『【TRPG】遊撃左遷小隊レギオン!【オリジナル】 』
ジャンル:群像ファンタジー
コンセプト:時代の過渡期。否定され『変わる』ことを要求された者たちの抵抗
期間(目安):起承転結で4シナリオ
最低参加人数:4人
GM:あり
決定リール:原則あり。過度の場合はGMが調整
○日ルール:あり(5日)
版権・越境:なし
名無し参加:なし
敵役参加:あり
避難所の有無:あり
備考:最強厨歓迎
キャラ用テンプレ
名前:
性別:
年齢:
性格:
外見:
血筋:(『〇〇の眷属』 生まれ、親の職業や、由緒正しい家柄ならそれを)
装備:(武器・防具・アクセサリーなど)
遺才:(キャラが何の天才なのかを簡単に)
マテリアル:(キャラの遺才を発揮するのに必要な媒体)
前職:(左遷されてくる前に所属してた職業)
異名:(天才なので二つ名の一つや二つ)
左遷理由:
基本戦術:
目標:
うわさ1:
うわさ2:
うわさ3:
――ここが否定の最果てだ!
人類は『英雄』を必要としなくなった。
誰かと共有することのできない才能という現象に、人々が否定的になり始めた時代。
極少数の優れた人間が人類全体を牽引していく社会形態は終りを告げ、
完成されきった魔導技術は誰でも手軽に奇跡を起こせるレベルに社会へ浸透した。
今日より明日は強く輝き、強すぎる光は明日を覆い隠す!激動する時代の中に、取り残される者たちがいた!
『魔』を色濃くその血に残した、いわゆる『天才』たちである!
高すぎるポテンシャルとプライドに組織の中で爪弾きにされ失職寸前の天才たち。
否定され続けた彼らに残された道は、官民問わずあらゆる機関からの出向という形での、左遷。
受け入れ先は帝都王立従士隊、新設されたる窓際部門。『遊撃課』という名の境界なき雑用部隊。
掃き溜めの如く集められた有象無象(レギオン)達は、天才同士身を寄せ合って自分の異質を平均化した。
ここなら誰もが最底辺。天才という名の社会不適合者達は、果たせるかな国防の最前線へ。
そう、ここは最底辺の最前線。
変わりゆく時代に否定され、変わることに抗う者たちの最果て。
【遊撃左遷小隊レギオン! 起章 ――掃き溜めの英雄達―― 】
大陸横断鉄道の重厚な車輪が轍を叩く音。
その名の通り大陸を横断する長大な鉄の道は時折線路上に不測の障害物が散見される。
小岩や魔物程度ならば先頭車に据えられた衝角で粉砕しながら進めるが、砕きこぼしが車輪に噛み付くことは多々ある。
だからこの列車、基本的に乗り心地は最悪なのだが大陸間の交通手段に乏しいこの国ではこれでも上流階級御用達だ。
埃っぽい木製の客車を、ボルト=ブライヤーは滑音立てつつ歩いていた。
帝都王立従士隊の制式野戦服を纏い、両腰には片手剣と曲剣を一振りずつ提げている。帯剣は任務中の証であった。
彼の目庇が向かう先はコンパーメントの一室。申し訳程度のソファに、一人の少女が眠っていた。
年の頃16,7といったところの成熟しきっていない童顔は、みっともなく開けられた口でますます幼い印象を与える。
胸当てと手甲程度の軽装鎧だが、それでも寝心地は最悪だろうに、幸せそうな顔をして爆睡しているのである。
少女の頭の傍には彼女の身の丈ほどもあろうかという長大剣が立てかけてあった。それを思い切り蹴り飛ばす。
「んがっ!?」
倒れた剣は見事に少女の顔へその柄の一撃を見舞った。
がばりと跳ね起きた少女は濡れた犬のようにぶるぶると被りを振った。
「て、敵襲でありますかっ!?」
「そうだったらお前とっくに死んでるだろうが」
「な、なるほど!わたし死んでしまったというわけですね!どうしましょう葬儀に着ていく服がないであります!」
「ないのかあるのかどっちだ」
「おお!?我ながらめんどくさいキャラ付けを……って、小隊長じゃないですか」
ボルトはこめかみを抑えながら嘆息。やはりこいつに当直を任せたのは失敗だったか。
無様に眠りこけた挙句、様子見に来た小隊長の顔を見て自分の落ち度にピンと来ないあたりが救いがたい感じ。
「お前は"何"だ、言ってみろ」
「は!帝国騎士団より従士隊遊撃課に出向して参りました上位騎士、フランベルジェ=スティレット課員であります!
ご用命の際は親しみを込めてフランベルジェ=スティレット上位騎士様殿ちゃんさんとお呼びください!」
「歩み寄る気ゼロか!?……まあいい、おれがお前に申し付けた任務は何だ」
「は!現在大陸横断鉄道による任務地への移送中でありますが、魔物や野盗の襲撃に対応すべく立ち見番をば!」
「んでお前は今何してた?」
「寝てました!」
「なんでだ」
「夜なので!」
「………………」
頭が痛くなってきた。
「当直の意味わかってるか?」
「大丈夫でありますよ小隊長!わたしなら緊急事態に陥る"前"に対処可能でありますので!」
「お前今おれに殴られて目ぇ覚ましたよな?」
「殺気がありませんでしたので」
剣の鞘を撫で、不意に据わった眼をするスティレット。恐らく彼女の言葉に嘘などないのだろう。
もしも本気の殺意、敵意、害意で以て寝ている彼女を害そうとすれば、達成する前にボルトの首は飛んでいる。
それをできるだけの実力と、実績と、――天性の『才能』が、スティレットの"血"にはある。
(またこの眼だ……だから嫌なんだよ、天才どものお守りは……ッ!)
喉の奥に舌打ちを隠しながら、ボルトは踵を返した。
彼が長を務める部隊には、スティレットのような天才ばかりが集められている。
その誰もが一級品の実力と能力を持ちながら、その天性ゆえに組織に馴染めなかったはみ出し者達。
曰く、『掃き溜め』。曰く、『窓際』。曰く、『いらない子処分場』。曰く――
「お前らの常識で語るんじゃねえよ。おれの部下である以上、おれの常識に従ってもらう。
いいか、おれは日和らねえし馴れ合う気もねえ。おれの仰せつかった任務は、お前らの天才を徹底的に否定することだ」
――曰く、『最底辺の最先端』。
社会から、組織から、あらゆる凡百の他人から、否定された者の終着駅。
「――ここが否定の最果てだ」
* * * * * *
この世界での『才能』とは現実に言う漫然としたものではなく、個人に備わった一種の『特殊体質』である。
人類がまだ猿とそう変りなかった頃から、ヒトよりも上の存在として『魔族』と呼ばれる生物がいた。
『魔族』とヒトの祖とが交わって生まれたのが現在の人類であり、ヒトが魔力や魔法を扱えるのもその名残だとされている。
血脈に刻まれた、『魔』の痕跡。世代の下った今では魔力程度にしかその特徴は現れていないが、しかし何事も例外がある。
それが『才能』。魔族の形質が色濃く浮かび上がったヒトより少し上位の人間。
例えば剣の才能のある者はどれだけ虚弱でも怠惰でも、一度剣を握れば絶対に常人に遅れをとることはない。
絶対不変の、まさしく天恵じみた身体現象。血脈によって遺伝するその性質と、解析解明されきっていない人体の神秘性。
そこから遺伝する才能のことをヒトは『遺才《ブラックボックス》』と呼んだ。
遊撃課に集められた人材は、小隊長であるボルトを除き全員がこの遺才ゆえに力を持て余した者たちなのである。
「もうすぐダンブルウィードだ。着く前に作戦の確認をするぞ」
昼前。遊撃課の全員を集めた客車の一室を貸切り、ボルトはブリーフィングを開始した。
作戦板に貼られた地図は今回の任務地、帝国領最南端の街『開拓都市ダンブルウィード』。
帝国領土の南を開拓する為に作られた開拓民の街であり、国境に面した戦闘地帯でもある。
大陸の南半分を覆う小国家群『西方エルトラス連邦』との散発的な戦闘が始まってからは、市街戦の渦中にあった。
「帝国軍のゴーレム部隊がこの街での哨戒中に消息を絶った。おれ達遊撃課に課せられた任務は、該当区域の速やかな制圧。
それから部隊の安否の確認と、必要なら回収。ゴーレムは鹵獲されると不味いからな、持って帰れなきゃ解体する」
はっ!とスティレットが挙手したので質問を許可。
「普通に帝国軍から回収部隊を出せば良いんじゃ?」
「勘案要素がある。消息を絶ったゴーレム部隊だがな、こいつらは別に交戦中に通信が途絶えたわけじゃねえそうだ。
つまり、『敵軍以外の何か』……魔物か野盗か、完全なイレギュラーで全滅したことになる。
おれたちに任されたのはその『何か』を確かめさせる人身御供……敵がエルトラス軍でなけりゃ軍を出す謂れはねえからな」
「そんな、軍の精鋭が全滅した相手でありますよ……!?」
「そういうことだ。得体の知れねえ相手に、軍も身銭を切りたくねえってこったな。まあ、好意的に解釈すりゃ、
『お前らならやれる』……ここに集った小隊規模の遺才持ちならってな、期待されてるぞ」
万感の皮肉を込めてボルトはニヤリと笑った。
官民問わずあらゆる組織から左遷されてきた『遊撃課』だ。厄介者の見本市と言い換えても良い。
帝都の上層部・元老院や帝国議会の面々からしてみれば、あわよくばいらない子の処理に丁度良いと考えてのことだろう。
厄介な案件に厄介者を向かわせれば、必ずどっちかが消えるわけで。
「ダンブルウィードに到着次第、現地の司令支部に合流。町民の避難が完了するまで待機、終わったら思い切り暴れていいぞ。
まあ、被害弁償に追われる軍に睨まれたくなけりゃ、自重することも……まあ多くは望まねえが、うん、頑張れ」
衝角が土埃を削る音に、鉄の擦れ合うブレーキ音が混じり、やがて大陸横断列車はその南端の終着駅へ迎えられる。
一夜限りの悪夢『帝都大強襲』から二年、長く続いた暗く黒い最悪の世紀が終わり、人々が光へ向けて歩き始めた時代。
やがて来る明日を、肯定できる人々の時代。
後に『盛世の先駆者』と呼ばれた帝都王立従士隊新設部門『遊撃課』。
掃き溜めの英雄たちの物語は、否定の最果てから始まった。
【起章『掃き溜めの英雄達』開始】
【大陸横断鉄道に乗って帝国領最南端の街『ダンブルウィード』へ現地入り】
【キャラクターの導入エピソードを添えての参加歓迎。もちろん「現地入りした」という情報だけの参加も歓迎】
【このターンは作戦説明・顔見せということで。次ターンから本格的に話を動かします。みなさんよろしくお願いします】
名前:ボルト=ブライヤー
性別:男
年齢:21
性格:リアリスト気取り
外見:痩せ型、短髪、三白眼。従士隊制式の装甲服を着用
装備:二本のショーテル。ゴーレム搭乗時は突撃砲
血筋:帝都郊外の農家の生まれ
遺才:――
マテリアル:――
前職:従士隊特務捜査課
異名:――
左遷理由:新設される遊撃課の舵取りとして課長職に抜擢
基本戦術:バックアップ全般
目標:要求された成果を『遊撃課』で挙げる
うわさ1:二年前帝都を襲った魔物大強襲で多数の同僚と友人を一人亡くしたらしい
うわさ2:ゴーレムの無免許操縦の常習犯。曰く資格とると仕事が増えるからだとか
うわさ3:遊撃課の小隊長にして唯一の凡人。天才たちを纏めるには天才以外が必要だという理由で。
名前:フランベルジェ=スティレット
性別:女
年齢:17
性格:実直、真面目、突撃系
外見:栗色の肩までかかる短髪
血筋:剣の眷属・『崩剣』スティレット家の二番姫
装備:身の丈ほどあるグレートソード(長大剣)『館崩し』
遺才:対物破壊剣術『崩剣』
マテリアル:剣
前職:帝国騎士団(上位騎士)
異名:剣鬼スティレット、破嬢槌
左遷理由:功名心ありきの独断先行・命令無視多数につき
基本戦術:あらゆる障害を破壊して近づいて斬る
目標:世の中がもっと単純になること
うわさ1:貴族生まれの帝国騎士団上位騎士。超絶的な頭の悪さで教導院を中退するも親のコネで騎士団へ
うわさ2:遺才ゆえか物を破壊したり解体するのが大好きで、複雑な構造は嫌いらしい
うわさ3:戦闘に関しては天才的で、その剣術を評価されて最近『剣鬼』の称号を賜ったらしい
主な設定
世界観:
剣と魔法のファンタジー世界。魔法は明確な技術体系として社会に取り込まれている。
かつて魔族とヒトの祖は交わり、その身に魔族の血として魔力を宿した人類が生まれた。
剣から魔法へ、魔法から魔術へ、時代の変遷と共に『魔』は洗練され、高度に社会に浸透する。
そして時代は下り現代。人々の中から段々と『魔』は薄くなり、失われていこうとしている。
舞台となるのは大陸の半分ほどを領地とする巨大国家『帝国』。
対外兵力として正規軍、国家内部への治安維持組織として騎士団と従士隊を持ち、
主に官僚や貴族の護衛に騎士を、国民の守護に従士を置く。
従士隊:
自衛隊と警察を合わせたような治安維持機関。騎士の下役で、職分は国家公務員。
その実力は構成員によってピンキリで、軍ほどの練度もなければ騎士団程の人材もない。
万年人材不足ゆえに、打開策としてあらゆる機関からの左遷者を集めた『遊撃課』を設立する。
遺才《ブラックボックス》:
この世界での『才能』とは現実に言う漫然としたものではなく、個人に備わった一種の『特殊体質』である。
その身に宿す人類の祖、魔族の血脈が表出した絶対不変の遺伝形質。これを『遺才《ブラックボックス》』と呼ぶ。
例えば剣の才能がある者は、どれだけ怠けようともどれだけ虚弱でも、剣においては才能のない者より強い。
故にこの世界では、血筋と家柄が何よりも重いのだ。
マテリアル:
『遺才』を発揮する為には祖となった魔族に自分を近づける必要がある。
具体的なイメージのしやすさからそれは大抵『才能の象徴』となる物を身につけることになる。
剣の才能があれば剣やそれを模ったものを、知識の才能であれば書や本を……などなど。
その象徴物をマテリアルと呼ぶ。
足が速い、というだけで持て囃されるのは幼少期に限る。
貴族が奴隷同士の身体能力を競わせる道楽を行っているという話もあるが、わざわざそれに出場するために奴隷になってどうするということになるので今回は無視。
ともかく、ほぼ幼少期に限る。
足が速い。それだけで、中心的存在になれるものだ。
繰り返す、幼少期に限る。
小さい頃から、皆のヒーローだった。
俺の速さに追いつけるものはいなかった。大人達の馬車なんかより、俺の方がずっと速かったんだ。
風よりも速く。音よりも速く。光よりも……は流石に無理があるけれども。
いつでも俺は、韋駄天だった。
だからその速さを活かしたかった。皆の期待に応えてやりたかった。喜ぶ顔が見たかったから。
あれが欲しいな→俺がひとっ走り買ってきてやるよ!
そんな奉仕活動から。
あれが欲しいから買ってきてよ→ちょっとひとっ走り行ってくるわ!
へと変化を重ね。
何時の間にやらはや幾年。つい先日15歳の誕生日を迎えた。今となっては立派な、それはそれは立派な。
パシリができました。
――生い立ち、完。
名前:ウィレム・バリントン
性別:男
年齢:15
性格:パシリ
外見:黒の短髪、黒く細い瞳。背は低い
血筋:『風の眷属』の傍流のそのまた落胤。
装備:鋸刃ナイフ、魔靴『ツウォ・二ビス』
遺才:走法『縮地』
マテリアル:靴
前職:民間護衛会社
異名:韋駄天
左遷理由:護衛対象に誤って重傷を負わせてしまったため
基本戦術:目にも止まらぬ速さで近づいて急所を突く
目標:大なり小なり他人の役に立つ
うわさ1:本気を出せば音速は超えられるらしい。しかし衝撃波に耐えられないのでそこまではやらない
うわさ2:実は履いている靴は先祖が使っていたと言われ本家に伝わる魔靴。なぜコイツが履いているのかは不明
うわさ3:根っからのパシリ体質だけど本人が幸せだと思ってるならそれでいいんじゃないのかな(てきとう)
思い返すと就職してからまだ一月も経っていない。出向という体ではあるが、はっきり言って左遷。厄介払いであることは自分が一番わかっている。
(……ま、当然だけれども)
あんなことを、しでかしたのだから。
しかし置かれている状況に反して気持ちは朗らかである。相手が変わっただけ。人の役に立てるということには変わりはない。
車内で任務の説明は聞いた、初っ端からどうやらかなり危険ではあるようだ。命すら、秤に乗るのだろう。
別にそれならそれでいい。それこそ、別に人生終わったっていい。
誰かの役に立って死んだのなら、きっと俺は幸せな死に様だろうな。
列車が止まる。扉が開く。
ナルシスティックな自己犠牲精神に酔いしれながら、ウィレムは大地に立つ。
よろしくお願いします
名前: セフィリア・ガルブレイズ
性別: 女
年齢: 16
性格: 正義感溢れる真面目な少女、少し怒りっぽい
外見: 眼鏡と短く後ろで束ねた黒髪が特徴、身長は女性にしても小柄
血筋:剣の眷属『双剣』 ガルブレイス家の末姫
装備:対の剣『アロー』『ミュルダール』家宝の胸当て『リカード』
遺才:両手自在術『双--ツガイ--』
マテリアル:両手に何かを持つということ
前職:帝都近衛騎士団
異名:『グラス・リッパー』(眼鏡の切り裂き魔)『剣舞姫』
左遷理由: その正義感故に上官に煙たがられたから
基本戦術: 素早く敵陣に切り込む
目標: 武勲を立てて出世しようと考えている
うわさ1: 帝国貴族の中でも名門と呼んでいい家柄だが、末姫ということもあり、期待はされていないが愛されていないことはない
うわさ2: 本来は『双剣』だけを扱う家柄だがセフィリアだけは『両手に持ったものは同形のものを自在に操れる』能力を使える
うわさ3:弓やライフルなどを両手であつかう動作をするものはからっきしである。逆に2丁拳銃やジャグリングなどは得意、あとなぜかゴーレムの操縦も
セフィリアはいまだ元上司フリードマン卿の言葉が信じられなかった
「セフィリア・ガルブレイズ卿、貴殿をこのたび従士隊に新設されることになった「遊撃課」に出向してもらうことになった
近衛騎士団からも1名出向させることになってね……そこで若い君を送ることになった
あそこは最前線で武勲も立てやすいだろう、是非任務に励んでくれたまえ。卿の得意な仕事だろ?」
思い出しただけでも歯の奥に力が入る
「これでは体のいい左遷です!」
おまけと言わんばかりにゴーレムの操縦櫃の壁を蹴る
鳴り響く金属の不協和音がセフィリアをさらに不機嫌にさせるには十分だった
だが事実そうなのであろう、それはセフィリア自身が一番良くわかっている
勤務外の盗難事件の解決や道案内、はたまた酔っぱらいの喧嘩の仲裁、銀行強盗まで解決してしまう
これが王都警備の者なら勲章の一つでも貰えただろうが近衛騎士団では処罰の対象にしかならない
結果から鑑みてその咎はごく軽い者であったが上司に疎まれるには十分であることには間違いなかった
新設された部署からセフィリアのもとに届いたのは1枚の紙切れ
「『ダンブルウィード』に単身で潜入し出来るだけ情報を集めよ」とだけ書かれていた
セフィリアはこの命令書をビリビリにやぶかないようにするのに大変な努力を要した
だが、命令は命令だ。新天地での最初の任務をいきなり放棄すると言うのはさすがに問題が大有りである
何事もはじめが肝心だ。だからこそ、始めにやる気をみせようと自家用武装乙種ゴーレム、レオンチェフ社製の「サムエルソンmk.3」を持ち出した
格闘戦を重視した構造で堅牢であるが機動性においてはお世辞によいとは言えないが航続距離と直線移動力にすぐれしばしば長距離行軍に使用されるレオンチェフ社の傑作機
だから、彼女はゴーレムの中にいたのだ
そう、ここは『ダンブルウィード』郊外の森林地帯にその身を隠していたのだ
潜入ということで戦闘用ゴーレムなどでやって来たと知られたら潜入の意味がない
なら始めから、大陸横断鉄道をつかえばよかったのではないか?
セフィリアの頭にはゴーレムありきで考えていた、はなから鉄道利用など考えていない
独断でゴーレムを持ってくるほどのやる気が評価される。そう確信していた
そんなはずはないのだが……そうこうしていると他の仲間の列車到着の時間だ
ゴーレムごと駅に向かい、彼らを出迎え開口一番にこう告げた
「はじめまして、帝都近衛騎士団より出向いたしましたセフィリア・ガルブレイズです
至らぬ身ではございますがよろしくご指導ご鞭撻をお願いいたします
任務のほうは……特になにもありませんでした」
操縦櫃から半身を乗り出し、しごく申し訳無さそうに敬礼をみせる
「ええと、ここであっているのか?
ダンブルウィード……うん、あってる」
レイリン=シキマは軽く頷くと、手に持った紙と街の入り口に立てられた大きな看板を見比べる。
空気が埃っぽい、道が舗装されていない、馬小屋のような家が建ち並んでいる、今まで居た帝都にいただけあってか、その汚さはより一層際だって見えた。
それもそのはず、今この都市は前線も前線、日々戦が起こっているのだ、街から怒声が鳴り響き、今もどこかで戦闘が行われていることが分かる。
「開拓都市って言うだけはある、全くと言って良いほど文明というものが感じられない。
軍の仕事なら構わないのだけど、左遷か……。
元々私みたいなのがここまでこられたこと自体が奇跡みたいなものだったのだけど、こんな幕切れになるとは」
その規格外の戦闘力と冷静な判断力、何事にも動じない強い精神、それらが全て備わっているレイリンは教導院を出た後、破竹の勢いで昇進を繰り返し、24と言う若さで少佐まで上り詰めた。
しかし、その終わりはあっけなく、上司がとある貴族から賄賂を受け取っているのを知り、それを告発したため当然のごとくやっかい払いされてしまった。
何故告発したレイリンが飛ばされたのか、それは勿論レイリンが告発した相手も同じ貴族から賄賂を受けていたからである。
表だって言われてはいないものの、それが原因で左遷されたことくらいレイリンは分かっていた。
「一つ黒かったら、他も黒いと疑え、本当にその通りでしたね。
流石に全部黒いとは思いませんでしたよ」
誰に喋るでもなく一人呟く。
そしてレイリンは、辞令に書いてある司令支部の場所に足を向け、殺風景な街と対照的に黄金色に輝く金髪を揺らしながら力強く歩き出す。
その足取りに迷いはなく、先ほどまでの気落ちっぷりが嘘のようであった。
レイリンの目は既に過去より未来を見据えていた。
「絶対に戻ってみせる、こんな底辺からはすぐに抜け出す」
現地の集合場所とされた司令支部であろう小さな家の扉の前に立つ。
扉を開ける前に軽く深呼吸をするとポケットから赤い液体が入ったパックを取り出す、その表面には大きくAと書いてあった。
「レイリン=シキマ、ただいま到着しました!」
名前:レイリン=シキマ
性別:女
年齢:24
性格:真面目・融通が利かない
外見:腰まで伸びた長い金髪、女性にしては長身
血筋:吸血鬼の眷属、シキマ家の長女
装備:なし、敢えて言うなら拳
遺才:吸血鬼としての能力
マテリアル:自身の血
前職:正規軍の将校(少佐)
異名:血の戦乙女
左遷理由:上司の不正を咎めたため、やっかい払いとして
基本戦術:高い身体能力と魔力を生かした中距離戦が得意
目標:また正規軍に戻る
うわさ1:ニンニクは嫌い
うわさ2:職務には忠実だが、自分がおかしいと思ったことはすぐに口に出す
うわさ3:夜は凄いらしい
【ダンブルウィードの司令支部に入る】
名前:フィン=ハンプティ
性別:男
年齢:18
性格:熱、血……?
外見:やや長めの青髪に赤いバンダナ着用
血筋:鎧の眷属・『天鎧』ハンプティ家の末弟にして唯一の生き残り
装備:蒼の手甲『剣砕き』
遺才:護衛術『天鎧』
マテリアル:鎧の一部
前職:民間護衛会社
異名:「最終城壁」
左遷理由:貴族の殺人事件の現場に居合わせた為
基本戦術:防ぎ、流し、いなし、受け止め、消耗させる
目標:楽しく生きる
うわさ1:元々名門貴族の次男だったが、2年前の魔物大強襲で一族は死亡。唯一の生き残りらしい
うわさ2:サバイバルな生活に関係のある知識以外……学問に関してはからっきしらしい。
うわさ3:防御に関しては天才的だが、攻撃は凡才。遺才の関係で直感や生命力は高いらしい
「たっはー、まさかあのバカ貴族のせいでこんな事になるとは思ってなかったぜ。
……けどまあ、牢屋よりはマシか!あそこ、運動もできねーもんなぁ」
大陸横断列車「ボルト=ブライヤー」。声はその列車の最後尾車両。
要塞の如く金属で固められたその屋根から聞こえた。
本来人の気配などするべくもない其の場所に視点を移して見ると、そこには一人の男が寝そべっている。
その容姿は端正ではあるものの未だ少年と青年の間と言えるもので、
特徴的なのはその青い髪と赤いバンダナ。そして、腕に嵌められた手甲。
彼の名は、フィン=ハンプティ
この度『遊撃課』へと配属された「天才」の一人であった。
「しっかし、ちじょーのもつれ、だっけ?
それで刺されて、関係ない俺をこんな所に飛ばすなんてひでぇよなー。
まあ、面白そうだからいいけどさ」
寝そべって鼻歌を歌いながら呟く少年……ちなみに、この列車の乗車券は
きちんと持っているので、ここに寝そべっているのは単なる趣味という事になる。
その様子を見ると、わざわざ寝苦しく危険な屋根という場所で寝転がる事に意味はなさそうだ。
と。
「うわっち!?あっぶねー!!」
甲高い金属の接触音と共に列車が停止し、フィンのバランスが崩れた。
彼が驚いて耐性を建て直し、上半身を上げて周囲を見渡すと
「お……お――っ!!」
其処に広がっているのは、彼の見知らぬ街。
『開拓都市 ダンブルウィード』
帝都とは比べ物にならない簡素で質素な町だが、それを見てフィンは歓喜の声を出す。
どうやらこの男は初めて見るモノや興味深いモノに強い好奇心を示す性分らしい。
列車の屋根から飛び降りると、子供の様に楽しそうな笑みを口元に湛え、一番乗りでも目指すかの様に
駅の出口に向かい駆けていった。
/訂正……列車名、無しでお願いします
全員が集められ、ボルトの説明を受ける中、1人話を聞かない者がいた。
「(退屈……パンケーキ食べたい……)」
プリメーラ=レズィビアン。「とある事情」により帝国から左遷された少女。
彼女に関する黒い噂は絶えず、「゛死神の愛娘゛」だとか「レズィビアンに関わった者は地獄すら生ぬるい最期を遂げる」だとか、ロクな評価がない。
お陰で、メンバーの中でも一際避けられているが、プリメーラ自身は特に気にするでもなく、外の景色を眺めていた。
「(左遷かあ……ま、気にしてないけど。帝国の空気は好かないし)」
青い髪を指で弄び、胸元のペンダントが首の揺れに合わせてチリンチリンと揺れる。
>「ダンブルウィードに到着次第、現地の司令支部に合流。町民の避難が完了するまで待機、終わったら思い切り暴れていいぞ。
まあ、被害弁償に追われる軍に睨まれたくなけりゃ、自重することも……まあ多くは望まねえが、うん、頑張れ」
「はぁーい」
待ってました、「暴れていいぞ」のその言葉。
プリメーラは黄色い瞳がギラリと輝かせ、艶めかしい舌を桜色の唇に這わせた。
精々、暴れさせてもらうぜ──……。
夢現の魔術師の物語、ここにて開幕。
「(と、その前に……)」
瞳がまたキラリッと別の意味で輝く。
視線の先には、プリメーラ大好物の「女の子達」。
「(なんて可愛らし…………美味しそう……!」
後半から心の声が丸出し、もといだだ漏れである。
彼女にはもう一つ、とんでもない噂があった。
「プリメーラに狙われた乙女は、二度と男を知れない体になる」。
そう、つまり彼女は──……。
「よりどりみどりだねェ、イッシッシッシ!」
その名に恥じぬ、生粋の「同性愛者(レズビアン)」である。
「薔薇色ならぬ百合色生活の始まりだゼー!ひゃっほう!」
こんなんで大丈夫なのだろうか…………。
【宜しくお願いしまーす】
名前:プリメーラ=レズィビアン
性別:女
年齢:17
性格:血と女に飢えている
外見:見た目はヒョロヒョロの幼女
青い長髪、ギラギラ光る黄色い瞳
黒のタンクトップとズボンの上から体中にベルトを巻き付け、その上から鎧を装着
血筋:不明(履歴を全て消されている)
装備:古めかしい大鉈、胸元にペンダント
遺才:催眠術
マテリアル:胸元のペンダント
前職:帝国のお偉いさんの護衛……だったらしい
異名:夢現の魔術師
左遷理由:不明、だがとんでもない事をやらかした
基本戦術:催眠術での操作
目標:女の子全員をてごめにする……つもりらしい
うわさ1:とにかく謎に包まれている。とある有名な快楽殺人鬼の一人娘と噂されているが真偽は不明
うわさ2:甘いものと女の子と殺人のためなら命を捨てる覚悟がある。そして男には驚くほど興味なし
うわさ3:帝国では表に出せないようなブラックな仕事をこなしていた。
鳥は空を飛ぶ為に、風の声を聞く必要はない。
永い時を寄り添い合ってきた恋人達のように、鳥は風と踊る事が出来るのだから。
竜は強くある為に、己の身体に苦痛を強いる必要はない。
その身に秘めた螺旋を描く設計図が、既に彼らが絶対の強者であると証明してくれるから。
獣は大地の堅さを知らずとも疾風の如く駆ける事が出来る。
魚は水の流れを学ばなくとも流麗な泳ぎの術を知っている。
彼らは生まれながらにして『天才』だからだ。
人は、そうではない。
だからこそ森羅万象を読み解く術を編み出し、合理を極めた道具と方法論を築き上げ、
『天才』の描く無軌道な現象からさえも核心を見抜き、抉り抜いてきた。
この世に遍く全ての事象を『分析』する事で、人間は『天才』を優秀の階梯から蹴落してきた。
だが――もしもその『分析』を完璧にこなす天才がいたとしたら。
それは人間の、凡人の全てが否定される事に他ならない。
再び『天才』が階梯の上に立つ。
黒い霧が自分の全てを覆い尽くすような恐怖が、凡人達の心に生まれた。
暗黒の霧は日に日に凡人達の恐怖を煽り続けた。
そして――サフロール・オブテインは帝都を追われる事になった。
その背に憎悪、嫌悪、畏怖、あらゆる悪感情を秘めた視線に背中を刺されながら。
とは言え無数の鋭刃にも等しい視線は、彼の心に傷一つ負わせてはいなかった。
オブテイン家は堕天使の眷属。
天主を神の座から蹴落そうとした、全知全能になりたかった者の末裔。
だからこそ世界を分析し、分解する能力に長けており
――神によって創られし全てのモノに嫌われる運命だと理解して、受け入れていたから。
一度受容してしまえば、気楽なものだった。
影のように纏わり付く絶望を振り切ろうと躍起になる事も、奈落の底から届かぬ光に手を伸ばす事もない。
全ては徒労だ。元々、物事を理解する事は得意だった。
帝都を追い出されたサフロールは、大陸横断鉄道の客車にいた。
緩く波立った長めの茶髪が、細い黄金の腕輪が、十字型の銀の首飾りが、列車の揺れに同調する。
独りではない。同じく帝都から追い出された爪弾き共、『遊撃科』の面々と共にだ。
部隊長の説明と質疑応答を、時折欠伸をしつつ聞き流す。
「んなクソ分かり切ったこたぁどうでもいいんだよ。それよりお前、スティレットだったか?
お前さ、殺気のない攻撃にゃ反応しねぇってマジな訳?」
直後、不意に響く軽やかで小気味いい金属音。
サフロールが硬貨を床に落としていた。同時に視線を右下へと向ける。
意識と視線の誘導――ミスディレクション。
左手に持った分解用の短刀が、スティレットの首に添えられた。
「あぁ、マジみたいだな。今のは単なる『興味本位』だからなぁ。
……馬鹿だろテメェ。相手にゃ鹵獲されたゴーレムがあるかも知れねえんだぞ?
こっちからクソ共のねぐらに飛び込むんだ。罠だって仕掛け放題だろうよ。気ぃ抜いてんじゃねえ」
決して解けない凍土を思わせる眼光と声色。
「どうせ死ぬならここで綺麗に分解《バラ》してやるぜ?挽肉もどきよりかはマシだろ。
それとも任務前にドタマ弄ってゴーレムもどきにしてやろうか?」
歪んだ嘲笑。
「……はっ、冗談だっての。アンタもそう険しい顔すんなよ、隊長殿。
俺はただ、闘技場と戦場の区別がついてねえアホに、ありがたい警告をくれてやっただけだぜ?」
短刀を下ろし、顎を上げて見下しの視線を向けた。
「……にしても、剣鬼の称号ってのは随分安っぽくなったんだなぁ。えぇ?
いや、剣鬼だけじゃねえか。天才の名も、今の世の中じゃ大安売りだ。
女なんぞに天才の名が相応しい訳ねえってのによぉ」
だが悪意の発散は止まらない。
より濃厚に、広域に拡散していく。
「歴史をちょっと振り返ってみりゃ明らかなこった。武人も文人も、偉業を成し遂げたのは大半が男だ。
そりゃ中にはちったぁマシな女がいた事は認めるぜ?だが幾ら何でもこりゃねぇだろ。
ここにいるのは女が半分以上、野郎は腑抜けが一人にアホ面が一匹。
ここに顔を出してねえ詰まったクソみてえな奴らがいるにしたって、ちょっと酷すぎやしねえか?」
不意に列車が大きく揺れる。
即座に慣性を分析、対応――サフロールの身体は一切揺れない。
「到着か。まぁ、死にたくねえなら精々用心するこった。既にゴーレム部隊が消えてんだ。
駐屯部隊なんてアテになんねえ。石人形の二の舞になりたくねえなら……なんて言ってる内に、アホが一匹飛び出してきやがったか。
俺ぁ知らねえぜ。アイツは頑丈らしいし、くたばる時も原型は留めてるだろうからな。止めてえ奴が止めるこった」
【よろしくお願いします!】
名前:サフロール・オブテイン
性別:男
年齢:18
性格:傲慢、上から目線
外見:緩いウェーブのかかった長めの茶髪、細身、装飾具まみれ
血筋:堕天使の眷属=『掌握』
装備:分解道具/外套/腕輪や首飾りなどの装飾具
遺才:分析
マテリアル:装飾具の数々
前職:研究者
異名:『分解魔』
左遷理由:ゴーレム分解など奇行の数々/凡人達の最後の砦を脅かした為
基本戦術:分析して分解する
目標:天才共の分析/成果を上げて帝都へ舞い戻る
うわさ1:物事を分析して、分解するのが大好きらしい
うわさ2:昔、軍用の巨大ゴーレムを一人で分解して、薄笑いしていたらしい
うわさ3:天才にも凡人にもえらく嫌われているらしい
名前:アルテリア-サジタリウス
性別:女
年齢:27歳
性格:傲慢、身勝手、子供好き(ロリ、ショタ趣味ではなく)
外見:鋼鉄のキュイラスとブーツ、上半身はサラシのみ \でけぇ/(おっぱいと慎重的な意味で)
血筋:弓の眷属、元サジタリウス家当主
装備:ロングボウ「「ヘラクレシア(身の丈ほどの弓)」 空間魔法処理済矢筒
遺才:魔弾の射手(長めの刀剣か棒状の武器を弓矢のように正確に射ることが出来る)
マテリアル:弓と刀剣or棒状の武器
前職:帝国騎士団
異名:歩く攻城兵器、浪費家
左遷理由:軍事費を使いすぎたから(反省の色全くなし)
基本戦術:遠距離からの攻撃+味方への武器の配給
ごく稀に、敵の武器を奪い、それを射るような近距離戦も行う
目標:自分の正しさを証明する
うわさ1:自身の軍事論、経済論、宗教論を持ち、それに絶対の自信を持っている
うわさ2:処女?姐さんはヤ(自主規制)だろJK
うわさ3:矢筒は矢筒というなの四(版権の都合上)トらしい
うわさ4:金遣いの荒さから騎士団に入る直前に家を追い出されたらしい
参加するのサ
(とある会議場にて)
「貴君の活躍は大い評価している。貴君の存在がいなかったら敗北していた戦もいくつかあっただろう」
重苦しい空気の中、団長クラスの騎士が言葉を発する。
言葉だけならば、賛辞に聞こえるが口調はどこかしら重く、確実に皮肉っているのが理解できる
「しかし…だ。納得のいかないことがある。それはコレだ」
椅子にふてぶてしく座る彼女の目の前に出されたのは、山積みにされた請求書の山だ。
「これは何の請求書かね?」
彼女は当然のように答える
「使った武器ダ」
相変わらずふてぶてしい態度を取る彼女についに堪忍袋の緒が切れたのか
騎士は怒声を上げ叫ぶ
「弓兵の貴様が何故、一個中隊分の剣や槍を買う必要があるのか?あぁ!?
百歩譲って貴様が使っていたとするならば、たかが1騎士が一回の戦でここまで買うのは常軌を逸していると思わんのか?」
騎士が捲くし立てる中、また彼女の態度は一変もせず、彼女は一呼吸おいて立ち上がる
「あんたが百歩千歩譲らなくとも私はここに書いてある武器をちゃんと使っタ、それに私はこれでも控えたつもりだしナ」
両手を広げ、彼女は自身の正当性を主張するかのように語る
「1本の矢なら盾や鎧で容易く防がれル。だが、バリスタで射出された刀剣や槍ならば容易くそれさえも貫き通せル
それに矢は1本で最大で一人しか倒せないが、同じような手段なら纏めて貫き殺すことも可能ダ
加えて、前線で戦っている連中にダイレクトに新しい武器を輸送することが出来ル、まさに理想的な戦法サ
それさえも理解できないのカ?がっかりだヨ
それともアレカ?政治屋の豚共のご機嫌取りに経費削減カ?笑い者だナ
私は平和を買っているんだ。それに私が武器を買うことにより(難しい話なので省略)という訳ダ
こっちに削るならまずは役立たずの豚共が溜め込んだ金を吐き出させロ」
まるで壇上でオペラを謳うかのように自身の持論を吐き出し終わると先ほどまで怒りを露にしていた
騎士たちの表情がもっと非情なものに変わる
「言いたいことはそれだけか?」
「あァ」
騎士の一人が深く息をする
「左遷だ。地に這い蹲れ狂人」
彼女の遊撃課への左遷が決まった瞬間である
>「ダンブルウィードに到着次第、現地の司令支部に合流。町民の避難が完了するまで待機、終わったら思い切り暴れていいぞ。
> まあ、被害弁償に追われる軍に睨まれたくなけりゃ、自重することも……まあ多くは望まねえが、うん、頑張れ」
彼女が手を上げる
「質問、レンタル武器の違約金は経費でオトせるのカ?それとも、火事場泥棒の真似事しても構わないのカ?」
騎士団のころとは違い、従士隊の厄介者部隊が使える予算は限られている。
故に彼女が使う武器も高価な鍛冶屋の一品ではなく、ボロのレンタル品を使わざる終えないことになる
レンタルの武器が気に入らない彼女はダンブルウィード内にある武器屋、鍛冶屋においてある武器をガメようとしている
その証拠に質問をしながら、目の前に広げられた地図に印と無駄なく回れそうなルートを書き込んでいる。
鼻息荒く書き込んでいる彼女だが、怖気を感じ一瞬動きが止まる
>「よりどりみどりだねェ、イッシッシッシ!」
>「薔薇色ならぬ百合色生活の始まりだゼー!ひゃっほう!」
「ついでに!この変態は射殺しても構わんのだろウ」
名前:ロキ・ハティア
性別:?
年齢:?
性格:ふざけすぎ
外見:年齢性別不詳な童顔、触角のような髪飾り、道化師をモチーフにした無駄にカラフルな服
血筋:(笑)の眷属『蝕撹』
装備:魔扇『扇子オブワンダー』(外見はハリセン)ペンダント『笑いの金メダル』空飛ぶ絨毯『レッドカーペット』
遺才:BT(ボケツッコミ)式幻想戦闘術『笑喚世界』
マテリアル:ハリセン
前職:?
異名:『エンタの紙様』『THE☆イロモネア』
左遷理由:多分ふざけすぎたから
基本戦術:ボケてツッコむ
目標:英雄になりたい? いいえ、トリックスターになりたい!
うわさ1:実はツッコミよりボケの方が得意らしい
うわさ2:出オチ担当必至である
うわさ3:触角は偽物である
そろそろ作戦会議をやっている頃だろうか。
「釣れないかな〜」
ワタシは便所にこもって便器の中に釣り糸を垂らしていた。このような状態をシドと言う。
ワタシの目標はトリックスターだ。
ある書物によると、トリックスターとは……名も無き存在に最も近い立場にいるもの。FO系。
FO系である。無責任な運命の悪戯と一緒である。こんなんでまともにストーリーに関われる訳はない。
背景の一部もしくは名も無き者のレギオン(集合体)とでも思っておけばよろしい。
ドンドンドンッと扉が叩かれる。
「うらぁ! いつまでこもってんだ!!」
「もう、邪魔しないでよ! 今釣りやってるんだから」
「肥溜めじゃねーんだから釣れるわけないだろ!」
「……。それもそうか!」
こう見えて今、ワタシは最高にワクワクしている。だって『遊撃隊』である。好きなだけ遊べる隊なのである。
>「薔薇色ならぬ百合色生活の始まりだゼー!ひゃっほう!」
「楽しそうだね、PINK隊に移籍されない程度に頑張りなよ」
性別欄?のワタシにとっては全くの他人事だった。周囲を見渡すと確かに百合色。
「幼女から姉御まで幅広く揃ってるね。手始めにあの大剣のありますちゃんなんてどうかな」
面白そうなので煽ってみた。
気づけば誰かが話しかけてきていた。
お前はどこの誰だ、一体なぜここにいる・・・?
お前は何のためにこんなことをした?
お前はなぜ
お前は
お前・・・
ワタシの記憶の始まりは、真紅の湖の中央に漂う所から始まった。
というか、その記憶が始まってから数週間しか経ってないのだけれども。
状況に流されるだけ流されて・・・私は何のためにここにいるんだろう。
何を目的として生きる?私は誰だ?
「・・・以上、私の今までのあらすじ・・・短いなぁ」
鉄と鉄が噛み合う背筋の寒くなるような音を残して鉄塊が停止した。
碌々乗り合わせる人間も少ない帝国の端の端。そんな列車も今日は客が多い。
ただし、それが列車にとって歓迎すべき客かどうかは別として、だ。
『遊撃課』の面々が乗っているこの客車、『遺才』を持つものばかりが集っているせいか
異様な雰囲気を持っている為に、わずかな客すらも寄ってこない。
まぁ、寝る分には便利だけれども。ブリーフィングの最中にも、心地よい程大きな振動が眠気を誘う・・・
>20
それでも眠れないのはさっきの一幕だろうか、見張り番のスティレットに絡んでいた・・・えーと、そう
サフロール、と言っただろうか。あまりにも見ていられないので割り入ってしまったのだ
――そこらへんにしたらどうですか?左遷されたのが気に食わないのだったら同僚をこき下ろしても時間の無駄ですよ
「・・・さっさと手柄を挙げて自分の価値を証明すればいいじゃないですか、か」
人の悪意に出くわしたせいか、神経が逆立っているらしい。
「この鬱憤は、『障害』にでも晴らさせてもらいますか・・・」
半面に泣き笑い、半面に十字傷の瞳を描いた仮面の下で私はひとりごちた。
この地は最果て。ここで何を得、何を失うのだろうか・・・
名前:フェイスレス
性別:女
年齢:??(30以下らしい)
性格:普段は昼行燈
外見:黒い長髪ポニーテール、ロングコート(灰)、シャツにデニムショートパンツ、仮面
血筋:???(水の眷属だと推定される)
装備:奇刃大剣『無名』、蒼玉のチョーカー
遺才:液体を支配する程度の遺才
マテリアル:『無名』
前職:無職
異名:蒼面の名無し、
左遷理由:元々行き場のない身なので、戦闘能力だけ買われて遊撃課へ
基本戦術:中遠距離から水などで牽制・拘束し大剣で叩き斬る
目標:記憶を取り戻す、その先は考えてない
うわさ1:記憶喪失なので常識がすっぽぬけてるらしい
うわさ2:仮面の下の素顔は案外美人らしい
うわさ3:一年程前のアルテナ湖赤化事件の原因はこいつらしい
参戦です、よろしくお願いします
なだらかな円錐状の天辺に天帝城を戴く帝都エストアリア。
ハードルと呼ばれる環状の区画が層を成し、SPINと呼ばれる転移交通網が人々の脚代わりとなっている。
「いつも見回りごくろうさん。おかげで若い娘たちも安心して働けてるようだ。こっちでの生活には慣れたかい?」
両手の指では数え切れないハードルの内の上から数えて八番目。
その一角に建つ、バラを模した柵に囲まれた"人魚姫"の名を冠する大衆向けの娼館。
「ええ、まあ、それなりには。ところでマダム、何か用事があると聞きましたけど?」
そこの一室に、机を挟んで向かい合う二人の女。
一人は娼館の警備担当職員であり、同地区内の厄介事などの仲裁役も任され――押し付けられ――ているノイファ・アイレル。
もう一人は現役の娼婦であり、娼館のオーナーでもあり、街の顔役でもある"マダム"の名で親しまれる妙齢の美女。
「相変わらずせっかちだねい。少しは上司と世間話の一つも楽しもうって気はないのかい?
まあいいさ、ちょいとアンタに頼みたいことがあってね。
もっとも、嫌だと言ったところでオーナー命令に変わるだけなんだけど。」
「はあ……相変わらず人使いが荒いですね。それで、なんです?」
ノイファは嘆息しながら先を促す。この上司の性急さは今に始まったことではない。
それでも今のところ上手くやっていけているのは、共に二年前の"帝都大強襲"を生き抜いた故か。
「こいつに外部協力員って名目で出向して欲しいのさ。」
机の上に投げられる紙の束。
一番上の紙、表紙に書かれているのは新設の部隊名。
「帝都王立従士隊『遊撃課』……ですか?」
「そ。天才――始祖たる"魔"の顕現度合が高い者を集めた、まあ有体に言えば厄介払いされた連中さね。」
何処で調べてきたものか、連なる"天才"たちの名は結構な数に登る。
上は上級貴族から、下は身元不明まで、生まれも育ちもまるで異なる、唯一共通するのが"爪弾き者"というただ一点。
「で、何故私なんです?」
「決まってるだろ?アンタ以外に適任が居ないからだよ。
なんたって天才達と組むんだからねい。実力と実戦経験、あとついでに従士隊っていう土壌。
それに何より――まだ"視え"るんだろう?その右目。」
マダムが指摘するのはノイファの右目に宿る魔、"未来視【予見】"。
極近い時間に限られることと、長時間ないし連続での使用こそ出来ないものの、人の身には過ぎたる異質。
「なるほど……了解しましたよ。
それで何時から行けば良いんです?」
最早決定事項であることは明白。何を言ったところで覆りはしまい。
それにこの上司は酔狂では決して動かない。常に帝国の行く先を見据えているのも事実なのだ。
「あれま、随分と物分りが良いね。それじゃあ――」
だが、次いでマダムから発せられた言葉は、彼女の笑みも相まって、その信頼を破壊するに足るものだった。
「――今すぐ大陸横断鉄道の南行き口に向かっとくれ。行先は最南端の『開拓都市ダンブルウィード』。
奴さん達も今日の便で向かうから、中で合流出来るだろう。
ああ、そうそう。準備はもう出来てるからねい。
大丈夫、ちゃんと下着もアンタの持ってる中から他人に見られても大丈夫なのを私が選んどいてあげたよ。」
「ちょっ!いくらなんでも急すぎるでしょ!?
というか、え、何、なんで人の部屋勝手にあさってるんですかっ!あーもうっ!」
この日ノイファの叫び声は、娼館の外まで聞こえたのだった。
【ノイファ、『遊撃隊』の面々とダンブルウィード行便に乗車。よろしくお願いいたします。】
名前:ノイファ・アイレル
性別:女
年齢:23
性格:怒る(切れる)と怖い
外見:先端を編んだ長髪、右目を前髪で隠している。
出るところは割と出てる。
血筋:千里眼の眷属【予見】、地方都市出身
装備:レイピア、白刀"リンクス"
「人魚」の意匠が入ったブルーのジャケット、ダブレット、ロングブーツ
遺才:後天性未来視【予見】
マテリアル:右目
前職:娼館の警備担当員
異名:――
左遷理由:上司の意図に依る出向
基本戦術:防御重視の剣技と魔術
目標:帝国が誤った道を進まないように影で暗躍する。
うわさ1:名前を呼ばれても気づかないことがたまにあるらしい。
うわさ2:二年前の魔物大強襲の時は帝都に居たとのこと。
うわさ3:過去に指名手配されたことがあるらしい。
皆さんよろしくお願いいたします。
『――"ピニオン"よりダンブルウィードの"クランク"。進捗を報告せよ』
『こちら"クランク"。軍から回収部隊の到着を確認。思ったより対応が早い』
『気取られたか?』
『いや、その様子はない。"血の戦乙女"の姿が見えたから軍の部隊かと思ったが、どうにも妙な編成だ。
服装からしててんでバラバラ、従士や騎士まで混ざってやがる。共通してるのは腕章だけだ』
『音頭取りはどいつだ?』
『わからん。把握次第報告を上げる』
『了解した。監視を続けろ。"マキナ"の起動準備は?』
『問題なく完了した。マッチ・アップも十分だ。あとはケツを叩くだけだな』
『よし、いい音鳴らせよ。帝国軍にしては妙な腰の軽さだが、懸念材料は他に?』
『委細良好。軍人としちゃ"戦乙女"とお手合わせ願いたいもんだが……こっちにもまだ切れるカードがある』
『へえ、お前のお友達か?』
『"人形姫"さ。"ピニオン"から押し付けられたときゃどうしたもんかと思ったが、存外納得以上の仕上がりだぜ』
『そいつは良い。では念信終わる。良い報告を期待してるぞ。――GoodLuck(健闘を祈る)』
『念信終わる。――GoodLuck(栄光あれ)』
* * * * * *
>「質問、レンタル武器の違約金は経費でオトせるのカ?それとも、火事場泥棒の真似事しても構わないのカ?」
質問が上がる。挙手したのは騎士団からの出向、アルテリア=サジタリウス。
「軍に聞け。と言いたいところだが、逆に言えばこっそりやれば責任は全部軍が負ってくれるってわけだ。
つまり、回答はこうなる。――バレねえようにやれよ」
彼女の詳細な情報はすでに上がっていた。武器の消費量がハンパなくて左遷。
なんでも、武器を矢のように番えて射出する遺才持ちのようで、矢と同じノリで槍を撃つのだからたまったものではない。
アルテリアの辞令書にも、管財課から『要注意!』の朱が怨念たらしく入れられていた。
>「よりどりみどりだねェ、イッシッシッシ!」
>「薔薇色ならぬ百合色生活の始まりだゼー!ひゃっほう!」
>「ついでに!この変態は射殺しても構わんのだろウ」
プリメーラという如何にも危なそうな課員が妄想全開で興奮した犬みたいになってるのを睨めつけて、問うた。
ボルトは万感の思いを込め、答えた。
「バレねえようにやれよ」
問題はあるまい。多分。
>「んなクソ分かり切ったこたぁどうでもいいんだよ。それよりお前、スティレットだったか?
お前さ、殺気のない攻撃にゃ反応しねぇってマジな訳?」
ブリーフィングの終了間際、あくび混じりに放たれたのは粘着質な声と、軽やかな金属音。
研究院から出向してきたサフロール=オブテインが、床にコインを落としていた。
咄嗟に視線がコインへ集中する。
>「あぁ、マジみたいだな。今のは単なる『興味本位』だからなぁ」
その刹那で、スティレットの喉元へ刃があった。
当の彼女とはいうと、瞬きひとつせずあの据わった眼で、刃ではなくサフロールを見続けている。
>「どうせ死ぬならここで綺麗に分解《バラ》してやるぜ?挽肉もどきよりかはマシだろ」
「ならお前は、任務前に解雇(バラ)して無職もどきにしてやろうか。言っとくが課員じゃない奴に帰りの切符はねえぞ」
ボルトはペンを構えていた。『遊撃課』の任務は全て課員の有用性のテストも兼ねている。
ここできちんと職務をこなし、一定の評価を挙げたらば、晴れて現職への復帰と相成るというわけだ。
そして『遊撃課』には出向扱いにもかかわらず一方的な解雇権を与えられている。ペン先一つで首は容易く飛ぶのだ。
>「……はっ、冗談だっての。アンタもそう険しい顔すんなよ、隊長殿。
俺はただ、闘技場と戦場の区別がついてねえアホに、ありがたい警告をくれてやっただけだぜ?」
「だったらおれの見てない場所でやれ。おれからしてみりゃお前もそいつも等しくアホだ」
>「……にしても、剣鬼の称号ってのは随分安っぽくなったんだなぁ。えぇ?
いや、剣鬼だけじゃねえか。天才の名も、今の世の中じゃ大安売りだ。女なんぞに天才の名が相応しい訳ねえってのによぉ」
>「歴史をちょっと振り返ってみりゃ明らかなこった。武人も文人も、偉業を成し遂げたのは大半が男だ。
そりゃ中にはちったぁマシな女がいた事は認めるぜ?だが幾ら何でもこりゃねぇだろ。
終始鬱陶しげにひとしきりを語る。
>「・・・さっさと手柄を挙げて自分の価値を証明すればいいじゃないですか、か」
道化のような仮面を被った女性がそこへ割って入った。
彼女も遊撃課の課員だ。如何なるときも仮面を外さず、まるで素顔のないように振舞う、その名もフェイスレス。
「そういうことだ。おれがお前に求めてるのは争いの火種じゃねえ。それを消す能力だ」
>「お……お――っ!!」
民間護衛会社から出向してきたフィン=パンプティがいの一番に飛び出していき、課員達もそれに続く。
やがて残ったのは刃をかざし続けるサフロールと、牽制され続けるスティレットと、ボルトのみ。
彼はサフロールの短刀を手甲で押しやると、スティレットを促した。
「行くぞ」
「了解であります」
サフロールを残して彼らはコンパーメントから退出する。
その去り際に、スティレットを先に行かせてボルトは振り向く。サフロールへ。
「男も女もあるか。あいつやお前みたい天才を『剣鬼』とか『才鬼』って呼ぶが、どうしてか知ってるか?
――おれたちにとっちゃ、お前らみんな等しく『化物』なんだよ。男尊女卑ごっこならよそでやってろ」
捨て台詞のように吐き捨てて、ボルトは再び踵を返した。
>「はじめまして、帝都近衛騎士団より出向いたしましたセフィリア・ガルブレイズです。
至らぬ身ではございますがよろしくご指導ご鞭撻をお願いいたします任務のほうは……特になにもありませんでした」
列車から降りた遊撃課の面々を出迎えたのは、ゴーレムが一機。
中から顔を出したのは、先んじて現地に潜入し情報の橋頭堡を築く任務を仕った騎士団の少女。
現地で合流するよう言われていたボルトとて、よもやゴーレムに乗ってやってくるとは思ってなかった。
「そのゴーレムは鹵獲品か?違う?自前か。そりゃ随分と無茶な……って、お前指令書読んだか!?
それサムエルソンじゃねえか。小回り最優先の市街戦で使うような機体じゃねえだろ!」
「おお?そうなのでありますか?」
趣味柄ゴーレムに詳しいというか割と造詣の深いボルトにとって看過できぬ問題であった。
ゴーレムとはやりたい事に合わせて乗り換えたりチューンする必要のある『傀儡重機』だ。
鉄道のチケット申請がなかったことも鑑みるに、おそらくセフィリアはゴーレムを移動手段としてここまで来たのだろう。
サムエルソンmk.3。レオンチェフ社製の傑作機と名高いこれだがウリはあくまで『進撃力』。必殺は突進にこそある。
別名、猪。そんな感じ。こんな建物の密集した場所で下手に動かせば、それこそ猪の如くぶつかりまくること請け合い。
「お前はこの街にピンボールでもしに来たのか!?解体屋の真似事するつもりがねえなら大人しくしてろよ。
……まあ、その、道いっぱいの魔物を轢き潰すのに使うんでもねえ限りな」
「なんで最後の方ちょっと照れてるんでありますか……」
ただ、数あるゴーレムの中から名器と謳われたサムエルソンを選んだ慧眼にはボルトも注目していた。
その一点においては、この上なく見所のある騎士であった。
「お前のお仲間じゃねえのか、スティレット」
「近衛騎士は部署が違うでありますからねー。でもでも、お噂はかねがね聞いてるでありますよ!
『双剣』ガルブレイズ家の方で、その武勇と見た感じから『グラス・リッパー(眼鏡の切り裂き魔)』と呼ばれているとか!」
「十割見た感じで決めただろ、その異名」
ガルブレイズの導きでダンブルウィードの司令支部へと向かう遊撃課一向。
街の最先にあり、旅人を迎えるゲートの役割ももつ寄り合い所を改造して司令支部を拵えていた。
まずは旅装を解き、支部から提供された市街戦用の作戦行動嚢(バックパック)が支給される。
地図や念信器、携帯糧食から治療符、簡単なトラップツールまで入ったオールインワンの優れものだ。
「住民の避難状況は?」
「8割方は完了しているが、年寄りや怪我人を抱えた家はまだちらほらと残っている。
なるべく一般市民に被害を出したくないが、もしもの時は――国庫は開けておくとのお達しだ」
自主避難できるうちはいいが、動けない者を運ぶにはルートの選定から運搬器具、隠密行動とどうしてもコストがかかる。
そういった諸々のしがらみを切り捨てて、『死んだ分だけ賠償を払う』と軍が決定してしまったのだ。
「エルトラス軍の警戒網を掻い潜ってゴーレムの回収をするのは相当な骨だからな。
だが何、君たちの回収作業が万事うまく行けばそれで済む話だ。是非とも頑張ってくれよ。
なにしろ元老院の虎の子、『遺才』持ちばかりを集めた新部隊らしいじゃないか!」
「……簡単に言ってくれるぜ」
ボルトは嘆息しながらこめかみを揉んだ。それは市民の安否を懸念してのことではなく、純粋に作戦成功率の勘案。
戦場になっているダンブルウィードになぜ非戦闘市民が残っているかと言えば、そこに少なくない利権が存在するからだ。
国の保証体制というのはかなり先進的で、戦地となった街の町民には『戦場手当』と呼ばれる手当金を払っている。
この手当をもらい続けるために街へ残る市民は少なくなく、さらに両軍の兵士が買い物という形で外貨を落としていってくれる。
戦争が生むのは貧困と苦痛だけではない。上手く立ち回ればこの状況は利権と利潤と金になる。
そういうことを熟知しているのが、このダンブルウィードの人々なのだ。
>「レイリン=シキマ、ただいま到着しました!」
頭を悩ませる司令支部の鬱屈した空気を払拭するように、ドアから高い声が飛んだ。
『血の戦乙女』ことレイシン=シキマの到着を以て、遊撃課は作戦準備を完了する。
* * * * * *
最初に異変に気付いたのは、市内に散開して捜索にあたっていた軍司令支部の兵士たちだった。
あらかたの市民の避難を完了したはずの街中から、かまどでも炊いているかのような低い音が聞こえてきた。
それはやがて魔獣の唸りの如く響きを重厚に変え、そして爆発した。
「エリック班より支部に入電!市街地にて正体不明の目標から攻撃さる!部隊の損耗が酷い!援護を!」
『こちら支部!どういうことだ、詳細に説明しろ!』
「俺にもよくわからん!ただとてつもなくでっかい影と鼻が会ったかと思うと、そのままぶん殴られてッ……!」
『魔物か!?』
「でかい岩みたいな……!ああクソ、足がイカれた!撤退命令はまだk――」
再び念信器越しに轟く咆哮。そして全てを砕く破壊の調べ。
念信が復旧したとき、オペレーターの耳に聞こえてきたのは兵士の悲痛な驚愕だった。
『こいつは、オイ、嘘だろ……』
「エリック班!応答しろエリック班!そいつは"何"だ!?お前ら何と戦っている!?」
悠久にも近い沈黙と、土砂降りのような破砕音のあと、念信器は小さく震えた。
『――ゴーレムだ。人の乗ってない、操縦基の空になったゴーレムが、独りでに……!』
司令支部はやにわに慌ただしくなった。
「アーマイル班から入電!市街東区にて魔物の集団の襲撃を受けた模様!」
「魔物撃滅失敗!逃げ遅れた市民が襲われています!」
「エルトラス軍の侵攻を確認!奴らの戦闘作戦の可能性があります!」
「レット帝曹の部隊がゴーレムとの交戦に入りました!エリック班は全滅!繰り返します、エリック班は全滅!!!」
「ゴーレム止まりません!複数の機体から装甲を剥がして自分に重ねているらしく、攻撃が通らないようです!」
「敵ゴーレムを重装甲目標に変更!飛翔機雷準備!」
「駄目です!ゴーレムの周りにも魔物が!」
「――出番だ遊撃課諸君!」
司令官に丸投げされた匙を受け取ったボルトは、それで遊撃課の面々を指した。
「今の話は聞いてたな?作戦内容に変更はねえ。速やかな制圧と、ゴーレムの回収だ。
ただ状況が変わった。市街中央部で暴走ゴーレム、東区で魔物が避難できてない市民を襲撃している。
向こうの残存部隊と合流のち、これを撃滅――余裕があれば市民の避難を完了させる」
東区と言えばこの司令部からほど近いところにある住宅街だ。
人口が密集しており、それ故に全ての市民を避難させきれていない。魔物からしてみれば餌の群れだ。
中央部とは東区を挟んだ対極にあり、ゴーレムはそこから司令部――街の外へ向けて侵攻していた。
放っておけばじきに東区、司令部へと到達し、ダンブルウィードを脱出されてしまうだろう。
司令部の壊滅と引換えに。
「バリントン、ガルブレイズ、パンプティは東区で魔物の撃滅と住民の避難!おれも後で行く。
迅速さが問われる任務だ。良いとこ見せろよバリントン。東区を制圧したらバリケードを築け、埋没機雷も貸してやる」
中央区でゴーレムを食い止められなければ、ここが最後の砦となる。
その為にも迅速な魔物の相当と、派手に戦っても問題ないよう住民の避難は徹底しなければならない。
護衛術に長けたフィンや、無類の突貫力を誇るセフィリアのゴーレム、
風の眷属、『韋駄天』のウィレム=バリントンのフットワークを活かしきらねばこなせぬ任務。
「シキマとサジタリウス、オブテイン、フェイスレスは中央区。シキマ、お前が陣頭指揮をとれ。
ゴーレムの周りの魔物を掃討し、可能なかぎりこれを撃滅。残存部隊の火力をサポートしろ。
とにかくゴーレムの侵攻を食い止めることを先決にだ。穴掘ってでもなんでもいい、止めろ」
敵は重装甲目標。生半可な攻撃は通らないだろう。故に瞬間攻撃力に特化した能力を持つメンバー。
オブテインは純戦闘系ではないが分析に長ける。ゴーレムが相手ならば優秀な戦略顧問となるはずだ。
「ハティアとレズィビアンは撹乱。西区でエルトラス軍が燻ってるらしい、思いっきり掻き回してやれ」
そして――
娼館の警備員から何故か左遷されてきたという妙齢の女性剣士。
ノイファ=アイレルに指示をだそうとして、妙な既視感に囚われた。
「……アンタ、どっかで見たことあるような」
(いや、)
没入しかけた思考をぶった斬り、ボルトはウィレム達を指さした。
「『予見』の遺才だっけか?胡散くせえな……まあいい、防御系の技能持ちだったな、東区の指揮はアンタがとってくれ」
「わたしはどうするでありますかっ!?」
「戦況を見て投入する。暇なら邪魔な草でも刈ってろ」
「ほ、『崩剣』は農作業の為に極められたわけじゃないのであります!」
「総員、任務は頭に入ったな?死んでも労災出ねえから、認められたきゃ死ぬ気で生きて帰ってこい」
ボルトは腰から片手剣を抜き放ち、石畳に渾身の力で突き刺した。
「――状況開始だ」
* * * * * *
【ダンブルウィード東区】
住宅街は別の活気で溢れていた。住民の代わりに跳梁跋扈するはダンブルウィード原産の魔物、ニードルデーモン。
牙や爪の代わりに強靭で極悪な刺を体中に生やした蛙のような外見をした魔獣である。
「住民の避難を優先しろ!クソ、倒しても倒しても湧いてきやがる!」
「もう少しの辛抱だ!帝都からの増援がこの街に来てて、それがめっぽう強いって話だ!」
「ウワサの『遊撃課』だろ!?帝都追い出されたはみ出し者連中に、何ができるってんだよッ!」
この刺というのが曲者で、刃は弾かれるし矢や攻性魔術はまずもって阻まれる。
突き刺されば凶悪な返しがついていて抜けず、さながら剣山に生けられる花のような姿で絶命する羽目になる。
彼らの刺とはまさしく攻防一体となった鎧であり剣なのである。
そして今もまた、逃げ遅れた老婦人を突き刺さんとニードルデーモンが突進する――!
* * * * * *
【ダンブルウィード中央区】
暴走ゴーレムは残存部隊の魔術砲撃をこれでもかと浴びながら、しかしその歩みは瞬きほどの間だけ滞るのみ。
機体名は『インファイト2』。帝国軍正規採用の乙型タイタン級陸戦ゴーレムである。
近接格闘性能に全てのウェイトを置いたこの機体はあらゆる攻撃に耐えうる装甲で接近して殴るのを基本戦術にしている。
そんな、軍が全幅の信頼を寄せるこの装甲が実に3枚重ね。消息を絶った他のゴーレムから剥がして使っているのだ。
「ちくしょう、本国の軍はやっぱいいの使ってやがんなあ!魔導機雷踏んでもほぼ無傷ってどういうことだよ!」
「いいよなあ。あいつぶっ倒したら装甲だけひっぺがして貰ってやろうぜ。労働の対価だ」
「名案だ。だったら遊撃課の連中が来る前に片付けねえとだな。おー、俄然やる気が――」
ガションッ!
暴走ゴーレムの胴体部分が開き、箱のようなものがせり出してきた。
箱には蓋がされておらず、兵士たちは中身を目の当たりにすることができた。細長い、射出タイプの魔導機雷。
「「飛翔機雷〜〜〜〜ッ!!?」」
ばしゅんっ!と快音一つ。暴走ゴーレムの腹から発車された飛翔機雷は兵士たちのバリケードを直撃。
炸裂術式が起動する。轟音と閃光が風を呼び、バリケードは炎と衝撃に飲まれて掻き消えた。
【緊急事態発生。消息を絶っていたゴーレムが無人で暴走&強化、さらに魔物の襲撃も】
【作戦領域……◆ダンブルウィード東区:魔物が住民を襲う。魔物の殲滅と住民の避難、ゴーレム用バリケードの敷設
◆ダンブルウィード中央:暴走ゴーレムと魔物の群れ。魔物の撃滅とゴーレムの侵攻妨害
◆ダンブルウィード全域:散会したエルトラス軍。何かの作戦行動を行っている模様。撹乱せよ 】
【NPCバトルです。今回のボスとなるゴーレム以外は全てワンターンキル・決定リールOK。能力披露用】
着いて早々に本性がバレバレなプリメーラ。しかし、そんな彼女に背後から声をかける者がいた。
>「楽しそうだね、PINK隊に移籍されない程度に頑張りなよ」
「……わお」
珍妙な格好をした奴だった。
性別を特定出来ない顔つき、虫の触角のような髪飾り、おおよそ戦闘には相応しくなさそうな色彩豊かな道化服。
ああ何だ、変態か。
プリメーラの脳はいやに冷静に判断した。
>「幼女から姉御まで幅広く揃ってるね。手始めにあの大剣のありますちゃんなんてどうかな」
「んー……いや、ボク的にはあのフェイスレスちゃんって子も捨てがたいんだよねー」
横で射殺許可の申請が聞こえたが、きっと気のせいだろう。
>「はじめまして、帝都近衛騎士団より出向いたしましたセフィリア・ガルブレイズです。
至らぬ身ではございますがよろしくご指導ご鞭撻をお願いいたします任務のほうは……特になにもありませんでした」
汽車から降りたボルト達を出迎えるセフィリアを見上げ、次に驚く。
「あれっこのサムエルソン、バルデロイック騎士団長ご愛用のじゃね?」
帝都で何度か見た事がある。式典やらの行事の度に乗り回しては自慢していたのは記憶に新しい。
それを許可なく勝手に持ち出したのだとすれば……彼女、中々の大物かもしれない。
「しっかしさあ、なんてーかこう……あんまり活気ないよね、ここ」
セフィリアに案内され、司令部を目指す最中でのダンブルウィードを、プリメーラは素直にそう評価した。
只でさえ何もないこの開拓都市。そこから人すら殆ど居なくなってしまっているのだ。
さながら、見捨てられたゴーストタウン。
「寂っしー場所……」
どこか此処ではない遠くを見るプリメーラは、少し哀しげにそう呟いた。
司令部に到着したプリメーラ達に、早速バックパックが支給された。
予想以上の中身の上等さに、おぉと目を丸くする。
「遊撃隊っていうから厳しい装備を覚悟してたけど…割と良いもんだね、こりゃ」
早速バックパックはベルトで腰の部分に装着。
メンバー1小柄な彼女には不釣り合いな格好であったが、全く気にしなかった。
【魔術師と道化師、出撃】
>「――出番だ遊撃課諸君!」
ボルトの鋭い号令。メンバーに緊張が走る。
その中で一人、プリメーラは笑みをたたえてボルトの指令を聞き逃すまいとする。
>「ハティアとレズィビアンは撹乱。西区でエルトラス軍が燻ってるらしい、思いっきり掻き回してやれ」
「任せろー」
ハティアと呼ばれた道化師を見やる。どうやら彼(ないしは彼女)と組むことになった。
目があったのですぐ逸らした。ジロジロ見るのは失礼だったか。
>「――状況開始だ」
「Yes sir!」
【ダンブルウィード・西区】
西区では、逃げ遅れた一般市民がエルトラス軍人に襲われていた。
「止めてっ、手を離して!」
「良いじゃねーかよ嬢ちゃん。ちょっと位よぉオ?」
下卑た笑いを浮かべる軍人の男。
逃げ遅れた娘は、それでも尚抵抗しようと睨みつけ、その顔に唾を吐きつけた。
「よぉお〜し……どうやら死にたいみてえだ……なッ!」
娘は死を覚悟し、瞼を閉じる。
青筋を浮かべる男の長剣が、娘の首へと振り下ろされ……ることはしかし、なかった。
「なーにやってんの?エルトラスの雑魚軍人さん」
野太い悲鳴と、柔らかい、抱かれる感触に、娘が恐る恐る目を開ける。
そこには、失った右手首を押さえて絶叫する敵と、見たこともない珍妙な格好の二人組が立っていた。
一瞬何が起きたのかわからないと言いたげな娘に、青髪の娘は笑いかけた。
「すぐ終わらせるからさ、『眠ってて』」
すると娘は、まるで糸が切れた人形のように崩れ、安らかな寝息をたて始めた。
「さあ、お仕置きタイムだ雑魚共。ハティア、半分任したよ」
「抜かせ糞餓鬼!その首斬り落としてくれる!」
第2のエルトラス兵士がプリメーラに突撃する。
対し、プリメーラは構えすらせず、ニヤニヤ笑うだけだ。
そして兵士が長剣を上段に構えた瞬間、それは起こった。
「ねえ、ボクを斬ってもいいの?」
「『斬る前に手首もげちゃうよ?』」
その場にいた誰もがその瞬間、理解出来なかっただろう。
その瞬間まで闘志と敵意を剥き出しにしていた兵士が、剣を取り落とし、自らの右手首を庇うように転げ回って絶叫しているのだから。
「オレの……オレの手ェェエ!!」
しきりに「手」と叫ぶが、兵士の手は両方とも無事だ。
兵士たちを戦慄が襲う。しかし彼等は曲がりなりにも兵士。
「こっ…殺せ!相手はガキ2人だぞ!」
次々に飛びかかってくる兵士達。しかし。
「ねえ、『ボクの動き、見えてないでしょ?』」
刹那、兵士達の視界からプリメーラが消失。
「ほーら触っちゃった。『右足、もげてるよ?』」
彼等がプリメーラを探す間も次々に、手や足を押さえ込んで悲鳴をあげる。
「止めろ…止めてくれェエ!」
今度は、プリメーラが背後からこう囁きかけた。
「なに言ってんの、『今アンタの手首をもいだのは後ろの奴だよ?』」
兵士の目が血走り、すかさず背後でのた打ち回る兵士を突き殺した。
そして起こる、エルトラス軍人同士達の大乱闘。最早撹乱どころではない。殺し合いだ。
「アッハハハハハハハハァ!『そーら切り刻め!突き殺せ!目を抉れ!耳を削げ!殺し合えぇ!アヒャハハハハハ!』」
いつの間にかボロ屋の屋根の上で高笑うプリメーラ。
彼女の胸の六芒星が、翡翠の光をたたえている。兵士達の目もそれに同調するように、翡翠に染まっていた。
これが彼女の戦い方。『刷り込みによる催眠術』。
彼女に近づけば『触った箇所が斬り落とされる』という催眠。
子供だからと舐めてかかったのが、運の尽きだ。
「ちょっとやり過ぎちゃったかな?」
重なり合った死体の山を前に、悪戯っ子のように舌を出す。
反省などない。もとより、する気もない。
プリメーラは全員死んでいることを確認し、荷物を漁り始めた。
物資は貰っておいて損はない。何か有益な情報でもあれば儲けものだ。
「……ん?これは…………」
一人の兵士のパックバックに入っていた書類。それに目を通したプリメーラの顔色が変わる。
「誰か、メッセージレコード・メールと伝書鳩を!今すぐ!」
メッセージレコード・メールは、届けたい相手にのみ自身の声で内容を伝えられる便利な手紙だ。
学のない人間でも伝達出来るように、と考案されたものである。
「伝令!遊撃隊小隊長ボルト=ブライヤーへ、ダンブルウィード西区担当プリメーラ=レズヴィアンより報告!
西区に潜伏中のエルトラス軍兵士を撹乱中、《謎の同志討ち》によりエルトラス軍兵士全滅!次なる指令を待機!
尚、同封の書類はくれぐれも《扱い》にご注意を!あとスティレットちゃんをお嫁に下さい!以上!」
手紙はしっかりとプリメーラの伝令を録音した。
それをエルトラス軍人の書類と一緒に丸めると、鳥籠の中の 白鳩に見せた。
「いいかい、『しっかりボルト小隊長に渡すんだぞ。つついてでも早急に返事を書いてもらえ』」
そう暗示をかけ、鳥籠の扉を開けたとき。
鳥籠が『鳩を吐き出し、手紙と書類を奪い取った』のである。
呆然とする一同を余所に、飛べない鳥のように飛び跳ねながら去っていく鳥籠。
ぼそりとプリメーラが呟く。
「……間違って、鳥籠に暗示かけちゃった」
やれやれである。
【エルトラス軍人を催眠暗示で同志討ちに見せかけ全滅。次の任務待ち】
【伝書鳥籠がボルト小隊長に向かいます。タイミングは任せます】
は?全滅?
見せ場独り占めですか
他人の事を考えられないバカですか
同士討ちした二部隊が全滅、でいいんじゃねえの?
それで万事解決だ
コテなら正々堂々避難所で文句言えや
でなきゃGMが調整すればいい話な訳で
>31
>「男も女もあるか。あいつやお前みたい天才を『剣鬼』とか『才鬼』って呼ぶが、どうしてか知ってるか?
――おれたちにとっちゃ、お前らみんな等しく『化物』なんだよ。男尊女卑ごっこならよそでやってろ」
「フフ、よく分かってるね。ワタシ達は化け物さ!」
小隊長に笑いかけて駆けだした。
>35
>「んー……いや、ボク的にはあのフェイスレスちゃんって子も捨てがたいんだよねー」
「確かに! 飛びかかって仮面ひっぺがしたいな〜」
仮面はひっぺがすためにあるのだ。
>「はじめまして、帝都近衛騎士団より出向いたしましたセフィリア・ガルブレイズです。
至らぬ身ではございますがよろしくご指導ご鞭撻をお願いいたします任務のほうは……特になにもありませんでした」
「おうおう、遠路はるばるよくぞ参った! 自分の家だと思ってくつろぐと良いぞ!」
ゴーレム娘の背中をハリセンでバンバン叩く。
>32
眼鏡っ娘の先導で司令部を目指す。もちろん踏んでいいのは石畳の白い部分だけだ!
>「寂っしー場所……」
「これ食べる〜?」
指にはめたとんがったコーンのようなお菓子を口に放り込む。
>33
>36
>「ハティアとレズィビアンは撹乱。西区でエルトラス軍が燻ってるらしい、思いっきり掻き回してやれ」
「さーて、久々のライブといきますか!」
ワタシは笑った。心底楽しそうに。
>「さあ、お仕置きタイムだ雑魚共。ハティア、半分任したよ」
「おっけ〜い。さあさあ、アナタ達はワタシと遊びましょ♪」
背中に背負った真紅の絨毯を広げ、飛び乗る。
高い場所は飛べないから移動用にはあんまり使えないんだよね、これが!
意味があるのかって? お笑いのライブは演出が命なのだ!
「この餓鬼何やってんだ!」
兵士が突進してくるのを尻目に扇を広げ、舞うように一回転。魔を帯びた風が吹き抜ける。
この先暫く便宜上一般兵士が見ているであろう光景を語ろう。
周囲が極彩色のシュールな空間に変化する。
「なんだこれはっ!?」
「魔女空間!?」
現れしは、ハリセンを持った褌マッチョ。背中には”釣り”という力強い筆文字。
褌マッチョ達が兵士を取り囲んで容赦なく叩き始める。
「いや、違う! マゾ空間だ……!」
続いて無数の羽根の生えた小さいおっさんが現れ、輪になって踊り始める。妖精である。
赤と黄色の巨大人型ゴーレムが現れたかと思うと、ランランルーと言いながら縦横無尽に破壊光線を放つ。
さらには巨大なスクリーンのようなものが降りてきて、意味不明の腐女子動画が上映される。
「ひぃいいいいいいい!!」
加速する狂気。這い寄る混沌。
「楽しい仲間がポポポ〜ン!」
ワタシは歌いながら何人にも分裂してみせた。正しくはそう見せかけた。
「ちっとも楽しくねーよ!」
ワタシ”達”は犬歯をむき出して嗜虐的に笑う。
「一つ教えてあげようか」
「笑うという行為は本来攻撃的なものであり、獣が牙を剥く行為が原点にあるという……」
「笑わせるという行為もまた残酷なものさ。時に人の不幸をバカにしてこき下ろし、時に品性お下劣な言葉を連呼する!」
「それで傷付く人がいる事を知っていながらね! そう、まさしく人ではない“魔”の所業だ……!」
ワタシは雑魚兵士達の四方八方に現れ、言葉を継いでいく。
「もう一度言うよ。人ではない、”魔”なんだ。真実を、見せてあげよう」
雑魚兵士達は見ただろう、ワタシの姿が揺らぐのを。まるで化け物が真の姿を現さんとするかのような演出!
「あ……あ、あ……!!」
そこに長ネギを持って突進してくる1,5頭身のオレンジ色のトゲトゲの謎の生物。
諸事情により、目の部分には黒い線が入っている。
さあろそろティロ・フィナーレ(最後の一撃)だ。扇子オブワンダーを大きく振りかぶり、魔力を練り上げる。
「布団が・吹っ飛んだあああああああああッ!」
布団が吹っ飛んだ、と軽く言うが、布団がものすごい勢いで吹っ飛ぶほどの風圧を想像してほしい。
魔性の突風を受けて、兵士達が一斉に昏倒する。彼らは1,5頭身のトゲトゲに長ネギで叩かれて倒れたように感じている事だろう。
「あ、あはははははは」
倒れた兵士は笑っていた。密林でライオンに出くわしたときのような、それはそれは素敵な笑顔だった。
これが『笑喚世界』。幻術でボカしてハリセンの一撃で締める。つまりボケてツッコむ漫才の王道。
怒涛のごとく押し寄せる狂気の幻想で現実を浸蝕し撹乱する禁断の芸だ!
「お粗末さまでしたー!」
ぺこりとお辞儀をし、カーペットを丸める。観客たちは笑い過ぎて再起不能だ。
目を覚ましたとしても意味が分からない事を口走り、下手をすれば檻のついた病院行きになることだろう。
>38
>「……間違って、鳥籠に暗示かけちゃった」
ここはツッコまざるを得ない! ハリセンを一閃。
「なんでやねん! ご飯を食わずに茶碗を食うがごとしだよ!」
というか物にも暗示ってかけれるのか!
>>34 >「シキマとサジタリウス、オブテイン、フェイスレスは中央区。シキマ、お前が陣頭指揮をとれ。
ゴーレムの周りの魔物を掃討し、可能なかぎりこれを撃滅。残存部隊の火力をサポートしろ。
とにかくゴーレムの侵攻を食い止めることを先決にだ。穴掘ってでもなんでもいい、止めろ」
中央区にて無人の暴走ゴーレムが出現したという情報にさきほどまで静かだった司令部がにわかに騒がしくなる。
最も騒いでいるのはほぼ伝令と課長のボルトだけで、集まった『天才』達は何処吹く風、まるで雨が降ってきたという情報を聞いた一般人のような反応だった。
しかし、まだ住民の避難がすんでいないのにくわえ、謀ったように敵軍の侵攻を開始する。
その中でレイリンは元軍属の経験を買われてか、陣頭指揮を任された。
そして、ボルトから個々の簡単なプロフィールの載った書類を渡してくる。
それを見て、レイリンは思わず目眩を覚えた。
「なに、この面子は……、あの課長面倒なのを全部私に押しつけたかっただけなんじゃないの?
指揮に歳は関係ないとはいえ、この部隊だと面倒そう……」
レイリンは自分の前に集まった3人を見回す、主な得物は大剣と弓と工具みたいなもの。
ゴーレム相手にどうすれば足止めできるかレイリンは考える。
「課長からこの場の指揮権を預かったレイリン=シキマです、今から貴方たちには私の指揮下に入って貰います、異論があるなら今すぐこの隊から出て行って下さい。
早速だが私達に求められている働きは魔物の殲滅とゴーレムの足止めです、時間はありません、今すぐ現場に向かいます」
普段なら返事を聞くなりなんなりするレイリンだったが、緊急時で尚かつこの部隊である、下手に面倒を起こすより動く方を優先した。
外に出ると、恐らくゴーレムから発せられているであろう地響きと人の叫び声などが入り交じって聞こえてくる。
音が近い、この司令部まで来るのも時間の問題だろう。
中央区に到達すると、まず乙型ゴーレムが目に入る、そして周りは魔物、ニードルデーモンがいる。
レイリンは素早くニードルデーモンに肉薄するとニードルデーモンの名の由来でもある棘を掴み、折る。
「剣のように鋭く、鉄のように硬い……か、確かにその通り。
でも、言い方が悪いです、鉄のように柔らかいのが正しいはず」
そして、折った棘があった場所に思い切り拳を叩き込む。
その拳はいとも簡単に肉を貫き、あっけなくニードルデーモンを絶命させる。
レイリンは腕を引き抜き、一息つこうとする、刹那、レイリンの周囲が暗くなる。
影、それはゴーレムの巨大な手が作り出した巨大な影。
咄嗟に身を転がすと、先ほどまでレイリンがいた場所に大きな穴が穿たれる。
乙型ゴーレム、普通に人間なら相対した時点で死んでもおかしくない、戦略兵器。
『天才』の集まりである遊撃課の一員であるレイリンでさえ、まともに相手をすればただではすまないであろう。
「夜ならともかく、昼にこれは少し厳しいですね。
あの分厚い装甲がある以上生半可な攻撃は届かない……」
そうしている間にもゴーレムは着実に歩を進める。
魔物自体はレイリン達の活躍もあって、次第に減ってきてはいるが、肝心のゴーレムの進行は全く遅らせられていない。
乙型ということもあってか、少々のバリケードは次々に破壊されていき、穴なんてものは軽々とまたがれる、軍の努力も空しく、全く歯が立っていない。
その時、レイリンは先ほど貰ったプロフィールを思い出す。
サフロール・オブテイン、左遷理由、ゴーレムの分解をした――。
すかさず、戦っているオブテインの近くに向かい、問いかける。
「オブテイン、力を貸してください。
不甲斐ないですが、今の私にこのゴーレムを止める術はありません。
貴方はゴーレムの構造に詳しいはず、幸いと言って良いのかは分からないですけど、あのゴーレムは無人。
操縦席までいければ何とかならないでしょうか?」
【中央区:魔物の数はあるていど減らすが、ゴーレムの進行は緩まず。
オブテインに何か策がないか聞く】
【ダンブルウィード東区】
逃げ惑う住民、飛び交う怒号。阿鼻叫喚。
人々の恐怖や苦痛に歪む顔もやがては打ち棄てられた人形のように感情すら抱かなくなるだろう。
ダンブルウィードに棲む魔物、ニードルデーモン。彼らとそして独りの少女の手で躍る機械人形によって。
「…みて、あの子、泣いてる。かわいそう、ね? レイチェル」
少女の名は"エミリー=ジャバウォック"。"クランク"の持つカードの内の一枚。
そしてエミリーの傍で微動だにせず直立する成年の女性、彼女は"レイチェル"。
エミリーのその幼い手で造り出された機械仕掛けの殺戮人形だ。
このレイチェルこそがエミリーの最高の友人にして最高の武器。
エミリーが"人形姫"と呼ばれる所以である存在。
「パパとママが、しんじゃったんだもん…。かなしいはずだよ、ね? レイチェル」
血の海に横たわる両親の死体に縋り泣く少年にエミリーは静かに歩み寄る。
「だいじょうぶ、すぐに会えるよ…。…だってひとはしんだらみんな天国に行くんだもん」
「あなたもあえるよ、よかったね」
エミリーの背後から飛び出すように現れるニードルデーモン。
じりじりと少年に詰め寄る。その体中の刺が幼い体を無残に貫くのも時間の問題だ。
すぐ向こう、目と鼻の先でも逃げ遅れた哀れな老婦人が同様に魔物の手によって虐殺されようとしている。
「…このままだったらすぐにおわりそう、ね? レイチェル」
ほっと安堵の息を吐くエミリー、そんな少女の姿はこの戦場に於いてある種倒錯的で異彩を放っていた。
【東区:エミリー出現、ニードルデーモンによる蹂躙を見守っている】
◆ENEMY CHARACTER◆
名前:エミリー=ジャバウォック
性別:女
年齢:12
性格:根暗・感情的かつ衝動的
外見:長い黒髪(前髪は目にかかっている)・黒い生地のエプロンドレス
血筋:平々凡々な玩具屋の娘
装備:成人女性を模した身の丈180cm程の機械人形、名はレイチェル
遺才:――
マテリアル:――
前職:――
異名:人形姫
左遷理由:――
基本戦術:遠距離から人形を操って戦う
目標:敵を殲滅
うわさ1:両親から玩具作りの業を教え込まれ、初めて作った玩具がレイチェルらしい
うわさ2:友達はレイチェルだけしかいないらしい
うわさ3:店に押し入ってきた強盗に両親を殺されてしまったが、その際レイチェルを操り“死”という名の報復を与えたらしい。
【ダンブルウィード東区】
まずはニードルデーモンに挑んでみた。分が悪かった。
持っているナイフでは攻撃範囲が短く、急所を突こうにも針のせいで近づけない。
はっきり言って相手の攻撃が当たることはないので負けることはないのだが、勝つにもかなり骨が折れる。
だから諦める。
戦うのにはもっと適した人がいるはず、みんな"天才"なんだから。
「俺は、俺の能力が一番発揮されることをするだけっスねぇ」
デーモンの注意を引き付ける。
突然目の前に現れる。そしてすぐにいなくなる、気づけば少し向こうにいる。
そちらに針を伸ばす、しかしそれは空を切る。やはり少し向こうにいる。
空間移動でもなんでもない。ただ走っているだけ。しかしそれが異常に速いだけだ。
その過程が認識されないのなら、瞬間移動と何が違うのだ?
同時進行で市民の避難誘導も行う。倒れた市民には腕を差し出す。歩けない市民には肩を貸し、心折れた市民には声をかける。
大丈夫、人には尊厳がある。そう簡単に立ち止まったりしない。命さえあれば、またいくらでもやり直せる。
その気持ちひとつで、ウィレムはひたすら区内を駆け回る。
どう考えても出来ないだろう?
こと二つの事柄を同時進行なんて。
この男なら、出来るのだ。
走っているうちに、目の端にとある光景。急停止、そちらに注目。
「危ないっ!!」
言うが早いか走るが早いか。ウィレムは駆け出し、危うくニードルデーモンに刺されそうになった少年と。
もう1人、そこにいた"少女"を抱きかかえ、すぐにその場から離れる。
ウィレムは基本的に単純だから、何も考えない。
こんな危ないところに小さい子供がいるのなら、助けるのになんら躊躇いはない。
その少女が発する雰囲気にも、気づくことはないのだ。
しかしウィレムはそんなに体力に余裕がある訳ではない。少年少女とはいえ2人も抱きかかえていつも通りの速さが出るものか。
(ガ、ス、欠……)
突然緩慢な動作になり、その場に立ち止まってしまう。
先ほどのニードルデーモンは当たり前のように追ってくるし、なんか女性っぽい人形もこっちに向かって来ている。
少年少女を見捨てればウィレムは逃げられるだろう。それぐらいの体力なら残っているはずだ。
当然そんなことは選択肢に入らない。俺は何のためにここにいるのだ。
しかしこのままでも当然死んでしまう。いくら死んでもいいって思ったからってこの死に方はあんまりだ。
それに俺が死んだら当然この子達も死んでしまうだろう。何が人の役に立っての死、だ。これでは死にきれない。
さてどうするか。
ウィレムの頭には一つしかない。
――他力本願。
「センパーイ!助けてセンパーイ!」
たった一月だけの護衛会社勤めではあったが、ウィレムだっていくつかの依頼はこなしてきた。
とは言っても精々その足の速さを活かした伝令など。とてもではないが要人警護の役目をウィレムがすることはなく。
まさに護衛に適していると言える遺才の持ち主が、その任を果たしていたことを強烈に記憶している。
多数の凶刃から、まさに文字通り身を挺して庇い、武器を破壊し。
その姿はまさに盾であり、壁であり。ウィレムの瞳にはとても眩しく映っていて。
同じくここに飛ばされたと知った時はそれは驚いたものだ。何をやらかしたのかしらないが……まぁ何かやらかしたのだろう。
だけど、同時にとても心強かった。
センパイがいるなら大丈夫。
センパイがなんとかしてくれる。
だから。
「センパーイ!僕らこのままだと死んじまいまっス!」
とりあえずあらん限りの声を張り上げる。
ヘタレはここにいた。
どもども
今日、体洗うためのタオルこうてきた 切れちゃってさ
カゴメトマトジュースのもっと
風呂わかしてはーいろっと! バブ@森の香り
おまえらー いそじんのうがい薬こうたー!!!
【ダンブルウィード東区】
多くの場合、人の願いとは叶えられぬ物だ。
どれだけ願い請おうと、運命という流れの前に願いは容易く阻まれる。
ましてやそれが「死にたくない」という願いであれば、尚更。
この世界において、命は軽い。
風の前の塵の如く
落ちる前の枯れ果てた葉の如く
だが、それでも。
誰かを救おうとする者がいる限り、世界に救いはある
「――――疾風怒濤疾風迅雷、電光石火に俺参上ッッ!!!!」
針の魔物に穿たれ、哀れな肉塊と化そうとしていた老婦人。
彼女が待っていた「死」という運命の流れに、一枚の壁が立ち塞がった。
その壁とは、運命さえも捻じ曲げた壁とは、石造りの民家の屋根から
飛び降りてきた、たった一人の青年。
「ひゅー、なんとかセーフだったみてぇーだなっ!! 大丈夫か、ばーちゃん?」
速度の遺才を持つ少年の助けを求める声に応えるかの様に、
赤いバンダナを巻いた蒼髪の青年、フィン=ハンプティが、
ニードルデーモンの凶器たる棘を右腕一本で「受けてとめて」いた。
「よっ!久しぶりだな、ウィレム! そこの坊主と女の子も怪我は無いか?」
蒼髪の青年は背後の老婦人の無事を確認した後、その棘を受け止めたままの姿勢で
視線をさらに後ろにいた三人……かつての後輩である少年と、幼い少年少女へ
向け、少年の様に「にっ」と笑い、左手の親指を立てて見せる。
まるで歴史にその名を消した勇者という言葉を体現するかの如く。
勿論、この間でニードルデーモンが黙って動きを止められていた筈も無い
死を唄う事を妨げられた事への怒りをぶつける様に、
その恐るべき棘を、何度もフィンに突き刺そうと体当たりを試みていた。
だが、結局その攻撃が一度としてフィンの身体を抉る事も、フィンを後退させる事も無かった。
何故なら、その全てがフィンの手甲に妨がれ、軌道を反らされ、それと同時に棘が砕けていたから。
棘とは直線的に衝突すれば恐るべき貫通力を発揮するが、それは正面からぶつかってこそのもの
少しでも進入角度をずらされ、衝撃を与えられれば、存外容易く砕けるものだ。
更に、その棘よりも衝突した物体の硬度が高ければ……結果は言うまでも無いだろう。
フィンはその緻密な防御を、直感によって片手間で行っていたのである。
やがて、多くの針が砕け落ちたニードルデーモンは苛立ちと警戒心から
気味の悪い雄たけびを上げる。それを聞いたフィンは少々不愉快そうな表情をニードルデーモンへと向けた。
「……あーっ、うるせぇうるせぇーっ!!
折角後輩と話してんだから、空気読めよっ!!」
そして、再度体当たりしてきたニードルデーモンの軌道を逸らし、
近くの石壁へとその勢いに任せてぶつけさせた。
棘があってこその攻防一体という事は、その棘が減れば言わずもがな。
今まで棘に守れれていた生身の肉で石と衝突したニードルデーモンが苦悶の声をあげる。
――が、それで絶命する様子も無い
防御にこそ特化しているが、フィンの行動に必殺の威力はない様だ
「……ん?なんだありゃ?
ウィレム、あれお前の知り合いか?」
と、そんな感じでニードルデーモンをいなしていたフィンは、その視界に異様な物を捕らえる。
それは女性を模した人形。精巧に緻密に作られた、殺戮兵器。
勿論、フィンがこの人形の繰り手について知っている事はないので、背後の少女を疑う様な事は無い。
ただしそれでも何かを感じたのか、歩いてくるその人型に対して、軽く防御姿勢を取る。
>「男も女もあるか。あいつやお前みたい天才を『剣鬼』とか『才鬼』って呼ぶが、どうしてか知ってるか?
――おれたちにとっちゃ、お前らみんな等しく『化物』なんだよ。男尊女卑ごっこならよそでやってろ」
「ハッ、悪いがその件については統計なんでな。文句なら歴史の教科書にでも書き込んでろよ」
悪意的な笑み――悪意の濃度を一層増していく。
言葉を悪意で研ぎ澄まして、背中を突き刺す刃を吐き捨てた。
「あぁそうだ、教科書と言えば課長殿。アンタ、農家出身なんだって?
アンタを学校に行かせるにゃ大変な苦労があっただろうに。……報われるといいなぁ?」
ボルトの手元のペンに、薄汚い羽毛で撫でるような視線と笑みを向ける。
直接的な示唆は何もしない。晴れやかな未来の暗示――光の裏に必ず生まれる闇を覗かせた。
――俺を排除出来るのなら、やってみろ。生涯を貫く後悔をくれてやる。
歩みの鈍ったボルトを追い抜き、振り返りざまに言外の挑発と脅迫、嘲笑を浴びせる。
>「はじめまして、帝都近衛騎士団より出向いたしましたセフィリア・ガルブレイズです。
至らぬ身ではございますがよろしくご指導ご鞭撻をお願いいたします任務のほうは……特になにもありませんでした」
「……随分とデケェのに乗ってきたなぁオイ。
持ち主が見合う脳みそ持ち合わせてないってのが唯一にして最大の失敗って所か?」
圧倒的な暴力を連想させる岩塊を見上げ、しかしサフロールは動じない。
言葉の刃は一層鋭利に研ぎ澄まされ、口舌から溢れる毒はより凶悪に。
あらゆる者に害意を振り撒く。
世界から嫌われるが故に世界を嫌う――好意の返報性の裏返し。
嫌うから傷付ける。傷付けるから嫌われる。底なしな悪意の螺旋。
「……だがまぁ、確かにマシなゴーレムだ。目的を明確にして、最も単純な方法で実現させている。
つまり破壊と質量だ。ま、相手を轢き潰すにしろ対ゴーレム戦闘に使うにしろ、脚部と重心、側面装甲に改善の余地があるがな」
比較的親しげな口調と、興味を引くだろう話題を引き連れてゴーレムに歩み寄る。
相手に合わせた情報と態度――同好の心理的報酬、対人方略。
脚部を一撫で、密かに魔力を浸透させた。
眠れる命令は追跡と爆破、まだ見ぬ敵の目的がゴーレムの鹵獲である以上、保険を忍ばせる。
状況に応じて、忍ばせた魔力を援護にも回せる。何一つ損はない。
が、誰にも告げはしなかった。敗走を前提にした策を、天才が受容するとは思えない。
――いや、そもそも自分のした事を、他人が受け入れる筈がない。
細工を済ませ、バックパックを受け取った。
汎用性に特化したオールインワン――凡人達が合理を追求し、洗練した逸品。
「けっ、悪かねえが……上等なモンを揃えりゃ優秀って訳でもねえだろ」
だが、天才に与えるには明らかに間違った一品。
軍属でない者にトラップツールを与えた所で使いこなせる訳がない。
『最終城壁』に治療符など、お笑い種にしかならないだろう。
鳥に剣を持たせ、獣に靴を履かせているのと変わらない。
小さな鞄から漏れ出す、自分への嫌悪感。
「否定の一環って事かよ。下らねえ」
胸中で蠢く悪感情を路傍に吐き出して、司令部へと向かった。
>「住民の避難状況は?」
>「8割方は完了しているが、年寄りや怪我人を抱えた家はまだちらほらと残っている。
なるべく一般市民に被害を出したくないが、もしもの時は――国庫は開けておくとのお達しだ」
「国庫だけじゃなくて悪人共の抜け道まで開けとくんじゃねえぞ?
ゴーレムの鹵獲を完全に秘匿出来るなんて、盗まれた奴の頭にクソが詰まってるか、
天才の集団でもねえ限り出来やしねえ。まず間違いなく、民間人、或いは軍にも潜り込んでるプロがいるぜ」
今回の目的は失われたゴーレムの捜索、回収、強奪者の撃破だ。
だが問題は違う。そもそも国防に関わるゴーレムが容易に盗まれた事自体が問題なのだ。
見つけた、取り戻した、倒したで終わりではない。
再発の防止が為されなければ、木を切り倒して根を殺さないのと同じだ。
>「エリック班より支部に入電!市街地にて正体不明の目標から攻撃さる!部隊の損耗が酷い!援護を!」
>『――ゴーレムだ。人の乗ってない、操縦基の空になったゴーレムが、独りでに……!』
「……あぁ?わざわざ鹵獲したモンを使って、どう言う事だ?何が目的だ?」
脳内の情報を分析し、分解――幾通りものパターンに再構築して予想を立てる。
隣国の侵略。隣国に注意を向けねばならない為、必然的に駆逐されない魔物の侵攻。
戦争による利権にあやかっているからこそ生まれる軍への――或いは戦争への怨嗟。考えにくいが愉快犯。
だが幾ら考えども、明確な答えは浮かばない。判断材料が少なすぎる。
>「――出番だ遊撃課諸君!」
>「――状況開始だ」
「クソ分かり切った事を抜かすんじゃねえって、俺は今日一日で何度言えばいいんだ?」
皮肉を吐き、立ち上がる。
両手に通した黄金の腕輪、煌くイヤリング――失われた天使の光輪。
胸元で揺れる銀の十字――神に奪われた神聖性。
己の身体を天使に近付ける。魔力が滾る。
音もなく、サフロールの背から翼が兆した。
背中に受け続けてきた悪感情の視線を思い出させる、薄汚い黒で斑に染められた翼が。
魔力で構成された無数の羽が舞い上がり、陽光に溶かされたかのように消え去った。
「ゴーレムに魔物の群団か。興味ねえな。分析《バラ》すまでもなく壊滅《バラ》して終わりだ」
『飛翔』の魔術を行使して、サフロールは中央区へと飛び立った。
高層な建物の上に降り立ち、戦場を見渡す。
立ち止まっている間も、魔力の羽は絶えず飛散していた。
不意に地響き、乙型ゴーレム『インファイト2』の進行によるものだ。
「おーおー、マジで操縦席に誰もいねえのな。まぁ、不可能な芸当じゃねえ。
魔力を糸状にして接続しておくか、予めルーチンを叩き込んどくかすりゃいいだけだ」
軽口を叩きながらも、サフロールの表情は冷冽だった。
彼は自分の口にした事が『可能』で――しかし『至難』の芸当だと理解しているのだから。
人間は非常に複雑な計算の上で、自分の姿勢を制御している。
無意識にしているその計算を、ゴーレムの操縦では意識的に行わなければならない。
魔力線を保ちながら計算をこなす。魔力に複雑な計算式を込めて、自動でゴーレムを制御する。
どちらであったとしても『人間業』ではない。
『天才の集団』、自分の吐いた嫌味が脳内でリフレインする。
「まさかな、と言いたい所だが……」
悪辣な笑みがサフロールの表情を支配する。もしも敵方に『天才』がいるとしたら。
自分で好き勝手に分解出来る実験体が手に入るかもしれない。
彼は『遺才』を分析し、その核心を解明して抉り抜くつもりでいた。
『天才』に再現性を付加するのだ。
帝都が恋しい訳じゃない。研究院でやりたい事がある訳でもない。
だが、サフロールは『天才』の再現を目指していた。
――彼自身も、意識していない願望によって。
>「剣のように鋭く、鉄のように硬い……か、確かにその通り。
でも、言い方が悪いです、鉄のように柔らかいのが正しいはず」
「遅いぜ指揮官殿。で、御下知の方は?」
建物の屋上を飛び降りて、中央区の通りに見えたレイリンの隣へと降りた。
たちまち、ニードルデーモンがサフロールを引き裂かんと殺到する。
しかしサフロールは動じない。ただ再び『飛翔』を行使して、後方へと大きく飛び退く。
直後に頭上からゴーレムの巨大な手のひらが、一瞬前の彼の居場所を、ニードルデーモン達を叩き潰した。
>「夜ならともかく、昼にこれは少し厳しいですね。
あの分厚い装甲がある以上生半可な攻撃は届かない……」
>「オブテイン、力を貸してください」
「……まぁ待てよ。あのゴーレムは恐らく魔力線か、注ぎ込まれた魔力の情報によって操縦されてる。
でなきゃあり得ねえんだ。魔力なしに石塊は動かねえ。
だからアレを止めたきゃ、魔力線を『精査』してぶった切るか、新たに魔力を叩き込んで命令を壊してやりゃあいい」
それだけならば最悪、遠距離からでも行える。強烈な魔力波を浴びせて、敵の魔力を塗り潰してやればいい。
命令系統を破壊するだけならば、ゴーレムそのものは無事だ。
破壊よりも奪取、手柄は大きい方がいいに決まっている。
「が、しかしだ。どうせなら俺はその『魔力』を補足する事を提案するぜ。
そうすりゃ芋づる式に『操縦手』の位置が特定出来る」
奪取に加えて敵の捕獲も可能になる。
自身の内側に巣食う天才性が、最大効率を求めろと孤独に呟く。
凡人共の届かぬ領域に飛び立て、こんな事も出来ないのかと見下してやれと囁き続ける。
遥か天上から悪意の毒薬を撒き散らしてやれと、喚き散らす。
「そうとも、俺は天才だ。凡人共にも出来る仕事なんざに甘んじていられっかよ」
殊更激しく、魔力の羽が舞い踊った。
そして――唐突に、魔物の群れの奥深くから声が響く。
『助けて!誰か助けて!』
『クソ、撤退しろ!諦めるな!友軍はすぐそこだぞ!』
無数の棘の隙間から垣間見える民間人と、軍人の姿。
助けに向かう暇などなく、魔物達が飛びかかる。
しかし周囲に広がったのは断末魔の悲鳴ではなかった。
無数の羽――宙空に溶けていった、サフロールの魔力で構成された羽。
それらが一斉に、一律に、真紅の輝きを放つ。
直後に『爆発』の魔術が、逃げ遅れに襲いかかった魔物を棘一本残さず灰燼とした。
サフロールの技能――己の魔力を分解し、周囲に散布。
羽として再構築し、魔術を発動する。今回ならば『幻覚』と『爆発』を。
類稀なる分析能力の結晶たる芸当。
欠点――魔力波などによる散布した魔力の消滅、散布と拡散の速度、改善点は多い。
また何よりも、あまりにも似合わない翼そのもの。
「さあて、これで特大の穴が完成だ。回収の事を考えると、泥沼の方が良かったんだがな。
……で、ここからはテメェらの仕事だぜ」
爆発で作り出した穴を見据え、解説を始める。
「いいか、正直言ってあのゴーレムは欠陥品だ。あのサイズを二本足で支えるなんざ、無謀以外の何物でもねえ。
魔術で補佐しているみてえだが、そんな事するなら端から構造を変えりゃいいんだ。
コンセプトワークってモンがまるで出来ちゃいねえんだよ、アレは」
ロマンなんざクソ食らえだと吐き捨てて、続ける。
「つまり弱点は足って訳だ。他のゴーレムの装甲を足してるせいで、重心も崩れてやがる。
ぶっ壊す必要はねえ。盛大に転ばせて、あの穴に叩き落としてやりな。
ま、穴に落とせなくても周りの建物に突っ込みゃ地力じゃ抜けらんねえだろうがな。課長殿の叱責で耳を傷めたくねえなら気張りやがれ」
とは言え、と補足事項へと言葉の架け橋を繋ぐ。
「欠陥品つっても、ありゃ天才の作った欠陥品だ。凡人共の最高傑作なんざより、よほど厄介だろうよ」
長口上の締め括りは彼の本性、露悪的な笑い。
「女共にゃ荷が重いかもなぁ。おうそこの高慢ちき、ちゃんと矢はまっすぐ飛ばせるか?アイツまで届くのか?
吸血鬼も、気楽にやれよ?どうせ日中だから力が出ませんでしたって言い訳があるんだからよ。
仮面のテメェは……論外だな。仮面なんてのはテメェに自信がねえって告白してるようなもんだぜ」
毒舌と暴言――本性ではあっても、本心ではない。
彼女達の能力は他ならぬサフロール自身の遺才『分析』によって、有用性を理解している。
小馬鹿にされたまま黙っているような連中でもないという事も、だ。
【穴を跨がれる→突き落とせばよくね?防御固い→ローキックでダウン取ればよくね?
同部隊の三人に暴言、焚き付ける】
長旅の垢を落とす暇も無く、ダンブルウィード司令支部は恐慌と怒声とが入り混じる喧騒に包まれていた。
もとより此の地は戦場。散発的とはいえエルトラス軍と兵火を交えている。
だから、多少のことでは揺るがない。しかし今回は勝手が違った。
>「今の話は聞いてたな?作戦内容に変更はねえ。速やかな制圧と、ゴーレムの回収だ――」
攻め手は群れなす魔物。それと無人稼動するタイタン級陸戦ゴーレム。
下される命令は殲滅、そして拿捕。
(偶然……なんて都合の良い理由ではありませんよね)
人と、魔物と、意思無き機甲。それらが同時に強襲してくるなど偶然でも有り得はしない。
確固たる思惑、あるいは陰謀が渦を巻いているのは明白。
ならば此方の打つ手は、それらを真っ向から食い破るのみ。
(とはいえ、些か数が多そうですよ)
――多勢に無勢。そんな逡巡を否定するかのように、ボルトは寡兵をさらに三分。
通常の部隊運用からすれば徒に戦力を分散するだけの自殺行為。
しかし天才揃いの遊撃課は"常識"の枠外。文字通り一騎当千の集合体。ならばこその作戦だろう。
隊長は唯一の凡人、というのが先に閲覧した考課表の記載だったが、決して型に嵌めたがる愚鈍では無い。
いや、むしろ柔軟といって良いだろう。
本人にとってそれが良い評価かどうかは判らないが、彼すらも"枠外"の人材ということだ。
>「……アンタ、どっかで見たことあるような」
「あ――」
思索に没頭する余り気づくのが遅れた。
ボルトの三白眼が疑わしげにノイファを捕らえている。
「――あ……あらら、随分と古風な手を使いますね、ボルトさん。
これから戦闘が始まるっていうのにお茶にでも誘っていただけるのかしら?
あ、それともウチの常連さんでしたか?
それは申し訳無い事を……ごめんなさい、内勤ではないものですので。」
内心はかなり肝を冷しているノイファだが、笑顔を取り繕う。
マダムから手解きされたおかげか、今では完璧にそれをこなせる自身があった。
あまり褒められた特技では無い気もするが、背に腹は代えられない。
>「『予見』の遺才だっけか?胡散くせえな……まあいい、防御系の技能持ちだったな、東区の指揮はアンタがとってくれ」
功を奏したのか、単純に突っ込んで欲しくない所に触れたのか、それ以上の詮索は無かった。
代わりに東区の指揮を任される。
「了解しました、ブライヤー隊長。」
踵を打ち合わせ、敬礼を送り、おまけに片目も瞑りつつ、ノイファはその言葉に応えた。
「――と言うわけで、皆さんと一緒に東区の担当と、現場指揮を受け持つことになったノイファ・アイレルです。
"さん"でも"ちゃん"でも呼び捨てでも、お好きなのを選んでね。」
指令支部から程近い担当区域の東区へ、駆け足で向かうその道すがら、ノイファは自己紹介を済ませた。
即席の部隊。隊員は"前衛"のセフィリアに、"守衛"のフィン。そして"遊兵"のウィレム。
其処にノイファを加えた計四人。
ダンブルウィード周辺に生息する魔獣程度なら、例えダース単位で居たところで問題なく撃破可能だろう。
「どうもお待たせしましたっ。帝都王立従士隊『遊撃課』です!」
東区に到着するのと同時に、ノイファは声を張り上げ宣言する。
住宅街に溢れかえる魔獣の群れと、防戦一方の司令支部付の兵士たち。
敵ならば意識を此方へ引き付けるために、味方ならば檄の代わりに。
効果の程は半々。
思惑通りに此方へ首を向けるのも居るが、全部が全部そうでは無い。
逃げ遅れた老婦人を獲物と定め、一体の魔獣が襲い掛かる。
「拙い!ウィレム君っ――」
人の脚では到底間に合う距離ではない。突撃用ゴーレムでも初速で敵わない。
ならば――『韋駄天 』の名を冠する天才ではどうか。
>「俺は、俺の能力が一番発揮されることをするだけっスねぇ」
ノイファが最後まで言い終わるよりなお疾く、ウィレムが肉薄していた。
(凄い……初動からもう目で追えないなんて)
ちょっとした長剣サイズの魔獣が持つ無数の棘と、ウィレムの持つナイフの相性ゆえに倒すには至っていない。
それでもウィレムは付けば離れ、離れればまた間合いを詰めと、魔獣を手玉に取り続ける。
片手間に幼い二人の子供まで回収してのけるという偉業も成し遂げていた。
>「センパーイ!助けてセンパーイ!」
だがそれにも終わりが来る。
人の限界速度を遥かに超越した動きと、二人の子供という余剰過重がウィレムから体力を奪っていたのだ。
しかし、自分の命がまさに風前の灯火だというにも関わらず、ウィレムは逃げない。
>「――――疾風怒濤疾風迅雷、電光石火に俺参上ッッ!!!!」
救いは来た。空から。
「えぇっ!?何時の間にあんなトコに……。」
家屋の屋根から、勇者よろしく飛び降りて窮地を救ったのはフィン=パンプティ。
魔獣の棘を片手で受け止め、続けて繰り出される突進にも、微動だにしない。
(こっちもとんでもないですね。直前で打点をずらす体術と、それを見極める眼の精度。)
『天鎧』という名の絶対防壁。防御に特化した無毀の盾。
交差法の要領で、自身の衝突力を跳ね返された魔獣は、全身の棘をへし折られ石壁に叩きつけられる。
「思わず呆気にとられたけども……セフィリアさん、私たちも行こう。
ウィレム君とフィン君には打撃力が不足してるからそれを補うように。
取りあえずこの付近を片付けちゃおう。私は向こうから、貴方はあっちから、真ん中で合流ね。」
ひらひらと手を振りながら、セフィリアへの指示を出し、ノイファは駆け出す。
「よいっしょお!」
疾走、跳躍。
すれ違いざまに――抜刀。
ノイファが真っ先に狙いを定めたのはフィンに叩き伏せられたニードルデーモン。
腕の力だけでは無く上半身の捻りで加速し、鞘走らせた白刀が、頭頂から腰間までを両断する。
ドス黒い血流と内容物を撒き散らし魔獣が絶命する。
「次は……っと。」
四肢をたわませ、棘を突撃槍の如く掲げ、突進してくる魔獣が一体。
太刀を正調に構えたまま、右脚を開いて踏み込み、左足を引き付ける。
交差。一閃。
魔獣の棘は虚しく空を突き上げ、勢いを維持したままに走り去り、その途中で二つに別れて地に伏せる。
「残念。さてと……って、今度は二体同時!?」
時間差で迫る二重の棘。
一つ目を切り抜けても二つ目が襲い掛かり、迷っていたのでは一つ目を避ける猶予が無くなってしまう。
(仕様がない……こればかりは何度やっても慣れないですが――)
――背に腹は代えられないと、ノイファは自身の右目に魔力を通した。
導線を得て活性化した"魔"が、秘めた異能を十全に発揮しようと爛と輝き。
熱を帯びた右目の視界が開け、世界が姿を変える。
眼を通して脳に送られる少し先の未来。力の起こりと、移り、流れ、その到達点。
自身の行動の結果、相手がどう動くか。その最適解。
一体目の魔獣は出頭に首を跳ね飛ばし、欺瞞動作で二体目の選択肢を削り、叩き斬る。
「お待たせ、っと。二人ともお手柄でした――うん?」
合計四体のニードルデーモンを無傷で斬り伏せ、フィンとウィレムの下に辿り着くノイファ。
しかしその先で、二人が纏った警戒の気配に眉をひそめる。
視線の先に居るのは、此方へ向かってゆっくりと歩く長躯の女性、否、女性の形を模した機構人形。
無論、ただの人形がこんな戦場に居る訳もない。
「これは……確かに、嫌な予感がひしひしとしますねえ。」
ノイファもフィンに合わせる様に、手にした白刀を構えた。
>「そのゴーレムは鹵獲品か?違う?自前か。そりゃ随分と無茶な……って、お前指令書読んだか!?
それサムエルソンじゃねえか。小回り最優先の市街戦で使うような機体じゃねえだろ!」
「い、いえ、そのようなつもりは移動用に便利で……あと……」
セフィリアは言葉を詰まらせる
彼女自身は気を使ったつもりだったのが目の前の新しい上司、ボルト=ブライヤーにはいささか不評という様子
しかし、他の面々も一様にセフィリアが持って来たゴーレム『サムエルソンmk.3』に興味はありといったところだ
その証拠に……
>「おうおう、遠路はるばるよくぞ参った! 自分の家だと思ってくつろぐと良いぞ!」
「は、はぁ……?」
見たこともない道化士然とした風貌、初対面に馴れ馴れしい態度、物言い
セフィリアのいままでの人生で初めて出会う『異種』
「よ、よろしくお願いします」
その態度は警戒というより困惑の色が強い、セフィリアはこの人は苦手だなと本能的に感じた
困惑の横で新上司ボルトはセフィリアにまだなにか言いたげな表情であった
まだなにかあるのかと、身構えてしまう
>「お前はこの街にピンボールでもしに来たのか!?解体屋の真似事するつもりがねえなら大人しくしてろよ。
……まあ、その、道いっぱいの魔物を轢き潰すのに使うんでもねえ限りな」
「なんで最後の方ちょっと照れてるんでありますか……」
上司と同僚の掛け合いに苦笑
「そんなことはありません!私のサムちゃんはそんじゅそこらの猪ゴーレムと一緒にしないでください!
装甲だってマルネシリア鉱山の上質の魔法銀を使ってますし動力だってレオンチェフ社のスタンダードモデルではなく、ハイエンドモデルの……
あと秘密の機能が……」
その後も魔導回路はどこのを、サスペンションはこう手を加えているなど司令部に案内しつつ熱く語ったが皆はほとんど聞いていなかった
司令部に一同を案内するという大役を果たして一息という訳にもいかず、バックパックを支給され、ついにときはきた
>「――出番だ遊撃課諸君!」
見計らったかのようなタイミング、空気は刹那に引き締まる
敵が動き出した、セフィリアの背中には冷たいものが走ったが顔や自らが発する空気にはいっさい出さなかった
街に住民がいて、魔物が襲撃してくるという状況は『訓練』でそういう『想定』のもと、という大きな前提がある経験だけ
近衛騎士団とは重要人物や政治的な重要拠点の警護するというのが主な仕事だ
魔物討伐やの野盗相手の鎮圧戦などは管轄外もいいところ、セフィリアは人を殺したことはない
「人殺しは嫌だ」とか「戦いが怖い」とかそういう勘違いモラリストとは違う
ただ単純に機会がなかっただけなのだ
彼女は緊張していただけなのだ、コンクール前のピアノ奏者のように
>「バリントン、ガルブレイズ、パンプティは東区で魔物の撃滅と住民の避難!おれも後で行く。
迅速さが問われる任務だ。良いとこ見せろよバリントン。東区を制圧したらバリケードを築け、埋没機雷も貸してやる」
「プライヤー課長より任務拝命いたしました。これよりセフィリア・ガルブレイズ、我が剣技を持ってお応えいたします!」
仰々しく一礼、颯爽と部屋を出て行く、そこに緊張の色を感じることなどだれにも出来なかった
【ダンブルウィード東区】
操縦櫃から見る景色は帝都の平和な雰囲気や喧噪とは対極にある破壊と怒号で溢れていた
大通りにはニードル・デーモンが数を群れてひしめいている
住民の姿はここには確認出来ない、ならやることは決まっている
「これより戦闘用ゴーレムで突撃を行ないます。友軍は大通りより退避せよ!
魔術式拡声器より外部に通告、操縦桿を握りなおす
巨躯を駆り、大通りを最高速で加速する、巨体、重量で敵をひねり潰していく、自慢の外皮もゴーレムの前にはブリキも同じであった
「蹂躙完了しました。個別殲滅に移ります」
その声には多少の熱気が混ざる、操縦櫃から身を乗り出し、跳躍、着地、再び跳躍
ニードル・デーモンに躍りかかる
腰に携えた双剣を引き抜くと一撃、弾かれる、その勢いを利用して逆手でもう一撃、外皮にヒビがひとつ
視線を移す、左右には路地と酒場等の背の低い建物、路地に走り込み、壁を蹴り酒場の2階テラスに飛び上がる
再び視線はニードル・デーモン、2階から飛び降りヒビに剣を突き立てる
「まずは1匹!次っ!」
路地奥のニードル・デーモンを眼鏡が捉える姿勢を低くし地を駆ける
そのまま膝蹴りで刺のないあごを狙い顔面を無理矢理あげる口に剣をねじ込み。剣を上下に開いた
内部から真っ二つにされたカエルもどきが湿った音を暗い路地裏に響かせた
「はあ・・・はぁ・・・次!」
路地を反対に飛び出し目にしたのは
>「センパーイ!僕らこのままだと死んじまいまっス!」
助けを呼ぶウィレムの姿だった
「バリントン!」
彼を助けようと駆け出した、だがそれよりも早く先に彼を助けたものがいた
>「よっ!久しぶりだな、ウィレム! そこの坊主と女の子も怪我は無いか?」
彼の手甲裁きはニードル・デーモンの猛攻を容易くいなし、難なく無力化した
「ハンプティさん、す、素晴らしい腕前ですね」
救助に成功した様子を確認するといままで続いていた緊張の糸がほんの一瞬、緩んだ
ニードル・デーモンはそこを感じとったのだろう、セフィリアに襲いかかろうとその体を動かし……
襲うことは出来なかった。そこをノイファが先んじて息の根を止めた
「あ、あぶなかあぶないところをありがとうございます・・・」
ずれた眼鏡を直しながら避難民の無事と自分の安全を確認し今度こそ安堵する
剣をしまいノイファと状況の打開を話し合おうと話をすすめた
「アイレル女史、こちらに要救助者が4名、子供たちと老人です。私はまだ戦闘行動を続けるので人員を回すよう手配したほうがよくありませんか?」
現場指揮官に判断を伺う
「いや、ちょっとまってください、もう1名、いますね。お〜い、そこの女の人、ここは危険で・・・す・・・よ・・・?」
セフィリアの目に映るは魂なき人形の姿
あまりに異質、一目見ただけでこれが敵とわかる気配を出していた
それは他の仲間も強く感じていたようだった
そこで彼女は言葉を止めた、これ以上は危険だと本能が叫んだ
「ノイファ女史!ハンプティさん!バリントン!そこの子供たちは任せました。あの機械人形は私がァッ!」
セフィリアの体が弾けるように機械人形に向かう、その最短距離を駆ける姿は弾丸のごとく、抜刀と同じく足の筋肉を最大稼働、本来はブレーキをかける足裏を体に平行に踏み込み、地面を蹴る。氷上の踊り子が渾身の回転跳びを繰り出すように
反発力が彼女の体を地面から押し上げ、前進の推力を文字通り跳ね上げる。そこに回転力が加わる。隙は大きい
だが、セフィリアの速さがその隙をほとんど感じさせることはない
彼女の体を発射台に放たれる銀色に光る刃、風を超える速さでそれは機械人形を捉える
【ゴーレムで多数のニードル・デーモンを蹂躙後、直接戦闘へ そのごレイチェルに先制攻撃】
どもども おはよう
今起きてしまった
ジョギングコースで走ってくるかなー 気持ち良さそう。
ユーロビート聴きながらw
ジョギングすると楽しくなれるぞ
"眷属"、その単語がエミリーの脳裏を過ぎる。
文字通り目にも止まらぬ駿足で幼き少年を――そして何故かエミリーまでもを――窮地から救った"韋駄天"ウィレム・バリントン。
ニードルデーモンの突撃を物ともせず緻密に計算された防衛力でその鋭利な刺を残らず砕いてみせた"最終城壁"フィン=ハンプティ。
同時に迫り来る二体のニードルデーモンの猛攻を見極め最上の選択肢を見事に選び取ったノイファ・アイレル。
流麗、まるで双剣が命を得たかのように縦横無尽に繰り出される剣技でニードルデーモンを斬り伏せた"グラス・リッパー"セフィリア・ガルブレイズ。
彼らは遺才《ブラックボックス》の遣い手に違いなかった。
こちらへと距離を詰める機械人形とそれに対峙する"遊撃隊"四名、そして後方に庇われるようにして立つエミリー。
期せずして挟撃の好機を得たエミリーは心中でほくそ笑む。
>「ノイファ女史!ハンプティさん!バリントン!そこの子供たちは任せました。あの機械人形は私がァッ!」
果敢に向かって行くセフィリア、その駆ける姿は弾丸の如し。だが機械人形は歩みを止めない。
そこに放たれる白銀の剣閃、それは遠心力を帯びて更に力を増す。
突如機械人形のしなやかな両腕が指先から二の腕にかけて割れ、そこから飛び出しナイフのように長身の刃が現れる。
そしてセフィリアの双剣による技を同様に双剣で受け止める。
しかしそこには圧倒的な力量の差がある、その要因が遺才と凡人に因るものか、人間と人形に因るものかはさておき。
軽々と押し切られ、そのまま流れるように刃は機械人形の肩から胸に深々と斬り込む。
もしも相手が人間であったならば確実に致命傷に至る鋭い斬撃、もはや動くことは出来ないだろう。
しかしそれはあくまでも人間であった場合。
機械人形は自身の体に食い込む刃を更に受け入れんとばかりに一瞬でセフィリアとの距離を詰める。
そして刃を収納した両腕をセフィリアの背に回し強く抱擁する。
抱擁と言っても決して愛を伝えるような優しいものではなく、万力のように強烈な力で締め付け骨を砕き死へと誘う抱擁。
続いて両足も腰へと回し両腕と同様にギリギリと締め付ける。
最後に脳天がばっくりと四方に割れ、そこから耳障りな音を響かせながら円形の刃が顔を出した。
「あなたたちはうごかないで」
そこでエミリーがセフィリア以外の三人に言葉を発す。
右手に鋭く研ぎ澄まされたナイフを握り、左手は少年の髪を鷲掴みにして。
ちなみにナイフは傍らで息絶えている哀れな兵士から拝借したものだ。
「少しでもうごいたら、この子をころす」
空でも眺めながら物思いに耽っているかのような淡々とした口調。
小さな少年を殺すことなど蚊を叩き潰すのに等しい、エミリーの中にある残酷で無機質な価値観を如実に現していた。
「…でも、その方がいいのかも。だって天国でパパとママに会えるもん…」
ナイフの刃で少年の柔らかな首筋を傷つけないようにそっと撫でる。
「"人間"は、しんだら天国に行くの。だから――」
そこで言葉を切り虚ろな瞳で三人を、そしてセフィリアを見つめる。
「あなたたちは、いけない。あなたたちは、"ガラクタ"だもん」
ナイフを握る手に力が入り、ぶるぶると震える。まるで抑え切れない怒りに打ち震えるように。
「…血におぼれるガラクタ…遺才にすがるガラクタ…」
ぶつぶつと囁くように"ガラクタ"と恨み言のように繰り返すエミリー。
少年の首に僅かに刃が食い込み、微かに血が滲む。
「わたしたちの力こそが"本物"ッッ!! わたしたちこそが"人間"ッッ!!」
血を吐き出すような叫声で恫喝し、獣のような唸り声を漏らす。
「レイチェル…? …そいつを早くこわして…。……バラバラにするのよオオォォッッッ!!」
エミリーのヒステリックな命令に呼応するように、脳天から飛び出した刃はガリガリと回転音を響かせながらセフィリアの顔面を割り砕く為じりじりと近付いていく。
【エミリー:左手で少年の髪を鷲掴みにし、右手に持ったナイフを首に当て、『動けば殺す』と脅し、人質に取る】
【レイチェル(機械人形):両腕両足でセフィリアの体に組み付き、脳天から割り出てきた回転ノコギリでセフィリアの頭部を狙う】
最近AKBにはまっててさ
みんな結構かわいいし、見てておもしろいよな
今晩は・・・
<テレビ>19:00-19:56 日テレ 「なるほど!ハイスクール」
<テレビ>22:55-23:20 NHK アニメ 「もしドラ」 仲谷明香(北条文乃役)
<テレビ>24:15-24:40(再) NHK アニメ 「もしドラ」 仲谷明香(北条文乃役)
<テレビ>24:55-25:25(※番組開始時間変更の可能性あり) TBS 「有吉AKB共和国」
<ラジオ>19:45-19:50 TFM 「前田敦子のHEART SONGS」
<ラジオ>21:30-22:00 文化放送 「AKB48 秋元才加・宮澤佐江のうっかりチャンネル」
<その他>19:00〜(予定) バンブーちゃんねる_ニコニコ動画 「あみなとニコニコ。」 佐藤亜美菜
みんなお忘れなく!
【ダンブルウィード東区】
助けは、これ以上ないタイミングで現れた。
来て欲しい時に来てくれる人物こそ、居て欲しい時に居てくれる人物こそ、世の中は"英雄(ヒーロー)"と呼ぶのだ。
>「よっ!久しぶりだな、ウィレム! そこの坊主と女の子も怪我は無いか?」
「センパーイ……」
感謝と満足と安心がない混ぜになったような表情を、その笑顔への返答として。
抱えていたままだった2人を地に降ろす。もう俺が守ってる必要はないんだ、センパイが守ってくれるんだから。
もう後は見ているだけで事は済んだ。防がれ、壊され、無力化し、弾かれるニードルデーモン。
とはいえ仕留められた訳ではないようで、思わずウィレムは身構えるが……それも構えるだけで終わる。
同じくここ東区に向かっていた……2人の女性。本当にウィレムは見ているだけしか出来なかった。
次々と魔物を屠っていくその姿はには甚だ感服するしかない。
「いつの時代も、女性は強いと言いまっスけどねぇ…」
ちょっと怖い。
>「……ん?なんだありゃ?
> ウィレム、あれお前の知り合いか?」
>「ノイファ女史!ハンプティさん!バリントン!そこの子供たちは任せました。あの機械人形は私がァッ!」
「……だそうでっス」
その双刃を煌めかせて機械人形に向かうセフィリアを眺めながら感嘆しつつ言葉を吐く。
あの人やら大丈夫だろう、という希望的観測に基づいた軽い言葉ではあったが、そう一筋縄でいく人形ではなかったようだ。
その刃を受け止められ、さらに目でわかる恐ろしい力で締め上げられ……。
「セフィリアさんっ!」
その刃は危ない、と思わずそちらに走り出そうとして、背後からの声にその身を固める。
射殺許可も降り、改めて筆を走らせる。
本来ならば、書きあがったものをウィレムに渡しパシらせようとしたところ
その手が止まる。
それはサフロールの八つ当たりめいた罵声が遮ったからだ。
アルテリアは眉一つ動かさず、隊長であるボルトに視線を向ける。
(さてさテ、どう捌くか見ものだネ)
こんな厄介者部隊を任されるほどの腕があるのか、アルテリアはそこが気になっていた。
>「ならお前は、任務前に解雇(バラ)して無職もどきにしてやろうか。言っとくが課員じゃない奴に帰りの切符はねえぞ」
「ペンは剣よりも強しネ、皮肉なもんダ(なるほどネ、任されるだけあル)」
ボルトのとった行動は、上下関係をフルに使った脅しだ。
生意気な部下を黙らすには一番有効な手段だが、サフロールは一向に黙ろうとしない
ボルトの隊長としての手腕は中々のものではあるが、所詮凡才だ。天才を黙らせることは叶わない
>「あなたたちはうごかないで」
振り向いたその先の、目の前の光景が信じられなかった。思わず瞼を瞬かせる。何も変わらない。
先ほど助けた少女が、同じく助けた少年に、鈍色に光る短刀を突きつけているのだから。
>「少しでもうごいたら、この子をころす」
いくら物分かりの悪いウィレムでも理解できること。
この少女は危険だ。
何にトラウマがあるのか……遺才持ちへの敵対心が、肌でわかるほど。
しかしこの少女について分析している時間などない。
この状況を打破できるのは、俺だけだ。
「そう言われて本当に動かない奴なんかどこにもいないっ!」
ウィレムは走る。普通の人間には、それは消えたようにしか見えないかもしれない。
少女の瞳がそれを映し、脳がそれを認識。脊髄を通って腕の筋肉を動かすまでのその時間で。
ウィレムは少女に肉薄する。
「――っ」
激痛。
少女の腕をとり、少年の首を掻き斬る筈だったその刃を強引にこちらに向けて、自分の左太腿に突き刺した。
「こうすれば……もうナイフは使えないっスよね?」
少女は少年の髪の毛を掴んでいる。無理に引き剥がそうとしては、ややもすれば少年の頭皮に大きな傷を残すことにもなりかねない。
ナイフを奪い取ろうともしたが、かなり確りと握っているようだ。もつれ合いになるのは構わないが、少年に害が及ぶ可能性もある。
こうしてしまえば、ナイフは使えない。痛みと引き換えに、少女を無力化するために。
実はもう一つ、解決策はあった。
少女の刃が少年に到達する前に、ウィレムの持つナイフで少女の息の根を止めてしまえばいい。『縮地』は、それを可能にする。
自分が傷ついてでも敢えてそれをしなかったのは……勇気がなかったからだろう。
年端もいかない少女を殺すなんて、そんな大それたことの。
「は、早く!センパイも、ノイファしゃんも!俺はいいっスから、セフィリアさんを!」
さて、いつまで体力がもつやら?
射殺許可も降り、改めて筆を走らせる。
本来ならば、書きあがったものをウィレムに渡しパシらせようとしたところ
その手が止まる。
それはサフロールの八つ当たりめいた罵声が遮ったからだ。
アルテリアは眉一つ動かさず、隊長であるボルトに視線を向ける。
(さてさテ、どう捌くか見ものだネ)
こんな厄介者部隊を任されるほどの腕があるのか、アルテリアはそこが気になっていた。
>「ならお前は、任務前に解雇(バラ)して無職もどきにしてやろうか。言っとくが課員じゃない奴に帰りの切符はねえぞ」
「ペンは剣よりも強しネ、皮肉なもんダ(なるほどネ、任されるだけあル)」
ボルトのとった行動は、上下関係をフルに使った脅しだ。
生意気な部下を黙らすには一番有効な手段だが、サフロールは一向に黙ろうとしない
ボルトの隊長としての手腕は中々のものではあるが、所詮凡才だ。天才を黙らせることは叶わない
(バレなきゃいいってんだシ、誤射ってことで片付けよっかナ)
プリメーラに対して降りた射殺許可をあえて曲解し、アルテリアはなんとなくそう思った。
ああいう手合いは鼻っ柱が折れた瞬間に、二度と立ち上がれないぐらいに叩きつぶすのが定石だが
悲しいかな、それはそいつが自惚れた凡才を潰すやり方だ。サフロールには通用しない
だからこそ、効率のいい厄介者の消し方をなんて考えてしまうのだろうか
そんなこんなで列車は目的地であるダンブルウィードに到着した。
「やれやレ、支部の武器で我慢するカ」
嫌みったらしくそうぼやき、ウィレムに渡そうとした地図を裂いて捨てた。
支部についてから、早速アルテリアはバックパップに手をつけていた
レンタルのボロ武器やくすねた支部の武器にトラップツールを用いて何か細工をしているようだ。
鼻歌交じりで手を動かしている中、支部内が徐々に慌しくなる。
トラブルだ。
>「――出番だ遊撃課諸君!」
仕掛けを施した武器を矢筒にしまい、立ち上がる。
そんな中、ボルトは指示を出す
>「シキマとサジタリウス、オブテイン、フェイスレスは中央区。シキマ、お前が陣頭指揮をとれ。
ゴーレムの周りの魔物を掃討し、可能なかぎりこれを撃滅。残存部隊の火力をサポートしろ。
とにかくゴーレムの侵攻を食い止めることを先決にだ。穴掘ってでもなんでもいい、止めろ」
「盛大にやらせてもらうヨ」
短くそう返し、陣頭指揮権を得たシキマに向きを変える。
>「課長からこの場の指揮権を預かったレイリン=シキマです、今から貴方たちには私の指揮下に入って貰います、異論があるなら今すぐこの隊から出て行って下さい。
早速だが私達に求められている働きは魔物の殲滅とゴーレムの足止めです、時間はありません、今すぐ現場に向かいます」
「さすが正規軍ダ。いうこともイチイチ硬いネ」
そう呟き、アルテリアは先をいくレイリンを追うように現場へ向かった。
「しっかシ、随分とまぁ効率の悪そうな戦い方をするなァ」
屋根の上からニードルデーモン共を次々と射殺しながら、下で戦う二人の戦い方に対しボヤく
だが、それ以上に不満を感じる存在がいる。
それは目の前で相変わらず口煩く暴言を吐くサフロールの姿だ。
「まさしく自惚れ屋にはお似合いの格好だナ」
天使のように空を舞い、敵を蹂躙する姿は華麗さと口汚さがギャップを生み出し
まるで神経を鱗取りで逆撫でされるような不快感を感じる
>「女共にゃ荷が重いかもなぁ。おうそこの高慢ちき、ちゃんと矢はまっすぐ飛ばせるか?アイツまで届くのか?
吸血鬼も、気楽にやれよ?どうせ日中だから力が出ませんでしたって言い訳があるんだからよ。
仮面のテメェは……論外だな。仮面なんてのはテメェに自信がねえって告白してるようなもんだぜ」
その声が聞こえた瞬間、溜め込んでいた感情が噴出し、サフロールに対して弓を引いていた。
アルテリアが今構えているのは、先ほどからニードルデーモンに対して放っていたボロい刀剣の類ではなく
支部からくすねてきた、鋼の槍だ。それを最大限に引き、躊躇なく放つ
轟音と共にまっすぐ突き進む槍は、たまたま射線上に入ったニードルデーモンを容易く貫通し、そして
サフロールの頬を掠め、壁に深々と突き刺さる。
「あぁ悪イ、珍しいガチョウかと思っタ」
サフロールに対し、そう平謝りし、次の槍を構える
「だから、謝っているだろう代理(レイリン)?それにただそれだけの為に消費した訳じゃないサ」
仲間割れをするつもりはないことと意図があることをレイリンに伝える。
よく見ると先ほど放たれた槍の掴みの部分から赤い線がアルテリアに向かって伸びているのがわかる
「ようやく分かったカ?まぁ効果は薄そうだと思うがネ」
先ほど放った槍と今現在持っている槍とは鉄線で繋がっていた。
今もっている槍を違うところに放てば、ゴーレムの足を引っ掛けられる程度の罠が出来るだろう
「まぁ転ばなくても足に絡み付けばいいんだがネ」
【サフロールに対し誤射(ワザと)、それだけではなくワイヤートラップも仕掛ける(期待してない)】
風呂上がってきた
半身浴しながら西村京太郎のトラベルミステリー読んでました
>>35>>42 【ダンブルウィード西区】
圧倒的な戦力と破天荒な諸々によってエルトラス兵を壊滅させたプリメーラとロキ!
だが悲しいけどこれは戦争。殺っても張っ倒しても敵はまだまだ湧いてくる。
後続のエルトラス兵たちはプリメーラとロキのある意味対極な戦いぶりに戦慄し、震撼が走った。
「なんなんだあいつら……!精鋭の小隊が手も足も出ないだと……!?」
「相手はたった二人だぞ!むくつけき俺たちエルトラスの兵が、こんなにもあっさりと……!」
彼らとて軍人。選ばれし素養と厳しい訓練を経てこの戦場に立っている。
『遺才』のようなワンマンアーミーを可能にする能力への対処も修めているし、連携もとれていたはずだ。
圧倒的な数と地の利を持ちながら、未だ彼らは慄然と足を止めたままだった。
この距離ならまだ敵にも気付かれていない。しかしこのまま前進を許せば会敵は時間の問題。
「わかったぞ!奴らは多数に対する戦いを心得てる。一対多において最も効率の良い戦術はなんだ」
「同士討ちを警戒させて包囲されないよう立ちまわったり、あるいは同士討ちそのものを誘発させること……」
「――そうか、『精神干渉』!全滅した部隊の不可解な行動にも頷ける!」
「だがどうするってんだ!?ネタが割れたところで精神を操られるんじゃ対処のしようが……!」
「待て、軍事教練で習っただろう。戦場では敵味方入り乱れて戦う羽目になるから、普通の精神じゃいられない」
「常に神経をすり減らしながら接敵に怯えるのが戦場のスタンダート……」
エルトラス兵の一人はそのとき、天啓の如き閃きが脳裏を駆け巡るのを感じた。
戦場の平常心。敵の能力が精神に根ざすものであるならば、そこに漬け込んでくる可能性が高い。
例えば、味方を敵だと誤認させる、とか――。
「つまりだっ!どうせ異常な環境だ、『更に常軌を逸すれば良い』……!!」
「つまり、どういうことだってばよ!?」
「始めからおかしくなっておけばこれ以上おかしくされることはない」
…………………………。
「なるほど!!」
「頭いいなお前!!」
「その発想はなかったわ!!」
「お前の聡明さは三千世界に響き渡るな!!」
「見事な作戦だと感心はするがどこもおかしくはない!!」
「それほどの頭脳を持ちながらどうしてこんな部隊にいるんだ!!」
みんなみんな。
先行した部隊が同士討ちと意味不明な技で全滅するという特殊過ぎる状況に正気の糸が切れてしまっていた。
「決まりだ。作戦名『まじきち!』……俺たちの狂気で、奴らの狂気を凌駕するッ――!!」
進撃を続けるプリメーラとロキの前に、軍装ではない5人の男達が躍り出た。
「イカれたメンバーを紹介するぜ!俺はボーカルのジョニー!」
「たてぶえのジョセフ!」
「フルートのジョージ!」
「ハーモニカのジョルノ!」
「鍵盤ハーモニカのジョナサン!」
5人は鎧を脱ぎ、思い思いの得物をそれぞれ口に構えて立つ。
「俺たちは、素敵な音を奏でる為なら手段は問わない極悪非道の音楽集団!」
「五人合わせて『ジョジョジョジョジョの奇妙な演奏』!!」
「戦争なんてくだらねえぜ!俺たちの歌を聞けェーーーッ!!!」
【精神攻撃対策として狂気に走ったエルトラス兵達。楽器を手にロキとプリメーラに殴りかかる】
「なーんか、肩すかし食らった気分だねェ」
伝書鳥籠を見送り、ロキのハリセンツッコミを受けてから10分後。
プリメーラとロキは、ビスケットをかじる余裕すら持ち合わせながら順調に進撃する。
「初仕事だってのに敵は『死ぬほど』雑魚いわ、ご褒美(脳内では)の娘っ子には逃げられるし。あ、いる?」
愚痴相手の報酬の代わりのビスケットをロキに差し出す。
真正面から剣を振るう敵には狂気を与え、背後から襲いかかる卑怯な敵には鉈の錆になってもらう。
その姿は正に「死神」。《夢》であってほしいと願う《現》を創る魔術師。
「ねェ、ボクを楽しませてくれる奴はいないのかな……?」
唇を尖らせ、笑いの道化師・ロキを見る黄色い目。
道化師の瞳の奥を、彼(女)の本質を捉えようとしていた。
そんな時だ。プリメーラとロキの目の前に、軍装ではない者が複数現れた。
>「イカれたメンバーを紹介するぜ!俺はボーカルのジョニー!」
長いので省略。
「…何だ、コイツら」
予想しなかったイレギュラーの出現に、目を丸くする。
エルトラス軍の連中だろうか。しかし軍装ではない。只の(頭のおかしそうな)音楽家の集団のようだ。
「(つーか全員名前が゛ジョ゛から始まるんだな……)」
しかし何故このタイミングでが現れるのだろう。敵軍から逃げ出してきた類の連中だろうか。
>「俺たちは、素敵な音を奏でる為なら手段は問わない極悪非道の音楽集団!」
鎧を脱ぎ捨て、男達は楽器を構えた。
彼等の真意を掴めないプリメーラは、眉を顰めるしか出来ない。
>「五人合わせて『ジョジョジョジョジョの奇妙な演奏』!!」
「いやいや。団名、長すぎだろ。もっと縮めろよ」
思わず右手の手刀、即ちツッコミを入れる。しかもかなりズレた方向に。
ロキ以上に面倒臭そうな相手が出たなあ、と頭の片隅で溜め息を漏らす。
>「戦争なんてくだらねえぜ!俺たちの歌を聞けェーーーッ!!!」
鬼気迫る表情で襲い来る音楽家達(自称)。
プリメーラ達からすれば、理由もなく戦闘を仕掛けられる不条理。
だが、狂気に満ちた集団を目の前にして尚、彼女はただ眉間の皺を更に深めるのみだ。
「『跳ぶよ』、ハティア」
一番早いボーカルのジョニーがプリメーラに殴りかかるよりも早く。
プリメーラはロキの腕を掴み、音楽家集団の頭上を『跳ぶ』。
さながら、滝の激流に逆らって跳ねる鯉が如く、鮮やかな跳躍。
そうして彼等の背後を取り、脱ぎ捨てられた鎧を見る。
「やーっぱり、エルトラス軍の連中か」
肩甲に刻まれたエルトラス軍の紋章を見、音楽団達を鋭く睨めつける。
「こんなおふざけた作戦で、ボク達を倒そうとか思ってたワケだ。へぇえー……」
グシャリと、鋼鉄製の鎧を、エルトラス軍の紋章をブーツで踏みつける。
「バ カ に し て ん の ?」
怒りに燃える黄色い炎がプリメーラの瞳に輝く。
ロキの腕を強く握りすぎ、ロキが痛みを訴えてようやく手を放す。
「そんなに音楽が好きなら、とっておきの奴を聞かせてやるよ」
ボゥ、とペンダントが妖しく輝く。
しかし、色は翡翠ではなく、攻撃的な緋色の光。
「ねえハティア、お歌は得意?」
緋色の光がロキの喉を踊るように囲い、吸い込まれる。
「歌ってごらんよ。今なら、『君の歌の美しさに、みんな狂っちゃうかもね』」
プリメーラは餌を前にした鮫のように、そう笑う。
そして、人の域を超えた、狂気を誘う歌を聞くまいと、耳を塞いだ。
【プリメーラ→ロキ:喉に催眠《暗示》をかけました】
【喉に催眠《暗示》:人間が出せる限界の音域を゛少々゛広げました。
歌でも歌えば名伏しがたい音に敵のSAN値が真っ逆様かもNE!】
>79-81
>「初仕事だってのに敵は『死ぬほど』雑魚いわ、ご褒美(脳内では)の娘っ子には逃げられるし。あ、いる?」
「どもー」
>「ねェ、ボクを楽しませてくれる奴はいないのかな……?」
「んん? それはどういう意味での楽しませるカナ?
お笑いという意味だったらアイツ……相方がいれば絶対楽しませられたんだけどな〜。
ほんまピン芸人の道はハードモードやで〜」
真実かネタか分からないようにとぼけて受け流す。トリックスターたるもの、本性を見透かされてはならない。
ワケわからんところがトリックスターのトリックスターたる所以である。
>「イカれたメンバーを紹介するぜ!俺はボーカルのジョニー!」 「たてぶえのジョセフ!」
>「フルートのジョージ!」 「ハーモニカのジョルノ!」 「鍵盤ハーモニカのジョナサン!」
「おおっ! 本当にイカれてるね!」
ワタシは無邪気な子どものように笑った。
>「俺たちは、素敵な音を奏でる為なら手段は問わない極悪非道の音楽集団!」
>「五人合わせて『ジョジョジョジョジョの奇妙な演奏』!!」
>「いやいや。団名、長すぎだろ。もっと縮めろよ」
「あー、そんな昔話あったよね! 音楽家の勇者ご一行の伝説! 確か……亀ルーン(カメルーン)の笛吹き男だったっけ!
音楽家の勇者達が世界に平和をもたらすという伝説の笛を探しに行く壮大なる冒険譚だよ。
主人公がルーンが刻まれた亀の甲羅を背負ってる事と伝説の笛がある場所をかけあわせた題名だ!」
>「戦争なんてくだらねえぜ!俺たちの歌を聞けェーーーッ!!!」
「って言いながら殴りかかってるやん! 言う事とやる事がてんでバラバラだよ!」
>「『跳ぶよ』、ハティア」
「おっとお!」
ツッコミが終わるか終らないかのうちにプリメーラに捕まれて跳ぶ。
そこには脱ぎ捨てられたエルトラス軍の鎧。
「勝ち目がない事を認め鎧を脱ぎ身一つで語り合おうとするその心意気……敵ながらあっぱれであります!」
>「バ カ に し て ん の ?」
「あだだだだだ!! 痛い痛い!」
>「ねえハティア、お歌は得意?」
「んー? 昔話の吟遊ソングなら多少」
>「歌ってごらんよ。今なら、『君の歌の美しさに、みんな狂っちゃうかもね』」
ハリセンを拡声器に見立てて口元に近づける。
ワタシと彼女の能力は使い方の方向性さえ違えど親戚みたいなもの。合体させればより強い効果を生み出すだろう。
「あーあー、エントリーナンバー1番、ロキハティア歌いまーす」
♪〜♪〜♪〜♪
あんなこっといいなできたっらいいな
あの夢この夢いっぱいある〜けど〜
♪〜♪〜♪〜♪
ここで恒例の相手側視点だ。歌に合わせ、シュール且つサイケデリックな空間が演出される!
騒々しい喧騒。広々とした緑の芝生生い茂るフィールド。
白黒のボールを追いかけるむくつけき男達。応援団席で歌っているワタシ。
♪〜♪〜♪〜♪
みんなみんなみんな叶えてくれる 不思議な音色で叶えてく〜れ〜る〜
敵に自由に勝ちたいな〜!
はいッ チュートーの笛〜〜!
♪〜♪〜♪〜♪
そこで、よく屋台で売ってる伸び縮みする笛を取り出して吹く。
兵士視点では、むくつけき男達を裁定する偉そうな人が笛を吹く。
ピ――ッ!!
ワタシは確信した。
――勝負、あり!
「ちなみにチュートーの笛とは、前述の昔話における伝説の笛の名前である。
いかなる因果律も無視して吹いた者に無条件勝利に導く超弩級のチートアイテムだ!」
もちろん実際に吹いたのは屋台で売ってるただのピーヒャラヒャラっていう笛だけどね!
【名状しがたい狂気の歌を披露。さらにこちら側の完全勝利を思い込ませる術が炸裂!】
さて、飯くってお腹いっぱいだから ベットで横になるか
今日の俺の夕飯
ご飯 味噌汁 納豆 メンチカツ 野菜炒め
食い過ぎて動けねーんだよ いま ホットコーヒー飲みながら。
うごけねーよ
浜岡原子力発電所とめるとかアホか!
トヨタが反発するか愛知から出て行くかもな
駅に着けばあっという間に臨戦状態に陥っていた。
私含む4人が中央区への配置・・・
「さて、問題は手早く移動する手段ですが、私に一計が・・・」
とみてみればもう全員走り出していたようで、あっという間においてけぼりを食らっていた。
「やれやれ・・・みなさんせっかちですねぇ。」
指を弾くと、足元に赤い噴水が沸き起こる。その上に背中の布包みを解いて載せる。
それは、全てが石で象られた全長2mを超す大剣だ。総重量で言えば噴き出す水を押しつぶしそうなものだが、噴水の上で安定している。
「さて、急ぎますか。」
軽々と大剣の上に飛び乗ると同時、赤い水が中空を走る奔流となる。
当然、大剣もその流れに乗り、高速で宙を駆ける。
⇒中央区
>「「飛翔機雷〜〜〜〜ッ!!?」」
「やれやれ、間に合いましたねぇ。」
爆発の炎と煙を風が吹き飛ばすと、赤い水の球に包まれた兵士二人のかたわらに立つ影。
バリケード自体は消し飛んだものの、兵士二人はその赤い水に守られたようだ。
が、中の兵士二人はじたばたもがきながら何かを水中で必死にアピールしている。
「・・・ぁ」
軽く指を鳴らすと同時に水の球が弾け、二人の兵士がせき込みながら必死に空気を貪る。
『・・・ぜぇ、はぁ、ゴーレムにぶち殺されると思った次の瞬間には変なピエロもどきに溺死させられかけるとか、何なの?ばかなの?死ぬの?
俺の相方は今日が厄日なの?』
『・・・げほっ、いや、そこはお前が厄日だという可能性に思い当れよ。』
「ぁー、どうでもいいですけどここからの戦闘に巻き込まれるとホント死にますよ?」
既に周囲ではシキマ達がゴーレムの周りの魔物たちの駆逐を開始していた。
そこに再びの爆風。オブテインによる大規模空爆から降り立った彼がこちらを見やる。
>仮面のテメェは……論外だな。仮面なんてのはテメェに自信がねえって告白してるようなもんだぜ」
「・・・ふぇ?」
仮面の口元のあたりに手を当てているあたり、暇なので欠伸をしていたらしい。
その周囲に転がるのは不透明な赤い球。大の大人の足元から臍のあたりまでの大きさの球がごろごろと転がっている。
「あぁ、まぁそうでしょうねぇ・・・私自身、自分が誰なのか知りませんし。さて、これで仕上げっと。」
胸の高さに挙げた右手の指を弾き、音を鳴らす。すると、転がっている赤い球のどれもが不気味な音を立ててその一部に穴を開ける。
赤い球の内側からは身の毛もよだつような呻き声と、ニードルデーモンのものであろう血と体液が噴き出す。
血の雨を浴びるピエロの仮面。さながら心の壊れた画家の狂気の風景が展開されていた。
「あぁちなみにもう穴が開いた訳ですし30秒もらえれば、泥沼の落とし穴でよければ私が作りましょうか?
・・・ただし、この通りは向こう半年程高さ0mの橋をかけてもらうことになりますけど。」
【現在地:中央区。付近のニードルデーモンを赤い球に閉じ込めて惨殺。
オブテイン達に泥沼落とし穴の作成を請け負うと提案。】
これから日本は激動の時代だな
5/6
<テレビ>22:55-23:20 NHK アニメ 「もしドラ」 仲谷明香(北条文乃役)
<テレビ>24:12-24:53 テレ東 「マジすか学園2」 全12回
<テレビ>25:30-26:10 TVN奈良テレビ 「マジすか学園2」 全12回
<テレビ>25:59-26:29 関西テレビ 「Mujack」 高橋みなみ
<ラジオ>24:20-24:40 ニッポン放送 ノースリーブスの「週刊ノースリー部」 小嶋陽菜 高橋みなみ 峯岸みなみ
<ラジオ>25:00-27:00 ニッポン放送 「AKB48のオールナイトニッポン」
機械人形へと意識を向けたフィン。その隙にも、戦闘は続けられていた。
ノイファ・アイレル――現場指揮を任されたという女性。
彼女の剣技には特に光る物は無いが、それにもにも関わらずニードルデーモンを易々と斬殺している。
恐るべきはその「予見」の力。フィンの直感的な物と異なり、理論的に物の流れを理解しているかの如き
その動きは、まるで自滅でもさせるかの如く華麗に魔物を退ける。
続いては、セフィリア・ガルブレイズ。この少女も正に鬼神が如き活躍を見せ付ける。
彼女が繰るゴーレムは、まるで暴風雨が如き破壊を魔物達に振り撒き、無視の如く彼らを殲滅させる。
更に驚くべきはその剣技。ニードルデーモンの針の「間合い」に対して不利な双剣であるにも関わらず、
その不利を補って余りある技術で双剣を手足の如く繰り、針を掻い潜り、正確に的確に魔物を切り刻む。
そんな二人の女性の活躍を視認したフィンは、まるで面白い劇でも観たかの如く「ニッ」と白い歯を見せ、
少年の如き笑みを作る。
>「お待たせ、っと。二人ともお手柄でした――うん?」
>「ハンプティさん、す、素晴らしい腕前ですね」
「ははっ、あんた達こそすっげーよ!男の俺達よりも全然攻撃力あるぜっ!!」
>「いつの時代も、女性は強いと言いまっスけどねぇ…」
ウィレムの呆然とした様な口調に対し、フィンの口調は実に楽しそうであった。
最も女性への言葉としては微妙だが……そこは女の機微など介さないフィンの事、仕方ないと言えるだろう。
そしてそう言いつつ、視線を人形へと固定する。いつどんな動きがあろうと対応出来るように。
そして、まず動いたのはセフィリアだった。弾丸を思わせる四肢の躍動を以って
機械人形へと破壊の舞いを魅せ付ける。
普通の人間ならば誰もが思うだろう、この攻撃を持ってすれば敵がなんであれ打ち砕けるだろう、と。
……だが。護る事に特化しているフィンは直感的に気付いた。その攻撃が孕む危険性に。
「――! おい、あぶねー!離れろっ!!」
言ったときには時既に遅く。待っていたのは一手も二手も三手も孕んだ、人形による死の抱擁。
人間の姿を模しつつ人間に不可能な挙動で展開された刃が、セフィリアへと襲い掛かる。
それに対し、即座に援護に回ろうとしたフィンだったが
>「あなたたちはうごかないで」
「!?」
背後から聞こえてきた声。無機質で淡々としたその声に反応し、ピタリと動きを止める
ゆっくりと視線を移せば、そこには刃物を持った少女。
恨みか怨嗟か、様々な物を含んだ呪いの言葉を吐く少女と
――――その命を少女の盾とされた少年の姿。
(おいおいマジかよ……こんなチビが、こんな真似すんのかっ!?)
>「少しでもうごいたら、この子をころす」
>「レイチェル…? …そいつを早くこわして…。……バラバラにするのよオオォォッッッ!!」
思いもよらぬ状況。助けた少女が敵であるという顛末――――。
だが……恐らく、この状況自体は簡単に打開出来る。そう、人質にされた少年を、見捨てればいいのだ。
そうすれば、人形に護られぬ人形遣いなど撃破は容易い。恐らくは捕獲も殺害も簡単に出来るだろう。
戦場を歩いていれば、或いは一度でも死線という物を掻い潜り生き残った事がある人間ならば、
こんな場面には腐る程出くわした事がある筈だ。命の取捨選択。生き残る為の間引き。
少年一人の犠牲を以って多くの人々を助けられるというのなら、迷わずそうするべきだ。
だから、フィンは一度ギリッと歯軋りをして天を仰ぎ、
真っ直ぐに、その瞳で少女を見つめ――――
瞬間、風が吹いた
正に瞬きをするかしないかその間に状況を動かしたのは、フィンの元同僚であり後輩のウィレム。
彼が、一陣の風の如く凶刃の間へと滑り込んでいた。そして
「――わかった!こっちは任せろっ!! 死ぬんじゃねーぞウィレム!!」
それを脳が認識した瞬間、フィンもまた走り出していた。
ウィレムとは逆方向に、セフィリアに襲い掛かっている機械人形へと向けて。
ウィレムへの援護に向かわなかったのは、恐らくこの場で動ける者の中で、
機械人形に対しての相性が一番高いのは自分自身だからだと考えた故にだろう。
「――――人形っ!てめぇ動けるなら、気合入れて考えてみやがれっ!!
テメェのご主人様を、『バケモノ』にするんじゃねーっ!!」
意思の無い人形に対して吼えるのは、フィンの機械人形に対する無知故にか。
無駄であるというのに届くと信じて言葉を吐き出しつつ、フィンは今にもセフィリアへと
襲い掛からんとしていた回転する刃とセフィリアの顔の間に、自身の右腕を割り込ませる。
瞬間、キインという嫌な音と共に手甲と刃物が火花を散らし、その到達を大きく遅らせる。
次いで、空いている左腕で拘束を緩めようとするが……外れない。
やはり、人間と機械では力が違いすぎるのだ。
「力」の遺才を持つ訳でもないフィンの腕力では、人形の腕はびくともしなかった。
そうしてその事を認識したフィンは、一瞬考えた後、
機械人形の中……先ほどセフィリアが付けた左胸の傷へとその左腕を「突っ込んだ」。
「ぐっ……!? た、すけにきたぜっ!!抜けられそうかっ!?」
機械人形の内部機関が発生させる熱が、手甲の隙間を通り、
フィンの腕を焼くように熱する……常人ならば火傷で数秒で手が動かなくなるだろう行為だが、
生憎「遺才」の持ち主は、常人ではない。汗を流し熱の齎す苦痛に絶えつつ、内部からの動きの阻害を試みる。
上手くいけば、機械人形の左半身の拘束を多少なりとも緩められるかもしれない。
【フィン:機械人形へと接近し、刃の動きを阻害しつつ拘束を緩めようと試みる】
おいおい ゆうこりん結婚しちゃったな
【ダンブルウィード・西区】
プリメーラはおそるおそる、塞いだ耳とぎゅっと強く瞑っていた目を開ける。
そこには、壊れたように狂笑し、楽器を一心不乱に奏でるエルトラス兵がいた。
「わぁ……流石ロキだね」
少しの間、プリメーラは感嘆した。薄々は感じていたが、冗談抜きでロキは強い。
現に、こうしてプリメーラが与えた未知数の力も使いこなしてみせた。
二人の遺才の相性の良さもあるだろう。しかし、ふざけているが、実力は本物だ。
しかし、これだけの力量の持ち主を、何故上の連中は追い出したのだろう。
ふざけていた、というだけでは何となく納得がいかないような気がする……
「へ!?な、何でもないよ、ハティア!」
プリメーラはハッと我にかえり、首を横に振る。
感動のあまり、少し「素」が出てしまっていたようだ。
「と、とにかく!このまま一気に進撃しちゃお!ね?」
誤魔化すように先を促し、プリメーラは先立って歩き出す。
ロキが本質を見せないように、彼女にもまた、見せられない本質が、彼女にはある。
……彼女自身が意識的に気づいていなかったとしても。
「あららのら、エルトラスの兵士さんは随分と腰抜けですのね」
突如、背後からこの戦場に似つかわしくない少女の声が聞こえた。
「お前、西区で助けた……」
振り返ると、気狂った音楽集団を踏みつけ、逃げ出した筈の娘が立っていた。
だが、娘は二人に一瞥すらくれもせず、まるで気づいていないような素振りだ。
「全く、折角こっそり゛扇動゛して差し上げたのに……
こんなにあっさり白旗を上げてしまわれるとは」
呆れた、といいたげに音楽集団を、ゴミを見るような目で見下す少女。
先程までのか弱く可憐な姿は、微塵も見当たらない。
「エルトラスでこれだと、クランク、ひいては東区の人形姫殿も怪しい所ですね…」
娘は何やら思考を巡らせるような素振りを見せる。
だが、その碧色の瞳がロキを捉えた一瞬。
娘の姿が残像となり、掻き消えた。
「ッハティア危ない!」
ロキが動くより早く、プリメーラが娘とロキの間に割って入る。
しかし、娘はお構いなしと鋭い蹴りを発した。次いで、ミシリ、と重く嫌な音。
「あ゛ッぐ…ぅ……」
崩れ落ちるプリメーラ。鳩尾に深く入れられ、意識が飛びそうになる。
「おやおや。仕事上の仲間を助けるなんて
──らしくありませんね、《魔術師》」
娘は鼻で嘲笑い、ロキの襟を乱暴に捕まえる。
不条理で理不尽、抗いようのない暴力。それだけで、娘がただ者でないことが分かる。
「ハ…ティアを、離し…あ゛ぁっ!」
「お客様、『上演中の私語は厳禁ですよ』」
プリメーラの腹を容赦なく蹴り上げ、娘はロキと共に姿を消す。
予期せぬことにプリメーラはロキを呼ぼうと大声を……
「(…声が、出ない……!)」
「私達なら此処ですよ、《魔術師》」
ハッと上を見上げると、今は機能していない協会の十字架の上に二人はいる。
プリメーラが向かおうと立ち上がると、娘は素早くダーツの矢を放ち、
プリメーラの足元に投げつけて動きを牽制する。
「上演中に立ち上がるとは……行儀を知らないお嬢様ですね」
ククク、と笑ってみせる。悪意の籠もった微笑み。
ロキの襟は依然捕まえたままで、娘はエプロンドレスを脱ぎ捨てた!
それは娘ではなく仮面を付けた長身の男。
山高帽、緑を基調とした貴族服とはためくマント。
「レディースエーンドジェントルメン!
初めまして皆々様、不肖私め、怪盗゛ナイアルト゛と名乗るしがない奇術師にございます。
今宵は素晴らしいショーをご覧にいれたいと思う所存!」
ナイアルトがサッと腕を振るうと、百人近いエルトラス兵がプリメーラを取り囲む。
彼等の目に生気はなく、まるで操り人形のように朧気な足取り。
「クラウン君、問題だ。ここに百人のエルトラス兵と一人の魔術師君がいる。では…」
唇の端を上げ、パチンと指を鳴らした刹那。
白い煙が辺りを包む。やがてその煙が消えると……
「問い1。本物の魔術師君はどこでしょう?」
驚くべきことに、エルトラス兵が全員プリメーラに変化した。
まだ驚くのは早いよ、とばかりにナイアルトは続ける。
「では問い2。魔術師君達が此処で戦い始めると……」
プリメーラ達が武器をかかげる。不穏な空気がその場を支配する。
「何人、死体になるでしょう?」
眼下で、戦争が始まった。
プリメーラ同士が武器を手に、相手を殺さんと戦いあう。勿論、本物も戦っているだろう。
だが、魔力を消費し、疲弊した彼女が倒れるのも時間の問題だ。
「制限時間は、そうだね…彼女の命が尽きるまででどうだい?」
フワリと空中に浮き上がり、さもおかしそうに笑うナイアルト。
「君も道化師なら笑いなさい。笑顔でこその道化師でしょう?」
そして、彼女から奪っていた六芒星のペンダントを投げて寄越す。
「君には選択肢がある。魔術師君を探し袋叩きにあうか、
道化師らしく魔術師君を見捨てて面白おかしく逃げ出すか……。
強制はしないさ。私は高みの見物をさせてもらいますよ」
そう微笑むと、ナイアルトは宙であぐらをかき、行く末を見守った。
【西区イベント:怪盗ナイアルト登場】
【西区:百人近くの偽プリメーラ登場。本物は声が出せず意思疎通不能】
【ナイアルト→ロキ:ペンダントを渡しプリメーラが遺才が使えない事をほのめかす】
▼Enemy Character▼
NPC
名前:゛怪盗゛ナイアルト
性別:不明(恐らく男)
年齢:不明
性格:コロコロと変わる、詩的表現が多い
外見:長身、仮面、緑を基調としたド派手な怪盗の服装
血筋:不明
装備:ステッキ、ダーツの矢
遺才:変身、扇動術(催眠術の一種)
マテリアル:ステッキ
前職:不明
異名:夢幻の怪盗
基本戦術:変身、剣術、集団の扇動や撹乱
目標:エルトラス軍からの依頼をこなす
うわさ1:帝都、エルトラスにおいて半年前から巷を騒がせる怪盗
うわさ2:「盗めないものはない」が信条。基本的に人は゛直接的゛には殺さない主義
うわさ3:エルトラスから報酬を貰う代わり、帝都で暗躍している。今回のゴーレム騒動にも関係ある、かも……?
なんつーか、ビックリするくらい面白くないから大人しくギャグに逃げていた方がいいよ
>「ノイファ女史!ハンプティさん!バリントン!そこの子供たちは任せました。あの機械人形は私がァッ!」
その場の誰よりも速く仕掛けたのはセフィリア。
爆発的な踏み込みを推進力に換え、閃く一対の銀光が疾風の如く標的を斬り裂く。
>「――! おい、あぶねー!離れろっ!!」
フィンが、声を張り上げ離脱を促す。
セフィリアの放った一撃は肩口から胸までを深々と抉っている。相手が人であれば十二分に致命の域。
だが敵は物言わぬ機械人形。フィンの警告は正鵠を得ている。
しかし既にセフィリアは拘束され、殺人人形の本領ともいえる暗器機構の餌食になろうとしていた。
「フィン君!」
>「あなたたちはうごかないで」
援護をと、発した声に被せるように、後ろから響いたまだ幼い声が停止を命じる。
ノイファは振り返りながら歯噛み。
後ろに居るのは救助した老婦人と幼い少年少女。羊に化けた狼へ、全く注意を払わなかった己への悔恨。
「――まさか、エルトラスが此処まで人手不足だったなんて、ね。」
そこには、小さな手には不釣合いな大型の軍用ナイフを構えた少女と、その刃を首筋に突き付けられた少年。
皮肉と嘆息を零し、ノイファは白刀を鞘へ納める。
>「少しでもうごいたら、この子をころす」
淡々と、まるで空模様でも告げるように、少女は謳う。
言葉に嘘は無い。瞳に燈る昏い光が、少女が秘めた不断の意思を証明している。
(……取れる手立ては――)
少女の視線を真っ向から受け止めながら、ノイファは打開策を巡らせる。
彼我の距離は十分に刃圏の内、動くより先に斬れるか――無理だ。盾となる少年を越えなければ刃は届かない。
魔術による目晦ましならどうか――此れも駄目だ。魔力の導線を感知されれば其処で終わる。
どれも決定打には至らない。行き着く先にあるのは命の引き算。
即ち――仲間をとるか、少年を救うか。
(――難しい、ですねえ……)
じわりと熱を帯びる拳、募る焦燥。
刻一刻と削られていく時間。
このまま、何の手段も講じられずに、どちらかを諦めなければならないのか――
>「そう言われて本当に動かない奴なんかどこにもいないっ!」
そんな諦観と、停滞する時を吹き飛ばすように、暴風すら伴ってウィレムが駆ける。
声すらも、影すらも置き去りにして、少女の持つ大振りのナイフを自身の大腿へと埋めるウィレム。
>「は、早く!センパイも、ノイファしゃんも!俺はいいっスから、セフィリアさんを!」
>「――わかった!こっちは任せろっ!! 死ぬんじゃねーぞウィレム!!」
後輩の覚悟の程を見て取ったフィンが、微塵の迷いも見せずにセフィリアの下へ走り出す。
「本当にもう、無茶するわねっ!」
同時にノイファも動く。但し、方向はフィンとは真逆。
上半身を前へ倒し、伏す直前で片脚を踏み込む。腕を剣帯へ伸ばし、即座に抜剣。
澄んだ鞘擦れの音を響かせ、撓ったレイピアの剣先が孤を描き、少女の形の良い頤の下で止まる。
「すぐに人形を停止させなさい。……って言ったところで、止めないわよね。」
少女からは目を離さず、ノイファは小さく嘆息。
後僅かに腕を突き出せば、即座に命を奪える。
しかし、それでは体を張って無力化させたウィレムの労力を無駄にしてしまう。
(甘い。って怒られそうですけどね)
なによりノイファ自身もいくら敵とはいえ、年端もいかない少女を手に掛けたくは無い。
怒りに囚われているとなれば猶更だ。
とはいえ、そうなると自分たちで人形を止めるしか無くなった。
人形の制御方法が判らない以上、少女を気絶させることも出来ない。
最悪、暴走などという事態を引き起こしたのでは目も当てられないからだ。
(まあ、あちらも刃の方は何とか出来たみたいですし、二人にがんばってもらいましょうか)
フィンの手甲と回転刃が噛み合い奏でる金属音に顔をしかめながら、ノイファは二人へ視線を向ける。
相手は機械人形。それ故に人の急所をいくら破壊しても決定打にはならない。
だが、人を模しているが故に、弱点となる箇所もあるのだ。
「セフィリアさん、四肢を狙ってみて!
人間を模している以上、腕を壊せば攻撃能力が、脚を壊せば機動力が奪える筈――」
そして再びノイファは少女へと向き直る。
「――違う?」
そしてそれはフィンとセフィリアならば十分に可能なのだ。
何故なら人形の刃では"天鎧"を砕けぬし、装甲も"双剣"を阻むことは出来ない。
「もしあの人形がお嬢ちゃんにとって"武器"じゃなくて"友達"なら、今の内に投降した方が良いわよ。
私たちも出来る限り悪いようにはしないから。」
ノイファは突き付けていたレイピアを鞘へと戻していた。
ね。と、ウィレムに同意を求めつつ、ノイファは未だウィレムの大腿に突き立ったままのナイフに目を向ける。
随分と遠慮なく刺したのだろう、それは根元までしっかりと埋まっていた。
「うわー……ウィレム君、これ痛いでしょ?」
ノイファはちょいちょいとナイフの柄を突きながら、答えが判りきっている問いを口にする。
加虐性に目覚めたわけでは決して無い、多分――口許は微かに笑っているのだが。
大体は傷の具合を確かめていたのだ。
そしておもむろにナイフを握り――
「ウィレム君の両脚は立派な武器なんだから、もっと大事にしないとダメだよ。」
――えいやっ、と掛け声をかけて一気に引き抜いた。
ナイフという支えを失ったことで、流れ出る血の量が目に見えて増える。
「大丈夫、大丈夫。慌てない、慌てない。ちちんぷいぷいってね。」
ノイファは傷口に手を翳し、魔力の導線をつなげる。
イメージするのは光――成長を促す柔らかな陽光。
現われる効果は"治癒"。
数ある魔術大系の中でも、神聖魔術と呼ばれるそれ。
回復や浄化、結界の構築など神殿に属する司祭たちが用いる魔術系統である。
時間が逆行するように、真新しい肉が盛り上がりウィレムの傷口を塞ぐ。
神の奇跡にも等しく見えるが、万能の力などというのは存在しない。
回復に使用するのは負傷者自身の体力。
それゆえに、致命傷であればあるほど効果が薄くなる、という欠点もある。
「あと、失った血までは戻らないから暫くはふらふらするかもね。
ま、此れに懲りたら次から刺すのは腕にしなさい。そうすれば走って逃げられるでしょ?」
【ウィレムが作った隙を利用してエミリーに投降を促す。
あとウィレムの怪我を治療。最終的に剣は引っ込めてます。】
<テレビ>10:00-11:45 CX 「笑っていいとも!増刊号」 秋元才加
<テレビ>14:00-15:00 日テレ 「木曜7時は・・・なるほど!ハイスクール」
<テレビ>18:00-18:30 CSファミリー劇場 「AKB48 ネ申テレビ Season6」
<テレビ>18:10-18:40 NHK 「MUSIC JAPAN」 DiVA
<テレビ>19:58-20:54 CX 「爆笑!大日本アカン警察」 大島優子 高橋みなみ 指原莉乃
<テレビ>23:15-23:45 CX 「新堂本兄弟」 高橋みなみ
<テレビ>23:30-24:05(再) BSジャパン 「マジすか学園」
<テレビ>24:10-25:23(再) NHK(総合・東北地方) 「MUSIC JAPAN」※変更・休止の可能性あり
<テレビ>26:55-27:55(27:25〜出演)※再放送 MBS 「三代目 明智小五郎」 大島優子
>94
>「わぁ……流石ロキだね」
「えへへ、まあね〜」
ん? 上の名前で呼んだ?
>「へ!?な、何でもないよ、ハティア!」
あ、苗字に戻った。
>「と、とにかく!このまま一気に進撃しちゃお!ね?」
「れっつらごー」
おもむろに、さっき助けた少女が現れた。
>「エルトラスでこれだと、クランク、ひいては東区の人形姫殿も怪しい所ですね…」
「ははーん、分かったぞ! 黒幕はお前だ」
少女をびしっと指さしたその時!
>「ッハティア危ない!」
「ああっ、プリメっちゃん!」
>95
>「おやおや。仕事上の仲間を助けるなんて
──らしくありませんね、《魔術師》」
「分かってないな、漫才コンビは何よりも固い絆で結ばれているんだよ」
拘束されたまま、ぞっとするような残酷な微笑を浮かべる。
指をこの不埒者の目の前に持って行ってぐるぐる回す。
さあおいで、めくるめく悪夢の世界へ……。
>「上演中に立ち上がるとは……行儀を知らないお嬢様ですね」
「効かない!?」
何だこいつ、幻術がかからない。
さっきまでの余裕の笑みは消え、がちょーんとでも効果音が入りそうな顔をしてしまう。
>「レディースエーンドジェントルメン!
初めまして皆々様、不肖私め、怪盗゛ナイアルト゛と名乗るしがない奇術師にございます。
今宵は素晴らしいショーをご覧にいれたいと思う所存!」
「ああーっ、怪盗かよ! どうせ幻術か催眠術の類だろ! どうすんだよ同系統じゃん! 道理で耐性があるわけだよ!」
同系統の能力の場合相手の方が明らかに上位だと勝ち目がないわけで。
「とりあえずお前の服派手すぎるわ! ショーとか言っちゃう!? 劇場型犯罪者かよ!」
なんというブーメラン!
わらわらとエルトラス兵が集まってきた。
まだこんなに残ってたとは……さては後ろの方でサボってたクチだな!
>「クラウン君、問題だ。ここに百人のエルトラス兵と一人の魔術師君がいる。では…」
>「問い1。本物の魔術師君はどこでしょう?」
エセプリメーラ約100人と本物が一人。これぞ101匹プリメーラ。
「うわぁ! こんなに増やしてどうすんの。遊撃隊全員食われてもまだ足りないよ!」
というかワタシまで術にかかったということダナ。勝ち目ないじゃん。
>「では問い2。魔術師君達が此処で戦い始めると……」
>「何人、死体になるでしょう?」
「待て待て待て! これってほぼ同士討ちやん! いいの!? 手駒が減っちゃうよ!」
>「制限時間は、そうだね…彼女の命が尽きるまででどうだい?」
>「君も道化師なら笑いなさい。笑顔でこその道化師でしょう?」
投げ渡されたのは、ペンダント。プリメっちゃんのマテリアル。笑うしかね――!
「こやつめハハハ、お主もワルよのう!」
>「君には選択肢がある。魔術師君を探し袋叩きにあうか、
道化師らしく魔術師君を見捨てて面白おかしく逃げ出すか……。
強制はしないさ。私は高みの見物をさせてもらいますよ」
「見捨てて逃げるなんてできるかッ!!」
このセリフは鎧君あたりにふさわしいって? 心配ご無用! 続きがある!
「だってそんな事をしたら後でやられるもん! 断然袋叩きのほうが増し!」
殺られるかヤられるかはご想像にお任せする!
「う〜〜む」
エルトラス兵達が相打ちしてるってことは彼らにはすでに幻術の類がかかってる。
なのでいつもの空間に取り込むことはできない。専門用語で言う所の達成値が足りない!
でもこういう集団催眠状態っていうのはちょっとベクトルをずらしてやれば一斉に注意がそっちに向いたりするんだよね〜。
その引き金と成り得るものはなにか。例えば皆が共通で大好きな物……。
「ママ〜、あの人たち何?」
「見ちゃいけません!」
何だよこんな時に通りすがりの一般市民かよ。思わずイラッとして言い返す。
「やかましいわ! 人が一生懸命考えてる時に茶々入れんな! ていうか一般ピープルはこんな町はよ避難しろ!」
「般ピーにだって事情があるんだよ! 戦場手当欲しいんじゃい!」
「話には聞いてたけどはっきり言っちゃう!? ……ん?」
「戦争利権……それだ!」
おもむろに魔法の絨毯に飛び乗る。兵士達の上空を飛びまわりながら、まき散らすは紙吹雪。
「さあさあ、早いもん勝ちだよ〜〜!」
兵士達の目線が、上に向き始める。そうだ、それでいい。
「早くしないと無くなっちゃうよ〜!」
せきを切ったように、兵士たちは紙くずを我先にと奪い合い始めた。
「あっははははは! ビ・ン・ゴ!」
種明かしをすると、紙切れをお金に見せかけてあるのだ。
お金って人間が生み出しながらもはや人間の手に負えなくなった世界最大の悪魔じゃないだろうか。
有史以来人類はこの悪魔の紙切れに振り回されて滑稽な喜劇を演じてきたのである。
紙切れに振り回される、まさにこの状態。面白すぎて笑いが止まらない!
何はともあれ逃げるなら今のうち!
本物プリメーラまで集団催眠にかかっていたら困るので大剣のありますちゃんの姿に見せかけて叫ぶ。
「プリメーラちゃんどこにいるでありますか!? 迎えに来ましたわたしの姫!
不肖フランベルジェ・スティレット、プリメーラちゃんのお嫁になるであります!」
つ【幻術で兵士達の気をそらす。フランベルジェの姿で本物プリメーラに呼びかける】
>「つまり弱点は足って訳だ。他のゴーレムの装甲を足してるせいで、重心も崩れてやがる。
ぶっ壊す必要はねえ。盛大に転ばせて、あの穴に叩き落としてやりな。
レイリンの協力に答え、ぶっきらぼうながらも返答するサフロール。
『堕天使』の名を冠するサフロールのおびただしい数の羽根の爆発により、ゴーレムの周囲の魔物はほぼ全滅し、ついでに大きな穴をも作っていた。
「今から落とし穴なんて掘る暇無いと思ったのですが、やっぱりここでは常識は通用しませんね」
サフロールのしたことをみて思わず苦笑いをするレイリン、いくら自分の化け物だろうが、今まで自分以外の化け物とあまり出会ったことがなかっただけにその驚きは大きかった。
>「女共にゃ荷が重いかもなぁ。おうそこの高慢ちき、ちゃんと矢はまっすぐ飛ばせるか?アイツまで届くのか?
>「あぁ悪イ、珍しいガチョウかと思っタ」
>「だから、謝っているだろう代理(レイリン)?それにただそれだけの為に消費した訳じゃないサ」
>「あぁちなみにもう穴が開いた訳ですし30秒もらえれば、泥沼の落とし穴でよければ私が作りましょうか?
サフロールの悪口に対して、攻撃をもって応えるアルテリア。
しかし、確かにそれだけのために消費されたわけではなく、ワイヤーが伝っているのが分かる、要するにワイヤーでゴーレムの足を引っかけようという魂胆であろう。
同じくフェイスレスもサフロールの口撃に対して、何を返すでもなく軽く流していた。
その中でレイリンは一人だけ僅かに微笑んでいた。
「オブテイン、貴方が何のつもりで喋ったのか、勘違いかも知れませんが私には分かります。
私達を奮起させるために言った言葉であるならば、違う言い方がいいと思います。
例えば、『頑張れ』とか『しっかししろ』とかですね。
お節介かも知れないですけど私はこういう風に言われた方が嬉しいです」
そう言って言葉を締めくくると、レイリンは再び頭を回す、ワイヤーはある、落とし穴も出来た、水もある。
それを含めて考えると出来ることは一つだろう。
「サジタリウス、貴方はワイヤーを何本か、落とし穴の前に張って下さい。
大体ゴーレムの足の高さでお願いします。
フェイスレス、1分あげますから落とし穴を泥沼に、そして落とし穴の前も水で滑りやすくして下さい。
最後にオブテイン、貴方はゴーレムがワイヤーに引っかかった瞬間にゴーレムの後頭部付近で爆発を起こして、私達の飛翔機雷も一緒に使って下さい。
皆さん、頑張りましょう!」
レイリンの言葉が終わると同時に、3人とも一斉に動き出す。
兵士達の必死の抵抗もあってか、ゴーレムの進行は僅かではあるが遅れている、ような気がする。
ゴーレム自体もそれほど早く動いているわけでもなく、ワイヤーとラップの設置場所までちょうど1分くらいであろうか。
その間にも周りの建物や、兵士達が次々と破壊され、吹き飛ばされていく。
「ではオブテイン、最終確認をします。
ゴーレムの足がワイヤーに引っかかり、それと同時に私が足に攻撃します。
そこで爆発をお願いします」
前を見ると、ゴーレムはすぐそこまで接近していた。
機械であるゴーレムではあるが、まるで生きているかのように凄まじい威圧感を発している。
ついにゴーレムがワイヤーとラップの前にやってくる。
ゴーレムが右足を大きく前に出し、落とし穴を跨ごうとする。
しかし、その動きは幾重にも張り巡らされた、ワイヤーに阻害される。
ワイヤーが軋む、あと少しでワイヤーが弾けるという所でレイリンがその拳を思い切りゴーレムの軸足に叩き込む。
「痛っ!」
とてつもない大きさと重さを誇るゴーレムに拳を叩き込む、その反発力にレイリンの全身の骨が震え、あまりの痛みの思わず口を開く。
その瞬間、ゴーレムの後頭部で凄まじい爆発が起こる。
まるで協調性の欠片も無さそうなオブテインだが、流石と言うべきか完璧なタイミングであった。
大きな穴を跨ごうと体重移動を始めていたゴーレムのバランスを崩すには十分すぎる爆発であった。
【中央区:ワイヤーとラップ完成+ゴーレムワイヤートラップに引っかかる】
5/9 スケジュール
<テレビ>10:25-11:25 日テレ 「PON!」 小嶋陽菜
<テレビ>11:00-13:53 TBS 「ひるおび!」 柏木由紀
<テレビ>12:00-12:30 BSフジ 「カンニングのDAI安☆吉日」 梅田彩佳
<テレビ>19:00-19:55 TBS 「世紀のワイドショー! ザ・今夜はヒストリー」 (浦野一美SDN48)
<テレビ>20:00-21:54 テレ東 「世界卓球2011ロッテルダム」
<テレビ>21:00-22:54 TBS 「釣り刑事2〜竿に掛った大悪党!!〜」 仲川遥香
<テレビ>22:55-23:25 NHK 「アスリートの魂」 ナレーション:大島優子
<テレビ>23:50-24:50 TBS 「COMING SOON!!」 フレンチ・キス
<テレビ>24:20-25:15 テレ朝 「お願い!ランキング」 指原莉乃
俺さ(笑) やっとスマートフォンでWIFIを自宅で設定できたよ(笑)
つべとか、ニコニコ動画とか さっくさくだね。
>「伝令!遊撃隊小隊長ボルト=ブライヤーへ、ダンブルウィード西区担当プリメーラ=レズヴィアンより報告!」
乾肉など齧りつつ戦況を俯瞰していたボルトの足元に、なにやら紙片を孕んだ鳥籠が自走してきた。
回転草(ダンブルウィード)のごとく、しかし風に煽られたでもなく転がった鳥籠は目的地に到着すると中身を吐き出す。
紙片は伝心術式を施術したメッセージレコードメール。したためてあるのは文ではなく声だ。
>「西区に潜伏中のエルトラス軍兵士を撹乱中、《謎の同志討ち》によりエルトラス軍兵士全滅!次なる指令を待機!」
「っは、なーにが『謎の同士討ち』だ。お役所仕事舐めんな」
課員の遺才については入隊の時点ですでに調査が上がっている。プリメーラの遺才は『催眠術』。それも超強力なものだ。
だからボルトは彼女と相対するとき、必ず幻術防護の術式を絶やさない。純粋に信用してないのもあるが、やはり畏れがあった。
敵味方入り交じる戦場で、全滅規模の催眠術を行使するその出鱈目なまでの能力。場所を悪くすれば国が傾くレベルだ。
(化物、化物とは言ったが実際目の当たりにすると薄ら寒いな……こんなのがあと十何人もいやがるんだ)
オブテインにしたって、あれが本気の翻意を見せれば最後、ボルトはこの世にいない。
スティレットが矢面に立ってくれたおかげで難を逃れたが、あれがボルトだったら為す術も無く斬殺されていた。
そのスティレットにしたって、今のところ従順だが裏で何を考えているかわかったもんじゃない。何も考えてない公算のが大きいが。
そしてそれは、すべての課員に対しても同じことが言えてしまうのだった。
>「尚、同封の書類はくれぐれも《扱い》にご注意を!」
「書類……こいつか」
メールに巻き込むようにして添付されていた書類は、間違いなくエルトラス軍の書式。
題名は意訳だが、『ダンブルウィードにおける"ピニオン"との合同作戦について』。内容は――――
「超重要機密書類じゃねえか……!なんでこんなモンが、暗号化もされずにただの歩兵に運ばれてんだ……!?」
考えうる可能性。この書類が暗号化の必要もないただの伝達事項であること。そしてもうひとつ……
『暗号の通じない場所への伝令』――それはすなわち敵軍、『帝国』への書類であるという懸念。
ボルトは指令支部の面々に見つからぬよう、注意深く書類を野戦服のポーチにねじ込んだ。
(『扱いに注意』ってのはこういうことか……あのクサレ幻術師、ただの変態かと思ったらなかなかどうして――)
>「あとスティレットちゃんをお嫁に下さい!以上!」
前言撤回。ただの変態だった。
「あんなこと言ってるぞ、スティレット」
「はーいー?もっと大きな声でお願いするでありますーっ!」
件のスティレットはといえば、指令支部の外で長大剣を地面に刺しそこに体を預けて遊んでいた。
彼女の足元には血の海が広がっている。散乱しているのは肉と、毛と、鋼より硬い刺の数々。
指令支部の周辺にも例にもれずニードルデーモンが出現し、その全てを一匹残さずスティレットが屠っていた。
剣の眷属・『崩剣』のスティレットにして、かつて当代最強と謳われた剣士と同じ『剣鬼』の称号を持つ少女。
その剣筋はいよいよもって冴え渡り、市民を護りながらとはいえ遊撃課の面々にすら善戦した魔獣を群れで相手して息一つ乱さない。
遊撃課長ボルト=ブライヤーの『保険』。近接戦闘なら無類の強さを誇るスティレットという手駒の存在である。
* * * * * *
フェイスレスの術式によって窮地を救われた二人の兵士は、
新しく積んだバリケードの影から駄目元の攻性法撃を放ちながら撤退を続けていた。
「すげェ……これが『遺才』持ちばっか集めた遊撃課かよ……!」
「あの『血の戦乙女』まで出張ってるときた……さっき俺たちを救ってくれた仮面の子もすげえが、あっちの弓の人も半端ねえぞ」
「ありゃあ槍を弓で撃ってんのか!?なんつう力してんだよッ……!一発で地面に穴開けるような爆発術式の使い手までいやがる!」
ともすれば自分たちの否定にも繋がる遊撃課への感嘆を、しかし現場で肌に感じたからこそ彼らは漏らす。
だが敵もさる者。ニードルデーモン相手ならば無双の威力を誇る彼らの拳が、弓が、剣が、術が、進撃を続けるゴーレムを削れない。
援護法撃も相まって装甲は少しずつ目減りしていくものの、それがまだあと3枚残っている。微塵も足を滞らせない。
「あのゴーレム、どうにもキナ臭いぜ。あれだけの装甲貼って、ちっとは足が鈍るかと思えばそんなこたあねえ」
「インファイトシリーズなら歩くよりも後部噴射術式で跳んだ方が疾いんじゃねえのか」
「さあな。それよりもあれがエルトラス軍の兵器なら、なんでゴーレムの周りに誰もいないんだ?」
通常ゴーレムの戦場運用と言えば、伏兵や埋没機雷からゴーレムを守るために随伴歩兵をつけるものである。
逆に言えばこの随伴歩兵のないゴーレムなどデカくて硬いだけの木偶に過ぎず、いくらでも対処のしようはあるのだ。
しからばこの街の均衡を破る重要な作戦に、随伴歩兵もつけてないようなゴーレムを出すのは敵兵にとっても違和感を拭えない。
「だけど、俺たちは周りの魔物のせいで飛翔機雷が撃てなかったんじゃないか」
「あのデカブツは、ニードルデーモンを随伴歩兵にしてやがるんだ!エルトラスには魔物を操る技術があんのか……?」
>「痛っ!」
『血の戦乙女』の指揮で街道に穿たれた大穴を落とし穴に改造し、ワイヤートラップと爆裂術の連携がゴーレムを襲う。
上体のバランスが著しく不安定なゴーレムは呆気無く傾き、そして大穴の中へと滑落した。
轟音とともに、真っ赤な水柱がダンブルウィードに雨を降らす。大量の水泡を吐き出しながら岩の巨人は赤い水面に沈んでいった。
「――やったか!?」
* * * * * *
* * * * * *
「"ピニオン"から"クランク"へ定時連絡。応答せy」
『ファーーーーーック!!』
「な、なんだ!?何があった!?」
『クソッタレが!"血の戦乙女"、あのアマァ……!俺の大事な"マキナ"にミソ付けやがった!』
「どういうことだ!状況を報告しろ」
『ああ、今なら胃の中身を沸騰させる自信があるぜ。ヘソでアフタヌーンティーでも沸かしてやらあ』
「……簡潔にだ!」
『"マキナ"がドボンだ。よくわかんねえ大穴の大泉の中に沈んじまった!妖精さんも出てきやしねえ!』
「なんだと?」
『自律自走にしといたのが仇になったぞ!だから俺が乗るって言ったんだッ!聞いてんのか"ピニオン"!』
「落ち着け"クランク"。損害の状況を確認して報告を上げろ。作戦は中止だ、撤退するぞ」
『面白い冗談だなァオイ!』
「熱くなるな。マキナは深い沼の中、敵地で漁師の真似事でもする気か?死ぬなら辞表出してからにしろ、クランク」
『そうじゃねえ、そうじゃねえんだピニオン。俺はむしろ冴え渡ってるぜ……ずっと言いたかったセリフがあるんだ』
「……なに?」
『――――こんなこともあろうかと!!』
* * * * * *
刹那。
ゴーレムを沈ませた泥沼が爆散した。雷が真横に走ったような紫電の閃きのあと、腹の底に強く響く轟音。
街道の石畳が巨大な手で順番に剥がされていくようにめくれ上がり、断裂し、蒸発する。不可視の刃が路面を抉っていく!
一際大きな水柱で、泥沼状態だった落とし穴の中身は全て外に出てしまった。どころか、穴は穴としての原型を保っていなかった。
砂地にポツリと空いた小さな穴に指を突っ込んで、手前に引けば、穴は広がり指で引いた線の一端に変わる。
それをゴーレムのサイズで再現したかのじょうな惨状が、中央区に広がっていた。
ゴーレムの落ちた穴からまっすぐ東区へと続く街道が丸ごと抉れ、地面を実に2メートルも掘り下げていた。それが東区までずっと。
それを成し遂げたのはゴーレムの腹から突き出た巨大な砲塔。人間一人ならゆうに発射できそうな大口径の、主砲であった。
攻性術式砲の余熱を陽炎として吐き続けるゴーレムは、やがて何事もなかったように抉れた道を踏み出した。
「な、なんつう出鱈目な威力……!まともに食らったらゴーレムでも一発で吹き飛ぶぞ!?」
「いや、主砲の威力もおかしいが、インファイトにあんな大口径の魔導砲なんてついてたか!?」
「なんでもありかよ……!」
ゴーレムは止まらない。先程からちくちくと攻撃してくる人間たちを鬱陶しげに視覚素子で捉えて、寸胴から生えた腕部を向けた。
「ヤバい!!また飛翔機雷が来るぞッ――!」
腕部から再び箱が飛び出し、内蔵されていた飛翔機雷に火を入れた。
大した攻撃もしてこない帝国兵を無視し、有効打に成り得る4人の強者へ向けて誘導性の飛翔機雷を射出した。
【プリメーラちゃんからの手紙を受け取る。ヤバげな書類ゲット!】
【中央区:暴走ゴーレムを落とし穴にかけることに成功!しかしゴーレムは主砲を開放、落とし穴を地面ごと吹き飛ばして進撃再開】
【中央区の面々へ向けて飛翔機雷(ミサイル的なもの。当たると爆発します)を発射。誘導性アリ】
セフィリアが放った一撃は機械人形を雁金で両断には一歩及ばずながら腹の当たりまで刀身が体を侵略した
手応えがある……機械人形との戦いは初めて、かってがわからない
だけど……
「ここまでやれば・・・・」
その考え、油断は昨日食べた砂糖菓子よりも甘く、命取りとなる
敵の動きは速い、剣の動きが止まるや否や密着し両腕をあらん限りの力で締め付けがおそう
攻撃のあと即座に退避すればあるいは、いやおそらくは無理だったであろう。それほどのタイミング
「アグゥッ!」
締め付けられる力を加速度的に増えていく、それに比例するがごとく痛みを増していく
苦痛に顔を歪める、しかし、セフィリアの顔はさらに恐怖でその顔を歪めていくことになる
眼前の機械人形の顔が割れ、中から回転ノコギリが姿を現し、彼女の頭を両断しようと刃が迫る
「キャァァァ!イヤァァァ!」
セフィリアの悲鳴が当たりに響く、初めての死の恐怖に彼女は普通の女の子とかす
刃は彼女の髪に触れ、いよいよ頭に届くというとき……
金属音が響くセフィリアの小さな頭と人形の悪魔の爪とも言うべき刃との間にフィンの手甲が滑り込む
この時点、まだ彼女は何が起こったかはわからない
>「ぐっ……!? た、すけにきたぜっ!!抜けられそうかっ!?」
「ハンプティさん!」
セフィリアはか弱き少女ではない、声こそ恐怖を感じた少女の色を浮かべていたが、一瞬の隙を逃さす
その身は死の包容から抜ける
>「セフィリアさん、四肢を狙ってみて!
人間を模している以上、腕を壊せば攻撃能力が、脚を壊せば機動力が奪える筈――」
代理投稿お願いします
同時にノイファの指示が飛ぶ、必要なときに必要な指示をだせるこの人は指揮官の素質があると頭に浮かぶ
体は言葉に反応し左腕と左足の切断を狙い、剣を走らせる
【抱擁から脱し、レイチェルの左腕と左足を切断しようとする】
「(厄介だ……)」
プリメーラは焦っていた。
何せ相手は、扇動術を掛けられた、痛みも死も恐れぬ兵士達だ。
しかも、敵の外見は《自分自身》。マテリアルも、声も奪われた彼女に、
自身を証明できるものはない。
このままロキがここに乱入しても、うかつに手を出せずにやられてしまう。
「(頼むよロキ…挑発に乗らないでくれ!)」
ナイアルトとロキの会話を聞き、プリメーラはただ祈る。
二人揃ってやられる位なら、一人逃げて貰うほうがはるかにマシだ。
しかしロキは、
>「見捨てて逃げるなんてできるかッ!!」
真っ向からの反論。自身と己を天秤にかけ、出されたロキ自身の結論。
「(ロキ…………)」
それを聞いたプリメーラの心は、今まで感じた事もない感情に支配される。
が、そこはロキ・ハティア。
>「だってそんな事をしたら後でやられるもん! 断然袋叩きのほうが増し!」
「(野郎!ボクをそんな目で見てたのか!)」
心中怒りのツッコミを放つ。どこまでもゴーイングマイウェイな二人だ。
しかし、間もなく二人から意識を逸らすことになる。
複数のプリメーラに囲まれ、相手をせざるをえなくなったからだ。
「(チクショウ…ボクがホンモノだって伝えることが出来れば……!)」
その時だ。頭上から、何か紙ふぶきのようなものが落ちてくる。
「(これって……紙幣?)」
>「さあさあ、早いもん勝ちだよ〜〜!」
ハッとして上を見上げると、ロキが空飛ぶ絨毯に乗ってそれらをばらまいている。
しかし解せない。ロキがこんなに大金を持っているようには思えないが……。
>「早くしないと無くなっちゃうよ〜!」
他のプリメーラ達はせっせと紙幣を集めている。
プリメーラはじいっと食い入るように紙幣を見つめる。
するとそれは、ジワジワとただの紙切れへと変化…いや、戻っていく。
>「あっははははは! ビ・ン・ゴ!」
どうやら、これがロキの策略のようだ。
プリメーラ<<<|見えない壁|<<金(紙吹雪)。
襲われることも無くなったが、何となく胸中は複雑だ。
>「プリメーラちゃんどこにいるでありますか!? 迎えに来ましたわたしの姫!
不肖フランベルジェ・スティレット、プリメーラちゃんのお嫁になるであります!」
と、ここぞとばかりにロキがスティレットに変化した。
プリメーラ自身が催眠に掛かっていた時の為の作戦だろう。
「(にしてもそっくりだな……本人と並んでも分からんかもね)」
ほんの少しの微笑とともに、スティレットに化けたロキに駆け寄ろうと立ち上がり。
「う゛っ……!?」
チクリとした痛み、次いで、背中から、体の感覚が麻痺していく。
錆びた人形のように振り返ると、同じプリメーラがニタニタと笑っていた。
その手には、鍼。この痺れから察するに、麻痺の毒を塗っているのだろう。
「(しまっ……)」
膝をつき、地面に倒れ込む。
目だけでロキとそれに駆け寄るプリメーラを見、気づく。
ナイアルトが、居ない。
ならば、あのプリメーラは──!
「スティレット、助けに来てくれたのね!嬉しい!」
プリメーラに化けたナイアルトがロキに抱きつく。
首の後ろに回した左手に隠し持つ鍼が、ロキの背中を狙う!
「ろ゛……キ…………! に゛げ……ッ!」
痺れる喉を酷使し、プリメーラは必死にか細い声を絞り出した。
「(お願い、気づいて……!)」
【プリメーラ:麻痺毒により動けないよ、声必死に出してみたけど小さいよ】
【ナイアルト:プリメーラに化けて接近、麻痺の鍼を打とうと虎視眈々】
>「キャァァァ!イヤァァァ!」
恐怖を湛えた悲鳴、他でもないセフィリアのものだ。
先程までの威勢は何処へやら、その姿は十六歳の少女そのもの。
所詮"眷族"と言ってもただの"人間"――いや、"ガラクタ"だ、エミリーは勝利を確信する。
>「そう言われて本当に動かない奴なんかどこにもいないっ!」
だがその直後、ウィレムが疾走、その常識外れの脚力はまるで忽然と姿を消したかのように錯覚させ、エミリーの脳内処理の混乱を促す。
その隙にナイフごと腕を取られる、まるで瞬間移動のような芸当に抗う術は無い。
次の瞬間柔らかな感触が刃から持ち手へと伝わる。
>「こうすれば……もうナイフは使えないっスよね?」
刃はウィレムの左太腿に深々と埋まっていた。
やられた、沸き立つ焦躁感。ならば力任せに抉り出してやる――
>「すぐに人形を停止させなさい。……って言ったところで、止めないわよね。」
だがそれも遮られる、顎先に突き付けられたノイファの握るレイピアに因って。
>「――――人形っ!てめぇ動けるなら、気合入れて考えてみやがれっ!!
テメェのご主人様を、『バケモノ』にするんじゃねーっ!!」
轟く怒号、視線を剣先からその声の主ハンプティへ移す。それは物言わぬ機械人形へと向けられていた。
迫る回転刃の進行を手甲で遮り、切り裂かれた傷口から左腕を侵入させる。
すると機械人形の動作は目に見えて鈍くなり、その隙を突いてセフィリアも拘束から抜け出る。
機械人形は体勢を立て直そうにも身動きが取れず、そのまま地に突っ伏す。
ハンプティの左腕が偶然にも四肢の動作を担う重要な箇所に接触していた為だ。
>「セフィリアさん、四肢を狙ってみて!
人間を模している以上、腕を壊せば攻撃能力が、脚を壊せば機動力が奪える筈――」
セフィリアへ飛ぶ指示、構えた双剣の切っ先は左腕を左足を捉えている。
>「――違う?」
最早完全に形成は逆転していた。
彼らが常人であったならば挟撃も人質も効果的であり、好機と成り得たかもしれない。
だが彼等は常人とは程遠い、寧ろ真逆に位置する人種だ。
"掃き溜めの英雄達"――最初から、独りの少女と一体の人形がどうにか出来るような存在では無かったのだ。
>「もしあの人形がお嬢ちゃんにとって"武器"じゃなくて"友達"なら、今の内に投降した方が良いわよ。
私たちも出来る限り悪いようにはしないから。」
そう言ってノイファがレイピアを鞘に収める。
そしてエミリーも真っ直ぐ機械人形へと駆け出す、ノイファに対して返答する僅かの間すらも惜しむかのように。
「やめてっ、やめて!! レイチェルをころさないでえぇ…っ!!」
物言わぬ機械人形、それでもエミリーにとっては"武器"ではなく"友達"。
唯一の友達である"レイチェル"なのだ。
地に横たわるレイチェルを庇うように小さな体で覆い被さる。
「…おねがい…っ、…やめて…」
嗚咽を漏らし、ついには箍が外れたかのように声を上げて泣き出す。
そのエミリーの頬には"一筋の涙も流れていない"。
だが決して演技をしているわけではない、完全なる敗北を前に戦う意思は微塵も残っていないのだから。
ならば何故か? それは――エミリーもまたレイチェルと同様に機械で造られた人形だからだ。
独りの人間の少女として産まれ、死に、そして唯一の"友達"の手に因って機械人形として生まれ変わった。
それがエミリー=ジャバウォックという少女の真実の姿だった。
暴言を受けて、アルテリアの視線がサフロールを射抜く。
直後に鉄槍が放たれた。幾重にも重ねた薄氷を踏み砕くような音が響く。
ただの鉄槍が、多重に展開されたサフロールの防御壁を砕いたのだ。
鉄槍の軌道は微塵も逸れず――しかし眼光の軌道を辿る事はなく、彼の頬を掠める。
サフロールの背後で轟音、鉄槍は石製の建物に完全に埋まり込んでいた。
>「あぁ悪イ、珍しいガチョウかと思っタ」
「……似合ってねえのは分かってんだよ。惨殺《バラ》されてえかクソアマ」
頬を伝う鮮血を手の甲で拭う。
同時に、宙空に舞った魔力が羽の姿を取り戻し、サフロールの裂傷に触れた。
純白の羽が血を吸って真紅に染まり、光の粒子となって霧散する。
羽が消え去ると、既にサフロールの頬の傷は治癒されていた。
だが不愉快を色濃く滲ませた表情は緩まない。
小馬鹿にされた事が、彼のプライドに傷を付けた訳ではない。
>「ようやく分かったカ?まぁ効果は薄そうだと思うがネ」
「したり顔で抜かしてんじゃねえ。生温い真似しやがって」
相変わらずの刺々しい口調。刃を連想させる程に尖った視線が、ワイヤーをなぞる。
彼の不愉快の理由はまさに、アルテリアの張った罠が原因だった。
>「あぁちなみにもう穴が開いた訳ですし30秒もらえれば、泥沼の落とし穴でよければ私が作りましょうか?
・・・ただし、この通りは向こう半年程高さ0mの橋をかけてもらうことになりますけど。」
サフロールの表情が、更に険悪に染まっていく。
背中の翼もまた彼の感情を反映させて、黒が白を侵食しつつあった。
けれども彼は何も言おうとはしなかった。
言葉を毒に浸した無限の剣として、アルテリア達に突き刺そうとはしなかった。
このまま順調に事が運べば、手柄は確実だ。
最高効率――自分の天才性を完全に証明し、実験用の天才さえ手に入る可能性がある。
文句なしの帰結だ。
――それがどれだけ期待外れな過程を踏んでいたとしても。
>「オブテイン、貴方が何のつもりで喋ったのか、勘違いかも知れませんが私には分かります。
「そうかよ、奇遇だな。俺も一つ分かった事があるぜ。テメェの脳内にゃ甘ったるい花畑が広がってやがるってな」
落ち着き払ったレイリンの言葉を鼻で笑い飛ばし、悪言を紡ぐ。
天才とは理解されないからこそ天才なのだ。
孤独で、孤高で、孤立した存在同士である自分達が、頑張れと励まし合う。
下らない喜劇を演じるつもりはないと、身を翻してレイリン達を視界から消した。
>「ではオブテイン、最終確認をします。
ゴーレムの足がワイヤーに引っかかり、それと同時に私が足に攻撃します。
そこで爆発をお願いします」
単純で簡単な作業だ。返事も返さず、舞い上がる羽の軌跡を何気なく目で追っていた。
分解した魔力をゴーレムの後頭部近くで羽として再構築する。
しかしこの芸当がなくとも――サフロールの才なしでも、ゴーレムに爆撃は出来る。
三人組で二人が『飛翔』、もう一人が『爆破』の魔術を使えばいいだけの事。
そしてゴーレムが罠に掛かった、泥が足を取る、吸血鬼の末裔が渾身の打撃。
空の一部を白黒に塗り潰す羽が、一点に凝縮――指向性の大爆発。
崩れた体勢に止めが刺され、ゴーレムが泥沼に落ちた。
「ハッ……これで終わりかよ。くっだらねえ」
終わってみれば、この作戦に天才は必要なかった。
「単にここの連中が凡人の中でも一際クズだっただけだ。
まともな司令官と、忠実な兵士と、然るべき道具がありゃ事足りた」
自分は確かに最大効率を体現した。
ゴーレムは確保し、自動操縦の為に組み込んだ魔力も補足出来る。
だが張り合いのない作戦だった。端的に言ってつまらない。
胸の内で不愉快に蠢く感想を、唾と一緒に吐き捨てて、地面を蹴って誤魔化す。
一瞬の後に――大気を震わせる轟音が鳴り響いた。
蹴飛ばした砂とは比べ物にならない砂塵や泥が面となって迫る。
サフロールが咄嗟に上空へと『飛翔』、速度と質量による致死の運命を回避した。
そしてそれ故に、先の轟音と粉塵の正体を、誰よりも早く理解した。
深く広く抉れた地面、立ち昇る陽炎、ゴーレムの腹部から覗く巨砲――規格外の魔導砲。
それらを間に当たりにして――サフロールは笑った。
>「ヤバい!!また飛翔機雷が来るぞッ――!」
白煙の尾を引いて、四発の飛翔機雷が発射された。
機雷は帝国兵もバリケードも無視して、遊撃課を標的とする。
肉薄する機雷に対して、サフロールは両手を前に突き出した。
防御結界を張る。壁ではなく、球体だ。
前方からの爆風を、受け止めるのではなく後方へと受け流す為に。
直撃、爆発――理想的な形状で展開された結界は、しかし全体にヒビが走っていた。
ただ一度の防御で、結界が砕け散る。
その様を見て、しかしサフロールの表情は崩れない。
むしろ一層笑みを色濃くして、ついには声を上げて哄笑し始めた。
一しきり笑うと、今度はレイリン達の前へと踊り出て、滞空。
歓喜と挑発が入り交じった表情で、声を張り上げた。
「……そうだ!これだぜ!凡人共にも出来る仕事でおしまいなんてつまらねえよなぁ!?」
天才の創造物を、更に高みへと押し上げる――それもまた、天才にしか出来ない事だ。
驚異的な魔導砲、敵戦力を分析して攻撃対象を判断出来るほどに高度な自動制御。
凡人達がどれだけ集まった所で、太刀打ち出来る筈がない。
「よぉ高慢ちき!テメェの才能は凡人が十人もいれば出来るような罠を張る事か?
仮面女!テメェの泥沼だってそうだぜ!吸血鬼!あの程度で全力か!?
ウチの課長殿にゴーレム乗らせた方がよほどマシな仕事をするだろうなぁ!」
――サフロールの行った爆撃は、凡人が三人いれば賄える。
然るべきゴーレムを用意すれば、先のレイリンの打撃は再現出来る。
アルテリアの罠もフェイスレスの泥沼も、要する人数の差はあれど本質は変わらない。
ならばサフロール達の『天才性』は群れた凡人で再現出来るものなのか。道具で代替が利くものなのか。
「――違えだろうがよ!無能!無才!凡人!俺たちゃ羊じゃねえんだ!
凡人共が何人集まって手を組もうと届かねえ高みこそが俺達だ!えぇ!?そうだろう!?」
叫びに伴って、サフロールの翼が巨大化し、広がった。
曲線を描き、先端を突き合わせて魔力が渦を巻く。
顕現する魔術は『引力』――だが無差別にではない。
羽が舞い降りる。辺り一面に散らばった、ニードルデーモンの死体へと。
魔力の断片によって『引力』の対象となった死体が、宙へ誘われる。
幾つもの死体は、巨大な棘の塊に成り果てた。
サフロールが、立てた親指を地面へと向ける。
死体の塊が弾けた。数え切れない棘が、地面へと高速で降り注ぐ。
アルテリアの周囲に、等間隔に突き立てられる。
分解され、突撃槍の形に再構築された悪魔の棘が。
「おら、くれてやる。その代わり下らねえ使い方したら今度はテメェがそうなる番だぜ」
一方的に言い付けると、次にサフロールはフェイスレスを睨む。
「テメェもだぜ。あのゴーレムはもう、原型である『インファイト2』を大きく上回ってやがる。
泥沼なんてケチな事抜かしてんじゃねえ。やるならこの通り丸ごとだ。出来るモンならもっとでもいいぜ?
とにかく派手にやりやがれ。テメェに記憶がねえのなら、唯一残ったその才能がテメェの存在価値だ」
最後にレイリンへと視線を滑らせた。
「よう、吸血鬼の末裔が石人形に劣るたあ惨めなモンだなぁ?
吸血鬼の力ってのは馬鹿力だけか?え?違えよなぁ?
テメェの身を可愛がるなんてのは凡人のやる事だぜ?」
治癒の終わった頬を思わせぶりに撫でながら、粘着質な声色で嫌味を降らせる。
「ほら、精々マシな所を見せやがれよ女共」
言いながら、自らも魔力の羽を一層大量に撒き散らす。
サフロールは『堕天使』の末裔。
神に、『全知全能』に――『創造主』になりたくて、なれなかった種族。
故に彼の遺才は『分析』であり――それは『分解』と『再構築』へと繋がる。
「……流石に大通り全域に魔力を散らすのは、しんどいなんてレベルじゃねえな。やってられっか。
だが……ほら、もっと近付いてこいよデカブツ。言っておいてやるが……」
――不敵な笑みと共に、紡ぐ。
「――そこから先は、俺の『世界』だぜ」
サフロールの魔力で満ちた空間は、言わば彼が自在に掌握出来る『世界』だ。
自在に分析し、分解して、再構築出来る。
神の座を求めた『堕天使』の本領、真骨頂。
欠点――高密度の魔力を展開する為に訪れる消耗。本人以外の魔力による『世界の崩壊』。
所詮は『成り損ない』の技法――不完全でしかない。
「さぁて……次はチャチな魔導砲なんざ使わせねえぜ。
完膚なきまでにブッ倒してやりゃ、自慢の主砲もただの花火に早変わりなんだからなぁ」
【アルテリア→ニードルデーモン製の無数の棘:フェイスレス&レイリン→懲りずに煽り立てる
高密度の魔力で満たした『世界』を展開中。完全にブッ倒せば主砲も何も関係ないだろ的な】
大勢は決した。
当然死ぬとは思っていなかったが――一応、ウィレムの『決死』の覚悟も、功を奏したと言っていいのだろう。
>「やめてっ、やめて!! レイチェルをころさないでえぇ…っ!!」
>「…おねがい…っ、…やめて…」
地に付する人形にしがみつき嘆願するその言葉。少なくとも嘘は見えず、これ以上どうこうしようという気持ちにはなれないだろう。
終いには泣き出してしまった少女の姿にはウィレムもなんだか言葉にはし辛いが居た堪れない感情が去来する。
ナイフが刺さった太腿を庇いしゃがみこんでいるようなこの状態からはよく見えないが、恐らくマジ泣きだろう。
はっきり言ってウィレムの行動はただの先走った自傷行為でありこの少女本人に何ら被害を受けたわけではなく、
「なーんか、俺たちが悪人みたいになってまスね……」
客観的に見れば、年端もいかない子供をよってたかっていじめているようにも見えるかもしれない。
いやそんなことは決してないんだけど、ほら、なんとなく。
さて問題は未だにウィレムの痛覚神経をこれでもかとばかりに刺激し続けるこの左大腿部のナイフだろう。
心配かけさせまいとわりと平気なふりはしているが、実のところ相当痛いというか痛くて痛くて痛くて泣きそう。結構血も出てる。
咄嗟の判断だったとはいえ他にも幾らでも手段はあったよなー、とも思う。じゃあ言ってみろとか問われると答えられないが。
ともかくこういうのって無理に引っこ抜くとこう血がドバーッて出て来て結構取り返しのつかないことになったりする気がする。
ウィレムの微妙な教養では心許ないが太腿って確か太い血管が通っていると聞いたことがある。それに傷ついてたらどうしよう。
全く後先を考えて居なかったことに自責しつつ果たしてどうしようか考えて考えて考えて結局思いつかないところに。
>「うわー……ウィレム君、これ痛いでしょ?」
>「ウィレム君の両脚は立派な武器なんだから、もっと大事にしないとダメだよ。」
ナイフの柄から傷口へ、振動が伝わる度にウィレムの表情が福笑いのようにころころと変わる。喉から漏れる言葉にならない声。
実を言うとウィレムがあえて刺す箇所を足にしたのはわりと深くない事情があるのだが、ここでは割愛。
なぜならそのことに思考を移そうとした瞬間、違う痛みとともに足が軽くなるのを感じたからだ。
ノイファがナイフを抜いた、そのことに気づくのに時間はかからない。溢れ出す血流。やはりというか大事な血管に傷ついていたようだ。
今まで見たこともないような夥しい血の量に言葉を失う。顔が青くなる。気の早い脳は走馬灯の準備を始める。
>「大丈夫、大丈夫。慌てない、慌てない。ちちんぷいぷいってね。」
別にウィレムはこれまで治癒魔法を見たことがなかったわけではない。だが、自分に使われるのはたしか初めてで。
みるみるうちに傷口が塞がってゆくその光景と、こそばゆいような暖かいような感覚に、言葉を失うこと数秒、十数秒、数十秒。
瞬く間に血は止まり、そこには"跡"だけが残った。まるで何ヶ月も前の古傷かのように、一筋の線だけを残して。
>「あと、失った血までは戻らないから暫くはふらふらするかもね。
> ま、此れに懲りたら次から刺すのは腕にしなさい。そうすれば走って逃げられるでしょ?」
「ほ、ほ、ほ……」
ほ?
「惚れるでしょーが!」
まぁ、その、今まで女性に優しくされたことのないウィレムだから、無理はないのかもしれない。
実際に惚れた訳ではないが、心優しい大人の女性の魅力にすっかり顔は赤くなってしまっている。
「い、一応お礼は言っときまス!ありがとうございまっス!でもあんまり俺に優しくしないで下さい!」
これ以上優しくされると本気で惚れかねないからだろう。思春期の少年とは難儀なものである。
女性とは自分を虐げるもの。それが普通だと思っているウィレムには、些か刺激が強すぎた。
「さて、だいぶ魔物は片付いた感じっスかね?」
少年と老婦人も無事避難させ、くるりと周りを見渡す。とりあえず周囲には見えない。魔物の姿も、人の姿も。
「まぁとりあえずもう一回軽く東区内を見回って生き残りが居ないかだけ確認しないとスね。
あと、まだ逃げ切れてない住民が居ないかも一応確認しないと。
それが終わったらバリケードの建設、っスよね。うし、もうひと頑張り」
その瞬間の立ち眩み。態勢を崩しそうになってなんとか堪える。頭が回らない。血が足りていないのは明らかで。
少しでも体力を回復させないと今のままでは役立たずに違いない。
「……ごめんなさい、俺はちょっと休憩していいスかね?見回りは任せまっス」
ふと、背後から轟音が響き渡る。
振り向いた向こう、もう少し向こう。あちらには確か西区から中央区を突っ切ってここ東区まで繋がる街道があったはずだが。
繰り返す、あった"はず"だが。
「――っ!?」
近づいて、確認。
背筋が震える。
それは、まるで、谷のように、地面が、抉れて。
中央区の方角から、ずっと。
味方の行為とは思えない。こんなことをするメリットが思いつかない。つまりは、あのゴーレムの仕業ということで……。
まるで紙細工のように、消し飛ばしてしまえる相手に。果たして、バリケードが何の意味を持つと言うのだろうか?
ただ。
(例え気休めでも、やんなきゃでスよね)
それに、あくまで中央区が突破されたら、だ。中央区の面々がゴーレムの侵攻を止めてくれるのなら、必要のないことなのだから。
「……とりあえず、もう傷つけたりとかしないスから、泣き止んでもらえまっスか?」
【ちょっと休憩→バリケードの建設に着手するつもり】
>>115-116 【エミリー:敗北。戦意喪失状態】
【レイチェル:敗北。左肩破損(裂傷)】
【追記です、↑忘れてました。ごめんなサイケデリコ】
>114
>「スティレット、助けに来てくれたのね!嬉しい!」
これ本物? なんかノリが違うくないかい?
と思いながらも抱擁を受ける。途端、背中を針で刺されたような痛みを感じた。
「うっ、……効くぅうううう!」
勝利を確信し、ニタリと笑う偽プリメーラ。
「お返しっ!」
その隙に、こちらも負けじとハリセンで肩に一撃叩き込む。
目の前には唖然とした表情のナイアルト。大量のプリメーラズは兵士の姿に戻った。
「ふっふっふ、油断禁物。お客さんこってますなあ」
ちなみに、巷でよく言うところの”口論の末揉み合いに発展”とはこういう意味である。
「どうして麻痺毒が効かないか知りたい? 知りたい? ヒントをあげよう、“瘴”の眷属だからさ!」
ここで種明かしをペラペラ喋っては死亡確実なのでヒントにとどめておく。
「ご先祖様はめくるめく魔法の世界の住人なのでーす!
ワタシの幻術にかからなかったあなたも実はそうなんじゃないの? な〜んちゃって」
めくるめく魔法の世界、略して魔界。
現世とは異なる因果律を持つ、概念が具現化する不条理ワールドのことだ。
一般的には地獄なんて物騒な呼び名で呼ばれている。
「チャカしていいかい? ここから先はワタシの世界だよ!」
手の先が痺れてくるのを感じながら、不敵な笑みを浮かべた。
ナイアルトの幻術が解けている今なら、兵士を掌中にする事が出来る。
場面設定は合戦、兵士達は戦国武将、ナイアルトは敵の将軍だあ!
「皆の衆、かかれかかれ!この者打ち取った暁には一国一城の主ぞー!」
ナイアルトはあっという間に兵士達に取り囲まれた。
「ここで会ったが100年目、恨みはらさでおくものか!」
「打ち首―、打ち首じゃあ!」
「ふはははは! 今日のところはこの辺にしといてやろう」
やっべー! うまくいかなかったらどうしようかと思った。三十六計逃げるにしかず。
喧騒を尻目に、倒れているプリメーラ(今度こそ本物)の首にマテリアルのペンダントをかける。
そして魔法の絨毯でくるんで抱き上げ、すたこらさっさと走り去る。
形だけお姫様抱っこ。実際には魔法の絨毯で浮かんでるのを運んでるだけ。
もうお分かりだろうか。
ワタシの眷属は、遥か古の時代に魔界に隔離され、高濃度の瘴気に適応した人類の末裔。
とはいえ、瘴気と毒は微妙に違う訳で。耐性であって無効化ではないんだよなこれが。
「アルトく〜ん……ちょっと……効きすぎだよ……」
足が鉛のように重くなってきた。
相当強い毒だな。当然だ、プリメっちゃんが一瞬で倒れるほどなんだから。
「ただ……いま」
司令部に入った瞬間、糸が切れたように倒れたのでした。
【ナイアルトを煙に巻き、危うく逃走に成功】
……と思ったらその辺で行き倒れていた! 大ピンチだ!
【ごめんなさい、事故りました! 逃げてみたものの行き倒れになったよ!】
凶刃は止まり
二刀による一閃が機械人形の左半身を奔り抜けた。
「あちち……ったく、危ねーなぁ」
フィンはセフィリアの斬撃が走る直前に腕を引き抜き、
そのまま大きく後方へと跳躍すると、帯びた熱で周囲の空気を歪ませる
手甲をパタパタと振りつつ、機械人形に向けて再び警戒の構えを取っていた。
いかに破損しようと、相手が人間でない以上警戒を重ねるに越した事は無い。
僅かな動作すら見逃すまいと拳を構え――
>「やめてっ、やめて!! レイチェルをころさないでえぇ…っ!!」
「……」
そして、必死に駆けてきて機械人形を庇うかの様に覆いかぶさった少女の姿に、
苦虫を噛み潰した様な表情をし、やがてゆっくりと構えを解くと、
くしゃくしゃとバンダナの上から自身の青髪を掻く。
勝敗は、既に決していた
本来ならば目の前の機械人形を完膚なきまでに破壊し、
素材として持ち帰るのが軍人としての正しい在り方なのだろう
破壊しないでおけば何が起こるか判らないし、少女が演技をしている可能性もあるからだ。
人質を取る様な事をする者なら、そんな下種な演技でも十分にやりかねない。
だが、生憎と志願して軍役に付いた訳でもないフィンには、
そんな軍人としての気概などないし、全てを疑う様な性格でもない
何より、そんな「楽しくない」事をこの青年が望む筈は無い。
フィンは涙を流さず慟哭する少女へと歩み寄ると、
その場にしゃがみ、少女の頭に頭にポスンと手甲をつけたままの右手を乗せる
「『泣く』なって。お前もお前の友達もいじめねーからさ。
ただ、さっきのボウズとセフィリア、後ウィレムにはごめんなさいって言っとけよ?」
フィンは少女にニカリと歯を見せ笑う。そこに警戒の色は無い。
先程までこちらに殺意を向けていた存在だというのに。
慟哭しつつ涙を流さない人間かどうか判らない存在なのに――――こちらは、
ただフィンがその違和感に気づく程に繊細でないだけなのかもしれないが。
そうして立ち上がり、セフィリアの肩を一度ポンと叩くと
ウィレムの方へと歩いていく。
>「大丈夫、大丈夫。慌てない、慌てない。ちちんぷいぷいってね。」
>「惚れるでしょーが!」
そこで目にしたのは回復を行っているノイファと、
何やら顔を真っ赤にしてなにやら叫んでいる後輩の姿。
「何してんだ?」
まあ、そこにある優しさの魅力も思春期の少年の複雑な心もフィンには
感じ取れる筈もなく、首をかしげるだけに終わった。
が――――ここは戦場。そんな閑話も長い間許される筈もない。
抉れた地面。消された街道。それが知らせる異常事態。
「うおおっ、すっげーな!なんだこれ!なんだこれ!」
だが、そんな異常事態に対してフィンは目をキラキラと輝かせ子供のような表情をする。
見た事の無い事態に、冒険や珍しいものが大好きなフィンのテンションは上がる。
普通なら尻込みする場面だが……「天才」の性格が普通な事は少ない。
フィンの場合は、これでもまだまともの部類に入るだろう。
「いよーし!よくわかんねーけど、俺はバリケードの前線に立つぜっ!!」
入るだろう……多分。もしもウィレムがバリケードを作り始めたら、
恐らくはバリケードの上で手を組んで仁王立ちし、
無駄に目立つ事になってしまうであろう様な、そんあ性格の青年だが。
【フィン。バリケードの建設予定箇所の最前線付近で腕を組み、
中央部の様子を観察している】
【西区・元聖マリアンヌ教会前】
>「うっ、……効くぅうううう!」
その叫びを聞いた瞬間、ナイアルトは勝機を、プリメーラは敗北を感じた。
奇術師は止めを刺そうと二度目の鍼を振り上げ、プリメーラは絶望に目を閉じる。
だが。
>「お返しっ!」
「…………………ッ!?」
プリメーラの顔をしたナイアルトの顔筋が歪む。
何せ、鎧を付けた精鋭兵士をいとも容易く吹き飛ばす威力を持つハリセンだ。
普通の人間ならば、肩が砕け、その場でのたうち回ってもおかしくない。
「何故だ……一滴垂らしただけで半日は動けなくなる゛アレニエグモ゛の毒だぞ?
クラウン君、君は一体……」
>「どうして麻痺毒が効かないか知りたい? 知りたい? ヒントをあげよう、“瘴”の眷属だからさ!」
>「チャカしていいかい? ここから先はワタシの世界だよ!」
途端、プリメーラの姿から戻ったエルトラス兵士達がナイアルトに襲いかかる!
その様を唖然と眺めている間に、ロキが駆け寄り、マテリアルを首にかけてくれた。
>「ふはははは! 今日のところはこの辺にしといてやろう」
「(ロキ、それ捨て台詞臭いよ……)」
動けないプリメーラは空飛ぶ絨毯にくるまれ、抱きかかえられた。
奇妙な浮遊感に包まれながら、絨毯から少しだけ顔をのぞかせる。
ナイアルトは何か怒号をあげながら兵士達を操ろうと躍起になっている。
その様が何だが滑稽で、プリメーラは思わずクスリと笑うのだった。
― * ― * ― * ― * ―
全くもって腹立たしい。ナイアルトは仮面についた血を拭い、死体を蹴飛ばした。
『ナイアルト、定時連絡はどうした? おい、ナイアルト?』
キィンという耳鳴りの直後、他人の声が直接入り込むこの感覚も腹が立つ。
至極不機嫌、と言いたげに、ナイアルトはそれに答える。
『こちらナイアルト。帝都側から思わぬ邪魔が入りました。エルトラス兵士の半分が壊滅です』
『ヒューッ!遊撃隊だっけ?で、誰にやられたんだ?』
『魔術師とクラウンです。あのような屈辱、初めてです』
『女の子か〜オジサン羨ましいぜ…って、たった二人に半分!?ヒュゥーウ!
で、どうすんだ奇術師さんよ?その化け物共、放っておくのかい?』
『この色欲魔…。私はこのまま彼奴等を追いかけます。作戦もまだ途中ですから』
『アイサー。こちらも予定通りに…おい待て、誰が色欲魔だゴルァ』
『それでは念信を終わります。Good luck』
『ちょっと待て、話は終わってないぞオイ、まt』
半ば強制的に念信を切った。八つ当たりも甚だしいな、と自嘲するが、ボヤボヤしている暇はない。
この作戦において、必要なのは兵士ではなく、自分゛達゛なのだから。
プリメーラ達が消えた方角を見やる。腹の中で、怒りと疑問が燻っていた。
「(“瘴”の眷属……フッ、まさかね)」
自分の脳内で仮説を立てたが、一瞬にしてそれを崩した。
かの一族は、あの戦いでとうに滅ぼした筈なのだ……そう言い聞かせ、ナイアルトはその場から姿を消失させた。
― * ― * ― * ― * ―
【西区・出発地点】
プリメーラ達は、既に使われなくなった空き部屋に潜んでいた。
麻痺毒の幻覚作用に苦しむロキの額をそっと撫でる。ベッドがあったのが幸いだった。
だが、ずっとこうして隠れている訳にもいかない。
ナイアルトが自分達を始末する為に追い掛けて来る可能性はある。
だが、ロキは毒抜きはしたものの、まだ痺れで戦えない。
プリメーラ自身、戦闘での出血に伴い毒は抜けてきたが、まだ痺れが残り、少々貧血気味。
「(そうだ、助けを呼ばなきゃ……)」
フラフラと外に出る。相変わらず死体が転がり、死臭がむせかえる。
開けた場所に出ると、プリメーラはマテリアルを掲げた。
「『おいで』」
まだ嗄れる声で、空に呼び掛ける。マテリアルが淡い青に輝き、間もなく一羽の白い鳩が舞い降りてきた。
『西、助けて、プリメーラ』
鳩の白い体躯に自分の血で拙い文字を殴り書き、鳩を飛ばした。
司令部に鳩が着くまでは少し時間が掛かる。
それまでは、自分一人でロキを庇いながら戦わなければならない。
「(――――やるしかないんだ)」
刹那、遠く、中央区から轟音が聞こえてくる。
地鳴りがプリメーラを僅かに揺らし、亀裂がこちらに向かって走り、足元で止まった。
東区の人形姫、中央区のクランク。ナイアルトがそんな事を呟いていた事を思い出す。
……もしかしたら、援軍は絶望的かもしれない。腹を括ろう。
「フフ、クランクは゛アレ゛を出したようですね。お仲間さんが心配ですか?」
二人を追って現れたナイアルトと十数人のエルトラス兵士達。
不思議と恐怖はない。不敵に笑ってみせてすらいる。
「誰からでも来いよ。全員叩きのめしてやる」
エルトラス兵士達に囲まれて尚、プリメーラは強気にそう言い放った。
【イベント・鳩よりSOSをこめて:伝書鳩が司令部にGO。プリメーラのもとまで誘導してくれます】
【プリメーラ→ロキ:ある程度の毒抜きを施し民家に隠す】
【西区にてナイアルトとエルトラス兵士十数人と交戦中。助太刀待ち】
逃げたら、左遷された。
ルイン・ラウファーダは逡巡としていた。
遊撃課への異動命令。そして、任務につき召集。どれも嫌な内容ばかりだ。
結果として彼はダンブルウィードまでは来たものの、顔も見せずにさぼった。
「あぁぁぁ…行きたくねぇーよおおお〜〜〜ダンブルウィードとかふざけんなよぉぉお〜〜」
騎士団よりも悪い給料、最前線での戦い。ルインにとってはどれも地獄だった。
故に彼がダンブルウィードの前で現実逃避をはじめるのは至極当然の流れである。
「……知らね。寝よう」
やる気も出ない。多額の借金を抱え、掃き溜めのような課への出向。
前門も後門も塞がっていて窮まってしまったのならこりゃもう寝るしかない。
少なくともルインの中で残された選択肢はそれしかない。
ごろりと地面に寝転がり、最後の財産である安物の槍を枕代わりに抱きしめる。
───でも……ここで任務放棄しちゃうと首とぶよな
「はっ……!これはもう一人の俺………!?」
ルインの中に残された最後の良心が、現実逃避をするだけのルインに語りかけてくる。
───クビになったら借金も完済できないよなぁ…また人間はどこまで水だけで持つか、やってみるか?
「しっ…知らん知らん!!俺はここから動かない!ルイン・ラウファーダは動かない!!」
───あん時は優しいおばあさんに助けられたから良かったけど……今回は、死ぬな
「う……ううう…う〜〜〜〜ん…………えぇぇぇぇいい!やりゃあいいんだろうがやりゃあ!!」
しばしの沈黙の末にがばりと起き上がり、引き締まった顔で一歩を踏み出す……が、足が震えて動かない。
心で嘘をついて頑張ろうとしても身体は正直なようだ。なんとか槍を杖代わりにして必死で前へ進む。
しかしヘタレが何か行動を起こすときには必ず裏がある。それはルインとて例外ではない。
(……だがタダで戦う俺じゃないぜ!もう戦闘もほとんど終わりかけって時だ……
最後の最後で“しれっ”といりゃ最低でもクビにはならんだろ)
その病的なまでのビビリ症とヘタレさから、人々は彼を臆病者(ザ・チキン)と呼ぶ。
「………遊撃課の皆って絶対ゴツイおっさんとか強面ばっかなんだろうなぁ〜〜……俺馴染めるかな……
つーかまずクビにならねーよな?な?な? ダイジョウブダヨ、ウンガミカタシテクレルヨ(裏声)」
いらぬ心配をしながら自問自答を繰り返す器用な行動もそこそこに西区へと足を進める。理由はない。
しいて言えば危機察知能力が『中央区には死んでも行くな』と告げていたからそれ以外を選択したにすぎない。
傾斜を下ろうとした瞬間、中央区からの地鳴りに足を全力で滑らせ──盛大に転んだ。
「んだよっ……ふざけんなよっ…!あのタイミングで揺れなくてもいいだろケチィー!バカァアア!」
揺れの原因が分からず恐怖で逃げることしか考え付かなくなった時に、遭遇した。
数十名のエルトラスの兵達。幸いまだルインのことには気付いていないようだ。
(まだ終わってねーのかよ……!俺のしれっと作戦が音を立てて崩れていく……!!)
いや、あいつら、誰かを囲んでるぞ。心の声が呟く。
それからエルトラス兵は女の子を囲んでいるのだと理解するのに時間はかからなかった。
しかしだからと言って後は俺に任せろーと言わんばかりに登場するほどルインは勇ましい性格ではない。
(いやいやいやいや。パンピーを囲うとか……もしかしてそういう趣味なのか!?
兵士ならともかく……あれは…助けたほうがいいのか?)
距離が遠いせいか、プリメーラをダンブルウィードに住む一般市民か何かと勘違いしているようだ。
そこで義務感というか使命感というか……そんなわけのわからぬ正義が今更昂ってしまう。
蜘蛛の巣が張った義憤に突き動かされ、気が付けば後は俺に任せろーと飛び出していた。
俺はなにをしているんだと疑問の声が浮かぶがそんなものもすぐ失せた。
「くっそぉぉおおお!!あああああああ、あ、あ、後は俺に任せろ、いや、任せるんじゃねーーーッ!!」
突然湧いた、足の震えた青年に何事かとエルトラス兵は振り向く。
その顔にびくりと一歩後退りしてしまうルイン。どう贔屓目に見ても、天才のそれには見えない。
ゴキブリの如く湧いてきた邪魔者を排除すべく一人の兵が剣を振るう。
(やべえ。やべえやべえやべえやべえ。くるくるくるくるくるくるく…きたぁぁあああーーーーっ!!)
咄嗟に槍を構え、剣の一撃を横にいなす。そして、薙ぐ。それだけだ。
2動作でエルトラス兵の鎧を裂き、赤い液体が零れ地面に伏す。それを数回、繰り返す。
それだけで5人の兵は瞬く間に戦闘不能に追い込まれ───路傍の石と同じ状態でいるしかなかった。
彼の戦闘スタイルに先手は必要ない。
その全ては敵の先手を受け流し無力化した瞬間に攻撃する、後手必殺の戦闘。
そして、これが彼の遺才による戦いではない。彼の遺才による槍術は先の戦い方とはむしろ対極にある。
にも関わらずルインがこの戦い方を選ぶのは彼が臆病者であることに他ならない。
「違うんや!!俺は違うんや!俺は遊撃課に配属されたけど
給料は騎士団より安いし職場は怖そうだしで今まで顔も見せずにサボッてただけなんや!!
だから俺は何も悪いことしてへんのや!!俺に関係あるのは、多額の借金だけなんや!!」
エルトラス兵数名を倒した張本人は終始情けなく「ぎゃー」だとか「うわー」と叫んでいた。
しかも喋らなくてもいいことまで暴露していた。クビは飛ぶことになりそうである。
「さっ………さあ俺が引きつけている内に逃げるんだ!だ、ダイジョウブ…大丈夫じゃねーけど大丈夫!!」
どうやら彼はまだプリメーラを一般市民か何かと勘違いしているらしい。
【颯爽とビビリまくりながら登場。プリメーラさんを一般市民か何かと勘違い】
【余談ですが今まで怖かったので何もせずサボっていました】
(司令部にて)
空をぼぅっと眺めていたら、灰色の空に一匹の鳩がこちらに向かっているのが見えた。
徐々に近づくにつれ、胴体にかかれている文字が鮮明になる。
>[西、助けて、プリメーラ]
「・・・西?」
反射的に指笛で呼んだ。
鳩は気づいたのか、滑空してくる。
スイは、近くにいた兵士の馬に飛び乗った。
「もらうぞ。」
鳩はこちらだ、というように、飛び去っていく。
スイを乗せた軍馬は西へと疾走した。
戦場についたと思えば、鳩は少女の元へと飛んでゆく。
少女の前には、完全に逃げ腰な青年が槍を構えている。
>「俺が引きつけている内に逃げるんだ!だ、ダイジョウブ…大丈夫じゃねーけど大丈夫!!」
頭痛がしてきた。
思わずボーガンを構え、少女と青年に向かって叫んだ。
「お前ら、伏せろ!」
軍馬の鞍の上に立ち、スイは引き金を引いた。
[西区参戦です。鳩に導かれてやってきました]
>「やめてっ、やめて!! レイチェルをころさないでえぇ…っ!!」
群れなすニードルデーモンと、人形遣いの少女を降し、東区は束の間の平和を取り戻していた。
とはいえ、ダンブルウィード全域に散らばる正体不明の敵を、全て撃退した訳ではない。
隣の中央区とその先の西区では、まだ遊撃課員たちが戦闘を続けているのだ。
(此方は片付きましたけども……さて、援護に回すか、それとも陣地を守るか)
損壊した人形に縋りつき、泣きじゃくる少女を傍目に、ノイファは頭を悩ませていた。
下された命令は魔獣の掃討と、防衛線の構築。
だが、此方の損害は――内、一人は力技だが――無し。
ダンブルウィード兵の協力を得られるのなら、四人全員を割り振るのは些か多いよう気もする。
(まあでも、中央区はかえって邪魔になりそうですし、西区は距離がありすぎますかね)
中央区を受け持つ隊員は広域戦闘や、火力に特化した者が多い。
対して此方、東区は近接戦を得手とする隊員で構成されている。故に足を引っ張りかねない。
西区は単純に距離の問題。
ウィレムなら一足だろうが、未だ座り込み、肩を震わせている以上そうそう無理はさせられない。
「それじゃあ――」
>「ほ、ほ、ほ……」
「――へ?」
次の指示を出そうとして、しかし横から聞こえてくるウィレムの声に遮られる。
内から搾り出すような、どこか上擦った苦しそうな響き。
もしかしたら、治療が不十分だったのだろうか。
ノイファは慌てて視線を落とす、が――
>「惚れるでしょーが!」
「……は、ええっ!?」
>「い、一応お礼は言っときまス!ありがとうございまっス!でもあんまり俺に優しくしないで下さい!」
「はい、ごめんなさい!
……えっと、あれ、うん?怒られたですよ?」
余程気に障ったのか、怒りで顔を赤く染めたウィレムの勢いに押し切られ、思わず謝るノイファ。
釈然としないものを感じつつ、自分に落ち度があったのかと頬に手を添え首を傾げる。
>「何してんだ?」
丁度傍まで歩いてきたフィンも、その様子を不思議そうに見ていた。
>「さて、だいぶ魔物は片付いた感じっスかね?」
東区内の生存者確認とバリケードの設置。
やるべきことはまだあると、ウィレムが気合も新たに立ち上がる。
「うん、そうだね。
それに、そろそろブライヤー隊長も来るだろうし、ちゃちゃっとやっちゃおうか。」
先刻まさに、それを言おうとしたのだとは表情に出さない。
実際するべきことは多いのだ。
先の二つに、埋没機雷の準備。併せて移動経路の選定。
魔獣の侵入を阻むためとはいえ、各区をつなぐ道全てを塞いでしまう訳にはいかない。
(あとは……あの子をどうするか、ですよねえ)
投降した人形遣いの少女。エミリー=ジャバウォックの処遇。
無論、言葉を違える気はない。
自分に出来得る限り、便宜を掛け合うつもりではあった。
しかしダンブルウィードの住人からしてみれば、彼女は同胞を害した仇敵であるのも事実なのだ。
このまま此処に置いていたのでは、余計な軋轢を生み出す可能性もある。
(何か名分が必要、ですね――って!?)
どうしたものかと考えを巡らせていたその時、大口径の砲音が轟いた。
大地は鳴動を止めず、空気は帯電したかのように皮膚を叩く。
咄嗟に顔を覆った腕を退ければ、そこには有るべき筈のものが消えている。
「けほっ、……なにごと!?」
中央区と東区をつなげる街道に、巨大な溝が穿たれていた。
余程の魔力か、あるいは瘴気を、凝縮して叩きつけなければこうはなるまい。
>「うおおっ、すっげーな!なんだこれ!なんだこれ!」
だというのに、楽しそうにはしゃぐフィンは、変わり者揃いの遊撃課の中でも郡を抜いて大物なのかもしれない。
防衛線の構築に取り掛かろうとする者たちを横目に、中央区の方向へ目を輝かせている。
「大したものだわ……。」
ノイファは乾いた笑いを吐き出す。
「えーと、私はまだ生存者が居るか確認してくるから、エミリーちゃんをお願い。
そうねえ……名目は"敵の情報に通じてるはずだから逃がさないように"ってことで。」
よろしく、と他の隊員へ声をかけ、ノイファは走り出す。
否――そうしようとして脚を止めた。
「あらら、そういう訳にもいかないみたいね……。」
重心を落とし、だらりと下げた腕を腰へ這わせ、周囲を見回す。
いつの間にか東区は、新たな殺気に包まれて居た。
【生存者確認に出ようとするも、周囲の殺気を察知して脚を止める。】
リードルフは夢と現の狭間、微睡みからゆっくりと覚醒する。
寝呆ける頭を回転させる。見渡す限りに肉塊と針がそこかしこに散乱する地獄が広がっていた。
そうだ、僕はスイと共に遊撃課に五時間も遅れて到着して課長さんにしこたま怒られたんだっけ。
でもって、馬糞の掃除をさせるみたいに残りの魔物やニードルデーモンの駆除を命令されて、一匹残らず駆除したんだっけ。
隣では、スイが呆けっと灰色の空を食い入るように見上げている。倒す相手が居なくて退屈なんだろうな。
起きたら小腹が空いてきた。四次元薬草鞄の中を弄り、キャラメルを探り当てて口の中に放り込む。美味しい。
「キャラメル食べますか?」
スティレットからの熱烈な視線を感じたので、彼女もお腹が空いているのかなと思いキャラメルを差し出してみた。
いたく気に入ったようなので「まだありますよ」と差し出す。「ボルトさんにもどうぞ」と彼の分まで渡すと喜んでくれた。
和やかな空気の背後で、肉塊の山の一つがもぞりと動いた。油断しきった二人の脳天を狙い、ニードルデーモンの腕が振り下ろされる。
転瞬、残像。煌めく一閃。
「殺気丸出しですよ。サボテンさん。」
動作、素振り、殺気すらおくびにも見せる事なく、リードルフは自らの得物の片手剣をその醜い頭に串刺しにしていた。
人間を超える視力、聴力、瞬発力、エルフの素質を半分受け継いだ彼だからこそ出来る芸当。
剣を一気に引き抜き、ニードルデーモンは今度こそ地に伏せ、開いた瞳孔を鎮めた。
「やれやれ。最近のゴーレムは騎士道ってものを知らないんですかね。」
同意を求める目配せをするも、「今のはちょっとした冗談ですよ。」と柔らかく笑ってその場を離れ、スイの横に戻った。
「・・・西?」
それまでずっと声を発さず黙っていたスイが不意に呟いて、何事かと倣い空を見上げる。
スイが指笛を鳴らすと、鋭い高音に反応したそれが急降下してスイの腕に留まる。
白い鳩だ。伝書鳩だと直ぐに分かったが、手紙も持たずに何故こんな所にいるのか。
「西、助けて、プリメーラ・・・・・・。これってまさか!」
酸化して赤黒くなった文字が白い鳩の胴体に書かれているのを見た。紛れもなく人間の血だ。
プリメーラといえば、同じ遊撃課の人間だ。ロキという仲間と一緒だった記憶がある。
西区はエルトラス兵士が潜伏している。事態は一刻を争う。スイは既に近くの軍馬を駆り出していた。
「もらうぞ。」
「僕も行きます。お借りしますね。」
スイに便乗する形で騎乗し、白い鳩の導きのもと追従する。
程なくして西区に突入した二人は複数の人影を認める。中心の男女を数十人の敵軍兵士が包囲している。
風に乗って、男の情けない弁明が耳に届き、油を売っていた仲間の一人と知る。
「どうやら、僕達の仲間のようですね。少々頼りなさそうですけど。」
眉尻を下げて微苦笑するリードルフの手には、幾つもの黒い球状の何か。
スイとほぼ同じタイミングで鞍の上に立ち上がるが、彼の目的は違う所にある。
「疾っ!」
猛スピードで馳せる馬上でバランスを取り、着地点を定め、馬の背、首を駆ける。
頭を台に、体重を感じさせない軽やかな跳躍が繰り広げられ、男女の間に着地する。
派手な登場にも関わらず、彼ら敵兵には刹那的にしかその姿を見ることは許されない。
理由は単純明快で、彼が跳躍した際に放り投げた煙幕弾が破裂し、視界を黒い煙が覆ったからだ。
「スイ、今です!」
リードルフの掛け声を合図に、黒い煙の幕を一陣の矢が切り裂いた。
それを皮切りに混乱する敵兵達。その隙に少女を抱き寄せ、勇敢な臆病君と背中合わせになる。
「良いかい、死にたくないなら、合図するから出来るだけ高く跳んで。」
青年の足の震えに一抹の不安が脳裏をよぎるが、今は言うとおりに動いて貰うしかない。
何故ならばこれも単純明快で、リードルフ達を助けんとする二頭の馬が此方に突進して来るからに他ならない。
「今だっ跳んで!」
合図の号叫と同時に、爪先で青年の尻を満身の力をこめて蹴り上げる。
蹴る際の力を利用してリードルフも少女と共に飛翔すると、走り来る馬上の着座に成功した。
青年も、スイの後ろにしがみつく形で成功している。安堵し、救助した少女に片微笑みかけた。
「プリメーラさんですね。貴方の鳩に導かれた味方です。」
「スイ、と・・・・・・・・・・・・・・・槍男君、敵は任せました!」
今度はプリメーラに導かれ、ロキの元へ向かう。毒にやられたと説明を受け、手早く薬を調合して飲ませた。
「痺れが完全に取れるまで時間はかかりますが、もう安心ですよ。」
さっさと道具を片付け、片手剣を武器に加勢へと向かう。
「紹介が遅れました。リードルフ・シルヴァニア、愛情をこめてリーフとでも呼んで下さい。」
【西区参戦、煙幕で撹乱+二人を救出+ロキさんの毒抜きのコンボ】
【長すぎでごめんなさい】
一体の機械の人形と一人の機械の少女との決着はついた。
魔物の雄叫びも人々の悲鳴も鳴りを潜め、一安心を迎えようとしていた。
しかし、戦いは終わらない。このダンブルウィードの災いはまだ始まったばかりなのだ…。
「どうやら…、このウスノロは来るのが遅かったようで……、ハァ」
ナーゼムは今にも崩れ落ちそうな表情で、目前の状況を観ていた
脇道からノロノロと表れたその男は不健康そうに黒ずんだ目を走らせ状況を瞬時に把握した
ダンブルウィード東区、敵と思われる見知らぬ人物複数と共に我等が人魚姫はいた。
傍らには彼女の人形が倒れ伏しぴくりとも動かない。
圧倒的に不利な状況だった
男は頭を抱え…
「ごめんなさい、ごめんなさい…。一人で戦わせて辛かったですよね…。
私がもっと早くここに来れたら、もっと早く仕事を済ませてたら、もっと早く朝食を食べていたら…」
地の底から聞こえるようなか細い不安定な声で自らを責めた。
…おおよそ、関係のなさそうな事まで考えているが本人は真剣である。
自分が人に嫌われるのも、街の人々の虐殺も、エミリーが負けた事も・・・
全て、全て自分が悪い。彼は本気でそう考えているのだ。
止まない自己嫌悪からふと思考思考を戻す。せっかく隠れていたのにこれでは見つかってしま…、
いや、既に手遅れだった。
>>134 長髪の女性がこちらに気づき戦闘態勢を整えている。
自分の無能さに辟易する。しかし今は落ち込む時ではない。
思考を切り替え、ナーゼムは長髪の女性、ひいてはエミリーにフラフラと歩み寄った。
「皆様こんにちは。私、ナーゼムと申します。どうかよろしく…、
しない方がいいですね…。こんなみすぼらしい奴なんかと。…………ハァ
あぁ、失礼。…皆様、先程の轟音、中央区で何か爆発があったようです。早く逃げた方がいいですよ」
極めて、世間話をするように、相手を逆撫でないように話す。その手には懐から出した斧が握られていた。
赤黒い血を滴らせた斧を
「そこの子は私めの身内でして…、よろしかったら引き渡していただけますか?」
【東区、武器を携えエミリーの変換を要求する】
◆ENEMY CHARACTER◆
名前: ナーゼム・グフライス
遺才: 化身(魔獣に変身できる
ゆめにっき
気絶中特に描写することがないので夢の内容をここに記す。
夢と言うのは得てして整合性のない意味不明なものであり、多分全く意味はない。
が、夢は現世ではない世界との魂の接続とか自説を展開するとち狂った人もおり、もしかしたら万が一の確率で何かの暗示かもしれない。
TAKE1【レベル上げ時代】
「俺をもっと笑顔にしてくれよ」
その青年はつまらなそうにこっちを見ていた。
「お前のギャグ寒いわ!」
「下手糞はひっこめー!」
飛んでくる空き缶や靴。ワタシは詰まらない芸をただただ謝るしかなかった。
「しーましぇーん!!」
そう叫んだ瞬間、場面が切り替わる。
TAKE2【ラスボス決戦前夜】
「ついに、ついにここまできたんだね……」
「あとは奴だけか……。奴さえ倒せばようやく念願のワラキンが手に入るぞ!」
ラスボスは、永遠の時を生きる美少年!
「よくぞここまでたどり着いた、挑戦者達よ! 我こそは……」
「まさか……伝説のフェードアウト系芸人”ランニングさん”!?」
「超絶魔奥義”ピンポンダッシュ”の使い手か……こいつは強敵だぜ!」
「ウオオオいくぞオオオ!」
ハリセン振りかざして突撃する。
が、突然ランニングさんの姿は霞のように掻き消え、勢い余ってすっ転んだ。
転べば当然場面転換である。
TAKE3 【蜜柑の王国】
ワタシは荒野をさまよっていた。
そこに、首から下は人間、首から上は蜜柑そのものという謎の生物が現れた。
「ああーっ! 昨日“朝の蜜柑ヨーグルト”を夜に食べたせいだ!」
踵を返して逃走する。なぜか大軍勢と化した蜜柑怪人が後ろから迫ってくる。
「ほいさー!」
崖から跳んだ。降りた先は……広大な蜜柑畑でした。
あっという間に蜜柑怪人に取り囲まれた。
「蜜柑の王国へいらっしゃ〜い! 僕の顔を分けてあげるよ!」
蜜柑怪人は自分の顔の一部をつかみ……もぎたてフルーツ☆
「ぎゃあああああああああああああ!!」
>137
「はっ!」
弾かれるように起き上がった。毒は完全に抜けているようだ。一体誰が?
そして、手にはなぜか蜜柑が握られていた。
「なんで蜜柑だよっ! 普通こういう時はもっと意味ありげな物だろ!」
【目を覚ます。手の中になぜか蜜柑】
「了解ダ!盛大に浪費させてもらおウ」
レイリンの指示に答え、矢筒から仕掛け付の槍を数本取り出し、トラップを張り巡らせる
罠を張り終えたときには、先ほど明けた大穴はすでに泥沼に姿を変えていた。
これでゴーレムを捕獲する準備は整ったが、しかし、アルテリアの表情は曇っていた。
彼女の頭の中で先ほど聞いた言葉がひっかかり、不安を感じさせる。
>「欠陥品つっても、ありゃ天才の作った欠陥品だ
サフロールは眼前に迫るゴーレムのことを欠陥品、つまりは、失敗作といった。
凡人の失敗と天才の失敗、果たしてどちらの失敗も同じ意味を持つのだろうか?
アルテリアはその質問に対して否と答える。
天才の失敗とは、その天才が求めた求めていた答えとは違う答えが成立してしまうことだ。
その天才はソレを失敗と呼ぶだろう、しかし、凡人の視線から見れば、それさえも成立する。
だからこそ、天才は失敗しないものだという俗説が凡人の間で囁かれるのだ。
しかし、なんだかんだ考えたところで今更何か出来るわけでもない。
とりあえず、念の為に矢筒からロングソードを何本か取り出し、備える。
そして、ついにゴーレムが罠にはまり、それと同時にサフロールとレイリンが動く
思惑通りにバランスを崩したゴーレムは泥沼に沈んだ。
「………フ」
一息つこうとした瞬間、轟音と共に水柱が立ち、泥沼は跡形もなくなった。
「あぁ…これからが本番カ」
悟っていたかのようにアルテリアは静かに呟き、弓を引く
「物は一流の物ではあるが…奏者は二流だナ」
自身に迫る飛翔機雷に狙いを定め、射抜く
「この程度の浪費で私を倒せると思っていたのカ!この首が欲しければもっと浪費するべきダ」
不敵な笑みを浮かべ、また刀剣を取り出す。
>「……そうだ!これだぜ!凡人共にも出来る仕事でおしまいなんてつまらねえよなぁ!?」
「破格値で買った勝利に意味は価値は無イ!盛大に浪費し圧倒的に勝ってこそ意味があル!
ガチョウの癖によくわかっているじゃないカ」
>「よぉ高慢ちき!テメェの才能は凡人が十人もいれば出来るような罠を張る事か?
>「――違えだろうがよ!無能!無才!凡人!俺たちゃ羊じゃねえんだ!
凡人共が何人集まって手を組もうと届かねえ高みこそが俺達だ!えぇ!?そうだろう!?」
「今更そのことを聞くカ?そんなの 当 然 の こ と だ ろ ウ !!!」
吼えるようにサフロールの檄に応える。
そして、展開されるは槍の林、この時点でアルテリアが最大限の実力を発揮できる条件は整った。
「その前に一つ質問だ。使い切ってもかまわんのだろう?…答えは聞いてない!!!」
すぐさま、槍を引き抜き、ゴーレムに対して放つ
一射だけではない、間髪無く同じ肯定を速度を上げひたすらに繰り返す。
最終的には凡人にはまねのできない域に達する。
しかし、彼女の異常な部分はこれだけではなく、その速さでは不可能なまでの精密な射撃もその内に入る。
先ほどから放たれている槍は、全てゴーレムの操縦席だった部分に向かって飛んでいるのだ。
突き貫くことに特化した槍の攻撃力を最大限に生かすには面での攻撃ではなく、点での攻撃が望ましい。
遺才あってこそ成し遂げられる理想の射撃、しかし、同じ天才が作ったゴーレムに利くのだろうか
【槍を用いて操縦席を狙って一点集中射撃】
>「…おねがい…っ、…やめて…」
セフィリアは機械人形を完全に破壊しようとしていた自分の刃を止める
ふっと息をはき、両手に持つ剣をしまう、その動作には貴族出身たる優雅さが映し出されている
>「なーんか、俺たちが悪人みたいになってまスね……」
『「敵対したら全力で倒す、それ以外なら全力で守る」これが我が家の家訓、戦場では甘えは禁物
敵対したらすべて殲滅!って昔からお父様が言っていたけど、私はこんな女の子を手にかけるのは嫌よ
あなただってそうでしょう?バリントン」
ほつれた後ろ髪を直すため一度、紙を後ろで止めていたリボンを解く
首の中間程度まで伸びるそれが空っ風に揺らぐ
>「『泣く』なって。お前もお前の友達もいじめねーからさ。
ただ、さっきのボウズとセフィリア、後ウィレムにはごめんなさいって言っとけよ?」
「そうです。私たちは兵隊さんじゃないから、殺しはしないよ。ただ傷つけた人には謝らないとね」
足を怪我しているウィレムの方向を指でさす
その顔は先ほどまでの『切り裂き魔』の顔ではなく、年相応の少女の顔だった
>「大丈夫、大丈夫。慌てない、慌てない。ちちんぷいぷいってね。」
>「惚れるでしょーが!」
「アイレル女史、隊内での交際は風紀に影響があるのでやめたほうがいいのではないでしょうか?
それにバリントンは稼ぎが良さそうな顔ではありませんよ」
訂正しておくが彼女は悪気があって言っているのではない
ただそう思ったから言っただけだ
東区は一応の落ち着きを見せた
いまは敵兵も魔物もその姿を見せない
だが、そこに爆音が鳴り響く
「キャァ!」
セフィリアは初体験の謎の爆音、その正体は砲音である。しかし、だが彼女に取っては初めての音だった
あまりの音に身がすくみ、しゃがみ込んでしまう、大気の振動が、巻き起こる砂埃が彼女の思考を狂わせる
そっと目を開けると彼女の眼前にはえぐれた街道だったものが目に入った
「なに……これ……」
>「うおおっ、すっげーな!なんだこれ!なんだこれ!」
喜ぶウィレムを少し冷めた目で見つめる
(なんで喜んでるの?死にたがり?)
>「えーと、私はまだ生存者が居るか確認してくるから、エミリーちゃんをお願い。
そうねえ……名目は"敵の情報に通じてるはずだから逃がさないように"ってことで。」
「りょ、了解です!彼女が他の友軍にも拘束されないよう配慮します!
ノイファの言葉に慌てて立ち上がり、急いで敬礼
走る彼女の背中を見つめた。だがすぐにその足は止まり緊張感がセフィリアにも届く
「どうしました?・・・!!」
セフィリアにもすぐに異常さが伝わって来た
薄暗い森の沼地のような空気が頬を舐め回すように漂ってくる
>「皆様こんにちは。私、ナーゼムと申します。どうかよろしく…、
しない方がいいですね…。こんなみすぼらしい奴なんかと。…………ハァ
あぁ、失礼。…皆様、先程の轟音、中央区で何か爆発があったようです。早く逃げた方がいいですよ」
現れたのは黒い長髪の女性、一般人では決してない異様な雰囲気を持つ『魔女』といっていい、そんなものを持っていた
>「そこの子は私めの身内でして…、よろしかったら引き渡していただけますか?」
こんな血が滴る斧を持った人間にはい、そうですかと少女を渡す道理はない
「いえ、とりあえず斧で威嚇するような人は……!」
その言葉と同等と思える速さで彼女は駆け、両手の刃を走らせ袈裟、逆袈裟に切り掛かる
「敵です!!!」
【セフィリア ナーゼムさんに両手の剣で左右から同時に切り掛かる】
思惑通り、というべきかインファイト2は赤い泥沼へと落下。
「さてさてここから驚異の360度大回転といきましょう、か・・・?」
>ゴーレムを沈ませた泥沼が爆散した。雷が真横に走ったような紫電の閃きのあと、腹の底に強く響く轟音。
>「ヤバい!!また飛翔機雷が来るぞッ――!」
「あらら・・・」
眼前に迫る機雷は、地面から噴き上げた水流に爆発すら適わず遮られた。
見返してみれば、魔導砲塔により盛大に抉られた大地。もうもうと立ちこめる白煙の中からインファイト2の姿。
「まだ足掻きますか、面倒ですねぇ・・・」
大地に突き立てた石剣に寄り掛かったまま腕を組むのとは対照的に、意気揚々としてきたのが味方に約二人ほど。
>テメェに記憶がねえのなら、唯一残ったその才能がテメェの存在価値だ」
見下ろす視線を気だるげに仮面で迎える。視線の感情はさっきのサフロールのと同質、倦怠と嫌悪。
「ご心配なく、始末はもう大方終わりですよ。ついでに言うと、私が派手にやると市民や味方に被害が大きいので辞退させてもらいましょうかね」
顎で指し示すのは白煙をあげながら進むインファイト2。主砲の熱で泥沼を蒸発させた白煙が、今もまだ上がり続けるのはどういう訳か。
むしろ、そのゴーレムの身体自体からも白煙が上がっているような・・・。
「あの落とし穴に落ちた時点でもう大方詰みですよ。まさか、ただの泥沼を用意する訳がない。」
よく見れば分かる。ゴーレムの四肢の付け根、両肘両膝の関節部計8ヶ所に赤い泥が纏わりついているのだ。
未知の溶解液と化した赤い泥水が、滴り落ちることなく徐々に関節を溶かし破壊してゆく。
「主砲の余波余熱?機雷の衝撃波?そんな中途半端なもので私の操作は崩せない。時間と共にアレは分解された操り人形のようになって終わり。
自身を攻撃して弾き散らそうとするなら自爆でしかない上に、私たちに攻撃する暇を与えてくれるだけ。もう詰みでしょう。
まぁ、それでもご不満なら・・・もう解体作業でも始めますか。」
そう言い終えると、軽く指を弾く。同時に、しゅうしゅうと音を立てる溶解音がキチキチと不快な音に押しのけられ始める。
――きち、キチチ、ギチチチチ!!
「さて、関節の内8ヶ所に向けられた水の刃、向こうの天才は退けられるものやら?」
異音は、ゴーレムを溶解させている水が凄まじい勢いで回転する故に発せられる音だ。
各所の装甲が赤い泥水に食い破られ悲鳴を上げている音。
石剣によりかかるフェイスレスは、腕を組んでその異音に耳を傾けている。
【中央区⇒詰み宣言。両肘両膝及び両腕両足にとりついた赤い泥を溶解液に変える。
更に回転させて溶解速度UP。本人は地面に突き立てた剣に寄り掛かって余裕の構え】
>「『泣く』なって。お前もお前の友達もいじめねーからさ。
ただ、さっきのボウズとセフィリア、後ウィレムにはごめんなさいって言っとけよ?」
>「そうです。私たちは兵隊さんじゃないから、殺しはしないよ。ただ傷つけた人には謝らないとね」
伏せていた顔を恐る恐る上げるエミリー。
そこには快活に笑うハンプティと、そう言ってウィレムを指差すセフィリアの姿。
「……あ…あの…わ、わたし…」
下を向いておずおずしているとレイチェルが瞬時に立ち上がり、エミリーを守るように三人の間に割って入る。
一切の感情を排除した表情、だがその行動は"私の友達を虐めるな"とでも言いたげだった。
「レイチェル……だいじょうぶ、このひとたちなにもしないから……」
レイチェルの後ろに隠れながら僅かに顔を覗かせる。
どうやら脅えているのではなく恥ずかしがっているらしい。
他人から優しく接して貰ったことのないエミリーにとって二人の行動は少々刺激が強かったようだ。
「あの…………ごめんなさい…っ」
それだけ言ってレイチェルの手を引きながら走り去る……わけではなく、ウィレムの方へ駆け寄って行く。
ウィレムは赤面しながらノイファに対して何事かを声高に叫んでいた。
どうやら喧嘩をしているようだ、とレイチェルの背中越しに二人を眺めながら思った。
少し迷ったが意を決して声を掛けることにする。
「………あの……ごめんなさい、さっき……」
まるで蚊の鳴くような、耳を澄ましていないと届かないような声。
たどたどしく言葉を紡ぐ内にエミリーはまた泣き出しそうな顔になっている。
>「……とりあえず、もう傷つけたりとかしないスから、泣き止んでもらえまっスか?」
「……………うん……」
そう答えながら幼い顔が歪む、嗚咽が漏れるのを必死で堪えているようだ。
その時、突如鼓膜を引き裂くような爆音が轟いた。
中央区の方角から立ち上る煙、そこへ続く街道は無残に破壊されていた。
まるで硬質な皮膚を乱暴に引き剥がして内部を露出させたような、凡そ人間業では有り得ない状態だった。
これは間違いなく自分達側の組織の仕業、考えずとも容易に分かることだ。
>「皆様こんにちは。私、ナーゼムと申します。どうかよろしく…、
しない方がいいですね…。こんなみすぼらしい奴なんかと。…………ハァ
あぁ、失礼。…皆様、先程の轟音、中央区で何か爆発があったようです。早く逃げた方がいいですよ」
「……ナーゼム…? ……どうしてここに…」
そこに覚束無い足取りで近寄ってきたナーゼムと名乗る男。
エミリーも言葉を返す、一応の面識はあるようだ。
「あ…あのね……わたし、まけちゃったの…。だから……」
ナーゼムの不健康そうな瞳から視線を逸らし自然と下を向く。
そして視界に飛び込んできた物に思わず息を飲む。
赤い物が地面に落ちて蜘蛛の巣状の痕を作る、それは真っ赤な血を垂らした斧だった。
>「そこの子は私めの身内でして…、よろしかったら引き渡していただけますか?」
ナーゼムはこの人達と正面から戦う気なのだろうか、エミリーは困惑しながら双方を見やる。
その斧が"口封じ"の為に使われる可能性など微塵も頭を過ぎることは無い。
>「いえ、とりあえず斧で威嚇するような人は……!」
>「敵です!!!」
いの一番にナーゼムへ駆けたのはセフィリアだった。
ナーゼムに狙いを定め、双剣から繰り出される斬撃。
【エミリー:困惑しながらも傍観、今のところはナーゼムに危険意識無し】
【レイチェル:エミリーの傍らで待機】
― * ― * ― * ― * ―
『やべえなこりゃ……エミリー嬢どころかマキナまで追いつめられるとァなあー』
『フン、良い気味です色欲魔め。東と中央は任せろって息巻いてたのはどこのどちらさんです?』
『うぐ。いやでもさ、こっちにはまだ壊獣君がいるしー!"夜鬼"だっているしー!』
『その子は私の部下です。何かあったら承知しませんよ』
『ちぇー。お前だってスパイの癖に出しゃばってさ、"睨まれる"よ?』
『作戦はほぼ成功したようなもの。暇つぶしの兎狩りに興じる位良いではないですか』
『そりゃいいけどさ、お前。気を付けろよな』
『兎にだって、長い歯があるんだからよ』
― * ― * ― * ― * ―
耳障りな金属が耳を突き、プリメーラの鉈が宙へ弾き飛ばされた。
ナイアルトは嗜虐じみた笑みを隠そうともせず、ステッキの先でプリメーラの顎を捉える。
「おやおや、もうお終いですか魔術師君」
悔しさに歯軋りが漏れるが、万策尽きた状態だ。
体力も残り少なく、どんどん増える敵兵に最早打つ手無し。
>「くっそぉぉおおお!!あああああああ、あ、あ、後は俺に任せろ、いや、任せるんじゃねーーーッ!!」
その時、エルトラス兵士の包囲の外から、矛盾した台詞が聞こえてきた。
助けが来たのか。プリメーラの心に一瞬の希望が芽生える。しかし……
「これはこれは……随分と頼りになる助っ人ですねぇ」
ナイアルトがあからさまに馬鹿にした笑顔を向ける。
そこに居たのは、槍を構えてガタガタと足を震わせる、如何にも弱そうな青年Aだった。
希望は一気に萎み、再び絶望が舞い戻ってくる。
「その無謀な勇気に免じて、痛みも無く死なせて差し上げなさい」
青年にはそれ以上一瞥もくれることなく、プリメーラを見下ろす。
その水色の髪を引っ掴み、容赦なく引き摺りあげる。彼の心に容赦は皆無だ。
「さあ、貴方は私がたっぷりと相手を「ギャァアー!」……!?」
サッと悲鳴が上がった方を見る。明らかに青年の声ではなかった。
何が起きたのか理解する間もなく、次々に兵士たちが戦闘不能に追い込まれていく。
「これは……貴方、一体!?」
>「違うんや!!俺は違うんや!俺は遊撃課に配属されたけど(以下長いので省略)」
情けない声で言い訳を捲し立てる青年A。その言い訳する間も敵を倒す手を止めようとはしない。
矢の矛先は怒涛の勢いでこちらまで突入し、ナイアルトは咄嗟にプリメーラから離れた。
>「さっ………さあ俺が引きつけている内に逃げるんだ!だ、ダイジョウブ…大丈夫じゃねーけど大丈夫!!」
二人の間に割って入り、仁王立ちする青年。しかし、膝は終始笑いっぱなしだ。
プリメーラは混乱する頭で状況を整理しようとした。しかし周りはそれを許さない。
「全く、この私に矛先を向けるとは何と無謀な。愚かな!」
青年の槍先に、器用に乗るナイアルト。重さを感じなかったのか青年は驚いている。
幻覚に陥れるステッキを向けるナイアルトだが、ここから更に混沌とした展開が彼女等を待ちうける!
「ふえっ!?」
何の前触れも無く、その青年は現れた。鮮やかな緑髪、尖った耳、すらりとした体躯…。
誰もその青年に反応できなかった。いや、する前に兵士達はその姿を目視出来なくなった。
二人の青年とプリメーラを囲うように、煙幕が兵士達を包む。
矛先のナイアルトは、ただただ驚くしかない。そして、エルフの青年が叫ぶ。
>「スイ、今です!」 >「お前ら、伏せろ!」
ほぼ反射的に、プリメーラは青年Aの腕に手刀を食らわせる。
青年は槍を手放し、ナイアルトはバランスを崩して宙に放り出される。
同時に、矢が駆け抜ける。そしてその先には、ナイアルトがいる!
「グゥッ……!?」
矢はナイアルトの足に突き刺さり、苦悶の表情を浮かべながら兵士達の中に落ちた。
どうなったのか確かめようとしたが、エルフの青年に抱き寄せられた事によって叶わない。
青年二人は何やら会話しているが、煩くて聞こえたものではない。
>「今だっ跳んで!」
エルフの青年が足に力を込めたのを感じ、咄嗟にプリメーラは暗示を掛けた。
青年達の≪脚力強化≫。勢いよく、二人とも跳び上がり、馬に飛び乗った。
>「プリメーラさんですね。貴方の鳩に導かれた味方です。」
ツン、と強い薬草の匂いを嗅ぎ取った。彼女はすぐに彼が薬剤師であると気づいた。
「な、仲間が毒を盛られたんだ!こっちだよ!」
【西区・民家】
>「はっ!」
「ロキ!大丈夫?どこも痛くない!?」
解毒治療を受けたロキが起き上がり、嬉しさのあまり飛びつく。
だが、いつまでも喜んでいる暇はない。三人が駆けつけると、二人がエルトラス兵士達と対戦中だった。
しかし様子がおかしい。敵が減った様子が無い。
よくよく見ると、傷つき戦えなくなった筈の兵士達が幽鬼のように立ち上がっている。
「ナイアルトの仕業だ……」
「「その通り」」
二人分のナイアルトの声が聞こえ、本当にナイアルトが二人現れた。
幻術の類か?いや違う。どちらも実体だし、どちらも操られた様子が無い。
「問い3といこうか」
「どちらかが本物で、偽物だ。死体を操っているのは偽物だ」
「「さあ、どちらが本物かな?」」
襲い来る兵士と二人のナイアルト。識別するのは困難だ。
再び囲まれる五人の遺才達。プリメーラは頭を回転させる!
「(どちらかが偽物……でも、どちらも扇動が使えるってことは、どちらにも同じ"弱点"がある!)」
「皆、聞いて!相手は集団を操るのが得意な奴だ。でも裏を返せば、"一人での戦い"に弱い!」
スイとリードルフ、ロキに向かって、
「ナイアルトの性格を考えると、本物は自分に傷をつけた君達の方へ行くと思う。
僕らが偽物を倒せば敵の数はぐっと減る筈だ。だからその間は麻痺毒の鍼に気を付けて!」
次に、まだ足が震えっぱなしのルインに振り向く。
「おにいさん、怖がらないで。ボク達二人で偽物を倒そう。そうすればもう勝ったも同然だ」
プリメーラが力強く手を握ると、マテリアルが金色に輝き、ルインの中にそっと入っていく。
「『おにいさんとボクでなら勝てる。自信を持って!』」
パッと手を離すと、ナイアルトと対峙する。黙ってばかりで何も喋ろうとしない。
「ボクがアイツの相手をする。合図したら、アイツの死角から槍を打ち込んで!」
今度は鉈は要らない。拾った兵士の剣を振るい、ナイアルトに打ちかかる。
だが、本当の罠はここからだった!
「馬鹿ですね。誰が『偽物は一人しかいない』と言いましたか?」
「ッ!しまっ……!」
新たに増えた偽物が、空中からプリメーラに斬りかかる――!
【ゾンビ兵士登場。偽物を倒すまで倒しても起き上がります】
【偽ナイアルト登場。プリメーラちんピンチ、ピンピンチ】
【本物ナイアルト→ニヤニヤ傍観。ボコボコにして下さい】
【ルインさんの恐怖心を無くす暗示をしました】
すっかり締めるの忘れてたわ。
俺様だよ、締め人だ。
エロDVDをセットして見ようと必死になってたらハングアップしてDVDが出てこねー。
おい、なんなんだこりゃ、締められねーとか思ってたら。
なんか適当な画像クリックしたらいきなり大音量でしかも夜中にやべー、って焦ってるうちに時間過ぎちまった。
てか、このエロDVDって全然おもろくないだろ。会社の同僚から貰ったんだが、エロ本の付録だとか、
結局、見たけどいらねーや。ブーメランして飛ばしてやった。変なもん貰っちまったよ。
あーすげー疲れた。普段やらないことやると疲れる。エロに引っかかっちまった。
PowerDVDなんか滅多につかわねーからわけわかんね。しかもバージョン古すぎてワロタ。
何で俺様がこんなのにひっかかっちまうんだ。エロパワーには負ける。
というわけでド━━(゚ω゚;)━━━ン!!!!!
明日から日曜まで出張なので締めはおやすみ。
最近盛り上がってるから俺は必要ないみたいだな。だが、それを邪魔するのが俺の仕事、まあ、まっとけ。
もう、エロDVDは二度と見ない。抜きネタにもならんな。
お前らも若いんだから、本物を相手にしろよ。だが、本物が一番疲れるんだよな。クンニすると首が痛くなって疲れる
いい方法があったら教えてくれ。何で俺に抱かれる女は決まって右側のオッパイが感じるんだ。よくわかんねー
だがそれがいいド━━(゚ω゚;)━━━ン!!!!!
長文過ぎるド━━(゚ω゚;)━━━ン!!!!!
おやちゅみなちゃいな(*´ω`*)
作戦は完璧だった。
レイリンの目論見通りゴーレムは崩したバランスを取り戻そうと足を穴の中へとだし、見事落とし穴の中に吸い込まれていった。
しかし、次の瞬間世界の終わりを告げるがごとく轟音と地響きがレイリンを襲う。
「何?地震?
いや、違う、これは――」
レイリンは本能的に危険を察知し、その場を大きく飛び退く。
穴の中から大きな水柱があがり、その轟音は中央区を街全体を包み込み、地を深々と割っていく。
魔導砲である、そして追い打ちをかけるように飛翔機雷がレイリン達を襲う。
レイリンは周りで地に伏して、完全に絶命しているニードルデーモンの棘を掴むと、思い切り飛翔機雷へと投げつける。
飛翔機雷はレイリンへと届くことなく、ニードルデーモンと共に爆散していく。
>「よう、吸血鬼の末裔が石人形に劣るたあ惨めなモンだなぁ?
>「ほら、精々マシな所を見せやがれよ女共」
「そんなこと言われても困ります。
昼間の私は例えるなら真昼の吸血鬼みたいなものですし、あんまり役に立たないですよ。
でも貴方の励ましはありがたく受け取っておきます」
>「――そこから先は、俺の『世界』だぜ」
サフロールの言葉と共に、あたりに濃厚な魔力が満ちた空間が展開される。
見ただけでは何も変わりないが、レイリンには大量の魔力を肌で感じていた。
「驚きました、何に使うのか分かりませんが凄いです……。
折角貴方の『世界』に招待して貰ったのですから、私も負けてはいられませんね。
でも、こうなるとアレは使えなさそうですし……」
>「その前に一つ質問だ。使い切ってもかまわんのだろう?…答えは聞いてない!!!」
サフロールがニードルデーモンから作り出した棘をアルテリアが放つ。
その速度は尋常ではなく、常人が一発撃つ間に十発以上撃てそうな早さである。
そして、それが全て同じ所、ゴーレムの操縦席の部分に吸い込まれるようにして刺さっていく。
>「さて、関節の内8ヶ所に向けられた水の刃、向こうの天才は退けられるものやら?」
アルテリアの激しい攻撃を受けてしばらく止まっていたゴーレムがまた動き始める。
だが、その歩みは落とし穴に落ちる前と比べて明らかに鈍っている。
その原因はゴーレムの関節部から上がっている白煙が物語っていた、フェイスレスの能力により、泥が溶解液へと変化していたのである。
「なるほど、これでゴーレムの動きは大分鈍りましたね、これで足止めと言う目的はほぼ達成できましたけど。
それだけじゃ満足しないでしょうし」
レイリンは言葉を切ると、周りに散らばっている兵士達のバックパックを漁る。
そしてそこからまだ使っていない飛翔機雷を取り出していく。
「皆が頑張っているのに、指揮している私がこれじゃあ示しがつきませんから」
そう言ってレイリンはゴーレムに正面から向かっていく。
ゴーレムは真っ正面から向かってくるレイリンに対して、これ幸いと拳を振り上げ、振り下ろす。
動きが鈍っているとはいえゴーレムである、その拳は大地を振るわせ、地に大穴を開ける。
レイリンは高く跳躍し、拳を避けると、地にめり込んだ拳の上に着地する。
同時に更に跳躍し、アルテリアの射撃により、既にぼろぼろになっているゴーレムの操縦席へと向かい、強引にこじ開ける。
「ゴーレム相手に一番の安全地帯と言えばここ。
それにしてもゴーレムって誰も乗ってないのに動くモノなのですね。
あっ、今は攻撃止めといて下さい」
中から顔を出し、外にいる三人へと声をかける。
いくら装甲を固めたところで、元々人が乗る操縦席の仲間では頑丈に出来ているはずがない。
レイリンは足で操縦席の床を思い切り踏む、流石に中からの攻撃には対策していないようで床の一部はあっけなく抜ける。
そして先ほど集めた飛翔機雷をゴーレムの中へ向けて全て撃ち出す。
レイリンが操縦席から地上へと飛び降りると、ゴーレムの内部で爆発が起こる。
落とし穴から出るために使った魔導砲の影響で、ただでさえ装甲が弱っていたところに追い打ちをかけるように飛翔機雷を当てられたためゴーレムの装甲が弾け飛ぶ。
その巨躯はそのままだが、骨格が露わになり、関節を纏っている溶解液の影響でどんどん動きが鈍ってきているその姿は哀愁さえ漂っていた。
「ここまでくると何か可哀想ですね……。
さてと、お膳立ては出来ました、オブテイン最後は任せましたよ。
私は『凡人』にも出来ることしかしませんでした、貴方には『凡人』に出来ない仕事、期待しています」
【中央区:ゴーレムの装甲が弾け飛び、内部骨格もダメージ大。
関節部も溶け始め、ゴーレム半壊状態】
『……おい、人形姫負けたぞ』
「予想外だ。"血の戦乙女"だけじゃなかったのか……だが軍人にも見えねえぞ、なんなんだ奴らは」
『俺も寡聞にして知らん。諜報部に詳しく調査させねばならんな。それより人形姫だ、尋問で口を割りかねんぞ』
「あー、"ピニオン"から教育されたとはいえ、根っこの部分じゃまだ幼いもんなぁ。やむをえねえべ」
『口を塞ぐか?お前の位置からなら狙撃できるだろう』
「いや、さっき殺気を気取られた。連中には遺才持ちが混じってるみてえだ。適材適所、直接回収に行かせるさ」
『"壊獣"を出すのか』
「バイトも付ける。現場でうまく舵取りしてくれることを祈るぜ」
* * * * * * *
ダンブルウィード東区。遊撃課の迅速な活躍によって制圧され、市民の退避も完了したこの地区で、人知れず動く影がある。
魔物の肉片を踏み越え、砕かれた地面を踏みしめ、割られた店頭に散らばる陶器の欠片に躓きつつ。人影は小柄な少女のものだった。
「はっ……はっ……あんの……クサレナマモノがっ!!何勝手に先行してんのよ……このあたしを差し置いてッ!」
悪態をつく少女は、瀟洒なフリル付きのドレスに、艷めく蜜色の髪を柔らかく巻き癖つけて揺らしていた。
万人がその容貌に高貴なものを感じるであろう、高級に完成された調度の数々。瓦礫の中にも際立つ、やんごとなき身分の証明。
しかして、彼女の風貌にはたった一つ例外があった。その身に背負うのは、子供の一人も入りそうな巨大な『金庫』。
堅牢な鋼の箱を、革のベルトで背中に固定している。
>「そこの子は私めの身内でして…、よろしかったら引き渡していただけますか?」
その視線の先に、彼女の属する組織から同じように派遣されたナーゼムの姿があった。
荷の多い少女とは違い、身軽な彼はさっさと行ってしまっていた。
敗北したエミリーの『回収』。急を要する任務だから、足の速い者が先行するのは当然なのだが、彼女は理不尽に肩をいからせていた。
背中の金庫の下部に作られた引き出し口に手を突っ込み、銅貨を一枚取り出す。
彼女は遺才持ち。マテリアルは貨幣だった。魔術が発動し、銅貨が消滅して代わりに手のひら大のレンガが現れた。
金で買える物なら武器から魔法まであらゆるモノを、貨幣と引換に召喚する――それが彼女の遺才。
「よかったら、じゃないわよトーヘンボクッ!!」
投擲した。少女の膂力で投げ放たれたレンガが、へろへろと宙を泳いでナーゼムの頭にごちりとヒットした。
図らずも、それはセフィリアがナーゼムに斬りかかったのと、同じタイミングだった。
「こーいうのはね、舐められたら終わりなのよッ!初見からメンチ!しゃべるなら巻舌!ビビらせたモン勝ち!
あたしはそうやって数多の取引先相手に常勝を収めてきたわ!今日とて例外はなく!萎えたマネしたら売り飛ばすわよ!」
積まれた瓦礫の山の上に登り、少女は親指で自分を差した。
「あたしはクローディア=バルケ=メニアーチャ!そこのマセガキが負けたと聞いて居ても立ってもいられず駆けつけたわ!
ああエミリー、別に負けたことについては怒ってなんかいないわ!最初から期待してないもの!捨て駒よあんた。わかる!?」
少女――クローディアは、そこに居る誰にも目を向けず、ただエミリーだけを瓦礫の上から見下ろしていた。
敗者に対する絶対的な優越感、そして軽蔑と侮蔑。クローディアの表情は、それらの感情をこれでもかとばかりに積載していた。
「嘆かわしいわね!今や人の命すらお金で買える時代だってのに、人の口にはお金じゃ戸は立てられないんだもの!
ここにいる全員に一封包んでお帰り願って、それで解決するなら私だってそうするわええそうするわ!ウソよ、勿体無いじゃない。
あたしとあんたの間にあるのはとっても簡単な理屈よ!――『お金もったいないからあんたを殺す』」
新たな紙幣を用意し、魔術を発動した。次の瞬間、クローディアの手には装填済みのボウガンが握られていた。
「ナヨってないで気合入れなさいナーゼム!これだから平民出はイラつくのよッ!
……バイバイエミリー、恨まないでね。来世で会ったらご飯の一つも奢ってあげるから。ウソよ、勿体無いじゃない」
よく狙いをつけて、エミリーの眉間へ向けてボウガンの引き金を引いた。
なんの躊躇いもない一射だった。
【ナーゼムに合流。東区の面々に名乗りをあげながらエミリーへボウガンを発射】
エネミーデータ
名前:クローディア=パルケ=メニアーチャ
性別:女
外見:マジ高貴
性格:そんなに高貴でもない
血筋:『銭の眷属』。帝都三大豪商のひとつ、メニアーチャ家の傍流
装備:強襲型野戦金庫『無尽勲』
遺才:万象購入魔術……対価に金銭を使う召喚術。金の続く限り無尽蔵に召喚できるが、金銭でやりとりできるものに限る。
マテリアル:貨幣
基本戦術:武器とか色々買って物量攻撃
うわさ1: 享楽都市ウルタールという数多の豪商を排出した土地の生まれだが二年前に街ごと消滅の憂き目に合う
うわさ2: 帝都に従兄弟がいるらしい
うわさ3: 資産運用に失敗して借金が焦げ付き、肩代わりしてもらうために『クランク』に入った
【NPCではありませんが決定ロールOKです】
勇んで割って入ったまでは良い。が、そこから足が哄笑をやめる気配はない。
気の早い脳は走馬灯の準備を始めていた。
>「全く、この私に矛先を向けるとは何と無謀な。愚かな!」
瞬間、ルインの構えた槍先につま先で立つナイアルトに恐怖は津波となって押し寄せる。
ステッキを向けられてもただ情けない声を上げるだけだ。当然そこに天才の面影はない。
「お言葉ですが元々俺は罪もない一般人が襲われるのを止めようとしただけであり
矛先を、いや俺の武器は槍ですがとにかく攻撃するつもりなんて毛頭なく、はい!
だから先に矛先を向けてきたのはあなた方でして!!俺はなんも悪ぅございませんっ!!
正当防衛!正当防衛!ノーカウントですよノーカウント……!いや、だからノーカンっすよ!」
21年間生きてきて身につけたスキルの一つ『弁解』を巧に操り正当性を主張するが
彼は未だにプリメーラが同じ遊撃課の人間であることに気付いていない為、内容はとても的外れだった。
弁解虚しくナイアルトのステッキが扇動の効果を発揮せんと動いた時、絶妙なタイミングで黒煙が周囲を包んだ。
「げほっげほっ!!げほぅっ!!」
煙を吸ったのかむせたらしい。
>「スイ、今です!」
>「お前ら、伏せろ!」
謎の声が耳に届いたと同時に腕に痛みが走り、思わず槍を手放した。
槍先に立つナイアルトは態勢を崩しルインは「痛い!痛い!」と叫びながら地面に丸くなる。
突然現れた二人の内一人が放った矢は煙を裂いて飛翔し、態勢を崩したナイアルトの足に突き刺さった。
苦悶のそれに顔を歪めながら兵士達のいる位置へと落ちていく。
そして、当のルインは未だ状況についていけずにいる。
煙と腕の痛みのせいでナイアルトの足に矢が刺さったまでしか理解できていないらしい。
そこにエルフの青年が華麗に着地、プリメーラを抱えて青年はやたらイケメンな台詞を吐く。
>「良いかい、死にたくないなら、合図するから出来るだけ高く跳んで。」
「誰っ!?いや俺は死にたくないどころか戦うのもごめんなんですけどっ!?」
地面に転がった槍を拾いつつ背中合わせの形になり、今の気持ちをありのまま叫んだ。
いつの間にか兵士達はプリメーラ達を囲み逃げ場のない状況となっているにも関わらず。
>「今だっ跳んで!」
言葉尻の部分でルインが頼りなく思えたのか、はたまた彼にとって嫌いなタイプだったのか
とにかく跳び上がる瞬間に尻を思い切り蹴られた。
(いっでぇぇぇぇえーーーー!!何やってんの!?何やってんの!?
跳べって言った癖に何で蹴ったのっ!?何で蹴られたの俺!!なんか悪い事したぁっ!?)
痛みに気が散ったせいでまともに跳び上がれそうにない。それでも半ばヤケになったのか足に力を込め跳躍。
ルインは心の中で「無理に決まってるだろ!エルフの奴のせいだ!」と既に良い訳を並べ始めていたが
プリメーラの咄嗟の機転により馬に飛び乗ることには一応の成功を果たした。
>「プリメーラさんですね。貴方の鳩に導かれた味方です。」
「何格好つけとんねんっ!?俺への謝罪の言葉はっ!?ほら!尻キックや尻キック!
かのダンブルウィード尻キック事件のことだよぉっ!!忘れたのか!?」
リードルフは些細なことだと判断したのか、華麗にスルーされたがルインのやかましい声は止む気配なし。
そして自分が未だにみっともなくスイにしがみついている事に気付き、手を離した。
中性的な外見のせいで後ろからでは性別の判断がつき難い。
女性だった場合変態のレッテルを貼られながら殴られても困るので「すんませんでしたぁっ!」と気持ち土下座の勢いで謝罪。
もの凄い勢いでリードルフに謝罪を要求したり自分は速攻で謝ったり忙しいヘタレである。
【西区・民家】
プリメーラの仲間が毒を盛られ、そしてリードルフは薬剤師であるという。
危機的状況にある仲間を救う為真性ヘタレのルインは流されるがままに馬で民家へと到着する。
そして別段珍しくない敵とも遭遇。迎撃は自然と最後尾にいたスイ達に向けられた。
>「スイ、と・・・・・・・・・・・・・・・槍男君、敵は任せました!」
「知らん!!俺は知らんぞ!流されるがまま来たが俺は給料貰えなくなるからクビになりたくないだけだ!!
別に好き好んで飛び出したワケじゃあねーっての!後はお前らに任せ……あ?」
ルインの言葉は虚空に響くばかりで、リードルフの心には響かなかったようで。
つまるところ完璧にスルーされてしまい空回りの情けない有様だった。
取り残されたスイはじぃっと哀れみのこもった目でこちらを見つめ空気も最悪な状況。
そしてルインは言ってしまったのだ。『後は俺に任せろ』と。大人ならば自分の言葉に責任を持たねばならない。
つまり逃げてはいけない状況にあるのだ。心なしか再び足が笑い出した。
「ちっくしょーー!!今回だけだからな!!今回限りだからな協力すんのはっ!!
小さい娘の仲間が助かったら俺は逃げるからなっ!後は知らんぞ!なぁーんにも知らん!!」
斬りかかる兵士の一太刀を横に受け流し、すかさず突きの一撃。
後方の弓兵が矢を構えたその瞬間スローイングナイフを抜き放ち投擲。
群がる兵士の合間を縫って頭部に刺さり赤い液体を噴いて倒れる。
「こっちは慢性的な金欠なんだ!後でそのナイフ返せよ!!」
しかし一向に敵の人数が減る気配はない。
ルインはもちろんスイの攻撃によって数を減らしているにも関わらず、だ。
前の敵に気を捉われていた隙に、足に感触。それはエストラルの兵士。
「なっ……ワケがわかんねーー!こいつ、死んでるのに動いてやがる──!?」
槍は自分の間合いより内に入られると脆い。
それを何よりも熟知しているルインはすかさず兵士の手を蹴り上げ二、三歩後退。再び防御の構えを取る。
「無理〜〜〜〜〜!!!こんなの絶対無理ぃ〜〜!逃げる!!俺はもう逃げるっ!!」
足だけでなく声も震え出す。死兵相手にもうルインはいっぱいいっぱいだ。
病的な臆病者の彼がここまで頑張ったのだからある種の奇跡と言える。
>「ナイアルトの仕業だ……」
>「「その通り」」
民家からいつの間にか現れたプリメーラ達の声に反応し、ナイアルトは『二人』で参上した。
その姿は紛う事なき奇術師。続く異常事態にルインはあうあうと落ち着きがない。
誰よりも敏感な危機察知能力が発動し、ルインは先祖から伝わる最後の手段を用いて回れ右をしようとするが……
>「ナイアルトの性格を考えると、本物は自分に傷をつけた君達の方へ行くと思う。
> 僕らが偽物を倒せば敵の数はぐっと減る筈だ。だからその間は麻痺毒の鍼に気を付けて!」
一般人だと勘違いしていたプリメーラから的確な指示が飛び出し、思わず泡を食った。
もちろんそんな頭の悪い勘違いはサボリ常習犯のルインだけであるがとにかくぎょっとしてしまう。
何はともあれ逃げるタイミングを失ってしまったのでそのままモブ臭く立ち尽くすしかなかった。
そして「あれ?もしかして一般人じゃなくて味方の人?」と自分の愚かな思考回路に漸く疑問を抱いたその時
>「おにいさん、怖がらないで。ボク達二人で偽物を倒そう。そうすればもう勝ったも同然だ」
「わ、悪い………こう見えてお兄さん去年『逃げ腰の槍使い』って称号を偉い人から賜ったんだ。
剣鬼みたいに格好良くなくてごめんね!でも俺あんな有名な人と違ってショボいから、うん!!」
最後のうんでみっともない自分を無理矢理納得させた。
自分より幼い娘に励まされたのだから尚更情けない。格好悪い大人の生きた標本がそこにあった。
>「『おにいさんとボクでなら勝てる。自信を持って!』」
強く手を握られ、プリメーラのマテリアルであるペンダントが金色に輝く。
女性経験も真性でアレなルインは相手が子供とは言え終始あるゆる意味でビビリっぱなしだった。
「うん、結論から言うと……怖いからむ………あれ?……いや、いやいや待て待て。
今なんかおかしい。今の俺ちょっとおかしいぞ。恐怖のあまりに感情を失ったのか……?」
即座に違和感。震えた足と声が止まった。
目の前の敵が恐怖の対象でなく棒立ちのオブジェにしか見えない。
何よりその原因がわからない。とにかく蜘蛛の巣の張った脳みそを稼動させ急いで原因究明に当たった。
「────もしかして俺ってロリコン?いや、ストップ三大欲求!それはちょっとありえん」
前触れもなく恐怖心が無くなり混乱したのか斜め下の結論に着地したようだ。
プリメーラの催眠術の効果であることには未だ気付きもしないが特に問題なし。
>「ボクがアイツの相手をする。合図したら、アイツの死角から槍を打ち込んで!」
「は……はあ………わかりやした」
言われるがままに安請け合いしてしまい、戦闘勃発。
そしてルインは微かな『ひっかかり』を憶えた。いつもならばそれに対して逃げるはずの『ひっかかり』
しかし今の彼は例えるのならルーのないカレー。ひっかかりに疑問を感じながら槍を構える。
そして、そのひっかかりはすぐに姿を現した。
>「馬鹿ですね。誰が『偽物は一人しかいない』と言いましたか?」
>「ッ!しまっ……!」
そんな屁理屈が通るか、と気付けば既に走り出していた。
いつもならば。いつもならばその優れた危機察知能力により全員を連れて逃亡していただろう。
しかし恐怖心を失ったことによりそれは鈍りに鈍って、今このような状況にある。
「なぞなぞやってんじゃねーんだぞぉぉおおおおおおおお!!」
渾身の力を込めて空中の偽物に槍を投擲。
放たれた槍は一直線に腹に突き刺さり、穿ち、地面に落下。
穂先は地に刺さるとナイアルトの偽物は腕や足をびくりと痙攣させた。しかし遺才は未だ見せず。
臆病者にとって遺才は最後の切り札。このようなところでまだ見せる訳にもいかなかったのだ。
しかしこの時、彼は失念していた───偽物はもう一人いることに。
「うおおおおおおおお!?危ねええええ!!」
咄嗟に翻り、偽ナイアルトのナイフを、腰のスローイングナイフで防ぐことには成功。
しかしスローイングナイフは投げるためにあるのであってナイフで切れ味はないに等しい。
何より彼は槍の天才であってナイフの天才ではない。不意打ちは運が味方して防いだが二撃目は……
「くっそおおおおおおおおおお!!今度から絶対ビビリはやめねーーーッ!!
つーか誰か助けてくれーーーーーー!!このままじゃ俺が死ぬーーー!!ヘルプ!ヘルーープ!!」
デッドオアデッドの状況で彼は助けを求める。
恐怖心はなくなっても彼が真性ヘタレであることに変わりはないようだ。
本物のナイアルトはこの状況を愉快そうにほくそ笑んでいることだろう。
【きれいなるいんがプリメーラさん助ける→汚いルインに戻ってSOS】
【ついでに無駄に長くなってすいませんでしたぁ!!】
157 :
名無しになりきれ:2011/05/14(土) 19:23:21.39 0
メンズビームを食らえ!!!
158 :
名無しになりきれ:2011/05/14(土) 21:36:25.17 0
テクノブレイカー
【西区 上空】
「色々としててちょっと遅刻して来ましたが…」
空中に浮かしたゴーレムから周囲に目線を向け各区での戦闘状況をざっと見た後
「自分、あんまり必要でないような…
ほとんどの区内で戦闘は終了気味だし、なんか中央区は物凄い戦闘してるし…
いっそ、このままここで傍観しててもよさそうかな…」
正直、本来戦闘員じゃないしと思い横になると下方から
>「くっそおおおおおおおおおお!!今度から絶対ビビりやめねーーーッ!!
つーか誰か助けてくれーーーーーー!!このままじゃ俺が死ぬーーー!!ヘルプ!ヘルーープ!!」
味方(?)らしき人物が敵にやられそうになって叫んでいた
「…なんかよくわからないけど、助けてっていってるし…暇潰しにはなるかな?」
座っていた機械式ゴーレムの肩から手の方へと移って
「じゃ取り合えず…この“G-03”をあの味方をねらってる敵に向かって
急降下させて踏み潰すか…」
そういって乗っている機械式ゴーレムを偽ナイトハルトを一気に急降下させ攻撃した
【西区 上空よりルインを発見し救出に出現、偽ナイトハルトに攻撃
G-03の大まかな外見は避難所にて発表します】
アルテリアの超速射が操縦席を穿ち道を拓き、フェイスレスの溶解水が巨躯の前進を鈍らせる。
そこへ降り立ったレイリンが内部からゴーレムを蹂躙した。無残にも追加装甲は弾け飛び、銅鑼のような音を立てて石畳を跳ねた。
ゴーレムは傷つき、内部から爆炎と蒸気の入り交じった煙を上げながら、それでも再びゆっくりと歩き出した。
始め遅々としていたその歩みはやがて速度を上げていき、先刻と変わらぬ速さの進撃を再開。
――否、装甲が減っただけ幾分か俊敏ですらある。
関節を溶かすフェイスレスの溶解液は、液体であるがゆえに今すぐ駆動自体を止めるには至らなかった。
「……それでも、装甲は薄くなったし主砲は煙吐いてるしで、もう一押しで行けるんじゃねえか?」
「今の状態なら俺たちの攻撃も効くかもしれねえぞ!飛翔機雷用意!てーーーっ!!」
バリケードから顔を出した帝国兵の一人が、虎の子の飛翔機雷を目視照準で放った。
円筒形の本体の上半分に炸裂術式、下半分に噴射術式を施術されたこの安価で便利な魔導兵器は通常、
軽装甲のゴーレムならば一撃で行動不能に陥らせる威力を持つ。なればこそ、ゴーレム運用には随伴歩兵が必須なのだ。
百人の歩兵を相手にできる戦闘重機を、たった一人の歩兵が倒せる武装が存在する――それが戦場のパワーバランスだ。
果たせるかな、飛翔機雷は射出され、重装甲目標のゴーレムへ着弾した。
「やった……か?」
やっていなかった。飛翔機雷は確かに爆裂したが、ゴーレムと機雷との間に展開された不可視の障壁によって爆風を阻まれていた。
ただ爆炎が壁にぶち当たったかのように逸れていくのを見て、歩兵は呻くように呟いた。
「力場装甲――!!」
通常装甲とは別物の、魔導術式による装甲である。発動することによって防御性能を発揮する、重さのない装甲。
積載重量やスペースを無視するかわり、常時発動ではないので不意打ちには弱く、また燃費も悪い虎の子の兵装だ。
扱いの難しさから戦場で運用されることは滅多になく――逆説的に、戦場で運用できるだけの技術を敵が秘めている証左でもあった。
「ありえねえ……!あれだけの重装甲を動かす出力で、まだ力場装甲まで使えるってのか!?リソースどうなってやがる!」
「それだけじゃねえ。主砲や飛翔機雷筒もそうだが、本来インファイトシリーズに載せようのない兵装まで載っけてやがる。
腹や腕の中から兵装出すゴーレムなんて見たことないぞ……!?」
ゴーレムとは有体に行って『岩人形』だ。魔術によって動きを与えられ、"中身"の動きを再現する無骨な鉱物の鎧と言い換えてもいい。
次々と武器を換装して戦うゴーレムというアイデア自体は云十年も昔からあった。ただしそれはゴーレムの内部を弄るのではなく、
前線に兵装を積んだストレージを用意しておき、短距離転移術式で兵装を転送して使うという発想が関の山だ。
それすらも、孤立無援になったときが圧倒的に弱くなるという理由で実用化には至らなかった。
この世界に言う『機械』――複雑な機構を前提にしたそれを組み込んで、かつ戦場で動かせるほど耐久力と軽さを備えた素材などない。
『機械を仕込んだゴーレム』など、技術力の観点から言ってありえないのだ。あるとすれば、それは人智及ばぬ『天才』の所業。
まったくこの暴走ゴーレムは、現代の戦場の常識を根本から覆すに足りず打ち壊すほどの、超越技術の塊なのだった。
果たしてゴーレムは止まらず、さりとて装甲大破以上の損害を被るでもなく、速度を上げて進撃を続行するのだった。
十重二十重のバリケードをあっさりと踏み壊し、撤退戦を続ける帝国兵達を蹴散らし、剣山のような魔獣の死骸も意にかけず。
『ただ進むだけ』という機能のみに特化した暴走ゴーレムは、その至上命題を全うする。絶望が、蔓延しようとしていた。
――『なるほどな……どうやら敵さんは、派手な決着のつけ方をご所望らしい』
中央区に派兵された遊撃課の面々のバックパックが震えた。
サイドに取り付けられた作戦用の暗号化機能付き念信オーブに入電したのは、遊撃課課長・ボルト=ブライヤーの声だった。
『お前らが派手に暴れてくれたおかげで状況の把握に時間がかかっちまった。おっと、責めてくれるなよ?
これでも凡人にしては結構な好タイムが出せたんだ。レコード上位がお前ら天才で埋まってなけりゃ、帝国新を塗り替えてる』
感知系術式を応用して地表に微弱な魔力波を流し、その反響で戦況を鷹の目のように俯瞰する高位の情報取得魔術。
ボルトの十八番であり、天才ぞろいの遊撃課において課長を任じられた最大の理由でもある。
彼にかかれば広大な戦場の光景も、盤上遊戯の配駒を把握するように俯瞰して認識できるのだ。
『状況は大体わかった。おれの采配ミスを呪ったぜ。火力重視で対人関係に難有りな連中を中央区に集めたが、
ここまで見事に協和音奏でてくれるとは予想外だ。お前ら天才の癖に他人に気ィ使ってんじゃねえよ。借りてきた猫か?』
ボルトの予想では、もっと中央区は殺伐としているはずだった。なにせ他者を省みずに爪弾きにされた連中だ。
手柄を取り合ったり、己の技に同僚を巻き込んだり(実際、若干そんな傾向は散見されたが)してもおかしくないと。
ところがどうだろう。分解狂は激を飛ばすわ浪費弓師は素直に罠を張るわ名無し顔無しも戦乙女もサポートに回るわで。
お互いを気遣いお互いに高め合う、健全な切磋琢磨がそこにはあった。そしてそれは、遊撃課に求められる姿ではなかった。
『甘んじてんじゃねえよ。お前らは天才なんだ。お前らは"バケモノ"なんだ。人間らしさなんて捨てろ。貪欲に生きろ。
バケモノ同士で慣れ合ってんじゃねえぞ。天才《バケモノ》を使っていいのは――凡人《おれたち》だけだ。だから、」
ボルトは、天才が嫌いだった。彼が凡人である故の、ある種のやっかみもあったが、根本にあるのは恐怖だった。
だから彼はその恐怖を、自分の刃に変えることで乗り越える。剣を恐れる人間が、自ら剣を取ることで戦士になっていくように。
『――――おれがお前らを活かしてやる』
世界を救った英雄はやがて怪物へ変わる。ならばその怪物を怪物のまま、もう一度英雄にしてみせる。
ボルトの決意。底意地の悪い采配であわよくば天才同士の同士討ちを狙った彼は、その過程で気付いてしまったのだから。
どれだけ人々が拒絶しようとも、怪物には力がある。『有無をいわさず無理やり強引に"助ける"』ことのできる力が!
『フェイスレス!お前の遺才は水だったな。水操って関節溶かすことができるのなら……逆に"固める"ことはできるか?
水銀でもなんでもいい。ゴーレムの関節は溶かすだけじゃ止まらねえが、うんと重たい水で駆動そのものを抑えてみてくれ』
魔力によって結合されているゴーレムの関節部は、そこのパーツが破損しても自動で代替する機能が備わっている。
もともとは可動域を超えて関節を曲げたときに転倒する事故を防ぐための機能だが、暴走ゴーレムもそれが機能しているのだろう。
『サジタリウス!お前は戦線を離脱して中央区南の"メリア商会"まで全速力。スティレットを待機させてあるから合流しろ。
官給品の槍や剣撃つだけじゃ飽きてくるだろ?――とっておきの良いモン撃たせてやるよ』
スティレットには指令支部近くの魔獣を掃討させたあとすぐに命令を出しておいた。
ニードルデーモンの相手に倦んでいた彼女は尻尾を振って群れを片付けると中央区へ飛んでいった。
『シキマ!お前にはフェイスレスが止めたゴーレムを動かしてもらう。……そうだな、"投げ"ろ。装甲が飛んだ今、
関節が鈍ればバランスは崩せるはずだ。お前の"本気"の膂力なら装甲なしのゴーレムぐらい持ち上がるよな?』
レイリンは吸血鬼の眷属。その怪力はむくつけき腕自慢ぞろいの軍ですら持て余すほどだったという。
アルテリアの撃つ『矢』を、最高の状態で叩き込むためにはゴーレムが空中に居る必要があった。そして。
『オブテイン!お前、分析すんのが趣味なんだってな。天才を調べたいとか考えてるって話もおれの耳には入ってきてるぞ。
お前よ、わざわざ敵から選び出さんでも天才なんか、お前のすぐ傍にいるだろうが。シキマが何の眷属かは知ってるな。
あいにくのこの時間だが――シキマに本気を出させろ。やり方は任せる』
サフロールが中央区で同僚たちに激を飛ばしていたのを知ってから、ボルトはこの男に対する認識を少し変えた。
スティレットとの列車での一件もそうだが、サフロールは天才の天性を"引き出させない"術を理解している。その逆も然り。
『総員、作戦は頭に叩き込んだな?死んだ奴を打ち上げに誘う謂れはねえから、おれの奢りで飲みたかったら必ず生きて帰ってこい』
ボルトは柏手一つ。
大事な作戦の前に、頭の中身を切り替える合図として――死んだ友人がよくそうしていたのを、思い出していた。
『――状況開始だ』
* * * * * * *
【中央区南・メリア商会前】
どの街にも言えることだが、ある程度建物が密集する地区には、一定の間隔で街中に鉄塔を立てている。
例えば雷がどこに落ちるかビクビクしているよりは、高い場所にある尖った金属に落ちやすい性質を利用して、
敢えて一定の場所に雷を呼ぶことで周囲の安全を確保する試みがある。いわゆる『避雷塔』というやつだ。
低い家が並ぶ中、天を貫くようにそびえ立つ鉄塔はなかなかの壮観である。
「お待ちしておりましたであります!アルテリアどのっ!」
先んじて待機していたスティレットは身の丈ほどある長大剣を背負った矮躯でぴょんぴょん跳ねた。
メリア商会の屋根の上に一跳躍で登ると、他の家屋より高い屋根は彼女たちの視界を一気に広げてくれる。
アルテリアにも登るよう促した。
「小隊長より指令は伺っているであります!よもやわたしまでこの一世一代の大作戦に噛ませていただけるとは、
このスティレット、最高に感激してるでありますよぉ!ではでは早速、アルテリアどのの『矢』をご用意するであります!」
スティレットは担った長大剣『館崩し』に手をかけた。鞘走りして刀身を顕にする館崩しには、一切の刃紋が施されていない。
まるで一枚の鋼板から直接削り出したかのような、剣と呼ぶにはあまりに無骨で大雑把すぎる意匠。表面は磨きこまれている。
その柄を握った瞬間、スティレットの体内で血液が沸騰する錯覚を覚えた。体が『剣』の魔族を模し、その眷属たる血が輝きを増す。
「スティレットの家が血脈に宿す剣――『崩剣』はあらゆる障害を薙ぎ払う絶対不退の『対物破壊剣術』であります。
『轟剣』リフレクティアや『双剣』ガルブレイズのような戦闘剣ではなく、人も魔も鋼も纏めて叩き斬る『破壊』こそが真髄!」
体ごと回転させながら、スティレットは館崩しを一回転。その刃はまるでバターにナイフでも入れるように抵抗なく鉄塔を通った。
音すらなく。彼女が剣を納めると、鉄塔の後ろ側で何かが爆裂する轟音と共に鉄塔が半ばから倒れ始めた。――アルテリアの方に。
「小隊長曰く、これが『矢』だそうであります!シキマどのが投げたゴーレムの中枢を、これで射抜けと!
アルテリアどのの遺才は棒状のものならなんでも矢のように射ることができるそうですね!最高にカッコいいであります!!」
ゆっくりと、スティレットから供給された『矢』は、腹の底を震わす地響きを立てながらアルテリアに『落ちてきた』。
【ゴーレム中破。装甲全損。奥の手の術式バリアを使いつつ進撃速度UP】
【暴走ゴーレムを完全停止に追い込むための作戦発令。ボルト課長からの指令↓
レイリン:フェイスレスの固めたゴーレムを100%の力で上に放り投げる、アルテリアの狙撃補助
サフロール:レイリンが100%の力を出せるよう補助せよ
アルテリア:スティレットと合流し、彼女の切り出した鉄塔を矢にしてゴーレムを狙撃せよ
フェイスレス:ゴーレムの関節に打ち込んだ水を溶解液から固める方向に切り替えよ】
【次のターンで暴走ゴーレム戦の決着となります】
聞こえてきたリードルフの声と同時に矢を放つ。
再び馬を操り、無人の馬とともに黒煙の中に突入する。
二匹の馬は大きく跳躍し、少女を抱えたリードルフは無人の馬に、もう一人の青年は、自分の後ろにしがみついた。
後ろから情けない声があがるが、気にせず、馬主を巡らせる。
そのまま黒煙を脱し、仲間がいると聞き、その民家へと向かった。
>「スイ、と……………槍男君敵は任せました!」
「勝手に決めんじゃねえ」
反射的に吐き捨て、構える。
そのまま薄れゆく黒煙に向かって放つ。
>「知らん!!俺は知らんぞ!(長いので省略)」
後ろからそんなことが聞こえ、思わず哀れみの目でみる。
いつもならここでボーガンで殴っているところだが、今は状況が状況だ。
そのまま、前に向き直り、そのまま矢を放ち続ける。
だが違和感を覚えた。
数が、減らない。
>「ナイアルトの仕業だ……」
>「「その通り」」
二人の人影。どちらかが偽物だという。
スイは思わず舌打ちをした。
風の印、というものがある。
何者にも風は特有だ。
表の自分では裏の影響でか、風は色をついて見える。
それを利用して、僅かながら風を操られるのを使い、風を固め、味方につける。
敵味方を区別する為もあり、裏が暴走したときの保険用でもある。
さっきナイアルトにはなった矢は、敵用の印がついていた。
敵用の印は特別なときにつける。
手ごわい相手、それもナイアルトのような、惑わすのが得意なような奴が対象だ。
復活する死体に、膝を狙って、矢を放つ。
死体は起きあがろうとしてもがき続ける。
「起きあがるなら足関節さえ狙えばいい。動けないだろう?」
そのとき青年の叫び声が耳に届いた。
とっさにそちらに向き、唖然とした。
「あのゴーレム中に浮かんでやがる…」
ひくりと口元が動く。
勘で味方だと判断し、敵用の印を探した。
後ろに向き、矢を一気に放つ。
「おやおや、バレてしまいましたか」
「うっせえ、この仮面野郎が!」
【敵兵士を動けなくする、本物のナイアルト発見のコンボ】
【無駄に長くなってすいませんでした!】
>148
「あなたは薬剤師さんなんだね、ありがとう」
リードルフと名乗った青年にお礼を言うと、プリメっちゃんが飛びついてきた。
「わわっ!?」
どうやらナイアルトが追ってきたらしい。しつこい奴!
>「「さあ、どちらが本物かな?」」
どうやら死霊術士か何かを味方につけているらしい。
「ええい! 要は両方倒せばいいんだろ!」
>156
>「ッ!しまっ……!」
二人目の偽物が現れた!
>「なぞなぞやってんじゃねーんだぞぉぉおおおおおおおお!!」
「おっ、ヘタレ君ナイス!」
>159
>「くっそおおおおおおおおおお!!今度から絶対ビビリはやめねーーーッ!!
つーか誰か助けてくれーーーーーー!!このままじゃ俺が死ぬーーー!!ヘルプ!ヘルーープ!!」
ヘタレ君が逃げ回りながら助けを求めていると、助けは現れた! 求めよさらば与えられん。
偽ナイアルトは突如降下してきたゴーレムの下敷きになった! 多分。
これぞ交通インフラ(?)による事故死、略して交通事故である。
>165
>「おやおや、バレてしまいましたか」
>「うっせえ、この仮面野郎が!」
何か分からないが本物が見つかった。
「よっし、あとはこいつをフルボッコにしようか」
「うおおおおおおおおお!! 無視すんじゃねえ!」
「いたの!?」
皆に忘れられていた偽ナイアルトその1がナイフで襲い掛かってきた。
見れば、手に持った蜜柑が消えかかっている。
「それは果物ナイフか、ならばプレゼントッ!」
このまま消えては勿体ないとばかりに、蜜柑を偽ナイアルトに投げつける。
「ふざけてんのかてめー!」
ただの蜜柑だと思って避けようとしなかった偽ナイアルトにぶつかった瞬間、爆発した!
どごーん!
「ぐわっ!? ……くくく、ハハハ、ギャハハハハハ!!」
偽ナイアルトその1は腹を抱えて笑い転げ始めた。瘴気爆弾ならぬ笑気爆弾だ!
笑いがおさまった頃には精魂尽き果てている事だろう。
「一丁上がりっと」
偽物が片付いたところで本物ナイアルトに向き直る。
「あなたのお蔭で掴んだよ。さあ、新しい《世界》を見せようか。」
ちょっと堕天使君みたいに思わせぶりに格好つけてみる。
呼び出したいものを細部までイメージしていく。遥か北の国の神話に刻まれた孤高の狼。強く、気高い魔獣。
それは、夢と現実の狭間。夢だけど夢じゃない。夢の世界から蜜柑を持ってきたのと一緒である。
「笑喚世界Lv2!! ―――我が声に応え暫し姿を現せ、彼の世に住まいし異形の者!!」
一帯に満ちた魔力が、凝集して形を成していく。
「出でよ、魔獣フェンリル!!」
眩い光が辺りを包み、次の瞬間そこにいたのは……!
「わん!」
子どもの落書きのような可愛いデザインそのままの犬でした。
が、首にかけた名札に”ふぇんりる”と書いてあるので誰が何と言おうとフェンリルなのだ。
ワタシがイメージしたものがそのまま具現化しているのだから当然の結果である。
「動物ショーが始めるよ〜! 楽しい仲間がポポポポーン!」
1匹では寂しいので幻影を100匹作って取り囲んでみた。真ナイアルトをびしっと指さしてフェンリル達に命令を出す。
「行け、フェンリル! アイツの仮面をひっぺがせえええええ!!」
「わんわんわん!」
101匹フェンリルがナイアルトに飛びかかる!
【偽ナイアルトその1をミカン笑気爆弾で行動不能に。
魔獣フェンリル召喚。真ナイアルトに101匹フェンリルを飛びかからせる】
168 :
名無しになりきれ:2011/05/15(日) 20:09:06.47 0
身長57m体重550トンの超巨大ゴーレムか
休みながら悶々とする少年W(15)。血が足りてない癖にさらに血が頭に回っているし、恐らく立てやしないだろう。
バリケードの建設について思いを馳せようとしたのに、思考はすぐに脇道へと脱線してしまう。
(ノイファしゃんて何歳だろ、23、4ぐらい?もう結婚とかもしてるだろ、だから早まるな俺早まるな俺)
少しぼーっとするだけですぐにさっきの優しい笑顔が瞼に浮かぶ。あの聞いているだけで心が綺麗になりそうな声とともに。
だけど良くない、色恋沙汰には痛い目しかない。誰かに惚れて結局傷つくぐらいなら、誰にも惚れたくない。
(つーか俺が20ぐらいになった頃にはもう30近いじゃん!おばさんだよおばさん!ナイナイナイナイ!)
心の中なら何を言ってもいいと思っているのだろうか。
「お、俺に熟女趣味はないっス!」
とうとう口に出た。そこにいたのはただの馬鹿だった。
ともかく、わりと吹っ切れた(?)らしい。なんかすごい清々しい顔になってる。
>それにバリントンは稼ぎが良さそうな顔ではありませんよ」
だからなんかかなり酷いこと言われてる気がするけどウィレムには全然気にならない。全然気にしてない。気にしてない。気にしてないから。
ほんとに。全然気にしてないってば。全く気にならないなぁ。はっは。何だよ稼ぎが良さそうじゃない顔って。
さっきの街道にテンションが上がっているフィンに(やっぱりセンパイは大物だ)とかよくわからない尊敬の念を抱きながら、
稼ぎの良さそうな顔について思考の迷路に入りこもうとしたウィレムにかけられる声。掠れそうで、弱々しい。
>「………あの……ごめんなさい、さっき……」
「いやいやこれは俺が勝手につけた傷だよ?謝ることなんか何にもないっスよー」
一瞬何について謝られているのかわからなかったほど。ウィレムは本当に何も思っていない。もう治っているわけだし。
さっき酷いこと言った人にこそ謝って欲しいよな、とか思ってるのが正直なところ。たぶん酷いこと言ったつもりすらないだろうが。
「でも一応、謝罪の気持ちには応えまっス!」
そしてニヤリと笑う。
そんな、戦闘後の緩やかで和やかな雰囲気。
長く続く筈もない。
最初に現れたのは男。恭しく語り、この少女の身内だと語る。少女も面識があるようなので、どうやら嘘偽りはないらしい。
だがはいそうですかと受け渡す訳にいかないのは、この少女が重要な情報を持っている可能性と、
その男が握る、血の滴った得物だ。
>「敵です!!!」
「早っ!」
ウィレムが考える前に、既にセフィリアは行動を始めていた。
……確かに、この少女の身内という時点で味方であるとは思えない。
その思い切りの良さは見習わなくてはならないのかもしれない。
セフィリアが男に斬りかかったのとほぼ同時。その場に響く金切り声。
>「よかったら、じゃないわよトーヘンボクッ!!」
現れたのは――この瓦礫が立ち並ぶ状況にはとてもじゃないが合わない、貴族然とした服装の少女。
しかしそこに高貴なものを感じないのは、背中に背負った大きな金庫か、その言葉遣いか。
芝居的な自己紹介をする少女――クローディアと名乗った――を眺めながら、ウィレムは立ち上がる。
毛穴が反応する。よくいる、『ヤバい』タイプの人間。会話が出来ない。するつもりがない。
身構え、フラリと来て堪える。実のところ体力は全然回復していない。満身創痍だ、1人だけ。
紙幣を取り出したかと思うと、それは瞬く間にボウガンに変わった。魔法だろうか、それはいい。それは大事じゃない。
武器を携える理由。
男の要求したような、引き渡しではない。
ここで『処分』するつもりだ。
> ……バイバイエミリー、恨まないでね。来世で会ったらご飯の一つも奢ってあげるから。ウソよ、勿体無いじゃない」
ボウガンを構える。狙いを定める。引鉄を引く。そこに躊躇は微塵もない。
「危ないっ!!」
放たれた矢は、狙い狂わずエミリーの眉間に向かっていた――。
単純に、足が速いだけでは走れない。
常人がウィレムのような速さをその脚に宿したとしても、恐らくすぐに転ぶか壁にぶつかる。
目に見えない速さで走るのだから、自分を中心として考えれば『周りが目に見えない速さで移動する』のだ。
障害物には何も反応できない。路傍の小石でも大きくバランスを崩し、転倒する憂き目に遭うのは想像に難くない。
とどのつまり、単に足が速いだけでは『縮地』にはならない。
目にも止まらぬ速度でさえ、その網膜に焼き付ける動体視力。
そして、超速度で動きながらも確実に行動に反映する反応速度。
その2つが揃って初めて、この遺才は力を発揮するのだ。
結論から言えば、放たれたボウガンの矢がエミリーに刺さることはなかった。既の所で、その矢は握りしめられ、勢いを失っていた。
もう少し反応が遅かったらそう思うと内心ヒヤリとする。しかしその気持ちは外に出さない。当たり前のことの様に、見せろ。
ボウガンの矢を無表情に投げ返し、狙われているのであろうエミリーを抱え、ついでに機械人形を背負い、2人組から瞬時に離れる。
安全なところまで運ぶつもりだったが、今回の荷物は少女+機械人形。血の足りていないウィレムには無理な問題だった。
しかし力を振り絞り、なんとか味方の最後方にまでは逃げることはできた。これなら大丈夫、遺才持ちが3人もいるんだぞ。
最前線の防衛役はセンパイがいる。それでもう何も怖くない。
ノイファしゃんもセフィリアさんも強いから、この人たちに守られるなら心配ない。
それにいざとなったら――この身を捨てて、盾になればいい。
もう戦力にはなれないけれど。あと一回ぐらいなら、多分、走れる。
「んと……エミリーちゃん、って言ったっけ。あいつら知り合い?……聞くまでもないか。知り合い、スよね。
そして、明らかに君を狙っている。それも疑い様がないだろう。口封じ?敗者への制裁?それは俺にはわからないけど。
君はさっきまで敵だったんだ、君を守る義理は俺たちにはない。君を差し出せばそれで終わる。この場は終わる。
――でも」
言葉を切る。
「センパイも、ノイファしゃんも、セフィリアさんも。もちろん俺も、そんなことは全く考えてない。
――君を、守りたいと思っている。
俺たちのこんなお節介な気持ちが迷惑で、もう死んでしまいたいと思ってるなら別だけど……
もし。もしもでいいんだ、少しでも生きたいと。俺たちの気持ちに、応えてくれる心があるなら。
……君の友達の力、借りてもいいっスかね?」
いまだにエミリーの傍に寄り添う人形――レイチェルと呼んでいたか。相手の力が測れない現状、こちらの戦力は少しでも欲しい。
先ほどの戦いで左腕が使えなくなってしまったようだが、未だ戦闘能力はあるだろう。痛みなど感じない、機械人形の特権。
少なくとも、カッコつけてはいるが実際はフラフラなウィレムよりはよっぽど戦力になる筈だ。
「大丈夫、センパイがいるから。レイチェルちゃんも、多少暴れたってこれ以上怪我なんかしないっスよ」
ちょっと信頼しすぎである。
【とりあえず後衛に避難、エミリーに寝返りを唆す】
>「ガチョウの癖によくわかっているじゃないカ」
「おいコラ、だァァァァァァれがファンタジックガチョウだぁ!?テメェは後で惨死体決定だクソアマがぁ!」
サフロールの激怒の声、けれども長くは続かない。
代わりに溜息混じりの呟きが零された。同時に視線を上げる。
「つーかよぉ」
ゴーレムが、見事な手際でガラクタへと作り替えられていく。
高度な魔術と機械機構によって制御されていた関節は見るも無惨に溶解され、
恐らくは『天才』の手で一つ上の次元へと押し上げられた操縦基は無数の棘に貫かれ、
別のゴーレムから装甲の強奪、極大威力の魔導砲、常識外の魔術機構も全て吹き飛んだ。
それでもなお駆動している事には感嘆すべきだが――元の驚異的な姿は見る影もない。
「……テメェら、ゴーレムの奪還って目的完全に忘れてやがんだろ」
レイリン達の暴虐――それが意味する所は、戦果の減少。
鹵獲出来れば国防の水準を大きく上昇させられる筈だった。
それこそ帝都の研究院に跋扈する凡人共が一世紀を費やしても不可能な程に。
帝都が遠のく足音が、サフロールの頭の中で反響する。
溜息を一つ、何の為に女共に手を貸してやったのかと言う疑問を禁じ得ない。
>『甘んじてんじゃねえよ。お前らは天才なんだ。お前らは"バケモノ"なんだ。人間らしさなんて捨てろ。貪欲に生きろ。
バケモノ同士で慣れ合ってんじゃねえぞ。天才《バケモノ》を使っていいのは――凡人《おれたち》だけだ。だから、」
>『――――おれがお前らを活かしてやる』
「ハッ、笑わせんな。羊に狼《バケモノ》が御し切れるかよ」
踵を支点に爪先を上げて、落とし、地面を軽く叩く。
魔力を流し込んで、ボルトの感知術式に干渉する。
攻撃ではない。ただの嫌がらせ――爆音の情報を逆流させた。
念信オーブから返って来た短い悲鳴に、サフロールがくつくつと笑う。
「……まぁ、いいぜ。どうせ手柄はコイツらが滅茶苦茶にしちまったんだ。
横着はやめだ。メインプランを進めるとするさ」
彼が帝都へ舞い戻る為のメインプラン――即ち、天才の分析。
>「さてと、お膳立ては出来ました、オブテイン最後は任せましたよ。
私は『凡人』にも出来ることしかしませんでした、貴方には『凡人』に出来ない仕事、期待しています」
「やなこった。俺がやっちまったら意味がねえだろうが」
援助に回り、挑発で煽り続けたのも、全てその為だった。
サフロールは展開した『世界』で天才達の働きを観測し、分析し続けていた。
アルテリアの弓術――明らかに女の域を逸した腕力。
マテリアルを持たない時との比較が出来れば、興味深い情報が得られる筈だ。
フェイスレスの水術――単に大気中の水分を凝集した訳ではなさそうだ。
召喚術の一種ならば、何処から召喚しているのか。
加えて水に対する様々な性質付加『防護』や『拘束』、『圧殺』に『溶解』、通常の魔術でそれらは使えるのか。
>『あいにくのこの時間だが――シキマに本気を出させろ。やり方は任せる』
「……つまり、後はテメェだけって訳だ」
それだけ言うと、サフロールは目を閉ざして思考を研ぎ澄ます。
分析するのだ――吸血鬼の力の源泉を。
ほんの数秒の沈黙、そして彼は目を開き、言葉を発した。
「吸血鬼は夜に力を発揮する。だがその理由は日光が無いからって訳じゃねえ。
だとしたら昼間に寝首を掻かれてくたばる理由がねえからな。
吸血鬼にとって日光はただの敵、それ以上の物ではねえんだ。
つまり……敵がいるなら味方もいるって訳だ。吸血鬼を夜の王たらしめる味方が。
それは何だ?考えるまでもねえ、月だ。月を力の源にするのは、何も吸血鬼だけに限らねえ。
人狼の一族も、そして『門』も月によって力を引き出されたと聞く。
実際、吸血鬼も人狼も、満月の夜にこそ最高の力を発揮するってのは有名な話だしな」
つまり、とサフロールが連ねた言葉を結論へと導く。
「テメェに本気を出させるのは簡単だ。今この場に、月夜を招待してやりゃいい」
事も無げに、宣言した。
同時にサフロールの翼が躍動し、『世界』が変貌する。
地表を覆う半球状だった『世界』は空へと昇り、淡黄色に輝く球形の天蓋と化した。
天蓋には使命が与えられていた。
日光の大部分を遮り、透過させる際には情報を書き換え、月光へと変質させるようにと。
そして戦場に、白と黒の羽が降り注ぐ擬似夜が訪れた。
レイリンが一歩踏み出せば、そこは既に『吸血鬼の世界』だった。
「【贋物の夜】《イミテイト・ナイト》とでも名付けるか。おら、行って来いよ吸血鬼」
迫り来るゴーレムを顎で示して、しかしサフロールは一つ思い出したように付け加えた。
「あぁ、そうそう。吸血鬼に人狼、『門』にしてもそうだがよ。
満月の夜にゃ限りなく正気を失うらしいな。つまり月が齎す『狂気』もまた、奴らの力の源って訳だ」
贋物である事を補うべく、満たされた『狂気』は通常の満月より遥かに高濃度だった。
月の狂気を抑制する銀細工も、見たところレイリンは装備していない。
血が濃ければ濃いほど狂気を深く受け入れる筈だが――よほど精神力に自信があるのか。
或いは単純に満月が遠いからか。
「当然、その『世界』にも『狂気』は満たしてある。
耐える自信がねえなら、一足先に司令部に帰ってもいいんだぜ?隊長殿?」
最早意図も悪意も見え透いた挑発の笑みと共に、サフロールがレイリンの顔を覗き込む。
と、彼の胸元から銀色の煌きが一瞬垣間見えた。
彼のマテリアルの一つである聖銀の十字架が、大袈裟な仕草で踊っていた。
>「なぞなぞやってんじゃねーんだぞぉぉおおおおおおおお!!」
ルインが吼えた。先まで膝を笑わせていた青年が、力の限りに槍を偽ナイアルトに投擲する。
槍をまともに受けた偽ナイアルトは、大量の血を腹から噴きだし落ちていく。
「貴様、よくもラムレスを!」
「! おにいさん避けて!」
>「うおおおおおおおお!?危ねええええ!!」
怒り狂った偽ナイアルトの片方は標的をルインへと変え、ナイフで斬りかかる。
ルインも負けじと応戦するが、得物は切れ味ゼロに等しいスローイングナイフ。
勝敗は火を見るよりも明らかだ。共に応戦しようとプリメーラはナイフを構えるが……
「――――――ッ!」
視界が揺らぎ、たまらず膝をついた。
久しぶりのこの感覚に、プリメーラは焦燥感を覚えた。
「(しまった、魔力切れ――――!)」
首に提げたマテリアルが色褪せ始めたのだ。
プリメーラの催眠術の致命的な弱点。その1つがこの魔力切れだ。
集団催眠の連続行使や身体の損傷は、著しい魔力切れを起こす。
「(今まで暴れてたツケが、今頃になって……最悪のタイミングだ!)」
魔力切れに伴い、ルインにかけていた催眠も解ける。
吸い取った筈の恐怖も舞い戻る。
>「くっそおおおおおおおおおお!!今度から絶対ビビリはやめねーーーッ!!
つーか誰か助けてくれーーーーーー!!このままじゃ俺が死ぬーーー!!ヘルプ!ヘルーープ!!」
「莫迦め!泣き喚いてどうにかなると思ってんのか」
ルインを追いつめつた偽ナイアルトが声高に嘲笑い、喉仏に刃を突き刺さんと振り上げる!
「ッ止めろぉぉォオオオ!」
ふらつく足でルインを救うべく、ナイフを手に走る。しかし距離が少し遠すぎる。
「恨むなら、自分の愚かさとオメェを焚き付けたあのアマを恨むんだな」
「(間に合わな――……!)」
その時だった。
今までに予想だにしない出来事は多々あれど、今度こそその場にいた全員がド肝を抜かれた。
「な、ななな……なんだありゃあ〜〜〜〜〜!?」
偽ナイアルトが驚愕のあまり腰を抜かす。実際、プリメーラも開いた口が塞がらない程だった。
>「あのゴーレム中に浮かんでやがる…」
スイが言う通り、プリメーラ達の上空に、乙型ゴーレム…G-03が現れ、急降下してきたのだから!
「っおにいさん!!」
このままではルインごと潰される。
ナイフを偽ナイアルトに投げつけて気を逸らし、ルインに渾身のタックル。
ザザザザッと砂埃を上げて地を滑る二人。
結果として、着地したG-03の足と足の隙間に入ることで事なきを得た。
「だ、大丈夫?おにいさん…」
ルインへの心配もそこそこにゴーレムの下から這い出す。プリメーラはゴーレムを見上げてとある人を探す。
こんな出鱈目なゴーレムを作れる人間を、ただ一人だけだがプリメーラは知っていた。
「ストラトス!ストラトス・クロイツだよね!?」
金属ヘルメットを被った白髪の少女、ストラトス・クロイツ。
プリメーラはかつて、゛上゛の命令でこの少女を護衛していた時期があったのだが、それはまた別の話である。
>「おやおや、バレてしまいましたか」
>「うっせえ、この仮面野郎が!」
>「よっし、あとはこいつをフルボッコにしようか」
展開は加速する。スイが本物を見つけ出し、全員が構える。
その時、こちらへ突進してくる者がいた。先程の偽ナイアルトである。
>「うおおおおおおおおお!! 無視すんじゃねえ!」
「「いたの!?」」
随分失礼すぎるツッコミの後、ロキによって一蹴される偽ナイアルト。
ゲラゲラ笑い転げる様は怪奇そのもの。やはりロキは敵に回したくないなと密かに思う。
>「出でよ、魔獣フェンリル!!」>「わん!」
「――って可愛いい!?」
「貴様!何故私が犬アレルギーだと!?」
「ぅえええマジで!?ってか何このノリ!?」
ロキが召還術を使うと、何だか可愛い生き物が出てきた。一瞬だけコメディにもなった。
しかしどんなに可愛くても大群で押し寄せられれば脅威だ。
「クッ……こんなもの、扇動で!」
ナイアルトのステッキが妖しく輝く。だがフェンリルの大群が操られることはない。
ロキが操っているのと、ナイアルト自身も体力が少なくなり能力を十全に発揮できなくなっているのだ。
「今なら、ナイアルトを倒せる…!」
ロキが偽ナイアルトを止めたお陰で、動く死体の数も減り、ゴーレムに畏れをなして逃げ出す者もいる。
「みんな、なるべくナイアルトに兵士達を近づけないように!」
また扇動を使われては厄介だ。大衆はゴーレムを操るストラトスやスイ達に任せるとする。
ナイアルトはプリメーラを見て鼻で笑う。
「魔術師君、自分で分かるだろう。君は既に殆どの魔力を使い果たしているんだよ?
それとも、またそこの臆病者の、へっぴり腰の、槍使い君に任せる気かい?」
殺気をこめてナイアルトを睨むも、すぐに視線を逸らし引け腰のルインに歩み寄る。
「ごめんね、おにいさん。後もうちょっとで、アイツを倒せるから……」
近くにいた何匹かのフェンリルがプリメーラの足元にすり寄り光となって、マテリアルに収束する。
「アイツだって口ではああだけど限界なんだ。おにいさんの敵じゃないよ」
魔力が切れて尚、遺才を発動しようとマテリアルが魔力を求めているのだ。
「皆がどうかは分からないけど、ボクはおにいさんに賭けるよ。だっておにいさんは……」
光が余るほど輝くマテリアルをルインの首にかけ、にこりと微笑む。
「あんなに勇気があって、強い人じゃないか!」
そしてマテリアルから手を離した刹那、遂に限界が訪れる。
視界がくらみ、プリメーラの体は地に崩れるのだった。
【プリメーラ→残りの魔力すべてをマテリアルにこめて気絶】
【ルイン→ステータス異常:もう何も怖くない状態】
【ナイアルト→ヘロヘロ状態】
「んっ?なんだ、あいつら」
バリケードの最前線に立っていたフィンは、それ故に新たに現れた「敵」への対処が遅れた。
反応速度の問題ではない、単純に距離の問題である。
状況を理解出来ないまま眺め見ていたフィンの瞳に映った人影は二つ。
一つは貴族然とした雰囲気に、巨大な金庫という要素を混ぜ合わせた奇妙な女性。
もう一つは、血染めの斧を手にした男。森の奥に在る日の当たらない沼地の様な雰囲気を纏う者。
そしてフィンがその二人を視認した直後
状況は、動いた
一切の迷い無くその双剣を斧男に繰り出すセフィリア
そして――――エミリーに放たれた一本の矢。
「なっ……!?」
フィンの目が見開かれる。急襲。
その事を脳で判断する前に直感を以って認識し、エミリーに全力で駆け寄るフィンだが、
その肉体が速度に関する遺才を持つ訳ではない以上、覆しようの無い限界が立ちはだかる。
矢は無情にもエミリーの脳天に向かい――――
そして、その矢は再び吹いた一陣の風によって阻まれた。
風の名はウィレム。フィンの後輩にして韋駄天の名を冠する「天才」。
「遅くなってすまねぇ!!ウィレム、よくやった!信じてたぜっ!!」
ウィレムがエミリーとレイチェルを後衛へと移動させた直後、入れ替わる様に
全速力を持って走り込んできたフィンが、急停止の反動で地面から砂埃を舞い上げつつ、
「敵」の眼前に現れる。
「――――疾風の様に、俺参上っ!!
やい、てめー等!!小さい子供に何しようとしてやがった!!」
二人組にビシリと音が聞こえるかの如く人差し指を突きつけ、
その視線を合わせ睨み付けながら、フィンは振り向かずに後方にいる仲間に声をかける
「皆、怪我はねーか!? いまいち状況は良くわかんねーけど、こいつ等は悪い奴って事でいいんだよな!!
だったら――――俺が皆を守るから、全力全開で前進して、
このつまんねー状況を、とっととぶっ飛ばしてやろうぜ!!」
手甲を前に構えるフィン。
彼が守ると言ったからには、それを貫く事は困難を極めるだろう。
【全力で前線から戻ってきて戦線に加わり、防御姿勢を取る】
>「みんな、なるべくナイアルトに兵士達を近づけないように!」
向こうからプリメーラの声が聞こえた。
目の前のナイアルトはロキの魔獣フェンリルのおかげで疲労状態。
>「だってお兄さんは……」
>「あんなに勇気があって、強い人じゃないか!」
プリメーラの力を振り絞る声が聞こえた。
スイはため息をついた。
ここで『アイツ』を出すのは不本意だ。
非常に気分が悪い。
しかし、この状況ならばアイツの方が向いている。
スイはぼそりと呟いた。
「出てこいよ。おまえの好きな状況になってきたぜ。」
ふらりとスイの体が揺れる。
ボーガンが手から滑り落ちた。
ボーガンが地面に落ちる音が響いた頃、口元の両端が怪しくつり上がった。
「はぁん。なるほどな。」
第一声がそれだった。
ボーガンを拾い上げ、背中のベルトに固定する。
「要するにアイツをとめりゃあ、事はおしまいってことかよ。」
状況確認をした後ナイアルトに向き直った。
「よお仮面野郎。さっきお前言ってたよな。こんなもの、扇動で、って。じゃあ質問だ。お前は風を扇動することはできるか?」
風が、巻き起こった。
巻き起こる風は奔流を生み出し、竜巻のように上へと向かう力が増す。
「知ってるか?風ってのはな人間ごとき、容易に吹っ飛ばしちまうんだ。」
埃が舞い上がり視界が不透明になる頃、スイが鋭い一言を発した。
「行け!!」
竜巻は移動し、ナイアルトへと向かう。
もがくナイアルトはあっさりと宙に浮かんだ。
そして、青年の方へ向く。
「さあ、兄ちゃん。とどめはあんたがさすんだろう?」
この顔をみた者は一様に言う。
あれこそが極悪人の顔だ、と。
【スイの二重人格裏モードスイッチON、ナイアルトを宙に浮かべ、ルインにとどめを促す。】
>「ストラトス!ストラトス・クロイツだよね!?」
呼ばれたのでそちらを向いてみると見覚えのある顔がいた
一般から見れば遺才持ちは基本目立ちやすいのですぐ誰かはわかった
「プリメーラさんですか、お久しぶりです。あの時は色々ありがとう御座いました。」
しかしここは戦場、ゆっくり話す暇などは殆どない
こうしている間にも
>「出でよ、魔獣フェンリル!!」
とまた新しい味方が現れ魔獣どころか狼かも怪しい
召喚獣が大量に呼び出され地面を多い尽くしていた
「……かわいい」
と誰にも聞こえないぐらい小声で言っている間に
いつの間にかプリメーラが地面に倒れていた
そうかと思えばさっきとは別の味方が
ゴーレムで潰したのと同じ奴を風か何かで舞上げていた
「はぁ、なんかもうよく分からないけど取り合えず……」
と言ってゴーレムの腕から地面に降りてプリメーラを背負った
「彼女のことはこっちで看護するから今は敵を倒すことをだけを考えて
今はあなたの見せ場なのだから…
見せ場は誰だってかっこよく決めたいでしょ」
後日こんなキャラにも合わないことを言ったことに絶対に後悔するだろうなと思った
【プリメーラを避難させ、ルインに頑張るようさらに言う】
【すみません、入りきらりませんでした】
182 :
名無しになりきれ:2011/05/17(火) 09:52:27.15 0
名無し
うす汚れた見るからに不健康そうな男が持つ斧
血のついた斧、これを見せれば多少なりとも驚くと思っていた。
相手が尻込み、戦闘を避けられるなら越したことはない、するのがと願っていた。
エミリーの奪還が今の任務でたあり戦う必然はないはず
壊し、傷つける。争いは仕事として喜ばれる事はあれど愛される事はない。
ナーゼムは争い自体は嫌いだった。
……うす汚れているのは先程の爆発による砂塵のせいだが、これも争いとあの道を進んでいた自分が悪いのだ。
覚束ない足取りで進み、斧を持ち直す。そこで違和感に気付いた。
先程観ていた限り、ここには人魚姫と四人の人間がいたはずだ。長髪の女性、背が低い男性、赤い布を巻いた男性、…ではもう一人は?
>「いえ、とりあえず斧で威嚇するような人は……!」
>>142 声が聞こえ、危険を察した。全く自分は何を呆けていたのか…。戦闘を回避できる段階など既に越えている。自分と彼らはもう
>「敵です!!!」
小柄な女性が既に懐に入り込み、双剣が首を刈らんと迫っていた。
あ、無理かも…、の「む」を思い描いた刹那
視界に火花が散る。
頭のすぐ横に風斬り音を聞きながら瓦礫へと身を投げ出す。
>「よかったら、じゃないわよトーヘンボクッ!!」
>>152 突然の鈍痛に一瞬ぼやけ、倒れて食い込んだ瓦礫の痛みに覚醒した頭に
可愛げのある声の可愛げのない台詞がこだました
「クローディア…、さん…?」
可憐な容姿に無骨な金庫を背負う少女がそこにいた。
恰好が矛盾してるなら口調も矛盾しているその少女は高く積み重なった瓦礫の上でまるで威嚇する子猫のようにまくし立てる
>「こーいうのはね、舐められたら終わりなのよッ!初見からメンチ!しゃべるなら巻舌!ビビらせたモン勝ち!
あたしはそうやって数多の取引先相手に常勝を収めてきたわ!今日とて例外はなく!萎えたマネしたら売り飛ばすわよ!」
「…すみません」
謝るしかなかった。彼女を置いて行動をした、という後ろ暗さもあった。
と言っても、「辛気臭い、近くにいたら運が減る」と別行動を求めたのは彼女だが…
尻餅をついているナーゼムの首に
双剣の女性は改めて剣を突き付ける
剣は光沢を放ち鏡のように自身を映していた
泥のように濁った目だった。
クローディアが矢を放った。男がそれを守った。もう一人が勇敢に前に躍り出た
自分には無い、強い目をしていた。
「ふ、ふふ…そうですね…」
何を思ったか、剣に映る自分を隠すように刀身を握る
熱を帯びた痛みが手に走り、手が震え血が滴る
異常な行動を前にし、女性は警戒し、距離をとる。剣が引かれ傷の熱がさらに高まる。
掌から流れ出る血が増え、瓦礫を赤に染める
痛みに耐えながらも頬が緩む。もう片方の手で首にかけてあったネックレスを引きちぎった。
「剣の輝き、美しく残酷な…、天才の名に恥じぬ一閃
そしてクローディアさんの天才の力が私を助けてくれた…、
そのクローディアさんの攻撃すら別の天才の前に無力化・・・!
天才として生まれ、才に溺れず、才を恐れず、嫉まず、驕らず…
ハァ…、私のようなまがい物とはまるで違う…!」
先程までの柳の下に佇む亡霊のような危なげな雰囲気が一変した。
「わかりました…。皆様、死にたくなかったら、せめて一生懸命逃げきってください・・・」
予告なく、躊躇なく
ネックレスにしていた牙を傷口に突き刺した
牙は掌を貫通し、出血も夥しいものになる
「ぁ゛…、ぐああぁあ゛ぁあぃあ゛あ゛!!」
言葉にならない絶叫が響き渡る
常軌を逸した行動、そして…
ナーゼムの「遺才」が発動する
東区が光に包まれた
時間こそ短かったが、目をくらますには十分すぎる光量
初めに気がついたのは誰たったか
ナーゼム・グフライスを名乗る人間が消滅していた
代わりに、彼がいた場所には
異形
辺りに転がるニードルデーモンなど比ではない。
まるで小さな山脈を彷彿させる巨大な獣が存在していた
岩石のような固い甲殻に覆われた四肢
背中に固い毛を生やした筋骨隆々の体躯
幽鬼のような表情など跡形もなく
飢えて、餓えて、暴れたくてしょうがないといった肉食獣の本能が生えそろった牙の間から醸し出される。
額から生えた二つの角を振り回し咆哮、聞いた者は魂が危機を叫ぶおぞましい咆哮
人間の時が地の底の亡者のうめき声だとすれば、獣のそれは灼熱地獄で踊り狂う閻魔の怒号
それは、まさしく怪物だった。
力も、人間などとは比べるまでもない
一回の跳躍で瓦礫が吹き飛び、双剣を構える女性の前に躍りて、挨拶がわりと前脚を振り下ろす
巨大な丸太のような一撃、まともにくらったら人の原型を留めているだろうか・・・?
ナーゼムは争いが嫌いだった
そして、争いでしか力を活かせない自分が大嫌いだった
【ナーゼム→化身完了、セフィリアに殴り掛かる】
ゴーレムが空から落ちてきた。
これは比喩などではなくれっきとした事実である。
あの巨体が浮くのか。何よりそれは突然の出来事で、その場にいた全員が泡を食った。
「ふわあああああああああああああああああああああああああ!!!!」
───そしてその場で一番驚いて見せたのが催眠術が解けたヘタレ。…しかしそれもその筈。
ゴーレムは肉薄する偽ナイアルトに向かって落下してきている。
が、あの巨体で偽ナイアルトに落下するということはナイフで切り結んでいるルインにも落ちてくることになるのだ。
遅いのか速いのか判然としないがとにかく落ちてくる。空が落ちてくる。
「こんなところで死にたくねぇよおおおおおおおおおおおおおおおおおおお」
みっともなく大粒の涙をこぼしながら逃げようとする。が、腰を抜かしてか動けない。
本当にデッドオアデッドの状況だが相変わらず子供のようにぎゃーわーと泣き叫ぶその姿。
進退窮まった人間はここまで情けなくなれるのか。
>「っおにいさん!!」
プリメーラのタックルが炸裂し「いってえ」という悲鳴とともに涙の混じった砂埃が舞い上がる。
着地の成功を果たしたゴーレムに偽ナイアルトは踏み潰され
プリメーラによりルインは窮地を脱することができたが───普通立場が逆である。
涙で水溜りをつくった後、もそもそと立ち上がるとシーンは一気に進んでいたらしい。
状況の把握に手間取ったがなんとなく理解はできた。
本物のナイアルトをスイが見つけ、ピエロのような格好の人・ロキが忘れ去られた偽ナイアルトを倒したところだ。
「もっ、もう神経の限界だ!アンタらだけで頑張ってくれ!!」
悲痛な叫びで発動する奥義『他人任せ』が炸裂し、後方で待機の構えを取ろうとした瞬間
>「出でよ、魔獣フェンリル!!」
>「わん!」
>「貴様!何故私が犬アレルギーだと!?」
「か、かわいいいいいいいいい!?でも場違いすぎんだろっ!?」
突飛なコメディに思わず足が止まり、慣れないツッコミが炸裂する。
───そもそも終始コメディだった気がしないでもない。
ロキの遺才により生み出されたふぇんりる達はナイアルトに一斉に飛びかかっていく。
扇動術で対抗を試みているようだがいまいち効果は薄い。
魔力を用いた奇術の連続使用にナイアルトも疲弊しているのだ。
>「今なら、ナイアルトを倒せる…!」
>「みんな、なるべくナイアルトに兵士達を近づけないように!」
プリメーラの指示共に皆は死霊の如き兵士達へ勇ましく向かっていく。
しかしルインが戦う気配は、ない。心臓は早鐘を打ち手が震えていた。
直接の戦闘は向いていないとは言えナイアルトの殺気は臆病者を畏怖させるには十分すぎる。
そして敵の兵士は斬っても突いても戦いを続ける幽鬼。どちらも相手にはしたくない。
結果。ルインは逃げる算段ばかりしていて戦うどころではなかった。
>「魔術師君、自分で分かるだろう。君は既に殆どの魔力を使い果たしているんだよ?
> それとも、またそこの臆病者の、へっぴり腰の、槍使い君に任せる気かい?」
その通りだ。さっさと四脚のゴーレムあたりで踏み潰した方がいい。
>「ごめんね、おにいさん。後もうちょっとで、アイツを倒せるから……」
>「アイツだって口ではああだけど限界なんだ。おにいさんの敵じゃないよ」
無理だ。お兄さんはネズミも殺せない臆病者だ。
>「皆がどうかは分からないけど、ボクはおにいさんに賭けるよ。だっておにいさんは……」
>「あんなに勇気があって、強い人じゃないか!」
眩い光を放ち続けるマテリアルを首にかけると共に、プリメーラはその場に崩れ落ちた。
瞬間。風で髪が揺れる。ナイアルトは竜巻のような荒々しい風に飲み込まれる。
今まで違った雰囲気を醸し出すスイが何かを語りかけてきたが、今のルインの耳には届かなかった。
続いてゴーレムの腕から人が降りてくる。17歳くらいの女の子だ。おそらくあのゴーレムの所持者なのだろう。
>「彼女のことはこっちで看護するから今は敵を倒すことをだけを考えて
> 今はあなたの見せ場なのだから…
> 見せ場は誰だってかっこよく決めたいでしょ」
意識を失ったプリメーラを背中に抱え、戻っていく。
勇気があって、強い人。ルインはその言葉を強く反芻する。
「………強くねーなぁ。俺。………勇気もねー」
地面に突き刺さった槍を引き抜く。血を掃い、構える。
怖くはない。しかし一人では立てなかったことに恐怖を感じる。
プリメーラの力が、皆が背中を押さなければ何もできなかったのだろう。こうやって立つことも。
「情けないよな。……一人じゃこうやって対峙すらできないんだからさ」
一人で立とう。せめて、周りの人を守れるぐらいに強くなろう。
自分の足で、自分の力で対決しよう。情けない震えた足で。臆病者のままで。
ルインの体から魔力が吹きだし槍へと収束されていく。
槍が五条の光を纏う。光はまるで稲妻のような鋭さを見せ、槍を燦然とさせる。
「でもまあ、頑張って臆病の壁を突き崩してみるか……!」
ルイン・ラウファーダの遺才。それは万物を貫く一点突破の槍『ブリューナク』
その槍術は破壊力のみで語れば他の攻撃特化の遺才よりも劣るだろう。
しかし、貫通力のみを極めたそれはどれほど堅牢な盾だろうと穿つ、突けば対人投げれば対軍の必殺の槍。
地面を蹴り、走る。そしてゴーレムの脚を踏み台にし跳躍。
風に飲み込まれたナイアルトへ一人の臆病者が、奇術師と対峙した。
「これが臆病者の精一杯の勇気だぁぁぁぁあぁぁああああぁぁぁぁあっ!!!」
槍より放たれた突きの一撃は光の柱となって風を貫き───ナイアルトへ迫る。
【皆に押されなんやかんやでナイアルトに遺才で攻撃】
クロアチアの少年がすごい 磁気体質でアイロンを体にひっつける 手からは熱を発し、病気を治す
>>1,2,3,4,5,6,7,8,9,10,11,12,13,14,15,16,17,18,19,20
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フ ア,フ.ィ /ヽ ヽ_//
>>21,22,23,24,25,26,27,28,29,30,31,32,33,34,35,36,37,38,39,40
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>>41,42,43,44,45,46,47,48,49,50,51,52,53,54,55,56,57,58,59,60
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>>221,222,223,224,225,226,227,228,229,230,231,232,233,234,235,236,237,238,239,240
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フ ア.フ:ィ /ヽ ヽ_//
「あ、拙っ――」
ノイファは舌打ちを洩らす。完全に読み違った。
こと戦闘においてならば圧倒的アドバンテージを誇る遺才、"未来視『予見』"の持つ弱点。
それは、本来"見え"ないものを"視る"がゆえの、消耗と反動。
出し惜しみしないことには身体が持たない。
>「そこの子は私めの身内でして…、よろしかったら引き渡していただけますか?」
亡霊と錯覚するほどの陰気さを漂わせた敵対者――ナーゼムは言った。
言葉が意味するのは回収。すなわちエミリーの奪還。だから標的となるのは自分たちだと判断した。
それが誤り。
>「……バイバイエミリー、恨まないでね。来世で会ったらご飯の一つも奢ってあげるから。ウソよ、勿体無いじゃない」
しかし、ナーゼムとは纏う雰囲気も、威勢のよさも、そして行動すらも全く真逆の少女――クローディアが言い放つ。
手馴れた仕草で翻る紙幣。引き換えに召喚される弩。鏃が指し示す先に居るのはエミリー。
クローディアの狙いはこの上なく理に適ったものだった。殺害による口封じ。
「――エミリーちゃん!」
引き金が絞られ、弦が滑る。推進力を得た飛矢が、風を引き裂き奔る。
人の身では、一度放たれた矢に到底間に合いはしない。
>「危ないっ!!」
そう、普通ならば。
だが生憎と遊撃課員は普通ではない者の吹き溜まりなのだ。
エミリーを狙った矢は、それ以上の速度をもつウィレムによって、中空に縫い止められる。
>「皆、怪我はねーか!? いまいち状況は良くわかんねーけど、こいつ等は悪い奴って事でいいんだよな!!――」
後退するウィレムと入れ代わるように、砂塵を巻き上げフィンが駆けつける。
怒気も露に視線は敵を見据え、構える姿はさながら泰山の如し。
そして、先んじてナーゼムと刃を交えているセフィリア。
これだけの戦力が揃っているのだ。
対する相手は二人。さりとて侮るつもりはない。冷静に、冷徹に、数の有利を維持しつつ追い詰めるのみ。
「ぷわっ……けほ。そうね、とっても悪いやつよ。
なにより、仲間だったエミリーちゃんを口封じの為に殺そうとしたってのが気に食わない。
だから、きっちりとオシオキしてあげないとね!」
腕を振って砂埃を払い除け、ノイファは視線をクローディアへと向け、対峙。
這わせた腕は剣帯へ延び、指先はレイピアの柄をなぞる。
双方ともに臨戦の準備は万全。
(貨幣を媒介にした召喚術?詳細までは判りませんが……何にせよ乱戦になるほど厄介な相手――)
ならば――セフィリアが敵の一人を足止めしている間に片付ける。
"右目"はいつでも発動できるよう導線を徹し、裂帛の気合とともに大地を蹴る。
――その瞬間、閃光が爆ぜた。
「くっ、なん……なの!?」
世界が白く塗り潰される。しかし立ち止まりはしない。横に跳躍。
ノイファは両眼を灼いた閃光をナーゼムの援護魔術だと思っていた。
停止すれば、そこへクローディアの追撃が来る。そう判断したのだ。
(もう少し、まだ……――来た)
晴れる視界。世界が色を取り戻していく。
ナーゼムと至近距離で戦っていたセフィリアは無事かと、顔を向け――
「……え?」
――そこにいた獣と眼が合った。
四肢を鎧う甲殻。天を突く体毛に覆われた巨躯。鋼鉄の刃の如き鋭い牙と、禍々しく延びた双角。
そして魂を握り潰すかのような咆哮。
ニードルデーモンなどとは比べるべくもない、真なる魔獣。
「セフィリアさんっ!上!」
獣が、巨人の振るう棍棒のような前脚をセフィリアへと叩きつけた。
地響きが轟き、瓦礫が弾ける。
避け得たのか、それとも押し潰されたのか、立ち昇る砂煙に阻まれ窺い知ることは出来ない。
可能ならばすぐにでも駆けつけたいが、そうはいかない理由があった。
(セフィリアさん、無事……ですよね。そう信じますから!)
もう一人の敵、クローディアの存在だ。
最初に見せた武器を自在に召喚する能力。
どの程度の物まで呼び出せるのかは不明、だがそれを封殺しないことには確実に不利になる。
ナーゼムを覆う装甲と体毛。
一見しただけでも、生半可な攻撃は通用しそうもないこと程度は判る。
すなわちクローディアは誤射を気にする必要もなく、十分な火力を振るえるということに他ならない。
もっとも、例えそれがなくとも気にかけるかどうかは若干疑わしいところがあるが。
「クローディア=バルケ=メニアーチャ。
その家名に弓引くのはちょっと気が引けるのだけども、貴方のお相手は私が努めさせて頂きますわ。」
レイピアを引き抜き、切っ先は地へ。横に払って一礼。
「でもね、仲間を殺そうとしたその性根には正直ムカついてるの。
だから命まではとらないけど――」
腕を返し、胸元まで引き上げ、切っ先をクローディアへ向ける。
「――泣いて謝るまで許しません!」
右目に紅い光を灯し、ノイファはクローディアを睨みつけた。
【クローディアと対峙。"予見"発動】
◆N/wTSkX0q6でくぐってみたら、レクストの名前が出てきた
レクストといえば肥溜めで問題になっている従士のことだ
何を思ってトリップを同じにしたのかわからんだが、従士と間違われると、名無したちに格好の話題を提供するだけだぞ
>176 >179-180
>「皆がどうかは分からないけど、ボクはおにいさんに賭けるよ。だっておにいさんは……」
>「あんなに勇気があって、強い人じゃないか!」
>「彼女のことはこっちで看護するから今は敵を倒すことをだけを考えて
今はあなたの見せ場なのだから…
見せ場は誰だってかっこよく決めたいでしょ」
「あっはははは! がんばれヘタレ君〜!」
クラスで一番気弱そうな人に皆で学級委員長と言う名の雑用係を押し付ける光景がなんとなく思い浮かんだ。
否、一番潜在能力を隠し持ってそうな人をクラスのリーダーに盛り立てる光景と言っておこう。
>「情けないよな。……一人じゃこうやって対峙すらできないんだからさ」
ヘタレ君の周囲のオーラが変わった。魔力が槍に収束されていく。
ついに隠し玉を見せるのだ。わくわく。
>「でもまあ、頑張って臆病の壁を突き崩してみるか……!」
「安心して、一人ではいかせないよ。大役押しつけた責任とってせめて副委員長ぐらいにはなってあげようじゃん」
ワタシはニヤリと笑った。
フェンリル達がヘタレ君の周囲に集まり、魔力と化して槍に宿る。
>「これが臆病者の精一杯の勇気だぁぁぁぁあぁぁああああぁぁぁぁあっ!!!」
ナイアルトを貫く光の柱に重なって見えた事だろう、全てをかみ砕く顎を持つ荘厳なる魔狼の幻影が。
「うわなにするやめぐわあああああああああああああああああ!!」
問答無用で貫かれたナイアルトの絶叫が響き渡る。
そして刹那の後、糸が切れた人形のようにその場に崩れ落ちた。
「ざまーみやがれ! 大・勝・利〜〜!!」
ヘタレ君に向かってクラッカーを鳴らす。
「何だよ本当は強いんじゃん、ヘタレ君! ん? 強いのにヘタレ君っていうのはあれだよなあ。なんて言うの?
プリメっちゃん気絶しちゃったし早く帰ろう!」
【ルインを支援。ナイアルト撃破】
帰ろうとしたその時。辺りを包み込む尋常ではない気配。振り返る。倒れたままのナイアルト以外誰もいない。
『どこを見ているのですか? 私はここですよ』
……否、そこには仮面が浮かんでいた。ナイアルトが付けていた仮面だ……!
『フフフ……どうやらあなた達を見くびっていたようです。楽しいショーをありがとう!
その命、今しばらく預けておきましょう! あなたたちならもっともっと楽しませてくれそうですからね』
そう言い残すと、仮面はその場から掻き消えた。
【一行に語りかけるナイアルトの仮面。再戦をほのめかして姿を消す】
ヴァンフォーレ甲府の長身FW=ハーフナー・マイク。
オランダ出身で、94年に家族で日本国籍を取得した父=ディド・ハーフナー
(GK/名古屋グランパスエイト、ジュビロ磐田などで活躍)の息子であり、
日本初の親子Jリーガーとして複数のクラブを渡り歩いたが、
昨シーズンは、J2得点王にも輝き、甲府のJ1昇格に大きく貢献する目覚しい活躍を遂げた。
今シーズンが楽しみな23歳のマイクは、すでに6試合で3得点。
18日には一般女性と入籍を発表したばかり(入籍日は5月16日)と順風満帆だったが、
そんなマイクが、入籍したお相手とみられる女性と共にアディダス銀座店を訪れた際、
ある問題が起こり、ネット上は大騒ぎとなっている。
なんと、店員の女性が自身のツイッターでマイクに悪口雑言の限りを尽くしたのだ。
掲示板上では、店員の女性も特定され、すでにその女性はツイッターもmixi も退会しているが、
該当するツイッターでは、来店したマイクに、
「そいえば今日マイクハーフナーが来た。ビッチを具現化したような女と一緒に来てて、
何かお腹大っきい気がしたけど結婚してんの(^ω^)??」、
「帰化したからハーフナーマイクかwアシュトンカッチャー劣化版みたいな男が
沢尻劣化版みたいな女連れてきたよwとりあえずデカイね、ホントにwww」などと、
とても店員とは思えないツイートを行っていた。
現在、マイクはアディダスのスパイクを使っており、掲示板上では「絶対に許さない」
「社会をなめてるなぁ・・・こういう子にはちっとばかしお灸が必要じゃないかね?」
「やっちまったなw」などの書き込みが見られた。
サッカー選手とツイッターにまつわる問題といえば、今年のはじめに、
都内ホテルの飲食店アルバイトが、稲本潤一と田中美保のデート現場を得意気にツイートし、
ホテル側が公式に謝罪をする騒ぎもあった。
http://news.livedoor.com/article/detail/5569059/ ◆アディダス ジャパン お詫びとご報告
http://www.adidas.com/jp/corporate/01company/0519.asp
あれだけ散々な攻撃を受けておきながらそれでもゴーレムは尚動くのをやめない
通常のゴーレムを超えたこの性能は天才の改造故か
その能力に感嘆しているところに割り込んできたのは隊長の声か。
>『フェイスレス!お前の遺才は水だったな。水操って関節溶かすことができるのなら……逆に"固める"ことはできるか?
> 水銀でもなんでもいい。ゴーレムの関節は溶かすだけじゃ止まらねえが、うんと重たい水で駆動そのものを抑えてみてくれ』
「正確には、液体ですけどね。」
ゴーレムを眺めるその視界の中で世界が急速に反転した。
鬼の歩く夜の世界、それが演出されていた。
「まぁ、やることやりますか・・・と言った時にはもう終わってる訳ですけど」
さきほどまでその石の身体を溶かし灼いていた液体は、一瞬にして赤い鎖と化して固化しその身を縛り付ける
「ある種の魔力に汚染された環境で生まれた蟲には、こんな風に大気に晒すことで恐ろしく強固な固体に変化しちゃうって訳。
さ、仕上げは任せましたよ。」
【中央:酸(?)⇒特殊固化樹脂へ変化。ゴーレムを束縛してみる】
何か言う事ないの?
別にお前がいなくてもスレは回るんだよ?
盛大なクラッカーの音に、プリメーラの意識が僅かだが引き戻された。
ナイアルトは倒された。それを聞いたプリメーラの顔も綻ぶ。
しかし、これで終わりではないような、ざわざわとした感じが胸の中にあった。
>『どこを見ているのですか? 私はここですよ』
ナイアルトの声が聞こえ、全員に緊張が走る。
プリメーラも身体を強ばらせ、ストラトスの背中に強くしがみつく。
>『フフフ……どうやらあなた達を見くびっていたようです。楽しいショーをありがとう!
その命、今しばらく預けておきましょう! あなたたちならもっともっと楽しませてくれそうですからね』
そう言い残し、仮面が掻き消える。
それが合図だったかのように、ナイアルトだった身体から黒煙が噴きだす。
すると、ナイアルトの杖が独りでに動き、先端の多面体の石が煙を吸い取っていく。
そして、もう用はないとばかりに、仮面と同様、陽炎のように消失した。
後には、プリメーラ達と、無数の死体が転がるだけとなった。
【中央区 某所】
「ありゃ、お帰り。ナイアルト」
『゛自分゛に《お帰り》と言われるのも妙な気分ですね』
そこには二人しか、否、一人は人と呼んでいいのか定かではないが、兎に角二人しか居なかった。
仮面とステッキ、ナイアルトのマントだけが宙に浮き、まるで透明人間がいるようである。
「兎狩りに失敗した訳だ。ん?」
『作戦すらまともにこなせなかった貴方に言われたくはありませんね』
「ハハッ、痛いとこ突いてくるぜお前さんよぉ」
男は、ナイアルトの目(?)を見ようとせず乾いた笑い声を上げた。
眼下では、無惨にもマキナが破壊されていく。念信を拾い聞きし、男は肘をついて深く溜め息を吐く。
「こりゃ作戦は失敗かなァ。早々に撤退するかね」
『貴方らしくありませんね。゛遺才゛はここにいるというのに』
「天才共がうようよ居るんだぜ?無理無理_、三十六計逃げるにしかずだぜ。
……今のとこは、ね」
男は仮面を空中から剥ぎ取り、自らの顔に貼りつけて唇の端を吊り上げる。
『上の方々や゛聖女゛殿に叱られても知りませんよ?』
「聖女ちゃんはちょっと問題かなぁー。まだオトしてないし」
へらへらしているが、それは正しく、西区にいたナイアルトの厭らしい笑みそのもの。
「まっ!後は、精々他のみんなに頑張って貰いましょーかね」
『人でなしですね、貴方も』
男は帽子とマントも空中から剥ぎ取って身につけ、その場から離れて移動用の魔法陣に入る。
声だけのナイアルトに、男は軽い調子で答えた。
「『そりゃま、俺“も”ナイアルトだからねぇ』」
ステッキで陣の中心を叩いた瞬間、青い光が魔法陣から発せられる。
黒い多面体の宝石を親指で一撫ですると、ナイアルトはそこから消え失せた。
【西区:作戦完了? カラスが鳴くから帰ろうぜ!】
【ナイアルト→部下を放置しダンブルウィードから脱出。汚い流石ナイアルト汚い】
名前:ナイアルト(本体)
性別:男
年齢:見た目三十代後半
性格:悪戯好き・少々(?)スケベ
外見:黒の短髪と黒い瞳、体つきはそこそこ筋肉質で肌は浅黒い
血筋:掌(ショウ)の眷属
装備:布を巻いただけのような服、装飾具、ステッキ、仮面
遺才:変身、剣術、集団の扇動や撹乱
マテリアル:仮面、ステッキ
前職:――
異名:夢幻の魔術師
左遷理由:――
基本戦術:変身、剣術、集団の扇動や撹乱
目標:――
うわさ1:今の所、ナイアルトの本体。彼の他にもナイアルトは居るらしい?
うわさ2:記憶が一切なく、仮面と自身の欲望=悪戯心の赴くままに生きる。
うわさ3:大の女好き。守備範囲バリ広。女なら人外でも構わないと漏らしていた。
旬なテレビ美女の「名器」100選
【Aランク:極上】
Aランクは「極上」名器の持ち主。上物の耳の溝と、豊かな肉付きの口が両方揃った顔触れだ。
特に吹石一恵(14位)は耳だけ観れば「絶品」。口相も悪くなく、臥蚕(下瞼の上部分)の張りも良くて、セックスで男を骨抜きにする相だ。
前田有紀(28位)は、耳の溝は「絶品」も、口元の肉付きが淋しく、順位が下がった。
このランクには、井上和香(23位)、吉瀬美智子(27位)、蒼井優(18位)といった〈たらこ唇〉が軒並み入っている。
井上和香はあのトレードマークのぽってり唇に歓待紋がたくさん刻まれ、入れ心地抜群!
吉瀬美智子は〈たらこ唇〉プラス〈仰月口〉で上ツキ名器にちがいなく、正常位での交わりが美味と観る。
新垣結衣(20位)、井上真央(19位)は口角の締まりが素晴らしく、耳の溝も申し分ない深さで、高位につけた。
口角の締まりということでは、女子アナ勢の秋元優里(15位)、西尾由佳理(24位)、大橋未歩(26位)が揃って良相だ。
しゃべる職業は(歩き仕事と並んで)、性感をこなれさせ、それが内性器(膣道)に反映して名器を作りやすい。
性感に加えて締まりの良さでも「上物」と観てまちがいなく、女子アナにしておくのがもったいない!?
同じ女子アナの平井理央(22位)は、狭い耳の溝と口元のもっちりした肉付きの他に、独特の浮光のある眼相(典型的な好色相)がプラス要因になって順位を上げた。
酒井法子(31位)は、耳の溝は名器相だが口元が淋しい。
一方、目の間隔は狭く、(黒木瞳と同様)小鳥目の相でもあって、この順位になった。
松下奈緒(25位)、竹内結子(17位)、米倉涼子(21位)は、耳の名器相に加えて目の間隔が狭めで、生来、膣道は細い方だ。
太々とした勃起を呑み込むと膣口はパツパツに拡がりきり、抜き加減にしたときは膣口は粘膜のように伸び、肉柱に貼りつく感じでもてなすだろう。
大島優子(16位)や後藤真希(30位)は人中が深く、やはり膣肉の締まりの良さを示している。
終わった、はずだった。
装甲が弾け飛び、味方の帝国兵の飛翔機雷により、ゴーレムは動きを止める、はずだった。
しかし、お約束通りと言うべきか、ゴーレムは新たに魔導術式による装甲、言わば力場装甲を展開し、飛翔機雷を防いでいた。
いくら乙型ゴーレムといえど、物体である以上キャパシティと言うモノがある。
ただでさえ重い上半身を二足で動かすために通常ゴーレムはあまり兵装を持たない。
つまり装甲が厚いことと、兵装が充実する、この二つは両立し得ないはずなのである。
だが、そのゴーレムはそれを両立させていた、これが今後の戦争において大きな影響を与えるであろう事は想像に難しくなかった。
「……、これどうすれば良いんでしょうか?」
レイリンは装甲が軽くなったせいで先ほどよりも動きが速くなったゴーレムを見て呟く。
完全に裏目であった、まさか力場装甲まで持っていると思っていなかったための攻撃であったが、そのせいで更にゴーレムの攻撃が熾烈になる。
>――『なるほどな……どうやら敵さんは、派手な決着のつけ方をご所望らしい』
>『状況は大体わかった。おれの采配ミスを呪ったぜ。火力重視で対人関係に難有りな連中を中央区に集めたが、
ここまで見事に協和音奏でてくれるとは予想外だ。お前ら天才の癖に他人に気ィ使ってんじゃねえよ。借りてきた猫か?』
「それは命令でしょうか?
命令であれば、今から揉めても構いませんが……。
何にせよ、私に指揮を任せた課長のミスですよ、私みたいなのが対人関係に難があったら軍には居られませんから」
バックパック横の念信オーブにボルトから入電された。
いくら有能であっても、協調性かコネが無ければ軍では生きていけない。
出る杭は打たれるため、軍では出来るだけ敵を作らないようにしなければならない。
そして自分を守ってくれる上司を見つける。
これが、短い間ではあったが軍属でレイリンが学んだことである。
それと同時に、統制の重要さも学んだのである。
有能な指揮官と有能な兵士が集まったとき、それは足し算では表せない力を発揮する。
不本意な左遷ではあったが、レイリンにとって『天才』が集まる部隊をどうまとめるか
いうのは興味の対象であった。
>『甘んじてんじゃねえよ。お前らは天才なんだ。お前らは"バケモノ"なんだ。人間らしさなんて捨てろ。貪欲に生きろ。
バケモノ同士で慣れ合ってんじゃねえぞ。天才《バケモノ》を使っていいのは――凡人《おれたち》だけだ。だから、』
>『――――おれがお前らを活かしてやる』
「確かに私達は馴れ合わないでも生きていける、だから馴れ合わない。
それこそが今のこの現状なのだと私は思います、『天才』を世の中が迫害しているのではなく、『天才』が孤高を望んでいる。
誰にも頼らない、その考えこそが私達を孤高の存在へ作り上げている。
その点、この部隊には無限の可能性がある、と私は思います。
そしてそれを活かすのも殺すのも、課長次第です、私自身課長が仕えるのに足る器ならばずっとこの部隊にいても構わないと思っています。
だから、私の期待、裏切らないで下さいね」
>『シキマ!お前にはフェイスレスが止めたゴーレムを動かしてもらう。……そうだな、"投げ"ろ。装甲が飛んだ今、
関節が鈍ればバランスは崩せるはずだ。お前の"本気"の膂力なら装甲なしのゴーレムぐらい持ち上がるよな?』
確かに100%の力を出すことが出来れば、ゴーレムを持ち上げることは可能だ。
しかし、今は昼、そしてこの場にはサフロールの濃厚な魔力が漂っている。
本気を出すのはほぼ不可能であった。
>「……テメェら、ゴーレムの奪還って目的完全に忘れてやがんだろ」
「しょうがないですよ、これを無傷で止める事が出来る人がいたら是非紹介して欲しいです。
作戦というのは現場の判断によりその場その場で変わるものです、この場合こうするのが最善だった、そうですよね?」
未だ動きを衰えさせることなく、周りのバリケード、民家全てをなぎ倒しながら何かに取り憑かれたように進軍するゴーレムを指さす。
生死、有機物無機物問わず、ただ淡々と破壊をもたらしていく、誰も抗うことは出来ない。
>「テメェに本気を出させるのは簡単だ。今この場に、月夜を招待してやりゃいい」
>「【贋物の夜】《イミテイト・ナイト》とでも名付けるか。おら、行って来いよ吸血鬼」
>「当然、その『世界』にも『狂気』は満たしてある。
耐える自信がねえなら、一足先に司令部に帰ってもいいんだぜ?隊長殿?」
サフロールの言葉と共に目の前にドーム状の黒い空間が作り出される。
そして、首から提げた白銀の十字架を故意か否か、分からないがレイリンに見せつける。
「ご明察です、貴方もこんな事が出来るんですね、驚きました。
あと、指揮を任されただけなので隊長などと畏まらなくてもいいです、年下ですし特別にレイリンお姉さんって呼んで良いですよ」
サフロールの挑発を軽く流すと、レイリンはサフロールの胸元で踊っている十字架を人差し指で弾き、【贋物の夜】へと足を踏み出す。
「この中では、あまりちょっかいかけないで下さい、手加減出来ないと思います」
あたりに夜の帳が下りる、そして天上にはレイリンの黄金色の髪を優しく照らす満月。
そして深く濃く漂う狂気。
瞳がまるで血のように紅く煌めく、五感が研ぎ澄まされる。
レイリンの唇が月明かりを反射して艶やかに紅く輝き、その口元には鋭い犬歯が覗いている。
全ての生物の動き、鼓動、息遣い、それらが手に取るように分かる。
夜――吸血鬼の本拠地、人狼ならば我を忘れるかも知れないが、夜の王たる吸血鬼にとってこの程度の狂気は腹の足しにもならない。
「100%までとはいかないけど、充分ね」
レイリンが普段から言葉遣いを丁寧にしているのは、夜に言葉遣いがあまり変わらないようにするためである。
いつも気をつけていれば、たとえ夜でも言葉遣いが変わらなくなると思っているのである。
しかし、吸血鬼としてまだ若いレイリンは夜になると血が騒ぎ、その感情を完全にコントロールすることはまだ出来ない。
吸血鬼だけあって狂気にのまれはしないが、内なる破壊衝動が滲み出す。
>「ある種の魔力に汚染された環境で生まれた蟲には、こんな風に大気に晒すことで恐ろしく強固な固体に変化しちゃうって訳。
さ、仕上げは任せましたよ。」
未だ止まることを知らないゴーレムの関節に纏っていた泥が紅い鎖へと変貌し、その身を縛り付ける。
すると、ゴーレムは関節を激しく軋ませながらもその動きを止める。
レイリンは音もなくゴーレムの背後へと降り立ち、巨躯を支えている足へと回し蹴りと繰り出す。
体にためをつくり一回転して繰り出された蹴りはゴーレムの左足の装甲を大きく凹ませ、足をすくう。
四肢が動かせなくなったゴーレムは為す術もなくレイリンの方へと倒れ込んでくる。
レイリンは両手でゴーレムの巨躯を支える、ゴーレムの重さにより足が地にめり込む。
「サジタリウス、あとは任せるわ。
一撃で決めなさい」
両足に力を込め、思い切りゴーレムを天上へと投げ飛ばす。
装甲が無くなったとは言え、ゴーレムである、しかし、その重さを感じさせることなく軽々と宙に舞う。
敵対した男の動きは遅く、戦場で単独行動をするほどの力量があるとはセフィリアは到底思えなかった
なぜなら彼女の先制攻撃に対して身動き一つ取れなかったのだから
なので初撃こそ、渾身の力で放ったが、これではこの人を殺してしまう!っとそう考えた
始めにもいったが彼女は人を殺したことがない、それは人として喜ばしいことであるが武人としてはどうなのだろうか?
彼女は武の名門に生まれ家族は軍人に関係するものがほとんどだ
10ほど年の離れた兄が2人、共に正規軍で活躍する青年将校、父は将軍として国に尽力している。
母も軍人の娘として生まれ軍人の妻として家に嫁いで来ている
あと姉が1人いるがその姉もとある有望な青年将校のもとに嫁に行くことが決まっている
セフィリアも生まれたときは姉と同じ道を辿るはずであった
……だが父はそうはしなかった
彼女は才能がありすぎたのだ。双剣を自らの体の一部とし、その他両手に持つすべての物を自由自在に扱えた
剣術では兄を齢10の頃には超え、2年後には父を倒した
昨今、問題になっている『遺才』であったのだ。
ガルブレイズ家はそういう家柄ではあったが彼女の才能は突出していた
過ぎた才は忌み嫌われる。……これ以上はまた別の機会にしよう
ともあれ、彼女は寸前で刃を裏返し峰で打つことに決めた。目の前の男を『拘束』できるのではないかとそう考えたのだ
だが、その思いは脆くも崩れ去った。斬る相手が急に消えたのだ
「んなっ!」
目の前から消えた相手に戸惑うが敵はすぐ下にいた
どうやら、なにかの拍子に地面に倒れてしまったみたいだ
ちょうど彼女とナーゼムを挟んで直線上にいたクローディアが見えなかった
「怪しい男!あなたを拘束します!」
>「ふ、ふふ…そうですね…」
「な、なにがおかしい!」
セフィリアに言ったわけではないがそう取ってしまったのだ
>「あたしはクローディア=バルケ=メニアーチャ!そこのマセガキが負けたと聞いて居ても立ってもいられず駆けつけたわ!
ああエミリー、別に負けたことについては怒ってなんかいないわ!最初から期待してないもの!捨て駒よあんた。わかる!?」
「メニアーチャ?かの豪商の娘?なぜこんなところに?」
だが彼女が遺才を使うところを見て合点がいく
「金を使う遺才というの?さすがお金持ち」
彼女とて貴族の端くれだからその家名ぐらいは知っている
>「剣の輝き、美しく残酷な…、天才の名に恥じぬ一閃
そしてクローディアさんの天才の力が私を助けてくれた…、
そのクローディアさんの攻撃すら別の天才の前に無力化・・・!
天才として生まれ、才に溺れず、才を恐れず、嫉まず、驕らず…
ハァ…、私のようなまがい物とはまるで違う…!」
ナーゼムの独白…
「急に何を言って…きゃ!」
彼の奇怪な行動に小さな悲鳴を上げる
「やめなさ…!!」
そこで声が途切れる
目の前が白一色に染め上げられ天と地、左右がまったくの不明に陥ってしまった
閃光の魔術か、その場にいた多くの者がそう思っただろう
危ないっと思ったが体が一瞬膠着して身動きが取れない
死んだかも知れないと考えたが幸運にもその最悪の事態だけは免れた
そっと目をあけると目の前にいたのは冴えない顔の長身の男ではなく……
堅そうな甲殻に野獣のような毛、そして獰猛な表情、牙
おぞましい咆哮、セフィリアは恐怖と突然の出来事にまだ動けない
「ば、化け…もの・・・」
ニードル・デーモンとは違う本物の魔界からやって来たかのような魔物
そう感じられずにはいられないそれほどの異形
軽く跳躍し眼前に降り立つ
その前足が彼女の小さく軽い体を襲う、擦りでもしたら彼女の命はない
だが、彼女はこと戦闘に関しては天才だったのだろう
細い2本の剣で降る下ろされた足を受け流したのだ
そして間髪いれずに下ろされた前足の堅牢な甲殻を隙間狙う
【体が勝手に反応してナーゼムの攻撃を受け流す、その後甲殻の隙間を狙う】
◆小説
「後ろで大きな爆発音がした。俺は驚きながら振り返った。」
◆ケータイ小説
「ドカーン!びっくりして俺は振り返った。」
◆ラノベ
「背後から強烈な爆発音がしたので、俺はまためんどうなことになったなぁ、とか そういや昼飯も食っていないなぁとか色々な思いを巡らせつつも振り返ることにしたのである」
◆山田悠介
「後ろで大きな爆発音の音がした。俺はびっくりして驚いた。振り返った。」
◆司馬遼太郎
「(爆発−−)であった。余談だが、日本に初めて兵器としての火薬がもたらされたのは元寇の頃である…」
◆荒木飛呂彦
「背後から『爆発』だアァァァッ!これを待っていたっ!振り返ると同時にッ!すかさず叩きこむ!」
◆竜騎士07
「ドカァァン!!!後ろで大きな爆発音がした…!俺は自分の置かれた状況を整理した…。 脳内に満ちた液体が取り除かれ、時間が動き出す…………ッッ!即座に俺は後ろを振り向く…ッ!」
勝利の余韻に浸る空気の中、一人分の呑気な拍手。拍手する当人は、掴み所のない笑顔を全員に向けた。
「お疲れ様。やっぱりチームワークって良いですねぇー。」
そう言って皆を見下ろすリードルフの下には、動くことすらままならないエルトラス兵の山。
「ナイアルトに敵兵を近づけさせるな」。プリメーラの言葉を、彼は忠実にこなしてみせたのである。
「見せ場を邪魔されるのは癪だろうと思いましてね。
勝手ながら、皆さんには眠って頂きました。」
笑顔のまま、手の中の睡眠玉を弄ぶのをやめ、敵兵の山から飛び下りて全員の前に着地。
「プリメっちゃん気絶しちゃったし早く帰ろう!」
「そうですね。皆さん帰って治療する必要ありそうですし…………!」
ルインの擦り傷を長い指でつついて遊ぶ最中、尋常ではない気を感じ振り返る。
全員を後方に庇うように立ち剣を構え、宙に浮かんだ、黒く淀んだ邪気を孕む仮面に対峙してぼやく。
「台所の黒い悪魔《コックローチ》よりもしぶといですね。一周して敬意すらうまれそうです。」
再戦を仄めかすような言葉を残し、ナイアルトの気配は完全に消失した。
【司令部】
「ボルト隊長、失礼します。」
二、三回のノック、絞め殺される猿の断末魔のような音をたてドアが開く。
白衣と薬草の香りを纏わせたリードルフが入り、ボルトに敬礼する。
「西区の状況報告に参りました。その前に……無礼をお許し下さい。」
いきなり謝ったかと思うと、瞬きより早くボルトのこめかみスレスレを剣先が突き抜ける。
その刃をゆっくり引くと、ボルトの背後で肉塊が落ちる音。蝸牛を思わせる生物が死んでいる。
「盗聴巻貝ですね。誰かさんが盗み聞きしようと仕掛けたみたいです。」
屈んで拾い上げ、蝸牛の死骸を窓から投げ捨てる。階下の誰かの頭に落ちたらしく悲鳴が聞こえた。
それすらも特に気にするでもなく、リードルフはソファーに腰掛ける。出始めに、西区の報告から始めた。
「まず西区ですが、本来の目的である攪乱は課員達の働きにより達成されました。
ですが、兵を指揮していた人物が気掛かりです。怪盗ナイアルト、ご存知ですよね?」
出された紅茶に溢れる程の砂糖を加えて砂糖の紅茶あえに変え、西区での戦闘を事細やかに話した。
「エルトラス側が彼を雇った意図は掴めませんが……。
何にせよ、彼といいゴーレムの件といい、このままでは終わらない気がします。」
角砂糖を口の中で噛み砕いて飲み込む。苛々している時の彼の癖だ。
「僕は殆ど後に戦闘に参加したものですから……。
レズィビアン課員かラウファーダ課員辺りに後でお話を伺っては如何ですか?
二人ともだいぶ疲弊してましたけど、処置は施しましたので後一時間もすれば全快する筈です。」
本当は、ルインがずっとサボっていて状況すらよく判らず戦闘に参加していた事は知っていた。
だが、あえてリードルフはルインが油を売っていた事すら黙っている事にした。
「それと隊長、僕の事なんですけど……。」
ボルトの肩越しに月が顔を覗かせていた。暫くそれに見入るリードルフ。
やがて少し憂いを帯びた表情で語り始める。
「吸血鬼や人狼が月ならば、エルフは日を欲します。
半分しか恩恵を受けられない僕には、夜は終わりの時間なのです。」
月光がリードルフを優しく照らす。そしてそれは起こった。
髪は、月光を取り込むかのように緑から金へ。尖った耳は丸く、体は縮み、胸部が膨らんでいく。
そこには一人の『人間の美女』がいた。
父親がエルフ、母が人間のハーフであるが故の、リードルフの弱点が現れた瞬間。
「ご心配なく隊長。朝には昼間の僕に戻りますから。」
よく通る女の声でリードルフだった女は笑う。唯一変わらなかった緑の瞳がボルトを見透かす。
「この事は、二人だけの秘密ですよ?隊長。
そうですね、夜の間はフローレンスとでも呼んで下さいな。」
最後に会釈すると、フローレンスはドアノブをひき、盛大にドアに頭をぶつけて悶えるのだった。
【司令部に帰還→メンバーの治療→隊長に報告】
【リードルフ→フローレンスに変化】
名前:フローレンス
性別:女
外見:金髪、緑瞳、女性的な体
遺才:無し(夜の間は発揮出来ない)
基本戦術:薬を使う
目標:一族の出世・嫁探し
うわさ1:リードルフの夜の姿。誰にも秘密。破壊的なドジ。
うわさ2:一族の血を絶やさぬため、人間の嫁を密かに選定中。遊撃課に入ったのもそのため。
うわさ3:ぶっちゃけ一族全員が皆こんならしい。大丈夫かこの一族。
不穏な気配にスイは口元を引きつらせた。
>「台所の黒い悪魔《コックローチ》よりもしぶといですね。」
リードルフの声が聞こえスイは首をひねった。
「だい…ところってなんだ?」
戦場で生きたせいか、今一つ一般知識に欠けるスイである。
そうこうするうちに仮面は消え、司令部へと帰ることになった。
【司令部】
隊長に報告すると言ったリードルフや、仲間は今この場にはいない。
いるのは自分達を導いた鳩と己のみ。
そしてふと気づいた。
鳩の名前を決めていない。
しばらく考えた末に、肩に乗っている鳩に言った。
「よし、お前の名前はブラッディピース号、略してブラピ号だ!!」
破壊的なネーミングセンスであった。
名前をつけて満足したので、鳩を撫でながら、自分も報告のためにボルトの元へと向かう。
やはり、人に頼んで報告するより、自分で報告をする方が安心する。
信用をしていない訳ではない。
もはや癖なのだ。
部屋の前にたどり着き、話し声が聞こえ、反射的に耳をたてた。
なにを話しているかはわからないが、女性の、しかも大人の声が聞こえた。
スイは今日何度目か数える気も失せるほど再び首をひねった。
はて、報告に行ったのはリードルフではなかったのか。
隙間から漏れてくるにおいで合点がいった。
黙っておこう。自分には関係のないことだ。
そう判断した。
扉がわずかに開き、スイは窓へ走った。
報告など後でいくらでもできる。
そう思い窓から飛び降りた。
【司令部に帰還。鳩に名前をつけ、ボルトに報告しようとするが断念】
【スイ、裏モードOFF。今は表】
付け忘れました。
すいません
クローディアの放った矢は、狙い過たずエミリーの眉間へと飛来する。
彼女は武闘派ではない。肉弾戦などもっての外で、常に遠距離・不意打ちから一撃で仕留めるスタイルを貫いてきた。
外せば手痛い反撃を喰らい、そのまま逆転される。クローディアは自分の能力の方向性も、そしてその限界も熟知していた。
だから彼女は外さない。エミリー本人はもちろん、周りの仲間ににも手を出せない、そういう位置からの射撃だった。
だが。
そんな緻密である種老獪な彼女の戦術も、ただ『天才』の一言で容易く瓦解する。
>「危ないっ!!」
エミリーの近くにいた二人の男のうち、若い方が跳んでいた。
人体の駆動限界を容易く突破した急転機動。エミリーに迫る矢をあろうことか途中で掴み、その勢いを止めていた。
卓越した身体操作とそれについてこれる反射神経・動体視力がなければ成し得ない所業だ。クローディアは軽く戦慄を覚えた。
「今の動き……あーはん、なるほどッ!あんたがウワサに聞く遺才持ちねッ!?」
『クランク』の情報によれば、東区に展開した帝国軍の増援部隊には遺才持ちが混じっているらしい。
"人類以上"の動きをやってのけたこの男がその天才であることは想像に難くなく、同時に彼女にとっては僥倖だった。
見るからに鉄火場を潜ってなさそうな朴訥とした少年である。彼は反撃してくるかと思えば、エミリーとそのおまけを連れて退避。
間違いない。『速いだけ』だ。クローディアと同じく――戦闘系の遺才ではない。
>「遅くなってすまねぇ!!ウィレム、よくやった!信じてたぜっ!!」
ワンテンポ遅れて年上の方が動き出す。若いほうをウィレムと呼んだ、蒼の手甲姿。
クローディアとウィレム達との間に割って入り、その身を以て盾とする。これでは追撃を射れない。クローディアは舌打ちした。
>「――――疾風の様に、俺参上っ!! やい、てめー等!!小さい子供に何しようとしてやがった!!」
「何しよう、ですってぇ!?戦場で薄っぺらいモラル問うてんじゃないわよッ!見れば分かんでしょうが!」
苛立ちのあまりクローディアは地団駄を踏んだ。金庫の中身がそれに合わせてガチャガチャ鳴る。柔らかい巻き髪が空気を攪拌する。
腹いせにクロスボウをしこたま叩き込んでやろうと思ったが、寸でのところで思い留まる。
手甲姿のこの男、パッと見からして隙がない。背後の連中に向かって激を飛ばしているくせに、前方に対する注意が微塵も逸れてない。
(はーん……この男もタダモノじゃないってわけ!)
思考を纏め、状況を把握し、次なる一手――どんな武器を購入しようか逡巡する刹那。
クローディアの傍で世にもおぞましい、酔っ払いの怒鳴り声のような雄叫びがあがった。
それが意味するところを知っていたクローディアは、手のひらで目を覆う。直後、眩いばかりの閃光が迸った。
>「ぁ゛…、ぐああぁあ゛ぁあぃあ゛あ゛!!」
そこに存在していたのは、ゴーレムですら当たり負けしそうなほど巨大な体躯と質量を持った獣だった。
筋骨隆々の四肢に、獰猛な牙と爪。漂う獣臭は本能を揮発させた気体のようにも思え、別の意味で目を覆いたくなる奇状。
「はン!ようやく本気出したってわけ、ナーゼムッ!自信持ちなさい、そうなったときのアンタはとっても魅力的よ!」
珍獣的な意味で、とか見世物的な意味で、とかそういう言葉を普段のナーゼム相手なら臆面なく言うのだが、今は流石に自重した。
さて、彼女にも敵はある。ナーゼムが分断してくれたおかげで負担は減ったが、未知数の4人を相手に気を抜けるほど油断はしない。
>「クローディア=バルケ=メニアーチャ。
その家名に弓引くのはちょっと気が引けるのだけども、貴方のお相手は私が努めさせて頂きますわ。」
レイピアを抜き払った妙齢の女が、貴族然とした慇懃な構えを見せる。その挙動たるや、戯曲のように流麗な体捌きであった。
>「でもね、仲間を殺そうとしたその性根には正直ムカついてるの。だから命まではとらないけど――」
右目に異能の光が灯る。巨大な蛇の眼光に、睨まれた錯覚を得た。
直感が告げる。この女、この中で一番『只者じゃない』。気あたりか、波出る凄みか、風が吹いてもいないのに髪が煽られた。
>「――泣いて謝るまで許しません!」
「な、舐めんじゃないわよーーーーーッ!!」
気圧されぬようにクローディアは精一杯の勢いを付けて言い返した。
あまりの怖さにホントはちょっと涙目だったが、天下のメニアーチャがビビったとあっては名折れもいいところ。
怒りでその他の感情を押しつぶし、心を烈火で染め上げる。その作業を完了するのに二秒の沈黙と深呼吸を要した。
「ちょっと大義があるからっていい子ぶってんじゃないわよっ!あんた軍人ならわかるでしょ!?普通、常識的に考えて、
負けた仲間から情報漏れそうになったら殺すでしょうが!そいつ一人の為に何百人の仲間を危険に晒すわけにはいかないのよっ!」
逆説的に言えば、彼ら帝国軍がエミリーを守ろうとすることについては正しいとさえクローディアは思う。
重要な情報源だ。口封じにやってくる敵兵を迎撃するのは当然で、彼女もそれを覚悟の上でここに来た。その上で、殺す自信があった。
しかも泣いて謝れば許してくれるときたものだ。おおよそ軍人とは思えないレイピア女の発言に、クローディアは面食らっていた。
「きぃーーーっ!ムカつくわ!ムカつくこと那由他のごとくだわ!このレイピア女!あんたは一番最初に抹殺してやるわっ!」
同時に、興味があった。この女は何者なのだろう。
あんな瀟洒なレイピアを戦場に持ち込んでいる時点で兵員どころか下士官ですらなさそうだ。将校クラスが紛れ込んでいるのか?
メニアーチャ家を知っているような口ぶり。クローディアが知らないということは、『本家』に知り合いでもいるのだろうか。
そして――問題のレイピアに目が止まった。その意匠に、彼女は見覚えがあった。
「ああああああっ!そ、そのレイピアは!従兄(にい)さんが後生大事にしてた家宝の!」
優雅絢爛なスウェプト・ヒルトと、柄頭に緻密に掘り込まれたメニアーチャの家紋。
齢18にして元老院直属の帝国議会、その末席にまで上り詰めたメニアーチャ『本家』の当代。
ジース=フォン=メニアーチャが二年前に人に譲ったという家宝のレイピアに相違なかった。
クローディアが本人から聞いたところによれば、二年前の帝都を――そして彼の姉を救う為の篤志として譲渡したらしいが。
目の前のこの女が、その帝都を救った一人なのだろうか。否、そんなはずはない。こんなアマちゃんに魔族を倒せるわけがない。
「と、盗ったんでしょう!軍人なんてみんなそうよッ!やれ徴発だなんだって色々持って行かれたわっ!
あいつらにとっちゃ貴族も市井もお構いなしなのよっ!あんたのそれも、そうやって本当の英雄から没収したに違いないわっ!」
クローディアは半ば怒り任せで――新たに召喚したクロスボウをレイピア女に向けた。
「かえせかえせかえせかえせかえせーーーーっ!!」
引き金を押しこむその刹那。クロスボウが中央からべきりと折れた。無機質な鋼鉄の腕が弓身を殴り飛ばしていた。
クローディアの鼻先まで肉薄していたのはエミリーの傀儡人形・レイチェル。左肩を破損しながらも、残った右が彼女に迫る!
「――――ッ!」
仕込み刃を顕現させた拳の一撃は、クローディアの胸元にまともに入った。
果たせるかな、その刃は血に染まらない。どころか、彼女の服に触れたところで止まっていた。それ以上びた一寸も刺さらない。
「……不意打ち、大変結構じゃないエミリー。あんたのそういうストイックなところ、ちょっとだけ尊敬してたわ。
でもダメね、ダメダメ。裏切りってのは最初の一撃で決めなきゃ意味ないのよ。それをあたしが警戒してないわけないじゃない」
クローディアは視線を手甲姿に向ける。彼はやがて気付くだろう。己の手の中に――いつの間にか金貨が握られていることに。
「フィン=ハンプティ。18才。『鎧の眷属』パンプティ家の末子。特殊技能は遺才『天鎧』……おっどろいた。アンタも遺才持ち?」
朗々と読み上げられる内容は、手甲姿――フィン=パンプティの個人情報。
彼が以前務めていた民間護衛会社から、クローディアがたった今『購入』したプロフィールだった。
プロというのは、己の技術を売って生計を立てる者の総称だ。
護衛のプリオであるフィンにとっての『商品』は、その超越的な防御能力。――クローディアはフィンのその『防御力を買った』。
これが彼女の遺才の真骨頂、金銭でやり取りできるものならば、有形無形を問わず何でも購入し召喚する特殊魔術。
フィンに支払われた金貨は、彼の現在の給与を日割りしてさらに10秒あたりの金額を算出したものである。
「ちゃちゃが入ったけど、さあ始めるわよ帝国軍!武力にもの言わすアンタ達を――あたしの経済力で叩き潰す!」
購入した『天鎧』の10秒が切れると同時、クローディアは両手を振り上げ上空に金貨をばらまいた。
彼女が指を鳴らすと空中の金貨が掻き消え、そこから火炎・雷撃・吹雪と多種多様な魔法が豪雨のように降ってくる!
メニアーチャ子飼いの魔術師達が、その攻性魔術をクローディアに売ったのだ。
クローディアはバックステップで魔術豪雨の殺傷圏から逃れ、金貨を一掴み地面に放った。
召喚されたのは巨大な『滑空砲』。帝都の新技術の集大成で、なんと魔術ではなく鉛の砲弾を発射できる対物破壊の代物である。
攻性魔術は一つ一つが中型魔獣を一撃で仕留められる威力のものだが、クローディアは贅沢にもそれすら目眩ましにする。
滑空砲で狙うは、従兄の家宝を盗った(とクローディアは思っている)レイピア女。暗殺者のように、殺気を隠しながら大砲に点火。
爆発が鉛玉を追い立て、人間の頭部ほどはあろうかという巨大な砲弾が、轟音を立ててレイピア女に迫る!
【遊撃課の面々を軍属と勘違い→人道を問われたことに怒る】
【クローディアの魔術:値段のつくものなら無形物でも買える→情報や、相手がそれで金貰ってるなら技術も召喚可能】
【金貨を上空にばら蒔いて攻撃魔法を召喚→大砲を召喚し、ノイファへ向かって発射】
「おヤ?そんなこと言っていいのカ?てっきり凡人の真似事が御望みかと思ってたがナ」
ボルトの意外な発言にアルテリアは少し驚きを見せそう返す。
これまでのボルトの否定的な発言や、凡人の代表として遊撃課の長を勤める以上
彼の目的が天才たちの再教育だとばっかり彼女が思っていたのだから仕方ない。
>『――――おれがお前らを活かしてやる』
「…」
その言葉に、アルテリアは静かに微笑を浮かべ答える。
(ならバ…改めてお手並み拝見といこウ)
>『サジタリウス!お前は戦線を離脱して中央区南の"メリア商会"まで全速力。スティレットを待機させてあるから合流しろ。
官給品の槍や剣撃つだけじゃ飽きてくるだろ?――とっておきの良いモン撃たせてやるよ』
>『総員、作戦は頭に叩き込んだな?死んだ奴を打ち上げに誘う謂れはねえから、おれの奢りで飲みたかったら必ず生きて帰ってこい』
>『――状況開始だ』
「了解しタ!ただシ、期待はずれなら破産するまで飲んでやるからナ」
【中央区南・メリア商会前】
ボルトの命令通り全速力で目的地に向かう最中、アルテリアの心中は
まるで、プレゼントを確認しようと逸っている子供のように期待に胸ふくらませ、興奮していた。
目的地に向かいながら、ボルトの言った「とっておき」が何なのか思案しながら駆けると
>「お待ちしておりましたであります!アルテリアどのっ!」
「待たせたなチビスケ」
スティレットの姿を確認し、促されるようにして、屋根に飛び上がる。
>「小隊長より指令は伺っているであります!よもやわたしまでこの一世一代の大作戦に噛ませていただけるとは、
このスティレット、最高に感激してるでありますよぉ!ではでは早速、アルテリアどのの『矢』をご用意するであります!」
「御託はいイ!早く『とっておき』を…作る?」
スティレットの言葉にアルテリアは催促の言葉を引込め、片眉を上げる。
状況が読めないアルテリアを置いて、スティレットは構わず自身の遺才を振るう
轟音と共に影を落として避雷塔はアルテリアの頭上へ迫る。
>「小隊長曰く、これが『矢』だそうであります!シキマどのが投げたゴーレムの中枢を、これで射抜けと!
アルテリアどのの遺才は棒状のものならなんでも矢のように射ることができるそうですね!最高にカッコいいであります!!」
「………」
自身の予想を遥か上をいったボルトの「とっておき」にアルテリアは唖然とした。
そうしている間にも、『矢』は速度を上げ倒れこんでくる。
「ククク・・・ハハハハハハハハハハハハハハハハハハハァ!!!」
突如、アルテリアは狂ったように大声で笑いだし、『矢』を受け止め、そして、それを軽々と持ち上げる。
それは筋力によるものではなく、やはり、遺才による賜物であるのは言うまでもない。
「フフフ…少し違うゾ!チビスケ、出来るからかっこいいのではない、理屈にあっているからかっこいいのダ!!!」
そういってアルテリアは悠然と構える。
どうみても「矢」が大きすぎて射ることは出来ない。だが出来る。
彼女の遺才がその無法を通す。「矢」は飛ぶ、彼女の手に収まった瞬間その結果は確約されている。
「課長がここまで浪費したんダ。せっかくだから、この一射に名前をつけよウ
そうだな…天撃つ雷撃と書いてチビスケなんと呼ばス?」
よほどご機嫌なのか、闇夜に落ちた空間に狙いを定めながらスティレットに問題を出した。
その瞬間、レイリンによって中空に投げ出されたゴーレムが偽りの月明かりに照らされその姿を現す。
>「サジタリウス、あとは任せるわ。一撃で決めなさい」
念信オーブ越しにレイリンの声が聞こえる。
「当然ダ!ここまで浪費したんダ!決める以外に何があル!行くゾ」
天 撃 つ 雷 撃 !
轟風と共にゴーレムに向けて放たれた避雷塔
その様はまさに、摂理に逆らい天を撃つ雷そのものだった。
【ボルトの考えに少し驚く
当然のように塔を構え、その間にスティレットに大喜利の御題を出す
後、投げ出されたゴーレムを確認、止め?の一撃を放つ】
光が煌めいた。
エミリーからの返答も聞かず、ウィレムは駆けた。
体力的には限界に近く、そのまま退いていたほうが身のためだとしても。
駆け出さずにはいられなかった。
そこに現れた、怪物の方向へ。
>「ば、化け…もの・・・」
「セフィさん!」
ウィレムと違い間近で怪物を見てしまい、間近でその咆哮を聞いてしまったのだ、固まるのは人間の本能だろう。
とりあえず声をかける。それだけでも変わるはずだ。大勢には影響を及ぼさないとしても。
ウィレムは駆け抜け、怪物の後方に陣取る。振り向かない。おそらくこちらには気付いていない。
……単に、気付いていても気にしていないだけかもしれないが。戦えそうに見えない、矮小な存在を。
怪物が跳躍する。眺めるだけ。走り出せない。体が震えている。はっきり言ってそりゃウィレムだって恐ろしい。
息を吸う、吐く。
爪先を立てて、両踵を二回ずつ、交互に地面に打ち付ける。
これは準備だ。ウィレムが履くその靴の異な紋様が、一瞬だけ鈍く光を発する。
ナイフを取り出す。その刃が鋸刃なのは別に大工がしたいわけじゃない。
何回も切って、人の脂で斬れ味が落ちても。斬りつけることさえできれば、重傷を与えられるようにだ。
傷口がボロボロになって、治りにくいように。
「行くぜ、バケモン。"狩り"の時間だ」
自分を鼓舞するために、まるで『物語の主人公のような』気障めいた言葉を吐いて、得物を逆手に持ち、見据える。
俺は主役なんて人柄じゃない。それは自分が1番わかっている。背景に紛れ込むような、通行人だ、路傍の石だ。
その身をもって誰かを守れるような能力もない。双刃にて敵を切り裂くような、剣技を備えているわけでもない。
人形を操れたりもしないし、治癒魔法やカリスマやおっぱいもない。足が早いだけの、脇役だ。
ただ、そんな脇役でも。
誰かの役に立っていいはずだ。
(俺の体力!もう少し保ってくれよな!)
怪物がセフィリアの前に着地する。腕を振り上げる、振り下ろす。間に合うか、もう間に合わない。畜生、無事でいてくれ。
跳躍する。
ただのジャンプとは桁が違う。常人がそんなに跳べはしない。まるで爆発でも起きたかのように、瞬間的な上への推進力。
これは遺才ではない。……遺産、とでも呼べばいいだろうか。その魔靴、先祖より伝わるマジックアイテム。
『縮地』の遺才持ちが使用すれば、速さによる二次元的な平面制圧力から高さも加わった三次元的な空間制圧力に変わる。
連続使用は出来ないが……ここぞという時、ウィレムの切り札。
そして、今が、その時だ。
跳躍による最高到達点。空中で態勢を強引に変える。ナイフを両手で握り、そのまま逆立ちするように。
非力なウィレムでもその刃を突き立てられる力と変わる、重力加速度という強い味方。
落下点を確認する。目的を視認。位置座標変更なし。このまま落ちれば、それでいい。
視界の隅に映るのは攻性魔術。幾種類もの、まるで魔術の雨。こちらまでには届いてないが、それの威力は推して知る。
ノイファしゃんは大丈夫だろうか、いや心配ない。センパイがいる。全く心配なく、俺はこの怪物に全力を注げる。
守る役目が俺じゃないことに――少し、歯痒さはあるけれど。
筋骨隆々な体躯、重力の力をもってしても刃は通らず、弾かれてしまうことは想像に易い。
だがどんなに体を鍛えようと、鍛えられない場所はある。
硬い生物は数あれど、この部分に攻撃が効かない生物はそうはいない!
それは――脳天!
「うおおおおおぉぉぉぉぉぉぉおおおおおおおっっっっっ!!!!!!」
落ちながら見える光景では、セフィリアは怪物の攻撃を受け流し、更に反撃を加えようとしていた。
さすがだ、おそらくウィレムとあまり年齢は変わらないだろうに。
その姿に頼もしさを感じながら、ウィレムは落ちる。
突き刺す。
怪物の頭に向けて。
その刃を。
最悪、刺さらなくたって構わない。
脳を――揺らせ!!
【ピョーン→グサッ】
226 :
名無しになりきれ:2011/05/23(月) 19:36:04.98 O
ここの小説おもしろいよね
ちなみに今不可思議探偵団見ながら書き込みしてまーす
227 :
名無しになりきれ:2011/05/23(月) 19:37:31.76 O
晩飯くいおわってお腹いっぱいです
228 :
名無しになりきれ:2011/05/23(月) 19:44:48.31 O
今エナジードリンクドデカミン飲んでるんだけどカロリーオフなんだよな
人口甘味料としか書いてないんだが、これって大丈夫なのか?
才ある者達は集結し、少女の命を刈り取ろうとする新たな敵の前に立ち塞がった。
此処に居るのは、一人一人が文字通り一騎当千の戦士達。
攻撃、防御、補助。
全てが揃っており、もはや負ける要素はない。
……と、恐らくは、この場にいる多くの者がそう思っていただろう。
そう、閃光と共に現れた「獣」の姿を見るまでは
研ぎ澄まされた命を刈る事に特化した牙
獲物を蹂躙する為に進化した爪
弱気者の意思を無慈悲に打ち砕く堅牢な装甲
放たれる威圧感は、もはやそれ自体が質量を有しているかの様にすら感じられる。
魔獣
真にして巨大なる魔の獣が此処に君臨するまでは
「なっ……あいつ、魔獣だったのか!?」
目視したフィンの顔に驚愕が浮かぶ。それもそうだろう。
魔獣は先程のニードルデーモンの様な魔物とは違う。
正真正銘、人の手に負えない化物なのだから。それがいきなり目の前に現れれば、
驚愕するのも無理はない。
そしてその間に魔獣は嵐の様な凶撃をセフィリアへと向けて放った。
当たれば死ぬ。文字通りの必殺の暴力。
しかし、その場面に対し「天鎧」フィン=ハンプティが割り込む事は無かった。
防御に特化しているフィンは、セフィリアの無意識的な動きを目視しただけで直感的に
理解したのである。セフィリアが魔獣の初撃を回避出来るであろう事を。
(んでもって、あっちにはウィレムがいる――――ならっ!!)
フィンが向いたのは、もう一人の敵。
クローディア=バルケ=メニアーチャ。
魔獣が持つのが突破力ならば、クローディアが持つのは浸透力の様な何か。
ここで止めなければある意味では魔獣並みの大きな災禍となる可能性がある。
フィンは、魔獣の攻撃で舞い上がった砂埃を拭いつつ、
クローディアを見つけ出し――――その姿に目を見開いた。
クローディアは、エミリーが不意打ち気味に放った攻撃を「受け止め」ていたのだ。
まるで、絶対の防壁でも有しているかの如く。
>「フィン=ハンプティ。18才。『鎧の眷属』パンプティ家の末子。特殊技能は遺才『天鎧』……おっどろいた。アンタも遺才持ち?」
告いで彼女が放った言葉はフィンを更に驚愕させる。
何故ならクローディアが言い放ったその内容は、違わずフィンのプロフィールだったから。
不気味――――としか言い様が無い。見知らぬ相手が、それも敵が、自身の事を知っている。
更には、自身に匹敵する力を出して見せた。
普通の神経をしていれば、臆し警戒する事していた事だろう……しかし
「ははっ――――流石俺!有名人だぜっ!! それに、よくわっかんねーけど、お前の魔法か?
それ、面白そうじゃねーか!!お前を倒した後、色々出させてやるぜっ!!」
生憎というべきか、残念というべきか、フィンはそういった方面で恐怖を覚える性格ではなかった。
バンダナを軽く前に引き、快活な笑みを浮かべ相手を見据える
>「ちゃちゃが入ったけど、さあ始めるわよ帝国軍!武力にもの言わすアンタ達を――あたしの経済力で叩き潰す!」
直後。フィンは、一切躊躇う事無く前進していた。
向かう先は魔術豪雨、そして『滑空砲』の射線のど真ん中。
炎が、氷が、魔獣すらもなぎ倒す鉛の塊が、ノイファに向かう筈であった凶弾の嵐が、その全てがフィンを襲う。
爆炎、轟音と共に舞う地面。
あらゆる生命を否定するかの様に放たれた、武力ではない財力による蹂躙。
圧倒的な破壊は数秒間続いた。
こんな嵐の中に飛び込む愚か者がいるとすれば、その人間は塵一つ残さず消える事だろう。
そう
「……はっ――――どうした、全然軽いぜ「経済力」っ!!!!!!」
飛び込んだ者が、フィン=ハンプティで無ければ。
「負けた仲間が情報を漏らしたら、情報持って攻めて来た相手から、
それでも味方を全員守りきればいいだけじゃねーか!!
んでもって捕まった仲間を助ければ、万事解決だろっ!!」
額から大量の血を流し、服は氷と火でボロボロになっている。
だが、フィンは立っていた。その後方には壁でも在ったかのように一切破壊の痕跡が無い。
ノイファの前に立ち、全ての攻撃を「受け」きったのだ。
「よーく目に焼きつけやがれクロなんとかっ!!
――――俺は、フィン=ハンプティは、お前が捨てる物も全部守り抜いてやるぜ!!!!」
フィンは音が鳴るかの如き勢いでクローディアを指差す。
とはいえ、天鎧といえど先の一撃に無傷とは行かなかった様で、
ズボンの右足部分を血が染めていっている。
「――――ノイファっち、攻撃は任せた!!
んでもって、やばい攻撃がきたら俺の後ろに来い!!
たとえ軍隊が来俺が敵だろうと、俺が絶対に守ってやる!!」
フィンはそんな様子をおくびにも出さず、振り向かずにノイファにそう言った
【クローディアのノイファに対する攻撃をカバー。防御する】
【右足負傷】
233 :
名無しになりきれ:2011/05/25(水) 00:19:19.52 O
今日醤油買ってくるの忘れちゃったよ(笑)
234 :
名無しになりきれ:2011/05/25(水) 00:23:03.86 O
醤油って冷蔵庫入れて保存した方がいいのかね?
あれほっとくと酸化してすぐ味変わっちゃうんだが
235 :
名無しになりきれ:2011/05/25(水) 00:26:15.67 0
メギドラオン!?♪。
問答無用見敵必殺で放たれた一撃は敵を確かに貫いた。
槍が纏った光も霧散し、ナイアルトはその場に崩れ落ちていく。
(あーこれで勝ったな、うん。めでたしめでたし。もうこんな役回りは御免だ──。
ところで……なんか忘れているような……そう、落ちる、とか…そんな感じの…って落ち、落ち、おちるっ!?)
彼はナイアルトに攻撃を放つ際に、ゴーレムを踏み台に跳躍した。つまり今空中にいるのだ。
高さは───軽く見積もって二階建てほどだろうか。
「あがががががががががが!!!落ちる!落ちる〜〜〜〜〜〜!!」
落下の恐怖に思わず空中でじたじたともがくが五体が虚しく空を切るだけだ。
そしてどしゃりの擬音と共に地面との熱い抱擁とキスを交わし、地面の心強さを改めて噛み締める。
「いっでぇぇぇぇえええええええええええええ!!あ〜〜〜あ〜〜いたい、いたいぃ〜〜〜〜〜」
骨が折れてもおかしくない高さだ。
だがしかし。大宇宙の意思なのか、奇跡的に酷い擦り傷で済んだらしい。
痛みで派手にのた打ち回るその姿はいつもの情けないルインそのものだった。
>「ざまーみやがれ! 大・勝・利〜〜!!」
>「お疲れ様。やっぱりチームワークって良いですねぇー。」
ロキがクラッカーを鳴らすが、ルインからすればそれどころではない。
この痛みがなくなるなら死んでもいいという矛盾した考えを脳に浮かべ、直後激痛が走る。
あろうことかリードルフはピアニストのような繊細な指で擦り傷をつつくという暴挙に出たのだ。
「いっでええええええ!?…お…俺にはな…世の中で“これだけは”許せないことってのが3つあんだよ!
それはな。料理に入ったパイナップルと借金をつくることと、傷口をつつかれることだ!!
わかったらやめろっ!!やめろったらやめろバカ!やーーーめーーーろーーーって!」
やや大げさに痛がりつつ今までつつき放題だった手を無造作に振り払う。
当のリードルフはおふざけお遊びのつもりだったらしくにやにやと笑っているだけだ。
瞬間。異常な気配が空間を包み───その場にいた全員を振り返らせる。
>『どこを見ているのですか? 私はここですよ』
「アンタって本当に人間かよ……!」
槍がナイアルトの身体を貫いた感触を思い出しルインは堪らず顔を歪ませる。
仮面はこの人数差に関わらず依然従容としていた。そこに顔が、表情があるように振舞い言葉を紡ぐ。
>『フフフ……どうやらあなた達を見くびっていたようです。楽しいショーをありがとう!
>その命、今しばらく預けておきましょう! あなたたちならもっともっと楽しませてくれそうですからね』
「勝手な理屈をぬかすなよ!俺は、俺達はおもちゃじゃねーんだぞ!」
悲しいかな訴えは届かず仮面は一方的に再戦を仄めかし、姿を消した。
そしてやはりというかなんというか一番安堵したのはルインだ。
「こ、怖かった〜〜〜〜。………い、いや。これは別に俺がチキンなんじゃなくて
なんか化け物みたいな姿になって第二ラウンドとかになっても、その、困るしな。
ホントだぞ!別にあんな変人仮面が怖い訳じゃなくてだな……!あっあっ!今笑ったな!!」
果たせるかな、必死の弁解は自身を更にみっともなくしただけで終了した。
終わった…………いや、終わってしまったと言うべきか。
一人医務室にあるソファに腰を下ろしていたその男の名は、ルイン・ラウファーダ。
遊撃課に配属されたにも関わらず任務を放棄した生粋の臆病者。
ところどころに包帯やガーゼが貼られているのは治療を施された証左だ。
「────ここで下手をうてばクビになる。いや……それは遅刻でごまかせばいいとして」
齢21にして借金を背負うルインは、仕事がなくなると非常に困る。
にも関わらず油を売る辺りからしてどうしようもない逃げ腰ボンクラヤローである。
「課の皆ってどんな人達なんだぁぁぁあああああああああぁぁぁぁぁぁぁああっ!?
やっぱあれか!?あれなのか!!男ばっかで筋骨隆々で顔に深い切り傷の痕やら胸には七つの……」
自身が「ひぃー」と筋骨隆々で巨躯のおっさん共に怯える姿が目に浮かんだ。
補足を入れておけばルインは招集の段階で既に『逃げる』のみを選択していたので他の課員の顔を知らない。
あうあうあわわわと慌て勝手に頭を抱えるその姿を頭のオカシイ人と言わずなんと言うだろう。
そもそも最初から逃げようとするからこのような事態に陥るのだが……その事に気付いていないのは彼一人である。
足が速そうな人と格好良い先輩と天使(笑)みたいな人が脳内でルインを足元から輪切りにして額縁の飾ったところで
(………あーあー。もう知らん。寝よう寝よう。)
怖そうな同僚(※妄想です)と最前線での厳しいこれからの任務という現実から目を逸らすために、寝た。
現実逃避はルインの得意技の一つなのである。
ベッドの心地良い感触の中で全てが変わったあの日を思い出す。
思えばあの日から、遊撃課に配属される運命が決まっていたのかも知れない。
「人生は一度しかないんだ。全部受け入れるしかないだろ」
二年前。返す事も困難な借金を背負っていたことをルインは実の親父から告げられる。
理由は酷く陳腐だ。親父がギャンブルに嵌って調子に乗っていたら大負け、大損。
何度も何度も繰り返す内にいつの間にか首が回らなくなったという。
それでもあっけらかんとしていた親父と目玉の爆発する額のせいで、現実味はなかった。
もしかしたら親父はにっちもさっちも行かなくなって開き直っただけだったのかも知れないが。
そして三日後親父は魔物大強襲の事件で死んだ。
悲しくないと言えば嘘だったが、それよりも怒りの矛先を失ったことでやり場のない怒りが燻ることになる。
これからどうやってこいつを返していくんだ。と。
教導院を卒業していたルインは長男として家族のために渋々年俸の良い帝国騎士団に入隊。
だが生来人よりも臆病だった彼に騎士団など土台無理な話だ。結果は見ての通り。
───実の親によってブタを掴まされた彼の人生は、確かに理不尽で辛いだろう。
しかしその逆境がルインの人生を良きものに変えていくのかも知れない。
(男には『休息』が必要だ…………暗闇の荒野を進み続けるための『休息』がな。
だから断じて現実逃避ではないッ!つーかもう現実なんぞ知るか!ばーか!!)
ぬくぬくとした坊っちゃん育ちの結果が、『コレ』だからである………
【寝ることで全てから逃げれると考えているようです】
238 :
名無しになりきれ:2011/05/25(水) 22:43:04.00 O
醤油買ってきた(笑)
239 :
名無しになりきれ:2011/05/25(水) 22:44:28.78 O
一番小さいやつ 確か130円くらいだった
>「課長がここまで浪費したんダ。せっかくだから、この一射に名前をつけよウ
そうだな…天撃つ雷撃と書いてチビスケなんと呼ばス?」
降ってきた『矢』を目の当たりにして、アルテリアは獰猛に笑った。
矢に比べて小さな小さな弓を――当然だと言わんばかりに構え、番える。合致したマテリアルが彼女を人類より一歩進ませる。
「そうでありますねぇ……穿ち貫くイメージに雷光のニュアンスを加えて……整いましたであります!」
スティレットが手の平をポンと打つ、その刹那。
レイリンの投げたゴーレムがその巨躯を街並みから浮上させた。そうして彼女たちの立ち位置は、絶好の狙撃ポイントとなった。
極限にまで張り詰めた弓の張力を、解き放つ。
『レ イ ス テ ィ ン ガ ー
天 撃 つ 雷 撃 !』
切り裂かれた突風に煽られて尻餅をつきそうになる。
超質量の鉄雷が、まさしく雷もかくやの速度で飛翔した。
* * * * * *
最初に感じたのは小さな小さな風のゆらぎ。
中央区。レイリンが上空へゴーレムを放った刹那、巨大な竜の羽撃きのごとき突風が大気を浚った。
風が吹く。そのしんがりを受けるようにして巨大な鉄塔が――信じがたいことに、その先端を穂先とする槍のように飛来した。
ゴーレムの中枢を貫く軌道。切っ先が岩肌の表面に触れた瞬間、術式が起動し力場装甲が展開。鉄塔を阻む力が障壁となって顕現する。
さる事情によって無尽蔵の魔力供給を実現し、力場装甲を張り続けられるゴーレムにとって、矢の威力は問題ではなかった。
見たところ自己推進の術式も施されていないただの巨大なだけの『矢』。押し合いへし合いするうちに勢いをなくすだろう。
誤算があるとすれば――それが『ただの鉄塔』じゃなかったということ。
避雷塔。先んじて雷を受け止め、地表に散らすことを目的に作られた鉄塔である。
正確には『雷に含まれた魔力を吸収・拡散』する性質を付与した魔導建築物であり、その性能はこの場においても遺憾なく発揮された。
飛翔機雷を何発受けても傷ひとつつかなかった力場装甲が、鏃から魔力を吸い取られ、後部から空気中へ放出されていく!
障壁を貫通し、中枢を穿ち抜くまでに――正味、一瞬とかからなかった。
腹部から背部にかけて鉄塔が突き抜ける。魔導経絡を切断された四肢が痙攣するようにビクビクと宙を掻く。
関節の各部で爆発が起こり、内蔵兵器の術式に誘爆。潤滑材を血液のようにまき散らしながらゴーレムは仰け反った。
轟音に破砕音が混じり、撃ちぬかれたゴーレムはそれに留まらず鉄塔と一緒に空中を走り、やがて教会の壁へ激突して停止。
奇しくもその姿は、巨大な杭によって磔にされた吸血鬼の末路を彷彿とさせた。
無類の進撃力を誇る巨躯も、地面から脚が離れてしまっては最早自走することままならず、ゆっくりと事切れるように動かなくなった。
中央区に、静寂が戻ってくる。
* * * * * *
「っつぅ……あのイカレ分解魔が。減棒だな」
未だひりつく鼓膜の幻痛に眉を歪めて、ボルトは悪態をついた。
感知術式に突如として流し込まれた情報の波濤は知覚を劈き、不可視のダメージとなって彼を襲った。
下手人は割れている。サフロールのアホだ。
公務執行妨害でフダをつけてやろうかとも思ったが、打ち上げの酒代を彼の給与からさっぴくことにして溜飲を下す。
>「ボルト隊長、失礼します。」
司令部の扉をノックして、西区へ遣っておいた課員のリードルフ=シルヴァニアが滑るように入室してきた。
西区からの念信が途絶えたことはボルトの耳にも入ってきたが、こうして彼が戻ってきたということは、大違ないということだろう。
>「西区の状況報告に参りました。その前に……無礼をお許し下さい。」
リードルフの手元が閃き、ボルトの側頭部を掠めるようにして細身の刃が走った。
首を傾けて後ろを振り返ると、蝸牛が貫かれて死んでいた。
>「盗聴巻貝ですね。誰かさんが盗み聞きしようと仕掛けたみたいです。」
「おいおい、司令部の警戒網もザルだな……まあいい、大義だシルヴァニア」
もとより聞かれて困るような情報はやり取りしていない。
唯一の懸念があるとすれば、西区から送られてきた重要機密書類だが……モノが割れてない以上致し方ないだろう。
>「まず西区ですが、本来の目的である攪乱は課員達の働きにより達成されました。
ですが、兵を指揮していた人物が気掛かりです。怪盗ナイアルト、ご存知ですよね?」
「よりによって『夢幻の魔術師』か……また厄介なのが出てきたな」
怪盗ナイアルト。人呼んで夢幻の魔術師といえば、近年の戦場で半ば都市伝説の如く語られる存在である。
一個中隊を皆殺しにして死屍累々を築いたかと思えば、かき回すだけかき回して何もせず帰っていくことさえある神出鬼没の騒乱屋。
その無茶苦茶ぶりから、なんらかの組織の後ろ盾を得ている可能性を示唆されていたが……正直、敵にまわすにはしんどい相手だ。
>「それと隊長、僕の事なんですけど……。」
>「吸血鬼や人狼が月ならば、エルフは日を欲します。半分しか恩恵を受けられない僕には、夜は終わりの時間なのです。」
そのとき、やにわに月光が窓から飛び込んできた。まだ日は落ちていないはずなのに、とボルトはまず仰天する。
それがサフロールの創り出した『偽りの夜』であることは、やがて復旧した感知網で知るところとなったが――それをさておいて。
目の前のリードルフに生じた変化は更に珍事だった。優男風のエルフが消失し、代わりにしっとりとした美女が忽然と現れたのだ。
「……おぉ」
なんとなく、ため息が零れた。
寄る者全てに噛み付くような面をしたボルトですら三白眼を見開くような美しさだった。
>「この事は、二人だけの秘密ですよ?隊長。 そうですね、夜の間はフローレンスとでも呼んで下さいな。」
柔和に微笑んで、『フローレンス』は席を立った。
熱っぽい目を配せながらその場を辞して司令室の扉まで歩き――自分で引いたドアにぶつかるという奇跡的なポカをやらかした。
ボルトは目頭を揉みながら二度目のため息をついた。今度こそ、それは毒気を抜かれた嘆息だった。
「西区連中に言っとけ。軍の部隊と合流して怪我人の救出と手当、それから暴走ゴーレムの『元』になった機体の回収。
中央区のアレはもう使い物にならねえだろうからな……申し訳程度でいいから適当に成果を掘り当てろ」
敵を倒してハイ終わりの戦場ではない。遊撃課の受難はまだまだ続くのだった。
* * * * * *
「うおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおん!!!!」
『な、なんだ、びっくりしたな……』
「マキナが!マキナがやられちまったよおおおん!あんな磔刑みたいなことしやがって、あいつら鬼か!?」
『ふむ、遺才持ちならその中に"鬼"の銘を賜った人間がいるかも知れんな』
「そーいうことを言ってんじゃねえから!比喩だよ比喩!おめーわりと他人事みたいに思ってんだろ、ピニオン!」
『それはそれとしてだ、クランク。今度こそ撤退する他あるまい。エルトラスの部隊は壊滅、マキナも大破。西区も制圧された』
「ナイアルトは?あいつ帰ったの!?あンのクソバカ色ボケ野郎……!西区一人で大丈夫って言ったの自分だろーが!」
『あれに責任感とかの類を求める愚は犯すまい。撤退準備しろ。東区に送った連中の"処理"の裁量は任せる』
「あいよ。じゃあマキナの戦闘記録回収してくるわ。今回の戦いで唯一得る物があったとすりゃ、こいつだけだからなあ」
『大赤字だ。人形姫ぐらいの逸材を育てるのは大変だったんだぞ』
「へーへー。また適当に可哀想な子供見繕ってきますよっと」
* * * * * *
暴走ゴーレムが磔にされた教会の屋根の上に、突如として一人の男が現れた。
何の前触れもなく、あたかもずっとそこにいたと言わんばかりに、天辺の十字架に腰掛けて戦況を見下ろしていた。
「ああ……苦労して作ったマキナが。模型を壊されたガキの気持ちがよくわかったぜ」
30代も半ばといったところの、長身の男だった。中年特有の、ハリのない肌は赤銅色に日焼けしている。
どこにでもいる労働者然とした風体だったが、特筆すべき特徴を挙げるとするならば、ジグザグに固められた色の薄い髪。
暴走ゴーレムの主たる実働部隊の、リーダー格たる男だった。コールサインは『クランク1』。
ジグザグ髪は十字架を蹴った。宙へ踏み出し、当然のごとく重力の虜となる。脚を下にして自由落下し――ゴーレムの上に着地した。
驚くべきことに、かなりの速度で着地したにもかかわらず、音はおろか舞う粉塵すら微塵も揺らがなかった。
「クランク1から各位。遺才回収して撤退しろ。ランデブー地点はフォックスロット−684。二時間後」
耳に仕込んだ小型の高性能念信器に向かって指示を出す。
中央に派遣された遊撃課員達の見てる前で、平然とそれをやってのけた。
不確定な対象をいきなり攻撃することはないという確信と、攻撃されても跳ね除けるだけの力量の現れである。
数秒待って、念信器が応答を返した。
『クランク6了解。遺才回収』
男の声が響き、中央区に変化が発生した。レイリンが吹き飛ばした三枚重ねの装甲が、風前の塵芥の如く、ふっと掻き消えたのだ。
『クランク4了解。遺才回収』
酒焼けしたドラ声。刹那、ゴーレムの四肢と腹部に仕込まれていた機構が消失し、飛翔機雷や魔導刃が吐き出されて石畳を転がる。
『クランク7了解。遺才回収』
冷えた女の声。機能停止してなおゴーレムに供給され続けていた魔力が途絶え、魔導炉が沈黙。ゴーレムが急速に劣化していく。
そして、その様子をずっと見続けていたジグザグ髪の男が最後に呟いた。
「――クランク1。遺才回収」
避雷塔に散らされ、障壁としての役目を果たさなくなった力場装甲が消失した。
支えられていた避雷塔の尻部がズシンと地面に落ち、テコの原理でゴーレムの中枢部が開かれた。
ジグザグ髪の男――クランク1は、その内部に手を突っ込むと、そこから拳大の鉱玉を一つ抜き取った。
「そんでもって記録オーブも回収、と。はーい任務完了オツカレちゃーん」
敵に制圧された領域のど真ん中で、機密に関わる最重要物件を手遊びしながら、クランク1は振り返った。
まばらに散った帝国兵が、各々の武装を構えて遠巻きに彼を取り囲んでいる。その中にはマキナを仕留めた連中も居る。
「ひゅう、右も左も天才ばっかつーか……ほとんど見本市だな。俺がご贔屓にしてる戦場じゃあ、こんな部隊の話は聞かなかったぞ」
クランク1は、千人二千人に一人と言われる遺才持ちを集めた部隊など、寡聞にして知らなかった。
まして、それが従士隊に新設された新部隊であり、遊撃課という名前があることなど知る由もなく。
お互い未知との遭遇で、両者は膠着状態だった。
『そいつを逃がすな!暴走ゴーレムから何か抜いてやがったぞ!』
そのとき、遊撃課の面々の念信オーブに入電。ボルトの焦りの滲んだ声が飛び出した。
感知術式によって戦況を細部まで把握していたボルトは、敵の男がゴーレムから抜き取った"何か"が重大な戦略物資であることを、
ほとんど直感していた。無人のゴーレムにもかかわらず、わざわざ己の脚で出向いてきたという事実が、何よりもキナ臭かった。
【暴走ゴーレム撃破!黒幕っぽい男が登場、暴走ゴーレムから記録オーブを回収。小隊長から捕縛指示】
【西区へ怪我人の救出と消息をたった他のゴーレムの回収を指示。主に瓦礫の中】
243 :
名無しになりきれ:2011/05/26(木) 17:45:32.64 O
雨降りそうな嫌な天気
244 :
名無しになりきれ:2011/05/26(木) 17:46:26.12 O
明日は振るみたいだな
傘邪魔なんだよね
245 :
名無しになりきれ:2011/05/26(木) 17:48:08.42 O
梅雨って嫌だよな
蒸し暑くて
>「ば、化け…もの・・・」
そんなことは知っている
>「なっ……あいつ、魔獣だったのか!?」
あぁそうだ。これがオレの力だ
>「はン!ようやく本気出したってわけ、ナーゼムッ!自信持ちなさい、そうなったときのアンタはとっても魅力的よ!」
うるさい。お前に何がわかる
こんな力、私は望んでいない
威力、攻撃地点、ヒト一人消し飛ばすには十分過ぎるはずだった。
だが砕けたのは瓦礫、瓦礫、瓦礫…
道に大穴が空くほどの一降りに肉が潰れる手応えを感じなかった。
立ち込める粉塵の中、脚を穴から抜く。
やはり空振り、そして殺気を感じた
砂埃から現れたのはあの一撃で倒れたはずの彼女だった
一瞬の合間に見えた恐怖に引き攣った表情など露ほども感じさせない勇ましい気迫と共に二振りの彼女の牙が迫る
ナーゼムは内心驚いた。
この姿を見て、恐怖からすぐに立ち直った者…、まして瞬時に立ち向かう者など今までいなかったからだ
同時に憐れんだ。
そんな細い剣が通ると思っているのか?この脚に?正気か?
守る必要もない。剣が折れ、絶望したその時に今度こそ叩けばいい
脚にわざとスキを見せ、もう片方の脚を構えようとした時
声は上から響いた
>「うおおおおおぉぉぉぉぉぉぉおおおおおおおっっっっっ!!!!!!」
見上げてしまった。故に反応が二手遅れた
額を襲う衝撃、甲殻の間接を縫う刺突
人間なら身もだえする暇も無く絶命する最高のコンビネーション
………そう、人間なら
「オオオ¨ォオオ¨ォ¨ォオォオ¨オ¨ッッ」
意識が一瞬飛ぶ、脚から血が流れる
ただそれだけだった。
魔獣は一呼吸の間に覚醒し、怒りの咆哮を上げる
だが、内心の怒りは己に向けててある。
この二人、強い。人魚姫が負けても仕方なし
相手は更に二人、時間をかけるわけにはいかない
何をしている。バケモノならバケモノらしく暴れろ
この剣はオレの油断で刺さった。ならば、抜かせない
剣は深々と刺さり、血が滴り落ちている
魔獣は、甲殻を閉めた。刀身が食い込み傷が拡がる。しかし、これで剣は抜けないはずだ。
もう一つの脚で頭上の人物を掴む。見ると人魚姫へ放たれた凶矢を止めた少年だった
「ギッ…、ギギハハ…」
およそ人間には真似できそうにない恐ろしい笑い声が響く。
「コンドハ…、コッチダッッ!!!」
掛け声と同時に魔獣は口を大きく開ける
クローディアの魔術の豪雨と合わさり、とても常世の光景に見えなかった
上下に並ぶ牙は一つ一つがまるでギロチンのように鈍く光った
【ウィレムを掴み、噛み砕こうとする】
【脚一本に剣が刺さり、傷も深い。しかし剣は抜けにくい】
化け物の攻撃は奇跡的に受け流せた。体が勝手に動いた結果だ。
いままでの自分の努力と遺才に感謝し、眼前の敵には畏怖の念を強める
「あなたに出会えたことを感謝しましょう。『強敵との出会いを大切にしろ』我が家の家訓です」
そしてセフィリアの白刃がナーゼムの前足を捉える。堅牢な甲殻の隙間へ深々と飲み込まれる
視界にウィレムが現れる、上からの強襲
「バリントン!迂闊よ!そんな果物ナイフで倒しきれない!どこににげるつもり!?」
空中で落下速度を加えた一撃は確かに有効である。現に先ほどのニードル・デーモンを駆逐するさいには同様のことをした
だが、ナザーム相手にはリスクがありすぎるというもの・・・!!
セフィリアの警告、その声がウィレムに届くことはない。魔獣の咆哮、この世ならざる者のような声
それがかき消す。
彼がナーゼムに拘束されてしまう
「だめ!逃げて!早く!」
セフィリアの声が空しく響く、ノイファとフィンはクローディアの財力の弾幕に苦戦している
ウィレムを助けることが出来るのは自分しかいない、その焦燥、恐怖が彼女を駆り立てる
……だがさらに彼女を焦燥の坩堝に落とし込む、現実が彼女を責め立てる
「ぬ、ぬけない!どうしよう、バリントン!抜けないよ!」
非痛な少女の叫び、彼女の愛剣がナーゼムの甲殻に挟まれ、その身が彼女の言うことを聞かない
彼女は遺才は両手自在術、両手に剣がなければただの剣術が人より上手い女の子
体も人一倍小さい彼女がこの魔獣を倒す術はない
先ほどまでの戦士然としたセフィリアはいない
だが、彼女は諦めてはいない
いま考えるは一つ「この魔獣を倒せる武器を探す」
能力の関係上彼女の持つ武器は剣だけではない、だが、だがしかし
この魔獣に有効な手段は皆無と言わざるを得ない、結果、探す!探す!探す!
目を皿に、血眼に!仲間のために!
ない、堅殻を打ち破る武器などほいほいと転がっているわけがない、ゴーレムを取りに戻る時間もない
転がってる……わけが……ない
そこまで思考して、セフィリアは決定的なことにきづく、『あれ』をつかえばいいと
彼女は全身をバネにして飛ぶ、両手には愛剣が一振り、彼女の遺才を発揮するにはいたらない
ニードル・デーモンを蹂躙した圧倒的身体能力はなりを潜めたが、その動きは依然として速い
彼女はニードル・デーモンの刺を拾う、もちろん両手にだ
能力が戻る、正確かつ高速で刺を投げる。狙うはウィレムを噛み砕こうとする大口、2本は螺旋状に回転しその突貫力を強める
彼の横を風切り音とともに一対の刺が矢のごとく過ぎる
これははまだ、序の口、ただの時間稼ぎだ!そういわんばかりに彼女はさらに駆ける
目指すは先ほどの酒場、そこから大きめの樫の木でできた丸テーブルを予備の剣と共に二つに斬る
その足を掴む、そう即席の質量武器、ハンマーいやむしろこん棒が近いと言っていい
これなら堅牢な甲殻とてその衝撃はではダメージを無視出来るものではないだろう
「バリントンを……はなせぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!」
強烈な一撃をナーゼムの頭をお見舞いしようと叩き込む
掛け声を上げたのを、甚だ後悔する他ない。
位置的利を活かした不意打ちならば、気付かれずに最後まで完遂するべきだった。思いもしない攻撃は、時に大打撃を生む。
しかし口を開いてしまった、叫んでしまった。自分を鼓舞する狙いがあったとはいえ、その行為は暗愚に等しい。
結果として、怪物は声に反応して見上げた。
こっちを見た。
こっちを見た。
こっちを見たのだ。
反射的に瞳を閉じた。攻撃の直前としては非常に滑稽だが、直視できなかったとしか言えない。
その額に聳える双の角に体を貫かれることがなかったのは、僥倖としか言いようがない。偶然であり、運がよかっただけ。
それでも、無事その刃は到達した、化物の頭へと。脳天ではなく額になってしまったが、影響はないはずだ。
実際に、影響はなかったのだろう。
刃は刺さることなく、弾かれた。
それでも、一瞬この化物の動きは止まった。
――利いた。
それが些細な、ほんの僅かな一撃でも、繰り返せば、きっと。
水滴だって、やがては大岩に穴を穿つのだ。
>「バリントン!迂闊よ!そんな果物ナイフで倒しきれない!どこににげるつもり!?」
愛用の武器を果物ナイフ扱いされたことに内心少しだけ不満を感じたが、それだけ。
心配はご尤もだが、生憎それはウィレムには関係ない。
飛び降りて、駆け抜ければ、逃げられる。
逃げ切れるはずだった。
常ならば。
いつもの、ウィレムの、基礎体力ならば。
だが、そうではなかった。
目の前が、歪んだ。
世界が、眩んだ。
「しまっ――」
た、まで言い切ることはなかった。最早身体の自由が効くことはない。拘束されたら、それまでなのだ。
端的に言えば、保たなかった。体力が。限界だったのだ。無理だったのだ。最初から。
立ち眩み。それは一瞬ではあったのだろう。だがその一瞬で充分なのだ、逃げられないように捉えるには。
迂闊だったのは間違いない。セフィリアの助言は的を射ていたのだろう。
全ては、後の祭りだが。
>「だめ!逃げて!早く!」
無理だ、逃げられない。こんな力で捕まえられてしまっては逃げることなど出来るはずがない。
ウィレムは確かに逃げるのは十八番ではある。だがそれはあくまでも足が自由に使える状況下での話である。
何もが追いつけない早さで大空を駆け抜ける鳥も、羽が折れてしまったらそれはただの獣の餌なのだ。
>「ぬ、ぬけない!どうしよう、バリントン!抜けないよ!」
抜けないのか、なら諦めてくれ。残念ながらどうしようなんて言われても俺には何も出来ないのだ。
だから早く諦めてくれ。そんな顔をしないでくれ。その身体に似合った、しかし似合わないことを言わないでくれ。
俺のことを「稼ぎが良さそうではない」と言い切ったあの慇懃無礼な態度でいてくれよ。
センパイとノイファしゃんに合流してもいい。逃げてもいい。俺のことは諦めてくれ。そんな長い付き合いでもないんだ。
なぁ、頼むよ。
俺はたぶん、ここで終わりなんだ。
>「コンドハ…、コッチダッッ!!!」
怪物の口が開かれる。食い物は選べよ、腹壊すぞ――。
観念したかのように身体を縮こまらせたウィレムだが、衝撃が来ないことに驚いてそっと顔を上げる。
そこにあったのは開いたままの口だった。ここまで口が来ていなかったのだ。
文字通り、口止めと言うのだろうか?二本一対の棘が、その貫通力をもって化物の口の動きを留めていた。
誰の放った攻撃なのかは考えるまでもない。思わずウィレムの口から笑みが零れる。
「ははっ……しまった。俺を助けようとしてくれてる人がいるのに、諦めて死ぬこと考えてちゃ申し訳が立たないや。
死ぬのは別に構わないんだけど、もう少し、やれるだけやんないとね」
セフィリアはどこかに駆けて行った。逃げたのでも構わないが、おそらくそんなことはないのだろう。
武器を探しに行った、というのが一番有り得る答えだろうか。なら、俺は少しでも食い止めてやるだけだ。
ナイフを左手に持つ。これはやはり臆病なところが出ているのだろうか、利き手は失いたくないと。
それにしても、さっき刺さらなくて良かったのかもしれない。まだここにナイフがあることに感謝すらする。
こちらに向けて大きく開かれた口。そこに、自ら腕を突っ込む。ナイフを掴んだ、左手を。
「なぁバケモン。腕一本ぐらいならタダでくれてやるよ。釣りもいらないからさ。
ついでに口内炎もあげるよ。水さえも飲めなくなるかもな、喜べよ」
左腕を動かす。口の中で、ナイフを、振るう。振るって振るって振るって振るって振るって振るって振るって振るう。
これは舌か?これは歯茎になるのか?ナイフから伝わる感触だけではわからない。咀嚼器官の向こうを、只管刺し貫く。
だがいつまでも無抵抗に攻撃し続けることが出来る訳ではない。セフィリアの投げた棘も、時間稼ぎにしかならない。
その口の上下に付いている牙という名の鋭い刃が、自殺志願のウィレムの腕に体との離別を知らせる。
――咬みつかれた。
さぁ左腕の感覚がなくなったぞ。どこまでいかれた?千切れたか?千切れちゃいないか?それすらわからない段階だ。
ただでさえ足元が覚束ないような状態で、さらに左腕に出血性の強い痛み。叫ばなかった自分が天晴れだ。
だが、こんな状況で長いこと気を保っていられる程、ウィレムの体は鍛えられてはいない。
二口目も近いだろう。次は頭かいかれるか。意識が飛ぶのが早いか、死んで意識が飛ぶのか。
目を閉じてしまいそうになった時、聞こえてきた声。
声高で、よく通る。決して耳障りではない。
腐海に沈みそうだったウィレムの意識を、否応なく引っ張り出し、引き摺り上げる、
――声が。
>「バリントンを……はなせぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!」
あぁ。来たぞ。来てくれたぞ。
剣士とは思えぬその華奢な体躯に、しかしその戦闘力は非凡。
眼鏡の奥のその瞳は力強く、その両手に持つものは即席の武器、なんと二つに分かたれたテーブル。
その絢爛な胸当てを見るにおそらく貴族の出だろう、その名はセフィリア・ガルブレイズ。その人が!
先刻のような狼狽える少女の表情ではなく、凛とした戦士たる表情を携えて!
「ふはっ……さっきのもかわいかったけど……やっぱセフィさんは……そっちの方が似合ってまスね……
あ、そだ……次は……次があるのなら、その時は……ウィレム、と呼び捨てにして欲しいでっス……
家名で呼ばれるのは……あんまり好きじゃないもんで……ね」
聞かせるつもりがあるのかないのか。独り言のように、ウィレムは呟いて。
最後に、精一杯の笑顔を向けて。
セフィリアの渾身の一撃を、まるで芝居の一場面の様に、眺めていた。
ウィレムの意識は少しずつ、確実に混濁していく。
完全に手放してしまうのも、そう遠くはない。
――それでも、まだ気を失う訳にはいかない。
ウィレムの意思に呼応するように、その魔靴の紋様がうっすらと光を発していた。
【口の中にナイフで攻撃】
【片腕欠損(?)意識朦朧】
アルテリアが、鉄塔を打ち放った。
雷光さながらに、鉄塔はゴーレムへと襲いかかる。
そして――轟音、大気を伝播する震動。
天に反逆する雷が、命無き石人形を教会への磔と処した。
教会――堕天使の末裔と忌み嫌われてきたサフロールにとっては、嫌悪の対象でしかない。
ゴーレムを見上げる彼の視線が酷く細っているのは、陽光のせいばかりではなかった。
「……まぁ、クソアマ共にしちゃ上出来なんじゃねえの?」
苦々しげに、呟いた。
散々見下し、罵倒を重ねたが、結果は文句が付けようがない。
「ま、メインプランの方も収穫もあった事だしな」
小さく付け加える。サフロールは作戦中、三人の天才を観察し、分析し続けた。
そこから導かれた結論は、彼の研究『天才性の分析』を確かに達成へと近付ける物だった。
作戦も最大効率とは行かなかったが、凡人には到底不可能な防衛を成し遂げた。
文字通りに傲慢なサフロールのプライドも、溜飲を下げていた。
後はさっさと司令部へと帰り、報告を済ませるだけだ。
そうして今日手に入った情報から研究を進めようと、サフロールは視線を逸らし――
>「ああ……苦労して作ったマキナが。模型を壊されたガキの気持ちがよくわかったぜ」
視界の端、教会の屋根に立つ男の姿が見えた。
咄嗟に、再び顔を上げる。
「……オイ、誰だテメェ」
微かな、だが苛烈な気迫を秘めた声が零れた。
ゴーレムの残骸が、証拠品が、収穫が、全て失われていく。
しかしサフロールは、それらに見向きもしない。
「いや、誰かなんてのはどうでもいい。肝心なのはそこじゃねえ」
拳を堅く握りしめる。
双眸を見開き、魔力を全身から横溢させた。
「肝心なのはテメェが、この俺を見下してるって事だ。俺を、この俺をだ」
堕天使の血が、神になれず地上へと堕された魂が、見下される事を忌み嫌う。
そしてサフロールは激憤と嫌悪の炎を瞳に宿して、猛り吠えた。
「ふざけやがって……!見下してんじゃねえぞ!誰であろうと、俺を見下す奴は許しちゃおかねえ!!」
>『そいつを逃がすな!暴走ゴーレムから何か抜いてやがったぞ!』
「クソ分かり切った事を何度も抜かしてんじゃねえよ凡人が!
テメェが言うまでもなく……あのクソ野郎には俺が裁きを下してやらぁ!!」
激情の叫び、同時に右腕を天高くへと勢い良く掲げた。
背中の翼が燃え盛る炎のごとく豪壮に広げられた。
舞い上がる魔力を受けて、空に創った天蓋が変質する。より獰猛に、凶悪に。
今まで遮っていた陽光を収束――そして指向性を与えて解き放った。
狙いは脚。逃走を封じ、何より二度と自分を見下せないように。だが目的は殺傷だけではない。
回避、防御、反撃に相手が魔力を使えば、サフロールはそれを捕捉出来る。
魔力を掴んでしまえば、それを分析して探知が出来るかもしれない。
ゴーレムに関する物品はまとめて消し去られてしまった。
故に新たに一つ、サフロールは証拠品を落とさせるつもりだ。
【ソーラービーム→足止めor『証拠品=魔力』を残させるつもりです】
『この悪女!雌犬め!取り返しのつかない事しやがって!!』
薄暗い路地で男女が口論している。否、口論というより男の一方的な私刑だ。
貴族の風貌をした男は、何度も女…しかもあどけない少女を鞭打っている。
しかし少女は苦痛に顔を歪めるどころか、男をせせら笑う。
『望んだのは彼女の方さ。ボクが大好きなんだって…アハハハハハハ!』
『黙れ雌犬ッ!よりによって゛遺才゛に手を出すなど…何を考えているッ!?』
男は少女の胸倉を掴む。
その弾みで、少女の古びた鎖で繋がれたペンダントが引きちぎられた。
刹那、少女の瞳が殺気で満ち、男の首を締め上げていた――――…。
【司令部/医務室】
「――――ッは!」
覚醒すると、医務室の天井が見えた。あのまま再び眠っていたらしい。
夢を見ていた。左遷される切欠になった夢。
昔の夢を見るなんて、どうやら疲れていたようだ、と胸元に手をやる。
こんな時は、マテリアルがあれば落ち着く……
「………………あれ?」
サッと血の気が失せる。無い。彼女と長年連れ添ってきた六芒星のペンダントが、無い。
「(どこ…!?ボクのペンダント……!!)」
確か、゛おにいさん゛に一度渡したのだ。取り返さなければ。青年は直ぐに見つかった。
ベッドで呑気に寝ている。プリメーラは猫のように忍び寄り、青年に飛び乗った。
「(どこに持ってるんだろ…)」
とりあえずポケットを弄る。無い。ズボンのポケット。無い。
シャツを剥いでみたが見つからない。
「(ズボンの中に隠すタイプなのかな…)」
脱がせば分かるか、とベルトを外してズボンに手をかけた所で、ふと視線を感じて顔を上げる。
青年と目が合った。青年が声を上げるより早く、手で口を塞ぐ。勢い余って鼻まで押さえた。
「お願い騒がないで!これにはワケが……!」
プリメーラの手を除けようと青年が暴れ、2人は揉み合って、
「きゃぁぁあああっ!?」
2人揃ってベッドから落ちた。
形勢も逆転し、プリメーラが逆に青年に押さえ込まれている状況だ。
端から見れば、色々と怪しい格好だった。
「あいたたたた…… !」
腰を強く打ったせいで上手く立てず、腰をさする。
瞬間、顔色を変えて、ずれた患者服を素早く直した。
まるで、股の付け根の何かを隠すかのように。
「あ、あの、ペンダントを探してて…おにいさんが持ってるんじゃないかって…その……」
しどろもどろに答えようとする。が、混乱して上手く言葉が出ない。
「ご、ごめんなさい……」
腰の痛みも相まって、目を潤ませて謝るプリメーラだった。
【中央区/教会前】
時間は少々経過し、ボルト小隊長の命によりプリメーラ達は中央区に到着していた。
「スティレットちゃぁああん!無事で良かったよおおお!!」
飼い主にまとわりつく子犬が如く、スティレットに抱きついて甘える。
「レイリン姉さんと姐さんもご無事で何よりですー!」
どさくさに紛れてレイリンとアルテリアにも抱きつく。
後は゛アイツ゛さえ居なけりゃなあ…とばかりに、サフロールを睨みつけた。
「(何で生きてんのよ、サフロール(カイワレダイコン)のクセに!)」
プリメーラはサフロールを毛嫌いしていた。
恐らく、サフロールもそうだろう。思想が真逆の二人は正に水と油だ。
帝都で顔を合わせる度に怪我人が出る大喧嘩をしていた程、二人の仲は険悪なのだ。
「あー腹立つ!腹立つったら腹立つぅう!!」
怒りに任せ、こちらを見ようともしないサフロールを呪い殺さん勢いで睨む。
その時だ。
>「ああ……苦労して作ったマキナが。模型を壊されたガキの気持ちがよくわかったぜ」
>「……オイ、誰だテメェ」
ハッと視線を剃らすと、奇妙な髪型の男がいた。
唖然とする中、どんどんゴーレムは回収されていく。
この時点で、決まっていた――あれは、敵だ。
>『そいつを逃がすな!暴走ゴーレムから何か抜いてやがったぞ!』
先んじて動いたのはサフロールだった。魔力を収束させ、男に撃つ。
ならばと、男が避けた方向へプリメーラは駆ける。
「『逃がしゃしないよ!!』」
マテリアルが輝く。すると、瓦礫が幾つも宙に浮かび、男(とサフロール)へ向かう!
【医務室→ペンダント返してーとお茶目を働いてみる】
【中央区到着。瓦礫を操作しクラウン1とどさくさに紛れてサフロールさんを攻撃】
剣を突き付けたままノイファは動かない。
自身の持つ遺才を最大限に発揮するには、攻撃の際の"起こり"に合わせ、カウンターを仕掛けるのが効果的だからだ。
(……内心はどうあれ、表情には出しませんか――)
クローディアに対する認識を改める。
先刻の対峙の際に切先より滲ませた剣気、並の手合いならそれだけで射竦めるだけの自身があった。
にも関わらず、クローディアは怯むどころか一喝すら返してみせた。
(――流石はメニアーチャの血統、といったところでしょうかね)
先代と先々代の頭首の商才によって、たった二代で平民から大貴族へと転身を果たした豪商、メニアーチャ一族。
その過程は並大抵のものでは無かったに違いない。当然多くの血も流れたのだろう。
その一切を一顧だにせず、不要なものは切り捨て必要なものは利用し尽くしてきた、尋常ならざる気概。
メニアーチャの名を世に知らしめた天性の才覚は、脈々とクローディア自身にも引き継がれているのだろう。
>「きぃーーーっ!ムカつくわ!ムカつくこと那由他のごとくだわ!このレイピア女!あんたは一番最初に抹殺してやるわっ!」
それもノイファが辟易するほど色濃く、だ。
(それにしても……よくもまあ、次から次へと啖呵が切れるものですねえ)
小さく嘆息を洩らす。同じメニアーチャでもこうまで違うものだろうか。
ノイファが良く知るメニアーチャは、静かな意思と、揺るがぬ尊厳、深い思慮を持った、大貴族という金看板に何一つ恥じない青年だ。
二年前に起こった未曾有の大災害、帝都大強襲。
それを乗り越えたという経験も、青年が押しも押されもせぬ帝国貴族と変貌を果たした大きな要因なのは疑うべくもない。
ふと、覚えた懐かしさに口元が緩むのを自覚した。
>「ああああああっ!そ、そのレイピアは!従兄(にい)さんが後生大事にしてた家宝の!」
それも、クローディアがあげた悲鳴によって直ぐに消えることとなったが。
彼女が目敏く見付けたのは、ノイファの持つレイピアに刻まれた意匠――大貴族メニアーチャの家紋。
現頭首ジース=フォン=メニアーチャから拝領した、絢爛な装飾と、実用に耐える剛健な鋭さを併せた、名品中の銘品。
「ああ、コレですか?誰も信じないような寝物語の褒美に、然るお方が下さいましたの。」
頬に手を当て、ひょいと掲げ、これ見よがしにクローディアへと見せ付ける。
「あらら、盗ったなんて人聞きの悪い。欲しいのなら欲しいと言えば考えますのに。」
つーんと、そっぽを向いてクローディアを挑発。
目的はクローディアの意識を此方へと向けること。何故ならそれが、彼女を追い詰める布石になるのだから。
>「かえせかえせかえせかえせかえせーーーーっ!!」
「やっぱりダーメ。それに、私にばかり気をとられてると思わぬところから脚を掬われるわよ?」
新たに空を舞う紙幣。突き付けられるクロスボウ。
そしてクローディアの横合い、完全な意識の外から鋼の拳を滑り込ませるレイチェル。
腕の先から延びた刃が、無防備なクローディアの胸元へ迫る。
それを見届け、ノイファは右眼の導線を切り離した。『予見』を使うまでも無い。
「ちょっと……どういう仕込みかしら、それ。」
必勝の確信を伴った笑みは消え、ノイファは驚嘆を隠すことなく呟く。
少女一人を刺し穿つには十分に過ぎる刃は、クローディアの服すらも貫けずに、その動きを停止していた。
>「フィン=ハンプティ。18才。『鎧の眷属』パンプティ家の末子。特殊技能は遺才『天鎧』……おっどろいた。アンタも遺才持ち?」
(貨幣を代価にした物質召喚術、じゃあ無いってことですか……)
完全にクローディアの能力を見誤っていた。
そのことに焦燥が募る。
遊撃課の切り札たる隊員たちの遺才情報は、本来重要機密に当たる筈なのだ。
にも拘らず、クローディアは何処からかその情報を得ていた。
民間警備会社に在籍していた過去を持つ、フィンのプロフィールを何処かで知っていた。というのとは訳が違う。
彼女の反応が予め知っていたのではないことを証明している。
なにより、クローディアがレイチェルの腕を受け止めてのけたのは、他ならぬ『天鎧』を自分の身で試したからではないだろうか。
他者の持つ才能すらも己の武器とする。もしそうならば、クローディアの持つ戦力は計り知れないことになる。
>「ははっ――――流石俺!有名人だぜっ!! それに、よくわっかんねーけど、お前の魔法か?
それ、面白そうじゃねーか!!お前を倒した後、色々出させてやるぜっ!!」
だが、遺才を使用されたかもしれない当の本人は、かなり明後日の方向に自身を鼓舞していた。
「何というか……ものすごい前向きな発想ねえ……。
まあ、でも確かに、敵である以上どうにかするしかないものねっ。」
再び、右目に魔力をつなげる。二度同じ轍は踏まない。
右眼に灼熱。間を置かず、立て続けに発動させた反動。それは気力でねじ伏せた。しかし長くは持ちそうもない。
>「ちゃちゃが入ったけど、さあ始めるわよ帝国軍!武力にもの言わすアンタ達を――あたしの経済力で叩き潰す!」
クローディアの言葉と、湯水の如くばら撒かれる金貨を合図に、交戦の火蓋が切って落ちた。
初手は雨あられと吹き荒れる攻性魔術の群れ。
降り注ぐ焔の矢、這い回る電撃の檻、舞い狂う氷雪の嵐。ありとあらゆる魔術が牙を剥いて襲い掛かる。
だがその悉くを、ノイファは避けてのけた。
着弾地点や構築箇所、発生する空間――その全てを把握。
やり過ごすために必要な手順、最適路の演算――これは経験で補う。
(まったくいやらしい、間隔を段々詰めて来てますねえ……、このままじゃ磨り潰される)
魔術による爆撃はじわじわと包囲網を狭めつつある。
もとよりいたぶる腹積もりなのか、それとも戦闘経験の蓄積によって精度を上げたのか。
唯一判っているのは、このまま手を拱いていたのでは逃げ場を逸するということ。
「だけど、貴女の相手は私一人じゃないからねっ。」
ノイファは大きく後ろに跳躍。
クローディアを相手に間合いを開けるのはまさに愚策。相手が得意とするのは面制圧なのだから。
だが空いたその場所に、何物をも徹さない無敵の盾が存在するのだとしたら――それは決して無駄な行動ではない。
>「……はっ――――どうした、全然軽いぜ「経済力」っ!!!!!!」
ノイファと入れ替わるように滑り込んだフィンが、クローディアの放った魔弾の悉くを受け止めた。
焔の矢も、電撃の檻も、氷雪の嵐も、止めと放たれた『滑空砲』の破城槌が如き弾丸すらも。
皮膚が裂け、血が飛沫き、あちこちが焼け焦げ凍て付いても、それでもフィンは倒れない。
>「――――ノイファっち、攻撃は任せた!!
んでもって、やばい攻撃がきたら俺の後ろに来い!!
たとえ軍隊が来俺が敵だろうと、俺が絶対に守ってやる!!」
「その呼び方はちょっと気易いんじゃない?うーん……でも、可愛いから良いかしら。
まあ、それはさて置き、ありがとね。その時は遠慮なく守ってもらうから――覚悟しておいてっ。」
頼もしい背中に返答と返礼を置き去り、身体を捻る。
飛び退いた勢いを前進のための推進力へと代え、フィンの脇を抜けてクローディアとの間合いを詰める。
大技の直後ゆえか、それとも金貨が底を尽いたのか、まばらな攻撃を全て先んじてかい潜る。
「――っ!」
『予見』の使用限界。負荷に耐えかねた右眼から零れる血涙。指先で拭い飛ばす。
「さてと、腕?脚?どっちが良いかしら?好きな方を選ばせてあげる――」
口端を笑みに歪めてノイファはクローディアへと問いかけた。
弓撃つように引き絞ったレイピアと、その切っ先に添えた指。
視線はクローディアの両目を真っ向から見据え、離さない。
「――なーんて、ね。」
放たれる剣身。閃くのは二回。
狙いは、クローディアが背負う『金庫』の留め具、その一点だった。
【クローディアへ肉薄。刺突2回。金庫の留め具を狙って落とすのが目的。
258 :
名無しになりきれ:2011/05/28(土) 21:08:17.81 O
蒸し暑い
259 :
名無しになりきれ:2011/05/28(土) 21:10:23.50 O
梅雨って1年のうちで最悪な時期だよな
260 :
名無しになりきれ:2011/05/28(土) 21:13:09.03 O
お前ら傘盗むなよ
>253-254
「プリメっちゃんにルインく〜ん、次の依頼だよーん!」
バーンと扉を開ける。プリメっちゃんがヘタレ君もといルイン君に押さえ込まれている。
「あれ? まさか……」
暫し間を開けてぽんっと手を打つ。
「東方の格闘技ジュードーってやつだね! 面白そう! 今度ワタシも誘ってよ!」
所変わって中央区。
ふぇんりるが怪我人の救出のために匂いを嗅ぎまわりながら着いて来ている。
「いよっ、便所飯君、こんにちワン! 挨拶すれば友達増えるよ!」
伸び縮みする笛を吹きながら堕天使さんの周囲をぐるぐる回る。もちろん特に意味は無い。
「わんわんわん!」
ふぇんりるが瓦礫の一か所で立ち止まって激しく吠える。瓦礫の隙間を覗き込む。
「大変だ、人が埋まってる〜。どっこいしょー!」
瓦礫はびくともしない。
>「『逃がしゃしないよ!!』」
「ナイスタイミング!」
プリメっちゃんが魔法で瓦礫をどかせてくれた。
「た、助かった……」
這い出てきた途端、お互いにお互いを指さす。
「あーっ、お前はー!」
「あーっ、キミ達はー!」
瓦礫の中から出てきた人達は……
「ジョジョジョジョジョの奇妙な音楽隊!」
でした!
ワタシを指さした奇妙な音楽隊の面々は言う。
「貴方様は我ら奇妙な音楽隊の指揮者!」
「そのとーおり!」
ワタシは自信満々で頷いた。彼らは歌の後遺症で記憶がおかしくなっているのだ。
「怪我人の救出とゴーレムの回収してるから手伝って〜」
「「「「「了解!」」」」」
やったね! 友達が増えたよ!
つ【瓦礫の中から奇妙な音楽隊を救出。友達増えたよ!】
263 :
名無しになりきれ:2011/05/28(土) 23:42:13.69 O
梅雨の時ってさー周りに半乾きのくっせー奴でてくるだろ
アレが何より嫌なんだよな
264 :
名無しになりきれ:2011/05/29(日) 17:44:11.87 O
雨うぜええええ
胴体を打ち貫く一撃で、とうとうゴーレムは活動を停止した・・・
しかし、いつの間にかその体の上に降り立つ人影が。
「・・・今回の主犯、でしょうかね」
真っ先に反応した水と油の二人組の攻撃に乗じ、フェイスレスの足元からも赤い波濤が教会に押し寄せる。
ゴーレムの胴体と、その上の男ごと巻き込むように強酸の波が大質量を伴って叩きつけられる
「どうやら、どこの国も考え付く策は同じというところでしょうか。」
異才の寄せ集め、それによる作戦行動・・・どこの国も持て余すのだろう。
わずか20に届かぬ異才持ちどもが暴れただけで今回のこの街はおそらく凄まじい惨状となっているはずだ。
今はまだ攻撃に隠れて姿が見えないが、おそらく姿を現したあの男も何の手段もなく出てきた訳ではないだろう
ことここに至っても尚、フェイスレスの姿勢は『見』のままだった
【中央区:クランク1へ、強酸の波を叩きつける。】
避難所に一切顔出さないとはいいご身分ですねド下手くそさん
お前なんかいなくたってスレは回っていくんだよ?
なのに誠意も見せられないの?
>「……はっ――――どうした、全然軽いぜ「経済力」っ!!!!!!」
クローディアが散財してぶっ放した滑腔砲。巨大質量の一撃が土煙の中に着弾し、大気に一際波を立てる。
果たせるかな、金貨10枚分の攻撃力は牙を向いてはくれなかった。晴れた埃の向こうに立っていたのはフィン=パンプティ。
血だらけで、薄汚れて、無傷とはとても言い難いが、それでも――家屋すら吹き飛ばす滑腔砲を受けて、五体の在るまま立っていた。
「『天鎧』……!!」
奇しくも先立ってクローディアを守った天鎧の防御力が、今度こそ彼女に仇なす結果となった。
舌を打ち、舌を巻く。防御だけに全てを費やした遺才。研ぎ澄まされた絶対の盾は、如何なる矛も通さない無敵の不可侵領域。
>「負けた仲間が情報を漏らしたら、情報持って攻めて来た相手から、それでも味方を全員守りきればいいだけじゃねーか!!
んでもって捕まった仲間を助ければ、万事解決だろっ!!」
「ばっ……!?」
フィンが搾り出した言葉は、軍人が吐くにはあまりにもお粗末な理想論。
そして――武人が叫ぶならば、この上なく魅力的な提案だった。そしてクローディアは、生粋の文人だった。
「ふざっけんじゃないわよッ!わけわかんない!超弩級の意味不明よ!無責任なセリフでお茶濁そうとしてんのがヨミヨミだわ!!
語るだけならタダでしょうよええそうよ!実行には責任と費用が掛かるの!安月給のくせにデカいこと言ってんじゃないわよっ!」
だが。
『天鎧』フィン=パンプティは、体現していた。
彼の後ろには文字通り矢の一本も通らず、クローディアが大枚をはたいた大量の攻撃を、一つ残らず無力化し受けきっていた。
これが天才。その異質。この男は、自分の在り方を確定している。大言壮語を、己の全てで肯定している。
>「よーく目に焼きつけやがれクロなんとかっ!!
――――俺は、フィン=ハンプティは、お前が捨てる物も全部守り抜いてやるぜ!!!!」
「きぃいいいいいいっ!必ず失わせてやるわ……!このあたしにご足労させた足代は、高くつくわよっ!」
『守れなかった』クローディア=バルケ=メニアーチャには、その男がとても眩しかった。
直視できず、目をそらすように、レイピア女へ視線を移す。
単純な話だ。『天鎧』は防御の遺才で、言い換えれば『守るだけ』の能力。攻撃能力自体は危険視するものではない。
目下の問題はレイピア女だ。将校クラスであろうがなかろうが、先刻の術式連打を悉く躱し尽くした練度は並大抵ではない。
弾数の懸念もある。ただでさえ借金を肩代わりしたばかりで節約モードなのだ。この調子で避け続けられたらあっという間に破産する。
クローディアには、あらゆるルートから品を入手する、『買う』才能こそ恵まれていたが、資産を運用する才には選ばれなかった。
そのあたりが本家の従兄と違うところで、彼はそれに加えて人身を懐柔する術にも恵まれているのである。
そう、才能にも程度の差というものがある。
得てして血族の本家が強力多彩な遺才を得て、血の薄い分家には運良く才能を受け継いでも微々たるものであることなど珍しくない。
本質的なことを言えば、クローディアのそれは厳密な『遺才』ではなかった。
『濃い遺才』とそうではないものを区別する言葉がこの国にはない為に、一絡げに遺才と呼ばれているだけなのだった。
閑話休題。
迎撃するクローディアの硬貨術式をかいくぐりながら、クローディアの胸先まで肉薄したレイピア女が、不意に止まった。
右目から流血している。負傷によるものではない。まるでいつもの如くといった感じで、慣れた手つきで血を拭う。
(なにかの代償、あるいは負荷によるもの――?なにはともあれ、今がチャーンスっ!あたしはチャンスを逃さない女!)
果たして、それはチャンスではなかった。レイピア女は、一部の隙すら生じさせない洗練された所作で剣を閃かせる。
剣先がこちらへ。触れてもいないのに、その刃の冷たさを肉の奥に感じた。
その切れ味が、どのような結果を齎すか、直接的なイメージとなって彼女の脳裏に去来した。
>「さてと、腕?脚?どっちが良いかしら?好きな方を選ばせてあげる――」
一瞬。一瞬だけ、とてつもない気あたりがクローディアを襲った。
いつの間にか流していた汗が全て引き、ぞっとするような圧力が彼女のつま先からつむじまでを貫いた。
「ひっ――」
瞳孔が開いたまま戻らない。刃の輝きが異様に眩しくて、生々しい痛みの情報が脳内を加速して、剣の動きが酷くうすのろに思える。
そんなはずはないのに。
剣が来る。来る。来る来る来る。回避?防御?間に合わない。間に合うわけがない。
レイピア女は笑っていた。口端だけを緩める、それは平時ならば同性のクローディアですら見惚れるほどの柔和な美笑。
それが、今は、あまりにも凄絶な、獰猛な、猛禽の笑みを思わせた。あぎとを開いた捕食者は、きっとこんな顔をしてるんだろう。
そして、何も見えなくなる――
>「――なーんて、ね。」
景色が開いた。何も見えなかったのは、彼女が恐怖に耐えかねて瞑目していたからだった。
剣は正確に二回繰り出され、針の穴を通すような精密さでクローディアの背負う金庫の、皮の留め具を破壊していた。
右肩と左肩、それぞれをである。動く的の、小さな小さな留め具を、二つ同時に切断する、神業的な斬撃だった。
金庫が石畳に落下して、それを追うようにクローディアが尻餅をついた。目の前で微笑む女の圧力に、完全に屈服していた。
「あ……あ……」
腰が抜けてしまったのか、最早立つことすらままならない。
金庫を落とされた以上、引き出して使うことは不可能。クローディアにとっては、武装を解除されたに等しい事態だった。
命を奪わなかったのは、レイピア女の情けだろう。『泣いて謝るまで許さない』――最初から、そう言っていたではないか。
この気位。この品格。この技量。斜陽を背に立つ姿はまるで、英雄譚に出てくる品位煌々の戦乙女のよう。
「まさか……本当に……?」
この女は。2年前の帝都を救った――
不意に背中を預ける仲間の姿がフラッシュバックし、視線を回す。ナーゼムが、あぎとの中をナイフで蹂躙され、
あまつさえ――テーブルの残骸でタコ殴りにされようとしていた。
「っ!! ナーーーーーーゼムッッッ!!」
クローディアの咄嗟は機敏。袖に仕込んでいた銀貨――ナーゼムの給与の一秒分。掌に滑り落とし、魔術を発動する。
軍属ではないが、傭兵として戦っているクローディアやナーゼムは、『その身柄』こそが商品だ。
故に。
「来なさいっ!!」
離れたところで戦っていたナーゼムが、クローディアのすぐ傍へと召喚されてきた。
クローディアは足と腰に激烈な喝を入れて無理やり尻を上げると、獣のように金庫へと飛びついて金貨を掴めるだけ掴みとった。
「パンプティ!あんたに教えてあげるわ!あたしは仲間想いなんかじゃないけれど――商品は大事にする性質なの。
どいつもこいつもあたしの大事な商品をーっ!そりゃ傭兵は使い捨てかもしれないけどね!無駄遣いして良い道理もないわ!
あんたが全てを守るなら、あたしはあたしの財産を守る。天鎧なんかじゃ及ばない、金のかかった守りを実現してやるわ!」
金貨を――両手に抱えた金貨の全てを、魔術で彼女の力に変える。
ひときわ強い輝きのあと、クローディアを包みこむように金色の輝きが波を立てた。
やがて光が終逸したとき、そこにクローディアの姿はなかった。代わりに立っていたのは――馬車ほどもある、岩の巨人。
乙型陸戦ゴーレム、ミドルファイト3(豪華仕様)。インファイトシリーズとは別の設計理念のもと開発されたゴーレムで、
砲術戦に特化したスペックを誇る。両肩から生える二基の大口径魔導砲が主だった特徴であり、かの機を表す全てだ。
クローディアは操縦基に体を収めて、まっすぐと――先ほどまでナーゼムが戦っていた二人を見据えていた。
「イチャついてんじゃないわよーーっ!忌々しいから可及的速やかに、消えてなくなれーーーっ!!」
ミドルファイト3の砲門が開き、衝撃術の魔導砲撃が敵の二人を狙って発射された!
【レイピア二連撃によって金庫を落とされる。丸腰のピンチに、これまたピンチのナーゼムを召喚】
【砲撃戦ゴーレム・ミドルファイトを召喚して搭乗。セフィリアとウィレムへ砲撃】
アルテリアの放った矢、いやそれはもう矢と呼べるレベルの大きさではなかった、がまるで稲妻のようにレイリンの投げたゴーレムを完璧に打ち抜く。
一向に衰える気配のない力場装甲にレイリンは一抹の不安を覚えたが、それは杞憂に終わる。
放った矢がわりの避雷塔の性質が力場装甲を拡散させ、ついに耐えきれなくなり教会へとゴーレムはその巨躯を磔にされた。
「――それはあたかもゴルゴタの丘の上で磔にされたイエスを彷彿とさせは流石にしなかった、なんてね。
それは良いとして気分が良くなるほど豪快ね、帰って課長の奢りで飲みましょう」
そういって踵を返そうとした瞬間、あたりを強烈な威圧感が支配する。
素早く振り向くと、そこには一人の男が、レイリン達の前で仲間に指示を出す。
それは『天才』揃いの遊撃課相手にあまりにも愚かな行動であり、殺して下さいと言わんばかり、のはずだが、レイリンは動かなかった。
本能的に察したのだ、これは隙があるわけではない、絶対に負けるわけがないと溢れんばかりの自信、その余裕があるからこその隙だろう。
>『クランク6了解。遺才回収』
>『クランク4了解。遺才回収』
>『クランク7了解。遺才回収』
>「――クランク1。遺才回収」
数人の男女が混じり合った声が響くと、目の前からゴーレムのパーツが消えていく。
分厚い装甲、内部機構、途切れることなく続いていた魔力の供給、そして丸い玉。
どんな馬鹿でも、わざわざ回収しにきたのだ、どれだけ重要なモノか言われずとも察するであろう。
>『そいつを逃がすな!暴走ゴーレムから何か抜いてやがったぞ!』
今まで冷静さを失うことなく、的確に指示を飛ばしていたボルトの声に始めて焦りの色がにじむ。
レイリンは応えるまでもなく了承し、隊長角と思われるクランク1と名乗っていた男に飛びかかろうとする。
しかし、それより前にサフロールが動き出す、今まで遮っていた日光に指向性を持たせ、光線状にしてクランク1へと放つ。
その眩い光を前にレイリンは目が眩む。
吸血鬼は日に弱いというのは有名な話である、しかしレイリンから言わせれば大げさだった。
灰になるだとかはあまりにも馬鹿げていて、吸血鬼は昼に弱いといっても夜ほどの力を出せないだけであってまともに活動するのに何の支障もないどころか一般人何かよりは遙かに動ける。
そして、昼には吸血鬼としての性質が弱くなる代わりに、吸血鬼に対して効くと言われているものでも殆ど効かない。
逆に夜で吸血鬼としての性質が色濃く出ているときは、例えば十字架、銀などのものに対しての耐性が弱くなる、最もたかが十字架程度でどうにかなるものでもないが。
だが、今は夜として動いていた最中にこの強い陽光は、直接当たったものではないと言えレイリンにとっては厳しいものがあった。
「くっ……止め……オブテイン」
その中でどうにか立ち上がり、サフロールを止めようと動き出そうとしたレイリンだったが、そこに新たな刺客が現れた。
なんとプリメーラが今にも倒れそうなレイリンに抱きついてきたのである。
それにより完璧にバランスを失い、みっともなく尻餅をつく。
>「レイリン姉さんと姐さんもご無事で何よりですー!」
「ちょっと……今夜相手してあげるから、退いて……ね?」
息も絶え絶えに、プリメーラを押しのけると、プリメーラはクランク1とサフロールに向かって攻撃を仕掛ける。
レイリンの事情を知ってか知らずかは分からないが、不意を突いたサフロールへの攻撃のおかげで、光線状の攻撃は強制的に終わらせられ、レイリンはようやく立ち上がる。
「さてと、じゃあ一気に終わらせましょう」
一対多の戦いにおいて重要なのは波状攻撃、ゴーレムなどの巨大で固い相手には一斉攻撃も必要だが、相手は人、フットワークの軽い敵に対しては休む暇を与えずに攻撃する波状攻撃が一番適している。
それを分かっていたかどうか定かではないが、結果としてそうなったサフロールとプリメーラの連携攻撃(?)により回避先を潰されたクランク1へと瞬時に肉薄し、その速度を乗せた拳を繰り出す。
>「………強くねーなぁ。俺。………勇気もねー」
>「情けないよな。……一人じゃこうやって対峙すらできないんだからさ」
彼の身体から一斉に大量の魔力が噴出するだがそれはすぐに手に持った槍へと収束していく
>「でもまあ、頑張って臆病の壁を突き崩してみるか……!」
言うと同時に雷のような速度で駆けたかと思うとG-03の脚の一本を踏み台にして
>「これが臆病者の精一杯の勇気だぁぁぁぁあぁぁああああぁぁぁぁあっ!!!」
敵に彼の必殺の力を持つ一撃が当たりそして・・・
>「ざまーみやがれ! 大・勝・利〜〜!!」
クラッカーの音が鳴り響く
>「何だよ本当は強いんじゃん、ヘタレ君! ん? 強いのにヘタレ君っていうのはあれだよなあ。なんて言うの?
プリメっちゃん気絶しちゃったし早く帰ろう!」
敵は今の彼の一撃で倒されたのだと聞いて場の空気が徐々に張り詰めたものではなくなってくる
「……」
自分も自覚はこそしていなかったが、緊張していたようだ。少し気が楽になる感じがした
背負っていたプリメーラも意識が回復したのか。ほんの少しだが身動きする気配がした
やっと終わったのか、そう思った瞬間である
>『どこを見ているのですか? 私はここですよ』
それは余りにいきなりの事でなんなのか理解できなかった、しかしそれはすぐに驚愕に変わる
「…あの一撃でなぜ倒されてない?」
その声は目の前でルインによって倒されたはずである敵のものであった
敵の声が聞こえたのだろうかプリメーラは身体を強ばらせて自分の背中に強くしがみついていた
>『フフフ……どうやらあなた達を見くびっていたようです。楽しいショーをありがとう!
その命、今しばらく預けておきましょう! あなたたちならもっともっと楽しませてくれそうですからね』
>「勝手な理屈をぬかすなよ!俺は、俺達はおもちゃじゃねーんだぞ!」
起き上った彼が敵に向かって叫ぶ、しかし敵はそれよりも先に消えてしまっていた
>「こ、怖かった〜〜〜〜。………い、いや。これは別に俺がチキンなんじゃなくて
なんか化け物みたいな姿になって第二ラウンドとかになっても、その、困るしな。
ホントだぞ!別にあんな変人仮面が怖い訳じゃなくてだな……!あっあっ!今笑ったな!!」
彼の必死の言い訳はやはり彼の嘘のつけない人柄を表しているのか、ユニークなものだ
あれだけのことがあったのに辺りは一気に緩いものになった
「だめ…口元がどうしても笑っちゃう」
ついつい自分も噴き出してしまった
【司令部/格納庫】
あのあとプリメーラや彼(あとで名前を聞いたところルインというらしい)やほかの人たちをG-03に載せて
再び空中に浮いて一気に司令部まで向かった
今は部隊の隊長であるボルト=ブライヤー 氏の指令があるまで各自待機とのことで司令部にいた
そして自分は格納庫に自分用に列車で運搬しておいた工具や甲型ゴーレム、工作機械などを整理し終えて
G-03以外の運搬する際にバラした乙型を組み直しているところだ
「んーやっぱり隊長にいろいろと申請しようかな…」
辺りに人はいないので普段と違い少し大きめの声になっている
「第二格納庫や地下施設の建造許可とあとは…機材とかって部隊の経費で落ちるかな?他には…」
淡々と独り言をしゃべりつつ、的確に効率よく物凄い勢いでゴーレムが次々組み上げられる
なんとも言えない光景がそこにあった
【司令部の格納庫にて指令がでるまで待機、出されればすぐにでも運搬用の装甲ゴーレムで出発可能】
例えるなら、クルミだろうか
ヒトの頭とは魔獣にとって存外柔らかい
鈍く輝く処刑台が罪人の頭を簡単に噛み砕こうとした時だ。鋭い衝撃が襲う
噛めない、口を閉じることができない。
ナニかが引っ掛かっているのか?仮にそうだとしても魔獣の力に打ち勝っているソレはなんだ?
周りを見渡せばあの女はニードルデーモンの屍の上にいた
なるほど、合点がいった。低俗とはいえ同じ魔獣、そこらのモノより固い訳だ。
だが、所詮はその程度
「コノテイドォォォ、、小骨ミタイナモンダロォォォォ!!」
ギチギチと針がしなる。力を込めればソレすら砕くこと、訳無い。
しかし、眼前の相手はそれを悠長に見ていない
>「なぁバケモン。腕一本ぐらいならタダでくれてやるよ。釣りもいらないからさ。
ついでに口内炎もあげるよ。水さえも飲めなくなるかもな、喜べよ」
口に広がる斬撃、刺突、斬撃!
今まで、どんな攻撃も大した怪我をしなかった。それは堅固な体だったからだ。
しかし、この内からの、まるで無防備な所を着いた闇雲な攻撃
今まで魔獣が出会わなかった
最後まで諦めない者の悪あがき
魔獣は悲鳴を上げた
「アアィ゛アアァ゛ァ゛ア゜ァイ゛ァア゜アアッッ」
悶え苦しみ、暴れ回る。
その度に牙が男の腕を傷つける。しかし攻撃が緩まることはない
だが、魔獣の口はいつまでも女々しく悲鳴をだすモノではない、相手を恐怖させる咆哮を上げる為にある
「ガ゛アァ゛ァァア゛゛ア!!ナメンナァアアァァ!!!」
血に塗れた口の中に輝く針がへし折れた。引っ掛かりもなくなり勢いよく牙が落ち
――咬みついた。
さぁまずは腕一本頂くか
完全に切断するために力を更に込め
>「バリントンを……はなせぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!」
られなかった
先程のナイフなど比ではない。巨大なゴーレムで殴られたような衝撃が側頭部を襲う
「ガッハァァッッ!!」
ついに捕えた、という油断が災いした。
呻いてしまった、口を開けてしまった、放してしまった。
少年はすぐさま距離をとる。
腕は重傷だが、とにかく生きている。
トドメを…、させなかった…?このオレが…?
ふがいなさに怒りが込み上げ
悔し紛れに腕を振り回して暴れる
周りの全てを壊し、己の腕の傷が更に広がり、
剣が抜け落ちても獣の怒りは収まらない
「ガァ! クソガッ、クソガアァ゛ァ゛!!
ナンナンダテメェラ!オレガ怖クネェノカ!!?
ア゛ァ、痛ェ畜生…、オレハバケモノダゾ…、壊スコトシカデキナイ天才ダ…!」
血を吐き、悲痛に叫ぶ声が響く
彼は、寂れ、そして平和な村の平民の出だった。
天才とは無縁の家系に生まれ、天才として、それも一際悍ましい異才として生まれた
異才を覚醒させてから彼は愛されない、否定されつづけた人生だった
父を殺してしまった。母に否定された。故郷に殺されかけた。
自分のチカラが大嫌いだ。こんなチカラを持ってしまった自分が大嫌いだ。
だが、この組織は、この仕事は、この仲間は…
このチカラを必要としてくれた。
期待に応えたくて、今まで何度血に染まっただろう。
これからも変わらない呪われた人生かもしれない。
だが、必要とされることは「救い」なのだ。
だから…
「ココデ、負ケタラ…、オレノ存在ハ何処ニモ無イ!ソレダケハイヤダッッ!!」
砕けた破片が宙に舞い、鋭い破片が二人を狙う
礫の対処に一手遅れるはずだ。
「っ!! ナーーーーーーゼムッッッ!!」
まるでタイミングを合わせたかのようにクローディアの合いの手が入る
途端に場面は変わり、眼前には別の女がいた。
先程と自分と同じ、勝利を確信し、油断した表情をした…
「! モラッタアアァァァァァ!!!」
腕を横に凪ぐ。既にこちらは限界に近づきつつある
この一撃、例えこの腕ちぎれようと決める!!!
【ウィレムを解放、セフィリアの剣も抜けた】
【二人を礫で牽制後、クローディアによってワープ ノイファに決死の覚悟で攻撃】
「西区連中に言っとけ。軍の部隊と合流して怪我人の救出と手当、それから暴走ゴーレムの『元』になった機体の回収。
中央区のアレはもう使い物にならねえだろうからな……申し訳程度でいいから適当に成果を掘り当てろ」
「ひ、ひゃい……。失礼しました……。」
痛む鼻を押さえ、涙を堪えながらフローレンスは退室した。
夜の姿は、どうも調子が狂ってしまう。エルフの時のまま振る舞おうとするからだろう。
こればかりは直らないだろうなと何度目になるか判らない嘆息が出た。
「さて、皆さんを集めなければ……。」
差し当たって、まずは医務室に向かうことにする。2人とも、そろそろ目を醒ましている筈だ。
なるべく音を立てぬよう、医務室のドアをゆっくり引く。
「失礼します、遊撃課のフローレンスで……。」
自己紹介しかけて、フローレンスは文字通り凍りついた。
場所を間違えた。その言い訳が通じたらどんなに良かっただろう。
ルインが、プリメーラを押し倒していた。しかも服がはだけている。
フローレンスは迷わず、ルインに大股で歩み寄り、きつい平手をお見舞いした。
「神聖な医務室で、しかも怪我人になんてことを……。恥を知りなさい!」
顔に紅葉を散らしルインを叱りつける。まさか事故だったとは露ほどにも思っていない。
緊迫した空気が張り詰める中、やにわにロキによって豪快に扉が開かれた。
その場で瞬時に空気を読んだかは分からないが、ロキは手を打って呑気そうに笑った。
「東方の格闘技ジュードーってやつだね! 面白そう! 今度ワタシも誘ってよ!」
「……じゅ、じゅーどー?かくとーぎ?」
「あ、あの、ペンダントを探してて…おにいさんが持ってるんじゃないかって…その……」
追い打ちをかけるように、プリメーラ自身が事故であることを説明した。
何てことだ。とんでもない勘違いをしていた事を諭され、更に顔が朱に染まる。
形容し難い空気が流れ、フローレンスはおろおろとするばかりで。
「ご、ごめんなさい……」
「す、すみませんでした……。」
結局二人は揃って、ルインに頭を下げるのだった。
【格納庫→中央区】
「ストラトスさん、いらっしゃいますか?」
格納庫に入室すると、ストラトスが訝しげにフローレンスを見る。
まさか目の前の女性がリードルフである事を知らない。頭を下げて自己紹介する。
「初めまして、遊撃課非常勤のフローレンスです、リードルフの姉ですわ。どうぞお見知りおきを。」
早速ですが、と西区に集っていたメンバー達を見回し、任務の概要に入る。
中央区に向かい、怪我人の救出を最優先する事を説明し、リードルフとは後で合流すると流しておいた。
そしてストラトスの運搬用ゴーレムに乗り、面々は中央区へ向かう。
「あれは……遊撃課の方でしょうか?」
フローレンスの視界に、背中に羽を生やした少年が映る。腕章は遊撃課のものだ。
少年は戦っているらしい。戦いは既に収束したものと思われたが、どうやらまだ終わりではないらしい。
一足早く降り立ったのはプリメーラだった。しかし方向は遊撃課の腕章をつけた女性たちの元だ。
金髪の女性に抱きついて甘えたかと思いきや、今度は敵と思わしき男と少年に瓦礫を放っている。
敵は彼らに任せよう。何より『今』は人間であるフローレンスは判断し、ルイン達へと振り向く。
「これより戦線の渦中の人達を避難させます。ストラトスさん、私を緊急避難所まで!
皆さんは怪我人を運んできてください。治療も手伝ってくれると助かります……ルインさん貴方もですよ?
スイさん、貴方はその鳩で東区や西区の怪我人も運ぶよう伝えてください。では……状況開始です!」
ロキ達もゴーレムから飛び降り、フローレンスは中央区の緊急避難所に降り立つ。
怪我人が皆、治療を待っていた。両頬を叩いて緊張をほぐし、集まった怪我人に大声で伝える。
「皆さん、応急手当をしますので一列に並んで下さい!重傷人を最優先に!」
【中央区に到着。緊急避難所で手当てを開始】
鼻歌を歌いつつ、窓から窓へと飛び移る。
スイは鍵の開いた窓を探していた。
「このあたりにありそうなんだがな…」
現在ブラピ号は優雅に空を滑空中。
ほどよく開いた窓を見つけ、もう一つ上の窓辺にずり落ちつつぶら下がる。
その体勢のまま軽く窓を蹴って部屋に着地した。
そこには…なんとも言えない光景が広がっていた。
ルインが、プリメーラを押し倒している奇妙な事態を、スイは冷静に対処しようとした。
「…発情期か。」
…冷静すぎた。
「子作りはいいことだが…場所は選べよ。」
フローレンスに張り倒されたルインを見ながら言った。
そしてしどろもどろになっている二人を見て一言。
「そんなこともあるさ。」
そしてロキに向かって言った。
「是非その格闘技、今度教えてくれないか。」
じゅーどー、という響きに魅力を感じたスイだった。
【中央区】
光の一線が、ゴーレムの上にいた人物を射抜こうとする。
続いて瓦礫が飛ぶ。
「……。あー、と。」
状況から見て、この戦闘状況は問題なさそうだと判断する。
そこにフローレンスの声が聞こえた。
>「スイさん、貴方はその鳩で東区や西区の怪我人も運ぶように伝えてください」
>「では…状況開始です!」
「了解。それと」
スイは鳩を指さし、言った。
「こいつにはブラッディピース号という立派な名前があるんだ」
それだけ言うと満足したので、ブラピ号に話しかけた。
「おまえの仲間たちにも力を貸してくれと言ってくれ。」
わかったと言うように、ブラピ号は羽を広げ、そのまま飛び立つ。
近くの森からは、何羽もの鳩が、西区と東区に向かって飛び立っていく。
きっと鳩たちは怪我人を誘導してくれるはずだ。
空に飛び立ったのを確認すると、スイは、フローレンスを補助するために、緊急避難所へと足を向けた。
【鳩たちが西区と東区へゴー。怪我人を誘導します。】
【スイはフローレンスの手当の補助にまわります。】
(……………ん…………ん?)
違和感を覚えたのは眠り始めてしばらくしてからだった。自分の上で何かが動いている。
寝起きでまともに働かない頭で何があったのかと億劫そうに首を動かすと
人が上にいた。
目があった。
思考が停止した。
叫ぶより早く口と鼻を塞がれる。息苦しさと寝起きの視界のぼやけで相手の顔がはっきり見えない。
何もわからない、という事実がルインの中を焦りと恐怖で満たしていく。
>「お願い騒がないで!これにはワケが……!」
(ま、まさか取立人が俺の内臓を売り払うつもりで…!?)
ルインにとって心当たりはそれしかない。
実際そんなことはまずありえない。が、突然の出来事で冷静さを欠いていた。
故に考えるより先に反射的に身体を動かし激しく抵抗していた。
足を動かし、相手の手を掴み、力任せに押す。結果───ベッドから落下。
「うおわぁぁぁっ!?」
しかしルインとて素人ではない。
情けない声を上げつつも、反撃を食らわぬよう相手を抑え込むことに成功した。
押さえ込んだ状態で恐怖からか呼気を荒げるその姿は色々とアブナイ。本当にアブナイ。
ふと相手の顔を覗き見る。え、と目が丸くなった。何故ならば不可解な行動を起こした人物が
>「あいたたたた…… !」
小さい娘もといプリメーラだったからだ。
「なななななななな何してんんんんんのっ!?何でっ!?意味がわかんない!」
「何故」とか「どうしてなんだ」といった疑問の台詞しか頭には浮かばず考えがまとまらない。
起きたばかりで頭がまだぼうっとしていたのもあったのかも知れない。
>「失礼します、遊撃課のフローレンスで……。」
二度のノックと共に現れたのは淑やかな女性だった。
女性は遊撃課の人間らしく丁寧に自己紹介を始めるが、場の惨状を見て瞬時に固まった。
そこで漸くルインも状況を飲み込みはじめたのか顔を引き攣らせる。
>「神聖な医務室で、しかも怪我人になんてことを……。恥を知りなさい!」
「え?え?い、いや、これは違うんです!これはただの事故といいますか……!違いますって!ちが」
果たせるかな、必死の説明はフローレンスの心に響くことなくばちんの快音と共に情けなく崩れ落ちる。
好感度が底を割る情景を垣間見た気がした。泣きたくなった。
そもそもパンツ丸出しの男の説明に耳を傾ける人間などいない。説得力なぞ全くない。
「うっ…ぐぐ……なんで俺が叩かれなきゃいけないんだ……」
初対面の女性にいきなり平手を貰ったのがショックだったらしく目の端には涙が溜まっていた。
涙目になりながら窓に目をやると影が見えた。
人かどうかは判然としなかったが今のルインにそれを確かめる余裕はない。
>「子作りはいいことだが…場所は選べよ。」
そよ風が医務室に吹いた同時に窓から華麗に床へ着地。窓の外にいたのはスイだったらしい。
窓から入ってくるというスイの奇行は現在の緊迫した空気の中ではよくある日常の風景に感じられた。
「知らん!一生涯童貞の俺にそんなアドバイスいら……いやそんな話をしてるんじゃない!」
いよいよをもってルインも調子がおかしくなってきたらしい。
緊張した雰囲気の中で時間はただただ過ぎていく。ロキはそれを崩すように絶妙なタイミングで現れた。
>「プリメっちゃんにルインく〜ん、次の依頼だよーん!」
ばんとノックもなしに扉が豪快に開く。しかし異常なまでの温度差に誰も言葉を発しなかった。
ロキもしばし沈黙し、やがて考えがまとまったとでもいうように手をぽんと叩いた。
>「東方の格闘技ジュードーってやつだね! 面白そう! 今度ワタシも誘ってよ!」
>「……じゅ、じゅーどー?かくとーぎ?」
やった、とルインは心の中で救いの手を差し伸べてくれたロキに心から感謝した。
意図的であるのか偶然のものであるのかは判然としなかったが。多分後者だ。
畳み掛けるように間髪入れずプリメーラの説明が入り、事態は全て丸く収まった。
>「ご、ごめんなさい……」
>「す、すみませんでした……。」
「い、いや……いいですよ、勘違いってよくあることだし………」
頭を下げる二人にどこか申し訳なさそうな顔をする。
しかし一つだけ腑に落ちないことがあった。
(何で俺の口塞いだんだろー……あ、後服とかどうしてあんなことに?)
未だ納得がいかず頭には疑問符が浮かんだまま。
言ってはいけないような気がしたのでルインは心の奥にしまっておくことにした。
【中央区】
ストラトスの運搬用ゴーレムから降りると、遠くにいる他の遊撃課の人達に恐る恐る一瞥をくれる。
(筋骨隆々のおっさん……傷だらけのおっさん………やばいおっさんだらけ…ひいいい!!)
───がそんなことはあるはずもなく。
むしろルインが想像していたようなむさ苦しいおっさんだらけではなく、むしろその逆。
女性率の多いことにようやっと気付きほっと胸を撫で下ろす。
そしてプリメーラが節操なく課員の女の子達に抱きつくのをみて思わず苦笑い。
(………甘えてんのかな。まあ、子供だし。)
まさか同性愛者だとは夢にも思わない。
「い、いや……安心しちゃいけない……もしかしたら戦うかも知れないんだぞ……!」
ルインは怪我人の救出とゴーレム回収優先だから、と半ば強引に連れて来られたが全く信用していなかった。
訝しそうに敵がいないか周囲を何度見回す。一体誰と戦っているんだろう。
向こうとは大分距離があったが、まだ戦闘が終わっていないらしいことが一層ルインを不安にさせる。
>「これより戦線の渦中の人達を避難させます。ストラトスさん、私を緊急避難所まで!
> 皆さんは怪我人を運んできてください。治療も手伝ってくれると助かります……ルインさん貴方もですよ?
> スイさん、貴方はその鳩で東区や西区の怪我人も運ぶよう伝えてください。では……状況開始です!」
「ほっ………良かった……嘘じゃなかったのね………」
随分と大きな安堵の声を漏らす。理由は勿論救助優先だからだ。
勿論そんな浮かれた気分で何故自分だけ釘を刺されたのかなど考えもしない。
早速与えられた任務をこなそうと足を動かす。負傷者はすぐに見つかった。
「ここにゴーレムの飛翔機雷に巻き込まれて怪我した奴がいる!重症だ!」
「任せてくれ!今行くぞぉぉおーーー!!」
喜び勇んで味方の帝国兵のところへ一直線。今までとは別人のようである。
勇気は欠片もないが人を助けようとする優しさくらいはルインも持ち合わせていた。
「俺は応急手当くらいしか出来ないから、止血して避難所連れて行こう」
てきぱきと応急手当を済ませ怪我人を乗せる即席の担架を作り上げた。
「って、担架は二人いないと使えないや。どうしよう………」
「俺が一緒に運ぶよ。だから大丈……いたっ!」
「肩を怪我してるんだから無理しない方がいいですよ。あ〜〜〜困ったな…どうしよう……」
くだらない事で途方に暮れる帝国兵とヘタレ。そこには天才のての字もない。
思わぬところで立ち往生を食らっていると一人の筋肉質の男が担架の端を掴んだ。
「あ、アンタは……?」
「“あんた”?あんたってェのは俺のことかいッ!?俺の名はたてぶえのジョセフ!
ロキさんの命令で救助活動中だ!初対面でぶしつけだがねェ〜〜〜ッ!手伝ってやるぜ!」
軍装ではない、民間人の出で立ちをした男が加わる事により解決した。
普通ならば訝しむがロキさんならありえるな、と一人で納得した。
いざ担架を持とうとしたところで、瓦礫に山に足を滑らせ綺麗に転んだ。
「ちょっ………大丈夫か!?」
「だ………大丈夫れふ……さあ避難所へ急ぎましょう。すぐ近くじゃまだ戦闘やってますから……」
と、爽やかな笑顔で答えるルインの額から赤色の液体がだらだらと皮膚を伝っていた。
破片で頭を切ったらしい。切り傷は少し深いらしく虚ろな目で明後日の方向を見つめている。
これには流石のお調子者のジョセフも焦った。
「全然大丈夫じゃねーだろうが!!ロキさーん!怪我人が増えてます!」
「ははは、いや大丈夫ですから本当に……ほら、俺って髪の毛が赤茶色だから……血っぽいから」
ルインは至極真面目な顔で言葉を搾り出しているがどう見てもまともではない。
ついでにその気概を戦闘中に見せるべきだ。
【負傷者が一名増えました】
レイピアと共にクローディアへと向けて疾駆するノイファ。
血を流すフィンは腕を組み、快活な微笑を浮かべながらそれを見送る。
その瞳に有るのは、ノイファが負ける事は無いであろうという一種の「信頼」であった。
防御の遺才である『天鎧』の血を色濃く受け継いでいるフィンだからこそ、判るのだ。
ノイファの「攻撃」面での強さと厄介さが。知識ではなく、本能的な部分で。
だから、周囲を見渡す程の余裕が出来た
そして、見てしまった。
「……な、っ、ウィレムっ!!?」
魔獣に腕を喰らわれんとしているウィレムの姿を
無事ではある様だが、その腕は鮮血に染まり、失血のせいで肌の色は蒼白と化している。
遠目にも判る。それが深い傷であるという事が。
「――――てっ、めえええええええっ!!!!!
ウィレムに……俺の後輩に何してやがるんだッッ!!!!!!」
ウィレムの速度を持ってすれば、攻撃を喰らう事は無い。
そう思って魔獣へと向かわなかった。その判断が、裏目に出てしまったのかもしれない。
そしてその結果、ウィレムは傷ついた。
理解した瞬間、仲間を傷つけられたという事実への激怒か、
フィンは明朗な彼には珍しく、強い怒気を孕んだ声を出した。
傷ついた自身の傷の事など忘れたかの用に魔獣へと駆け出そうとしたが
>「パンプティ!あんたに教えてあげるわ!あたしは仲間想いなんかじゃないけれど――商品は大事にする性質なの。
>どいつもこいつもあたしの大事な商品をーっ!そりゃ傭兵は使い捨てかもしれないけどね!無駄遣いして良い道理もないわ!
>あんたが全てを守るなら、あたしはあたしの財産を守る。天鎧なんかじゃ及ばない、金のかかった守りを実現してやるわ!」
だが、期せずしてその必要は無くなった
クローディアが叫んだその言葉と共に、魔獣ナーゼムがフィンとノイファの前に突如として君臨したからだ。
恐らくは召喚と似たような現象なのだろう。
そして、呼び出された魔獣は、ダメージを負ってはいる様だが、未だその凶悪な力は健在している。
それは見る者に恐怖と絶望を味わわせるには十分な迫力であった。
>「! モラッタアアァァァァァ!!!」
そうして、薙ぎ払う様な豪腕、命を叩き折るかの如き一撃が繰り出される
先程の砲撃と同じく……否、その攻撃面積を考えれば、それをも上回るかもしれない
まさしく破壊に特化した一撃。それは容赦無くノイファへと襲い掛かり
「――――させる、かよっ!!俺は言った! ノイファっちをどんな攻撃からでも守るって!!
んでもって、これ以上、仲間は傷つけさせねぇ――――例え、俺の命にかけても、だっ!!」
「よく見とけクロなんとかっ!!
テメェには、金よりも大切なモンを、俺が気付かせてやるっ!!!!」
刹那の後の交錯の後――――
その腕を、爪を、フィンが受け止めていた。
負傷した足で走ったからだろう。右足は鮮血で赤色へと変色しており、
魔法の雨で負った傷口からも血は流れている。
だが、それでも間に合った。
正に命がいらないかの暴挙だったが、しかし、フィンは魔獣からすれば遥かに脆弱な身体で、
魔獣の渾身の一撃を確かに受け止めていた。
超絶的な技巧を用いて、豪腕の衝撃を地面に逃がしたのだろう。
地面には円形にひび割れが生まれている。爪は――――ノイファには届いていない。
そう、フィンは確かに受け止めたのだ。
――――ただし、その代償は大きかったが。
よく見れば、魔獣の爪の一本がフィンの右脇腹を抉ってていた。
臓器は傷ついていない。致命傷ではないだろうが、それでも夥しい血が流れ出る。
持久戦になれば、失血で最悪命を落とす程の傷だ。
「……今度は、こっちの番だああっ!!!!!!」
だが、フィンはそんな様子はおくびにも出さず、その手甲を即座に魔獣の爪と爪の間に叩きつけた。
指の隙間というのは、どんな動物でも基本的には脆い箇所である。
如何なフィンが攻撃に向いていないとはいえ、頑健な金属を至近から渾身の力で叩きつければ、
それなりのダメージは与えられるかもしれない。
「ノイファ――――っ!!!!!」
膝を付きながら、フィンは背後のノイファに声をかける。
鎧は役目を果たした。次は剣の番だ。
【フィン、全身負傷及び、右足、右脇腹へのダメージ大。
ナーゼムの一撃を受け止め、一撃反撃を入れる】
>276
フローレンスと名乗る綺麗な女の人が現れた。リーフ君のお姉さんなんだって。
でも姉弟なのになんで種族が違うんだ? もしかしてリーフ君はチェンジリングなのか?
チェンジリング……妖精の取り換え子。ここでの意味は人間の両親から生まれたエルフの事だよ!
>278
>「是非その格闘技、今度教えてくれないか。」
「実はワタシもやった事はないんだけど今度一緒にやってみよう! きっと楽しいよ!」
>277
ストラトスの作ったらしい運搬用ゴーレムで移動する。
「すごいすごーい! 空飛ぶゴーレムが作れるって事はー天空の城も作れちゃうんじゃない?」
>279
>「こいつにはブラッディピース号という立派な名前があるんだ」
「血塗られた和平……多くの犠牲の上に勝ち取った平和……深い!」
>282
空飛ぶ絨毯を使って楽々と怪我人を運んでいると、声がかけられた。
>「全然大丈夫じゃねーだろうが!!ロキさーん!怪我人が増えてます!」
>「ははは、いや大丈夫ですから本当に……ほら、俺って髪の毛が赤茶色だから……血っぽいから」
「おわっ!?」
ルイン君は緊急避難所に強制連行と相成った。
避難所では多くの怪我人が手当を待っていた。とてもリーフ君一人では間に合いそうにない。
とりあえず叫んでみた。
「気合いだ、気合いだ、気合いだ―――ッ!」
「ええっ!? 気合で治ったら苦労しませんよ!」
と、ジョセフさん。
「確かにそうだね。どんなに勇気100倍でも負ける時は負けるし死ぬときは死ぬ。現実は残酷だ。
でもそれが当てはまらない世界があるんだよ。でも彼の地では想いが形になる……。
んでもって今この辺は少しだけその世界に近い状態になってるね」
おそらくは偽りの夜の原因となった何かの大技の余波か。この魔力は堕天使さんのものだろう。
「奇跡の霊薬ポーションだよ! どんな怪我も一瞬で治るよ!」
意味ありげな青い瓶に入った霊薬をルイン君をはじめとする怪我人に配って回る。
と見せかけて本当は何の変哲もない水である。
さてさて、プラシーボ効果の実験です。どれ位の割合の人に効果が出るかな?
【ルインを緊急避難所に担ぎ込んだついでに怪我人相手にプラシーボ効果の実験を始める】
いつでもなな板に戻りやすいように、レス置き場のレスを転載しています
振り下ろす木塊、重さ片手で数十キロ、樫の木は堅い、武器としては十分な……いや、十分すぎるほどの物
彼女の細い腕には不釣り合いながらもその遺才がそれを持つことを可能にさせる。普通の人間が片手で持つなどは考えられない物
持つことが出来るのが彼女の遺才!ガルブレイズ家の異端!『剣舞姫』と呼ばれる達人!教導院時代にグラス・リッパーと恐れられた少女!!
そんなものはいまは関係ない、ただのセフィリア、セフィリア・ガルブレイズとして、同僚のウィレム・バリントンの窮地を救おうとその持てるすべてを……
双腕が支える木塊に注ぎ込んだ!!
まだ出会ったばかりの友のために叫ぶ、期間は関係ない……共に戦場で剣を並べた
その事実だけで戦友と友と呼ぶことに彼女は疑念を挟む余地などは存在していない
ただ友のために、その魔物の強靭かつ凶悪な両腕が彼女の軽い身体を木の葉のごとく引き裂くかも知れない
その鋭い牙、大きすぎる顎が彼女の小さな頭を噛み千切るかもしれない
───関係ない───
そのような考えが彼女の動きを鈍らせることはこれっぽっちもない、そんなものよりここで友を見捨て1人生き残ることのほうがなにより怖い
彼女の能力ならそれは造作もないことだろう。ゴーレムを取りにいき、現在の圧倒的な体格差を逆転させ、仇を取ることもできる
おそらくだがウィレムはそう望んだかもしれない、だが、だがしかし! 彼女それを良しとしない
貴族の矜持か騎士としての責務か? いや、違う。ただ彼女がそういう人間だっただけだ
ただの実戦経験がない者の無謀な突貫と取られるかも知れない。事実はそうであろうが彼女はただ友のために恐怖を抑えての行動
そうただ友のために
>「ふはっ……さっきのもかわいかったけど……やっぱセフィさんは……そっちの方が似合ってまスね……
あ、そだ……次は……次があるのなら、その時は……ウィレム、と呼び捨てにして欲しいでっス……
家名で呼ばれるのは……あんまり好きじゃないもんで……ね」
頭を打つ直前に聞こえる友の声……死ぬかもしれないときに軽口を叩く彼に彼女は口の端を少し上げる
だが、彼の左腕が魔獣の牙に傷つけられ、いまだその口の中に捕らえられている
「うわぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」
怒りがインパクトの直前、さらに加速させる
>「ガッハァァッッ!!」
彼女の怒りの一撃が魔物の脳天に直撃した。同時に蹴りナーゼムから距離を取る
同時にくるは暴風のごときナーゼムの反撃、かろうじてかわす
背中に冷たいものが伝う……タイミングが一瞬でも遅れていれば死んでいた
恐怖が再び顔を出す、全身に緊張が走る。死神が彼女の首筋に刃をつきつけたような感覚
>「ガァ! クソガッ、クソガアァ゛ァ゛!!
ナンナンダテメェラ!オレガ怖クネェノカ!!?
ア゛ァ、痛ェ畜生…、オレハバケモノダゾ…、壊スコトシカデキナイ天才ダ…!」
周囲に響くは魔獣の咆哮
(怖い、怖い、怖い、怖い、怖い、怖い、怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い)
怖いに決まっている!
ふたたび溢れ出る感情に潰されそうになる。ウィレムの左腕のことを思い出すと怒りが恐怖を塗りつぶす
「よくも私の(友達の)ウィレム(家名で呼ばれるのがいやらしいので)を!」
怒りに任せて駆ける……
>「ココデ、負ケタラ…、オレノ存在ハ何処ニモ無イ!ソレダケハイヤダッッ!!」
ふいに聞こえる敵の独白……その言葉が彼女の動きを鈍らせる
負けたら自分の存在価値は……その才を疎まれ、左遷された自分の価値は……
「お前は幸運にも末娘だ!好きに生きるがいい!騎士になりたいと言うならそうすればいい! だが、その才に溺れるな!
その才に負けるな! その才を常に高めろ! そうすればお前は立派な騎士となり人々の憧れとなる! いいな!」
父の力強い言葉を思い出す、セフィリアはその言葉に元気よく返事したこともついでに思い出した
結局、彼と彼女の差はそういったところなのかも知れない、生まれによる不幸はいつの時代にもどこにでもあるのかも知れない
一歩間違っていればこの敵と自分は立場が逆だったかも知れない。一瞬、ほんの一瞬彼女の脳裏にはそんな考えが浮かぶ
気付けば目の前には瓦礫、彼女の頭にあたる。ごく小さいものでそれほどのダメージはないが、眼鏡が飛び、ぶつかったところから鮮血が一筋ながれる
隙が出来た!……かの魔獣の追撃はなかった。目を開けると魔獣は眼前ではなくノイファの前にあらわれる
いきなり移動に彼女は面食らうがどうやらクローディアの魔術によるものらしい
だが彼女にはそんなことを考えてる余裕はない。
「目が……! 目が痛い! 頭が……!」
突如、眼を抑え地面に座り込む
彼女の遺才は特殊だ。両手に持つ物を完璧に扱うためにそれに必要な身体能力も強化される。筋力、反射、持久力等々鍛えられる
その中でももっともその恩恵を受けるのが『眼』だ。戦闘にはその双眸が不可欠、驚異的な動体視力や物体把握能力などが脳に多大な負担をかける
そのために特殊な魔術を施し、眼の負担と脳の処理を軽減していた
眼鏡が負担を肩代わりし徐々に処理するそういう方式だ
それが無くなったために脳に負担が一気に来たのだ
「ああ……あ、あああぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」
激痛が彼女を襲う、これほど長い間の実戦は経験したことがない
その蓄積された負担がいま彼女を襲っているのだ。いま彼女はただの人以下だ
>「ガッハァァッッ!!」
浮遊感。
解放されたことに気づくのと、地面に着地するのは、ほぼ同時だった。
本能的に距離を取り、そして気付く。
――走れる?
さっきまで、息も絶え絶えで。いつ気を失ってもおかしくない状態だったのに。
視界ははっきりしている。息も切れていない。上から下まで、違和がない。
左腕が完全に使えずダラリと垂れ下がっていることを除けば、「元気なウィレム」がそこにいる。
理由はわからないが、まだ走れるみたいだ。
ただ、同時に。本能的に理解する。
こんなの、長続きするはずないと。
>「ココデ、負ケタラ…、オレノ存在ハ何処ニモ無イ!ソレダケハイヤダッッ!!」
「……俺たちが勝つことで存在がなくなる?どれだけあんたの存在ってちっぽけなんだよ。
はっ、なら俺の全身全霊を賭けて、お前のその存在を否定してやるよ!」
――全てを失なったとしても、それでも、何かは残るものなんだよ、絶対に!
飛んできた瓦礫など全く苦にすることはない。避けることなど造作もないのだ。このウィレムには。
いざ反撃に移ろうとしたところで……隣に立つ人物の様子がおかしいことに気付く。
>「目が……! 目が痛い! 頭が……!」
「せ、セフィさん?」
さすがのウィレムも目を丸くする。さっきまであんなに元気だったのに、まさかさっきの礫が?
いや両目を押さえている。いくらなんでも同時に両の瞳に礫が当たるなんてことはないだろう。
頭、も?
>「ああ……あ、あああぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」
いくらウィレムでも焦る。
セフィリアの攻撃力を当てにしていたところが十分ある。ウィレムのナイフは怪物の口の中に置いてきた。
そのセフィリアが戦えない?どうする?どうする?どうすればいい?
ふと気付くと目の前に居たはずの怪物がいない。視線を遠くにやると、さっきまで居なかったゴーレムが。
そして。
>「イチャついてんじゃないわよーーっ!忌々しいから可及的速やかに、消えてなくなれーーーっ!!」
砲撃が向かってくる。こちらに。すぐに逃げろ、だがここには蹲るセフィリアがいるんだぞ。
近づいてくる!着弾する!間に合わない――!
爆発。
「はは……遅すぎっスよ」
セフィリアを右手だけで抱え、乾いた笑いを浮かべる。『縮地』に、「間に合わない」は存在しない。
この遺才をもってすら本当に間に合わないのなら、それを認識することすらないからだ。
視界の隅にあの怪物が映る。瞬間移動でもしたのか?あの丸太のような腕でもって、攻撃を仕掛けていた。
そして当然、あちらにはセンパイがいる。重傷のようだが、守り抜いていた。
――嘆息。
もしそこに居たのがウィレムだったらどうだった?2人揃ってぐしゃりと潰れて御臨終。
センパイだからこそ、護れるのだ。どんなに強い力が働いても。
その傷については心配ではあるが、センパイだから大丈夫だろうと考えてしまうほどに。
さっき怪物に拘束されていた時も、センパイの声は聞こえていた。俺のことも、気にかけてくれる。
いつまでも、越えることは出来ないだろう。ウィレムの尊敬する人だ。
そして、考えてしまう。護られている人のこと。その人を護れるのは自分じゃないこと。
少しだけ、ほんの少しだけの嫉妬の炎が、ウィレムの胸を焦がす。
「大丈夫スか?……ただ、あんなのに対抗できるのは、セフィさんだけだから。大丈夫じゃないと、困る」
セフィリアに声をかけつつ転がっていた、眼鏡を拾う。枠に歪みはあるものの、硝子に割れなどはない。
現状ではセフィリアは戦えそうにないが、かといって余裕などウィレムにはないのだ。
ゴーレムに対抗できるのは、おそらくゴーレムだけだろう。セフィリアのゴーレムに目をやる。
ここからそれほど遠くない場所に。ほぼ無傷の状態で聳えている。
逡巡は要らない。セフィリアを抱えたまま、ウィレムはそのゴーレムの側へと走る。
「俺が時間を稼ぐっスから……なんとか、元気になってくれ」
セフィリアを降ろし、眼鏡をかけさせる。目が目がと言っていたので、これで少しはマシになるか?
見渡す。向こうの方。背中合わせのように並ぶゴーレムと怪物。
その近くに、転がっている、物体がある。さっきまでクローディアが背中に担いでいたモノだ。
留め具の部分が破壊されている、さっきの戦いで落とす羽目になったのだろうか。
金庫を守るように並び立つ2つの巨躯。常で考えるのなら、そんなところに近づくのは自殺行為だ。
だが、考える時間すら惜しい。
瞬時に金庫の元へと向かう。気づく頃には、ウィレムはもうそこにいる。
金庫に手を掛ける。予想通りだがむちゃくちゃ重い。ましてやこっちは片腕だ。
だが、それでも力を込める。歯を食いしばる。手から血が出る。
持ち歩こうなんて思わない。少しだけでも持ち上げることさえ出来ればいい。それだけ出来れば――、
――跳べる。
ウィレムの足下からの推進力で、金庫ごと、高くへ。高くへ。遥か上空へ、跳んでいける。
跳躍、のちの最終到達地点。
もう避難は完了した、市民は無人のダンブルウィード東区。その上空で、ウィレムは声高々に張り上げる。
この金庫が全財産だとは思わないが、財力を武器としているのなら、少しでも失われると、辛いだろ?
「さぁ皆々様お立会い!ここでとびっきりの良い知らせだ!
魔物に襲われてこの街、色んな被害が出ちゃっただろう?壊れたモノを直すのだってタダじゃない!
そんな時だ!なんと!あの大豪商のメニアーチャ家の方が、復興支援をしてくれるって仰せだよ!
こりゃもう足を向けて寝られやしないね!さぁ早いもの勝ちだ!」
もちろん市民に聞かせている訳ではない。すべては、地上のクローディアへと。
まるで魔導拡声器でも使用したかのように通る声で叫びつつ、ウィレムは金庫の引き出し口に手を掛ける。
何の予備動作もなく金を取り出すのは見ていた。つまりは、そういうこと。予想通りだ、鍵はかかっていない。
体に括り付けていたのならそう盗まれたりはしないし、何度も取り出さなくてはいけないその遺才からか。
常日頃持ち歩く財布にまで鍵を付け、毎回開錠して支払う輩がいるなら、それは心配性の枠を越えている。
銅貨が、銀貨が、金貨が、紙幣が。まるで雨のように、零れ落ちてゆく。
一陣の風が吹いて、つむじを巻いて。四方へ、八方へ、十六方へ。
とてもじゃないが、拾い集めきれやしないだろう。
金をばら撒いて、ばら撒いて、ばら撒いて、金庫の中が空に近づいて。
最後の一掴みでも、遥か遠くに投げようとして。
――そして、糸が切れた。
なぜこんなに動けたのだろうか、とんと見当が付かないが……限界だったのは、ずっと前からだ。
理由など考えても堂々巡りだ。神様が俺に力を与えてくれたということにしよう。無神論者だけどな。
結果として、もう指一本すら動かせない。目の前が霞む。色づいていた世界が、白黒に変わっていく。
俺がやれることはやった。あとはみんなにやれるだけやってもらおう。また笑顔で会えるといいな。
(とりあえず……もう……疲れた……かな……)
ここは空中。叩きつけられたら重傷どころの騒ぎではない高さだ。
それ以前に、ほぼ間違いなくあのゴーレムに撃ち落とされるんじゃないだろうか。
だけど、もう何も出来ないから。
ふらふらと漂いながら、落ちながら。
ウィレムは瞳を閉じる。
満足げな表情を浮かべて。
【気絶】
ゴーレムが沈黙したのを確認するとアルテリアは静かにため息をし、スティレットに視線を移す。
「レイスティンガー…カ」
確認するようにその名をつぶやくと、徐に矢筒に手をつっこみあるものを取り出す。
「いいセンスダ」
そういってスティレットにペロペロキャンディーを渡した。
「さぁテ、あのガチョウがどんな顔をしているか見に行くとしよウ」
そういってアルテリアは意気揚々と先ほどまでいた場所に戻っていった。
しかし、現場の状況は彼女が予想を裏切った。
大胆不敵に現れた敵によって言いようもない緊張感がただよっている。
ボルトの命令を受けすぐに射ろうとするも
>>「レイリン姉さんと姐さんもご無事で何よりですー!」
「離れロ!この豚女ッ!」
状況を省みずにタックルしてきたプリメーラによって邪魔される。
それを口汚く罵り蹴り飛ばし、改めようとするが、
サフロールの放った光、そして、プリメーラが飛ばした岩によって標的が完全に隠れてしまった。
「…チッ!!!」
不愉快そうに舌打ちし、しぶしぶ怪我人の救助にあたる。
敵の増援を発見した以上、この緊急避難所も安全とはいえず
アルテリアはそのまま避難所の警護についた。
>「奇跡の霊薬ポーションだよ! どんな怪我も一瞬で治るよ!」
>意味ありげな青い瓶に入った霊薬をルイン君をはじめとする怪我人に配って回る。
>と見せかけて本当は何の変哲もない水である。
「神も奇跡もないんだヨ!」
すぐさまロキに接近し、渾身の拳骨を落とした。
「どこの世界に酒瓶に薬を入れる医者がいるんダ!」
実は、ロキが渡していた瓶はアルテリアが最近ドハマリしていた酒の瓶だったのだ!
「何をするだぁー!!!」
ジョナサンが吼える。
「黙レ!この第一部捕虜!悔しかったら黄金長方形の回転でもやってみロ!」
先ほどまでのイライラが爆発したのか!怒りが露になり、その矢先がロキではなく
指揮者を殴られ燃え尽きるほどヒートしているジョ(略)ジョに向けられている。
【避難所を警備中、ロキの軽率な態度にキレるが、怒りの矛先はジョジョへ】
293 :
名無しになりきれ:2011/06/02(木) 19:58:27.45 O
戦場カメラマンって何がおもしろいの?
激痛が襲う、眼も開けられない
いままでは目が痛くなることはあったが、ここまでの痛みはない
(こんなときに……不甲斐ない!!)
頭の中で毒づいてもしかたがないが、痛みで声に出すことは出来ない
>「イチャついてんじゃないわよーーっ!忌々しいから可及的速やかに、消えてなくなれーーーっ!!」
メニアーチャのお嬢様の声がするがウィレムを連れて逃げないと! その想いに身体応えてはくれない
(不甲斐ない! 不甲斐ない! 不甲斐ない!)
自分は貴族で騎士だ! 民を守る使命がある。友を守る使命がある
……いつもならそんなことも考えていただろう
ゴーレムが近づく……セフィリアは動くこともできない
>「はは……遅すぎっスよ」
身体が急に浮き上がる。ウィレムの声がするのは彼が助けてくれたからだろう
ぎゅっとウィレムの服を掴み、振る落とされないようにする
「あ……り…が…とう、わたし……かるいで……しょう?」
振り絞るように声をだす、痛みが増し思考力が薄れていく、せめての軽口
>「大丈夫スか?……ただ、あんなのに対抗できるのは、セフィさんだけだから。大丈夫じゃないと、困る」
ウィレムが落とした眼鏡をかけてくれる
「これで……大丈夫。ありがとう……ウィレム」
立とうとする……ふらつく足、叩いて奮起させる。やっとゴーレムの足下に立つ
彼の期待に応えたい! その想いだけで彼女はゴーレムに昇る
>「さぁ皆々様お立会い!ここでとびっきりの良い知らせだ!
魔物に襲われてこの街、色んな被害が出ちゃっただろう?壊れたモノを直すのだってタダじゃない!
そんな時だ!なんと!あの大豪商のメニアーチャ家の方が、復興支援をしてくれるって仰せだよ!
こりゃもう足を向けて寝られやしないね!さぁ早いもの勝ちだ!」
始まるウィレムのパフォーマンス、敵の資金を使うその行動はとても滑稽で戦場という超緊張感が漂う空間でさえ
とてもおかしかった
セフィリアは笑うのをこらえながら、操縦櫃に身を埋めた
「さあ、サムちゃん。友達の期待に応えないといけないよ! 私とあなたなら出来る。さあ、悪いゴーレムちゃんを退治しようか!」
自分のゴーレム『サムエルソンmk3』に話しかける。語りながら魔術回路を次々と起動させていく、蒸気圧も問題はない
各部の魔術回路もオールグリーンを示す
さあ、私の時間の始まりだ
(ウィレム……時間稼ぎをありがとう)
彼の姿を探す……空で金庫の中身を投げようとしていた……が、急に糸が切れた人形のように落下し始める
「うそっ!」
ゴーレムを急速で移動させ落下点で待ち構える手のひらで相対速度を合わせ衝撃が内容にキャッチする
「ふう……あぶなかった」
ウィレムを狭い操縦櫃に入れると敵対するゴーレム『ミドルファイト3』に向き直る
「ゴーレムで敵対したのが運の尽き!私のサムちゃんが成敗してあげます!」
セフィリアはゴーレムに乗るとテンションがあがる
ブツリ――と、鋼の剣先は狙い違わず、遣い手の意思を忠実に実行した。
石畳へと落下した金庫が重々しい悲鳴を奏でる。
>「まさか……本当に……?」
地面に腰をつけたままのクローディアが、妙に熱の籠もった視線でノイファを見上げ、声を絞り出す。
「うん?ああ――」
ノイファは笑みを崩さず、しかしレイピアの切先は突き付けたままで、声に応じた。
「――ええ、もちろん。きちんとエミリーちゃんに謝るのなら、キレイさっぱり水に流してあげるわ。」
胸を反らせ、開いてる片手でぽんと叩く。
やや尊大に過ぎる調子かもしれないが、意思が挫けかかっている相手ならば反抗の芽を潰すのに丁度良い筈だ。
だが、そんなノイファの思惑とは裏腹に、クローディアの視線からは音を立てて熱が引いていく。
(え?あれえ?対応を間違いましたかねえ……)
右眼を苛む熱量はいまだ甚大。今日の使用は最早不可能だろう。
だから余裕の態度も、寛大な素振りも、全ては戦闘を回避するための虚勢。
今一度あの物量で攻められたら次を凌げる保障はないからだ。
>「アアィ゛アアァ゛ァ゛ア゜ァイ゛ァア゜アアッッ」
>「っ!! ナーーーーーーゼムッッッ!!」
そして魔獣の咆哮が場を席巻し、その声に気を取られた一瞬の隙をつかれ、止まっていた戦いの刻が再び息を吹き返す。
翻る金色と銀光。貨幣を介した召喚術。
果たして、クローディアは岩の鎧と魔導砲の剣を備えた巨兵を従え――
「こうして睨み合うのは二度目だわね……。」
――ノイファは本日二回目の、そして今度は至近距離で、ナーゼムと対峙するはめとなった。
魔獣の口から滴る夥しい量の血が大地を朱に染める。
ナーゼム自身のものか、それとも戦っていたセフィリアとウィレムのものなのかは判らない。
ただ、目の前の魔獣は激しい怒りに支配されている。その一点だけは確実だった。
>「! モラッタアアァァァァァ!!!」
「ふぅん。アナタ、案外流暢にしゃべれたのね!」
皮肉一つを残してノイファはレイピアを放った。無二の名剣といえども、ナーゼムが相手では荷が勝ちすぎている。
大地を穿つ剣。唸りをあげて迫る巨木の如き魔獣の豪腕。
前髪が揺れ、顔が引き攣る。背筋が粟立ち、口端が歪む。
回避する術も場所もない。ならば――
(――斬り拓くほか道はなし、ですねえ)
半ば捨鉢ともいえる覚悟。歪んだ口の端が釣り上がる。
引き延ばされる時間と知覚。ノイファは襲い掛かる絶死の一撃に対し、迎撃の構えを執った。
魔獣の豪腕がノイファに届くことはなかった。
>「――――させる、かよっ!!俺は言った! ノイファっちをどんな攻撃からでも守るって!!
んでもって、これ以上、仲間は傷つけさせねぇ――――例え、俺の命にかけても、だっ!!」
「フィン君っ!?」
ノイファとナーゼムの間へ割り入ったフィンが、己の身を盾として阻んだからだ。
五体を血で染め、何時倒れても不思議ではないほどの無数の傷を負いながら、それでもなお駆けつける。
誰もが憧れ、誰もが求める、絶対不滅の英雄像。天の鎧、フィン=ハンプティとはまさにそれだった。
しかし英雄とて不死身ではない。
とりわけ右脇腹を抉る爪痕は深く、早々に傷口を塞がなければ失血死しかねない。
「待ってて、今治療を――」
>「……今度は、こっちの番だああっ!!!!!!」
だが、回復を促すノイファの声は、他ならぬフィンの裂帛でかき消される。
どころか、苦悶の表情を浮かべることもなく、魔獣の爪の隙間へと手甲を叩きつける。
フィンは声に出すことなく、その行動をもって告げているのだ。いまこそ反撃の時なのだと。
>「ノイファ――――っ!!!!!」
「あーもう!貴方といいウィレム君といい無茶ばっかりしてっ、ホント似た者同士だわ!
倒れたりしたら……許さないからね!」
搾り出されるフィンの声に後押しされ、ノイファは走った。
一歩でフィンを置き去りにし、続く一歩で大地を蹴る。
着地するのは大地ではない。フィンが受け止め、延びきったままのナーゼムの腕。
針のような毛を掴み、甲殻の隙間へ指をかけ、先へ先へと疾走する。
肩口から鼻先へ、なだらかな鼻梁を踏み台に真上へ跳躍。
これ以上ないほど至近距離で、三度。視線と視線が絡み合った。
「流石にもう慣れたかしらね!それに意外と可愛い瞳してるわよ?アナタ。」
空中で姿勢を整え白刀を鞘走らせる。
孤を描いた切っ先が、大上段で静止する。そこまでが跳躍の頂点、あとは落下していくのみ。
限界まで身体を反らし、捩る。
最大威力の斬撃、狙うは魔獣の眉間。甲殻ごと、断ち斬ってみせる。
短い呼気とともに、ノイファは白刀を振り下ろした。
【ナーゼムの腕を駆け上り跳躍。落下速度も加えた斬撃を、眉間へ向けて振り下ろす】
297 :
名無しになりきれ:2011/06/03(金) 20:14:44.83 O
最近チョン押しばっかりでマジうぜえ
【格納庫】
>「ストラトスさん、いらっしゃいますか?」
格納庫で黙々と道具や機材の整理していると誰かが入ってきた
声と見た目からして女性であるのはわかったが今本部にいる人達の半分ほどには挨拶をし終えたと思っていたため
誰だろうとしばらく考えていると
>「初めまして、遊撃課非常勤のフローレンスです、リードルフの姉ですわ。どうぞお見知りおきを。」
なるほど、非常勤の…それなら見かけなかったのも納得できる
「こちらこそはじめまして、これからはよろしくお願いします」
それからフローレンスさんは西区メンバーを収集して「早速ですが、」と任務の概要を告げた
大雑把に要約すると「中央区を中心に負傷者の救出活動をする」というものだった
「それなら、自分のゴーレムを使うのはどうでしょうか。運搬用はすでに組み終えましたし、甲型ゴーレムの人形モデルだと50体までなら同時操作可能です。
といっても、瓦礫撤去にG-03のような乙型を使うので実質30体が限度でしょうが…」
大まかながら任務での役割が決定し早速、中央区へ向かうことになった
【中央区】
現在、運搬用のゴーレムに遊撃課の部隊と医療用の器具、乙型1機、甲型30機をのせて
中央区で戦闘が激しかったに向かって走行している
「やっぱ、これは振動が激しいすぎるからまだ改良が必要かな…」
そう考えていると徐々に建物の破壊が激しくなってきた。
それから更に進むと辺りには破損したゴーレムが見えだしてきた
>「これより戦線の渦中の人達を避難させます。ストラトスさん、私を緊急避難所まで!
皆さんは怪我人を運んできてください。治療も手伝ってくれると助かります……ルインさん貴方もですよ?
スイさん、貴方はその鳩で東区や西区の怪我人も運ぶよう伝えてください。では……状況開始です!」
「了解。ですがその前に甲型のゴーレムを10体ほど降ろして手伝わせます、
さすがにこの範囲でこの人数では時間がかかりそうなので。」
【緊急避難所に向かうことを了解】
砲塔から円状に広がる蒸気。魔導弾を吐き出した主砲がスライドし、戦闘用の蓄魔シリンダーを排莢する。
クローディアは胸部の操縦基に腰掛けながら、羊皮紙型の情報表示枠に目を通し、動力レベルを『強襲』から『戦闘』に切り替えた。
同時に動作形式をアクターモードからスレイヴモードへ。踵を上げて硬直していたミドルファイト3が緊張を解いた。
ゴーレム――傀儡重機の操縦方法には大別して2通りの種別がある。
中の人の四肢の動きをそのままゴーレムの動きに再現する、まさしく鎧のように動かす『アクターモード』。
操縦基に据え付けられた操作盤を通してゴーレムに命令を送り、奴隷のように動かす『スレイヴモード』。
前者は直感的に操縦できる上に操縦者の身体技能に比例してゴーレムの運動性能も上がる為、武芸者や兵士が好んで使う。
そして文民であるクローディアは、その逆――身体技能を必要としない代わりに操作が複雑な後者を常用していた。
『あーっはっは!勝った、勝ったわっ!!完ッ璧な不意打ち!流石は不意打ち界の麒麟児の名を欲しいままにするあたしだわ!』
わざわざ外部拡声管から外に高い声を響かせてクローディアは勝ち誇る。
敵は未だ砂埃の向こう。何やら頭を抑えていたテーブル女の方を砲撃してやった。ウィレムとやらはあの距離だ。まず間に合わない。
『あたしはやったわ!あとはアンタだけよナーゼム!お給料欲しかったらいいトコ見せなさい、査定は弾むわ――ッ!?』
瞬間、直感が脳裏に接近警報。クローディアの死角、ゴーレムの足元に、ウィレムが立っていた。
いつの間に?あさおこからどうやって?テーブル女は見捨ててきたのか?
――様々な疑念と逡巡がクローディアの右脳と左脳を高速でラリーする。あまりに速く、掴んで検めることもできない情報の嵐。
そうして硬直している間に、ウィレムはゴーレムの足元にあった金庫を担ぎ上げていた。
『なっ、何を――』
問うより疾く。ウィレムは跳んでいた。
金庫を担ぎ上げながら、『天才』の跳躍力で遥か直上の天へと辿りつく。そして彼は、胸いっぱいに息を吸ってから、叫んだ。
>「さぁ皆々様お立会い!ここでとびっきりの良い知らせだ!――
その言動が意味するところを瞬時に理解して、クローディアは顔から色を失った。
何をやろうとしているんだこいつは。マズい。これは絶対にマズい。それをされたら、私はもう戦えなくなってしまう。
止めないと――。ミドルファイトが彼女の意志を反映し、右腕に開いた中口径の連装魔導砲を向ける。
思考が上滑りして上手く魔力が練れない。操縦盤を握る手が泉のように汗を吹出す。努力むなしく、果たしてそれは起こった。
金庫の中身。クローディアが乏しい才で、まさしく爪に火をともす想いで貯めてきた硬貨が、紙幣が――全財産が、風に奪われる。
「あああああああああああああっ!!!」
故郷も後ろ盾も家族も財産も全て失った彼女が、金庫一杯の金額を貯めるのに、どれほど苦渋を啜ってきたことか。
裕福な家庭に生まれた、年頃の娘がするようなお洒落や美食やあらゆる幸せを溝に捨ててでも必死で金を増やしてきた。
最後の賭けの資産運用にも失敗し、『ピニオン』がその借金を肩代わりしてくれなければ、彼女はナーゼムと共に首を括っていたのだ。
傭兵に身をやつしてまで願った故郷・ウルタールの復興と、失った全てを買い戻すという彼女の切願も逃さず、風が再び奪っていく。
絶望が肺を絞めつけて、自然に叫びが漏れていた。怨嗟と、放心の呻き。目玉が眼窩から溢れそうなほどに見開いた。
波濤のように押し寄せる悲しみが、やがて確かな赫怒へ変わる。
「――――――ッ!!」
焼け付いた感情は、それ以上彼女に何も言わせず、ただ冷徹な動きをクローディアの指先へ喚起した。
レクティルの中央に、意識を失って墜ちていくウィレムを合わせて。せめて一矢とばかりに撃発命令を出した。
射出。閃光。轟音。
果たせるかな――魔導砲の一撃は、ウィレムを砕いてはいなかった。
戦場には、クローディアのものとは別の、もう一人の巨人が佇んでいた。岩肌の巨躯。ゴーレムである。
敵のゴーレムが、ウィレムを庇うようにして、砲撃を防いでいた。対人用の魔導砲ではゴーレムの装甲に傷ひとつ入れられない。
>「ゴーレムで敵対したのが運の尽き!私のサムちゃんが成敗してあげます!」
ご丁寧に、外部拡声器を使って挑発までかけてきた。聞き覚えのある声。あの頭を抱えていたテーブル女だ。生きていた。
ミドルファイトに装備された最新の精査術式が相手の機種を割り出す。乙種、陸戦ゴーレム。製造元・機体名称――
「『サムエルソンmk3』――はんッ!レオンチェフの型落ち旧型安物ワゴンセール品じゃないっ!!
威勢良い啖呵はケッコーだけど、あたしの『ミドルファイト3』、通称ミドっさんの敵じゃあ、ないわっ!!」
『サムエルソン』シリーズはその進撃能力から軍部での評判こそ良いが、mk3モデルともなると民生品として出回るほどに旧型だ。
帝国軍でも未だに実戦配備されている理由の一番は『安く、タフで、信頼性があるから』であり、まさしく究極の実用モデルと言える。
対するクローディアのミドルファイト3は帝都の老舗メーカー『エクステリア』の最新モデル。
生産性を度外視した高コストに見合う弩級の性能を持ち、進撃力こそサムエルソンに遅れをとるものの、実戦闘能力は桁違いだ。
「所詮は貧乏帝国の軍人ねッ!旧態然な現場主義は往々にして先進的な提案にとって変わられるものなのよっ!!
温故知新なんて老害どものプロパガンダだって思い知らせてやるわーーーっ!時代の幕開けをその目に刻んで果てなさいっ!!」
これ以上ないほどに勝ち誇りながら、クローディアはサムエルソンから距離をとった。
背面装甲から八基の砲門がせり出し、太陽へ向く花弁のように前方のサムエルソンを捉えた。
「資本主義バスターーーーっ!!」
計八発の大口径装甲貫通魔導弾が、あるものは直進し、あるものは弧を描き、あるものは時間差で、全てがサムエルソンへ殺到する!
着弾すれば装甲を貫通してゴーレム本体に甚大なダメージを与えるだろう。操縦者だって無事では済まない。そういう攻撃。
クローディアの戦力分析は、純然たる事実を紐解いているが故に、寸分の狂いもなかった。
誤算があるとすれば――そう。理屈を無視し物理を超越する現象、『天才』という乱数までは、クローディアにも見立て切れなかった。
【ゴーレムバトル!八門の対装甲魔導弾がサムちゃんへ!】
ゴーレム戦……セフィリアは実戦では初めて戦う。もっとも帝都での警護が主な任務の近衛騎士団がゴーレムを乗って戦うということがまずない
ならセフィリアの実力はたいしたことがない? そんなことはない個人所有のゴーレム、貴族が有する広大な敷地
総操縦時間は有に数千時間をゆうに超える。厳しい父の訓練と趣味の時間が半々
その彼女、自身の技術には絶対の自信を持っている「帝都一のゴーレム乗り』
そんなふうに自負しているほどである。あくまで自称なのだが……
彼女が駆るゴーレム『サムエルソンmk.3』
>「『サムエルソンmk3』――はんッ!レオンチェフの型落ち旧型安物ワゴンセール品じゃないっ!!
威勢良い啖呵はケッコーだけど、あたしの『ミドルファイト3』、通称ミドっさんの敵じゃあ、ないわっ!!」
クローディアの言う通り型落ちもいいところ、10年ほどまえにガルブレイズ家にやって来たときも、すでに進む新型機と交換のためである
幼いセフィリアの眼にその巨体は畏怖の対象としてではなく羨望の対象としてだった
「私もこんなに大きくてなりたい!!」
幼き日の彼女の願いが叶わなかったのは現在の姿が如実に表していることだった
彼女はこのセムエルソンを大切に扱った。幼い頃から整備を手伝い、拭いてあげることが日課だった
そんな彼女がクローディアの言葉に怒りを覚えないはずが無かった
普段なら……
だがその前にもっと彼女が意識を奪うことがあった
「ミドルファイト3!エクステリアのさ、最新型!まだ軍の一部でしか配備されてないのに!!どうして!
生産性は最悪! 整備性は劣悪! 武器は独自規格の特別製! エースオブエースのための機体!
私のサムちゃんとはカタログスペックが文字通り桁が違う!そんな……そんな……!」
彼女はミドルファイト3の搭載武装、装甲材質、魔力出力、開発者のコメントまですべての情報が彼女の頭に入っている
近衛騎士団の初任給で買おうと思っていた憧れの機体……初任給ではあと1000年分ぐらい足りないのを知った彼女は夜通し泣いたと言う
『出世しよう』彼女がそう心に決めたときだった
だから彼女は頑張った……必死で職務に専念した
頑張りすぎてここへ来た。この目の前の憧れを粉砕して自信の出世の道を開く
この旧式機で最新型のハイエンドモデルを撃破したとなれば噂になるに違いないっと考えている
>「所詮は貧乏帝国の軍人ねッ!旧態然な現場主義は往々にして先進的な提案にとって変わられるものなのよっ!!
温故知新なんて老害どものプロパガンダだって思い知らせてやるわーーーっ!時代の幕開けをその目に刻んで果てなさいっ!!」
セフィリアの言葉に勢いを増すクローディアの言葉……当のセフィリアは口の端を大いに持ち上げ、歪な笑顔を形成していた
「ええ、まったくその通り。古いことは駄目! ことゴーレム界においては古さがそのまま戦力の差になるといってもいい!
だから!」
ぶつぶつと独り言を呟く
>「資本主義バスターーーーっ!!」
「だからっっ!……」
そこから先は大口径装甲貫通魔導弾の発射音にかき消された
一歩も動かないサムエルソンに誰もがやられたと思うだろう。だが操縦櫃のセフィリアだけが余裕の表情でそれを魔弾を眼で追っていた
着弾寸前に急速後退、脚部の金属車輪のお陰で移動能力は高い、魔弾が地面に突き刺さる
直進してく魔弾が装甲に突き刺さる!寸前に装甲が爆ぜる魔力感知装置が作動し装甲に仕掛けられた『爆』の魔術が発動したのだ
俗にいう爆発反応装甲と呼ばれるもの装甲の破片が魔導弾を撃墜し時間差の魔導弾する巻き込む
「私のサムちゃんは常に最新最強なんです!!」
彼女は家のお金で最新の装備を買い、そのつどパワーアップしていた
だから中身は別物と言ってよかった。これが『サムエルソンmk.3』の最大の特徴『拡張性』
古いからこそ改良の余地がある。彼女はサムエルソンの長所をのばす装備を施していた
重装甲と……
「多収束飛翔爆弾発射!」
背部武装コンテナから炎を吹き上げ、二本の中型飛翔機雷がインファイト3に飛ぶ、着弾まで半分といったところで炸裂
中から無数の小型魔導爆弾が殺到していく、周りの被害など考えない
「これはほんの挨拶程度っ!!」
直線運動のエネルギーを華麗に円運動の動きで遠心力に変換し綺麗にコーナーを回る
その動きを止めることはない、常に動き続ける。本来のサムエルソンでは出来ない動き
彼女の整備とアッセンブリーと操縦技術が結集したスペシャル・マニューバといえる
「砲撃機としてもゴーレムとしても操者としても私たちが上であることの証のために!
私はあなた達に勝ちます!」
くるりと半回転しインファイト3を正面に捉える
コンテナから取り出すは大型低反動魔導砲、そこから放たれる砲弾、鉄塊……中にはぎっしりと火薬がつめられている『榴弾』
あたれば大抵の機体は大ダメージを受けるだろう。さきほどの小型魔導弾の是非によっては一発大破も十分ありうる
303 :
名無しになりきれ:2011/06/05(日) 22:33:23.00 O
アイスクリーム食いたい
「クランク1より各位。件の意味不明小隊と接触した。会話で出来る限り情報を収集したのち離脱する。
――つーわけで、こんにちは帝国軍のみなさん。おじさん君たちのこともっと知りたいなあ。一体何者なのk」
>「クソ分かり切った事を何度も抜かしてんじゃねえよ凡人が!
テメェが言うまでもなく……あのクソ野郎には俺が裁きを下してやらぁ!!」
クランク1が問いを発しかけた刹那、眼下の石畳から極光が迸った。
辛うじて視認できたのは、翼を生やした男がこちらに腕を向けている姿。収束された光の束が砲の如くクランク1へ殺到する。
「うわっと……おいおい、おじさんが話してる最中だぞ。途中で遮っちゃ駄目だろ」
クランク1は掌で応える。極光の矢が着弾する寸前で、ゴーレムに展開されていたのと同じ不可視障壁がそれを阻んだ。
極光は、まるで石に弾かれた雫のように大気中へ散っていく。
>「『逃がしゃしないよ!!』」
その合間を縫うようにして、瓦礫の散弾が飛来してきた。
全ての弾丸が、クランク1に届く前に虚空で停止し、見えざる手に握り潰されて細やかな破片の雨を石畳に降らせた。
「いや、だから、逆に考えてみ?ちょうど舌も回って気持ちよく喋ってる時にそうやって水差されるのは誰だって嫌だよな?
人が嫌がることをやっちゃ駄目だろ。喋りたがりのガキじゃないんだから。あと年上にはちゃんと敬語を使おうな」
放たれた瓦礫は極光の射手にも及び、熱線の瀑布が中断される。
間断を作らぬように、今度は人の姿が肉迫してきた。鼻先まで近づいたのは、軍では知らぬ者なき『血の戦乙女』。
>「さてと、じゃあ一気に終わらせましょう」
戦場で数多の敵を屠ってきた一撃は、ごく単純なストレートパンチ。ただしそれは、理を超越せし者の一発だった。
極光を防いでいた不可視障壁を正面から殴りつける。それだけで、光によって削られ続けていた障壁が破砕された。
硝子が散るの如く、割られた障壁の破片が放射状に虚空へ広がっていく。形を戻せない。拳は壁を割砕いてなお勢いを止めない。
「おっさんの忠告は聞いとくもんだぜ若人」
瞬間、砕かれた破片の一つ一つが禍々しい形状の刺に変形。その切っ先の全てをレイリンに向け、彼女を針鼠に変えんと殺到する!
クランク1が攻撃の成功を確信した刹那、彼の背後――教会の壁から刃が生えた。
音もなく突き出した長大な剣先は、濡紙を断つように岩造りの壁面を貫き破って、微塵も勢いを殺さずにクランクへ迫った。
それはまるで、壁の向こうから、壁など意にも介さず無造作に剣を振り抜いただけのようで、そして――事実そうだった。
「お……!」
崩行く壁の中から現れたのはフランベルジェ=スティレット。
口には何故かキャンディーの棒を咥えながら、両手で握った『館崩し』の刃筋を立ててクランク1へと叩きつける。
クランク1は咄嗟に、レイリンを攻撃する為の刺を総動員して館崩しの剣腹を打撃。刃の軌道を変えることに成功した。
振り抜かれた刃は誰を斬ることもなく弧を描いてスティレットの背へと帰っていった。
「やるねえ。真正面から突っ込んできた血の戦乙女は陽動、本命はこっちか!」
「ひゃいひょうひひゃっひょひひほへはひはふ!」
「口にもの入れたまま喋るなよ!そんなキメ顔して大事なセリフだったんじゃねえのか!?」
追撃をかけようと腰を落としたスティレットへ、クランクはただ指先を向けた。
「締まらねえなあ。少し黙ってろ」
ぎょん、と大気の軋む音がして、スティレットが吹っ飛ばされた。
砲撃や打撃を受けたのではない。まるで『後ろから引っ張られた』かのように背後の壁に叩きつけられ、崩れた瓦礫の中へ埋まった。
「あー無理だ。お前ら全然おじさんの話聞いてくれねえなあ。俺はただお前らの所属・規模・資本・現存勢力を
ちょっと知りたいだけなのに。人間同士のコミュニケーションって奴はさ、やっぱお互いを理解するところから始まるんだよな」
クランク1はぼやきながらレイリンの拳圏から退避し、再び姿を消した。
やがて彼がもといた十字架の上へと忽然と出現する。レイリンやその仲間達が立つ、その遥か直上の場所だった。
「やれやれおっかねえなあ、くわばらくわばら。クランク1、情報の収集に失敗。これ以上の接触は危険と判断。これより帰投する」
念信器の向こうから了解の返答があり、クランク1は懐から手のひらサイズの符を取り出した。
遠隔術式の一種で、これを破ると遠隔地に施術した術式が発動する、一種の撃発信号のようなものだ。
クランク1は躊躇いなくそれを破り捨て、中央区の空を吹く風に紙片を流した。
それは、暴走ゴーレム『マキナ』に仕込まれた最後の機構――自爆機能を起動する撃発符だった。
「それでは諸君、バッハハーイ。連中が軍人なら、もう会うことはないだろうけどな」
きっかり5秒の間があいて、磔になっていたゴーレムの操縦機に起爆の魔方陣が浮かび上がる。
もはや意味を成さない警告の後、教会周辺の全てを焼き尽くす規模の大爆発が中央区を包んだ。
【クランク1撤退。暴走ゴーレムに仕込まれた自爆機能が作動し、付近一帯を丸ごと包む大爆発!】
緊急避難所でフローレンスが重傷者を治療する間、スイは軽傷者を治療していた。
基本的薬草の知識のみ、リードルフにたたき込まれていたスイは、こんなところで役立つとは少し驚いていた。
「次!早く来い!」
だいたいの治療が終わりかけたところで、入り口付近が騒がしいのに気づいた。
そちらに目をやると、見知らぬ男と睨み合っているアルテリアと頭を押さえているロキ、血みどろで立っているルインを見つけた。
彼らに近づきとりあえず、ルインを引っ張って連れていき、避難所のベッドに乱暴に転がした。
「なんだ傷は浅いのか。」
未だ出血し続ける患部を見、ぼそりとそうこぼした。
重傷だったらフローレンスに押しつけて、面白そうなものが見れそうだと思ったのだが。
薬草を傷口に(盛大に)押しつけ、ガーゼを止めて、仕上げに一叩き。
「男なんだから、これぐらい我慢しろ。」
顔に笑みを浮かべながらスイはそう言い放った。
しばらく病人の相手を続けていると、外から激しい警告音。
慌てて窓から屋根に飛び上がった。
光景を見て、スイは引きつった笑みを浮かべた。
「おいおい……。自爆起動か。」
自嘲気味に呟く。
「おい、せめて避難所守るぐらい協力しろ。」
その瞬間スイの目に狂気が浮かんだ。
「うわ。さっきからぜんぜん面白くねぇ!俺は血が見たいの!この盛大に吹き出して流れる血が!!たまには見せろやぁぁあ!」
ひとしきり叫んで落ち着いたのか、俯いていた顔をあげた。
「まぁいいか。感謝しやがれ。俺様の特大級だ。」
ぶわりと風が巻き起こり、一気に、暴風の竜巻と化した。
それと同時に、爆発が起こる。
激しい炎が避難所を襲おうとするが風に遮られ、上へと舞い上がる。
衝撃波に体を震わせながら、スイは恍惚とした笑みを浮かべた。
「いいねぇ。ビリビリくるねぇ!前言撤回だ!これは面白い!」
狂った笑い声をあげながら、風は避難所を守り続けた。
【軽傷者とルインの手当→爆発から避難所を風で守る】
■プロフィール
ニックネーム ・・・・・・・・ あっちゃん
所属事務所 ・・・・・・・・・ 太田プロダクション
生年月日 ・・・・・・・・・・・ 1991年7月10日
出生地 ・・・・・・・・・・・・・ 千葉県市川市
血液型 ・・・・・・・・・・・・・ A型
スリーサイズ ・・・・・・・・ T161 B76 W60 H83
活動期間 ・・・・・・・・・・・ 2005年12月8日〜
所属チーム ・・・・・・・・・ チームA
趣味・特技 ・・・・・・・・・・ ブログ、映画、寝る、スキンケア、朝ごはんを食べる、岩盤浴、ショッピング
好きな食べ物 ・・・・・・・ 海藻類、紀州梅のはさみ焼き、梅干、干し貝柱、堅あげポテト、刺身、寿司、貝類、スイーツ、レバ刺し
嫌いな食べ物 ・・・・・・・ 杏仁豆腐、グリンピース、辛いモノ全般
好きなキャラクター ・・・ リラックマ、ダッフィー、メルモ
好きな洋服 ・・・・・・・・・・ NINE、ヒステリックグラマー
好きな花 ・・・・・・・・・・・・ バラ、かすみ草
好きな色 ・・・・・・・・・・・・ ピンク、白、黒、金
好きな映画 ・・・・・・・・・・ 私の頭の中の消しゴム、トワイライト〜初恋〜、ゴシップガール
好きなアーティスト ・・・・ テイラー・スイフト、マイリー・サイラス、ビックバン、KARA、YUI
チャームポイント ・・・・・ 目
得意教科 ・・・・・・・・・・・・ 英語
今1番やりたい事 ・・・・・ 釣り
■映画
├あしたの私のつくり方(花田日南子役、2007年4月28日)
├伝染歌(香奈役、2007年8月25日)
├那須少年記(笹原恵役、2008年6月)
├DOCUMENTARY of AKB48 to be continued 10年後、少女たちは今の自分に何を思うのだろう?(2011年1月22日)
└もし高校野球の女子マネージャーがドラッカーの『マネジメント』を読んだら(川島みなみ役、2011年6月4日)
■テレビドラマ
├スワンの馬鹿!〜こづかい3万円の恋〜(黒田比奈子役、2007年10月16日 - 全10話)
├栞と紙魚子の怪奇事件簿(紙魚子役、2008年1月5日 - 3月29日)
├太陽と海の教室(船木真由役、2008年7月21日 - 9月22日)
├松本サリン事件〜妻よ、母よ…犯人と"疑われた"家族 闘いと絆の15年〜(河野真澄役、2009年6月26日)
├こちら葛飾区亀有公園前派出所第六話(本人役、2009年9月12日)
├ドラマ24「マジすか学園」(前田敦子役、2010年1月8日 - 全12話)
├大河ドラマ「龍馬伝」(坂本春猪役、2010年3月頃 - )
├Q10(久戸花恋(Q10)役、2010年10月16日 - 全9話)
├桜からの手紙〜AKB48 それぞれの卒業物語〜(前田敦子役、2011年2月26日 - 3月6日)
├ドラマ24「マジすか学園2」(前田敦子役、2011年4月 - )
└花ざかりの君たちへ〜イケメン☆パラダイス〜(2011年7月10日 - )
■バラエティ
├AKB48ネ申テレビ(2008年7月13日 - )
http://www.fami-geki.com/nemousu/ ├AKBINGO!(2008年10月1日 - )
http://www.ntv.co.jp/AKBINGO/ ├週刊AKB(2009年7月10日 - )
http://www.tv-tokyo.co.jp/shukan_akb/ ├AKBとXX!(2010年7月13日 - )
http://www.ytv.co.jp/akbxx/ └なるほどハイスクール(2011年4月21日 - )
http://www.ntv.co.jp/naruhodo/