1 :
GM ◆7HJblQjUuMRu :
2 :
名無しになりきれ:2009/09/06(日) 20:56:35 0
#前スレ最後のレスを転載します。
竹馬の道化は馬を軽やかに駆って楽々と、赤土が剥き出しで滑る坂を越えさせたのを
みて驚いたような反応を示します。
それを尻目に島の木立の中を進むと、木の枝を使って布を広げ、地に押し固めた羊毛の布を
敷いたしつらえの仮宿が設けられており、敷布の上には数人が座って談じているのが
見えます。
クラインが馬で近づくのをみて、彼らは立ち上がり、敷布の端に並び、中央の者が
声を掛けてきます。
「馬上のお方、どちらに参られますか? 我らはあちらの山に向かう修道士でございます。
よろしければ、我らの客としてひと時お過ごし下さい」
>2
「野営中失礼いたす」
馬より降りるのもそこそこに挨拶し、私は切り出した。
「お気遣いありがたいが、あいにくと、人を探す途中の身とて、
くつろいでゆくいとまはない。
山頂の修道院の院長が下山しているはずなのだが、
心当たりはないだろうか。
先程の火球騒ぎに巻き込まれたのではないかと、
知己らが山頂で心配しているのだが」
---------------------
このスレの即死回避ってどのぐらいなんでしょうね?
無意味にスレを伸ばすわけにもいきませんが、
テンプレらしいテンプレもないし…
NPCリスト作っておくんだった。
当分ちょっと時間が取れなくて。
レスのみで御挨拶を忘れてました。
前スレはお留守をあずかっておきながらうっかり落としてしまい、
大変失礼いたしました。
今スレでもよろしくお願いします。
一人で多人格を演じ分けるのは大変だなw
>5
ありがとうございます
参考にします
>6
即死回避に苦労しているときにちゃっかりレスするとは
このツンデレさんめ、どうもありがとう
>>3 修道服を着た一行はクラインの言を聞くや、さっと緊張した面持ちとなり、中央の者が
代表するように話します。
「その火球騒ぎの主は我らを守るためにはるばると、この地まで来た方でした。
山頂に落ちたようなので心配しております。先ほど使いを出したばかりです。
山頂といえば、我らは様子を伺おうと手紙を昼間に持たせて出しましたが、果たして
着いているかどうか。
それやこれやで、事情が分からずこうして皆で気を揉んでいるばかりです」
#
NPCリスト あると便利なので作ろうと思います。出来ましたらこのスレに書き込む形で
上げようと思います。
>8
「その守り人とは、小柄な竜騎手だろうか?」
ふと不穏な予見が心中をよぎるのを押し殺し、私は続けた。
「それならば先程、山上で遭遇した。
命に別状はないようだったが」
信頼のおける知己預かりとなっている、と短く説明し、先を続ける。
「貴殿らの手紙がどうなったかは、申し訳ないがあいわからぬ。
私自身、昨夜はじめて僧院を訪れたばかりの身、色々と雑事に取り紛れ、
当地の事情も知らぬまま今宵の異変に遭遇した次第。
探す相手が下山していたと聞いて、身柄の確認に降りてはきたが、
当人の所在が解り次第、引き返すつもりでいたのだ。
調べてわかるものなら引き受けもしようが、
まずは尋ね人を捜し当てねば体が空かぬのだ。あいすまぬ」
---------------------------
NPCリスト、お待ちしています。
先10日かそこら取り込むので、そっけないレスのみで失礼します。
>>9 「殿は山上から来られたのですな。然り、我らが空を託した方は小柄でございました。
一同皆、はらはらして見守っておりましたが、ついにあの山に落ちてしまい、我らは
てをこまねいておった次第です」
そう、中央の者は言い、「ところで、殿はクライン殿ではありませんか。
ならば、手紙を出したのは他ならぬそれがしでございます。院長というのは都で
給わった役職にて、この地でそれが受け入れられるかどうか危ぶんでおります。
いずれにせよ、我らは山に登り、務めを果たさねばなりませんが、はたして、どうやって
果たせばよいのか、それを案じております」
#NPC一覧はこちらもゆっくりまとめることになると思います。
あちらこちらで人物の呼称を曖昧に複数使ってきたので、そこらを整理する必要がある
かもしれませぬ。
>11
「…何と」
松明を掲げ直し、まじまじと見た相手の姿に聞き知った色を認め、
私はほっと安堵の息をついた。
「何と、貴殿であったか。
如何にも、受け取った手紙に返事を出したものの、その後音沙汰なく、
確認を取ろうとした矢先に矢継ぎ早の異変に見舞われた次第。
モン祭司に外と聞いたものの要領を得ず、探し回っていたところ。
まずは御無事を喜ばせていただこう。
しかし、お尋ねの件についてははかばかしい返事を申し上げられぬ。
先に仰った竜騎手は山頂で墜落、命に別状はないものの、
対抗者の竜騎手、姫君の兄キツバ殿の言葉によれば、今晩中に院長の席次は改まるとか。
私には何のことやら理解が及ばぬが」
一度言葉を切り、改めて切り出す。
「なにぶん、上でも下でも事情を知らぬがゆえに、
その場その場で最善手を信じて動いてはいるものの、子供の使いに同じ、
何をどう為すのが最良か、とんと判断がつかぬ。
山頂に戻ることをお望みならば、問題なくお送りいたすが如何に」
レスアンカー間違ってましたね。
言うまでもありませんが>10で。
>>11 「クライン殿、慌てなさりませんよう。貴殿と私とは初対面なのです。
しかし、こうして会えたことは望外の喜びです。なにしろ、我々はここで
山の上で一体何が起きているのかと気を揉むばかりでした。ましてや
頼みの綱としていた竜をあのような目にあわせてしまうとはなんともはや。
さて、その院長の席次が改まるというのは、おおよそのことは察しが
ついております。それこそが、殿も御覧になった数々の出来事の中心かと
思われます。
今をおいて時は他にありますまい。私が山へお供いたしましょう」
と、この人物はいい、一歩敷布から踏み出ます。
朝の礼拝で若姫とそのおつきの爺にかしづかれていた年輩の老人とは
確かに別人で、年頃は壮年を過ぎたというところでしょうか。
この者は周囲の者をみわたし、そなたたちは朝方、ゆっくりと参るが良かろう。
羊はあちら岸に残しておくも良かろうが、そなたたちに任せるといいおき、
クラインの言を待っています。
>>13 「…失礼した」
よく見れば似ていなくもないという程度の彼を
見誤ったは焦りか、疲れがゆえか。
「探し人をいまだ見いだせぬとあらば、探索は続けねばならぬが
さりとて、他に適任者もないようだ。
聞けば早々に上へ向かわれた方が宜しい由、
まずは貴殿を山頂までお送りするとしよう。
後ろへ乗られよ、事情は道すがらお伺いいたす」
手綱を引き、私は手を取って彼を馬上へ上げた。
---------------------------------
(馬を疲れさせないよう)ゆっくり山上へ向かいながら情報聞き取り、
門内まで送った後は速攻引き返して探索続行、の予定。
馬は夜まで休みっぱなしでしたが、クラインは休み無しで
やや疲れはじめた頃かも。
>>14 次の院長の指名を受けたというその修道士は、林の縁、島状台地の端手前で馬を下り、
そこで、竹馬に乗った道化と挨拶し、道案内をするよう命じ、道化がどこからか引いてきた
ロバに乗り換えます。
竹馬の道化は大またで中洲の低い藪や草むらを跨ぎ、時折は杖で草を左右に散らして
背後に続く乗り手に道を示しつつ、先を進みます。
馬上で背後からみると、道化は肩幅からみて男ですが髪の毛が大変長く、後ろで一本に
まとめて肩甲骨の間を下に編んで垂らしてあり、固い組紐でまとめてあります。
さて、次期院長はクラインの膝先を進み、振り返ってはクラインの質問に答えます。
#
ということで3つ程度質問をお願いいたします。次期院長は何についても出来る限り答えようと
するでしょう。
>15
道化の背を見るともなしに見やり、静かに馬を進めながら、
私はゆるゆると混乱した思考をまとめた。
「まず断り置きたいのは、貴殿の手紙が私に届いた経緯だ。
昨夜この僧院に到着し、今朝参議会の席で逗留の依頼を受けるまで、
私はこの地について何ら知らなかった。
ゆえに、後程知己より副院長のようなものと聞きはしたものの、
正式に紹介を受けた『院長』は、参議会を主催する祭司に他ならなかったのだ。
貴殿からの手紙には、何の紹介も但し書きもなかった。
手紙を届けた者からは院長から、とのみ聞いたので、
私は当然、それを既に知る相手からのものと思ったのだ。
もしかの配達人の言う『院長』が私と同じ相手を指すものなら、
私が出した返事は見当違いの相手に届いたのかも知れぬ。
否、『院長は下に』と私に告げたモン祭司の指す『院長』が貴殿なら、
私が探そうとした相手は、そもそも僧院を出てさえいないかもしれぬのだ」
ここではじめて目線を合わせ、私は彼に問うた。
「一体、如何にして昨夜到着したばかりの私を知り、手紙を送り届けたのか。
しかも、あのような曖昧な走り書きで。貴殿を知る者の手を介すか、
但し書きの一言でも添えられていれば誤解はなかっただろうものを。
そもそも、貴殿は誰なのか?」
自然と眉間に寄った皺を指先で解しつつ、私は嘆息した。
「正直に言って、私はやや疲れている。
推察がままならずとも、充分に理解が及ぶよう、
あいまいな言い回しやほのめかしは一切なしでの説明を願いたい」
気を取り直し、言葉を継ぐ。
「そしてもう一つ、早急に尋ねねばならぬ事がある。貴殿の言う『守り手』の事だ。
皆の前ではあのように言ったが、実際のところ、
あの竜騎手は山頂でキツバ殿の竜といさかい、火球を飛ばしあった末、墜落した。
命に別状はないというのは事実だが。恐らく、キツバ殿預かりの身となっているだろう。
キツバ殿が任ずると仰せになった新しい院長というのが貴殿の事なら、
その貴殿が送り込んだ守り手が何故、彼と争うことになったのだ」
------------------------------------
長くなったので分割。
質問は1.手紙が届いた経緯 2.自己紹介の要求 3.竜騎手の正体 で。
>>17 ロバに跨った修道士はクラインの言に深くうなづき、ご不審はもっともですなと答え始めます。
「それがしはフィンリ。あの山の修道会本部から遣わされて参った修道士でございます。
クライン殿に手紙を出すよう頼んだのはそれがしですが、手紙を書いたのはそれがしでは
ございません。
殿のことを知ったのは、ここから川上にある別の修道院、殿の御友誼に預かっている院長
からの手紙によってなのです。我ら一行は都から羊とともにこの川べりまで参りましたが、
なんとも連絡が十分にとれず、大変難儀しておりました。そこに殿をかの院長が推薦し、
人となりを手紙のやりとりで伺い、これはということでお願いしたものです。
手はずでは、今宵もうとうに時刻は過ぎてしまいましたが、山の下の崖、古道沿いにある
墳墓にて殿とお会いすることになっておりました。この中洲からみえる門塔の窓に
明かりが点れば、それがしが供を連れてまいる予定でした。
先に申したとおり、院長の座を巡り、様々な思惑がございます。先の院長が凶刃に倒れる
にいたり、本部から私を送り込もうということになったのですが、こちらの谷の領主の間では
また別の考えがあるのでしょう。
さて、キツバ殿と我らが都の騎士団に頼んでこられた守り手が戦うはめになったのは
この思惑の違いで、キツバ殿と我らとの間に不信、わだかまりがあるがゆえです。竜の乗り手
にとって、自分の竜の縄張りのすぐ先、時間によっては風上となるところ、そして、谷の
人心の中心である、あの山に別な竜がいるというのはなかなか認めがたいことかと思います。
しかし、一方でキツバ殿には替えの竜はございませんでしょうから、正面から挑むことは
あるまいし、我らの決意をはっきりと知れば、話し合いの道も開けるかと思ったのです。
それが裏目に出て、お二人とも、山の上に降りられたようです。浅はかなことでした。
さて、守り手殿についてですが、
我らはこの中洲でごく短い間しか守り手殿と話しておりませぬゆえ、どのような方であるのか
は申し訳ないことに知らぬのです。まこと、忘恩の徒と誹られても止むを得ますまいが
事態が事態であるがゆえ、ご容赦くだされ。
>>18 「門塔の窓…」
ふと山頂を見上げ、心を過ぎった思惟を打ち払うように首を振って、
私は静かに答えた。
「貴殿らの思惑やわだかまりを、私は一切存じ上げぬ。
ゆえに、いずれの陣営とを問わず、語られた言葉以上の事は
知りようもなく、またしいて推察しようとも思わぬ。
充分な知識なくしての推論は、容易に邪推に成り下がりうるがゆえに。
貴殿には当山の必要があり、私にはその護衛をなし得る立場と意志がある、
今はただそれだけを念頭に入れておこうと思う。
ただ、到着してより後の助勢は必ずしもお約束できぬ。
その後の成り行き次第だ」
おのが鳶色の額髪を一房引っ張ってみせ、私は肩をすくめた。
「みだりに誓いを立てるべからずとは、我が父の遺言だ。
髪一本の色さえ、自らの意志では変えられぬのが人の子の無力であると
常に肝に命じよ、と。
先に探そうとしていた人物が院内に在るなら、私はその場で御役御免となり
以降、余程の事がない限り自らの意志で動ける。
そうでなければ、彼の無事を確認するまでは探索を続けねばならぬ。
我がロードの名にかけ既に誓したがゆえに」
再び、山頂を見遣る。
ほの明るい灯火に包まれ、僧院は一個の巨大な鬼火のようにすら見えた。
一カ所ミスってた
×当山
○昇山
>>19 フィンリはここで問い返します。「クライン殿、このまま山の上に戻られるのであろうか。
それとも、我らが落ち合う手はずとなっていた墳墓で、その意中の人物を探されるおつもりは
あろうか」。
墳墓への道なら、この者も知っていますし、それがしも多少は覚えがあります。
夜道ではありますが、迷うことなくいけましょう。
しかし、山の上に戻るのが何はともあれ、先決とあらばお供して参りましょう。
そう、彼が問うたのは山の端、登り口に差し掛かるあたりのことです。
>>21 「いや、ひとまず戻るべきであろう」
ちらと振り向いた道化を目で軽く制し、先を急ぐよう目線で促して、
フィンリ殿へ向き直り私は続けた。
「貴殿が私と面会すべく指定した場に、彼がいようはずがない。
私が出した返信とは、手紙を彼からのものと思い違えたがゆえに、
門外へ出るのは障りがある、院内で面会するため場所を定められたし、との内容だった。
大元の手紙を知らぬ彼が、墳墓へおもむこうはずがない。場所を知らないのだから。
モン殿が私の問いを貴殿についてと思い違えたなら誤解が解けてまずは重畳、
さもなくば、探す相手が貴殿らの野営地界隈にいると、何故考えたのか改めて尋ねよう。
あの騒ぎからかなり経つ。先程浮き足立っていた司祭も流石に落ち着いたことと思う。
考えてみれば、当事者の貴殿らにもあの騒ぎによる負傷者はないようだというのに、
余人が巻き込まれた危険は薄いだろう」
馬を山頂へと向けつつ、一言言い添える。
「それとは別に、ひとつ断っておかねばならぬ事がある。
キツバ殿の言葉どおり、今日明日にも院長の座が改まるというのなら、正規の長のいる地に、
私の乞われた任はもはや必要なかろう。
となれば、明日早くにでも、この地を出立せねばならぬ。
任を果たすため、我がロードより必要な裁可を受けるべく出立させた急使が、
先に我が領へ到着しているはず。追って事情を話し、使者の必要がなくなった事を伝えて、
この地へ戻さねばならぬ」
----------------------------------
月〜水と、旅行のため留守にします。
一応宿にもネット環境はありますが、月曜日・水曜日あたりはレスが難しいだろうので、
その間レスが遅れる事を御了承ください。
>>22 ありがとうございます。それではその間に人物一覧を仕上げます。
NPCリスト、木曜の夜に出せると思います。簡易版と詳細版を平行して作っています。
簡易版は名前と簡単な呼び名のみ。詳細版は時間進行表もあわせて作ろうかとしていますが
どうなるかこれは不明です。
遅くなりましたが、ただいま帰りました。
旅づかれでぐんにゃりしてるので、お急ぎにならなくて大丈夫です。
スレが落ちない程度にのんびりお待ちしてます。
>>25 お言葉に甘えてもう少し時間を頂こうと思います。
前スレをもう一度読み返して、地図の設定がかなりずれていたことに気づいたり、
色々と書いた時点で考えていたことを思い返したりして手間取っています。
登場人物は随分増えたかと思っていましたが、名無しで役職のみの者が
多いだけで主要人物はさほどおりませんでした。
NPCリストを待つ間、スレの保守がてら
クラインの設定をちみちみまとめておきます。
既出分+補足少々。
卓ゲ板で有名な同名騎士に比べると相当しょぼいですがw
クライン・G・トーラス
辺境領主、三十代目前。
貴族ではなく、私領を治める田舎騎士、四代目。
数年前に妻を亡くし、以来やもめ暮らし。
仕事漬けの兄を案じた弟の策略で、数年ぶりに遠出中。
SW基準でファイター4〜5、レンジャー3、セージ3〜4、ナイト3ぐらいか。
現在の装備
バトルアックス 、ロングボウ
ラウンドシールド、バンデッド・メイル、オープン・ヘルメット、ゴーントレット、グリーヴ。
領主歴がそこそこ長いため、政治的なアタマはあるが、
騎士だけにけっこう頑固なところもある。
亡き妻ひとすじで浮ついたところがなく、いたってお堅いが社交嫌いという程でもない。
けっこう理屈っぽい。
>>27 ありがとうございます。人名の簡易一覧はまとまっているんですが、
台詞で言及されたり設定された者を拾い出すとこれがなかなか終わりませぬ。
そうこうしているうちにもう一人、このごに及んで出したい人が生まれてきたりするので
不思議なものです。
クライン設定:周辺NPC
・妻(名前未定、故人)
クライン最愛の女性。修道院育ちの淑女だったが生来体が弱く、数年前死去。
二人の間に子供はなく、家督は弟が婚姻ののち引き継ぐ見込み。
・弟(名前未定)
クライン曰く『やんちゃ者』。年齢は離れているが兄弟仲はよく、
仕事漬けの兄を案じ、知己とはかって兄を修道院への旅へと送り出す。
一言で言うと善良なスイフリー、または純粋なヒースクリフ。
・父 グロス・トーラス(故人)
実直で謹厳、ロードの信任も厚かった。いわば老成したクライン。
描写はないが母親も、夫の死と前後して亡くなっている。
・ロード・メビウス
修道院を含む土地領主。豪放磊落にして武勇にたけ、政治家としても優れた人物。
クラインとは親子ほど年齢が離れている。
・親友(名前未定)
クラインとは正反対の境遇と性格ながら、無二の親友だったらしい騎士。現在消息不明。
彼をPCにしていれば、どれだけすらすらレスをつけられた事やら!
・老院長(名前未定)
クラインの妻の眠る古僧院の長。人手と予算不足を補うためには
縁者さえ伝書士に駆り出すちゃっかり者だが、基本的に実直で善良な人物。
・愛馬 アルタクス
ごく平均的な軍馬。唯一スレに登場。どういうわけか夜間にばかり乗り回されている…
昼ずっと厩舎で骨休めしていたので、乗り手に比べてまだまだ元気いっぱい。
クライン設定・自宅周辺環境
辺境のド田舎、領民より羊や牛の数の方が多い。
街道からもやや外れているため旅客もまれ。住民全員顔見知り。
事あるごとに兄の代理であちこちへ呼ばれているクラインの弟に至っては、
領民宅で生まれた子豚の数まで把握しているほど人と人との距離が近い。
代々の領主が命名した土地生まれの領民もそれなりの人数。
文化水準は低いが土地が豊かで生活水準はそこそこ。
冬が厳しい年、近郊と合同で狼狩りが行われるのが最大の非日常イベントという
至って牧歌的な土地。住民の八割が農民、残りは職人など。
クラインの叔父、義父(妻の父)領とそれぞれ隣接しており、
どちらもクライン領よりは大きく人口も多い。
人のやりとりはあり、領主・住民相互の中は良好。
領主の館は村落中央にあり、一応砦の体裁は整っているが
要塞として機能した記録は存在しない。
クラインと弟の二騎士が土地の戦士の全員だが、
漁師など、それなりに腕に覚えのある者が若干いる。
なぜか503エラーで落とせませんでした…
そろそろ出勤時刻なので、落とせないままDL期限過ぎそうです。
すみません。
>>32 また明日あげてみます。内容は未完なのでお恥ずかしい限りです。
あげるのは完成後でかまいませんよー
リストが出ても話が進まなければ、レスつけようがないですし
じゃ、進めながらリスト作成を続けます。これまでの経緯を全部まとめようとして
作業量が多くててこずっています。
>>22 フィンリは中州にいた我らが負傷を逃れたのは、竜の乗り手が守ってくれたことが大きいのです
と話し、川の中州のさらに対岸にいる羊の群れは多少乱れものの無事なようでありがたいことだと
言います。
その上で、実は裏手から山の上に行ける道もあります。その道が廃れていなければですが
と話しますが、ふと知識を伝えたかったような口ぶりで別に裏手から廻るべきという意味合いでは
ありません。
さて、
登り口は道化の案内とこれまでの往復での経験からすんなり見つかります。
山に登り始め、あたりの眺望が広がると、谷間上流のそこかしこには灯火が瞬き、あるものは
行列を成してこちらへとゆっくり動いています。
ふと顔をあげると、山腹の自分たちよりも上にも灯火が瞬き、山上の明るい光の元へと
向かっています。速度を少々あげれば門塔の下にたどり着くまでに追いつけそうな位置と見えます。
フィンリも気づいたようで、クラインにあの行列に追いつくべきかと問うてきます。行列といっても
灯火が一つか二つ揺れ動いて登っているのみでさして大人数とも思えません。
>35
「いや、殊更に急ぐ必要はないだろう」
追いつくなら追いつくがままにすればよかろうが、と言足しながら、
私は下りに遭遇した一団をふと思い起こしていた。
流石に彼らは山頂に着いた頃だろうが…
山頂を見上げたついで、ふと山麓を見下ろす。
先程の野営地がどの辺りか、はっきりと見て取ることはできなかった。
----------------------------
こんどは無事DLできました。
改めて見るとえらい情報量ですね。お疲れ様です。
自分でも拾い忘れていた設定が2、3ありました。
年末から来年初頭にかけて、かなり忙しくなる予定です。
勝手ながら、可能なら年内に完結させていただけると助かります。
>> 37
先を行く行列は足取りが遅く、フィンリはとくに竹馬に乗った道化をせきたてていませんが、やがて
山腹の陰の中に姿が見えるようになります。トリウマが二、三頭に荷を背負わせ、その前を二人の
人物が歩いています。
門塔の天辺、鐘楼のあたりに変化が起きているのにも気づきます。灯台ゴーレムの光の中、
谷上からの風になにか、白く光るものがはためいています。おそらくは旗だと思われます。
紋様は定かには見えません。
よく確かめようと眼をこらしたところで、思いがけないほど近くから狼の遠吠えが聞こえます。
ごくごく近く、ひょっとしたらこの山腹の斜面のどこかにいるのではないかと思うくらいのそばです。
そんな中、道化もフィンリも歩調を保ち歩き続け、前を行く一行に追いつきます。
どうやら道を譲ってくれるのか、山腹にトリウマを押し付けるように伏せて、道の脇へと人物二人は
立ち、修道服を着たフィンリに挨拶をします。
声の響きからして、そのうちの一人は女性と思われます。目深に外套をかぶっているため表情
などは分かりません。フィンリと道化はそれぞれ手短に挨拶に応え、前の一行はクラインへと
かすかに体を向けます。
#ゲーム内の時間では明け方に終われる調子です。実時間ではあともう少し、でも年末に入る前
には確実に終わると思います。
>>39 彼らに続き、馬上より軽く会釈して礼を述べ、注意を払って馬を進める。
この夜半に女性が山上へ向かうとは訝しくもあり、また不用心にも感じたが、
ここまで来たなら、このまま山頂を目指す方が危険がなかろう。
狼の声で、先程キリマ殿が連れいた精霊を思い出した。
案外あの精霊の呼び声かもしれないが、気は抜けない。
門までいま少し、くれぐれも気をつけられよと声をかけ、
私は彼らの先へたった。
-----------------------------------------
進行了解しました。ありがとうございます。まいていきましょう。
>>40 女性一人に年輩の男性一人の一行を過ぎ、声が聞こえなくなったあたりで
修道士フィンリは振り返り、クラインに低い声で話します。
「あの方は、我らが頭上を舞っていた竜の乗り手、我が黒衣の乗り手を山に落とした竜騎士殿の
奥方です」。
そして、乙女の塔を指差して、私が若輩の時分、この山に居ったときは
あの塔に住まわれておりました。大層お転婆でトリウマを自在に乗りこなしておられました。
はてさて、何も知らぬふりをして騎士殿をご紹介すべきであったでしょうや?
そう、溜息をつきフィンリは頃合ですな、とロバを降り、引いて歩き始めます。
ところで、
谷からどれだけ者共が山に集まっているか、それを知りたいところですが、クライン殿は
どう思われますか。谷の村々の者は山にいる者とまた立場が異なりましょうし、山にいる
者に輪をかけて粗忽者が多うございますぞ。慮外な振る舞いに及ばぬとも限りませぬ。
#できる限りはやめに人物紹介を用意します。
>40
「キリマ殿の…」
思わず振り向いたが、既に追い抜いた二人の姿は闇に溶け込んでいた。
「聞いただけなら妹姫とよく似た御気性のようだが、さても竜騎手を輩する血筋、
貴婦人といえど勇に長けておいでのようだ」
聖域育ちの貴婦人というだけなら同じであるものを、
亡き妻とはかくも違う者かと、妙な感慨を覚えた。
「キリマ殿の奥方とあらば、いずれお目通りする事になるだろう。
お引き合わせがなければそれまでのこと、
元より私はさほど彼の君の覚えがめでたい立場でもない」
それはさて置き、と話を切り、私は彼の質問に答えた。
「谷は元より、山の民のおおよその人数すら私は存じ上げぬ。
事実、上がってゆく人々と下りの道で擦れ違いはしたが、
山頂がさほど混乱に陥っているとも思われぬ。
私は降りてきたが、上には人数をさばけるだけの顔触れがあるし、
ついでに言えば、既に手に負えないほどの混乱をきたした後だ」
今更多少の混乱を追加したところでどうという事はあるまい、と、
苦笑をまじえ、半ば冗談口に、半ば本心から私は呟いた。
>>42 フィンリはキリマという語がクラインの口から二度も出るに及んで、向き直るなり
驚嘆にたえぬのをまざまざとあらわす強い口調で、
「クライン殿、キリマの名をご存知でしたか。思わぬ言い間違いではありますが、
おそらくは山の上で聞かれたのでしょうな。その名をお伝えしたのは修道会の者では
ありますまい。はてさて、クライン殿は山に登られてからまだ日が浅いでしょうに
随分とお詳しくなられたものだ。
さよう、竜騎士キツバ殿の奥方は活発なご気性であらせられました。他ならぬ
この私が司祭を務めていたおり、この山で婚礼の儀を執り行ったものです。
夫を気遣って山に参られたのでしょう。そういえば、妹君のこともご存知なのですな。
さよう、奥方となられてからは妹君のみで過ごされておりました。都に届く便りでも
たびたびご健在であることは伝わっておりましたが、殿ともすでにお知り合いに
なったのですな」
さてはて、キリマの宿坊のことは修道会本部のほうでも懸案になっております、
私としては当人に会い、行く末に心を配ってやるのがまず先決かと思いますが
クライン殿はどう思われますか、と水を向けてきます。
>>43 やんわりとした指摘ではじめておのが言い間違いに気づき、
どうにも予想外に疲れているらしい自分に驚きつつ、
簡単に非礼を詫びて、私は答えた。
「先程も申し上げた通り、私は昨夜当地に到着した身、
彼の名はたまたま今日、検分の場に居合わせて知ったに過ぎぬ。
キツバ殿についても先程遭遇したばかり」
ゆえに名を取り違う愚をおかしたのだがと釈明し、一言言い添える。
「立ち会ったのみではあるが、裁きに携わる者が彼の有罪を信じてことに臨んでおり、
ゆえに証言が必ずしも公正に行われていない印象を受けた。
真相はさて置き、まずは中立に検分できる者を選任される事ですな」
本来、部外者の私が差し出がましい口をきく事ではないが、と言添えて
私は口をつぐんだ。
雑談に時間を費やすうち、さきほど出てきた門塔が、既に目の前にあった。
>>44 「検分が行われたのですか。あぁ、なるほど、それで竜騎士キツバ殿も焦られたのか。
検分は結審に至らぬうちに行動を起こされたのであろう。
祭司モン殿を悪くとらないでいただきたいのです。私が入山する前に形を整えておき、
私が中立の位置でキリマと宿坊の処遇を決することができるようにと計らいたかったの
でしょう」
そういえば、キリマは幼いころからの竹馬の友がおりました。何事もなければ
我らを案内する道化役には彼らも加わっていたことでしょうに。まこと運命とは
分からぬものです。
門塔の前、広場となっているところには、先ほど山を降りるときにすれ違った巡回祭司と
師父ヌガが二人で灯火を掲げて立ち、こちらが近づいてくるのをみて挨拶します。
背後では城壁の石組みの穴に木の板を差し込んで、簡単な卓がしつらえてあり、
その上に帳面が載せられています。おそらくは到着した者を記す帳面ではないかと
思われます。昼に典獄カージャールがこもる読誦の塔の書写室に集められていた
記録から地図を探すときに似たものをざっと見た覚えがあります。
フィンリは巡回祭司、師父の順に肩を抱き合い、手短に無事であったことを告げ、
クラインを振り返り、二人を紹介します。師父はクラインに改めて挨拶し、どのような
身分で記帳されるのを望むかと尋ねてきます。
>45
ただ曖昧な苦笑で応じたのみ、返答はせず、私は黙って馬を進めた。
適切な問いを返すなり、相槌で流すなりするには事情に疎すぎ、
まだ事実、疲れてもいた。
彼らが挨拶を交わす後ろで馬を降り、手綱を引いて歩み寄る。
ヌガ師父の問いには至急の身ゆえ後ほど、とのみ答え、
同時にフィンリ殿の背を軽く叩き、確かに送り届けましたと一言、添えてその場を去った。
山を下り、フィンリ殿を連れ戻るまでの間に、これだけの手はずが整えられていることから、
院内の混乱は回復し、秩序が取り戻されつつある事が見てとれる。
今ならモン祭司を探すのはたやすく、また彼も落ち着いた応答を返してくれよう。
一刻も早く彼へ問い、誤解があらば解いてからでなければ、
次に何をなすべきかを決める事すらできない。
-----------------------------------
次のアクション
モン祭司を探し、『院長は下に』と言ったのがフィンリのことで間違いないのか確認します。
間違いなければ長物を置きに一度宿坊へ戻りますが、
そうでなければ再び門塔を出て探索を続ける心算です。
馬は一端門塔の中へ。
>>46 師父ヌガはクラインの微苦笑に至極真面目な顔で、夜明け前に民会が始まるであろうことを
伝えます。山に集まれる者のみで谷のことを色々話し合おうというのだそうです。
そして、クラインとフィンリに向かってモン殿をお探しでしょう、広場の乙女の塔の前におられるはず
です、キツバ殿がご一緒のはずだと付け加えて、帳面に一息に
隣谷の高名なる領主にして高潔なる騎士クライン殿、祭司モン殿の名代にして
修道士フィンリ殿の供奉 お一人
と書き記します。帳面にはこの伝で巡回祭司や既に山にいる者の押し印や署名などが
書かれており、暇をみてはヌガが注記の形で氏名や身元を書き添えているようです。
さて、門塔の下を潜り抜けて広場に達すると、小さな土人形どもの燐光はいつの間にか
薄れているものの、灯台ゴーレムは何事も無かったかのように光を放ち続けています。
そして、広場には朝課に出ていたとの同じくらいの群集が夜着にありあわせの布を羽織って
あちこちで三、四人と固まっては談じ込んでいます。大回廊や門塔や宿坊の者が出ている
のだと思われます。人の動きをざっとみると、乙女の塔の前にいる集団が中心のようで、ここと
他の集団との間を往復している者が何人かいるようで、その者を中心に話があちこちで膨れ上がって
いるようです。
祭司モンと同じく宿坊の主たちのうち顔見知りの者はクラインとフィンリが近づくのを見て、輪の中に
場所を開け、それぞれ挨拶し、フィンリには挨拶に続いて熱烈に抱擁を交わしあい、お互いの無事を
キツバの前で口に出して喜び合います。
モンもクラインの手を握って、よくぞご無事で連れて来て下さったと感情をあらわにし
民会が開かれるであろうことをキツバのことを目の隅でみながら告げます。
>47
過剰な麗句に若干困惑はしたが、それを差し引いて余りある
ヌガ師父の能筆っぷりへの敬意から、敢えて言わず、私は門塔をくぐった。
モン殿の様子より、予測が当たった事──彼の言葉足らずとも言え、
私の早合点とも言える──は理解できたものの、
追って何か言うには私は疲れ過ぎていた。
一度武装を解こうと思うのでと断り、その場を辞す。
門塔脇に繋いでいたアルタクスを馬屋へと戻し──鞍を外してやる余力は流石になく、
馬屋を出て最初に会った若い助修士に後を託した──宿坊へ向かう。
道すがら、人波の中に副院長──私が当初思っていたところの『院長』──の姿を目で探す。
敢えてモン祭司に念押しはしなかったが、私の憶測が更なる勘違いでない限り、
この群衆のどこかにいると思われた。
----------------------------
副院長が見付からなくても、そのまま宿坊へ戻ります。
何もなければ武装を解いて、外套引っかけて民会が始まる前に再び広場へ。
時間があるなら、しばらく体を休めて暖まってから出直すかもしれません。
夕食後ずっと動きずっぱりでしたので。
>>48 クラインが合流したとき、偶然なのか、背後、二頭の竜が落ちたあたりに張られている天幕から
若姫付きの爺が顔を出し、引っ込みます。
しばらくして、中から昨日の朝課で見かけた老僧が姿を現します。背後には若姫マルトが
付き添い、その背後にさらに弟御クリスタが控えています。
老僧はフィンリのほうへ近寄り、両手でフィンリの手を包み込むように握手し、遠路はるばると
来たことをねぎらいます。フィンリも老僧が健勝であることを言祝ぎ、居合わせた一同は
両者の言を聞くやおなじくねぎらい、健康を称えます。驚いたことに無表情でいた竜騎士キツバも
老僧の健康をたたえます。
さて、クラインが門塔に戻ると、隅塔と本塔のつなぎの部屋の前で、典獄の甥シャルルと会います。
シャルルはクラインの姿をみて、伯父と会ってくれないかと頼んできます。
>49
「手空きゆえ、障りはないが」
宿坊の扉を開きつつ招くと、彼は私に続いて室内に入り、
私の促しに応じて椅子にかけた。
「典獄殿の使いか。面会したいとは、民会の前に、それとも後に。
どちらにせよ断る理由はないが」
ちょうど昼と逆の図、旅荷に付けた革袋から蒸留酒を一口、杯に注いで干した。
喉からかっと熱が上がり、冷え込んだ体の芯がぬくもる。
飲むかと目で尋ねたが、彼が首を横に振ったため、私は杯を置き、
武具を外して、背に負った矢筒と並べ卓上に置いた。
手甲、脚甲を外し、硬革鎧の胴帯を緩めて留め金を外す。
体を締め込んだ防具を外すと同時、心理的にも負うた荷が下りたと感じられて、
私は深く深呼吸をついた。
>>50 シャルル「できるだけ早いうちに。伯父の気力が持つうちにお願いしたい」といい、
あわてて、いや、人事不省に陥るというわけではないが、今のうちに話したいことが
あると言付かっているのだ、と言い足します。
つづいて、明け方には、伯父に代わってか、あるいは介添えで民会にでなくては
ならない、私も鎧をまとうことになりそうだ、とクラインが脱ぐ様をみながらひとりごち、
面倒なことになったものだ、とつぶやきます。
シャルルに続いて読誦の塔の書写室に入ると、中には修道士がカージャールの枕元
に静かにはべっています。そして、文書の山のところでは別に修道士たちが史料を
整理し、より分けています。
クラインが入ってくるのをみて、典獄カージャールは枕元の修道士に何かいい
下がらせ、寝台の上で体を起こし、かたわらに立つのはクラインとシャルルのみ
となったとみるや、ぼそぼそと挨拶もそこそこに話し出します。
いわく、民会でキツバはおそらくこの山の領主としての権限を主張し、院長を指名する
であろうこと、カージャールはその人選に懸念を抱いていること、また、若姫マルトが
山を降り里に戻ることもこれに関連している恐れがあること、都に官僚として人を出している
この山の支配は帝国にとっても重大な関心ごとであること、さらにはこの山にいる貴族たち
にも影響はあるであろうこと、修道院の領として現状維持を一官僚としては望むより他ない
こと、などです。
そして、クラインに質問はあるかと尋ねます。
>>51 PL発言でお願い
帝国の権力系統がわからなくなってきたので、
クラインが知っていておかしくない範囲で設定補足お願いします。
PLレベルでは、
帝国(まとめてはるか雲の上)>>>>>ロード>>クラインたち諸領騎士
ぐらいにしか設定していません。
クラインは地方騎士でもずっと末尾の方の端騎士(格はそこそこですが)なので、
現在設定だと、カージャールもキツバもマルトもひっくるめて
定刻に連なる雲上人としてしか認識していません。
>>52 帝国は複数の王国(皇帝とその一族が王座を継いでいる)、皇帝直轄領、家臣領、自由都市領、
辺境伯と騎士団領などに分かれています。
そして、この修道院の山そばの大河には複数の谷があるのですが、元々住んでいた原住民の上に
移民の群れが各谷ごとに別々に何回かの波に分かれて入り込み、結果として各谷の習俗や政治は
大きく異なるものになっています。
修道院のあるこの谷は、都の皇帝と使う言葉が同一となっており、修道会を通じて
官僚の人材、そして都への労働者を谷から送り込み、逆に都から政治的な難民や避難民、物見遊山
の者、湯治客などを迎えています。
今の皇帝はこの谷に係累がおり、それはカージャールとシャルルが抱えているらしき遺骸の主、
大公も同様です。カージャールが若い頃に騎馬弓手として軍旅でこの谷にきて皇帝の陣に連なった
といっていますが、これは皇帝が即位するときの戦の話です。
したがって、元々はこの谷出身の家系の者が今の皇帝の都には多数おり、そのルートは区々な
わけです。
皇帝としては、そのややこしさを少しでもまとめるために修道院を通じての官僚育成と帝国統治、
そしてゆくゆくは共通言語の普及などを図っていくことになるのでしょう。
したがって、カージャールについてはクラインより皇帝と縁の深い人物であり、今の皇帝がある限りに
おいては都では格上、この谷では都を背負う限りにおいて格上、しかし個人としてみればクラインのように
所領がはっきりある身分ではありません。典獄としてはおそらくは部屋住みの身分でしょう。
キツバとマルトについては、都との関係を同じく推定する必要がありますが、キツバ、マルト、クリスタ
については修道院のある谷の領主たちを代表する一族なのはたしかです。
一方、谷に修道院は宿坊という勢力を扶植し、谷の領主とは別に自由農民と繋がろうとしています。
>>51 考えをまとめようとしばし黙し、握った手の甲で軽く、寝台の枕板を打つ。
指が当たるこつこつという音が静かな室内に響いた。
「一つ、申し上げておく事がある」
考え考え、ゆっくりと口を開く。
「私が伝書士としてこの地に赴いた理由の半分は、家の者の小知恵によるものだが、
縁の僧院より、ここな参議へ紹介を受けた理由は、別に思い当たりがある。
若い頃、とは言っても妻を亡くした後の事だが、故あって私は、
無実を訴える者を決して見捨て置かないという宣誓を立てた。
一族の中では有名な話であり、また同輩の間でも知られているため、
同格の者の間では、揉め事の仲裁と言えば先ず私を呼ぶ者が多かった。
誠実に事に当たる事に於いては亡き父の評判が高かった事もあり、
中立の部外者が必要とされる局面では、頼られる事が多いのだ。
キリマの検分の場で内心、或いはこの為に…とも思っていた」
一度言葉を切り、重い思いにとらわれつつも、だがきっぱりと言う。
「しかし、当地にあっては事情が違う。
何より、如何に政治に翻弄されていようとここは変わらず聖地であり、俗世ではない。
王権を持たぬ我が身には、ロードの裁可を得ずしては、関わる事すら許されないのだ。
当地において座を長ずるキツバ殿が領主として采配を振るうなら、
元より私は口出しできる立場にはない。
キツバ殿が当地に到着した時点で、まとめ役としての依頼は反故になったに等しいのだから」
典獄殿の力弱い目に目を据え、一言一言をはっきりと語り聞かせる。
「貴殿が知己としての私に、年長者としてシャルル殿への介添えを望むなら、
一個人として、騎士として、できるだけの事はするとお約束しよう。
しかし、貴殿の代理人として以上の力添えはできぬ。
私には責を負う所領があり、血族があり、彼らの立場を危うくしてまで、
差し出がましい真似はできないのだから」
相済まぬと詫び、私は頭を垂れた。
------------------------------------
設定補足ありがとうございます。
クラインは辺境伯に連なる者と思っておけばいいかな。
ちょっとFSSのフィルモア帝国っぽいw
>>54 「問題は、キツバ殿がこの谷の正統な領主であるのか、そして、領主の資格とは何かですな。
この修道院を統べる者、或いは預かる者が誰なのかも関わってくるだけになにぶん難しい
問題だと思われる。
私の調べが及んでいる範囲では、正統な領主を主張できる者はこの山に三人いるはず。
つまり、竜騎士キツバ殿、若姫マルト殿、若姫の弟御にして甥御のクリスタ殿です。
一方、この修道院の院長、或いは乙女の塔付きの司祭を名乗れる家系も別にあるようだし、
さらにいえば、守護職も過去には設けられておったようです。昨晩の検分までその子孫が
健在とは知らなんだが。
しかし、さらに話が複雑なのは民会です。武装したる者、耕す者、参集する者であれば
誰でも理屈の上ではこの山の共同持分を代表するため名乗りをあげることができるようだ。
つまり、クライン殿の情理を尽くした判断が必要とされるのはまさに今をおいてなかろうと
存じる次第だ」
おおよそ、このような内容のことをカージャールはシャルルの介添えを受けながら述べ、
最後に、
キツバ殿については、内乱が終わってからこの方、出奔されていたことを民草はどうみているか、
これも関わってこようし、一方、今は負傷しているものの竜が復活すればまた流れは
変わろうし、はてさて、どうしたものかと嘆じて見せます。
>55
ここまでざっと目にしてきたこの地のややこしさが結集したかのような事態に、
私は軽い目眩を覚えた。
室内を見回し、手近にあった三つ足椅子を引き寄せて、
典獄殿の枕元に腰を下ろす。
改めて目線を合わせ、考えながらゆっくり口を開いた。
「改めて幾つか、質問をさせていただきたい。御存知の範囲で構わない。
キツバ殿が出奔されていたとの事だが、先代の家督は彼が継いでいたのか?
だとすれば、彼が不在の間、姫君や弟君の後見は誰が務めていたのか。
また、当地において、内乱以前、御領主はどのような立ち位置にいたのか。
世俗騎士ならば、聖域を加護はすれども干渉せぬのが当然だろうものを」
典獄殿の言葉を繰り戻し、反芻しつつ考えを進める。
「元来、当地の建立者──王権を持つ誰かに間違いあるまいが──によって
守護職が任ぜられていたなら、それが途切れたのはどういうわけか?
司祭を専任する家系があったというのも初耳だが」
ここまで言葉を継いで、ふと取り沙汰している事態のありえなさに気づき、
それに翻弄されている己をやや忌々しく思いつつ、私は一人ごちた。
「一体いつから、この地はかように政治に翻弄されるようになったのか…
そもそも、聖域を統べる者とは聖職者以外ありえるはずもあるまいものを、
難民にすぎぬ俗世の者までもが、支配権を取り沙汰し口出ししようとは」
──ふいに。
閃いた思考に──雷光のごとく、という修辞そのままだった──私は凍り付いた。
「──カージャール殿」
彼が私へ、怪訝な視線を向ける。
「その守護職というのは」
腕に覚えた、軽い感触がよみがえる。
キツバ殿は何と言った?
フィンリ殿は何と言った?
ありえようはずがない。キツバ殿は領主だという。
ならば世俗騎士──竜騎手とはいえ──に違いあるまい。
その俗騎士が相争い、追い落としたのだ。
だが、そう考えればつじつまは合う。しかし──まさか。
「その守護職というのは、まさか先程の」
口の中で、舌が凍り付いた。
--------------------
流れとは関係ありませんが、シャルルは騎士なんですかね?
それとも単に、伯父のボディガード専任の戦士なんでしょうか。
>>56 「実はそもそもこの山と谷の土地を誰が支配しているかは史料からははっきりしないのだ。
谷の領主たちの間での相続のたびに分割されたり、寄進として修道院に差し出されたり、修道院が山の斜面を
天まで届かんばかりに段々畑を作ったり、新たな羊を導入したりといったことが記録されている。
そして、実入りが増えるたびに、新たな村が作られたり、寝小屋が建てられたり、村が移動する。
修道院があり、活発に技術を開発している分、変化は他のところよりも激しいのかも知れぬ。
よって、この山は必ずしも聖地として修道院が一円的に支配しているわけではないのだ。
しかし、最近をみてみれば、修道院が力関係で優りつつあり、領主は劣勢だったようだ。それは他ならぬこの
門塔と乙女の塔の違いにも出ている。また、宿坊にこもる村の豪農たちの元気のよさ、あぁ、ふてぶてしさも
これと関係があるのだろう。
さて、谷の領主の第一人者としての地位については、先代が内乱で軍勢を集めておきながら頓死した後、
竜騎士キツバ殿が出奔し、結局、軍旅につくことなく谷間の若者はこの山に集まり、射手回廊を作り、解散したのだ
そうだ。その後、キツバ殿がみておられた家督を守る役は先代の修道院長に委ねられており、家を代表する役目は
若姫マルト殿が乙女の塔付き司祭のご老体の補佐で務めてきたようだ。
この乙女の塔付き司祭と修道院、谷の司教と谷の巡回祭司の関係もまた難しいところがある。ことに両者とも
史料では同一の名称で呼ばれることがあり、同じ名前を代々受け継ぐものだから、読み解きにくくて仕方が無い。
これは都にある内乱関係の資料でも同じだ。貴族たちは幼名も若武者としての仇名も長じてからの肩書きも
似通ったものばかりだからな。
>>57 「修道院の守護職は、キリマの宿坊に代々継がれていたようだ。しかし、これも元は谷の領主が仲間内で指名した
ものか、修道院の中の役職だったのか、実ははっきりしない。かりにクライン殿が懸念されているように、かの
黒衣の守り手が都で守護職に任命されてこの地まで飛んできたのだとすれば、あたかも殿にとってもまた、自らと
役目を同じくする者がいることになりますな」
#シャルルは典獄の本家筋の者で、見習い中という設定で考えています。だから伯父あるいは叔父のカージャール
のもとにきてその技を学ぶ必要があるというみたてです。
PLより
すみません、風邪ひきました。
文章まとまらないので熱下がってからレスします。
http://www.youtube.com/watch?v=EbodqtEO1us 冒頭と07:50からシリアの十字軍城塞。7:50からは崖面を削り磨き上げ上部の城壁と一体化してある濠がみられる。
左手の塔は、オベリスクを脚にする橋に対して横矢掛かりの機能あり。
シリア人なのかアラブ人なのか、サラディンの城というのも間違いではない。サラディンが攻略して
その後使っていたでしょうから。サラディンでなければバイバルスがそうしているはず。
撮影者は若い男性なのだろう。城の中をあちこち歩き回っていい画像を撮ってくれている。ありがたいです。
冒頭のほうでは矢狭間の詳細な動画あり。あちらこちらで人物を写しこんでいるので寸法が分かるのも大変良いです。
>>58 典獄殿の口上を聞くうちやや落ち着きを取り戻し、
話の内容を注意深く吟味する。
「…つまり、こういう事だろうか?
当地は現在、およそ聖域としての独立を保っているとは言い難く、
それが何時からどのようにとも分かちがたい。
修道院と土地の民の領有地の境界もはっきりせず、
それは院内に至るまで及んでいる。
先代当主亡き後、キツバ殿の出奔で相続は宙に浮き、
家督は院長に、名代は姫の管理下にある…」
合っているだろうか、と目で問いつつ、ふと浮かんだ疑問を口にする。
「次の院長を指名する、との宣言は何に拠るものだろう?
本来その座は参議が合議の上決めるものではないのか。
仮に領主に任命権があったところで、領主の座は今現在、
まだ彼の元にはないものを」
------------------------------------
ようやく復帰できました…土日潰れました。
微熱が引いたら動画も見てみます。保守ありがとうございました。
>>64 「この山自体については、持分として割合で取り分ける定めになっているようだ。ただし、谷のあちこちの村の
豪農たちは宿坊をこの山で営んでいるし、かつ、それらの村には修道院とは別に領主がいる。そして、それらの
領主の頭領となる人物が今不在ということだ。家の経営は乙女の塔で若姫マルト殿がやっていたような気配もあるが
詳しいことは分からぬ。院長はそれを補佐する立場であったようだが、乙女の塔には別に司祭もおり、これは
修道院とは独立している」。
「次の院長を指名するのは、史料の上では民会で選ばれた領主の権限による。ただし、領主は参事会に諮問するか
民会に問うのが慣例のようだ。ここらは領主としての力量、実力が左右する面が多いのだろう。
つまり、竜騎士キツバ殿は民会で領主の座を要求し、その後院長を指名しようというのだろう」
「私としては、領主には誰が就くべきか、院長には誰が就くべきか、この二つをいかに解決するかを見守りたい」
「この山にいる都の民、谷の民とも不安定な面がある。そして、キツバ殿の処遇について帝がどう思われるのか
それを思い巡らして対応を決めねばならん。しかし、帝の務めを果たす身を軽々しく危険にさらすことは許されない」
#お帰りなさいませ。動画は面白そうなのをyoutubeから探すのが楽しかったのでついつい長めのものも
張ってしまいました。
>65
「わかりきった事ではあるが、民会の流れを見る他あるまいな」
肘杖をつき、組んだ指に鼻先を乗せて、私はぽつりと呟いた。
「悩ましい状況ではあるが、蓋を開けねば結果は出せぬ。
典獄殿においては、上つ方の思惑も酌まねばならぬところだが、
いずれにせよ、大凡の流れが定まってからの事だ。
案外、うまい落としどころに落ち着くやもしれぬ」
あまり期待はできぬが、と言い足し、私はくしゃくしゃと前髪をかいた。
「私に至っては、誰それの名代という名目でもなければ畢竟、部外者に過ぎぬ身だ。
読めもせぬ先行きを憂いてみたところで腹の足しにもならぬ」
ふと先程の言を思い出し、傍らに立つシャルル殿をちらと見た。
「貴殿には、都への報告もあろう。無理は禁物、まずは自重されよ。
老婆心ながら申し上げておく。くれぐれも早まった振る舞いなきよう」
---------------------
未だ本調子ならず。早寝心掛けてます。
FM青春アドベンチャーで連載中の『ゼンダ城の虜』を聞いていますが、
主人公ルドルフのCVイメージが軽くクラインとかぶって受けました。
クラインより若く闊達ですが、皮肉っぽい拗ねた喋り方イメージが。
>>66 「クライン殿は形の上ではこの山の守護職にあると主張できるように思う。それに先祖伝来の所領がすぐ隣谷とあっては
さほど等閑視してはおられないのではないか」。
シャルルはカージャールの話の間、のんびりと枕元で小刀で木彫りをしていましたが、クラインの言を聞いて、
「しかし、伯父がこうあっては民会で表に出ざるを得ないこともありえよう。場合によってはキツバ殿を除かねば
ならんだろう」と淡々とこたえ、また木彫りに戻ります。
伯父は、たしかに決闘で神意を問う古法はあるだろうが、と動揺したようにつぶやきをもらし、
この上は民会で議論が尽きたところで帝の名代として案を示すべきではないかと思うと述べます。
今のところ、民会の議題となるであろう項目は
領主の座、院長の座、修道士にしてカーギの宿坊の甥キリマの処分。、これに関連して
若姫マルトの里帰り、羊の群れを迎える祭礼、山と谷を狼から守り交通と治安を回復、などがあります。
民会は参加者の資格確認(欠如する者の退出を促す儀式)に始まり、議長を選出し、民会の開催を求めた者が
提議し、続いて参加者の中から議事を寄せ、ついで審議をし、と続きます。本格的な場合は中断し、袖舞台で
交渉をし、と長々と続きます。修道院、宿坊、谷の領主たちなどが参加するはずです。
法を審議し、
>>67 「審議に入る前に夜が明ける事は疑いなかろうな」
典獄殿の挙げる懸案項目を指折り数え、私は嘆息した。
「せめて早朝課明けからとしてくれれば、こちらも一息つけようものを。
名ばかり守護職といえ、形だけ仮受けしたことを問われるなら
欠格として退席を乞われても抗えぬ。
いっそそうなれば、宿坊へ戻って高鼾を決め込むだけな分、手間がないが」
肩をすくめつつ、再び前髪をかく。
「冗談はさて置き、所領が近いというだけでは参画を申し出られませぬな。
この地は我が小領よりはむしろ、義父領に近い。
ロードを差し置きしゃしゃり出る言い訳にはなりますまい。
参議よりの依頼が正規には撤回されていない以上、
その線で押せば強いて退去を命じられはすまいが。
昨日一昨日の来訪者が、事情も知らず差出口をきくわけにもいかぬ」
シャルル殿を振り向き、やや語気を強めた。
「しかし、流れがどうあろうと、短慮はなるまいぞ、若人。
ことこの件においては、私は伯父君の御意見を全面的に支持させてもらう
貴殿の軽挙妄動は伯父カージャール殿の意を酌んだものとみなされ、
ひいては都の意向と見なされても申し開きはできぬ。
俗世との分があやういとはいえ、ここはいまだ聖域という事を忘れてはならぬ」
--------------------------------------
ゼンダ城単行本、関連にヴィクトリアンガイドが入っていて笑いました。
自分と同じスレの住人がけっこう読んでいそうです。
展開は確かに早いですね。この時代の名作ラインナップは大概そうですが。
むしろ、現代作品が冗長なのかもしれません。
>>69 「しかし、火の粉が降りかかってから、策を講じるわけにもいくまい。現にこの谷と貴殿の谷の間は
古来からの道で繋がっており、急使が通れることが判明したとあっては、どうであろうか。
都にも修道会を通じて官僚や労働者としてこの谷の者が多数住まっている。この地での動揺は
避けねばならぬ。家族や故郷が危ういとあっては職務にも身が入らず、仕事の実もあがらぬであろう。
クライン殿に腹案があらば、及ばずながら力添えいたしたく思っていたのだが」
カージャールはそう話します。シャルルは平然と木彫りを再開しており、話には加わってきません。
クラインの度重なる強い制止については、依然から心を決めておりご意見無用といったふうです。
「クライン殿はお疲れであろうが、民会の前に民の間で話を聞く機会を設けられるべきであったかもしれぬ。
はたして、どの程度修道会の者がこの山や谷に住まう人々の心をかちえているのか、実を言うと判然としないのだ。
ともかく、人心は史料からは読み取れぬし、ましてや、内乱がどのような傷をこの山の民に残しているのかなど
さっぱり分からぬ。つまり、私は未だになすべきことをなしていないのかもしれぬ。陛下の眼と耳たるには
民の本意こそ知るべきだからだ。
だが、民の本意に流れを与えて導く者たちとはクライン殿はおおよそこれまでで会われたのではあるまいか
とも思う」
>>70 「官吏たる貴殿らしい意見だが」
私は苦笑した。
「小領とはいえ所領を持つ身から言わせてもらえば、 人心とは一両日にして掴めるものではない。
如何にも、戦や探索に於いては、短時間でも多くの相手から話を聞くのを情報収集の要とするが、
それはあくまで『これで充分』と言えるだけ、かけられる時間がないゆえ適度に見切りをつけるまで。
本心から語り合い、わかり合うには月、年という単位の時をかけても事足らぬ。
これは戦でも探索でもない。政治なのだから。
一日休みなく人々と語りはしたが、これで何を把握した、誰を知ったと言い切るのは傲慢に過ぎよう。
事実、先程貴殿から聞くまで私は、この地の聖地と俗世の特殊な関わりを微塵も知らなかった。
それを聞かせられるだけの時間もなく、聞かせようというほど腹を割った相手もいなかったという事だ。
一日二日人を訪ねて聞いて回って、それで人をまとめ、翻案が出せるようなもめごとなら、
私の到着を待つことなく、とうに解決していただろう」
自然と眉が寄るのを、指のはらで押しほぐす。
「なるほど、山道とはいえ急使が行き交えるなら、無縁な土地とは言うまい。
しかし、それを口実にこの地のしがらみに割って入ろうとは無茶というもの。
無論、民会へは出るつもりだ。土地の者の意向を無視してまでとはいくまいが。
可能なら議論を整理し、土地のロードに仕える一騎士として事情の把握につとめ、
後日ロードへ報告し、あるいは都への貴殿の報告へ口添えをする使者とはなろう。
しかし所詮、ここは辺境。この地が肺炎になったとて、都はせいぜい咳をする程度。
大きな動乱にでもならぬ限り、都が腰を上げぬ事は嫌ほど知っている。
我がロードなればこそ、親身に熟思いただけはしようが」
無意識に下唇を噛んでいた。痛みで気付き、口を開いて先を続ける。
「私に、民会そのものの流れを左右するほどの発言力は元よりない。
彼らには彼らそれぞれの立場があり、意見があり、代表者がいる。私が代弁べき立場の者はない。
互いに意見を摺り合わせ、落としどころを探せるならよし、
会議が紛糾して収集がつかぬなら、明日以降に続きを日延べするよう異見はしようが…」
無意識に、語気が強まる。
「だいたい、ありていに言えば、この土地のやり方が無茶なのだ。
怪異の混沌のただ中、墜落する飛竜とともに出奔していた当主を迎え、
混乱もおさまらぬ中、深夜の山頂に集まって民意を問おうとは。
これで落ち着いて話ができるなら王か聖人だ。まとまるものもまとまるまい。
辺境領の寄り合いでさえ、障りがあれば日延べをするものを。
代表者らの都合か土地の習わしかは知らぬが、無謀にも程がある。
姫君をさらった悪竜を倒した勇者が、王国を継いでめでたしなのは吟遊詩の中だけだ。
まとまらぬもめごとを力押しで片付けるならもはやそれは戦、
政治とは言えまいものを」
つい本音が漏れたのは、疲れのためだけとは言いきれないだろう。
「私にできるだけの事はしよう。その上で、どうにもならぬ事はどうにもならぬ。
確約できるのはせいぜい、話し合いの席を堪えられず力に走る馬鹿者がいたなら、
叱り飛ばしてつまみだそうというところだな」
「もともと、谷の村々では祭礼の準備が始まる時期であることは知っておったであろうから、この山に集まる準備は
していたであろう。それに、どの程度今生きている規定かは知らぬが、各村、各宿坊はこの山の施設が損なわれれば
分担して修繕する定めもある。ならば、この山で戦闘があれば、どの程度の災厄であったか、しかるべき者が立会い
検分に登ってくるであろう。
竜騎士同士の戦いにしても、民会にしても、いずれもキツバ殿が決断されたことだ。つまり、彼の思い通りにことが
運んでいるのであろう。このままでは、朝が明ければめでたくキツバ殿はこの谷の領主の第一人者となり、この山を制する
こととなるはずだ。
クライン殿のこの谷での立場がロードからの許しを得るまで固まらぬというのは分からぬでもないが、かといって、
ことあるごとに己の立場が脆いことをこの山じゅうで吹聴して廻るわけにもいかぬだろう。なぜなら、谷の衆からみて
すでにそなたは隣谷を代表する者であるし、さらにはモン殿がすがりつき、キリマに本部が酷な処断をするのを食い止めた
原動力に他ならない。
お疲れとは思うのだが、民会前にシャルルとともに広場に出て、民草や民草を束ねる者の意見を探ってみては
どうであろうか。まずはこの柿でも食べてはいかがであろうか。甘みをとれば疲労も軽くなろう」
そこで、シャルルはふと思い出したように、そういえば若姫マルト殿にまだ伺候されてはいないのではあるまいかと
クラインに水を向けてきます。
>73
典獄殿の諭しで苛立ちの熱も引き、私は眉間を押さえつつ立ち上がった。
「然り、既に抜き差しならぬ立場にあるのはゆるぎない事実だ。
他に動きようがないというなら、打てるだけの手は打とう」
柿は結構、と軽く片手を挙げて固辞し、教導への礼を述べて、
私は典獄殿の部屋を辞した。
広場へ出る前に宿坊へ立ち寄り、旅荷から伝家の薬酒をひとしずく、
ワインで流し込んでおく心積りだった。
「酒」を「流し込む」というのにはわけがある。
元は家令が父祖より継いだという秘伝の薬酒は、蒸留酒を土台に
数種の薬草、蜂の巣などを長期漬け込み作るのだというが、
その秘伝が盗まれた試しはないという。
一度に一滴以上口にすれば胸焼け請け合いというひどい後味のため、
余程の修羅場でもなければ誰も口にしたがらない代物なのだ。
流石に戦場では重用されるが、旅荷に積むのは、
これを使わず済む旅であるように、というまじない半分のもの、
これほど消耗が激しくなければ、口にしようとはさらさら思わなかっただろう。
姫君に嗜好する前に、同梱の糖蜜で薬酒の香は消さねばな、と思いつつも、
既にあの味を思い出して、口の中が苦かった。
--------------------------------
特に何もなければ、直で広場もしくは姫君のいる場へ。
75 :
名無しになりきれ:2009/10/23(金) 09:58:53 O
あ
>>74 広場を見渡す門塔入り口の階段踊り場に出ると、あちらこちらにたかれた火を人々が囲み、ひっきりなしに話し、
歩き回っています。
降りたところで、キリマの検分の折に脇に並んだ僧侶に会い、乙姫マルトの所在を乙女の塔と聞き、顔を見知った
者に挨拶しながら向かうと、伺候しては退出するらしき村人らしき者と何度かすれ違います。
手前の半円の濠を掛け橋で渡り、中に入ると吹き抜けのように天井が高く、各階の木床を貫いて立て坑が
設けられています。
丸い石壁に沿った木の階段を登ると、広間があり、そこに若姫マルトと山に登るときに追い越した女性が二人
暖炉の火を背中に卓に並び、着席の一同と穏やかな声で会話を交わしています。
空席を一同は進め、ついで、若姫マルトより年長にみえる女性が柿をクラインに勧めます。
#質問を3つどうぞ。
>>76 幾度もお目にかかりながら、かような深夜に伺候するはこびになった非礼を短く詫び、
奥方には初の御挨拶と気付いて、ロード・メビウス旗下の辺境騎士と名乗り、
私は勧められた席に腰を下ろした。
型どおりの挨拶を済ませて、口を開く。
典獄殿の加減が思わしくなく、シャルル殿が名代をつとめるだろう事を先ず告げた。
「姫君が下山予定とお伺いし、群狼の難を逃れられるなら重畳と思いおりましたが、
兄君が家督を継がれるとのこと、今後どうなさるのかをお伺いしても?
或いはお残りになり、兄君を補佐なさるのかと。
失礼ながら、今宵の異変と急な帰山に、衆人の動揺も少なからずあると思われ、
民会が荒れなければよいがと案じている次第です。
奇しくもここに妹君と奥方、キリマ殿に関わる貴婦人が二人がらお揃いだが、
出奔の経緯を何かお聞きお呼びでは?
領主就任前に、その説明があれば、領民もどれだけか安心しようというもの」
そこでふと気付いて、私は背後のシャルル殿を振り向いた。
「そう言えば、貴殿に預けた飛竜の乗り手は今どこに?
山麓よりお連れしたフィンリ殿が、随分案じていたのだが」
---------------------------------
質問1・姫君の今後の予定は?下山するのか残るのか?
質問2・キリマの出奔の内情は?
質問3・飛竜の乗り手はどうした?
クライン個人は、(カージャールとは異なり)キリマの領主就任自体は問題視していません。
個人的に問題のある領主は他にも少なからずいるので、領主としてこの辺は相互不干渉、
目に余るようならロードに奏上してから話を通すのが筋、
当人と話をつけるにしても、まずは身内の話を聞いてから、ぐらいに思っています。
(領主個人として内政干渉すると、戦乱になりかねないので)
>>77 「クライン殿、私は乙姫ルゴダと申します。キツバのことについてお話いたしましょう。
もともと、あれはこの山に内乱で逃れてきた若者でした。まだ、この山に私がおり、マルトが
里に居たころの話です。キツバはこの塔に日参しては私とともにトリウマを乗り回し、
都の戦乱から逃れられたことを喜んでいるだけの無邪気な若者でした。
しかし、ある日を境にして全てはかわります。あれが竜騎士となったのです。
あれがどのようにして竜を得たのか、知る者はおりません。しかし、我が父は竜騎士たるあれ
と私を娶わせることを選び、よってこの山から私は去り、かわりにマルトがこの塔にこもること
となったのです。
さて、キツバに出奔を進めたのは他ならぬ私です。都の家が帝に叛旗を翻し、破れたとあって
あれは混乱し、うろたえるばかりでした。元々、男など将来のことに定見も無く、ただその日その日
の無聊を剣を振るい馬を乗り回して過ごすだけですから、あれもその御多分にもれなかったのです。
そして、今日、私がまた山に戻り、若姫を里に下がらせるというわけです。
フィンリ殿とは道中ご一緒されておられましたね。ご案じなさることはありませぬ。この塔の上に
居られます。幸いに差し障るほどのお怪我はされていませぬ。くわえてこの山には優れた癒し手が
おりますゆえ、心配には及びませぬ。
(ここで、シャルルはつと脇の階段へと進み上へあがっていきました)
クライン殿は今晩はだいぶご活躍されたと若姫から伺っております。どうぞよしなに」
>>78 気遣わしく、私は眉を顰めた。
妹姫と奥方を前に、口に出すわけにはいかない──だが、これはしかし。
戦乱を避け、聖域に退いた騎士──おそらくは──青年が竜を持ったと?
その竜騎手が妻を娶り、家督の相続権を持つ身で身の処し方を定めず、
子女の薦めそのままに出奔したと?
──あまりに愚かしい真似と言わざるを得ない。
彼は幾歳だ──?──若いようには見えたが、仮にも妻を持つ年で。
その立場にあったのが我が弟ならば、即座に騎士の銘を剥奪されているところだ。
聖域近接領ならではの特異な例しなのか?
「──では、お二方、弟君それぞれに、竜については御存知ないという事か」
或いは先代院長が何かを知っていたかもしれないが、
だとしても彼は既に墓の下だ。
当時の混乱の中ではやむを得ぬ措置だったとしたところで、
家領と子女を捨て置き姿をくらましたという事実は、
帝座の定まった今、いかにも彼には分が悪い。
民会で何らかの弁明はなされるだろうが、あまりに先が読めぬのも気色が悪い。
「守護竜騎手の気が落ち着いたなら、会って話を聞いてみるとします。
何かを知っていてくれればよいのですが」
貴婦人らに礼を述べ、立ち上がってはじめて、
私は傍らにいたはずのシャルル殿の姿がない事に気付いた。
-------------------------
特に何もなければ、落ちた竜騎手を尋ねます。
>>79 ルゴダは、黒衣の竜騎手ならば、容態は安静だがまだ会話らしき会話はしておらぬと話し、傍らに居た
爺を促して、クラインを上階へと案内させます。
上階へ階段を上がりきったところでは、シャルルが所在無げにたたずんでいましたが、爺とクラインが
上がって来るのをみて後ろにつき、部屋に入ります。
部屋の四方は壁掛けに覆われ、中ほどは衝立で仕切られ、大きな青銅製の浴槽に白布に包まれて
女性が入っています。男性三人は衝立越しにしか様子を伺えませんが、女性は身じろぎもせず、浴槽の中で
眠っているようです。
部屋の中は温かく、蓮のような匂いで満ちています。みると、衝立の脇に大きな盆がおかれ、土塊が載せられています。
バスタブの中は泥を溶かして保湿してあるのかもしれません。蓮の匂いは土の香りが湯で発散されているせいでしょう。
爺は室内にいた女性らと低い声で囁きをかわしていますが、衝立のこちら側にあった棚と机にクラインらを案内します。
机の上には黒衣の乗り手の所持品らしき、懐中壷、道中筆、護符、指輪、その他もろもろの品が置かれています。
>>80 「女性、──であったか、やはり」
手応えの軽さよりまさか、と思ってはいたが、こうして目の当たりにし、
この無茶な事態に、改めて目眩がした。
竜の乗り手には女性もいると聞き知ってはいたが、
飛竜同士の諍いの挙げ句に上空より堕ちるとは──追い落とされるとは。
「当地の守護者ではないかと聞き及び、尋ねてみたが」
卓上を眺めやりつつ、私は彼らに聞いた。
「回復のほどは。可能なら一言、二言会話をさせてもらいたいが」
>>81 室内に居た女性は爺となおも低い声で囁き、厳しい顔でうなずきます。
爺は「殿、少々なら大丈夫ですぞ。ただ、疲れる話は勘弁願えますかの」と言い、
衝立のすぐそばへとクラインを手招きします。
背後ではシャルルが興味深げに黒衣の乗り手の所持品を見ているのが分かります。
室内の女性らはとがめるような視線を彼の背に向けていますが、お構いなしです。
#3つ質問をどうぞ。
#大規模規制に巻き込まれました。代理投稿スレの方のお力を借りて投稿しています。
>81
「心得た」
声色は低く、動作は緩やかに、件の竜騎手の耳元にかがみ込み、
つとめて穏やかに、私は語りかけた。
「そのまま聞いていただきたい。私は故あってこの地に逗留する者、
先程貴殿の墜落に行き合い、仔細を知りたいと尋ねた次第」
聞き手の神経をおびやかさないようゆっくり、聞き取り易いよう一言一言をはっきりと、
──病者への語りかけに慣れている事が哀しかった。
白い貌に一瞬、臨終の床にあった妻の面影が過ぎったのを、
強く目を閉じて打ち消した。
「無理に答えられずとも良い、私の言葉が聞こえるなら、──失礼を」
白布に包まれた冷たい手を注意深く拾い、続けて語りかける。
「私の手を握るなり、まばたきをするなり、唇を動かすだけでもよい、
少しでも楽なやり方で答えていただければ良い」
かすかに手が握り返されるのを確認し、私は続けた。
「先程山麓でフィンリ殿に会い、無事山頂までお届けしたところ。
その際、貴殿について伺い、もしやと思っているのだが、
貴殿はもしや、この地の守護者と呼ばれる役職にあるのではあるまいか?
だとすればもしや、先代院長と面識がおありでは?
また、何故上空でキツバ殿と諍う事になったのかをお聞かせ願えまいか」
-----------------------------
相手の体力の消耗を少しでも避けるため、
YesNoは言葉にせず伝えられる手を取りました。
質問1・彼女は守護者か?(YesNo)
質問2・死んだ院長と面識はあるのか?(YesNo)
質問3・なぜキツバと諍いになったのか?
規制が長引きそうなら、代理投稿スレへレスを取りに伺いますが、
代理投稿スレってどこにあるんでしたっけ。
アドレスを貼っていただければ、次からレス取ってきて貼ってからレスつけます。
>>83 クラインが浴槽の中の女性の手を取った瞬間、二つのことが同時に起こります。
順々に書きましょう。まず、クラインが触れた刹那、女性の手の平から泥の滴がしたたり落ちながら
形を変え、あたかも雪の結晶のような形となって、クラインの手の平の上に落ちます。そして、かすかな
青い光を放って、丁度、今宵、下の広場で小人どもが放っていたような燐光が結晶の内側から
穏やかに室内の明かりを照らし返しています。
そして、同じく手先が触れたかと思うや、クラインの脳裏に思考と感情が迸り流れこんできます。
雲海を旋回し、山肌に激突するのを怯えながら、切れ間から急降下し、山腹の斜面を駆け上がっては
稜線の手前で反転し、振り返りざまに指先から火球を放ちつつ、闇をすかして見続け、膝は竜をしっかりと
締めようときつくこわばり、肌は黒衣の外套の内側に張り付いたように凍りつき、胸元のスカーフは
冷たくはばたき、頬をなで、黒雲の中で雨が骨身まで通るのを感じながら、ひたすら恐れを押さえつけ、
励ましの言葉を掛け続けるイメージで思考が満たされ、感情も同期しかかります。
ついで、己の唇が質問の言葉を囁き、それが糸となって、或いは音のようにイメージの海を揺らし、
答えをつむぎだします。
たしかに騎士団の副長と長の立会いで、この山の守護者たれと任じられたこと
騎士団の長はこの山の先代の院長と兄弟であること
そして、キツバとの争いは恐らくは偶然から生じた誤解であるが、先方がひたすら戦いを求めるとあっては
やむをえなかったこと … …
手の平の中の結晶についても、イメージは答えを返してくれます。
おそらくは、竜やゴーレムなどを作る種となるもの、人が求めるものを具現化する依り代で
具体的にはわからねど、恐らくは始原の泥海に浸せば、求めるものが形となって現れるのではないかと
黒衣の乗り手は推測しているようです。
さて、他ならぬ乗り手自身がその泥に身を浸しており、近くにはさらに材料となりえる土塊があります。
不足しているならば、下の広場にゴーレムの残骸が転がっていますし、群集さえいなければ灯台ゴーレムも
材料となるでしょう。
#代理投稿スレ
http://yy44.60.kg/test/read.cgi?bbs=figtree&key=1243456885 にて代理投稿をお願いしています。大規模規制にかかりまして、ご迷惑をおかけしております。
>>84 唐突な燐光と途方もない幻影の奔流に幻惑され、
私はその場で、凍り付いたように固まった。
流れ込むヴィジョンが止まり、ようやく正気を取り戻す。
成程、意識はなくとも、飛竜を使役する乗り手ともなると
『言葉』一つ伝えるにせよ、やりようが破格だ。
戸惑いつつ手のひらの『結晶』を見やり、重ねて私は問うた。
「では貴殿は確かにこの地の「守護者」なのだな?
亡くなった先の院長の兄弟とのみ面識があると?
キツバ殿の諍いとは行き違いより生じたものであり、
貴殿の本意ではなかったという事で相違ないか。
…この種をなぜ託そうというのか、私には解りかねるが…
私が求めるものはこの件の実像のみで、竜や人型に用はないのだが。
預かるべきと言うなら預かるが、これをどうせよと言われるのか?」
-------------------------------
守護者の回答待ち。
返答がなければ、とりあえずこの場で泥に浸してみるかと。
代理投稿スレに巡回予約を入れておきました。
次からレスを拾って貼って、その後レスをつけます。
(見つけ次第まずコピペして、それからレスを考えるので
続け貼りとはいかないかもしれませんがあしからず)
>>85 すると、黒衣の乗り手の思考は悔恨と諦念で満たされ、やがて、脳裏に次の言葉が浮かび上がります。
空には二種類の者がいる。人を撃ち落す者と、ただ撃ち落されるのを待つために上がる者の二つだ。
私は残念ながら後者だったようだ。そして、空で果てるとは我が魔法の技も知識も引き継がれることなく、無為に
朽ち果てることに他ならぬ。
私は確かに騎士団長と副長から守護者に任じられた。しかし、その職務を果たせそうにもない。
我が魔力は傷つき、或いは二度と元のようには飛べぬだろう。竜も我を主として遇し続けるだろうか。
その結晶は、今日、私が流した血と涙の結実なのだろう、絶望とともに託しきれぬものを託そうとはこの後に
及んでも愚かしく思えてならぬが、或いはそなたこそが、私に課せられた務めを果たしうる者なのかもしれぬ。
結晶はクラインの手から滑り落ち、乗り手が使っている泥の中に揺らぐことなく落ち、一瞬青い放射光を放ち、
そして、乗り手の体を包む白布ごと泥が覆ったかとおもうや、氷のように筋を走らせ、霜のように細かな枝を伸ばし、
やがて、魔女を芯にして、クラインが望む形のものが現れます。
#任意の形状、能力のものを選んでください。クラインが何らかの思いや記憶を引き換えとした場合、さらに
この名状しがたい代物は成長し、能力を獲得します。
>>86 守護者の紡ぐ言葉は、私には半分も解せなかった。
だが、その言葉にこめられた、思いのたけは伝わった。
護るべきものを護れぬ辛さ。その無念さ。
力を与えられながら、責を果たせぬ痛みと苦しみ、嘆きと哀しみが、
かつて味わった想いと重なって我が胸を刺し貫く。
「引き受けよう」
知らず、ぽつりと呟きが漏れた。
「私に貴殿のような力はない。だがだが全力を尽くそう。
貴殿の無念を知るがゆえに」
刹那、滑り落ちた結晶が放った輝きが私の目を射た。
眩しさに細めた目を見開き、予想外のものを認めて、私は絶句した。
──確かに、この事態を打開する解を求めはした。求めはしたが。
差し出した手に触れたもの、それは長大な一本の鍵だった。
-------------------------
どうもイメージが固まらず、書斎のファンタジー資料を山にしました…
鍵と言っても小さなものではなく、かなり大きなもの(オタクなことを言えば、
セーラープルートが持ってるアレぐらい巨大でも可)をイメージしていただければ。
駄洒落ネタに逃げたわけじゃなく、どう成長させるかはおおよそ固めてあります。
能力についてはちょっと保留。
ネタ振りを正しく消化できているかどうか自信がないので。
(これまたオタクなネタですが、レイアースに出てきた
伝説の鉱物エスクードぐらいのイメージだったんですが合ってるんかなあ…)
1/3
『鍵』の長さは、ちょうど彼女の身の丈ほどか。鋼の質感に比し、驚くほど軽い。
燐光の残照を淡くまとい、象牙色の地に金の濃淡が大理石模様を描く美麗さは、
私の知る何物にも似なかった。
「我が所領の古老より聞き覚える、古の伝承がある」
当たり前の大きさなら持ち手になる部分が、竜面を象った盾の形をしている。鍵の歯の形状は片刃の戦斧。
盾と斧を繋ぐかたち、柄に女性像が浮き彫られている。
面差しは確かに乙女でありながら、竜鱗の甲冑に身を包み、盾を掲げ戦斧を支える、この乙女の名を私は知っていた。
「王帝が君臨し、修道士や尼僧らが寺院を建立する以前、この地の主は、
力と叡智に長け、魔術を能くし、騎獣を操って空を駆ける戦乙女であったという。
彼女は武勇を以て妖魔に向かい、人々を守って土地を拓く戦士たちを愛で、彼らを守護したが、
時代がうつり、勇士がその役目を終えると、深い森の奥へと去ったとか。
その美と若さは数世代を経て衰えずと吟遊詩に謳われ、ハイエルフの一族であったとも語られるが、
当時を知る者は既になく、所領に隣接する森にその名が残るのみ──エルフェンバイン、と」
私と妻が出会ったのもその森であった。
清浄にして静穏、されどその深淵は知れず未だ人間を寄せ付けぬ深き森。
戦乙女の誉れに胸を踊らす村の若者と、勇士の勲に胸焦がす村の乙女らの、春の祝祭の舞台。
「守護者の銘を持つ女性より預かり得た『力』に、これ以上の銘はないだろう。
この『鍵』の銘は──エルフェンバイン」
2/3
顔を上げ、貴人らを見遣る。
「二つ目の問いは──私は、年長者の下位騎士として、貴人に尽くすべき礼を尽くしたつもりでいたが。
一時的に強大な力を得たがゆえ、居丈高に振る舞う輩と思われたなら、不本意と言わざるを得ない」
奥方の物言いを、浅薄と謗るには当たるまい。
彼女はただ、一族と己が夫を案じる、私より年若い一子女に過ぎないのだ。
「三つ目の問いについては、この場で私が断ずるべきものではないと申し述べるに留めよう。
如何な力を使役しようと、私は畢竟、一辺境領主に過ぎない。
民会への参画を前に、この地の守護者の心残りと力とを預かる身にはなったが、
キツバ殿が領主として適任か否か判定を下すのは、これより行われる民会の出席者であり、
彼らの承認は、当人が示すべき領主としての格に依るものであって、
元来過客の私が口出しすべきところではない。
この地の民の総意が出たならば、私は守護者の代理人として全てを見届けた上、所領に戻る所存──
預かった『力』と『座』を受け取るべき者を見出すまでは、この地に留まらざるをえぬが」
如何に適任者を探し、力を継ぐかは、今この場で詮議する必要はあるまい。
それ以上に、今この立ち位置において、キツバ殿の出方が気がかりだった。
>>89-91 乙姫ルゴダはクラインの言よりも、顔や仕草を見ていたのでしょうか、聞き終わったのも気にせず、見守っていますが
やがて、しかし使い方も分かるまいに、我らが山にて宝器を得る方が今宵現れるとは、まこと運命は思いがけぬもの、
それにしても、この山の守護職にある者がこうまで増えるとは意外であったと、言い置き、若姫と若を置いて階下へと
去ります。
若姫はクラインとシャルルにそっと目礼をし、姉の失礼を詫びた上で、民会を司るのがこの山での最後の役目となりそうだ
と話します。そして、クラインからは何か民会で議すべき事があるかと尋ねてきます。
もちろん、修道会の者は修道会の会則でもって、参事会を開き、山の持ち分を守ろうとするでしょうし、羊の群れを
だしに策を巡らすことはありえるでしょうが、今、この時点で彼らにも我らにも竜はありませぬ。クライン殿の宝器が
竜に変じるのでないならば、ただ、民会で議を述べつくし、言葉を戦わせることで決することになるはず。
そう若姫は見通しを語ります。すると、脇から若が、そしてキリマを救うことも出来ましょうと、付け足します。
#鍵の現在の形態は了解しました。
>>92 場を辞す奥方を見送り、私は姫君を振り向いてかぶりを振った。
「何度も申し上げたが、そして何度でも申し上げるが、
これほど権益の込み入った場で、主張すべき多くの議事を控える諸氏を差し置き、
部外者が発言するのは越権行為にならぬと考えます。
各々の言い分を聞いた上で、あまり紛糾するようなら仲裁はするにしても、
まずは其々の出方を見ての話、ですな。
奥方が仰せられた通り、私自身はただ、使い様も知らぬ祭器を預かるのみの身、
ようやく場に居並ぶ正当な理由を持ち得たに過ぎぬのですから」
そこで言葉を切り、私は問いを発した。
「一つお伺いしたい。今ほど、竜はないと仰せられたが、
守護魔女殿の竜はさて置き、今現在この山にはキツバ殿の竜がいるはず。
兄君の竜である以上、それは姫君らの側にあると考えて間違いないのでは」
若君へ向き、更に一言付け加える。
「あやうく聞き逃しかけたが、若君、キリマの処遇について何かお伺いか──キツバ殿から。
民会で何れ、彼の審議についても議題に上がるものと踏んではいるが」
------------------------------------
いまだに一回もレスをコピペしていない…
避難所の代理の方々の勤勉さがありがたいやら申し訳ないやらw
>>91ラストの疑問の回答をお願いいたします。
>>93一部修正
×越権行為にならぬと
○越権行為に他ならぬと
>>93 若姫マルトは笑みの顔を作り、ことさらに快活な調子で、
殿、殿は家と血筋に拘るばかりで実情をみておらぬこの山の者共に目を曇らせられておいでです、と答えを返しはじめます。
我が姉は私をキツバ殿に娶わせるつもりで居られますが、私、本心を打ち明けますと、今宵ただいまから弟クリスタを供奉して
都へ上がろうかと思っております。
キツバ殿と離縁して妹を夫に嫁がせようという姉のことです、殿さえその気でしたらば、私を殿の嫁にすることも今は考えて
おるかもしれませんが、どうぞ猿芝居には付き合わず、身を全うなされるべきかと存じます。
ナウがこの山の下にて私たちを待っております。そうです、殿の手紙を御領地にお届けする役目をおおせつかった青年の
ことです。私は考えまして、どうせなら隣谷を統べる領主様にお目通りすべきかと思ったものですから、待たせておきました。
この谷の者が家や血筋にこだわるのは、都との距離が一層近くなり、家や血筋の意味が薄れているからに他なりませぬ。
そもそも、都から毎年のように羊が下ってきて、そして来年には若者として先達に連れられて上がっていくというのに
この谷だけの事情でいつまでも修道会やらを振り回すわけにも行きませんでしょう。身請けをし、人を型にはめて労働者と
して仕立てて、元来た都に送り返す場と化しているとあらば、すでにこの谷も山も宿坊の主たちの庭のようなものです。
姉やキツバ殿にはまた別のお考えがおありでしょうし、都の帝や修道会の方々にも思うところはございましょうけど
年老いて白髪となり、腰曲がり、ウマに乗れなくなるまで付き合っているわけにもいきません。
さて、キリマのことですが、殿のその宝器があれば、瞑想室から救えると思いますわ。ナウのほかに若い殿御が一人
増えたところで旅に差し支えはありませんし。若い学問のある男をわざわざ民会で晒し者にしてハグレ者に仕立て上げる
など愚かな行いです。
シャルルはこれを聞いて、思わず笑いをはじけさせ、しまいには腹を抱えて笑い出しています。周囲には留め立てする者も
おらず、クリスタとはいえば、クラインに顔を向けていますが視線はどこか遠くを泳がせて、あえて表情を覗きこもうとは
していません。
#91の質問
鍵を成長させると、記憶、義務、感情、或いは技などが欠落します。ただし、後に蘇ることはありえます。
1/2
シャルルの非礼は気に障ったが、今は視線を走らせたのみ、
咎め立てるのは後に回し、私は先ず、姫に問うた。
「妹君の御意向を介さぬ奥方のなさり様、さぞ気遣わしくお思いでしょうが、
私については心配御無用。
妻が身罷りし折、血縁を説き伏せ、生涯を独り身で通す騎士誓願を立てて、
いずれ弟にそれなりの子女を縁づけ後継を託す旨、既に一族の者も承知しております。
そのような些事より、お伺いしたいのは今の御申し出。
意に添わぬ婚姻を拒む乙女の潔癖は無理なき事なれど、
意義を申し立てるのではなく、民会前に姉君や義兄殿にも告げず出立なさるなら、
戦乱を前に、地領を出奔なされたキツバ殿と何ら変わりありませんな」
若姫の顔はわずかにこわばったのみ、されど見開かれた目に、
おのが言い草の棘を認めはしたが、私は下がりはしなかった。
「よんどころなき事情があるとはいえ、ひとたび時期領主に去られ、
こたびは親わしい代行者に去られる民には同情せざるを得ない。
老若卑賤を問わず、隔てなく接する姫君には内心、敬意を覚えておりましたが、
義兄君に全てを丸投げし出立なさるなら、
それだけの君主しか持てなかったのも、この地の民の運というもの。
余所者が口を差し挟む事でもありますまい。
お止めはいたしませぬ。ご随意に」
2/2
姫君の後背、身をこわばらせる若君がちらと目に映ったが、
言葉を留めることなく、ひといきに言い尽くす。
「キリマの件については、はっきりとお断り申し上げる。
彼の生命が今しも危険にあるなら考えもしよう。
しかし、審問を前に逃げ出せというのは、彼の風評を貶めるのみならず、
正義を曲げ、真犯人を増長させる事に他ならぬ。
無罪を明かすため審議の留保、或いは延長のため後ろ盾をとのお申し出なら
喜んで助勢申し上げるが、逃亡を助けよとお頼みはお断りいたす。
たとえ、私が宝器の使い方を知っていたとしても」
溜息を一つ、ぽつりと言い添える。
「ナウをお引き留めいただいた件には、御礼申し上げる。
これで、ロード宛の奏上文を撤回する手間が省けた。
この様では、私がこの地に逗留せねばならぬ期間は、更に長いものとなりそうだ」
──この地の不幸は、頼るべき上位者を欠く事にある。
若い貴人を残し、先代が亡くなられたのは悲しむべき事だ。
ふいに、どっと疲れを感じた。
------------------------------
レス読み返して気付いたけど、キリマとキツバをしょっちゅう呼び間違えてるなあ…
ところで、ちょっと自信がないんですが、守護魔女は消失したんでしょうか?
雀A「えーっと、殺人容疑がかかってるのが」
雀B「キリマ」
雀C「ドラゴンチェイスで一騎撃墜したのが」
雀D「キツバ」
雀E「斬魔さんに・・・騎翼さん?」
雀F「ちょっと苦しいね」
雀G「門と鍵くらい簡単なら良かったんだけどね」
>>98 目から鱗が落ちた
ありがとう、もう二度と間違えないよ!
>>96-97 後ろではシャルルがなおも笑い転げていましたが、やがて、クラインの前、若姫マルトと若クリスタとの間に割り込み、
クラインにまたも笑いだしそうな顔で話しかけます。
「殿、明らかに殿は正しいが、同時にとてつもなく間違っておられる。いやはや、我が伯父御にもまさる堅物ぶりですな。
思うに、殿がこの谷の領主となれば全ては丸く治まるのではないですか。民会を司る若者に縋られており、手には
この谷の宝を握り、隣谷の領主からは信任厚く、かつ、この世の縁は全て思いのまま処されてきた。その身の上で
ありながら、なぜこの谷を自ら統べて平和に導こうとしないのか、まこと不思議、奇怪としか言いようがありませんな。
勿論、殿は筋を通したい。それは分かるが、しかし、眼の前の若者は果たして修道院やら竜騎士やら臆面もなく
高慢ちきな姉、これは失礼、に敵いましょうか? もちろん、無理なのは分かっておられよう。それなのに、駆け落ちを
阻み、あえて餓えた狼の前に身を差し出させ、はてにはそれを中立の立場から見守ると仰せられている。
まこと、騎士道とは面妖にして不自由極まるものですな」
「ところで、若姫よ。かりにこの私、典獄の一族にして、多くの貴人の血を存分に舐めさせてきたこの剣二振りで
クライン殿に挑戦し、宝器を掌中にしたとすれば、そなたは私に、その用い方を指南できるであろうか?」
「あくまで仮の話ですぞ、勘違いなされるな。辺境の騎士とはいえ、老練な剣にかかって命をむざむざ捨てるわけ
には行きませんからな。しかし、仮にそのようなことが生じた場合、どうなされるか、今からよく思案されておくことを
お奨めする」
そうシャルルは言い切り、また、ひとしきり笑います。
#海辺の良き魔女の体は消失しました。
>100
非礼極まりない言い草だが、少しも腹は立たなかった。
懐かしい声を思い出す。
『──この堅物め!』
今この場に彼が居れば、間違いなく同じ言葉で私を面罵しただろう。
何と久しい事か、この言われようは──そう、あれから十年余も経つのだ。
シャルルと目が合う。挑発的に私を見返す目に、自然と笑みがこぼれた。
若人の傲然とした表情が一転、怪訝なものとなる。
あの頃の私は、彼よりもまだ若かった。
激昂した私に代わり、切り返したのは──あの時、我が父は何と言った?
「──口が過ぎるぞ、若僧」
言葉とは裏腹に、噛み殺しきれぬ笑いがこぼれる。
シャルルの表情に、困惑の色がにじんだ。
あの頃の父は、今の私よりやや年嵩だった。
そしてこの姫は、──そう、この若姫は、あの頃の妻よりなお若いのだ。
「姫、──都に誰か、頼るべき縁者はお持ちか」
私を見る、困惑と不安に満ちた目が、若鹿のような印象を与える。
「父君に代わり一言、意見させていただく。
この地で形勢が悪いゆえ都へ、というお考えなら、やめておかれるがよい。
寄る辺のない若い貴人にとっては、都会は辺境よりなお厳しい土地。
ことに、宮廷の雲雀は口さがないもの──聖域育ちの乙女にはお勧めできぬ」
軽く身を屈め、しかと目を合わす。
私の長身もあろうが、ほっそりした小柄な姿は、弟君とさほど変わらぬように見受けられた。
「脅かそうというのではない。幾許か政を知る者として一言、助言申し上げたい」
シャルルに感謝すべきだろう。──確かに言葉が過ぎた。
頼るべき後見すら持たぬ、この年若い姫に。
「騎士と戦士の違いが何であるかを御存知か?
我が君主は、騎士を任ぜられるにあたり、こう祝詞を与えられる。
──いかな逆境にあろうと、人を愛し国を愛し、
強きに向かい弱きを守る事こそ、栄えある騎士の誉れなりと。
まことの騎士は、救いを求める乙女に、決して対価を要求せぬもの。
それが、報酬を得て戦う戦士と騎士を分けるものです」
我が弟を教え導く時のように、しかと目を合わせ、私は語り聞かせた。
「矜持ある騎士は、正当な領主位を預かる乙女の、筋の通った依頼を決して退けぬ。
もしお望みなら、貞節を守り賢く身を処すための盾として、私に加護を依頼されよ。
徒に責を逃れるためでなく、論を通し身を守るためなら、
持てる力と預かる力をもって、成し得る限り、力をお貸しいたそう。
もし、私を信頼しうる騎士だとお思いなら」
片目を閉じ──あまり行儀のよい行いではないが──一言付け加えた。
「ただし、駆け落ちの件は留保させていただく。
こればかりは、目の前の民会を正当にやり過ごした後に願いたい」
----------------------------------
>魔女消失
了解しました。
騎士叙勲の祝詞は、今手元にありませんが和田慎二のSFドンキホーテから。
ぐぐったけど出てこなかった。元はもっと名文句だったんだけどなあ…
>>101-102 若姫マルトは、都へ着いたらば家名など捨ててつつましく生きようと思っておりましたと答え、それをとりなす
ように背後から若クリスタがマルトの前へと進み出て、
「クライン殿、姉マルトに代わりお願いする。我ら両名の盾となり、姉が民会を司るのを助けていただきたい」
と言い切り、頭を下げます。
シャルルは、困惑の表情を浮かべたままで脇に退きこのなりゆきを見ていましたが、
「瞑想室のキリマを取引に使い、宿坊の主らを取り込まねば到底、民会を乗り切るなどできないのでは
ないかと思うが?」と誰へともなく問いかけ、続いて、これは伯父貴を担いででも民会に出さねば
あとあと繰言をくらうだろうなと言い訳がましくひとりごち、大様に若姫と若に手を振って退出しようとして
振り返り、ところで、その青年ナウはどう連絡する手はずになっているのだ? と若姫に尋ねます。
若姫は、山の下の旧道の上にある腰帯窪みで待機しているはずだと答え、今は一人でも民会で
味方となってくれる者が必要です、とだけ返答します。
>103
「シャルル殿、病床の典獄殿を引き出すには及ばぬ」
行きかかる彼を呼びとめ、姫と若君へと向き直って、私は語りかけた。
「クリスタ殿が、姉君に組する意志を示された以上、話はずっと早い。
要は、姫君が望まぬ縁組を受けずに済めば良い。
現状のところ、キツバ殿が領主として支持を受けるや否やは
縁組抜きには五分五分と見る。そこで」
私より頭一つは低いクリスタ殿に目線を合わせ、その肩を軽く叩く。
「姫の預かる領主位を処するに当たり、キツバ殿へではなく、
クリスタ殿への譲渡を希望する旨を表明していただきたい。
無論、当面は後見が必要となるが、これは私からロードへ奏上する。
後見人たるロードから若君の補佐騎士として派遣される形であれば、
私の差し出がましい振る舞いも、どうにか格好はつく」
本来なら越権行為も甚だしい行為だが、
聖域と俗世の境界が曖昧極まりないこの地でならぎりぎり許される線だろう。
事後承諾の形になるが、近隣領主騎士の手前、筋を通すにはこれ以外ない。
我が君主には御理解いただけるという確信があった。
「私が後見をつとめるとすれば、形ばかりだが領主位は姫君から若君へ移るのみ、
現状の維持を望む都の要望も立てられる。
この場ではカージャール殿の承認を得られるのみだが、
都の後押しが得られるとあらば、クリスタ殿の擁立に流れる者は少なくなかろう。
キツバ殿の就任を良しとせぬ者、近隣領主の顔色を伺う者のみならず、
こう言っては何だが、私がこの地に留まる事を良しとする者もまとめて抱きこめる」
要は、若君が成人するまでの時間稼ぎではあるが、
このままなしくずしに縁談が進められるよりは余程ましだろう。
姫君と通う印象のある若鹿の目が、まっすぐ私を射る。
「決意いただけまいか。姉君ともども、必ずやお護りすると約束しよう」
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クリスタの年齢はミドルティーンぐらいと踏んでいますが、
実際、何歳ぐらいなんでしょうね?
領主位まわりのメンバーの、おおよその年齢を教えていただけると助かります。
尚、土日と旅行のため、不在にします。
次のレスは月曜以降になります。ご了承下さい。
>>104 クリスタはクラインを見つめ返し、しっかりとうなづき、背後ではマルトがその肩に手を置こうとして、ためらって
引っ込めます。
シャルルはいずれにせよ、伯父貴に報告せねばなるまいと言い置き、戸口の外へと飛び出します。
入れ替わりに竜騎士キツバと乙姫ルゴダが入ってきます。
キツバはクラインの手にする大きな鍵を眼にし、その内から放たれる青い光を認め、クラインをにらみつけます。
ルゴダはその背後で、マルトとクリスタを同じく睨みつけ、一言も発しません。
やがて、キツバは佩剣の柄に手を置き、クラインとの間合いを慎重に測り、戸口から左へと横へ歩を進めます。
#各人物の年齢についてです。
竜騎士キツバと乙姫ルゴダが30代前半、若姫マルトが20代前半、若クリスタが10代半ば
瞑想室に閉居する修道士にして宿坊キリマのキリマ、青年ナウは20代前半
修道士にして副院長モンは40代半ば、都から下ってきた修道士にして院長となるべきフィンリはモンより年嵩で40代後半
師父ヌガと乙女の塔付きの老爺が50代 です。
ただいま戻りました。
ついでに初めて自分でレス取ってこれた。
風邪っぽいのでレスは明日。
>>105 「早や民会の刻限となったか。貴殿自らお呼びに上がるまではなかったが」
竜騎手の目に剣呑な色を見て、軽口に紛らわせながらも油断なく目をくばる。
それとなく姫と若君を背後へ庇いながらも、
武具を外してきた己の迂闊さに私は内心歯噛みした。
よもや民会を前に、彼がここまで短慮に振舞おうとは思わなかった故だが…
帯びた武器は短刀のみ。
せめて姫君らを退避させたいが、頼みのシャルル殿もこの場にはいない。
「かような場で武器を抜けば、貴殿の義弟妹たる子女もただでは済まぬ。
せめて室外へ出られよ」
呼びかけに応じる意思があるのかどうか、更に歩みを詰める相手に、
せめて盾代わりにと宝具を斜めに構え、私は一歩退いた。
約したのだ。若君と、そして守護魔女と。
護らねばならぬ。この命に代えようとも。
--------------------------
相手が斬り込んで来るようなら、宝具の刃部で止めるか、
無理なら盾部で受け流そうとすると思います。
それはそうと、来月2日〜11日、入院のため不在にする事になりました。
その間、ネット環境には全く触れません。申し訳ありません。
予定が押す分、1月に食い込むならやむなし、
バトルシーンでクラインのアクション決めて展開巻くのも可、です。
>>107 私信のみ取り急ぎ
入院されるとのこと了解しました。できるだけ11月中に終わらせたいと思っています。
どうぞお体お大事に。
>>107 「そなたの素っ首に用はない。その得物を置いて行かれるがよろしかろう」。竜騎士キツバはこう言い放ち、
一歩踏み出し、クラインの大鍵の間合いへと踏み込みます。
室内に居合わせた一同は、固唾を呑んでキツバとクラインの二人を見守り、少しも動こうとしません。
クラインは衝立と湯舟を左横背にし、正面右手にキツバを見、大鍵を構え、肩幅に足を揃え、そして
片足を引き、こころもち腰を落とします。
キツバはこれをみて、剣を左横に隠すように右半身を乗り出し、上体を前傾させ、軽く右足をもう一歩踏み出して
拍子をとるようにつま先で床を鳴らします。
室内をおぼろげに照らす蝋燭が揺れた瞬間、キツバは左足を大きく前に出し、右半身から入れ替わるように左半身を
前にした姿勢とし、左手で鞘から走り抜きながら、抜き終わらぬままクラインへと斬りかかります。
クラインは両手を軸に大鍵を回転させ、キツバの柄の打撃、そして、鞘ごとの当身を弾き飛ばして勢いを逸らし、そのまま
左足つま先を軸に右足を横に出して斜めに受け流しつつ、両手を返してキツバの後頭部を伺う一撃を浴びせます。
#展開はこのままクライン対キツバで、クラインの勝利で行きたいです。交互に3レス程度で終わらせるのが良いでしょうか。
>>109 竜騎士はすんでのところで身を反し、剣の半ばで私の渾身の一撃で止めた。
「…恥を知れ。竜騎士たる者が、盗賊のごとき言葉を吐くとは」
返事はない。力は互角か、踏み込みだけなら私が有利だったが、
如何せん、代用品の武具が心もとない。
鍔迫り合いを長引かせるのは不穏当と見て、斜めに剣を流し、再び間合いを取った。
部屋は暖かいが、血が熱く滾り、衣服の下で肌が熱を吹く。
如何な材質より成るものか、宝具には傷ひとつない。
「逃げる機会を与えてやったものを」
「逃げはせぬ、この場で命を落とそうとも。
騎士の誇りと守護者の銘にかけて」
咆哮と共に踏み込み、再びの斬激を真っ向より受ける。
室内に響いたのは、鈍い剣戟ではなく、高く澄んだ器楽音だった。
薄い瑠璃の器同士を、そっと打ち合わせたかのような──
剣を受けたのは、左手の角盾。右手には──
考えるより先に、体が動いた。
振り下ろす戦斧の一撃を、竜騎手は身をひねって紙一重でかわし、
充分な体勢でなかった私にひと蹴りをくれて距離を置く。
蹴上げられた脚に、痛みはかほどもなかった。
燐光が、ほの蒼く室内を満たしていた。
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規制解除かな?おめでとうございます。
11月中に完結へ持ち込むのが可能なら、何より助かります。
戦闘は交互2レスでも結構です。キリのいいところで終わらせて下さい。
エルフェンバインの能力ですが、ぐだぐだ迷っている日数もないので
SWの神聖魔法「ディバイン・アーマー/ディバイン・ウエポン」相当品にしました。
武器(任意)と盾、防具に変化。武器防具を既に装備している場合は発動不可。
今回は守護者としての覚悟で発動、騎士盾と戦斧、プレートアーマー。
>>110 クラインの手に持つ戦斧と、一瞬にして身にまとった鎧、その内側から放たれる燐光は
キツバを青く染めるように照らし出し、燭台の明かりが揺らぐにつれて、影も揺らぎます。
無言でクラインの左側へと回りこみつつ、鞘を右手に剣を左手に持ち換え、また、左手と
右手の得物を持ち替えては、相手の動きの重さ、腕の振りの範囲と重みを見極めようとしています。
一方、クラインはこの鎧の重さも息苦しさも不思議と感じていません。腕も肘も関節は自在に
動き、さらには手首さえまるで生身の体のままかのように動くかのようです。さぞや精妙な
作りになっているのかと視線を下ろして隅々まで見て取る暇もなく、ただ、ひたすらに軽く
まるで竜の鱗をまとっているかのように感じます。
そういえば身のうちにみなぎる熱気も、それを心地よく発散してくれる鎧も、まるで自分が
竜となって大空を飛んでいるかのような錯覚を与えてくれます。
左背へ回り込もうとするキツバの動きに楽々と応じながら、室内全体に気を配る余裕があるほどです。
若クリスタは若姫マルトを背に隅へと逃れ、別の隅には侍女たちが固まり、戸口脇には乙姫ルゴダが
険しい顔をし、こちらをみています。
そのとき、窓から夜風が吹き込み蝋燭が心もとなげに揺れ、このときをとらえたキツバが
鞘でクラインの右足膝裏を、剣で左手の盾裏、盾の柄を握る手首を狙って打撃してきます。
クラインは一歩下がりつつ、盾を下ろして鞘の一撃を下へと逸らし、戦斧の柄で剣の切っ先を弾いて
交わします。
これで、キツバとクラインの位置は逆転し、キツバは衝立と湯舟を背にし、クラインは戸口と乙姫ルゴダを
背に室内を見渡す形となります。正面は窓で、窓覆いの布がさきほどからかすかに揺れては
外の広場の空気を運んできています。
#おかげさまで規制解除されました。11月中に確実に終わると思います。
>>111 この条件下、立会いを長引かせる気はさらさらなかった。
視界が闇に沈むおそれがないとはいえ、子女らのいる狭い室内、
何より、守護魔女の弔いも済まぬ場を荒らしたくはない。
若い貴人らの前で、身内を殺めたくはない。次の一撃で決める。
──守護者よ、我にこの場を汚させたもうな。戦乙女よ、我に勝機を。
心中、短く祈りを捧げ、とぎすませた神経を戦斧の切っ先に集中させて、
渾身の踏み込み、私は斬り込んだ。
盾様に構えられた鞘もろとも、剣の付け根を狙い横薙ぎにする。
相手の手中、堅固な鞘が、耳障りな音をたて砕けた。
軽さに比し、驚くほど強固な戦斧は、そのまましたたかに剣を叩く。
甲高い音が響いた。
-------------------
>規制解除
何よりでした。
きりきり終われるよう、せめて1日1レスを心がけます。
>>112 剣が根元から折れた瞬間、キツバは柄をクラインの顔目掛けて投げつけるや、身を翻して衝立を蹴倒し、
湯舟を片手で飛び越え、そのまま窓へと駆け寄るなり外へと身を躍らせます。あわてて一同が窓に駆け寄ろうとすると、
外からは、何物かが吠えたける声がし、続いて、風がどっと室内まで押し寄せ、大きな白い影が窓の外を過ぎ去ります。
かくて、竜騎士キツバは二度目の出奔を遂げることとなり、行方をくらましたのです。
一方、室内では乙姫ルゴダが冷静に侍女を指図し、散らかった室内の調度を整え、片付けさせ、まるでクラインのことなど
眼に入らぬといったふうです。
若姫マルト、若クリスタはクラインを気遣うように近づき、傍に立っています。
外の広場では竜が飛び去ったのを気づき、人々が一層声高に遠慮なく言い交わすのが聞こえます。
かくて、民会はなにごともなくつつがなく終わり、
クリスタが谷の領主の第一人者となること、修道院の院長がモンからフィンリに代わりモンは
赦免されたキリマを連れて都へ登ること、そして騎士クラインがクリスタの後見として守護職につくことが決まり
ルゴダは谷の館へと戻り、若姫マルトは乙女の塔でさらにしばらく過ごすこととなります。
そして、海辺の良き魔女はその遺品が宝物館に仕舞われ、師父の手で院の記録に名を残すこととなります。
やがて、竜騎士団の仲間がこの地を訪ねることもあるやもしれません。
かくて、修道院、谷の領主たち、豪農と宿坊、都の貴公子らに帝に仕える者どもが入り混じりなすこの話も
終わりを告げることとなります。
エピローグ(クライン)
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白日が、中天にかかろうとしている。
「ここでしたか、守護竜殿」
聞き覚えた声に振り向いて、ゆるゆると塔の石段を登ってくる老ヌガを目に留め、私は苦笑した。
「その呼び名は勘弁願いたい。どうにもむずがゆい」
「正午にご到着なさるのでしたかな、弟君は」
「そう思って待っているところだが」
塔から見下ろす街道をかえりみつつ、私は答える。
「気ままなたちだ、多少時間の前後はあるだろう。
領主位を預ける身としては、もう少し時期領主の自覚と落ち着きを持ってもらいたいが」
「しかし、良く努めておられるとか」
「然り、よくやってくれている。
突然永の領主代理を預かり、留守居を命じられたものを、不平も言わず、真面目に務めているようだ」
叔父や義父からの親書にも、その様は詳しい。
我が領に変わりはないだろうか。その仔細も、当人が到着すれば詳らかに尋ね聞けるだろうが──
「──ヌガ師父」
塔を渡る風が、襟をなぶる。私を見る師父に目をやるでもなく、私はぽつりと呟いた。
「今この時のみ、私の聴罪僧代わりとなっていただけまいか」
「仰せとあらば」
天を仰ぐ。
碧空に、ほの白い昼月が浮かんでいる。
陽光の眩しさに目を細める。
「──我が妻は病にみまかったが、実際には殺されたに等しい。──少なくとも、私はそう考えてきた」
遙か天空を、大鷹がゆっくりと横切ってゆく。
「とある知己が、大きな醜聞に巻き込まれた事がある。私はそれを知らなかった。
否、小耳にはしたが、何かの間違いと思っていた。
──妻と共に彼を訪問した折、醜聞を信じた与太者が、
天誅と称して彼の姉を城砦から突き落とした。──妻の目の前で」
悲鳴に駆けつけて、床に崩おれた妻を目にした時の、心の臓を握りつぶされたような衝撃。
気を失った妻を抱き起こし、塔の石段の下に、朱に染まる乙女を見た時の驚愕。
──一生涯、忘れはすまい。
「眼前で友人を殺された衝撃は、元より体の弱い妻には大きすぎた。
以来床がちになり、数年後、流行り風邪をこじらせて、妻はこの世を去った」
今なお、ずしりと重く、胸にのし掛かるこの哀切な思い。
「妻の死は病ゆえだが、事件さえなければいま少し長らえたはず──醜聞の真相を暴き、正義をただし、
無責任な噂を広めて、罪なき乙女らを死においやった噂雀どもをを告発できるならばそうしたかった。
──だが、そうはできなかった」
重く、溜息がこぼれる。
「心が折れ、床につき、長く起きあがる事もままならかった妻の枕元を、私は離れられなかった。
旗色は彼に悪く、風聞の害は、彼にくみする者すべてに及ぶさま。
実姉を殺された一件は、旗向きを変える最後の好機だった。しかし、肝心の私は証言台に立つ事ができなかった。
面白おかしく脚色された噂を真に受けて、軽率にも殺人を犯す者すらいる実情を突きつけられ、
病床の我が妻と、案ずる私とに累が及ぶ事をおもんばかって、彼は汚名を受けたまま姿を消した。
姉妹を殺された悔しさより、生きている妻を案じてくれたのだ。
釈明せぬのは醜聞が事実だからだろうと、更なる追い打ちが彼を見舞ったが、そうと知らぬ私は、彼を恨みさえした。
彼があのような醜聞に巻き込まれさえしなければ、と。
──何と、私も噂雀どもと同じではないか。
事の本質を見失い、噂の矢面に立たされたに過ぎぬ彼を責めたのだから。
結局、最後まで彼を信じ抜いたのは、今は所在の知れぬ我が親友、フェルマーただひとりであった。
フェルマーの薦めで彼は辺境の修道院に身を隠し、後には人知れず出家してしまった」
二頭のトリウマが、急勾配を矢のように駆け下ってゆく。
似た風景を、以前にも見たのをふと思い出した。
「妻が死んだ後は、悔恨ばかりが残った。
武勇に秀でようと、最愛の女性一人護れず、友を信じられずして何が騎士か?
彼のように俗世を捨てたくとも、後を託すべき弟はあの頃まだ幼く──今のクリスタ殿ぐらいだったか──
家長の責務を全うせよと、一族は総力を挙げて私の説得に当たった。
それならばと、せめて終身を独り身で通す請願を立て、私は、世俗騎士のまま俗世に背を向けた。
だが、世間から遠ざかり、職務に打ち込もうとも、愛する半身を欠いた悲しみは去る事がない。
亡き妻に固執し、後継を残す義務を捨てた頑固者よと後ろ指をさされれば、
それは違うと叫びだしたいほどの痛苦が胸を貫いた。
罪なき者を死に至らしめた運命を思い、主の幕屋からも足が遠のいた。
何故妻は、彼の妹は死ななければならなかったのか、その答えを求め、ここまで生きてきた」
「して、答えは得られたか」
塔の幟が、風にひるがえる。
「この地を訪ね、勝手を知らぬ場で振り回されることに、はじめは腹を立てもした。
だが、其々に事情を持ち、思うように動かせぬ一人一人と向き合ううち、
所領において、自分がどれだけ人の気遣いに護られていたかに思い当たった。
何が私をこの地に導いたのかはわからない。
だが少なくとも、騎士としての契約に従い、宝具を手に竜騎手と向き合った刹那、私は妻の事を忘れていた」
昼餉の支度だろう。宿坊の方から、立ち上る幾筋もの煙が目にうつる。
「求める答えには、いまだたどり着かぬ。
だが、妻の死を無為にするかどうかは私次第だと、ようやく思えるようになった。
守護職をまっとうし、宝具をおさめてこの地を去る日が来たら、改めて己に問おうと思う。
罪無き者の死を糧にしたと言えるだけ、自分は成長したか。
無辜の民が泣く事なきよう、惜しみなく力を尽くしているかと。──今はそれでいい」
「──貴殿に主の加護を」
塔の風見が、音もなくくるくると回る。風が変わったようだ。
「弟君がご到着なさったようですな」
街道の外れに、見覚えある白黒斑の馬が見える。
塔の上の私に気づいたわけでもなろうが、坂道を駆けあがってくるその姿をみとめ、私は師父へと向いた。
「どうやらそのようだ。降りて出迎えるとしよう。あのやんちゃ者を」
門塔の下、馬上に手を振る弟の姿が見える。
鐘楼の鐘が、正午を告げた。
>>113 エンディングお疲れ様です。
終盤、私情で随分展開を巻かせてしまい、申し訳ありません。
一年間、どうもありがとうございました。
クライン側からのエピローグは、これで全部です。
よろしければ、スレの残りで展開を急いで畳んだはずみではしょられた
各キャラのエピローグ等、聞かせていただければ嬉しく思います。
色々勿体無い気がしますので。
>>118 こちらこそ、後半端折ってしまいすみませぬ。民会をやるとまた色々長くなり12月に間に合いそうになかったのです。
今回一番大きかったのはまだまだ登場人物の行動選択肢の引き出しが足りませんでした。
騎士を動かすのに適したNPCを準備し、依頼する、庇護を願う、挑発・挑戦する、逃げ込む、陥れる、
叙任・任命するなど色々ありえたものを、修正するのに随分時間がかかりました。
各キャラについては大まかにこうなるだろうということまでは考えてありますので、おいおい
主な人物だけでも頑張ろうと思います。
本当に1年もの間、ありがとうございました。
120 :
名無しになりきれ:2009/11/24(火) 14:34:23 0
こっそりEND
取り急ぎ粗筋のみ
祭司モン
本部では、山出しのモンと呼ばれる。フィンリの弟弟子。帝が院内各宿坊の閉鎖と
会各学院の講授停止による学生と教授の解放と兵力提供を命じたとき抵抗し
謹慎処分を受け山の瞑想室に送り込まれるも、突然の崩御で沙汰止みとなる。
師父ヌガ
今回の騒動後も西の村を拠点とする竜騎士キツバと交誼を保つ。乙姫ルゴダを支え
それぞれの宿坊にも弟子を抱え、フィンリを陰から支え、あるいは牽制する。
典獄カージャール
翌年春、甥シャルルとともに山を去り都へ復命。帝に竜殺しの秘薬を献上し、褒賞を得る。
その後は平凡な官吏として過ごしつつ甥に尋問、拷問と史料渉猟の技を伝える。
典獄の甥シャルル
伯父御のいさめにも関わらず出奔し、竜騎士団に加盟。始原の泥海で竜を作ろうと半生を
費やす。竜を屠るための技を磨き、ついには竜を食うという怪鳥の伝説を尋ねて山を越えて
異国へと向かう。
若姫マルトと青年ナウ
大河を下り、異国の地で根付く。トリウマを二頭連れて行き、子孫に伝える。
宿坊の主カーギ
谷の村々の水利争いが激しくなり、夜の水番を自らしていて神隠しに遭う。死体はついにあがらず。
人間贅沢なもので、ここまで来ると
メインストーリー裏で動いていたあれこれも知りたくなるなあ
クライン視点で話が進んでいると
クラインが見ていない部分、目をやらない部分は描写されずじまいになるもんね
違ったタイプのPCならまた違った部分が描写されたんだろうけども
>>122 典獄カージャールと祭司モンが、辺境騎士クラインが山にくるまでしていたことや
祭司モンとクラインなじみの修道院の老院長のやりとりなどがそこらは難しいです。
裏で何かが動いているのは、たとえばクラインが山の上でゴーレムと出くわす直前に
でてきたフクロウ(金の足環)、あるいはその直前にすれ違った祭司モン、若姫マルト、若クリスタ
が夜で歩いるあたりなどで表現はできたのですが、これも説明がないままでした。
前の院長を誰が殺害したのかも結局は決着がつかないまま終わっていますし、
あちこちと抜けている部分があります。
#以下にて新たにシナリオを始めようとしております。ご笑覧いただけると幸いです。
アフガンにて
http://changi.2ch.net/test/read.cgi/charaneta2/1259121725/
>>123 新スレおめでとうございます
入院する都合参加はできませんが、頑張って下さい
気になった部分の種明かしだけでも知りたい…
ピックアップして質問してもいいでしょうか?
特に気になっているのは、
・明け方の夢の複線はどこで消化される予定だったのか
・道化はひょっとして名持ちのNPCだったんじゃ
あたりなんですが。
>>124 二回見た夢のそれぞれは起こりえるイベントを表していました。
山のあちこちを廻ったり、あるいは水関係の話を丁寧に追った場合に似た場面が
でてきたり、夢の中の登場人物が出てくる可能性があります。
また、最後の晩に寝た場合は続きを見て修正を加える可能性がありました。
川の中州から山まで案内した道化は宿坊の主の息子の一人とまでは決めていました。
名前はどうしても必要になった時点で決めます。どちらかというと考えている最中は
道化、典獄、その甥、祭司、若姫といった役どころのほうが重要でした。
#入院 どうぞお大事に。検査でしょうか。無事に済むことを願っています。
>>125 なるほどなるほど
ネタ明かしありがとうございました
入院は手術です、多分生還するとは思いますが
良性ですが腫瘍で内臓取るので必ず戻るとは断言できません
こちらのデータ整理等は気が向いたらで結構ですから、
新スレの方を優先して下さい
●持ちですから、スレは落ちてもレス見られます
スレが落ちる前に間に合えばもーけ、ぐらいに思っておきます
落ちた場合、これがお別れのレスになることと思います
改めて、一年間おつきあいありがとうございました
御縁がありましたらまたお会いしましょう
>>127 長い間に色々と設定を変えたり、展開と落としどころを変えたりとしているので
後半はかなり大変でした。
データ整理では祭司モンが大変重要な位置になると思います。これと絡む修道会本部から
来た僧たちの動きが色々と大人しすぎたかと反省しています。
また、竜が二頭で争っているとき、山の上でも別な争いを平行して起こすべきでした。
実際にはゴーレムが無抵抗に近い形で倒れるのみで、ここも工夫が足りませんでした。
山にキツバの手の者が先遣で入り込んでいるなり、なんなりやりようがあったはず。
#
手術がご無事に済むよう祈っています。大掛かりな手術のようで心配になりました。
けれでも、お医者さんや看護婦さんに病院の腕を信頼し、予後も順調に過ごされることを願うばかりです。
雀A「クラインの中の人が早く帰ってこられますように」
雀B「もしもその後、自宅療養中ヒマでしょうがなかったらアフ」
雀C「こらっ!無理させちゃダメっ!」
御心配おかけしましたが無事復帰しました。
SWのリザレクション後、一週間安静というデータは
微妙にリアルだなーと感心しております。
週明けから、退院早々仕事に復帰(デスクワークのみですが)なので
ネットに振り向ける気力体力は残らないと思いますが
余力があれば見学に伺いたいと思います。
色々ありがとうございます。
>>130 無事の退院、おめでとうございます。
そういえばガープスでも消毒関係で何か呪文があったと思います。
どうぞお体を大切にお過ごし下さいませ。
132 :
名無しになりきれ:2010/01/23(土) 08:15:59 0
ユックリエンドロール
TRPGて何だ
振り返らないことさ
終わった擦れに書き込んだら保守されるだろやめろ