38 :
飛陽代理:
(どうする、どうすればこの状況を打開できる、どうすれば)
車体の頭上でリーフィの悲鳴が上がる。この時になってようやく彼女も一緒にいるのだということに気付く。
しかし却ってそれが飛陽の行動を制限することになる。
今から急発進しても回避は恐らく間に合わないだろうし上の二人を振り落としてしまいかねない。
「モウ、イイカラ、モウオワッタワ・・・」
ミントが呼びかけるが動き出した歯車が止まることはなく、眼前にはただ接近する車体の影が見え始めていた。
自分とこの場の全員の安全を確保できる方法が見つからない、答えが、出ない。
保護の対象がこの場に増えた、皮肉にもただそれだけの事が飛陽を追い詰める。二人を見捨てられない。
(最早これまでか)
身の危険を覚えてかジェニファーが車体の外へ飛び出す。しかしその鉢植えにはいつも付いている
飛陽の人格回路がついていない。それを見て飛陽はミントにも同じように車体の来ない方へ飛ぶように言う。
ミントの目は見えているのだ。避けるのは簡単だろう。
「ワカッタワ」と言うとミントもまたリーフィを貼りつけたままジェニファーが逃げた方へと飛び去る。
二人が去るのを見届けた直後に音が聞こえた。方向がはっきりと分かるほど間近で、次いで影が映り、最後に
衝撃が飛陽の最後の一両を襲う。
(南無三!)「うぅおおおおおおおああああぁぁーーーーーーーーーーー!!」
自分が付けたドリルが自分の体に喰い込み、自分に付けられた砲台が自分を穿つ。
この期に及んで飛陽はふと思う。自分の記録はドリランドに入る前で途切れておりこういう壊れ方はした事がなかったな、と
しかしそんな考えももう一台の車両がぶつかると同時に霧散してしまう。
車体全体がひしゃげると飛陽は周りを巻き込むように爆発した。そして辺り一帯には轟音、閃光、そして・・・
【飛陽全機撃墜!飛陽の人格回路はその辺に落ちてます。】