「邪気・・・ですかあ、なんだか物騒ですねえ。盗賊たち以外で先に根城にしてた奴で
しかも死霊術を使う・・・嘘の一つも吐いて素直に討伐隊組んでもらった方がいいかもですね」
儀式場に行く前にイーネそんなやりとりを交わした。契約の儀式について相手の精霊がシルフ
とわかるとにわかに顔をしかめたので何かと思えば
>喧しいしテンション高いし実は腹黒だし、しかもやたらイーネに慣付くし
咄嗟に噴出しそうになるのをこらえる。同属嫌悪とは珍しい。だがそれと同時にマイノスも
あることに気付く。そうつまりはイーネっぽい精霊が憑くかも知れないのだ。
やっと会話のできる精霊がと思えば性格がイーネ。夢なら覚めてくれ。
そんな風に考えながらも今マイノスは儀式の真っ只中、いや、その直後にいた。
カナは自分に魔力がなくその手のことには疎いと言っていたが鉱山の時といい、自身の魔力を使わない
儀式魔法にはかなりの知識があるようだった。普通魔力を持つ者は自分のモノを使いこなすための
研鑽を積むがカナのやり方は魔力の無い者でも魔法を使うためのもので、それはつまり
彼女の魔力というものに対する理解度の高さの表れでもあるということだ。マイノスは感心した。
>少年よ。捕まえたぞ!
「僕はこっちですよ」カナの背中に声をかける。きまりの悪そうな彼女をイーネが茶化す。
嫌いと言っていた通りシルフに対して遠慮が全くなく扱いも乱暴そのものだがその姿が
マイノス以外にもでかいシルフが幅を利かせているようにしか見えなかった。しかし
>不本意ながら、少年には待たせた貸しもある…イーネが力貸すネ
その言葉から先の彼女の行動が場にそぐわないほど力呼び寄せたのだった。