魔法、それは奇跡の力
魔法、それは夢を叶える力
魔法、それは笑顔を守る力
あなたに、願い事はありますか?
助けたい誰かはいますか?
叶えたい恋はありますか?
頑張って頑張って、それでもどうしても叶わない純粋な想い
もしあなたがそれを望むなら、
「魔法」はあなたに奇跡をプレゼントする事ができます
} `丶
/ ̄ ̄\ 「 \ __ -┴ ァ \ / ̄ ̄\
. / ´ / ヽ / ボ
| 魔 | \ __ く/ . | ク. |
| 法 | ∨ __ '⌒ Y } | と │
| 少 l _|{ '⌒ r:‐ヘ 八 ,′ | 契. |
| 女 | / 八 、:::ノ イ 丶. / | 約. |
| に │ , ⌒\/ , / ーァ T´ { \/\ | し │
| な. | ( (⌒ >く/ / . : / ',: :ヽ : 〈) ) | て |
|. ろ | 丶\{/ : : :/: : :./ ヽ-ヘ : : : //、 /
| う. l /\\_∧: : ,′| i i | ∨∧// : : :\_\___/
| よ. | (__ ゚: :。 :ーァ‐' : ; | | | | ー‐く: : : : :。: ゚ : _ノ
| │ /. : : :。人: : :.:! | | | | \: 。 : : : :)
♪ / (_/{:_:/ \:{. { ,' ノ \_ノ ̄
\__/  ̄> \)(/ く
/ / ̄ ̄ ̄\ \
'ー‐ ー‐'
【ブラック魔法少女TRPG】
【魔法少女とは?】
・叶えたい願いを持った人間が【悪魔】と『契約』する事で変身できる存在
・魔法少女は他の魔法少女の『魔法核』を奪うか、魔法少女を殺す事でその力を増す
魔法核を奪われた魔法少女は、三日以内に魔法核を取り戻さなければ廃人となる
死んだ魔法少女の肉体と魂は悪魔に食われる
・魔力か魔法核を集める事で、その魔法少女の願いを一つだけ叶える事が出来る
叶える願いの難しさによって必要となる魔法核と魔力の総量は変わる
・願いを叶えない限り、魔法少女をやめる事は出来ない
テンプレ
名前:
所属:
性別:
年齢:
性格:
外見:
願い:
魔法:
属性:
行動傾向:
基本戦術:
うわさ1:
うわさ2:
うわさ3:
それ、仮面ライダー龍騎のパクリじゃないすか。
契約するのはモンスターか悪魔かの違いだけで
願いかなえるのも同じだしwwww
参加希望です。よろしくお願いします。
名前:筋肉 とおる
所属:超日本プロレス
性別:男
年齢:25
性格:無鉄砲
外見:金髪のモヒカンなガチムチ男、変身するとあれが取れて女の子のフリフリの服を着る
願い:強敵と戦い、己を鍛える
魔法:閃光魔術、肉体強化
属性:筋肉
行動傾向:見敵必殺
基本戦術:キャッチ・アズ・キャッチ・キャン
うわさ1:契約した悪魔はプロレスの悪魔とか
うわさ2:48の関節技と52の殺人技を持つらしい
うわさ3:究極の必殺技を悪魔から伝授されたとか
6 :
毒太郎 ◆.LMqmG8Hlg :2011/02/23(水) 01:24:22.02 0
参加希望です
名前:毒太郎
所属:ふぐの毒被害者の会
性別:野郎
年齢:34
性格:温厚
外見:とっても良い
願い:ふぐの毒をこの世から消し去る
魔法:毒
属性:猛毒
行動傾向:目には目を毒には毒を
基本戦術:毒殺マンセー
うわさ1:独身らしい
うわさ2:包茎らしい
うわさ3:ドナルドのうわさ♪
そこの貴方、魔法少女になってみたくはありませんか?
――え?頭が湧くにはまだ肌寒いって?あっはっは、これは手厳しいですね。
いえいえ、わたくしは決して、そのような気の違えた類の者では御座いません。
まぁ百聞は一見にしかずと言う事ですし、まずはこれをご覧下さい。
――まず初めに鞄が開かれる――
――これはですね、魔法核と言う物でして。
ささ、お手に取ってみて下さい。大丈夫、危なくありませんよ。
ほら、何となく、不思議な力を感じるでしょう?
え?温感を刺激しているだけじゃないのかって?あっはっは、用心深いですねぇ。
では――それを握り締めて、念じてみて下さい。何を?何でも構いません。
欲しい物、好きな人、将来に望む自分の姿、何自分の考える魔法とは何か、でもいいのです。
それが貴方の『魔法』になるのですから。
おぉっと、出来ましたね。初めてにしては大変筋がよろしゅうございますよ。
――え?魔法少女になったとしたら、何をすればいいのかって?
――次に心が開かれた――
簡単な事で御座いますよ。ただ、同じ魔法少女と共に戦って、ゲームを勝ち残るのです。
そして戦いの中でずっと魔法核を失わずにいられれば、やがてその魔法少女は一つだけ、願いを叶えてもらえるのです。
何でも一つだけ、ね。えぇ、それだけです。
おや、魔法少女になってみたい?勿論構いませんよ。ですが願いを叶えるまで魔法少女をやめる事は出来ませんが……はい、分かりました。
――ご契約、ありがとうございます。
これで貴方は魔法少女です。同じ魔法少女と共に戦って、殺し合い、ゲームを勝ち残ってくださいね。
――え?どう言う事だ?言葉通りの意味で御座いますよ。あぁ、失礼。魔法核を奪い合い、が抜けてしまいました。
何故言わなかったのかって、ちゃんと申し上げたじゃありませんか。同じ魔法少女と共に戦って、勝ち残ると。
説明不足だ?それ以上の説明を求められませんでしたから、私は。
おやおや、いけませんよ。私はそのような魔法では殺せませんから。
あぁ、それはもっといけない。魔法核を投げ捨てようとするだなんて。
魔法核は貴方の夢や心と、強く結びついています。それが魔法の源ですからね。
それを奪われたり捨てたりしてしまったら、貴方は心なき廃人となってしまいますよ?
――そして真実が開かれて――
ともあれ、おめでとうございます。
貴方は晴れて魔法少女となりました。
貴方が魔法核を集め、願いを叶え叶える為にもう一度私と出会う事を、心待ちにしております。
――物語の幕が開かれた――
テンプレ
名前:闇のセールスマン
所属:不明
性別:外見上は男
年齢:不明
性格:商売人
外見:黒いスーツに七三分け、細いメガネに常時スマイル
願い:契約
魔法:口先
属性:闇
行動傾向:魔法少女の素質がある者を見つけ出して、契約する
基本戦術:魔法少女の素晴らしい点を前面に押し出しつつ、聞かれない事は一切伝えない
うわさ1:かつて倒そうとした魔法少女もいるけど返り討ちにあったとか
うわさ2:魔法核を集めると彼にも何かメリットがあるとか
うわさ3:でも結局は真偽のほども何にも分かってないとか
名前:坂上 南雲 (さかがみ なぐも)
所属:女子高生
性別:女
年齢:16
性格:フライトハッピー
外見:飛行服に飛行帽。銀髪ロング
願い:パイロットになりたい
魔法:マジカル航空戦闘機
属性:空
行動傾向:見敵必殺徹底交戦
基本戦術:ミニチュアから実物大まで大小様々な戦闘機を生成しファンネルっぽく戦う
うわさ1:極度の空軍系ミリオタ。ラプターがお気に入りらしい
うわさ2:魔力残量にもよるけど戦闘機から爆撃機輸送機偵察なんでもござれ
うわさ3:「おっパイロット」という本職にぶん殴られそうなギャグの為に豊胸運動を頑張ってるとか
そのうち参加します
10 :
名無しになりきれ:2011/02/23(水) 13:10:06.02 0
ちーんぽーーーー!!!!
名前:獅子堂 国刃(ししどう くろは)
所属:教師
性別:男
年齢:30
性格:シニカルを気取っている
外見:無精ひげのだらしない教師。いつも着ている灰色の背広はよれよれ
外見(変身後):大きな黒いトンガリ帽子と黒マントの黒髪美少女
願い:悪魔を殺したい
魔法:物体射出魔法
属性:風
行動傾向:戦闘は避けたがるが始まれば容赦しない
基本戦術:弾幕
うわさ1:娘は魔法少女だったらしい
うわさ2:嫁とは離婚している様だ
うわさ3:好物はカップ麺とか
参加します
弾幕とか書いてあると東方思い出してモヤるw
もう過半数が少女じゃない件
ちんぽこ禁止
名前: 奈津久 萌(なつく もえ)
所属: 県立高校
性別: 女
年齢: 17
性格: ストイック
外見: 変身前 紺ブレザー紺ハイソックス(制服) 黒髪を首の後で一つにくくっている
美人だけど目が死んでる
変身後 モンコン、パープラチアット、アンクルサポーター、バンテージ、タンクトップ、キックショーツを装着した
田丸ヒロシ風の筋骨隆々な姿になる
願い: ラジャダムナン、ルンピニー初代統一女子王者
魔法: 肉体及び感覚強化
属性: 蹴
行動傾向:やるとなったら先手必勝
基本戦術:前蹴り多用
うわさ1:女人禁制のラジャダムナン、ルンピニー両スタジアムで試合をするために悪魔と契約したらしい 伝統や格式って面倒くさいね
うわさ2:卒業後タイに渡るためにバイトを頑張っているらしい でも勉強もおろそかにしていないぞ
うわさ3:変身後のモンコンはわざわざ悪魔に外してもらうらしい じゃあ付けんなよってツッコミは無粋だ
よろしくオナシャス!
狙いすぎのネタキャラって寒いよ
手入れの行き届いた庭園にメイドが一人。
その動きは流麗でいて大胆に。
テーブルメイクという作業が優雅な舞にまで昇華されていた。
準備が整うと同時に……否、客の来訪と同時に庭園に完成された客間が出来上がっていた。
テーブルと椅子がニ脚。
そして紅茶のポットとカップ、ケーキ。
ただそれだけではあったが庭園に調和し、上質な客間となっていたのだ。
客は上空からやってきた。
箒に跨り、きらびやかな衣装。
「いらっしゃいませ。ちょうどお茶のご用意ができたところですのよ?」
にっこりと微笑むメイドに来客は驚き、臨戦態勢を取り警戒した。
お互いが悪魔と契約した魔女であることはわかっている。
願いをかなえる為に、戦いあう……戦わざるえない事も。
「どういうこと?」
来客はメイドを睨みつけながら短く尋ねる。
その視線を笑顔で受け流し、メイドは着席するように促した。
お互い殺しあう間柄とはいえ、恨みもなく、ならばせめて挨拶とお茶くらい、と。
戦いの日々を過ごしてきた客は、余りの想定外の申し出に毒気を抜かれ座ることに。
しかしそれで警戒をといたわけではない。
魔力感知で周辺に罠や魔法陣がない事は確認している。
殺気どころか闘気すらないメイドをテーブルに挟み、一挙一動も逃さず観察している。
腰はおろしていても、どのようなタイミングでどのような攻撃を受けようとも対応できるように。
「ねえ、いくつだか知ってる?」
「……え?」
テーブルの下で密かに魔力を練ろうとした瞬間に掛けられた問いに驚き、その真意を測りかねた。
が、その答えはすぐに得られることになる。
「183よ。私が願いをかなえるために必要な魔法核。
つまり、183人の魔女を殺さなくてはいけないの。」
柔らかな口調と冷徹なまでな内容。
メイドの表情はメガネの奥に隠れ、伺いしることは出来ない。
そしてさらにメイドの言葉は続く
「そして、あなたが183人目……」
言葉と共に僅かにあげられるメイドの右手。
その動きも、そこに込められたほんの僅かな魔力も客は見逃しはしない。
客が即座に立ち上がり、魔力を集中させ攻撃に移れるようになるまで数瞬。
メイドはまだ椅子に座っており、魔力も全く変わっていない。
「ふっ…!!!!!」
客がどのような言葉を発しようとしていたかは知りようがない。
言葉は紡がれることなく、メイドのカップに赤い飛沫がかかる。
直後、テーブルに頭部を失った客が突っ伏す音に一歩遅れて発砲音が庭園に響いた。
テーブルにじわじわと赤い領域が広がるのをメイドは恐ろしく冷徹な目で見下ろしながらカップを傾けた。
『ザザ…婦長様。あのー…』
「ファビオラ。これで達成よ。一緒に乾杯しましょう?」
一キロ先にいる部下の狙撃手にねぎらいの言葉をかけるメイド。
無線機からはしばしの沈黙が流れ
『婦長様?魔女の戦いってこういうのでいーのでしょーか?』
遠慮がちに質問する部下にメイドは今まで浮かべていた柔らかな笑みとは異質な……
全く異質な笑みを浮かべて応える
「魔女の戦い?なぜ?なぜそんなものをする必要が?
魔女を殺し魔法核を集めれば願いがかなう。
その為に魔法を打ち合う必要がどこに?
否、断じて否。
魔法で殺すのも鉛玉で殺すのも殺すことには何ら変わりもない。
ならばより確実に、より安全に殺す方法を取ればいいのよ!」
無線機越しからでも部下の怯えた様子がよくわかる。
そんな哀れな部下に、メイドは祝杯をあげることにした。
哀れな183人の生命とただ一つ叶う願いのために。
「さあ、私の願いもこれで叶うわ。お祝いよ!」
テーブルを赤く染める客だった肉塊にアルティメット焼夷弾を投げつける。
超高温の閃光は1キロ先の部下にも良く見えるだろう。
高らかに笑うメイドの貌は正に魔女のそれそのものであった。
名前:マジカルメイドロベルタちゃん
所属:南米十三家の一つ
性別:女
年齢:20代後半
性格:羊の皮を被った猟犬のふりしたターミネーター
外見:メイド
願い:若様のおねしょが治りますように
魔法:マジカル銃撃戦
属性:虐殺
行動傾向:目標に向かって一直線
基本戦術:火力命のゲリラ戦
うわさ1:掃除、暗殺、拉致、洗濯、拷問、破壊工作、料理、銃撃、秘書業務、なんでもこなすよ
うわさ2:南米中の悪党から命を狙われているけど、誰も手が出せないらしいぞ
うわさ3:黒髪三つ編みメガネっ娘のメイドだけど、萌えより燃えが似合うぞ
19 :
名無しになりきれ:2011/02/24(木) 22:38:38.90 I
センスねぇキャラだな
死ねよキモオタ
雑談所の次スレはここでいいの?
名前: 鳴海 警鐘(なるみ けいこん)
所属: 正義の味方
性別: 男
年齢: 45
性格: 正義
外見:カウボーイハットと全身白のシルクスーツ
願い: ブラックコーヒーが飲めるようになりたい
魔法: 出来ない
属性: 特にない
行動傾向:ハードボイルドな行動を好む
基本戦術: 殴る、蹴る、撃つ
うわさ1: 常に帽子を被っている
うわさ2: バイクが愛車
うわさ3: バイクが変形するらしい
ガチャピン「少女でない奴は消すよ?」
名前:層化大作
所属:偉大なる宗教家
性別:女だと言い張る
年齢:人間だと2歳
性格:器が小さい
外見:金正日
願い:世界を平和にする
魔法:大量破壊兵器
属性:独裁
行動傾向:布教活動
基本戦術:逃げる
うわさ1:勧誘がしつこい
うわさ2:勧誘を拒否すると嫌がらせにあう
うわさ3:勧誘を拒否すると○される
「ギャハハ!ほらほらどうした!もうお終いかよ!?」
夜空から叩き落としたボンクラに、猪間麻子(いのま・まこ)は罵倒の追撃を降り注がせた。
「だぁれに断ってこの街の夜を呑気に空中遊泳してやがったんですかねぇ!?」
暗く黒い地面の一部を覆って揺れる土煙に向かって、挑発的な言葉と唾を吐く。
「ほら、答えろよ!」
同時に右腕を振るった。手には黒線が握られていた。夜空に溶け込む黒線が猛然とうねり、土煙に迫る。
黒線が地面を抉った。巻き起こった風圧に、土煙が晴れる。麻子がボンクラと謗った相手の姿は、なかった。
「あん?ったく、何処へ行きやがった……」
直後に、麻子の背後から突風が襲い掛かる。
突風と化した魔法少女が。突き出した右手には、一振りの剣が握られている。
「おぉっとぉ!そちらでしたかぁ!今のはちょっと危なかったぜぇ!?」
だが白の閃きは麻子に届かない。
麻子の操る黒線は自在に姿を変え、鳥籠の姿を得て主を守った。
「にしても、ちょこまかとめんどくせえ奴だな。それに大馬鹿野郎だ」
更に黒線は変貌する。鳥籠が解け、刃の切先から蛇の動きで巻き付いていく。
ついには剣を持つ手まで、絡め取ってしまった。
「なーんでその厄介なスピードをさぁ、逃げ足として使わなかった訳?
アンタがアタシに勝てないのは明白だったじゃん。現実見えてないの?鳥目なの?」
嘆息を零して、麻子が首を横に振る。
相手の魔法少女は何とか黒線を振り解こうと足掻いていたが、無駄だった。
「まぁ、何でもいいけどさぁ。アンタもう、終わりだし」
冷徹な宣告と共に、麻子が乱暴に右腕を振り回した。
連れて黒線が大きく暴れる。相手の魔法少女を捕らえたままで。
そして放物線を描いた果てに、地面へと再び少女を叩き付けた。
麻子が反対側に腕を振るう。相手は先ほどと殆ど同じ動きを経て、また地面に衝突した。
麻子は何度も、同じ動作を繰り返す。
四方八方に、徹底的に。
「さぁーて、そろそろいい具合に挽肉予備軍になってる頃合いじゃぁございませんかねぇ?」
数え切れないほど相手を地面に叩き付けた後、麻子は黒線を手繰り寄せる。
ずるずると引きずられるがままの相手は、衣装も髪も肌も、傷だらけの血塗れになっていた。
「もしもーし、生きてますかぁー?つーか生きてるよなぁ。だって殺す気ねーし。
死体まさぐって魔法核探すのめんどくせーし?何より気分わりーし?」
微かに震えるだけの相手を、麻子は濡れた刃を思わせる視線で貫いた。
死にたくないのなら魔法核を差し出せ。出さなければ殺してから探るまでだ。
だったら大人しく出した方がまだ身の為だろうと、暗に告げている。
「……だ」
「あぁん?」
「……やだ」
「あーそうかい。だったら……」
「……諦めたくない」
一瞬、麻子の動きが止まる。そして――相手が立ち上がった。
恐ろしい執念を宿した形相が、麻子を更に一瞬、怯ませる。
「あぁあああああああああああああああああ!!」
決死の叫びと共に、剣が突き出された。
黒線の操作は間に合わない。切先が、麻子に届いた。
「……アンタさぁ」
半開きの口から、胸元に走った衝撃と共に、小さな声が吐き出された。
怒りとも、呆れとも取れる吐息が続く。
「これでアタシが死んでたらどうすんだよ。アンタ、人殺しだぜ?」
衣服の裂け目から、格子状の黒線が覗いていた。
黒線の正体は、鎖だ。交錯する細い鎖が、帷子として麻子を守っていた。
自由自在に姿を変え、あらゆる物を束縛する鎖。
それが彼女の魔法道具だった。
「だって……だって……!」
消え入るように呟いて、それきり相手は泣き出してしまった。
麻子が何度目かになる、溜息を吐いた。
「……傷が治るまで待ってやる。そしたら魔法核を出しな。さもなきゃ……」
凄烈な敵意の炎を迸らせる瞳で、麻子は相手を睨み付ける。
相手は視線を何度もあちこちに逸らして、必死に認めまいとしている様子だった。
が、やがて無言でいる事に、無言でいられる事に堪えかねて、小さく頷いた。
押し殺した嗚咽が、静かな夜闇に溶けて消えていく。
そのまま右腕で両目を覆って、相手が魔法核を差し出した。
せめて夢が終わる瞬間を、見なくても済むようにと。
麻子もそれが分かっているからこそ、乱暴に魔法核を奪い取った。
死神が大鎌を振るって、一瞬で命を刈り取るように。
そして、すぐにその場から飛び去った。
後には茫然自失の態で跪く元魔法少女が残される。
一度たりとも、麻子が振り返る事はなかった。
「……チッ、気分わりーな。もう一戦ばかし、派手にやらねーと胸がムカムカしやがる」
麻子が空中で立ち止まる。
空中に走らせた鎖を足場にしていた彼女は、不意にもう一本鎖を発現させて、振り回した。
金属の輪が互いにぶつかり合って、不可思議な音を奏でる。
魔法を感知出来る者のみが聞き取れる音だ。要するに、誘いだ。
ここに魔法少女がいる。一戦交えようと、誘っているのだ。
無論、この音は無差別に分け隔てなく、魔法少女なら誰にでも聞こえる。
複数人の魔法少女が来る事も十分にあり得たが――それはそれで楽しい事になりそうだと、麻子は獰猛な笑みを浮かべた。
エネミーデータ
名前:猪間麻子(いのま・まこ)
所属:貧乏な家庭→孤児院→違法風俗→放浪
性別:女
年齢:13
性格:荒っぽい
外見:野良犬のような目付き、伸ばしっぱなしの切り揃ってない茶髪、黒のタイトなジャケットにスキニーパンツ
魔法少女に変身すると、フリフリの衣装になるけど、長手袋とサイハイソックスを装備している。
願い:支配する側になりたい
魔法:鎖を発生させ、操る
属性:イメージ現象化型
行動傾向:好戦的
基本戦術:鎖を操って殴り、縛り、防ぎとバランスよく
うわさ1:父親に犯された事があるとか
うわさ2:人を殺した事はないとか
27 :
名無しになりきれ:2011/02/25(金) 18:40:54.46 0
ブラック魔女RX
>>26 鋭い呼気とともに右足を跳ね上げる。速く、しかし力は抜いて、足をしならせ、インパクト。
合皮に叩き付けられた足を振り戻し、敷マットの表面を蹴りつけて即座にもう一発。
同じ手順を踏んでさらに一発。途切れることなくミドルキックを繰り返す。
壁の時計の針が天頂へ戻り、ブザーが鳴った。
「エィッシャアッ!!」
最後の一発を気合と共に打ち込んで、その日の練習の最後のメニューである、同じ蹴り足でのサンドバッグ打ちを終える。
その後、温度の上がりきらないシャワーで汗を流し、まだ残っている数名に挨拶をしてからジムを後にした。
昨日と同じ帰り道。昨日と同じ疲れた体。
――違うのは、今の萌が"魔法少女"であるということだけだ。
大通りの間を繋ぐ、いつでも人気のない真っ直ぐな路地。
家に向かって歩いているまさにこの道の上で、萌は十字路の悪魔ならぬ"路地裏の悪魔"に出会ったのだった。
誘いに乗ったことを後悔はしている。だが運命は走りだした。
もはや最後まで走り切るか、途中で蹴り落とされる以外に道はない。
しかし、分かってはいても、決心し切れるものでもない。
当面は大人しくしているべきである。そう考えた萌は、とりあえずいつもと変わらない日常を送ろうとしていた。
路地の終わりに差し掛かる。"悪魔"と出会った、まさにその場所。
知らず、心拍が早まる萌の耳に、金属が触れ合うやかましい音が飛び込んできた。
ぐるりとあたりを見渡す。何もいない。視線を上に向ける。
月を背に立つ影が、そこに居た。
「……ええと。こんばんわ。じゃ」
言うなり踵を返して駆け出す。まさかなった翌日にいきなり別の魔法少女に出会うなどと、
頭の片隅にすらそんな思考を置いてなかったにしては機敏な反応ができたものだ。
萌はそんなふうに、どこかしら他人事であるかのごとく考えていた。
参加するぜ
名前: 浅倉威(王蛇)
所属: 異世界(龍騎の世界)で死亡→魔法少女の世界へ
性別: 男
年齢: 没年25歳
性格: 常にイライラしている
外見: 蛇皮のジャケット、ジーパン(茶髪)
変身後は紫色の鎧を着た戦士
願い: 戦いを続ける
魔法: 召還術(ミラーモンスター、武器)
属性: 毒(強酸)
行動傾向: 戦いを求める
基本戦術: ひたすら前進
うわさ1:不思議な力を秘めたカードデッキを持っているらしい
うわさ2:トカゲの姿焼きが好きらしい
うわさ3:一度死んだことがあるらしい
水を含ませたスポンジに洗剤を馴染ませて、泡立てる。
そして、使い終えたカップを三つ、手慣れた動作で洗っていく。父と母、そして、少女の三つ分。
ココアの染みが残らないように、丁寧に擦る。
それが終わったら、今度はカップに付いた泡を、水でさっぱり洗い流す。
仕上げに、水滴を布巾でしっかり拭き取ってから、食器棚に戻す。
これが、茅野いずみ――彼女の毎朝の日課だった。
そろそろ、学校に行かないと……。
「行って来ます」
父と母にそう告げて、いずみは玄関のドアを開いて外に出る。
日差しが眩しい、雲一つない真っ青な空。
昨日の天気予報では、今日は雨になると言っていたから、洗濯はしないでおいたのに……。
少し損をした気分になったが、天気が良いと、やはり気持ちが良い。
「……あっ」
いけない……青空にかまけて、忘れるところだった。
学生鞄から取り出した鍵を、玄関のドアの鍵穴に差し込む。
少し捻るとカチャリと小さな音、しっかり鍵が掛かったことを確認してから、いずみは学校へと歩き出した。
この家には、もう誰もいない。
二人はもう二度と戻らない、そう思っていた。
けど、今は違う。
私の力があれば、お父さんとお母さんを取り戻せる…。
……なのに、私はまだ迷っていた。
自分の幸せのために、他人と傷つけ合い、奪い合うだなんて。
名前:茅野(ちの) いずみ
所属:私立高校2年生・クラス委員長
性別:女子
年齢:16歳
性格:人に優しく、時には厳しく。自分のことよりも、人のことを優先しがち
外見:腰ぐらいまでの長さの、ボリュームがある紫がかった髪・丸型レンズの眼鏡・制服
外見(変身後):紫色をベースにしたロングドレス・背に黒と紫の斑模様の蝶の羽が生えている
願い:離婚した両親が、いつまでもお互いを愛し続け、一緒にいられるように
魔法:開花魔法
属性:花
行動傾向:他の魔法少女と戦うのは極力避けたい、でも願いのために魔法核は集めたいという矛盾した想いの狭間で揺れている
基本戦術:巨大な花弁で身を守りながら、先が鋭利に尖ったツタと人喰い花を呼び出して攻撃する
うわさ1:クラスをまとめる委員長で、クラスメイトからもとても信頼されているらしい
うわさ2:高校1年の時期に転校してきた。中学生の時に、ある問題を起こして引っ越してきたらしい
うわさ3:離婚の原因は両親ではなくいずみにあるそうで、強い責任を感じているらしい
【数日前】
学校帰りに夕飯の買い物をするのは、いつもの日課だ。
その日はたまたま時間が遅くなってしまって、デパートを出た時にはすっかり日も落ちて暗くなっていた。
急いで家に帰ろうと思って、普段は通ることのない路地裏を使うことにした。
そして――そこで、あの人と出会った。
私が魔法少女になる元凶になった、あの人と。
(
>>7-8)
……えっ?あ、あの……私…ですか?
(こ、この人……いったい……まさか変質者…?ど、どうしたら…)
あの……すみません…わ、私、急いでいますから…
――まず初めに鞄が開かれる――
…?これ、宝石…ですか?
……魔法、核……?あの、よく意味が…。
……でも、とても綺麗。見ていると、吸い寄せられるみたい…。
本当に、触っても平気なんですか?
…じゃあ…少しだけ。
に、「握り締めて、念じる」?
は、はぁ……やってみます。
(…こんなことは子供騙しに違いない、魔法なんて物も存在しない
……でも、もし存在するなら、私はもう一度……お父さんとお母さんを……)
……はな?は、花びらが…私の前で浮いて…?
…えっ…?あのっ、これって…!?
……本当に魔法なんですか?こ、これが私の『魔法』…?
……っ、魔法少女のこと、聞かせてください!
――次に心が開かれた――
…ということは、他にも魔法少女がいるんですね。
そして、その人達とのゲームに勝てば、私の願いを叶えることが出来る…。
(そうすれば、お父さんとお母さんを元通りに…)
…私、魔法少女になります。
――契約…。これで私は魔法少女に…。
戦って、勝ち残って…………え?
こ…殺し合うって、いったい…!?ゲームに勝てば良いって、そう言ったじゃないですか!!
そ、それならこんな物、いりませんっ…!
持って帰って……、っ!?
――そして真実が開かれて――
……騙したんですね…私を…。
「魔法核を取られた人間は心なき廃人になる」って…そう言いましたよね…?
なのに、魔法核を集めろだなんて……それは、つまり…っ。
――物語の幕が開かれた――
…魔法核さえ集まれば、お父さんとお母さんを…
…でも、そのために他の魔法少女達を……殺す?
学校にいる時だけは、魔法少女のことは忘れるように努力していた。
いずみは考え込むと、すぐ顔に出る方だ。その度に、周囲の生徒に心配を掛けてきた。
委員長であるいずみが、暗い顔をしているわけにもいかないだろう。
そうやって一日の授業を終え、買い物をして、家に帰る。
一通りの家事を済ませ、風呂に入り着替えると、三人分のココアを淹れる。
カップを三つ並べたら、その中の一つの前の椅子に腰掛ける。
適当な時間になれば、カップはそのままにして、ベッドに入って眠る。
これが、毎晩の日課だった。
今までがそうだったように、今夜もそうやって一日が終わることをいずみは知っていた。
いつも通り、終わる――はずだった。
(
>>25-27)
「……?」
不意に聞こえた何かの音に、思わず部屋を見渡す。
金属同士が搗ち合うような、そんな音だ。
一つ不思議なのは、その音の発生源になるような物が、この部屋には無いこと。
そして、もう一つ不自然なのは、その音が何の曇りもなく耳に届いていること。
不可思議で、何故か酷く気分が悪くなる音だ。
「…………何か、いるの?」
閉じたカーテンの隙間から、そっと外の様子を窺う。
辺りは暗闇に覆われ、空には星が瞬いている。
その星の中でも、線のように連なって輝く“それ”は一際輝いていて、目を引くものがあった。
本当に星だったなら、ちょっとした天の川に見えたかもしれない。
それは星でなければ、電線でもなく――鎖だった。
制服に着替えて、家を飛び出したいずみは、無我夢中で走っていた。
空の上に続く、鎖を目で追いながら。
この妙な鎖の先に魔法少女がいることを、確信していたからだ。
魔法少女に会ってどうするのかまでは考えていなかったが、知らないふりをして眠ることなど、いずみにはどうしても出来なかった。
「……あれは……?」
膝に手を付き、切らした息を整えようと呼吸を繰り返しながら、空を見上げた。
――向こうに続く鎖の上に立つその少女は、まるで宙に浮いているかのようだった。
この鎖が、きっと彼女の『魔法』なのだろう。
ふと、その少女の足下――というよりは、少女の下の地面――に、もう一人誰かが立っていた。
その人も、鎖の魔法少女に気づいたのだろうか、一目散に駆け出した。
恐らく彼女も魔法少女の一人なのだろう。
……私も、逃げ出すべきだったのかもしれない。
でも、その人のように即座に足を動かすことは、私には出来なかった。
三浦は来るな
>――これはですね、魔法核と言う物でして。
>ささ、お手に取ってみて下さい。大丈夫、危なくありませんよ。
>ほら、何となく、不思議な力を感じるでしょう?
この男は確かに死んだはずだった。
別の世界で、警官の銃弾に倒れ。終わらない戦いの中で永遠の激情に駆られてた男。
彼の名前は浅倉威。
深い眠りの中にいる浅倉を、男の声が呼び覚ます。
「なんだ?お前はぁ……」
生暖かい風が頬を叩く。また、浅倉の中で「怒り」が渦巻く。
理由は分からない。自分でも抑えきれない程の怒り。
イラつく。ただ、それだけが浅倉の中で何度もキリキリと音を立てる。
浅倉の手にした魔法核は紫色に輝くと、やがて1つのカードデッキへと変化した。
それを見た時、彼は思い出す。自分が何をしてきて、今どうしてここにいるか。
>簡単な事で御座いますよ。ただ、同じ魔法少女と共に戦って、ゲームを勝ち残るのです。
>そして戦いの中でずっと魔法核を失わずにいられれば、やがてその魔法少女は一つだけ、願いを叶えてもらえるのです。
「――戦う?ハハッ……フッハハハ!!面白い。――戦うってのはいい気分になれる。
だがな」
浅倉は凍てついた眼で男を睨む。
まるで蛇のようなその、感情のない双つの眼で。
「俺は、女じゃない。」
>――ご契約、ありがとうございます。
これで貴方は魔法少女です。同じ魔法少女と共に戦って、殺し合い、ゲームを勝ち残ってくださいね。
浅倉は男の言葉を聞き終えるまでもなく、闇夜の中へ消えていく。
宛もない、明日もない。しかし、浅倉の中の激情だけは止まる気配はない。
魔法少女、始めましたっ♪
いえ、だからどーしたと言われても困るんですけど……何だか最近読んだ古い本にこんな出だしのがあったような。
あ、違うんです! 違うんです!
正直私、今ガチで困ってるんです。
それはつい最近のことでした。
木枯らしの吹く如月の逢魔が時、塾帰りの私にまさしく「魔」が降りかかったのです。
現れたのはあまりにも胡散臭い笑うセールスマン。
その巧みなに話術に乗せられ、褒められ、煽られて、私はついうっかり魔法少女へっ――!
……「魔」が差したとは、まさにこのことでした。
開かれたのは一つの鞄。
望んだものは無数の願い。
結ばれたのは一つの誓い。
始まったのは無限の悪夢。
契約内容(
>>7-8)を知った私はすぐさまクーリング・オフを試みたけれど、時既に遅し。訴えようにも後悔先に立たず。
待ち受けていたのはソリッドでハードでブラックでファンタジーなデス・ゲームなのでしたw
ねーねー、これ何て聖杯戦争?アリスゲーム?火星の迷宮?暗鬼館のプログラム?
戦わないと生きのこれませんか…………そーですか……。
い や す ぎ る (´Д`;)
うぅ……私のバカッ!超バカッ!!死ねばいいのに!
でも、死にたくない!誰も……殺したくない。
――いいわ、権謀術数、愛と勇気と「魔」法(不本意だけどっ)を以て、何としてもこの戦いから抜け出してやるっ!!
【テンプレ】
名前:神田 理奈(かんだ りな)
所属:公立 富士見小学校 6年2組
性別:女
年齢:12
性格:転んでもタダでは起きないタイプ
外見:黒髪ショート。普通の日本人。身体の凹凸は少なめ。
願い:魔法少女になりたかっ「た」→普通の女の子に戻りたい!
魔法:黒魔法・黒魔術(これまでの読書経験で知り得た版権モノやイメージ)
属性:闇
行動傾向:他の魔法少女を倒さずに魔法少女を辞める方法を模索中。
しかし、魔法少女であること自体はまんざら嫌いでもない。
基本戦術:白兵と魔法を併用する昔のRPG的な魔法戦士型
うわさ1:本人に自覚は無いが両親の影響を色濃く受けたオタクのサラブレッドらしい。
うわさ2:年齢に対して発育が良く無いのでときどき男の子と間違われるらしい。
うわさ3:…………これぐらいかな?
【よろしく】
>>26 猪間 麻子
またしても塾帰り。
辞めようにも一番話を聞きたいセールスマンはその後、姿を現しませんでした。
探す方法もわからないのでここは同じ境遇の魔法少女に話を聞くのが手っ取り早いでしょう。
さて、何と尋ねたものか。
「すいませーん、魔法少女辞めたいんすけどーw?(笑顔で)」
笑顔はいいか。きもいし。
そもそも誰が魔法少女なのかもわからないし。
と、思ったその時
頭に軽い痛みと、耳鳴りのような金属音が私の感覚を支配した。
魔法少女からの発信、そう判断できたのは自分の勘によるものか、あるいは魔法少女に備わった能力なのか。
いずれにせよ、結果的に私はその音に導かれて他の魔法少女と出会えたのである。
「こ、こんばんは……」
あるいはノコノコと顔を出したとも言うべきか。
そこにいたのは私と同じぐらいの年頃の魔法少女。
でもどうしよう――何か、すっごく殺る気マンマンなんですけどぉ…………。
【とりあえず、挨拶】
>>28 >「……ええと。こんばんわ。じゃ」
「おいおいおい!人様の顔を見てそそくさと逃げ出すなんて失礼じゃないですかぁ!?」
背中を見せて逃げ出した萌に、麻子は鎖を振り回した。
萌の逃げる先の地面を鎖が抉る。
更に鎖は獲物を睨む蛇の魂を得て独りでに、萌の行く手を阻んだ。
そして、じりじりと躙り寄る。萌の逃げ場を奪い、この場に『縛り付ける』。
鎖の輪が奏でる金属音が、逃がすつもりはないと明確に告げた。
「ほぉら!帰って来いよ!魔法少女同士、仲良く遊ぼうじゃねぇの!」
鎖の先端が微かに引く予備動作を経てから、猛然と突き出された。
格闘技の突きと似た動作だが、威力は段違いだ。
麻子の細い腕が振るった鎖が、アスファルトの地面を粉砕してみせたように。
>>32 「……で、そちらさんはなぁに人のツラぁずっと見てるんですかぁ?」
顎を上げて首を捻り、横目に眼下を見下ろす形で、麻子はいずみを睥睨する。
「それに挨拶も無しかよ。こんなガキに礼儀を語られるってぶっちゃけどうなの?」
麻子が夜空を断ち切る鎖から飛び降りた。
同時に自分が足場にしていた鎖の端を掴み、引き寄せる。
鎖が麻子が掴んだ方と反対側の末端から丸まり、固まって、鉄球の形を得た。
「仕方ねーからお手本見せてやんよぉ!ホラこんばんは!そしておやすみなさいってなぁ!!」
鉄槌に化けた鎖を、重力の助力を上乗せして振り下ろす。
轟音と共に地面が揺らいだ。粉塵が舞い上がって、茅野がどうなったのかを覆い隠す。
予備動作の大きな一撃は、躱すには十分な時間があった。
よしんば喰らっていたとしても、魔法少女の身体は殺し合いに適応するべく、頑丈になっている。
死にはしない。死ぬほど痛いだけだ。
痛くて痛くて、自分を守らざるを得なくなるほどに。
相手を殺してやりたくなるほどに。
無論一度その気になってしまえば、今度は戦いの阻害にならないよう、全ての痛みを沈黙させる事だって出来るのだが。
「よぉネーちゃん。まさか今のでくたばったりはしねーよなぁ?夜遊びの時間はこれからなんだ」
鎖の鉄槌を放り捨てて、麻子が土煙の向こう側に問いかける。
と、不意に背後から声がした。
>>37 >「こ、こんばんは……」
「あぁん?……おぉ!オメーはちゃんと礼儀ってモンを弁えてるじゃねぇか!」
控えめな挨拶で理奈の存在に気付いた麻子は、両手を叩いて喜色を表情に浮かべた。
「まだアタシとタメか、年下くらいだろ?そのわりにちゃんとしてんじゃねぇの。いいねぇ気に入ったぜ」
歯を剥いて、快活に笑う。
そして、
「そんなイイ子ちゃんにはごほーびをくれてやんねーとなぁ!ほらよ!」
態度を獰猛に豹変させて、手元に出現させた鎖を理奈へと振り下ろした。
「クク、ギャハハハ!いいねぇ!これで三匹……いや、違ぇな」
周囲には未だ姿を見せていない魔法少女の気配がある。
位置の特定まではいかなくとも、漠然とした近くならば可能だ。
これは麻子だけに限られた能力ではない。
ゲームの進行を潤滑にする為の、魔法核の一つの機能だ。
「ほら出てこいよビビリ共!みーんなまとめて屈服させてやるぜ!」
【全員に単純な打撃攻撃。よろしくお願いします】
>>39 質問なんですけど契約する悪魔って闇のセールスマンだけなんですか?
>>38-39 鎖を自由自在に操る魔法少女――猪間麻子が、駆け出した少女――奈津久萌の逃げ場を塞ぐ。
鎖の動作の一つ一つが、まるで生きているかのように思える。
その流れるような鎖捌きに、いずみは麻子から目が離せなかった。
容赦や遠慮などという物が一切感じられない圧倒的な暴力の前に、いずみの全身は恐怖で凍り付いていた。
>「……で、そちらさんはなぁに人のツラぁずっと見てるんですかぁ?」
不意に自分に向けられた言葉に、いずみは肩をびくりと震わせて、息を飲む。
こちらに顔を向ける麻子、その鋭利な視線は、いずみの心を貫くには充分過ぎる威力を持っていた。
さっきと同じように、あの鎖が、生き物のように襲い掛かってくるに違いない。
しかし、心が確かな恐怖で支配されつつある中で、いずみはどこか油断していた。
ここはまだ、自分のよく知る日常の世界で、他人から危害を加えられることなんて、そうあることではないのだと。
だから、麻子が攻撃を行わずに、鎖から地に降りようとした時、いずみは一瞬だけ安堵してしまった。
その隙を知ってか知らずか、落下する麻子の手から振り下ろされる鎖の集合体。
それが目前にまで迫ってきて、いずみはようやく気づいた。
この空間が、日常から大きく懸け離れた別世界だということに。
――痛い、痛い、痛い、いたい、いたい、いたい
いずみは、麻子の攻撃を避けることも出来ず、無惨にも全身でそれを受け止めてしまったのだ。
蜘蛛の巣状にひび割れた地面の中心で、いずみは這い蹲っていた。
全身のあらゆる痛覚が、悲鳴を上げている。
死んでしまいそうなほどの痛みに苛まれながらも、なんとか地面に手をつき、次に膝をつく。
何度か浅い呼吸を繰り返して、激しく咳き込むと、地面に吐き出した唾液の中には、少し血が混じっていた。
なぜ次の攻撃が来ないのか、それを不思議に思う前に、視界を遮る土煙の向こうから、麻子の声が聞こえた。
>「よぉネーちゃん。まさか今のでくたばったりはしねーよなぁ?夜遊びの時間はこれからなんだ」
まるで、この戦いを楽しんでいるかのような、そんな言葉だった。
この少女に、自分を見逃すつもりがないことは、よく分かった。
戦わなければ、奪われるのだ。魔法核を、ただ一つの願いを――お父さんと、お母さんを。
そう考えた次の瞬間には、すでにいずみの『魔法』が発動していた。
人一人なら軽く飲み込んでしまいそうなほどの大輪の花がいずみの体を下から包み込むように出現し、毒々しい暗赤色の花弁が、空気を扇ぐようにして砂煙を一斉に吹き飛ばした。
花の中心にぽっかり空いた口のような部分からは、数本の緑色をしたツタが飛び出し、いずみを砂煙から守るようにして寄り添う。
遮る物は全て消え失せ、いずみは、ようやく麻子の姿をその視界に捉える。
>「ほら出てこいよビビリ共!みーんなまとめて屈服させてやるぜ!」
他人を馬鹿にして勝ち誇っているかのような麻子の態度に、いずみは無性に腹が立った。
しかし、これは好機かもしれないと思い、麻子の隙を突くつもりで――いずみは、おもむろに右手で麻子を指差す。
すると、寄り添っていたツタが、いずみの右腕から右手へとぐるりと巻きつき、そして人差し指を沿って、まるで伸びる弾丸のように麻子を狙って射出された。
麻子の手足を、貫かんとばかりに。
【皆さん、よろしくお願いします】
>「おいおいおい!人様の顔を見てそそくさと逃げ出すなんて失礼じゃないですかぁ!?」
駈け出した萌の頭上から金属音が降ってくる。数m先の路面を砕いて一瞬音が止まった。
小さく舞い上がった砂埃の中で、鎖が鎌首をもたげている。
>「ほぉら!帰って来いよ!魔法少女同士、仲良く遊ぼうじゃねぇの!」
鎖がくい、と輪一つ分ほど身を引いて、次の瞬間まっすぐに顔面を狙って伸びてくる。
萌は左にステップインしながらのヘッドスリップで鎖をかわす。
インファイトでの打撃を捌くのに比べれば、鼻歌どころか熱唱していても可能なほどの余裕がある。
だが、一発を避けただけで、退路に居座られている状況には変わりがない。
萌には"やる"気がないが、麻子には逃がすつもりがないらしい。
背後ではどうやら"新手"との戦端が開かれているようだ。
麻子を倒すなり退けるなりするまではそちらと共闘ができるかもしれない。
では、その後は……?願いを叶えるためにもっとも速い手段は"核"を集めることだ。当然、萌も所持している"それ"を。
(逃げるのも生身じゃ無理、か……)
ため息をつきながら、萌は斜めがけにしていたバッグを投げ捨てた。鈴がチリリ、と鳴る。
左足を半歩踏み込み、両腕を真っ直ぐ前へ伸ばしてから肘を曲げる。
典型的なアップライトに構えたその瞬間、萌の体が光に包まれた。
そして光が消えたとき――そこには一人の"ナックモエ"が立っていた。
隆起した筋肉を包むのは、オイルでぬめ光る褐色の肌、朱色のモンコンとパープラチアット、
ファイアパターンのタンクトップとショーツ、黒のサポーター……。
ただ両の拳に巻かれたバンテージだけが、月と街灯の頼りない明かりの中に、白く浮かび上がっていた。
「やる以上はマジでいくよ」
別人のように野太くなった声で言い放つと、萌はアスファルトを踏み抜かんばかりの勢いで前進……と見せかけて一気に反転。
メントールの匂いだけをその場へ残して、麻子へと向かう。
鎖がどの程度まで伸展するかは分からないが、掻い潜ったところで追ってくるだけだろう。
本体を叩かねばならない。逃げるにしろ退けるにしろ――倒すにしろ。
走る速度をわずかに落とし、タイミングを調整。そこから再加速、横手から伸びてきた蔦にわずかに遅れて跳躍。
先程の意趣返しとばかりに、顔面目がけて膝を突き出した。
「……あー。間に合わなかったか」
鎖を繰る魔法少女に敗れ、呆然と座り込んでいる元・魔法少女。
その少女の背後に、一人の男が立っていた。
よれよれの背広に無精髭。どこにでもいそうな男性。
そんな男の額には汗が流れており、その呼吸は乱れている。
恐らく、ずっと何かを探して駆け回っていたのだろう。
「ったく、あれ程言ったのにどうして先走るかね……お前さんはまだ
他の魔法少女と戦えるレベルじゃねぇって教えただろうが」
男は、少女の横へドカリと座り込むと、煙草を咥え火をつける。
そして、横の少女へ向けてその煙を吹きかける。
煙を吹きかけられた少女は……反応しない。僅かに咳をしたのみ。
「はぁ……あれだけ煙草の煙嫌がってたのに、それがこうなっちまうんだよなぁ。
あと三日もすれば完全に心が消える……フザケてるよなぁ」
誰に聞かせるでもなく呟く男の声に、それでも少女は反応しない。
まるで心をどこかに忘れて来てしまったかの様に。
「……まあ、仕方ねぇよな。お前さんとはここでお別れだ。
いろいろあったが、楽しかったぜ。病院の方へは俺が連絡とってやるから、もうゆっくり休め」
そして、しばらくの時間が経ってからそう言うと、男は立ち上がり振り返らずに
歩き出す。無表情な少女の目に流れた一筋の涙を振り切る様に。
「さーて、次の魔法少女を捜すとするかね……」
>>39 猪間麻子
>「あぁん?……おぉ!オメーはちゃんと礼儀ってモンを弁えてるじゃねぇか!」
>「まだアタシとタメか、年下くらいだろ?そのわりにちゃんとしてんじゃねぇの。いいねぇ気に入ったぜ」
あ、ほめられた。
殺る気マンマンの彼女は既に二人の魔法少女と交戦状態に入っていた。
どこか獣じみた雰囲気を漂わせている彼女は余裕の笑みを浮かべてこちらに振り向いた。
>「そんなイイ子ちゃんにはごほーびをくれてやんねーとなぁ!ほらよ!」
いきなりかっ!?
彼女の手から突然現れた鎖がもの凄い勢いで私に向かって振り下ろされる。
幸い距離があったのと他の二人に気を取られていたせいか、狙いは大雑把で少しの動きで避けられた。
ちょ、本当に殺す気かっ、このオネーちゃん!?
流石に呑気な私もこればかりは血の気が引いた。
生まれて初めて他人から向けられる“殺意を伴った暴力”。
その破壊力は安穏な人生を送ってきた自分に「順応」を迫るに十分なものだった。
それは彼女の攻撃を向けられた他の魔法少女も同様らしく、各々に戦闘態勢をとる。
でも
>「クク、ギャハハハ!いいねぇ!これで三匹……いや、違ぇな」
>「ほら出てこいよビビリ共!みーんなまとめて屈服させてやるぜ!」
――でも
私は彼女と戦う気になれないでいた。
何で?何であの子は戦おうとするの?
何を望んでたった一人で、何もかもを敵に回そうとしてるの……?
彼女に危害を加えられたことに対する「恐怖」や「憎しみ」は確かにある。
でも、私が何より感じたのは彼女や私、他の二人をこんなことに駆り立てている状況そのものに対する「怒り」だった。
>>42 茅野いずみ
紫衣を纏った「花」の魔法少女が「鎖」の魔法少女に対し攻撃を仕掛けた。
魔法によって顕現した植物のツタが無数の槍となって発射される。
一方の「鎖」の魔法少女は「拳」を構えたもう一人の魔法少女の接近を受けている。
自衛的な二人の行動は、あたりまえなのかもしれない。
だけど、これは何かが違う!
「我は紡ぐ――」
何が正しいのかは私にはわからない。
……ただ、何が許せないのかは、何となくわかる。
「光輪の鎧!!」
私の魔法によって形を成した光の障壁が「花」の魔法から「鎖」の魔法少女を守った。
だいたい、1対3なんて卑怯だし。
一見トチ狂ったようにしか見えない私の行動に対して、彼女たちが何かを言う前に、私は尋ねた。
「ねえ……手を貸す前に教えて、あなたの願いって何?どうしても戦わなきゃ叶えられないものなの?」
何かに餓えたように、一人で戦いを求める魔法少女に。
【茅野いずみの魔法攻撃を妨害】【猪間麻子に質問】
>>40 他にも悪魔がいるって事にした方が多様性や即応性が広がると思うので、いる事にしましょう
リーマン悪魔はエリート気取りだからしないけど、
悪魔の中には使い魔みたくサポートしてくれるアフターサービス付きの奴がいたりしてもいいんじゃないでしょーか
つーか皆さんレス早いですね!
レス返しにはもうちょっとお時間を下さい!
魔法核を奪われたら参加終了ってシムテムどうにかならんの?
三日以内に取り戻せばいいんじゃね?
魔法使えないだろうから困難を極めるだろうけど
そこはキャラハン側の匙加減で良いんじゃないかね
>>41 「……あっれぇ?返事がねーなぁ、ネーちゃんよぉ。まさか今のでくたばったとか言わねーだろうな」
麻子が目を細め、しかし次の瞬間に突風が巻き起こる。
自然に起きた風ではない。吹き飛ばされた土煙の向こう側で、巨大な暗赤色の花が咲いていた。
風はその花びらによるものだった。自分に向かって吹き寄せる土煙に、麻子は右腕で目を防護する。
「わっぷ……へぇ、いいねぇ!やる気になったって訳だ!話が早いぜ!」
凶暴に笑うが、依然として麻子の視界は狭まったままだ。
その隙を突いて、先端の尖ったツタが自由自在の槍となって放たれる。
体を半身にして、麻子は最初の数本を躱した。
続く数本を、空中に出現させた鎖で纏めて縛り上げて無力化する。
だが一本、防ぎ切れなかったツタが麻子の右腕に迫る。
麻子が小さく舌打ちした。先んじて痛覚を殺し、
同時に突き刺さった後すぐにツタを断ち切れるように魔力を練った。
加えて追撃を防ぐ牽制として、鎖を数本、足を絡めて転ばせようと地面を這わせる。
>「我は紡ぐ――」「光輪の鎧!!」
しかし茅野のツタは、麻子には到達出来なかった。
前触れなく現れた光の障壁が、ツタを受け止め、弾き飛ばした。
「……はぁ?」
予期せぬ出来事に、麻子が素っ頓狂な声を零した。
>>43 >「やる以上はマジでいくよ」
「おぉっと!アンタもやる気になっ……ってキモッ!?うわ何それキメェ!超キメェ!」
筋骨隆々のむさ苦しい男に変身していた萌に、麻子は思わず顔を顰めて後ずさる。
靴裏が地面を擦り、すぐに止まる。
生理的嫌悪に一歩退かされはしたが、決して臆した訳ではないと、鋭い眼光が主張した。
「近寄るんじゃねぇよ!気持ちわりーな!」
肉薄する萌に、右手のひらをかざす。
鎖が金属音の産声と共に手のひらから生え出て、鳥籠の姿を得た。
――直撃、轟音が響く。籠を織り成す鎖は、見事にひしゃげていた。
直撃ではなかったが、萌の膝は麻子に届いた。額が切れて、流血している。
痛みはない。だが怒りはある。傷口の奥が、熱く昂ぶった。
「いってーなぁ……!っざけやがって!」
咆哮と共に、麻子を囲っていた鳥籠が独りでにばらけた。
そして幾本もの鎖となって、全てが同時に萌へと襲いかかった。
>>46 >「ねえ……手を貸す前に教えて、あなたの願いって何?どうしても戦わなきゃ叶えられないものなの?」
「あーあー、さっきのはオメーの仕業か。で、なに?
頭湧いちゃってるんですかぁ?何でオメーにそんな事教えなきゃならねーんだよ」
理奈の問いに、麻子は訝しげに目を細め、呆れで口を半開きにする。
「そもそもさぁ、逆に戦わずに叶えられる願いってある訳?
オメーだってガッコーでテストや駆けっこくらいすんだろ?
それだって一位になりたかったら他の奴らを蹴落さなきゃなんねー訳でさぁ」
顎を上げて理奈を見下すようにして、問いを返した。
「何のこたぁねーさ。こんなの、夢を叶える異種格闘技戦みてーなモンじゃねぇか。
テストで一番になりたいヤツと、駆けっこで一位になりたいヤツが蹴落し合うゲームってだけだ」
事もなげに、麻子は自身の結論を導き、
「……つーかオメーよぉ。だぁれが手を貸してくれなんて言った?
マジで頭おかしいのか?それとも手を組めば見逃してもらえるとでも思ったかよ」
狂犬と見紛わんばかりの凶暴さを沈めた瞳で、理奈を睨んだ。
「まぁいいさ。せーっかく小洒落た鎧をくれたんだ。お礼をしてやらなくちゃなぁ……!」
ゆっくりと、右手のひらを理奈に向ける。
刹那、夜闇から鎖が現れて、理奈を囲む軌道で螺旋を描いた。
「生憎オメーのみてーに洒落ちゃいねーがよ。アタシも鎧をくれてやるよ。
ま、殺しやしねーから安心しろ。全身の骨が砕けた後で、魔法核を頂戴して終わりだ」
麻子が右手を握り締める。
それを合図に、鎖が理奈を締め付けるべく収縮した。
【茅野→這い寄る鎖、萌→複数の鎖による打撃、理奈→鎖で圧迫】
>>48 ――ハイもしもし、こちら魔法少女契約科でございます。
え?ゲームシステムにご不満が?……はい、はい、なるほど。
一度の敗北が取り返しのつかないものであると、参加の継続に支障をきたす、ですか。
貴重なご意見、ありがとうございます。すぐに対応させて頂きます。
そうですね、例えば『夢を奪われた魔法少女は、夢を求めて魔法少女を襲う亡者のような存在になる』
……と言うのはいかがでしょうか
はい、次のキャンペーンが始まる頃には改善策を用意出来るかと。
また、当社では参加者の皆さんによる意見も広く募集しております。
えぇ、それでは。
【24時間以内にレスします】
>>51 いずみが放ったツタを、麻子は慣れた身のこなしで躱す。
次の攻撃もあっさりと鎖で封じられてしまうが、いずみの表情から焦りは感じられない。
残った一本のツタが、麻子の右腕を狙っていたからだ。
麻子もそれに気づいたようだが、どうやら先程のように鎖で防ぐのは出来ないようだ。
ツタは、すでに目前まで迫っている、いずみは自分の一手が決まることを確信していた。
>「我は紡ぐ――」「光輪の鎧!!」
だが、突如ツタの前に不可思議な光の障壁が現れ、いずみの攻撃を阻害した。
「……え?」
一瞬、麻子の『魔法』による物かと思い、いずみは様子を窺ったが、どうやらそれは違うらしかった。
ということは、誰か別の魔法少女の仕業に違いない。
光の障壁を駆使した魔法少女――神田理奈 が誰かを特定しようと、周囲を見渡すが、いずみの視界に入ったのは別の物だった。
あの鎖が、まるで蛇の群れのように、足元に這い寄ってきていた。
それに驚き、慌ててツタを出現させて打ち払おうとするが、間に合わずに足を捕られてしまい、そのまま地面に引き倒される。
両足に絡みついた数本の鎖が、ギリギリと音を立てて締め付ける。
「くっ、うぅ……!」
万力を思わせる強烈な力に、僅かに呻き声を上げながらも、鎖を解こうと『魔法』を発動させる。
すると、いずみの後方から、またも巨大な花が出現する。
だが、先程の花とは違い、花弁は黒と紫のまだら模様をしており、中心の部分は端から端までが、まるで人の口のように裂けている。
そして、その中には獣のように尖った牙が、ズラリと生え揃っていた。
その口を大きく開いていずみの体を中へ招き入れると、ギロチンのように勢いよく口を閉じ、いずみの両足に伸びる鎖を容易く切断した。
再び花が口を開け、花弁を震わせながら絹を裂くような叫び声を上げる。
その中には、いずみが、鎖の痕が痛々しく残る足を庇うようにして、座り込んでいた。
足が痺れて動かすことが出来ず、とてもすぐには立ち上がれそうにない。
【一時的に戦闘不能、人喰い花の口内で守られてはいるが、強い攻撃には耐えられない・麻子に強い敵意】
>>51-52>>55 振り抜かれた膝頭は、鎖で編まれた籠を即座にガラクタへとクラスチェンジさせた。
だが、その"ガラクタ"は麻子の身を守るには十分な働きをしていた。
魔法の力で強化された萌の身体能力で放てば、文字通りに"必殺"となりかねないカウローイを、額をカットする程度で止めたのだ。
萌はいささか意気消沈していた。とはいえそれは、打撃を防がれたことよりも麻子から浴びせられた罵声に拠るところが非常に大きいのだが。
(好きでこんなナリしてるわけじゃないんだけどなあ……)
鎖が解け、萌に襲いかかる。数は多いが完全にタイミングを揃えた一撃。下がればそれで回避は完了。
問題は、下がった結果として間合いが広がってしまったことだ。
逃がすまいとさらに繰り出される鎖を、練習で培ったテクニックでかわす。
「近寄るな、って割には離れるのも嫌、と。ワガママなお子さんねー」
手足の回転は無数に宙を泳ぐ鎖に負けていない。さらに速度を上げることもできる。
魔法少女としての力を振るうのは初めてだが、まるで限界などないかのように体が動く。
つまり――相手も当然これ以上があるということ。
なにぶん魔法少女歴1日の萌にとって、例えば魔法で何かを創りだして攻撃したり、
魔力そのものを弾として撃ち出したり……という"いつも"と違う戦い方は不慣れだ。
だからこそ、こちらの実力を読まれる前に接近、速戦速決といきたかったのだが、今となっては難業だ。
麻子の魔法は多数を相手にするのに都合がよさそうだ。逃げるのも骨の折れる事だろう。
説得も不可能。最初から話を聞くつもりが一切無さそうだし、事実、説得を試みた理奈は拒絶と攻撃を返答として受け取っている。
何をどうすれば自分に有利に働くか。萌は一瞬だけ考えた。
「シッ!」
思考の間隙を突くように左下から伸び上がってきた鎖を、左手でパーリング、勢いはそのままにわずかに軌道を変える。
数発受けただけで手のひらに痺れが残り始めた。悠長に思い悩む暇はないらしい。
次の鎖も同じくパーリングで受け流し、今度はそれを追うように位置を変える。そこから跳躍して"人食い花"のもとへ。
「あんた!ちっと手伝いなさい!」
花の中のいずみに怒鳴りつけ、まだ追ってきた鎖へショートフック。
要は、「一番話が通じそうな相手と協力して、一番話が通じなさそうな相手をまずどうにかする」という単純なプランである。
仮にうまくいって撃退できたとしても、その後は笑ってさよならというわけにもいかないだろうが、まず的は絞りたい。
ガッツ石松ですら喧嘩には頭を使うのである。
うまくいかなければ……状況に変化が起きないというだけの話だ。
坂上南雲が契約し魔法少女になったのは、放課後の帰路・人気のない公園でのことである。
閑静な住宅地故に日が落ちれば人通りも疎らで、幼児童子とその親しか使わない団地の公園に人影はなく。
南雲は常々よりここを近道として通ってきた。素通りしてきた。公園ではなく道として、留まらぬ通過点として。
公園内に一つだけあるベンチになど、生まれて以来16年生きてきて数えるほども座っていない。
そのベンチに、今日は珍しく客がいた。天地開闢と同じだけの衝撃を南雲は受けたのであった。
小学校から足掛け10年、一度も使用される姿を見なかったベンチに、一人の男。
年の頃三十路に差し掛かるか否かといった、パンチパーマに柄シャツという見からに非カタギ然とした風体。
タバコの灰をビール缶の中に落としながら、ゆっくりと紫煙を夜空にくゆらせていた。
濃く曇ったサングラスの奥に一重の双眸を滾らせ、男は南雲に声を投げた。
「姉ちゃん、おどれ、ワシと契約して魔法少女にならんけえ?」
思わず足を止める。長く豊かな黒髪が慣性を孕んで瑞々しく揺れる。
今にも消え入りそうな街灯の下、どう見てもチンピラな男が放った言葉は、多分世界で一番ミスマッチ。
場の構成要素を一つ一つ見分してようやく合点をつけた南雲は、最後にようやく気が付いた。
――生まれて初めて。この公園で立ち止まったことに。
通過点が分岐点に変わった瞬間を、ターニングポイントの誕生を、心のなかで静かに祝った。
【ブラック魔法少女 坂上南雲編 第一話 『わりと何もこわくない』 】
「これはのォ、『魔法核』いうてな。まあ魔法を使う源っちゅうんか?
姉ちゃんのォ、ユメとかキボーをこん中に込めるんじゃ。それが魔法になる」
男が旅行かばんから取り出した手のひら大の珠のようなもの――魔法核は、馴染むような握り心地。
掴んでいる手を離したくなくなるような、不思議な温もりと心地良い質感で表面を装飾していた。
「よくわかんないけどプリキュア的なものを想像すればいいの?」
「ぷりきゅあは知らんが語感のままに考えればええ。要点説明するから必要ならメモとれや。
1 魔法核に願いを込めることで魔法少女になれる
2 魔法少女はその名の通り魔法が使える
3 魔法核は魔法の塊であり、規定数集めることで込めた願いを叶えることができる
4 魔法核の集め方は「奪う」か「殺して奪う」こと
5 願いを叶えるまで途中辞退は不可能。魔法核を奪われれば3日で廃人と化す
…………こんなところじゃ」
ふむ、と南雲は考える。問題なのは4と5。
魔法少女になった瞬間から魔を喰らい魔に喰われる骨肉の争いへと身を投じなければならないその一点。
「4と5は言わないほうがみんなホイホイ契約するんじゃないのー?」
「そういう輩もおるにはおるんじゃけんども、ワシは数だけ揃えようってやり方は気に食わんのじゃ。
命を賭けるに値する願いを込めた方が、魔法少女としては安定するけぇ」
「誠実じゃーん」
「量より質をとったってだけの話じゃ。量重視のやり方が通用するんはせいぜい中学生までじゃけんし。
そこんとこ勘違いすんなや?んでどうするんじゃおどれ、魔法少女になるんけ」
「願いって、どんな願いもオッケーなの?」
「オッケーじゃ」
「オールオッケー?」
「オールオアナッシング」
「ゼロサムゲーム!」
「言葉遊びしんなや!」
ヤニ色の犬歯をむき出しにした男を見て南雲はケラケラと笑う。
日も落ちた人気のない公園で、チンピラ丸出しの男と相対する女子高生の態度ではなかった。
「いーよいーよよござんしょ、契約しましょー。この魔法核ってのに願いを込めればいいわけね」
「ええんじゃな?契約したら後戻りは効かんけえ、よく覚悟を決めて契約せえよ。
契約事項は確認したか?命を賭けるに値する願いか?わからんことがあったら今のうちに聞いとけ」
「あ、んじゃいっこ質問」
「なんじゃ」
「あんた何者?」
魔法核を握ったまま、南雲は薄暗闇の向こうの男を見る。
サングラスの向こうで男は双眸を細めた。――それは、柔和な笑みだった。
風が公園の空気を根こそぎ新鮮なものに替える、その完了を待って、吐き出すように、答えが来る。
「――――悪魔じゃ」
迷わずぶん殴った。
柄シャツの向こうの鳩尾に、渾身の右フック。
「ぐべぇっ!!」
「マジカル腹パぁーン」
「ま、まだ魔法少女に契約しとらんやないけえ!っつーか女子高生が問答無用で腹パンて!
恐ろしい国じゃあ……ギギギ……この国の女子高生はみーんなこんなんばっかか!」
「いやー、諸処の事情につき体鍛えてるッスから、自分」
「体鍛えてると通りすがりの悪魔に腹パンすんのけ!?どんな因果関係じゃ!」
「そう、そこ!悪魔なんかいるわけないじゃん!よしんばいたとしても、貴様のような悪魔がいるか!」
「魔法少女は信じるのにか!」
「魔法少女もぶっちゃけほとんど信じとらんわ!そんな、はだしのゲンみたいな喋り方しくさって!」
「なにーっ!?広島弁はこの国の人間が最もビビる言語だってゆうから勉強してきたのに!」
「メッキ剥がれてる剥がれてる」
「ふえええ〜〜〜っ」
「やめて、チンピラの顔で可愛い声出さないで。なんなんだこの業深すぎる光景」
「契約してくれる?」
「あーもう、する!しちゃいます!この坂上南雲、一世一代の大盤振る舞い!」
「じゃ、願って」
「お、おー……」
握っていた魔法核を胸の前に掲げ、両手で挟み込むようにして構える。
じんわりと手のひらに広がる温もり。この魔法核とやらだけは、この世のものとは思えない得も言われぬ神秘を醸していた。
「んー……」
「ボケはいらんぞ」
「………………」
「なにその冷や汗」
(って言ってもなー。正直魔法少女とか言われてもピンと来ないし。なにより高校生にもなって魔法はイタ過ぎる……)
面白いガイキチさんがいるから小芝居に付き合ってあげようと物見遊山での今だったが、
しかし実際契約(ごっこ)の段になってみると、これはこれで恥ずかしい。顔面に火が入るのが分かる。
なにせ花も恥じらう16才。春からの高校も慣れてきて、そろそろ花のJKライフに踏み出そうという時期に、
よりにもよって魔法少女はないだろう。科学全盛のこの時代に、酔狂でなければしょっぱい詐欺だ。
(まあいいや)
羞恥心を完全に心から締め出すという折り合いのつけかたで、南雲は腹を決めた。
水滴のように静謐を湛えた心で――願う。
そして、光が流れこんできた。
「っあ――――」
手のひらを温めていた温もりが爆発し、暖かな風が南雲の全身を包む。
二、三度綴じた瞼の向こうで光が瞬いて、風が吹き抜けていった。
南雲は気付く。己の纏う衣服が衣装に変わっていることを。高校指定のブレザーが、淡青の飛行服に変身していた。
「お、おお?おおーーーっ!?」
「それが『変身』じゃけえ。今このときより、坂上南雲――おどれは魔法少女じゃ」
よろしゅう。悪魔は右手をの差し出した。その手を南雲は反射的に取り、潜るように懐を密着させ。
「っせえええええええええい!」
留め跳ね払いの三拍子揃った見事な背負い投げで悪魔から一本を獲った。
* * * * * * *
そんなことがあって。
そんなことがあって。
そんなことがあって。
坂上南雲はその場の勢いで魔法少女になった。魔法少女になってしまった。盛大にやっちまった。
(うわーどうしよ!16にもなって魔法少女はないわ。端的に言って年甲斐ないわ)
実情と裏腹に南雲は悲観的ではなかった。
例え魔法少女同士の殺し合い、その渦中に立たされたとて、彼女の眼から希望は失われなかった。
そもそもは信じてもいないのに軽率な行動をした南雲の自業自得であると割り切れる。
それにもう一つ。魔法少女のバトルロイヤル。これについても南雲には理論武装がある。
双方完全合意の上での戦いで、魔法核は命を賭けた正当な戦利であるということ。
戦争に絶対の悪がないように、魔法少女達の戦いにも悪はない。紆余曲折あれど、みな己の意志で戦場踏み込んだ。
命を奪い合うという点においては銃撃戦を繰り広げる兵士となんら変わりはなく、ならば気に病む必要はないと。
まだ一度も魔法少女戦を経験していない南雲は――そう安直に考えていた。
さて、幾日かが明けた休日の昼下がり、南雲は再びあの公園へと足を運んだ。
休日はお父さんとどこかへ出かけるのが常なのか、はたまた悪魔の魔性によるものか、人っ子ひとり見当たらない。
「来たか。なにも知らずなにも信じず鉄火場へと飛び込んだ愚者よ!」
「来たとも!戦う手段に活路を見出し己の夢を遂げるため!わたしは舞い戻った!」
「じゃ、変身して」
「はーい」
今回悪魔に会う時間を設けてもらったのは、契約の取り消しを求めてのことではない。
『魔法の使い方』――戦う力の使い方を習得し、魔法核争奪戦での勝率を上げようとしての今である。
一度にたくさん魔法少女を量産するより一人の魔法少女を戦えるよう後見する信条らしいこの悪魔は、
南雲の求めを快諾し、今こうして誰もいない公園に結界を張り、南雲の魔法訓練に助力している。
「変っ身――!」
掛け声一閃、南雲は魔法核を直上の空に放った。
空中で光が炸裂。解けるようにして光のリボンが南雲の肢体を覆い、ややあって蒸着。
一陣の風が上昇気流となって吹き上げ、ブレザーが淡青の飛行服へと変身して南雲の体を覆った。
艶やかな黒髪から色が抜けて、月のような輝きを放つ銀髪へと変わる。風を孕み帆のようにはためく。
「それがおどれの魔法衣装じゃ。耐熱、耐衝撃、対化学、対魔法の防御魔法がオートでかかっとる。
それ着とるうちは車に轢かれようがが銃で撃たれようが簡単には死にはせんしケガもせん」
防御許容を超えるような魔法攻撃は貫通するんじゃけどな。ははは。
そんな感じにさらっと付け足した悪魔に寒気を覚えつつも、南雲はくるりと回転。
「っへー、似合う?」
「似合うように自動補正をかけとるんじゃ。明日激太りしても変わらず着られるけえ」
「うわ、マジレスっすか――うーん、なにか足りないよーな」
具体的には手が空いている。
魔法少女のイメージを頭の中に描いてみて、今の自分に足りないものを精査する。
「あー、魔法の杖的なものが足りない!」
「そんなもん初めからありゃせんわ」
「ええー、杖なくしてなにが魔法少女よ。これ譲れない絶対!杖欲っしっい!つーえ!つーえ!」
「あーもーじゃかあしい!これやるから口閉じれ!」
差し出した南雲の両手にズシリと重い何かが乗る。
黒光りする拳銃だった。オートマチックの拳銃だった。スパイが持ってそうな拳銃だった。
「なにこれ」
「マジカルハジキじゃ」
「淀みなく言い切った!その意義やよし!」
「弾は魔法で生成せえ。今からやり方を教えちゃる」
「生成?」
「そう、物体生成。ええか、魔法少女の魔法ってのは『イメージの具現化』……頭の中身を現実に持ってくる能力じゃ。
魔法核から魔力を練り上げて、強いイメージで形にするんじゃ。こんな風にの」
悪魔の手のひらに極彩色の風が生まれ、花弁のように散る。
南雲は息を飲んだ。先ほどまでなにもなかった手のひらの上に、拳銃弾が一つ出現していた。
「これが魔法、その基礎も基礎。物体を具体的にイメージして、魔力をその形に結晶させる。
材質も性質も魔力が代替しとるから……ほら、金属の手触りじゃろ?銃に込めて撃てば人も殺せる」
「はへー、スゴイね魔法って!」
「まだまだ序の口よ、次は応用編――固有魔法についてじゃ」
「固有魔法」
「読んで地の如く魔法少女毎に固有のスキルが存在するんじゃ。
物体生成が魔法少女の基礎の基礎、ボクサーで言うところのジャブなれば、固有魔法は必殺のストレートじゃのお。
魔法少女を契約する際にかけた『願い』が反映されたものになる。ちなみにおどれはどんな願いをかけたんじゃ」
問われた途端、南雲は片足を軸にぐるりと回転した。フィギュアスケートばりの回転速度で。
「よくぞ聞いてくれました!この坂上南雲には『夢』がある!三千世界に轟き渡る、底なく果てなき野望、それは!」
「なんじゃ」
「パイロットになりたーい」
「勉強しろや!まだ高校生やろがい、今から目指しても十分間に合うじゃろ!
おどれそんな小学生の卒業文集みたいな願いで契約したんか!控えめに言って色々と残念じゃのう」
「願いが固有魔法になるって聞いてたらもっとまともなのにしてたよー!
まあでもよかった!『胸が大きくなりますように』とかにしなくて!目も当てらんないわ」
「まあええわ。ちょっと固有魔法出してみい、その願いなら飛行関係の魔法になるじゃろし」
「よしきた」
南雲は再び無駄に回転し、虚空へ向けて掌を掲げる。
魔法核から魔力を汲みとって、そこに秘められた『願い』を雛形に魔法を解放する。
「でえいっ!」
ポン!と空気の抜ける快音一つ。
彼女の掌から萌え出たのは一翼の紙飛行機。静かに滑空し、そして砂利の上に軟着陸した。
「なにこれ」
振り向くと、背後で悪魔が頭を抱えていた。
こめかみと目頭を揉む、本格的に頭痛がしてきたときの仕草だった。
「か、紙飛行機……おどれ、マジで魔法少女の才能ないんと違うか」
「才能とかいるの!?生まれ持った素質の問題なんだ魔法少女って!ユメもキボーもありゃしないな!」
「おどれの願いのショボさを如実に表しとるのう。――あの、帰ってもらっていいかな」
「急によそよそしくなったね!え、そんな深刻な問題なの」
「いや、今までありがとうございました。短い間だったけどこれから頑張ってください」
「敬語ぉ!?」
そのとき、人もなく音もないはずの公園で、彼女の耳が微細な異変を捉えた。
聞こえたのは金属のかち合う音。それも距離によって減衰しない、脳の髄まで響く鐘音。
「どっかでドンパチやっとるのお」
「魔法少女が?」
「おう。今の音は魔法少女の立てるサインじゃ。かかってこい、私はここにいるってな。
おどれは違うかもわからんが、魔法核蒐集のために積極的に交戦を好む魔法少女は少なからずおる」
「ふーん」
聞き流した南雲はしかし結界の向こう、音のした方向を見据えて動かない。
ここからじゃ何が起こっているのか見えやしないが、それでも何かを視線で掴んで離さない。
「行ってみるか?」
悪魔の問いに、首だけを動かして振り向く。
サングラスの奥の双眸もまた、獰猛に見開かれていた。
「間近で見てみるとええ。――マジもんの殺し合いって奴を」
日はとうの昔に暮れていた。
南雲が魔法少女になった晩と同じ――静かで闇の濃い夜だった。
* * * * * * *
>>43>>52>>56 「お、女の子同士で!女の子同士で縛りあったり突きあったり、なにしてるのあの子たち!」
「その事実の切り出し方には悪意を感じるのお」
「ちょっ、写メ、写メ撮りたい!ああもうデジカメ持ってくればよかった!」
魔法少女達の戦うエリアの隅、林立する一軒家の屋根の上に二つの影がある。
坂上南雲とその契約悪魔である。二人は生成した双眼鏡で戦いの一部始終を観察していた。
「撮ってどうするんじゃそんなもん。言っとくけど写真には映らんぞ。物理法則から踏み出しとるからな」
足元見てみい。と促されて下を向けば、なるほど街灯に照らし出されているにも関わらず南雲には影がない。
試しに変身を解いて、フリル付きの飛行服を制服のブレザーに戻すと、今度はちゃんと影が映った。
「なんか幽霊みたい」
さて、只今絶賛勃発中の戦いに目を向けてみることにする。
場の中心――今宵の主催は夜空舞う一人の魔法少女。反骨精神の塊のような、野良犬染みた雰囲気を持つ少女だ。
相対するは三つの影。アスファルトに咲く巨大な花と、筋肉全開の偉丈夫と、鎖で戒められた幼女。
そんな感じ。
「魔法……少女……ぉ?」
少女は二人しかいなかった。
二人しかいなかった。
あとはおっさんと花だった。
「いや、ちょっと待って、うん、待って、花はまだ分かる。花を咲かせる魔法なんていかにも少女チックでいいじゃない。
でもおっさんは何!?なんなの!?神聖な少女たちの戦場に!あのような巨悪がまかり通るの!?」
「ワシの聞かれてものお。そういう魔法なんじゃろとしか」
「この戦いっておっさん可なの?」
「変身すればみんな『魔法少女』になるのが普通じゃし、特に年齢制限も性別制限も設けとらん」
「なんで性別制限設けなかったーーーっ!?」
たまらず南雲は飛び出した。
かような悪行が蔓延ってはならぬ。
政治も学もわからぬ南雲であったが、揺るがぬ正義の心と悪に対する嗅覚だけは人一倍鋭敏だった。
屋根伝いに跳躍する、その過程で変身。淡青の、フリルの付いた、北欧の飛行服を身に纏う。
「誰が敵ってわけじゃない……この魔法少女の戦いに!わたしはまだ自分のスタンスを獲得していない!
だけど!可愛い女の子とおっさんが殴り合ってるこの状況――わたしが与するべきは明確!」
そして辿り着いた。鎖の魔法少女と、おっさんの拳の交錯点。
幾条もの鎖がおっさんを貫かんと迫り、おっさんは受け流して回避する。
巨大花のあたりへと退避したおっさんへ向けて、南雲は躊躇わずマジカルハジキを構え、発砲した。
「可愛くない奴は死ねーーーーっ!!」
16発入りの弾倉が空になるまで引き金を引き続ける。
【麻子とナックモエとの戦いに乱入。ナックモエと巨大花へ向かって発砲】
テンプレちょい修正
名前:坂上 南雲 (さかがみ なぐも)
所属:女子高生
性別:女
年齢:16
性格:フライトハッピー
外見1:黒髪を適当に結ってある。
外見2:淡青でフリルのついた飛行服。フィンランド空軍の軍服っぽい。銀髪ロング
願い:パイロットになりたい
魔法:マジカル航空戦闘機
属性:空
行動傾向:全世界の可愛い女の子の味方
基本戦術:ミニチュアから実物大まで大小様々な戦闘機を生成しファンネルっぽく戦う
うわさ1:極度の空軍系ミリオタ。ラプターがお気に入りらしい
うわさ2:戦闘機から爆撃機輸送機偵察なんでも出せるけど熟練度の低いうちは紙飛行機程度しか出せないらしい
うわさ3:「おっパイロット」という本職にぶん殴られそうなギャグの為に豊胸運動を頑張ってるとか
【よろしくお願いします!】
>>52 猪間麻子
お返事はすぐいただけました。
>「頭湧いちゃってるんですかぁ?何でオメーにそんな事教えなきゃならねーんだよ」
……だ、そうです。いーじゃん、けちー。教えたところで減るもんじゃなし。損するわけでもなし。
>「そもそもさぁ、逆に戦わずに叶えられる願いってある訳?」
あるよ。「魔法少女になりたい」って願いを叶えてもらった人間が……ここにいるんだもん。
思ってたのと全然違うけど。
>「オメーだってガッコーでテストや駆けっこくらいすんだろ?
それだって一位になりたかったら他の奴らを蹴落さなきゃなんねー訳でさぁ」
そうなのかな。
>「何のこたぁねーさ。こんなの、夢を叶える異種格闘技戦みてーなモンじゃねぇか。
テストで一番になりたいヤツと、駆けっこで一位になりたいヤツが蹴落し合うゲームってだけだ」
そうかもしれない……。
でも、“一位になること”と“蹴落とし合うこと”って、同じことなの……?
競争には確かに順番がつくけれど、それは誰かを蹴落とすためじゃなくて、“みんなが一位を目指せるため”にするんじゃないの?
>「……つーかオメーよぉ。だぁれが手を貸してくれなんて言った?
マジで頭おかしいのか?それとも手を組めば見逃してもらえるとでも思ったかよ」
む、そんなことっ……すいません、少しだけ思ってたかもしんない。
何食わぬ顔でバカな善人を装い、戦意がうやむやになったところであんたから情報をもらおうかなー、とか。
思ってたんだけど、全然甘かった。おねーちゃんのそのヤサグレ具合。一体どんな地獄を見て育ってきたのよ……。
>「まぁいいさ。せーっかく小洒落た鎧をくれたんだ。お礼をしてやらなくちゃなぁ……!」
>「生憎オメーのみてーに洒落ちゃいねーがよ。アタシも鎧をくれてやるよ。
ま、殺しやしねーから安心しろ。全身の骨が砕けた後で、魔法核を頂戴して終わりだ」
闇夜に浮かんだ純色の縛鎖が、螺旋を描いて私に迫る。
繋いで、叩いて、縛って、奪う――あの娘の望んだ『魔法』の形、これまで見てきた世界の表象。
誰かに戦わされるのは嫌。奪い奪われるだけの世界はもっと嫌。
“それ”に抗いたくて――私はあのとき、『魔法』を望んだんだっ!!!!
「我掲げるは双魔の剣!」
両手に生じた不可視の力場が言葉通り二つの剣を形成する。
程よい重さを腕に感じ、その鋭利な刀身が縛鎖を切り裂き、空間に霧消させる。
「…………」
【不可視の剣で鎖を破壊】【続く】
>>55 茅野いずみ
戒めを解いたはいいけど、やはり積極的に誰かを攻撃するのは気が引けた。
……いや、別にヒヨってるわけじゃなくてですね。
幸い「鎖」の魔法少女は「拳」の魔法少女とがっぷり四つ。
再びこちらにロックを向けるまでちょっとだけ時間がありそうだ。
あとは……
見渡した先に座り込んでいる「花」の魔法少女を見つけた私。
先程受けた攻撃で足を負傷したらしく、鎖でつけられた痕が実に痛々しい。
…………
私のせいだなっ!うん!!
一瞬色んな言い訳じみた考えが脳裏をよぎったが、認めてしまうのが自分の為だろうという
これまた偽善的な思考を繰り返し、反芻し、煮詰めて、こんな小学生いたら大人は何て思うだろうとか
世間的なアレやコレやを気にしつつ、結果的にやることが同なら考えるだけ無意味
という結論に至るまでおよそ0,3秒。
私は「花」魔法少女の方へと走っていった。
「大丈夫ですか……?」
『我は癒す斜陽の傷痕』
魔法少女なら簡単な怪我ぐらい自分でどうにでもなるだろうけど……私は彼女に治癒魔術を施した。
簡単な打撲や裂傷ならこれで防げるはずだ。
「お姉さん、さっきはごめんなさい……ただ、あなたが喧嘩するのを止めたかったの」
今更許してもらえないかもしれないが、私の本心には違いなかった。
>>56 萌
そのとき、「鎖」と戦っていた魔法少女がこちらまで飛んできた。
……くさっ!
鼻をついた強烈なハッカの匂いに思わず顔をしかめる。
っていうか……おっさん誰!?
>「あんた!ちっと手伝いなさい!」
筋肉隆々の男が発するタフな声が「花」の魔法少女にオネエ言葉で話しかける。
何なの、この絵ずらは……。
さっきまでそこら辺にいたもう一人のお姉さんはどこへ消えた?
【茅野いずみに回復魔術】【ナックモエの姿に困惑】
>>62 坂上南雲
>「可愛くない奴は死ねーーーーっ!!」
(みんなそう思ってるけど、ソレ言っちゃ駄目)
どこからともなく聞こえてきた天の声に、脳内で同意と制止を唱える。
忙しない状況の変化は私の認識が追いつく前にどこかへ吹き飛んでいく。
次の瞬間。
ダダダダダダダダダダダダダダダダ(16発)!
放たれた凶弾の雨がオッサンと巨大花の上に降り注いだ。
……今度は何?
【さらに困惑w】【遅くなってすいません】
>>55>>56>>65 >「あんた!ちっと手伝いなさい!」
「……何だぁ?仲良くプリキュアごっこでもするってか。筋肉ダルマとパックンフラワーで?
真新しすぎてガキが泣き喚くっつーの。そもそもよぉ……」
顎を上げて、自分よりも年上で、遥かに大きな相手を見下すように、麻子が嘲笑する。
「いいんですかぁ?そんな簡単に手ぇ組んじまって」
笑みを一層色濃くして、問いを放った。
「敵の敵は、やっぱり敵なんだぜ?魔法少女ってのはよぉ」
不安を煽るような口調だった。
「預けた背中を刺されちまっても、知らねぇよ?」
若干13歳の少女である麻子は、しかし魔法少女として戦ってきた経験によって、萌達に心理的な揺さぶりを仕掛けた。
敵の敵がやはり敵であると言うのは真実だが、同時に味方を得た敵はより厄介な
――無論、麻子は相手に結託された所で負けるつもりはないが――敵である事も事実だ。
萌達が麻子の言葉を完全に聞き入れるとは思えないが、彼女らの心に一滴の猜疑心を零しておいて損はない。
「つーかネーちゃん、危ないんじゃねぇの?そんなチンケな家に引き篭もってたらよぉ……」
麻子が周囲の電柱や街頭、建物に鎖を絡ませた。
縦横無尽に張り巡らされた鎖を足場に何度か跳躍し、再び夜空に立つ。
両手を頭上に掲げて、麻子は大量の鎖を宙空で発生させ、編み上げた。
金属音の産声がけたたましく響く中、段々と鎖の集合体が形を得ていく。
狼だ。超重量の狼の生首が、月光を受けて獰猛に煌めいて、茅野の閉じこもる花を睨んでいた。
「こわぁい狼さんに喰われちまうぜぇ!?醜いブタみてーによぉ!!」
麻子の脅迫的な言葉を咆哮の代わりとして、狼の生首が落下を始めた。
重量級の鎖の塊は、防ごうとすれば甚大な損傷を呼ぶだろう。
勿論、避けてしまえば何の問題もない。
が、足を強く締め付けてやった茅野には難しいだろうと、麻子は踏んでいた。
更に――避けなければ手痛い被害を被るのは、茅野に協力を求めた萌とて同じだ。
そして萌が避けたのなら、それは『協力関係』とこれ以上なく矛盾する。
他の魔法少女の心が繋がり鎖となる事を、麻子はとことん防ぐつもりでいた。
あるいは、無理に助けようとして共倒れしてくれれば、僥倖だ。
しかし麻子は、一つの事実と可能性を見落としている。
まず、理奈が茅野の足に治癒を施した事実を。
また、もしもこの状況下で、誰かが多大な自己犠牲を厭わず茅野を助けたのなら、
それは二人、または三人の『協力関係』を決定付けて、強固にしてしまうと言う可能性を。
>>62 >「可愛くない奴は死ねーーーーっ!!」
「で……ありゃ一体何なんだぁ?」
先ほど聞こえた不意の銃声と、戦闘前には感知出来なかった魔力に、麻子が振り向く。
同時に、闖入者が何者なのかを理解した。
とりあえずフリルを付けておけば魔法少女らしいだろうと言わんばかりの飛行服を纏う少女の隣。
強面の、魔法少女とは明らかに毛色の違う魔力を醸し出す男を見て。
「なるほどねぇ。バンビちゃんって訳だ。あるいは、ウミガメのガキってトコかぁ?」
意地の悪い笑みが浮かんだ。
これまで茅野や萌、理奈に見せてきた、獰猛な野良犬を思わせる笑みではない。
ただ、自分にとって都合のいい物を見つけたと言う、笑い方だ。
麻子にとって南雲は、まな板の上で跳ねる鯉や、巣から落ちたヒナ、ネギを背負ったカモでしかない。
「ほぉら……ぼやぼやしてっと喰われちまうぜぇ……?」
夜空に浮く南雲の下、死角から彼女の足を狙って、微かな金属音と共に鎖が伸びる。
【他の魔法少女同士に協力されると面倒→じゃあ助け合えない状況作るよ、協力なんてまやかしだっつーの
茅野を包む花を中心に、萌と理奈も巻き込む巨大な鎖の塊を落とす。呼びかけと回復で、ある程度みんな近くにいるって感じで進めたけど良かったですか
そして南雲さんよろしくお願いします!軽いちょっかいなので軽くあしらって下さい!】
まるで足に力が入らず、これでは攻撃を避けることすらままならない。
この花も、恐らく長くは持たないだろう。
魔法少女になって日も浅く、実践経験も皆無であるいずみの力は、正に脆弱その物で、
手痛い攻撃にも耐えられるほどに強靱な花を生み出すことなど、まだ出来るはずもないのだ。
とりあえず外の様子を窺おうと、薄く開いた花の唇から顔を覗かせる。
>>56 それと、萌が目の前に現れたのは、ほぼ同時だった。
「え…………き、きゃあぁっ!?」
筋骨隆々、ぬめる褐色の肌が眩しい格闘家・ナックモエの姿に、一瞬気圧されたが、
>「あんた!ちっと手伝いなさい!」
――それが麻子と戦っていた萌なのだと、逞しい筋肉美に戸惑いながらも何とか理解する。
「す、すみません…!足に力が入らなくて…っ」
しかし、萌の協力を求める声に応じようにも、足の方が言うことを聞かない。
そうしている間にも、萌は向かってきた鎖を、拳を打ち付けていなす。
――せめて、この足の痛みさえ消えれば……
>>62 >「可愛くない奴は死ねーーーーっ!!」
突如、けたたましい破裂音と共に、幾つもの何かが花の表面から中へと突き抜けた。
それは、『空』の魔法少女――坂上南雲の持つ『マジカルハジキ』の銃口から射出された、魔力で生成された弾丸だった。
幸い、いずみは腕や足を掠る程度で済んだが、人間を飲み込む程に巨大な人喰い花は格好の的だった。
当然何発もの弾丸をその実に食らい、まるで生き物のようにもがき、のた打ち回ると、その衝撃でいずみの体は地に吐き出される。
もはや体を守る物は何もなく、無防備な状態で敵陣に放り出されたような物だった。
>>65 そこに駆け寄ってくる、一人の魔法少女、神田理奈だ。
まだ小学生ぐらいだろうか、その外見からは愛らしさとあどけなさを感じる。
その姿を見ても敵意がないのは明白だったが、小さな女の子だからといって油断するつもりはない。
他でもない麻子も、また『小さな女の子』だったのだから、魔法少女ならば誰であろうと警戒するべきだ。
いずみは、理奈の出方を待つことにした。
――後ろ手に、手近にあったこぶし大の石を隠し持ちながら。
近くに駆け寄ってくるということは、相手の近くにいなければ出来ないことをしようとしている。
つまり、理奈は接近戦の魔法を得意としているのかもしれないと、考えたからだ。
この石を投げつけるなりして注意を逸らし、その隙に魔法で応戦しよう、と。
>「大丈夫ですか……?」 『我は癒す斜陽の傷痕』
だが、理奈の行動はいずみの思惑からは大きく外れたものだった。
一瞬感じた魔法力の波――いずみは、まだそれを的確に感じ取れるわけではないが――に怯え、石を握り締めた右手を振りかぶろうとしたが、すぐに止めた。
いずみの足に刻み込まれた鎖の痕が、理奈の魔法によって、すっかり消えていたからだ。
――これが…この女の子の、力…?
痛みもほとんど引いており、いずみは驚きながらも、ゆっくりと立ち上がる。
>「お姉さん、さっきはごめんなさい……ただ、あなたが喧嘩するのを止めたかったの」
“さっきの”ということは、光の障壁は、この少女の魔法による物だったのだろう。
そう理解したいずみも、理奈の顔を見据えて口を開く。
「……これは、喧嘩ではなく戦争です。貴方も、他人のことを気に掛けている場合ではありません…」
理奈の謝罪の言葉を突き放すようにそう言ったいずみの唇は、僅かに震えている。
それを抑え込むように唇を噛み締めながら、理奈から顔を背けて目を逸らす。
そして、理奈の不意を突こうと未だ右手に忍ばせていた石を、地面に取り落とした。
伏し目がちに、そっと呟く。
「…でも、きっと魔法って、本来はこうして人を助ける為に使う物なんでしょうね
だって、昔読んだ絵本に出てきた魔法は、人を幸せにする魔法ばかりでしたから…」
>>71に続
おもむろに顔を上げ、理奈を見つめる。
その表情は、普段いずみが過ごしている日常の中で見せているような、柔らかな笑顔だった。
「二つ、お礼を言わせて下さい。まず私を助けてくれたこと、そして……私を止めてくれたこと、」
そして、理奈に向かって深々と頭を下げた。
「本当に、ありがとうございます」
委員長としての生真面目な性分をこれでもかと発揮するかのように、数秒間その体勢を維持する。
女子校生が小学生女子に礼をして敬意を表しているという、端から見れば少し特殊な状況が出来上がってしまっていた。
>>67 >「いいんですかぁ?そんな簡単に手ぇ組んじまって」
そんなある種、非日常的でありながらも平和な光景に水を差す言葉。
その声の主は顔を上げて確認するまでもなく、麻子だと分かった。
麻子の方へ向き直ると、心の中に残る僅かな不安を打ち消すつもりで叫ぶ。
「私は、貴方の言葉に惑わされたりはしません…!!」
いずみは麻子の狡猾さに腹が立ったが、今はそれよりもこの状況をどうにかするべきだと考えた。
もちろん麻子を殺すつもりは既に無く、致命傷にならない程度に攻撃を与えれば、戦略的撤退でもしてくれるかもしれないと思ったのだ。
いずみは、銃弾によるダメージで地面に突っ伏していた人喰い花に急いで駆け寄り、その場に座り込む。
花の表面にはいくつもの痛々しい穴が空いている、そこにそっと手をかざして魔力を注ぎ込んでみる。
すると、少しずつ穴が塞がって癒えていくのが分かった。
引き続き治療を施そうとしたが、突如人喰い花を照らしていた月明かりが何かに遮られる。
まるで、急に空に暗雲が立ち込めたかのようだった。
いずみは不思議に思い、頭上を見上げる。
「……え?」
そこには、麻子の鎖によって編み上げられた猛獣、巨大な狼の首が、上空からこちらを睨みつけていた。
>>72に続
>「こわぁい狼さんに喰われちまうぜぇ!?醜いブタみてーによぉ!!」
「…っ!!」
麻子の言葉に呼応するかのように、狼は地上を目掛けて落下を始めた。
いずみが、理奈と萌に対し声の限りに叫ぶ。
「っ……ふ、二人とも、逃げ――」
そこで、いずみの声は途切れた。
生首の落下速度は凄まじく、今から立ち上がって逃げたところで、到底間に合うものではなかった。
花の治療にかまけて麻子から目を離したりしなければ、避けることも、それが出来ずともいずみの魔法で首の落下速度を多少軽減するぐらいは出来たかもしれなかったが。
人を喰うはずの花は、哀れにも狼に喰われてしまった、それは当然傍らにいたいずみも同じことだ。
いくら魔法の防御補正が掛かっていたとしても、鉄の塊を真上から受け止めてしまったら、耐え切れるはずもない。
いずみの体はいとも容易く押し潰され、全身の骨という骨を粉々に砕かれ、そして絶命した。
理奈の足元に、紫色の光を放つ物体が転がっている。
それは紛れもなく、いずみの持っていた魔法核だった。
最期――生首が頭上僅か数メートルにまで迫ってきた瞬間、理奈に向かって投げていたのだ。
こんな状況にありながら自分を助けてくれたこと、人として大切なことを思い出させてくれたことに対する感謝の証として。
【いずみ死亡・魔法核を理奈に託す】
【リアル事情により一時退場せざるを得なくなったので、こういう流れにしてまいしました…;
セールスマンさん(
>>53)いわく、『亡者』として後日復活(と言えるのかは微妙な存在ですがw)出来ればなぁ、と考えているのですが…
ご迷惑お掛けすることになってすみません…】
【×セールスマン ○販売員でしたね、訂正します…】
エターナルフォースブリザード!?♪。
トリニティーパワーサンダー!?♪。
タクティクスエネルギーファイアー!?♪。
クリティカルドライブフラッシュ!?♪。
麻子の落とした超重量の鎖の塊で、茅野は死んだ。
魔法少女としての茅野は、死んでいた。
夜闇を渡る煌きを、絶望の中で託された希望の光にも見える煌きを認めて、麻子はそれを理解した。
「……チッ、バッカじゃねーの」
吐き捨てるように呟いた麻子は、しかし微かに肩を震わせていた。
「普通逆だろうがよ。大怪我すんだぞ?なのに何で魔法を投げ捨ててんだよ」
責めるような口調だった。何て事をしてくれたとさえ、言わんばかりの。
魔法少女は即死さえしなければ、怪我は急速に治っていく。
勿論大きな怪我にはそれだけ多くの魔力を必要とするし、
何より回復の隙を見逃すつもりなど麻子には更々なかった。
が、殺すつもりも、同様にありはしなかった。
「……おい、オメー。そのバカの魔法核、近付けてやれ。30秒もすりゃ、とりあえず死にはしねえ」
魔法核を託された理奈を睥睨して、麻子が一方的に命じた。
「待ってやる。不意打ちもしねえ。だからさっさとしろ。アタシは、人殺しがしたい訳じゃねーんだ」
睨んでいるのか、顰めているのか分からない表情で、早口に吐き捨てる。
麻子は凶暴だったが、これまで相手の魔法少女を殺した事はなかった。
彼女にとって魔法少女の戦いはあくまでも、彼女自身が言ったように、夢を叶える為のゲームなのだ。
相手を傷つけ、夢を奪う事はあっても、恒常的に命まで奪うだけの動機は、麻子にはなかった。
――それが、必要に迫られない限りは。
【お疲れさまでした。もう三月ですし、は仕方ないと思います。またいつかお会いしましょう。
あとマジ死にしてるよりかは、のちのちの選択肢が広がるかなって事で、ちょいと余計な事をさせて頂きましたです】
76 :
名無しになりきれ:2011/03/03(木) 00:00:04.26 O
良スレage
77 :
名無しになりきれ:2011/03/03(木) 06:01:49.24 O
良ビガーパンツage
――幼い頃から
私はパパやママがずっと集めている小説や漫画、アニメや特撮のDVDを見て育った。
中でも私は『魔法』と云われる力で困っている人を助けたり、悪人や怪物をやっつけたりする魔法少女の物語が
超大好きで、その子たちと友達になってみたい!と本気で思っちゃうほどかなりイタイ子でした。
かつて現実だと思っていたそれらが、フィクション……全部嘘なんだって気付いたのは、多分小学生になってから。
本当の現実はもっと救いがなくて、この世界は守ることよりも奪われることのほうが簡単に起きてしまう残酷な場所
なんだって知ってしまってから、私の中にあった物語は次第に置き場を失って、いつしか幼い憧れだけが胸に残りました。
それでも彼女たちの物語や言葉、行動は、誰かの“願い”を映している鏡なんだって、どこかで信じてた。
ううん、信じたかった。
「そこの貴方、魔法少女になってみたくはありませんか?」
だから、声をかけられたとき……自分の運命と勘違いしちゃったんでしょうね。
勿論最初は鼻で笑ったわ。
ギリギリ小学生とは言え、いい年した娘が魔法少女なんて冗談にもなりゃしない。
でも、もし本当なら――
自分に誰かを助ける力が、『魔法』を手に入れることができるなら
私という物語が映す“願い”が、この世界を変えられるかもしれない。
奪われるばかりのこの世界から、少しは抗えるかもしれない。
そんな……そんな幼い憧れだけに突き動かされて、あのとき私は魔法少女になった。
なってしまった。
【ブラック魔法少女 神田理奈 編 第1話『後悔なんてしたくない』】
>>70-71 茅野いずみ
やや驚きながらも、「花」の魔法少女は治った足で立ち上がり、私を真っ直ぐ見据えてこう言った。
>「……これは、喧嘩ではなく戦争です。貴方も、他人のことを気に掛けている場合ではありません…」
突き放すようなお姉さんの言葉。うん……分かってた。
これが喧嘩なんて生ぬるい言葉で表現できないものであることぐらい。
自分のやってることが、誰から見ても綺麗事でしかないってことぐらい。
だけど……だけど……
そのとき、ゴトッという重い音がしたかと思うと、彼女の足元に拳大の石が転がっていた。
げげっ、これって、もしかして……
地面に転がる即席鈍器に唖然とする私を余所に、彼女は最早私に何の警戒心も無く、伏目がちに口を開く。
>「…でも、きっと魔法って、本来はこうして人を助ける為に使う物なんでしょうね
だって、昔読んだ絵本に出てきた魔法は、人を幸せにする魔法ばかりでしたから…」
…………
>「二つ、お礼を言わせて下さい。まず私を助けてくれたこと、そして……私を止めてくれたこと、」
このとき、
>「本当に、ありがとうございます」
このときの彼女が見せてくれた笑顔とこの言葉を聞いて、私の中の何かが弾け飛んだ。
刹那に歪んだ視界の理由を、私はすぐに把握できない。
それが自分の涙だったと気が付いたときは既に遅くて……次の瞬間、私は堰を切った感情の奔流に泣き崩れていた。
「う……うぅ……くっ……えぅぅ……!」
怖かった。何もかもが怖かった。
初めて知った争いの中で、自分を騙し騙しでやっていたけど、本当は今にも壊れそうだった。
勢いに流されるまま使った魔法がいつ誰かを傷つけるんじゃないかって……その人の大事なものを壊してしまうんじゃないかって。
不安で不安でたまらなかった。
この人の言葉に私は救われた。
私の魔法は、間違って何か……なかったんだ。
【続く】
>>67 猪間麻子
>>72 茅野いずみ
>「いいんですかぁ?そんな簡単に手ぇ組んじまって」
>「敵の敵は、やっぱり敵なんだぜ?魔法少女ってのはよぉ」
「鎖」の魔法少女の声が聞こえる。
俯いたままの私にその顔は見えないが、幾分挑発めいた態度なのは何となくわかった。
>「私は、貴方の言葉に惑わされたりはしません…!!」
それに応じる凛とした女性の声。
猜疑に満ちたこの戦場で、初めて出逢えた、私の魔法の道しるべ。
ささやかだけれど、信頼という縁(よすが)の根を張り、咲いたその花は私の心を明るく照らした
>「こわぁい狼さんに喰われちまうぜぇ!?醜いブタみてーによぉ!!」
――巨狼のアギトに齧り獲られる、その時まで。
>「っ……ふ、二人とも、逃げ――」
ぐ し ゃ
スイカを叩き潰したような音がしたかと思うと、硬貨が落ちたときの快音が耳に遅れて届いた。
不思議に思った私が最初に眼にしたのは、足元に転がる紫色の魔力核。アカイイロ。
あ、いけない。これはあの人の大事なものなんだから、返さないと。
拾い上げて立ち上がる。
差し出そうとしたその先に見たものは――鉄の塊によって骨を圧壊された、血溜まりに沈む魔法少女の肉体だった。
「――い、い――――いやあああああああああああああああぁ……――!!!!」
【茅野さん、お疲れ様です……】
【キャラに感情移入し過ぎてしまいましたね。あなたのレスを読んだとき、本当に泣いてました……(−−;)】
【後日復活をお待ちしております。
>>75に対する理奈の行動はだいたい決まっていますが、今後の方針を決める為にも
萌さんと南雲さんのレスを見てから考えたい所存にございます】
血の泉=マミさんか?
さて他のキャラは・・・
萌は麻子の言葉を眉ひとつ動かさず聞き流しながら、未だ手数の減らない鎖を、同じように減らない手数で打ち払う。
いっそ掴んで引きずり寄せてやろうかと考えたが、引っ張ってる間に別の鎖に攻撃されるだけと思い直し、萌はいずみの返答を待った。
そして返ってきた答えは……
>「す、すみません…!足に力が入らなくて…っ」
先程の交戦でやられたのだろう。萌は音がするほど歯をかみしめ、さらに一歩踏み出した。
変身した後の萌の身長は190センチ台、体重も3桁に達する。ただそこに立っているだけで、花ごといずみをかばえる程度の大きさだ。
麻子の言うとおり、いずみに悪意があれば文字通り背を刺される。
それでも、麻子に"腹を刺される"よりはまだ可能性は低いように萌には思えた。
>「可愛くない奴は死ねーーーーっ!!」
さらに一歩踏み出そうとしたところで、上空から声が降ってきた。反射的に上を見た萌と南雲の構えたハジキが視線を交わす。
(見える!!)
魔法によって強化された超感覚のおかげで、萌にはハンマーが落ちて銃口が火を吹き、スライドが後退する様まではっきりと認識できた。
吐き出された弾丸がにじり寄ってくる。素早くサイドステップ。他者の認識では一瞬、萌の主観では十数秒に及ぶ時間を経て……
弾丸は全弾命中した。
萌は体を捻りながら後ろへ吹っ飛ぶ。
そもそもいくら軌道が見えても、弾丸よりも速く動けないなら回避は不可能である。
「たっ……タイオイルがなければ即死だったわ……!」
意識が途切れたせいか、変身が解けて制服姿に戻った萌が、呟きながら体を起こす。
タイオイルとはナックモエ――ムエタイ選手を指す言葉だ――が体に塗るオイルで、
鎮痛作用や、摩擦を減らすことで肌へのグローブの食いつきを抑えて、裂傷を防ぐ効果がある。
だいたいどこの製品にもがかなりの濃度で配合されているのが特徴だ。
このオイルが弾丸を逸らし、致命傷を防いだのだ。魔法というものは奇跡に満ちている。
とはいえ、弾丸の運動エネルギーは萌の皮膚と贅肉と筋肉をいくらかずつ削ぎ落としていった。
そこから流れ出した血はブレザーの布地の色を少しずつ濃く変えている。
すぐ前にはいずみと、いつの間にか理奈がいた。
ずいぶんと吹き飛ばされたものだ。血の染みは何で抜くんだっけ?パラニュークの小説をもう少し真面目に読んでおけば良かった。
萌の脳裏に浮かんでくるのは場違いな考えばかりだ。
>「こわぁい狼さんに喰われちまうぜぇ!?醜いブタみてーによぉ!!」
膝をついて立ち上がった萌の頭上に影が差し、耳障りな金属音がひときわ音量を増す。
狼の頭部を模して編まれた鎖が、顎門を開いて落ちかかってきた。
萌は変身することも忘れ一歩退く。理奈もすでに範囲外に居る。
だが、当然それに続くものだと思っていたいずみは、その場に座り込んでいた。
萌は反射的に踏み込み、足を振り上げる。
(間に合え間に合え間に合え間に合え間に合え間に合ええぇぇぇぇぇぇぇ!!)
全力でのテツ・カン・コー。右足が狼の横面を捉える。すねから嫌な音がする。そして、狼はアスファルトに口づけをする。
萌が生身のままで放ったハイキックは自分の足をへし折った。
鎖の隙間を通り抜けた血が一滴、萌の服に跳ねかかる。
血の染みは何で抜くんだっけ?
赤い輝きを手に理奈が悲鳴を上げるが、萌の脳裏には場違いな考えが浮かんでいた。
名前:神崎 壊(かんざき かい)
所属:死刑囚
性別:女
年齢:17歳
性格:この世の全てが敵。常に苛立ちを抱えている。
外見:切れ長の目、バサバサの金髪
外見(変身後):金と紫の強化服
願い:戦う事
魔法:怪物を召還、強酸、武器精製による接近戦(剣)
属性:毒
行動傾向:好戦的、狡猾な一面も持つ
基本戦術:接近戦を得意とする、モンスターを利用した攻撃も得意
うわさ1:過去に8人の人間を殺害した
うわさ2:自分の家族を4人殺害している
うわさ3:魔法核を手に入れ、刑務所を脱獄した
(宜しくお願いします)
射撃は続く。筋肉男と巨大花を正確無比に撃ち据える。
威力相応の反動は、変身によって強化された基礎膂力のおかげで小気味いい振動だ。
弾倉が空っぽになるまで引き金を引き続け、銃声はやがてハンマーが空振りする音にとって変わる。
数えで正確に16発。マジカルハジキはその役目を終え沈黙した。
「ふゥ〜、気持ち良いもんだね!空っぽになるまで中身を出し切るっていうのは……!
さてさて、弾切れたし早速弾丸生成でリロードを――ってマガジンどうやって抜くのか知らねー!」
引き金を引けば弾が出るということぐらいは一般常識であっても、マガジンキャッチの存在までは南雲とて知らない。
エアガンすら持たない彼女にとって、射撃以上の動作は完全な未知。安全装置は初めからかけられていなかった。
(えっと……ドラマなんかじゃ横っかわについてるボタンを押して、)
試行錯誤する彼女の背後、結果的に南雲が加勢した鎖の魔法少女の影が差す。
>「ほぉら……ぼやぼやしてっと喰われちまうぜぇ……?」
敵意が孕んだ風は黒。悪意が断じた一閃の銀光。
右足に拘束感。南雲の耳に風切音が届いた瞬間には、既に彼女は宙に放り出されていた。
「でえええーっ!?」
見開かれた双眸が捉える景色は逆転のまま停止。
鎖に足首をとられ、そのまま逆さ吊りにされたのである。
足から伸びる鋼の縛鎖、その起点を握る魔法少女と逆さの視界で眼が合った。
「……やーどーもこんばんわ」
吊られたまま気さくに話しかけるが、鎖の少女はこちらを見ていなかった。
南雲の背後で展開される光景の、その一部始終を見据えているのだった。
つられて南雲もうまく体を回転させて振り向く。
>「っ……ふ、二人とも、逃げ――」
――捉えた視界のその先で、少女がひとり潰れて死んだ。
「……………………えっ」
鎖を幾重にも重ねて構成された、巨大な狼の顎。
超重量の鉄塊は隕石というよりかは、振り下ろされた鉄槌のように、巨大花を噛み潰した。
中にいたであろう、主たる花の魔法少女ごと。水風船を割ったみたいに、今度は鮮血が開花する。
>「――い、い――――いやあああああああああああああああぁ……――!!!!」
悲鳴なんて生やさしいものじゃない、横紙を縦に破るような絶叫。
圧潰された肉塊の隣で――その死の瞬間を一番間近で見てしまったであろうもう一人の少女が慟哭する。
反対側の隣では、足が変な方向に曲がった少女が放心している。筋肉男の姿はなく、そこにいるのは彼女たちだけだった。
>「待ってやる。不意打ちもしねえ。だからさっさとしろ。アタシは、人殺しがしたい訳じゃねーんだ」
鎖の少女とて予想外の事態に困惑したのか、動揺を隠さず誰彼に指示を出す。
南雲は動く。握ったままのマジカルハジキで足を戒める鎖を狙う。
「……っ!」
が、弾は出ない。装填なんかできていない。
宙吊りのままでは踏ん張りが効かず、鎖を引きちぎることすらできない。
ただただ、無情に揺れるだけの振り子と化す南雲。その眼に宿るは感情の奔流。
「――はっな、せぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇっ!!!!」
体を無理やり捩り、上半身に回転を生み出す。
その勢いのまま腕を振り上げ――掌に魔力を込めた。願いに問い、解答を出力する。
宵闇を染める空色の極光。掌に展開した光から、光と同じ色をした、一翼の紙飛行機が飛び出した。
夜空を空色に曳光。射出された紙飛行機の、挙動はしかし滑空ではない。マッハもかくやの速度で――飛翔。
瞬きより速く虚空を切り、鎖を濡れ紙のように斬断した。戒めを解かれた南雲はアスファルトへと墜落する。
猫のように空中で反転し、着地した。鎖の少女とその敵対者たちとの間に立ち、鎖の少女と対峙する。
「この坂上南雲、不覚にも今晩この時まで危機感の欠片もなかった――その点についてはお礼しなくちゃだね」
鎖の少女を見据える南雲の双眸は、赫怒でもなく怨嗟でもなく、ひたすらの戦意に満ちていた。
だけど、と言葉を追加して。
「聞いてたよ鎖ちゃん。さんざん人を信じることの愚かさを説いておいて、そりゃちょっと都合良すぎるんじゃないの。
君ちゃんは今すぐもっかい狼出して、今度は全員まとめて潰すことだってできる。そうしない保証なんてないない。
これは命がけの戦いだから。魔法少女は生まれながらにして常在戦場だから。誰も信じないし、信じてもらえない」
背刺しの理屈を常用して、人を信用しない者は、自分もまた信用されないしっぺ返しを覚悟しなければならない。
それが殺し合いならなおのこと。魔法少女はその信念に関わらず、たった一人で戦い続ける宿命を背負うのだ。
南雲が抱擁するように両腕を広げれば、腕に乗るようにして無数の紙飛行機が出現する。
さながら南雲を空母にした艦載機の如く、紙製の飛行編隊は彼女の周囲に展開された。
「敵の敵は味方でも敵でもない。そりゃただの赤の他人だよ鎖ちゃん。そう、今宵の私たちのようにね。
だから私と戦お。不意打ちしないと言ってくれた君の言葉を、歪みなき真実に変えるために!
――戦いを超えて、背中を任せる戦友になれるように!!」
空色の紙飛行機達は、流星群となって鎖の魔法少女へと飛翔する。
【独自の理屈で茅野ちゃんの治療の時間稼ぎをかって出る。
麻子ちゃんに紙飛行機流星群(一機一機は紙レベルに軽いので被弾してもダメージ微細)】
>>72 【お疲れ様です。凄く絡みたかったキャラなのでまた後日ぜひともこのスレでお会いできるとそれはとっても嬉しいなって】
新規参加です。よろしくお願いします
名前: 蒼月徹(そうげつ とおる)
所属: 大学生
性別: 男
年齢: 21
性格: 正義感は強い
外見: さえない外見のどこにでもいる大学生風
変身時は自分が手に持った機体と同じ姿になれる
そのものというよりはそういうデザインの鎧を着ているといったイメージ「MS娘」をイメージしてもらいたい
願い: ガンダムになること
魔法: いろいろなガンダムになれる。レベルが低いうちは強力な機体にはなれない
属性: イメージと願いの実体化
行動傾向: 勝つこと
基本戦術: MSになってその機体にあった戦い方をする
うわさ1: 彼の願いは魔法少女になったときに叶っている
うわさ2: だから、自分がこの戦いを終わらせようと思っている
うわさ3:争いをなくすこともガンダムの役割なのだから
【ブラック魔法少女 蒼月徹編 第零話 『魔法少女、大地に立つ』 】
俺はガンダムになりたかった。
ああ、笑ってくれても構わない
子供のころから、あの白い姿に憧れていた
年齢的には20歳を超え、大人の仲間入りをしたのは去年のこと
心はまだ子供のままだった
「俺がガンダムだ」
とある主人公の台詞だ
俺はこの言葉を画面越しに聞いたとき、この主人公が心の底からうらやましかった
なぜならこいつは『ガンダム』に、自らが憧れる崇高な存在になれたのだから
ガンダムはただのアニメ。なれるはずがない、そんなことはわかってる
だけど、俺はガンダムになりたかったんだ
「君?−−−にならないかい?」
時間は確か……18時前だったと思う
あたりはすっかり暗くなり、大学の裏手にある駐輪場に人気はなかった
俺が通う大学の裏門、そこは学生が騒ぐ駅がある表門とは違い、出ればすぐそこには住宅街が広がっている
電車で遠くの大学に通うのを嫌がり、家から近くそこそこのレベルの大学を受験した
俺の家はこの裏門から自転車で20分もかからないこの住宅街の端っこのほうに家族と住んでいる
いつも通り、愛用の自転車にまたがりいざ帰宅というときにいきなり声をかけられた
「はぁ?」
よく聞き取れなかった
このとき無視してさっさと家に帰れば、良かったのかどうかはいまだにわからない
「君?魔法少女にならないかい?」
次はしっかりと聞き取れた
「魔法少女?」
聞き慣れない単語に思わず聞き返す
「そう魔法少女だよ。奇跡の存在、人間を超えた存在、魔を司る物」
淡々と一言、一言を紡ぐ
俺はこのとき初めてこの言葉の主に視線を向けた
少年だった
街灯のあかりが当たらない場所に立っているのでよく顔を確認することは出来なかったが
少年だったのだ
始め呼び止められたときは、気にも留めなかったがよくよく思い出してみれば、声は少々大人びているが少年と言ってもよかった
「いえ、そういうのには興味ないです」
大学にはいろいろな人間がいる。勉強に励むもの、スポーツに励むもの、遊びに励むもの、趣味に励むもの
中にはアニメを好むものもいるだろう
そういう輩が集まるサークルの勧誘。そんな風に思った
「魔法の力に興味がないのかい?奇跡の力、願いを叶える力。そういうものにだよ」
ただのアニメサークル勧誘ではないとそのとき悟った
それほど人生経験を積んだわけではないが、この少年の放つ雰囲気というものがたかだか1大学生が持つものとは思えなかったからだ
まして、メンバー募集に必死であるという雰囲気でもなかった
静かに重い
そう感じるしかなかった
俺はこの少年の話を聞くしかない、それ以外の選択肢など用意されてなかった
「君は感受性が豊かだね。僕のことをそういう風に取るなんてね。見込みがあるよ」
頭の中をのぞかれた!
さらには、どう見ても年下の少年なのにその上からの物言いが、ごく自然なものと受け取ることが出来た
「ああ、僕は人間なんていう下等種ではないからね。君の頭の中を読むくらい簡単さ」
さらりと説明をするが何一つ理解出来なかった
「まあいいよ。君には才能がある。魔法少女のね。君が望むのなら魔法の力をあげるよ」
その少年は鈍く光る石のようなものを取り出した
「これは魔法核と言ってね。これに君の願いを込めれば君の願いが魔法となる。さあ、やってみるといいさ」
俺の手を持つとその石を掌においた
「こういうのって代償があるものですよね。まさかノーリスクでなんて都合が良すぎる」
この俺の質問に少年は初めて驚いたような様子を見せた
「君はなかなか鋭いね。リスクはあるよ」
俺の掌から石をつまむと話をはじめる
「願いを叶えるためには他の魔法少女の魔法核を奪わなければ願いはかなえられない。数は願い事によって様々だね」
俺は黙って少年の話に耳を傾けていた
「魔法核を盗まれた魔法少女は心ない存在になってしまう。それでも君は自分の願いを叶えるために魔法少女になるかい?」
少年はふたたび自分の掌に魔法核を置いた
俺はそれを強く握りしめた
「俺は魔法少女になる。ガンダムになれるのならば」
少年は急に笑顔になった
「ああ、なれるよガンダムに」
体が光に包まれる
俺はガンダムになるんだ
【ブラック魔法少女 蒼月徹編 第1話 『白い魔法少女』 】
あれから数日、俺は毎日あの少年に会い魔法の使い方を練習していた
俺の魔法は『自分が手に持ったMSになれる』
武器なども再現され、ビームライフルで空き缶を打ち抜く練習を今はやっている
「今の君のレベルじゃあ、空き缶を貫くのが精一杯だね」
少年は練習場所である公園のジャングルジムの上から笑っていた
俺は手に持つガンプラ『RX-78-2』ガンダムを置く、体に纏っていた装甲やイメージ上
手にもつかたちになるビームライフルやシールドが消え去り普段着に戻る
「魔法核を集めないと威力が上がらないないし、強力な機体には変身出来ないですし」
汗を拭うと少年のほうに向き直る
「まだ魔法核は2個だね。もっともすぐに魔法少女に倒した君には驚かされたがね」
少年は笑顔を崩さない
「あれはまぐれですよ。たまたま彼女が弱かっただけです」
つい先日デビュー戦を終えていたのだ
相手はフォークを使う魔法少女。中学生ぐらいだったと思う
もちろん先に仕掛けてきたのは彼女だ
『おいしいものをお腹いっぱい食べたかった』そんな微笑ましい願いを持つ少女を倒し、いま俺はここにいる
「新しい願いは決まったかい?」
彼の言葉はおかしかった。
この殺し合いはそもそも自分の願いを叶えるための戦いであった
だが俺の願いはとりあえずは叶った
ガンダムの姿になって戦うことができる
それだけで満足出来るものだったが、この少年はそれでは満足できないようだ
まだ名前も教えてくれない少年だが悪い人には思えなかった
「決まりましたよ。俺はこの力でこの戦いを終わらせようと思います
俺がこの悲しい連鎖を終わらせます。それがガンダムの役割だとおもうんで」
少年は面食らった表情のあと、大声で笑った
「それはまた大きく出たね。おもしろいよ。ああ、目指すがいいよ。その果てない幻想を、人の願いのその先を」
相変わらず良くわからないことをいう人だな
「その言葉を聞けたら満足だ。こんな馬鹿なことをいう人間は初めてだよ。せいぜい努力してくれ」
そういうと彼は俺にひとつのガンプラを手渡した
「この機体は……」
知っていたこの機体は
「『CB-0000G/C』リボーンズガンダム」
悪役が乗るガンダムを手渡され困惑する
「いまの君では扱えないかも知れない。
しかし、この機体は特別だよ。この機体を扱えるようになれば君の願いに近づけるかも知れない」
少年は近づいて俺の顔をじっくり眺める。なにか満足げに頷く
「そのときまた会おう。さよなら」
少年はそれ以上何も語らず、彼はその姿を消した
1人になった俺は別に悲しくはなかった
戦い続ければ彼にまた会えるし、いまは特に未練などなかった
練習して腹がすいたので駅前でなにか食べてから帰ろうとおもい自転車を走らす
しばらく走ると強烈な感覚に襲われる
魔法少女が戦っている、それも複数
自転車をそっちに向ける漕ぐスピードも自然と速くなる
ほどなく現場に到着した
そこには予想通り複数の魔法少女が存在していた
大量に血のあとも見える
状況はよくないと理解することができた
俺は手にRX−78−2ガンダムを握りしめると変身しその場に乱入した
『戦いを終わらせる』その目標は自分の勝利によって達成される
【蒼月徹 乱入 全員にとって味方であり、敵である 交渉次第でどうにでもなる】
みなさん、よろしくお願いします
>>82 奈津久 萌(主観時系列的に
>>66と
>>79の間)
オッサンの巨躯が弾幕の衝撃によって吹き飛ばされる。
ごろごろ転がっているところを見ると自ら受け身をとったのかもしれない。
オッサンは回転を止めるとそのままピクリとも動かなくなった。
うわ……まさか。
一瞬肝を冷やした私はその後信じられないものを見た。
オッサンの身体が淡く輝き、細かい粒になって崩れていく。
浜辺に作った砂の城が風の中に消えていくような、あんな感じだ。
消えたオッサンの代わりに現れたのは――近所の県立高校の制服を着たおねーちゃんだった。美人だけど目が死んでる。
どうやらオッサンはあのおねーちゃんが変身した姿だったみたいね。
ムクリと起き上がって一言。
>「たっ……タイオイルがなければ即死だったわ……!」
…………
タイオイル、すげえ!
今度買ってこよっ!
身体を張ったこの実演販売を彼女の『魔法』だと認識できるほど、私の頭は賢くなかった。
【理奈、萌さんのタイオイルに感動】
>>75 猪間麻子
>>85 坂上南雲
>「……チッ、バッカじゃねーの」
取り乱していた私を冷水のような一言で目覚めさせたのは、やはり「鎖」の魔法少女だった。
バカですって!?
一体誰がこんなことをしたと思って――
>「普通逆だろうがよ。大怪我すんだぞ?なのに何で魔法を投げ捨ててんだよ」
続くその言葉に私は絶句する。
魔法を――投げ捨てた?この人が……?どうして?
手のひらで輝く紫色の光と、倒れた「花」の魔法少女を交互に見つめて困惑する。
>「……おい、オメー。そのバカの魔法核、近付けてやれ。30秒もすりゃ、とりあえず死にはしねえ」
命令するような口調と怪我人に対して吐き捨てられた二度目の「バカ」に一瞬カッとなりつつも、
私の意識は後半の一言に集中した。
まだ、死んでない!?
>「待ってやる。不意打ちもしねえ。だからさっさとしろ。アタシは、人殺しがしたい訳じゃねーんだ」
そんなこと言って……また「いい子にはごほうびだー♪」って、するつもりなんでしょ。
さっき言ったことが本当なら、今すぐにでも助けたい。
でも、ついさっきまで散々な目に合わされて、私にはもうこの娘の言うことが信じられなくなっていた。
そのとき
>「――はっな、せぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇっ!!!!」
新たな魔法少女が宵闇から突如姿を現した。
疾風の如く颯爽と登場した彼女の纏う衣の色は――蒼穹の青。
飛行服の上からでもそれわかるナイスボディ(オヤジか私ゃ)が銀糸のようなロングヘアに彩られ、月光の下で煌いている。
坂上南雲と名乗った魔法少女は、そんな感じの人だった。
>「聞いてたよ鎖ちゃん。さんざん人を信じることの愚かさを説いておいて、そりゃちょっと都合良すぎるんじゃないの。
君ちゃんは今すぐもっかい狼出して、今度は全員まとめて潰すことだってできる。そうしない保証なんてないない。」
私と「鎖」の魔法少女の間に立つ彼女の言葉は、今の私の心を代弁してくれているかに思えた……
>「これは命がけの戦いだから。魔法少女は生まれながらにして常在戦場だから」
この一言を除いて。
>「誰も信じないし、信じてもらえない」
胸によくわからない痛みが走る。さっきまで私が信じていたものを否定されたような気がして――だけど
>「敵の敵は味方でも敵でもない。そりゃただの赤の他人だよ鎖ちゃん。そう、今宵の私たちのようにね。
だから私と戦お。不意打ちしないと言ってくれた君の言葉を、歪みなき真実に変えるために!
――戦いを超えて、背中を任せる戦友になれるように!!」
この人が言ってることも、何だか間違ってはいないように思えた。……何だか、不思議。
自分に対して無防備な、けれども自信に満ちた彼女の背中に、私は自分とは違う魔法少女として“別の答え”を見たような気がした。
【所謂すれ違いの典型】
【悪役扱いですいません。温室育ちの理奈には麻子さんの「匙加減」が理解できないみたいです】【続く】
状況が好転したわけではないけれど、
あの「空」の魔法少女――坂上南雲さんが時間を稼いでくれているのは確かだ。
なら、私のするべきことは決まっている。
私は手の中にある紫色の魔力核を握り締めた。
温かい感じがして、何かが私の思考に流れ込んできた。
<お父さんとお母さんが元通りになりますように>
これは――この人の“願い”?
理由まではよくわからないが、自分のせいでバラバラになってしまった家族をもう一度取り戻したい。
「花」の魔法少女の切実な……魔法に込めた祈りだった。
私が貰っていいものじゃない。
手にした魔力核を倒れた彼女の手に握らせる。
すると、彼女の魔力核が少しだけ強く瞬き、「花」の魔法少女の肉体がみるみるうちに修復されていった。
地面に広がる血溜まりが消え、砕けた骨と肢体がビデオの逆再生のように元通りになる。
う……ちょっとだけ、グロいかもしんない。
「我は癒す斜陽の傷痕」
治癒魔術を施し、回復を促進させる。
「う……けほっ、けほっ……」
やがて完治した彼女の肉体が静かに呼吸を取り戻した。
しかし、意識が戻る様子がない。何で!?
何か足りないものがあるのだろうか――辺りを見回したその時、足を負傷した「拳」の魔法少女と目があった。
「……立てますか?」
この様子を見る限り、彼女に治療など必要無いのかもしれないけれど、念の為。
【茅野いづみさんの肉体の修復に成功】【萌さんと目が合う】
>「この坂上南雲、不覚にも今晩この時まで危機感の欠片もなかった――その点についてはお礼しなくちゃだね」
鎖の拘束を逃れた南雲に、麻子は忌々しげに鋭く舌を打つ。
これで南雲は、もうウミガメの赤ん坊では無くなってしまった。
外敵に対して無防備を晒している内に仕留めてしまえば楽だったが、そうはいかなくなった。
>「聞いてたよ鎖ちゃん。さんざん人を信じることの愚かさを説いておいて、そりゃちょっと都合良すぎるんじゃないの。
君ちゃんは今すぐもっかい狼出して、今度は全員まとめて潰すことだってできる。そうしない保証なんてないない。
これは命がけの戦いだから。魔法少女は生まれながらにして常在戦場だから。誰も信じないし、信じてもらえない」
続く南雲の言葉の刃に、麻子は沈黙して、
「……はっ、勝手にしろよ」
嘲笑を零した。
同時に鎖が二本、麻子を中心として輪を描いた。
輪はそれぞれ垂直に交わっている。
「アタシは殺すつもりなんかなかった。そんなの気分わりーし?アタシはアタシの夢を叶えたいだけだし?
事実ソイツが魔法核を投げ捨てるなんてバカをやらかさなきゃ、
問題なんざ何もなかっただろ。今だって、そこのガキが魔法核で治療すりゃ、やっぱり何一つ問題ねーんだ」
鎖の輪は段々と縮小していき、麻子の体に触れて、
「だからアタシは悪くない。何も悪い事なんかしちゃいねえ」
そのまま体の内側に潜り込んで見えなくなった。
麻子の鎖は『支配力』の具現だ。拘束する対象は、何も物理的な物に留まらない。
麻子は自分自身の感情を束縛して宣言を強め、一切の罪悪感を封じ込めていた。
とは言え、そのような事をしなくても、麻子の言葉は殆ど本心ではあったのだが。
>「敵の敵は味方でも敵でもない。そりゃただの赤の他人だよ鎖ちゃん。そう、今宵の私たちのようにね。
だから私と戦お。不意打ちしないと言ってくれた君の言葉を、歪みなき真実に変えるために!
――戦いを超えて、背中を任せる戦友になれるように!!」
宣言と同時に、紙飛行機の群れが麻子に迫る。
鎖の鳥籠を築こうとするが、遅い。
音に喰らいつかんほどの速度で飛翔する紙飛行機の編隊は、鎖が行く手を閉ざすよりも早く夜空を駆ける。
衣装が裂けて、無数の切り傷が麻子に刻まれた。
再び舌打ち、麻子はまず傷を治し――迷いなく、服の裂け目も全て直した。
魔力という観点から見れば完全にただの無駄遣いだ。
けれども、麻子にとっては重要な事だった。
自分を支配するのは、自分だけ。そう決意している麻子は、常に衣装をタイトに保つ。
二度と、誰も自分を乱暴に扱ったりしないように。自分が支配する側に回る為に。
麻子の鎖は『支配力』の象徴でありながら、同時に『自分を守る物』の象徴でもあった。
「……意味分かんねえわ。日曜日の朝八時半に帰って下さぁい」
剣呑に目を細めた麻子は、しかし何もせずに夜空に立っていた。
魔力の回復を図っているのもあるが、同時に、茅野の治療を待っているのだ。
彼女の目的はあくまでも『勝利』と『支配』であって、『殺害』ではないのだから。
ただしそれも、人道や道徳ではなく、単に自分の気分が悪くなるから、と言うだけではあるが。
「いいぜ、テメェらが背中を任せあうってぇなら、アタシは真上からそれを叩き潰すまでだ。
そうさ、アタシは上に立つんだ。人間様が地を這う虫ケラを好き勝手出来るように。
アタシは誰よりも高い所に立ってやるんだ」
敵意に研ぎ澄まされた視線が、修復の終わった茅野の体を認めた。
麻子が右腕を振るい、地面から鎖が生える。
鎖は茅野の体に巻き付くと、理奈達からやや離れた所に投げ飛ばした。
茅野の手から魔法核が零れ落ちて、理奈の足元に転がる。
「さぁて続きをやろうぜ。背中を預けて力を合わせて、かかって来いよ」
夜空に右手を掲げ、夜闇から三本の鎖を取り出す。
編み上げて、巨大な塊を作りはしなかった。
二度目ともなれば警戒されているだろう。
当たりもしない大技を打ったところで、魔力の無駄使いでしかない。
だから、単純に麻子は鎖を鞭の軌道で放った。
打撃と捕縛を同時に行える、鎖の基本であり最大の長所を有した攻撃だ。
「テメェら全員、縛って捕らえて止めて閉じ込めて抑えて組み敷いて躙って押し拉いで
絡げて戒めて限って妨げて圧して捻じ伏せて絞って封じて侵して制して纏めて括って
束ねて奪って屈服させてやるからよ」
>>90 と、ふと麻子は新たに近付いていた魔力に気が付いた。
振り向くと、機械然の装甲を纏った青年がいる。
「今夜は千客万来だなぁオイ。アンタがどんな奴だとか、
どんな願いでそのクソみてーにダッセェコスプレしてんのかは知らねーけどよ」
更にもう一本、麻子が鎖を生み出した。
「アタシはテメェらの上に立つ。それ以外はどうでもいい。
アタシが上、テメェら下、お分かり?分かったらさっさとくたばりやがれ」
そして理奈、萌、南雲達に向けたのと同じように、鎖を落とした。
【四人に一本ずつ鎖の鞭。
蒼月さんよろしくお願いします。でも私ガンダムはサッパリわからないので、そこの所ご了承下さい】
【ブラック魔法少女 神崎 壊編 第1話 『純粋悪』 】
「力が欲しいか?」
冷たい牢獄の中で、何度も金髪の女は壁に頭を打ち付ける。
額に血が流れても、それが鈍い痛みに変わってもそれを止めない。
やがて、声の主が牢獄の中に近付いてくる。
黒い服を着たやせ細った眼鏡の男。女は切れ長の目を見開き、その姿を睨む。
「……お前、何だぁ?」
額から流れる血が額を伝いながら、女の視界を赤く染め上げる。
男は紫色の輝く何かを手にすると、それを女に差出し無表情のままで
語り出した。
「今のままの貴女は、死を待つだけの運命だ。しかし、それを変えれると
したら……どうですか、神崎 壊さん。」
女の口角が吊り上がり、そして流れ落ちる血がその口内へ落ちる。
鉄と生臭い味を感じながら女、神崎 壊はその「輝く何か」を掴む。
それから数刻、関東拘置所では原因不明の脱走事件が起こった。
闇世の中で肌着1つと裸足で走り出す影。
神崎壊は魔法少女となり、再び「自由」を手に入れた。
何者にも縛られない、快感こそが彼女の全てだ。
やがて朝日がその顔を照らし出し、戦いの始まりを告げた。
(魔法少女同士は戦う運命にあります。相手の魔法核を奪えば、
貴女は更に強くなる。)
男の言葉に導かれるように、壊は戦いの中へ飛び込んでいく。
「……魔法少女同士は戦うんだったなぁ。ここか、祭りの場所は。」
両手を広げ、4人の少女と1人の男を見据える。
そしてその全身を紫のオーラが覆うと同時に、壊は毒々しい邪悪な鎧を纏った
魔法少女へと変身した。
【少女達の戦いに乱入】
>>90>>93>>95-96 目の前の鎖の塊がほどけていく。金属がアスファルトを擦る音に、液体が跳ねる音が重なった。
あらわになったいずみの体は十分に原型をとどめているが、逆にそれは、元が生きていた人間であることを強烈に想起させる。
ジム帰りでよかった。萌は心底そう思った。吐くものなんか残っていない。
動く鎖に巻き込まれたいずみの腕がぱたりと倒れて、また血が跳ねる。
そこへ理奈が近づき、血溜まりに沈む手に魔法核を握らせた。
全身あらぬ方向へねじ曲げられたいずみの体が緩やかに修復され、血が再び体内へと戻ってゆく。
起こっている現象は喜ばしいことだが、正直なところ愉快な光景ではない。萌は目を背けた。
右足のすねに関節が一つ増えていた。
(……いやいやいやいやいや)
二度見する。折れている。痛みはほぼない。軽くパニックを起こしかけて、視線をあちこちに彷徨わせる。
麻子が南雲の攻撃を受けて傷を負っていた。即座にそれを治す。
理奈がいずみのそばに立ち、魔法をかけている。修復速度が目に見えて上がった。
(……出来るかな?)
萌は自分の右足に手を伸ばした。折れた足をまっすぐに伸ばす。さすがに酷く痛む。
"本当にヤバイときは痛みを感じない"とジムの先輩から聞いてはいたが、どうも嘘らしい。
涙をぼろぼろこぼしながら折れた箇所に手を当てて、とにかく"治れ"と念じながらさする。
2秒ほどであっさりと骨がくっついた。
「魔法すげー」
感嘆の声が漏れる。体の表面に塗られたオイルで銃弾をそらすのに比べれば、まだしも常識的であるはずなのだが。
>「……立てますか?」
自分の足をしげしげと眺めていると、理奈に声をかけられた。
「大丈夫、なぁんも問題なし」
言いながらひょいと立ち上がる。それから一歩脇へ。萌と理奈の間を鎖が走りぬけ、いずみを絡めとって後方へ運び去る。
そう、萌自身には問題はない。それは別のところに存在している。より正確に言うなら数m上空に。
「預かり物でしょ、ちゃんと持っといて」
転げ落ちた魔法核を拾いあげて理奈に握らせる。これを持って逃げてしまえば夢に近づく。
しかし、"自分の力"でそれを叶えるのでなければ意味はない。
>「さぁて続きをやろうぜ。背中を預けて力を合わせて、かかって来いよ」
麻子が言い放ち、鎖が伸びる。即座に変身。再び褐色の巨漢と化した萌は大きくダッキング。肌の上に鎖を滑らせながら前に出る。
いずみの近くで戦っていれば巻き込んでしまうことも考えられる。まずは移動だ。
鎖は南雲や理奈にも伸びている。さらに、萌の視界に映る白い影――初代ガンダムを"着込んだ"徹に向けて、麻子が新たに鎖を伸ばす。
新手が増えた。的が増える。こちらから注意が逸れることも増える。
>>97 (よっし!)
麻子を中心とした円運動から一気に距離を詰めようと、足の親指に力を込めた萌の前には紫金の鎧。
前への推進力を膝を沈めて殺し、後方への跳躍力へ変える。またも新手だ。
あまり手入れがされていない髪にあまり良くない目付き。
「あー、なんか雰囲気似てるけどお友達?……どっちにしろ今ちょっと忙しいんでどいてもらえます?」
言いざまにステップイン、壊を進路上から排除すべく前蹴りを放った。
>>96 >「……意味分かんねえわ。日曜日の朝八時半に帰って下さぁい」
「あっはっは、言うねー。でもでも、この物語をハッピーエンドにしないと……子供泣いちゃうよー?」
問答のさなかにも花の少女の治療は進む。
南雲の存在はあくまで牽制。遍く万難をその肩に受け、背後に一厄足りとも通さぬ肉の鉄壁。
やがて、紫の輝きが強まり――至死していた少女にヒトの形と命が戻る。治癒が完了する。
>「さぁて続きをやろうぜ。背中を預けて力を合わせて、かかって来いよ」
夜空に閃く三条の銀光。
鎖の魔法少女の繰り出した、南雲とその後ろの二人を打ち据える魔法の凶器。
掲げる腕を、
>「テメェら全員、縛って捕らえて止めて閉じ込めて抑えて組み敷いて躙って押し拉いで
絡げて戒めて限って妨げて圧して捻じ伏せて絞って封じて侵して制して纏めて括って
束ねて奪って屈服させてやるからよ」
振り下ろし、降ってくる。
「――っは!」
南雲もまた魔法で応じた。アスファルトから雨後の筍の如く突き生えたのは巨大な紙飛行機。
座礁した船先のように、空を割いて降ってくる鎖の瀑布を迎撃する。
金属のこすれ合う音と風切り音は、巨大な紙のひしゃげる快音と邂逅した。所詮紙製の飛行機は粉砕される。
生まれた間断――微細なスキに身体を無理やりねじり込み、南雲は地面を蹴った。殺傷圏からまろび出る。
>>98 「みんな生きて――っでええええ!?」
先ほどまで足の折れた女子高生の立っていた場所にマジカルおっさんが再出現していた。
疑念が確信として核心を突く。
(変身してああなるんだ……)
ワセリンでも塗りたくっているのか鎖をヌルっと逸らし、おっさんは跳躍した。
>「あー、なんか雰囲気似てるけどお友達?……どっちにしろ今ちょっと忙しいんでどいてもらえます?」
その先には禍々しい鎧を来た少女と、さらにその向こうにガンダムっぽい格好(!)をした少女の二人。
新手の魔法少女。それも鎖の少女と似た雰囲気を纏う――有り体に行って、武闘派に匂いのする二人。
ともあれ新手の対処はおっさんに任せ、南雲は花の魔法少女を治療していた少女へ意識を向ける。
>>93 「え――っと、ロリちゃん!ロリちゃんでいいや!あとで名前教えてね!
ロリちゃんはこの戦いをどうしたい!あの花の子を護りたい?それとも――あいつを倒したい?」
今だ上空で鎖引く魔法少女を指さして、南雲は問う。
「わたしは坂上南雲。言っとくけど正義の味方じゃないぜー。わたしが守るのは全世界の可愛い女の子!
さっきの自分と矛盾したことを言うようだけど、君がわたしを信じてくれるなら――」
踊るようにスピンステップ。鎖を回避し、同時に腕を振った。
飛行服の袖から新たな紙飛行機が射出され、発光せず宵闇に溶け込む。
ステルス性能を発揮する。
「――この翼で!どこにだって運んであげられる!!」
大きく弧を描くように迂回して、ステルス紙飛行機は加速する。
軌道を悟られないように、狙うは鎖の少女のこめかみ。脳を揺さぶる痛打を加える算段である。
>>90 同時にガンダム娘へ向かってもう一翼の紙飛行機を飛ばす。
攻撃速度でないそれは、掴みとって開けば文字が踊っている。薄く発光し、夜闇の中でも読み取れるだろう。
『 ワレ襲撃サレリ 敵ハ鎖ノ魔法少女 救援求ム 』
【麻子ちゃんの攻撃を回避、ステルス紙飛行機を迂回させて側頭部を狙う
理奈ちゃんをナンパ。共同戦線を提案
ガンダムさんに救援要請の紙飛行機を送る】
>>93-100 戦闘に乱入した
しかし、そこには複数の魔法少女。
誰が味方で、誰が敵かを瞬時に理解することは難しかった
>「アタシはテメェらの上に立つ。それ以外はどうでもいい。
アタシが上、テメェら下、お分かり?分かったらさっさとくたばりやがれ」
自己紹介代わりにと鎖らしきものを飛ばしてくる。これが友好の握手代わりであるとは到底思えない
実に単純明快、「私は敵です」と教えてくれたのだ
「殺し合いに上とか下とか、馬鹿なことを言う!」
背中からビームサーベルを抜く、光り輝く刀身が暗い場所を淡く照らす
「そんな短絡的な攻撃っ!」
鎖をビームサーベルでたたき落とし、ビームライフルに持ち替える
足を止めることなくビームライフルに狙いをつけ、次々と光弾を放つ
空き缶を貫く程度の威力とはいえ体に当たればそれなりの被害を被ることだろう
鎖の少女に牽制しつつ、周りの様子を伺う
他の魔法少女、ムエタイ風巨漢は俺に対しては様子見と言ったところか、正しい判断だ
あとは別の魔法少女、回復に勤しんでいる少女、回復されている少女
そして飛行服を着ている少女
彼女は紙飛行機を使って攻撃を仕掛けていた
その内の1つが俺に向かって飛んでくる
1つというのはおかしい、速度も攻撃しているというものではなく、手で掴めそうなほどだった
罠かも知れないと言う思いもあったがこれはなにかのメッセージと受け取り紙飛行機を掴んだ
>『 ワレ襲撃サレリ 敵ハ鎖ノ魔法少女 救援求ム 』
そこにはこう書かれていた
鎖の魔法少女はすでに敵対している。この少女と敵対する理由はない
文字を書く道具がないので、飛行服の少女に頷きで了承の意思を伝える
俺は共同戦線を張ることにしたのだ
>>97 >「……魔法少女同士は戦うんだったなぁ。ここか、祭りの場所は。」
友好的な雰囲気とは到底いえない、新たな魔法少女が登場した
しかし、自分から敵対するつもりはない
できるならこの鎖の少女との戦いに集中したかったからだ
【
>>96 そこは十分きをつけます 】
>>96 猪間 麻子
>>98 奈津久 萌
>「大丈夫、なぁんも問題なし」
言葉通り何事もなかったかのようにすっくと立ち上がるお姉さん。
タイオイルって偉大……なわけないか。
やっぱり魔法少女は自力で怪我を治す力が備わってたんだ。
限度はあるんだろうけど、その人の魔力核さえ無事なら肉体を元通りにできるのかも。凄い。
当然魔力(?)は消費されちゃうみたいだけどね。
現に私、少し身体がだるいです。
グラウンド12周ぐらいの疲れ。
これってドラ○エのMPみたいに一晩寝れば回復するのかなぁ……。
――などと、余計なことを考えてたのがいけなかった。
耳障りな金属音。
そして地面から忍び寄った魔力の鎖が「花」の魔法少女の身体に巻きつき、空中に投げ飛ばす。
何てことをっ!?
地面に激突する、そう思った刹那、「花」の魔法少女の肉体が景色に溶けるようにフェイドアウトする。
要するに、消えたのだ。今更言うのも何だけど、まるで魔法のように。
直後。
(やれやれ、さっきまで魔法少女を辞めたいと思っていたのに――)
私の思考に直接呼びかける誰かの声。辺りを見回す――居た。電柱の影、七三分けに黒いスーツ、細いメタルフレームの眼鏡。
(そうまでして誰かを助けたいわけですか……)
私を魔法少女にした、あのセールスマン!
(いいでしょう。この少女、茅野いずみの肉体は私が一旦お預かりします)
駄目……返して。その人を返してよ!
(この宴の後に――またお会いしましょう)
口元に人差し指。ニヤリという音が聞こえてきそうな薄気味の悪い笑みを残し、セールスマンは姿を消した。
………………。
>「預かり物でしょ、ちゃんと持っといて」
木偶の坊と化していた私の手に、「拳」のお姉さんが何かを握らせる。
「花」の魔法少女、茅野いずみさんという人の魔法核。とりあえず、私が預かるしかないようだ。
ううん、違う。私が預からないと……いけないんだ。
【闇のセールスマンが出現し、茅野いずみさんの肉体を略取】【理奈、再びいずみさんの魔法核を所持】
【勝手にキャラを動かしてしまって申し訳ありません。おそらく茅野さんは今後理奈にとってとても重要な「戦う理由」になると
思われましたのでこのような展開を取らせていただきました。セールスマン氏の立場上、おかしくない程度の行動・言動に留める
ようできる限り努力はしましたので、どうかご容赦願います……m(−−;)m】【続く】
>>97 神崎 壊
>>98 奈津久 萌
>「……魔法少女同士は戦うんだったなぁ。ここか、祭りの場所は。」
混沌深まる戦場に降臨したのは新手の魔法少女。
金と紫に彩られた鎧を身にまとい、その瞳は好戦的な色を示していた。
っていうか、祭りってあんた……どこぞのブログが炎上して喜んでるVIPPERじゃないんだから(−−;)
>「あー、なんか雰囲気似てるけどお友達?……どっちにしろ今ちょっと忙しいんでどいてもらえます?」
またしても聞こえてきたタフな声に一瞬ぎょっとする。
視界に現れたのは筋肉隆々のムエタイ戦士。いつの間にか変身していた「拳」の魔法少女だった。
言うが早いか瞬時に距離を狭め、強力な蹴りを放つ――!
【理奈の視点:神崎 壊 vs 奈津久 萌】【続く】
>>96 猪間麻子
>>100 坂上南雲
>「テメェら全員、縛って捕らえて止めて閉じ込めて抑えて組み敷いて躙って押し拉いで
> 絡げて戒めて限って妨げて圧して捻じ伏せて絞って封じて侵して制して纏めて括って
> 束ねて奪って屈服させてやるからよ」
圧倒的な語彙と呪いと崩壊と筋違いを込めて、彼女の魔法が啖呵と共に炸裂する。
暴力的な呪詛によって具現化された鎖の鞭が無防備な自分を打ち据えた――かに思えた。
ヴンッ! ヒュン! パリパリパリ!! ビリィ……!!!
速すぎて何が起きたのかは上手く説明できない。けど、状況を音だけで表すとだいたいこんな感じ。
決して手を抜いてるとか、そーいうことはありません。……本当だってば。
ただ一つだけ理解できたのは、「空」の魔法少女、坂上南雲さんが防いでくれたということだ。
>「え――っと、ロリちゃん!ロリちゃんでいいや!あとで名前教えてね!」
すごくザックリした呼称を与えられ、とりあえずニコニコしながら肯いておく私。
ちょっぴり頬が引きつってるかもしんないけど、気にしちゃいけない。うぅ……ロリちゃん、かぁ。
>「ロリちゃんはこの戦いをどうしたい!あの花の子を護りたい?それとも――あいつを倒したい?」
花の子――茅野いずみさん。あの人の身体は闇のセールスマンの手元にある。魔法核は私が持ってる。だから大丈夫。
あいつ――「鎖」の魔法少女。戦わずに叶えられる願いなんてないと言った、あの子。
倒す? 私は誰の願いも……奪いたくないのに。
>「わたしは坂上南雲。言っとくけど正義の味方じゃないぜー。わたしが守るのは全世界の可愛い女の子!」
そ、それはまた随分偏った信仰をお持ちで……
>「さっきの自分と矛盾したことを言うようだけど、君がわたしを信じてくれるなら――」
端整な顔立ちにそぐわぬ大きな瞳が、強い意思を宿して私の顔を覗き込む。
僅かに跳ね上がった自分の鼓動を感じて、私はほんの少し視線を泳がせる。
視界の隅に捉えた銀色に輝く髪が、夜風の匂いをはらんで優しく揺れていた。
>「――この翼で!どこにだって運んであげられる!!」
このとき、青天の霹靂を思わせる彼女の真っ直ぐな視線をまともに受けて……私の「何か」がブチ抜かれた。
どうしよう
こ、この人……何だか、す、す、すっごく…………は、は、は、恥ずかしいんですけどおおおおおぉ!?
瞬時に紅潮した顔面と正体不明の胸の高鳴りに、思わず俯く。
何なの?何ナノ?ナンナノ?? くぁwせdrftgyふじこ!? いやいや、落ち着け神田理奈。
今は慌てふためいているときじゃないの。考えてなの。
「私は……」
頭の中で言葉を選び、迷って、捨てて、また選ぶ。
奪わないって決めたんだ。奪われるのも嫌なんだ。誰かを信じていたいんだ。
あの子の願いが、戦いでしか叶わないと言うのなら……“倒す”以外の道はこれしかない。
「あの子に――“勝ちたい”です!!」
【理奈、坂上南雲さんの提案を受諾】【ついでに正体不明の感情に困惑】
一部訂正「そぐわぬ→そぐわしい」ですね。意味がおかしくなっちゃいます。
>「え――っと、ロリちゃん!ロリちゃんでいいや!あとで名前教えてね!
ロリちゃんはこの戦いをどうしたい!あの花の子を護りたい?それとも――あいつを倒したい?」
「ギャハハ、いいアダ名貰ったじゃねえか!ロリちゃんよぉ!?羨ましいねぇ!?」
嘲笑と共に、麻子が右腕を振り上げた。
手のひらから更に数本の鎖が兆して、獲物を見定める蛇の如く夜空で揺らぐ。
>「わたしは坂上南雲。言っとくけど正義の味方じゃないぜー。わたしが守るのは全世界の可愛い女の子!
さっきの自分と矛盾したことを言うようだけど、君がわたしを信じてくれるなら――」
>「――この翼で!どこにだって運んであげられる!!」
南雲の宣言に、麻子は再び鼻で笑った。
「テメェから他人の下に付いて何が楽しいんだか。なに?アンタまさかマゾな訳?」
自分で吐き出した罵声に、麻子が一瞬硬直する。
魔法少女になる前、彼女が閉じ込められていた『鳥籠』の事を、思い出したのだ。
「……あーあー、いたねぇそう言えば。そんな客も。クソうざってえ思い出を掘り起こしてくれてありがとうよ。
お礼にアンタから、ぶちのめしてやる事にするよ」
麻子の双眸が険悪に研ぎ澄まされて、南雲を射殺す勢いで睨み付けた。
同時に、全ての鎖が金属音と共に絡み、一本に束ねられる。
貧弱な紙飛行機では弾けないほどの重量と速度で、南雲を仕留める算段だ。
>>101 しかし不意に視界の端から迫った光弾に、麻子は攻撃を中断した。
追って続く数発の光弾を、鎖の束で弾いて掻き消す。
「うっぜぇな……。アンタから叩きのめしてやってもいいんだぜ?」
狩りを邪魔された狂犬の眼光が、蒼月を貫く。
「つーかなに?『殺し合いに上とか下とか』?バッカじゃねぇの。
殺し合いがしたいんならアキハバラにでも行って来いよ。その衣装、ガンダムだっけ?お似合いだと思うぜ?」
見下し、罵倒して、嘲笑を浴びせる。
「何度も言うけどよぉ、これはただのゲームだ。テストで一番になりたい奴と、
駆けっこで一番になりたい奴が競争するってだけじゃねぇか。
アタシにゃ何の縁もねーけど、受験勉強とやらと何が違う?プロ野球と、会社同士の競争と何が違う?言ってみろよ」
両腕を左右いっぱいに広げ、挑発的に首を曲げて問いを放った。
「死人が出るか出ないか?受験勉強だって首吊る馬鹿は出てくるだろ。
仕事をクビになりゃ……色々とやらかす馬鹿だっているさ」
一瞬、過去を思い出して表情を苦めながらも、麻子は更に続ける。
「夢を奪うのは駄目だってか?負けたら何かを諦めるのは当然の事だろ。ゆとってんじゃねぇよボケ。
ヒーロー気取りで戦いを止めてえなら、イラクでも、エジプトでも、好きなトコに行きやがれ」
吐き捨てて、息を吸い込み、
「アタシの夢を、邪魔するんじゃねぇよ」
苛烈なまでの意気を込めて、麻子は最後の一言を紡いだ。
一拍置いて、灼熱した脳みそから排熱をするように、息を長く細く吐き出した。
「さて、と……お喋りが過ぎちまったなぁ」
再び、麻子の敵意を宿した視線が南雲を捉える。
右手を緩やかに振るって、鎖の軌道が南雲を轢き潰すよう修正した。
そして――不意に麻子の側頭部に、衝撃が叩き込まれた。
脳を揺らして意識の断片を掠め取っていく、鋭い一撃。
「な……?」
何が起こったのか、分からなかった。
意識が一瞬途切れ、鎖が悲鳴を一声上げて一斉に砕け散る。
南雲に狙いを定めていた鎖の束も、麻子が足場としていた鎖の結界も。
無防備になった麻子に、幾つかの光弾が命中して弾けた。
支えのない状態で吹っ飛ばされて、麻子は重力の鎖に囚われ、落下する。
「がっ……は……!」
麻子が地面に叩き付けられて、鈍い落下音が響いた。
痛みを殺し切れず、更には体のあちこちで骨が折れて、暫し麻子は立ち上がれないでいた。
と、二本の鎖が麻子の傍に現れる。鎖は彼女の両腕を絡め取ると、人形のように吊り上げた。
「……ぎゃは」
吊るし上げられて力なく揺れながらも、麻子が取った最初の行動は、笑いだった。
「いいねぇ。ようやく、良いのが入ったじゃないか」
滲んだ汗は、確かな苦痛を示している。
「……なぁ、何で今のがアタシに当たったのか、分かるか?アンタが正しい選択をしたからさ。
戦ってる最中にベラベラくっちゃべる奴に、一発ぶちかます。これ以上なく正しい選択だ」
それでも麻子の口角は微かに上がって、余裕と嘲りを見せつけた。
「でも、だからこそ……アンタらはアタシに勝てねえよ」
回復が終わり、麻子は自分の足で地面に降り立つ。
手のひらが外側を向くように、両腕を左右に伸ばした。
鎖の輪が彼女を囲む形で積み重ねるように、無数に生成される。
輪はゆっくりと、回転を始めた。
輪の回転は徐々に、確実に加速していく。
やがて鎖の輪は、黒い一本の線にしか見えなくなった。
高速回転する鎖は、触れた物を問答無用で抉り、切断する刃となっていた。
「だって、アタシは間違っちゃいない。正しい事をしてるんだ」
猪間麻子には、自分が絶対と信じる正当性があった。
夢を叶える為に戦う。その過程で何かを失う。
それは至極当然の事で、ぐだぐだと甘えた事を抜かすのは、ただの馬鹿だ。
いずれ踏み躙られて、虐げられる立場に転落するに決まっている。
そういう連中に限って何の考えもなく、ただ何となく英雄気分に浸っていたり、博愛主義を気取ってるのだ。
そんな馬鹿共に――。
「アタシが、負ける訳ないんだ」
そして冷徹な声の直後、鎖の輪が、その直径を広げ始めた。
回転する鎖の刃は一切速度を落とさぬまま、休息に殺傷範囲を広げていく。
【鎖の竜巻みたいな感じで、全体攻撃です。さほど高さはないです】
【
>>102、構いませんよー。悪魔が遠大な計画を練っていて、なんて話がやりたい訳でもありませんのでー】
【ありがとうございます!】
【それにしても……鎖って色んな攻撃方法があるんですね。うーん、勉強になります】
>>98 >「あー、なんか雰囲気似てるけどお友達?……どっちにしろ今ちょっと忙しいんでどいてもらえます?」
>言いざまにステップイン、壊を進路上から排除すべく前蹴りを放った。
前蹴りを食らいながらその足を腹部で受け止めそのまま後方へ押し戻していく。
その途中、いや蹴りを食らった時からずっと。
神崎壊は、笑っていた。楽しくて仕方がないのだ。
戦う事、そして自由でいる事が。その口角は鋭利な角度に吊り上がり
前方の魔法少女を突き刺すような眼で睨み上げる。
「イライラするんだよ、あんな牢獄の中で。
ずーっと、ずーっと。オレは、戦いたい。
誰もいい。戦えよ。戦え!!」
萌の足を掴み、ドラゴンスクリューのように巻き込むと
一瞬で体ごと吹き飛ばす。
魔法により出現した「剣」のようなものを手にした壊が
萌の眼前へ迫る。
「戦いはいいな。お陰でイライラがすっきり、消えた。
はは、あはははははははは!!はぁ……!!」
【萌の前蹴りを受け止め、ドラゴンスクリュー気味に投げ飛ばす&剣でメッタ打ちにせんと接近】
【生存報告。みなさん無事でしょうか】
【生存報告 被害なしです】
停電や余震で遅れましたが、無事です
【同じく生存報告】
【
>>113 良かったです。ご自宅は何ともありませんでしたか?】
名前:壱斬 千渦(ひときり せんか)
所属:高校生
性別:女
年齢:17
性格:不器用
外見:人形を人間にした様な黒髪美人。左腕が義肢
願い:左腕を取り戻す
魔法:・手やナイフで触れた物や魔法を硬度や抵抗を無視して切断出来る
・視力の強化
属性:斬
行動傾向:気まぐれ
基本戦術:接近し、切断する
うわさ1:特殊な宗教を信仰する旧家の生まれで、片腕はそこで失ったらしい
うわさ2:素の格闘技能が異常に高いが、これも家の教育の成果らしい
うわさ3:幻肢痛に苦しんでいるらしい
よろしく
【ブラック魔法少女 壱斬 千渦 編 第零話 『伽藍の落日』 】
「……」
歴史を感じさせる程に色付いた梁も、染み一つ無い張り替えられたばかりの障子も、
金箔によって絢爛に飾られた襖も、所々に赤黒い染みの付いた若草色の畳も、
その全てが紅蓮の炎に犯されていた。
もはや焼け崩れる運命から逃れられぬ旧家の一室。その中央には少女が立っている。
烏の濡羽を思わせる長く艶やかな髪。月の如き白い肌。そして赤く染まった死装束。
少女は佇み、長い、長い間天を仰いでいたが、やがてその視線を前へ向け
出口へ向かい歩き始めた。その足音は炎の音に消され、幽の世界に生きる者を想わせる。
静々と歩く少女。と、その服の裾を掴む者が在った。
「お前、よくもこんな……」
その手の主は狒々の様な老人。老人の高価な黒い和服は、老人から流れる
血を飲み嘗て無い程の美しい色彩を放っている。
老人は赤く塗れたその腕で少女の白服を紅く汚すと、恨めしげな表情を隠す事無く口を開く。
「……折角、わし等がここまで『完成』させてやったのに、
『贄』として相応しく育ててやったのに……それを……それをよくも……ギイッ!!?」
恨みの毒を吐く老人。だが、その毒は半ばにして遮られる事となった。
少女が手から放し、床に落ちた銀色の線で畳と手が縫いつけられた為だ。
「ぐうっ……よくも……よくも……千渦ぁ……っ」
「――――さようなら。私の揺り籠」
歩き去る、もはや振り返らない少女。
彼女の背後では「よくも」と恨みを呟く無数の声が聞こえていたが
やがて、何かが大きく崩れる音と共にそれも聞こえなくなった。
夜闇を照らす、火炎に染まる屋敷。
ソレを背にして、血染めの死装束を纏う少女は歩き続ける。
伸びる影は二つ。人と、人の目の映らぬ悪魔。
これは今から3年前の話。語り継ぐ者も、見る者もいない、始まりの幕間。
遅れました。ルーターが死にましたけど本人は怪我ひとつありません。
>>106 >「殺し合いがしたいんならアキハバラにでも行って来いよ。その衣装、ガンダムだっけ?お似合いだと思うぜ?」
彼女の罵声に聞いて落胆と怒りを感じる
「お前はこれを殺し合いと思っていないのか?現に人は死んでいるんだぞ!!」
俺は怒りを込めた声を発した
>「何度も言うけどよぉ、これはただのゲームだ。テストで一番になりたい奴と、
駆けっこで一番になりたい奴が競争するってだけじゃねぇか。
アタシにゃ何の縁もねーけど、受験勉強とやらと何が違う?プロ野球と、会社同士の競争と何が違う?言ってみろよ」
さらに言葉を続ける『鎖』の女、ただ俺の神経を逆なでるだけだった
「違う!それらで人は死なない! だがこの戦いでは死ぬ死んだ人間はやり直すことが出来ない!!
受験だって浪人でも何でもすればいい!! プロ野球で全部勝つ球団はない! 仕事で失敗しても別の仕事で挽回すればいい!!
この戦いに次はない!!!」
この台詞はガンダムっぽくはないなとは思うがまあ、こんなものだろう
ヒーローみたいではある。最後はちょっと刹那っぽいしな
それにしても、この女の世間知らずさには呆れさせられる
「死人が出るか出ないか?受験勉強だって首吊る馬鹿は出てくるだろ。
仕事をクビになりゃ……色々とやらかす馬鹿だっているさ」
確かにこの言葉には一理あるな。
でも、ただの世の中に絶望したい盛りのガキか……
だがまだ若いな……っと、俺もまだ大学生のおこちゃまだな
「希望を持てず絶望をする、そう言う人間もいる! だけど、希望を持たないと夢を持たないと人は生きていけない!」
いいこと言ったな俺、アニメだと名言入りか?
餌がないと人は動かないんだぜ、嬢ちゃん
>「夢を奪うのは駄目だってか?負けたら何かを諦めるのは当然の事だろ。ゆとってんじゃねぇよボケ。
ヒーロー気取りで戦いを止めてえなら、イラクでも、エジプトでも、好きなトコに行きやがれ」
馬鹿が! 英語もろくにできないのに海外なんていけるか
それにお前もゆとりだろうが!!!
「負けたら諦めるんじゃない! 諦めたら負けなんだ!!」
決め台詞を言ったつもりが、彼女に無視され内心少し寂しさを感じる
>「さて、と……お喋りが過ぎちまったなぁ」
そういうと俺から注意を放し紙飛行機少女に向けた
あ、馬鹿だ
戦いの最中に敵から目を離すなどとは馬鹿のすることぞ
師匠におこられるな
さてお馬鹿さんには攻撃っと
>足を止めることなくビームライフルに狙いをつけ、次々と光弾を放つ(自スレ
>>101より抜粋)
>「な……?」
〜中略〜
「>でも、だからこそ……アンタらはアタシに勝てねえよ」
俺が正しい選択をしただって? 当たり前だろ、俺はお前の魔法核が欲しいのだからお前と戦ってるだけだから
お前を痛めつけないと目的が達成できないそれだけだ
利用出来るものは利用し、利用出来ないものは排除する
>「アタシが、負ける訳ないんだ」
いい気迫だ……自分がそう思ってる限り負けないはしない
な〜んて言うわけないだろ
死んだら終わりだ、次はない
肉体か精神かはこの際問題ではない
どちらも同じことだ
だが……
>【鎖の竜巻みたいな感じで、全体攻撃です。さほど高さはないです】
この攻撃は少々厄介だな
初代じゃちょっときついな
もしものために持っていたもう一体のガンプラを取り出す
『LM312V04 ヴィクトリーガンダム』
いま、俺が使えるガンダムで空を飛べるガンダムのひとつだ
あとはエールストライクとフォースインパルスだが宗教上の理由であまり使いたくない
武装の数は減るがビームライフルとサーベルが使えれば問題はないだろう
武器が豊富な初代の活用はまたの機会だ
「ヴィクトリーの名が伊達じゃないところをみせてやる!」
そういって空に退避する
これほどの攻撃を繰り出す魔力がそう長いほど持つはずがない
魔力切れを狙って攻撃すればいいだけだ
ミノフスキークラフト、空を飛ぶための魔力の消費も馬鹿にはならないがな
>>神田理奈>>坂上南雲
>「あの子に――“勝ちたい”です!!」
紙飛行機少女となにか喋っていたこの場でもっとも魔法少女っぽい少女
俺は年上がこのみだからストライクゾーンではないが、十分に可愛いと言えるだろう
どれくらいかというと戦闘中にこんな感想を持つぐらいにはかわいい
まったくこんな小学生ぐらいの女の子がこんなバトルロワイヤルに参加させられるとは
騙されたか、よほどの事情があるのか
たぶん前者だろうな、事情があるようには見えない、事情があるならもっと積極的にいまの状況で動きをみせるだろう
それがやっといま、決意を固めたようだ
小学生の割に良く考えてると言えば少々褒め過ぎか? まあ、眼下の『鎖』の少女のようにやさぐれてもらっても困るけどな
年はそう変わらなさそうだが、人にもいろいろあるもんだな
どちらに味方をするかと聞かれれば間違いなく
「紙飛行機と黒髪ショート、死ぬなよ」
名前がわからないから特徴で呼ぶしかない
それに敵を増やすのはよくないよな、下心などはない
銀髪ロングの飛行服か……アニメキャラみたいな外見だな
この子もまたかわいいな、こんな美少女ばっかり戦ってたら生命の危険なとは別の危険な目に遭う可能性もあるな……
今後のことはこいつらの出方しだいだな
敵になるか味方になるかは
【
>>118 ルーター君に乙です。あとは神崎さんですね】
【……色々と思うところがあるため、申し訳ありませんが状況が落ち着くまでレスを自粛します】
>>121 「――――」
混迷する戦場。魔法と言う名前の破壊の力が支配するその場を、
古びたコンクリ製のビルの屋上から見つめる影一つ。
それは少女だった。絹の如き黒髪を風に棚引かせる少女。
その美貌は人形の如く人間離れしているが、それよりも特徴的なのはその衣装。
少女が羽織る服は、喪服。死者を悼む漆黒の和装。
おおよそその場には相応しくない、日常から離れた服装であった。
喪服の左腕部分はまるで 中身が無い かの如くに髪と共に風に靡いており、
そして、その右腕には一本の短刀が握られている。
少女の非対称の造詣は、しかしそれが個の完成系であるとでも叫ぶ様に
凛とした静謐な美を纏っている
眼下で繰り広げられる戦局をじっと眺め見ていた少女だったが、
やがてその瞳は二つの点で静止する
機構鎧を身に纏った様な少女。
虚の世界の事象を呼び起こし、ソレを纏う少女。
人が辿り着けぬ法則を魔法と言う力で備えた少女。
己が理想の為に見知らぬ誰かを犠牲にした魔法少女の姿。
鎖を侍らせる少女。
縛り付ける様に屈服させる様に。
何より自身を守る様に鎖を纏う少女。
己が願いの為に見知らぬ誰かを犠牲にした魔法少女の姿。
「――――嗚呼、見つけた」
清水を思わせる様な声が喪服を纏う少女の喉から流れ出る。
そして少女は――――空へ跳んだ
まるでビルの屋上から、命を投げ出す様に。否。或いは空を舞おうとでも言うかの様に。
その姿に、重力が引力が、死を求めて少女に圧し掛かる。
だが、少女はもはや彼らに捕らえられる領域の存在ではなかった。
桜の花弁の様に中空を舞い落ちる少女は、鎖の竜巻を避け空へと飛翔した、
機構鎧を身に纏う少女へと真っ直ぐに、月光の様に落下し――――
「別て(わかて)」
交差の瞬間、銀の線が機構鎧の少女へ向けて奔った
【乱入。蒼月さんにナイフで斬撃。切断の魔法はかかってないけど、
ガンダムな装甲の隙間(間接部?)を狙って鋭い一閃を放ちました】
(何とか無事でいます、皆さんも無事で何よりです)
>>123 空に逃げ鎖の少女からの奇襲を避ける、その目的はいまのところ成功をみた
空を飛べるって言うのは結構なアドバンテージだな
その瞬間、俺の心に隙が出来た
眼下の女の子に意識をを奪われていたのもまずかった
「高速で飛来する魔法少女だと!!」
空を飛べるの自分だけではない、飛んだために敵に発見されたのだ
迂闊!! そう思ったときにはもう遅かった
>「別て(わかて)」
氷のような冷たい一言、瞬間走る痛み、燃えるような痛み
装甲の隙間を狙う正確無比な一撃
腕はなんとか皮一枚で繋がっていた
とっさに無事な腕で掴み、落下を防ぐと同時に回復をはかる
瞬時に繋がる、といっても皮だけ、神経、筋肉、骨の再生には時間がかかる
片腕は死んだといっていい。すくなくともこの戦闘中はもう使えない
敵は速い、どんな姿かよくわからなかったほどだ
逃げるように急上昇、黒い着物、喪服をきた少女。あれか!
「落ちろ! 蚊トンボォ!」
ビームライフルを6連射し近づけさせない
クロスレンジはやばいという判断を瞬時に下せた俺を褒めてやりたい
くそ!! なにをそんなに焦ってる
これじゃただの小物だ。俺はガンダムだ!
椅子を尻で磨くだけの男で終わってたまるか!
「俺が1番上手くガンダムを扱えるんだよぉ!」
【壱斬千渦さんにビームライフルを6連射 当たればかなり痛い】【壱斬 千渦さん攻撃で左腕使用不能、ビームシールド展開不可】【精神状態は若干の錯乱】
【みなさんご無事でなによりでした。こんな時にレスなんて不謹慎に思われる方もおられると存じますが、こういう時こそ普通に振る舞おうと思いましたので昨日、今日のレスとなりました。
私のような者のレスで、もし被害にあった方の目に留まり一時の精神的安寧をもたらせたらとせつに願います
最後に被害にあった方すべてに哀悼の意を述べ、亡くなった方のご冥福を祈ります】
申し訳ありませんが、私も暫くはレスを控えたいと思います
どうにも、精神面が落ち着かないのです
皆さんの復帰には合わせて復帰致します
私も自粛には賛成。期間は、まあおいおい決めていきましょう
ただ今私にターンが回っているので、近いうちにレス投下するやもです
ま、ま、生きてるよーっていう報告程度に受け取ってくれたら幸いです
【
>>126 あまり無理をなさらないように。
ここでしか接点のない方に対して本来こういう態度をとるのは(PCとしての馴れ合いを忌避する意味で)あまりよくないのかもしれませんが、報告を読んでおそらく被災地にいらっしゃるであろうあなたのことが一番心配でした。
どうか一刻も早くあなたの心が落ち着きを取り戻せるよう深くお祈り申し上げます……】
【
>>127 流れ的にレスを待つ側のようですので、期間のほうは合わせます。
自粛とはいえ、同僚に対して礼を欠くわけには参りませんので。】
【あと、
>>125 不謹慎だなんて思ってませんので、どうか気にしないでください!】
129 :
名無しになりきれ:2011/03/16(水) 01:08:38.72 O
保守
>>128 ご心配かけてどうもすいません。でも大丈夫です!
回ってきたらちゃんとレスしますのでお構いなく進めて下さいね!
>>128 ご心配かけてどうもすいません。でも大丈夫です!
回ってきたらちゃんとレスしますのでお構いなく進めて下さいね!
返事が遅くなって申し訳ありません
自粛に関しては賛成です
幸い私はいま現在、被害を被っていないので再開時期についてはお任せします
>>128 そう言っていただき、ありがとうございます
(きっと想いは誰もが同じ……奪いたくないし、奪われたくない。その上で、『何をすべきか』)
放った声は夜風に乗って、淡光の魔法少女の耳朶を打つ。
まだ酸いも甘いも知る前の、女に羽化する前の儚さと、聖別された白銀の如き清楚さを兼ねる双眸。
ガンダムには紙飛行機を送ったが、この少女にはどうしても肉声で届けたかった。
それは、『すべき事』だから。一歩だけ、前に進むために。
(わたしはそうありたいから。君はどうかな、ロリちゃん!)
>「私は……」
繋がった言葉の先。
幼い魔法少女は、年齢以上の熱を以て回答する。
>「あの子に――“勝ちたい”です!!」
確かな意志の胎動は、南雲の胸の奥まで届いた。
思う以上に、口端が獰猛に角度を上げた。
「――その選択を待ってた!!」
同時、夜空に空色が弾ける。
鎖の魔法少女を狙ったステルス紙飛行機がその威力を発揮し、彼女の攻防力を少しだけ削ぐ。
そこへ畳み掛けるようにガンダムからの狙撃。幾重にも重ねるようにして光弾を叩き込まれ、鎖少女は地に堕ちる。
>「がっ……は……!」
クリーンヒットを受けてなお、鎖の少女は立ち上がった。
強引に自身を吊り、戦闘態勢を持ち直す。追撃を打とうにも手が出せなかった。
建物を使って上手くガンダムの射線から逃れ、しかし接近戦を躊躇わせる威嚇。
攻防力に劣る南雲にとって、下手に攻め打って手痛い反撃を喰らうのだけは避けたかった。
>「いいねぇ。ようやく、良いのが入ったじゃないか」
彼女は痛みを知らない。魔法少女に成り立ての上、紙飛行機を飛ばすだけの矮弱な固有魔法。
一対多という状況に加え、使い方に工夫を重ねて今までどうにか立ち回ってきたが、これより先はガチンコの殴り合いも否めない。
つい数日前まで一般人だった南雲は、本当の意味での手足飛び内臓乱れ散る『戦闘』にはやはり躊躇いがあった。
まして相手は戦歴豊富な武闘派魔法少女。
(ロリちゃん含め、イイのを貰うより先に決着に持ち込む……超短期決戦!これっきゃない!)
>「でも、だからこそ……アンタらはアタシに勝てねえよ」
>「だって、アタシは間違っちゃいない。正しい事をしてるんだ」
鎖少女が再始動する。
出現した無数の鎖輪に回転が与えられ、彼女を中心にした台風か竜巻のごとく威力が発生する。
その姿はさながら巨大な鎖の柱。異なるのは、その直径が依然成長を続けるという一点。
南雲が様子見に飛ばした紙飛行機が、まるで噛み砕かれたかのごとく四散した。
>「アタシが、負ける訳ないんだ」
殺傷領域は、じわじわと拡大する。
「ぎゃー!倒したいとは言ったけれど、具体的にどう倒すかという構想が今!あの技によって完封された!
端的に言いましょう、この坂上南雲、早くも泣きそうです!――どうしよう、ロリちゃん」
カッコつけた手前、何があってもクールに対処するつもりでいた南雲だが、流石にコレはヤバい。
魔法とか関係なしに、物理的に切り刻まれる。生肉コンクリなんでも来いの凶悪万能シュレッダー。
(ガンダムさんは――)
視線を走らせた先、肝心のガンダムはまた別のガンダムに換装していた。
それはいい。問題はその先、更に新手の魔法少女。喪服に短刀を携えた魔法少女と交戦中であった。
おっさんは鎧の少女と未だ戦闘の最中。しからば、現状鎖少女に立ち向かえるのは南雲と幼き淡光の魔法少女のみである。
「ロリちゃん、ごめんっ!」
鼻先まで迫ってきた鎖柱から退避、ステップするようにアスファルトを蹴り淡光の魔法少女に肉薄。
膝と背を抱えるいわゆるお姫様抱っこ、そのまま放った紙飛行機を足場に壁を登って民家の屋根に立つ。
(台風の目みたく、中心部はガラ空き……?いやいや、それについて何の対策もしてないってのはありえないっしょ)
敵は何人もの魔法少女を屠ってきた(であろう)バリバリの武闘派だ。
己の技の弱点ぐらいは把握しているだろうし、その対策も当然講じてあると考えるべき。
ではこちらの戦力はどうだろう。これから作戦を組むならば、正確に把握する必要はあるだろう。
「ロリちゃん、差し支えない程度にきみの固有魔法おしえて!きみにはなにができて、この状況にどう活かす?
おっと、こっちから先に教えるのが礼儀かな……わたしは紙飛行機が飛ばせます。以上!能力名はまだ決めてない!」
腕を振る。袖から滑り出た紙飛行機が空中で加速し、鎖柱の上部から急降下特攻を仕掛ける。
ダメもとだ。これで相手の対策が割れればよし、万が一対策してなくて攻撃が通ればなおよしである。
「大丈夫、勝てるよ。鎖ちゃんは正しいけれど、強さを『正しさ』に頼り過ぎてる。超依存してる。
そして正しさ、正義なら、わたし達にもアドバンテージがあるんだよ。昔の偉い人は言いました!」
回転し、キメ顔。
「――『可愛いは正義』!」
【理奈ちゃんを抱えて民家の屋根に退避。能力を聞く】
【麻子っちゃんの鎖柱の上空から紙飛行機で神風特攻】
【一応私としては復帰です。今日で一週間ということで、再開の区切りとしてはちょうどいいかなーっと。
まだまだ日本全国混乱も困難もあるかと思われますが、今後もみなさんと楽しめたらと思います】
>>125 「浅い――――けど、片腕は捕ったわ」
舞い散る花弁の様に落下した喪服の少女は、
ビルの上から跳んだのと同じ様に地面へと着地する。
慣性と重力に従って発生したエネルギーに地面から砂埃が舞うが、
少女にそれを意に返した様子は見られない。
井戸の底を思わせる暗く静謐なその瞳は、未だ空を舞う機構鎧の少女を捕らえる。
>「俺が1番上手くガンダムを扱えるんだよぉ!」
そう叫び、ライフルの様な形状の銃を千渦へ向ける。
千渦切りつけられた片腕は、見れば既にその傷口は再生していた。
万全、とまでは行かないだろうが、失血死を狙える様な物ではない事は理解出来る。
「集めた魔法核の効果、か。基礎の能力が伸びてるわね」
放たれるのは光線。現代科学では実用の域に至っていない光と熱の攻撃。
恐るべきはそれを一撃ではなく六撃放った事だろうか。
空気を貫く様に放たれるその光線――――しかし。
一撃目の光線は『切断』された。
まるで花火の様に散る光線。屑星の欠片の如く散らされたそれは、
背後の建物に当たり複数の爆発を起こした。
見れば、千渦は光線の機動上に短刀の刃を真っ直ぐに向けていた。
その刃が纏うのは、血の様に赤い魔力。そして、同じ光が千渦の瞳にも宿っている。
千渦の口元に浮かんでいるのは、小さな笑み。
この世の理を塗り替える魔法という力。機構鎧の少女がそれを手にし空を遊び光線を繰る様に、
千渦という少女にもその力は宿っている
この世界の全てを切り裂く『切断』の魔法
そして切り裂く対象を見失わない為の『目』
そして千渦は舞う。くるりくるりと、舞踊の様に。
おそるべきはその魔法と、身体能力。
刃を振るうその度に光線は刃に切り裂かれ、散り、その舞いを飾り立てる。
咲いて咲いて咲いて咲いて、裂いて裂いて裂いて裂いて
「――――確かに貴女はその鎧を上手く使える様ね。
けれど、それは貴女の力じゃないわ。貴女が魔法核を奪った娘達の力よ」
舞いの最後に最後の光線は、千渦の喪服の左腕を貫く。
だが、そこから血も骨も散る事は無かった。
何故ならそこには何も無かったから。かつて在った物は今は存在していないから。
風に袖髪をはためかせながら、千渦は宣告する
「――――壱斬千渦、それが私の名前。
命と心を奪われた魔法少女、その近しい人々の憎悪の代理人。つまり、殺し屋よ」
千渦は身体能力を強化し、ビルの壁を走って登り、機構鎧の少女に接近していく。
雑談所読んでる人いますか
再開するのか、しないのか
私は自粛に賛成しましたが、再開するならすぐにでも再開出来る用意はあります
自粛を続けるかいつ再開するかの具体的な声明のようなものを出していただければ
わかりやすいのでお願いします
【急かさないで下さい】
>>137 再開云々じゃなくて個人的な自粛だから、書けるならいつでも書いていいんだよ
私はターンが回ってきたのなら、レスを返すつもりです
理奈さんのご意向が分からないので、それ以上は何も言いません
143 :
神田理奈:2011/03/22(火) 19:59:47.90 O
け、携帯の書き込みは初めてです……。
要件だけ取り急ぎ失礼します。
遅くなってごめんなさい。只今規制中のため書き込みができません。
私はこの通り、既に復帰の構えです。
私のレスは千夜万夜さんの代理投稿スレにあります。
どなたか取りに行っていただけませんでしょうか……。
【うう、歯がゆい……只今規制中につき、書き込みができません。】
【このレスは批判要望板経由の代理投稿によるものです。】
【本来のレスは長すぎるため千夜万夜さんの代理投稿スレに置いてあります】
【大変お手数ですが、どなたか代わりに持ってきていただいてよろしいでしょうか……】
【
>>132 >>142 ご迷惑おかけします。私の意志はこのとおり、既に復帰の構えです】
行ってくる
>>106-107 猪間麻子
>>119-120 蒼月 徹
>>133 坂上南雲
>「――その選択を待ってた!!」
絞り出した私の答えに不敵な笑顔で応える南雲さん。
私の想う“選択”と、この人の考えるそれは同じじゃないかもしれない。
けど、今はこの笑顔を信じて力を合わせるほかに――方法は無い!
>「ギャハハ、いいアダ名貰ったじゃねえか!ロリちゃんよぉ!?羨ましいねぇ!?」
振りかぶった決意を挫く声の主は勿論「鎖」の魔法少女。
うぅ、ちょっとだけ気にしてるのに……だったらあなたにあげようか、ロリちゃんの称号!?
私の渋面に目もくれず、嘲笑うかのように彼女は続ける。
>「テメェから他人の下に付いて何が楽しいんだか。なに?アンタまさかマゾな訳?」
そのとき……自信と余裕に満ちていた彼女の表情が、そのとき少しだけ凍りついた。
タイトな服に包まれた小さな肩が、微かに震える。
>「……あーあー、いたねぇそう言えば。そんな客も。クソうざってえ思い出を掘り起こしてくれてありがとうよ。
> お礼にアンタから、ぶちのめしてやる事にするよ」
…………客って、何の話だろ?
彼女の口からついて出たその言葉には、深い憎悪が込められていた。
読みかじりの知識とそれに連なる想像が、私の頭の中で彼女の過去を真っ暗に染め上げる。
察しの悪い私にも、いい加減この子のことが――自分を躊躇させていた「何か」が、少しだけわかった気がした。
鎖を振り回し、彼女は睨むような半眼に苦悶の表情を浮かべて言い放つ。
その瞳が語る世界は、私が見てきた何よりも厳しくて……悲しくて……苦しくて……生々しくて……
>「希望を持てず絶望をする、そう言う人間もいる! だけど、希望を持たないと夢を持たないと人は生きていけない!」
先程から戦列に加わっていたガンダムのお兄さんが真っ白な言葉で希望を説く。この人の考え方に、私は賛成だ。
どこか自分に酔いしれている表情が何だかなーって気はしますけど……。
>「夢を奪うのは駄目だってか?負けたら何かを諦めるのは当然の事だろ。ゆとってんじゃねぇよボケ。
ヒーロー気取りで戦いを止めてえなら、イラクでも、エジプトでも、好きなトコに行きやがれ」
にゃはは、それいいかも。
もし私が昔のアニメに登場するような魔法少女になれたら、モモちゃんみたいに核攻撃だって止められるかもしれない。
あなたが見てきた世界を――変えられるかもしれない。
>「負けたら諦めるんじゃない! 諦めたら負けなんだ!!」
すれ違う言葉は伝わる前に虚空へと消える。交わされる思いは違うけど、それぞれがコインの表と裏のようにこの世界の一部だ。
お兄さん、違うの。そうじゃないの。
その子は、「諦めた」わけじゃないの――
>「アタシの夢を、邪魔するんじゃねぇよ!!!!」
「諦めてない」から“魔法”に縋ったんだよ……。
【続く】
>>107-108 猪間麻子
>>134 坂上南雲
>「さて、と……お喋りが過ぎちまったなぁ」〜>「がっ……は……!」
「!?」
思いの丈を吐き出した「鎖」の魔法少女を待っていたのは姿無き紙飛行機の強襲と、ビームライフルによる魔弾の追撃だった。
しかし、滅茶苦茶痛そうな波状攻撃を受けても彼女は立ち上がる。
>「いいねぇ。ようやく、良いのが入ったじゃないか〜これ以上なく正しい選択だ」
えーえー、問答無用で攻撃をしかけるのが正しい事だって言うなら、きっとそうなんでしょうね!
隣にいる南雲さんを見る。前を見たまま、真剣な表情で戦う術を考えているようだ。
直後――。
>「でも、だからこそ……アンタらはアタシに勝てねえよ」
>「だって、アタシは間違っちゃいない。正しい事をしてるんだ」
>「アタシが、負ける訳ないんだ」
鎖の魔法少女が動き出す。後ろめたい何かを誤魔化し、自分に言い聞かせるような言葉をバネに戒めを解き放つ。
彼女を繋ぐ縛鎖は形を変え、全てを拒絶・切断する竜巻の刃となった。急速に直径を広げ、円刃が迫る!
>「ぎゃー!倒したいとは言ったけれど、具体的にどう倒すかという構想が今!あの技によって完封された!
> 端的に言いましょう、この坂上南雲、早くも泣きそうです!――どうしよう、ロリちゃん」
はいっ、わかりまてんっ!><
――などとブリっ子できる余裕なんて私にも無いのです!ってゆーか南雲さん、さっきまでのキャラは何処へっー!?
いえ、クールなあなたも素敵ですけど、オロオロした顔もなかなかの萌え要素かなぁ……って違う!違う!鎖が迫ってるの!
>「ロリちゃん、ごめんっ!」
「ふえっ!?」
錯乱していた私は自分が抱きかかえられていたことにすら気がつかなかった。
竜巻との距離をとり、南雲さんはそのまま民家の屋根へと退避して私を降ろす。
>「ロリちゃん、差し支えない程度にきみの固有魔法おしえて!きみにはなにができて、この状況にどう活かす?
おっと、こっちから先に教えるのが礼儀かな……わたしは紙飛行機が飛ばせます。以上!能力名はまだ決めてない!」
腕を振って紹介通り紙飛行機を飛ばす。牽制が目的だろうか。この状況下においても南雲さんは勝機を模索している。
>「大丈夫、勝てるよ。鎖ちゃんは正しいけれど、強さを『正しさ』に頼り過ぎてる。超依存してる。
そして正しさ、正義なら、わたし達にもアドバンテージがあるんだよ。昔の偉い人は言いました!」
行動に迷いが無くて、私が怯んだあの子の『正しさ』に負けない、別の『正しさ』を持ってる――見習いたいな。
>「――『可愛いは正義』!」
見な……どうしようかな??
【続く】
南雲さん曰く、固有魔法とは魔法少女がそれぞれが独自に使用できる「必殺のストレート」のようなものなんだとか。(
>>60)
「物体生成」や「自己修復」「魔装変身」「思念通話」といった共通スキルと違い、その能力は個人の『願い』に反映される。
魔法少女2日目とはいえ、私はそういった情報を一切知らずにこの場に来てしまった自分に寒気を覚えました。
……まあそれはともかく、時間が無いので説明もそこそこに私は南雲さんの問いに答えた。
「私の能力を一言で表すなら――『呪文』です。技の名前を叫びながら魔力を放出し、そのイメージ通りの効果を発揮させます」
こう言うと何やらとんでもない能力のように聞こえるかもしれないけど、実際はそうでもない。
技の威力は当然自分の持つ魔力量に比例するし、効果範囲が限られている――私の声が届く距離まで。
何よりいちいち「技の名前」を発声しなければ発動しないので隙が大きいという欠点がある。
反面、瞬間的な爆発力に転用できる魔法なので同じ魔力量で作られた永続的な魔法等に対しては有効かもしれない。
ついでに言うと近頃はあまり技の名前を叫ぶ戦い方が流行らなくなった気がする。
上記の欠点のこともあるけれど、主に 中 二 臭 い とかいう理由で嫌われてる傾向があるとか。
もっとも、小学生の私は中学生ですらないのでそんなこと気にしませんけど。
「要するに、叫んだら『かめはめ波』のようなものが出せると思ってください。
技の名前を言う前にあーだこーだと詠唱を加えて威力や射程距離を大きくすることもできます」
図書室で見つけた、一昔前のファンタジー小説。
それが私の主なグリモワール(魔道書)だ。
「あと――」
私は芝居がかった仕草で胸元まで上げた右手を振り下ろし、軽く一回転した。
炎のような赤光の中で、着ていた衣類が粒子のように分解されて独自の魔装へと変化する。
黒髪はブロンドへ、瞳の色も黒からグリーンへ。
赤いドレスに黒のアクセントを加えたロリータ・ファッションの魔法少女がそこにいた。
「私、神田理奈って言います、よろしくっ☆」
あれ、おかしいな、こんな格好するつもりなんてなかったのに……。
【遅れて申し訳ありません。本日より復帰いたしました】
【リアル事情と規制が重なり、進行を大きく遅らせてしまったことを深くお詫び申し上げます】
【
>>137 遅くなってごめんなさい。
>>128の通り、南雲さんの復帰に合わせて自粛は解除するつもりでした】
【書き込みが遅くなったのは個人的な事情によるものです。不快な思いをさせてしまったようですいません】
ビームライフルの光弾は切り裂かれたァ!
冗談だろおい、放ったすべてをことごとく回避、切り払われた
最後にはなった光弾は彼女の左腕を貫いたが袖を吹き飛ばしただけだった
始めからないものは貫けない、これはパフォーマンスなのかよ!
余裕見せやがって!
「ニュータイプか、こいつはァ!」
>「――――確かに貴女はその鎧を上手く使える様ね。
けれど、それは貴女の力じゃないわ。貴女が魔法核を奪った娘達の力よ」
だからどうした! 俺は戦って戦って戦い抜いてェ! この戦いを終わらすために参戦した
そのためには力が必要だ! 力を得る手段はただひとつ、たったひとつ!
「だから、なんだって言うんだ! 俺には目標がある、それはこの馬鹿げた戦いに参加した奴全員、漏れもなくだ
あんたにだってなにかしらあるはずだ。そのための力を得ることに他人の力がいるんだよ!
こいつはそういうルールだ!」
なぜこうも熱くなるのか? 俺にだって罪悪感のひとつやふたつはあるってことさ
高速で迫る月明かりに映し出される少女の顔が目に映る……笑ってやがる
こっちはこれっぽっちも笑えない、ビームライフルは光速には遥かに及ばないが普通の人間には反応も出来ないスピードのはず
なにを考えてるんだ俺は……こいつが『普通』の人間か?
否!断じて否である!
こいつは『魔法少女』だ。俺とおんなじ『魔法少女』
……俺は少女じゃなくて青年か、今の俺はガンダムを着込んだ青年だ
魔力を使ったときに女の子になる? 馬鹿言うな、そんな都合のいいものじゃない
ただそこらへんにいる男とは違う! 俺はガンダムだ、ガンダムなんだ! ガンダムは負けない!
「負けちゃいけないんだよォォォォォォォォ!」
戦いは熱くないといけないな
焦りはとれた激昂したと見せかけ敵を油断させる作戦をとる
>「――――壱斬千渦、それが私の名前。
命と心を奪われた魔法少女、その近しい人々の憎悪の代理人。つまり、殺し屋よ」
ああ、そういうことか
殺し屋とか輩もいるということか、仕事というのなら特に遠慮する必要はない
こいつの魔法核を遠慮なく奪えるということか
べつに誰であっても魔法核は奪うけどな
ビルの壁を駆け上がってくる少女、そのスピードは先ほどから上がってる
身体強化と言うわけか、切り裂く魔法持ち身体強化で戦う少女
さっきのメガ粒子をナイフで切り開くところからナイフの刃が効果範囲か
なら……
近づかせる道理はないな!
俺は巨大なビームキャノン、メガ・ビームライフルを出現させ壁伝いにくる少女に標準をむける
先ほどよりも巨大な光弾がその銃口からほとばしる
Vダッシュの武器だって?おいおい、追加ユニットを含めての『ヴィクトリーガンダム』だぜ
【私の言葉でいらぬ混乱を招いたことをまずお詫びします。また不快に思った方もいらっしゃるようなのでその方々にも深く謝罪いたします。できることならこのことは綺麗さっぱり忘れていただけたら幸いです】
【
>>142 わざわざどうもありがとうございました。ご迷惑をおかけしました】
【
>>144おかえりなさい、どうかこれからも変わらずお願いします】
【
>>149お騒がせして申し訳ありませんでした】
【最後に神崎さんや萌さんの早期復帰を願っております】
>>110 爪先が壊の腹に吸い込まれる。
軸足を捻り、更に前へと押し込もうとした萌の動きが止まった。
(やば、取られた!)
萌は止められた蹴り足をとっさに引くが、やすやすと自由にしてくれるような相手はもちろんいない。
>「イライラするんだよ、あんな牢獄の中で。ずーっと、ずーっと」
壊が一歩踏み出す。萌が一歩下がる。
>オレは、戦いたい。 誰もいい。戦えよ」
さらに懐が一歩。萌も一歩。
>「戦え!!」
叫ぶと同時に懐が腕を振り上げた。萌はとっさに体を捻って飛ぶ。
振り抜かれた腕に膝が巻き込まれて捻じられ、痛みが走った。
そのまま投げ飛ばされ、路面を転がった勢いで膝立ちになる。
体の各部に力を入れてみて、ダメージを確かめる。戦闘に支障が出るほどのものはない。
飛ぶのが遅れていたら膝を持って行かれていたかもしれない、そう考えると顔が青くなる。
戦士は足で戦うものだ。武器を持っていようが素手だろうが、まず"機動力"がなくては勝機はない。
それは例えば、よそ事に気を取られている相手の眼前へ肉迫する時など特に重要である。
>「戦いはいいな。お陰でイライラがすっきり、消えた」
間合いの内へ踏み込んできた壊が剣を振る。初撃はかわす。哄笑しながらの追撃を、腕に腕を当てて止める。
さらに脇腹を狙った一閃。萌は思い切り歯を噛み締め、剣が肌に当たる瞬間思い切り力を入れた。
食い込んだ刃が、腹筋で挟まれて運動量を無くす。
「こっちは……」
足を半歩踏み出し、壊の足の間へ。
「とっととうちに帰って……」
空いている方の腕をたたみ、引く。
「ご飯食べて寝たくてイラついてんのっ!!」
引いた腕を思い切り振る。風を裂いて萌の肘が懐の額へ飛ぶ。
インパクトの直前、体の捻転によって剣がさらに奥へ食い込んだ。
痛みが打撃を鈍らせる。懐が後ろへ吹き飛んだが、振り抜いた腕の手応えがよくわからない。
だが、ともかく間合いは離せた。萌はさらに下がりながら脇腹を撫で、傷を治す。
魔力の消耗と体力の消耗、どちらを避けるかには一考の余地があるだろうが、とりあえず流血は止めるべきだ。
先に考えなければならないのは、剣に対してどう対処するかである。
ムエタイはガードを重視しない。
これは腕で相手の攻撃をブロックした場合、"腕を攻撃された"とみなされるからで、かわりに回避のテクニックが非常に豊富である。
が、いくら豊富だと言ってもすべての攻撃を避けきれるものではなく、
拳足ならまだしも、刀槍の類いを相手に回避に失敗すればどうなるかは考えるまでもない。
萌はアップライトに構えて、腕に意識を集中させた。
ほんの一瞬の間を置いて、空中から滲み出すように、古式ムエタイの武器"マイソーク"が現れる。
形としてはトンファーにさらに拳を保護する部位を付け足したようなもので、回転させて使うことは出来ないが、
拳の打撃力は大幅に増す。と同時に、腕で相手の武器を受け止めることが可能になる。
しっかりと握りこんだそれを一つ打ち鳴らす。カン、と高い音が響いた。
「それじゃあ、第2ラウンド行きましょうか」
言い放つ。
萌の目には新たな乱入者である千渦も、広がり続ける鎖の渦もなく、ただ眼前の敵である壊だけが写っていた。
その壊へ向けて、拳でワンフェイクを入れてから左足を振り抜ぬく。
【壊さん、長らくお待たせして申し訳ありません】
【ブラック魔法少女 門前百合子編 第零話 『愛の自爆装置』】
わたくしは生まれながらにして全てを手に入れていました。
誰よりも愛らしく生まれ、誰よりも愛されて育ちました。
欲しい物は何もかも好きなだけ手に入る不自由のない生活。
それは例え“人”であっても――そう、例外ではありません。
けれど、そんな潤いの毎日を生きながらもわたくしの心は徐々に枯れ、腐っていきました。
わたくしは飽きていたのです。全てに。全てを手に入れた自分の人生に。
わたくしの心は虚しさに溢れ、そして…――
「あの…その話、長いですか」
わたくしのモノローグに口を挟んで話の腰を折った悪魔(と自称した男)の右頬を強く張る。
ここからわたくしの苦悩の日々が始まるというのに、黙って聞いていられないなんて育ちの悪い悪魔(自称)ですこと。
「す、すみません…あの、出来れば願いの方を先にお教え頂ければと…」
赤く腫れ上がった頬をさすりながら、目に涙を浮かべて懇願している。
願い。そんな物は一つしかありません。決まっていますわ。
「わたくしの愛する“あの方”の夢を叶えて差し上げたいのです。それがわたくしの願いですわ」
「“あの方”…?」
「ええ、クラスメイトの……あら、名前も明かさなくてはいけませんの?」
「はあ、出来れば」
わたくしのプライバシーに汚らしい足で踏み込もうとした悪魔(と自称した男)の左頬を強く張る。
「す…すみませんっ…」
「すみませんでは済みませんわ」
「ま…まあとにかくそれが貴方の願い、と」
「ええ、そうですのよ」
わたくしがそう答えると悪魔(自称)は何やら怪訝な視線をわたくしに送っています。
「……女の子なら普通『両想いにしてっ!』とか願いません?」
「わたくしの願いに難癖を付けるつもりなのかしら」
「ごめんなさい」
謝るのなら最初から何も言わなければ良いのです。黙って聞いていなさい。
とはいえ確かにこの悪魔(自称)の言うことも、至極真っ当な意見ですわ。
普通ならばそう願うのでしょう。ですがわたくしは普通ではありません。
愛されることなんて、もう既に飽きていました。
「とはいえ、如何かしら?わたくしの願いは魔法少女となる資格を持っていますの?」
「それについては問題ありません。魔法核さえ集めれば、貴方の願いは必ず成就します」
だからわたくしは“あの方”だけを愛し、“あの方”のために願うことを選んだのです。
「契約完了です。おめでとうございます、これで貴方は魔法少女となりました」
「ありがとう、セバスチャン」
「セバ……は?」
「名前が無くては不便でしょう。わたくしが名付け親になって差し上げますわ」
「頼んでないです」
わたくしの配慮を無碍にしたセバスチャンの顔面を巨大な拳で殴り付ける。
蛙が潰れたような声を上げながら吹っ飛ぶセバスチャン。
わたくしはとても驚きました。だってそうでしょう?
わたくしのしなやかで優美な髪が、突然握り拳のような形に変化したのですから。
「…そ…それが…貴方の力、です」
そう言い残したが最後、地面に突っ伏して動かなくなったセバスチャン。
こんなに長い髪、まるで『塔の上のラプンツェル』のようだわ。
わたくしがラプンツェルなら、“あの方”はきっと王子様ね。
わたくしはセバスチャンをその場に放置して、早速魔法少女を探しに街へ出掛けました。
魔法核が別の魔法少女の居場所を教えてくれるのだそうですわ。
それでも簡単には見つからないだろうと覚悟はしていました。
ですが、わたくしは一人の魔法少女をいとも容易く見つけてしまいました。
運すらもわたくしに味方しているようです。
その子はとても小さく、まだ小学一〜二年生ぐらいの女の子でした。
わたくしは柔らかな微笑みを携えて声を掛けました。
貴方は魔法少女ですわね、実はわたくしもですのよ、と。
女の子はパッと花が咲いたような明るい笑顔でわたくしにこう言いました。
「エヘヘ…じゃあお姉さんもまほーかくをもってるの?あたしも、もってるよ!あつめてるんだよー」
「あらそう、」
――ザクリ。
という音が聞こえたかは分かりませんが、効果音を付けるのならそれが適当なのでしょうね。
蛇のように首をもたげた髪が、女の子の首を切り裂いたのですから。
それはさながら死神の持つ巨大な鎌のようで、我ながら見ていて身震いがしました。
女の子はぱっくりと開いた傷口から血飛沫を噴き出し、地面を転げ回ってもがき苦しんでいます。
その体から魔法核が零れ、わたくしの足元にコロコロと。
「奇遇ですわね、わたくしもですのよ」
それを手に取り、眺めた後にわたくしはそう呟きました。
もう聞こえていないようでしたけれど。
名前:門前 百合子(もんぜん ゆりこ)
所属:高校生
性別:女
年齢:17歳
性格:お嬢様気質・愛に生きる乙女
外見:金髪のゆるい巻き髪・清楚な印象の服を好んで着ている
変身時は童話に出てくるプリンセスのような純白のドレス
願い:愛する“あの方”の夢を叶えたい
魔法:自身の髪の毛を自由自在に変化させる
属性:髪
行動傾向:魔法核を集める・魔法少女を殺すことに抵抗はない
基本戦術:主に髪の毛による斬撃・打撃/回避もそれなりに
うわさ1:名家の一人娘、両親に溺愛されて育ったらしい
うわさ2:自他共に認める美貌、街を歩けば誰もが振り向くか二度見するそうだ
うわさ3:しかし愛する“あの方”(同級生の男子生徒)には見向きもされていないとか
【ひとまず参加表面のみ】
【次から参加しますのでなにとぞよろしくおねがいします】
>>148 おかえりなさい!
>>155 よろしくお願いします!
私用で少しレス返しが遅くなるかもしれません
ちょうどバトルが分かれていますし、遅いなと感じたのなら
戦場を変えて先に進めるなどして下さって構いません
トリわすれてました!
もしもしでごめんなさい!
>>149 >>151 【ただいまです!】
>>156 【了解です】
【携帯って便利ですけど打つのが大変ですね】
【そろそろ大詰めですし、個人的にはラストアタック前にあと1レスほど南雲さんと作戦練りたいかなぁ……みたいに思ってます。】
初歩的な質問ですが、魔法と願いって関係してないと駄目ですかね
例えば、未来に剣術家がいたとして
願いに関係するなら未来予知とかそんな感じになりますが
効率よく核を集めたいなら本人に合わせた能力のほうがいいですよね?
教えてスーツの人
>>159 そのしつもんにこたえてほしければ
しょうがくろくねんせいれべるの
こくごのべんきょうをしてきてね
にほんごができないとさんかできないよ
つまり、時間旅行したいという願いを持った剣術家が契約したら
時間に関する能力になるのか、才能をいかせる能力になってもいいのかって話か?
月夜にひらめく純白の光沢、このドレスこそがわたくしの魔法少女としての衣装。
機動性には欠けますがそれは全く重要ではありません。
こうして屋根の上に立つには確かに少々ミスマッチな衣装の様に思えますけれど。
そんなことよりも……ここから見渡す限りでは、1・2・3・4……7人かしら?
まさか魔法少女達の交戦に遭遇するだなんて、わたくし思ってもみませんでしたわ。
魔法核が示す方角へと歩を進めていただけですのに……なんて好都合なのかしら。
だって上手くいけば7つもの魔法核をわたくしの手中に収めることが出来るんですもの。
それだけ集まればきっとわたくしの“願い”も叶うことでしょうね…。
さて、それでは残りの1人になるまでここで高見の見物といきましょう。
そして戦い疲れ満身創痍の生き残りをこのわたくしが華麗に撃破…。
漁夫の利で魔法核ゲットですわ!さあ皆様方、早く死んでおしまいなさい!
【ブラック魔法少女 門前百合子編 第一話 『愛をとめないで』】
……と考えていましたのに、なかなかどうして粘り強い方々ですわね。
わたくし待ちくたびれてしまいましたわ。
とはいえ、参戦しようにも皆様方ほぼ1対1のマンツーマン、せっかくの均衡を崩すのは気が引けますわね。
……ってあらあら、あそこは2対1の様ですわね。多勢に無勢、なんて卑劣なのかしら。
珍妙な飛行物体を飛ばしている方と(
>>134)、もう1人…あのドレスがとっても素敵な女の子。(
>>148)
いけませんわね、ここはわたくしが加勢して差し上げましょう。
一束のポニーテールのようにした髪を螺旋状に変化させると、それを強靱なバネのように利用して空高く跳躍。
こうして移動すると足が痛くならずに済みますのよ。
何はともあれ飛行物体と鎖の……竜巻(?)のような物体が飛び交う異質な空間の真っ只中に飛び込むわたくし。
当然優雅に降り立つことに成功致しました、髪のバネで着地の衝撃を殺しながら。
まずはお三方に一礼、そして愛らしい微笑みを浮かべながらこう続けました。
「お初にお目に掛かりますわ。わたくし、門前 百合子(もんぜん ゆりこ)と申します」
バネ状の髪をいつもの巻き髪へ変化させ、その状態から瞬時に増毛。およそ5メートル程のロングヘアの出来上がりです。
「わたくしも御覧の通り魔法少女ですわ。言うまでもなく戦いに参りましたのよ」
大量の髪を二本のツインテールに整え、それぞれを三日月のような形状に変化させると…それはまるで巨大蟹の鋏の様。
ともあれ2対1。どちらに加勢するかは言うまでもありません。
「そちらの……飛行物体をぴゅんぴゅん飛ばしている貴方と、美麗なドレスを身に纏ったセンスの良い貴方」
髪を鋏から巨大な人の手に変え、わたくしは二人をそれで指差しました。
「わたくし、貴方方に加勢致しますわ」
だって、わざわざ不利な方の味方に付く理由なんて御座いませんもの。
あちらの鎖の女の子には酷い仕打ちだと思いますけれど。
「大丈夫、3対1ならきっと勝利出来ますわよ!」
そう言ってお二方に愛らしくウインクをしてから、髪の手を再び巨大蟹鋏へと変化。
僅かに残していた後ろ髪をバネに、鎖の少女の懐へと瞬時に飛び込みます。
とりあえずは腰辺りに狙いを定め、上半身と下半身の分離を狙うことに致しましょう。
上手く行けば御の字ですわ。
【ひとまず有利(そうに見えた)神田理奈・坂上南雲の側に付く】
【巨大な髪の鋏で猪間麻子の腰辺りを狙いつつ、バネの力で猪間麻子へ急接近】
【これより参加させていただきます】
【改めてよろしくおねがいします】
名前:鷹河 明日香
所属:高校生、ボクシングジム所属
性別:女
年齢:17歳
性格:真面目
外見:黒いウルフカット、若干ツリ目気味 服装はブレザーだったりジャージだったり
外見(変身後):魔法少女風ホットパンツとキャミソール(臍出し)、ボクシングシューズ
グローブの替わりに金属製のガントレット、
永遠の挑戦者の意味をこめて基本カラーは全部「青」
願い:過去の改竄(ある事故を無かったことにしたい)
魔法:野獣(ケモノ)の血
属性:肉体強化、物理エネルギーの付与
行動傾向:奇襲を嫌い、真っ向勝負を好む。
基本戦術:接近戦オンリー、
うわさ1:父親はタイトルマッチ前日に事故死した悲運のボクサーらしい
うわさ2:事故の原因は自分のせいだと思い込んでいるらしい
うわさ3:ボクシングに関しては逸材らしい
【テンプレに問題がなけ参加します。】
修正、テンプレートに問題がなければ参加します。
>>159 スーツの人って自分の事でいいですよね!
ひとまず「魔法と願いが関連していないと駄目か」にお答えしますね!
出来れば、その方がいいと思います
もちろん強制する訳ではありませんが、その方がやりやすいでしょうし
で、剣術家の下りはちょっと質問の意図が絞りきれなかったのですけども
「未来で「過去に行きたい」という願いを叶えた剣術家が過去に来ている」という意味なら
「時間関連の魔法」と「剣術家としての技能」を持っているって事には出来ると思います
技能が二つある事に加えて、既に願いを叶えてしまっている事から
少し取り扱いが難しくなるかなとも思いますけれど
そうではなくて「将来、剣術家になりたい」という意味なら
それはそのキャラが「未来という時間に固執しているのか」それとも「剣術家という目的に固執しているのか」で
能力を決めたらいいんじゃないかなと思います
「魔法核を効率よく集める」というのは中の人的な考えの気もしますし、キャラの一番の願いを能力に照らし合わせてあげて下さい
>>164 願いと能力がどうたら言ったあとでなんなんですけども!
結局どんなテンプレだろうと、皆それぞれ自由でいいと思います!
よろしくお願いします!
あと本文の方はもうちょっと時間をください!
【ご新規のみなさん、宜しくお願いいたします】
【まだ規制が解けません。千夜さんに次レスを投稿しましたので、どなたかお願いいたします……ごめんなさい】
>>163 門前百合子(時間的には次の麻子さんの後、南雲さんの前の行動)
紙飛行機の牽制によって得られた成果を確認し、私は南雲さんと顔を見合わせる。
恐怖と昂揚を伴う“物語の経験則”が、自分の頭を動かした。
だけど――まあ、世の中そんな都合よくいくわけがありません。
ひゅるるるるる……ばいいい〜〜〜〜ん!!
舞い降りた新手の魔法少女が巨大なツイン縦ロールをバネに華麗に着地。
刻々と加速する局面は新たな状況を作り出し、私に選択を迫る。
>「お初にお目に掛かりますわ。わたくし、門前 百合子(もんぜん ゆりこ)と申します」
門前さんは名前通りホワイトリリィのような微笑を浮かべ、悠然と自己紹介。
縦ロールから巻き髪へ。巻き髪からロングヘアへ。瞬時に増毛・伸縮・可変をこなし、ぞわぞわ動く大質量の髪は圧巻です。
>「わたくしも御覧の通り魔法少女ですわ。言うまでもなく戦いに参りましたのよ」
二つに割れたロングヘアがツインテールへ、そして巨大な蟹ばさみに変形する。
これで挟まれたら私の胴体なんてうまい棒よろしく軽ーく真っ二つだろう。
>「そちらの……飛行物体をぴゅんぴゅん飛ばしている貴方と、美麗なドレスを身に纏ったセンスの良い貴方」
「は、はいっ!?」
いつの間にか巨人の指となっていたその髪にずびしっ!と指をさされ、びくりっ!と身構える私。
>「わたくし、貴方方に加勢致しますわ」
「…………」
――心強い、本来ならそう思うのが当然なのかもしれない。
けれど私の心に湧き出た感情は、どういうわけかまるっきり逆のものだった。
――この人、恐い。
協力を申し出てくれている人にこんなことを考えるのはいけないことだ。頭ではわかっているのに、身体が勝手に強張ってしまう。
>「大丈夫、3対1ならきっと勝利出来ますわよ!」
ディズニープリンセスのような華やか美貌に艶然たる笑みを浮かべてウインクする門前さん。
言うが早いか髪を再び蟹ばさみに戻し、「鎖」の魔法少女へと向かおうとする。
「待ってください!」
気がつくと私は門前さんを呼び止めていた。
「あの子を――殺すつもりですか?」
【どう反応しようか迷いましたが、気がつけば理奈のほうが勝手に動いてました】
【
>>163 よろしくお願いします】
【ひとつ気になる点があったのですが、「現状」において麻子さんは鎖を竜巻状にして誰も近づけない状態(
>>107)です。
彼女の行動を尊重するのであれば「懐に入る」という表現はできないかと思われます】
【
>>168 お待ちしております】
>>170 >【ひとつ気になる点があったのですが〜】
【確かにその通りですよね】
【すみません、配慮と読み込みが足りませんでした】
【
>>163【巨大な髪の鋏で猪間麻子の腰辺りを狙いつつ、バネの力で猪間麻子へ急接近】を、】
【【巨大蟹鋏で猪間麻子の腰辺りを狙いつつ、距離を詰める隙を窺う】に修正させていただきます】
【連投すみません、名前入れた方が紛らわしくなかったですね】
【以後気を付けます】
【
>>173 こちらこそ、恐縮です】
【規制とけました。代理投稿してくれた方に、改めてありがとうございました】
【
>>136 他スレで好きなキャラは『ヒーロー』の真性さん、緑間さん、シールドマンさん、『空戦少女』の扶桑さん、『ジェンスレ』のローゼンさんです!】
猪間麻子は、自分の行いが正しいと信じている。
魔法少女同士が戦うこのゲームは例えるなら願い事の異種格闘戦で、真っ当なものだ。
敗者が何かを失い、時に命を落とすのは、どんな競争だって変わらない。自分達だけを特別視する理由はない。
それに自分は、今まで一度たりとも進んで人を殺そうとした事はない。
自分は何も間違っていない、だからこそ勝ち続けているのだと、麻子は確信していた。
それでも、
「たまーにだけどさ、疑問に思っちまうんだよなぁ。
夢を諦めたくないって、負けたくないって泣き出すような奴らを見ると。
アタシは本当に正しい事をしてるのかって」
回転する鎖の殺傷範囲を拡大しながら、麻子が言葉を漏らす。
「だけど……もしも、もしもアタシが間違っているなら、いつかは負ける筈だ」
鋭く皮肉げな苦笑いが、続いて零れた。
「甘ったれで、お子ちゃまで、生温い馬鹿みてえな魔法少女が、アタシを止める時が絶対に来る。そうだろ?」
ずっと昔に見た、テレビの中の魔法少女みたいに。
心の中でそう続けて、鎖の隙間に垣間見えた理奈と南雲を睨んだ。
「ほぉら!私に勝ちたいんだろ!だったらこれはどう凌ぐ!?」
麻子の浮かべる笑みに、ほんの僅かに喜色が浮かび、
>「ロリちゃん、ごめんっ!」
>「ふえっ!?」
「……はぁ?」
たちまち、憎悪と敵愾心が表情を余さず塗り潰した。
「……に……がる」
奥歯が悲鳴を上げるほどに歯噛みして、双眸を嫌悪で研ぎ澄まし、麻子が小さく呟く。
「何逃げてやがる!!テメェらは……魔法少女だろうがよぉ!!」
そして激しい憤怒を隠そうともせず、我鳴り声を上げた。
目を見開いて息を荒げ、麻子は灼熱の眼光で理奈と南雲を射殺さんばかりに睨んでいる。
肩を大きく上下させて、しかしやがて諦念を込めて細く長い溜息を吐いた。
「はっ……下らねえ。散々キレーごと抜かしといて、結局ケツまくって逃げ出すのがお好みかよ。
いっそイイ店紹介してやろうか?腰抜け共にゃ丁度いいと思うぜ?
どうせ今から、ユメもキボーもない人生に縛り付けられるんだからよぉ」
麻子が微かに上に向けた顔を右手のひらで覆う。
指の隙間から見える夜空から、紙飛行機の雨が降り注いでいた。
だが構わず、無数の裂傷が刻まれる事も一向に気にしないまま、麻子は肩を小刻みに揺らして笑った。
そうして笑いを最後を、期待外れだったと言わんばかりの嘆息で締め括る。
「……なぁに、気にすんなよ。別にテメェらは悪かねぇ。逃げて正解だ。
ただ、少しでも『期待したアタシが間違ってた』ってだけさ」
何気なく、自分でも意図しないまま、麻子は皮肉に乗せて本心の欠片を紡ぎ出す。
「だから……もう間違えてなんかやらねえ」
自分の体を強く強く抱き締めて、宣言した。
直後、麻子を中心に拡大していた鎖の竜巻が、無数の金属の輪に分解して四散した。
「これ以上なく正しいやり方で、テメェらを屈服させてやる」
飛び散った金属の輪は麻子から放射状に飛び散って、理奈と南雲を追い越していく。
そして――再び連結し、巨大な円の姿を取り戻した。
鎖の円は高速回転を再開する。
今度はゆっくりと、内側に捉えた者へと迫るように収縮しながら。
決して逃げられぬよう、『縛り付ける』ように。
「さぁ、どうするよ腰抜け共!もう逃げらんねえぞ!」
煽り立てるように叫んだ。
と、麻子が視線を理奈達から逸らす。
鎖を分解する前にはなかった人影が、竜巻の内側に増えていた。
悍ましい大鋏の形に変形した金の長髪に純白のドレス。
白磁のような肌に、子猫のような可憐さと悪魔を思わせる妖艶が矛盾なく同居する、異様な美貌を持つ魔法少女が麻子を睨んでいた。
麻子が両眼を一層に細めた。
金髪の魔法少女――門前百合子の醸す、髪の一本一本から滲み出るような悍ましい気配を感じ取ったのだ。
>「わたくし、貴方方に加勢致しますわ」
「……何だ、アンタもコレがお目当てってか?」
麻子が懐から、鎖で雁字搦めにされた小さな宝石のような物を取り出した。
彼女の魔法核だ。これ見よがしに手のひらに乗せて、百合子に見せつける。
「だけど残念……」
そして口に放り込んで、嚥下した。
「魔法核はもう、アタシの腹ん中さ。どうしても欲しいってぇなら、アタシの腹掻っ捌いて奪うんだな」
握り拳に立てた親指で腹部を指して、麻子は挑発的な嘲笑を浮かべる。
魔法核が欲しいなら自分を殺すしかないと、脅迫する。相手が手強い時に、麻子がよく使っていた手だ。
もちろん麻子は、この相手は本当に自分を殺してでも魔法核を奪いかねないと踏んだ上で、こうしている。
魔法核が欲しければ、腹を掻っ捌くしかない。
つまり攻撃される部位が胴体に限定させるよう、言葉で『制限』しているのだ。
麻子は常に、衣装の下に鎖で編んだ帷子を仕込んでいる。
金髪の大鋏をまともに喰らったとしても、致命傷には至らない。
鋏の一撃を凌いだ瞬間に鎖を髪に絡めて拘束し、鎖を巻きつけた拳を叩き込む。
それが麻子の作戦だった。
「ほら、出来るモンならやってみろよ。ま、そんなチャチいドレス着てるような奴にゃ、到底無理だろーけどよ」
挑発を重ねて、鎖を巻いた拳を固く握り締める。
衣装の袖から、ぽたりと一滴、血が滴った。
衣装は絶対の拘りから即座に修復したが、裂傷そのものの治癒が遅れていた。
激情に任せての大技の連発によって、麻子の魔力残量は大きく削れていた。
【鎖の竜巻を分解→再構築で、南雲と理奈、百合子を内側に。鎖は徐々に収縮していきます
百合子に対して鎖帷子で防御→カウンター狙い。魔力が減少気味
遅くなってすいませんでした!】
>>150 >「だから、なんだって言うんだ! 俺には目標がある、それはこの馬鹿げた戦いに参加した奴全員、漏れもなくだ
あんたにだってなにかしらあるはずだ。そのための力を得ることに他人の力がいるんだよ!
こいつはそういうルールだ!」
機構鎧の少女が放つ熱い言葉。信念。
それを無表情に正面から受け止めた千渦は、
まるでつまらない映画でも見てしまったかの様な雰囲気を纏うと、
窓枠を足場に上へ向けて更に加速する
「……そうね。これは、そういう「ルール」よ。
ただし、これはゲームじゃないけれどね」
>「負けちゃいけないんだよォォォォォォォォ!」
「現実(それ)を理解していないと、自分が主人公だと勘違いした、
ヒロイックな気分に酔いしれる、貴女の様な存在に成り果てるの。
今まで何人も見てきたわ。貴女を」
口端を皮肉気に上げると、千渦は真正面に迫ってきた巨大な光弾を目視する。
迸る光は先ほど切り裂いたそれよりも大きく、直撃すればただではすまない事は想像できる
だが、敢えて千渦はその攻撃を回避しようとしなかった。
魔力を前面に展開し、気休め程度の防御を行うと、小さく、だがはっきりと響く声で告げる
「あら……そういえば、この下には他の魔法少女達も居るんだったわね。混戦している様だし、
光線がこのまま進んだら、不意打ちに下の彼女達は全員死んでしまうんじゃないかしら?」
千渦が告げたのは、目の前の少女の在り方に対する「人質」。
目の前の少女の演技がかった口調から、なにかしらのヒーローを気取っていると推測したのだろう。
眼下に居る少女達の命を盾に脅迫をかける。
仮にビームの射出を中断すれば、その直後に千渦は機構鎧の少女へと接近し、再び斬撃を放つだろう。
魔法少女が狩るのは魔法少女だけなのか?
魔法少女は自身の願望をかなえる為に同等の力を持つ者と共食いをする。
それが魔法少女の在り方だ。だがしかし、例外は存在する。
願い次第では、ただの一般人が犠牲になってもおかしくは無い。
【ブラック魔法少女TRPG 鷹河明日香編 序章 「The First Step」】
「つか、マジ弱すぎなんですけどー。これじゃ話にならいっつーか?
ぶっちゃけぇー親の七光りで八百長してたんじゃねっすか鷹河さん?」
人の気の失せたジム内に魔法少女の罵りが響く。
その視線の先にいたのは、血塗れでマットに沈む鷹河という名の普通の少女
何故、彼女は同じ魔法少女ではなく、一般人に危害を加えているのか?
理由は、彼女の願いに深く関わってくる。
彼女の願いは『気に入らない相手を死ぬほどボコボコにしたい』という至極単純で迷惑なもので
気に入らない相手ならば魔法少女だろうが一般人だろうが、その標的になる。
そして、現在、彼女が気に入らない相手に指定したのが、ここにいる鷹河明日香という話になる。
ちなみに、鷹河は今、彼女の魔法によって彼女が満足するまでリングを降りることが出来なくなっている。
「ち…ちが…う」
虫の鳴くような声で鷹河は反論し、ゆっくりと立ち上がって再びファイティングポーズを構える。
しかし、血達磨になるまでメッタ打ちにされたダメージは深く、押せば倒れそうなぐらいにふらつく
「チッ、マジウゼェ…」
先ほどの一撃で決まったと思っていた彼女は不愉快そうに舌打ちをし、止めをささんと一気に間合いをつめる
「さっさと死ねよ!!!」
勢いに任せ、体重の乗った必殺の拳を振りかざそうとした。その瞬間、邪魔をするようにゴングが鳴ると
まるで、間にレフェリーが入ったかのように、彼女の動きはビタリと止まり、明日香は間一髪の所で難を逃れる
どう見ても私刑としかいえない殴り合いでゴングが役目を果したかは、彼女の魔法の条件ということで合点して欲しい。
(難は逃れたようだが…ダメージが…)
ダメージの深さを確認しつつ、明日香はフラフラと青コーナーへ向かう。
しかし、そこに万全の体制で待ち受けるトレーナー達の姿は無い。
(今出来るのは、とにかく座って休むことしか…)
コーナーに寄りかかり、そのまま重力に逆らわずに腰を落とした。その時、ある違和感を覚えた。
(イス?なんでこんなところに)
気がつくといつの間にか、イスに腰をかけていたことに彼女は困惑している中、そいつは現れた。
「随分とまぁ手酷くやられたもんだぁ」
左目に眼帯をした中年オヤジがいつの間にか目の前にいた。
思わず声をあげそうになったところを、オヤジは手にしていたタオルで強引に口を塞ぐように
血と汗を拭きはじめる。
「なぁに、通りすがりの老いぼれよ。まぁちと普通じゃないがな」
明日香は相変わらず困惑した面持ちを浮かべるが、オヤジはそっちのけで氷嚢で体を冷やし始める
「どうやら変態だと思っちゃいないようだな。ならいいや、単刀直入で一言、このままじゃ殺されるぜ
まぁまぁ落ち着いて話を聞けよ」
とオヤジは手短に現状と相手が何者で魔法少女がどのようなものか説明する。
「とまぁ、こんな具合だが、1つ忘れちゃいけねぇことがある
負けたら終わりだ。いいか脅しじゃねぇ、負けたら死人になるか生きた死人になるかどっちかしかねぇ
お前さんにその覚悟があるなら…こいつを受け取れ」
オヤジは目の間に魔法核を出し、明日香へ決断を迫る。
追い討ちをかけるかのようにゴングが次のRの開始を告げた。
選ばなければ死、選べば一度の敗北さえも許されない戦いへ身を賭さねばならなくなる。
そんな極限の選択の中、明日香は静かに微笑み
「負けたら終り…ボクシングと一緒ですね」
そう呟き、魔法核を受け取った。
魔法核を受け取った様を見た相手の表情が変わった。
目に先ほどまでなかった異様な殺意が篭り、表情から余裕が消えた。
彼女からしてみれば、半死人から魔法核を奪えるチャンスでもあり、同等もしくはそれ以上の力を持って逆転されるピンチでもある以上
そこまで警戒して当たり前だろう。
「今度こそ、死ねぇ」
再開と言わんばかりに、先ほどと同じように勢いをつけた右を振りかざす。
しかし、未だにフラついている明日香にはどうすることも出来ない。
接近する相手、迫る拳…絶対絶命の中、そんな中、ある記憶がフラッシュバックされる。
それはある男の姿だ。
男は才能に恵まれていたものの、勝負運には恵まれず大きな結果をあげることが出来ず「無冠の帝王」と呼ばれていた
栄光を得るために、男はただ1つのことを残しありとあらゆるものを投げ捨て、栄光を求めた。
絶望に死に物狂い抗い執念深く追い求め、やっと、その長年の努力が身を結ぶチャンスが到来した
その時、男はただ1つ残したものを守るべく事故で死んだ。栄光に手を届かせる間もなく死んだ。
(私のせいで…お父さんは死んだ)
父として男は当然のことをした。栄光のために積み上げたものを全て捨て、男は父として死んだ。
(私がいなければ、お父さんは試合に出ることが出来た)
陳腐なドラマならば、彼女が父の変わりにそれを手にしようとするだろう。
だが、違う。それを手にするのは自分ではない。父かそれを打ち破った王者のどちらかが手にしなければ意味が無い
故に明日香は願う。
(私の存在が無くなってもいい…あの事故を無かったことにして欲しい)
願いは入力され、魔法核はそのシステムを起動させる。
辺りが一瞬、激しい光で包まれ、明日香を魔法少女へ変身させる。
光が収まったとき、明日香はリングの中央に立っていた。
蒼炎をイメージさせる可憐なコスチュームに身を包ませ、先ほどまで自分の血で濡れたグローブは
ガントレットに変わる。その姿はまさにプ…接近戦特化型の魔法少女を表した姿だった。
「どうしたんですか?殺すんじゃないんですか?」
先ほどまでのダメージも消え、軽快にステップを踏みながら敵を挑発する。
「バカにしてんじゃねぇ」
挑発に乗り、敵は接近し、右を出す。
先ほどまでは全くといっていいほど捉えられなかった動きが今ではしっかりと見える。
(これなら)
「いっけー!!!」
紙一重で敵のパンチを交しつつ、明日香も大きく前に踏み出し右のカウンターを繰り出す。
「おぐぅ」
腹に深く突き刺さる明日香の右に、思わず声を漏らす。
確実な手ごたえを明日香は感じたが、明日香はまた攻める。
もう一歩踏み出し、体を戻す勢いでテンプルに左を叩き込む。
その後も間髪なく相手が立てなくなるまで容赦なく次々と拳を叩き込んだ。
一分もしないうちに今度は敵が血達磨になり、力なくマットに沈む
こうして、鷹河明日香は魔法少女になることになった。
【ふつつか者ですが、よろしくお願いします。
とりあえず、今は乱入せず、次から出てこようと思ってます】
>>180 済まない、これだけ教えてほしい。
プ……の後に続く文字を教えてほしい。
気になって夜も眠れないんだ。
突然の不躾な質問を許してほしい…
伏線を貼る難しさ
>>178 >「あら……そういえば、この下には他の魔法少女達も居るんだったわね。混戦している様だし、
光線がこのまま進んだら、不意打ちに下の彼女達は全員死んでしまうんじゃないかしら?」
「だからどうした?」
俺はさらにもう1発のビームを放つ
光弾は迷うことなく一直線に黒衣の少女に向かう
ガンダムの主人公が味方ごと撃つかというと答えは否、断じて否
ヒイロならデュオごと撃ちそうだけどな
そんなことはさておき、他の魔法少女ごと撃つのは気が引ける
が、がだ、俺には夢がある
このすべての戦いを終わらせるそれが俺の役目だ
それにはときに冷酷にならなければならない!
「荒んだ心に武器は危険なんだ!だから……」
この台詞はいまの流れで言うのははなはだおかしいが言いたくなったのだからしかたない
そして、俺の心に迷いはない
そして、俺のビームが黒衣の少女に接触する
>>148>>163>>170>>177>>178>>183 >「何逃げてやがる!!テメェらは……魔法少女だろうがよぉ!!」
鎖少女の咆哮に、
「む、無茶苦茶ゆうなあっ!」
脊髄反射で飛び出る言葉は情けない呼応。
南雲が選んだ『距離を取る』という選択は、どうにも鎖少女の逆鱗を掠めたらしく。
(そんな、逃げなきゃ必死のこの状況で逃げるなとは殺生な!窮鼠でも噛むの躊躇するレベルだよ!
でもでも大体読めてきた!『魔法核争奪戦』の絶対遵守ルール!おかしいと思ったんだよね……
――――『鎖ちゃんは強すぎる』)
如何に南雲の魔法素養が乏しいといえ、固有魔法が紙飛行機と変幻自在の魔鋼鎖とでは分が違いすぎる。
また、唯一鎖少女に対して有効打となり得たガンダムのビーム……これもまた、南雲とは比較にならぬ出力だ。
悪魔は教えてくれなかった、魔法少女の裏ルール。固有魔法の出力を底上げするような要素が存在する。
(戦闘技術の巧拙じゃあなく!純粋な力の足し引き!魔法少女は『魔法核』を奪い合う――)
それはすなわち、『所有する魔法核の多寡』。
魔法核を奪えば奪うほど、魔法少女を殺せば殺すほど。魔法少女は強くなる。
(数の利は見た目以上には戦況を左右しない……!この力量差をひっくり返すには――)
隣を見る。共同戦線を張った淡光の幼き魔法少女。
彼女の協力が不可欠で、そして彼女はまだ切っていないジョーカーを持っていた。
巨大花の魔法少女から受け継がれたもう一つの魔法核。敵の王将を刺せる金駒の存在。
>「私の能力を一言で表すなら――『呪文』です。技の名前を叫びながら魔力を放出し、そのイメージ通りの効果を発揮させます」
固有魔法のこの字も知らぬままここに来たという淡光の魔法少女の言に、しかし南雲は舌を巻いていた。
逆説、彼女は魔法の基礎も教えられぬまま戦場に放り込まれ、そして生き延びたのだ。
(なんとゆう天性……というか色々老成してるなあ、この子。始めて会ったときもコミュ力たっけーって思ったもん。
今も共同戦線にそつなく適応し始めてる。なによりちっちゃくて可愛いっ!これ重要!!)
>「要するに、叫んだら『かめはめ波』のようなものが出せると思ってください。
技の名前を言う前にあーだこーだと詠唱を加えて威力や射程距離を大きくすることもできます」
「オッケ、大体了解しました!複雑なよーで実にシンプル!発想力と語彙力の勝負!いいねそーゆの大好き!
さー手札は揃った!あとは――持ってる札をどう切って、鎖ちゃんを上回るか」
顎に手を添えて逡巡。下がりっぱなしだった眉尻を並行にし、眦は切れ長を持ち直す。
眼球の動きだけで戦況を走査、掌握。空中戦を続けるガンダムと喪服、格闘戦を続行するおっさんと鎧。
蒼穹の果てから高速で接近する人間大の何かを捉え、視線を戻すと淡光の魔法少女が変身していた。
>「私、神田理奈って言います、よろしくっ☆」
鼻血を吹きそうになった。
南雲は屋根の上に倒れ込むと、ごろごろと悶え出す。その頭上スレスレを鎖少女の放った鎖が擦過して行った。
煩悩と悪運が彼女を救ったが、別の意味で悶え死にしそうだった。
(きゃ、きゃわいいいいいいいいい!持って帰りたい!枕元に座らせて、毎晩30分ぐらいお話したいっ!!)
「はっ!おピンク色の三途の川が見えた!あっぶねー!よ、よろしく理奈ちゃん……」
背後で金属音。先程飛んでいった鎖が再び結合する音だった。
南雲や理奈を含む戦闘領域を円で囲った鎖の輪は、あの凶悪な回転を再開する。
>「さぁ、どうするよ腰抜け共!もう逃げらんねえぞ!」
今度は、縮む動きで肉薄する殺傷力の束。
「あーもう、こっちは紙飛行機一個出すのにもひいひい言ってるってのに!大技ばっか出しくさって――」
作戦会議も疎かに、応戦しようとしたその時。
空から少女が降ってきた。南雲には、スパゲッティのモンスターが出現したように見えた。
>「お初にお目に掛かりますわ。わたくし、門前 百合子(もんぜん ゆりこ)と申します」
>「わたくしも御覧の通り魔法少女ですわ。言うまでもなく戦いに参りましたのよ」
優雅に一礼する少女。門前百合子と名乗った彼女は輝く背蓑をうなじに担う。
それは伸びに伸びた髪の毛で。あろうことかナマモノのごとく脈動していた。
(新手――とかじゃなくて!いやいや!もっと突っ込まなきゃいけないとこがあるでしょー!)
>「そちらの……飛行物体をぴゅんぴゅん飛ばしている貴方と、美麗なドレスを身に纏ったセンスの良い貴方」
「っひい!こっち見た!ラブ・デラックスみたいなのがこっち見た!」
門前百合子。この少女、十人以上に目を惹く容姿をしていることはしているが、髪のインパクトがハンパない。
隣の理奈も突如の邂逅に驚愕と怯えが先行しているようだった。
なんとしてもこの娘だけは守らねばならぬ、と狭義心めいたものが芽生えてきて、南雲は一歩前へ。
>「わたくし、貴方方に加勢致しますわ」
>「大丈夫、3対1ならきっと勝利出来ますわよ!」
「えっ」
(うわああああ怪人パスタ女が仲間になりたそうな眼でこちらを見ているうううううう!!!)
門前は頭からハサミを生やしながらガラ空きの鎖少女に肉薄する!
それを――
>「待ってください!」
いつの間にか南雲の前に出た理奈が、呼び止めていた。
「理奈ちゃん!?」
予想外の連続にさしもの南雲も硬直する。
戦闘タイプの魔法少女同士で相討ちにでもなるかと仄かに期待していた故の、素。
>「あの子を――殺すつもりですか?」
その言葉が。
門前百合子以上に――坂上南雲の脳髄へと紫電を走らせた。
足が笑う。膝を着きそうになって、どうにか持ち堪える。眉間を親指と人差し指で強く摘んだ。
(わたしは――戻れなくなるとこだった……!!)
少なくとも、平常の南雲であれば目の前で人殺しを黙認するなど言語を道断するが如き所業であるはずなのに。
戦場という特殊すぎる状況と、鎖少女の武闘派過ぎるキャラと。
そしてなにより、魔法だなんて突拍子もなさすぎる事象が現実感を歪めに歪め、認識に靄をかけてしまっていた。
それは、端的に言えば『ゲーム脳』。他人と命のやりとりをしているというリアリティが、南雲からは欠如していた。
取り戻せたのは、理奈の言葉を呼び水に。
坂上南雲は、ここへ来てようやく人道倫理から致命的に踏み出しかけた両足を発見した。
取り返しのつかなくなる領域まであと一歩。理奈のおかげで、彼女は人でなしにならずに済んだのだ。
「……大丈夫、殺させなんかしない」
再び理奈の前へ踏み出し、門前と理奈との間に自分の身体を置く。頼りなくても、盾ぐらいにはなれるように。
「カンタンな話だよ、理奈ちゃん。門前ちゃんが鎖ちゃんを殺っちゃう前に、わたし達で鎖ちゃんを確保する。
鎖ちゃんは死なないし、わたし達は鎖ちゃんに勝てる!完璧完全完勝策!あまりの頼もしさに全世界がめろめろ!」
>「魔法核はもう、アタシの腹ん中さ。どうしても欲しいってぇなら、アタシの腹掻っ捌いて奪うんだな」
鎖少女は門前の敵対に呼応する。挑発するように、自分の魔法核を口に含み、そのまま飲み下した。
その姿を射抜くようにして南雲は指先を突きつけた。角度を微調整しながら、指さして宣言する。
「やだねー!腹掻っ捌くのも吐かせるのも絵的に色々問題あるので!緊急措置を取らせてもらいます!
鎖ちゃん、君を捕まえてふん縛って放置してときどきいたずらして――下から出るまで待ぁつっ!!」
同時、アスファルトに空色が芽吹いた。指先ほどの小さな小さな紙飛行機――その数は幾千。
飛び立つ渡り鳥の如くアスファルトから立ち上る紙飛行機の集合体は、南雲と理奈の姿を完全に隠匿する。
隠すのは姿だけではなかった。何千という紙飛行機の羽ばたきは、対峙する者にすら言葉を聞き取らせない。
即席のブリーフィングリー。人呼んで作戦会議室である。
「理奈ちゃん、辛いことを強いるかもしれないけど――聞いて。おそらくわたし達の中で鎖ちゃんに
決定打を与えられるのは君だけ……『花』ちゃんからもう一つの魔法核を受け継いだ、君だけ」
魔法核を受け取ってからの理奈が魔法を使った痕跡はないが、彼女の魔法少女としてのスペックは底上げされているはずだ。
そして、それを使うと言うことは――神田理奈という少女が、魔法核の争奪戦を肯定することを意味する。
奪った魔法核を己の糧にするという、その倫理の逸脱を、目の前の優しき少女に許容させるのは、心苦しくて。
(それでも、『花』ちゃんの力を借りなくちゃ、勝てないから……!)
「選択して欲しい。誰かの願いを背負う未来、そして――戦うことを!!」
空色の紙吹雪が晴れて。
南雲は再び銃を握っていた。弾はない。今の目隠しで装填したとハッタリかまして乗り切る所存。
これは牽制だった。例え武闘派の魔法少女とて、同じ魔法少女に銃を向けられて警戒しないわけがないという目論見で。
「言い忘れてたけどさ、ありがとね、理奈ちゃん。君のおかげで今わたしは――」
視線と射線を鎖少女と門前から離さず、南雲は呟いた。
「――――わりと何もこわくないっ!」
返事のように、ビームが降ってきた。
ガンダムが下を省みずに撃ったそれが、南雲の鼻先三寸を掠めてアスファルトを焦がす。
「ぎゃー!ってくぉらあ!ガンダムーーっ!!対地砲撃して良いもんじゃないでしょそれは!あやうく死亡フラグ回収するとこだったわ!」
【門前ちゃんにキケンの匂いを感じ、彼女より先に麻子ちゃんを倒すことを理奈ちゃんに提案】
【相手に気取られぬよう紙飛行機吹雪のブラインド内で理奈ちゃんに二つ目の魔法核を使うよう要請】
【拳銃のハッタリで戦ってる二人を威嚇。完全ブラフなので、魔法とかでサポってくれると嬉しいなって】
【 ブラック魔法少女 坂上南雲編 第一話 『わりと何もこわくない』 了 】
【皆さんお久しぶりです、ご新規の方も初めまして!】
【先日は急の退場でご迷惑お掛けしました、本当にすみません…】
【リアル事情も一通り解消しまして、身勝手ではありますがまた皆さんとご一緒させていただければと…!】
【もし良ければ現在の戦闘パート(と言っていいのでしょうか?)が一段落してから復帰したいと思っているのですが…】
【念のため、私のテンプレは
>>30にあります。
茅野いずみの状態は『猪間麻子の鎖の塊を頭から叩きつけられ瀕死
→神田理奈の助けにより(魔法核を手元に戻してもらう&治癒魔術)外傷回復
→《現在》茅野いずみの魔法核は神田理奈の手に&肉体は闇のセールスマンが略取』です】
>>188 【見返りは?】
【相応の見返りを用意してくれるのだろう?】
>>181 【実は容姿モデルが黒いほうのプリキュアだったりして
プリキュア?いいえ、魔法少女ですっていう意味を込めて「プ・・・」な訳なんですね】
>>188 【おかえりなさい
この時期に復帰できるということは、地震の被害もあまりなかったようで何よりです】
>>188 【またお会いできて本当にうれしいです!是非ご一緒しましょう!】
>>188 【わ、お久しぶりです!こんなにすぐ戻ってきてもらえるなんて……!!
と思ったけど、なんだかんだで一ヶ月近く経っていたんですね。実感無かったです^^;
おかえりなさい。改めてよろしくお願いしますm(−−)m】
【現在レス作成中です。百合子さんのレス待ちでもありますが、リアルの事情でお返事にもう少し時間がかかりそうです】
>>176-177 猪間麻子
>「……何だ、アンタもコレがお目当てってか?」
彼女が取り出したのは、他でもない魔法核。
…まあ嫌だ。そんな、まるで魚でも釣るように見せつけて。
……でしたら釣られて差し上げましょうか。わたくし、一度喰らい付いたら離すつもりはありませんわよ。
「ええ、その通りですわ。魔法核さえ手に入れば、わたくし直ちにこの場から退散致します」
試しに彼女に向けて右手を差し出しました。
もしかしたらあっさり渡して下さるかもしれないでしょう?
もちろんその可能性はゼロに等しいけれど、それならさっさと奪い取ってしま――
>「だけど残念……」
「……? …なッ!?」
……飲んだ。この娘、魔法核を。飲んだ、フフッ…飲んだ!飲みましだわ、この娘っ…!!
「アッハハ……。アハハハハッ…!! フ、フフフ…ああ、おかしい…」
>「魔法核はもう、アタシの腹ん中さ。どうしても欲しいってぇなら、アタシの腹掻っ捌いて奪うんだな」
そう言って彼女が指差したのは、彼女自身のお腹。魔法核の在処。
そして憎たらしい笑みを浮かべている、わたくしの闘争本能を否応なしに刺激するその顔。
前言撤回。魔法核を手に入れたら、脱け殻は完膚無きまでに叩き潰すことにしましょう。
わたくしの心に呼応するかのように髪は火焔の如く躍り狂う。
それはわたくしの燃え上がる怒りそのもの。
>「ほら、出来るモンならやってみろよ。ま、そんなチャチいドレス着てるような奴にゃ、到底無理だろーけどよ」
「わたくしのセンスは寸詰まりの小娘なんかに理解出来ませんのよ。ごめんあそばせ」
一応平静を装いはしましたが、わたくし内心はらわたが煮えくり返っておりました。
あまりの怒りで顔面が痙攣してしまいましたもの。
もう、さっさと片を付けてしまいましょう。割っ捌いてしまえば何もかもすぐ終わりますわ。
…それにわたくしたちを取り囲むこの鎖は、どうやらタイムリミットの役割を担っているようですし。
何にしろ、急がないと美しいわたくしの体がミンチになってしまいますわね。
蟹鋏の刃を大きく開き、小娘の腹部目掛けて向かっていこうとした……その時でした。
>>170 神田理奈
>「待ってください!」
水を差したのは、先ほどの服のセンスがとってもよろしい女の子。
何故に今この子は止めたのかしら。わたくしを。
ここは私に殺させて!なんて言って下されば心強いのですけれど。
どうやらそんなつもりがないことぐらいは、顔を見れば分かりましたわ。
>「あの子を――殺すつもりですか?」
呆気に取られました。ある意味衝撃を受けましたわ。
一瞬情けなく口を開けてしまって固まってしまいました。美しいこのわたくしが。
いったい何を言っているのかしら、この娘は。
「当然、そのつもりですわよ」
慌てて表情を作り直し、包容力のある微笑で即答、だって時間が勿体無いですもの。
それに、とじりじりとこちらに距離を詰める鎖の渦を指差しながら。
「早く行動を起こさなければ、時間はあまり残されていないようですわよ」
>>185 坂上南雲
そこで気が付きました、先程わたくしのことをモンスターにでも遭遇したような目で見ていた彼女が。
ものの見事に震えていましたわ、察するに今の彼女言葉に衝撃を受けたのでしょう。
怯えているのかしら、それとも…?
わたくしが様子を窺っていると、彼女はまるで何かを取り戻したように明るい表情で……
>「……大丈夫、殺させなんかしない」
「……はい?」
>「カンタンな話だよ、理奈ちゃん。門前ちゃんが鎖ちゃんを殺っちゃう前に、わたし達で鎖ちゃんを確保する。
鎖ちゃんは死なないし、わたし達は鎖ちゃんに勝てる!完璧完全完勝策!あまりの頼もしさに全世界がめろめろ!」
>「やだねー!腹掻っ捌くのも吐かせるのも絵的に色々問題あるので!緊急措置を取らせてもらいます!
鎖ちゃん、君を捕まえてふん縛って放置してときどきいたずらして――下から出るまで待ぁつっ!!」
あまりの恐怖に錯乱でもしているのかと思ったら、どうやらそういうわけでもないようですわ。
つまり正気。正気でこんな戯れ言をのたまっているということ。
そして瞬間、紙飛行機の集合体が二人を覆い隠す。(って、あら…?わたくしは?)
とはいえ、分かりましたわ。この二人は、あの小娘を殺すつもりが毛頭無い。
それどころか、あの紙飛行機女はわたくしを出し抜くつもりでいる。
――なら、答えは一つですわ。
「魔法核は、わたくしの物。誰にも渡しませんわ」
紆余曲折ありましたけれど、再度鎖の小娘の腹部に狙いを定める。
先程は水を差されましたが、今度ばかりはそうはいきません。
紙飛行機女と水差し少女が紙飛行機の群れと戯れている間に、小娘を始末します。
完璧な作戦!思わずいやらしい笑みが零れてしまいますわ。
蟹鋏の軌道を腹部に定め、後ろ髪をバネにして、鮮やかに鎖の小娘との距離を詰めます。
もっと鎖の迎撃でもあるかと思いましたが、意外にもあっさりと飛び込めましたわ。
もう魔法核は目の前、この邪魔な皮と肉を切り裂いてしまえば。
開いた鋏をそのまま腹に目掛けて閉じる。
すると、ガチンと音を立てて開かれた小娘の腹からは汚らしい内臓がデロデロと…!!
「…ガチン?」
この小娘、体が鎖で出来ているのかしら。
なんて、わたくしとしたことが馬鹿なことを考えてしまいました。
目の前の敵は、憎たらしい小娘はまだ生きているというのに。
【神田と南雲を尻目に攻撃開始】
【麻子の腹部に髪の蟹鋏で攻撃するも、当然鎖帷子で防がれる】
【麻子に対し、圧倒的に隙を見せている状態】
>>188 わお!お帰りなさい!
またアナタとご一緒出来てとても嬉しいです!
トリ忘れてました!もしもしでごめんなさい!
改めてお帰りなさい!
>>176 猪間麻子
>>184-185 坂上南雲(主観的には
>>170の前)
私が自己紹介を済ませると、南雲さんは何故か突然屋根の上で苦しみながら転げまわった。
あの、そんなに暴れたら落ちちゃいますよ……?
>「はっ!おピンク色の三途の川が見えた!あっぶねー!よ、よろしく理奈ちゃん……」
やや上気した顔になりながらも冷静な視線で応える南雲さん。
あまり自覚はないけれど、私の今の格好はこの人にとってちょっとした破壊力があったみたい。
「は、はいっ、こ……こちらこそ…………」
ノリと勢いでつい語尾に ☆ なんかをつけてしまった自分が、ちょっと恥ずかしいです。
それはさておき、問題は刃の竜巻を纏った「鎖」の魔法少女だ。
南雲さんが上空から放った紙飛行機を――避けない!?
「…………」
タメ息を漏らしながら中で何かを呟いている。けれど“今は”もう聞こえない。
彼女は傷だらけになった己の身体を庇うこともなく、それどころかさらに新しい技を繰り出した。
自分を囲っていた竜巻を砕き、今度は内側に向けた巨大な円刃で私達を取り囲み、追い詰める。
>「さぁ、どうするよ腰抜け共!もう逃げらんねえぞ!」
“拒絶”から“束縛”へ――彼女の願いを象った魔法の根源。
少しずつ、ほんの少しずつだけど、あの子の本当の思いに近づきつつある。
けれど、この技を破るのは簡単じゃない。
>「あーもう、こっちは紙飛行機一個出すのにもひいひい言ってるってのに!大技ばっか出しくさって――」
隣に並んだ南雲さんが彼我の魔力量の違いに不満を零す。
かく言う私も結構ギリギリだ。使えてせいぜいあと1回か2回――ただしそれは、“自分の分だけ”のお話!
【続く】【茅野さんへ:ストーリーへの復帰は「どのような形」でなさる予定ですか?】
>>195 門前百合子(主観的には
>>170の後)
戦いの喧騒の中で――刹那の静寂が三人の間を包み込んだ。
不思議なものでも見るかのような門前さんの視線を受け、私の身体に震えが走る。
>「当然、そのつもりですわよ」
微笑を浮かべ、即答。すこぶる、エレガントに。上品なお友達と休暇の予定を話すお嬢様の如く、至極、当たり前に。
>「早く行動を起こさなければ、時間はあまり残されていないようですわよ」
迫る刃を指で示す。何を言ってるんだお前は。言外の含みで感じる、門前さんのルール。
震える体、渇いた喉からはもはや言葉にすらできない喘ぎ声しか絞り出てくれない。
ずるくて臆病な私は、ぶっちゃけこの人を敵に回すのがもの凄く恐くて……恐くて、動けなかった。
髪でできた巨大な鋏を構えなおし、門前さんが走る。
もう、止められない。今度こそ行ってしまう――誰か……誰か……!!
【続く】
>>185-186 坂上南雲
>「……大丈夫、殺させなんかしない」
南雲さんっ!
>「カンタンな話だよ、理奈ちゃん。門前ちゃんが鎖ちゃんを殺っちゃう前に、わたし達で鎖ちゃんを確保する。
鎖ちゃんは死なないし、わたし達は鎖ちゃんに勝てる!完璧完全完勝策!あまりの頼もしさに全世界がめろめろ!」
絶望の淵から救い上げてくれた極上のスマイルに私の鼓動が再び跳ね上がる。頼もしいのは……あなたです。
直後、蒼穹の魔法少女が水色の光を呼び出す。渡り鳥のように膨大な数の紙飛行機が私たちの姿を隠した。
それはお互いの意思を再確認するために作られた即席会議室。
>「理奈ちゃん、辛いことを強いるかもしれないけど――聞いて。おそらくわたし達の中で鎖ちゃんに
決定打を与えられるのは君だけ……『花』ちゃんからもう一つの魔法核を受け継いだ、君だけ」
――驚いた。
どうやら南雲さんは私と“同じこと”を考えていたらしい。一つ違う点があるとすればそれは“どちらがやるべき”か……この一点。
「鎖」の魔法少女は、強い。少なくとも今の私達だけでは太刀打ちできない程に。力量の差は多分、集めてきた魔力核の数。
いくらあの子がボロボロでも、この差を埋めるには少なくともあと一つ――茅野いずみさんの魔力核を借りるしかない。
>「選択して欲しい。誰かの願いを背負う未来、そして――戦うことを!!」
始めから私は誰かの“願い”を奪うなんて、まして利用するつもりなんて、さらさらなかった。
南雲さんは少しだけ違う。お互いが望むのであれば、“戦うこと”からも“奪うこと”からも、決して逃げない人だから……。
けれど、私が今手にしている“願い”の持ち主は――茅野いずみさんは、そうじゃなかった。
今日出会った人の中で唯一、私の魔法の在り方を認めてくれた人だから、“奪わない”と決めた私を許してくれた人だから……。
この手にあるものが“奪われた願い”ではなく、“託された願い”なら――“背負うべき”は、私の方だ!!
「はい!」
握り締めた決意を合図に、紙飛行機が一斉に羽撃(はばた)いた。
>「言い忘れてたけどさ、ありがとね、理奈ちゃん。君のおかげで今わたしは――」
銃を構えた横顔で、空の魔法少女が囁く。
>「――――わりと何もこわくないっ!」
……私は一体、南雲さんに何をしてあげられたんだろう?
>「ぎゃー!ってくぉらあ!ガンダムーーっ!!対地砲撃して良いもんじゃないでしょそれは!あやうく死亡フラグ回収するとこだったわ
!」
ふと湧き上がった私のささやかな疑問は、白い悪魔によってあっさり打ち落とされてしまいました。
【南雲さんの提案と要請を受諾】【続く】
>>175 猪間麻子
背後に鎖が迫る中、私は再び「鎖」の魔法少女と対峙する。
私達が屋根に退く前に、あの子が呟いたいくつかの言葉を、私は覚えている。
>「たまーにだけどさ、疑問に思っちまうんだよなぁ。
夢を諦めたくないって、負けたくないって泣き出すような奴らを見ると。 アタシは本当に正しい事をしてるのかって」
……だったらこんなこと、止めればいいのに。
>「だけど……もしも、もしもアタシが間違っているなら、いつかは負ける筈だ」
――もしそうなったら、一体誰が“あなたの夢”を救ってくれるの?
>「甘ったれで、お子ちゃまで、生温い馬鹿みてえな魔法少女が、アタシを止める時が絶対に来る。そうだろ?」
――うん、そうかもしれないね。
>「何逃げてやがる!!テメェらは……魔法少女だろうがよぉ!!」
――違うよ。そんなもの初めからいない。この世に存在しない……全部“嘘”だ!!
私はずっと前からそれを知ってる。――多分、あなたも。今だってそうだ。私ですら自分の目的の為に動いてる。
だけど。……だけど!…………だけど!!
それが“誰かの夢を奪っていい”理由にも“あなたの夢を諦める”理由にも……絶対に、ならない。
なってたまるもんですか。
あなたにとってそんな悪夢みたいな世界を吹き飛ばしてくれる力が魔法少女にしかないと言うのなら、私は“魔法少女”になってもいい。
「南雲さん!」
伝えたい言葉があるんだ。
「私、思うんです。あの鎖の子……今はあんなに眼つきが悪いけど、笑えばきっと可愛いんじゃないかって」
叶えたい願いがあるんだ。
「あなたの翼で私を運んでください、あの子の場所まで」
守りたい夢があるんだ。
「世界中の可愛い女の子を守ると云ったさっきの言葉――嘘にしないでくださいね!」
この世に魔法少女がいないなら、魔法少女になればいい。
誰かの夢を奪うのではなく、誰かの夢を守れるような――そんな魔法少女に!!
後悔なんてしたくない。
【南雲さんに麻子さんのところまで空輸を要請】
【 ブラック魔法少女 神田理奈 編 第1話『後悔なんてしたくない』 了 】
>>191 【ただいま帰りました!お互いご無事で本当に良かったです…】
>>192 【またご一緒していただけたら、それはとっても嬉しいなって。よろしくお願いします!】
>>193 >>199 【お久しぶりです!本当ですね〜…。なぜか私もあまり実感がないです……w】
【こちらこそまたお願いします!】
【復帰の形についてですが、『戦闘終了後に目覚めた後、魔法核を改めて理奈さんに託す=文字通り願いを託す』ようにしたいと思っているのですが…】
【改めて理奈さんの『戦う理由』になれればなぁ、と考えてます!】
>>197-198 【こちらこそ嬉しいです、ありがとうございます!
またよろしくお願いします…!】
【それでは、邪魔になってしまうといけないので私はひとまずROMりますね】
【皆さん、また後ほど〜】
>>183 「ああ――――」
紡ぎ出されたその言葉を聴いて、千渦はその口元を皮肉気に吊り上げる
人形じみた美しさは、そんな表情をしても損なわれる事は無く、
絵画にしても栄えるであろう程だった。
「――悪かったわ。私は、勘違いをしていたみたい。
貴方はヒロイックな気分に 狂って いる人種だったのね」
そして、光の奔流が千渦の全身を飲み込み、貫く。
余波の光弾は、千渦の眼下にいた魔法少女達の地面を抉る。
数秒間光に焼かれたであろう千渦は、当然消し炭になっている筈だ。
何故なら、空中では回避行動が取れないからだ。
回避手段が無ければ、攻撃を直接受ける。その結果は避けられない。
――――ただし、それは回避手段が無ければ、だが。
地上から、声がした。凛とした千渦の声。
「……これでは、貴女の殺害は難しいわね。
それにしても――――やっぱり、経験が浅いわね。」
千渦は生きていた。
その右足を炭化させながらも、生きていた。
彼女は回避したのだ。ビームを。
空中に物体を精製し、それを蹴って移動する。
魔法少女の基礎中の基礎である魔法。
回復、身体強化、簡易の物体想像。それを利用したのだ。
機構鎧の少女が本気で殺しにかかるつもりなら、即座に接近し止めを刺すべきだった。
……とはいえ、千渦の呼吸は乱れている。
回復は始まっている物の、流石に瞬時に戦闘可能になる程の回復は出来ない様だ。
それを自認したのか、千渦は追撃が来ない内にその場から去る事を試みる。
近くのビルに入り、建物と建物の死角を移動しながら、機構鎧の少女から離れていく。
「――――夢に狂った哀れな娘。覚えておくといいわ。
貴女の思考回路では、誰も救えない。貴女の行動からは、決意を感じない。
薄すぎる意思では、どこにも辿り着けない」
「世界は貴女の遊びに付き合う程、甘くは無い」
呪いの言葉の様な言葉を残して、千渦は立ち去っていく――――
【 ブラック魔法少女 壱斬 千渦 編 第壱話『片羽の濡羽』 完 】
/遅くなってごめん
>「やだねー!腹掻っ捌くのも吐かせるのも絵的に色々問題あるので!緊急措置を取らせてもらいます!
鎖ちゃん、君を捕まえてふん縛って放置してときどきいたずらして――下から出るまで待ぁつっ!!」
「オイオイ、アタシをご指名ってか?マニアックなオプションまで付けやがって。
高くつくぜ?支払いは、魔法核以外認めてやらねーから覚悟しやがれ」
百合子と対峙した状態から、麻子は横目で南雲を睨んだ。
更に地面から夜空へと飛び立つ紙飛行機の群れの行方を、今度は顔ごと動かして追いかける。
百合子など存在しないかのような振る舞いだ。
これも『行動制限』の一つ。隙だらけの姿を見せつける事で、仕掛けてくるタイミングを『束縛』する。
>「魔法核は、わたくしの物。誰にも渡しませんわ」
麻子の言葉と態度が奏功したか、あるいは偶然か。
どうあれ、百合子が跳んだ。
後ろ髪をバネにしての一足飛びで、麻子を瞬時に間合いに捉えた。
麻子は防御も回避もしない。大鋏がその淡い黄金を深紅に染めようと刃を閉ざし、
>「…ガチン?」
硬質な金属音だけが生じた。
衣装だけが裂けて、裂け目からは細い鎖の格子が覗いている。
「バーカ、寸詰まりのガキにダマされてんじゃねぇよオバサン」
嘲笑を伴う罵倒と共に鎖が放たれ、百合子の髪に絡みついた。
「そんじゃ、ミンチになっちまえよ。なぁに、死ぬ前に引き寄せやっから安心しな」
髪に絡めた鎖を左手で引き寄せ、別の鎖を巻いた右拳を振りかぶる。
収縮しつつある鎖の暴風へ殴り飛ばし、巻き込ませるつもりだ。
体を抉り飛ばし続けて、回復に魔力を使い切らせた所で引き寄せる。
そうして魔法核を奪う算段だった。
>「――――わりと何もこわくないっ!」
「……ちぃっ!」
だが飛行機による逆巻く滝が途切れて、拳銃を構える南雲が見えた。
同時に麻子は体を捻り、拳の軌道を弧に変える。
拳銃の射線から逃れるように足を捌き、百合子の脇腹を抉った。
魔力はまだ残量があるが、余裕があるとは言えない。
無駄なダメージを貰ってやる余裕はないと、麻子は判断した。
狙いは百合子を南雲めがけ殴り飛ばしての、攻撃と防御の両立。
果たして、それは成功した。
>「だからどうした?」
――が、直後に、百合子を殴った右腕を頭上からの閃光が呑み込んだ。
蒼月の放ったビームライフルだ。
麻子が悲鳴を噛み殺して、それでも堪え切れず呻き声が漏れる。
表情は苦悶と、悔しさに染まっていた。
完全に不意を突かれ、図らずも百合子を救ってしまった、二つに対する悔しさだ。
「けっ……ヒーロー気取りはどうしたよ、オタク野郎。メッキが剥げてんじゃねえか」
肘から先が黒焦げになった腕を、それでも脇腹の裂け目と同時に袖を修復する。
無事な左手で抱き締め、蒼月を見上げて、麻子は脂汗に塗れた顔に皮肉な嘲笑を浮かべた。
不意を突かれたのは、自分の油断だ。
百合子を助けてしまった事が悔しいのは、あくまで百合子が気に入らないからだ。
左腕を完全に消し炭にされていながらも、麻子は精神的には、まったく蒼月に負けた気でいなかった。
「テメェの思想は嘘っぱちで、力は他人のモンで、言葉は借りモンで」
当然だ。
「だったらテメェが生きてる価値なんて、これっぽっちもねーじゃん」
麻子から言わせれば、蒼月は途方もなく、侮蔑に値するほどに、間違っているのだから。
「そんな奴に、アタシは負けねーよ」
苦痛の波紋に水面を揺らす麻子の細い双眸が、重力に『縛られた』ように視線を落とす。
そしてこちらをまっすぐに見据える、理奈をしかと『捉えた』。
「ツラ構えが変わったじゃねえか、ロリちゃんよぉ。……さぁ、来いよ」
右手の回復は、遅々として終わらなかった。
だが無事な左手に鎖を巻き、麻子は身構える。
腰を軽く落とし、足幅を広げて、取ったのは迎撃の体勢だった。
持てる力の全てをかけて、理奈を迎え打つつもりだ。
理奈の魔法核さえ奪えば、身体と魔力の回復が同時に行える。
そうなってしまえば、後は勝ったも同然。
ここが勝負の分かれ目だ。
今夜だけの話ではない。
自分が魔法少女としてこれからも戦い抜き、願いを叶えられるかどうか。
自分が正しいのか、間違っているのか。
全てが、この戦いにかかっている。
そう、麻子は静かに、しかし胸の奥深くで、決意を固めていた。
【南雲のブラフに引っかかって百合子にフック→ビーム被弾
回復遅い、無事な左手に鎖を巻きつけて迎撃態勢】
>>壱斬千渦さん
>「――悪かったわ。私は、勘違いをしていたみたい。
貴方はヒロイックな気分に 狂って いる人種だったのね」
「そうだぜ、狂ってなきゃハタチ超えて、男で魔法少女なんて馬鹿なこと考えねぇよ!
お前だって普通じゃないだろ?狂ってるんだろ?普通の人間がヒロイズムに浸れるかよ、気持ち悪い
俺にはこんな、こんな楽しいことはないさ!
だから俺は戦い続けるぜ!この戦いを終わらせて俺は真のガンダムになるんだ!!」
俺はこの戦いを終わらせるつもりだ……ただし、真面目にするかどうかは神のみぞ知る
強くなってもっと強いガンダムを使いたい!!
その気持ちが俺のすべてだ
喪服の女、日本人形と見紛う容姿の魔法少女の暗殺者
笑顔は冷たくどこまでも作り物のようだった
それを歪ませても美しさは変わることはないが言いようのない快感が俺の中でこみ上げて来た
ビームの奔流が彼女を包む
殺したと思ったが喪服は空中で間一髪に回避した
原理は簡単だが、避けられたことはなんとも面白くはない
せっかくのチャンスが……次はこう上手く行くとは限らない、むしろ俺が殺される確率のほうが高いだろうね
>「――――夢に狂った哀れな娘。覚えておくといいわ。
貴女の思考回路では、誰も救えない。貴女の行動からは、決意を感じない。
薄すぎる意思では、どこにも辿り着けない」
「世界は貴女の遊びに付き合う程、甘くは無い」
言葉を残し女は去る、あれの攻撃を完全に回避したわけではない
左足を消し炭にすることには成功していた
追撃をするつもりはない、奴は強い、いまの俺では勝てる相手ではない
なんとか遠距離からの攻撃で敵を退けていたにすぎない
「俺は男だよ……間違えんな!」
すでに遠く聞こえないであろう女に毒を吐く
「そうさ、俺にも普段の生活がある大学の勉強、就職活動、魔法少女は片手間だよ……悪いかよ」
現実のことを考えると少なからず憂鬱になる
無邪気にこの魔法少女という営みに全力を傾けれたらどれほど楽か……
「それにしても『世界は俺の遊びに付き合うほど、甘くない』か……世界が許してくれる限り遊び尽くすさ」
世界の懐の深さに期待しようか、俺は眼下で戦う少女達に視線を移した
>>坂上南雲さん>>神田理奈さん>>門前百合子さん
>「ぎゃー!ってくぉらあ!ガンダムーーっ!!対地砲撃して良いもんじゃないでしょそれは!あやうく死亡フラグ回収するとこだったわ!」
下から聞こえてくるのは元気な女子高生の声、今どきのJKは死亡フラグってことば知ってるんだな
巻き込めなかったのは少々残念だったな……魔法核2個ゲットあわよくば3個ゲットでレベルアップってのは虫が良過ぎたか
大事の前の小事、お前達の力で平和にしてやろうとおもったんだが当てが外れたな……まあいいや
「悪かったな、相手が強かったんだ。わざとじゃねぇよ」
俺はいまどんな悪どい顔でこいつらに話しかけているの非常に気になるところだ
よく見ると見知らぬ金髪の令嬢然とした女がいた
「いつのまにか仲間が増えてよかったじゃねぇか……ほら、さっさとあのクソ生意気な鎖女をやっちまえよ
数で押しちまえ、俺はもう無理だから上から見学させてもらうさ」
ビル屋上の縁に腰掛け高みの見物と洒落込もうか、下から飛行少女の他に俺に文句を垂れる女が一人
>>猪間麻子さん
>「けっ……ヒーロー気取りはどうしたよ、オタク野郎。メッキが剥げてんじゃねえか」
魔力で身体能力が強化されるのはいいことだ。奴の脂汗にまみれた顔がよく見える
どうやら腕を黒こげに出来たらしいな
「お前に俺のヒーロー像はわからねぇよ。悲劇のお花畑ヒロインさん」
こいつはどうやら俺のことが気に食わないらしい
俺もお前のことが嫌いだけどな
>「テメェの思想は嘘っぱちで、力は他人のモンで、言葉は借りモンで」
「だったらテメェが生きてる価値なんて、これっぽっちもねーじゃん」
「そうかそれは悪かったな、自分の思想は真実で、力は自分の力、言葉は自分の言葉を持った女には俺みたいな人間は薄っぺらいよな〜
嫌いだよな〜ムカつくよな〜生きてる価値ないよな〜」
俺は上から鎖女を見下ろす、ガキによくいる夢見がちなやつだ
足を組み、ポケットからタバコを取り出しくわえ火をつける
「お前がたぶんの世界で一番正しいんだろうよ。お前の世界ではな」
紫煙を口から吐き出しタバコを指でつまむ
「世界で一番不幸な女の子が一番薄っぺらいヒーローを倒すか?」
>「そんな奴に、アタシは負けねーよ」
「勝つか負けるか、それだけか楽しめよ。人生をよ!命短し恋せよ乙女ってな」
あくまでこいつはちゃかす怒らせやすい奴は怒らせたほうがやりやすいってさっきも言っただろ?
あれ?いってなかったか?
>>茅野いづみさん
【よろしくお願いします。クズ野郎で引っ掻き回しますがよろしくお願いします】
>>壱斬千渦さん
【また戦っていただけたら幸いです】
>>門前百合子さん>>鷹河 明日香
【挨拶が遅れました。初めましてよろしくお願いします】
>>猪間麻子さん
【好きなだけこけ下ろしてください、殺すのだけは勘弁してくださいね】
萌ちゃパスいる?
パトカーのサイレンが近づいてくる。
神埼は舌打ちをし、立ち去った
少なくともそんな糞みたいなパスは要らんだろ
坂上南雲は魔法少女だ。歴は浅いが、覚悟はある。
語るような過去もなければ、特筆すべき現状があるわけでもなく。どこにでもいるような楽天家の少女。
もとより彼女のメンタリティは、どうにもならない物事を割り切ってしまう方向に完成している。
だからいきなり放りこまれた戦場にも、容易く命の散っていく惨状にも、南雲は適応できた。
自分はもう一般人ではなく、人間ですらない。魔法少女は職業ではなくそういう種類の生物だ。
魔法は奇跡じゃないし、奪い合いには挑むべきだし、殺し合いは忌むようなことじゃない。
それらは魔法少女という生き物の、切って離せぬ『生態』なのだから。
【 ブラック魔法少女 坂上南雲編 第二話 『奇跡や魔法があるのなら』 】
――神田理奈に出会うまで、南雲はそれを疑わなかった。
>>209>>206>>202>>196 >「魔法核は、わたくしの物。誰にも渡しませんわ」
門前百合子は跳躍し、鎖少女へ肉迫する。
南雲があっと声を挙げるより早く、その凶器と化した髪が鎖少女の腹部を斬撃した。
>「…ガチン?」
(上手い……!狙いを限定させて防御を集中してる!)
阻んだのは帷子の如く腹部を覆う鎖の束。斬撃に対し絶大な耐性を誇るインナーアーマー。
同時に南雲の牽制を受けての回避ステップ。繰り出された拳は門前をこちらへ押し出す一撃。
弾は入ってないけれど、ハッタリの都合上まさか味方(仮)を撃つわけにもいかず、南雲は銃を引っ込める。
吹っ飛ばされた門前を抱く形で受け止め、踏ん張りが効かず一緒に地面を転がった。
「いだだだだ……重いよ門前ちゃん!」
真に恐るるはあの矮躯で門前を殴り飛ばした鎖少女の膂力。身体能力すら魔法核の数でここまで違うとは。
本気でガンダムが恨めしく思えてくる。と、そのガンダムはと言うと。
>「悪かったな、相手が強かったんだ。わざとじゃねぇよ」
適当な謝罪を寄越すと旋回し、高みの見物と洒落込み始める。
どうやら喪服の少女は去ったらしく、煙草まで吸い始める外野っぷり。それでも彼の一撃は、確かな効果を置いていった。
鎖少女の右腕が炭化している。あの威力のビームをまとも受けたらああなるという未来図に毛穴が縮む。
そしてもう一つ。
(回復できてない……?)
鎖少女の右腕は黒炭のままだった。それは魔力の枯渇が故か。それともそれすらデコイなのか。
いずれにせよ鎖少女に残された腕は一本のみ。自然と攻撃手段も目減りしつけ入る隙は広がっていく。
>「ツラ構えが変わったじゃねえか、ロリちゃんよぉ。……さぁ、来いよ」
それでも彼女はあくまで交戦意志を崩さなかった。立ち上がりながら、南雲も応じるように視線を合わせる。
>「南雲さん!」
隣の理奈が、弾けるような言葉を打った。
>「私、思うんです。あの鎖の子……今はあんなに眼つきが悪いけど、笑えばきっと可愛いんじゃないかって」
そうだ。この戦いは、この状況は、小難しく理屈をこね回してどうにかなる類のものではない。
必要なのは、決意と意志。たった一つの真実や、揺るぎない回答なんか要らない。
前へ向かうと決めたのならば、あとは心を武装するだけだ。気持ちだけじゃ足りないものを補うために、魔法があるんだから。
「どーかんだよ理奈ちゃん。あーゆースレた娘に笑顔が戻ったら――もう萌えるっきゃないっ!」
戦う理由なんか、あの娘の笑顔が見たいから、で十分だ。
>「あなたの翼で私を運んでください、あの子の場所まで」
「運ぶよ、君を。踏み出すと決めた最初の一歩を!万難を超える最強の一歩に変えてみせる!!」
魔法核に願いを問い、回答を魔力に出力する。空色の燐光が発生し、収束し、練り上がる。
>「世界中の可愛い女の子を守ると云ったさっきの言葉――嘘にしないでくださいね!」
目を閉じ、返答代わりに、南雲は笑った。口端を引き上げる、獰猛な笑み。強い微笑み。
目を開け、対峙する鎖少女を見据える。疲弊し、傷つきながらも戦意に衰えのない少女に。
「自分の正しさに疑問があるって言ったね、鎖ちゃん。だいじょーぶ、君は魔法少女としてこの上なく正しいよ。
でもね……同時に『魔法少女』としては正しくない。致命的に間違ってる。なぜならば!」
回転し、びしりと鎖少女へ指をさす。
「ベテランのようだけど、君は魔法に名前付けてないっ!魔法少女って言ったら必殺技の一つもなきゃ嘘だよ!
技編み出して!名前を付けて!カッコ可愛く叫びながら敵をぶっ倒してこそ魔法少女!深夜系もさもありなん!!」
あの鎖の裁断機とか、花の少女を倒した狼の顎とか、それっぽい技はあるのに名前を叫ばない。
魔法少女に幻想を抱く歳でもないが、少女に妄想は抱いちゃう南雲にとって、それは許しがたい狼藉だった。
かく言う南雲も能力名とか考えてなかったけれども、魔法少女歴一日なのでご愛嬌。ならば今から付ければ良い。
「名付けよう!わたしの魔法は!この手に抱える全て(女子に限る)を護る為の!戦う防衛飛行隊!
――『攻性制空圏《ライトウィング》』!!」
刹那、燻っていた空色の燐光が炸裂した。長口上で時間を稼いでまで練りに練り上げた魔力の成形物。
理奈の足元から萌え出たそれは一枚の折り紙。ただしその巨大さは半端じゃない。目測で2メートル四方の正方形。
生まれた折り紙は理奈をその内に包み、ひとりでに折り畳まれていく。形を創っていく。
その過程で、理奈が完全に覆われる直前、南雲は彼女にそっと耳打ちした。
「……きっかり10秒。舌噛まないよう気をつけて」
完成したのはやはり紙飛行機。先端に逆三角形のヒレがついた、イカ飛行機と呼ばれる形の紙飛行機。
速度を手放し代わりに航続性能に特化した巨大なイカ飛行機は、発光を停止し宵闇にその姿を紛れさせた。
ステルス性能である。
南雲が二翼の紙飛行機を鎖少女へ飛ばすのと同時、イカ飛行機は気取られぬよう静かに飛び立った。
機首は遥か上空へ向けて。理奈を搭載した人間一人分の大きさと重量を持つ紙飛行機は夜空を目指す。
理奈の能力を最大限発揮する為に南雲の打ち出した解答。鎖少女の遥か真上まで理奈を運び、そこから真下へ急降下。
彼女の魔法は詠唱に時間をかければかけるほど威力と射程の増すシステム。
しからば、時間と距離とを同時に稼ぐ戦術が必要だ。上空へ打ち上げ、きっかり10秒の自由落下で鎖少女へ肉迫しながら詠唱する。
(理奈ちゃんを詠唱に集中させつつ、鎖ちゃんへ確実に『届ける』にはこれっきゃない!あとは――)
視線をこちらへ背中を向ける魔法少女へ。イレギュラーがあるとすれば、この門前百合子。
巨大イカ飛行機に残存魔力の殆どを使い切った南雲が、武闘派の彼女を止めるには。
「御宅拝見ごめんくださいっ!」
鎖少女へ意識を向ける門前の背後に気配を消して忍び寄り、後ろから彼女の形の良い胸を鷲掴みにした。
ちょっと幸せ。
【理奈ちゃんを巨大ステルス紙飛行機で上空へ。魔力が底を尽きたので門前ちゃんに牽制目的でセクハラ】
名前:塞守 真衣(さえがみ まい)
所属:私立中学統合武道部
性別:女
年齢:13(中学二年生)
性格:常に何かに焦燥感を煽られているのか余裕がない
外見:黒髪ロング、体系にメリハリはあるけどゆったりした服を好む
願い:魔法核がなくとも誰にでも魔法を使えるようにする(別の意図アリ)
魔法:身にまとう衣装・装備を作り出し自分の戦闘能力を上げる(現在2種類のみ)
1、剣闘(グラディエイト)スタイル
防具:白地を基調とした肩甲の大きなドレスアーマー
武器:右手の大ぶりな籠手と、身の丈を超える大剣
2、近銃撃(アグレッサー)スタイル
防具:ドレスアーマーから大ぶりな防具を外して、各種プロテクターをつけた感じ
武器:右手にオートショットガン、左手に大型拳銃(双方魔力を銃弾にする)
属性:武
行動傾向:普段から冷静だが、逆鱗に触れると見境なく攻撃する
基本戦術:剣闘スタイルをメインとして防御力と攻撃力に任せた前進制圧
うわさ1:姉を自殺で亡くしたらしい
うわさ2:それ以来武術や運動を始めたらしい
うわさ3:夢にうなされる事が多いらしい
【この戦闘に乱入はしませんが、新規参加希望です。皆さんよろしくお願いします】
【すいません。レスを返そうと思ってたんですけど、風邪をひいてしまって……】
【明日には返せるようにしますね。大事なところなのに、ごめんなさい(−−;)】
【
>>203 了解しました。お返事ありがとうございます。】
【
>>216 よろしくです】
>>216 よろしくお願いいたします。
昨今の仮面ライダーっぽい印象を受けました
>>217 ドンマイです。焦らずゆっくり治してね!
ふと思ったんですが、魔法少女に変身できるのって夕方から夜限定なんですかね?
まぁはっきりしてないところあーだこーだいうのはナンセンスだと思いますけど
仮に変身できる時間が限られているなら、昼間に作戦会議や腹の探りあいなんか出来ますし
違うんだったら学校にいるときに奇襲かますことが出来ておもしろそうですけど
>>209 蒼月 徹
>>206-207 猪間麻子(主観的には
>>201と
>>202の間)
>「悪かったな、相手が強かったんだ。わざとじゃねぇよ」
南雲さんの死亡フラグ発言に対し、ガンダムのお兄さんは事も無げに応える。
>「いつのまにか仲間が増えてよかったじゃねぇか……ほら、さっさとあのクソ生意気な鎖女をやっちまえよ
>数で押しちまえ、俺はもう無理だから上から見学させてもらうさ」
「…………!?」
続けて発せられたその言葉に私は驚いた。
好青年然とした男の人がそんな事を言ったことよりも、「このお兄さん」がそんな事を言ったことに。
格好がちょっとアレだけど、優しい人だって……思ったんだけどな。
>「希望を持てず絶望をする、そう言う人間もいる! だけど、希望を持たないと夢を持たないと人は生きていけない!」
――どういう根拠があってそう思ったのかは、自分でもよくわからないけど。
>「けっ……ヒーロー気取りはどうしたよ、オタク野郎。メッキが剥げてんじゃねえか」
焼け焦げた片腕に脂汗を浮かべながら、「鎖」の魔法少女が嘲笑する。
遠くにあって聞こえないはずの二人の会話が、このときばかりはよく聞こえた。多分、これも魔法のおかげ。
>「お前に俺のヒーロー像はわからねぇよ。悲劇のお花畑ヒロインさん」
この人にとってのヒーローがどんなものなのかは、私にもよくわからない。
私はどちらかというと、多少バカでもいいから、ヒーローには「お花畑を愛する人」であって欲しいわけで……。
>「テメェの思想は嘘っぱちで、力は他人のモンで、言葉は借りモンで」
> だったらテメェが生きてる価値なんて、これっぽっちもねーじゃん」
自分に向けられたわけでもないのに、「鎖」の魔法少女の言葉が、何故か私の心にグサリとブッ刺さる。
ふいに俯きそうになった自分を堪えながら、私は二人から目をそらさずに思った。
>「そうかそれは悪かったな、自分の思想は真実で、力は自分の力、言葉は自分の言葉を持った女には俺みたいな人間は薄っぺらいよな〜
>嫌いだよな〜ムカつくよな〜生きてる価値ないよな〜」
そうか――このお兄さんは、私とちょっとだけ似てるんだ。
誰かが想った考えに共感して、誰かに似せた力を行使して、誰かの云った言葉を心に宿して……誰かが創った嘘を、一時は信じた。
>「お前がたぶんの世界で一番正しいんだろうよ。お前の世界ではな」
この人と私に違いがあるとすれば、それは一つ。たった一つの大きな違い。
“魔法”を手に入れた今、それが争いの手段だけでなく、誰かや自分を幸せにできる力だって、本気で信じてるかどうか。
私は信じる。もう一度だけ、信じる。
この気持ちが本当のものなら、嘘にだって……価値はあるんだから!
【続く】【蒼月さんへ あなたが宇宙世紀の肖像になるなら、理奈は『魔法の少尉』を目指しますw】
>>215 坂上南雲
>「運ぶよ、君を。踏み出すと決めた最初の一歩を!万難を超える最強の一歩に変えてみせる!!」
蒼穹の魔法少女が爽やかに、そして獰猛な笑みで私の願いに応えてくれた。
>「自分の正しさに疑問があるって言ったね、鎖ちゃん。だいじょーぶ、君は魔法少女としてこの上なく正しいよ。
> でもね……同時に『魔法少女』としては正しくない。致命的に間違ってる。なぜならば!」
>「ベテランのようだけど、君は魔法に名前付けてないっ!魔法少女って言ったら必殺技の一つもなきゃ嘘だよ!
> 技編み出して!名前を付けて!カッコ可愛く叫びながら敵をぶっ倒してこそ魔法少女!深夜系もさもありなん!!」
な、なんだってー!?
……あ、いや、体現してる私が真っ先に突っ込むのは変な話ですよね。全く以てその通り。
高町な○はさん然り! リ○・イ○バースさん然り! あと、日曜日の朝とか……。
>「名付けよう!わたしの魔法は!この手に抱える全てを護る為の!戦う防衛飛行隊! ――『攻性制空圏《ライトウィング》』!!」
水色の光と共に突如現れた巨大な折り紙。渦巻く突風。一陣の風。そして、無理な当て字。
南雲さん、即興にしてもネーミングセンスが凄まじいです。右翼なんてそんなケレン味たっぷりな……。
こんなカッコイイ技名恥ずかしすぎて私に言えるはずがない。けど、私――こういうの、嫌いじゃありません!
巨大折り紙は自ら形を変えて私の身体を包み込んだ。
>「……きっかり10秒。舌噛まないよう気をつけて」
私の身体が完全に隠れてしまうその刹那、南雲さんがそっと呟く。
発言の“意図”を察知した私は親指をグッと立ててそれに応えた。
――そして双翼は飛び立つ。闇に紛れ、静かに夜を切り裂いて進む白鴉となって。
【続く】【……すいません、時間の都合で受けの動作までしか書けず、自分の分までいけませんでした】
【私自身の行動は明日の内に仕上げます】
>理奈さん
お大事にしてくださいね
待つくらい、なんて事はありませんから
>>216 すいません失念してました!
よろしくお願いしますね!
イライラしてます。皆さんはどう解消してますか
>>207 猪間麻子
高く。
――高く。
――――高く。
南雲さんの魔力によって創られた翼が、星の煌く夜空を翔る。
静かに、けれど、力強く。自らの重さを振り払うように、天を目指す。
かつて飛行機は――人が自由を手に入れる為の、魔法だったのかもしれない。
ううん、もしかすると、今でもそうなのかも。
目標高度に達したイカ飛行機が停止して、私に圧し掛かっていた重力が消えた。
ふと軽くなった心が捉えた目の前の風景に、息を飲む。
不思議な不思議な、魔法の折り紙でできたこの飛行機からは、外の様子がとてもよく見える。
街の灯り。歩く人。通り過ぎる車。電柱の影。路地裏の闇。そして――――魔法少女。
魔力で強化された私の視力が、地上に立っているそのうちの独りを『捉えた』。
彼女がほんの一瞬だけ戸惑ったような動きを見せ、停止する。すると、突然上空にいて見えないはずの私を……凝視した。
「誰よりも高いところに立ってやるんだ」――そう語ったときと変わらない、決意の瞳で。
空間すらも超越した音の無い世界で交錯した視線の先。蛍光灯の光の下で、彼女の唇がそっと動いた。
>「……さぁ、来いよ」
「……うん、行くよ」
飛行機の機首が瞬時に会頭し、重力が再び私の身体に圧し掛かる。
【続く】
「――赤よ、楽園を追われし血潮の色よ」
急速に迫る地面。そこに立つ「鎖」の魔法少女を見つめ、私は詠唱を開始する。
「――此の咎人に、導く光を」
次の一撃で、願いも、怒りも、悲しみも、何もかもごちゃまぜに入り乱れた、この悪夢のような夜を終わらせよう。
「――紅は、儚き理想に、懸ける旗」
南雲さんが貸してくれた――この【軽やか-light-】な【翼-wing-】と共に
「――夕暮れは、絶望の明日を、厭う朱」
【真っ直ぐ-right-】な今の気持ちを……
「――然れど、汝、高貴なる緋の色よ! 今こそ叫べ、理に抗いし、法の元」
全力で【刻み-write-】こもう。
「――我が宿罪を贄として、 餓 狼 の 頸 木 を 打 ち 砕 け ! !」
きっとこれは…………私達が「次」に進むための【儀式-rite-】なんだから……!
右手の中にある紫色の魔法核を握り締める。
茅野さん、少しだけ、少しだけ力を貸してください!
「 『緋 色 の 決 意《スカーレット・レゾリューション》』!!」
目標の直上で紙飛行機が展開する。
同時に機体から放出された私は狙いを定め、「鎖」の魔法少女に呪文を放った。
一条の真紅の光が闇を切り裂く。
【お待たせしました。うぅ、日付が変わっちゃった……レスの質を気にする余り途中で手が抜けなくなってしまいました】
【悪い癖なので次から絶対気をつけます(−−;)】
【
>>218 ありがとうございます】
【
>>219 休める時にいっぱい休んで、おかげ様ですっかり良くなりました。お待たせしてごめんなさい】
【>変身 ど、どうなんでしょうね……言われてみれば確かにみんな変身する時間が夕方以降かも^^;】
【
>>222 お待たせしました。今週中には次のステージに進みたいですね……】
【技の効果に関する解説:物理的な破壊力は無く、「自分が使った魔力の分だけ相手の体力をごっそり蒸発させる」可視光線です】
【このまま沈黙しているのもアレなので自分の導入でも書こうかと思うのですが】
【>猪間さん、闇のセールスマンのセリフ、導入に借りていいですか?】
【ごめんなさい、上のレスは私です(汗】
>>227 セールスマンはNPC扱いだし導入程度なら全然オッケーだと思うヨ
>>228 既出セリフの引用って意味ですか?喋らせたいって意味ですか?
前者なら言うまでもなく、後者なら、あまりキャラ崩したり陰謀チラつかせたり以外ならオールオッケーです!
つまり
>>229ですね!でしゃばってごめんなさい!
トリ忘れてました!いつもすいません!
避難所立てる予定は無いのか?
今回のように相談したいコテもいるだろう
本スレでの質問を憚るコテは意外と多い
クズニートロリヲタは
ウンコ製造機 一生童貞 劣等人種 未発達動物 輪廻転生 無駄な性欲 常識外れ 世間知らず
脳障害 親のPET 苛めの対象 誰も相手にせず 社会のお荷物 迷惑極まりない 堕落した生活
睡眠過剰 昼夜逆転 ネトゲ廃人 エロゲ三昧 アニメ大好き ゲーム中毒 2ch荒らし
平日昼間から嫌韓議論 三次元批判 嫁は二次元 悪臭 ブサイク デブガリ キモオタ 変態
知的障害 精神障害 親のすねかじり 基地害右翼 人生最底辺 池沼 屑新人 ロリコン 鬱は甘え
精神分裂統合失調 対人恐怖症 回避性人格障害 友人皆無 吃音 滑舌悪し 戯言満載
独り言多し 生きる価値なし 歩く猥褻陳列物 グロ動画 メンヘラ野朗 自己分析能力欠如
努力不足 後悔の連続 失敗常時 成功は既に閉ざされた 誇大妄想 現実逃避 お先真っ暗
高学歴 交際男女 高収入 嫉妬乙 将来無職
学習能力なし 国語力なし 語彙力なし
無職 寄生虫 ストーカー 規制の常連 戦争賛美 コピペ道 禿げ 低学歴 嫉妬乙
オナニー生物 コンプの塊 不潔 カルト信者 変質者 病的プライド
在日乙w ペットボトル尿 生塵 フィギュア 萌え道 コミュ障 批判達人
腐女子趣味 彼女いない暦 年齢 反共主義 自民信者 麻生万歳 自作自演
禁欲主義w 知能低い 2ch信者 棚上げ 高性能PC 排外主義 左翼討伐
産経信者 軽蔑侮辱 レッテル張り 大日本帝国万歳 徴兵制 非力 役立たず のけ者
キモイ 服装無頓着 オタクの癌 ニコニコ動画の癌 理解不能 働いたら負け 原始人
9条改正 写真恐怖 霧鐘髭 武器好き 自慢合戦 乏しい思考力 悲しき青春 黒歴史 キレル 恥 オナニ達人 セクス素人
空気読めず 幼児脳 成熟拒否
処女信仰 露助怖気 一重 肌荒 歯並び醜態 5:5分け バレンタイン恐怖 置換冤罪 嫌煙者 目を合わせられない
攻撃的 ネットが生きがい 黒服 カロリー無視 無計画 自覚無し 甲高い声 リュック 早口
不適な笑み 曜日感覚失落 打たれ弱い 生活保護申請受諾不可 餓死覚悟 ネット依存症
自殺志願 泣き寝入り 無気力 目標無し
家事手伝い 非求職型 不登校 引きこもり 傷病者 社会経験無し 成果主義 発達障害
学習障害 怠け者 ひ弱 忌者 陰者 淫者 虚業 不労所得 専業主婦 哲学研究
献血 プロゲーマー 芸術批評 日本軍は正しい 創価学会 実況プレイ 一人っ子率高し
街頭デモ ニコニコはオタクの巣 恥さらし 永遠未成年 ナチズム
野菜不足 カップラーメン 油ギトギト 肉メイン 朝昼兼用 食べるのめんどい ポテチ
下を向いて歩こう 過剰防衛 施錠大量 変な目で見られる 場違い とらのあな常連
洗顔せず ニキビ王 風呂入らず 洗濯せず 便所行かず マナー判らず 誰も近寄らず
トラウマ王 共依存 銃マニア サバゲーマー なりきり名人 妄想力最強 第二の世界 コスプレ好き
リア充爆発しろ嫌悪 女に触れたことも無し 話したことも無し 風俗行く勇気も無し 頑固者 堅物
有言無実行 傍若無人 唯我独尊 悪口雑言 魔法少女 猪突猛進 他力本願 絶体絶命
天真爛漫 竜頭蛇尾 優柔不断 不幸召還
>>232 【私もそうですけど、多分みなさん「敢えて」その話題には触れないようにしてたんですよ^^;】
【お話の内容が内容だけに、ある一人が権力を持ち過ぎるのはあまり良くないと感じたのと、
避難所を立てたその人に対して責任を押し付けたくなかった、というお互いの配慮がありました】
【でも、あなたのおっしゃる通り、必要に思ってる方はいるでしょうし、あったほうが便利だと思います】
【「参加者以外の誰か」が立てたという「形」で運営するなら、問題ないかも……?】
下手に立ててでしゃばりの仕切り屋気取りと思われてもつまらないですしね
自分はもし避難所を設けるなら、千夜万夜さんのところで間借りさせて頂くのが妥当だと思いますけど、どうでしょう?
それが一番クリーンだと思います
さてその避難所だが件の千夜万夜に誰かが立てたことを報告しておく。
お知らせも済んだので名無しはROMに戻る。スレ汚しごめん。
わお!ありがとうございます!
わざわざ立てて下さるなんて感謝感激です!
南雲の作り出した巨大な紙飛行機に飛び乗って、それきり理奈の姿が消えた。
けれども麻子は微動だにしない。
足幅を広げ左腕を軽く突き出し、真正面に向かって構えたままだ。
――今更不意打ちなんか、する訳ねぇ。……そうだろ?魔法少女
それは相手の性格を鑑みた上での戦術的な分析であり、同時に理奈に対する無言
の期待だった。
自分が間違っているのなら、それを止めて欲しい。
麻子自身でさえ全貌を認識してはいない、無意識の、膨大な期待だった。
もし裏切れば、厳粛な罰を与えるつもりだった。
南雲が逃げ出した時、鎖の竜巻を内側へと収縮するよう組み替えたように。
今度は、それを一気に収束させるつもりだった。
どこから不意を突こうが関係ない。まとめて仕留めてしまえるように。
だが――もしも神田理奈が本当に『魔法少女』で、もしも自分が本当に間違って
いるのなら。
どこから来るだろうか、麻子は考える。
――きっと、いいや、間違いなく、アタシの上からだ。
きらびやかに夜空を背負って、真っ向から、間違ってる悪者《アタシ》を倒すに
違いない。
それが、魔法少女ってモンだろ。
麻子が夜空を見上げる。そして――
>「……うん、行くよ」
声が聞こえた。正々堂々と、ご丁寧に。
思わず、麻子が苦笑を零した。
「オイオイ、姿隠した意味ねーじゃねぇか。……いいねぇ、それでこそ魔法少女
だ」
声の降り注いだ夜空に向けて、拳を構え直す。
>「――赤よ、楽園を追われし血潮の色よ」
徐々に高まっていく魔力の迸りと共に、詠唱が聞こえ始めた。
今度は別の意味での苦笑いを、禁じ得なかった。
麻子は目を細め、肩を揺らして少しだけ笑って――双眸を研ぎ澄ますと、再び夜空
を睨んだ。
魔力を振り絞り、練り上げる。
まず行ったのは衣装の修復だ。常に修繕は絶やさずにいたが、僅かなほつれもな
いように、更に念入りに。
>「此の咎人に、導く光を」
当然、残り少ない魔力を消耗する事になるが――これは【鼓舞-incite-】だ。
>「――紅は、儚き理想に、驅ける旗」
誰にも屈服したりしない、自分を支配出来るのは自分だけ、【正しい-right-】と
信じる事を絶対のものにする為の。
>「――夕暮れは、絶望の明日を、厭う朱」
そうして今度は左腕の鎖を、身を包む衣装のように【堅く-tight-】編み上げてい
く。
>「――然れど、汝、高貴なる緋の色よ! 今こそ叫べ、理に抗いし、法の元」
鎖はまたも、何もかもを【噛み砕く-bite-】狼の首へと変貌した。
>「――我が宿罪を贄として、 餓 狼 の 頸 木 を 打 ち 砕 け !
!」
「そうさ、アタシは狼だ。誰にも負けねえ、誰にも屈したりしねえ」
>「 『緋 色 の 決 意《スカーレット.レゾリューション》』!!」
真紅の光条が麻子へと放たれ、夜空を切り裂く。
同時に、麻子が左腕を振り上げた。
左手を覆っていた鎖の狼が、猛然と夜闇を昇っていく。
そして激突――狼は全てを噛み砕けという命題に従って、光条に喰らいついた。
力と力が、想いと想いが拮抗する。
狼の顎が震え、徐々に閉じていく。そのまま強引に、完全に閉ざされた。
砕け散る――狼の首が。
光を喰らい切れず、内側からの力に耐えかねて膨張し、無数の隙間から光を漏ら
して、粉々に四散した。
真紅の光条は死なず、止まらず、麻子へと迫り、一瞬で彼女を塗り潰した。
周囲で回転していた鎖も、快音と共に全てが一斉に砕け散り、夜闇に溶けるよう
に霧散した。
完全なる敗北だ。
けれども、麻子に与えられたのは堪えがたい苦痛でも、身を焦がす灼熱でもなか
った。
魔力も体力も真紅によって焼き尽くされた脱力感と――とても【澄んだ-bright-
】な開放感だ。
自分は間違っているのか、絶えず付き纏っていた疑問の答えが出た。
もう二度と、そんな疑問を抱く事はない。
間違い続けてきた自分は、魔法少女によってついに止められたのだから。
そして、全てを失うのだから。自分が今まで、他人に強いてきたように。
「へ……へへ、間違ってたのは……アタシの方だったか……」
自嘲の笑みが、自然と口元に浮かんだ。
「そりゃあ、そうだよなぁ……。アタシを犬コロ扱いしたクソ共と、アタシは結局同
じ事をしてたんだ」
力が込められず震える右手を何とか、麻子は自分の腹部に当てる。
飲み込んだ魔法核が、皮膚を透過して浮かび上がってきた。
多くの魔法核を内に『囚えて』、鎖で雁字搦めにした、真っ赤な魔法核だ。
「ほらよ、これはテメェのモンだ。魔法少女」
それを手のひらに乗せて、理奈へと差し出した。
「……あぁ、いや、悪い。ちょっとだけ待ってくれ」
が、何かを思い出したように、麻子は魔法核を握って手を引っ込める。
そして、左手にナイフを生成した。
「なぁ……狼王ロボって知ってるか?」
魔力の絞りカスでしかない、小さな、本当に小さな、戦いには使えそうにもない
ナイフだった。
「スゲー賢い狼だったんだってよ。けど、ある日、人間に捕まっちまったんだ。
するとな、ソイツは人間の与える餌を食わずに、自ら死を選んだんだとさ。誇
り高い死ってヤツさ」
言いながら、麻子は笑った。
とても柔らかなで、だが確固たる意志を奥に秘めた
――これから起きる事は、仕方のない事なんだ。
決してお前のせいじゃないんだと、そう言いたげな微笑みだった。
「ロボはな、自分の嫁さんの死体を利用されて捕まったんだ。そんな奴らの餌な
んか食ってたまるか。
そんな奴らに飼われてたまるかって死んでいった。
アタシも、もう二度と、あんなクズ共に飼われるのは御免だ。だから……」
麻子がナイフを首筋に添える。
「……ありがとうな、止めてくれて。アタシはクズだったけど、おかげで最後は誇り高く死ねるよ」
一筋の涙と共に、白刃が動脈を鋭く裂いた。
【
>>226 こちらまで気合が入ってくるような、とても素敵なレスだったと思います。
自死について→後々にまで影響しちゃいそうなアレですので、止めるも止めないも是非決定ロールしちゃって下さい!
それにしても大分長くなってしまいましたね、申し訳ない限りです!】
むぉ、何か改行がおかしな事になってる気が!
もしもしですいません!お許しを!
【ブラック魔装少女 塞守 真衣編 第零話】
――おねえちゃんは、みんなには内緒だけど、魔法少女なんだよ
それが、私の今に繋がる発端だった
私には昔、姉がいた。そして・・・
その姉を【自殺】で失った
誰もその本当の理由を知らない、姉の死・・・・・・
確かに姉は自殺だった。しかし、その理由を両親すら知らないでいる
それ以来、私は刃を研ぎながら運命の時をただ待った。
幾度も自らの妄想じゃないのか、不安に苛まれる夜の果てに・・・・・・機会は、来た。
>――そこの貴方、魔法少女になってみたくはありませんか?
「待っていたわ、御託はいい。それを早く渡して。・・・それが何なのかは知らないけれど。どういうものなのかは予想がついてるわ。」
>――ご契約、ありがとうございます。
>――これで貴方は魔法少女です。同じ魔法少女と共に戦って、殺し合い、ゲームを勝ち残ってくださいね。
「そういえば、願い事だけど・・・【悪魔の絶滅】を願うのもアリなのかしら?」
>――・・・・・・
「冗談よ。例え今ある魔法核全てを集めても無理でしょうね。私の願いはそんなものじゃない
この魔法核などなくとも、人々に魔法の力を扱えるようにする・・・それが私の欲望(ねがい)」
>――それはそれは。先ほどとはうってかわって随分と可愛らしいことを仰る
>――しかし、そうされると私どもとしても、契約が難しくなって困りますねェ・・・
「嘘ね。別にデメリットばかりじゃないでしょう?願いが叶った後どうなるか、何も考えがないほど私は浅はかでもない。」
>――いやはや、何ともやりづらいお嬢さんですね。賢しく健気なお嬢さん、貴方は晴れて魔法少女となりました
>――貴方が願いを叶える為にもう一度私と出会う日をお待ちしておりますよ。では、ご健闘をお祈りしております・・・・・・
そうして私は、魔法少女となった。
あの悪魔のいなくなった部屋で、私は魔法核を握りしめてソレを見つめる。
・・・長かった。姉の年齢に追いつき、最早私は機会すら無く無意味な人生を歩むしかないかと思いかけていた。
だけど、やっとチャンスが訪れた。当分は、あの悪魔から聞いた基礎的な魔法を練り上げることに終始するだろうけれど
いずれ打って出て、魔法核を回収する。幾人もの魔法少女の人生を壊す事にもなるだろう。
魔法核がなくとも魔法を扱えるようにする。それは私の目的への手段。
しかし、真剣にそれを願っていることもまた事実。
「もうすぐだよ、お姉ちゃん・・・あいつらに思い知らせてやる日はもうすぐ訪れる。私は・・・・・・」
【第零話 『私は世界を赦さない』 to be continued...】
>>241 猪間麻子
血流が地面に零れ落ちる。
その横で打ち捨てられたナイフが魔力の欠片となって、虚空に消えた。
私は“自分の血液”で汚れた袖を隠しながら、静かに呟く。
「駄目だよ、こんなことしちゃ……」
右手に鋭い痛みが走る。
ここまで運よく全く怪我をしなかったのに、本日初めて負った負傷は、皮肉にも自分の行いによるものでした。
「私も南雲さんも、あなたの願いを奪いたくて、死んで欲しくて――戦ったわけじゃないんだから」
何をやってるんだこいつは、という顔でこちらを見る彼女と、その手に包まれた赤い魔法核に視線を送る。
「それはいらない」
目を瞑って、深く息を吸う。こんなこと、私がこの子に言っていいのか、わからないけど――
「あなたが持ってなきゃいけないものだと思う。
たとえ間違った方法で手に入れたものだとしても、勝手に捨てたりしちゃ……駄目だよ。
誰かの夢を奪った人は、奪ったその人に対する責任があるの。ずっと背負っていかなきゃ、いけないの。
こんなところで投げ出すなんて、そんなの、ずるいよ……」
私は……私は何て傲慢なことを言ってるんだろう…………?
この子はきっと、私が生ぬるく平和に過ごしてきた短い人生なんかよりもずっと、ずっと辛い目にあってきたはずだ。
でなきゃこんな、こんな全てが敵に思えるような孤独な生き方なんて……できない。
そんな哀しい生き方を続けてきた人に、それでも私は「生きろ」と言ってる。「生きてて欲しい」なんて、願ってる。
「あなたは、クズなんかじゃない」
そうだ、私は知ってる。
確かにこの子は、自分の願いを叶える為に誰かの夢を奪ってきたのかもしれない。茅野さんにだって大怪我をさせた。でも……
>「アタシは、人殺しがしたい訳じゃねーんだ」
でも、誰かに「死んで欲しい」なんて、一度も言わなかった。
さっきの門前さんみたいに「躊躇わない」人だっているこの怖い戦場で、「それ」を越えることなく、自分の夢を守り続けた。
何かに『束縛』され、自由を奪われることの辛さを、「生きること」そのものを失う悲しさを誰よりも知っている優しい人だ。
「強くて誇り高い、立派な“魔法少女”だよ」
だけど、ガンダムのお兄さんが言ってたように、人はきっと“希望”や“夢”がないと“生きて”行けないんだ。
どちらか一方だけでは――きっと駄目なんだ。
「だってそうでしょ?叶えたい願いがあったから、ここにいるんでしょ?――だったら最後まで自分の夢を守り抜いてよ……
あなたを傷つけて当たり前みたいな顔してる、こんな酷い世界なんかに……負けないでよ……」
例えそれが自分の為だったとしても、夢を守るために一生懸命生きてる限り……人間はみんな“魔法少女”なんだ。
【理奈、麻子さんの自殺を妨害。ナイフで腕を深く切ってますが、誤魔化してます】【続く】
「――最初に会ったとき、言ったよね。『手を貸す』って……」
あのときの『それ』は、私が魔法少女を辞める為の方便だった。でも、今はもう違う。
変わってしまった。
「もしこれから先、誰かがあなたの夢を奪おうとしたときは――私があなたの力になる」
色褪せていたかつての憧れが鮮やかに蘇って、思わず心の中で苦笑い。
卒業して次の春には中学生になるのに、私ってば、何て痛い子なんだろう。
「私、神田理奈、ただの魔法少女。理奈でいいよ。よろしくっ☆」
今日私は、何人の魔法少女と友達になれたんだろう――なんて。
※ ※ ※
ボンヤリとしてきた頭で辺りを見回す。
争いの気配は続いているようにも思えたし、消えてるようにも感じられた。
南雲さんは大丈夫だろうか?門前さんは何をしてるんだろう?ガンダムのお兄さんはまだ上から見てるの?
「鎧」の魔法少女と「拳」の魔法少女の決着は……どうなったんだろ?
私には、何もわからない。
腕の出血はいくら押さえても止まりそうになかった。もう自分で治す魔力すら無い。
これ以上使うと茅野さんに返したとき、空っぽになってしまう――ま、いっか。
戦いが終わったのだとすれば、後はこれを返せばいいだけだ。
「ねえ、セールスマンさん、そこで見てるんでしょ?出てきてください」
その姿が見えるか見えないかを確認することもできないまま
――私の意識が闇に落ちた。
【理奈、どこかにいるであろうセールスマンを呼んで倒れる。出血多量で意識不明】【避難所に連絡事項】
力いっぱい、ナイフを突き入れた。
間違いなく、自分が死ねるように。けれども、
>「駄目だよ、こんなことしちゃ……」
手応えはあった。手応えだけがあった。痛みがない。何故か。
麻子の首筋をナイフから庇って、理奈の右手が割り込んでいた。
涙で滲んだ視界でも、しかと見て取れた。たちまち麻子の表情が、揺れる。
不可解に、切迫に、そして怒りへと、移ろっていく。
「……このっ、バカ野郎!何やってんだ!」
ナイフを放り捨てて理奈の右手を取ろうとする。
が、理奈はすぐに右手を隠してしまった。
気丈な振る舞い、麻子が理奈に見せた微笑みと同じ、自分のせいではないと仕草
で主張する。
それが無性に、腹立たしかった。
理奈の胸ぐらを、苛立ちに任せて引っ掴んだ。
それでも、理奈は動じない。
>「私も南雲さんも、あなたの願いを奪いたくて、死んで欲しくて――戦ったわ
けじゃないんだから」
理奈の瞳の奥に灯る確固たる意志の光に、むしろ麻子の方こそ揺らがされた。
>「それはいらない」
二の句を継げずにいる内に、断言されてしまった。
>「あなたが持ってなきゃいけないものだと思う。
たとえ間違った方法で手に入れたものだとしても、勝手に捨てたりしちゃ……
駄目だよ。
誰かの夢を奪った人は、奪ったその人に対する責任があるの。ずっと背負って
いかなきゃ、いけないの。
こんなところで投げ出すなんて、そんなの、ずるいよ……」
麻子が右手の上の魔法核を見つめる。
深紅の中に沈んだ、幾つもの煌き――他の魔法少女達の夢があった。
――責任、それがあるからこそ、アタシは死ななきゃいけなかった筈なんだ。
アタシは、テメェとは違う。本当に力づくで、他の奴らの夢を奪ってきた。
人殺しの一線だけは踏み越えなかったけど、
アタシみたいに夢を失った生よりも死を選んだ奴だって絶対いる。
分かってて、今日まで戦ってきた。
なのに、死ぬ事でその責任が取れないのなら、アタシは一体どうしたらいい?
生き続ける事で責任が取れるのか。
夢を返す為に歩き続ければいいのか。
夢と心を無くして死んだ者にはどう責任を取ればいいのか。
極彩色の夢々が、麻子の視線に答えを返す事はない。
>「あなたは、クズなんかじゃない」
答えを出せないまま、理奈が言葉を重ねた。
更に新たな疑問が連なる。だったら自分は、一体何なのか。
>「強くて誇り高い、立派な“魔法少女”だよ」
本当にそうなのかと、麻子は自問する。
そんな筈がないと、分かりきっていた答えが脳裏で響く。
>「――最初に会ったとき、言ったよね。『手を貸す』って……」
>「もしこれから先、誰かがあなたの夢を奪おうとしたときは――私があなたの力になる」
>「私、神田理奈、ただの魔法少女。理奈でいいよ。よろしくっ☆」
笑顔と共に夜闇に星屑を散りばめるように明るく、理奈が自己紹介をした。
こんな最低最悪の悪夢に突き落とされて、なおも希望を失わず、眩く笑う事が出来る。
理奈はまさしく――麻子が憧れて、求め続けてきた――魔法少女だった。
そして、だからこそ、
「……馬鹿言うなって。アタシが“魔法少女”の訳、ねーだろ」
断首台さながらに冷厳な口ぶりで、麻子は理奈の言葉を切って落とした。
そのまま、続ける。
「それにアタシの願い、分かってんのか?アタシは誰も彼もを支配出来る、一番高い所に立ってやるってんだぜ?」
刃の鋭さを秘めた眼光と言葉を、淡々と放つ。
それから――麻子は笑った。
気概の炎を太陽のごとく燃え上がらせた笑みだ。
「だから……今からだ。今からアタシは、“魔法少女”になる。
一番高い所に立って、誰も彼もを守れる“魔法少女”になってやるんだ。
アタシみたいになっちまう奴が、一人もいなくなるように」
それでも、それが麻子の選んだ償いの方法だった。
正しいかは分からない。ただの自己満足かもしれない。
疑念は決して完全には振り切れない。
が、それでも今までよりずっと『正しい』事だと、麻子は確信していた。
「魔法少女はまだ名乗れねえけど、アタシの名前は猪間麻子。好きに呼んでくれ
」
自己紹介を返し、やや躊躇いがちに右手を差し出そうとして、理奈の異変に気付
いた。
真っ暗な夜の闇で分からなかったが、顔色は蒼白、辛そうな表情が隠し切れてい
ない。
>「ねえ、セールスマンさん、そこで見てるんでしょ?出てきてください」
最後の力を振り絞ったかのように、理奈が倒れた。
慌てて麻子が駆け寄るが、既に魔力の枯渇している彼女には何も出来ない。
理奈の体を抱き起こした。手のひらから伝わる冷たさは、夜闇と大差なかった。
「っ……!おい!ふざけんな!テメェはまだ、アタシの名前も呼んでねえんだぞ!
アタシだってそうだ!互いに自己紹介だけしてお別れなんて、絶対おかしいだろ!
そんなの、アタシは認めないぞ!」
悲痛な叫びが、夜の暗闇に虚しく散った
――だが不意に夜闇が渦を巻く、悪魔を誘った――
これはこれは、鋭い慧眼をお持ちのようで、お見逸れ致しました。
それにしても面白い劇を見せて頂きました。
貴女の望みは彼女でしょう?えぇ、勿論お返ししますとも。
元々、魔法核を失ったからと言って、私どもが何かをするという契約ではございませんしね。
――悪魔の傍らにもう一つの渦、茅野いずみの姿が顕になる――
ですが、よろしいのですか?
見たところ貴女の魔力はもう殆ど枯渇した状態だ。
その上、魔法核を返してしまっては……本当に死んでしまうかもしれませんよ?
まあ、私には人間の傷はよく分かりませんがね。
――口調とは裏腹の笑み、悪魔が抱く期待の象徴――
とは言ったものの、これは見物ですね。
飛行機の貴女、眼前で踊る宝石を見過ごせますか?
眠れる純白の姫がもしも目覚めれば、彼女の衣装はたちまち深紅に染まるでしょう。
大罪を抱く毒婦の行方は?夜とは悪の隠れ蓑、奪われる前に奪うべきではないでしょうか。
糸の燃え落ちた傀儡人形はもう誰にも操れない。彼女がここへ帰ってこない保証は何処にもありません。
健全な魂は健全な肉体に宿る。そんなの嘘です。武の達人だって心に忍び込む魔は擲れないのですから。
ところで正義って鬱陶しい言葉ですよね。何せ妥協が許されない。
ですが妥協のある正義とは即ち横柄、暴虐、そこのコスプレの貴方、素質がありますよ。どうですか?
そして……花を操る貴女。貴女は何を選んで、何を捨てるのでしょうね。
希望の蜃気楼から始まった悪夢の幕は美しい絆をもって下ろされるのか。
それとも漆黒と灼熱の欲望こそが幕切れには相応しいのか。
さあ……果たしてどうなるのでしょう。
【セールスマン登場。皆をそれぞれどうするか煽り立てる。そろそろ幕切れですかねー】
……ごくり
勝負は決した。神田理奈の魔法が唸り、夜空は真紅の雷鎚に切り裂かれる。
紡ぐ言葉は魔術の『呪文』。重なる叫びは決死の咆哮。迎撃するのは鋼鉄の"あぎと"
両者は中空で正面衝突し、押し切る形で真紅が優った。瞬き一つで状況は完結し、そして立っていたのは理奈の方だった。
>「駄目だよ、こんなことしちゃ……」
自害しようと刃を閃かせた鎖少女。鮮血が夜冷えしたアスファルトを濡らす。
果たせるかな、鎖少女の命は散ってはいなかった。反応できなかった南雲の目の前で、朱花を咲かせたのは理奈の袖。
>「私も南雲さんも、あなたの願いを奪いたくて、死んで欲しくて――戦ったわけじゃないんだから」
(君って娘は、どこまで……!)
南雲は反応できなかったが、跳躍するだけの魔力が残っていたとしても、鎖少女の自害を止めようとはしなかったろう。
それだけの戦いがあり、南雲には畏れがあった。自身の殺人や、目の前での人殺しはとりあえず止める。
が、敗北した魔法少女が『廃人になる前に自分でけじめをつける』ことまで妨害する気はなかった。
『負ければ奪われ、奪われれば廃人』――それが魔法少女のルールであり、鎖少女は負けた。その魔法核は、奪われて然るべきだ。
だから『奪わない』と決めた理奈の選択には唖然としたし、憮然とした。くたびれ儲け以外の何でもない。
>「ねえ、セールスマンさん、そこで見てるんでしょ?出てきてください」
その言葉を皮切りに、失血した理奈は静かに目を閉じ、そして風に煽られたように足から力を抜いた。
倒れる。その先に南雲は腕を出し、そっと抱き留めた。額に浮かぶ玉の汗とは裏腹に、その身体はぞっとするほど冷たい。
「甘すぎるよ、理奈ちゃん――」
この少女は、危険だ。
魔法少女としてのシステムそのものを否定しかねない徹底した博愛主義は、彼女の幼さだけでは割り切れない底知れなさを感じる。
本気の敵意と確実な死を以て相対した鎖少女を、その身を傷つけてまで庇う姿は天使にも――その皮を被った魔性にも見えた。
ここで彼女を処置なく放置すれば、確実に死に至るだろう。しからば理奈の内に残る二つの魔法核は南雲のものだ。
最早抗戦ならぬ鎖少女からも同等以上の魔法核を獲得できるだろう。漁夫の利だ。やってしまえ坂上南雲。
『願い』を薪とする魔法核の魔力が底を付いたからか否か、南雲の脳裏に黒い考えばかりが通過していく。
ほんの雫程度の魔力を上手くやりくりすれば、銃弾の二つぐらいは生成できるだろう。手を翳そうとして――
>「っ……!おい!ふざけんな!テメェはまだ、アタシの名前も呼んでねえんだぞ!
アタシだってそうだ!互いに自己紹介だけしてお別れなんて、絶対おかしいだろ!そんなの、アタシは認めないぞ!」
歩く気力すらままならぬはずの鎖少女が弾かれるように走り寄り、理奈を抱き寄せた。
ほんの数十秒前まで命をとらんばかりの攻勢を見せていた武闘派の魔法少女が。年相応の悲痛な声を上げて。
(………………)
南雲は無言でそれを俯瞰していた。理奈の身体は冷えていくばかりで、唇は紫になりかけている。
失血性ショックで死に至る量がどれほどかは深く知らないが、そろそろ止血せねば後遺症まで残りかねない。
なりふり構わず動かぬ少女の身体を揺すり、慟哭する鎖少女と。無表情のままそれを見下ろす南雲と。
手のひらに魔力を練り上げた。
震える理奈の傷口にそっと当て、搾り出した雀の涙ほどの魔力で、申し訳程度の治癒魔術を行使する。
血管に膜が張る程度ではあるが、確かに溢れ出る血液は止まった。携帯を取り出し、119番した。
「もしもし!女の子が血を流して倒れてるんです!凄い量で、わたし、どうしたらいいか……!は、はい、場所はですね、」
無表情のまま器用に声色だけに焦りを含ませ、救急車の手配を完了する。
あとは理奈の運否天賦だ。彼女の行いが正しければ生き残るだろうし、そうでなくても他の魔法少女による治癒があれば助かる。
そう、もう一人。理奈に救われた魔法少女。あの花の魔法少女に助ける意志があれば。
「奇跡や、魔法が、あるのなら。理奈ちゃんは生き残るべきなんだ。この娘はきっと、誰よりも『魔法少女』になれる。
こんな怨嗟と悪意に満ちた、偽りの魔法少女じゃない。生物としての魔法少女でもない。職業としての魔法少女でもない」
幼い頃、誰もが憧れた姿。大人になってしまった自分には、眩しくも見届けたい光。
鎖少女、猪間麻子と名乗った彼女がそうだったように、命懸けの敵意すら凌駕する絶対的な光。
「――『信念』としての、魔法少女に」
麻子に未だ冷たい理奈の身体を押し付け、南雲は立ち上がった。
変身を解き、黒に戻った長髪に夜風を孕ませながら踵を返す。
「鎖ちゃん、花ちゃん。理奈ちゃんのこと頼んだよ。わたしにできるのはここまでだけど。
救いたいのはわたしも一緒だし、――救われたのも、一緒だから」
彼女のおかげで、わたしはまだ割りきらずに済む。奇跡と、願いの、魔法少女を信じられる。
絶望を、跳ね除けられるのだ。
「それじゃー、アデュー。近いうちに会えるといいね、今度はみんなでお茶しよう!お姉さん奢っちゃうぞっ」
手のひらを後ろに向けてひらひら振りながら南雲はその場を後にした。
理奈の懐には一翼の紙飛行機が差し込まれている。広げた中には、空色の文字で南雲の連絡先が記してあった。
* * * * * *
「――せっかくのチャンスだったのにのう。ええんか坂上、無駄骨じゃぞ」
帰路、いつもの公園にて。パンチパーマに柄シャツの悪魔がベンチに腰掛けて待っていた。
「いーのいーの。わたしはかわいい女の子の味方だから。ってゆーか、なんで先帰ってんの!」
「アニキがおったからのう。あんま顔合わせづらいんじゃ」
「あん?」
「ロリ娘がぶっ倒れた後に、悪魔が来たじゃろ」
「あー、あー、お兄さんなの?」
「悪魔業界は義兄弟じゃ。杯も交わしとる」
任侠風の悪魔業界だった。このチンピラ悪魔はてっきりイロモノ系かと思ったが、案外これがスタンダートなのかもしれない。
果てしなくどうでも良い情報だった。チンピラ悪魔はビール缶に煙草を押しこんで、纏めて燃やして消した。
「どうじゃ、魔法少女としてのデビュー戦は。初めてにしてはおどれ、随分と平然としとるのう」
普通は極端にビビるか目が死んでるかのどっちかじゃが、と続ける。
問われて、南雲は肩を竦めた。ナマの殺し合いを体感したはいいが、最後で見事に毒気を抜かれてしまったから。
「痛いのも殴るのも嫌だけど……可愛い女の子と毎回会えるなら、大歓迎かなっ☆」
「ナンパ目的じゃと……!?斬新すぎるわ」
ま、ま、と遮るように両腕を掲げる。
そうして坂上南雲の生涯をして初めての、魔法少女の殺し合いは、一人の死者も出すことなく幕を閉じた。
叩き終えた鉄を水に浸すように、僅かな余韻を孕む風は街を駆け巡り、ゆっくりと少女たちを冷まして行く。
【理奈ちゃんの傷に止血を施し、救急車を手配。茅野ちゃんか猪間ちゃんが治療できるなら無視しておkです】
【理奈ちゃんに連絡先を書いた紙飛行機を忍ばせて撤退】
【 ブラック魔法少女 坂上南雲編 第二話 『奇跡や魔法があるのなら』 了】
――暗い。
いずみの躯は闇の中を、ただひたすら漂っていた。
終わりの見えない、どこに続くとも知れない漆黒。
いずみの目に映る全てが底知れぬ闇だった。
このまま闇に融けて消えてしまうかもしれない、漠然とした予感があった。
――心地良い。
それも良いのかもしれない、いずみは静かに瞼を閉じる、その時を受け入れるかのように。
だが不意に何かの気配を感じた、この闇の中には何者も存在しないはずなのに。
自然と瞼を開き、闇の中に手を付き躯を起こす。
そこで初めていずみは、自分の躯が闇の中に横たわっていたことに気付いた。
確かに何かの存在を感じる、なのに深い闇だけがどこまでも続いていた。
――違う。
足元に忍び寄るかのように近付いてくる一筋の線が、そこにあった。
この闇を切り裂こうともがいているようにも見える、赤黒い色が屈強に煌めく微かな存在。
それは、血だった。
闇の奥へと続く一筋の血、そしてその先には小さな少女が横たわっていた。
この線は、少女の腕から多量に流れ出る血で出来た物だった。
――あの女の子、どこかで……
見覚えのある少女、そして朦朧とした意識の中に声が響く。
それは、呪文のような言葉。
――我は癒す斜陽の傷痕――
その瞬間、眩い光が差し、いずみの躯を包み込むと纏わりつく闇が祓われていく。
それと同時に漆黒にまどろむいずみの意識も次第に浮上し、視界は白で埋め尽くされていった。
「……う…っ」
小さく呻いて重い瞼を開くと、すぐにそこにあったのは顔。
「……え」
目覚めたいずみの顔を深々と間近で覗き込むのはあの男――闇のセールスマンだった。
「お目覚めですか」
「……きゃあぁぁっ!?」
驚いて悲鳴を上げるいずみから、顔を離してけらけらと笑う。
「そう驚かずとも」
「驚きますっ!!……というか、どうして貴方がここに……」
“ここ”と言って辺りを見回す、だがその空間には何も存在しなかった。人も、建物も、植物も、地面さえも。
「……ここは、どこ……?」
「えぇ、何処でも有り、何処でも無いとも言えますでしょうね」
「はぐらかさないでください…!何が目的で、こんな妙な場所に…!!」
「おやおや、これは手厳しい。私はあくまでも善意の上で貴方の躯を此方まで運んで差し上げたのですよ?」
……善意?そんな物、この人にあるはずがない。
反吐が出る、安易に口に出すべき言葉ではないので心の中で悪態をつく。
いずみが睨みつけても、セールスマンは何も感じないように微笑むばかりだ。
ここがどこなのか、それはこの際置いておくしかない、それよりも……
「……戦いは、どうなったんですか」
鎖の巨大な塊が落下してきたところまでは覚えている、けどその後は……分からない。
いずみの脳内に色濃く焼き付いている、先程見た夢の中での光景。
血を流して倒れる少女、神田理奈の姿。
「……っ、あの子は…?」
「……さて?」
「っ…!いい加減にしてください!!」
「まあまあ……そうかっかなさらずに、」
微笑、口調、態度、何もかもがいずみの神経を逆撫でして苛つかせる。
「只今ご覧に入れましょう」
そう言って、開いた右手をいずみの眼前に差し出す。
――……?
いずみにはその行動の意図が全く見えず、怪訝な表情でその掌を見つめる。
セールスマンが一歩、二歩といずみの方へ進み出て、そしてごく自然な動作で、いずみの両の目を掌で覆う。
一時の暗闇、
「……哀れな花が一輪……」
その言葉が合図のように、目に映るのは鎖の鉄塊。
そして、無惨に押し潰されたいずみの躯。
「……わ、私……。ま、まさか死んでしまったんですか…?」
「いえいえ」
まるで映画のようにシーンが切り替わると次に映ったのは、いずみの手に魔法核を握らせる神田理奈の姿だった。
すると砕けた血肉や骨が逆再生のように元通りになっていく。
いずみは、またもや助けられたのだ、他でもないこの優しさに溢れた少女に。
「…………ありがとう」
「いえいえ」
「……貴方に言ったわけじゃありません」
「おや、これは失礼致しました」
またシーンが切り替わる、地面に横たわるいずみの躯。
その躯に鎖が巻き付き、遙か彼方に投げ飛ばされてしまった。
「え、えぇぇ…っ!?そ、そんな……ひどい……っ」
「邪魔でしたもので」
「っあ、あなたがやったんですか…!?」
「それこそ誤解というものです。先程も申し上げました通り、私は貴方を助けて差し上げたのですから」
空高く投げられたいずみの躯が重量を帯び、再び地面へと落下していく。
地表到着まで残り数メートル、なるほど……これが死因なのか、そう思った次の瞬間、
「……あ」
いずみの躯は闇に溶けるように消え去った、まるでそこにいなかったかのように。
そこで視界が明るくなる、両目を覆っていた掌が離されたからだ。
相変わらず微笑みを絶やさないセールスマンに、いずみは恐る恐る口を開く。
「あ、あの……今のはもしかして……」
「えぇ、私が」
「……………」
「そして今に至るということです、ご理解頂けましたか?」
「……は、はい。ありがとうございました」
確かに助けられている、疑ってしまった罪悪感から、すぐに頭を下げた。
「…あの、私のことはよく分かりました。……でも、他の人達は……?」
「それはご自身の目で確かめられた方が確実でしょうね」
セールスマンがいずみから視線を外して後方を見る、咄嗟に振り返ると、そこには見慣れた現実の世界が広がっていた。
「……え?ど、どうして…。いつの間に……」
そして、一番に視界に飛び込んできたものは、地面に横たわる理奈の姿だった。
続いて、その躯にすがる麻子、その光景をどこか冷えた目で見つめる南雲。
地面を赤黒く濡らす血に、いずみは一瞬息を飲む。
「……夢じゃ、なかった」
あるいはこれが悪夢なのかもしれない、自分を救ってくれた恩人が、目の前で息絶えようとしているのだから。
理奈の傍らへと駆け寄り、即座に腕を調べる、夢で見た時と同じように痛々しい傷があった。
そこからは次々に血が溢れては流れ出て、理奈の生命力も失われていく。
病的なまでに青ざめた肌、一刻を争うことは火を見るより明らかだった。
――……けど、今の私はこの子に何が出来るんだろう……
『開花魔法』、それは所詮他人と争い合い傷つけるための道具でしかない、魔法という名の凶器。
ましてや願いのためなら幼い少女である麻子をも手に掛けようとしたいずみに、始めから他人を救う魔法など手に入れられるはずがない。
どれほど理奈に対し、感謝の念を述べたところで、いずみの想いが『両親』のみに向けられている事実は何も変わらないのだから。
>>249 >そして……花を操る貴女。貴女は何を選んで、何を捨てるのでしょうね。
――なにをえらんで、なにをすてる
セールスマンの言葉が、いずみの心に重くのしかかる。
自分に何が出来るのかと自問自答しながらも、その片隅には既に一つの答えが存在していた。
ただ気づかないふりをしていただけだ、何故ならそれを選び取ってしまうことは、
――願いを、捨てる。お父さんとお母さんを……
全てを諦めてしまうことに、他ならないからだ。
自分にとっての全てである、唯一の生きる理由である両親を、捨てる。
それはいずみにとって、正に死ぬことも同然だ。
――でも、
「……もう一度、お礼を言わせてくださいね」
突如、いずみが静かに呟く。その視線は理奈へ向けられていた。
「私の命を救ってくれて……ありがとうございます」
――それでも私は、この女の子に救われた
「それで…恩返しと言ってはなんですが、……これ、使ってください」
――命だけでなく、人間としても
理奈に手渡していた魔法核、それを今一度理奈の手に確かに握らせる。
理奈が、いずみにそうしてくれたように。
理奈の青ざめた肌に少しずつ血色が戻り、頬もほのかに健康的な赤みが浮かぶ。
「けど、きっと『貴方に託す』と言っても、聞き入れてはくれないと思いますから…」
いずみは、なんとなく、そんな予感がした。この少女は、きっとそうなのだろうと。
そして思わず、この場にそぐわない笑みを零してしまう。
「だから、“お貸しします。”私が『返して欲しい』と言うまで、ずっとずっと持っていてくださいね」
それはとても一方的で身勝手な約束だったが、いずみにとっては、初めて両親以外に想いを伝えた瞬間でもあった。
>>251-252 魔法核を理奈の手に堅く握らせるいずみ、そこに南雲も僅かながらの魔力を腕の傷口に注ぐ。
応急処置としては少し心許ないかもしれないが、魔法核は今もなお理奈の躯を回復へと向かわせている。
呼吸も安定してきているようにも思えた、この状態なら腕の傷も滞りなく治癒出来ることだろう。
>「もしもし!女の子が血を流して倒れてるんです!凄い量で、わたし、どうしたらいいか……!は、はい、場所はですね、」
南雲が携帯電話で何処かへ連絡をしている、口振りから察するに救急関係の手配だろう。
「…この様子ならきっと大丈夫だと思います。こうしていれば、きっと元気に…」
そう言って南雲へ視線を向けると、彼女は既に踵を返し、この場を去ろうとしていた。
一瞬呆気に取られた後、慌てて南雲に声を掛ける。
「あ、あの…っ!」
>「鎖ちゃん、花ちゃん。理奈ちゃんのこと頼んだよ。わたしにできるのはここまでだけど。
救いたいのはわたしも一緒だし、――救われたのも、一緒だから」
「…………」
何も言葉は要らなかった。南雲も、麻子も、自分と想いは同じだと分かった、それだけで良かったからだ。
>「それじゃー、アデュー。近いうちに会えるといいね、今度はみんなでお茶しよう!お姉さん奢っちゃうぞっ」
突然出た軽口に、思わず噴き出す。
「…ふふっ。はい、ぜひご一緒したいです」
去りゆく背中が夜の闇に消えるまで、いずみは目を離すことが出来なかった。
そこで、ふと気づく。彼女の名前すらも知らなかったことに。
そして、もう一つ気づく。
「…理奈さん」
さっき確かに、そう名前を呼んでいた。
「あなたは、理奈さんというんですね。素敵なお名前だと思います」
そう言って微笑みながら理奈の頬を軽くなでる。
そこで、いずみは理奈から視線を外し、麻子へと向ける。
「…あの、こうなった経緯は分かりませんが…。今のあなたに敵意はないと考えていいんですか?」
その言葉には麻子への怯えはなかったが、まるで出方を窺っているような慎重さを含むものだった。
「もしそうなら……ひとまず自己紹介をしませんか?」
こんな状況下で不謹慎かもしれないと思いながらも、いずみは続ける。
「私は、茅野いずみといいます。高校二年生です、よろしくお願いします」
テンプレ的な自己紹介に会釈を加えて、麻子の返答を待つ。
理奈も大分顔色が良くなってきている、無事に目覚めてくれることを祈ろうとした矢先、遠くから救急車のサイレンが聞こえてきた。
恐らくここへ向かっているのだろうが、このままここに留まるべきなのか、いずみは迷っていた。
少なくとも怪我はほぼ完治しつつある、この状態で救急車を待っていては厄介なことにならないだろうかと。
【麻子に名を名乗る。敵意はないが多少の警戒心はあり】
【理奈の名を知る。引き続き魔法核を握らせて、躯と意識の回復を促す】
物事を第三者目線で観ることは大切だ。
当事者同士じゃわからないことも見えてくる、岡目八目とはよく言ったもの
俺の眼前では美少女が自らの尊厳、矜持、想いをぶつけ合う
まったくお前ら何ものだ……なんで、こんな年でそんなふうに思える?行動出来る?
すごいな……こいつらはまぶしいと言っていい
>「けっ……ヒーロー気取りはどうしたよ、オタク野郎。メッキが剥げてんじゃねえか」
鎖女の言葉を反芻する……やっぱりこいつが嫌いだ
俺がヒーロー気取り?正義の味方だって?やめてくれよ
そんなよくわからないものの味方にはなりたくない
……俺は俺だけの味方だ
>「ベテランのようだけど、君は魔法に名前付けてないっ!魔法少女って言ったら必殺技の一つもなきゃ嘘だよ!
技編み出して!名前を付けて!カッコ可愛く叫びながら敵をぶっ倒してこそ魔法少女!深夜系もさもありなん!!」
こいつはどこまでもマイペースだな
なにが必殺技だよ……中身、中学生男子か……
早くゴッドガンダムかシャイニング使えるようになりたいぜ……
>「 『緋 色 の 決 意《スカーレット・レゾリューション》』!!」
紙飛行機で空を舞う、魔法少女
魔力と、空気に乗り夜空を高く舞い上がる
燐光が尾を引き少女の道を表す、キラキラと夜空に星を増やすがごとく
そして、放たれる紅の閃光……少女の意思のようにまっすぐ突き進む
周囲が一気に明るくなる、まぶしいなぁ……なんてまぶしいんだろうか
>「そうさ、アタシは狼だ。誰にも負けねえ、誰にも屈したりしねえ」
巨大な黒狼。やつのすべてを賭けたであろう鎖製の狼が光を飲み込む……一瞬、あたりが暗くなる
暗闇でも結果は見える、ほら、すぐに明るくなるぜ
徐々に狼が光を食らいきれなくなり、1条、また1条と光が狼の顎から漏れだす
崩壊はすぐ、爆ぜる黒狼、飲み込まれる鎖女
魔力は想いの力というのならば、あのまっすぐ、すべてを正しい方向に想える魔法少女と自分の境遇を呪い、すべてをマイナスに考えるが綺麗な花畑に憧れる少女
どっちが勝つかなんてのは、連邦とジオンどっちが勝つかなんてのものよりわかりやすい
未熟な技術しかない連邦もその背後にある国力で、技術で優れるが国力で劣るジオンに最終的に勝つより明白
連邦を魔法少女、ジオンを鎖女、国力を想いの力とでも置き換えてくれ
>「へ……へへ、間違ってたのは……アタシの方だったか……」
あっさりと負けを認める、あれだけすっきりと負ければ仕方ないか
これで愉快な仲間がぽぽぽぽーんてか?あの魔法処女のことだ、どうせ「いっしょに戦おうよ」とでもいいいだしそうだな
そのころ鎖女が語っていた『お話』はあいつの心の支えのようだが、俺はどこの民話だったか思い出すのに必死だった
数秒、意識は下から離れていたのは痛恨のミスだった
>「……ありがとうな、止めてくれて。アタシはクズだったけど、おかげで最後は誇り高く死ねるよ」
そう、目を離した隙に自決を計ろうと言うのだ
「おい、ちょっとまて!」
思わず声が出る……こいつのことは嫌いなはずだし、敵が減ることは喜ばしいことだ
なのに声が出た
自分でも驚きだが目の前ではもっと驚きなことが起こっていた
魔法少女が自分の手を鎖女のナイフと首の間にいれている
これは普通の人間が出来ることじゃない、まず相手の死を考えたとき体は硬直するか、凄い奴で手を押さえる程度に決まってる
それをこいつは自分の手を突っ込みやがった!
>「あなたは、クズなんかじゃない」
>「強くて誇り高い、立派な“魔法少女”だよ」
>「もしこれから先、誰かがあなたの夢を奪おうとしたときは――私があなたの力になる」
>「私、神田理奈、ただの魔法少女。理奈でいいよ。よろしくっ☆」
離れていたので二人のやり取りはよくは聞こえなかったが、おおよそのことは理解出来た
もう少し外野のためにも大きな声で話してもらいたいもんだ
400年以上前、日本は戦国時代だったが、いま魔法少女がやっているのはその時代の戦のひとつの形式、武力を見せたあとで相手を甘言で味方に引き入れる調略
こいつは天然でやってるのか?いや、狙ってやってるにしろこいつは凄い
こんなにしたら鎖女もイチコロだろ
だが、状況はすぐに動いた、魔法少女が倒れやがった
魔力の使い過ぎだ……相手を思いやるのもいいが自分が倒れたのでは意味がない
完全な枯渇は死を意味すると言っていい
いいものを観して貰ったお礼に助けてやるかと、腰を上げビルの谷間に身を投げ出した
ミノフスキーフライトが地面との反発力生み、俺を落下という事実から遠ざけ、その身を宙に浮かべた
自由落下ではなく、ゆっくりと地面に降り立つ
魔法少女に魔力を分けてやろうと……いや、なぜ分けてやる必要があるこのまま魔法少女と鎖女の魔法核を手に入れられるじゃないか!
幸いにも魔力のなさそうな飛行少女、弱り切った鎖女は物の数じゃない
……やるなら今だ、こういう時のために魔力を残していたんじゃないか
そして、俺の心を後押しする悪魔のささやき
>ところで正義って鬱陶しい言葉ですよね。何せ妥協が許されない。
ですが妥協のある正義とは即ち横柄、暴虐、そこのコスプレの貴方、素質がありますよ。どうですか?
俺の知らない悪魔、そいつが俺の頭、いや、こころに直接話しかける
要約すれば自分の好きなように力を使えと……さらなる力を得て
「だが、断る……俺は俺のやりたいようにやるさ、火事場泥棒みたいなマネはやらないね」
俺が悪魔との葛藤の間にどこからともなく現れた新たな魔法少女
ああ、こいつが俺が来たときに死んでた奴か生き返るとはなんでもありかよ
たしか、花の魔法少女……花娘でいいな、魔法少女に魔法核を握らせる
どいつもこいつもお人好しばっかりだ。
「魔力がなくて弱ってるんだ、魔力を分けてやれ」
俺は近づき魔法少女の核を握ると魔力を注入してやる
「こんだけあれば死ぬことはないだろうよ、お前らはとっととどこかにいけよ。救急車が来たときにこんだけ雁首揃えてたら迷惑だろ
ここは年長者の俺が責任を持つ、安心しろこいつの魔法核を奪うとか卑怯なことはしない
それより、死にかけのお前らがいたほうが状況の説明が面倒だ。さっさと帰れ!」
俺は最後の帰れの部分の語気を強めたこれで気の弱そうな花娘は帰るだろう
だが……
「おい鎖女!お前も人に言えないような経歴があるんだろセットで警察コースだ、もっと面倒なことになりたくなかったらお前もとっとと消えろ!」
俺はそばの自転車から鞄の中のノートを取り出し、携帯電話の番号を書いて花娘と鎖女に渡す
「ほらほらちゃっちゃと行け!」
>>249 猪間麻子/闇のセールスマン
>「魔法少女はまだ名乗れねえけど、アタシの名前は猪間麻子。好きに呼んでくれ」
――うん、じゃああなたのほうが少し年上みたいだし、大人っぽいから、麻子さんって呼ぶね。
けれど、私にはこの言葉を発することも、やや躊躇いがちに差し出された彼女の手を握り返すこともできなかった。
失血によって混濁した頭が、記憶の順序を曖昧にしている。
そして闇の中で聞こえた――声。
>これはこれは、鋭い慧眼をお持ちのようで、お見逸れ致しました。
ようやく……ようやく会えた。
>それにしても面白い劇を見せて頂きました。
私たちをこの争いに導いた、張本人。
>貴女の望みは彼女でしょう?えぇ、勿論お返ししますとも。
>元々、魔法核を失ったからと言って、私どもが何かをするという契約ではございませんしね。
こ、こ、この言い方……。
失くしたら廃人になってしまうような代物を人に押し付けておいて、「何もして無い」なんて……!!
JAROが知ったら苦情が来るレベルですよ?どーせ相談できませんけどっ!
……それでも、約束を守ってくれただけまだマシかもしれない。
現にセールスマンの傍らには茅野いずみさんの肉体が立っていた。
【続く】
>ですが、よろしいのですか?
>見たところ貴女の魔力はもう殆ど枯渇した状態だ。
>その上、魔法核を返してしまっては……本当に死んでしまうかもしれませんよ?
…………え?
>まあ、私には人間の傷はよく分かりませんがね。
私――死ぬの?
切り裂かれた右腕を確認して、言葉を失う。
溢れ出した流血が血だまりを作り、見えないはずの闇の中で鮮やかな赤を彩る。
目減りしていく命の色を眺めながら、自分の体が速やかに冷えていくのが――解る。
鼓動が跳ね上がる。バクバクと身体の中で響くそれは、まるで押し返せない巨大な時計の針の様。
恐い。死ぬのが恐い。でも――
>「っ……ふ、二人とも、逃げ――」
にわかに惨状の記憶が蘇る――そうだよ。
この人がいなかったら、私はとっくの昔に死んでいた。
この人の力が無かったら、私は麻子さんに勝てなかった。
この人のおかげで、私はこの瞬間まで生かされていたんだ。
「よろしいも何も――答えなんて、始めから決まってます!」
私は自分が選んだ“魔法”に、後悔なんてしてない!だってこの魔法は、みんなの“思い”が叶えたものだもの!
ねえ、セールスマンさん。だから、私…………恐くなんかないよ。
これはきっと“闘い”の始まり。
闇の底で人々の願いや夢をを玩んできた“あなたたち”と、
そんな理不尽で残酷な世界の摂理に抗う“わたしたち”の、
誇りを懸けた“真剣勝負”。
ここで死んでしまうなら――――――それが私の運命だ。
【理奈、意識下で悪魔に対立の意思表示】
「あの貧乳どこ行ったぁ!!」
深刻な状況など一切顧みない萌の罵声があたりに響く。
変身は解けて制服姿に戻っているが、ハイソックスとスカートの間の肌には浅い切り傷がいくつも走っていた。
実のところ服の下も同様な有様で、ブレザーはまだしもワイシャツの洗濯はひどく面倒だろう。
無論、懐との戦闘で受けた傷である。お互いに致命傷にならない程度の攻撃を交換し合った挙句、あっさり逃げられたのだ。
再戦があるかどうかはわからないがそれはともかくとして、
どうせやりあうなら核の獲り合いだと意気込んでいた矢先に、矛先を外された格好の萌としては苛立ちをぶつける相手が必要で、
そういえばさっき上空からいきなり弾いてくれた奴がいたな、と思い返し、次のマトはそいつだと肩をいからせ戻ってきた次第である。
なお、萌自身人に言えるほどにグラマラスな体型というわけではないが、170超の長身であること、
今は減量期ではないこと、そして、胸から付いて胸から落ちるタイプということを加味すれば"ある方"には分類される。
さて、戻ってきてみればどうも事態は収束仕掛けているようで、理奈の周りで数人が額を寄せている。
サイレンが近づいてくる。ガンダム男(変身が解けるまでは気がつかなかったが)が理奈に付き添うらしい。
この風貌だと容疑者扱いされかねないのではないだろうかと失礼極まりないことを考えつつ任せる事にした。
少なくとも理奈の体に関しては心配していない。目の前で、PSゲーム「トゥームレイダー」で主人公ララ・クロフトが
高所から落下した時のような死に様(結果としては生きていたが)をしたいずみが、目の前で"逆再生"した様子を見ていたのだ。
肉体的には回復はするはずだと楽観的に考えている。
「んじゃまかせるわ。あたしはバイトにしろジムにしろ行き帰りはここ通るから、喧嘩売りたいならいつでもおいで」
言いながら一行の脇を通り過ぎ、投げ捨てたキックミット型のバッグを拾い上げる。砂を払ってからそれをかけて、
肩越しに手を振りながらその場を去った。
「良かったのかな?」
「何がよ」
虚空から投げかけられた声に、前を向いて歩きながら萌は応える。
左手の塀の上、ちょうど目の高さのあたりが滲んで、薄い、影とも霧ともつかないものが現れた。
「あの場で彼女らを倒せば一気に核が四つだ、惜しいとは思わなかったかね?」
影はわだかまって濃さを増し、形を成す。ぬいぐるみのような小さな象が、ちょこんと塀の上に座っていた。
ただし一つ目で体色は極彩色のまだら模様という代物だが。
「返り討ちにあう確率のほうが高いでしょーよ。それに……」
「それに?」
象が首を傾げる。
「そういうのは性に合わない」
「ふむ、人間のそういう感情というのはよくわからないものだな。多対一は受け入れても奇襲は嫌いかね」
「……悪魔の美的センスのほうがわかんないわよ」
象が逆側に首を傾げる。
「変身後の君の姿は美しいと思うが?」
即座に萌はバッグを投げつけた。象に当たったバッグは跳ね返って萌の手元へ、
当てられた象は転げ落ちる。が、次の瞬間には何事もなかったように数歩先の塀の上に座っていた。
「あのさ、『どうせなら可愛くしてくれ』って言ったよね?」
「肉体美大いに結構ではないか」
「ベクトルが違うでしょうよ!頼むから!ルー!何とかしてよ、頼むよルー!」
往年のブラッド・ピットばりに象にしがみつきながら萌が叫ぶ。
「苦しいよ、そもそもルーとは誰だね」
頭をがくがく揺さぶられながらも一切苦しそうな様子を見せずに象が言う。
「それに、"契約"の前に言っただろう?魔法少女になった以上、願いを叶えるまでやめることはできないのだと」
「そんなあ……」
萌は手を離してへたり込む。しかし、「話が違う」だの、「騙された」だのとは言えない。
練習帰りで酸素が足りてない頭をしていたとはいえ、"契約"の話に適当な相槌をうった挙句、
変身後の姿を「うまくイメージできないから任せる」と言ったのは萌自身である。
しかし、萌は知らない。象が、萌の「何とかしてくれ」を、
「せめて外見だけは真っ当に」ではなく「魔法少女を辞めたい」と言っているのだと
"故 意 に"曲解していることを。
「戦いは続く。せめてゆっくり体を休めたまえ」
「言われなくてもそうするよ!」
バッグをかけ直し、家路をたどる。
ふと、いつかこの道を歩けなくなる日が来るだろうかと、そう考えて思わず足を止めた。
振り向いて背後を見る萌の耳に、遠ざかるサイレンの音がかすかに届いた。
【 ブラック魔法少女 奈津久萌編 第一話 『お前のセンス絶対おかしいよ』 了】
猪間麻子は何も出来なかった。
魔力はもう残っていない。神田理奈を助ける事は、出来ない。
南雲が理奈に駆け寄った。悪魔から解放された茅野もすぐに駆け付けた。
南雲は僅かに残った魔力で治癒を試みる。茅野も、己の魔法核を託してまで、理奈を救おうとしていた。
生きる価値のないと罵った蒼月でさえ、一助となっていると言うのに。
その間に麻子が出来たのは、ただ邪魔にならないように理奈の体を南雲に預け、下がっている事だけだった。
悲愴な表情で一歩後ろによろめいて、理奈を見る。出血は止まり、顔色も幾分かマシになった。
>「…この様子ならきっと大丈夫だと思います。こうしていれば、きっと元気に…」
茅野が安堵の吐息に交えて、静かに呟く。
その言葉が麻子の心の奥底へと、深く深く染み入った。
そして、麻子は小さく震えた。目に涙が滲んで、震えを帯びた吐息を零す。
「ホント……か?ウソじゃないよな?ソイツ……助かるんだな?」
堰を切ったように、涙が溢れた。
「良かった……。本当に……良かった……」
膝を折り、崩れ落ちて、麻子は咽び泣く。
両手で胸を、心臓を、安心を抱き締めるようにして。
>「鎖ちゃん、花ちゃん。理奈ちゃんのこと頼んだよ。わたしにできるのはここまでだけど。
救いたいのはわたしも一緒だし、――救われたのも、一緒だから」
声を掛けられて、麻子が顔を上げた。
両手で目を擦って涙を拭い、何度か鼻を啜ってから、やや赤らんだ目で南雲を見つめる。
>「それじゃー、アデュー。近いうちに会えるといいね、今度はみんなでお茶しよう!お姉さん奢っちゃうぞっ」
「……待てよ」
立ち去ろうとする南雲を、麻子が呼び止めた。
だが、いざそうしてみると、逡巡が禁じ得なかった。
バツの悪そうに押し黙り、視線が左右に泳ぐ。
が、意を決すると共に再び、南雲へと向けられた。
「その……襲いかかったり、馬鹿にしたり、悪かったよ。アイツを助けてくれて、ありがとな。
あとさ……必殺技も、考えとくよ。……笑ったら承知しねーからな」
歯切れ悪く、ぽつりぽつりと麻子は南雲の背中に語りかける。
南雲は何も、麻子の為に理奈を助けた訳ではない。当たり前だ。麻子だって、それくらい分かっている。
それでも猪間麻子は、神田理奈が助かって、心の底から安堵した。途方もなく嬉しかった。
だからこそのお礼だった。
麻子の言葉に南雲は振り向かず、しかしひらひらと背中越しに手を振って、去っていった。
>「…あの、こうなった経緯は分かりませんが…。今のあなたに敵意はないと考えていいんですか?」
茅野が恐る恐る、問いかけた。
その通りだ。今や麻子に、誰かを叩き伏せるような獰猛な敵意はない。
しかし、麻子は肯定の言葉も仕草も、見せられなかった。
故意ではないとは言え、彼女は茅野を限りなく死の淵にまで追い込んでいる。
信じてもらえなくてもおかしくない。勿論、信じて欲しいなどと言うつもりはない。
だが何を言っても怒りを買うだけで、悪い方向に転がるばかりなのではないか。
そう考えてしまうと、麻子は何も出来なかった。
>「もしそうなら……ひとまず自己紹介をしませんか?」
>「私は、茅野いずみといいます。高校二年生です、よろしくお願いします」
けれども茅野はそう言って、驚いた事に自分から自己紹介をした。
まず自分から、信じている事を示すかのように。
麻子が息を飲んで、強ばっていた表情を緩ませた。
彼女の心を圧迫していた黒い霧のような不安が、軽やかに消散する。
「……アタシは、猪間麻子。えっと……学校は、今は行ってないんだ」
やや苦味の混じった笑いを、誤魔化すように浮かべた。
「まぁ、そんな事はどうでもいいんだ。それよりアンタも、悪かったな。
その……まさかあんな事するとは思わなかったんだよ」
ちらりと、視線を理奈の手へと逸らした。
指の隙間から、茅野の魔法核が見える。
「……でも、いいのかアンタ。魔法核を手放すって事は、願いを諦めるのと同じだ。
今はこらえられても……段々心が絶望に蝕まれていく。そうして最後は堪えられなくなって死ぬか、廃人になっちまうんだぜ……?」
魔法核は夢を、心を、繰り抜いて形を与えた物と言っても間違いではない。
それを手放すという事は、単に言葉の上で割り切るだけの事とは訳が違う。
車からガソリンを抜き去るように、時計から電池を取り外してしまうように、夢と心を失うのだ。
堪えて我慢出来るようなものではない、不可避の絶望がやってくる。遅かれ、早かれだ。
「まぁ……そうなっちまうまで、コイツがアンタをほっとくとは思わねーけどさ。一応、忠告しとくからな」
そうしている内に、いよいよ南雲の呼んだ救急車、サイレンの音はすぐ近くにまでやってきた。
>「こんだけあれば死ぬことはないだろうよ、お前らはとっととどこかにいけよ。救急車が来たときにこんだけ雁首揃えてたら迷惑だろ
ここは年長者の俺が責任を持つ、安心しろこいつの魔法核を奪うとか卑怯なことはしない
それより、死にかけのお前らがいたほうが状況の説明が面倒だ。さっさと帰れ!」
「……はぁ?」
>「おい鎖女!お前も人に言えないような経歴があるんだろセットで警察コースだ、もっと面倒なことになりたくなかったらお前もとっとと消えろ!」
俺はそばの自転車から鞄の中のノートを取り出し、携帯電話の番号を書いて花娘と鎖女に渡す
>「ほらほらちゃっちゃと行け!」
大上段から見下し唾を吐き捨てるような口調に、麻子は苛立ちを隠さなかった。
柳眉を逆立てて双眸を研ぎ澄まし、挑発的な笑みを取り戻して一歩前へと踏み出した。
「バッカじゃねーの?だぁれがテメェみてーなロボットごっこに熱心なアホを年長者だなんて認めるかっつーの!」
更に一歩、差し出されたメモを手の甲で弾き飛ばした。
そもそも麻子は携帯電話も、まっとうな住居も持っていない。電話番号など知らされても、大した意味はないのだ。
徐々に回復は進み、だが未だに爛れている右手の人差し指を突きつけながら、麻子は続ける。
「そもそも今更善人面した所で信じてもらえるとでも思ってんのかよ。脳みそがお花畑なのはテメェの方だぜ」
だが怒りの猛進はそこで止まった。
一転して、麻子は口をもごもごとさせて何かを言い淀む。
「……そりゃ、テメェは置いとくにしても……茅野、いずみの方が年上だし」
人の名前を呼ぶ事さえ久しぶりの麻子は、やや呼び難そうにしながら、茅野を横目で見た。
「善人面にしたって、アタシが言えた事じゃないけどよ……」
視線はそのままには留まらず、更に落ち着きなく揺れ動く。
唇も、何かを言い難そうに、真一文字に結ばれている。
けれども、いつまでもそうしていても仕方がない。
決心して――あるいは自棄になって――麻子が口を開いた。
「……あーもう!よーするにだ!アタシはコイツの傍にいたいんだよ!文句あっか!」
一息に言い切ってから、一層恥ずかしくなったのか、麻子は再び視線をよそへと逃した。
「テメェに言われなくても、余計な手間は取らせねーよ」
言うや否や、麻子の首から下を夜闇から兆した鎖が包んだ。
鎖は溶けるようにして、フリル付きのドレスと、長手袋、サイハイソックスにブーツへと変化する。
魔法核の所有数が文字通り桁の違う麻子は、魔力の回復も理奈達より早かった。
戦闘は無理にしても、変身してちょっとした魔法を使うくらいは出来る。
「これで救急車の上にでも乗っていきゃ、何の騒ぎにもならねーだろ。妙な真似したら、テメェを半殺してやるよ」
――それから暫くして、神田理奈は目を覚ます。
救急車の中か、病院のベッドの上か、どこかは分からないが、目を覚ます事は間違いない。
それを見届けると、猪間麻子はもう一度安堵の溜息を零す。
また目尻に涙が浮かんでくる。良かったと、彼女のぬくもりを確かめて、逃げてしまわないように抱き締めたい。
俄かに萌芽した衝動を、微笑みで曖昧に誤魔化して、彼女はその場から立ち去った。
【最後にちょっとばかしデレておきたいなって思いまして、
でも既に撤退した方、次から参加予定の方を待たせてしまっても悪いですし、
こんな感じになっちゃいました。麻子ちゃんも撤退です】
>>260(
>>256の中間辺りで)
>「魔力がなくて弱ってるんだ、魔力を分けてやれ」
蒼月の手が、いずみと理奈の手に重なる。
暖かい力を感じる、蒼月の魔力によるものだろう。
「あっ……ありがとうございます……」
ロボットのような格好に戸惑いながらも、いずみは頭を下げた。
この人も魔法少女…?一瞬怪訝な視線を送るが、蒼月に感づかれないように逸らす。
>>265(
>>256の直後辺り)
>「ホント……か?ウソじゃないよな?ソイツ……助かるんだな?」
>「良かった……。本当に……良かった……」
その言葉に驚き、思わず顔を上げる、もちろん魔法核はしっかりと握らせたまま。
麻子はその場に膝を付き、大粒の涙を流しながら嗚咽を漏らしていた。
いずみは、どういった心境の変化なのだろう、と皮肉ではなく単純に疑問に感じた。
この涙に一切の嘘がないことはまず間違いない、ならばその理由は何か、と考えだからだ。
>「……アタシは、猪間麻子。えっと……学校は、今は行ってないんだ」
麻子はそう言って微笑む、だがその表情には若干の気まずさが含まれているようにも見える。
「では、『麻子さん』…ですね」
敢えて『学校』については触れずに、柔らかな微笑みで言葉を返す、いずみなりに気を遣ってのことだった。
この歳で――外見から見た推定年齢だが――学校に通っていないのは、それなりの理由があるに違いないと考えたからだ。
「まぁ、そんな事はどうでもいいんだ。それよりアンタも、悪かったな。
その……まさかあんな事するとは思わなかったんだよ」
“あんな事”とは、当然魔法核を理奈に投げ渡したことだろう。
「いえ…どうか気にしないでください。…あれは私が勝手にやったことですから」
決して麻子を責めるような口振りにはならないように、注意を払いながら答える。
そこで麻子が視線を逸らした、その先には理奈の手、そしてその手の中にはいずみの魔法核が握られている。
>「……でも、いいのかアンタ。魔法核を手放すって事は、願いを諦めるのと同じだ。
今はこらえられても……段々心が絶望に蝕まれていく。そうして最後は堪えられなくなって死ぬか、廃人になっちまうんだぜ……?」
>「まぁ……そうなっちまうまで、コイツがアンタをほっとくとは思わねーけどさ。一応、忠告しとくからな」
思わずあの悪魔の言葉が頭をよぎる。
――魔法核は貴方の夢や心と、強く結びついています。それが魔法の源ですからね。
――それを奪われたり捨てたりしてしまったら、貴方は心なき廃人となってしまいますよ?
一抹の不安はある、そして恐怖も。
だがその心を覆い隠すかのように、いずみは精一杯気丈に振る舞う。
「私は平気です。とにかく今は理奈さんのことを優先しましょう。……それに、」
――私の心が壊れても、悲しむ人なんて誰もいない
「……こう見えても、私の心は強靱に出来ていますから」
危うく口に出してしまいそうになった言葉を、なんとか喉元で押し止める。
だが、取り繕うように出た言葉はまるで答えになっていない。
魔法核を手放してしまえば、いずみの心は確実に絶望に侵されることになるのだから。
もっと上手い言葉で伝えるべきだろうか、そう考えてあれこれと思案しようとした、その時だった。
>「こんだけあれば死ぬことはないだろうよ、お前らはとっととどこかにいけよ。救急車が来たときにこんだけ雁首揃えてたら迷惑だろ
ここは年長者の俺が責任を持つ、安心しろこいつの魔法核を奪うとか卑怯なことはしない
それより、死にかけのお前らがいたほうが状況の説明が面倒だ。さっさと帰れ!」
>「おい鎖女!お前も人に言えないような経歴があるんだろセットで警察コースだ、もっと面倒なことになりたくなかったらお前もとっとと消えろ!」
>「ほらほらちゃっちゃと行け!」
差し出された紙片、そこには電話番号らしき物が書かれてある。
それを拒否するという選択肢も頭に浮かばず、素直に受け取った。
そして、いずみは再度頭を抱える。
そういえばこの人は誰なのだろう、と。
>「……はぁ?」
>「バッカじゃねーの?だぁれがテメェみてーなロボットごっこに熱心なアホを年長者だなんて認めるかっつーの!」
>「そもそも今更善人面した所で信じてもらえるとでも思ってんのかよ。脳みそがお花畑なのはテメェの方だぜ」
麻子が差し出された紙片を、まるでまとわりつく蝿でも払うかのように手で弾いた。
そこで気づく、麻子の人差し指が爛れているのを。
麻子の傷を気に掛けながらも、恐る恐る二人の顔を窺いつつ口を開く。
「あのっ…ひ、ひとまず落ち着いてください…。今は言い争いをしている場合では……」
ここまで麻子が怒りを露わにするのには理由があるのだろう、単なる犬猿の仲というわけではなさそうだった。
>「……そりゃ、テメェは置いとくにしても……茅野、いずみの方が年上だし」
>「善人面にしたって、アタシが言えた事じゃないけどよ……」
視線を泳がせながらもそう続ける麻子、何か言いよどんでいるようにも見える。
やがて、何事かを決心したような面持ちになったかと思うと、投げ遣りに言い放つ。
>「……あーもう!よーするにだ!アタシはコイツの傍にいたいんだよ!文句あっか!」
そう言って視線を逸らす麻子の姿は、年相応の可愛らしい少女そのものだった。
戦いの時とはまるで別人な愛らしい姿に思わず頬が緩む、きっとこっちが本当の猪間麻子なのだろう、そう思って微笑ましい気持ちになる。
>「これで救急車の上にでも乗っていきゃ、何の騒ぎにもならねーだろ。妙な真似したら、テメェを半殺してやるよ」
鎖で編まれた――当然傍目には分からないが――ドレス一式に身を包む姿は、まるで人形のようだった。
そんな格好でも麻子の乱暴な口調は相変わらずで、いずみはこっそり苦笑した。
理奈の手に魔法核を確かに握らせて、いずみはそっと腰を上げる。
「麻子さん、理奈さんのこと、どうかよろしくお願いします。
…私も付き添いたいとは思うんですけど、その……私、病院は……」
そこまで言って、申し訳なさそうに顔を伏せて黙ってしまう。
――ここからなら間違いなく“あの病院”に行くことになる
やむを得ない事情で、理奈を付き添う気にはとてもなれなかった。
「……すみません」
麻子に頭を下げる、そして蒼月の方に視線を向ける。
「…ええと…、……ロボットさんも理奈さんのこと、どうかよろしくお願いします」
いずみは蒼月の名前を知らない為、迷った末に見たままの姿で『ロボットさん』と呼ぶことにした。
改めて二人に一礼をしてから、いずみは多少おぼつかない足取りでその場を後にした。
「……あっ」
家に辿り着いたいずみは、僅かに声を漏らした。
玄関のドアがほんの少し開いている、つまり鍵が掛かっていないのだ。
慌てた様子で駆け寄りノブに手を掛けると、躯にぶつかりそうになる程の勢いでドアを開く。
「お父さん…!?」
返事はなく、静まり返った家の中にはいずみの声だけが響いた。
なかば投げ出すような風に玄関に靴を脱ぎ捨てると、リビングに駆け込む。
そこには家を出る前にテーブルに並べておいたココアが三つ、そしていずみが使っている家の鍵が置いてあった。
ドアが開いていた理由、それはただ単に鍵を閉め忘れて出て行っただけのことだった。
一瞬でも父が帰ってきたことを期待した自分に、いずみはやり場のない喪失感を覚える。
今までにも何度か同じようなことはあった、だがその度に父の姿を期待したことは一度もない。
ならば何故か?それは、いずみ自身も気づかぬ内に、心の片隅で唯一起こり得る奇跡を願っていたからだ。
魔法核を失った今、いずみが縋ることの出来る奇跡という名の希望。
それはいともあっさりと崩れ去り、後に残るのは慣れ親しんだ静寂。
そして、いずみの心に生まれたのは、ささやかで、それでいて確かな闇――絶望の種だった。
その種が芽を出し、いずれ花を咲かせる日は、そう遠くない未来に訪れることになるだろう。
【麻子さんのデレっぷりに2828しながら、茅野いずみ撤退いたしました…!w】
ぱしゃ
無遠慮に叩きつけられるカメラのフラッシュに、思わず顔をしかめる。
「あー、駄目よ理奈。ちゃんと笑って」
( ̄ワ ̄;)ニ、ニパー……
ぱしゃ ぱしゃ
「んー、まあいいわ。次、ちょっとポーズとってご覧、こういう風に」
言われるままオレンジチェックのスカートの裾をつまんでお辞儀するように広げてみせた。
こうですか? 恥ずかしいです。
パシャ! パシャ! パシャ!
「おk、いいわよー、羞恥に歪んだその表情!赤らんだその頬!マーベラス!」
狂ったようにデジカメのシャッターが切られる。叔母さん、何が美味しいのか、わけがわからないよ……。
こんな写真を後でチラシとして2000件のお宅に配布するというのですから、たまりません。
胸元に飾られたグリーンのリボンを握り締め、私は泣きそうな気持ちで叔母の人形を務めていた。
撮影はしばらく続くみたいなのでまず、これまで何が起きてどうしてこんな状況になっているのかを簡単にご説明します。
「あの夜」――気を失っていた私は、市内にある病院のベッドで目を覚ましました。
お医者さんの診断によると、怪我はたいしたことはなく、倒れたのも軽い貧血ということで、次の日には退院することができました。
勿論、一時は生死の境をさ迷うぐらい危険な状態でした。
闇の中で見た複数の光、ずっと傍にいてくれた誰かの体温、そして一人の魔法少女が差し伸べてくれた大きな希望に私は救われたのです。
退院した直後、長らく遠いところに暮らしていて最近戻ってきた叔母が、私にある話を持ちかけてきました。
何でも明後日にオープンする自分の喫茶店を手伝って欲しい(依頼)手伝いなさい(指示)むしろ手伝え(命令)。どれだったかな?
ニュアンスは微妙ですけど、結局のところ私に拒否権はありませんでした。叔母さんは昔からそうです。
そんなわけで。
そんなわけで……。
そんなわけで…………。
オープン前日の今日、叔母さんはチラシ用のモデル及びまだ不足している人員を「私の知り合い」から選ぶことにしました。
と、私が叔母さんから言われたのが“ついさっき”…………無茶苦茶だよ、この人!
作り物のメロンソーダを乗せたトレイを持ちながらフラッシュを浴びていたそのとき、事務所のドアがノックされた。
「どーぞー」
撮影の手を止め、席に着き来客に応じる叔母。面接して、あわよくば“彼女”を店に引き込むつもりマンマンです。
わあああああああ!!どうしよう!?
南雲さんには『今後のことについて色々とご相談したいことがあるのですが、お時間ありますか?』ってメールして、
待ち合わせるのに都合が良かったから、という程度の理由で“ここ”に来てもらうだけなのにいいいいいいいいいいい!
ま、まあ大丈夫かな……南雲さんが嫌なら嫌って、ちゃんと断れば済む話だし。
もし一緒にここで働いてくれるなら、それはそれで……嬉しいけど。
それに、今の私は「魔法核を失ってしまった」茅野さんについての所在が知りたくて仕方がなかった。
南雲さんなら、何か知っているかもしれない。
【最初の戦いから二日後】【喫茶店のオープン前日、叔母さんの横暴により間違って南雲さんをウェイトレスの面接に呼び出してしまう】
NPCデータ
名前:都築ゆりか(つづき−)
所属:喫茶店『テンダー・パーチ -Tender Parch-』オーナー兼店長 神田理奈の叔母
性別:女性
年齢:自称27(神田理奈「確か去年もそうでした」)
性格:コロコロ変わります
外見:黒のショートボブ、自称年齢相応の美貌、店内では黒服
行動傾向:特に決まってません。
うわさ1:別名:1000の資格を持つ女
うわさ2:別名:1000の格言を持つ女
うわさ3:一人称が「ボク」やら「あたし」やら気分で変わるので安定しないらしい
【どういう人なのかは私にもよくわかりません。初対面の人にも気さくに話せちゃう人みたいです】
「3番テーブル、アールグレイのホットとキャラメルスコーンでーす!」
「はーい!!」
注文を取り、カウンターとホールを行きつ戻りつ。
必要とあればレジ仕事。
必要とあれば軽い調理。
頃合を見て水やコーヒーのお代わりに目を光らせる。
日曜日のお昼過ぎ……オープン初日の喫茶【Tender Parch】は大盛況を迎えていました。
メインストリートからは外れるものの、通りの目につきやすく且つ通勤通学の動線に近いこのお店はなかなか恵まれた立地にあります。
可愛いウェイトレスの制服も、何気に客引きになってるのかも。
場所の条件だけでなく、お店のインテリアもセンスが良くて、メニューも何気に豊富で美味しそうなものが揃っているみたいです。
お茶の葉からお菓子まで、何もかも本格的な感じがして……なのに安い!
叔母さん、こんなの何処からもらってきたんだろ……?
注文を一通り済ませ、店内を見渡す。
ホールの広さは学校の教室一つ半ぐらい。広すぎず、狭すぎず、可愛い店名にぴったりな、こじんまりした印象。
利用客は基本的に学生さんが多いのかな?
流石に私みたいな小学生はいないけれど、私立の中学校の制服を着た人から大学生風の人たちまで、色々。
日曜日なのに制服を着ているのはそういう校則だから、というのを友達から聞いたことがある。
時折漂ってくるスープやお菓子の匂いが鼻をくすぐる。
ああ……お腹空いたな。
早く上がって私もお客さんになりたいよ。
私達のシフトは午前9時から午後2時まで。終わってお茶を楽しんでも十分休日を楽しめる時間なのです♪
よし、もうちょっとだ。頑張ろう。
【最初の戦いから3日後】【オープン初日の情景・休日・利用客多数】
>「バッカじゃねーの?だぁれがテメェみてーなロボットごっこに熱心なアホを年長者だなんて認めるかっつーの!」
やはり、ずいぶんこの猪間麻子と言う人間には嫌われたらしい
こいつは人をカテゴリーで判断するらしい、こいつにどう思われようがべつにどうでもいいけどな
「じゃあ、お前が救急士の対応やそのあとの警察への対応は大丈夫なのか?べつに認めろとはいわない
面倒ごとをやってやろうっていうのが俺の気持ちだよ。裏も表もないね」
ついつい相手をしてしまう
適当に流せばいいのにな……
>「そもそも今更善人面した所で信じてもらえるとでも思ってんのかよ。脳みそがお花畑なのはテメェの方だぜ」
ほら、また噛み付いてくる
「戦ってないときと戦ってる時のONとOFFぐらいつけれるようになれよ
そんなんじゃ、いつか死んでしまうぞ。そうなりゃ助かってもこの子は悲しむし、そこの茅野さんだって悲しむんじゃないか?」
いまの奴にはこういう情に訴えるかんじに濁しておけばいいだろう
>「あのっ…ひ、ひとまず落ち着いてください…。今は言い争いをしている場合では……」
「まったくその通りだな、こんな女子高生に間をもたれるなんて、鎖女に言われたことも遠からずってところだな」
苦笑いを浮かべながら頭をかいてごまかす
今は必要以上に敵を作る必要はないだろう……だけど、この猪間だけはどうも好かない
まだ黒女のほうがまだ好感が持てる
いや、今はどうでもいい、とりあえずこいつとガチでやりあうには魔法核の数が違いすぎるな
>「……そりゃ、テメェは置いとくにしても……茅野、いずみの方が年上だし」
>「これで救急車の上にでも乗っていきゃ、何の騒ぎにもならねーだろ。妙な真似したら、テメェを半殺してやるよ」
ほら、やっぱりお花畑なのはお前のほうだ。ガキにはそっちのほうがお似合いとは思うがな
こいつがカテジナさんみたいになったら面白いな……
「好きにすればいいさ、俺は昏睡状態の小学生になにかしようとする趣味はない」
……こいつ、でれ過ぎだろ
>「…ええと…、……ロボットさんも理奈さんのこと、どうかよろしくお願いします」
おどおどした様子の茅野に俺は顔に笑顔を貼付けて答えることにした
「ロボットさん……ああ、俺のことか、俺は蒼月、蒼月徹だ
この子のことは任せてくれ、責任を持って病院まで連れて行くさ
じゃあ、君も気をつけて帰れよ」
出来るだけ愛想よく振りまくと茅野を送り出した
その後はやって来た救急士に偶然通りかかったことを説明し、彼女とはなんの面識もないことを伝えた
救急車に同行し、彼女が収容されるまでは付き添った。連絡を受けた警察に連行され
警察署にて事情徴収されたがまったく疑いがかかることなく、むしろ見知らぬ少女を助けたと言うことで褒められて終わり案外拍子抜けだった
これも日頃の行いの賜物だろうさ
【ブラック魔法少女 蒼月徹編 第1話 『魔法少女、大地に立つ』 了】
次回予告
初めての戦闘を経験した徹、が彼の自分の本位のスタンスに違和感を覚える他の魔法少女達
彼の戦闘中の言動の不一致は何を意味するのか?彼は敵か味方か?
次回【ブラック魔法少女 蒼月徹編 第2話 喫茶店の中】
君は刻の涙をみる……
あの戦いから3日後……日曜の朝、特に昨日は夜更かしをすることはなかったので家族とともに朝食を取っていた
実家暮らしは飯を作らなくていいというのは便利だな。テレビからは昨日のスポーツの結果や地方のほのぼのとしたニュースが流れていた
親父は贔屓のプロ野球球団が勝って喜んでいる。しばらく親父とは野球を観に行っていないな……こんど誘ってみようか?
母さんは妹と今日オープンの喫茶店の話で盛り上がっている
横からは「雰囲気がよさそう」だの「ケーキがおいしそう」だの「やっぱりオレンジペコだよね〜」などと聞こえてくる
紅茶にこだわるなら、今朝のコーヒーもインスタントじゃなくてもうちょっと気を使って欲しいもんだ
俺は特に気にすることなく、テレビに意識を戻した
総合情報バラエティは地域ニュースから地方の飲食店の紹介が流れていた。残念ながらくだんの喫茶店ではなかった
朝食を食べ終えた俺に待っていたのは母と妹からの容赦ない指令だった
「ちょっと徹、どうせ暇なんでしょ?なら、この喫茶店に偵察に行って来なさい」
「そうそう、私とお母さんは忙しいから兄ちゃんが行って来てよ!」
よくあることだ。この2人を相手にすることはシロッコとハマーンを同時に相手にするよりたちが悪い
行きたいなら自分で行けばいいものをなぜいつも俺を頼ろうとするのか?
家族に頼られることは悪いことじゃない、この二人の指令に従うことにしよう。幸い日曜の午後は暇だ
「じゃあ、朝はジムに行くから、帰りに買ってくるよ」
この場合のジムはガンダムの量産型『RGM-79』のことではない、スポーツジムのことだ
中高と野球部に所属していたのが大学はクラブやサークルに入らなかったからだ
理由は特にない、めんどくさかった?そんなところだ
大学生活は楽しくやっている、地元の大学だから中学や高校からの友人も多くいる
野球はやめたが体を鍛えるのは好きだ、だから今日もスポーツジムに通うのだ
なによりも強くなれる、そこで格闘技に手を出さないのが俺らしいとも言える
昼過ぎ、ジムで一通り体を鍛えた俺は妹の手製の地図を片手に目的の喫茶店に探す
その場所は街のメインストリートから少し離れているが、大学と家からも近い、そのため授業の合間にふらっと立ち寄るには便利かも知れないな
そんなことを考えながら店の前についた
確かにオシャレな喫茶店といった外装だ。あの2人が好みそうにな店構えだ
愛用の中折れハットを被り直すと喫茶店の扉を開いた
店内は女子高生や女子中学生が中心で男の姿はあまりなかったが、まったくいないこともなかった
若者ばかりが目立つ、そういう店なんだろう。俺は運良く窓際の席が空いていたのでそこに座る
「アッサムのミルクティーにおすすめのケーキとあとクラブハウスサンド」
紅茶とケーキは調査でクラブハウスサンドはただの昼飯だ
注文の聞いてくれたのはどうやらここのオーナーであった
まだ20代後半ぐらいというのに立派だな〜と思いつつ俺は窓の外に視線を移した
まだこのとき数日前に戦った奴らと再会するとは思っていなかった
【蒼月徹 店内に神田や南雲や他の魔法少女がいるとは毛ほどにも考えていない】
君は刻の涙をみる……
面白くもないし話も作れないんだからせめて出しゃばるのはやめようなタケルちゃん
「…っ……?」
カーテンの隙間から射し込む光に、テーブルに突っ伏していたいずみがゆっくり瞼を開く。
どうやら昨晩はあのままリビングで眠ってしまったようだ。
深いため息をつき、テーブルに手を付きながら重い躯を起こして、とりあえず手洗い場に向かった。
冷たい水道水で顔を洗い流し、乱れた髪をしっかり整える。
そうすると、モヤがかかったような状態の意識も徐々に晴れていった。
郵便受けから持って入った新聞をテーブルに広げ、載っている記事に隅々まで目を通す。
目当ては『小学生児童の死亡記事』、理奈の安否を知るためだ。
昨日の今日で記事になるとも考え辛いが、確かめずにはいられなかったのだ。
幸いなことに理奈を思わせる記事は見つからない、安堵の息をつき、新聞を閉じて席を立つ。
昨晩から置いてあった三つのカップ、冷め切ったココアは流し捨て、たっぷりの洗剤で洗う。
ココアの跡が残らないように念入りに。
玄関を出ると、少し離れた場所で、ふくよかな中年女性二人が楽しげに話し込んでいた。
それはいずみとも仲の良い近所の奥様方だった。
その一人がいずみの姿に気づいて嬉しそうに手を振ると、もう一人の女性もそれに続いた。
いずみも軽く手を振りながら駆け寄る。
「おはようございます」
いずみが深々と頭を下げると、二人も釣られるように頭を下げた。
「おはよう、いずみちゃんはいっつも礼儀正しくてオバサン感心しちゃうわぁ」
「ほんとねぇ。ウチの子なんてそりゃもうヒドイもんよ!」
「そんなことありませんよ。だって……君、みんなにとっても優しいですし」
いつものようにそんな他愛ない会話を交わしていた。
すると、おばさんがふと思い出したように手を叩く、そして口に手を当てながら内緒の話をするように囁く。
「それより聞いた?昨日の夜遅く、女の子が救急車で運ばれたって話…」
――もしかして…理奈さんのこと…?
「聞いたわぁ、この近くでしょお?道の真ん中で倒れてたらしいわよね。その子亡くなったって噂よ…!」
「…えっ…?そ…それ本当ですか…!?」
――そんな…まさか……
「やぁね、それデマよ。もう意識もハッキリしてて、今日ぐらいには退院出来るそうじゃない」
「アラヤダホント?」
それを聞いていずみは密かに胸を撫で下ろす、確実な情報ではないので不安は残るが。
その後も井戸端会議に熱中する二人に別れを告げ、いずみは学校に向かう為その場を後にした。
それから二日後――戦いの日から数えて三日後――の日曜。
いずみは適当な朝食を済ませると、休日の日課である掃除を始める。
だが、今は掃除機の吸い込み口を覗き込みながら何事かと四苦八苦していた。
リビングの床に掃除機をかけていると、テーブルの下にあった何かを吸い込んでしまい、それが中のローラーに絡みついているようなのだ。
ネジ留めの固い蓋を何とかようやくこじ開けると、そこから僅かに白い紙が頭を覗かせていた。
とりあえず一安心、と短く息を吐くとその紙片をゆっくり引っ張り出す。
ローラーに強く絡んでいたせいで、まるで新品のポスターのように丸まってしまっている。
「……?これ、って…」
広げてみると、電話番号らしきものが書かれていた。
何か見覚えがあるような、頭に残る記憶を順に辿っていく。
>「ロボットさん……ああ、俺のことか、俺は蒼月、蒼月徹だ
この子のことは任せてくれ、責任を持って病院まで連れて行くさ
じゃあ、君も気をつけて帰れよ」
そう言って愛想よく微笑む男子の顔が、咄嗟に頭に浮かんだ。
「……蒼月さんっ!!わ、私すっかり忘れてた…!」
慌てて充電器に差してある携帯電話を手に取る。
紙片と画面を交互に見てゆっくり確実に数字キーをプッシュしていくが、
――……でも、ちょっと待って
途中で手を止め、すぐに携帯電話を閉じる。
――そういえば、私……
そして何か恐ろしい物を見るような目で、蒼月の電話番号を凝視する。
――お、男の子に電話番号を渡されたの初めて…!?
「…ど、どうしよう。…あぁ…どうしよう…」
口元を手で押さえつつぶつぶつ呟きながら、落ち着きなくリビングをぐるりと一周、そして二周と歩き回っている。
顔は蒼白で目は虚ろ、今にも気を失って倒れそうな様相だ。
――よくよく考えてみたら、歳の近い男の子と電話すらしたことない……
女子の友人が多いいずみにとって男子と会話する機会があるのは学校ぐらいで、ましてや休日に男子に電話を掛けるなど有り得ないことだった。
――……でも、理奈さんのことが気になる。麻子さんも、あの後どうしたんだろう…
――あの後のこと、蒼月さんならきっと知っているはずだし……
「そ、そうっ。べ…別に変な電話じゃないんだから気にせずに…友達?のように…??」
そう自分に言い聞かせるように、わざわざ声に出す。
瞼を閉じ、何度か深呼吸をすると意を決して再び携帯電話を手に取る。
時刻は既に午後を回り昼時だったが、いずみは未だに紙片と携帯電話を睨んで微動だにしていなかった。
何度挑戦しても、最後の一つの番号が押せないのだ。
「……や…やっぱり…駄目っっ!!」
悲痛な叫びを上げながらソファーに向かって携帯電話を放り投げる。
――もう諦めよう。理奈さんのことは何か別の方法で……
そこでプルルル、とコール音が聞こえた。
びくっと肩を震わせ、投げ出した携帯電話に取り付く。
液晶画面には『発信中』という文字が確かに映し出されていた。
投げた拍子に偶然指がキーに当たってしまったのだが、今のいずみにそこまで思考が及ぶ余裕はない。
もはや切るわけにもいかず、恐る恐る耳に当てて蒼月が出るのを待った。
【蒼月さんが着信に応じた場合】
繰り返すコール音が途切れる。
電話に出たのは無機質な機械音声ではなく生身の人間、蒼月だった。
「あっ……ぇ、…っ、う……、ぁ…」
緊張のあまり言葉が出ず、通話口を通じて届くのは嗚咽のみ。
このままではいけない、と軽く咳をして一つ一つ頭に思い描いた言葉をなぞるように声に出す。
「あっ、あの…!!茅野、でス!……茅野いずみですっ!ええと…っ、ミミ三日前の花の眼鏡デスッ!!」
上ずる声でなんとか断片的な自己紹介を終える、“鼻眼鏡”と聞き間違えられていないことを祈りつつ。
「…す、すみません、突然お電話してしまって…。……ええと……今お時間ありますか?」
近所で噂されていた通り理奈が本当に退院しているのか、いずみはそれを蒼月の口から確かめたかった。
「その…っ、電話ではお話がしづらいので、今からお会いしたいんです。……だ、駄目ですか?」
【蒼月に電話を掛ける(発信時間は、店内にいる蒼月さんが『窓の外を眺めている』ぐらいのタイミングですっ)】
【誘いに応じて下されば、こちらからテンダー・パーチに向かいたいと思います〜】
【電話に出なかった場合もまた後日別ルートのレスを書きますから、蒼月さんの思うようにしてくださいね】
【避難所で少しだけ質問?というか相談したいことが…】
――『おとなになったら、夢も希望も諦めなきゃいけないの?』
坂上南雲は高校生だ。
将来の自分に過度な大成を期待する歳でもなく、さりとて今の自分を不当に高く評価する歳でもなく。
社会通念上に言う『子供』の時期を乗り越えて、『大人』の新米として社会に参画を始める年頃だ。
大人になる過程とは、子供の頃には無限に見えていた選択肢の一つ一つを見分し切り捨てていく作業に似る。
そうして自己の限界を知り、叶わぬ可能性に早々に見切りをつけ、人は、一皮剥けるのだ。
無限の可能性というものは往々にして指針を狂わせ迷いを生む。
幾多の夢と希望とを切り捨てた代償として、迷いなく己の人生を見据えたとき、初めて至る境地が"大人"なのだ。
そうやって人は、いつしか前しか見えなくなっていく。
【 ブラック魔法少女 坂上南雲編 第三話 『それはとっても怪しいなって』 】
早朝、いつもの公園にて。坂上南雲はチンピラ悪魔の立会いのもと魔法の訓練に励んでいた。
前回の戦いで決定打足りえなかった彼女。固有魔法が戦闘向きでないこともあるが、南雲はそもそもバトル慣れしていない。
銃の装填の仕方もわからない体たらくであったから、それについては帰ってからネットを参照した。
「……そうじゃ。構造を把握すれば物体生成のイメージはより強固に、少ない魔力で生成できるようになる。
弾は魔力の余っとるうちに作り溜めしておけよ。あとは魔装変身だけで総魔力の半分を持ってかれる現状をなんとかするんじゃ」
「うーん、もうちょっとシンプルにしたほうがいいのかな。無駄フリルとかのせいで余計に複雑になってる気が……」
「おどれ、魔法少女たるものフリルは絶対じゃろ」
「グラサンパンチパーマのチンピラが言うと説得力あるねー!」
「ワシのこたどうでもええんじゃ。実際のところな、魔装の防御力ってのは本人がその衣装に持つイメージの強さで決まるんじゃ。
じゃけえ、印象を強めるために派手な格好しとる魔法少女が多いじゃろ?フリルもその一例じゃな」
「そのパンチパーマも防御力アップしたりするの?」
「パンチに喰いつくなや!飛行服でハジキのおどれが魔法少女っぽくなさすぎなだけじゃ」
そうは言っても恥ずかしい。高校生がフリフリドレスはマジでない。
ないというのは存在しないという意味ではなくナンセンスという意味だ。ぶっちゃけありえない。
フリル付き飛行服という意匠は、大人にならんとする南雲の最大限の譲歩であった。
「ともあれね、このマジカルハジキ、出オチアイテムかと思ったら怪我するぜ。わたしにとっては多分唯一の武器になるから」
悪魔の張った消音結界の中で、装填済みのハジキを虚空へ向けて構える。両手でホールド。トリガーを引く動きは最小限に。
胃袋に響く銃声と同時、遠くのベンチに置いた空き缶がはじけ飛んだ。ここ数時間の訓練で、だいぶ当たるようになってきた。
「……魔法で戦えや」
「そこなんだけどねー。わたしの魔法って、結局破壊力じゃたかが知れてるんだよ。少なくとも拳銃弾には勝てないレベル。
逆に言えばさ、魔法なんか使わなくてもハジキがあれば攻撃力はいらないんだ。引き金引くだけで魔法以上の破壊ができるんだから。
この魔法は、『普通じゃできないこと』の補完要素として機能するべき。攻撃以外の、例えば、理奈ちゃんを運んだアレみたいな」
そこも南雲が切り捨てた『可能性』。
魔法合戦が常の魔法少女戦において、攻撃に魔法を使うという発想を、できないものとして割り切った。
故に異色の魔法少女として戦いに挑むこととなっても、南雲には迷いがない。可能性を閉じ、一本道に自分を追い込んでいるのだ。
「はぁー。アニキはロリ娘とか花娘とかファンシーな魔法少女囲ってるっちゅうのに……ワシんとこはこんなんか」
「あっはっは、表出ろマジカルヤクザ」
「おーおー上等じゃ!魔法の粉で夢の世界にご招待してやろうか!」
「お前ファンシーはどうした!?」
「あん?十分リリカルでメルヘンでファンシーじゃろ。魔法の粉(そのままの意味で)と夢の世界(そのままの意味で)」
「そのツラでそれ言ってもぜってー字面通りじゃ通らないから!」
と、南雲のケータイが『メールキャッチプリキュア』のテーマで受信をお知らせした。
(過去にメールを送れるというタイムマシン機能を持った携帯を駆使して二人のプリキュアが過去を改変しつつ、
闇の機関と戦いを繰り広げる今期日曜あさ八時の大人気シリーズ女児アニメである。)
さておき、背面ディスプレイには知らないメールアドレス。無警戒に開いてみれば、昨夜連絡先を教えた気になるあの子。
ファンシー枠魔法少女の筆頭、神田理奈からのメールであった。
>『今後のことについて色々とご相談したいことがあるのですが、お時間ありますか?』
……………………。
「……おいマジカル広域指定暴力団構成員」
「なんじゃマジカル都条例違反生物(なまもの)」
「オシャレな服の作り方おしえて」
* * * * * *
メールに指定された喫茶『てんだぁ☆ぱぁち』(やや誇張)は街の基幹駅を噴水側に出てすぐの店屋通りに存在していた。
従業員と思しき数人が行ったり来たり。ビニールに包まれたままの花輪がいくつか。ガラス張りに張り紙一枚。
(って、まだオープン前じゃん)
いつもの制服を脱ぎ捨て、魔装変身の応用で青主体のキャミソールにサマーカーディガンといった出で立ちの南雲。
待ち合わせというからにはオサレなサ店で午後のティータイムでも同伴する旨のお誘いかと馳せ参じたわけだが。
もしかして、人気のない薄暗い開店前の店内にて人には言えないヒミツの相談が……?(誇張なし)みたいな。
居ても立ってもいられなくなった南雲は矢も盾もたまらず従業員用通用口から繋がる事務所へのドアをノックした。
>「どーぞー」
入室を促された。理奈の声ではない。瀟洒な意匠の施されたノブを捻り、南雲は事務所に首を突っ込んだ。
フラッシュの閃光が部屋を染める。準備なく直撃をうけた南雲の網膜がホワイトアウトから立ち直ると。
神田理奈があられもない姿で羞恥に頬を染めながら恥ずかしいところをいっぱい撮られていた。
誇張なし。
「………………」
無言で携帯を取り出す南雲。
カメラを抱えていた妙齢の女性がそれを手のひらで制す。
「待って。気持ちは分かるけど通報というのは早計よ。揺蕩う清流のように形のなき美の一瞬を切り取るというこの芸術。
いかなる国家権力とて妨害を許される所業じゃないわ。ほら、貴女もその携帯を投げて甘美な果実を賞味しましょう」
女性は摺り足歩きで南雲の背後に近づくと、彼女の握る携帯をひったくった。
果たせるかな、ディスプレイを見た女性の目が驚愕へと変わる。南雲の携帯は――カメラを起動していた。
「通報なんてどうだっていいんです。国家権力も治安維持法も非実在なんちゃらもクソくらえです。
目の前で、女の子が羞恥に染まった表情でカメラを受け入れてるのなら……」
「……なら?」
「わたしも撮ろうかと」
まるで彫りたての仏像のような、楚々とした面立ちで遠い目をした南雲は語った。
女性は親指を立てた。
「揺ぎなき煩悩!気に入った!!」
とまあ、そんな感じで。
坂上南雲はカメラアシスタント兼撮影モデル兼ウェイトレス兼同好の士として『テンダー・パーチ』に雇われたのだった。
カメコの女性は理奈の叔母で、都築ゆりかというらしい。言われてみれば遺伝子を共有しているようなそら似っぷり。
理奈が大人になったら、きっとこんな感じの溌剌とした美人になるのだろうなあ、といった感想を十人が十人抱くだろう。
制服の採寸とか、接客業務ひと通りの研修を受けて、来る日曜日。
南雲は年末のハガキ配別以来の勤労者としてテンダーパーチを訪れていた。同僚には理奈もいる。
ん?理奈もいる?
(それって思いっきり労働基準法違反なのでわ……?)
聞いたところ小学生の理奈が何故店員として労働しちゃってるのかは、この際深い闇として首突っ込むのはよしとこう。
ま、ま、看板娘的なアレだと認識しておく。あくまで店長の身内がお小遣い稼ぎに店を手伝ってる的な。
序列的には南雲のほうが後達なので、理奈は先輩なのだけど。チィーッスとか挨拶すべきだろうか。
「オーダー入りまっす!ナポリワンアメリカンワン夕暮れに佇む老紳士のひとときワン!」
オーダー回りにバタバタしてるあいだにパスタとコーヒーと夕暮れに佇む老紳士のひとときがキッチンから出てきた。
パスタは冷めないように、コーヒーは零さないように、夕暮れに佇む老紳士のひとときは振動で加水反応して苛性ソーダが
発生しないように入念な注意を払って運ぶ。そのとき、何も無いところで躓いてトレイをひっくり返してしまう。
「わーっ!コーヒーとナポリと夕暮れに佇む老紳士のひとときがーーっ!!」
カップとディッシュと夕暮れに佇む老紳士のひとときが宙を舞い、品待ちの客に直撃した。
コーヒーとナポリはともかく。他の客たちから動揺のざわめきが起きる。
「ま、マズい!あの客夕暮れに佇む老紳士のひとときを引っ被っちまった!早く除染しないと骨まで溶かされるぞ!」
「ひいい!硫黄の腐ったような匂いがあたり一面に立ち込めてやがる!こいつを吸ったら一瞬であの世行きだぜ!」
「換気だ換気!だから夕暮れに佇む老紳士のひとときを運搬するには乙種危険物取り扱い免許が要るって言ったんだ!」
その客。
>>277 いつぞやのガンダムさんであった。
【坂上南雲、テンダー・パーチに雇用さる。ガンダムさんに夕暮れに佇む老紳士のひととき(珍メニュー)をぶち撒ける】
【時間軸的には電話の掛かってくる前後?】
神田理奈と出会い、餓狼同然の生き方をやめ、『魔法少女』を目指すと宣言してから三日。
猪間麻子は――
「……腹減ったぁ」
堪え難い空腹に苛まされていた。
悪魔との契約を経て魔法少女となり、違法風俗を叩き潰して逃げ出して以来、
麻子は売春に釣られるようなゲスから財布を奪ったり、時には盗みを働いて生計を立てていた。
だが『魔法少女』になると言ったからには、そんな事をする訳にはいかない。
いかないのだが――今更親元や、孤児院に戻るのはあり得ない。さりとて頼れる親戚もいない。
住所不定、それ以前に13歳の児童ではアルバイトも出来ない。
そうして理想と現実の断層に嵌り込み、藻掻いている内に三日間が過ぎてしまった。
「うぅ……こうなったら、魔法で食い物を……」
単純な物質の生成、基本の魔法を用いて、麻子はおにぎりを作り出す。
それを一気に頬張って、ろくに咀嚼もせずに呑み込んだ。
が、空腹感は依然として消え去りはしなかった。
胃には確かに、おにぎりが運ばれた重みがある。
にもかかわらず、空腹感はむしろ増してさえいた。
「……やっぱ駄目かぁ」
がっくりと肩を落として、麻子がうなだれる。
魔力とは、魔法少女のみが扱えるエネルギーだ。ゼロから生まれてくる物ではない。
生命活動や、希望や怒りなどの感情、それらの余剰エネルギーを魔法核が汲み上げて、魔力として充填するのだ。
魔力で食べ物を作って食すというのは、言わば自分の肉を自分で齧るようなものだ。
「こう言うの……なんつーんだっけ……エントロピー……?」
朦朧として回らない頭から意味のない言葉が紡がれて、麻子の唇から零れ落ちる。
先ほどから足取りの覚束無かった麻子はとうとう、自らの声の行方を追うように倒れ伏した。
「もう……動けねぇ……」
道行く人々は麻子に怪訝そうな視線を向けはしても、誰も歩み寄ったり、声をかけようとはしない。
「けっ……ざまぁねぇな……。散々弱肉強食を謳ってきたアタシが、食うにあぐねてくたばるたぁな……」
「あらあら、よく分かんないけど、あなたお腹空いてるの?良かったらウチで何か食べていく?」
「あぁ……とうとう幻聴も聞こえてきやがった……。メシが食えるならもう一度悪魔と契約したっていいぜ……」
「うん、さっぱり分かんないけどお腹空いてるのは分かった!と言う訳で一名様ごあんなーい!」
「……へ?」
混濁した麻子の意識が現実と幻想の境目を見極め終わる頃には、彼女は喫茶店の奥へと連れ込まれ、
色とりどりのケーキと芳しい香気を孕んだ湯気を燻らせる紅茶の並んだテーブルの前に座らされていた。
一つの芸術作品のように輝いてさえ見えるテーブルの上の光景に、麻子の瞳が大きく開かれて、輝きを映す。
「こ……これ、ホントにいいのか?」
「勿論よぉ。ささ、召し上がれ♪」
瞬間、麻子は腹を空かせた子犬さながらに、食事に食らいついた。
一心不乱に、次々と並べられた食事を齧り、飲み込んでいく。
「あらら、本当にお腹が空いてたのねー。どう?美味しい?」
「すっげーうめー!ありがとなオバさん!」
「オバ……!い、いいのよー。ところでお代の方はしめて一万円になりまーす♪」
ぴたりと、麻子の手が止まった。
手だけではない。全身が、まさに凍りついたように硬直していた。
「えーと……オバさん、今なんつった?」
「あら、聞こえてなかった?じゃあお代の方はしめて一万五千円になりまーす♪」
「さり気無く水増ししてんじゃねえええ!つーか、え?マジで?金取んの?」
「当たり前じゃなーい。私はあくまでウチで食べてく?って聞いただけでー、タダなんて一言も言ってないんだもん☆彡」
「きゃるんっ」と自分で効果音を付けつつ、喫茶店の主――都築ゆりかは人差し指を唇に添えて首を傾げる。
「無理すんなってオバさん……。て言うか、アタシのナリを見てそんな金持ってると思ったのかよ。
自慢じゃないけどアタシは今、正真正銘の一文無しだぜ?」
「大丈夫。実はこの喫茶店、今日オープンしたばかりなのよ。だけどね、まさかこんなに繁盛するとは思ってなくて。
人手が足りてないのよねー。それに宣伝のチラシももっと可愛くしたいし……何より私、可愛い女の子が大好きなの!」
「……オイオイ、まさか」
「そ、そのまさかよ。何か知らないけど、悪魔と契約するよりかは、マシだと思わない?」
今度は「ぴきゅん」と、やはり口で効果音を紡いで、都筑ゆりかはウィンクをした。
そうして手際よく、麻子の体型に合った制服を用意して、笑顔と共に見せつける。
麻子が片手で頭を抱えて、諦念の混じった溜息を零した。
「……やれやれ。ま、サービスはお手のモンっちゃお手のモンだけどさ」
都筑には聞こえないように、小さくぼやく。
「いいぜ、やってやろうじゃん。ケーキのお礼って事なら、文字通りちょろいもんさ」
「あなたが食べたのは、とても一切れのケーキとは言えないけどね」
都筑のジョークに、麻子が微かに口角を吊り上げた。
差し出された制服を受け取って、ロッカールームへと案内を受け、流れるような動作で着替えを済ませる。
そうして都筑の聞きそびれていた名を答え、写真撮影も難なくこなし、いざ接客とホールへ繰り出して――
「――で、何でお前らがここにいるんだよ……」
自分と同じく【Tender Parch】の制服を着た理奈と南雲に、思わず両手で頭を抱えて項垂れた。
客席にはいけ好かない蒼月までもがいる。
何故かひどく前衛的なファッションをしているが、特段に麻子の興味を引く事はなかった。
つい十数秒前に自分の口から飛び出した渾身の「いらっしゃいませ」が頭の中でリフレインした。
折角だからと、意気揚々とケーキよりも甘ったるい発音を心がけた、過去の馬鹿な自分を鎖で簀巻きにしてやりたい衝動が沸き立つ。
「うぅ……クソ、何か急に恥ずかしくなってきやがった……」
スカートの布地を軽く握り締めて、麻子は頬を僅かに赤らめていた。
『自分は自分の物』という信念に則って、制服の袖もスカートの裾も、長く保ってある。
だがそんな事とは次元の違う、どうにも振り払えない小っ恥ずかしさがあった。
――普段と違う自分を知人に見られる恥ずかしさなど、これまで感じた事もなかった麻子に、その正体は決して分からないが。
「いいか。お前らは何も聞いてないし、今日見た事は全部忘れる。いいな!絶対だからな!」
強気――と言うより躍起になって、麻子は人差し指を突きつけてそう叫んだ。
【行き倒れ→連れ込まれ→何やかんやでバイトする事に。
やってやろうじゃんって感じでノリノリでホールへ→よもや理奈達がいるとは思わず狼狽
時系列的にはガンダムさんに夕暮れに佇む老紳士のひとときがぶち撒けられた後です】
【ブラック魔装少女 塞守 真衣編 第弐話】
――日曜日
紺のスカートにシャツとベスト、どこの学校の生徒か判別しづらい服を纏い
私は、学校の近くに最近オープンした喫茶店『テンダーパーチ』へと足を運んだ
中々の盛況ぶりを誇る店内に、運よく私は店の片隅の席を取る事に成功。
ここに来たのは、新しいお店のメニューの質を確かめる為・・・というわけでもなく
私の『習慣』の場として利用できるかどうか確かめる為。
お店の雰囲気も良いし、複数の学校の生徒が見受けられる・・・僥倖。
鞄からテキストやノートをテーブルに広げ、私は周囲の雑音に耳を澄ませる。
『噂の収集』。魔法少女になるにあたって私はそれを習慣とした。
魔法なんていう力を得た場合、多かれ少なかれそれを周りに誇示したり
あるいは、何らかの影響が周囲に出る。そう踏んで、この喫茶店に来たのだけれど・・・
――知ってる?あの飛び降り事件
最近夜中に変質者が――
――例の部長とマネージャーの関係って・・・
ただ一つの失敗は、噂の中に紛れて私の事件が紛れていることだろう
つい数日前、同じ学校のクラスメイトを一人排除した。飛び降り自殺事件として扱われているけれど
真夜中の学校でのいじめっ子の飛び降り、遺書もないとなれば流石に怪しい噂としては十分だったかもしれない。
喧騒に耳を澄ますのにやや疲労を覚えた私は・・・うん、そこのウェイトレスに頼もうかな(>274)
「すみません、キャンディーのミルクティーと、レアチーズケーキを一つお願いします。」
簡単にオーダーを終え、カウンターに向かうその姿を目で追って・・・違和感。
なんというか、あのウェイトレスさん幼すぎる。甘く見積もっても私より年下。ほぼ小学生。
芸能人でもなし、働いていていいんだろうか・・・
などと、思いを馳せているとさっきのウェイトレスさんがケーキと紅茶を持ってきた。
・・・やっぱりこのお店大丈夫かな。と、テーブルに品を置いたところでつい目が合った
―― ドクン
「――っ?」
鞄の中の私の魔法核が疼いた気がした。
その態度を不審に思ったのか、気遣わしげな視線を向けてくるけれど、やんわりと遮る
「ごめんなさい、仕事の邪魔をしてしまって。どうぞお仕事に戻ってください」
・・・まさか、『当たり』だろうか。いくらなんでもあんな幼い子まで?
まぁ、それならそれで構わない。例え老若男女誰であれ、私の欲望(ねがい)の糧にするまでのこと
テーブルに視線を戻し、私は機を伺う事にした・・・
【神田さんにケーキと紅茶を注文、ピンと来た(?)けど待機。店内の様子をうかがってます】
>>283 坂上南雲【オープン前日】
ガチャ
入室した南雲さんが私達の姿を見て、硬直する。
ブルーのキャミソールと白いサマーカーディガンのコントラストがとても爽やかだ。
>「………………」
流れるような二人の動作は、まるで居合い抜きのようでした。
咄嗟に携帯を取り出した南雲さんと、背後に回りこんで瞬時にそれを取り上げた叔母さん。
>「待って。気持ちは分かるけど通報というのは早計よ。揺蕩う清流のように形のなき美の一瞬を切り取るというこの芸術。
いかなる国家権力とて妨害を許される所業じゃないわ。ほら、貴女もその携帯を投げて甘美な果実を賞味しましょう」
そ、そんな……この叔母を相手に助け出して欲しいとまでは言わないけれど、あなたまでこの人の餌食になるなんて……!
>「通報なんてどうだっていいんです。国家権力も治安維持法も非実在なんちゃらもクソくらえです」
しかし当の本人は全く臆することなく、静かなる情熱を以て己の政治心情を主張した。今の世の中は間違っていると攻めの姿勢。
えーと、ところでこれ、もしかして……
>「目の前で、女の子が羞恥に染まった表情でカメラを受け入れてるのなら……」
>「……なら?」
>「わたしも撮ろうかと」
南雲さん――あなたもか!
>「揺ぎなき煩悩!気に入った!!」
私の叔母、都築ゆりかの親指が勢いよくおっ立てられて天を衝く!
久々の同朋に巡り合えた喜びが満面の笑みとなって、彼女の顔面から溢れ出ていた。
あうあう。私って……ほんとにバカ。よもやこんなことになるなんて……。
勢いそのまま、怒涛の撮影会(及び制服合わせやら研修)は夜中まで続行された。
今度は南雲さんも一緒に被写体になってくれたのが、まだ救いでした。
【続く】
【訂正 店名のスペルは Tender Parch ではなく Tender Perch です。大変失礼しました】
オープン前日・南雲さんと別れた後】
「はぁ――」
着替えて、お店を後にする私。南雲さんを見送ったあと、一人で溜息をつく。
とてもじゃないけど、じっくりと今後のことを相談できる空気じゃなかった。
ううん、相談できない原因は……むしろ、私の中か。
家路に向かう傍ら、懐から自分の魔力核を取り出してみる。
明らかに以前の私のそれよりも魔力が強くなっていた。昨日目覚めた朝のことを思い出すと、気が重い。
改めて見て、今はっきりと確信した。私の魔力核は茅野いずみさんの魔力核を取り込んでしまったんだ。
だとすれば、茅野さんは廃人になってしまったことになる。
けれど、もしそうなら、それを知ってるはずの南雲さんはどうしてそのことを私に教えてくれなかったんだろう……?
私に気を使って隠してた?でも、今日の様子だと、とてもそうは見えなかった――私の目が確かなら。
ううん、違う!
ふいに誰かを疑いそうになった自分が嫌になり、思わず首を振る。
――逆にこう考えよう。
私に何も教える必要が無かったってことは、茅野さんはきっと無事なんだよ。
楽観的でもいい。私にはこう判断することしか、できないんだから。
じゃあ、どうして茅野さんは廃人にならずに済んだの……?廃人になってしまった魔法少女と、茅野さんの違いは何?
誰かに“奪われた”のではなくて、誰かに“譲った”から……?
誰かに魔法核を譲れば、願いを叶えなくても魔法少女を辞めることができるの……?
ならそれって、かつて私が求めていたことと同じじゃない!
「………………」
あはは、そんな確証なんて何処にも無いよね。いくらなんでも都合が良すぎるよ。
じゃあ茅野さんは、一体どうなってしまうんだろう。
その人の“願い”と“夢”を形にした魔法核を自らの意思で手放したとき、そのヒトには一体“何”が残るの?
そのときの私には、さっぱりわからなかった。ただ、嫌な予感ばかりが私のお腹の下で……泥のようにいつまでも渦巻いていた。
【続く】
【オープン前日】
――まずは、仲間を増やすことだ。
部屋の明かりを消し、布団に包まったまま私は考える。
あのセールスマンさんの狙いがどうあれ、
折角自分の“魔法”を手に入れた人たちが――魔法少女が傷つけ合う世界なんて、私には耐えられない。
この力は……きっと誰かの、少なくとも自分が生きる為だけに使うべきで、誰かを傷つける為に使っちゃいけないんだ。
誰かの“願い”を奪ってまで自分の“願い”を叶える為に使うなんて……そんなの!
同じ考え方の人は他にもいるはず。始めは戦うことになっちゃったけど、麻子さんも茅野さんも賛同してくれた。
私みたいに半ば騙されて魔法少女になった人だって、いるはずだ。
問題は“願いを叶える為だけに魔法少女になった”人達。
私がもし自分の考えを他の魔法少女に大っぴらにしてしまったら、この人達と戦うことになるかもしれない。
南雲さんは……“どっち”だろう?
私がもし自分の想いを打ち明けたら、傍にいてくれるかな……?それとも――
あの人と戦うのだけは、絶対に嫌だ。
…………
もう止そう。明日は早いんだし。
瞳を閉じて静かに呼吸する。撮影や思考の疲れも手伝ってか、私はすぐに眠りに落ちた。
夢も見なかった。
>>286 猪間麻子
【再びオープン前日】
「いらっしゃいませー♪」
うわぁ……それにしてもこんなきゃぴきゃぴした声が出せる自分に驚き。
一夜漬けとはいえ、叔母さんの研修は徹底している。だけど、それよりもっと驚いたのが……
>「――で、何でお前らがここにいるんだよ……」
「このお店のお手伝い。むしろ麻子さんこそ、いつからここにいたの?近くにいたなら教えてくれたらよかったのに。
あれから一つも連絡くれなかったし……」
「あら理奈、この子とお知り合い?」割って入ったるは言うまでも無く、私の叔母さん。
「は、はい。友達……です」
「あーら、そうだったのぉ〜?これはこれは奇遇・遭遇・千載一遇。
南雲ちんといいこの子といい、あなた案外人を見る目があるわね。きっとあたしに似たんだわ」
「ところで叔母さん。いつの間に麻子さんに声かけてたの?昨日は全然……」
「ふっ、あたしの人徳を以てすれば必要な人材くらい呼ばなくたって向こうから自ずとやって来てくれるもんなのよ。
ねー…………麻子りん★彡」
――嘘だ!!!!
「(ぱくぱく)と、とにかく一緒に働けて私も嬉しいな。それに、制服も凄く似合ってるし、可愛いよ麻子さん☆」
>「うぅ……クソ、何か急に恥ずかしくなってきやがった……」
スカートの裾を掴んでもじもじする麻子さん。
うーん、そ、そうかな。麻子さんの場合、魔法少女のときの服と比べたら返って露出が少ないと思うんだけど……
>「いいか。お前らは何も聞いてないし、今日見た事は全部忘れる。いいな!絶対だからな!」
え?どういう意味?もしかして、新しい催眠術か何か??
【営業中の一コマ。麻子さんと会話】
>>284 坂上南雲
「ところで叔母さん」
「んー?」
「お給料のことなんだけど……」
「終わってから渡すわ。金に汚い子供は嫌われるわよ」
「『支払いを誤魔化す奴は信用するな』って言ったのは叔母さんだよ」
「ちっ」
「舌打ちしないでください……」
面倒臭そうに立てられた指の数は3本。5時間働くから、÷5。
「あの……」
「ごめんね理奈。でも、これはあなたの為なの。お手伝いの駄賃に子供がそんな大金貰ってもロクなことにならない。
『身に余るお金は自分を滅ぼす』のよ、覚えておきなさい」
「じゃ、じゃあ麻子さんはどれだけ貰えるの?」
「あの子は別枠」
「どういう意味?」
>「オーダー入りまっす!ナポリワンアメリカンワン夕暮れに佇む老紳士のひとときワン!」
「! 夕暮れに佇む老(略)。ついに注文する猛者が現れたのね……みwなwwぎっwwwてwきwたwわwwwっ!!」
「ねー」
「夕暮れに佇む老(略)は危険だから気をつけて運ぶのよ!!」
「ちゃんと答えてよ、叔母さん!」
「お腹が空いて倒れてる人には何かを食べさせる……でも、無銭飲食は許さない、それが私のポリシーよ」
「え?」
「こう言い換えることもできるわね。即ち、『働かざるもの、食うべからず』」
この人、鬼なの?
>「ま、マズい!あの客夕暮れに佇む老紳士のひとときを引っ被っちまった!早く除染しないと骨まで溶かされるぞ!」
>「ひいい!硫黄の腐ったような匂いがあたり一面に立ち込めてやがる!こいつを吸ったら一瞬であの世行きだぜ!」
>「換気だ換気!だから夕暮れに佇む老紳士のひとときを運搬するには乙種危険物取り扱い免許が要るって言ったんだ!」
「だから言ったのに。ふふ……何も無いところで転ぶのはドジっ娘属性かしら?南雲ちんたらどこまで私を楽しませてくれるの……?」
「うちにあんなメニューあったっけ!?」
「喫茶店経営には時にああいう冒険も必要なのよ。わかったらあんたもキリキリ働きなさい」
「(冒険しすぎです)はい」
【営業中の1コマ。南雲さんを眺めながら】
>>287 塞守 真衣
う゛……す、すごい匂ひ……
とりあえず……夕暮れに(略)の処理を手伝いに行こう。
窓を開けて換気。布巾を絞って…………溶けないよね、コレ?
そのとき
>「すみません、キャンディーのミルクティーと、レアチーズケーキを一つお願いします。」
「あ、はーい」
テーブルの上に本やノートを並べて勉強している女性からオーダーが入る。
喧騒の中にあってなお、そのお客さんの声はハッキリ届いた。
パタパタと駆け足。されど、運ぶときは慎重に(これ以上余計な仕事増やしたらお店の評判落ちちゃうし……)。
横を過ぎるテーブルから聞こえてくる噂話の数々。
飛び降り事件。通り魔。他人の恋話。女の子の行方不明。
大抵は知らない人の不幸話だ。蜜味。メシウマ。シャーデンフロイデ。
面白そうに話せる感覚が、私には……まだちょっとわからない。いえ、笑ってしまうときもありますけど。
「お待たせしました〜」
重たい食器にフラつきながらも、何とか無事到着!
―― ドクン
何、今の?懐に入れてある魔法核が何かを感じたような……
目の前のお客さんに視線を映す。
長い黒髪が綺麗な人だ。私より年上なのは間違い無い。
それよりも何だろう――居住まいに何処か張り詰めた感じがして、隙が無い。
この感覚、もしかして……
>「ごめんなさい、仕事の邪魔をしてしまって。どうぞお仕事に戻ってください」
「は、はいっ!」
直後、背後で夕暮れ(略)をぶちまけた現場から言い争う声が聞こえてきた。
一方は南雲さん、もう一人は……ガンダムのお兄さん?うん、多分そうだ。
なんだ、気のせいか。
【理奈、一瞬察知しかけるが真衣さんの反応を蒼月 徹さんのものと誤認】
家の戸を潜って後ろ手にドアを閉め、季節の割に冷たい風を締めだす。
「ただいま」を言えばちゃんと「おかえり」が返ってくる。萌はその程度のことでひどく安堵している自分に気づいた。
なるほど言葉というものはそれ自体が魔法だ。
家人と顔を合わせる前に部屋に上がり、即座に着替える。ジャージを履いて足を隠し、
思ったよりは酷くないがそれでも存分に血まみれのシャツを、とりあえず机の引き出しに押し込み、
タンスを漁って濃紺の長袖Tを引っ張り出す。見えるところの傷は、ジムでできたといえばごまかせる範囲だ。
下りてダイニングへ行くと既に食事の用意がされていた。
席に着いて手を合わせる萌に、母親は益体もない話を投げかける。
萌はそれに適当に相槌を打ちながら椀を傾ける。
"彼女ら"にもこんな時間があるのだろうかと、漬物に箸を伸ばしながらふとそんなことを考えた。
それから三日。
"喧嘩"を売られることも売ることもなく過ぎたその間、差し迫った問題といえば落ちない血の染みくらなものだった。
(結局、古い血液汚れに効くという漂白剤をこっそり買ってくる羽目になった)
さて、基本的に家と学校とジムとバイト先の4点間で生活している萌だが、休日ともなれば出歩くことも多い。
9時前には起きだして、タイト気味の白いパーカーにチャコールのクロップドパンツという出で立ちで家を後にした。
――などといえばいかにも無難な格好をしているようだが、
ヘビーローテーションされすぎたせいでパーカーの袖はリブが擦り切れかかっているし
ボトムも元は黒だったものが退色して炭黒に見えるだけだ。
おまけに中に着ているTシャツはサークルジャークスという残念ファッションである。
足元の、白と緑のプーマだけがなんとか及第といったところだろうか。
>>277>>284 大抵はどこでもそうだが、駅前には店が集中している。移動距離は少なく、成果は多くできるというわけだ。
幾つか店を回って目当ての本やCDを手に入れたあと、駅の反対側へ出た。
通りを少し行って、横手のウインドウをふと見やる。蒼月徹がいた。
そして一瞬遅れて、Tシャツの内側で魔法核が胎動する。
「……携帯地震速報か」
視認する前に反応してくれないことには役に立たない機能である。
詳細な人数は判然としないものの、反応からするとまだ他にも"いる"らしい。
こちらには気づかれていないようだ。萌はとりあえず手近な電柱の影に身を滑り込ませて様子を伺う。
まさか魔法少女がフツーにバイトをしていて、これまたフツーに魔法少女(?)が客として来たなどとは思ってもいないので、
(もしや魔法少女同士が生きる実感を求めて夜な夜なファイトしあう秘密のクラブでも……?
あるいは魔法少女養成所、さしずめ"魔女の穴"……いやこれはなんか駄目だ、よくわからないけど危なげな表現だぞ)
などと思考がスイングバイを繰り返して加速しながら明後日の方向へ飛んでいく。
そうこうしているうちに南雲が料理を運んできた。
(あいつもいるのか……他は)
そして、なおも店内の様子を探る萌の前で、徹に運んできたものをぶちまける。立ち上る白煙。
それを見た瞬間、萌の脳裏に閃くものがあった。
(まさかあんな店のど真ん中に躓くようなものがあるはずはない、ということは明らかに故意……。
煮えたぎった料理をぶっかけるのは映画「ウォッチメン」でも使われたメジャーな攻撃方法、
そして店内にいるであろう他の魔法少女……。つまりこれは、あのガンダム男を"やる"ために仕組まれた罠ということ……ッ!)
南雲との初の邂逅はいきなり銃撃されるというものであったが、その際の発言、「可愛くない奴は死ね」はしっかりと憶えている。
そして、蒼月徹は「可愛くない」。であるからして、南雲が他の魔法少女と手を組み、徹の排除に動いた。
以上が萌の筋書きである。哀しいかな、ストーリーテラーの才はないようだ。
(しかし、そうなると次の標的はあたしという可能性も……ここは一つあいつらの手口を見ておいたほうが……
いや、それよりも……ッ!!)
カッと瞠目する萌の、胃袋が哀しげな鳴き声を上げた。いささか朝食を軽く済ませすぎたようだ。
さらに言えばこの後はジムなので、今のうちに何か腹に入れておくべきであろう。
幸い、店内は発生したガスのおかげでちょっとした白い暴動の真っ最中、
確認できる範囲の魔法少女はその騒動に手を取られているようで、気付かれずに入店できそうだ。
どうせすぐにバレるだろうが、それはまあその時のノリでどうとでもなる可能性が高い。
ドアをそっと押し開けて店の中へ入ると、黒服にガスマスクの女性、都築ゆりかに席に通される。
「人参と山芋のスフレにコホーお飲み物はオリエンタルビューティでコホーよろしいですねコホー?」
「あ、あとこの水切りヨーグルトの抹茶ティラミスもお願いしますっ」
「かしこまりましたコホー少々お待ちくださいコホー」
呼吸音を後に残して、ゆりかはガスの只中へと去っていく。プロフェッショナルというのは偉大なものだ。
萌は、半ば以上素でどのケーキが美味しそうか選んでいた自分を戒め、周囲に観察の目を配る。
目的はあくまでも偵察なのだ。たとえ、いかに建前臭くとも。
>>287>>293 とはいえ、通された席が観葉植物の陰な上、徹がいたあたりのガスがいまだに濃く、店の半分は自動的に視野の外。
声は聞こえるものの、耳に入ってくるのはどうでもいいうわさ話や、店員らしき人物が「メディック!」と叫ぶ声くらいなものである。
近くの席に目を向けると、テーブルの上に店を広げて勉強中の塞守真衣と、盆を運ぶ理奈の姿が眼に入った。
何か違和感がある(小学生と思しき人物が労働をしているという事に、ではない)。
萌は胸元に手をやった。
魔法核は緩やかに胎動している。
理奈が背を向けて去っていく。
魔法核は緩やかに胎動している。
首にかけた鎖を引っ張る。シャツの中から魔法核が出てきた。
麻紐で編んだネットの中で、薄緑色のそれは、ごくかすかに光を放っているようにも見えた。
「……」
そのまま鎖を離して、シャツの外へ核を出しっ放しにする。
それから、買ったばかりの文庫本を引っ張り出して、注文したものが来るのを待った。
多くの人間が一度は考える『平和とはなんだろう』
ある人間はすべての武器を放棄して戦争を完全になくした世界だと、ある人はいう子供たちが草原で寝転びながら歌を歌える世界だと……
現代日本、なんだかんだとあるが世界的に見ても平和な国だ。だからこそ、若者は戦争をある種のファンタジーとして捉える場合もある
俺にも戦争っていうのが国と国との戦い以上に何かを感じられることはない
命のやりとり?そういうことを言うなら俺は3日前に初体験をすましている
経験したことのない高揚感、緊張感が全身を駆け巡り、興奮しっぱなしだった
楽しかったな〜、とああいうスリルある遊びは最高だ
注文した品を待っている間、この前の戦いのことを思い出す、そんなとき胸ポケットに入れてある携帯が振動で着信を知らせる
(このパターンは電話?あいつ、気になって電話かけてきやがったな……)
今回の作戦の立案者、妹大佐からの連絡と見て、すぐに手に取って開いた
(残念なことに俺の携帯はいま流行のスマートフォンではない、何時か買おうとは思っている)
そこに表示されたのは見知らぬ番号……すこし、引っ掛かるが俺はその電話を取ることに決めた
「もしもし、蒼月徹ですが……」
>「あっ……ぇ、…っ、う……、ぁ…」
>「あっ、あの…!!茅野、でス!……茅野いずみですっ!ええと…っ、ミミ三日前の花の眼鏡デスッ!!」
通話口の先からはひどくテンパった女の子の声が聞こえてくる
ひどく聞き取りにくかったが、なんとか『茅野いずみ』という単語を拾うことが出来た
「ああ、この前の、どうしたの?突然?」
とりあえずは人当たりのよい会話を心がけよう
>「…す、すみません、突然お電話してしまって…。……ええと……今お時間ありますか?」
まだ、いくらかの混乱?焦りが取れ、話しやすくなってくる
「ああ、大丈夫だよ。いきなりの電話でちょっとびっくりしたぐらいさ」
電話はいつも突然かかってくるもの。だが、女子高生から突然というのはなかなかにおもしろいシチュエーション
>「その…っ、電話ではお話がしづらいので、今からお会いしたいんです。……だ、駄目ですか?」
これこそ突然だ。女子高生、、、と、会うとか、下手したらタイーホじゃねぇか!
い、いや、ここで女子高生の誘いを無下にするのも……せっかく頼ってくれているのだし、断るのはかわいそうだ
ま、まてよ!罠じゃないか?……いや、そうだろう……だが、それはそれでおもしろい!
「いまはテンダー・パーチっていう喫茶店にいるんだが、よければここまできてくれない?
それなりにおご……ぎゃああああああああああああああああああああああああああああああああああああ」
茅野に取っては店名が聞こえた直後に絶叫、おかしいと思ったことだろうさ
ほんの数秒前
>「わーっ!コーヒーとナポリと夕暮れに佇む老紳士のひとときがーーっ!!」
横からはかわいらしい女子高生の声が……最後はなにかおかしかったようなこともなきにしもあらず、携帯を耳に当てたままそちらを降り掛かると
ナポリとはなんの関係もないがナポリタンという日本人の懐かしの味がまずは俺の顔面を的確に捉えた
なんという……奇襲!やるなブライト!、って熱!東方は赤く燃えているどころじゃない!
頭がやられた!まだだ!まだメインカメラがやられただけだ!……だが、アムロさん、人体のサブカメラの位置を教えてください
あたなにかが……そう、なにかが股間に落下した
液体がかかったぞ、冷たいく、シュワシュワする……炭酸かなぁ…… いや、違う…違うな。炭酸は、もっとォ、バアッ!ってなるもんなー
いやいやいや、ばあっとなってるよ!カミーユ!お前の頭より俺の股間が彗星だよ!
俺にこれらのものをぶちまけたのは女の子であることは声から予想はつくおそらくはかわいいだろう
かわいい子が自分の股間に飲み物?をぶちまける……よくある妄想シチュエーションだが、全国の男共に一つだけ忠告がある
死ぬほど痛いぞ、と
店内に広がる白煙と腐乱臭、さらにガスマスクの女主人が暗躍
「はいは〜い、お客さんはさがって、さがって!バイオハザードが発生しているからね」
まったく朗らかに言うべきことではないが、あまりの股間の激痛に俺の意識は虚空の彼方に消え去った
茅野いずみが初めて異性を意識するようになったのは、中学生の時。
ある日の友人の一言が始まりだった。
実はクラスに好きな人がいる、どうか協力して欲しい。
比較的同級生達と仲の良かったいずみは、自分なら役に立てる、と思ってその申し出を快く引き受けた。
その男子に好きな人がいるのかどうか、それを聞き出してもらえないだろうか。
もちろん自分に頼まれたということは内緒で、という条件付きだった。
回りくどい物言いは意図的に避け、単刀直入に聞き出すことに決めた。
……くんって、今好きな人いますか?
校舎裏に呼び出したのはいずみからで、最初に言葉を切り出したのも同様に。
まるで天気の話でもするかのように、さりげなさを装いながら。
すると……は一瞬驚いたような目でいずみを見たかと思えば、顔どころか耳まで真っ赤に染めて俯いた。
…な、なんでそんなこと聞くんだよ…
熱でもあるのかと心配しながらも、友人からの頼みを優先する為、話を続ける。
少し考えこむようなフリをしてから。
ええと……単純に気になるからなんですけど。…駄目、ですか?
すると弾かれたように顔を上げる……、二人の視線がかち合う。
………れ、は
……?あの…、ごめんなさい。よく聞こえま…
お、俺は……お前が好きだッッ!!
良く言えば王道、悪く言えば古典的。
今時の少女漫画でも有り得ないような粗大ゴミレベルにクサすぎる展開を経て、いずみは男性を異性として認識、意識するに至った。
そしてこの日から、昼ドラ展開を地でいくような三角関係が幕を開けることになったのだが。
今はそんなことよりも――
>「いまはテンダー・パーチっていう喫茶店にいるんだが、よければここまできてくれない?
「テンダー…パーチ?ですか…」
そういえばそんな名前の店の話をしたような、教室での友達との会話を思い返す。
確か場所は……
「…分かりました。すぐに行きま……――」
>それなりにおご……ぎゃああああああああああああああああああああああああああああああああああああ」
突如携帯のスピーカーを通じて家中に響き渡る絶叫、思わず耳から離す。
携帯を凝視したまま身動き出来ずにいたが、すぐに思い出したように再度携帯を耳に当てて蒼月に呼び掛ける。
「も…もしもし…!?蒼月さん…?だ、大丈夫ですかっ!」
蒼月の返事はない、というよりはどよめき声が煩く、何も聞こえない。
ただ「骨まで溶かされる」やら「メディック!」やら物騒なキーワードを拾えた程度だ。
――…これは、まさか…
もはや会話が成立していない通話を切ると、急いでいつもの制服に着替える。
――蒼月さんは魔法少女の襲撃に遭った…?
あの悲鳴は明らかに不意を突かれて出たような声だった、つまり突然攻撃を受けたに違いない。
それが魔法少女の仕業ではなかったとしても、蒼月の身に人為的な危険が及んだのは確実だ。
何にしろ丸腰で行くのは自殺行為だ、魔法が使えるのなら話は別だが。
いずみはすぐさまキッチンに向かうと、今朝洗ったばかりのコップや皿に混じってギラリと光る一物を握り締めた。
怪我をしないように新聞紙で包み、学生鞄の中にそっと忍ばせる。
次に調理用具が入った棚を開き、“パンはパンでも硬くて食べられないパン”でお馴染みのアレを取り出す。
そして、それも同様に鞄の中に。
「…急がないと、蒼月さんが危ない」
逆に危険人物と思われかねない装備を詰めた学生鞄を手に、いずみは家を飛び出して行った。
「っ、はぁ……はぁ……。こ、ここ…?」
息も切れ切れに辿り着いたのは、他でもない『テンダー・パーチ』。
看板にそう書かれたその店は、外から見た限りでは普通の店だった。
この場合での普通というのは、決して飛び抜けた物がないという意味ではない。
そこはむしろ普通ではない、気品漂う中にも可愛らしさがアクセントを放つ外観はとてもオシャレだった。
普通ではないというのは、つまり傍目には何もないように見えるということ。
心なしか一部の窓が白煙で曇っているようだったが、いずみはそれには気付かない。
店内へと通じるドアの脇に身を潜ませ、学生鞄から新聞紙に包まれた物体を取り出す。
その端を引っ張り勢い良く剥がす、すると中から現れたのは……
「“これ”なら私でもなんとか戦えるはず…」
鉈だった。
一度は包丁を持参しようとしたが、これでは心許ないと思い直し、家にとんぼ返り。
そして持ってきたのは、大振りの刃が暴力的に煌めく鉈。
「ええと、それと……」
そこでもう一つ、取り出す。
同じように新聞紙で包まれた物体、先ほどと同様の動作でそれを剥ぎ取る。
そうして現れたのは、ノコギリだった。
一度はフライパンを持参しようとしたが、これでは心許ないと思い直し、家にとんぼ返り。
そして持ってきたのは、獰猛な獣の牙のようにギザギザの刃が狂気的に煌めくノコギリ。
「うん…これで大丈夫」
危険人物に対抗する為の武器を改め、慎重にドアノブに手を掛ける。
やっぱり怖い、急に襲われたらどうしよう、中に誰もいませんように、必死に願いながらノブを捻る。
ノブが回り、端まで到達したのを確認した後、躯ごとぶつかるようにして押し開けた。
店内に突入するいずみ、右手に鉈、左手に鋸という常軌を逸した出で立ちで。
「そっ…そこまでです!!蒼月さんを離しなさいっ!!」
だが、そこに蒼月の姿はない。
代わりにガスマスクを着けた得体の知れない女性が何事かと顔を出した。
「あらら、オープン初日で強盗?これってある意味ついてるのかしら!」
「きゃあああぁぁっ!?…え、誰…というか何…!?」
「テンダー・パーチの店長でっす☆」
――絶対嘘だ。ガスマスクを着けた喫茶店の店長なんて聞いたことがない。この人、変人?
「も…もしかして貴方が蒼月さんを…?いっ、今すぐ蒼月さんを出しなさい!!」
「お金を要求しないで人間を要求する強盗!新しいっ!それって新ジャンルかしら」
「ふざけないでください!わ…私は…っ、本気なんですから!」
両手に握った鉈と鋸を前に突き出し、ガスマスク店長を精一杯威嚇する。
【喫茶店内、現れたガスマスクゆりかさんと対峙(?)】
【本当に攻撃しようとは思っておらず、鉈と鋸はあくまで護身の為】
【ブラック魔法少女 壱斬 千渦 編 第弐話 『平穏偽装』 】
「きええええええええええいっ!!!!!!」
巨体といって差し支えの無い男が絶叫と共に放った、竹刀による縦一線。
腕力の上に技術が加算されたその一撃は、まともに受ければ大の大人であろうと
骨を砕く程の威力を保有している。つまりそれは「技」としての域にまで達した一撃。
例え剣道を齧っていた事のある人間であろうと、それを避ける事を出来る者は少ないだろう。
しかし――――
「――――」
「っ……くそおっ!!どうして当たらねぇんだよっ!!」
放たれた豪閃が相手を捕らえる事はなかった。
ただ空を切り、大気を揺らすに留まる。
攻撃を外した――――いや、外されたその男は苛立ちを隠さぬ瞳で
息を切らせながら目の前の相手を睨み付ける。
「――――遅いからよ」
その視線への返事は、凛とした静かな声だった。
恐るべき事に、そこに居たのは、巨漢が放った一撃をそよ風の如くいなしたのは、
絹の如き黒髪に人形の如き美を宿す、隻腕の少女であった。
その少女の淡々とした言葉を聞き、見る間に巨漢の顔が紅くなる。
侮辱された、と思ったのだろう。この巨漢、技術こそ在るが如何せん精神面にかんしては未熟が残る。
「ふ、ざけんな!!俺は全国区の腕前だぞ!?テメェみたいな女に速度で負ける筈があるかっ!!」
「……そう思うならそうなんでしょうね。貴方の中では」
対峙する少女が冷静であり、汗の一つすらかいていない事で、ますます巨漢の怒りは膨れ上がる。
そして、羞恥か憤怒か高慢か。巨漢はとうとうこの試合のルールを破ってしまった。
すなわち「突き」の禁止。この試合を始めるに当たって、危険だからと双方が同意したルール。
それを男は破った。そして――――その突きは男のどんな攻撃よりも速かった。
(ふん、俺は突きが一番の得意技何だよ――――え?)
そう、確かに速かった。が、遅かった。
「危ないって言ったわよね」
直後、男の竹刀が縦に圧縮され、膨らみ、砕け散った。
男は最後まで何が起こったかも判らぬまま、竹刀の破片に眉間をしたたかに撃たれ、意識を失った。
この刹那、なにが起きたのか――種明かしをすると、それは実に単純な事である。
黒髪の少女が、相手の突きに対して寸分違わぬ異常な精度を持って
相手の竹刀の頭に「合わせ」て突きを放ち、その余りの速度と威力に巨漢の突きは撃ち負け砕けたのだ。
「今時、道場破りなんて流行らないわよ」
この試合、心技体、全てにおいて隻腕の少女――――「一斬千渦」の圧勝であった。
千渦は竹刀を床に置くと、タオルで少しだけかいた汗を拭き、用意してあった麦茶を飲む。
先ほどの時代遅れの道場破りを外へと放逐した今、この道場には一人として人影は無かった。
ただただ静謐が支配する空間。まるでその主であるかの様に、飲み干した麦茶のコップを床へ置くと、
千渦は障子を開き、道場の庭を眺める。
「……まだ帰って来ないみたいね。あの爺は」
爺……少女が呟いたたその人物は、この『道場』の本来の主の事である。
一文字鉄砕(いちもんじ てっさい)。かつて大きな大会で何度も優勝し、
多くの剣道家から剣聖と唄われている人物。
最も、その実体はエロ爺なのだが、それでもその強さと築きあげた人脈は本物。
達人という言葉が相応しい人物で、現在の千渦の身元引受人でもある。
そんな訳で、千渦は鉄砕が用事――――(キャバクラ通いなのだが千渦は知らない)を済ます間、
居候としてこの道場の保全や稀にやって来る道場破りの撃退に勤めているのであった。
「……」
千渦はやがて障子を閉めると、道場の隅で正座をし、静かに目を瞑り、身動ぎ一つしなくなった。
一本の芯でもあるかの用に「しゃん」と伸びた背中。
その姿勢の美しさは、まるで千渦をまるで美術品の様に魅せる。
と、そんな感じで一時間ほど瞑想していたその時。
道場の近所であろう。直ぐ近くから喧騒が聞こえてきた。
それにもみじろぎせず静かに座った千渦だが、その脳裏には疑問符が浮ぶ。
果たして、この近所にそんな騒がしい在っただろうか。
そう思い――――そして、そういえば今日が近所の喫茶店の開店日だという事に思い当たった。
基本的に外出をあまりしない千渦は近所の事と言えど、聞き流す程度にしか
覚えていないのだ。
だが、今回千渦はその騒ぎに関わるつもりは無かった。
元々人付き合いを好む性格でもない。そのまま沈黙し、自身の内面の奥へ奥へと瞑想を続ける。
【ブラック魔法少女 鷹河明日香編 幕間 「明日香はどっちだ」】
明日香が魔法少女になってから、日常にある変化が訪れた。
今まで自分を担当していたトレーナーがジムを辞め、新しく雇ったトレーナーが自分を担当することになった。
それだけなら、よくある些細な出来事であるはずだった。
なんと、トレーナーとしてやってきたのは、明日香に魔法核を渡した眼帯のオヤジだったのだ。
「ゼィ…ハァ…ゼェ」
いつもどおりのロードワーク、だが、明日香の様子がいつもと違う
肩で息をし、顔には大粒の汗を浮かべ、足取りは重い
「こらぁ!まだ休んでいいっつってねぇぞ」
その後ろから原付に乗った親父が明日香の後を追い、尻を叩く(直接的な意味ではなく)
「ハァ…そんなムチャなぁ」
思わず明日香はそう漏らす
「口答えすんじゃねぇ!もう五キロ加重だ」
オヤジは即座に指を鳴らした瞬間、明日香の動きが止まる。
明日香の疲労の原因、それはオヤジの魔法によるものだった
明日香は現在おおよそ40kgの負荷を負わされた状態でいつも通りのトレーニングをさせられていた
(流石にこの段階はまだ早かったか?)
オヤジは一旦原付を止め、明日香の様子を伺う。ことによっては負荷を軽減させようかと思ったが
「フンギィィィィ!!!」
予想を裏切るように再び明日香は動き出した。
しばらくして
「うし!このへんで休憩にするか」
と喫茶店「テンダーバーチ」の前でオヤジが止める
「や…やったぁ」
明日香はふらふらな足取りで店のドアに手をかけようとした瞬間、動きが止まる
また加重された訳ではなく、店内の異常な状態に気がつき手が止まったのだ。
「の前に、ちょっとスパーでもするか」
店内の状況を明日香以上に把握していたオヤジは明日香の耳元でそう呟くと
思いっきり明日香を突き飛ばし、強制的に入店させた。
「いたたたた…いきなり何するんでうわぁ!」
振り返り、オヤジに文句を言おうとした瞬間、目の前にあったのはいずみが握る大鉈の先端部だった
「わッわっわ…」
驚きのあまり後ずさりしたところを、ゆりかが捕まえる。
「あらヤダ!あなたもしかして女子ボクサーの鷹河さん?ちょうどいいところにきてくれたわね」
逃げられないようがっしりと肩を掴みゆりかは話しかける
「今強盗に入られているんだけど、どう?やっつけてくれない?やっつけてくれたらうーん?」
「え…あ…はぁ?」
「しばらくの間、ケーキとドリンク只にしてあげるわ!まかせて、私ダイエットメニューも得意なの♪」
と掴んでいた手を離し、軽く背中を押される。
「さぁ皆さん本日のメインイベントのはじまりはじまり!」
ゆりかがゴング代わりにティースプーンでカップを叩く
(スパーってこういうことだったのかぁ)
オヤジの言葉の意味をようやく理解し、即座に拳を構える。
「あの…なにかの間違いとかイタズラの類だったならそれを早く捨ててください。私、本気でいっちゃいますから」
万が一のために、明日香はいずみに警告する。
答えがNOだった場合、明日香は即座に左ジャブを打ち出すかもしれない。
【ゆりかといずみの中に割って入り、いずみと対峙
ちなみにオヤジは既に店内でくつろいじゃってます】
>「それなりにおご……ぎゃああああああああああああああああああああああああああああああああああああ」
店内に響き渡るガンダムさん(私服)の悲鳴。
彼の股間からはもうもうと煙というか化学スモッグ的な気体が発生し、ズボンの生地を溶解させていた。
「お、おきゃくさまっ!只今お拭きいたしま……ぎょえああ!」
「うひい!店員Aがやられた!メディック!メディ〜〜〜〜ック!!」
>「はいは〜い、お客さんはさがって、さがって!バイオハザードが発生しているからね」
ガスを吸って志半ばに倒れる同僚、その身体を掻き抱き慟哭する同僚。
ガスマスクを着用した店長がオーダー帰りに颯爽と現れ、理奈を伴って事後処理に尽力している。
「うう……ごめん理奈ちゃん……君のような若い世代にまでこんな責務を……」
南雲は唇を噛み締めながら俯いていた。もちろんエプロンの裾をきゅっと掴むのも忘れない。
これをやるのとやらないのとでは発生するリビドー係数(いわゆるひとつの萌え要素)が段違いなのである。
夕暮れに佇む老紳士のひとときという名のバイオハザードはその爪痕を人々の心に何時までも刻み続けるだろう。
そう、たった一人の不運にして哀れなる男性客と男性機能の犠牲によって……!
(いやいやいや)
それではいけない。責任というものは、例え履行できなくてもとらんとする意志こそが肝要。
六法全書も最高裁も伊藤誠もそう言ってる。相手の心証次第では示談の道もあると。
「わかりました……この坂上南雲、責任をとります!責任持って新しいモノで弁償をば!」
最近の性転換技術は発達しているというし。
溶けたガンダムさんのガンダムな部分をこう、新しく成形し直す的な手術を……。
「とりあえず当面はキッチンよりご用意いたしましたこのバナナで手を打っ」
>「そっ…そこまでです!!蒼月さんを離しなさいっ!!」
バナナ片手にガンダムさんに迫ろうとする南雲に、背後から牽制の声がかかった。
振り向くと、これまたいつぞやの花の魔法少女が――鉈と鋸の二刀流でエスタークのように仁王立ちしていた。
「積極的に切断する方向のオペですか!?」
そんな大味な刃物で切った貼ったできる部位なんでしょうか。中に誰もいないと思うんですが。
ていうかガンダムさん蒼月さんって言うの。めんどくさいからガンダムさんで統一するけど。みたいな思考の上滑り。
>「あらら、オープン初日で強盗?これってある意味ついてるのかしら!」
>「ふざけないでください!わ…私は…っ、本気なんですから!」
魔王と対峙する勇者の如く、現れたるは店長。でもこっちもこっちでかなり悪魔っぽいビジュアル。
鉈女vsガスマスク女という、B級企画映画のような好カードにオーディエンスは湧きに湧いた!
「すげェ……!この勝負、どう転ぶかわからねえぞっ……!」
「一見武器持ちの鉈女が有利に視えるが……しかし店長も侮れん。なんてったって夕暮れに(ryを創り上げた女だ」
「オッズは1:1,2ってところか。さあさ、張った張った!睨み合いに突入した今が賭け時だよ!」
>「あの…なにかの間違いとかイタズラの類だったならそれを早く捨ててください。私、本気でいっちゃいますから」
ついにはトトカルチョまで始める者が出始めた頃、店長は召喚魔法を唱えた!
ギャラリーの中から選び出される一人の少女。店長曰く女子ボクサー歴戦の雌だとかなんとか。
>「さぁ皆さん本日のメインイベントのはじまりはじまり!」
鉈女vs女子ボクサー。
なんかもう色々と収拾のついてない戦いはさておいて、店長は通常業務に戻らんとばかりに厨房へ引っ込んでいった。
流石は自称1000の資格を持つ女。店員のミスから起きた乱痴気すらもエンターテイメントに変えてしまったのだ。
南雲はそんけいのまなざし(棒読み)でそれを見送りながら、自分も配膳途中の品があったのを思い出して踵を返した。
>「――で、何でお前らがここにいるんだよ……」
「わお、麻子っちゃんじゃん」
店長と入れ替わるようにフロアに出てきたのはこれまたいつぞやの……鎖の魔法少女。
猪間麻子と名乗った彼女は、テンダー・パーチの制服に身を包んでもじもじしていた。
なんでここに?とか、どこからここに?みたいな疑問は置いといて、南雲はとりあえず率直な感想。
「よく似合ってるよー。でもよく似合うサイズの制服が理奈ちゃんのも合わせて2着もあるのはどういうことなんですか店長」
「あらあ、アタクシ1000の資格を持つ女よ。こんなこともあろうかと用意するなど造作もないわ☆」
「想定してちゃマズいケースだと思うんですが!なに小学生雇うこと前提で経営してるんですか!?」
「雇用じゃないもーん。麻子りんはちょーっとした恩返しとしてお手伝いしてくれるんだもんね?ね?」
いいのかそれで。それでいいのか労働基準法!ナメられすぎじゃないの!
いよいよ追求してはいけない闇に触れた気がするので南雲は手を引いた。麻子っちゃん、君の犠牲は忘れない。
>「いいか。お前らは何も聞いてないし、今日見た事は全部忘れる。いいな!絶対だからな!」
「いやぁー?お姉さんちょっと忘れられそうにないかなー。夜寝る前とかに思い出してニヤニヤします」
これだ。店長と会話してるとどうにも突っ込み側に回ってしまう気がするので。
こうやって小さい女の子をニヤニヤからかってるときが一番輝いてる気がする。
フロアの方では鉈女vs女子ボクサーが白熱のデッドヒートを繰り広げているさなかのようだった。
騒ぎに加わらない一部の静かな客は、熱狂する取り巻きを横目に見て嘆息する。
「ったく……喫茶店だってのに静かにできないのかねえ連中は。理奈ちゃん可愛い」
「まったくその通り。紳士は厳かにアフタヌーンティーを嗜んでこそですな。理奈ちゃん可愛い」
「ですなですな。我々は紳士なので。店員も客に劇物ぶち撒けるようなドジっ娘(笑)ですし。あ、理奈ちゃんは可愛い」
(駄目な紳士たちだっ……!)
開店一日ではあるがそろそろこの喫茶店の集客傾向が見えてきた。
テンダーパーチの客層が大別して二つ。店長の放つお祭り騒ぎのエンターテイメントを騒いで楽しみたい層と。
レベルの高いと評判の女子店員を愛で眺め肴にしつつティーをしばくといった自称紳士層。彼らは後者。
「このロリコンどもめ!ガチ刑法に抵触する小学生になんかいつまでも固執してんじゃあないっ!
ここは食べごろ熟れどきピチピチメリハリぼでぃーの16歳、坂上南雲一等接客兵と楽しくお話しなーい!?」
南雲は紳士たちへ向けてしなを作った悩殺ポーズ。紳士たちは一瞥して、それから互いに顔を付き合わせた。
「然るに政治とは施政者の側も模索を繰り返している分野も多く、なかなか打開策が見出せない部分は否めんよな」
「しかし君、現代政治とは民主主義が殆どだ、往時の封建制のように苛烈な打ち壊しは起きにくいのではないかね」
「まあ待たれよご両人、蜥蜴の尻尾切りと言うように模索のち不可分を除いて不要部分を切り捨てるなどどの時代でも」
「こ、高度の政治的な問題を議論し始めた……!?」
なんでだ。
彼らの紳士力を減衰せしむるなにやらでも南雲から放射されたのか、いやはや。
ジト目で睨みつけると、紳士たちは慌てて取り繕うようにして手を振った。
「や、だって歩く炉心幼壊と言わしめた理奈ちゃんならいざ知らず、南雲ちゃんってリビドーからは程遠いじゃん?」
「デートのときにペットボトルで凍らせた麦茶持参しそうだし」
「ファミコンのカセット吹くんじゃなくて端子舐めそうだし」
「失礼な想像をするなーっ!流石にファミコンは古過ぎるわ!せめてスーファミとかゲームキューブでしょ!」
あと麦茶凍らせて何が悪い。
「あーすまん、そうだったな。ファミコン世代はてんちょぶべっ!?」ドパンッ!
そのとき、南雲の耳の傍数センチを横切って何かが背後から前へ飛んで行った。
次の瞬間喋りかけた紳士の一人、その顔面が白く染まっていた。眼と鼻と口の区別もつかぬまま分厚い何かに覆われている。
飛んできたものの正体は生クリームのたくさん乗ったパイ。飛んできた元の方向は厨房の奥。
「てんちょー、食べ物を粗末にするのは流石にどうかと……」
「あらあ大丈夫、そのパイはその客に出す予定のだったから☆お客様のお口にダイレクトに配膳しただけ♪」
合理的な口封じだった。
「ところで店長」
「なあに南雲ちん?」
「ファミコン世だいえなんでもないです仕事に戻りまっすラララ勤労の喜びーーっ!」
店長が巨大な中華鍋を振るっているのを見た南雲は回れ右。まかないがダイレクト配給されかねない。
紳士はもごもご言いながらパイを剥がさんとじたばたしていたが、やがて力尽きた。なまんだぶ。
ガンダムさんを巡ったキャットファイト(?)も佳境に入っているようだ。オーディエンスの白熱は止まない。
>>293 >>296 (時系列は気にしない方向で)
「おりょ?理奈ちゃん、どったの?」
客の一人となにやら話していた理奈が首を傾げながら戻ってくる。
歳は理奈や麻子とさほど変わらないか少し上の、女子中学生風の少女。
果たせるかなその娘を視界に入れた途端、南雲の魔法核もまた反応した。
(これは――)
女子中学生だけではない。
観葉植物の傍の席で読書する少女や、オーディエンスの外で女子ボクサーを応援する禿げに眼帯の中年男性からも。
同様の違和感というか、波長――魔力の気配が感じられる。中年男性に到っては比べ物にならない規模だ。
似たような膨大さに覚えがあった。南雲の契約した悪魔、あのチンピラ悪魔と同質の魔力。
そして。
「理奈ちゃん、アレ……!」
理奈の制服を引っ張って、気取られないように身体で隠しながら指をさしたその先。
喧騒も気にせず読書を続ける少女――どこかで見たような気もしたが、彼女の首から下がったペンダント。
ゆっくりと呼吸するように明滅するそれは、紛れもなく魔法少女の願いの源、魔法核だった。
ガンダムさんといい、花の魔法少女といい、理奈や麻子や自分といい、そして新手の者たちといい。
「魔法少女率、凄いことになってない?」
【日常の一幕】
【萌ちゃん(変身後のインパクト強過ぎで変身前は南雲主観では初対面)の魔法核を見て理奈ちゃんに耳打ち】
>「いやぁー?お姉さんちょっと忘れられそうにないかなー。夜寝る前とかに思い出してニヤニヤします」
「よーしいい度胸だ。一生忘れられねえようなトラウマで今日という日を忘れさせてやるよ」
獰猛な狼の笑みが、麻子の表情に舞い戻った。
不敵な歩調で彼女は南雲へと歩み寄り――
「お客様ぁ、このお店は初めてですか?初めてですよねぇ。オープン初日ですもんねぇ。
私お客様に是非食べてもらいたいオススメメニューがあるんですけどぉ……いかがですかぁ?」
そのまま通り過ぎ、語尾に逐一『♪』や『☆彡』が付きそうな声色と口調でお客様の傍に立った。
返事は聞かない。鼻の下を伸ばして呆然とする客を視界から外し、狂乱の最中にある厨房へ一声。
出てきた料理は、夕暮れに佇む老紳士――因果応報の象徴を、麻子が両手で抱えた。
「あぁ、安心しろよ。ぶち撒けるなんて野蛮な真似はしねぇさ」
打って変わって晴れやかで愛嬌に満ちた、花びらが舞うような笑顔を浮かべる。
裏側から、隠し切れないどす黒い地獄の瘴気を漂わせながら。
「けど……お客様に食い物をぶち撒けるような悪い店員には、指導が必要だよなぁ?」
更に歩み寄る。同時に極々細い鎖で店内の椅子を操作し、南雲の背後へと運んだ。
後退りをすれば丁度足を引っ掛け、腰を下ろしてしまう位置だ。
そして一度着席してしまえば、不可視の鎖が南雲を雁字搦めにするだろう。
「ほら、お客様には誠心誠意、愛を込めて、こうやって接するんだよ。はい、あーんっ……ってなぁ」
異様に柄の長いスプーンで掬った夕暮れに佇む老紳士を、南雲の口にゆっくりと近づける。
南雲とスプーンの距離が近づくに連れて、麻子の悪辣な笑みが濃度を増していく。
「――まったく、賑やかなのは良い事だが……喫茶店と言うのは本来憩いの場であるべきだ」
不意に、入り口から響いた声。
「もう少し『静粛に』……だよ。諸君」
スーツに身を包んだ、若く怜悧な雰囲気の女性が一声――瞬間、全ての騒動が収束した。
南雲の目と鼻の先にまで迫っていた夕暮れに佇む老紳士は揮発したかのように消え去り、
蒼月にぶち撒けられたナポリ混じりの劇物は、店員の抱える耐蝕容器に収まっている。
「えっと……これ危ないので、お預かりしますね。あっ、急に話しかけてごめんなさい!」
茅野の背後から滑らかな動作で鋸と鉈が没収された。
年の頃は恐らく茅野と同程度。黒髪のお下げに眼鏡を掛けて、地味な少女だった。
接近を気付かせない動作だが、高い技術の賜物と言う訳ではない。
気配も足音もあった。ただ、存在感があまりにも欠如していただけで。
「ほらほら、アンタもさっさとそれ下ろして」
言葉と共に明日香に歩み寄る少女――短髪に淡青色で控えめなフリルTシャツとデニムスカートにスニーカー。
明日香の間合いの外で両手を上げて、手のひらをひらひらと踊らせる。
「可愛い女の子が鼻血ブーとかマニアック過ぎでしょ?」
と、次の瞬間、少女は明日香の目の前にまで距離を詰めていた。
明日香の拳に、彼女の手のひらが被せられる。
『……君達は魔法少女だろう?なに、取って食ったりはしないよ。少し話がしたいだけさ。安心してくれ』
魔力による意思疎通、念話が発信される。
「ふむ、誰でもいいんだがね。騒ぎが収まったのなら席に案内してもらえるかな?」
注目を散らす為に一言、不可解な現象に対する疑問を、義務で押し流させた。
何食わぬ顔でスーツの女性は紅茶とケーキのセットを注文する。地味めの少女が念話を引き継いだ。
『えっと……まず誤解しないで欲しいんですけど、私達に敵意はないんです。ほ、本当ですよ!ウソじゃありませんからね!』
一人勝手に慌てふためいている所に店員が声をかける。
地味めの少女の動揺ぶりに拍車がかかり、溜息交じりに短髪の少女が続ける。
『ちょっと頼みたい事があるのよ。アンタらにとっても、多分悪い話じゃないよ。
少なくとも喫茶店で血みどろバトルをおっ始めるよりかはさ』
スーツの女性が注文を終えた。二人の少女に目配せで、後は自分が説明する旨を告げる。
『まあ聞くだけ聞いてくれ。まず……私達の説明からさせてもらおうかな。
私達は『楽園派』と呼ばれる派閥を組んでいてね。簡単に言えば、ハト派って事さ。
夢を奪われるつもりも、奪うつもりもない。徹底した専守防衛。ハトだって百羽いれば、タカを追い返す事くらい出来る』
まずは自己紹介。
『私はその責任者みたいなものさ。恥ずかしながら、『楽園』の中では最年長の魔法少女でね。
っと、申し遅れたけど、私は苗時静(なとき・しずか)だ。よろしく』
はっと気が付いて、地味めな少女も後に続く。
『あっ!も、申し遅れました!私、目立零子(めだち・れいこ)って言います!』
更に短髪の少女も。
『私は駆走知史(かばしり・ちふみ)、よろしくねー』
『さて、話を続けさせてもらうよ。次に知ってもらいたいのは……この新聞だ』
テーブルの上に大きく――横目で見ようと思えば見えるように、新聞紙が広げられた。
『失踪者の帰還や原因不明の昏睡からの回復がここ数日、全国で相次いで起きている。
単刀直入に言うと彼らは敗北した魔法少女で、全ては悪魔の差し金だ。
とは言え、悪魔が慈悲の心に目覚めたと言う訳ではなくてね』
辟易と嫌悪が入り交じった溜息が零れる。
『彼らは夢と心の代わりに、絶望を与えられた。
そしてそれが、失った物を取り戻す為に魔法少女を襲えと駆り立てる。
他人の夢や心で、自分の喪失感が埋められる訳はないのにね。
悪魔達からしてみれば、彼らは……そう、ボーナスキャラのような物なのだろう。
魔法核を奪い続ける彼らを倒せば、きっと多くの魔法核が手に入る』
口の中に広がる苦い感情を塗り潰すべくケーキと紅茶を一口。
一度、静が店内の魔法少女達に視線を配った。
『私達は彼らを『亡者』と呼んでいるが……まぁここまで言えばもう察しは付いているだろう。
この辺りでも、『楽園』の住人が亡者に襲われている。君達には、ここら一帯の亡者を排除して欲しい。
勿論、報酬はある。亡者の持っていた魔法核に加えて、私達が正当な防衛の結果得た魔法核も明け渡そう』
魔法少女ならば誰もが魅力を感じるだろう報酬。
『……本当は、そこの狼さんに頼みに来たんだけどね。
こんなにも小鳥がいるのなら、『楽園』への体験入園を兼ねてもいいかもしれないな。
悪意がない事を前提に、私達は来る者を拒まない。平和な日々を取り戻したかったら是非言ってくれ』
お世辞にも好意的とは言えない視線に猪間麻子が、微かに両眼を細めた。
『……いいんじゃねぇの?行って来れば。悪いけどアタシはまだここに用があるんでね。
遠慮しとくよ。アンタ達『楽園』からすれば、アタシはブラックリストの筆頭だろうしな』
改心したと告げた所で、信じてもらえる訳もない。
淡々とした口調に微かな皮肉を込めて、投げ返した。
『体験入園の会場は既に用意してある。君達に野心か、平和への渇望があるのなら、すぐにでも案内させてもらうよ』
――鉄砕の道場へ、また一人踏み入る者がいた。
恐ろしい巨躯を誇る訳でもなければ、修行で凶相に歪んだ面をしている訳でもなく。
挑戦者は、白衣に白袴を矮躯に纏う、黒髪を後ろで一つに束ねた、端麗な容姿の少女だった。
腰には黒い鞘に収められた、真剣を差している。
「……手合わせ、願えますか」
言葉は尋ねる形だが、言葉は有無を言わさぬ響きを秘めていた。
千渦を前にして、少女は静かな声色と共に刀を抜く。
少女の小さな体躯から俄かに、熾烈な気迫が溢れ出した。
横溢するのは気迫だけではない。魔法少女特有の気配も混じっている。
構えは正眼、一足一刀の間合いまで躙り寄る。
そこで、静止した。あと一歩踏み込めば、刃が届く。
だが動かない。己の刃が届く距離とは、即ち相手にとっても必殺の間合い。
無論、少女――影野刃月(かげの・はつき)とて、生半可な太刀筋を見せるつもりは毛頭ない。
それでも動けない。相手は隻腕だと言うのに――
前進と同時に突き、いなされて首筋を刃で撫で切られる。
上段、初動を見抜かれ踏み込むと共に腹を裂かれる。
下段、躱されて刀を戻す前に上段から深く斬り付けられる。
――勝てる手立てが、流れが見えない。
「……凄まじい手練と、お見受けしました」
敵意を消し去りながら一歩、畏怖に負けて二歩、刃月が後退した。
刀を収め、頭を下げる。
「突然の無礼をお許し下さい。貴女の実力がどれほどの物か、確かめる必要があったのです」
そして刃月はその場で正座をして、両手を床について説明と懇願を始めた。
亡者、楽園、依頼、報酬、見学――『楽園』の意図を残さず告げる。
「決して悪い話ではない筈です。どうか、お力添えを願えませんでしょうか」
【亡者の軽い説明→夢と心を無くした空洞が絶望で埋まりきった元魔法少女。魔法核を求めて魔法少女を襲う。
『楽園』→奪うも奪われるも嫌な魔法少女達の集まり。防衛と報復以外の全ての戦闘を放棄している
亡者を倒して報酬が欲しいor楽園に興味があるなら招待するよと勧誘】
>>297 蒼月 徹
>>300 茅野いずみ
>>306 鷹河明日香
>>307 坂上南雲
>「それなりにおご……ぎゃああああああああああああああああああああああああああああああああああああ」
夕暮れに佇む老紳士のひとときをまともに受けたガンダムのお兄さんから、命の砕ける音が聞こえた。
夕暮れに佇む老紳士のひとときがお兄さんのズボンの大事なところに穴を開け、肉の焼けるような匂いと共にあたりを白煙が包み込む。
白い闇の向こうから悲鳴が聞こえなくなるのと同時に、お兄さんのシルエットも動かなくなった。
……夕暮れに佇む老紳士のひとときって、必殺技だったんだ。
って、おいっ!流石にそれはまずいだろっ!
喫茶店のメニューで人死にが出るとか聞いたことないんですけどっ!?
「理奈〜?コホー」
ひいぃ!叔母さんがフォースの暗黒面に……!!しかし、もともとそれっぽい人なので全く違和感を感じない。
……ところでそれ、何を被ってるんですか?
「ガスマスクよコホー」
>「お、おきゃくさまっ!只今お拭きいたしま……ぎょえああ!」
>「うひい!店員Aがやられた!メディック!メディ〜〜〜〜ック!!」
私たちの分は?
「無いコホー」
……もういいです。突っ込むのも疲れてきました。
>「うう……ごめん理奈ちゃん……君のような若い世代にまでこんな責務を……」
嫌です!こんなことで人の命なんか背負いたくありませんっ!
>「わかりました……この坂上南雲、責任をとります!責任持って新しいモノで弁償をば!」
その手に持ったバナナはナンデスカッー!?
あれ?何だか私、結局突っ込み役になっちゃってるよ……だって二人とも何処まで本気わかんないんだもん!
>「そっ…そこまでです!!蒼月さんを離しなさいっ!!」
そのとき、店の入り口から聞き覚えのある声が意を決するような響きで聞こえてきた。
【続く】
>>300 茅野いずみ
>>306 鷹河明日香
>>309 坂上南雲
この声は……
茅野さん――っ!?
忘れもしない。南雲さんやお兄さんさんと一緒に生死の境を彷徨っていた私を助けてくれた人だ。……自らの魔法核を、犠牲にして。
でも良かった……やっぱり無事だったんだ。
向こうはまだ私に気がついていないらしい。
声をかけようと思ったそのとき、彼女の両手にごっつい“鉈”と“鋸”が煌いてるのが見えた。
――――え?
思わず凍りつく。
向こうはまだ、私に気がついていないらしい(気持ちさっきとは違うニュアンスで)。
どうしよう、きっと私から魔法核を取り返しに来たんだ……。
マズい!返すのはいいけど茅野さんの魔法核、私のとくっついちゃって離せないよ!?
どうしよう? ど う し よ う !?
>「積極的に切断する方向のオペですか!?」
それだ!流石南雲さん、ナイスッ☆ でも、魔法核って鉈や鋸で割って大丈夫なの……?
「その男の子なら大丈夫よ、南雲ちん。心配ないわ。
アレックスはむしろチョバムアーマーを脱いだ後こそ本領を発揮するものだし。さて――」
全く噛み合わない台詞を差し挟んだ叔母がおもむろに茅野さんの前へと躍り出る。
>「あらら、オープン初日で強盗?これってある意味ついてるのかしら!」
>「きゃあああぁぁっ!?…え、誰…というか何…!?」
>「テンダー・パーチの店長でっす★コホー」
アナキン・スカイウォーカーの成れの果てにしか見えません。
>「も…もしかして貴方が蒼月さんを…?いっ、今すぐ蒼月さんを出しなさい!!」
>「お金を要求しないで人間を要求する強盗コホー!新しいっ!それって新ジャンルかしらコホー」
>「ふざけないでください!わ…私は…っ、本気なんですから!」
蒼月さん……?もしかして、ここで倒れてるガンダムのお兄さんのこと……?
だとすれば私はどうやら大変な勘違いをしていたらしい。
じりじりと対峙する茅野さんと親戚のダース・ベイダー。何だろう、心が、痛いです。
そこへ新たな影が!
>「あらヤダ!あなたもしかして女子ボクサーの鷹河さん?ちょうどいいところにきてくれたわね」
>「さぁ皆さん本日のメインイベントのはじまりはじまり!」
>「あの…なにかの間違いとかイタズラの類だったならそれを早く捨ててください。私、本気でいっちゃいますから」
突然現れた女性ボクサーが叔母に代わって茅野さんの前に立ちはだかる。
だ、大丈夫かな……?
緊迫した店内の光景に湧き出す一部のギャラリー。
店長は厨房に消えた。南雲さんは仕事に戻った。私はおろおろと見守ることしかできない。
忙しくて騒がしくて大変だったけど、思えばこのときはまだ――――平和だったんだよね。
【続く】【騒ぎが収まるのを見守り、蒼月さんが目を覚ますまではここにいたことにしてください】
>>296 奈津久 萌
>>309 坂上南雲(同じく時系列はいずれにも入れられる方向で)
勉強をしていたお客さん(
>>287 塞守 真衣)の席から戻った後のこと。
>「おりょ?理奈ちゃん、どったの?」
南雲さんに話かけられた。
私が感じた“先程の不可解”が顔に出ていたのだろうか?
「い、いいえ。何も……」
多分、自分の思い違いだったはずだ。だってさっきの反応は――お兄さんのものなんだから。
しかし、南雲さんは同じようには考えなかったらしい。
>「理奈ちゃん、アレ……!」
私の袖を引っ張り、周囲を警戒しながら誰にも気付かれないように注目を促す。
その指先が示した先には――魔法核のペンダント!?
持ち主の顔には見覚えがあった。確か、変身後と変身前の姿にすごくギャップのある「拳」の魔法少女だ。
自分から戦いは挑まないけど、向こうから喧嘩をふっかけられたら迷わず応じるタイプの人だったと思う。
敵ではない。しかし、味方でもない。
…………
何かヤダなー、こんな考え方。
>「魔法少女率、凄いことになってない?」
「そ、そうですね……」
南雲さんの勘の良さには驚かされるばかりだ。いや、もしかすると私が鈍すぎるだけなのかもしれない。
何となく、何となくだが魔法少女以外の【別のもの】の反応も混じってるような気もする。どうなってるの、ここ?
うーん……
と、とりあえず、考え過ぎても仕方無い!今は自分の仕事に専念しよう。
テーブルを行ったり来たりしているうちにたまたま視線が合った「拳」のお姉さんに、私は声を出さずに挨拶した。
『ど、どうも』
思念通話。ちょっと前に覚えた魔法少女の基本スキルだ。短い距離なら覚えたての私でも簡単に扱える。
【南雲さんに言われて悪魔らしき反応だけ探知。仕事しながら萌さんに軽く挨拶】
>>306>>310-312>>315 テーブルを指でコツコツと扣きながら、萌は文章を目で追う。
「……来ないな」
注文した品が、ではない(もちろんそれはそれで待ってはいるけれども)。
魔法核をあからさまに見せることで何処かしらから何かしらのリアクションが得られるのではないかと期待していたのだが、
思ったより食いつきが悪いようで、南雲が理奈に耳打ちをしたのが視界の端に見えたくらいだ。
それすら、もしかしたら仕事上のやりとりの可能性もある。
(チックショウ、帰りにジム村田のDVDでも借りていくかな)
バス釣り名人のDVDを見ただけで釣りがうまくなるなら世話はないのだが。
萌はため息混じりに本を伏せる。
その、瞬間――。
ちぃん、と陶器を金属で弾く音が疾り抜けた。
(……これはッ!)
同時に店内に満ちる気配、これは紛れもなく闘気!
待っていたものではないがようやく起きた変化に萌は顔を上げる。
排煙機構が動作し、ようやく晴れ始めた白煙の向こうに人影が二つ。
鉈と鋸を構えるいずみ。そして拳を構える萌の見知らぬ少女、鷹河明日香。
(見知らぬ……?いやどっかで……、いやいやそれよりも一体何がどうしてこうなった?
やっぱりここはファイトクラブ?はたまたいつの間にやら"静かなる丘"に迷いこんで?)
ナパームの三製法やしばりくびの歌が萌の脳裏を駆け巡る中、二人の少女の戦いの幕が切って……
>『ど、どうも』
「はうあ!?」
漫☆画太郎もかくやと言わんばかりの表情で驚愕する萌。周囲を見渡すと理奈と目が会った。
(え、テレパシー?すげー、魔法だー)
どうも萌には自分が"魔法少女"であることを忘れる癖があるようだ。
『からだのちようしはもういいみたいですね』
初めて携帯でメールを送るおばあちゃんのような文面を思い浮かべる。
通じるか今ひとつ不安だったが、うまく"送信"できたようだ。
そういえば名乗りも交わしていないな、と思い出し、せっかくだし思念でもって自己紹介でも、と考えた萌の耳を
>「もう少し『静粛に』……だよ。諸君」
冴えた声が打った。
声の主は"楽園派"筆頭、苗時静。
静は通された席の上に新聞を広げる。
店の真ん真ん中のその席なら、店内にいる魔法少女全員がそれを見ることができた。
ちょっと木に視界を塞がれがちな萌も例外ではない。
紙面では原因不明の昏睡から回復した少女の記事が比較的大きく扱われている。
>『失踪者の帰還や原因不明の昏睡からの回復がここ数日、全国で相次いで起きている。
> 単刀直入に言うと彼らは敗北した魔法少女で、全ては悪魔の差し金だ。
> とは言え、悪魔が慈悲の心に目覚めたと言う訳ではなくてね』
続く話を、萌の主観で要約すればこうだ。
"悪魔が、願いを餌に咥え込んだ少女たちを、出がらしになってもちぎって煮出してまだ搾り取ろうとしている"
そして、
"その娘らをシバキ回して止めをさしてやれば報酬が得られる"
非常に胸糞が悪くて素敵な話だ。もともと"断たれた"相手なら呵責も軽く済む。
>『体験入園の会場は既に用意してある。君達に野心か、平和への渇望があるのなら、すぐにでも案内させてもらうよ』
だが、最後の言葉には萌は否定を返す。
『悪いんだけど、"今すぐ"ってのはちょっとね』
なぜならば――
(なぜならば!)
「おまたせしましたー、こちら人参と山芋のスフレに、水切りヨーグルトの抹茶ティラミスと東方美人になりますー」
魔法少女ではない、ただの店員が彩りも鮮やかな二つのケーキとお茶を運んできた。
そう、萌は注文した品をまだ目にしてすらいなかったのだ。
「あ、どうもー」
愛想良く店員から皿を受けとり、ひとまず茶をすする。
鼻腔から微かに残っていた硫黄臭が追い出されて、代わりに甘い香りが満ちる。
それからティラミスを口に運び、抹茶の苦味と水切りヨーグルトを使用したチーズクリームの爽やかな酸味を楽しむ。
カロリーがおいしさの単位などというのは魂にまで脂肪がついた人間の世迷言にほかならない。
低カロリーでも美味い物は美味いのである。
【至福】
目を覚ますと周りは白で一色、そういわば高濃度粒子領域、はたまた噂のニュータイプフィールドか
ついに俺もニュータイプに……?いや、イノベイターか!
どちらにしても人類の革新か、それはいいな
いやしかし、ニュータイプは人類が宇宙という新たなる生存環境に適応し目視による空間把握が困難かつ
空気の振動を介して声で意思を伝える手段がないために脳波による意思疎通、一種のテレパシーのようなものが発達、空間把握能力を補うために脳自身の
機能が増幅されたのではないかというのが俺のニュータイプ論だ
まあ、トビア・アロナクスの言葉を借りれば”宇宙に適応した人間”というわけだ
いや、まてまてまて、おかしいだろ?さっきまで喫茶店で紅茶とケーキとクラブハウスサンド待ってたはずだ
いくら俺がニュータイプ的素養の高い人間だからといって喫茶店でいきなり覚醒するはずがない
思い出せ!思い出すんだ俺!一体何があったのか
確か……ジブラルタルでケイトが支えてクワンリーが「機体はそのまま、パイロットは死んでもらうが……」
いやこれは昨日見ていた機動戦士Vガンダム第14話「ジブラルタル攻防」だ
戻りすぎた。そうだ!喫茶店で謎の劇物が俺を襲って!
すべてを思い出した
「ハッ!俺は……」
目覚めると周りはすべて白かった
「煙幕?」
魔法少女が俺を狙って強襲?阻止臨界点はとっくに超えちまってるようだ
ならなぜ俺は死んでない?これは別のなにかがあるとみた
魔法でそれほどのダメージは受けていないがおとなしくしていたほうが賢明だ
狸寝入りを決め込んでいると嫌な予感しかしない怪しい3人組がやってきた
>「もう少し『静粛に』……だよ。諸君」
ほらやっぱりだ
やつらは『楽園』といううさん臭さ爆発のやつらだ
組織名が楽園とはまた怪しい、しかしこいつらの持って来た話は魅力的なものだった
>『私達は彼らを『亡者』と呼んでいるが……まぁここまで言えばもう察しは付いているだろう。
この辺りでも、『楽園』の住人が亡者に襲われている。君達には、ここら一帯の亡者を排除して欲しい。
勿論、報酬はある。亡者の持っていた魔法核に加えて、私達が正当な防衛の結果得た魔法核も明け渡そう』
狸寝入りは終了決定だ
「オーケー、その話、俺は乗った。よりどりみどり結構じゃないか
俺は力が欲しいからな」
>「けど……お客様に食い物をぶち撒けるような悪い店員には、指導が必要だよなぁ?」
麻子が凶悪至極な笑みを浮かべて夕暮れに佇む老紳士のひとときを運んできた。
狂気じみた激臭と反社会的なビジュアルに思わず後ずさりする南雲。刹那、膝の裏がかっくんと屈折した!
(椅子ッ――!?いつの間に!)
気付いたときには時既に遅し。立ち上がろうとした南雲は、自分が眼に見えないほど極細の糸に拘束されていることを知った。
否、糸ではなく。――魔法少女・猪間麻子の固有魔法、魔法の鎖である。
>「ほら、お客様には誠心誠意、愛を込めて、こうやって接するんだよ。はい、あーんっ……ってなぁ」
「いやいやいやいや!わたしお客さんじゃないですし!っていうかスプーン溶けてる溶けてる!」
げに恐るべきは容器すら五分と持たないその侵食性能。原子炉の容器でも持ってこなければ保存は務まらないだろう。
夕暮れに佇む老紳士のひとときという食べ物は、およそ刹那的な賞味を楽しむための料理であった。
楽しめるかはこの際別として。某所では罰ゲームに用いられているというし。某所って何だ。ペリカが基本通貨の強制労働所か。
>「――まったく、賑やかなのは良い事だが……喫茶店と言うのは本来憩いの場であるべきだ」
どこからともなく入店した、落ち着いた風の女性客の鶴の一声で、世界がガラリと瞬転した。
テレビドラマでカメラが別のシーンに切り替わったような『違和感のない異物感』。
見れば、南雲の鼻先に鎮座ましましていた存在感がまるきり消失し、ガンダムさんも驚きの白さでクリーニング完了していた。
>『……君達は魔法少女だろう?なに、取って食ったりはしないよ。少し話がしたいだけさ。安心してくれ』
およそ超然のものとしか思えない現象が目の前で起こった。
畳み掛けるように数人の、堅気から一歩踏み出したような目をした女性と少女が集団でご来店。
頭の中に直接響いてくるような、『ある共通項をもつ者同士で通じる言葉』。
>「ふむ、誰でもいいんだがね。騒ぎが収まったのなら席に案内してもらえるかな?」
この状況。
(新手の魔法少女――!!)
咄嗟、南雲は椅子ごと飛び退いた。麻子とて想定外だったらしく意識の集中が途切れ、鎖は戒めを解き自重で椅子が落ちた。
この数秒で、南雲が取った行動はおよそ三つ。
入り口付近にたむろしていた魔法少女達から距離をとり、
理奈を庇うようにして魔法少女達との直線上に割って入り、
エプロンドレスの内側に仕込んであった自動拳銃のセーフティを静かに解除していた。
が、それも徒労に終わる。
魔法少女達に敵意はなく(あるいはそれを装っているかだが、いずれにせよ一触即発という雰囲気ではない)、
さりとてただの挨拶というわけでもなさそうだ。最年長の苗時と名乗った女性は、あくまで静寂に言葉を滑らせる。
>『さて、話を続けさせてもらうよ。次に知ってもらいたいのは……この新聞だ』
長いので以下要約。
魔法核を奪われて廃人になった少女たちが、津々浦々で息を吹き返しているらしい。
ただしそれは手放しで喜べる奇跡ではなく、悪意による必然だった。希望の代わりに絶望を携えた彼女たちは『亡者』と呼ばれていた。
苗時たちハト派の魔法少女――『楽園』の魔法少女達は、この『亡者』による魔法少女狩りの憂き目にあっているらしく。
とどのつまりこれは、『楽園』への勧誘と『亡者』に対する警告、両方を兼ねた彼女たちなりのパフォーマンスなのである。
>『体験入園の会場は既に用意してある。君達に野心か、平和への渇望があるのなら、すぐにでも案内させてもらうよ』
『……怪しい』
南雲の回答は、端的にして率直。
同時に、魔法少女のブラックな部分を散々見てきて、およそこの戦いの酸いも甘いも知ってしまった彼女にとっては当然の帰結だ。
『言っちゃなんだけど、あなた達もーーーーーれつに怪しいよ?話の真偽を判断する材料が、こっちにはなきに等しいんだもん。
ニュースがその話題で騒いでるのは知ってるけどさ、それと亡者云々との因果関係については、あなた達に聞いた情報が全て。
初対面の、しかもいきなりお仲間ぞろぞろ連れて他人のテリトリーに上がりこむ連中ってのはね、胡散臭さ無量大数だよね』
こう見えて漫画読みでもある南雲は、『カイジ』とかでそういう感じにホイホイついていったノンケが酷い目に合う類型を見てきた。
極端な話、苗時の語ったことの全てがウソっぱちで、『楽園』は超タカ派だったりして、これが大掛かりなペテンだったとしても。
南雲は驚かないし、文句も言わない。ただ信頼できるソースが欲しいだけだ。
『例えばさ、今この店やこの近所で"亡者"ってのとエンカウントして、それをみんなで撃退するような流れだったら
信用しちゃうかもだけどね。あっはは、流石にそんな都合のいいことは、ないかっ』
せっかくだからフラグも立てておく。
ともあれ南雲のスタンスは現状、限りなく黒に近いグレーでの、猜疑であった。
【『楽園』の話に猜疑的】
322 :
名無しになりきれ:2011/05/18(水) 14:22:55.51 O
?
>>317 萌
>「はうあ!?」
私の念信を受けた「拳」のお姉さんが驚愕の表情を浮かべる。
一瞬作画担当が交代したんじゃないかという程のリアクションだ。
私、何か悪い事したかな……?
お姉さんの顔芸が何を意味していたのかがわからないまま少しの間佇んでいると、返事が返ってきた。
>『体後容姿(からだのちようし)はもういいみたいですね』
正しく受信できてるのかちょっぴり怪しいけど、こう聞こえたんだから仕方ありません。
とりあえず、前日の出来事から体の心配をしてもらったのは間違いないみたい。
「おかげさまですこぶる好調です」という意思表示をこめて、笑顔でお辞儀する。
年齢の割りに背も低く、発育もよろしくない私としては……容姿の面までは自信無いですけど。
【続く】
>>310-312 『楽園』派&猪間麻子
>>321 坂上南雲
>「もう少し『静粛に』……だよ。諸君」
その『声』を受けて――慌ただしかった店内の空気が俄かに入れ替わる。
消失した劇物。
収められた鉈。
下ろされた拳。
え?今この人たち、『何を』したの? むしろ『いつから』そこにいたの――!?
突如現れた三人の女性が、来店と同時に異質な緊張感を呼び込んだ。
多分あの人たちも魔法少女なのだろう。
素直に驚くことしかできない私は、ありのまま今起こった事を話すことしか能の無いポルナレフさん状態だ。
>『……君達は魔法少女だろう?なに、取って食ったりはしないよ。少し話がしたいだけさ。安心してくれ』
畳み掛けるように看破される私達の正体。店内にいる不特定多数の魔法少女に向けられた念話。
>「ふむ、誰でもいいんだがね。騒ぎが収まったのなら席に案内してもらえるかな?」
齢は私の叔母と同じぐらいか、リーダー格らしき女性が声をあげる。
店内を見回す彼女達に応じ、その視線を遮るように誰かが素早い動きで私の前に割って入った。
南雲さん――?
カチリという無機質で小さな音が聞こえて、私は思わず手に持っていた丸トレイを抱きしめた。
>『えっと……まず誤解しないで欲しいんですけど、私達に敵意はないんです。ほ、本当ですよ!ウソじゃありませんからね!』
わたわたとした口調で念話を引き継いだ地味目のお姉さんに何故か親近感を覚えて、私はほんの少しだけ気持ちを緩ませた。
苗時さん、目立さん、駆走さん。
『楽園』派と名乗る彼女達三人の話(特に専守防衛的なところとか)は、私にとって何だか魅力的に聞こえた。
私は別に魔法核を集めたいわけじゃない。「今は」ただ――この力で誰かの願いを守れたらいいなって……漠然と考えているだけだ。
>『……本当は、そこの狼さんに頼みに来たんだけどね〜』
>『……いいんじゃねぇの?行って来れば。悪いけどアタシはまだここに用があるんでね。
遠慮しとくよ。アンタ達『楽園』からすれば、アタシはブラックリストの筆頭だろうしな』
麻子さん……。
以前までの彼女の行いを考えれば、この返答は仕方無いかもしれない。
撃退して相手から得た魔法核を「正当な防衛の結果」と言ってしまうこの人たちの考え方も……なんだかひっかかる。
とりあえず、ここは
『あの……その前に一ついいですか?その、『亡者』になってしまった人ってもう魔法少女には戻れないんですか?』
返答の保留。勧誘に対して質問で返す。
姑息なやり方だけど、この世界は慎重すぎるぐらいが――きっと丁度いい。私達は既に一度騙されているんだから。
それに……一連の問題は茅野さんとも無関係じゃないかもしれないから。
【返答を保留、苗時さんに質問】
>「オーケー、その話、俺は乗った。よりどりみどり結構じゃないか」
『いいね、分かりやすい子は嫌いじゃないよ。私達を害さない限りはね』
>『悪いんだけど、"今すぐ"ってのはちょっとね』
>『……怪しい』
『うん、だろうね。だけどそう思うって事は、君達が既に辛い目を見たからだ。
そうだろう?だけどそんな君達にこそ、私達『楽園』は手を差し伸べたいんだよ』
純白の羽が舞うような微笑みと共に、苗時静は答える。
>『例えばさ、今この店やこの近所で"亡者"ってのとエンカウントして、それをみんなで撃退するような流れだったら
> 信用しちゃうかもだけどね。あっはは、流石にそんな都合のいいことは、ないかっ』
『……いや、案外この店は危ないと思うよ。これだけ魔法少女がいたら、亡者が嗅ぎ付けるのは時間の問題だ』
楽しげで平和な、止まり木のような世界が壊されてしまうかもしれない。
静かで鋭利な返答――率直な意見であり、善意の尾に火を点ける言葉でもあった。
『とは言え、ただ信じて欲しいと言うのも芸がないよね。だから――』
微かな笑みと同時に、苗時が腕を動かした。
鋭く振るい、その手から解き放たれた球体が弧を描く。
そして――緩やかに南雲の手に収まった。
透明な立方体に包まれた空色に輝く球体、苗時の魔法核が。
『私の魔法核だ。君に貸しておこう。大切に扱っておくれよ。持ち逃げは勘弁して欲しいかな』
事もなげに、苗時は言う。
『私達はこれからすぐに場所を変える。亡者をおびき寄せる為に用意した、『楽園』のステージに」
無論、持ち逃げされたところで取り返す術はある。
楽園の魔法少女が集結すれば、相手が多くの魔法核を所有していようと押し潰せる。
誰か一人が奪われたのなら、全員で取り戻す。楽園の基本姿勢だ。
だが、当然ながら無傷でとはいかない。
楽園に被害なく亡者を排除する為に、余計な戦いを生んでしまっては本末転倒だ。
とは言え、南雲が善良な少女ならば持ち逃げなど当然考えず。
また魔法核を貪欲に求めているのなら、たった一つではなく報酬を求めるだろう。
魔法核は欲しいが闘争は嫌だと言う卑しい者ならば――大した敵にはなり得ない。
『そこでそれを返してくれればいい。信用という利息を添えてね』
ウィンクと共に告げる。
>『あの……その前に一ついいですか?その、『亡者』になってしまった人ってもう魔法少女には戻れないんですか?』
『……どうだろうね。亡者に関しては、私達も殆ど分かっていないんだ。
捕らえて人体実験と言う訳にもいかないしね。
安直に考えるのなら……自分の魔法核を取り戻せば、戻れるんじゃないかな?』
顎に右手を添えながら呟き、更に一言付け加える。
『敗者復活戦と言わんばかりにね』
この戦いも悲劇も、全て悪魔のゲームに過ぎない。
誰もかもが、自分さえもが気分を害する、けれども吐かずにはいられなかった皮肉だ。
『さて、それでは私達は退散するよ。余計なものを呼んでしまう前にね』
楽園の魔法少女達が席をたつ。
『……町外れに、閉鎖したテーマパークがあるだろう?あそこなら誰にも迷惑を掛けずに済む。待っているよ』
背中越しに言葉を残して、苗時は店を後にした。
【次のターンくらいにはバトルに持ち込めます。
他に希望の展開があればその限りではありませんが】
>『……いや、案外この店は危ないと思うよ。これだけ魔法少女がいたら、亡者が嗅ぎ付けるのは時間の問題だ』
南雲が念信間で放った冗談に、しかし苗時は穀膳と答えた。それは完膚なきまでの、マジレスだった。
話しに聞く亡者とやらは、魔法少女の気配に反応して集まる、およそ自律的な思考を放棄した行動傾向に律せられるらしい。
これではまるで、ゾンビか何かだ。それもホラー物ではなくパニック物のそれである。得体のしれない恐怖というよりかは――災害。
>『とは言え、ただ信じて欲しいと言うのも芸がないよね。だから――』
苗時が何かを放った。緩やかな放物線を描き、それは南雲の胸元へと吸い込まれる。両手でキャッチ。
掌の中に覚えのある温もりが灯った。形こそ違えど、それがもたらす雰囲気は、南雲のものとよく似ていた。
すなわち。
>『私の魔法核だ。君に貸しておこう。大切に扱っておくれよ。持ち逃げは勘弁して欲しいかな』
「わお。本気なのおねーさん」
さすがの南雲もヘラヘラするのをやめた。己の手の中にあるのは、確かに魔法核に違いなかった。
魔法少女の命と言い換えても遜色ない最重要物件だ。おいそれと人に触れさせて良いものじゃない。
逆説的に言えば、魔法核を貸すという行為は――何にも勝る『誠意』や『信頼』の証明となる。
そして同時に、南雲はこの話を信じざるをえない政治的な立場に立たされることとなった。
『あちらがここまでしているのだから』。……往々にして善意や誠意というものは、悪意よりも鋭い心理的な楔となる。
そしてこの苗時静という女性は、そうした『善意の使い方』とも言うべき処世術の類に長けているのだった。
すなわち、南雲は信用に足る情報源を得ることなく、信じないという逃げの選択肢を潰されたのだ。
>『私達はこれからすぐに場所を変える。亡者をおびき寄せる為に用意した、『楽園』のステージに」
超然とした態度を崩さず、苗時は続けた。
己の命を相手の牙の真下に置いているとは思えないほどに涼しい顔。きっと保険があるのだろうと南雲は予想する。
そう、保険。この女は始めから、魔法核を担保にしようとなんて思っちゃいない。楽園という組織が、立場が、権力が。
苗時静にとってのリスクを排し、望む結果を生み出す一つの『武装』として機能しているのだ。まったく狡猾な女であった。
>『そこでそれを返してくれればいい。信用という利息を添えてね』
そうしてそんなことを、白々しく言ってのける。付随するウインクは、今まで見た誰のそれよりも蠱惑的だった。
南雲はテレパシーの周波数を一つ隣に移し、苗時にだけ聞こえる秘匿回線を繋いで囁いた。
『苗時さん、意外と性格悪いね』
自分が、他人のそういう賢しさを嫌いじゃないということを、南雲は知っていた。酷薄な笑みを悟られぬよう気を揉んだ。
ともあれこれで魔法核二つ。『楽園』の迎撃ポイントに着くまでの間は、南雲も理奈やガンダムさんのように二倍キャンペーンだ。
新たな武器を手に入れた時の人間特有の、なんとも言えない全能感が、今は心地良かった。酔ってしまわぬように自制する。
>『あの……その前に一ついいですか?その、『亡者』になってしまった人ってもう魔法少女には戻れないんですか?』
共用回線の方で理奈が問うた。
慈愛溢れる彼女のことだ。亡者さえも救おうとしての発言だろう。問われた苗時は思案するように零す。
>『……どうだろうね。亡者に関しては、私達も殆ど分かっていないんだ。捕らえて人体実験と言う訳にもいかないしね。
安直に考えるのなら……自分の魔法核を取り戻せば、戻れるんじゃないかな?』
(……でもそれは、魔法少女システムの本旨から逸脱する行為で。端的に言って『骨折り損』になる)
魔法核は戦利品だ。血反吐を吐くような戦いを経験して、手足ちぎれてでも掴みとった勝利の証だ。
だから『亡者』は忌むべき存在だと南雲は思う。堕ちてしまった者への憐憫じゃない。往生際の悪い敗者への怒りだ。
亡者と生者に戻すという作業は、そこに至る全ての魔法少女の命がけの戦いの結果を、リセットすることにほかならない。
だから南雲には、亡者を助けるという発想は始めからなかった。シビアな考え方だが、そうでなくては生き残れないのがこの戦いだ。
>『……町外れに、閉鎖したテーマパークがあるだろう?あそこなら誰にも迷惑を掛けずに済む。待っているよ』
そこまで言い残して楽園のリクルーター達は引き上げて行った。
魔法少女の密度が一気に下がって初めて分かる、店内に満ちていた無色透明の圧が抜けていった気がした。
「ふう。どうしよ、理奈ちゃん。わたしこんなのもらっちゃったんだけど」
掌に未だ乗っかっているのは、四角いアクリル・ケースのような意匠の魔法核。
中心に輝くその光は、南雲と同じ空色で手の中を照らし続けている。
「悪徳商法みたいなことするなー。知ってる?ネガティブオプションって言って、頼んでもない商品を送りつけて代金請求すんの。
普通は無視して放っとけばいいんだけど……今回ばっかはそうもいかないね。真偽はどうあれ、返しに行かなきゃ」
町外れの、閉鎖されたテーマパーク。苗時はそこで待つと言っていた。
行ってみる価値はあるだろう。よしんば罠だったとして、無警戒に近づくよりかはずっと生還率も高いはずだ。
機動力に長けた南雲の固有魔法は、本来こういうときの逃走なんかに役立つのかも知れない。
「ちょうどあと20分でバイト上がりだし、行ってみよっかな」
そんなこんなで20分後。
南雲は町外れの閉鎖されたテーマパークの、正門前に自転車を漕ぎ着けた。
私服姿に、腰には模型屋で買ったエアガン用のホルスターを提げている。マジカルハジキが威嚇するように収まっていた。
念の為に南雲は紙飛行機を一翼飛ばした。テーマパークの上空を旋回し続けるようプログラムしてある。
「苗時さーん。ブツのお届けにあがりましたんですけどー」
正門の影に左半身――心臓のある位置を隠しながら、南雲は呼んだ。
【魔法核を受け取る。テーマパークへ】
>>318 萌
>>319 蒼月 徹
>>321 坂上南雲
「拳」の魔法少女の反応。
>『悪いんだけど、"今すぐ"ってのはちょっとね』
>「おまたせしましたー、こちら人参と山芋のスフレに、水切りヨーグルトの抹茶ティラミスと東方美人になりますー」
ひとまず、軽食を摂る。何故ならここは喫茶店だから。
抹茶ティラミス美味しそう! いいなぁ。うぅ……見てたらますますお腹空いてきた。
時計を見る。2時まで、もうちょっと。
蒼月さんの返答。
>「オーケー、その話、俺は乗った。よりどりみどり結構じゃないか。俺は力が欲しいからな」
苗時さんの話にノリノリです。夕暮れ(以下略)のダメージも見られません。
損傷軽微、ピンピンしてます。もしかして蒼月さんはフェイズシフト装甲なの?
幼い頃、シン・アスカさんみたいな兄が欲しいと思っていました。周りの友達はキラ派ばっかりでした。回想終わり、マル!
南雲さんの場合。
>『……怪しい』
で、ですよね……。
私とはまた違った視点で楽園派に対する不審点を指摘する南雲さん。
言われてみると、確かにまだ亡者と遭遇していない私達には苗時さんの話を鵜呑みにすることができない。
>『例えばさ、今この店やこの近所で"亡者"ってのとエンカウントして、それをみんなで撃退するような流れだったら
> 信用しちゃうかもだけどね。あっはは、流石にそんな都合のいいことは、ないかっ』
ざわ・・・ざわ・・・
南雲さん、そんな怖いこと言わないで……
【続く】
>>325 苗時 静
>>327 坂上南雲
>『……いや、案外この店は危ないと思うよ。これだけ魔法少女がいたら、亡者が嗅ぎ付けるのは時間の問題だ』
――ヂリッ!
ふいに胸の辺りが熱くなる。始めて麻子さんと会ったときと――同じ感覚だ。
苗時さんの言葉が火花となって私の中にある可燃性の何かを刺激する。
この人は多分、遠まわしにこう言っているのだ。「周りの人間を巻き込みたくなければ、早くここから離れろ」と。
なるべく人目がつかないように目的を果たしたい魔法少女と違い、亡者は魔法核を得るためなら手段を選ばない。
そう言っているようにも聞こえる。――文字通り、いつか映画で見た生前の本能だけで動きまわるリビング・デッドのように。
亡者が本当にそういう存在なら、こんなのまるで……地獄からきた悪魔のすることだ。――悪魔?
>《悪魔達からしてみれば、彼らは……そう、ボーナスキャラのような物なのだろう》
そういえばさっき苗時さんも悪魔って言ってたっけ?それは一体、何者なんだろう?
>『とは言え、ただ信じて欲しいと言うのも芸がないよね。だから――』
私がボンヤリ考えている間に苗時さんが次の行動に移る。
>『私の魔法核だ。君に貸しておこう。大切に扱っておくれよ。持ち逃げは勘弁して欲しいかな』
>「わお。本気なのおねーさん」
――――!? 思わず昔のヤンキー漫画風の感嘆符を浮かべて絶句する。
やられた! これじゃ南雲さんから『断る』という選択肢を奪ったも同然だ。
持ち逃げなんてしようものなら――この人達は、きっと容赦しない。南雲さんもそれには気付いているだろうけど……。
>『私達はこれからすぐに場所を変える。亡者をおびき寄せる為に用意した、『楽園』のステージに」
>『そこでそれを返してくれればいい。信用という利息を添えてね』
ウインクを浮かべる苗時さん。その涼しげな瞳が私の前に立つ南雲さんに向けられ、一瞬だけ硬直する。
交わされた視線の間にある無言のやりとりを、私はただ、黙って見守っていた。
【続く】
>>326 苗時 静
私の質問に対する苗時さんの答えはこうだった。
>『……どうだろうね。亡者に関しては、私達も殆ど分かっていないんだ』
多分、これは本当だと思う。
>『捕らえて人体実験と言う訳にもいかないしね』
人体実験。こういう言い方をされると調べようという考え方自体がいけないことのように感じてしまうから、不思議です。
>『安直に考えるのなら……自分の魔法核を取り戻せば、戻れるんじゃないかな?』
私も同じことを考えていました。確かに、安直過ぎるかも。
……確証が得られいないということは、楽園派の中でまだ誰も試したことがないということだ。
まあ、当然だよね。
>『敗者復活戦と言わんばかりにね』
始めからこういう風に考える人達が亡者になった魔法少女まで積極的に助けるなんて――思えないし。
『ありがとうございました』
とは言っても、確証のない方法で亡者になった人たちを助けようとするのはあまりに危険すぎる。
亡者になった人がどんな状態なのかわからないけれど、当人にハッキリと戻る意思が無ければ説得すらできない。
下手すれば返り討ち、自分まで亡者にされてしまう可能性があるということだ。
常識的に考えれば見ず知らずの人の為にそこまでする義理なんて、どこにもない。
――こういう風に考える私にも、この人たちを責める権利なんて……無い。
だけど、もし私を助けたせいで亡者になってしまった人がいたとしたら?
不安に駆られ、蒼月さんが座っている辺りに視線を走らせる……いない!
さっきまでそこに立っていたはずの茅野さんが、何処にも見当たらない!
何処……私が見落としてるだけだよね?トイレかな?
>『さて、それでは私達は退散するよ。余計なものを呼んでしまう前にね』
>『……町外れに、閉鎖したテーマパークがあるだろう?あそこなら誰にも迷惑を掛けずに済む。待っているよ』
楽園派の魔法少女達が順に席を立って店を出て行く。
俄か雨の暗雲が通り過ぎて、止まり木の空が晴れの青さを取り戻す。
けれど再び降りた優しい陽射しは、もう私の心を落ち着かせてはくれなかった。
【苗時さんの解答にお礼。店内にいたはずの茅野さんを見失う(勘違いかもしれない)】
>>328 坂上南雲
>「ふう。どうしよ、理奈ちゃん。わたしこんなのもらっちゃったんだけど」
「もらったんじゃなくて、貸してもらったんでしょ」
南雲さんの手のひらで空色の魔法核が光る。南雲さんのものと同じ色だ。
>「悪徳商法みたいなことするなー。知ってる?ネガティブオプションって言って、頼んでもない商品を送りつけて代金請求すんの」
「あ、社会の授業で習ったことあります。他にはキャッチセールスとか、ねずみ講とか……」
>「普通は無視して放っとけばいいんだけど……今回ばっかはそうもいかないね。真偽はどうあれ、返しに行かなきゃ」
「私も一緒に行きます」
街外れにある閉鎖されたテーマパーク。昔パパに一度か二度、連れて行ってもらったことがある。
しばらく行かないうちに潰れてしまったけど、今でも一部のアトラクションがそのまま放置されている所だ。
>「ちょうどあと20分でバイト上がりだし、行ってみよっかな」
時計を見る。1時40分。南雲さんの言葉に頷いたそのとき
「――理奈」
叔母さん?
「ちょっと早いけど、上がっていいわよ。バックにお茶とお菓子も用意してあるから、南雲さんも麻子さんも飲んでいって?」
「う、うん……」
アプリコットの甘い薫りが疲れた気分に心地いい。
アップルタルト、ストロベリーバームクーヘン、そして……抹茶ティラミス♪
賄いは中々豪華だった。
折角のお茶だけど、ゆっくり飲んでる暇は無い。
私はカップをソーサーに置き、南雲さんと麻子さんに質問した。
「あの、さっき苗時さんが誰かのことを“悪魔”って言ってましたけど、二人は“悪魔”に会ったことあるんですか?」
20分後、私は南雲さんと共に約束の場所へと到着した。
【ターン2終了。南雲さんに同行する意思表示。出陣前にお茶を飲みながら二人に質問。
(意外に思われるかもしれませんが、理奈はまだセールスマン達が何者かを知りません)】
ブラック ≪ベ イカ レント・コ ンサルティング≫ 反社会的暴力組織
▼ 社員同士の裏切り(密告、チクリ)をさせている
▼ 経営者江口新が絶えず社員を疑っている(監視カメラ、張り込み)
▼ 社員を、恐怖感、危機感、不安感で操る
▼ 重要事件を紛糾問題にすり替え、口頭でごまかす
>「苗時さーん。ブツのお届けにあがりましたんですけどー」
「やあ、いらっしゃい。来てくれて嬉しいよ」
晴れやかな声と共に姿を現して、苗時が微笑む。
歩み寄り、魔法核を受け取って、そのまま別の魔法核を手渡した。
「受けてもらえるんだね、本当に良かった。これはちょっとした気持ちだよ。
……まぁ、前金と思ってくれても構わないけどね」
有無を言わさぬ嬉々とした笑顔で、二の句を継がせない。
勢いのままに話題を流し、転換する。
「さて、それでは早速だけど、亡者を誘き寄せるとしようか。
それまでの間だけど、君達には楽園を楽しんでもらおうかな」
笑顔のまま、苗時が手を叩いた。
後ろに緊張した様子で控えていた目立零子が、恐る恐る手を掲げる。
目立の願いと魔法――『地味な自分からの脱却』『光と飾りの創造』。
金色の輝きが彼女の手から溢れ、拡散する。
光が世界を塗り替えていく。閉鎖され、寂れた遊園地が瞬く間に無数の彩りに満ちた。
更に新たな魔法少女が二人現れる。どちらも年端もいかない少女だった。
まず一人が、目立と同じように右手を天へとかざす。
動物や童話の住民を模した着ぐるみが、あちこちに出現した。
少女の願い――『めいっぱいオシャレがしたい』。
生まれたのは『服を作り出す魔法』。およそ戦闘では生き残れそうにない力。
続いてもう一人が空へ手を伸ばす――秘めたる願いは『ぬいぐるみとお友達になりたい』。
顕現される奇跡は『命なき物に仮初の生を』。
着ぐるみが、動く事をやめたアトラクションが息を吹き返す。
また一人、もう一人と魔法少女が現れて、魔法を振るう。
夢の墓場に、願いと奇跡が満ちていく。
最後に、苗時が右手を掲げた。
『静かな時』を願う魔法が、遊園地を包み込む。
ここはもう、誰も足を踏み入れる事のない『楽園』となった。
魔法を知り、或いは呪いに蝕まれた少女達でなければ、決して辿り着く事のない『楽園』に。
「楽園へようこそ、二人とも」
再び生を得た遊園地の煌きを背に、苗時が微笑みを湛えながら言った。
「これだけ派手に魔法を使えば、亡者達も嗅ぎ付けてくるだろう。
他の魔法少女がやってくる可能性も、あるにはあるけど……邪魔にはならないさ。
これまで『楽園』に手出しする者には、容赦なくやってきたからね」
苦笑を残して振り返り、遊園地を見上げながら、言葉を紡ぐ。
「……随分と大変だったよ。やればやられると、他の魔法少女達に知らしめるのはね。
多くの争いがあった。敵も私達も多くの血を流した。その上に、この『楽園』が成り立っているんだ」
けれど、と言葉の架け橋を繋ぐ。
「多大な犠牲を払っても尚、この『楽園』はどうしようもなく不完全で、不安定だ」
声の調子を沈ませて、続ける。
「亡者の件で、悪魔達はこのゲームの『ルール』が変更出来ると分かってしまったからね。
いつ連中が、この楽園を『禁止事項』にするか分からない。闘争を『強制』するか分からない。
もしそうなってしまったら……きっと楽園の皆は、殆どが生き残れないだろう」
弱々しい魔法に乏しい魔力、皆無に等しい戦闘能力。
身を寄せ合って、辛うじて生きていられる魔法少女達は、今更『楽園』の外では生きていけない。
「明日には『楽園』は失われてしまうかもしれない。
もしかしたら、この先ずっと安寧の日々を過ごしていけるのかもしれない。
いつ、その日が来るのかは分からないんだ」
細く、長い吐息。息を深く吸い込んだ。
「だけど、だからこそ……私はその日が来るまで、この『楽園』を守ってみせる。
それ以外の理由で、『楽園』が失われるだなんて、そんな事は絶対に許さない」
意志を研ぎ澄まして、決意を言葉にして形にする。
「――なんて、そんな事は君達には関係ない事だったね。ついお喋りになってしまったよ」
理奈と南雲へ振り向いて、苗時は困ったような笑みを浮かべた。
「とにかく、今は『楽園』を楽しんでおくれよ。
たしか知史君は今手が空いている筈だから、彼女にガイドを……知史君?」
首を左右に回して駆走知史の姿を探し、彼女の様子に苗時が疑念の声を零した。
駆走は膝を突いて項垂れていた。呼吸を荒げ、肩を大きく上下している。
明るい表情で彩られていた顔は蒼白で、冷や汗に塗れている。
他の魔法少女が数人、心配そうに駆け寄った。
苗時も同じように一歩――直後に、風切り音。青黒い閃き。
駆け寄った魔法少女達が、同時に崩れ落ちた。
代わりに、駆走が立ち上がる。
血に濡れた刃を手に、青黒い衣装を纏い、胸には漆黒の穴を、そして狂気の笑みを浮かべて。
すなわち――亡者の覚醒。
「……一体、いつ魔法核を無くしていたんだい?」
苗時が問う。
「おー、流石に冷静ですねぇー。カッコイイなぁー……じゃなくて、えっと、三日くらい前でしたっけ。
魔法少女になったばかりなのに、何だか物凄い怖い子に当たっちゃいましてね。
後で知ったんですけどあの子大層なベテランだったんですねー。あはは、本当に運がないなぁ私」
明朗で饒舌な語り口。だがどことなく悪意が潜んでいる。
「だけど三日前、その可哀想な知史ちゃんにも幸運が舞い降りたんですよ。
あのいけ好かないクソ眼鏡。初めに騙された時は殺してやりたいくらいでしたけど、
「実は私達、このゲームに新たなシステムを導入しようと思っていまして。
貴女はとても不幸ですが、運がいい。産声を上げた夜に失った夢を取り戻すチャンスを、その日に得られるのですから」
だったかなぁ?とにかくこれは本当に助かっちゃいました」
左手を目の横に添えて営業スマイルを真似ながら、駆走が三日前の夜を演じる。
「あ、でも初めはこんなつもりなかったんですよ?人の夢を奪ってまで〜とか、色々考えてたんです。
でもその夜の内に他の魔法少女に出会った時、私急に気が遠くなって……気が付いたら魔法核が一個、手の中にあったんですよ」
胸の穴から一つ、魔法核を取り出した。
橙色の、誰の物かも分からない魔法核。
夢を失い、代わりに絶望で満ちた心の穴を満たしはしない、他人の夢。
「それで怖くなって、逃げ出して、そしたら知史さんが来て楽園の説明を受けて、
目の前の逃げ道に考えなしに飛び込んで、気が遠くなるのを必死で堪えていたけど……結局はこれ。
ってのが事の顛末ですねー」
自嘲の笑みを浮かべた。
「でも、今思えば馬鹿な事をしてたもんですよ。だって今、私とっても充実してるんです。
他人を蹴落とすって、夢を奪い取るって、なんて楽しいんだろう!って。
その上、運がよければ自分の夢まで戻ってくるんですから……いい事ずくめですよ、ホント」
両腕を広げて、駆走が満面の笑顔を浮かべる。
胸に開いた奈落の奥で、絶望の闇が蠢いていた。
苗時が、苦渋の表情で口を開く。
「……君の苦難に気付いてあげられなかったのは、私の責任だ。
年長者として、楽園の責任者として、恥ずかしい限りだよ」
「おぉー、この状況でも大人ですねぇ。つくづくカッコい……」
苗時の表情が、眼光が変わる。
憐憫と負い目が消え去り、瞳に決意が満ちた。
「だけど、残念ながら君は今から楽園の敵だ。排除させてもらう」
「……わぉ、ますますカッコイイ」
「無論、彼女達がね」
背後の理奈と南雲を勢いよく指差しながら、付け加えた。
「……前言撤回しちゃおっかなぁ」
「悪いけど、私には楽園の皆を護る義務があるんでね……君の相手は出来ないな。
二人とも……よろしく頼むよ」
「ま、いいですけどね。ちょっと順番が変わるだけです。誰一人逃したりはしませんよ」
苗時が退く。理奈と南雲への加勢は出来ない。
駆走が楽園の住人を狙った際に、その攻撃を『沈静化』する為に。
駆走が子供が棒切れを弄ぶように剣を振り回して、理奈達を睨む。
「折角だから先手は譲ってあげるよ。ほら、年上の余裕って奴?
どう?苗時さんほどじゃないけど私もカッコ良くない?あはは」
快活な笑い――不意に、変貌する。
「ほら、かかってきなよ」
酷薄で冷淡な、歪んだ笑みに。
「どうせ私の呪い――【付平等】《フェアトレード》には叶いっこないんだからさぁ」
【亡者→駆走。行動→先手を譲る。
呪い→願いから生まれるのが魔法。絶望から生まれるのが呪い、みたいなもの】
>『いいね、分かりやすい子は嫌いじゃないよ。私達を害さない限りはね』
「はっ!お前らこそ俺の邪魔をするなよ。俺は力が欲しいだけだ。その場を与えてくれたお前らに感謝こそすれ襲うようなことはないさ」
できればここで強くなる。いまはまだ扱える機体が少なすぎる。そう、俺はもっと多くのガンダムになりたいんだ
俺は懐疑的な他の少女を黙って見ていた。あいつらの不安もわからなくもないな。どう見てもこいつらは怪しい
>『……町外れに、閉鎖したテーマパークがあるだろう?あそこなら誰にも迷惑を掛けずに済む。待っているよ』
場所は……あそこか、子供の頃にはよく行ったことがある。なんの変哲もない普通の遊園地だ
「オーケイ、ちょっと遅れると思うが、俺の分は残して置いてくれよ」
俺はやっと来たケーキと紅茶とクラブハウスサンドを急いでかきこんだ
【自宅】
俺の自宅はごく普通の一軒家、自慢と言えば築年数がまだ5年にもみたないことだな
べつに俺が稼いで建てたわけではないから、不満もなにもないのだがな
俺は2階に上がろうとすると妹が喫茶店はどうだったかと聞いてくる
「うまかったよ。こんど行ってみたらいいよ。お前と同じぐらいの年代の子も働いてるからな」
それだけ言うと俺は2階にある俺の部屋に向かった
まず目に入るのが俺がいままで集めたガンダムグッズだ
プラモデルやフィギュアを中心に飾ってある
そこから何機か取り出し、リュックの中に入れた向かうは町外れの遊園地、たぶん他の奴らはもうついているだろう
【遊園地】
俺がつくとそこはずいぶん前に閉鎖したはずなのにずいぶんと賑やかな様子だ
「すでにパーティは始まってるのかよ。」
すぐに中に入る。すぐに『楽園』の連中と理奈と南雲の姿が見えた
だが、様子がおかしいあきらかに雰囲気が悪い。俺は遠くから彼女達の様子を見ることにした
【いままで連絡がなくて、すみません
最近、忙しいので中身も少し薄めで申し訳ありません】
にんぽ帳焼かれた
339 :
名無しになりきれ:2011/06/05(日) 20:08:40.05 O
おっぱい揉んであげよう
一応保守
みんな全滅したのか・・・?
342 :
忍法帖【Lv=38,xxxPT】 :2011/07/16(土) 19:51:50.88 0
死んだよ
343 :
名無しになりきれ:2011/07/16(土) 20:05:46.49 O
ざまぁ
神田の行動。
>「……とにかく、ありがとね」
駆走さんの瞳から絶望の淀みが消え、その表情に笑みが浮かんだ。彼女にはまだ「自分」が残っている。
>「え?あれ?そこ流しちゃう?……まぁいいけどさ」
流したわけじゃない。
この人が魔法核を取り戻し、本当の意味で『生者』に戻れるかを確認できるまで、私は安心できない。
「ありがとう」なんて、受け取れない。そんなありがとうは「ありがとう詐欺」だ。
>「えっと……確か、鎖使いの女の子だったけど……別に探し出そうとか、そんなのはいらないよ?
>夢がなくたって……別に、生きていくには困らないだろうしさ。案外世の中、そんな人ばっかなんじゃないかな」
だってこんなこと言っちゃってるんだもん。
いや、別に生きててくれるのは嬉しいよ?魔法核を取り戻したくないって言うならそれでもいい。
鎖使いの女の子(時系列的にやっぱりなーとは思ってたけど多分麻子さん)にお礼参りに行くとか言い出さなくて、本当に良かった。
でもそれじゃ大事な前提が抜け落ちてる。
この人は今の自分が偶々悪魔の悪戯のようなもので生かされてるだけだって、全く気が付いてない。
もしこの先、悪魔の気が変わりでもしたら糸の切れた人形みたいに眠れる廃人に逆戻りだ。そんなの生きてるなんて言えない。
駆走さんは廃人になる前に『亡者』になったからその自覚がないかもだけど、苗時さんの話では実際に廃人になってしまった人は……確かにいたんだ。
あの悪魔がこんなことで私たちを手放してくれるような手ぬるい連中なら、私はとっくの昔に魔法核なんて手放してるよ。
しかし――
『苗時さん、もしかしてあなたは……最初から何かご存知だったのではないですか?』
>「……だとしたら、なんだって言うんだい?」
彼女の口から明かされたのは、不足した仮定による裏返しの肯定。
即ち、苗時さんは初めから駆走さんが『亡者』であることを知っていたという……事実?
考えてみれば、魔法少女として私たちよりもはるかに格上のこの人が知らなかったというのがそもそもおかしい。
>「だって君達は、何も聞かなかったじゃないか」
随分無茶を言う。
ええ、確かに聞きませんでした。ことここに到るまで聞こうとも思いつきませんでした!
ようやく気付いた。私が天性の「嘘吐き」とすれば、苗時さんは筋金入りの「誠隠し」だ。
>「君達の活躍で、結果として皆が得をした。それ以上に大事な事があるかい?ん?」
多数の利益を得る為に仲間すら切って使う。リスク回避には外部の人間を利用する。分のいい保険だ。
「い、いずれにしてもあなたがたが『楽園』を名乗るのであれば、今は駆走さんを助けることを考えるべきでは……?」
【続く】
なな板で再開されたようで嬉しいです
皆さんのレスを毎回楽しみにしていたのでこれからも是非頑張って下さい
――それは多分、願望に近かったのだろう。
「駆走さんが今後あなたがたに危害を加えないって言うのであれば、もう『楽園』の敵じゃありません。
けど、今のままじゃいつまた『亡者』に戻ってしまったり、気を失って廃人になってしまうかもわからないんです」
他力本願と言い換えてもいい。
私は苗時さんに……『楽園』に駆走さんを見捨てて欲しくなかった。
散々他の魔法少女を傷つけてしまったこの人を今更受け入れるなんて難しいかもしれない。
けどそれは、『亡者』故に仕方なかったことだ。悪いのはきっと――彼女にこんなことをさせた、悪魔のほうだ。
「さっき本人の言葉を聞いて希望が出ました。魔法核のアテはあります」
<……今からだ。今からアタシは、“魔法少女”になる。
一番高い所に立って、誰も彼もを守れる“魔法少女”になってやるんだ。アタシみたいになっちまう奴が、一人もいなくなるように>
今のあの人なら、きっと手伝ってくれるはず。
「だからお願いです。どうか駆走さんを『楽園』に戻してあげてください」
当の駆走さんは自分の魔法核なんていらないと言っているけど、どうでもいい。危機感が足りないだけ。
例え苗時さんがあらかじめ事情を知った上で私たちを炊き付けたのだとしても、そんなの関係ない。
いえ、ぶっちゃけハラワタ煮えくり返ってますけど………………でもでも!
元々私は苗時さんの誘い方には懐疑的だったし、実際彼女が南雲さんにあんなことをしてこなかったら依頼に乗ることも無かっただろう。
こんな状況にはならなかったはず。
それでも私に我慢ならない点があるとすれば、『楽園』を名乗るこの人たちがまだ可能性の残っている駆走さんを助けないことだ。
だけど……これはやっぱり私が“魔法少女”として自分を納得させる為のエゴでしかない。
わかってるんだ。だから、私が苗時さんに要求できるのは……ここまで。強いて言うなら
>「つっても、あんたらだってお仲間が返ってくりゃあ初めに考えてた以上の得でしょ?
>もし成功したらギャラにもう少しイロつけてくれてもいいんじゃない? 」
拳の魔法少女が端的に要求を突きつける。
私にはもうこれ以上誰かの『願い』を背負う勇気は持てないからいい。そもそもこの人を止める権利も無いし。
正統な報酬……か。
>「いやいやいやいや。ちょっと待ってよ」
南雲さん……。
>「こんなのってないよ。あんまりだよ。
> 結果的に得とか言うけどさ、わたしたち思っきし怪我してますし。損得の勘定は結構だけどさ、損得で感情は割り切れないよ。
> 殴られたから殴り返して痛みが消えるわけじゃないし。殺されたから殺し返したってプラマイはゼロじゃなく双方マイナスだよ」
そうだ。今回の件で一番“誰か”を許せない人がいるとすれば……多分この人かもしれない。
でも、南雲さん。流石にこればかりはどうしようもないよ。元々相手の方が大きかったわけだし。
周囲の空間からガソリンのような匂いが消えた。南雲さんが物体生成を解除したのだろう。
>「いやね、何が言いたいかって言うとですね。――溜飲を下そうと思って」
彼女が漏らしたその言葉の次に、信じられない光景が待っていた。一つの銃声を合図に、それは始まった。
【苗時さんに要求。南雲さんの行動の少し前】
347 :
名無しになりきれ:
【入社危険】ベ_イカレ_ント・コ_ンサ_ルティング【常習詐欺】
派遣待機社員は何も設備が無い部屋に監禁されカメラで行動監視
新卒内定辞退強要 退職休職強要実行犯の執行役員南部光良が在籍
違法派遣事前面接 新卒就職ブラックリスト指定 顧客情報漏洩