【ゾンビ】 28日後.../ 28週後...【アンデッド】02

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15 ◆JwKmRx0RHU
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>>9
内心で毒づきながら店の窓ガラスに視線を流したとき、男が映っているのが目に入った。
つま先から頭頂めがけ恐怖が一気に衝き上げ、身体がおののく。
「(ッッ!!!!)」 頭の中は真っ白で何も考えられず、硬直している身体を強引に捻った。
“ 走るタイプ ” は、3mもない位置まで駆け寄っており、辛うじて盾を構えた俺に喰らい付く。
タックルを受けたみたいに押し込められ、事務所扉に後頭部を激しく打ちつけたようだ(痛みは全く感じない)。
「ガァァッ グァガガァァッ」 歯を剥き、噛もうと暴れまくる感染者が、盾を払い除けようと掴む。
自分と大差ない体格なのに力で圧倒されながら、盾を奪われまいと必死に両手で抑えた。
感染者が片手でしか盾を掴まないので凌げているが、長くは持たない。 盾で押し返せもしない。
このままでは、盾の中心で捉えている感染者の歯が横滑りした瞬間に噛まれる。
脚を間に捻じ込んで蹴り押すのも、互いの胴体が密着していて無理だ。
肩ベルトで吊るした鋲打機は3.9kgだが、両手は塞がっている。

歯を食いしばり、盾越しの感染者に渾身の頭突きを見舞う。
続けざまに盾で押し返し、もんどりうつように地べたを転げながらフォークを拾い上げ、感染者の胸元に突き刺す。
大動脈を貫くと、感染者の傷口からドバドバと血液が滴り落ちる。
「( !? )」 血しぶきの勢いが不自然だ。
刺さったフォークを更に突き込んで感染者に尻餅を着かせ、繰り返し体中を突き刺す。
ぐったりと横たわった感染者は、しかし指先がかすかに動いている。
口からおびただしい吐血を繰り返しながら 30秒と経たず事切れたが、向けたフォークの構えは解かない。
よく見ると、血のりがアメーバのようにうごめいている。
「(血管や血液が自律運動して循環を補強してる? 身体能力の上昇はこれが原因・・・)」

我に返り周囲を見渡し、すぐさま目の前に転がってる感染者の亡き骸に視線を戻し、
それを3度ほど繰り返してから念のために首を2度刺す。

倒した。

生き延びる事ができた・・・。
大人の “ 走るタイプ ” との初めての戦闘。
手が自分の意思と関係なしに激しく上下に動き始め、やがて膝も震え出し、俺はその場に両手を着いてしまった。
早く鍵を探さねばならないのに、身体が言うことを聞かない。

感染者の靴が小さく動いた。
首や胸からの出血が止んでいる感染者は、虚ろな視線を俺の方に向けながらゆっくりと、ゆっくりと立ち上がる。
俺はフォークを構えながら後ずさりした。
世界保健機関(WHO)の公式情報で知識こそ得ていたが、
「(これが 不完全蘇生 と呼ばれる現象・・・か)」
1度は死亡した感染者が、“ 走るタイプ ” から “ 這うタイプ ” へと蘇えった。
もう前のように唸り声を出しながら飛び掛ったりはしない。
感染者の周りを移動すると、こちらの動きに合わせて向きを変えてくるが、目で追っている感じではない。
眼球から大脳にかけてフォークを斜め上に突き上げると、感染者は崩れ落ちるように倒れ、蘇えらなくなった。
「( “ 走るタイプ ” は痛覚麻痺や腕力こそ増すが、弱点は普通の人間と変わらないようだ)」
事務所の裏に廻り、窓ガラスを割って室内に入る。

プリウスの隣りにパジェロを停めて荷物を移し、プリウスの鍵を抜いて他の車の鍵を入れている袋に収めた。
パジェロが動かなくなった時のバックアップに使うために、その鍵袋を缶ジュース自販機の下に隠す。
ブラインドで隠した店内で防毒マスクや手袋などを念入りに洗浄し、服を着替え、使えそうな道具を物色してから出た。

「(次は燃料と銃だ)」