「さっきのが爪割れを防ぐ魔法で、今から教えるのが刺抜きの魔法な」
「こんなにたくさん魔法を教えてもらって、僕はなんてお礼をいったらいいのか」
「何言ってるんだ、必要最低限の魔法も覚えてないから教えてるだけさ。こんなのは
親切のうちには入らないよ。ほら、ちゃんと見てろよ」
ここはエルフの里。話しているのは里にいた青年エルフとマイノスだ。目を覚ましたのは
昼をとうに過ぎた頃だった。カナの方はまだ目を覚ましていない。あれだけの手傷を負っていたのだ。
無理もないと思いつつ、マイノスは一時的に世話役となったこの青年エルフと話し込んでいるうちに
相手側から「暮らしに役立つ魔法」の手ほどきや技術の訓練を受けることになった。
それは教会やギルドで教わるようなものではなく、誰でも使えるような簡単だがあれば便利な魔法だった。
深爪を防ぐ、虫歯を治す、親知らずをなくす、無駄毛を脱毛して体に負担をかけないといった実に
しょうもない、しかし効果の高いものが多かった。薄毛を治療する魔法(ただし自分には使用不可)を
教わったときはマイノスは感動したものだった。
初めは単純にからかっていたつもりのエルフも有難がられているうちに気分を良くしたのか教えるのにも
次第に熱を帯びていき、その光景を見ていた他のエルフも寄ってきては自分の幼かった頃の悪戯の技術を次々に
教えていった。起きてきた時間が遅かったこともありすぐに日は暮れたがマイノスと青年エルフは楽しげに
最初に案内された建物へと帰って行った。カナはどうしているだろうか。一応キャクも残してはきたのだが。
彼女の無事を確認してから帰ろうと思ったが、正直に言ってマイノスは次の日が楽しみだった。
(明日は何を教えてもらえるんだろう、次の旅はきっとすごい楽だろうなあ)
【こちらこそ上手く場面を切り替えられずお待たせしてすみません】