一緒に冒険しよう!ライトファンタジーTRPGスレ6
>>254 「むむ、私の勘違いだったか」
この竜神は、デミウルゴスを除く多くのアルコーンが苦手とする精神分野への介入を行っている。
ということは、やはりこの竜神はアルコーンのアドーナイオスではなく、本当にソフィアの分霊と見て間違いはないのかも知れない。
「いろいろ思い出してきたぞ――アルコーンとしての記憶と知識を。
だが、ソフィアの叡智にまでは届きそうにないから、結局意味は無いな。
後でいろいろ質問して情報をまとめよう、良いかな」
『いいとも』
「よし」
そういうことになった。
>>257 レヴィアに心の隙を上手いこと突かれてピヨピヨしている男に、イョーベールは言葉を投げかけ、彼の正気をつなごうと模索した。
「青年!男にとって、美女は酒と同じだ。
酒は呑めども呑まれるなと言うだろう?
男の中の男たる超男だったら、美女は食っちまうものだ。
逆に女に食い物にされるような男は男として二流、そんな奴は超男とは呼べんぞ。
超男を目指すなら、まずは肝に銘じておけよ」
顔だけ美形のスライム蟹が何か言っている。
容貌と言動がまるで噛み合っていないが、わたしのキャラではいつものことである。
「それに――物語の基本は、全てが丸く収まるハッピーエンドだ。
彼女のように、大事な何かを切り捨てて不完全な結末で満足してしまうのは、それこそ、きみの目指す超男から遠ざかる道だ。
ああいう一種の『あきらめ』は、夢も希望も捨てて現実に満足した大人を気取っている、 頭の可哀想な子供にでもやらせておけばいい。
大丈夫だ、全てを丸く収めてハッピーエンドに導く『超男』は、必ず実在する。
そうだろう?」
とりあえず、明確な意思を持って成長しかけている男の背中を後押しするようなことを言ってみる蟹であった。
どんなにカッコイイことを言ったって、蟹は蟹である。
何度も言うが、発言者はヘンテコな蟹スライムであり、0歳児である。
ちなみに、この発言だが、実はビャクの心の地雷を絶妙な力加減で踏んでいる気がするのは秘密だ。
彼は全てを救いたくても何かを切り捨てざるを得ないような設定だったはずだが、生憎、イョーベールは彼のことをよく知らない。
そう、蟹に悪気は無いんだ。
>>260 「外見と出自だけでモノを判断した挙句、異界の存在を何もかも十把一絡げにするとは、まったくもって見識の狭い奴だな。
そもそも、単なるヒーローを超えたスーパーヒーローならば、
全てを助けたいと思って、それが最後には実現できるのが当たり前ではないか。
それに、いくらいきなり抱きついてきたからといって、
真摯に歩み寄る姿勢を見せた相手に蛇をけしかけるなんて、きみには常識が無いのか?」
コイツに常識を語られては、もうオシマイである。
イョーベールは、蛇に噛まれて傷を負った男に回復魔法をかけた。
さっきまでアホなことばかりしていた奴には見えない。
「口振りからするに、きみは『この世界の』神の意志の体現者でも気取っているようだが、
その神の程度が知れるようなことは控えた方が良いぞ。
何処の世界でも、常識より神の意思を優先するようになった奴は、ロクデナシとして扱われているからな」
言わんでもいい余計な一言を付け加え、またしても地雷を踏みにかかるイョーベール。
先ほど「見えている地雷をあえて踏むのは云々」と言ったが、それを自分でやっている気がしてならない。
いや、PCの持つ知識とPLの持つ知識を別として考えるのは当たり前なので、イョーベールにとっては「見えていない地雷」なのだが。
そして、レヴィアは勇者パーティとイシハラさんを互いに争わせようと画策し、逃げた。
これぞまさしく、俗に言う二虎競食の計である。
とはいえ、勇者達は目の前のイシハラさんをどうにかしなければならないので、この計略には乗らざるをえない。
「……むう、行ってしまったか。
絡む相手が居なくなって、一人で延々とSSを書くハメにならなければいいが」
まったくもって余計なお世話である。
「とりあえず、目先の問題を処理しないといけないな」
キャラクターとしては、あくまで逃げた敵よりも目の前のイシハラさんの処分を優先せざるを得ないので、無理に追いかけたりはしない。
と言うか蟹は鈍重なので、追いかけても追いつけないので、目先のことに集中せざるを得ないのだ。
>>259 「アレの扱いは、とりあえずイシハラを殺処分してから考えよう」
こんな人でなしみたいなことを言う異界生物が居るから、異界の生き物は信用できない、などと言われるのだ。
だが、今は蟹で本当に良かった。
もしゴローのままだったら、わいせつ物を常に陳列しているような輩が居るスレなど有害なスレだと言われても、全く言い訳ができないからだ。
「ぬわっ!?」
さて、イシハラさんが振らせてきた巨大な障子は、一番背が高くて大きいイョーベールに真っ先に引っかかっている。
障子は上手いこと蟹の口の辺り、つまりスライムが顔を覗かせている辺りに、綺麗に乗っかってしまった。
このため、イョーベールは前が見えない。
「何打これは、前が見えない!」
そう。だから何度も言っているだろうに、前が見えないのである。
つまり、アイリスが第六天魔王を殺っちゃったときと同じパターンである。
彼は視界が封じられてもがいているが、巨大な蟹がじたばたしているこの状況は、単に障子が振ってくるよりも危険だ。
この巨大蟹に踏まれると、障子に押しつぶされどころではないかも知れない。
252-259
>そうね……私の意図をエレガントに表現するなら、この世界を守る事、かしらぁ?
きっと、利害だって対立しないんじゃなぁい?うふふ。
よろしくねっ、ビャク=ミキストリ☆」
男と共に寄って来ていた怪魚共がこちらを守る姿勢になるとレヴィアの口から
イシハラの所在を聞かされる
後ろでは思いとどまるようにという声がしていたが
「交渉成立だな…感謝するレヴィア=メルビレイ」
>「どいつもこいつも裏切り者ばっかりだ!」
「狂気に冒されて裏切った奴など信用できないとは言うがね、
神二柱がかりで洗脳されたら、抵抗などできるわけがないだろう。
それに、われわれの目的は明白だが、あちらは態度からして腹に一物抱えているのが明白ではないか。
「そうだな、二柱の神に洗脳されれば抗える訳がない…が逆に考えてみろそれゆえ簡単に解放されるとは思えん
本人も気づいていないが正気に戻ったと見せかけて操っているのかもしれない
故に貴様が正気が確実だと言える?お前か?お前の仲間が保証してくれるのか?
貴様等と関わってからそうは経ってないゆえに信頼関係が成り立ってない以上貴様を露ほども信じていない」
確かに強大なラスボス格に当たる神の洗脳を自力で解けるとは思えない
だが、それゆえに簡単に解ける事がおかしいのだましてや相手は神だどんな力を持っているのかすら想像がつかず
洗脳を緩めているだけかもしれないという考えも出来る
>勇者なら過ちを許してあげなきゃ。裏切られてもまた信じるのが勇気だ!」
「気をしっかり持って正気に返ってくださーい!
レヴィアは絶対まともじゃないですよ!
限りなく黒に近い黒です!」
「ふん勇者かそんな肩書きでは飯も食えんよ…その判断を勇気と無謀を履き違えてないといいがな
過去の俺だと受け入れただろうがそれに俺はもうじきそちら側に居てはいけない者となる」
皮肉を交えた直後、警告とも別れとも取れる発言をする
外見ではわからないだろうが彼の中ではすでに兆しが見えている
そしてカウントダウンも
>「そうだ!そういえば名も無き狂気の神は何処へ行った?
すっかり忘れていたが、今のところ真の敵はヤツじゃないのか?
ビャクよ、とりあえず、きみはもっと冷静になった方が良いぞ」
「…奴は共通の敵なのは確かだな狂気など撒き散らされても困るからな」
その意見には賛成だった。
>「ビャクさん…。ボクはどうしたら…」(もぐもぐ。泣きながら鍋を頬張ります)
「……お前の信じる道を行けばいい、あの蟹も言っているが大事な何かを切り捨てて不完全な結末で満足してしまうのか
どうかはお前が決める事だ。俺は愛した女すらも救えなかった男だ…
そしてそのために一つの世界を犠牲にしてしまった」
正しき道を進める青年に対し自らの犯した罪の一部を告白する
愛する女が全ての元凶であることと
世界が同一であり天秤に賭けたとある男の末路を
「そしてこんな運命を敷いた全てを憎みこの様…お前はこのような道を辿るな
俺はハッピーエンドを導く事もできなかった半端者だこれでも足掻き続けてるがな
それが後悔する道だったならばそれまでと言う事だ俺と同じでな
そう感じる前に死ねる事が出来たのならばお前は――目指していた物になれたと言う事だ」
それを言い終えると背中を向けた
>『その程度なら智慧の神である私の力でどうとでもなる』
>『ところで話の収集がつかなくなってきたことはないか?
ここは一番身近な共通の敵であるシンタロー・イシハラを倒してから今後の展開を考えてはどうだ?』
「その前にこの有害スレをKISEIしなければいけないのだーーーっ!!!!」
「生きてたらまたね〜。チャオ☆」
イシハラが話の都合上巨人となりシナリオボスとして出てくるとレヴィアは穴の中に消えていった
そして巨大な障子が落ちてきた
「いちいち面倒かけるなよイシハラァァァァ!!」
命令を受けていた対象イシハラが出現した同時に手には剣を持ったまま
降って来る障子に対抗するためビャクの周囲に夢想剣が大量に出現させる同時に射出
こちら側に向かってくる障子をひたすら爆破していた
だが彼という存在に組み込まれたカウントダウンはこの時も蝕んでいた確実に
「あと少しなんだ…わざわざリセットする必要はなくなるはずなんだ
頼む…施行は遅らせてくれ…」
誰かに祈るように哀願するように何者かに呟く
>>258>>261 >「人魚はいってますよ!? ジュゴンとかマナティじゃないんですか!?」
鍋の具を見てアズリアがびっくりしていると、迷っている男にイョーベールがこう言いました。
>「青年!男にとって、美女は酒と同じだ。
酒は呑めども呑まれるなと言うだろう?
男の中の男たる超男だったら、美女は食っちまうものだ。
逆に女に食い物にされるような男は男として二流、そんな奴は超男とは呼べんぞ。
超男を目指すなら、まずは肝に銘じておけよ」
「イョーベールさんは綺麗な女の人を食べてしまえって言ってる…。
だから、人魚くらいなら食べても平気なんじゃないかなぁ?えへへ」
>>263 >「……お前の信じる道を行けばいい、あの蟹も言っているが大事な何かを切り捨てて不完全な結末で満足してしまうのか
どうかはお前が決める事だ。俺は愛した女すらも救えなかった男だ…
そしてそのために一つの世界を犠牲にしてしまった」
>「そしてこんな運命を敷いた全てを憎みこの様…お前はこのような道を辿るな
俺はハッピーエンドを導く事もできなかった半端者だこれでも足掻き続けてるがな
それが後悔する道だったならばそれまでと言う事だ俺と同じでな
そう感じる前に死ねる事が出来たのならばお前は――目指していた物になれたと言う事だ」
「…信じる道。そうだね。男の道は一本道。ボクは自分を信じる!誰かを切り捨てたりなんかしない。
信じた道のさきが、たとえ地獄だって、ボクは笑いながら歩いていくよ!だってそれが男の道だから!!」
>>260 抱きしめたレヴィアからは甘い香りがしました。
男も落ち着きを取り戻していて、色男っぷりをいかんなく発揮しています。
男の腕が6本もなければ美男美女のなかなかよい絵です。
>「けふっ……うふふっ、ダメよ……女の子はもっと優しく抱きしめなくちゃ…………ヒュドラッ!」
「君がいいこじゃないからさ。…ってヒュドラって何?」
レヴィアはいつの間にか多肢の鞭を握っていました。
鞭の先から飛ぶ青黒い筋。風を切る唸りと首に巻きつく冷やりとした感覚。
「…くはっ!!」
見る見るうちに男の顔に朱が昇りはじめます。
6本の腕からは力が抜け、レヴィアはスルリと男の腕から抜け出します。
>「残念ねえ……憐憫に目が眩んで誤った選択をするなんて。うふふっ。
全てを救うなんて誰でもできる甘い夢想は凡夫のもので、超人の選択じゃないわぁ。
世の中を動かしてきたのは、いつだって果断な選択を下せる超人たちよ。
アナタの目指してるのは超男でしょお?
選ばれた人間になりたいのなら、犠牲を恐れちゃダメ。
誰かを傷つけることをひたすら恐れる様な羊が、真の男になれて?」
「………」
>>259>>260>>261>>262 蛇の鞭が緩んだ隙に男は大山椒魚の背中から水に飛び込みました。
でも水位が下がっていてフロアの床に強く頭を打ちつけます。
首をやって男は虫の息となりました。白く濁っていく意識の表層で男は巨人の爆誕を見ます。
>「KISEIKISEIKISEIKISEIKISEIKISEIKISEIKISEIKISEIKISEIKISEIKISEIKISEIKISEI!
私は今期限りで所長を辞任する・・・。
その前にこの有害スレをKISEIしなければいけないのだーーーっ!!!!」
現われたのは巨人となったシンタロー・イシハラでした。
>「また訳の分からないものが現れたわねぇ……。
見なさい“男”さん、あれが異世界に魂を捧げた売国奴の末路。
異界の浸食を排除しない限り、こんな脳幹の弱い劣化した人間が無数に生み出されるのよぉ?」
「…みえるよ…楽園が…。光の大地の真ん中に大きな木が一本見えるよ。
木には沢山の木の実がみのってる。でも幹が細いから折れそうなんだ…。もう…。折れちゃうのかな…」
男には向こう側の世界が見え初めています。はっきり言って瀕死でした。でも。
先ほどまで「超男」の存在を熱く語っていたイョーベールが魔法でキズを治してくれました。
>「生きてたらまたね〜。チャオ☆」
レヴィアは逃げたというか落ちたというか先に進みました。
イョーベールさんはSSを書く羽目にならないといいが。と、とても心配しています。
「彼女なら独りでも逞しく生きれると思う」
男は、レヴィアを野良猫みたいに言いました。とっても失礼です。
>「いちいち面倒かけるなよイシハラァァァァ!!」
同時に色々なことが起きます。巨大な障子が落ちてきてイョーベールの視界を奪います。
イョーベールの足下にはアズリア。ビャクはさらに降って来る無数の障子をひたすら爆破しています。
「アズリアさんがあぶない!今、助けるぞー!」
男は無数に落ちてくる障子を避けつつ爆発の下を掻い潜り、イョーベールに走ります。
「イョーベールさんの視界を回復させる!!とー!!」
落下中の障子に足をかけて二段ジャンプする男。イョーベールの顔を覆う障子に6本の腕をさしこみます。
ズボ!ズボ!ズボ!ズボ!ズボ!ズボ!
障子には六つの穴。
「壁に耳アリ!障子に目ありぃーーー!!」
きっと開いた穴からイョーベールの目には素晴らしい世界が映ることでしょう。
でも、男の6本の腕のうちの2本の手の先が真っ赤になっています。
「……血…?」
果たしてイョーベールの目は無事でしょうか。足下のアズリアは?
男は怖くなって震えています。
大統合全一学研究所の最下層。
奇怪な魚たちが転がる床を踏み締めながらレヴィアが通路を進み、奥に設置された頑丈な扉を開ける。
テロやクーデター、実験の暴走など、不測の事態を想定して造られたシェルターの扉を。
汚水は、すでに完全に下水へ排水され、扉を開けても流れ込む事は無い。
レヴィアが入った部屋の中にはシンプルな内装にコンピュータが並び、中央で太陽を模したオブジェが鎮座している。
目に見えぬ針のような妖気が漂う中を歩き、彼女は部屋の中央へ進む。
太陽のオブジェはイシハラと完全に同調しているようで、彫刻の瞳には彼の見るものが映っていた。
現在も地下フロアで行われている戦いの様子が。
それをレヴィアが覗きこむ……。
「あらあら、どうやらあの男は大蟹に垂らし込まれちゃったみたいねえ。
空を飛べると信じさせて、無垢な幼児にビルの飛び降りを勧めるなんて残酷な蟹だこと……くすくす」
嗤いながら、レヴィアは部屋に備え付けられていたテーブルの引出しからサインペンを取り出す。
屈んだレヴィアは、細い指でペンを器用に操って床に複雑な紋様を描き始めた。
それは異界から流れる力を制御して呼び込み、隣界との接点をここに集約するための魔法円。
彼女は異次元の通路となっている太陽のオブジェを媒介として、
阿弥陀クジの様にバラバラにこの次元へ伸びる異次元の接点を、ここへ集約し、捩り合せて一本に束ねるつもりなのだ。
【>>地下フロア】
地下フロアでは、レヴィアが去った後も戦いが続いていた。
ビャクが面倒を掛けるなよイシハラァァァァ!!と叫びながら、魔力の剣を無数に出現させた。
飛翔した彼の剣は次々とイシハラに突き刺さり、流れる飛沫が床をどす黒く染める。
血みどろの巨人は攻撃して来たビャクを、にこやかな顔で見下ろして言う。
『わかった、面倒は掛けないよ。無採決で法案を通してKISIするからね』
支離滅裂だった。
狂気に憑かれた者の言葉には、筋も脈絡も無い。
迷走する竜巻の様に、得て勝手に狂った感情をぶちまけるだけなのだ。
そして気が移ろったのか、いきなりテイルに首を向けたイシハラは恐ろしく不興げな顔だった。
『もう新旧交代の時期じゃありませんか。
神や妖精のように、前頭葉の退化した一億才の老人に世界を任せる時代は終わったんじゃないですか』
イシハラが筋肉を収縮させると、体に刺さった剣が盛り上がる。
『非実在青少年をKISIする』
巨人に刺さっていた数十の魔剣は、肌を逆撫でる兇風を伴ってテイルに向かって撃ち出された。
『不法入国した多くの魔物が凶悪な犯罪を繰り返しており、
大きな災害が起きた時には騒擾すら想定される……よって魔物もKISEIするよ』
続けての彼の奇行は、狂気が生み出したインスピレーションによるものなのだろうか。
突然ジャンプしたイシハラは外壁にしがみつくと、上に手を伸ばして研究所崩壊の際に断線した高圧線を掴んだ。
大統合全一学研究所は、現在の科学力を超える高度な研究施設であり、通常の施設の数倍の電力が供給されている。
そして、その数十万ボルトの大電力は、まだ送電を止めていないようだった。
イシハラがケーブルを振り回すと、地面に触れたケーブルの先端からバチバチと激しいスパークが散る。
『ここは処刑の部屋だからね』
イシハラが釣り糸の様に投げたケーブルは、宙を飛翔してイョーベールとアズリアのいるであろう辺りに投げつけられた。
>>263-264 まだ洗脳が完全に解けていないのではと言われているが、こればかりは言い訳のしようがないので黙るしかない。
イョーベールは解放されたつもりであるが、何を仕掛けられているかはわからないのだ。
それはともかく、障子に視界を阻まれてもがいていると、ビャクが何か祈り始めた。
「おいどうした、さっきからリセットとか何を言ってるんだ?
まさか、この世界が爆発するのか?
もしそうなら、この世界の産地をちょっと確認する必要がありそうだな」
チャイナボカンシリーズで検索すると分かるとおり、中国製品はよく爆発するらしい。
とはいえ、この世界が中国製品ということはまずないので、流石に爆発はしないだろう。多分ね。
>>266 男の勇気ある行動により、イョーベールは救出された。
超男になる日も近いかも知れないが、それは本人がどの辺りまで男を上げて満足するかにもよるだろう。
「むむ、コレは障子だったか!
穴が開いて少しは見えるようになったぞ、よし助かった!
……おい、どうしたんだ、その血は?」
男の腕に付着している真っ赤な鮮血だが、これの正体がまるでわからない。
アズリアは今や立派な空飛ぶポリプ状生物、イョーベールは青い色のゼリー状のスライムである。
どちらも赤い血が流れているのか、甚だ疑問であると言わざるをえない生物だ。
「それはひょっとして、聖痕とかいうやつか?」
>>267 とうとうイシハラの頭がおかしくなってしまった。元からだが。
そして、何故か主張が先ほどのレヴィアと驚くほど類似している。
「何だ、こいつまで!
言っている事が先ほどの小娘と同じではないか。
この世界がこんな連中ばかりなら、『枝切り』をしてしまっても良くないか?」
安易に何かを切り捨ててハッピーエンドを放棄するなと言った舌の根も乾かないうちにこれである。
『ここでイョーベールの言う『枝切り』について解説しよう。
そもそも世界樹の枝は、ある方向性を持った世界の基幹で、葉っぱや木の実はその世界の分岐した可能性を表しているんだ。
枝切りというのは、世界樹の枝を切ってパラレルワールド(≒平行世界)ごと滅ぼすことで、
別の枝に属する世界に効率良くエネルギー――主に、世界を構成する『バイト』が行き渡るようにすることを言うんだ。
こうした行為は、主に自分の世界が深刻なバイト危機に陥っていることを察知した人が仕方なくやることが大半だ。
もちろん、イョーベールの言うとおりに、この世界に対して『枝切り』を実行しようものなら、
レヴィアの言葉にあらゆる角度からの説得力が生まれてしまうことになって、本当に悪役になってしまうよ。
ところで、デミウルゴスが新しく世界樹を作るために今の世界樹を滅ぼそうとする行為も、枝切りの延長と言える。
デミウルゴスやイョーベールのようなアルコーンの多くは、この壮大な『枝切り』に関わっている可能性が高いんだ』
以上が叡智の神ソフィアによる、わかるようでわからない『枝切り』の解説である。
ちょっと前までの天神様のようなポジションが定着しないか心配になるくらいの解説っぷりだ。
いつの間にかソフィアの口調がNHKか何かのお兄さんみたいになって深刻なキャラ崩壊が起きているが、
残念ながら内容そのものはNHKの教育版組のようには優しくない。
「さすがは叡智の神!見事な解説だと関心はするがどこもおかしくはない。
そうか、枝切り――ハッ、まさか!?」
イョーベールは何かひらめいたらしい。
「そうだ、さっきからこの世界はやたらイベントが濃ゆい、
と言うかさっきの女を筆頭に、さっきまでチンチロリンをしていた博徒どもとか、やたらとキャラがクドい奴が多かったな。
これは、ひょっとすると嫌な予感が的中するかも知れないぞ。
この世界の『バイト』はどうなっている?」
バイトとは、世界を構成する力のことである。
確かに、この世界を満たすバイトの量を知ることで、レヴィアたんの目的をほぼ全部読める。
だが、それは誰に聞けばいいのだろう?
そもそも、解説さんことソフィア神の言うとおりであるならば、
こういうことは、アルコーンであるイョーベールの専門分野である気がしてならないが、誰かが答えてくれるさ。きっと。
「ううむ、だんだんと全ての謎が一つに繋がってきている気がするぞ。
今日の私は一段と頭が冴えている。いい感じだ。こんな気分で頭を動かしたのは初めてだぞ。
名も無き狂気の神についても気になる。
そうだ、デミウルゴスと同様のアルコーンとしての知識によれば、
確か名前を呼ぶ事が許されない神が、何処かの世界にいると聞いたことがある――
そして、名も無き狂気の神は名前が無い――
なんということだ、どちらも『名前を呼ぶことができない神』という点で共通している!
これは果たして偶然だろうか、いやそんなはずはない。
ということはつまり――!」
だが、いろんな疑問や推理の答えが返ってくる前に、例の神を動かす大電力を持ったケーブルが、イョーベールの背後から襲いかかる。
イョーベールはただでさえ回避に適性が無い巨体の持ち主なのに、その上長ったらしい説明台詞で忙しいので、反応することさえできない。
「ぬわーーっ!!」
これはいけない。多分致命傷だ。なんてこったい。
>257
>「君の意見は正論だ。だけど君はあぶない人だ。大山椒魚にあの人たちも乗せてやれ。人と異形。双方生きる道があるはずだ」
「君はもしや……」
平和共存を願う心。記憶喪失といういかにもな設定。そしてボロボロの身なりで身をやつしているが実は美形な顔立ち!
世界を救う勇者を探すという固い決意を胸に旅立った日の事を思い出した。
全然やる気なかったじゃんというツッコミは禁止である。
「そうだ、ボクは本来勇者を導くナビゲーターポジション志望だったじゃないか。
なれるよ、キミなら超男になれる! キミこそがボクが探していた勇者かもしれない!」
いや、その、アズリアさんも性格は勇者として申し分ないのだが、なんというか外見があまりにも斬新すぎる。
>259
>「言論の自由・・・ 表現の自由・・・ そんなものは、この私がKISEIする!」
ついにシナリオボスが登場した!
>「KISEIKISEIKISEIKISEIKISEIKISEIKISEIKISEIKISEIKISEIKISEIKISEIKISEIKISEI!
私は今期限りで所長を辞任する・・・。
その前にこの有害スレをKISEIしなければいけないのだーーーっ!!!!」
「させてたまるかああああ! 言論の自由と表現の自由は決して侵してはならない恒久の権利!
それをKISEIするなんて心の死だ!」
>「障子に押しつぶされてKISEIされるがいい! 有害キャラども!」
「なんのっ、寄らば大樹の陰!!」
ボクは障子攻撃から逃れるため、巨大なイョーベールさんの影に隠れた!
>260
「生きてたらまたね〜。チャオ☆」
「あっこら! カオスなもの同士に戦わせて潰しあいさせる気だな! なんてこった!」
>262
>「何打これは、前が見えない!」
「これはまずい!」
こんなところにいては真っ先につぶされてしまう。
全くの別人のはずなのに、今のイョーベールさんはなんとなくアイリスさんを彷彿とさせた。
>264
>「いちいち面倒かけるなよイシハラァァァァ!!」
ビャクさんが障子を爆破する。
>267
>『もう新旧交代の時期じゃありませんか。
神や妖精のように、前頭葉の退化した一億才の老人に世界を任せる時代は終わったんじゃないですか』
「ボクに言わせれば逆だね。キミ達の世界はもう随分と長い間神や妖精を忘れすぎてたんじゃない?
とても豊かだけどどこか息苦しい。
でもヨウちゃんみたいな人はボク達人で非ざる者の事をずっと覚えててくれたんだ……!」
『非実在青少年をKISIする』
「くっ! どうすればいいんだ!」
その時! ソフィアが動いた!
―― 今こそ汝の剣に我が加護を与えましょう!――
テュポーンが眩い光を放ち、鞘が解ける。
同時にボクは戦闘形態に変身した! 涼やかな美形の顔立ちとすらりと伸びる手足に、豪華絢爛な翼。
これで非実在青少年KISEIからは逃れられる!
テュポーンの柄の部分を見ると、太極図の白と黒の間に線が入っていた。
つまり一応テュポーンを制御できるようになったということか!
「鼻息真拳、超ミサイルプロテクション!」
激風に乗った魔剣を阻む突風の防波堤を展開する!
【
>>268-269】
巨大な生き物たちの発する声は、亀裂の入ったコンクリートを通じて僅かながらも地下に届くようだった。
開け放たれたドアから、ソフィアとイョーベールの声が微かに漏れ聞こえてくる。
世界樹、枝切り、バイト……レヴィアは彼らの話を半信半疑にではあるが、おおまかに理解した。
疑念が残るのは異世界人との数度のやり取りで、言葉は同じでもそこに込められる概念に異なる部分を感じていたためである。
「うふふっ、要は地球で起きている問題と同じじゃないの。
人口爆発が齎す環境破壊、資源枯渇、人種暴動、犯罪増加、内乱、戦争……。
エネルギーが有限なら、持ってる奴から奪わなくちゃ、ねえ?」
レヴィアは目的に一つ手順を加えることとした。
異次元からエネルギーを収奪した上で、宇宙樹からこの次元を切り離す。
唯一の懸念はJHVH(造物主)の怒り。
本気で止めようと思えば、この世界の造物主は今すぐ全てのものを消滅させることが可能なのだから。
「私を止めたいなら……今すぐ徴を示しなさい」
天への問いは静寂に吸い込まれる。
何も起こらない事に安堵を見せたレヴィアは微笑し、次元の揺らぎを集約させる儀式を遂行することとした。
「――KATOLIN LEPAC――OMET LEPAC――RAMALATZ LOMIOL――」
レヴィアの口から奇怪な句が発せられると、魔法円が陽炎の様に揺らぎ、内に異界の光景が現出する。
それは砂漠になり、次の瞬間には城となって、揺らぎが像を掻き消すと新たに草原の景色を創り出していた。
こちら側に集約された異次元への通廊が熊手状となった影響なのだろう。
例えるならЖ形の溝を埋め立てて、Ψ形にしたようなもの。
見知らぬ次元である以上、ガイアと呼ばれる世界なのか、別の世界なのかは判別はできないが、
魔法円の中に現れたのが地球と隣接する次元であることに間違いは無い。
仮に世界樹をA、この次元をZの位置に置くなら、Yに位置する異世界。
後は向こう側に渡り、地球側に通じる複数の次元通廊を束ねて、Ψ形の通廊を一本の線に束ねる。
そして残った通廊を裁断して破壊すれば、この次元は完全に世界樹から切り離されるのだ。
異次元の高エネルギーを取得するという目的を加えたが、おおよそのプランはこれで良いはず。
しかし、この揺らぎを留め置いて維持するのは容易いことではない……向こう側では魔術に長けた協力者が不可欠だろう。
【
>>270】
轟という風鳴り。
爆発音にも似た音が、姿を変じた妖精が颶風を生み出したことをレヴィアへ報せる。
風の壁は魔剣を吹き散らし、両者の間に剣の嵐とも言うべき空間を作り出す。
数瞬の合間に宙を踊り狂う刃たちは暴風神に薙ぎ払われるが如く一本残らず叩き落とされ、無機質なコンクリートを仮の鞘としていた。
“男”の目の前の床にも、ギンッと音を立てて数本の夢想剣が突き刺さる。
【>>ALL Player シャローム。サーバーの回線は昨日から通じてたのね。こちらは無事よ☆】
>>259-271 >「……血…?」
>「それはひょっとして、聖痕とかいうやつか?」
「そういえば聞いたことがあります!
神に選ばれた像は夜中に血の涙を流すという伝説を・・・!
きっと男さんが超男に近づいた証拠ですよ!」
自説を披露するアズリアですが、像が泣くのはあまり関係ない上に微妙に怖い話です。
正痕か否か、それは今後の男さんの活躍ではっきりするでしょう。
>「ううむ、だんだんと全ての謎が一つに繋がってきている気がするぞ。
「な、なんですってー!? それはいったいどんな答えですか!?」
先ほどから“普通の”異世界人アズリアには理解不能の話ばかりでしたから、仕方ありません。
イョーベールの言葉にアズリアは食いつきました。
レヴィアが逃げたのも、イシハラを倒すことも忘れて食いつきました。
・・・前者はともかく後者は忘れてはいけませんでした。
イシハラは高圧電線を掴むと、アズリアとイョーベールに向けて投げつけたからです。
『アッー!』
見ていたフラポリーが木の板にそう書き込んだのも無理はありません。
一方のアズリアは身体強度に自信があるのか避けずにケーブルを受け。
・・・弾けてしまいました。
ようするにポリプ状の身体がバラバラになってしまったのです。
イソギンチャクをバラバラにしたような光景は、グロいと感じられる人にはグロいかもしれません。
それはともかく。
これでアズリアもフラポリーも干渉能力が限られてしまったわけですね。
戦いは他の方に(
>>270とかにです。)がんばっていただきましょう。
さてさて。
しばらくするとアズリアは霊体になって、落ちている板への書き込みを始めました。
『なんで体が壊れちゃったんですか!?
ある種の電気エネルギー以外には無敵です。って言ってたじゃないですか!』
だから、あの線が偶然その【ある種の電気エネルギー攻撃】だったんですよ。
いやあ。 偶然って恐ろしいですねえ。
『とにかく! 今は大切な時期なんです!
今すぐ私を自分の体かフラポリーさんの体に戻してください!』
そうは言われても、フラポリーの身体は見ての通りバラバラですからねえ。
・・・そうそう、そういえば身体を壊してしまった事、フラポリーに謝らなくていいんですか?
『はっ! そうでした!
すみませんフラポリーさん! 大事な体をバラバラにっ・・・?
・・・あの。 フラポリーさんはどこに行かれたんですか?
あれ? PLの人まで・・・。 みんなどこに行っちゃったんですか〜〜〜!!!?』
もちろん、皆さんはこの漫才もどきを聞いていてもいなくても構いません。
確実な事は1つ。
フラポリーがどこかに行っちゃった事です。
・・・ああ、もう1つ確実な事がありましたね。
枝切り。とイョーベールは表現しましたが、事態がもうちょっと深刻な事です。
>木には沢山の木の実がみのってる。でも幹が細いから折れそうなんだ…。もう…。折れちゃうのかな…」
男さんは実に良いものを見ました。
実はこれ、今の世界樹のイメージ映像なんです。
木の実はそれぞれの世界で、幹は世界を繋ぐライフライン世界樹。
幹が折れたら実はどうなるか?まともな植物を知っている方なら末路はご想像のとおりです。
しかも世界樹を折ろうとしている輩がいるわけですから、さあ大変。
・・・この世界の危機的状況が、ROMの皆様にもおわかりいただけたでしょうか?
>>270 >「そうだ、ボクは本来勇者を導くナビゲーターポジション志望だったじゃないか。
>なれるよ、キミなら超男になれる! キミこそがボクが探していた勇者かもしれない!」
「そうかな?ボクは君の探しているような立派な勇者ではないと思うけど…」
可愛い妖精のテイルに誉められて男は頬を赤く染めました。
>>268>>272 >「それはひょっとして、聖痕とかいうやつか?」
>「そういえば聞いたことがあります!
神に選ばれた像は夜中に血の涙を流すという伝説を・・・!
きっと男さんが超男に近づいた証拠ですよ!」
イョーベールとアズリアは聖痕について詳しいようです。
「せいこん…。それは君がみた光。ボクがみた希望…。あ!それは青雲だね」
>>271 “男”の目の前の床にギンッと音を立てて数本の夢想剣が突き刺さりました。
ビャク。テイル。イシハラの三人の攻防の凄まじさがうかがわれます。
「聖痕に魔剣。これは神がボクに与えた啓示なんだろうか…」
呟く男の目の前で、アズリアが爆ぜました。
「うああああああああ!!!!!!アズリアさぁあぁあん!!!!!」
気がつけばフラポリーの姿もありません。
>「ぬわーーっ!!」
おまけに「ぬわーーっ!!」とイョーベールが悲鳴をあげています。
アズリアが盾となってくれた御蔭でイョーベールとケーブルの接触までには
ほんの少しの時間差が出来ました。男はその時間差を見逃しませんでした。
夢想剣を投擲しケーブルを切断します。
世界樹、枝切り、バイト。男の心の奥で蠢動する不安。
「もしかしたら世界樹はボクたちの血を求めているのかもね」
男は考えているうちに鬱になってきて変なことを口走りました。
>>265 >「…信じる道。そうだね。男の道は一本道。ボクは自分を信じる!誰かを切り捨てたりなんかしない。
信じた道のさきが、たとえ地獄だって、ボクは笑いながら歩いていくよ!だってそれが男の道だから!!」
後ろから清々しいほど気持ちのよい希望と決意に満ち溢れた声が聞こえた
振り向けばきっといい眼をしているだろう
久しぶりにいい物を見れた気がする
実に気分が良かった。せめてこの者夢ぐらいは守れる者であろうと
そう心の中で誓った
>>268 >「おいどうした、さっきからリセットとか何を言ってるんだ?
まさか、この世界が爆発するのか?
もしそうなら、この世界の産地をちょっと確認する必要がありそうだな」
「………聞こえたかならばさっさと逃げろこの世界はもう…」
そこから先は口にはしなかった
なぜならばそこには辛い選択しかなく改めて口にすれば
自分の立場と役割を嫌でも自覚してしまうからだ
>「…みえるよ…楽園が…。光の大地の真ん中に大きな木が一本見えるよ。
木には沢山の木の実がみのってる。でも幹が細いから折れそうなんだ…。もう…。折れちゃうのかな…」
「そうか…この世界にも終幕が近いというわけだな」
一刻も早くしなければ――この世界はいや全ての分岐世界は終わるだろう
もう自身が居られる時間は限りなく短かったのがすでに分っていたから
>>267 >『わかった、面倒は掛けないよ。無採決で法案を通してKISIするからね』
剣山のごとく魔力の剣が突き刺さりながらもなんら顔色変えずに放ったこの一言
もはや狂っている――ただその一言に尽きる
ならば言葉は要らぬ
居るのは死を与える決定的な過程と一打
意志は確実にこの世界に終幕を与え、帳尻を合わせるための地上げ屋
永久闘争存在と変えられつつも
この世界が終わりを告げようともせめて理想を夢見
世界を変えられる希望と運命を持つ者達
生き残らせるという想いだけを胸に一歩を踏み出す
>>272-273 >「もしかしたら世界樹はボクたちの血を求めているのかもね」
状況はすでにそうなっていたが、自身の最後の意志でそれを意地でも
否定させてみせるそのために自身で居られる時間も幾ばくもない最後の言葉を発する
「……そんな事はさせん…お前たちは早く向こう側の世界に行けそして止めるんだ
俺は…此処で奴をイシハラを倒す。無命剣よ!我が命の輝きで道を照らせ!!」
ビャクの持っていた無命剣フツノミタマから自身の持つ全ての力を捧げた事により
金色の炎の嵐を巻き起こしイシハラに捨て身同然に近づき
そして殆ど零距離で女神転生では問答無用の最強魔法を死力を尽くして放つ
「お前は此処で果てるんだ!メギドラオンッ!!」
この言葉と共に光に包まれ大爆発を起こした
そしてその衝撃により地面にヒビが入り地面に大きな穴が空くと
「じゃあな…男よ…守るべき者だけは違えるなよ」
その暗い奈落の底の様な穴にイシハラと共に落ちて行った。
>>272>>274 一瞬遅れ、コードが切断されたことにより、イョーベールは事なきを得たようだった。
「あれ、死んだと思ったら生きていた……むっ、他は!?」
他はといえば、とりあえずアズリアin空飛ぶポリプ状生物が危篤、それどころか聖天していた。
「とりあえずザオリクだな……」
ザオリク。DQシリーズではお馴染みの死者蘇生の魔法である。
とはいえ、どのような形で蘇生されるのかは知らない。
アンデッドということはないが、元のアズリアかも知れないし、フラポリーの身体がそのまま再生されるだけかも知れない。
ひょっとすると
>>245で活動を始めた天使軍団が一晩でやってくれたために、死者蘇生の魔法が効力を発揮しないこともありうる。
「クソッ、このまま守り続けても埒が明かない!
こうなったら防御を捨てて、アタック・フォームに変形するしかないか!」
先ほどボスキャラの座を降ろされたので、そのままお蔵入りになるかと思っていたが、そう、イョーベールは形態変化を残していたのだ!
突然出てきた形態変化の設定だが、元ネタにおけるイョーベールは蟹座担当のアルコーンであると同時に、何故か射手座も担当している。
よって、キャンサー形態からサジタリウス形態に変形する理由が、一応ある。
さて、その変型過程は謎だ。物理的にありえない変型をしている。
あの巨大蟹が、何故か同じくらいのサイズのケンタウロスのような形状のメカに変型した。
そいつはモノアイを赤く光らせ、四本の腕にそれぞれボウガンを装着している。
蟹だったときに甲羅の中に居た巨大スライムは何処へ行ったのか?それは誰も知らない。
ともあれ、この射手座を模したロボは、元ネタのドラクエシリーズではサージタウスといって、いかにも攻撃的なヤツだ。
「どうだ!サジタリウス・フォームになったことで、攻撃的になったぞ!
耐性がいろいろ残念になったがな!
だが、守りを固めるばかりで打って出ずして、何が勇者か!
これからは攻撃的に行くぞ!」
いろいろ説明台詞である。
また、同時に、聖闘士星矢的な意味でも地位が向上したが……
「この一撃で――!」
>>276 四本の腕に装着されたボウガンを構え、矢の弾幕をご馳走しようとした矢先のことであった。
「えっ」
ビャクがイシハラを道連れに奈落の底へと落ちていった。
誤射するといけないので、とりあえず呆然と見送った。
「ビャク……無茶しやがって……」
>268-269
「どこかで聞いたことがあるぞ。原初にこの世界を支配していた神々の宇宙的恐怖の神話。
その神話の名はクdrftgyふじこー、あれ?なぜか発音できない!」
>272
「アッー! アズリアさんがいつの間にか死んどる!」
といってもイソギンチャクは本来アズリアさんの体ではないわけで幽体は無事だからまあよしとしよう。
>273
>「もしかしたら世界樹はボクたちの血を求めているのかもね」
「自らが生贄となって世界を救う悲劇の英雄譚……美しくて実に素晴らしい! だが断る。
犠牲にはしないよ。誰一人犠牲になっていい人なんていない!」
>274
>「……そんな事はさせん…お前たちは早く向こう側の世界に行けそして止めるんだ
俺は…此処で奴をイシハラを倒す。無命剣よ!我が命の輝きで道を照らせ!!」
>「お前は此処で果てるんだ!メギドラオンッ!!」
「ちょ、おま!」
誰一人犠牲にしないと言った矢先死亡フラグが全開だ!
>275
>「ビャク……無茶しやがって……」
ケンタウロス型のメカになったイョーベールさんがビャクさんを呆然と見送る。
「行こう、ビャクさんの想いを無駄にしないために!」
その時ボクはある事に気付いた。
世界の命運を託され夢想剣を手にした美青年。勇者のナビゲーターポジションの凛とした妖精。
かっこいいケンタウロス型のメカ。
あとはアズリアさんが元の美少女の姿で生き返ればまごう事なき正統派勇者パーティーだ!
ボク達が正統派勇者パーティーになれるかどうかはアズリアさんにかかっている!
>271
「行こう、ビャクさんの言ってた”向こう側の世界”へ! おそらくそこに真のシナリオボスがいる!
もっと地下から次元の揺らぎを感じる!」
次元の揺らぎを追ってさらに地下に向かう。
>「……そんな事はさせん…お前たちは早く向こう側の世界に行けそして止めるんだ
>俺は…此処で奴をイシハラを倒す。無命剣よ!我が命の輝きで道を照らせ!!」
「…ビャクさん。まさか…死ぬ気じゃ?…やめて!やめるんだ!ビャクさん!!」
男が止めるのも聞かずビャクは金色の炎を纏いイシハラに近づいていきます。
>「お前は此処で果てるんだ!メギドラオンッ!!」
ビャクの放った光は大爆発を起こし、地面に大穴を穿ちました。
>「じゃあな…男よ…守るべき者だけは違えるなよ」
「ビャクさぁーーーーーーーーーーーーんっ!!!!!」
深い奈落。
男が叫ぶビャクの名は、黒で塗りつぶされた漆黒の闇の底に吸い込まれるだけでした。
「ありがとう…。ビャクさん。君がいてくれてよかった。…君に会えてよかった…。
…とおく…とおく、時の輪の接する場所で、…まためぐり会おうね…」
>「ビャク……無茶しやがって……」
サジタリウス・フォームになったイョーベールも悲しみにくれています。
>「行こう、ビャクさんの想いを無駄にしないために!」
「うん」
6本の夢想剣は男の手の聖刻の力で刃鳴りをしていました。
漲った闘気が魔剣に呼応しているのです。
* * * * * * *
男は幽体のアズリアさんがどんな感じになるのかと心配しながらも
みんなと一緒に地下へと進みます。
しばらく進むと核シェルターの扉のように大きく分厚い扉が見えました。
扉は開いていました。
「この先にレヴィアがいる」
男が恐る恐る入って見ると、部屋は只ならぬ妖気で充満しています。
中にはシンプルな内装にコンピュータが並び、中央で太陽を模したオブジェが鎮座していました。
塔の傍らには魔法円を媒体とし宙に浮かびあがって見える蜃気楼の様な風景。
「…これは」瞠目する男。
天井からは小石がパラパラと落ちて来ます。よく見れば部屋には無数の亀裂。
きっとビャクのメギドラオンの影響でしょう。残された時間はあと僅かのようです。
「レヴィアさん!そこにいるのか!?ここは危険だ!もう帰ろう!」
ゴゴーン!天井の一部が崩れ落ち太陽のオブジェを潰しました。
同時に魔法円から浮かぶ蜃気楼が、狂ったアメーバーの様にまわりに飛び散ります。
>>ALL
アメーバに飲み込まれてしまったら異世界に飛んでいってしまうことでしょう。
【アメーバはシナリオボスの前のちょっとした前菜です】
【
>>276-277】
詠唱を続けていたレヴィアが気配を感じて精神の集中を切る。
地下室の扉を開けて、妖精や“男”が室内に入って来ていた。
「……どうやら貴方達も生き残っちゃったみたいね。
ボスキャラがどうとか言ってたけど、お楽しみのゲームはクリアできて?」
レヴィアは薄く笑い、片手で床の紋様を指し示す。
床には青白く燐光を発する魔法陣が描かれ、その内側には無数の景色が重なり合っていた。
「うふふ……これ?
これはね、異界から送られてくる力の流れを利用して空間の歪みを集束したのよ。
今、次元の通路はとても安定していて、次元崩壊に影響を与えず安全な行き来が出来る状態。
異次元の地理は分からないけど、ナビゲートしてくれれば、多分望みの場所にも繋げられるわ。
そっちは安全に帰れて、こっちの世界は異次元の魔物に消えて頂ける……。
あら、これって良いこと尽くめじゃないの?そうね、そうだわ。すごぉい!」
わざとらしく声を上げた後、レヴィアは思案するように軽く握った右手を頬に当てる。
「さて……それでここからが本題、ね。
この次元から異次元の影響を一掃するには、宇宙樹から切り離さないといけないみたいなのよねえ。
そのためには、隣の次元に渡って同じ作業をする必要が――」
遮る様に危険を叫ぶ“男”の声。
鼓膜を震わせる轟音にレヴィアの笑みが凍り付いた。
轟音は“男”が発したものでは無い。
天井の一部が崩落し、地下室に大量の石片と溶け爛れた肉塊を降らせたのだ。
グズグズに崩れた肉塊は、狂気を静かに閉ざしたイシハラだった。
おそらくは、その質量によって何度も中間で崩落を繰り返し、この地下室まで達したのだろう。
彼の落下した場所は、狙い澄ましたかのように太陽のオブジェの上。
押し潰された彫刻は砕け散って、もはや次元間の通廊を安定させる魔術アンテナの用は為すまい。
「……運が無かったわね。たった今、こちらの交渉カードが潰えてしまって。
シンボルも流れ込む力も無しに、この規模の次元通廊を造り出すには長い時間が掛かるわ。
つまり、また次元間の移動をして欲しくない状態になってしまったってことね。
アナタたち、私が何ヶ月も儀式を行うのなんて悠長に待てないでしょ?
残念だけど平和的な解決は諦めてちょうだい」
冷気を帯びた冬の声で宣告すると、レヴィアが右腕から黒い影を伸ばす。
多頭蛇の鞭は宙を疾り、九本の黒雷を描きながら、一行の先頭にいたテイルと“男”に向かってゆく。
このヒュドラを模した鞭に巻き付かれれば、鋼鉄のワイヤーで締め上げられる程度のダメージはあるだろう。
もし噛みつかれれば、毒蛇に噛まれた程度の影響もあるかもしれない。
【>>男、テイル 蛇の鞭が襲ってくる】
>「さて……それでここからが本題、ね。
この次元から異次元の影響を一掃するには、宇宙樹から切り離さないといけないみたいなのよねえ。
そのためには、隣の次元に渡って同じ作業をする必要が――」
「……宇宙樹から切り離す?それって「枝きり」だよね?
ボクの予想だと切り離された世界はエネルギーの供給を失って停止してしまう。
時が凝結されてしまうんだ…。つまりは宇宙の記憶に閉じ込められてしまって
終わりも始まりもない死んでるような状態になるんだよ!」
男は悲しそうに語りました。(でも嘘かも知れません)
そして雪崩の様に押し寄せる轟音。石片。肉塊。
>「……運が無かったわね。たった今、こちらの交渉カードが潰えてしまって。
シンボルも流れ込む力も無しに、この規模の次元通廊を造り出すには長い時間が掛かるわ。
つまり、また次元間の移動をして欲しくない状態になってしまったってことね。
アナタたち、私が何ヶ月も儀式を行うのなんて悠長に待てないでしょ?
残念だけど平和的な解決は諦めてちょうだい」
レヴィアの双眸が“男”の目を射ります。静かな激昴を宿した瞳。
語尾に冷気の籠もった言葉を発しレヴィアの右腕から黒い影が飛びました。
「く!!」
男の周囲で風が唸り、一瞬のうちに体中に黒い溝が走ります。
じわじわと肉に食い込み深みを増す黒い溝。男の身体は見る見るうちに赤く染まっていきます。
鋼鉄のワイヤーの如き毒蛇の締め上げが、肉を食い破り鮮血を噴かせたのでした。
「…これで良かったんだよ。レヴィアさん。
仮に宇宙樹からの枝切りに成功したとしても、もしもその切り離されて見捨てられる世界が
君の住むこの世界のほうだとしたらそれでも君はそれを良しとしたの?
君が異形と見下しているものが宇宙の本質であり、混沌こそ真実だったとしたら…」
「KI…SEI……TEN…BATU…」
血臭漂う血の沼からイシハラの声が聞こえてきます。
それは絶望と呪いを孕んだ血塗れの声でした。なんとイシハラは生きていたのです。
「KI…SEIッ!!!!」
ぐずぐずに崩れた肉を撒き散らしながらイシハラは血の沼をバタフライで跳ねました。
宙に舞った巨体は空間を押しつぶしながらレヴィアに迫ります。
ビャクの攻撃は勝つことだけを徹底的に教育された戦後エリートたちの矜持を著しく傷つけたのです。
「イシハラー!!」
男は叫び、夢想剣で鋼鉄の鞭を斬断すると、イシハラの下敷きになりかけたレヴィアを突き飛ばしました。
轟音が部屋に響きます。イシハラは沈黙しました。男はイシハラの下敷きになりました。
(…ビャクさん…ボク…超男になれたかな…。
…また…会えるよね。…時の輪の接するあの場所で…)
その時、男に超パワーが流れ込み、潰されても無傷ですんだ。
その超パワーの名は ろ り こ ん ぱ わ ー
力の代償に男はロリコンになってしまった!
結論から言いましょう。
>>275で使われたザオリクは問題なく効果を発揮しました。
ザオリクは名前を指定する魔法であり、この場合アズリアが対象となります。
さらに言うなら
>>276の期待通り、アズリアは元の姿で復活しました。
仮に美少女ではなかったとしても、それはPLの人の責任ではありません。
元々の姿ですからね。
問題は。 復活した“場所”です。
御存じない方のために説明しましょう。
アズリアとフラポリーは身体を交換しています。
このためアズリアの元の体は、以前フラポリーが動かしていました。
ところがある事件がきっかけで、フラポリーはアズリアの身体から飛び出てしまったのです。
抜け殻になった身体の方は、当時カオスパーティーの行動起点だった飛行艇に収容されました。
で。 今は身体は。 こんな事もあろうかとPLの人が回収しています。
つまりしばらくは、アズリアは戦線復帰出来ないのです。
・・・この事実をどうやってカオス勇者に伝えるかですが・・・
やはりアズリアが使っていた板に書き込むのが一番ですね。
アズリアが使っていた板を見た人がいれば、そこには次のような書き込みが増えています。
『現在アズリアはそちらに向けて移動中です。 しばらくお待ちください。』
勇者たちはこの書き込みに気づいても良いし、気づかずに板を踏み割るのも自由です。
尊い犠牲者(
>>274とか
>>280とかです)が続出していますが挫けず頑張りましょう。
世界の命運は勇者たちにかかっているのですから!
・・・ちなみにロリコンは病気です。
「もうロリコンでいいや」と考える人は末期症状ですのでお気をつけください。
>277
>「レヴィアさん!そこにいるのか!?ここは危険だ!もう帰ろう!」
レヴィアさんは魔法の儀式のような事をしていたのでした。
「それは何……!?」
レヴィアさんによると、異次元間を繋ぐ通路らしい。
>「あら、これって良いこと尽くめじゃないの?そうね、そうだわ。すごぉい!」
ソフィアが復活して目的は果たされた訳で、そう言われてみればその通りだ。
>278-279
問題はその次だった。
「宇宙樹から切り離すだって!? そんな事をしたら何が起こるか分かんないよ!
最悪その瞬間に消えちゃう……!」
この世界にはヨウちゃんやハカナちゃんがいるのだ。見過ごす事はできない。
が、議論するまでもなく、イシハラの残骸が落ちてきた。太陽のオブジェは砕け散った!
「あ」
>「 アナタたち、私が何ヶ月も儀式を行うのなんて悠長に待てないでしょ?
残念だけど平和的な解決は諦めてちょうだい」
蛇の鞭で締め上げられる!
>「…これで良かったんだよ。レヴィアさん。
仮に宇宙樹からの枝切りに成功したとしても、もしもその切り離されて見捨てられる世界が
君の住むこの世界のほうだとしたらそれでも君はそれを良しとしたの?
君が異形と見下しているものが宇宙の本質であり、混沌こそ真実だったとしたら…」
「男さんを離せえ! エアリアルスラッシュ!」
レヴィアさんの手から伸びた蛇の根本めがけて真空刃を放つ。
>「KI…SEIッ!!!!」
>「イシハラー!!」
なんと、イシハラが最後の足掻きで動きだし、男さんがレヴィアさんを庇って犠牲になった!
「男さん……!」
アズリアさんは一向に生き返る気配はないしどうなってんだ!
このままだとパーティーメンバーがボクとイョーベールさんだけになってしまう!
「どうして!? どうして皆犠牲になるの……!?」
ソフィアが厳かに言った。
『彼の者が勇敢なる戦士を必要としているのだ』
「彼の者……? 死霊皇帝!?」
『左様。冥界は今天使の軍勢の侵略を受けている……!』
「な、なんだってー!? 天使編はもう終わったはずじゃあ!?」
『境界の力を司る私なら冥界への扉を開くことができる。
ただし何が起こるか分からないし帰ってこれる保証もない。それでも行くか?』
>280
その時! 男さんに超パワーが流れ込んだ!
「なんて神々しい力だ……!」
それはまさに、表現の自由を縛り付け心に死をもたらすKISEIに対抗する者にふさわしい力。
そんな気がした。色んな意味で勇者覚醒である(!?)
といってもロリコン効果は数ターンで消えるとかいうことにしても一向に差し支えない。
>『現在アズリアはそちらに向けて移動中です。 しばらくお待ちください』
アズリアさんも実は生き返っていたようだ。
ボクは一同とアズリアさんの看板に向かって問いかけた。
「冥界が大変らしいんだ……! あそこを敵に抑えられたら輪廻の生命システムが崩壊する!
せっかく生き返ったばっかりのところ何だけど行く気はある!?」
【
>>279-282】
九匹の蛇が“男”と妖精に絡みついて締め上げた。
全身に蛇を食い込ませ、貌を赤に膨らませた“男”は、それでも苦しい息の下でレヴィアに問い掛けてくる。
切り離され、見捨てられる世界が此方側でも構わないのかと。
妖精も何が起こるか分からないとの警告を下す。
「うふふ……私、鶏口牛後が主義なの。
自分の世界が枝葉末節の末端だなんて耐えられないわぁ。
だから、この世界を宇宙樹から切り離すのは止めてあげなぁ〜い。
もちろんエネルギー問題は解決しなくちゃいけないけれど、ね。
もし、この試み自体が大いなる錯誤なのだとしたら――その時はこの世界ごと滅びるわ☆」
事も無げに語り、笑みを妖精にも向ける。
テイルの放つ怒りと敵意の波動は、レヴィアにも容易く感じ取れた。
そう……敵意であって殺意では無い。
それ故に、放たれる攻撃の威力も範囲も死を齎す程の物では無いとの憶測が容易にできる。
無風の地下空間に発生した風を感じた瞬間、レヴィアは柄から手を離して数歩の距離を横に飛ぶ。
一瞬の後、宙に放り投げられた鞭の柄が無数の傷で裂けた。
しかし荒れ狂う真空の刃は、レヴィアの服や肌を浅く裂いただけ。
「手緩いこと……。殺す気でかからないと後で後悔するわよぉ?」
己の優位を確信して悠然と立つレヴィアの背後で、巨大な肉塊が宙を跳ねた。
見上げるレヴィアが思わぬ攻撃に身構えると、誰かに背中を強く押された。
背後で響く激突音。
振り返った先に“男”の姿だけが無い。
「……大蟹が言ってたわね。
スーパーヒーローなら全てを助けたいと思えば、最後には実現できるのが当たり前って。
でもね、全てを助けられるスーパーヒーローは物語の中にしか存在しない空想の産物。
人は言葉を使う生き物だから、存在しないものでも有るように思い込めるのよ。
それは出来る事と出来ない事を履き違えて妄想の全能感に浸った代償……おとなしく受けなさい」
妖精の悲嘆に龍が答える。
彼は彼らの世界の話をしていたが、レヴィアには関わりの無い事。
冷淡な表情を崩さず、歩きながら彼らに近づいてゆく。
「冥界へ侵略?貴方たちの世界も、一枚岩では無さそうねえ。
故郷の危機には同情するけど、次元の歪みには余計な事をしないでちょうだい。
死後の世界へ逝きたいのなら、この世界の冥界に送ってあげるわ」
レヴィアの手に武器は無い。
“男”に切断された多頭の蛇鞭は、妖精の周りの床で無惨に転がっているのだから。
……それぞれの切り口から新たに二本の首を生やして。
「ヒュドラは意志持つ鞭、手元から離れても動き続けるのよ……さあ、遊んでおあげ」
ヒュドラの如く首を増やした蛇鞭は、包囲した獲物たちを紅玉の様な眼で睨み付けると一斉に飛びかかった。
それと同時にレヴィアが床を蹴る。
レヴィアは妖精が投げた何かを抜き出せば、龍を元の抜けがらに戻す事が可能だろうと判断していた。
狙いは龍神ソフィア。
蠢く蛇の群れを横目に龍の巨体の前に達したレヴィアは、そのまま勢い良く跳躍し、龍の頭部にしがみつく。
もし彼女がソフィアの体内に入れば、シャードを奪うだけでは飽き足らず、龍の肉体そのものを破壊するかもしれない。
【>>テイル、イョーベール 包囲した蛇が襲いかかる】
大変だ! 包囲している蛇はお尻を目掛けて襲いかかってくるぞ!
>>279 「なんてこった!」
男が異形と化したイシハラに押しつぶされていた。
とりあえず上に乗っかっているイシハラを蹴飛ばして除去し、あわてて手当てを開始しようとする。
が、サジタリウス・フォームになってスキル構成が攻撃重視に変わったため、ここでは回復技が使えない。
「しっかりしろ!物語の途中で死ぬスーパーマンがあるか!」
身体が大きすぎて、男を揺さぶったりできないので、とりあえず怒鳴る。
>>280 「むぅ、この力は……エロスか!?」
誤解を招くような言い方だが、エロス(愛)はカオスより生じた原初の神で、確か前章でも敵として登場した。
もちろん、単なる異常性癖としてのロリコンは重大な病気であり、早期の治療が必要である。
だが、それを純粋な愛へと昇華することによって、KISEIに対抗する大きな力にすることができるだろう。
愛は勝つ。愛の力が問題を解決する物語は山ほどある。
「どうやら、まだ希望は失われていないらしい。
しかし『男』め、お前は何処までデカくなるんだ――?」
イョーベールは安心して微笑んだような気がするが、今のヤツの顔には真っ赤なモノアイしか付いていない。
先ほどまでのスライム以上に表情の変化がわからない奴である。
>>283 「スーパーヒーローは物語の中にしか居ない。
なるほど、そいつはお前の言うとおりかも知れん。だが」
イョーベールは四本の腕のうちの一本でレヴィアを指差して言った。
「この馬鹿騒ぎだって、全てが終わった後で振り返れば、一つの壮大な物語に見えるだろう。
その中に、一人くらいはそういうスーパーヒーローが居ても良いじゃないか。
――彼は、まだ諦める気は無いんじゃないか?」
そう言って、倒れ伏す男を指す。
何もかもが終わったと決め付けるには、男は致命的な状態ではない気がする。
たとえこの場は死んでいたとしても、
>>282で提示された新たな冒険の舞台・冥界で、装いも新たに再登場する可能性もある。
さて、それはともかく、レヴィアとの戦いはまだまだ続く。
「ヒュドラか!厄介な――」
ヒュドラとは、ギリシャ神話に伝わる多頭の蛇の怪物だ。
ファンタジー的には、複数の首による連続攻撃と、首を切り落としてもすぐに再生する生命力で悪名高い。
勇者達がかつて戦った混沌の魔獣『ガチャピン』が召喚してきたことは、記憶に新しい。
もっとも、以前戦ったものと同じ種類のヒュドラとは限らず、どちらが強いかはわからない。
イョーベールは応戦しようと弓を構えるが、こちらのヒュドラは様子が変だった。
「これは!?」
何も起きない。勇者達の尻を目掛けて襲いかかったヒュドラが、突然、微動だにしなくなったのである。
そして、この世界が急激に色あせてゆくのが、誰の目にもはっきりとわかる。
「なるほど」
元々がデミウルゴスの下で枝切りを行うアルコーンだったイョーベールは、その原因を理解した。
「演劇において、物語を強制的に終わらせる手法を『デウス・エクス・マキナ』というが――
たった今、『この世界』が、世界樹から切り離されたらしい」
デウス・エクス・マキナは、少し前に名前が出た『ウチ・キリ』や『宇馳錐(ウー・チキリ)』、つまり打ち切りとも類似した手法でもある。
つまり、打ち切り臭の漂う諸展開や台詞回しも、無慈悲なるデウス・エクス・マキナの手によって、この世界が世界樹から切り離されつつあったからこその現象だったのだ。
そして、以前登場したデウス・エクス・マキナは、デミウルゴスと深い関わりがあった。
「どのような世界であっても、そこに住まう一つ一つの生命が物語を紡ぐ。
世界を満たすバイトの本質は、『新たな物語を作り出す』エネルギーということだ。
一人でそれを占有する者は、単に強い力を有しているというわけではない。
たとえ力が弱くとも、複数の物語に強い影響を及ぼす、いわゆる『重要人物』になるのだ。
そして、それが完全に尽きた世界は時が止まり、何も起こらなくなる。
何も起こらない世界では、新たな物語が決して生まれえない。
それこそが世界の完全なる死か――」
つまり、この時間停止現象は、何者かの手によって、この世界が世界樹から切り離されたために起こった現象だというのだ。
バイト供給を立たれたことによる、物語の強制終了。まさにデウス・エクス・マキナである。
もちろん、この恐るべき打ち切り旋風は、全て真の敵の仕業であることは言うまでもない。
>>282 そして、ソフィアが新たな冒険の世界へと導こうとしている。
次の舞台は冥界らしい。
イョーベールがソフィアの開いたゲートの傍に立った頃には、この世界の殆ど全部が灰色になって、時が止まっていた。
「この世界は、もはや新たな物語を紡ぐことはない。
となれば、まだ無事なガイアの冥界へ、早々に移るしかないな。
――世界樹からこの世界が切り離されることがお前の希望だったようだが、どんな気分だ?」
イョーベールはレヴィアを見遣って、この世界の完全な破滅という現実を突きつけた。
だが、レヴィア自身はそれでも色あせないかも知れない。
彼女自身が多量のバイトを占有する『重要人物』であるかも知れないからだ。
もちろん、このまま現実に絶望して足踏みをするだけであれば、レヴィア・メルビレイの物語はそれ以上展開されない。
そうなれば、彼女には完全な死が訪れるだろう。
イョーベール自身は、この世界に早々に見切りをつけて、ソフィアに従って次章の舞台へと移動しようとしている。
【
>>285-286】
世界が色を失い、あらゆる物が動きを止める。
レヴィアもまた、龍の首に掴みかかった姿勢で空中に静止していた。
ソフィアが彼女を引き剥がして離れた後も、そのままの位置で。
いち早くレヴィアが動きを止めたのは、黄昏の龍神が境界の力で干渉した為なのだろうか。
ソフィアは憐れむような眼でレヴィアを見つめ、時を経た者だけが備える重い声を出す。
『吾輩も受肉した神。異界の魔人よ、易々と汝の思い通りにはさせぬ。
いや、汝の企てを望まぬのは吾輩だけではあるまい。
この星に住まう、どれだけの命が汝に賛同すると言うのか?』
「……」
『では行こう、カオスの勇者たちよ。
宇宙樹からこの世界が切り離された以上、
次元の扉は何時切れるとも知れぬ細い糸で繋げているに等しいのでな』
ソフィアがカオスの勇者一同に語り、自ら作りだした異界へ通じるゲートへ入りこむ。
イョーベールやテイルに“男”、ソフィアに続く者もいるだろう。
しかし、全身を灰色に染めたレヴィアに動く気配は見られない。
ただ虚ろに時を凍らせるだけ。
時間が停止している以上、もはや何かの物体を動かしたり、攻撃して損壊できるのかすら不明だった。
灰色の世界が赤子を寝付かせるように音も消して行く。
次元の扉は次第に狭まり、静かに異界への道を閉ざすだろう。
そして後に残るのは永遠に静寂する世界……。
――――。
【>>ALL 空中で時間停止】
ソフィアたちが異次元に去った後、どれぐらいの時間が経ったのだろうか。
1秒?1時間?それともアイオーン(永劫)?
時の秤が動かぬ以上、経過時間は誰にも分からない……。
「――我思う、故に我在り」
秒の時も流れないはずの世界に、微かな呟きが漏れる。
呪詛にも似た言霊は、レヴィアの口から発されていた。
イョーベールが語る世界の本質の説明は、時を止めたレヴィアの脳をも駆け抜けていたのだ。
無論、謎の人馬が語る言葉が真実とは限らない。
しかし今のレヴィアには、この時間停止現象に得心の行く説明がつけられなかった。
もし、あれが真実ならば根本的な錯誤を認めざるを得ない……。
レヴィアはエネルギーの供給が絶えることを、エントロピー増大による宇宙の熱的死をイメージしていた。
物理的な現象としてエネルギー供給が絶えることを。
それが世界を動かすエネルギーの本質は物語そのものですって?
なら私を物語として動かし、観測するのは誰だって言うの?JHVH?水槽の脳?
……そんな概念を受け入れるのは屈辱としか言えない。
それ故にレヴィアはイョーベールの言葉を否認する。
あんな馬鹿げた話は事実として認めない!承認しない!
たまたま起きた現象を、さもそうであるかのような迷盲で粉飾しただけ!
「はっ、なにがバイトよ!?物語よ!正しいのは私!
この時間停止は、異次元から流れ込んだ法則で汚染されたまま、次元が切り離されたせいよ!」
こみ上げる怒りに、レヴィアの長い髪がゴルゴンの様に空をのたうつ。
もはや、彼女の時は止まっていなかった。
怒る神も及ばぬほどの怒りを込めて、レヴィアはソフィアたちが消えた空間を睨みつける。
異界の扉はすでに貝の如くピッタリ閉じて、宙に煌めく微かな線として痕跡を見せるのみ。
床に着地したレヴィアは、肺の中でまで水飴の様に絡みつく止まった空気の中で、手足を掻いて歩く。
人馬の言葉を否定する為に外の様子を確かめたかったが、閉じた扉も、天井の穴を塞ぐ瓦礫の山も微動だにしない。
「……同盟の期限をイシハラの暗殺が成功するまで、にしておいて良かったわね。
全ての時間が停止している以上、時が動くまでイシハラは生死不明なシュレディンガーの猫よ」
破砕されたオブジェの傍には、姿を変身前に戻したビャク=ミキストリが倒れていた。
手首を掴むと停止した物体とは違い、ぎこちなく動く。
呼気を感じないのは時間停止で空気が静止した影響なのか、或いはすでに死神に連れ去られたせいなのか……。
「この世界を次元の根源に直接繋げれば、時と空間は正常を取り戻すわ……。
いいえ、そう在らねばならない!」
ビャクを左手で引き摺ったまま、レヴィアは線の如く狭まったゲートの前に立つ。
呪いと瘴気を込めた右腕で空間の痕を穿って強引に押し広げると、異次元へのゲートは再現された。
毒々しい七色の光芒を伴って。
パシュ!一瞬小さな音がするものの、動かぬ空気はすぐさま振動を止めて反響を残さない。
「かっ……ぁあっ……!」
異次元に繋がるゲートを強引に開けた影響なのだろう。
レヴィアの右腕は跡形も無く蒸発していた。
たちまち焼ける鏝で捻じ切られ続けるような苦痛を朱色の断面が作りだす。
レヴィアは神経が焼き焦げる痛みを無理やり怒りで押さえつけると、
灰色の世界を網膜に焼きつけるように見つめ、己が抉じ開けた道に向かって一歩を踏み出した。
僅かに体を捻じ込める程度の隙間から、虹の光芒を洩らす狭き門の中へ。
五感を押し潰すような圧倒的な量の光に浸されて意識が途切れ掛けた瞬間、レヴィアの瞳は茫漠とした荒野を映し出した。
色褪せたブレザーに包まれた彼女の姿は、もうここには無い。
【Followed by Chapter18 (
http://www1.axfc.net/uploader/Img/so/109052)】
咎に囚われし青年いや―憐れな少年は自身の意識が失われる前に
奈落に落下しながらもこれで何度目かの走馬灯を見ていた
それでも結構の間が空いているが、それでも何度見てもいい物じゃない
だがこの世界を越えて出会った者達―特にこの身を全てを肯定し認めてくれた
守りたかった人の顔が思い浮かぶその中でも苛烈な争いとは無縁な平和な世界で出会った
片腕に障害を持ちながらも賢明に働く男と健気で病弱なその男の伴侶その二人から生まれた顔だった。
少年が守りたかったのはありふれた幸せを受けるべきとても平凡な人達である
それを見ているだけで少年は胸から熱い物が込み上げとても幸せだった
「……益々会えそうにないな…お前達には…」
自我が失われるあと数刻に裏切られながらも愛した女の名を口にする
「イ…リュー…シア…」
力尽き瞼がゆっくりと閉じていくその最期にもう一人の女性の姿が思い浮かんだ
かつて闇の中から救い自分を主と呼んで慕っていた忍びの女―かつての仲間を
「く…く…まさか静葉を思い出すとは…ね」
完全に閉じ終わると力尽きた。
【↑訂正生まれた子供の顔だった】
レヴィアが消えた直後、この世界ではワームホール状の空間ゲートから狼の毛皮をかぶった大量の武装した兵士達が出現し
同時に彼らは異常な破壊力と根幹と構成情報を破壊する兵器を持ち入りこの世界を破壊していった
みるみる内にこの世界は全て火の海で溢れ帰り、世界は勢い良く削られ破壊されていく
その中で一人だけ灰色の外套を纏い
奇妙な装飾を施された仮面をかぶった男がその光景をただ見つめていた
崩壊している見下ろしの良いビルの上から
『不要世界項目に則り、第348961073世界の排除を実行中』
破壊に回っている狼の毛皮をかぶった兵士達―ベルセルク達の報告を聞いて
そのまま続け、完全に消滅させるように最終指示を下し
自身は最初から居なかったように姿を消す
次の脅威が広がりつつある世界とその脅威の排除を目指して
男は夢をみていました。
満ちた月が大地に銀の涙を降らせ
枝で眠っていた繭たちは
光り輝く蝶となって虚空に舞います
蝶たちはどこへむかうのでしょう
それは誰にもわかりません。
でも、これでみんなが救われる
そう男は安心しました
しかし、次の瞬間。悲劇は訪れたのです
羽化しかけた繭を次々と燃やしていく狂気の出現
男は絶叫し、目を覚ましました。
目覚めたての白んだ意識の表層には、呪詛にも似た言霊が響いています
ぺったんぺったんつるぺったん♪
ぺったんぺったんつるぺったん♪
割れるように痛む頭
「みなさん…おは幼女ぉ…」
おはようの挨拶もまま成らぬまま男はソフィアに導かれていました。
「…ここはどこ?」
男が目の前の風景に驚いていると。
「わたしたち、今、天使と戦っているの!」
なんだかよくわからない生き物が忙しそうに空を飛んでいきます。
【
>>288】
「真っ先に時間が止まるとは、どうやらあいつはたいしたバイトの持ち主では無かったようだな。
いわゆる口だけ番長とか、プロ市民とかいう、明らかな脇役に違いあるまい。
では、あんなのは放っておいて冥界に行くぞ!待っていろ冥王ハーデス!」
ソフィアに続いてイョーベールが、異次元ゲートに入りこむ。
「む、どういうことだ?急に体が軽くなったぞ?まるで中に入っていた何かが抜け出て行ったようだ」
イョーベールは困惑したように語ったが、そもそもサージタウスの中に何かが入っていたのかなど余人には窺い知れない。
「もしやサジタリアスフォームと次元移動の影響で、私の魂に何らかの影響が出たのかもしれん。
人格と芸風の修復は困難なので、今後は多重人格的になるが仕方あるまい。
或いは不定期で何度か元の人格に戻る事ならあるかもしれないが、
今この瞬間に喋っている人格が表象に現れることはもう無いだろう」
【
>>291】
「うむ、今はあまり明るくないので夜のようだ。ロリこんばんはと言ったところだな」
“男”に挨拶を返すとイョーベールは周囲の様子を窺う。
さて、カオスの勇者の出現先はどこかというと街だった。
奇異の念を覚える前に、さっそくソフィアが冥界の説明を始める。
『ここは物理的に存在する街では無く、無数の霊たちが思念によって、かつて在りし日を再現する空間。
忘憂の街ネペンテスとでも呼称しようか。
少なくとも永らく滞在する霊たちにはそう呼ばれているようだ。
ここで自らの死を受け入れた霊たちは、ネペンテスを出て魂の穢れを清める旅を始める。
そして冥界に湧く12の泉に沐浴することで、罪は徐々に洗われ、未練や妄執の無くなった魂は冥界から去るのだ』
しかし今や忘憂の街の空には、翼有る獅子に跨った有翼の人が飛び回り、地では人とも獣とも付かぬ生き物たちが逃げ惑う。
とても、死の痛みが和らぐまでのモラトリアムとして機能するとは思えない有様であった。
「なるほど、つまり天使の襲撃で街があちこち壊れているのも霊魂達が傷けられて、思念の街を保てなくなっていると言うわけか。
だが問題無い、こちらには神がいる。先生お願いします」
『……済まぬが太古に神々の間で取り決めた領域の盟約により、黄泉と高天ヶ原に於いて吾輩の力は10分の1に減衰する。
新たな盟約を結び直さぬ限りは』
「つまりカオスの勇者たちにも頑張ってもらおうと言うわけか。勇者の出番を奪わないとは分かっているな!
よし、みんな頑張ってくれ!私もみんなの出番を奪うつもりは全く無い!いくぞ男よ!聖衣分解!」
1マイクロ秒の間に鉄の体をバラバラのパーツに分解したイョーベールは“男”の周りに集まるや鎧を再構成して“男”に装着された。
なぜかサイズはピッタリだ。
余った部品がどこに消えたのかは、やはり誰にも窺い知れない。
【>>イョーベール シャローム、いつかまたどこかで】
次元を移動する際の、空間ごと圧し潰さんとする感覚にもレヴィアは意識を失わなかった。
肉体を持つが故の痛みが、絶え間無く右腕に襲い続けるから。
この苦痛は神経の一部を麻痺させて感覚を遮断すれば、容易く取り除けるだろう。
レヴィア・メルビレイの肉体とて自らが問題無く行動する為に、大脳の一部を麻痺させているのだから行うのは容易い。
しかし、レヴィアはそれを望まなかった。
己が怒るほど、憎むほど、嫉むほど……魂に受けた傷が深いほど力を増す存在であると自覚するが故に。
「そう、今から行うのは単なる生存競争では無いわ……私の!宇宙の尊厳を賭けた戦いよ!
例え万象を砕こうとも私は私の宇宙を取り戻す!他の世界なんて知った事じゃないッ!」
レヴィアが立つのは、シナイ半島の荒野を思わせる薄暗い茶色の大地。
辺りには仄かに光る灯火たちが、暗い大地を照らしながら彷徨していた。
彼らは冥界を漂う無数の霊魂。
まだ人の形を保っている者もあれば、鬼火のような塊として在る者もいる。
暗天の空には、一つの影が舞う。
レヴィアが空の影を超視眼によって凝視すると、それは自らの世界で天使と呼ばれる存在に酷似していた。
彼が天使であれ、異世界の神に仕える存在であるばレヴィアと関わりは無いのだが、無性に苛立ちを掻き立てられた。
「ごめんなさいね。私今とってもイライラしてて……押さえられる自信が無いわぁ!」
地面に転がる石を左手で掴み、投擲する。
弾丸の勢いで投げつけられた石は天使の頬を掠め、彼にレヴィアの存在を気付かせたようだ。
たちまち槍を手にした天使がレヴィアの元へ降下してきた。
それを見ながらレヴィアは息を吸い込み、肺に溜めた空気が燃え上がる様をイメージする。
天使が目前に迫るとレヴィアは口を大きく開き……一瞬の後、その場は燃え上がる紅蓮の炎に輝いた。
――――。
火傷に呻きながら倒れる天使に馬乗りになって、堅い石で顔を殴打する。
「ちょっと質問いいかしらぁ?
手駒の水魔たちを連れてこれなかったから、手荒な訊き方になるけど許してね?」
レヴィアは嗤いながら訊く。
この世界について。貴方たちは何者なのか。何をしているのか。世界樹について。神について。
質問を続けながらも石による殴打を止めない。
三、四十回は繰り返しただろうか。
訊きたかった事を全て訊き終えた時には、膨れ上がった天使の顔は、もはや元の麗しかった面影を留めていなかった。
最後にレヴィアは天使に“貴方は物語の存在なの”と問う……。
歯を全て叩き折られた天使の口から、か細い声が漏れる。
ガイアよ、救いたまえ……と。
返ってきたその答えを聞くと、レヴィアは天使の脳天に石を振り下ろしてから立ちあがった。
目指すのは万物なるカオスが発祥する世界樹の根源。
レヴィアは、根源に至る高次元への通廊を開くのに十二の霊泉を触媒に使う事に思い至る。
この次元も強く揺らいでいる以上、この地から宇宙樹の根に至るのも不可能では無さそうに思えたのだ。
それには冥界各地に散って要所を押さえる天使たちに先んじて、霊泉を抑えねばならない。
黄泉界を統べる神族と天使たちとの争いに乗じて。
霊泉へ向けてレヴィアが歩き始めると、恐れるように近くの鬼火たちが離れて行った。
>283
>「手緩いこと……。殺す気でかからないと後で後悔するわよぉ?」
そう言われてはっとする。そういえばいつからこうなったんだろう。
最初は光の女神の刺客として敵対勢力を殲滅する冷酷な刃だったはずなのに。
いつの間にかすっかり牙を抜かれたものだ。
>「ヒュドラは意志持つ鞭、手元から離れても動き続けるのよ……さあ、遊んでおあげ」
意思持つ鞭ヒュドラが迫りくる!
>284
「せっかくシリアスっぽくなってんのにくだらんネタを振るなあああああ!!
これが本当の尻アスパート、じゃねーよ!」
ボクが妖精で心底良かった。なぜなら尻の穴が無いから。
>285-286
突如として時間が停止する。世界が止まる。
>「これは!?」
>「この世界は、もはや新たな物語を紡ぐことはない。
となれば、まだ無事なガイアの冥界へ、早々に移るしかないな。
――世界樹からこの世界が切り離されることがお前の希望だったようだが、どんな気分だ?」
「そんな……酷いよ! ヨウちゃんは!? ハカナちゃんは!? この世界に生きてた人達はどうなるの!?」
>287
>『では行こう、カオスの勇者たちよ。
宇宙樹からこの世界が切り離された以上、
次元の扉は何時切れるとも知れぬ細い糸で繋げているに等しいのでな』
もはやソフィアに続いて冥界への門をくぐるより他に選択肢はない。
「レヴィアさん、争ってる場合じゃない。とにかく行こう!」
ゲートの途中から話しかけるも、レヴィアさんは動かない。
「レヴィアさん!? レヴィアさ――ん!」
次元の扉はゆっくりと閉じた。レヴィアさんを時の止まった世界に残したまま。
>291-292
【第17章開始】
「ここが……冥界……」
>「みなさん…おは幼女ぉ…」
「うん、おハロー」
時間帯がよく分からないので朝でも昼でも使える便利な挨拶をしておいた。
幼女といえば、気付けば章が変わった影響でまた3,5頭身に戻ってしまっている。
>「うむ、今はあまり明るくないので夜のようだ。ロリこんばんはと言ったところだな」
「イョーベールさん、どこがどうとは言えないけどなんか雰囲気違う事無い?」
具体的には専門用語で言うところの中の人が。
>「つまりカオスの勇者たちにも頑張ってもらおうと言うわけか。勇者の出番を奪わないとは分かっているな!
よし、みんな頑張ってくれ!私もみんなの出番を奪うつもりは全く無い!いくぞ男よ!聖衣分解!」
イョーベールさんは、男さんの鎧と化した!
ボクはなんとなく事情を理解した。これはきっと俗に言う所の大人の事情ってやつだ。
「安心して! 君の想いはボク達が受け継いだ!」
そして立派な鎧を装着した男さんはますます勇者っぽくなってしまった。
ここがどこかと聞かれたら。 さてさてなんと答えるべきでしょうか?
世界の裏側。 実の影。 大樹の根。 視線の死角。 あるいは舞台裏。
・・・どれも違う気がします。
要するに普通は見えない場所、行けない側なのです。 それで十分ですよね。
その普通は行けないはずの場所で、1人の少女が安らかに眠っています。
こうしていると最初に彼女を引き上げた時のようですね〜。
綺麗な顔してるだろ。 生きてるんだぜ。 これで。
・・・反応が返ってこないのも大変なので、そろそろ起きてもらいましょうか。
アズリアさん。 アズリアさん。 朝ですよ、起きてください。
しばらく呼びかけながら体を揺り動かすと、ようやくアズリアの閉じていた目がゆっくり開きました。
ん〜、・・・どうやら電気ショック時の記憶も残っているようですね。
説明の手間が省けてありがたい限りです。
「・・・ここは・・・。 ・・・私、また死んじゃったんですか?」
いえいえ。 今回はちゃんと生きてます。
それどころか(×少し残念な)とても嬉しいお知らせもありますよ。
こほん。 ・・・なんと、イョーベールさんの魔法で、あなたは無事元の体に戻れたのです!
その証拠にちゃんと自分の目で”見える”でしょう?
今までは感覚で感じていただけでしたからね。
いやぁ、良かった良かった。
言われて始めて元の体に戻れた事に気づいたようで、アズリアはじつと自分の手を見つめました。
次に弾かれたように立ち上がると、急いで自分の体をあちこち触り始めます。
「ほんとだ・・・。 私の体だ・・・。 私、元の体に戻れたんだ・・! ・・・やったーーーー!!!」
しばらくの沈黙の後、雪に喜ぶ猫みたいにアズリアは喜びを爆発させました。
あんなに喜んでもらえると、わざわざフラポリーと体を交換してあげた苦労も報われますねえ。
個人的には 働けど働けど我が暮らし楽にならざり の方が見ていて面白いですけど。
「・・・? 何か言いましたか?」
いえ別に。
それより自分の体と感動の再開も果たしたことですし、そろそろテイルさんからの伝言でも聞きますか?
>「冥界が大変らしいんだ……! あそこを敵に抑えられたら輪廻の生命システムが崩壊する!
空中に大写しになったテイルさんの顔から(看板から見た映像です)衝撃の事実(笑)が明かされました。
・ ・ ・ こ れ は た い へ ん だ!
冥界のシステムが壊れたら、あれとかこれとかそれとか色々大変な事になるかもしれません!!
「そうなんですか?! わかりました! 私も皆さんと合流して冥界を助けに行きます!
PLの人さん! ここから冥界にはどうしたら行けるんですか?!」
あちらに黒と赤の光がぐるぐる渦巻いている場所があるのが見えますか?
あれが冥界へと通じる次元の狭間です。
一方通行になっていますので、それだけはお気をつけて。
「ありがとうございます! このお礼はいつか必ず! では!!」
いえいえ。 こちらも楽しませてもらっているので。 それではお元気で〜。
・・・言い忘れていましたが、今のあなたはゴブリンなら倒せるくらいの強さでしかありません。
行っても足手まといになりそうなので行かない方が・・・もう行ってしまいましたね。
引きとめたのですが仕方ありません。
それでは再び、視点をカオスの勇者たちに戻すとしましょうか。
>>291-294 それでは皆様お待ちかね。 やってきました冥界編。
冥界編2とか 真!冥界編とか表記した方が間違えなくていいかも知れません。
>「わたしたち、今、天使と戦っているの!」
男と話をした冥界の住人が、戦争中でもあまり危機感が無いのは仕方がありません。
なにしろ死んでもすぐ生き返れるのですからね。
この太古の昔からの”決まりごと”がある以上、冥界に攻め込んで成功したものはいまだいません。
・・・まだいないからと言って、これからもいないわけではないのがこの話のポイントでしょうか。
「お久しぶりですみなさん!
アズリア・ニャン! ただいま帰還いたしました!」
ばーん!と効果音が鳴り響き、何も無い場所に現れたドアからアズリアが現れました。
見た目はアズリア 中身もアズリア。
別におかしなところは無いのですが、普通の人間に戻っていますのでお間違えのないように。
これで正統派勇者パーティーの完成ですね。
フラポリー? その辺に居るんじゃないですか? たぶん。
ちなみにドアは一方通行なので、アズリアが出てくるとすぐ消えます。
移動制限がかかりますからこれは重要情報ですよね。
ソフィアの現状説明の後、大人の事情でイョーベールは男の鎧となりました。
>>292 >「安心して! 君の想いはボク達が受け継いだ!」
「イョーベールさんの思い、決して無駄にはしません! 任せてください!」
残念ながらこの場にいないフラポリーは別れの言葉を言えません。
なのでPLの人が変わりにお礼の言葉を言わせていただきましょう。
いままでありがとうございました。 どうかお元気で。
「勇者達よ。 戦いの前にお前達に伝えておかなければならない言葉がある。」
さてさて、そんなこんなで男さんが勇者男に改名できそうな姿になった後。
重々しい口調でソフィアは勇者達に、
>>245の”ガイアの言葉だけ”を伝えました。
重々しい口調でソフィアは勇者達に、
>>245の”ガイアの言葉だけ”を伝えました。
大事なことなので2回言いましたよ。
「真実がいずれにあるのか、もはや知恵の神である私にも見通せぬ。
1つだけ私にわかることがあるとすれば、それはお前達の行動が世界を左右するだろうということだ。
天使の軍勢と戦い輪廻のシステムを守るか。 ガイアの言葉を信じて死霊皇帝と戦うか。
あるいはどちらでもない別の方法を選ぶのか。
よく考えて、己の進むべき道を進むが良い。
私もお前達と同じ道を歩むとしよう。」
他力本願っぽいですが、ソフィアは勇者達を指示するつもりのようですね。
もちろんPLの人も全力で勇者達の散り際・・・もとい、戦いを見守る所存です。
勇者達はこのまま天使の軍勢と戦っても良いし、ソフィアの話は聞かなかった事にするのも自由です。
で。 またまたちなみにアズリアは。
「えっ・・・?」
出てきていきなりの話のスケールの大きさに思考停止しています。
神話大戦に一般人が紛れ込んだようなものですから気持ちはわかります。 が。
あちこち冒険してきたのだから、少しは精神的成長が見られても良さそうな気もしますけどねえ。
もっとがんばりましょう。
>「うん、おハロー」(>294)
>「うむ、今はあまり明るくないので夜のようだ。ロリこんばんはと言ったところだな」(>292)
「えー!?おハローとロリこんばんはって!!楽しい仲間と再会出来るって評判のおまじないだよ!
いい?唱えてみるね。おハロー。おはローゼン。ロリこんばんは。ロリこんばんハマタ。
まーほーおーの言葉で、楽しい〜仲間がポポポポーン」
ばーん!
冥界に効果音が響き、ドアからアズリアが現われました。
(おまじないの効果ではなくただの偶然です)
>「お久しぶりですみなさん!
アズリア・ニャン! ただいま帰還いたしました!」(>296)
「うわあ!アズリアさんだー!!かわいいねー!今の姿のアズリアさんのほうがステキだよ!
でも、下腹部には今も小さなアズリアさんが棲んでいるんだよねっ!?」
男は男らしくサラッと下ネタをとばしました。
そしてソフィアの説明が終わるとイョーベールは男の鎧となります。
>「安心して! 君の想いはボク達が受け継いだ!」(>294)
>「イョーベールさんの思い、決して無駄にはしません! 任せてください!」(>296)
「イョーベールさーーーーん!!!!のっきゃあああああああ!!!!」
男は自分の体に装備された鎧にむかって叫びました。しかし鎧は静かに光っているだけでした。
悲しむ男でしたが、なんだか捨てるところのない魚みたいとも少し思いました。
「えぐっ。えぐ…。ありがとうイョーベールさん…アナタのことは、ずっと忘れません。
イョーベールさんの思いのこもったこの鎧。ボクは一生大切にします…」
でも。くんくん。鎧は蟹のにおいが…。
「くさい!くさい!なんだこれぇ〜!!カニくさい!てか重いし!なんだよこれーーーーっ!!」
たまらなくなった男は鎧をあっさり近くの泉に投げ捨てます。
すると泉の底から超きょにゅうのダイナマイトバデーの神族の女が出てきました。
「あなたの落した鎧はローズの香りのする鎧ですか?無臭の鎧ですか?それともこのカニ臭い鎧で…」
「ローズの鎧です!!」男が食い気味に言うときょにゅう女は激怒しこう言います。
「嘘つきは許しません!!!同僚ともども汚れた心を洗い流しなさーい!!婆棲炉曼(バスロマン)!!」
きょにゅう女は超きょにゅうを泉に叩きつけるように沈め、ざばーんを起こします。
ざばーん!!このざばーんの衝撃は遥か銀河の果ての地球からも観測出来たといいます。
【よくわからなくなってしましました〜。自分は頭がおかしいのでサラッと流してください】
冥界は知識の宝庫である。
よく何かの名人が死んだ際、墓場まで業を持って行ったと称される事もあるが、そのような秘伝すらも冥界には存在する。
なぜなら、ここには今までに死んだ全ての者の知識が集積されているのだから。
当然、蘇生を含む禁術秘術や高等呪法、結界の使い手も少なくない。
生者とは戦力の量が桁違いなのだ。
それが何万年にも渡って冥界が侵略者から守られてきた理由である。
レヴィアにとって、黄泉界を統べる死霊皇帝と天使たちとの戦いは拮抗しているに越したことは無い。
両者の力を削ぎ続けて、限りなくゼロに近づけるには、弱い勢力に加担する方が良いのだ。
それには強大な存在であると考えられる冥界の支配者より、天使に協力するのが良さそうだった。
しかし、話を聞く限り天使の目的は魂の一極化のようである。
己が受け入れられるとは到底思えない。
それに霊泉を用いて高次元への通廊を作るという目的自体、結局どちらとも相容れないのだ。
「この世界の住人にとって、所詮私は異次元の魔物。
決して分かり合うことは無いわ……」
冥界側に付いて内部から喰らおうにも、論理的に考えて得体の知れぬ者をいきなり仲間に引き入れたりはしない。
おそらくは身分保障が必要だろう。
冥界の者たちに信頼させるだけの有力者による。
ならば窮地に陥っている所へ加勢する、という形が良いのではないだろうか。
それには両者が戦い会う場に赴かねばならないのではあるが。
最も激しい戦いの行われる激戦区へと。
「冥界の力有る神族……さっきの天使によればイザナミ、ヒルコ、スサノオと言った所かしらぁ?
名前だけは此方の世界の神を模して……本当に粉い物の世界だこと。
これじゃ、下手をすると私にも遭いかねないわね」
不意に空の色が白んだ。
日が昇ったのではない。
レヴィアの前方に見える長い山脈の峰には、無数の天使が集っている。
彼らの光の魔法が昏い空を輝かせているのだ。
何かが起こっているようだった。
しかし、何が起こっているのかを確かめようにも徒歩の移動力など多寡が知れている。
おそらくは着くまでに数日かかるだろう……。
まずは移動手段を確保しなければならない。
「文明の利器も水魔も使えない以上、魔術で水を動かすしか無いでしょうねえ。
水魔は生けるものと交われば産み出せるでしょうけど、さっきのは殺してしまったし。
この世界でヘブライの魔術が発動すればいいんだけれど……」
レヴィアは地面に左手を当てて水脈の流れを調べる。
荒涼とした外見とは違って、冥界の地下は豊んでいるようだった。
無数の生き物の鼓動に混じって、地下に強い水の流れを感じる。
レヴィアは、その水を引き出すべく高い声で呪文を唱えた。
「lvjtn mkhtyb mjm ltsat!(引き出される者が命ず。水よ、出でよ!)」
呪文は沈黙しか齎さなかったが、それでもレヴィアは瞑目して待つ……。
やがて大地が微かに振動を始めた。
揺れは次第に大きくなり、突如ゴォン!という音を立てて地面に亀裂が走った。
割られた大地は、そこから勢い良く水を噴き出させ、数十メートルはあろう巨大な蛇の姿を形作る。
レヴィアのいた世界で、神の作った最強の生き物と呼ばれる海の魔物を模して。
彼女は水で出来た大蛇に乗ると、長く連なった山脈に向けて己が騎獣を向かわせた。
大蛇は鉄砲水の如く大地を抉りながら、大地をうねってゆく。
霊泉の一つが湧くニルヴァーナ連山の山頂では、天使長ルナとイザナミが対峙していた。
その周りでは無数の上級天使、下級天使たちが、聖歌トリスアギオンを歌いながら舞う。
聖歌が作りだす力場によってルナの理力は何倍にも増幅され、その体には輝ける黄金のオーラを纏わせていた。
血塗れのイザナミは、岩肌に縋りながらそれを睨みつけている。
両者の勝負は、すでに決しているようだった。
天使長ルナは勝ち誇ったようにイザナミを見下ろし、諭すような口調で語りかける。
「貴女は勘違いしているようですが、何も我々は新たな命の誕生まで阻もうと言うわけではありません。
全ての死せる魂から、悪しき闇を払って光に染め直すだけです。
さすれば、今後生まれてくる命は全てが正しき光の種族となる。
全ての邪悪なる者は、最初から生まれてこなくなるのですから。
蘇生についても同様、闇の者の魂は冥界で洗礼して光へと導く。
これこそが、世界を蝕む邪神デミウルゴスに対抗する唯一の道。
ガイアの命を一つに束ねて強く輝く光で満たし、全世界の人々の祈りの波動によってデミウルゴスを滅ぼすのです。
神や勇者の様に一部の力ある者では無く、無数の力無き人々の思いが一つになる事で世界は守られるでしょう。
そして、それを執行できるのは真の光の使徒である我々のみ。
これはガイアの意思なのです……黄泉の女神よ、己が過ちを認めて冥界を開け渡しなさい」
『それがガイアの、アマテラスの意思?
とても、そうは思えませんが……しかし、その真偽について今は問いません。
貴方の取る手段について問いましょう。
貴方も天使ならばセフィロトの樹を知っていますね?世界樹の象徴を。
魔術理論に於いて、セフィロトの樹は世界が二つの根本原理で成り立っている事を教えます。
陰と陽、太陽と月、男と女、闇と光……。
完全なる世界は、この対極なる二つが完璧に一つになった時にこそ創造されるもの。
貴方の創る光の世界は完全なものと言えるのですか?デミウルゴスにも崩壊させられぬ強固な世界だと?』
「無論」
『……盲信に取り憑かれ、言葉は通じませんか。
されど、黄泉で魂を統制するなどという蛮行を許すわけには行きません。
これから私は貴方たちを止める為に全ての魔力を解放します。
口惜しや……この姿を晒す事になろうとは……!』
瞬間、奔流する魔力がプラズマとなって、女神の全身に蛇の如き八柱の雷神を纏わせた。
イザナミの貌を覆う仮面は、魔力に耐えかねたように砕け散り、醜く腐敗した顔を外気に晒す。
腐肉のこびり付いた髑髏の貌を。
「それが黄泉の女神の正体か!おぞましい闇の眷属め!」
黄金の天使と黄泉の女神が、魔力の雷と聖なる光輝をぶつけ合い、長く連なる山脈が朝陽を受けたかのように照らされた。
響き渡る噴火の様な激震は遥か遠くにまで轟き、両者の戦いの激しさを聞く者全てに知らしめるだろう。
イザナミの投げかける八雷をルナの聖剣が真っ二つに切り裂く。
白色の炎を噴き上げる聖剣が空に閃く度に、熱風の竜巻が紙一重で致命傷を避けるイザナミの肌を焦がす。
数千の天使によって増幅されたルナの力は強大であった。
元々傷を負っていたイザナミは、体力も尽きかけている。
さらにルナの聖剣を捌くイザナミの横から、背後から、頭上から、天使たちの光の魔法が間断無く飛ぶ。
戦いが長引く程に女神は傷つき衰えて行った。
イザナミが、その体を大きく傾がせた瞬間、勝利を確信したルナの剣が迫る。
しかし、その剣は届かない。
戦い合うイザナミとルナの間に、洪水の如き波濤が押し寄せていたから。
「ここは引けばぁ?死んじゃったらどうしようもないでしょ?
なんなら、私が運んであげてもいいわよぉ」
轟々と音を立てる水流は生きているが如きで、その先端には人間の姿。
水蛇の頭部に腰を埋めているのはレヴィアだった。
ルナは怜悧な容貌を突然の闖入者に向けると、聖なる剣を突きつける。
『見た所人間のようだが、この数の天使から逃げ果せるとでも?』
「できるわよぉ……こうすれば、ねっ☆」
レヴィアが水蛇の胴体に向かって炎を吐きかけると蒸発した水が、濛々とした蒸気を生んだ。
立ち上った濃い霧は、辺りに白い闇を作りだしてゆく。
レヴィアは、さらに呪文を唱えて地下から呼びだした水で霧の範囲を広げながら、ダミーの水蛇たちをも作りだす。
魔力消去の魔術で霧を解除しようとした天使もいたが、白霧が消えることはなかった。
霧は魔力で作られているのではなく、水を直接操って作り出しているのだから。
これを消すには物理的に吹き飛ばさねばない。
天使たちがそれに思い至った時、すでにイザナミを連れたレヴィアは天使たちの攻撃範囲外へと逃れていた。
イザナミは歯を剥き出した口を震わせて、ユーティリス大湖へ向かうよう、レヴィアに細い声で頼む。
そこにはスサノオ……死霊皇帝の宮殿が有るから、まずはそこへと。
向かうべき目的地を指さすと、イザナミは力尽きたのか血を吐いて昏絶した。
彼女たちは、やがて蒼茫たる大湖の中島に浮かぶ、死霊皇帝の宮殿に辿りつくだろう。
――――。
イザナミたちが去って後、ニルヴァーナ連山で暴風が吹き荒れる。
魔術の風によって霧を吹き飛ばした天使たちは、イザナミと水蛇を操る者を追うかとルナに問う。
『その必要は無い。
相手にも反魂の術を用いる者がいる以上、敵を倒すという行為は一時的な効果しか上げないのだから。
まずは、この泉を洗霊の泉として造り変える。
打倒した魔なる者は、この泉で魂を聖別して啓蒙し、我らの尖兵と為す』
天使長の号令で、光の軍勢が大合唱を始めた。
ホーリー・ナイト……かつて地上にて鋼鉄のバラグというゴーレムに光の属性を付与し、転生させた魔術にて。
ルナが、その聖なる理力を一つに収束して泉へと向ける。
霊泉そのものに光の属性を付与すべく。
天使たちの作りだす揺らめく光輝のオーロラは、仄暗い冥界に光の宴を催していた。
それは閃光と雷鳴と共にワームホール上の空間ゲートを通してやってくる
まずは一人―
奇妙な装飾を施された仮面をかぶり灰色の外套を纏った一人の男と小鬼のような
この世界での姿に変わった独立支援機関ユービックが出現し、すぐにゲートは閉じる。
『死の終着点冥界ポイント64388到達』
男は周囲を見渡すがほとんどが朽ち果てているこの場所に特に珍しい物など
存在し得ない
『輪廻の生命システム根幹に重大な崩壊現象が確認されています
このままでは多次元に多大な影響が見られますどうなされますか?』
ユービックはやはり何の感情も込められない無機質な声で支援を命じられている主に問う
しかしその返答は返ってこず、ただ歩みを始める
アマテラス、イザナミ、ヒルコ、スサノオ
そして天使長ルナなど知った事ではない
彼に課せられ、その身を動かしている理由は一つ
数多くの世界を揺るがす戦い・出来事を阻止する事のみ
邪魔をする存在は一切を排除する
例え何者であろうとも――かつて共に戦った者でも
>296-297
>「えー!?おハローとロリこんばんはって!!楽しい仲間と再会出来るって評判のおまじないだよ!
いい?唱えてみるね。おハロー。おはローゼン。ロリこんばんは。ロリこんばんハマタ。
まーほーおーの言葉で、楽しい〜仲間がポポポポーン」
「いやあ、それで再開できたら苦労はしないよハハハ」
>「お久しぶりですみなさん!
アズリア・ニャン! ただいま帰還いたしました!」
「うそお、再開できた――ッ!?」
フラポリーちゃんの外見でアズリアさん。つまり元のアズリアさんの体にアズリアさんが入っている。
正真正銘のアズリアさんだ!
「良かったね、生き返ったんだね!」
美青年主人公と美少女神官戦士と妖精魔法使い。冒険開始以来でも例を見ない王道勇者パーティーがここに誕生した。
そういえばフラポリーちゃんはどこに行ったんだろう。まあフラポリーちゃんの事だからその辺にいるだろう。多分。
>「勇者達よ。 戦いの前にお前達に伝えておかなければならない言葉がある。」
かくかくしかじか云々かんぬん
「うーむ、どうしたものか……」
この言葉を信じるなら天使の味方をして死霊皇帝と戦うべきである。
でもこれ自体がデミウルゴスの罠という可能性もあるのだ。
「よし、後で考えよう!」
困った時は決断を先延ばしにする、これ先人の知恵。
>「くさい!くさい!なんだこれぇ〜!!カニくさい!てか重いし!なんだよこれーーーーっ!!」
「アッー! 何やってんだ!」
>「嘘つきは許しません!!!同僚ともども汚れた心を洗い流しなさーい!!婆棲炉曼(バスロマン)!!」
「なるほど、天罰ってわけだね!」
津波に流された! ような気がした!
気が付くと、見知った顔がボク達は覗き込んでいた。
「なーんてね、びっくりした? 今の巨乳女はリムよん」
ちなみに今の彼(女)はゴスロリの幼女にしか見えない。
妖精に7頭身形態があるのだから妖魔にもあって当然だが、妖精は変身しても巨乳にはならない。
「キミは……幻妖のリムじゃないか! 久しぶりすぎてもう口調とか忘れちゃったぞ!」
説明しよう! 幻妖のリムとは死霊皇帝軍六武神の一人。
つまり当初の敵勢力の四天王の6人バージョンのうちの一人みたいなポジションだった人だ。
「これより皆様には12の霊泉を巡っていただきまーす」
リムの後ろにはツアーのようなまとまりのない一団がいた。
「なんでパックツアーのガイドやってんの!?」
「まあ湯治みたいなもんね。テイルちゃん達も行くぅ?」
なぜか温泉ならぬ冷泉パックツアーに誘われた。
>「うーむ、どうしたものか……」
「君は導く者でしょ」
>「よし、後で考えよう!」
「えーーーー!」
>「嘘つきは許しません!!!同僚ともども汚れた心を洗い流しなさーい!!婆棲炉曼(バスロマン)!!」
>「なるほど、天罰ってわけだね!」
「天罰だなんてそんな、照れますなー。がぼごぼぼ…」
メイルシュトロームが一同を襲いました。しばらくして男はびしょ濡れで目を覚まします。
気がつけばイョーベールの鎧も再装備されていました。
霊泉の力で、しっかりファブリーズされた鎧はもうカニくさくありません。
腰から下も馬くさくもありませんでした。
>「なーんてね、びっくりした? 今の巨乳女はリムよん」
「リム?」
>「キミは……幻妖のリムじゃないか! 久しぶりすぎてもう口調とか忘れちゃったぞ!」
「忘れちゃった?記憶喪失なの?ボクと同じだね。でもそれってテイルちゃんが言うセリフ?」
>「これより皆様には12の霊泉を巡っていただきまーす」
>「なんでパックツアーのガイドやってんの!?」
「まさかリストラ!?武神なのに!?」
>「まあ湯治みたいなもんね。テイルちゃん達も行くぅ?」
「はーいはーい!ボクも行くよ!行くよ!」
男はテイルとリムを両脇に抱えて嬉しそうに歩いていきます。
男にとっては楽しい楽しい幼女誘拐ツアーの始まりでした。
それとこれは余談ですがリムの後ろのまとまりのない一団の中には坂上○郎の姿もありました。
水戸黄門式に漫遊していればきっと何かが起きる。男は楽天的に考えていました。
304 :
名無しになりきれ:2011/04/03(日) 00:19:39.35 O
ワインを拾った
ユーティリス大湖の水面に映る無数の篝火が、激流で作られた水蛇によって掻き乱される。
宮殿を取り囲む湖は、それ自体が霊泉。
篝火と見えたそれは転生を望む無数の霊魂たちであった。
ニルヴァーナ連山の戦いから一昼夜、イザナミを連れたレヴィアは死霊皇帝の宮殿へと到着する。
この辺りの空域では蝙蝠の如き羽を持つ魔族たちが、白き翼の襲撃者を警戒しており、まだ天使の軍勢も寄せ付けていないようだった。
死霊皇帝軍にイザナミを引き渡したレヴィアは、彼らにルナの脅威を説き、次に己の境遇を語り、ここへ留まれないものかと問う。
『次元の漂泊者よ、我が母イザナミを救ってくださったのは感謝する。
己の帰属する世界を失った汝の境遇にも同情しよう。
しかし、我らが眷属ならぬ汝を長くスサノオの居城に留め置くことは出来ぬ。分かるな?
とはいえ恩人を無碍にも出来ぬ。もし汝にスサノオの眷属となる心積もりがあれば……。
そうであれば、ここに身を寄せるのも許されよう』
「それなら喜んで教義と戒律を同じくするわ☆
だって、帰るべきお家が無い、家なき子なんだもの」
スカートの左裾を軽く摘み上げたレヴィアが畸形の男に答えた。
畸形の男の顔は醜く、足は折れ曲がり、自ら黄泉界の神族であると名乗らねば、魔族と呼んでも疑う者はいまい。
彼の名はヒルコ……イザナミの実子にして日剣以外の地ではヘパイストスとも呼ばれる、黄泉界の造営や技術を司る長。
鷹揚に頷いたヒルコは、レヴィアに死霊皇帝軍への一時受け入れを許可すると、話題は黄泉界を襲う大乱に移った。
『今、この冥界にスサノオの魂は顕現していない。
時折、巫女や神官を通じて切れ切れな託宣を下すのみ。
アマテラス殿との融和を果たした時から、スサノオは冥界に帰って来ないのだ。
もしや高天原にいるのではと思い、使者を何度か送ったが、全員が行方不明となり唯の一人も戻って来ない。
大規模な次元震の影響で断絶したのか、自らの意思で戻らないのか、或いは他の原因に寄るのか……。
天使の襲撃に対しては、各地に点在する霊泉へ精鋭たる六武神や三将を守護に当たらせたが、何しろ敵の数も多い。
それに英霊達の霊魂の中には、天使へ同調する者まで出始めたようだ。
母上も属性の近い地上や冥界の者に神託を下して戦士を募ってはいるが、手が足りぬのは如何ともし難い』
「うふふっ……守護者が足りないなら、ここにもいるじゃなぁい?」
微笑したレヴィアが名乗りを上げると、ヒルコはしばしの思案を見せた後、それを許可する。
但し、光の軍勢に対抗する守護兵団の一兵卒として。
ある程度の力が有るのは認められても、当然ながら指揮権を与えられるほどの信用までは無いのだ。
「そういえば、ソフィアってこの世界の神よねえ?」
『然り。太古の時代、彼の者はアマテラス殿とスサノオを滅ぼさんとした恐るべき龍王』
「その龍……たぶん、この世界に来てるわよぅ?受肉して、ね」
瞳に妖しい煌めきを灯したレヴィアが、己の世界で見聞きしたものを語る。
ヒルコはそれに動揺を受けたようで、すぐさま配下に偵察兵を編成し、調査するよう指示した。
さらにスサノオの魂を神降ろしの儀で呼び寄せるべく、儀式の準備をせよとも。
ルナだけならともかく、ソフィアまで現れるとなるとスサノオ無しでは対抗できないと判断したのだろう。
不穏な空気が漣の様に広がる中、レヴィアは一度龍神を目撃している自分も偵察に同行してはどうかと提案する。
そして、それは受諾された。
ユーティリス大湖に架かる大橋を渡ったレヴィアの姿は、黄泉の大地を駆けるべく造られた砂航船に吸い込まれる。
この巨大な木造船体は、中世ヨーロッパ時代のガレオン船を思わせた。
しかし黄泉の技術によって造られた船は、船底にスケート靴を思わせる三つの長大なブレードが付けられている。
このトリャンドリア号は人の船に似るが、生命炉を内燃機関とし、金属製ブレードで大地に線を刻みながら進むのだ。
レヴィアを乗せた砂航船は、砂飛沫を立てながら滑るようにして大地を駆けて行く。
トリャンドリア号の部隊が受けた命令は、ソフィアの動向を確かめる事。
二つの敵に同時に当たる事を避ける為、可能なら一時停戦の申し入れ、無理ならば牽制と監視を。
欲を言えば撃破だが、下手に攻撃して天使と共闘されても困る。
スサノオの魂を帰還させるまで、ソフィアには大人しくしてもらわねばならないとの事だった。
膨らんだ帆が風を受け、船底は土を斬り裂き進む。
舵輪は山羊の頭部を持つ魔族が操っていた。
彼の腕なのか、砂航船の性能なのか、揺れも殆ど感じない。
甲板に上ったレヴィアは風で流れる髪を抑えながら前方を眺める。
遠くには燃え盛るオレンジの空。
霊泉の一つ、霊魂の煩悩を焼き尽くすと言うフレーゲル炎湖は近いようだった。
ここを目指したのは、情報が錯綜して未確認ながらもネペンテスで龍を見たとの報告が入ったからである。
フレーゲル炎湖は位置的にネペンテスに最も近いのだ。
「陸を走る船なんてどうかと思ったけど、意外に乗り心地も悪く無いわねえ?」
『グゥェェ』
操舵士の魔族は人語の発声ができないようで、潰れた山羊の声を返すのみ。
砂航船は大地を進み続け、やがて前方に黄泉界の生物と思しき異様な集団が見えた。
先頭には巨大な龍の姿。妖精と“男”の姿も見える。
「あれがソフィアを名乗る龍よ。船をあの集団の横に着けて」
操舵士が舵を切り、魔族の船員たちが帆が畳むと、次第に砂航船のスピードが緩む。
熱の無い炎を噴き上げる、紅の水を湛えた湖の手前で船は止まった。
船の甲板上から顔を覗かたレヴィアは、カオスの勇者に声を掛ける。
「あらぁ、お久しぶりねえ?妖精ちゃんに“男”さん?
顔ぶれは少し変わったみたいだけれど、お元気そうで何よりだわぁ。
私はちょっとばかり、お元気じゃ無くなっちゃったけどね……うふふっ」
そう言って蛇の様な眼で笑う。
レヴィアの右腕は肘から先が鉈で斬り落としたかのように失われ、断面はどす黒い瘡蓋に覆われている。
「私ね、今は死霊皇帝軍の庇護下に入ったのよ。
だから今は闇の勢力の一員なの。
それで……貴方たちが行動を共にしてるドラゴンだけど、太古に光と闇の神に牙を剥いた邪龍って言うじゃない?
何でそんな怖〜いドラゴンと一緒にいるのかしらぁ。
冥界側はソフィアをとても恐れているみたいだけど、目的はなぁに?
もしかしてスサノオの不在と天使の襲撃を、これ幸いと冥界を侵略しに来たんだったりして?うふふ」
【>>テイル、男、アズリア 挑発混じりに挨拶】
>>302 >>303 >>306 >「よし、後で考えよう!」
>「えーーーー!」
「いいんですか!? 後が長すぎて時間切れになったりはしないんですか!?」
真面目人間アズリアの発言には一理ありますが、だまされてはいけません。
アズリアも意見を言っていないので同じ穴のムジナです。
前略>婆棲炉曼(バスロマン)!!」
>「なーんてね、びっくりした? 今の巨乳女はリムよん」
「ええっと・・・誰・・・でしょう・・・?」
下っ端ガイア神官のアズリアは、リムの顔を見たことがありませんでした。
仕方がないので、ここはソフィアに助けてもらいましょう。
「実はあの女は『かくかくしかじか』」
「なるほど! そーだったんですね!」
ちなみに『かくかくしかじか』とは説明魔法の一種です。
どんな長い説明文でも一瞬で説明できて、PCは満足 PLの人も満足。
いや〜魔法って本当に便利ですよね。
>「まあ湯治みたいなもんね。テイルちゃん達も行くぅ?」
>「はーいはーい!ボクも行くよ!行くよ!」
「混浴じゃないですよね? ないですよね?」
何気にアズリアも乗り気です。
こうして、水戸黄門的漫遊を始めるカオスの勇者御一行であった。
めでたしめでたし。
・・・当初の目的を完全に忘れているようですが、まあ面白いから許しましょう。
「ワインを拾った。
>>304」
おおっと! ソフィアが落ちていたワインを拾ったようです!
カオスの勇者にノリが似てきたようですが、それで良いのか知恵の龍神!
まあ面白いから許しましょう!
で。
「ここがフレーゲル炎湖。 効能は肩こり冷え性ロリコン・・・ん?」
ガイドのリムに連れられて、やってきましたフレーゲル炎湖。
どうみても熱そうなのに熱くないのがこの湖の見所です。
今は一般公開はされていませんが、隠れた観光スポットとして冥界では大人気。
なんて説明を続けていた(こんな六武神で大丈夫か?)リムの近くに、陸を走る船が横付けします。
甲板から顔を出したのは・・・。
次元の向こうであったばかりのレヴィアたんでした。
世界樹が物質化したせいでつながってはいますが、次元の向こうであることに間違いはありません。
> 私はちょっとばかり、お元気じゃ無くなっちゃったけどね……うふふっ」
「レヴィアさんじゃないですか! どうしたんですかその腕は!
早く魔法で治療しないと駄目ですよ!」
腕を無くしたレヴィアに、アズリアは大きなお世話を言いました。
まあ冥界ですから、それぐらいの魔法が使える人もいるでしょうしね。
特別な理由が無ければ治療くらいはするものでしょう。
「あ、レヴィアさんにはまだ自己紹介してませんでしたね。 私、アズリアです。
以前の姿は仮の姿で、本当はご覧のようにちゃんとした”人間”何ですよ!」
ちゃっかり自己紹介も済ませるアズリアでした。
レヴィアにとっては、さして重要では無いでしょうけどね。
> もしかしてスサノオの不在と天使の襲撃を、これ幸いと冥界を侵略しに来たんだったりして?うふふ」
「そうなんですか・・・? そんなに邪悪な神様には見えないですけど・・・?」
アズリアはソフィアを見ました。
ソフィア@しんりゅう はワインを手に持っていました。
秘蔵の えっちなほん は持っていてるかもしれませんが、邪悪な龍という印象はありません。
「ぼく わるいかみさま じゃないよ。 ぴきー!」
なんと! とつぜんソフィアがひらがなで話し始めました!
ドラゴンクエストの呪いではないはずですから、これは何かをごまかそうとしているに違いありません!
「おお そうじゃ! おまえたちに ワインを あげよう!
ワインを のんで おんせんに はいって けんこうに なろう!」
ソフィアの前に人数分のグラスが現れ、そこに(拾い物の)ワインが注がれます。
勇者達とレヴィアはワインを飲んでもいいし、相手にしないで話を進めるのも自由です。
「ちょっと! スサノオの不在ってどーいうこと!?
リム聞いてないんですけど!!」
『グゥェェ』
一方、トリャンドリア号では操舵士の魔族が上司のリムに首を絞められていました。
実にカオスな光景です。
【
>>307-308】
カオスの勇者一行の中でさっそくアズリアが口を開き、レヴィアに腕の治療を薦めてくる。
言葉遣いからして、元の世界で見た魔物のうち大蟹では無い方と思われた。
彼女の言葉からは、この世界では治癒魔術が発展している事が窺える。
「治療ねえ……でも、私忘れたくないのよ。魂の痛みをね」
曖昧な答え方で言葉を濁す。
レヴィアは魔に連なる者とは言えるが、ガイアの魔族達とは違って生物の一種族と言うわけでは無い。
己の概念が崩れれば、ケルトの偉大なる神々が小さな妖精に堕した如く、矮小化する事も有り得た。
従って、常に呪詛を生み出し、それを纏い続けるのだ。
呪詛は力を増すと言うより、力を減じない為に持つと言った方が正確かもしれない。
さらにレヴィアには得体の知れぬ異界の魔術に対する嫌悪感もあった。
元の世界と断絶した自らの存在は、体内に現存するバイトとやらだけで賄われているのではないか。
異界の法則と概念を受け入れれば、それが減じて行くのではないか……。
無論そのような怖れなど、意識の表層に上っても認めはしない。
しかし否定したはずのイョーベールの言葉は、拭っても消えない浸みの様にレヴィアの魂を汚していた。
「よろしく、アズリアちゃん。以前の醜い姿、お似合いだったのに……くすくす」
レヴィアからソフィアが再び他界の侵攻を企てているのではないかと聞き、アズリアが同行している龍の姿を見る。
それに対し、ソフィアは愚者を装うかのような態度を見せるのみ。
取り繕うように温泉やワインを勧める龍をレヴィアは冷ややかに鼻で笑う。
「あらあらぁ、冥界の侵攻やイシハラのボス就任がどうのこうのと、余計な事ばっかり言う割に肝心な事には口を紡ぐのね。
貴方は、スサノオとアマテラスに牙を剥いて三界を我がものにしようとしたって聞いたわよぉ?
だから冥界側はソフィアと一時不戦はしても、同盟まで結ぶつもりは無いみたい。
うふふっ、当然ね。何を考えてるか分からない相手なんて信用できないものねえ?」
ソフィアの存在が明らかになった以上、幻妖のリムも不審の念を抱く事だろう。
死霊皇帝による地上侵攻の意思は、そもそもソフィア打倒の為に光と闇を一つの戦力に纏め上げる事を念頭に置いたもの。
光と闇が融和を果たしても、境界は未だ光と闇の混じり合うカオスの外側の存在なのだ。
まして、ソフィア自身もスサノオやアマテラスと争っていた理由を語らないとなれば尚更である。
「ま、いいわぁ……こちらは一時不戦の提案を伝えに来ただけ。
そちらが受け入れようと受け入れまいと構わないわ。
おかしな動きを見せるようなら、それなりの対応を取るだけよぉ?」
カオスの勇者たちの傍を通り過ぎ、レヴィアは紅の湖へと近づく。
湖畔には寺院を思わせる木造らしき建築物が幾つか建ち、集落を形成していた。
建物の作りは古代日本の様な趣で、見た所釘の様な金属類は一切使われていない。
おそらくは、冥界の住人たちが霊泉の管理などの為に造ったものなのだろう。
『リム、今日はもう食べて飲んで温泉に浸かって寝るっ!』
魔族から死霊皇帝が帰還していない経緯を聞いたリムが寺院風の建物の中へ消えてゆく。
続いて入ろうとするカオスの勇者たちを見て、レヴィアが口の端を吊り上げた。
「ここは死霊皇帝軍御用達よ?
ソフィアと同行する貴方たちと寝所を同じくは出来ないもの。
そうね。貴方たちは地面にでも寝っ転がって地虫や雑草でも齧ってればぁ?
とっても豪勢な温泉ツアーじゃないの。うふふっ」
カオスの勇者たちに背を向けると、レヴィアも建物の戸口を潜ってリムへ続く。
【>>ALL 建物の中へ】
「用意は整った……これより進軍を開始する
獄炎のバルトールにはプレアデス七姉妹が当たれ。
首座使徒アルタイルとリュラは、上級天使を率いて速やかに疾風のアルベルを撃破せよ。
光鉄のグラムは鏡楯騎士団が迎え撃て。指揮は聖騎士ミルファクに任せる。
残る六武神三名の所在は、はっきりしない……中級天使は捜索と伝令に務めよ。
プレセペ連星隊はケルビムを使って魂狩りを行え。
下級天使は捕獲した敵の魂を洗霊するように。
聖歌隊は私と共にスサノオ宮へ進軍する」
ルナの命令を受けた無数の天使たちが空に舞い上がり、命令を受けた各所へと散った。
暗い空に白の翼が雲霞の如く流れ、空の色を塗り替える。
山脈に陣取ったままなのは下級天使たちと、天使には似つかわしくない黒の法衣を纏うプレセペ連星隊と呼ばれた一団のみ。
隊長であるプレセペは、大鎌を天秤の様に肩に担ぎながら傍らで待機する無数の白猫たちの一匹に近づく。
そして小柄な体と可愛らしい顔には似つかわしくない下品な言葉遣いで、白猫の一匹へぞんざいに声を掛けた。
『そーらっ、グラエル、行くぜぃ。これから楽しい楽しい魔族たちの魂狩りなんだからよっ!
反魂で蘇生させた手間分ぐらいは、しっかり働いてもらうからな!』
無数の白猫たちは背に翼を生やし、瞳には獣らしからぬ知性の光を宿す。
翼有る小さな獣は、プレセペ連星隊の天使たちに真名を呼ばれると次々に唸りを上げ、巨大な有翼の白獅子へと変貌する。
普段は猫の姿を取る彼らこそが天使の位階の第二座、智天使たる有翼獣ケルビムなのだ。
『ホヨトホー!駆けろ!』
天使たちがふわりとケルビムの背に跨る。
彼らの向かう先は、六武神が守護していないと思われる霊泉。
その途中に遭遇した全ての者の魂を刈り取りながら、死の天使たちを乗せたケルビムは弾丸の様に空を駆けてゆく。