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無防備な親友の姿に江利子は
一度感情を、殺した。
二人だけで居る時に零れ出る、本当の感情を。
背中を抱きしめたい、手を握りたい、
顔を近づけ愛の言葉を囁いて、唇を重ねたい。
でも、それは。親友という二人の関係を壊してしまう、罪な感情。
でも、一度なら。そっと背中を手で撫で、指先で蓉子の身体を確かめる。
背中から首へ。首から髪の毛へ。髪を掻き分け、耳を撫でる。
そしてそっと頬に口付けしようとすると…
「ん、ん…せ、い」
蓉子の口から出たもう一人の親友の名前に、江利子はそっと身を引いた。
じゃあ、今日はこのへんで。ごきげんよう。