時はネフティス歴845年、時の精霊ネフティスに、感謝の意を込めて制定された暦も、800年以上の時を刻んだガイネア
その西部に位置するエウロペア大陸。
西部にある神聖ローガンブリア帝国と東部にあるティルネラント王国との間では、数年前から小競り合いが頻発していた。
両国間の関係は悪化の一途を辿り、本格的な戦争が始まるのも時間の問題ではないかと、ささやかれ始めたころ。
帝国内では王国軍の侵攻に対して、精霊兵器で構成された義勇軍が結成された。
物語は、とある没落貴族の少年が戦争で名を挙げて、過去の栄光を取り戻そうとするため、義勇軍に参加しようと、義勇軍本部がある街、ロンデニオンにやって来たところから始まる
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舞台は人と精霊が存在する世界、ガイネアの西方に位置し
神聖ローガンブリア帝国、ティルネラント王国、ファールデル教国の3国が存在するエウロペア大陸が舞台
簡単なルール
決定リールあり、後手キャンセルあり
名無し参加なし、敵役のみの方歓迎
途中参加大歓迎!
バランスは考えてください
テンプレ&設定
人物設定
名前
年齢
性別
容姿
体格
性格
身分
所属 (神聖ローガンブリア帝国義勇軍、ティルネラント王国軍、ファールデル教国傭兵隊、それ以外)から選択してください
説明
機体設定
機体名
精霊の種類
精霊の名前
精霊力(エネルギー)一般的な精霊兵器が2000程度
耐久力 (S〜すごい、A〜結構いい、B〜いい方、C〜普通、D〜ちょっと苦手、E〜苦手、G〜最悪)
運動性
装甲
武装
機体&精霊説明
世界設定
人と精霊が存在する世界、ガイネアにある
文明としては精霊文化以外は中世地球文明に準じる
精霊設定
精霊は世界中のありとあらゆるものに存在し、宿っている
契約することによって使役することが出来る。契約した精霊を物に宿すことによって、機械を動かすエネルギーとしての面もある
精霊兵器は精霊のそういった部分を活用している
人工物には精霊は誕生しにくい、ある程度の時が経ったものや、人の思いが集中したものには、物の精霊が誕生する
精霊にも、ランクが存在し、下位の精霊は一般人でも多く使役出来るが上位になればなるほど、使役出来るには、ある種の心の強さが必要になってくる。自分の限界を超える量やランクの精霊を操ろうとしたら、心に異常をきたし、最悪、死に至る
しかし、精霊の方から協力してくれる場合はその負担は少なくなる
また、精霊を使役することによって精霊魔法とよばれる能力で超常現象を起こすことができる
舞台
神聖ローガンブリア帝国、ティルネラント王国、ファールデル教国の3国が存在す
るエウロペア大陸が舞台
世界にはほかにも大陸や島国が存在している
国設定
神聖ローガンブリア帝国
皇帝アーネス3世が統治する、エウロペア大陸西部にある国
建国から400年以上経ち、豊かな国土と温暖な気候とで平和な国として栄えて来たが、最近ティルネラント王国との小競り合いが絶えない(味方)
ティルネラント王国
ペネロペ女王が統治する大陸東部の新興国家、小国が散在し群雄割拠の大陸西部を十数年で武力により統一した軍事国家
最近、帝国に小競り合いを仕掛けている(敵)
ファールデル教国
教皇タチバナノスクナが治める宗教国家、大陸南部に位置する
正義の精霊セイティスを信仰するセイティス教の総本山がある国、国を挙げて傭兵稼業をおこなっている
初代教皇ファールデルにちなんでファールデルを国号にしている(中立)
質問待ってます
キャラ&機体設定
名前 レオニール・ルラン・ファーブニール
年齢 16
性別 男性
容姿 金髪碧眼のどこかあどけなさが残る、少し幼い顔立ち
体格 長身痩躯
性格 性格にも幼さが残るが、家名再興の為か割としっかりしようとする
身分 子爵(没落貴族)
所属 神聖ローガンブリア帝国義勇軍
説明 帝国の子爵家、ファーブニール家の嫡男
祖父が宮廷内の勢力争いに破れ、没落してしまった家を再興するため義勇軍で名を上げようと参加することにした
父は現在の質素な生活に満足しており、再興には興味がなかった。そうした親への反発もあり家を飛び出した
機体名 イグニス・フロゴーシス
精霊の種類 火の上位精霊
精霊の名前 フェニキア
精霊力 5500
耐久力 C
運動性 A
装甲 E
武装
火炎剣 フレイムファング
魔法の矢
フェニキアの翼
フェニキア顕現
機体&精霊説明
ファーブニール家に伝わる機体
長い間、実戦で使われていなかった物をレオニールの叔父、アーウィンが気まぐれで改修した
アーウィンは優秀な精霊兵器技師であったが気まぐれ者として有名で、気まぐれで老朽化が進んでいた機体をレオニールの父には内緒で直してくれたことには、感謝している。
能力は新型の精霊炉を積み、各種最新技術を投入されたこと、ファーブニール家守護精霊フェニキアの力が相まって最新精霊兵器に匹敵し、一般兵器の2倍以上の精霊力を持っている
フェニキア
ファーブニール家守護精霊として古くから家に使え、代々の当主、嫡男が受け継いで来た火の上位精霊
上位精霊なので自我を持ち、優しい性格からかレオニールのお世話係としても行動している
普段は、女性の姿でレオニールと一緒にいるか、彼の持っている家宝、火炎の宝剣に宿っている
長いよぉぉおおおおお
>>5 設定3行に要約
人と精霊が世界にはいるよ。地球でいうと中世だよ
帝国(味方)王国(敵)教国(敵味方どっちでもいいよ)
精霊、機体の属性とある程度の強さを決めるよ、意思持ってる奴もいるよ。魔法も使えるようにしてくれるよ
以下本文
僕は多くの期待と少しの不安を胸に義勇軍の本部がある街、ロンデニオンにやって来た
っと来てみたのはいいがどこに行けばいいかも分からない……
街の入り口でオロオロしていると、後ろから僕の名前を呼ぶ声が聞こえて来た
「レオン様〜先へ先へと勝手に行かないでくださいよ〜義勇軍本部の場所分かるんですか?」
染められたように紅く美しい髪を持ち、すらっと伸びた手足、美しい胴体が合わさって人形のような印象を持たせる
彼女はフェニキア、僕の家の守護精霊だ。僕のことをいつも子供扱いするけど、いつでも僕のことを心配してくれる優しい精霊だ
「遅いよ!フェニキア、早く義勇軍本部に行こうよ!いや、それよりもお腹が空いたから食堂に行こう!ほら、あっちからいい匂いがする!」
僕は彼女の手を引き、匂いの方に向かおうとする
「待ってくださいレオン様、大切な物をお忘れですよ」
彼女は僕のに火炎の宝剣を渡す
「イグニスにお忘れでしたよ、私にとっても大切なもんなんですから、しっかりしてくださいよ、もう〜」
頬を膨らますと、彼女は僕の先を行ってしまった
「まってよ、フェニキア〜今度から気をつけるよ〜」
怒らせちゃったな、食堂に甘い物がすぐに機嫌を直してくれるかな
そんなことを考えながら、受け取った剣を腰に差し、早足で先を急ぐ彼女の後を追った
名前 エルトダウン・シャーズ
年齢 22
性別 男
容姿 美しくもなく醜くもない。茶髪。
体格 平均的な体格。
性格 少し精神に異常がある。自分を低く見ることが多い。
身分 研究者
所属 それ以外
説明 ASL(人工精霊研究所:Artificiality Spirits Laboratory)の研究員の一人。
無機物から無の精霊を作り出すことに成功する。
その後、テストとしてホロウ・クロウラーを開発。
搭乗機として戦場でテストデータを集める。
機体設定
機体名 ホロウ・クロウラー
精霊の種類 無の独立精霊
精霊の名前 ファラーシア
精霊力 1000
耐久力 F
運動性 S
装甲 D
武装
エイサーグラディウス
ビッグアルバレスト
メカニクスランサー
ランページ・アトモスフィア
機体&精霊説明
ASLで作られた3機目の試作機。
人工的な精霊を媒体としてるため、精霊力は低いが、その代償として特異な運動性能を得ている。
その機動性を利用した近距離高速戦闘が得意。
「ランページ・アトモスフィア」は空気中の様々な物質を吸収し、機体内部で固形化、それを高速で撃ち出すASLの独自機構である。
ファラーシア
ASLで人工的に生み出された精霊。
金属類から生み出されたが、安定せず火や水等の元素の力を持たぬまま生まれたので「無の精霊」と名付けられる。
エルトダウンの持つ銀時計に宿る。名の由来はラテン語の「虚偽」から。
こんな感じでしょうか?
人物設定
名前 フォリナー=エグラート
年齢 26歳
性別 男
容姿 顔立ちは平凡だが目つきが悪い、黒髪。
体格 中肉中背
性格 面倒くさがり
身分 第二十七独立強行排撃隊長
所属 ティルネラント王国軍
説明
元々は大陸西方の国家であるヴァルフレン剣皇国の軍人。生来の面倒くさがりな性格がたたり日陰者の下士官だったが、
テイルネラント王国によって生国が併呑されたことで、敗軍の兵として最前線に立たされる日々を送る羽目になった。
強行排撃隊とは、作戦遂行中に、存知ではない敵の存在を認識した場合に敵方に吶喊、排撃する為に存在する露払いの部隊。
撃たれること前提の威力偵察という手段ではなく、撃たれる前に撃つを根本的思想とするテイルネラントならではの部隊である。
常時においては国境の最前線を警護する任務についている。
機体設定
機体名 ケルテ・マリーネ
精霊の種類 氷の精霊
精霊の名前 ラヴィーネ
精霊力 4200
耐久力 A
運動性 D
装甲 B
武装
フリード・ガンランス:氷属性の精霊の加護を得たガンランス。
砲撃、斬撃、貫撃、どれをとっても威力は高いがその分重量のある武器である。
機体の運動性の低さもあいまって近接戦闘では運用が難しい。
アイシクル・ミラー:精霊の力を借りて腕部に発生させる氷の盾。
シュネーバル:氷の弾丸を四方に撃ち出す。
相手の遠距離攻撃や懐に飛び込んだ相手に対して迎撃する為の兵装である。
フロスト・グライテン:精霊の力を借りて脚部の下に氷のボードを発生させる装置。
運動性が低い分、走行速度を補う為に用いられる。直線移動の速度はそれなりだが方向転換は出来ない。
機体&精霊説明
テイルネラント王国では汎用の精霊機の性能ならびに量産性の向上を目指し、
純粋な精霊ではなく、精霊の力を抽出した精霊力を増幅する炉の搭載が試みられた。
だが、試作機の段階で稼動時に尋常ならざる熱量を生み出し搭乗者の死を招く。
そこで氷属性の精霊を宿らせる形で熱量を抑制。結果的に従来機を上回る精霊力を持つ機体が完成した。
ところが冷熱の負荷に耐えうる素材を装甲に用いた故に重量が嵩み運動性が犠牲になってしまう。
コストパフォーマンスに優れず、精霊力の高さ故にパイロットを選んでしまうという点でも問題があり、
動作が不安定なピーキーな機体となったため開発計画は断念されてしまう。
失敗作として倉庫で埃を被りそうになっていたところを、機体消耗の激しい強行排撃隊に回された。
耐久性と装甲の違いがわからん
耐久力は機体その物の硬さじゃないでしょうか?
装甲はその硬さまでの硬さ…?
意味が分からなくなってきた。
耐久力はHP
装甲は防御力
13 :
名無しになりきれ:2010/05/09(日) 22:44:45 0
>>1がなかなか顔出さないもんだからのびないでござるよ
ある程度人がそろってから動こうと思ってるならとんだ思い違いですぜ
むしろ自分が動いて見本を示すべきでさぁ
>>7>>8 エルトダウンさん、フォリナーさん、よろしくお願いします
今後、どのように動きたいかや、やりたいことなどをこのスレか避難所にでも書き込んでください
>>12 その通りです
分かりにくくてすみません
対応が遅れて本当にすみませんでした
しかも、規制まで……orz
あと、今さらなんですが、みなさん、トリをつけて欲しいです
規制…ですか。頑張ってください。
僕はどう動いてもらっても構いません。
とりあえず長いものには巻かれろ、です。
右に同じく
設定上攻められても攻めても問題ないので
#と、言ってもスレが進展しないので、
>>1さんと関わりを持たせようかな。
エルトダウン・シャーズはロンデニオンに居た。
数日前のロンデニオン郊外で起こった小さな紛争に介入し、その後しばらく休養している。
エルトダウンの所属するASLは独立した研究機関である。どこの国家、団体にも属さない完全に孤立した研究機関。
そしてASLは自ららが作り上げた実験機の完成度を計るため各地で起こる様々な軍事活動に参加し、テストデータを収集している。
エルトダウンもそのテストデータを今月分は収集し終えたところである。
今、エルトダウンはロンデニオンで最も有名な食堂に居た。
「ふむ、損壊率は平均にして97.6パーセント…ネックと言えばエネルギー消費が激しいところかな…?」
書類を見ては独りでボソボソと喋りその都度何かを書き足している。
"冗談じゃねえぜ…アンタが機体をグイグイ動かしてる間、こっちは必死こいて働いてんだぞ…?
それをわかってんのか?エルトダウン?"
書類の隣に置かれた銀時計。そしてエルトダウンの隣でじっとその銀時計を見つめるボロ布を被った男。
男の名はファラーシア。ASLによって人工的に作り出された無の精霊。
その精霊力の弱さから完全に肉体は出来上がっていない。
それを隠すためにボロ布をかぶせているのだ。
ASLに居る時やエルトダウンと二人の時は銀時計に宿ったまま会話するのだが、
公の場では不審がられないように、人間の形として現れるのだ。
「勿論さ。データがある程度集まれば、君の事も何とかなるハズさ。
まあ、それまでの辛抱だよ。頑張ってくれたまえ」
エルトダウンは自身では問題ない返答をしたつもりだったが、
ファラーシアにはどうも利用されている感じが否めなかった。
"ふん、まあいいぜ。コッチもアンタがいなけりゃ生まれてねえんだからな。
せいぜい共栄していこうぜ、相棒"
「ハァー、やんなっちゃうね」
男は投げやりな態度で机に足を乗せて愚痴をたれた。名はフォリナー・エグラート。
今やテイルネラントに併合されたヴァルフレン剣皇国出身の軍属である。
「相変わらずねフォリナー…そのようなことでは生き残れないわ」
そんな彼をあざ笑うかのようにくすくすと声をたてる白銀の髪を棚引かせる一人の女性。
時折青く光るその衣服は人間のそれではなく、見るものを寒からしめるような印象を与えている。
彼女の名はラヴィーネ。フォリナーの相棒を勤める氷の精霊である。
「嫌にもなるさ。相手は帝国義勇軍だぞ?
正規軍と違って、自前で精霊機持ち出してまで祖国を守ろうって連中だ。
士気がダンチなんだよダンチ、わかる?」
「そうね…私の目の前で不貞腐れてる朴念仁よりははるかにマシでしょうね」
そう言ってパートナーを酷評するラヴィーネだが、表情はまんざらでもないようだ。
言われた方も意に介するつもりはないようで、地図を広げながら思案にくれる。
「上層部もロンデニオンに本格的な攻勢をかけたがってる。
近いうちに大規模な戦闘が生じるかもしれねえな。全く…めんどくさいったらありゃしねえや」
義勇軍の本拠地が陥落すれば、帝国側の指揮を挫く切欠になる。
相手の敵愾心を潰すべく正面から牙をへし折る、それが王国の流儀だ。
「期待してるわよ?剣皇国きっての怠け者のエース様」
「ほんっと、厄介な女に捕まっちまったなぁ」
地図を放りなげると、困ったように頭をかいて天を仰ぐしか無いフォリナーだった。
>>17-18 皆さん、どうもありがとうございます
私としては、こうして欲しいとかはいうつもりはないので好きに動いてくださいね
食堂を探しがてら、ロンデニオンの街を観光気分でいろいろと見て回っていた
「大きな街ですね〜ほらほら、レオン様〜これなんでしょうね〜」
よくわからないが、筒の先に丸い物がついていて、ぶるぶる震えていた。いったい何に使うんだろうか?
あまり大きな街には行ったことがなかったから、珍しいものばかりで、僕は楽しくて仕方がなかった。
「フェニキア、街って楽しいね!」
そのとき、ぐ〜とお腹が大きな音を出す
楽しくて、お腹が空いていたのを忘れていた
「レオン様、食堂に向かいましょうか?」
僕たちは街で一番の食堂に足を向けた
食堂に近づくにつれて、いい匂いが漂ってくる
「私もお腹が空きました。楽しみですね〜」
食堂の扉をくぐるとそこ空いている席に座ると、ウェイトレスが注文を取りにきた
僕達はそれぞれ、オムライスとカルボナーラを頼む
「レオン様、どうやらこの食堂には私の他に人の姿をした精霊がいるみたいですよ」
>>19の方に視線を向けると、茶髪の男と一緒に布を被った怪しい男が一緒にいた。
彼女は滅多に合わない、人の姿をした精霊に興味津々のようだった
>>20 いつでも攻めて来てもらってもいいですよ
日ごろの悪い目つきをよりいっそう悪くして、フォリナーは格納庫に戻ってきた。
「あら、その仏頂面、とうとう出撃かしら」
「あー、そうさね、俺達の部隊も頭数に入れられちまったよ!」
はき捨てるような物言いに、ラヴィーネはいよいよくすくすと笑い出した。
一方のフォリナーはうんざりしたように頭を抱え、もう片方の拳を壁に叩きつける。
生来の面倒くさがりにとって、実戦などというものは反吐が出る程嫌なものだった。
「いよいよロンデニオンの制圧作戦が始まるのね」
「そう言うと大仰だけど、内容そのものは単純明快だぜ?」
北西部からガルーダ部隊による空爆、しかる後に北部からは主力部隊による侵攻を行う。
主力部隊はそのままメインストリートを直進し、一気に中央部に迫る算段となっている。
「で、私達はどういう立ち居地にいるの?」
「聞きたいか?俺達の任務は爆撃が始まる寸前に東部から居住区を抜けて吶喊し、相手の鼻っ柱を叩き折るのことさ」
ガルーダ部隊は確かに空を移動できるという点では優れた兵科だが、耐久力に難があり迎撃されると損害を免れ得ない。
その為、爆撃を確実に成功させるためには鼻っ柱…すなわち相手の砲台などの対空設備を予め沈黙させる必要がある。
こう書くと簡単だが、その実非常に困難極まる注文であった。
なにせ攻撃が早すぎれば爆撃の意図に気づかれてしまい、遅ければ爆撃に巻き込まれかねない。
しかも遮蔽物が多く、相手に地の利がある場所での戦闘であり、危険度はかなり高かった。
「全くろくでもない任務だぜ。糞の山に自分から突っ込むようなもんさ」
「敗残兵の身分でえり好みは出来ないでしょう?そんなに嫌なら祖国と運命を共にすればよかったのよ」
相棒の冷たい物言いにやれやれとかぶりをふると、フォリナーはそのまま愛機であるケルテ・マリーネに乗り込む。
「やれやれ、いくとするか…全機出撃!」
こうして、複数の強行排撃隊が爆撃支援の為にベースキャンプから出撃した。
"おい、エルトダウン。あの可愛い娘ちゃんがこっち見てるぜ。俺の事気になってんじゃねえか、行こうぜ!"
ファラーシアは人工的に作り出された精霊。
それ故に、より人間らしい、より本能の赴くままに生きている。いや、生かされている。
多くの事において他の精霊より劣っているファラーシアの唯一の長所だ。
殆どの精霊とその主人は主従関係にあるが、ファラーシアに至っては違った。
「おいおい、過剰反応だろう。いくらなんでも君を気にかけるなんて趣味が悪すぎる」
エルトダウンは軽くあしらう。が、ファラーシアは諦めきれなかった。
"俺ァ、この銀時計に縛られていい様に動けねェんだよ。
頼むよォーあの娘と話をさせてくれよー"
執拗にエルトダウンに頼みこむ。
すぐに下手に出るところは主であるエルトダウンと同じようだ。
「あくまで駄々をこねるつもりかい?…仕方がない、いいよ。行こうか」
エルトダウンが銀時計をポケットにしまうのとほぼ同時にファラーシアは飛びあがってガッツポーズをした。
…ファラーシアを見ていた娘の方へ歩いていく。
その隣に座っているのが主人だろう。
「やあ、こんにちは。そちらの可愛い精霊さんがコイツをじっと見てたものでね。
あ、いやいや。嫌ではないですよ。人の形を持つ精霊はあまり居ませんから。ムリもありますまい」
乱立荒らし対策保守
25 :
名無しになりきれ:2010/05/12(水) 18:28:12 0
精霊って人型がデフォなのな
>>23 茶髪の男が僕の方に近づいてきた。あまりに彼の方を見すぎたからか、気を悪くしたりしたのだろうか?
「フェニキア……僕、あの人を怒らせちゃったのかな?」
僕は萎縮して、彼からうついて、彼に怒られる覚悟を決めた
フェニキアの方をちらっとみると、彼女はニコニコして彼の方を見ていた
「やあ、こんにちは。そちらの可愛い精霊さんがコイツをじっと見てたものでね。
あ、いやいや。嫌ではないですよ。人の形を持つ精霊はあまり居ませんから。ムリもありますまい」
思いとは裏腹に彼は実に気さくに僕に話しかけて来た
「え、え、っとあの、すみません」
僕はあまり他人と話した経験がない、それなのにいきなり見ず知らずの人に話しかけられ、気が動転してしまった
「レオン様、落ち着いてください。申し訳ありません、主が粗相を」
フェニキアは立ち上がり、彼らに深々とお辞儀した。
「初めまして、私の名前はフェニキア、火の精霊です。どうかよろしく」
ファーラシアに握手を求めて手を差し出す
「え、えっと、僕の名前はレオニール・ルラン・ファーブニールです。よ、よろしくお願いします」
ガチガチに緊張したまま、彼に腕を差し出した
#フォリナーさん。適当に襲ってくれれば応戦します。
青年は話しかけると、挙動不審に話しだした。
恐らく、対人経験があまりないのだろう。
エルトダウンもかつてはそうだった。
/「レオン様、落ち着いてください。申し訳ありません、主が粗相を」
「ん、ああ、構わないよ。皆そんなものさ。恥じるものじゃあない」
優しく笑ってフォローする。人にイメージを植え付けるためだ。
実際のエルトダウンは笑顔など見せないし、こんな口調でもない。
いわゆる、営業スマイルというヤツだ。
"エルトダウンの言う通りだぜ。そんなにかたくならずさ"
青年は自己紹介を始めた。
名をレオニール・ルラン・ファーブニール。精霊の名はフェニキア。
「ファーブニール…どこかで聞いたな…名のある家の出なのかい?
ああ…私はエルトダウン・シャーズ。ASLの研究員ですが…
もしASLと聞いて不快に思ったなら申し訳ない。君の前からすぐに消えるよ」
当然である。ASLの行っている研究は、多くの宗教、思想、理念にとってはタブーなのだ。
それ故、ASLの活動を良く思わない人々は世界中に居る。
最近では、妨害活動まで起こす過激派がいるくらいだ。
フェニキアがファラーシアに手を差し出す。握手を求めている。
「ああ、すまない。コイツはそっちの腕が無くてね。出来れば反対の手でしてもらえるかな」
確かに腕が無い。不安定な構造だから、完全に人の形を作れない…ASLが抱える問題の一つでもあった。
"腕が無くてね、じゃねえよ!…ホントにデータが集まったらどうにかしてくれるんだろうなァ?"
ぶつくさと文句を言いながらファラーシアはフェニキアと握手をする。
するとレオニールも腕を差し出してきた。
「どうも、レオニール君。よろしく」
ファラーシアはフェニキアと握手し終えると、
"エルトダウン。問題ねえならこのあと一緒にカフェにでもいかねえか。
こんな食堂じゃあ格好悪いぜ。俺にとってもあんまり良くない場所だしな"
#んじゃいよいよ作戦開始ってことで
ロンデニオンから東に10km近くの場所に、精霊機の部隊が複数集結していた。
いずれも対空設備無力化の為に出撃してきた強行排撃隊の面々である。
「まいっちゃうね、全く」
「今更四の五の言ってもはじまらないわよ」
隊長の一人としてこの場にいるフォリナーだったが、相変わらず愚痴はつきない。
ラヴィーネもなれたもので、適当にたしなめる。
「面倒極まるんだよ、本当にもう!」
フォリナーが諮詢する理由、それは街にいたるまでの間に幾多にも張り巡らされた防衛線にあった。
ロンデニオン近郊で戦闘が頻発してる昨今、帝国義勇軍側も非常に神経を尖らせており、
突破しようともなれば必死の抵抗が生じるのは確実であった。
歩兵同士だけでの戦いであれば、堀を掘る、壁をめぐらす、鉄線を張る…といった程度で済むが、
戦場の花形が精霊機に写ると、必然的に防衛網も強化される。
「でも、グズグズしていると味方の爆撃が始まってしまうのでしょう?」
「あぁ、わかってるさ」
いよいよ諦めたように肩をすくめると、ラヴィーネに目配せして脚部から氷のボードを生成させる。
フロスト・グライテン。運動性に優れないケルテ・マリーネの移動力推進装置のようなものだ。
「行くぞ!俺らの隊は陽動だ。他の部隊が対空設備を無効化するのを支援する」
「徹底的に暴れて、連中の目を引くってことね」
フォリナーの隊が吶喊を開始したのを受けて、他の部隊も次々に防衛線に殺到。
義勇軍側の哨戒部隊やなけなしのトラップは次々と簡単に突破され、
ここにロンデニオン攻防戦の火蓋が切って落とされた。
昔リアルロボット系のスレでコケたやつがあったな……。
頑張れよ
>>1&PC。参加はしないがROM専補助で応援するぜ。
○登場人物まとめ
神聖ローガンブリア帝国義勇軍
レオニール・ルラン・ファーブニール(イグニス・フロゴ−シス)
ティルネラント王国軍
フォリナー=エグラート(ケルテ・マリーネ)
ファーデル教国傭兵部隊
なし
ASL(人工精霊研究所:Artificiality Spirits Laboratory)
エルトダウン・シャーズ(ホロウ・クロウラー)
○機体の総合的な格付け
(判定はSを7点、Aを6点というように各能力値を足して4つを平均化したもの)
(なお、精霊力に関しては2000=4点とし、500ごとに1点上昇として判定している)
(※あくまで好事家が趣味で行なった暫定的なカタログスペックである)
(※それぞれの機体が持つ特殊機能や潜在能力は加味されていない)
S
A
B ケルテ・マリーネ(5.6)イグニス・フロゴーシス(5.75)
C
D ホロウ・クロウラー(3.25)
E
G
#フォーリナーさんお待たせしました
「ありがとうございます。取り乱すような真似をして、どうもごめんなさい」
彼と彼の精霊の対応に僕は恥ずかしさを感じて、また謝ってしまった
「僕は一応貴族ではありますけど、あ、でも、叔父さんが有名な精霊兵器技師なので、それで聞いたことがあるんじゃないですか?」
没落してしまった家名を出すのは恥ずかしかったから、有名な叔父さんのことで、話を濁して答えた
「エルトダウンさん、人工精霊研究所のかたなんですか、、始めてお会いしました。祖父は嫌いだそうですが、僕は素晴らしい研究だと思いますよ」
上の世代の人は彼の所属する、ASLの研究に対して、嫌悪感を抱いている人は多い、
僕自信は挑戦的な研究をしている所という認識しかない。嫌悪感は抱いてはいない。むしろ、新しいことに挑む集団として、どちらかというと興味がある。
「ということは、この精霊の方は人工精霊なんですか!?」
フェニキアは初めて出会う、異質の精霊に心の底から驚いていた
「凄いなぁ!意思を持って、体もあるなんて凄い!本当に凄いですよ!」
僕が無邪気にはしゃいでいると、店のドアが勢いよく開き、男の人が息を切らせて入ってきた
「王国の奴が攻めてきやがった!」
彼の一言で、店内が騒然となった。
僕は義勇軍に入るためにこの街にやってきた。僕の力を見せるチャンスがやってきたのだ。
しかし、足が動かない
「「僕はいったいなにしに来たんだ!戦いに来たんだろう!!」」
心の中で自分を奮え立たせようとする、しかし、僕の身体はいうことを聞いてくれなかった
「レオン様、ついに来るべき時が来ました。私達の初陣です。おそろしく思っていることでしょう、しかし、安心してください。
レオン様には私がついています。私が必ずや、レオン様をお守りいたします。さ、イグニスで王国軍を撃退しましょう!レオン様なら大丈夫!自信を持って下さい。」
フェニキアの優しい言葉が、僕の心をほぐしてくくれた。
身体が動く、僕は覚悟を決めた!
「エルトダウンさん、僕は王国軍を倒しに行きます!」
僕はフェニキアの手を引き、イグニスを置いた街の外に走り出した
「イグニス・フロゴーシス!僕に力を貸してくれ、行くよ、フェニキア!」
防衛線を突破してきた敵の前に立ちはだかった
「レオニール・ルラン・ファーブニールだ!義勇軍に助太刀するため参上しました!さあ、王国軍どもかかってこい」
雷鳴といっても差支えが無い程の銃声が飛び交い、それに重金属が弾けてぶつかりあう音が響いて重なる。
戦闘開始より10分、ロンデニオンの防衛ラインをめぐる熾烈な戦いは、侵入者の側に軍配が上がりつつあった。
『ポイントA-13、圧されているぞ!』
『B-6から砲兵回せ!』
大地が勢いよくえぐれてまるで粉塵のように舞う様を見て、導術兵の念話にも自然熱が入る。
そして遂に…防衛線を支えていた最後の1機が、爆音と共に黒煙を上げて地に崩れ落ちた。
『クソッ!最終防衛ラインが突破された!』
『市街の全部隊に告げる!最終防衛ラインが突破された!来るぞ…迎撃用意!』
その頃、市内は混乱と恐怖に包まれていた。
逃げ惑う人々の叫び声、そしてけたたましく響く鐘の音…さながら狂想曲と言うべき様相を呈している。
「やれやれ、ようやく防衛線を抜けたか…」
「でもここからが本番、気を抜いちゃダメよ」
さぞくたびれたとばかりに首を回すフォリナーをたしなめながら、ラヴィーネは東区の門を見据える。
その開かれた門から、一つの影が飛び出し王国軍の前に敢然と立ちはだかった。
>「レオニール・ルラン・ファーブニールだ!義勇軍に助太刀するため参上しました!さあ、王国軍どもかかってこい」
「やだねぇ…正義の味方って奴かい?あーいう手合いは相手をするのが面倒でしょうがねえや」
「ほんと、勇敢な坊やだこと。それにあの精霊…」
愚痴をこぼすフォリナーとは対照的にくすくすと笑うラヴィーネだが、その目は笑っていなかった。
相棒のそんな様子をいぶかしんでか、ラヴィーネを見やって尋ねる。
「何だ、知り合いか?」
「いいえ、でもあの機体についてるフェニキアってのは高名な火の上位精霊、極めて厄介な相手よ」
ファーブニール家といえば、帝国でも有数の名家だ。
権力闘争に敗れたとはいえ、その守護精霊ともなれば精霊界での知名度も極めて高かった。
「へぇ、悪名高さでお前に勝る奴もそういないだろ?パイロット殺しの冷血女め」
「心外ね、私がいつ貴方にそんな仕打ちをしたの?」
古い異名を持ち出してきたフォリナーに対して、頬を膨らませながら不満げに抗議する。
そこにはかつてパイロットを殺し続けてきた恐怖の精霊の面影はどこにもなかった。
「ま、いずれにしろ厄介なことには変わりねぇな。ありゃ低く見積もっても精霊力5000くらいはあるぞ」
「どうするの?隊長さん」
ゆっくりと考えている時間は無く、並の機体ではアレには太刀打ちできないのは明白だ。
となると残された手段は一つしかない。
「アレは俺が相手をする。お前達は先に東区に侵入しろ」
「やっぱりそうなっちゃうのね」
ラヴィーネは半ば諦めに近い境地で呟くと、精神集中を開始して機体の精霊力を高めていく。
それをアイズとして彼の隊も、他の隊も、イグニスをスルーして東区への侵入を開始した。
フォリナーは友軍を援護するべく、あえてアイス・ガンランスを振りかざしてレオニールの前に立ちはだかる。
「小僧、お前さんの勇気に免じて俺も名乗ってやるよ。俺の名はフォリナー・エグラート…お見知りおき願おうか」
名乗りをあげると、今度はゆっくりとガンランスを正眼に構える。
「まずは挨拶代わりだ…受け取れ!」
勢いよく発射された砲弾の軌道はレグニスから大いに外れ…東区でも最も大きな教会堂に直撃した。
派手に風穴を開けてしまったレンガの壁では、最早自重を支えきれず塔の崩落が始まる。
「ほんっと、バチあたりな男よねー」
ラヴィーネも呆れて見せたあたり、この攻撃が暴投ではないことがわかる。
教会はおおむね信仰の対象であり、市民の避難場所として用いられることもある極めて重要な施設だ。
そこに初弾を寸分違わず成功させたことで、市民には恐怖を、敵部隊には敵愾心を煽り冷静さを奪う。
奇襲をしかけて機先を制することこそ陽動の要…軍人としての行動原則をフォリナーは忠実に守っていた。
34 :
名無しになりきれ:2010/05/14(金) 00:18:05 0
レオンは普通に主人公してるけど
精霊で実体ないっぽいのに性欲丸出しのホロウや
いきなり教会を狙い撃ちにする信仰心ゼロのフォリナーがヤベエ
機体のスペック的に見てフォリナー氏はむしろライバルキャラっぽいね。
……今後の展開でシャアになるかジェリドになるか、見物だぜw
/「エルトダウンさん、僕は王国軍を倒しに行きます!」
"えっ、おい、ちょ…ま、ちょっと待ってくれよ!あッ!!"
レオニールとフェニキアは行ってしまった。
王国軍。恐らくティルネラント王国の軍だろう。
ここ数年、ローガンブリアと敵対状態にあった。
そしてここ、ロンデニオンはローガンブリア帝国義勇軍の本拠地でもあった。
「ハハ、行ってしまったか…もちろん、私たちも行くよ、ファラーシア。
カフェはまた今度にしよう。今は戦いを楽しもうじゃないか」
人の居なくなった食堂から足早に去る。
そこら中に煙が上がっている。王国も本腰を入れ始めたのだろう。
"冗談じゃねェぞ!チクショーッ!!とっとと行くぞエルトダウンッ!"
エルトダウンが鼻で笑うと、ポケットの中にある銀時計のフタを閉めた。
それと同時にファラーシアが消え銀時計に戻る。残ったのはボロ布だけ。
しばらく砲弾の中をかいくぐりホロウ・クロウラーを置いていたところまで来た。
「よかった、カモフラージュはバレてないらしい。さ、行くよ」
ハシゴを下ろし、ホロウ・クロウラーに飛び乗る。
「第一、第二、第三ギア、正常に稼働。各部異常なし。最終安全装置、アンロック!機体偽装装甲、パージ!」
突然、エルトダウンがコクピットで騒ぎだす。
"…何やってんだ、エルトダウン?アホウか…?"
ポケットの中からすこしこもった声がする。
「やってみたかっただけさ。さあ、行こうか。データ収集だ」
"おい、ちょっと待てよ。どっちに味方するつもりだ?あの娘がいる帝国だよなァ?"
深くエルトダウンがうなずく。が、そんな様子などファラーシアには見えない。
確認を取りたくて騒いでいるファラーシアを黙らせ、ホロウ・クロウラーは高速で移動しはじめた。
市街を蹂躙している一機の精霊兵器に近づく。
突然の出来事に、対応できなかったのだろうか。その場に立ち尽くす。
「我々、ASLのデータとなってもらおうか。その命と引き換えにね」
ホロウ・クロウラーが左手に構えたエイサーグラディウスを振り下ろす。
鈍い音を伴って、眼の前の機体は字の通り"潰れて"しまった。
「さぁて、次だね。クフフ…」
>>27 参加出来ないのは大変残念ですが、ご支援ありがとうございます!
敵部隊の前に立ち塞がるところまではよかった
興奮していたから、自分がなにをしているか、どんな状態にいるのかわかってな
かった
戦場なんて見たこともない子供が義勇軍を蹴散らした王国軍の精鋭の前に戦いを
挑んだ
身の程知らずだ
それに気付いた時、僕の身体が奮えだした。武者震いなんかじゃない、恐怖、怖
いから震えてきたんだ
「やってやる、やってやるんだ」
恐怖で心が潰されないように、強気の言葉で自分に言い聞かす
眼前の隊長機以外、目に映っていなかった
通り過ぎる他の機体を気にしている余裕はなかった
「レオン様、落ち着いてください。相手は見たところ、氷の精霊が守護した機体のようで
す。相性は私達が有利です」
フェニキアは僕を安心させ、落ち着かせようと言葉かけてくれた
この時の僕は、彼女の言葉で多いに救われた
「あぁ、うん、そうだね。僕達の炎であんなやつ、溶かしてやろうよ!」
僕は両手で剣を構えた、相手は巨大な槍のような武器、たしかガンランスと呼ば
れている武器だった
敵は僕が名乗ったことに倣ってか、名乗りをあげた
>「小僧、お前さんの勇気に免じて俺も名乗ってやるよ。俺の名はフォリナー・エグラート…お見知りおき願おうか」
「フォーリナー・エグラート……」
自然と敵の名前が口からこぼれた。ああ、僕は今からこの人と戦うんだ
そう思うと体は固くなり、手に汗が浮かんでくる
緊張感が体を支配していく、次第に自分の呼吸の音がやけに大きく聞こえてくる
相手と対峙して、まだ1分と経っていないはずなのに、もう何時間もこうしているように感じてくる
疲れが全身に広がる、極度の緊張は急速に体力を奪っていく、知識としては知っていたけど、実際に体感するとつらいものだった
そのとき、敵がガンランスを構え、瞬時に砲撃が放たれた
一瞬、反応が遅れた
だけど、砲弾は僕とは見当違いの方向に飛び、轟音のすぐ後に鐘の不規則な音が聞こえて来た
とっさに轟音の方を見る、崩れ落ちる教会が僕の目にはしっかりと映った
頭の中にいろいろな思考が頭を駆け巡った
『街の守護精霊を奉る教会をになんてことを!』『なぜ、教会を狙う』
『なぜ?なぜ?なぜ?なぜ?なぜ?なぜ?なぜ?なぜ?なぜ?なぜ?』
僕の頭の中でその回答を導き出したとき、僕は敵機に怒りに任せて突撃していた
「あそこには避難してた人がいるかもしれないんだぞ!お前に人の心はあるのかぁぁぁ!!」
最上段から厚く大きな刀身を誇る炎の剣を感情に任せて振り下ろした
制止するフェニキアの声は僕の耳には届いてはいなかった
>>36 エルトダウンさん、お好きに暴れ回ってください
>>37 教会の塔がガレキと化したのを確認すると、分厚い大剣を抜き放って敵機が吶喊してきた。
>「あそこには避難してた人がいるかもしれないんだぞ!お前に人の心はあるのかぁぁぁ!!」
「戦場でマトモでいようなんて随分と贅沢な子ねぇ」
「悠長なこと言ってる場合かよ…ありゃ速ぇぞ」
フォリナーはガンランスを右手に持ち直すと、左腕から氷の盾…アイシクル・ミラーを出現させた。
とはいえ、真っ向から相手の攻撃を受け止めるつもりはない。
相手は炎、こちらは氷。属性においてもスピードにおいても相手に分があるのだ。
「直線的な攻撃なんざ…!」
ケルテ・マリーネの半身をずらし、盾で剣の腹をたたきつけた。
アイシクル・ミラーの表面は鏡と見間違う程に磨き上げられた氷のようなもの。
上段の構えから振り下ろした斬撃は、側面から摩擦係数ほぼゼロの氷の盾の接触を受けて文字通り滑る。
「ちょ、ちょっと掠っただけなのに盾が溶けちゃったじゃない!」
炎の剣の威力を前にして、流石のラヴィーネもゾッとした表情を浮かべた。
直撃を受けていないのにこれでは、まともに食らえばどうなるかわかったものではない。
とはいえ、力任せの斬撃を途中でかわした以上、最大限のチャンスがめぐってきたと言える。
「(ギリギリまで近づくとは迂闊だな!折角の上位精霊が宝の持ち腐れだ!)」
フォリナーは斬撃を終えきっていないレグニス目掛けてシュネーバルを発射させた。
シュネーバル…ラヴィーネの力を借りて氷の弾丸を撃ち出す迎撃用の装備だ。
と言っても、ただの氷ではなく大気の大半を占める窒素を氷結させて出来た弾丸である。
射程がない為遠距離攻撃には使用できない分、近接戦闘での威力は強力だった。
「こいつはおまけだ!」
片手でガンランスを構えなおすと、そのままレオンめがけて突き出した。
>>38 振り下ろした大剣はケルト・マリーネを両断することはできず、盾により、受け流された。地面にその刃をめり込ませた
力任せに振るったため、剣は思いのほか深くめり込み、すぐに抜けはしなかった
その隙を狙われ、氷弾が機体に命中、衝撃が全身に走る
とっさにフェニキアが炎の翼を出現させ、翼でイグニスを覆い、氷弾の威力を幾分かは消してくれた
しかし、それでも機体にも損傷はある、フェニキアが損傷個所を報告してくれたが、耳を通り過ぎただけで終わった
今、怒りに身を任せた僕にその衝撃、損傷はなんら障害にはならない
頭に血が上っている、視界がひどく狭い
「敵はどこだ?」
敵を見失った。怒りに頭を支配され、正常な思考ができない
「レオン様!右横!剣を振ってください!」
フェニキアの言葉に体が咄嗟に反応した
地面から抜いた剣の勢いをそのままに機体を回転させるように横に薙ぎ払う
ケルト・マリーネが突き出したガンランスと炎の剣がぶつかり、すさまじい轟音があたりに響き渡る
その衝撃でのけぞってしまう、機体の重量ではケルト・マリーネに軍配が上がったようだ
ティルネラントの事前に偵察によれば、ロンデニオン市内に存在する対空設備はおよそ37箇所。
無論、他にも存在する可能性はあるが、確認されている脅威は殲滅するに越したことはない。
『B班、東区の状況はどうか!』
『現在陽動部隊が展開中、対空設備は11箇所の沈黙が確認されています』
作戦開始から既に15分、ガルーダ部隊が作戦空域に到達するまで15分を切っている。
それまでに残り26箇所を破壊せしめること、それが強襲排撃隊の共通の任務だった。
『王国軍の連中を何としても殲滅しろ!』
『東区より先に絶対に進ませるな!』
無論、義勇軍の側とてやられっぱなしでいる筈もない。
精霊機が、砲兵が、民兵が、地の利を活かし、現有戦力の限りを尽くして決死の抵抗を続けている。
激闘の中で陽動を請け負った排撃隊も1機、また1機と数をすり減らしていく。
『怯むな!実行部隊の連中が対空設備を排除するまで持ちこたえるんだ!』
しかし彼らは知らない。王国軍と義勇軍との戦闘の中で暗躍する1機の精霊機”ホロウ・クロウラー”の存在を…
>>39 一方こちらは東門の手前。闖入者の一人が、果敢な勇者を相手に凍てつく弾丸を撃ち込でいた。
「やったか!?」
「ちょっと!何フラグ立ててんのよ!」
あまりにもお約束じみたセリフに対するラヴィーネの抗議を軽く無視して、
駄目押しとばかりにガンランスを構えなおそうとしたフォリナーは、再度息を飲む羽目になった。
イグニス・フロゴーシスの背後から、紅い炎が吹き上がり機体を包み込む。
その様は、まるで鳥が翼で自らを覆うかのようであり、見るものを圧倒した。
「あれがフェニキアの翼ね…お目にかかるのは初めてだけれど」
「オイオイ勘弁してくれよ…空まで飛ばれたらそれこそ対処のしようがねえぞ!」
ぼやきながらもガンランスでの攻撃は続行する。
炎の翼に防がれたとはいえ、シュネーバルは確かに相手の装甲を抉ったのだ。
おまけに、僅かながら相手の反応が遅れている。こちらを見失っていることは明白。
畳み掛けるのが常道と言えたが…刹那、相手の機体が急速に回転して剣を横薙ぎにしてきた。
「クッ、速ぇ!」
「さぁ…どっちがタフかしらね?」
アイス・ガンランスと炎の剣フレイムファングが轟音と共に激突する。
重金属の弾ける音が当たりに響くと、イグニス・フロゴーシズの側がのけぞった。
鍔迫り合いは重量のあるケルテ・マリーネに優位に働いたのだ。
「これも耐えられるか!?」
先程はわざと別の標的を狙ったガンランスの砲弾。今度こそ勇敢なる若者が駆る炎の機体に向けて発射した。
「また一機…っと。遅いよ、もっと機敏に動かなくちゃあ」
ホロウ・クロウラーのビッグアルバレストがどこの所属かもわからない機体に直撃する。
鋼鉄の矢はどこかの精霊機を貫いた。爆音が響いた。
王国か帝国か。もはやそんなことはどうだってよかった。
データ収集こそがASLの一研究員としての仕事だった。
"お…おい、エルトダウン…ちゃんと敵を選べよ…?あの可愛い娘ちゃんを殺ってたりしたら…"
ファラーシアは危惧する。もっとも、それはある意味恒例になっていた。
先の紛争に参加した時も、ただ手当たり次第に他の機体を潰していたのだ。
「わかってる。どうせ彼もこんなどこにでもある精霊機には乗らないよ。特徴があるはずさ」
悠長に話しつつ、また新たな獲物を視界に捉える。
急加速しつつ、右手のメカニクスランサーを突き立てた。
運動エネルギーを得たそれはどんなに厚い装甲でさえも、紙のように貫いた。
もっとも、獲物も無抵抗と言うわけではない。
『う…うァァァッ!化物めェッ!くたばれやァァッ!!』
機体を貫かれつつも、その手に持った機械剣を振りかざす。
が、それは空を裂いただけだった。
その機体の搭乗者が空を裂いたことに気付かず『やった』と思った時、その搭乗者の意識は無かった。
"まああんな剣に当たっちまったらほぼ一発で沈んじまうしな。
そのための機動性だ。悪く思うな、成仏しろよ"
ファラーシアは生み出された当時、戦場に立つのは嫌いだった。
殺人の手伝いをしていると思ってしまうからだ。
今となってはそれが当たり前になってしまっているのだが、
時々その名残でこうした言葉を出してしまう。
「さてさて、パーティーの盛り上がりも最高潮になってきたね。
もっともっと踊ろうか。どうせ仮面舞踏会だ、何をしても心は痛まない」
そう言うと、ホロウ・クロウラーは『特徴』のある二機の精霊機が居る方向へ加速し始めた…
43 :
名無しになりきれ:2010/05/15(土) 23:56:00 0
まさかの3すくみか?
>>41 機体の重量差で大きく仰け反り、体勢は崩れた
そのまま、ろくに体勢が整っていない、不安定なバランスのまま、剣を振るおうとする
「「レオン様!!!」
そのとき、フェニキアの耳をつんざくほどの大声が耳から頭に届く
振ろうとした剣を止める
「落ち着いてください!相手は相当の手練です。残念ながら、今のレオン様では実力不足です
ですから、私が全力でサポートします。」
フェニキアの優しい口調で僕の心は幾分か落ち着いた
「ああ、わかったよ。フェニキア、ごめん、心配をかけちゃったね。」
「レオン様が生まれた時からおそばにいるのですよ?こんな心配、レオン様が庭の木から落ちた時のほうがよっぽど心配しましたよ。」
ああ、そんなこともあったなと、過去の記憶に数瞬の短い間だけ、戦闘から頭が離れた
完全に僕の思考は落ち着いた
「上に飛んでください!」
指示に冷静に反応し、イグニスを空中に飛び上がらせる
足下を砲弾が通り過ぎる
「その調子です!レオン様!」
「ああ、もう大丈夫だよ!炎の矢、10本!敵を貫け!」
機体の周囲に炎できた矢が出現し、レオンの合図に矢がケルテ・マリーネに殺到する
フェニキアでもラヴィーネでもいいけど、俺もこういう傍仕え精霊欲しいわ……。
>>44 鍔迫り合いを優位に進めたフォリナーが放った弾丸は、イグニスを捕らえつつあった。
だが、不安定な体勢から強引に剣を振りかざそうとした敵機が急に動きを変える。
砲弾はイグニスの足元を通り過ぎると、開いたままの東門の中に吸い込まれていく。
「(またか…!)」
相手は勇敢な若者であっても、経験で言えば自分の相手ではない。
だが上位精霊の力を借りて本来なら致命的な部分をうまく補っている。
「マジに空飛びやがった!火の鳥かよあいつは!?」
「ボヤボヤしてないで、次来るわよ!」
軽口を叩いているようでも、フォリナーは内心冷や汗が出るような思いだった。
もしパイロットの技量が自分と同等だったら、あっという間に勝負は決しているだろう。
砲弾が市内の建造物に着弾して轟音を立てる頃には、
既に10本の火の矢がケルテ・マリーネに迫りつつあった。
「迎え撃つしかねえか!」
ラヴィーネに合図を送り、シュネーバルを発射させる。
固体窒素の弾丸が精確に炎の矢に激突し、火種を凍てつかせた。
物質の性質上、常温では遠距離の相手に届くことなく気化してしまうが、
迎撃に用いる限り対象物を瞬間的に冷却し、自らを守る結界のような役割を果たしている。
「でもこのままじゃジリ貧よ!」
「わかってるさ…空中で身動きが取れるか…試してやる!」
再度ガンランスを構えなおし、空中のイグニス・フロゴーシズに返礼の砲弾を撃ち込んだ。
47 :
名無しになりきれ:2010/05/16(日) 17:39:49 0
精霊って機体についてるの?
それとも機体から離れて行動したりもするの?
よくわからん
>47 >1は今規制中みたいだからそういうことは避難所で聞いてやりな。
#
>>45 #ファラーシアが…いない…だと…?
エルトダウンはホロウ・クロウラーのスピードを少し緩めた。
「そうだ、この際だから言っておくよ」
一体どの際なのかわからないが、
ファラーシアは黙って聞くことにした。
「君はASLで生み出された精霊の三体目…っていうのは知ってるね?
これから、君の兄や姉について話しをする。よく聞いてくれ。
まず君のお兄さん、一体目の精霊だ。 彼は木の板から作りだした精霊らしい。
というのも、その頃私はASLには居なかったんだ。
名前をシエロ。空の精霊だ」
"シエロ…ねえ。空って意味だな。なんで空なんだ?青かったのか?"
エルトダウンはファラーシアの声を聞きやすくするために銀時計から出るように指示した。
「いや、そっちの空じゃ無い。『空っぽ』とかの意味の空さ。
まあ、ともかく彼は今もどこかで活動を続けてる。今度会いに行こうか。
で、これからが本題なんだ」
急に空気が張り詰める。ファラーシアもそれを察して真剣に耳を傾けた。
「君のお姉さん…ヌルっていってね。君と同じ無の精霊さ。
ファラーシア。君は彼女を何から作って、何に宿らせたと思う?」
突然の問いかけに一瞬戸惑うファラーシア。
"えっ…そりゃあ…なんだ、ゴミとかか?"
「…人だよ。人間を媒体として生まれさせ、その人間に宿らせたんだ。
ASLの考えとしては精霊ってのはその物体に宿る精神みたいなものでね。
それはつまりどういう事か。
一つの肉体にその人間の精神と精霊の精神が共存できると思うかい?
答えは否。宿主の人間は数日後に自殺。それと同時に彼女も消えてしまった…」
"おいおい、そんな案を平気でとおらしちまったのかよ!?"
怒りと疑問が複雑に入り混じっていた。
それはエルトダウンの"姉"という表現が引き起こしたものだった。
「もちろん、殆どの研究者は反対したさ。
けど、その案に賛成した数人の研究者はやってしまった…
その頃からだと思う。ASLが本格的に嫌われ出したのも。
そして数人の研究者は過激派に拉致、監禁され、
およそ230日間も拷問を受け続けたらしい。死ぬことも許されずね」
ファラーシアにはそんな事を平気でやってのける人間が不思議でしかたなかった。
そしてこんな話を冷静に話せるエルトダウンも…
「ASLの捜索班が救出したときには、研究主任以外の研究者は惨殺。
当の研究主任は四肢が無く、歯や爪もすべて抜かれ、体中に釘が刺されて、瀕死の状態だったそうだよ。
その二日後に衰弱死。哀れだね」
"いやいやいや。哀れじゃねェよ。それグロいな…まあ罪人だから当然なんだろうけどさ…"
少し物悲しそうに語るファラーシア。
エルトダウンが全てを語り終えると、すぐそこで二機の精霊機が接近戦を繰り広げていた…
#なんとなくどうしてもやってみたかったんです。すいません。スルーしてください。
>エルトダウン氏
ファラーシア君はいいやつと思うよ?しかしどうせなら女の子のほうが……いい!
空に逃げたことによって砲撃を回避し、ことなきをえれた
僕はフェニキアに頼りきっている
彼女の指示、機転で今日何回命を救われたかわからなかった
今は仕方ない、ここで生きて成長して、彼女に今日の、いままでの恩を返そう
僕は彼女の指示で再び放たれた砲弾を回避して、炎の矢で反撃を行うとした
だが、砲弾はイグニスに直撃した
歴戦の戦士の風格が漂ってくる彼が、ただ撃ってくるはずがなかった
彼の予想射撃通り動き、直撃を受けてしまったのだ
「うわぁぁぁぁ!」
地面に叩き付けられた衝撃と直撃の衝撃とで意識が朦朧とする
フェニキアの声が遥か遠くに聞こえる
僕たちのほかにもう1機現れたことに気付いたとき、僕の意識は途切れた
>>45 ありがとうございます
フェニキアはご主人様ラブな性格にしてみました
>>47 精霊機の動力は精霊ですので、戦闘のときは精霊炉の中にいますが、普段は物に宿ったりしています
フェニキアは上位精霊ということで依り代なしで好きに動けるというふうに考えています
あとフェニキアの人の姿は擬態です
意地の張り合いになってgdgdにならないかと思って心配してたが……杞憂のようだったね。
「ラウンド1」はフォリナーが制したか。
>>45 ラヴィーネは昔は尖ってたけど、今は丸くなってちょっと我侭な娘くらいになった感じでイメージしてみた。
娘の姿は雪女のイメージ。それなりに位は高いけど、
そこまで上位ってほどでもないので機体、あるいはフォリナー本人からあまり離れて行動は出来ない。
ってなイメージかな。
>>52 精霊機での空中での身動きは難しい。ましてや回避行動ともなるとおのずと予想がたてやすい。
フォリナーが発射した弾丸は、吸い込まれるようにしてレオンの駆るイグニス・フロゴーシスに命中した。
「へぇ、やるじゃない」
「た〜ま〜や〜ってか?」
ラヴィーネの感嘆の声に笑顔で応じてみせたフォリナーだったが、内心は穏やかではなかった。
経験の差があったから、こちらに分があったのだ。出来うるものなら再戦はしたくない。
「(厄介な相手は芽が出ないうちに叩き潰すのが常道…悪く思うなよ小僧!)」
>>49-50 だが、フォリナーは姿勢を崩して崩れ落ちるイグニスに再度狙いをつけることはできなかった。
新たなる精霊機…ホロウ・クロウラーが東門を抜けて出現した為である。
『隊長!所属不明機が1機そちらに向かいました!』
「もう見えてる!」
導術通信を通じて、その所属不明機がどうやら敵・味方の区別なく屠っていることを知る。
彼と同じく陽動を受け持った部隊のうち、最低でも1つはそれに潰されたと見て間違いないだろう。
王国のものとも、教国のものとも、帝国のものとも異なる拵えの精霊機…
おそらく不信心者の集団として悪評高いASLだろう。
「やれやれ、罰当たり同士のご対面〜ってやつだな」
「冗談言ってる場合じゃないでしょ。時間は大丈夫なの?」
ガルーダ隊が到達するまで10分を切っている。猶予はあまりない。
出来うるなら自分もそろそろ市街の攻撃に加わりたいところだが…
眼前の機体は形状から察するにどう見てもスピード特化型タイプ。相性が悪すぎる。
おまけに先程の勇敢な少年と異なり、相手は確実に戦慣れしている。
「はは、今日で二階級特進しちまうかもな…」
「ちょっと!それじゃ私はどうなっちゃうのよ?」
抗議をあげるラヴィーネの声を無視する。正直、自分が死んだ後のことまで考えていられなかった。
>>53 ラウンド2でフルボッコにされそうですw
「墜とされた…みたいだね。残念だ。ちょっと他とは違うから良いデータが得られると思ったのに」
あくまで余裕のエルトダウン。何故なら先の戦闘を見る限り、被弾する可能性は無に等しい。
それに、いくら紙の様な装甲とはいえ、1発ほどなら直撃にもなんとか耐えられるだろう。
"ヤバくねえか?オレは逃げる案に投票するね。死んだら元も子もねェぞ"
ファラーシアの言う事も一理ある。
こんな機体だからこそ、それを危惧する。当たり前だ。
「君が精一杯働けば大丈夫さ。さて、気づかれないうちに行くよ。先手必勝ってね」
メカニクスランサーを右手に構え、最大速度で突進する。
ハイリスクハイリターンの戦術。
外せば大きく隙が出来てしまうため、非常に危険なのだ。
もっとも、外れることは理論上の物だ。
実際に、今までも外したことなど一度もない。
「遅いねェ!一般機の分際で派手なカラーリングするからだよッ!!」
だが、距離が近くなるにつれて、その考えが誤っていたことが明らかになった。
一般機などとんでもない。むしろ専用機だろう。乗っているのは恐らく隊長クラス。
"おいおいおいおいおいッ!!まだ間に合うってッ!逃げろよ!"
ホロウ・クロウラーの構造上、機体がやられれば搭乗者はもちろん、精霊にも危険が及ぶ。
「もう遅いよ。貫くしかない!」
>>55 被ってしまったァーーッ!!
ファラーシアも同じ感じで、上位っていうか単独種なのでいろいろ不安定です。
その一例として体の一部が無かったり…
>>57 この程度の被りなら無問題でござるよニンニン。
>>56 「んなっ!速ぇ!?」
突進してくるホロウ・クロウラーを前に、フォリナーは内心の冷や汗どころか、今度こそ”戦慄”した。
流石の彼もこれほどの機動力を持った機体にはお目にかかったことがない。
「シュネーバルはまだか!?」
「ごめん…すぐには無理!」
空気中の窒素を凝結させて大量の弾丸として放つシュネーバル。
威力としては強力だがその分ラヴィーネの消耗も激しかった。
ましてや短時間の間に二度も使用すれば、次に発射するまでは幾許かの時間を要するのだ。
「だろうな!でもやるしかねえ…くそ面倒くさいったらありゃしねえや!」
元々ケルテ・マリーネの運動性がさほど高くないことに加えて、
相手は既にこちらを完全に捕らえている。今更回避などできよう筈もない。
「盾は出せるか?」
「それくらいなら何とか!」
ラヴィーネの返事に満足したのか、フォリナーはようやく口元に笑みを浮かべた。
氷の盾、アイシクル・ミラーを発動させた左腕で身体を庇う。
相手の攻撃が触れたその瞬間に、右手のガンランスを突き出す心算なのだ。
「上等だ…腕の一本くらいはくれてやるさ!」
60 :
名無しになりきれ:2010/05/17(月) 23:57:35 0
精霊=スタンドかと思った
当たるギリギリだっただろうか。
目標が鏡のように輝く盾を展開した。
「一撃じゃあ沈まないかッ!だがッ!」
運動エネルギーが加算されて絶大な威力を得たメカニクスランサー。
"ちょ、ま…警戒しろって!罠かもしれっ…"
ファラーシアが最後まで言い切る前にメカニクスランサーは目標の盾とそれを展開している左腕を貫いた。
だが、その時すでにエルトダウンに余裕の表情は見られなかった。
浅はかな行動だった。機動力を生かした戦闘が得意なのに、自らそれを潰してしまったのだ。
そして、ホロウ・クロウラーの左腕は目標の右腕と同じように貫かれていた。
「損壊率80%オーバー…左手だけで…あきらか構造上の欠陥でしょ、これ…」
今までに無い数値。相手が戦闘のプロと言う理由もあるが、大きな理由はASLの独自の機体構造だった。
もともと、人工精霊が持つ精霊力は極端に低い。
それを補うために機体を極限まで軽量化、各部に蒸気機関を配置したのだ。
それにより、尋常ではないスピードを得たが、代わりに大きな欠陥を機体に残した。
"だから言っただろッ!バカヤロウ!とっとと退避するぞッ"
背水の陣。狙って引き起こしたわけではないが、ファラーシアがその分頑張ってくれた。
「まだだよ…せっかく良いデータ源が見つかったんだ…最後までやろう」
常人から見れば狂っていた。
損壊率80%とは人間に例えると体中から出血し、瀕死の状態だ。
それでも戦おうというのだ。エルトダウンのデータへの執着心は尋常ではなかった。
"お…おい…冗談じゃねえッ!!頼むッ!夢なら醒めッ…"
その瞬間、ホロウ・クロウラーの足もとで爆発が起きた。
「何事だッ…!?砲兵…?」
まさかの援軍だった。
ただでさえ機体は大きく損傷しているのだ。
関節部をやられた今、移動など出来るはずがない。
「仕方ない、出来れば使いたくなかったけど…」
エルトダウンが厳重に保護されたスイッチを押す。
両腕が強制パージされ、内部から巨大な吸気口が現れる。
そして周囲の大気を一気に吸収した。
それによって、ホロウ・クロウラーの周辺は一時的に酸欠状態になる。
周りの動物は十分な酸素が得られず、行動が制限されるという二次効果もあった。
「もうボロボロだし仕方ないね。ランページ・アトモスフィア…発射ッ!!」
ゼロ距離射撃。大気中の物質を凝縮した弾が肩に背負ったビッグアルバレストを通して発射される。
どうせ当たっても当たらなくてもそのうち機能は停止する。
後は『敗北』か『引き分け』を決めるだけだった。
>>61 ホロウ・クロウラーのメカニクスランサーはケルテ・マリーネの左腕を盾ごと貫いた。
相手の必殺の武器は、鏡のように光沢を放ち摩擦係数によるスリップすらものともしなかったのだが…
「そこだあッ!」
肉を切らせて骨を絶つ。フォリナーの狙いは最初からそこにあった。
胴体の中央部を狙って繰り出されたガンランスは、相手の左腕を貫くに留まった。
「でもこれで相手の機動力は殺せたわ!」
「あぁ、後はねじ伏せちまえば…って、もう来やがった!」
至近距離での爆発。東門から展開しつつあった義勇軍の部隊だった。
恐らく出口をふさいで、なおかつこちらを排除しにきたのだろう。
「(まずいな…こいつを盾にして凌ぐほかねえ!)」
ガンランスを腰部のホルダーに戻すと相手の腕を掴む。
だが、掴んだ筈の腕はパージされてしまい、外された腕を持ったまま立ち尽くす格好になってしまった。
直後、爆音と共にケルテ・マリーネは動きを封じられてしまう。
「なんだこりゃ!」
「…あたり一帯の大気を全て吸引しているみたいね」
ランページ・アトモスフィアの吸引力は大気のみならず、至近距離にいた彼らにも適応された。
巨大な掃除機で吸われて完全な密着状態、もはや回避も叶わない。
「ってことは…まさか」
フォリナーの予想はおおむね間違ってはいなかった。
吸引された大気が収縮された塊となって、ゼロ距離で発射されたのだ。
衝撃によってケルテ・マリーネは打ち上げられたボールのごとく宙を舞った。
そのまま2、3度バウンドすると、乱回転の後にようやく直立不動の体勢で静止する。
「ぐ…ぐぐ、ち、ちっくしょう!」
「酷い有様ね」
冷熱に耐える重装甲は外から見て分かるほどにズタズタで、一部は脱落を始めている。
関節部からは白い煙があがり、左腕は完全に欠損、残った右腕も既に操作を受け付けない。
パイロットであるフォリナーも幾度と無く身体を叩きつけられて重症。
最早戦闘に耐えうる状態ではなかった。
「かろうじて直立してるなんざ、奇跡でしかねえな。フロスト・グライテンは動くか?」
「えぇ、でも今は尻尾を巻いて逃げるくらいしか出来ないわ」
後方に弾き飛ばされてしまった為、既に東門が遠くに見える。
だが、逃げる前にどうしても確認しなければならないことがあった。
今回の作戦、対空設備無力化の成否を見届けなければ帰るに帰れない。
「(まだか!?)」
フォリナーが痺れをきらしかけたその時、轟音が周囲一帯を包み込んだ。
街の外からでも分かるロンデニオン最大の建造物、西区の大時計塔が崩落を開始したのだ。
『隊長!実行部隊から連絡です。我、目標の無力化に成功せり!以上です』
「よし!撤退だ。といっても西か南からにしろ、東門じゃ敵部隊が手薬煉引いてまってやがる」
ベースキャンプで落ち合おうぜ、とだけ言い残して彼は通信を切った。
後は空爆部隊と本隊の仕事だ。ラヴィーネに合図を出すと、シートに深く腰掛ける。
「疲れたなら寝ててもいいわよ。逃げ帰るだけなら操縦してあげるけど?」
「バカを言うなよ、家に帰るまでが戦争だぜ」
ボロボロに傷つきながらも、最後まで軽口を叩くのは忘れなかった。
バカでかい爆音と、大地震のような衝撃が生じる。
見事ランページ・アトモスフィアは目標に直撃した。
「各部機関のオーバーロードを確認…熱量負荷限界を大きく突破。ホロウ・クロウラー、停止」
まるで戦い疲れたかのようにホロウ・クロウラーの頭部がうなだれる。
ほんの数分の事なのに、何日も戦っていた気がした。
"こりゃハデにやられちまったな、エルトダウン…だから、言ったろうに"
少し汚れた銀時計をエルトダウンがキレイに拭く。
「いや。こういう経験も大切さ。おかげで膨大な量のデータが集まったしね。感謝感謝」
ホロウ・クロウラーの計器類を見ながら手持ちの書類に何かを書き込む。
なぐり書きされた文字の量は、今までの物を遥かに凌駕していた。
…そして、予備電源に切り替わるホロウ・クロウラー。
カモフラージュ用の装甲があるところまで戻り、それを担いで出来るだけ遠くに逃げる。
「あーあー聞こえますか。こちらエルトダウン・シャーズ。データをそちらに持っておきます。
予定の時間は8分と53秒後。予定の時間が迫ったら防衛システムの解除を願います。オーバー」
無線機…とおぼしき機械に向かって話す。
ボロボロのホロウ・クロウラーにエネルギーの循環が確認された直後だった。
ホロウ・クロウラーの上を数機の巨大な翼が過ぎ去った…
65 :
名無しになりきれ:2010/05/18(火) 22:08:00 0
そして気絶しっぱなしの主人公
家に帰るまでが戦争……うん、確かに。
フェニキアはただ黙って戦局を見守っていた
コクピットでは主人が気を失っている
激闘を繰り広げる2機の様子をしっかりとみていた
彼らの戦いが終わったあとが撤退のチャンスだと
耳がを塞ぐほどの爆音と大地を揺らす衝撃のあと、ケルト・マリーネがボロボロになりながらも撤退していった
そのすぐあとには、ホロウ・クロウラーがパージした装甲を片手に撤退していった
フェニキアはこのあとの行動を考えた
義勇軍はすでにこの街から撤退しているだろう
すでにこの街から人の気配はない王国軍の都市攻略戦術の第2段階は確か空爆のはず、ここで寝ていたら確実に被害にあう
レオンはまったく起きる気配がない
まずい状況だった
フェニキアはホロウ・クロウラーねからファーラシアの気配がしたことを思い出す
「彼らがどこに向かったかはわかりませんが、いまは彼らについて行くしかなさそうですね」
フェニキアは自らでイグニスを操作し、ホロウ・クロウラーの後を追った
68 :
名無しになりきれ:2010/05/19(水) 23:45:57 0
とりあえずひと段落着いたのかな?
第1話乙。
サブタイトルはどれにするw?
「イグニス、大地に立つ!」
「ケルテ、襲来」
「虚無が目覚める日」
規制が解除されました。いままで、ご迷惑をおかけしました
>>68 とりあえずは一段落です
新規参入するかた今がチャンス!
>>69 「イグニス、大地に立つ!」がいいです
参加者の皆様は今後やりたいことなどがあれば避難所の方にでも書き込んでおいてください
71 :
69:2010/05/21(金) 18:54:39 0
すまん、俺が悪かった。
避難所及び各関係サイトは
>>3を参照。
参加します。
■キャラ&機体設定
名前 アデラ・グラーフストレーム(Adela Grafstro"m)
年齢 28
性別 女性
容姿 黒髪黒眼。長髪で前髪ぱっつん。
目つき鋭く、全体的にシャープな印象。隻眼で普段は眼帯をしている。
体格 長身。細身だが筋肉質。凹凸は少ない。
性格 冷静沈着
身分 傭兵隊(レイブン隊) 隊長
所属 神聖ローガンブリア帝国義勇軍 外国人傭兵団
説明 ファールデル教国出身の傭兵。代々傭兵の家系。
精霊兵器の運用を主とする傭兵隊「レイブン隊」を率いて各地の紛争地帯を転戦していたが
この度の抗争で帝国側と契約した。
以前の戦闘で右目を失うも、闇の精霊の宿った宝珠を義眼とすることで索敵感覚を補っている。
機体名 コルバス・コラックス
精霊の種類 闇の精霊
精霊の名前 フギン=ムニン
精霊力 2000
耐久力 D
運動性 B
装甲 E
武装
バリスタ(メインウェポン。強力なクロスボウ)
クォレル(バリスタにつがえる太矢。鏃が鋼鉄製の徹甲矢、火薬と信管を仕込んだ炸裂矢など)
グラディウス(白兵戦用のサブウェポン。取回し易い広刃のショートソード)
セスタス(格闘戦用の短剣付き手甲。据付・飛び出し式)
煙幕発生装置(闇の粒子を周囲に散布して視界を奪う。敵味方の区別なく作用)
■機体&精霊説明
機体:コルバス・コラックス
ファールデル教国製の多用途精霊機。
最大の特徴は航空可能な精霊兵器であること。
低装甲・高機動の軽量機体で、空中戦・地上戦共に対応。
空中戦 : 空中浮揚・高速での短距離航空が可能であり、防空任務・近接地への偵察・対地攻撃任務などに向く。
地上戦 : 低装甲であるため白兵戦は向かない。後衛からの支援射撃を主な運用とする。また、下記による煙幕などでの支援が可能。
その他、付随精霊であるフギン=ムニンが発生させる闇の粒子(光を遮断する煙幕)を利用して様々な効果をあげることができる。
範囲煙幕 : 闇の粒子を継続的に周辺散布することで煙幕効果を期待できる。効果範囲は本機を中心に半径50m程度の空間。
機体隠蔽 : 闇の粒子を本機に纏わせることで機体を完全に闇で覆うことができる。夜間の隠密任務に適する。
精霊:フギン=ムニン
「闇の宝珠」と呼ばれる宝石に取り付く闇の精霊。
現在は宝珠ごとアデラの右眼孔に埋め込まれている。
自我はあるが極めて薄い、あるいは極端に無口である。
問いかけに対して yes(はい) / no(いいえ) /donno(わからない) で返す程度。
光を遮断する闇の粒子を散布することができる(黒い煙幕のようなもの。無味無臭)。
また、性質として「演算」と「記憶」が得意。
「演算」は射撃の偏差や敵機の移動予測などに利用可能。「記憶」は過去に見聞きしたことを蓄積でき、適宜検索してフィードバックできる。
宝珠から抜け出して実体を取ることもできるが、全身が深い闇で覆われているため、容姿や形状はよくわかっていない。
「戦力差が顕著に出た」
ファールデル教国傭兵隊、アデラ・グラーフストレームは先の戦闘をそう評した。
「古より続く神聖ローガンブリア帝国。
正規軍・歴戦のローガンブリア騎士団は精強。大陸中央では寡兵を以って敵主力をよく抑えている。
だが北東方面はこの通り義勇軍任せだ。
圧倒的に人手が足りていない」
彼女は各地を転戦する傭兵であり、精霊兵器の運用を主とする「レイブン隊」を率いる女丈夫である。
この度の紛争においては帝国義勇軍に参加。
しかし不本意なことに、その初仕事は義勇軍ロンデニオン本部の撤退支援となってしまった。
「せめて傭兵隊の合流があと少し早く進めばな…。
敵部隊の陽動も見事だったが、市街防衛ではやはり兵力差が響いた。
空爆部隊など我らレイヴンにとっては鴨撃ちの的だが、凌いだところで王国精鋭の後詰がくる。
着任早々の我らを殿に置いての早期撤退とは……ふふ、英断としておこう」
列を成して行軍する義勇軍本隊を見ながら、アデラは考える。
この先数km先にある山間の街、アルバニアン。
あそこには既に、義勇軍に参加志願のファールデル傭兵部隊が複数詰めている。
遅延無く彼らと合流し、部隊の再編を急がねばならない。
撤退支援の主な内容は3つであった。
1.レイブン隊の機体が持つ高速航行能力を使っての哨戒。
2.敵機に発見された場合の煙幕支援(隊長機の能力)
3.敵機邀撃
アデラは黒塗りの精霊兵器「コルバス・コラックス」に搭乗し、小高い丘の上に着陸した。
ここからは義勇軍の行軍をよく見渡せる。
そして彼女の眼はいかなる異常も見逃さないのである。
「レイヴン1より各機。
本隊より南へ5km地点に精霊兵器の移動によるものと思われる砂煙を目視した。
確認に向かう。レイヴン2は私に続け。
他機は警戒を深めつつ現状を維持せよ」
目標上空に急行したレイヴン隊は、林間を疾走する2つの機体を発見した。
ホロウ・クロウラーと、それに追従するイグニス・フロゴーシスである。
「フギン=ムニンよ。あの2機は本部に登録されているか?」
『 No 』
「了解」
使役精霊のフギン=ムニン…普段はアデラの右目に納まっている…には、ロンデニウム駐留部隊の登録機は全て記録させてある。
彼の記憶は正確である。目前の2機は明らかに怪しい。
アデラは旋回し、彼らの正面上方に位置すると声を張上げた。
「そこの2機、速やかに停止し所属を明らかにせよ。
我々は神聖ローガンブリア帝国義勇軍である。
繰り返す…」
○登場人物まとめ
神聖ローガンブリア帝国義勇軍
レオニール・ルラン・ファーブニール(イグニス・フロゴ−シス)
>>4 アデラ・グラーフストレーム(コルバス・コラックス)
>>72 ティルネラント王国軍
フォリナー=エグラート(ケルテ・マリーネ)
>>8-9 ファーデル教国傭兵部隊
なし
ASL(人工精霊研究所:Artificiality Spirits Laboratory)
エルトダウン・シャーズ(ホロウ・クロウラー)
>>7 ○機体の総合的な格付け
(判定はSを7点、Aを6点、Bを5点……というように各能力値を足して4つを平均化したもの)
(なお、精霊力に関しては2000=4点とし、500ごとに1点上昇として判定している)
(※あくまで好事家が趣味で行なっているカタログスペックである)
(※それぞれの機体が持つ特殊機能や潜在能力は加味されていない)
S
A
B ケルテ・マリーネ(5.6)イグニス・フロゴーシス(5.75)
C
D ホロウ・クロウラー(3.25) コルバス・コラックス(3.5)
E
F
G
>>アデラさん
参加ありがとうございます
すぐに合流したいと思います
>>75 いつもありがとうございます
避難所に今後の展開の私案を書かせてもらいました
ご意見があれば遠慮なくお願いします
ズタボロの機体を何かが後から追ってくる。
イグニスだ。レオニールとフェニキアのイグニスだった。
「おいおいおい…このままついてきたらシステムにハチの巣にされちまうぞ…」
ホロウ・クロウラーの機体コードはASLに登録済みだ。
だが、イグニスの機体コードなど登録されているわけがない。
防衛システムの解除とは、いわばフィルターをかけるようなモノ。
あらかじめ登録されている機体コードを指定すればそれだけを通すのだ。
つまり、イグニスや他の所属の機体はおろか、
ホロウ・クロウラーさえも防衛システムを解除しなければただのジャンクになる。
"おい、聞こえるかよッ!?ついてきたら死ぬぞーッ"
後ろについてくるイグニスに向けて叫ぶ。
その後、まるで木霊のように前方から何かが聞こえた。
/「そこの2機、速やかに停止し所属を明らかにせよ。
「なんだなんだ、女か?予定を狂わされるのはゴメンだが…ま、太刀打ちもできねえわな。
あーあー、こちら、エルトダウン・シャーズ。ASLのテストパイロット兼研究者だ。
一つ忠告しておくが、あんまりそこから後ろに動くなよ。スクラップにされるぜ」
密林に偽装してあるASLの本部が、もうすでにそこにあった。
あと少し後ろに動けば、眼の前の機体はたちまち大破してしまうだろう。
ASLの防衛システムは空中、地上、地中と、様々な所にまるでクモの巣のように張り巡らされている。
それだけASLは防御機能を重視していた。
先の研究者の拉致、拷問、惨殺があってかららしい。
"あ゙ーメンドウだなァ…こっちは抵抗の意思もなんもねえよ。だから見逃してくれよーッ"
ファラーシアはやや疲れた感じだ。
精霊炉を使った後はいつもこんなノリなのだ。
>78
> あーあー、こちら、エルトダウン・シャーズ。ASLのテストパイロット兼研究者だ
「戦場荒らしのASL。
これより後方は貴君らの隠れ家か」
紛争地帯に現れ、単騎で暴れまわる。
それは彼らの研究のために必要な事なのだという。
どこかで戦端が開かれれば彼らは必ずやってくる。
今回もそうなのだろう。
「こちらは拠点の構築もままならない敗走軍。
未だ正確に把握できていない勢力の人間を抱え込みたくはないが……」
だが、それを判断するのは自分ではない。
勝手な行動は傭兵部隊の信頼を貶める。
彼を拘束し、雇い主に処遇を仰ぐのが適当であろう。
「ASL所属エルトダウン・シャーズ殿。
今は緊急事態である。この地域においては、近々にティルネラントの追撃が予想される。
貴君の身柄は我ら義勇軍で保護する。
進路を北西にとり義勇軍本隊と合流せよ」
コルバス・コラックスの右腕に装備されたバリスタは正確にホロウ・クロウラーの操縦槽を狙っている。
これは事実上の降伏勧告である。
『 Cause for concern(懸念材料) 』
アデラの右眼窩に宿る精霊・フギン=ムニンの言葉が、彼女の頭に響いた。
"戦場荒らしだってよ。こりゃいい称号をつけられたもんだぜェ!へへへ"
戦場荒らしの称号はエルトダウンやファラーシアにとって、
不名誉な称号ではなかった。むしろ喜ばれるべき称号。
『戦場荒らし』として名が広まっているという事は、ASLの活動の宣伝にもなっているという事。
もちろん、エルトダウンのペアも空の精霊、シエロのペアも荒らすばかりではない。
たまには、部隊を助けるような働きもするし、それこそ道徳的な行動もする。
「まあ、無名よりかは幾分マシだろうねえ。これからはそう名乗ろうかな…」
/ 進路を北西にとり義勇軍本隊と合流せよ」
断るつもりであった。だが、そうはいかない。
予備電源の使用を余儀なくされている状態である。
戦っても、明かに分の悪い賭けだ。
「サーイエッサー。了解っと。といっても、拒否権なんか無いんだろうに」
ASLの本部に予定の変更を知らせると、機体を北西に向けた。
エルトダウンは後ろで立ち往生するイグニス・フロゴーシスを横目で見ながらゆっくり前進し始めた。
大雑把に初戦まとめ
#1 ロンデニオン攻防戦
概要:
神聖ローガンブリア帝国の都市、ロンデニオンは同国が結成した義勇軍の本拠地である。
対するティルネラント王国軍は敵勢力の拠点制圧のため、大規模攻勢をかけたのだった。
結果:
帝国義勇軍は敗走し、後方の街アルバニアンへ撤退。
王国軍によるロンデニオン制圧成功。
経過:
>>19-67 (始)
王国-陽動部隊、ロンデニオン東部より防衛線を突破し、都市部へ吶喊(とっかん)。
帝国-義勇軍、ロンデニオン東部に戦力を集中しこれを迎撃。
王国-工作部隊、ロンデニオン内部に侵入し対空兵器の破壊活動を開始。
帝国-義勇軍、工作部隊への対応を指示するも東部への戦力集中のため不足。
王国-工作部隊、ロンデニオン内の主要対空兵器の破壊を完了し撤退。
王国-陽動部隊、ロンデニオン東部より撤退。
王国-航空爆撃部隊、北西よりロンデニオンに接近
帝国-義勇軍、敵空爆目前で総員退避命令。
王国-主力部隊、ロンデニオン制圧に成功。
(終)
>80
> サーイエッサー。了解っと。といっても、拒否権なんか無いんだろうに
「キミの認識は正しいが、ここは穏便にいこう、エルトダウン殿。
それから私は女だ。Sirでは困る」
『 yes, Ma'am 』
……本隊合流後、しばらくして……
義勇軍・野営テント内部。
傭兵アデラ・グラーフストレームと研究員エルトダウン・シャーズは簡易テーブルを挟んで対面していた。
「コーヒーとホットワイン、どちらが好みかね。
今日の行軍途中にあった民家で買い上げたものだ」
ここは本隊の最後尾で、隊伍の殿軍を務めるレイブン隊のテントである。
決して狭い空間では無い。
大人の4〜5人程度なら車座になれる。ただし、ルーフは低く立ち上がれば頭をぶつけてしまうだろう。
開かれた入り口からは、外で湯とワインを煮沸している他の傭兵隊員の姿が見えた。
「ここへ来てからもう2、3日になるか。
ほぼ軟禁生活で不便だとは思うが、勘弁してくれ。
ロンデニオンでキミの搭乗機が味方をやっつけたのを見た者がいる。
もちろん、実際にやっつけられた者も。
現状、キミが無闇に出歩くのは危険だ」
実際、ASL所属機が義勇軍に保護されたことは既に知れ渡っていた。
義勇軍の一部勢力はASL機操手の引渡しを要求したが、それは上層部に却下されている。
「だがここにいれば安心だ。
怪しげな外国人傭兵団のテリトリーで、こんな隊列の最後尾に来ようというやつはいない」
アデラは切れ長の目を更に細めてにやりと笑った。
「そうだ。キミの処遇のことだが、先ほど纏まったようだよ」
アデラは傍らにあった書状筒から大判の羊皮紙を取り出し、エルトダウンに手渡した。
そこにはこう記載がある。
【ASL所属・エルトダウン・シャーズ研究員 及び搭乗機の保護の対価として
上記の者に神聖ローガンブリア帝国義勇軍麾下での作戦投入を要請する。
投入作戦の成功1度を持って支払いの完了とし、上記の者の身柄を返還するものである】
羊皮紙の最後には義勇軍責任者のサインと、ASL研究所の代表のサインがあった。
既に契約は結ばれたらしい。
「要は、キミの身柄解放の代価として、キミの戦力を1回だけ借りたいということだよ。
私は神聖ローガンブリア帝国義勇軍外国人傭兵団 レイヴン隊隊長、アデラ・グラーフストレーム。
改めて宜しく」
/「コーヒーとホットワイン、どちらが好みかね。
「ん、ああ。ありがとう。私はコーヒーを頂くとするよ」
エルトダウンは半ば軟禁状態にあったものの、
何不自由ない生活を送っていた。むしろ親切だったくらいだ。
/ 現状、キミが無闇に出歩くのは危険だ」
"ククク…やりすぎたツケが回ってきたなァ、エルトダウン"
面白おかしく言い放つのはファラーシア。
相変わらずボロ布をかぶせられていた。
エルトダウンに羊皮紙が手渡される。
「ほう、羊皮紙ですか。今はパピュルス紙が主流で…こんなところでお目にかかれるとは思ってなかったよ」
その羊皮紙をじっくりと読む。その視線は上から下へ何度も往復していた。
ファラーシアはとなりでなおも笑い続けていた。
「ジジイめ…データが遅れたからってこんな事するかねえ、普通」
ジジイ。この方面のASL最高責任者。エルトダウンの帰ろうとしていた研究所の所長でもある。
その名前はもちろん本名ではない。
グレイス・ガルシア。その頭文字を取ってエルトダウンはG・Gと呼んでいる。
"まあ、仕方ねえわな。契約は契約だ。それに一回だけだろ?簡単なコトさ"
/「要は、キミの身柄解放の代価として、キミの戦力を1回だけ借りたいということだよ。
「あー、なるほどね。オーケイ。よろしく、アデラ隊長」
「ここは……」
目を覚ますと知らない天井が目に入った
横にはフェニキアが今にも泣き出しそうな顔で僕に抱きついて来る
「レオン様……!」
それ以上は言葉が出なかったみたいだ
「心配かけたみたいだね」
僕はずっと気絶していた
フェニキアに聞いた話によるとエルトダウンさんの後を追ってロンデニオンを脱出したということだった
傭兵のアデラさんという人に連れられ、義勇軍の本隊に合流していた
フェニキアが僕の素性を語り、テントを一つ借りてくれた
テントの中には僕とフェニキアだけだ
彼女は僕に付きっきりで看病してくれくれていたのか、精霊といえどもその表情には疲れが見えていた
「ありがとう、フェニキア、元気になったよ。さ、アデラさんに挨拶に行かなくちゃ」
「レオン様、まだ動いちゃ駄目ですよ」
「いや、でも、そのアデラさんにはお世話になったみたいだから、ちゃんとお礼を言わないと貴族の名折れだよ」
「そうですか?無理はしないでくださいね」
「分かってるよ!挨拶だけだよ!」
フェニキアの案内でアデラさんがいるテントに向かう
家が没落してもノーブルな精神は捨てないレオン君であった。
アデラは長い黒髪をかきあげて耳にかけると、ホットワインをひとくち、口に含んだ。
そして予想通りの味に顔をしかめた。
「…やはり不味いな。
グリュー用のブランデーも無い。蜂蜜も無い。無い無いずくしでこの様だ」
『 Too sour 』
傭兵隊長の失われた右眼球に取って代わった闇の精霊・フギン=ムニンが彼女の味覚を代弁する。
もっとも、そのつぶやきは彼女自身にしか聞こえてはいないのだが。
アデラは目を瞑ると、酸味の効いたグロッグを一気に呷った。
>83 エルトダウン
> ほう、羊皮紙ですか。今はパピュルス紙が主流で…
「ローガンブリアでは、このような正式文書に羊皮紙を用いるようだ。
しかし、パピルスも安価でよい材料だな。
エウロペア大陸は乾燥しているからいいが、気候が湿潤なファールデルではすぐに腐ってしまって普及しなかった」
アデラはエルトダウンから契約書を受け取ると、再び証書筒に納めた。
> ジジイめ…データが遅れたからってこんな事するかねえ、普通
「ASLのキミに対する評価はかなり高い様だよ。少なくとも見殺しにはしなかった」
当初、ASLは身代金による解決を望んだが、義勇軍はそれを拒否。
その代替案が現案の契約である。
これは、猫の手も借りたいという義勇軍の状況を最大限に映したものでもある。
「それから、キミの機体…ホロウ・クロウラー。
精霊兵器の基本構造がこの大陸で流通しているものとはかなり違うな。
義勇軍の技師連中も野営地での修理は不可能だと言ってる。
そこで、専門技師と修理部品、あるいは代替機の輸送をASLに要請した。
じきに到着するはずだ」
> まあ、仕方ねえわな。契約は契約だ。それに一回だけだろ?簡単なコトさ
ファラーシアの言を聞いたアデラは、少し口の端を上げて見せた。
「作戦成功の1度を以って…というのがミソだな。
私が作戦参謀ならば、あの高機動機体を凡庸な作戦に投入することは考えない」
キミはどちらがいいのか、とファラーシアにも飲み物を勧めながら、アデラは続ける。
「まぁ、虎の子を使うのは何時か、ということだ。
そしてそのときは我々も供することになると思う。きっと。
……ああそうだ、ASLの連中が到着したら、ただちに搭乗機の調整に入ってくれ。
未だティルネラントの追撃を否定できないのだ。手早く頼む」
>84 レオン
「やぁ、こんばんは。
レオニール・ルラン・ファーブニール殿。体の具合はどうかね」
レオンがテントをのぞくと、アデラが出迎えた。
「私は義勇軍外国人傭兵団 レイヴン隊のアデラ・グラーフストレーム。
委細はフェニキア嬢から聞いている」
少年を簡易テーブルの前へ招き入れると、アデラは彼に現状の説明を始めた。
衛生兵によれば、レオンの体は無事なこと。
精霊機イグニス・フロゴーシスの損傷部位は、義勇軍技師によって修理がなされたこと。
また、フェニキアによってレオンの身元の確認はとれているが、義勇軍本部に登録がないこと。
加えて、ロンデニオン敗戦後、ASL所属機に追従していたことでスパイ容疑がかかっていたこと。
「容疑はすでに晴れているがね。
そのASL機を通じていろいろと取引があったから」
流れで、ASL所属のエルトダウン・シャーズがこの陣地内にいる理由も話された。
それから、話題はレオンの義勇軍参加に関するものに移った。
「本来、貴君の戦績ならば輜重部隊に回ってもらう筈なのだが…。
幸か不幸か、ロンデニオンで貴君と敵戦隊ケルテ・マリーネとの交戦を視認した者がいる。
あれは敵のエースだ。幸運だけで生き残れるほど甘くない」
アデラはジロり、と少年の顔を見つめた。
「貴君は従軍経験こそ乏しいものの、その戦闘能力に対する評価は高い。
もしこのまま義勇軍に参加すれば最前線への配備は免れ得ないだろう。
それでよければ、義勇軍への参加登録を済ませたまえ」
本部のテントはここより北へ120mほどの場所にあり、ローガンブリアの旗が立てかけられている。
在中の事務官に手続きを願えば、義勇軍への参加が正式に認められるのだ。
・・・
しばらくして、闇の中。
『 Regi-o-nn will kill Fevnir 』
命知らずの若者は、すぐに参加を表明するだろう。
そして、敵味方に関わらず、軍団はあの少年を殺すだろう、と彼女の右目・フギン=ムニンは咎めるように呟いた。
「まだ子供だが、自分の生死には自分で責任を持ってもらう。
この義勇軍、もはや遊兵を食わせる余裕はない。
……それにあの子を前線に投入することは字義通り、私の保身にもなる」
レイヴン隊は前線部隊。側には強力な仲間を置いておきたい。
例えそれが、若干16歳、成人にも達せぬただの少年であっても。
/「ASLのキミに対する評価はかなり高い様だよ。少なくとも見殺しにはしなかった」
「ま、せいぜい『生きて苦しめ』ってトコでしょう。使いものにならなくなったらポイ。そんなもんですよ」
事実、それはASLの暗黙の了解の様な物でもあった。
研究者という立場上、少しでも周りに後れを取ると誰も待ってくれはしない。
そしてその内捨てられてしまうのだ。エルトダウンはそのような人間を多く知っているし、その眼で見てきた。
/そこで、専門技師と修理部品、あるいは代替機の輸送をASLに要請した。
"あーエルトダウン、残念だな。俺はその代替機とやらには乗らんからな。絶対"
今までも多くの物資がエルトダウンに支給されてきた。
だが、それらの殆ど…いや、全てが粗悪製。
ホロウ・クロウラーの装甲が損傷した時も送ってきたのはジャンク品だったし、
とある国で物価が高騰し、食糧が不足した時も送られてきたモノは物乞いの食事よりもヒドかった。
今回にとっては機体の大部分が損傷している。恐らく多くのパーツが取り換えられることだろう。
送られてくるのは質の悪いもの。それはすなわち、機体性能の低下を意味する。
「あーファラーシア、残念だが縛ってでも連れて行く。キミがいなくちゃどうにもならないだろう」
同じように返すエルトダウン。
ファラーシアはそれを軽く流して、アデラからの質問に答えた。
"ああ、飲み物はいいぜ。どうせ飲んでも足元に水をやるだけだ。体の一部がねェんだ"
「では、アデラ隊長。ホロウ・クロウラーのチェックに行ってくる。
技師ではないが、これの設計にはある程度携わっている。研究者という立場上ね」
神聖ローガンブリア帝国最北端の都市ロンデニオンが陥落した。
不可侵とされた神域は、帝国人の言うところの「蛮人」によって蹂躙されたのだ。
街は今やテイルネラント王国の軍政下にあり、厳戒態勢がしかれている。
王国軍との戦闘によって通りに散乱したガレキについては撤去作業が進められ、
義勇軍によって使用されていた設備は押収、補修されて王国軍によって再利用されていた。
ケルテ・マリーネが格納されている仮宿舎から程近い酒場で、
そのパイロットたるフォリナーは部下達と共にトランプゲームに興じていた。
店内には椅子と机がのこるのみであり、店主の姿も見えない。
「それにしても隊長の傷、たった2、3日で綺麗に治りましたねー」
「ま、日ごろの信心深さのおかげって奴だろ」
部下の感嘆の声に不謹慎極まりないジョークでかえすと、一同はどっと笑った。
その様子にラヴィーネは半ば呆れ顔を浮かべ、主人の後頭部をどつく。
「感謝しなさいよ、もし私がいなかったらあんたは包帯姿のまま前線に向かうところだったんだから」
「わーってるよ、俺達には療養って言葉が適応されんからな」
強行排撃隊、常時は国境を警護し、作戦時には最も危険な任地に赴く。
王国軍の前線を支える屋台骨と言えば聞こえはいいが、その福利厚生は最悪な状態にあると言ってよかった。
王国に対する投降者で編成された部隊ゆえ、
機体の修理は受けることは出来ても、人間への扱いは極めて粗雑なものなのだ。
そんな状況下で、重症を負った彼が2、3日でほぼ完治してのけたのはラヴィーネの力のおかげである。
数多くのパイロットを殺した恐怖の精霊が、ここまで親身になることは珍しい。
「ま、俺達はしばらく待機だ。敵さんに動きがあるまでの間はな」
「上も二の足踏んでるんですかねー、そのままの勢いで攻めると思ってましたよ」
街道をつたって南下すると、山岳の町アルバニアンにたどり着く。
そこには本拠を失い撤退した敗残兵と、各地から支援のためのはせ参じた連中が合流していた。
大軍を展開しづらい上、攻めるに難しいアルバニアンでは、戦闘の長期化は避けられない。
空爆しようにも、ロンデニオンのように予め設備を無力化することはほぼ不可能だった。
「連中だってやられっぱなしじゃないわ。必ず逆ネジを食らわせてくる筈よ」
「だろうな、いずれ近いうちにまたぞろ激戦になりそうだな」
ロンデニオンには今なお数多くの市民が取り残されている。
敵の支配下にある同胞を救出すべく、義勇軍が奪回作戦をしかけてくる可能性は大いにあった。
上層部としては、帝国領侵攻の橋頭堡であるロンデニオンを堅守するべく防備を固める方針をとっていたのだ。
>88 エルトダウン
> ま、せいぜい『生きて苦しめ』ってトコでしょう。使いものにならなくなったらポイ。そんなもんですよ
自分よりも幾分若い人間に諦観の極みのような色を見たアデラは幾分困惑した。
「随分シビアな組織なんだな。ASLというのは」
ASLが精霊に関する先進的な…涜神的で人道に反するという皮肉も込めて…研究をしているということは知っている。
だが単騎で戦場の全てを、今や世界の全てを敵にまわす様な、一種勇敢にして反面無謀な行動を取る、その源泉は一体何なのかと常に疑問に思っていた。
祖国を守ろうという愛国心ではない。義侠心や自己陶酔とは違うだろう。まして生きるための金欲しさのためでもない気がする。
ではなんだろう?
研究者としての、研究に対する狂信的な献身……?
いや…、今の彼を見る限り、諦観からくる服従がそうさせているのではないか、とアデラは思い始めていた。
> "ああ、飲み物はいいぜ。どうせ飲んでも足元に水をやるだけだ。体の一部がねェんだ"
「これは失礼した。余計な申し出だったな。許してくれ」
ファラーシアと呼ばれる人工精霊はどうやら完全な状態ではないらしい。
だが、なかなかどうして人間味のある憎めない性格だ。
エルトダウンのような飄々として、どこか空虚な雰囲気とはまるで正反対である。
完全ではない、不完全。
ファラーシアを見ていたら、彼女は不意に思い出した。大体、自分の体だって欠損だらけではないか。
右目は他の物に挿げ替えられているし、その他にも、彼女の中には正常に稼動していない器官があった。
「……ふぇ」
アデラは軽く鬱になった。
> では、アデラ隊長。ホロウ・クロウラーのチェックに行ってくる。
「了解した。
野営は夜明けと共に終了、本隊はアルバニアンに出発する。
確認はそれまでに完了してくれ」
アデラは去っていく若者と精霊の背中を見ながらぼそりと独りごちる
「彼らはいいコンビだな。
お互いの不足を補い合っているような、不思議な感じがする」
そういえば、この前拾ってきたレオニールとフェニキア嬢だって見ていて微笑ましいふたり組みである。
「向こうは世間知らずと世話焼き娘か。
あれはあれで和む
では我々はどうだ。
行き遅れと片言謎生物……」
『 Nothing to say 』
まさに、言うべきことは何も無かった。
(アルバニアン到着)
アルバニアン。
義勇軍本部・ロンデニオンから西方に位置する山岳都市。
大陸内部の都市からロンデニオンへの流通・補給拠点として賑わいのある街だったが、今は精霊兵器が所狭しと闊歩し、殺伐とした雰囲気に包まれている。
「ふふ、だいぶ大所帯になった」
アデラ・グラーフストレームは街の様子を見ながらつぶやいた。
アルバニアンに駐留していたファールデルの傭兵部隊が、撤退してきた義勇軍本隊と無事合流したのである。
もともと彼らはロンデニウムで義勇軍に参加する予定であったが、移動前に当の拠点が制圧されてしまったため、ここで立ち往生していたのだ。
部隊再編も恙無く完了した。
合流する傭兵隊はすでに義勇軍側でも把握していたため、撤退行軍中にその手筈を整えていたようだ。
そして、義勇軍の打つ次の一手、反攻作戦第一弾の詳細も既に各部隊長に令達が終わっていた。
レイブン隊に割り当てられた兵舎では、すでに部下と関係部隊の連中がアデラからの報告を待っている。
アデラは作戦書を片手に彼らの元に急いだ。
・・・
「すぐにでもロンデニオン奪還に向かいたいところだが、急いては事を仕損じる。
この地図を見てくれ」
アデラは兵舎の会議室…元々は食堂の広間…の大テーブルにロンデニオン周辺の概略地図を広げた。
彼女が廻りを一瞥すると、この作戦の参加者がテーブルをぐるりと囲んでいる。
令達作戦の報告中である。
「地図の西方が当地アルバニアン。中央がロンデニオン。
そして、その先東側に橋が架かっているのがわかるか? ケルン大橋だ」
地図には、ロンデニオンから少し東へ進んだところに大きな河があり、そこに架橋された橋が描かれている。
このケルン大橋は、神聖ローガンブリア帝国北東部とティルネラント王国を結ぶ交通の大動脈であった。
そして、橋の上には、大きく×印が付けられている。
「ケルン大橋を落とす。
あの橋の向こうはすぐティルネラント領だ。
敵の陸路輸送をダメにして補給線を断ち切る。
この作戦は早急に、かつ電撃的に遂行する必要がある。
もたつけば敵軍軍需物資の輸送が漸次完了し、我々の立場はさらに危うくなる。
作戦詳細は以下のようとする」
1.少数精鋭にて、今夜半に出撃。
2.夜のうちにケルン大橋南3km地点・林道に到達。
3.夜明けと共に敵軍防衛部隊を攻撃・殲滅
4.敵部隊殲滅後、義勇軍の攻城精霊機「ミョルニル」にてケルン大橋を破壊。
5.大橋破壊を確認後、速やかに撤退。
6.残存兵力は、同時期に進軍しているはずのロンデニオン包囲部隊に合流し、指示を待つ。
「……作戦地点へは地元出身の義勇軍兵士が先導する。
ミョルニルは建築物破壊機能を持つ大型精霊機だ。機体と操手はレイブン隊が空輸・護衛する。
作戦中に敵の輸送部隊に遭遇する可能性もある。輸送物資に精霊兵器が含まれていた場合、可能であればそれも破壊する。
作戦については以上だ。
各隊各自、本日18:00までに準備を完了し、アルバニアン西門へ集合せよ」
義勇軍の反撃作戦、開始前夜のことである。
ホロウ・クロウラーのチェックができたのはアルバニアンに着いてからであった。
暗闇の中。機械音が五月蠅く鳴っている。
「ふむ…関節部の損傷は思った程だね…ファラーシア、精霊炉の方はどうだい?」
"ン、あぁ。いたって健康だぜ。こんなトコまでやられてちゃあ、本格的に改修しなくちゃなんねェしな"
傭兵部隊の技師がホロウ・クロウラーを見ても、さっぱりだったという。
それは当然だ。その多くのパーツが規格外の物。
一般には出回っていない、完全にASLの特機専用のパーツだった。
整備性が最悪という所が、ASLの精霊機共通の難点であった。
「さて、後はパーツの支援と技師の到着を待つだけだね」
ホロウ・クロウラーを闇の中に残して、会議室へ足早に向かった。
――会議室
アデラが作戦概要を説明している。
が、エルトダウンは殆ど聞いていない。
というのも、自分は遊撃に回ると思い込んでいるからだ。
「まったく、戦争ってのは不毛だね。もっとも、それがデータソースになるんだけどね」
書類を見ながらファラーシアと話し合う。
"おい、今回もデータ収集すんのかよ。前みたいに突っ走り過ぎんなよ"
「わかってるよ。私もそこまでバカじゃあない。同じ過ちは二度と繰り返さないように努力はしてるつもりさ」
あくまで努力している『つもり』。
そう言うのが一番安全なのだ。確定もせず、かといって否定するわけでもない。
そうしているうちに、ホロウ・クロウラーのパーツ、もしくは代替機が届いたとの連絡が入った。
>「……ふぇ」
>
>アデラは軽く鬱になった。
多分誤植だろうけど微妙に可愛いぜ、アデラ姉さんwwwwww
>>87 アデラ・グラーフストレーム
第一印象はなにか恐そうな人だなぁと感じた
たぶん、この人が傭兵として生きてきた経験が僕にそういった印象を持たせたの
だろう
凄みと言い換えてもいい、彼女からの視線を感じるとカエルの気持ちになってく
る
彼女が何か話しかけてきたけど、緊張してなにを言っているのか聞いていなかっ
た
ただ最後に義勇軍に参加しないかと問われた気がした
「レオニール・ルラン・ファーブニール
我が剣と我が守護精霊と共に義勇軍に参加させていただきたい、微力ながらこの
力、ファーブニール家の名に恥じぬよう尽くさせてもらいます」
柄にもなく『我』なんか使ったけど貴族らしくできたかな?
「レオン様、アルバニアンで登録して初めて義勇軍に参加したことになりますよ
。あとアデラさん、伯爵家たるファーブニール家の嫡男をスパイ容疑にかけるな
ど失礼極まる行為です!謝罪を要求します」
「まあまあ、僕が寝てる間に終わった話なんだからいいじゃないか」
「よくありません!謝罪の一言ぐらいあってもいいじゃないですか」
「僕たちを助けてくれたんだから、それぐらいは気にしないでおこうよ」
プリプリ怒るフェニキアをなだめ、僕はフェニキアに抱きつく
「でもありがとう、フェニキア。君の気持ちだけで幾万の謝罪より心が満たされるよ」
「……レオン様」
フェニキアは顔を真っ赤にしてうつむき黙ってしまった
「アデラさん、守護精霊がご迷惑をおかけしました。スパイ容疑の件とでちゃらにしてくもらえたら幸いです」
ニコッと彼女に笑顔を向け、その場を後にする
>>91 そんなやり取りがあったころから一夜明けて、アルバニアンに到着した
すぐに事務官のもとに向かい義勇軍の登録をすませた
「ありがとうフェニキア、でも僕が自分で行かなくてもよかったの?」
「なにをおっしゃいますか!伯爵家の御曹司であるレオン様がそのような雑務をする必要なんてありませんよ」
「上位精霊のほうがすごいと思うんだけどな……」
なにはともあれ、無事に義勇軍に参加できた。ここから僕の本当のサクセスストーリーが始まるんだ!
アデラさんからは登録が済み次第、会議に出席してほしいといわれていたので早速向かうことにした
「ねえ、フェニキア?」
「なんでしょう?レオン様」
「会議ってどこでやってるの?」
「さあ?どこでしょうか?」
とりあえず、勘で兵舎の食堂に向かうことにした
「食堂なら、広かったし会議にはぴったりだと思うんだ」
「聡明な判断です。レオン様」
僕たちは食堂に向かい、少し遅れて入室した
後ろのほうに座り、アデラさんが話すロンデ二オン奪還作戦の前段階にケルン大橋を落とし敵の補給路を断つ作戦らしい
確かに義勇軍は数多くもなければ練度も高いとは言えない傭兵のほうがほうがよほど戦力になるだろう
寡兵で戦力、練度で勝る敵に勝つためには策を講じなければならない
そのための補給路の断絶か、いい作戦だと思う。ロンデ二オンは城壁都市でないのが幸いした
城壁があれば攻略の難易度は段違いだったろう
補給路を分断した後、西側から進攻する本隊と挟撃する形で東側から少数精鋭部隊が強襲すれば敵軍を混乱させることができる
戦力を大きく分割するわけではないから、本隊にはほとんど影響がない
この作戦の肝はおそらく敵も精鋭部隊には精鋭部隊をぶつけてくるだろう
それをいかに早く倒し、本隊と戦っている敵部隊の背後をつけるかで作戦の成功率は大きく変わってくるだろう
新参者で年端もいかない僕だが、精鋭部隊に選ばれ手柄をたてたいなとぼんやり考えた
>92 エルトダウン
> というのも、自分は遊撃に回ると思い込んでいるからだ。
「ASL、エルトダウン・シャーズ殿。
キミには殲滅の先陣を切ってもらう。
高性能精霊機部隊、フェンリル隊 隊長への就任を命ずる。
…隊といっても2機編成だが」
上の空といった感じのエルトダウンに、アデラは急に指先を向けた。
フェンリル隊はこの作戦に限っての即席部隊である。
そして、この作戦の成功を以ってエルトダウン・シャーズの身柄は解放されるのだ。
「2番機にはあのファーブニールのイグニス・フロゴーシスをつける。
キミのホロウ・クロウラーに追従できるのは今、義勇軍の中でもあれくらいしかない」
そしてアデラは続けた。
「キミとレオニール殿は顔見知りだそうだな?
彼の戦歴はまだ浅い。
上手く導いてやってくれ。
ASL所属のキミが隊のリーダーとなるわけだが……これは本部による正式な辞令だ」
一瞬会議室はざわめいたが、すぐに収まった。
皆、さもあろう、という顔だ。
ホロウ・クロウラー並びにエルトダウン・シャーズの戦歴は驚くべきものである。
本部はこれを評価し、今作戦への投入を決定したのだった。
「やはり楽はできなかったな、研究員殿。
無事古巣へ帰れることを祈っているよ」
彼女は目を細めてニヤリと微笑んだ。
>94 レオン
> 伯爵家たるファーブニール家の嫡男をスパイ容疑にかけるなど失礼極まる行為です!謝罪を要求します
遺憾の意を表明しながら次々と非難を並べるフェニキアに対して、
アデラは人差し指を彼女の口に当てて続く言葉を遮った。
「キミは可愛いな、フェニキア」
残った隻眼でフェニキアを見すえながら、少し口の端を歪める。
目前の少女が息を飲んだを確認すると、アデラはすっと彼女の唇を解放した。
「弁解をさせてくれ。
まず、容疑をかけたのは私ではない。義勇軍の本部だ。
私は状況を正確に彼らに話しただけ。
そして疑惑は既に晴れた。今では誰もキミ達を疑ってはいないよ。そう腹を立てないでくれ。
…すまなかったな」
> プリプリ怒るフェニキアをなだめ、僕はフェニキアに抱きつく
> アデラさん、守護精霊がご迷惑をおかけしました。スパイ容疑の件とでちゃらにしてくもらえたら幸いです
「ああ…私は全然全く気にしていないよ。こちらこそ失礼したね」
仲良く立ち去る2人を見ながら、闇の精霊フギン=ムニンは苦言を呈したのだった。
『 explode a-full-life 』
「…全く同意する」
しかしアデラは内心、涙がでる程うらやましいのだった。
・・・
(会議室)
> 新参者で年端もいかない僕だが、精鋭部隊に選ばれ手柄をたてたいなとぼんやり考えた
エルトダウンに続き、レオンにもアデラの指先は向けられた。
「レオニール・ルラン・ファーブニール殿。
聞いたとは思うが、キミにはエルトダウン・シャーズ殿と組んでもらう。
ホロウ・クロウラーに続く運動性を持ち、かつ白兵戦果も期待できるのは今、キミの機体だけだ。
よって先陣部隊、フェンリル隊への配属を命じる」
フェンリル隊は、この作戦だけの臨時部隊である。
高性能機体での撹乱・攻撃。
奇襲とはいえ、相手に対応の時間を与える分けにはいかない。
この作戦の肝は、この2機の活躍如何になるだろう、とアデラはふんでいた。
「本来ならば義勇軍正規兵であるキミがリーダーであるべきだが、如何せん経験が少ない。
そして我々は形式に拘っている場合ではないのだ。
色々と不満はあるかも知れないが、頼む」
この任につけるのはキミしかいない、この通り。とアデラは頭を下げた。
そしてレオンの耳下でこうも囁いたのだった。
「フェンリル隊のリーダーはASL所属。
……彼のことは信じているが、何らかの形でASLの介入があるかもしれない。
そのときはキミの手で始末をつけろ。いいな」
…これが未成年への通達内容なのだろうか。アデラは胸にチクリと痛みを感じた。
ケルン大橋。
10年前、神聖ローガンブリア帝国とティルネラント王国の友好の証として建設された橋である。
それ以後、両国の通商を中心に幅広く使われてきた。
「これを我々の手で破壊しようと言うのか……。後戻りはできんな」
無事作戦地点に到達した義勇軍精鋭部隊が後方で待っている。
レイヴン隊の対地攻撃開始を以って、彼らも橋の敵防衛部隊に殺到する手はずだ。
『 Break the Bifrost 』
「虹の橋を落とすのは冥府の軍団だったな、確か」
アデラはクスリと笑った。
だが一秒の後、その顔は指揮官としての緊張に包まれていた。
「レイヴン隊、射撃用意!」
アデラ搭乗機、コルバス・コラックスから散布されていた煙幕が解除され風に流されると、レイヴン隊は空中停止し、各々の射撃兵器に矢弾を込めた。
「目標、敵監視塔!……発射!」
ヒュッ!っとクォレル(太矢)が空を切る音がして数秒後、目前の監視塔の頂上付近…おそらく管制室…が爆発炎上した。
信管と火薬を充填した炸裂矢、そして助燃のための油瓶をくくり付けた矢などが次々に発射されると塔のあちこちから煙があがる。
「敵監視塔は機能停止!殲滅部隊、攻撃を開始せよ!
殲滅部隊、攻撃開始!
フェンリル隊先陣を切れ!」
念話用の増幅装置が塔にあったはずだ。
これで少しは敵増援のタイミングも遅れるだろう。
あとは地上部隊との連携をはかり、最善を尽くすだけだ。
「レイヴン隊A班はこのまま殲滅部隊の援護にまわる。
B班はミョルニルの護衛急げ」
なんだ、曳光弾無しでも充分明るいじゃないか、と燃え盛る監視塔を見ながらアデラは思った。
夜明けから暫くも経っていない薄暗い戦場の空を、炎の柱が眩しい程に照らしだしている。
>93
「どうやら舌が回らなかったようだな。
アルバニアンの宿舎でアルコールを取りすぎたか」
アデラは極めて平静を装っていたが、自分の口元が若干緩んでいるのは気づいていないようだった。
『 Mission Complete(作戦成功) 』
「いやいや、狙ってやったわけではないよ、決して。
ちょっと舌足らずを演出して普段素行が悪い者が良い行いをすると過大に評価されるあの現象を起こそうとしていたわけではないよ」
アデラは動揺した。
狙っていたのだった。
ロンデニオン、今やテイルネラント王国の最前線基地と化したこの街で、
王国軍の司令部がにわかにあわただしさを増していた。
敵側にロンデニオン奪還を前提とした戦力の集中と反撃の兆しがある以上、
新たに策定された防衛計画を元に作戦行動を開始せざるを得ない。
それにより俄然緊張は高まり、その空気は末端の兵士にまで浸透していった。
が、そんな空気に染まらない問題児が一人…
「ほんっと、面倒くさいねぇ、敵さんも真面目すぎでしょ」
「取られたものを取り返そうとするのは人間の心理でしょ?バカなこと言ってないで準備なさい!」
フォリナーとラヴィーネのやりとりは最早恒例行事である。
隊員達も苦笑いしながら見やるだけで突っ込みを入れる素振りすら見せない。
格納庫から程近い酒場を、ブリーフィングルーム代わりにしてで作戦会議を開く。
テーブルに広げられた地図には幾重にも書き込みがなされていた。
「俺達が向かうのはこのケルン大橋だ。本部もここを最重要拠点と位置づけてる」
「当然そこに敵も目をつける…というわけね」
補給線の確保は、戦争を行う上で絶対に欠かしてはならない最重要事項だ。
その要たるラーメン橋を吹っ飛ばされては、王国軍は戦略的不利に立たされてしまう。
空路と言う手段もあるにはあるが、陸路に比べて安定性に欠けること甚だしかった。
# かぶっちまったー /(^o^)\
夕闇に覆われていた空が、山際から次第に赤みを帯びていく…夜明けが近かった。
「今回の増援は強行排撃隊の全部隊だけでなく、本体からも人員を割くらしい」
「数で勝る王国軍だからこそ出来る防衛ラインってやつですね」
数で勝るということは、その分物資もドカ食いすることになる。
文字通りの飯の種を、易々と敵の好きにさせるわけにはいかなかった。
「もしケルン大橋を落とされたら、どうするの?」
「そん時は街の後退しつつ街の東側へ防御ラインをシフトするだけさ」
刹那、けたたましく鐘の音が鳴り響く。おそらくケルン大橋が襲撃を受けたのだろう。
内心間に合わないかもしれないと思いながらも、フォリナーは部下達に号令を下す。
「行くぞ…27番隊出撃だ!」
隊員達は『応』の掛け声だけ発し、部隊長に続いて格納庫へと向かう。
勝利の女神はいまだに中央を向いたまま、表情を変える時を待ち続けていた。
「で、結局先駆けなのね。悲しいことだねえ…」
大橋への攻撃が始まった。
そしてたった2機のみで敵の防御陣へと突入していく。
勿論、エルトダウンも何の用意もしてなかったわけではない。
敵はこちらを迎え撃つ準備をしている。今までのように混乱などしていない。
それは即ち、下手を打てば死ぬということ。
昨晩からホロウ・クロウラーにくっついていたのはこの用意のためだった。
各部に即席ではあるものの様々なギミックを搭載している。
それの多くは機動性を底上げするための小型ブースターであった。
「ホントにラクじゃないねえ…隊長さんも軽く言ってくれる…データは持ち帰りたいんだけどね」
後ろのイグニスの事など気にもせずに全速で飛ばしていく。
ホロウ・クロウラーの設計プランは当初、二つであった。
一つは今の様な超高機動戦闘。被弾しないことを前提とした設計。
二つ目は装甲でガチガチに固めた、いわば砲台としての運用を想定した設計。
どちらの計画が選ばれるかはエルトダウンに委ねられていた。
というのも、ホロウ・クロウラーほどの高機動となると搭乗者にかかるGが凄まじいのだ。
それ故、計画の選択はエルトダウンがどれだけGに耐えられるかによって決められた。
そして今に至る。
"エルトダウン、飛ばしすぎだろ…苦しくねェのか?"
「もちろん。慣れたさ。さあ、敵さんが迎えに来てくれてるよ…」
高速のまま敵の防御陣形に突っ込む。
そのまま一機に目星をつけると懐に入り込む。
「遅い…寝てるのかい?」
エイサーグラディウスが敵の機体を貫く。
その機体から精霊力がエネルギーとして漏れ出したと思うと、ホロウ・クロウラーはすぐにそこから退避した。
そのすぐあと、爆音が鳴り響いた。
103 :
名無しになりきれ:2010/05/28(金) 00:07:58 0
王国側の参加者が少ない件
そもそも参加者自体が少ない件
(横から参加失礼。)
ブゥゥゥン…
ケルン大橋後方、ティルネラント王国領の森の中を、精霊駆動機の重苦しい音が通り過ぎていく。
カァ…カァ…カァ…。ホー…ホー…ホー…。驚いた鳥たちは、わさわさと散って。
夜更けに目を覚ました狩人が、深刻な顔をして空を見ていた。
>101
>「行くぞ…27番隊出撃だ!」
フォリナー隊長の指令を受け、27番体は颯爽と現場へ向かっていた
「クソッ、こんな夜更けに出てきやがって。まったく、昨日は酒飲まないで正解だったぜ」
『飲めなかった、の間違いだろう?また大負けしたんだからねぇこの馬鹿』「うるせぇ!」
その遙か後方から、光り輝く”何か”が近づいていた。
『ん…後ろに見えるあれはなんだい?光ってるけれど』
「さあな。流れ星でも見たんじゃないのか?それより仕事だ、仕事!」
しばらくして、27番隊の背後に現れた一機の精霊機は…精霊の力を借りて、搭乗者の声を戦場に響かせた。
「わたしこそ しんの ヒロインだ!!」
空に透く羽四枚の羽を持つその機体のフォルムは、まるで戦場に似つかわしくなく…まるでおとぎ話に出てくる妖精のようだ。
『ねえ、ヨハンナちゃん、帰ろうよ。もう満足しただろう?』
「うるさいうるさいうるさいっ!商工業ギルドに掛け合ってプロデュースしてくれるってパパが言ってから、何秒経ったと思ってるの?」
『知らないよそんなこと…』
「昨日までの時点で、9万9882秒よ!こうなったら、ヨハンナがやるしかないんだから。
古今東西、アイドルを目指すなら戦場の中心で愛を歌うのが一番だって聞いたっ。ヨハンナだって、やればできるのっ!」
『ヨハンナちゃん…細かい女は…ひでぶっ』「なんか言った!」
幸か不幸か、炎に揺れるケルン大橋へ辿り着いたヨハンナ。しかし…そこでふと足踏みをする
「パティ、どっちが味方で、どっちが敵なのかな?」『ここは王国領なんだから、あっちにいるのが敵だと思うよ』
「そうか!さすがパティ、ベテランだけあるわね」『…ボクはもう、何も言うことがないよ』
「…きゃっ!」レイヴン隊の流れ矢の一つが、ヨハンナの機体ティアリア・ドラウパディーの側面を掠めた。
「よ、よくもっ!よくもヨハンナのティアラちゃんに傷をつけたね!?もう、ゆるさないんだからっ!いけぇ、目からスパークッ!」
ティアリアの頭部から、精霊機3体は丸々入るんじゃないかと思われる二条の光線が照射され、夜明けの朱い空を目映く照らす。
『これって、ヒロインのすることなのかなあ…』
その頃、冒頭で空を眺めていた狩人は。
「お、おらぁすげぇものさ見ただ!でっけぇ妖精さが飛んでいっただ!パンツ丸見えだっただ!」
『朝っぱらからバカなことばかり言ってんじゃないよこのボケ!』
ヨハンナは味方を巻き込むかどうかを考えずに射撃攻撃を行った。
しかしこの武装の威力は微々たるものであり、目くらまし程度にしかならないだろう。
人物設定
名前 ヨハンナ・トデスキーニ
年齢 12歳
性別 女
容姿 赤髪碧眼。純白の甘ロリ
体格 幼児体型
性格 わがままで気まぐれ
身分 シュトロウス侯の一人娘。亡国の皇女
所属 ティルネラント王国の貴族(実質それ以外?)
説明 父シュトロウス侯はとある国の皇帝であったが政治に興味がなく、ティルネラント王国が攻めてくるや否や帝位を禅譲、隠遁生活を送っている発明王
退屈な田舎暮らしに飽き飽きし、大陸のトップアイドルを夢見てしばしば街へ現れる
亡国の再興に興味なし、ティルネラント王国への帰属意識も薄いよう。その場その場の気分によってふらふらと立場を変える
機体設定
機体名 ティアリア・ドラウパディー
精霊の種類 風の上級精霊
精霊の名前 ハウリンティウス16世(パティ)
精霊力 2700
耐久力 C
運動性 B
装甲 D
武装
スパーキングファン(近接戦用。扇状で、扇面は半透明)
ティアリアビーム(頭部から突風を起こし、前方左右30度あたりを撃つ。精霊の力によって弾道が光るため、ビーム状に見える。火力ほとんどなし)
スターダストアロー(装飾性の高い弓をつがえ、直線上に風の粒子を放射する。これも光る)
ソードブレイク・アバランチ(レイピアで無数の突きを繰り出し、武器ごと粉砕する。ほぼ対雑魚NPC専用)
ティアリアバリヤー(パリンと割れるバリア。制御しだいで味方の補助も可能)
ヒーリングブリーズ(周囲の風の精霊の力を借り、味方を修復)
機体&精霊説明
ウサ耳妖精型精霊機。搭乗者の少女趣味がにじみ出ている
父シュトラウス侯の作。何十回に及ぶ娘のコレジャナイ抗議のあと、ようやく承認された
見た目より耐久力があるのは親の愛。逆に見た目より遅い。飛行能力あり
ぱっと見派手な割に火力のない武装が多い
ハウリンティウス16世
吹き荒ぶ嵐の精霊・・・のはずだったのに、ヨハンナのお守りを押しつけられてからというものすっかり牙を抜かれてしまった
普段はキャンディ状コウモリの姿を取っている。こうしないとヨハンナが怒るので
なお、性自認はオス
>>96 >「レオニール・ルラン・ファーブニール殿。
聞いたとは思うが、キミにはエルトダウン・シャーズ殿と組んでもらう。
ホロウ・クロウラーに続く運動性を持ち、かつ白兵戦果も期待できるのは今、キミの機体だけだ。
よって先陣部隊、フェンリル隊への配属を命じる」
……先陣!僕の期待は現実へと変わった。
嬉しさのあまり、飛び上がりそうになったのをぎりぎりのところで押さえて立ち上がった
「はい!レオニール・ルラン・ファーブニール、フェンリル隊への配属承りました
魔狼のごとく、敵の喉笛を噛みちぎってご覧にいれます!」
先駆けは武人の誉れ、決して自分の実力が評価された結果ではなかったが、期待されている証と受け取る
>「本来ならば義勇軍正規兵であるキミがリーダーであるべきだが、如何せん経験が少ない。
そして我々は形式に拘っている場合ではないのだ。
色々と不満はあるかも知れないが、頼む」
アデラさんの気遣いが出来て、形式にこだわらず柔軟に合理的に判断できる人物のようだ
傭兵は戦場で生きて来た人種だからそう言う人が多いとは聞いていたが彼女はまさにそういった人物なのだろう
「いえ、エルトダウンさんのほうが年長で実戦経験も豊富でしょう。むしろ、僕が指揮をするなんて、彼の能力を殺してしまうだけです
僕は少数精鋭たるフェンリル隊2番機に任命されただけで満足です。」
ビシッと敬礼するとアデラさんが近づいて、耳元でささやいた
>「フェンリル隊のリーダーはASL所属。
……彼のことは信じているが、何らかの形でASLの介入があるかもしれない。
そのときはキミの手で始末をつけろ。いいな」
「……!!」
確かにそういったこともあるだろう。エルトダウンさんは完全に義勇軍の味方でもない訳だ
なんらかの事情で戦闘中に王国側に寝返る可能性もあるだろう
「……」
僕はなんの返事も出来ず、敬礼の姿勢のまま前を見つめるしかなかった
>>102 得体の知れない嫌悪感を抱きながら、エルトダウンさんの後ろをついていく、彼は僕のことなど気にせず、凄いスピードで進んでいく
いろいろと考えが頭によぎっては来えていく。集中しなければ、そう考えれば考えるほど頭には余計なことがうかんでいく
「レオン様!前!前!」
フェニキアの言葉にはっと我に返るとすぐまでエルトダウンさんが敵を撃破していた
あわてて、剣を取り出すと敵の爆発に乗じて、大剣を振るい両断する
>>106 ヨハンナさんよろしくお願いします!!
彼女がどう動くのか楽しみです
ケルン大橋破壊作戦の戦端が開かれて数分。
ティルネラント王国の大橋防衛部隊の陣は未だ乱れ、足並みは揃わぬままである。
それは主にホロウ・クロウラー、イグニス・フロゴーシスのたった2機によって引き起こされていた。
『 Enfants terribles 』
恐るべき若者たちとは、お側付きの精霊フギン=ムニンの語るところである。
味方機を狙う敵を空中から牽制・攻撃しながら、眼下の趨勢を窺っていたアデラだったが、実際、先陣を切った2人の腕には舌を巻いた。
通常では考えられない程のスピードで戦場を駆けながら次々と敵を屠るホロウ・クロウラー。
並みの機体制御術では防御行動すらままならない素早さである。
少し遅れてイグニス・フロゴーシスはサポートについたのか、彼に翻弄されている敵機を1機、また1機と確実に仕留めていた。
最初はおっかなびっくりだった機動が、だんだんと堂に入ってきている。
全く順調である、とアデラは判断した。
「フェンリル隊による敵の攪乱は成功。
フレキ、ゲーレ各隊も攻撃開始。
敵軍がフェンリルに気を取られている隙に包囲殲滅せよ」
フレキ隊、ゲーレ隊も少数ながら義勇軍の精鋭揃いである。
突然の闖入者を捕らえようと躍起になっている王国軍の面々は、もはや彼らの敵ではない。
>105
アデラは突然、自分の左目の端…ケルン大橋より西側方面…が光ったように感じた。
『 Break, Break(回避行動せよ) 』
使役精霊であるフギン・ムニンが警告を告げる。
慌てて身を翻した搭乗機コルバス・コラックスであったが、何者かが発射したと思われる光線が右腕を貫いた。
風圧の塊が機体に直撃したかのような感覚がある。
「くそっ、何かが右腕部に命中した! 損害は……」
右手に装備したバリスタの表面が僅かに削れていたが、その他に目立った損傷はない。
「一体なんだ…。大砲での牽制もしくは試射…?」
アデラが西方に眼を向けると、そこには1機の飛行精霊機と、その足元…王国軍の精霊機が隊列を組んで一直線にこちらへ向かってくるのが見えた。
増援である。
予想よりも大分早い。
「あれは……王国軍第二十七独立強行排撃隊、ヴァルフレンの剣…!」
『 Ghost 』
「剣皇国は滅んでなどいない。あのように実体を持って我々に立ち向かってくる」
アデラは一瞬の思案の後、素早く指示を出した。
「義勇軍各機へ。
王国軍の増援が西方より進軍中だ。ケルテ・マリーネの強行排撃隊がくる。
陸戦各隊は陣を整えて会敵を待て。
レイヴン隊B班はただちにミョルニルの空輸を開始しろ。
ケルン大橋に運び次第、すぐに破壊工作に入れ」
建築物破壊兵器ミョルニル。
ケルン大橋の即時破壊のためには、この機体のもつ大槌の力が必須である。
そして、この作戦の成功が無ければ義勇軍に明日はない。
「ここが勝負どころだぞ、義勇軍精鋭諸君。
敵の突破を許すな。橋が落ちるまで何としても喰らいつけ!」
敵軍増援は目前。
アデラはコルバス・コラックスの主砲に炸裂榴矢をつがえると、先ほどの礼とばかりに撃ち返した。
高速で移動するホロウ・クロウラー。
そのスピードは補助ブースターで底上げされているため、更に速くなっている。
敵を翻弄しつつ撃破している。と、その時だった。
ホロウ・クロウラーが敵の攻撃を回避し、後退した時。
機体の側面スレスレを光が走った。
「なんだ…攻撃かな?直撃する所だったよ…」
一瞬、光が飛んできた方向を見て、そのままスルーした。
どうせ他の部隊がなんとかするだろう、そんな考えだったからだ。
"で、エルトダウン。いつお前のパーティーとやらは始まるんだ?"
「まだだよ。少なくとももう少し働かなくちゃ。大橋が落ちてからかな」
そう言い終えると、ブースターを全力で吹かす。
一気にエルトダウンにGがかかる。少し嗚咽がもれるモノの問題はない。
「増援が来る。頭数を減らしておかなければならないしね」
上手く敵の攻撃を避けながら徐々に接敵する。
イグニスはなんとか順調に戦闘を行っているようだ。
"あの娘…大丈夫かねェ…しかし、考えなおさないかい?エルトダウン。彼女すらもアンタは…"
「大丈夫。…なことはしないよ。あくまでも…ね」
小声で、何かをはばかるように喋るエルトダウンとファラーシア。
「さ、今は任務に集中だよ。私には私なりの考えがあるさ」
暗闇での戦闘はイグニスにとっては苦ではない
敵と戦闘に突入すれば自らの炎で周りを照らし視界を確保することができる
しかし、夜間奇襲ではその炎で敵に位置を知らせてしまうという欠点もあった
だから、今は剣だけで敵と渡り合っている
昔から剣術の練習を欠かしたことはない、その腕前には少々の自信もある
「ファーブニールの牙の威力とくと味わえ!」
さらに敵機を切り伏せると不意に何かが光り、命中するが装甲を少し削った程度だった
「なんだ!なんだ!どこからの攻撃!」
「あの攻撃は脅威ではありません、気にせず目の前の敵に専念してください!」
「わかったよ、フェニキア」
別方向からの攻撃は無視して目の前の敵と剣をぶつけ合う
イグニスのパワーは普通の精霊兵器を凌駕している、鍔迫り合いで負けることはなかった
「落ち着け、落ち着いて1機づつ相手していくんだ」
自分に言い聞かせて落ち着いて攻撃を処理し、自分の攻撃を繰り出していく
順調に戦えている、このまま行けば手柄を立てて帰れる
爆音渦巻く戦場では、ヨハンナの声は橋まで届かなかった。
しかしヨハンナの放った光線は、精霊機の密集する地点を貫いたようだ。
「大・勝・利!この世に悪が栄えた試しはないのよ、おほほほほ」
『あ、当たっちゃった…』
「第一話「ロリ介入!舞力による戦争の超根絶!」もそろそろ終わりね。
魔法の言葉はツイテルタノシイアリガトウ♪来週もまた見てね〜」
『ヨハンナちゃんはいったい、誰に向かって話しているんだ…』
ティアリアビームは決して威力のある武装ではない…が
子どものおもちゃにしては十分すぎる代物だった。
常に死神のラブ・コールに晒されている強行排撃隊と違い、
大橋防衛隊は所詮職業軍人の集まりであり、戦闘への覚悟がまるで違う。
帝国義勇軍による突然の奇襲、火矢の嵐と上空のフェンリル隊からの攻撃。
そこをさらに正体不明の閃光が貫いた。ケルン大橋は阿鼻叫喚の地獄絵図と化した。
>110
>敵軍増援は目前。
>アデラはコルバス・コラックスの主砲に炸裂榴矢をつがえると、先ほどの礼とばかりに撃ち返した。
いっぽう、ヨハンナの不用意な攻撃は、第27強行排撃隊の到着を
彼らの予想よりも早く気づかせることとなった。
強行排撃隊員A「クソッ、余計なことしやがって」
隊員B『最近のガキっていうのは、こんな時間まで出歩いてるのかい?世も末だねぇ…』
先ほどの声の調子から察するに、謎の機体の乗員は少女であろう…
一人の隊員が、剣を構えながらヨハンナ機へと近づいていく。
隊員B『そこのガキ、何者だい…?ここは子どもの来るところじゃないんだよ。
とっとと帰っておねんねしな!さもないと、撃ち落とすよ』
「な、なんですって!わたしをシュトロウス公の娘と知っての狼藉か!
ねぇパティ、アイツ撃ち落としていい…?」
『ダ、ダメだよヨハンナちゃん』
さて、ケルン大橋に向いていた義勇軍は、その戦力の一部を強行排撃隊への応戦に回してきていた。
矢の数は次第に増え、ヨハンナそして強行排撃隊へと降りかかる。
隊員B『ちぃ、まったく鬱陶しいねぇ。分かったら、さっさと帰んなよ』
「えっ、あっ、ちょっと!危ないじゃない!ティアラちゃん、バリヤーよバリヤ」
ティアリアの周囲を半透明な薄緑色の幕が覆い、矢を弾く。
しかし数秒するとバリヤーはパリンと割れ、その破片が光りながら地面へと落ち、吸い込まれた。
降り注ぐ矢の雨を強引に突破するほどの能力はない。
『前に出すぎだってば。ヨハンナちゃん、バック、バック』
「噂には聞いていたけれど、ローガンブリア人ってほんっと野蛮人なんだね。仕方ない、いったん引いて回り込むか」
強行排撃隊迎撃に力を入れる義勇軍。
と、ケルン大橋の上で信号弾とおぼしきものがパンッ、と鳴った。
すると南東の河川中から義勇軍の背後を狙って水弾が撃ち込まれる。
その目標は、橋のふもとから射撃により援護を行っているレイブン隊A班であった。
ティルネラント王国の水陸両用精霊機サヒュアジンによる攻撃だ。
国を分ける河川だけあって相当な深さがあり、早朝の薄暗さの中では、
河川中の相手の位置はおろか、その機体数さえも精確にはつかめないだろう。
【ケルン大橋防衛部隊(陸上)の士気ダウン】
【ヨハンナ後退】
【→レイブン隊A班:南東より、水陸両用精霊機サヒュアジンによる水弾攻撃】
【それと北西から強行排撃隊襲来か?】
フォリナー率いる27番隊は襲撃を受けたケルン大橋を守るべく、闇夜を切り裂くように颯爽と戦場へと向かっていた。
既に他の排撃隊も異なるルートで向かっているとの報告が入っている。
数の差で敵の作戦を阻止するというのが王国軍の目論見だが…
『クソッ、こんな夜更けに出てきやがって。まったく、昨日は酒飲まないで正解だったぜ』
『飲めなかった、の間違いだろう?また大負けしたんだからねぇこの馬鹿』『うるせぇ!』
夜半の出立ともなれば愚痴も一つや二つは出てくるものだ。
そんな隊員同士の口論に割って入り、制止するフォリナーの言葉にも自然熱が入る。
「ギャーギャー五月蝿ぇぞ、戻ってからやれ!」
「戻れたら…の話でしょうけどね」
ラヴィーネの物言いは例によって冷ややかなものだ。やれやれと口に出そうとした瞬間、表情を一変させた。
フォリナーもラヴィーネも確かに”見た”。遙か後方に光源…はっきりとはしないが、おそらくは精霊機。
「味方かしら?」
「にしたって変だ。俺らが今通ってるルートは街の人間から聞き出した脇道のようなもんだぜ?」
単独で後ろにつけてくるというのは解せない話だったが、その疑問もすぐに解決した。
現場にたどり着くや否や、背後から追い抜くように空を駆け抜ける1機の精霊機が視界に現れたからだ。
>「わたしこそ しんの ヒロインだ!!」
「はぃぃ!?」
「…この反応、ハウリンティウス16世じゃない…何やってんのよ」
フォリナーはあいた口が塞がらず、ラヴィーネにいたっては呆れ顔を浮かべる始末だった。
戦場に颯爽と現れたヒロインに送りつけられたのは、ファンからのラブコールではなく肩を射抜くレイブン隊の流れ矢。
ティアリア・ドラウパディーもやられっぱなしではいられない。頭部から光線兵器を打ち出して対抗する。
だが、距離が距離だ。敵を仕留めるにはいたらないだろう。
「どうするの?アレじゃたいして効き目はないわよ」
「知るか、子守は俺達の仕事じゃねえ。面倒にも限度ってものがあらぁ!」
今の27番隊が最もなすべきことは、義勇軍の排除。
相手も精兵、空を自在に翔るレイブン隊の危険性はよくよく承知していた。
その他にもフレキ、ゲーレ隊などが参加しているのがわかる。
「そうそうたる面子だわ、帝国側も本気で橋を壊しに来たようね」
「あぁ、面倒だが気を引き締めていかねえとえらい目にあうぞ」
が、彼の思惑を他所に隊員達はヨハンナにご執心の様子だった。
『クソッ、余計なことしやがって』
『最近のガキっていうのは、こんな時間まで出歩いてるのかい?世も末だねぇ…』
突然の乱入に腹が立ったのか、目標より先にヨハンナの駆る空飛ぶ兎に向かっていく隊員達。
剣を構え、ドスの利いた声で脅すように会話を始めてしまう。
『そこのガキ、何者だい…?ここは子どもの来るところじゃないんだよ。
とっとと帰っておねんねしな!さもないと、撃ち落とすよ』
「あのバカっ!」
操縦席で隊長たるフォリナーは呻いた。今は子供を相手にしている場合ではないのだ。
そうこうしているうちに、義勇軍は戦力を再編しこちらに向かってきている。
「いい加減にしろ!目の前の敵にだけ意識を払えってんだ!これ以上面倒増やすんじゃねえ!」
普段怒声を上げないフォリナーがここまで神経とがらせてる理由は一つ。
彼自身も突然の乱入者に戸惑っているのだ。が、敵はそんな猶予は与えてはくれない。
一方ラヴィーネはといえば、ティアリア・ドラウパディーのバリアが物理的な攻撃を遮断するところをしっかりと見ていた。
「吹き荒ぶ嵐の精霊と呼ばれた自慢の力は衰えてはいないようね…」
「何にせよ下がったのならそっちのことはいぃんだョ。行くぞ…!」
フォリナーは意識を目の前の敵に切り替えた。
数分もしないうちにサヒュアジン隊が川から殺到することは間違いない。
ならば自分達は橋からやってきた連中を返り討ちにするだけだ。
「さぁ、死にたい奴からかかってきやがれ!」
フォリナーはあえて大喝すると、ガンランスを正眼に構えて発射した。
117 :
名無しになりきれ:2010/05/31(月) 00:53:01 0
スピードタイプのマシンが多いね
名前 セラ
年齢 24
性別 女
容姿 胸までかかった銀色に光り輝くストレートヘアに色白で空色の瞳。
体格 普通の女子
性格 生来の温和さと公人としての冷酷さをあわせもつ
身分 ティルネラント王国第4皇女であり第4軍団を指揮する将軍でもある
所属 ティルネラント王国軍
説明 陰謀と術策の蛇の巣である王宮にて飼い殺しになるよりもと戦場で戦う道を選ぶ
機体設定
機体名 セルフィー
精霊の種類 光の精霊「ウィル・オ・ウィスプ」
精霊の名前 フィー
精霊力1800
耐久力 C
運動性 A
装甲 C
武装 ライトニングダガー(近接戦闘用)
ライトニングアロー(精霊力を宿した超遠距離射撃が可能な弓矢)
機体&精霊説明
機体には異世界の精霊である光の「ウィル・オ・ウィスプ」を古の召喚術により宿すことに成功。
精霊力が標準以下となっているのは精霊炉のネックである膨大な熱量を抑えるため炉を小型化しているため。
近接戦闘には向かない。
改行長すぎにつき (1/2)
>113 【→レイブン隊A班:南東より、水陸両用精霊機サヒュアジンによる水弾攻撃】
全く想定外の出来事であった。
レイヴン隊の中で、背後からの対空砲撃に反応できた者は少ない。
アデラが信号弾の明滅に気が付いて振り返ると、大橋南東部、それも河川内から何かが飛来するのが分かった。
そして次の瞬間、破砕音。
「後背から敵の対空射撃!
レイヴン隊は航行高度を落として敵射線から外れろ!
川面から撃ってくる!」
アデラ・グラーフストレームは搭乗機コルバス・コラックスを着地させ、レイヴン隊の被害状況を確認した。
視認できる範囲では、河の縁にいた味方機の内、1機の片腕が吹き飛んでいる。
もう1機は操縦槽付近に直撃を受けて墜落していた。
味方からの報告によれば、被弾した機は多かったものの、幸運なことに反撃能力を奪われるまでの被害は少なかったようだ。
また、被弾機複数の証言から、敵の射撃位置はやはり河川内にあることが分かった。
「被弾部位に矢弾破片、爆発痕無し。付近に水飛沫が飛び散っている。
発射位置は河川内。
フギン=ムニン、敵機の詳細分かるか」
普段よりアデラの右眼窩に収まっている精霊フギン=ムニンは、演算と記憶を得意とする。
そしてその「記憶」には、アデラの商売柄、各国精霊機の情報を豊富に含むのである。
『 Amphibious merman : Sahuagin 』
水の精霊の加護を受けし、サヒュアジン。
水中から高圧水弾を発射できる水陸両用の精霊機である。
「十中八九その機体だな。
だがヤツら、艦砲射撃で我々の頭を抑えているだけで満足するか……?
いや、きっと上陸して挟撃を狙ってくる。
ロンデニオンからの援軍は確実だ、ここで欲を出さない指揮官の方が珍しい」
目まぐるしく変わる戦況の中で、彼女は確実に冷静であった。
理由は簡単である。
各地の戦場を渡り歩く傭兵にとって、こんなことは日常茶飯事だからだ。
(2/2)
「レイヴン隊より義勇軍各隊へ。
河川から敵の揚陸部隊が進軍中、こいつらはレイヴン隊で相手する。
狼(陸戦隊)は現状維持のまま、眼前の増援を蹴散らしてくれ」
実際、レイヴン隊は上陸して義勇軍の挟撃を狙うと思われる敵部隊に対して、陣形構築を完了しつつあった。
敵水弾の射線に入らぬように川岸から距離をとり、敵の渡河を待ったのである。
「上陸戦は、大概において上陸側が全戦力を展開できないのが難しい。
半分は陸の上にあがっても、もう半分はまだ河の中だ」
次々と渡河し、川岸に押し寄せる精霊機サヒュアジン。
しかし、それは地形によってこちらの陣が把握できないままの、いわば目隠しの突入である。
そしてレイヴン隊の対空攻撃に備えて、未だ河川に残る機体もいるはずであった。
「……よし、的が岸から顔を出したぞ。第1陣、バリスタ放て!」
攻めに難く、守るに容易い上陸戦。
攻撃の成功には守備の2〜3倍の戦力が必須と目されている。
アデラは自問自答した。
緊急出撃でそんな数が確保できるか…否!
水陸両用・特殊機体サヒュアジンの相当数がロンデニオン近辺に配備されているか……否、否!
「この奇襲、アマチュア相手になら効果充分だろうな。
だが、ファールデルの戦争狂には少し足りない」
アデラは切れ長の眼をさらに細くして口の端を上げた。
視界前方には、レイヴン隊によって射抜かれた敵精霊機の残骸が転がっている。
その数、ざっと7機ほど。
敵の出鼻は挫いたのである。
「レイヴン隊から義勇軍各隊へ。
敵揚陸部隊の迎撃に成功。これで暫くは大人しくしてるはずだ。
大橋破壊まで約10分ある。そちらも何とか凌いでくれ」
今回、大橋の破壊を担当する精霊機ミョルニルは、雷の上位精霊が宿る大槌(巨大なハンマー)を所持している。
それが大気の中から雷精を抽出し、蓄積するためにはあと10分程の時間が必要であった。
【レイヴン隊、サヒュアジン隊の迎撃成功 + 残勢力の様子見のため足止め】
ここはロンデニオンとケルン大橋の中間地点。夜の闇に紛れ三機の精霊機が隠れ潜んでいる。
一機にはティルネラント王国第4皇女「セラ」の搭乗する光の魔装機セルフィー。
残りの2機にはセラの教育係でもある老兵のドルガンと見習い兵であるアロルが搭乗していた。
「殿下!義勇軍がケルン大橋に展開しつつあります!
我が第四軍団の本体も先の戦闘により我々以外は休養中。
我々がこのロンデニオンから接近し加勢することは難しいと考えます!」
老兵のドルガンがセラに進言する。
「…状況判断は私がすると申しておる」
セラは穏やかに言った。
「はっ」
「アロル。貴下は下がってよい。ここはドルガンと私が出よう」
「はい」
アロルは内心では自分と歳も差ほど変わりないセラを守りたい気持ちで
いっぱいであったのだが大人しく命令にしたがった。
闇のなかをケルン大橋に向けて疾走する2機の魔装機。
【一先ず様子見ということで…】
122 :
名無しになりきれ:2010/06/01(火) 07:36:52 0
トールハンマーで橋ふっ飛ばすのか
戦場の空気が変わった
別方向からの閃光はフェンリル隊だけじゃなく、ケルン大橋の防衛部隊にも飛ん
できた
ただでさえ奇襲で浮足立っていた敵は、もはや混乱しているようだ
「チャンスです。炎の矢の準備は出来ています」
「どれくらい?」
「一網打尽に出来るぐらいなら」
フェニキアはどうだと言わんばかりの表情で僕を見てくる
「流石、頼りにしてるよ」
「お褒めいただき、私は幸せです」
フェニキアははにかんだ笑顔を見せた
「派手に行くよ!」
炎の矢がイグニスの周りに無数に顕れ、闇からイグニスの姿を赤く映し出す、そ
の姿は敵兵が一瞬、目を奪われる者もいたほどだ
ケルト・マリーネに放ったときより遥かに多い数十の魔矢がケルン大橋防衛部隊
に殺到していく
多くの敵を貫き、防衛部隊の多くを削った
「レオン様!後退してください!」
「なんで!?敵を倒すチャンスじゃないか」
「多くの魔矢を打ちすぎて、精霊力を消費しました。回復が必要です。ほんの数
分で十分戦えるだけ回復します。
ここはエルトダウンさんに任せて、後退しましょう」
フェニキアが言うのならば間違いないんだろう
敵をやっつけたい衝動もあり、無視しようかとも思ったけど、ここは大人しく下
がることにした
「わかったよ、下がるよ。エルトダウンさん、今の攻撃で精霊力を多く消費して
しまいました
回復のため少しさがります」
通信でかれに伝えると敵機のいないロンデニオン方面に後退することにした
遠くで戦闘の音が聞こえるぐらいに後退し、機体を停止させ一息つくことにした
「ふう・・・・・・」
大きく息をはいて、体の力を抜いて水筒から水を一口含んだ
「緊張して喉が渇くよ」
もう一口水を飲み、フェニキアの小言がくる頃だなと思い、耳を傾けることにし
た
「レオン様、戦場ではつねに緊張して置かなければなりませんよ。でも、緊張の
しすぎは・・・・・・!」
いつもの小言を中断し突然、フェニキアが周囲を警戒し始める
「こ、この気配は!異界の精霊!珍しい、出会うのは何年ぶりでしょうか。
ロンデニオン方面から来ますから、おそらくは敵です」
【ロンデニオンとケルン大橋繋ぐ街道、でロンデニオン方面からくる敵を迎え打
つ】
フォリナー率いる27番隊もケルン大橋防衛部隊もセラ直属の部隊ではない。
王国からの増援部隊も然りである。王宮の覇権争いのなか第四軍団以外はセラにとっては
後ろから撃たれてもなんらおかしくない状況なのであった。
生死を賭ける戦場において人を動かすものは強要でもなければ論理や義務感でもないだろう。
必要なのは兵士からの信頼を得ること。ただ命令だけを聞く弱卒の集団では軍は機能しないのだ。
然るべきことには格々の指揮官が臨機応変に事態を把握して対処してくれなければならないのだが、
それを期待できるのはこの戦場においてはフォリナー=エグラートしかいないようだ。
「殿下!ケルン大橋防衛部隊が炎の魔矢によって掃討されていきますぞ!!」
老兵ドルガンがセラに通信越しに叫ぶ。
「…なんと…」
セラは一言発し腐心すると、地を滑るように走る魔装機の足の裏で大地を鷲掴み急停止する。
「殿下!?」
ドルガンも慌てて魔装機を停止させた。
「私は戦場の詳しい状態を知りたいのです。ウィル・オ・ウィスプの力を使うことにいたしましょう」
意識を集中して機体に宿した異世界の精霊と交信し始めるセラ。
ウィル・オ・ウィスプは多くを語らずに主に感覚で戦況をセラに伝える。
それは短所でもあり長所でもあった。セラは戦場にいるすべての人間を知っている感覚に襲われる。
「…橋のうえ…雷の上位精霊…」
セラの脳裏に精霊機ミョルニルが浮かぶ。
「なんですと!やつらは橋を破壊するつもりか!?」
雷の上位精霊と聞き瞬時に悟った老兵ドルガンは精霊炉の出力を全開にし
大橋に猪突しかけるもセラに制止されてしまう。
「お待ちなさいドルガン…ここは私の光の矢で…」
言いかけてセラはこちらに向かってくる気配に気づいた。それは一旦戦場から離脱したレオンだった。
「何者か!?」
セラは精霊による索敵を止めると魔装機セルフィーを操縦して身構えた。
魔装機はライトニングダガーを握りしめている。
「殿下!御下がりくだされ!ここはわたくしめにお任せを!」
ドルガンの魔装機ドルフィーは巨大な戦斧を右手に持ち、
左手には機体全体を覆い隠すような盾を構えながらレオンの魔装機に突進する。
【レオンのフェニキアにシールドアタックをかける老兵ドルガンの魔装機ドルフィー】
>119-120 アデラ【レイヴン隊、サヒュアジン隊の迎撃成功 + 残勢力の様子見のため足止め】
>だがヤツら、艦砲射撃で我々の頭を抑えているだけで満足するか……?
ケルン大橋防衛隊・サヒュアジン隊は、河川中より義勇軍に向かって砲撃を続けた。
レイブン隊への攻撃の合間に、出力を抑えて放水を行い、ケルン大橋の鎮火にあたる。
大気中では鉄砕く矢も、比重の重い水を通してとなっては十分な力を発揮することができない。
河川が天然の障壁となってレイヴン隊の攻撃を防ぐ…
しかしサヒュアジン隊からしても、視界の不自由な中で空駆ける精霊機を的確に狙うのは困難であった。
はじめのうちこそ不意撃ちによっていくらかの損害を与えられたものの、
岸の影や橋の裏に回られては打つ手がない。
>「……よし、的が岸から顔を出したぞ。第1陣、バリスタ放て!」
業を煮やし、不用意に岸辺で浮上したサヒュアジンが、レイヴン隊の放つ集中砲火の餌食となる。
思い切りのかけるサヒュアジン隊は各個撃破の憂き目にあい、一機、また一機と水泡に帰していった。
7機ほどの損害を出すと、これ以上は泥沼になるだけと判断し、残りの数機は河川を遡ってそのまま戦線から離脱した。
>116 フォリナー
>ならば自分達は橋からやってきた連中を返り討ちにするだけだ。
>123 レオン
>ケルト・マリーネに放ったときより遥かに多い数十の魔矢がケルン大橋防衛部隊に殺到していく
「これ以上は…持たない…ッ!」
27番隊の到着に気づくと、片腕のもげた精霊機が近づいていく。
「こちらケルン大橋防衛隊、只今正体不明の敵の攻撃を受け…ぐぁッ!」
すぐにレイヴン隊の矢の的となり、爆散してしまった。
”最重要拠点”にしては、ケルン大橋の守備は明らかに脆弱であった。
遡ること数日前、司令部の老害がフォリナーら橋梁防衛派の意見に水を差したのである。
『連中が、取り残された市民を捨てて橋を攻めるものか…若造がッ』
もとより義勇軍本部のあるロンデニオンの攻略がこの時点で成功するなどとは、誰も思っていなかった。
それを若干26歳の、しかも投降兵が先陣をきって成したのだ。
フォリナーは、王国生まれの老将らの嫉妬の的となった。
だが…結果としてはフォリナーら橋梁防衛派が正しかった。
ロンデニオン攻略戦に人員を割き手薄となっていたケルン大橋防衛隊は、既に壊滅状態にある。
ロンデニオン堅守派の老将らは、今ごろ苦虫を噛むような表情で出撃準備を進めているであろう
第27強行排撃隊の後を追い、他の橋梁防衛派のも続々と駆けつけていた。
一旦橋から離れたヨハンナは、一際高い大木の枝にティアリアの腰を落ち着けていた。
登りきらない朝日を背景に、数多の兵がその命を光と散らして。
遙かなる海より来る大河が、無言のままその戦景を映して。
「すっごいすっごい!パティ、ねぇ見てみて!きれいな花火だねー♪」
『ヨハンナちゃん、ボクはそれもう悪役の台詞だと思うんだ…』
幼いヨハンナは、まだ本当の戦争を知らないのだ。
>124 セラ
>「殿下!ケルン大橋防衛部隊が炎の魔矢によって掃討されていきますぞ!!」
>老兵ドルガンがセラに通信越しに叫ぶ。
「あっ、またなんか来た」
『ティルネラントの機体が多いね。応援かな?』
ケルン大橋へと向かう、セラとその配下、第四軍団であった。
その凜とした指揮官の声に、ヨハンナは聞き覚えがあるように感じた――
「この声は…まさか、セラ様!?」
第四皇女セラといえば、戦場を駆ける美姫として、
男女を問わず一部にカリスマ的人気を誇っていた。
ただ、世情に疎いセラ本人はそのことにあまり気づいていないかもしれない。
ヨハンナは声の聞こえる方、セルフィーへと接近していく。
「あのセラ様と共に戦ったのがこれまたとびっきりの美少女だって分かったら
ヨハンナの人気もうなぎ登り…時代が見えるよ、ヨハンナの!」
『世の中そううまくはいか馬鹿なっ!』「うるさいのよ!」
第四軍団本隊の前に現れたヨハンナは、セラに向かって叫んだ。
「セラ様ですか?シュトロウス侯爵家のヨハンナ・トデスキーニです!
書を、じゃなかった、今暴徒が橋で暴れてます!一緒に戦わせてくださいっ」
シュトロウス侯といえば、十数年前ほと前にシュトロウス地方に転封されるまでは一国の主であった男だ。
その名を知るものの評価は、良くも悪くも、干戈も交えず国を譲り渡した君主、というものが一般的だろうか。
【サヒュアジン隊迎撃され、残機も敗走】【ヨハンナ、セラに接触】
名前 ディクト=シルフィス
年齢 22
性別 男
容姿 整った容姿で切れ長の目、赤髪
体格 身長190cmを越える大男
性格 熱い性格で戦いが好き
身分 ファールデル教国第一傭兵部隊
所属 ファールデル教国
説明 ファールデル教国の傭兵の中でエリート集団である第一部隊に所属しているが、
組織での行動はあまり好きではなく、面白そうな雇い主を見つけては独自で行動している
機体設定
機体名 阿修羅
精霊の種類 地の精霊
精霊の名前 太郎
精霊力3000
耐久力 A
運動性 D
装甲 A
武装
地之剛剣
対魔之護封壁
天之地槍
機体&精霊説明
ファールデル教国に古くから伝わる伝説の金属、緋緋色金で出来た黄金の機体
腕が六本ある特異な機体で、操縦には相当な技術を必要とする
耐久性はとても高く、並の攻撃ではびくともしない
運動性が低いくせにろくな遠距離兵器を持たないためほぼ近距離でしか戦えない
「ああああああ、遅い! この機体は何でこんなに遅いんだ!」
『貴方が重量のある剣を積み過ぎだからでしょう、それにヒヒイロカネは頑丈な反面とても重量があります』
つい先程、教国からロンデニオンに到着したばかりのディクトは雇い主であるテイルネラント王国の第二十七独立強行排撃隊長には明日にでも挨拶しようと思って宿をとった。
しかし、ケルン大橋付近で戦闘が起きているという情報がディクトの耳に届くと、居ても立ってもいられなくなり機体を走らせ、戦闘場所に向かっていた。
王国側は援軍と共に出撃してくれと願い出てきたがディクトはそれをはねのけ単身で出陣していた。
だが、地形を全く把握していないディクトはケルン大橋の場所が分からずに遠回りしてしまった。
その苦労あってか目の前にケルン大橋が見えてくる。
「初めから戦闘が起こっている場所は明るいって言えよ、随分時間喰っちまったじゃねぇか!」
『いやこれは常識なので分かっていると思っていましたよ、これくらい分からないのは馬鹿かディクト様だけです』
「まぁ着いたからいいけどよ、おっやってるやってる、あれは王国軍か?
折角だから挨拶でもしていきますか」
背中から身の丈くらいの大剣を引き抜き、義勇軍の兵に襲いかかる。
予期せぬ機体の出現に義勇軍の兵は戸惑い、盾を構え攻撃に備えてくる。
「ちゃっちい盾だな、んなもんじゃ止められねぇよ、おらぁ!」
三対の手によって振るわれる黄金の大剣は構えた盾ごと機体を両断する。
爆発する機体の炎によって黄金の機体が輝きを増す。
「ファールデル教国第一傭兵部隊所属ディクト=シルフィスだ、義によって助太刀致す!
なんてな」
『聞えるのですか?』
「前もって伝えてあるはずだから大丈夫だろ……多分」
フォリナーの放った初弾が、敵集団の先頭に見事命中し、轟音と共に爆ぜた。
その炎が半ば照明弾の役割を果たし、夜目が利かない者もその明かりを頼りに敵に向かって突き進んでいった。
「気を抜くな!相手はフレキ、ゲーレの連中だ」
帝国側にとっては乾坤一擲の作戦、投入された戦力も並々ならぬものがある。
なけなしの防衛戦力ではどこまで支えきれるかわかったものではない。
サヒュアジン隊にしても空をかけるレイヴン隊に頭を抑えられては思うように動けないだろう。
「いいか、防衛部隊はもういないものとして勘定しろ!敵を排撃して、橋を守ることが俺達の役目だ」
今の時点で、フォリナーは敵の目的が橋を破壊することにあると決め付けていた。
理由は二つ、一つは帝国側にとって橋を占領し維持するには戦力が足りないこと。
もう一つは橋を破壊することで王国側の増援を防ぎ、ロンデニオンに篭る軍勢を牽制できることである。
「だから言ったっつーに、上がここの防衛に力を注いでくれりゃ、こんな面倒なことにはならなかったんだ!」
「敗残兵が何を言っても聞き入れられないことくらい、わかってたでしょ?」
後の面倒を回避したい一心で彼がロンデニオン攻略前に提言した『ケルン大橋防衛計画』は、ものの見事に却下されていた。
おかげで睨まれる羽目になったのだから、余計に面倒が増えただけだと愚痴も増える。
それでも戦闘に支障をきたすことなく、目前の敵を減らしていくのはエースパイロットの面目躍如と言えよう。
ラヴィーネも、冷たい口調で応じながらも主を良く補佐していた。
「次ぃ!」
フロスト・グライテンの力で移動速度を高めたケルテ・マリーネのガンランスが、敵機のコクピットに深々と突き刺さる。
武器を引き抜くと、今度はその首を掴んで引き寄せて9時方向から来た敵の攻撃を凌ぐ。
『し、しまった!』
味方に攻撃をあててしまったことで、敵パイロットが一瞬動揺を浮かべて動きが鈍る。だがそれは戦場において命とりでしかない。
間髪いれずに攻め寄せたフォリナーの部下のサーベルによって、炉を破壊され爆散する羽目になった。
無論、敵もただではやられはしない。狼の異名を持つ陸戦部隊なのだ。
集団での戦闘力は27番隊と比べても決して引けを取らなかった。
戦場がにわかに乱戦の様相を呈しかけた時、ラヴィーネが新たな接近者を感知した。
「3機くるわ、ロンデニオンからよ…この反応は『ウィル・オ・ウィスプ』!?」
「皇女殿下のお出ましかよ!」
確認したフォリナーは、一瞬何かの間違いではないかと思いたかった。
ティルネラント王国第4皇女であり第4軍団を指揮する将軍でもあるセラが、僅かな護衛と共に戦場に乱入してきたのだ。
「この独特の波長は…いつ感じても慣れないわね」
ラヴィーネも普段とうってかわって緊張の表情を浮かべている。
彼女は王族だろうが何様だろうが意に介さないが、相手が異世界の精霊ともなると話は別だ。
さらにその方向に向かって、敵陣から飛び出した機影が一つ。
「あれは!」
「こないだの小僧か!」
見間違うわけが無い。炎の上位精霊の加護を受けたイグニス・フロゴーシスだ。
セラ皇女の駆るセルフィーに向けて吶喊してくのが遠目からも視認できる。
「いいの?皇女様の救援にかけつけなくて
「俺の仕事は、あの坊主とやりあう事じゃねえ」
フォリナーにとって、レオンはしとめ損ねた因縁を持つ相手である。
だが作戦の本質を考えれば相手にしている暇は無い。瞬間的に判断を切り替えた。
「それに、俺が行ったら余計なお世話になっちまうよ」
レオンは上位精霊の宿る特注機にこそ乗っているが、先の戦闘を省みるにまだ戦場に出て間もないことは確実。
一方セラ皇女の側は、本人の機体も魔装機という格別のものであり、齢24にして戦場を縦横する名パイロット。
お付の護衛を勤めるドルガンにしても老練さでは王国随一と謳われるベテラン。
さらにティアリアがセラの方に向かっているのも確認できた。こうなれば事実上の3対1だ。
「ま、あちらさんが遅れを取ることもないか…あの坊やも無茶をするわねぇ」
「まだ戦場慣れしてねえんだろうさ」
戦場においては、よほど自分の腕前に自信が無い限り常に友軍と行動を共にするものだ。
単機になるとすればそれは自分が残る時。それが彼が戦場で定めた鉄則だった。
#魔装機って言うとサイバスターしか出てこない。
大量に展開する敵の防衛部隊。
その数はどんどん増えていき、やがて数では劣勢を強いられるようになるだろう。
そしてホロウ・クロウラーもわずかながらダメージを受け始めている。
「やっぱり無傷とはいかないか…問題ないがね…このくらい」
/「わかったよ、下がるよ。エルトダウンさん、今の攻撃で精霊力を多く消費して〜
「ほい。十分に働いたんだからじっくり休んでてくれて結構だよ。後は任されよう」
特にレオニールを気に留めることもなく再び砲火の中に身を投じるエルトダウン。
が、その時ファラーシアが異変に気付いた。
"どーやら傾奇者が現れやがったようだぜ。しかもかなりのプロらしい。もう数機撃破されてる"
どうやら大橋の方に『そいつ』は居た。
『そいつ』は義勇軍の精霊機を一機、また一機と撃破していく。
「…そっちへ行ってみようか…いいデータソースにもなるだろうしね。ここは他の連中に任せよう」
そう言って大橋へ向けて全速で移動し始める。
――ケルン大橋付近
"アイツみてェだぜ…バカでけェ剣持ってよ。しかも金色のカラーリング…目立ちたがりか?"
ファラーシアがまるで相手をバカにしたような口調で話す。
だが、エルトダウンは知っていた。
「違うね。アレはヒヒイロカネ。とても重い金属だけどその分非常に硬い。
ホロウ・クロウラーのプランBで採用も検討されていたからね。
あんなモノを装甲に使ってなお、移動して戦える…
よっぽどのベテランじゃないとあんな機体操作はできない…
しかも腕がいっぱいあるしね。私も長くロボット研究に奉仕していたが、あんなのは見たことが無い」
実際、エルトダウンがあの機体を操縦しろと言われても、
おそらく数年、下手を打てば十数年の訓練が必要になってくるだろう。
"そりゃスゲェ。だが…遅いぜ?コイツなら余裕じゃねェの?"
それはエルトダウンも考えたことであった。
だが、ロンデニオンでの相打ちを考えると油断は死につながるだろう。
「ここは慎重に行くよ。あんなのでぶったぎられたら、私はもちろん君まで無事じゃないだろうね」
乱戦に移行しつつある戦場において、義勇軍の機体が1つ、27番隊の後方に回り込む。
背後から相手を狙い打ちにしようとした兵士だったが、その目論見を達成することはなかった。
身体ほどはありそうな大剣を担いだ金色の精霊機・阿修羅が戦場に姿を現したからである。
盾を構えて凌ごうとした機体ごと両断され、爆炎によって阿修羅の黄金の装甲が煌く。
フォリナーが雇い入れていた傭兵、ディクト=シルフィスがようやく戦場に到達したのだ。
>「ファールデル教国第一傭兵部隊所属ディクト=シルフィスだ、義によって助太刀致す!なんてな」
「遅いぞ!何やってた!」
「ま、ちゃんと来れたんだからいいじゃない」
予めルートを教えてあった筈なのに遅参されてはたまらない、とぶつぶつ言い出す主をラヴィーネが宥める。
愚痴はいくらでも沸いて出てくるが、いずれにしろ今は状況が好転したのだ。
ならばそれを生かすのが常道。
「まぁいい、一挙に敵戦力を殲滅するぞ!」
133 :
名無しになりきれ:2010/06/02(水) 00:04:43 0
人が増えたな
いいことだ
ドルガンはレオンのイグニスに猪突しかけるも攻撃の手を一旦止めた。
ヨハンナのティアリア・ドラウパディーが急接近してきたからである。
ドルガンの駆るドルフィーはレオンを盾で牽制しつつもヨハンナに向けて
いつでも戦斧を投擲出来るように機体の頭の上に振りかざしたまま構えている。
>「セラ様ですか?シュトロウス侯爵家のヨハンナ・トデスキーニです!
>書を、じゃなかった、今暴徒が橋で暴れてます!一緒に戦わせてくださいっ」
「こどもか?」
ドルガンは拍子抜けしたような声をあげた。するとセラが凛とした口調でヨハンナに語る。
「あなたはシュトロウス侯爵家のお方なのですか?
事実がどうであれ過去をさかのぼって勢力上の問題が起こるとすれば、それは政治の問題として扱われましょう。
あなたが力を借して下さると言うのなら私は構いません。義勇軍を駆逐するために共に戦いましょう!」
「殿下!!相手は子供ですぞ!それに…」
ドルガンは内線でセラに忠告する。
戦わずして国を譲り渡した血族の者に底知れぬ疑義を抱いていたのであった。
「わかっておる。少女のあのような言いようは一番腹黒さを感じさせる」
セラの低くすばやい言いざまにさすがの老兵も息をのむ。
ドルガンはセラの成長ぶりにはほとほと感心していた。
そもそも教育係りでもあるドルガンがこの戦場にセラを引きずり出したのも大軍隊の戦法しか知らない将軍に
戦術を生む思考と戦う者の思考を一体化させた体験律を与えるためなのだ。
ドルガンはレオンだけに視線を向け機体を低く構えると突進体勢になる。
「…というわけだ!邪魔をするな小童!!」
巨大な盾を前面に出し再加速するとイグニスに猪突するドルフィー。
「ヨハンナ。私はこれからライトニングアローで橋上の精霊機ミョルニルに対し超遠距離からの狙撃を行います。
あなたには射線上に入るものを空中から駆逐していただきたいのですが協力していただけますか?」
セラはすでに魔装機の弓矢を構えている。
ウィル・オ・ウィスプの力を宿した機体ほどもある長く巨大な矢は静かに力を蓄えていく。
【セラ=精霊機ミョルニルに対して遠距離射撃の準備、発射まで約2分。ヨハンナに射線上の敵の駆逐を要請】
【ドルガン=再びイグニスにシールドアタック(当たっても盾で機体の体勢を崩す程度)】
フェニキアが感知した敵が僕の目の前に現れた
彼女驚くような敵だ恐らく相当な手練だろうか
それとも、よほどの有名人かと、僕は予想したが、その予想は概ね正解だった
その両方だった
眼前に現れた機体は2機だ
1機はその隙のない動きから、そうとうなベテランパイロットなことがわかる
もう1機は、ちょっとティルネラント王国のことを知ってたら帝国国民でも判る、超がつく有名人だ
「・・・・・・セラ皇女!!」
そね機体、セラフィーは僕でもしっていた
魔装機と呼ばれる王国の精霊機
その性能もかなりのものだという噂だ
そして、彼女自信の武勇は帝国内でも有名だ。知勇兼備の王国の美姫将軍
幾多の戦場を駆け抜け、勝利を手に入れてきたと
「異世界の精霊と契約しているのは知っていましたけど、まさか御本人にであうなんて!」
フェニキアも皇女殿下の登場は予想だにしていなかったのか、驚きを隠せないでいる
「それに、2対1だよ。僕たちには圧倒的に不利だ」
「そうですね。数の不利はどうしようもありません。しかし、私とイグニスの力、そしてなにより、ご自身の力をお信じください」
「うん、わかったよ」
僕はそれだけ答えると剣を構えた
彼女の信頼には言葉ではなく、剣で答える
それが帝国貴族だ
「さあ、かかってこい!」
僕の言葉に答えたかはわからないが、もう1機、お付きの機体のほうが盾を構えて突撃してきた
・・・・・・と、思ったのだか、急停止、別の方向を見据える
奇妙な機体がそこにいた
いままで、こんな変わった機体は見たことがなかった
そして、その機体は恐らく味方ではないだろう
皇女殿下に近付きなにやら、言葉を交わした
そして、従者は隙を見せることなく、会話に参加し、手短に済ませ、再び突撃してきた
咄嗟に剣の腹で盾の攻撃を防御する
シールドバッシュでバランスを崩す。
「くぅ・・・・・・僕の相手はベテランばっかりだ!」
「その方が速く成長できますよ」
「死んじゃったらもともこもないよ!」
「弱きは禁物ですよ。レオン様」
「そんなことを言ったつもりはないよ!」
イグニスに炎の翼が顕れる
機体と周囲を炎の光で照らし出す
「翼にはこういう使い方もあるんだ!」
顕現した翼と宙に舞う羽根
その羽根がドルガンの機体に刺さり、小規模の爆発を起こす
【ドルガンのシールドアタックでバランスを崩すが、フェニキアの羽根の攻撃を繰り出す
その隙にバランスをとる】
>「遅いぞ!何やってた!」
「はははは、すみません隊長殿、でも早く来ていたら俺が手柄総取りしていましたよ。
雇われの身として少し遠慮したんですよ」
『何処で戦闘が起きているか分からなかった、なんて言ったら解雇ものですね』
炎に照らされ煌々と輝く機体は大剣を振り回し、周りの精霊機を次々に破壊していく。
阿修羅は遅くて硬いという性能上乱戦に向いている、最低限の攻撃しか避けずにそのまま突進し圧倒的な攻撃力で叩きつぶす。
だが、不意を突かれて混乱していた義勇軍も次第に体勢を立て直し始め、阿修羅の周りから離れ、遠距離攻撃に切り替えていく。
ただでさえ遅い阿修羅が剣筋の見切りやすい大剣を振り回すだけでは相手も次第に慣れ、避けられるのは道理だった。
敵だけでは無く味方さえも巻き込まれたらたまらないと言わんばかりに離れていく。
『さっきから攻撃が空振りしていて恥ずかしいです。
それに味方からも見捨てられています、これは酷い……』
「うるせぇな、太郎! ちょこまかと逃げやがって卑怯者ども! 正々堂々戦わなねぇか!」
ディクトの挑発も虚しく、誰一人として接近戦を挑もうとする者はいなかった。
痺れを切らした阿修羅はその大剣を地面に思いきり突き立てると、腰から六本も刀を抜き出す。
両刃である大剣とは異なり、反りのある片刃の大剣より短めの刀。
元々大剣は近接戦に使うように作られたわけではなく、攻城用、または攻城兵器の破壊を主な目的として作られたのだ。
「おらおらおら! 誰か俺を止められる奴はいねぇのか!」
三対の刀を縦横無尽に繰り出し、敵の精霊機を八つ裂きにしていく阿修羅。
大剣を置いていったため速度も向上し、手数も六倍になると並の兵士では回避するのは容易な事では無い。
「そういえば隊長殿、今の状況はどうなっている? 敵を倒せばいいと言うのは分かるがどうすれば勝ちなんだ、殲滅か?」
『私は思うのですが、ディクト様は下手に動かずここで素振りしていた方がいいのでは?』
乱戦の中にあって、陸上部隊の情勢は次第に27番隊の側に傾き始めていた。
阿修羅の到着によってもたらされた変化は、フォリナーが予想していた以上に有利に働いている。
>「はははは、すみません隊長殿、でも早く来ていたら俺が手柄総取りしていましたよ。雇われの身として少し遠慮したんですよ」
「言ったな?そんじゃ今日のMVPは期待させてもらうぞ!」
ディクトの弁が言い訳と承知しながら、ジョークを交えて応じるフォリナーの表情には若干だが余裕が戻っている。
対照的に、それまで楽観的だったラヴィーネの表情が次第に真剣身を帯びていった。
「…ウィル・オ・ウィスプから情報が送られてきたわ。敵はミョルニルを持ち出してきたみたいね」
「雷神の槌(トゥール・ハンマー)かよ!」
デカブツ
本来攻城兵器として用いられる大型精霊機だ。その威力は彼も良く承知している。
ケルン大橋を破壊するつもりなら、これほど適材適所な使い方はないだろう。
「となると、セラ殿下はライトニングアローで景気よくふっ飛ばすことを御所望みたいだな」
セラフィーはその間敵の攻撃に対応することは難しいだろうが、
老兵ドルガンが地を、ヨハンナが空を抑えている以上心配は要らないだろう。
作戦遂行をする上で一番の障害は、やはり空を自在に飛び回るレイヴン隊だった。
既に防衛部隊とサヒュアジン隊が叩きのめされている以上、こっちに来ることは時間の問題である。
「レイヴンか…面倒の一言じゃすまない相手だぞ?隊長のアデラにしたって相当の手練れだし」
「フギン=ムニンにしたって数少ない闇の精霊の一人よ」
無論、王国側の増援も次第に戦場に姿を見せ始めようとしている。
であれば、フォリナーとしては厄介な連中の相手は本隊に頑張ってもらいたいのが本音だった。
そこへ、再びディクトからの通信が入る。
>「そういえば隊長殿、今の状況はどうなっている? 敵を倒せばいいと言うのは分かるがどうすれば勝ちなんだ、殲滅か?」
「まぁ間違って無いわね」 不 貞 の 輩
「当面の目標は皇女殿下に近づこうとするフレキ・ゲーレの陸戦部隊を殲滅することだ」
基本はセラのライトニングアローをサポート。見事ミョルニルを破壊できれば良し。
もし破壊できなかった場合のことを想定し、敵の陸戦部隊を排除しつつ攻城兵器に接近。
これを無力化せしめることが出来るように備えておく。
「うっかり射線に入るなよ?」
「誤射で撃ち落されても労災はおりないものね」
くすくすと笑いながら不謹慎なジョークを飛ばすあたり、主の癖が少しずつ伝染っているラヴィーネだった。
140 :
名無しになりきれ:2010/06/02(水) 23:40:03 0
結局橋は壊すのか壊さないのか
>134セラ【ヨハンナに射線上の敵の駆逐を要請】
声の主が確かにセラであることを確認すると、ヨハンナの声調は半オクターブほど上がってしまって。
「ほ…ホンモノのセラ様ですか!?ありがとうございますっ!
このヨハンナ、セイシンセイイお尽くししたく思うショゾンであります!」
「なんということでしょう!ヨハンナは、初舞台をセラ様と競演してしまったのです!
正真正銘、本物のセラ様よ!これでロザリーポジションはいただきね♪ナイス暴徒!いぇい♪」
「きっとこの戦いの後、ヨハンナはお忍びの姫様を暴徒から守ったヒロインとして、一躍時の人となるの。
それでそれで、セラ様おつきの騎士に目に止まって…
嗚呼、けれどもヨハンナには皇子様とのお見合いの話が!」
『おーい、帰ってこーい』
「けどね、近衛騎士は実は桂冠詩人に引けを取らないぐらいの詩の名手で、ヨハンナの心を射止めるの。
そして、ヨハンナと彼は、二人で世界中を回って…彼が作った詩を、ヨハンナが歌うの。
彼の詩を歌ったら、たとえ瓦礫のオペラだって超満員なんだわ…」
『それじゃロザリー関係なくない?ヨハンナちゃん…』
もう空は朱く染まっているというのに、そこに星の輝きを見ているヨハンナの夢想は、遙か未来へと向かっていて。
その目は一歩前の現実を見ていない。当然、ドルガンの疑りなんて片言も耳に入っていなかった。
しばし悦に入り、自作自演の夢の舞台で踊り続けると…はっと目を覚まして。
「さぁ、そうと決まれば、後は目の前の敵を討つだけよ。いくよ、パティ」
『なんだかなあ』
ケルン大橋に向かって飛ぶと、第27番強行排撃隊に隠れるようにして、弓を構える。
たしか、橋の上のをどうにかすればいいって聞いたと思うけれど…
ちょっと記憶があやふやかもしれない。
小さな胸を期待でいっぱいに膨らますヨハンナに敵はなかった。今なら月も射てられるはず。スターダストアローの弦は硬く、そして本来矢を添えるべき場所には代わりに砲頭があった。射手の意を介して、藤頭が翠緑の輝きを持ちはじめる…
「誰だか知らないけれど、ティルネラントはテロには屈しないよ!下がりなさい!」
ヨハンナの放った風弾は翠光を湛えながら空を穿ち、そして、
そのまま天へ還り、西の空に輝く明けの明星となった。
「なんで当たらないのよ〜!ちょこまかちょこまかと逃げ回って、それでも本当に男なの!?止まれー!」
『止まれって言って止まる相手はいないと思うよ…』
「正々堂々、ティアラちゃんの攻撃を受けなさい!卑怯者ぉ〜!」
顔を真っ赤に染めたヨハンナは、ティアリアを少し前進させると、
ろくろく狙いもつけずにスターダストアローの風弾を散らした。
「こうなったら仕方ないわ。ティアラちゃんの全力、思い知らせてあげる!」
『これじゃ全力じゃなくて悪あがきだよ、ヨハンナちゃん』「むっき〜!」
後衛に回ってお姫様の防御を務めたほうがよっぽど王国に貢献できるだろう…
この場においてティアリア・ドラウパディーの性能を知る数少ない存在である
ハウリンティウスは、小さく溜息をついた。
【→レイヴン隊B班:フォリナー隊に混じって弓を射るも当たらず、逆上して風弾を乱射】
>「ほ…ホンモノのセラ様ですか!?ありがとうございますっ!
>このヨハンナ、セイシンセイイお尽くししたく思うショゾンであります!」
「私もうれしくおもう」
にこやかに返すと機体を水平に保ちすぐさま狙撃体勢をつくるセルフィー。
セラは異世界の光の精霊ウィル・オ・ウィスプをスポッターとして狙撃を敢行するつもりだ。
すでに友軍には射線上からの退避命令が勧告されているが介入はすこしばかり遅すぎたのかも知れない。
雷精を抽出し蓄積を完了させつつある精霊機ミョルニルの大槌はいつ振り下ろされてもおかしくはない状況だった。
セラはまわりの状況を確認するために交戦中のドルガンとレオンを何気なしに見つめる。
イグニスの機体からは炎の翼が顕れ周囲を炎の光で照らし出していた。
>「翼にはこういう使い方もあるんだ!」
「ぬぐおおお!」
ドルガンの機体は小爆発に包まれる。
「まどろいわ!小童!!」
機体の損傷は軽微なようだ。ドルフィーは爆発で煙る機体そのまま、鋼の足でイグニスを蹴り飛ばす。
「ここで戦闘に不慣れな若造を殺す道理はワシにはない!立ち去れ!」
それは先制して攻撃を仕掛けた老兵の矛盾した言葉でもあったがレオンを「たやすい相手ではない」と判断した老兵の陽動の言葉でもあった。
目的はあくまでも精霊機ミョルニルの破壊。言葉でレオンを退けられるのならそれに越したことはない。
−−精霊ウィル・オ・ウィスプの力を借りているセラは特別な感覚に襲われている。
戦場にいるすべての人々を知っているという感覚の中、闇で蠢く魂はぶつかりあい消えてゆく。
ウィル・オ・ウィスプは異世界の光の精霊であるがガイネアの光の精霊とはまるで異なっているようだった。
魂は飛び交う戦場で荒々しい雷の精霊の波動を捉えたセラはついにセルフィーから巨大な矢を放った。
大気を切り裂き確実な精度をもって精霊機ミョルニルに迫りゆく実体と霊性を秘めた光の矢。
死すべき者たちの踊るつかの間の荒地に霊性の光が死の影を落す。
【ドルガン、レオンに戦場からの退去を促す。精霊機ミョルニルへライトニングアロー発射(成否不明)】
>133
いいことだがROM専からしてみればそろそろ頭の処理がおっつかねぇぜ。
一応全員のレスには目を通してるけど文末の【 】でまとめてくれたほうが状況を整理
しやすくてありがたいね。
別に頼まれてないけど、この辺でいつもの〜♪
○登場人物まとめ
神聖ローガンブリア帝国義勇軍
レオニール・ルラン・ファーブニール(イグニス・フロゴ−シス)
>>4 アデラ・グラーフストレーム(コルバス・コラックス)
>>72 ティルネラント王国軍
フォリナー=エグラート(ケルテ・マリーネ)
>>8-9 ヨハンナ・トデスキーニ(ティアリア・ドラウパディー)
>>106 セラ(セルフィー)
>>118 ドルガン(ドルフィー)&アロル(名称不明)>>NPC
ファーデル教国傭兵部隊
ディクト=シルフィス(阿修羅)
>>127 ASL(人工精霊研究所:Artificiality Spirits Laboratory)
エルトダウン・シャーズ(ホロウ・クロウラー)
>>7 ○機体の総合的な格付け
(判定はS=7点、A=6点、B=5点、C=4点……というように各能力値を足して4つを平均化したもの)
(なお、精霊力に関しては2000=4点とし、500ごとに1点上昇として判定している)
(※あくまで好事家が趣味で算出した“素体だけ”のカタログスペック、戦力・火力の絶対的差ではないので注意)
S
A
B 阿修羅(5.25)ケルテ・マリーネ(5.6)イグニス・フロゴーシス(5.75)
C ティアリア・ドラウパディー(4.35) セルフィー(4.4)
D ホロウ・クロウラー(3.25) コルバス・コラックス(3.5)
E
F
G
>124 「私は戦場の詳しい状態を知りたいのです。ウィル・オ・ウィスプの力を使うことにいたしましょう」
『 Someone's watching us 』
誰かに見られている、とアデラの使役精霊フギン=ムニンは警告した。
アデラは全く気が付かなかったが、この精霊には明らかな違和感があったようである。
一説によれば、彼らは人知の及ばぬ領域への感覚を持っており、しばしばそれを使って交信するという。
「おそらく敵の観測精霊の仕業だ。ミョルニル(橋の破壊兵器)の存在は露見したな…」
きっと敵には広域の索敵を行える精霊機が配備されているのだろう。
そして、ミョルニルに宿るのは雷を司る上位精霊である。
目立たないはずがない。
観測の網の目を抜けられたとは到底思えない。
アデラの頬を冷や汗が伝う。
こちらの目的と手段が悟られた今、あとは此方彼方のスピード勝負・時間の戦いのように思われた。
>141 【→レイヴン隊B班:フォリナー隊に混じって弓を射るも当たらず、逆上して風弾を乱射】
多数の輝く風弾がレイヴン隊を襲った。
それもミョルニルの護衛についていたB班に向けてである。
しかし彼らは今、敵軍に対して直接的な航空攻撃をしていない。
「明らかにミョルニルを意識した攻撃だ。連中何を狙ってる……?」
アデラは考えた。
敵は多分、大型精霊機ミョルニルを破壊しようとしている。
そのために護衛のレイヴン隊B班が邪魔なのだ。
では、具体的にどうやってミョルニルを破壊する気なのか。そこが対応と反撃の鍵である。
地上部隊の強行突破?
いや、その包囲を段々と狭めてはいるが、敵に戦力集中の兆しはない。
航空部隊の集中爆撃?
現状視認できるのは排撃隊に混じって弾幕を張っているあの1機だけだ。
あの機体にそこまでの火力があるとは思えない。
ではなんだ。カラスを追い払った後、何をする気か。
「狙撃」『 Snipe 』
人間と精霊の思考が一致を見た。あり得る。
観測機がいるのなら、それを生かす能力を持つ精霊機がいて何ら不思議はない。
「この乱戦状態で敵狙撃手の特定は無理だ。フギン=ムニン、煙幕出せ」
『 Elemental Counter Measures : ON 』
アデラの搭乗機コルバス・コラックスの背面には、フギン=ムニンが生み出す闇の粒子を増幅させる仕掛けが施されている。
「闇の粒子」は一切の光を遮断する性質を持つ、一種の煙幕だ。
アデラは搭乗機でミョルニルに接近すると、その周囲をすっかり暗黒で覆ってしまった。
もはや彼らを通常の視覚で捉えることは困難である。
ただし、鋭敏な感覚を持つ精霊や大きな力を持つ上位精霊に対してどれ程効果があるかは疑問であるが…。
【ミョルニルを煙幕包みで射線を遮る】
>142 精霊機ミョルニルへライトニングアロー発射(成否不明)
光の矢はコルバス・コラックスの発する闇を切り裂き、ミョルニルの機体を貫く。
それだけに留まらず、光は河川の対岸に吸い込まれ着弾地点に大穴を穿ったのだった。
しかし、暗黒粒子による精霊妨害(ジャミング)は一定の効果を見せたのである。
「ミョルニル左腕大破、だが直撃は避けた!」
フギン=ムニンは闇の粒子の濃度を巧みに変化させていた。
暗闇の内部では闇と雷の精霊力がところどころで交じり合い、打ち消し合い、混沌の様を成す。
そして雷精の集積状況でミョルニルの位置を知ろうとした観測手を欺瞞にかけたのである。
結果、射撃は数メートルのズレを生じ、ミョルニルの左腕を吹き飛ばすに止めた。
アデラは被害報告と共に、ミョルニル操手へ作戦遂行への障りはないかを確認した。
返答、「作戦続行可能」。
イルアン・グライベル…雷精自体を掴んでしまう特殊な手甲…がどちらか一方でも無事であれば事は足りるのだという。
幸運であった。
たった数メートルの誤差が、生死の境界であった。
もし光矢がミョルニルの操縦槽に直撃していたら、あるいは武器である大槌を破壊されていたら。
両足のどちらかを失って機体の平衡を保てなくなっていたら。
この作戦は手詰まりである。
しかし幸運でなければ、戦場で生き残るのは難しい。
【セルフィーのライトニングアロー、ミョルニルに命中するも撃破ならず】
『 Mjolnir is rdy 』
アデラの体に宿る闇の精霊フギン=ムギンが建築物破壊兵器ミョルニルの準備完了を報告すると、ケルン大橋のたもとがにわかに発光し始めた。
ミョルニルの大槌が、大気より雷精のエネルギーを蓄積している。それが飽和状態に近づいたのだ。
イィィィィィィン
発動機の駆動音のような、甲高い音が響く。
十年前、ローガンブリアとティルネラントの共同開発で建設されたケルン大橋。
アデラには、これが両国融和への最後の架け橋と思われた。
それを今、自分たちの手で壊そうというのである。
「……感傷だな」
全てはもう遅いのだ。
帝国領はすでに蹂躙され、事態は引き返せないところまできている。
そして、だからこそ、あの恐ろしい破壊の権化がアデラの号令を待っている。
「雷精充填完了につき秒読み開始!
3、2、1、トールハンマー、インパクト!」
精霊機ミョルニルがその隻腕を振りかぶった、次の瞬間。
稲妻が閃き、雷鳴が轟いた。辺りが真昼のように白み、爆音が耳をつんざいた。
その光に誰もが目を閉じ、その音に誰もが耳を塞いだ。
目の前の世界が揺れる。それは、まるで天からの一撃のように思われた。
大槌の柄は、雷精によってどこまでも伸張した。
長く伸びる柄を持って打ち下ろすさまは、打撃というよりむしろ投擲であった。
大槌は半円を描いて橋の中央へ落ち、触れたもの全てを爆砕し分解した。
荒ぶる雷精の群れは橋げたを貫通し河川へと向かい、流れる水をもその破壊の対象とした。
水柱が上がったかと思われたが、それは沸騰してすぐに別のものになった。
その様子は遠くアルバニアンの軍宿舎からでさえも観測することができた。
一転、静寂。
咽返るような水蒸気と、焦付くような臭いが一体を包んでいる。
一連の現象が終りを告げると、ケルン大橋の一部は消滅していた。
特に橋中央付近は文字通り、「何もなくなって」いた。
橋の東西では支柱部分がわずかに形を留めていたが、大きく亀裂が入り、すぐに崩落が始まった。
少しの時を待つこともなく、全てが河川に飲み込まれてしまうだろう。
「ケルン大橋の破壊に成功した。
ミョルニルは機体冷却に入っている。直ちに空輸し避退させろ」
その破壊力に唖然としながら、アデラはミョルニルの後送を味方に指示した。
事実、驚いている暇はない。
続々と到着するロンデニオンからの敵増援に対応しつつ、迅速に後退しなければならない。
作戦の半分は完了した。もう半分は、味方の生還を以って達成とするのである。
【ケルン大橋の破壊に成功】
【義勇軍・ケルン大橋破壊部隊の面々に撤退を呼びかける】
【作戦成功を受けて、義勇軍・ロンデニオン攻略部隊がロンデニオン西部より前進開始】
フレキ・ゲーレ隊はよく善戦しているが、時間を追うごとにその数を撃ち減らしていった。
フォリナーは射線に入らぬよう細心の注意を払いながら、次第に橋との距離を縮めていく。
「待って!闇の粒子が広がっていくわ!」
「煙幕か、小賢しい真似しやがってからに!」
刹那、光の矢が轟音と共に橋の方へと突き進み、黒煙の中に吸い込まれていく。
直後に響く轟音。セラが放ったライトニングアローがミョルニルに命中したのだ。
「やったか!?」
「だからフラグ立てるなって何度言わせるのよ!」
主に突っ込みを入れながら、ラヴィーネはおそらくこの攻撃が敵を静止させるにはいたらないことを肌で感じていた。
コルバス・コラックスから生み出された闇の粒子が次第に晴れていく。
そこに現れたのは、片腕を欠損しながらも作戦能力を残しているミョルニルだった。
「マジかよ!?」
嘆いたところで、状況は変わらない。
ミョルニルの雷神の槌に雷精エネルギーが充填され、飽和状態に近づくにつれて発光による輝きが増していく。
橋の破壊まで残された時間はあとわずかだった。
「このままじゃ拙いわね」
「わかってら!」
フレキ隊の隊長機の操縦席を叩き潰し、そのまま殴り倒して踏みつけると、フロストグライテンを作動させる。
通常であれば、氷の板を精製して機動力の心もとないケルテ・マリーネを滑走させる為の装備でしかないが、
敵機を踏みつけた状態で装置を動かせば、そのまま足元の敵ごと凍てつかせて巨大な氷塊となるのだ。
「間に合え!」
横倒しの精霊機を凍らせて出来た巨大な氷塊を土台代わりにしつつ滑走。妨害を試みる敵を次々に敵を突破しして橋に向かう。
だが…
「うおっ!?」
「キャッ!」
この世の終わりを髣髴させるかのごとき雷鳴、そして世界を覆うかのごとき白い閃光。
直後に起こった膨大な水柱と水蒸気、白煙。清らかな流れと湛えられた川は濁流にとってかわった。
「間に…合わなかったわね」
10年にわたって王国と帝国を繋いできたラーメン橋は、轟音と共に消失した。
残存する橋げたも、最早急流に耐え切れず崩落を始めている。
ケルン大橋の防衛作戦は失敗に終わったのだ。
「ついでにテメエも沈め!このクソッタレが!」
滑走し、猛スピードとなっていた氷塊から飛び降りざまにけりを入れて方向を変えるフォリナー。
”それ”は一度バウンドすると、そのまま空輸体勢に入りつつあったミョルニルに一直線で向かっていく。
ワイヤーで固定され、空中に引き上げられようとしていたミョルニルに、回避行動をとることは不可能だった。
加速度的に突っ込んできた巨大な氷塊がモロに激突すると、バランスを崩し着水。
牽引しようとしていたレイヴン隊の1機を巻き添えにして濁流に飲み込まれていった。
だが、八つ当たりで敵を落としてもどうにもならない。
「どうするの?隊長さん」
「こうなったら仕方ねえ!全機撤収、東部防衛ラインを堅守するぞ!殿は俺とディクトだ!」
今は暗転しつつある状況を僅かにでも食い止めなければならなかった。
【ミョルニル:撤退の為に空輸しようとしていたところを攻撃され川に流される】
【27番隊:防衛目標だったケルン大橋大破により、ロンデニオン東部の防衛ラインを堅守するべく撤収】
149 :
名無しになりきれ:2010/06/04(金) 00:48:25 0
橋は落ちたか
氷夫妻二度目のフラグワロタwwwwww
セラ姫×アデラ姐の攻防とか、マジかっこよすぎ。
みんなキャラ立ってるな〜
>144-146アデラ 「この乱戦状態で敵狙撃手の特定は無理だ。フギン=ムニン、煙幕出せ」
「なにかモクモクとわいてるね…。ふふっ、チャンスよ!
目の見えない敵なら、撃ってれば一つや二つ当たるはず!」
コルバス・コラックスが煙幕を張ると、むしろ嬉しげに攻勢を強めて。
はしゃぐヨハンナの横で、ハウリンティウスは違和感を強めていた。
『航空部隊がいるのに、煙幕…?ヨハンナちゃん、あの煙幕の中に入っちゃダメだ!』
「えっ」『下がって!早く!』
砲撃は続けながらも、ティアリアを後退させて煙幕から距離をとる。
『視界不良だと、天地の区別が効かなくなって危ないんだ。
今残っているのは空戦機ばかりだし、あまり意味がないんじゃ…。
他にもっと大事なものがあるのかな?それとも、幻術…?』
「…っ!?」フォリナー隊から離れたティアリアを狙い、レイヴン隊の矢が飛ぶ。
どうやらティアリアの足に被弾したようだ。なんとか姿勢を直す。
「こんのぉ〜!名無し兵士のくせに、ティアラちゃんにキズをつけるなんて!
ヒロインは番組の終わりに近づくほどにパワーが遙かに増す…
そして使ってない武器をあと二つも残している!これがどういうことだか、分かるよね♪」
ヨハンナは何もない宙空に手をかけた。
「番組終了まで後5分!いっきに雪崩れ」
その時だった。
*
ガガガッ、ガウンッ、ゴゥン…ゴゥン…ゴーンッ…ゴ…ン…
一瞬、目の前が真っ白になって。
視界が戻った後も、衝撃波がビリビリと伝わってくる…
ティアリアの操縦席は耐衝撃性に優れるけれど、外身はそうはいかない。
ゆらゆら陽炎のように視界が揺れて、そしてその先では…
「なになに!?一体何が起こったっていうの」
『そういうことか…』
目の前にある”はず”のケルン大橋が、跡形もなく崩れさっていた。
川へと下る橋のかけらに混ざって、ティルネラント、そして義勇軍の犠牲者たちも海へと還っていって。
くろがねの墓標を運ぶ大河は、まるで全ての罪を消し去るレテの川のように。
気がつけば、日輪はその全身を海から天へ上げていた。
ヨハンナの瞳は、川の流れの風にそよぐ様を見つめて。
*
「えっ、ヨハンナの出番今日これで終わり!?まだ何もしてないのにー!」
『何もしてないって、これだけやれば十分でしょ…』
>146【作戦成功を受けて、義勇軍・ロンデニオン攻略部隊がロンデニオン西部より前進開始】
老将はその怒りと焦りを思いっきり執務机に叩きつけた。額には冷や汗が浮かんでいる。
無理もなかった。今日は勝利の美酒に酔いしれる者が、明日にはその盃を自らの血で潤す…
そんなことが、このティルネラントではしばしば起こっているのだから。
「ぐぬう…認めん!断じて認めん!」
司令室の扉が開き、部下によって事の次第が伝えられる。
「ほう…」老将は、静かに笑みを湛えた。
*
兵士A「敵さん、橋の方で暴れてるらしいぜ」
兵士B「司令は陽動だって言ってるけどなあ」
兵士A「ま、何にしろ仕事がないっていうのはいいことだ」
ローガンブリア義勇軍による”ロンデニオン攻撃”への警戒のため、
総力体制を整えるように発令されてから、もうしばらく時間が経つ。
どうやらハズレだったらしい…と哨戒の兵士が思いはじめていたその矢先。
前線に並べられていたデコイが倒れる。それも一つや二つではなく、矢の羽音のフーガを奏でて。
兵士A「…来ちまったみたいだな」
ローガンブリア義勇軍襲撃の伝達はすぐに司令部へと届き、
その間も、伝わった部隊から順に前線へ向かった。
*
老将「想定通りの結果になったじゃないか。思った通りだ。所詮若造の戯れ言、経験に勝るものはなかったよ」
兵士C「は?」
老将「当初の計画通り…総員、防戦せよ!ローガンブリア軍をロンデニオンに入れるな!」
老将は――ローガンブリア軍が攻めて来ているにも関わらず――
まるで吉報を聞いたかのような様子で命令を発した。
>125(自己参照)
>ロンデニオン堅守派の老将らは、今ごろ苦虫を噛むような表情で出撃準備を進めているであろう
老将はそのプライドゆえ、未だケルン大橋へ本隊を割いていなかった。
ケルン大橋攻撃の知らせを受けてまで橋梁防衛派を留めることはできない…
フォリナーの第27強行排撃隊を筆頭に、多くのトップガンが橋へ向かっていったのは事実だ。
しかし…
政争を避け、その日その日の情勢を見て強者につく傭兵。
あるいはもっと露骨な、老将に媚びを売って地位を得ようとする者。
悲しいかな、そういう者も決して少なくはなかった。
ケルン大橋へ向けるか否か、出撃準備のみで宙に浮いていたティルネラントの矛が、
今、ロンデニオンを奪還せんとする義勇軍の尖兵に突きつけられる。
義勇軍のホームグラウンドであるとはいえ、決して楽な戦いにはならないだろう。
【ヨハンナ=何もできないうちに橋を落とされる(全弾外れ判定)】
【→義勇軍・ロンデニオン攻略部隊:
ケルン大橋に向かわせるか迷っていたロンデニオン堅守派の王国軍と衝突】
まるでこの世の終わりを告げるような轟音と振動とともにケルン大橋が崩壊する。
それは雷の上位精霊を宿した精霊機「ミョルニル」によって引き起こされたものだった。
「あーあ、ついにやっちったか……これでもう後戻りはできねぇぞ」
『これで帝国との亀裂は決定的なものになりました』
「まぁそっちの方が俺は面白れぇから、わざわざ来たかいがあったな」
冷却状態に入り、空輸されようとしていたミョルニルへフォリナーが氷塊をぶつけ、川に落下させる。
>「こうなったら仕方ねえ!全機撤収、東部防衛ラインを堅守するぞ!殿は俺とディクトだ!」
「堅守? 何だそれ? 俺は殲滅って命令しか聞こえねぇな。
ここにいる奴らを殲滅しないと帰らねぇぞ!」
『早速作戦無視ですか、でも殿としては悪くない選択だと思います』
阿修羅は三対の刀を再び腰に仕舞うと、地に突き刺した大剣を引き抜き構えた。
その姿は鬼神と呼ぶに相応しいほどの闘気を放っている。
橋を破壊した事で役目を終え背を向け逃走を始めた部隊に単身斬ってかかる。
大橋を破壊し、気を緩めていた精霊機を一機、また一機と破壊していく。
相手も阿修羅の危険性を察知し、二、三機ほどで逃げる時間を稼ごうと反転し向かってくる。
しかし、阿修羅は一薙ぎで全てを破壊すると、また逃げる精霊機を追う。
常人からすると、あまりに愚かで無謀な行為ではあったが、阿修羅だからこそできる愚行であった。
――数分後。
『そろそろ潮時かと』
「損傷率60までは余裕だろ? まだまだいけるぜ」
『違います、きりがありません、ロンデニオン攻略部隊が混ざってきています、単身で止めるのは不可能です』
いつの間にか阿修羅の周りにはロンデニオン攻略部隊が集まってきている。
太郎の言う通り、このままでは囲まれ、流石の阿修羅でも持ちこたえることは不可能だろう。
阿修羅は燃えさかる炎を背に受け、血のような紅い輝きを残したまま撤退を始める。
既にある程度後退していたフォリナーの元へ向かう。
命令を無視したディクトではあったが、一応殿の役目は果たしていた。
「隊長殿、これからどうする? このままロンデニオンまで退くか?」
『やることが分からなくなると途端に指示を仰ぐ、典型的なゆとり脳です』
【ディクト:ケルン大橋破壊部隊をほぼ壊滅させ、撤退を始める】
「落ちた…か。さて、じゃあファラーシア。私たちも動くとしよう…」
轟音と共に崩壊していく橋と、それに群がる精霊機群。
それらを見つめつつ、エルトダウンは不敵な笑みを浮かべる。
"来ちまったか…あの娘には当てないでくれよ…"
その時、はるか上空には巨大な鉄の翼。その翼にはASLのロゴが入っている。
そこから一機の精霊機が投下される。
ズシンという地響きとともに着地したそれに、武器という武器は全く無かった。
『待たしたな、ホロウ・クロウラーのパイロット。
こちらは…そうだな、サイアニス・テネブラエ。シュヴァルツ・ヴァルトのパイロットだ』
突如の援軍。これはASLの、我々はオブザーバーではないという意思表示でもあった。
「サイアニス・テネブラエ…青き闇か。女性にしては幾分、センスの悪い名前だと思うがね」
『構わない。センスの悪いのはお互い様だろう?エルトダウン・シャーズ』
半ば喧嘩の様に会話する二人。エルトダウン・シャーズとサイアニス・テネブラエ。
"エルトダウン…あれが空の精霊…シエロか?すげえパワーを持ってるんだが"
驚嘆するファラーシア。
『さあ、敵はどちらだ?帝国か、王国か?』
把握しているハズであるにも関わらず、聞いてくるという事はやはり彼女もエルトダウンと同じように『戦場荒らし』なのだろう。
「敵…敵はローガンブリア帝国義勇軍。完璧に叩きのめしてほしい。
…聞こえるか、ティルネラントの部隊長。我々はたった今からティルネラント側を支援する」
サイアニスもその声明を送ると直ちに行動を開始した。
"お…おい、どうやって戦うんだよ…?丸腰じゃねえか。アイツ"
そう、シュヴァルツ・ヴァルトは何の武器も持っていないのだ。
「あれは機体の格闘能力のデータを集めるための機体でね。
彼女にはあの拳と足こそが武器なのさ」
たった二機で反旗を翻す。
これがASLのやり方。このような形でデータを集めることは稀である故に上層部が下した決断だった。
【エルトダウンに増援。そしてティルネラント側に寝返り】
ドルフィーが小爆発に包まれ、煙りでその姿をしっかりと確認、出来なかった
剣を構えどんな動きでも迎え撃とうとした
煙の中から何か鉄の塊が飛び出してきた
ドルフィーの足だ
いきなりのことに反応が遅れ、蹴りをまともに受けてしまった
機体が地面につく
ドルガンの罵声が耳に響く、屈辱てきだった
頭が真っ白になった
体が勝手に動いく、
「レオン様いけません!敵の言葉にしたがいましょう!」
「うるさい!!敵にあそこまで言われ、機体に土をつけられて黙っていられるか!」
セラフィーがライトニングアローを放ったとほぼ同時にドルフィー強烈な剣の一撃を放つ
その後のことなどなにも考えていない一撃だったが不利な体勢から放振るわれたのがその太刀筋を弱らせた
凄まじい、凄まじ過ぎる爆音が響いた
ケルン大橋が落ちたのだ
名前 アルタイテン
年齢 見た目は10歳程度
性別 女性
容姿 ぼんやりとした紅い瞳で、髪が身長よりもずっと長い。白髪。
体格 年相応。だが少し細い。
性格 物事を全て機械的に処理し、感情があるように思えない。
身分 ?
所属 それ以外
説明 過去に何度か確認された謎の存在、「アルタイテン」の内部に取り込まれている少女。
いつも眠っているかのように瞳を閉じており、全く動かない。
突然喋りだすこともあるが、言っていることは意味不明で、声も無機質。
「アルタイテン」というのが少女を指すのか、機体を指すのか、はたまた精霊のことなのか、
詳しいことは何も解っておらず、今のところは「これ自体」がアルタイテンであるとされている。
機体設定
機体名 アルタイテン
精霊の種類 虚無
精霊の名前 アルタイテン
精霊力 9800
耐久力 S
運動性 G
装甲 A
武装
アール:全身からクリスタルを発射し、更にそのクリスタルから拡散光線が発射されるMAPW
セト:額から光線を発射。
ノヴァル・エメト:右手から黒、左手から白の光剣を伸ばし、斬りかかる。
レオーズ・シュム:腕から伸ばしたクリスタルを高速回転させたドリル。
オルギオン:胸部から黒い光を発射する。
ディスハルキュオン:全身にエネルギーを纏って突撃。
機体&精霊説明
過去何度も争いの空に現れた謎の戦闘体。
針山の様な黒い巨大なクリスタルから、人型の上半身が生えた特異な外見をしている。
急に出現し、何もせず、ただ傍観しているだけかと思いきや、
無差別に破壊行動を開始するなど、その目的は不明。
敵役のみで参加希望です。
ボコボコにされたいのでこんな風にしてみたんですが、これでイケますか?
昨日の友は今日の敵……そして、5つ目の勢力の出現か。
第2話にして波乱の展開だな。
>>156 敵役だけの参加も大歓迎ですよ
設定も面白いですね
いろんな設定が増えて世界が広がっていきますね
繰り出されるイグ二スの太刀は不利な体勢からとはいえ、そのスピードは尋常ではない。
が、ドルフィーも尋常ではなかった。なんと巨大な戦斧で太刀を受け止めたのだ。
ぶつかり合った二つの武器から発する衝撃音で大気が震え二つの機体の力比べが始まる。
「ぬおおお!」
ドルガンは顔面を揺すって雄叫びをあげる。
すると遠くから凄まじい爆音が響いた。大橋が壊されたのだ。作戦は失敗したのだ。
「姫!!」
ドルフィーはイグ二スとの力比べを止め機体をバーニアで跳躍させるとセルフィーの真横に着地する。
ドルガンは殿下ではなく姫と呼んでいた。武人ではなく教育係りとしての顔をのぞかせていたのだった。
2機は並んだと同時にロンデニオン方面に向かって流星のように撤退する。
「……敵に鮮やかな者がいる」
セラは呟いた。ウィル・オ・ウィスプで感じたセラ独特の表現だった。
【セラ撤退】
グラード・ゼリュペットは地方の豪族だ。
目的は配下の精霊機隊と共に軍功を上げ名を売ること。
夜明けのガイネアをグラードはロンデニオンに向って30機の精霊機隊を直進させている。
義勇軍のロンデニオン攻略部隊と合流するためであった。
しかし偵察隊を通じロンデニオン東部を堅守している第27番強行排撃隊の動きが
重いと判断したグラードは合流を一旦見送りフォリナー率いる27番隊の駆逐に専念することにした。
グラードを先頭にした精霊機隊は駆けに駆けてフォリナーの伏せている敵陣へと猪突する。
当然、敵の斥候を気遣うべきであったが、一旦行動を決めた瞬間から無駄に戦力を割く余裕はなかった。
真横から奇襲をかけ敵部隊を殲滅し敵の後続を絶つ。その上で敵の本隊を事前に捕捉して、
それが圧倒的な戦力であったら退避する。そう決めていた。
「撃てー!!」
グラードが叫ぶとグラード隊から27番隊へ機関砲による射撃が敢行される。
27番隊の精霊機が数機、爆発で四散した。
「出鼻を挫く!!左右二手に分かれて挟みこめ!隊長機は俺がやる!!」
グラードは土の精霊機グラドフのスレッジハンマーをケルテ・マリーネに向かって振り下ろす。
【グラード隊。27番隊に奇襲】
名前 グラード・ゼリュペット
年齢 26
性別 男性
容姿 長い黒髪を頭の天辺で豪快に縄でくくっているが目が悪いため丸い眼鏡をかけている。
体格 長身でがっしりしていて日本刀でも持たせればほとんど武士。
性格 豪胆にして繊細な野心家。
身分 地方の豪族の棟梁。
所属 神聖ローガンブリア帝国。
説明 名を上げるために戦闘に参加。
機体設定
機体名 グラドフ
精霊の種類 土
精霊の名前 ガイアン
精霊力 3800
耐久力 B
運動性 D
装甲 B
武装
スレッジハンマー:両手持ちの巨大ハンマー
ブーストハンマー:ハンマーを飛ばし大爆発を起こす(弾数1)
ハードパンチ:強烈な打撃攻撃
ミサイルランチャー:文字どうりのミサイルランチャー
アースシェイク:精霊の力を籠めたハンマーで大地を引き裂き鉱石を噴出させて敵全体に大ダメージを与える
機体修復:土の精霊の力で装甲の再構成を行う
機体&精霊説明
鉱石と金属の中間のような素材の機体。荒地などではそのフォルムが自然に迷彩となる。
土の精霊ガイアンはその地域に土着した伝説の精霊であり知る者も少ない。
(セラ撤退の間、義勇軍で参加します)
>>158 (ありがとうございます。とりあえず今出て行くのも何なので、しばらく待機してます…)
………何処とも知れぬ、赤。
上も下も、右も左も無い…空間。
一方は鮮やかな朱に染まる、夕焼けの様な淡い光を持ち、もう一方は、暗く重く、何処までも沈みきった闇。
朝と夜の境の如き静寂の世界の、ちょうど中心に、「それ」は浮かんで居た。
『………………………………………』
黒い水晶の塊…見れば誰もがそう思うだろう。
空間に満ちる赤光を美しく反射させ、輝き……同じく存在する闇には、怪しく溶ける様に馴染んでいる。
大きさもかなりのものだ。恐らく小山一つ程度はあるだろう。突き出した鋭利な水晶の柱一つ一つでも、人間より大きい。
しかし、これはどこか、何かがおかしい…無機質さが感じられない。
ただの黒水晶にしか見えないはずなのに。生物的な何かを感じる。
「………お…父……さ……」
静寂に響く、微かな声。聞くに、少女だろうか…
哀しそうな……求めるような声…
「お父さん……どこ………なの……?……暗い…よ……怖い………」
『…イずみ………イズミ…………泉。流レる、生命ノ………』
『寂しクない…ワタしが…私が傍ニいルからね……さァ、私ト遊ぼウ………何ヲしテ遊ボうか…?』
「…………鬼ごっこ……………」
『……良いよ。良イね。よウシ、じャあ鬼ごッコをシよう――』
突如として、静寂と夕焼けに包まれていた空間が轟音と共に振動しはじめ、景色が歪んでゆく。
それと同時に、黒き水晶の塊その中央から、一際巨大な柱が一本伸び出でると、
静かな鼓動ように全体が脈打ち、柱の内部に不気味な影が形作られていく。
『………舞台は世界ヲ創り、世界ハ舞台を壊す………』
次の瞬間、水晶の柱は砕け、そこには翼を広げた異形の姿が在った。
透明なオーロラの如き、揺らめく翼を強く開き、影は、咆哮した―――
オオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオ………!!!
「部隊の被害は甚大なれども、橋梁の破壊に成功。
義勇軍主力は今こそロンデニオンを攻めるべし」
アデラ・グラーフストレームは、念動会話装置によってケルン大橋破壊作戦の顛末を報告した。
報告先は義勇軍主力。今まさにロンデニオン西部から進行中の大部隊である。
「さて、ここからが本番だな」
通信を終えて、アデラはつぶやく。
ケルン大橋の破壊は成功した。
これによってティルネラントからの敵・即時援軍は無く、軍需物資の輸送も寸断した。
しかし、義勇軍はロンデニオンを包囲して長期戦に持ち込むわけにはいかないのだ。
ケルン大橋の北東からの敵輸送経路は、遠いながらもまだ生きているからである。
時間はかかるだろうが、確実に王国の援軍はやってくるだろう。
そしてそれを阻みながら包囲を持続させる体力が義勇軍にあるとは思えない。
だから、義勇軍は素早くロンデニオンを落とす必要がある。
【義勇軍・ロンデニオン攻略部隊、王国軍・ロンデニオン堅守派部隊と戦闘続行】
>148 【ミョルニル:撤退の為に空輸しようとしていたところを攻撃され川に流される】
「まるで悪魔だな」
アデラは眉間に皺を寄せながら悪態をついた。
フォリナー・エグラード操るケルテ・マリーネが一気に味方3機を片付けてしまったからだ。
特に味方のフレキ隊隊長の機体は、操縦槽を無残に踏み抜かれ、のみならず、弾丸代わりに蹴り上げられた。
『 He's just a sword 』
アデラの右眼窩に収まっている闇の精霊フギン=ムニンは、フォリナー=エグラートを一振りの剣であると評した。
それは、彼はヴァルフレン剣皇国出身の軍人であることにも関係しているのかもしれなかった。
彼は剣であり、一本の槍であり、ひとつの鏃であり、力そのものである。
つまり、彼はそれらを振るう剣士ではない。振るわれる刃である。
「そうか、やつは剣か。凶刃かくあるべしと言ったところだな。
ずっと鞘に納まっていれば良かったに、ティルネラントも忌々しい剣を抜いた」
引き際とこちらの目的を見事に見抜いて退陣する二十七番排撃隊を目の当たりにしながら、アデラは怒り心頭であった。
彼とはいずれ決着をつけなければならない。
なぜならアデラは、戦場で戦うのは戦士であるべきだと思っていたからだ。
だが彼は戦士ではなく剣であり白刃である。命令の遂行のために効率化した行動をとる一流の軍人である。
彼は教会を躊躇なく破壊できる。彼は戦死者を足蹴にする。命令の遂行のためには何事をも厭わない。
「レイヴン1からレイヴン5、ミョルニルへ。
聞こえているか……? いや、頼む聞こえていてくれ。
機体を捨ててでも脱出しろ。戦闘が終わり次第、必ず助けに行く。決して諦めるな」
>153 いつの間にか阿修羅の周りにはロンデニオン攻略部隊が集まってきている。
>160 【グラード隊。27番隊に奇襲】
撤退支援のための義勇軍数部隊が到着し、劣勢であった義勇軍も多少の盛り返しを見せた。
そしてケルン大橋の破壊を受けてか、ティルネラントの増援部隊も撤退を開始した。
「敵も引いていく。義勇軍各隊、この隙に死傷者の回収と撤退急げ」
アデラは当初の作戦通り、ケルン大橋を後にして、ロンデニオン西部から進軍中の攻略部隊へ合流するつもりであった。
兵力が温存されていれば、このままロンデニオンの東部へ部隊を進めて挟撃(とはいかないまでも後方攪乱)の線もあったが
敵増援の思わぬ反撃に合い、残存精霊機の損耗も激しい。
ケルテ・マリーネ、ファールデルの阿修羅、そして未確認の狙撃精霊機。
敵とはいえ粒揃いである。
反面、敵部隊をここに釘付けにできればロンデニオン攻略部隊への支援にもなりうるが、彼らを相手にどれだけの時間が稼げるというのだろう。
現存戦力では足止めも難しいとアデラは判断した。
その時。
『 Newcomers 』
フギン=ムニンがつぶやく。
搭乗機コルバス・コラックスの視界前方、撤退中の敵部隊に横合いから突っ込む機影が多数。
「あれは……確かローガンブリアのゼリュペット一門の部隊だな。
ロンデニオン攻略の予備兵力として主力と合流と聞いていたが……独断か、それとも命令変更?」
高速接近での奇襲、どうやら橋梁破壊工作部隊の撤退支援ではないらしい。
あの動きは攻撃の機動である。
機数も多い。突破からの分断包囲か、あるいは一撃離脱か。
「こちらケルン大橋破壊工作部隊のレイヴン1だ。
当部隊は現在損耗が激しく、撤退中である。
だが貴隊の要請次第ではある程度の支援は可能と考えている。返答を」
【撤退しながらもグラード隊の様子を見る】
>154 【エルトダウンに増援。そしてティルネラント側に寝返り】
『 Fenrir tears off his chain 』
フェンリル狼に鉄鎖をつけたところで無駄である。
そんなものは容易く引き千切ってしまうからだ。
彼を本気で押さえつけるためには、誰かの片腕を犠牲にしなければならないだろう。
「もともと我々とは価値観の違う連中だ。遅かれ早かれこうなるだろうとは思っていた」
お目付け役だったはずのイグニス・フロゴーシスの姿は見えない。
既にやられてしまったのか、逸れてしまっただけなのか、それは分からない。
1対1ならばあるいは……と思っていたが、2機相手ではイグニスの性能を以ってしても持て余すだろう。
「ASL研究員、エルトダウン・シャーズ殿。
すばらしい活躍だった。橋の破壊もキミの活躍があればこそだ。
契約すでに履行され、キミはもう自由だ」
アデラは対峙するASL機に向かって発声した。
それは賞賛であり、また契約の履行が正式に完了したというエルトダウンへの報告でもあった。
だが、続く言葉はまるで正反対、辛辣余りある罵詈雑言である。
「自由の身であるキミにおいては、研究でもなんでも好きにするがいい。
もうローガンブリアもティルネラントも、帝国も王国も関係ない。
どちらに肩入れするのも構わない。
少なくとも、ASLは最低限の契約くらいは守れると証明されたわけだ。良かったな?」
アデラはさらに続ける。
「だがキミのいう研究というのは、今にも敗走しようという軍隊を蹂躙することなのか?
だったら機体大の鉄くずを用意して飽きるまで殴っていろ。
それとも、昨日まで食事を共にしていた者たちに剣を向けることをテストというのか?
この裏切り者め。お前なんかどこにも所属できるものか。ティルネラントだってそんなやつはお断りだ」
アデラは目の前に立ちはだかる若者をなじりになじった。
挑発した。頭に血を上らせて判断力を奪おうとした。
つまり、「私を見ろ」と言った。
正直なところ、ASLの機体は脅威である。
彼らはいかなる戦場にも現れ、いかなる戦場においても生還する。
戦闘能力は折り紙つき。しかも今回は増援のおまけまでついている。
「ASLはレイヴン隊で対応。まずは他味方機の撤退を優先させる」
貴重な残存兵力を失うわけにはいかない。
義勇軍には精霊機を切り捨てる余裕など無い。
ここは攪乱に秀でたレイヴン隊が食い止めるのだ。
「全機、最大推力であたれ。特に増援機については情報がない。警戒せよ」
【レイヴン隊、ASL所属2機と対峙】
ケルン大橋の消失後に義勇軍のロンデニオン攻略部隊が姿を現すと、戦場は三度様相を変えた。
>「堅守? 何だそれ? 俺は殲滅って命令しか聞こえねぇな。ここにいる奴らを殲滅しないと帰らねぇぞ!」
ディクトの判断も半分は当たっている。
残存する陸戦部隊であるフレキ・ゲーレ隊の面々は可能な限り排撃しておく必要があった。
とはいえ、次々と殺到してくるであろうロンデニオン攻略部隊を全て排除するのは不可能である。
「敵さんも随分と戦力揃えてんじゃねえか!全く面倒くせえったらありゃしない」
「案外、味方が全部来なくて正解だったかもしれないわね」
結果論でしかない。あらかじめ橋の防衛に戦力を割いていればこの事態は避けられたのだ。
ラヴィーネもそれは承知の上で、これ以上後手に回らなくて済んだという程度の気休めを言ったに過ぎない。
何にせよ、今はこの場を凌ぐことが最優先課題だ。撤退中の27番隊は、このままでは猛追する敵の攻撃に晒される羽目になる。
最初は優位に敵をなぎ払っていた阿修羅も、次第に劣勢になってケルテ・マリーネの近くまで退いてきた。
>「隊長殿、これからどうする? このままロンデニオンまで退くか?」
「そうだ。ただし突出してきた敵については排除しろ。懐に飛び込んできた奴はお前の担当だ」
アイシクル・ミラーで敵の弾丸をはじくと、返礼とばかりに敵の先頭に向けてガンランスを発射する。
次第に敵の数も増えてきた。状況は楽観を許すようなものではない。とそこへサイアニスからの通信が入ってきた。
>「…聞こえるか、ティルネラントの部隊長。我々はたった今からティルネラント側を支援する」
『な、よくもぬけぬけと…!』
「こちらはテイルネラント王国軍、第27独立強行排撃隊だ。貴官の強力に感謝する。敵空挺部隊の動きに注意されたし」
部下をさえぎるように簡単な謝辞を述べると、フォリナーはASLとの導術通信のを打ち切った。
予想はしていなかったが、驚くほどのことでも無いという風に目の前の敵に意識を切り替える。
『隊長!自分は納得できません。あいつらは…!』
「ASLにはよくあることだ。背後に気をつけて戦闘を続行しろ」
昨日の敵は今日の友、今日の友は明日の敵。それが戦場の常であった。
細かいことを気にしても埒が明かない。背後に常に気を配り、全力で目の前の敵を排除するのみ。
まして相手はASL、道義を持ち出していい相手ではない。
「出来れば、レイヴン隊とうまい具合につぶしあってもらいたいね」
「そうそう都合よくは…来たわ!右舷より敵部隊接近…数は30!」
会話を交わしている暇すら無い。
千客万来とは良く言ったもので、新たな敵影が27番隊を標的として奇襲をしかけてきた。
咄嗟のことに対応できなかった隊員の数名がその餌食となって爆散する。
「やってくれるじゃねえか!ラヴィーネ、あの隊長機についてる奴に心当たりはあるか?」
「ちょっとわからないわね…でも土の加護を得ているわ、手強いわよ!」
重量級の精霊機であるグラドフが、巨大なスレッジハンマーを振り下ろしながら吶喊してくる。
ケルテ・マリーネも重量級ではあるが、あの手の重量級の相手とマトモにかち合うつもりはない。
氷の盾、アイシクル・ミラーを左腕に発生させると、半身をずらしてグラードの攻撃をいなすが…
「うおっ!?なんつー衝撃だよ!」
「いなしただけでこれじゃ、普通に食らったらただじゃすまないわね」
スレッジ・ハンマーに横から触れた、それだけで機体が揺れたのだ。
並みの相手ではない以上、自分が受け持つしかない。その覚悟を定めるとガンランスを相手に向けて突き出した。
【27番隊:グラード隊と交戦開始】
【フォリナー:隊長のグラードと戦闘開始】
>162 【義勇軍・ロンデニオン攻略部隊、王国軍・ロンデニオン堅守派部隊と戦闘続行】
国境にほど近いロンデニオン。
この地に義勇軍本部―”本部”と称される拠点は他にも数カ所あるが―が置かれていたのもそれなりに理由があった。
東部が険しくやや西部が開けているこの土地は、ローガンブリアからのアクセスが良く、またティルネラントからは攻めづらいのだ。
それがティルネラント王国・ローガンブリア制圧部隊の戦況を不利にしていた。
制圧後に復興作業を進めているもの、まだ日も浅く、街のあちらこちらにガレキが散らばっている。
拠点と呼ぶよりも、仮設軍営といったほうがしっくり来るだろう。
体力に余裕がないという点では、ローガンブリア制圧部隊も義勇軍とそう代わりはなかった。
*
ヨハンナは恍惚と川を眺めていた。
「人は何故、争わずにいられないのでしょう…」
その目を見れば、本気でこの命題に取り組んでいないことが分かる。
『ところで、セラさんたち帰っちゃったけどヨハンナちゃんは追わなくていいの』
「えっ!?ちょっ、ちょっとぉ!」
振り返ると、セラのセルフィーがだいぶ小さく見えた。
追おうとするけれども、前方で再び戦火がくすぶりはじめて。
「くぅ〜!」
鋭く睨みつけるヨハンナの目の先にあるのは、レオンのイグニス。
先ほどドルガン翁と刃を交えて機体だ。
「ねぇ、知ってる?ウサギは話が進まないうちに主役を即死させてもいいんだよ…?」
八つ当たりだった。
ティアリアが扇の要を握ると、風の粒子がその淡く薄緑色の扇面を形成する。
『それって、キャラ的にボクのセリフだよね』
「だってパティは絶対言ってくれないじゃない」
『そうだけどさ…』
ヨハンナは薄桜散ル鬼兎ノ舞を舞わせた。
ティアリア・ドラウパディーのウサ耳が、朝霞にたゆたう…
「アンタのせいで、大事な人に置いてかれたじゃないッ!」
イグニス・フロゴーシスの側面から一気に突っこみ、
スパーキングファンですっと斬りつけた!
イグニスはくびをはねようとされた!
【→レオン:横から扇で斬りかかる(そこまでの威力はなし)】
/ それとも、昨日まで食事を共にしていた者たちに剣を向けることをテストというのか?
『その通り。それが我々のやり方だ。履き違えるな。ASLはどこにも属さない。
あんな契約書が我々に有効だと思ったのか?帝国も堕落したモノだな』
サイアニスが同じように対応する。
ここは女同士の争いといったところか。罵り合いを展開している。
「ま、そういうことですね。別に王国がどうだとか帝国がどうだとかもどうだっていい。
あくまで私は強制的に拘束された身ですしね。あなた方は仲間でも何でもない。ただの烏合の衆です」
そして周囲にレイヴン隊―先ほどまでの同胞達―が展開する。
勿論、勢力の差は圧倒的だ。エルトダウン達はたったの2機。
いくら特機だからと言って気を抜けば死ぬ。
『エルトダウン、後衛は任せる。その為の本部からの追加武装だろう?』
シュヴァルツ・ヴァルトは拳を前に構える。
それと同時にホロウ・クロウラーも全速で移動し始める。
「まあ、全部ジジイ達の計画どおりってワケね。ファラーシア、よろしく」
ファラーシアは返事もせずにガチャガチャと機体の各部をいじり始める。
すると、ガシャンという音とともにホロウ・クロウラーの予備装甲が変形を始める。
"よっこいしょっと。こんなもんかね。支援砲撃用88mmカノン砲。アハトアハトだ"
ホロウ・クロウラーの肩部には大砲が背負われている。
シュヴァルツ・ヴァルトもすでに戦闘を行っている。
その拳から繰り出される攻撃は相手の行動を奪っていく。
「そこッ!!」
一瞬機体がノックバックする。だが、この追加武装を装備した状態でもある程度速度は維持できている。
そして放たれた88mm砲弾は一直線に敵機に直撃する。
ランページ・アトモスフィアと同じ原理で打ち出される砲弾の速度は決して衰えることはなかった。
『そんなトロい剣戟ッ!』
サイアニスは華麗に、まるでダンスを踊るかのように敵機を行動不能にしていく。
それは武器を持たないが故に引き出されるスピードとパワーであった。
シュヴァルツ・ヴァルトはそれらに特化した機体ではない。
やはり、その性能はサイアニス・テネブラエによって引き出されているのだろう。
【レイヴン隊と交戦中。ホロウ・クロウラーの運動性がさがりました】
土の精霊機グラドフのハンマーがケルテ・マリーネの氷の盾でいなされ地表に突き刺さると、
体勢を崩したグラドフの脇腹にガンランスが襲いかかる。
「てめー面白いじゃねーかああ!!だがなあっ…精霊よ我に力をー!アースシェイク!!」
グラードの怒声とともにハンマーが妖しく光り輝き地表に突き刺さった部分から大地がわれ始める。
バラバラに割れた大地は激しく上下するとケルテ・マリーネと27番隊の体勢を大きく崩し
おまけに土の魔力で精製された鉱石を噴出させてフォリナーたちの機体を損傷させた。
グラード隊の隊員ピピンとタルトは歓喜の声をあげる。
「やったー!」
「こいつらひっかかったー!」
27番隊をグラード隊で挟み撃ちにしたのはこのためだったのだ。
勿論グラード隊はアースシェイクの射程内には一機たりとも進入していない。
「くっくっくっく…」
グラードは眼鏡の奥の瞳を半分ほどに細め不敵な笑みを浮かべている。体勢を崩した敵のガンランスを避けるのは容易なこと。
その機体はケルテ・マリーネから数歩離れた位置にあった。
グラードが次の攻撃にうつろうとした瞬間。アデラからの通信が入る。
「あ!?クソ忙しい時に…。おう!猫の手も借りてーんだ!まわせるもんは全部まわしてくれ!!じゃあなー」
「…あなたというお方はものの頼みかたも知らないのですか…」
土の精霊ガイアンは低く良い声で言った。
「やっつけろー」「おー!」
ピピンとタルトは燃えていた。
二人ともうだつのあがらない平民の出だったがグラードの考えに共感して先日入隊したのだ。
故郷のシャクレ山で採れた爆弾石を無数に縄で括りつけた精霊機を操り27番隊と奮闘している。
「タルト!爆弾石使おうぜ」「おう!」「あの一番硬そうなやつ!」「おう!」
爆弾石を機体から毟りとるとタルトは阿修羅に投げつけたのだがタルトに向かってきた27番隊の隊員と
被さり目の前の27番隊の機体が数機、爆散することとなった。
「お…おい!!」
爆発は思った以上で離れて見ていた味方のグラードも引くほどだった。
「隊長見てっぞ!」「おー!!」
タルトは誇らしげに胸をはる。足場をボコボコにされた27番隊も苦戦していた。
離脱しようと飛び出したところを狙い撃ちにされてしまうからだ。
「おう。隊長さん。オレの名はグラード・ゼリュペット。まあ死ぬ者に語ってもしょうがねーんだが、
のちのグラード王に殺されたのだと言うのなら話は別だろう?あの世で自慢できるぞ。
お前のような兵士には何を話してもわからんと思うがな。男に生まれたからには国を興す位の気概がなくちゃ人生つまらんものだ。
人同士、国同士。考えが違う者はぶん殴って言うことを聞かせる。それが男というものではないか?」
グラードは操縦席で豪快に股座を開くと胡坐をかいて熱弁している。この場にいる全員に向けて語っているのかも知れない。
陶酔しきっているグラードはグラドフのミサイルランチャーの全弾をケルテ・マリーネにむけ発射した。
【@グラード、レイヴン1に援軍要請。Aフォリナーの機体にミサイルによる飽和攻撃】
>169 「あ!?クソ忙しい時に…。おう!猫の手も借りてーんだ!まわせるもんは全部まわしてくれ!!じゃあなー」
「すまない、前言撤回する。ASLの襲撃だ、支援は厳し……」
こちらの報告が完了するまえに、念動会話のチャンネルがぶつりと切られる。
目の前にはASLの機体が2機。状況は変わりつつあった。
「あの猪突猛進ぶり、独断での突撃だな」
アデラはため息をついた。
所詮、こちらは義勇軍。正規の訓練を受けた軍隊ではない。
意思の疎通も一枚岩とはいかず、時として各自判断で行動する部隊もでていた。
「あの規模だ、独立行動でもそうそう力負けはないと思うが
こちらも他部隊の支援うんぬん言える状況ではなくなった」
どちらにせよ、まずは近々の敵を排除する必要がある。
【レイヴン隊 : ASLへの対応により、グラード隊への支援困難】
>168 (1/2)
> 『その通り。それが我々のやり方だ。履き違えるな。ASLはどこにも属さない。
> あんな契約書が我々に有効だと思ったのか?帝国も堕落したモノだな』
「なんだ、煽りのひとつもできるじゃないか、ASL」
自分の蒔いた舌戦ながら、彼女の物言いにアデラはくすりと笑ってしまった。
神出鬼没にして悪鬼羅漢の如きASL精鋭機。
パイロットはどんな超人が乗っているかと思えば、なんのことはない、中身は普通の人間ではないか。
どうやら、目前機体の操手は、挑発に憤慨し、自らの組織に矜持を持つ女性のようである。
アデラは不謹慎ながら、彼女に親近感を抱いた。
「ふふ……だが"あんな"契約書とは心外だな、ASL。
我々はあの紙切れ一枚に命を賭ける。
ローガンブリアの騎士も、ファールデルの傭兵も、契約によって生き、契約によって死ぬのだ」
アデラは搭乗機であるコルバス・コラックスを飛行させ、ホロウ・クロウラーとシュヴァルツ・ヴァルトの周囲を旋回した。
そして彼らの武装、機動をつぶさに観察する。航行中にバリスタ(大型クロスボウ)に太矢をつがえるのも忘れない。
「狂気の沙汰に思えるか?
羊皮紙とパピルスに書かれたインクの染みに、そんな価値があるはずが無いと思うか?
ならば見せてやる。契約を果たさんとする者の覚悟を」
挨拶代わりの口上は終わった。
久しぶりの直接戦闘に、アデラの鼓動が増してゆく。
罵り合いの後は、闘争の時間である。
>168 (2/2)
> そして放たれた88mm砲弾は一直線に敵機に直撃する。
『 88mm FlaK : Acht-Acht 』
アデラ・グラーフストレームの右目は既に失われており、現在そこには闇の精霊フギン=ムニンが住まう。
その精霊の豊富な知識によれば、ホロウ・クロウラーがこちらに砲口を向けているものは高性能の高射砲である。
「そいつは素敵だ。命中したら木っ端微塵だな」
敵前衛と火力後衛との連携は素晴らしく、レイヴン隊は1機、また1機と落とされていく。
その中でも特にホロウ・クロウラーの88m砲は脅威であった。
飛行部隊への牽制射撃、そして決定打となる精密射撃と砲口を休ませることがない。
ただ、砲の重量からか先ほどまでの素早い機動はできていないように思える。
そこが狙い目である、とアデラは感じた。
「フギン=ムギン、ECM(精霊力妨害)にて周囲一定範囲を闇に閉ざせ」
『 Roger that 』
闇の精霊は精霊機コルバス・コラックスの背面に設置された増幅装置を通じて闇の粒子を散布し始めた。
これは光を完全に遮断する黒い煙幕である。
「レイヴン1、敵後方火力へ単騎突撃する。他機は敵前衛を包囲の上、行動遅延を狙え」
暗黒を纏いつつあるコルバス・コラックスは、ホロウ・クロウラーに高速接近した。
88mm砲弾が左肩を掠め、パーツが爆砕する。
「心臓に悪い!」
機体をロールさせて上手く衝撃を逃すと、コルバスは構わず前進する。
ほどなく、コルバス・コラックスとホロウ・クロウラーの周囲は闇に閉ざされた。
一切の色は消え失せ、眼の前は黒で塗りつぶされる。
通常の方法では一寸先すら把握することは難しい、真の闇。
暗闇の中、意識だけが孤立したように感じられる。しかし、それはアデラ自身も同じであった。
だが、そうでない者がいた。
深遠の闇は、フギン=ムニンの領域である。
彼の世界に光はない。
だが、「触覚」がある。
闇の粒子がまるで指先のように空間をすべり、全てを把握するのだ。
アデラは左眼を瞑り、右眼孔に感覚を集中することでフギン=ムニンの感覚を共有した。
「現在敵機後方25m、方位280へ並行飛行中……」
アデラはフギン=ムニンを通じて感じている。
自機の飛行体勢、飛行方角、地表との距離、大気の流れ。
ホロウ・クロウラーとの距離、その輪郭、エイサーグラディウスのハードポイント、アハト・アハトの砲身と砲口の向き、砲弾の軌跡……。
「闇は私の世界だ。夜に沈め、エルトダウン・シャーズ!」
コルバス・コラックスはホロウ・クロウラーに向けて急旋回すると、機体を天地反転させて右腕のバリスタを地面とほぼ並行に構えた。
狙いはホロウ・クロウラーの足部。
フギン=ムニンはその演算能力によって3秒後の敵移動予測地点を示し、アデラはバリスタのトリガーを引いた。
火薬仕込みの炸裂矢がホロウ・クロウラーへ迫る。
機体の機動を奪えば、味方部隊への追撃は不可能。 最小打撃で最大効果を狙うのが傭兵アデラ・グラーフストレームのやり方であった。
【コルバス・コラックス(アデラ) : ホロウ・クロウラーの足元に射撃し、移動能力の奪取を狙う】
『確認……確認………完了…』
「………同期…開始…………」
『「…………状況……開始……」』
何処からともなく聞こえる少女の声と共に、戦闘体「アルタイテン」がその巨大な手を空間にかざすと、
夕陽の様だった世界は一瞬で歪み、ぐるんと反転すると、移り変わった場所は、「戦場」だった。
見渡す限りのそこかしこから、戦火と共に黒煙が立ち上り、
爆音や強い振動が絶え間なく続く。
地を揺るがし、空を裂き、「精霊」の力を宿した機兵達が、互いに破壊しあっている…
子供ならば、決して喜ぶような状況ではない。しかし、少女の目には、この激しい戦闘など元より映っていない。
彼女が見ている景色は、戦場等とは真逆のもの。
血塗れた大地は、どこまでも広がる穏やかな草原に。
燃える戦火は、美しい赤い花に。
立ち上る硝煙は、高く力強い一本の木に。
そして、唸りを上げ、凄まじいレベルの戦闘を行う機兵達は………
「……可愛い……動物さん…?」
……その様に映っている。いや、“見せられている”。
『そウだ…今日は、彼ラが鬼ごッコをして遊ンでクレるらしイ…さぁ、…………沢山捕マえよウ……』
「オイ、西側配置足りてないだろ!さっさと……!?な、何だありゃあ!?」
その存在に気付いた兵の一人が、狼狽の声を上げる。
ケルン大橋が落ち、誰も彼もが守りに攻めに必死だった中での異形の来訪者だ、当然の反応ではある。
ましてや、その異形に対しての知識を、浅深関係なしに持っていれば尚の事…
「……ふざけ…やがる………!ボサッとすんなさっさと動け!ありゃ『アルタイテン』だ!!」
「アル…!?ほ、本部!!?」
「目標、確認…」
『補足、補足……』
『「戦闘行動を開始します」』
【アルタイテン戦場乱入】
/「フギン=ムギン、ECM(精霊力妨害)にて周囲一定範囲を闇に閉ざせ」
今まで後方支援に徹していたホロウ・クロウラーは一気に視界を失う。
"うっわ、なんだこれ。なんにも見えねえじゃねえか"
エルトダウンはあくまで冷静に機体を動かしまわっている。
それは一見、不規則な動きにも見えるが高い能力を持つ精霊にとってはある種、規則的な運動であった。
そして数秒。大きな衝撃。
「!?直撃ッ…バカな…相手は闇の中でも何らかの方法で索敵が出来るのかい…?」
そしてまた数秒。今度はさらに大きな衝撃。
機体が大きく揺れ、エルトダウンは頭を打つ。
"ま…マズいぜ!大ピンチじゃねえかァ!!"
本来ならば、本来のホロウ・クロウラーであればこの直撃にも耐えうる装甲を持っていたはずである。
だが、支援武装を装備したのが仇になった。
装甲が薄くなっていたのだ。特に足部装甲はもともと多いものではない。
「…動けない…?どうにかできないかな?ファラーシア…?」
"うん、ムリだな。こりゃあプランB…固定砲台で決まりだな"
勿論、装甲が薄いホロウ・クロウラーは固定砲台などにはなれない。
打つ手がない。チェックメイト。エルトダウンがそんな事を考えた時。
『青き闇の異名を忘れてもらっては困るな。
こちらも幾多の戦場をくぐりぬけてきた。これくらいは想定範囲内だッ!!』
彼女もまたこの闇に巻き込まれていたのだろう。
そうしてほどなく闇の中で金属のこすれあう音が響く。
半ば感覚的にコルバス・コラックスの腕を掴む。闇の中で。
『油断したか?闇の中だと自分は無敵だと思ったか?
機体の位置など音、風の流れ、温度差で簡単にわかるものだ。
よく奮戦したな。だが…ここで消えろッ!!』
掴んでいる腕を離さず、シュヴァルツ・ヴァルトの逆の腕をコルバス・コラックスの頭部の前に持っていく。
シュヴァルツ・ヴァルトに搭載されている唯一の兵装、ナックルブラスター。
『手の甲に精霊力を収集しそれを利用した強力な一撃を加える…
あくまでロマン兵器だと思っていたが…自ら闇の中に突っ込んできたのが最大の誤算だったな。
わかるか?周りのレイヴン隊とやらは私に気づいていないぞ…?』
サイアニスがニヤリと笑うと手の甲に集められたエネルギーを解放する。
それと同時に拳がコルバス・コラックスの頭部に激突するだろう。
そうなったとき、恐らくコルバス・コラックスの頭部は吹き飛んでいる。
【ホロウ・クロウラーは移動能力が著しく低下。
シュヴァルツ・ヴァルトがコルバス・コラックスへ一撃を加えんとしている】
/アルタイテン
「ぐうう…足がやられたのはマズいね…」
冗談ではない、という表情で言う。
"あー…エルトダウン…逃げ…れねェよな?"
「どうかしたのかい?ファラーシア…?」
暗闇の中で周囲は見えない。
ファラーシアのみがその気配を察知できた。
"タブーリストのヤツだ。コードフィフス。アルタイテン…"
エルトダウンはハッと覚悟した。
このまま何もしなければ…死に直結すると。
>172
ロンデニオン近郊にセラたちの野営地はあった。なにぶん隠密な行動であったため
ティルネラント王国の第四皇女が、そのようなところに野営をしていることなど誰も想像しえなかったであろう。
帰還したセラはしばらく戦場の通信を傍受していたのだがある異変に気づいた。
「…あるたいてん?」
飛び交う情報の中で何かの名前をセラは掴んだ。胸騒ぎがした。傍らの精霊も騒ぎ出している。
テントの外では少し離れた位置でドルガンとアロルが何やら話していたがセラはアロルだけを自分のテントに呼んだ。
「アロル。服を脱ぎなさい」
「は!?」
「はやく!!」
セラはすでに下着姿になっていた。
アロルはこんな形でセラの下着姿を見ることになるとは夢にも思わなかった。
「あなたは私の服を着てここで休んでいなさい。私は少し外出します。あ!あとあなたの魔装機をお借りますね」
「え…!でも…」
「五月蝿いな!言うこと聞かないと殺すわよ!!」
「!!?」
アロルはセラの言葉使いの変化に耳を疑った。
「愚図はきらいなの。はやく」
「…は…い」
服を交換すると呆けているアロルを察してセラが語りだした。
「…演じてるのも辛いのよ…。
王宮の貴族連中なんかニヤニヤしながら私によってくるけど腹の中じゃ何考えているかわかんないし
民衆だってホントことは何も知らないで演技している私に夢をみているだけなの。
鬱陶しいのよ。神経に触れるの。みんなみんなつまらない団子虫のくせに」
アロルは絶句していた。セラにたいしての思いがガラガラと音をたてて崩れだしていた。
「街にアロルを使いに出させます。私は少し仮眠いたします」
テントの中からセラは外にいるドルガンに言い放つ。
「かしこまりました。昨夜の戦闘で姫もお疲れでしょうから充分にお休みくだされよ。
疲れたお体で出歩くことなどないように。ここはわたくしが見守っておりますゆえご安心を」
髪をまとめ帽子を被りアロルに変装したセラはアロルの魔装機ル・フィーに乗って戦場へと飛び立った。
「…アルタイテン…意味不明だわ…でも王国の敵なら破壊するだけよ!」
【セラ:アロルの機体ル・フィーで再度戦闘介入(アルタイテンの様子見)】
精霊機に乗ってるのに着替える必要あるのかwww
女は分からん
テントから出る際にドルガン氏や周りの目を誤魔化すためだろ……
アロル君、役得だな
唐突に撤退を始めていたフォリナー率いる27番隊へグラード隊が襲いかかる。
隊長機と思われる機体が巨大なハンマーを振り上げフォリナーに襲いかかる。
その攻撃を軽くいなしたフォリナーだったが、地表に叩きつけられたハンマーが光を放ち、周囲の地面が割れ始める。
『相手も私と同じ地の精霊のようですね』
「是非とも戦ってみたいが、あれは隊長殿の獲物だ、俺は周りの雑魚どもを片付けるぜ」
阿修羅の足下の地表は太郎の加護のおかげで割れなかったため阿修羅は無傷であった。
グラード隊の隊員が阿修羅めがけて石を投げつけるが、ちょうど目の前に飛び出してきた27番隊の隊員に当たり爆発し、周りの機体も少し巻き込まれた。
「おお、結構な威力だな、ただの石では無いな」
『恐らく爆弾石でしょうね、流石の私でも直撃すれば無傷とはいきませんよ』
奇襲を受け混乱していた27番隊は足場の悪さも伴ってか苦戦していた。
そして敵の隊長機であるグラドフから大量のミサイルがアースシェイクによって体勢を崩したケルテ・マリーネに向けて打ち出される。
ディクトは手に持った大剣を思い切りミサイルに向けて投げつける。
大剣は一つのミサイルに当たり爆発させると、それにつられていくつかのミサイルも誘爆する。
「まぁあれだけ爆発させれば大丈夫だな、俺は俺で周りの掃除をしますか」
腰から三対の刀を取り出すと、グラード隊へと切り込む。
先ほどのケルン大橋破壊部隊とは違い動きは遅いが硬い装甲を持っていて闇雲に斬りつけるだけでは満足にダメージを与えられない。
「腕の見せ所だな」
『貴方の唯一の取り柄ですからね』
ディクトは三対の刀を華麗に操り、すれ違いざまに相手の精霊機の関節部分と顔面をピンポイントに断ち切っていく。
四肢と視界が失われた機体は殆ど破壊されたも同然、何も出来ずに地面に転がる。
「隊長殿、こっちの雑魚は俺一人で掃除しておく、そのデカブツは譲ってやりますよ」
【ディクト:グラード隊と交戦、グラード隊の隊員と戦闘中】
>>167 老兵との勝負は決着を見せず、僕の一撃をもってしても通じはしなかった
「レオン様、生きていれば、それだけで勝利に等しいのです。生きていればこそ、あの隊長や先ほどの老兵との戦いの挽回がなせるのです
どうやら、橋が落ちたようですね。今日のところはよしとしましょう。」
フェニキアの優しい言葉と笑顔が心と体に染み渡ってくる
「疲れたな〜」
今日も生き残れた。ふと空を見上げる、星が綺麗に瞬いていた
「ほら、フェニキア、星が綺麗だよ。戦場でもその美しさには変わりはないんだね。」
「ええ、幾年経とうと変わりないです。」
二人して空を見上げているとそれは急に現れた
強大な精霊機、上半身は人型、下半身は漆黒のクリスタルで作られていた
月明かりに照らされて、夜空に妖艶に佇んでいた
「ア、アルタイテン……!」
お伽噺に語られる戦場の悪魔、実在していたという驚き
「まさか、こんなに早く出会ってしまうなんて!!」
伝説の精霊機と登場に驚いたときに、すぐそばにはヨハンナがいたということをすっかりと忘れていた
僕もフェニキアを両方が彼女の存在を忘れていたのだ
しかし、そこはさすがは上位精霊、彼女の攻撃には寸前で気がついた
「レオン様、右に機体をずらしてください!!」
フェニキアの言葉に無意識に反応して、扇の刃から逃れた、翼を発現させてヨハンナと相対した
「さっきから戦場を引っ掻き回して何がしたいんだよ!!」
グラドフのハンマーが地に落ちた瞬間、フォリナーは自分の判断ミスに気づいた。
相手は地の精霊の加護を受けている…となると次の瞬間に発生する事象は限られている。
「やっちまった!」
叫んだ時にはもう遅い。ハンマーの先端から生じたインパクトは、地割れと共に衝撃となって27番隊に襲い掛かった。
ケルテ・マリーネ以下、殆どの隊員が足元からの攻撃に対処できずバランスを失う。
こうなってしまっては繰り出した攻撃があたる道理は無かった。
とそこへ…
「ちょっと待ってよ…この反応はまさか!」
空が歪み、針山のような水晶を髣髴とさせる巨大な精霊機が空中に出現する。
過去幾度と無く不吉の象徴として語られてきたアルタイテンが、この戦場に突如姿を現したのだ。
「アルタイテン…だと!?」
「なんでここに来るのよ!」
フォリナーは一瞬、その疫病神と言ってもいい闖入者に目を奪われた。
そこへ土の精霊によって生み出された鉱石弾が飛来してきても、回避できよう筈もない。
「きゃっ!」
「ディクト!そっちに2機いったぞ!」
唯一同じ地の精霊の加護を得ていた阿修羅が踏みとどまるが、その金色の機体にも敵の攻撃が殺到する。
爆弾石は他の機体に炸裂して、27番隊の別の2名の隊員が新たに野末の土の仲間入りを果たす羽目になった。
フォリナーはここにいたって強大な闖入者から意識を逸らした。
彼の経験則上、何をしても無意味ということを知っているからだ。
「ちぃ!」
「やってくれたじゃないの!このドサンピンが!」
ケルテ・マリーネの対冷熱装甲にとって、ダメージは左程深刻なものではない。
にもかかわらず、ラヴィーネの怒りのボルテージは急速に上がっていく。
相性の悪い炎の上位精霊ならいざ知らず、見ず知らずの精霊相手に遅れを取ったこと、
これがラヴィーネの堪忍袋の尾を断ち切った。
>「おう。隊長さん。オレの名はグラード・ゼリュペット。(略」
「殴り合いは大いに結構だが…」
「アルタイテンまで来てるってのに、誇大妄想狂に付き合ってられないわ。分不相応な野心と共に死になさい!」
ケルテ・マリーネの機体が青白い光に包まれ、周囲に冷気が満ちていく。
グラドフから発射されたミサイルに備え、シュネーバルを発射しようとしたフォリナーだったが
その前に阿修羅が大剣の一つを投射したのが確認できた。
>「隊長殿、こっちの雑魚は俺一人で掃除しておく、そのデカブツは譲ってやりますよ」
「ナイスアシストだぜディクト。後で1杯おごっちゃる」
フォリナーは上機嫌で再度シュネーバルの準備に入った。
最もそれは迎撃の為ではない。空気中の窒素を大量に取り込み、固体として打ち出す為だけにである。
「来やがれ!」
ミサイルの1本が飛来してきたミサイルに命中し、その爆発に巻き込まれて他のミサイルにも誘爆していく。
爆炎が周囲を包んだ後、そこにケルテ・マリーネの姿は無かった。
「鬼さんこちら!」
『な、なんだってあんなところに』
奇襲により心理的優位にたった筈のグラード隊の面々が今度は度肝を抜かれる番になった。
何故なら、重量級の機体である筈のケルテ・マリーネが空中に確認できたからだ。
「極限まで冷やされた空気が、急速に熱を帯びるとどうかるか知ってるか?」
答えは上昇気流。しかも大量の固体窒素が気化した時に発生した質量の膨張がそれを手助けした。
足元から崩されて立っていることもままならないなら、いっそ地から離れればいい。
「これでも食らいな!」
アイス・ガンランスから砲弾が発射される。とはいってもただの砲弾ではない。
精霊の持つ力をギリギリまで高めて注入することのできる特注品だ。
ケルン大橋を破壊するためにくるであろう敵の攻城兵器を、
ラヴィーネの力を目一杯込めて、一撃で凍てつかせる為に用意してきたものだ。
「結果的に無駄骨に終わっちまったと思っていたが…」
「これで頭の芯まで凍てつかせてあげるわ」
砲弾はグラドフではなく、グラード隊が展開していたエリアの中心に着弾、
膨大な冷気が、まるで波紋のように周囲に広がっては地面を凍りつかせていく。
今度はグラード隊の方が足元からの攻撃に晒される羽目になった。
「さぁて、足場を奪われた同士…今度こそ真っ向からの殴りあいと行こうじゃねえか」
先程は回避されたガンランスの攻撃を、今度は空中から落下しながらグラドフ目掛けて繰り出した。
(1/2)
>173 機体の位置など音、風の流れ、温度差で簡単にわかるものだ。
「そんなわけあるかッ、この野生児女!」
周囲に広がる暗闇の中、アデラはホロウ・クロウラーからの離脱をはかったが、それは叶わなかった。
素早く接近したシュヴァルツ・ヴァルトに左腕を捕捉されてしまったからである。
飛行出力を上げて脱出を試みるがびくともしない。
さすが近接戦用精霊機というべきであった。
機体の重量と、それを縦横に機動させるだけのパワーが、コルバス・コラックスを掴んで離さない。
「もっと出力上げろ!」 『 Max Power 』
アデラに使役される精霊フギン=ムニンの言葉には何の感情も篭っていない。
それはいつものことながら、場合が場合である。
もっと緊張感をさらけだしても罰はあたるまい、とアデラは思った。
『 Warning : The enemy's attacking us 』
暗闇の中、アデラは目を閉じてフギン=ムニンの感覚で周囲を把握している。
自らを捕らえている敵機体の左腕部に大きなエネルギーの奔流が確認できた。
あれが直撃すれば、コルバス・コラックスの薄装甲は破壊され、操縦槽すら吹き飛んでしまうだろう。
何か、何か手はないか。アデラは考えた。
右腕のバリスタ(巨大なクロスボウ)で攻撃。
しかし今、バリスタにクォレル(太矢)は装填されていない。
ホロウ・クロウラーへの射撃直後であったことが災いした。
では、白兵戦用のグラディウスで凌ぐ。
しかし、後部腰付近に装備されている剣を抜刀する前に、敵の拳はコルバスに命中する。
「……」
時間がゆっくり流れる。諦観がアデラを支配した。
(2/2)
どう頑張っても敵の力強い腕からは逃れられそうもない。
フギン=ムニンの触覚ともいえる感覚は、敵の大出力攻撃の接近を知らせている。
狙いはアデラの搭乗する操縦槽。あれでは痛みを感じる暇もない。
死が迫っていた。
しかしそのとき、アデラの脳裏に浮かぶものがあった。
あれはいつか見た光景。父親の横顔。そして彼は言った。あの日と同じように。
『グラーフストレームの家系はピンチにあって諦めない。
声を出せ、頭を使え、体を動かせ。あらゆる可能性に思惟をめぐらせ、実行しろ……』
『「観念するのは、その後だ」』
アデラ・グラーフストレームは続くの父の句を口にすると、突如行動を開始した。
コルバスの力では脱出不可能。バリスタは役に立たない。グラディウスを抜くには遅すぎる。
ではどうする。
仕込みセスタス(手甲付属の短剣)。
アデラは敵の胸甲に搭乗機の右手を当てると、仕込みセスタスのスイッチを入れた。
強力なバネ仕掛けで飛び出すセスタス。
ただし、敵の頑強な装甲はその刃を通さない。
だがアデラの狙いはそこではない。
敵の拳が自機に触れる瞬間、バネと刃の反動でコルバス・コラックスの体を右側に逸らしたのだ。
金属のひしゃげる音、次に爆音が聞こえ、黒塗りの精霊機は文字通り吹き飛ばされた。
闇の粒子はいつの間にか掻き消えて、したたかに地面に叩きつけられたコルバスは天を仰いでいた。
「……どうやら死に損なったな」
気密構造であるはずの操縦槽(コックピット)右側からは僅かに日の光が漏れている。
コルバスの右腕と右半身の一部は既に消失していた。
そして、視線の先にある「モノ」を見て、アデラは「しめた」と思った。
「ASL、分別無しの空中戦艦が来たぞ。破壊の棘、漆黒の牙だ!
今日はこれでお開きにしよう。
レイヴン隊は全機撤退、あれに撃ち落とされる前に!」
アデラは声を張上げると、コルバス・コラックスの左航空精霊炉…右側炉は既に無い…を全開にして飛び去った。
【コルバス・コラックス(アデラ) : シュヴァルツ・ヴァルトによって機体半壊、戦闘不能】
【レイヴン隊 : 全機撤退 →アルバニアンで修理予定】
【義勇軍ケルン大橋破壊部隊 : 撤退完了 →故障機はアルバニアンへ、無事な者はロンデニオン攻略部隊へ】
漆黒の牙と聞くと最凶のお気楽部隊が浮かぶんだが
「なんだぁーッ!?」
阿修羅の剣の投射にシュネーバルによる迎撃によってミサイル攻撃が失敗に終わった次の瞬間、
グラードは更に目を見張ることとなった。
「なっ!?飛んだ!?」
上昇気流で空中に舞い上がったケルテ・マリーネはガンランスをグラドフ目掛け繰り出してくる。
>「さぁて、足場を奪われた同士…今度こそ真っ向からの殴りあいと行こうじゃねえか」
「くっくっくっく…戦いはこうでなくっちゃあなあーっ!!刀の時代からそうであったのだ!!
理念や大義名分が変わろうと所詮は生命と生命の奪い合い!イクサは生命が終わらぬ限り未来永劫続くのだ!!」
興奮しているグラードは唇の端から涎を垂らして、それが逞しい太ももに落ちるや否や
精霊機と一体化しているが如くグラドフを操ってみせる。巨大でありながらその動きは滑らかで美しい。
「ぬはははははは!!」
キン!!ガンランスの尖端とスレッジ・ハンマーの打撃面が見事にぶつかり合った。
「重装甲型の精霊機同士ならば下手な回避運動など必要ない!シンプルに機体性能を極限まで引き出したものが勝ちなのだ!!」
グラードが叫ぶとスレッジハンマーのハンマー部分が赤く光りだす。それは噴火する前の火山口をイメージさせた。
「グラード様…よいのですか?」土の精霊ガイアンは聞いた。
「構わんぜ!ブーストハンマーの零距離射撃!結構ではないか!!
奴さんだってバカじゃない。何かしこんでるはず。ならば思う壺の壷ごと破壊してやるだけだ!」
今まさに密着した二つの機体の真ん中でブーストハンマーが炸裂しようとしていた。
−−「あのやろー!」ピピンは顔を真っ赤にして激怒していた。
阿修羅に精霊機の四肢と頭部を切断されたために地面に転がったその機体を亀のようにじたばたさせている。
どうしようもなくなったピピンは機体の蓋を開けて中から顔を出すと地表は銀色に輝いており
味方の精霊機が滑る足場に四苦八苦しているようだった。グラード隊の何機かが27番隊の攻撃で爆散している。
「ちくしょう!レイヴンの援軍はどうしたんだ!?さっき隊長が呼んでたろ!」
ピピンはふと空を見上げた。空にはアルタイテンが浮遊している。
「…なんだあれ!!」ピピンは目を皿のように丸くした。
−−「まてこらー!」タルトはなんとか氷の大地から脱出するとグラート隊の精霊機を
次々と戦闘不能にしていく阿修羅に近づいていき爆弾石を再び投げつけた。
【グラード:フォリナーに零距離からのブーストハンマーを敢行。タルト:ディクトの阿修羅に爆弾石投射】
『「むだだむりだムリムダ無駄無駄無理無駄無理無理無理無理無理無駄無理無駄無駄無理」』
…また一つ、大きな爆発音と共に強い光が生まれ、直ぐに消えた。
突如として戦火の空に現れたアルタイテンは、所属やら何やらを一切無視した純粋な破壊活動を行っている最中であり、
既にどの勢力も、無視できないレベルの損害を受けているだろう。
何処からともなく降り注ぐ鋭利なクリスタル片。仮にこれを避けようとも、クリスタルからはほぼ全方向へと拡散光線が発射され、
狙われた者だけではなく、その近くに居合わせた者も次々に撃ち抜かれる。
また、アルタイテン自身もその両腕から黒白の光剣を伸ばし、さながら死神の如く他の精霊機を刈り取っていく。
出現地点近辺は、最早地獄と化していた。
「馬鹿野郎戻れっ!!逃げてりゃ追ってこねぇんだ、ほら早く!」
「うるっせぇ!!ちくしょう…!ふざんじゃねぇぞこのバケモンがよォ!!」
…別に逃げる者を追わないわけじゃない、それでは「鬼ごっこ」じゃないから。
ただ、「逃げた先にあるのが何か」を教えていないだけに過ぎない。
止める仲間を振り解き、先程まで離脱しようとしていた一機の精霊機が向かって来る。
果たして、どのようなつもりで、何の為に。
「クソッタレヤロウが!よくも弟をやってくれたな!?ああ!?アイツはな、アイツはなァッ!!!」
『「そんな答えは求めて居ないないぞ。タナトスは中々に早足」』
「戦いが!…あ…?え………?っぇ……………???」
――下らないことを話された。コレは今何と言っていたか。オトウトが何だとか。
ああ、ああ、まぁ良い。所詮はどうでも良い事にカテゴライズされた内容だ。
無理に思い出さなくたって、Qが縮まるわけでもない。―――
先程の精霊機は怒りに任せて凄まじい勢いで突進して行ったが、
今現在の様子はと言えば、
アルタイテンの鋭く尖った手刀の先端に、深々と胴を食い込ませて、ダランと力無く垂れ下がっている。
『「0にも満たない存在で。面白みが無いぞ。来世で会おう」』
そう吐き捨てると、貫かれた機体から「輝き」が漏れ出し、そのままアルタイテンへと吸収されていく。一体何が行われているのか…
その後暫く“中身”もろとも死に逝った機体を眺めていたが、元より興味など無かった為か、すぐさま二つに裂いて捨てた。
『「ネフティス。時流の流れが傾いた。抗えるか抗うのださぁ抗え。
高々、空間とヒトの認識の狭間程度に留まっている分際で。刻の数えに貴様は要らぬ不要不必要除外排除」』
周囲には所属を問わず、大量の残骸だらけだ…
粗方近くに在ったものを破壊し尽くしたアルタイテンは、再び上空へと舞い戻ると、
両の腕から黒と白の光の剣を伸ばし、意味不明な内容の独り言を、延々と呟きながらグルグルと回転している。
回転は綺麗な円を描き、そしてその円はあっという間に怪しい光を放つ「魔方陣」の様な物に変わっていき、
雷を降らせたり、火球を降らせたり、時には何も起こらぬまま、パリンと割れてしまったりしていた。
>174
『「強い光は光ではない、純粋な。そこからまた光が生まれるのであり……」』
ちょうど10個目の魔方陣モドキが、何も起こさぬまま割れて散った時。
アルタイテンは急に回転を止めると、遠くを見つめるように、首を少し前へとずらした。
『「闇。闇闇暗闇暗所暗部。良いぞ…愚者も悪魔も死神も戦車も星も月も。…闇に生じる所在り」』
その赤い双眸には、一体何が映ったのか。
一通り理解不能な言葉を吐くと、全身のクリスタルが魚の鰭のように波打ち、ゆっくりとその場から移動を開始する。
―――何やら強い力を感じる。精霊の力だの機体の性能だのという話ではない。
これは何と表現すれば良いのか、適当な言葉を知っていたかもしれないが、そんなこと今は良い。重要じゃない。
運命というのか、宿命と言えば良いのか。いや違う。思い出したぞ、意思だ。意思。意思意思意思意志。
大事なことだぞ覚えておこう。ああああしかし今は書き留める為のペンも紙も無い。
意思だ意思。強い強い強力強靭。意志の力。意思意思意思いしイシイシい思イしイシイシ意し―――
―――生存本能に強く働きかける、チカラだ。
随分永らく、意思の強さというのを忘れていた。いや元々己に意思のチカラなぞあったか?
考えたところで、今まで一つも何かを導き出せた覚えが無い。
ならば触れてみよう。「意思」に。直接。
あぁそうだ。さっきのアレも、意思を見てから廃棄すれば良かったのだ―――
【アルタイテン、居合わせた勢力を全て破壊。ゆっくりとホロウ・クロウラーへ向け移動中】
>179 レオン(フェニキアの言葉に無意識に反応して、扇の刃から逃れた、翼を発現させてヨハンナと相対した
ヨハンナのヒステリックな一撃を、若い勇者はムダのない動きでかわした。
「わっ、わわわっ、きゃ〜!」
標的を失ったティアリア・ドラウパディーは、そのまま川岸の大木に突っこんだ。
葉を散らせながら落下していくティアリア。
>169 グラードの怒声とともにハンマーが妖しく光り輝き地表に突き刺さった部分から大地がわれ始める。
『ヨハンナちゃん高度保って!危ない!』「わかった!」
とっさに推力を復帰させると、地鳴りが真下の大地を通り過ぎて。
ティアリアのすぐ足下を、勢いよく鉱石が飛んでいった。
「あ、危なかったー…」
大木を背にし、レオンを見上げる。
>「さっきから戦場を引っ掻き回して何がしたいんだよ!!」
「高みから見下ろしてナニサマのつもり!
ヨハンナはヨハンナのしたいことをしてるだけ!」
別にイグニス・フローゴーシスの高度は変わっていない。
ヨハンナが”勝手に”つっこんで”勝手に”落ちたのだ。
『あれは…イグニス・フロゴーシス、それにフェニキアかな』
刹那の間を置いて、その扇でティアリアの口元を隠させた。
「でもアナタ、名無し兵士にしてはいい声してるじゃない?どこの誰だか知らないけれど。
育ちがよさそうっていうか。ローガンブリアにもちょっとは文化があるんだ〜。
いいよ、ヨハンナの夢、聞かせてあげる!」
ぽち。
ヨハンナの中で変なスイッチが入った…音がハウリンティウスには聞こえた。
『…しかし、フェニキアの加護を受けているにしては太刀筋が若い…?』
当然だ。ハウリンティウスが最後にイグニスを見たのは、
数十年前、いやもしかすると数百年前になるかもしれない。
ヨハンナは閉じた扇を剣に見立て、その切っ先をレオンに向けた。
その声は芝居がかってきている…
「ヒナ鳥はタマゴの中から抜け出ようと戦う。ボクらはヒナ、タマゴは世界だ。
生まれようとするボクらは、一つの世界を破壊しなければならない」
>172 【アルタイテン戦場乱入】
『…!!風向きが変わった…?ヨハンナちゃん、これはよくないものだ!気をつけて!』
「ボクは翔ぶんだ。輝けるアブラクサスの御許に向かって。
そのために…ボクは、貴方という”世界”を超克する!」
『…ヨハンナちゃんって人の話聞かないよね』
「パティだってそうじゃない」
『聞いてたよ。「高楼の天女」第二幕第三場、ヒロインが義理のお父さんに言った台詞』
「あったり〜♪」
覚えていた…というよりは、覚えさせられたというべきなのだろう。
父に代わり、ヨハンナの一人舞台の”常連”を務めさせられていたのだから。
『でも、あっちの”王子様”はヨハンナちゃんにかまけてる場合じゃないみたいだよ』
「それはヨハンナのセリフ!」
”どこからともなく”現れた紫黒の水晶が、徐々に戦場の空気を浸食している。
>182 フォリナー(膨大な冷気が、まるで波紋のように周囲に広がっては地面を凍りつかせていく。
蒸発した氷は今や霞となってこちらに流れてきている…
ティアリアが扇を開き、腰元に下げた。
「ボクはっ!王子様に、なるんだッ!」
下方から円弧を描くようにして飛び上がり、イグニス・フロゴーシスに斬りかかった。
スパーキング・ファンの軌跡に沿って、風の粒子が光を残して。
霞がそれを反射して、ティアリアの背後を翠色に染めて。
けれども、その後ろではもっと大きな葡萄色の闇が空を統べていた…
【→レオン:おい、デュエルしろよと口上を述べ、下から斬り上げる】
ゆっくりと闇がはれてくる。
ホロウ・クロウラーの最も近くにはエネルギーの過負荷で腕から火花を上げているシュヴァルツ・ヴァルト。
そして周囲には謎の残骸。
「サイアニス、コードフィフスだ。タブーリストは頭に入れてるかい?
この残骸も奴によるものだろうね…機体が万全なら戦えることもできるけど…」
少しひきつった表情で言う。
『バカ言うな。タブーリスト…しかも5thという上位の物に手を出すのか?
いくらホロウ・クロウラーでもシュヴァルツ・ヴァルトでも自殺行為だろう』
"まあそりゃそうだな。俺なんかこの距離でも寒気がするぜ。なんとか動けるうちに逃げるべきだな、うん"
ホロウ・クロウラーの足は完全に使いものにならないわけでもなかった。
少なくとも、アルタイテンが近づく間に退避できるだろう。
「了解。通信機がイカれてる。連絡は頼んだ」
『了解。エルトダウンの移動力低下と併せて報告しておく。間に合いそうにないなら回収が来るだろう』
事務的に会話する二人。
「ごめんね、コードフィフス。デートとしゃれこむのはまた今度にしよう」
そしてシュヴァルツ・ヴァルトにけん引されるように移動を始める。
【ホロウ・クロウラー並びにシュヴァルツ・ヴァルト。一時撤退。追撃は可能】
>>190 空に飛び上がり、ティエリアの上を取ったのだが、攻撃を仕掛けた当人はバランスを崩し、そばの大木に突っ込んでいた
「・・・・・・・素人なのか?」
自分自身いったいどうしたらいいかわからない
彼女の動きが予測できない
いきなり、上からものを言うなと怒られた
戦場なのに
「フェ、フェニキアぁ」
「ハウリンティウスも苦労しているようですね」
フェニキアに助けを求めたけど、彼女はなにか遠い目していた
僕が狼狽しているとヨハンナはさらに勝手に話を進めだした
「名無し兵士だと!ファーブニール家の嫡子としてその言葉聞き捨てならない!」
彼女はまったく僕の話なんて聞いていなかった
自らの夢を語るのに夢中になっていた
彼女は戯曲の一節を演じ始めた
都で見たことがある「高楼の天女」だ
確か、フェニキアが感動して、泣いていたと思う
スラスラと言葉が出て来るところから、いままで何度も演じてきたんだろうな
彼女のペースに巻き込まれ、その演技を静かに見守っていた
なにかこの間は攻撃しては行けない気がした
>「ボクはっ!王子様に、なるんだ!」
彼女は気持ちを刃にのせ、イグニスの下から切り上げてきた
その太刀筋は、翡翠色の粒子を散らし、いつの間にか立ち込めていた霞に反射して美しかった
しかし、それに心奪われるほど、今の僕は油断してはいなかった
「王子様になる!?いきなりなにを言い出すんだよ!
君の言葉と行動は理解出来ないよ!
何をしたいんだ!世界を変えたいのか!名を上げたいのか!ただ、戦いを楽しみたいのか!
王子様になる!?戦場で女の子がなにを目指すんだよ
僕は戦場で名を上げたい!!この剣でぇ!この機体でぇ!ファーブニール家を再興するんだ!!」
後ろによけて、上から機体ごと剣を振り下ろす
【ティエリアの攻撃を避け、高低差を利用して、上から剣を振り下ろす】
>192 レオン(後ろによけて、上から機体ごと剣を振り下ろす
楕円軌道をとって、ということを除けば、ヨハンナの斬撃は至って単調な円舞。
ケルト・マリーネのガンランスを受け止めたレオンなら、いとも容易く見切れるものだ。
振り下ろされた炎の剣が、孔雀の扇を受け止める。
刃と面がぶつかりあい、その接点から風の粒子が零れ出して。
その剣圧は互角ではない。レオンの剣が扇面を少しずつ、ギリ、ギリ、ギリ…と粒子の膜を削っていく。
出力の面からみれば、イグニス・フロゴーシスはティアリアを遙かに上回っている。
にも関わらず鍔迫り合いとなっているのは、相手が年端も行かぬ少女らしきことでレオンにブレーキがかかっているか、
さもなければ”返事”を返すことに多少気を取られているのだろう…ハウリンティウスはそう判断した。
>「王子様になる!?いきなりなにを言い出すんだよ!
>君の言葉と行動は理解出来ないよ!
>何をしたいんだ!世界を変えたいのか!名を上げたいのか!ただ、戦いを楽しみたいのか!
>王子様になる!?戦場で女の子がなにを目指すんだよ
>僕は戦場で名を上げたい!!この剣でぇ!この機体でぇ!ファーブニール家を再興するんだ!!」
ファーブニル家の未来の当主は本気だ。
ヨハンナにも声の端々から、そのみなぎる決意を明瞭に感じさせた。
心意気だけなら公爵家、いや皇族にすら負けてはいないのだろう。
レオンの決意をぶつけられて、ふと扇に込める力が弱まって。
フレイムファングの剣圧を受け止めきれず、後方へ弾き飛ばされる。
半秒ほど吹き飛ばされたところで体勢を直し、再びイグニスに向かう。
「ねぇパティ、ファーブニール家ってナニ?」
『ごめん、聞いた覚えはあるんだけど…何だったかな』
「ま、いっか。とにかくどこかのおぼっちゃんということね」
「ふふん、『戦場で女の子がなにを目指すんだよ』って?
戦場なんて前座だもん、次のステージにすすむためのステップの一つでしかないの。
ここでの目的はひとつ。おにーさんをつかまえて軍人さんにひきわたすこと。
アクギャクヒドウな暴徒を捕まえたのが、これまたとびっきりの美少女だってわかったら
ヨハンナは一躍時の人よ。そこからヨハンナのレジェンドがはじまるの!」
『……』
再びスパーキング・ファンの緑色をした扇面を形作らせ。
「だいたい、テロリストなんかに聞くミミはもってない!」
『もう十分話してると思うんだ…あいたた、痛い痛い!』
>187 アルタイテン(何処からともなく降り注ぐ鋭利なクリスタル片。仮にこれを避けようとも、クリスタルからはほぼ全方向へと拡散光線が発射され、
ティアリアそしてイグニスにも拡散光線の一端が迫る…
「ヒトがはなしてるときに、わりこまないでよっ!」
扇を閉じ光線源に向けると、二機の周囲に球状のバリアを展開する。
アルタイテンの光線と重なり合うと対消滅し、
残った皮膜も、数秒経つと玻璃のかけらのように砕け、地に落ちた。
「さあ観念しておナワにつきなさい!おとなしくしてれば、恩赦にするようパパにたのんであげる。
この世に悪がさかえたためしなんて、ないんだか」
ふと思い出し、さっき光が飛んできたほうを見た。
その黒い塊に扇を向けると、ヨハンナはわなわなと震えだして…操縦席越しであっても声で分かる。
「な…ナニアレ…」
その方角の空は異形の巨躯に支配され、その大地は見るも無惨な兵機の骸に埋め尽くされ。
大きな水晶は今も、三月のウサギのように狂った魔宴を繰り広げて。
『だから言ったのに』
【レオンの剣に弾き飛ばされ、再び向かうも乱入してきたアルタイテンを見て絶句】
>>193 >>「ふふん、『戦場で女の子がなにを目指すんだよ』って?
戦場なんて前座だもん、次のステージにすすむためのステップの一つでしかないの。
ここでの目的はひとつ。おにーさんをつかまえて軍人さんにひきわたすこと。
アクギャクヒドウな暴徒を捕まえたのが、これまたとびっきりの美少女だってわかったら
ヨハンナは一躍時の人よ。そこからヨハンナのレジェンドがはじまるの!」
>「だいたい、テロリストなんかに聞くミミはもってない!」
「誰が悪逆非道な暴徒だ!誰がテロリストだ!この帝国貴族の僕に向かって、失礼千万!!
年端もいかない女の子だからって、言っていいことと悪いことがあるんだ!!
非礼を詫びろ!!少女だからって関係ない!君も高貴な生まれだろう!ここで貴族の礼節を叩き込んでやる!」
「レオン様、あんのクソ生意気なガキに痛い目をみせましょう。ファーブニール家を、レオン様を侮辱した罪をその身にたっぷりとわからせてあげましょう!」
フェニキアが本気で怒っている、久しぶりに見た
彼女は我が家の守護精霊だ。ファーブニール家が侮辱されたことは彼女が侮辱されたに等しい
剣を構え、ティエリアに切り掛かろうとするが……
「!!っ」
別方向からの攻撃がくると感じた勘で拡散光線を避けた
避けたあとにティエリアが光の膜でイグニスまで覆ってくれていた
「余計なことをっ・・・・・・!」
敵に情けをかけられた気がして、気分がいいものではなかった
だが、そんなことを言っている場合ではなかった
アルタイテンが近付いてくる
あんなやつ、逃げる以外の選択肢はない
眼前の少女も事態の深刻さにきづいたみたいだ
もはや、なりふり構ってはいられない
「失礼するよ」
一言、謝ると、ティエリアを抱え上げ、一目散にアルバニアに飛び帰る
「淑女の体を無断で抱えることに謝罪の言葉を、火急の事態故、危険極まる戦場に、御身を残せしは帝国貴族の名折れ、お許し戴きたい、お姫様」
『貴族には貴族の対応を、つねに礼節を持て・・・・・・祖父の言葉だったかな、おじいちゃん、僕は頑張ってるよね』
いままで戦っていた少女
あんまりいい感情は持っていないけど、最後の皮肉にその気持ちを見せてみた
ケルテ・マリーネによって地表が凍り付いたことによりグラード隊の足場も奪われることになり劣勢になりかけていた27番隊は息を吹き返した。
動揺が広がるグラード隊の隙をディクトは見逃さなかった。
投擲した大剣を拾い上げ再びグラード隊に斬りかかる。
先ほどの四肢を切断した華麗な剣舞とは打って変わって大剣を豪快に振り回す。
次々に爆散していくグラード隊の精霊機達。
「弱い弱い、これじゃあ寝ててもぶっ潰せるぜ」
『過剰な慢心は敗北の原因になります、お気をつけて』
凍り付いた大地より抜け出した精霊機が阿修羅めがけて爆弾石を投げつけてくる。
不意を突かれた阿修羅は回避できずに大剣を目の前にかざし盾とする。
すさまじい爆発、重量のある阿修羅でさえ軽々と吹き飛ばされた。
「くっ、なめやがって」
『なめていたのは貴方でしょう、私の言ったことを忘れないように』
「黙れ太郎、分かってんだよ。
どの位の威力か当たってみたかっただけだ」
阿修羅は大剣を杖にして立ち上がると、爆弾石を投げつけてきた精霊機に向かって大剣を投げつける。
回避行動をとったが避けきれなかった精霊機の脚に大剣が突き刺さる。
動けない精霊機に接近すると、その上に乗り大剣を引き抜く。
「あばよ」
そして精霊炉に思い切り突き立て、直ぐに離れると精霊機は爆散した。
『損傷が激しいです、そろそろ戦闘続行は不可能です』
「しょうがない、一旦引くか。
隊長殿、損傷が酷いんで一度ロンデニオンに退きます。
あんた達も適当に切り上げて、俺の歓迎会と称してぱーっと飲みに行こうぜ」
27番隊へそう言い残して阿修羅は戦場から立ち去る、その後ろには大量の精霊機の残骸が転がっていた。
阿修羅よりも損傷の激しいが戦っている精霊機は何機も居る、しかし阿修羅はその性質上大破すると修理するのに一度教国へ戻らなければならない。
これから始まる新たな戦いは先ほどの戦いよりも激しい、そんな時のタイムロスは致命的なものになる。
【ディクト:一度ロンデニオンまで撤退】
>194 レオン
>「誰が悪逆非道な暴徒だ!誰がテロリストだ!この帝国貴族の僕に向かって、失礼千万!!
>年端もいかない女の子だからって、言っていいことと悪いことがあるんだ!!
>非礼を詫びろ!!少女だからって関係ない!君も高貴な生まれだろう!ここで貴族の礼節を叩き込んでやる!」
『これはヨハンナちゃんが悪いな。謝ったほうがいいよ。…ヨハンナちゃん?』
アルタイテンに対する恐怖から言葉を失ったか…と思ったハウリンティウスはしかし、
ヨハンナを見て気づいた。その瞳がむしろ輝いているということに。
「…勝つる。これで勝つる!
あれだけおっきな黒水晶をもってれば注目度アップまちがいなし!!」
全く話を聞いてない。ハウリンティウスは泣きたかった。
「クリスタルにキズをつけないように気をつけなくっちゃ。
パティ、痛撃をつかうよ。この弓にすべてをかけるっ!」
『はいはい…』
スターダストアローを構えると、籐頭が緑色に光り始めて。
けれどもその翠光はすぐには放たれず、キュゥン…と音を鳴らせながら徐々に膨らみ。
「これでキめる…!痛撃のリンフォルツアンド!」
並の精霊機一機ほどの大きさに膨らんだ風弾を、
アルタイテンの上半身に向けて撃ち込んだ!
しかれどアルタイテンの動きを止めるまでには至らなくて。
「オウジョウギワが悪いなー。でも、まだまだっ!」
無謀にも二発目を放とうとするけれど…
>「失礼するよ」
「きゃっ!ちょっと、何するの!」
いきなり…というのはヨハンナが自分の目の前しか見ていなかったからであって、
レオンはつとめて紳士らしくしたのだろうけれど。
イグニスがティアリアを抱きかかえ、アルタイテンから離れていく。
どうする、ヨハンナ…?
. 承知する
ニア 断る
「だが断るでござるで候っ!」
『ナニその野武士みたいな返事?』
「音楽をたしなむレディの、誘いを受けたときの正しい返事よ」
「別に、ボクは魔法のヴァイオリンを出したりはしないんだけど」
ティアリアの両腕をぶんぶんと振り回して抵抗するも、イグニスから逃れられず。
「はなせはなせヘンタイー!クリープ!ロリコン!ペドフィリア!
はなさないと大邪神アグ●スを召喚しちゃうよ!いいの!?」
「ヨハンナはただのイッパンシミンなんだから、
ユーカイなんてしてもおカネにならないんだから!
ヘンなことしようとしたら、星見の塔の植え込みから飛びおりてサヨナラしてやるー!」
あくまで我を貫き通すヨハンナと違って、レオンはあくまで礼儀正しくて。
>「淑女の体を無断で抱えることに謝罪の言葉を、火急の事態故、危険極まる戦場に、御身を残せしは帝国貴族の名折れ、お許し戴きたい、お姫様」
その言葉を聞いて、ヨハンナは自分がとても子どもっぽく思えた…
というか、実際に子どもなのだけれど。
暴れるのをやめて、そのままイグニスにティアリアを任せる。
「うー…けど、ヘンなことしようとしたらホントにパパにいいつけてやるんだから!」
さっきまでの棘っぽさは、この声にはなく。
お目付役のハウリンティウスとしてもレオンの行動は気に入らないのだが、
ひとまず眼前の危機を避けることが先決だったので、あえて介入しなかった。
*
戦闘空域を抜けて目的地―ヨハンナは知らないがアルバニア付近―に着いたらしく、
レオンは義勇軍の軍営から多少離れたところでティアリアを下ろした。
「ありがと…」
しおらしく謝辞を返し、レオンには見えないけれどその頬はわずかに紅潮しているのに。
次の瞬間、ヨハンナは急にティアリアを飛び上がらせた。
「ふんだ!テロリストなんかに助けてもらったって、うれしくなんてないんだから!
今日のところはゆるしてあげる。でも、こんど会ったらその時こそつかまえてやるわ!
体を洗って待ってなさい!」
イタズラ好きな妖精は恥ずかしい捨て台詞を残し、そのままレオンの前から去っていった。
【→アルタイテン:スターダストアローによる風弾溜め撃ち(威力:弱〜中)】
【レオンにエスコートされて戦線離脱。後、恩を仇で返すようにして撤収】
既に義勇軍の手によって破壊されたケルン大橋。
しかし、ティルネラント王国側の河川対岸には数機の対空兵器と精霊機の姿があった。
「対空砲レイピア、早々に展開完了しろ」
王国の軍需物資輸送部隊、フェネック隊である。
先ほど橋梁破壊の連絡を受けて本国に帰還予定の彼らであったが、その予定すら覆された。
正体不明の機体、通称「アルタイテン」のためである。
―いつまでも不確定要素に振り回されるわけにはいかない。我々はあれを踏破する必要がある―
本部司令官の鶴の一声により、輸送部隊は再び橋への前進を続け、今、ここにいる。
フェネック隊は多くの対空兵器と砲手を輸送していた。
ロンデニオンで自らが破壊した対空兵器の埋め合わせのためである。
それが仇となった。
「俺だってあんな化物と遣り合うのは御免だが、ケツを捲れば抗命罪で縛り首だ。
今日ほど運命の女神を恨んだことはないね」
輸送部隊の指揮官は堂々愚痴をこぼす。それはここにいる全員の代弁である。
「目標は上空の黒い棘棘だ! 砲手、よく狙えよ!」
新配備の対空兵器レイピアは、榴弾弾頭を発射する高火力の大砲である。
命中すればいくらあのデカブツだって無事では済むまい……。
指揮官は祈った。
「3・2・1、撃て!」
轟音とともに放たれた破壊の使途が、アルタイテンを目指す。
【王国軍輸送隊 : アルタイテンに向けて射撃】
>196
『「…………?………高速で接近する反応が」』
ホロウ・クロウラーを追って移動していると、何やら後方から凄まじい速度で迫り来る反応が現れた。
精霊機の反応ではない。しかし対空兵器の類でもないらしい。エネルギー体か?
何というか……この反応は、「嵐」や「竜巻」等に似た………
初めて見たモノは何でも調べてみなくては気がすまない。
早速その場で解析を始めたアルタイテンだが、あろうことか動きが完璧に停止している。
此処に自分の脅威となる者は居ないと判断しているが故であろうが、それはあまりにも油断が過ぎた。
自らの顔面へと鋭く空を切って直線状に突き刺さる風の弾丸に、その瞬間まで気付けなかった程だ――
瞬間、衝撃。
『汚イ汚いな流石隠者汚いぃヒヒヒヒヒイィ!?!?!?!?!?』
「痛………!?」
キンッ!、という鋭利な音と共に、顔面の装甲が渦巻く風に抉り吹き飛ばされ、
頭が在った場所には、半円状の風穴を開けられた黒い鎧の塊の様なものが無様に載っているだけという有様。
半分理解不能のままに、見なくても分かるが一応は頭部の破損状況を確認しておく。
『「……損傷……損傷……頭部、大破。頭部、大破…」』
―――タイハ……大破……?
大破大破大破大破大破大破大破大破大破ァ?
小破でも中破でも損傷無しでもなく、大破だと?私の最高傑作が?
有り得ん…!176層にも及ぶ特殊魔素伝達式剛性金属装甲が!!!
高々風圧の磨耗程度に破砕されたなどと……!―――
『……偶然だ…!!あノ程度他に集中ヲ裂きスぎたガ為に発生した魔素の伝達循環ノ遅レ事にヨる偶発的事故に過ギないコレに間違イナど無い!!!』
発狂した少女ではない「誰か」の声を合図に、頭部に開けられた風穴から次々とクリスタルが突き出し、再びその顔面を形作る。
再生を終えた両の眼は、やたらと生物的に鈍く光り、風弾が飛んできた方向をギロリと睨む。
そこにはまたも初めて眼にする機体。構成を見るに量産機ではない。
『「しかしエロースは貴様に見向きもしない、消えろ消えろ消えろ消えろ消えろ消えろ消えろ消えろ消えろ!!!」』
怒り、というよりも狂気に近い咆哮を上げてヨハンナを押し潰さんとする勢いで突進するが、
ここに来て、更なる障害が現れる。
>198
>「3・2・1、撃て!」
『イィヒヒヒヒヒヒィアヒャアヒャヒャヒャヒャアアァ!!!?』
次々とガラスの割れるような音を立てて機体に突き刺さる、弾。弾。弾。
見るに近くの河川にいつの間にやら対空兵器がズラリと立ち並んでおり、それが遠慮なしの一斉射撃を掛けて来ている。
雨の如く無限に撃ち出される弾丸群に、さしものアルタイテンも動揺を隠せない。
しかもなんと厄介な事に弾の雨は全て榴弾であり、一発で二度美味しい炸裂品だ。
降り注ぐ弾丸の量に負けない程、体を構成する黒い水晶が砕け落ちていく。
だが、所謂ピンチのこの状況で、アルタイテンの眼光が不気味に歪む。
『「…貴様知っているか……?それは固まり過ぎだ…砲撃とは、群れて一点を狙えば良いものではない。
心理にして真理の雨を降らせてやろう」』
一瞬で落ち着きを取り戻すと、全身の損傷箇所から凄まじい速度でクリスタルが湧き出る様に生え、無限に枝分かれし、
その全てが天に向けて一斉に発射される。本体からだけではない、先程ボロボロと落ちていった破片までもが、
地面に巨大な黒水晶の城を築き、次々と上空へクリスタル片を飛ばしていく。
粗方撃ち尽くしたところで、今度こそアルタイテンは不気味に笑う。
『「回避、も、防御、も……次に起こすアクションは貴様等次第…
“アール”の答えは四秒後に訪れる」』
【アルタイテン、ホロウ・クロウラーもティアリアも忘れ、王国軍輸送隊と戦闘、アール発射。
(シールド系のものがあれば軽減&無効化可能なレベル)】
「ふぅ…よかった。どうやら助かったみたいだね」
エルトダウンは安堵する。
ホロウ・クロウラーとシュヴァルツ・ヴァルトが停止する。
その遥か上空を飛行するのは巨大な鉄の翼。
その翼にはハッキリとASLのロゴがあった。
『既に要請しておいた。例のアレだ。巻き込まれるなよ?』
すると、鉄の翼から無数の黒い塊が落ちてくる。
そしてそれらは空中で傘のように開くとそれぞれ自律行動をしだした。
"アレが前々から開発してた量産型の精霊兵器か?殆ど精霊力もねェみたいだが"
ファラーシアにはそれらから微塵の精霊力も感じられなかった。
ASLの方針転換の象徴である。
大量の無人兵器を量産することで低コストかつ効率よくデータを収集するのだ。
もちろん、大型の精霊兵器の開発を終了したわけではない。
今後ともASLは拡大されていくだろう。
「そうだよ。黒い風…試作量産型精霊兵器。ま、質より量ってことだね」
そしてそれらは各部に搭載された発射口からごく細いレーザーを撃ち出す。
目標はアルタイテン、及び王国軍輸送隊。
精霊力を凝縮したレーザーだが、一つ一つの威力は低い。
時間稼ぎほどにしかならないだろう。
【鉄の翼より黒い風射出。アルタイテン、王国軍輸送隊へ攻撃開始。
ホロウ・クロウラーとシュヴァルツ・ヴァルトは鉄の翼に誘導され撤退中】
自分達の斜向かいでもアルタイテンに攻撃を仕掛けた者がいる。
その攻撃に注意を向けたのか、上空の悪魔は動きを止めた。
それは、まさに僥倖であった。
「アルタイテンに直撃弾! 見ろ、分厚い装甲を剥がしてやったぞ化物め!」
レイピア(大口径の対空砲)の一斉射撃が、空中停止中の大型精霊機に命中した。
弾頭はアルタイテンに深く突き刺さり、内部で爆裂する。
着弾地点付近からは黒煙が上がり、砕けた水晶装甲がパラパラと地上に落下している。
いける、とフェネック輸送部隊の隊長は確信した。
「ヴァルフレンやファールデルの連中ばかりにでかい面をさせておけるかってんだよ。
ここいらでティルネラント人の意地を見せる。レイピア、弾篭め始め!」
最新鋭の対空兵器を指揮するこの男は、ティルネラント出身の士官であった。
昨今、急激な領土拡張を行ったティルネラント王国軍には、占領国・属国の軍人も多く編入されている。
特にロンデニオン攻略部隊はそういった外人による部隊が主力となっており、かなりの活躍を見せていた。
あんなデカブツと対峙するなんて貧乏くじもいいところだが、ここで引いたらティルネラント人の男っぷりが廃るのである。
「第二射用意!」
指揮官は叫ぶ。
しかし、実際に二度目の射撃命令が下ることはなかった。
敵機アルタイテンの反撃が始まったのだ。
指揮官は修復される敵の装甲に目を疑い、発射される敵の広域攻撃兵器には成す術すら持たなかった。
「敵水晶から高出力のエネルギー確認……攻撃範囲が広すぎる、畜生!」
所詮は輸送部隊。彼らには航空支援も、防御手段もなかった。
あるのは輸送用のカーゴと対空兵器のみ。
一撃で仕留められなければ勝てない戦いだったのである。
「レイピア一号機、二号機大破!
三号機は無事か……おい、砲手逃げるな馬鹿野郎!」
阿鼻叫喚であった。
まともに光線攻撃を受けた対空兵器は沈黙し、砲弾槽を誘爆させて吹き飛んだものもあった。
致命傷は避けられたものの、悠然と空を舞うアルタイテンに恐れをなしてか逃走をはかる砲手もいた。
皆、敵にいいようの無い恐怖を覚えており、それが一気に噴出したのだ。
そしてダメ押しとばかりにアルタイテンより後方の飛行精霊機からの砲撃をも一身に受ける破目になった。
混乱の最中にあった彼らが、その攻撃の主(ASL)を認識していたかどうかは定かではない。
「ダメだ。火力が違いすぎて支援無しじゃあどうにもならねぇ!
撤退、撤退だ!ここは何としても生き残れ!」
ロンデニオンに搬入予定だった対空兵器レイピアはほとんどが使い物にならなくなってしまった。
しかし、攻撃の手ごたえはあったのだ。
これを報告し作戦を検討すれば、あの正体不明の悪魔を地面に叩きつけてやることができるかもしれない。
この交戦自体を無駄にしてなるものか。フェネック隊は一目散に本国への逃走を開始した。
【王国軍輸送部隊 : アルタイテン・ASLの攻撃に部隊半壊。逃走。】
※出番終り
逃走する王国軍輸送部隊に接近する精霊機が一機。アロルのル・フィー…否。
今はセラが搭乗しているル・フィーだった。
ル・フィーは突撃型のドルフィーや後方支援型のセルフィーとの調度中間地点の兵装。
つまりは標準的で、ポテンシャルは高いものの特徴がないのが特徴の機体だった。
セラは敗走する王国軍輸送部隊の輸送品を機体を並走させて物色している。
「おまえ!これを借りるぞ!」荷台を指差しセラは低めの男言葉で言った。
「これは使えない!『対空』兵器じゃないんだ!」輸送部隊の兵士は手で罰を作っている。
「わかっている」
セラが目をつけたのは局地戦用の対艦装備を持つ大型の精霊機だった。
機体の腹部から背中へ被さるようにグルリと繋がっている巨大な砲身。
これも設計上、巨大な精霊炉が影響しているのだろうか。使い勝手は恐ろしく悪そうだ。
名前は蝸牛としよう。
セラはル・フィーで蝸牛から砲身だけを毟り取るように引っこ抜くと断面から内臓のように
垂れ下がっているコードをル・フィーの精霊炉に直結させた。標準型の機体は汎用性があるのが優れもの。
「第四軍団の者か!?無駄だ!レイピアの集中砲火もアルタイテンには効かんかったのだ!!
対艦兵器ではあるとはいえ、それ一つでどうするつもりだ!?」
兵士となにやらやりとりしている者に気づいた指揮官がセラとは知らずに叫び返す。
「…。このアロルさまをなめるなよ。どーてーやろー」
アロルに成りすましたセラは下品な言葉で指揮官に返した。
「ど!…ばかな!!そんなわけないだろ!第四軍団の者だな!その識別信号覚えてやる!!」
「…じゃあなーどーてー」
セラは歯を食いしばって笑いをこらえるとアルタイテンを中心として、ASLとは対角線に位置する空域にル・フィーを飛翔させた。
ちょうどアルタイテンを斜め上空から見下ろす形。
「ASLの貞操の無さを味方にする!」
精霊炉のエネルギーを、蝸牛の大砲に集中させるとセラの機体は推進力を失い自由落下を始める。
自由落下のなかで彼女は、ASLの試作機のレーザーの雨で削れて薄くなったアルタイテンの装甲部分を
ピンポイントで打ち抜くつもりなのだ。
「落とす!!」
グワンッ!!
ル・フィーの精霊炉で高出力を得た蝸牛の熱線がアルタイテンを襲う。
【セラ:レーザー攻撃で薄くなっているアルタイテンの装甲に砲撃】
『「…空腹………労した割に、成果が無い…非効率的……帰還も検討…」』
先程のアールの直撃につき徹底していく王国軍輸送部隊をしげしげと見つめつつ、
アルタイテンはゆっくりと顎に手を当て、何事か考え始めている。
戦場にわざわざ現れるのには理由が在る。「とあるモノ」を集めているからだ。
それは戦場でなくては手に入らないモノ……故に自らを強力な戦闘体として形作り、想い固めている。
しかし、今回はそれの集まりが幾分か悪い。前回現世に現れたのが何年前だったかは忘れたが、
百と経ってはいるまい。自分からすれば取るに足らぬ程短い時間だ。
人間にとっては随分と永く感じられようが、それでも「アレ」の質がここまで落ちるほどのことが、高々十数年で起きたとも思えない。
『「やはり…時期尚早…?しかし、確かにウロボロスが一周した筈だが……」』
顎に手をやったまま一人小首を傾げる。どうにも理解が及ばない。
と、今の今まで首が在った場所を、鋭い閃光が一瞬で焼いて行った。
何かの見間違えかと思ったが、そういえばさっきから全身に小さい衝撃やら揺れを感じていたのを思い出し、
閃光が飛んできた方向を首を傾けたまま振り返る。
そこには無数の黒い鉄傘が、こちらに向け精霊力圧縮砲と思われるものを連射している姿が見て取れた。
しかしアルタイテンの体を構成する装甲はその構成上、所謂レーザー系の攻撃は効きにくい。
さっきから撃ち込まれている程度の出力では、水晶の向きに反射されるか、無限に反射して体内に消えてゆくだけだ。
今現在、自分は再生も困難なガス欠状態であり、早急な補給活動が必要なのだが、どうにもこの低威力では回復出来そうに無い。
この状態に実弾か直接攻撃を受けては間違いなく傷が残る。やはり一度撤退するべきだろうか……
帰還の優先度が高くなり始めたその時、しかし帰還は不可能になってしまった。
>「落とす!!」
『「んん?」』
こんな近距離に精霊機が!?気付かなかった…いや気付かなかったわけではない、気付いてはいた…!
しかし、考え事をしていた時だった上に、撤退して行った王国軍に紛れていた反応だったので、そのまま一緒に撤退するものと思っていたのだ。
…いや言い訳は良い、そんなことより、コイツは何てモノを担いで飛んで来たのか…!
あれは何時ぞや目にしたことがある。先程の細々としたものとは比較にならない一撃を放つ「火」だ。
『「!?…それは…!!不味い不味い止せ止せ止せ止せやめろ女!!!!」』
気付いてから必死に止めたが、化け物の待てに応じてくれる常識人などこの世に居ない。
次の瞬間、凄まじい衝撃が全身を奔ったと同時に、圧倒的な熱量が腹部を襲った。
それはちょうど黒水晶の固まりから上半身が生えている部分だ。たった今撃たれたばかりだというのに、既に融解が始まっている。
前方に向かって雄雄しく突き出していた二本のドリルはグニャリと曲がり、飴の如くボタボタと雫と化して落ちていく。
このままでは本当に不味い。そう思い、突き刺さる熱線を何とか吸収しようと試みるが、とても貰いきれる威力じゃない。
次第に意識が薄れ、視界がぼやけてくる………
この身に危機を感じたが、それ以前に、自分には自分以上に守らなくてはならない者が居る。
伝わった熱により溶けかけている翼を無理矢理広げ、腕を交差させる。
そのまま、熱線を弾くように両腕を広げると、そこには巨大な黒い魔方陣が展開され、ミシミシと嫌な音をさせて光っている。
『「シュムアテナトスグラマトン……!この子を守る…私の、永久の使命が…!!」』
例え刺し違えてでも、内に眠る少女の障害となるものは、何を以ってしてでも排除が絶対。
耐久値を無視して、極限まで体内のエネルギーを爆発させる。
狂気に塗れた、化け物だからこそ出来る意地の選択。
『「オルギオン」』
【アルタイテン、融解寸前でセラにオルギオンを近距離発射。現在装甲の再生は不能】
>204
セラは目を見開き瞠目する。蝸牛の熱線がアルタイテンの腹部を見事に融解させているのだ。
対艦砲にこれほどの威力があるのか。それにしても容易すぎる。
これは自滅までとはいかないものの消耗しているアルタイテン側に原因があるのだろう。
「でも勝ちは勝ちなのよアルタイテンさん」
狙いとは幾分外れてしまったのだがセラは薄い笑みをたたえて言った。
>『「シュムアテナトスグラマトン……!この子を守る…私の、永久の使命が…!!」』
「!!」
それはセラの慢心を狙いすましたかのようなアルタイテンの反撃。
蝸牛の熱線を弾き返すようにして狂気に濡れた高エネルギー波がセラを襲う。
砕け散り蒸発する蝸牛の砲身。
「あぶない!」セラの機体は大砲を捨てて東に旋回していた。
命を守るための極限の回避行動。柔らかい体は操縦席で重力に押されると揺れて元に戻る。
「くう!」
前のめりになり操縦桿を前に倒すと機体をアルタイテンに猪突させるセラ。
機体の金属の腕に握られているセラミックの剣をアルタイテンの胸部に向けて振り下ろす。
「てやあああ!!」
振り下ろした剣がアルタイテンの装甲を引き裂こうとした瞬間、右腕が溶解し空中に千切れ飛んだ。
ASLの圧縮砲の雨がセラに降り注いでいたのだ。
セラは機体をアルタイテンの真下に潜り込ませ圧縮砲の雨から
回避すると地表をギリギリに飛んで退却することとなった。
アルタイテンと接触したセラの心には敗北感とは別に空漠とした思いが湧き出している。
「…あの化け物…。…この子を守るって言っていたわ…」
なにかしらの切れ端のような言葉。
間断なく思考に襲い掛かる疑問を振り払いセラの精霊機は戦場から離脱した。
【セラ:撤退】
>>196-197 ヨハンナを抱え、アルバニアまで飛んでいる最中に、彼女にいろいろと酷いことを言われた気がしたが、
僕は自分の心の平静を保つために、彼女の言葉を聞かないことにした
「さすがに、アルバニアまで連れて行くわけにいかないな」
近くの森にイグニスを着地させ、ティエリアをゆっくりと解放した敵意はないという証明のために、コクピットから外に降り立った
「手荒な真似をしてごめんね
あれ以上、あそこにいたら死んじゃったかもしれない
君とは戦ってたのに変な話だけどね」
自分でもなんだか可笑しくなってくる
思わず、吹き出してしまた
「あははははは、でも、やっぱり女の子をほって置いて、僕だけってのも、目覚めが悪いしね」
照れ隠しに、頭をかきながら、はにかむ
フェニキアはそんな僕の様子を優しく微笑んでくれていた
>>「ありがと・・・」
彼女の消え入りそうな、小さな謝辞を聞けただけで僕は満足だったその直後にティエリアは急発進し、暁の空に消えていった
「・・・・・・誰がテロリストだよ
でも、次に会う時を楽しみにしてるよ」
ティエリアの姿が見えなくなるまで見送りったあと、アルバニアまで撤退してくる、友軍の列に交じってアルバニアまで撤退することにした
【レオン:ヨハンナを見送り、アルバニアまで撤退】
グラード・ゼリュペットはアルバニアの軍病院のベットの上で目覚めた。
フォリナーの機体にブーストハンマーを繰り出した後の記憶は空漠としている。
「夢か現か…」
ベットから起き上がると己の体の無事を確かめるように院内を闊歩する。
「グラードさま!」
後ろで声がした。グラード隊のピピンの声だった。
ピピンによればブーストハンマーの大爆発のあと王国軍の増援があり
グラード隊は撤退したと言うことだった。タルトも背中に大火傷負い、
半数に減ってしまった隊員の生き残りもこの病院に入院しているらしい。
当のピピンも精霊機を失ったあと戦場を走って逃げ出し今この病院に到着したところだった。
「あのあとの記憶がまったくないのだが…」
グラードは呟いた。
「グラードさまは、おいらたちを逃がすためにたった一機で王国軍とたたかってくれたんですよ!」
「ふむ。ではそのあと俺は意識を失うまで戦い続けて意識のないまま戦場から逃げ出して来たというわけか?
…がんばったんだな…俺…」
「はい」
グラードは窓から遠くを見つめていた。
「出直すか…」
「はい!」
【グラードはここで終わります】
エルトダウンは暗く静寂に包まれたコクピットの中でとある夢を見た。
恐ろしい夢から気がつけばそこは無音、汗にまみれた自分。
「夢…か。ヒドい…何かとんでもない夢だったな…」
エルトダウンが見た夢。それは崩壊の旋律。
誰も抗う事は出来ない。夢の主である自分でさえも。
コクピットには誰もいない。回収班が気を利かしてファラーシアを持っていったようだ。
鉄の翼の格納庫で役員にコーヒーを貰うと一気に飲み干した。
鉄の翼で回収されASLまで向かっている途中、窓から地面を見た。
まるでゴミの様に無残にも散らかされた精霊機や砲台。
砂漠で半ば風化しているそれらはおそらく何年も何年も前の物。
ボーッと地面を眺め続ける。相も変わらず残骸は散りばめられている。
『ここにいたのか、エルトダウン・シャーズ。
すっかり寝ていたようだが…よく眠れたか?』
呼びかけに呼応して窓から目を離す。
そこにはまるで予想していたモノとはかけ離れた…なにか魅力的な女性がいた。
長い髪、真っ赤に濡れた唇、そして何より特徴的なのは真っ直ぐな黒眼。
エルトダウンは夢の事を話そうかと思ったが、どうも気が引けた。
顔を合わせてすぐにこんな事を言うのもどうだろうか。
そんなエルトダウンらしくない事を思っていた。
「ええ…ああ、先刻はありがとうございました。もう死んだと思いましたからね…
それにしても綺麗なお方だ。こんな美女がアレに乗っているとは意外でした…」
それは営業スマイルとも違う、人間的な微笑み。
サイアニスは少し嬉しそうにしながらも鼻で笑った。
『お世辞は勘弁してくれ。褒めても何も出ないぞ?
…船長が後でデータを提出しろと。それからは技師班が機体の修復をしてくれる。我々は今日はゆっくり休めとの司令だ』
そう言い終えるとすぐに振り向き、廊下を真っ直ぐに歩いていった。
左右に振れる彼女の長髪は戦場の冷徹な印象を全く感じさせなかった。
【エルトダウン、サイアニスならびに乗機は鉄の翼に回収。ASLへ帰投中…】
『「損傷、損傷……大破、大破、大………破……」』
迫るセラの剣撃が直撃する瞬間、先程の弾幕に救われた。
瞬間、まるで糸が切れたかのように、アルタイテンの山の如き巨躯が、空気の振動を周囲に走らせながら、
空さえ揺るがし、地響きを伴って地に落ちた。
黒水晶で形作られた、怪しくも美しく光る自慢の装甲はドロドロに融解し、最早見る影も無い。
上半身などは、原型が人の形をしていたことさえ分からない程に崩れ、
ぐったりと垂れ下がっているだけとなっており、苦しそうな呼吸音だけが聞こえてくる。
――こんな筈では――
一体どうしてこんな状況になってしまったのか、原因を分析することも出来ない。
今は考え事をしたくは無いのだ。酷く衰弱しきっている。
もう配慮に留めるだけでは済まない、決定だ。「撤退」する。
『「…次元固定開始、安定…第788拘束機関、二次開放………戦闘ユニット、パージ…」』
―するべきことはもう決めた、ならば行動は迅速にせねばならない。手際が悪いのは嫌いだ―
今日まで想い続けてきたカタチを捨てる。データは既に登録済みだ、惜しくはない。
何かが折れるような「バキン」という音がした数秒後、アルタイテンの上半身は影のようにぼやけると、
一瞬で砕け散り、純粋に巨大な黒い水晶の塊となる。
分割していたエネルギーの流れが一本となったことで、最低限の再生と、帰る為の「力」は確保出来たようだ…
少々揺れながらも、再び浮上する。
『「ルート確認………魔素変換開始、数値修正……
……情報不足…侮っていた………次は……………」』
―――次は、もっと強く―――
【アルタイテン、撤退】
「……ふがっ」
傭兵アデラ・グラーフストレームは、唐突に目を覚ました。
どうやら作戦会議のあと、そのまま眠ってしまったようである。
慌てて左右を確認するが、義勇軍の面々や傭兵仲間は、既に持ち場へと退散したようだ。
「私はどれくらい寝ていた、フギン=ムニン」
『 about 2 hours 』
アデラの右眼窩に納まっている闇の精霊・フギン=ムニンは答えた。
正確には、彼女がテーブルに伏して寝息をたて始めてから、1時間53分24秒ほどが経過していた。
・・・
山岳都市アルバニアンにある、義勇軍作戦会議室。
ここでは連日、作戦会議が繰り返されている。
ケルン大橋破壊の成功を受け、ロンデニオンへ進撃した義勇軍主力であったが、ティルネラント側の強硬な守りもあって未だ拠点奪還を果たせていないからである。
味方に甚大な被害を受けながらも、ティルネラントの主な輸送経路(ケルン大橋)は破壊することができた。
しかし、かといってティルネラント王国はロンデニオンをこちらに明け渡す気はないようであった。
敵の指揮官は嬉々として迎撃用の陣を敷き、精霊機部隊を各所に配置したのである。
ロンデニオンに篭って徹底抗戦の構えだ。
「連中、粘る気だな」
陸路での遠回りとなるが、北東の山間を通ればティルネラント王国本土からロンデニオンへと至る道はある。
彼らはそこからの援軍を待っているに違いない。
ふーっ、とアデラはため息をついた。
彼女は、ケルン大橋さえ落としてしまえば、敵軍の意気を挫くこと大であり、即撤退の可能性すらあると踏んでいた。
だが現実は違った。
アデラの楽観論は粉々に打ち砕かれたのだ。
「……」
部屋の空気が湿気を含んでじわりと暑い。
アデラは白いシャツのボタンをもう一つ外すと、黒のクラバット(首巻スカーフ)を少し緩めた。
総力を挙げての短期決戦しかないだろう、とアデラは思っている。
敵の増援が予想される以上、こちらに包囲持久戦を構える余裕は無い。
敵援軍到着までに義勇軍の攻撃が成功すれば、我々の勝利。
そうでなければ、彼らの勝利である。
「しかも敵は正面だけではない。
なかなかどうして、エウロペアは戦局のるつぼじゃないか!」
突如上空に現れた無差別破壊兵器「アルタイテン」や、敵味方関わらず戦場に介入してくるASL(人工精霊研究所)など、動向予測が困難な勢力の影響も考えなければならない。
次回の作戦には早急、かつ慎重な選択が必要である。
【義勇軍 : ロンデニオン奪還に向けて、決戦準備中】
ケルン大橋崩落から数日。
ロンデニオン制圧部隊はローガンブリア義勇軍の第一波をかろうじて退けるも、
未だ楽観視できる状況にはなかった。
老将「本国からの増援はまだ来んのかッ!」
老将の拳が机を打ち、乾いた音を立てる。その目は充血していた。
無理もない。哨戒兵と偵察兵とのニアミス程度の小競り合いではあるが、
ここ数日の間もたびたび散発的な戦闘が起こっている。
老将「まさかケルン大橋そのものを破壊するとはな…
ヴァルフレンの若造、ここを落とす時に捨て駒にするつもりが死に損ないおって、
もう少し使えると踏んでおったが」
その剣を鞘に押し込めんとし、この事態に至った責任は、間違いなくこの老将にある。
老将「ところで、そのフォリナーは何をしておる?」
将校「申し訳ございませんが、存じ上げません」
老将「…だんまりを決め込むつもりか」
ケルン大橋を落とされたとあっては占領政策は大きく修正せざるを得ない。
しかも、義勇軍はまだしもアルタイテンの出現は予想外であった。
制圧部隊の士気は日に日に低下しており、撤退も考慮すべき手の一つではある…
だが、むしろそれだけの損害があるからこそ老将は引くに引けなかった。
老将「ロンデニオン制圧のために国王陛下から多大な戦力をお借りしておきながら、
戦果が『橋を落とされました』では儂の立場がない」
老将「レイヴン隊とは全く名前通り。義勇軍など所詮寄せ集め、烏合の衆に過ぎん。
このクローディアスもかつては戦場で名を馳せた騎士。
我が剣を以てしてでも粉砕してくれるわ!」
クローディアス「さて…”山羊”の方は準備は進んでいるのか」
兵士「仰せのままに」
見るも無惨な瓦礫の祭殿。それを見守る者もまた、砕けて伏した女神像。
フォリナーによって破壊された教会堂跡の前では、
大きな刃を持つ不気味な機械装置を中心に、大勢の人だかりができていた。
兵士「只今よりローガンブリア義勇軍のスパイ、
セドリック・ベッセマーの公開処刑を行う」
兵士「この者はティルネラント軍に虚偽の情報を流し、あろうことか、
ティルネラント王国、神聖ローガンブリア帝国両国の友好の証、
ケルン大橋の爆破テロに荷担した者である」
兵士「のみならず、近日の混乱につけ込んで婦女暴行、略奪を繰り返し、
その悪行は留まる事を知らない」
処刑台に横たえられたのは見るからに屈強な大男である。
筋骨隆々とした体、いかつい顔つきなど、見る者は凶悪な犯罪者という印象を受けるだろう。だが…
死刑囚「違う!俺は何もやってない!本当だ、俺は本当に何もしてないんだ!」
囚人の言ったことは事実であった。
この男、セドリック・ベッセマーは一介の大工に過ぎない。
無実の市民を、ただ”悪人役”にふさわしいという理由で
クローディアス配下の兵士は凶悪なスパイに仕立て上げたのである。
整った顔立ちの若者や凛然とした女性では、この役は務まらない。
なぜならば、ロンデニオン市民に「義勇軍はその名にそぐわぬ犯罪者の集団」という
イメージを植えつけるに足らないからだ。
そしてまた彼は、クローディアスがケルン大橋を落とされた責任をかわすための
”身代わり山羊”でもあるのだった。
かつ…悲しい事だけれど…
娯楽の少ないこの世界において、公開処刑は市民のささやかな楽しみの一つなのだ。
人混みの中には、大勢の大人に混じって幼い子どもまでもがその様子を見ている。
市民A「(おっかないわねぇ…私じゃなくてよかったわ)」
市民B「(他人の不幸は蜜の味、って奴だな。へへ!)」
市民C「(ローガンブリアだろうがティルネラントだろうがどっちでもいい。
俺達はただ平和に暮らせりゃよかったんだよ!
義勇軍の連中、余計な事してくれやがって)」
兵士「以上の理由により、この者セドリック・ベッセマーに死を賜る」
牧師「汝、神の代行者としてこれを行う。汝ら罪なし」
処刑人がスイッチを押すと、無慈悲な刃が哀れな男の喉元を通り過ぎ…
持ち主から引き離された丸い塊が、紅い液体を散らせながらボトリと落ちた。
兵士「ローガンブリア義勇軍を騙る凶悪な賊徒は、まだこの町に潜んでいる!
もし見つけた者は、すぐに最寄りの兵士まで報告されたい!」
ヨハンナは数日ぶりに家(ティルネラント西北・シュトロウス地方)に帰った。
「ただいま…」
父「お帰り」
『トデスキーニ様、私が至らないばかりに…申し訳ありません』
「パパ、ヨハンナはもう12よ。おしりペンペンはもうイヤ!」
父「…何か困った事はなかったかい?心配していたよ」
「…べつに」
父「そうか。無事ならよかったよ。ハウリンティウスにも苦労をかけたね」
『とんでもないことです』
「(なによ。パパはパティのほうが大事だっていうの?)」
「ヨハンナ、明日もおでかけしたいの。ね、いいでしょ?」
父「それは、どうしても行かないといけない事なのかい?」
「うん、と〜っても大事なの。ゼッタイに明日いかないとダメなの!」
父「…それなら、仕方ないね。今日は遅いから、もう寝なさい」
父親としては、娘の希望を最大限尊重したつもりだ…
しかしその返事を聞いてヨハンナの表情が更に険しくなったことを、彼は見逃した。
「ありがとう。じゃあ、おやすみさい!」
乱暴に扉を閉めると、ヨハンナは自室に戻り、ハウリンティウスを抱いて寝た。
*
ヨハンナが生まれて間もなく母親は亡くなり、何不自由のないように育てた筈。
けれど、ここ最近は次第に反抗的になり、父親としては大いに困惑していた。
…もともと愛された事の少ない彼には無理のある事だったのかもしれなくて。
ヨハンナの父、シュトロウス侯爵テオーデリヒ・トデスキーニは
ラトリア帝国最後の皇帝…というのは廃帝である彼には少々語弊があるけれど…であった。
テオードリヒが即位した頃、帝室は血で血を洗う皇位継承権争いで揺れていた。
彼が即位したのも、腹違いの兄と従兄弟が差し違え、皇位を継ぐ者がいなくなったから。
テオーデリヒの母は、彼が幼いころ、叔父の放った刺客によって、
テオーデリヒをかばって息子の目の前で刺され、死んだ。
父親にいたっては顔を見たことすらない。
周囲に誰も信頼できる人間がいない、そんな環境で育ったテオーデリヒが
この世でただ2人…と、もう一体…だけ心を許せるのが、
ヨハンナとその母であり、そしてハウリンティウスであった。
テオーデリヒ「やはりあの子は君の娘だよ。こんな雪深い牢獄には収まりきらないな」
自嘲気味に妻の遺影を見やると、テオーデリヒは再び部下の研究報告に目を移した。
【王国軍:無実の市民を義勇軍のスパイに仕立て上げて公開処刑。
プロパガンダにより、ロンデニオン市民の義勇軍に対する感情悪化】
−−ロンデニオン近郊−−第四軍の野営地−−
朝の陽射しが濃い影を落とし濡れた空気に木々は緑を深くしていた。
白っぽく露んでは遠ざかる意識の切れ端がひらひらと脳裏を霞めては浮かびあがる。
セラは夢から覚めると純白の天蓋ベットから体を起こした。
すでにテーブルには食事の準備ができている。テーブルに向かえば侍女が椅子をひいてくれた。
「さがってよい。食事はひとりでする」
セラが言うと侍女でもある女兵士は静かにテントから出た。朝は食欲がない。
やわらかいパンを一口ほおばると洋盃にそそがれている曹達水で飲み込む。
あとは銀の実をひとつ。
甘い実は溶けるように飲みこまれると細い首を通り体の底深く落ちてゆく。
目を瞑りセラは思い出す。大橋での攻防。アルタイテンやASLの存在。
すべては悪魔の御伽話のような出来事。セラは目を静かに開けると鼻白んだ表情をみせた。
最近ものを見ていると頭が痛く重くなる。目から入ってくるものはあまりにも大きく重過ぎる。
テントから出て朝の空気を胸いっぱいに吸い込むとセラはテントの入り口で警備をしているアロルに呟いた。
「頭には世界がひとつ入っているのですから、それはそれは重いでしょうね…」
「?」
アロルには言葉の意味がわからなかった。
【ケルン大橋崩落から数日後の朝。ただの朝です】
ケルン大橋崩落から数日がたった。その間はずっと、義勇軍はロンデニオン攻略のための作戦会議が連日行なわれていた
僕はというと会議には出席しているものの、端っこの方で黙って座っているだけだった
やっぱり、傭兵という人たちの雰囲気は苦手だった
作戦会議自体は聞いているだけで戦略、戦術の実戦的な勉強になってとてもためになった
でも、さすがにこう毎日、毎日会議ばかりだと、疲れる
アルバニアンは鉱山都市だ。特に観光名所などもないけど、鉱夫や兵士で賑わう街は活気に溢れていているだけで退屈はしなかった
昼間からメインストリート沿いにある居酒屋ではそこらかしこで酒盛りが繰り広げられていた
僕とフェニキアはそんな賑わうメインストリートを並んで歩いていた
「ロンデニオンといい、アルバニアンといい賑わってる街は歩いているだけで楽しいね」
「そうですね。でも、私はレオン様と歩いているならどこでも楽しいですよ」
「ははっ、フェニキアにそう言われるのは悪い気はしないね」
「レオン様もいつかは私のもとから巣立って言ってしまうのでしょうね…」
フェニキアは遠くを見つめて寂しそうな目で遠くを見つめていた
「でも、私は寂しくなんてありませんよ。歴代の当主様もご立派になられましたし、いつになるかもわからないですけど、レオン様の子供をお世話するのも楽しみで仕方ありません」
「もうそんな、未来の話はいいよ。僕はまだ結婚もしてないんだよ」
「先代様が卑劣な罠であのようなことにならなければ、今頃は……」
「せっかく、賑やかなところを歩いているんだから、湿っぽい話はやめようよ」
「そうですね、申し訳ありませんでした。」
いろいろと見物しながら、歩いていると入り口の方に人だかりができていた
気になって近づくとそこには精霊機をつめるような大きなトレーラーがあった
横には帝国技術院の紋章がおおきく描かれている、辺境の都市に技術院の人間がやってくることなんて珍しく、人が集まって来ているのだった
どんな義勇軍の精霊機でも見に来たのだろうか、と考えを巡らせているとトレーラーから人が降りて来た
「ん、あれは!!」
「アーウィン様ですね」
どんな物好きかと思ったら、おじさんだった
「おじさん!どうしたんです?こんなところまで」
アーウィン「いや〜レオニールが義勇軍に参加してるって聞いてね。イグニスの調子を見に来たんだよ
どうだい?上手く使えてるかい?」
「おじさんのお陰でイグニスは絶好調だよ。ありがとう!」
アーウィン「うんうん、そうだろう、そうだろう。レオニールの活躍は帝都にまで聞こえてくるよ
ファーブニール家の嫡男が義勇軍に参加して戦果をあげてるという話は陛下の耳にも入っているよ」
「陛下の耳にも!陛下はなんと仰られていたんですか?」
アーウィン「さあ、そこまでは?でも、大変喜ばれていたそうだよ。
そうそう、それより、技術院の同僚に聞いたのだけどね。ここの地下にアルバニアンからロンデニオンに続く地下道があるらしいんだ
だいぶ昔に使われなくなったんだけど、鉱山の方から続く道なんだけどね。あ、地図を貰ってきたから」
おじさんから地図を受け取る
ずっとニコニコした顔で話を続ける
「ありがとう、おじさん!うん、この大きさなら精霊機も十分通れるよ!」
アーウィン「役に立ってよかったよ。さ、イグニスのところに案内してくれよ
記録水晶で君の活躍とデータを一刻も早くみたいんだ」
「ははっ、わかってるよ。おじさん、相変わらずの精霊機好きだね」
「こちらです。アーウィン様」
【レオン:ロンデニオンまでの地下道の地図を手に入れる
アーウィンとともに格納庫に向かう】
鉄の翼の中に作られた広い空間。
金属と金属が衝突する音が響く。
『やる気があるのか?エルトダウン・シャーズ。
がら空きだッ!!墜ちろ!』
シュヴァルツ・ヴァルトの蹴りがホロウ・クロウラーの腹部に直撃する。
大きな振動。そして機能停止の合図。
鉄の翼の中に設けられたその施設は精霊機の闘技場と言えるだろう。
二人はコクピットから降りると、互いに軽く会釈した。
「強いですね…暗き闇…その異名は伊達じゃ無いようで」
『その名で呼ぶのはやめてくれと言ってるだろう。エルトダウン。
サイアニス…それでいい。本当の名などとうの昔に捨てた」
サイアニスは苦笑いをすると、足早にエルトダウンの前から逃げだした。
"なァ…エルトダウン。あの姉ちゃんなかなか可愛い所もあるんだな。
気付いたか?さっきちょっと照れてたろ?"
その事にはエルトダウンも薄々気づいていたが…
「まさか。こんな模擬戦闘の後だから暑かったんだろう。
特にあの機体は放熱やらなにやらで凄いらしいからね。初期の機構を採用してるんだ」
エルトダウンは帰りにコーヒーを一杯だけ貰って自室へ戻った。
――鉄の翼、左舷監視室
周囲を警戒する為の部屋だが、不毛な鉄の翼では空の景色が見え最も心が落ち着く場所でもある。
『一体どうしたのだ…私は…?ただの同僚なのに…シエロ…教えてくれないか?』
【つなぎです。特に意味は…】
218 :
フィリップ ◇QzzonL2xIE :2010/06/19(土) 02:28:45 0
臨戦態勢下のロンデ二オンへ上空から1機の精霊機が接近しつつあった。
が、その機体の機動はどこか不自然であった。
高度が一定せず、姿勢も不安定、いわゆるジグザグ飛行なのだ。
[コックピット内]
ネ「まったく、お前というヤツは、水平飛行もロクに出来ないのか?
私もとんだマスターをもったものだ」
銀灰色の髪の少女とも大人の女性ともつかぬ雰囲気をもつ精霊が問う。
フィ「仕方ないだろう。領地からここまで強行軍できたんだからな。
機体がもっているだけでも僥倖だよ」
必死に姿勢制御につとめながら黒髪の青年が答える。
ネ「私には、乗り手の技量にも問題があるように思われるのだがな」
彼女の呟きが青年に届くことはなかった。
ロンデ二オン市街上空に到達すると同時に機体が限界を迎え、ロンデ二オン市内に不時着したからである。
【フィリップ、ジグザグ飛行ののち、ロンデ二オン市内に不時着】
阿修羅をメンテナンスに出し、暇になったディクトは当てもなくロンデニオンの街を彷徨っていた。
背中には精霊である太郎が宿っている大剣を担いでいる。
ディクトは傭兵と言うだけあって精霊機でも戦闘だけではなく、肉弾戦も得意だった。
「あーあ、やることねぇなー、帝国は早く攻めてこないのか?」
『ディクト様、ここでそのような発言は慎んでください。
民衆も神経質になっているのですから』
「んなこと知るか、俺には関係ない。
おっ何か人だかりが出来てるな、ちょっくら見てくるか」
>>212 先の戦いで崩壊した教会になにやら大勢の人が集まっている、人々の表情を見る限り楽しい事が起きていないことは明白だった。
ディクトはその大きな身体を生かし、人混みをかき分けていくと目の前には大きな刃を持つ断頭台が見えた。
そして、その下に一人の大男が横たわっている。
その男は首から先が無く、地面には男の顔と思われるものが転がっていた。
兵士から話を聞くと、この男は義勇軍のスパイでケルン大橋爆破事件に荷担していたらしい。
ディクトの眉が釣り上がる。
「おいおい、そりゃ無いだろ、あの事件に荷担って何したんだよ、適当なこと言ってんじゃねぇぞ!
橋の防衛を軽んじて、防衛兵を置かなかったお偉いさん方の責任だろ!
巫山戯んじゃねぇ!」
『ディクト様落ち着いてください』
ディクトはそう叫ぶと近くの兵士に掴みかかる。
野次馬はまた新しい娯楽を見つけ、今度はディクトを中心に大きな輪を作る。
「にやにやすんな屑が、てめぇは無実の人間を殺して楽しいのか」
「し、知るか、俺は上から命令されたからやったんだ、関係ないだろ。
そ、それにお前だって兵士じゃないか、人殺しだろ」
『あ・・・・・・地雷踏みました』
「一緒にするな!
俺の戦ってきた相手は殺す覚悟も死ぬ覚悟も出来ていた奴らだ。
お前みたいな下衆が冒涜するのは俺が許さねぇ!」
ディクトは激昂すると、そのまま掴んでいた兵士を思いきり殴り飛ばした。
周りから悲鳴があがり、近くから兵士が集ってくる、そしてディクトを取り囲むように陣形を組むんだ。
ディクトは背中の大剣を抜き、地面に突き立てる。
「かかってこい、お前らみたいな覚悟のない腑抜けが束になろうと俺に勝てないことを教えてやる」
――数分後。
ディクトの周りには誰もいなかった。
ディクトはあのまま兵士に捕らえられ牢屋に連れ込まれてしまった。
大剣も取り上げられ、手持ちぶさたになったディクトは牢の中で寝そべる。
「あー暇だ、帝国は早く攻めてこねぇかなー」
【ディクト:兵士に捕まり牢屋行き】
わたしの名前はヨハンナ・トデスキーニ。
イマをときめくちょ〜人気アイドルアイドルなのだ☆
「今日はサクラとモモにエンのある日なんだって!
ヨハンナ、また一つおりこうになっちゃいました〜♪てへっ。
それじゃみんな、準備はいいかなー!ヨハンナ、うたいますっ☆」
「ソ・ラ・に、あかいリュウ・セ・イ 夜の銀・河・を、すべるようだね〜♪」
(15分経過…)
「キミの〜ヨユウが、ぐさっと! ムネの〜お〜く〜にさ〜さるよ〜♪」
(28分経過…)
「モモクリ3年カキ8年、いつか実をつけます わ〜らい〜ま〜すぅ…」
「今日はたくさん来てくれてありがとう!ヨハンナ、とってもカンゲキです☆」
ヒュウゥ〜ウウゥ〜…
広場、というか、廃屋の撤去跡に集まった観客はごく少数。
遙か南方から来たのだろう、黒い肌をしたジプシーの青年、
どう見ても恍惚の人としか思えない口を開けっ放しの老人、
そしてうら若い花売りの少女。これで全員だった。
「…さむいジダイだとおもわんか?」
『戦闘地域だから仕方ないんじゃない?むしろよく集まったほうだと思うよ』
「…そう。そうなのよ!ふ〜、びっくりした」
「今回のライヴは、一見みたかぎりでは地下レベルだけれど、
今日こられなかった全大陸1000万人のサイレントファンをコウリョにいれて
センゲンします!ヨハンナのジダイはもうはじまっていると!(ぐっ)」
『……』
ヨハンナが一人感動しているところへ、
ヨハンナよりかは少し年上らしい花売りの少女が歩いてきて。
花「あまり聴かないメロディだったけれど、
かわいらしいお歌を聴かせてくれてありがとう。
最近は物騒な事が続いてるから、和んだわ。
おひねり代わりだけれど、このお花をあげる」
ヨハンナの手に渡されたのは、幾重にも重なった金色の花。
「わ〜ありがとう。…えっと、なんていうお花なの?」
花「これはね、ラナンキュラスって言うの。
『晴れやかな魅力』ていう意味があるのよ」
「すてき!ほんとうにありがとう。このお花のこと、忘れないようにするよ」
『あまり踊り子にエサをやらないでください…』
花「あらあら、うふふ」
和む二人の背後で、けたたましい鐘の音が鳴り響いた。
花「嫌だわ、また義勇軍の攻撃かしら。今日はありがとう。
ヨハンナちゃんも気をつけて帰ってね」
「うん、きっとまた来るよ!」
別れの挨拶を交わすと、花売りの少女は足早に立ち去った。
ジプシーの青年はいつの間にかいなくなっていた。
…おじいさんは相変わらず、口を開けたまま薄ら笑いを浮かべているけれど。
「まーたショウコリもなくロー畜どもがみんなのヘイワをこわしにきたのね。
深紅の凶悪なる歌姫ヨハンナちゃんが、ケチョンケチョンにしてやるんだから!」
『おらのヨハンナちゃんが不良になっちまっただ〜。
ていうか、正義の味方なのか凶悪なのかはっきりしないね』
「つまんないコトいうクチはどのクチかな〜?柔軟剤どぼどぼの刑にしちゃうゾ☆」
『そ、そんなかわいい声のヨハンナちゃんには似合わないと思います!』
「え、そ、そうかな〜、そんなにかわいいかな〜///」
『(残念な子で助かった…)』
ヨハンナはカトキ立ちで、大きなウサギのぬいぐるみを抱きしめて。
「パシュペリキャメリン プミポン、パーミラィオン♪」
すると、ヨハンナの周囲を爽やかな風が包み込んで、だんだんと少しずつ。
強く、大きく、それだけではなくて、次第に透き通る翠の輝きを得て。
それが精霊機としての大きさを保って、光が落ち着くと、
ヨハンナはティアリア・ドラウパディーの操縦席に着いて。
…ところで、ヨハンナ自身が変身するわけじゃないので、途中で裸になったりはしません。
「さあいくわよ!パティ、準備はいーい?」
『あんまりよくない…』
ハウリンティウスをポコンと叩くと、ヨハンナは煙の立つ方へ向かった。
【ヨハンナ(@ロンデニオン):ゲリラライブ後、事件の起こってそうな方へ出陣】
鳴り響く鐘、轟く爆音……
慌しく走り回る兵士達を無視し、一人ゆっくりと行く大きな影があった。
否、ただ大きいだけではない。その姿は明らかに人外たるものであり、
初見の者ならば、最新技術でダウンサイジングに成功し、
オマケで自律機動機能まで付いた新手の精霊機ではないかと勘違いしてしまうかもしれない。
全身に、明らかに「着ている」ではなく、「取り付けられている」ような装甲を纏い、
頭部からは流れるように美しい、けれど猛々しい、赤と藍の剛毛を流し、
腕に至っては球体関節だ。この時点で、これが人間であると認識する者は居ないだろう。
だが、今更周囲から向けられる視線程度は、彼、ゴウケンにとって何ら辛いものではない。
少し立ち止まると、鼻も口もないそこらの精霊機と変わらない様な顔を動かし、周囲を見渡す。
「…下らんな……よもや、敵襲如きで毎回之程喚いて居るのか…?」
ならば尚更下らんな、と呟いて、止めていた脚を再び前へと動かす。
騒がしいのは好きではない。まして、敵が来たからと一々騒いでいては、兵士など役に立つものではあるまい。
慢心ならずとも、平常心と云うものが足りない。
『皆誰もがご主人のように、心臓から毛がジャングル状態じゃないんですから。十人十色って言葉知ってます?』
ふと、何処からか女性の声がしたかと思うと、右拳に蒼い炎が燃え上がり、
黒い棘だらけの重厚な鎧を纏った、美しい女性が現れて、ゴウケンの隣を並び行く。
それは、その容姿に見合った低めの声で、しかし見合わぬ優しさと、溢れる無邪気な声で。
「……ヴェーゼル。言葉の意味も解らずして言葉を吐くな…」
『何と失敬な!知ってますよ十人十色!つまりはあれですよね、十人のカラフルな方々が居て、皆違って皆良い的n』
「惜しいが。しかしてこの場合には少々不適切よな…」
『むむむ………難解ですねぇ、出直します……』
全く…毎回毎回、何処でこの様な言葉を覚えてくるのか…
その度意味やら使いどころなどしつこく訊かれるので勘弁願いたい。
まぁ、一度戦闘ともなれば今からは想像も付かぬ程集中してくれるので、早々に機体へと向かいたい所だ。
だがしかし、その思惑を知ってか知らずか……いや、絶対に解った上でやっている。
唐突に何も見えなくなった。正確には、「視界が黒で埋め尽くされた」というのが正しいのだが。
『ゴーケン!ねぇねぇねぇ今日は何するの?どこ行くの?わたしのイタズラって楽しい?わたしは楽しいよ!』
「………………………………………………………………………。」
傍から見ると、私の顔には黒い靄が掛かっている状態らしく、そのまま棒立ちしている私はとても滑稽だとか。
…何時ぞや、隣で笑いを堪えているヴェーゼルから訊いた話だ…
キャッキャッと嬉しそうに笑う声の主は、ゴウケンの頭髪からひょっこり姿を現すと、そのままちょこんと肩に座った。
大きさは30センチほど。黒いワンピースを着て、紅い髪を二つにまとめている。
闇の精霊ゼクシス。理由は不明だが、ヴェーゼルとの契約の際に一緒に現れ、散々喚いた挙句、勝手にこの髪に宿った。いや宿られた。
それからというものの髪の色が様々に変化するし、事在るごとに悪戯を仕掛けてくる……戦いもせぬ雑魚め……!
「……闘いに出向く。場所は闘争の在る場所。そして貴様の成す事は全て児戯にも劣る…!」
『なんだとー!?ところで“じぎ”ってなーにー?』
…………最早、歩く気力すら折れた……視界を覆う靄を軽く払い、とりあえず近場に見つけた広場に向かう。
此処ならば問題あるまい。ヴェーゼルも頷き、共に言葉を紡ぐ。
「我等共に在り、果て無き正義を求める者なり」
『零れる善に安らぎを、良無き悪に撃槌を』
「『来たれ、閻魔よ』」
『かもーん!エーンちゃーんっ!!』
突如として空に雷鳴が走り、一本の剣の如き雷光が、ゴウケンの立っていた場所を貫いた。
同時に立ち上がる巨影。その猛き姿は、正に閻魔と呼ぶに相応しい。
これこそが荒ぶる力の精霊機、「エンマ」である。
姿形がゴウケンそのものだが、別に雷に撃たれたショックで巨大化した姿ではない。
ちゃんと内部に搭乗しているのだが、今回のように呼ぶと、変な勘違いをする者が後を絶たない。
だから直接乗り込むべく格納庫に向かっていたのに。しかしこの際形式に拘ってなどいられないだろう。
エンマはその剛脚で地を抉り、何かを感じるままに走り出す。
「私を私たらしめるのは、闘争の果てに在る正義……闘争在る限り、私は何度でも其れを見極めよう…!!」
【ゴウケン、出撃】
湖のほとりを一人歩くセラ。こんな朝にも花は降る。
舞い散った花びらは地面を金色に染め、靴底で乾いた音をたてる。
さらにその地面の奥深くでは湧き水の水音が響いていた。
セラは湖水で身を清めるとテントに戻り鏡の前で化粧水をつける。
一枚肌で張り切った白い肌。もちろんどこにもムラはなくマツ毛は密集していて
縁がとてもくっきりしていて、頭の形、白いこめかみ、鼻の反り方。
そのひとつひとつを追うとそこにあるすべてが何らかの完璧。
「はう…」
大きなため息をつくとセラは今日も戦衣を身に纏う。
「なに!?地下道だと!!」
ドルガンは髭面を震わせながら情報班の兵士の胸座を鷲づかみにしていた。
「はい。義勇軍と27番隊との交戦跡地で、損傷した機体の回収を行っていた兵士たちが地盤の陥没を見つけ
確認してみると地下道を発見いたしました。中は広大な迷路のようになっていたそうです」
それはグラードのブーストハンマーで緩くなった大地が陥没したあと。
「ロンデニオン防衛部隊の本部はなんと言っておる!?」
「はい。捨ておけと…単なる坑道だと申しておりました」
「ばかな!やつらはロンデニオンの地下伝説を知らんのか!?
地下道が見つかったということは伝説は本当だったと言うことだ!」
ドルガンは膝まづいている黒金の巨人ドルフィーの操縦席に駆け上ると
「姫ー!!」と大きな声でセラを呼ぶ。
「うむ。話は聞いていた」セラのセルフィーの瞳は生命を得たかのように輝いている。
すでにセラはセルフィーに搭乗しておりウィル・オ・ウィスプの光は鋼の機体に血のように循環してゆく。
二つの機体は背中から光を放ちながら空に舞うと目的地に飛翔した。
【セラ:ドルガンと共にグラードとフォリナーの交戦跡の陥没地点の調査に向かう】
山岳都市アルバニアンは、今や義勇軍の最前線基地である。
街に溢れているのは神聖ローガンブリア帝国出身の義勇軍兵士だけでない。
遠く南方より参陣したファールデル教国の傭兵たちも多数駐留している。
彼らの目的はもちろん、義勇軍に参加して食い扶持を稼ぐこと。
そして、それに便乗する形でファールデルの精霊機技師たちもこの街に簡易ハンガーを用意し、精霊機の修理に奔走していた。
ファールデル教国・精霊技師集団「ドヴェルグ」。
彼らにとってもこのような大規模な紛争地は「稼ぎどころ」である。
ファールデル製の精霊機は言うに及ばず、参加者のほとんどが自腹で参戦している義勇軍・ローガンブリア製精霊機の修理も引き受けて、
かなりの資金が彼らに流れていた。
「他国の争いに首を突っ込んでは利益を得る。まるで死臭に群がるハゲタカのようだな、我々は」
貸倉庫を改修したドヴェルグの簡易ハンガーを歩きながら、傭兵アデラ・グラーフストレームはファールデル教国の体質について自嘲した。
『 It's our style 』
やり方の問題であると、アデラの失われた右目に住まう闇の精霊フギン=ムニンは呟く。
「もっともだ。確かに私はこれ以外の生き方を知らない。
我らの餌場、常に死風血風たなびく也」
ファールデル教国が戦争の主体となることは少ない。
大概を第三者として関わり、外資を得ているのは確かである。
・・・
「私の機体はあとどれくらいで仕上がる?」
自分の機体の前までやって来ると、アデラは顔見知りのドヴェルグ整備士に声をかけた。
返答は「今日の日没までには」。
彼女の搭乗精霊機コルバス・コラックスは、先の戦闘によって半壊していた。
左腕のポールドロン(肩甲)の剥離をはじめ、右腕全失、右半身の溶解、双発精霊炉の片方停止など、修理にかかる時間と資金は計り知れない。
そこで、アデラは所属部隊(レイヴン隊)の同型機を間借りすることにした。
パイロットの負傷により遊んでいる機体があったからだ。
武装やスペックはほとんど変わらない。ECM発生装置(闇の精霊が発する黒煙の増幅機)のみを搭乗機から換装するだけである。
「これを壊したら借金生活だ。次は五体満足で帰還したいものだな」
【アデラ : 搭乗機を換装。武装・能力はほぼ同様の同型機】
自機の様子を確認したアデラは、次にアルバニアンの目抜き通りを目指した。
帝国技術院の貨物車が来ている、と整備工が話していたからだ。
「ローガンブリア騎士団からの援軍……? まさか。 彼らに戦力的余剰は無い」
淡い期待を胸にしたアデラであったが、すぐに打ち消した。
そもそも辺境での戦闘を、ボランティア(義勇軍)と マーセナリー(傭兵団)に任せきりの帝国軍だ。
彼らが今更こちらに手を貸すというのも、あまり現実的ではない気がした。
ではなんだろう。 興味を持ったアデラはとりあえず、その現場に足を伸ばしていた。
「あれは…レオニール・ファーブニール? 彼が話しているのは誰だ」
技術院の貨物が停車している近辺で、アデラは見知った顔を見つけた。
しかも、その貨物から姿を現した人物と親しげに会話している。
「そういえばファーブニール家は帝国精霊兵器技師の家系だったな。技術院所属の縁故者か」
女傭兵は彼らに近づいた。
なんといっても、帝国技術院の紋章を付けての来訪者である。
もし彼の訪問目的が個人的なものであっても、帝国軍関係者に変わりは無いのだ。
色々と聞いておきたい話はある。
>216
> 「そうそう、それより、技術院の同僚に聞いたのだけどね。
> ここの地下にアルバニアンからロンデニオンに続く地下道があるらしいんだ」
>「ありがとう、おじさん!うん、この大きさなら精霊機も十分通れるよ!」
ロンデニオンへの地下道。
それも精霊機が通行可能であるという。
帝国技術院の来訪目的を確認するため、レオンとアーウィンの側で様子を窺っていたアデラは、その情報に目の色を変えた。
その話が本当であれば、ロンデニオン奪還への糸口が更に増えることになる。
アデラはたまらず目の前の二人の会話へ割って入った。
「おッ、お話中失礼するッ!」
いきなりの乱入である。夢中になると空気の読めない女であった。
闖入者に話の腰を折られた二人の視線を受けながら、ゴホン、とひとつ咳払いをすると、アデラは続けた。
「私は神聖ローガンブリア帝国義勇軍の傭兵アデラ・グラーフストレーム。
先ほどの地下道の話、次回ロンデニオン攻略における重要な経路となる可能性がある。
可能であればおふたりとも、義勇軍の作戦本部へおいで願えるだろうか。
……立ち聞きの非礼は詫びるが、今すぐにでもその情報を検討したい。我らの勝利のために」
身内との談話中、突然話に割り込まれたレオン達の驚く顔を見ながら、この少年とはつくづく縁があるな、とアデラは思った。
【アデラ : ロンデニオンへ通じる地下道の話を立ち聞き。作戦の検討開始】
叔父さんと格納庫に向かおうと、したときに背後から、アデラさんがすごい勢いで会話に入ってきた
どうやら、僕たちの会話を聞いていたらしい
しかも、尋常じゃないようすだ
彼女の興奮が伝わってくる
僕はその雰囲気にびっくりしたけど、彼女は咳ばらいをして、話を続ける
地下道の話を聞いていたらしく、ロンデニオン奪還の重要な情報だと息巻いていた
僕はアデラさんに地図を渡そうとすると・・・・・・
アーウィン「待て、レオニール
私は彼女に地図を渡すには条件がある
叔父と甥の久々の会合を彼女は邪魔をした
私は気分を害した。それの埋め合わせをしてもらう。
なぁに簡単なことさ、君の機体を見させて貰おう。技術屋の性でいろいろな機体を見ておきたいのだよ
今後の参考にね」
「相変わらず、おじさんはいちいち、変な言い回しをするよね。
素直に見せてくださいって言えばいいのに」
おじさんは親族以外には、不親切なのはいつものことですよとアデラさんに一言伝えて、地図を渡した
「地下道から進攻するなら、是非行かせてくださいね」
「レオン様まで」
僕もおじさんに倣って条件をつけることにした
勿論、冗談とわかってもらえるように笑顔を彼女に向けながら
ブーストハンマーの爆心地に空いた大穴の調査にむかうセラとドルガン。始めにドルガンが機体ごと大穴の内部に侵入しそれにセラが続く。
大穴に射し込む陽光を浴びながら二つの機体は降下していく。上を見れば光の入り口は小さくなりあえかない光で二人を照らしていた。
「照明弾!」セラが命令するとドルガンの機体から照明弾が発射されて闇の底を照らし出し、その光景に二人は瞠目する。
光の中、浮かびあがったのは巨大なホールでありその広さと円形の形は闘技場を連想させた。
そして壁のまわりには精霊機が通れる程の無数の通路が入り口を見せている。
「姫様!あれを!」
ドルガンが指差した先には27番隊の機体の残骸が数機。落盤に巻き込まれて落下したのだろうか。
巨大なホールの中央地点に着地するとセラは27番隊の残骸の損傷を確認した。
それは爆発や精霊機との戦闘によって出来た損傷ではなかった。操縦席が凄まじい力で潰されている。
上から落ちた者がここで何者かと戦って操縦席を潰されたのだ。
「砲すら弾く前面装甲が紙くずのように潰されておる…」機体を見つめドルガンは驚愕していた。
照明弾の明かりも小さくなり周辺から闇が押し寄せはじめる。
「…む!?救助信号を確認!…点滅して…消えた!?なんだ?27番隊の生存者か?」
「あ、あれは!?」セラは無数にある通路の一つからこちらを凝視している電光の目を確認する。
その物体は27番隊の機体を引きづりながら通路の奥深く消えていく。
「姫!ここはやばいですぞ!引きましょう」ドルガンは機体の腕でセルフィーの腕を掴むと急上昇した。
「しかし今の信号は!生存者では!?」セルフィーはドルガンに引っ張られて後ろ向きに飛んでいる。
ドルガンの機体が外に出て陽光を浴びた瞬間。
ブーストハンマーで開けられた穴の溶解面から薄い装甲板が何十もカメラのシャッターのように渦を巻きながら入り口を塞いだ。
突如、穴を塞ぐ装甲板にドルフィーの鉄の腕は切断されてしまう。
塞がれた天井に激突しそうになったセルフィーも逆噴射をして天井への激突を回避するのが精一杯だった。
「…!!」
セラを闇が包む。闇に一切のもの音が吸われてしまうような感覚。まるで巨大な空虚に囚われてしまったようだ。
「…この巨大な地下建造物は生きている?」セラが呟くと再び救助信号が点滅する。
「フォリナーは行方不明となったと噂で聞いた。…もしや彼なのか?」
セラは通路に進入して信号を追う。
【セラ:ドルガンと離れ離れ。救助信号を追い謎の機体を追走。今のところ小ネタ】
>227
> 私は気分を害した。それの埋め合わせをしてもらう。
> なぁに簡単なことさ、君の機体を見させて貰おう。技術屋の性でいろいろな機体を見ておきたいのだよ
普段より冷静沈着を旨として行動しているアデラであったが、今回はいささか急いて結論を焦った。
―しまった、どうやら機嫌を損ねたか。
内心肝を冷やしたアデラだったが、レオンの口添えでどうにか丸く収まりそうな気配である。
「それはお安い御用というものです、閣下。
ファールデルの技術の精髄、どうぞご覧ください。
私の機体を預けてあるハンガーまでご案内しましょう。 こちらへ」
山岳都市アルバニアンのメインストリートを外れ、暫く歩いたところに精霊機のハンガーはあった。
元々は商人のための貸倉庫であったが、現在はファールデルの精霊機技師たちが借り切って、簡易の精霊機整備工場に変貌している。
アデラの搭乗機「コルバス・コラックス」は数あるハンガーのうち第三十二番倉庫に格納され、現在装備換装の最中だった。
「このコルバスは航空性能と汎用性が特徴の機体です。
搭載する精霊の質を選びません。
下位の精霊から上位の精霊まで、何を使ってもそれなりの働きをする。量産精霊機の中でも信頼のおける機体です。
ただ、精霊の特色を生かすには別途、ハードポイントに専用装備を用意する必要がありますが……」
黙々と整備を続けるドヴェルグ(精霊機技師)を横目に、アデラは自機の説明を始めた。
機体操手の観点から、アーウィンの知的好奇心を満足させるように。
ただし、機体の素材や機密事項に関するものは巧みに伏せながら。
>227
> 「地下道から進攻するなら、是非行かせてくださいね」
「ふふ、この死にたがりめ。
この地下道、抜けた先はニヴルヘル(死者の国)かもしれんというのに。
キミが彼の国の住人となるには、少々若すぎるんじゃないかな」
レオンの笑顔にメロメロになりながらも、全力で皮肉を返した。
ここでデレてしまっては年長者の威厳は保てないのである。
また、それは皮肉であると同時に真実でもある。
敵の只中に奇襲となれば、失敗したときのリスクは前線での押し引きよりも格段に高い。
「どれ…、事前に一舐めといこう」
レオンの叔父であるアーウィンの興味が、ファールデル整備工の手並みに移ったところで
アデラは受け取った地図を広げた。
それは、ロール状に巻かれた大判の羊皮紙である。
所々が痛んでおり、特に地図の縁は少し力を入れるとボロボロと崩れてしまいそうだ。
慎重に羊皮紙を開らき、記載内容を確認する。
・地図中央上部に「ルーシ鉱山地図」と明記。
・鉱山入口から内部に伸びる数本の坑道。その内、「第6番坑道」が地下に伸びている。
・「第6番坑道」は途中枝分かれするが、ほぼ一本道でロンデニオンに接続する。
・接続先に「ローガンブリア正教」のホーリーシンボル。そして「Church(教会)」の文字。
「鉱山と教会を繋ぐ通路……?」
アデラはその長く細い指を、羊皮紙のインク線に沿って滑らせた。
ルーシ鉱山はアルバニアン近くの鉱山である。既に廃鉱であり、街からそう遠くはない。
そして、鉱山の坑道からロンデニオンへ伸びる地下道を利用すれば、敵に気づかれることなく背面から奇襲できるだろう。
それにつけても、地下道の本来の利用用途はよく分らなかった。
水路か何かで採掘鉱を輸送していたのだろうか。だとしても、なぜ教会に通じているのかが不鮮明だ。
だがこの際、地下道の建設目的はどうでもいいことだった。
目下、ロンデニオンへの奇襲に使うことができれば万々歳である。
「レオニール、キミはこの地図を持って作戦本部へ。
私は先んじて地下道のマッピングを行う。
さぁ共に全力を尽くそう。我々に時間はない、急ぐぞ」
アデラはレオンの頭をくしゃくしゃに撫で付けると、装備の換装が終わったコルバスへ走り出した。
【アデラ : レオンに義勇軍本部へ地図と奇襲作戦の要項伝達を依頼】
【アデラ : メンテが終了した精霊機コルバス・コラックスにて、地下道の先行偵察へ向かう】
>「それはお安い御用というものです、閣下。
ファールデルの技術の精髄、どうぞご覧ください。
私の機体を預けてあるハンガーまでご案内しましょう。 こちらへ」
アーウィン「閣下は止めてくれよ。私はそんな立場ではない。一介の技術屋さ
それより、早く格納庫に案内してくれ、ファールデルの精霊機に触れる機会も貴
重、1秒でも長く見たいんだ」
おじさんは、アデラさんを急かしながら格納庫に早足で歩いていく、僕とフェニ
キアはおじさんの子供のような態度に対して、彼女に謝りながら、ついていく
格納庫に着いた僕たちは、おじさんとアデラさんは『コルバス・コラックス』の
元に行き、おじさんに機体の解説を始めた
僕も始めは、一緒になって聞いていたけど、なかなか会話に入り込めるような内
容でもなかったから、
フェニキアに地下道について話を聞いてみた
「ねえ、ねえ、フェニキア、アルバニアンからロンデニオンに地下道があるって
知ってた?」
「いえ、知りませんでしたが、ここの周辺の地下には水脈がありましたので、昔
の人達はそれを使って、鉱石を運んでいたというのは、知識としては知っていま
したが、地図をちょっと拝見した限りでは、あれほどの大型の地下道があるとは
、私も驚きです」
「フェニキアでも知らないことがあるんだね」
「知らないことだらけですよ。だから世界は面白いんです
何百年存在しようと、世界は姿変え続け、新たな顔、隠された顔を見せ続けてく
れますよ
その中でもファーブニールの若君が1番興味深いですけどね」
「君の興味が尽きないように努力するよ」
二人で話ているとおじさんが近付いてきた
その顔はあまり満足のいっている顔ではなさそう
案の定、口を開いて出てきた言葉は不満の声だった
アーウィン「まったく、機体の運用方法など聞いていないんだよ。私が知りたいのは装甲の材質とか動力機関だというのに」
ぶつぶつと恨み事を吐き続け、その内容は多少の精霊機の知識を持つ程度の僕には専門すぎる内容に変わってきたあたりで、
アデラさんがやってきた
>「ふふ、この死にたがりめ。
この地下道、抜けた先はニヴルヘル(死者の国)かもしれんというのに。
キミが彼の国の住人となるには、少々若すぎるんじゃないかな」
地図を片手にやってきた彼女は、いつもと変わらない厳しい戦士の顔だった
「はは、それよりも僕はグラムをもったジークフリードがいるほうが怖いですよ」
彼女が年少の僕のことを気にかけてくれるのは本当にありがたいけど、僕は危険を冒してでも名をあげなければならない
大きな武勲が必要な時に敵中枢に奇襲できるチャンスは是が非でもつかみ取りたかった
「ファーブニールの牙で死者の女王ごと噛みちぎってやりますよ」
>「レオニール、キミはこの地図を持って作戦本部へ。
私は先んじて地下道のマッピングを行う。
さぁ共に全力を尽くそう。我々に時間はない、急ぐぞ」
「了解です。」
アデラさんに頭をくしゃくしゃになでられて悪い気はしなく、期待されていると一層、体に力が入った
「フェニキア、行こう!!」
フェニキアの手を引くと作戦本部に駆け出した
[サイアニス・テネブラエ、およびエルトダウン・シャーズ。
データの解析、分析が終了した。ご苦労だった]
鉄の翼のブリッジ、おおよそ艦長らしき人物がいた。
サイアニスとエルトダウンはただただ気をつけをして報告を聞いていた。
[ゆっくり休んでくれ…と言いたいところだがな。
民間からのタレ込みがあった。アルバニアンに集結中の帝国軍が動き始めるやもしれぬ。
連戦で辛いと思うが絶好のチャンスだ。二人ともすまないが出撃を頼む]
おおよそ艦長らしき人物の名はアルヴェリヒ・ツィーゲ。
ASL西部支部準航空責任者。とどのつまり、代理艦長である。
[ああ、それと。例のタブーリストのヤツと接触したみたいだね。
本部から直々に指令が来ているよ。
サイアニス・テネブラエ、エルトダウン・シャーズ。
タブーリストの存在との接触をこの二名およびそれを支援する人員に限って許可する]
ブリッジからそれぞれの個室に戻るまでの間、エルトダウンとサイアニスは一緒だった。
「驚いたよ。ASLにもその異名で登録してあるとは。本名を聞けるチャンスかと思ったんだけどね」
とは言うものの、ASLの研究者の殆どが本名など滅多に公表しない。
様々な人種や国籍を持っていた人間が集まっているASLだ。
おおよそ名前からどこの国の人間かは想像がつく。
そうなってしまえば、内部で分裂しかねない。それを防ぐため、異名もとい偽名を持っているのだ。
もっとも、エルトダウンやアルヴェリヒ艦長は紛れもなく本名なのだが。
『…束の間の休息か。こうして私たちは戦場を荒らしまわって生きるしかないのだろうか。
死ぬ時は恐らく地獄行きだろうな。あまりに罪が重い。既に26年もの歳月を血で染めてしまった…』
どこか物悲しそうに語るサイアニス。
恐らくこういう時、普通の男は慰めの言葉でもかけてやるのだろう。
だが、エルトダウンはそんな術など知らぬ。
「ほう、女性ってのは歳を墓場まで隠し通すものだと思っていたけれど…
どうやら偏見だったようだね。26…か。年上だったんだなあ」
エルトダウンの自然の理からハズれた応答に、何かを期待していたサイアニスは間の抜けた顔をした。
しかし、サイアニスはどういうわけか嫌ではなかった。それは何か新鮮な感じがしたからだ。
『そうか…エルトダウン・シャーズ…実に貴方らしい言葉のキャッチボールだ。
それでは、私の個室はここなのでね。また、後で会おう』
サイアニスが廊下に設けられた一室に入る際にエルトダウンは少し笑って見送った。
そして、ファラーシアが待つ自室へとゆっくりと歩き出すのだった。
【ここで関係する人アデラさん。少し関係する人レオンさん】
闇の中。謎の機体を追い地下通路を進むセラ。
ゴワッシャン!濁った地下の空気を振動させて衝撃音が走る。
「くっ!」
セルフィーのサーチライトが無残にも操縦席を潰された27番隊の機体を照らし出した。
潰された装甲の隙間からは血のようにオイルが噴き出している。それはフォリナーの機体ではなかった。
救援信号も消えている。獲物を破壊し捨て去った謎の機体は速度を速めセラのサーチライトの光から脱出していた。
「謎の機体はアルバニアンに向かっている?」
セラは追跡と共に機体のシルエットから推測可能な機体識別をウィル・オ・ウィスプに検索させている。
データバンクからは謎の機体の情報が水晶モニターに投影され始めていた。
「アスモデウス。半世紀前にフルカス博士が製作した機体…その開発理念は…」
セラはすべてを読み終えると啓蒙しがたい焦燥にかられる。
突如まわりの風景が変わった。坑道に突入したのだ。
どうやらこの地下空間は一枚岩ではないらしい。深い闇とともに色々なものが内在しているようだ。
アルバニアン側の坑道入り口から現れる巨大な百足型の機体。アスモデウス。
コルバスに向け走り出したアデラは気づいたであろう。太陽の下、赤黒く妖しく光る奇怪なアスモデウスの姿に。
ガザガザガザ…無数の鉄の脚で砂埃を舞い上げながらコルバスに接近する巨大百足。
「ひっひっひっひっひ…」
百足の頭部。埋め込まれているような透明な半球体の内部には白髪白髭の老人が確認できた。
フルカス博士。そして百足の背中に頭から尻尾の先まで転々と埋め込まれている小さな球体。
その内部は黒ずんでいて内部の様相は確認できない。
「ふぁ!!義勇軍!?」
アスモデウスを追跡してきたセラは坑道から飛び出すと目の前に現れた光景に息をのむ。
義勇軍の最前線基地。
「ごめんして…で見逃してくれる?」
突然のアスデモウスとセラの出現に義勇軍の兵士たちは怒号していた。
「そんなに甘くない?私もだけど!」
セラはそう言い放つとセルフィーの左手に内蔵されている機関銃で無人の精霊機たちを次々に破壊していく。
【アルバニアンの義勇軍最前線基地にセラとアスモデウスが襲来。ごめんなさい】
「…………んん?」
『ななな何か今ヘンな音しませんでしたかぁ…?!』
『そだねぇー、ガサガサ聞こえたねぇー……まぁでも、近くにゃ何も居ないし…安心しなよ』
先刻、エンマを駆って勇ましく出撃したゴウケン一行は、しかし戦場になど居なかった。
では何処かというと、明かり一つ無い正真正銘の闇の中。
ここはロンデニオンより伸び出た、巨大な地下空間。そこに敷かれた地下道である。
今は闇の精霊であるゼクシスが張り切ってナビ役をこなし、それに従う形で、
拳に灯した青炎だけを頼りに、トボトボと地下を歩き回っている最中だ。
『しっかしまー…ゴーケンってば戦場に推して参るぅ!……んじゃなかったの?』
「ふん、抜かせ……ただ唐突に、私の記憶の一片を確かめて置きたかったに過ぎぬ…」
確かに…普段の自分ならば戦へと全力で走るであろうが、今回は別だ。
思い出そうとしても、ぼんやりとも浮かばなかった過去の記憶。それが今になったところで、
一部のみが急に、鮮明に。脳裏に浮かび上がったのだ。
『それがこの、ちかどー?……暗い場所好きだからどーだって良いけどさ、
よーへーは選ばず殺すのがお仕事なんでしょー?サボってたら「しょくむタイマン」で訴えられんぞ!』
『どっちかというと職務放棄ですかね。ところで職務タイマンってどういう喧嘩の方法ですか?』
…はて…私は傭兵について、そんな偏った知識を之の者に与えただろうか。あとヴェーゼルは暫く去ね。
しかし、一応ゼクシスの言う通りだとも思う。
ただただ次の所属を求め彷徨い、最寄りに在ったのがこのロンデニオンであり、そして其処に居たのがティルネラント王国軍だった。
本当にそれだけの理由で、今のところ此処に身を置いてはいるが、傭兵としてするべき事はしなくてはならないだろう。
だが、此処に来て思い出した記憶。そして、その記憶の通りに存在した地下道……………
どうしても、偶然だと片付けることが出来なかった。
此処には、何かが……失われた自分の何かが在る気がしてならない。
其れを確かめるまでは…退くわけにはいかないのだ。
「…其れに…敵が之の地下道に気付いて居ないとも限らぬ……
利用され、足元から崩されては手痛いでは済まぬのだ。既に幾つかの精霊機による進入跡も見られる…
ともすれば、逆に敵の不意を突く事も出来よう…さすれば、一時の怠慢など不満にも至るまい」
『…ほーん…半分くらい解んなかったけど……ちゃんと考えてるってことだね、ならいいや!』
『流石にございます。でしたらそろそろ、張り込む場所を定めませんと』
「……そうだな………なれば、丁度今居る之の場にて、まだ見ぬ猛者を待ち受けようか…」
『ふんふん…ここなら一本道だし、あっちから来るなら絶対通らなくちゃいけない道だよ!』
【ゴウケン、地下道中央にて仁王立ち】
>234 (1/2)
アデラは、調整の完了した黒塗りの精霊機「コルバス・コラックス」に向けて走った。
地下道の存在というロンデニオン奪還の足がかりを得たことで、その顔には不敵な笑みが浮かぶ。
しかし、それは自分の機体へ近づくにつれて、引きつったものに変貌した。
「おい、鉱山から何か出てきてるんだが…アレは何だ」
『 donno(分らない) 』
アデラに埋め込まれている闇の精霊フギン=ムニンの答えはにべもない。
ルーシ鉱山からアルバニアンにかけて、砂煙がもうもうと舞い上がっている。
続いて銃声。
アデラは急いでコルバス・コラックスに乗り込むと、義勇軍の念導会話チャネルを開いた。
―発進可能な機体は緊急出撃せよ。
現在視認されているのはティルネラントの飛行精霊機1、所属不明の大型多足精霊機1。
ルーシ鉱山に接する都市北東部を攻撃中、ティルネラント側の威力偵察と思われる。迎撃せよ。
繰り返す、発進可能な機体は―
「鉱山の地下道を使われたな……。向こうの方が一枚上手だったか」
アデラは舌打ちした。
アルバニアンの周囲は味方哨戒機の厳重な監視下にある。
彼らに発見されずにこの奇襲を成功させるのは不可能だ。
ティルネラント側も何らかの手段を使い、あの地下道の存在を知ったのだろう。
進入方角を加味すると、そう考えるのが自然である。
「兎にも角にも、荒っぽい客を追い払おう。
敵は少数、可能なら鹵獲して楽しい時間を過ごさせてやる」
乾いた唇を一舐めすると、アデラはコルバス・コラックスを急発進させた。
向かうは敵の迎撃。
それに、はからずも帝国技術院技師(アーウィン)の目前での戦闘となる。
上手く動いてファールデルの技術を売り込んでやろうか、などと考える抜け目ないアデラだった。
>234 (2/2)
「足が多ければ良いというものではないだろう」
多くても3本目までだ、とアデラは思った。
アデラが操縦するコルバス・コラックスは高速で襲撃地点へ飛行すると、速やかに戦況を確認した。
事前情報の通り、小型機が1機、大型機が1機の2機編成。
特に地上を蹂躙している大型精霊機の風体は異様である。
赤黒のカラーリングにムカデを思わせる多足形態。
足は休むことなく駆動し、その度に体節は滑らかうねり蠢く。
それはまるで、地獄の生物が地底から這い出てきたかのようであった。
「貴君は、あれのデザインについてはどう思う?
ティルネラントの精霊機技師は、どうやら趣味が悪いようだが」
ハンガーの修理中機体を破壊していたセルフィーに向けてバリスタ(大型のクロスボウ)を一発放つと
アデラは敵精霊機の操手に問うた。
【アデラ : 敵機迎撃任務につく。セルフィーに射撃攻撃】
メンテナンス途中の精霊技師たちが悲鳴をあげながら逃げ惑う義勇軍前線基地。
操手と精霊の宿っていない精霊機たちに向け機関銃を乱射しているセラが悦に浸っていると遠方から攻撃をうけた。
>「貴君は、あれのデザインについてはどう思う?ティルネラントの精霊機技師は、どうやら趣味が悪いようだが」
「んにー?」
唐突なアデラの問いかけの前にバリスタの投射を確認。セラは悠々と機体をスキップさせバリスタを回避する。
「あー。あなた…このまえ会ったわね(正確には会ってはいないんだけど。私の狙撃を邪魔した人ね…)
その大百足はティルネラントのものではないわ。王国の部隊も襲われたんだから無差別の無所属機よ!」
ドウッ!突然、建物の影から精霊機が滑るように現れセルフィーにむけ弾丸を発射した。
救援に駆けつけた義勇軍の機体。遠くにも街道を疾走してくる複数の機体が確認される。
「ふーん…」
弾丸を空中大ジャンプして回避したセラは着地地点をすでに逆算していた。それは弾丸を放って移動する機体の頭の上。
建物の影を回避運動をしながら横移動している機体は、セラにもう一発弾丸をお見舞いしようと建物の裏を廻りこみ
セルフィーの死角に出るつもりだったのだが出るも何も空中から現れてまだ着地もしていないセルフィーに機体の側頭部を蹴られて頭部を失ってしまう。
ぞくぞくと集結する義勇軍を見ながらセラは…
「…にしてもこの物量差。ここは敵の領域の真ん中なのかしら。私の体力とセルフィーの精霊炉が無限だったら
なんとかなるのかも知れないけど…。ここから飛んで逃げるのは無理ね」
地表を蠢く巨大百足は頭部をもたげて口元のオオバサミをガシンガシンと打ち鳴らしている。あれが27番隊の機体の分厚い前面装甲を食い破ったのだろう。
「地下道を使って逃げるのだとしても百足が邪魔だし…。そうだわ。義勇軍に百足退治させよう。まあ、退治できればの話なんだけど」
セラは無線の周波数を義勇軍に合わせアデラに話しかけた。
「聞こえてる?私の名前はセラ。あの百足型の機体の名前はアスモデウス。今から約50年前フルカス博士によって実験的に造られた精霊機なの。
精霊機といっても炉で使われているのは人間の霊魂で頭と背中に無数に走っているあの小さい丸い半球体が一個一個精霊炉になっているみたい。
それを全部破壊したら多分アスモデウスは沈黙するはずよ。どう?私と手を組んで百足をやっつけない?」
セラの話は話半分嘘半分。積極的にアスモデウスを破壊するつもりはなかった。
大百足の存在は地下道を利用する者への脅威となり壁となる。今の段階ではやはり義勇軍にとっての障害となることだろう。
地表では義勇軍とアスモデウスが戦闘が始まっていた。セラとアデラの会話は義勇軍の兵士たちにも伝わっており
一人の勇敢な兵士が相打ち覚悟で背中の球体の一つを剣で真っ二つにした。
すると「ほぎゃぁー」とその場に居た者全員の腹部を突き刺すかのような悲鳴が轟く。見えない胎児の幻影が膨らみ爆発して広がる感覚。
百足はのたうちまわる。無数のロケットエンジンを点火させて自らのたうちまわっているのだった。
それはネズミ花火のように不器用に空中に舞うとアデラの機体に巻きついた。
百足の頭部のカプセル状の操縦席からは白髪白髭の老人がコルバス・コラックスの装甲を通り抜けアデラの頬をしわしわの両手で挟む。
精霊炉そのものと化しているフルカス博士の霊魂。人機一体の異形の精霊機。
女の魂の底を手で撫でつけるような老人のザラザラとした乾いた魂は嗚咽をもらしつつアデラを両手で抱きしめている。
コルバス・コラックに巻きついたアスモデウスは機体を締めつけはするものの破壊しようともせず、ただただ巻きついているだけに見えた。
「…じゃれあってるの?」
アスモデウスの行動に意表をつかれたセラは地下道に逃げ込むことも忘れて虚脱している。
【空中でコルバス・コラックに巻きつくアスモデウス】
見渡す限りの青い空。ところどころに散らばる、甘菓子のような白い雲。
見上げれば、心浮かれるような晴れやかな景色が広がっていた。
…ただ一点、ここが最前線であるということを除けば。
ヨハンナは手を組み、頭の上に向かって大きく伸びをして。
「ふぁ〜、今日もいい天気だね。ゼッコーのヒロインショーびよりだわ!」
ヨハンナのやる気は十分だ。けどむしろ、その理由のない自信こそが、ハウリンティウスの頭痛のタネで。
『こういうときは、臆病なくらいがちょうどいいのよね…』
>218 フィリップ【フィリップ、ジグザグ飛行ののち、ロンデ二オン市内に不時着】
ヨハンナが煙のもとを辿ると、そこでは一機の精霊機が文字通り”横たわって”いた。
戦闘地域とはほど遠い。そもそも、ここはロンデ二オン市内である。
先日の作戦のときのガレキが残っている程度で、周囲に敵機の気配などなかった。
「うわ、だっさ…」
『そりゃティアリアはセミオートだから、ちょっとやそっとじゃおちないだろうけどさ…』
ヨハンナはそれでもしばらくの間、憐れむような目でフィリップ機を眺めていたけれど、
急ににこにこしだすと、くちびるに指を当て、考え事をはじめて。
『(ヨハンナちゃんのこういう仕草は、何かロクでもないことを企んでいる証拠だ…)』
考えがまとまったかと思うと、ヨハンナはフィリップ機に近づいて猫なで声で話しはじめた。
「もしもし、そこのおにーさん…いやおねーさん?うーん…
そうだ、おにおねーさん!ダイジョブですか〜☆ミ」
「パティ、ヒーリングブリーズはつかえる?」『問題ないよ』
「それじゃ、あっちのダッサイ墜落機にかけてちょうだい。辻ヒールはヒロインスキルのキホンだもんね」
『…ヨハンナちゃん、マイク入ってるよ』
「え!ウソ!?ちょっ、なんで切らないのよ!」『…ウソ』
次の瞬間、ハウリンティウスに強烈な一撃が放たれたのは想像に難くない。
「おにおねーさん、いま修理魔法つかうから、ちょっとじっとしててくださいね☆
だいじょ〜ぶ、いたくしないから〜♪」
「いやしのチカラよ、かのモノをみたせっ☆」
ヨハンナの台詞は単なるかけ声で、特に意味はない。
『蒼穹の調律師として命ず、原初の海より刹那の安康を与えしアリエル――』
ハウリンティウスの詠唱に応じて、七色の光がスィゴーニュに集まり、優しく包み込んでいく。
光は、スィゴーニュの損傷箇所に溶け込んで。
周囲に独立して存在する、風の下級精霊に呼びかけ、その力を借りて機体の応急処置を行う。
それがヒーリングブリーズの原理であった。原料は、大気中の微粒子を精霊の力で変換して用いる。
精霊間の相性もあるので、その効果はネージュの意思にも多少左右される。
万全を期すならば精霊機整備士の補修を受けるに越したことはないが、
多少ぶつけた程度であれば問題はないだろう。
「どうですか、おにおねーさん。機体のチョーシはよくなりました?☆ミ
お〜こく軍のハカセさんにみてもらったほうがよさそうだから、案内しますね♪」
とは言ったものの、ある意味観光客のようなヨハンナは、本当はどこに行けばいいのかわかってなくて。
少しの間あたりを見回すと、南西方向に精霊機の集団ができているのを見つけた。
たぶん人のたくさん集まっているところがアタリでしょ、と考えたヨハンナは、
南西に向かってフィリップを引きずろうとする。
>219 【ディクト:兵士に捕まり牢屋行き】
???「おいおい若ぇの、俺様に挨拶もせずに昼寝かい?いい身分だなァ?」
寝そべろうとするディクトを、同室の囚人数人達が取り囲む。
???「まァまァよせや。ソイツはまだ新入りなんだ、
これからたっぷり”教育”してやればいいさ」
ディクトを囲む囚人達が下卑た笑い声を上げた。
ディクトの入れられた牢は大部屋で、数十人の囚人が入れられている。
先程の声は、この牢の中でもっとも序列が高いらしい。
囚人A「何ぃ、アンタあの強行排撃隊に入れられてたのか?そりゃ命拾いしたな」
囚人B「違ェねェや。何せ、ここにいたら衣食住はタダ。俺たちァ公務員みたいなもんよ」
こんな感じで、冷たい牢の”新入り”への質問攻めが続くのであった。
*
数時間後。
一通り聞き終わり、ようやく質問攻めから解放されたディクトに、ある男が声をかけた。
謎の男「ディクト=シルフィスだな?お前に用がある…」
そう言うと、男はディクトをこっそりと牢から出そうとする…
【ヨハンナ(→フィリップ):スィゴーニュに応急処置。南西へ連れて行こうとする】
【(→ディクト):謎の男(モブ)が出獄を持ちかける】
民間からのタレ込みでいつどこでどのような規模で戦闘がおこるかを知っていたASLは
すぐさまホロウ・クロウラーとシュヴァルツ・ヴァルトを差し向けた。
[二人とも、よろしく頼む。ここからでは幾分、遠すぎるのでね。
こんなこともあろうかと本部から精霊力増幅炉を持ってきた。使い捨てだ。気にせず使ってくれたまえ]
精霊力増幅炉とは機体の精霊力を底上げしてそれによって高速で移動するというもの。
もっとも、精霊力増幅炉はそれ自体への負荷が高く使用制限を超えると爆散する故、連続での使用は不可能。
兎角、増幅炉は使い捨ての移動用ブースターと言えるのである。
そして、山岳地帯を二機の精霊機が高速で移動している。
「もう少しで増幅炉の使用限界だね。ちょうどアルバニアンだ。パージするよ」
ガチンという錠の外れるような音とともに、機体背部に装着された増幅炉が音を立てて崩れ落ちる。
後は自然落下である。目標はアルバニアン。義勇軍の前線基地が確認できた。
"おいおい、もうおっぱじめてんぞ?総合火力演習かなんかか?"
『サイアニスだ。標的を確認した。タブーリストはクリア。始めるぞ…ッ!』
シュヴァルツ・ヴァルトは足で大地を一蹴すると標的の精霊機の背後から首を吹き飛ばした。
そしてそれを見たエルトダウンはニヤリと笑って精霊炉の出力を最大まで上げた。
「しかし気持ち悪いのがいるね。アレも一応標的かな?」
多手多足の精霊機とおぼしきものが一機の精霊機にとりついている。
もっとも、君子危うきに近寄らずである。
実際、あのような特機と戦っても大してデータは集まらない。
それにとりつかれている精霊機のパイロットの恐怖を考えると面白くてしかたなかった。
だから放っておくのだ。その間に他の精霊機や基地を蹂躙する。
【アルバニアンに到着。しばらく暴れます】
地下道「この流れは・・まずい・・・!」
1/2
「だるい、ここの囚人どもは気楽で良いな。
もっと殺伐としてるべきだろ・・・・・・。
普通俺の経験人数とか下世話なこと聞くくらいなら外の様子を聞くだろ・・・・・・」
牢の中にいた囚人達の質問攻めから解放されたディクトは大の字に寝転がる。
そして仮眠を取ろうとしていた矢先、牢の外から黒いフード付きの外套を着た男が近づいてくる。
「ディクト=シルフィスだな?お前に用がある…」
「あ?用って何だよ」
「取りあえず、お前を出してやる、ついてこい」
黒ずくめの男は牢の鍵をあけると、ディクトを外に出す、それに便乗して出ようとして囚人がいたがディクトが蹴り飛ばし牢の中に戻した。
その後、男について行くと薄暗い路地に出た。
「で、どうして俺を助けた。
一応助けてもらった借りは返そうと思うが、無理難題だったら無視するぞ」
「安心しろ、そんなに大それた事は頼まない。
ただ、俺たちのクーデターに参加してほしい。
俺はある反政府組織、いわばレジスタンスの一員なんだが、その組織には精霊機を操れる者が少ない、だから是非ともお前の力が欲しい」
「何で俺なんだ? 確かに俺は強いが、一応王国に雇われている傭兵だぞ?
もしこのことを俺がばらしたらどうするんだ?」
ディクトの問いかけに男は薄く笑うと、太郎が宿っている大剣を取り出し、ディクトに差し出して口を開く。
「お前は先ほどの処刑を見て憤っていた、だからだ。
ただ強いだけの人材は要らない、この国の在り方に疑問を持っている人で無くてはならない。
お前は教国の人間だが、この国の在り方をみて憤った、それだけで十分」
「まぁお前の言い分は理解できた、協力してやらない事も無い。
具体的に何をするんだ、それを聞いてからじゃないと何とも言えないな」
男は身を翻し、さらに路地の奥に進んでいく。
しばらく歩くと、目の前に小汚い二階建ての宿が見えてくる。
その中に入ると、カウンターには人の良さそうな顔をした坊主頭の中年男が居た。
「いらっしゃい、お二人様で?」
「国を変えるのは賢い君主でも正義の法でもなく、我々国民だ」
男はそう呟くと、坊主頭の目つきが変わり、カウンターを開けた。
カウンターの奥の部屋には地下に続く階段があり、ディクトは男とともに下っていった。
大きな円卓とそれを囲むように、ディクトくらいの大男でも悠々座れるくらい大きな十三個の椅子が設置されている。
その椅子には1から13まで番号が振ってあり、既に二つを除いて全て埋まっていた。
その椅子の中でも一際大きな椅子に座っている口と顎に白い髭をたくわえた精悍な顔つきをした男が口を開く。
2/2
「ようこそ、ディクト=シルフィス殿。
我等『円卓の騎士』は君を歓迎する、私はこの『円卓の騎士』の王、ヴァレリア=ラルファード」
ディクトは黒ずくめの男に促されるまま13の椅子に座ると、それに続いて黒ずくめの男も椅子に座る。
ディクトが椅子に座った瞬間、周りの視線が全て集まった。
「おいおい、まだ俺は仲間になるなんて一言も言ってねぇぞ。
まずお前らの計画を話せよ、話はそれからだ」
「他の大陸の国では国の主は民衆の支持を集めた者がなる、という制度の所があります。
それに引き替え、我が国は延々と同じ血筋の者が国の主を継いでいる。
だから、我々は重い税に苦しみ、戦争では捨て駒のように扱われ続ける。
そして、王は自分は今の地位から落ちることが無いことを分かっているから好き放題振る舞う。
そんな暴挙が何年も続いてきた、こんな下らない制度は今すぐ壊すべき、貴方もそう思いませんか?」
「あ、ああ・・・・・・まぁおかしいとは思う」
ヴァレリアの剣幕に負け、ディクトは曖昧な返事で返す。
それを聞いたヴァレリアは何度か頷くと立ち上がり大げさに手を広げると、再び口を開く。
「だから我等は今こそ動くのだ、戦争の混乱に乗じてクーデターを起こし、この国の政府を乗っ取る」
「んな事出来るわけ無いだろ、馬鹿か。
簡単に政府を乗っ取るって言ったってどうするんだ?」
「いずれ帝国が大規模な親好を開始した際、我等は各地で民衆を煽り、行政機関を占拠する。
そして国王を殺し、新たな主は民衆の支持で選ぶ、これで今よりより良い国になるのは間違いない」
「その新たな主とやらを決めるときに攻め込まれたら?」
「教国との仲介で停戦します、いくら中立とはいえ王国が帝国に敗れ、帝国が巨大戦力になったら教国もただでは済まされないですから。
教国としては帝国と王国は戦い続けてくれた方が良いのですよ」
ディクトは特に言うことが無くなったのか、黙り込む。
ヴェレリアはそれを確認すると、数回頷く。
「そして、今ロンデニオンは帝国に狙われている。
この戦争に乗っかり、我々はロンデニオンに滞在している王族を殺そうと思う。
第三王子ルーデルと第四王女セラ、この二人だ。
このセラという王女は王位には興味が無いらしいが始末しておくにこしたことはない。
ただ、精霊機乗りとしての腕は確からしいのでディクト、君に任せる、まぁ何人かに手伝いをさせるから安心したまえ。
それでは解散だ、諸君健闘を祈る」
ヴァレリアが手を叩き、解散の合図をするとディクトを除いた10名が一斉に立ち上がり、円卓のある部屋から出て行く。
「やれやれ面倒なことに巻き込まれた、でもおもしろそうだから良いか」
『ディクト様、本当によろしいのですか? 利用されていますよ』
「分かってる、だから俺も十分に利用させてもらうさ」
【ディクト:反政府組織『円卓の騎士』に加入】
「無事に届けられてよかったね」
「ええ、お偉方も大喜びでしたね」
「うん、僕の手柄にもなったし万々歳だよ」
「彼らの勘違いでしたがラッキーでしたね」
一仕事を終えた僕たちは、少しの達成感と共に、アデラさんに追いつこうと格納庫に向かっていた
未知の地下道という響きは、年頃の男の子にはとても魅力的で、興味深いものだった
「地下道ってどんなのだろうね?楽しみだな〜」
「鉱山跡地ですし、過度な期待はしない方がいいですよ」
アデラさんは偵察と言っていたので、帰ってくるまで時間があると思って、僕とフェニキアはゆっくりと歩いていた
「そうかな〜そうなんだろうな〜」
と他愛もない話をしているとき、遠くから銃声が聞こえて来た
音の方に振り向くとルーシ鉱山の方から煙が上がっていた
地下道を使った王国の奇襲か!急がないと
そう思った時には行動は終了していた
格納庫の方に一目散に駆け出し、イグニスの元に向かっていた。
機体に乗り込むとすぐさまに機体を起動させ、精霊炉を稼働させる
起動までの時間がとても長く感じ、焦燥感が体中に広がっている
「レオン様、行けます」
「了解、レオニール・ルラン・ファーブニール!イグニス・フロゴーシス出ます!」
ルーシ鉱山に近づくにつれ、銃声、爆音、衝突音とがいやなハーモニーとなり、その音量は大きくなっていく
そして、一番に目に飛び込んで来たのは、大きなムカデ型の精霊機とセラフィーの姿と……
「キャァァァァァァァァァァァ!!m、ム、ム、ムカデ!!」
フェニキアの悲鳴だった
そう、彼女は足が多い生物というものが苦手だった
「いや、イヤ、嫌ぁぁぁぁぁ!レオン様、ムカデは無理です」
「守護精霊を守るのも主の役目!いざ勝負!!」
取り乱す彼女を救おうとその根源に激しく切り掛かる
ムカデは思いのほか、固く
剣が弾かれてしまう、負けじともう一度振りかぶろうと機体の足に力を入れたときに
凄まじい爆音とともに地面が割れ、イグニスとムカデは地面のそこに落ちてしまう
【レオン:アスモデウスとの戦闘中に地下に落下】
>238 (1/2)
> その大百足はティルネラントのものではないわ。王国の部隊も襲われたんだから無差別の無所属機よ!
> どう?私と手を組んで百足をやっつけない?
返る敵機の声を聞いたアデラは、存外に若い女操手だな、と思った。
「ああ、キミはトール(ミョルニル)殺しになり損ねた狙撃手か。ケルン大橋では世話になった」
セラと名乗るティルネラント兵士の話を聞く分には、どうやら彼女達にとっても精霊機アスモデウスの存在は想定外であったようだ。
その証左に、彼女もあの巨大なムカデを持て余している。
共闘やむなし。
しかし次にアデラの口が発したものは、Yesの返事ではなく、意味のない短音節であった。
「んくッ……!」
アデラの搭乗機コルバス・コラックスは突如として激しい衝撃に襲われた。
アスモデウスが地表から急上昇し、アデラの搭乗機に巻き付いたからだ。
強力な圧力によってギシギシと軋む機体。
空中にいるという油断がアデラの操舵を鈍らせていた。
>238 (2/2)
スロットルを絞り込んで精霊炉の出力を上げようが無駄であった。
既に全方位を抑えられたコルバスは、機体どころか、腕の一本さえピクリとも動かない。
「囚われた」
そして、次なる衝撃がアデラを襲う。目の前に深く皺の刻まれた老人の顔。
『 Ghost 』
アデラの相棒、闇の精霊フギン=ムニンは即座にその正体を看破した。
精霊機アスモデウスの頭脳たるフルカス博士の霊体が、コルバス・コラックスの操縦席に現れたのである。
フルカスの亡霊は、およそ瑞々しさからは程遠く枯れてしまった両手で女傭兵の頬を弄ぶ。
アデラの顔を冷や汗が伝った。
予想外のこと、常識外の事態に血の気は引き、顔面は蒼白となった。
しかし、彼女は心底諦めない性分であった。
折れない心が、彼女を気丈に振舞わせるのだ。
「やあ、こんにちはフルカス博士」
それに希望はまだあるように思われた。
未だコルバスを破壊しないのはなぜだ? 彼は何をやっている?
こんなときは腹を決める。粘って勝機を待つのもまた、ファールデルの傭兵である。
『 Hello Dr.Furcas, Hello world 』
闇の精霊フギン=ムニンも精霊間通信を試みているようだが、あまり有効ではないようだ。
そもそも常に片言のフギン=ムニンは、言語でのコミュニケーションが苦手だ。
「博士。暗き世界より50年ぶりのご帰還、生への渇きも御座いましょうが、
私のようなトウの立った女よりも、若くて美しい者が近くにはべり居ります。
ほら、すぐそこに」
引き攣った微笑みを浮かべながら、
アデラはその細長い人差し指を、フルカスの眉間からコックピットの外へ向けて動かした。
その指の先には、セラの搭乗する精霊機「セルフィー」。
傭兵アデラ、もうなりふり構わぬ生き様である。
『 deplorable(嘆かわしい) 』
【アデラ : 精霊機アスモデウスの霊体フルカスと意思疎通を試みる】
>【ヨハンナ(→フィリップ):スィゴーニュに応急処置。南西へ連れて行こうとする】
俺は、墜落時の衝撃で死んで、天国にいるんじゃないだろうか?
接近してくるウサギ耳の妖精を見た時のフィリップの第一印象である。
>「おにおねーさん、いま修理魔法つかうから、ちょっとじっとしててくださいね☆
だいじょ〜ぶ、いたくしないから〜♪」
ウサ耳妖精から聞こえた声が、彼を現実に呼びもどした。
理由はわからないが、目の前の機体のパイロットは、彼の機体を修理するつもりのようだ。
>精霊間の相性もあるので、その効果はネージュの意思にも多少左右される。
一方、精霊のほうは、主よりも速く、そして正確に事態を理解して対応していた。
『久しいな、ハウリンティウス。
今回はお前の主の好意に甘えさせてもらうが、この借りは必ず返させてもらうぞ』
まわりの下級精霊たちと協力して機体の修復を進めながら、
雪の上位精霊は風の上位精霊に呼びかけるのであった。
しばらくすると、スィゴーニュは自力で起き上がれるまで回復した。
>「どうですか、おにおねーさん。機体のチョーシはよくなりました?☆ミ
お〜こく軍のハカセさんにみてもらったほうがよさそうだから、案内しますね♪」
少女の呼びかけに、いまだ事態を飲みこめていない青年が答える。
「なんとか、動けるようにはなった。協力を感謝する。
こちらは、アルザスの領主ジャンの嫡子、フィリップ。
父の命により、王国軍に加勢する者だ。よろしければ、貴下の所属と姓名を伺いたい」
機体をティアリアに並走させながら、謎の機体とその主の素生を問う。
【フィリップ、ヨハンナについて行きつつ、その素生を問う】
>「ああ、キミはトール(ミョルニル)殺しになり損ねた狙撃手か。ケルン大橋では世話になった」
セラはアデラの内心とは裏腹にその声に思った通りの印象を受ける。
戦場で受けたあの感覚と繊細な戦いぶりは同じ女の所業としか考えられない。
>「んくッ……!」
小さなアデラの悲鳴のあとコルバス・コラックは空中で機械の百足に包まれる。
セラは驚愕したが、さらに驚愕することになった。
「ASL!」
大気を切り裂き急速接近してくる機影はASL。アルタイテンとの交戦中にASLの脅威は体験済み。
セラは地下道に避難することも考えたがあの地下道が最終的に
どこに繋がっているのかセラにはわからなかったし入って来た入り口はすでに塞がれてしまっている。
ただ確かなことは隠れることが可能なだけということ。
でも逆に今なら暴れるASLのどさくさに紛れて地上を使って逃げることも不可能ではないだろう。
>「やあ、こんにちはフルカス博士」
>「博士。暗き世界より50年ぶりのご帰還、生への渇きも御座いましょうが、
>私のようなトウの立った女よりも、若くて美しい者が近くにはべり居ります。ほら、すぐそこに」
通信から聞こえてくるアデラの声。誰と会話しているのか想像すればセラの背筋はぞっとした。
アスモデウスの性能から考えれば予測するのは容易なことなのだが
現実の霊魂との接触は聞いているだけの者でも気持ちよいものではなかった。
「みゅー」セラは猫のマネをして誤魔化した。この機体のパイロットは猫なのだ。おばけのフルカスくるんじゃない!と。
「猫か…」フルカスはかすれた声で納得するとアデラのまな板の胸に顔をうずめる。
体に電撃が走る。フルカスの思い出がアデラの頭に流れ込んでいく。
暗い地下道の奥深くにみえる研究室。
研究室には若き日のフルカス博士とおそらくは臨月をむかえた妻と幼い双子の姉妹がいた。
だが、みな落盤事故で死にかけている。フルカス博士自身も頭から血を流し必死の形相で実験機材を扱っているのがうかがえた。
「本当に霊魂があるというのなら、みな私の前に現れろ!無いのならこの精霊炉の中で生き続けてくれ!!」
実験の成否はわからなかった。ただ最後は暗闇の中で狂ったように笑う血まみれの男の姿がアデラの脳裏に映し出されていた。
>「守護精霊を守るのも主の役目!いざ勝負!!」
少年の溌剌とした声が闇を切り裂く。レオニール・ルラン・ファーブニール。
剣光一線!百足の背中に正義の鉄槌!が惜しくも弾かれてしまう。
がアデラとの中に割って入られたアスモデウスはコルバスから離脱すると
怒り狂ったかのようにイグ二スにとびかかった。コルバスは解放される。
ボゴン!空中で百足の背中の球体がまた一つ割れた。イグ二スの剣でできた小さな亀裂に炉の圧力が加わって時間差で爆発したのだ。
揚力を失い地面に叩きつけられたアスモデウスに追い討ちをかけて剣を振りかざすイグ二ス。
機体の足に力を入れたときに凄まじい爆音とともに地面が割れ、イグニスとムカデは地面のそこに落ちてしまった。
「ギャオオーン」闇の中でイグ二スに襲い掛かるアスモデウスの牙。
セラはここぞとばかりにアデラに言った。
「あの地下道からは王国軍が進軍してきているから義勇軍はもう終わりね」
嘘をつく。実際にはゴウケンが一人、中間地点で仁王立ち。これはただアデラの反応を見るための言葉。
素直に納得すればロンデニオンとこの地下道は繋がっているということになるのだろう。
【イグ二スに襲い掛かるアスモデウスの牙。セラ:アデラにかまをかける】
>250 (1/3)
> 「みゅー」セラは猫のマネをして誤魔化した。この機体のパイロットは猫なのだ。おばけのフルカスくるんじゃない!と。
> 「猫か…」フルカスはかすれた声で納得するとアデラのまな板の胸に顔をうずめる。
「絶対確信犯だな、ドクターッ!」
亡霊フルカスの抱擁を受ける傭兵・アデラは内心そう叫んだ。
歴戦の傭兵も若干涙目である。
そっちがそう来るなら、じゃあ次はワンワンとでも言ってやろうか、そう思った矢先である。
> 体に電撃が走る。フルカスの思い出がアデラの頭に流れ込んでいく。
亡霊の強い思念と記憶がフラッシュバックする。
接触はほんの一瞬。 しかし、アデラと使役精霊フギン=ムニンはフルカス博士の歴史を共有するに至った。
地下道の崩落が起こした悲劇、といったところであろうか。
「人を精霊に昇華させる研究があるとは聞いていたが…その末路がこれか」
自然に存在する強力なエネルギー・精霊を人の手で成そうという研究は昔から広く行われてきた。
現在ではASL(人工精霊研究所)がその筆頭であろう。
そういった研究の中でも禁忌とされてきたのが、人と精霊とを混在させたり、人を精霊そのものと化してしまうものである。
『 What a pitiful sight 』
フギン=ムニンのつぶやきが聞こえる。
アデラは、家族の面影にすがるフルカスの霊体と、いまや彼の肉体である精霊機アスモデウスを見て思った。
理性はすでに無く、知性による制御からは無縁であり、狂気の残滓によってのみただ生き続ける。
それはまるで本当の意味での亡霊であり、この世に残された哀れな迷い人ではないか。
だから、今自分が置かれている危機も忘れ、彼に対して憐憫の情を禁じ得ないのだ。
>250 (2/3)
> アスモデウスはコルバスから離脱すると怒り狂ったかのようにイグ二スにとびかかった。コルバスは解放される。
「よくやった、レオニール・ルラン・ファーブニール!」
レオンの乗るイグニス・フロゴーシスの一撃がアスモデウスの注意をひいた。
ムカデの抱擁から逃れたアデラの搭乗機コルバス・コラックスはそのまま高く空中へ飛び出す。
「礼を言わせてくれ、レオニール。キミには借りが出来たな」
謝辞を述べながらも、アデラは周囲の確認を欠かさない。
ルーシ鉱山とは別方向からも黒煙が上がっている。念導会話装置からはASL襲来の報も聞こえる。
危険な事象ほど重なって起きるというが、まさに今がそんな状況だ。
「だが、まず片付けるべきはこっちだ」
アデラはコルバス・コラックスの機首を巨大なアスモデウスに向けた。
> 「あの地下道からは王国軍が進軍してきているから義勇軍はもう終わりね」
レオンの支援もあり解放されたコルバスであったが、敵精霊機セルフィーから更に不利な情報がもたらされる。
しかし。
若いわりになかなかの胆力じゃないか、とアデラは思ったのだった。
「ハッ、嘘だね!
戦闘開始から暫くたったが、そちらのお仲間が現れる様子は無い。
それにあのムカデに対してティルネラントは有効な処置を取っていないな。
先ほどのキミの言葉、共闘の提案がその証拠だ。
この事態は、キミの独断先行が起こした事故だろう?」
彼女が地下道の調査中にあの大ムカデに遭遇した、というのが自然な推理だろう。
そして、追うか追われるかしているうちにルーシ鉱山…義勇軍の真っ只中に飛び出してしまった。
「さぁコイツの処理は手伝ってもらうぞ、セラ嬢!
何、拘束後のことを恐れることはない。私から口添えして、キミの命だけは保証する」
今や崩落した地面の底、暗闇で睨みあっている味方機イグニスと敵機アスモデウスを見ながら、アデラはセラに提言した。
「スポッター!光だ!彼(レオン)に光を!」
>まとめ (3/3)
状況は変わった。
義勇軍のイグニス・フロゴーシスと大型精霊機アスモデウスは暗い地下で対峙している。
アデラの乗るコルバスは敵の戒めから逃れ、
セラの精霊機セルフィーはこれからの行動を念入りに検討しているように見える。
速さこそは正義なり。アデラはレオンに必要な情報を伝えた。
「イグニス・フロゴーシス、聞こえるか。こちらレイヴン隊のアデラ・グラーフストレーム。
あのデカブツの弱点は体節ごとに搭載されている小型精霊炉だ。
ドーム状の炉を全て破壊して、悪魔を地獄に返してやれ!」
精霊機コルバス・コラックスは右腕に装備されたバリスタ(大型のクロスボウ)に太矢を装填する。
鏃部分に信管と火薬を装填した炸裂矢である。
「これだけ的が大きいと当てるのも楽だな。
……Dr.フルカス。このレイヴンがヴァルハルへの道案内をさせていただく」
『 R.I.P 』
コルバスがバリスタのトリガーを引くと、クォレルは狙い過たずに炉のひとつに吸い込まれ、大きな爆発を生んだ。
【アデラ : 大型精霊機アスモデウスの精霊炉を攻撃】
【アデラ : セラにアスモデウス攻撃要請】
【アデラ : レオンにアスモデウス攻撃要請】
ディクトは数名の仲間とともに薄暗い地下道を進む。
ここは義勇軍の本拠地の近くに繋がっているらしく、その本拠地では『円卓の騎士』の抹殺対象であるセラがいるという報告を義勇軍に潜んでいるスパイから聞かされた。
鉱山の地下道らしく入り口は探せばいくらでもあるらしい。
そこでディクトは背後からセラを強襲する作戦にでることになった。
ヴァレリアにディクトの乗る阿修羅を『円卓の騎士』の象徴、いわば旗頭のような存在にしていきたいと言われた。
『円卓の騎士』はこの国では一番大きなレジスタンスであり、今までも積極的に活動してきていたらしい。
各都市に支部があり、本部はある森の中に隠されている。
「一度この機体ででたらもう二度と王国軍には戻れないな」
『傭兵として雇われている事にすればいいでしょう』
「まぁ実際そんなとこだしなぁ、隊長殿は行方不明らしいし、俺があそこにいる理由も無くなったからなぁ・・・・・・」
などと。雑談していると目の前に一機の白をベースとした機体が仁王立ちしているのが見えてくる。
『向いている方向からして帝国側からの攻撃を警戒しているようです、恐らく王国側の兵士でしょう、適当にやり過ごしましょう』
「だな、お勤めご苦労さん。
俺は今から向こうの援軍に行くから、お前も頑張ってくれ」
とだけ言って、阿修羅は仁王立ちしている機体の横を素通りする。
相手も王国側から来たディクトは味方だと認識したのか、特に咎められはしなかった。
そして、進んでいくうちに光が見えてくる。
その光の中を突き進むと大量の義勇軍、それに百足のような巨大な精霊機、それと戦う数機。
ヴァレリアから聞かされたセラの乗っている精霊機のセルフィーの外見と完全に一致する機体がコルバス・コラックスと相対している。
「あれがセラって奴の期機体と・・・・・・アデラか?」
ディクトとアデラは同じ教国の出身として、お互い顔見知りであった。
そこまで仲がよいわけではないが、同じ任務に携わった事もあり、ディクト個人も精霊機乗りの先輩としてある程度尊敬している。
「まぁどうでも良いか、では早速宣伝しますか。
俺は『円卓の騎士』第13騎士ディクト=シルフィス!
第四王女セラ、その命貰い受ける」
『格好悪いです』
「やれって言われたんだしょうがねぇだろ、俺だって恥ずかしいんだ、言わせんな」
『円卓の騎士』は主であるヴァレリアを筆頭とし、その下に幹部として2から13の騎士がいる。
レジスタンスはその性質上、カリスマ性を持つため民衆に活躍を知ってもらう必要がある、だから戦場に出るときにいちいち名乗りを上げるのだ。
先ほど渡された砕けた聖杯のエンブレムを肩につけた阿修羅が、セルフィーに斬りかかる。
【ディクト:地下道を通り、セラを強襲】
>249 フィリップ
>『久しいな、ハウリンティウス。
>今回はお前の主の好意に甘えさせてもらうが、この借りは必ず返させてもらうぞ』
『お気になさらず、ネージュ様。こちらこそ、お嬢様がご迷惑をおかけして申し訳ない…』
ハウリンティウスの憂鬱そうな返答の裏には、自分の苦労も含まれていて。
>「なんとか、動けるようにはなった。協力を感謝する。
> こちらは、アルザスの領主ジャンの嫡子、フィリップ。
>父の命により、王国軍に加勢する者だ。よろしければ、貴下の所属と姓名を伺いたい」
「キカ…?」『あなたっていう意味だよ』「へー」
「流れのアイドルヨハンナです♪これからもよろしくね☆
今日はかわいいエイリアンをやっつけにきたの〜♯」
『ヨハンナちゃん、答えになってなくない?』
「いいんだよ、これで。だって…」
「オトコの人はプライドが高いから、あっちより位が上なんていっちゃダメ。
ツネにお客さんよりバカで格下で手がとどきやすそーにみせなくっちゃいけないの。
パティ、こんなのアイドルのキホンだよ〜?踊り子のおねーさんがいってたんだけど」
『ふーん…。やり過ぎな気もするけど』
*
兵士A「おいそこの二機、ちょっと止まれ」
スィゴーニュそしてティアリアの前方に数機、量産型の精霊機が現れた。
精霊機墜落の一報を聞いて駆けつけた兵士たちである。
「せっかくおテガラ一人占めだとおもったのに…」
『どこまで行くつもりなのさ。兵隊さんに任せればそれで完了でしょ?』「あ、そっか」
「流れのアイドルヨハンナです☆ 精霊機がおちてこまってるひとがいたので、
ヘータイさんのところまでつれってあげようとおもってました#」
兵士B「…とりあえず、おなまえとおうちを教えてくれるかな」
「むー…」ヨハンナは兵士Bの精霊機に接触し、渋々降りてとある免状を渡した。
兵士B「!!リ、リーダー、この子ジョングレーリン(楽師)のマイスター免許持ってますよ!」
兵士A「は!?(いや、どう考えてもそこのちっこいガキがマイスター免許なんて持ってるわけないだろ)」
兵士B「しかも保証人、シュトロウス侯になってます」
兵士A「ちょっとお前、それ貸してみろ!」
二人は機体を停止させ、しばらく免状とにらめっこしたが、
偽造の証拠も見つけられず、結局問題なしということに”した”。
兵士A「…マルレーネ・クプファー。ご協力感謝します」
兵士B「ちょっ、それでいいのかよ!どう見ても怪しいだろ、名前違うし!」
兵士A「芸名だろ、常識的に考えて。そこのお嬢さんはおおかた、
お偉いさんの愛娼の娘か、さもなきゃ隠し子だろうな。悲しいけど、俺ら公僕なのよね。
悪いことは言わん、長いものには巻かれとけ。触らぬ神に祟りなしとも言うしな」
「イザというときのために、踊り子のおねーさんのなまえで
作ってもらっといてよかった〜♪」
兵士A「で、そっちの事故機の方は?」
兵士Aは怪訝そうな声でフィリップの素生を問うたが、
その答えが耳に入るや否や機体から降り、地に頭をつけて詫びた。
兵士A「領主様のご令息とは露知らず、ご無礼を申しましたッ!」
兵士B「…」まさに下僕!
身元確認が済むと、兵士たちは二機を先導しつつ作戦の説明をはじめた。
>241 エルトダウン【アルバニアンに到着。しばらく暴れます】
兵士A「只今アルバニアン方面に戦火の兆しありということで、
ロンデニオン南東の防衛線を強化しています」
兵士A「第一目的はアルバニアンの帝国義勇軍による攻撃であった時の防衛ですが、
もし義勇軍に大規模な事故、ないし第三者からの義勇軍への攻撃があった場合は…
この機に乗じて一気にアルバニアンを叩くとの事」
現在ロンデニオンの王国軍は、主要な補給路であったケルン大橋を絶たれ片肺である。
北東の補給路においても義勇軍の妨害に遭っており、
ジリ貧の戦況を打破する必要があった。
兵士B「…で、キミは何でついてきてるワケ?」
「おクニのためにがんばってるヘータイさんにおうたをささげたいの☆ミ」
兵士B「なんか…残念な子です…」
兵士A「おい、目を合わせるとバカが伝染るぞ」
*
ヨハンナは突然、背筋にゾクッとするような寒気を感じて。
「このカンジ…昆虫系男子のニオイがする!」
『ボクは特に何も感じないけど』
【ヨハンナ:あくまで流れのアイドルと言い張る。現れた兵士に追従】
【王国機兵隊(モブ):フィリップとヨハンナの身元確認後、
二機をロンデニオン南東の防衛ラインに先導】
>251>252>254
>「絶対確信犯だな、ドクターッ!」
二人のやりとりに聞き耳を立てていたセラは戦衣の上からでも浮かびあがってわかる胸を撫で下ろした。
「ふー…化け猫作戦成功ねー…」
というよりフルカス博士の好みではなかったのかも知れない。
イグ二スの剣が振り下ろされるとコルバス・コラックスにとりついたアスモデウスは
地表を破り土煙とともに暗い地下へとその身を落とす。
セラの問いにアデラは答えた。
>「ハッ、嘘だね!戦闘開始から暫くたったが、そちらのお仲間が現れる様子は無い。
>それにあのムカデに対してティルネラントは有効な処置を取っていないな。
>先ほどのキミの言葉、共闘の提案がその証拠だ。この事態は、キミの独断先行が起こした事故だろう?」
「…あなた…。どこからか見てたんじゃないでしょうね…?その慧眼には恐れ入ったわ…」セラは言葉を返す。
>「さぁコイツの処理は手伝ってもらうぞ、セラ嬢!
>何、拘束後のことを恐れることはない。私から口添えして、キミの命だけは保証する」
「あれれー拘束されることはすでに決定?それに命だけは保証って怖すぎるし…
個人的には他にも色々とオプションが欲しなー…
例えば全裸にしてシャンデリアの如く吊り上げるのは禁止にするとか」
そうは言うもののセラの瞳には好奇と劣情の入り混じった羨望の色が伺えた。
エロ姫の如何わしい発言のもと純粋無垢なレオンと大型精霊機は闇の中で対峙している。
>「スポッター!光だ!彼(レオン)に光を!」
「えー。それはいいんだけど。つまりは協力したらここのところは見逃してくれるってことよね?
それならいいわよ。それなら…」
セラは渋々承諾するとセルフィーを地表に降下させイグ二スの援護に入ろうとした。その直後。
>「まぁどうでも良いか、では早速宣伝しますか。俺は『円卓の騎士』第13騎士ディクト=シルフィス!
第四王女セラ、その命貰い受ける」
「ふぇ?なあに?あっ!!(お返事しちゃった!)」
地下道の入り口から現れたのは黄金の機体阿修羅。機体の肩には砕けた聖杯のエンブレム。
「そ、そのエンブレムはまさか!円卓の騎士!!…って自己紹介してたわね。ひょっと!」
セルフィーは機体を自ら崩すようにしてヌルリと回避する。それは機械の動きというよりは人の動きに近い。
阿修羅の質の高い剣線が虚しく空を斬り孤を描いた。
(こういう時って焦ってバーニアを使うとタイムラグが生まれて斬られちゃうのよね。えい!!)
セラはセルフィーの鋼鉄の脚を阿修羅の腹部に激突させると機体をそのまま空中に跳ね上げバーニアを点火させてさらに空中に飛んだ。
「びっくりさせたお仕置きっ!!」
ドドドドドドド!!セラは空中から阿修羅に向け機体の左腕に内蔵された機関銃を放つ。
【セラ:挨拶代わりに阿修羅に空中から機関銃の嵐。アスモデウスはレオン君が動いてから動かす予定】
「…………まだ何か浮かぶ事でも在ろうかと思って居たが…
ふん…そうも都合の良い様にはいかぬか……」
エンマは変わらずに仁王立ちしており、この状態から一歩も動いていない。
その間、ゼクシスに周囲を探らせ、自分も青炎を明かりに照らせる範囲を見回してみたが、
急に何かを思い出す、ということは、もう起きそうに無かった。
『まぁ、あまりお気になさらぬ方が…無理はよろしくございません。
この手の問題というのは、少し時間をおいて様子を見てみるものですよ』
「……元より、之の地下道の警戒ついでだ。貴様の謂う通り、気にも留めておらぬ」
そうですか、と苦笑するヴェーゼルをぼんやりと眺めていると、背後、遠方に気配を感じる。
エンマにはレーダーの様な機材は一切搭載されていない。加えて識別信号の認識さえ出来ないのだ。
戦場に立つ兵器としてこれはかなり致命的だが、ゴウケンが自ら望んで取り払ったのだから仕方が無い。
全ては自らの目で見極めてこそ意味があると言い張って。
『6じのほーこーに反応あr……うをっ眩しっ!!』
「……金色…六本腕……成る程、あれに見えるが阿修羅か…」
首を少し後ろに回したエンマの視界には、闇の中でも僅かな光を集め、
神々しく金に輝く異様な機体が捉えられていた。自分はその機体のことを知っている。
ゆっくりと当然な様子で、阿修羅はエンマの横を通って行く。
特に止めたりはしなかった。あちらの方向から来たのでこちらの所属か。
などと気を緩めたからではない。寧ろ、その逆。
ゴウケンは只ひたすらに、疑心に凝り固まった眼差しで。その姿を睨みつけていた。
何故ならば、機体のことは勿論、その搭乗者のことについても少しばかり情報を持っていたからだ。
――組織としての行動を嫌い、流れ気ままに雇い主を探す――
そんな者が今目の前に居て、この先を目指している。最早、疑い以外に抱けるモノが無かった。
そして、その対象から急に送られた通信で、疑いは確信へと変わった。
>「だな、お勤めご苦労さん。俺は今から向こうの援軍に行くから、お前も頑張ってくれ」
援軍に行く。 要 請 な ど 来 て い な い の に ?
「………良いだろう……此処は任されよう…………なれば、貴様も精々励む事だ…
最も…之の先から、増援の要請など出されていないがな………!!」
そう言葉を発した途端に、風一つ無かった地下道に生温い風が吹き抜け、
エンマの長くうねった髪がユラユラと揺れる。
鋭い爪の生えた足が地面に思い切り踏み込み、殺意を籠めた拳をかなり離れた阿修羅の背中に向けた、
その時だった。
『上から来るぞー!気を付けろー!!!』
「何……!?」
ズドォオオオオオオオオオオオオオン!!!!!
突如地下道の天井が崩れ、エンマは慌ててバックステップで飛び退いた。
間一髪。こんな時にだけだが、ゼクシスの臆病な勘が役に立つと思える。
『褒めるんだったら素直に褒めろ!助けてやったんだぞー!?』
駄目だお前は調子に乗るから。
構えを解かぬまま摺り足で近付き、落ちて来た物を確認する。
精霊機が一機、其れと………巨大な百足、だろうか?精霊機だとすれば見たことがない。
あちら側の新兵器か何かか。
「…随分と出来の悪い玩具を造るものだな……然し。
私の前に出でたからには、只撃砕在るのみ…」
布のすれる音と共に、エンマは深く腰を落として拳を構える。
基礎にして完成形。これが全ての技の始動に必要とされる「空」。
天井に開いた巨大な穴から日の光が差込み、エンマの真白き装甲が眩い程の光を放つ―――
『おぉーい待て待て待て待てゴーケンちゃんよー!まだ上から何か来てるってぇー!?』
【ゴウケン、レオンとアスモデウスを発見。臨戦態勢】
>257
> 例えば全裸にしてシャンデリアの如く吊り上げるのは禁止にするとか
「義勇軍の虜囚生活は、キミの想像しているようなフェティッシュなものではないよ」
アデラは苦笑しながらもセラの言わんとしていることを否定した。
義勇軍の士気は高く、わりによく統制されていたからである。
「そう望むなら別だがね」
確かに「義勇軍」はその名のとおり、単なる寄せ集めの集団に過ぎない。
しかしそこに集った人材は、非常に良質であった。
その源泉は、構成員に一定以上の教育を受けた憂国の士が多いこと。
また、自ら精霊機を保有し出撃できることを参加条件としているため、「富める者」が多くを占めていることだ。
彼らが捕虜に対して非人道的な見せしめを行うかと言えば、答えはノーであろう。
さらに価値のある方法で利用するはずだ。
身代金の要求、あるいは味方捕虜との交換が妥当な線かと思われた。
ティルネラント王国優勢ではあるものの、実際の戦線は押しつ押されつの拮抗状態。
こういった交渉の余地は充分にあった。
「キミの処遇について、もう少し善後策を協議したかったが……悠長に話をしている場合ではないようだ。
ティルネラント第四王女殿。
この際、ローガンブリアへの亡命というオプションも考慮に入れてみてはどうかな」
この戦闘の後、キミが生きていればの話だが、とアデラは続ける。
一般兵士ならいざ知らず、「王女」ならば利用価値も鰻上りだ。これは義勇軍の打算も含めた誘いである。
【アデラ : セラに亡命を勧める】
>254
会話中であったセラの搭乗機・セルフィーを後背から攻撃する者がある。
あれは同じファールデル傭兵、ディクト=シルフィスの機体だった。
「ディクト=シルフィス……王国排撃隊への配属と聞いていたが、今ではもう別の顔か」
ファールデル教国は言わば傭兵国家であり、同国人が敵同士として顔を会わせることも多い。
ただし、短期間に雇い主を変えるというケースは珍しい。様々なリスクを伴うからだ。
王国に嫌気がさしたか、それとも厄介なトラブルに巻き込まれたのか…。
「正義の精霊セイティスの子らに幸運あれ」
ファールデル教国での信仰厚い、精霊セイティス。
それは自分に向けた言葉でもあり、同郷の戦士に向けた祈りでもあった。
※名前を入れ忘れましたが、>260も私のレスです。
>259
神聖ローガンブリア帝国義勇軍。
ティルネラント王国軍。
反王国組織・円卓の騎士。
人工精霊研究所。
そして過去の研究の遺物であるアスモデウス。
様々な勢力の末端が一同に会した山岳都市アルバニアンは、まるで魔女の釜底のようである。
しかも、イグニス・フロゴーシスとムカデ型精霊機の後には、新たな王国精霊機の姿が見えた。
あのティルネラント王女の話も、あながち嘘ではなかったのかも知れない。
『 Fish in troubled waters 』
混沌に利を得よ、とアデラの使役精霊フギン=ムニンは言った。
簡単にいってくれるとは思ったが、状況の整理は有意義である。
目の前に多くの処理すべき事柄が現れたとき、まず最初に行うのは処理の順番を決めることだ。
「ドクターをやるッ」
まずはフルカス博士の操るアスモデウスの打倒。
巨大精霊機、しかも挙動が不明であるため放置は論外、危険である。
それに目の前の味方を助けずに何をするというのか。
「一か八か、あの精霊機も巻き込んでやる」
アデラは地下道に姿を現した新たな精霊機ゴーケンに話を持ちかけた。
「こちらローガンブリア義勇軍、レイヴン隊。
貴君はティルネラントの所属機だな、聞いてくれ。
目の前の大ムカデは善も悪も、帝国も王国もない、破壊の権化だ。
国境を越えた助力を求めたい。
貴国のセラ王女も戦いに巻き込まれており危険な状況だ。貴種を助くは武人の誉れであろう」
【アデラ : ゴーケンにアスモデウス攻撃依頼】
突如、地面が崩壊し、地下に叩き付けられた
「イタタタタ」
叩き付けられてコクピットの至る所にぶつけ、痛みが走る
剣を杖に機体を立て直し、土煙ではっきりとは確認出来ないがアスモデウスの方に剣を向ける
姿ははっきりと見えないのに、その禍々しい破壊衝動が暗い地下道に充満していく
フェニキアはブルブルと震え、今は頼りにならない
僕1人でこの化け物に戦わなければならないと思うと、足が震えて来た
だけど、弱気になってはいけない
彼女を守るために、このムカデ野郎を倒さなければならない
>「イグニス・フロゴーシス、聞こえるか。こちらレイヴン隊のアデラ・グラーフストレーム。
あのデカブツの弱点は体節ごとに搭載されている小型精霊炉だ。
ドーム状の炉を全て破壊して、悪魔を地獄に返してやれ!」
上から、アデラさんのアドバイスが飛ぶ
間接が弱点なのか!
「アデラさん、ありがとう!情報感謝します」
さっきは上段から切り掛かったが、その堅牢な装甲に弾かれた
なら、突きで装甲の間にさすしかない
周りの状況は激しく変わっているみたいだけど、関係ない
今は目の前の敵にだけ集中しよう
剣を中段に構え、アスモデウスの隙間に剣を突き刺す
(>259>262)
レオンのイグ二スとともに地下道に落ちるフルカス博士の大型精霊機アスモデウス。
落ちた先にはゴウケンのエンマ。フルカスは目の前に現れた巨人のような精霊機に瞠目する。
>「…随分と出来の悪い玩具を造るものだな……然し。私の前に出でたからには、只撃砕在るのみ…」
「ギャオオオン!!」ゴウケンの言葉にアスモデウスは電光の両眼を怒りで赤く発光させた。
天井の大穴から射し込む太陽光を浴びエンマの真白き装甲は眩い程の光を放っている。
対峙する3機の精霊機。地下道にはアデラからの通信が飛び交う。
内容はアスモデウスの弱点に関するもの。
すでに情報漏れしていることにフルカスは内心驚愕するものの、それは至極当然のことだった。
元々アスモデウス製作を依頼し資金提供してくれたとある小国はとっくの昔にティルネラントに敗戦している。
軍の機密データが流出していたとしてもそれはなんらおかしくもない話だった。
クライアントである小国は資源に乏しい土地柄であったため精霊機を大量配備する力はない。
そのためにフルカス博士は一個大隊に匹敵するほどの一騎当千の大型精霊機を製作することを強いられたのであったが
内密に計画を進めるためにと地下道の一角に隠れて研究していたことが仇となった。
不運な落盤事故は完成したての精霊炉と大型精霊機の青写真を残したまま研究を一旦凍結させることとなったのである。
あの事故の日。死にゆく家族の命を吸い完成した人の霊魂をエネルギーとする特殊精霊炉。
フルカスの理想主義からしてアスモデウスは無敵でなければならないのだ。
>262
「ギャオオオン!!」
アスモデウスが咆哮をあげエンマに飛びかかろうとした瞬間イグ二スの剣が背中の間接部分に突き刺さる。
装甲の関節部分の隙間から循環器系が切断されると剣が突き刺さった部分から蒸気のようなものが血のように噴き出し
レオンの操縦席の中に双子の姉妹が飛び込んできた。落盤事故で死亡されたとされるフルカス博士の双子の娘。
「殺されたの…殺されたの…あの子は殺されたの…」
双子は冷たい手の平でレオンの頬をなで上げると蒸気のように消えた。
>259
剣を背中に突き刺したままイグ二スを引きずりながらもアスモデウスはエンマに突進する。
が、いくつかの精霊炉を破壊されているために通常の突進力がうまれてない。
しかし大百足の鋼鉄の牙は堅守を誇る27番隊の前面装甲を紙くずの様に噛み砕く力は健在である。
「ギャギャギャオオーン!!」
悲鳴のようにも聞こえる咆哮を放ちアスモデウスはエンマの胸部を噛み砕かんと猪突する。
【レオン君のアグニスを背中で引きずりつつゴウケンさんのエンマに牙攻撃してます】
「びっくりさせたお仕置きっ!!」
セルフィーの左腕から機関銃が火を噴く、阿修羅は黄金に輝く大剣で受けるとそのまま大剣を空中にいるセルフィーへと投げつける。
遠距離攻撃用ではない大剣の投擲はそれほど速いものではなく簡単に躱される。
そして落ちてきた大剣を掴むとバーニアが切れ、地上に降りてきたセルフィーへと大剣を振るう。
しかし、セルフィーはまともに受けようとせずに、再び距離を取り機関銃で攻撃してくる。
「あー、めんどくせぇ、もっとガンガン戦おうぜ」
『この阿修羅を前にして接近戦を挑もうとする機体は少ないかと』
「おい、お前らも援護しろ」
ディクトに付いてきていた『円卓の騎士』のメンバー三機の精霊機がセルフィー目がけてライフルを発砲する。
火の出るような攻撃にも関わらずセルフィーは華麗にそれらを避けていく。
阿修羅はセルフィーの背後に回り込み、その背中に大剣を振るう。
これも簡単に避けられるが、避けると思われる空域を予め狙っていたライフルがセルフィーを捉える。
その攻撃ですら最低限しか当たらずに避けていた。
「上手いし、速いな、こりゃ手こずりそうだ」
『ディクト様ももっと繊細な操作をしてみてはいかがですか?』
「やかましい、お前がダイエットしたら考えてやるよ」
アスモデウスの出現で混乱しているという状況はディクトにとって幸いしていた。
殆どの兵士がアスモデウスに構っている中、ディクトとその仲間だけはセラを狙っている。
逆にディクトはアスモデウスが倒される前にセラを片付ける必要があった。
「おし、一気に潰すぞ」
阿修羅とその他三機の攻撃が一気にセルフィーへと襲いかかる。
【ディクト:アスモデウスを無視しセラに攻撃】
/装甲の関節部分の隙間から循環器系が切断されると剣が突き刺さった部分から蒸気のようなものが血のように噴き出し
「面白い…特別な機構を採用してるみたいだね…叩かせてもらうよ!」
まるで血のように、まるで脈を掻き切られたかのように、蒸気が噴き出す。
その様子を見たエルトダウンは研究者の血が騒ぐのか、目を光らせた。
/悲鳴のようにも聞こえる咆哮を放ちアスモデウスはエンマの胸部を噛み砕かんと猪突する。
"しかし気持ち悪ぃな。ムカデ野郎が…虫酸が走るぜ"
ファラーシアは少し嫌な顔をする。
エルトダウンは『DANGER』と書かれたプラスチックを拳で叩き割ると、その中のレバーを引いた。
うるさい機械音と共にホロウ・クロウラーの背部が変形する。
「久方ぶりにぶちかまそうか、ファラーシア。高出力型ブースタ…リリース」
まるで翼の様に展開したそれはただでさえ高速なホロウ・クロウラーを更に加速させる。
だが、その反面弱点もあった。小回りが利かないのだ。また、元の状態に戻すまでかなり時間がかかる。
分り易く言えば『ホロウ・クロウラー突撃型』と言ったところだろうか。
ホロウ・クロウラーはエイサーグラディウスを投げ捨てるとメカニクスランサーのみを手に持った。
『エルトダウン、無理はするな。危険だと思ったらすぐに逃げろ。それを使用した状態での損壊率のデータはこちらも確認している』
軽く応答すると、そのまま巨大ムカデに向かって突撃するエルトダウン。
横腹を突くような形。真っ直ぐ突っ込めばメカニクスランサーが刺さって動けなくなるのは先の戦いで確認済みだった。
【アスモデウスに横から攻撃】
>260>264
(時間軸少しもどってディクトさんの阿修羅との交戦前)
>「義勇軍の虜囚生活は、キミの想像しているようなフェティッシュなものではないよ」
>「そう望むなら別だがね」
「ふーん。逆にあなたが望むなら…シャンデリアになってあげてもヨークシャーテリアになってあげてもよろしくてよ」
ヨークシャーテリアも微妙にエロい表現。
(ここから戦闘開始)
空中からの機関銃攻撃も阿修羅の厚い装甲の前ではそれほど効果はなかった。兆弾が辺りに飛び交っている。
>「あー、めんどくせぇ、もっとガンガン戦おうぜ」
「苛々してるのが機体の動きに出てるみたいね。欲求不満?」
阿修羅の剣撃を次々とかわすセルフィー。並みの精霊機ならば簡単に真っ二つにされていることだろう。
セラはディクトと戦いながらもアデラの通信を聞いている。
>「キミの処遇について、もう少し善後策を協議したかったが……悠長に話をしている場合ではないようだ。
>ティルネラント第四王女殿。この際、ローガンブリアへの亡命というオプションも考慮に入れてみてはどうかな」
>この戦闘の後、キミが生きていればの話だが、とアデラは続ける。
「うーん…どうしようかなぁー…」セラは迷っていた。今の目的は第四軍の元へ生きて帰ること。
利用できるものは藁でも利用したい。自分が帰らなければ指揮権は他軍に移行されてしまい
なにかと風当たりの強いセラ直属の第四軍の兵士たちは他の将軍たちに捨て駒として扱われてしまうことだろう。
それに円卓の騎士たちの間断ない攻撃にセラはたじたじだった。華麗な回避運動で最低限しか当たらない攻撃も最低限は当たっているのだから。
「騎士たちは…よく鍛えられている…」機体をかする銃弾の振動を感じつつセラは呟く。
>「おし、一気に潰すぞ」
掛け声とともに阿修羅とその他三機の攻撃が一気にセルフィーへと襲いかかる。
セラはライトニングダガーで応戦するも阿修羅の大剣でライトニングダガーは空中に弾かれてしまった。
「くう!この機体との近接戦闘は禁物よセラ!」セラは自分を戒めつつ回避運動に集中している。
一撃必殺の破壊力を誇るライトニングアローは精神集中のために僅かな溜めを必要としているため至近距離からでは放てない。
「第13騎士のディクト=シルフィスさん。あなたを殺します」防戦一方だったセラが突然静かに言うと
セルフィーの腰の部分から照明弾が射出される。それはドルガンが地下空間で使用したものと同じもの。
その光はセラの命を奪うために居合わせた者たちの目を一時的に眩ますには充分の光量だった。
辺りの風景が光に溶けこむように包まれていくとセラは精霊炉を全開にして阿修羅との距離を開くことに成功する。
ケルン大橋の時のように超遠距離ではないためにライトニングアローはすぐに充填されいつでも発射できる状態だ。
「ディクト=シルフィスさん…あなたには壊れた聖杯と共に天に昇ることをお勧めいたしますわ」
セラは薄い笑みをたたえながらディクトの阿修羅にライトニングアローは放った。
【阿修羅にライトニングアローを放ちました】
>「こちらローガンブリア義勇軍、レイヴン隊。
貴君はティルネラントの所属機だな、聞いてくれ―――」
「……………?………」
聞こえてきた声が自分に向けられているものだと理解すると、構えたまま顔だけ上を向く。
…義勇軍からか…滅するべき悪の言葉になぞ、一々耳を傾けていられるか。
とは普段のゴウケンの対応だが、今日のゴウケンには色々と変化がある。
故にだろうか。然程嫌悪感も覚えぬままに、話くらいならば…と思ったのは。
「ふん…鴉如きめが……何故に私を武人と心得るのか」
いきなり皮肉たっぷりに言葉を返すが、相手はそれでも協力が何だなどと言っている。
正直、どうにも信じられない。元来より疑り深い性格なので尚の事なのだが、
あの巨大百足はやはりあちらの新兵器で、協力を求めて油断させたところを……という情景が浮かんで仕方ない。
確かめるのも面倒なので、ここから飛び掛ってまずあのレイヴン隊とかいうのを喰い潰そうか…
が、そうもいかなくなった。
先程百足と共に落下してきた精霊機が、百足の背を突き刺し、百足が暴れながらにこちらへと突っ込んでくる。
正面からその様を見ていると、迫力どころの話ではない。
『あぎゃーー!?何アレ気持ちわるーーーーー!!?』
『主!ここは問答している場合では…!』
「…フン……国境を越えた助力か…貴様等、何時か必ず其れを果たして見せよ。
良かろう、此の場は協力させてもらう。其の代わり…鴉、次は貴様に喰い掛かるぞ、覚えておけ」
協力する意思を示してから言葉を切り、迫り来るアスモデウスへと向き直る。
百足の巨大な牙が唸りを上げて展開され、エンマの胸部へと真直ぐ向けられた。
しかし、ゴウケンは防御の姿勢を見せずに、ただ「空」の構えを取り続け、
ひたすらに巨大な鋭い牙を見つめ続けていた。
「……………ッ……………」
衝撃。遂にアスモデウスの牙が、無防備なままのエンマの胸部装甲に突き立てられた。
殴り合いで推し負けぬ為にエンマの装甲は並みの精霊機よりかは遥かに頑丈だが、それでもこの一撃には流石に耐えかねるらしい。
牙がグイグイと装甲に埋められていき、オイルよりも赤みの強い「何か」が少しづつ流れ出る。
ミシミシと軋むような嫌な音がコクピットに響き渡り、
心なしか壁が狭くなってきているような気もする。
このままではエンマの上半身と下半身はお別れをしなくてはいけないし、
何より乗っているゴウケンもこの世界に二度目の別れを告げなくてはならない。
『おいこらー!寝てんのかー!?このじょーきょーで寝とるのかキサマー!!』
『ぐ……装甲の維持が…!限界値ギリギリ…です……!!』
「―――――――――――――――」
ヴェーゼルとゼクシスの慌てふためく声を聞いているゴウケンは、少し悲しそうな、深く長い溜息をついた。
瞬きしているのだろうか?いつも薄紅く光っている眼光が点滅している。
だがそれも、ほんの一瞬のこと。
「成る程……貴様も又…秩序無き闘争の犠牲者で在ったか………ふん!!」
バキン!と音を立て、大胸筋の様な形をした胸部装甲が、まるで力を込めた筋肉の如く盛り上がる形で展開された。
これによって、突き刺さっていた牙を押し広げる。
すると待っていたかのように、腕の爪が生えた装甲がスライドして拳を覆う。
「斯様に謂い様の無い感情を、私が覚えるとは………
然し……貴様も又、その無秩序な争いの火種と成り得る事も事実。
せめて蒼き焔と共に…安らかに天へと昇るが良い!!」
『はぁあああああああああ……!!!』
力を込めると、腕部装甲の各所から青炎が噴出し両腕を包む。
轟々と蒼く燃えるエンマの腕は、さながら口を開けた龍の如き凄まじい様子になっていた。
そして今、裁きを渡して罪を滅する“閻魔”が、その拳を振りかぶる。
「咬………!!!」
燃え盛る龍の牙は、アスモデウスの両目に叩き付けられて、より一層激しく燃え上がった。
【ゴウケン、アスモデウスに噛まれたまま顔面破壊を試みる】
フルカスは好きだった。
装甲の向こう側にいる兵士たちの肉袋を噛み潰す感触がたまらなく好きだった。
潰された人間は死への恐怖から解放され操縦席に残るものはただの肉塊。
有機物が無機物へと限りなく近くなり一体化するような感覚。それは何ものにも変えがたい。
アスモデウスの牙によってエンマの胸部装甲がミシミシと音をたてる。
>「斯様に謂い様の無い感情を、私が覚えるとは………
>然し……貴様も又、その無秩序な争いの火種と成り得る事も事実。
>せめて蒼き焔と共に…安らかに天へと昇るが良い!!」
「無秩序な争いは永遠につづくじゃ…。和平さえも永遠に争い続けるための糧となろう。
それならば滅びるまで争い続け、人はこの世から消えてなくなるべきなのじゃよ。
精霊機が生まれた時代から世界は変わってしまった。今では大精霊さえも戦争の道具と成り下がっておる始末。
大精霊たちの戦争への介入は自然界のバランスを大きくくずすことになるじゃろう。
私が天に還る時はこの世からすべての精霊機が消えてなくなった時なのじゃ」
ガシャンッ!!金属が潰れる音が地下道にこだまする。
エンマの『咬』
轟々と蒼く燃えるエンマの拳がアスモデウスの頭部装甲を破壊して突き刺さり
大百足の牙は咬む力を失った。
と同時に突如強襲してきたエルトダウンのホロウ・クロウラーによって
アスモデウスの横腹にメカニクスランサーも突き刺さる。
それはケルテ・マリーネの盾させもいとも簡単に貫く槍。旧式の精霊機に成す術はない。
「む…汎用性の高い人型精霊機のほうが一枚上手じゃったか…」
アスデモウスは口からエクトプラズムのような白い粘液を吐き出してエンマを自機と密着させる。
すると大百足の背中にひっついているレオンのイグ二スの操縦席に再び双子の姉妹が現れた。
「逃げて…逃げて…」少女たちはささやく。
「くくく…この歳でも…ひとりはさみしくてな…共に地獄へいこうぞ…」
フルカスが最期の言葉を言い残すと大型精霊機アスモデウスは爆裂した。
大爆発に大地が揺らめく。
−−−遠い昔。地下研究室。大事故で瀕死のフルカス一家。フルカスは家族の魂が天に昇ることを
許さずに特殊精霊炉の完成に利用した。科学者としての理想主義は家族の死さえも凌駕したのだった。
臨月の妻は最期に子を産み落とすと「この子を…守ってあげてね…」とフルカス博士にいい残して絶命する。
出産と落盤事故で絶命した妻と双子の娘の魂の炎を吸い完成しつつある特殊精霊炉。だがもう一歩、出力が足らない。
「あと一つ魂があれば精霊炉は完全に燃焼を始める!」フルカスは生れ落ちたばかりの我が子見つめると
その細い首に手をかける。特殊精霊炉は生まれて間もない赤ん坊の命をもってして完成としたのだった。
フルカスは死んだ我が子を抱きながらも精霊炉の完成を狂喜乱舞しており、傍らの瞬きすることもない妻の死体の目からは涙が流れていた。
爆発後の大地はゆらゆらと陽炎を産む。幻覚か…。アデラ率いるレイヴン隊の何人かが空に飛んでいく赤ん坊を抱いた美しい女性と双子の姉妹を目撃した。
あと、これは後日談になるのだが地震が起きた夜は地下道の奥から狂ったような老人の笑い声が今も聞こえてくるらしい。
【アスモデウス:大爆発】
>255-256
>「流れのアイドルヨハンナです♪これからもよろしくね☆
今日はかわいいエイリアンをやっつけにきたの〜♯」
機体の装飾とその自己紹介から、ヨハンナという少女の素性について、どこかの成金の娘なのだろうと見当をつける。
兵士B「!!リ、リーダー、この子ジョングレーリン(楽師)のマイスター免許持ってますよ!」
兵士A「は!?(いや、どう考えてもそこのちっこいガキがマイスター免許なんて持ってるわけないだろ)」
兵士B「しかも保証人、シュトロウス侯になってます」
だが、その予想は見事に裏切られた。
>兵士Aは怪訝そうな声でフィリップの素生を問うたが、
その答えが耳に入るや否や機体から降り、地に頭をつけて詫びた。
兵士A「領主様のご令息とは露知らず、ご無礼を申しましたッ!」
(ティルネラントは身分序列が厳しいと聞いていたが、これほどとは思わなかった)
ただ、ここまでへりくだった対応をされるとフィリップとしても悪い気はしない。
「任務御苦労、誘導感謝する。貴官らに武運があらんことを」
「ヨハンナ殿、貴女のような方は戦場に向かわれるべきではない。
貴女の歌は殺伐とした戦場よりも、穏やかな街の方が似合うだろうから」
調子に乗ったフィリップは、ヨハンナに向かってこんな気障なセリフを放ったのち、戦場へと向かって飛び立つのであった。
ネージュ「ついに幼女まで口説くようになったか、このロリコンめ」
精霊のつぶやきは、機嫌よく精霊機を操る主には届かなかった。
【フィリップ、ヨハンナに戦場からの離脱を勧める】
【フィリップ、戦場に接近】
「ディクト=シルフィスさん…あなたには壊れた聖杯と共に天に昇ることをお勧めいたしますわ」
思わず不意を突かれ、セルフィーのライトニングアローの充填をされてしまい、その光る矢が阿修羅目がけて撃ち出される。
あまり距離が離れていないため、矢が阿修羅へと到達するまでの時間はそう長くない。
「ちょっ、避けられねぇぞ。
お前ら!俺のことは良いから打った直後のセルフィーへ攻撃しろ」
『万事休す、ですか』
ライトニングアローを放ち隙が出来たセルフィーをいくつもの弾丸が貫く。
そして、阿修羅は回避行動を取ろうとするが既に矢は目の前直撃は避けられない。
と、次の瞬間。
先ほどまで暴れ回っていたアスモデウスがエンマによって破壊され、大きな爆発を起こす。
爆発は凄まじく、そこまで近くには居なかった阿修羅まで爆風に巻き込まれる。
だが、そのおかげで阿修羅はライトニングアローの直撃を避けることが出来た。
「何とか直撃はしなかったがかすったな」
『もの凄い威力ですね』
直撃こそ避けた阿修羅ではあったが機体へのダメージは大きく、満足に戦える状態では無くなった。
「無理するな、って言われたしな」
ディクトは出撃する前、ヴァレリアにセラは政治には殆ど関わっていないから無理してまで仕留める必要は無いと言われたことを思い出す。
阿修羅はアスモデウス爆破で巻き起こった砂塵が漂っている間に大剣で地盤を崩し、密かに地下道を使い戦場から去っていった。
【ディクト:戦場から離脱】
>「ちょっ、避けられねぇぞ。
>お前ら!俺のことは良いから打った直後のセルフィーへ攻撃しろ」
「え!?」
騎士たちは回避行動に入らずにセルフィーにライフル射撃を敢行してきた。
ライトニングアローの射線上にいる機体は阿修羅のみ。
残りの騎士たちは直撃を受けないまでも必殺兵器の威力でほんの少し装甲を溶解させるにとどまっている。
ボゴン!!
騎士のライフルの弾丸がセルフィーの左腕の機関銃の弾そうを貫通し誘爆をひきおこす。
「いたいっ…う…腕が!」
セラは自分の腕をもがれたような錯覚に一瞬おちいる。
隙をつかれたために次々と機体を貫通していく騎士たちの弾丸。
機体の脚を貫き腹部を貫く。弾丸は操縦席のセラの足元スレスレを貫通していた。
「くっ…」蜂の巣にされていくセルフィーは機体のバランスを崩して地面に倒潰する。
セラが死を覚悟した次の瞬間。大地を轟かす大爆発が起こった。アスモデウスが爆発したのだ。
地盤が崩れて騎士たちは大地に飲み込まれていく。
「こんな私にでも神の御加護はあるみたい」
その隙に乗じてセラはセルフィーを捨てて異界の光の精霊ウィル・オ・ウィスプとともに近くの小屋に逃げ込んだ。
騎士たちは崩れ落ちる地面からバーニアで脱出するとセルフィーの爆発を目撃することとなった。
「これで騎士たちも、しばらくは私の命を狙ってこなくなるわね…たぶんね…。あとはここからどうやって脱出するかが問題…」
精霊ウィル・オ・ウィスプこと「ウィー」は洞のような目でセラを見つめている。
「ごめんね…あなたのお家(セルフィー)壊しちゃった。ウィーは8歳ほどの少女の姿をしている精霊。
『……』黙りこくってセラを見つめているだけだった。声は誰も聞いたことがない。
「…えへへ(こわい…この子…)」無口な光の精霊にセラは笑顔でごまかした。
「鉱山がここでしょ。空から見てた感じだとメインストリートの向こう側に精霊機のハンガーはあったから
精霊機を奪って逃げることもできそうね…」
『……』
「ねー?」
【セルフィー大破。セラ:メインストリート外れの精霊機整備工場へむかう】
>269
> 【アスモデウス:大爆発】
『 The Demon down 』
闇の精霊フギン=ムニンが呟くと、直後、大型精霊機アスモデウスは爆散した。
ローガンブリア義勇軍、ティルネラント王国軍、そしてASL(人工精霊研究所)。
それぞれ異なる勢力による総攻撃の結果、大ムカデは地獄へと還った。
「50年前であれば、蹴散らされていたかもしれない。
だが我々は進歩した。
時間があなたの技術を陳腐なものにしたのだ、ドクター」
さようなら、狂気の犠牲者たち。
霊体フルカスとの接触により、大まかな事情を共感したアデラは思った。
そして、遠く天へ上る儚い影を見ながら、彼らの平静と安寧を祈る。
「過去の悪夢は消え去った。 あとは残った今をどうにかしなければな」
アデラは搭乗機コルバス・コラックスの右腕に装備されたバリスタ(大きな石弓)にクォレル(太矢)を装填する。
次に考えるべきは、この鏃を一体どこに放つかであった。
>271 【ディクト:戦場から離脱】
>272 【セルフィー大破。セラ:メインストリート外れの精霊機整備工場へむかう】
ティルネラント王国王女とそれを狙う反政府組織「円卓の騎士」の顛末はどうなったのであろうか。
アデラはアスモデウスの巻き起こした粉塵により視界が悪い中、しかし、精霊機セルフィーの爆発炎上を目撃した。
「あれでは操手が生きているどころか、まともな死体もあがらないだろうな……。
まだ若いようだったが、これも戦争、避けられない運命か」
周囲を見渡したが、円卓の連中の姿もない。
第四王女の暗殺完了として撤退したのか、あるいはアスモデウスの爆発に巻き込まれたのか。
気になるところではあったが、近々において、彼らが義勇軍に直接被害をもたらす事はないだろう。
特に、反政府組織はロンデニオン攻略において利用価値があるとさえ考えられた。
【アデラ : セルフィーの爆発を確認】
【アデラ : ディクトと円卓の騎士を追わず】
>265 エルトダウン
>268 ゴウケン
それより気掛かりなのは、ASLとティルネラントの機体の去就である。
彼らは戦闘後の地下道にて、味方のイグニスを含めてある種の三すくみを形成していた。
無差別攻撃に定評のあるASLは言うに及ばず、ティルネラント機についてはさらなる増援の可能性も捨てきれない。
今は戦場より姿を消したティルネラント第四王女の言もある。
アデラは「ティルネラントよりの増援なし」と喝破したが、事実、敵機体が1機姿を現しているではないか。
最悪の可能性を視野に入れて動くべきである、とアデラは結論づけた。
「こちらレイヴン隊のレイヴン1だ。
B-7地点にティルネラントとASLの機体を確認。
地下道の存在はすでに露見しているかもしれない。迎撃部隊は至急来られたし」
さらに続けて、地下道に集うデーモンスレイヤー3機に声を張上げた。
多分この戦局の中で、一番濃密な箇所にいる者たちに向けて。
「レオン、聞こえるか! 付近に敵機が2機だ。警戒せよ。
なに、もうすぐ迎撃部隊が到着する、心配するな!」
これには、味方義勇軍の増援を示唆することで、敵機の逃走を促す意図も含まれていた。
アスモデウスを倒した3機は、いずれも各勢力精鋭機であることは疑いがない。
現状で彼らを敵に回し、こちらの戦力を無駄に消耗したくはなかった。
またティルネラント機に至っては、こちらから共闘の申し出をしたこともあり、
このまま恩を仇で返すのはバツが悪い。
大型精霊機・アスモデウス爆発の影響で砂塵が舞い上がり視界がきかない。
アデラ自身も周囲に気を配りながら、天井にぽっかりと穴があいた地下道に向けてバリスタを構えている。
【アデラ : 地下道の戦局を警戒】
【アデラ : 義勇軍に援軍要請】
【アデラ : レオンに警戒するよう伝達】
それは予想外の展開だった。
巨大ムカデの装甲に突き刺さると思われたメカニクスランサーが高出力ブースタの推進によって貫通してしまっていたのだ。
巨大ムカデを貫いたホロウ・クロウラー。その直後に後方から大きな爆発音が聞こえた。
「この爆発は私達のせいじゃないね。おそらく…自爆か。刺さってたら今頃あの世だね」
その間に高出力ブースタを元に戻す。
だが、あまりぐずぐずはしてられなかった。
周囲は戦場。一般兵は今の大爆発で萎縮するだろうが、一部のパイロットは動じない。
『エルトダウン、大丈夫か!?気をつけろ、周りは敵だらけだぞ!』
サイアニスの言うとおりだった。
ブースタが元に戻ると再び移動を始めた。
一部大爆発に巻き込まれた機体があったのだろう。残骸が落ちている。
"おいおいおい!!エルトダウン、近くにでっけー穴があるぜ!どうやら…ロンデニオンに通じてるみたいだぜ?"
「へぇ〜いいね、行ってみようか」
そうしてホロウ・クロウラーは洞穴の中へと突っ込んでいくのだった。
陸戦機を駆る兵士についてくヨハンナだけど、その気分はイマイチよくなくって
「ねぇパティ、なんでそこのおじさんたち地にはいつくばってるの?
とべる子つかえばいいのに。バカなの?サタンなの?」
『あのねヨハンナちゃん、フツーの航空精霊機っていうのは、
操縦するのにそれなりの技術が要るんだよ。角度とか。
それにフォーメーションを組んで飛んでたら敵方にバレバレでしょ』
「せっかくティアラちゃんにのってるのに、
みえるケシキがいつもといっしょなんてつまんない〜!
このままじゃヨハンナのジュミョーがストレスでマッハなんだけど」
>270 フィリップ 【フィリップ、ヨハンナに戦場からの離脱を勧める】
>「ヨハンナ殿、貴女のような方は戦場に向かわれるべきではない。
>貴女の歌は殺伐とした戦場よりも、穏やかな街の方が似合うだろうから」
渡りに船、という訳でもないけど、ヨハンナはもう我慢の限界。
「ヨハンナぁー、やっぱりコワくなっちゃいましたぁ;;ごめんね〜b
今日のプログラムはここでおしまいデス;またあおうねっ☆」
そう言うと、ヨハンナもヨハンナで一端ロンデニオン市部へと戻って。
兵士B「なんだったんだ一体…。公達(=フィリップ)は公達で先に行っちゃうし」
兵士A「邪魔者が消えて丁度いいじゃないか。
ふう、やっといつも通りの仕事ができるぜ」
*
『戻ってどうするのさ?』
「ちょっとヘータイさんたちを巻くヒツヨーがあったの!
ヒジョージタイのロンデニオンからヌケガケするにはこれしかないから」
『どゆこと?』
「だから!イッキに上にのぼってサクテキのきかないところまで行くの。
パティ、ティアラちゃんをロケットでつきぬけさせて!」
『でも、ヨハンナちゃん一人でどーにかこーにかできる話じゃないよ』
「うー、とにかくなせばなるはず。サクシサクにおぼれるんじゃただの金糸雀だよ。
ニジを見上げるかなしきカナリア、もう飛べばいいんだ!」
「メタフィジ・ポスタル・シリアルキリングっ!」
止めても無駄だろうな…と思ったハウリンティウスは、飛翔魔法の詠唱を始めた。
『イタミヲシラナイコドモハキライココロヲウシナッタオトナハキライヤサシイマンガガ
スキバイバイ――ライブライカロケット!』
「行くよおおおおおおお!乙女@国士無双十三面待ち<<プリンセスライジングサン>>!」
ふわふわと浮いていたティアリア・ドラウパディーはゆっくりと…そう、
ほんの少しずつ上昇するけれど…ある一点で光の如く舞い上がり、高く高く消えた!
「こ…このくらい高く飛んだらだいじょ…ぶ…かな…」
『色々混ざりすぎて、元々が何だったかてんで分からなくなってきてるね…
?ヨハンナちゃん?大丈夫!?』
「ちょっと…高く…飛びすぎちゃ…た…かも…イキが…はぁ…くる…しい…っ…」
【フィリップの離脱勧奨を言い訳にして市部に戻り、王国軍の索敵範囲外まで急上昇】
「之しき程度で……私は倒れん………!」
アスモデウスの自爆跡、黒々と上がる爆煙を手刀で切り裂いて、
修羅が如き闘気を放つエンマが再び陽光を浴びる。
純白だった装甲は熱に滾って赤熱化を起こしており、今は真っ赤に染まっている。
全身が赤くなった以外には特に融解などは起きていない。
元より耐熱性に優れた装甲であったことと、爆発の直前に蒼炎で全身を覆ったことで、
熱によるダメージはほぼ無しに等しい。
ただ、アスモデウスに噛まれた胸部装甲が爆風の衝撃で少し脆くなっている様だが…
『流石に零距離とあっては……私もカバーしきれませんでした、面目無い…』
「…ふん…謂って呉れる…貴様にしては良く遣ったと謂った所か。気に掛けるな」
其れよりも。ゴウケンは周囲をグルリと見回す。
上にはこちらに対し武器を構えるレイヴン隊。
自分の立つ地下道には、同じく爆発に巻き込まれたであろうレオン。
煙やら何やらで視界が悪いので確認は出来ないが、恐らくはまだこの地下道に落ちているはずだ。
『は…は〜らほろひれはれ〜………』
………ゼクシスが動ければ、確実に周囲が把握出来たであろうが…
近距離での大爆発に目が眩んだのか、クルクルと踊るように回っている。
まぁ、ヴェーゼルが居れば戦闘に何ら支障はないので放って置く。
「闘争が在り、悪が在るのならば、順序などは意味を成さん」
敵なら何でも良い。「空」の構えを取ると、拳をコルバス・コラックスに向けて青い火球を連射する。
エンマ唯一の遠距離攻撃「焔戒」。発射の際には一々その方向に向けて拳を振り抜かなくてはならないので、命中精度は決して高くないが、
牽制として撃ちまくっているので命中しなくても問題ない。
「馴れ合いは此処まで……我は一撃の拳にて、全ての罪を薙倒し、“悪”を滅する」
焔戒を撃ち終え、再び素早く構えて右手を虚空に突き出すと、
蒼炎が集まり、長大な“太刀”の形に固定されエンマがそれを振り翳す。
「忌光」は鈍く光り輝き、その揺らめく切っ先には敵機がしかと捉えられている。
太刀を構えたエンマの眼光が、不気味にニヤリと細められ、闘志とも殺気とも取れぬ狂気じみた気配を放つ。
そして、紅蓮に染まった真紅の精霊機は、高らかに吼えた。
「我が名はゴウケン……いざ、推して参る!!!!」
【ゴウケン、アデラに対して攻撃開始】
元倉庫の仮設精霊機整備工場はてんやわんやの大騒ぎ。
「なんだなんだありゃなんだ!?」若い精霊技師は叫んでいる。
視線の先にはメインストリートを走行してくる蒸気機関の自律式貨物車が一台。
運転しているのは短髪の若い娘だった。貨物車は倉庫の前に停車する。
「アーウィンさんいるかぁ?」短髪の女が貨物車の窓から顔をだして叫んでいた。
「わかんねーよ!自分で探してくれ!こっちも忙しくて手が離せねーんだ!
もう壊れた精霊機なんてもってくんじゃねーよ!」
「何言ってんのよ!修理するのが技師の仕事でしょ!こっちだって不眠不休で運搬してやってんのに!」
−−セラは貨物車のすぐ隣で技師と運び屋のやり取りを聞いていた。
荷台にはイグ二スとそっくりの機体が横たわっている。どこからもって来たのだろうか。
外装甲はほとんど破壊されており機体の溝に詰まった土からは草が生えている。
まるでどこからか掘り出して来たかのようだった。
若い技師は運び屋に言う「倉庫にはもう入れねーからここで待っててくれ!」
技師のつっけんどんな言い方に運び屋の短髪娘、チャコナは怒って返す。
「義勇軍が大変だからって聞いて遠路遥々運んで来てやってんのになんなのその言い草!!」
チャコナは運転席から飛び降りると技師の前に仁王立ち。その体からは女の匂いがした。
体も洗わずほとんど不眠不休で来たから、むせ返るような命の匂いが技師の鼻につく。
義勇軍のために本当に不眠不休で駆けつけてくれたのだろう。
運び屋の若い娘は口は悪いが健気ながんばりやさんなのだということは技師も感じとれていた。
「これはなんですか?」セラは会話に割り込んだ。
「精霊機さ。見りゃわかんだろ?悪いけど詳しくは言えないよ」腕組みをしてチャコナはセラに言う。
「ずいぶん古い精霊機みたいですけど名画のように古臭ささは感じませんわね。
むしろ時代を超越したような新しささえも感じます…」
そう言うとひらりと荷台に飛び乗るセラ。操縦席の扉は開いていた。ウィーがこっそり開けていたのだ。
「ちょっとあんた!!」チャコナは短銃を向けるとセラに発砲する。
セラの肩を銃弾がかする。機体の上で王女は臆することなくチャコナを見下していた。
「この機体は頂戴いたします…」
セラは指にはめている指輪をチャコナに一つ放り投げるとその体を華麗に精霊機の中に潜り込ませる。
古びた機体に光の精霊ウィル・オ・ウィスプが宿ると精霊機は土を払い落としながら立ち上がった。
「この精霊機生きてたのかよ!?」若い技師は工具を持ったまま立ちすくんでいる。
神聖ローガンブリア帝国から義勇軍へ対しての申し訳程度の支援であるイグ二スとの同型機は
セラによって強奪されてしまった。
メインストリートを闊歩するセラの搭乗した謎の精霊機。
「王国に帰還したら改修してこの子の名前はセルフィー2にでもしようかな?
この子の装甲を最新式に改修できれば旧セルフィーよりも強い子になれると思うんだけど。ね?」
『……』ウィーは相変わらず無口。
「こちら精霊機整備工場!義勇軍本部へ!精霊機が一機強奪された!
盗難機はメインストリートをロンデニオン方面へと逃走中!至急迎撃に移られたし!繰り返す…」
「ぴーぴー五月蝿いわね。義勇軍の虫けらさんたち。やっぱりここは地下道を使って逃げるしかないみたい…」
セラはセルフィー2(仮)を地下道の入り口へ走らせる。そこではゴウケンとアデラの戦闘が始まろうとしていた。
【セラ:イグ二スと酷似している謎の精霊機を強奪し再び地下道入り口へと向かう】
(上の文はほとんど遊びになっています)
アスモデウスに引きずられ、洞窟のそこかしこにぶつかり、再び衝撃がはしる
フェニキアが頼りにならない今、彼女の力で使える武器の大半が使用出来ない
今は剣を放す訳にはいかなかった
「耐えろ!今は耐えろ!」
衝撃に耐えているときに、コクピット内の温度が下がるようなきがした
>「殺されたの…殺されたの…あの子は殺されたの…」
双子は冷たい手の平でレオンの頬をなで上げると蒸気のように消えた。
僕は何が起きたのかわからなかった
二人の子供が僕の頬に触れたきがしたけど、全く感触というものはなかった
「……!!!!!!」
はじめて見た
幽霊だ
混乱して、状況を飲み込めないでいると……
>すると大百足の背中にひっついているレオンのイグ二スの操縦席に再び双子の姉妹が現れた。
「逃げて…逃げて…」少女たちはささやく。
その声と同時に剣が抜けた
少女の声に体が動かされたかのように、全力で機体からはなれる
その直後に起きる爆発、爆風がイグニスを包み、機体が壁に叩き付けられる
バラバラになったアスモデウスに僕は少女達の幻影をみた
「ありがとう」
その言葉が自然と口からこぼれていた
>>「レオン、聞こえるか! 付近に敵機が2機だ。警戒せよ。
なに、もうすぐ迎撃部隊が到着する、心配するな!」
「わ、わかりました。ちょっと体と頭をぶつけすぎたようです
頭がボーっとするので少し下がらせてもらいます」
【洞窟から抜け出し、穴のそばに待機する】
−−ロンデニオン−−
ロンデニオン市内を警備する王国兵士たちの間では奇妙な噂が流れていた。
兵士A「アルバニアンとここロンデニオンは地下道でつながっているんだってさ」
兵士B「嘘つけ!」
兵士A「ほんとうだってば!いま第四軍がこの街のどこかにある入り口を血眼になって探し回っているって話だ」
兵士B「へー。だったら何故オレたちには探索命令がおりないんだろう?」
兵士A「あのな…それはだな…。誰にも言うなよ。クローディアス様と第四軍のドルガン翁の仲が悪いからだ」
兵士B「そうなのかよ…それは知らなかったなぁ…」
兵士A「クローディアス様はドルガン翁に借りをつくるのがイヤなのだ。それに山羊を持っているという自負心がある。
義勇軍が地から沸いて来ようが天から降って来ようが蹴散らす御積もりなのだろう」
−−アルバニアン−−
セラが義勇軍の新戦力である精霊機を強奪するのにはそれほどの時間はかからなかった。
ウィーは新築の家の間取りを調べるかのように機体の水晶データに潜りこんでは、あっちこっちの機能を試す。
光の剣や光の翼。ウィル・オ・ウィスプは光の精霊であるから基本的にはイグ二スの光バージョンになるらしい。
「これは掘り出し物ね」ウィーから送られてくる水晶データにセラはほくそ笑む。
地下道入り口付近に到着するセルフィー弐。爆発での影響は穴が異様に大きくなったことぐらい。
アデラの言葉から察するにこの地下道はロンデニオンと繋がっている。
理由はかまをかけたつもりのセリフが成立したから。
穴の入り口にはレオンのイグ二スが待機していた。シルエットが似ている。製作者が同一人物か。はたまたレプリカか。
「ちょっと!そこ通してくれない?死にたくないでしょ?」
光の剣を片手にイグ二スへと歩いていくセルフィー弐。レオンは爆発の衝撃で頭がボーっとしているらしい。
セラはそのなんとなく拙い動きに気づく。
「なよなよしてへなへなしてて情けないわねー。私が見逃してあげるからあなたのほうが引きなさいよ」
それはメス猫がオス猫に猫パンチをするが如くレオンに投げつけられた暴言だった。
【セラは義勇軍からイグ二スとの同型機を強奪してきました。そして地下道を使い逃走を図ろうとしています】
洞窟の外に出て、機体をしゃがませる
洞窟で戦ったためか、なんだか息苦しくなった
コクピットハッチを開き、大きく息を吸い込む、肺は大量の新鮮な空気に充たされ、体中に酸素を巡らせた
脳にも新鮮な酸素が供給され、気分がすっきりとして来る
「ふぅ〜まだ少し頭がぼーっとするよ」
「大丈夫ですか?気持ち悪いってことはないですよね?頭を強く打ったりとかは・・・・・・」
「心配ないよ。それより、フェニキアの方が心配だよ
もう怖くはないの?」
「ええ、レオン様のご活動でもうすっかり大丈夫です」
「僕はなにもしてないよ〜引きずられていただけだ」
「いえいえ、レオン様のあの一撃が大きなよういn・・・・・・!」
また今回も、フェニキアは話の途中で敵の気配を感じたみたいだ
「この気配は・・・・・・ティルネラントの王女!!」
セラ姫の気配を感じたすぐ後に、彼女は姿をあらわしたのだ
それも、とびっきりに驚きを伴ってだ
「イグニスの同型機!」
あるというのは聞いていたが、実際に見るのは初めてだ
帝国の精霊機をなぜ王女が乗っているのか、謎はあるが、いまはどうでもいい
明確な敵意を持って姿を立ち塞がる
そして、投げ付けられる暴言に僕は彼女のイメージを大きく変えなければならなかった
「セラ皇女殿下とはいえ、その言い草は見逃すことはできません
この剣であなたの前に立ち塞がります」
暴言に怒りではなく驚きが多きく、割りと冷静に彼女と戦えそうだ
【レオン:セラと戦いを決意する】
>「セラ皇女殿下とはいえ、その言い草は見逃すことはできません
>この剣であなたの前に立ち塞がります」
「…きみ。私と会うのはこれで二度めだよね?これが合縁奇縁とういうものなのかしら…」
セルフィーと(セルフィー2とか弐だとめんどい)イグ二スは見つめ合ったまま対峙している。
「それも同じ機体。運命の出会い?そのわりに私の胸はぜんぜん高鳴らないよ。
少しはどきどきさせてくれない?ぼく」
セラの機体は背中に光をまとっていた。炎の翼ならぬ光の翼。
その場でセルフィーは何度か羽ばたいて見せるとイグ二スに向かって突然低空飛行を敢行する。
しかし激突する瞬間、光だけを残してレオンの視界から消えるセルフィー。
レオンの目に焼きついているのは光の残像のみだった。
「どこを見ているの?こっち…こっちよ」セルフィーはイグ二スの真後ろにいた。
セルフィーの光の翼は機体にとんでもない推進力を与えているらしい。
ガクン!!イグ二スの膝の後ろを蹴り飛ばして転ばすセルフィー。
「くす…おかしいね」
転んだイグ二スの頭をセルフィーは足で踏みつけイグ二スの顔面を地面に押し付けている。
「セラね…もっとどきどきさせてほしいの…
あなたには運命の人になって欲しかったりして…」
レオンで遊ぶセラであった。
【地下道入り口前でイグ二スを地面に転ばして頭を踏みつけているセルフィー】
〜前回のハイライト〜
天空のカナリア・ヨハンナ、ロケットでつきぬける!楽してズルしていただきかしら…!?
「ブンマツは…!?で…しめるのが…ホワイト…スプリング系オトメ…の…タシナ…ミ…!」
『ヨハンナちゃん、今しゃべっちゃダメだ!しかもそんなくだらないことで』
今ティアラちゃんのいる空は高くて空気が少なくて、体力のないヨハンナはもう…息が…
「パティ…かなしいカオしないで…だって…セツメーショにも書いてあったでしょ…?
1週目はぜったいバッドエンド、レンアイは2週目からチートでって」
『…いつまで芝居打ってるのさ。もう苦しくないでしょ』
「あ、ホントだ。…そっか、おひさまのちかくまでとんだからチカラが目覚めたんだね!
今日から新番組・魔法騎士<<マジックナイト>>ヨハンナRXかー♪」
『違うよ、単に空気のあるところまで落ちただけ』
「もうちょっとシンパイしてくれたっていいじゃない…
うゆ、なんかくーきが足りなかったからアタマいたいかも」
『仕方ないな。なら、こうしてあげる』
ヨハンナの小さな額に、ハウリンティウスはそっと背中をのせてくれて。
「なまあたたかいーい。…でも、いたくなくなったかも」
『ところで、もうすぐ終点だよ。落ちるよ!』
そう…ティアリアは今、およそ9.8メートル毎秒毎秒の加速度を保って、
母なる大地へと猛進している…!
「なんでそれをはやくいわないのー!?ティアラちゃん、逆噴射!バリアー全開っ!!」
ティアリア・ドラウパディーは遙か上天より翡翠の流星と化して空を落ち、
アルバニアン付近の草原に着くと…
烈々たる轟音とともに砂塵を巻き上げ、跡には半径30m程のクレーターができた。
「ショックアブソーバーが優秀なのはいいけど、
こうもなにもないと、いきてるのかしんでるのかわからないね…」
『小石のせいで精霊機甲冑に細かいキズがついてるけど、
そのほかは特に異常はないよ、ヨハンナちゃん』
「さすがは紳士淑女のスポーツにもたえうるオートクチュール精霊機だね。
アハトアハトどころかフンデルトアハトが直撃してもだいじょーぶ」
『飛んでくるのがウェイブボールならね…』
「乙女@清一三暗刻ドラ4<<プリンセスオペレーションメテオ>>のはじまりはじまり〜!
…ただし、おりたのは星の王子さまじゃなくて星の王女さまだけどね♪」
『ムダヅモはもういいよ。それと星の王女さまはヨハンナちゃんにはまだなれない』
「宇宙意識にめざめたりしないもん!」
と、そこへ出撃準備中だった義勇軍の精霊機隊がやってきて…!?
「ははーん、さっそくヨハンナのファンのおでましね。
ほら見なさい、全大陸1000万人のサイレントファンはホントにいたじゃない」
そのうちの一機が、なにか”酒樽のようなもの”を切り離した。
続いて、他の機体も次々とその”酒樽のようなもの”を捨てていく。
「なにかな、これ。もしかして、あたらしいオタ芸…?」
ハウリンティウスにはその”酒樽のようなもの”が何か見当がついている…つまり…
『(これは…増槽…!)ヨハンナちゃん、気をつけ』
次の瞬間、ハウリンティウスは判断を誤ったことに気づいた。
身の危険を感じたヨハンナは、即刻そして全速力でティアリアを退かせて逃走を図った!
義勇軍一般兵「そこの不審機!止まりなさい!」
「イヤだ!止まれっていって止まるバカがいるもんかーっ!」
ここは大人しくしておくというのも手、とハウリンティウスは思ったけど、後の祭りだ。
義勇軍一般兵「止まれ!止まらないと撃つぞ!」
ティアリアの方へ、しかしティアリアからは大きく外れて、鉄の羽羽矢が空を切る。
「ちょっと、どこのセカイにアイドルへむかって
サイリウムをなげつげるバカがいるのー!しかもあたってないし!へたっぴ!」
警告目的なので、ワザと外されてるんだけど。
「ちがうよね!ちがう!たたかっちゃいけないんだよぉ、ボクたちは〜!」
*
何分間くらい駆けたろう…ヨハンナたちの前方には切り立った崖のようなものが見える。
「これくらいにげればだいじょぶかな…」
やっとの思いで義勇軍を巻いた(義勇軍だっていつまでも鬼ごっこをしていられるほど
ヒマではないのだ!)ヨハンナは、ふぅと胸をなで下ろすと、誰もいない後ろを向いて。
「あっかん、べー!はやくヨハンナをころばしにいらっしゃ〜い♪」
『ヨハンナちゃん、前!前見て!』
>200 セラ「なよなよしてへなへなしてて情けないわねー。私が見逃してあげるからあなたのほうが引きなさいよ」
ヨハンナが再び前を向くと…なんと、セラ機とレオン機がすぐ目の前に迫っていた!
「こんな、おハナシの中の「てんこーせー」みたいのってナシでしょー!どいてーっ!」
ごぅんっ☆
ティアリア・ドラウパディーはセルフィー弐に勢いよく突っこんだ!
しかもその勢いはセルフィーにぶつかったくらいでは収まらない。
ティアリアか、あるいはティアリアに当てられたセルフィー弐が
レオンのイグニス・フロゴーシスと玉突き衝突するかもしれなくて…!?
【上空よりアルバニアン付近に落下。義勇軍を巻いて地下道入り口付近へ】
【→セラ・レオン:前方不注意によりセラ機に激突。連鎖判定は他の方に任せます】
>277 (1/2)
『 Evade(回避せよ) 』
今や傭兵アデラの右目となって存在している精霊、フギン=ムニンの囁きが頭に響く。
その声には緊張も動揺もない。
この闇の精霊は、およそ人の感情とは遠い存在である。
「やる気だな」
精霊機エンマが撃ち出す炎弾を避けながら、アデラは静かに呟いた。
爆発の影響で胸甲赤く染まる様は、東方の地獄の番人たるオーガ(鬼)を想起させる。
警告はした。
敵は退かない。
ならば、交戦しない理由もない。
次第に集まりつつある義勇軍の面々を横目に、アデラは行動を開始した。
>277 (2/2)
>「馴れ合いは此処まで……我は一撃の拳にて、全ての罪を薙倒し、“悪”を滅する」
「金次第でどちらにでも味方する。
我ら傭兵が正義と悪を語るならば、貴君は笑うだろうか」
アデラの搭乗機コルバス・コラックスは高速で飛行しながら、
途中途中に闇の粒子を撒いて機体を黒い煙幕に隠した。
闇の粒子は精霊フギン=ムニンの発する遮光物質であり、黒いモヤや煙のように作用する。
無数の蒼炎が、中空に現れた暗闇を突き抜けてゆく。
「ティルネラントはまるで燃え盛る炎だ。
多くの国家を飲み込んで、それでもまだ足りない。
戦火が戦火を呼び、今やローガンブリアをも焼き尽くさんとしている」
コルバスは更に加速した。
日光の差す方角へ急旋回し、逆光で地上からの狙いを攪乱する。
「それが女王ペネロペの意思か、それとも議会の利権構造がそうさせるのか。
私にはわからない。
だが、帝国が落ちれば、次に連中の目が向かうのはファールデルだ。
エウロペアを席捲する炎が、教国を巻き込まない理由はないのだから」
これは、アデラ自身の個人的な考察である。
ファールデルの中にも、軍事力で気を吐くティルネラント王国に対して様々な意見が飛び交っている。
そうはならぬという楽観論者もいる。むしろ望むところだという歴戦の猛者も多くいる。
「戦争は飯の種だが、母国に火をくべては本末転倒である。
言わば、この戦いはファールデルとティルネラントの代理戦争だ。
少なくとも私はそう考えている。
…我々を悪と言わば言え。その拳を以って断罪してみせろ。
先戦救国。これが精霊セイティスに誓った、私の正義だ」
逆光位置から宙返りをうってエンマの後背へと回り込むと、
アデラはバリスタ(大きなボウガン)のトリガーを引いた。
先端に炸裂機構が仕込まれたクォレル(太矢)がエンマの背後へ接近する。
そして、コルバス自身もグラディウスを抜き放ち、敵機へと低空突撃を敢行した。
【アデラ : エンマへ射撃 + 突撃攻撃】
【代理投稿本文】
【アルバニアン】
アルバニアンの対空陣地は今日も平穏だった。
だから、彼らが接近してくる旧式の航空精霊機を味方だと勘違いしたとしても、だれも責めることはできないだろう。
アルバニアンの対空砲陣地上空まで接近したスィゴーニュの周りに何十もの雪のような精霊力の塊が形成されてから、それが地上へ向けて落下するまで、わずか数瞬。
対空砲陣地の各所で、小さな爆発が生じた。一つ一つの爆発は小さくとも、砲や銃座、司令室などの機能の中枢を狙い撃ちにされては、急ごしらえの対空陣地などひとたまりもない。
一方、突然の奇襲に混乱するアルバニアン上空を悠然と飛び去っていくように見えたスィゴーニュにも、異変が生じていた。
エンジンが再び、故障したのだ。
奇襲後の一撃離脱が不可能となったスィゴーニュは、身を隠そうと先の戦闘で空いた穴から地下道に進入する。
【フィリップ、アルバニアンを爆撃後、大穴から地下道に進入】
『円卓の騎士』本部に阿修羅を持ち込んだディクト。
『円卓の騎士』の本部はミュルクの森と言われる、王国一の広葉樹林にある。
場所としてはロンデニオンの遙か東の王国領に位置する。
様々な魔物が生息している森でもあるため好きこのんで入ろうとするものは殆ど居ない。
そんな森の地下を改造して作った本部である。
ディクト達はセラの搭乗機であるセルフィーの破壊を確認した旨を伝えたが、ヴァレリアはあまりいい顔をしていなかった。
「で、お前らの方はどうだったんだ?」
「ルーデルの事か? 勿論成功だ、毒を盛ったらころりと死んだ。
彼ら貴族だけこのような戦争時に高級なものを食べるので仕掛けるのはたやすい。
だが、まだ公表はされていないようだな」
ヴァレリアは食べ物の仕入れの段階で毒を混ぜ、それを食べさせたのだ。
貴族が食べる食物は高級なので、予め仕入れる場所を調べておいて食物が仕入れられる前に仕込んでおいた。
『円卓の騎士』は戦えるものこそあまり多くないもののその協力者は王国各地に存在している。
「随分と成功確率の薄い作戦のようにも思えるけどな。
よく成功したな」
「遅効性の毒だからな、食べた時には気づかないのだ。
もっともルーデル以外にも多くの被害が出はしたが、致し方ないことだ」
ヴァレリアの言葉にディクトは僅かに眉を上げる。
しかし、直ぐに微笑を浮かべると、ヴァレリアに背を向け本部にある円卓の部屋から出て行く。
「ここは帝国に譲るのか?」
「ああ、そのつもりだ。
ここは王国には必要のない領土、それにこのまま帝国が負け続けては計画も上手くいかなくなる」
最後にそれだけ会話すると、ディクトは出て行った。
そしてディクトに割り振られた部屋に向かう。
「あーあ、やっぱり怠いなぁ……」
『我慢してください、もう少しの辛抱ですよ』
先ほど逮捕された身としてはロンデニオンでは顔を隠さないことには出歩けない。
しかし、顔を隠すようにしても怪しいのでまた捕まる危険性がある。
だから、然る時が来るまでこの本部で待機していないといけないのだ。
【ディクト:『円卓の騎士』本部にて待機、第三王子ルーデルと他数名死亡】
>「…きみ。私と会うのはこれで二度めだよね?これが合縁奇縁とういうものなのかしら…」
「王女様と縁があるというのは、一男子としては光栄極まりないことでございます
それが、どのようなものであろうと……」
>「それも同じ機体。運命の出会い?そのわりに私の胸はぜんぜん高鳴らないよ。
少しはどきどきさせてくれない?ぼく」
「僕のような年少者に胸が高鳴るようなら、それはそれで問題がありますよ」
同じ機体なら、僕の方が使い慣れているから有利だ
そう、心の中で思ったとき、油断してしまった
>「どこを見ているの?こっち…こっちよ」
一瞬でセラの姿を見失い、声のする方へ振り向く前にイグニスは地面に叩き付けられてしまった
頭部を足で押さえられて、身動きが取れなくなってしまう
しかし、それは人間での話だ。僕が乗っているのは精霊機だ!
「フェニキア!!」
僕の声に答え、イグニスの翼が開き、セラの足踏みから脱出したとき、目の前に見たことのある精霊機が、猛スピードで僕とセラ皇女の直線上にやってきた
とっさの判断でそれを避ける
そのすぐ後にセラ機とティエリアが激突し大惨事となった
「あの〜2人とも大丈夫ですか?」
洞穴に突っ込んだと思われていたホロウ・クロウラーとシュヴァルツ・ヴァルトはすでに戦域には居なかった。
何故か。ASLは今ここで戦闘を行い続けても効率の良いデータ収集はできないと判断したのだ。
特機だらけの戦場。特機だからこそデータ収集は上手くいくが特機だからこそ手ごわいものがある。
撃墜されてしまえば全てのデータは水の泡だ。
それを懸念するのはASLとしても至極当然だった。
『エルトダウン。あの地下道はロンデニオンへと繋がっている。
つまりどういう事か。どうせあの地下道も突破されるだろう。頃合いを見計らってロンデニオンに直行しないか?』
確かに洞穴を通れるのはごくわずか。
複数の勢力が仲良く通れるわけもない。ましてや三つ巴の今となってはさらに。
「うーん、それはいいかもしれないね。どっちもなかなか消耗してきてるし、
しばらくはオブザーバーでいようかな?」
"ま、ゆっくり休めるんならそれに越したことはねェよ。油断するなよ。いくら戦域外だからって見つからねえってわけでもねェ"
エルトダウンは了解した旨をサイアニスに伝えるとサイアニスは鉄の翼で待機しているアルヴェリヒへ報告した。
[ 了解した。こちらでも逐次情報を知らせる様に手配しておくよ。
君達が消耗しないことが一番大事だからね。では引き続きよろしく頼む。オーバー ]
【エルトダウン及び僚機、戦域外から戦闘を傍観中】
セルフィーの足の裏でギリギリと軋むイグ二スの頭部。セラはレオンの諫言に鼻白む表情を隠せないでいた。
なぜならレオンの言葉−−
>「僕のような年少者に胸が高鳴るようなら、それはそれで問題がありますよ」
セラはレオンをからかうつもりが逆にあげあしをとられてしまっていた。
「でもね。あなたが足元で平伏していてくれている件にかんしては私の胸は充分に高鳴りましてよ」
実際にはレオンの意志を無視して踏みつけているのだけれどセラは言う。
「まあ、あなたと私は対等にはなれないものね…ましてや蜜月なカンケーなんて夢のまた夢…」
セラはセルフィーの左足でイグ二スの背中を押さえ、固定し直すと
右足を振り上げ頭部を狙っておもいっきり足を振り下ろした。イグ二スの頭部を踏み潰すつもりだった。
ガシャン!金属の弾ける音が広がり、そこには体勢を崩すセルフィーの姿がある。
なんとイグ二スは背中の翼でセルフィーの体勢を崩すとともに足踏みから脱出していたのだった。
「こ…こいつ!なまいきーっ!」
カッとなったセラが光の剣を構えようとした瞬間。
>「こんな、おハナシの中の「てんこーせー」みたいのってナシでしょー!どいてーっ!」
「ヨハンナ!?」
猛突してくるティアリア・ドラウパディーはエヴァのロンギヌスの槍をほうふつさせる。
ごぅんっ☆…なんとも形容しがたい衝突音。セルフィーは朝礼で貧血を起こした生徒のように倒れこむ。
>「あの〜2人とも大丈夫ですか?」とレオン。
セラは操縦席でひっくりかえっている。
「…相変わらず可愛いウサ耳ねヨハンナ。ケルン大橋のときはありがとう。
お互いにこうしてまた生きて巡り会えることを私は嬉しく思います。
でも再会の喜びを味わうこともなく…あなたは私を玉突き事故で殺そうとしてくれました…。
場合によってはあなたの萌え萌えのその機体…燃え燃えになりましてよ…」
操縦席でお尻と頭を入れかえつつセラは語る。
【地下道入り口付近で対峙するセラとヨハンナさんとレオンさん】
前回のハイライト〜メーデーメーデー \SOS!/ メーデーメーデー \SOS!/
>289 レオン(そのすぐ後にセラ機とティエリアが激突し大惨事となった
>291 セラ(ごぅんっ☆…なんとも形容しがたい衝突音。セルフィーは朝礼で貧血を起こした生徒のように倒れこむ。
「きゃああああああああぁぁぁぁぁぁぁぁ!」
ヨハンナの乗るティアリアは、セルフィー弐とは逆方向、つまり元来た方向へと
意図せず宙返りしてひっくり返り、地面に叩きつけられる。またまた砂塵を巻き上げて。
確かにティアリアのショックアブソーバーは優秀だけれど…
けど、3D酔いの前には何の役にも立たない!
「う”ゆ”〜、なんだか目のまえがぐにゃぐにゃする…」
ヨハンナがなんとか焦点を合わせると、そこには…イグニスの同型機が2機!
>「あの〜(中略)大丈夫ですか?」
>「…相変わらず可愛いウサ耳ねヨハンナ。ケルン大橋のときはありがとう。
>お互いにこうしてまた生きて巡り会えることを私は嬉しく思います。
>でも再会の喜びを味わうこともなく…あなたは(中略)してくれました…。
>場合によってはあなたの萌え萌えのその機体…燃え燃えになりましてよ…」
「この声は…セラさまとこないだのユーカイ犯…?」
『うわ、ひどい言い様』
「でも…なんでセラさまがユーカイ犯と同じのに!?」
「…そうか、ナゾはすべてとけた!」『何が』
「あのね、セラさまとそこのユーカイ犯はコイビトどーしなの。
で、ヨハンナはふたりがカケオチしようとしてるゲンバに出くわしちゃったってワケ」
『……』
「恋のためにクニをすてるなんて…セラさまはなんてオンナなの…!?
でもちょっとあこがれるかも」
「どうしよ、このままだとセラさまのコイジをジャマしたツミで
ウマにけられてころばされちゃうかも!パティ、とりあえず逃げよう!」
『はいはい…(このまま何もしてくれないでてくれると、ボクも助かるんだけど)』
ヒトの話を聞こうとせずに修羅場(笑)から離脱するヨハンナであった。
「ああどこかかくれるところないかな、っとちょうどいいトコに大穴が!」
先の戦闘で肥大化した地下道入り口から内部へと侵入するヨハンナ。
けれど、数分としないうちにまた別の精霊機とぶつかって…!?
「わっ!今日はよくモノにあたる日だね。星占いもあてにならないなー」
義勇軍一般兵A「貴様!何者だ!」
ヨハンナがぶつかったのは、アデラの要請を受けて駆けつける途中の義勇軍だった!
「そ、それいじょー近づいたら…究極魔法ドラグ・ス●イブをうつよ!」
ハッタリをかけながら、ティアリアをジリ…ジリ…と後退させるヨハンナ。敵が多すぎて。
『(どうしてこの子はすぐに人を威嚇するかな…)』
前方には義勇軍の小隊、逃げようにも後方には駆け落ち途中のカッポー(笑)がいる。
義B「何っ!?究極魔法だと!」
「そうだよ。ドラグ・スレ●ブだよ…!」
義A「ははっ、ブラフはよせ」
『ヨハンナちゃん、右、右』
ハウリンティウスの言う右方を見ると、先の爆発で露わになった別の通路があった。
「それじゃおじさんたち、ばいば〜い♪」
ティアリア・バリアーを一歩手前に展開して目くらましに使うと、全速力でその通路へ!
*
仄暗い地下道を時期の燐光で照らして進むヨハンナ。
「これくらいにげればだいじょーぶかな…」
『さっきも同じようなこと言ってなかったっけ』
「さっきまでのヨハンナとはちがうの!パティ、チカラをかして」
ティアリア・ドラウパディーが、精霊甲冑を生着(しょうちゃく)するタイムは、
わずか0.05秒にすぎない。
では、生着プロセスをもう一度見てみよう、と言いたいところだけど…
「パティ、ヨハンナがきがえてるあいだ、ちゃんとみはっててよ!」『はいはい…』
機体については一瞬で着せ替えできても中の人はアナログなのだ。
しかし、このオートクチュール精霊機はクローゼットや姿見すらも備えている。
なんというテクノロジーの無駄遣い!
『ヨハンナちゃん、なんで全天周囲モニター切るの』
「つけっぱなしにしてると全面ガラス張りみたいではずかしいからッ!」
世の中とは理不尽なものだな、と殴られながら思うハウリンティウスであった。
*
「これで…よしっ!ねぇパティ、おかしいところとかない?」
『ちゃんと着られてる。かわいいと思うよ』
「うん!ありがと♪」
ヨハンナの新コスチュームは、夢がいっぱいフリルいっぱい…という、
そのスジの人が見たら人誅を下されそうなミニスカ巫女装束で、
ヨハンナの乗るティアリアもまた、ウサミミ妖精からキツネミミ妖狐へと姿を変えて。
「強気に、本気。無敵に、素敵。元気に、勇気!テスタメント・巫女ロリ参上!」
ひゅ〜るるる〜〜…。もちろんだけど、あたりには誰もいません。
「とにかく先にすすむよ、パティ。ふふっ、これでだれもヨハンナのこと、
ティルネラントの令嬢だなんて気づかないもんね」
『(今までの戦いって、ティルネラント人だからというよりは、
ヨハンナちゃんが先にしかけてたような…)』
さて、地下道入り口の右側脇道から奥へ進んだヨハンナは…
巡り巡って左側の脇道から帰ってきたのだった。
「やっとあかるいところにでた〜♪さて、義勇軍のヒトになりすましてやりすごすよ」
義勇軍一般兵A「貴様!怪しい奴!」
「ひゃあっ!」
義B「その声!貴様さっきのガキだな!」
「ち、ちがうよ!さっきのは双子のおねーさん!」
義B「なんだ双子か。なら仕方ない…では、所属と姓名は?」
「う”」
上の方に目を反らしたヨハンナの目に入ったのは…!
>286 アデラ(途中途中に闇の粒子を撒いて機体を黒い煙幕に隠した。
「そうだよ…『魔砲戦記』にもちゃんと、ママにするなら
しろいアクマよりくろいシニガミにしなさいって書いてある!」
『…ヨハンナちゃん?』
最近見たお芝居…「マリー・ビーンズ」と「ウェザーマン」のタイトルを思い浮かべると、
ヨハンナは次に、義勇軍兵士に向かってデタラメを並べはじめた!
「わたしは魔法王国クリステールからきたマリーウェザー。
あのくろいのにのってるのがマリーのママなの!」
義A「魔法王国、クリステールだと…?聞いたことのない国だな」
義B「アデラさんが!?」
名前さえ聞いてしまえばこっちのもの。
ヨハンナいやマリーウェザーは、どうせ相手には見えないのでにぱー☆と笑った。
「クリステールはこのセカイの、”あるいていけないトナリ”にあるんだよ。
マリーは”イノチの花”をさがしにこっちのセカイにきたの!
でね、アデラママはクリステールの前女王アレクシエルの転生体なの」
全部口からでまかせの、荒唐無稽な電波である。
義勇軍の兵士はぽかーんと口を開け…ているヒマなどないのだ!
義C「くっ!今の攻撃でジャックがやられた!」
義A「あの赤いヤツ(=エンマ)…話は後だ、ガキはさっさと帰れ!」
『よかったねヨハンナちゃん。これで帰れ』
「ここでかえれるわけないでしょ!ロー畜にもちょっとばかしチカラをかしておけば、
ティルネラント、ローガンブリアどっちがかってもセカイを救ったアイドルになれる…
我ながらサイコーのプランじゃない」
「また魔王のテサキのシワザだね。ヘータイさん、おてつだいしま〜す☆」
こっちが多勢で相手が無勢と知れば俄然やる気が出るヨハンナであった。
【セラ機・レオン機を見て地下道へ逃走。人気のないところでティアリアをきせかえ】
【再び地下道入り口に戻り、アデラ(の転生前)の娘とデムパな主張をし義勇軍に加勢】
鉱山方面から立ち昇る黒煙を院内から瞠目していたグラード・ゼリュペットは激しい焦燥に駆られていた。
「あの黒煙。義勇軍の慌てっぷりから推測すると敵さんの奇襲か?
言わんこっちゃねーよな。義勇軍の主力もケルンの時に押し切っていりゃあこんなことにはならなかったはずだ」
グラードはピピンに嘆いている。
「でも前に出過ぎて僕たちは死にかけました」ピピンは諫言した。
「あ、あれは流れだ。運が悪かったんでい!」グラードは頬を赤く染めながら言葉を返す。
「ん!?なんだありゃ?」突如、西の空を指さすグラード。
西の空には飛行型精霊機の護衛を引き連れた大型船が一隻、アルバニアンに向かって飛行してくる。
空飛ぶ船。グラードも初めてみる代物だった。その甲板には大砲がずらりと並んでいる。
=飛空挺内船橋=
対空監視「見えました。アルバニアンです」
サマウス艦長「よし、予定通り入港する。いや待て。交戦中だったはずだ」
対空監視「はい!煙が見えます」
サマウス艦長「はい、ではないよ。先に搬入されるはずの精霊機を強奪されて、
この艦まで傷物にされてしまってはたまらんだろう!それに元々、何故この艦で精霊機を運ばなかった!?」
真面目な艦長だったがつい先ほど入電された精霊機強奪の件に関しては帝国の上層部に不満をもらしていた。
操舵長「まさかこんなものが後から西の海で発見されるなんて誰にも想像できなかったんですよ」
サマウス艦長「やることなすこと上手くいかんな。それに古物の改修ならアーウィン殿でなくとも、他に出来る者がおるだろうに」
情報処理兵「艦長!王国の第三王子ルーデルが毒殺されたとの連絡が入りました!」
サマウス艦長「円卓の騎士の仕業か?過激なやつらだ」
「よし戦域を迂回して義勇軍陣営にまわり込め!義勇軍の地上部隊に我が艦の援護を要請しろ」
【帝国飛行戦艦スレイプニル着陸体勢に入る】
>「金次第でどちらにでも味方する。
我ら傭兵が正義と悪を語るならば、貴君は笑うだろうか」
「………何を謂うかと思えば……………なれば私も傭兵だ。
傭兵の分際で善悪を語る私を笑うが良い」
煙幕をばら撒きながら移動するコルバスを見失わないうちにエンマは飛び上がり、
次々と手にした光の太刀で煙幕を切り払っていく。
しかし、いずれにも手応えが無い。あのスピードは少々厄介だ。
>「ティルネラントはまるで燃え盛る炎だ。
多くの国家を飲み込んで、それでもまだ足りない。
戦火が戦火を呼び、今やローガンブリアをも焼き尽くさんとしている」
「貴様……。よもや、死合の中でこうも饒舌な者が在ろうとは…
何を企む鴉風情めが」
戦闘中に此処まで言葉を紡いだ相手は始めてだ。故、彼には珍しく、冷静さを欠きイラつきながらも、
機体の体勢を整えて着地する。
すぐさま天を仰ぎ見るが、敵機の姿が無い…………
…否、太陽の逆光の中に僅かながら重なって黒い影が見える。
地上に居ることをかなり巧く利用されたようだ。
>「それが女王ペネロペの意思か、それとも議会の利権構造がそうさせるのか。
私にはわからない。
だが、帝国が落ちれば、次に連中の目が向かうのはファールデルだ。
エウロペアを席捲する炎が、教国を巻き込まない理由はないのだから」
「……先程から聞いて居れば…貴様は随分と先読みが得意な様だな…
然し、其れは先見が過ぎると謂うものだ。其の考えに縛られ、今を駆ける事も出来ぬ様では……
何よりも、仮に貴様の思い描く通りの未来に成るならば、
其の刻は私がファールデルの盾にも矛にも成ろう」
自分は傭兵という極めて自由な立場を利用して、様々な面から正義と悪を見て回っている。
金などは要らない。この身には衰えも空腹も無い。温かいご馳走も、安眠できる寝床も、必要だったのは過去の事。
今居るティルネラントでさえ、最寄だったからという理由だけで属しているのだ。絶対の忠誠を誓ったわけではない。
考えうる中で、現在最も善に近いと考えるファールデルにティルネラントの戦火が触れれば、
間違いなく自分はティルネラントを完全悪と判断して全力で排除に掛かる。
しかしそれも、「そうなれば」の話。今眼前にある精霊機は敵でしかなく、
仮にも一度属したからには、余程のことでもない限りこの一戦はティルネラントの勢力として、
迫り来る悪を薙ぎ払うのみ。
「良かろう…ならば貴様も、抱き掲げた其の正義………」
いつの間にか逆光の中から背後に回ったコルバスが突撃してくるのが見えた。
すかさず迫る弾丸を忌光で焼き払い、敵の動きを凝視する。
空中を高速で飛び交われては手の出し様がないが、同じ高さに降りて来たのは不運だったと言えよう。
コルバスの刃はエンマの肩部を掠り。しかし、その一瞬の接近で、在ろう事かエンマの右手はコルバスの頭部を鷲掴みにしていた。
そして信じられない程の馬力で高々と持ち上げ、またもエンマの眼光が不適に歪む。
「 示 し て 見 せ よ ! ! ! 」
【ゴウケン、コルバスの頭部を掴みそのまま地面に叩き付ける】
>>「…そうか、ナゾはすべてとけた!」『何が』
「あのね、セラさまとそこのユーカイ犯はコイビトどーしなの。
で、ヨハンナはふたりがカケオチしようとしてるゲンバに出くわしちゃったってワケ」
スピーカーからヨハンナの声がだだ漏れだ
この状況をどう受け取ったら、そうなるんだろうか?
「あの〜ヨハンナさん……」
とりあえず、勘違いしている彼女に話を聞いてもらおうと思ったんだけど……
>「どうしよ、このままだとセラさまのコイジをジャマしたツミで
ウマにけられてころばされちゃうかも!パティ、とりあえず逃げよう!」
彼女が人の話を聞いてくれるわけがなかったorz
ピューと効果音が聞こえてきそうな感じで洞窟の奥に消えていった
「相変わらず、嵐のような女の子ですね」
フェニキアがいい感じに閉め、そして、残される僕とセラ皇女
「セラ様、どうします?続けます?」
完全に興は削がれたが、このまま、はい、終わりとは行かないだろう
セラ皇女に戦いを聞く必要はなく、問答無用で攻撃してもよかった
(でも、そんなずるいことはできないよな〜)
真剣勝負ではむしろ甘いと言われるだろう、しかし、僕は卑怯者にはなりたくはなかった
「あなたが戦いたいなら、お相手さしていただきます」
中段に剣を構え、セラ皇女の反応を伺う
>「どうしよ、このままだとセラさまのコイジをジャマしたツミで
>ウマにけられてころばされちゃうかも!パティ、とりあえず逃げよう!」
「待ちなさい!ヨハンナ!」
地下道へ消えるティアリア・ドラウパディー。
「…脱兎の如くとはよく言ったものね…」
ひとりごちたあとセラは義勇軍本営付近に帝国飛行戦艦スレイプニルの入港を確認した。
その巨体はゆっくりと建物と建物の間に沈んでいく。
セラも運搬用の飛空艇や戦艦といえるべきものは見てきたがあれは見たことのないタイプの戦艦だった。
>「セラ様、どうします?続けます?」
>「あなたが戦いたいなら、お相手さしていただきます」
「んー…。じゃあ、やめよぅ。
私…この機体を頂戴できただけでも今日は充分な収穫なんだもん」
戦艦スレイプニルの存在はセラに少なからず威圧感を与えている。
現にスレイプニル護衛にあたっていた新鋭の飛行型精霊機隊には強奪された精霊機の奪取命令が下っていた。
セラに遅疑逡巡と思いを巡らす時間はない。
「またね」セラはそう言い残すと地下道へと消えた。
百足型の大型精霊機の襲来(解決済み)旧式の航空精霊機の空爆攻撃。セラによる精霊機の強奪。
異形の人型精霊機エンマの存在。
立て続けに起きる諸問題に義勇軍の指揮系統は混乱しているようだ。
義勇軍にとって良い知らせとなるものは王国の第三王子の死とヨハンナの戦闘介入。
それに戦艦スレイプニルの編入ぐらいだろう。
−−義勇軍で溢れかえる地下道。
「義勇軍にバレなきゃバレないので越した事はないんだけど強行突破しかないみたいね!!」
光の翼が地下道の闇を照らし出し、先ほどヨハンナから目くらましを受けた義勇軍の小隊の中をセルフィーが押し通る。
するとセルフィーが通り過ぎたあとに義勇軍の機体たちの腕、脚部分と胴体部分が綺麗にバラバラとなり切断された。
それは光の翼と光の剣によるすれ違い様の乱れ斬り。光の翼は出力を最大にすることによってブレードと化していたのだ。
地下道を疾走するセルフィーはアスモデウスの爆心地でもある地下道にでた。
アデラの応援に駆けつけた義勇軍。エンマにコルバス・コラックスに謎の狐耳の機体。
「きつねみみ…」セラはヨハンナではないのかとあからさまにいぶかしむ。
エンマの方はコルバスと交戦中なのだから王国側の者とすぐに理解出来たのだが
格闘戦を行っているために下手に援護が出来ない。
ならば後方支援と、穴から地上に出てぞくぞくと集結してくる義勇軍の第一陣を光の武器で微塵切りにしていく。
(これくらいでいいかなぁ…)
ゴウケンに話しかけ集中力を削いでもいけないのでセラはある程度義勇軍を斬り捨てると黙って地下道の奥に消えた。
【○戦艦スレイプニル:義勇軍本営に無事入港】【●セラ:地下道奥へ進む】
地下道へと進入したスィゴーニュは、義勇軍の追撃を避けるため、地下道の奥へと向かい、そこでエンジンの調整を行っていた。
エンジンが復調し、再び、飛び立とうとしたとき、前方からイグニス(セルフィー)が向かってきた。
(まだエンジン本調子じゃないのに・・・)
エンジンから精霊力が供給されないことには、この機体の唯一の取り柄である機動性すら満足に活用することはできない。
ただでさえ、イグニスとスィゴーニュでは性能に雲泥の差があるのだ。
(できるだけ、時間を稼ぐしかないな・・・)
フィリップはスィゴーニュのもつ短銃を相手の方に向けながら、名乗る
「私はティルネラント王国軍のフィリップ・アルザスだ。機体を見るところ、相当な身分の方とお見受けするが、貴殿の所属と姓名を伺いたい」
相手は本来帝国貴族しか機乗を許されないイグニスタイプである。
もしこのイグニスタイプのパイロットが義勇軍の若きエースといわれるレオン・ルラン・ファブニールなら、旧知のフィリップを見逃してくれるかもしれない。
もしパイロットがレオンでなかったとしても、イグニスに機乗するような者は、相手の名乗りを無視して攻撃するような真似は普通はしないはずだから、時間稼ぎという当初の目的は達成されるはずだ。
【フィリップ、地下道奥でイグニス(セラ機)と鉢合わせ】
>296
> 【ゴウケン、コルバスの頭部を掴みそのまま地面に叩き付ける】
精霊機コルバス・コラックスは激しく地面に打ち据えられて、その衝撃は容赦なく操手を襲う。
数瞬の後、アデラは気を失っていた。
四肢は脱力しダラリと伸びており、先ほどまで機能していた左眼は虚ろを見ている。
閻魔による断罪は成ったかと思われた。
だが。
彼女の謳った正義は、彼女以外の者たちが示したのだった。
アデラの援軍要請に応えた義勇軍の仲間たちが集結する。
1機、2機、3機……小勢ながらも現れて、場を満たしてゆく。
敵の攻撃にさらされて、その数はだいぶ少なくなった。
しかし彼らは諦めない。
母国のために。家族や隣人のために。彼らの平穏と安寧のために。
アデラの正義は彼女のためだけの正義ではない。
それは普遍的なものである。
それは自然と義勇軍兵士たちの胸にあって、彼らを死地へと向かわせる源泉である。
> 「 示 し て 見 せ よ ! ! ! 」
『 And your turn 』
アデラの右眼窩で発せられた闇の精霊の囁きは、誰に届くことはなかった。
今、多くの銃口が、鏃が、剣先が、エンマの視界前方を取り囲んでいる。
張り詰めた空気の中、場の全員が運命の時を待った。
【アデラ : 一時的に気絶。help!!】
【義勇軍 : 義勇軍残勢力でエンマを包囲】
地下道を進むセラの前に現れたのは旧式の航空精霊機。操手がセラにむかって叫ぶ。
>「私はティルネラント王国軍のフィリップ・アルザスだ。機体を見るところ、相当な身分の方とお見受けするが、貴殿の所属と姓名を伺いたい」
「私はティルネラント王国第四王女。セラフィーナ・メアリ・アレクサンドラ・ティルネラント。
この機体は義勇軍から奪って来たものです。武器をしまいなさい。フィリップ・アルザス」
スィゴーニュの目の前で停止するセルフィー。
「あなたの機体は旧式の航空精霊機ですね。まさか鷹が穴熊のように地下を這って来たわけでもないでしょう。
義勇軍への奇襲後に何らかのトラブルがあってここに隠れ潜んでいる。そんなところでしょうか?」
セラは体裁よく語っているが自分は調査中のトラブルで行き当たりばったりの行動の末、偶然にイグ二スタイプの精霊機を強奪しただけの身。
本来なら偉そうな態度で語れない。
「今、私は帰還の途中です。見てのとおりこの機体に外装甲はなく裸同然。
それにこの地下道が実在するという証明を一刻も早くロンデニオン防衛本部に伝えなければいけないのです。それではまた」
そういい残してセラはフィリップの前から去った。
−−−しばらくしてロンデニオン美術館の庭園にある巨大オブジェ「ヴァルハルへ続く穴」からセルフィーは現れた。
教会跡が本来なら正式なルートなのだろうがセラが少し迷ったせいもあっていくつか存在する出口の一つに辿り着いたということになる。
第四王女直々の言葉とマッピングされた水晶データのお陰で地下道の存在は証明されロンデニオン防衛本部の老将も動かないわけにはいかなくなった。
この地下道を利用した義勇軍の戦略を想定すればそれは決死隊による奇襲。それぐらいしか考えられなかった。
それならばと作戦本部は地下道のあちらこちらに爆薬を仕掛け「ヴァルハルへ続く穴」の出口に小隊を配備することにした。
そして第四軍率いるセラは強奪したイグ二スタイプの精霊機を本国で改修するためにロンデニオンから撤退した。
【セラ:第四軍とともに本国へ撤退】
【ロンデニオン作戦本部:地下道に爆薬を仕掛け「ヴァルハルへ続く穴」入り口へ小隊配備】
(教会跡地の出口は瓦礫の下になっているため無警戒)
前回のハイライト〜なんとヨハンナの正体は花の魔法使いマリーウェザーだった!(嘘)
「ティアラちゃんってよんだらショータイばれちゃうかな…
じゃあ、きょうからこの子はクレハ、クレハ・ラクシュミーちゃん!
パティはレゾナンティウス、レジーナちゃんね」
『はあ…』「ヘンジはハイ!」『はい』
っていったって、ハウリンティウスはハウリンティウスだから、
分かる精霊には大体見当が付けられるんだけど。
>300【アデラ : 一時的に気絶。help!!】【義勇軍 : 義勇軍残勢力でエンマを包囲】
マリーウェザーが手練れと見込み、母と騙ったアデラが、今目の前で地に打ち付けられた。
「うそ…」『たった一機なのに、こんな威圧感…!?』
「アデラママはS級魔術師じゃなかったの?」『…そっち?』
けど、その攻撃に怯みもせず、義勇軍の戦士はエンマに立ち向かう!
「みんなマリーのためにがんばってくれてありがとう…!」『えっ』
マリーウェザーの瞳に星が入っている。これは本物のアレだ…!
レゾナンティウスは呆れるしかなかった。
「マリーもがんばる!みんなのために、せいいっぱいうたうねっ♪」
マリーはティアリアもといクレハのアンプリファイア機構を最大にし、歌い始めた!
言うまでもないけど、どこぞのマーメイドプリンセスと違って歌に攻撃力なんてない。
義勇軍A「何やってんだあのガキ?うっせぇ…」
義勇軍B「よそ見をするな!次、来るぞ!」
「いいコのままのマボロシなんて、つーくーるのはやめて〜♪
ほんとうのわたーしを見つめてっ、ずっとまぁってっる〜!」
それから数秒して…音響がぷちっと切れた。
「まだ1番しかうたってないのに、どーしておわるの!」
『これがオモテ世界の怖さってヤツさ、ヨハンナちゃん…』
マリーウェザーの怒りの矛先はレゾナンティウスに向かうのであった。
次回、お嬢様暴走特急マリーウェザー、正義の力が嵐を呼ぶ…かな、かも。
【名称変更などまとめ(基本ステータスは >106 と同じ)
ヨハンナ・トデスキーニ => マリーウェザー
ハウリンティウス16世 => レゾナンティウス
ティアリア・ドラウパディー => クレハ・ラクシュミー】
【何をトチ狂ったか歌い出したでござるの巻。必殺時間稼ぎ】
【ただしアデラに追撃が入った場合はマリーウェザーの援護防御+バリア】
戦艦スレイプニルの護衛に当たっていた新型飛行精霊機を駆る帝国貴族の息子たち、シュナイダー。ティアミス。オルスランの三兄弟は
アスモデウスの爆発で空いた大穴付近の上空を旋回しながら場の様子を伺っていた。
彼等の目的は強奪された精霊機の奪取。だが今となっては地下道奥へと逃避したセラを追う事はかなりのハイリスクと言えよう。
「どうするんだい兄さん。盗難機は追わないのかい?」長髪の美形の次男、ティアミスは長男のシュナイダーに問うた。
「あれを見てごらん美しい弟よ。義勇軍の素晴らしい愛国心を。人は愛国心から兄弟の様に思いを一つにすることができるのだね」
シュナイダーは身を捩じらせながら瞳を輝かせていた。上空から見える大穴の中にエンマを取り囲んでいる義勇軍の姿が見える。
「くぅん…はあはあ…素晴らしいよ。義勇軍…」三男のオルスランは自分を抱くように両腕をクロスさせている。
>「いいコのままのマボロシなんて、つーくーるのはやめて〜♪
>ほんとうのわたーしを見つめてっ、ずっとまぁってっる〜!」
「この歌声は!?天使の歌声かい?暗い穴ぐらから天使の歌が聞こえるよ!
戦場で戦う者たちに捧げる歌声が聞こえてくるよー!!」ティアミスは興奮して叫びあがる。
「おお神よ!我らに勝利を!死すべき定めの人の子に祝福あれ!」三兄弟は鞘から剣を引き抜くと天に掲げ重ね合わせた。
『ホーリーレイン!!』三兄弟は復唱する。
重ね合わせた剣が光輝き始め、聖なる光の雨がエンマに激しく降り注ぐ。
【帝国貴族三兄弟(またの名を余分三兄弟):エンマさんに聖属性の圧縮砲(雨というよりレーザービーム)による飽和攻撃】
「…………我は………刃…………」
コルバスが動かなくなったのを確認すると、数秒後にエンマはゆっくりとその手を離した。
義に語るべくも無し。互いに掲げた譲れぬ想いがあるのなら、最後に勝り立っていた者こそが正たる預かり。
それこそがゴウケンの中での根元に当たり基礎たる考えである。
そして、敗れた者はそこまで。これもまた彼の信条ではあるのだが…
「………ふん……動かぬ者を拳撃した所で…我が身にも成らぬか……」
何やら複雑そうに呟くと、そのままあっさり背を向ける。
この敵は見逃す。という意味もあったが、それ以上に、接近する気配を感じたから。
『おや……主、お客様が数人ほど』
「………ほう………」
一機、二機と、小規模だが、確実にこちらを包囲する形を取っている。
今さっき目を覚ましたゼクシスが『お、お前らー!相手をなー!数でなー…!許さーーーん!!!!』
だとか叫んで憤慨しているが、やはり放っておく。
「成程……貴様等が、奴の義の代弁者…。いや………掲げる者か…!」
言い終えるが先か、未だ滾る真紅の装甲を燃やしたエンマは稲妻の如く踏み込み、
手近に居た精霊機を頭から蹴り潰す。通常の精霊機よりも一回り程大きいエンマは、踏みつけ程度でも威力が凄まじい。
足の下敷きになった敵機パイロットの生存を確認すると、姿勢を低くしたまま加速する。
だが、二機目の顔面を見据えて両の拳を構えたところでその加速がピタリと止まる。
というのも……
>「いいコのままのマボロシなんて、つーくーるのはやめて〜♪
ほんとうのわたーしを見つめてっ、ずっとまぁってっる〜!」
思わず頭を抱えたくなるような呪歌が、大音量で響いてきた為である。
拳を胸の前に止めたままの姿勢で音のする方向を確かめる、が。
その瞬間構えていた拳はあっという間に「空」の構えとなり、静かな闘志と共に、歌の発信源へと向けられていた。
『あれ?歌は?もう終わり?何だー結構ノッてたのn(ry』
『主、感じる波動から、ほぼ間違い無いかと…』
「……貴様………其処で何をしている……『ヨハンナ・トデスキーニ』……!!」
みるみるエンマの剛毛は逆立ち、全身から立ち上る怒りがオーラとなって見えそうになっている。
エンマには、一切の所謂「レーダー」が搭載されていない。
しかし機器の無い代わりに、ゴウケン自身の記憶能力は優秀で、
特に味方の機体とあらば、誤って攻撃してしまうことなど無いよう、機体の細部に至るまで念入りに記憶している。
そして、その搭乗者についても。
眼前にある機体は随分と凄まじい外見をしているが、関節部などの仕様の一致。
何よりも、このような機体のカスタムを好む者をゴウケンは一人しか知らないし、それ以上居て欲しくなかった。
ヨハンナ・トデスキーニ。消え滅んだ一国の皇女だと伝え聞くが、同時にとんだお転婆だとも聞いている。
所属は間違いなくティルネラントだが、見るに周囲の義勇軍は彼女に対して攻撃の意思がない様子。
それに彼女の性格を足して考えられる状況は只一つ。
「自由気まま…純粋で在る事は時に愚か……。之のタイミングで……裏切りとはな………」
完全に頭の中で悪滅スイッチがONになったゴウケンは、既にクレハへと飛び掛っていた。
空中で一回転し、エンマ固有の耐熱腰部装甲「ハカマ」を激しく翻し、
裏切り者=悪を一撃の下に葬るべく、その踵を叩き付け―――
>『ホーリーレイン!!』
ることが出来なかった。何やら今日は次から次へと障害が現れる。
突如として目の前を光の雨が埋め尽くし、ゼクシスが『ホーリー!?溶けるぅうううううう!!!』と大絶叫。
一瞬の内で何が起こったのか理解できず、
分けも解らぬままに目の前のヨハンナを抱えて光の雨の範囲外へと飛び退ける。
「莫迦な!!此処に来て、又異物の介入か!!」
度重なる邪魔という邪魔。今度という今度こそ、ゴウケンの怒りが頂点に達した。
空気で察したゼクシスはおずおずとゴウケンの髪の中に潜り込み、
ヴェーゼルは溜息一つと『お供します』とだけ一言。
殺気を放つエンマはヨハンナを適当に近くに降ろすと、静かに上空を見上げ、
新たに現れた敵機達へと素早く飛び掛る――!
「―――掌―――!!」
必殺の一撃と共に。
【ゴウケン、アデラをその場に残し&ヨハンナの自由行動を発見&貴族三兄弟のいずれかに攻撃】
>「んー…。じゃあ、やめよぅ。
私…この機体を頂戴できただけでも今日は充分な収穫なんだもん」
>「またね。」
そう言う一言、残して彼女は洞窟の奥に来えていく
まさか、本当に戦わずに、逃げ出すとは思わなかった
「ま、まて!」
セラ皇女を追って、再び穴に飛び込む
そこで見たのは、白い装甲に精霊機なのに頭部からは赤と白の髪の毛をたなびかす、精霊機というよりかは
人間に近い外見をしていた
「お、大きい」
そして、なによりもその機体は大きかった
イグニスよりも一回り大きい、その巨躯と異様な風貌から発せられる威圧感は尋常ならざるものを感じ取れた
そして、その巨躯の隣に横たわるアデラさんの機体、コルバス・コラックス
僕の着地と同時にふりそそぐ、光のシャワー
おそらく先ほど到着した帝国戦艦の攻撃だろう
セラ皇女との戦いの最中に飛来したスレイプニルのことを思い出す
目の前の白い機体は、光のシャワーを回避した
上空をキッと睨みつけると、飛び上がる、今しがた攻撃してきた飛行精霊機に、必殺の一撃を叩き込もうと
幸い、こちらの優先度は低かったか、光のシャワーで気付かれなかったか、こちらに敵意を向けられることはなかった
「アデラさん!!」
その隙にと、コルバス・コラックスの元に駆け寄る
頭部の破損は見られたがコクピットに損傷は見られず、ホッと胸を撫で下ろした
「アデラさん、しっかりしてください、大丈夫ですか!!アデラさん」
声をかけても、反応がない
「大丈夫です。命の鼓動は感じます。ただ少々、弱くは感じられます」
命に別状はないとわかっても、戦場で気絶した女性を放っておくことは出来ない
しかし、イグニスの出力ではコルバス・コラックスを抱えたまま、穴の外に飛び出せない
周りを見渡す、義勇軍の機体と、どこかで見たことのある趣の機体
「ヨハンナさん、助けてください!アデラさんを助けなければなりません」
なぜ、このとき、敵で少女のヨハンナを頼ったのかは、わからないが僕は彼女に助けを求めた
>「―――掌―――!!」
ゴウケンの掛け声と同時にエンマは跳躍し空中のティアミスを襲う。
その重装甲の機体に似合わぬ電光石火の体当たりは、まるで先頭に蒼い炎を纏った拳を持つ重機関車。
ゴウケンの気迫に圧倒されつつ、防御体勢に移るティアミスは大盾をいとも簡単に打ち砕かれてしまう。
「くっ!まるで機体そのものが巨大な打撃武器だ!!」
ティアミスは大破した大盾を赤マントと見なし機体を闘牛士の様にひらりと回避させる。
エンマを形容するなら三羽の大鷹に跳び掛かる一頭の荒獅子。
「貴殿がたとえ一騎当千の力を持っていたとしても、この大空で我々に勝ると思われるか?八つ裂きにしてくれようぞ!!」
シュナイダーが気勢を上げるとティアミスはエンマの顔面に機関砲を放ち、同時に残りの兄達がエンマの巨体に剣撃を浴びせる。
剣撃で厚い装甲は打ち破ることは出来なかったのだが、衝撃波は彼の機体を吹き飛ばし地表に叩きつける形となった。
落ちたエンマを取り囲み再び集中砲火を浴びせる義勇軍たち。
地下道からアルバニアンの地表に移った戦場は義勇軍に圧倒的な勝利条件を与える。
義勇軍小隊長「間合いをとって実弾で狙え!奴との近接戦闘は極力避けろよ!」
「くっはっはっはっは!!」次男のティアミスは空中で快活に笑っている。
「勝ったね兄さん」と三男のオルスラン。
「…そうだいいことを思いついた。あの勇者には派手に散ってもらおうじゃないか」
長男のシュナイダーは薄い笑みをたたえて言った。
「戦艦スレイプニルへ砲撃の要請をするのだ。目標は敵侵入者。新米艦長の良い実戦経験となろう」
数分後。ゴウケンは気づいたであろうか遠くのアルバニアンの街並みからゆっくりと浮上し姿を現す巨大な攻撃戦艦の姿を。
すべての主砲門が己の機体に向けられているということを。
「サマウス艦長。当てようと思うな。最低でも威嚇射撃になればよい」無線で艦長に語るシュナイダーの口調は静かだった。
サマウス艦長「当てるもなにも味方に当たったらどうするつもりか!?」
シュナイダー「…血を流すことを恐れてはならぬぞ…サマウス艦長」
サマウス艦長「く…味方義勇軍に射線上からの退避命令を!」
シュナイダー(…我々が砲撃を要請した時点で義勇軍は独自の判断で回避行動に出ている。
中には砲撃しやすいように陽動をかけ足止めをしている者もいるというのに。これほどまでの素人なのか?サマウスとは)
情報処理兵「全友軍機の射線上からの退避を確認!」
サマウス艦長「よ、よし!撃てー!!」
ドギュルーンッ!!ドギュルーンッ!!ドギュルーンッ!!ドギュルーンッ!!
高熱の巨大な光線が四発。唸りを上げながらエンマに放たれた。
【地下道から出たゴウケンさんを地表に落して戦艦スレイプニルからの砲撃】
>303 帝国貴族三兄弟
>「この歌声は!?天使の歌声かい?暗い穴ぐらから天使の歌が聞こえるよ!
>戦場で戦う者たちに捧げる歌声が聞こえてくるよー!!」ティアミスは興奮して叫びあがる。
「ね、レジーナ、きいたきいた?やっぱりわたしはスーパーアイドルね♪
文化のない西戎すらトリコにしてしまうなんて」
『よかったね』棒読み。『(余計なコトしてくれるなぁ…)』
「つぎっ!2曲目、うたいますっ!」
何を考えたのか、マリーウェザーは気分の落ち込むような歌を選んだ。
「だれかが、まちのどこかで、ひとり、ないてるっ
だれかが、まちのどこかで、よるが、つ・らいー♪」
破壊力ばつ牛ン。端から見たら、明らかに選曲ミスだろう。
>306 レオン「ヨハンナさん、助けてください!アデラさんを助けなければなりません」
「わたしはマリーウェザーです!
アイソがよくってかわいいヨハンナは双子の姉、マリーとはベツジンなの!」
マリーが気持ちよく歌っている時にナニ…と機嫌を損ねながら声の元を見やる。
見ると、そこはマリーが考えているよりも大事になっていそうで。
「アデラママって、ダッシュツしたんじゃないの…?」
『あっちの二人の話をく限りでは、まだ、だね』
「よくわからないけれど、とじこめられたとかなのかな」
ひとまず、マリーはイグニス、コルバスへと飛んでいく。
「ママ!だいじょうぶ?ごめんね、マリー、ママなら
もうダッシュツしてるんじゃないかなっておもてって、きづかなかったの…」
半分くらい演技が入っている。だって相手は母親(の転生体)という設定なんだもん。
けれど、コルバスの主からの返事はなくって。マリーもようやく事の重大さに気づく。
「おにーちゃん、ママのことたすけようとしてくれてありがとう。ママ!ママーッ!」
クレハを使ってコルバス・コラックスの救助を手伝おうとするけれど、
でもクレハの出力はイグニスに遙かに劣る。二機がかりでもなかなか運び出せなくって。
「レジーナ、なんとかしてよ!レジーナってライトニング7なんでしょ!」
『ごめん、この機体の精霊力アクセラレータじゃこれが限界』
のろのろと運んで行くけれど、これじゃいつターゲットにされるか分からない。
その時だった。
義勇軍兵士「本官もアデラ・グラーフストレームの撤退を支援するであります!」
二人と二匹、そして二機が必死になっているところへ、数体の両機が飛んできてくれて。
幸か不幸か、義勇軍アルバニアン基地は目と鼻の先にあるから、すぐに着いた。
アルバニアン基地はASLの二機(>241)およびフィリップ(>287)による攻撃で半壊し、
今も至るところで煙がくすぶっているが、攻撃自体は沈静化していた。
さて、義勇軍の作戦本部で問題となっているのは、地下道を用いた奇襲の有効性である。
既に敵機数機が地下道に現れており、
ロンデニオンの王国軍がその存在を未だ知らないと考えるのは楽観的すぎる。
そして相手が地下道の存在を”もともと”知っているならば
わざわざ地下道を選ぶのはかえって危険である。
野戦か攻城戦かと問われて、メリットもないのに攻城戦を選ぶ馬鹿はいない。
しかし、王国軍が地下道を知っていたにしては不可解な点が残る。
現在のところ確認された敵機は数体の特機で、部隊を率いての攻撃は確認されていない。
これではわざわざ各個撃破されに来たようなものだ。
ここで頼りになるのは、ロンデニオンに残してきた諜報部隊の報告である。
やはり、王国軍は”今やっと”地下道の存在に気づいたとの事。
当然相手は何かしらの対策をうっているだろうが、詳しいことは分からない。
地上ルートにしても、これまでの偵察により、
王国軍はトラップや固定砲台を設置して戦闘に備えていることが確認されている。
その点では、今気づかれたばかりの地下道の方が準備は手薄ではあろう。
見通しが効くが守りの堅い地上ルート。
成功すれば痛撃を与えられるかもしれないが、不確実性の残る地下ルート。
畢竟、どちらをとってもメリット・デメリットは均衡していると思われる。
【マリーウェザー(=ヨハンナ)他:アデラ機を義勇軍アルバニアン基地まで運び出す】
グラード・ゼリュペットは作戦会議に参加していた。
怪我のために戦闘に手が出せないぶん口は出したかったからだ。
とにかくこの男は何かを出していないと気がすまないらしい。
「こっちには帝国さんからいただいた戦艦があるんだろう?
一隻だけだから艦隊は組めないが、それでもあの火力は敵さんにとっては充分な脅威になるはずだ。
ならば体勢を立て直して明日、真正面からロンデニオンへ攻めればいい」
このグラードの発言に対して初老の軍師は問いかける。
「随分威勢のいい話だが真正面からとはあまりにも無謀過ぎやしないかね?グラード君」
「んあ?今の俺たちに主力部隊を分散させるほどの兵力が残っているのかよ?
それに隊列を組んでの正攻法なら王国も受けざるおえねー。
そうなればロンデニオンの主戦力を外に引きずり出すことも可能なはず。
あとは空っぽになったロンデニオンに地下道からの奇襲部隊が乗り込んで王国の指揮系統を潰す
…よい考えではありませんか?」
グラードは答えた。しかし軍師はさらに問いにかけてくる。
「諜報部隊の話によれば地下道はすでに王国に気づかれているそうだ。
それでは奇襲にはならんだろう」
「気づかれているって話なら我々の存在だって、とうの昔に気づかれているでしょうが。
敵さんが足元ばかり気にしているのだとしたらそれはそれで好都合。
主力部隊が、奴さんの俯いている頭をかち割るでけですが。何か?」
「グラード君。君は戦争を街の喧嘩と勘違いしている。
だが面白いな。私も負けられぬ戦いで少しばかり臆病になっていたようだ。
…わかった。君の作戦に賛同することにしよう」
「他に意見のある者は?」議長が問う。
【会議中】(話をなぞっているだけみたいになってますが暇なので書いてみました)
「…………。やはり、地より離れて居ては…決定打に至らぬか………」
舌打ち一つと共に、一撃をかわされたエンマは落下を始め、
当然、この際にはどうしても隙が出来るわけで。当然敵もそれを狙ってくるだろう。
早速一機がエンマの頭部目掛けて機関砲を連射する。
これは落下中であったということと、腕でガードしたので被弾数こそ少なく済んだが、
次の二機による斬撃ばかりは流石に避ける術もなく、ただ防御に徹することでやり過ごした。
ここまで来てようやく着地する。
だが、呼吸を整える間も無く、地上にいた義勇軍の猛攻がゴウケンに向けられた。
少ないとは言え複数。圧倒的実弾による弾幕に、流石のエンマの装甲も限界を向かえ始める。
しかし。
「敵も計れんか……!!」
装甲の消耗を気にも留めずに敵陣へと肉迫したエンマは、両の手で敵機の頭部を掴み、破砕し。
腕部を引きちぎり、脚部を蹴り砕き。
その様は鬼神の乱舞が如く。次々と義勇軍を薙ぎ倒す。
しかしそれでも確実にエンマは限界に近付き、機体の各所が悲鳴を上げる。
それでもひたすらに拳を振るい、ある程度の余裕が出来たとき、ようやくヴェーゼルが顔を青くして叫んでいるのに気付いた。
『主早く!!聞こえてますか回避行動を!あーいえ、は、走ってください!!間に合いません走って!!!
右に!あれ、左…!?とととにかくあっちに向かって全力で逃げてください!』
「何を………」
次の瞬間、ゴウケンが目にしたのは、もうすぐそこまで迫っている巨大な光。
四発並んだその内の一発が、確実に今自分の立っている位置に向けて飛んできている。
それが戦艦砲撃であることに、ゴウケンは気付いていたかも知れないし、あるいは気付いていなかったかもしれない。それでも。
「――――剣――――」
「………!?………」
突如、頭の中に不思議な声が響く。
優しくも儚げな、温かくも、どこか寂しげな、何処かで、聞き覚えのある声が。
聞こえる度に、叫ぶヴェーゼルやゼクシスの声が遠ざかり、謎の声だけがはっきりと聞こえてくる。
『剣………何者モ恐れズ、何ニも付カズ…たダタだ血塗レた絶対正義が狂気ノ剣よ…』
「………何……者だ………?」
『…貴様ハ「空」…「空」にシテ「鋼」……「鋼」ニしテ「刃」…』
「何者だと…問うている……!」
『……未だ貴様の目覚メは不完全……ダが忘れルな…貴様は剣………“アの子ノ為の”…』
「…………!!…………貴様は…!貴様が…私の……いや…私が……!?」
ゴウケンが言葉を発したのはそこまで。
直後に強大な砲撃が地を抉り全てを焼き尽くし、周囲には何も残らなかった。
そして、「見つからなかった」。
エンマの、残骸の一部さえも。
【ゴウケン、謎の声を聞いた後、戦場より消滅】
>306 >309 (1/2)
>【マリーウェザー(=ヨハンナ)他:アデラ機を義勇軍アルバニアン基地まで運び出す】
目を覚ますとそこは、見慣れた機内であった。
ふらつく体。
意識は必ずしも明瞭ではない。
だが、傭兵としての本能がすぐさま周囲を確認せよと警告している。
「周囲確認……周囲確認……ッ」
状況把握の遅れは時として致命傷になる。
アデラ・グラーフストレームは重い頭と霞む隻眼を半ば強引に働かせた。
左右前方に見慣れた義勇軍機。
後方に見慣れぬ精霊機(クレハ・ラクシュミー)。
流れる景色を鑑みるに、どうやらアデラの乗る精霊機コルバス・コラックスは
山岳都市アルバニアンに後送されているようである。
『 You're still alive 』
闇の精霊フギン=ムニンの無感情な囁きが、朦朧とする精神を現実へ引き戻す。
確か、敵精霊機との交戦中に気を失ったのだ。
うしろを走る不思議な機体は気になるが、なんにせよ、無事味方に回収されたということらしい。
「ふわぁ……助かったぁ……」
アデラは一通りの謝意を周囲の精霊機に述べると、操縦座席に深く身をあずけた。
(2/2)
念のため、ということでアデラが覚醒した後も友軍の彼らがコルバスの搬送を続けていた。
搬送先は、アルバニアンにある精霊機整備工場である。
先ほどの戦闘で影響のあった場所を修復し、戦闘が続くようであれば即復帰しなければならない。
「キミたちのおかげで命拾いしたよ。ありがとう。
ところで戦況はどうなっている?」
気絶中の情報不足を埋めるために現況の確認をしながら、それにしても…とアデラは考えていた。
後について並走する機体(クレハ・ラクシュミー)。
動物を模したその形状に思い当たる節があったのだ。
「なぁ……キミの機体はどこかで見た覚えはあるのだが」
確かにどこかで見たような気がする。
それとも、気絶のショックで記憶が混濁しているだけなのだろうか。
右目に宿る精霊・フギン=ムニンに尋ねても完全な一致はない、ということである。
しかし……。
アデラはひときわ異彩を放つ精霊機クレハ・ラクシュミーの操手に尋ねた。
「キミは一体、どの部隊の所属なのかな?」
そのとき、遠く後背で轟音が響いた。
戦局に何らか動きがあったようである。
【アデラ : 搭乗機コルバス・コラックスと共に後送。修理予定。】
【アデラ : マリーウェザー(ヨハンナ)に所属を質問】
直撃。シュナイダーは砲撃の中のエンマを瞠目する。
大気を切り裂き押し分け、その通り道にあるすべての物を破壊していったエネルギー波はあらゆる生命や物質の存在を認証しない。
ゴウケンの機体も例外ではすまないはず。
直撃後。大気はその失われた空間を復元すべく、真空と化した弾道に押し戻り
上空に回避していた帝国貴族三兄弟の機体を海のうねりの如く揺らめかせる。
『ふむ。お見事』輪唱し焼かれた地表に舞い降りる三兄弟。
「あれほど特化した機体も珍しかったですね。サンプルとして回収したかったのですが跡形もなく消滅したようです…」
オルスランは少し残念そうに言った。
「よし!我々の勝利だ!義勇軍の勇者たちよ!この結束力をもってすれば我々は王国さえも打ち破れよう!」
戦場に響き渡る快活なシュナイダーの声。シュナイダーは続けてみなに問うた。
「とどめをささねばならぬ者は!?」
義勇軍小隊長「みな無事です!瀕死の者はおりません!」
戦場には義勇軍の傷ついた機体が数多く散開していたのだが操者の傷は最大で大腿部の複雑骨折程度。
「まさかあれほどの者が王国に存在していたとは…」
野獣に食い散らかされた様な戦場の有様を見て義勇軍の小隊長は焦燥に駆られている。
「王国の規模や性質を考えればこれから先何が出てきてもおかしくはないだろうな…。
だが安心しろ。その時は我ら三兄弟が剣となり盾となって先陣に立つこととなろう」
シュナイダーたちは機体を飛翔させつつ小隊長に答えると華麗にアルバニアン基地へと帰還した。
【三兄弟:エンマの消滅を確認。義勇軍とともにアルバニアン基地に撤収】
マリーウェザーの操作で、クレハ・ラクシュミーは元の姿に…
いや、前はウサギ人形だったけれど(>221)、
今度はしっぽもふもふのキツネ人形に”戻った”。
光る風が通り過ぎたら、そこにはフリルミニ巫女装束に身を包んだ国籍不明の少女。
傍らにずんぐりとしたコウモリをはべらせ、腕にはキツネのぬいぐるみを抱いて。
>313 アデラ
>「なぁ……キミの機体はどこかで見た覚えはあるのだが」
>「キミは一体、どの部隊の所属なのかな?」
マリーウェザーはアデラの声を聞くと…
虚ろだったその双眸から瑠璃色の雫を滴らせ、アデラの懐へと一直線に飛び込んだ!
「ママー!よかった、だってマリー、ママがしんじゃうかもって、ひぐっ」
マリーウェザーの涙は、半分嘘でも半分本当。
テロリストの片割れかもしれない女を母と慕わなければならない…という認知的不協和が
生じているために、もしかしたら本当に縁があるかもしれない、と思い始めていたから。
マリーウェザーの目に映るアデラの瞳は、
男勝りで気が強かったらしい亡母の肖像画のそれに似ている…ような気が、少女にはした。
困るのはアデラだ。いくらなんでも女なんだから、産んだか産んでないかぐらい分かる。
それに、ファールデル人のアデラとティルネラント貴族のヨハンナでは全く似てなくて。
素性を問うアデラに返ってきた答えもまた、奇想天外より落ちたものだった。
「ママ、おぼえてないの?マリーウェザーだよ?ママの子どもだよ」
ヨハンナが>294で捏造した設定だから覚えているわけがない。
「だって、クレハちゃんのことはおぼえてるんでしょ?
あのね、ママはうまれかわるまえ、魔法王国クリステールの女王さまだったの。
けど、あるひ魔王アクダマーがせめてきて…ひぐっ、ひぐっ」
思い出し泣きの体裁を繕ったけど、本当はそこから先が思いつかなかっただけ。
「クリステールはこのセカイからは”あるいていけないトナリ”にあるから、
ゲートをとおってきたんだけど、でもゲートはもうとじちゃって、それで…」
言葉が続かない。マリーウェザーはさっき(>294)何て言ったのか半分忘れていた!
『(う”…ヨハンナちゃんから殺気が…)』
レゾナンティウスはどきゅんかるまを消費して協力行動を行った!
『姫様は、再びクリステールへのゲートを開き、そして魔王アクダマーを倒すために、
”イノチの花”を探しているのです』
>そのとき、遠く後背で轟音が響いた。
「ひぐっ!」マリーウェザーはアデラにしがみついた。
究極のRPG・義妹TRPGを超える、至高のRPG・義娘TRPGが、今、始ま…
らないだろ、常識的に考えて。
>310 グラード他【会議中】
義勇軍棟梁A「そういう問題じゃない!」
グラードの意見に対し、一人の若い棟梁が口角泡を飛ばした。
議長「どうしたんだね、君らしくもない。落ち着きたまえ」
議長の制止にはっと我を取り戻し、怒気を和らげて反論を続けた。
棟梁A「絶澗・天井・天牢・天羅・天陥・天隙あらば、必ず亟かに之れを去りて、
近づくこと勿れ。『グランドサン&チャイルド』にも書かれていることです。
上下左右を阻まれた穴ぐらなんて、どれだけの損害が出るか知れたものじゃない」
議長「君の言うことももっともだ。しかしね…
アデラ君も言っていたが(>162)、我々に残された時間は少ない。
ティルネラントに体勢を立て直す隙を与えてしまったら、戦局はますます厳しくなる。
そしてグラード君の案の他に策もないのだよ」
棟梁A「しかし、そんな危険な作戦を引き受ける者がいますか?」
見ればグラードが、それなら俺が引き受けると言わんばかりの顔をしている。
そしてそれはグラードだけではなかった。
議長「我々とて決して五里霧中というわけではない。
ファーブニル卿の叔父君より賜った地図(>230)もある。
技師を集め、想定しうるリスクとそれらへの対策の準備もはじめている」
棟梁A「…分かりました。ですが、当家からは地下部隊は出しません。私を除いて」
>314 義勇軍小隊長「みな無事です!瀕死の者はおりません!」
地下道方面の義勇軍が全員生還したことが、作戦会議室にも伝わった。
兵士A「…以上。死者は一人たりとも出ていません」
議長「そうか…。なによりであった」
先ほど対空陣地より悲報が届いていただけに、会議場の皆の喜びもひとしおだ。
対空陣地では、ロンデニオン製の敵航空機を味方と誤認してしまったため、
砲撃手を筆頭に甚大な被害を出してしまった(>287)。
またASLと交戦した基地部隊も無事とは言い難かった(>241)。
なにせ相手はデータ収集のためなら人の命などなんとも思わない人間で、
しかもその機体は義勇軍の精霊機を一撃で潰す程の攻撃力を持っていたから(>36参考)。
【マリーウェザー(ヨハンナ)→:娘と呼んでねお母さん(S県月宮的な意味で)】
【義勇軍:グラード他の提案を受け、10フィート棒の用意など地下道攻略準備を続行】
>316
>棟梁A「しかし、そんな危険な作戦を引き受ける者がいますか?」
>議長「我々とて決して五里霧中というわけではない。ファーブニル卿の叔父君より賜った地図もある。
>技師を集め、想定しうるリスクとそれらへの対策の準備もはじめている」
「話は決まった!もし地下部隊の志願者が少ないのであれば俺も参加しましょう!」とグラード。
=戦艦スレイプニル船橋=
「よ!艦長さん」
グラードは少ない時間を利用し顔見せのつもりで自ら船橋に出向くとサマウス艦長と挨拶を交わす。
船橋のクルーたちは実戦でのエンマへの砲撃データの分析と今後の改善点などの話し合いで慌しくなっていた。
そして数分間戦術などの情報交換をしたグラードはサマウスに少しの違和感を感じる。
「艦長。あなたは迷っておられるな?」神妙な顔つきで尋ねるグラード。
「…見破られましたか…。正直私はこの戦いに疑問を感じています。
貴族たちのようにこの戦いを聖戦と考える事は出来ません。
出来ることならば戦争の被害は最大限に抑えたい。私はそう考えています」
艦長にしては若干若いその男の軍人らしからぬ意外な披瀝にグラードは内心驚いていた。
純粋すぎる。艦長がそのような逡巡を戦場で持っていては多くの兵士の命とりになることだろう。
「迷いは禁物ですぞサマウス艦長。ともに王国軍を駆逐することだけに集中いたしましょう!」
そう言葉を返しグラードは焦燥を残したままスレイプニルの船橋から去ることになる。
上の文で「戦争の被害は<敵も味方も>最大限に抑えたい」
『敵も味方も』が抜けてしまいました。
戦艦スレイプニルの砲撃音。
「ひぐっ!」と小さい悲鳴をあげアデラにしがみつくマリーウェザー。
戦況を変えた砲撃から約一日。
ロンデニオンとアルバニアンの中央地点では領域を確保するため展開された両軍の地上部隊が激しい戦闘を繰り返している。
グラードの予言は見事に的中した。
正攻法に展開された義勇軍をロンデニオンの防衛部隊も専守防衛のままでは抑えきれなくなってしまっていたため
目には目を歯には歯をというべく、正攻法で来る敵を正攻法で受ける戦法へとその戦術を変貌させていたのである。
同時に義勇軍の地下部隊も作戦を遂行中。義勇軍の航空部隊も戦場に展開開始。
そしてアルバニアン基地からは戦艦スレイプニルが発艦する。
「迎撃圧縮砲、精霊砲、精霊炉、各システム正常、異常無し。
サーボモーター、空圧シリンダー異常無し。各部アクチュエーター正常作動」
「帝国戦艦スレイプニル…発進!!」
艦長の命令とともに超ド級の精霊炉に生命力が漲り艦尾の八基の噴口からは推進力に転換された精霊力がほとばしる。
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義勇軍の地上部隊はロンデニオンのブ厚い城壁の向こう側からくる防衛部隊の援護射撃に苦戦を強いられていた。
航空部隊も先の王国輸送部隊が運搬して来た対空砲の嵐で迂闊に空爆を実行出来ない。
帝国貴族三兄弟の一人ティアミスは血路を開くために突貫。
対空砲を破壊すべく空から聖なる光弾を放ったものの光弾はロンデニオン外周に張り廻らされている魔法障壁によって打ち消されてしまう。
見ればロンデニオン市街の中央に禍々しい大型の精霊機が一騎。その背中からオーロラのように放出されている魔法障壁の源。
遠距離攻撃を無力化する魔法障壁の存在を知ったティアミスは大型の敵精霊機を破壊するため単独で勝負を挑んだものの
市街に伏兵していた防衛隊の集中砲火を浴び粉々に散ってしまった。
「兄上が逝ってしまわれたぁー!」号泣するオルスラン。
「く!!スレイプニルに砲撃を要請する!!」とシュナイダー。
すぐさまスレイプニルの主砲から発射される光の熱線。
それは敵精霊機ではなくシュナイダーとオルスランの機体を一瞬で蒸発させた。
二人は死を実感することもなくこの世界から消滅したことだろう。
艦橋で静かにひとりごちるサマウス艦長。
「戦いの火種となっているもの…それは義勇軍だ…。今ここで私は迷いは捨てた。王国のクローディアス殿の意見に私も賛同しよう。
義勇軍の反乱さえなければ、この世界には王国によって統治され平和な世の中が訪れるのだ…」
【義勇軍主力部隊とロンデニオン防衛隊の本格的な武力衝突開始】
【帝国貴族三兄弟。シュナイダー、ティアミス、オルスラン、戦死】
【戦艦スレイプニル王国側に寝返り】
【ロンデニオン市街中央付近で魔法障壁を発生させる王国の大型精霊機出現】
ビチィィィィンッ!!
ホロウ・クロウラーのコクピット内に不協和音が鳴り響く。
シュヴァルツ・ヴァルトも同じだった。
「な…なんだ?ビックリした…」
『エルトダウン、鉄の翼との通信が途絶えた。ジャミングが入ったか、障壁が展開された可能性がある』
命の綱が切れた。エルトダウンは直感的にそう思った。
鉄の翼との通信が途絶えたと言う事は救助要請も出来ない。まして指令すらも受け取れないのだ。
エルトダウン達は立ち往生してしまう…ハズであった。
"ま、こーいう時の為に非常時用マニュアルが配布されてんだがな。これは一応非常時だろ"
そうして座席裏に積み重ねられた書籍の一番下から黄色い表紙の冊子を取り出した。
《司令部が非常事態時と認めた場合、もしくは即座に回復不可能な混乱時にのみ閲覧と記載されている権限を特別に許可する。
1、全ASL所属人員の武器の携行および使用、障害との交戦。
2、全ASL所属人員は常にもっとも効率的な行動を考え独断で動く事。
3、マナーやエチケットは守ること。
4、電気の使い過ぎに注意しましょう。
ASL非常事態対策委員会》
「なんて雑なマニュアルだ…ま、ASLらしいといえばASLらしいかな。
というわけだ、ファラーシア、サイアニス。独断で動いてもいいらしい」
エルトダウンは満面の笑みを浮かべながらレバーを動かして前進しだした…
>315(1/2)
「意義あり!」『 Objection 』
アデラは半ば無意識的に細く長い指先をつきつけていた。
彼女の右目に宿る精霊フギン=ムニンも、その行動に同調している。
対象は無論、マリーウェザーことヨハンナである。
「諸君、世界は矛盾で満ちている!」
♪追求(GBA 逆転裁判I)
>「ママ、おぼえてないの?マリーウェザーだよ?ママの子どもだよ」
「なるほど。証言によれば、私がキミの母親であるという」
アデラは左目を瞑って腕を組むと、右手の人差し指を上下に動かし始めた。
一種の癖である。
そして次の瞬間、カッと目を見開くと、語気を強めて言い放った。
「しかし、マリーウェザー嬢!
それはありえないことなのだ。 その理由というのは……」
■次の中からキミの考えを選ぼう!
ア1.まだ結婚してないから
2.まだ○○だから
3.そもそも、子供を生めないから
>315 (2/2)
ア3.そもそも、子供を生めないから
しおらしく目に涙をためるマリーウェザーに向かって、アデラは攻勢を開始した。
「理由は簡潔にして単純……私の子宮は機能していないのだ!
だから、キミのような子を生むことは不可能!」
画面が揺れた。聞いていた周囲の義勇軍兵士も困惑しているようだ。
「グラーフストレームの家系において、石女は男と同じ扱いを受ける。
つまり、外で稼がねばならん」
ため息まじりのその口調はもはや愚痴に近い空気をはらみだしていた。
16歳で嫁にいき、19歳までに子供はできず、精霊による検査で事実が判明したとき。
若かったアデラ・グラーフストレームは絶望したものだ。
だが、今は違う。
もう花嫁として明るい未来を夢見た女は死んだ。
一傭兵としてその義務を果たさなければならない。
目の前の少女が侍らせている精霊は強力だ。
精霊機の発明は、このような子供ですら脅威となる世界を作ったのだ。
年少者は油断を誘う。彼女がティルネラントの放った埋伏の毒でないとは言い切れない。
>「だって、クレハちゃんのことはおぼえてるんでしょ?
> あのね、ママはうまれかわるまえ、魔法王国クリステールの女王さまだったの。
……あ、転生前の話か。
気づいたときにはもう遅かった。
アデラは不必要な自分の身の上を語ってしまったことになる。
「……(イラッ)」
アデラはマリーウェザーとレゾナンティウスの物語をよく吟味した上で、次のような行動にでた。
・左の頬と右の頬を引っ張ってムニムニする
「オマエの口にゲートをオープンしてやろうか!
軍宿舎まで来てもらうぞ。身元を調べつくしてやるーッ!」
【アデラ : 取り調べのためマリーウェザーを宿舎へ連行の構え】
>311
轟音が響いた。
ルーシ鉱山の付近から、もうもうと黒煙があがっている。
先ほどまでアデラとゴウケンが交戦していた地点である。
「空中戦艦よりの艦砲射撃……。ローガンブリア騎士団、とうとう動いたな」
神聖ローガンブリア帝国とティルネラント王国の戦争が始まってしばらく。
国境線の中央部では各国の主力がぶつかり合う熾烈な戦いが繰り広げられていた。
しかし、ロンデニオンを含む帝国北東部ではそうならなかった。
帝国には、王国に匹敵するほどの軍事勢力がなかったのである。
そこで戦略的に中央より劣る僻地には、帝国の有力者たちを集めた義勇軍を結成させ、防衛に当たらせた。
アデラの所属する神聖ローガンブリア帝国義勇軍もそのひとつである。
「中央もこちらも戦局は変わりつつあるということか」
ロンデニオンは義勇軍の本拠地であった。
拠点が落とされたことで、帝国主力のローガンブリア騎士団が戦艦の派遣を決めたのではないか。
アデラはそう考えた。
「あの規模の空中戦艦があればロンデニオンへの正面攻撃にも期待がもてる。
この追い風、逃すわけにはいかない…」
巡ってきた勝機。知らぬ間に舞い降りた切り札。
アデラは長い黒髪をなびかせながら、遠く浮かぶスレイプニルを見上げる。
だがこのとき、一体誰が知りえたであろうか。
8本脚の軍馬が引き起こす恐るべき事態のことを。
>322【アデラ : 取り調べのためマリーウェザーを宿舎へ連行の構え】
>・左の頬と右の頬を引っ張ってムニムニする
>「オマエの口にゲートをオープンしてやろうか!
> 軍宿舎まで来てもらうぞ。身元を調べつくしてやるーッ!」
強引に口を広げられながらも、マリーウェザーは請願の声を挙げた。
「ほんは、はひーはいははいほはほ(そんな、マリーはいらない子なの)?」
けれどその声がアデラの心に届くはずは全くなく、すぐさま数名の兵士に取り囲まれて。
普段なら即逃げようとするだろうマリーだけど、
自分で作った舞台に飲み込まれていたがために、気づいた時には既に囲まれていた。
…それはレゾナンティウスにとっては、かえって好都合だったかもしれないけれど。
結局、アデラの視界から去るまで、マリーウェザーは芝居をやめなかった。
マリーウェザーが連行されたあとも一人の兵士がその場に残っていた。
兵士A「あの…アデラさん…今聞いた話は、墓場まで持って行きますから」
青い顔をしてそう言うと、彼女もまた、走ってその場から去って。
*
そんじょそこらのゴロつきと違って義勇軍はノブレス・オブリージュに満ちている。
当然マリーウェザー一人を超兄貴が取り囲むなどということもなく、
護送は銃後部隊の女性兵士が担当した。
…一つ付け加えておくなら、最近参院議員になったニュー速公認アイドルだって
女の子である。1・2・3・4・ぎゆうぐんー♪
宿舎の一室までマリーを連れ行くと、
兵士たちは見張りの一人を残して元の持ち場へ戻った。
そこは取調室には似つかわしくない、まるで貴族の屋敷の客間のような部屋。
「たいくつ…」
小ぎれいな部屋ではあるけれど今ひとつ見るものが足りなくて。
見張りの兵士はどう見ても話の合いそうなタイプじゃないし。
しばらくして、貴族の従僕みたいな十代半ばらしき青年が”取調室”に入ってきた。
青年「ごめん、待たせちゃってね。…はは、あっはっは!」
「(いったいナニがおもしろいんだろ…)」不機嫌そうな顔を隠しきれないマリー。
青年「まいったなー、キミみたいなかわいい子が悪い魔法使いだなんて
「わたしはまほー王国クリステール第二皇女だよ!わるいまほーつかいはあっちなの」
青年「あー、ごめんごめん」
青年は大胆にも、マリーの頭を撫でてきた。
「ちょっ、ちょっと!レディのあたまをいきなりさわるなんてシツレーだよ!」
青年「ごめんごめん、キミの口って飼い猫の口とそっくりでさ、
キミと同じでまだ子猫なんだけど、すっごくかわいいんだー」
その表情を見る限り、青年が猫をとてもかわいがっていることが分かる。…猫を。
「子ども子どもって、マリーはこのまえ12才になったんだよ!もうりっぱオトナだもん」
青年「えっ、まだ12才なの?すごいなー。僕なんか、15のとき子どもなのに
戦場に出されたけど、足なんかガクガク震えちゃってさ、すっごく怖かったよ」
「15才ならもうオトナでしょ…」
青年「アステールならそうかもしれないけどさ、僕らのところではまだ子どもなんだよ」
「アステールじゃなくてクリステール!」
やっぱりか、と青年は思った。ローマのユスティニアヌス法典では女子の成人年齢を12、
男子の成人年齢を14歳としており、旧教勢力の強い地域では今もこれを基準としている。
とすると、芝居でなければ、目の前の少女は旧教勢力の強い地域の出なのだろう。
青年はここまで推理したもの、それだけでは該当する地域が広すぎて特定できない。
この青年、見た目こそ十代半ばだけど、実際には二十を超えている。
軽い口調や人懐っこそうなフェイスとは裏腹に、諜報と暗殺を得意としていた。
男性としては小柄な体躯も、物影に隠れながら仕事をするには好都合。
青年「ごめん、僕ってさ人の名前とか覚えるの下手でさ、いつも苦労するんだ。
間違えたらまた言ってくれると助かるよ…」
青年はまるでわんこ系キャラみたいな、バツの悪そうな表情で応えた。
「(このヒトちょっとかわいいかも…v)」
青年「友だちから聞いたんだけどさ、キミってすごく歌が上手いんだって。
ちょっと聴かせてもらってもいいかな?…ダメ?」
「うゆ、それはシカタないなー…。一日一ゼンっていうしねっ!」
言葉とは対照的に、嬉々として歌い始めるマリーウェザーであった。
【宿舎へさらわれて、遊んでもらえるvと思ったら取り調べられていたでござるの巻】
326 :
名無しになりきれ:2010/07/17(土) 14:29:37 O
はい
頭痛が痛い……間違えた
頭痛がして来た。マリーウェザーさん(どう考えてもヨハンナさん)とアデラさんの会話を聞いていると
こんがらがってきそうだ
彼女の想像力はいったいどうなっていうのか?いや、最早あれは真実なのか?
アデラさんは本当に前世での彼女の母親なのか?
>「理由は簡潔にして単純……私の子宮は機能していないのだ!
だから、キミのような子を生むことは不可能!」
>「グラーフストレームの家系において、石女は男と同じ扱いを受ける。
つまり、外で稼がねばならん」
彼女もついつい、相手をしてしまい余計なことを口にしてしまったようだ
そんなことより、アデラさんは結婚していたのか!!
別のことに驚いてしまったけど、確かに彼女の年齢で結婚していない方が不自然なんだけど、
「アデラさん、とりあえず今はゆっくりしましょう。戦闘は他の人に任せて、次に備えましょう」
彼女にそうつげ、自分は一足先に宿舎に戻り、取調室に向かった
部屋に近づくにつれて、騒がしい声が聞こえてくる
間違いなく彼女だ
扉の前に立つ、彼女の歌が聞こえて来た
僕は苦笑いを浮かべながら、ノックする
「義勇軍所属のレオニール・ルラン・ファーブニールです。彼女に面会をしたく、馳せ参じました」
【レオン:ヨハンナが取り調べされている部屋に彼女に会いに来た
フェニキア:イグニスの中で待機している】
___ゴウケン消失と同時刻___
ロンデニオン防空網から更に上空__
黒を基調とした色彩、六角形の砲身の長筒を逆さまに両側面に三角形の翼がある
ファールデル教国に存在する「空飛ぶ鉄砲」もとい
強襲迫撃艇「サイカ」である。
この砲身の最奥_格納庫では既に甲冑姿の精霊機が今か今かと
「発射」の刻を待ちわびていた
「あの馬モドキ…臆して見えたんだがなぁ…
それとも赤い奴が不調だったってか?」
独り言の最中通信が飛び込む
『そろそろこちらの射程圏だぞ?準備はいいかイオよ』
イオと呼ばれた男の目つきが代わりその瞳は底光りし、不敵な笑顔をたたえた
まさにその刻
>>319の光景を偵察機からの映像が届いた
『フン…同情にも値せんな
イオよ、皮肉にも今のスレイプニールの砲撃で進路が開かれた…』
その言葉を遮り
「あんの馬モドキが!!兄者!」
『フッ…撃ち方用意…』
六角形の砲身の内側が精霊力により最奥から白く輝く
その光が先端にまで満たされると同時に
『撃て!』
大気が揺らぐのではないかと思われるほどの轟音が響き
六角形の銃口からは光の軌跡を残すのみ
機体の方は既に「サイカ」から見てスレイプニールの直ぐ真後ろに位置し
白刃をすでに振り抜いた状態で静止したまま、イオは呟いた
「…事情はまるっきり知らねぇが…旗色変わるや否や
『後ろから』味方を撃ちやがるとは恥を知らんのか!」
そう言いながら右手の太刀…通常の倍の厚みと長さを持つであろう
長物を血を払うかの如く振り下ろすと
スレイプニールの艦橋部分に斜線が入り、ずり落ちていく…
【イオ:依然スレイプニールの側にいる】
『エルトダウン、まずはこのジャミングあるいは障壁の元を倒さなければない。
障壁の展開を辿っていったんだが、ロンデニオンのちょうど真ん中から展開されている』
「ロンデニオンの真ん中からここまで障壁を展開できるとはね…かなりの大型と見ても良さそう…かな?」
エルトダウンは現在位置からロンデニオン中央への移動距離とそれにかかる時間を計算している。
"ま、連中もタダじゃあ通してくれねェだろうなア。妨害も受けるだろうぜ。高速でつっきれば地獄への片道切符なんだがな"
ホロウ・クロウラーの機動性をもってすれば、ロンデニオン中央部への接近など容易い物だ。
だが、防衛部隊も侵入者を黙って見過ごすわけもない。例えロンデニオンの中央に接近できたとしても、帰りは無事に帰れる保証はない。
「どうしたものか…ふーむ…」
エルトダウンが悩んでいると、突如轟音が響き渡った。
遥か上空には一隻の艦。だが、ASLの鉄の翼とは似ても似つかない、まさに戦闘用の艦艇だった。
巨大な砲口。鉄の翼は全翼機なのに対しもっと逆の攻撃的な翼。
『あれは…サイカだ。ファールデルもあんな兵器を投入してきたのか…
だがエルトダウン、この期に乗ずるべきだと私は考えるが?』
サイアニスの言うとおりである。サイカの砲撃によって地上は大混乱なハズ。
防衛部隊もサイカにしか目は行かないだろう。
「そうだね…じゃあ、行こうか。あんなのがあったんじゃ鉄の翼も危ないしね。多分、空域的に近いだろうし」
エルトダウンは鉄の翼がサイカに補足されていない事を願った。
『大丈夫だ。鉄の翼とてヤワじゃない。迎撃手段もある。いざとなれば黒い風を使えばいいんだ』
そうしてエルトダウンとサイアニスはロンデニオンの中央へむけて移動し始めた。