同じくだが、年明けから
サイグントゥムに駐留する魔王軍の侵攻が突如停止した。
最前線であるアトルムには多数の騎士やら傭兵やらが集まっているが、
その理由を知る者はいなかった。とは言え、侵攻が止まったのは事実。
体勢を立て直し、進捗状況等々によっては反転攻勢に出る事も視野に入れている。
目下、再編を急いでいるアトルムではどこもかしこも猫の手でも借りたい状況なのだ。
数ヶ月前にアトルムに辿り着いたセラヴィーの姿も、その中にあった。
帝国の出身である事で痛くもない腹を探られ、女である事で侮られ、
年若い事で年長者からの嘲りを受け―――と、決して出だしは順調ではなかった。
しかし今の周囲にはそんな気配はほとんどない。あるとしても一部の連中のものだけだ。
今日も今日とて、各地から続々と集結する人員の割り当てなどが行われる予定で、
セラヴィーの方にも何人か回されるらしい。即戦力としての期待はもちろん、
この過酷な状況下でもへこたれない頑強な精神の持ち主である事を願ってやまない。
「先の侵攻時には多数の死者とそれ以上の離反者で総崩れ寸前でしたものね……
攻勢に出たとしても、押し切れなければ同じ轍を踏む事になりますが、
今残っている面々に限って言えば、そんな心配は不要でしょう。
さて、今度我が隊に着任する方々はどちらに転ぶのでしょうか?」
最近処理する事項が増えたせいか、独り言が多くなった。
頭の中だけで片付けるには物が多すぎるのだ。今も必要書類に目を通しっきりであった。
「揃ったね。それでは、ぼちぼち参ろうか」
結局のところ、斥候隊を率いる事になったのは龍堂だった。
彼の部下は皆多忙を極め、兵のガス抜きに付き合う余裕を与えられていなかったからだ。
志願者は計40名、ちょうど1個小隊に相当する戦力である。
多いか少ないかは意見の分かれるところだが、斥候としてはいささか過剰な兵力だ。
しかしながら、斥候の実態が威力偵察にある事は明白。
となれば、この戦力では少々心許ないところがあろう。
しかし、龍堂は極めて楽観視していた。
彼の元に届いた情報は、アトルムに駐留しているのは非正規部隊であるはずだった。
であれば、差し向ける兵力は1個小隊で充分だろう、との予測である。
陽は既に落ちた。
戦場の主導権は、陽光から夜陰へと徐々に移行している。
この時間帯こそ、まさに魔族の刻というべきであった。
一般的な水準の話だが、夜戦において魔族は人類に優越する。
確固たる自信があったわけではないが、龍堂はほとんど不安要素を持たずにサイグントゥムを進発した。
アトルムで集結しつつあるのが非正規部隊ではなく、再編中の正規軍である事。
彼らの戦闘技量が一般水準で語ってよいものなのか不透明である事。
龍堂は、この二つの要素をまったく考慮していない。
【ややや、ご参加ありがとうございます……と言っても自分はスレ主でも何でもないのですがw】
【騎士サイドが賑わいを見せようかという今日この頃、折れずに最後まで敵でありたいものです】
必要処理事項をあらかた片付け終わった辺りで
交代の旨を申し渡されるセラヴィー。
「ああ、もうそんな時間なんですね……分かりました、すぐに行きます」
そう返答し手早く部屋の片付けを始める。
仮の執務室として用意された部屋は見るも無残な状態で、足の踏み場などなかった。
ある程度中心に近い面々は揃ってこのような有様であり、かと言って丸投げできる
相手もいない事からどうしても整理整頓はおざなりになってしまうのだ。
セラヴィーはまだ要領と手際よく片付けられるからいい。
ある隊長クラスの人物の部屋など、ゴミ捨て場と間違えられた事すらあるのだ。
そんな扱いはごめんと、わずかな時間を使って片付けるようにしているわけであった。
そして、現在のアトルムでは見張りは全員での交代制を敷いている。
雑多な状態で役割分担がしっかりと行き届いておらず、目も回るような
忙しさの中で聞き逃したりするなどしてのトラブルが頻発した事を受けての措置だ。
セラヴィーを含めた隊長クラスも例外ではないが、気分転換には丁度いいと
概ね好評ではある。もちろん、処理の滞ってる一部の者は不満を漏らしているのだが……
今日の担当はサイグントゥム方面西側三番見張り台。
最前線であるアトルムにおいて、微妙にではあるがサイグントゥムに
もっとも近い位置であった。当然、サイグントゥムを進発した
斥候隊からも真っ先に見える場所である。
【どこまでやれるか、どこまでやっていいか分かりませんが】
【できるだけやってみるつもりですので、よろしくお願いしますね】
基地を出た後、龍堂はまもなく気付いた。
「意外とまともな見張り台じゃないか。思ったより拠点化が進んでいるようだ」
龍堂はただちに散開を命じる。
40名の斥候小隊を10名ずつの4個分隊に分け、そのうち1個分隊を自らの直卒とした。
志願制にしたため、それぞれ分隊を構成する種族は多種多様だ。
ゴブリン等の機動分隊、トロール等の打撃分隊、ドルイド等の支援分隊に分類するのが関の山で、
その他分類の難しい者は、全て龍堂の指揮する第1分隊に振り分けられている。
「第3分隊、前へ。第4分隊は第3分隊に続け。第1、第2分隊はその場で待機」
第3分隊とは先の分類における打撃分隊であり、第4分隊とは同じく支援分隊である。
この時、龍堂は斥候小隊が既に敵に発見されているものと考えていた。
アトルムの見張り台の位置からして、こちらの行動が筒抜けである可能性は小さくない。
夜戦に強い魔族の見地からすれば、充分に捕捉可能な距離なのだ。
人類の中に魔族に比肩する夜目自慢がいるかどうかわからないが、いないという保証はどこにもない。
であるならば、より悪い事態を想定するべきだった。
「中隊を連れてきてちゃんと威力偵察に出るべきだったかな。今さら言っても詮無き事だけど」
眉間に皺を寄せて難しい顔をしている龍堂の頭の中には、見張り台の破壊という目的が書き込まれている。
単に小競り合いで終わらせるつもりだったのだが、アトルムの拠点化が進行していた事が彼の予定を変更させた。
サイグントゥムを出撃した斥候隊は、目標を見張り台の破壊へ変更し、徐々にアトルムへと迫っている。
一応は草木の影を伝って進軍しているが、敢えて正面からの進路を取ったのは、敵方の出方を窺うと言った意味合いもあるだろう。
【先制攻撃、どうぞw】
早馬を走らせ、一人の少年風の騎士がアトルムの城砦に入った。
騎士の中でも例外的な軽装備。これでも聖都モナスカスフィルの騎士である。
「残れと言った次には戦地に赴け、とな…何と人使いの荒いことか」
名はエイトゥリム・トランシル・セレウキアソウェト…通称エイトリーである。
聖都での任務を早々と切り上げさせられ、最前線へと行かなくてはならなくなった。
娘夫婦や孫に別れを告げる時間すらなく少々心細いものの、頬を叩いて気合を入れる様子は
ベテランの戦士そのものであった。
「三番見張り台は…ここか」
アトルムの城砦は難攻不落と言われた歴史あるサイグントゥムに比べ、低い作りとなっている。
不意を突かれれば決して安全ではないだろう。
敵には東方出身の智将が猛威を奮っていると聞く。サイグントゥムの陥落を見れば、
早くもこの地が計略にかかっていてもおかしくはない。
エイトリーが到着すると、先に入っていたと思われる味方の若い女騎士がこちらに振り返った。
少年のようないでたちのエイトリーを見ると、早速がっかりしたような表情を見せた。
「やあ、上手くやってるかな?私は法王庁の騎士エイトリーだ。君の名は?」
女騎士の服装をよく見ると、装備にはことごとく帝国の紋章が入っている。
なるほど、仲間から浮いているように見えたのは帝国兵の姿を見た他国籍出身の兵が
警戒しているからなのだろう。エイトリーは彼女の手を取ると、まず握手してみせた。
「君は綺麗な目をしている。だが、勿体無い… そう、騎士だからこそ団結が必要なのだ。
ちょっと失礼… これでよし…と!君もこれで我々の同士だ」
荷物袋から聖章旗を取り出す。そしてそれを女騎士の首に結びつけ、後ろに垂らして
マントの上を覆うようにした。はためく純白の布にはっきりと聖章が浮かび上がる。
念のため締まりすぎていないか首を触って確認し、頭を撫でる。
そして周りの騎士や従者・雑兵たちに呼びかけた。
「騎士よ!兵士たちよ…!今こそ立ち上がれ!…今こそ、魔王軍の奴らに
目に物見せてくれようぞ!国籍や種族など関係ない!まさに今ここにいる我々こそが、
魔王軍を討つ聖なる槍なのだ…!!」
エイトリーは弓戦士であるため、早くも見張り台の前線に立たされた。
周囲に入り混じる過度なほどの期待、嘲笑、好奇のまなざしを見ると、先ほど
目立つ事をしたのを後悔したほどである。
(なんということだ…これでは集中できん)
弓矢の準備はできた。あとは精神力の集中だが、ついでに魔力の探知を無意識のうちにしていた。
「…馬鹿な!」
決して膨大なものではないが、敵意のある魔力が近づいてきているのが分かった。
エイトリーは決して眼が良いわけではなく、ましてや夜であるので、敵のはっきりした位置は分からない。
しかし、確かに夜襲は行われようとしているのだ。目立たないモーションで振り返ると、近くの相手に伝えた。
「夜襲だ。敵はもうすぐそこまで来ている…北の森の方向からだ。
静かに他の見張り台にも知らせろ。敵を引き付けたら一斉に反撃を行う」
いつ敵が現れてもいいよう、エイトリーは弓を構え、精神を集中させた。
【遅くなりましたが再参戦です。よろしくお願いします。】
帰ってきたのは嬉しいが急ぎすぎだら
セラヴィーは執務室まで持つ隊長待遇なのに
部下の一人から聖都からの早馬の報告が入った。
何か良くない報せか、と聞くと最前線への赴任を新たに申し付けられた為、
急ぎ馬を走らせて駆けつけたのだとか。
「そうですか、朗報で安心しました。ではその方には休息を取って頂いて……?」
聖都からの騎士、エイトリーに自身の権限で休息を取らせようと
口にしかけたところで一人の少年のような顔立ちをした人物が見張り台に上がって来た。
セラヴィーは名前はおろか風貌も聞いていなかったため、
その少年兵がエイトリーと名乗るまで聖都の騎士だとは気づかなかった。
「え、ええ……貴方が、エイトリーさm……?」
少々面食らいつつ、自己紹介をしようとしたところでいきなり握手された。
その上なにやら一人合点してあれよと言う間に話が進んでいってしまう。
突然の急展開に、お疲れ気味のセラヴィーの思考はまったくついていけていない。
「え、あ、はぁ……ありがとう、ございます……ではなくて!」
このまま流されっ放しではいけないと、二、三度首を振って呆けた意識を覚醒させる。
虚を突かれて機を逸し。結果名乗れていないのだ。それは礼を失する事になってしまう。
「はじめまして、エイトリー様。私の事はセラヴィーとお呼び下さい。
お気持ちは有難く頂戴しておきます。ですが、今の私にはこれは羽織れません」
そう言うとセラヴィーはエイトリーが誂えた聖章旗を外し、手に持った。
まっすぐにエイトリーの目を見て、凛とした姿勢で自らの思いを語る。
「私は自分の生まれや育ちを隠すつもりはありません。
後々帝国の出身と知れて、私の気持ちを疑われるのは不本意ですから。
それに、私は自分の行いを通じて多くの人に知って頂きたいのです。
帝国の人間が、みな利己的な考えを持っている訳ではないと言う事を。
ゆえに私はこの身を包む帝国の紋章を消さないでおいているのです。
ですから、この旗はこうして……」
手に持った旗を、背負っていた斧槍の柄にしっかりと巻きつけていく。
巻き終ったところで距離を取り、一振りすると聖章旗が見事に開いた。
ちょうど吹いた一陣の風が少しの間だけだが力強く聖章旗をはためかせてくれる。
「いつでも広げられるようにしておきますね。
これならば、いつでもエイトリー様のお気持ちを思い出せますから」
そう言ってにっこりと微笑んだ。
そうしてエイトリーと衝撃的な出会いを果たして数十分が経った。
突如早馬で現れ、騎士団長もかくやという演説を早々に披露したエイトリーは
すっかり注目の的となっていた。さすがのセラヴィーにもフォローのしようがない。
(一目見た時の印象と違って、しっかりとした考えの持ち主のようですね。
熟練の騎士である事は立ち居振る舞いで分かりますし、胆力も問題なし)
エイトリーの哨戒状態を見て、セラヴィーは冷静にエイトリーと言う騎士を分析していた。
そんな時、エイトリーの驚いたような声が耳に入る。続く内容は……敵襲!
「それは本当ですか?……嘘をついている様子ではありませんね。
分かりました、すぐに他の哨戒員にも声をかけさせます。
……近くに来たら教えて下さい。気取られぬ様にそこの松明を放って
周囲を照らしますので」
先ほどエイトリーの到着を知らせに来て、そのまま見張りについた部下に
伝令を頼みそれと分からぬ様に準備を進める。
「それにしても、このタイミングで敵襲……いつもの小競り合いなのか、
或いは侵攻再開の先触れ? どちらにせよ、気を緩められませんね。
エイトリー様、弓が使えなくなった場合はすぐに下がって武器を持ち替えて下さい。
その間の時間稼ぎくらいはできる筈ですので」
突破された場合、乱戦になる。斧槍は使えないだろうと判断し長剣に手をかけた。
【>龍堂様
先制攻撃、と言うよりも迎撃準備を整える形になった気がします(汗)】
【>エイトリー様
こちらこそ、実力不足の若輩者ですがよろしくお願いしますね】
【>275様
私は気にしていませんから、大丈夫ですよ。
駄目ならば駄目と言いますしね。お気遣い、有難う御座います】
【長くなり過ぎた為にレスを分けました】
「動かないな。なかなか慎重な指揮官だ」
既に第3分隊は、見張り台からの射程圏内に突入しているはずだった。
しかしアトルムからの反撃は未だ実施されていない。
よもや、こちらの動きに気付いていないという事もないだろう。
これ以上、不用意に接近するのは危険だ。
「第4分隊に伝えてくれ。魔法攻撃用意、全属性使用自由」
龍堂は手持ちのハーピーを使って伝令を飛ばした。
空を飛ぶ事で伝令が敵に発見される可能性は高まるが、今は速度を重視しなければならない。
今さら事前の作戦が不徹底であった事を嘆いてもしかたないし、背に腹は代えられないところだった。
龍堂は併せて第1分隊に前進を命じた。
第4分隊と合流し、魔法攻撃中に敵の攻撃を受けた際の援護を容易にするための処置である。
第3分隊にはそのまま前進を続けさせる。
詠唱が完了し、魔法による遠隔攻撃が開始される頃合い、丁度第3分隊が敵の照明圏内に侵入するはずだった。
ほどなくして第4分隊は詠唱段階を終了し、魔法攻撃の用意を整えた。
その報告を受けた龍堂は、大きく首を縦に振って右腕を上げた。
それから一呼吸おいて号令を発する。
「魔法、撃ち方始め!」
火球、氷槍、雷撃等々、種々の攻撃魔法が闇夜に彩りをもたらした。
それらの進路は一様にアトルムの見張り台を目指しており、中でも西方三番見張り台に攻撃が集中した。
これだけの事で破壊されるほど脆弱な構造にはなっていないだろうが、見張り台に配置された人員に対する殺傷力は充分に保有しているはずだった。
この魔法攻撃を合図として、第3分隊が突撃を仕掛ける。
アトルムの照明がはっきりとトロールたちの姿を映し出す間合いから、各々が武器を携えて門へ直進しようとしている。
何者の妨害も受けなければ、彼らは自身の重量と勢いを以って、アトルムの門を突破してしまいかねない。
一方その頃、第2分隊はなりを潜めていた。
龍堂の命令を受け、ひっそりと隠密行動を取って戦場を迂回、アトルムの側面を窺っていたのだった。
【いやっほーう、復帰最高! この年の瀬のクソ忙しい時期にどうもありがとうございます】
【で、とりあえずこっちから仕掛けてみました。適度にぼかして回しましたので、お好きなように受けて頂いて構いません】
「私は自分の行いを通じて多くの人に知って頂きたいのです。
帝国の人間が、みな利己的な考えを持っている訳ではないと言う事を。
ゆえに私はこの身を包む帝国の紋章を消さないでおいているのです。
ですから、この旗はこうして……」
女騎士、セラヴィーは聖章旗を外し、ハルバードの柄に巻きつけた。
一瞬驚くが、その凛とした行動にエイトリーはすっかり感心してしまう。
「これならば、いつでもエイトリー様のお気持ちを思い出せますから」
「ふむ… いい表情をしている。娘を思い出すようだ」
こちらも微笑み返す。娘?という表情をするセラヴィーをよそに、
エイトリーは周囲へと呼びかけを行った。
エイトリーの知らせをセラヴィーが聞き、続いて周囲の兵士が動く。
「エイトリー様、弓が使えなくなった場合はすぐに下がって武器を持ち替えて下さい。
その間の時間稼ぎくらいはできる筈ですので」
「馬鹿な、私が女に盾になってもらうような非道なことを… む?」
その時気付いた。セラヴィーの周囲で兵士たちが指示を受けて動いている。
何とセラヴィーが、この持ち場の隊長だったのだ。
「…すまなかった。馬鹿なのは私の方だったな。セラヴィー、君の言う通りに
無理をせず後ろに下がるとしよう。危険が及ぶようであれば遠慮せずに私を頼るがいい。
そうなれば全力をもって君を守ろう」
こりゃ赤っ恥をかいた、といった感じでエイトリーは頭に手を当て、軽く頭を下げた。
敵の最初の動きは、森の上をハーピーが舞ったところから始まった。
エイトリーはあろうことかこちらに気を取られ、絞った弓に風の魔法を重ねると
そちらに向け放った。
辛うじてそれは仕事を終えたハーピーの腹部を貫き、撃ち落とすことに成功した。
しかし、敵は既にそのさらに前面へと達していたのである。
エイトリーは強力な範囲攻撃をあっさりと消費してしまった。
「魔法、撃ち方始め!」
敵将の号令が上がり、一斉に様々な属性の魔法がこちらに向け放たれた。
「い、今だぁ!撃てえぇぇぇ!!」
上ずったエイトリーの声が上がる。魔法が放たれると同時に敵の位置がはっきりと見えた。
前面に出たドルイドの後ろからトロールの大きな体が現れ、城壁に迫ってくる。
こちらからの弓兵の攻撃によりドルイドの一体が射倒されたのを確認すると同時に
城壁に爆発音が響いた。
「ぎえぇぇぇえぇ!!」「ぐぅぅああ!」
前面にいた弓兵の断末魔の声が響く。少なくとも近くにいた二人は絶望的だ。
「ケイン!殺られた…のか!?」
隣で立っていた若い騎士が、自分の前で弓を構えていた従者が倒れたのを見て、そう叫んだ。
体の半分が魔法で吹き飛んでおり、とうに絶命している。
だが、この騎士は実戦経験が少ないのだろうか。明らかに従者の死に狼狽している。
(何だこの士気の低さは!このままではまずい…)
「弔いは後にするんだ!トロールが来るぞ…その従者のためにも君は
剣を抜いて前に出るべきではないか?私も支援する…!」
エイトリーが矢をつがえ、ドルイドの頭を射抜く。まずは危険な魔法攻撃を
少しでも抑えなくてはならない。
二体目のドルイドの頭を射抜いた頃、城壁にトロールの突撃が行われた。
「セラヴィー!そちらは大丈夫か?」
エイトリーは隊長の様子を見、弓を置くと、今度は剣に手をかけ構えた。
再び精神を集中しつつ敵の動きを見る。
280 :
名無しになりきれ:2009/12/28(月) 21:51:46 0
脳味噌ぐちゃ
娘、と確かに言われた。妹とか姉とかでなく―――。
とすると、エイトリーは童顔なだけで実は自分よりもかなり
年上なのではなかろうか? 気になったが、怖くなったので聞くのを止めた。
申し出を聞いたエイトリーが抗議しかけてすぐに撤回した。
何に気づいたのか大よそ分かったが、追求する気は元より無い。
「いえ、お気になさらず。はい、有事の際には頼らせて頂きますね。
でもエイトリー様、お気づきでしたか? 弓を使える貴方を、
会ったばかりだと言うのに私はもう頼りにしているんですよ」
事実、セラヴィーには弓は扱えない。肉体的にも感覚的にも
修練すればすぐに頭角を現す素養はあるはずなのに何故か使えないのだ。
それを自覚しているセラヴィーにとって、弓兵は尊敬と信頼に値する存在なのである。
むろん、人格面に問題がある場合は無条件に、とはいかないのだが―――。
敵部隊には少なからず魔術を行使できる者がいたようで、多様な攻撃が
自身のいる見張り台を中心に襲い掛かってきた。咄嗟の反応で自分は無事だったが、
今の攻撃で近くにいた騎士の従者がやられてしまった。
なお悪い事に、その騎士アルバは経験が浅くゆえに奇襲と従者ケインの
突然の死に狼狽し身動きが取れなくなってしまっていた。
エイトリーの呼びかけも耳に届いておらず、死の恐怖に支配され始めていた。
「アルバ! しっかりなさい!」
このままでは第二波の攻撃でケインの後を追ってしまうと判断したセラヴィーは、
恐怖で自失しかけていたアルバの頬をひっぱたいた!
「エイトリー様の言うとおりです、そんな有様では貴方に仕えたケインが
胸を張って自分の事を、貴方の事を誇れないではありませんか!
今貴方がなすべき事は、ケインの死に打ちひしがれて
自分の殻に閉じこもる事でも、座して死を待ちケインの後を追う事でもありません!」
ここまでまくし立てて一息。
「貴方は騎士なのですよ……正しき者を守る盾であり、悪しき者を討つ剣。
貴方がケインの事を想うのならば、ケインの無念を晴らす為にも剣を取りなさい!」
鼓舞する内に感情が昂ぶったのか、セラヴィーの目尻にはうっすらを涙が溜まっていた。
それを見たからか、或いは叱咤が功を奏したのかアルバは自分を取り戻してくれた。
「……ええ、それでこそケインが主と認めた騎士の姿です。
ではアルバ、貴方は門の前に行き敵の侵入に備えて下さい。
正門を抜かれれば被害が拡大します。可能な限り持ちこたえて下さい」
命を下されたアルバは、先ほどのうろたえぶりが嘘の様に生気に溢れた返事を残し門へと向かった。
「エイトリー様、これ以上の攻撃を許せばアトルムの防衛線に大打撃を受けてしまいます。
エイトリー様には、このキャットウォークに上っている弓兵の指揮をお願いします。
私は開門し、敵指揮官の捜索に当たります……どうか、アトルムを守って下さい」
そう言ってセラヴィーは見張り台から駆け下り、自身の隊員と合流して門へと向かった。
―――一方、アトルム司令部では―――
城壁周辺での爆音と伝令により、執務中だった司令官にも敵襲が察知された。
司令官「くそッ、奴らめ性懲りも無くまたきおったか!
重装部隊は門の前に陣取り、敵部隊の進攻を止めろ!
その後方に弓兵隊、魔術師団は所定の位置に着き援護を、味方への誤射には注意せよ!
神官団と救護部隊は随時負傷者の搬送と介抱を、護衛部隊は一歩も彼らに近づけさせるな!
私は前線に出て、直接指揮を執る! ……思い上がった魔族どもめ、人間の力を、舐めるなよ……!」
伝令を受け、各部隊の隊長達は当初の混乱を引き摺る事も無く、部隊の配置を行っていく。
その訓練された動きは、先の侵攻を生き延びなおアトルムに駐留する強者達の士気と、
苛烈な経験によって磨かれた錬度の高さを感じさせるものだった。
その様子を見ていた傭兵たちも、誰に言われるでもなく自身の最も得意とする場所へと陣取った。
彼らの心にも火がついたのだろう……負けてられないと言う感情の火が―――。
【何と言うか、決定リールと呼ばれるものを多く含んでいる気しかしないです……
従者に先立たれた騎士の名前を勝手にでっち上げてしまいましたが、良かったのでしょうか?
それに司令官まで出してしまって……】
騎士側参加者多そうだな
ここはいっちょ敵サイドで参戦してみようかしら
いやいや、どう見ても騎士側2人しかいないだろw
敵側はいれば助かるけどどっちかってと騎士側の方が需要あるぜ
あ、いやほら上の方で年明けから〜って言ってるじゃないっすか
だから敵方のが人少なくなるのかなぁと
「拙い事になったぞ。あちらさんを本気にさせてしまった」
渋面を作っている龍堂が受けたのは、城門を攻撃中の第3分隊からの一報だった。
報告によれば、城内の精鋭と思しき部隊が迎撃に出始めているようだった。
そもそもこちらの戦力は僅か40名に過ぎない。
本格的な反撃を受ければ、ひとたまりもないのだ。
「ヒューマン・ボーイズは戦争が出来るのか?」
龍堂がそんな冗談を口にしたのは、初撃を加えた直後の敵兵の動揺を見たからだった。
しかし、今となってはそのような余裕など消え失せてしまっている。
「第3分隊を後退させてくれ。第4分隊は援護……おっと、危ない」
危険を察知して身を屈めた龍堂の頭上を、一本の矢が通過して行った。
この場所は、城壁からの射程にすっぽりと収まってしまっているのだった。
すでに第4分隊は2名の損失を計上しており、これ以上の損害は容認できなかった。
城壁上からの攻撃に対処する必要がある。
そう考えた龍堂は、おもむろに魔法銃を引き抜いた。
慣れた手付きで魔法弾を装填すると、中空へ向けて発砲。
魔力によって構成された弾丸は、第4分隊の上空で炸裂した。
「対物理障壁を展開した。効力は長続きしないが、第3分隊の後退を援護するには充分だろう。さあ、やってくれ」
平素は緊張感の無い顔付で命令を下す龍堂だが、今回ばかりはその表情に緊迫の色を滲ませていた。
上手く第3分隊が後退に成功したとしても、その背後にはアトルム正規軍が追撃のため襲い掛かってくるはずだ。
第4分隊も時機を見て後退させなければならないから、殿軍は必然的に龍堂の第1分隊が担う事となる。
龍堂及び第1分隊は、刻々と死戦の兆候を感じつつあった。
【遅くなって済みません。それとあけましておめでとうございます】
【New Comerも騎士側・魔王軍を問わず絶賛募集中でございます。お気軽にご来店下さい】
「なかなかやるな…あの娘」
セラヴィーがアルバと呼ばれた騎士を立ち直らせ、自分の部隊にそのまま組み込んで門の方に向かう。
「私は開門し、敵指揮官の捜索に当たります……どうか、アトルムを守って下さい」
「了解、無理はするなよ」
ちょっと先走り過ぎではないか、とも思ったがとりあえず頷くことにした。
見張り台の戦力はドルイドの魔法攻撃をほぼ無力化し、
トロールの攻撃を辛うじて食い止めていた。
「ひぃぃぃ!何だこいつらぁ…うわぁあ!」
いきなり兵の悲鳴が上がった。何が起こったのかと思い見てみると、
壁に張り付いたトロールを足場にしたゴブリンがわらわらと城壁の上に上がり、
弓兵たちに襲いかかっているではないか。数人が急所を突かれて倒れる。
「怯むな!相手はゴブリンだぞ…落ち着いてやれば勝てる!」
傍にいた騎士、従者が気を落ち着けて迎撃に向かうが、既にゴブリンの二体は
エイトリーの元に飛び掛ってきた。
「ぬおぅっ!」
慌てて剣を抜き、ゴブリンの一体の首を横薙ぎにする。辛うじてリーチはこちらが上だ。
大きく抜けたモーションにゴブリンの返り血もあり、エイトリーはもう一体に
左側面を取られ、懐に入られたかに見えた。
「ギャァァ!」
上がったのはエイトリーではなく、ゴブリンの悲鳴だった。
「ハンドアーチャー…」
なんと、エイトリーの左手には小さな片手弩が握られていた。いや…正確には仕込まれていた。
エイトリーはそれを自慢げにちらつかせるが、周囲の兵たちは自分の持ち場で夢中で全く見ていない。
下の方が騒がしくなっている。どうやら司令部からの増援のようだ。
前線をこのタイミングで押し返すつもりだろう。セラヴィーも合流するに違いない。
「おや…敵は撤退するつもりのようだぞ」
急に後退し始めたトロールらの姿を見てエイトリーがつぶやく。
耐久力のあるトロールは半数以上がまだピンピンしている。間違いなく撤退だろう。
敵の部隊の上に障壁らしきものが見える。上位の魔術師…おそらく敵の幹部だろう。
司令部の本隊はそのまま追撃に向かうようだ。
「さて、私たちは…一先ず手当てからだな」
生き残った半数以上が怪我をしており、中には重傷の者もいる。
防衛戦は勝利、十分な成果だ。
ポーション類を取り出すと、後ろに下がった仲間の方に放り投げる。
「よし、敵が射程からはずれ、我らの本隊が敵に接触するまで援護するぞ」
無事なエイトリーは、他数名の仲間とともに弓で敵への追い討ちをかけることにした。
セラヴィーの姿はこちらからは見えないが、野戦場かこちらにいずれ来るだろう。
敵突撃部隊の攻撃により多数の負傷者を出したものの、
重装兵たちは敵の猛攻を前に良く耐えていた。合間に反撃をしたために
敵に余計な勢いを付けさせなかったのも大きいだろう。
既に交戦した大よそ10体のトロールの内2体は息絶えており、
残る8体もいずれは包囲分断され、各個撃破されるのだろう。
そう思っていたが、突如敵部隊が後退を始めた。
劣勢を悟り被害の拡大を防ぐためなのだろう。考えなしの
トロールとは思えない手際のよさで、殿もきちんと立てている。
有能な指揮官に率いられている事は疑いようが無い。
司令官「敵の後退を確認したが、第二波の懸念は捨てきれない!
重装兵は引き続き城門前の防衛に当たれ!
……セラヴィー隊が追撃を開始しただと?
クレド隊とホーク隊はセラヴィー隊につき、追撃せよ!
ただし深追いはするな、敵の伏兵の可能性を常に念頭に置くように!
手の空いた者は負傷者を神官団の元に、急げ!」
司令官「城壁部の指揮は……エイトリー? 先ほど着任した聖都からの騎士殿か。
セラヴィーから指揮を引き継いだのか……エイトリー殿に伝令を。
城壁部の状況が安定したならば弓兵隊長に場を一任し司令部へ来る様に、と。
……来て早々戦闘になったと言うのに、果敢に敵に立ち向かい、
突然の指揮委任にも躊躇する事無く任務を遂行したのだ。
司令官である私がその労苦に報いねば、礼を失するだろう? 頼むぞ」
―――一方、追撃を開始した部隊―――
『隊長、クレド隊とホーク隊が追撃に参加する模様!』
「了解しました、両部隊の攻撃に巻き込まれないよう十分に注意して下さい。
歩兵には歩兵の戦い方があります、功を急いて無駄に命を散らさぬよう―――」
『了解!』
クレド隊は騎兵部隊で、ホーク隊は弓兵部隊である。
野戦においてこれ以上の組み合わせは無いだろう。既に敵部隊はセラヴィー隊の
視界に収まっている。直に、援軍もその姿を視認するであろう。
その中、隊に合流した先ほどの騎士アルバに声をかける。
「大丈夫ですか?」
『先ほどは見苦しい所をお見せしてしまいました……もう大丈夫です。
ケインの為にも、仲間の為にも……私はもう迷いません。共に武運を』
「はい、互いに勝利の女神が微笑まん事を。では、また後ほど」
話すうち、殿を務めているであろう敵部隊との交戦距離へ踏み込む。
「現在殿を務めているのが、敵の中核部隊のようです。
個々の力量では敵わないでしょうが、我々には数と兵種の理があります。
落ち着いて事に当たる様に……セラヴィー隊、交戦を開始します!」
『オォーーーー!!!!!!!』
鬨の声を上げ、敵殿部隊へと駆けるセラヴィー隊。
その後ろからは騎兵隊と弓兵隊がそれぞれ駆けつけ、陣を展開し始めている。
【明けましておめでとう御座います。返信が遅れ、申し訳ありませんでした。
これからはなるべく間が空かないようにしたいと思います。
今の所は問題ないようなので、司令官を引き続き動かしています】
【>283及び285様
返信が遅れましたが、是非ともご参加下さればとても嬉しく思います。
どちらの陣営になさるか分かりませんが、その時はよろしくお願いいたしますね】
新規参加おk?
すまん、文章を間違えて投下してしまった
参加したいんだが今騎士側と敵側どっち需要ある?
どっちかってと騎士側だが敵側がしばらく顔出して流れ止まってるし
敵側でもいいと思う
「第3分隊は負傷者を収容して基地まで退いてくれ」
分隊長を務めるトロールの一人にそのように命じた後、龍堂は敵追撃部隊を観察した。
先頭は歩兵部隊だったが、後方に騎兵と弓兵が控えているようだ。
順次予備戦力を投入されるのは、こちらにとってあまり楽しい事態とは言えそうにない。
この問題に対する策について、龍堂は少々思考の時間を経た。
その間にも敵歩兵部隊が接近しつつあった。
第4分隊は詠唱を完了しており、すぐにでも攻撃を加えられる態勢を整えている。
既に敵部隊を魔法攻撃の射程圏内に捉えていたが、龍堂は即座には攻撃を命じなかった。
敵部隊を充分に引き付け、必中距離となった段階で初めて、彼は第4分隊に攻撃命令を下す。
「撃て!」
第4分隊から、魔法攻撃が飛んだ。
使用属性は火を命じてあったから、火球ばかりが敵歩兵を目掛けて一直線に向かっていく。
この一撃を放った第4分隊は、整然と後退を開始した。
彼らは龍堂の命令により、魔法の一斉射の後は一目散に基地へ戻る段取りになっている。
代わって前列に飛び出したのは第1分隊だった。
「総員、突撃に移れぇっ!」
龍堂の号令が下されると、第1分隊は猛然と敵追撃部隊に突入を試みた。
第1分隊には、ワーウルフやリザードマン、キマイラといった非常に好戦的な面子が揃っている。
扱いが難しいために手元に置いておいた連中だが、乱戦に際しては頼もしい戦力となる事を期待してよかった。
龍堂も魔法銃を固定式に設定し、銃身から炎を立ち昇らせて敵中に斬り込んだ。
即席のフレイムソードだったが、弾丸に籠められた魔力が消失すれば、この効果も失われてしまう。
追撃部隊の歩兵隊に対して乱戦状態に持ち込む事は、龍堂にとっては一か八かの賭けだった。
彼は、敵の騎兵・弓兵への対処を、この手段によって解決しようと企図したものだった。
敵味方入り乱れた状況では、弓兵の援護は難しいと踏んでいる(味方への誤射という危険が高すぎるからだ)。
騎兵についても、乱戦となってしまえば、その最大の武器である機動力を活かす事は出来まい。
(これが上手くいったとしても、次が問題だ。どのタイミングで引き揚げたらいいものやら……)
敵兵と斬り結ぶ中、龍堂はそのように考えざるを得なかった。
単に乱戦に持ち込んだだけでは、数に劣るこちらが消耗するだけだ。
個体の能力、夜間戦闘という二点の優位を以って、どこかで状況を打開する一手を放たなければならない。
次の一手を模索しながら、龍堂と第1分隊は死戦の中へ身を投じている。
【む、む。なんだか筆のノリがよろしくない。でも3日を超えて止めていられない。そんな中途半端な出来でごめんなさい。世界に向けて謝罪します】
【魔王軍は野の遺賢を広く募集しております】
魔王軍にエントリーシートを提出してみるでござる。
【名 前】オズライト・フォウル
【年 齢】58歳
【性 別】男
【種 族】人間
【職 業】魔王軍/野戦指揮
【魔 法】戦闘補助系統をいくつか
【装 備】大剣、甲冑
【持ち物】予備武器
【身長・体重】180cm 85kg
【容姿の特徴、風貌】灰色の髪と髭、隻眼
【性 格】豪放
【趣 味】馬の世話
【人生のモットー】恩も借りもしっかり返す
【自分の恋愛観】一生に愛する女は一人で良い
【備 考】ある小国の騎士だったが謀略により失脚。位と領地を剥奪され妻子も失う。
魔王軍に拾われ復讐を遂げた後もそのまま所属。
野戦と機動戦を好む武断派だが年齢相応に老獪。
【魔王サイドで参加しようかと。よろしくおねがいします。】
アトルムを見下ろす丘陵地帯。
戦場と化した原野を一望することの出来るその場所に一体の騎影があった。
「さすがに司令殿といえどこの数の差、それも撤退戦で埋めるは少々骨が折れる仕事じゃなあ…。」
顎を擦りながら重々しく声を発するのはサイグントゥムに駐留する魔軍の部隊指揮官、オズライト・フォウル。混じりけなしの人間である。
齢はすでに老境と言っても差し支えないがその体躯は鍛え上げられ、一線で活躍する若い騎士と比べても勝るとも劣らない。
「斥候部隊を率いて御自ら出陣したと聞いた時はまさかと思ったが。
とは言え、定刻どおり帰還できなんだワシにも非があるのだがの。」
本来なら部隊を率いて矢面に立つのは彼なのだが別件で出ていた任務が予定より長引いたのだ。
その任務も物資調達と言えば聞こえはいいがようは略奪である。
「さて、と…。ここで悔やんでおっても戦況は良くならんしな。動くとしよう。」
愛馬の手綱を引き背後に控えていた部隊へと向き直る。
首の無い馬の牽く戦車に跨った重装の騎士。
巨躯の狼に乗ったゴブリンの戦士。
どこに座るのかと疑問が浮かぶ骨ばかりの馬を起用に乗りこなす骸骨の剣士。
彼が率いる魔物、その全てが騎乗兵であった。
突撃の命を待ちわびるようなその視線に満足げな笑みを返し――
「――これより司令殿の撤退を支援する。
一気に駆け下り、敵の横合いから食い破れ!
小難しいことは考えんでも良い。目の前の敵をひたすらに蹄にかけよ。
後は司令殿が良い様に計ってくれようて。」
引き抜いた大剣を高々と掲げ、馬を棹立ちさせ、その眼はすでに戦場を睨み付けている。
「チャアアァァァジッ!!」
号令一下。オズライトとその率いる騎兵達は土煙を巻き上げアトルム軍へと襲い掛かった。
『オォーーーー!!!!!!!』
勇ましい声が上がり、前線の本隊が駆け出していった。
(おぉ、あれは)
追撃を行う部隊の中に、長い髪を揺らすセラヴィーの姿を確認する。
その姿は遠くから見ても目だった。
そろそろ敵も射程圏内から離脱する。
「防衛戦は我々が制した!見ろ、我が軍が敵を追い詰めていくぞ…!」
高々と勝利宣言をすると、弓を下ろした。
「これは我々の勝利でもあると同時に、神の勝利、明知の勝利でもあるッ!」
エイトリーは傍に刺してあった聖章旗を掲げ、天に向けてそれを掲げた。
こうなるとすっかり止まらなくなるのがいつもの彼ではあったが、
なにせ不意を突いてきた敵のことだ。冷静に考えてみればみるほど、
本隊にセラヴィーの隊までもが前線に出てしまった以上、この場所は危険である。
見渡すと他の防衛隊も死傷者を出していて、勢いに任せて追撃を行った者が多数おり、
手薄になりつつあった。
「まずは怪我をしている者の治療を優先だ。セラ…隊長は敵の追撃に向かった!
我々はこの場所に留まり、隊長が戻るまで防衛任務を続けるとしよう」
先ほどの活躍ぶりを見てか、エイトリーの言葉からやや間を置いて、騎士たちが
黙々と任務についた。
「なにィ!?」
弓の修繕をしながらふと遠くを見ると、夜の闇であまりはっきりとは見えないが、
聞きなれない獣のような声、そして味方と思われる人間の悲鳴などが響いた。
どうやら、敵の一部隊が反撃に出たようである。
エイトリーは慌てて作業を中断し、城壁に張り付くようにして見守った。
【名 前】ラックラー
【年 齢】19歳
【性 別】男
【種 族】カエル
【職 業】騎士
【魔 法】錬金術
【身長・体重】8センチぐらい
【容姿の特徴、風貌】
派手な金の鎧を身にまとった黄緑色のカエル
頭には小さな王冠がのっている
【性 格】
常にハイテンションなおしゃべり蛙
適当人間
ポジティブで自信過剰
【趣 味】おまけ人形集め
【人生のモットー】楽しければおk
【備 考】
謎多き蛙
相棒は真っ白な白馬
錬金術の腕は相当高い
運の良さは一流
【
>>292 回答ありがとうございました。騎士として参加させていただきます。】
【>>龍堂さん、みなさん 次回がもしあったら魔王軍として参加したいと思います。
これからよろしくお願いします。】
敵部隊に迫るセラヴィー隊の先頭に立つのは隊長であるセラヴィーだった。
普通隊長と言うものは、先頭から一歩引いた位置か部隊の最後尾が
基本的なポジションなのだが、セラヴィーは着任してから今に至るまで
決して先頭を譲らなかった。故に、敵部隊の動きに真っ先に気づいたのも―――
「! 敵部隊から魔法攻撃! 後続は回避行動を取りなさい!」
そう叫び、自身も身を屈め火球の洗礼を潜り切り込んでいく。
「うぁぁぁぁっっ!」 「くそっ、ザナクがやられた!」 「ヴェイルもだ!」
後続の様子から二名の隊員が魔法攻撃の餌食となったようだ。
だがしかし振り返るわけにはいかない、既に目の前には新手が迫り出しており
他に気を回せばたちどころに壊滅してしまうのだから。しかしこれも敵の策なのだろう、
魔法攻撃による僅かな隊列の乱れに付け込まれ、敵味方入り乱れる乱戦になってしまった。
「乱戦に持ち込まれた……! これでは後続部隊の援護は望めませんね……
セラヴィー隊、決して孤立するな! 互いに背を合わせて戦うのです!」
指示を受け、隊員は互いを確認すると背を預け合い抗戦する。
そんな中セラヴィーは、刀身が炎でできた剣を振るう魔族と鉢合わせてしまった。
目の前の相手こそサイグントゥムの司令官、龍堂詠羽だった。
一方、クレド隊とホーク隊はセラヴィー隊と敵部隊が入り乱れてしまった為に
当初の予定を変更、乱戦の外周に近い敵を優先的に狙う作戦を取った。
突発的な状況の変化にも、即座に対応する事ができたためセラヴィー隊の
被害は想定よりも少なく済みそうだった……が、手槍での機動戦を
行っていたクレド隊に敵の増援と思わしき騎兵部隊が迫っていた!
「クレド隊長! 我が隊の側面より敵の増援が迫っています!」
「こちらでも確認した!(クッ、まんまと敵の策にかかってしまったか!?)
クレド隊はこれより敵騎兵部隊へと矛先を変える!
ホーク隊には決して近づけぬ気概で臨め! チャージ!」
奇しくも敵騎兵部隊指揮官オズライトと同じ号令でクレド隊は敵部隊へと突撃を開始したのだった。
一方ホーク隊は部隊を半数に分けた。隊長ホーク側は各々の得意とする得物を抜き放つ。
「野郎ども! 陸の化け物なんぞにビビるんじゃねぇぞ!
突っ込んだ嬢ちゃんらの手助けだ、ヘマこいたらゲンコツじゃすまさねぇからな!」
「オォォォーーーー!!!!」
ホーク隊は乱戦に突入、苦戦を強いられているセラヴィー隊と合流しようとする。
残った部隊はクレド隊への、弓での援護射撃を続けるようだ。
―――アトルム司令部では―――
司令官「敵の増援だと!? チィッ、このままでは追撃に出た部隊が……
止むを得ん、重装兵と魔術師団を押し出し前線の兵へ魔法での援護をさせる。
兵団長アダンと師団長アイゼルにはその様に伝えろ!
城壁部のエイトリー殿には引き続き周辺部と……城内の警備を願おう。
特に兵糧庫と武器庫はアトルムの要……もしここに被害が出れば、
アトルムの城塞機能は大幅に低下してしまうからな」
司令官から伝令を頼まれた従士は、急ぎエイトリーの元へと走る。
敵部隊との交戦場所が城壁外である為に、必然城内は手薄になっており
万が一敵の別働隊にこの急所を衝かれるような事があれば、体勢の立て直しに
更なる時間と人手が割かれるのは明白だったからだ。
【またしても遅くなってしまいました……できない口約束はするものではありませんね……】
【>龍堂様
そんな事は無いと思いますよ。私の方はといえば、どうもやり過ぎな気がする内容ですので……
遅れた事も含めて、私も一緒に世界に向けて謝罪いたします】
【>オズライト様
よくお越し下さいました。敵同士と相成りましたがよろしくお願いいたしますね。
ご都合主義と取られるでしょうが、このまま側面を衝かれると全滅確定なので
騎兵同士でぶつかる様にしてしまいました。申し訳ございません】
【>エイトリー様
と言う事で、僭越ながらネタを振らせて頂きました。
ご自身が担当されるもよし、部隊を分けて人員を回すもよし。
エイトリー様の望まれるままに動かして下さい】
【>ラックラー様
カエルとは驚きの出で立ちですが、こちらこそよろしくお願いいたします。
実はラックラー様に召集をかけようかと思ったのですが、ラックラー様にも
考えがあるのではと思い、今回は見送っています。申し訳ございません】
【名前】ジャック・クラウザー
【年齢】26歳
【性別】男
【職業】傭兵(正規軍側)
【魔法・特技】魔弾:魔力(火・氷・雷など)の宿った球体を放つ特殊技能
【装備・持ち物】魔弾、皮で出来た服とロングハット、愛馬(クリス号)
【身長・体重】180cm、65kg
【容姿の特徴、風貌】長い茶髪
【性格】陽気
【趣味】コイン集め(銭ゲバ)
【人生のモットー】とりあえず、死なない程度に頑張る
【自分の恋愛観】あんまモテないんでどうにもワカラナイ
【一言・その他】魔弾という特殊技能を持つ傭兵。
その日暮らしの為、傭兵の賃金で何とか生活している。
【皆様よろしく】
目の前の女騎士と斬り合った瞬間、龍堂は果てしない後悔の念に襲われた。
なぜなら、明らかに相手の腕の方が上だったからだ。
正直に言えば、体面など気にせずただちに逃げるべきだった。
しかし、相手の技量はそう簡単に自分を逃がしはしないだろう。
たちどころに防戦一方となってしまい、龍堂は早くも死を覚悟しなければならない状況に追い詰められてた。
その状況を打開する切欠となったのは、サイグントゥム基地から出撃した援軍の存在だった。
これは、龍堂にとってまったく計算外の事態だった。
しかしこの状況は、龍堂の構想にとって非常に都合のよい変化と言える。
女騎士と斬り結ぶ中、僅かに隙をついた龍堂は大きく後方へ飛び下がり、彼女の間合いから脱出する。
そして魔法銃の設定を変更し、頭上に向けて射出。
刀身の形をした炎の塊は、天高く舞い上がって大きく炸裂した。
実は、これは信号弾だった。
当初より戦場を迂回して戦闘に参加していなかった第2分隊に、行動を促すためのものだ。
いずれは第2分隊を動かして状況を打開するつもりだったが、時機を図りかねていたところである。
それが、予想外の味方援軍によって天の時を得た。
最後のカードは、今、この時を置いて他に切るべき時はない。
「退却だ! 全軍退却! 基地からの援軍にも引き揚げを伝えてくれ!」
龍堂は即座に伝令を走らせた。
ハーピーはもう使えない。
戦場の混乱を突けば上手く行くかもしれないが、アトルムの見張り台が問題だった。
腕の良い射撃手がいるようで、既にハーピーの他にも損害が出ている。
敵に背を向けようとした龍堂は、ふと思い留まった。
つい先ほどまで斬り合いを演じた相手を、少し気に掛けたためである。
「素晴らしい腕前でした。その技量は、我が軍にとって大きな脅威です。
時に、貴女のお名前をお伺いしてもよろしいでしょうか。
僕は龍堂詠羽。魔王軍サイグントゥム基地司令を拝命しております」
龍堂が呑気に挨拶などしている間にも、第2分隊は今まさに攻撃を開始せんとするところであった。
ゴブリンらの軽歩兵で構成される第2分隊は、敵側面を奇襲すれば、そのまま一撃離脱を図って基地へと戻って行くだろう。
第1分隊には既に負傷者も多く出ている。
基地からの援軍が状況を許すのであれば、騎馬に拾ってもらって撤退する事も、伝令に言い含めてあった。
魔王軍の威力偵察から開始された一つの夜戦は、徐々に終局の様相を呈し始めている。
【何だか物凄い勢いで人が増えてきた悪寒! グゥレイトォ!】
【ひとまず区切りを付けて次に繋げる方向で参りたいような気がしますが、如何でしょうか】
【それとまたまたまた遅くなって済みません。順番を勘違いしてました orz】
「さて…このまま歩兵の側面を突ければ苦も無く蹂躙できるが…。」
アトルム軍へと襲い掛かる人外の騎兵隊。
その最前を駆けるオズライトは異様なほど冷静に戦場を眺めていた。
特筆すべきはその瞳。常とは異なり鮮やかな金色で彩られている。
”梟の眼(オウルアイ)”と呼ばれる夜闇こそを己のテリトリーとする変異魔術。
それを用い漆黒が支配するフィールドを迷う事無く疾走していた。
目当てとする敵追撃歩兵との接触まで残り僅か、こちらの足なら数分で到達できる距離だ。
もとより騎馬と歩兵では勝負にならない。一方的に虐殺して終いである。
既に城壁からの弓による援護も失われた相手ならばなおさらだ。
「ま、そう簡単にはいかんよの。」
敵尖兵の背後から湧き出た騎馬兵がまるで歩兵の側面を覆うように展開する。
乱戦からはみ出た者を串刺しにしようという腹だろうか。
さらに背後には弓兵隊も控えているようだ。
オズライトは手綱から手を離すとハンドサインで部隊を二手に分けた。
自身はデュラハンとスケルトンナイトを従え騎馬兵へ、残るゴブリンライダーは大きく迂回し弓兵の背後を狙わせる。
魔物の中では非力と言えるゴブリンだが種族特有の矮躯は隠密行動に最適であり夜陰に紛れればより効果を発揮できるだろう。
あとは距離を詰めこちらに背を向ける騎兵を打ち倒すだけだが――
「――むう。気づきよったか。」
舌打ちしながら吐き捨てる。せめてもう少し距離を稼ぎたかったが…。
目の前の標的を屠った騎兵隊が反転、突撃。
突撃(チャージ)の声も高らかにオズライトへと肉薄してくる。
「こちらの動きを察した洞察力は褒めてやるがな。騎馬突撃でものを言うのは重さと――」
獰猛な笑みを浮かべ、大剣を振りかぶり
「――速度よっ!」
目の前の騎士へ横殴りに叩きつけた。
幾たびもの戦場を共にした愛馬はオズライトの動きを察し、直前に馬首を下ろしている。
一撃を受け損なった騎士を吹き飛ばし、返す刃で次の標的を馬ごと切断。
並走するように進み出た揮下の魔物たちも同様にその暴力性を撒き散らす。
魔物と人の身体能力差に加え駆け続けた者と駆け始めた者、その差は歴然であった。
数回の衝突を終え、上空に光が灯る。
龍堂が放った信号弾だ。
夜空を照らすのは赤、意味するところは撤退。
オズライトは角笛を咥え、高らかに吹き鳴らすと馬を返し退却準備に取り掛かる。
対峙した騎兵隊は殲滅こそ出来なかったが追討出来ない程度には叩いた。
こちらも死者が出たが戦果としてはまずまずと言えよう。
部下達も負傷者を拾いつつ撤退を始めているようだ。
オズライトも撤退中の友軍の中に龍堂の姿を確認すると馬を走らせる。
だがその近くには抜き身の剣を携えた女騎士の姿もある。
互いに向き合い何かを話しているようにも見えるが――
「――やれやれ、また司令殿の悪い虫が騒ぎ出したようじゃなあ。
まあ人間を見縊らんのは美点の一つじゃが…のっ!」
言い終えると同時、手近にあった槍を投げつける。。
弧を描いた槍は狙い違わずちょうど中間、龍堂とセラヴィーを分断するように大地に突き立った。
意識を逸らすことが目的なのでこれで十分だ。
オズライトはその間隙を突いて龍堂へ近づき、馬上に引き上げる。
「司令殿。老骨の相席で申し訳ないがお許し下されよ。」
「帝国の騎士殿、馬上にて失礼する。
此度の手際実に見事。いずれ別の戦場で相見えることもあろうがその時は我が剣馳走しよう。」
セラヴィーに告げ終えるとオズライトは再度撤退を開始した。
【とりあえず撤退開始。追撃ないならスタコラサッサです】
【セラヴィーさん
お気になさらずw
私もいきなり歩兵の側面突けるとは思ってませんでしたので】
【ラックラーさん、ジャックさんよろしくお願いします】
「うーむ」
次第に激しさを増したと思われる遠方の戦の明かりを見ながら、エイトリーは
唸っていた。
アトルムの兵が持つ松明やランタンの明かりよりも、見慣れぬ魔法の明かりが
徐々に目立つようになってきている。敵の抵抗が激しくなった証拠だろう。
その時、司令部にいたと思われる従者の一人が後ろから現れた。
「司令官閣下よりエイトリー様に伝令いたします!現在、城内の者の多くが
出払っており、各施設の防備が手薄になっております。少しでも多くの人員を
まわし、城塞機能を死守せよとのこと!」
「閣下から…だと?おぉ、そういえば…」
エイトリーは今になって改めて、この場の指揮権が自分に委ねられていることに気づいた。
司令官閣下からの直々の名指しだ。そしてセラヴィーの顔を思い出す。
(私も頑張らなくては!若い者には負けてられん…)
そして思い立ったエイトリーは、近くにある聖章旗を高く掲げ、手振りを加えながら
周囲の兵力に呼びかけた。
「弓兵以外の各員に告ぐ!これより武器庫・兵糧庫・正門付近の防衛の強化を行う!
各自配置につけ!我々弓部隊はここに残って見張りを続行する!これは司令官閣下からの命令だ!
隊長はまだ前線で戦っておられるぞ!我々も良いところを隊長に見せようではないか!」
オー!と掛け声が上がる。死者が何人も出ており、死体を脇に戦っているとはいえ、
士気はまだ十分だ。
エイトリーは戦況がお互いに撤退へと向かったことを明かりの動きから感じた。
「前線は決着がついたようだが…まだまだ油断はできんな」
弓の状態を確かめ、周囲を見渡して前線武器がいきわたっているかを確認した。
出会ってしまった敵とセラヴィーは幾度と無く切り結ぶ。
純粋な白兵戦の力量で言えばセラヴィーの方が上なのだろうが、
経験は確実に相手の方が上だった。押してはいるのだが、後一歩を踏み込ませてくれない。
乱戦で得意とする集団戦法を取れない人間側は、ホーク隊の援軍を受け入れてなお劣勢であり
その事実が焦りを生み、と悪循環に陥らせていた。
またはっきりとは分からないが、敵の増援が到着したらしい事が
近くを走り抜けていったホーク隊の一員から伝えられており、
敵を前に気を逸らすと言う大失敗を犯してしまう。
幸運にもその隙に付け込まれる事は無かったが、敵は距離を取って
何がしかの合図を送り撤退を叫んでいる。初めて気づいたが、
目の前の敵がこの部隊の指揮官だったようだ。
しかしてセラヴィーはこの敵を仕留め損なった事を後に激しく後悔する。
何故ならば、自身で仕留められる可能性を持った相手がサイグントゥムの司令官だったからだ!
「……貴方が、サイグントゥムの……!」
一方、弓での援護を行っていたホーク隊に敵騎兵部隊が襲い掛かる。
迫る敵の気配を、海賊生活で鍛えられた勘で察知した分隊は援護を止め
身をかわす事に専念する。傭兵部隊として多くの戦いを経験した彼らは、
騎兵と真正面からぶつかっても勝てない事を学んでいた。被害を最小限に留める事を
優先した結果、軽傷を負わされる者は出ても死者を出さずに済ませる事ができた。
この結果は、ホーク隊への魔法防御の援護が間に合った事も一因である。
もちろん、敵部隊に損害を与えられてないので一概に喜べないのだが……
クレド隊は二手に分かれた敵騎兵部隊の本隊と思われる方と交戦。
敵隊長らしき大剣使いに先鋒が弾き飛ばされ、次鋒の命が狩られる。
速度と地力の差によって瞬く間に半数が討ち死にし、隊長クレドも
善戦したが魔法援護が間に合わずオズライトの凶刃の前に倒れてしまう。
それでも生き残った騎兵達は怯えを見せずに奮戦し、
アイゼル隊の魔法援護を受けた事も重なって、何体かを討ち取る事はできた。
両部隊に襲い掛かった騎兵部隊は、龍堂の信号弾による合図と
オズライトの角笛の音に即座に反応し撤退を開始する。
馬を駆り逃げる敵に弓は当たり辛く、追討でき得る騎兵部隊は半壊状態。
敵の撤退を妨げられる者はいなかった。
隙を見て斬りかかろうとしていたセラヴィーだが、手槍によって機を逸してしまう。
悔しさを噛み殺しながら、なおもはっきりと名乗りを上げる。
「私の名はセラヴィー……龍堂詠羽、その名と顔は覚えました」
そのまま、敵司令が騎馬の背に揺られ撤退するのを見ている事しかできなかった。
己の無力さと未熟さに、怒りを隠そうともしない顔でサイグントゥムの方を見つめ
「……どこが……どこが、見事な手際か! 預かる部隊一つ満足に指揮できず、
味方の援護も活かせず、敵の司令も仕留められず! 多くの部下や仲間を、
無駄に死なせただけと言うのに! …………………………っ…!」
ひとしきり叫んだ後、生き残った者達の方に振り向くセラヴィーの顔は厳しかった。
「……無事な者は、死者をアトルムへ……」
一言だけ命ずると自身も近くの遺体を背負う。それは、騎士アルバだった……。
―――アトルム司令部―――
司令官「……今回もまた、奴らにしてやられたと言うわけか……っ!!!!」
振り下ろした拳は机を粉々に砕いた。
司令官「部隊の再編と、荼毘の準備を頼む。
遺品はいつもの通りに、引き摺ってなどいられるものか。
……サイグントゥムへの偵察を考えねばならん。
あちらも動きを抑えていたなら、その分軍備が増強されているとみるべきだからな。
セラヴィー、エイトリー殿に伝令。すぐに司令部に来るように、と」
司令官「……さて、人払いも済んだ事。ラックラー、と言われましたな。
カエルの騎士とは、童話の主人公そのものと言わざるを得ない……
貴殿は、何ゆえ我らに助力するのだ? ぜひお聞かせ願いたい」
割れた机の頂点に鎮座する、騎士の鎧を着込んだカエルに司令官は問いかけた。
【ではこの辺で小競り合いは終了に……複数の部隊を運用するのって疲れますね……
それと、また規制されてしまいました。解除されるまでは代理投稿になります】
【>龍堂様
大丈夫ですよ、お気になさらず。
一応次の布石を敷いておきますが、不都合がありましたら仰って下さい】
【>オズライト様
追撃は不可能です。あまり詳しくないので、
弓の件は間違っているかも知れませんが……】
【>ラックラー様
かなり無理やりな繋げ方でしたが、振らせて頂きました。
不都合がおありでしたらその部分は無視して下さい】
【>ジャック様
色々と申し訳ありません、ご挨拶が遅れました。
これからよろしくお願いいたします。ジャック様については真に身勝手ながら
明日お話を振らせて頂きますが、やはり不都合がおありならば無視して下さい】
司令官に呼び出されたセラヴィーは、執務室に入るや否や
自身の不甲斐なさを理由に隊長職を辞任する意向を伝えた。
しかし司令官は
司令官「死んだ者達がそれを望んでいるとは思えん。
それに、お前とエイトリー殿にはサイグントゥムへの偵察任務を
引き受けて貰いたくてな。辞任云々は、この任務が終わるまで保留だ。
……この任務は、今更言うまでもないが非常に重要なものだ。
我々が戦力の増強を図っていたように、相手もただ遊んでいるわけではなかろう」
司令官「セラヴィーと剣を交えたと言う、敵の司令官……龍堂詠羽。
魔族でありながら慎重かつ冷静に戦局を読める、侮れん奴だ。
魔王軍の侵攻が止んだのも、奴の仕業だろう。
足並みを揃え磐石な体制を構築する腹積もりなのは想像に難くない。
今回の襲撃で、奴自身がアトルムの状況を目にしてしまっている以上
こちらもサイグントゥムの現状を把握しておかねばならんのだ」
司令官「エイトリー殿は先の襲撃で敵と直接の交戦はしていない。
つまり顔が割れていない……偵察の為の潜入にはうってつけと愚考する。
セラヴィーは顔を見られてはいるものの……言い方があれだが、
女である事が強力な武器になると思った。化粧一つで女は変わる、そこに賭けたわけだ。
至極適当ですまないが、他に適役がいない。頼まれてくれ」
と新しい任務にかこつけて一蹴してしまった。敵の司令官を討つ絶好の機会を
ふいにしてしまい、残ったのは多くの仲間達の犠牲だけ……その中には、
自分がたきつけた騎士アルバも含まれている。種々の要因が重なり、
表情にこそ出していないが、自責の念が一際大きい状態なのだった。
とは言えそこは戦場に立つ者、気持ちを無理やり切り替え
セラヴィーはアトルムの一角にある酒場『暁の明星亭』へと入っていく。
『暁の明星亭』はアトルム誕生の時から酒場として共に歴史を刻んできた老舗で、
駐留する騎士や町を通る商人、果ては仕事を求める傭兵など実に多くの面々に利用されてきた。
そうした経緯から、酒場側も訪れる客のニーズに合わせて掲示板やら仕事の仲介やら
多くの事柄を請け負っている。故に、ここでの揉め事はご法度となっているのだ。
セラヴィーは戦時下にも拘らず盛況な酒場で、腕が立ち信用できる傭兵を探していた。
日々のノルマや訓練を終えた傭兵はほとんどの場合ここにいるか臨時宿舎に詰めているかしている。
あちこちから上がる口笛や下卑た野次などを聞き流しつつ見回していたセラヴィーの目に、
一人の傭兵が飛び込んできた。特に目立つ風貌ではないのだが……
「失礼ですが、お隣よろしいでしょうか?」
セラヴィーが声を掛けたのは、一部から『魔弾の射手』と呼ばれている傭兵、ジャックだった。
【どうも自分ひとり急ぎ足になっている気がしてなりません。
こんな無茶振りでもよろしければ……駄目ならば無視しちゃって下さい。
あと、二つ名っぽいものは『魔弾』の能力から浮かんだだけです……】
「ひぃ、ふぅ、みぃ……ちぇっ。今日もスッカラカンだな、うん。」
自分の財布袋の中身を数えながら帽子を脱ぎ捨てる男、その名はジャック・クラウザー。
以前は魔弾の射手と呼ばれるほどの使い手だったが、今は面倒を嫌うやさぐれた
傭兵の1人と化してしまっている。
今日もつまらない任務(金持ちの護衛)を終えて酒場で1杯引っ掛けているところだ。
「おやっさん、今日もいつもの頼む。」
果実のジュースをちびちびと飲みながら隣に座ってきた女性の方を見る。
歳は自分と近いくらいだろう。何事かと目を輝かせる。
>「失礼ですが、お隣よろしいでしょうか?」
「あ、俺の隣?いいも何も…どうぞっすよ。」
立ち上がり椅子をセラヴィーの前に差し出す。
身なりからして騎士のようだ。
ジャックはというと様々な装飾が付いたボロボロの皮の服
、そして帽子を脱いだら一際目立つ目の前に突っ張った髪型。
どう見てもそこら辺の浮浪者かゴロツキである。
そんな自分に声をかけたセラヴィーに興味を持ったのか、ジャックは言葉を返した。
「あんた、俺に何のようだい?まさか、今夜ご一緒に…いや、冗談だよ。
…その格好、あんた帝国軍か?」
【いえいえ、全然助かります。よろしくです】
「はじめまして、私はアトルム駐留軍にて
一部隊を任せられている、セラヴィーと申します」
(小声)『今日ここに来たのは(小声に)少人数での任務を遂行するために
頼りになる方を探しに来たからです』
「はい、私は帝国の騎士……だった、と言うべきなのでしょう。
国の許可無く出奔した私は帝国にとっては大罪人、騎士の位は剥奪されているでしょうね。
ですが私は、後悔はしていません。私は私にとっての理想の騎士となるために
生きようと決め、今ここにいるのですから」
「私の様な奇矯者と懇ろになりたいなんて、心の広いお方ですね。
とは言え私も多少は教育を受けておりますゆえ、出会ってすぐにとはいけません。
……こうした事は、もっと互いを知ってからでないと……」
ジャックの質問に一つ一つ丁寧に答えていくセラヴィー。
途中暴走気味になったり冗談を真に受けたりと、誤解を招きかねない事になっているが
当のセラヴィー自身は全く気が付いていない。
「……そう言えば、お名前を伺っていませんでしたね。
よろしければ、お聞かせ願えますか?」
ちょっと荒っぽい性格なら『人に名前を尋ねるならまず自分からだろう』となるものだが、
生来よりの生真面目なセラヴィーが、敵以外に対してそんな事を思うわけも無く
必然ジャックの名前を自分から聞きにいかなければならなかった。
セラヴィーは酒を二杯注文する。一杯は自分の分で、もう一杯はジャックの分だ
こういう話はお酒を飲みながらの方が弾みやすい、
と言う間違ってはいないが合ってもいない思い込みからの行動でまるで深い意味は無い。
【>ジャック様
そう言って頂けると助かります。それでは、よろしくお願いいたしますね】
エイトリーはしばらくの間、勝利の余韻に酔いしれた後、
聖章旗をおもむろに一本抜き取り、それを体に巻きつけながら
数名の法王庁出身の若い兵四人を率いて城を出発した。
ユリウスというベテランの騎士にその場の指揮権を任せて。
伝令が来たときには既にエイトリーの姿はなく、
ユリウスら残存の兵士が何事もなかったかのように守備任務を続けていた。
「エイトリー殿は『我々は戻ることはない』との伝言を残した」と彼は話したという。
フラン・フス・サイグントゥム… かつてそう呼ばれ、古代帝国の植民地であったこの地は
歴史の厚みがまさに、城塞の厚みとなってその姿に威厳を封じ込めていた。
海岸部に立てられたそれは海と急な丘が天然の要塞を形作っており、魔王軍に降伏し奪われるまで
共和国最大の要衝として栄えていた。
サイグントゥムの城下まであっさりと忍び込むことができたのは、エイトリーが
少人数を選び、かつ五名という絶妙な精鋭メンバーで侵入し、風の隠遁魔法で
すり抜けることができたからであろう。
「さてと…」
城内の状態を一通りチェックしたエイトリーは、既に自分の魔法力が尽きかけているのを感じた。
「ここでやる以外にあるまい」
エイトリーが選んだのは、城郭の後方にある巨大な柱のうちの後ろ二本である。
サイグントゥム城は最上部の位置が全体から見て後方に偏っている。
一か八かだが、これ以外の方法はないと言ってもいい。
「さぁ開始だ。…少々、歴史を壊すようで芳しくはないが、いくぞ」
エイトリーの周囲の四人の兵が一斉に展開し、荷物の大部分を占める火薬の展開に入った。
一人が火薬の設置を行い、もう一人が見張りをする。これを二本の柱で同時に行う。
火付け役のエイトリーはその真ん中付近で魔力を溜めつつ隠れる。
「おい貴様!そこで何をやって…ぎゃああ!!」
ついに一人が見つかったらしく、相手の兵を討ち取ったらしき声が響く。ここまでだ。
「そこまで!四人とも作業を中止して私のところに集まれ!」
見つかった側の兵が動いて数秒後、エイトリーの弓から魔法の矢が放たれる。
それはかまいたちのようにうずまきながら摩擦を起こし、火薬に火をつけ大爆発を起こさせた。
同時にもう一発を反対側に放つと、エイトリーは四人を連れて一気に撤退し、
城外へと一目散に駆けた。
「貴様ら!法王庁の斥候か!!?」
囲まれた…
エイトリーは逃げ道がないことを悟ると、無言で巻きつけていた聖章旗をかかげ、
剣を抜いた。亡き妻、娘と息子、孫、セラヴィー、司令官、そして戦った仲間たちの顔を思い浮かべ、
一瞬だけだが感慨に浸った。一斉に敵兵が斬りかかる。
二十名以上を殺害し、エイトリーら5人は全滅した。
包囲した隊長がエイトリーの顔を覗き込むと、ニヤリとして、
「火薬を使ってこのサイグントゥムを落とそうとは、何と愚かな!さあ、死ぬがいい…」
しかし、その笑みはすぐに苦悶の表情に変わった。
隊長の額には深々と矢が刺さり、エイトリーの脇に倒れ伏す。
「…ヘッドアーチャー」
兜に仕込まれていた弓を操作したエイトリーの最期の顔は満足そうだったが、
すぐさま回りにいた敵兵によって、他の4人とともに首を取られた。
その後、地響きとともにおよそ1000年にわたってこの地を守ってきた
最上部「天帝の箱庭」が崩れ落ち、サイグントゥム城では多数の兵が命を落とした。
この話は法王庁やその周辺諸国で「5人の決死隊」として語り継がれることとなった。
【元々送りバントのつもりで参加したので、ここらでリアル事情のこともあり、
抜けさせていただきます。ありがとうございました。】
またかよ
だったら最初からやらないでくれ
【今年に入って一月も経たない内に何度規制されるのでしょうかね?
それはそうと、他の方々はまだいらっしゃるのでしょうか……
もしいらっしゃるなら、どの様に対応すべきかご意見等をお聞かせ願いたく。
私の方は期間が空いた事もあり固まってはいるので。
一応3日ほど待つ心積もりですが、その間一切の反応が無い場合
勝手ながら私の方で〆るつもりです。たとえ尻切れトンボでも、
放置で終わらせてしまうのは気持ちが悪いので……申し訳ありませんが、ご了承下さい】
【人魔戦争記】
これは、先日見つかった過去の戦争に関して極めて詳細な情報を
記した歴史書である。既に伝説とも御伽噺とも言われるこの出来事が、
歴史上確かに存在した事を証明する、有力な証拠と言っても過言ではない。
だがそれは同時に、人間の愚かしい歴史のみを証明する可能性も孕んでいるのだが―――。
ここは、リーザ共和国首都サイグントゥムの歴史研究所。
サイグントゥムは非常に古い都市である。町並みは古代の建築様式及び
技術が使われており、現在の技術よりも優れている点が多い。
歴史書によれば、この研究所はかつて城塞都市といわれたサイグントゥムの、司令部だったそうだ。
サイグントゥムが『魔王』と名乗る何者かに従う軍の一大拠点であったのは……
正確な年代は不明だが、およそ数百年前だろうと思われる。
この歴史書が製作されてから、それだけの年月が経過しているらしい。
故に歴史的観点だけでなく、物品的にも貴重に過ぎる代物だ。
そう遠からぬ内にこの歴史書は世界遺産に認定されるであろう。
そうなる前にこの歴史書の内容の完全複写を終えねばならない。
世界遺産になってしまえば、歴史書を紐解く事……即ち、『空白の歴史』を
埋める機会は永遠に失われてしまうのだから―――。
人間の歴史とは、一言で言ってしまえば『戦争』である。
どの時代の出土品も、人間が戦争をしていたと言う事実はきちんと伝えてくれる。
仕方が無い。人間と言う存在は、この大地に現れた瞬間から戦いを始めていたのだ。
私を含め、この研究所に集まった連中の誰も、それを否定する事は無い。
だが人間の歴史の中に、一切の推測すら許さぬほどの『不自然な空白』が
あった場合、どう思う? 私の様な頓狂な変人はみな、この『空白の歴史』を
解明する事に躍起になった。それも驚く事に、互いが手を取り合って、だ。
集った者達は、世間からは『変態』と呼ばれるほどの歴史学傾倒者。
歴史の証明の為ならばいかなる手段も考慮に入れ、時に実践する。
中には犯罪者と断じられ、獄に繋がれた者もいるほどの、だ。
そうした、狂気に片足突っ込んだバカたれ共の執念がついに実ったのだ。
しかしその程度で小躍りするようなのは一人もいない。
全員分かっているのだ、発見が重要なのではない……事実を知る事が、何よりの褒美なのだと―――。
結果から言えば、『魔王』とその軍勢は実在したらしい。
それも、ゴブリン、オーク、トロール、キメラ エトセトラ エトセトラ ――――
伝承に登場するような『魔物』の存在つきで。
こんなバカげた話、誰が信じるものか。大方、トチ狂った物書きの与太話だろう。
普通ならまず間違いなくそう言う……されど今回の与太話に限っては違った。
地下から、歴史書と共に明らかに人間と異なる生物の骨が見つかったのだ。
半ば化石と化していたそれらの、生前の姿を骨から推測した結果……
上記の『魔物』の外観と驚くほど符合していたのだ。
中には人間のものもある。数は若干人間の方が多い。
しかも、人に近い魔物と人間は例外なく武具を纏っており……
そう、彼らは戦っていたのだ。紛れも無く、過去のサイグントゥムで―――。
私達はその事実を知った時、喜びと同時に別の強い感情を感じた。
それは……『畏れ』。都市の形状は、城塞都市だった時と大きく食い違っている。
夥しいなどと形容するのも憚られるほどの死者の上に建つ、首都サイグントゥム。
そう、サイグントゥムとは、巨大な墓なのだ。
恐らく平和な時代に入った時に、城塞都市を崩しその上に新たな都市を築いたのだろう。
過去の戦争を忘れないように、或いは、無かった事にする為に―――。
内に溜めていた熱は、この事実を知った瞬間霧散してしまった。
表情を見る限り他の連中もそうだろう。私達は、この事実を胸の内に仕舞う事にした。
サイグントゥムは墓である―――そんなキャッチコピー、誰が喜ぶと言うのだ。
だが後悔は無い……熱が引いたのも、半分は私達の欲を満たしてくれたからである。
私達は感謝せねばなるまい……この歴史書を遺してくれた、セラヴィーと言う祖先に―――。
後書:こんな形で申し訳ないが、驚愕の事実が発覚した。
創業云百年を誇る老舗『暁の明星』、世界一の大企業であり
知らぬ者のないこのグループの名前が、歴史書に記されていたのだ。
当時は隣町である第二の都市アトルム一の酒場として、絶大な人気を集めていたのだとか。
一部からは眉唾物と誹謗されていたわけだがさてさて、面白い秘密を知ったものだ。
【後ろ髪を引かれ、ずるずると引き延ばしていたわけでしたが……やはりダメでしたね。
このような終わらせ方で申し訳ありませんが、他のプレイヤーの方々がいらっしゃらないのに
勝手に動かす事に、この期に及んで二の足を踏んだ結果この様な形に収まりました……。
やはり、最大の失敗要因は私の力不足だったのでしょう。自身の未熟さに、ただ恥ずばかりです。
誠に、申し訳ありませんでした……このスレがどうなるか、それは分かりません。
ともあれ、参加して下さった方々には感謝してもし切れません。お付き合い下さり、有難う御座いました。
長々と一人語りしてすみません、それでは―――ご縁がありましたら、いつかどこかで。】
乙
超乙・・・・!
気持ちは察して有り余る。
本当にお疲れ様でした。
これにめげずにまたどこかのスレで楽しんでください。
長文うざす
エイトリーを勝手に主的な立場にするという考え方自体が醜い
318 :
名無しになりきれ:
END