>>534,
>>531 ゴロつき共から自衛隊の銃器を向けられ、拠点スタジオを明け渡した。
こんなことなら、屋上拠点の備蓄を増やしておくべきだったと後悔の念が押し寄せる。
しかし、武力を背景に奴隷として扱われなかっただけでもマシか。
いずれにしろ、このままでは初期感染者が餓死する5ヶ月後まで生き延びることができない。
ここ1ヶ月間は、隣りのディスカウント店の缶詰と屋上の貯水槽に依存してきたが、
今後は行動範囲を拡げるざるを得ない。
何よりも最優先すべきは、銃の獲得か・・・。
下のゴロつきども全員が銃を持っているということは、自衛隊の放棄車両などから拾えるのか。
2Lペットボトル×2本と半分の食糧および生活必需品を地上に下ろした。
農具のフォークと鉈だけが唯一の武器という心許ない装備で、四駆を手に入れねばならない。
その後に燃料を確保し、それらを足として銃と弾薬を探す。
感染者は知能が極端に低下し、その行動は興奮性、精神錯乱などの神経症状とも取れるほどで、
身体能力こそ野生動物なみに強化されるが、集団で連携したり、物陰に身を潜めるなど、
思考力を伴った狩りをするわけではなく、捕食対象を見つけると真っ直ぐに襲い掛かり、
捕食対象が見つかるまでは重度の認知症のように徘徊する。
狂犬病
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E7%8B%82%E7%8A%AC%E7%97%85 認知症
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E7%97%B4%E5%91%86%E7%97%87 2011年に起きた福島原発事故での政府の対応を見た俺は、世界を席巻してきたこの感染症に、
日本政府が有効な対策を講じれるなどとは考えていなかったので、フランスに発症者が出た段階で
最悪の事態を想定して準備してきた。
運転中に砂地でスタックしたり、片輪が側溝に落ちた経験があり、その時に四駆との違いを思い知り、
路面の状態が良好と思えない現状では、四駆以外の自動車で動き回るのは自殺行為に等しいと考える。
道路を挟んだ平屋に入り、風呂場やトイレや押入れを含む全てを確認し、感染者が入ってこないように雨戸を閉め、
車庫に停めてある乗用車の鍵を探す。 運が良いと思えるのは、鍵が見つかった自動車がプリウスだと言う点だ。
この車は走行モーターを備えたハイブリッドで、走行音が驚異的に小さく、歩行中に気付かず真後ろに付かれて、
驚かされた事が何度かあった。 出す音と感染者が集まる確率は比例し、俺の生存率に反比例する。
ほどなく鍵を見つけ出し、扉の隙間から周囲を確認してから表に出て素早く車に乗り込もうとしたが、
脇に置いてった自転車にショルダーバッグの肩掛けベルトが引っ掛かってしまい、車に乗り込めないばかりか、
自転車が倒れて大きな音を出してしまった。
焦る気持ちを抑えてバッグのベルトを自転車から外し、車に乗り込んで真っ先にドアの戸締りを確認。
リュックサックは敢えて背負ったまま、シートを倒して運転し易いポジションを作り、キーを挿し込みエンジンを始動する。
燃料が半分ほど残っているのを確認した時、フロントガラスに感染者が張り付いて来た。
目を見開き、歯を剥き出し、ガラス越しに俺を喰おうとして顔を押し付ける。 敏捷さから “ 走るタイプ ” だと判定した。
サイドブレーキを解除。 右サイドミラーに、自転車が車体に倒れ込んでいるのが見える。
「(拙い・・・。 後輪が自転車を巻き込めば、最悪でタイヤがパンクしてしまう・・・! だが、
このまま留まっていれば、感染者の唸り声で集まってくる連中に取り囲まれてしまうッ 一か八か懸けるしかなぃ)」
オートマチックのギアを1速に入れて一気にアクセルを踏み込む。 ガガガガっと異音を立てながら発進。
幸いにも後輪は自転車を巻き込まなかった。 車庫の出入り口に張られている鎖を、車体で押し切って公道に出る。
感染者は右窓に張り付いて来た。 その背後に1体、左の車道に2体が凄まじい速度で走って来るのが確認できる。