カナがこちらの言い分を聞いてくれたことにマイノスは素直に喜んだが、食事も任せると言われて
僅かに思考が止まる。前にタバコを食っていたような気がしたが毒系統の食材となるとさて何であろう。
そもそも素人でも簡単に用意ができる毒物となるとちょっと見当がつかなかった。
(ま、まあでもその辺は探して見ればなんとかなるだろう。毒キノコとかでパンとかスープを
作ってみればいいんだろうし)
考えながら街へ入りカナを卵の殻の前に降ろすと、何やら空中に何かを書き出す。よく見れば指先に
魔力の光が灯っている。その指で書いたのはどうやら魔方陣のようだ。鉱山などで見た物を空中に描いたのだ。
(そういえばこういう使い方って考えたことなかったなあ)
そもそも魔力を使った文字があり、それを札や剣といった物に書きつける技術があるのだから
こういった形で直に魔方陣を書いて魔法を使うという形式があって当然である。これまでに見たカナの使う儀式魔法が
使用者の魔力に因らないものであったこと、そして近年では呪文を唱える音声魔法が主流という
ことから連想できなかったのだ。これもまた数ある魔法の中の一形態である。
それをやっとマイノスが理解し始めた辺りでカナの術が終了する。見れば手には先程の殻が石になって収まっている。
その技術がなんであったかかなり高度な魔法だったのではないかと思ったが、それよりも彼女が言った聞き捨てならない
台詞の方が脳裏に引っかかった。
(さっき竜の遺伝子って言ってたような、それってやっぱりカナさん竜になりそうだったんじゃあ)