37 :
飛陽代理:
視界が悪い中でシェンロンの状態を確認することはできなかったが、鳴り響いた轟音と地響きから
どうにか落とすことには成功したようだと飛陽は判断する。あとは近づいて砲台をチラつかせて
追い返せばいい。実弾は出ないがハッタリとバレなければ問題ない。
そう思い、詰めに入ろうとするが何かに足をとられる。また泥かと思ったがそうではないらしい。
踏みしめる地面に違和感を覚えると残った機械猿達が群がっている。指の欠けた鉤爪にも張り付いており
猿の側もこの場の詰め、即ち飛陽と残りの自分たちの処分へと移ったようだった。
「ええい此奴ら!折角捻り出した好機だと言うに!」
シェンロンの落下した時から経過した時間を数え焦っていると探知盤の反応が無くなる。
正確に言えば反応はあるのだが周囲の状況を取り込めなくなっているのだ。状況の成り方から故障ではなく
電波妨害を受けたのだと分かったがそれだけだった。
ー見えない、何も見えない、なにもー
煙幕が晴れたかと視界を切り替えるが煙幕は未だ残り続けている。当然だ、さっきの攻撃は水があれば
有るほど長続きするという攻撃なのだから。次に自分に向かい接近してくる車両があったことを思い出す。
確かに自分が量産した飛陽タイプにはそういった装備を搭載できる作りの物もある。
以前のマハーカーラ戦で使わなかったのは相手の火力が高すぎたことと接近しすぎていて効果が
見込めなかったからだろうが、今はこれ以上ない危機を作り出している。
(つくづく拙者は機械に縁がないでござる)
目が見えず立ち往生していると何かが自分に飛び乗って来る、猿かと思ったがそれは聞き覚えの
ある声でただいまを告げてくる。ミントだった。
「おお!自力で戻られるとは、ご無事で何よりでござる!」
本当はリーフィも張り付いているのだが今の飛陽では気付くことはできなかった。
そして安心したのも束の間、車体の後方へ何かが飛来し直後に爆散する。機械猿が盲撃ちをしながらの
突撃を敢行したのだ。
(マズいでござる、ここまで来といて・・・!)
この後予想される事態に対して今の状況を整理する。
ジェニファーが戻りシェンロンを落としてミントが帰ってきた、ここまではいい。問題は自分に乗る猿の
突撃により窮地に立たされており、シェンロンを落とすために使った煙幕と相手の使ったチャフのせいで
状況がまるで分らないことだった。
音が近い。すぐそこまで来ているのだろう。猿を踏んだ時、或いはミントが乗った時に足を止めるべきではなかった。
真っ直ぐ突っ込んで来ている以上、こちらも動きつづけていれば少なくともこの状態は回避できた。