>…お客サンが来るネ。ほら少年、きっちり接客してやるネ
返事の直後にイーネからそう声をかけられ視線を追えば、そこには以前鉱山内で一戦交えて
葬ったゴブリン、正しくは元・ゴブリン達の姿だった。死霊となってここまで歩いて来たのだ。
「ふっ、アンデッドなんてそれこそ僕にだって何とかできますよ!」
心からの本音だった。攻撃魔法に乏しい自分でも何とかできる。いささか自虐的ではあったが
その事実がこの少年に自身を与えていた。余裕を持って呪文を唱え始める。
その内容は教会に縁のある者なら聞いたことがあるかも知れないものだったが、所々違っていた。
ゴブリンのゾンビ達に狙いを定めながらエルフの里で青年達に教えてもらったことを思い出す。
(アンデッドってのは上と下のレベルの差が激しい、下級の者は至極単純な命令しかこなせない、
それはつまり"生きている者を狙う"ことだ)
本来は肝試しの時に悪ふざけで使っていた魔法だそうで、屍霊術の代わりに死体を動かす為に作ったのだぞうだ。
「世界に満ちる僅かな生よ、死を奪われし者達に安らぎを恵みたまえ、リザレクション(もどき)!」
神聖魔法の中でも最上位に位置する蘇生用の魔法であるリザレクションはレベルの足りない者が使えばその結果は
ゾンビたちと大差はない。違いは本当に少しの間「生き物として生き返る」ことである。
このリザレクションの紛い物は初めからその失敗の結果を起こすために調整されており魔力の消費も微々たるもの。
ゾンビの一団に魔法をかけ何体かに効果があったのを見てマイノスは勝ち誇る。
「かからなかった奴にも一応チャームをかけますが、この共食いでどこまで減るか、見ものですね」
聖職者が見れば卒倒しそうな事をしつつマイノスは様子見を決め込んだ。