こうしてササミ・テバサコーチンの転入一日目は終わろうとしている。
初日から大騒動を経験し、これからの学園生活もこんな感じで過ごしていくのだろう、といううっすらとした予想と共に。
夜族も眠る午前4時。女子寮の一室にポッと光が灯った。
学園の女子生徒、トモエ・ユミの部屋である。
白い着物姿のトモエ・ユミは、自室の仏壇の前に置かれた三本のロウソクの炎に向かって合唱する。
「南無阿弥陀仏」
彼女は静かに念仏を唱えた。
☆☆☆魔法少女トモエ・ユミ 第一話『廊下で滑って転んだような・・・』☆☆☆
『私の名前はトモエ・ユミ。フィジル魔法学園の一年生!
毎日が恋と魔法に大忙し!だけど、たいへ〜ん!
今日は朝から授業があるのに寝坊しちゃった!
早く教室に入らないと、遅刻して先生に叱られちゃうよ〜>w<』
そんな脳内ナレーションを流しながら、白いセーラー服を着た女子生徒、
トモエ・ユミは無表情で廊下を走っていた。
時刻は午前8時29分。授業開始まで残り1分である。
午前8時33分。教室はにわかにざわめきが起こっていた。
今朝一番の授業は、あの頑固でクソ真面目なジジイことロック先生の授業である。
後にも先にも、ロックが授業に3分も遅刻してくることなど生徒には考えられないことだった。
そうでなくても、昨晩以降ロックの行方を誰も知らない。
ロック・ウィルは学園の先生でありながら、現役の闇払いである。
闇の魔法使いの襲撃を受けたのではないか?
誰ともなくそんな噂を口にしだしたころ、教室のドアがガラッと開いた。
生徒達のざわめきがさっと静まり、教室に入ってきたその人物に視線が集中した。
だが、“彼女”はロックではなかった。
>「よぉ、みんな集まってるか?おん?」
人民服を着た若い女性が、教室にいる生徒達を見下ろすようにして教壇の机にあぐらをかいて座った。
彼女は肩に背負っていた槍を黒板に立てかけると、生徒達の誰もが疑問に思ったことに答えた。
>「みんな俺が誰だ?って顔してんな。俺は闇払い局のレベッカ・ウォンって者だ。
> さっき掲示板にも貼ってきたんだがよぉ。いつまで待ってもロックは来ねぇぜ?」
レベッカは、闇払い局がとある闇の魔法使いの組織を壊滅させる準備をしていること、
そしてロックはそれを成功させるための秘密の任務を遂行するためフィジルを後にした事を告げた。
生徒の何人かは、納得いかない、といった表情を見せた。
レベッカは、そりゃそうだろうなぁ、と思った。
こう言うレベッカ自身も、今回の突然のロックの失踪には疑問を感じていた。
闇払い局から、そう発表しろ、と言われているから仕方なく言っているだけにすぎない。
ただし、学園側と闇払い局側の思惑は簡単に想像できた。
学園側としては、教師の一人が失踪したと噂になれば責任問題になるし学園の信用に傷がつく。
闇払い局側としても、ベテラン闇払いの一人が失踪したと敵勢力にばれたらやっかいなのだろう。
その双方にとって一番都合がよい“言い訳”が、今回の“秘密の任務”というわけだ。
>「そういうわけだ、おめぇら。わかったら自習でもしておとなしくしてな。じゃあな。」
レベッカが槍を肩に担ぎ直して教室から出ようとした時、教室の外からドーン!と大きな音がした。
>「ああ!?一体どうしたってんだ!?」
レベッカと数人の生徒が慌てて教室の外に出ると、
廊下の突き当たりにある掃除道具入れに白いセーラー服を来た女性が突っ込んでいた。
うつ伏せに倒れているので顔は見えないが、恥ずかしいらしく耳まで真っ赤になっている。
レベッカは近くにいた男子生徒に「誰でぇありゃ?」と尋ねた。
>>「トモエさんっすよ。俺達と同じ新入生。なんでも家業のせいで今までずっと休学してたらしいぜ〜。
>> 俺も顔を見たのは昨日の晩が初めてだ。…ちょ、まっ、何やってんだよぉーッ!?」
男子生徒はレベッカが槍の柄でトモエのスカートをめくろうとしたのを止めた。
>「ほんの冗談に決まってんじゃねぇか。おぅ、こいつにもロックの件伝えとけ。俺はもういくぜ。」
レベッカは「昨晩ねぇ…」とつぶやきながら帰っていった。
>>「トモエさん、ロック先生今日来ないんだってよ。自習らしいぜ〜?」
「……はい。私は大丈夫だから、おかまいなく。」
>>「本当に?ならいいけどよぉ。」
男子生徒はトモエのスカートをピラっとめくった後、そそくさと教室に入った。
>>「赤か…へへっ。」
「ざ・ぱんでみっく」
フィジル魔法学園最大の危機!?〜学園の命運は劣等生たちに託された!〜
「成程…わかった、が…少々遅かったな」
分析結果に目を通しながら保険医は肩で息をしながらうなだれた。
もはや椅子から立つ力すら残っていない。
「それ」が生まれたのは三週間ほど前だろう。
しかし「それ」が姿を現したのは二週間前。
流行の風邪と同じような症状で静かに、そして瞬く間に学園に蔓延してしまった。
次々に倒れていく学園関係者たち。
今になって「それ」がなんであるか突き止めたのだが、あまりにも遅すぎた。
「それ」は魔力の高い者ほど早く広く感染し、症状も重い。
「それ」は魔力や気等を有する生命体に感染する為、人、人外、人造、問わず感染する。
「それ」にかかった者は大幅に魔力が衰弱し、能力も減退する。
「それ」に気づいた時には学園教師や上級生たちはもはや起き上がれない程になっていた。
魔力が高いがゆえに。
〜〜親愛なるフィジル魔法学園生徒諸君〜〜
諸君らも身をもって知っているであろう。
今フィジル島に蔓延する奇病。
これは魔界から持ち込まれた未知なるウィルスが人体に入ったことにより突然変異して生まれたものだとわかった。
感染力は凄まじく、魔力が強い者ほど重篤な症状に見舞われる。
故にこの手紙を受け取るものは普段魔力が低かったり、病に侵されても何とか動ける者であろう。
己の力のなさを自覚している者や、ウィルスにより力の減退を感じている者だと思う。
いまフィジル魔法学園でまともに動けるのはこの手紙を受け取った諸君らのみなのだ。
学園は重大な危機に陥っている。
その危機を救う手段は解明された。
この未知なるウィルスの抗体を持つ者がいる。
魔界からの留学生「ササミ・テバサコーチン」の。彼女の生血が必要なのだ。
彼女は現在この学園において唯一万全の存在といえる。
ウィルスに侵された者やウィルスの影響をほとんど受けない者にササミ・テバサコーチンの捕縛は難しいかもしれない。
だがしかし、繰り返し言うが、動けるのは諸君のみなんだ。
学園の命運を握る存在になった気分はどうだろうか?
保険医としてあるまじきことだが、フィジル魔法学園の精神にのっとり言わせてもらおう。
協力し、奮戦せよ!今日の主人公は君たちだ!
各自ササミ・テバサコーチンに説得もしくは捕縛を試みるのもよいだろう。
しかし万全を期したい者は保健室に来たまえ。
部外秘故に出せぬササミ・テバサコーチンに関する資料を用意しておこう。
手紙を書き終えると、保険医は紙を優しく撫でる。
紙は無数に分裂し、それぞれ折れ曲がり、畳み、広がり、様々な動物を模した折り紙となって学園中に散らばっていった。
保険医もウィルスに侵され衰弱しているので、折り紙たちは途中で力尽きるかもしれない。
だが何割かはまだ健在そうな魔力を嗅ぎ当て、その者の元へと届くだろう。
一斉テレパシーや校内放送を使わなかったのは補足対象であるササミに学園の動きを察知されないようにだった。
手紙を受け取ったフィジル魔法学園の生徒たちの奮闘が今ここに始まる!
保健室に行けば保険医がベッドで横になっている。
症状が進んだ為か、問いかけても返事はなく、そしてそれに対処するすべもないのも既知のことである。
できる事と言えば、手紙に書かれた通り、ササミの生血を手に入れる事なのだ。
机の上に魔法陣が描かれ、手をかざせば資料が浮かび上がるだろう。
【部外秘】
ササミ・テバサコーチン
体力 A・血中の再生酵素もあり、多少の怪我はダメージにならない。
魔力 A・魔力は高いが、切り札の儀式魔法用に温存する傾向があり、普段は小魔法しか使わない。
持久力C・長時間連続の活動には向かない
攻撃力A-
斬撃 A・超振動ブレードによりなで斬りに特化している。
打撃 D・なで斬りに特化しているため打撃は殆どない
格闘 C・ヒットアンドウェイが基本で格闘能力は低いが足技には注意
守備力C
対物理C・再生酵素を含む血を持っているが、それでも防御力は低い
対魔法C・魔法への抵抗力は低く、特化防御属性はない
機動力A-
飛行能力AA・超高速飛行が可能。旋回能力も高く、守備力の低さを補って有り余る。
地上 C・歩くのには向かない
水中 D・飛び込むことはできるが泳げない
特殊能力
石化ブレス・
石化ブレスを各所の口から吐き出すがその射程距離は息を吹きかけるのと同じ距離であり1Mほど。
有効射程距離に至っては50pほど。
ただし、空気より重いので上空から散布の場合はその限りではない。
また風向きに影響を受ける
怪音波
怪音波を各所の口から発するが、超振動による破砕が可能なレベルではない。
音波を重ね合わせることにより打撃も可能であるが、座標演算が難しいため実践的ではない。
ただし、怪音波による三半規管への攻撃には注意が必要だが、発声と同じく長くは続かない。
また、怪音波を発することによって水晶体である枝分刀を共振させて超振動ブレードとすることができる。
七面体
種族特性として七つの顔を持つ
視力、動体視力は優れており、室内に張り巡らされた糸を躱しての高速飛行をしたとの報告もあり。
各面の視界を共有しており、死角はないものと思われる
七面と手袋操作により七人分の呪文詠唱と魔法動作ができ、多人数による儀式魔法を単独で行使可能。
ただし魔力はあくまでひとり分なので多用はできない模様
多頭類の類に漏れず再生能力が高い。
血に再生酵素が含まれているためだが、傷は回復できても体力や魔力までは回復できない。
戦法
全天視界と高速飛行、枝分刀による多刀流を用いた高速機動剣術は強力といえる。
剣術といっても機動力をかんがみればその間合いはロングレンジと言って差支えがない。
性質
光るものが大好きで、集める習性がある。
磁場の変化に弱く、平衡感覚を失うらしい。
次世代魔王候補生と言われるだけあって、強力な個体といえる。
魔界にて学園創設の動きがあり、学園というものの視察および人間の危機に対する行動の観察を目的としていると思われる。
ササミがフィジル魔法学園に転入して三週間。
女子寮に部屋を与えられたが、寝るとき以外はあまり部屋にはいない。
彼女の部屋は生活感が乏しいが、その壁一面には様々なコレクションがくっつけられている。
趣味というか習性として、光るものを集めるのだ。
光るものならば何でもいいらしく、ビー玉、ガラス片、貝殻、宝石、などなど、節操なくちりばめられている。
そんな部屋を開けいつもはどこにいるか。
それは、学園尖塔の一番上が彼女のお気に入りであり、定位置となっていた。
魔界と違うどこまでも高く澄んだ青い空。
頬を撫でる穏やかな風。
眩いばかりの太陽。
青く澄みきりどこまでも昇って行けそうなこの空が気に入ったのだ。
いや、正直に言うと既に昇ってみた。
どこまでもどこまでも高く高く。
雲を突き抜けさらに上昇していった。
が、太陽に近づいているというのに上がれば上がるほど風は強く、寒く、暗くなっていく。
そして何よりも息苦しく。
ササミの肺活量は高くはあるが、排出口が七つもあるのでひとつあたりに分散すればさほど肺活量が高いとは言えない。
七面を持つことで様々な利点があるのだが、七面に対して体は一つという事が様々な欠点となって現れるのだった。
そんなこともありながらも三週間。
眼下の学園はいつもと変わらぬ活気が……なかった。
最初はそんなことなかったのだ。
活気に満ち溢れた学園を見下ろすのも好きだったのだが、二週間が過ぎた頃からだろうか。
徐々に活気が静まり、三週間たった今ではすっかり静かになっている。
その原因をササミは知らない。
ただ風邪は流行っている程度の認識で、今日も尖塔の先端で風を受けていた。
その遥か眼下。
動物を模した紙が学園中を飛び回っている事も気づいていな。
保険医が放った折り紙の手紙はまだ動けそうな魔力を察知して各所に散っていくだろう。
中には途中で力尽き、廊下や談話室、通路などで落ちている手紙もある。
手紙を受け取り事態に気付く者、手紙を偶然広い事態を知る者。
様々な生徒がウィルスに侵されながら学園の為に立ち上がる!
事をササミはまだ知らない。
【学園に奇病が蔓延】
【保険医が解決策を突き止め、手紙を各所に放つ】
【ササミは学園で一番高い尖塔の上に位置し、発見は容易】
ある朝目が覚めると自分の上に一人の少年が丸まって眠っていることに気がついた
「確か昨日はグレンが僕の上で丸まって眠っていたはずですよね・・・・・ということは彼はグレンなのでしょうか?
まあこの業界、使い魔が人間に変身していたぐらいで驚いていてはやっていけませんが・・・・・」
この業界とは魔法使いの世界のことだろうか?
フリードはよくよく彼を観察してみる
確かに上のほうだけ赤い黒い髪や黒っぽい肌それに猫耳と猫尻尾はグレンに一致する
まだ寝ているので判断は出来ないだろうがこれで目を開けたとき金色の目をしていたならば
彼がグレンであることは確定的に明らかになるだろう
「この状態のグレンにもキャットフードを食べさせていいのでしょうか?」
どうでもいいことを真剣に考えるフリードリッヒ
ちなみに言うとグレンの格好は当然裸首輪である
猫なのだから当然なのだが今の姿ではいささか問題があるだろう
「猫は猫の姿だから尊く美しいというのに一体誰のいたずらでしょうねぇ?」
とベットから降りようとするが何か変だ
「・・・・・・体が重い?」
一体どういう事だろうかいつもよりも力が出ない
「これは一体・・・・・」
とにかく服を着替えて学園に向かわねばと仕度を始めるフリードリッヒ
『なんじゃこりゃー!!』(猫語)
今頃自分の変化に気がついたグレン
フルネームはグレン・ダイザー
彼の主人はフリードリッヒ・ノクターン
ノクターン公爵の息子である
つまりデュークである
「そんな細かいことは気にしなくてもいいですから僕の服を着るか
今すぐ猫に戻ってください。とにかく学校に行きますよ」
そしてフリードの余った服を着たグレンを携え学園に向かうフリードだったが・・・・
「・・・・・・あれ?」
学園内は閑散としており殆ど生徒がいない状態であった
「これは一体・・・・・」
また同じ事を言うフリードリッヒ
自分の教室に向かい席に着くと黒板には大きな字で
本日担任は体調不良のため云々かんぬんと書かれていた
そこに飛んでくる折鶴
それを広げようとしてびりびりっと破いたりと失敗しながらも何とか内容を見ることに成功したフリード
やはり白人には折り紙を解くのは難しいようだ
「・・・・・・・・また面倒なことになりましたねぇ」
『もしかして僕の変身もこれが原因なの?』(猫語)
「いえそれはたぶんどっかのショタコン魔女の仕業でしょう」
さあてどうやって血を手に入れようか?
「とりあえず血に恵まれない善良な吸血鬼のためのボランティア献血でも始めますかね」
『そんな道具一式何処にあるのさ?』(猫語)
「ガチレズの吸血鬼カミーラさんなら持ってるんじゃないですか?」
いくらかわいくても男の子のフリードが貸してもらえるとは到底思えないのだが
本当にそんな作戦で大丈夫なのだろうか?
エンドウユウキ捜索事件が解決してから三週間。
保険医の手紙を受け取り、学園の新たなる危機を知ったルナ・チップルは保健室に来ていた。
悲しいかなルナにウイルスの影響はまったくなく身体の調子はすこぶる良い。
逆に、今日の青空のように何時もより冴えている気がする。
保険医の先生はベッドで横になっていて、問いかけても返事はなかった。
こんな風に能力の高い人間は弱体化してしまっているのだろう。
(ひょっとして…目立つチャンス?)
そうだ。ルナはもっと目立ちたい。他人に認識してもらいたい。
現在のようにキャラチェンジをして美呪アル系になる前は、本当に目立たない存在だった。
教室の入り口で談笑している男子生徒たちに気付かれもしないで、
ずっと教室に入れずに彼らの背中の後ろに立っていたりした。
べつに恋人でもないのにしばらく話を聞かされた。ゆるせない。
でもササミの生血を奪い学園の危機を救えば皆が見てくれる。
(みんなの心に、私が生まれる。みんなと心を繋げられる)
そう思うのは遺跡の事件以後、リリィとの関係が疎遠になっている、と勝手にルナが思っていたから。
実際にはそんなことはなく、リリィは誰に対しても平等に接していた。
ただ変わったのはルナ自身のほうで、心に罪悪感のようなものが生まれてしまっていたのだ。
――ルナは魔法陣に手を翳しササミ・テバサコーチンの情報を読み取ってみる。
「……」
そして沈黙。これはまさに象に戦いを挑む蟻のようなもの。
ササミから正攻法で血を奪うことは容易ではないだろう。
「…あ!でもいいこと思いついたわ!蚊に変身して血を奪うのよ!」
ぽんと手を叩く。でもどうやって…。書庫に行けば変身魔法の資料などがあるのだろうか。
午前8時40分。女子寮のとある一室。
本来なら既に授業が始まっているはずである。
しかしこの部屋の主、トモエ・ユミは、白い着物姿のままベッドで惰眠を貪っていた。
『いいかげん起きなよトモエ〜。もう授業が始まってるよ〜?』
ふわふわとしたキツネの子、フォクすけ☆はそんな主人を起こそうとしているが、
トモエの口からは「やー」「だめー」「いやー」とネガティブな反応しか返ってこない。
「体が重い…こんなに気分が悪いのは初めて……もう何もしたくない。」
『ん?トモエ、何だろうあれ?ベランダに鶴の折り紙があるよ!弱々しいけど、パタパタ動いてる!』
トモエはしぶしぶベランダに落ちていたそれを拾った。
『あ〜あ、とうとう先生からのお叱りメールが来たんだ。3日も欠席するからだよ。』
「…いいえ、どうやら違うらしいわ。今、学園に重大な危機が訪れているみたい。」
折り紙を開封し、中身を読んだトモエはフォクすけ☆にも事情を説明した。
今、学園全体にウイルス感染が広がっているらしい、と。
そして、そのウイルスの抗体をササミ・テバサコーチンという女子生徒が握っているということ。
『なるほど。これは魔法少女の出番、というわけだね。』
「ロック先生がいない今、学園の正義は私が守る。変身…!」
トモエはババッ!とポーズを決めると、足元に浮かぶ魔方陣から生まれた光に包まれた。
光のベールに包まれたトモエはいつの間にか白いセーラー服姿に変わる。
そう、彼女こそは学園の正義を守る使者、魔法少女トモエ・ユミなのだ!
「魔法少女トモエ・ユミ………
…………!?」
トモエは名乗りを上げたとたん、ふらふらと目眩をおこしてへたり込んでしまった。
『色々と無理をしすぎだよトモエ!ウイルスは魔力に反応するって書いてあったじゃないか!』
「…そうね、あんまり魔法は使わないようにしましょう。」
トモエはふらふらしながらもフォクすけ☆と一緒に保健室へと移動を開始した。
まず、ササミ・テバサコーチンの人と“なり”を知る必要があるからだ。
≫209
保健室には先客がいた。ルナである。
フォクすけ☆はルナと、ベッドに横になって動かない保険医を交互に見て叫んだ。
『なぜ殺たし!?』
「…いいえ、たぶんそうじゃないでしょう。」
トモエはフォクすけ☆を諌めた。
「あらぬ疑いをかけてごめんなさい。私は怪しい者じゃないわ。
私は魔法少女トモエ・ユミ。
夢と希望と真実と勇気と自由と正義と愛と平和とか弱き女性を守る使者、
不条理だらけの世の中で、愛と勇気と希望を抱き、正義の刀で悪を打つ、
どんな逆境にも負けない愛の為に生きる少女、
魔法少女トモエ・ユミよ。」
トモエは終始無表情のままルナにそう自己紹介をした。
おはようございます。リリィです。
今日は、朝からとってもびっくりするニュースがありました。
なんと起きたら、私、ペンギンになってたんです!ふしぎ!
「ピヨ・・・・・(なんてナレーションつけてみても、状況が変わるわけじゃないのよね)」
夢だと思い、寝なおしてみてもだめ。
ほほをつねってみても、鏡の前で元に戻るのを待ってみてもだめ。
「ピィ」
困った、と本人は言ったつもりなのだが、実際に口から出たのはひよこのような鳴き声だけだった。
リリィはキィー!!と地団駄を踏んだ。
(本来のペンギンと呼ばれる生き物の鳴き声とは違うし、変身薬の誤飲が原因ってわけじゃないみたいね。
状態異常?それとも呪いかな?・・・・・・ああ、困ったなあ。
そりゃ、 保健室に行けば元に戻れるかもしれないけど・・・・・)
学園の保険医は、正真正銘のHENTAIで天才だ。
どんな怪我だろうが状態異常だろうが、彼女なら治してしまうだろう。
ではなぜためらうのか?
そう、リリィがあまり乗り気でないのには、ちゃんと理由があった。
ここ最近学園では風邪が流行っていて、医務室は連日、大量の患者相手にてんてこ舞いなのだった。
(先生も体調が悪いせいか、最近とっても機嫌悪いって噂なのよね・・・・・・)
だが、背に腹は変えられない。
この際多少叱られるのは覚悟の上で、解毒剤か解呪魔法を掛けてもらうしかないだろう。
ただ、ここにきて重要な問題が浮上する。
それは、「いかにして保健室までたどり着くか?」である。
リリィは自分の両腕・・・・否、両翼に視線を落とした。
青く短い羽毛に覆われたフリッパーは、小回りが利くはずもない。これでは、ドアノブをまわすだけでも一苦労に違いない。
道中襲い来るであろう数々の試練を思い、青ペンギンは深いふかいため息をついた
そして現在。
>208
>「とりあえず血に恵まれない善良な吸血鬼のためのボランティア献血でも始めますかね」
>『そんな道具一式何処にあるのさ?』(猫語)
>「ガチレズの吸血鬼カミーラさんなら持ってるんじゃないですか?」
ササミの血液をどう集めようかと議論を交わすフリードとなぞの少年(※グレンちゃん)
「ピィ?ピー!ピー!!ピー!!!」
ふと彼らが足元に目を移せば、青いペンギンがいやおうなく視界に入るだろう。
だがその出で立ちは、ペンギンであることを差し引いても、珍妙、としか表現しようのないものだった。
フリードの腰あたりまでしかないペンギンは、ぐるぐるめがねをかけ、体のあちこちに折り紙をくっ付けていた。
そして不思議なことに、なぜか頭上に箒を水平に乗せていた。
さらにそれには、ペンギンが持つには大きすぎるサイズのカバンがくっついていた。
普通に考えれば、バランスを崩して箒もカバンもペンギンの頭からすべり落ちてしまいそうだ。
しかし、荷物を乗せてバランスが悪いはずの箒は、当たり前のように水平を保ち、つりあっていた。
「ピー!!」
ペンギンはフリードに駆け寄るやいなや、足にまとわりついてピーピー泣き出した。
そして、何か必死に語りかけている。
ペンギン本人としては「自分はフリードの友達で、朝起きたらペンギンになっていた」と訴えかけているだろう。
「元の姿に戻りたいから、フリード君悪いけれど、保健室に一緒についてきて」とも。
だがグレンならともかく、いくらジルベリア人であるフリードが逸般人であろうとも、ペンギンの言葉が理解できるかどうかは未知数であった。
ぐうう、とペンギンのおなかが鳴った。
ペンギンは箒に釣り下がったカバンに頭を突っ込むと、苦労してビンを取り出し、床に置く。
「ピ!」
ペンギンは両羽を何度かばたつかせた後、お願いのポーズをとった。
どうやら、この瓶詰めをあけてほしいようだ。
ちなみに中身は、マグロフレークのスープ煮である。
ペンギンはここで朝食をとった後、保健室へ移動する気満々である。
【フリード、グレン組と合流。テレパシーでなくペンギン語(?!)で状況を説明
この後、フリードと共に保険医の下へ移動する気満々】
>209-212
>「ピィ?ピー!ピー!!ピー!!!」
>「ピー!!」
いつの間にか現れた青いペンギン
ペンギンは寒いところ出身の生き物故に
氷の魔法使いのフリードに惹かれたのか足元に擦り寄ってきた
いやそうではないらしい
どうやら何かを訴えようとしているようだ
>「ピ!」
「グレン!ペンギンさんが何言ってるかわからないよぉ」
さすがのフリードもペンギンの言葉はわからないらしい
『大丈夫まぁかぁせぇてぇ・・・ちゃちゃちゃちゃん♪ウィジャ盤』(猫語)
そんなフリードに対し何やら板のようなものを取り出すグレン
ウィジャ盤とは平たく言うと西洋版こっくりさん板である
共通語のアルファベットに当たる文字列が順番に書かれており
これを利用すれば言葉が喋れなくとも会話を成立させることが可能なのだ
「グレン・・・・いつの間にこんなものを・・・・」
『だって猫語わかんない人が多いんだもの対策ぐらいはしてるさ』(猫語)
「さあこれでどうして欲しいのか言ってごらんよ?」
そもそも動物が文字読めるのか?とも考えないフリード
今まで普通じゃない動物としか触れ合わなかったことによる弊害であるが
今回はそれが良い方向に向いたようだ
「ええと・・・・なんだかよくわかりませんがこの瓶を開けろって事ですか?」
『フィー坊の怪力でやったら瓶の首を捩じ切っちゃうんじゃね?』
さすがに普段のフリードもそこまで怪力じゃない・・・・はず
数分後
「はぁはぁ・・・・なんて固いビンの蓋なんでしょう?開けるのにここまで梃子摺るとは」
『もうサーベルで横に斬ったほうが早かったんじゃね』(猫語)
おかしい・・・いつもならこんな瓶の蓋簡単に開けられるはずだ
そう疑問を持つフリード
普段フリードは自分が意識しないうちに魔法によって肉体強化をしていたのだろう
そうでなければこんなちびっ子が熊とタイマンして勝てるわけがない
つまり魔法によるブーストが弱体化した今のフリードは単なるお子様でしか無いのだ
「まあいいでしょうこれでいいんですねペンギンさん?」
そしてどうやら保健室に連れていって欲しいらしいとわかったフリードリッヒ
「僕あの保険医さん苦手なんですけどねぇ」
『男のフィー坊には無害じゃね?』(猫語)
「それでも万が一女性化したりしたらその場で襲われかねませんから」
『じゃあフィー坊は女だったら誰でも襲うのかよ?』(猫語)
「いや僕はそうじゃないですけど保険医ですから」
保健室に来たフリードだったが・・・・・
「し、死んでる」
>『なぜ殺たし!?』
「まさかルナさんが犯人なんですか!?」
『いや保険医生きてるから!変態は不死身だから!!』(猫語)
世界とは、時として残酷である。
フィジル魔法学園、力の使い方や制御方法を知る事の出来ない
『突如大量発生した天才達』の為に設立された学び舎……クリスと呼ばれる少女もまた、
今はこの学園にいる。元の姿こそ違えど、その小さな体に秘められた力は本物である。
しかし、当人はこう言うだろう……『力など、欲しくなかった』と――――。
その日もまた、クリスは部屋に閉じ篭り図書館から拝借してきた書物を開いていた。
はるか東の地にかつて存在したと言う『人の思考を読み取り具現化する』能力を持った
人外の存在、『覚』と呼ばれる者の力を借り編纂されたそれは、書を開いた者の
記憶に直接イメージを見せる事が出来るものだった。
……諸般の事情により目を失った今のクリスでも、これならば読み解く事が出来るのだ。
三週間、食事も取らずほとんど寝もせず『読み』続けた結果その書物から
得られる知識はなくなってしまった。読み返す気は起きない、環境により強制的に
研ぎ澄まされた集中力を読解に注ぎ込んで、全部覚えてしまったからだ。
……これもまた諸般の事情があるのだが、今のクリスは人間を毛嫌いしている。
部屋から一歩も出ようとしないのはその為だ。その姿勢を、周囲は『ショックが大きいのだ』と
解釈して、落ち着くまでそっとしておこうと結論付けたのである。
(『……それにしてもおかしい。何故、こんなにも静かなのだ?』)
クリスは三週間ぶりに部屋から出た。邪魔になるだけの書物を返却し、あわよくば
恐らく複数あるだろうこれの連番を借りようと思い立ち行動に移したのである。
……それ故に、クリスもまた学園に蔓延している魔界ウィルスに感染してしまうのだろう。
>205-213
クリスの部屋から図書館までは、道筋的にどうしても保健室前を通るしかない。
角を曲がったところで、ひっそりと静まり返っていた空気がにわかに騒ぎ始める。
どうやら、幾人かが保健室に用があるらしい……耳に飛び込んできた声の中には、
聞き覚えのあるものもあった。格別用事など無いクリスだったが、通り過ぎようとした時
その場の数人から違和感を感じ立ち止まる。『熱』の動きが、おかしいのだ。
>『なぜ殺たし!?』
>「まさかルナさんが犯人なんですか!?」
>『いや保険医生きてるから!変態は不死身だから!!』(猫語)
「……保険医は、弱ってる。熱が、おかしい。何が、あった?」
クリスは、言葉の端々から刺々しさを感じさせる様な冷たい声色で状況を聞く。
心情の変化とは、ここまで態度を一変させるものなのだ……もっとも、生来のお節介焼きは
そうそう簡単にどうにかなるものでもないらしい。
……目の見えないクリスに、保険医のばら撒いた手紙の存在を知る事などできよう筈もなく、
よしんば気付いたところで視覚の存在しない者がどうやって内容を知り得ると言うのか……
>>210-214 魔法少女トモエ・ユミは無表情で自己紹介してきた。
(薄っぺら!感情はどこにいったのよ!)
すごく胡散臭い。おまけにルナに殺人容疑をかけてくる。
「ちょっと〜!何が悲しくてオレがこんな変態殺さなきゃなんねぇんだよ〜」
はじめましての相手なら、ガツンと上からものを言って上下関係に白黒つける。ルナはそんな悪いことを考えていた。
椅子に片足を乗っけて威圧的に自己紹介をしようとする。
が、椅子の足には車輪が付いていて…
「オレの名前はルナ・チップル。よろしくな!」
と言い終えたところで大股を開きぺたりと床に突っ伏してしまった。
結果的に床に平伏すというめちゃめちゃ丁寧な挨拶をしてしまえば、そこに現れるフリードたち。
>「まさかルナさんが犯人なんですか!?」
「なわけねぇだろ。たくっどいつもこいつも…」
体育座りの状態で、フリードをジト目でにらみつける。
遺跡にいた時は、遠近法の影響かかっこよく見えていたけど、
地の文に身長130センチと書いてあったのに気がついたルナは結婚詐欺にあった気分。
いくら美少年でもちびっ子は恋愛対象外なのだから可愛くみせる必要はない。
しかし、グレンにフォクすけにペンギンと、使い魔がいるのは学園の流行りなのだろうか?
「……ってペンギン!?」二度見したあと両手で口を隠す。気がつけばペンギンがいた。
(か、かわいい…)
猫も狐も可愛いけど、あのペンギンのぐるぐるメガネは可愛い過ぎる。
しかしルナは歯噛みして感情を隠す。
何故なら不良キャラなのにペンギン抱っこはありえないから。
「ふ、ふーん…。どっから来たのかな〜?このこ…。珍しいからリリィにも見せてあげたいな〜」
ペンギンの頭に人差し指で、ぐるぐるとのの字を書き続ける。感触が良くていつまでもぐるぐる出来そうな感じ。でも…
「ああー!こんなことをやってる場合じゃない!今学園はピンチなのよ。あの深夜アニメ枠の魔乳、ササミ・テバサコーチンの血液を
一刻も早く手にいれなければならないのよーッ!」
窓の外。ぷかぷか空を飛んでいるササミを、ルナは切歯扼腕する思いで睨みつけ、一同に振り返る
「オレ、ちょっと変身薬とってくる。だからあんたたちは保健室で寝ててもいいぜ。
オレがお先に、ササミの血をちょちょいといただいちまうからな!」
颯爽と保健室から出て行こうとするルナだった。
すみません、本スレに書き込めない場合はここに書いたほうがいいのでしょうか?
一応ここに投下させていただきます。
「ふぅ・・・」
私は思わずため息を吐いていた。
「ここじゃ、おとなしく勉強もできないのか・・・」
思わず二回目のため息が出てしまう。憂鬱な気分で飲む朝のコーヒーはこんなに不味い物だったのか。
憂鬱な気分にさせた元凶である手紙にもう一度視線を向ける。
その手紙には今学園で流行っている病の原因、その対処方について書かれていた。
と、他人事のように言ってはいるが私自身もその流行病にかかっており、若干体がダルイ。
「かと言って、見過ごすわけにはいかないよな・・・」
私はこれでも医療魔法使いを目指している。
そんな人間が他人が病で苦しんでいるのを尻目に部屋の中で勉強をしている事などできない。
いつもよりも重く感じる体を起こし、大きく伸びをして気分を変える。
「さて、と・・・どれにするかな?」
髪をポニーテールにまとめながら今日つけていく眼帯を吟味する。
こう言っては何だが、これでも私はおしゃれには気を使っている方だと思う。
左目の火傷傷を隠すために付け始めた物だが、今では私のファッションに欠かせない物になっている。
「よし、これにしようか」
桜の花弁が咲き乱れる雅な眼帯にしよう。今のこの憂鬱な気分を少しでも変えるためだ。
「とりあえず、そのササミって奴の情報が必要だな・・・」
ならとる手段は一つだ。さして軽くない足取りで保健室に向かう。
>「ああー!こんなことをやってる場合じゃない!今学園はピンチなのよ。あの深夜アニメ枠の魔乳、ササミ・テバサコーチンの血液を
一刻も早く手にいれなければならないのよーッ!」
保健室の前に来たら保健室の中から会話が聞こえてきた。
会話の内容から察するにおそらく中に居る奴らもササミの血液目的だな。
「失礼するぞ、変態野郎。」
いつも通りの挨拶をして入ろうとした、が
>「オレ、ちょっと変身薬とってくる。だからあんたたちは保健室で寝ててもいいぜ。
オレがお先に、ササミの血をちょちょいといただいちまうからな!」
>颯爽と保健室から出て行こうとするルナだった。
保健室の中に鈍い音響く。擬音で表すなら、ごうッ!とか、ド、グオォ!って感じだな。
まさにドンピシャのタイミングだった。保健室から颯爽と出てきた奴と顔面衝突した。
「〜〜〜〜〜〜〜〜っ!!〜〜〜っっ!!!」
この時、私は声にならないほどの痛みって奴を体験した。貴重な体験だ。ああ、なかなか出来ない貴重な体験だった。
もう二度と体験したくないけどな。
ひとしきり、顔面を押さえて悶えた私はぶつかった奴に視線を向けると半分睨み、半分涙目の視線を向ける。
「っってめぇ・・・どこみてやがる! てめぇに目はついてるのか!?片目しかねぇ私でも周りの確認くらいするぞ!?」
と、感情に任せて言ってしまったものの自分に全く非が無いかと言われると・・・
「・・・あー、すまん、こっちも不注意だった。」
私も注意していればこんな事にはならなかっただろう。
>ド、グオォ!
セラ先生のあごにルナの石頭がヒット。
>「〜〜〜〜〜〜〜〜っ!!〜〜〜っっ!!!」
「きゃあ!」
体勢を崩したルナは、小さな悲鳴をあげて顔面から床に突っ伏した。
べタン!のちゃ。モチのように床に張り付いたルナの顔。
それを床から剥がすと、床には白い顔型がついていた。
見ようによっては、ルナの顔が外れて取れたようにも見える。
恐ろしいことに厚化粧が剥がれ落ちてしまったのだ。
>「っってめぇ・・・どこみてやがる! てめぇに目はついてるのか!?片目しかねぇ私でも周りの確認くらいするぞ!?」
「うわぁ〜ん!ごめんなさ〜い」
セラに睨みつけられ、いきなり平謝りするルナ。さっきまでの強気はどこへやら。
でもルナが弱気になったのも理由があって、ルナの化粧にはほんのりと魔法の効果があった。
猫の粉をアイラインに用いれば暗闇でも目が見えたりするといった感じで普段は強気増量のメイクをしていた。
だから顔が汚れたり化粧が剥がれたりすると本性の弱虫ルナが出てきてしまう。
本当に怖いことが起きた時もそれは同義だ。
床に乙女座りのルナは、顔を隠しながらパタパタと慌ててメイクをし直す。
>「・・・あー、すまん、こっちも不注意だった。」
「はあ〜!?謝ったらすむ問題じゃねえだろごるぁ!
ワディワジでお腹に詰まった内臓をぜーんぶ瓶詰めにしてやろうか!?」
お色直しが完了して、強気が復活したルナはセラに掴みかかる。
言っておくが、決して情緒不安定ではない。
セラを移動式椅子に押し付け座らせると、クルクル回しながら部屋の中央に走らせた。
「ふん!じゃあな〜ばばあ!」
捨て台詞を吐き、ルナは颯爽と保健室をあとにしようと思っていた。
が、今度はクリスとぶつかってしまう。
「ってめぇどこ見てやがる!?てめぇには…あ…」
クリスの様子を見て沈黙するルナだった。
夜が明け窓から、朝の日差しが差し込み部屋を照らす。
太陽の光を受けてプリメは不機嫌そうに目を覚ました。
モゾモゾと気だるそうにベッドから体を起こし、ふと外の景色に目をやる。
雲ひとつない青空が不愉快なほどに清々しく、まるで吸い込まれるようだ。
そうしている間にも眠気は覚めていき、意識が現実へと引き戻されていく。
そしてプリメは思わずため息をつく。
「はぁ、今日もまた授業があるのか…」
もう一度ベッドへと体を潜らせ、入学当初から現在に至るまでを思い返す。
こんなはずではなかったのに、もっとめぐるましい活躍をして。
すばらしい成績を取って周囲の人間をあっと言わせるような活躍をしていたはずだったのに、
ところが今ではいつ退学になるのかを怯える毎日を過ごしている。
かといって自分から去るような潔さなど持ち合わせていない。
結局のところ、いつものようにプリメは胃の痛みを抱えながら支度を始めるのだった。
かばんを持って部屋のドアをあけ、廊下へと繰り出す足は重苦しい。
友達が一人もいないプリメにとって友人たちが笑い合って歩いている廊下は居た堪れなくなるのだ。
俯きながら歩き始めるが、すぐに違和感に気がついた。
今日という日はなにやら様子が違う、談笑どころか廊下はシーンと静けさを保っているのだ。
「い、いったい何が……」
こうなるといつもの廊下の活気がないと不安になってくるのだろう。
ビクビクしながら廊下をゆっくり歩いている姿は頼りない。
恐怖に耐えながら何とか自分の教室へと向かったが、そこでも誰もいないという事態に直面し、
とうとう堪え切れなくなり涙を流しながらフラフラとあちこちを彷徨い歩く。
「うぅ……だれかぁ〜、返事してぇ……怖いぃ」
>210-214
そんな時、ふと保健室のほうから声が聞こえる。
>『なぜ殺たし!?』
>「まさかルナさんが犯人なんですか!?」
>『いや保険医生きてるから!変態は不死身だから!!』(猫語)
>「……保険医は、弱ってる。熱が、おかしい。何が、あった?」
>「ふん!じゃあな〜ばばあ!」
たった一人自分が取り残されたような気がしていたプリメにとって
保健室の人気はまさに救いとも呼べるものだったのだろう。
遅刻しそうなときでさえ走ることなどしないのに、この時ばかりは保健室へと駆け込む。
そして中に数人がいることを確認すると安堵からか、思わずその場にへたり混んでしまった。
「お、おいそこのお前たち、この状態は一体どうなってるんだ!
誰でもいいから私に分かりやすいように教えろ!なるべく分かりやすくだぞ!」
涙交じりに保健室にいる全員に向かって叫ぶ。
>213-218
>「さあこれでどうして欲しいのか言ってごらんよ?」
「やだやだやだー!ウィジャ盤って、一人で使ったらだめな道具だって習ったんだもん!!」
じたばたと駄々をこねるリリィだが、ほかに意思疎通ができる道具もない。
半べそをかきながらも、ペンギンの羽でウィジャ盤の文字を指し始めた。
>「ええと・・・・なんだかよくわかりませんがこの瓶を開けろって事ですか?」
ピィ♪とうれしそうに返事をするリリィ。
>『フィー坊の怪力でやったら瓶の首を捩じ切っちゃうんじゃね?』
「ピ!ピー!!」
ウィジャ盤は非常にいいアイディアだが、いかんせん指す文字を見てくれないと始まらない。
ビンの蓋をあけるのに手こずっているフリード達は、リリィ=ペンギンだと気づけないままだった。
数分後 。
蓋の開いた瓶に大喜びでかぶりつく青ペンギンと、息を切らしたフリードが居た。、
「はぁはぁ・・・・なんて固いビンの蓋なんでしょう?開けるのにここまで梃子摺るとは」
『もうサーベルで横に斬ったほうが早かったんじゃね』(猫語)
「まあいいでしょうこれでいいんですねペンギンさん?」
「ピー!!」
ご飯にありつけて、すっかりご満悦なペンギン・・・・・・あれ、自己紹介やったっけ?
とにもかくにも、保健室に連れて行って欲しい旨はちゃんと伝わったようだ。
そして保健室の扉を開けると、そこは修羅場と化していた。
「ピー!!(ルナちゃんが床に座らされてる!?もしかしてSEKKYOUタイム?!)」
>「し、死んでる」
>『なぜ殺たし!?』
>「まさかルナさんが犯人なんですか!?」
「ピィ、ピー!!!(訳:あっ、あのぬいぐるみ喋ってる!!!)」
>「なわけねぇだろ。たくっどいつもこいつも…」
「ピー(ルナちゃーん!)」
リリィが嬉しそうに、友達のルナへと走っていこうとする。
そこに、白いセーラー服で妙齢のご婦人が自己紹介を始めた。
>「あらぬ疑いをかけてごめんなさい。私は怪しい者じゃないわ。 (略)魔法少女トモエ・ユミよ。」
「・・・・・・・・・・・・ピーッ、ピュイ?(訳:つまりトモエ先生は、魔女じゃなくて魔法少女ってこと?
あれ?でも、大人でも少女なんですか?」
学園の平和を守る、正義の味方なあの方の仲間?などとのんきに考えているリリィは、
今そこにある危機にまだ気づけていない。
床に座り込んでいたルナは、リリィの頭に人差し指を乗せた。
>「ふ、ふーん…。どっから来たのかな〜?このこ…。珍しいからリリィにも見せてあげたいな〜」
「ピー!ピィ・・・・・・ィ(あっルナちゃん、実は私がそのリリ・・・・・あああうあう・・・・め、目が回る・・・・・うう・・・・」
>「ああー!こんなことをやってる場合じゃない!今学園はピンチなのよ。
あの深夜アニメ枠の魔乳、ササミ・テバサコーチンの血液を 一刻も早く手にいれなければならないのよーッ!」
ルナの指が頭から離れたとたん、リリィはぱったりとその場に倒れてしまった。
(暗転)
〜そのまましばらくお待ちください〜
(再起動)
分厚いぐるぐるメガネの下で、リリィの目がぱちっと開いた。
「ピー!!(訳:こんなことしてる場合じゃなーい!!!)」
と、ペンギン語(?!)で叫びながら飛び起きるリリィ。
保健室の人影は、いつのまにか3人ほど増えていた。
>「……保険医は、弱ってる。熱が、おかしい。何が、あった?」
びくっと青ペンギンが目に見えて緊張した。
久しぶりに見るクリスは、がりがりに痩せて、重傷を負った怪我の跡もまだ残ったままだった。
一時は打ち解けた時もあったはずなのだが、今はその面影はどこにもない。
そしてリリィは、彼女によくわからない負い目を感じていた。だから、一瞬、なんと声をかけたらいいのかわからなかったのだ。
だが何とか気を取り直し、クリスに向き直る。
>「今学園では風邪が流行ってて、保険医もダウンしちゃったの。
> うつるといけないから、部屋でおとなしくしてるか、食堂でご飯食べておいで」
ウィジャ盤で文字を指し示すペンギンは、ちょっぴり元気が無かった。
だが、リリィはここでもうっかりさんだった。
クリスは目が見えないから、いくらウィジャ盤を使っても意味がないのだ。
リリィはウィジャ盤を指しつつ、ペンギン語で同じ話をしている。
クリスが鳥の言葉を理解するか、誰かが翻訳してくれない限り、彼女の言葉は伝わらないだろう。
「ピッ!」
椅子に座ってくるくる回って遊んでいるのは、出来の悪いリリィに時々勉強を教えてくれるセラだった。
ぶっきらぼうさのなかに垣間見えるやさしさがチャームポイントだと、ひそかにリリィは思っている。
「訳(セラさーん!朝起きたら私ペンギンだったんです!保険医さんダウン中なんで、どの解毒剤がいいか教えてー!!」
リリィはそう叫ぶと、くるくる回るセラの足に飛びつき---そのまま一緒に回り始めた。
ルナには「ササミを捕まえるために、なぜ変身薬が必要なのか?」と問いたかったが、椅子から降りてしばらくは質問も無理そうだ。
>「お、おいそこのお前たち、この状態は一体どうなってるんだ!
> 誰でもいいから私に分かりやすいように教えろ!なるべく分かりやすくだぞ!」
新たな来訪者が来るころには、リリィはまた目を回しふらふらになっていた。
「ピ〜ィィ(訳:魔界の風邪で学校閉鎖ですぅぅ)」
ばったり倒れたペンギンの体から、折り紙がひとつ外れて落ちた。
その折り紙はむっくり起き上がると、プリメの手に元気よく飛びついた。
もしも折り紙を開けば、学園に流行している病気の原因が何か、プリメも知ることが出来るだろう。
問題は、今後どうするか?である。
ササミから力づくで血を奪おうとするなら、それなりの準備が必要になる。
ちなみに、もしリリィに「今後どうするのか?」と問えば、きっと「ササミちゃんに血を分けてもらえないか話してみる」と答えるだろう。
>214-220
>「……保険医は、弱ってる。熱が、おかしい。何が、あった?」
>「今学園では風邪が流行ってて、保険医もダウンしちゃったの。
> うつるといけないから、部屋でおとなしくしてるか、食堂でご飯食べておいで」
だがクリスは目が見えない
「言葉が喋れないペンギンさんと目が見えないクリスさんの会話は難しいですよね」
『よしここは僕が説明するよ』(猫語)
「グレンはグレンで猫語しか喋れないじゃないですか」
『猫としてのプライドが人間の言葉を喋るという事を拒んでいるんだ!!(迫真)』(猫語)
>「ああー!こんなことをやってる場合じゃない!今学園はピンチなのよ。
あの深夜アニメ枠の魔乳、ササミ・テバサコーチンの血液を 一刻も早く手にいれなければならないのよーッ!」
「変身薬?吸血コウモリにでも変身するつもりですか?
まあ何でもかんでも暴力で解決するのは馬鹿のやることですしね
その考えは正しいと思いますよ
僕達は魔法使い、一番の武器は強力な攻撃呪文ではなくその魔法を操る知恵のハズですから
そもそも派手な爆発を起こすだけなら爆弾でも使えばいいんですし
その力がどれだけ強力か?ではなくその力で何をやるかが重要になるわけですよ」
『そうだよね戦いだけが解決策じゃないもんね・・・・で、フィー坊には何か策があるの?』(猫語)
「それを今から考えるんですよ・・・・・・そういえば血はどれぐらい必要なんでしょうかね?
手に入れた血の保存は僕の物を凍らせる力で何とかなるでしょうけど?」
『なんにせよルナさんが成功するか失敗するかその結果によるよね』(猫語)
> 「誰でもいいから私に分かりやすいように教えろ!なるべく分かりやすくだぞ!」
「平たく言うと保険医は医者のくせに病気で倒れた
僕達も症状は軽度ですが同じ病気に掛かってしまった
その病気を治すにはササミさんっていう魔族に血を貰わないといけないって所ですかね?」
『病気のせいで僕は人間の姿になっちゃったみたい』(猫語)
「どうやら一部の患者には変身してしまうという妙な症状が出てるみたいですけど・・・・・・
もしかしたらこれはこれで別の原因かもしれませんね」
『逆に考えるんだ!猫に戻ろうと思うのではなく、猫に変身すればいいと思うんだ!』(猫語)
「そんなに白猫になりたいんですかグレン?もしくはメス猫になっちゃう危険もあるんですよ?
はぁ・・・保険医もつい最近までエンカさんの手首がすぐに取られるからいっそマグネット着脱式にしてしまうかとか
マッドなことを言いつつ元気にしていたというのに」
『ある意味保険医が倒れて助かったかもしれないねエンカさんは』(猫語)
>214>219>220
> 「・・・・・・・・・・・・ピーッ、ピュイ?」
青いペンギンがどうやら自分に何か言いたいことがあるらしいことにトモエは気づいた。
「フォクすけ、この子、私に何か伝えたいみたい。何て言いたいのかわかる?」
『わかるわけがないよ。』
>「……保険医は、弱ってる。熱が、おかしい。何が、あった?」
部屋の奥から、盲(めしい)た“かたわ”の少女が姿を現した。
「(熱がおかしい?)」
トモエは少女の言葉に疑問を感じた。
なぜ触ってもいないのに保険医が熱を出しているとわかるのだろうか?と。
『あー、トモエ〜!このペンギン、文字を指さして何か伝えようとしてるよ!
…今学園では風邪が流行ってて、保険医もダウンしちゃったの。
うつるといけないから、部屋でおとなしくしてるか、食堂でご飯食べておいで…だってさ!』
フォクすけ☆がトモエにそう報告した。
> ウィジャ盤で文字を指し示すペンギンは、ちょっぴり元気が無かった。
「待っててね。保険医さんは、私が必ず元に戻すから。」
そう言ってトモエはクリスをぎゅっと抱きしめた。
トモエは保健室にある魔方陣に手をかざし、ササミ・テバサコーチンの容姿を覚えた。
しかし、ササミの戦闘力については読まなかった。
必要ではないし、詳しく読む時間がもったいないと考えたからだ。
そう、トモエはササミと戦おうとは考えていないのである。
保健室の入り口でセラとルナがぶつかって悶えている。
トモエは無言で二人の横を通り過ぎ、保健室を後にした。
>207
尖塔の上にいるササミは、下から白い何かが登ってくるのが見えるだろう。
それは、空飛ぶ座布団に座った白いセーラー服の少女。
魔法少女トモエ・ユミである。
「ごきげんよう、ササミ・テバサコーチンさん。」
トモエはササミと同じ高さで止まり、彼女に挨拶をした。
「私は魔法少女トモエ・ユミ。
夢と希望と真実と勇気と自由と正義と愛と平和とか弱き女性を守る使者、
不条理だらけの世の中で、愛と勇気と希望を抱き、正義の刀で悪を打つ、
どんな逆境にも負けない愛の為に生きる少女、
魔法少女トモエ・ユミよ。」
トモエは無表情のまま自己紹介をした。
ちなみに無表情なのは、感情がないわけではなく、笑うのが苦手だからである。
『ぼくの名前はフォクすけ!ちなみにこの空飛ぶ座布団は学園から借りたものだよ!』
とフォクすけ☆も挨拶をした。
「ササミさん、私はあなたにお願いがあってここに来ました。どうか聞いていただけませんか?」
トモエは、今学園にウイルス感染による被害が広がっていること、
そしてその抗体をササミがもっていることを簡単に説明した。
「この学園を救うために、あなたの血を提供していただけないかしら?」
――保健室
盲目のクリスを見たルナは、リリィとセラをほったらかしにして沈黙していた。
そこへ話しかけてきたのはフリードリッヒとグレン。
>「変身薬?吸血コウモリにでも変身するつもりですか?
(中略)
>その力がどれだけ強力か?ではなくその力で何をやるかが重要になるわけですよ」
>『そうだよね戦いだけが解決策じゃないもんね・・・・で、フィー坊には何か策があるの?』(猫語)
>「それを今から考えるんですよ・・・・・・そういえば血はどれぐらい必要なんでしょうかね?
>手に入れた血の保存は僕の物を凍らせる力で何とかなるでしょうけど?」
>『なんにせよルナさんが成功するか失敗するかその結果によるよね』(猫語)
「はあ?なめんなよチビッコ。俺の作戦は成功するに決まってるじゃん。
蚊に変身して血を奪うのさ。蚊は血液が固まらないように何かを出しながら血を吸ってるって知ってるか?
それにコウモリで齧ったら痛みでササミに気付かれるだろうし…」
と言い終えたところへプリメ・インアップがあらわれる。
>「お、おいそこのお前たち、この状態は一体どうなってるんだ!
>誰でもいいから私に分かりやすいように教えろ!なるべく分かりやすくだぞ!」
涙交じりに叫ぶ少女に、フリードリッヒが丁寧に現状を説明した。
ルナは泣いているプリメにハンカチを手渡す。
「わかっただろ?ってことで、あんたたちはあんたたちで協力してササミの血液採取にチャレンジしてみたらいいよ。
言っておくけどさ、泣き落としみたいな説得でササミが大人しく血を渡してくれるとは俺は思えないけどな。
遺跡じゃみんなが困るまでニヤニヤ見てただけだったろ?
じゃ、そういうことで。もたもたしていると発病して変なものに変身しちまうかもしれねーから俺は急ぐぜ」
ルナはペンギンのおでこを指でつついて保健室をあとにした。
活躍して目立ちたいのと、蚊に変身するのは矛盾しているようだけど、そこまで頭は回らない。
そして変身薬のある部屋で蚊に変身する薬を見つけ驚愕する。
漆黒のその変身薬は一リットルもあったのだ。おまけに微炭酸。
震える手で埃の被った薬瓶をフーっとしてラベルの注意書きを読んでみる。
「えっと…変身時間は三分。ただしゲップをするたびに三秒間だけ人間の姿に戻る…。
う、うそ…どうしよう……。三分しか変身出来ないとなるとササミにもの凄く接近しなくちゃダメじゃんか」
――しばらくして、薬瓶を胸に抱いたルナは、不安そうに尖塔の階段を昇っていた。
いつの間にか保健室を抜け出したトモエがササミと接触していたことをルナは知らない。
>219-223
パール色の髪をした少女がプリメの状態を見かねてかハンカチを手渡してくる。
「ぐすっ……ぐすっ……」
ハンカチで涙を拭いている内に次第に表情に余裕が戻っていき、何とか平静さを取り戻す。
落ち着き、次第に周りが見えるようになるにつれて、近くの華奢な男の子の声が自然と入ってきた。
>「平たく言うと保険医は医者のくせに病気で倒れた
>僕達も症状は軽度ですが同じ病気に掛かってしまった
>その病気を治すにはササミさんっていう魔族に血を貰わないといけないって所ですかね?」
男の子の話をしばらく黙ってキョトンとした様子で聞いているプリメ。
頭の中では『病気』や『魔族』の二文字がグルグルと高速回転をしている。
周りからはとてもじゃないけど理解しているように見えないだろう。
>「ピ〜ィィ(訳:魔界の風邪で学校閉鎖ですぅぅ)」
頭の処理能力が追い付かずボケっとしていると、ペンギンの体から落ちた折り紙が手に飛びつく。
少し戸惑いながらプリメはその折り紙を開きそこに書かれている文字を読む。
そしてそこに書かれている内容が華奢な男の子の言うことと大よそ同じだということが分かった。
「き、奇病……だと、ま、まさか伝染病なのか!?」
瞬く間に紙を持つ手が震えて顔が青ざめていく。
思わず四つんばいで保健室の隅っこへと移動してジロジロと保健室にいる人間を見渡す。
「ま、まさかお前たち全員感染しているんじゃないだろうなっ!近寄るなっ!!
そうか、だから今日はあんな静かで……だとしたらもう私にも……」
とうとうカバンを抱えながらうずくまり、物々と独り言を言い始める。
実際なところ、魔力という魔力を入学してから発揮してないプリメにはこの病気は風邪程度の症状すら与えていない。
だが奇病という響きは、それだけである種の恐怖感と不安感を煽ってしまうのだろう。
>「わかっただろ?ってことで、あんたたちはあんたたちで協力してササミの血液採取にチャレンジしてみたらいいよ。
>言っておくけどさ、泣き落としみたいな説得でササミが大人しく血を渡してくれるとは俺は思えないけどな。
そういって先ほどのハンカチをくれた少女が我先にと保健室を出て行く。
よほど自信があるのか、それとも秘策があるのか、どちらにせよ少女は保健室にいる人たちと協力する気はないようだ。
「ササミの血液…?そうか!いつもあの尖塔で黄昏てる根暗女の血があればいいのだな!」
ここにきてようやく本当に状況を把握し始めたようだ。
ガバっと立ち上がり先ほどの絶望感はどこかへと吹き飛んだように声を張り上げる。
そして悠々と片手を振り上げ保健室にいる人間たちにむかって叫ぶ。
「よしお前たちー!私の病気を治すためにササミの血液奪取作戦を決行する!
お前たちは私の手足となってがんばるのだぞ。数の暴力を思い知らせてやるのだっ。」
そして周りの返答すら待たずに意気揚々と保健室を出て行く。
もし誰も協力的でなかったらなどということはおそらく頭にないのだろう。
>223
不安そうに尖塔へと続く階段を昇っているパール色の少女の少し後ろに、息を切らしてプリメが現れる。
そのつかれきった表情は日ごろの運動不足を表している。
「はぁ……はぁ……なんでこんなに階段があるんだ。配慮がなってないぞ。
だからこの学園は嫌なんだ。いつだって私に厳しいばかりで……」
また独りで愚痴を言っているが、少女を見つけた途端に急いで駆け上がり近づいていく。
その目は少女自身ではなく完全に持っている薬瓶へと向かっていた。
「おい、それはいったいなんだ?……まあちょうどよかった。
この階段を上ってて喉が渇いていたところだ。それを私に渡せ!」
そして少女が胸に抱きかかえている薬瓶に手を伸ばし強引にもぎ取ろうとする。
このままお互いに瓶を巡って引っ張り合ったら何かの拍子に落としたり、蓋が開いて中身が出たりすることは想像に難しくはないだろう。
>217-225
>「ってめぇどこ見てやがる!?てめぇには…あ…」
部屋の中に顔を向けると、何やら騒がしかった。
誰かがぶつかっただの目が付いてる付いてないで口論になっている様だ。
状況を確認しようと口を開きかけた瞬間、急に方向を変えて走り出した何かにぶつかられた。
そして言われたのがお決まりのセリフ……最後まで言いはしなかったが。
「……クック、目が付いてるのか、か?
見えているのだろう、見ているのだろう? それで理解できないなら
その目は必要ないな。もっとも、なまじ見えているからこそ避けられない事もある。
そこの椅子に座っている『眼帯を着けたお嬢さん』、貴女はどう思う?」
強烈な皮肉や嘲りを含んだ口調で、ルナやセラに質問を投げかける。
見えていない筈なのに、なぜ『セラが眼帯を着けている』のが分かったのか?
それもまた、熱センサーのちょっとした応用である。
無論、そんな物を使って周囲を把握している事を知る者など誰一人としていない。
クリスが重傷を負った事件、その場にいた面々でさえ、だ。
>「お、おいそこのお前たち、この状態は一体どうなってるんだ!
> 誰でもいいから私に分かりやすいように教えろ!なるべく分かりやすくだぞ!」
現状を把握し始めたクリスの後を追う様に、保健室へと姿を現した女生徒。
声は震えていて、言葉が与える印象と声がまるで一致しない。
>「ま、まさかお前たち全員感染しているんじゃないだろうなっ!近寄るなっ!!
> そうか、だから今日はあんな静かで……だとしたらもう私にも……」
事情を知った女生徒、プリメは激しく動揺し隅で頭を抱えた。
そこへ、クリスは救いどころか止めを容赦なく放つ。
「ああ、既に感染してるよ。それも、大分前からね。
……熱の放ち方が感染したての私と違う、保険医とかとほぼ同じ。
良かったじゃないか、ここにいるのはみなお仲間だよ?
竜の巣穴も、皆で入れば怖くないと言うじゃないか。ッハッハハハハ」
齢10に届くか否かと言う子供の口から出る言葉じゃない。
この異常性は、プリメを更に追い詰めるのだろうか?
>「今学園では風邪が流行ってて、保険医もダウンしちゃったの。
> うつるといけないから、部屋でおとなしくしてるか、食堂でご飯食べておいで」
何か良く分からないものが、もう片方の良く分からない何かの言葉を翻訳する。
それを聞いたクリス、ペンギンの方へと(目が見えない筈なのにそれぞれの隙間を縫って)
歩み寄り、頭部を思いっきり鷲掴みにした。
「ほう、UMAの分際で一人前に人様の心配か。余計なお世話だよ。
それよりもお前は自分の心配をするんだな、今夜の食卓に丸焼きで並ばぬ様に
神様にでもお祈りしておくんだな。まぁ、奴らに縋っても無駄だがね」
喋りこそ静かではあるが、その細腕のどこにそんな力があるのかと不思議に思うほど頭を締め付ける。
いわゆるアイアンクローの状態、リリィにはたまったものではないだろう。
……クリスは、この得体の知れない生物がリリィである事に気付いていない。
ペンギン語なんか知らないし、テレパシーも届いていないのだ。
知っていたら? とうに保健室を後にしていただろう。それだけ、根が深い。
>そう言ってトモエはクリスをぎゅっと抱きしめた。
そんな事をしていて意識を逸らしたせいで、トモエの動きに気付くのが遅れた。
気付いた時には抱き締められていた……強烈な嫌悪感がクリスを襲う。
「……私に、触るな!」
ペンギンの頭部を掴んでいた手を放し、思いっきりトモエの抱擁を振り解く。
目蓋こそ塞がっているものの、表情にははっきりと憤怒の色が出ていた。
>ルナはペンギンのおでこを指でつついて保健室をあとにした。
>そして周りの返答すら待たずに意気揚々と保健室を出て行く。
>もし誰も協力的でなかったらなどということはおそらく頭にないのだろう。
先程まで頭を抱えていたかと思えば、解決方法が分かった途端前向きになったプリメ。
躁鬱でも患っているんじゃないかと周囲から心配されているかも知れないとは、本人は知らないだろう。
「ふん、他力本願か。人間らしくて羨ましいよまったく」
そう言うと、クリスは肩から掛けていたバッグから一冊の古びた書物を取出し
ペンギンの頭に乗せた。バランスを崩して落ちようが知った事じゃない。
「図書館に返しておいてくれ」
返事も聞かず、クリスは保健室を後にした……果たして、何人が気付いただろう。
クリスの歩いていった方向は、尖塔へと続く通路だった事に――――。
>>222 いい気分で空の風を受けていると、見知らぬ女が座布団に座ったまま現れた。
この姿勢だけでもかなりシュールなのだが、それに反して穏やかな礼儀正しい挨拶に驚いた。
そのあとに続くトモエの話をササミの七つの顔は唇を噛みながら聞いていた。
>「この学園を救うために、あなたの血を提供していただけないかしら?」
「ぷっ…ぷくっくっくっく…ぶほおおおーー!あっはっはっはっは!」
最後まで聞き遂げると同時に限界に達し、査察の顔が一斉に大笑いし、身をよじらんばかりに空中で転がる。
「ぷあっはっはっは!ひー!ひー!
あんたええギャグ持っとりゃーすなぁ。
その年で魔法少女って、図々しいにも程がありゃーすわっはっはっは!」
腹を抱えて大笑いをした後、涙が浮かぶ目にそっと指を当てながら顔を上げ、再度噴出した。
「ひーっ、ひーっ、く、苦しい。
あー、うん、血ね、ええよー。」
半ば呼吸困難になりながらも返事は意外なほどあっさりとしたものだった。
笑いも落ち着き、体制を戻したところでにやりと邪悪な笑みが浮かぶ。
「血が欲しいならそら構わせんけど、魔界の流儀にのっとって芸武(げーむ)しやーせ。
ルールは簡単、鬼ごっこだで。
どんな手を使ってもえーから私を捕まえたら血を上げるでよ。
捕まえんでもこの腕切り落として血を持って行ってもいいし。
まあ、できるものやけどね」
不敵にそう言い放つと枝分刀を一閃させ、軽く上昇した後、尖塔の屋根に向かい落ちていく。
落ちながらトモエに付け加える。
「病気でよいよいなモンらに本気出すのもアレやし、半手として建物から出えせんわ。
あんたらは中からでも外からでもすきにしやーせ。
そうみんなに伝えてちょーよ」
そう告げ終わると同時にササミの足は尖塔の屋根に着き、足の着いた部分が丸く抜け落ちる。
先ほどの一閃で切れ目を入れておいたのだ。
こうしてササミの体は尖塔の中へと消えていった。
>>223>>225 尖塔最上階。
瓶の引っ張りっこをしていたルナとプリメは不意に辺りが暗くなったことに気付くだろう。
それが何かは直後に身を持って知ることになる。
屋根板と共に降り立ったササミは足元に一本の瓶が転がっている事に気付いた。
だがそれに興味を示すことなくふわりと浮きあがる。
屋根板の下には二人が下敷きになっているのだが、プリメはその魔力のなさゆえに、ルナはその存在感のなさ故にササミはその存在に気付かない。
「ほしたら鬼ごっこ、はじまりだでー!」
屋根に開いた穴に向かって叫んだあと、ササミは猛スピードで尖塔の階段を降りていく。
>>227 尖塔まで来ていたクリスは急降下してくる熱源に気付いただろう。
だがその次の瞬間には熱源は通り過ぎ、狭い尖塔の階段からササミが引きずってきた南緯五十度と言わんばかりの突風に晒されることになる。
それと共にササミのスカートを構成していた手袋がばら撒かれていった。
尖塔の根元、校舎の最上階にたどり着いたササミはそのまま速度を落とさず一気に一階まで到達し、そこでようやく停止して降りてきた階段を見上げるのだった。
誰も追いついていないのを確認し、はたと考える。
--このまま動ける生徒たちを振り切って校舎内で雲隠れというのは興がなさすぎる。
せっかくなので弱体化した人間たちが自分をどうやって捕まえようとするか知りたかったのだ。
程よく追いかけっこを楽しみ、相手の出方を見てみたい。
そうするためにはある程度自分の居場所を知らせておく必要がある。
その為に道中手袋をまき散らしておいたのだが、さて--
考えながらもう一度周囲を見回す。
ばら撒いた手袋は辺りを見回せば一つくらい見つけられるくらいの割合で落としてある。
手袋は自動的にササミのいる方向を指し示すのだ。
一階は玄関、職員室、保健室、一般教室、その他あるだろうが、まだ日が浅く把握しきっていない。
とりあえず広く目立ちそうな正面玄関ホールへと移動した。
【鬼ごっこ開始
学園内には辺りを見回せば一つ見つかるくらいの割合で手袋が落ちています。
手袋は指さしており、その方向の先にササミがいます。
ササミの現在地は正面玄関ホールです】
>222-229
>「ほう、UMAの分際で一人前に人様の心配か。余計なお世話だよ」
「これこれ動物(?)をいじめちゃいけませんよ。ただしゴブリンは除く」
とバナナを食べながらクリスをたしなめるフリード
『どんだけ嫌いなんだよゴブリン』(猫語)
フリードはゴブリンを嫌っている
それはフリードが大切な人をゴブリンに奪われたからだ
フリードの従妹はゴブリンによって取り替え子、すなわちチェンジリングされたのである
「相手がゴブリンでしたなら首根っこへし折ってそのまま脊髄を引きずりだしても結構ですけど
ペンギンさんにはそんな事をしちゃいけませんよ」
『本当に出来てもやめてよねお肉が食べれなくなっちゃう』(猫語)
>「ふん、他力本願か。人間らしくて羨ましいよまったく」
「互いがお互いを道具として使う関係それが仲間です
仮に失敗したら失敗したで僕には損もありませんし
まあ・・・・損得関係なしに役に立ちたいと思うようになればそれは仲間を超えて友達と呼ぶんですけどね」
『で、結局手伝うの?』(猫語)
「病気が治るのなら僕にとっても有益ですからね」
ちなみに何故フリードがバナナを食べているのかというと
「バナナの皮というのは相手を転ばせるという概念を内包した立派な概念武装なんですよ
人間ならともかく魔族や神族にはこういう概念武装は効果が抜群なはずです」
ということらしい
『多分全然関係ない人が転ぶって落ちだと思うよ?』(猫語)
「その時はその時で素直に謝りましょう」
ちなみにハリセンにはボケた人間に絶対当たるという概念がこもっているらしい
「あとは伝統的な鳥を捕まえる籠と棒と紐・・・・あと餌ですね
普通に考えて捕まらないでしょうけど自分を舐めているのかと怒って冷静さを失わせるのも作戦のうちです」
『鳥を捕まえるという概念がこもっているなら普通に捕まらね?』(猫語)
「そこまでうまくいくわけ無いでしょ?常識的に考えて」
『フィー坊に常識を問われた・・・だと』(猫語)
「相手をからかいまくってペースを崩しそして罠に誘い込む
これが人間が魔族に対抗するセオリーというものです」
『あほなギャグで相手の脳を破壊するんだねわかるよ』(猫語)
まさに外道
「さて問題は何処にササミさんが居るか?っていう所ですね
居ないところにバナナの皮を仕掛けても効果はないでしょうし・・・・・」
『よしここは棒を倒してその方向に進んでみようか?』(猫語)
この猫超いきあたりばったりである
尖塔の最上階についたルナ。
昇っている時は辛いけれど、着いてしまえばあっというまだった。
大きく息を吐くと胸に抱えた一リットル瓶を見つめ独りごちる。
「はあ…喉渇いちゃった。今ならこの薬、全部飲み干せるかも…」
蚊に変身する薬は、一リットルをすべて飲み干して初めて完全な効果があると記されていた。
屋根裏の片隅には外に出る最後の階段。外に出ればササミがいるのだからルナの緊張はマックスになる。
その時だ。下から駆け上って来る者がいた。
金髪でシャギーがかかったセミロング。琥珀色の瞳に切れ目気味の三白眼、おまけに虚乳。
その正体は保健室でルナがハンカチを渡したプリメ・インアップ。
>「おい、それはいったいなんだ?……まあちょうどよかった。
この階段を上ってて喉が渇いていたところだ。それを私に渡せ!」
プリメはルナが胸に抱きかかえている薬瓶に手を伸ばし強引にもぎ取るつもりなのだろう。
「ちょ、ちょっとぉ!おまえなんだよー!?図々しいやつだな。
はなせってば、これはジュースなんかじゃねぇよ!」
予想外のプリメの行動に戸惑うルナ。そもそもビジュアル系に化けているのはこんな風なことをされないためなのに。
そして、二人が引っ張りっこをしていると不意に辺りが暗くなる。
円形に斬断された屋根板がササミを乗せて降ってきたのだ。
>「ほしたら鬼ごっこ、はじまりだでー!」
「……(むきゅう〜…おにごっこ〜?)」
ルナが屋根板の下から這い出た時には、すでにササミの姿はなかった。
仕方なく、転がっている変身薬を抱えて尖塔を降りれば床にぽとんとササミの手袋が落ちているのに気付く。
近くにクリスの姿もあったから、ルナは少し怖かったが彼女の傍にまで赴き手袋を拾って嵌めてみた。
びしっ!気がつけばクリスの鼻の穴に指をつっこんでしまっていた。手というか、手袋が勝手に指差してしまうのだった。
「これって、もしかして…ササミの場所を指し示してるんじゃ?あ!ごめんなさい!」
すぽんとクリスの鼻の穴から指を抜き、ぺこぺこと謝り逃げるように手袋の指し示す方向へと歩む。
変身薬の入った瓶を小脇に抱え廊下を進む。行き先は手袋の指の指し示す方角。
途中、保健室の前を通ったので扉を開けて人影に向かって話してみる。
「よくわかんねーけど、何かササミが鬼ごっことか言ってたぞ。
そしてたぶんだけど、そこらへんに落ちてるササミの手袋は
あいつのいる場所を指し示しているのかもしれねえぜ」
急いでいたので人影のことはよく見ていない。ただ変態保険医がふらっと立っていたのかもしれない。
あまり確認しないでルナが先を急げば正面玄関ホールに到着。
指差している方向にササミの後ろ姿を見てビクっとして廊下に引っ込む。
「ちっ、こんなところにいた…。ホールだから広いしどうしよう?
動き回られたら厄介なのよね。もうちょっと様子をみましょうか。
ササミも動きを止めるような瞬間があるはず。
それをひたすら待つかそれとも作り出せるか、そこが勝負の分かれ目ね……」
真剣な顔のルナだったが、しばらくしてもじもじし始める。緊張からかトイレに行きたくなったらしい。
>「はあ〜!?謝ったらすむ問題じゃねえだろごるぁ!
ワディワジでお腹に詰まった内臓をぜーんぶ瓶詰めにしてやろうか!?」
>お色直しが完了して、強気が復活したルナはセラに掴みかかる。
酷い言われようである。確かにこちらも不注意だったがそっちにも非があるだろう。
>セラを移動式椅子に押し付け座らせると、クルクル回しながら部屋の中央に走らせた。
・・・仕返しにしたってこれはしょぼくないか?
しかしなぜだろう、昔こんな遊びをした事はあるが、今やって見ても微妙に楽しい気分になるのは。
>「訳(セラさーん!朝起きたら私ペンギンだったんです!保険医さんダウン中なんで、どの解毒剤がいいか教えてー!!」
>リリィはそう叫ぶと、くるくる回るセラの足に飛びつき---そのまま一緒に回り始めた。
私が椅子で回っていると一匹のペンギンが私の足に飛びついてきた。
「…また厄介事かよ。いいじゃねぇか、さっきの奴がササミから血を盗ってくれば変態野郎は無事復活。
あの野郎の方が腕はいいぜ?」
しばらく回った後、椅子を止めて目を回したペンギンを抱き上げる。
「それにそっちの姿の方がかわいいぜ?」
とは言え、本人的には物凄く困っているのだろう。
「…で?こんな事になった心当たりは?昨日の夜に食べたものは?誰かに呪いをかけられるような事は…
お前の場合なさそうだな…。ってなると誰かの悪戯か?
違う生物に変化させるのってのは魔法にしろ、薬品にしろ、複雑なもんが多いだ。」
いかん、いつもの勉強を教えるときのテンションになってきてるな。
「とにかくだ、わたしなりに何か治す手段を考えてはみるが、最悪さっき言ったように変態保険医に丸投げしなきゃならん
悪いな、こんな事なら薬品学ももう少し勉強しとくべきだった。」
しばらく考え込むも、全くと言っていいほど手段が思い浮かばなかった。
そんな事をしているうちに周りの奴らの大体はササミの捕獲に乗り出していた。
>「さて問題は何処にササミさんが居るか?っていう所ですね
居ないところにバナナの皮を仕掛けても効果はないでしょうし・・・・・」
>『よしここは棒を倒してその方向に進んでみようか?』(猫語)
「とりあえず、最初に出て行った連中の向かった方に仕掛けとけばいいんじゃねぇか?」
坊主二人がなにやら相談し合っている。
「でも、そいつはやめてくれ。今見た感じ動ける面子の中で怪我の処置ができそうなのは私かこのペンギンリリィくらいだ。
誰か怪我されたらそれこそ私のストレスがマッハだ。」
ペンギンに処置をさせる訳にはいかないので実質私一人だが。
それにペンギンであろうがなかろうがリリィに処置させるのは危なっかしい。
「そんな不確定な作戦より、こっちは人数の理があるんだ。人海戦術で挟み撃ちの方がよかねぇか?」
ん?私は普通に話してるがそういえば…
「私、自己紹介したか?してなかったらわりいな。えっと…名前なんだっけ?」
フリードは、ササミの血を採ったら冷凍して保管してくれるらしい。
そして、ルナが変身薬をつかって、どうやってササミの血液を採取するつもりかというと・・・・・・・。
「はあ?なめんなよチビッコ。俺の作戦は成功するに決まってるじゃん。
蚊に変身して血を奪うのさ。(略)
「ピー!!」
目を回していたリリィが、とんでもない!とでも言わんばかりに、床に転がったまま声を張り上げた。
「ピピピイッ!(プチってつぶされちゃったらどうするのよ!ぷちって!!)」
>「…また厄介事かよ。いいじゃねぇか、さっきの奴がササミから血を盗ってくれば変態野郎は無事復活。
> あの野郎の方が腕はいいぜ?」
しばらく回った後、椅子を止めて目を回したペンギンを抱き上げる。
>「それにそっちの姿の方がかわいいぜ?」
リリィはぽっと赤くなったが、はっとわれに返り、子供が駄々をこねるように、ばたばたと両羽を振る。
セラには幸い言葉が通じているが、それでも困っていることは、十分察してくれているだろう。
何か心当たりはと聞かれるが、あいにくさっぱりわからなかった。
>「(略)ってなると誰かの悪戯か?
> 違う生物に変化させるのってのは魔法にしろ、薬品にしろ、複雑なもんが多いだ。」
がーん!とショックを受ける。
>『逆に考えるんだ!猫に戻ろうと思うのではなく、猫に変身すればいいと思うんだ!』(猫語)
「そ、そうよ!グレンの言うとおり、変身薬飲んで、人間に戻るって言うのは・・・・・」
>「そんなに白猫になりたいんですかグレン?もしくはメス猫になっちゃう危険もあるんですよ?
リリィはどーんと落ち込んだ。
グレンと同じ発想というのもあるが、白猫になったり男子になったりするのはもっと困る。
フリードのようならともかく、ガチムチマッチョでは着る服がない。
(ううん、よしんば着れたとしても、HENTAI街道まっしぐらじゃないのさー!!)
リリィもなんだかんだ言って、結構テンバっているようだ。
>「とにかくだ、わたしなりに何か治す手段を考えてはみるが、最悪さっき言ったように変態保険医に丸投げしなきゃならん
> 悪いな、こんな事なら薬品学ももう少し勉強しとくべきだった。」
「ピ!(了解!)」
ありがとう、といわんばかりに、ぺこりと頭を下げる。
とはいえ、セラとしても難しい問題であることには違いない。
それでも何とかしてくれようとしているらしく、そのまま考え込んでしまった。
そんな彼女を邪魔しないようにと、リリィはそっと腕から抜け出し、床に下りる。
この先どうなるかは誰にもわからない。だが、一人じゃないのはなんとも心強いことだった。
さて。一方、事情を知ったプリメはというと。
折り紙に書かれた文章で大体の事情を把握したらしく、激しく動揺し隅で頭を抱えた。
>「ピー・・・・(ま、まあまあ、落ち着いて・・・・・)」
うつるから近寄るなといわれ、リリィとしては少なからずショックを受ける。
>じゃ、そういうことで。もたもたしていると発病して変なものに変身しちまうかもしれねーから俺は急ぐぜ」
「ピ?ピー!!」
待って待って!と叫んだが、ルナは任せとけ!とでもいうように、リリィのおでこをつついて行ってしまった。
クリスはクリスで、グレンの翻訳を聞くか聞かないかのうちに、リリィペンギンの頭を思いっきり鷲掴みにした。
その形相は、リリィもはじめてみるものだった。
リリィはピーピーなきながら、じたばたと手をばたつかせる。
クリスはひとしきり言いたいことを言った後、興味を失ったようにぽいとリリィを開放した。
何がそこまで気に入らなかったのかはわからないが・・・・・どうやら、怒らせてしまったようだ。
・・・・・・・余談だが、一般的にペンギンは肉食獣だ。
まあこのペンギンは元人間だが、果たして丸焼きにしても美味しいのだろうか?
謎である。
>「よしお前たちー!私の病気を治すためにササミの血液奪取作戦を決行する!
> お前たちは私の手足となってがんばるのだぞ。数の暴力を思い知らせてやるのだっ。」
リリィも慌てて後を追おうとしたが、足元がふらついている上に、床に残ったルナの顔型に足を滑べらせすっ転んでしまった。
そうこうしているうちに、プリメやクリスは部屋を出て行ってしまった。
「ピー・・・・・・」
しかもご丁寧に、クリスは突っ伏しているリリィの頭の上に、重たい本まで載せて。
「ピィイイィ・・・・・(クーちゃんが、しばらく見ないうちに不良になっちゃった・・・・・・?)」
床に突っ伏したまま、るるるー、と涙の水溜りを作るリリィ。
怪我の具合が悪いのだろうか?それとも、体調が悪いのだろうか?
(・・・・・・・・・・・体調?!)
リリィは何度かじたばたした後、本の下から何とか抜け出すことに成功した。
「そうよ!きっと病気にやられて人が違っちゃったんだわ!それとも体調が悪いからいらいらしてるのか!」
短期間でここまで性格が変わってしまうと、とりあえずウィルスのせいで性格が変わったとしか考えられなかった。
まあ他の原因としては、怪我をした時に頭をどこかに打ち付けたか、変身の後遺症で凶暴化しているか、
別人格が現れたくらいしか心当たりがなかった。
「ピー。(まあ、人間がペンギンになったり、猫が人間になったりするんだもん。
ウィルスのせいで、クーちゃんの精神状態に何らかの変化があってもおかしくないよね
早くササミちゃんから血を分けてもらって、皆の病気を治さなくっちゃ!)」
ウィジャ盤でそうフリードやセラ、グレンにも同意を求める。
リリィは、意外と立ち直りも早いようだ。
>「さて問題は何処にササミさんが居るか?っていう所ですね
居ないところにバナナの皮を仕掛けても効果はないでしょうし・・・・・」
>『よしここは棒を倒してその方向に進んでみようか?』(猫語)
>「とりあえず、最初に出て行った連中の向かった方に仕掛けとけばいいんじゃねぇか?」
>「でも、そいつはやめてくれ。今見た感じ動ける面子の中で怪我の処置ができそうなのは私かこのペンギンリリィくらいだ。
> 誰か怪我されたらそれこそ私のストレスがマッハだ。」
「ピ!(治療なら任せて!)」
セラという後ろ盾を得て、なぜか自信満々のペンギンリリィ。
だが、ビンの蓋ひとつ開けられないというのに、一体何をどうするつもりなのだろうか?
>「そんな不確定な作戦より、こっちは人数の理があるんだ。人海戦術で挟み撃ちの方がよかねぇか?」
セラとフリードが、ササミちゃん捕獲作戦を練っている。
「(グレン、悪いけど、この本カバンに入れてくれる)」
ウィジャ盤を使って、クリスが残していった本をカバンに入れるようお願いする。
今は、本の返却よりもササミから血液を貰うほうが重要だ。
何より心配なのは、蚊に変身すると宣言して出て行ったルナだ。
ササミにぺちっとされて、その辺にぺったんこになって倒れていない事を祈るばかりである。
まあ、魔法少女トモエ先生がついているだろうから、そんなことにはならないと思うのだが。
(・・・・・・・ん?)
セラが自己紹介を始めた時。
リリィの視界の隅、クリスが開け放していったドアの外に、何か黒いものが見える。
それはぴちぴちと動いていて----。
「(魚だ!お魚が落ちてるー!わーいわーい!!)」
リリィはぴょんぴょん飛び跳ねながら、廊下に落ちている黒い魚めがけて突進した。
「いっただっきまーす!!」
そして大きく口を開けて、ぱくりと一口。
何回か咀嚼した後、だーっと滝のような涙を流す。
「お魚じゃなかった・・・・・・・」
廊下の隅っこで手袋をほお張って涙を流していたリリィは、
自分の横をルナが通り過ぎていったことに気づかなかった。
そしてちょうど物陰に隠れていたため、ルナもこちらには気づかなかった。
どーん、と落ち込んでいるリリィの視界の端、廊下の曲がり角付近で、再び何かが動いた。
黒い影だ。
「あっ!お魚だ!今度こそお魚だー!!」
わーいわーい!と、大喜びで、再び突進していくリリィ。
魚が絡んでいるせいか、ペンギンとは思えないほどのすばやさと身のこなしである。
たった今、黒い影が魚ではなかったと確認したはずなのに、少しも懲りていないようだ。
まあ、おそらく再びリリィが拾い食いしようとしている黒いものも、絶対に魚ではないだろう。
「もごもご(訳:わーいわーい、今度こそ!今度こそは本物のお魚だー!!・・・・・んん?)」
口いっぱいに手袋を頬張っていたリリィのくちばしから、ぼとぼとっと手袋が落ちた。
「ピ-----!!(ササミちゃん!ササミちゃんじゃないの!皆探してたんだよ!
悪いけど血を少し分けてよ!皆待ってるから、保健室にきてきて!!」
とうっ!とササミの足に飛びつこうとするリリィ。
ササミの提案した条件を聞いていないからこそできる芸当である、
果たしてササミは、ペンギン語がわかるのだろうか?
それ以前に、ペンギンになってから自己紹介していないのだが・・・・・・果たして、ササミには今のリリィがわかるのだろうか?!
>228>229
『ササミちゃん、行っちゃったねー。』
「ええ、そうね。」
尖塔の屋根に降り立ったトモエは、ササミがそこに開けた穴を覗き込みながらそうつぶやいた。
すでにササミの姿は見えない。トモエは先程のササミとのやりとりを思い出していた。
彼女は言った。鬼ごっこの始まりであると。
もしも彼女を捕まえることができたら、学園に蔓延している病気の抗体、
つまりササミの血液を提供してくれると彼女はトモエに言ったのだ。
「こんな余興につきあっている場合ではないのだけれど、仕方ないわね。
無理矢理に彼女から血を奪うわけにはいかないものね。」
『そう言うわりにはなんだか嬉しそうだね、トモエ?』
「…そうかしら?」
実際、トモエは嬉しかったのだ。
ササミが自分の話を聞いて、笑ってくれたこと。
そしてササミが自分とゲームをして遊んでくれること。
そのどれもが、子供の頃学校に行けなかったトモエにとって、夢にまでみた青春の一コマ。
憧れていた学園生活そのものなのであった。
『今度ササミちゃんに会ったら、彼女が何を言っても、笑ってあげたらいいんじゃないかな?』
「…ええ、そうね。きっと、そうするわ。」
トモエはササミが開けた穴から尖塔の中に入った。
トモエは尖塔の最上階より、病気でふらふらしながら階段を降りていった。
その途中に屋根板が落ちているのを発見した。
これはササミが屋根に穴を開けた時に落ちた物である。
『待ってトモエ!だれか下にいるみたい!』
トモエは屋根板を持ち上げた。
どうやら金髪の少女が屋根板の下敷きになっていたようだ。
プリメ・インアップである。トモエは知る由もないが、ルナは既に脱出した後のようだ。
『怖がらなくてもいいよ!彼女は魔法少女、魔法少女トモエ・ユミだ!正義の味方だよ!』
「大丈夫?怪我はしてない?」
トモエはプリメにそう話しかけた。
玄関ホールで佇んで数分。
ササミの眉間にしわが寄っていた。
てっきり動ける生徒たちが死に物狂いで襲い掛かってくると思っていたのに、この静けさは退屈なものでしかない。
首を少しひねり始めたところでようやく第一の刺客がやってきた。
しかしそれはペトペトと駆け寄ってくるペンギン。
鳴き声に振り向きもせず、とはいってもどこかしらの顔が対面しているのだが、足元に駆け寄るペンギンに足を一閃させる。
次の瞬間、ペンギンはササミの胸に抱かれていた。
手袋をばら撒いてきたために丈が短くなったスカートで足も大きく回りやすい。
射程距離に入った瞬間に足は伸び、ペンギンの頭を文字通り鷲掴みにしてそのまま回転。
遠心力を利用して頭上に放り投げ、落ちてきたところで抱きかかえたのだ。
「なんだで、このペンギンは。でもなんだか抱き心地ええがね〜」
ササミは逆刷り込みによりリリィに対し母性を発揮してしまう。
ペンギンがリリィだとは分からずとも本能的に母性が体を動かす。
抱きしめぐりぐりと頭を撫でその感触を堪能した後、小さく息をつく。
「訛りが酷いけんど、言ってることはだいてー判るわ。まーせっかくやし、一緒にあそぼまい」
伊達に怪鳥ではない。
ササミはリリィのペンギン語がある程度分かるようだ。
リリペンギンを抱っこしたまま、手袋が三対スカートから分離し印を結ぶ。
それと共に項、背中、額の顔が呪文を唱え始める。
呪文の完成と共にササミは叫ぶ。
「フィジルのみんな!ササミ・テバサコーチンだてよぉ。
事情は分かったぎゃ。病気を治すんに私の血がいるんなら、芸武をしやーせ。
鬼ごっこだぎゃ。
半手として建物から出えせんし、校舎にばら撒いた手袋が私の方向を示しとるから捕まえにきやーせ。
捕まえんでもこの腕一本切り落として血をもってっても構わせんわ。
私のところに来たのがペンギン一羽ってどーゆーことやの!
病気でヨイヨイやからってねこんどるゆーのはでら情けにゃーで!
フィジルのモンの気概ゆうのを見せてちょーせえや!」
この言葉は三つの顔が完成させた広域伝達魔法によりフィジル島全体にいきわたるだろう。
保険医が放った無数の手紙、校内にばら撒かれた手袋、そして広域伝達魔法による挑発。
これだけ揃えばフィジルの者たちも本気になるだろう。
伝え終わった後、
「ピーーーピ、ピー」
(そういうわけですから芸武を楽しみましょう。
ちなみにあなたは私を捕まえたのではなく私につかまっているのでノーカウントです。
よくわからないけど妙に可愛いので芸夢をアリーナ席で楽しませてあげますよ)
ペンギン語で笑顔で語りかけた。
【現在地・正面玄関ホール】
【ペンギンリリィを抱っこして広域伝達魔法で挑発】
【ルナの存在にはいまだ気づかず】
用語解説
しやーせ=しましょう
きやーせ=来てください
やの=なのですか
よいよい=ふらふら
でら情けにゃーで=凄く情けないですよ
見せてちょーせえや=見せてください
>231-
>「でも、そいつはやめてくれ。今見た感じ動ける面子の中で怪我の処置ができそうなのは私かこのペンギンリリィくらいだ。
誰か怪我されたらそれこそ私のストレスがマッハだ。」
「ペンギンリ・・・・え?」
『e?』(猫語)
「『何それ怖い』」
今更ペンギンの正体に気がつくフリードとグレン
>「そんな不確定な作戦より、こっちは人数の理があるんだ。人海戦術で挟み撃ちの方がよかねぇか?」
「そうですねこんなものはポイしちゃいましょう」
と適当にバナナの皮をほうり投げるフリード
>「私、自己紹介したか?してなかったらわりいな。えっと…名前なんだっけ?」
「じゃあ僕から・・・・」
と自己紹介をしようとしてセラに近づき自分が捨てたバナナの皮で滑るフリード
すってんころりんすっとんとん
『もう何やってるのさフィー坊・・・・・』(猫語)
「とりあえずネタとして一度転んで置かなければと思いまして
ええと僕の名前はフリードリッヒ・カイ・ポリアフ・ザンギュラビッチ・シャーベットビッチ・デューク・ノクターンです」
『長いわ!』(猫語)
とハリセンで突っ込むグレン
「まあ長いんでフリードリッヒでもフリードでも好きな方で呼んでください
ちなみに彼がグレン、僕の使い魔の猫です
猫は猫の姿が一番美しいというのに奇病のせいでこんな姿に・・・・・
この姿のグレンをチュッチュするわけにはいけないんで早く元に戻って欲しいと願っています」
>「(グレン、悪いけど、この本カバンに入れてくれる)」
と言う(?)ので言われたとおりにカバンの中に本を仕舞うグレン
『人間の手って便利だよねこういう時』(猫語)
「ですけど僕は猫のグレンが好きなんですよ」
確かに人間の体・・・特に手は便利だ
だがフリードは本来の姿である猫のグレンが好きなのだ
>(・・・・・・・ん?)
「え?ちょっと何処に行こうっていうんですかリリィさん!?」
お魚らしきものを見つけて突進するリリィ
『かわいそうに心までペンギンに支配されて・・・・・』(猫語)
「そういうグレンは中身がいつも通りですね」
『猫要素の残った中途半端変身だからね、精神には問題ないんだよ』(猫語)
そんなグレンには猫耳と人間耳合計四つの耳がある
だからといって聴力が二倍になったなんてことはないのだが・・・・
「皆さんとりあえずペンギンさん・・・・もといリリィさんを追いかけましょう」
>「よくわかんねーけど、何かササミが鬼ごっことか言ってたぞ。
そしてたぶんだけど、そこらへんに落ちてるササミの手袋は
あいつのいる場所を指し示しているのかもしれねえぜ」
どうやらあれは魚でなくて手袋らしい
「なるほどそういうことですか・・・・・ならば」
手近な手袋をひとつ拾い紐にくくりつけ垂らすフリード
『さっきからいろいろ何処から出してんの?』(猫語)
「ないしょですよ・・・さあこれでササミさん探知機の出来上がりです
この手袋の指の向いた方向に行きましょう」
【正面玄関ホール】
ルナが観葉植物の裏に隠れていると、何処からともなく現れたペンギンリリィが、ササミに向かってヨチヨチと歩いてゆく。
「ぁ…」
と、ここで場面は保健室に入れ代わる。この前、テレビで見たシャーロックホームズの映画のように時は逆回しになって再生される。
過去の保健室で、セラ先生もといセラとペンギンは普通に会話していた。
ちなみにセラ先生と勘違いしてしまったのは、テンプレに優しく勉強を教えてくれると書いてあったから。
でも人の話を聞かないルナは、セラとペンギンリリィが普通に会話出来ることを知ることもなく、
リリィに蚊に変身したらペチッて潰されると忠告されたことも知らない。
だからそのまま保健室から飛び出してゆく。
そして、屋根板の下敷きになり、脱出後再び保健室へ。
この後屋根裏では、プリメとトモエの百合劇場が始まるのだろう(うそ)
あとよくよく思い出してみたら、保健室で見た影はフリードリッヒだったらしい。
時間に軸があるのかはわからないけど、時間軸がわからないから個人を特定しなかっただけ。
ただの独り言にならなくて良かった、と無意識の海で誰かさんが微笑む。
静けさが停滞する正面玄関ホール。時は現在に追い付き重なって動きだす。
ササミは広域伝達魔法で芸武が行われていることを高らかに宣言。
やきもきしてるササミのオーラは、なぜかフライパンをお玉でカンカンと叩く若妻にみえた。
一方のリリィはササミに抱かれている。
ビジュアル系の不良を気取っているルナは、世間体があるから
ペンギンを抱っこするササミを羨ましく思い
それと抱かれているリリィにも同じ感情を抱く。
ルナの両親は、神隠しにあった兄のことばかりを心配してルナのことを見てくれないのだ。
「……リリィは、どこいっちゃったのよ」
急にさみしくなったルナは、悲しみを怒りに変えてササミを憎む。
(三週間かそこらで人気者になった魔乳。ルナにもあの魔乳さえあったら…みんなの注目を受けるのに)
「あ、でも芸武って…。そっか、鬼ごっこって言ってた意味がわかったわ。それなら無理に血を狙う必要もないのね。
ササミのやつは、ぜったい私が捕まえてやるんだから」
いったん廊下に戻ったルナは近くの女子トイレまで下がると鏡をモップで割って、角度を計算して室内のあちこちにその破片を設置。
ぴよぴよのスイッチを押して用をすまし再び正面玄関ホールへ。
コンパクトを取り出すと、その鏡で陽光を反射させササミの顔に光りを当てる。
「おーいササミ〜!おまえのかあちゃん魔乳〜♪やっぱりおまえも魔乳〜♪」
そう言ってルナはてけてけと女子トイレに駆け込む。
廊下の床にはルナのアクセサリーが点々と落ちていてキラキラするものが好きなササミの興味をそそるかも知れない。
アクセサリーは女子トイレに誘うように落ちていて、ササミが追っていけばトイレの窓の淵に綺麗に装飾されたコンパクトを目にするだろう。
トイレの中に入ったら個室の扉が閉まっていてピヨピヨ音。
しかし開けても個室の中にいるはずのルナの姿はない。そのかわりに飲み干された変身薬が床に転がっているのが見える。
トイレのピヨピヨ音は不気味に鳴っている。
でもササミが耳を澄ませばプーンと頭上からモスキート音が聞こえてくるはず。
「げぷっ…つかまえたー!」
天井からササミに向かってルナが降る。蚊に変身出来る時間は三分。
でもげっぷをすると三秒だけ人間に戻る。それを利用してルナは故意にげっぷをした。
避けられたら、おつぎはワディワジを使用する。ワディワジの光はトイレ内に仕掛けられた鏡に乱反射。
当たればササミの魔乳は洋式トイレの穴に詰め込まれてしまうことだろう。
そこへ蚊に戻ったルナがプーンと迫る予定。悲しいかなこんな時にげっぷは出ない。
逆に数分間、蚊でいるしかなかった。
「プ〜!」
蚊の鳴くような声をあげてササミに迫る予定。
「大変だ〜!大変だ〜!大変だ〜!」
短い赤髪が上下に揺らしながら失踪する赤い人影
赤い目が右往左往して、とてもじゃないが冷静とは思えません
廊下を走っている炎髪灼眼の討ち手ではなく、フィジル魔法学園総代
炎道勇気
遥か彼方、東方よりやってきた魔法武士
3週間前の事件では中心人物でありながら、対して印象ものこせないまま幕を閉じました
今日まで総代の仕事を無難にこなしながら過ごして来ました?
じゃあ、なんでこんなことになるまでほっていたんだって?
先生すらやられてるのに所詮一生徒の勇気くんにそんなこというのも酷だとお思いませんか?
未曾有の事態に大変だ〜と叫びながらただ走っているだけ
いいえ、ただ、走っているだけかというと違います
彼はとある場所を目指しています
廊下に落ちている手袋の指し示す先を目指して走っているのです
「おらぁ!ササミ出てこい!学園の平和と真の健康は俺が守る!!」
そう時折叫びながら、廊下を走っている
勇気の許嫁である真は今回の騒動の影響をもろに受け、自室で動けないでいる
「芸武だってふざけやがって!とっとと血をよこしやがれ!
うお〜どこだ!!早く出てこい!」
ササミは玄関ホールにいるのだが勇気はそれを知らずに走り回っている
手袋のお陰で確実に近づいているのだが……
勇気は魔法実験室を過ぎ、食堂を駆け抜け、図書室を横切り、悪魔召還室をスルーしてたどり着いたのが・・・・・・
「女子便所だと……」
そこは勇気が入り込むことが出来ない聖域の一つ(他には女子更衣室など)
勇気は便所の前で右往左往するしかなかったのです
>240-242
手袋の指し示す先を進むフリード達
だがそこはとんでもない所だった!!
>「女子便所だと……」
「あ、炎道さんこんにちはってここは・・・・・」
そう男が入っていけない禁断の場所女子トイレである
「ぼ、僕男の子だよ!女子トイレなんて入れないよ!
あっ!そうだ!グレンを女装させて突入させましょう!!」
自分が女装しても顔が割れてるから駄目だという理由なのか
人間に変身したグレンを女装させて突っ込ませようとするフリード
『ちょっと待てその理屈はおかしい』(猫語)
「まあでもグレンは猫ですし人間に欲情とかありえませんから
そのまま突っ込ませても大丈夫ですよね」
と笑いながら言うフリード
どうやらグレンの女装は免れたようである
『人間のトイレとか臭いからやだ』(猫語)
それに反発するグレンだったが
「リバースパロスペシャル!!」
力でねじ伏せるフリード
『ギ、ギブアップ』(猫語)
「いやあ全力で技出しても相手を殺さないで済むって楽しいですね」
といい笑顔でのたまうフリード
まさに外道である
『もうどうなっても知らないからね?』
と結局女子トイレに入っていくグレン
やはり主従の関係は絶対であるようだ
だがはたして大丈夫なのか?
『見つけたお姉ちゃん』(猫語)
そこにターゲットの姿を見つけにゃ〜と鳴くグレン
はたしてグレンはササミを捕まえられるのか?
「グレンも逝ったようですし僕はここら辺に鳥を捕まえる罠を仕掛けましょうか?」
と籠と棒と紐そして重石を踏み合わせ皿に入った鳥の餌をセットする
そんなもので魔族が捕まるわけが無いと思うが・・・・・
「きっと理性では抗っても本能には逆らえないはずです」
とんなわけねえだろうなことを言い放つフリード
まあ油断はしてくれるだろうが・・・・・
※リバースパロスペシャルとはいわゆる戦争男の使うパロスペシャルである
オリジナルは前後逆なのだ
ササミちゃんを捕まえた!と思った直後、リリィの体が宙に浮いた。
>「なんだで、このペンギンは。でもなんだか抱き心地ええがね〜」
「キュー?!キュ・・・・・ピュイー!!(ちょ、待って!!)」
目を白黒させながらむぎゅむぎゅされているペンギンリリィ。
ぐりぐりとササミは逆刷り込みによりリリィに対し母性を発揮してしまう。
ちなみに、ササミの胸元にも彼女の顔がちゃんとついていてですな・・・・・・・。
(ちょ、ササミちゃん、近い近い近い!!!)
「キュー!!!」
〜そのまましばらくお待ちください〜
>抱きしめぐりぐりと頭を撫でその感触を堪能した後、小さく息をつく。
>「訛りが酷いけんど、言ってることはだいてー判るわ。まーせっかくやし、一緒にあそぼまい」
そこには上機嫌のササミと、、口から半分魂が抜けているペンギンの姿があった。
リリィがショックから立ち直った頃、ササミの挑発的なゲーム開始宣言は終わった。
>「ピーーーピ、ピー」
>(そういうわけですから芸武を楽しみましょう。
>ちなみにあなたは私を捕まえたのではなく私につかまっているのでノーカウントです。
リリィは首をかしげた。
ということは、いったん地面に降りて「ササミちゃんターッチ(ハァト)」とやったら、カウントされるのだろうか?
(や、またタッチする前に「ぽーい」ってされちゃうな)
なにぶんリーチの長さが違いすぎて、お話にならない。
>よくわからないけど妙に可愛いので芸夢をアリーナ席で楽しませてあげますよ)
>ペンギン語で笑顔で語りかけた。
わーい、と喜んでから、はっと我に返る。
芸夢に参加して実際に苦労するのは、リリィと同じフィジルの学生なのだ。
(だめよリリィ、ここはきっぱりとお断りして、弱ってる皆の加勢に行かなくちゃ!)
そう思いつつも、リリィの左羽はササミの黒手袋をつかもうとふよふよ動いている。
( 皆には、私の力が(多分)必要なのよ!さあっ!きっぱりと!)
そしてリリィは大きく息を吸い込むと、きっぱりと
「ピー。ピィ?(アリーナ席では、おやつに魚は出ますか?)」
ササミちゃん、ペンギン一羽見事ゲットである。
「ピーィィ?(なんで血液分けてあげないの?協力してくれたら、皆ササミちゃんにすっごく感謝するのに)」
リリィは、ササミが留学してきた動機と理由をよく知らなかった。
んん?と首をかしげて考え込んだ後、
「ピ!(ササミちゃんは、皆の人気者(アイドル)になりたいの?)」
リリィの脳内では、豪華なドレスを身に着けたササミが、
「ほーら、悔しかったらわたくしを捕まえてごらんなさーい」と、高笑いしながらクルクル回っていた。
そんな時。
>「おーいササミ〜!おまえのかあちゃん魔乳〜♪やっぱりおまえも魔乳〜♪」
そう言ってだっと逃げ出すルナの姿。
「ルナちゃん!」
どうやら蚊に変身する作戦は、思いとどまってくれたようだ。
だが意味がわからない。
「ルナちゃんが、ササミちゃんのこと褒めてる・・・・・・?」
もしかして、褒め殺し作戦だろうか?
「・・・・・・・あっ!落し物だ!ルナちゃんが落し物してるよ!見て!」
リリィはルナが落として行ったアクセサリーを指(?)差し、ササミの注意を引いた。
>229>231
>「ちょ、ちょっとぉ!おまえなんだよー!?図々しいやつだな。
>はなせってば、これはジュースなんかじゃねぇよ!」
「ケチくさいことを言うな。ほんの一口だけでいいんだ!」
そういって必死にルナに食い下がるプリメ。
あまりの身勝手な言い分と行動には相手も困惑せずにはいられないようだ。
しかしそうやって揉み合っていると辺りが暗くなり不意に地面に大きい影が映る。
上を見たときには時はすでに遅く、切り取られた屋根板がプリメの頭へと直撃し押しつぶされた。
「ふぎゅ・・・っ!!」
そのままばったりと床へ倒れ、屋根板の下でしばらくの間朦朧としているのだった。
>237
>『待ってトモエ!だれか下にいるみたい!』
そうしている間に誰かがやってきたのか、屋根板が持ち上げられる。
クラクラしながらゆっくりとプリメは立ち上がるが、目の前の女性に驚き、しりもちをつく。
「ひ……っ!ごめんなさいごめんなさい。ちょっと調子に乗っただけなんです!」
そういって両手で顔を隠しガクガクと震えている姿は先ほどの保健室での情けなさを思い出させる。
しかし、相手はそんなプリメを見て不憫に思ったのか、やさしい言葉をかけてきた。
>『怖がらなくてもいいよ!彼女は魔法少女、魔法少女トモエ・ユミだ!正義の味方だよ!』
>「大丈夫?怪我はしてない?」
奇妙なぬいぐるみを使った腹話術による自己紹介、そして本人の無表情さのせいもあって、
態度が軟化するのに時間がかかったが、同時に悪意があるわけでもないのを察し、ゆっくりと立ち上がる。
「け、怪我はしてないみたいだ。その、あ、ありがとう……。」
そういって本人から目をそらし不自然なほどに顔を赤らめ、しどろもどろになりながら礼をいった。
久しくやさしい言葉などかけてもらってなかったプリメは、トモエ・ユミの気遣いがとてもうれしかったのだろう。
「そういえば、名前をまだ教えてなかったな。私はプリメ・インアップだ。よろしく……」
そういって恥ずかしそうに俯きながらトモエと握手を交わす。
その時プリメの手が淡く輝き魔力が溢れるが、本人はそんなことを一切気づいてないようだ。
>「フィジルのみんな!ササミ・テバサコーチンだてよぉ。
>事情は分かったぎゃ。病気を治すんに私の血がいるんなら、芸武をしやーせ。
お互いに自己紹介を済ませたところで、ササミから魔法を介しての呼びかけが始まる。
自らにハンデを貸し、その言い様はなんとも挑発的だ。
学園を巻き込む一大事であるはずなのだが、その感覚はまるでゲーム気分のようだ。
それとも何か別の思惑でも隠しているのだろうか?
どちらにせよ戦いの火蓋は切って落とされたということになる。
「くっ……自分だけ感染してないからってなんだあの言い草は!
こうしてはいられないっ!一刻も早くササミから血を奪わなければ、行こうトモエ!」
そして散らばってる手袋のひとつを手に嵌めて、ササミの方角を確認しながら歩き始めるプリメ。
しかしあまりに手袋に集中しているためか、その足取りはひどく不安定であちこちにぶつかったり転びかかったりしている。
この調子では先が思いやられそうだ。
>>241>>244 広域伝達魔法による宣戦布告が終わるとリリペンギンが疑問を投げかけてくる。
その問いに一瞬きょとんとしたのに、にたりとした笑みを浮かべながら答えた。
「ピ!」
(協力?感謝?人気者?そのようなものは必要ありません。
ここだけの話、実は私は魔界からのスパイなのですよ。
学園というものがどういったものなのか、そして人間の危機に対する対処法を内部から観察するために。
今回の騒動はちょうどいいので、病気で弱った人間がどんな手を使って私を捕まえるのか観察したいのですよ)
たった一文字にどれだけの言葉が詰め込まれているのかペンギン語の不思議である。
相手がペンギンであることと母性が働いているため、冥土の土産と称して自分の悪事をぺらぺらとしゃべる悪役のよう暴露するササミ。
そんな時、眩い陽光と共にルナの声が届く。
>「おーいササミ〜!おまえのかあちゃん魔乳〜♪やっぱりおまえも魔乳〜♪」
「ふ、ふんっ。やっすい挑発だがね。人がどんな思いしてこの魔乳を手に入れて維持しとるかもしりゃーせんと…!」
頬を引き攣らせながらピクピクと震えながら挑発を受け流そうとするササミ。
だが、リリペンギンが指し示すアクセサリーにその態度は崩れた。
「こがあな見え透いた罠やけどしゃーないしのったるわ」
そういいながらも光物の誘惑には勝てないのだ。
リリペンギンを抱きかかえたまま低空を滑空し、しっかりと落ちているアクセサリーをすべて拾いながら女子トイレへと入っていく。
トイレの窓の淵には綺麗に装飾されたコンパクト。
けげんに見ながらその装飾に惹かれしっかりと懐に入れると、個室からはピヨピヨと音が流れる。
あけてみれば貝殻が一つ、ピヨピヨと音を鳴らし続け、床には瓶が転がっていた。
「誰もいない?」
全天を見渡す視界でトイレ内に誰もいないことに不信を感じるササミ。
ピヨピヨ音にかき消され、モスキート音には気付いていなかった。
>「げぷっ…つかまえたー!」
頭上から変身を開場して現れたルナ。
もちろんその姿は目に映っていたのだが、恐るべしはルナの存在感のなさ。
目には映ってもササミはそれを認識したのは降りかかり肩に手をかけられてからだった。
「あ、え!?…と、ルミ!?どこから?時空振は感じなかったのに!」
完全なる不意打ちであり、狭い個室ではよけることもできず、また両手はリリペンギンを抱えたまま。
たとえテレポートで現れても出現直前に特有の振動、時空振を感じ逃げることはできたはず、という思いが口をついた。
まさか蚊に変身していたなどとは思ってもみなかったのだ。
降りかかったルナの重みで思わず床に足をつく。
掴むことは得意だが、走ったり重いものを支えたりすることが苦手なササミの足は、バランスを保つために一歩、二歩とよろけた。
そして三歩目を踏んだ時、ルナが変身を解いてから三秒たち、ルナはまた蚊の姿へと戻ったのだ。
「あ、あろ?今なんかあったよーな…」
ササミは三歩歩くと何かを忘れてしまう鳥頭なのだ。
先ほど現れたルナのことをすっかりと忘れてしまっていた。
既に蚊の姿になりさらに存在感の薄いルナを察知することができず、きょろきょろと辺りを見回して首をかしげるササミ。
>>242>>243 「結局トイレには誰もおりゃーせんかったか。」
ルナからすれば絶好の吸血チャンスだがその時トイレの扉が開きグレンが入ってきた。
『見つけたお姉ちゃん』(猫語)
「にゃ〜って。女子トイレに入ってくるような男にはこれだぎゃ!」
リリペンギンの耳を抑えると、カッと口を開き怪音波を発するササミ。
狭い場所でこそ怪音波は効果的にその威力を発揮する。
グレンは不快な音に怯むことになるだろうが、もっと悲惨なのは蚊の姿になっているルナであろう。
怯んだグレン(とおそらく目を回している蚊ルナ)の脇をすり抜け女子トイレから出たのであった。
するとそこには大きな籠が棒で隙間を作られ、中には鳥の餌が。
棒には紐がついており、あからさまな罠となっていた。
それを見たササミはプルプルと肩を震わせ無言で籠の中へと入っていった。
紐が引っ張られ棒が倒れるとともに籠は閉じられた、が。
「なめとんのきゃーー!」
次の瞬間、竜巻のような絶叫と共に籠はバラバラに切り裂かれ、中からササミが出てきた。
右の小脇にリリペンギンを抱え、左手に水晶でできたシミター、枝分刀を持っている。
周囲にはスカートを構成していた手袋が三つ、分裂した枝分刀を手にササミの周囲を浮遊している。
手袋をかなり消費したのでスカートの丈は股下から数えた方が早いくらい短くなっているが気にする様子はない。
「どいつもこいつもこんな手しか思い浮かばせえへんのきゃ!出てきて捕まえてみやーせ!」
フリードの罠は失敗したが、ペースを崩すという狙いは達成できたようだ。
>245
> 「そういえば、名前をまだ教えてなかったな。私はプリメ・インアップだ。よろしく……」
顔を赤らめながら自己紹介をした少女は握手を求めて手を差し出した。
『アハ♪この子、かわいいねートモエ〜!
僕の名前はフォクすけ☆だよ!よろしくね〜!』
「………」
トモエは無言で差し出されたプリメの手をそっと握って握手した。
> その時プリメの手が淡く輝き魔力が溢れるが、本人はそんなことを一切気づいてないようだ。
「プリメさん、あなた……」
トモエは握手した手が離れた後、何かに気づきプリメに声をかけた。
しかし、トモエはお互い余計なトラブルとは無縁でいたいだろうとばかりに口をつぐんだ。
「…ごめんなさい、なんでもないわ。」
>238
> 「フィジルのみんな!ササミ・テバサコーチンだてよぉ。
> 事情は分かったぎゃ。病気を治すんに私の血がいるんなら、芸武をしやーせ。(以下略)」
広域伝達魔法によって聞こえてきたササミの言葉を聞いたトモエは顔をしかめた。
「これはちょっと困ったことになりそうね。」
『どういうことだい?トモエ?』
「彼女が血を提供することが当然の“義務”だと考える人達は、彼女を憎らしく思うということよ。」
トモエにとっての正義は“自由”主義、つまりこの場合ササミの血液は彼女の所有物だから、
彼女がどう使おうが勝手たるべしという立場をとっていた。
しかし、同時にまた別の正義が存在することもトモエは理解していた。
富める者が貧しい者に施しをしなければならないのと同じように、
今ササミ以上にササミの血液を必要とする学園の生徒達に、
ササミは血液を速やかに提供する“義務”がある、という考え方である。
ましてや保険医が学園に配布した手紙を読むと、はっきりと示されているわけではないが、
魔界からウイルスが持ち込まれた原因もササミにあるように推測できる。
もちろん不可抗力というものがあったのだろう。
しかし、それを理由にさらにササミが学園中から嫌われるようになったら気の毒だ。
「こうなってしまった以上、仕方が無いわね。このゲームが終わるまでに、
ササミさんの立場が悪くならないように、うまく落とし所を見つけないといけないわ。」
『学園の平和を守る。ササミの立場も守る。両方やらなくちゃあいけないのが、魔法少女のつらいところだね。
覚悟はできているのかい?最悪、トモエは憎まれ役にならなくちゃあいけないよ?』
> 「くっ……自分だけ感染してないからってなんだあの言い草は!
> こうしてはいられないっ!一刻も早くササミから血を奪わなければ、行こうトモエ!」
> そして散らばってる手袋のひとつを手に嵌めて、ササミの方角を確認しながら歩き始めるプリメ。
『この手袋って、たしかササミちゃんのスカートの…
ということは、今頃ササミちゃんのスカートの丈が短くなって…ムフフ〜ッ(ハート)』
そう言って興奮するフォクすけ☆を尻目に、トモエも手袋を二つ拾い、なぜかその一つに東方の銀貨を入れた。
東方の銀貨は小さいので、指のところにスッポリ入り、外からは銀貨が入っているのかそうでないのかわからない。
その後トモエは、足取りのおぼつかないプリメの肩を抱き寄せた。
「危ないわ。」
プリメが拒絶しなければ、トモエはプリメが転ばないように支えながら下に降りて行くだろう。
>247
> 「どいつもこいつもこんな手しか思い浮かばせえへんのきゃ!出てきて捕まえてみやーせ!」
「待たせたわね、ササミさん。」
ササミがその声のする方へ視線を向ければ、ふらふらとした足取りで階段を降りてきた無表情の少女、
トモエ・ユミと視線が合うだろう。
『あ、ほらほらトモエ!笑うんだろう?』
「…うん。」
トモエは目を細め、口を軽く開き、広角を左右45°上方向に持ち上げた。
誰がどう見ても、少女の無邪気な微笑みに見えるはず…だといいんだけどなぁ………
真顔に戻ったトモエはササミを見据えて言った。
「正面から行かせてもらうわ。それしか能がないもの。」
そう宣言した後、トモエは一直線にササミに突進していった。
>「ルナちゃん!」
>「ふ、ふんっ。やっすい挑発だがね。人がどんな思いしてこの魔乳を手に入れて維持しとるかもしりゃーせんと…!」
「なにさ。人がどんな思いをしてその魔乳を見てるのかも知らないで!」
ササミが転校してきたばかりの頃。ルナは男子生徒が、ササミの魔乳のことを話しているのを聞いてしまった。
実際は一部の男子生徒の戯言みたいなものなのに、男子全員がエロい目でササミを見ているのだと決め付けてしまっていた。
だからせっかくキャラチェンジで積み上げてきた(と思っている)ルナの学園での存在感は
魔乳によって一瞬で潰されてしまったと変な誤解をしていた。
「私は偉大なる救済者になって皆の注目を浴びて魅せる!」
バタン!トイレに入って一リットルの変身薬を飲み始めるルナ。
ササミはリリィの誘導のおかげもあってトイレに入って来ていた。
「うぐ…うぐ…ぷがっ!お、溺れ…」
薬を飲み続けるルナのお腹はパンパンになり背中まで膨れ始める。
微炭酸が喉を焼く。ピンチ…。
でも味はフルーティーなのでなんとかなりそうでもある。
甘い物は別腹…古い言い伝えを信じてルナはがんばる。
そしてついに空っぽになった瓶が床に落ちた。
「(やった!)」
……でも結果は、
>>246-247に書いてあるとおり。
>「結局トイレには誰もおりゃーせんかったか。」
「ぷきゅぅ〜〜」
怪音波が小さい蚊の全身を振動させて、車酔いと船酔いと宇宙酔いが
一緒に来たような感覚が襲い掛かってきた。
「しゃ、しゃしゃみめ…ゆるしゃないわよ……」
三分が過ぎ、人間に戻ったルナはふらふらと立ち上がり
眉根を中指でもみもにしながらおぼろげな記憶を辿る。しかし…
「あれ…、私…ササミを……」
首を傾げて思い出してみるも、怪音波でやられてしまった記憶はあやふやになっていた。