【TRPGの】ブーン系TRPG【ようです】

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1名無しになりきれ

はじめに

このスレッドはブーン系とTRPSのコラボを目的とした合作企画であります。
詳しくはhttp://jbbs.livedoor.jp/internet/7394/
をご覧下さい。

一応のコンセプトである『登場人物はAAをモチーフに』はどんなAAでも問題ありません。
でないとブーン系に疎い人はキツい物があるでしょうから。

登場人物は数多の平行世界(魔法世界やSF世界等)から現代に呼び寄せられた。
或いは現代人である。と言う設定になっております。

なので舞台は現代。そしてあまり範囲を広げすぎても絡み辛いと言う事から、
ひとまずは架空の大都市としますです。

さてさて、それでは楽しんでいきましょー。




参加用テンプレ

名前:
職業:
元の世界:
性別:
年齢:2
身長:
体重:
性格:
外見:
特殊能力:
備考:
2三浦啓介 ◆6bnKv/GfSk :2010/02/10(水) 21:04:44 0
石製の祭壇を前に、一人の男が佇んでいた。

彼の眼下では光輝の描く花莟が煌々と、周囲を支配する宵闇を退けていた。
辺りの地面は一体どれ程の時の流れに削られたのか、随分と傷や雑多な植物に満ちている。

けれども光華の苗床たる祭壇だけは一体何故だろうか、秩然とした姿を保っていた。

足元から立ち昇る穏当ならぬ風に白衣の裾をはためかせ、男は口元に笑みを湛えていた。
手掛けられる事が無くなってどれだけ経つのか、男の顔は伸びっ放しの黒髪にその殆どを覆われている。

その奥で、彼は狂気染みた狂喜の笑顔を浮かべていたのだ。

「さあ来い、異界の住民達よ」

言葉を皮切りに、祭壇がより一層の輝きを放った。
臨界にまで達した閃光は、純然たる漆黒を湛える夜空へと昇天していく。
一拍の静寂を挟んで、幾条にも束ねられた稲妻の如き光が、彼方此方へと降り注いだ。

遥か遠方の空を見上げ、男はもう一度喜色を表情に宿らせる。
現代へと呼び出された異世界の民に、まだ姿形すら知らぬ彼らに。
自らの悲願を叶える期待を寄せて。

「もうすぐだ。もうすぐで僕の、そして……」

彼が紡ぎだす声は最後、役目を終えた祭壇の崩落する音に呑まれ、宵闇へと消えた。
3三浦啓介 ◆6bnKv/GfSk :2010/02/10(水) 21:06:11 0
名前:三浦啓介
職業:考古学者
元の世界:現代の世界
性別:男
年齢:25
身長:170くらい
体重:50くらい
性格:厭世家
外見:伸ばしっ放しで顔の殆どを覆い隠す頭髪と白衣
特殊能力:考古学の知識、採掘物のコレクション、奥の手
備考:異世界の人物を現代へ呼び寄せた。目的等は作中で


よろしくおねがいしまーす
4尾張証明 ◇Ui8SfUmIUc:2010/02/10(水) 22:01:06 0
信号は青に

一拍置いて、周りの雑踏が一斉に対岸に向かって動き出した。俺も押し流されるように同じ方向に歩き出す。信号機から、音の割れた民謡が鳴っている。

違和感

よく見知った交差点のはずだが、何かがおかしい。

(はて、何がおかしいのか。)

考えを巡らせながら歩いている内に、対岸に着いた。一緒になって渡ってきた銘々は、銘々の目的とする場所へ迷うことなく向かって行く。つられて歩き出そうとなり、立ち止まる。立ち止まったまま、動けない。どこへ行けばいいのかわからない。

青信号をギリギリで駆けてきた女が、背中にぶつかった。俺はとっさに謝り、しかし女はただ迷惑そうに、いぶかしげにこちらをちらと眺めただけだった。
違和感、記憶がない。俺はなぜここにいるのか、どうやってここに来たのか、何処へ行こうとしていたのか……?

ぐるりと周りを見渡す。

住み慣れた街の物々しい雰囲気を、くたびれたざわめきに変えたような街がそこにあった。
5尾張証明 ◇Ui8SfUmIUc:2010/02/10(水) 22:03:54 0
(建物の形は同じなのか)

ふらふらと辺りを歩き回りながらぼんやりと気付く。見慣れたビルディング、見慣れた駅。しかし、

(入ってる店が違う。駅の名前も)

どうしてこうなった、と俺は首を振った。夢でも見ているのか?それともテロ屋に薬でも盛られたか。
そう言えば、さっきから喉の調子がおかしい。炎症を起こしたように、舌の付け根辺りがじりじりと痛む。
反射的に周りを見渡した。懐に手を入れて、腋に吊ったM10に中指が触れる。

顔、顔、顔。群衆の中で、それらしい素振りを見せる奴はいない。

(まったく……)

杞憂だったらしい。懐から手を抜き、ごまかすように服を叩く。この世の中はどうも平和で、そしてただやたらと騒がしい。
本屋にでも行くか、と俺は再び歩きだした。記憶通りの所に有るとも思えないが、まあ、ふらふらしていればいずれはかち合うだろう。


夢であれ何であれ、情報が必要だ。知らないって事は恐ろしいことだから。いつもそう思うのだ、職業柄。

(ここは何処の細道じゃ、か)
再び聞こえ始めた民謡を背に、あてどなく俺はさまよい始めた。
6尾張証明 ◇Ui8SfUmIUc:2010/02/10(水) 22:04:52 0
名前:尾張 証明
職業:首都警察警察官(公安一課 左翼担当)
元の世界:戦争がもう少し長引いた現代日本
性別:男
年齢:37
身長:平均的(170cm前後)
体重:60kg前後
性格:厳格(生真面目)
外見:ガッチリとした体型、黒いスーツの上によれよれのダッフルコートを羽織っている
特殊能力:特になし 平行世界に飛ばされてからは聾唖になってしまう(本人は喋ってるつもりでも音になっていない)
7尾張 証明 ◇Ui8SfUmIUc:2010/02/10(水) 22:05:11 0
名前:尾張 証明
職業:首都警察警察官(公安一課 左翼担当)
元の世界:戦争がもう少し長引いた現代日本
性別:男
年齢:37
身長:平均的(170cm前後)
体重:60kg前後
性格:厳格(生真面目)
外見:ガッチリとした体型、黒いスーツの上によれよれのダッフルコートを羽織っている
特殊能力:特になし 平行世界に飛ばされてからは聾唖になってしまう(本人は喋ってるつもりでも音になっていない)
8シエル=シーフィールド ◆z3LBhHM1sM :2010/02/10(水) 22:11:46 0
「う……ん?」

見渡す限りの闇の中で少女は目を覚ました。

「ここは…?」

確か、森で魔法の訓練をしていた筈。
と少女は自らの状況を整理しようとする。

しかし、いくら考えても何故自分がここに居るのか。
それが分からない。

「暗い…」

少女は右手を空に翳した。
空間の組み換えと、塵の急激な酸化。
そのイメージが右手を通して具現化する。

空間には轟々と燃える炎が浮かび上がっていた。
炎は漆黒に溢れていた空間を照らし、その輪郭と少女の姿を浮かび上がらせる。

小さな少女はその身に不釣合いな重々しい鎧を纏っていた。銀色のそれは炎の光を受けて橙に光っている。

「……?」

開けた視界に映ったのは見た事の無い四角い調度品の数々。
その一つ一つが炎の揺らめきを反射しぎらぎらと輝いている。
9シエル=シーフィールド ◆z3LBhHM1sM :2010/02/10(水) 22:12:31 0
今の状況は、分からないことだらけだ。
幸いなのは、鎧と剣は装備していること。

鎧は王宮魔法騎士に与えられる安物の支給品であるが素っ裸で突っ立っているよりは幾分かましだろう。
自身の身の丈程ある得物の巨大な剣はすぐ側の地面に物々しく突き刺さっていた。

「…怖いなあ…」

照らされるといえど暗い場所と知らない場所は苦手だ。
何時魔物に襲われるかわかった物ではない。

「うーん…」

ここから動くべきか否か。
本来なら王宮の救助を待つべきなのだろうが、どうもこの場所にはそれは来そうに無い。

恐らくは、自らの居た場所とは文化が違うのだろう。
とすれば自分に対してそこの人々が友好的とは限らない。

「考えても仕方ないかな……」

ふう、と溜め息を漏らして少女は歩き出した。
まずはここがどこなのかを知らなくてはならない。
そして、何故自分がここにいるのかを。

――小さな少女は闇を歩く。

  ――はてさて、先に待つのは希望か絶望か。

    ――1つの物語は、こうして始まった。
名前:シエル=シーフィールド
職業:魔法騎士
元の世界:中世に似た剣と魔法の世界
性別:女
年齢:107
身長:132cm
体重:35kg
性格:年齢のわりに無邪気だが比較的落ち着いている
外見:ちっちゃい、しかし乳はでかい。普段は分厚い鎧を着込んでおり、その様はあまり良くわからない。巨大な剣「クレイモア」を所持。

特殊能力:各種自然を操作する属性魔法。
       理論体系化されており、各種属性と九つの段階が存在する。
       上位になるほど長い詠唱が必要になったりするが彼女はあまり上位魔法を使いたがらない。

備考:特殊な種族であり、年齢を重ねても身体的な成長は無い。因みにまだ種族の中では若いほう。
    現代の機械技術等に一々驚く少しうるさい子。
    ロリババアと言われるとキレる。

改めて、皆様よろしくお願いします。
11名無しになりきれ:2010/02/10(水) 23:07:14 0
ここも規制されてるかな
12名無しになりきれ:2010/02/10(水) 23:10:39 0
あ、されてない
すまん、ちょっと詳細みてくる
13名無しになりきれ:2010/02/10(水) 23:14:23 O
ブーン系とのコラボ企画の場所はここか!!

14名無しになりきれ:2010/02/10(水) 23:15:09 0
そうだ!!
15名無しになりきれ:2010/02/10(水) 23:19:50 O
>>14
把握した!
おもしろそうだから参加したくてきた。
とりあえず、詳細を熟読して来るけど……
AAをモチーフにする場合、どのAAかをあらかじめ公開した方が良いのん?
16名無しになりきれ:2010/02/10(水) 23:24:43 0
>>15
公開してもいいし、内緒にしてもいい。あとは避難所で聞いたほうがいいかも。
17名無しになりきれ:2010/02/10(水) 23:24:43 0
>>15
避難所で聞いてくれ
18名無しになりきれ:2010/02/10(水) 23:27:06 O
>>16-17
ありがとう。
なら、細かい質問はあっちでしてみる。
スレ汚ししてすまない。
19タチバナ ◆Xg2aaHVL9w :2010/02/11(木) 00:22:06 0
『精霊指定都市センダイ』は、超超超高度に発展して魔法と見分けのつかなくなった純然たる科学の賜物である。
世界を丸ごと一つの都市として一括管理するその環境操作の極致は、現実すら捻じ曲げて人々の暮らしを豊穣たるものとした。
空は青く、草木は映え、水は澄み、人は荒む。生きとし生けるものは皆が己の現実《リアリティー》に依ってのみ生を繋ぐ世界。

「……とまあ、僕ぁそういうところから来たんですよ」

「あーはいはい、政令指定都市宮城県は仙台市から来たのね。よくわかります。それで、銭湯の女湯にスーツのまま入ってた理由は?」

「僕のスーツは丸洗い可の優れ物でして、ついでに僕自身も丸洗い推奨な優れ者でして。これはもう一緒に洗っちゃうしかないかなと」

「……男湯で洗えよ」

「はっは、やだなあ。――汚いじゃないですか」

「お前女にどんな幻想持ってんの!?」

がしゃーん。

無骨で露骨で粗忽な音をがなり立て、無銭入浴及び不法侵入及び公然猥褻容疑者、タチバナ(仮名)は拘置所収容の大岡裁きと相成った。
この街に一つだけある昔ながらの公衆浴場、その女湯に突如として湧いて出た彼は、着のみ着ままに拘束され、通報された。
オールバックにスーツ、腕にはアームカバー着用と如何にもな官僚姿に当直の巡査官は最初こそ慇懃な態度で事情を聴取していたが、
タチバナの発言に一貫性が見られず身分証もこの国で通用する物ではなかったために次第にぞんざいな処遇へと掌を返した。

五月だし。脳味噌の気温が例年より三割り増しな人間扱い。言うこと為すこと戯言妄想ずんばらりである。
どっから湧いて出たかという疑問があるにはあったが張本人が人畜無害極まりないため不問、裁判を待てとのお達しだった。
薄いベッドに腰掛け、ずぶ濡れのスーツの尻から水分がベッドを浸潤していくのを感じながら、タチバナはようやく現状を認識し始めた。

(はて……僕は何故『オンナユ』とやらにいたんだろうか。確か役所で今日の仕事を始めようと"精霊"で書類整理を――)

そこから先の記憶がない。気が付けば湯煙香る桃源郷で着衣水泳を敢行していた。
『オンナユ』と呼ばれるあの場所はどうやら絶滅したはずの公衆浴場であり、股の間に息づくご子息保持者は入場を頑として断られるらしく。
"精霊"による自己防衛を図る間もなく連れ去られてしまった。そうして鉄格子の中で彫像と化している次第である。

(うーむ、浴場もそうだしなんだろうこの文明が2、300年ぐらい遅れていそうな前時代的過ぎる就寝設備は。酸素サーバーも催眠光灯もないのか)

縦縞に切り取られた狭い窓から外を見る。調整されているはずの空はどんよりと暗く、吹きすさぶ風は確実に肺を削りそうな臭気を含んでいた。
いつまでもこんなところに拘留されていたら角膜と肺に悪い。どちらも移植が難しく、金もかかるため、タチバナは何よりもその二つを大事にしていた。

「とりあえず空気の良さそうなところへ行こうか。どうやらここは『センダイ』とは違う世界らしい。そういう世界もあるとネットに書いてあったから間違いない」

誰ともなく虚空へ言葉を放つと、山びこの代わりに拘置室の軋みが返事をした。天井が歪み、果実のように盛り上がる。
ミシミシとコンクリートが軋む音をさえずりながら、一定の質量にまで成長した盛り上がりは結露した水滴が落ちるように天井から切り離された。
ぼとり、と地面に落下する過程でコンクリートの果実はその身をひとりでに彫刻していき、数秒のちにそこにあったのは石で出来た巨大な人形である。
それはまさしく彫像と表現するのが正鵠。二メートルほどの身長はその四半分を頭部に費やしている。首から下は手足の短い、幼い少女の身体。
最後に目の大きな顔面が掘り込まれると、それは完成した。長身のタチバナより頭二つは背の高い、遠目には可憐な幼女の彫像。

「やあ、アクセルアクセス。キミが別状なく顕現できたということは、やっぱりここは別世界なんだろうね。拘置所に顕現阻害装置がないなんて」

『そのよーだねぇ。ところでじんせいはつのたいほはどんなきもち?ねえどんなきもち?』

「なかなかどうして興味深いね。とりあえず出ようか、せっかくだから脱獄気分を味わうために――壁ぶち抜いて行こう」

『あいさー』

幼女の巨像――アクセルアクセスがコンクリートの拳を振りかぶる。拘置所の地上三階に位置するこの部屋で、逃亡の鉄槌は敢断なく振り下ろされた。
轟音が大気を砕き、破壊の瀑布が外気を穿つ。粉塵満ちる壁面の欠落から、一体の彫像と一人の男が飛び立った。
こうして世界を違えた男の飛行系逃避行は幕を開ける――。
20タチバナ ◆Xg2aaHVL9w :2010/02/11(木) 00:27:26 0
名前:タチバナ
職業:精霊行使調律官(公務員)
元の世界:精霊指定都市センダイ(世界をまるごと一つの都市に統合。環境操作の極致)
性別:男
年齢:23
身長:長身
体重:痩躯
性格:饒舌家
外見:オールバックにスーツ。腕にはアームカバーを着用
特殊能力:精霊行使術――万人に宿る思念体型事象干渉デバイス"精霊"を駆使して生活に利をもたらす術。スタンド的な何か

備考:高度に発展した科学が魔法と見分けのつかない世界。
    各人が"存在"にインストールしたデバイスによって現実を好き勝手に捻じ曲げる為、現実に対する観念が薄い。
    人類みなが慢性的なゲーム脳に侵されている状態

精霊・『アクセルアクセスVer2.3.1』――基本形態は幼女。本体の影響をうけてかよく喋る。空とか飛べる

精霊とは――
スタンドとアルターと重機を足して二で割ったもの。意志の力によって『顕現』し、飛んだり跳ねたり殴ったり、物理法則無視したりする。
普段は思念体の形で存在しており、現実に影響を及ぼすには『顕現』しなければならない。
なお、『顕現』する際には顕現体を構成する材料が必要であり、専らその辺の資材や壁材を拝借している。
コンクリートを使って『顕現』すれば精霊の身体はコンクリートであり、水や木材もまた然り。
21■■■■ ◆b413PDNTVY :2010/02/11(木) 01:32:45 O
走る。
地獄絵図のような戦場を少女は駆けてゆく。
無数に転がる骸は全て、苦悶に歪み安らかな死を遂げたものは存在しない。
そんな致死量超過の戦場を少女は白き純白の乙女は駆け抜ける。
その供は十二の獣。かの者達はその命尽きたとしてもなお闘い抜く。
それは一つの生き様だったのかもしれない。
正義の為に、美しいものを守るために、自らをかなぐり捨てて走り抜けるエゴイズム。

「行くわよ! 朱雀!!」

「はいはい。任されて……」

少女は紅色の鳥に跨り天を駆け、九尾の獣、その亡骸すらも討ち滅ぼさんと……

「みんな? 準備は良い?」

「応!」

死してなお、障気を撒き散らす殺生石。
此を残してはならぬ。此は災いをもたらす物。
少女は自らの僕へと命を告げる。この世の和を結ばんがため。
光放つ十二天将達。さぁ、冥府送りの歌を歌え!!

「金剛白面九尾の尾裂。その悪意、落とさせてもらいます!!」
22■■■■ ◆b413PDNTVY :2010/02/11(木) 01:34:50 O
そしてついに、その役目全てを終えた少女。その時に彼女は見た。世界そのありざまを。
無数に存在する平行世界。
その海の中で彼女は自らの帰るべき場所を探す。
そこは、少女が居ない世界だった。
そこは、青年が悪と戦う世界だった。
そこは、歯車が導く世界だった。
そこは、魔法が支配する世界だった。
そこは、巨大な機械人形が戦う世界だった。
そこは、女性が泣き折れる悲しい世界だった。
それは、白いカンバスの世界だった。

あぁ……ここだ。この生まれたての無窮の世界。
何も恐れず、全てが望むがまま……

その時。少女は自らが別な世界へと引きずり込まれているのに気がつく。

「……え?冗談じゃないわ。私には帰りを待つ人が、……がいるのよ……ッ!!」

瞬間、その世界は彼女を捉えた……
23名無しになりきれ:2010/02/11(木) 01:37:38 0
早く氏ね糞ヴィッペル
24佐伯 ◆b413PDNTVY :2010/02/11(木) 01:37:51 O
名前:佐伯 零
職業:■■■(黒く塗りつぶされている)
元の世界:生まれたての白いカンバスの世界
性別:♀
年齢:17
身長:165.5cm
体重:56kg
性格:生真面目でツッコミ気質。口よりも手と足と間接技が先にでるタイプだが基本的には良識人。
外見:薄い栗色の巻き髪。白い服を好む。体重が重めだが殆どが筋肉。
特殊能力:異常とも言える身体能力。神憑り(トランス)
備考:飛ばされてきたショックで記憶が断片的に飛んでいる。
   そのため、能力自体は皆無。だが体質はそのままになっている。
   特殊能力?のトランスは自らの体を霊体並びにそれに準じた存在に貸し与える体質。

元のAAはξ゚听)ξ

不束者ですがよろしくお願いします。
もし元ネタが分かる方、居りましてもそっと胸の中にしまっておいて下さい。
25名無しになりきれ:2010/02/11(木) 01:38:58 O
そういや昔こういうスレあったな
26名無しになりきれ:2010/02/11(木) 12:49:29 0
これ立てた奴消えろ

目障り
27 ◆BR8k8yVhqg :2010/02/11(木) 13:49:18 P

 どんな世界にも、そしてどんな都市にでも、人の目に触れない暗部が存在する。
 アンダーグラウンド――と言えば聞こえはいいが、要するに汚れた裏社会だ。
 物語の舞台となるこの町にも、そういった社会が存在しているのだ。

 極道。あるいはヤクザと呼ばれる住人達。

 街の片隅、薄暗い路地裏で厳しい表情をして立つ彼もまた、その類の人間だった。

「…………」

 黒いサングラスにスーツ――明らかに一般人とは違った雰囲気を纏う男。
 男の背後には細長いビルが人目を忍ぶように建っており、彼は入り口を塞ぐように仁王立ちしていた。
 ビルの中では現在、二つの巨大な犯罪組織が、重役を集めた会合を行っている。
 見張りとして立つ彼のような下っ端には、首を突っ込むことさえ許されない世界。

 緊張からか、春先の陽気ゆえか、男は額にうっすらと汗をかいていた。
 サングラスを取って、手の甲で汗を拭う。
 そしてサングラスを再び装着した時――彼は、不審な物音を聞いた。

 どさり、と聞こえた。何かが降ってきたような音だった。

 彼のすぐ横で。

「ッ!?」

 咄嗟に、懐の銃に手が伸びる。

28 ◆BR8k8yVhqg :2010/02/11(木) 13:50:11 P

 内ポケットの中の拳銃を握りながら、男は顔だけを横に向けた。

「いててて……、顔打った」

 そこには、一人の少女が倒れていた。少女と形容するには、やや年齢が高いかもしれない。
 尻餅をついたような格好の少女は、両手で顔を覆っていた。
 奇妙な服装である。土木作業員が着用するようなツナギ(何故か真っ黒だ)を着ている。
 ボサボサの長髪は灰色がかっていて、手入れという概念を知らないかのように跳ねていた。

「おい、お前……そこで何やっとんや」

 よく状況を飲み込めない極道の男が、そう訊いた。
 ビルの中にいる天上人達のご機嫌を損ねれば、自分の木っ端より軽い命など簡単に吹き飛ぶ。
 不明瞭な要因を残しておくわけにはいかないのである。

「ん……あー? 何、あんた誰?」

 少女が顔から手を離し、男の方に目を向けた。意外なほどに白く透き通るような肌が覗く。
 その容貌は割と整っている部類に入るだろうが、ギラギラとした眼光だけが不似合いだった。
 見覚えがある顔だと男は思った。そう、あれは確か――――。

「お、お嬢さん!?」

 彼の所属する組織の長の、娘。一度だけ見たその人によく似ていた。

「は? そんな風に呼ばれたのは初めてだな……つーかさ、ここ明るすぎねえ?
 まぶしくてしょーがねえよ。あんたもそう思わない?」

 服に付いた埃を払いながら立ち上がった少女は、そう嘯いた。

29 ◆BR8k8yVhqg :2010/02/11(木) 13:52:25 P

「おおっと、良さげなサングラスかけてんじゃん。それ、くれよ」

「お嬢さんと……ちゃうんか? よう似とんな……双子みたいや」

「聞いてる? あたしさ、目ぇ悪くなりたくないんだよね。ちょーだい」

「やらんわボケ。どっから湧いてきたんか知らへんけど、はよ去ね。血見んで」

「へー、そゆこと言っちゃうわけ。なら力づくで頂いてくよ」

 どこに隠していたのか、少女の右手には長い鉄パイプが握られていた。
 至る所が凹み、傷の付いたその武器は、刺さるように凶悪な空気を纏っている。
 男は黙って拳銃を抜き、躊躇わず少女の眉間に突きつけた。
 威嚇ではない。男には実際に何人も殺してきた経験があった。

「……それ、本物?」

「そうや。死にたくなかったらとっとと消えや」

「銃なんてちっちゃな武器を使ってるやつ、久々に見たよ」

「……はあ?」

 少女は不敵に微笑み、鉄パイプを捨てて両手を挙げた。ホールド・アップである。

「おい、誰が手を挙げろと……」

 男が顔をしかめ、そう言った瞬間。少女の口から、不可思議な言葉が漏れた。

「『シュヴェア』」

30 ◆BR8k8yVhqg :2010/02/11(木) 13:54:17 P

「!?」

 男は奇妙な感覚に囚われた。握っている銃が――いや、腕全体が――『重い』。
 まるで骨と筋肉が鉛の塊になってしまったかのように、大地に引き付けられるのだ。

「ぐ……お……!?」

 たまらず、両腕を地につけた。銃が転がっていく。
 まるで土下座をするような無様な体勢になり、男はこめかみに血管を浮かべて顔を上に向ける。
 少女は笑っていた。

「はは。無理すんな、肩外れちゃうぞ」

 脂汗を流す男の顔からサングラスを奪い、自分が装着する少女。
 実はブランド物である。二十万円以上するサングラスを盗られ、男は叫ぶ。

「なんやこら! 返せや! 俺を誰やと思てんねん!」

「そういう台詞を言うやつって、たいてい雑魚キャラだと相場が決まってんだよ。
 いいサングラスじゃん。やっとまともに物が見えるようになった。感謝感謝」

 少女は地面に転がった鉄パイプを拾い上げ、ふと男の拳銃に目を向けた。

「これももらってくからな」

 男は必死になって立ち上がろうとするも、異常に重くなった腕がそれを許さない。
 拳銃を奪われるというのは言い逃れのできない大失態であり、厳しく叱責されることになるだろう。

「覚えとけや……お前、裏社会を敵に回すことになるんやで」

「はいはい。じゃあ後ろから襲われないように、気絶してもらうかね」

 最後に男が見たのは、振り下ろされる鉄パイプだった。

31 ◆BR8k8yVhqg :2010/02/11(木) 13:56:03 P

「裏社会ねえ」

 拳銃をツナギのポケットにしまい、少女は路地裏を歩く。
 ガラガラガラと鉄パイプを引き摺る音が、狭い空間に反響して消えていく。

「んなもん恐れてたら、地下世界は歩けねえっつうの」

 立ち止まり、空を見上げる。


「……しっかし、ここがどこだか知らねーけど、やけに天井が高いな」



 少女の名前はミーティオ=メフィスト。

 本物の『アンダーグラウンド』から来た、超能力者である。


名前:ミーティオ=メフィスト
職業:浮浪者
元の世界:地下世界
性別:女
年齢:18
身長:168
体重:51
性格:奔放・粗野・単純
外見:ボサボサの長髪にサングラス・黒いツナギ・鉄パイプ
特殊能力:重力操作

備考:全面核戦争後に作られた『地下世界』。
  生き残った人間が寄り集まり、各地に『街』を形成しているが、二度と地上に戻ることはできない。
  ミーティオは戦争直後から生まれ始めた『フリューゲル』(超能力者の総称)である。
  常に大きな鉄パイプを引きずって歩く彼女は、地下世界で生まれ、空も太陽も知らない。

よろしくお願い致します。
33月崎真雪 ◆OryKaIyYzc :2010/02/11(木) 15:19:13 0


「もう! 檸檬(れもん)ねえちゃんのバカ!」

季節は五月。
暖かい陽気に誘われた人間が集い、喧騒を為すターミナル駅の周辺。
月崎真雪は拗ねていた。
同じ高校の先輩であり、従姉妹であり、同居人の檸檬。
今日、彼女と一緒に街で買い物をするはず。
しかし檸檬は、部活でどうしても抜けられない試合が有ると言い、
真雪との予定を直前でキャンセルしたのだ。

「何もドタキャンすること無いじゃない…」

抑えられない怒りが沸々と、独り言という形で沸いてくる。
今日はゴールデンウイーク初日。
そういうことで、お気に入りの白いシャツワンピースに茶色のベルト、
前髪を上げるヘアバンドも白いレース模様の一番のお気に入りをしてきたのに。
お気に入りの服は気分を高揚させるけど、ドタキャンされたらショックも大きい。
34月崎真雪 ◆OryKaIyYzc :2010/02/11(木) 15:20:27 0

休日の気だるく騒がしい空気が真雪に絡みつき、一層ブルーな気持ちにさせる。
本来なら、この時間はファーストフードでも行って楽しくお喋りしていた筈なのに。
どんよりした気持ちで、真雪は青に変わった信号を眺め横断歩道を渡る。
目の前には、五月の休日にもかかわらずコートを羽織ったオッサン。
彼が、横から急いでいたであろう女性にぶつかっていた。女性が謝罪して去っていく。
と、そこで真雪は違和感を覚えた。その違和感のまま、ついて行く。
オッサンは迷子のようにさまよって、やがて立ち止まった。
そしてとっさに脇に手を伸ばし、辺りを見渡す。

(やだ、付いて来ちゃったのバレた!?)

そんな真雪の焦りをよそに、オッサンは何事も無かったかのようにコートを払い、
そしてまた歩き出した。
真雪も、距離を取ってついて行く。そんな自分に、真雪は驚いた。

(何で私付いてってんの…いくら暇だからって…)

自嘲しながら、付いていくのは止めない。

35月崎真雪 ◆OryKaIyYzc :2010/02/11(木) 15:21:52 0

だって、あのオッサンは違和感の塊だ。

しかも今、真雪は一人。片手に紙袋を提げているし、ヒールを履いた足は痛い。
レギンスに包まれたふくらはぎもパンパンだが些細な問題では無い、と思う。
その前に、違和感に反応した自分自身の好奇心を満たしたい。

(決めた)

ただ付いて行くのは止めにして、話し掛けよう。
万が一危険人物だとしても、多分どうにかなる。
質問すれば、何か反応が帰ってくる。その時の反応で判断すればいい。
真雪は小走りになり、その大きな背中を叩いた。

「あの、すみません。迷子ですか?」

そして、そのオッサンは―――


36月崎真雪 ◆OryKaIyYzc :2010/02/11(木) 15:22:42 0

名前:月崎 真雪(つきざき まゆき)
職業:高校生。私立の女子高に通っている
元の世界:現代
性別:女
年齢:16
身長:156cm
体重:50kg ダイエットしようかなとか考えてる。
性格:穏やかだが、心を許した相手には毒舌。
寂しがり屋で相手に酷いことをするのが(特に暴力は)苦手。
好奇心旺盛で、本人は気付いてないが割とお節介。
外見:鎖骨あたりまである焦げ茶の髪。前髪をヘアバンドで上げている。
制服は深緑の地に薄い緑のラインが入ったセーラー服。リボンは水色。
私服は黄色や白のシャツワンピースを好んで着る。コートはカーキ色でマフラーは黄緑色。
特殊能力:人が嘘を吐いているか、もし吐いていたらそれは悪意か善意かを見破る。
理由が分かるかは真雪自身の判断に委ねられる。
備考:幼い頃から力があり、周りから虐められていた。だから力のことに関して問い詰められるのが苦手。

ブーン系もTRPGも不慣れなものでご迷惑をおかけすると思いますが、
どうぞよろしくお願いします。
37名無しになりきれ:2010/02/11(木) 15:56:28 0
ブーンはゲロをはいた

ブーンは倒れた

終わり
38名無しになりきれ:2010/02/11(木) 16:36:00 0
>>36
援護ヴぁくげきするぜ
39ゼルタ=ベルウッド ◆8hdEtYmE/I :2010/02/11(木) 17:55:45 0
「……あれ」

ゼルタ=ベルウッドは初め、何が起きたのか理解できなかった。
さっきまで彼女は宿のふかふかしたベッドの上に座り込み、今日の戦利品を眺めていたはずだった。
大粒のルビーが散りばめられたブレスレットは、今も彼女の右腕にある。

じゃあ、ここはどこなんだろう。

そう思い、ゼルタはキョロキョロと辺りを見回す。
彼女が今いるのは、それなりに整理整頓された狭い部屋だった。ふかふかのベッドではなく、床に敷かれた薄い布団の上に座っている。

ゼルタはふと、部屋の片隅に若い男が立っているのを見つけた。
男は怯えた表情で、背中を壁に貼り付けるようにして震えている。どうやらこの部屋の持ち主のようだ。

「えーと」

ゼルタはぺたりと座りこんだ姿勢のまま、男に話しかけた。

「……こんにちは?」

男は答えない。驚愕のあまり口が聞けないようだ。
彼にしてみれば突然自分の部屋に見知らぬ少女が現れたのだから、当然と言えば当然の反応か。

40ゼルタ=ベルウッド ◆8hdEtYmE/I :2010/02/11(木) 17:58:40 0
そのまま少しの間、二人の間に張りつめた空気が漂う。

「ん。ま、いいや」

沈黙を破ったのはゼルタだった。どうやら男と話すことを諦めたらしく、傍らの大きな麻袋を掴んで立ち上がった。動きに合わせて白いワンピースの布地がひらひらと揺れる。

「じゃあね、ばいばい」

ゼルタは男に軽く手を振ると男に背を向け、持っていた袋を担ぎなおして扉のほうへと歩き出した。

「あ……」

男が何かを言いかけたが、彼女は振り向かない。
ただまっすぐ歩いていき、そのまま立ち止まることなく扉の向こうへと姿を消した。

扉は開かなかったというのに。

部屋に一人残された男はしばらくの間呆けた様子で突っ立っていたが、やがて今思い出したかの様に絶叫した。

「で……で、で、でたぁあーっ!!」
41ゼルタ=ベルウッド ◆8hdEtYmE/I :2010/02/11(木) 18:01:12 0
名前:ゼルタ・ベルウッド
職業:盗賊
元の世界:広大な砂漠の広がる世界
性別:女
年齢:享年14歳
身長:158cm
体重:0kg
性格:起伏は小さいものの感情豊か。やや独占欲が強い
外見:白を基調とした絹のワンピースドレス。麻袋を所持。全体的に薄い。色々と。
特殊能力:鍵開け 壁抜け 姿を消す
備考:
亡霊。死因は圧死。
商人の末娘であり、父親には「自分の欲しいものは自分の力で手に入れろ」と言われて育った。

幽霊ではなく亡霊。一般人でも見えるし触れもする。
42訛祢 琳樹 ◇cirno..4vY:2010/02/11(木) 18:35:01 0
「…?」

暗い路地裏に男が立っている。
キョロキョロと周りを見回すのだが此処が何処なのか皆目見当もつかないらしい。

「私は家でゲームやってて…?」

呟くがその先が分からない。
仕方無いのだ。
ゲームをして、新作のシナリオを書こうとしたところでいつの間にか路地裏に立っていたのだから。

「とりあえずここに居ても仕方無いべな、帰るか」

そう思い立ち路地裏から出ていく。
男は無事に帰れたら新作書く、と心に決め路地の外へと足を踏み出した。

「よいしょーい」

気合いを入れる為か無意識に呟く。
そして、外で見えたのは古い科学技術の塊だった。

「…タイムスリップ?」

タイムスリップ、時間旅行、まだ現代の科学的にも無理な事だが男はそう考えることにした。
そうしないと、説明がつかないのである。

「うん、さっぱどわがんね」

空を見上げ立ち竦む男の脳内では、既に元の時代に戻る為のプランが組みあがっていた。
43訛祢 琳樹 ◇cirno..4vY:2010/02/11(木) 18:42:35 0
名前:訛祢 琳樹
職業:ergシナリオライター
元の世界:現代によく似た平行世界
性別:男
年齢:27
身長:172
体重:50
性格:少々天然
外見:前髪は伸びっぱなしでいつもは目とかけている眼鏡が隠れており、薄く顎髭をはやしている
服装はキリン柄のドテラに黒いジーパン
特殊能力:集中力、トラップ回避能力、落ち着き
備考:生まれが現代世界での東北なので少し東北訛りが入る
平行世界と現代世界との共通性は大陸の形と科学の発達具合以外であり、平行世界の方が科学が発達している
44訛祢 琳樹 ◇cirno..4vY:2010/02/11(木) 18:45:57 0
名前:訛祢 琳樹
(なまりね りんき)
職業:ergシナリオライター
元の世界:現代によく似た平行世界
性別:男
年齢:27
身長:172
体重:50
性格:少々天然
外見:前髪は伸びっぱなしでいつもは目とかけている眼鏡が隠れており、薄く顎髭をはやしている
服装はキリン柄のドテラに黒いジーパン
特殊能力:集中力、トラップ回避能力、落ち着き
備考:生まれが現代世界での東北なので少し東北訛りが入る
平行世界と現代世界との共通性は大陸の形と科学の発達具合以外であり、平行世界の方が科学が発達している
45宗方丈乃助 ◆d2gmSQdEY6 :2010/02/11(木) 19:13:26 0
1人の青年が、街中にある自動販売機の軒下に手を突っ込んでいる。
北関東の田舎、東方町に住む青年、宗方丈乃助である。
手探りで引っ張っぱり出したのは5円玉が1枚。
それでも丈乃助の顔は満面の笑みで満ちていた。

「うひょ〜!これで100円くらいは稼いだぜ…マジに。」
急に空がが曇り始め、雨が丈乃助の頬を伝う。
雨を避ける為に、走り出そうとした瞬間――ッ!!

【ゴロゴロゴロ…ピシャァァァアンッツ!!】

雷が丈乃助の体を直撃し、その場から肉体そのものを消失させた―!


≪数時間後?≫

「ねぇ、おじちゃん!なんで寝てるのぉ!?」

青い鼻水が丈乃助の眼を覚まさせた。
目の前にいるのは間抜けそうな小僧が1人。
こちらを見つめてニヤニヤ笑っている。
「おぉ!!ガキ、てめぇ…俺はまだ18だっつーの!!」
起き上がり周囲を確認すると、そこは何処かの公園のようだった。
しかし、自分の住んだ街にこんな公園は在った記憶が無い。
まるで存在しない、不思議な光景だった。
そして何より、丈乃助の脳裏を過ぎるのは―

「俺、雷に打たれた筈だよなぁ…?なんで、ピンピンしてんだ?」
疑問をよそに、小僧が丈乃助の目の前に、1つの指輪を見せる。
笑顔は無くなり、何処か所在無さげな表情を浮かべている。
「どうした?おまえ、その指輪壊れてるみてぇだけどよぉ…」

「これ、僕のお母さんのなんだ。でも、今日僕が遊んでて壊しちゃって
…とても大切なものなのに。飼い犬のぺスが持っていったって僕、嘘吐いたんだ。
なんか、凄く、ぺスに悪い事したなって…」

丈乃助は宝石の抉れた指輪を手に取り、ゆっくりと手に包んで見せた。
「おい、小僧。これをやる前に1つだけ、約束だ。
ぺスと母ちゃんに、今日の事を謝れ。分かったか?」

小僧は小さく頷く。その姿を確認した丈乃助が掌を広げてみせる。
そこには宝石が元通りになった指輪が在った。
「おじちゃん!凄いね!どうやって治したの!?」

丈乃助はゆっくりと歩き出しながら小僧の問いかけに答える。
「なぁに…手品さ。なんのことはねぇ、タネも仕掛けもない、手品さ。」
感謝するように何度も頭をペコペコする小僧に再び振り返り、丈乃助は
一度だけ呟いた。

「あと、小僧…俺はおじさんじゃねぇ。同じ事、2度言わせんなよ?な?」
クシで自慢のアフロを整えながら丈乃助は歩き出した。
 
46宗方丈乃助 ◆d2gmSQdEY6 :2010/02/11(木) 19:15:24 0
名前:宗方 丈乃助(むなかた じょうのすけ)
職業:学生
元の世界:現代に酷似した世界(日本、架空の都市)
性別:男
年齢:18
身長:190cm
体重:70kg
性格:お調子者、普段はボーっとしてる事もあるが金のことになるとせこい。
外見:アフロヘアーに装飾品を散りばめた学ラン、髪型にこだわりがある
備考:現代の日本に酷似した世界に住む少年。
性格はいたって普通の高校生だが、髪型の事を馬鹿にされるとぶちきれる
特殊能力:自身の精神力を実体化させ、攻撃することが出来る超能力を持っている。
(本人は悪霊と呼んでいる)。
47尾張証明 ◇Ui8SfUmIUc:2010/02/11(木) 21:10:15 O
>>35
しばらく歩き回ってみて気が付いたことは、部分部分は違っても、街の構成そのものは元
の街と何も変わっていないと言うことだった。
(間違い探しを見てる気分だな)
記憶に有るものと地名だけが違う標識を見上げながら苦笑いする。
この分だと、やはり自宅も職場もまるきり変わってしまっているのだろう。
(それに……クサすぎて尾行だとも思わなかったが、やはり尾行なのか?)
顔をしかめる
自分の中で、冷静さが少しずつ失われてゆくのがわかる。
頭の中で、とりあえず捨て置いた疑問が膨らみ始める。
混乱と、理性が入り交じり始めている。
『お前は、赤頭巾か?』
かまを掛けるつもりで振り向かずに呟く。距離はだいたい五歩後ろ。相手が大人の男なら致命的な
距離だが、女で子供なら、なにが起こっても、まあなんとか素手で対処できる距離だ。
(子供の殺し屋とも思えんからな)
左翼にかぶれた女学生……赤頭巾が公務員らしき男に初めて活動家らしいことをしようと
している。
それが無難なところだ。
『質問に答えろ』
返事は、ない。動きもしない。気配だけはある。
俺はただ静かに待つ。
前触れもなく
いきなり女学生は動いて
対処する前に
いきなり背中を叩かれた。
「あの、すみません。迷子ですか?」
『あるぇ?』

48名無しになりきれ:2010/02/11(木) 22:18:53 0
ベルゼブブ大王
ハエをぶちまける
49名無しになりきれ:2010/02/11(木) 23:22:08 0
ブーン系アイドル
果てし幕ごみ
50名無しになりきれ:2010/02/12(金) 00:25:52 0
ここがゴミムシどもの巣か
51通行者 ◆T28TnoiUXU :2010/02/12(金) 00:57:45 0

駅正面から伸びるメインストリートは、今日も人間で溢れている。
ショッピングビルの巨大なスクリーンが投影する超低速の高速道路。
画面の片隅に、先程から"ゴールデンウィーク"の文字が貼り付いていた。

「……嘘だろうな、そいつは」

街を埋めているのは鼠色の地面。立ち並ぶのは灰色の箱だけだ。
何処も彼処も、この世界は黄金色になんか染まっちゃいない。
それとも、もしかしたら連中の瞳には映っているのだろうか―――

―――全てが光り輝く世界。

背中を縦に切り裂く一対の傷痕が鈍く疼いた。
遠い昔、そこに有った筈の"翼"を思い出したせいだ。
その喪失感を埋める何かを求める様に、世界の底を彷徨い歩く。

スクランブル交差点の中に、それは無い。

薄暗く汚れたガード下に、それは無い。

冷たい歩道橋の上に、それは無い。

路地裏の闇を縫って、ふらふらと。

表通りの雑踏を、泳ぐように。

横手から、ごく軽い衝撃。

知らない女が俯いたまま何事か呟いて、俺の傍から足早に立ち去った。
移されたオーデコロンの残り香は、甘ったるくて気に食わない。
女が、今度は先の青信号でコート姿の男に衝突していた。
この街の人間は何故、誰もが早足で歩くのだろう。
あるいは、俺の速度だけが狂っているのか。
女は何時の間にか少女に替わっていた。

『あの、すみません。迷子ですか?』【>>35

『あるぇ?』【>>47

その少女は預言者だったのかもしれない。
流れ聞こえて来た言葉で初めて気付かされた。
――――この世界では、誰もが迷える羊なのだと。



【今回の新しい試みを知って、何らかの形で支援したくなった。
 反射的にレスを作ってはみたが、本格的な参加は考えていない。
 開幕限りの景気付けだとでも思って、適当に流してもらえると助かる】
歩き歩いて少女が行き着いたのは、人でごった返した賑わいの中だった。
暗闇に溢れていた空はいつの間にか晴天に変わり、向こう側には光を振り撒く太陽が見える。

人のいる場所に抜け出せたのは非常に喜ばしいことだったが、
少女の中にはまた新しい戸惑いが生まれてしまった。

「あの子…コスプレ?」
「かわいい!幾つだろう?」
「すごーい、あれ本物の鎧?」

自分が、ここでは異常であること。

誰も銀に輝く鎧など着てはいない。
ましてや武装など…。

人々の好奇の視線が一斉に少女に向けられる。
このままではマズイ。
そう思った少女はどこか身を隠せる場所が無いかと人の海に駆けた。

そして走るうちに少女は感づく。

明らかに違いすぎるその場所の文明に。
巨大な建造物が建ち並び、辺りには鉄の牛か馬かが猛烈なスピードで駆けていく。

おかしい。
これは、ただ単に文化の違いというだけでは説明がつかない。

「……まさか…」

少女の脳裏に、一つの禁術が浮かんだ。
空間操作魔法の極。
決して行われることの無かった、究極の禁術。
考えたくは無かったが、現実に起こったことを釈明するにはこれしかない。

次元跳躍。

世界は、複数の次元に分断されて存在している。
その狭間は、強固な壁に遮られ誰もが通る事を許されない。
そして、その壁の向こうには想像もつかないような発展を遂げた世界が存在している。

…とある賢者が提唱した世界という概念に対する学説だ。
この壁を空間魔法で強制的に一時崩落させ、その間に対象を転移させる。
それが次元跳躍。

これなら記憶が曖昧な理由も、よく分からない技術に満ちたこの場所にも説明がつく。

しかしこの魔法は完成されることなく封印されたとあった。
しかも使用には計り知れないほどの魔力を必要とする筈。
並大抵の魔法使いでは根こそぎ魔力を持って行かれ、命も尽きるだろう。
少女の知る限りでは、これを扱える程の大魔法使いは存在し得なかった。

ならば、この世界の誰かが目的を持って呼び出した。
そう考えるしかない。

「ん……?」

ふと、嫌な予感を風に感じた少女は
思考をやめて意識を現実に引き戻してみた。

「あ……」
逆に、ここまで無事に走って来れた事のほうが奇跡なのではないだろうか。
目の前には、誰だろうか見知らぬ人が、激突を待つようにそこに突っ立っていた。

「 」

顔面蒼白とはこの事だろう。
言葉にならない叫びと同時に掻きたくない類の汗がどっと全身に吹き出る。

「う…わわわわわ…!どいてぇぇぇええ!」

全速力で駆けずり回っていた為、急に止まろうとすれば前面から転げるだろう。
それでも、転んで無理やり止まればよかったのだ。
そうすれば激突した挙げ句、向こうもこちらもド派手に吹っ飛ばずに済んだのに。

「ばふっ!」

どいてくれ、の声に気付いて振り向いた相手に少女はとても勢い良く、激突した。
55???? ????? ◆6ZgdRxmC/6 :2010/02/12(金) 02:49:45 0

”彼”は退屈していた。

「あ? 何見てんだよ、てめえ」

平日の公園、通っている高校からの帰り道に不良少年に絡まれた”彼”は睨みつけてくる不良少年に対し、自分の素直な気持ちを伝えることにした。

「……いや、楽しそうだなと思って」

特になんの感情もこめずに放った言葉を、しかし不良少年はケンカを売られていると感じたらしい。言葉を荒げる不良少年に、しだいに彼の仲間とおぼしき少年たちが現れ、”彼”を囲む。
そして、またたくまに”彼”に対するリンチが始まった。

(はぁ……)

殴られる

(ちょっとは面白いかと思ったんだけど……)

”彼”は殴られる

(やっぱり、退屈だな……)

そして好きなだけ”彼”を殴った少年たちは、捨て台詞を残すとその場を去っていった。
56???? ????? ◆6ZgdRxmC/6 :2010/02/12(金) 02:53:53 0

”彼”は、殴られる”彼”の姿をぼーっと眺めていた。
そしてそれが倒れるのを見届けると、”彼”はそれを「よいしょ」と起こし、土ぼこりを払って一言、「ごめんなさい」と言った。
”彼”が抱き起こしたもの、それは一瞬前まではたしかに”彼”そのものであったはずだったが、今、それはどこからどう見てもいつも近くの道端に置いてある、一体のお地蔵さんにしか見えない。

幼い頃から、彼には不思議な才能があった。それは「誰かが”彼”と認知するものの範囲をひろげる」という妙なもので、その奇妙な才能を使って彼は時折こうやって『退屈しのぎ』をしている。

しかし『退屈しのぎ』をしてもなお彼の『退屈』は終わらなかった。
殴られる自分の姿を『見ていた』今の自分も、ちょっと自分とお地蔵さんを”あやふや”にしただけなのにあっさりと騙されてしまう不良たちも、”彼”にはどちらもつまらなくて、ひどく面白くないものに感じられた。
こうやって”彼”はいつも刺激をもとめ、そしてそれを得られずに絶望し、そして結局『退屈』していた。

退屈でつまらなくて面白くもない。彼はそんな自分の生きる『世界』がいやでいやでしかたがなかった。

ふと、誰かに呼ばれたような気がした。
あたりを見回すが、誰も居ない。

自分とはちょっと離れた位置に、一匹の青い毛並みの猫がいるだけだ。
少し、期待してしまった。
自分のこの、果てしない『退屈』を終わらせてくれる誰かが、自分を呼んでくれたのではないかと、少しだけ希望を抱いてしまった。
そんな夢みたいなこと、起きるわけもないのに……

「それは、わかりませんよ?」

―――そんなことを思っていた”彼”は、目の前の猫がこちらを見上げて喋ったのを見て、瞬時に計り知れないほどの期待が胸の中に沸くのを感じた。
57???? ????? ◆6ZgdRxmC/6 :2010/02/12(金) 02:55:39 0

「実際、今あなたは呼ばれている。ここではないどこかの、誰かに」

少年のような声で、青い毛並みの猫は続ける

「それはきっと今のあなたの望む、『退屈』を終わらせてくれる呼び声、しかし……」

”彼”は耳に聞こえるほど自分の心臓の音が高ぶっているのを感じながら、猫の言葉に耳を傾ける。

「……あなたにとって、その声はけっして『希望』にはならないでしょう」

猫の言葉が終わると同時に、視界がぐにゃりとゆがむ。
遠のく風景の中、猫に、”彼”が「お前はなんなのか」と尋ねると、猫はなんとも形容しがたい奇妙な表情を浮かべ、言った。





「私は、あなたが私だと思うもの。それ以外のなにものでもない」




58???? ????? ◆6ZgdRxmC/6 :2010/02/12(金) 02:56:54 0
>>2
ふ、と風景が変わる。
真っ暗な暗黒の中に”彼”は立っていた。

目の前にいるのは白衣を着た男。”彼”は、一瞬男のことをのっぺらぼうかなにかかと思った。
男の顔に目や鼻や口があるのが分からなかったからだ。
実際それは、ただ伸ばしっぱなしの髪に隠れて見えなかっただけだったのだが。
”彼”は、男に話しかけたかったが、極度の緊張により、”彼”は何を話しかければいいものか、まったく頭に浮かばなかった。

「お……僕の名前はn……」

とりあえず自分の名前を名乗ろうとして、「まてよ」と”彼”は思った。
そのとき”彼”は直感していた。目の前に広がる『世界』は、今まで自分のいた『退屈な世界』とは違うと。
”彼”は、あの『退屈な世界』にいたころの”彼”が、大嫌いだった。だからこそ、そのとき『彼』は思ったのだ。

―――あの世界で生きていた自分を殺して、今、この世界に新しい自分として『生まれ変わろう』と。

そのためには、新しい名前が必要だと彼は思った。
真っ先に思い浮かんだのは、”竹の中で萌える植物の芽”。硬い何かの内側で成長し続け、そしていずれその殻を打ち破る。そんなイメージ。
そして、次に浮かんだのは幼い頃見た、動物や昆虫を模したロボットたちが戦うマンガ。それに出てきた蛾の幼虫型ロボットの名前。
『蛾』は繭を経て変体する。まさに『生まれ変わろう』とする自分には、ぴったりなイメージだ。
よし、決めた。今から自分の名前は―――

「……あんたが、僕をこの場所に呼んだんでしょう?」

普段の口調を隠すため、とりあえずの敬語。それに対して目の前の男は無言。

「教えてください、僕は何をすればいい?」

この男なら自分の抱えていたあのどうしようもない『退屈』を消し去ってくれる。半ばすがるようにそう信じて、彼は今しがた自分につけたばかりの名前を、男に名乗る。
59竹内 萌芽 ◆6ZgdRxmC/6 :2010/02/12(金) 02:58:39 0









「僕は”もるが”……”竹内萌芽”です。教えてください、僕はこの『退屈』を終わらせるために、一体何をすればいい?」










60竹内 萌芽 ◆6ZgdRxmC/6 :2010/02/12(金) 03:00:37 0
>>54うわごめんかぶった


名前:竹内 萌芽 (たけうち もるが)
職業:学生
元の世界:現代と似たような「退屈な世界」(彼自身がそう呼んでいるだけ)
性別:男
年齢:17
身長:平均的
体重:普通
性格:悪質
外見:すべて平均的で身体的に特徴と呼べるものがまったくない。服装は白のTシャツと黒のズボン(学校指定)
特殊能力:”あやふや”と彼は呼んでいる。―――自分と対象の境目を物理的、あるいは精神的に混ぜて分からなくしてしまう(認識的な意味で)

備考:彼のいた世界では、「他にも世界がある」という認識がないため世界そのものに名前はついていない。
   また、彼のような特殊な才能を持つ人間もあまりいない(少なくとも社会的には認識されていない)

61 ◆z3LBhHM1sM :2010/02/12(金) 03:03:53 0
>>60
ぴったりちょうど終わったからおk
逆にいいタイミング
62訛祢 琳樹 ◇cirno..4vY:2010/02/12(金) 04:52:47 0
「うん、さっぱどわがんね」

そう呟いて空を見上げていると何やら声が聞こえてくる。

「う…わわわわわ…!どいてぇぇぇええ!」

どいてくれ、と言われているようだが私の事だろうか。
そう心のどこかで考え、声のした方向へと振り向いた。
のだが。

「ばふっ!」

「えっ」

不意にぶつかられ吹っ飛ぶ体。
私はそれを他人事のように、
人ってこんなに飛ぶんだなあ。
等と考えながら見ている。

「女の子にぶつかられて飛ぶとか情けない、鬱だ死のう、天国でエロゲ書こう」

地面にぶつかる直前に呟く。痛くない。私は強い子。
そしてそのまま意識を飛ばしてしまうのだけど、それすらも冷静に、あくまで他人事のように見ていたのであった。
63名無しになりきれ:2010/02/12(金) 06:06:56 0
そもそも成り立たないエロゲとして
64月崎真雪 ◆OryKaIyYzc :2010/02/12(金) 11:12:37 O
>>48

そのオッサンは、とても驚いたようだった。目を見開き、口をぽかんと開けている。
多分「は?」とか「あれ?」とか、そんな感じの口の開け方。
(あー…私、バカだ)
その反応を見て、真雪は心の中で自嘲した。
大体、声を掛ける段階が遅すぎる。
声を掛けるなら、あの交差点をさまよっていた時に掛けるべきだったのだ。
しかし、この場で反省会を開いても仕方ない。ほらあのオッサン滅茶苦茶
怪しい者を見る目でこっち見てる!
「ごめんなさいっ…声、掛けるタイミング見失っちゃって…」
嘘はつけないから、正直に謝った。自分が怪しい者なのは重々承知している。

だけど、それでも。

信じてくれなかったとしたら、と思うだけで過去の悲しみが込み上げた。
―――誰も、私の気持ちと私の思いを信じてくれない―――
(この人も私の話を信じてくれない。だけど、これは私のせい)
理由など、頭では分かっているのだ。でもこの悲しみは理屈じゃなく、感情。
(ああ、目頭が熱いなぁ)
思い切って顔を挙げて、涙が流れぬよう抑えながら自らの両手を握りしめた。
「何故、あなたが警戒し過ぎるのかはわかりません。
でも、私が変なことしたから不愉快にさせたことはわかります」
そして、一拍あけて拳をほどいてから、相手の反応を
シャットアウトするように瞳を閉じた。涙が流れたが、気にすることは無い。
「だけど私、バカだから放っておけないんです。
声が全く出ていないあなたが、何かに巻き込まれるかも知れないから」
紙袋を提げている手で涙を拭い、ボストンバッグを掛けている手を胸に当てる。
「私に出来ること、無いですか?」
そう呟いてから、瞳を開けた。
65 ◆OryKaIyYzc :2010/02/12(金) 11:39:00 O
>>64
安価間違えた…しにたい
>>48ではなく>>47ですぜ
…荒らしに安価してしまった
66Ku-01 ◆x1itISCTJc :2010/02/12(金) 17:50:03 0






 now loading…







67Ku-01 ◆x1itISCTJc :2010/02/12(金) 17:51:41 0


「起動完了」


 傾いた可視領域。頭部を擡げた。
 かりかりと処理を進める音が響く。
 どうやら主電源からオフモードになっていたらしいと、上体を立ち上げながら考える。

 強制終了の為にエラーが起きていないかとスキャンが開始され、問題なく終了した。


「?」

 そして、首を傾げる。
 たとえ主電源を強制終了されたとしても、副電源で作動し続けるはずの通信が遮断されている。
 電子機器との通信を主な仕事とする自分に、あってはならない状態だ。
 通信を回復しなければと衛生回線を起動するが、返ってくるのは警告音。


『サテレイションとの通信を失敗しました』


 こんなことは初めてだった。


68Ku-01 ◆x1itISCTJc :2010/02/12(金) 17:53:06 0


 詳細を問い合わせると、

『チャンネル設定が対応していない可能性があります』


 とにべもない答えが表示される。

 こんな警告メッセージも初めてだった。
 慌てて乾いたモノアイを洗浄して辺りの様子を見回す。

 停止状態に成る前のデータとは異なる風景が広がっていた。
 データベースに検索するが、保存されたことのない場所だとAIは告げる。


「此処は、何処でしょうか、応答は?」


69Ku-01 ◆x1itISCTJc :2010/02/12(金) 17:55:14 0


 Ku-01は途方に暮れて呟いた。


 強制終了される前までは、大陽系第三惑星連合軍第三シェルターの本部にて、戦闘オペレーションを行っていたはずである。
 目前に広がっていたウィンドウは消え、見たこともないような量の人々が行き交う道が見えた。
 随分可視領域が狭く暗いと思ったら、どうやら高い建物の隙間のような場所にいるらしい。
 その建物の切れ間に、青く濁ったような天井がある。

 軍用として扱われている第三シェルターにはこのような擬似天井は設置されていない。
 何時の間に住居用シェルターに迷い込んでしまったのだろうか、と首をかしげる。

 あふれるような音がヘッドギアを模した耳パーツに流れ込む。
 Ku-01は逐一それを解析しようとするが、処理が追いつかない。くらりと不快感が生まれる。
 背後には夢の島に廃棄されるような遺棄物が散らばっていた。

 AIがかりかりと混乱を示す。
 常に清浄に保たなければシェルター内の環境は保たれない。こんな風に遺棄物を放置しているなんてありえない。
 指示を仰ごうと主人として登録された上官のナノマシンに通信を呼びかけるが、それすらも遮断された。

 八方塞がりである。


 このような状況を人は、

70Ku-01 ◆x1itISCTJc :2010/02/12(金) 17:56:16 0


「困りました」


 そう言うのだ、と言った上官をおもいながら、Ku-01はそう人工声帯をふるわせた。


 可視領域内の情報から読み取るに、どうやらこの場所は自分が元居た大陽系第三惑星とは異なる星にいるらしい。
 辺りを歩く人々の姿は元の星と何ら変わらない。どうやら敵性惑星ではないようだ。
 
 様々な可能性を浮かべては廃棄し、Ku-01は元の星とは全く違う次元に位置するらしいと考えた。
 とすると、早急に元の次元へと帰還しなくてはならない。

 上体をぴんと伸ばし、両足を二つに折りたたみ、体の下に敷くようにして座る。
 所謂正座と呼ばれる姿勢だが、Ku-01のデータベースにその単語はない。
 ただ単にAIの処理を促すのに好ましい設置体勢というだけだ。
 兎も角、遺棄物に囲まれるようにして座り、自分が今からこなしてゆくべきタスクを確認していくことにした。


71訂正;Ku-01 ◆x1itISCTJc :2010/02/12(金) 17:57:25 0


「困りました」


 そう言うのだ、と言った上官をおもいながら、Ku-01はそう人工声帯をふるわせた。


 可視領域内の情報から読み取るに、どうやら此処は自分が元居た大陽系第三惑星とは異なる星らしい。
 辺りを歩く人々の姿は元の星と何ら変わらない。どうやら敵性惑星ではないようだ。
 
 様々な可能性を浮かべては廃棄し、Ku-01は元の星とは全く違う次元に位置するらしいと考えた。
 とすると、早急に元の次元へと帰還しなくてはならない。

 上体をぴんと伸ばし、両足を二つに折りたたみ、体の下に敷くようにして座る。
 所謂正座と呼ばれる姿勢だが、Ku-01のデータベースにその単語はない。
 ただ単にAIの処理を促すのに好ましい設置体勢というだけだ。
 兎も角、遺棄物に囲まれるようにして座り、自分が今からこなしてゆくべきタスクを確認していくことにした。


72Ku-01 ◆x1itISCTJc :2010/02/12(金) 17:58:13 0


 まずは、通信の回復。

「現在使用可能なチャンネルの検索を開始します」


 次に、現状の確認。

「通信開始後、現在位置の割り出しを予約します」


 そして、再重要事項――、

「マスターのナノマシン通信が確認できません。早急に仮登録を行います」





 其処まで決め、優先順位でリンクしていると、一つの影がKu-01の目の前の壁の影から現れた。
 かりかりとAIが音を立てる。
 最優先のリンクされていたタスクが反応し、その人影の主人仮登録をはじめる。


「あなたを仮マスターとして登録します。お名前は?」

73Ku-01 ◆x1itISCTJc :2010/02/12(金) 17:58:54 0


名前: Ku-01(くノぜろわん) 通称ゼロワン
職業:軍用オペレーションオートマトン
元の世界:大陽系第三惑星
性別:無性別
年齢:製造から一年半が経過
体重:97kg
身長:160cm
性格:受動的 冷静 事務的
外見:球体関節 無表情
   ノンスリーブ軍服、ヘッドギア、黄緑のポニテ
特殊技能:手からワイヤー発射
     機器類の操作、通信
     電波への干渉
備考:元いた世界では第三次宇宙大戦勃発中
   最初に接触したPCを主人と認識、登録します
74尾張証明 ◇Ui8SfUmIUc:2010/02/12(金) 19:42:17 0
>>64

ようやく違和感の一つが解消された。
背中にぶつかった女、こちらが謝ったと言うのに、不思議な反応をした。

(声が出ていなかったから、か)

眉間に僅かに力が入る。ますます厄介事が増えている。見知らぬ街、他人には聞こえない
自分の声、そして目の前の女学生。



この女学生の言葉には善意しか無い。それはよくわかる。
しかし純粋な善意から来る言葉ほど危険な物はない

(この娘は危険だ)

経験が耳元で囁く。混沌が喉の詰まる毒だとしたら、純粋さとは凶器だ。どんな物であれ、
極端に蒸留された物は周囲にとって害でしかない。その事はいつも自分の周囲が証明
してきた。

(この娘には関わらない方が良い)

いっそ狂人の振りをして誤魔化すか。それに実際、はっきり自分が狂人ではないと、言い
切れる自信はもはやないのだ。

自分は瀬戸際にいる。自己が崩壊しかかっている。

今の自分はバラバラになった内面が、ただ伸びきった外面に引っ掛かっているにすぎない。
とてもこんな危険な娘に関わっている余裕はない。
出来うる限り、穏便に帰ってもらおう。

(良いことをした、と思い込ませるか)

胸ポケットから手帳を取り出し、言葉を書き込んで、黙ってじっと返事を待っている娘に
差し出した。

『すみません この街の 本屋は どこにありますか?』
75名無しになりきれ:2010/02/12(金) 20:53:18 0
胸から
ケツバットだ!!

ケツバットの攻撃¥!
76佐伯 ◇b413PDNTVY:2010/02/12(金) 23:07:18 0
「丸の内に近いわね」

断言して少女は辺りを見回す。
辺りにはガラス越しのショーウィンドウが並び、
真正面にはご丁寧に丸ビルを模した巨大な建物まである。これはどう見ても丸の内だ。
しかし、この現状は先の銀行口座の件も含めて明らかに出来過ぎている。
銀行口座の件。
彼女、「佐伯 零」はこの世界の人間ではない。いや、人間ですらないかもしれない。
それにもかかわらず、零は大型自動二輪の免許証とキャッシュカード。
更には保険証に携帯電話まで所持していた。

(口座の暗証まで一緒だったし……
 ただ、気になるのがこのサエキ レイって言う人物について。でしょうね)

そう、免許証には住所等もあり明らかにもともとこの世界に居たと言う証拠があるのだ。
推測では誰か別な人、もしくはこの世界の「少女」なのだろう。
しかし、彼女「佐伯 零」はこの世界とは別な世界から来ている。
そして、それは「佐伯 零」自身が一番分かっている。

「推測しましょう。
 私は、何かを終わらせて本来あるべき場所に帰るはずだった」

「しかし、それはなにかの意思により妨害された。結果、私はここにいる。それは事実……」
77佐伯 ◇b413PDNTVY:2010/02/12(金) 23:07:59 0
大丈夫だ。記憶が混雑して分からないことだらけだが状況が飲み込めている。
ならば何かしらの役目、rollが彼女にはある。

もし、役目が半日で終わるなら良いが、長時間にわたる場合何らかの拠点を持つべきだ。
この世界のサエキ レイの家に泊まる。と言う手もあるが、
仮にサエキ レイが何らかの理由により危険にさらされていた場合、それはかなり危険な判断だ。

そう考えた零はまず、ホテルの確保する事にした。が、

「でも、服のセンスサイアクよねぇ」

そう呟き、高級そうなバッグの並べられているウィンドウを眺める。
そこに映り込んだ零は自慢の緩い巻き髪以外は別人の様になっている。

ボンテージファッションって奴だろうか?
上から説明すると上着は革をつなぎ合わせて作られたぴっちりと張り付くような仕立ての「物」だ。
78佐伯 ◇b413PDNTVY:2010/02/12(金) 23:10:37 0
まず、最初に目に付くのは両脇を脇の下から裾までのスリット。
これを革紐で縫い合わせており着込んだ際に肌が露出する様に出来ている。
更に胸元は強調するように大きく開かせてそれを中央で無理矢理に革紐で縛り上げると言う挑発的な物。
その為なのか? それとも最初からなのか? 袖に当たるものやバストより上に生地はない。
又、裾の長さは肋骨が隠れる辺りで臍を完全に見せに行くスタイルだ。

この上着に加えて零は超ローライズの革パンをはいている。
この革パン。スキニーブーツカットタイプらしく上着と同じかそれ以上に、
フィットしてヒップラインなどはくっきりと出てしまっている。

もはや、だめ押しなのだろう。
その下の靴はひざ下丈のニーハイブーツでヒールの長さが左右で三cm違う。
このお陰で自然なモンローウォークを実現している。

この有る意味では完璧なファッション。
だが、零から見ればこれは最悪の部類である。

「この世界に飛ばされた時のイメージがそのまま形になったみたいね……
 あぁ!!ったく、もう、寄りによって私がこの格好なんて!!」
79佐伯 ◇b413PDNTVY:2010/02/12(金) 23:13:25 0
叫んでみても姿が変わるわけではない。
零は観念して洋服店を探すことにし、適当な路地裏に入る。

この手の路地裏にはオシャレな洋服店が有る可能性が高い為だ。
適当に路地を歩き、ゴミを蹴り飛ばし歩いて行く、右手の法則に従い別な路地に入り込む。
その時だ、ふと、ゴミにまみれながら座り込む人物に気がつく。

(……人……?……正座?)

怪しい。これはもしかしたら早くも役割を果たすときが来たのかもしれない。
そう思い。零は声を掛けてみる事にした。もちろん、ツッコミのセリフを頭に思い描きながら。

しかし、それは叶わなかった。

「あなたを仮マスターとして登録します。お名前は?」

その人物が先に声をかけたからだ。

「え?あー、サエキ、佐伯 零です。あの?お身体の具合でも悪いのですか?」

完全に毒を抜かれた零は素での反応を返す。
80佐伯 ◇b413PDNTVY:2010/02/12(金) 23:14:56 0
沈黙。

ややあって彼女?硬質で機械的な声だったが発音や雰囲気から女性ではと思われる人物は反応を示す。
しかし、その内容は驚愕するような内容だった。

「登録完了。貴女をマスターとして認識します」

「は?」

開いた口が塞がらないとはこの事だ。
どうやらとんでもない大地雷を踏んでしまったな。と零は思い天を仰いでみた。
81佐伯 ◇b413PDNTVY:2010/02/12(金) 23:16:47 0
「丸の内に近いわね」

断言して少女は辺りを見回す。
辺りにはガラス越しのショーウィンドウが並び、
真正面にはご丁寧に丸ビルを模した巨大な建物まである。これはどう見ても丸の内だ。
しかし、この現状は先の銀行口座の件も含めて明らかに出来過ぎている。
銀行口座の件。
彼女、「佐伯 零」はこの世界の人間ではない。いや、人間ですらないかもしれない。
それにもかかわらず、零は大型自動二輪の免許証とキャッシュカード。
更には保険証に携帯電話まで所持していた。

(口座の暗証まで一緒だったし……
 ただ、気になるのがこのサエキ レイって言う人物について。でしょうね)

そう、免許証には住所等もあり明らかにもともとこの世界に居たと言う証拠があるのだ。
推測では誰か別な人、もしくはこの世界の「少女」なのだろう。
しかし、彼女「佐伯 零」はこの世界とは別な世界から来ている。
そして、それは「佐伯 零」自身が一番分かっている。

「推測しましょう。
 私は、何かを終わらせて本来あるべき場所に帰るはずだった」

「しかし、それはなにかの意思により妨害された。結果、私はここにいる。それは事実……」

大丈夫だ。記憶が混雑して分からないことだらけだが状況が飲み込めている。
ならば何かしらの役目、rollが彼女にはある。

もし、役目が半日で終わるなら良いが、長時間にわたる場合何らかの拠点を持つべきだ。
この世界のサエキ レイの家に泊まる。と言う手もあるが、
仮にサエキ レイが何らかの理由により危険にさらされていた場合、それはかなり危険な判断だ。

そう考えた零はまず、ホテルの確保する事にした。が、

「でも、服のセンスサイアクよねぇ」

そう呟き、高級そうなバッグの並べられているウィンドウを眺める。
そこに映り込んだ零は自慢の緩い巻き髪以外は別人の様になっている。

ボンテージファッションって奴だろうか?
上から説明すると上着は革をつなぎ合わせて作られたぴっちりと張り付くような仕立ての「物」だ。
82名無しになりきれ:2010/02/12(金) 23:17:28 0
あばばばば被ったww
83名無しになりきれ:2010/02/12(金) 23:39:39 0
ここでアバ茶をぶちこむ
84タチバナ ◆Xg2aaHVL9w :2010/02/13(土) 03:00:06 0
>>31

アクセルアクセスの背に乗って空を翔る。傍から見ると幼女の背に跨る官僚という荒唐無稽にも程がある光景である。
幼女の背丈がタチバナよりずっと巨大であることや、幼女の脚部からアフターバーナーが露出し陽炎を上げている辺りがなんとも白昼夢的。
彼等は光学ステルスを張りながらギリギリ地上に飛翔音の聞こえない高度を保ちつつ西へ東へ突き進む。

「ともあれ、この世界がどういう場所かを知るためには現地人に直接聞いた方がいいね。メディア媒体が紙なんて骨董品を使ってるような世界だし」

『かつじばなれ?これだからゆとりはー』

「ははは、現場主義と言って欲しいね。さて、問題の第一村人だけど……できれば若い女の子がいいなあ」

『死ねよロリコン』

「おいおいいきなりキャラ崩壊はよしてくれよ。それにちゃんと理由だってある。女の子は総じて可愛いもの好きと決まっているからね。
 LO社製、今をときめくピチピチギャル(死語)達に大人気の幼女型精霊アクセルアクセス、キミを前面に出していけばきっと取り入りやすいよ」

『ようじょをだしにおんなつるとかあいかわらずぱねーどうていしこうだねー。死ねよ』

「ははは、なんだか今日のキミは妙に毒舌だね。反抗期かな。うちは褒めて伸ばす系の教育だよ?もっと弁舌麗しく僕を言葉で飾るんだ」

『おまえがきょういくされてどうする』

ビルの狭間を縫って飛行し、アクセルアクセスの生体走査を用いて『できるだけ人目につかない場所で一人で歩いている若い女性』を捜していく。
ふと目をやった路地裏に一件該当。黒のツナギにボサボサの長髪、黒のサングラスに鉄パイプは全てがちぐはぐで、アンバランスな魅力を醸していた。

「あの娘にしよう、アクセルアクセス。見るからにキワモノっぽい雰囲気じゃないか。ああいう突飛な娘に限って腹の中じゃ結構常識人だったりするんだよ。
 思春期症候群のお嬢さん方はきちんと自分の平凡さを理解したうえで奇行に走るからね。ネットにそう書いてあったから間違いない」

高度を下げる。鳶のように旋回しながら路地裏へと舳先を向け、スローターによる加減速を繰り返しながら降りていく。
やがてパイプを引き摺りながら我が道を行くグラサン娘に噴射音が聞こえる位置まで近づいた瞬間、運命の悪戯かはたまた嫌がらせか一陣の突風が。
風に煽られ大きくバランスを崩したアクセルアクセスが推進の方向を違えてビルの壁へ一直線。

「あ」

『れ』

激突。粉砕。轟音。
現在のアクセルアクセスはコンクリートの塊であり、その硬度と質量はスローターの速度で以って破城槌となる。
頭部が壁面へと大いにめり込んだ幼女の巨像はそのまま沈黙し、緊急脱出したタチバナが遅れて地面へ生還した。
瓦礫が滝を作る傍で着地時にグネった足を押さえ盛大に転げまわったタチバナは、それでも表情を変えることなく立ち上がった。

「やあお嬢さん。暇なら僕と空をドライブにでも出かけないかい?新車を買ったんだ。そこで前衛芸術に成り果ててるけどね。HAHAHA。
 見たところ思春期やさぐれ逃避行に真っ最中みたいだし、きっと素敵な自分が見つかるよ。――ネットに書いてあったから、間違いない」

ビルが抉れ埃と煙の舞う中で、その惨状を作り出した当事者は至って何事もなかったかのように右手を差し出した。


【路地裏に墜落。情報収集の為現地人を捜索中、異世界人とは知らずミーティオに接触】
85名無しになりきれ:2010/02/13(土) 12:44:51 0
あんま面白くないね
 入り組んだ路地裏は迷路のようで、あてもなく彷徨う彼女は大きな道に出られないでいた。
 もっとも、暗く狭い『地下世界』で生まれ育ったミーティオには、慣れ親しんだ風景ではある。

「うおっ! あれはライトか? すげえ出力」

 ちらりとビルの隙間から覗いた太陽を見て、思わず顔をしかめた。
 サングラス越しではあるが――彼女の眼にはやや強すぎる光だった。

「……っかしーなぁ。なんであたしはこんな街にいるんだ?」

 この路地裏に落ちてくる前の事を考えるが、そうするとすぐに頭に靄がかかったようになってしまい、
 何もはっきりしたことを思い出せない。最後の記憶が何なのかさえ曖昧だ。

 ただ、尋常ならざる事態に巻き込まれているような、漠然とした焦燥感だけがある。

「腹減ったなぁ。とりあえず飯喰いてえ」

 ゆっくりと変化する不思議な天井(実際は単に雲が動いているだけなのだが)を見上げながら、
 がらがらとミーティオ=メフィストは歩いて行く。

 その時、何か奇妙な飛行物体が眼に映った。

 陽炎のような氷のような、透明なのだが周囲から浮き上がったように見える何かが。

「んー?」
>>84

>高度を下げる。鳶のように旋回しながら路地裏へと舳先を向け、スローターによる加減速を繰り返しながら降りていく。

 こっちに来る。ミーティオはいったいなんなのだろうかと思いながら、左手をその物体に向けた。
 よくわからないものは撃退しておくに限る。

「フリューゲルか、新しい兵器か……なんにせよ、墜としとくか」

 超能力者『フリューゲル』。彼女が持つのは重力操作の能力。
 最大出力ならば時間を止められるほどの超重力を自在に操る力である。

 徐々に距離を縮めてくる謎の物体を真っ直ぐ見据え、獰猛に笑うミーティオ。

「『シュトゥルツェン』」

 急に下方への引力を受けたそれは鉛直に落下する――はずであったが。
 何故だか能力は発動せず、飛行物体は変わらずに接近を続けている。

「……あれ? あれれ? どうした、あたし?」

>やがてパイプを引き摺りながら我が道を行くグラサン娘に噴射音が聞こえる位置まで近づいた瞬間、
>運命の悪戯かはたまた嫌がらせか一陣の突風が。

 混乱しているうちに、何かガスバーナーのような激しい音が聞こえてきた。
 わたわたと慌てていると、風に煽られたのか、急にその物体は軌道を曲げた。

>「あ」

>『れ』

 轟音――まるで隕石でも降ったかのような激しい音と共に、ビルの壁が崩壊した。
 それと共に飛行物体の透明さが消え、異様なその全貌が明らかになった。
 灰色の巨大な人形がビルの壁に半ばまでめりこみ、その上から男が飛び降りてくる。

「け……結果オーライだなオイ。勝手に墜落したぞ」

 着地の際に捻った足をかばいながら、降ってくる瓦礫の雨を避けつつ、男は近づいてきた。
 痩せていて背の高い、針金のような男だった。

 あんぐりと口を開けるミーティオの前で、男は手を差し出してきた。

>「やあお嬢さん。暇なら僕と空をドライブにでも出かけないかい?新車を買ったんだ。そこで前衛芸術に成り果ててるけどね。HAHAHA。
> 見たところ思春期やさぐれ逃避行に真っ最中みたいだし、きっと素敵な自分が見つかるよ。――ネットに書いてあったから、間違いない」

「えーっと……その……今日はやけにお嬢さんと呼ばれる日だな?」

 じゃなくて、と彼女は口をつぐんだ。

 死ぬほど怪しい男だ。ややミーティオより年上のように見える。どことなく変態っぽい。
 だがしかし、どうやら友好を示そうとしているらしい相手には、友好で返さなくては。

 鉄パイプを持ち替え、右手で握手をした。

「まあとりあえず、飯食わしてくんない?」

 捕らえた獲物は逃がさない。ミーティオはがっちりと男の手を握り締めて、笑った。


89名無しになりきれ:2010/02/13(土) 15:34:05 0
蛆虫がミーティアの身体にむしゃぶりつく…

ミーティアの30%が食われた
90葉隠 殉也 ◆sccpZcfpDo :2010/02/13(土) 19:13:09 0
その身はボロボロになろうかというのに
黒き鎧を纏った青年は必滅の拳を振るう。
その拳に自分が背負った人々の想いを
散っていった者達の願いを
そして揺るがぬ信念を込めて

「無貌の神よ!この一撃が汝を駆逐する!」

そしてその一撃が世界を蹂躙してきた存在を葬る。

「よく僕を倒したねけれど忘れない事だ僕はどこの世界にもいる」

「必ず君の前に現れる、必ずだ」

予言をすると高位霊エネルギーの塊である肉体が飛散し、同時に一撃に影響されて膨れ上がる。

そしてそのエネルギーは爆発し、青年を包み込む。

エネルギーの中から様々な物を見せ付けられる

人類の創造から本来この世界が辿っていた未来と可能性―――

そして様々な形態を迎える平行世界―――

その映像を見終わった頃、見知らぬ大地を踏みしめている事に気づく。

「どこだ…?ここは?」



91葉隠 殉也 ◆sccpZcfpDo :2010/02/13(土) 19:14:27 0
名前:葉隠 殉也(はがくれ じゅんや)
職業:新日本帝国軍人(零式特殊戦団 准尉)
元の世界:謎の生命体と戦争している大戦後の世界
性別:男
年齢:20
身長:181cm
体重:59kg
性格: 一本気で基本生真面目な性格。ストイックだが、胸に熱い物を秘めている。
外見:背部に円形の車輪のような装置と一体化した詰め襟付き白い軍服、黒縁の伊達眼鏡
   黒い髪のツンツン頭
特殊能力:戦人無形型 ―――人の持つ可能性を限界以上まで引き上げ、一触必殺や様々な武器をいとも簡単に扱いこなす
     最終古武術。但しその能力は個人によるため、皆伝レベルまでは彼以外は到達していない。         
備考:黒い空間から現れる世界の神などに酷似した謎の生命体に滅亡の危機に瀕している世界出身。
   それ以前の世界観的には、現代レベルまでのより進んだ科学技術や魔術などを持つ大正時代
   その代表的存在と最終決戦後、この世界に来ていた。
   新日本軍では人類最強の男と言われ、英雄扱いされている。
   帝国軍人として誇りを持っており残りの生涯、命、一魂が果てるまで
   人種の垣根を超え牙を持たぬ者達の牙となる事を誓っている。
   
神冥滅甲「業」 ―――神を滅し、滅ぼし尽くすために作られた特殊な鎧型霊装兵器。
       これを装備する事により英霊(戦散っていった兵士達や民など彼の信念に惹かれて協力する霊)達を使役、または
     自動的に共に戦ってくれると同時に攻撃力や防御力など総合的な能力が上がり、内蔵されている様々な武器が使用可能。
     左腕には斬った者の命を吸い尽くし、切れ味が増す妖刀「剣鬼」が装着されており、内部から出したり戻したりが可能。
92宗方丈乃助 ◆d2gmSQdEY6 :2010/02/13(土) 19:52:13 0
公園を出た丈乃助は商店街へ向った。
近くにあるCDショップに入っていくが、どうやら自分の知っている店では無さそうだ。
「へぇ〜こんなところにTUTAYAがあったんだな。まぁ、いいや。
ランキングチェックすっかぁ〜」

CDシングルのランキングチェックへ向かう丈乃助を待っていたのは、
自分の知るアーティストなどいない異世界の音楽だった。
「え?3位は…少年アラ・モードの「僕たちのネバーマインド号」?
聞いたことねぇ名前だな。えーと、2位は…TELYAの「アンドロメダお前」!?
またまた聞いたことねぇぜ……なんだか今週のランキングは新人が多いな。
まさか一位はなぁ……げげっ!!」

丈乃助の目の前に映るのは、見たことも聞いたこともないアーティストだった。
「少年メリケンサックで、曲はニューヨークマラソン!?…なんだよ、それ。」
視聴コーナーでとりあえず、TELYAのアンドロメダお前を見てみる。
テクノともPOPともいえない不思議な音楽に、丈乃助の心はがっちりと掴まれた。

「グッ…と来たぜ。なんつぅ、グレートな音楽だよ!!」
財布の中身を確認し、2千円を払いTELYAのCDを購入した。

(…宗方丈乃助 とりあえずCDを買う 残金2万231円)
93◇OryKaIyYzc:2010/02/13(土) 19:57:13 0
>>74

『すみません この街の 本屋は どこに有りますか?』
メモ帳に書かれた文字は、そのオッサンが間違い無く迷っている事を示していた。


大丈夫。彼は嘘を吐いていない。


「本…屋? こっからだとちょっと遠いや…」
真雪は確認するように呟いて、記憶の中からこのあたりの本屋を探した。
そして出て来た選択肢は三つ。
一つは、駅へ戻って反対方向の出口に広がる、繁華街の中の古本チェーン店。
もう一つが、大通りまで出て右に曲がり、道なりに進んだ所にある2階建ての本屋。
どちらも、ここからだとかなり歩く。

そして最後。通っている高校が目の前に有る、個人経営の小さな本屋。
そこは先程の2店よりも比較的近い。
しかし、真雪が休日にそこへ行くのは、めったな事がない限り有り得ない。

「ここからだと、結構歩きますよ。まず、さっきとは違う大通りに出なければ行けないから」
結局、真雪は大通りに有る本屋を案内する事にした。出会ったばかりの頃から
感じていた違和感が、拭えない。それどころか益々強くなっているのだ。

まるで―――彼が世界に嘘を吐いているような、吐かれているような、そんな違和感―――

違和感の原因を、真雪はもう少し突き止めたくなったから。
「また迷子になったら困るし、案内しますよ!」
行こう、少しだけ遠回りして。



>>62

「痛ったぁ…」

ド派手に激突し、ド派手に地面に激突した。
普通なら気絶確実だろうが、鎧が多少削れたのみでシエルが負傷することは無かった。

さて、問題は相手方である。

「……」

そろり、と倒れたままの相手の顔を覗き込む。
薄く顎鬚が生え、目の殆どが髪の毛に覆われた顔。
一見して、“貧弱そう”という言葉がシエルの脳裏を過ぎった。

「……ていうか」

生きている気配が無い。
まさか、本当に殺してしまった?

「……嘘…」

重さ数十キロの鉄の塊が激しく激突した。
死んで当然といえば、当然だが。

流石にそれでは魔法騎士としてマズイ。

「どどどどどどうしようぅ…」
無実の、しかも異世界の住人を、
出会って早々殺害してしまった。

それは少女の心に重圧としてのしかかる。

「う…うぅぅ……」

涙が頬を伝う。

「でも……」

まだ、生きているかもしれない。
というかこれは勝手な妄想ではないか。

「ま…魔法…」

文明の仕組みが違う異世界の住人に効くかは分からないが、
取り敢えず回復魔法はかけておかねば。

「お願いします…!」

相手の心臓辺り。
手を翳し、細胞の活性を促すイメージを送り込む。

それは緑の光として可視化し、相手の体に纏わりついた。
魔力が代謝を促し、地面に叩きつけられた衝撃の傷はすぐ癒えるはずだ。

「これで…」

あとは目覚めてくれるのを待つだけだ。
96訛祢 琳樹 ◇cirno..4vY:2010/02/13(土) 23:13:41 0
>>94

私は目を閉じどこかに寝転がりぼうっと考え事をしていた。
意識の覚醒と、目を閉じる前の記憶を復旧させる為だ。

「…」

私はさっきまで死んでいた。
…ような気がする。
もしかしたら宙にふわふわ漂って、霊体になってたのかもしれない。
逆に、ただ気絶をしていただけなのかもしれない。

「…」

そんなことを考えていたら意識は覚醒したのだけれど、目を開きたく無い。
よくある起床前の倦怠感だ。

「起きたくない、起きたくない、働きたくない」

そう呟き転がると何か固い物に当たる。
起きたくない感情を抑えて目を開けるとそこにはファンタジーに出てくるような鎧。

ああ、私、気絶してたんだべな。

そう心のどこかで考えたまま、私はそのままぽかんと鎧の少女を見つめているしか出来なかった。

>>96

魔法をかけてから数十分ほど経っただろうか。
懇々と目を閉じ続けていた彼は、突然呟いた。

>「起きたくない、起きたくない、働きたくない」

同時に寝返りをうち、シエルの鎧にこつん、と頭をぶつける。

「!……働きたく…?」

ようやっと気がついたようだ。
呟いた言葉に妙な違和感と無気力を感じたが、
胸の奥には安堵と同時に言いようのない嬉しさがこみ上げる。

「……」

彼はというと、シエルを見つめたまま硬直してしまっていた。

当然か。
曖昧な記憶の中で目を開けるとそこにはどう見ても異質な鎧姿の少女がいるのだから。

シエルはなるべく彼を刺激しないように、
混乱しているであろう彼の脳内を更に掻き乱さないように言葉を選んで言った。

「あの……おはようございます…」

「眠いなら、また寝かせてあげますよ?」

あまり洗練されてはいなかったが。
98尾張証明 ◇Ui8SfUmIUc:2010/02/14(日) 00:56:02 0
>>93

道すがら、娘から様々な事を聞かれた。

職業や年齢、血液型。どれも当たり障りのない質問で、面倒な嘘を吐かずに済んだ。


公務員で、三十七歳。B型でRH-。娘が一人居て、犬を一匹飼っている。そろそろ引っ越
しをしようと考えていて、この街に住む事も視野に入れている。口の聞けない、表情豊か
な中年の男性。


それが娘にとっての俺だった。


『君ほど 善意溢れる子供に会ったことがない』


案内された本屋の前で、別れ際にそう書いたメモを破って渡した。心の底からの、皮肉を
込めた本心だった。

もし善意しかない人間が本当に居たとして、そいつは本物の狂人か、もしくは聖人だ。そし
てどちらにしろ、それらはいつでも俺にとっての敵だった。

(あの娘が俺の居た街に住んでいたら、デモにでも参加していたんだろうな)

小学生が使うらしい社会科の教科書を黙々と読みながら、俺はぼんやりそう思った。
99訛祢 琳樹 ◇cirno..4vY:2010/02/14(日) 01:23:49 Q
>>97

「あの……おはようございます…」

無言で見つめていると、目の前の鎧少女が言葉を発した。

「眠いなら、また寝かせてあげますよ?」

また寝かせるとはあれだろうか、また気絶させる気なのだろうか。
いや、それよりだ。

「鎧って、ゲームみたいだべな…」

無意識に呟いてしまう。
これがゲーマーの性か。

「まさか此処はゲームの世界…!」

「……なんつってね」

少女が着いてこれないであろう独り言をひとしきり呟いた後、起き上がる。
そうして服の埃を叩き相手に向き直す。

「おはようございます、私は訛祢琳樹と申します」

「あと痛いのは得意じゃないからまた気絶とかさせるような体当たりは止して下さい」

マイペースにマイペースに、私は改めて少女に話し掛けた。
100葉隠 殉也 ◆sccpZcfpDo :2010/02/14(日) 02:37:21 0
>>72
神冥滅甲を解除し、背後が騒がしく振り向いた。
自分の目で見た最初の光景は、
今まで見てなくて等しい数え切れないほどの人々がおり、行き交っていた。
そちらから差し込む太陽が眩しかったため、手で遮る。
さらに辺りを見回し、何処かの裏路地だと確認できる、
ここは明らかに先ほど居た自分の世界などではないのは明白だった。
今から取る行動は一つしかない動揺などはしている暇すらも勿体無い

「………とりあえず行動するのみ」

方向を前に変え、真っ直ぐ歩き始める。

それから数分後、何やら人影が見える

「人か…?」

前方に人影が見えたので、これを機に接触を試みる事とする―――
101名無しになりきれ:2010/02/14(日) 03:57:19 0
遠くで速射砲がなりひびく。・・・


人影は志望した
102名無しになりきれ:2010/02/14(日) 11:29:22 0
酒場ではエッチが行われていた




103◇x1itISCTJc:2010/02/14(日) 21:37:26 0
>>80


 随分と過激な格好をした女性である、とku-01は感じた。
 住居用シェルターでしようものなら、風紀を乱すとして即刻罰せられる域だ。
 それから鑑みるに、どうやらこの次元は服装等の自由度が高いのだろう。


「ハロー ワールド。私は軍用オペレーションオートマトン、型番ku-01(クのゼロワン)です。
どうぞゼロワンとお呼び下さいませ」
 

 とりあえずと立ち上がり、唖然としている女性に一礼した。
 脳内ではいまだカリカリとマスター登録がされている。
 ナノマシン検索、反応なし。
 応急措置として角膜、声紋登録を行う。


「これより、私は一時的にあなたの所有物となります。
ご指示が無ければ自律的に元の次元への帰還を目指しますが、指示は御座いますか? 応答は?」
>>99

呆然とシエルを見つめていた彼は、ふ、とよく分からない言葉を呟いた。

>「鎧って、ゲームみたいだべな…」

げーむ、とは一体何の事か。
チェスの試合かカード博打の事だろうか。
何れにしろ鎧がゲームの様、とはシエルに理解できなかった。

彼は続けて独り言のように呟く。

>「まさか此処はゲームの世界…!」
>「……なんつってね」

今度も理解には苦しんだが、シエルの中で引っ掛かった言葉があった。

此処は、ゲームの世界。
つまり、彼は此処を違う世界だと考えている。
深く考えすぎかもしれないが、今の自分の状況と合わせて考えれば十分考えられる。

彼も、壁の向こうから…。

その真相を聞こうと口を開きかけた直後だった。

>「おはようございます、私は訛祢琳樹と申します」
>「あと痛いのは得意じゃないからまた気絶とかさせるような体当たりは止して下さい」

畳み掛けるように、マイペースに彼…訛祢琳樹はシエルに話した。

「はあ…琳樹様、ですか」

他国の人物には礼儀正しく。
例え言葉を遮られても懇切丁寧に対応致します。
それが我が国王宮魔法騎士。

「私はシエル=シーフィールドと申します」

しかしどうも彼は勘違いを冒しているようだ。
眠らせる、とは魔法で眠らせてあげようということだったのだが。
残念、言葉を間違えた。

「あと、気絶させるなんて野蛮な事はしませんよ!私は騎士ですから!」

気絶させることはしない。
だが、聞きたいことはあるのだ。

「でも、あの…突然こんな事を聞くのは失礼に当たるかもしれませんが…教えてくれませんか?」

もし彼が自分と同じだったならば。
誰かが呼び出した、という仮説は現実味を帯びてくるのだ。

「あなたは、この世界の住人なのでしょうか?」

106訛祢 琳樹 ◇cirno..4vY:2010/02/14(日) 22:31:35 0
>>105

「でも、あの…突然こんな事を聞くのは失礼に当たるかもしれませんが…教えてくれませんか?」

そう少女、いや、シエルは。そう私に言う。
まともに働いてるのか、みたいな質問以外なら答えようと心に決めその続きを待つ。
そうしてシエルが続けた言葉は…。

「あなたは、この世界の住人なのでしょうか?」

一瞬理解が出来なかった。
これが俗に言うちゅうにびょう?とやらなのだろうか。
ただ、この現状でその言葉は手掛かりにしかならないわけで。

「…多分?」

少し迷ってから頷き肯定した。
私は正直世界より時間旅行の方だと思ってたわけだけど、それは違うのかもしれないし。
そしてこのシエルという少女も違うところから飛ばされたのかもしれない。
というか騎士とか言ってる時点で飛ばされてる気がする。

「…うん、多分」

頭のネジが飛ばされてる可能性もあるけど。
今は話に乗っておくべ。ね。
107 ◆b413PDNTVY :2010/02/14(日) 22:54:37 0
>>103

(うわぁ……なによコレぇ;;)

そう思い、零が仰いだ空はとても高く澄んだ水色をしている。
一瞬だが空間が「歪んで見えた」気もするが目の錯覚だろう。
これはヤバい。もし彼女がこの世界の人間ならぶっちゃけ電波さんだ。
そして、この世界の人間でなくても厄介であるのは間違いない。

「ハロー ワールド。私は軍用オペレーションオートマトン、型番ku-01(クのゼロワン)です。
どうぞゼロワンとお呼び下さいませ」

そう言い立ち上がるゼロワン。その時だ。零はある違和感を感じた。
彼女の立ち上がり方は、一見すると普通に立ち上がった様でもある。
しかし、

(今、人体の骨格構造を無視した?)

零はあちら側の世界では何かと戦う事が多かった。そのせいかそういった構造、急所に関しては熟知している。
その零から見て、今の立ち上がり方は不自然に映ったのだ。
零の脳裏に彼女に対しての興味がふつふつとわき始める。
108佐伯 ◆b413PDNTVY :2010/02/14(日) 22:55:42 0
そして、
彼女のお名前だ。
型番ku-01(クのゼロワン)しかも軍用オペレーションオートマトンときた。
軍用オペレーションマトン。多分、軍隊で使用される何らかの機械のことだろう。
それを名前の簡素さが表している。

一礼する彼女を見ながら、零は思考を回転させる。その内容は……

(型番ku-01…クのゼロワン……クの一?くのいち!?)

やはりツッコミだった……

悲しいかな。こんな時でも零は気になればそれに思考が集中してしまうのだ。
だから、本来ならば気づけるべき危険にさえ気づけない。

「これより、私は一時的にあなたの所有物となります。
ご指示が無ければ自律的に元の次元への帰還を目指しますが、指示は御座いますか? 応答は?」

そして畳みかけるようなこの単語。
これにより彼女が零と似た境遇であること。帰還を望んでいることが確認できた。

(そうね……ここは協力するのが定石。服はオアズケかしら?)
109佐伯 ◆b413PDNTVY :2010/02/14(日) 22:57:08 0
零をまっすぐに見つめる瞳には一切の曇りはなく恐らくは、
零が最終的に帰還するための捨て駒に使ったとしても迷い無く実行するだろう。
そう感じた零は彼女への処遇について決断をした。それは

(この子は、いえ……この子を利用はできないわね。後味悪そうだし……
 ここは協力して、それぞれの世界に帰る手がかりを探しましょう)

そして、もし元の世界へ帰れないならば何とかして自分の世界に連れて行こうとも決意する。
その為のプランを話し合おうとした時だ。

カラン

と、背後から物音がする。
同時に奥の通路からも下ひた笑い声と共に「サイテー」な服装の男が歩いてくるのが零の目に映る。

囲まれた。

零たちの居る裏路地は狭い上に、前後を抑えられると身動きが取れないような構造になっていた。
恐らくはこのあたりの路地を縄張りにしている品性の良くない者たちだ。

(この恰好のせい?よねぇ……さて、どうするか……)

どこの世界にもこう言った輩は居るようだと後ろを見やる。合計は八人。
110佐伯 ◆b413PDNTVY :2010/02/14(日) 22:59:18 0
女二人を犯すのに八人とは少し多いなとも思う。
それだけ飢えているのだろう。ならばたっぷりと遊んであげるのが礼儀というものだ。

「へへ、よぅ?ネーちゃん」

比較的まともそうな奴が声をかけてくる。
他の奴らは通路を塞ぎながら音楽を聴いたり、露骨に舌なめずりをしたり、
ゼロワンを興味深げに見たりしている。

「面白い格好してるじゃねぇか。そこでよぅ俺らとイイことしないか?」

そこでってどういう理屈だ。と言うツッコミを飲み込み零は言葉を紡ぐ。

「そうねぇ。たっぷりといたぁくして、虐めてあげるわ……」
     your master is order 
「ゼロワン?ご主人様の命令よ!!黙ってみてなさい!!」

(そう、アナタは私が守ってあげるから)
                         badboy's
ヒールの感触を確かめるように零は足を組み換え流し眼で男たちと対峙する。その姿に慈悲などは感じられなかった。
>「…うん、多分」

彼はそう答えた。
多分。
随分アバウトな返答だ、とシエルは頭を抱える。

「と、言うことは……うーん…」

彼は決めかねているということなのか。
この世界の住人であることが、あやふやにしか認識できていないのだろうか。
そうシエルは考えた。

つまりは、違いが微妙すぎて分からないのだ。
自分がいた世界と、今いる世界の差が。
恐らく、世界同士の次元が限りなく近いのだろう。
ならば、それを自覚させなければ。

「あの…私達は何者かに此処とは違う…つまり元々私達がいた世界から此処へ呼び出された……んだと思うんです」

正直、言うのはいいがどう考えても彼には変人にしか見られていないだろう。
一般とズレているであろう鎧など着込み、発言は常識はずれ。
もし、元の世界で同じ事をされたら間違いなく逃げる。

だが、それでも知りたい。
それは間違いなく元の世界へ戻る手掛かりになる。

シエルは続けざまに言った。

「こんな言動はあなた方の感覚では狂人に値するのかもしれませんが」

少なくとも、シエルはこんな言葉を放つ相手には狂人の認識を持つ。
だからそう思われる前に一気に畳み掛けなければ。

「そうとしか考えられないんです」

「この世界に違和感を感じていませんか?」

「感じているなら、それはおかしい事なんです」

「私は、ここが元々いた世界と違う事がハッキリ認識できます…文明自体が違いますしね」

「つまり、私は元の世界からこの世界に呼び出されたということ…そしてあなたはこの世界に違和感を感じている…これは偶然にしては出来過ぎてます」

「だとするなら、私達は世界の差の大きさこそ違えど、同じように元の世界からここに飛ばされた……と思えませんか?」

本当に全てを一気に喋ってしまった。
彼がどういう心境で聞いていたのか、考えたくもない。
そもそも彼が世界に違和感を感じていなかったとしたら…本末転倒、喋り損だ。
これはある意味で賭けなのだ。

「……私を、信じてくれますか…?」

はてさて、それは表を向けるのか、裏を向けるのか。
113名無しになりきれ:2010/02/15(月) 00:46:23 0
ブーンがのしかかられたそうです

つ「裏を向ける」
114ゼルタ=ベルウッド ◆8hdEtYmE/I :2010/02/15(月) 01:03:35 0
「うーん」

しばらく町を歩いてみて、ゼルタは確信していた。

ここは砂漠じゃない。砂漠の町じゃない。

空気が違うし、町並みが違うし、町を歩く人も違う。

何もかもが、わたしの知っている町とは違う。

どういうわけか見知らぬ土地に一人投げ出されたのだと、ゼルタはそう理解していた。

とはいえ、まさか異世界に飛ばされたとは思わない。

せいぜい「どこか遠くにある、文化の進んだ町」なのだろうとしか思わなかった。どうやって来たのかは……。

「ま、いいや」

とりあえずここがどこなのか、確かめないと。

ゼルタは一先ず地図を扱っている商店を探して、再び当てもなく歩き始めた。
115ゼルタ=ベルウッド ◆8hdEtYmE/I :2010/02/15(月) 01:06:24 0
「おかしいなぁ」

三十分ほど後、ゼルタは物陰で一人、ああでもないこうでもないと首をひねっていた。

彼女が先ほどから四苦八苦している相手は、なんのこともない一枚の地図だった。

あの後ゼルタは運よく書店を発見、店内で無事に地図を入手することができた。

入手、である。購入ではない。

その後、書店から逃げ出しこうして裏路地に隠れるようにして地図を眺めているのだが。

残念ながらゼルタが入手したのは世界地図だった。砂漠育ちの彼女は海を知らず、半分以上青で塗られている地図は意味不明だった。

さらに悪いことに、ゼルタはこの世界の文字が読めなかった。そのため、地図に何が書かれているかがさっぱり分からないでいた。

>>100

と、誰かが近づいてくる気配がした。顔を上げて振り向くと、精悍な顔つきをした青年が一人、ゼルタのほうへと向かってくるのが見えた。

「ん、ちょうどいいや」

あの人に聞こう。

そう呟くとゼルタは値札が付いたままの麦わら帽子を被りなおし、自分から青年に向かって駆け寄っていった。

「そこのお兄さん。ちょっと教えてほしいんだけど」

そう言って持っていた世界地図を広げて見せる。

「この町って、どの辺にあるのかな?」
116五月一日・皐月 ◆AdZFt8/Ick :2010/02/15(月) 01:20:43 0
名前:五月一日・皐月(つゆり・さつき)
職業:中学生でシスター
元の世界:現代並行世界
年齢:14
身長:150cmぐらい
体重:乙女の秘密
性格:優しい人、常時敬語。
外見:黒い短髪に丸眼鏡、それに肩から肘にかけて露出している、ふりふりひらひらな改造シスター服を着ている。
趣味:洋服を作ったり魔改造したり。

特殊能力:「施し」を自分の生命に転化し、他者に分け与えることの出来る能力。
彼女にとって「誰かに何かをしてあげる」という行為はストレートに自分に帰ってくる。
他者にとってその行為が「善意」であると認識された場合、その感情の強さによって彼女の生命がストックされる。
その生命で自らの傷を癒したり、また他者に分け与え救うことも可能。

本人はその能力の具体的な性質に気がついていないので、基本的に彼女の善意は計算などなく素で行われる。

備考:どうでもいいが十一月生まれである。
  :他の設定は後から勝手についてくると思う。
117葉隠 殉也 ◆sccpZcfpDo :2010/02/15(月) 01:22:28 0
>>110
前方に確認できた人影は女子が二人、そしてそれを取り囲む男が八人
なんとも嘆かわしい事情がどうあれ女子を相手に複数で囲むとは…
そんな状況は見ておられず、男達に声を掛ける。

「大の男が情けない……貴様等それでも男か?」

男達は振り返り、近づいて突っかかってくる。

「なんだテメェは?俺等の邪魔すんなよ」
「痛い目に遭いたいのか?」
「女の前で格好付けるためにこんな事してるのか?馬鹿じゃね?」

「黙れいこの日本男児の風上にも置けぬ馬鹿共が!!」

怒りの咆哮と共に近くの壁を殴ると同時に壁が大きく抉れる。

「男が集団で女を取り囲むなど言語同断!恥を知れい!!!」

この光景を見た男達の反応は様々だった
唖然とする者、腰を抜かす者、顔が青ざめる者
そして

「だ、だからどうしたんだってんだよ!!」

男達の一人が怯えながらもナイフを取り出し、こちらに向かって走ってくる
そしてそれが刺さったように見えた。
しかし、血は一滴も垂れなかった。
いとも容易くナイフを指一本で抑える。
この事に完全に失望の色が隠せなかった。

「こんな物を出さなければ喧嘩の一つもできんとは……」

拳に力が入る。

「男なら拳一つで勝負せんか!!」

振り上げた拳が男の顔にヒットし、勢い良く吹き飛ばされる。
そして他の男達の方を見る。

「他に俺に挑む者はおるか!?いるのなら出て来い!」

ここに居る男達全員を一度根性を叩き直さねばならん
そう思い、拳を構える。


118五月一日・皐月 ◆AdZFt8/Ick :2010/02/15(月) 01:22:45 0
全身が砂になっていく感覚。
周囲は渦巻く水の流れで、少しずつ少しずつ体が削られていく。
少しずつ微細な粒子になっていく様を、何も出来ずただ見つめる。
皐月が巻き込まれた「流れ」の感想は、大体そんな感じだった。

「………ふへ?」

奇妙な声から口から漏れた。
だがそれは仕方ないことであろう、何せ彼女が朝起きて、普通に学校に行こうとしたら、変な球体に飲み込まれたのだから。
気がついたら見たこともない場所だった――都心なのは、まぁわかるが。

「え、えーっと、えーっと?」

携帯電話を取り出し、見てみる、ビバ圏外。
次に周囲を見回してみる、が、見知った景色はどこにも無い。
暫く考えた末、彼女がたどり着いた結論は、


「ま、迷子になりましたよー!?」
119五月一日・皐月 ◆AdZFt8/Ick :2010/02/15(月) 01:23:38 0
やたら露出度の高い、コスプレのような服装の少女がぎゃーぎゃーと一人騒いでいる姿は非常に目立つが、本人はそれを気にかける余裕は無かった。
ひとしきり騒いだ後、迷子になったという事実を厳粛に受け止めた上で、皐月は一つの結論を出した。

「と、とりあえずおまわりさんに道を聞いて地元まで戻る手段を考えましょう!」

という極自然な思考である。
財布を確認したところ、諭吉さんが三名程残っていたので、まぁ交通費も問題ないだろう、多分。

「すいませーん! 交番の場所を知りませんか?」

とりあえず手当たり次第、見かけた人に声をかけてみることにする、それがこの世界での彼女の第一歩だった。
120宗方丈乃助 ◆d2gmSQdEY6 :2010/02/15(月) 01:31:19 0
「ごめんなさぁぁい!」

1人のひ弱そうな学生が不良の集団に金を集られている。
「あのさ、お金を出せばぁ〜僕たちはそれでいいの。
暴力反対!!」
叫びながら学生に蹴りを入れていく。
「そうそう、暴力反対なんだって!」
更に仲間の1人が、学生の顔を殴り飛ばす。

その様子を遠巻きに見つめるアフロヘアーの男、丈乃助。
彼は面倒を嫌うが、その反面こういった状況を見逃せない性質でもあった。
「あの〜皆さん。それくらいでいいんじゃないすか?
その子も謝ってますし。」
頭を掻きつつ、丈乃助が割って入る。仲裁のつもりで来たが、不良達は
ニヤけた面を保ったまま更に学生の股間に蹴りを叩き込んだ。

「おぶし!!」

情けない声を上げて悶絶する学生を、大爆笑で見ている不良たち。
次に矛先が向いたのは、丈乃助の方だった。
「おい、そこのマリモみてぇな頭の奴。
何お前正義感ぶってんの?マジでダサ〜プププ!!」

それまで平穏な顔をしていた丈乃助のアフロヘアーから湯気が立つ。
顔は鬼のように変化し、不良たちにもこの音が聞こえた事だろう。

121名無しになりきれ:2010/02/15(月) 01:34:04 0
そこに

ミシェル・ブーンが乱入
122宗方丈乃助 ◆d2gmSQdEY6 :2010/02/15(月) 01:36:27 0
―プッ・チーン!!

「あぁ”!? おい、てめぇ……今、俺の頭がなんだって?」

不良達は大声で再び叫ぶ。「マリモっつたんだよ、馬…あぎゃぁああああ!!」
不良のリーダー格の男が全てを言い終える前に、前歯が全て吹き飛ぶ。
血を放出しながら、のた打ち回る姿に他の不良も腰を抜かす。
「え?え?な、なんだこいつ!!」
這い回りながら逃げ出していく。しかし丈乃助の怒りは収まらない。

「おい、待てっーんだよ!!ゴ ラ ァ !!」

丈乃助の背後から拳の連打が放たれる。
無論、彼らには見ることすら出来ないが。
宙を舞い、太陽に届かんばかりに吹き飛ばされた不良達の情けない叫び声
だけが木霊した。

###############

夕焼け小焼けのSEが鳴る商店街のカフェで、学生が丈乃助にパフェをおごっている。
「あの、さっきはありがとうございました!
僕、体小さいし気が弱いんであぁいう人、苦手なんです。
僕は、広瀬香味っていいます。」
一方のパフェを食いながら極上の笑みを返す。
「いいってことよ。しかし、マジでこのパフェ、グレートな味だな。
あ、そうだ。少し聞きたいことがあるんだけどよ。
――ここの街って、東方町からどれくらい離れてる?」

広瀬君は、一瞬何を言ってるんだこいつ?
馬鹿か?という顔をしたが何とか言葉を紡ぐ様に返した。
「あの…非常に、その、いいにくいんですが
東方町なんて街は、ありませんよ。多分…」

「ええええええええ!!!なんだそれぇええええええええ」

丈乃助の言葉がカフェに響いた
123タチバナ ◆Xg2aaHVL9w :2010/02/15(月) 03:11:21 0
>>88

>「まあとりあえず、飯食わしてくんない?」

サングラス娘は獰猛に口端を吊り上げ、犬歯を魅せながらタチバナの右手を握った。なんとなく猛禽を思わせる笑み。
タチバナも彼女に合わせてにいっと相好を崩すと、それまでの無表情が嘘のように顔面を狂気染みた笑みで装飾した。

「ははははは!見てるかいアクセルアクセス!女の子に出合って三秒で食事に誘われてしまったよ!これも僕の人徳の為せる業かな!?」

路地裏によく通る堂間声は反響し、しかし呼びかけに応える声はない。アクセルアクセスは沈黙していた。
ビルの壁面に頭から突っ込み、光学ステルスも停止してその醜態を衆目に晒している。生憎と、観衆はたったの二人ではあったが。
どうやら激突の際に顕現体の中枢にまで重大な瑕疵が生じたらしく、意思の表示しら不可能であるようだった。

「なるほど、コンクリート同士でぶつかればそりゃ割れもするだろうね。顕現し直すまでもない、暫く引っ込んでいたまえ」

パチリ、と指を鳴らすとそれまで幼女の形を保っていたコンクリートの塊が融けるように形を失い、路地裏に堆積していく。
まるで積み木の城を崩したかの如く、一秒後にはアクセルアクセスだったものの名残はどこにもない。ただ風化したセメントの山が積もっているだけだった。

「飯、飯か。いいね、僕も丁度小腹が空いていたところだよ。なに、食事代なら心配しなくていい。女の子に支払わせるほど僕は爪に火を灯していない。
 なんといっても天下の公務員だからね。中学生の年収ぐらいは常に持ち歩いているよ。つまり――女子中学生の一年がいますぐ買えるわけだね!?」

いちいち動作に風を切る音を加えながら、タチバナは踵を返した。サングラス娘を伴なって、路地裏から大通りへと出る。
土地勘のないタチバナは標識と市街看板地図を頼りに商店街へと赴き、一件のカフェテリアに目をつけた。鋭くターンし、同行者へと向きなおす。

「申し遅れたけれど、僕の名前はタチバナ。タッチのタにチチ離れのチ、バター犬のバにナトリウムのナだ。夢に出るまで脳に刻み付けておくといい」

再び店へと向き直ると、流れるような動きで入店、二名様で禁煙席を指定し、なめらかに着席した。優雅にメニューを開くと、字が読めないことに気付く。
そう、タチバナのいた世界では情報は基本的に概念図データでのみやりとりされていて、本来ならば発声による言葉の応酬すら必要ない。
それでもタチバナが発声言語を習得していたのは、デジタル化していない住民とのコミュニケーションのため調律官に求められる技能だからだ。
なので。

「メニューの品を片っ端から。おっと、スマイルは無料ではない?HAHAHA一体いくら出せば貴女の笑顔を購入できるのでしょう。取り扱ってない?ああ、そう」

よく通る声でされたやりとりに店内の客がみなタチバナを見ていた。本人はなんら気にすることなくメニューの指定を続ける。
店の中には夕方の街で買い物の合間に休憩にきた主婦や、営業帰りのサラリーマン、珍妙な髪型をした長身の高校生などが席を囲んでいる。
若い女の店員を片っ端から口説かんと躍起になるタチバナであったが、やがて相手をするのが屈強な男性店員ばかりになり、
その口数とテンションは右肩下がりに落ちていくのだった。



【ミーティオを伴なってカフェへ。文字が読めないのでメニューを片っ端から注文】
124名無しになりきれ:2010/02/15(月) 06:27:26 0
砲撃が始まった
125月崎真雪◇OryKaIyYzc:2010/02/15(月) 12:55:43 P
>>98

遠回りしながら、真雪は彼に様々な質問をした。
そうして答えられたのは、あたりさわりの無い内容だった。
『公務員で、三十七歳。B型でRH-。娘が一人居て、犬を一匹飼っている。』
『そろそろ引っ越しをしようと考えていて、この街に住む事も視野に入れている。』
…らしい。
会話(で良いのだろうか)をしながら進んでいくと、
目的の二階建ての大型書店が見えてきた。
「あ、見えた」
真雪は呟いて、後ろで付いて来てもらった男性に振り返る。
「あの角にある二階建ての建物です。…あ、そうだ」
後ろを向き器用に歩きながら、真雪は名乗った。
「私はツキザキマユキ。ツキは満月の『月』で、ザキは川崎とか大崎の『崎』。
マが真実の『真』で、ユキは冷たい『雪』です。…あなたのお名前は?」
その男性は少し迷った挙げ句、メモ帳に『尾張証明』と書いた。
真雪はメモ帳を覗き込んで棒読みで声に出す。
「えーと、オワリ…ショウメイさん?」
読んだ瞬間、彼がぶっ、と吹き出した。
そしてメモ帳、名前の上に、読み仮名を書き込む。
「ああ、マサアキさんか! 間違えちった、ごめんね」
謝った後で、真雪は再び前を向いた。
目の前には、もう目的地。
「じゃあ、ここだから」
立ち止まった真雪を追い越し、尾張が頷いた。メモ帳に、サラリと書き込む。
『君ほど 善意溢れる子供に会ったことがない』
そして、メモ帳を閉じ、軽く頭を下げる。それは多分、有難うの意味。
それを見て、真雪は微笑んだ。
「ううん、良いよ。私も暇だったから。…じゃあね」
コクリと尾張が頷いて、書店に入っていく。
その姿が見えなくなるまで、真雪は見送った。





「わたし」

「そんな」

「イイコじゃないよ」
真雪の呟きは、風に消えた。

>>123

>「飯、飯か。いいね、僕も丁度小腹が空いていたところだよ。なに、食事代なら心配しなくていい。女の子に支払わせるほど僕は爪に火を灯していない。
>なんといっても天下の公務員だからね。中学生の年収ぐらいは常に持ち歩いているよ。つまり――女子中学生の一年がいますぐ買えるわけだね!?」

 びしっとオールバックにキメた長身の男に連れられ、ミーティオは大通りに出た。
 そこは――彼女が見たことの無い、溢れるほどの人、人、人で埋め尽くされていた。

「ふおお……」

 実際には、このレベルの人混みというのは、日本では決して珍しくないものである。
 しかし『地下世界』において、果てが見えないほどの群集が道を歩くということは無かった。
 さらにもう一つミーティオを驚かせたのは、道の真ん中を我が物顔で走る自動車群である。

「すげえ、車があんなにたくさん……しかもカッコイイな」

 ミーティオの記憶にある車というものは土砂や瓦礫を運ぶための運搬車がほとんどであり、
 それも滅多に見る事のできないレアなもの、という認識が一般的であった。

 道行く人々の奇異な服装、彼女にとっては厳しい日差し、そして無限に高く浮かんでいるような空。
 奇妙な疎外感をミーティオが味わっていると、男が振り返って笑いかけてきた。

>「申し遅れたけれど、僕の名前はタチバナ。タッチのタにチチ離れのチ、バター犬のバにナトリウムのナだ。夢に出るまで脳に刻み付けておくといい」

「タチバナ……タチバナ、ね。まあ覚えておくよ。あたしはミーティオ=メフィスト」

 聞いているのかいないのか、芝居がかった仕草でタチバナはまた踵を返し、一つの建物に入っていった。
 置いていかれてはたまらない、とミーティオもその後を追う。空腹そろそろ限界であった。

 二人が入ったのは、洒落た雰囲気の、静かな喫茶店だった。
 果たしてどのように振舞えばいいのかわからず戸惑っていると、タチバナが手を引いてくれた。

「あの、お客様、当店にそのような危険物の持ち込みは……」

 がらがらと引かれる鉄パイプを見て、気の弱そうなウェイトレスが近づいてきた。

「ああ? なんだあんた、この『隕鉄』の味を知りたいのかい? 鉄の味だよ〜♪」

 おもむろに振り上げられた鉄パイプを見て、「ひっ」と短く悲鳴を発し、ウェイトレスは逃げていった。
 小さなテーブルに向かい合って座る二人。
 空いている椅子に鉄パイプを立てかけ、ほっと一息つく。

>優雅にメニューを開くと、字が読めないことに気付く。

 何かに気付いた様子で、一度は開いたメニューをすぐに閉じるタチバナ。
 そして小さく手を上げて、店内を歩いていたウェイトレスを呼び寄せた。
 このウェイトレスは先程のよりいくらか賢く、ミーティオの鉄パイプには言及しなかった。

>「メニューの品を片っ端から。おっと、スマイルは無料ではない?HAHAHA一体いくら出せば貴女の笑顔を購入できるのでしょう。取り扱ってない?ああ、そう」

(うおおお、こいつ金持ちか!? こりゃ知り合っといて損はねえな!)

 よく観察してみれば、その大袈裟なアクションや仰々しい物言いにも、何か高貴さのようなものが含まれているような!

>若い女の店員を片っ端から口説かんと躍起になるタチバナであったが、やがて相手をするのが屈強な男性店員ばかりになり、
>その口数とテンションは右肩下がりに落ちていくのだった。

 ……と一瞬思ったが、どうやら貴人ではないらしいと思い直した。
 まあ金持ちならなんでもいい、とりあえず飯が喰えれば何も文句はない。

 暇潰しに店内を見回していると、突然大きな叫びが響いた。

>>122
>「ええええええええ!!!なんだそれぇええええええええ」

 声の方を見ると、二人の若者が果物の入った細長いガラスの器に向かっていた。
 叫んだ方らしいガタイのいい男の服装、そして髪型を見てミーティオは思わず吹き出した。

「ぶはっ……! おい見ろよタチバナ! あいつガス爆発に巻き込まれたみてーな髪だぞ!」
128宗方丈乃助 ◆d2gmSQdEY6 :2010/02/15(月) 16:19:48 0
>>127
「いや、そのぉ…本当にないんですよ。東方町なんて、この近くに。」

広瀬君は丈乃助の叫び声にビビリつつ、言葉を返した。
丈の助はハッと我に返り、申し訳無さそうな顔つきで広瀬君に会釈を返す。
「お、わりぃ…なんかさ。つい、ワケわかんなくなって叫んじゃったわけよ。
悪気はないんだぜ?だけど、奇妙だよなぁ…俺いったい何処にきちまったんだ?」

パフェを食いながら気を取り直すように深呼吸をする。
丈乃助の前に見えるのは大声でこちらを指差す1人の女性。
ボサボサ頭にサングラスというなんとも言えないイカした姿をしている。
>「ぶはっ……! おい見ろよタチバナ! あいつガス爆発に巻き込まれたみてーな髪だぞ!」


「 あ ぁ !?”てんめぇ…」
再び湯気を上げ、立ち上がろうとする。異変を察知した広瀬君が
丈乃助を制止すべく声をかけるが―!?

「あ、あの丈乃助君!!君の頭は、決して変じゃないよ!!
マリモでもないし、その、ガス爆発でもないし!
強いて言うなら、ポンデライオンみたいかなぁって…あははは!」

丈乃助の視線が、女から広瀬君へ変わる。
怒りの矛先が変化した瞬間だった。

「誰が…ポンデライオンだてめぇえええええ!!!」

「あばばばばばばばば!!!さーせんでしたぁああああ」

カフェのテーブルを殴った瞬間、机が破壊される。
その次に起こった現象に、広瀬君や周囲の人間は驚愕する。

テーブルが直っているのだ。破壊されたはずのテーブルが完全に直っている。
しかし、何処か変だ。
「あれ?さっきまで四角だったテーブルが…三角になってるぅ!?」

我に返り、丈乃助はバツの悪そうな顔で広瀬君たちを見つめる。
一礼し、何だか悪いなぁと思いながら財布を取り出した。
「すまねぇ…髪型のことけなされるとプッツンしちまうんだ。
なんつぅ〜かよ。理由はねぇんだ、本能ってやつなんだろうなぁ。
侘びってことで、俺があんたらの飯奢るよ。な、広瀬君。」

一瞬で温和な顔に戻った丈乃助を、呆気に取られた顔で見る広瀬君。
あんぐりと空いた口が、ゆっくりと「え、あ・・・はい。」
とだけ言った。

――カフェの様子を見つめる黒い影。その影の背後には宙に浮く人型の化物がいた。

『くくく…見つけたぜぇ、俺と同じ世界から来た呑気なヤロウをよぉ。
この弓と矢でこの世界も邪眼使いに変えてやるぜ…」

 
129ゼルタ=ベルウッド ◆8hdEtYmE/I :2010/02/15(月) 16:38:13 0
「あ、あれ?」

声をかけたと思ったら、華麗に素通りされた。

軍人のような格好をした青年はゼルタに気付く様子もなく、どんどんと路地を奥のほうへと進んでいく。

「……無視するのはいくらなんでもひどいんじゃないかなー」

ゼルタは少々むっとした様子で青年を追う。が、思った以上に青年の歩みが速い。ずんずんと先へと行ってしまう。

小走りに走ってようやく青年に追いついた時、ゼルタは彼が自分を素通りした理由に気付いた。

どこか際どい服装をした巻き髪の少女と、青年同様軍人のような格好をしたポニーテイルの女性とが、ガラの悪そうな男の集団に囲まれていたのだ。少女がもう一人を庇うように、臨戦態勢で構えている。

「あー、なるほど」

人助けってわけだ。それじゃ気付かなくても仕方ないか。

それにしても、あの手のゴロツキの集まりはどこの町にでもいるんだなぁ。

そんな傍観者然とした感想を思い浮かべていると、青年が男たちに向かって声をかけた。

>「大の男が情けない……貴様等それでも男か?」

男達が振り返り、何人かが青年に近づいて絡んでくる。

>「なんだテメェは?俺等の邪魔すんなよ」
>「痛い目に遭いたいのか?」
>「女の前で格好付けるためにこんな事してるのか?馬鹿じゃね?」

>「黙れいこの日本男児の風上にも置けぬ馬鹿共が!!」

>怒りの咆哮と共に近くの壁を殴ると同時に壁が大きく抉れる。

「……ほえー」

そんな光景を見て、ゼルタはただ驚きの声を漏らすことしかできなかった。

>「男が集団で女を取り囲むなど言語同断!恥を知れい!!!」

青年の一喝が空間を震わせる。一瞬、ここだけ時間が止まったかのような感覚に襲われるが……。
130ゼルタ=ベルウッド ◆8hdEtYmE/I :2010/02/15(月) 16:40:01 0
>「だ、だからどうしたんだってんだよ!!」

張りつめた空気に耐えられなくなった馬鹿が一人飛び出した。短刀を取り出し、青年に向かって突進する。

「うらぁああっ!」

が、その刃が青年に届くことはなかった。彼は指一本で短刀を止めて見せたのだ。

>「こんな物を出さなければ喧嘩の一つもできんとは……」

>「男なら拳一つで勝負せんか!!」

叱咤の声とともに男の身体が吹き飛び、壁にぶつかって崩れ落ちる。恐らくしばらくは起き上がれないだろう。

>「他に俺に挑む者はおるか!?いるのなら出て来い!」

「クソが、やっちまえ!」

リーダー格らしき男の一言で、ゴロツキたちが一斉に襲い掛かる。同時に、女性二人の側に残っていた連中も動き出した。どうやら青年を襲う何人かを囮にして、彼女らを連れ去るつもりのようだ。

だけど。

過去荒れている二人の内、巻き髪の少女の表情を見て、ゼルタは思う。

向こうは向こうでなんとかなりそうだな、と。
131名無しになりきれ:2010/02/15(月) 19:30:00 0
しかし射程が足りない!
どうしても脳みそが足りない1
132尾張証明 ◇Ui8SfUmIUc:2010/02/15(月) 20:23:23 0
『成桐市の地下に眠る古代遺跡―――星辰の揃う時、■■山にその一部は表出する!!―――』


馬鹿らしいと思いつつも読み進めたオカルト雑誌を棚に戻す。

本屋に入って数時間。幸いこの本屋の店員は立ち読みし続ける客をはたきで叩くような真似はしないらしく、必要と感じた本は大方読み終えることが出来た。

>>115(何か途中で少し騒がしかったが……万引きがどうとか)

ともかく

(成桐市)

予想はしていたとはいえ、地図帳から自分の元居た街の名前がさっぱり消えていたのは、やはり衝撃的だった。しかしそれ以上に

(1945年に敗戦……本土上陸されたのが沖縄のみで、おまけにそもそも戦っていた相手まで違う……モンロー主義を貫かなかったアメリカ、か)

やはり自分は夢でも見ているのではないか。

(そうであってもなくても、今の自分に感じられるのは現実のみだ)


頬をつねれば痛いし腹も減る、疲れもするし、眠気も同様だ。死ねば当たり前のように死ぬだろう。そう確信できるほど全ての感覚は明瞭だった。
夢を見ているとは、到底信じられない、しかし夢としか思えない。


(今重要な事は何だ?)


娘の事を思う、死んでしまった妻の事も。仕事、同僚、上司、装機に居た頃、テロ屋に捕まって殺された友人の事を思う。あいつは両目をくり貫かれても俺について口を割らなかった。


(帰りたい)


(そして死ねない)


金、あと寝床も要る。アシは適当に盗めば良い。それに、

(同じ様な体験をしている奴が、他に居ないか)

探す。何としてでも手掛かりを掴む。掴んで、帰る。自分の元居た所に。


(取り敢えず、車を盗もう)



133三浦啓介 ◆6bnKv/GfSk :2010/02/15(月) 20:58:24 0
「驚いたな……。寸分の誤差も無しにここに現れるとは」

眼前に現れた異世界人に、三浦啓介は小さく呟いた。
時空跳躍の秘術は桁違いの高度さと不確定要素の多さから、どうしても誤差が発生する。
場所がズレたり、場合によっては時間さえも相違して、召喚が起こる事だってあるのだ。

にも拘らず竹内萌芽を名乗るこの男は、寸分違わぬ精度でここに現れた。
全くの偶然か、或いは彼自身に抱える能力が原因か。
三浦の理解が真実に及ぶ事はない。

けれども同時に、及ぶ必要も無かった。
何せ竹内萌芽は三浦を前に、自らがどうすればいいのか。
行動の指針を委ねると言っているのだから。

早速恭順な駒を一つ手にしたと、三浦は黒髪の下で秘かにほくそ笑む。

しかし竹内が求めているのはあくまで『退屈からの解脱』である。
目的が満たされないと知れば、彼は途端に三浦を離れていくだろう。
やはりこの事にも、彼の意識が辿り着く事はなかった。

「退屈かい? ……だったら僕と、ゲームをしよう」

目下、己の計画が幸先の良い走り出しをした多幸感に支配されて、三浦は語る。

「この世界には、如何なモノにも犯されない『イデア』と呼ばれる存在があるんだ。
 私はそれを集める為に、君達を他所の世界から招いた」

君達、との単語に竹内がぴくりと反応を示す。

「そう、この世界に呼んだのは一人ではない。ゲームには対戦相手がつき物だろう?」

揺れる長髪の隙間から笑顔を零して、三浦は人差し指を竹内の眼前へ突きつける。

「ゲームと言うのは『宝探し』だよ。君は対戦相手達を下して、または協力して。
 とにかく手段は問わず『イデア』を集める。どうだい?」

勿論『宝探し』は一筋縄ではいかない事。
もしも三浦が望まない『イデア』でも、自分の元へ持ってきたならば何らかの報酬がある事。
つまる所前者は難解なミッション、後者はメダルの大好きな王様だ。

ゲーム性を強調しつつ二つを説明に付け加えて、三浦は提案した。


【そう言えば、何気に我々時間軸は未だ夜です。次のターンでぶっ飛ばして周りに追いつくとかアリですです】
134 ◆6bnKv/GfSk :2010/02/15(月) 20:59:19 0
路地、建物の陰。
街に無数に存在する闇に潜んで、幾人かの男が密談する。

「……おい、確かに見たんだろうな」

「間違いねえよ、アイツら『文明』持ちだ。それも相当にレアいぜ?
 『機構傀儡《マリオネット》』まであると来たモンだ。他にも……」

『瞬間移動《テレポート》』
『重力制御《グラヴィトン》』
『物体変質《オーバーライト》』
『偏光隠匿《ミラージュラップ》』
『視外戦術《ゴーストタクティクス》』
『代謝促進《イージーヒール》』
『身体強化《ターミネイト》』

指折り指折り、彼らの内の一人が数えていく。

「……んで? 仕掛けるんだろ? だったらまとまってる今がチャンスだ。さっさとやるぞ」

勇み足に踏み出した男に数歩遅れて、仲間と思しき連中が追従する。

「お、おい……。大丈夫かよ? そんだけの『文明』、俺らだけじゃどうにも……」
「安心しろ。実は奴らな、ついさっきヤーさんと一悶着してんだよ」

「おっ? ってえ事は……」
「応援、来るってよ。まあ、囲んでボコるとしましょうや」

【喫茶店と路地裏、並びにシエルさんとこに何かヤバげな連中を向かわせました。
 他の方もこれを期にどっかに巻き込まれるなり、何なりと。】

【『文明』に関しては近い内に作中に説明しますです。とりあえず今は『単一の異能』と言う事で扱ってください。
 ヤバげな連中の『文明』はご自由にしちゃってください。】
135名無しになりきれ:2010/02/15(月) 22:46:40 0
「神よ、世界は何時からこんなに白状になってしまったのでしょうか……」

とぼとぼと歩く皐月、二十人近くに声をかけてみたものの、その反応は一様に芳しくなかった。

(少し宜しいでしょうか? アナタのために祈らせてください!)

という一言から始まっているので当然といえば当然なのだが。
修道女として礼儀(?)だと教え込まれている為、本人的には全くおかしい事をしているとは思ってないので、余計に気がつくことが出来ない。

「うう、喉が渇きました……これも神の与えたもうた試練なのでしょうか……?」

目の幅涙をだらだらと流しながら、せめて自販機か水のみ場でもないかと視線を動かす。
が、あいにく周囲にそれっぽいものは無く。
とりあえずありそうな場所、という事で、人気の多い商店街へと足を進めることにした。
136皐月 ◆AdZFt8/Ick :2010/02/15(月) 22:47:44 0
いやっほう前レスにトリ付け忘れた。

しかし皐月の目論見とは裏腹に、自動販売機があれば彼女が飲めない珈琲以外が売り切れだったり、個人商店のじっちゃばっちゃが留守だったり、中々喉の渇きを潤せない環境にいた。
だが、その代わりと言ってはなんだが、カフェの看板が目に入った。


「…………っ!」


繰り返すが皐月は修道女である。
敬謙なる神の子羊がファミリーレストランなる俗世的な場所に保護者も無く入るなど言語道断である。

だがしかし。

――食品サンプルとは、見ることで店頭に入る前からメニューを選ばせる為と、その外見から客引きを行うという二つの目的がある。
この場合、後者の役目をそれをしっかりと果たしているといえよう。

「……神よ、ちょっと歩き疲れた私に慈悲はOKですよね?」

歩き回って体力を消耗した彼女に、なんかでっかいパフェのサンプルは非常に魅力的に映った。
やわらかそうな生クリーム、底にたまったザクザクのコーンフレーク、天辺にある白いアイスクリームの頂点にあるのは真紅のサクランボ。
カラースプレーが適度に塗され、ポッキーが適度なアクセントとなっている――。
自分自身に言い訳をしながら、皐月は店内へと足を薦めた。

【カフェに乱入】
137名無しになりきれ:2010/02/15(月) 23:33:40 0


138ku-01 ◇x1itISCTJc:2010/02/15(月) 23:37:54 0
>>130


 唐突に現れた男性が啖呵を切るのを聞きながら、ku-01は主人の足元まで可視領域を下ろしていた。
 先ほど彼女は「黙ってみているように」と指示を下した。
 それに従わんとku-01は口を噤み、待機体勢に入ろうとしたのだが。


 AIが警告音を鳴らす。
 それは主人の危険を察知したものだ。


 人間を護るべし。AIの最奥にプログラムされた事項が、そう叫ぶ。
139竹内 萌芽(1/5) ◆6ZgdRxmC/6 :2010/02/15(月) 23:38:32 0

「『イデア』……ですか」

前髪で顔を隠し、ゲームを提案した目の前の男の言葉に”先程竹内萌芽になったばかりの”少年はぼそりと呟いた。
『イデア』、あの『退屈な世界』での学校の授業で習ったことがある気がする。
「本質」に近い言葉で、五感でとらえることができず、理性でとらえられるものだとかなんとか……
ただ、それとこの男の言っている『イデア』が同じものなのかは分からない。しかし、分からないままにしておくのもなかなか”面白そうだ”と彼は思った。

この男は言った、「ゲームをしよう」と。つまりこれはゲームなのだ。しかも『宝探し』である。

萌芽は、自分の全身の背筋にぞくりとした感覚が走るのを感じた。

自分を『この世界』に呼び寄せるほどの”力”をもつ男が、自分に提案した「ゲーム」。それがどういうものなのか想像しただけで興奮を抑えられなかった。
”竹内萌芽”になる前の彼は、”自分と何かをあやふやにする”という不思議な才能を持ちながらも、その才能を利用する『目的』がなく、今までその才能はせいぜい『退屈しのぎ』ぐらいにしか使えなかった。
しかし、この人は自分に『目的』をくれるのだという。しかも「ゲーム」という自分を楽しませてくれる要素までつけて。
やはりこの人こそ、自分の『退屈』を終わらせてくれる人に違いない。と萌芽は思った。

『……あなたにとって、その声はけっして『希望』にはならないでしょう』

ふいにここに来る前に会った、不思議な猫の言葉が頭をよぎった。
『希望ではない』? こんな”面白そうなこと”が『希望』でなくてなんだというのだ。

「いいでしょう、その『ゲーム』乗りますよ」

だから彼は迷いなくそう言って、笑った。
140ku-01 ◇x1itISCTJc:2010/02/15(月) 23:39:08 0
 主人は三人の男と対峙している。
 残りの五人はどうやら先ほどの男性への対処へ向かったらしい。
 今にも飛びかからんと三人の体が緊張し、主人の体もそれに対応せんと強ばっている。
今にも交戦が始まりそうな状況に、焦りに似た熱を持つ。


 一時でも良い、時間を稼ぎ、主人に進言しなくては。




 不意に、かりかりと尚も処理、検索を続けていたAIがメッセージを表示させた。
141ku-01 ◇x1itISCTJc:2010/02/15(月) 23:39:52 0







  使用可能なチャンネルの検索が終了しました。

142ku-01 ◇x1itISCTJc:2010/02/15(月) 23:40:46 0
 タスクの予約優先リストを破棄。
 対象を検索する。条件に一致したのは約176
 更に条件を絞り込む。4つが合致した。対象の検索を開始。
 362の端末が合致。これ以上の絞り込みは不可能と判断。

「介入を開始します」




『♪』


 それは、陳腐な音色だった。
 男達のうちの一人のポケットから鳴り響く。


 メールの着信を告げる音。


 だが、男達は無視を決め込んでいるのか音源を止めようという動きの気配は無い。
 二つ目の音色が重なっても、誰もが下卑た笑みを浮かべたままでいる。
 そして更に重なる、三つ目の音色。流石に三人は怪訝に眉を寄せた。

「お、おい……なんだよ、なんの悪戯だ?」

 音は止まない。
 一通分を終えたかと思うと、休むことなく二通目を告げる。
 三通目、四通目、五通目。止まらない。
143ku-01 ◇x1itISCTJc:2010/02/15(月) 23:41:32 0
処理のため内部で発生した熱が、ku-01の耳パーツから、透明素材の多い瞳から、
緑色に着色された光と変換され淡く漏れ出す。




 何事だと男達が慌て始める。
 それを見ていて何かを察したらしい主人が振り返り、口を開く前に作業を完遂した。



 ぱんという軽い爆発音を追いかけ、プラスチックの溶ける異臭。


 通りの方からの同様の音と、悲鳴とが路地裏にも舞い込んだ。


「お言葉ですが、マスター」


 排熱の済んだku-01の瞳から光が消える。


「その履き物は激しい運動には不向きかと思われます。お預かりいたしますか? 応答は?」
144竹内 萌芽(2/5) ◆6ZgdRxmC/6 :2010/02/15(月) 23:49:16 0
>>139

さて、そうときまればせっかくの「ゲーム」を楽しまない手はない。
萌芽はさっそく行動にでることにした。

「あ、そういえば、まだあんたの名前を聞いてませんでしたね……」

ふと気付き聞こうとして、途中で「いや、やっぱりいいや」と言葉をとめる

「なんだか今はそれも『秘密』にしていた方が面白そうですしね。でも、そのかわり僕が最初の『イデア』を持ってきたら、ちゃんと教えてくださいね? 『イデア』がどういうものなのか、あとあんたの名前も」

「まずはそれが最初の『報酬』ってことで」
けらけらと笑うと、彼はその場で両手を大きく広げ、目を閉じる。
そしてその場で、世界と自分の境界を”あやふや”にした。

すっと、自分というものが風船のように膨らんでいく感覚。
それとともに、世界というものと自分というものの境目が薄れていく。
すると感じる。世界と同化した自分の中にある、複数の”異物”の存在を。
目の前の彼が言っていた、「対戦相手」とやらだろう。複数の場所に存在し、そしてその数はいまなお増え続けている。

これはもう少し時間を置いておいた方が面白そうだ。
そう思った彼は、自分と世界の境界を”あやふや”にしたまま、”参加者”がゲームが面白くなりそうな程度に増えるまで待つことにした。
145竹内 萌芽(3/5) ◆6ZgdRxmC/6 :2010/02/15(月) 23:51:08 0
しばらくすると、さまざまな”参加者”が、彼と同化する世界の中に現れるのがわかった。

”幼女のような妙な飛行物体に乗った謎の男”

”黒いスーツを着て町を彷徨ういかつい男”

”サングラスに黒いつなぎを着た、鉄パイプの女”

”珍妙な格好のおっさん”

”鎧と剣を持ったちびっ子”

”アフロ”

”幽霊の盗賊”

”ロボット”

”ドぎついファッションの女”

”ロボット(多分)”

etc……

なるほど、異世界から呼び出したというだけあってなかなか面白そうな面子がそろったなと彼は思った。
それらは、彼と同化した世界の中で出会い、おそらくは先ほどの”あの人”が意図する通りの「ゲーム」を始めることになるのだろう。
さあ、自分もそろそろこの中の誰かに接触するか、そう思ったとき

「……ん?」

―――ふと、違和感を感じた。



異常なまでに個性的な―――それは異世界の住人なのだししょうがないとは思うのだが―――メンツのなかで、ただ一人妙に”普通”の人間がいる。
女の子だ。少しぽっちゃりしているという意外、外見的にとくにこれといった印象はもたない。
”あの人”は「ゲーム」のためにわざわざ異世界から”参加者”を呼び出したと言った。
ならばこの少女も、なにかしら他人とは違う、”普通ではない”何かを持っているはずだ。
自分と似たような世界からきた、自分と似たような存在。
彼は彼女のことを、少しだけ「面白そうだ」と思った。

「よし、じゃあこの人にしましょうか」

そういって、萌芽は自分と世界を”はっきり別々に”し、そして今度は、自分と彼女の目の前の空間との境界を”あやふや”にし始めた。
146竹内 萌芽(5/5) ◆6ZgdRxmC/6 :2010/02/15(月) 23:53:10 0

目を開くと、彼女が立っていた。

「やあ、こんにちはだ……」

一瞬、”萌芽”になる前の”彼”の口調が出そうになって、彼はひとつ咳払いをする。
目の前の女の子は、なんだかぽかんとした表情をしていた。
まあ相手からすれば自分が急に空間から沸いて出たように見えるだろうから、驚くのも無理はない。

「こんにちは、キミは『イデア』を持っているのでしょうか?」

ちなみに彼は、世界と”あやふや”になれたとしても、それだけでは相手の内面まで知ることはできない。

「あ、ごめんなさい。自己紹介が遅れました。僕は萌芽。竹内萌芽です、よろしく」

だからよりにもよって、目の前の相手に”嘘を吐く”という行為が、自分にとっての最大の失態であるということなど、気付く由もなかった。


ターン終了:
【月崎真雪に接触:いつこのシチュエーションになるかは真雪のPLさんにまかせます】
【嘘:名前を偽っている】
【能力発動中:能力で現状に干渉することは難しい、ただし本体は三浦啓介の側にいるので、少なくとも本体は町にいる萌芽が何をされても無傷】
147名無しになりきれ:2010/02/15(月) 23:55:03 0
ここでキャンセル攻撃

↓ 次の人どうぞ
148ウェイター ◆T28TnoiUXU :2010/02/16(火) 00:12:41 0

――――身支度をしながら現場に入ると、フロアの一部が修羅場と化していた。

『メニューの品を片っ端から。』【>>123

「はい。……はあ?」

テーブル席で、オールバックの男がウェイトレスを呼び止めている。
その傍らには、アホの子の様に店内を見回しているサングラスの少女。
見慣れた同僚が、格調高いヴィクトリアンスタイルの給仕服で接客に入った。
服装に不釣合いな安っぽい電子音を響かせて、ハンディをスタンバイさせている。

「……いえ、失礼いたしました。
 花まるあーくハンバーグが、おひとつ。
 エスニック風オムレツグラタンが、おひとつ。
 ええと、そちらに記載されていますのはメニューでは――」

『――おっと、スマイルは無料ではない?』

「はい。正確には無料ではなく、価格がゼロとなっておりますが」

『HAHAHA一体いくら出せば貴女の笑顔を購入できるのでしょう。』

「はい。お客様が記載額ゼロの失効していない法定通貨をお持ちでしたら」

―――不味いな。裏メニューの梅サンド並に不味い状況だ。
あの女にしては珍しく、客相手で"はんにゃモード"に入ってやがる。
身支度の途中だった俺は、制服のタイを放り出して六番テーブルへと向かった。

「ああ……っと、悪いなお客さん。
 ウェイトレスが無駄口を叩いたみたいで」

「……っ!?
 どうして祇越さんがフロアに出てくるんですか。
 べつに、これはトラブルじゃありません。そもそも私は貴方より先輩――」

「――いいから和泉、お前はさっさとオーダー通しに行け」

「……わかりました。
 ですが、くれぐれもお客様には最大限の敬意を忘れないでください、ねっ!」

俺の足の甲を踵で踏みつけてからカウンターの奥へと消えて行くウェイトレス。
その場に残されたノータイのウェイターは、一礼してオールバックと対峙した。

「そのメニューだが、んなモノ置いてな……いえ、現在取り扱っておりません」

『取り扱ってない?』

「実を申しますと、大型連休直前のミーティングにて店長から通達がありまして。
 お客様が御注文なさった"和泉の笑顔"の原料であるインテリ気取り19歳は、
 "無愛想娘の・スマイルなんて・営業にはちょっと使えないんじゃない?"
 通称"BSE"の疑いがある為、提供は差し控える様にとの指示が――――」



……

数分後、仕事をやり遂げた男の顔で制服のタイを取りに休憩室へと向かった俺は、
何故か自分のマグカップだけが真っ二つに割れているという怪奇現象に遭遇した。
149ウェイター ◆T28TnoiUXU :2010/02/16(火) 00:13:25 0
――――大都市が、多様な個性を撹拌する坩堝であるとするならば。
其処に住まう者達の食を預かる飲食店は、その縮図だと言えるだろう。
大型連休初日のランチタイムを迎えたカフェレストラン『マルアーク』――
――俺が臨時ヘルプとして呼び出されたこの店舗とて、例外では無い。



……

一階のフロア全域を見渡せる配置で城壁の様に伸びているカウンター。その内側で。
キッチンへと連なる通路口から戻って来た和泉が、事務的かつ無愛想に口を開いた。

「……祇越さん、今日はシフト入っていませんでしたよね」

「俺を正規のウェイターみたいに言うな。こっちは"代行業務"で来てるだけだ」

依頼人である女店長は現在、店を放り出して特殊遊技施設のイベントに参戦中だ。
己の城を捨ててでも、高設定の"CR萌えよ!截拳淑女"に座りたかったらしい。
その弥縫役が"便利屋"稼業を営む腐れ縁の所に回されて来た、というわけだ。

「以前から思っていたのですが、貴方の就業形態は問題があると思います」

「文句があるなら、ミス・ギャンブラーに言ってくれ」

黙り込んだ俺は、ゲストに一杯420円で提供される高級泥水の調合作業を開始する。
先に紅茶の準備に入っていた和泉は何やら言いかけて、煮え切らない声音を出した。

「……ホットは170ccです」

「どうやって量れってんだ」

「カップのフチから1.5cmですけど」

「だから、どうやって測れってんだよ」

「あ。持ち手とスプーンの柄は右側に向けてください」

「一気に言われて出来るか! 右ってのはステージで言うとどっちだ!?
 ベースがイビキかいてる方か? それともギターが歯軋りしてる方か?」

「その間で寝言を吐いてる人がお箸を持つ方ですっ!
 ああ、もう! 貸してください。あとは私がやりますから。
 ……そ、それから言い忘れてましたけど、さっきはありがとうござ――」

「――む。おい、いま入って来た丸眼鏡の娘を見てみろ和泉。
 最近じゃ希少なくらい可愛気のある佇まいだと思わないか?」

まくしたてながら顔を赤く染めていく表情の変化を俺は見逃さなかった。
同僚の怒りを終息させる為に、俺は哀れな子羊を躊躇無く生贄に捧げた。

『……神よ、ちょっと歩き疲れた私に慈悲はOKですよね?』【>>136

「くっ…! あちらのお客様も私が対応しますから。
 それより祇越さん、四番テーブルのお客様のグラスが空です。
 一度フロアに出た以上は、常にテーブルに気を配るようにしてください」

ウォーターピッチャーをこちらに押し付けると、和泉はエントランスに出た。
俺はと言えば、六番テーブルの周囲には近付きたくないというのが本音だった。
なぜなら、あのオールバックの男は何らかの権力を持つ人間特有の気配があるし、
サングラスの少女からは、嗅覚が訴えるのとは別種の"野良犬の臭い"がしたからだ。
150ウェイター ◆T28TnoiUXU :2010/02/16(火) 00:15:41 0

ミネラルウォーターで満たしたピッチャーをぶら下げて向かった四番テーブル。
そこには、緑花野菜のオブジェを頭に乗せた学ラン姿が着席していた。
同席している舎弟にメシを奢らせているらしい。羨ましい限りだ。

「水は……お冷のおかわりは要るか……いかがですか。
 ついでに……宜しければパフェのおかわりはいかがでしょうか。
 当店の名物である"マルアーク・タワーパフェ"がオススメだ……ですが」

俺は真摯な会釈――相手に対する確認・角度15°――を流麗に駆使して、
嫌がらせ半分で当店最上のぼったくりメニューのサジェッションを試みる。

『ぶはっ……! おい見ろよタチバナ! あいつガス爆発に巻き込まれたみてーな髪だぞ!』【>>127

『誰が…ポンデライオンだてめぇえええええ!!!』【>>128

誠心誠意の接客は、バカ騒ぎに掻き消されたらしい。これはアレか?
感覚器官の稼働に回すべきエネルギーが毛髪に吸い上げられてるとでも?
いや、むしろ頭頂部に安置されている空間芸術の方が本体だったりするのか?

「おい、其処の――」

俺は、学術的着想を素直に言葉に出しかけて、思い留まった。
背後に居るであろうウェイトレスからのプレッシャーを感じたからだ。
危うく忘れちまう所だった……"お客様には最大限の敬意を"だったよな。
おかげで誤解を招く恐れのある発言をせずに済んだ。感謝するぜ和泉トレーナー。

「――失礼致します、ブロッコリーみてーな御髪のお客様。
 あまり大きな声で話されますと周囲のお客様の御迷惑ですので、
 大変申し訳ありませんが幾分お控え頂くよう御協力をお願い致します」

ピッチャーを置いてテーブルに背を向けるが、騒ぎが収まった様子は無い。
カウンターでは何故か、和泉がハイライトの消え失せた瞳でこちらを見ている。
俺は背後を振り返る気にも向こうへ戻る気にもなれずに、その場で溜息を吐いた。
151訛祢 琳樹 ◇cirno..4vY:2010/02/16(火) 02:17:39 Q
「……私を、信じてくれますか…?」

長い話を喋り終えた後、彼女はこう言った。
信じてるか、それの答えはYesだ。
何故なら彼女はこう言ったのだから。

「こんな言動はあなた方の感覚では狂人に値するのかもしれませんが」

自らを狂人と言う狂人などいない。
私はそう考える。いいや、決め付けている。

そうして少し、といっても三十秒ほどだが、私は考えた。

A1、この世界に違和感を感じていないか?
Q1、感じている。

A2、彼女はここが元々いた世界と違う事が文明の違い等からハッキリ認識できるそうだが?
Q2、鎧からして、そうだろう。この世界や私の覚えている世界とは全く違う服装だ。

これまでの結論はこうらしい。
彼女は元の世界からこの世界に呼び出された
そして私はこの世界に違和感を感じている

続けて
A3、これは偶然にしては出来過ぎているとは思わないか?
Q3、ああ、確かに必然的に仕組まれた何かのように思う。

A4、だとするなら、私達は世界の差の大きさこそ違えど、同じように元の世界からここに飛ばされたと思えないか?
Q4、思えるかもしれない。

これらから考えて、彼女の言った事は筋が通っているのだ。

それ故、答えは

「信じよう」

Yesだ。
152ネルロ=ディエスト ◆gjb6TJ/kAk :2010/02/16(火) 06:00:54 0
「今日の稼ぎはこんだけか………チッ」

いくらかの紙幣をひらひらさせながら男は呟いた。
泥棒も楽じゃない。
入った家が豪邸でも質素なボロ屋でも、いくらそこに金があるかは解らない。
今日"寄った"家はそこそこの家。
2LDKの一軒家。
防犯に気を遣っているのかいないのか、犬がいる。

しかし眠っていては仕方がない。
8の頃から盗みをかじり、11年間磨いたピッキングさばき。
いとも簡単に鍵を開け中に入る。

真っ暗だが、どこに何があるかは解る。
下見をしないで盗みに入る泥棒など居ない……筈。
リビングには誰もいない。
多分皆寝室に居るはずなので、物音を立てぬよう慎重に中を探る。
しかし財布には目を細めたくなるような金しか入ってなく、他にあったのは貯金箱だけ。
それも子供が貯金してるらしく硬貨が数枚あるだけだった。
持っていくのは財布と奇妙な石。
一見只の石だが、どこか人を引きつける。

近くから物音が聞こえる。
どうやら誰かが起きてきたらしい。
窓の硝子を開け、急いで立ち去る。
南無三、姿を見られてしまったようだ。

それも仮の姿。
私は変身の呪文を唱え、また街に消える。
153ネルロ=ディエスト ◆gjb6TJ/kAk :2010/02/16(火) 06:13:22 0
名前:ネルロ=ディエスト
職業:泥棒、飲食店のレジ係
元の世界:現代
性別:男
年齢:19
身長:171cm
体重:51kg
性格:したたか、嘘つき(8:2)
外見:黒髪短め、軽装で腰には毒付きのナイフ
特殊能力:変身の呪文が使える。
人間に変身するならどんな姿にもなれる。
備考:飲食店で働きつつ裏稼業では泥棒。
嘘の巧さは天下一品。
泥棒は幼い頃から盗みをやっていたので得意。
性格はしたたかで、気を許せる相手はいない。
孤児なので愛を知らず、無愛想。
154名無しになりきれ:2010/02/16(火) 08:41:55 O
155訛祢 琳樹 ◆cirno..4vY :2010/02/16(火) 09:32:38 Q
「……私を、信じてくれますか…?」

長い話を喋り終えた後、彼女はこう言った。
信じてるか、それの答えはYesだ。
何故なら彼女はこう言ったのだから。

「こんな言動はあなた方の感覚では狂人に値するのかもしれませんが」

自らを狂人と言う狂人などいない。
私はそう考える。いいや、決め付けている。

そうして少し、といっても三十秒ほどだが、私は考えた。

Q1、この世界に違和感を感じていないか?
A1、感じている。

Q2、彼女はここが元々いた世界と違う事が文明の違い等からハッキリ認識できるそうだが?
A2、鎧からして、そうだろう。この世界や私の覚えている世界とは全く違う服装だ。

これまでの結論はこうらしい。
彼女は元の世界からこの世界に呼び出された
そして私はこの世界に違和感を感じている

続けて
Q3、これは偶然にしては出来過ぎているとは思わないか?
A3、ああ、確かに必然的に仕組まれた何かのように思う。

Q4、だとするなら、私達は世界の差の大きさこそ違えど、同じように元の世界からここに飛ばされたと思えないか?
A4、思えるかもしれない。

これらから考えて、彼女の言った事は筋が通っているのだ。

それ故、答えは

「信じよう」

Yesだ。
156月崎真雪 ◇OryKaIyYzc:2010/02/16(火) 16:07:36 0
>>125


「あれ、月崎さん?」
は、と真雪が後ろを振り返ると、そこにはジャージを着たクラスメートが立っていた。
「あ…小林さん…」
真雪が振り返ると、小林は自転車を押して真雪に駆け寄る。
そして、マシンガンのようにまくし立て始めた。
「どうしたの? こっち来て。あと一緒に居たおじさん誰?
まさかエンコーでもしてたとか?」
「そんな訳無いじゃん…」
小林と呼ばれた少女は、悪戯をするような笑みでまくし立てる。

彼女は明るく人懐っこいが、
人の話を聞かずマシンガンのように無神経な言葉を並べ立てるのが欠点だ。
真雪は何も答えられず、ただ俯いて黙っている。
「それにしてもあのおじさん、公務員っぽかったねー。
でも公務員ってエンコーしたらフツーより危ないんじゃなかったっけ?」
「違うっつってんでしょ黙ってよ!」
相変わらずニタニタと笑い失礼な事を言いまくる小林に、真雪は怒鳴って遮った。
真実も知らないのに馬鹿にされてはかなわない。特に、彼は。
なぜ自分が尾張の名誉を守っているのか分からずに、真雪は頭を沸騰させていた。
「あの人は道に迷ってたから案内しただけ!
援交なんかするわけないじゃん何言ってんのアタマ沸いてんじゃないの!?」
「ひっどいフツーそこまで言う!? 別にこれぐらい冗談じゃん!」
「冗談で見知らぬ他人犯罪者にしてんじゃないよ!」
「犯罪者とかいっ「ハイハイ二人とも落ち着きなさいなぁ、ここ、どぉろぉ」」
ヤケに沸点の低い会話に、冷や水が降りかかった。
その間延びした声は、真雪にとっても小林にとっても聞き慣れたモノ。
真雪の後ろから現れた、ジャージ姿の檸檬のモノだった。
「ほぉら、みぃんな二人を見てる。わるぅい意味で目立ってるわよぅ、あなた達」
「だって愛内先輩…!」
突如登場した檸檬に、小林はうろたえる。
「あらぁ、里奈ちゃん。本屋の中で友梨ちゃんたち待ってるわよう?
お話は後で聞いてあげるから、
あなたは友梨ちゃんたちのところに行ってあげなさいなぁ」
真雪の上にのしかかり、檸檬は小林を誘導した。
小林は面白くなさそうに舌打ちをし、檸檬に頭を下げた。
「分かりました愛内先輩。じゃあ、また明後日」
「うん、遅刻しないようにねえ! ばいばぁい」
「はい、さようなら! お疲れさまでーす!」

自転車を押して駐輪場に止め、鍵も掛けずに書店に入っていく姿を見送った。
157月崎真雪 ◇OryKaIyYzc:2010/02/16(火) 16:08:31 0



そして、檸檬が訊ねる。
「で、何があったのぅ? まゆきちゃん」
「…会話、どうせ聞いてたじゃん」
拗ねた口調で答えると、檸檬はさらに体重を掛ける。
「れも姉ぇ、おっぱいが凄く重いんだけど」
「だってぇ…あのまゆきちゃんが、一回誰かを助けただけで、
誰かにこんなに心を開くとは思えないんだものぅ」
檸檬の言葉に、ふ、と真雪は笑う。
「だって、うそ吐いてなかったしね。
ただ…酷く混乱してた」
「…混乱してた?」
真雪の言葉で、檸檬がオウム返しに問う。
「そう…よく分かんなかったし、向こうも分かってなかったけど」
ふう、と溜め息をつくと、真雪は話題を変える為に次の行動を聞いた。
「このあと、どうする?」
「そぉねぇ、マックで時間でも潰しましょうか? わたし、疲れちゃったぁ…」



【真雪達はマックで時間つぶし。】
158尾張証明 ◇Ui8SfUmIUc:2010/02/16(火) 16:47:20 0
「おい、やっぱりないぞ!!」

緊迫した声が頭上から聞こえる。


「ヤクザが泥棒に入られたなんてシャレになんねぇ……おいオヤッサンはどこだ、連絡と
らにゃ……」

「会合だよ!今日はもう帰ってこない。……畜生、携帯も切ってやがる!!」


(バレてなさそうだ)


そう判断して、臭いに顔をしかめながら下水道を駆けた。それにしても両手に一つずつ持
ったボストンバックが酷く重い。
息を切らしながら考える。
(後は泊まる場所だな)

複雑な経路を迷わず進み、目標のマンホールの下にたどり着いた。
一つずつ地上にバックを押し上げ、あらかじめ止めておいた盗難車に積む。
エンジンを掛けながら、それにしても、と片方のバックの中身の事を考える。

(金はともかく、なんとなくこれを盗んではみたが、本当に必要だったか?)

いいや、細かいことは後で考えよう。こんなにわけのわからない状況にいるのだ、とりあ
えず武器はあった方がいいだろう。
とりあえず、などという気持ちで持つには、いささか凶悪すぎる代物だが。

(さて、ナンバーを付け替えたとは言え、街中を盗難車でふらふらするには勇気がいるな)


車を出して、その場を離れる。ヤクザごときに捕まるつもりはない。さっさと移動しよう。


(ん?)

しばらく車を走らせて、騒ぎに気がついた。

(大通り、いや商店街か……何かあったのか?)

鐘を鳴らした消防車がいくつも通りすぎて、大通りの方向に向かって行く。

(見に行ってみるか)

普段なら無視するところだが、ひょっとしたら、何か手掛かりがあるかもしれない。


【尾張証明:89式5.56mm小銃(銃剣あり)入手 5.56mmNATO弾弾倉1ダース入手 車入手(盗
難車) 喫茶店に向かう(何か起こった後、もしくは最中)】
159宗方丈乃助 ◆d2gmSQdEY6 :2010/02/16(火) 17:57:12 0
>>150
>「――失礼致します、ブロッコリーみてーな御髪のお客様。
>あまり大きな声で話されますと周囲のお客様の御迷惑ですので、
>大変申し訳ありませんが幾分お控え頂くよう御協力をお願い致します」

「あわわわ…僕が謝りますんで許してつかあさーい!!」
ウェイターに涙目で謝る広瀬君を尻目に、ブロッコリーみてぇな髪型の
学ラン男こと宗方丈乃助は、パフェに夢中で話を聞いてなかった。

「うんまぁーい!マジでこのパフェうめぇ!!
なんで、なんでこんなに美味いんだっつーの!」
ウェイターに上機嫌でチップを渡す始末。広瀬君は余りの変わりように
言葉を失った。
しかし、そんな状況でも丈乃助の”嗅覚”みてぇなモンは冴えているのであった。
このカフェに近付いてくる不穏ないくつもの影を感じ取り、咄嗟に席を立つ―!!

「グレート……!!おい、広瀬君にグラサンねぇーちゃんにかっこいいおじさん。
なんだかやべぇ匂いがプンプンすっぜ……」

丈乃助の予感は的中する。
「文明」持ちを狙い、奴らが来たのだ―

【謎の敵の存在を感じる 喫茶店での異変が始まる?】
160名無しになりきれ:2010/02/16(火) 20:00:51 0
次々酒場がモンスター過していく!!!


161佐伯 ◆b413PDNTVY :2010/02/16(火) 22:57:05 0
怒号と悲鳴が飛び交う路地裏。謎の闖入者とゼロワンの行動により既に形勢は逆転していた。
謎の連続着信、自らの体に近い場所での小規模爆発、理解する事の出来ない出来事の連続で男たちはパニックに陥っている。
それを責める事は誰にも出来ない。民衆などそういうものだ。それを路地の向こう側から聞こえる悲鳴が裏付けていた。

「テ、テテテ!テメェ!!」

もはや言葉にならない意味不明な言葉を紡ぎながらその民衆の一人、リーダー格の男が零に手を伸ばす。
その眼にはさまざまな感情が綯い交ぜとなっている。零には彼らが何を考えているかが手に取るようにわかった。
それは理解できないものに対する人間が抱く当たり前の感状。恐れと拒絶だ。恐れと拒絶により混乱した彼らが行う行動は一つだった。
もし、ここで彼らが逃げると言う選択をおこなったのならばどれだけ良かったか。
しかし、彼らに逃げるほどの知能があれば今頃こんな所にはいないだろう。そう思い零は自らに伸びる腕を強引にねじふせる。

掴んだ手首を捩り同時に足を払い飛ばす。そして空中に取り残された男を壁へと叩きつける。
たったそれだけの動作で気絶するリーダー格の男。彼が倒れたその時、ポケットから金属片が零れ落ちる。

「この、女ぁ!!」

リーダーが倒されたと言うに混乱しながらもまだ自らの有利を確信してやまない衆愚。残りの二人が零に向けて駆け寄ってくる。
おぞましい程の悪意を持ったソレだが所詮はただの人でしかない。零は迫る鉄パイプを退屈そうに見ながらゼロワンに声をかける。

「アナタ、ヒールが激しい運動にふさわしくないって言ったわね?」

男の攻撃が命中する寸前だ。零の足が少しだけ動く。

「〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜ッ!?」

踏んでいた。男の足を、男のつま先に当たる部位を零のヒールが踏んでいたのだ。それも靴の素材を貫きそうな勢いで。

「ハイヒールの中にはヒール部に金属製の細いヒールが使われている物があるの。ピンヒールって言うんだけどね」
162佐伯 ◆b413PDNTVY :2010/02/16(火) 22:57:59 0
「アレ、武器として使えるのよ?」

零の攻撃。それは至極簡単なものだった。
『人体における急所、並びに神経の集中している場所』へのピンポイント攻撃だ。
零の攻撃した場所はつま先の骨にもっとも近い位置でここを思い切り踏まれると場合によっては複雑骨折することもある部位だ。
更に押し込むようにして踏みつける零の攻撃に、ついに男の手からパイプが落ちる。
それを確認した零は足を離すと問答無用でこめかみに上段回し蹴りを叩きこみ沈黙させる。

「な、なんなんだ!!あっという間に!!テメェはなんなんだ!!」

男の問いはもっともだろう。赤子の手をひねるのよりも簡単に男二人が倒されたのだから……
その問いに零はおどけるように答えてみせる。その内容は、

「私?そうね……通りすがりのおせっかいさんかしら?」

「う、うわぁぁぁああああああ!!」

その悪魔的な魅力に魅せられたのか?ついに恐怖に気が触れたのか?男は子供の様に走ってくる。
それに対して、ヒールを履いた悪役は髪をかきあげながら待ち構える。

もはや狙いも何もない小さな刃物を繰り出すごろつき。零は後ろで聞こえている喧騒にも決着がつくのを感じながら返り討ちにする。

「ハッ!!」

正確な足技により跳ね上げられ悪漢の腕から滑り落ちるナイフ。宙を舞うその刀身にに悪鬼の様な横顔が映し出され「事」は一瞬ですんだ。
まるで死神の鎌の様に繰り出された後ろ回し蹴り。それが男の顔面に吸い込まれそのまま払い落す。

「手ごたえがないのにも程があるわね」

これでは私刑にすらならない。そう思いながら零はゼロワンの方へと向き直る。

「お礼、言わないといけないわね?」

そう言いゼロワンの手を取る。その姿には先ほどまでの迫力は微塵も感じられなかった。
163タチバナ ◆Xg2aaHVL9w :2010/02/17(水) 04:44:29 0
>>127
>>128
>>148

>「ぶはっ……! おい見ろよタチバナ! あいつガス爆発に巻き込まれたみてーな髪だぞ!」

サングラス娘、もといミーティオ=メフィストが珍妙な球体毛髪を頭部に装備した高校生を見て弾けるように爆笑する。
タチバナは空気を攪拌できそうな勢いをつけて首を回し、指示された方を見る。錆付いたドアノブのようにゆっくりと首を戻し、無表情のまま器用に笑う。

「ははは、いやいや、笑ってはいけないよミーティオ君。彼にはきっと自らの頭髪を賭してでも洗いたかった食器があるに違いない」

>「――失礼致します、ブロッコリーみてーな御髪のお客様。あまり大きな声で話されますと周囲のお客様の御迷惑ですので、
   大変申し訳ありませんが幾分お控え頂くよう御協力をお願い致します」

>「誰が…ポンデライオンだてめぇえええええ!!!」 >「あばばばばばばばば!!!さーせんでしたぁああああ」

ミーティオ、タチバナ、そしてウェイターからの散弾が如き三段攻撃。限界を超えてプッツンしたらしき珍妙高校生は縮れた怒髪が天を突く。
怒声と罵声を咆哮しながら怒りに任せてカフェのテーブルを叩き割った。連れと思しき高校生が事態を収拾すべく頭をsageまくる。
タチバナの興味は叩き壊されたテーブルにあった。否、『叩き壊されていたはずの』テーブルである。
確かに割れていたはずのものが、何故かその形を前衛芸術に変えながらもテーブルとしての職場に再就職できる程度には直っていた。

(ふむ……これは科学技術というよりもっと単純にして純粋な……超能力の類かな?いずれにせよこのタワシ頭、僕と同じく『逸脱した人間』――)

「君、そう、頭頂部森林計画遂行中の君だ。今しがた君がこのテーブルに対して行った所業について少し話を――――」

>「グレート……!!おい、広瀬君にグラサンねぇーちゃんにかっこいいおじさん。なんだかやべぇ匂いがプンプンすっぜ……」

誰何と疑問を一緒くたにした言葉を放とうとして、遮られる。珍妙な髪型の下で双眸が剣呑へと研ぎ澄まされる。

臨戦の気配。
そしてそれは、轟音と共に到来した。

最初は閃光。続いて破砕音。最後に烈風。
通りに面したカフェの窓ガラスが例外なく弾け飛び、店内を嵐が吹き荒れる。赤光が瞬き、流動する大気が客達舐め尽くした。
悲鳴は、一拍遅れてやってくる。突如巻き起こった戦場の如き惨状に客達の反応は様々だ。
事態が把握できずに硬直する者。テーブルの下で頭を抱える者。最愛の人間を庇い伏せる者。何をおいても逃げ縋る者。

それらが織り成す多様な騒音喧騒を、全て踏み越え何者か達が侵入してくる。窓からのご来店は、お煙草をお吸いにならない団体様だった。
スーツ、柄シャツ、スウェット等々その服装に統一感は見られないが、全員がそれぞれ武闘派の風を醸している。
何よりも特筆すべきは六人の陣形が公平たるものではなかったこと。多人数で真ん中の一人を取り巻くように立っている。

「おー、スッゲ。『文明遣い』が3……4人。『機構傀儡』に『物体変質』、『重力制御』まで揃ってんじゃん。役満じゃん。」

柄シャツを着た中心の男が店内を舐めるように見渡し、何かを数える度に眼球をひくつかせる。やがてタチバナ達を視線で射抜くと、

「僕ちんさァ、お前らの身体にはキョーミないわけ。持ってる『文明』を大人しく差し出せば――死体は綺麗に処理してあげちゃう」

下卑、という言葉すら裸足で逃げ出すような地獄染みた笑い声。顔面中がピアスと刺青で装飾された中央の男は背骨を逸らして哄笑する。
部下と思しき取り巻きの男達に目配せすると、男達は懐から各々の武器を取り出し構え、臨戦の陣形をとる。

「良君どうする?こいつらここで殺して這いで持って帰るなら殺っとくけど。文明さえ手に入れば用済みだろ?」

取り巻きの一人が判断を仰ぐ。良君と呼ばれた中央の男は、説けた歯を剥き出しにして隙間から空気を漏らす。
触れるものを黄土色に染め上げそうな吐息は、周囲一体に腐乱した卵のような劇臭を味付けしていた。目玉をぎょろりと回転させて、言う。

「ふしゅしゅしゅしゅ、おんなのこは殺しちゃメっじゃぜー。僕ちん死姦には興味ないしー」

【NPCバトル in カフェ】
『文明』遣い達を狙う組織――雑魚多数、全員が『文明』で武装している。
ボス格 良君(33) 武装:『文明』<俺色吐息〈オクトパスカル〉>内臓に内臓するタイプの大気変換機構。あらゆる気体を生成できる
164タチバナ ◆Xg2aaHVL9w :2010/02/17(水) 05:31:19 0
タチバナは突き刺さっていた。爆風の煽りを受け、木の葉のように店内を舞った彼は慣性と頭蓋骨の強度を全て壁の掘削に費やし、頭からめり込んでいた。
最低限の空気は通っているのか窒息した様子もなく、かといって抜け出さんと暴れるでもなく、頭部を壁に植えながら内装の一部となっている。
どうにかこうにか試行錯誤ののち頭部をすぽりと抜き出すことに成功したとき、店内には無数の男達とその親玉によって占拠されていた。

「おお、これは一体どうしたことかな?数秒前まで女の子と楽しく和やかティータイムに供されていた空間が!さながら爆心地に!」

歌い上げるように誰もが知っている現在の状況を宇宙に向かって発信する。空からは応答がなく、占拠した男達ですら反応を忘れていた。
無表情のまま常体に戻ったタチバナは自らの周囲を眺め、認識し、確認した。身体に異常はない。頭のネジが二三本締まったようだが。

「……さて、僕らの蜜月に土足で踏み込む不埒な輩はどこのどなたかな?場合によっては命に関わるパンチをするよ?」

現状の理解が常人より遥かに遅れた物言いに、取り巻き達が色めき立つ。それは驚嘆であり、憤慨でもあった。

「ああ?てめえ自分がどういう状況かわかってんのか?文明出して楽に死ぬか出さずに苦しんで死ぬかの二択しかねえんだよ」

「『文明』?なんのことだね。生憎僕は公衆の面前で曝け出すのは我が愚息だけと生涯を賭けて心に誓っているんだが」

「真摯の方向が間違ってんぞ」

「紳士だろう。真摯だけにHAHAHA。しかし人類が生殖行為によって発展したと考えれば、
 なるほど生殖器というのは存外『文明』の名を冠するに相応しいかもしれないね。ではちょっと待っていたまえ、すぐに披露めよう――」

言いながらタチバナが己のズボンの社会の窓に手をかけてカチャカチャやり始めた瞬間、銃声が轟いた。
下半身に手をやりながらゆっくりと倒れるタチバナ。相対する男の手には硝煙を上げる拳銃が握られていた。

「――色ボケが、死んどけ」

撃たれた。人が撃たれて、倒れた。
カフェが占拠されてからもどこか現実感のない状況を飲み込みきれていなかった客達が一気に恐慌へと叩き落される。
飛び交う悲鳴、怒号、発叫。割れた窓から逃げ出す客には目もくれず、襲撃者達は尚も『標的達』から目を離さない。

「さーて、そんじゃー邪魔な客共もいなくなったことだしー、サクっと始めますかー!ぎゃ☆く☆さ☆つ(はぁと」

良君が明朗かつ醜悪に宣言し、取り巻き達がその手に持った銃器を一斉にミーティアや高校生へと向ける。
一斉掃射の号令が出されようとして――狂気染みた豪放な哄笑によって遮られた。

165タチバナ ◆Xg2aaHVL9w :2010/02/17(水) 05:40:57 0
「ははははははははははははは!!!銃弾!硝煙!衝撃!鈍痛!これだ!この臨場感!このリアリティー!僕が渇望していた――『揺らがない現実』!!」

むくりと、タチバナが起き上がった。その顔面は狂ったように歪み口端は吊り上がり、白い歯が剥き出しだった。喜色を満面に湛えて、叫ぶ。

「素晴らしいねこの世界は!こんなにも強固で!捻じ曲げるに難い世界を捜していた!最早世界と僕とを隔てる膜は存在しない!」

タチバナを撃った男は信じられないといった風で開いた口を塞げない。彼の用いる銃器は『文明』の恩恵を受けたもので、
当たりさえすれば傷を作らずとも確実に対象を死に至らしめることを約束された必殺兵器だ。それを、寸分の狂いなく急所に受けて、なお、立つ。
そして気付く。タチバナのスーツの表面で未だ停滞し続ける必殺弾丸の存在に。歪んだレンズの景色のような、小さな陽炎が弾丸を阻んでいた。

「アクセルアクセス――よくやった。顕現解除」

『空気を素材に顕現したアクセルアクセス』は握っていた銃弾を床へと落下させながら巨躯を霞へと融かしていく。

「ははは、今の僕はこの上なく素晴らしい蒼々たる気分だ。だから命を狙った君にも忠告してあげよう。そこ、危ないよ」

「――ああ?」

脳が辛うじて疑問符を作った時には、既に男の命運は確定していた。『残ったガラスが突如形を変え幼女の彫像となって』、背後から背中を殴り飛ばされる。
ガラスの拳はコンクリートほどの破壊力を持たないが、それでも人一人を殴り倒すには十分すぎる重さと硬度を備えていた。

「こ、こいつ――!!」

仲間が倒れる音で反射的に銃口を向けた取り巻きの一人が強化小銃をアクセルアクセスへと乱射する。貫通弾がガラスの幼女を抉る――その前に、
アクセルアクセスは既に崩れ始めていた。彫像がただの砕けたガラスへと変わりきった頃、過熱した小銃が突如歪み、形を練り上げ鋼鉄の彫像が生まれる。

「――ッひいっ!!」

小銃を素材に顕現したアクセルアクセスはその仮宿の持ち主を両腕のスタンガンで沈黙させる。
タチバナはというと、まるでオーケストラの指揮者のごとく、指を振りながらアクセルアクセスへと迅速な指示を出していた。
彼と彼女は『存在』を介して繋がっている。故に言葉はなくとも意思は伝達され、完璧なる操作と支配を可能としていた。
平常時にお喋りするのは、完全なる趣味である。

「はは、ははははは、はははははははははははははははははは!!!!!!」

狂った笑みは健在。そこに哄笑が加わって、まさしく豪鬼の如き気勢をタチバナは得ていた。
だから言う。

「さあ!この濃厚で芳醇な世界を護る為なら僕はなんだってするし、なんだってできることをここに確約しよう!――ネットに書いてあったから、間違いない!!」


【NPC敵に応戦。雑魚を三人ほど倒す】
166月崎真雪 ◇OryKaIyYzc:2010/02/17(水) 05:42:29 0
>>157

本屋からさほど離れていないファーストフード店で、
真雪と檸檬はポテトを摘みながらだべっていた。
「れも姉ぇ、試合が早く終わったなら連絡すれば良かったのに、どうしたの?」
テーブルの上で伸びている真雪が、檸檬に連絡せずに居た理由を問う。
檸檬は紙容器に少しだけ残っていたポテトをトレイの上にだし、
積み重なった空の容器に更に重ねている。
「物理的に連絡が取れなくなっちゃったのよぅ…
連絡しようとしたら、携帯が爆発しちゃって」
「爆発う!?」
有り得ない言葉に、真雪が跳ね起きた。テーブルに付けていた頬が赤い。
「大丈夫なの? 何があったの?」
「あははっ、まゆきちゃんのほっぺたおもしろぉい。
大丈夫よぅ爆発する直前に壁に放り投げたから」
真雪の赤い頬を笑いながら、檸檬は真雪の頭を撫でる。
「わたしもそのことは良く分からないわぁ…
急に着信音が異常に鳴って、慌てて電源を切ろうとしたら異様に熱を持ち始めて。
これは危ないと思って、そこら辺の壁に放り投げたの。
それがいけなかったのねぇ…いきなり、ばーん、て爆発しちゃったぁ」
「ほぇえ…」
檸檬の説明に、真雪は奇声をあげた。
檸檬の手が離れたので、真雪は再びテーブルに頬を付け瞼を閉じる。
最後の一本を食み、紙ナプキンで指を拭いてから檸檬は真雪に逆に問いかけた。
「で、わたしの話は終わったわぁ、次はまゆきちゃん。
どうしたのぅ? 里奈ちゃんと喧嘩したときの言い方、
まるで案内したその人に一目惚れしたみたいだったじゃなぁい?」
真雪はその一言に、瞳を開けた。

そう、なのだろうか…
まだ、分からない。常識的に考えて、好きになる要因がない。
彼は優しくしようとしていた。だけど、その優しさが嘘なのは分かっていたのだ。
利他的な嘘。あの人は、私の為に嘘を吐いていた。何が目的に有ろうと、それは真実。
でも一方で、酷く混乱していた。その混乱は、何かの事件に巻き込まれたかのよう。
そう。引っ越しなんて嘘だ。あの人は

『自らの意志でこの街にやって来た訳じゃない』



……
………
167月崎真雪 ◇OryKaIyYzc:2010/02/17(水) 05:44:51 0
「まゆきちゃん、目を開けたまま寝ちゃだめよぅ」
思考の波を漂っていた真雪を、檸檬が引き上げた。
真雪は未だぼやけた思考のまま、頷く。
「うん、考えてた」
「そうねぇ。でも放って置かれると寂しいわぁ。
で、答えは出た?」
檸檬の問いに、真雪が笑って答える。
「うん…恋じゃないけど、気になってる」
その勢いのまま、これまでの事情を説明した。
迷子のおじさんを助けた事。
そのおじさんが優しく在ろうとしてくれた事。
そして、彼が吐いて真雪が許した嘘の話。
「ごめんね、れも姉ぇ。私、れも姉ぇに嘘吐いた…」
「良いのよまゆきちゃん…それにしても、変な人だったのねぇ」
真雪が苦笑いで肩を竦めると、檸檬が許し、話を終わらせた。
真雪が携帯を見ると、もう午後六時。空が、赤い。
「れも姉ぇ、もう六時なんだけど」
「あらぁ、帰らないとまずいわぁ。今日は試合が有るって家を出たから…。
まゆきちゃんはどうするのぅ? わたしと一緒に帰る?」
真雪は携帯から目を離さず、檸檬に告げる。
檸檬は早速テニスラケットを抱え、席を立った。
「私はいいや…暫くは街、ブラブラしてる」
彼女の問いに答えながら、真雪は携帯を閉じてバッグに押し込む。
「…おばあさまが居るものね」檸檬が静かに呟いた。
真雪はコクリと頷いて、席を立つ。
「おばあちゃんに会いたくないからさ…だから」
答える声も元気がない。
真雪に元気づけるように、檸檬は肩を叩いた。
「だったらついでに、まゆきちゃんの荷物も部屋に置いとくわよぅ」
「…ありがと」
真雪は、檸檬の提案に乗ることにする。
小さな声で礼を言うと、檸檬は嬉しそうに微笑んだ。
「良いのよぅ気にしないで」
「そう? じゃあ、後でね」
「うん、ちゃぁんと、暗くなる前にお家に帰るのよぅ?」
一通り会話をしてから店を出て別れる。
檸檬は、真雪の紙袋を手に家へ。
真雪は、隙を潰すために街へ。



そして、真雪は近道である住宅街に足を踏み入れた。
【檸檬と別れました。街へ向かうようです】
168三浦啓介 ◆6bnKv/GfSk :2010/02/17(水) 06:03:24 0
【どこかの路地裏】

君達がチンケなチンピラの相手をしていると、不意に路地裏に影が差す。
どこからか新たな人影が現れ路地の入り口を塞いでしまったのだ。
君達に覆い被さったのは人影に他ならない。

「あぁん? 先客か? おいテメーら、とっとと散りな。でねーと痛い目見るぜ」

威嚇めいた語り口と同時に、入り口の男は拳を振るう。
狭い路地で暴れた拳は壁によって阻まれる筈であった。
けれども、拳の軌跡は止まらずに弧を描く。
男の腕で煌く腕輪が、怪しく君達の意識に滑り込んだ。

原型を失い液状化して滴る壁の一部を見て、君達は如何な感情を抱くだろうか。

「うえっ!? ぶ、『文明』持ち!? じょ、冗談じゃねえぞ!」

ともかく路地裏に寝そべっていたチンピラ達は、異様な現象を目にして一目散に逃げ出した。
『文明』と言う聞き慣れない単語に君達は果たして疑問を抱くのか。

「さぁて、次はお宅らだぜ。……三つだ。三つ数える内に『文明』を出せば痛ぇ目遭わずに済む」

とは言え『文明』が何かを知り得ない君達は、何を差し出せばいいのか分かる筈もない。
そうこうしている内に、男は三つを数え終える。

「交渉決裂だ。お宅らがヤベェ『文明』持ってんのは知ってる。こっちも手加減出来ねーぜ。
 」

狭い路地裏に位置する君達には知り得ぬ事だが、
既に路地の入り口から通りに至るまで、彼らの包囲は完成している。

人数は優に君達の数倍はいるだろう。もしかすれば、十倍を超えている可能性もある。
しかし案ずるなかれ、彼らの持つ『文明』は君達の力と比較すれば貧弱だ。

とは言え勿論、生半可な威力ではないのは確かだ。
常人がまともに喰らえば最悪、命を落とす程の物も存在するかも知れない。
鉄壁の守りを紙切れと変えてしまう者もいるかも知れない。

君達は彼らと闘争してもいいし、逃走してもいい。
169三浦啓介 ◆6bnKv/GfSk :2010/02/17(水) 06:07:00 0
【往来】

「よう姉ちゃん……と、オッサン、アンタもこの姉ちゃんの知り合いか?」
幾人もの柄の悪い連中がぞろぞろと、君達を囲うように現れる。

「面倒くせぇから単刀直入に言うぜ。『文明』をよこしな。
 そしたらこっちも楽、テメーらも無傷。いい事尽くめだ」

やはり君達に文明が何なのかは分からない。
疑問と思考が生んだ無言を、彼らは拒絶と受け取ったようだ。

「……ああそうかい。だったら、こっちも割りとやる気になるしかねえな。
 ラウンジ通りの連中ほどじゃねーが、テメーらもそれなりに厄介そうだ」

男は暗に、ラウンジ通りでも似通った状況が展開されている事を零す。

「見た所テメーの『文明』は『代謝促進』≪イージーヒール≫。
 つまり代謝じゃ治り得ねえ傷。例えば火傷なんかは、癒せねえよなあ?」

突然、男が前に掲げた右手から紅蓮の炎が迸った。
手全体が紅に包まれる中、中指の指輪だけが変わらず白銀の輝きを放っている。

「俺の『発火担手』≪パイロパイロット≫を喰らえば、テメーらはアウト。
 死んじまっても恨むなよ? 降伏は許してやっからよ」

君達を囲う輪が段々と小さくなっていく。

君達は彼らと闘争してもいいし、逃走してもいい。


【路地裏、シエル達の元に敵性NPC到来。数は明記せず。
 『文明』持ちも幾人かいるが、同じく数は任意。能力も同様】
170名無しになりきれ:2010/02/17(水) 06:43:51 0
ポーン…
>>155

コインは表に向いたようだ。
少し大袈裟かもしれないが、これでほぼ確信が持てた。

誰かが、ここに他次元から存在を呼び出したのだ。

それが誰か、何故なのかはまだわからない。
シエルと琳樹以外に誰かを呼び出したのかも。
だがその事実がわかっただけでも、元の世界へ一歩進んだことになる。

「…ありがとうございます!」

そのヒントを与えてくれた彼には感謝しなければ。

「じゃあ…どうしましょうか…」

同じ境遇の人とは一緒に行動するべきだとは思う。
しかし、別々に行動して情報を収集するのも手だ。

「取り敢えず私は情報を集めたいんですけど…琳樹様は?」

にこやかに、聞き終えた直後だった。

背後に迫っている強烈な殺気を、シエルは感じた。
どうやら、情報収集どころではないようだ。

「えと…ごめんなさい…」

「すぐそこに、私達を狙う何かが迫ってます。……琳樹様。これを」

シエルは、一冊の本を取り出した。
古くなって煤けた、焦げ茶色の本。

「魔法…といって通じますかね…。世界を捩曲げる力を扱う為の本です」

実際には理論化された魔法の発動条件を羅列しただけの魔法教科書なのだが。
緊急用にちょっとした仕掛けを施してあった。

「私の魔力を込めてあります。…ページを開いて、書いてある通に念じてください。」

本を媒介に魔力を充填して魔法を発動させる。
異世界の人間が魔法を本質的に扱えるかはわからないが、この方法ならば本に込めた魔力の尽きぬ限りは使用できるはずだ。

殺気はすぐそこまで迫っている。
恐らくは、この事件に関わっている者だろう。

「来ます……琳樹様、御武運を…」

173訛祢 琳樹 ◆cirno..4vY :2010/02/17(水) 11:33:20 Q
私が彼女の質問に答えようとした時だ。

「すぐそこに、私達を狙う何かが迫ってます。……琳樹様。これを」

渡されたのは一冊の本。
何やら魔法を扱う為の本、らしい。
使い方的にも、私にも分かる言葉で書いてあるのが幸いだった。

「来ます……琳樹様、御武運を…」

彼女の言葉に軽く頷いて本を見、呟く。

「…ますますゲームらしくなってきたべな」

何やらゲーマーの血が疼いたりテンションが上がってきたりして忙しい。
だが、私に出来るのだろうか?
この何の特殊能力もないただのおっさんに魔法なんて使えるのだろうか。

「…さっぱどわがんね」

けど

「やってみるしかねーべ」

少し目を閉じ集中する。
集中した方が、魔法とか出しやすいらしいから。
いや、ゲームの受け売りだけど。

「さ、早いとこチンピラやっつけよーか」

ニヤッと笑って正面を見た。
…こうした方がかっこいいだろ?


【訛祢琳樹:魔法書入手及びに覚悟完了】
174久和 ◆KLeaErDHmGCM :2010/02/17(水) 11:49:36 Q
今日までは生きたくもないいつもの生活だった。
行きたくもない大学から家に帰って寝て起きて、次に見たのは暗い暗い廃ビル。

「…どこ、だよここ」

辺りを見回すが全く見覚えがない。
体を見るといつものように四本の手、頭の上にももう一本。
相変わらず景色の色と体の構造が同じで、そして刀を持っていた事には安心した。
…けれど家じゃないのは確かだ。
これが虐めてる奴らの仕業としても、やり過ぎにも程がある。

「まずは移動…」

言いかけて止める。
移動はしたいけど、ここから動けばあの興味津々な視線。
いや、むしろ化け物でも見るような視線を向けられるのだろう。
それは避けたい。

が、それならどうする。

「…寝るかぁ」

また起きたら元に戻ってるかもしれない。多分。
そんな楽天的思考で、俺は目を閉じた。

「だがそれは間違いだったのかもしれない…なんてね」

フラグを立てたのはこのままずっと同じところで同じ時間を過ごすのもあれだからだ。

「敵でも何でも、虐めっ子以外なら来ればいいんじゃね」

俺の目の前に立つ人間は、刀の錆にしてあげるから。
そう呟き、俺は深い眠りへと落ちていった。
175前園 久和 ◆KLeaErDHmGCM :2010/02/17(水) 11:51:21 Q
名前:前園 久和(まえぞの くわ)
職業:大学生
元の世界:モノクロ世界
性別:無
年齢:22
身長:167
体重:54
性格:仲の良くない人や特定の人には結構ツンツンしているが仲良くなった人には優しい。所謂ツンデレかもしれない。でも暴言吐きまくるからDQNだと思う。
外見:手が五本の奇形。イメージ的にはゆめにっきのモノ子。
長く後ろで纏めた黒髪に黒縁眼鏡、そして真っ白な肌。黒色の特製スーツを着用し、手の内の一本に武器の白い刀を持っている。
特殊能力:覚醒、治癒
備考:性別は無いが基本的に男。全てが白黒に見えている。
奇形であるが故に虐められていた過去を持ち、人間不信。
覚醒すると理性が無くなると共に強大な力を得、暴走する。
176尾張証明 ◇Ui8SfUmIUc:2010/02/17(水) 14:33:05 P
よく観察してみても、商店街そのものには事件があったようには見えなかった。
煙も見当たらなく、火の気も感じられない。

商店街の入り口に停まった何台もの消防車、その間を縫うように、我先にと逃げ出して行
く人々。

何も起こっていないように見えるのに、騒ぎだけが酷くなってゆく。
異常と言えば、それが異常に思えた。



商店街から離れた所に車を停めて、ここまで歩いて来た時に、走り抜けていった人々の会
話から漏れ聞こえた言葉を思い出す。

(化物、ね)

すぐに銃が抜けるように、ホルスターの位置を確認する。
時間と共に、少しずつ商店街から出てくる人の波が弱くなる。今しかない、と寄りかかっ
ていた壁から背を離して、野次馬に紛れ、消防隊員に見つからないよう注意しながら商店
街入り口のすぐ手前、既に人が逃げた後の雑貨屋の中に入り、三階の窓を目指した。

現場には消防隊員が邪魔でとても近づけないし、こちらは犯罪者だ。目立った行動もした
くない。ならばアーケードになった商店街の屋根づたいに現場に近づこうと言う考えだっ
た。

(蛇が出るか鬼が出るか)

踏み抜かないか足踏みして確かめた後、硝子の天井をそろり、そろりと進み始めた。

177皐月 ◆AdZFt8/Ick :2010/02/17(水) 15:06:02 0
>>149

ウェイトレスさんにパフェを注文して、意気揚々と足をぱたつかせてそれを待つ。
なんだかやたらと焦燥感に溢れているような気がしたが多分気のせいきっとそう。
とりあえずドリンクとパフェを注文し、お冷を喉に流し込んでようやく一息ついた。

「んー、やっぱり通じませんよね」

携帯電話をもう一度開いては見るが、やはり圏外。
充電はまだ残っているが、その間時間が確認できる程度の意味しか持たない。

何はともあれ頼んだものが来るまでは暇なので、手持ち無沙汰に周囲を見回す。
ついでに交番までの場所を聞けそうな人がいたらいいな、と思い人のよさそうな人を探すのだが、

1、何だか非常に特徴的なヘアスタイルのぱっと見前時代的不良。
2、その舎弟っぽい人。
3、グラサンでワイルドな女性。
4、オールバックにスーツの男性。

「…………へ、下手に声をかけたら怒られるかも知れません」

係わり合いにならないほうがよさげな方々をスルーし、普通っぽい人に目を向け……


178皐月 ◆AdZFt8/Ick :2010/02/17(水) 15:07:34 0
>>163
>臨戦の気配。
>そしてそれは、轟音と共に到来した。

>最初は閃光。続いて破砕音。最後に烈風。

「……っ!」

ようとした時、それは起こった。

>通りに面したカフェの窓ガラスが例外なく弾け飛び、店内を嵐が吹き荒れる。赤光が瞬き、流動する大気が客達舐め尽くした。

脊髄反射で身をかがめた為、幸いにも皐月は飛び散るガラスから身を守ることが出来た。
瞬間、皐月のつけていたロザリオからぴしり、と音がした。

(な、何、何ですか!?)

あまりの出来事にパクパクと口を開いただけで、思った事を言葉にすることが出来ない。
だが、身を伏せたままの彼女など意にも介さず、状況はめまぐるしく動き続ける。
皐月が恐る恐る目を開いて見た光景は、散乱する店内と、武装した男達。
外へ逃れた人々と、飛び散ったガラスの直撃を受け、あるいは男達の攻撃で……動けない人たち。

(あ、あう、あ、こ、これ――は?)

既に交戦状態にはいってるオールバックの男性――彼が起こしている現象は到底理解できる物ではない。
ただ少なくとも、この状況を作り出した襲撃者達は、もう床に転がる一般人たちに眼を向けてはいないようだった。
否、目を向ける意味もないのだろう――転がっていれば踏みつけて殺して、退かすだけ。
179皐月 ◆AdZFt8/Ick :2010/02/17(水) 15:09:19 0
「……君」

「ひっ!?」

声をかけてきたのは、丸まっていた皐月の下、自分が座っていたテーブルへと何とか這ってきた男性だった。
半身にガラスが刺さっており――赤い血が流れている。

「……にげ、るん、だ」

『助けて』ではなく『逃げろ』というその声に、震える。
初めて、今日この場で、出合ったとすら言い難いその人から聞こえた、自分を気遣う言葉。

「――っ!」

皐月は悲鳴のような声を絞り出し、ロザリオに手を当てた。
また、ぴしり、と、何かが割れる音がした。

「……ここに、いてください、動いちゃ駄目、です」

それが合図なのか……男性の苦痛に揺らぐ表情が、疑問の表情へと変わる。


『痛みが消えている』のだ。


無理解は恐怖を生む。
皐月は間違いなく、現状に恐怖していた。
だが感情のリミッターは時に恐怖を上回り、人間の本性をさらけ出す。

今、この場は間違いなく戦場である。
間違いなく命の奪い合い、殺意の支配する空間である。

だが、五月一日・皐月と言う少女は限界まで――――

「喧嘩は……」

ば、とその場から立ち上がった少女の一言は、余りにも――――


「やめてくださいっ!」


空気が読めていなかった。


【特殊能力:「施し」】
【誰かから「感謝される描写」を得た場合、結晶を一つ得る。結晶を消耗することで治癒、あるいはあらかじめ治癒相応の「ダメージを受けない」現象を引き起こすことが出来る】
【「治癒」や「ダメージ」は広義的な表現であり、具体的にどこまでと言う指定は無い、ぶっちゃけ使用者次第。用法容量を守って正しくお使いください】
【結晶は首もとのロザリオにくっついており、条件が満たされると勝手にミョウバンの結晶のような感じで増えていく、3つまでストック可能。割って他人に譲渡出来る】
【皐月本人は結晶の効果を知らない、が、御守りと称してやたら他人に配る癖がある】
【以降皐月はPC相手・重要NP相手との描写以外で結晶を生み出すことが出来ない】

【結晶数の変動:3(初期状態)→2(割れる硝子から防御のために発動)→1(男性を助けたことによる)】
【現在の結晶数:1】
【黙ってれば何とかなったかもしれないのに立ち上がる】
>>128
>「 あ ぁ !?”てんめぇ…」

 ミーティオの声はアフロに届いていたらしく(別に声をひそめるつもりもなかったが)、
 鬼のような形相をした若者がこっちの方を睨みつけた。頭から湯気が出ている。

>「あ、あの丈乃助君!!君の頭は、決して変じゃないよ!!
>マリモでもないし、その、ガス爆発でもないし!
>強いて言うなら、ポンデライオンみたいかなぁって…あははは!」

>「誰が…ポンデライオンだてめぇえええええ!!!」

 しかしその怒気はすぐさま標的を変え、相席していた気の弱そうな男の方に向けられた。
 もはや阿修羅のような顔になっているそのアフロは、怒りのままに拳でテーブルを叩き割る。

(……ん?)

 その情景はミーティオの眼に不思議なものとして映った。
 テーブルを破壊したのは――あの若者の拳ではなく――その背後にいた『何か』。
 一瞬。ほんのわずかな間だけ、奇妙な人影が具現化したように見えたのだ。

 異常な光景はそれだけではない。

>テーブルが直っているのだ。破壊されたはずのテーブルが完全に直っている。
>しかし、何処か変だ。
>「あれ?さっきまで四角だったテーブルが…三角になってるぅ!?」

 これには流石にミーティオも仰天した。

「おいおい、タチバナ、今の見たか?」

>>163
>(ふむ……これは科学技術というよりもっと単純にして純粋な……超能力の類かな?いずれにせよこのタワシ頭、僕と同じく『逸脱した人間』――)

 先程まで馬鹿を見るような眼でタワシ頭(丈乃助、だったか)を見ていたタチバナは、急に真面目な顔になって何やら考え出した。

>「すまねぇ…髪型のことけなされるとプッツンしちまうんだ。
>なんつぅ〜かよ。理由はねぇんだ、本能ってやつなんだろうなぁ。
>侘びってことで、俺があんたらの飯奢るよ。な、広瀬君。」

「おぉ、そりゃいいや。ま、あたしはハナっからタチバナに奢ってもらうつもりだったけどよ」
>>159
>「うんまぁーい!マジでこのパフェうめぇ!!
>なんで、なんでこんなに美味いんだっつーの!」

 向こうのテーブルからはそんな声が聞こえている。
 ミーティオは運ばれてきたスパゲッティ・ナポリタンに一心不乱に喰らいついていた。

「うおう、なんだこりゃあ! 何これ! うまい! 何これ!?」

 動物性タンパク質と言えばネズミ・炭水化物と言えば雑穀であった彼女にとって、それは革新的な美味であった。
 今まで使ったこともないような味蕾がフル稼動しているのを感じる。

「なータチバナ、これなんだ? パッと見、ハリガネムシか何かに見えるけど」

 寄生虫と間違えられては料理人も作りがいが無いというものである。
 ミーティオが話しかけても、タチバナは深く思考の海に沈んでいるらしく、返事をしない。
 そんな彼をサングラス越しに見上げ、首を傾げ、また目の前の皿を空にしていく作業に戻った。

>「君、そう、頭頂部森林計画遂行中の君だ。今しがた君がこのテーブルに対して行った所業について少し話を――――」

>しかし、そんな状況でも丈乃助の”嗅覚”みてぇなモンは冴えているのであった。
>このカフェに近付いてくる不穏ないくつもの影を感じ取り、咄嗟に席を立つ―!!

>「グレート……!!おい、広瀬君にグラサンねぇーちゃんにかっこいいおじさん。
>なんだかやべぇ匂いがプンプンすっぜ……」

 タチバナが顔を上げて丈乃助の方に話しかけたが、それは勢いよく立ち上がる丈乃助の体躯に遮られた。
 このボンバーヘッド、かなりの長身であり肩幅もあるので、立つと否応なく目立つ。

「…………?」

 ミーティオも感じた。背筋に氷の刃を突き入れたような寒気、この慣れ親しんだ空気の粟立ちは――

 ――『殺気』だ。
>そしてそれは、轟音と共に到来した。

>最初は閃光。続いて破砕音。最後に烈風。
>通りに面したカフェの窓ガラスが例外なく弾け飛び、店内を嵐が吹き荒れる。赤光が瞬き、流動する大気が客達を舐め尽くした。

「うおおおおうっ!?」

 現状把握よりも先に、ミーティオはまだ料理の残る皿を抱えてテーブルの下に隠れた。隣の鉄パイプも抱き寄せる。
 彼女にとっての食料は、世界で三番目くらいに大切なものなのだ。

>悲鳴は、一拍遅れてやってくる。突如巻き起こった戦場の如き惨状に客達の反応は様々だ。
>事態が把握できずに硬直する者。テーブルの下で頭を抱える者。最愛の人間を庇い伏せる者。何をおいても逃げ縋る者。

 一瞬にして地獄の様相を呈し始めたカフェの中。ミーティオは急いでサンドイッチを頬張り、ジンジャーエールで流し込む。
 全ての皿を空にしてから、のそのそとテーブルの下から這い出てきた。タチバナはどこだ。

>タチバナは突き刺さっていた。

 あいつはよくよく壁に刺さるのが好きだなあと思いながら、混乱の渦に陥れられた店内をぐるり見渡すミーティオ。
 ほとんどの客が気を失ったり、這いつくばって逃げ出したりしている。

>「おー、スッゲ。『文明遣い』が3……4人。『機構傀儡』に『物体変質』、『重力制御』まで揃ってんじゃん。役満じゃん。」
>「僕ちんさァ、お前らの身体にはキョーミないわけ。持ってる『文明』を大人しく差し出せば――死体は綺麗に処理してあげちゃう」
>「良君どうする?こいつらここで殺して這いで持って帰るなら殺っとくけど。文明さえ手に入れば用済みだろ?」
>「ふしゅしゅしゅしゅ、おんなのこは殺しちゃメっじゃぜー。僕ちん死姦には興味ないしー」

 明らかに場違いな集団が、ぞろぞろと群れて侵入してきていた。
 あれが爆破犯だろうとアタリをつけたミーティオは、うんざりした顔になる。

「あたしの行く先に平穏は無いのか? こちとら人を殴って楽しい年頃は過ぎてんだけどなぁ」

 普段なら五・六人の相手など苦にはならない。しかし、先程のタチバナとの邂逅が脳裏をよぎった。
 あの時、発動するはずの能力が発動しなかった。もしかして今の自分は、かなり能力が弱まっているのではないか?
(よし、逃げよう)

 壁から抜けたタチバナは何やら鬼気迫る笑いを発しながら大暴れしているし、ここからは見えないが、
 あの丈乃助とかいう若者も恐らく勇敢に戦っているのだろう。
 自分がいなくなってもきっと大丈夫だ、と自分に言い聞かせて、ミーティオは観葉植物の影に隠れた。

 もうもうと粉塵が舞っているこの店内で、彼女の黒いツナギは非常に視認し辛い。

>「はは、ははははは、はははははははははははははははははは!!!!!!」

 腰を低くしながら歩いていく途中、タチバナの笑声に振り向くと、既に三人ほどが地に伏せっていた。
 剣呑な男だ。あの狂気を自分に向けられなくて良かったと、心から思った。

 さらに進む。シスターのような格好の女の子が男性を介抱している横を、通り抜けた。

「あれ、こっち出口じゃねえじゃん。しくったなー」

 辿りついたのは、厨房へと繋がるドアだった。普段は開いているのだろうが、今は閉まっている。
 そっと鉄パイプで突いてみると、簡単に開いた。ゆっくりとそのドアに近づき、身体を押し込む。

>「喧嘩は……」
>「やめてくださいっ!」

 ドアを閉める直前、あの女の子がわざわざ注意を引くように立ち上がるのが見えた。
 何がしたいのかよくわからなかったが、その無謀さは素晴らしいとミーティオは思った。

 厨房を抜けて店の裏口へ。鍵のかかったドアをぶち破り、裏路地に出た。
 カフェに残してきた者達の武運を祈りながら走り出そうとする――が。

「――ちぃっと待ちぃや、そこの小娘。ワシの弟分が世話んなったそうやないか」


【カフェから脱出】【数人のヤクザに遭遇】
184宗方丈乃助 ◆d2gmSQdEY6 :2010/02/17(水) 17:41:15 0
>>163
凄まじい殺気が丈乃助の本能を刺激する。
咄嗟に取った行動は、周囲の人間へ叫ぶ事だった。

「おい、あんたらぁ!!いいから逃げろ、逃げれねぇなら出来るだけ体を
低くして伏せろぉおお!!」

>最初は閃光。続いて破砕音。最後に烈風。

爆発と同時に、広瀬君に向かい一筋の光が射られた。
「え…ご、ごふぉ……」
広瀬君の首に刺さるのは、黒い矢。血を噴出し、昏倒していく様を
丈乃助は呆然と見つめていた。
「……ひ、広瀬ぇええええええ!!」

広瀬君の元へ走ろうとするが、周囲には怪我人が多い。
”射程距離”内の入らなければ、丈乃助の能力は発動できない。
爆発で吹き飛ばされたせいだろう。まだ、広瀬君まで10メートルはある。
更には襲ってきた連中が何かこちらに向け喋っている。

185宗方丈乃助 ◆d2gmSQdEY6 :2010/02/17(水) 17:41:56 0
> 「おー、スッゲ。『文明遣い』が3……4人。『機構傀儡』に『物体変質』、『重力制御』まで揃ってんじゃん。役満じゃん。」

「てめぇら……一体、何のつもりだ。」
燃え上がる怒りを込め、全力で走り出す。
まずは、広瀬君を助ける為に――!!
しかし、邪魔が入る。アロハシャツを来た男が拳銃を取り出し
汚い黄色の歯を見せて笑った。

『何って?殺すんだよ、てめぇーらをさぁ!』

丈乃助へ拳銃を乱射する。弾丸がアフロヘアーの直前まで
近付いたその時――!!

「わりぃーな。倒されるのはてめぇーの方っすよ!」

丈乃助の目の前で弾丸が「停止」する。いや、停止したのではないのだ。
丈乃助の前に出現した「人型」が弾丸を拳で粉砕していたのだ―!!

「ゴルァ……てめぇが撃った弾丸の速さなんざ、眠気が出ちまうくらいだぜ。」

予期せぬ悪霊の出現に、腰を抜かすアロハ男。
『なんだこいつ……こんな文明見たことねぇぞ!!』

「お化けじゃねぇー。こいつの名前は、クレイジープラチナムってんだ。
テストにはでねぇーが、覚えといて損はねぇぜ。
そしてその能力は……”壊して治す!!”」

粉砕された弾丸が、治される。
ゴム玉に変化したそれが、男の元へ反転し―放たれた!!

「ゴラララララララララララ!!!!!ゴラァ!!」

更に拳のラッシュの追撃。
射程距離に入った広瀬君を治す為、アロハ男達を吹き飛ばした。
「おい、大丈夫か…今治すぜ。」

広瀬君の傷口が治癒していく。
しかし、広瀬君の目は閉じたまま動かない。

「おい、広瀬…治したぜ。おい、めぇー覚ませっつんだよ!!」

しかし、動かない。まるで死んだようだ。

【広瀬君死亡!? 敵を1人〜3人くらい吹き飛ばす】



186宗方丈乃助 ◆d2gmSQdEY6 :2010/02/17(水) 17:47:45 0
【スタンド】
名前:クレイジープラチナム
外見:人型、マゼンタカラーとシアンを基本としたカラーリング。
全身にハートと星のマークが刻まれている
能力詳細:物体や、生命体を治し変化させることが出来る。
射程距離は5メートル。
ただし、完全に死んだものは治せない。
187名無しになりきれ:2010/02/17(水) 17:51:53 0
と、オデコに番号をイレズミした世紀末モヒカン集団の増援が!!!
188三浦啓介 ◆6bnKv/GfSk :2010/02/17(水) 18:19:38 0
三浦の名前と『イデア』の正体、その二つが萌芽の求める最初の報酬らしい。
『イデア』の価値を考えれば破格にも程がある代償だが、本人が言うのだ。
わざわざ訂正を求める必要もない。

三浦が再び口元に歪な三日月を描いていると、萌芽は何やら両手を広げ目を瞑っていた。
三浦は暫し沈黙してみたが、どうにも萌芽が動き出す気配は兆してこない。
それどころか、放っておけばいつまでも今の状態を維持していそうだ。

「まあ、メダルの王様だって、最初にくれるのはショッボい装備だしね」

三浦の名前にせよ『イデア』の正体にせよ。
場合によっては『イデア』そのものよりも先に、見つけてしまえるかも知れない。
その程度の代物だ。

それ程までに、『イデア』の意味と三浦啓介の名は、この世界では有り触れていた。

「……さて、そろそろ僕はお暇するよ。明日は予定があってね。
 運が良ければ、いや悪ければかな? 君は早くも求めた物を二つとも知る事が出来るだろう」

萌芽の隣を通り過ぎて、けれどふと思い出したように三浦は彼を振り返る。

「そうそう、僕の居場所や連絡先は要らないだろう?
 それぐらい分からなければ、そもそも『イデア』を見付けるだなんて無理と言う物だ」

今度こそ三浦が立ち止まる事はなく、彼は崩落して用済みとなった祭壇を後にした。




そして翌日。彼は全国規模で、自身の名と顔を晒していた。
お茶の間の小さなテレビから、往来の所々にある巨大なモニターに至るまで。
公共の電波に乗せて。

「……はい、と言う訳で本日は年々増えつつある『文明犯罪』について、
 専門家、三浦啓介さんの意見を聞いてみたいと思います」

暗幕と化していた長髪を掻き上げ後ろで束ね、三浦啓介はにこやかな笑顔を作っていた。
昨晩の彼と結び付ける事は、至難を極めるであろう変貌ぶりだった。
「えー、三浦啓介さんは考古学者であり発掘家でも……」

司会の読み上げる自らの身上を聞き流しながら、彼は用意された席に着く。
煩わしいこの上無いと彼はうんざりしていたが、対外的な地位と言う物はやはり必要だ。
少なくとも考古学者であり発掘家である肩書きは、彼の目的の一助となっている。
となればやはり、維持の為には苦行も已む無しと彼は諦観していた。

「ご紹介に預かりました、三浦です。それでは早速……。
 と言いたい所なのですが、その前にまず、『文明』についての説明を」
手振りを交えて、彼は弁舌を振るい始める。

「『文明』を知っているかと聞かれれば、十人中十人が首を振るでしょう。
 しかし『文明』がどう言う物かを詳しく説明しろ。と言われたら、果たして何人がそれを出来るか」
周囲の人間が如何にもな仕草で頷くのを確認してから、彼は説明を続けた。

「『文明』とは噛み砕いて言ってしまえば、オーパーツやオーバーテクノロジーの類です。
 現代の科学では到底なし得ない事を可能とする。……ここまでは誰もが知っている事ですね」
一呼吸の間を挟んで、解説は再開する。
189三浦啓介 ◆6bnKv/GfSk :2010/02/17(水) 18:20:44 0
「しかし『文明』が持つ多くの特性は、意外と知られていません。
 例えば多くの『文明』が形を選ばず、現代社会の中に眠っていると言う事などは」
「……それは、何故なんですか?」
楕円のなり損ないのような形のテーブルを囲う一人が、問いを放った。

「……その問いは二つの意味で受け取る事が出来ます。
 が、折角なのでその両方に解を用意しましょう」
作り笑顔と共に、三浦は右手の人差し指を立てる。

「ですがその前に……、一つ疑問が生まれませんか?
 『文明』はここ数十年で忽ち世界中に知れ渡りました。
 ですが何故、こうも突然に『文明』が表層化したのか」

「……国のお偉いさんが、ずっと隠してたとか!」
出演者の一人がおどける。

「はは。もしそうなら、恐らく今も『文明』は陽の目を見ていませんよ」
対して三浦は、巧妙な作り笑いを浮かべてみせた。
「考えられている理由は沢山あるのですが、有力な説は二つ。『粉塵説』と『水銀説』です」
当然これだけの単語で出演者が理解に及ぶ筈もなく、彼らは一同に首を傾げる。

「勿論それぞれ説明しますよ。まずは『粉塵説』。これはつまり、こう言う事なのです」
言いながら、彼はテーブルの下から麦色の紙袋を取り出す。

「この袋、中身は何の変哲もない小麦粉ですが……今はその小麦粉を、『文明』とします。
 それでですね、この袋は見ての通り、未開封です。中の粉は、小さな穴でもない限り漏れません」
ですが、と彼は言葉を繋いだ。

「もしも私がこの袋を二つに引き裂いたら? 中の小麦粉はどうなりますか?」
「……そりゃ、辺りにぶち撒けられるでしょ」

「その通りですね。『粉塵説』とは、そう言う事なんです。
 人為的な開発か、或いは火山の噴火や地震等の自然現象によってか。
 ともかく眠っていた『文明』の封が破かれ、世界中にばら撒かれた」

「……ん? いやちょっと待って。でもだからと言って、『文明』が現代社会に浸透する意味がわかんないよ?」
「ごもっとも。ですが先ほど申し上げた通り、『文明』は形を選ばない。つまりですね」

一旦言葉を切り、三浦は袋の端を小さく破る。
開封された袋を右手で持ち上げ傾けると、左手に白い粉末を注ぐ。

「例えばこの小麦粉の山に『発火』の機能があったとしましょう。
 この小麦粉も、元々は麦。もっと辿っていけば色々な物になるでしょう。そして」

次に彼は掌の小麦粉を、テーブルに置いてあったコップに流し込んだ。。
水に小麦粉が混じり、不完全な白濁を作り上げる。

「こうなった場合、この水にもまた、『発火』の機能が宿るのです。更に」

不意に、三浦は両隣の出演者からコップを借り受ける。
そうして自身のコップを満たす液体を移す事数回。
随分と濁りの濃度は落ちたものの、小麦粉混じりの水がコップ三杯分出来上がった。

「こうした場合、このコップ全てが『発火』の機能を持つ訳ですね。とは言え、効力は三分の一となりますが。
 さてさてところで、もしもこの水を何処かの流しにぶち撒けたら、『文明』は瞬く間に拡散していきますね。
 そのようにして、『文明』は現代社会に眠っている訳です。さて、これが『粉塵説』です」
説明の小道具を片しながら、三浦は次の説明へと移る。
190三浦啓介 ◆6bnKv/GfSk :2010/02/17(水) 18:21:25 0
「次に『水銀説』ですが、こちらは単純です。水銀とは言うまでもなく有毒でして、
 過去には水銀に纏わる悲惨な事件もありました」
一拍置いて、解説は続行された。

「『水銀説』とはその事件で、水銀が人体に至るまでの過程に準えて名付けられた物です。
 つまり、自ら海草へ、海草から小魚へ、小魚から普通の魚へ、
 そして魚を幾度も摂取する事で、人間が水銀の毒に侵される」

沈黙の中、三浦の声だけが滔々と流れる。

「しかし、この水銀も毒性を発揮するにはある程度の蓄積量が必要です。
 『文明』の機能にしても同じ事が言えるであろう、との説。
 ですからこの『水銀説』は、『粉塵説』の後に成り立つ物ですね」

一通りの説明を終え、彼は小さく息を吐いた。

「……とは言え、別に万年筆がシャーペンを食べて『文明』を蓄える訳ではありません。
 相性の悪い物からは『文明』はすぐに離反してしまいますからね。
思いつきで飛ばした冗談が思いの他に笑いを呼ばなかった事に、彼は内心で顔を顰める。

「……ともかく、『文明』は誰もが手にする可能性のある物なのです。
 だから一向に『文明犯罪』は減っていかない」
やむなく、彼は閑話休題を図った。

「国や専門の機関が確保している『文明』は約二三万個ですが、
 その凡そ十倍の『文明』が未報告のまま使用されていると言われています。
 『文明』の秘密所持は違法なんですけどね、如何せんバレませんから」

今度こそ説明を終え、三浦は思い出したように手を叩く。

「ああ、そう言えば。『文明』はその性質上、メカニズムを解明出来ないのも特性ですね。
 お陰で、私は自宅からここまで電車を数時間乗り継ぐ羽目になりました」

今度は多少の笑いが生まれ、彼は少々溜飲を下げた。

「さて、お次は『イデア』についての説明をしましょうか。
 『イデア』と言えば、元々は哲学の用語ですが、この場合は別の意味合いを持っています。
 『文明』が何故、形を選ばない性質を持っているのか。その理由にも関ってくる……のですが」

ふと彼の視界で白い何かがちらつく。
視線を追わせてみると、正体はスタッフによるカンニングペーパーだった。
曰く『そろそろ時間である』と。

「どうやら、少し話し過ぎたようで。
 と言う訳で『イデア』に関してはまたの機会、とさせて頂きます」

その後司会が簡潔に締めの言葉を述べて番組は終わり、CMを経て次の番組へと映る。
三浦啓介はゲスト用の控え室で帰り支度をしながら、体中に染み込んだ面倒臭さに溜息を吐いた。
191三浦啓介 ◆6bnKv/GfSk :2010/02/17(水) 18:27:08 0
投下した直後だけど微修正ですです

>「ああ、そう言えば。『文明』はその性質上、メカニズムを解明出来ないのも特性ですね。
> お陰で、私は自宅からここまで電車を数時間乗り継ぐ羽目になりました」
>今度は多少の笑いが生まれ、彼は少々溜飲を下げた。

この台詞の後に追記で

「……他にも『文明』は何故だか分かりませんが、使用者によって出力が違ったり、或いは起動すらしない場合があります。
 ただの道具であるはずの『文明』が何故そのような特性を持っているのかは、未だに分かっていません」

彼の言葉は嘘であった。否、社会的世間的には、間違っていない。
けれども彼は何故イデアがそのような性質を持っているのか。
その理由を知っているのだ。

と書き足します。そして「さて、お次は〜」と続きますです。
192名無しになりきれ:2010/02/17(水) 20:34:36 0
そこに信者どもがどんどん現れ



大勢の兵どもを射殺していった・・・
彼は、不適に微笑んだ。
戦う覚悟は、出来たようだ。

現れた敵意の正体はシエルにとって不思議な格好をした、あまり頭のよさそうではない連中だった。

>「よう姉ちゃん……と、オッサン、アンタもこの姉ちゃんの知り合いか?」

姉ちゃん…にしては身長が足らない気もするが、まあいいだろう。
しかし割と友好的な敵意だ。
友好的な敵意などと矛盾してはいるが。

連中の人数はざっと十四人と言ったところか。

>「面倒くせぇから単刀直入に言うぜ。『文明』をよこしな。
> そしたらこっちも楽、テメーらも無傷。いい事尽くめだ」

はて、『文明』とは一体何のことだろう。
知りうる文明という単語を当てはめてみてもそれには違和感が残るだけだ。

シエルと琳樹の無言はどうやら相手方に否定と受け取られたようだった。

>「……ああそうかい。だったら、こっちも割りとやる気になるしかねえな。
> ラウンジ通りの連中ほどじゃねーが、テメーらもそれなりに厄介そうだ」

ラウンジ通り。
どうやらそこでも『文明』騒ぎが起こっているようだ。
つまり、そこに行けば同じ境遇…次元を超えたもの…に出会えるのではないだろうか。

>「見た所テメーの『文明』は『代謝促進』≪イージーヒール≫。
> つまり代謝じゃ治り得ねえ傷。例えば火傷なんかは、癒せねえよなあ?」
『代謝促進』と男は言った。
つまりは、文明とは魔法のことか。
いや、また別の“実体”かも知れないが、どうやらこの男はそれを一つしか持っていないと踏んでいるようだ。

じい、とシエルが思考をめぐらせていると、突然男の手が燃え上がり始めた。
轟々と音を立てて紅の煌きが揺れている。

>「俺の『発火担手』≪パイロパイロット≫を喰らえば、テメーらはアウト。
> 死んじまっても恨むなよ? 降伏は許してやっからよ」

シエルはある種、驚愕していた。
この世界にも魔法じみた何かが存在していたことに。

これは少し厄介な事になりそうだ。

さて、ここまでの男の言動を整理してみよう。
この男とその愉快な仲間達はどうやら『文明』とやらを欲しがっているらしい。
それをシエルが持っていると言うのだ。

そして、その『文明』とはシエル達の知る魔法のこと。
加えてそれは単一の属性を示すらしい。

今男が誤解しているのは、シエルが『代謝促進』……つまり回復魔法の初級中の初級である“ファースト=ヒーリング”
しか所持していないと思っていることだ。
故に男は代謝で直りきらない火傷を負わせようとその御手を発火させた。

実に、短絡で、理論に即していない。

魔法使いたるもの、すべての理論に通じ、それを利用しなければならない。
その基本がなってないのでは、意味がない。
「残念…ですね」

長い思考の後、シエルは漸く口を開いた。

「あァ?何言ってんだ、姉ちゃん」

男は右手に炎を灯しつつ言う。

「あなたがもう少し、魔法使いの思考を持っていたら…」

シエルは男の質問に答える事も無く、背負っていた巨大な剣、クレイモアの切っ先を男に向ける。

「もう少し、その炎を活かそうと思えたなら…」

直後、爆発に似た破裂音。
男たちも一度は聞いた事のあるだろう、つまりは銃声だ。

「!?」

その空間が、瞬間に沈黙した。
当然だろう。
男の額に、捩れた風穴が開いていたのだから。

「こんなことだって出来たのに…」

少し、悲しそうな表情で。
幼くみえるその容姿には実に不釣合いなその表情で。
小さな魔女は、悲しんだ。

「“バレットファイア”……如何ですか?」

悲しみを湛えた笑顔で、小さな魔女は残りの男たちに微笑む。
196ウェイター ◆T28TnoiUXU :2010/02/18(木) 01:57:48 0

――――それは、絵に描いた様なテロリズムの混乱と混沌だった。


『ははははははははははははは!!!銃弾!硝煙!衝撃!鈍痛!これだ!この臨場感!このリアリティー!僕が渇望していた――『揺らがない現実』!!』【>>165

『うおおおおうっ!?』【>>182

『……ひ、広瀬ぇええええええ!!』【>>184

俺は、吹き飛ばされた時に潰れちまったソフトケースをポケットから取り出す。
視線は店内に向けたまま、縒れた煙草を一本引き抜いて口の端に銜えた。

「え…っと。これ、どういう……?」

カウンターの影でしゃがみ込んでいた和泉が、ふらふらと出て来る。
どうやら精神的動揺が脚に来ているらしく、すぐにまた尻餅をついた。

「厄介な団体さんの御来店だ。10名……いや、"文明"ジャンキーが20名オーバーか?
 ドラッグパーティーの会場に選ばれたのは光栄だが、事前予約が欲しかった所だな」

「あ。もしかして改装工事業者の人たち……?」

「……店舗改装は来月の頭からの予定だろうが。
 何を呆けてやがる? さっさと警察・消防に連絡、急げ!」

「だって……! だってこんなの――
 ――こんなのマニュアルに書いてありませんでしたっ…!」

ここまで強がり切れない和泉を見るのは初めてだった。
いつも冷静ぶって氷人形みたいなウェイトレスが、らしくもない。
だが、そんな同僚の肩を抱いてやりたくなった俺もまた、らしくなかった。

「……災害時のマニュアルは、覚えてるな?」

「…じ、地震災害時――"――スタッフは、お客様の混乱防止に務めると共に、
  照明器具などが落下する恐れのある場所にいるお客様については、
  壁際あるいは店外など、安全な場所に移動させるものとする。
  お客様の避難誘導を行う場合には、必要な指示を―――"」

―――それまで床にへたり込んでいた和泉が、不意に立ち上がった。
瞳には、客達が混乱状態で避難経路を求める店内の様子が映っている。

「お客様……頭上のシーリングファンの位置をご確認ください!」

"落下物からの頭部保護"

「椅子が倒れておりますので、足下にお気を付けください!」

"倒壊物による転倒防止"

「―――ああ、それでいい。上等だ和泉!
 客の避難が済んだら、お前もさっさと逃げろ」

「はい! ……その、祇越さんは」

「休憩ついでに、フロアチェックにでも行くとするさ。
 このイカれたアイドルタイムが終わっちまう前にな……!!」

俺は、非常用ベルのプラスチックカバーを横殴りの拳で叩き割って駆け出した。
197ウェイター ◆T28TnoiUXU :2010/02/18(木) 01:59:57 0

「―――おい。お前ら全員、其処に正座しろ……!!
 料理一皿を拵える苦労も知らずに、ランチタイムを台無しにしやがって。
 だったら、この俺が教えてやる。いいか? そもそも食品衛生の三原則ってのは――」

俺は"文明ジャンキー"その1を背後から蹴り倒し、銜え煙草でダンスフロアに踊り出た。

「1.清潔!」

跳躍/ステップから軸足を切り替えて真上へ。

「2.迅速!」

連撃/右脚の初段の蹴り――ジャンキーその2の後頭部へ。

「3.温度管理だ!」

連撃/空中で90度回転して左踵による二段目の蹴り――その3の側頭部へ。

「以上は食材の受入、加工・調理、盛付・配膳等あらゆる過程に際して留意を要する」

着地すると同時に這い蹲る様な屈身。
その4の足首裏を鋭い脚払いで跳ね飛ばし、
伸び上がる動作で横薙ぎの裏拳を叩き込んだ。

「同様の事が、食品全般・器具類の取扱、従事者の作業環境等に於いても求められる」

周囲に居たジャンキー達を床上の特等席に御案内した後、
俺は通路壁に設置された防災用品を無造作に引っ掴んだ。

「ちなみに、加圧式ABC粉末消火器の放射時間は10〜30秒。放射距離は3〜7m前後だ」

投擲/振りかぶった消火器を、ジャンキーその5の胸板を目掛けて投げ付ける。
追撃/得物がヒットするのと同時に駆け寄って、全力のサイドキックを衝き込んだ。
炸裂/消火器のボディが、俺の踵の形に陥没し―――破裂音が店内の空気を振動させる。   

「主たる消火作用は負触媒効果に拠る抑制作用である―――がっ!?」

―――背中に衝撃。刹那、五感を失った。
両側の肩甲骨――"聖痕"の刻まれた位置――に、
違法改造済みのスタンガンが二本同時に突き立てられていた。
一時的に機能が麻痺した身体は、振り向くどころか防御行動さえ取れない。

「冷却作用は…無きに等しく……再燃の可能性が高い。よって――」

気が付くと、ゴルフクラブのヘッドが俺の外腹斜筋に深く減り込んでいた。
武装した連中が俺を囲む。静止する感覚。肋骨が何本か持って行かれた感触。

「――鎮火後は…完全に…消化が…完了したか……注意を…要する」

力任せに後頭部へ振り降ろされたバールの様なモノが、トドメだった。
舞い立つ白い粉塵の中で、俺の鮮血が影絵の様に散った。
視界と意識がカクテルシェイカーみたいに振れる。

「くくっ……人気絶頂…ってヤツだな……。
 カリスマウェイターも…楽じゃねえ、か…―――」

両膝を付いた俺は、背中から蹴り倒されて無様にフロアに転がった。
誰かの口笛が響いて、レフェリーの存在しないサッカーゲームがキックオフ。
鋭利に砕けたガラス破片の人工芝の上で、俺の白と黒の制服が赤く染まっていった。
198ウェイター ◆T28TnoiUXU :2010/02/18(木) 02:01:04 0



……

ダメ押しのシュートとばかりに蹴り上げられた満身創痍の身体が、二番テーブルにダイブする。
ゴールには逃げ遅れたらしい丸眼鏡の少女と、ほぼ手付かずのままの元・パフェグラスだ。
ぶちまけられたコーンフレークが、そこに突っ伏している俺の頬に血糊越しで張り付く。
だが前髪に染み込んだアイスクリームの冷たさは、意識を僅かに醒まさせてくれた。

「……君…いや…お客様…申し訳ありませんが…」

『ひっ!?』【>>179

「後ほど……代わりの品を…お持ち…しますので――…」

声と同時に咽喉を灼く塊までもが迫り上がり、俺を咳き込ませる。
最後の言葉が無事に少女へと伝わったかは、わからなかった。

…――"逃げるんだ"

『――っ!』

目の前には、修道服とロザリオを背景にして真っ赤なチェリーが転がっていた。
ウチのストロベリーソースは、こんな毒々しい色をしていただろうか。
霞む意識の中で、ぼんやりと考える。これじゃあ、まるで―――

「……まるで聖餐のワインだ」

その色が、先程まで真っ白だった視界を塗り替えようとしている。

――――ぴしり、と。

もう何も感じない筈なのに、近くで何かが割れる音を聞いた様な気がした。
199葉隠 殉也 ◆sccpZcfpDo :2010/02/18(木) 02:02:47 0
女子二人を囲んでいた内の五人が男達がこちらをいろいろな武器を持って取り囲む。
鉄パイプ、角材、ドス、中にはチャカなどをチラつかせている。
だが、半分以上を誘き寄せられたのは幸運であり好機であった。
女子二人も恐らくは只者ではないようだ、格好やらなにやらで判断していた。
だったらしばらく放置しておいても大丈夫だと判断する。

「一対一ではないが、実力差を見てもよく戦う勇気姿勢を見せた賞賛に値する」

嘲りでも皮肉でもない、それはただ純粋に褒め称えていた。

「だが…加減はせぬぞ…!」

一歩を踏み出すと音も立てず近づき、風切り音と共に踵落しを放ち頭部に直撃を受け倒れる。

男達は唖然としていたなぜならば
彼等から見れば一歩も動いていないのに急に横に現れるという風に見えたからである。

「どうした、かかって来んのか?ならば……その目に焼き付けろ」

そしてまた一歩、正確には一歩に見えるがその実は数歩分の距離を縮めている行法
縮地という技を使い接近していた。直これは当人は気づいておらず自然とやっている事となる、

「これが日本男児の正しき喧嘩の方法だ!」

そのままの体勢から裏拳を放ち、吹き飛ばされその斜線軸にもう一人居たため
その者もまとめて壁にぶつかり、二人が重なり倒れる。

「ヒィィィィ!」

恐れた男の一人がチャカを取り出し、発砲しようとするも引き金が引けない
なぜならば撃鉄が抑えられているからだ。

「流れ弾が善良な市民に当たったらどうするつもりだこの馬鹿者がー!」

腹部に強烈な拳の一撃を打ち込み、チャカを手放しうずくまる。

「これは俺が預かる…これは米軍が使っていた銃だな。さてと次はと…」

うずくまる男をひっくり返し、弾装二つと落ちているコルトガバメントを回収し最後の男の方を向く。

「…………」

その光景を見てあまりの恐怖に失禁した上に気絶していた。
なんともなさけない…いい年をこいて小便を漏らすとは…

「人前で漏らすとは…情けないだが これをここまで見ても逃げなかった事は褒め称えよう」

気絶していたのなら逃げるのなら当然だが、彼にとっては褒める事であり
その男の美点であるからだ。

服に手を突っ込んだまま気絶していたのでそれを気になり引き出すと同じくコルトガバメントであった。
そして更に探ると弾装を二つ回収する。

「こんな物を持っているとはな…お前達には危険すぎる代物だな」

懐に二挺のガバメントを入れ、二人の女子の安全を確認しに行く
あと後ろから見ていた少女も心配なので後で見ることとする。


200真雪 ◇OryKaIyYzc:2010/02/18(木) 06:43:39 0
>>167


住宅街を進む真雪の足取りは、重い。
「はぁ…どうやってかわすかなぁ…おばあちゃん」
うるさい祖母が、家で待っているからだ。



真雪の祖母は、不思議な現象を認めない。
金縛りに会えば体の不調と言い、心霊写真を見ればただの写り込みだと笑う。
鬼火を見れば気のせいと一蹴し、超能力者はインチキだと鼻白んだ。
最近の『文明』絡みの騒動も、祖母に言わせればただのヤラセ、らしい。
真雪の話でさえ勘が良いだけと取り合わず、
そんな暇が有ったら勉強しろとうるさいのだ。



(帰りたくないなぁ)
道端で立ち止まり、もう一度溜め息をつく。
真雪は肩に下げているバッグを持ち直して、進もうとした。
「あー…」
金属が落ちる、特有の高い音が響く。
真雪が後ろを向いて確認すれば、小さなペンダント。
檸檬が入学祝いに買ってくれた、銀の三角錐のペンデュラムが落ちていた。
「プルーフ…」
ペンデュラムに付けた名を呟きながら、拾う。
バッグから落ちたそれを首に掛け、立ち上がった。
目の前を見上げ、愕然とする。

丁度、先程向かおうとした向きの真逆。
その空間に、人が現れた。

>>146
現れた人物が、口を開く。
「やあ、こんにちはだ……」
彼は一つ咳払いをし、胡散臭い程の笑顔で続けた。
「こんにちは、キミは『イデア』を持っているのでしょうか?」

「…っ」
真雪は息を呑み、一歩後ずさる。
(何…? 何なの、この人…)
色々と意味が分からない。
『イデア』とは一体何なのか。
何故真雪に話しかけているのか。
そもそも、どうすれば空間から人が湧き出るのか。
困惑する真雪を見て、彼が明るい声で話を進めた。
「あ、ごめんなさい。自己紹介が遅れました。僕は萌芽。竹内萌芽です、よろしく」
201真雪 ◇OryKaIyYzc:2010/02/18(木) 06:45:16 0


混乱状態の真雪の頭に、金属同士がぶつかる時の高い音が、キン、と鳴る。

―――この人は、今、嘘を吐いた―――

(吐いた嘘は名前。その意志は利己的)
一瞬で判断した後、嘘を吐いた状況を把握し何をしたいかを探る。
(初めて会った人に自分から偽名を名乗る…
人を利用する為や、第三者に自分の個人情報を隠す理由が多い)
最近学び始めた心理学を元に、まずは有り得る理由を頭に並べた。
軽く目を瞑り、さらに思考を展開する。
(『イデア』…彼の要求は前者に通じ、最初の言葉を誤魔化すような咳払いは後者に通じる。だから…理由は両方)
そして、真雪の答えが出た。
閉じていた瞼をゆっくり開く。
(彼を信頼してはいけない)



落ちたバッグを肩に下げ直し、再度顔を上げた。
顎を引き、目の前の嘘吐きを睨む。
「生憎、嘘吐きに名乗る名も、差し上げる理念も持ち合わせてないです」
真雪は慎重に言葉を吐き捨て、街へ駆け出した。



【真雪は にげたした!】
【特有能力:インスピレーション・ライ】
【嘘を吐く意志を、言葉を聞いたり読んだりする事で瞬間的に察知する。
利己的、利他的と言う形の簡単な理由も同時に分かる。
ただし、その後の判断は利用者である真雪自身の状況判断能力によって変わる。】
202葉隠 殉也 ◆sccpZcfpDo :2010/02/18(木) 18:08:06 0
だが、女子二人の安全確認をしに行こうとした矢先
謎の男たちが乱入してくる。

>「あぁん? 先客か? おいテメーら、とっとと散りな。でねーと痛い目見るぜ」

男の一人が拳を振るい、当たるはずだった。
しかしそれは空を切り、代わりに乱入してきた男の一人の腕輪が光り
壁が溶けていた。

>「うえっ!? ぶ、『文明』持ち!? じょ、冗談じゃねえぞ!」

残りのチンピラ達は逃げていく

>「さぁて、次はお宅らだぜ。……三つだ。三つ数える内に『文明』を出せば痛ぇ目遭わずに済む」

男の言う言葉に聞き覚えはなく、頭を傾げる。

「文明…?それはなんだ?」

その言葉に返す者はおらず、三秒が経過する。

>「交渉決裂だ。お宅らがヤベェ『文明』持ってんのは知ってる。こっちも手加減出来ねーぜ。


だからなんの事か分からぬ以上、渡すもなにもないしそれ以前に態度が気に入らん
どちらにせよ、降りかかる火の粉は払わねばならない。

「さきほどの者達とは違い、何らかの力があるようだが…
 それでも貴様等は女子を複数で取り囲む下種に過ぎん」

闘志を更に燃やす瞳で、その者達を見下ろす。

「ならば、掛かって来いそれと先ほどの話を詳しく聞かせてもらうぞ」

再び拳を構える
203尾張証明 ◇Ui8SfUmIUc:2010/02/18(木) 19:02:00 O
(ここだな)

眼下の建物の前で、消防隊員達の目立つオレンジがよく動いている。この建物が事件の中
心らしい。

ガラスの向こうをかがんで覗き込み、どんな店かを確認する。

(喫茶店か……それにしても随分酷い壊されようだ)

入り口は崩れ、店の中にあったであろうテーブルが外まで吹き飛ばされている。

(血の跡もちらほらある)

(後はどうやってここに入るかだな)

喫茶店は二階建てで、ここからは屋根しか見えない。
商店街に並走した道路から敷地を突っ切って店の裏側から入るか……いや、グズグズして
いたら手掛かりが……

(そもそも、俺と関係が有ると決まったわけでもないのにそこまでやる意味が?)

しかし迷っている時間が惜しい。やってみるしかないか、と立ち上がり、素早くM10を抜
いて踵を軸に振り向き、構える。


こちらから見て屋根の対岸、向こう側のアーチの終点に人影が

「やあ、驚いた」

降参するように両手を挙げた、白衣を着た黒髪ストレートの女が立っていた。
204尾張証明 ◇Ui8SfUmIUc:2010/02/18(木) 19:02:32 0
(ここだな)

眼下の建物の前で、消防隊員達の目立つオレンジがよく動いている。この建物が事件の中
心らしい。

ガラスの向こうをかがんで覗き込み、どんな店かを確認する。

(喫茶店か……それにしても随分酷い壊されようだ)

入り口は崩れ、店の中にあったであろうテーブルが外まで吹き飛ばされている。

(血の跡もちらほらある)

(後はどうやってここに入るかだな)

喫茶店は二階建てで、ここからは屋根しか見えない。
商店街に並走した道路から敷地を突っ切って店の裏側から入るか……いや、グズグズして
いたら手掛かりが……

(そもそも、俺と関係が有ると決まったわけでもないのにそこまでやる意味が?)

しかし迷っている時間が惜しい。やってみるしかないか、と立ち上がり、素早くM10を抜
いて踵を軸に振り向き、構える。


こちらから見て屋根の対岸、向こう側のアーチの終点に人影が

「やあ、驚いた」

降参するように両手を挙げた、白衣を着た黒髪ストレートの女が立っていた。
205尾張証明 ◇Ui8SfUmIUc:2010/02/18(木) 19:04:25 O
自分を含め、こんな所にいる奴が怪しくない訳がない。

『動くな』

言ってから、軽く舌打ちをした。面倒なことだ、畜生め。

白衣の女は両手を挙げたまま、しげしげとこちらを観察してきた。嫌らしい薄ら笑いがカ
ンに触る。直感がこいつと俺とは相容れないと判断する。

「へえ、凄いですね。声が……いや、音が出てないのか」

気づかない訳だ、と女は一人で勝手に納得して、にやけ顔のまま続けた。

「私が誰なのか気になりますか?私はね、兎ですよ。あなたは犬みたいですが、それとも
狼ですか?羊の皮を被った」
BMWっていい車ですよね。

訳がわからないことをペラペラと女は捲し立てる。
俺はと言うと、なるべく銃を持った腕を疲れさせないようにしながら、どうやってアーチ
を乗り越えて女を拘束するか頭を働かせていた。


「どうしてこんな世界に来たか気になりませんか?犬狼さん」


思考が弾き飛ばされる。アーチに向けていた目が女に引き戻される。
ニッコリと女は笑った。

「兎だから時間を気にする方でね」

片方の手を下げて、パチリ、と女は首から下げた金色の懐中時計を開いた。

「さてと、追いかけっこをしましょうか。君は狼で、僕は兎だ」


『動くな』

意味もなく俺は呟く。女はぐっと体重を前に掛けた。つまり、ガラスに向かって。

『自殺でもする気か?』


「そんな顔しなくとも大丈夫ですよ。僕には『文明』がある」


「とは言え、それに引っ掛からない君みたいなイレギュラーはいるんだけど。」

「捕まえてごらん」

俺が引き金を引く前に、女は思い切り勢いをつけてガラスに向かって倒れ込んだ。



【尾張証明:症状悪化、声のみならず自分のたてた音も周りに聞こえなくなる
事件現場を検証しに来た『視外戦術』“兎”に遭遇】
206訛祢 琳樹 ◆cirno..4vY :2010/02/18(木) 20:02:42 Q
チンピラに風穴を開けた彼女が何かを言う。
悲しそうに笑いながら。
集中しているせいか、自分の声以外が聞こえないのが残念だ。

「…」

魔法書を捲りながら思考する。
魔法、剣、鎧。正しく私が入りたかったゲームの世界。
人が死んだなんてどうでもいい。

「この世界でこの瞬間に死ねたらどんなにいいだろう、ね」

私はただそれだけを考える。

「チンピラ達が羨ましい、死ねるんだから」

テキトウなページでテキトウな魔法を念じる。
するとチンピラの内の一人の体、恐らく心臓に鋭い氷が突き刺さった。

「いいね」

私でも魔法が使えるのは彼女の魔力が込められているから、そう言い聞かせておかないと私の力だと錯覚してしまいそうだね。

「お疲れ様です」

崩れ落ちるチンピラに声をかける。
人が死んだというのに緊張感が無いのは、多分ゲーム脳のせいだ。

「次は誰、」

いいや、焦ってはいけない。
私らしくマイペースに、いかなければ。

「そ、マイペースに逝かなければいけないね」
207葉隠 殉也 ◆sccpZcfpDo :2010/02/18(木) 20:47:53 0
先ほどの男達よりかなり数が多い上に超能力じみた力を持った者達も居たため
さっき見たいには行かないと思うがしかし、
そこで何とかするのが今の俺の成すべき事である。

「では…参る!」

最初は文明持ちとやらを目標と定める。
厄介なのは早めに潰しておくのが後々面倒はないからだ。
となると周りを囲っている者達が邪魔だったため、ガバメント二挺を両手に持ち
独特の構えになり、周囲を確認する。

「戦人無形型 銃拳―――」

発砲すると恐ろしい勢いで弾丸が計算された上で飛び交い、包囲していた者達が次々と倒れていく。
完全に弾が尽きる頃には文明能力者とその他以外は全員倒れていた。
尽きた弾倉を捨てて新しい弾倉と交換し、残った者達を見据える

「…まだおるがこれで周りは片付いたな」

ゆっくりと残っている者達の方向に向かう。






208竹内 萌芽(1/7) ◆6ZgdRxmC/6 :2010/02/19(金) 00:13:57 0

竹内萌芽は動揺を隠せなかった。

「え、あの、ちょっと……」

『生憎、嘘吐きに名乗る名も、差し上げる理念も持ち合わせてないです 』

一言そう言い放った彼女は、そのまま彼のほうを振り向くこともせず、街のほうへ駆けていく。

「あの、すみません。僕なんか気にさわることでも言いましたか……?」

駆けていく彼女の横を走る萌芽。ちなみに直接肉体を使って走る彼女に対して、萌芽は”走っている自分”のイメージを彼女の横の空間と”あやふや”にしているだけなので、このまま追いかけっこを続ければいずれスタミナの面で彼が勝つことは目に見えている。
しかしそんなことを知らない彼女は、こちらを振りほどこうと躍起になっているのだろう。走りながら話しかける萌芽のことについては一切無視を決め込むつもりのようだ。

しかたがないので、萌芽は彼女の横を走りながら、なぜ彼女が自分から逃げるのか考えてみることにした。
第一に思い浮かぶのは、自分の異常性に恐怖しているということ。
急に空間から出てくる男の姿は、ひょっとしたら彼女には幽霊かなにかのように見えたのかもしれない。

しかしそれはちがう。そう萌芽は直感した。

『生憎、嘘吐きに名乗る名も、差し上げる理念も持ち合わせてないです 』

あのとき自分を見た彼女の目は、恐怖というよりは”敵意”に満ちていた。
やはり自分は彼女の気に触ることでも言ってしまったのだろうか?
209竹内 萌芽(2/7) ◆6ZgdRxmC/6 :2010/02/19(金) 00:17:52 0

「嘘吐き」彼女は自分のことをそう呼んだ。
では自分が彼女についた「嘘」とはなんだろう?
少なくとも『イデア』のことではないはずだ。自分はそのことについて彼女に尋ねただけだし、そもそも自分も知らないことについてどう”嘘”をつけというのだろう?
まさか、と彼は思った。

ふっと自分と”あやふや”にしている空間を、彼女の横から彼女の目の前へと移動させる。
彼女から見れば、恐らくは自分の横を走っていた彼が、突然自分の前に現れたように思えたのだろう。
突然のことに驚いた表情の彼女に、萌芽はさきほど自分の頭をよぎった『仮説』について、彼女に尋ねてみることにした。

「あなたの言う『嘘』というのは、ひょっとして僕の名前のことですか?」

一瞬だったが、彼女の表情の変化を見て、それが彼の『仮説』が正しいことをあらわしていたのを確認すると、納得した萌芽はひとつ頷いてくすりと笑う。

「やっぱり、最初に会うのをあなたにして正解でした」

「あなたは”面白い”人ですね」そう言って笑うと、彼は自分と”あやふや”にしていた空間と自分を”はっきり別々”にした。
210竹内 萌芽(3/7) ◆6ZgdRxmC/6 :2010/02/19(金) 00:19:18 0

ふと目を開くと、始めの場所に立っていた。
あたりを見回すが”あの人”はいないようだ。まあ今はどうでもいい。

「あははははははははは!!!!」

腹を抱えて萌芽は笑う。愉快だと彼は思った。

彼女は自分のことを、”竹内萌芽”という自分の名前が”嘘”であると言った。
恐らくは彼女の”才能”なのだろう、”嘘を嘘だと見抜ける”とかそんなところだろうか?
なんでもいい、とにかく彼女は自分のことを”竹内萌芽”のことを「嘘吐き」だと言ったのだ。それが意味するのは、萌芽にとっては彼自身の存在の否定にひとしい。

”竹内萌芽”という名前は、自分がこの世界で生まれ変わるためにつけた名前だ。
なのに、彼女はその名前は嘘だという。自分はあの『退屈な世界』に生きていた頃のあの「n」で始まるあの名前の”彼”のままなのだという。
そんなことは我慢できない。我慢できるはずもない。

「あはははは……はぁ、そういえばまだ名前もきいてませんでしたね」

「まあいいか」と彼は呟く、とにかく愉快だ。だって彼女は自分の『敵』だというのだから。
”竹内萌芽”という存在そのものを否定する人間。これを『敵』と呼ばずになんと呼ぼう。

与えられた「ゲーム」に『敵』の存在。まったくこの世界は面白いことが多すぎる。

「ん……?」

そこまで考えて萌芽はふと、”あの人”の言葉を思い出す。

(ゲームと言うのは『宝探し』だよ。君は対戦相手達を下して、または協力して。
 とにかく手段は問わず『イデア』を集める。どうだい?)
211竹内 萌芽(4/7) ◆6ZgdRxmC/6 :2010/02/19(金) 00:20:30 0

『対戦相手を下して、または協力して』と”あの人”は言った。
つまり、”あの人”の予定している「ゲーム」では、”参加者”は協力することもあるが、対戦することのほうが多いということではないのか?
それはまずい、と彼は考えた。

名前も知らないあの『敵』は、”嘘を嘘と見抜ける”という才能を持っているように見えた。その彼女の持つ”才能”がそれだけなのだとすれば、それはあまりに戦闘に向いていないように見える。
自分の知る限り、この世界に来た”参加者”の多くはたいていなんらかの戦闘能力を持っている。
もし彼らが標的を彼女に選んでしまった場合、自分は彼女を負かすことができなくなってしまう。

”竹内萌芽”にとって、この勝負の勝利条件は彼女に”自分が竹内萌芽であるとみとめさせる”ことである。
だから彼女が死んでしまっては元も子もない。
なんとかしなければと思い悩んだ末、彼は再び自分と世界を”あやふや”にした。

そして、”参加者”が存在している箇所の空間と自分の存在を”あやふや”にし、そこにいる彼らに語りかけた。
212竹内 萌芽(5/7) ◆6ZgdRxmC/6 :2010/02/19(金) 00:21:53 0

「こんにちは」

「皆さんはなぜ自分がこの世界に”招かれた”かご存知ですか?」

「実は皆さんは、ある人に呼ばれてこの世界に来たのです」

「この世界に”招かれた”人間は二種類、ずばり戦闘能力のある者とない者です」

「戦闘能力のある人同士は戦わなければいけません、なぜってそれが僕たちを呼んだその人の意志ですから」

「戦って、最後に勝ち残った一人には、僕たちをこの世界に呼んだ人に会う権利が与えられます」

「そして”その人”に会えば、何か”報酬”が与えられます。もちろん、その”報酬”を『元の世界に戻ること』にすることも可能です」

「戦闘能力の無い方々には、またのちほど別に連絡させていただきます」

「あ、僕ですか? 自己紹介が遅れました、僕は竹内萌芽。皆さんをこの世界に呼んだ、”あの人”の使者です」
213竹内 萌芽(6/7) ◆6ZgdRxmC/6 :2010/02/19(金) 00:22:36 0

そんなことを戦闘力のある参加者に言い終わり、萌芽はほっと一息ついた。

「我ながら、よくこんなに言葉がぽんぽん飛び出すもんですね」

呆れたように言って、笑う。
これで戦闘力のある連中が潰しあってくれれば、彼らのうちの誰かが”彼女”に危害を加える心配もなくなるだろう。
もし潰しあわなかったとしても、自分が元の世界に戻れるという希望を与えられてなお戦うことを拒める人間なら、少なくとも”彼女”の敵になることはないに違いない。
これで、名実ともに彼女は『自分だけの敵』になったというわけだ。

「さて……」

一通りの作業を終えた萌芽は、ふたたび両手を広げて目を閉じる。

そして、再び彼女の前の空間と自分の存在を”あやふや”にする。
214竹内 萌芽(7/7) ◆6ZgdRxmC/6 :2010/02/19(金) 00:23:44 0

目を開けると、彼女が居た。
もういい加減この登場の仕方にもなれたのか、「またお前か」という表情をしている。

「やあ、また会いましたね」

萌芽はにこやかに微笑んで、自らの『敵』に向かって右手をひらひらと振ってみせた。


ターン終了:
【全戦闘向きキャラにキャラクター同士の戦闘を誘導:前園 久和と自分のキャラは戦闘向きだと自覚するPLさんへ、いつ接触されるかのタイミングは皆さんにお任せします】
【再び真雪に接触:これも萌芽が表れるタイミングはPLさんにおまかせします】
【能力発動中:能力で現状に干渉することは難しい、ただし本体は三浦啓介の側にいるので、少なくとも本体は町にいる萌芽が何をされても無傷(摂食・排便は「一通りの作業」に含まれます)】
215ゼルタ=ベルベット ◆8hdEtYmE/I :2010/02/19(金) 00:29:47 0
ゼルタは青年らがチンピラどもを叩きのめすのを、何もせずただボーッと眺めていた。

何もしていなかったからこそ、新たな来訪者に気付くのは早かった。

不穏な気配を感じて振り返ると、今来た道を埋め尽くすようにして無法者の集団が立ちはだかっていた。

二十人や三十人はいるだろうか。通路の反対側も、同様にして塞がれていた。

そこらに倒れているチンピラ共を一瞥して、先頭に立つ男が口を開く。

>「あぁん? 先客か? おいテメーら、とっとと散りな。でねーと痛い目見るぜ」

そう言って男は見せつけるように壁を拳で殴った。男の填めた腕輪が妖しく煌めき、ゆるやかな軌跡を描く。

先ほど青年がやったように壁を砕くのかと思いきや、なんと男の拳が触れた部分が液状化し、どろどろと滴り始めた。

「おぉう」

なんだろう、あのおもしろそうな力。

ゼルタはそんな感想を抱き声を漏らす。

>「うえっ!? ぶ、『文明』持ち!? じょ、冗談じゃねえぞ!」

ぼろぼろになりながらもお互いに肩を貸したり引きずったりしながら、チンピラたちは逃げて行った。

男はそれを蔑むような目で見送ると、残された面子に向き直る。

>「さぁて、次はお宅らだぜ。……三つだ。三つ数える内に『文明』を出せば痛ぇ目遭わずに済む」
216名無しになりきれ:2010/02/19(金) 00:31:44 0
『文明』。

『文明』って何だろう。あの男が壁を溶かしたのも、『文明』みたいだ。

一瞬光った、あの腕輪が『文明』?

似たような装飾品なら……確かに持っていたかもしれない。

考えている間に、男は三つ数え終わってしまったらしい。

>「交渉決裂だ。お宅らがヤベェ『文明』持ってんのは知ってる。こっちも手加減出来ねーぜ」

苛立ちを浮かべた顔でそう宣言する。

どうやら、このまま力ずくで奪うつもりのようだ。

今からでも、それらしき装飾品を渡せばあるいは許してもらえるだろうか。

「……でも、渡さない」


奪われるのは、お前だ。


そう呟くが早いか、ゼルタは男に向かって突進していた。右手にはいつの間に抜き放ったのか、不気味な輝きを放つ短刀が握られている。

そして反射的に突き出された男の拳をかわすと。


短刀でその手首から先を斬り落とした。

切断面から、真っ赤な血が勢いよく噴き出し始める。

「っ……んなっ!? お、俺の腕がぁあああっ!!」

男の顔が激痛と驚愕とで歪み、残った手で切られた腕を押さえる。

「盗賊相手に、物を奪おうとするのが間違いなんだよ」

ゼルタは手首の落ちた腕から手慣れた動きで腕輪を抜き取ると、今度は無防備になった男の喉を横一線に切り裂き、男を蹴り倒した。

返り血が跳ね、白いワンピースに紅い染みを作る。

「このガキ、よくも!」

別の男が鉄パイプを振り上げて駆け寄ってくる。
217ゼルタ=ベルウッド ◆8hdEtYmE/I :2010/02/19(金) 00:33:10 0
「ん」

振り下ろされる重い一撃を紙一重で回避、逆に懐に入って胸に刃を突きたてた。

「げっ……」

そのまま崩れ落ちる男の首から細い金の鎖のようなネックレスを引きちぎるようにして奪い、さらに奥へと走る。

三人目は指を切り落とし、指輪を奪った。四人目はイヤリングを耳から引きちぎった。五人目は一人目同様、手首を落として腕輪を奪った。

そうしてゼルタはどんどん奥へと切り込んでいく。

>>207

背後から銃撃音が迫ってくる。どうやら青年がチンピラから奪った銃で攻撃を開始したらしい。

なら、どうでもいい奴はあのお兄さんに任せよう。

ゼルタはそうほくそ笑む。

ゼルタは装飾品を身に付けた男だけに狙いを定めていた。どれが『文明』であるかは分からなかったが、それは後で選別すれば済む話だ。

もっと欲しい。もっともっと欲しい。

返り血を浴び、自らも血を流し鮮紅に染まりながら。

ゼルタは無法者の群れから強奪し続けた。
218Ku-01 ◇x1itISCTJc :2010/02/19(金) 03:11:03 0
>>207
 男性の銃器が瞬く間に辺りを一斉掃射した。
 辺りの建物の材質はコンクリートである。どうやら男性は主人に危害を加えるつもりは無いようだが、跳弾の可能性は否めない。
 可能な包囲への警戒の為、主人の手を払うようにして両手を広げる。


 衝撃に備えた、が銃声が止んでもなお、衝撃も破損報告もなされなかった。
 どうやら見事にすべての弾丸が敵側(だと予測される)人間に撃ち込まれたらしい。素晴らしい演算能力だ、と感嘆すつる。

 無造作に弾倉を取り替えた男性が何事か呟いてから、こちらへ向かってくる。



 それを可視領域に入れながら、ふとメモリに不可解な引っかかりがあることを認識する。
 文明とは何だろうか。
 ku-01はAIでかりかりと検索機能を起動していた。


文明 世の中が進歩し生活が豊かに便利になること.
▼〜開化(かいか)
世の中が開け進歩すること.
▼〜の利器(りき)
<連>文明の発達によって生み出された便利な道具.
▼〜病(びょう)
文明の発達によって新たに起こる病気.


 そんな結果が弾き出されるが、先ほどから会話の中で飛び交っている単語とは文脈が噛み合わない。
 今度はインターネット回線を利用した検索ボックスを作成、検索をする。

 それらしい使われ方をしているページ、データを発見した。
219Ku-01 ◇x1itISCTJc :2010/02/19(金) 03:12:59 0
 三浦という名前が所有しているデータの、論文らしきテキスト。何かの番組の録画のようなデータもある。
 閲覧を要請するが、生憎のこと保存形態がku-01には対応していないらしい。もどかしく感じながら、変換のプログラムを組み立てた。
 動画データの方が比較的形態が似通っているらしい。

 変換を要求する、と同時に検索結果を主人に伝えるべく口を開、



>>『こんにちわ』【>>212




「           」




 ノイズが迸った。

 人用言語に変換され人工声帯を排気で震わせていた言葉が、恐らくなんの加工もされないままに発音される。
 AIに混乱が生じていた。
 思考に、回路に割り込むようにして塗りたくられた情報が頭の中に貼り付く。
 対応していないはずのデータが無理矢理再生されているような不快感。


>>『皆さんはなぜ自分がこの世界に”招かれた”かご存知ですか?』
>>『実は皆さんは、ある人に呼ばれてこの世界に来たのです』
220Ku-01 ◇x1itISCTJc :2010/02/19(金) 03:14:37 0
排熱系統が上手く奮わない。暴走するかのように光が点滅した。
 尚もAIは情報――音声のような形のそれ――で塗りつぶされる。正常な処理が行われない。


>>『この世界に”招かれた”人間は二種類、ずばり戦闘能力のある者とない者です』
>>『戦闘能力のある人同士は戦わなければいけません、なぜってそれが僕たちを呼んだその人の意志ですから』

>>『戦って、最後に勝ち残った一人には、僕たちをこの世界に呼んだ人に会う権利が与えられます』

 そして、

>>『戦闘能力の無い方々には、またのちほど別に連絡させていただきます』
>>『あ、僕ですか? 自己紹介が遅れました、僕は竹内萌芽。皆さんをこの世界に呼んだ、”あの人”の使者です』


 それは、始まったときと同じように、唐突にとぎれた。


 すぐさまエラーチェックを行い、排熱をしながら立ち上がる。
 先ほどの情報、またはメッセージは、どうやら自分やそれに似た立場の存在に向けられたものらしいと保存域に処理。


 そこで初めて、自分以外にも同じような境遇におかれているものがいるらしいと初めて認識。これも保存域へ送った。


 伝えられたメッセージの意味を吟味することなどなく、ku-01は指示を待つ。
221 ◆6bnKv/GfSk :2010/02/19(金) 03:15:57 0
【路地裏にて】


君は盗賊としての本性を現し、凶暴極まる攻撃を繰り返している。
けれども油断してはいけない。
彼らは何の訓練も積んでいないし、場数も踏んではいない。
しかしながらそれでも、彼らには『文明』の牙があるのだから。

「オイオイ嬢ちゃん、ちょっと調子に乗り過ぎだぜ?」

サングラスに右手を添えながら金髪リーゼントの男が、君の前に立ち塞がる。
無防備の至りである体勢を一笑に付して、君は刃を振りかざす。
だが突然、刃の動きが止まった。
否、刃だけではない。君自身の動きもまた、何かに縛られたように封じられている。

「よう、驚きかい? こいつぁ『見敵封殺』≪ロックオンロック≫つってな。
 このグラサンで捉えた範囲のものを封じる事が出来んのよ。
 つっても効果は単体までだし、あまりデカかったりエネルギー量がスゲエと効かねえんだがよ」

動かない君を見下して、金髪リーゼントは悠々と解説を始めた。

「さあて……そんじゃ、お仕置きタイムと行きますかあ?」

不覚にも君は絶体絶命の窮地に追いやられてしまった。
しかしまだ諦念に囚われる事はない。

もしかしたら奪い取った物品に君の使える『文明』が潜んでいるかも知れない。
味方が助けてくれる可能性もある。
勿論君に逆転のプランがあると言うのならば、それを披露してしまうのもアリだ。
222 ◆6bnKv/GfSk :2010/02/19(金) 03:17:29 0
【同じく路地裏】


君は軍人としての本性を現し、凶暴極まる攻撃を繰り返している。
けれども油断してはいけない。
彼らは何の訓練も積んでいないし、場数も踏んではいない。
しかしながらそれでも、彼らには『文明』の牙があるのだから。

「おうオッサン。随分と調子こいてくれるじゃねーの」

言葉と共に、長髪オールバックの男が君に手袋を嵌めた掌を向ける。
隙だらけの構えに双眸を細めながらも君は男へと迫った。
だが、君の体がそれ以上前に進む事は無い。
まるで不可視の壁にでも阻まれたように、体が前進を阻んでいた。
いや、体ではない。正確には胸の辺りを起点として、体が前に進まないのだ。

戸惑う君に長髪オールバックは速やかに接近する。
しかして鮮やか極まる手口で君の体躯の前、横、背面に触れてのけた。
今度こそ、君の体は透明な拘束具にでも囚われたかのように動かなくなる。

「おっしゃ、『御身不通』≪パントマイム≫成功。幾ら『身体強化』≪ターミネイト≫でもその壁は破れねえぜ?
 ま、範囲が二十センチ四方と小せえのと、数が五つしか出せねえってのが難点だけどな」

見せ付けるように手袋を嵌め直しながら、挑発オールバックは謳う。

「さぁて……じゃあ当初の予定通り、囲んでボコると致しますか」

不覚にも君は絶体絶命と言わぬまでも窮地に追いやられてしまった。
しかしまだ諦念に囚われる事はない。

秘めたる兵装を開放してもいいし、味方が助けてくれる可能性もある。
勿論君に逆転のプランがあると言うのならば、それを披露してしまうのもアリだ。
223前園 久和 ◆KLeaErDHmGCM :2010/02/19(金) 03:43:21 Q
夢の中を漂っているとふと聞こえた夢とは違う声。
それは知らない男の声だった、そして俺の脳はうるさいという言葉に支配される。

>「皆さんはなぜ自分がこの世界に”招かれた”かご存知ですか?」

んなもん、知らねぇよ。
ていうかやっぱりこれは夢じゃなかったのか。

>「実は皆さんは、ある人に呼ばれてこの世界に来たのです」

へぇ。
…ある人って?

>「この世界に”招かれた”人間は二種類、ずばり戦闘能力のある者とない者です」

なら俺はある者か?
でも刀を使えるだけだ。

>「戦闘能力のある人同士は戦わなければいけません、なぜってそれが僕たちを呼んだその人の意志ですから」

めんどくさい、めんどくさいなあ。

>「戦って、最後に勝ち残った一人には、僕たちをこの世界に呼んだ人に会う権利が与えられます」

会って。
会ってどうする?

>「そして”その人”に会えば、何か”報酬”が与えられます。もちろん、その”報酬”を『元の世界に戻ること』にすることも可能です」

帰るにすることも、可能。
なら他の報酬にすることも出来るだろう。

>「あ、僕ですか? 自己紹介が遅れました、僕は竹内萌芽。皆さんをこの世界に呼んだ、”あの人”の使者です」

そこで目を開ける。
萌芽、萌芽。人間なんて信じられないがここは一つ信じておくしかなさそうだ。

「移動して異世界人探して、斬る」

そうすれば報酬を貰えるのだろう。
…報酬は、手を皆のように二本にしてもらおうか。
そうして報酬を貰った後は萌芽達も斬ればいい。
俺は鞘と刀をしっかりとチェックして、外へと歩き出した。


【前園久和:報酬を得る為、人を探しに大通りへ移動】
224月崎真雪 ◆OryKaIyYzc :2010/02/19(金) 13:51:00 O


夕闇に染まる住宅街を、二人の男女が駆け抜ける。
女…真雪は、付いてきている男から逃げようと必死に走っていた。
男が何か言っているが、とりあえず無視して走る。
それにしてもこの男(便宜上竹内と呼ぼう、便宜上)、
いつまで付いてくるつもりだろうか。
いや、真雪は分かっている。真雪自身、足は速くないし向こうは男だ。
スタミナも速さも段違い。多分竹内は、真雪が疲れて止まるのを待っている。
(しぬ…っつーか、こけるっ)
今日ヒールで出掛けた事を後悔しながら…真雪はこけた。
「い゛…ったたたた、最悪」
これでは、もう走られないだろう。
捻った足をさすりながら前を見上げると、目の前に竹内が立っていた。
ああ、やはり居た。充分話もしてないだろうし、
それもそうか。一瞬驚いたが、すぐに納得した。
真雪は額を拭い、竹内の言葉を待つ。
竹内が、ゆっくり口を開いた。
「あなたの言う『嘘』というのは、ひょっとして僕の名前のことですか?」
竹内の言葉に、真雪は小さく頷く。竹内がくすり、と笑った。
「やっぱり、最初に会うのをあなたにして正解でした」

「あなたは”面白い”人ですね」
その言葉を最後に、竹内が音も無く消える。真雪はただ、黙って見ていた。

真雪が空を見上げると、もはや夕の朱は消え、藍の空に星が瞬いている。
座り込んでいる方向には、交差点を通る車のライトが輝いている。
現在、6時53分。
真雪が座り込むその場所は、奇しくも昼間、真雪が尾張に話しかけた場所だった。



【真雪:捻挫して座り込んでいる】
 ミーティオの前に立ちはだかったのは、揃いも揃って白いスーツを着込んだ、サングラスの男達。
 それを認めた瞬間にミーティオは踵を返し、反対方向に逃げ出そうとするが、
 既にそちらにもガラの悪い男達が待ち構えていた。完全に囲まれている。

「諦めや。どうもお前は『文明』持ちらしいが、こっちゃプロやで」

 その中でも一際体格の良い男が、そう告げる。
 彼の言葉がきっかけとなり、男達は懐から拳銃を取り出し、ミーティオに向けた。

「……あんたら、誰?」

「小娘が。お前がかけとるそのグラサンは、ワシの弟分のや」

「なるなる。で、どうする? 悪いけど返してやる気はねーよ?」

「安心せえ、お前の意向は全く関係あらへん」

 傲岸不遜なミーティオの態度にもヤクザたちは怯まず、じりじりと包囲を狭めだした。
 撃ってこないということは殺す気はないのだろうか。彼女は考える。
 殺す気がないなら何が目的なのか?

「めんどくせ」

 思考を放棄し、鉄パイプを思い切り投げ上げた。

「…………?」

 くるくると回りながら上空を舞う鉄パイプ。怪訝な目で男達はそれを見上げる。
 ミーティオ=メフィストは――獰猛な笑みを浮かべ、牙を剥く。

「墜ちろ、『隕鉄』」

 その凶悪なフォルムの鉄塊が、飛燕の速度で降り落ちた。
 間抜けに空を見ていたヤクザの一人、その無防備な脳天に――黒い死神が直撃する!
 どす。金属と肉体のぶつかり合う鈍い音が、開戦のゴングとなった。

「テメエッ!!」

 ゆっくりと倒れていく第一犠牲者の隣。激昂した男が銃のトリガーを引いた。
 ――しかし目標とする黒い影はそこぬなく、銃弾は壁に穴を穿つだけ。

「ようようようようようようよう!! プロが聞いて呆れんな!」

 一人を気絶させて跳ね上がっていた『隕鉄』を、いつの間にか側まで移動していたミーティオがキャッチする。
 鉄パイプはそのまま振るわれ、拳銃のヤクザの顎先をかすめ、軽い脳震盪を引き起こさせた。
 重力の制御・引力の発生による超加速。弱まった能力でも、これくらいはできるのだ。

 壁を蹴り、また一人のヤクザの顔面に靴底をお見舞いし、最初の位置に戻るミーティオ。
 一瞬の内に三人を無力化せしめた彼女の能力に、静かな動揺の空気が広がっていた。

「……アホが。誰が実弾入れい言うたんじゃボケ」

 地に倒れ伏す部下を苦々しげに見下しながら、一番の権力者らしい男が吐き捨てる

「どーよ。これでやめにしねえか?」

「ガキ三人のしたくらいで調子に乗んなや? ……撃て」

 男の合図で、残っているヤクザ達の拳銃が一斉に火を噴いた。
 それに対しミーティオは、水平線を撫ぜるように左手をぐるり回した。

「『ハルト』」

 時が止まった――――のでは、ない。しかし傍から見ればそう判断されるのもやむをえない。

 数十の弾丸は、ミーティオの柔肌に触れることなく、中空で停止していた。

「ゴム弾、ねえ。お優しいことで」
 彼女が笑い、静止した弾丸は大地に引かれ、ばらばらと落下した。
 そのまま打ち返すことのできないあたりが、能力の弱まっている証拠だろうか。

 これには『プロ』たちも度胆を抜かれたらしく、息を呑む気配があちこちにあった。

 とん、とミーティオは跳躍した。
 重力の戒めから逃れた体躯は、軽々と十数メートルを越える。
 そして、関西弁の男の背後に回り、鉄パイプでその首を固定。左手は懐から拳銃を抜き、こめかみに突きつけた。

「おいお前ら! ボスのドタマぁぶち抜かれたくなけりゃ、そこから動くなよ」

「やるやないか。小娘、名前はなんちゅうねん」

「あ? ミーティオ=メフィストだよ。じっくり噛みしめろ。しかるのち黙れ」

「ワシは荒海銅二ゆうんや。持っとる文明は『崩塔撫雷』≪テンダートール≫――のうメフィストよ、
 なかなかようやったが、しかしワシに触れたらいかんかったな。『GOOD NIGHT』」

 ぱしり、とミーティオの全身を電流が走り抜けた。悲鳴を上げる間もなく彼女の意識は溶暗する。
 荒海はくずおれる少女の腹の下を腕で支え、山賊のように抱え上げた。

 がらん。鉄パイプと拳銃が空しい音を立てる。

「車回せや。こいつさえ確保できりゃあ、表のバカどもに協力する必要はあらへん。
 一般人のぎょうさんおる所でドンパチなんざ、気の狂ったアホにしかできん」

「副組長、こいつ危険ですよ。ここで殺したほうが……」

「ドアホ。こいつ一人殺しても手に入る『文明』は一つやし、ワシらに宿るとは限らん。
 仲間がおるとしたら助けに来るやろ……うまくやりゃ一網打尽や。じっくり罠にかけるんが賢い戦い方よ」

「副組長。さっき連絡があったんですが、支部の方に泥棒が入ったそうです」

「さよけ。サツより先に捕まえて無間地獄に落としたろか……しかし忙しいのう。
 組長がおらん時に二つも事件が起きるとは。なんやこら、厄日かいな」

「後始末終わりました」

「ご苦労。あー、その鉄パイプは残しとき。拉致ったことをお仲間に教えてやらなあかんでな。
 このご時世、金や銃以上に『文明』は貴重な資産やからのう。面倒やけど仕方ないわ」




【拉致られました。遺留品:鉄パイプ】
【リアルの用事で一週間ほど空けます。ご迷惑おかけします】

・NPC

名前:荒海 銅二 (あらうみ どうじ)
職業:ヤクザ (副組長)
性別:男
特徴:関西弁。彼の直属の部下もまた関西弁。
能力:『崩塔撫雷』≪テンダートール≫:皮膚から電流を発する。直接相手に触れるほか、導電体越しに攻撃する。
趣味:電気風呂・マッサージ
229葉隠 殉也 ◆sccpZcfpDo :2010/02/19(金) 17:31:35 0
ゆっくり向かっていた最中に、一人の男が近づいてきた。
妙な事に無防備な事が気になった。

>「おうオッサン。随分と調子こいてくれるじゃねーの」

そして男が手をかざすと目の前を急に進めなくなる。
目の前が壁があるように遮るのだ。

「むっ…進めん…」

男は素早く近づき、身体に何回か触れるとまったく身動きが出来なくなる。
そして男は自分の能力の事をベラベラと喋る

>「おっしゃ、『御身不通』≪パントマイム≫成功。幾ら『身体強化』≪ターミネイト≫でもその壁は破れねえぜ?
 ま、範囲が二十センチ四方と小せえのと、数が五つしか出せねえってのが難点だけどな」

なんとも妙な能力を持っているものだ、これが彼等の言う文明能力というのが成せる技なのだろう。
だが自分の身動きを止めた事に感心している。

>「さぁて……じゃあ当初の予定通り、囲んでボコると致しますか」

こう言っているが、相手は油断しているようだった
だが少々爪が甘いというべきか集中力と頭脳そして体内を通るバイパスと回路を封じていなかった。

「なんとも無様な有様だな…油断したのか?」

仮面をかぶり、赤い外套を着た英霊の一人が皮肉を言いながら語りかけてくる。

「そうだな…少し油断したようだ」

素直に認めると、おもしろくないと言いたげに嘆息する。

「お前はすぐに自分の欠点を認めるからおもしろくない……私が出ようか?」

なんだかんだ言いつつ、心配しているので協力を申し出る。

「いや…お前が出るほどでもない、すぐに片付ける」

目を瞑り集中するそして自分の内に流れる微弱な電気を軍服の装置を使い増幅させ
全身にある体内にある彼はそれを五つの属性(木、水、風、炎、雷)を作りその力を流し循環させるもしくは放出する回路、   
一般的にはチャクラと呼ばれる場所なのだがそれを全て開く。

「ここまでやった事は流石と言えるだが、お前は少しツメが甘い
 俺に喋れるほどの思考能力を残した事だそれだけあれば十分だ
 反撃する力にはな」

 「戦人無形型――― 紫電雷身」

そして練った力と同時に十万ボルトまでに増幅させた体内電気を全身から放電し、
近づいてきた男達に雷撃が襲う。

230尾張証明 ◇Ui8SfUmIUc :2010/02/19(金) 21:23:51 0
女はガラスを突き破り、そのまま


(馬鹿な)


偶然下を通りかかった空っぽの担架の上に落下した。
担架を運んでいた消防隊員があっけにとられたように見つめる中、流石に衝撃を殺しきれはしなかったのか、ふらふらしながら俺が入ってきた方の商店街の入り口に向かって走り始める。


『糞が!!』


吠える。吠えながら、女を追いかけて俺も走り出す。
追い付くどころか追い抜かなくてはならない。こちらはおよそ三階の高さにいるのだ。


(……)


銃をもう一度構えて、走りながらガラスの屋根に向かって引き金を引く。女の真上に破片が落ちるように計算して、


(後ろに目でも有るのか)


女は最初からそうなることがわかっていたかのようにガラスの雨を避けた。


(このままでは逃げられる)

入り口がどうなっていたかを思い起こす。三台の消防車が止まっているはずだ。

(消防車?消防車か……)


いける、かもしれない。問題は装機にいた頃より体力が落ちていると言うことと、アクロ
バットをするには自分が歳を取り過ぎていると言うことだ。


(ままよ)


商店街の入り口が迫る。屋根の終わりが見えてくる。
横に目を向ければ女と俺はほぼ並走していた。
231尾張証明 ◇Ui8SfUmIUc :2010/02/19(金) 21:24:31 0
浮遊感


屋根の縁を蹴り、飛ぶ、落ちる。
いくら受け身が上手くても三階から地面に叩きつけられればおしまいだ。

(届)

け、と

衝撃

受け身を取るまでもない。
梯子に足をとられそうになりながら、消防車の車体を駆け抜け、地面に降りる。

「なんとまあ」


俺から少し離れた所で、前屈みになって呼吸を整えていた女は呆れたように呟いた。


「でも私の方が上手ですね」

俺と女の間に、図ったようなタイミングで新たに来た消防車が割って入った。
逃がすかと一歩踏み出した所で、肩を叩かれる。


「ちょっと、君」


振り向くと、そこには憮然とした表情の消防隊員が三人。肩を叩いた男が、運転席の天井
がへこんだ消防車を指差す。


「公務執行妨害だ……逃げないでくれよ?」



もちろん、俺は逃げた。
232尾張証明 ◇Ui8SfUmIUc :2010/02/19(金) 21:25:44 0
消防隊員を振りきって、やっとこさ愛車の元にたどり着いた。


(歳を取ったな……情けない)


なんとも言えない感慨に耽りながら車を開けようとして、ワイパーに何かが挟み込まれて
いるのに気がついた。


(駐禁か?間抜けな警察で助かったな)


運が良いような悪いようなと思いながら紙を抜き取り、丸める寸前で気がついた。
紙の裏に何かが書いてある。


(鎧の……)



『鎧の女と奇抜な男

人形と強い女

軍人

幽霊

人形遣い

つかまえて よこせ
あすのたそかれ まで えきのまえ

しりたければ

兔より』



【尾張証明:竹内萌芽の声聞かず】
233名無しになりきれ:2010/02/19(金) 21:53:37 0
ハエが飛んできた

プーン系
234李飛峻 ◆nRqo9c/.Kg :2010/02/19(金) 22:43:31 0
「これからワシのすることをよく見ておくのじゃ…今のワシにはもう何度もできることじゃないからの。
ワシの息づかい…間の取り方…その一挙手一投足を!その目に…その心に…しかと焼き付けるのじゃ!!」

「師父ーーー!!……ああ、夢だこりゃ」

天に向かい手を突き出し、絶叫を上げ、そして正気に戻る男が一人。
傍から見たらまるっきりバカ丸出し、むしろ何処から見ても生粋のバカである。

ついさっきまで見ていた夢の内容を思い出す。
確かあれは一日の修行を終えて寝る前にちょっと生き抜きでもしようかと、自宅でやっていた古い電子遊戯の内容だ。
数ある時代から一つを選び、その一つ一つをクリアしていくそんなストーリー。

男の名前は李飛峻。
高度に科学が発達し、人々がその恩恵を享受する。
そんな世界にありながら自然と己を合一し、しまいには宇宙の真理を体現しようなどという前が3つも4つも付くかと言うくらい前時代的な生き方をしている男である。
もっとも趣味の一つがゲームというあたり多少文明は受け入れているようだが。

寝覚めで上手く回らない頭をぼりぼりとかきながら辺りを見回す。
目の前には壁、視線を上に向けていってもずーっと壁。
首が90度の角度に曲がったところで頭上にぽつん、と空が見える。

「は?」

どう考えてもここは見慣れた自分の部屋ではない。
さらにぐるりと見回してようやく気づいた。
自分がビルとビルの間、所謂路地裏に居るのだということを。

「そんな馬鹿な。昨日は酔八仙拳の修行をした覚えは無いが……」

信じられんといった感じで呟きながら、とぼとぼと、それでありながら体軸がまったくぶれないというなんとも奇妙な歩方で路地裏から抜け出す。
路地裏を抜けるとそこは都会だった。
まあそれ自体は左程に珍しいことでもないのだが。しかし風景が飛峻の知っているものではなかった。

立ち並ぶビル郡、行きかう人々、道路を走る車。
そのどれもが飛峻の時代から考えたらかなりの骨董品だという事実。
まだ自分は夢の中に居るのだろうかと頬をつねってみても返ってくるのは痛みばかり。

「ここは……何処だ?」

心の底から放った飛峻の言葉はしかし雑踏にかき消され、誰の耳に届くことも無かった。
235李飛峻 ◆nRqo9c/.Kg :2010/02/19(金) 22:47:56 0
名前:李飛峻(リー・フェイシュン)
職業:武侠
元の世界:平行世界(やや未来)
性別:男
年齢:26
身長:168cm
体重:55kg
性格:お人よしで細かな事は気にせず弱気を助け強気を挫く、であろうとしている。
外見:大雑把に切りそろえた黒髪に黒目。服装は時代がかったパオコート
能力:気孔武術
備考:科学マンセーの時代に逆行し古き時代の武侠に魅せられた青年。
   もともと天稟があったのか武門に入り多くの奥義を習得するに至った。
   武器は修めた功夫と左右の袖の中にある一対の旋棍(トンファー)。
   日本の一部の文化には割りと含蓄がある。
236宗方丈乃助 ◆d2gmSQdEY6 :2010/02/19(金) 23:01:50 0
「広瀬…マジで、死ん…」

呆けた顔で広瀬を見つめる丈乃助の前に、1人の青年が現われる。
日傘を差した、病弱そうな青年だが――――!?
彼は間違いなく、先ほどの連中の仲間に違いなかった。
日傘から隠し刀を抜き出し、それを丈乃助の方へ放って見せた。
鞭のようにしなるその刀が丈乃助の右足を切り裂く―!!

「うぉおお!!痛……つぅ!!刀が…曲がった!?」

血が流れる足を庇いながらそれでも広瀬を守るように立ちはだかる。
それを見つめながら日傘の男「切り裂き漆原」は自らの手にある刀の血を舐めまわした。
『どうしたんだい?僕はまだ切り足りない…もっと見せてくれよ。君の絶望ってやつをさぁ!』

彼の文明は『物質変化』刀を自在に変化させ、扱う事が出来る能力なのだ。
射程は10m程度。明らかにクレイジープラチナムの距離を越えている。
「やべぇぜ…なんとかして近付かねぇと!!」
足を庇いながら前進する。しかし、すぐに刀の脅威がそれを阻んでしまう。

『無駄だって。君は僕には近付けない。見てたよ…さっきの攻撃。
あれは近づかないと無理みたいだからねぇ。さぁ、この距離で切り刻んであげるよぉ〜』

斬撃の連鎖が丈乃助の肩、頬、更には背中を切り裂く。
しかし、それでも尚――前進を止めない。
「やらせるかよ……やらせるか、広瀬は俺のダチだ。
やらせはしねぇってんだよ!!」

拳を繰り出す。しかしそれは……寸前で阻まれた。
刀が丈乃助の拳を阻んだのだ。
『フフ…雑魚は消えてなよ。』
刀を振り下ろし、この首を狙う。

崩れ落ちる丈乃助――そして漆原の視線の先には、死んでいる広瀬の姿が映るはずだった。
しかし、起こった現実は違っていた。

「させるか……丈乃助君は、僕の恩人なんだ。お前みたいな連中に!!」

立ち上がり、丈乃助を庇う広瀬香味(高校1年)の姿だった!!
髪の毛はスー○ーサイヤ人の如き逆立ち。そして黄金の気を放つその姿。
まさしく、グレートな広瀬君である。
「僕にも見える……丈乃助君の能力が。やれる、僕にもやれるはずだ!!
うぉおおおおお!!!」

広瀬君の背後に、無数の小さな精霊が出現する。
それぞれが意思を持っているかのようなその動き。
そして全身に冷気を宿した力が、周囲の物を急速に凍らせていく。
「曲がるのなら…凍らせて動けなくしてやる!!」

彼のスタンド名はウインター・アゲイン。
全てを凍らせる絶対零度の力である。

【漆原(文明遣い)相手に広瀬君スタンド使いに覚醒】
237宗方丈乃助 ◆d2gmSQdEY6 :2010/02/19(金) 23:07:49 0
NPC(丈乃助のダチ)

名前:広瀬香味(ひろせ こうみ)
職業:高校1年生(体育と数学が苦手)
元の世界:現世界
性別:男
年齢:16
身長:155cm
体重:45kg
性格:臆病で優しい性格。基本的に、嫌とは言えない性格だが
覚醒する人が変わったように勇敢かつ大胆な男になる。
外見:茶色の短髪。学生服は真面目な着こなし。
能力:スタンド名「ウインター・アゲイン」
冷気を操る能力。矢の力により発現したばかりの為、強さは未知数。
すぐ傍で空気が凝結した音が聞こえた。
恐らくは、琳樹が発動させた魔法の影響だろう。
本を媒介にしているとはいえ、ある種の魔法の才能はあるかもしれない。

「ほら…彼みたいに」

目の前で驚愕して動かない男たちにシエルは言った。

「簡単ですよ?今のだって」

要は、属性の組み合わせだ。

理論体系化された魔法はそれ単体では限界がある。
その限界を突破させるには?
理論から奇跡を生み出すには?

簡単だ。
足せばいい。1と1を。

「第一錬金魔法…『分解―デコンプ―』、第二『再構成―リコンスト―』…」

クレイモアの先端がぐにゃりと形を変えた。
徐々に変化するそれは次第に銃弾を模っていった。

「それと…」

固まって動かない一人の男にその先端を向ける。
その形状を見た男はシエルがこれから何をしようとしているのか、それを察した。
「ふ…ざけんなァ!」

みすみす死んでなるものか。
その意思から、ふと硬直より解放された男達は激昂しシエルに襲い掛かろうとする。

が、その時点での行動では既に手遅れであった。

「第三火炎魔法…『指向性爆破―ダイレクトバーン―』を」

クレイモアの切っ先で爆発が起こる。
先に起こった音と同じ。銃声。

放たれた鉄塊はエネルギーを拡散させながら男の眉間を頭蓋に掛けて貫く。

「ほら、ね?」

二人目の風穴を目の当たりにした男達は恐怖に慄いた。

何故、こんなに多様種の『文明』を操ることが出来る?
『文明』は相性が合致していなければ使用することができない。
そしてその合致する相性は多くても二、三種類が限度だ。
目の前の少女の口ぶりからすれば、まだ使っていない『文明』がある。

これは、男達にとって予想外すぎた。

「……どうしました?」

沈黙して動かない男達にシエルが声を掛ける。

「戦場にあるのは、殺すか殺されるかだけ、ですよ?」
もう一度誰かに風穴を開けようと切っ先を正面に向ける。
しかし、魔法を掛ける前に突然現れた一人の男にそれが阻まれてしまった。

「随分とまァ…ド派手にやったね」

その他の男達からすると幾分か正常な人間に見える。
その男…と言うよりか少年に近い…は唖然とするシエルの表情を見て無邪気な笑顔を作った。

「君、見たところ『異常適合者―オーバードライヴ―』みたいだけど?」

シエルには男が何を言っているのかが分からない。
理解したのは、この集団が言っている『文明』と言うものが魔法と違うものだということ。

「……何の事でしょうか?」

「ん?しらばっくれちゃってェ。君は僕と同じ、『文明』に適合しすぎた人間でしょ?」

男の手がクレイモアに伸びる。
その指には十数個もの指輪が着けられていた。

「さっきのもさ」

クレイモアを握ったまま男は何かを念じた。
刹那、銃声。
三度目の銃声は先の二度とは違い、明らかに大口径の銃口から放たれたそれだった。
鉄は一人の男の頭蓋を丸ごと全て粉砕する。周囲に赤色の肉片が散った。

「こうやって、ね?」

男の笑顔は、無邪気で。
「“バレットファイア”……だっけ?」

それでいて冷淡だった。

「……何者だ」

その表情にシエルは底知れぬ狂気を見出す。
この男は、違う。
方法は違えど、魔法使いとして有り余る力を所有している。

「怖いなァ……。女の子が怖い顔なんて、感心しないゾ?」

男の手に力が篭るのを感じる。
分厚い鋼鉄の剣から亀裂の走る音がした。

「!?……ふざけるな!!」

危険を感じたシエルは第二火炎魔法『爆破―ボム―』を使い、男を引き離す。

「ふふふ……かわいいね」

確実に爆発に巻き込んだはずだった。
だがその男は確かにシエルの眼前に立っている。

「僕は鸛(コウノトリ)。文明の運び屋さ」
242名無しになりきれ:2010/02/19(金) 23:23:35 0
もっと行間詰めてくり
・NPC

名前:鸛 (コウノトリ)
職業:文明専門の運び屋
性別:男
特徴:掴み所がない。常にふわふわと、そして狂気を湛えている。
能力:『異常適合者―オーバードライヴ―』:多数の文明に適合しており、
   現存するほぼ全ての文明を劣化させずに持ち運ぶ事が出来る。
   それを利用して文明運搬の裏仕事を生業にしている。
   現在依頼を受けてシエルや他PLの文明(勘違い)を狙う。
   名前の由来は『文明を生まれたままの姿で運ぶ事』から。
外見:耳付きフードを被り、カラフルパーカとカラフルパンツを着ている。よく言えば個性的。悪く言えば電波。
趣味:クレーンゲーム、お菓子作り
244宗方丈乃助 ◆d2gmSQdEY6 :2010/02/19(金) 23:24:03 0
『…んだぁ…てめぇ…』

漆原は凍りつき使い物にならなくなった刀を振り回しながら広瀬君に叫ぶ。
しかし刀が曲がる事はなく、勿論丈乃助や広瀬君に届く事も無い。
『聞いてねぇよ。なんで、死んだ奴が急に文明に目覚めるんだ!?
そんなケース、聞いてないよ!!』

広瀬君は漆原の言葉に介する様子も見せず、精霊達に指示し包囲させていく。
冷気が漆原の周囲を取り巻き、そして凍らせていく。
『あ、あひぃ……さ…さぶぶぶぶぶぶ!!!!さぶ…いっ』

巨大な冷凍庫に保管された漆原を見つめながら広瀬君は元の人の良さそうな
青年へと戻っていた。
「死んだりはしないです。でも、しばらくは動けないでしょう……悪さはダメですよ。」

丈乃助は広瀬の姿に、ただ親指を立てる。
それが健闘を称える印であることは間違いなかった。
「グレートだぜ、広瀬。けどよぉ…お前、目ぇ覚ますのがおせぇーつぅんだよ!」
涙を流し喜ぶ姿に、広瀬君は少しだけ丈乃助の中の優しさを見た気がした。

その2人を遮るように、何処からともなく「声」が聞こえ始めた。

>「こんにちは」

>「皆さんはなぜ自分がこの世界に”招かれた”かご存知ですか?」

>「実は皆さんは、ある人に呼ばれてこの世界に来たのです」


「んだと…!?マジかよ、そいつは!!」
思わず声を上げる丈乃助の姿に広瀬君も顔を上げる。
「まさか…丈乃助君は、違う世界から来たって事?」

>「戦闘能力のある人同士は戦わなければいけません、なぜってそれが僕たちを呼んだその人の意志ですから」

>「戦って、最後に勝ち残った一人には、僕たちをこの世界に呼んだ人に会う権利が与えられます」


「世界に戻れる…か。俺は本当に違う世界の人間って事か?
この声が聞こえるってことはよ。」

呆然と佇む丈乃助。しかし、次の言葉への返答は決まっていた。


>「そして”その人”に会えば、何か”報酬”が与えられます。もちろん、その”報酬”を『元の世界に戻ること』にすることも可能です」


「悪りぃけどよ…俺は戦いには乗らないぜ。俺は”自分で自分がつええと思ってる奴や偉いと
思ってる奴のいいなりにはなられねぇー”そう決めてんだ。萌芽…だっけ。
覚えておくぜ、てめぇの名前。」

そして再び、カフェの災厄の権化へと向き直る。
タチバナの姿を確認し声を上げた。
「おい、そこのかっこいいおっさん!敵のリーダーがまだいる…
手を貸すぜ!!」

【カフェの戦闘を終結させるべく共闘を申請】
>>244
派手に被った…
ごめんなさい…本当にごめんなさい
246佐伯 ◆b413PDNTVY :2010/02/20(土) 01:27:51 0
状況が目まぐるしく変わる大混戦の中、零は状況を分析していた。
突如として現れた謎の武装集団。気がつけば戦闘が開始されておりおまけに状況は変わらず囲まれている。
相手の数も云十人規模であり、はっきりいって万事休すだろう。だが、まだ死んでいない。ならば逆転も可能のはずだ。
その時、危険な気配と言うか、要は殺意が周りに満たされるのを感じた。

「ッ!!」

伏せて。と言う声は銃撃音にかき消される。流れ弾に当たるのを避けるため身をかがめたが
どうやらゼロワンが守ってくれたらしい……

「あ、ありがと……う」

返事はない。どうやら彼女は何かしらの情報戦に移った事を認識した零は周囲を囲む武装した男たちを確認して回る。
基本、武装には鈍器に近いものを所持している物が多い。
だが問題は先ほど言っていた文明なるものだ。
先の攻撃で敵の一人はコンクリートの壁を液体状に変質させた……
どうやら文明なるものの恩赦の様だが……あの文明なるもの、
どういった構造をしているかは分らないがあの効果を見る限り、攻撃を受ければ致命傷を受けるのは間違いない。
彼らはそんな武器で武装した一団だ。この数、あんな物がゴロゴロしていると言う事なのか?
そして零もまた、その文明なるものを持っていると認識されている。
この事実を覆さなければ彼らは零を追う事を止めないだろう。

(状況は最悪……この戦いを回避するには交戦もやむなしか……)

そう、この状態では交戦しながら退路を確保するしかない。

247佐伯 ◆b413PDNTVY :2010/02/20(土) 01:28:47 0
「来たわねぇ……」

雄叫びを上げながら襲い来る武装した男たち。
彼らの動きは先程の身なりのよろしくない男たち。チンピラとでも言うべきだろう。
そのチンピラ達に比べていくらか組織的な動きで走り寄ってくるが、それでもド素人の域を超えていない。
後方で暴れまわる化け物じみた闖入者のお陰で戦闘を回避することが出来なかったが
『文明』なるものに関しては零も気にはなっていた。

(とりあえずは、とっちめて、拷問して、文明とやらを頂こうかしら……)

「ディヤッ!!」

一人前に声を上げながら文明とやらの恩赦を受けた即席の電磁警棒を振りぬく文明持ち。
現状ではその能力も、効果も分らない。ならば当たらないように戦闘するしかない。
そう判断した零はこの状況下で最も高い効果を発揮するであろう戦術をはじき出した。

エスクリマ。

軍隊や警察で使われる武装した相手に対するフィリピン発祥の格闘術である。
オリシと言う小型の棒。丁度警棒に近いサイズの物を二本用いて戦うもので、
本来ならば彼らの様な素人相手に使えば即死させてしまうほどの威力を持つものだが、
その型の中には相手の武器を奪うものが非常に多い。
そして今、零の前には武器を持ったド素人がわらわらと犇めいて居るのだ。

(まずは武器を奪う)

248佐伯 ◆b413PDNTVY :2010/02/20(土) 01:30:00 0
エスクリマは一つの型で素手、棒、ナイフ。この全てを応用で使う事が出来る。
その為、武器がなくても戦えるし、武器を奪うこともでき、武器を奪われても戦う事が出来る。

「遅い!!」

先の男より突きだされた警棒を持つ手を受け止めそのまま脇に挟み込む。
それと同時にあいている腕は手刀を脇に叩きこみ、腕を伸びきらせた所で手首を握り締める事で緩ませて、
つかんでいた方の腕で武器を奪う。これをディスアームと呼びエスクリマでは基礎の応用になっている。
そのまま息をつかさず奪った警棒で伸びきった脇を突き感電させ完全に気絶させる。
そして、相手の腕と腕を肱でクロスさせ投げるラバイと言う投げ技で地面に寝かせる。
ちなみにこの投げ技は確実に相手の肘を破壊する為のものである。

零はその動きを忠実に再現することで先ずは左手に電磁警棒を得る。

「テメェ!!」

またそれか……と思いながら零は同じく、今度は鉄パイプ製の電磁警棒を引っさげた文明持ちを迎え撃つ。
今度は振り下ろさる警棒を警棒で受け止めそのまま脇に挟み込み警棒の持ち手引っかけるようにして相手の前腕を巻き込む。
同時に何も持っていない腕で肘を極めて引き倒し肱関節を破壊。しかる後、引き倒す。
その結果、零れ落ちた警棒を拾い上げ骨折の痛みにのたうち回る男の側頭部へと警棒を滑らせ気絶させる。

これで零は一式のオリシを得た。

「来なさい。死にたがりには容赦しないわ」

クルクルと武器を振り回し、複雑な、しかしあくまで演武用の技を見せて回る。
見せつけているのだ。圧倒的な実力差を、知らしめているのだ。数では覆せない程の実力差を、

(出来れば殺したくはない。逃げるのならば追いはしない……)

249佐伯 ◆b413PDNTVY :2010/02/20(土) 01:31:09 0
「いったいどんな文明なんだ……こりゃあますます欲しくなってきたぜ!」

しかし彼らには冷静な状況判断が出来なかった。さらにいきり立つ男たちに叱咤する零。

「愚か者が!!」

その言葉を皮切りに一斉に飛び掛かってくる愚者の群れに零は真っ向から斬りこんでいく。

「セィ!!」

その四方を完全に囲まれた状況まで突き進み、零は必殺の殺人術を披露してみせる。
一人目、正面から迫るナイフを構えた男の突きを相手の手の甲が向いた側へとかわしその後頭部をかち割る。
続いて移動した方向から近い指輪を構えた男の腕を払いのけ顎を棒で跳ね上げる。
その状態で後ろを見やれば鉄パイプを振り下ろす者がいる。これに対して振り返りながら
突きを繰り出し、のど元を潰すと、踏み込んでの中段蹴りで吹き飛ばす。

「ウェーイ!!」

ターンを加えながら縮地で半歩横にスライド。両手のオリシを振り回し敵との距離を稼ぐ。

(アレ?)

その時だ。零は足もとに転がる金属片に気づいた。見るとそれには「ばぁぼんハウス」と書かれたタグが付いている。

(あれはあの時の……どうやらカギね。おそらくどこかの店舗……)

もしかしたら活動拠点に使えるかも知れないと思い、零はそのカギをゼロワンに向けてけり飛ばす。

「さぁて、どんとこい!超常現象!!」
250佐伯 ◆b413PDNTVY :2010/02/20(土) 01:32:18 0
ノリで言った瞬間に凄まじい電撃が走る。冗談が事実になり引き攣った笑いが零からこぼれる。

(けど、これならば離脱のための目くらましに使えるかも知れない)

その時、零の視界の端に白いワンピースが映る……
どうやら彼女も被害者の様だ。サングラスをかけた男の文明で行動を封じられている様子。
数人をさらに打ち据えて、状況を確認するが、やはり最悪。しかし光明は見えた。
これほどまでに執着しているのだ。ならばその心理を逆手にとれば良い。

「ェイ!!!!」

警棒をグラサン男に投げつけ少女への注意をそらすと大声で叫んでみせる。

「こちらの文明は『空間消滅(バニシング)』!!一歩でも動けば半径20mを消滅させる!!」

瞬間、場の空気が凍りつく。ハッタリだが彼らはこちらの文明を貴重な物と思っている。
ならば、出来る限り大きなハッタリをして見せて誤解させればいい話と言うわけだ。

「貴方達は知らないでしょうね!!この文明は強力な代わりに使用可能な程に集めるのは苦労するのよ!!」

後は動揺が感染し始めた部位をついて崩し、離脱を図る。それでこの場は切り抜ける事が出来るはずである。
問題はあの、雷を走らせた青年だ。うまく誘導できればよいのだが……

【零にはまだ萌芽のあやふやは聞こえていない。】
251前園 久和 ◆KLeaErDHmGCM :2010/02/20(土) 02:11:53 Q
化け物でも見るかのような視線を受けながら、物音を頼りにふらふらと歩く。
すると一組の男女と何人かのチンピラを見付けた。

戦闘中、しかも何か変な術みたいな物まで使っている。
ということは、ビンゴだ。
俺は弱そうなおっさんに目を付ける。

>「次は誰、」

この言葉の後にチラリと、見られた気がする。

>「そ、マイペースに逝かなければいけないね」

「なんか危なそうなおっさんだな…」

言動的な意味でね。
まあ、斬ってしまえばいいだけだ。

「俺としても後ろから不意討ちってのは何か嫌だから」

ここは正々堂々名乗らせてもらおう。
一歩、また一歩と戦闘中の男女に近付きながら声をかける。

「お前らが違う世界とやらから招待された人達?」

こちらを見る奴等の目は、どんな色に染まっているのだろう。
恐怖?それとも。

「招待された奴等なのなら」

いや、そうでなくとも

「斬る」

構えた白の刃。
それに映る俺の顔は少し笑っていた。


【前園久和:琳樹、シエルに接触。及び琳樹に戦闘を仕掛ける】
252葉隠 殉也 ◆sccpZcfpDo :2010/02/20(土) 03:18:21 0
全身から放電している最中に突如頭の中に声が入ってくる

>「こんにちは」

当然回りにこんな呑気な事を言う者は存在しない。

>「皆さんはなぜ自分がこの世界に”招かれた”かご存知ですか?」

そうだったのかと今更ながら思う。だが、この声の主が無貌の神の使徒の可能性は
捨て切れなかった。

>「実は皆さんは、ある人に呼ばれてこの世界に来たのです」

ある人とは何者だろうか?といってもなんのために呼んだのかは
今はまだ見えてこない。注意深く聞く

>「この世界に”招かれた”人間は二種類、ずばり戦闘能力のある者とない者です」

と言う事は自分以外にもこの世界に飛ばされてきている人間がいることになる。
もっともこの者が本当の話をしているとまだ信じているわけではない

>「戦闘能力のある人同士は戦わなければいけません、なぜってそれが僕たちを呼んだその人の意志ですから」

そんな事は知った事ではない、力は無闇やたらに使うべきものではない
少なくても自分の力は人を守るべき力なのだ、この言葉に過敏に反応する。

>「戦って、最後に勝ち残った一人には、僕たちをこの世界に呼んだ人に会う権利が与えられます」
>「そして”その人”に会えば、何か”報酬”が与えられます。もちろん、その”報酬”を『元の世界に戻ること』にすることも可能です」

なるほどそういうことか……その裏の意図がなんとなく見えてきた気がした。
自分達がわざわざここに呼び出しておいて呼び出した者達に殺し合いをさせ、自分達は見学している
報酬とやらはよほど自分の世界を嫌っていなければわからないが、決まっている
それは元の世界に帰ることだ。それと引き換えに殺し合いを迫るとは…卑劣極まりない
あの人と呼ばれる者とこの声の主に対して怒りが湧いてくる。

>「戦闘能力の無い方々には、またのちほど別に連絡させていただきます」
だが疑問も湧いてくる戦闘力がない者はどうするのか
今の自分には確かめようもないので、この事は保留する。

>「あ、僕ですか? 自己紹介が遅れました、僕は竹内萌芽。皆さんをこの世界に呼んだ、”あの人”の使者です」

この声の主の名前、声は覚えた。
そしてこの時から目標は決めた萌峨と名乗る者とあの人やらを探し出し、帰る方法を力尽くで聞きだす。
そしてその存在が邪悪ならば問答無用で倒すのみ。
極力同じ別世界の者とは戦わずにだそしてあわよくば仲間になってもらいたいと思っていた。
なければ自分で見つけ出す、例え何年掛かってでもだ。
姿を見せず、手の平で人を操ってるつもな人間に従うつもりは毛頭ない
強いられる戦いなど誰も望まず、それが悲劇を生みより多くの悲しみがあるのを
自分は嫌というほど知っていた。
目標は決めた、後はそれに向かって突き進むのみだった。
253訛祢 琳樹 ◆cirno..4vY :2010/02/20(土) 05:19:16 Q
何か得体の知れないものが私に近付いてきている。
今も声は聞こえないわけだから、少し集中するのをやめた。

「あ…」

すると途端に現実に引き戻される。
私は、殺したのか、人を。
目の前には得体の知れない何か、そして混乱した頭。
こんな状態で何が出来る。

「何も出来る訳がない」

呟き目の前の男を見た。
手には白い刀、そして体には五本の腕。
私は何故かそれを美しく思う。
未完成な物ほど美しいというのは、こういう事だろうか。

そう少し考えた後男に言う。

「君、もう一回言ってくれない?」

そして。
手間を取らせる相手にも。
私に殺された若い男にも。

「ごめんね」

そう呟いた。
254タチバナ ◆Xg2aaHVL9w :2010/02/20(土) 15:09:54 0
>>183
>>196
>>179
>>244
>>208


いつからだろう。求めるものの中に自らの世界が含まれなくなったのは。
誰もが恣意によって好き勝手に現実をねじ曲げ、塗り替え、変えていく世界。
魔法と見分けが付かないまでに発展した科学は、痴呆と見分けの付かない泥濘のごとき現実への怠惰を生み出した。
今ある現実が一瞬後には別のものへと変容する。生き死にすら技術によって掌握できてしまう。
まるで透明なガラス越しに世界を俯瞰しているような感覚。慢性的なそれは、人々をますます現実から遠ざけていく。

「――だから僕は求めたんだ!簡単には曲がらない道筋を!『揺らがない現実』を!歩き応えのある人生を!」

戦場は連転し、戦況は流動する。
ミーティオがそそくさと退散し、珍妙高校生とその連れが生死の境から復帰し、ウェイターが無双しつつ殴られ、シスターに施され。
そしてタチバナは、対峙していた。

「ひしゅうう!乱戦を盾に取って被弾しないように立ち回るとかマジパネー。んじゃこーいうのはどーよ?」
「――!ちょっ、良クン俺らもいるってー!!」

手下の陳言を無視し、良くん(33)が深く息を吸い込んで腹の中で暫し揺すってからこちらへ向かって息を吐き出した。
吐息には不自然なまでに辛子色が着色されている。咄嗟に危険と判断したタチバナは上着を脱いで大きく煽り、吐息を跳ね返すように風を生んだ。
辛子色の霧は、側で逃げ惑っていた手下の顔へと届き、吸い込んだ手下は――血を吐きながら痙攣して倒れ込んだ。

「ふむ――この色、この臭気、そして彼の爛れた皮膚。糜爛性の猛毒ガス、サルファマスタードかな」

タチバナの考察が正鵠を射たのか、良君の口端がついと上がり、辛子色の煙を漏らしながら引き笑いで正解を告げる。

「そっそ。僕ちんの文明は『俺色吐息(オクトパスカル)』。僕チンが吸った空気はあらゆる気体へと変身するのさー」
「先程から言うその『文明』とは一体なんなんだね。よもやおピンクな方面の業界淫語じゃあるまいね?」
「ええー、『物体変質』持ってる君がそれ聞くうー?ぼひゅっ、知らないなら知らないでもいいけどねん、殺してでも奪い取る」

良君が再び息を吸い込む。タチバナは大きく飛び退いて、吐息の範囲から逃れたところで脳裏に響く『声』を聞いた。
255タチバナ ◆Xg2aaHVL9w :2010/02/20(土) 15:18:30 0
>『皆さんはなぜ自分がこの世界に”招かれた”かご存知ですか?実は皆さんは、ある人に呼ばれてこの世界に来たのです』

(――!!?これは、直接脳へと響いてるのかな?『存在』をジャックされた覚えはないから、一方的な念波放送か)

天啓の如く降ってくる声が言うには、この世界へと辿り着いたのは人為的なものらしい。
そしてそれを行った作為者が望むのは、呼ばれた者同士の戦闘、相対、交戦。言わば世界代表の、バトルロイヤル。
報酬は作為者への謁見と、この世界に対する望むままの権利。帰っても、帰らなくてもいいということ。

「は、ははは!なるほど!そういうことか!僕がこの素晴らしき世界に拾い上げられたのも誰かに代理戦争を強いられる為だと!」

笑う。嘲笑う。哄笑う。
タチバナは全てを理解した。理解した上で、断じる。

「――ふざけるなよ」

つまりこの襲撃も、最初から仕組まれていたということだ。『文明』とやらをエサに、強制的に戦場へと引き摺り込むための、駒。

>「おい、そこのかっこいいおっさん!敵のリーダーがまだいる…手を貸すぜ!!」

珍妙高校生が同調したように語気を荒げた。タチバナは大きく頷き、いつもの芝居がかった口調で両腕を広げる。

「良いだろう。世界が僕を求めたのでないのなら、僕はその要求に自らを捩じ込もう。その為に必要なのは今!
 この場を無事に切り抜け、世界を掌握する『連中』の喉元へと牙を届かせること!……だから今、僕は再び剣を抜こう」

――世界に対して、本気で生きる為に。

「珍妙君!君の攻撃力は魅力的だが、今は我慢してそこの有象無象の雑魚共を片付けてくれ!僕は、そこの怪人ガス男を潰す!」

紙を打つような快音が響き、タチバナはガスを払ったスーツを着用した。
アームカバーも健在の、フォーマルな形態。精霊行使調律官タチバナの、戦闘装束。
戦いの火蓋は今初めて、切って落とされた。


【萌芽の放送に反発。丈乃助と協力体制を敷く。雑魚の掃討を依頼】
256三浦啓介 ◆6bnKv/GfSk :2010/02/20(土) 18:59:45 0
様々な物品によって、その部屋は酷く雑多な様相を示していた。
床や机、棚の上に転がる物には統一性がない。
本を初めとして装飾品、日用雑貨、文房具、あらゆる物が転がっていた。

そんな中で、二人の少女が部屋の真ん中辺りに置かれた木製の椅子に腰掛けていた。
二人共、歳は十四歳ほどだろうか。

一人は黒の長髪に、淡い青色のワンピース。
体幹と膝上を辛うじて隠されているだけで、曝け出された白い肢体には、無数の包帯が巻かれていた。
星空を封じた瞳も、小ぶりな鼻も唇も、肌理細やかな柔肌の頬も。
彼女の容姿は可憐の一言であったが、それでさえ、眼帯と言う痛ましい物が付属している。

もう一人の少女は打って変わり、肩の高さで切り揃えられた白髪。
白のシャツに黒いベストとズボン、首元にはネクタイと、硬質な雰囲気を醸し出している。
容姿は先の黒髪の少女と見比べても劣らぬ物だが、やはり何処か鋭利さがあった。

「ねーねー。あの萌芽って子、随分と好き勝手しちゃってるけど、いいの? 六花ちゃん」

包帯塗れの少女が、隣の少女に向けてぼやいた。
直立時なら腰まで届く黒髪が床を擦っている事も気にせずに。
彼女は隣に座る、立夏と呼んだ少女へと椅子ごと向き直る。
その表情には、期待の感情が色濃く表れていた。

「……いいの? って言うけど、駄目って言って欲しいんでしょ?」

対して立夏は首を左右に振りながら、呆れ口調で溜息を吐く。

「たはは……まあね。またお父さんの役に立ちたいし」

「それだけじゃないでしょ。心配されたいってのは別にいいけどさ。
 サイ、そんなんじゃアンタいつか死ぬわよ?」

感慨を含まない平坦とした声で、六花は遠慮無しに言葉を刺す。
サイと呼ばれた少女はしょげ返った様子で、それでも口をもごつかせていた。

「でも……私、お父さんが大好きだもん。それに……」

声の最後は、消沈した意気に塗り潰されて言葉とならなかった。
六花はもう一度、呆れ果てたと言わんばかりに溜息を吐く。

「……と言うかアンタ、アタシが止めた所でどうせ無視するじゃない。
 この警告だってもう何度目か分からないし。勝手にすれば?」

見る見る内に、朝日が差したようにサイの表情が明るくなる。
あまりの調子のよさに、図らずも六花の口から嘆息が漏れた。

と、不意に彼らの背後から物音が響く。
噛み合っていた金属同士が分かたれる音、開錠音だった。
途端に、今度は六花の顔もまた嬉々の色で彩られる。
257三浦啓介 ◆6bnKv/GfSk :2010/02/20(土) 19:00:53 0
足音が家に踏み込み、まっすぐと彼女達の部屋へと向かっていた。
二人は揃って椅子から立ち上がると、背後のドアへと向き直る。

「やあただいま。いい子にしていたかい?」

濃厚な土色のドアを開けて訪れたのは、三浦啓介だった。
昨夜からは想像も付かない柔和な笑顔を、二人の少女へと向けている。

「うん! ちゃんと言われた通り、お父さんの呼んだ人達を見てたよ!」

三浦に駆け寄り、彼を見上げる目を一等輝かせてサイは己の仕事ぶりを主張した。
少女の健気さに三浦は優しく、サイの頭に右手をぽんと乗せる。

「相変わらず、サイはいい子だね。それで、何か変わった事はあったかい?」

「あ、うん。あのね……」

しこうして、彼女は自分が見た光景を彼に告げる。

萌芽が異世界人でない少女にちょっかいを出した事。
更に呼び寄せた異世界人の殆どに接触を取った事。
あまつさえ虚言を撒き散らして、殺し合いを唆した事。

「それで……お父さん、どうする?」

言葉こそ問い掛けの形をしていたが、彼女の瞳は懇願を示していた。
即ち、自分に次なる仕事を下さい、と。

「そうだね。……ちょっとお灸を据えるのも悪くないね」

彼は右手を顎の下に運んで呟いた。
紡がれた声に、サイは顔を明るませる。

「でも、サイはどうにも無茶をしすぎる。君の包帯がそれ以上増えるには忍びないな」

だが続く言葉を受けて、彼女は忽ち笑顔を絶やし、とても分かりやすく落ち込んだ。
しゅんとして下を向く彼女の頭を、三浦はもう一度撫でる。

「……だから、僕も付いていこう。六花には悪いけど、もう一度お留守番を頼めるかい?」

サイの顔に、またも明るく照った。
反対に六花は、胸中に渦巻く無聊を示すように、唇を尖らせて拗ねてみせる。

「いいけど……だったらお父さんは今日、私と一緒に寝る事」

「えー! ズルいズルい! 私も一緒に寝るー!」

六花の提案に今度はサイがむずかった。

「駄目、サイは一人で寝るの。代わりに私は今から、一人で留守番するんだから」

「ズルいー! ズールーいー!」

「こらこら、喧嘩するんじゃないよ」

睨み合う二人の間に手を差し込んで、三浦は彼女達を宥める。
不満げな表情を見せる六花を撫でて、彼は彼女に微笑みかけた。
258三浦啓介 ◆6bnKv/GfSk :2010/02/20(土) 19:02:08 0
「サイも六花も仲良く一緒に寝よう。その代わりに」

殊更に温和な笑みを向けながら、三浦は言葉を紡ぐ。

「今から、六花も一緒に行こう。皆仲良く、でどうだい?」

六花は暫らく頬を膨らませて、三浦の笑顔とにらめっこを続けていた。
だがやがて諦めてように頬をしぼませ、目を瞑る。

「……仕方ないから、それで我慢してあげる」
「ありがとう、六花は優しいね。……それじゃあサイ、お願いするよ」
三浦の言葉に大きく頷いて、サイは足を肩幅に、両手を大仰に広げた。

「うん! 行くよお父さん! ほらもっと近く近く!」
「アンタのそれ、そんなに射程狭くないでしょ。さっさとしなさいよ」
はしゃいでいた所を六花に咎められ、サイは唇を尖らせる。

「ぶー、はいはーい。じゃあ行くよ! ……『瞬間移動」≪テレポート≫!」
瞬間、三人の姿が消失した。
時空を超えて彼らが訪れたのは、昨晩三浦がいた祭壇の跡地。

竹内萌芽のいる所だった。

「やあ、萌芽君。何やら随分と好き勝手な事をしてくれたようじゃないか」
到着するや否や、笑みを模って三浦は彼に話しかける。

「ゲームってのは何の為に存在するか知ってるかい?
 プレイヤーが楽しむ為、それは勿論そうだ。だけどね」

三浦の言が終わらぬ内から、サイは三浦の傍を離れ、萌芽の真横へと飛び込んでいた。
「あやふや」が発動されるよりも早く、彼女の足刀が萌芽の脇を捉える。
自分より一回りも二回りも小さな少女の一撃に、彼は無様にも吹っ飛び地で全身を擦った。

「運営者に迷惑を掛けるようなプレイヤーには、『ペナルティ』が必要だろう?」

腕を震わせながらも手のひらを地に突き上体を起こす萌芽を見下して、三浦は言う。
萌芽の視界には包帯の巻かれた白い脚が映り込む。
見上げてみれば嬉々の表情を浮かべて、サイが軽快にステップを踏んでいた。

「君一人でも『イデア』は見つけられるかもしれない。けれどもしも君が見つけられなかったら?
 その時に君以外の連中が、愉快に楽しく全滅していたら? 一体どうしてくれると言うんだい?」

『ゲーム』を提案した時とは打って変わって、何処までも自分本位に三浦は語る。

「君は随分と便利な能力を持っているみたいだけどね。
 僕の目的の邪魔になるようなら……君をBANするくらい、容易い事なんだよ」




【君は甘んじて罰を受け入れてもいいし、反撃を図ってもいい】
259通行者 ◆T28TnoiUXU :2010/02/20(土) 21:49:46 0

――――声が、聴こえる。

『こんにちは』【>>212

"天からの眼"の感覚とは違う。確かに"声"だった。
スクランブルでコート姿の男と擦れ違った時の様に、
本来は見えない筈の何かを"視て"いる訳では無いらしい。

『皆さんはなぜ自分がこの世界に”招かれた”かご存知ですか?』

招かれた? "招かれた"と言ったのか?

『実は皆さんは、ある人に呼ばれてこの世界に来たのです』

―――ああ。そういうことか。
俺は、この声の主が何者であるかを直感した。

「どうして、今頃になって現れた……」

『この世界に”招かれた”人間は二種類、ずばり戦闘能力のある者とない者です』

「我(オレ)は…僕は…私は――
 ――還りたくて……帰りたくて仕方が無かった!」

『戦闘能力のある人同士は戦わなければいけません、なぜってそれが僕たちを呼んだその人の意志ですから』

「打ち捨てられた教会堂で蹲りながら!
 冬のベンチで息を凍て付かせながら!
 路地裏の壁で血反吐に染まりながら!」

『戦って、最後に勝ち残った一人には、僕たちをこの世界に呼んだ人に会う権利が与えられます』

「ガキだった俺はずっと、全てが黄金色に輝く世界に帰る事だけを願ってた!!
 だって言うのに……だってのに何故、今更になってソレが与えられる!?」

『そして”その人”に会えば、何か”報酬”が与えられます。もちろん、その”報酬”を『元の世界に戻ること』にすることも可能です』

「"報酬"だと…?
 俺から翼を毟り取り、この街へと堕とした罪人が良く言う!」

『戦闘能力の無い方々には、またのちほど別に連絡させていただきます』

「受け取るのは、貴様等の方だ――」

『あ、僕ですか? 自己紹介が遅れました、僕は竹内萌芽。皆さんをこの世界に呼んだ、”あの人”の使者です』

「――俺を見放した主に代わって、この手で"報い"を与えてやる……!!」

俺の激昂に共鳴するかの様に、背中に刻まれた対の"聖痕"が震え出す。
光の帯が稲妻の様に迸り、集束した彩光が双振りの"剣"を形成し始めた。
260ウェイター ◆T28TnoiUXU :2010/02/20(土) 21:50:54 0
『喧嘩は……』【>>179

待ってやがれ、此処に居るクズどもをぶった斬って今直ぐに――

『――やめてくださいっ!』【>>179

「あー……。その、何だ。
 どうでしょう、今の彼女の一言。
 テロリスト代表の"文明ジャンキー"その6さん」

気が付くと俺は、隣でカッターを抜き放ったばかりの略奪者に無茶振りをしていた。
悪徳弁護士といった風体のジャンキーその6が、眼鏡のセルフレームを押し上げる。

「ええ。最悪です。5点ですね。
 我々にしてみれば百も承知でやっている訳ですから、
 面と向かって『くたばれジャンキー野郎』と罵られたのと同じです」

「そうか……俺も概ね同意見って所だ。
 いや、あまりの意外性に衝撃を受けたんでな。
 こっちが空気を読み損ねちまってたのかと不安になってた」

「ところで、マルアーク代表のウェイターさん」

「May I help you? (いかがなさいましたか?)」

「《イージーヒール》保有者と見受けましたが、どちらを選びますかね?
 我々に文明を渡すか、もう一度サッカーボールになるか……答えは?」

俺は一拍置いた後、"BSE"未検出の100%国産営業用スマイルを作ると、
"盾"にモーフィングさせた元・光の剣を、能力(ちから)いっぱい振り下ろした。

「―――Good Luck.(くたばれジャンキー野郎)」

その場に沈み逝くお客様を見下ろしながら、煙草に火を点ける。
『代謝促進』…… か。俺は、背後に居る少女へ肩越しの視線を送った。
"文明"なのか俺と同じ"能力"なのかは判らないが、確かにダメージが消えている。

『まさか…丈乃助君は、違う世界から来たって事?』【>>244

『は、ははは!なるほど!そういうことか!僕がこの素晴らしき世界に拾い上げられたのも誰かに代理戦争を強いられる為だと!』【>>255

どうやら"声"は連中にも聴こえていたらしい。
そう言えば"使者"とやらが『皆さんは』と言っていたか。
間違いない……連中は"彷徨える羊"だ。そして、おそらくは修道服の少女も。

「……おい、其処のなんちゃってシスター!
 お前にも今の"声"が――いや、そうじゃねえか」

二枚の光輝の盾が再び浮き上がり、周囲をゆっくりと公転し始める。
その中心で俺は、謝罪・感謝を表す角度45゚の最敬礼の姿勢をとった。

「お食事をお楽しみの所お騒がせして大変申し訳ありません、お客様。
 緊急時ですので、安全な場所へ避難なさって下さい。それと―――」

感謝の意を込めてウィンクを試みたが、我ながら不器用な仕草だったと思う。
少女からすれば、立ち上る紫煙に目元を顰めただけの様に見えたかもしれない。
仕方が無いので、黒髪ショートの頭を上からぐりぐりと撫でて謝意を表すコトにした。


「―――手当てありがとな。お嬢さん」
261ウェイター ◆T28TnoiUXU :2010/02/20(土) 21:51:56 0



……

『おい、そこのかっこいいおっさん!敵のリーダーがまだいる… 手を貸すぜ!!』【>>244

『珍妙君!君の攻撃力は魅力的だが、今は我慢してそこの有象無象の雑魚共を片付けてくれ!僕は、そこの怪人ガス男を潰す!』【>>255

「―――お前ら、さっきから何を勝手にウチのフロア仕切ってやがる?
 俺も混ぜろ! 素人だけに団体様御一行の接客させとくなんざ、
 カリスマウェイターのプライドが許しちゃくれないんでな」

転がっていたピッチャーを爪先で掬い上げて中空でキャッチ。俺は天を仰いだ。
ミネラルウォーターを額から浴びて、前髪のアイスクリームと血痕を洗い流す。

「怪人退治は得意か? だったら二秒で終わらせちまおうぜ、ヒーロー・ザ・オールバック!
 然る後に顔を貸せ。こっちは、お前らに訊きたいコトが山ほどあるんだ。
 未だドリッパーが生きてたら、俺の奢りで高級泥水を振舞ってやる」

両手をポケットに突っ込んだまま、ボンバーヘッドと背中合わせの格好になった。
目を逸らして俯き、フィルターが湿ったせいでクソ不味くなった煙草を深く吸い込む。

「……雑魚の残りは、ざっと十人ってトコか?
 ゴルフクラブとスタンガンとバールは俺がやる。
 他のは全員そっちに任せたぜ、クレイジーボーイ!」
262ウェイター ◆T28TnoiUXU :2010/02/20(土) 21:53:12 0
【ウェイター状況:
          ・萌芽に八つ当たり
          ・皐月に感謝のセクハラ
          ・ミーティオの離脱は知覚失敗
          ・タチバナに良くん(33)を丸投げ
          ・丈乃助に雑魚多数を押し付けて一服】
263宗方丈乃助 ◆d2gmSQdEY6 :2010/02/20(土) 22:38:57 0
>>255
>「珍妙君!君の攻撃力は魅力的だが、今は我慢してそこの有象無象の雑魚共を片付けてくれ!僕は、そこの怪人ガス男を潰す!」

「オーケイ、オーケー!!任せて下さいっスよぉー!」
迫りくるジャンキーどもが射程距離に入った瞬間、丈乃助の
ボンバーヘッドから湯気が上がる。
同時にクレイジープラチナが大口を開けて叫びながらジャンキーどもをぶち殴っていく!

「ゴラララララララララララ!!!!」

『ウへ』 『あべし!!』 『おげべっ!』

情けない声を上げて次々に宙を舞うジャンキー。
丈乃助はそれを双眼鏡でも見るかのような仕草で見つめる。
「中々いい光景だぜ―。まるで正月に履き替えたパンツみてぇに
気分は最高だ。」

その横を1人のウェイターが掠めて行く。
パッと見、普通の人に見えるが――身のこなしを見るにつけ普通じゃねぇーと感じる。
男の足元に転がるのは1冊の漫画雑誌、表紙には「ダークファンタージー2期 レノ復活!?」
の文字が…思わず表紙に見入ってしまう。
「漫画か…つぅか、今は見たくても見れねぇーつぅの。
ウェイターさん!ナイスパスだぜぇ…グレート!!」

広瀬君はというと、ジャンキーどもに囲まれて逃げまくっていた。
さっきまでの勢いはどーしたの!?
「ひ…ひぃい!なんだか分からないけど、さっきの力が出せないんだよぉ!
助けてぇー丈乃助くぅーん!!」

まだ完成されてない能力の為、制御が出来ていないのか?
丈乃助は広瀬君を追う有象無象どもに向け――テーブルを投げ付けた。
「おーい!こっち見るっすよー!どりゃああああああ!!」
雑魚に直撃し、砕けるテーブルごとクレイジープラチナの拳の連打を見舞う!!
凄まじいラッシュに、やがて雑魚とテーブルが一体化し……!?

『え?』『あひぃい!!』『う、うごけねぇ…』

「てめぇーらはウロチョロしまくるからテーブルにしといてやったっスよ。
カフェ荒らしたんだから、その分”体で返して”貰わなきゃね?」

丈乃助は人間テーブルに腰掛け、美術品のようなポーズを決めた。

【文明ジャンキーどもを”治す力”でテーブルと一体化させる】
264ゼルタ=ベルウッド ◆8hdEtYmE/I :2010/02/21(日) 02:06:27 0
目の前に立ちふさがった金髪黒眼鏡の男。ゼルタはこれまでの男たちと同様に、何か力を使われたりする前に斬り伏せようとした。
だが……。

動け、ない?

短刀を逆手に握り、男に切りかかろうとした姿勢のまま、ゼルタは微動だにすることができない。

>「よう、驚きかい? こいつぁ『見敵封殺』≪ロックオンロック≫つってな。
> このグラサンで捉えた範囲のものを封じる事が出来んのよ。
> つっても効果は単体までだし、あまりデカかったりエネルギー量がスゲエと効かねえんだがよ」

黒眼鏡の男は悠々と自分の『文明』の能力について解説する。
自分の優位を確信しているがゆえの慢心。
当然だろう。こうして動きを封じられた以上、ゼルタは男に対して何もできないのだから。

こんなに近くにいるのに、刃が届かない。

>「さあて……そんじゃ、お仕置きタイムと行きますかあ?」

黒眼鏡の男は両手をパキポキと鳴らす。他の男たちもぞろぞろと集まってくる。
ゼルタがさっき殺した人数の倍以上はいるだろうか。

完全に囲まれた、のかな。これからわたしをどうするつもりだろう。痛めつけて、『文明』を奪って……犯して、殺す?

自分の近い未来を想像し、ゼルタは心の中で首を振った。

それは嫌だなぁ、死なないけど。というかまあ、もう死んでるんだけど。
265ゼルタ=ベルウッド ◆8hdEtYmE/I :2010/02/21(日) 02:09:23 0
そんなどこか冷めた思いを浮かべていると。

「ちぃっ」

突然黒眼鏡の男が左へ跳んだ。直後に警棒のようなものが飛来し、後ろにいた別の男を直撃する。

「うぎゃあっ!」

そして。

>>250
>「こちらの文明は『空間消滅(バニシング)』!!一歩でも動けば半径20mを消滅させる!!」

>「貴方達は知らないでしょうね!!この文明は強力な代わりに使用可能な程に集めるのは苦労するのよ!!」

後方から女性が声を張り上げるのが聞こえた。囲まれていた二人の内一人だろう。
恐ろしい能力を持っているのだと脅され、男たちの間に動揺が走る。
と、黒眼鏡の男がゼルタから目を離した。どうやら向こうにいる女性の動きを止めるつもりのようだ。
確かに、束縛するならより恐ろしい存在を優先するべきだろう。
しかし、結果的にはその判断が命取りとなった。

「じゃあ、わたしは動けるよね?」

 ロックオンロック
『見的封殺』の対象が変更された瞬間、ゼルタは地面を蹴って男に肉薄する。単体にしか効果がないと言ったのは、他ならない彼自身だ。
彼が自分の犯した過ちに気付いたとき、ゼルタはすでに男の顔から黒眼鏡を奪い、装着していた。
男の顔から血の気が引く。

「『文明』頂きっ♪」
266ゼルタ=ベルウッド ◆8hdEtYmE/I :2010/02/21(日) 02:13:21 0
ゼルタはそう言って男の喉を切り裂いた。ワンピースはもう、元々白かったのか紅かったのかよく分からなくなっていた。
そして周囲のチンピラたちが動き出す前に再び走り出す。
途中で何人かを斬り、人と人との間をすりぬけるようにしてゼルタは女性二人の下へと辿り着いた。

「さっきはありがとね」

笑顔でそう告げ、彼女の邪魔にならないように移動する。

「あたしも、コレで手伝うから」

そう言って、さっき自分のものになったばかりの黒眼鏡をくいっとずり上げた。

【『見的封殺』を奪取、零・ゼロワンの二人と合流する】
【竹内萌芽の声はまだ聞こえず?】
「運び屋……だと?」

シエルの中に確信が生まれた。
文明とは、やはり魔法の事ではない。

何らかの実体を持った“所持するだけで奇跡を起こすモノ”のことだと。

「……なるほど…」

シエルはクレイモアを背負った。
即ち、戦闘を放棄すると言う意味。

「?……どうしたのさ?」

すっかり臨戦の形をとるつもりでいたコウノトリは拍子抜けしたようだった。

「私達が戦う意味はありません」

シエルの言葉に、コウノトリ含めその周りの男達も困惑を隠せない。

「私の力は文明などではありません。奪うものもないのに戦うとは…愚かです」

そいつらを睨み付けながら。
又、すぐにでも頭蓋を真っ二つにたたっ切れる体勢をとりながらシエルは言った。

「……文明じゃ、ない…?」

コウノトリは明らかに動揺を隠せないでいる。
――まさか、文明でなければ一体なんだと言うのだ。
確かに目の前の少女はこの町には明らか過ぎるほど異彩だが、まさか、文明もなしに異能を起こせると言うのか。――と。
その答えは聞かずともシエルが言った。

「これは“理論魔法”」

睨み付けたまま空中に手を翳す。
彼女の脳内でイメージされた塵の急速酸化が、心臓、腕、掌を経て現実世界に投影される。

小さな火花だったそれは次第に空中に浮かぶ炎へと成長した。

「ヒトの生命力…魔力を介して世界に干渉する方法です」

直後に炎は消え去った。
相手はどう反応するだろうか。シエルは待った。

「なるほど…ね」

意外とあっさりと、コウノトリは引き下がった。

まるで、シエルの置かれている状況を全て把握しているように。
まるで、最初から起こる事の全てを知っているように。

「解ったよ…君は“違う”みたいだ」

能面のような、顔面に張り付いた冷淡な笑顔でコウノトリは言う。

「そこのクソジャンキー君達も、彼女達は違うみたいだよ?」

「はァ?何言ってんだお前?俺らの仲間殺されて…」

一人の男が理不尽な撤収に反論しかけたときだった。
「“違う”っつってんだろ…?」

コウノトリの、雰囲気が反転する。
比喩、という生易しいものではない。
明らかに“反転”したのだ。
何故そういえるのか、わからない。
だが、解るのだ。理解が出来るのだ。

「……これが、文明…?」

それは人の意識にまで働きかけるというのだろうか。

シエルは誰に言うまでもなく、誰にも聞こえない声で呟いた。

「!…わ、わぁったよ…クソ…」

舌打ちをして男は納得する。
それに続くしかないように他の男にもそれは感染して行く。
シエルを諦めた男達はその場所から散り散りに去る。

それを見届けたコウノトリは反転させた雰囲気をまた反転させた。
その状態のままシエルに顔を向ける。

「ごめんね、勘違いしちゃって」

敵意はすっかり消え去っていた。
それでも、シエルは睨み付ける。

「いえ…」

それを知ってか知らずか、コウノトリはシエルの前で殆ど初めて笑顔を解いた。
「でも力を使うなら気を付けてね?また狙われちゃうよ?」

それでもその顔は能面のようで、不気味で、狂気が蠢いていて。

「……忠告、ありがとうございます」

シエルには、それが堪らなく不快だった。

「君達には、消えてもらっちゃ困るんだよ…」

その不快感の中で、男の言葉が脳内に突っかかる。

君達。消えてもらっては困る。

つまり、コイツは、知っている人間。

「貴様は!!……うぅ!?」

全てを聞きただそうとした、その瞬間。

思考を、掻き乱される感覚。
ぐちゃぐちゃに 頭が 犯されていく。
やめて、たすけて、
叫ぶ事も出来ない。 恐怖。

その異物が、いつしかそこに響く声に摩り替わった。
>「こんにちは」

聞いた 事のない 男 の声。

>「皆さんはなぜ自分がこの世界に”招かれた”かご存知ですか?」
>「実は皆さんは、ある人に呼ばれてこの世界に来たのです」

混濁 した意識は、その言葉で覚醒する。

>「この世界に”招かれた”人間は二種類、ずばり戦闘能力のある者とない者です」
>「戦闘能力のある人同士は戦わなければいけません、なぜってそれが僕たちを呼んだその人の意志ですから」

どういうことだ。

>「戦って、最後に勝ち残った一人には、僕たちをこの世界に呼んだ人に会う権利が与えられます」
>「そして”その人”に会えば、何か”報酬”が与えられます。もちろん、その”報酬”を『元の世界に戻ること』にすることも可能です」

それはつまり、ゲームの駒、としてここに呼ばれたと言うこと。

一瞬、この男に果てしない殺意が芽生えた。
ふつふつと沸く言いようのない怒りが、それに向く。

だが、それは同時に一瞬にして懐疑に変わった。

おかしい。
ここに呼ばれた理由が“殺し合いゲーム”の為なら。
繋がらないのだ。
先に言われた、あの言葉と。
272李飛峻 ◆nRqo9c/.Kg :2010/02/21(日) 02:37:41 0
いつまでも何処とも知れない場所に呆然と突っ立っているわけにもいかない。
幸いなことに文化圏ではあるようだし、判らなければ調べるまでのことだ。
飛峻は気を取り直すと街を行きかう人々に混じり、異邦の地へと一歩を踏み出した。

「今月財布かなりやばくてさ〜」

「あ、ハイ。先方もかなり乗り気でして、上手くいきそうです」

「お!忍者ボーイさんとレインさん!奇遇ですね!」

「敬礼!出た!敬礼出た!得意技!敬礼出た!敬礼!これ!敬礼出たよ〜〜!」

歩きながらすれ違う人達の会話に耳を傾ける。
聞こえてくる言語は『日本語』。
街に乱立する看板も同様、住人のほとんどがアジア系の顔立ちとくればここが日本の一都市と想定しても問題はないだろう。
現在位置は把握した。しかしそうなるとより深まる疑問が一つ。
すなわち何故、自分ははるばる海を越えた極東の街のど真ん中で寝てたのか、ということだ。

(さっぱりわからん……)

ますます途方に暮れ、何となく通りがかった個人商店の軒先に鎮座してた新聞を掴む。
その一面に書かれていた文字を見た瞬間、飛峻は頭を殴られたような衝撃を覚えた。

「なんだと!?」

思わず頓狂な声が出てしまう。
見出しにでかでかと踊る文字、そんなものはどうでも良い。問題はそれ以前だ。
新聞の発行年月日、飛峻が知るそれより実に半世紀近く過去の日付が打たれていた。

(これはアレか。滅びに瀕した世界が助けを求めるべく、別世界の勇者を呼び寄せるっていうアレか)

そのままの姿勢でたっぷり30分は微動だにせず、現実逃避に勤しむ男の姿がそこにはあった。


どこをどう歩いてきたのかさっぱり思い出せないが気づけばすっかり日は落ち、街並みもビル郡から閑静な住宅街に変わっていた。
そこかしこの家から夕食の準備の匂いが漂っており、飛峻の腹の虫も空腹を訴える。

(そういえば何も喰ってないな……)

懐をあされば財布は出てきたが、とは言えこれが使えるとは到底思えない。
せめて畑でも無いものかと辺りを見回すが延々と住居と、舗装された道路が続くばかり。
なんて酷いゲームバランスだろうか。
そんな益体も無い考えばかり浮かんでくる、

それでもなお、一縷の望みに縋りながら歩き続けるとぽつんと地面にうずくまる人影。
正直他人の心配をしてるどころの状況ではなかったが、武侠としての生き様がそれを許さなかった。
ぺたんと座り込んだ人影に近寄り、努めて明るく声をかける。

「?没……じゃなイ、あー……大丈夫カ?」

飛峻は少女の前にしゃがみ込むとたどたどしい日本語を駆使しながら手を差し伸べた。

【捻挫してうずくまっている真雪に手を差し伸べる】
『消えてもらっては、困る』

つまりこの男かコウノトリか、どちらかはブラフということになる。
どちらを信じればいい。

懐疑が、心を支配する。

>「あ、僕ですか? 自己紹介が遅れました、僕は竹内萌芽。皆さんをこの世界に呼んだ、”あの人”の使者です」

使者。

使者?

“あの人”とやらが使者を使役する理由がどこにある?
それならば最初にここへ呼び出した、その直後にルールを言えばよかったのではないか。
そうすれば『文明』を巻き込んで騒ぎを起こすこともなかっただろうに。
もしそれを最初から計算に入れていたとしても、あまりにも無駄な行為だ。

シエルの懐疑は一気にこの男…竹内萌芽へと向けられた。

「……誰が…」

脳内を侵食する異物を追い出してシエルは言う。

死んでも間違いには屈しない。
殺しても、殺されかけても。
騎士には矜持がある。

「誰が、従うものか…!」
何故、本来協同すべき者同士で殺しあわなければならない。
馬鹿げている。

シエルが現実に意識を取り戻した時、コウノトリは既にその場を離れていた。
聞きたいことは山ほどあったというのに。

ふと、琳樹の状況がどうなったのかが気になった。
魔力が切れてしまわなければいいが。

そう思い、シエルは向こうにいるであろう琳樹の方へ振り向いた。
275葉隠 殉也 ◆sccpZcfpDo :2010/02/21(日) 03:23:14 0
廻りを囲い始めていた男達は放った電撃を受けて全員倒れていた。
それに伴って身体は自由になっていた。
だが敵はまだまだいるのだ
しかし、無常にもその時が来てしまった。

「お腹が…空いた」

急に力が抜け始める当然だろう大量の力とカロリーを消費したのだから。
非常に不味い状況になってきた。
腹が減り、力が段々抜けていくその時

>「こちらの文明は『空間消滅(バニシング)』!!一歩でも動けば半径20mを消滅させる!!」
>「貴方達は知らないでしょうね!!この文明は強力な代わりに使用可能な程に集めるのは苦労するのよ!!」
女子二人の内一人が大声を上げ、何か物を投げると男達は動揺していた。
超人じみた視力で良く見ると、
投げた物はただの警棒のようだったのでそのように見えなかった
なんとなくその意図を察することが出来た
逃げる機会を作ってくれたので、その機会に乗る事とする。
まだなんとか走る力はあるので、走る少女の後を追うように駆け抜ける。
極力余計な力は使いたくないので、攻撃はひたすら避ける
あと少しの距離に居た避けられそうになかった一人は蹴り飛ばし、なんとか合流に成功する。

「咄嗟の機転に感謝する!」

改めて礼を述べ、自分にも時間が無い事を悟る。

「力を振り絞ればなんとかなるか……!」

再び、銃拳の構えを取る
276前園 久和 ◆KLeaErDHmGCM :2010/02/21(日) 03:55:54 Q
>「君、もう一回言ってくれない?」
>「ごめんね」

聞いてなかったのか何なのか、もう一度俺に台詞を言わせようとする。
なら簡潔に言ってやろう。

「人間は、斬る」

分かりやすく、

「そういうことだ」

簡潔に。

斬ると言われて目の前のおっさんはどう思ったのだろうか。
この姿を見て目の前のおっさんはどう思ったのだろうか。
他の人間のように恐れを抱いただろうか。

「不思議だな…」

他の世界から来たという、同じ境遇故に、気になる。
今日だけは少し時間をかけて斬ってやろう。
時間をかけて、相手の思考を少しだけ理解してからにしてやろう。
そう思った。

「さあ、おっさん。お前は俺を見て何を思う」
277尾張 ◇Ui8SfUmIUc:2010/02/21(日) 04:04:51 0
(駅、駅ねえ)

ようやく手に入れた手掛かりらしき紙片を片手に、安い作りのベッドに腰を下ろす。軋み
をあげながら回転式のベッドがわずかに回る。部屋に漂う無駄にケバケバしい香料の匂い
に鼻白む。

ラブホテルに寝床を構えるのは珍しい事ではないとはいえ(野郎五人で三日間過ごしたこ
ともある)、流石に仕事以外で泊まるのは初めてだった。

(調書無しでの家宅捜索が国警にバレたら、ほとぼりが冷めるまで逃げ込むのはココだと
相場決まっていたが……)

半分内々の冗談になっていたその状況に、まさか自分が陥ろうとは思わなかった。

(さてと、駅、と言っても色々ある)

改めて立ち寄った本屋で買った市内地図に、赤いボールペンで印を付ける。

(俺が最初にいた交差点に隣接するオカルト駅)

(規模で言うなら最も大きい、VIP駅)

他にもシベリア超特急の通るシベリア駅など様々だ。

(正直、どの駅かわからない)

『えきのまえ』

(最初にある語群が暗号になっているのか?)

全く専門ではないが、いくつかの有名なパターンを思い出しながら頭の中で組み合わせる。
首を傾ける。どうもしっくり来ない。

(暗号じゃないのか?)

(どこの駅に、そもそも何を持っていけば?)

黄昏まで、駅の前まで、つかまえて……

(ダメだなさっぱりわからん)

紙片をベッドの脇に放る。
(しりたければ、は取り敢えず諦めよう。せめて前半の語群の意味だけでも把握したい)

鎧の女、奇抜な男……

(明日は聞き込みだな)

今日はもう寝よう、と電気を消し、椅子に腰掛け、万が一の為に金の入ったボストンバッ
クとM10が入ったままのホルスターをすぐに手の届くテーブルに置く。

目を瞑る前に娘の寝顔を思い浮かべた後、幸福な気持ちが掠れる前にと、早々に浅いまど
ろみに落ち込んだ。


【尾張証明:警戒しつつ就寝】
278 ◆6bnKv/GfSk :2010/02/21(日) 06:31:49 0
君達は辛うじて合流に成功した。
とは言え白の衣服を臙脂に染めようとも、『文明』を奪おうと、自由を取り戻そうと。
君達が窮地にいる事は代わりはない。

放たれた雷を長髪オールバックは壁を新たに構築する事で防いでいる。
元々囲うなどと言う真似をするのは『文明』を持たないからこそなのだ。
『文明』持ちは勿論その性質にもよるが、基本は距離を取って動いていた。
その点では真っ先に『物質融解』≪ソリッドアシッド≫を奪われてしまった彼は哀れである。

また金髪リーゼントも『見敵封殺』≪ロックオンロック≫を奪われたものの、
別の『文明』を有している可能性はある。

一触即発の雰囲気が空気に溶け始める中、
不意に場に似つかわしくない軽快な電子音が周囲に響く。

音源は金髪リーゼントの胸元。
彼は薄っぺらな通信機を取り出すと、通話を始める。
eメールの届き得ないただの通信機は、無差別爆撃の煽りを受けてはいなかったようだ。
279 ◆6bnKv/GfSk :2010/02/21(日) 06:32:47 0
「あーもしもし? ……あーそりゃ、何か皆携帯ぶっ壊れてちまってよお。
 おう、俺の『文明』もおじゃんよ。マジ勘弁、これ直んなかったらマジでこいつら……え、何? 
 こいつらが持ってんの『文明』じゃねえの? マジ?」

余りに度を越えた間抜けっぷりに、金髪リーゼントを除いて誰もが閉口する。

「はー、マジでか。『文明』にしか見えねえんだけどなあ。まあオッケー。
 んじゃ撤収するとするわ。……ハイ! と言う訳でテメーら撤収!」

通話を終えると、金髪リーゼントは周囲の連中を見渡して命令を下す。

「動けなかったり、くたばった奴らはまあ置いてけ。残りたい奴は残ってもいいが、
 そろそろ『公文』が来るから自己責任な」

おざなりに指示を飛ばすと、金髪リーゼントは君達へと視線を戻した。

「と言う訳で、まあこれ以上オメーらとやりあってもこっちは得がねー事が判明しましたとさ。
 なのでこれにて閉幕でーすっと。侘び代わりに、そのアホ共の命と俺のグラサンをくれてやるからそれで勘弁な」

当然、君達の腹が納まる訳はない。
君達は彼に猛然と迫ろうとする。

「っと、怖ぇ怖ぇ。言ったろ? もうオメーらとヤリ合う理由はねーの。
 そもそも『文明』三つも譲ってやる事自体破格だってのに」

言いながら、金髪リーゼントは携帯を持っていない左手を右の目元へ運ぶ。
そしてあかんべえのような格好を取った。
するとどうだろう。
君達の先陣を切った者が不意に立ち止まり、君達はひどく出鼻を挫かれてしまった。

「『見敵封殺』は一個じゃねーのよ。グラサンだけだと思わせといて、
 このコンタクトの方を食らわせる。ってのが俺の必殺パターンだったのによお。
 俺のグラサン、返してくれ……るわきゃねーわなぁ。こんな事なら出し惜しみするんじゃなかったぜ」

嘆きながらも、彼は周囲に檄を飛ばす。

「おい、『瞬間移動』の準備急げ。俺がドライアイになったらビンタ喰らわすぞ」



かくして君達が行動を起こすよりも早く、連中はその場から逃走してしまった。
君達の元に残ったのは血と死体と、幾つかの文明だった。

【不良共撤退。奪った『文明』は三つ。『見敵封殺』『物質融解』
 ラスト一つはゼルダが強奪した物、落し物、等から自由に作っちゃってください
 とは言え所詮小物が持ってる者なので、効果はその程度って事を念頭に入れつつお願いします】
280訛祢 琳樹 ◆cirno..4vY :2010/02/21(日) 10:26:45 Q
「さあ、おっさん。お前は俺を見て何を思う」

目の前の彼はそう言った。
答えるまで戦うつもりは無いらしい、なら答えてあげようか。

「斬る、と言われた事に関しては別に何も思わなかったよ」

「斬られるなら斬られるで、私の人生そこまでって事だからね」

目を閉じて言う、相手の表情は分からない。
私はただ正直に言うだけだ。

「あと君の姿を見て、って事だけどね。美しいって思ったよ、私は」

「いや、別に口説きとかそういうのじゃないよ、男同士だし」

少し笑いながら言うが、相手が怒ってたりしたら私はもう終わりだろうと思う。
あの白い刀で斬られるのだろうと。

「まあ、私は死んでも構わないけれど」

あくまで笑いながら、私はその言葉を発した。
相手の表情は、分からない。
281前園 久和 ◆KLeaErDHmGCM :2010/02/21(日) 18:23:26 Q
おっさんが俺の質問に答えようと口を開く。
俺が無防備な今襲い掛かってもいいだろうに。
馬鹿なのか計算なのか。

>「斬る、と言われた事に関しては別に何も思わなかったよ」
>「斬られるなら斬られるで、私の人生そこまでって事だからね」

おっさんが目を閉じて言う。
こいつは死ぬことが怖くないのか?
それとも根本的に死にたがりなのか。

>「あと君の姿を見て、って事だけどね。美しいって思ったよ、私は」
>「いや、別に口説きとかそういうのじゃないよ、男同士だし」

ポカンと口を開ける。
は?美しい?俺が?
…何なんだ、こいつ。

結論的に言うと死にたがりで変人か。

「意味わかんねぇ、意味わかんねぇよ…」

人間の癖に俺の姿を恐れもせず差別も無し。
それどころか美しいだって?

「目を開けろよ、おっさん」

その言葉が本当かどうか確かめてやるよ。

俺はおっさんが目を開けたのを見て、真横に斬りかかった。
動かなければ信じてやろう。
282訛祢 琳樹 ◆cirno..4vY :2010/02/21(日) 23:42:08 Q
「目を開けろよ、おっさん」

言われるがままに目を開ける。
あとおっさんおっさん言うけど私まだ27なんだけどな。

「…」

目を開けてから少しの間を置いて、彼が私に刀を振り下ろす。
私の人生ここでゲームオーバー。はい、さようなら。
コンテニューなんて出来ません。

「…」

「…あれ?」

痛くないどころか死んでない。
私の脳内はもうゲームオーバー画面に切り替わってたんだけど。
ふと横を見ると腕ギリギリの所に刀があった。

「死んでも構わなかったのに」

刀を見て呟くけれど、やっぱり死ななきゃ死なないで嬉しいものだ。

「で、何で斬らなかったんだい?」

何か算段でもあるのだろうか。
そう思い、私は彼に聞く。

「殺すつもりだったんだろう?」

と。
283月崎真雪 ◇OryKaIyYzc:2010/02/22(月) 21:20:28 0
>>272


「?没……じゃなイ、あー……大丈夫カ?」
真雪が地面にへたり込んで居ると、不器用な日本語が聞こえた。
見上げると、中国人らしき青年が真雪に手を差し伸べている。
「あ…ごめんなさい、ありがとう」
頭を下げて、真雪はその手を借りて立ち上がった。
何でもないように青年が笑う。
「ちょっと、足を挫いちゃって…」
真雪が眉を下げて笑うと、青年が心配そうにこちらを見た。
青年が足首を見ようと屈む…と。

『『クゥウウウ』』

お互いの腹が鳴って、真雪は笑った。
「あははっ! お腹空いてたんだ!」
青年がこちらを見上げれば、今度は真雪が青年に手を伸ばす。
「良いよ! 困ってるところを助けてくれたから、そこのコンビニでおにぎりでも奢ってあげる! 一緒に行こ?」
284タチバナ ◆Xg2aaHVL9w :2010/02/23(火) 00:10:10 0
>>261
>>263

>「怪人退治は得意か? だったら二秒で終わらせちまおうぜ、ヒーロー・ザ・オールバック!然る後に顔を貸せ。
 こっちは、お前らに訊きたいコトが山ほどあるんだ。未だドリッパーが生きてたら、俺の奢りで高級泥水を振舞ってやる」

>「オーケイ、オーケー!!任せて下さいっスよぉー!」

「では諸君……抗いを始めよう。戦いを始めよう。相対を始めよう。――僕らの『終わり』を見据える為に!」

ウェイターが駆け抜け、珍妙が乱舞する。取り巻きのジャンキーズをちぎっては投げちぎっては投げの二人を尻目に、
タチバナは両腕をピシリと張り、絶妙な捻りを加えたポージングで良くん(33)と対峙する。

「なんか僕チンら、蚊帳の外じゃん?構ってくれないと寂しくて抱擁しながら咆哮しちゃうゾ(はぁと」
「ははは、気持ち悪いな滅亡しろ。生憎と僕の胸は女性限定でね、公害系男子はお呼びじゃないよ」

良くんが再び息を吐く。見るからに毒々しい色合いの霧はタチバナを覆わんと迫る。

「――アクセルアクセス!」
『ういー』

黒霧を材料にアクセルアクセスが顕現する。幼女型に型どられた煙は、圧縮した気体の拳を良くんへと振りかざす。
対する良くんは、懐に手を入れ金属製のオイルライターを取り出し虚空に向けて着火した。
そこへアクセルアクセスの拳が飛来する。明滅。閃光。轟音。火花が一瞬にして大気を走り、アクセルアクセスが爆発する。

「!!――引火性のガスか!」

咄嗟に頭を守るが、爆風の煽りを受けて後退する。砂塵と埃が充満する中、煙幕を突っ切って良くんの腕が伸びてきた。
タチバナは反応できない。もとより彼の身体能力は常人並みであり、戦闘慣れした良くんの奥襟掴みを捌き切れない。

「ふひひ。つーかまえたっ!」

良くんは巨体である。その剛腕は成人男性を軽々と持ち上げるに足るが、ジャンキーの風体でここまで速く動けることは計算外であった。
ギリギリと襟を締め上げられながら、ゆっくりとタチバナは牽引されていく。苦しさに駈られどうにか振りほどこうとするが、
良くんの動作に淀みはなく呼吸による挙動の乱れも見られない。どころか、良くんは先程から息をしていなかった。

(吸い込んだ空気を少しづつ『酸素』に変えているのか……!)

純粋な酸素は猛毒だが、吸気に含まれる酸素の濃度を少しだけ上げてやると、人間の身体は驚くべきパフォーマンスを発揮する。
自然治癒の促進や身体能力の底上げ、スタミナの長期持続など薬局の店頭に酸素缶や酸素入り飲料が並ぶことがその最たる証左となっている。
肺の内部の酸素濃度を調整できるのならば、呼吸をすることなく長時間の活動も可能となることだろう。

「ほら、さっさと『文明』出してよお。メンドイんだよねえ、文明とそうでないものの選り分けとかさあ。今ならひと思いに殺ったげるからさあ!」

返事をすることも出来ずもがくタチバナへ嗜虐の笑みを広げる良くん。露出した歯には著しく溶けたものとそうでないものの差が目立つ。
タチバナの意識はいよいよ明滅し始め、尋問の声が遠く聞こえ始める。血の通わない感触は、彼が忘れていたものを脳髄へと叩き込んだ。

(ああ、そうか――)

すなわち、臨死の恍惚。地獄のように熱く、悪魔のように黒く、接吻のように甘い。黄泉への誘い。

(現実は、苦しいんだった――!)

酸素不足で痙攣し始めた指先にどうにか力を込め、ゆっくりと前へと掲げる。人差し指を張り、歪む視界の中に良くんをはっきりと捉え、
泡を吹きながら紫色になり始めた唇から、蚊の鳴くような声を絞り出した。

「――――アクセルアクセス」

そして。
何も起こらなかった。
285 ◆Xg2aaHVL9w :2010/02/23(火) 01:13:23 0
「ざーんねーんでーしたっ。僕チンの『俺色吐息』に死角なんか存在しないのサー」

『精霊』を呼んだきり、うんともすんとも言わなくなったタチバナを玩具のように放る。
彼はあっけないほどに脱力したまま飛んでいき、爆風に流されて固めてあった椅子の山へと激突した。
良くんはペロりと唇を舐め、カフェの椅子の中に埋没したタチバナへと摺り足で歩み寄る。

「にしても、《アクセルアクセス》なんて聞いた事ない文明だねえ。そこのマリモ頭や暴力ウェイターの文明も所見だーい。
 こりゃー相当なレアモノかねえ、ふひょひょ、『進研』にもやっと風が回ってきたかもじゃんねー。『公文』も目じゃないぜよう」

「……いやはや、まったく理解の及ばない用語の数々、異邦人の至りといったところだね。
 『文明』?『進研』?『公文』?とりあえずエロい関連の話じゃないことは確かといったところか」

お、と良くんが黄ばんだ眼球だけをぐるりと動かして声のした方を捉える。椅子の瓦礫の中で、タチバナはふんぞり返っていた。
足を組み、両腕を両端の瓦礫の後ろに回すという、さながら高級ソファにでも座っているかのようなひとときを演出。

「あらら、息吹替えしちゃったかー。つらいよー?これからさっきよりもっと痛くて苦しくするよ?糞尿垂れ流しじゃぜ?」
「どうでもいいけど君は君でキャラが安定しないね。口調ははっきり一つにしたまえよ。絡みづらいだろう」
「いーのいーのオトコは背中で語るから。騙るとも言う。で、文明差し出すj『タチバナだいじょーぶ?』――!?」

淀みなく喋っていた良くんが口を噤んだ。それを代理するかのように彼の口から飛び出してきたのは、舌っ足らずな少女の合成音声。

「ああ、正味問題ないよアクセルアクセス。たった今そこのドスジャンキーにcv.アクセルアクセスを提供してみようと試みてる最中さ」
「な、何をし『そっかー、こっちはだいたいおっけーだよー』た!?」

良くんの質問は遮られ、喉から声帯を震わせることなく声が出ていることに気づく。
タチバナは立ち上がり、スーツの汚れを払いながら椅子の山の頂上へと君臨し、びしりと指先を狼狽する良くんへと向けた。

「僕のアクセルアクセスには顕現時の材料にできないものが二つあってね。一つは『生物及びその生体部品』、そして『他の精霊の顕現体』。
 時間と材料さえあればどこまでも巨大に顕現でき、逆に小さく顕現する分には限界がない。多分ナノサイズまでいけるんじゃないかな。
 ――ところで君の歯だけど、それだけ劇薬な気体に触れているわりにはやけに揃いがいいね。おそらくは耐食性の義歯だろう?」

まさか、と良くんが自らの口腔内に手を突っ込み、不自然に乾いた口の中で並びの良い歯の表面を順番に撫でていく。

「――ッ!!」

確かに一本、差し替えたはずの場所に、ない。『俺色吐息』の猛毒ガスで腐食してしまった歯の代わりにオーダーメイドした義歯が、無い。
そして理解する。先程タチバナが紡いだ呼び声を。あのとき何も起こらなかったのではない。『何も起こさなかった』のだ。

286タチバナ ◆Xg2aaHVL9w :2010/02/23(火) 01:34:17 0
「君の義歯を一本、アクセルアクセスに変えた。生の歯は無理だからね、見極めるのにえらく苦労したよ。
 ――で、見たところ口の中には無いようだね、その『文明』とやらは。呼吸に関係あるのだから口と踏んでいたが、どうだいアクセルアクセス」

『げんざいきかんしをちょうさちゅうー。おーるくりあー。はいにはいりまーす。おーっと、なんだーこのめかめかしいぶったいはー』

良くんは既に言葉を捨てていた。何も言わず、ただタチバナを黙らせるために駆け出していた。椅子の山の端に手をかけ、這いずるように駆け上る。

「なるほど、君の『文明』は肺腑――内臓に内蔵しているらしいね。あーあー、そんな必死になって走ったらますます酸素が要るだろう」

その通りだった。良くんは肺の内部にアクセルアクセスを宿しながらも、高速挙動の為に『文明』をフル稼働で肺臓内に酸素を濫造していた。
鬼神のごとき形相と速力で椅子山を登りきり、頂上で不安定な体勢をとるタチバナへ飛びかからんと跳躍する。

「アクセルアクセス、楽しい実験の時間だ。酸素濃度の濃い空間でおもむろに着火してみよう。どうなるかな?」

肉膜に囲まれた実験室で、世界一小さな象牙製の助手は両腕にスタンガンを、両足にアフターバーナーを用意する。

『やってみよー』

着火した。
ぼひゅっ、とくぐもった爆発音。良くんの身体が空中で一時停止する。力を失ったように墜落する彼の口端からはもくもくと煙が上がり、焦げる匂い。

「ふむ、肺の中に存在できる程度の量と濃度じゃ汚い花火とまではいかないか。精神的ブラクラは回避できたようでなにより」

『すぷらった?かたすとろふ?』

沈黙し、ときおり痙攣するだけとなった良くんの上で、タチバナはここぞとばかりにとっておきの決めポーズ。
繊維を張る快音が響き、キメ顔の彼は天に向かって勝鬨を挙げた。勝利の美酒を共有できないほど、自分は狭量ではないとタチバナは自己評価している。

「穢れがあるなら僕が禊ごう。色褪せたなら錦を飾ろう。僕は僕が見初めた世界を、見初めたままに充実させよう。
 だから、今はただ見ていてくれ。世界、           ――これが僕だ」


【良くん撃破。『俺色吐息』を破壊。倒したジャンキーズの『文明』を鹵獲】
287名無しになりきれ:2010/02/23(火) 07:19:21 0
パァん・・・
288名無しになりきれ:2010/02/23(火) 11:57:43 0
緊急保守
289 ◆6bnKv/GfSk :2010/02/23(火) 13:19:37 0
チンピラ共と丁度入れ替わりになる形で、君達のいる路地を新たな集団が取り囲う。
物々しい武装に身を包む彼らの中から一人。
小柄な、装備によって容姿等は分からないが、恐らくは女性であろう隊員が君達の前へと踏み出した。
軽機関銃を左手に携え、厳格な所作で敬礼をする。

「警視庁公安部文明課の『NOVA』です。レベル3の文明犯罪があったと通報を受けて参りました」

透き通った高音が紡がれる。
やはり隊員は女性であったようだ。

そして彼女が口にした公安部文明課、即ち『公文』とは。
文明に関する犯罪を担当する公的機関であり。
また『NOVA』とは『文明を所有しない戦闘集団』
(Not proprietor of O2《Ooparts and Overtechnology》but Valiant Arm)
の略称であるのだが、君達がそれを知る由は無い。
勿論ネットワークを介して情報を収集するならば、話は変わってくるが。

「……とは言え、どうやら逃げられた後のようですね。『進研』に先を越されなかったのが救いですか」

『進研』、正式名称は『進捗技術提供支援団体』。
『文明』を企業等へ貸し出す民間の団体であるが――未認可の『文明』を所持しているとの噂がある。
大企業にも『文明』を貸している為、『公文』も深みにまでは下手な手出しの出来ない団体なのだ。

これもやはり、現在の君達が知る所ではない。

「申し訳ありません。商店街でも同レベルの文明犯罪がありまして、到着が遅れてしまいました」

重ねて言うならば、君達の武装は『文明』とは違う。
彼ら『公文』は『文明』の存在や使用をある程度察知する為の技術を有しているが、君達の武装までは察知が出来ない。
それもまた、彼らが後れを取った理由の一つだろう。

「……さて。早速で申し訳ないのですが、事情聴取の為、同行願えますか?」

そう告げる彼女の口調は、先の敬礼と同じく硬い。
辺りには無数の銃痕、血痕、重傷人、死体。
不穏を彩る要素がパレットに並ぶ絵具よろしく転がっているのだ。当然の事だろう。

「その物品は、奪い取った『文明』ですね? それもこちらへ、渡して頂けますか」

ようやく、君達は警戒心の茨が自分達を囲っている事に気づいた。
幸か不幸か、君達の背後に位置する出口には『公文』の部隊は回っていない。

君達は彼らの要求に従ってもいいし、逃走を図ってもいい。
際して離れ離れになる事も、またあり得るだろう。
290宗方丈乃助 ◆d2gmSQdEY6 :2010/02/23(火) 14:02:54 0
>>286
>「穢れがあるなら僕が禊ごう。色褪せたなら錦を飾ろう。僕は僕が見初めた世界を、見初めたままに充実させよう。
>だから、今はただ見ていてくれ。世界、           ――これが僕だ」

「グレート……!!すげぇっスね、マジに。」
タチバナの実力を目の当たりにし、マジリスペクトの眼差しを送る丈乃助。
その横では広瀬君(16)が携帯で119番をしていた。
「あの…カフェで、あ、商店街のカフェです。はい、炉夢理商店街の
カフェです。怪我人がたくさんいるんで、早く来てください!」
丈乃助はけが人の近くへ歩み寄ると、クレイジープラチナムに手を翳させていく。
怪我人の傷口が修復されていく。まさに救急車も医者もいらない。
さらには魔法を唱える暇もない。なんというグレートな能力であろうか。
「……1人1人やるしかねぇから、少しばかり時間かかるぜぇ。
よし、この女の子はおk。次はこっちの母ちゃんだな。
安心しな、母ちゃんは無事だ。まだ息があるぜ。」
起き上がった少女に笑いかけながら怪我を治していく。

広瀬君はその様子を見ながら。不思議なことに気付いた。
足や手を負傷している丈乃助自身の怪我の事だ。
「あの……丈乃助君は、自分の怪我は……治さないの?」
丈乃助は手の傷を見せながら苦笑いしてみせた。
「俺の能力は、自分の怪我だけは治せねーんだ。
まぁ、世の中……都合良くはならないっつー事だな。」

################################

カフェでの闘争も終わり、警察官や消防士達が現場検証に
やって来ている。
丈乃助は面倒臭そうに聴取に応じた後、帰ってきた。
「丈乃助君、これからどうするの?あの声が本当なら
帰る場所が無いって事に……」

「あぁ、そうだな。悪いけど、泊めてくんね?
俺、金はないけどよ……手伝いならするぜ。」

広瀬君は満面の笑みでそれに応えた。
「うん、いいよ。じゃ、今日の風呂掃除と
犬の散歩と、明日のゴミ出し頼むね!」

【カフェに消防や警察到着、時間軸は夜】

291名無しになりきれ:2010/02/23(火) 15:35:12 0
>「……さて。早速で申し訳ないのですが、事情聴取の為、同行願えますか?」

>「その物品は、奪い取った『文明』ですね? それもこちらへ、渡して頂けますか」

その言葉を聞いた瞬間、ゼルタは地面を蹴り後ろへと跳んだ。
後ろ向きのままさらに三度跳び、そこでようやく『公文』の連中に背を向けて走り出した。
人斬りの現行犯、所持品はほぼ盗品。役人についていくなど、どうぞ捕まえてくださいと言っているようなものである。

「そこの少女、止まりなさい!」

背後から制止を呼び掛ける声が聞こえるが、ゼルタは聞く耳を持たない。
全速力で裏路地を駆け抜け、そのまま表へ……。

と、前方に『公文』の別働隊とみられる部隊が現れ、行く手を遮るようにして立ち塞がった。

「止まれ! 止まらなければ撃つぞ!」

先頭に立っていた隊長格の男が軽機関銃を構える。
その言葉はただの脅しではなく、警告に従わなければ男は躊躇いなく引き金を引くつもりだった。
例え目の前にいるのが自分より遥かに年下の少女であっても。

ゼルタは銃口を向けられてもひるまなかった。

「止まるのはそっちだよ」

そう嘯き、漆黒のレンズ越しに自分に銃を向けている男を睨む。
警告を無視して走り続けても男は発砲しなかった。いや、できなかった。
 ロックオンロック
『見的必殺』によって動きを封じられ、引き金が引けないのだ。
他の隊員がその異常に気付いた時、ゼルタは既に部隊の目の前に迫っていた。

「ばいばい」

ゼルタは疾走の勢いをそのままに、動きを止めた男を踏み台にして『公文』の一団の頭上を飛び越えた。

「脱出成功、かなぁ?」

今はとにかく逃げ切らないと。

表通りに無事着地後、ゼルタは方角も確認せずに再び走り出した。

【ゼルタ、『物質融解』及び『見的必殺』を持って逃亡】
【残り一つの『文明』の扱いはお任せします】
292尾張証明 ◇Ui8SfUmIUc :2010/02/23(火) 22:55:15 0
こんこん、こんこん

まどろみの外で規則正しい音がする。それが自分の意図した音でないと気がついた瞬間、一気に意識は引き上げ
られた。
閉じていた目を開け、据え置きの時計に視線を向ける。きっかり午前三時、就寝してから六時間。

(…………)

半ば無意識のまま、サイドテーブルに置いておいたホルスターからM10を取り出す。椅子から立ち上がって、ど
こか寝違えた箇所が無いかを確認した後ゆっくりとドアに近付き、覗き穴を覗く。

(なんのつもりだ)

眉を潜め、チェーンを付けたままドアを開けると、そこには覗き穴に向かって手をヒラヒラさせている白衣を着
た女がいた。

「やあ、夜分遅くにすみませんね」

とびきりの笑顔に銃口を向ける。やれやれ、といった感じに女はこちらに背中を見せた。
後ろに回された腕、手首には銀色の手錠。

「鍵は胸ポケットに入ってます。こうでもしないと信用してくれないだろうって鸛くんが」

くるりとこちらに向き直った女はふふん、と得意気に笑い、口を開いた。

「お詫びと訂正ですよ犬狼さん、頭を下げに来たのです」

「部屋に入れてはもらえませんか?」
293尾張証明 ◇Ui8SfUmIUc :2010/02/23(火) 22:56:00 0
「つまりあなたを雇いたい、と言ってるんです」

見た目だけ派手な照明の下、俺が寝ていた椅子に座った女は言った。
俺は左手に持った手錠の鍵の金属的な冷たさを握りしめた。

『文明とやらを 集めるために?』

「文明はついでです。本命はイデア」

部屋にあったノートを使って会話する。

『雇うと言うのなら 報酬はなんだ』

「情報ですよ。知りたいこと、知らなければいけないこと、沢山あるでしょう?」

少し考えてから、ノートに走り書きをする。

『前金は?』

「あなたを呼び寄せた人物の名前と、私の文明の性能」

『その情報が 正しいという保証は?』

くすり、と女は笑った。馬鹿にしたような、軽蔑したような、しかし間違いなく卑下と自己憐憫を含んだ笑いだ
った。

「保証?人権と同じくらい現実的に意味のない言葉ですね」
294尾張証明 ◇Ui8SfUmIUc :2010/02/23(火) 22:56:50 0
女は一瞬目を瞑った後、それに、と付け加えた。

「保証って物は、すでに基盤を持ってる人が使う言葉ですよ。あなたには、今はそれすらない。と、言うより私
が今からそれに成ろうと言ってあげているんです」

いちいち試さないでください。と女は続けた。

「喫茶店で事件が起きたときに、あなたと私は同じ判断をした。文明の事を抜きにすれば、あなたは私より格上
です」

『だから仲間に引き入れようと?』

「三浦に変な使われ方をするよりはマシだと判断しただけです」

鎖が擦れる音、女はハッキリこちらに向き直った。

「三浦啓介、あなたをここに呼び寄せた人物です」

「こちら側の誠意は見せました。あなたの立場の低さを鑑みれば破格の誠意のはず」

女は……“兔”、とやらは顎で俺の左手を指した。

「手錠を外せば、契約成立です」

【尾張証明:“兔”に雇われる】
295佐伯 ◆b413PDNTVY :2010/02/23(火) 23:47:35 0
「よし。後は……」

全員が集まった所で零は次の行動を思案する。
囲まれているのは変わってない。しかし、彼らは零の持つ文明を信じたようだ。
現に、喉を斬り裂かれ押さえている男は必死になりながら傷を文明とやらで治しているが、
その眼は零をとらえたままであり。警戒しているのは明らかだった.
それだけじゃあない。問題なのは囲んでいる者たちだ。

「マジかよ……」
「に……逃げようぜ……」
「馬鹿ッ…んな事したらどうなると思ってんだよ……」

(こうまでブラフが効くと申し訳ない気持ちまで湧いてくるわね)

そんな時、先の喉元を切り裂かれた男が無線機を取り出す。

(増援!?……それなら、来る前に逃げなくては……)

「あーもしもし? ……あーそりゃ、何か皆携帯ぶっ壊れてちまってよお。
 おう、俺の『文明』もおじゃんよ。マジ勘弁、これ直んなかったらマジでこいつら……
 え、何?こいつらが持ってんの『文明』じゃねえの? マジ?」

どうやら増援ではないらしいと確信した零だが問題はそこではない。
文明ではない。この単語はつまり、零たちに対する敵対理由がなくなった事を表すもの。
これで零の放ったブラフは意味を失った。しかし彼らとの戦闘はこれで回避することが出来そうだ。

「はー、マジでか。『文明』にしか見えねえんだけどなあ。まあオッケー。
 んじゃ撤収するとするわ。……ハイ! と言う訳でテメーら撤収!」

そして投げやりに放たれる撤退命令。どうやら危機は去ったらしい。
零は安堵しながらもゼロワンの足もとに転がるばぁぼんハウスのカギを拾い上げる。
その間に、何かを付け足しながら話していたようだが零は聞かなかった。
目的その物が無かったのだ、これでもまだ戦うなら本当に馬鹿の集団と言う事になる。
296佐伯 ◆b413PDNTVY :2010/02/23(火) 23:48:58 0
(鍵の種類は一般的な店舗用。型式は……分らないわね。
 でも、住宅用ではないし。あのチンピラどもが寝床にでも使っていたのかもしれない)

それならば、すでに潰れた店舗の可能性が高い。恐らくは汚いだろうが掃除すればいい話だ。
そんな事を零が思案していた時だ。その声は直接彼女の頭に響きわたった。

「こんにちは。皆さんはなぜ自分がこの世界に”招かれた”かご存知ですか?」

(この、声は?……!?)

「実は皆さんは、ある人に呼ばれてこの世界に来たのです」

その悪意の塊のような預言者は語る。悪夢のような事を。ただ淡々と。ルールを述べるように。

「この世界に”招かれた”人間は二種類、ずばり戦闘能力のある者とない者です
 戦闘能力のある人同士は戦わなければいけません、なぜってそれが僕たちを呼んだその人の意志ですから」

殺しあえと言うのだ。しかし、これは矛盾しているとも零は感じた。
なぜなら、こういったルールであるのならば最初に知らせるべきなのだ。
また、殺し合わせるのを楽しむのならば各々の位置、数を知る術がなければならない。
それだけではない。問題は「戦力外」の者たちだ。
殺し合わせるのが目的ならば「戦力外」は最初から必要ないはず。以上の事が瞬時にはじき出される。

「戦って、最後に勝ち残った一人には、僕たちをこの世界に呼んだ人に会う権利が与えられます。
 そして”その人”に会えば、何か”報酬”が与えられます。
 もちろん、その”報酬”を『元の世界に戻ること』にすることも可能です」

この一言が決定打だった。零はこの声の持ち主。恐らくは少年だろう。
彼が何らかの目的をもって「我々を」戦わせたがっているという確信を持つ。
297佐伯 ◆b413PDNTVY :2010/02/23(火) 23:53:15 0
更に零は彼の正体を暴いていく。

(……声のトーンからして普段はおとなしい性格。いえ、無関心。これが近いか……
 彼の言う事はこんなにも大量の矛盾を抱えている。これは彼が無計画に行動するタイプだと言う事を表している。
 それだけで無い。問題は彼がこういったリターンをちらつかせた点。もしかしたら報酬は本当である可能性が高い)

「戦闘能力の無い方々には、またのちほど別に連絡させていただきます」

(なるほど、確信した。彼は戦闘力をほとんど持たない。故のこの先導。恐らくは、刺激を求めているが何もできない。
 そんな小心者の学生。そして、とてもわがままで他人を見下し、自分の意のままに物事を運びたがる……)

着々と零のプロファイリングが続く。その自らの姿を見て零はある人物を思い出した。
しかし、それは今、この瞬間において何の意味ももたない。とりあえずはこの報酬が問題だ。
恐らくは、この電波を受信した人物たちの中にはこれを信じる者もいるはずだ。
だとしたら、危険すぎる。そこで零はある事に気づいた。

(あれ……おかしい。もし、皆が私と同じ境遇ならば、自分から言わなければ気付かれない。
 ……もしかして、私が……仲間外れ?……!?)

そう、零はこの世界で生きるにあたって最低限必要なことが約束された状態なのだ。
言い換えれば、帰る必要が必ずしもある訳ではない。これはおかしい。普通ならば必死になって殺しあうように仕組まれるはず。
更に言うならば、零は殺しあうための力が全くない。あるにはあるが全力ではないのだ。ここがキーワードかも知れない。

「あ、僕ですか? 自己紹介が遅れました、僕は竹内萌芽。皆さんをこの世界に呼んだ、”あの人”の使者です」

(萌芽ね、刻んだわ。バッドボーイ。まずは貴方を見つけ出して事の顛末を聞かせてもらおうかしら)

自らの異常を悟り、とりあえず移動しようと提案しようとした時だ。彼らは現れた。
298佐伯 ◆b413PDNTVY :2010/02/23(火) 23:54:21 0
「ようし。全員手を挙げろ!!地面に膝をついて両手を頭の後ろに置け!!
 いいか!?早くしろぉ!!時間がないんだ!!おぶぅ!!!」

そんな事を言いながら飛び込んでくる武装した男たち。
ちなみに最後の悲鳴は最初に飛び込んできた男が同僚の女性に殴られる音だ。

「痛いじゃないですかぁ〜都村警部補が急げってぇ〜」

更にもう一発。しかも蹴りだ。いい感じに顎を捉えていたが……

「警視庁公安部文明課の『NOVA』です。レベル3の文明犯罪があったと通報を受けて参りました」

(て言うか、今の24?よねぇ……)

透き通った声の女性が先程の珍事を無かったかのように自分たちの身の上を申し上げる。
警視庁公安。更に彼らの持つ武装。どうやら、またもやピンチの様だ……

(踏んでる。重いっきし踏んでる……あ、ぐりぐりしてる)

「……とは言え、どうやら逃げられた後のようですね。『進研』に先を越されなかったのが救いですか」

現場を押さえられず落胆する彼女だが、その口調には「やはり」と言う言葉がにじみ出ている。
恐らくは予想の範囲内なのだろう。しかし零にとってはそこが問題ではない。

(てか、NOVAに進研とか……駅前留学かよ!!)

そう、彼女にとってはこっちが優先なのだ!!!!
299佐伯 ◆b413PDNTVY :2010/02/23(火) 23:55:20 0
「申し訳ありません。商店街でも同レベルの文明犯罪がありまして、到着が遅れてしまいました
…さて。早速で申し訳ないのですが、事情聴取の為、同行願えますか?]

ここまで言い終えた彼女を見る。
相手は警察だ。下手に動けば無事では済まないだろう。そして、問題はこの場にいる面子。
恐らくは文明持ちかそれに準するもの。そしてゼロワン。
捕まれば、どうなるか分かった物ではない。それは零が身をもって知っていた。
最も、なぜ身をもってなのかは分らないが。

(後ろは、まだ空いている……となれば)

「ゼロワン……合図をしたら全力でここを離脱。追手をまいたらしばらくの間ここで待機していなさい……」

NOVA側には聞こえないように耳打ちし、彼女の制服のポケットに鍵と幾ばくかの札を滑り込ませる。
これで大丈夫だろう。そして念のためほかの二人にも……

「その物品は、奪い取った『文明』ですね? それもこちらへ、渡して頂けますか」

この言葉を聞いた瞬間に、血塗りのワンピースを着た少女が行動を起こす。
即ち、逃亡だ。零は心の底でしまったと呟く。同時にNOVAの武装兵たちが一斉に引き金を引こうとする。
その中、零は残った二人に言葉をかける。
それは「走れ」と「後はお願い」だ。前者はゼロワンに後者はドンキホーテの様な青年に。
そして零は頭を抱え込み蹲る。

その時に彼女自身が発した言葉は「止めて!!撃たないで!!」だった。
300李飛峻 ◆nRqo9c/.Kg :2010/02/24(水) 01:48:29 0
飛峻の手を掴み上体を起こす少女、しかし続くその立ち方はぎこちなかった。
片足を引きずる感じの、生まれたての動物のようなアンバランスさ。

「ちょっと、足を挫いちゃって…」

なるほど得心がいった。
というかそうでなければこんな何も無いような所にうずくまっては居まい。
どれどれと、捻った箇所を診ようと屈み――

『『クゥウウウ』』

盛大に腹が鳴った。

空腹による胃袋の収縮活動。
いかな功夫を修めても、奥義絶技を極めてもこればかりはどうにもならない。
道を極め尽くし仙人になれば霞だけで生きていけるというが、あいにくそこまでは至っていないのだ。

気づけば目の前では少女が腹を抱えて笑っていた。
一方の飛峻はというと、さすがに恥ずかしかったのか明後日の方向に顔を向け気まずそうにしていた。
これでは人助けにかこつけて飯を奢れと言っている様なものだからだ。

「良いよ! 困ってるところを助けてくれたから、そこのコンビニでおにぎりでも奢ってあげる! 一緒に行こ?」

嗚呼、案の定。
決して自分は礼を期待して助けたわけではないのだが、そんな申し訳ない思いで少女の方に向き直るとそこには差し出された手。
先程とは逆の構図、それがなんだかおかしかった。

「謝謝。いや、ありがトウ。
俺の名は李飛峻。実はこっちに来てから何も食べてないんダ。」

膝を叩いて立ち上がり、飛峻は破顔しながら包拳礼で感謝を伝える。
ここは素直に一飯の恩に預かろう、元々自分も途方に暮れていたのだ。
ポジティブに気を取り直し、少女の後を付いて行こうとするが不意に立ち止まった。

「あー、その前に。痛むのはこっちカ?」

少女の表情を伺いながら捻挫箇所に目星をつけると、飛峻は独特の呼吸で自身の内功を巡らせた。
次の瞬間、剣訣を結んだ指が高速で閃き、足首の付近数箇所の経絡を突いていく。

「いきなり悪かっタ。でも、歩く程度ならコレで大丈夫ダロウ。
後は寝る前に良く冷やしておけば後には残らなイ」

飛峻は一仕事終えた満足気な顔で告げると、今度こそ少女の後に付いて歩き出した。
301皐月 ◆AdZFt8/Ick :2010/02/24(水) 03:10:28 0
>>212

>「こんにちは」
>「皆さんはなぜ自分がこの世界に”招かれた”かご存知ですか?」
>「実は皆さんは、ある人に呼ばれてこの世界に来たのです」

脳内に電波が響いてきた。

>「この世界に”招かれた”人間は二種類、ずばり戦闘能力のある者とない者です」
>「戦闘能力のある人同士は戦わなければいけません、なぜってそれが僕たちを呼んだその人の意志ですから」

勢いで立ち上がった後、行き成り聞こえてきた言葉。
情報を噛み砕けば噛み砕くほど、目の前の異常を、少なくとも現実の光景として飲み下すことが出来た。

何も起きていないのに、吹き飛ばされる不良。
凍りつく人間、口から毒ガスを吐き出す男、そしてそれに対抗する妖精のような存在、それを操る男。

これが――戦闘能力のある者!

そして今、自分がどれだけ場違いな空間にいるか、皐月はようやく気がついた。

(……あれ、私、もしかして下手すると……死んじゃう?)

自覚した瞬間、勢いで動いていた体が、どっと恐怖に包まれ始めた。


>>260

>「……おい、其処のなんちゃってシスター!
> お前にも今の"声"が――いや、そうじゃねえか」

「……っ、は、はひ!」

ぐるぐると回っていた思考回路が、一瞬停止する。
気がつけばテーブルの下に転がっていた男性……ウェイターが、起き上がっていた。

(あれ? 大丈夫なのかな?)

その問いを発することも出来ず、言葉は続く。

>「お食事をお楽しみの所お騒がせして大変申し訳ありません、お客様。
>  緊急時ですので、安全な場所へ避難なさって下さい。それと―――」

くしゃりと頭をなでられて。

>「―――手当てありがとな。お嬢さん」

そして戦場に躍り出る、その後姿を見る。
会話の内容は良く聞き取れないが、この場の空気が変わった事は感じる。

「なんちゃってじゃありませんもぅん……」

小声の呟きと共に、ぺたりと座り込む。
ただ、その行為で、皐月は間違いなく、少し安心した。
ぴしり、と胸元のロザリオから音がしたことには気がつかなかった。
302皐月 ◆AdZFt8/Ick :2010/02/24(水) 03:11:57 0
やがて――皐月にはどういった経緯かわからないが、戦いは収束した、らしい。

>>286
>「穢れがあるなら僕が禊ごう。色褪せたなら錦を飾ろう。僕は僕が見初めた世界を、見初めたままに充実させよう。
> だから、今はただ見ていてくれ。世界、           ――これが僕だ」

オールバックの男性のそのセリフが、恐らく勝利宣言。
気がつけば、襲撃してきた不良たちはもう残っていなかった。
テーブルに混ざった(!?)男達や、痙攣して口から煙を吐く男。

「…………」

これが、「戦闘能力を持つ者」が戦った結果、だろう。
そしてそれをやらせようとしている、否、行わせた人物が居る――それが、あの声。

>「戦って、最後に勝ち残った一人には、僕たちをこの世界に呼んだ人に会う権利が与えられます」
>「そして”その人”に会えば、何か”報酬”が与えられます。もちろん、その”報酬”を『元の世界に戻ること』にすることも可能です」

信じられないことだが、この世界は皐月が知る世界では無いらしい。
様々な現象を見せられた今なら……それはたやすく受け入れられた。

>「戦闘能力の無い方々には、またのちほど別に連絡させていただきます」

同時に、自分がそれに抗う力がないことも、理解した。
ただ、それでも。

>「あ、僕ですか? 自己紹介が遅れました、僕は竹内萌芽。皆さんをこの世界に呼んだ、”あの人”の使者です」

――こんな事をやらせて、高みから見物しているような奴を、許しておきたくない。
――でも、私に何が出来る?

たった今戦場に居て、出来た事はただ立ち上がり奇声を上げて、そして何も出来ないまま終わっただけだ。
気がつけばアフロヘアの学生が、負傷した人々を治療していた。
きっとそれもあの人の能力……なのだろう。
303皐月 ◆AdZFt8/Ick :2010/02/24(水) 03:12:59 0
――暫くして、警察や消防が駆けつけてきた。
上手く頭が回らない、警官からの事情聴取に、ただこくこくと頷いているだけだった。

「――み、君?」

「え、あ、はい」

ふと我に返ると、警官は不思議なものを見る目で皐月を見ていた。

「へあ? へ、そ、そうです! はいです! その通りです!」

脊髄反射で応答していた為、何を質問されているのかがわからなくなっていた。
なのでとりあえず肯定の答えを返してしまったが、警官は更に眉をしかめた。

「だから――君、お家は?」

「……へ?」

そう。
この世界は皐月のいる世界ではない、らしい。
即ち、帰る家もない。
もっというならば、彼女の語る住所の場所は、存在して、居ない。

――この時間寮の門限破ってるよどうしよう寮長に殺される。
――神様ごめんなさい、私は規則を破ってしまった悪い子です。
――そういえば三毛猫の小五郎丸にご飯あげてなかったなぁ、更ちゃん代わりにあげてくれたかなぁ。
――定時のお祈りもしてないわ、大変大変どうしましょう。
――落ち着くのよ私、羊が一匹羊が二匹羊が三匹……ああそういえばこれって英語じゃないと意味ないんだっけ?

「君! 君!」

「はっ!」

混乱のあまり思考がぶっ飛んでいた。

「住所と電話番号! 答えられないのかな?」

「は、わ、はわわ……!」

試しに自分の住所を言って見るか……?
しかし、それがもし存在していなかったら、それは致命傷となりうる。
――「萌牙」と名乗った男の子に対して、対抗する為の動きを取れなくなる。

「えーっと、えーっと、私は……!」

慌てて周囲を見回し、ふと目に入った人。
その傍に寄って、人差し指で指して、叫んだ。

「こ、こここに住み込みで働いてま、っすすす!」

それは先ほど頭を撫でて安心をくれた、ウェイターさんだった。

【結晶:1】
【ウェイターさんに無茶振り】
304皐月? ◆AdZFt8/Ick :2010/02/24(水) 03:14:08 0
頭の中に響いた声。
何度も何度も思い出し、反芻する。
それを脳のありとあらゆる空間に――擦り込み、貼り付け、刻み込む。

>「戦って、最後に勝ち残った一人には、僕たちをこの世界に呼んだ人に会う権利が与えられます」
>「そして”その人”に会えば、何か”報酬”が与えられます。もちろん、その”報酬”を『元の世界に戻ること』にすることも可能です」

――舐めた真似してくれるじゃねぇか。

>「戦闘能力の無い方々には、またのちほど別に連絡させていただきます」
>「あ、僕ですか? 自己紹介が遅れました、僕は竹内萌芽。皆さんをこの世界に呼んだ、”あの人”の使者です」

今日体験したキーワードは――『文明』『あの人』『竹内萌牙』?
つか昨今の萌え美少女キャラみたいな名前しやがって、どんな面の男か拝みたくなってきやがった。
なんにせよ、人が行う全ての行為に対して、代償は必須だ。

――アタシ「達」をこの世界に呼んだ事を後悔させてやる、絶対になぁ。

【五月一日・皐月、無力を痛感】
【五月一日・殺気、細々と覚醒】
305前園 久和 ◆KLeaErDHmGCM :2010/02/24(水) 03:54:15 Q
>「殺すつもりだったんだろう?」

と、おっさんは言った。
勿論。おっさんが避ければ。
一気に殺意が消える。
その代わり避けなかったこいつに対して沸いてきたのは、一つの感情。

「…おっさんが変な事言うから、おっさんに興味が沸いてきた」

もちろんうほっ的な恋愛感情とかじゃない。
…いや俺、性別無いけどさ。
とりあえず、純粋な興味。

「という訳で勝手におっさんに着いていく、文句言ったら斬る、killyouだ」

人間なんか信じられないけど、いい意味で人間とはかけはなれてマイペースなおっさんならまあ虐められる心配も無いだろ?
…連れの女は知らないが。

「いつか忘れたが人間不信とか判断された俺に信じられるんだ、誇れよ」

まあ、信じてはないけど。
着いていって萌芽とやらを斬ったらおっさん達も斬るつもりだからな。
そう、俺が斬るんだ。

「おっさんはいつか俺が斬る、それまでお前が殺されないように守ってやるよ」

ニヤニヤと笑いながら刀を鞘に直す。
ここで俺に何かしたら、まあ賢いと誉めてやろうか。

「文句は、無いな?」


【前園久和:興味により琳樹に着いていく様子】
306月崎真雪 ◇OryKaIyYzc:2010/02/24(水) 17:50:39 0


真雪が手を差し伸べると、青年は膝を叩いて立ち上がる。それから笑顔で礼を述べた。
「謝謝。いや、ありがトウ。
俺の名は李飛峻。実はこっちに来てから何も食べてないんダ」
(あ、やっぱり中国系の人だった)
名を聞き独特の動きを見て、真雪は自分の憶測が合っていた事に納得する。
「そっか! 私は月崎真雪。私もお腹が空いてたから、あんまり気にしないで。
それじゃ、行こっか」
「あー、その前に。痛むのはこっちカ?」
そうして真雪が向かおうと足を動かせば、李が呼び止めた。
何だろう、と真雪が足を見下ろす。
するといきなり、しゃがみこんだ李が真雪の足首を突いた。
その動きに驚いて一歩後ずさる、その時、真雪は気付いた。
(足…痛くない…!)
「いきなり悪かっタ。でも、歩く程度ならコレで大丈夫ダロウ。
後は寝る前に良く冷やしておけば後には残らなイ」
そう言って、李は満足げな笑顔で立ち上がった。どうやら、手当てをしてくれたらしい。
「ありがとう、凄いね! ちょっとビックリしたけど、助かっちゃった!」
そこまで優しいと、真雪まで笑顔になる。
明るく礼を言うと、今度こそ真雪は李の手に触れ歩み出した。



ひゅうううぅ



突然、この季節には相応しくない、強く冷たい風が吹いた。
真雪が突風に目を瞑り、怯えたように再び目を開く。

「やあ、また会いましたね」

そこには、先程の嘘吐き。
竹内萌芽が立っていた。



【真雪:李飛峻を伴って竹内萌芽と再遭遇】
307Ku-01 ◇x1itISCTJc :2010/02/24(水) 21:29:59 0
ku-01の手の中には、集団が去っていった後に一つのこされたスプレー缶があった。
 恐らく、現在路上で転がっている内の一人が手放したのだろう。
 ぬるりとした赤がこびり付いている他、装飾のたぐいは一切無く、銀色のスチールの上に素っ気ない字体で《塗り潰せ!》と印刷してある。
 恐らく彼らの言う『文明』という物品だ、と形状などから解析、検索を開始。
 それも数秒足らずで終了し、主人に伝えようと顔を上げた所でいつの間にやら前方をNOVA名乗る集団に囲まれていた。

 当たり前ではあるが、前居た次元の索敵プログラムは、どうやらこの世界では使用できないらしい。

 ku-01は、人間ならば溜息を吐くような心境に陥った。


>>299
>「ゼロワン……合図をしたら全力でここを離脱。追っ手を撒いたらしばらくの間此処で待機していなさい……」


『合図とともに全力で離脱』と、近寄ってきた主人はそう言った。
 同時に僅かな金属音を察知。どうやら制服のポケットに何かを入れ込まれたらしい。

>「その物品は、奪い取った『文明』ですね? それもこちらへ、渡していただけますか」

 マスク越しにくぐもった、しかし元は涼やかであろうと分かる声がそう告げると同時に、後方がにわかに騒がしく成る。
 どうやら背後にいた人物が逃走を試みているらしい。軽機関銃の銃口が、ku-01達を越えた向こうに向けられる。
 と同じく、AIに飛び込む走れという言葉。

 エンターキーは押された。 

「アイ・コピー」
308Ku-01 ◇x1itISCTJc :2010/02/24(水) 21:30:49 0
主人がうずくまり頭を抱えるすぐ横に、倒れ込むようにして両手をつく。
 いわゆるクラウチングスタートに良く似た体勢。
 限りなく人体に似せて作られた構造は、しかし完璧な人体という訳ではない。出力が遙かに違う。
 きしりと僅かにきしむ音を立てながら、ku-01は上体を極力地面に近付け走る。
 大きく踏み出された速度は一歩目にしてトップスピードに乗っていた。
 数歩の間に集団の隙間を縫うように駆け抜ける。









「っ、止まれぇっ!」





 進行方向に位置するゴミ箱や遺棄物、段ボール箱などを容赦なく蹴散らしながら、ku-01は駆けていた。
 表通りとは反対方向に向かってしまったらしい。衛星通信から現在位置を割り出すが、この先にあるのはどうやら雑居のビルや住居といった人通りを生まないものばかりだ。
 背後からは数人分の足音と制止を要求する怒鳴り声、壁や地面をえぐる弾丸が飛来していた。
 無傷のまま撒くのは困難である、とAIが判断を下す。

「……」

「えっ、まじで止まんのかっ?!」
309Ku-01 ◇x1itISCTJc :2010/02/24(水) 21:31:36 0
 この世界の銃器がいかほどの威力を有しているか分からない今、むやみやたらと銃撃を受けるべきではないと判断したku-01は、
言われたとおりに足を止める。
 振り向くと、武装をした隊員が三名、同じく立ち止まりこちらへ銃口を向けている。

「よ、よし、……おとなしく手を挙げ、地に伏せろ。抵抗すんなよ」


 不意に、マスターとして本登録されている上官の発言がAIに浮かび上がる。

 敵性艦隊を撃ち落とし、奪い取った武器を使用して非難を浴びた際に、彼がしれっと言い放った言葉。
 それをそのまま発言欄に載せ、人工声帯を震わせた。



  ――これは、




「これは奪ったのではなくて拾ったものなので、使ったってノープログレム!」



「しまっ――!」



 右手を挙げ、持ち続けていたスプレー缶、《塗り潰せ!》のヘッドを押し込み、


「……あれ?」


 無反応。
 かこ、と手応えのない感覚に首を傾げる。
 恐慌し硬直していた隊員達が安堵に顔を見合わせ、笑い声をあげた。

「……っなんだよ、不適合か! 驚かせやがっテブァッ?!」

「残念です」
310Ku-01 ◇x1itISCTJc :2010/02/24(水) 21:32:31 0
みしりと先頭に立っていた隊員のマスクがきしみをあげる。
 人工皮膚を一枚剥げば堅い金属で芯の入れられた拳がめり込む音だった。

「なっ?!」

 そのまま吹き飛び、壁に叩きつけられる同僚を見守ることなく、もう一人も同じ軌跡を辿る。

「応援をtッグブェ!」

 無線機に呼びかけようとした最後の一人もそれに続く。
 ku-01は折り重なった三人を見下ろし、転がった無線機に呼びかけた。
 むろん、応援要請ではない。治療を要するものが居る、と。


『どういうことだ?! エヌ班、応答せよ! 応t、』
  ペイントイット
「《塗り潰せ!》吹き付けた相手の視界を閉ざし、それを三分三秒間持続させる」

 倒れ込むうちの一人の手の中に応答を求める無線機をそっと戻しながら呟く。

「傷つけず逃亡するには良いと思ったのですが……」

 とりあえず、主人に指定された『此処』というのを割り出さなくては。
 考えながら、ku-01は薄暗い道を歩みだした。



【ku-01、『塗り潰せ!』を入手するも、不適合のため使用不可】
【『塗り潰せ!』:顔に吹き付けた相手の視界を強制的に三分三秒間黒く塗りつぶす
 あと六回分の残量】
311訛祢 琳樹 ◆cirno..4vY :2010/02/25(木) 14:38:04 Q
「文句は、無いな?」

着いてくるってシエルがどう言うか。
あくまで君は殺しにきた人だし。

そんな言葉は喉の奥に飲み込んだ。

「…無いよ、うん」

私は、ね。
彼には文句言っても仕方無いだろうし。
斬るって言うかスルーされる気がする。

「ん」

よく考えたら彼の言動は、よくあるヒロインの「あ、あんたをいじめていいのはあたしだけなの!だから他の子はなんたらかんたら」に似てないか。
彼はツンデレなのかい。
というかフラグなのかい。
…男二人で?

「……」

無いな。

「シエル、さんは」

そこで彼と話すのをやめて、シエルの方へと顔を向ける。

…私は、シエルとフラグが立った方がエロゲやギャルゲ的にはいいと思うんだけどな。
312名無しになりきれ:2010/02/25(木) 22:04:40 0
何がエロゲだかギャルゲだか知らんがつまらん
もっとネタを練れよ
クズ
313竹内 萌芽(1/8) ◆6ZgdRxmC/6 :2010/02/26(金) 10:38:12 0

そういえば、面白そうなやつがいたなとふいに萌芽はそんなことを思った。

先程、彼が”参加者”全員に呼びかけたとき、彼の言葉に賛同するにせよ反発するにせよ大体の人間はただ彼の声が聞こえたというだけで身体的な異常は見られなかった。
―――ただひとりを除いて

(あの鎧のちびっ子……)

彼の”才能”は『何かに自分を認識させる』という、だれでもできることの延長線上である。
それを利用して、今回彼は試しに『自分の声』を『その人間の思考』という形で認識させるということをやってみた。
試みは見事に成功した……はずだったのだが

(明らかに、何か苦しがってましたよね……)

自分があの鎧のちびっ子の思考と自分の声を”あやふや”にしようとしたから、それに反発した?

だとしたら、かなり面白いなと萌芽は思った。

目の前の少女に”勝ったら”今度はあっちにちょっかいを出すのも面白いかもしれない。
そんなことを考えながら、右手を目の前の”彼女”にむけてひらひらと振ってみせる。
314竹内 萌芽(2/8) ◆6ZgdRxmC/6 :2010/02/26(金) 10:39:27 0

「あれ、ひょっとしてお邪魔でしたか?」

彼女の方だけしか見ていなかったので一瞬気付かなかったが、彼女の隣には時代がかったパオコートに身を包む青年が立っていた。
手などつないでいるところを見ると、かなり仲がいいのではないのかと思ったのだが、どうやらそうでもないらしい。

こちらの視線に気付き、なにやら否定する彼女の言葉によれば、自分のせいで足をくじいていたところを通りがかりのこの人が助けてくれたのだとか。
自分のときは出会ってすぐに逃げたしたくせにえらい違いだなと、萌芽は少しむっとしたがとりあえず気を取り直して彼に自己紹介をしておく

「はじめまして、竹内萌芽といいます。この人がお世話になったようで、どうもありがとうございます」

まったく自分としたことが、彼女が足をくじいていることを見逃すとはうかつだった。
動けない彼女が、通りすがりのほかの”参加者”などに襲われてしまっては、わざわざ手間をかけてまで他の”参加者”たちに呼びかけた意味がなくなってしまう。
彼女はあくまで『自分だけの敵』でなくてはならない。そうでなくては困るのだ。

青年は李飛峻というらしい。思えば”竹内萌芽”になってから人に名前を名乗られるのはこれがはじめてだ。
ちょっとした新鮮さを覚えながら、彼の身の上話などを聞いたところ、どうやら彼も”参加者”らしいということが分かった。

「あー……えっと、僕もそうなんですよ。他の世界から呼ばれてきたというか」

彼もぱっと見、戦闘能力のある”参加者”に見えたので言おうかどうか迷ったが、初めて名前を教えてもらえたということで親近感もあるし、第一自分の『敵』を助けてもらったという恩義もあるので軽く自分の知っていることを教えておくことにした。
まあそもそも、彼女の前で嘘を吐くなんて行為に意味があるとは思えなかったのだが。

「『イデア』っていうものがあれば、帰れるかもしれませんよ? 詳しくは知らないんですが」
315竹内 萌芽(3/8) ◆6ZgdRxmC/6 :2010/02/26(金) 10:41:25 0

彼女たちはコンビニに行くらしい。
自分もついて行ってもいいかとたずねたら、勝手にしろと言われたのでついていくことにした。

コンビニへの道、彼と他愛ない世間話をしながら、彼女にしつこく名前を訊ね続けたところようやく月崎真雪という名前を教えてもらった。

「まゆきさん、ですか。まゆきさん……つきざきまゆきさん」

それが自分の倒すべき『敵』の名前。
そう思うとなんだか楽しくて、その名前をくりかえし呟いていたら怒られた。

「ひょっとして自分の名前、嫌いだったりするんですか?」

少し期待をこめて聞いてみたが、どうやらそうではないらしいのでつまらないと思った。
316竹内 萌芽(4/8) ◆6ZgdRxmC/6 :2010/02/26(金) 10:42:40 0

コンビニで、真雪と飛峻と三人でおにぎりをながめていたときのことだ。

「―――ッ!!?」

ふいに脇に襲い来る、衝撃。

「運営者に迷惑を掛けるようなプレイヤーには、『ペナルティ』が必要だろう?」

気がつくと、地べたにはいつくばっていた。
どうやら”本体”の方が攻撃を受けたらしい、一体誰の仕業だと睨みつけようとすると視界に入ったのは白い足と、それに巻かれた包帯。
げほっ、と肺の中の空気を吐き出し、なんとか視線をあげるとそこに立っていたのは、自分にゲームを持ちかけた”あの人”だった。

「君一人でも『イデア』は見つけられるかもしれない。けれどもしも君が見つけられなかったら?
 その時に君以外の連中が、愉快に楽しく全滅していたら? 一体どうしてくれると言うんだい?」

痛みのせいで湧き出た涙で滲む視界の中、ぼんやりと見えるその人の表情はなんだか怒っているように見えた。

「君は随分と便利な能力を持っているみたいだけどね。
 僕の目的の邪魔になるようなら……君をBANするくらい、容易い事なんだよ」

BANとはなんだろう? と、痛みでぼーっとする思考の中で萌芽は考える。
殺される、ということならばそれはそれで面白い。この自分の”才能”を知って、なお自分を殺せるというのならそれはとても興味がある。
しかし、もしBANというのが”この世界からの追放”を意味するとしたら?

それは嫌だと、萌芽は思った。
あの退屈な世界に戻されて、元のあの「n」で始まるイニシャルの”彼”として、あの『退屈な世界』に飼い殺されるくらいなら死んだ方がいくらかましだ
317竹内 萌芽(5/8) ◆6ZgdRxmC/6 :2010/02/26(金) 10:44:13 0

「……すみません」

なので、とりあえず素直に謝っておくことにする。

「あ、でも連中が全滅するっていう心配はないですよ? 僕が呼びかけたのは、あくまで”戦闘力のある”人たちだけですから」

「さすがに僕も自分ひとりで見つける自信はないので」と言って笑う。
どうでもいいが蹴られた脇がかなり痛い。これは骨二三本イってるんじゃないかと思いながら痛む場所をさすると、それを見た少女がにこりと笑った。
娘さんですか? と聞いたらそうだと答えられた。まさか子持ちだとは……意外だ。
っていうか、教育のしかたまちがってないか?

そこまで考えて、ふと思考が切り替わる。
ここまでの”この人”の行動からして、この人の「ゲーム」にはこの人の決めた「ルール」というものがあるらしい。
それにしたがって遊ぶのも、まあ楽しめるが、今はもっと面白いゲーム―――月崎真雪との対戦―――がある。
正直、今回みたいに邪魔されるのは勘弁して欲しい。
といっても今までの会話から察するに、この人も自分と同じで大概自分勝手なところがあるからそんなことを頼んでも無視されるだろう。
それだけならまだいいが、それを知られて月崎真雪を人質に取られたりするとかなり面倒だ。
そう判断した萌芽はさっそく行動に移ることにした。

「まあそんなわけで、あなたの邪魔になるようなことはしませんよ。『イデア』だってちゃんと持ってきますし」

「だからしばらくは、黙って見ててください」それだけ言って、萌芽は自分と世界を、外向きに”あやふや”にする。
とりあえずこれで、他の人間からは自分とこの世界の区別はつかなくなった。
ドラえもんに出てくる『いしころぼうし』のようなものだ。透明になるわけではないが、こうすればだれにも気付かれない。

とりあえず向こう側に自分が見えてないのを確認し、とっととその場から消えようと思ったとき、萌芽の目に”面白そうなもの”が映った。
318竹内 萌芽(6/8) ◆6ZgdRxmC/6 :2010/02/26(金) 10:46:31 0

町に向かい、萌芽は歩いていた。
その顔には脂汗が浮かび、普段の余裕はまったくない。
理由は簡単だ。胸が我慢できないくらいに痛いのである。

「ああ、これは本当に骨がイっちゃってますね……」

たははと笑いながら、彼はポケットの中から一枚のカードを取り出した。
萌芽が”あの人”の前から消える直前、”あの人”のポケットから覗いていたそれを、とりあえず蹴られたことの腹いせにいただいてきたのだ。

「なんなんでしょうね、これ……」

”あの人”が持っていたものだから、なんとなく面白そうだと思っていただいてしまったが、正直なんにつかうものなのか、とんと検討がつかない。
そういえば、先程世界と自分を”あやふや”にしたとき、世界になんだか綺麗に溶け込んでいる感じの、しかし異質な無数の”何か”の気配を感じたが、これもそれと同じ匂いを発している気がする。

三浦啓介が『文明』の権威だと知っていれば、そのカードがなんなのか予測はついたのかもしれない。
それは、あまりに『不安定』であったため、三浦啓介ですら扱いに困っていた『文明』。
それが、存在自体が『不安定』な竹内萌芽という少年に適合するなど、おそらく三浦啓介自身予想だにしなかったに違いない。

カードには無数のカードで作られた二重螺旋の絵が描かれており、そしてその上には<<予測不能>>の文字。

「ストレンジ……ベント……?」

その上にふられた振り仮名を読んだ瞬間、そのカードがぼうっと光ったことを、痛みに耐えるのに必死な彼は気付く由も無かった。

ダイスロール:次レスの末尾

【偶数だった場合:ADVENT―前園久和―】
【末尾が3であった場合:FINALVENT】
【奇数だった場合:CONFINEVENT】
319竹内 萌芽(7/8) ◆6ZgdRxmC/6 :2010/02/26(金) 10:48:22 0

意識をギリギリのところで保ちながら、町の中を歩く。
正直、あの少女の蹴りをなめていた。このままだと本当に死ぬかもしれない。
それも悪くないか、少なくともあの『退屈な世界』で、「n」としてなんの面白みも無い毎日を送るよりはいくらかましだろう。

そんなことを考えて意識を手放そうとすると、なぜか思い出されるのはあの自分の『敵』である彼女のこと。

「そうだ……まだ死ぬわけには……いかない……!!」

あの少女に自分のことを”竹内萌芽”だと認めさせなければ、そうしなければ、少なくともあの少女の中では、自分は……”竹内萌芽”は嘘になってしまう。

「ぜったい……認めさせてやりますからね……」

人の意地の力というのは凄まじいものだ。気がつけば萌芽は目的の人物の前に立っていた。
彼はその場で世界と自分を”はっきり別々に”し、目の前の人物の前に姿を現す。

「あ、えっと……夜分遅くすみません。昼間喫茶店にいたシスターさん……ですよね?」

荒い息の中、とりあえず笑顔を取り繕って(実際それはかなり歪んでいたが)目の前の小さなシスターに話しかける。

「驚かせてすみません……あの……よかったら助けていただけませんか……?」

視界が霞み、足から力が抜ける。

「申し送れました、僕……竹内萌芽と……」

自己紹介を終えることなく、竹内萌芽は意識を失った。

ターン終了:
【五月一日・皐月に摂食後、気絶:助けるかどうかは皐月のPLさんにおまかせします】
320竹内 萌芽(8/8) ◆6ZgdRxmC/6 :2010/02/26(金) 10:49:55 0

インターミッション:竹内萌芽

夢を見た。
ずいぶん昔の夢だ。
『退屈』になる前の、まだ”彼”であることが嫌でなかったころの、夢。

あのころ、”彼”には幼馴染がいた。
彼女は自分とは違って、いろんなことに積極的で、そして無鉄砲だった。

いろんなイタズラをやった。っていうかやらされた。
そのどれもが楽しくて、そんな日々がずっと続くと思っていた。

金曜日、牛乳パックでいかだを作って、公園の池に浮かべた。
案の定沈没して、二人で仲良くびしょぬれになった。
そして、月曜日にまたあおうと言って別れた。

月曜日、彼女は学校にこなかった。
先生は教壇の前で、彼女が転校したことをつげた。
急な都合だって、そういってた。

いろんなことが、つまらなくなった。
彼女とのイタズラになら楽しく使えたこの”才能”も、彼女がいなくなったらなんの面白みもなくなってしまった。

いつのまにか、世界は色をなくした。

そして世界は『退屈』になった。


―インターミッション:竹内萌芽 おわり―
321ゼルタ=ベルウッド ◆8hdEtYmE/I :2010/02/26(金) 17:12:07 0
表通りの雑踏を駆け抜け、閑静な住宅街に入ったところでようやく振り返ると、どこかで追撃を諦めたのか『公文』の姿は見えなくなっていた。
通行人も一人として見当たらない。今ここにいるのはゼルタ一人だ。

「ふぅ」

ひとまず、当面の危機は去った。が、ここで新たな問題が生じる。

「……うわぁ」

今さらのように自分の格好を確認し、ゼルタは呆れたような声を上げる。
白かったワンピースは、返り血を浴びて赤黒く染まっていた。
短刀を握っていた右手、癖のない黒髪にも血はこびりついていた。
生臭い血の匂いが纏わりついているのが自分でもよく分かった。

このままだと目立ってしょうがないなぁ。どこかで着替えないと。

そう思いゼルタはきょろきょろと辺りを見回す。
やがて一軒の民家に目を付けた。

よし、あそこにしよう……。

ダイスロール:投下時間の末尾
【偶数なら『月崎家』へ】
【奇数なら『広瀬家』へ】
322ゼルタ=ベルウッド ◆8hdEtYmE/I :2010/02/26(金) 17:15:38 0
・・・

「ふー、すっきりした」

バスタオルで髪を拭きながら、ゼルタは浴室から出てきた。
肉付きの薄い身体から血の匂いは消え失せ、代わりに石鹸のいい香りがほのかに漂っている。

「それにしても便利なところだよねぇ。砂漠とは大違い」

彼女のいた砂漠と比較して、この世界の文明は遥かに高度だった。
例えば浴室。
砂漠では一部の金持ちの家にしかないようなものが、ここでは一般市民の民家に当たり前に存在する。
それも、格段に便利なものがだ。

「ここにずっといようかなぁ」

ぽつりと呟く。元より放浪の身である彼女にとって、砂漠に帰る意味は大してないのだ。
居心地のいいこの世界に留まりたくなるのも、無理はない。

と、そんな時。

>「こんにちは」

不意に、声が聞こえた。
反射的に脱衣籠から短刀を取って身構えるが、狭い洗面所にいるのはゼルタ一人だ。
『見的封殺』をかけてからゆっくり扉を開け、廊下を見渡すが、やはり誰もいない。
この家の住人が拘束を破ったのかとも思ったが、そんな様子もない。

「………?」

右手に短刀、左手にバスタオル、サングラス以外は何一つ身につけていないという状態でゼルタは廊下へと出る。
もし見知らぬ闖入者と遭遇したならば、タオルで視界を封じてそのまま襲い掛かるつもりでいた。

>「皆さんはなぜ自分がこの世界に"招かれた"かご存知ですか?」

ゼルタの思惑を無視して、声は続ける。
どうやら声の主は、ここではないどこかから、不特定多数の人間に語りかけているようだ。
それに気付いたゼルタは一旦警戒を解き、黙ってその声を聞くことにした。
323ゼルタ=ベルウッド ◆8hdEtYmE/I :2010/02/26(金) 17:16:40 0
>「実は皆さんは、ある人に呼ばれてこの世界に来たのです」
>「この世界に"招かれた"人間は二種類、ずばり戦闘能力のある者とない者です」
>「戦闘能力のある人同士は戦わなければいけません、なぜってそれが僕たちを呼んだその人の意志ですから」

そんなのは知らない。わたしの知ったことじゃない。

ゼルタは思う。
わざわざそんなものに従って殺し合う必要性が、彼女には見出せなかった。

>「戦って、最後に勝ち残った一人には、僕たちをこの世界に呼んだ人に会う権利が与えられます」

「いらない」

ゼルタは呟く。誰が自分を呼んだのだろうと、関係ないと思ったからだ。
だが、その考えは次の言葉を聞いて一瞬で変化した。

>「そして"その人"に会えば、何か"報酬"が与えられます。もちろん、その"報酬"を『元の世界に戻ること』にすることも可能です」

報酬。ご褒美。お宝。
これほど彼女のやる気をかきたてる言葉はない。
もっとも、ゼルタは砂漠に帰るつもりはない。
それ以外の何かを望むつもりだった。

「例えば、生き返ったりとか」

ぽつりとそう口にしてすぐ、苦笑しながら首を振る。
別に、今のままでも彼女の暮らしに大して問題はない。生き返る必要が、果たしてあるのだろうか?
324ゼルタ=ベルウッド ◆8hdEtYmE/I :2010/02/26(金) 17:18:27 0
>「戦闘能力の無い方々には、またのちほど別に連絡させていただきます」
>「あ、僕ですか? 自己紹介が遅れました、僕は竹内萌芽。皆さんをこの世界に呼んだ、"あの人"の使者です」

そう名乗ったのを最後に、声は聞こえなくなった。

「……えへ」

ゼルタの口から、自然と笑みがこぼれた。バスタオルを床に落とし、『見的封殺』をヘアバンドのようにしてかけ直す。

「今から何をもらうか楽しみだなぁ」

その前に新しい服を探さないと、ね。

短刀の背で肩をとんとんと叩きながら、ゼルタは寝室へと向かった。

【ゼルタ、『広瀬家』へと侵入。広瀬香味の母を拘束し、家探し中】
325宗方丈乃助 ◆d2gmSQdEY6 :2010/02/26(金) 18:48:54 0
帰り際、タチバナの傍にいた筈のサングラスの少女がいなくなっている事に気付く。
丈乃助は周囲を見回すが、やはり見つからない。
「あの〜一緒にいた女の子はどこに行ったんスかね……まさか、
あの連中に連れ去られたとか?いや、冗談っスけど…」

冗談で済めばベストだ。そう思ったが、何か腑に落ちない。
とりあえず、翌朝この喫茶店で再会すると約束しタチバナ達と別れた。

#######################

【夜・広瀬宅にて】

「ただいまぁ〜!あれ?ねぇ、母さん。
お姉ちゃんもいないの?あれ?」

靴を丁寧に揃えて上がっていく広瀬君に続きながら丈乃助は
靴を放り投げて上がり込んでいく。
「誰もいねぇのか?つーか、随分と嫌な匂いがするぜ……」

丈乃助の感じた微かな「匂い」。本能が、この家に潜む何者かの存在を感じ取った。
広瀬君はそんな言葉に首を傾げつつも、もう寝てるのかもしれないだろうと
寝室の戸をゆっくりと開けた。
「もう寝て……あ。」

口を空けたまま硬直する広瀬君。目の前には全然知らない女の子が立っていたのだ。
顎が何度も上下し、膝が恐ろしい速度で震える。
広瀬君は情けない事だが、股間からオアシスを発現させていた。
「じょ、じょ・・・じょじょ!丈乃助くぅ…んぅ。どどどどろぼ(ry」

尋常ではない様子の広瀬君に、台所で摘み食い(イカリングフライ)を
していた丈乃助も駆けつける。
「やれやれ……俺以外にも宿探しっスか?それにしちゃ…随分と派手にやるもんだな。」

丈乃助に背後に、クレイジープラチナムが出現した!

【侵入者と対峙。広瀬君は失神寸前、丈乃助はとりあえず様子見】

326名無しになりきれ:2010/02/26(金) 20:32:11 0
様子見なんてやってる暇あるか?
327ゼルタ=ベルウッド ◆8hdEtYmE/I :2010/02/26(金) 22:47:44 0
着替えという当初の目的は割とすぐに達成された。
娘の部屋のクローゼットにあった服で、気に入ったものを頂いたのだ。
……それが「セーラー服」と呼ばれる学生服であることは知らないままに。

本来ならばこの時点で退散するべきなのだが、ここで欲が出た。

「何かいいものないかなー」

そう思って、いろんな部屋を漁る。

ゼルタは基本的に金銭を盗まない。欲しいものは奪うため、金を使わないからだ。
それよりも金銀宝石で彩られた装飾品や刃物などを持っていくことが多かった。

が、そういったゼルタを満足させる獲物は、なかなか見つからない。
砂漠よりもはるかに豊かな世界とはいえ、そう簡単に「いいもの」が見つかるという訳でもない。
そうこうしている内に、外はもう暗くなってきていた。
そろそろ他の家族が帰ってきてもおかしくない頃だ。

「ちょっと長居しすぎたかなー……さて」

逃げますか、と思ったちょうどその時、部屋の戸が開いた。

>「もう寝て……あ。」

戸を開けた少年と眼が合った。少年はその場で口をぽかん空けたまま硬直する。
顎が何度も上下し、膝が恐ろしい速度で震える。おまけに恐怖のあまりに失禁してしまったらしい。

「おっとっとと」

ゼルタは少年に跳びかかろうとしたが、それを見て慌ててたたらを踏んだ。
328ゼルタ=ベルウッド ◆8hdEtYmE/I :2010/02/26(金) 22:49:04 0
>「じょ、じょ・・・じょじょ!丈乃助くぅ…んぅ。どどどどろぼ(ry」

少年はその場に崩れ落ち、外にいる誰かに助けを呼ぼうとする。それで異変に気付いたのか、どたどたとかけてくる音がした。
現れたのは、何かの爆発に巻き込まれたような髪型をした体格のいい青年だった。
すっかり腰を抜かした少年と、部屋の中のゼルタとを見てため息をつく。

>「やれやれ……俺以外にも宿探しっスか?それにしちゃ…随分と派手にやるもんだな。」

冷静に言い放つ青年に若干圧倒されつつ、ゼルタは言いわけをするように応じる。

「うーん、わたしが探してたのは宿よりも着替えなんだよね。まぁ、他にも何かないかなって漁ってたけど……」

応じながらも額のサングラスに手を当て、しっかりとかけ直す。
少年のことは無視。青年を睨みつけ、『見的封殺』≪ロックオンロック≫で動きを止める。

「じゃあね、ばいばーい」

左手で全財産が入った麻袋を掴むと、ゼルタはそのまま二人のそばを駆け抜け、廊下へと飛び出した。

【ゼルタ、離脱を試みる。スタンドは見えない様子】
振り向いた先に見えたのは、五本の腕を持った奇怪な人間と、今にもそいつに斬られそうな琳樹の姿だった。

「あぶなっ……!?」

い、と言おうとしたところで琳樹に迫っていたそいつの刀は勢いを止めた。
斬る、のではなかったのか。数多の憶測が脳内を駆け巡る。
恐らく、そいつはシエルや琳樹と同じ“呼び出された者”だ。
先の萌芽による扇動を信じ込んでしまった類だろう。全く、はた迷惑な話だ。

思考に浸ったシエルが答えを出す前に、二人の会話がそれを導いたようだ。

>>311

なるほど、こいつは琳樹という人間に対して特殊な感情を抱いたようだ。
言い寄られて困った風に琳樹はシエルに顔を向けた。

「私、ですか?」

正直、判断に困る。と言うのが本音だ。
今の今まで相手を殺すつもりでいたそれを簡単に信用して良いのだろうか。
シエルの生きてきた、その経験からすると信頼と言うのは心底薄っぺらく、それでいて簡単に引き千切られるモノだった。

「……構いませんが、条件があります」

それを確信に変えるには、誓約が必要である事も、シエルは重々理解していた。

「まずは、名前を名乗ってください」

どのような約束であっても、まずは名を名乗ることが大前提だ。
名はその存在を示す重要なファクターであり、知られる事は即ち相手に全てを許した事となる。

「次に、もし貴方がどこかで情報…どんなことでも構いませんが、それを得たら隠さず全て私達に話す事」
同じ境遇で、協力しなければならないなら、情報は最も大事な共有要素である。
それを独占する、と言うことは重大な裏切り行為だ。

「互いに命の危険が迫った場合、己が命を賭してでも相手を守る事」

恐らく、この事件の裏には何らかの“力”が絡んでいる。
それがどれほど強大かは解らないが、次元跳躍を使用できる程の強力な何かがあるのは間違いない。
その力に対抗するには命を危険に晒す事も覚悟しなければならないだろう。

一人で行動しようと複数で行動しようと、それは変わらないことではあるのだろうが。
せめて一緒にいるのならば、互いの命は護るのがいいだろう。

「以上です」

この男―だろうか…女性に見えなくもない―は恐らく琳樹にだけ興味を抱いているのだろうが、
それは同時に琳樹に対しての興味を失ったときのリスクも孕んでいる事となる。
恐らく、この男は何かしらの“異能”を持っている。姿だけではない、何かの異質を。
それを事前に封じることが出来ないと言うなら、ここで。

「面倒は承知です。しかし、それが飲めないと言うのなら」

シエルは、クレイモアの切っ先を地面に突き立てた。
ガン、と鈍い音を立ててそれは垂直に突き立つ。

「ここで私が斬ります」

ここで、消してしまわなければならない。
正直、考えたくもないが。シエルにとって、それが最善であった。

自らのちょっとした矛盾に、頭が痛くなる。今しがた、あの声に反発したばかりではないか。
少し、自己嫌悪。
331葉隠 殉也 ◆sccpZcfpDo :2010/02/26(金) 23:56:16 0
>「警視庁公安部文明課の『NOVA』です。レベル3の文明犯罪があったと通報を受けて参りました」

公安だと…記憶が正しければ確か表立って活動する輩ではなかったはずだが
恐らくそれは部署によって違うだろうと判断した。

>「……とは言え、どうやら逃げられた後のようですね。『進研』に先を越されなかったのが救いですか」

この言葉からしてどうやら先ほどの者達とは敵対しているらしい。
もっともここは見知らぬ世界だ公的機関が彼等と繋がっていないという保証はなかったが
その心配はないようだ。

>「申し訳ありません。商店街でも同レベルの文明犯罪がありまして、到着が遅れてしまいました
…さて。早速で申し訳ないのですが、事情聴取の為、同行願えますか?]

この状況を見て警察官ならば当然の行動だろうと思った。こちらとしては悪い事をしたつもりはなかったため
その言葉に従おうとしたとき、
>「その物品は、奪い取った『文明』ですね? それもこちらへ、渡して頂けますか」

この言葉に血に塗れたワンピースを着た少女は行動を起こし突如逃亡する。
制止の言葉にも関わらず、迷わず逃走していた。

「ちいっ、なんたる事を……!」

この事によって状況が悪化し、軽機関銃の銃口を向けられる。

>「後はお願い」

もう一人の少女の事を任せた(そう解釈した)と言う事らしい。
この言葉に思わず、「駄目だ!お前も一緒に来るのだ!」という言葉が出かけたがすぐに飲み込む。
それは可能だろうただし、今の状態で抱えて走れるのは五分が限界で恐らくは逃げ切れまい
なにより彼女を怪我をさせずに無傷のままというのが保証ができなかった。
悔しいが、このままの状態で保護されたほうが最低でも傷つけずに済むだろう。
不甲斐無さに全身を震わせながら、告げる。

「了解した、必ず助けに行く…すまない」

最後に謝罪し、追跡用の一体の英霊を呼び出し
少年の英霊に命じる。

「すまないが、あの女子にしばらく付いていてくれ」

少年はこくんとうなずくと消えるが、存在は察知できる状態になった。


332葉隠 殉也 ◆sccpZcfpDo :2010/02/27(土) 00:20:17 0
「任された以上は彼女を守らねばならん…」

だが肝心の守るべき者は恐ろしい速さでどこかに行ってしまった。
仕方がないので広範囲の探索英霊を出現させ、早速飛ばす。

「そこのお前!銃を捨てて手を上げろ!」

そうこうしている内に周りを取り囲まれてしまう。
だが、この程度で屈する訳にはいかない
相手が命懸けで賭した頼みをこちらも全力で答えねばならない。

「残念だが、願いを託された以上はそれは聞けん…!」

足に力を入れ、飛び上がると屋根の上に着地する。

「なっ………」

彼等は驚いていたどう見てもジャンプなどでは到達できない場所なのだから。
一瞥をくれてやると忍者の如き速さで屋根伝いに猛ダッシュで駆け抜ける。

「なにしてる早く追え!!」

呆けていた彼等に上司らしき人物が一喝し、大急ぎで追跡を開始した。
そして頃合いを見計らい、適当な所で何処かの路地裏に再び入る。
サイレンの音はどこもかしこも響いていたが、この路地裏に来る頃には
表通りから別の場所に向かっているだろう。

「しかし…腹が減った…」

そんな先の話よりも現在の危機の方がずっと大変だった。
まずは目先の事である食料確保がなによりも優先すべき事だった。
とりあえず食い物がありそうな表通りを目指す事とする。


333Interlude ◆T28TnoiUXU :2010/02/27(土) 01:25:16 0

『――悪いけど、泊めてくんね?
 俺、金はないけどよ……手伝いならするぜ』【>>290

『うん、いいよ。じゃ、今日の風呂掃除と
 犬の散歩と、明日のゴミ出し頼むね!』

「……そいつはグッドアイディアだ。
 ついでに店舗のリフォームも頼むぜ」

二人の会話にさりげなく、かつ模範的勤務態度で割って入ったのは、
モップを肩に担いで"ニコチン・タール限定の俺色吐息"を銜えた給仕だ。

「明日、犬の散歩の後にでも此処に寄ってくれ。
 少なくとも、今夜一杯はキープアウトだろうからな。
 この街で"文明"絡みの騒ぎがあれば厄介な連中の――」

言葉を切った給仕は、不完全燃焼の紫煙を吐き出して店外を見やる。
街路を斑に染めるポリスカーや救急車の赤色灯。その向こう側の影を。

「――狩猟の時間だ。"NOVA"が来る。【>>289
 捕まったら事情聴取だけじゃ済まない。
 猟犬が檻から出る前に、さっさと行くんだな」

視線の先で、場違いな装甲車両のシルエットがラウンジ通りの路面を這って来る。

「さっきから話は聞こえてるんだろう? オールバック、お前もだ。【>>286
 ジャンキー相手に大見得を切ってた様だが、鼻が利く連中の方が厄介だ。
 "レベル3"の重要参考人なんざ格好の獲物だ。もし奴等に喰らい付かれたら……」

食いかけのフライドチキンの皿に煙草が投げ込まれる。
剥き出しの骨に弾かれて先端の赫奕が飛び散った。
灰は酸化した油にバラ撒かれて直ぐに沈んだ。

「……キッチンの奥に走れ。
 スタッフ用の裏口が開いてる。
 店を出た後は真っ直ぐに駆け抜けろ」

>>183 到路地裏/>>228 遺留品】
334ウェイター ◆T28TnoiUXU :2010/02/27(土) 01:26:13 0

『住所と電話番号! 答えられないのかな?』【>>303

『は、わ、はわわ……!』

店内に視線を戻すと、犬のおまわりさんに保護されかかっている小娘と目が合った。
主が救ってくださる気配は微塵も感じられないあたりが実にユカイだ。
迷える羊より手に負えない。迷子の仔猫の類だ、アレは。

『えーっと、えーっと、私は……!』

俺は、キャッシャーのメモ用紙を一枚破り取ってペンを走らせる。
モップのハンドルをオール代わりに、仔猫へと救助ボートを漕ぎ出した。
使い古された手だが、彼女は俺の肉親ってコトで聴取を決着させる算段をつける。
ミスが許されない打席に立たされたのなら、スタンダードなスイングを堅実に振り抜くべきだ。

『こ、こ――』

こら、妹よ。お兄様を指差しながらハシタナイ声を上げるとは何事か。

「ああ、彼女は俺の――――」

『――ここに住み込みで働いてま、っすすす!』

このなんちゃってシスター……なんて無茶な振りをしやがる。
本人の発話意図に忠実に意訳すると、"私ぜんぜん挙動不審じゃないです制服とか着てませんけどマルアークのアルバイトです店舗内のどこかで寝泊りしてるんです大丈夫ですドラスティックに住所不定なんかじゃないです!"……と言った所か。
ちなみに"職質の探り球をフルスイングで場外アーチ"のサインを打ち合わせた覚えは全く無い。

「俺……の――…」

お前の出身地じゃ、カフェレストランには旅館みたいな居住スペースが併設されてるのか?
それとも、飲食店業務が師匠から弟子へと受け継がれる伝統技能にでも成り果ててるのか?

「…――俺のマンションで住み込みのハウスキーピングを任せてる使用人だ」

こっちの言い訳も大概だが、住み込み発言のフォローとしては上出来だ。
俺は先程殴り書きしたメモ用紙を、雑用を言い渡す主人の演技で手渡す。

「そいつを明日までに始末しておいてくれ。
 それと俺はもう少し掛かるから、お前は先に帰れ。
 行政機関の仕事を邪魔しない様、勝手口から出て行くといい」

  "話を合わせろ こっちは不審尋問のスケープゴート
   交換条件 そっちは店長室の金庫の中身をシュレッダー"

国家権力の前へと歩み出る時に、隣を擦れ違った少女の耳元で囁いた。

「……ダイヤルは6桁だ。民数記の2章32節を開け」



……

ここで仮に、何処かの小部屋で純情な正義が暴走したとしようか。
その場合でも、俺は積極的に雇用主を裏切ったコトにはならない筈だ。

―――"Ye cannot serve God and mammon."

願わくば強欲を司りし女狐の裏帳簿に主の祝福、もしくは断罪があらんことを。
335李飛峻 ◆nRqo9c/.Kg :2010/02/27(土) 12:31:57 0
「ありがとう、凄いね! ちょっとビックリしたけど、助かっちゃった!」

さすがに無遠慮に過ぎたか、と飛峻烈は内心冷や冷やしていたのだが真雪の笑顔がそれを消してくれた。
真雪は飛峻に助かったと言ったが実際救われたのはこちらだろう。
いきなり別世界に飛ばされてどうしたものかと途方に暮れていたのだ。
しかしそれすらも真雪の笑顔を見ていると「なるようになるか」といった気持ちになってくる。
飛峻もつられて呵呵と大笑するとそのまま一回り近く歳の離れた少女に手を引かれ歩き出すのだった。

だがそんな時間も長くは続かなかった。
轟、と一陣の風が吹いたかと思うと目の前に一人の少年が立っていた。

「やあ、また会いましたね」

飛峻は訝しげに少年を見据える。
彼とは初対面。つまりこの台詞が向けられている相手は――

(――真雪か)

少年が声をかけた相手であるところの真雪は身を竦ませ茫然自失といった感じだ。
以前会った時に余程怖い思いでもしたのだろうか。

(まあ、余り友好的な手合いといった類ではなさそうだが……)

飛峻はふむ、と思案顔で頷くと今なお真雪に引かれている手を握りやんわりと後ろに引っ張った。
それがもたらすのは立ち位置の交代。
自分の身を二人の間に滑り込ませ、背後に真雪を庇うように立ちふさがる。

とはいえ正対はしない。真雪の手を後ろ手に握ったまま半身で対峙。
両脚はややスタンスを広げ、開いた片手はだらりと下げる。
相手は見た目こそ平均的なハイティーンの少年だがその登場方法が只者ではない。
視認する直前まで全く気配を察知できなかったのだ。

「あれ、ひょっとしてお邪魔でしたか?」

しかし、そんな飛峻の心の内を無視するかのように少年は気安く話しかけてきた。
少年の視線の先には繋いだままの真雪の手。
飛峻は少年の言葉が何を意味するのか理解できなかったが、その意図するところを敏感に察した真雪はこの状況に至る経緯を早口にまくし立てていた。
ああ、なるほど。逢引でもしてるのかと勘ぐったということか。

「はじめまして、竹内萌芽といいます。この人がお世話になったようで、どうもありがとうございます」

真雪の説明に納得いったのか改めて少年、竹内萌芽が自己紹介と感謝の言葉を口にした。
しかしますます二人の関係に疑問が生じる。
なぜなら萌芽は飛峻が真雪を助けたことを心底感謝してる風だったからだ。

「ああ、コレは丁寧ニ。俺は李飛峻。見ての通りの異邦人ダ。
 ソレと礼には及ばナイ。マユキに世話になるのはむしろコチラだからナ」

ともあれ名乗られたからには名乗り返すのが武林の掟。
本当のところは異邦人どころか未来人ということになるのだろうが、そんなことを言ったところで気違いとでも思われるだけだろう。
しかしやや自嘲気味に名乗った飛峻に対する萌芽の返答は想像のはるか斜め上を行くものだった。
336李飛峻 ◆nRqo9c/.Kg :2010/02/27(土) 12:35:22 0
「あー……えっと、僕もそうなんですよ。他の世界から呼ばれてきたというか」

なんと萌芽は異世界からやって来たと言ってのけた。

「『イデア』っていうものがあれば、帰れるかもしれませんよ? 詳しくは知らないんですが」

しかも元の世界に戻る方法まで知っているときた。
まあこちらは若干信憑性に乏しい話ではあるようだが。
とはいえ、萌芽は実に多くのことを知っていた。

曰く、自分達はある人に呼ばれてこの世界に来た。

曰く、この世界に"招かれた"人間は戦闘能力のある者とない者の二種類。

曰く、ある人の意思の下戦闘能力のある者同士は最後の一人になるまで戦わなければならない。

曰く、最後の一人は自分達を呼び寄せた人物に会うことが出来、"報酬"が得られる。その"報酬"を使えば――

「『元の世界』に戻ることも出来る、ということカ……。つまりその報酬が『イデア』なのカ?」

俄かに信じられるような話ではないが他に方法を知っているわけでもない。
しかも飛峻同様別の世界から来たという萌芽の言葉だけに信憑性があるような気もする。
しかし、ということは萌芽の知人である真雪も別の世界の住人なのだろうか。
そう思い振り返ってみるが――

嗚呼、これは違うね。うん。

――そこには何とも形容しがたい冷ややかな目で見つめる真雪が居た。
まあこれが普通の反応なのだろう。
真雪との温度差を突きつけられた飛峻は、これは下手すると折角手に入れたオニギリを奢ってもらえる権利にありつけんかもしらん。などとプチ絶望感を感じずにはいられなかった。


結果から言うとありつけた。
この世界の住人、所謂一般人であるところの真雪は目の前で繰り広げられた電波トークに不信感を隠せない様子ではあったのだが。
そこは何とかなだめすかしつつ、途中一緒に行くとか言い出した萌芽が上手い具合に話をうやむやにしたりと様々な手練手管を駆使しての帰結だった。

「むう……オカカとコンブ、いやこの銀鮭も捨てがたイ。
 何?辛子明太子だト!?」

同じようにオニギリの棚を物色している真雪を見習い次々と手にとってみては戻していく。
正直な話どれがどんな味なのかいまいち判らないのだが、それゆえに多種多様な具の表示に好奇心がくすぐられる。
迷いに迷っていた飛峻だったがチラリとレジを見るとそこに何とも懐かしいシロモノを発見した。

「あー、ところでマユキサン。オニギリの代わりにアレはダメでしょうカ?」

妙に下手に出ながらレジサイドの什器に並ぶ肉饅を示しつつ真雪に話しかける飛峻。
だがその時もう一人の同行者が、自分と真雪のちょうど間に居たはずの萌芽の姿が消え失せていたことに気づいた。

「アイツは、モルガは何処に消えタ……?」

すぐさま飛峻は店内を見回したが、出会った時と同様に何の気配も感じさせずに居なくなった萌芽を見つけることは遂に出来なかった。



 ――暗闇からミーティオの意識が帰還する。
 ゆっくりと開かれた彼女の目には、煌びやかな装飾のついた天蓋が映った。

「…………?」

 ぱちぱちと目を瞬かせ、ミーティオは全身の慣れない感触に眉をひそめた。
 横たわっている自分の身体が、何かふわふわした柔らかい物に包まれている。
 そして何やら、冷たい金属のような質感が、右手首に密着しているのを感じる。

「なんだよこりゃあ……」

 西洋の宮殿に置かれているような、豪奢な天蓋付きのベッド。その上に羽毛のマット。
 ミーティオが見たことも無いほどの贅沢な寝具の上で、彼女は目を覚ましたのだった。
 半身を起こす。服装は変わらず黒いツナギである。何故こんなところにいるのかを思い出そうとして、嫌な記憶が蘇った。

「アラウミ……っつったか。覚えとけよ、歯の一本二本じゃ済まさねえ」

 ふと自身の右手に目をやって、金属感の正体が判明した。無骨な形状の手錠だった。
 その手錠からは長い鎖が伸びていて、もう一方の手錠に繋がっている。

 そちらの手錠は、白いドレスを着た少女の細腕に噛み付いていた。

「誰? ……誰?」

 ぐるぐる自分の脳が混乱していくのを、ミーティオは感じた。
 ここはどこだ。なんで連れてこられたのだ。なんだこの柔らかい寝床は。こいつは誰だ。隕鉄はどこだ!
 一つも答えが出ないまま、単純な彼女の脳味噌は限界を迎えた。難しい事は得意ではない

「ああーっ! メンドくせえ! 全部ぶっ壊してやらあ!」

 がばりと跳ね起きてベッドから降りる。手錠の鎖は長く、眠れる少女を起こしてしまうことはなかった。
 床には長い毛の絨毯が敷かれており、砂利や瓦礫に馴染んだ足にはかえって異質に感じられる。
 天井には重そうなシャンデリアがぶら下がる。冷蔵庫、テレビ、エアコン、その他の家具類も全てが高級品であった。
 無論、高級品どころか普通の電化製品すら所持したことのないミーティオは、それらに興味を示さない。

「『ファウスト』……!」

 拳に重力波を纏わせ、そのまま白い壁を殴りつけた。
 大抵のコンクリはこの技で砕くことができる――はずであったが、しかしその壁にはヒビすら入らなかった。
 金属製であっても歪みや凹みが生じないわけがない。異常な事態にミーティオの野生の勘が騒ぎ出す。

「……もしかしてこりゃ、出れねえのか?」

【ミーティオ:目覚める。謎の少女の存在】

【監禁場所:BKビル(二十五階建て)・最上階】

・概要

 都市のほぼ中央に位置する高層ビル。表向きは高級な雑居ビルという位置づけですが、
 その実ビルを管理するのは指定暴力団『成龍組』であり、ビルを出入りするのもほとんどがそのスジの人間です。
 またBKビルにはこっそりと文明『物体変質』《オーバーライト》が組み込まれており、
 ビルの外壁・内壁に作用する力に対して硬質化するため、ビルそのものの破壊は非常に困難になっています。

・内部構造

 一階〜十階:商業エリア。レストランや装飾品店など、高級志向の店が入っています。

 十一階〜十五階:事務所エリア。保険会社や法律事務所の事務所が入っています。

 十六階〜二十三階:居住エリア。指定暴力団『成龍組』の構成員が住んでいます。

 二十四階:管理エリア。荒海銅二を始めとする組幹部が居住しています。

 二十五階:???エリア。ミーティオは今ここにいます。

339前園 久和 ◆KLeaErDHmGCM :2010/02/27(土) 18:20:58 Q
俺が興味を持った男が見た女、それが提示した条件は三つだった。

>「まずは、名前を名乗ってください」
>「次に、もし貴方がどこかで情報…どんなことでも構いませんが、それを得たら隠さず全て私達に話す事」
>「互いに命の危険が迫った場合、己が命を賭してでも相手を守る事」

情報と、後はまあおっさんに言った事だ。

「分かった、約束する」

女の方をまっすぐ見て答える。
…まあ、嘘だけど。
情報はまだしも最後の条件は無理だ。
女が人である限り、ね。

「情報…」

俺はその言葉を口にしてふと思い出す。

「そうだ、萌芽とやらから送られてきた情報はもう二人とも知ってるだろ?」

二人とも戦えるみたいだしな。

「よーし、終わ」

…ああ、忘れてた。

「それと名前は久和、前園久和だ」
340宗方丈乃助 ◆d2gmSQdEY6 :2010/02/27(土) 19:26:11 0
>>328
>「うーん、わたしが探してたのは宿よりも着替えなんだよね。まぁ、他にも何かないかなって漁ってたけど……」

少女は平然とした様子でサングラスを掛ける。
広瀬君は呆然としたまま宙を仰いでいる。
「てめぇ……何するつもりッスか?」

少女を睨んだ瞬間、体が硬直し何も出来なくなる。
丈乃助は必死で体を動かそうとするがどうする事も出来ない。
「て…めぇ…まさか、文明って奴を使いやがった…な」

「文明!?嘘……まさか、文明使い!?」
広瀬君が正気を取り戻し、少女を追おうとするが時既に遅し――

>「じゃあね、ばいばーい」

「あ……いなくなっちゃった。どうしたの、丈乃助君。
冗談なら止めてよ!?金縛りの真似なんてさー」

「…冗談じゃねぇよ。マジにうごかねぇってんだよ…
つーか、早いとこ母ちゃんと姉ちゃん助けた方がいいぜ。
警察も呼べ。」

「あ…ぼ、僕の預金通帳ぉおおおおおお!!!」


こうして広瀬家の夜は更けて行った…(後日被害届けは提出)

【ゼルダに逃走される。時間軸は翌朝(喫茶店集合へ)】
341三浦啓介 ◆6bnKv/GfSk :2010/02/27(土) 21:04:30 0
「あ、でも連中が全滅するっていう心配はないですよ? 僕が呼びかけたのは、あくまで”戦闘力のある”人たちだけですから」

謝罪の後に、竹内萌芽は言葉を続けた。
重ねて、軽薄な笑顔が後を追って姿を見せる。
どうにもコイツは浅慮が目立つと、三浦はこれみよがしに溜息を吐いた。

「……いいかな? 戦闘が出来るって事は基本的に、それだけ有能な連中と言う事なんだよ。それを理解しているかい?」

当然、単純に身体能力が高いだけの者もいるだろう。
しかし彼らは異世界の住民、となれば当然『文明』でない異能の持ち主も存在する。
また何も能力を持っていない輩にしても、戦闘に携わる者なら優れた六感を持っている筈だ。
勿論『イデア』を探すに当たって、彼らの能力が役立つ公算は未知数ではある。
だが無いよりはあった方がいい。当たり前の事だ。

極論を言えば三浦にとって、『イデア』の探索に役に立たない者は死んでも一向に構わなかった。
だが誰が有用で誰が無用か、そんな事は彼にも萌芽にも知り得ない。
そもそも、異世界からどれだけの人数を呼ぶ事が出来たのかすら、正確には分からないのだ。
そこの所を、この這いつくばって涙目になっている男は分かっているのか。
考えて、三浦はもう一度嘆息を零した。

「まあそんなわけで、あなたの邪魔になるようなことはしませんよ。『イデア』だってちゃんと持ってきますし」

萌芽の言に三浦は再三、呆れを吐息に交えて吐き出す。
この萌芽と言う少年はなまじ能力が特異なせいか、一人よがりな思考に傾倒しやすいようだ。
『追放投票』≪サヨナラバイバイ≫なんて『文明』があればいいのにと、三浦は思考の隅っこで取りとめも無い願望を抱いた。

「だからしばらくは、黙って見ててください」

ぼんやりとしている内に、萌芽は何やら姿を眩ましてしまった。
とは言え彼の能力を断片的だが娘から聞いている三浦は、今更驚くでもなく、ただ双眸を細める。

「あれ? ……お父さん、追いかける?」

一瞬面食らったサイも、すぐに父親に問い掛けた。
まだすぐ傍にいるかもしれない萌芽への警戒は、皆無である。
仕返しでもされれば、それだけ父親に心配してもらえるのだ。
彼女にとってこの状況は、役に立てるし父の心配も得られる、正に良い事尽くめであった。

「いや、一応反省の色は見せたんだ。必要ないよ。それより……」

言いながら、三浦は六花の手を引いてサイに歩み寄る。
当惑する二人の娘を強く抱き寄せて、誰もいない虚空へと彼は意思を放った。

「まだいるなら聞きたまえ。今回は見逃そう。だけど今、この子達に手を出す事は許さないよ」

声は虚空へと広がっていき、返事はない。
代わりに彼の胸元で二人の娘が顔を赤めたり綻ばせていたが、彼は気付かず言葉を続ける。

「それに……あまり舐めない方がいいよ。この世界を、『文明』を、他の世界からやってきた輩を」

そして、と彼は言葉を続く。

「この僕を、舐めない方がいい」

萌芽が場から立ち去る直前、三浦はおもむろに、彼の方へ穏当ならぬ視線を揺らした。
それは単なる視界の推移か、それとも確かに萌芽を捉えていたのか。

「……さて、僕達も帰るとしようか」

険しい表情を一転してしゃがみ込み、三浦は娘達ににこやかに微笑みかけた。
342三浦啓介 ◆6bnKv/GfSk :2010/02/27(土) 21:05:32 0
「とは言え、警告を受けてすぐにこれか。二度目のペナルティも、存外に近そうだね」

剣呑な表情で溜息を吐いて、彼は白衣の胸をさする。
中に潜ませておいた『文明』が一枚、なくなっていた。
娘達を抱き寄せるべく前屈みになった際に、姿を覗かせていたのだろうか。

盗まれた物は彼にとって大した物ではないが、盗まれたと言う事自体は、彼にとって大事であった。
少なくとも竹内萌芽は、彼の思い通りにはならない。
ならば彼が『必要なくなった時』『邪魔になった時』に、始末する為の算段が必要となる。

「追々、あの訳の分からん能力の対策を練らないとな。
 補足するだけなら『要人用心』≪ストーキングストック≫で可能なのはサイが実証済みだ。
 だが先程のように位相そのものをズラしての逃避を阻止するとなると、どうだろう。
 『情報干渉』系統の文明なら……いや、そもそもあの能力の本質はなんだ?
 自らの情報を自在に管理する……違うな。それなら彼は変幻自在、怪我だってすぐに治癒出来る筈だ。
 となるともう少し下位に互換していけば類似する性質が……」

「おとーさーん、ねえってばー!」

顎に右手を運び抑揚のない声を紡いでいた三浦の袖を、サイが強く引いた。
思考の泥濘に沈んでいた彼の意識がサルベージされる。
何度か呼びかけていたらしく、サイは頬を膨らませていた。

「っと、ごめんよ。なんだい?」

「お父さんが呼んだ人達、一人が公文に捕まったみたい。今なら接触出来るんじゃない?」

むくれたサイを傍目に、素早く六花が用件を告げる。
先を越されたサイが彼女を睨むが、もたもたしているのが悪いのだと、六花はしれっとしていた。

「あ! そ、それともう一人! 何だか怖い顔したオジサン達にも誰か捕まってたよ!」

思い出したようにサイがまくし立てた。

「なるほど。ありがとう、サイ。……彼が余計な事をしてくれた事もある。彼らには早めに接触しておきたいな」

そして三浦はサイと視線を交わして、頼むよと言った。
彼女は明朗に従順に、首を大きく縦に振る。

「……でも、どっちに行くの? お父さん」

「そうだね。強面のオジサン達は手間がかかりそうだから、明日に回すとしよう。ひとまずは、公文からかな」

かくして三浦と二人の少女は再び『瞬間移動』によって、祭壇の跡地から姿を消失した。
343三浦啓介 ◆6bnKv/GfSk :2010/02/27(土) 21:06:28 0
子供連れで訪問を果たした三浦に、公文の面々は一部、怪訝な表情を浮かべた。

「……都村さん、誰っすか。あの人」

NOVAの中でも新顔の男が、装備を解きながら上官に耳打ちをする。

「……知らんのか、少しは本を読め。彼は考古学者にして文明の権威、三浦啓介だ」
「あー、何か週刊誌で読んだ事あるかも。んで、何で学者さんがここに来てるんすか?」
「そうだな、彼の説明に一つ付け足そう。彼は研究の名目で多くの文明を合法に所持してる。
 そしてその多くを、公文に殆ど無償で貸してくれているのだよ」
「なぁるほど。まあウチが進研の奴らに借りる訳にもいきませんからねぇ」

新人は大きく頷いて、
「で、結局何であの人はここに来たんすか?」
周りに大きな溜息を呼んだ。

「……知る訳ないだろう。だが、彼は公文と懇意な関係にある。どんな用事にせよ無碍には出来んぞ」

身近な隊員に責任者を尋ねた三浦が、都村の元へと歩み寄る。
柔和な微笑みと小さな会釈に、彼女はやはり機敏な敬礼を返した。

「ようこそいらっしゃいました、三浦教授。ご用件をお伺いします」
「こんにちは。……確か都村さん、でしたか? そんな堅い挨拶は結構ですよ」

三浦は相変わらずにこやかに言うが、立場を鑑みれば当然だと都村は譲らない。
両者が顔を合わせたのはたったの数回程度だが、この厳格さは容易く意識に刻み込まれる。
浮かべる笑みに僅かな苦みを浮かばせながらも、彼は口を開いた。

「それで用件なのですが、先程レベル3の文明犯罪の参考人を確保しましたよね。その人に会わせて頂きたいのです」

提示された要求に、都村は微かに眉を顰めた。
難色を示した訳ではない。むしろその程度ならば、容易い事だ。
だが、だからこそ、何故三浦はそのような要求をしてきたのかと言う疑問が生まれる。

「勿論構いませんが……詮索は、無用ですか?」

駆け引きなしに、都村は尋ねる。
下手な折衝を仕掛けて機嫌を損ねれば、今後にまで影響を及ぼす。
答えが得られなかったのならば大人しく退く事を前提に、彼女は問いを発していた。

「ええ、無用ですね」

微笑みを取り戻して、三浦は返答する。
一瞬、二人を取り巻く空気が冷ややかに変質した。
だが、

「なにせ、理由がどうにも単純過ぎますから。聞けばその人は『文明』を持たずにその場を切り抜けたそうで。
 その事に、ただ単に興味が湧いたってだけなのですよ」

朗らかに続いた言葉が空気を元に戻し、都村の強張った表情をも和らがせた。
344三浦啓介 ◆6bnKv/GfSk :2010/02/27(土) 21:07:15 0
「そう言う事でしたか。それではどうぞ、こちらです」
地下へ続く階段と長い廊下、更に幾枚もの扉を経て、三浦は簡素な灰色の小部屋へ案内された。

「この先です。ご覧下さい」
マジックミラーを通して覗き見が出来るらしく、三浦は都村に言われるがまま隣の部屋を覗く。

佐伯零は厳重極まる拘束を受けていた。
後ろ手の形で手枷を、椅子の足から離れられぬように足枷を。
更に彼女の胴体はビデオカメラに宿された『見敵封殺』によって完全な不動を強いられていた。
その上でハンドサイズのレンズ、これもやはり『見敵封殺』を持った男が三人、
ビデオカメラの男と合わせて部屋の四隅を押さえる形で待機している。
奇しくも彼女のボンテージ姿が、状況と絶妙にマッチしていた。

「……随分と手厳しい拘束だね」
微妙に呆れ返った口調と表情で、三浦が零す。

「文明犯罪を文明無しで切り抜けるなんて、漫画みたいな事をしてのけてますからね。これくらいは」

さも当然と言った口調で都村は返した。
けれども、三浦はこの厳戒態勢を解いてくれるよう、頼み込む。

「僕が彼女に話を聞かせてもらうのですから、失礼はないようにしなければなりません」

三浦の言い分はもっともだった。
都村は彼の言う通りに、見張りを退室させる。
部屋には解放された佐伯と三浦が、小さな机を挟んで座っていた。
二人の娘は少しふて腐れながらも、部屋の外で留守番をしている。

「どうも、僕は三浦啓介。考古学者で、文明についてはそれなりの知識を持っています」

三浦が切り出すが、どうにも呆けた表情を浮かべていた。
文明の意味が未だに分からぬ以上、三浦がどのような人間かも分からないのだろう。

「まあ、分かりやすく言えばこうですよ。……僕は貴方達の身上を知っている。
 その上で力の貸し借りがしたい。元の世界に帰るにしても、この世界に留まるにしても、僕は貴方達の力になれる」

どこまでも友好的に、笑顔を浮かべて三浦は提案した。
345佐伯 ◆b413PDNTVY :2010/02/27(土) 22:50:27 0
灰色の個室の中、零はどこから見ても「怪しい」と言う形容が似つかわしい男と対峙していた。
髪の毛はぼさぼさ。白衣を着ているがその白衣も所々にシミがあり白が好きと言うイメージではない。

「単に着る物が白衣しかない。髪の毛を梳かす暇があるなら研究に使いたい」

それが零の感じた印象だった。そしてそれは誰しもが抱くであろう印象でもある。
男の名は三浦。彼の言った事を信じるならば彼も又、零達と同じ境遇。もしくは……呼び出した張本人となる。
それならば、返答は慎重に行かなくてはならない。
零はゆっくりと口を開き、三浦と言う男に謝罪の言葉と質問を投げかけた。




「なるほどね。これが私のロールか……」

四時間以上拘束されていた警視庁を見上げると零は譲り受けたばかりの「足」に火を入れる。

カワサキ ニンジャZX−12RC ピーコック

これを渡されたときは思わず苦笑してしまったものだ。マジョーラカラーの黒いボディ。
四本出しの極太マフラー。本来ついている筈の下部ボディパーツは取り外され、
フロントのライトは黒いクリアーカ―ボンに変更。
内部の状態も彼女が「知っている」マシンにそっくりなのだから。

なぜ、零がこの様な足を手にいれ、釈放されたかと言うとそれは三浦の提案を受けたからだった。
彼の提案した内容は至極簡単なものだった。

「イデアを手に入れる為の協力をしてほしい。
 今はまだ詳しい指示は出せないがその時に指示に従ってくれれば良い」

そういった内容だった。
346佐伯 ◆b413PDNTVY :2010/02/27(土) 22:51:55 0
イデア。それが何であるかは分らなかったが、三浦と言う人物の力はかなり強いものだ。
その上、彼はこう告げてきた。

「もし、条件を呑んでくれるならばここから出して貰えるように計らいましょう」

これはありがたかった。さすがにあの状況では逃げ出すのは容易ではなかったし
何より、あのじっと見つめてくる男たちの目が気色悪いことこの上なかったからだ。
結果として、零は三浦の提案を呑んだ。そしてその結果として零にはこの世界での役目を受け取ることになる。

警視庁公安部文明課『NOVA』第三小隊所属 独立文明回収班 佐伯 零

少し長いが、要約すると三浦の指示に従い文明を回収したりする仕事だ。

「三浦啓介か……」

そう言い、別れ際の彼の様子を思い出す。
どこか読めない男だ。零の戦闘力を知った上で彼は正面から対峙してきた。
もし機嫌を損ねたら瞬きをする間もなく首の骨をへし折られるかも知れないと彼は言っていたがその通りだ。

「余程の自信家か、私の性格からそれは無いと判断したか……」

溜息を一吐きしてアクセルを繋ぎ、バイクを発進させる。
最初に確保するべきは連絡手段、ゼロワンと「彼」の分の携帯電話を入手しなければいけない。
次に、場合によっては必要になる文明持ちへの効果的な戦術。文明とは随分と厄介な物の様だ。素手では苦戦する時が来るかもしれない。
最後にあまり想定したくはないが三浦へ対する予防線。良いように利用されてポイだけは避けなくてはならない。

やる事は山積みだ。

「でも、その前に……食事ねぇ」

とりあえず、零は最寄りのコンビニへとマシンを走らせた。
347三浦啓介 ◆6bnKv/GfSk :2010/02/27(土) 23:39:10 0
うだうだ話し合いを描写する時間もなかったので、内容について注釈チックに補填をば。

:三浦は嘘を吐きました。
 嘘の内容は佐伯達が来たのを知っているのは、別の誰かの陰謀であると言う事。
:自分はその陰謀を知っていて、阻止すべく、また異世界組を助ける事を行動原理としている。
:陰謀の主は『鸛』や『兎』と呼ばれる者を初めとした集団である事。
:イデアについては、帰る為、現代に残る為に必要な物としか言ってません。

ってなところでよろしいでせうか。
嘘を信じたか、なんてのは佐伯さんにお任せします。
348タチバナ ◆Xg2aaHVL9w :2010/02/28(日) 02:54:46 0
>>290
>>302
>>333

良くん(33)の轟沈が呼び水となって、カフェを舞台にした強襲劇はとりあえずの終演を迎える。
珍妙頭とウェイターの活躍によって店内はジャンキーズの死屍累々、破壊され尽した戦場に勝利の凱歌が宿る。
奇しくも最初の爆発で粗方の客が逃げるか隠れるかの選択に針を投じ、戦闘における流れ弾の被害者は出なかった。

とはいえこれだけの惨状が街中にあって、世間が無関心を決め込むはずがなく。
遠くで微かに聞こえるだけだったサイレンはもうすぐそこまで赤光を伸ばしてきていた。
ウェイターの言が及ぶには、こういった『文明』と呼ばれる超常の器物を用いた事件は、とある特務機関の預かりになるそうだ。

>「さっきから話は聞こえてるんだろう? オールバック、お前もだ。
 ジャンキー相手に大見得を切ってた様だが、鼻が利く連中の方が厄介だ。"レベル3"の重要参考人なんざ格好の獲物だ。
 もし奴等に喰らい付かれたら……キッチンの奥に走れ。スタッフ用の裏口が開いてる。店を出た後は真っ直ぐに駆け抜けろ」

「うん、僕としてもここで僕の存在が公になるのにはあまり芳しくない。一抜けさせてもらうよ――また会おう」

アクセルアクセスの顕現を解除し、ウェイターに示された裏口へと向かう。途中、ジャンキーズの所持していた武器を幾らか拝借した。
『文明』とやらの構造や仕組みを把握したかったし、あわよくば戦力の増強にもなろう。
店員は既に避難したのかそれとも隠れているのやら、蛻の殻となった厨房を突っ切り、通用口から外への生還を果たした。

「さて、これからどこへ隠遁しようかな……そういえばミーティオ君は一体どこへ行ったのだろうね」

カフェで食事を共にしたサングラス娘、ミーティオ=メフィストは襲撃時にどこかへ逃げ去った。
タチバナの認識では彼女は思春期系暴走中のいたいけな一般人であり、戦場から逃げてくれたのはむしろ好都合であったのだが、
その後の動向が知れないとあれば彼女を慮るに些かの躊躇いもない。なにせ彼女は少女で、タチバナはタチバナであるのだから。

「――ちょっと捜してみようか」

虚空に鼻を突き出し、胸いっぱいに大気を吸い込む。商店街裏通りを漂う夕餉と人込みの匂いを存分に嗅ぐわうと、おもむろに首を回した。
説明しよう。タチバナのアブノーマルスキルが一つ、『瞬香囚踏《エクセレントサーチ》』。空中を漂う女人の残り香を嗅ぎ分けて追跡する能力ッ!
その性能は異世界においても遺憾なく発揮され、記憶したミーティオの匂いが辿った軌跡に当たりがついた。

『においかいでおんなさがすとかしょーじきないわー。姿慎めよ変態駄犬野朗』

「君の生体トレーサーを使っても良いんだけれどね。無闇に顕現して痕跡を残すこともないさ。――おっと、こっちか」

路地の角を何度か曲がり、そして見つけた。
通りからは死角となった路上で、ぽつねんと取り残された鉄パイプ。何の変哲もないそれの類似品はそれこそいくらでも転がっているが、
一層色濃く染み付いた女人スメルを違えるタチバナではない。紛れもなくそれは、ミーティオが後生大事に引き摺っていた鉄パイプだった。

「これは……つまりアレかな、『これを手がかりに私を迎えに来て!』的な?彼女にそんなヒロイン願望があるとは想像し難いが」

『じょーしきてきにかんがえて、ゆーかいじゃないの。すくなくともおまえをまってるなんてことはないとおもわれー』

「ふむ、この手際の良さはカフェを襲った連中と違う組織かな。ともあれミーティオ君がここにいないという事実に変わりはないね」

誘拐であれ消失であれ、鉄パイプがここに置き去りである以上、彼女の恣意がそこにあったとは考えにくい。
となれば助けるべきだろう。同じ釜の飯を食った仲である。何よりも異邦人であるタチバナにとって、彼女を失うのは損得においても前者となる。

「とは言ったものの、彼女の居場所は依然不明、これほどの手腕をもつ組織相手に僕一人で立ち回るのも浅慮極まる……そうだ」

簡単な話だった。一人でできないのなら、協力を仰げばいい。丁度お誂え向けな面子と、先ほどアヤをつけてきたばかりだ。
すぐに引き返すのはまずかろう。カフェは現在特務機関による状況検分と事情聴取が行われているはずで、自分はそれを回避するため抜けてきたのだ。

(決行は明日。それまでに僕もこの状況に対して錨を投じておこうか。せっかく『文明』とやらも手に入ったことだしね)

そして、夜は更けていく。
349皐月 ◆AdZFt8/Ick :2010/02/28(日) 03:47:38 0
冷や汗がだらだらと背を伝う。
そう、昔からよく言われていた。

(脊髄反射で何かするのはやめたほうがいいと思うヨ?)

更ちゃん、全く持ってアナタの言うとおりでした。
皐月は今とてもピンチです。
「コイツ何言ってんの」的な空気が私の体を刺しています。
警官のおじ様、頼むから私をそんな目でじろじろと見ないでください。

神よ、迷えし子羊を救いたまえ――!

>>334
『俺……の――…』

果たして、神はいた。

『…――俺のマンションで住み込みのハウスキーピングを任せてる使用人だ』

思わず涙が溢れそうになる。
――神よ、この世はまだ慈悲で満ちています!
皐月が心の中でそんな風に思っていると、気のせいか微妙に歪んだつくり笑顔を浮かべている風味のウェイターが言う。

『そいつを明日までに始末しておいてくれ。
 それと俺はもう少し掛かるから、お前は先に帰れ。
 行政機関の仕事を邪魔しない様、勝手口から出て行くといい』

と、同時に渡される紙。


  "話を合わせろ こっちは不審尋問のスケープゴート
   交換条件 そっちは店長室の金庫の中身をシュレッダー"


『……ダイヤルは6桁だ。民数記の2章32節を開け』

周囲には聞こえないように言われた言葉に、不自然でないように頷いた。

「は、はいっ、わかりました!」

あたかも使用人であるかのようにそそくさと言われたとおり奥へと引っ込む。
350皐月 ◆AdZFt8/Ick :2010/02/28(日) 03:48:44 0
「……あれ、しかし私は何かいけないことの片棒を担いでます?」

店長室の金庫の中にある書類をシュレッダーにかける。
言われたことをそのまま言葉に出し、キーワードだけを抜き出すと何だかそんな予感がする。

「んー……まぁ、いっか」

考えても仕方ないし、どっちにしろ助けてもらった恩は恩だし、それ以前に頼まれごとはきっちりやっておきたかった。
金庫の場所は割りとすぐにわかった、というかどんと存在感をアピールしながら鎮座していた。

「えーっと民数記の……、2章32節だから……」

603550。
ダイヤルを手早くかりかりと回すと、すぐにカチンと音がした。

「よくこんなのパスワードにしますね……あれ?」

確かに金庫の暗証番号はあっていた。
引けば少し重いが、問題なく扉が開く。

だが。

この世界は皐月の知っている世界では、ない。
それは先ほどの異世界バトルで、嫌と言うほど経験した。
しかし冷静になって考えると、言語や通貨は通じている。
そして聖書に書いてある記述まで……どうやら同じらしい。

「何か、関係は……?」

この世界と元いた世界との相違点。

……まぁ、今考えても仕方ないか。

今皐月に必要なものは何か。
それは……現状を把握すること。
あの声の主、竹内萌牙と名乗った少年(多分)は後でまた連絡すると言ってはいたが、出来れば本人に直接あって話がしたかった。

「こんな馬鹿なことやめさせて、そして元の世界に戻してもらいましょう!」

中にあった書類をがさがさと引きずり出し、金庫を閉めてダイヤルを回してロック。
そのまま室内にあったシュレッダーに紙を配置し、スイッチを入れ――――


「…………ん?」


入れようとして、一瞬体が固まった。

……あ、安心して気が抜けたのでしょうか……?

気を取り直して、改めてスイッチを入れる。
紙の束はものの数秒で細切れになり、何が書いてあるかわからなくなった。
351皐月 ◆AdZFt8/Ick :2010/02/28(日) 03:49:33 0
「これでお仕事お終い……あとはどうしよ、一晩だけでいいから泊めて貰えないかな……」

財布の中の諭吉さん三人(あ、パフェ代支払ってない)は頼もしい存在ではあるが、この場所が自分の世界でないという前提条件の上だと、多少心許ない金額でもある。
携帯が使えないということは、恐らく通帳やキャッシュカードも使えない筈だろう。
何日間こちらにいなければならないのかわからない以上、節約するのは間違った行為ではないはずだ。
幸い、あのウェイターさんは竹内萌牙の声を聞いていたそぶりを見せた。
事情を説明すれば何とかわかってもらえる……そんな期待を寄せながら、店長室の扉をそっと開けて、フロアを覗き見る。
警官への説明はまだ続いている様で、話を持ち出せるような空気ではなさそうだった。

「んー……」

少し待っているほうが賢明だろう――だけど、ちょっと外の空気も吸いたい。
落ち着くまで、少し外に出て待っていよう……そう思って店長室から直接外へとでた。
……なんでそんな扉があるのかは考えないことにしよう、うん。




……。
…………。
………………。
352皐月 ◆AdZFt8/Ick :2010/02/28(日) 03:53:40 0

「――――ふぁ?」

気がついたら日が暮れていた。
……日が暮れていた?
…………暮れてる!?

「…………はぁ!? え、ちょ、なんですか!?」

自分がいるのは店の裏口なので、当然人の気配は無いが、逆に表通りからは時間帯相応の喧騒を感じられた。

「え、だって、え、えー!?」

外に出た時は流石にここまで太陽は沈んではいなかったはずなのに!?。

「どうしよどうしよどうしようー!? もしかして寝ちゃったりしてましたか!? 今までのは全部夢ですか! 頬をつねってみましょう!」

つねった。

「痛いです!」

痛かった。

「うう〜……」

わたわたと一人で大げさなアクションをしていると――それは、唐突に訪れた。

>>319
『あ、えっと……夜分遅くすみません。昼間喫茶店にいたシスターさん……ですよね?』

「ひぇ!? あ、はひ、はい!」

思わず叫んで、声が聞こえたほうを向く。

(……男、の人?)

少なくとも自分より年上だろう、なんとなく『特徴がつかめない』……そんな男の子がそこにいた。
微妙に苦しそうに、胸を押さえながら。

『驚かせてすみません……あの……よかったら助けていただけませんか……?』

そのまま、彼を支えていた足が、すとんと抜けるように――落ちた。

「わっ、だ、大丈夫ですか!?」

慌てて手を伸ばし、その体を支えようとする。
手にかかる体重は覚悟していたより軽く、皐月の腕力でもそれなりに支えられるものだった。
だが。

『申し送れました、僕……竹内萌芽と……』

その名前を聞いた瞬間、一気に力が抜けそうになった。
353皐月 ◆AdZFt8/Ick :2010/02/28(日) 03:54:20 0
「竹内――萌、牙?」

それは正にあの声の主。
自分がこれから探すべき、そして対話すべき相手の名前。

「ちょ、貴方が竹内さんなんですか!? ねぇ!」

体を揺するが、反応は無い。
いや、胸を押さえて苦しそうに呻く声が、聞こえた。

「……っ、け、怪我? してるの?」

問いには答えず、ただぐったりとした体。

「と、とりあえず一度中に……」

両脇に腕を挟んで、扉を開けてずるずると中に引きずる。
流石に皐月の力ではここまでで、床に寝転がす形になった。

「……竹内萌牙……さん、って言ったよね、この人」

敵。
皐月にとって目の前の存在は、そうである。
だが。

「……お話をしましょう」

『皆さんをこの世界に呼んだ、”あの人”の使者』
彼はそう名乗った。
それが竹内萌牙の意思なのか、それとも強制されたことなのか。
現状の皐月に、それを理解する手段はまだない。

「それで、聞かせてください……何でこんな事になったのか」

対話は意思疎通の第一歩、なのだから。

「貴方が何をしたいのか、代わりに力になってあげられるかもしれません」

そっと両手で右手を取り、言う。

「こんな事……こんな酷いことをやめて、手を取り合えるかもしれません」

目を閉じて、その言葉を。

「だから……目を開けてください」

ぴしり、とロザリオに浮かんでいた結晶が、割れた。
354皐月 ◆AdZFt8/Ick :2010/02/28(日) 03:55:25 0
「……あれ?」

苦しそうだった表情が、心なしか安らいでいる。
少なくとも皐月にはそう見え、それで少しだけ安心した。

「……ちょ、ちょっと待っててくださいね、今タオルとか、上にかけるもの貰ってきますから」

ぱたぱたと店長室をでて、ようやく公共機関の応対を終えたのであろうウェイターのところへ小走りで向う。
そして一言、今の現状――一晩宿を貸して欲しいとか……竹内萌牙の事……自分の伝えたい言葉を、そのまま口に出した。




「あの、助けてくれませんか?」





(……細かい事を言わないところも、君の悪い癖だヨ?)

ごめんなさい更ちゃん、次から心がけます。


【結晶1→0 竹内萌牙の治療に使用】
【竹内萌牙を介抱、カフェに連れ込む】
【ウェイターさんに迷惑をかけ続ける作業開始】
【空白の時間に何かしていた模様、何をしてたんだろうね?】
355lost ◆AdZFt8/Ick :2010/02/28(日) 03:56:35 0
――それは裏路地の一角。
暗闇の中で、一人の男が動いていた。

「畜生、畜生、畜生ォ……!」

ガン、ガン、と壁を殴りつける。
彼の『文明』は身体強化なのでその程度では拳も傷つかないし痛みもない、が……

「畜生ぉぉ、なんなんだあいつら、ふざけやがって、こんなの聞いてねぇ、聞いてネェぞ!」

その能力を持ってして、行っているのは単なる八つ当たり。
カフェに奇襲を仕掛けたチンピラの一人で、彼は偶然、逃げ延びられた。
要するに運が良かっただけの男――だ。
それこそ、『今はつかまっていないだけ』のことではあるが。

「良クンが負けるなんてありえネェ――畜生、何でこんな事に……あ、あいつらの所為で……!」

そんな、怒りと焦燥、そして混乱を抱えた男であるが故に、


「ダァレの所為だってェ?」


かけられた声が少女のものだとしても、よほどの刺激となって耳に入った。

「……! 誰だテメェ!」

聞こえてきた方向……後ろを向けば、そこにいたのは髪の長い少女だった。
ただ目だけが爛々と赤い……どこかの学校の制服なのだろうか、ベストにチェック柄のスカートをはいていた。
どう見積もっても中学生ぐらい、そんな少女。
まるで何かを小馬鹿にするようにニヤニヤと、ニタニタと、頭から足先まで値踏みするように眺めていた。

「ンだこのガキ……」

「アァ、気にすんなよ、アタシの名前とか細かい事はいいんだからサァ」

自分より体格も年齢も上であろう、そして見るからに柄の悪い男に、少女はそれが当然であるかのように横柄な口を聞く。

356lost ◆AdZFt8/Ick :2010/02/28(日) 03:58:09 0
「それよりアンタ、どうよ、自分の弱さを実感した気分はサ」

「!?」

「テメェに何も出来ねェ感じとか、無力感とか沢山味わったか? そのどうでもいいような文明で、サ」

「……ッの野郎ォォォォ!」

体を振りかぶって、発動させていた『文明』の右拳をそのまま少女に叩きつける。
一瞬で華奢な体を吹き飛ばし、圧し折り、砕くであろう一撃。
少女はそれを、左手で軽々と受け止めた。

「んなっ!」

「へっちょろい文明だなぁオイ、これじゃ無理だっつーの」

その笑みはさらに酷薄なものとなり……

「だからサァ、アタシがアンタに力をやるヨ」

『文明』を仕込まれたその右拳が、熱く発光し始めた。

「な、なんじゃコリャ……っ!?」

「安心しろヨ、パワーアップにゃわかりやすい変化がつきもんだろ?」

その熱は更に広がる、そして少女はその問いに答えた。

「アタシは木羽柄、そしてアンタはこれからアタシの駒だ」

「ぐ、ああああああああああああ!」

拳に篭った熱は更に激しくなり、男は膝を付いて唸りだす。
その様子を見下しながら少女……木羽柄は、言う。


「《文明開化》……ハッ、安心しろよ、どんな雑魚でも目覚めりゃそれなりに強いもんだぜェ?」


【《文明開化》起動、発動までは少々時間がかかる模様】
【チンピラの《文明開化》開始】

357lost ◆AdZFt8/Ick :2010/02/28(日) 03:58:59 0
分類:NPC
名前:木羽柄・椿(-きばつか・つばき)
職業:中学生
元の世界:「この」世界。
性別:女
年齢:14歳
身長:156cm
体重:外見軽そう。
性格:常にニヤニヤと笑っている、悪魔的少女。基本残酷。
外見:長い黒髪に紺色のベスト、赤と緑のチェックスカート。そしてギラギラと光る赤い瞳。
特殊能力:《文明開化》
椿の左手に仕込まれている、情報干渉系文明。
他者の文明に干渉し、《開花》と呼ばれる情報を付与する。
《開花》影響下の文明はすさまじい速度で文明が《発展》、あるいは《進化》を行う。
もちろん文明の《発展》に保有者が付いていけることが前提であり、扱いきれない《文明》を無理やり所持させられた者は反動を受けることになる。

《発展しすぎた文明はいずれ崩壊する》という前提情報を基準に成立している能力の為、急激な能力の上昇の代価として、近い将来に《文明開化》を受けた文明は滅んでしまう。
文明を仕込んでいる部位に直接触れていたほうが効果が高い、即座に《発展》させきる事も、恐らく不可能では無い。
上限が見えないような《発展し続ける文明》、あるいは発展した文明を保有できるような人間がそのまま弱点となる。
また当然ながら文明を持たないものに対しても無力。


備考:何かを企んでいる様子。《文明開化》は既に相当数の人間に使用した模様。
358フウマ ◆HX.SA1r9II :2010/02/28(日) 23:59:45 0
名前:フウマ
職業:元忍者
元の世界:この世界(時間軸は過去)
性別:男
年齢:20代
身長:175
体重:62
性格:猜疑心の塊
外見:肩まである長髪、ボロい着物、切れ長の目
特殊能力:忍術
備考:主君を裏切って逃亡した忍として各地を転々としていた男。
猜疑心の塊で決して他人に心を開かない。
現代では消滅したはずの文明「白刃」を持つ。

359フウマ ◆HX.SA1r9II :2010/03/01(月) 00:09:16 0
「……ハァハァ」

追っ手から逃げ続ける日々。ここは未だ戦国の世が続く世界。
この世界の「過去」ともいえる時間。そこに彼はいた。
崖に追い詰められる1人の男。無数の矢が男に突き刺さろうとする瞬間――

男は下にある滝へ向け、飛び込んだ。
男の行方は知れず、霞のように姿を消したという……

――目を、覚ませ――

「ハァ……ハァ……」

男が目覚めたのは元の世界とは似ても似つかない場所。
冷たい地表、アスファルトが全てを占める表通りだった。
行き交う人々が、男を奇異の目で見つめる。
そのような目で見られるのは馴れていた。だが、何かおかしい。
彼らの服装、周りの家屋。何もかもが、自分のいた世界と同じではない。

腰に在る「白刃」を確認し、安堵すると同時に再び険しい眼つきに変わる。
男、いやフウマ(不烏馬)は歩いてくる1人の男を睨み、小さく呟いた。
>>332「血の匂い……この世界も、俺の居場所はないか。」
360月崎真雪 ◇OryKaIyYzc:2010/03/03(水) 20:41:25 0
結局、竹内萌芽は敵意を持って現れた訳では無いようだ。

自分は異世界から呼び出された者であること。
『イデア』を探させて、手に入れることが呼び出された理由であること。
それを伝えた上で、コンビニへ向かう真雪と李に付いてきているからだ。
因みに竹内の説明の途中、再び嘘の意思を感じたが、真雪は誰にも伝えていない。
伝えるなら、竹内の居ないところの方が邪魔をされずに伝えやすいだろうから。



「むう……オカカとコンブ、いやこの銀鮭も捨てがたイ。
 何?辛子明太子だト!?」
コンビニのカゴに緑茶を二つ放り込み、おにぎりを物色する。
隣ではしゃいでいる李への笑いをこらえ、後ろを振り返った。
竹内に、聞きたい事が山ほど有るのだ。
「そう言えばさあ、ちょっと聞き…!?」
振り返った瞬間、竹内は何かに攻撃されたように息を吐いた。
息が呼び水になったらしい。彼が佇んでいる場所に集中して霧が集まり…

そして、竹内萌芽は霧となり消えた。
「………」



呆然と竹内の消えた方を見つめていた真雪を
現実に引き戻したのは、李の声だった。
「あー、ところでマユキサン。オニギリの代わりにアレはダメでしょうカ?」
「っ! ごめん、な…」
その声に驚いて李を見上げると、李は険しい顔であたりを見渡していた。
どうやら、竹内が消えた事に気付いたらしい。

「アイツは、モルガは何処に消えタ……?」
「霧になって消えちゃった」
その呟きに真雪が答えると、今度は李が驚いたらしい。
何事かと問いただそうとする李の言葉が出る前に、真雪は雰囲気を変えて袖を掴んだ。
まるで、竹内など最初から居なかったかのように。
「じゃあ、もう買っちゃお? それと、飛峻さん…やっぱりあれをご所望?」
そう笑いながら真雪の指がさしたのは、肉まん。
李も笑って頷いた。
361月崎真雪 ◇OryKaIyYzc:2010/03/03(水) 20:42:07 0
肉まんやおにぎりや緑茶やらが入っているレジ袋を下げて、真雪達は夜の住宅街を行く。
そこに、やはり竹内は居ない。
おにぎりを一個食べ終えて、真雪は李を見上げた。
「ところでさあ、飛峻さん」
肉まんをほうばっている李は、何だと真雪を見下ろす。
「コンビニに行く前にあいつが言った事、あれ…嘘、有るよ」
真雪の言葉に、李は首を傾げる。真雪は気にせず続けた。
「『ある人の意思の下戦闘能力のある者同士は
最後の一人になるまで戦わなければならない』
それはあいつが有利になるための嘘。多分あいつは、戦闘能力は低いんじゃないかな?
『最後の一人は自分達を呼び寄せた人物に会うことが出来、"報酬"が得られる。
その"報酬"を使えば元の世界に戻れる』
それも嘘。これは直前の嘘を信じさせる為の嘘ね。
あいつは『イデア』と言うモノを集めているみたいだった。
呼び寄せた人の目的はきっと、あいつや飛峻さん達に
『イデア』を集めさせること、だと思う」
真雪の言葉に、李は口を開けた間抜けな表情になる。
問い掛けようとする李を遮って、真雪は話題を変えた。
「あ、そうだ! 飛峻さんはこの世界に来たばかりなんでしょ?
泊まる所とか…有るの?」
その言葉に李が首を振ると、真雪は小さく笑う。
「無いんだったらさ、私の家においでよ!
お母さん説得して、泊めてあげる」
言った後に李の前を行き、後ろを振り返った。
そして真雪は、李に手を伸ばす。
「どうする?」



【時間軸:夜】
【真雪は李を泊めるつもりらしい】
362葉隠 殉也 ◆sccpZcfpDo :2010/03/03(水) 23:11:29 0
>>359
食料を求めて歩いていると六回目の腹の虫の音が鳴る。
自分としては思っていないのだが、やはりこの世界だと服装が目立つ。
人に寄っては奇異の目で見たり色物の目で見たりと様々だ
中には、コスプレイヤーやらなんやらですかと言われ撮影してもいいですかまで言われたものだ

「しかし…中々食い物が見つからん…」

その言葉に反応するように七回目の腹の音が鳴る。

「背に腹は変えられん…やはりどこかで…」

と辺りを見回すと、鋭い視線を感じ緊張感が走る
その視線の方向を辿り一人の男に視線を止める。
その男は明らかにこの世界とはそぐわぬ格好をしており、ある考えが過ぎる
もしかして別世界から来た人間ではないかと
それならば、接触してみようと思い近づく

>「血の匂い……この世界も、俺の居場所はないか。」

自分の事を見てそう言っていた相当大変な経験をしてきたのか
それは分からないが
話しかけようとした直後に追跡用英霊が反応し、捕まっていない方の女子の居場所を捉えた。
いまはすぐに行くべきだろうが、とりあえずこの者との接触が第一と判断した

「君はもしかして別世界から来た者か?」

相手の答えを待つ。

363フウマ ◆HX.SA1r9II :2010/03/03(水) 23:21:33 0
>>362
自分の目の前に立つ男は尋常ならざる妖気を放っている。
外見も、周囲の連中とは明らかに異なる。
フウマは刀に手を掛けたまま少しずつ歩みを進める。

「君はもしかして別世界から来た者か?」

別の世界?どうやらこの男は何らかの方法で「この風景」と自分のいた
風景が違う「世界」だということを知っているらしい。
自分を嵌める為の罠の可能性もあるが、ここは聞いておいて損はないだろう。
刀を収め、警戒心を解いた振りをしながら男に返答する。

「うぬは、この世界が何なのか知っているような口振りだな。
俺はこの風景を知らん。うぬはこの世界とやらの人間か?
それとも別の世界からの人間か。
…どうした?腹の虫は随分と鳴き通しのようだが…ほれ。」

袋から草団子を投げ付ける。腹持ちの良い忍者の飯だ。
心の奥底で殺した筈の良心がつい芽生えてしまうのがこのフウマの
悪い癖である。

情報料と考えれば悪くないだろう。そう考え直し男の答えを待つ。
364葉隠 殉也 ◆sccpZcfpDo :2010/03/04(木) 00:20:32 0
>>363
>「うぬは、この世界が何なのか知っているような口振りだな。
俺はこの風景を知らん。うぬはこの世界とやらの人間か?
それとも別の世界からの人間か。
…どうした?腹の虫は随分と鳴き通しのようだが…ほれ。」

やはりこの世界の人間ではないようだった。
そして食い物をくれるので悪い人間ではない
見ず知らずの者にくれるなんてそうそういない

「いいのか!?君は良い奴だありがたく頂こう!」

その場で1分もしない間に胃袋に消えた。
そして命の恩人に礼を述べる。

「済まぬ…この恩は絶対に返す命を救われたも同然だからな」

基本は受けた恩は全力で返す、それは彼の信念にして流儀であった。
とりあえず、今知っている事をすべて話す
自分達は何者かに呼ばれた存在で、戦闘力がある人間は戦わなければならない事
そして勝った者には何でも願いを叶えて貰えるらしい事を話した上でこの男に問う。

「私はこの事を告げた竹内萌芽とあの人とやらを見つけ出し、帰る方法を聞きだす
 俺はもちろんそんな馬鹿げたゲームには乗らんむしろぶっ潰そうとも考えている
 そこで力を貸してもらえぬだろうか?」

礼を尽くし頭を下げ、共に戦って欲しいとこの男に頼み込む
果たしてこの男は協力してくれるだろうか?
365ウェイター ◆T28TnoiUXU :2010/03/04(木) 00:44:38 0


『――――あの、助けてくれませんか?』【>>354

  "胸を押さえて苦しそうに呻く声が、聞こえた"

少女の声と"天からの眼"によるテクストがオーバーラップする。
スクランブルに引き続いて、本日二度目の黙示らしい。
同時に、幾つかの断片的なヴィジョンを直観した。

「……悪いが、此処から先は"代行"のビズになる」

今までも啓示が降りるのは不意かつ不定期だったが、
これほどの短期間に何度も"視えた"のは初めてだ。
"能力"同士が共鳴しているのか、あるいは――――

     "目を閉じて、その言葉を"

――――引かれ合っているとでも言うのか。

「俺は完全前払いの依頼しか受けないコトにしてるんだ。
 その代わり、報酬次第でどんな厄介事でも代行を請け負う」

悪戯を思いついた様な良からぬ笑みを一瞬浮かべた後に、表情を消した。

「とは言っても、その様子じゃ大した金は持ってなさそうだな」

真横の壁に腕を立て、無防備な修道女の退路を塞ぐ。

「そういうわけで、お前に払ってもらう報酬は―――」

少女の顎先に指を伸ばして可憐な童顔を上向かせる。
丸眼鏡のレンズ越しの瞳を視線で捉まえて、離さない。

「―――税込価格で1050円だな」

少女の額に、ぺち。とドリンクとパフェの伝票を貼り付けて、
"厄介事"が転がってるであろう通路の先へと歩き始めた。

「やれやれ……ってトコか」

一拍の後に、くすぐったい何かが纏わりつく様な感覚があったが、
俺の精神衛生管理上、それには気付かなかったコトにしておいた。
366ウェイター ◆T28TnoiUXU :2010/03/04(木) 00:45:30 0
……



ドアを足裏で開くと、クローゼットの僅かに膨らんだ扉を煙草の先で指し示した。

「―――おい、なんちゃって修道女。
 早速だがブランケットの発掘作業に入ってくれ。
 おあつらえ向きのが何枚か突っ込んであった筈だ」

必要最低限の家具に、マリンブルーのカーテン以外は灰色が基調の殺風景な部屋。
一人暮らしでは広さを持て余し気味の、リビング兼ダイニング兼ベッドルームだ。
ここまで背負って来た少年を横抱きにして、レザーのカウチソファーに寝かせる。

「邪魔なモノは一回外に出しちまっていい。
 夢見の王子様に風邪をひかせたくなかったら急げ。
 ただし、アタッシュケースにだけは絶対に手を触れるな」

後ろを見ないで指示を出しながら、深く眠っている少年の様子を改めて確認した。
学生服の襟元のボタンを一つ余計に外して、ベルトを緩めてやりながら観察する。
過度に虚弱な身体には見えないが、特に鍛えられてもいない―――平均的な体格。

「……ああ。一つ言い忘れてたが、雪崩には気を付けろ」

整っている顔立ちもしていなければ、ひどい悪相とも言えない―――平凡な容貌。
完璧なまでに普通の高校生だ。"不自然なほどに自然な"高校生像がそこにあった。

「ついでに、そっちのシェルフからワイルド――…
 …――あー、七面鳥のラベルのボトルを出しといてくれ」

俺の為の用事も言いつけてみたのは、先程の主従芝居の余韻が残っていたせいだ。
妙に時間が掛かって到着したブランケットを二枚重ねにして、少年の身体を覆う。

「お前も腹が減ってるなら、向こうのキッチンを使っていい。
 食材と調理器具は見れば分かる。勝手に作って勝手に食え」

窓際のフックレールからフード付きのバスローブをハンガーごと引っ掴んだ俺は、
依頼人だか使用人だかわからなくなった少女の意向も聞かないで浴室に向かった。
367ウェイター ◆T28TnoiUXU :2010/03/04(木) 00:46:39 0
……



「ひょっとしてオーバーワークでへたばってるのか? なんちゃって住み込み仔猫」

俺は風呂上りで濡れた髪の毛を乱雑に拭き終えて、ナイトガウンに袖を通す。

「シャワーやベッドもキッチンと以下同文だ。お前の好きに寛げばいい」

少女の疲労に鞭打つ様な軽口を叩きながら、ベッドの端に腰掛けた。
"御使い"の方は消耗が激しいらしく、意識の回復は読めない。
今夜は色々と有り過ぎたが、これで漸く落ち着けそうだ。

「必要ならクローゼットに紛れ込んでる女物はくれてやる。
 ……もう、誰も使わないからな。
 それから本題だが――」

――出しかけた声を呑んだ。
潤んだ瞳と、僅かに開きかけた唇。
少女が見せたその表情が、俺にとっては―――

【皐月選択】
ニア
  1.―――何かを口に出そうか迷っている様に思えた。【>>368 "気付けのバーボン"へ】
  2.―――あくびを噛み殺そうとしている風に見えた。【>>369 "寝酒のバーボン"へ】
368ウェイター ◆T28TnoiUXU :2010/03/04(木) 00:47:43 0
【気付けのバーボン】

ボトルとグラスが載ったサイドテーブルを引き寄せる。

「――何か考えてるコトがあるなら聞かせろ。
 謙譲や慎みは美徳か? 俺はそうは思わない」

ロックの入っていないロックグラスに対して2フィンガー。

「そいつがくだらない戯言の類だったら歓迎するぜ。
 ……どうせ酒の肴だ。世迷い言くらいが丁度いいのさ」

傾くスピリッツが、遠慮がちなシーリングライトを琥珀色に反射した。



【GW1日目の深夜へ】
369ウェイター ◆T28TnoiUXU :2010/03/04(木) 00:48:49 0
【寝酒のバーボン】

空になったグラスをサイドテーブルに置いて、ベッドから腰を上げた。

「――いや、面倒な話は明日にしよう。今夜は眠っちまえ。
 合歓の木が足りなくなったら、遠慮しないで声を掛けてくれ。
 添い寝は5000、腕枕は10000、抱き枕は15000、それ以上は30000だ」

"御使い"の眠るソファに向かい合う位置で、フローリングに座り込む。

「……明日、適当な時間が来たら叩き起こしてもらえるか?
 手段は問わない。自慢じゃないが寝起きは最悪なんでな」

ベッドの横に背を預けて片膝を立てると、俺は静かに目蓋を降ろした。


――― One sheep, Two sheep, Three stray sheep...



【GW2日目の早朝へ】
370フウマ ◆HX.SA1r9II :2010/03/04(木) 01:18:11 0
>>364
「いいのか!?君は良い奴だありがたく頂こう!」

疑いも無く団子を頬張る目の前の男を見るに、どうやら本当に
善良とされる人間のようだ。
しかし、フウマの中の疑心は消える事はない。
冷たい目で見つめながら男の話に耳を澄ます。

「私はこの事を告げた竹内萌芽とあの人とやらを見つけ出し、帰る方法を聞きだす
 俺はもちろんそんな馬鹿げたゲームには乗らんむしろぶっ潰そうとも考えている
 そこで力を貸してもらえぬだろうか?」

竹内萌芽という者が、この話の主軸に在るらしい。
そして「元の世界」とやら。つまりは俺の住む風景に戻してやるという話だ。
他にもいるであろう、目の前にもいる「他の世界から来た者」を殺す事で自らを救う。
フウマは迷う事無く、腰に下げた短刀を引き抜く。

「実に面白き話よ…そうは思わぬか?うぬ達も…」

葉隠に斬り掛かると見せかけ、背後から襲おうとしていた黒服の男達に刀を振り下ろす。
背後に感じた殺気を一瞬で切り裂く。
喉元を切り裂かれた男達は声にも出来ない悲鳴を上げ、血飛沫と共に倒れた。

「どうやら、うぬを探していた連中のようだな。
もしくは、俺のこの”白刃”を狙ったか…」

刀と共に腰に携えた銀色の長刀を見せる。
短刀に付いた血を布で拭いながらフウマは男達の屍から有用そうな物を探り始める。

「さっきの答えだが…うぬは、どうしてこの世界の事柄に手を貸す?
どうでも良かろう…所詮は他人。関らぬが良き事だ。
こんな連中までうぬを狙っているのだ。命がいくつあっても足りぬ…しかし。」

男達の懐から銃器を拾い上げるが興味無さそうに放り捨てる。
一方で、ナイフや携帯には興味を示し懐へとしまっていく。

「俺は元の場所には戻りとうは無い。
くだらぬ世界だ。人が人を殺し合い、いがみ合う世だ。
もうすぐ夜が明ける。うぬに宛てはあるのか?
ならば付いて行こう。一応…はな。」

371ゼルタ=ベルウッド ◆8hdEtYmE/I :2010/03/04(木) 01:28:09 0
>>340
「じゃあね、ばいばーい」

廊下へと飛び出す直前、ゼルタは少年が落とした鞄を右手で引っ掴んで拾っていた。
別段奪う必要性もなかったものだが、無意識の内に鞄へと手が伸びていた。手癖の悪さは今さら治しようもない。

廊下へと飛び出し、壁を蹴って方向転換。そのまま玄関へと向かって疾走する。
扉に手をかけ外に出ようとしたその時――。

「あ」

サンダルを風呂場に脱ぎ捨てたままだった。とはいえ今さら戻るわけにもいかない。
余りぐずぐずしていると追いつかれてしまうだろう。

「これでいいや」

ゼルタは足元にていねいに揃えて置いてあった靴に自分の足を入れ、つっかけるようにして履く。
そして今度こそ、盗賊の少女は夜の町へと消えていった。

【ゼルタ、広瀬君の鞄と靴、広瀬姉の制服を奪って逃走。行方をくらます】
372葉隠 殉也 ◆sccpZcfpDo :2010/03/04(木) 02:03:31 0
内容:
>「実に面白き話よ…そうは思わぬか?うぬ達も…」
男は短刀を引き抜き、こちらを切り裂こうとする素振りを見せたが
それは自分には当たらず背後にいた黒服の男達に向けられたようだった。
血しぶきと共に黒服の男達は倒れる。

「二度も恩義を受けるとはな…すまんな感謝する」

彼が気づかなければ、自分は怪我を負っていただろう。
これで命を救われたのは二度目だ
しかし、いざとなれば見殺しにも出来たはず
尚更この男が悪い人間ではなく、むしろ良い奴だと確信した。

>「どうやら、うぬを探していた連中のようだな。
もしくは、俺のこの”白刃”を狙ったか…」

見せられた長刀に正直な所俺には価値がわからなかったが
この世界では価値があるのかもしれない。
だが、狙われるにしてもこの黒服の男達にも見覚えがなかった。

>「さっきの答えだが…うぬは、どうしてこの世界の事柄に手を貸す?
どうでも良かろう…所詮は他人。関らぬが良き事だ。
こんな連中までうぬを狙っているのだ。命がいくつあっても足りぬ…しかし。」
「俺は元の場所には戻りとうは無い。
くだらぬ世界だ。人が人を殺し合い、いがみ合う世だ。
もうすぐ夜が明ける。うぬに宛てはあるのか?
ならば付いて行こう。一応…はな。」

男の放り投げた銃器を回収しながら、男の戻りたくないと言った時点の顔を見ると
悲しそうなそして本当に辛そうな顔しているように見えた。
そしてこの世界に介入するのかの答えに答える。

「俺は人間が大好きだ、過ちも犯すが素晴らしい物を作ったり、誰かを想う心を持ち、やさしくできるそして
 なによりも一生懸命に生きていこうとする儚い生命の輝きが美しい 
 だからこそ守りたいと思ったそして、誰かを守れる帝国軍人になった
 その事は我が生涯の誇りと言ってもいい」

夜空を見上げ、覚悟に満ちた眼差しで振り返る。

「俺はその時から誓った我が生涯、命、一魂が果てるまで
人種など下らぬ垣根など超えて平和を享受する牙無き人々を守り
 そして守る牙となる事を」

それがどこの世界だろうと変わりはしない
守るべき笑顔が、愛が、信じるべき者が
そこにあるのだから守り続けていく
ただそれだけのことだ
柄にもなく熱くなってしまったことに恥ずかしくなってしまったが

「戻りたくないのもそれはお前の自由だ
 だが、忘れるな人が人を殺しあう世でもその痛みを理解している者は必ずいる
 それは理想かもしれないけれどみんながみんなそういうわけではない俺はそう信じている
 ああ、二度も世話になった恩人を連れて行くのは当然の事 宛てはあるぞ付いて来い」

あの女子は確か建物らしき場所から追跡英霊を感じ取れていた。
早速その場所まで行こうとするが、足を一旦止める。

「そういえば、君の名は聞いていなかったな
 まずは俺から名乗ろう俺は葉隠 殉也だよろしく頼む」
373李飛峻 ◆nRqo9c/.Kg :2010/03/04(木) 02:23:47 0
「霧になって消えちゃった」

出てきた時も唐突なら消えるのもまた然り、というわけか。
飛峻は嘆息交じりに真雪へと詳しい状況を聞こうとする。
だがその問いが言葉になることは無かった。
飛峻の袖を引いた真雪に会計を済ませてしまおう、と促されたからだ。


萌芽との邂逅は色々と謎が残るものではあったが、真雪にしたところでそれは同様だろう。
真雪と二人、すっかり日の落ちた住宅街を歩きながら飛峻は萌芽が言った言葉を反芻していた。

「ところでさあ、飛峻さん」

思考に耽っていた飛峻は真雪の呼びかけに「うん」と口に肉饅を咥えたまま振り向いた。
身長差のせいか若干見下ろす形になってしまうがまあ仕方ない。

「コンビニに行く前にあいつが言った事、あれ…嘘、有るよ」

予期していなかった言葉に思わず首を傾げた。
飛峻の問いかけを待つ事無く真雪は続ける。
次々と、萌芽の嘘を指摘していき――

「――呼び寄せた人の目的はきっと、あいつや飛峻さん達に『イデア』を集めさせること、だと思う」

そう締めくくった。
正直驚いた。アホの子のように口を開けたまま飛峻は素直に感心していた。
今の今までごく普通の少女だとばかり思っていたのだが。
あれだけのやり取りの中からこうまで発き立てるのある種の異能と言ってもいいかもしれない。
それとも実は名のある探偵の子孫とかだろうか。祖父の名にかけて事件を解決する類の。

真雪の整然とした説明に興味を惹かれた飛峻は、なぜそう思ったのか話の続きを聞こうとする。

「あ、そうだ! 飛峻さんはこの世界に来たばかりなんでしょ?
泊まる所とか…有るの?」

だが、その機先を制し逆に真雪に問いかけられた。
ブンブンと首を振る。無論、無い。
目星といえばコンビニまでの道中にあった公園くらいか。

「無いんだったらさ、私の家においでよ!
お母さん説得して、泊めてあげる」

そんな飛峻の思案をよそに、真雪はくるりと振り返ると

「どうする?」

と、笑みすら浮かべて言ってきた。
374李飛峻 ◆nRqo9c/.Kg :2010/03/04(木) 02:25:07 0
「本当にカ!?
 イヤイヤちょっと待て、ソノ前に一つ聞きたいのだガ……。
 マユキのお母さんは何処の馬の骨とも知れナイ異国人を快く泊めてくれるほどの傑物なのカ?」

聞いておいてなんだが、それはそれで一家の家計を握る者として危機意識が低すぎるような気がしなくもない。
だが屋根の下でゆっくり眠れるというこの提案に心揺り動かされているのも否定できないのだ。

飛峻が期待と罪悪感の狭間でうんうんと唸っている一方で、真雪も考え込んでいるようだった。
母親をどう説得するかシミュレートしているのだろうか。
顔に浮かぶ渋面から推測するにかなり難航しているようである。

「あー、済まなイ。
 ソンナ困らせようとしたわけじゃナイのだガ……」

必死に頭を悩ませながら、自分の身を案じてくれているのが伝わってくる。


「……ソレでは、お言葉に甘えさせてもらっても良いカ?」

折角の好意を無碍にするのも気が引けるし、例え固辞して実は泊まる当てがあると言った所ですぐに嘘だと見抜かれてしまうだろう。
ならば答えは既に出ているじゃないか。

飛峻は真雪の提案をありがたく受け入れると、深々と頭を下げた。
375ku-01 ◆x1itISCTJc :2010/03/04(木) 12:29:02 O
 ポケットから取り出した鍵と目の前の建物とを見比べる。随分日が陰っていたが、まだ十分通常モードで可視出来た。
 付属していたタグに名前から検索すると、この近辺に『バーボンハウス』という名前の店舗はそこしかなかった。
 恐らく一般的な雑居ビルと呼ばれる建物。その一階は飲食店という風にされている。
 いわゆる隠れ家的な、小洒落た外装だ。
 だが二階以上は特に装飾もない、至って普通の事務所と言った外観。


 一つのビルを借り切っていたようだが、何に使われていたのか。
 思索したい気にもなるが、まずは待機命令に従わなくては。


「マスターはここでの待機を指令したものと見なします」



 途中通ってきた商店街でも、なにやら騒ぎがあったようだ。
 NOVAの隊員が言っていた『大通りでの事件』というものに関連するのであろう。
 其れに関しても情報収集をしなくてはならない。どうにも、文明という単語がAIに引っかかるのだ。
 それから、少々エネルギー残量が心許ないのも気にかかる。
 差し出がましいと棄却される可能性もあるが、主人の安否も確認したい。

 様々なタスクを予約しながら、手の中の鍵が使える裏手に回り、スチールドアにそれを差し込む。

376ku-01 ◆x1itISCTJc :2010/03/04(木) 12:30:05 O

 がちゃりというアナログな手応え。
 スチールドアを開くと、どうやら其処は飲食店の厨房の奥だった。
 電気は通っているらしく、冷蔵庫などが低く唸る音が集音される。
 窓がないためか随分と暗く、視認が十分に行き届かない。暗視モードに切り替えようかと呼び出すが、棄却。
 手を伸ばした範囲内に、電気の操作パネルがあった。


「使用可能であると判断します」



 簡単に操作し、とりあえずは一階すべての明かりをつける。
 表にある自動ドアの電源は、少し迷ってから落とした。


377ku-01 ◆x1itISCTJc :2010/03/04(木) 12:30:50 O

 明るい蛍光灯に照らされた厨房内を見渡す。
 それなりに清潔で、調理に適した環境であると言えた。愚連隊のたまり場としてのフェイクかと推測していたが、営業はしていたのだろう。
 絶大な存在感を放つ大型の冷蔵庫がそれを物語る。
 両開きのそれを開くと、卵や肉、野菜と言った食材が所狭しと並んでいた。


 ku-01には、炭水化物やタンパク質、その他を分解、変換して熱量に変える装置も付いてはいる。

 このまま調理をせず、口に放り込み咀嚼し腹部にある変換装置に送り込めばそれは起動するであろうが、


「……」


 モノアイをきゅるりと動かして、ku-01は一考。

 そして材料から製造可能な料理のレシピを検索、データ化して、自身のAIにダウンロードする。




「あれだよね、例えロボットであろうがなんだろうが、見た目女の子がエプロンして料理してる図ってロマンだからね。譲れないよね」


 メモリに載った上官の言葉を舌に載せながら、エプロンを探し出した。
 お誂え向きに棚に入ったエプロンを見つけだし、腰に巻いた所で、物音を察知。
 どうやら誰かが建物内に入ったらしい。

378ku-01 ◆x1itISCTJc :2010/03/04(木) 12:47:41 0
忘れてた

【バーボンハウス 都市の中央部を少しはずれた所に位置
表向きとしては、昼はカフェ夜はレストランの飲食店
二階以上の施設は不明】
【ku-01 文明『塗り潰せ!』を所持
自身では使用不可】

 壁を何度殴りつけても全く壊れる様子がないので、ミーティオはいったん拳を休めた。
 肩で息をしつつ、現状の打開策を考える。とりあえず先程のベッドに戻った。
 鎖が長いと言っても限界がある。手錠をつけたまま全ての部屋を探索することはできない、と判断した。
 ぼふん、と羽毛に腰を下ろす。目の前にはすやすやと眠る白ドレスの少女。

「起こすか……? こいつも閉じ込められてるっぽいしなぁ」

 しばし逡巡し、大きなベッドを這って進んで、その少女の顔をまじまじと見つめるミーティオ。
 その時に至ってようやく気付いた事実が一つあった。

「……あたしに似てるな、こいつ」

 そう、深く眠りに沈んでいる彼女は、ミーティオの顔と造詣が非常によく似通っていたのである。
 やや睫毛が長く、唇の血色もよいが、双子と言われたら納得してしまいそうなほどに似ていた。
 思わず身を乗り出した。鼻と鼻がくっつきそうなほどに接近し、顔の隅々まで観察を始める。

 そういえば、とミーティオは思い当たる事があった。最初に遭遇したヤクザの言葉――。

 ――――『お嬢さんと……ちゃうんか? よう似とんな……双子みたいや』

「…………ぉ?」

「うわっ」

 起こす前に起きやがった。食い気味に拒否りやがった。

「おー……?」

 寝ぼけ眼の少女はぱちぱちと瞬きをし、指でミーティオの顔に優しく触れる。二人を繋ぐ鎖が揺れた。
 輪郭をなぞるように指先を滑らせて、ぐるり一巡して唇に到達する。

「はは……本当に、よく似てるんだね。目まで」

「なんだてめー、その指はどーゆーつもりですかクソアマ?」

「気に障ったかな。ごめんね。でも、僕は女じゃないんだ」

 少女――ではない。少年は、紅い三日月で妖艶に微笑む。
 黒いツナギと白いドレスが――闇と光のように。似て非なる二人は、一幅の絵画のように美しかった。

「僕の名前は成川遥(なりかわ・はるか)。君の名前も教えてくれるかな?」


 女のような男が言う事には、ここは『成龍組』というヤクザの一拠点であるらしい。
 二十五階建てビルの最上階。たとえ壁が壊れても、現在のミーティオには高すぎる座標だった。

 二人はベッドの上で胡坐をかいて座っている。

「なんであたしが捕まえられてんだよ。確かにちょっと噛み付いたけどよー」

「ミーティオ、君は『文明』を持ってるんでしょう? それが目当てだと思うよ」

「『文明』? なんじゃそりゃ。あたしの財産はこのツナギと『隕鉄』だけだぞ」

「うん? ……何か、特殊な能力を持っているでしょう?」

「そりゃまあ、あたしも『フリューゲル』のはしくれだからな」

 ミーティオが拳を握る。天蓋の飾りが一つ、千切れて落下した。

「でも、これを人に渡す事なんてできねーよ。それくらい知ってんだろ、常識で」

「……どうやら、君の常識と僕の常識は相容れないものみたいだね。どういうことかな……?
 何やら荒海達が忙しそうにしてたのと、何か関係あるのかな? きっとそうだろうね」

「アラウミ! そいつだ、そいつはどこにいる! この世に生まれ落ちたことを後悔させてやる!」

「物騒な人だ。ここの真下にいるけれど、この階からは出られないよ。ビルは壊れないし、
 階段に繋がるドアは、荒海の『崩塔撫雷』《テンダートール》じゃないと開かないんだから」

 にこにこと無邪気に笑う遥を見て、ミーティオの頭に疑念が湧いてくる。
 どうしてこいつは、ここまで知っているのか。こいつも荒海達の仲間なのではないか?
 そもそもこの妙に居心地の悪い部屋は、こいつの部屋なのではないだろうか?

「僕のことを怪しんでいるような顔をしているね?」

「怪しんでねえと言やあ嘘になるなぁ。言っとくけどあたしに優しさなんて欠片もねえぞ。
 能力が弱まってるとはいえ、人間の一体くらい呼吸するようにぶっ殺せるんだからな」

「怖い怖い。僕はいたって無害なお姫様だよ。この細い腕が見えるでしょう?」

「何がお姫様だ気持ちわりぃ! あたしをさっさと出せ、自由にしろ」

「それはできない、僕も閉じ込められてるんだから。立場は君と同じだよ。仲間だねぇ」

「はあ?」

 この手錠と鎖が見えるでしょう、と遥は口の端を曲げて笑った。
「お父様が少しばかり過保護でさ。学校に行かず家出ばっかりしてたら怒られちゃったんだよね。
 本来ならここは僕のお仕置き部屋なんだけど、ついでに君も閉じ込めたんだと思うよ」

「んなこた知るか。お前の事情は関係ねーんだよ、とにかく出せ。殴るぞ」

「人の話を聞かないなあ……女の子ならもう少しおしとやかにだね……」

 そろそろ実力行使に出ようとミーティオが拳を握り締めた時、辺りに軽やかな電子音が響き渡った。
 部屋のどこかにスピーカーが備え付けられているらしい。男性の声が続いて流れ出す。

『グッモーニン、ミーティオ=メフィスト。覚えとるか、荒海銅二や』

 呼ばれたミーティオは牙を剥き出し、首を巡らせて声の発信源を探す。

『お嬢さんもお目覚めのようやな。しかしまあ、並べて見るとホンマに似とんな。
 今回はちと手荒い方法で眠ってもらったけど、お身体に異常ありませんかのう』

「はっはっは、荒海。さすがに麻酔ライフルは予想できなかったよ。やるね」

『お褒めに預かり光栄ですわ。さて、メフィスト。お前はいわば釣り餌になるわけやが、
 お前を助けに来る仲間は何人くらいおるんじゃ。一応聞くだけ聞いとくわ』

「仲間ァ? はっ、あたしが死んで喜ぶヤツこそあれ、助けに来るようなのはいねーよ」

 ミーティオの生まれた地下世界で――超能力者『フリューゲル』は、必ずしも歓迎される存在では無かった。
 能力を活かして人を助けるような英雄は一握りであり、ほとんどは闇に生きる犯罪者となるからだ。
 一度決定された風潮はもう変えられない。『フリューゲル』に用意された職など存在しなかった。
 群れることを嫌うミーティオには、身一つで放浪する以外の選択肢が残されていなかったのだ。

 彼女と親交の篤い人間など、一人もいない。

『ほう? ワシには妙な情報がなんとなーく来とるんやけどな? ま、言いたないならええ。
 たとえ一個大隊が攻めてこようが、簡単にゃこのビルは攻略できへんからのう』

 『それと』と荒海は言葉を続ける。

『お前は監視されとる。お嬢さんに怪我でもさせてみい、三秒後に首が飛ぶからな』



・NPC

名前:成川遥(なりかわ・はるか)
職業:学生兼『成龍組』二代目
性別:男
年齢:18
身長:165
性格:柔らかい物腰
外見:長い茶髪・フリフリの白ドレス・女顔
備考:『成龍組』組長・成川創世(なりかわ・そうせい)の一人息子
    女のような服装の意味、『お嬢さん』と呼ばれる理由は作中で
382宗方丈乃助 ◆d2gmSQdEY6 :2010/03/04(木) 21:39:37 0
「ふわぁ〜あ。よく眠れたっスよ。」

「あのさ…僕、君のイビキのせいで全然眠れ…いや、なんでもないよ。
それに僕のお気に入りの靴はなくなるし、お姉ちゃんの服もなくなったし…」

「任せとけって〜。俺が次にあのヤロウに会った時に取り返してやっからよぉ」

朝日が差し込むAM8:00前。2人の男子高校生が住宅街を抜けて並木道を歩いていく。
辺りは街路樹が立ち、閑静な住宅街といった風情だ。
アフロ頭の珍妙な男子高校生、宗方丈乃助は櫛で自分の頭を整えながら地図を確認していた。
「確かこの辺だよなぁ、昨日の喫茶店ってよぉ」

「この程度の距離で地図なんていらないじゃない…どんだけ方向音痴…いや、なんでもない。」

昨日の話を思い出す。
タチバナという男が調べた結果からして、ミーティオという少女は
誘拐された可能性が在るという事だ。
「あのパイプにあの子の皮質でも付いてりゃ、俺の能力で追跡できっかもな。」

「え?どういう事?」

「俺の壊す力で一度あれをぶっ壊して、あの子の皮膚の破片が戻っていく
のを追えば、辿り着くだろ?」

「なるほど…」



>「とは言ったものの、彼女の居場所は依然不明、これほどの手腕をもつ組織相手に僕一人で立ち回るのも浅慮極まる……そうだ」

「協力ね…まぁ、あのオッサンの言う事なら信用出来るかもしんねーな。
まずはお茶でもしよーぜ。俺はアイスココアね。」

「僕はオレンジジュースで。」

【カフェにて他の参加者を待つ(時間軸:翌朝)】

383名無しになりきれ:2010/03/05(金) 01:57:50 0
「助けてくれませんか?」

何を助けてくれというのだろう。
何をしてくれと頼むのだろう。
口にしてから自分でも首を傾げ始めた皐月に対して、目の前のウェイターはこう言う。

>>365
『……悪いが、此処から先は"代行"のビズになる』

「……ビズ?」

何用語でしょう、と、少し傾いていた首が更に傾き始める。

『俺は完全前払いの依頼しか受けないコトにしてるんだ。
 その代わり、報酬次第でどんな厄介事でも代行を請け負う』

……ああ、お仕事って意味ですね。
ちょっと違う気がするけど大体ニュアンスはそんな感じだろう。
だが、納得を得ている間に――相手の表情は消えていた。

『とは言っても、その様子じゃ大した金は持ってなさそうだな』

気がつけば、逃げ道は完全にウェイターの体で塞がれていた。
場の空気が、変わっている。

『そういうわけで、お前に払ってもらう報酬は―――』

「――!?」

――顎を触られた。
――顔を上げさせられた。
――目が合った。

皐月の過去設定など、事態の進行にはどうでもいいことではあるが、彼女は何度も繰り返すとおり修道女である。
幼少期から寮暮らしの男子禁制、女人オンリー、家族以外の男性とは触れ合わないことが大前提な生活だったのである。

(わ、わ、わわわわわわわ)

幸い(?)、他の奥手純情純粋無垢な寮生のお嬢様達に比べて、皐月は男兄弟が多いこともあり比較的男性に対しての耐性はある。
普通に会話したりする程度なら別に問題は無い、が。
直に触れられて近い距離で顔を合わせる、という行為は流石に、あれでそれだった。

(報酬、何を支払え――ばいいんでしょう、も、もしかして私う、売られ――!?)

緊張と、改めて沸いてきた恐怖と、それ以外の何かで、皐月の内部が埋め尽くされていく。

『―――税込価格で1050円だな』

「ふえっ!?」

そんな状態だったので、頭にぺちんと張られた伝票に対して変な声がでてしまっても多分攻められないだろう。
そのまま何事もなかったかのように歩き出すウェイター。
硬直してしまった体を動かすのに二秒使い、ぎりぎりと首を動かす。

「――っ、、〜〜〜〜〜〜!!」

何かもう、色々頭が一杯になっていた。
ぱたぱたと慌てて追いかけるのに、更に三秒。
いつの間にかずれていた眼鏡を直す余裕も残っていなかった。
384名無しになりきれ:2010/03/05(金) 01:59:38 0
……。
…………。
………………。

>>366
『―――おい、なんちゃって修道女。
 早速だがブランケットの発掘作業に入ってくれ。
 おあつらえ向きのが何枚か突っ込んであった筈だ』

ウェイターの自宅(多分)にあがると、開閉一番そういわれた。
煙草で示された先にあるクローゼットを見つつ、

「だからなんちゃってじゃありませんってばー!」

そんなことを言いながら、言われたとおりにそれを開けようとする。

『邪魔なモノは一回外に出しちまっていい。
 夢見の王子様に風邪をひかせたくなかったら急げ。
 ただし、アタッシュケースにだけは絶対に手を触れるな』

アタッシュケース……と言われて、思わず手を止めてみれば、確かに銀色のそれがあった。
しかし触るなといわれた以上触ってはいけないのだろう、皐月も特に興味を示さず、クローゼットの中を漁る作業を再開する。

(あ、これちょうどいいかも)

畳んであったブランケットを引きずり出そうとし。

「ひぇ、や、ああああああぁぁぁ」

『……ああ。一つ言い忘れてたが、雪崩には気を付けろ』

数秒遅かった。
毛布やらなにやらからごそごそと涙目で這い出し、折角なのでその中から必要なものをせっせと取り出す。

……五月だし、まだ一枚でいいですよね

ぱたぱたとブランケットを抱えて、ウェイターを見ると、顎でソファに寝かされた萌牙を示された。
そのまま手渡すと、それが当然と言う風な流れで

『ついでに、そっちのシェルフからワイルド――…
 …――あー、七面鳥のラベルのボトルを出しといてくれ』

「へ、あ、はい!」

と指示を出され、脊髄反射でそちらに駆けてしまう。
385皐月 ◆AdZFt8/Ick :2010/03/05(金) 02:01:03 0
「――あれ?」

何で私がこんな事を? と疑問を抱いたのは、既に言われたポトルを手渡しているところだった。
渡すついでに、萌牙の顔を眺める。

……大丈夫そう、ですね

気を失う前は辛そうにしていた様子だったので、多少心配していたが、ここまで来てこの表情なら大丈夫だろう。
安眠している、と言うわけでもなさそうだったが、少なくとも苦しそうではなかった。
少し安心し、ほっと息を吐いた。


きゅるるるる。


「――――!?」

お腹がなった。
口をぱくぱくしながら、ゆっくりとウェイターの顔を見る。

『お前も腹が減ってるなら、向こうのキッチンを使っていい。
 食材と調理器具は見れば分かる。勝手に作って勝手に食え』

さして気にしてないといわんばかりにバスローブを手に取り、恐らく浴室であろう場所へと向っていった。

「……もーっ!」

やり場のない怒りが微妙に爆発したが、眠っている萌牙の反応はなかった。
386皐月 ◆AdZFt8/Ick :2010/03/05(金) 02:01:57 0

『ひょっとしてオーバーワークでへたばってるのか? なんちゃって住み込み仔猫』

「べ、別にオーバーじゃありません! 普通ですっ!」

浴室から出てきて、第一声。
色々合って疲れてるのは事実だが、認めるのも癪なのでなんとなく反論してしまう。
とりあえず食パンがあったのでマーガリンを塗ってもごもごと頂き、一息ついたところだった。
ビバ少食。

『シャワーやベッドもキッチンと以下同文だ。お前の好きに寛げばいい』

「……うぅ、ありがとうございます……」

結局世話になっている身なので、そういうしかなかった。
というか単にからかわれているだけであり、皐月はそれにぐるぐると振り回されているだけである。
下を向いてなんとなく次の言葉が出せず詰っていると、やがてウェイターからそれを切り出してきた。

『必要ならクローゼットに紛れ込んでる女物はくれてやる。
 ……もう、誰も使わないからな。
 それから本題だが――』

――本題。

ちらりと竹内萌牙を見る。

――あの人の言っていたこと
――今の私の状態
――それと、この人のことも、か

心の中でその内容をまとめて、口に出そうとし


「あの――あ、っふぁ……」


欠伸がでた。
387皐月 ◆AdZFt8/Ick :2010/03/05(金) 02:03:28 0
「………………」

羞恥で死ねるならきっと今死ねる、と皐月は思った。
体が硬直し、また冷や汗が流れる感じがした。
案の定、毒気が抜かれたかのように言われる。

『――いや、面倒な話は明日にしよう。今夜は眠っちまえ。
 合歓の木が足りなくなったら、遠慮しないで声を掛けてくれ。
 添い寝は5000、腕枕は10000、抱き枕は15000、それ以上は30000だ』

「い、いりませんっ! 何ですかそれ以上って!」

思わず叫んでしまう。
それがやはり、目の前のウェイターなりの気遣いなのだろうが、あいにくとそれを察せられるほど冷静ではなかった。
ぜぇぜぇと肩で息をしたが、特に気にした様子もなく続ける。

『……明日、適当な時間が来たら叩き起こしてもらえるか?
 手段は問わない。自慢じゃないが寝起きは最悪なんでな』

「……わ、かりました」

言うと、ベッドを背もたれに、そのまま瞼を閉じてしまった。

(使って……いいのかな?)

なんとなく、人の部屋にきて色々な自由を許してもらった事が心苦しくなる。

「…………」

少し考え込む仕草、顎に手をあて、首をかしげ――

「……ん、決めました!」

何が決まったのかはよくわからないが、決まったらしい。
とりあえずお言葉に甘えることにして、汗を流しに行くことにした。
ぱっとシャワーを浴びて、髪の毛を乾かし、同じくお言葉に甘えて女物の……何故あるかはわからないが、パジャマを借りた。
サイズがぶかぶかだが、衣服としての役割は果たしてくれるので特に気にはならなかった。
おやすみなさい、と呟いて、目を閉じて、はぁ、と息を吐く。
張っていた神経が、一気に緩んだらしい。
気がついたらどさ、とベッドにどさ、と倒れこんでいた。


――神様、どうか見守ってください――

心の中で、お祈りをする。

――明日、ちゃんと――お話――を――

一瞬だけ、竹内萌牙の顔を思い出し、

――しま――しょう――ね――


それを意識することなく、気がつけば眠りについていた。
388皐月 ◆AdZFt8/Ick :2010/03/05(金) 02:04:26 0
そして翌日。

「あっさでっすよー!」

カンカンカン、と鍋にお玉をぶつけるというオールドスタイルの目覚まし行為を行う皐月の姿があった。
因みに現在の服装はウェイトレス。
カフェの、あれである。

「あ、これですか? お言葉に甘えて、入ってたのを借りました」

座りやすいように椅子を引きながら、わざわざそんな服装をしている理由を口にした。

「一宿一飯の恩義は果たしますよっ! お店もお手伝いします! 食パンと卵と牛乳があったから朝ごはんはフレンチトーストです! 私はもう食べましたっ!」

とんでもなかった。

「食べ終わったら、お仕事ですよね? 開店時間八時でしたし」

カフェに入る際、なんとなく見て覚えていたそれを口にし、

「色々、お話もありますし――そっちでしましょう」

最後だけ少し真面目に告げて、どうぞ、とシロップの瓶を差し出した。

「それとっ、一個だけいいですかっ!」

そういえば言っていなかった気がする。
すぅ、と息を吸い込んで、言った。

「私の名前はなんちゃってシスターでも子猫でもありません! 五月に一日で五月一日・皐月ですっ!」

腰に両手を当てながら、大声で自分の名前を叫ぶ。
やたらと遅い自己紹介だった。


【翌朝まで時間経過】
【恐らくカフェへ移動、萌牙はウェイターさんの背に任せた】

【結晶:0】
【変動なし】
389竹内 萌芽(1/5) ◆6ZgdRxmC/6 :2010/03/05(金) 11:46:15 0

かんかんかんという、何かを打ち合わせるような音と「あっさですよー!」という少女の元気な声が聞こえた。
ゆっくりと目蓋を開くと、天井が目に映る。
どうやら自分は生きているらしい。

念のためソファーから半身を起こし、掛けられているブランケットをめくってみる。

「よかった、足はついてますね」

呑気にそんなことを言いながらソファーから起き上がり、軽く伸びをすると声のする方向へ歩を進めた。

「おはようございます」

ドアを開け、朝のあいさつ。
なんだかそこにいた少女と青年があっけに取られた表情をしているが、特に気にせず空いていた席に座る。

「フレンチトーストですか、いやーおいしそうですね。僕、朝ごはんはパン派なんですよ」

そう言って目の前の朝食に手を伸ばそうとしたとき、ふいに少女に質問をされた。

なぜ泣いているのか、と
390竹内 萌芽(2/5) ◆6ZgdRxmC/6 :2010/03/05(金) 11:47:26 0

一瞬、何を言われているのか分からず、萌芽は首をかしげる。
そっと自分の頬に触れると、そこはなんだかあたたかい水で湿っていた。
水は今なお、どこからか自分の頬へと流れてきている。そしてその水の発生源はどうやら自分の目かららしい。

―――それはまごうことなき、自分の涙だった。

「……あれ……どうしたんでしょう……あれ?」

ぬぐってもぬぐっても、あふれ出す涙。
なぜ泣いているのか自分でも一瞬わからず、萌芽は涙を止めようと四苦八苦する。
少し考えた結果、この涙の原因として思い当たることがひとつあった。

「あはは……すみません、ちょっと嫌な夢見ちゃって……」

なぜだろう、自分はもうあの「n」で始まる名前の”彼”ではないというのに。
なぜだろう、ここはもうあの『退屈な世界』ではないというのに。

こんなことではいけない、「竹内萌芽」は、こんなことで泣いてしまうような弱い人間であってはならない。

萌芽は首をぶんぶんと振り、溢れてきそうな涙を無理やり振り払うと、目の前のフレンチトーストを一口齧った。

「おいしいです、やっぱり死に掛けたあとの一口はたまりませんね」

なんだか滅茶苦茶な感想を言って、笑った。

きっと、うまく笑えたはずだ。
391竹内 萌芽(3/5) ◆6ZgdRxmC/6 :2010/03/05(金) 11:48:19 0

とりあえず朝食をいただき終わると、目の前の小さなシスター(今はウエイトレス)にお礼を言っておくことにした。

「僕が生きてるってことは、あなたが助けてくれたんですよね? ありがとうございます」

命を救ってもらったのだから、恩返しはしなくてはいけない。

「そうだ、よかったらこれ……」

なにかお礼になるようなものはないか考えた結果、ひとつ思い当たった萌芽はポケットを探り、昨日”あの人”のポケットからいただいてきたあのカードを取り出す。

「あれ……?」

そこで萌芽は異変に気がついた。

(カードの絵が……変わってる?)

昨日このカードを見たときは、たしかに絵は無数のカードで作られた二重螺旋だったはずだ。
しかし、今彼の手元にあるカードに描かれているのは、五本の手を持った男とも女ともつかない人の絵。
上の文字も<<予測不能>>から<<ADVENT―前園久和―>>に変わっている。

これは面白い、と萌芽は思った。

「あ、やっぱえっと……なんでもないです」

ごまかして笑う。さすがにばれたかな、と思ったが彼女は自分と話がしたいそうなので、なんとかごまかせたと言ってもいいだろう。
392竹内 萌芽(4/5) ◆6ZgdRxmC/6 :2010/03/05(金) 11:49:56 0

とりあえず、なんでこんな怪我をしたのかという説明から

「あー、なんというか……僕とゲームをしてるおじさんがいまして、その人の娘さんに蹴られました」

次に、昨日の戦闘力のある人間云々の説明。
これははたして本当のことを言っていいものかどうか迷ったので、ちょっと世界と自分を”あやふや”にして状況を確認する。

結果、本当のことを言っても別に問題はないと判断した。

もともと萌芽が戦闘力がある人間に戦うよう誘ったのは、月崎真雪に害を及ぼす可能性のある人間を少しでも減らすためだ。
世界と自分を”あやふや”にした結果、ほとんどの”参加者”たちは今誰か他の”参加者”と一緒にいるらしいということが分かった。
これは恐らく多くの”参加者”たちが、自分が元の世界に戻るために他の人間を傷つけるような者ではないことを表しているのだろう。そう萌芽は判断した。
”共闘”という可能性も考えなくはなかったが、まあ今はいいとしよう。

一番の成功は、月崎真雪と李飛峻が一緒に行動しているらしいということ。
昨日萌芽がわざわざ月崎真雪の前で戦闘力のある人間云々の嘘を吐いたのには思惑があった。

戦闘力云々の嘘を吐くことで、李飛峻の自分に対する信用はなくなるだろう。自分がいないときに真雪がバラすだろうから、それは当然だ。
しかしそれは同時に、李飛峻に月崎真雪が信用のおける、そして価値のある人間であることを印象付けることになるはずだと思ったのだ。
さらに、真雪には自分がまだ真雪の”才能”に気付いてないかのように思わせることができる。『敵』は油断しているときに倒すのが一番、変に警戒されてはやりにくいというものだ。

「あの戦闘能力云々ですけど、あれは全部嘘です。死んで欲しくない人がいるので、その人にとっての『敵』を減らそうと思って、あんな嘘を吐きました」

すでにばれている嘘をいつまでも吐き続けることはない、だから萌芽は目の前の少女と青年に正直にそう言った。
393竹内 萌芽(5/5) ◆6ZgdRxmC/6 :2010/03/05(金) 11:51:10 0

どうやら二人はどこかに出かけるらしい。
ここを拠点にして真雪にちょっかいを出しに行くのも面白いかと思ったが、どうせだしこの面白そうな世界を自分の足で歩いてみるのも悪くない。

あの鎧のちびっ子の反応から、ちょっと思いついたこともあるし。
それを試す機会にめぐまれないとも限らない。

「あ、僕もついていきますよ、お店のほうの手伝いもちょっとくらいならできると思いますし」

にこやかに笑って、そのあとに続ける

「あ、でもよかったらおんぶとかしてもらえませんか? 一応病みあがりなんで」

ターン終了:
【カフェへ:おんぶするかどうかはウエイターさんにお任せします】
【文明<<ADVENT―前園久和―>>:前園久和を強制的に召喚する、召喚された人間は、召喚した人間の意志で元の場所に戻すことが可能】
394佐伯 ◆b413PDNTVY :2010/03/05(金) 12:34:16 O
「携帯確保っと。あ、これ美味しい……」

そう言うと零は先ほど買ったばかりのプリペイド式携帯電話を取り出しボタンを弄りまわす。
アドレス帳を取り出し、自分自身の携帯電話の番号と三浦の番号を打ち込む。
その最中にもう片方の手で不思議な見た目のサンドイッチを口に運ぶ。
二つの携帯に番号を登録し終え、時刻を確認。

午後7時27分。

最後に時計を見たのは護送車に乗せられた時に見た午後2時前後……。
計算すればかなりの時間を拘束されていた事になる。

「あー。ったまくるわね……食事ないし尋問の時に逃げられたかも知れないけど
 逃げたら自分から怪しいですよって自白したようなものだし」

愚痴をこぼしつつサンドイッチを一気に咀嚼する。
飲み込み胃に押し込んだ後、今度は自分の携帯でWebブラウザを開きトップページから
ばぁぼんハウスを全条件で検索させる。

「ヒット。内容を閲覧……」

誰に対して言うわけでもないがついつい口から出る独り言。
傍から見たらおそらく麻薬中毒者に間違えられかねない光景だ。
因みに、その最大の理由は彼女の服装なのだが……
395佐伯 ◆b413PDNTVY :2010/03/05(金) 12:35:46 O
ばぁぼんハウス。正確にはバーボンハウスに改名したらしい。
そのバーボンハウスのWebサイトには……現在は店長の体調不良を理由に営業停止中と表記されていた。
他にもオススメメニューや営業時間、何故か店内ではなく食器の写真が並び店としての体裁はしっかりした物らしい。
ならば何故、あの様なチンピラが持っていたのだろうか?

「あの男が店長の訳ないだろうし」

考えても仕方ない。そう判断し、零は素早く住所を暗記する。

(さて、早く合流しなければならない)

食べ終えたサンドイッチの袋とリンゴジュースの紙パックをコンビニのゴミ箱に叩き入れ、
フルフェイスタイプのヘルメットを被る。

もし、イレギュラーが無ければゼロワンはここで待機しているはずである。
ならば合流しなければならないが、NOVAやイデアの件は伏せるべきだろうか?
そんな疑問がふと零の脳裏をかすめる。

(伏せるのがベストでしょうけど、同じ目的を持って行動するかもしれない仲間だからね。
 やはり、情報は包み隠さずに話すべき。か……)

396佐伯 ◆b413PDNTVY :2010/03/05(金) 12:37:51 O
詳しい話は後日連絡をくれる。と言った三浦だが、なかなか信じがたい事を彼は言っていた。

曰わく、
零達異世界人は『文明』の種として呼ばれたと言うこと。

それは、とある組織。
名前はまだはっきりとはしていないが組織は文明を新しく作るために異世界から異能者達やそれに準ずる者を召還し、刈り取りをしている。
零達は彼らに呼ばれたと言うこと。

又、この異世界からの召還については一度や二度ではなく何度も行われており、三浦自身も呼び出された被害者であること。

彼は同じ境遇の者を集め彼らと戦っていると言うこと。

最後に、イデアなる存在について……。
イデアとは零のかつて居た世界における情報因子に近い物だ。
異世界の住人たちはこのイデアを持たねば世界そのものから拒絶され存在を抹消されてしまう。
故に三浦はイデアを探しているとのこと。

(この事をどう分かり易く説明するか……)

零は若干の不安を胸にしながらバーボンハウスへと向かう。
【時間軸:夜。バーボンハウスへ向かう】
【所持品:携帯電話、キャッシュカード、大型自動二輪免許、プリペイド式携帯電話×2(何故か全て使用可能)現金八千円】
397フウマ ◆HX.SA1r9II :2010/03/06(土) 14:50:31 0
>>372
>「俺は人間が大好きだ、過ちも犯すが素晴らしい物を作ったり、誰かを想う心を持ち、やさしくできるそして
>なによりも一生懸命に生きていこうとする儚い生命の輝きが美しい 
>だからこそ守りたいと思ったそして、誰かを守れる帝国軍人になった
>その事は我が生涯の誇りと言ってもいい」


「物好きだな。俺は他人など、知った事ではない。
ただ、自由でありたいだけだ。」

夜空を見上げる葉隠とは対照的に、地面を見つめながら唾を吐く。
フウマにとって、他者は自分の敵。
一瞬、気を許したせいで何度殺されかけた事か。
先程の連中もそうだ。やはり、世界とやらは悪意に満ちている。

>「そういえば、君の名は聞いていなかったな
  まずは俺から名乗ろう俺は葉隠 殉也だよろしく頼む」

「俺の名前か…サイガ。サイガという。
葉隠、うぬは面白い男だ…少しばかりは興味がある。」

偽名を名乗り、そのまま歩き出す。
本名を名乗る意味などない。自分を偽る事にも何の感情も抱く事もない。
やがて、葉隠に導かれバーボンハウスと呼ばれる建物までやって来る。

「ここか…随分と巨大な城だな。用心に越した事は無い…
葉隠、戸を開けて中を見ろ。」

短刀を抜き出し戸の前に立つ。
398葉隠 殉也 ◆sccpZcfpDo :2010/03/07(日) 02:20:43 0
>「物好きだな。俺は他人など、知った事ではない。
ただ、自由でありたいだけだ。」

振り向いた際に人は信用ならぬ、という瞳をしていた
余程手酷い裏切りを受けてきたのだろう
この男の見てきた世界はさぞ自分には厳しい世界だったのだろう
それを思うとなぜか悲しい気持ちになっていた。

>「俺の名前か…サイガ。サイガという。
葉隠、うぬは面白い男だ…少しばかりは興味がある。」

サイガと名乗るが、先ほどの瞳を見た限り恐らくは本名ではないのかもしれないが
あえてなにも言わず、男を連れて追跡していた英霊の元に歩き始める。
とくになにもなく英霊が指し示す場所までやってくる。

>「ここか…随分と巨大な城だな。用心に越した事は無い…
葉隠、戸を開けて中を見ろ。」

「城ではなく、一応店という建物なのだが細かい事は後に回すか
 了解した」

少し警戒しながら扉を開けて中を見るが特に危険な者や他の人物の気配は感じられない。
先に中に入り、さらに確認するが特になにもなかった。

「よし、どうやら彼女を除いて誰もおらんようだな
 サイガよ入って来い」

外で待っている引き入れ、彼女の元に向かう。

男は条件を呑んだ。つまりは、誓約をした。
一抹の不安が残らないわけではない。
だが、今は信じるしかないだろう。

「久和様、ですね。私はシエルと申します」

突き立てたクレイモアを再び背負う。

「萌芽…確かに私は聞きましたが、どうにも不審で…」

あの粘液が脳に染込むような嫌な感覚を思い出すだけで悪寒がする。

「私はアレを信じていません」

シエルにとっては正直、この話題をとっとと終わらせたかった。
思い出したくないことも沢山ある、ということだ。

「それで…これからの事なんですが」

ふと、考えた。

「情報の収集は勿論なのですが」

「お二人とも何処かに寝床は……」

有るはずが無い。
今日此処に来たばかりなのだ。だからこそ、それを考えなくてはならない。

「……うーん…どうしよう…」
魔法で何とか出来なくも無いのだが。
それ自体に魔力をごっそり持っていかれる上に必要最低限、つまり暖をとるぐらいしか出来ない。
正直シンドイ。
が、

「……それしかないかなぁ…」

改めて目の前の二人を眺める。
双方考えてはいるようだが、どうもいい案は浮かばないらしい。
とすれば、これは決まりか。

「あの」

意を決し、頭を捻る二人に向かって声を発した。

「今日一日は私の魔法でどうにか出来ます。取り敢えず、事は明日に進めましょう」

今の時間がどれ程なのかは知らないが、空を見てみれば既に夕闇に覆われていた。
出来事が多すぎて体も精神も疲れきっている。もう休みをとるのがいいだろう。

「ちょっと待っていてくださいね」

すぐそばにあった金属が格子状に絡む不思議な建造物に手を置く。
そう言えば、ここはどのような場所なのだろう。琳樹を運んで来たとき、ちょうど良い場所が此処だった。
ある程度広いスペースと休憩にぴったりの長椅子。確か、入り口には『VIP公園』とあった。
恐らくはこの世界の概念における休息所のようなものだろう。

適当にこんな考え事をしながら呼吸をリズムに乗せる。
視界の端っこに殺したばかりの骸が転がっていた。
この世界で殺人が正当化されているのかは知らないが、幸いにも人通りは一切無く誰にも殺人を見られることは無かった。
だが、後々発見される事もある。一応後で処分しておこう。
「第五錬金魔法…」

呼吸のリズムに合わせて魔法の詞が口から零れる。
掌の向こうのモノがぐにゃりと不自然に変形し始めた。

「『加工―プロセサイズ―』」

金属の構造が一瞬にして組み変わる。
第五の、しかもある程度の大きさをもつ対象故に出力を上げて放つ魔法のせいで魔力がガリガリと削られていくのが解った。

「っ…!」

金属の格子はその姿をドーム状の建造物へと変えた。
内側には暖炉状の火炎魔法力維持加工を施してある。

「ど…どうぞ…ここで、今日……は…」

ただでさえ疲れきっている体に更に負担を掛けたからだろうか。
シエルの意識は現実から次第に遠ざかっていた。

最後にはぷつん、と糸が切れたように、その場に崩れ去った。

【ジャングルジムを金属製の温室に改造】
【魔力の使いすぎで意識を無くす】
402月崎真雪 ◆OryKaIyYzc :2010/03/08(月) 11:03:58 O



「……ソレでは、お言葉に甘えさせてもらっても良いカ?」
李の言葉に、真雪は満足げに笑う。
「うん! この坂を登り切った所だよ!」



月崎家は、一風変わった構造をしている。
坂を登り切った先には急な崖が有り、先には進めない。
行き止まりの左手に、一見二階建てに見える家が二世帯住宅の月崎家だ。
下り階段は一階(地下一階に見えるが)に続き、道路から見える玄関は二階部分である。
真雪が毎日の癖で階段を覗き込むと、パジャマ姿の檸檬が手を振って呼んだ。
「何だろ…ちょっと待ってて、すぐ戻るから」
李の返事を聞くと、真雪はその階段を下りて行った。

「れも姉ぇ、どうしたの?」
「どうしたの? じゃ無いでしょう?」
降りて訊ねると、いきなり檸檬にチョップされた。
大したダメージは無かったが驚いたので、真雪は首を傾げる。
「ん?」
「あのあからさまに怪しい人、どうする気?」
「あからさまに怪しいって…別にそんな怪しい人でも無かったから、泊めるつもりだけど」
檸檬の遠慮なしの物言いに、真雪は眉根を寄せて声を潜めた。
真雪の言葉を聞いた檸檬は溜め息を一つ吐いて、真雪の額にデコピンする。
「もぅ、お馬鹿」
綺麗に決まったデコピンは痛かった。真雪は涙目で額を撫でて、檸檬の次の言葉を待つ。
「お婆さま、今日は機嫌が悪いのよ…
今日、家族全員が集まって居ないとは何様のつもりだってね。
そんな日に、例え何かの恩人だとしても、
私達にとって見ず知らずの人を招く事は出来ないわねぇ」
檸檬が一言いう毎に、真雪の肩が下がっていく。
誰にどう言い訳するべきか唸る真雪の様子に、檸檬が小さく笑った。
「そんなに悩まないの。この家だからこそコッソリ家に入れる方法も、有るでしょう?」
下がっていた真雪の頭が、いきなり上がった。
そうだ、家族が主に使うのは2階で、1階には滅多に降りてこない。
それは生活空間が2階に集中しているからだが、今回はそれが役に立つ。
誰かをこっそり招き入れるのに、月崎家程便利な構造の家は無いかも知れない。
「じゃあ、呼んでくる!」

403月崎真雪 ◆OryKaIyYzc :2010/03/08(月) 11:05:53 O
真雪は李を連れて檸檬の部屋の前で待機させると、玄関から家へ入って行った。
ガラス戸越しに、檸檬と李が対峙する。
「どうして、まゆきちゃんと知り合ったの?」
李の話によると、真雪は何故か足を挫いており、しゃがみこんだ所を李が助けたらしい。
(そのお礼に…かな)
その檸檬の予想は、斜め上に大きく外れた。
何でも、この男。異世界からやって来たらしいのだ。
檸檬が目を丸くして驚いて居ると、李はやはり、という顔でうなった。
どうやら、自分でも『自分が置かれた状況』という物をうまく説明出来ないようだ。

それでも。
そこまで混乱するという事は、それ程厄介な事に巻き込まれたのだろう。
真雪は本当に困っている人を放って置けない質だ。しかも、抱え込む問題が厄介な程。
真雪がそこまで構うのも、その問題と、
李飛峻という人間の性質の良さに理由を求める事が出来るだろうと檸檬は理解した。

「それにしても、まゆきちゃん、遅いわねぇ…」
訝しげに、檸檬は扉を振り返る。
真雪の性格からして、李の説明の途中にこちらに着いてもおかしくない。
ただでさえ祖母や真雪の両親は真雪に対して冷たい。
404月崎真雪 ◆OryKaIyYzc :2010/03/08(月) 11:07:32 O
それに、今日の祖母は癇癪を起こし、檸檬が上へ上がれない状態なのだ。
まさか、祖母の癇癪に巻き込まれているのか。
檸檬が扉を開けようと近付くと、丁度その扉が強く開いた。
真雪は檸檬の部屋に飛び込むと、今度はその扉を思い切り閉めた。
そして扉が開かないように、強く体重を掛ける。

それから、扉の向こうから怒鳴り声が聞こえた。
『逃げるな! いつまで経っても誰かに逃げ込めば良いと思いやがって!
良いか!? この月崎家に化け物の居場所は無い!
今は慈悲で生かしてやっているがな、
昔だったら赤ん坊ン頃にとっくのとうに殺されてんだよ!
同じ空気吸ってると思うと気分が悪いね! さっさと死にな! 化け物女が!』
口汚い祖母の言葉を背に、静かに扉を開けて李を招き入れる。そして、李に耳打ちをした。
「今入れないとタイミング失うから入れるけど、激しいリアクションはとらないでね。
まゆきちゃんがもっと酷い目に遭うの」
祖母の口の悪さに唖然とする李を押さえて、檸檬は静かに嵐が過ぎ去るのを待つ。
真雪は、ただ震えて俯いていた。

嵐が去ると、真雪はふらふらと二人の下へ歩く。
そして二人の間で転びそうになり、李に受け止められていた。
痛々しい真雪の姿に李は口を開き…


【Choice:李飛峻】
1.真雪に、何が有ったのかと優しく訪ねた。→>>405【傷付く心、自己の否定】へ
2.檸檬に詳しい事情の説明を求めた。→>>406【教えなければいけないこと】へ
405月崎真雪 ◆OryKaIyYzc :2010/03/08(月) 11:10:43 O
【傷付く心、自己の否定】


痛々しい真雪の姿に李は口を開き、真雪に何が有ったのかと優しく訪ねた。
その声に、真雪は李を見上げる。両目から涙が溢れており、顔を濡らしていた。
「わ…たし、望んで、こうなった訳じゃ無い…」
真雪の弱々しい言葉に、李は頷く。
それを皮切りに、真雪の口から感情が溢れ出した。
「私だって…!みんなと同じように普通に暮らしたかった!
お母さんやお父さんと仲良くしたかったもん!
こんな力要らない…こんな役に立たない能力の代わりに誰も話を聞いてくれないなら
こんな力、捨てたいよ!何で私の話を聞いてくれないのどうして信じてくれないの!
私は騙したりしない!
私が嫌なことは相手にもしないもん分かるでしょ!?私は化け物じゃない!普通の人間だよ!」
そこまで言い切った後は、嗚咽で何も言うことが出来ないようだった。
困り果てた様子の李に、檸檬が説明する。
「この話でなんとなく感づいてくれたと思うけど…
まゆきちゃんは異能を持っているの。意思に関する異能」
何か覚えが有るのか、李はは、とした表情で檸檬を見る。
檸檬は真雪を受け取り、自分のベッドにそっと寝かせた。
「覚えがあるなら説明するわ。あなたはきっと、知らなければいけないことよ」
真雪の頭からヘアバンドを外すと、檸檬はそのベッドに腰掛ける。
「まゆきちゃんは、人が偽ろうとする意識を見抜く事が出来るの。
どんなに巧妙な嘘を吐いたとしても、それは余程『偽る』ということに意識が向く、
ということだから、却って分かりやすくなるみたい。
まあその分、勘違いとか又聞きの嘘は分からないらしいけど…。
この力が有れば騙されるって事は少ないんだけど、ただどこにでも狡猾な人は居てね…」
真雪の能力について語ってから、檸檬は真雪の現在の状況について軽く触れる。
話終えた檸檬は立ち上がり、扉の前で振り返った。
「だから…あなたは出来うる限り、まゆきちゃんの味方で居てね」

【檸檬は毛布を取りに出ただけです】
【真雪:ベッドで寝てる】
406月崎真雪 ◆OryKaIyYzc :2010/03/08(月) 11:12:10 O
【教えなければいけないこと】
痛々しい真雪の姿に李は口を開き、檸檬に詳しい事情の説明を求めた。
「…それ程、この世界は異能に排他的って事よ。
それより、まゆきちゃんをベッドに寝かせてあげて。
まゆきちゃん……疲れちゃったでしょうから…
私は毛布を取ってくるわ」
訊かれた檸檬が毛布を取りに部屋を出る。
部屋に戻ると、その毛布を李に渡した。
そうして、檸檬は真雪が寝ているベッドに座り、話を始めた。
「まゆきちゃんには、直感的に嘘が分かる異能が有るの。
そして、私の…いえ、私達の祖母は異様に異能を嫌うのよ。
昔のトラウマなんだって…だから祖母は情緒不安定でねぇ
癇癪を起こした時、必ず異能が有る人が犠牲者になるのよ…
親戚の中で異能が有るのはまゆきちゃんだけだから、必ず彼女が犠牲者になるのね。
下手に反発すれば折檻を食らうし、そもそも祖母は影響力の強いご当主様なの。
みんなあまり問題を起こしたくないから、まゆきちゃんを見捨てるのよ」
そこまで一気に伝えると、李は渋い顔で真雪と檸檬を見比べていた。
それに檸檬は苦笑いで答え、真雪が寝ている布団に入る。
安らかに眠る真雪の頬を撫でながら、話を続けた。
「まゆきちゃんの両親は、まゆきちゃんをどう扱えば良いものか困っているみたい。
一応、まゆきちゃんが生活に困ることが無いようにしてるけど…
まゆきちゃんとは精神的に疎遠、みたいねぇ…」
真雪がうめいて、檸檬の胸に抱き付く。
その頭を撫でて、檸檬が力無く笑った。
「まゆきちゃんの味方って、本当に少ないのよ。片手で数えられるぐらい。
だから…まゆきちゃんの事、好きならぜひ味方になってあげてね。
…おやすみなさい」
そう告げてから、目を瞑る。
明日こそ、真雪が楽しい一日になると良い。


【時間的に早いけど、就寝】
【飛峻さんは床で寝てね!】
407ku-01 ◇x1itISCTJc:2010/03/09(火) 00:07:30 0
 現れた二人分の生体反応にku-01は咄嗟に警戒態勢に入った。
 が、そのうち一人が先ほど場所を同じくしていた男性と気づき、翳していた手を下ろす。

「……」

 かしん、とモノアイが音を立てて、可視領域に二人の男性の姿が捉えられる。
 一人はku-01が前居た次元で言うところの軍服と若干デザイン指向の似通った服に、黒縁の眼鏡をかけていた。
 もう一人は裾や襟刳りの襤褸けた着物を身につけ、鋭い目つきでku-01を注視している。
 主人といい、この次元の人物の服飾倫理は『一線を画する事』が美徳なのだろうか。


「……認証しました」


 話を聞くところによると、どうやら彼は主人に自分のことを頼まれたらしい。
 主人がそう言ったからには、恐らく信頼に足る人物なのだろう。もう一人の男性の方はデータベースに無いが、ならば警戒をするべきではない。
 どういう手法でこの場を知ったかは理解不能だが、兎も角敵性はない人物として登録しておきたい。


「私は軍用オペレーションオートマトン、型番ku-01です。どうぞゼロワンとお呼び下さいませ。
可能ならば、お名前を記憶させていただけますか?」
408ku-01 ◇x1itISCTJc:2010/03/09(火) 00:13:23 0
かしりと関節部を軋ませながら礼をする。
 二人は聞き慣れない単語を訝しんでいるようにもとれたが、しばらくしてそれぞれの名前を口にした。
 それを口頭発音から変換、姿形の映像と併せてデータベースに書き込む。

 かりかりと処理を行っていると、一人が前に進み出て夜をこの建物内で過ごしたいという内容をku-01に伝えた。かくんと首を傾け、ku-01はAIに同時処理を促す。
 主人はこの建物の中で待機を指令した。彼らの内一人は主人に自分のことを頼まれているらしい。
 問題は、無いだろう。
 むしろ感謝の意を表すべきだ。



「登録完了」


 とりあえずと近くにあったコンセントに指先を押し当て、建物内の空調機器を起動させる。
 ku-01自体には外気温に対しての反応は無いが、人にとっては現在、余り快適な気温とは言い難い。
 ごお、と音を立て、暖かい空気がエアコンから吐き出される。

 それを確認してから、ku-01は自分の腰に巻き付いたエプロンの皺を軽くのばした。


「只今夕食の制作に取りかかります。予定では約三七分後に完成いたしますので、其れまで掛けてお待ち下さい。
アレルギーなどは御座いますか?」




 それから三八分後、湯気を上げるオムライスを前に三人は机を囲んでいた。
 軍服擬きが二人と草臥れた着物が一人という非常に奇妙な食卓だったが、ku-01自身がそんな事に処理を割くはずが無く、
かりかりと先ほどの料理の改善点をレシピデータに上書きしつつ、スプーンを握り込んだ。
409フウマ ◆HX.SA1r9II :2010/03/09(火) 00:32:28 0
周囲を警戒するフウマをよそに、葉隠が城内へ入っていく。

>「よし、どうやら彼女を除いて誰もおらんようだな
>サイガよ入って来い」

「かのじょ…?女か…だが、油断は出来ないな。」
刀を逆手に持ち、奇妙な作りの城内へ入っていく。
そこにいたのは奇妙な姿の女であった。

>「……認証しました」


「貴様…!!何者だ…追っ手ならば斬る…」

冷たい眼で奇妙な女を見据える。
しかし、一向に戦いを仕掛ける素振りを見せない。
少しばかりの間、にらみ合いが続くかに思われたが―

>「私は軍用オペレーションオートマトン、型番ku-01です。どうぞゼロワンとお呼び下さいませ。
>可能ならば、お名前を記憶させていただけますか?」

「…ぬ?何なんだ、この女…名前?あぁ、サイガだ。
それが何だと言うのだ?」

再び刀を構え、女を睨み付ける。
一瞬でも油断しかけた己を恥じながらも、刀を強く握り締める。

>「登録完了」

「何?登録…だと?なんだその術は!!
うぬは術士だな…ならば容赦はいらぬな。…斬る!」

襲い掛かろうとするが、それを必死で葉隠が止める。
「な、何をする…離せ!!離さぬかぁ!」
2人が取っ組み合いをしている最中、女もといKU-01は
なにやら炊事場らしき場所で料理を作り始めた。

>それから三八分後、湯気を上げるオムライスを前に三人は机を囲んでいた。

(…ゴクリ。見た事もない…食い物だ。食って良いのか?
いや、違う。これも敵の罠だ。おのれ…)

「おい、葉隠。うぬが先に食うがいい。」

毒見の意味を込めて葉隠を消し掛ける。
フウマはじっとKU-01の挙動を見逃さぬよう、注視しているようだ。
410 ◆6bnKv/GfSk :2010/03/09(火) 01:04:45 0
 


君達は異界の空気を吸い、
また異界の住民と触れあい、
着実に非日常の世界へと足を踏み入れた。

信頼出来る仲間を得た者もいれば、己の欲望のみに突き動かされる者もいる。
真実を探り彷徨う者がいれば、虚構を拠り所とする者もいる。

それでも、平等に訪れる物はある。
君達の誰もが得られ、君達の誰もが逃れ得ない。


朝が、訪れる。
411尾張 ◇Ui8SfUmIUc:2010/03/09(火) 02:23:15 0
採光性の悪い小さな窓から、いつの間にか射し込んだ朝日に気付き、目を細めた。

M10を分解してテーブルの上に並べ、一つ一つの部品に油をさし、丁寧に布で磨く。
三発撃って、弾が元々入っていた半分になってしまった。とはいえ愛着の有る銃だし、ほとんど自分の体の一部
のようなものなので邪険に扱う気もしない。

「描けましたよ」

銃身の痛み具合を思案していると、ウンザリとした顔で兔が目の前に紙を差し出してきた。作業の手を止めて紙
を受け取り、しばらく描き込まれた図を眺めた後、テーブルの端に放っておいたノートに『問題なし』と書いて、
クリアファイルに挟んだ。
その所作を額に手をやりながらじっと待っていた兎は、やっと終わったとひいひい言いながらベッドにひっくり
返った。

「あなた、きっと編集長に向いてますよ」

恨みがましく嫌味を呟いて、兔はのそりと体を起こす。携帯が鳴ったのだ。

「もしもし、……はい……やっぱりすぐには無理ですか……はい……」

ありがとうございました。と言って、携帯を切った。

「どうしてもすぐには無理だそうです。まずは正面から行くしか無さそうですね」

『そうか』

M10を組み立て、空撃ちして動作を確かめた後、弾を込めてホルスターにしまう。ずしりとした、慣れ親しんだ
重み。いつの頃か、責任から義務感へ、義務感から単なる事象へ、行程へと低きに流れ流れて停滞した重みだ。

(犬か、確かに。才能の無い狼よりはマシと言う、ただそれだけだな)

敵の敵は味方と言う。狐に追い立てられるのが兎だとしたら、狐を追い立てるのは犬か。

(なら人は何処に居るんだろうな)

無意味な思考と言うわけではない、しかし全てのものが他の縁に置き換えられると言うのは、些か強引ではない
だろうか?
412尾張 ◇Ui8SfUmIUc:2010/03/09(火) 02:24:27 0

『確認だ 報酬は?』

「……帰る方法。他人に貴方の声が聞こえなくなった原因と、貴方のたてる物音が聞こえなくなった原因」

『どこまでやれば成功だ?』

「それ、さっきも聞きましたよね?……随分とそこに拘るんですね」

兔は警戒するように表情を曇らせた後、「ミーティオ=メフィストを奪取するまで」と言った。

「計画通りに、私は貴方の補佐をします。なるべく接敵はしないつもりですが、どうしても避けられない場合は
貴方がこじ開けて下さい」

『奴ら ちゃんと間に合うんだろうな』

「勿論、それは間違いありません」

兔ですから、と鎖を指先で摘まんで、得意気に金時計をひけらかした。

「それじゃあそろそろ行きましょうか」

【尾張証明:BKビルの見取り図を手に入れる(兔の手書き)

兔:兔は他の(異世界から来た)PLがビル内でミーティオ=メフィストを救おうとして出会えば敵対、
もしくは味方になるよう勧誘する(勧誘する可能性の方が大きい)】
413葉隠 殉也 ◆sccpZcfpDo
何事も無く彼女を発見すると、自分の姿を見た瞬間警戒を解いた
そして自分とサイガを見てしばらくすると

>「……認証しました」

なにを認証したのかは分からんが、一応ここに来た理由を説明し
相手も納得してくれたようだった。

>「私は軍用オペレーションオートマトン、型番ku-01です。どうぞゼロワンとお呼び下さいませ。
可能ならば、お名前を記憶させていただけますか?」

「ならば同じ軍人として名乗っておこうか新日本帝国軍零式特殊戦団所属
 葉隠 殉也准尉だよろしく頼む」

規律良く敬礼をする。所属は違えど同じ軍人には敬意を示し敬礼をするのが
自分として礼儀の一つだった。

>「何?登録…だと?なんだその術は!!
うぬは術士だな…ならば容赦はいらぬな。…斬る!」

彼女の言葉に反応し、襲いかかろうとするので急いで取り押さえる。
>「な、何をする…離せ!!離さぬかぁ!」

「彼女は術士などではないとにかく落ち着かないか!」

恐らく彼に彼女が人ではないと説明したところで納得する所か興奮して暴れだすだろう
それからしばらく取り押さえていた。
そして彼女はその間料理を作っており、出来上がる頃にはもう彼は暴れるのを辞めていた。
どうやら彼女の作っていたのはオムライスらしく、とてもおいしそうな臭いがしていた。

「美味そうだ…これは君が作ったのか?料理上手だな」

その腕前に感服し、彼女を純粋に褒め称えた。

>「おい、葉隠。うぬが先に食うがいい。」

そう言われ、先に手を合わせて頂きますと言って一口食べる
文句なしに美味かったのでサイガに進め二口三口と食を進める。
そして食べ終わり手を合わせると立ち上がると一言告げる

「すまないが、少し仮眠を取りたい失礼する」

そのまま二階に向かいソファーがあったので寝転がり
眠りに付く事となった
この時すでに朝日が昇っていたが本人は知る由はない。