>エメラルン「アーシィ。この子、何者かわかるか?」
(同じく、小声で)
血の気配がさ、どうも覚えがあるんだよねぇ。昔、鳥の氏族の長まで使いに出されたことがあったんだけど…その時かな。
まだガキみたいだから力の制御は甘いだろーけど、多分結構な上位だよ。
ま、今のところ敵意はないっぽいよ? しかも迷子。世話役の女とはぐれたんだって。
(ね? と、くしゃりと頭を撫でる。最初は“箱”の話が気になり構っていただけなのだが、最終的には遠足のような有様になっていた。)
姫さん、感覚鋭いね。あの時も、気配だけでアタシが何者か見破ったよな?(前スレ28)
(もう随分と昔の話のようだ。くすくすと、どこか不透明な笑みを浮かべながら)
わかるだけに“異質”だろーさ。でもさ、蓋を開けちゃえば、意外と人間と変わんないよ? いろいろ無茶な力を持ってはいるけど。
正真正銘の馬鹿野郎もいれば、条件次第で話しが通じる奴もいる(春日を思いだしていた)。
力を望んで支配欲に呑まれて、無駄に殺し回る奴もいれば…死にたくないだけの奴もいる。(前スレ708)
リコは反論するだろーけど…姫さんの言う、ルルカがどうこうってのは、正直、あり得ない話じゃないと思うよ? こんなタイミングで現れたコイツの存在も、偶然だとは言い切れないし。
だからさ。もしまた魔族相手に立ち回ることになっても、今のこと忘れないでよ。
(言ってから、何を言い訳じみたことを、と自嘲する。
結局のところ人間を憎む魔族は多く、全体として悪意ある殺戮者であることは間違いないのだから。
それでも口に出してしまったのは――魔の力を感じた姫が“邪悪”と口にしたのが、少し寂しかったのかもしれない。)
そうそう。
(自分と、そしてまた心なしか落ち込んだ顔をしている姫の気分を切り替えるように)
コイツ、“箱”を探してるんだってよ?
アタシが知ってる限り、“箱”系の伝承は3つかな。
一つ目はパンドラ、通称“至宝”。…これはよく覚えてないな。
二つ目はアセトアルでびどでひ――なんだっけ。い、いーや、通称“浄化の聖櫃”。…うん、実はさっきのお清め。
三つ目は「幻惑の檻」。この檻に囚われた人間は、「甘い夢」を見せられる。
一度“夢”に屈服しちゃえば、その夢をもう一度見たいからって、その精神は“檻”の所有者の思うまま。心の闇につけいるクスリみたいなもんだよ。
人間の大魔術師に見つかって、キツーく封印されたって聞いたんだけどさ…やっぱあるとしたらココだよなあ?
…あ。一個忘れてた――“吸魔の棺”。
まあ、名前のまんまだよ。発動したら辺りの魔力を徹底的に奪って箱の所有者のモノにする。
魔力に依存しないと生きられないアタシたち魔族には、死ぬほど厄介なブツではあるけど…ま、これは大丈夫っしょ。
もう600年は行方知れずらしいし。効果の範囲は所有者の力に比例するけど、並みの奴じゃ制御どころか発動させるのもムリ。
それこそ白の魔王くらいの力でもありゃ、軽く世界を危機にするくらいの出力は出るだろうけどねー…
さすがに全世界の魔力を一辺に吸収されたら、大魔王誕生&自然のバランス崩れて大変なことになるだろうし、ね?
…ま、そんなとこだから? 警戒しすぎるくらいでちょうどいいんじゃん? 頼みのリコも今はああだし。マイナス思考は姫さんに任せたわ〜
(そんな、励ましともつかないフォロー述べている間にも、一同は控えの間へ…)