ファンタジーロボット大戦3

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31飛陽代理
予定よりも随分多めに煙幕を打ち出したせいで辺り一帯の見通しは最悪と言って良かった。
もとより豪雨で視界は悪かったが今では曇り空とは正反対の目によろしくない蛍光色がかなりの
広さに広がっている。相手はこちらを目指できないだろうがこちらも同様である。

(あーあーあんなに撃つからすっかり空が汚く・・・)
一しきり撃ち続けるととジェニファーが攻撃をやめる。煙たいという言葉が手緩く思えるほど
弾をばら蒔いたのでここからは探知盤頼りとなる。もっとも飛陽にはそれは苦にならないが。

(今のうちに一両目の爪を回収して、む!)
次弾の為に動けなくなった一両目の元へ行こうとすると汚い雲の中から何かが飛び出してくる。
どうやらさっき切り離したもう一方らしい竜の口が飛陽へ突っ込んでくる。

「間に合うか!」
咄嗟に残りの煙幕を迫り来るシェンロンの腕へと放ち砲撃の反動を足しにして回避行動を取る、
済んでの所で避けられそうだったが泥にキャタピラが滑り僅かに足をとられる。

金属を思い切り引っ掻くような音が聞こえたかと思うと二両目の車体が勢いに押されて傾く。
組み付かれたことで追撃が来るかと思ったが来ない。自分の装甲が噛み砕けないような機体とは
思えず怪しんでいると互いに動きがないまま時間だけが過ぎてゆく。

「・・・む?これはなんの信号でござろう、あの機体から発せられているようでござるが命令の形を成していない
でござる。暗号、いやそれにしてもバラバラすぎるでござる。何かのあまりみたいな」
互いに姿の見えない中で睨み合っているといきなり流れだした信号を感知する。

人間で言うところの不吉な予感に相当する予測を立てた飛陽は急いで爪の回収に向かう。距離はあまり離れていない。
キャタピラが泥を蹴散らす音と雨音が混じり名状しがたい騒音が発生する。シェンロンの脚を封じることには
成功したようだ。なら後は本体の番だ。

(突如こんなことしてきた理由は気になるでござるがそれで仕留め損なうほど拙者甘くないでござる)
探知盤の上からリーフィが後退しつつあることを知った飛陽は次弾を装填するとシェンロンが霧を抜ける瞬間を待つ。
現在の貧弱この上ない武装で戦うにはこれくらいしか方法がなかった。

(それにしても何故でござろう。先程の攻撃、拙者を仕留めようと思えばできたはず、妙でござるな)
相手の思惑には気づかないまま、飛陽は狙撃体勢へ移った。
【飛陽、煙幕の中でリーフィへ狙撃用意、またリーフィの行動に疑問】