【邪気眼】二つ名を持つ異能者になって戦うスレ7

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1名無しになりきれ
*「ここは 邪気眼 のスレです」
*「sage や 酉 は入力しなければ意味がないぞ」
*「荒らしを構った後には 荒らし扱いになるよ」
*「おお名無しよ 版権キャラを使ってしまうとはなさけない」

*過去スレ
【邪気眼】二つ名を持つ異能者になって戦うスレ
ttp://etc7.2ch.net/test/read.cgi/charaneta2/1203406193/
【邪気眼】二つ名を持つ異能者になって戦うスレ2
ttp://etc7.2ch.net/test/read.cgi/charaneta2/1209655636/
【邪気眼】二つ名を持つ異能者になって戦うスレ3
ttp://etc7.2ch.net/test/read.cgi/charaneta2/1211555048/
【邪気眼】二つ名を持つ異能者になって戦うスレ4
ttp://etc7.2ch.net/test/read.cgi/charaneta2/1213536727/
【邪気眼】二つ名を持つ異能者になって戦うスレ5
ttp://changi.2ch.net/test/read.cgi/charaneta2/1218369923/
邪気眼】二つ名を持つ異能者になって戦うスレ6 
ttp://changi.2ch.net/test/read.cgi/charaneta2/1225711769/

*避難所
二つ名を持つ異能者になって戦うスレ避難所3
P C:ttp://jbbs.livedoor.jp/bbs/read.cgi/computer/20066/1221605457/
携帯:ttp://jbbs.livedoor.jp/bbs/i.cgi/computer/20066/1221605457/

*まとめサイト
二つ名を持つ異能者になって戦うスレ@wiki
ttp://www9.atwiki.jp/hutatuna/

*これまでのあらすじ
『闘って奪い獲れ。生き残るためには勝ち残れ』。
舞台はどこにでもある地方都市、貳名市。
この街には「二つ名」を持ち、それに由来する異能力を有する『異能者』たちが存在した。
一通のメールは、異能者たちを否応なく闘いに駆り立てる。

「機関」に囚われた煌神・桐北・そして国崎。
金剛の野望が目前に迫る時、ついに動き出したレジスタンス「殲滅結社(ファンダメンタルデリート)」
そして国崎薬局に集いし異能者達の前に現われた「切断(カオスゲート)」の男。
異能者達の戦いは佳境を迎えようとしている!
2テンプレ:2008/12/19(金) 21:51:25 0
※参加者は原則として、絡んでる相手の書き込みから
【三日以内】に書き込んでください。(一人の場合は前回の自分の書き込みから三日)
もし、それが無理な場合は>>1にある【避難所に報告】してください。期限を最大七日まで延ばせます。
もし報告もなく、【四日以上書き込みが無い場合】は居なくなったとみなして、話を勝手に進めさせてもらいます。
どうかご協力お願いします。

*【テンプレ】
(キャラクターのプロフィールを記入し、避難所に投下した後、
 まとめサイトにて、自分のキャラクターの紹介ページを作成してください)
名前:
二つ名:ttp://pha22.net/name2/ ←で↑のキャラ名を入力
年齢:
身長:
体重:
種族:
職業:
性別:
能力:(一応二つ名にこじつけた能力設定を)
容姿:
趣味:
好きなもの:
嫌いなもの:
キャラ解説:

S→別格 A→人外 B→逸脱 C→得意 D→普通 E→不得意 F→皆無
U→変動 N→機能未保有 ……の九段階まで。
・本体
筋  力:
耐久力:
俊敏性:
技  術:
知  力:
精神力:
成長性:

・能力
範  囲:
破壊力:
操作性:
応用性:
持続性:
成長性:
リスク :
3折川雅司 ◆acBW5xlTro :2008/12/19(金) 23:20:46 0
前スレ>>263
>「え?うそ…折川君、ホントに?」
「まぁなぁ」

嬉しそうな表情を浮かべる姫野に、微笑んで肯定する。
(なんか鬱憤でも溜まってたのかぁ?まぁいいかぁ)

「…分かった。偉い人の命令なんだよね?じゃ、行こう」

そう言って、姫野は鞄に荷物を詰め込み始める。
中にはゴミじゃないかというものも混じってる気がするが…。
準備が出来たところで、姫野に話しかける。

「よぉし、んじゃ小金稼ぎにでも…って待てぇ!慌てんなぁ!」

折川の制止の声も聞かずに、姫野に手を引かれて階段に連れてかれそうになる。
その手を逆に引いてエレベーターまで移動させる折川。

丁度良くこちらに昇ってきたエレベーターに乗り込ませる。

「こっちの方が速いし楽だろーがよぉ。そう慌てんなぁ、標的は待ってくれると思うぜぇ」

前スレ>>269
二人がロビーに降りると、エレベーターの前には身なりの良い男性が居た。
そのブロンドの長髪、若々しく美しいと言っても過言ではない顔立ち。
一度だけしか見たことはないが、折川は一発で誰だか見当が付いた。

「もしかして…No.6?」

【場所:ナガツカインテリジェンスビル一階ロビー】
【折川雅司:レオーネに呼びかける】
4小村禅夜 ◆3LPMHhiq9U :2008/12/20(土) 03:03:59 0
ビルからビルへと、渡っていきようやく目的のビル跡地を目下に捉えた。
(全く……さっさとあの廃墟と化しているシナゴーグに戻ってアーリーの調査結果を聞きたいのですけどね…)
ビルから飛び降り、難もなく着地。そして、装神を解除する。
「機連送……壊れてなきゃいいんですけどねぇ」
瓦礫の山を散策し、自分の上着を探し出すが見つからない。
(……くそ、こんな真っ暗闇じゃわからないな。)

ここは街の中心部と言えるオフィス街の一角だ。
夜の、しかもこんな遅い時間にはどこのビルも明かりを消している。
例外といえば、少し向こうにデカデカと建ってるナガツカインテリジェンスビルぐらいだ。
「どうしたもんですかねぇ…」
瓦礫に座り込み、頬杖をついていると後ろから唐突に声をかけられた。

「特別幹部、小村禅夜様ですね。」
振り返ると、目の前に小さい初老の男性が立っていた。
「…そうでけど、あなたは本部からの使いですか?」
「ええ、そうでございます。私は今本部からの命により、機連送によって
連絡がつかない方々をお迎えにあがっておるのです。」
そういえば、朝も機関からのお迎えがありましたね。
一日に二回も呼ばれるとは…全くめんどくさい。
「で、理由はなんですか?」
朝のときはこれで泣かれたな。全く、なぜあれで土下座までされなきゃいけないんだ。
「なんでも敵対勢力が攻めて来るようです。詳細は、車の中で。」
「敵対勢力……ねぇ」
今回はちゃんと理由があるようだな。
面倒くさいが敵対勢力の来襲となると、サボれそうにありませんね……

「分かりました。いきましょう」
「では、こちらに。それとこれから他の構成員もお迎えに行きますのでご了承を。」
男性に着いて行き、すぐそこに止めてあった普通の乗用車に乗り込んだ。
それと、機連送についてはあとで他の構成員に探しだせるそうだ。

【小村:機関からの迎えによって、移動】
【この後、病院に寄り永瀬、織重を回収する予定】
5姫野 与一 ◆LuqsQs0P4w :2008/12/20(土) 12:49:04 0
>>3

>「よぉし、んじゃ小金稼ぎにでも…って待てぇ!慌てんなぁ!」
こっちの方が速いし楽だろーがよぉ。そう慌てんなぁ、標的は待ってくれると思うぜぇ」

階段まで先頭を切って手を引いていたが逆に手を引かれて
エレベーターまで連れていかれた。階段の方が安全なのにぃ…
やっぱり男の人って力強いなぁ

小さい時にエレベーターが半日間ずっと停まってしまいそこにずっと閉じ込められていたという過去がある。
それ以来どんなに高いビルでも階段を使っている。ちなみに屋上までは一時間程かかったそうな。

「…エレベーター…こ、怖かった…ウグ…頭いたい…」
少し酔った。後でトイレ行こう…

二人がロビーに降りると、エレベーターの前には身なりの良い男性が居た。
そのブロンドの長髪、若々しく美しいと言っても過言ではない顔立ち。
>「もしかして…No.6?」

そう。数回だけ一緒に任務を行ったことがある。名を確か…

「こん…にちは…じゃなくてこんばんは!レオー…ネ…さん」

どうしよう。緊張して顔が赤くなっているのが分かる。一緒に任務を行ったとはいえ会話はそう多くはなかった。
でも、ここに来るらしい敵の組織って一桁番号が来るほど強いの…?
レオーネさんまで来てるって事は他にも強い人たくさん来てるのかなー気になるなー会ってみたいなー
でも今はそれより…

うっ…吐きそう…

【ナガツカインテリジェンスビル一階ロビー】
【レオーネに接触】
【エレベーターに酔って吐きそう】
6廻間幻十 ◆SoGLnhQ8WY :2008/12/20(土) 16:42:16 0
>251-252
「…統時、何を不思議がってるかは知らないが、この街で行われているバトルロイヤルを未だに知らない人間がいると思ってないだろうな?
 もはやこの街は、異能者を取り入れる事を拒否する警察では手に負えない、異能者によって支配される世界となりつつある」
>266
話す最中に池上にも視線を向ける。

「そんな世界で女性が刀を振り回す光景がそれほど珍しい事もあるまい。
 今貳名市にはこの3日で生き残った異能者と、悪の存在の息のかかった人間しか存在しない。
 そしてその異能者の悪を裁く事も異能者にしかできない。"それ"のようにな」

幻十は梶原の死体に対して、ゴミを見るような冷たい視線を向ける。
>256
次に屡霞と戦場ヶ原に対し、梶原に向けたものと同じ視線を向ける。

「俺ははその悪の存在を裁く『殲滅結社(ファンダメンタルデリート)』の一人だ。悪の存在が何なのかは貴様も知っているはずだ山田権六。
 そして『殲滅結社(ファンダメンタルデリート)』はその中枢を突き止めた。統時、お前には戦力の足しになってもらおうかと思って来た」

幻十は再び統時に向き直り、梓川、屡霞、戦場ヶ原、池上とその場にいる者の顔を改めて見直す。
次に薬局の外に向き直って宙に手をかざす。すると空間に亀裂が生じ、その『亜空の扉』から先は別の場所の風景を覗かせる。

「この『亜空の扉』はその中枢へ繋がっている。考える猶予はやらん。他のメンバーは目的地に辿り着く頃だからな。
 指を咥えて待つのが嫌で、悪の存在――機関の殲滅に役立つ気のある奴はついてくるがいい」

幻十はそのまま『亜空の扉』に入っていった。

【廻間幻十:薬局外に『亜空の扉』を発生させて先に入る】
7宮野 光龍 ◆LHz3lRI5SI :2008/12/21(日) 00:18:11 0
前スレ>>262

さてさばく…って人めちゃくちゃいるじゃん!何しに来たんだよ!帰れ!
と思いつつ顔は笑顔で「ガンバリマス」と観客に微笑む。
鳳旋も見てるよ…。

さてここにあるのはマグロ一本。でかい。でかすぎる。
これを彼女にさばかせようとした店長を殴りたい。
まあ約束しちまったしやるしかねえか…

包丁を持つ。切ったり内臓出したりするのは大好きだし手慣れてる。
ってか久しぶりにおもしれぇな。わらいがとまらねえ!

―笑いながら作業すること5分

全てさばき終わった。みんな驚いた表情で見てくる。やっぱ5分ってはやいのか?
まあ、いいや。

あの女の人も「ありがとう」とか言ってマグロの切り身くれたしな。
とりあえず鳳旋のもとに行ってさっさとこの店出るか。

金を支払って店を出た。

外には一人の男が立っている。
「なあ、鳳旋。血のにおいがしねぇか?」
「うん?確かにするのう?」といって俺のにおいをかいでくる。
「俺のマグロの生臭さじゃねぇ!あいつだよ!」

目があっただけで殺意が伝わってくる!こいつは敵かよ!

【場所 スーパー唯能前】
【マグロ確保】
【敵を警戒中】

>>3 >>5
腕を組んでエレベーターを待つこと数十秒。
流石に遅いと言わざるを得ない。まぁ、国際企業だからな。ここは大目に見よう。
エレベーターは何もこの一つという訳ではない。
私はこのエレベーターに乗る事を諦めて別の、
右に十メートルばかり離れた所に在るもう一つのエレベーターに乗る為にその場を離れようとした。

丁度私が動き始めたその時、チーンという何とも間抜けな音と共に人の声が聞こえてくる。

>「もしかして…No.6?」

……一応、機関に所属しない人間もこの会社には居るのだ。
そのような無味乾燥な呼び方は止めて貰いたいものだな。

「――私に何か用か?」

場違いな呼び名で呼んだ者に振り向くと、そこには二人の男女が立っていた。
男の方は金髪と剣山の如く鋭い髪型が目を引き、
女の方は真っ白なコートに毛玉のような耳あてをしているが、
一番印象的なのは片手にヴァイオリンケースと見紛う程の黒いバッグを持っている所だった。
身を翻して二人に対して正面を向く。

>「こん…にちは…じゃなくてこんばんは!レオー…ネ…さん」

「ん? ……君は確か姫野与一くんだったか?

 こんばんわ」

男の方はともかくとして、女の方には見覚えがあった。
姫野与一、通称『装弾物語』 (アナザーレクイエム) 。
何回か共に任務に当たった事があるが、なかなかセンスの良い少女だ。
叩けば伸びるタイプか。

姫野の声は次第に、か細く消え入りそうな程小さくなっていった。
もごもごと口篭りながら喋る所為で、最後の方は特に聞き取り辛かった。

顔を赤らめているのは、何も私に気があるという訳ではない。
緊張しているのだろうな。それはそうだろう。彼女達にとって見れば私は雲の上の人間。
ファーストナンバーの中で私を含めた現場からの叩き上げ組みは、機関では生きた伝説扱いだ。
色々と噂が飛び交っているが、殆どが噂が尾ひれをつけて泳ぎ回っているだけというのが真実だ。
勿論、事実もあるが……。

「本部に無断で侵入しようとする異能者を撃退してくれているそうだね。
 No.1に代わって礼を言うよ、ありがとう」

私は姫野に向って日本式に頭を軽く下げる。
因みに頭を下げるというのは日本特有の文化だった気がする。欧米人の私には理解できない感覚だ。

「相変わらず良いセンスだ。…顔色が優れないようだが、大丈夫か?」

姫野の顔を心配そうに覗き込む。熱は無いようだが……。
それにしても、この隣の奴は誰だ? 私が忘れただけかも知れないが見覚えが無い。
男に顔を向けると、念の為に会った事があるかどうか確認してみる事にした。

「ところで、君は誰だい? 失礼だが私の記憶には無いんだが……。

 前にお会いした事かな?」

【レオーネ:現在地 ナガツカインテリジェンス本社ビル1階】
【折川に話しかける】
9鳳旋 希一 ◆sJZQ9grsuk :2008/12/21(日) 19:38:27 0
>>7

なんと彼奴の捌くのはマグロか!ふむ、素人ができるような代物じゃないはずじゃが…
妙にニコニコしとるな…自信があるのか?

―笑いながら作業すること5分

「す…すごいものじゃ…」

周りも唖然とする者、拍手喝采を送る者など多々いた。
なんという鬼才…まさかこんなにも早く捌いてしまうとは…

―――――

頭を下げて、光龍に代金を出してもらい店を出た。
確保したのはマグロとステーキ肉とサイコロステーキ。
調味料なら家にあるし今夜は豪勢な晩飯にありつけそうじゃ!

>「なあ、鳳旋。血のにおいがしねぇか?」と問い掛けてきた。
「うん?確かにするのう?」
「俺のマグロの生臭さじゃねぇ!あいつだよ!」と指を差した方向には一人の男が立っている。

「イヒ、イヒヒヒヒヒヒヒヒ!異能者ぁ見ぃつけぇたぜぇ…
この四方山四方男様の電刃破陣の餌食になぁりやがれえ!」

両手に光る長剣。いや、鋸か。彼奴も異能者か。
年は二十代後半辺りか…服装が汚い。浮浪者かの…
ここで奴を止めねば後ろの光龍も、動けない主婦王も危険じゃな…
仕方が無い。ここでわしの再デビュー戦と行くかの。

「えーと……そうじゃ!よもやガッ」

「てめぇ!この四方山様の名前も言えねえのか!いいか!よ・も・や・ま・よ・も・お様だ!」
「そうそう。四方山よモ゛ッ」
「こぉんのガキィ…ぜってぇーぶっ殺してやるぅ!カァァァァァァァァァァァァァァァァァァ!」

二回も噛んでしまったわ。彼奴は怒りに身を任せ奇声を上げながらこちらに飛びかかって来る。
まるで蛮族のようじゃ。構えをとるまでもないわ。手足の各関節に炎を纏わりつかせる。

「オヌシも不幸な輩じゃな…わしを鳳凰と知らずに襲い掛かるとはの…」

四方山を睨み飛ばし、飛び掛ってきた四方山の顔面に左ストレートを叩き込み右足で蹴り飛ばす
「ガ…ハッ…」
「ふん、恐れずして掛かって来い蛮族!わしは鳳旋!鳳旋 希一よぉ!」

【スーパー唯能前】
【四方山と交戦】
10梓川 博之 ◆acBW5xlTro :2008/12/21(日) 22:45:19 0
>6
廻間の兄貴は説明の後、妙な亀裂に消えていった。
…機関を殲滅したい奴はついてこい、か。

亀裂を見つめながら、考えを纏め上げ…立ち上がる。
と言っても、廻間の兄貴についていく訳じゃない。

「お前らとは此処でお別れみたいだな。
お前らがこっちはこっちでやるにしろ、廻間の兄貴についていくにしろ。

…俺は機関と戦うつもりなんて毛頭無いんだ」

そう言って周囲の奴らを一瞥する。
驚いた表情を見せる人も居れば、冷徹にこちらを見据える奴も居る。
黒霧を集める時間稼ぎのため、言葉をどんどん紡ぐ。

「悪いけど、機関がどれだけでかい組織か分かってたらこんな馬鹿な真似をする奴なんていない。
即席の少ないメンバーで大勢の統率された連中を叩こうというのがそもそも間違ってる。
俺は自分の命が惜しいし、勝率数%のような分の悪すぎる戦いに加勢する気も無い。
命の掛かった負け試合?誰がやるものか。
誇りが大事?そんなもの溝に捨ててしまえ。
他の人の命が晒される?知ったことか、危険の察知が遅れた奴のせいだ。
というわけで…俺は協力依頼は拒否してお暇させて頂く」

一呼吸置いて、もう一度見渡す。
女性の刀が煌いた気がした。
…斬られるかな?

だが、もう準備は完了した。
「なんと言われようが俺はこの決断を変えるつもりもないし、かと言ってみすみす殺されるつもりもないぜ。
……最後に一つ。

『これ』が俺の異能力だ」

言い終えるが早く霧は俺を包み込み……すぐさま分散した。
其処に俺の姿は無く、あとに残ったのは黒いコートだった。


【梓川:屡霞や幻十への協力要請を拒否、コートを置いて逃走。】
11池上 燐介 ◆qqu0tZFsYU :2008/12/22(月) 18:09:12 0
>>6>>10
廻間の兄という男はそれだけ言うと、『亜空の扉』とかいう空間の裂け目へと入っていった。
彼が言うには、この空間は機関の中枢部へと通じているらしい。
事実なら、彼は少なくともワープに似た、空間を飛び越える能力を有していることとなる。
そして空間の裂け目から覗かせる薬局とは違う別の場所の風景が、
それは事実であるということの証明であるだろう。
(これなら通勤、通学先がどんなに遠くにあろうと移動は苦にならんな。便利な異能力もあったもんだ)

と、彼の異能力の俗な利用法を思っては地味に感心していると、突如として霧男が口を開いた。
何を言うのかと思って聞いてみれば、なにやらこの男、機関と闘う気はないとのこと。
脅してまで必死に協力を促していた黒髪の女剣士にしてみれば受け入れ難い事態ではあろうが、
俺は特に何ら思うことはなかった。

それから彼はあれやこれやと言葉を捲くし立てると、「これが俺の異能力だ」の言葉と
着ていたコートひとつを残して、その場から忽然と消えるのだった。
前に逃げ場のない建物の屋上で彼を逃がした経験のある俺には特に驚くこともなかったが、
その他一同は初めて彼の異能力を見たのだろう、流石にそうもいかなかったようだ。
女剣士に至っては、彼を斬らずにまんまと逃がしてしまったことも重なってか、
どこか何とも言えないような顔をしていた。
俺はそんな彼らから視線を外すと、次に空間の裂け目に目を向けて、口を開いた。

「──ここにいる廻間や山田は一度俺と闘ったことがある。
だが、あいつは前に俺と出会った時、闘うことなく逃げた。
俺とすらまともに闘えないような奴が、強大な機関を相手取って闘えるわけもない。
この結果は当然といえるかもしれんな」

彼が女剣士の要請を断った時、俺は特に驚きもせず、何を思うこともなかったのは、
どこかこうなることを予想していたからだ。
考えても見れば、機関討伐に手を貸すということは自らの手を敵の人間の血で染めるということだ。
例えそれに動機やメリットがあろうと、仮に彼がこれまで通常とはかけ離れた世界を見ることなく
生きてきた人間だったとするなら、協力に強い抵抗感を持つことは不自然ではないのだろう。
そういう意味では、機関と闘う道をあっさりと選択した俺達には、
一般人というよりはむしろ、機関の人間に近い異常性があるのかもしれない。
──俺は軽く自嘲気味な笑みを浮かべて、無言で空間の裂け目へと足を進めた。
だが、その目前で足を止めると、思い出したかのように未だ店内で放置されている死体に視線を向けた。
                           ボロクズ
「──おい、汚いから片付けて置けよ、そこの死体を。店長が帰ってきたら迷惑するぜ」

それだけ言うと、俺は今度こそ空間の裂け目へと入っていった。
(思わず死体をボロクズ呼ばわりか。フッ……これでは異常性について、否定はできんな)

【池上 燐介:『亜空の扉』へと入っていく】
12 ◆KmVFX58O0o :2008/12/22(月) 20:12:21 0
「手配しておいてください。では」
曾壁は電話口の向こうの何者かにそう言うと、静かに携帯を閉じた。その表情には、わずかに笑みが浮かんでいる様に見える。
曾壁を乗せた車は、ナガツカインテリジェンスビルに向かって走り続ける。
さて、先ほど曾壁が携帯のモニターを注視していた理由を辿ろう。至極単純な理由だ。

それは、対機関組織の本社侵攻に対するカウンター――――つまり壁となる異能者を選考する為だ。
無論バトルロワイヤルに対して肯定的な異能者は選ばない。曾壁が選ぶのは否定的、あるいは消極的な異能者である。
ただしそれだけが選考理由ではない。その様な異能者の中から、戦闘能力に長けた能力を持つ者が、曾壁が欲しい人材だ。
この町に居る異能者の中――――その中から規定値に達していない異能者を、そして更に条件を絞り込む。
その結果、22人ほどの異能者を、曾壁は選定した。その選んだ異能者を拉致する様、曾壁は先ほどの電話で上層部に頼んだ。

『機関』の手に掛かればよっぽどの――――死んでもいない限り、どんな手を使おうと曾壁の選定した異能者を連れてくるだろう。
曾壁はその中で二人、自らの護衛に充てることにした。服屋の件でも分かるように、曾壁は自らの手を汚す事を良しとしない。
その二人の素性はどちらももちろん『機関』のエージェントではなく、ただ単に異能を授かってしまった一般人である。
二人の名は高橋と後藤。高橋は金融会社に通うごく普通のサラリーマン、後藤は素行の悪さで噂される、不良高の生徒である。
22人を乗せた――――本来は虐殺部隊が収容される大型の偽造大型トラックが、曾壁の乗っている車に追いついてきた。

「すみませんが、玄関口ではなく地下駐車場に移動してください」
曾壁が運転手にそう言うと、運転手はハンドルを回して車を地下駐車場へと向かう。後方のトラックも続く様に地下駐車場に入っていく。
しばらく走ると、専用の駐車位置が見えた。運転手は車を右折させるとバックで車を駐車させた。
後方を走っていたトラックは、曾壁が乗っている車の正面を通過していくとまっすぐ、運搬用の駐車場へと向かっていった。
曾壁は無言で車を降りると、トラックの向かった駐車場へと歩いていく。その際にメガネを外して。

駐車位置に停車しているトラックに着くと、曾壁は二回、掌を叩いた。するとトラックの助手席から黒服の男が出てきた。
男に視線を合わすことなく、曾壁は小さく頷く。男は頷き返すと、補助階段を上がり強固に閉められた荷台の鍵を空けた。
黒服が機敏な動作で補助階段を下り、入れ替わるように曾壁が補助階段を上がり――――荷台の中を見渡した。
狭い荷台の中に、ごった返すように22人の人々が横たわっている。人々はまるで何も知らぬように眠りこけている。何らかの手で眠らされたのだろう。
13 ◆KmVFX58O0o :2008/12/22(月) 20:12:59 0
すると、髪を赤く染めた一人の少年がぼんやりと両目を開き、背伸びをしながら起き上がった。他の人々も連鎖するように起き上がる。
「……どこだ? ここ……」
「おめでとうございます。貴方達は我が組織を防衛する為に選ばれた、栄誉ある異能者です」
赤髪の少年の独り言に、曾壁は抑揚の無い声で答えた。赤髪は曾壁の言葉にしばらく無言で俯くと、震えを込めた声で返した。

「ふ、ふふふざけんな! そ、それって殺しあえって事じゃねえか! 俺は知ってんだぞ! お前らが訳わかんない理由で人殺しさせまってくるって!」
「ほう、機関の事をご存じなのですか。意外と博識ですね、後藤さん」
赤髪と曾壁の会話に、周りの人々は明らかにざわめいている。中には泣き出したり、錯乱しているのも居る。
「殺し合いって、どういうことだよ! てかなんで俺はココに……」
「早く解放しなさいよ! 場合によっちゃ警察呼ぶわよ!」
「母さん……母さん、何処にいるの……?」

ざわつくトラック内の雰囲気を断ち切るように、曾壁はわざと大きな音を立てて、両手を鳴らした。ピン、と空気が張り静かになる。
「皆さん、私の目をじっと見てください。大丈夫ですよ。悪いようにはしません
 貴方方にやってもらいたい事は一つ、わが社を襲撃しようとする蛮族から本社を防衛して欲しいのです」

そう言いながら、曾壁は自分を呆然とした表情で見つめる人々に視線を向ける。
「もちろん生身のまま、防衛してもらう訳ではありません」
曾壁が指を鳴らすと、二人の黒服が何かを両手で掲げながらトラックの中に入ってきた。虐殺部隊が着込んでいる強化スーツだ。
「こちらのスーツを着てもらいます。もちろんこのスーツは非常に丈夫な素材で出来ておりますので、そう簡単に破られる事はありません。
 それとヘルメットも付属しておりこちらももちろん優秀な性能です。遠回りな言い方をしてしまいましたが、端的に言えば――――。

 安全面は完全に保障されておりますので、何ら心配はございません」

瞬間――――曾壁は人々の思考、不安と恐怖を司る部位にに自らの異能力を発動させた。
人々の中で混然としていた恐怖感や不安感が、曾壁の最後の言葉で収束され、消滅する。人々は一転、安堵の表情を浮かべた。
あれほど怯えていた赤髪、いや、後藤でさえ、目元に安心の色を浮かべ尚且つ。
「分かった! ココにやってくる奴らから、会社を守り抜けばいいんだな! ……で、それでなんかくれるのか?」

後藤の疑問に、曾壁は明らかに作り笑いを浮かべて返答する。
「もちろん。蛮族の撤退を確認後、皆様には謝礼を差し上げます。それと、もしも怪我等した場合も、すぐにケアを施しましょう」
曾壁の言葉にほっと、歓喜の声が上がった。曾壁は冷笑と思える作り笑顔を維持し続ける。
「理解していただけて、私も安心しました。それではこちらにスーツを用意しております。更衣室の用意はしておりますので、どうぞご利用ください」

「あぁそうそう、後藤さんと高橋さんは残っていてください。私の――――ボディーガードを勤めてもらいます」

「民間部隊の配置、完了いたしました」
「そうですか。では引き続き、見張りを続けていてください」
黒服の報告を聞いた後、曾壁は携帯をしまった。曾壁は今、黒服を着た二人の男を従えてエレベーターに乗っている。
下準備が整ったので例の反機関組織の襲来まで、ロビーで休息を取る為だ。二人の男――――高橋と後藤は無表情だ。
エレベーターが音を立てた。どうやらロビーのある一階に付いたらしい。曾壁は今度は作り笑いではない笑みを浮かべながら、エレベーターを降りた。
【曾壁:ナガツカインテリジェンスビル1階、ロビー】
【正面玄関口に10人、地下駐車場に10人の異能者(虐殺部隊のスーツ着)を配置する】
14戦場ヶ原&屡霞 ◆u5ul7E0APg :2008/12/22(月) 21:32:02 O
>>6>>10-11
廻間の兄を名乗る男の話を、屡霞は刀を下ろさずに聞いていた。
(ファンダメルデリート……。聞き覚えのない言葉だ。
機関に敵対する組織があろうとはな…)
投げ捨てられた戦場ヶ原も同じように男の話を聞いていたが、依然憮然とした表情のままだった。
そこで不意に梓川が口を開く。
「…どうやらおまえらとはここでお別れみたいだな。」
それは先ほどの屡霞の問いに対する答であった。―――その答えはNO。確固たる拒絶の言葉に、屡霞は刀の鯉口を切った。
「…そうか、君がその気ならば致し方ない。約束通り、その首を戴く!」
そう言って躊躇いなく抜き放った刃で梓川を横薙ぎする。
「!?」
―――が、そこに梓川はいなかった。
彼の体は霧散して消え、そこに残ったのは一刀両断された彼のコートだけだった。
「…体を霧にする能力か。まんまと逃げられたな。」
戦場ヶ原が口を挟む。
「よく知りもしねぇ相手を仲間に誘うとはな。それが貴様の甘さだ。」
「……見誤ったか。」
屡霞は煮え切らない表情で虚空を睨む。
異能者は皆闘いを望む者。そういった幻想が、彼女の中にあったのかもしれない。
「──ここにいる廻間や山田は一度俺と闘ったことがある。
だが、あいつは前に俺と出会った時、闘うことなく逃げた。
俺とすらまともに闘えないような奴が、強大な機関を相手取って闘えるわけもない。
この結果は当然といえるかもしれんな」
池上が相変わらずの冷笑で口を開いた。
正論だ。
その事実に、屡霞はただ黙るしかなかった。
池上はそんな屡霞の様子を気にも止めず、廻間兄の作り出した空間の断絶へ足を伸ばす。
「──おい、汚いから片付けて置けよ、そこの死体を。店長が帰ってきたら迷惑するぜ」
池上はそう付け足し、扉に入って行った。
屡霞はそこで我に返り、戦場ヶ原に言葉を投げる。
「…そうだな、戦場ヶ原、頼む。」
「チッ…俺の能力はゴミ掃除じゃねぇぞ。」
そう反発しながらも、彼は黒球を作ってそれを死体へと投げた。
マイクロシンギュラリティゼオレム――。黒球は瞬く間に死体を包み込み、そこには血溜まりだけが残った。
一仕事終えた戦場ヶ原は、一息置いてその場に残った廻間と屡霞に言葉を投げかけた。
「…俺はあいつの言葉に乗るぞ。これが罠だろうがなんだろうが、前に進むしかねぇ。
この手で奴らを根絶やしに出来るなら、利用できるものはすべて利用する。
貴様らはどうだ?」
その問いに屡霞は迷いを断ち切ったように即答する。
「…言ったはずだ。私はキミの右腕になると。こうなったら、地獄までも付き合うさ。」
そう言って、機関中枢へ続くという扉へ歩みを進める。
その顔は、すでに以前の彼女だった。
「ところで戦場ヶ原、キミの身体はもういいのか?」
「馬鹿野郎。俺を誰だと思っていやがる。こんな傷、少し寝たら治っちまったよ。」
どう見ても怪我は治癒していない。しかし彼がそういうのならば、そうなのだろうな――…
屡霞は静かに笑い、戦場ヶ原の後を追って扉に入った。

【戦場ヶ原&屡霞:亜空の扉に入る】
15折川雅司 ◆acBW5xlTro :2008/12/22(月) 22:56:23 0
>>5>>8
>「――私に何か用か?」
多少苛立ちが見えた声に、折川は少し後悔した。
(やっぱファーストナンバーを引き止めてしまったのは不味かったかぁ?)

そう思ってると、姫野が挨拶をして会話が始まる。
助かったとばかりに溜息をついて、二人の会話をおとなしく聞く。
…見てるうちに、姫野の顔色が悪くなってきたので背中をさすってやったりもしながら。

と、突然レオーネが折川に向いて質問する。
>「ところで、君は誰だい? 失礼だが私の記憶には無いんだが……。

> 前にお会いした事かな?」
「あ、No.77の折川ッス。多分初対面ッス、宜しくお願いですぜぇ。
No.6のレオーネさんについては色々と聞いていたんでちょいと呼びかけてしまっただけッス。
…にしても、て…じゃなくて貴方が参加するなんて、今回の敵はどれだけ凄いんスかぁ?
こいつがはりきっちまってよぉ……ん、おい、大丈夫かぁ?与一ぃ?」

姫野のもう一度背中を優しくさする。
本当に大丈夫なのだろうか。

>>13
そんなことをしていると、二人の男を従えた冴えない男が他のエレベーターから降りてくる。
顔を見てもぱっとしない、普遍的な男。

「……なんかいけ好かねぇ奴だなぁ…っと、そういえばどうすんだったっけなぁ?
すんませんがNo.6、何か知りませんかねぇ?」

【折川雅司:レオーネに質問】
16廻間 統時 ◆7VdkilIYF. :2008/12/22(月) 23:11:37 0
>>6
バトルロワイヤル……俺に来たメールの事だな。それは知っている。
なんせ、俺は一度とは言えそのバトルロワイヤルに乗ったんだからな。知らない方がおかしいだろう。

>「もはやこの街は、異能者を取り入れる事を拒否する警察では手に負えない、異能者によって支配される世界となりつつある」

だろうな。警察の手に負えるならこんな大騒ぎにはなって無いだろう。
むしろ、警察に期待するほうが間違っている。警察とは悪魔でも『純粋な人間』の抑止力だ。
異能者、特に俺たちのような戦闘向きの異能者……『純粋な人間でない』者には何の効果も無い。
その『純粋な人間で無い』異能者は同じ異能者が止めるしかないんだ。
『目には目を、歯には歯を』を……世界史でならったハンムラビ法典の言葉だ。

「それは知っているさ……」

そもそも、精神状態によってはモノのように人を壊せる俺と
昨日までただの一般人とさほど変わりなかった先輩を比べ、先輩を罵るのは間違っているのだろうが。
例えるならば……やり場の無い怒りを物にぶつける時のような感情が、俺の中に渦巻く。
……って、待て。この口ぶり。
アニキが異能者だという事はもうすでに決定事項だろう。ただ……なんでこんなに詳しい?
ただ巻き込まれただけなら、異能者に支配されてるなんて思いもよらないはずだ。
何故なら、俺達は『異能者同士で』戦い、最悪の場合は殺しあっている。
それはつまり、自然と異能者の数は減っている事になるから。
俺は機関のメンバーや幹部と戦ったからいいものの……
メンバーと一度も会った事が無いのなら存在を感じ取りはするかもしれないが、機関の名は一度も聞かないだろう。

>「俺ははその悪の存在を裁く『殲滅結社(ファンダメンタルデリート)』の一人だ。悪の存在が何なのかは貴様も知っているはずだ山田権六。
  そして『殲滅結社(ファンダメンタルデリート)』はその中枢を突き止めた。統時、お前には戦力の足しになってもらおうかと思って来た」

……『殲滅結社(ファンダメンタルデリート)』……何らかの対抗組織という事か。
大規模な機関に立ち向かえているぐらいだから、戦力としては恐らく大きいものと考えて良いだろう。
生半可な力なら、すぐに叩き潰され『殲滅』されているだろうからな。
そして……これで合点がいった。
アニキは自分を『殲滅結社』の一員だといった。ならば、敵対戦力の機関の情報を知っているのも頷ける。
敵の事を何も知らないのに戦いを吹き掛ける軍団なんて、いないだろうからな。
アニキは言うだけ言うと、自らの異能力を使い『亜空の扉』というものを作り上げた。
この異空の扉と言うのは、違う空間へと繋がっているらしくこの扉自体はその中枢……
つまり、機関の中枢へと繋がっているとの話だが。
語るだけ語ると、アニキは扉の中へさっさと入ってしまった。
17廻間 統時 ◆7VdkilIYF. :2008/12/22(月) 23:12:22 0
>>10-11>>14

「……」

俺は誰もいなくなった店内を見回す。
アニキが扉を作り出し、入った後……先輩はどこかへ消えその他の人間はアニキに倣い扉を潜った。
俺自身も扉を潜る事自体には何の抵抗も無い。だが、二つの事実が俺を押し止めていた。
(機関の中枢って事は……相当の激戦を強いられるだろう。
 だったら万全の状態で挑むべきなのだろうが、今の俺は万全とは言いがたい。
 こんな状態じゃ足手まといにならないだろうか……
 ……それに……ルナ、沙羅。俺がいなくなったのに気付いたら驚くか?)

携帯は持っている。だが、俺達は互いに携帯の番号及び、メルアドを知らないはずだ。
だったら、連絡先ぐらいは書いておいたほうがいいだろう。
そう思った俺は適当な紙とペンを手に取り、携帯の電話番号とメルアドを記入した。

「考えても仕方ない、行くか……まだ本調子じゃねえけどな」

メモをし終えた俺は、愚痴りながら『亜空の扉を』を潜った。
18神重智&敬 ◆6eLTPQTFGA :2008/12/22(月) 23:14:22 0
七草と出会い奇妙な話を持ちかけられた神重は七草と共にとある場所へ向かおうとするが
そこに謎の黒ずくめの集団が現れる。

何が起こったか理解はできなかった。
頬を掠ったナイフ。いつの間にか背後にいた黒ずくめの男。
こちらが問いただしても無視して男に止めを刺す。

「うわっ、きったなぁ〜い」

血のついた短刀を始末した男から引き抜いて七草は言う。

「あ〜あ見つかっちゃったわね〜、え?こいつ等は何者かって?
 知らないの?それよりもこれからいっぱい来るわよ」

こちらの疑問を見抜くかのように七草は言う。
眼では確認できないが確実に複数の獣がこちらを狙っている。

「それじゃあ、行くわよ先生、何か作戦は在る?
 無ければこのまま殺っちゃうわよ?」

作戦…あれほど大声を出して大部隊がきてないところを見ると
散り散りか、それとも囲まれているか…あまりいい傾向ではない。

(自分が持てる限りの速攻でケリをつけるべきだと思うぜ、俺は)
(考えが合うな、敬…私も今それを考えていたところだ)

「今から仲良く遠足にでも行こうという雰囲気ではないですね…
 この場はあまりいい状況ではありません。
 できる限り早く片付けましょう…私は少々援護に回りますよ」

そういいながら七草よりも前方の暗闇にできる限り強力な重力をかけようとするが

(クッ…やはり能力は安定しないなっ…)
(あまり無茶をするなよ智、いざとなれば俺の能力も…)
(わかっている…いざとなれば…な…!)

【神重:虐殺部隊と戦闘開始 速攻戦術】
19クロノ ◆SoGLnhQ8WY :2008/12/22(月) 23:41:36 0
>>15
床を壊す音一つさせず、突如折川の足元から手が"生えてきた"
その手は折川の足首を掴み、爪を食い込ませるように強く握る。
折川はそのまま地中へ引き込まれて行き、それと入れ替わるようにニヤケた裸体が床下から立ち上がるように出てきた。
金髪の、全身傷跡だらけの白い裸体。その足元には折川の着ていた革ジャンとそれに見合う衣類が靴や下着に至るまで全て取り残されている。
全裸の男――クロノはその衣類と周りを見回し、落ちてる革ジャンを羽織りながら口を開く。

「オヤ…これはちょうどいい所でしたカ?」

レオーネ、姫野、曾壁と向き合いながら、床に落ちてる折川の履いていたズボン(inパンツ)を手に取る。
背中には正面玄関とそこを護るように10人の異能者が背を向けている。>>13
>>6>>11>>14>>16さらに奥で『亜空の扉』が開き、廻間兄弟、池上、戦場ヶ原、屡霞が中から出てくる様子が映った。

「また会いましたねレオーネサン」

その身は下水道で纏った悪臭をその場に漂わせる。
一方、折川は地下駐車場に落とされていた。

【クロノ:下水道からロビーと地下の間の空間を伝い、異能力で床天井を抜けてナガツカインテリジェンスビル1階ロビーに出てくる】
【折川:クロノの異能力で体だけ服や床を貫通されて、地下駐車場に全裸で引きずり落とされる】
【『亜空の扉』で廻間幻十、統時、池上、戦場ヶ原、屡霞がナガツカインテリジェンスビル前に到着】
20姫野 与一 ◆LuqsQs0P4w :2008/12/23(火) 00:20:56 0
>>8,>>13,>>15,>>19

>「本部に無断で侵入しようとする異能者を撃退してくれているそうだね。
No.1に代わって礼を言うよ、ありがとう
相変わらず良いセンスだ。…顔色が優れないようだが、大丈夫か?」
レオーネさんが突然頭を下げて私にお礼を言ってきた。

「そ、そんな、レオーネさんが頭を下げる程大事な仕事じゃありませんよ!
それに最後の一人の…えーとぉ…変な奴に逃げられちゃったし…
…私はまだまだ半人前の子供ですよ…」

アイツの顔を思い出してしまった。ずっとニコニコしていたあの顔。絶対に忘れることは無い。
色々と一人で考え込んでいるとレオーネさんに質問された折川君が口を開いた。

>「あ、No.77の折川ッス。多分初対面ッス、宜しくお願いですぜぇ。
No.6のレオーネさんについては色々と聞いていたんでちょいと呼びかけてしまっただけッス。
…にしても、て…じゃなくて貴方が参加するなんて、今回の敵はどれだけ凄いんスかぁ?
こいつがはりきっちまってよぉ……ん、おい、大丈夫かぁ?与一ぃ?」

「ん…?私は大丈夫。ねぇ、折川君…いくら初対面だからってNo.6って呼び方は失礼だよぉ…」

小声で折川君に話し掛ける。レオーネさんもあまり機嫌が良くないみたい…
でも折川君の質問は少し気になるかも。

ちょっと強がって大丈夫って言ったけど、まだ少し辛いかな…
私を気遣ってくれているのか、折川君が背中をさすってくれている。
彼に迷惑は掛けられないなぁ…確か…酔いを止めるには深呼吸を三回…スーーハーー…

エレベーターの前で会話をしていると別のエレベーターから二人の男の人を連れた普通っぽい男の人が降りてきた。
何あれ…アイツより不気味…怖い…絶対好きになれない…

と、私の背中をさすってくれていた折川君の腕が突然離れた。

――!振り向くと白い腕が突然折川君の足を掴み地中に引き込んでいる!

「   折川君っ!!!   」

そこにアイツは図々しく立っていた。私が唯一負けた男。絶対好きになれない男。
今まで表れていた吐き気も、周囲の目も、漂う悪臭も一切気にならなかった。
私はただ二つの怒りに身を任せ異能力で''弾''となる長剣を創り出す。これまでに無いくらい鋭く、硬質で異常な数の棘が付いた長剣。
腕を砲身の役割、剣を弾丸として再び私の前に現れた''アイツ''にただ、力任せに振り下ろす―――!

一方その頃、与一の自宅から二つの影がナガツカインテリジェンスビルを目指し駆けていく
硬質な扉には鋸でも使ったかのような荒々しい傷跡が残っていた―――

【ナガツカインテリジェンスビル一階ロビー】
【クロノを攻撃】
21名無しになりきれ:2008/12/23(火) 15:10:51 0
俺の目の前で青年が倒れる、よく見ると服に血が滲んでいる。
瑞穂さんの話がいよいよ現実味を帯びてきた。
多分この青年は機関とやらに襲われて傷を負ったに違いない。
可哀想に、あと少し私が来るのが早ければ助けられたのに……。
俺は屈むと、青年の胸に手を当てる、ちゃんと心臓は動いているみたいだ。
小さく祈るとたちまち青年の傷が癒える。
そして、俺は青年を担ぎ上げると教会までの道を歩き出した。

「ったく、どうして俺がこんな事しなくちゃなんねえんだよ」

ぶつぶつと文句を言いながらも歩を進める。
こんな面倒な事したくはなかったが、流石に俺のせいで死なれたら後味が悪い。
教会に着き、扉を開ける、中から塩独特の臭いが漂ってくる。

「うわっ、なんだこの臭い!
あぁ、あの時の塩か、掃除しておけば良かったな」

まだ日が沈む前に倒した黒ずくめの男が思い出される。
俺は教会の長椅子に青年をのせる、流石に外よりは暖かいし安全だろう。
俺がやるのはここまで、自分のベッドに野郎を寝かせる趣味はない。
俺は俺で教会の二階にある、部屋に向かう。
携帯を開くと誰かからメールが来ていた、タイミングからしておそらく瑞穂さんだろう。
喜々としてメールを開くが本文には何も書いていなかった。

「そんな……これじゃあ、なんて返せばいいのか分からないじゃないか。
しかも、このあからさまな返信するなよオーラは………」

俺はあまりの絶望に携帯を落とすと、拗ねるようにベッドに潜った。

【織宮京:恋島を教会まで運ぶ】
22織宮京 ◆9uPeCvxtSM :2008/12/23(火) 15:11:38 0
コテ付け忘れすみません
23宮野 光龍 ◆LHz3lRI5SI :2008/12/24(水) 12:32:42 0
>>9


>>「イヒ、イヒヒヒヒヒヒヒヒ!異能者ぁ見ぃつけぇたぜぇ…
この四方山四方男様の電刃破陣の餌食になぁりやがれえ!」
何て言った…?よ・も・や・ま・よ…?

>「えーと……そうじゃ!よもやガッ」

>「てめぇ!この四方山様の名前も言えねえのか!いいか!よ・も・や・ま・よ・も・お様だ!」
>「そうそう。四方山よモ゛ッ」
>「こぉんのガキィ…ぜってぇーぶっ殺してやるぅ!カァァァァァァァァァァァァァァァァァァ!」

お前ら漫才してるのか?
怒った四方山(以下、イモ男)が突進してくる。
(やべーんじゃねーの?俺の能力すぐ出せねーし!どうする?)
>オヌシも不幸な輩じゃな…わしを鳳凰と知らずに襲い掛かるとはの…」
(何言ってんだ?おかしくなったか?)
あわてて鳳旋の方向を見る。すると手足の各関節に炎を纏わせていてイモ男の顔面に
左ストレートを叩き込み右足で蹴り飛ばした。

>「ガ…ハッ…」
>「ふん、恐れずして掛かって来い蛮族!わしは鳳旋!鳳旋 希一よぉ!」

とうとう我慢できなくなって言う。
「だから誰だよ!!!!!!」

イモ男と鳳旋がこっちを見て「邪魔スンナ!」みたいな顔で見てくる。
「スイマセンでした…」

この勝負俺は手を出さないほうがいいな…
【スーパー唯能前】
【イモ男と鳳旋の戦いを見てるだけ。必要ならば参戦】
24七草 ◆O93o4cIbWE :2008/12/24(水) 22:00:48 0
>>18

此方の問いに対し先生は数秒間を置いてこう答えた。

「今から仲良く遠足にでも行こうという雰囲気ではないですね…
 この場はあまりいい状況ではありません。
 できる限り早く片付けましょう…私は少々援護に回りますよ」

「アラ、そう、ぬるいわね…」

瞬間――赤い閃光、爆音――そして此方に飛来する物体、
高速で飛んできた物体は、途中ある一定の空間に入ると勢いを失い始めた、
そしてその物体は、私たちと奴らの間で地面に落ち込み、轟音と共に爆発した、

私たちの前に、赤熱の壁が出来上がった、無論、これに乗じて奇襲を掛ける。

「来たわね、じゃあ囮、頼んだわよ」

爪に血を滲ませ能力を使い建物の壁面に爪を突き立てる、ソレを起点に
建物の壁を器用に上っていく、その様は着ている服と相まってまるで黒猫の様だった。

―――囮、頼んだわよ―――

月明かりの下、建物の屋上から屋上へ飛び移って移動していく
その途中ベルトに取り付ている刃を固定して、そこに指を走らせ、刃に血を吸わせる。

――そんな通路で固まってるから――

屋上に立ち、足元の獣達を見下ろす、獣達の最後尾を取った、そして、黒い影が宙を舞う――


――奥に居る二匹に短刀をそれぞれに一本ずつ投げつける、刃は黒の冑を音も無く穿つ――

――真下の二匹の内、一匹に同じ要領で投擲、もう一匹を肩から踏みつけ着地、同時に短刀で脳天を絶つ――

――目前には此方を振り向く二匹、構えた銃身を両の手に持った二本の忍刀で弾き、返す刀で二匹を断つ――

――そして―

――消えろ――

――彼、いや、彼女がそう命ずると、男達は、闇に溶けるように消えていった、血汐も無い、獣の命を絶った刃だけが、後に残った。

「ふぅ、先生、終わったわよ」

月明かりを背に振り向き、神重に歩み寄り、そう伝える。

「さて、それじゃあ行きましょうか、話は、歩きながらしましょう?
 まず、昼間も言ったけど、アナタの目的は何かしら、昼間何かと戦ってたけれど…
 それと、アナタの質問も聞いてあげるわ、私が何者かは、今は話してあげないけど」

まずは昼間の事を聞く、モノによっては、協力してあげるつもりだ、
別に今の先生一人じゃ危なっかしいとか言うわけじゃない
そして、先生が何を聞いてくるのか興味が在る」

【七草:虐殺部隊を殲滅、その後移動を提案し、神重に質問、同時に神重の質問も受け付ける】
25鳳旋 希一 ◆sJZQ9grsuk :2008/12/24(水) 23:20:12 0
>>23

わしはここ数日、誰とも戦えず、能力も使ってこなかった。
各間接の炎は明るく燃えているが…燃えすぎじゃ。少々火傷覚悟で行かんとな。

「ふむ、久々にこの力を使うのでなぁ!どうやら加減はできなさそうじゃ!」
「あ、あちちぃ!このガキ、てめぇ…生意気なこと言ってんじゃねえぞ!オラァ!」

転がり、起き上がった四方山、何をするのかと思えば自分の右手の光鋸を飛ばしてきおった。
後ろに光龍がいるが、当たらないだろう。
彼奴に隙が出来ている。好機。その場から走り出し、四方山の手前まで踏み込み
彼奴の光鋸を持つ左手の手首を蹴り上げ、腹部を拳で殴りつける――

「ガァァァァァ!熱い!痛い!熱いィィィ!」
四方山の左手から鋸が落ちた。もう左手は火傷の痛みで使い物にならないじゃろう。
腹部を強打し、胃液も吐き出していた。

「こ、このやろぅ…がぁ…」

素早い動作じゃった。彼奴は右手で鋸を拾い、下から振り上げるように斬りかかる。
が、対応は簡単じゃ。一歩下がり、右手ごと彼奴の腹部へと真っ直ぐ蹴りを突き出した。
簡単に四方山は吹っ飛び、コンクリートに激突した。まだ意識を保っている。流石は異能者と言ったところか

倒れた四方山が起きあがり、突然叫びだした。
「糞がぁぁぁぁ!どいつもこいつも俺様を馬鹿にしやがってぇぇぇぇぇ!
あぁそうだ!アイツもそうだった!俺が気に入らないとか言って散々リンチしやがった!
てめぇもだ!説明してるのに人の名前を何回も間違いやがってぇぇぇ!」
「まったく…ただの逆恨みじゃな…大体オヌシがこちらに攻撃を仕掛けたのじゃろうが…」
「うるせえ、うるせえ、うるせえぇぇぇ!てめぇは黙って俺に殺されればいいんだよぉぉぉ!」

四方山の右手から再び鋸が出現した。先ほどの物以上に巨大な。
おそらくあれが彼奴の最初で最後の全力じゃろう。
じゃが今のわしの力ではアレを防げるほどのモノは繰り出せん。これはちと危険じゃ。

「光龍!気をつけろ!デカイのが来る!」

大きく横投げで巨大光鋸をわしと光龍の方向へ投げた。

「しぃぃぃぃぃねぇぇぇぇぇぇ!」

【スーパー唯能前】
【四方山全力投球】
【希一は回避】
26小村禅夜 ◆3LPMHhiq9U :2008/12/25(木) 02:18:45 0
>>4
永瀬と織重とかいう女性達は機関傘下の私立病院で保護されていた。
話によると彼女達は6レオーネと待ち合わせをしていたが、待ち合わせ場所に
向かう途中『何者か』に襲われたそうだ。
ここからは今私の隣で車を運転中の初老の男性の話だが、
その『何者か』はおそらく【殲滅結社】とかいう反機関組織の一員であるらしい。
そして私達は今からその【殲滅結社】から、機関本部『ナガツカインテリジェンスホテル』を守り抜く……のが任務だとか。

(……それにしてもだ。)
小村はバックミラーで後部座席の二人の少女の様子を見た。
二人の様子は心此処にあらず、といったところだった。
最近の女性のことはよく知らない(アーリーも流行とかに全く興味ないし)が、
二人の服装からして普段からあんな雰囲気じゃないだろう。
なにか衝撃的なことがあったのか……いや、無い筈が無いか。
二人ともその殲滅結社とかに殺されかけたのだ。
しかし、怪我などは織重とか言う少女の異能力で完治しているはず、
私も応急処置だった傷を完治させてもらったが相当な能力の高さ、正確さを持っていた。
だから普通なら復讐に燃えると思うんですが…………まぁもとより他人の心情なんか私は興味ないですし、どうでもいい。

車が病院を出て、数分が経った。
「……守れなかった」
バックミラーを見ると、織重の隣に座っている永瀬の声だったことに気づいた。
「…私……織重ちゃんのこと、守りたかったのに…また……また助けられて……私」
永瀬は顔を伏せたまま言葉を紡いでいった。バックミラー越しなので涙を落としているのかは分からないが、よく見る必要も無かった。
(……こいつ、復讐には燃えているが悪い方向にいってますね…)
しばらく重い空気が車中を張り詰めるように支配した。
27小村禅夜 ◆3LPMHhiq9U :2008/12/25(木) 02:20:50 0
数十分後、永瀬も落ち着きを取り戻していた。
が、しかしさっきまでの重い空気は今も尚車中を支配していた。
「……皆様、そろそろナガツカインテリジェンスホテルの地下駐車場に着きになります。」
沈黙を運転席の男性が破った。
(全く……こういう空気は嫌いですよ…)
(……小村ガ沈黙ヲ破ッテイタラ、更ニ空気ガ悪クナルトコロダッタナ)
(ん?な・に・か、言いましたか?ゴッドバルト?)
(何モ……)
(…まぁ、べつに気にしてませんけどね。)

地下駐車場に入ると、様子がおかしいことにすぐ気づいた。
人が入れみだり、皆何かに驚き慌ててる様子だった。
小村はすぐ車を止めさせ、助手席から外へ出た。永瀬たちも騒ぎに気づき続くように外へ出た。
「全く……何の騒ぎですか!?これは!?」
一応幹部の仕事をしようと状況説明を求めたが結果は―――――誰一人として答える者は居なかった。
(……こんなところで、私の影薄いという設定が使われますか…)
(…マァ、ガンバレ)

「……ゴッドバルト、やってください」
「ワカッタ。」
ゴッドバルトが出現し、拳を上に掲げる。
ゴゴオオオンンンンン!!!!――――
突如ゴッドバルトの拳が爆裂し、とてつもない轟音を地下駐車場中に鳴り響いた。

―――――――――
それによって、今まで混乱状態だった人々が一気に静まり返った。
中にはあまりの音に倒れる人間も居る。すぐ近くに居た永瀬もその内の一人だ。
「さて、なにがあったんで……」
見ると、裸の男性が隅で固まっているのに気づいた。
「あのお方は、確か77折川 雅司様です。」
いつの間にか運転席を出ていた初老の男性が答えた。
「セカンドナンバーですか。丁度いい、何があったか教えてくれませんか?」
質問すると同時に、近くに落ちていた虐殺部隊用の隊員服を手渡した。
横目に気絶していた永瀬が階段で一階ロビーに向かったのを確認するが、ほっておいた。

【小村:民間異能者集団を黙らせ、折川になにがあったか質問】
【永瀬:レオーネの気配を感じ、階段で一階ロビーへ(織重も同行)】
28クロノ ◆SoGLnhQ8WY :2008/12/25(木) 23:32:33 0
>>27
ロビーに来た永瀬と香坂が初めに視界に入ったのは、二人が待ち合わせていたレオーネの姿。
そして次にその妨害と自分達の命を狙った、革ジャンを羽織っただけの半裸のクロノの姿。
>>20そしてその変態ルックのニヤケ面に棘付きの長剣を振り下ろす姫野。永瀬は先程まで自分の置かれていた状況を思い出す。

「駄目!!そいつには――」

そいつには物理攻撃が全く効かなかった。
咄嗟の叫びも虚しく、振り下ろされた剣は革ジャンを裂く音を立てるだけで、幻を相手にしたかのようにクロノの体をすり抜けて床に衝撃を与える。
しかし彼は幻ではない。振り向き様に姫野の手に持った剣を叩き落し、その両手首をまとめ、自分の左手に収めて吊るし上げる格好で浮かせる。

「異能者デ…女性デ…年齢は10代…」

彼はそう言いながら空いた右手を差し出し、姫野のセーターをすり抜け、その肌を胸から"直に"触れながら脇をなぞり背中まで手を回す。
手の位置は背中から脇腹、へそ、さらに股の位置にまで触れて、腰をなぞって尻を撫でる様に滑らせる。
身動きの取れない姫野を前にして、その口元はさらにニヤケを増した。

「80,60,75…やはり貴女でしたカ」

先程まで彼女を撫で回していた手は、途端に殺す為の鋭さを構える。

「下りてくるべきではなかったデスネ」

彼はそのまま手刀を彼女の胸に突き出す。

――その様子を隠れてみていた永瀬は、クロノに対する恐怖の記憶が蘇りつつあった…

【クロノ:攻撃は異能力ですり抜け、姫野の両手を拘束しながら異能力でセーター下着を通り越して、直に肌を触れ回した後手刀で刺す】
29折川雅司 ◆acBW5xlTro :2008/12/26(金) 15:31:52 0
>>19>>27
折川は突然床から生えてきた腕に引きずり込まれ―――


「くっそ…なんなんだ今の奴ぁ…」
背中を打ちつけ、悶絶。
しかも裸というおまけつき。
「ゼッテェー―――今の奴ぶっ殺してやるぜぇ…!」

とは言ったものの、服が無い。
こんな姿で出られる奴の気が知れない。

隅っこで蹲っていると――地下駐車場という広く、密閉された室内で爆音が起きた。
「なんだぁ?今のは…」

辺りを見回すと、男が二人歩み寄ってくる。
スーツを着た初老の男性と、もう片方は…
「…特別な幹部っつー奴だったか?」

幹部から落ちてた隊員服を渡されると、いそいそと着始める折川。
「セカンドナンバーですか。丁度いい、何があったか教えてくれませんか?」
「…ども。助かったッスぜぇ……。
えーっとッスねぇ、ロビーのエレベーター前で与一と一緒にNo.6…レオーネさんと話してたら、突然床から腕が生えてきて。
んでぇ、恐らくは異能力で俺を素っ裸にしてこっちに落とされたんス。
………すると、与一の野郎が危ねぇ!!」

叫ぶと同時に折川は無骨な天井を見上げ、

「俺が落とされたっつーと…敵は丁度上かぁ!」

床から途轍もなく大きい石壁を猛スピードでせり出し―――ぶつける!
その衝撃に天井全体に振動が走る。

「チィッ…『ヘビーウォール』で壊れないってのはどういうことだぁ!」


【折川雅司:小村の質問に答え(?)、すぐに無視して天井の破壊に掛かる】
【恐らく振動は上階に伝わってる】
30 ◆KmVFX58O0o :2008/12/26(金) 21:37:37 0
>>19>>20>>28>>29
曾壁はロビーを一瞥した。ふと、上位幹部である男――――レオーネ・ロンバルティーニの姿が見えた。
曾壁は首を傾げる。彼は確かファーストナンバーの持ち主だ。それほどの人物が、本社に出向くとは非常に稀な事だ。
それほど本社を襲撃せんとする組織は厄介なのか。曾壁の頭に小さな不安が過ぎる。
だが同時に、浮き足立つような予感もしていた。それほどの相手と闘えるとあれば、異能者冥利に尽きるというものだ。

と、そのレオーネと話している二人組を見かける。双方の表情からして、親しい仲では無さそうだ。
一人は気だるそうな表情の女性、もう一人はパンキッシュな髪型の男性。曾壁はその二人の能力を何となく見極める。
男性のほうは大した事は無さそうだが。女性の方はそこが知れぬものを感じる。――――だが、何故だろうか。名前が浮かばない。
仕事上、組んだ事が無い――――と思ったが、すぐに打ち消す。そもそも自分の事を知っている人間が、機関内にはあまり居ないのだ。
自らの異能力と、行っている業務上、人に名と顔を知られるのはあまり好ましくない。そう思い、自分から他人を拒んできたのを忘れていた。

さて、特にコレといった変わった点は無さそうだ。レオーネ含む三人から目を離し、曾壁は場を離れようとした――――その時。
>「   折川君っ!!!   」
甲高い叫び声が聞こえ、曾壁は三人の方に顔を向けた。両手で、高橋と後藤に動くなと静止のポーズを掛ける。
―――――曾壁は自分の目を疑った。なぜなら、先ほどレオーネと話していたの姿が消失しており、尚且つ男性が羽織っていたジャンパーを着た……。
下半身をさらけ出した、金髪の男がレオーネと女性の目の前で慄然とそびえ立っていた。女性の瞳孔が見開くのがはっきりと分かる。

地下だと……? そんな馬鹿な。地下には異能者の軍団が待ち構えていたはず。いくら優秀な異能者でも、あれだけの軍勢を抜けるのは安易じゃない。
まさか……。曾壁は視線を床に移した。この下には地下駐車場と一階を挟んだ下水道が流れている。それにしても奇妙だ。
下水道を金髪の男が通ってきたのは明らかだろう。だが、それにしても金髪の男の真下にまったく亀裂が無いのはどういうことだ?
あれではまるで…・・・まるで、通り抜けたかの様だ。曾壁は金髪の男の位置と、先ほど男性の立っていた位置を思い浮かべる。
31 ◆KmVFX58O0o :2008/12/26(金) 21:38:11 0
そしてハッとする。男性と入れ替わった……。それも手品の様に完全に。あの男の異能力は――――物質を介せず貫通する能力か。
コレは非常に厄介だと、曾壁は思う。あれほど自在に異能力を使える男だ。生半可な攻撃なら簡単に無効化させるだろう。
そもそも物質攻撃は、あの男に対して何ら意味の無い攻撃となる。有効打を与える為には、金髪の男が無効化出来ぬほどの攻撃を与えるしかない。
だが、残念だがここにはそれを行える武器は無い。――――否、手はある。非常に被害が大きくはなるが。
そもそもその為に、私は後藤と高橋という護衛を立てたのだ。最初は柄にも無く驚いたが――――何て事は無い。曾壁は微笑んだ。

思考を数秒繰り広げ、曾壁は三人、いや、レオーネと女性、それと敵である金髪の男の方に視線を戻した。
すると女性が、頭上天高く、巨大な長剣を数本作り出すと、金髪の男目掛け力強く振り下ろした。
何を無駄な事を――――。曾壁は女性の攻撃を冷ややかな目で送ると、傍らの赤髪の少年、後藤を引き寄せ、耳元で囁いた。
「あの女性の攻撃はおそらく失敗するでしょう。その時、私が指示しますから、存分に貴方の異能力を発揮してください」

曾壁がそう言うと、後藤は無言で頷いた。と、曾壁は後藤に指示を出すとふっと眉間を寄せた。
このまま後藤に異能力を使わせては、女性まで殺す事になる。同胞殺しは重大なペナルティとなってしまう。それは非常に困る。
横で直立している高橋を右手で呼び寄せ、先ほどと同じく耳元で囁く。
「それと高橋さん。貴方にもお願いです。もしあの女性が攻撃されたら、貴方の異能力で救い上げてください。貴方なら出来ますよ」
高橋も後藤と同じく、無言で頷いた。曾壁は二人の顔を一瞥すると、男と女性の戦いを改めて見計る。

案の定、女性の攻撃が金髪の男の体を貫通し――――紙一重で、金髪の男の手刀が、女性の胸元を貫いた。
「では、いってらっしゃい。高橋さん」
曾壁が高橋の肩を叩く。高橋は両手を合わせるとゆっくりと引き離す。その間には黒いボールのような物が生成されていた。
両手を広げながらその物体をバスケットボール程度の大きさにする。そして高橋は走りながらその物体を、女性と男目掛けてぶん投げた。
その瞬間、金髪の男と女性の周囲のみが暗闇に覆われた。高橋はその空間に突っ込むと――――女性を抱きかかえて空間から抜け出た。

「ブラボー、高橋さん。それでは後藤さん。おろかな蛮族に、鉄槌を下しましょう」
曾壁が指を鳴らすと、後藤が高橋と入れ替わるように男目掛け疾走する。そして両手を地面に着き、空転すると――――。
一気に体を膨張させ、男目掛けて叩き落ちた。後藤の攻撃は男の異能力を物ともせず――――男の体もろとも、地下駐車場に落とした。
数秒の風塵後、曾壁は閉じていた目をゆっくりと開けた。そこには男の姿も後藤の姿も無く、巨大な穴がぽかりと開いているだけだった。

「……勝ったな」
曾壁ははっきりとそう言うと、口元を歪ませた。
【曾壁:高橋と後藤を使い、クロノを攻撃】
【高橋:異能力を使い、クロノに攻撃された姫野を救出】
【後藤:異能力でクロノを押しつぶし、地下駐車場に落とす】
32恋島達哉 ◆KmVFX58O0o :2008/12/26(金) 22:05:57 0
>>21
ん……神父さんが……俺を運んでくれてる……のか? 呆然とした意識の中で、俺は神父さんが運んでくれてる事に気づく。
神父さんの荒い息が聞こえてきて申し訳なくなる。無駄な体力使わせてしまいすみません……。
しばらく行くと、教会? いや、教会が見えてきた。神父さんの自宅なのだろうか。

ってゲホッ! 何か凄い塩臭いと言うか……。教会に塩まくって宗教的に大丈夫なのかな……。まぁどうでも良いけど。
神父さんは右往左往すると、整然と並べられた長椅子に寄ると、丁寧に俺の体を座らせた。あぁ、ぼんやりしてきた……。
そのまま神父さんは俺から離れると、自室に戻るのかどこかに行ってしまった。暖房が効いてないのか寒いは寒いが、外よりずっとマシだ。
俺は長椅子の上で仰向きに体を寝かした。当たり前だがごつごつした感触がキツイ。けれど、寝れる場所があるだけ……幸せだ。

それにしてもあの神父さんは何者なのだろうか。ぶっちゃけ身なりからして、堅気の気がしない。
けど、見ず知らずの、尚且つ訳分からず喚いた俺を助けてくれるって事はすげえ良い人だって事は分かる。
なんだろう、俺、神父さんと面識が全く無いのに、妙に懐かしい感覚がする。この感覚……どこかで……
何時の間に、俺は目を閉じていた。体が心より先に反応しているのだろう。もう無理すんなって事か。

なら素直に休息を取るぜ。俺は寝転び、じっと目を閉じた。もうガタガタだぜ。色んな所が。
でも四日目……どうしようかなぁ。機関には戻れないし、かといって戦うにも心もとなさすぎる。
誰か知っている人にでも会えればいいのだが。知っている人……駄目だ、知っている人は浮かぶが、だからって会えるとは限らない。
とりあえず……。

「死なない……様にするか」

そう呟き、俺は意識を深い深い闇に落とした。
【現在地:教会】
【就寝】
33姫野 与一 ◆LuqsQs0P4w :2008/12/27(土) 11:31:26 0
>>28>>29>>31

>「駄目!!そいつには――」

誰かが私を呼び止めていた。だが、この腕はもう止まらない、止めない。
結果がどうなろうとこの衝動は抑えられない

だがその一振りは――アイツを貫通して、叩き落された。
気付くのが遅かった…アイツは矢が刺さっても自分の体を貫通させていたんだ。
多分火から逃げ出したのも、折川君を地面に沈ませたのも全部アイツの能力で地中に逃げたから。

私はアイツに両手をまとめられ左手で吊るされるというなんとも情けない格好となってしまった
直後、私に何をするのかと思ったら――私の肌を直に触れてきた――!

>「異能者デ…女性デ…年齢は10代…」

「んっ…」
変態とか痴漢っていうレベルじゃない。コイツは!
空いている足で一蹴り入れてやりたかったが――力が入らない。
当たり前。後先考えずに難しい形状の、しかも弾丸としては不相応な代物を創ってしまったんだ。
強い疲労で力がまったく入らない。アイツの手が私を殺す為の手つきに変わったのが見えた。

「80,60,75…やはり貴女でしたカ

下りてくるべきではなかったデスネ」

「くっ!放せ!放せぇ!」

アイツの手刀が私の胸の中心目掛けて―――刺した。
34姫野 与一 ◆LuqsQs0P4w :2008/12/27(土) 11:32:17 0
ビルの前には二人の男。おそらくここの警備の者だろう。
その二人がこちらに気付いて左右から向かってきたが――

「時間がないのでな。貴様らに構ってやるほどの暇は無い!」
「踏み台からのー…二段ジャンプ!」

妹が右、俺が左から来た男達を踏み台にし、その勢いで更に跳躍して
入り口のガラスの扉を切裂いた――

中に入るとそれは無残な光景だった。
俺の後ろには十人程の黒ずくめ集団。幸いこちらには手を出してこないようだ。
エレベーター付近には巨大な大穴、そこに立ち尽くしている金髪の男
それらを見ている三人の男。しかも一人が抱えているのは――

「「与一!」」

彼女は胸から多量の血を流していた。顔も青ざめているが心臓には当たってなく、即死は免れている
俺はこの男から与一とバッグを預かり、このビルを出た。

―――――

身体能力が強化されているとはいえ、自分より遥かに大きい人を運んで走るのは辛かった
ビルから離れ、体に鞭を打ち中央の国道を走っている。とにかく安全な所を目指して。
人気の無い所。家は駄目だ。扉は切り裂いてしまったし、与一の仲間が連れ戻しに来るかもしれない。
時刻は深夜なので辺りはすでに暗闇。俺たちは近くの茂みへと身を潜めた。ここは何故か妙に塩の臭いが強かった

「ハチィ…与一はどうなっちゃうのぉ…?」
「……大丈夫だ。俺に案がある」

そう。この異能力を使えばきっと――

【ナガツカインテリジェンスビル一階ロビー→茂み(教会の近くとは気付いていない)】
【与一共々逃走】
>>13>>15>>19>>20>>28>>31

>「あ、No.77の折川ッス。多分初対面ッス、宜しくお願いですぜぇ。
>No.6のレオーネさんについては色々と聞いていたんでちょいと呼びかけてしまっただけッス。
>…にしても、て…じゃなくて貴方が参加するなんて、今回の敵はどれだけ凄いんスかぁ?
>こいつがはりきっちまってよぉ……ん、おい、大丈夫かぁ?与一ぃ?」

そう言って折川は姫野の背中を心配そうに擦り出した。
仲が良いのは良い事だ。

別のエレベーターの開閉音が聞こえたので視線を向けると、
そこには虐殺部隊の黒いスーツに身を包んだ二人と共に、
凡庸な雰囲気のする男が降りてきた。三人とも異能者である事は間違いなさそうだが……。
視線の外から折川の声が聞こえる。

「……なんかいけ好かねぇ奴だなぁ…っと、そういえばどうすんだったっけなぁ?
すんませんがNo.6、何か知りませんかねぇ?」

恐らくあの三人も私と同じ様に本部の防衛に刈り出されたのだろう。
虐殺部隊にも別の任務があるが、この非常時だ。本部防衛が最優先とでも命令されたのだろう。
同時に折川を、思った事を口に出さずにはいられない男なのだと感じた。

私は折川の問いに対して、彼の与えられる情報のレベルの範囲内で答える為、彼の方を振り向いた。
――が、折川の姿が消えいた。いや、正確には消されたというのだろう。
にゅっと伸びた白い腕……それは徐々に体の全貌を明らかにしていく。
あのシルクハットの男が、折川と入れ替わるように地面から生えてくる。
男はつい先程まで折川が身に付けていた衣服を手に取ると、袖を通し始める。

>「また会いましたねレオーネサン」

「これはこれは……。奇遇だな」

こいつの異能は物体を透過する力。しかし、常時発動型ではない。
ならば、奴の異能の発動条件を見極める必要がある。
奴がこのタイミングで本部に現れ、尚且つ機関の人間に対して攻撃をしたという事は、
この男は間違いなく敵勢組織『殲滅結社』の人間なのだろう。
だが、こいつ一人という訳ではない筈だ。……奴の仲間は何処だ?
>>35

辺りには酷く腐敗したような臭いが立ち込め出している。
明らかにあのにやけた顔の男が発生源であろう。
この臭いは下水道だな。――という事は奴の仲間は地下駐車場か。

次に気になるのは姫野の様子だ。折川が"落とされて"から若干脈拍が上がっているようにも見える。
仲も良かった事だし、ショックが大きいのだろう。
しかし、彼女の取った行動は、ナンセンス以外の何物でもなかった。

巨大な剣を作り出して攻撃したまでは良いが、
それらは全て虚空を貫く。代わりに男の鋭く槍のような手刀が姫野の体を貫いた。
この状況下では相手の手札を読む事が先決となる。
感情に流されて判断を鈍らせたな。……惜しい事を。

だが、次の瞬間先程の黒服のうちの一人が両手にブラックホールを思わせる黒い球体を作り出すと、
それを姫野とシルクハットの男目掛けて勢い良く投げつけた。

黒服はその空間に手を突っ込むと、姫野だけを救出し、
それに替わるようにもう一人の黒服が敵目掛けて疾走する。

黒服が新体操の選手のように軽やかな動きで宙を舞う。
次の瞬間、彼の体積は膨張し、敵目掛けて文銅のようにして落下した。
常時発動型ではないのか異能を使う暇も無く、
巨大な重石と化した黒服と共に大理石の床を突き抜けていった。
恐らくはにやけた顔を一気に下の階まで叩き落したのだろう。

>「……勝ったな」
眼鏡を掛けた凡庸な男が呟いた……。
いや、まだだ。奴は異能だけでこれまで生き残ってきた訳ではない筈だ。
そのタフネスさも要素の一つだろう。体中を蝕んだ傷跡を見れば良く解る。

「――実際に死体を確認してから勝ったという言葉を口にするものだ。

 ……恐らく奴はまだ生きている」

下の階、地下駐車場か。
一通り思案を張り巡らすと、私は階段を降りて行った。
あの男だけではない、奴の仲間も居る筈だ。
私の計画を、理想の世界を邪魔される訳にはいかんのだ。

【レオーネ:現在地 ナガツカインテリジェンスビル一階ロビー】
【階段を降りて地下駐車場へ】
37戦場ヶ原&屡霞 ◆u5ul7E0APg :2008/12/28(日) 00:12:48 0
光に包まれた扉の先に見えたものは、大理石が敷き詰められた立派な床と、天高くまで貫く広大な吹き抜けに囲まれた大きな空間。
そこはまぎれもない、猿飛の遺した情報通りの敵の本拠地。
『ナガツカインテリジェンス本社ビル』―――…
その燦然たるな雄姿に眼をくばせる暇もなく、戦場ヶ原と屡霞の二人は、自分たちを囲む無数の殺気に身を固めた。

(我々の突入がバレていた!?まさか罠――…)

屡霞の危惧はしかし、同じように扉をくぐった廻間兄の戦闘態勢を見た瞬間に打ち消された。
彼らは確かに作戦通りの行動だったのだ。ただ、敵もまた上手であったということ。
屡霞がその刹那の逡巡をしている間、戦場ヶ原はただ不敵な笑みを浮かべていた。

「おい、何を迷ってやがる。来るところまで来たんだ。こんな雑魚ども相手にしている暇はねぇ。」

そう言って彼が顎をしゃくった先からは、機関の証である黒いスーツを纏わない者たち―――すなわち一般の異能者たちが、その表情に色を乗せずにこちらににじり寄ってくるのが見えた。
その瞳はどこか虚ろで、さきほど闘った虐殺部隊戦闘員たちを、屡霞は思い出した。

「俺をここに連れてきた連中の思惑なんざ知ったこっちゃねぇ。俺は俺の目的を果たすだけだ。
 リンを助け、城栄金剛をブチのめす――…その邪魔をしようもんなら、たとえ相手が貴様でも、俺は容赦しねえぞ。」

そう言って鋭い眼光を強気に光らせる戦場ヶ原。気高く振舞ってはいるものの、彼がこの1日で蓄積したダメージは相当なもののはずだ。
こんな状態では、金剛はおろか、迫りくる有象無象の衆さえもさばき切れるかどうか…。

「戦場ヶ原…、やはり今のキミの身体では…」
「うるせェぞ!!今は目の前の敵だけを見てろッ!!!」

身体を案じる屡霞を尻目に、戦場ヶ原は眼前の敵の渦へ身を躍らせた―――…

【戦場ヶ原:現在位置:ナガツカインテリジェンスビル1Fロビー奥】
38宮野 光龍 ◆LHz3lRI5SI :2008/12/28(日) 13:06:43 0
>>25
(鳳旋の関節が燃えてる…これがあいつの能力か…)
とか考えていると
いつの間にかイモ男がコンクリートに激突していた。鳳旋はかなり強いらしい。

するとイモ男がキレて叫びだした
>「糞がぁぁぁぁ!どいつもこいつも俺様を馬鹿にしやがってぇぇぇぇぇ!
あぁそうだ!アイツもそうだった!俺が気に入らないとか言って散々リンチしやがった!
てめぇもだ!説明してるのに人の名前を何回も間違いやがってぇぇぇ!」

半分以上聞いていないが逆恨みらしい。
そんなこと思いながら足元の小石を蹴って遊んでいると
>「光龍!気をつけろ!デカイのが来る!」
と鳳旋が言ってきた。

前を見ると巨大な光鋸がこっちに飛んできた。
>「しぃぃぃぃぃねぇぇぇぇぇぇ!」
「マジで死ぬわあああああああああああ!!!」
と言って横に全力でかわす。
「…おいイモ男。お前そんなに死にたいのか?」
と言って近づく。さっきのが全力ならもう攻撃できないだろう。
「来るんじゃねェェ!!!」
と言って殴りかかってくる。能力の使い過ぎで動きも遅くなったのか… 哀れだ。
ひらりとかわして、銃を構える。
「バイバイ。イモ男」
その瞬間イモ男の頭が吹っ飛んだ。

【スーパー唯能前】
【イモ男を殺害】
39神野 沙羅 ◆LHz3lRI5SI :2008/12/28(日) 13:21:22 0
どうやらルナちゃんの説明によるとルナちゃんは「幽霊」みたいなものらしい。
もっと細かく聞きたいがあまり追及されたくなさそうな顔をしていたのでやめておいた。

ガラス工場近くに行くと三匹の犬が出迎えてくれた。
「ルナちゃん!犬だよ!」
とはしゃいでいると、ルナちゃんが
「危ない!!」と叫んだ。

何とその犬が3匹飛びかかって来た。とっさに拡散を使いはじき返す。
よく見ると犬ではなく狼だった。牙と爪が鋭くおまけに動きが速い。

「ヴゥゥゥ―!!」
と低く唸って攻撃のチャンスを見計らっている。
1匹が合図のように「ワン!」
3匹同時に突っ込んで襲いかかってきた。

1匹は何とか拡散で弾き飛ばしたが残りの2匹が背後の回って襲いかかって来た。

拡散が…間に合わない!!!

【ガラス工場前】
【拡散が打てずにピンチ】
40 ◆SoGLnhQ8WY :2008/12/28(日) 17:01:29 0
>>30-31
曾壁の指示で膨張した後藤が、クロノの上から降り床に穴を開ける様が、幻十にはビルの外から伺えた。
>>34>>36-37
その後すぐレオーネが階段へ向かい、どこからかやって来た二匹の犬とこちらにいた戦ヶ場原が突入していく様も黙認する。
その様子を正面玄関口に配置されていた虐殺部隊の格好をした異能者達はただ混乱しながら見送っていた。

「何をボケッとしてるんですか!!その男を入れてはいけません!!」

その様子に気付いた曾壁は戦ヶ場原を止めるように敵異能者達に合図する。
そしてそちらに敵異能者達の注意が向いた時に幻十も合図する。

「突入する」

自分を先頭に池上、統時、屡霞もビルの中へと向かう。その様子に気付いてさらにどうすればいいか混乱する敵異能者達。
異能力を持っていると言っても、統率の行き届いた兵士でもなければ確実な洗脳による統率力もない、
赤の他人同士の一般人の感情を煽っているだけであり、不測の事態に守備に不具合が起きるのは当然である。

「あ〜!!!何をやって――」

曾壁達のこの様子に幻十は敵異能者の正体が機関の人間でない事に気付く程ではないが、
兵士とも呼べない兵士を使わざるを得ない状況に機関の構成員が不足してきてる事は確信した。

そして床に開いた穴から見える、血塗れの手を掲げて膨張した男の上に立っているニヤケ面がやられているという考えは最初から無かった。

幻十はクロノを冷たい視線で見据えながらもその場で『亜空の扉』を開き、そこからロープを取り出しながら床穴から階下に下ろす。
クロノは足元の膨張した男の着ていた黒服を掴んだ状態でロープに?まり、引き上げられると穴を開けられて血の付いた黒服と中シャツだけを持って上がる。
服を放ってロープからジャンプし、その服と接触する際に異能力ですり抜けて、ちょうど着る形になった時に異能力を解いて同化する。

「そろそろズボンが欲しいところデスネ」

上半身だけちゃんとした格好の相変わらずの下半身丸出し変態ルックで、クロノの視線は曾壁へ向けられる。


その混乱の中で、烏合の衆の中の異能者が一人冷静に力を溜めつつある事に気付く者はいなかった。

【廻間幻十:池上、統時、屡霞と共にビル内突入、クロノを地下からロープで引き上げる】
【クロノ:後藤が床に穴を開けた事で地下に落ちるも、押しつぶされるのは異能力で回避しその胸を貫通。その黒服を上だけもらう】
【正面玄関に配置されてた虐殺部隊スーツ着用異能者10人の内9人混乱。1人は力を溜めている】
41 ◆SoGLnhQ8WY :2008/12/28(日) 18:10:14 0
>>40訂正
ロープに?まり→ロープに掴まり
42池上 燐介 ◆qqu0tZFsYU :2008/12/28(日) 23:27:51 0
空間の裂け目を抜け、辿り着いたその場所は、『ナガツカインテリジェンスビル』だった。
俺にとって予想外、というよりは、正に予想通りというべきだろう。
(夜叉浪とかいうあの男がここにファーストナンバーが集まっているとか言っていたが、
なるほど……やはりここが機関の中枢だったというわけか)

しかし、敵の一人がこの場所を敢えて漏らすような真似をしたのだから、
彼らにとっても我々の襲撃は予想されていたはずだ。
城栄のもとへと辿り着く為には、事前に幾重にも張り巡らされた罠を突破しなければ
ならないということは、想像に難くない。
だが、そうは思いながらも、どこか心のうちで楽にいきたいと願っていた俺には残念というべきか、
そんな罠の存在が現実のものであるということに直ぐに気づかされるのだった。

一つ、二つ、三つ──薄暗い視界の中でもはっきりと分かる程の複数の異能者達が、
手ぐすねを引いてこちらを見据えているではないか。
だが、ここまで来た以上、立ち止まるわけにもいかない。このまま、強行突破するのみ──。
そう結論付けたところで、廻間の兄が突入を合図した。
同時に『亜空の扉』を通った侵入者達はビル内への突入を開始する。
それを見た敵は、さほど戦いの場に慣れていないのか、不自然と思えるほど狼狽している。
突入と同時に敵が一斉攻撃を始めることは決定事項であるかのように考えていた俺は、
思わず拍子抜けといわんばかりに鼻で笑みを零した。
(フッ……ボンクラが。山田の「雑魚」という認識は間違ってはいなかったということか)
──が、そう確信したのも束の間。次の瞬間には、思いもよらぬ攻撃が俺達を襲うのだった。

「侵入者は……排除……! 消えうせろ……!」

誰が発したのか、突然の排除通告──。思わず足を止めて警戒するが、時既に遅し。
ビル一階全てを照らすような強烈な光がどこからともなく発せられ、その光は俺達侵入者を
あっけ無く包み込んだ。勿論、それはただの光ではなかった。まるで光に溶け込むような、
光と一体化していくような感覚に支配され、瞬時に体の自由を完全に奪われたのだ。
それどころか、徐々に意識さえも朦朧としていくようだった。
(──なに! この光は──)

──敵も、狼狽しなす術なく侵入者を突破させるような奴らばかりではなかったということだ。
ましてやここは敵の、機関の中枢──決して油断してはならなかったのだ。
これは、その報いというべきなのだろう──。

「し、しまっ────」

謎の光が体全てを覆いつくした時、俺の視界は真っ白に染まり、同時に意識が途絶えた。
そして、ビル一階を覆いつくした光が消えた時、ナガツカインテリジェンスビル一階に現れた
侵入者達の姿はどこにもなかった──。

【池上 燐介:謎の光を浴び、ナガツカインテリジェンスビルからどこかに瞬間移動させられ、意識を失う】
43 ◆KmVFX58O0o :2008/12/29(月) 00:43:38 0
戦闘終了――――。曾壁は地下に後藤と共に墜落した金髪の男の末に何ら不安を感じてはいない。
おそらく後藤の命は潰えただろうが、金髪の男は間違いなく圧死したはずだと、信じて疑わなかった。
すると勝利を誇っていた曾壁に、冷ややかな口調でレオーネが呟いた。

>「――実際に死体を確認してから勝ったという言葉を口にするものだ。
  ……恐らく奴はまだ生きている」
曾壁はレオーネの方に視線を向ける事もなく、ぽっかりと空いた大穴を冷淡な表情で眺めていた。あくまで表情は。
レオーネは自らの言葉を実行する為か、地下駐車場へと走っていった。曾壁は鼻を鳴らして高橋に向き直る。
「……ん? どうかしましたか?」
何故だか高橋が呆気に取られた表情を浮かべていたが、後藤の異能力に驚いたのだろうと解釈しておく。が――――。

曾壁は表情こそ崩さないものの、高橋異常に呆気に取られていた。あれほど見下していた蛮族達がビル内に堂々と侵入してきたのだ。
配置し、「壁」として機能する筈だった異能者軍団は、蛮族たちの異能力に割を食ったのか各々で混乱している。
曾壁は声を荒げ意識を統一しようとするが、所詮一般人。一度パニックの坩堝に嵌れば脱出する事は容易ではない。
「高橋さん、今すぐ者どもに最大級の――――」

高橋に指示しようとした矢先、曾壁は驚嘆する。後藤と男が落ちた地下駐車場に向かって伸びている。異様に長く、尚且つ太いロープが。
しかも伸びているロープの先には綱出を掴んでいる人間はおらず、雲のように浮かぶ不思議な空間が広がっているだけだ。
恐らく、いや、考えなくとも分かる。あの男の仲間が発している異能力だろう。どちらにしろ、あのロープを切らねば……。
曾壁が対処方法を考えようとした手前、何者かがロープを伝ってきた。――――やはりか。

後藤によって殺されたはずの男が、後藤の物であろう血まみれの黒服を羽織り、1階に昇ってきた。
その目には余裕があり、尚且つ曾壁に対して挑発めいた視線でもあった。その時の曾壁の顔は、初めて憤怒に満ちていた。
「き、貴様――――」
曾壁は掛けていためがねを取り、男に対しての精神攻撃を仕掛けようとした――――その時。

1階ロビー、否、1階全てに、眩い光が炸裂した。それも爆発するような凄ましい光だ。曾壁は耐え切れず、その場に転倒した。
他の異能者たちもバタバタと光に耐え切れないのか、糸の切れた操り人形の様に倒れていく。曾壁はどうにか体を起こそうとするが起き上がれない。
次第に意識が遠のいていく。消えかかる意識の中で、曾壁はこの攻撃が蛮族達の仲間による攻撃なのかと思ったが、違う。
この異常事態の中で一人だけ、頭を抑えながら仁王立ちする――――虐殺部隊のスーツを来た人物がいたからだ。

一体それが誰なのか、曾壁は全く見当が付かなかった。だが一つだけ分かる事がある。
拉致した非力な異能者の中で、これほどの力を持つものがいた事を配慮しなかった以上――――自分の敗北だと。

突如、彼彼女達を襲った光が緩やかに消滅していく。そこには何も残らず、奇妙な静寂だけが息を潜めていた
【後藤:クロノに刺され絶命】
【曾壁・高橋・異能者軍団:謎の光の発現によって消失】
44クロノ ◆SoGLnhQ8WY :2008/12/29(月) 21:51:50 0
>>42-43
敵の光によってビルのロビーにいた者は全て飛ばされた。
さすがに不意に光速で発動した異能力に反応は追いつかず、クロノも例外なくその力を受け、どこか人気の無い場所にいた。格好は先程までと変わらない。
その傍らには廻間幻十が腕で目を覆う格好で寝そべっていた。クロノを地下から引き上げた顔見知りの仲間。

「……」

クロノは戸惑う事無く幻十の胸にに手刀を突き下ろす。
幻十は胸の前に空いた手を持ってきてそれを受け止めるように構えると、その手に触れる瞬間クロノの爪が削れた。
即座にクロノは手刀を引いて後方へ宙返りしながら離れる。
寝込みを襲われた事に幻十は何も言わない。これが敵の襲撃だったら対応できなければ自分が悪いのだ。
そして近くに仲間がいてもそれは同じ事。
彼らは機関殲滅の為に情報を共有して、リーダーに従って作戦を行い、敵を倒す事にだけ力を合わせる。
自分の身は自分で護る。そこに仲間内での協力関係はない。

「あの異能力…メットをしていた敵も光を受けて飛ばされていたのデ、目を隠せば防げるようなものでも無さそうデスヨ。
 …まあ私にあの手の技は二度通じないので安心してくだサイ。次の機会には先に殺しておきマス」

クロノの言葉に言い訳も謝罪も無く、先の現象についての見解を述べるだけ。
機関の構成員も減ってきているが、上記のような事を当たり前の事としている為、我がレジスタンスの構成員も少数精鋭を極めている。
レジスタンスメンバーの死因の半分は敵ではなく味方…いや、クロノ一人にやられていると言っていい。
それを生き残った仲間内で知らない者などいないが、それでも彼を裏切り者として扱う真似はしない。
野に放ってしまえば再び一般人を殺して回る殺人鬼に成り果てるであろうし、何かの間違いで藤堂院神のように機関に復帰でもされたら事だ。
それに彼の言った事ははったりではない。彼にはそれだけの能力がある。
言うなれば処分された仲間は、強力な悪魔を手元に置いておく為の生贄。
そんな暗黙の掟も伴い、このレジスタンスは元機関に所属していたという罪を持つ者だけが正式なメンバーになる事を許されている。
なので異能力の維持の為に、無関係の一般人を定期的に生贄に捧げる敵幹部の男よりはまだマシとも言えなくのない。

「明朝、人員を揃え直し再度攻める。その時は頼んだ」

幻十はそれだけ言うと『亜空の扉』を開いて、その中から黒い長ズボンをクロノに投げ渡すと、自分も中に入っていく。
クロノはそれに続かず、渡されたズボンを履いた後、夜の街へと深けていった…

【廻間幻十:クロノと一緒に飛ばされるものの『亜空の扉』で再び離れる】
【クロノ:飛ばされた後ズボンもらって夜の街へ深けこむ】
45姫野 与一 ◆LuqsQs0P4w :2008/12/30(火) 13:14:24 0
「俺の能力でこの体を与一の体と融合させ、彼女の体を修復する。
体を失った俺の魂は欠片となってお前の心に残るだろう。」
「ハチ!行かないでよ!ハチィ!」
「与一を守る役目、後はお前に全て、託したぞ――――」

ハチの体は無数の光になり、与一へと降り注いだ。
彼女の体はこの真っ暗闇のなかで眩い輝きを放っている。
私は泣きたかったけど…涙は出なかった

―――――

…目が覚めたらなぜか周りは草だらけ。だから寝心地が悪かったのか…
辺りはまだ薄暗くて日も出ていた。でもこの辺、人がいない。
あの後、確か…エレベーターの前でアイツに刺されて、死んだと思ったのに…

「…折川君は?レオーネさんは?アイツはどこ?…ここは…どこ?」

バッグが頭に敷かれていて隣にはポチが眠っている。遠くの方にはあの大きなビルが見えた。
目の前には大きな白い壁…じゃなくて建物。ここはどこかの建物の裏?
私はまだ生きているらしい。ハチ、ポチがここまで連れてきてくれたんだね…ハチがいないけど…多分散歩に行ってるのかな
体を起こそうとしても、体が痛み出して起き上がるのが辛い。
まだ疲れが残ってる。それに刺されたんだから当たり前か…寒いけど…もう一回…

…一瞬だけ見えた手が、真っ黒い毛で覆われていた気がするけど…きっと疲れているんだろう。もう寝よう…

【場所:建物(教会)の裏】
【明朝4:00頃】
46??? ◆KmVFX58O0o :2008/12/30(火) 22:43:26 0
「俺」の勘が鈍りすぎていたのか、それとも対外から「俺」の目覚めを阻止していたのか、まさかココまで状況が悪化しているとはな。
このまま、「彼」が戦い続ければ、その先に待つのは間違いない、無慈悲な死だ。
本音を言えばこのままこの状況から逃げたい所だが、どうやら奴さんは本気モードになってしまったらしい。
昨日のあの男の存在は、今後も「彼」にとっては重大な障害となるだろう。この町を出歩けばまた何れ、出会う事になるのだから。

だが「俺」が心配なのはそれだけじゃない。
最近の「彼」の動向や、思考から察したがとうとう…・・・記憶が混同し始めたようだ。
元を辿る事は今やると非常に面倒だし、「彼」の今後を考えて止めておくが、もし今「彼」の持つ記憶が戻る様な事があれば厄介な事になるだろう。
厄介で済めば良いが……無理だろうな。もしそうなった場合、「俺」は「彼」を……。
まぁ、今は良いか。それより「彼」を今後どう生き残らすかを考えなきゃな。もう例の期日まで時間も無いし。

取りあえずこの二日間で「彼」が「俺」を目覚めさせてくれたのは好都合だ。間違いなく昔の状態だったら、「彼」は死んでいたからな。
だがまだ足りないな。奴さんの存在が日にちを追う事に脅威的になってやがる。どっちにしろ状況は好転しちゃくれない。
本気で追い詰められる状況が来ない限りな。そう思うとちょくちょく遭遇している気がするが、まだまだそれには達していないんだろう。
出来れば会わないまま、この町から抜け出し「彼」の望む平穏な日常に戻してやりたいがな。「俺」自身の望みとしても。

……もうそろそろ太陽が上がるな。そういえばもう四日目か、この町に来てから。
「俺」がたたき起こされるほどこの町に来てとんでもない事が起こったが、もう「俺」自身はこりごりだ。
「彼」を平穏な日常に返してやりたい。そう、何の代わり映えのない、退屈で緩やかな日常にだ。

つっ、少し思考を広げすぎたか……仕事に戻ろう。「彼」を守る為にも。
そして願わくば、何の怪我もアクシデントもなく、例の期日を乗り越えられる様、願うだけだ。
47恋島達哉 ◆KmVFX58O0o :2008/12/30(火) 22:45:15 0
>>45
……あ、・・・・・・あ〜……あ? 目を何度か閉じたり開いたりする。そしてグッと強く目を閉じ、もう一度開ける。
ええっとココは……あぁ、そうか。俺、確か昨日、親切な神父さんに助けられたんだ。それでこの教……って臭ぇ! 
俺は起き上がって早々激しく咳き込んだ。そうだ、何でかは不明だがすげぇ塩撒かれてるんだ、この教会。
寝ていた長椅子から降りて、教会を一瞥する。流石に人はいないが、教会だけあってなんつうか…・・・なんて言うんだろう。

そうだ、神聖な雰囲気に満ちていた。真正面の巨大なステンドグラスの聖母さんが眩く……。
いや、ぶっちゃけ蜘蛛の巣が所々引っかかっててアレな感じだが、相当長い歴史を持つって事で解釈しておこう。
そういや神父さんはまだ寝ているのだろうか。周囲の窓に目を映すと、ぼんやりと薄暗い。
結構寝たと思うから、まだ深夜って事はないだろう。って事は……朝方か。空の様子からして4時か5時って所か?

てか塩の臭いがマジで凄くキツイ……。考え事をしながら10回を越す咳払いしたぞ。てか撒きすぎっすよ、神父さん。
なんだか喉がすっげぇカラッカラになってきた。塩のせいかは知らんが。
そういや喫茶店でスパゲティ食って以来何も食ってないな……。財布の入ったバックは薬局に置きっぱなしのはず。
けど薬局まで行くのもなんかめんどいし、それに今すぐこの喉の渇きを潤したい。頼む、入っていてくれ小銭……!

そう思いながら俺はズボンを漁った。それから数秒後……やった、やっとラッキーが俺に巡ってきたぜ!
丁度120円分、俺の掌にある。問題はココからだ。この近くに自動販売機があるかどうかだ。
さっき神父さんと走ってきた河川敷には、それらしきものは見当たらなかったな……。
まじぃ、なんかまた駄目な気がするぜ、色々と。河川敷の方に戻ってみるか? だがそれには凄くリスクを感じる。

何故なら、昨日の狙撃犯が狙ってこないとは限らないからだ。いや、百パー狙ってくると思う。
あんなどうでもいいオッサンを撃ち殺すような無常な野郎だ。俺の事を嬉々として狙ってくるに違いねぇ。
……ええい、ままよ、こうなりゃあ!

俺は教会を出て、裏側の方へと向かった。来た道が危ないならどうするか? 別の道に行けばいいだけだ。
出てすぐ横の壁面に、バーンと自動販売機が仁王立ちしていた。あぁ、良かった。やっぱり俺は付いてる。てか付いてなきゃ嫌だ。
ここまで自業自得とは言え、どれだけの不運に巻き込まれたか。もう痛い思いも苦しい思いもごめんだね。

だが……だが、それで良いのかなぁ……。なんだか俺、国崎薬局の時以来から信念がブレまくりだな。全く定まらない。
「機関」の奴らが許せないのは変わらないが、けど何をどうすれば良いのかが、全く検討つかない。
昨日考えた、「機関」内部に取り込んでは俺のへタレ症で取りやめちゃったし、それに…・・・クロノの存在がなにより、俺の迷いを加速させた。
冷静に考えれば、「機関」の連中は憎き仇な訳だ。そう考えると、クロノのしている事は悪い事じゃない。
だが、違うんだ。何かが。上手く言葉に出来ないけど、俺は……あぁ、考えが纏まらねぇ!

……気づけば俺は教会の裏までとぼとぼと歩いていた。飲もうとしていた清涼飲料水にはまだ口をつけていない。
なんか飲む気になれない。ナーバス? 俺らしくもない。無意識に俺は苦笑していた。ホント、馬鹿だよなぁ、俺。
ん? 何だ? まだ薄暗いからよく見えないが、誰かが横たわっている様に見える。
こんなクソ寒いのに野外で、しかも生身で寝るなんて普通じゃない。……普通じゃないって事は……おい、おいおいおい。
行き倒れかよ、こんな所で……俺はやや警戒しながらも、俺は行き倒れ人にゆっくりと近づいていった。

……怪我はしていないみたいだな。何か物を持っている様子も無い。マジで生身のまんまか……本気で行き倒れか?
俺は行き倒れ人の背中の方に回りこみ、行き倒れ人に呼びかけた。体の感じからして女の人っぽいけど・・・・・まさかな。
「おーい、大丈夫かー? ここで寝てると風邪ひくぞー」
どうでもいいけど思う。暖かい方が良かったな、飲物
【4日目開始:教会裏】
48神重 智@代理:2008/12/31(水) 20:47:03 0
>>24

「アラ、そう、ぬるいわね…」

(ぬるいとよ、先生)
(仕方がない、私たちは今少し能力が不安定なのだから)
敵からの攻撃が奇襲の合図となり、七草は囮を頼んだと言い残して建物を器用に上っていった。

(おいおい…毒蜘蛛かよアイツは……)
(敬…せめて黒猫とかもう少しマシな表現は無いのか)

精神世界の中で会話してる間にも七草は奇襲のために見えなくなった。
そして残った黒服達の男が二人こちらへ向かってきた。

「甘い…正面からの攻撃は無意味ですよっ!」
距離を詰めようとした二人の黒服の男へ重力を放つ。
突然の己の重さの変化に耐えきれず一人の男は地面へ叩きつけられる。
だがもう一人は重力が不安定なせいで、神重へ漆黒の刃を振り下ろす。

「つっ…!」
振り下ろされた刃は神重の腕を切り裂き、腕からは血が噴き出す。
しかしトドメだと言わんばかりの男の刃がもう一度神重に届くことは無かった。

「…………!」
男が腕をもう一度振り上げた瞬間、神重の腕から出ていた血が細く鋭い槍を形成し男を貫いたからであった。
(智…やっぱりお前は……)
(…………)
男はそのまま神重の横へ倒れ、動くことは無かった。
そして地面に叩きつけられた男も、ショック死してしまったのだろう、動きはしなかった。

「ふぅ、先生、終わったわよ」

気がつくと七草が目の前にいた。
奇襲とはいえ、残った黒服の男たちをあの一瞬で潰しきったのだ…やはり並大抵の実力者ではない。
月明かりが彼を不気味に照らし、そのオーラをより一層感じられるものになる。だが―

「さて、それじゃあ行きましょうか、話は、歩きながらしましょう?
 まず、昼間も言ったけど、アナタの目的は何かしら、昼間何かと戦ってたけれど…
 それと、アナタの質問も聞いてあげるわ、私が何者かは、今は話してあげないけど」
七草はそのオーラを振り払い、さきほどと同じく私に話しかけてくる。
そのせいで私の緊張も少々ほぐれたのか

「囮というのはあまり怪我をしないものだと聞くんですがね」
と腕を軽く見せながら嫌味のひとつでも言っておく。とはいえ…既に完治しかかっているのが不気味だが。

「昼間は…あれは私の協力者を探していてね…より私に協力しやすい人物を
 それを敵に阻まれ、味方と別れ手がかりを探してたというわけですよ」

七草の表情を見ようとするが、影に阻まれて上手く見ることはできなかった。
「それじゃあ私から簡単な質問からさせてもらいましょうか…。
 あなたの能力の根源は一体何ですか?」

(…なぜそんなことを聞くんだ?智)
(これから敵になるか味方になるかわからない人物だ…能力を把握していれば色々と有利になることもある)
歩みを進めながらもう一つ質問を思い出す。
「それと、正確には今からどの辺りへ向かうんでしょうか?
 これは知っておかなればならないと思うんですがね」

【神重:七草と歩みを進めながら質問する】
49鳳旋 希一 ◆sJZQ9grsuk :2009/01/01(木) 23:31:36 0
>>38

>「マジで死ぬわあああああああああああ!!!」

と言って全力で横に跳んだ。なんとか回避できたようじゃ。
四方山はすでに疲れ果て、今にも倒れそうじゃった
そろそろ止めを刺した方がよいのかもしれんな。じゃが

>「…おいイモ男。お前そんなに死にたいのか?」

そこに、光龍が近づいていった。
警戒してる気配もなく、四方山の一歩手前で立ち止まった。
彼奴はその行動をどう取ったのか
>「来るんじゃねェェ!!!」
追い払うように 殴りかかっていった四方山。
その拳は驚くほど弱々しく、先程の勢いが嘘のようじゃ。
光龍はそれを軽く避け、どこからか銃を取り出し、四方山の脳天目掛けて発砲した



ガラス工場、自宅の帰り道。男二人買い物帰り。
スーパーの前で人の多いところなのにそこで交戦してしまうとは…
とにかく、四方山の遺体は人があまり通らない路地裏に運び、焼却処分した。

「のぉ、少々質問させてくれんかの?」
質問されるのが分かっていたのか、静かに光龍は頷いた

「先の、四方山を撃った事はオヌシの能力なのか?」

【帰路】
【光龍に質問】
50姫野 与一 ◆LuqsQs0P4w :2009/01/02(金) 13:19:41 0
>>47

…寒くて…寝付けない。多分30分程こんな状態だ。どうしてポチは熟睡できるのかな…
さっきからハチが帰ってこない。ずっと起きているのに物音一つしないなんておかしい。
あまり休んだとは言えないけど体はもう動かせる。自分でも不思議に思う…

ハチを探しに行こうかと思ったけど…寒い。こんな時は手を擦り合わせると暖かい…はずだが
手のひらに変な感触。毛の擦りあう音に、ブニブニした感触
恐る恐る見てみると…手が犬のようになっている…
真っ黒い毛、肉球、若干尖った爪。本当に犬のようだが幸い毛に覆われていない指がちゃんと五本あった。

「まさか………ちゃんと黒くなってる…」

自慢の金髪まで黒く染まっていた…けど、結びの先端は真っ白い。
他にはこれと言った変化がなかった。とりあえず、手は見られるとマズイかも。
バッグの中は菓子パンや日用品、武器などでグチャグチャだったがこの中に…
手袋が…あった。服と同じ白い手袋。爪で破けそうだけど、サイズが若干大きくて助かった
ついでに胸元が真っ赤な服も着替えようかと思ったけど…やっぱり寒くて…やめた。

装弾物語もちゃんと生成できる。後は視力が落ちてなければいいけど…
近くで自動販売機の音がした。人がいる
ポチも気付いたのか片目だけ開き、警戒している。

>「おーい、大丈夫かー? ここで寝てると風邪ひくぞー」

寝たふりをしていると人が声をかけてきた。男の人の低い声。
流石に異能者ではないと思ったのか、ポチはまた眠り始めた。
ここで無視するのも失礼だと思うので上半身だけ起こした。

「んむぅ…おはよう…ござい…ま…す…?」
メガネで老け顔の男の人。…どこかで見かけたかな?覚えてないけど…
なぜかとても悔しい経験をした気がする。けど分からない…

「あのぉ…どこかで会ったことが…?」

【場所:教会の裏】
【4:30】
51戦場ヶ原&屡霞 ◆u5ul7E0APg :2009/01/02(金) 22:48:25 0
>>42
「侵入者は……排除……! 消えうせろ……!」
戦場ヶ原が群がる敵に飛びかかろうとした、その刹那だった。
どこからともなく低い声が響いた。それと同時に、敵の背後から強烈な閃光が迸ったのだ。
「…!!?なんだッ!目くらましかッ!?」
あまりに眩い光に思わず戦場ヶ原は眼をその手で覆い、突撃の足を止めた。
「姑息なマネを―――…!!」
ブラックホールで影を作り出そうと、左手に力を込める。
しかし、生成された黒球は、瞬く間に消えてゆく。
(バカなッ…このタイミングで―――…能力切れだとッ!!?)
一人の異能者が1日に使える異能力は、個人差こそあれ絶対量が定まっている。
規定量を超えて能力を行使しようとすれば、当然能力は枯渇する。無限に湧き出る泉は存在しないのだ。
戦場ヶ原は、この1日の数多の闘いの中で多くの能力を使いすぎてしまった。
もはや今の彼に、抗う力はない。

「戦場ヶ原ッ!!!」

戦場ヶ原の後ろから屡霞が悲鳴に似た声をあげる。
戦場ヶ原は思わず自分の身体を省みた。
(なんだ…これはッ!!!)
光と同化して、消えてゆく己の肉体を見て、彼は狼狽した。
シンギュラリティゼオレムの闇に飲み込まれてゆくように、彼の体は光に飲み込まれていたのだ。
光はみるみるうちに彼の身体を蝕んでゆき、ついにその場から彼は姿を消した。
同じく屡霞も、近くにいた池上もまた光に身を包まれ、その場から姿を消した。
三人の意識はここで途切れた―――。


一方、そこは同ビル上層。
戦場ヶ原と同じ赤い髪をポニーテールに縛った少女が、憂鬱な表情を顔に浮かべて、廊下の窓から貳名市の夜景を臨んでいた。
「天さん・・・。」
煌神リンはぽつりと待ち人の名を呟いた。
彼は今どうしているのだろうか。銭湯で別れた際、そこにはわだかまりがあった。
(どういうことだリン…、お前ッ、機関の関係者だったのか!?)
怒気を含んだ戦場ヶ原の顔が脳裏をよぎる。
もしかしたら、戦場ヶ原は自分のことなど見捨ててどこかへ行ってしまったかもしれない―――…
そんな絶望を、リンは頭をふるふると振って振りはらう。
「…信じよう。今の私に出来るのは、ただそれだけ。」
つよい決意を胸に秘め、リンは夜景を睨んだ。
その時だった。

「おぉおーーい!!誰かぁぁあ!!出してくれよぉぉおお!」

耳を凝らしてようやく聞こえる程度の人の声。
不思議に思ったリンは、その声のもとを探った。
するとその先には、牢獄のような小さな部屋があった。
「誰かいるのか!?頼むよ!ここから出してくれよ!!」
内側からドンドンと扉をたたく音に、リンは小さく肩を驚かせながら、歩み寄って中を覗いてみた。

「あなたは――…誰?」

そこに閉じ込められていたのは、銀色に光る髪に気弱そうな表情を浮かべた、リンと同世代くらいの少年だった。

【戦場ヶ原&屡霞:池上と同じポイントへ飛ばされる。意識を失い、3日目終了】
【煌神リン:ナガツカビル内で『桐北修貴』に遭遇】
52ルナ ◆7VdkilIYF. :2009/01/02(金) 23:51:02 0
>>39
三匹の狼のうち一匹は沙羅が吹き飛ばしたが、残りの狼が沙羅を切り裂こうと飛び掛る……させるかっ!

「うりゃ!」

私は近くに落ちてた石を狼の横っぱらに投げつける。
すると、やっぱりと言うかなんと言うか、石は狼の身体をブチ抜いて壁にめり込んだ。
石に貫かれた狼は力なく崩れ去り、血を流しながら落ちる。
もう一体の狼は……咄嗟に履いてた靴を脱ぎ、それで殴った。
殴られた狼は地面にめり込む。気絶したか死んだかは分からない。それ以前にどうでもいい。
沙羅が弾き飛ばしたのがまた襲い掛かってきたが、これも殴ってめり込ませた。

「やりすぎた?」

貫かれたのとめり込んだのを見て、靴を履きながら呟く。
ハッキリ言って私の力は神族でもかなり上位にランクインする。
「そんなのが女神でいいのか」と統時は言ったが、いいんだからしょうがない。
……どうでもいいけど、靴の底が磨り減ってきたわね。

「それにしても危なかったわね……まさか、動物までもが襲い掛かってくるなんて。
 腕のいい調教師でもいるのかしら。それとも訓練されてたのかしらね?」

何となく周りを見渡しながら呟く。
まあ沙羅は無事だからいいわね。終わりよければ全てよし。

「とにかく、大丈夫だった?見る限りじゃ大丈夫そうだけど」

私の問に沙羅は大丈夫と答える。どうやら怪我はなさそうだ。

「よかった。それじゃあ行きましょうか?」

無事を確認すると安堵のため息をつく。
気を切り替えた私達は目前へと迫ったガラス工場に侵入した。

【ルナ:ガラス工場の敷地内に入る。沙羅も一緒】
53廻間 統時 ◆7VdkilIYF. :2009/01/02(金) 23:52:38 0
俺は誰もいなくなった店内を見回す。
アニキが扉を作り出し、入った後……先輩はどこかへ消えその他の人間はアニキに倣い扉を潜った。
俺自身も扉を潜る事自体には何の抵抗も無い。だが、二つの事実が俺を押し止めていた。
(機関の中枢って事は……相当の激戦を強いられるだろう。
 だったら万全の状態で挑むべきなのだろうが、今の俺は万全とは言いがたい。
 こんな状態じゃ足手まといにならないだろうか……
 ……それに……ルナ、沙羅。俺がいなくなったのに気付いたら驚くか?)

携帯は持っている。だが、俺達は互いに携帯の番号及び、メルアドを知らないはずだ。
だったら、連絡先ぐらいは書いておいたほうがいいだろう。
そう思った俺は適当な紙とペンを手に取り、携帯の電話番号とメルアドを記入した。

「考えても仕方ない、行くか……まだ本調子じゃねえけどな」

メモをし終えた俺は、愚痴りながら『亜空の扉を』を潜った。

『亜空の扉』を抜けた先……そこは「ナガツカインテリジェンスビル」だった。
……つまりこの事実はナガツカインテリジェンス=機関を示していることになる。
意外な事実に俺は驚いていた。しかし、頭では驚いてはいても心のどこかでは納得していたのかもしれない。
なぜかといえば、前々からこのグループには胡散臭い物を感じていたからだ。
その胡散臭さと言うのはほとんど直感から来るものだったのだが……まあ、今となっちゃどうでもいい。
俺は『紅い月』を構える。『月下十字』を発動させてもよかったのだが、発動させると通常時よりも若干疲労が溜まりやすくなる。
超融合から余り休めていないので、あまり体力を消耗させたくは無い。
そのため強敵が相手じゃない時には、感情さえ昂らなければ普通の短刀である『紅い月』で戦う事にした。

(どこまでやれるかはわからないが、やるしかないだろ)

紅い月を握り締めると、体中に力がみなぎるような気がした。
悪魔でも「気がした」だけなのだが、気休めにはなるだろう。
―――アニキが突入の合図を出す。俺以外のヤツはみんな突っ込んだ。
俺はというと、少しタイミングを遅らせて突入した。
今の俺だったら後方支援が分相応と思ったためだ。
ロビーへと躍り出ると、すでに戦闘が始っていた。俺は周りのヤツラを片付けようとする。
だが、その瞬間ロビー内に光が満ちた。

「っ!?」

突然の閃光に目が眩み、俺は動きを止めてしまう。
……恐らくこれは異能による特殊な光だ。
その証拠に、光を浴びているとどんどん感覚がなくなっている。
こんな光が自然に発生するわけが無い……かといって、閃光弾の光でもない。
ならば残るのは異能者による光と見るのが妥当だ……
くそっ!この襲撃、読まれてたってのか!明らかに光が発生するのが早すぎるぞ!
愚痴る間も無く、俺の意識は落ちていった―――

【廻間:光の影響でナガツカインテリジェンスビルからに瞬間移動。
    移動先は国崎薬局店内、疲労の影響もあり気絶】
54廻間 統時 ◆7VdkilIYF. :2009/01/02(金) 23:53:53 0
しまった……前の原稿も間違えてコピペしてしまった。

俺は誰もいなくなった店内を見回す。
アニキが扉を作り出し、入った後……先輩はどこかへ消えその他の人間はアニキに倣い扉を潜った。
俺自身も扉を潜る事自体には何の抵抗も無い。だが、二つの事実が俺を押し止めていた。
(機関の中枢って事は……相当の激戦を強いられるだろう。
 だったら万全の状態で挑むべきなのだろうが、今の俺は万全とは言いがたい。
 こんな状態じゃ足手まといにならないだろうか……
 ……それに……ルナ、沙羅。俺がいなくなったのに気付いたら驚くか?)
携帯は持っている。だが、俺達は互いに携帯の番号及び、メルアドを知らないはずだ。
だったら、連絡先ぐらいは書いておいたほうがいいだろう。
そう思った俺は適当な紙とペンを手に取り、携帯の電話番号とメルアドを記入した。
「考えても仕方ない、行くか……まだ本調子じゃねえけどな」
メモをし終えた俺は、愚痴りながら『亜空の扉を』を潜った。

の部分は無視しても結構です。
55恋島達哉 ◆KmVFX58O0o :2009/01/03(土) 20:42:33 0
>>50
行き倒れ人の様子をじっと伺いながら、俺は耳鳴りに対して警戒する様指示を出した。が、何故かだ。
耳鳴りは一向に俺の問いに対して返事を返してくれない。おいおい、また服屋の時みたいに次の段階何たらか?
勘弁してくれ……。これじゃあ一番考えたくない可能性が来た場合、おれはどうすれば良いんだ。
いや、疑いたくない。疑いたくないのは俺自身分かっているのだが、ここ数日の異常事態のせいで若干人間不信になってしまったようだ。

すると、だ。行き倒れ人が小さく体を震わせた。やっぱ寒いだろうに。……まさか。駄目だ、疑心暗鬼になっちゃ。
失礼かもしれんが、一応行き倒れ人の身体的特徴を調べてみる。一応言っておくが目でだ。
結構長くほっつき歩いていた為か、だいぶ目が慣れてきた。じっと観察してみると細部が明確になってきた。
体全体が丸みを帯びていて、顔に何処と無く幼さ……あぁ、完全に女の子だこれ。いや、童顔なだけで子かは分からんが。
両手には手袋を嵌めていた。……何故に手だけなんだ? 手だけ暖かくても意味無いだろうに。まぁ何かしら事情があるんだろうけど。

ん? じっと観察を続けていると、行き倒れ人がぼんやりと目を開けた。俺は反射的に半歩下がる。
けどこの様子だとどうやら最悪の可能性は回避されそうだ。あくまで俺の感だが、彼女はこの教会の裏で偶然倒れていた一般人に違いない。
しっかし、どうしてこんな所で彼女は倒れていたのだろうか。酔いつぶれ? それとも夢遊病か? どんな理由だろうと俺には関係無いが……。
彼女は目を開けるとのっそりと上半身だけを起こした。まだ寝たりないのか、寝ぼけ眼だ。

>「んむぅ…おはよう…ござい…ま…す…?」
……開口一番それかい。いや、ぶっちゃけ可愛いけど。俺は返す言葉が浮かばなくただ苦笑した。
にしても意外だった。もっと驚かれると思ったからだ。だって起きたら目の前に知らない男が立っているんだし。
かなりの度胸持ちなのかも。……ただ単に俺のへタレ容姿じゃ誰も驚かないだけかもしれない。

>「あのぉ…どこかで会ったことが…?」
首を傾げながら、彼女は俺にそう言った。いや、ここで会ったのが初めてなのだが。
けれど俺も疑問に思う。何故だか彼女に初めて会った気がしない。言うなれば近い様で遠く、遠い様で近い的な?
ま、それは置いといて。変な誤解を避けるためにも正直に言っておこう。飲物をポケットに忍ばす。

「悪いが……君とは面識はないな。けど」
なんとなく言葉を止める。別に意味は無い。
「俺もどっかで会った様な気がする。コレは……デジャヴって奴かな?」

多分違うと思う。おまけに恥ずかしい。なんだって俺はこうも気持ちの悪いカッコつけた台詞を吐けるのか。
もうアレだ、色んな意味でここ数日ガンガン男が下がりまくってるから……その……。
あぁぁぁぁ! 俺は彼女に背を向け自動販売機の方まで歩いて立ち止まると、両手で思いっきり髪をボサボサと掻く。
多分、嫌絶対彼女、引いてるだろうな。でも良い。どうせ引かれるなら早い内に引かれた方が、ダメージは少ない。

数秒ほどそうすると、それなりに整っていた髪が完全にぐちゃぐちゃになっていた。感触から分かる。
俺は彼女に目を合わせないように振り向き、ゆっくりと彼女に近づいた。……怯えられてるかもしれんが、しゃあない。
そしてポケットから飲む気の無くなった清涼飲料水を取り出し、彼女に差し出す。
「よければコレを飲むといい。ちょっとは落ち着けると思う」

「後、さっきも言ったけど、そこで寝てると風邪引くよ。
 すぐそこの教会に行こう。……君が良ければだが」
【姫野に教会に行くよう誘う:4時ちょい】
56宮野 光龍 ◆LHz3lRI5SI :2009/01/04(日) 20:22:28 0
>>49
>「のぉ、少々質問させてくれんかの?」
そりゃあ質問はされるだろう。躊躇なく人を撃ったからな…。
黙ってうなずく。

>「先の、四方山を撃った事はオヌシの能力なのか?」
「?ああ銃は能力じゃないが「俺が殺したこと」に意味がある。さっきガラス工場にいたとき狼出しただろ?俺は自分の手で殺した奴を召喚?できる。まあついでに言うと…」

鳳旋の方向を見て集中する。イメージがわいてくる。ゴキブリか…まあいい。
「鳳旋!お前今日ゴキブリ殺しただろ!」
鳳旋はびっくりしてこっちを向いてくる。
「…で今から出すゴキブリが今日殺したゴキブリってわけだ!」
といってゴキブリを召喚する。
「ゴキブリこええええええええええええええええええええ!!!
自分で出してなんだけどゴキブリ苦手だから鳳旋…焼き殺して…。」

とりあえずガラス工場に戻って鳳旋の飯でも食うか。でもこいつんちゴキブリ出んのかよ…

【ガラス工場に到着】
【沙羅の姿は見ていない】【鳳旋に能力に説明】
57七草 ◆O93o4cIbWE :2009/01/04(日) 22:33:37 0
「囮というのはあまり怪我をしないものだと聞くんですがね」

あら?、囮じゃなくて餌のほうが良かったかしら?
道化を囲うと書いて囮、なら棺桶にでも入った方が相応に振舞えたかもねぇ、吸血鬼さん?

心の中で軽く毒づく、その間に此方の返答が来た

「昼間は…あれは私の協力者を探していてね…より私に協力しやすい人物を
 それを敵に阻まれ、味方と別れ手がかりを探してたというわけですよ」

歩みを進めながら話を聞く、そしてあちらの質問

「それじゃあ私から簡単な質問からさせてもらいましょうか…。
 あなたの能力の根源は一体何ですか?」

ふぅん、素直に能力を教えるのは癪だけど、約束だからしょうがないわね。

それからもう一つの素朴な質問が来た、

「それと、正確には今からどの辺りへ向かうんでしょうか?
 これは知っておかなればならないと思うんですがね」

「ああそれなら、少し遠いんだけど……まぁ別に話なら立ち話でも良いんじゃあないの?
 奴らのおかげで、興醒めしちゃったわ、ホラ、話すならあそこなんかどう?」

そう言って神重のはるか後方の、無残に崩れ去った廃ビルを指す、半分は嫌味、半分は本気。

それを聞いた神重は、それならば、と自分の知っている近場の喫茶店を紹介すると言ってきたのに対し、

「この時間帯に普通の喫茶店が空いてるわけ無いじゃない?」

「…」

なおも煮え切らない神重に対し、止めの一言を放つ

「移動してる間にまた、さっきの奴らに絡まれたら、面倒だし、ね、いいからそうしなさい、
 ……ああ!もう!、私の能力、アナタの身体に教えて上げてもいいのよ?」

そう言い放ち冷やかに睨みつける、神重はやれやれと言った表情で、わかりましたよ、とだけ言い呆れ顔で一人ひょいひょいと先へ行った七草の後を付いていく。

神重も大変だろう、同日に殺し合いまでした相手にここまで振り回されるのだから、
例え殺し合った仲でなくともこの気分屋を相手にしては、常識人なら怒りを露にする所か愛想を付かしてしまう所だろう、
もしこの手合いに付いていく人間と言えば、それは大方弱みを握られた人間か、何か算段のある人間なのだろう、
今の神重の場合、そのどちらにも当たるのかも知れない、

「そうそう先生、私の能力、どんなモノだと思う?、うふふ、ちゃんと教えてあげるわよ
 ただ、先生から見たらどう見えるのかな、って、じゃ、向こうに着くまで考えててね」

そう言った後、歩く事二分余り、昼間の戦闘の火蓋を切って崩されたビルの前に着いた、
ビルとは言ったがその型はもはやビルの原型を殆ど留めては居ない、
話をするなら此処じゃなくともと思うかも知れないが、彼女にとってはこの場所が都合の良い様であった。

綺麗に上層部分が無くなり、瓦礫の山と化した、ビルであったモノの中へ入ってゆく、
内部はやはりと言うか、欠け落ちた、外壁、抜け落ち途切れた鉄骨やパイプ、硝子の欠片――挙げていったらきりが無い、
彼女は足音も立てず器用に奥へ入って行き、神重の到着を待ってましたとばかりに切り出した。

「さて、と、問題です、私の能力はどんなモノでしょうか?
 何?質問に質問で返すな?知らないわよ、そんなの」

【七草:神重を廃ビルへ誘う、自分の能力がどう見えるか問う】
58姫野 与一 ◆LuqsQs0P4w :2009/01/05(月) 15:04:07 0
>>55

>「悪いが……君とは面識はないな。けど

>俺もどっかで会った様な気がする。コレは……デジャヴって奴かな?」

「えーと…つまりお互い…初対面…ですよね?」

やっぱり会ったことは…ないかぁ。でもこの人も会った気がするって…

昨日の夜から色々な出来事が起きすぎている。
アイツの言うとおり、地上に降りてくるべきじゃなかったのかな…
折川君やレオーネさんはどうなったんだろう…

数秒ほどすると背を向けてたあの人がこっちに近づいてきた。
いつの間にか髪はグチャグチャになっていて、なぜか目を合わせてくれない。嫌われたのかな…
何をするのかと思えば、ポケットから自販機の清涼飲料水を取り出し、私に差し出した。

>「よければコレを飲むといい。ちょっとは落ち着けると思う」

喉も渇いていたし感謝感謝。早速開けて飲んだけど…もっと寒くなった気がする…

>「後、さっきも言ったけど、そこで寝てると風邪引くよ。
 すぐそこの教会に行こう。……君が良ければだが」

…あぁ。ここ、教会だったのか…ってことはこの人は神父さん?
見た目からはとても神父さんには見えないけど…

ふと横目でポチを見ると、小声で何か言っている

(あの教会…塩の臭いがかなり強くて私には無理だわ…私はここにいるから。)

どうやらついて来る気はないらしい。
図々しいけれどここは厚意に甘えて私だけでも。

「その…是非連れてってください。寒々…
えっと…私は姫野です。姫野 与一。よろしく、神父さん」

頭に敷いていたバッグを片手で担ぎ立ち上がる。
あれ?結構重いはずなのにすごく軽いな…
足も変な感触がした…多分足も毛で覆われているか…
とにかくこの腕の事だけはバレないようにしなければ。

【教会へ向かう】
【融合により一部能力上昇】
地下駐車場へ着くがそこには人の気配は無く、唯々機関の車両が連なっているだけであった。
天井にぽっかり空いた穴が、確かにここへシルクハットが落ちてきた事を示している。

――逃げられた……か? 目だけを動かし辺りを見渡す。
異能の気配を探るのではなく、相手の呼吸音、体から出る微かな音――
即ち人の気配を注意深く探ってみる。

暫しの間探ってみたものの、この場所には既にあのシルクハットの男は居ない様だった。
階段を急ぎ足で降りてくる足音が聞こえ振り向くと、永瀬たちが遅れて降りてきた。

永瀬と香坂は二人とも息を切らしていない。それでこそ私の教え子だ。
異能に頼るのではなく、自身のセンスを磨く事……。
それは私が彼女達に教えた基本理念だった。

ここに居ないとなると、次の目的地は……。
頭の中で行動ルートを割り出しながら、永瀬たちに合流する。
私は二人を従えて再び階段を上り始めた。

コンクリートに革靴の甲高い音が共鳴していく。
暫く上ると、不意に永瀬が口を開いた。

「わたし見ちゃいましたよ。アイツの能力」

ほう、それは興味が在る。永瀬へ視線を流すと、意味を理解したのか彼女は言葉を続けた。
再会してから初めての会話が、このような会話というのも味気ない物だが……。

「ん〜……。どう言ったらいいのかなぁ。
 アイツに襲われた時、箱を作ったんですけどぉ、
 まったく効果なかったです。すり抜けてきちゃいました」

物体をすり抜ける、か。空間に干渉しているのか?
だとすれば、奴の異能体系は操作系という分類に値する。
それとも変化系で自身の分子結合をゼロにして物体を透過、その後瞬時に再結合をするのか?

いや、難解に考える必要は無い。在りのままを受け入れるのだ。
奴の異能力は『物体をすり抜ける』それだけで十分だ。

ファンダメンタルデリート
殲滅結社、か……。一筋縄ではいかないようだな。

【レオーネ:現在地 ナガツカインテリジェンス本社ビル 階段】
【地下駐車場→地上 1Fロビーへ向っている】
60鳳旋 希一 ◆sJZQ9grsuk :2009/01/07(水) 12:48:44 0
>>56

「?ああ銃は能力じゃないが「俺が殺したこと」に意味がある。さっきガラス工場にいたとき狼出しただろ?
俺は自分の手で殺した奴を召喚?できる。まあついでに言うと…」

自分が殺した者を呼び出す事ができる?ふむ、いまいちイメージが浮かばんな…
第一、死者を呼び寄せるなんてことができるのじゃろうか?

「鳳旋!お前今日ゴキブリ殺しただろ!」
「な…なぜそれを…」
「で…今から出すゴキブリが今日殺したゴキブリってわけだ!」

目の前には今朝方わしが殺害した巨大ゴキブリが現れおった。

「う、うおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!!」
「ゴキブリこええええええええええええええええええええ!!!
自分で出してなんだけどゴキブリ苦手だから鳳旋…焼き殺して…。」

途端ゴキブリがその場から逃げ出そうとしたが、かかと落としを見事に直撃させた。

「流石に焼き殺すのはできないわ…素手で触れてしまうことになるからの…
しかし凄いな!奴はわしが今朝方死闘を繰り広げた猛者じゃ。奴には苦汁を飲まされたわ…
じゃがあれはオヌシではなくわしが殺した奴じゃったが?」

工場内の方から突然音がした。辺りは車が通っていなく、静かなので音が一段と大きく聞こえる
これは…コンクリートが砕けるような音、何かがめり込む音

「光龍、誰かいるようじゃ…気を付けんとな…」
相手が誰であろうと、中の長達が危険じゃ。急がんと

【ガラス工場】
【神野達の音を察知】
61神重智&敬 ◆6eLTPQTFGA :2009/01/07(水) 23:36:45 0
>>57

神重は疲れていた
それはなぜか…半日ほど前には殺し合いをしてた相手に振り回されているからである。
そして今いる場所は瓦礫の山…神重や七草、小村との戦闘で破壊されてしまったビルの内部である。
もちろん人が住めるような環境にはなってはいない。隠れ家…にしても限度がある。
七草がこの場所を会話の場所に指定したのは嫌味か。それともそういう趣味があるのかは全くの謎である。

(…………………)
(いい加減機嫌直せよ兄弟)
(…………あそこの喫茶店が出す紅茶はなかなかおいしいのですよ……それをですね……)
(…だめだこりゃ…)

歩きながら智と敬の二人は精神会話を続ける。
智は七草が行った喫茶店は遠いということで近くの喫茶店(神重のお気に入りである)を勧めたのだが七草によって却下。
言い返そうとするも七草に分がありすぎた。舌戦で負けるとは教師として如何な物であろうか。

(あの喫茶店なら絶対この時間にだってまだやっているはずです…なのに…ブツブツ…)
(………)

「さて、と、問題です、私の能力はどんなモノでしょうか?
 何?質問に質問で返すな?知らないわよ、そんなの」

奥に到着したと同時に待ってましたといわんばかりに七草が口を開く。
神重の質問は質問で返され、明確な答えは返ってこなかった。
この時敬ではなく、智にちょっとした反抗心が芽生えた。

「そうですね…あなたの能力は……」
辺りを見渡す。手のひらに乗る程度の小さな硝子の破片が目に入る。
その一欠片を拾い上げて無重力を与える。重力を失った破片は宙を漂う。

「明確なことはわかりませんが、血を媒介に何かを発動させる能力…といったところでしょうか」
続いて数個の欠片を拾い上げて次々と無重力を与えていく。その数8個。
能力が不安定なために多少のばらつきは見られるが確実に成功はしている。

「昼間の方との戦いで多少観察させてもらいましたからね…」
そう言いながら硝子の欠片を一つ指で弾くとそれは七草の頬を高速で掠り壁に突き刺さった。
当然七草の頬からは鮮血が流れる。
「今のは囮の怪我の分…そして残りは…あなたの能力を試す分ですよ…七草さん」
神重が手を翳すと残った欠片が一斉に七草に襲い掛かる。
だが欠片は紅い衝撃波によって粉々に打ち砕かれる。そのまま少し怒りを表した七草が攻撃に移る前に
「おっと…今のは軽いジョークですよ…そう怒らずに話をすすめようじゃないですか」
笑顔作りながらを両手を挙げ参ったのポーズをとる。

「今のを見るとやはりそうですね…あなたの能力は血を媒介に何かを発動させる能力…
 または何かを媒介に対象を切断及び破壊する能力…とでも言った感じでしょうか?」

【神重:七草の能力を予想してみる】
62恋島達哉 ◆KmVFX58O0o :2009/01/08(木) 19:59:03 0
>>58
俺が飲物を差し出すと、彼女は小さく頷き受け取った。手が小さいな……おっと、いかんいかん。
しかし冷たい方を選んでしまった事には後悔するほか無い。こんなにも寒いなら普通暖かい方買うでしょうがー。
まぁ悔やんでも金は返ってこないのだが。彼女は飲み干した空き缶を地面に置いた。

にしても微妙に彼女の視線が気になる。妙に俺の事を不思議がっているような。
まさか神父とでも勘違いしてるんじゃないかろうか。教会なんてワードを口にしたから。
だとしても、今の俺の見てくれは本業の神父からは程遠い。むしろ神父さんに説法してもらう立場だ。
……それは置いといて。ま、誤解されてるなら誤解されてるで弁解すれば良いだけだ。てかどう見ても俺を神父さんには間違えまいて。

>「その…是非連れてってください。寒々…
  えっと…私は姫野です。姫野 与一。よろしく、神父さん」
肩にバックを担いで、立ち上がった彼女が俺にそう言った。あ、誤解してるのね……。
それは良いとして、彼女の名は姫野というらしい。中々珍しい名前だと思う。俺は忘れないように頭で何度も呟く。
姫野与一……。うん、今まで会った人の中で一番覚えやすいかも。インパクト的にも。と言ったら失礼か。

姫野さんが置いた空き缶を拾い、自動販売機横のゴミ箱に捨てる。その際に。
「悪いけど俺は神父さんじゃない。ただのジャーナリストだ。ちょっとした事情でこの近くの教会に泊まっててね。
 身の上話は教会に行きながら話そう」
立ち止まって話す訳にも行かないので、教会に向かいながら姫野さんに俺の事を話す。

「俺の場合は色々とゴタゴタがあってさ……今向かってる教会の近くで気を失ってたんだ。
 それでその教会に住んでる……と思う本物の神父さんが、俺を教会まで運んでくれてさ。
 そんで、朝まで寝た後、目を覚ましてほっつき歩いてたら、君を見つけたって訳」
だいぶはっしょったけど分かってもらえたとは思う。姫野さんは首を小さく傾げてはいたが何となく納得した表情を浮かべていた。
既に目と鼻の先に、先ほどまで寝ていた教会が見えていた。まぁただ単に裏側に周っていただけだからそう時間も掛からない。

「そうだ、入る前に一つ。今はまだ起きてないけど、本物の神父さんが起きたら、君の事をどう説明したらいいかな?」
入り口前で姫野さんにそう聞くと、姫野さんは疑問符を頭に浮かべた。俺の語彙の無さを恨む。
「ええっと、変な意味ではないんだ。ただ、神父さんが君に対して疑問を持つかもしれない。
 その時に適当な言葉で誤魔化さないと色々と不利になりそうじゃないか。そういう意味で聞いたんだけど……」

どうにも不憫な雰囲気が流れてきたぞ。なんというか上手く言い表せない沈黙というか。
俺もそれ以上言葉を紡ぎだせず、姫野さんもどう返答して良いか困っているようだ。はぁ……俺って奴は。まぁ、いいや。
「ま、その時はその時で今は教会に入ろう。あ、それと何故か塩の臭いが凄いから、その手袋で鼻を塞いだ方が良い」
そんな空間で爆睡してた成果、俺の鼻は完全に塩の臭いに慣れてしまった。

俺が先頭となり、教会内に足を踏み入れる。さっきまでと全く変わらない室内。
「あぁ、そういや俺も自己紹介しないと。俺は恋島達哉。歳は……あれ、なんだったっけ?」
【教会内に入る】
【AM5:00】
63七草 ◆O93o4cIbWE :2009/01/09(金) 00:38:43 0
>>61

此方の問いかけに対し神重は内心機嫌を少し損ねた、といった感じであった、そして、

「そうですね…あなたの能力は……」

神重は辺りを見回し、その中に手ごろな硝子の欠片を見つけるとそれを次々と拾って行く、
二、三、と彼が手を離したそれは、不思議な事にふわふわと宙を舞っている。

「明確なことはわかりませんが、血を媒介に何かを発動させる能力…といったところでしょうか」

言いつつも彼はその動作を続けている、宙を舞う欠片は、六、七、八、その中には宙を舞うか漂うかの差がいくつか見られるのだが、
結果、八片の欠片が今神重の眼前に浮いている。

「昼間の方との戦いで多少観察させてもらいましたからね…」

そう言いながら漂う欠片の一つを眼前へと持って行き、それを指先で弾いた、
弾かれた欠片はあらゆるしがらみを拝し、本来在るべき力と速度以上を持って正確な直線を描き突き進む、突き当たる先に在った壁という遮蔽物を前にして、やっと、欠片は頭を埋まらせ、静止した。

その欠片は、彼女、七草の頬を掠めて行ったのだが、彼女は滲み出るソレを別段気にする事も無く其処に平然と立っている。

「今のは囮の怪我の分…そして残りは…あなたの能力を試す分ですよ…七草さん」

次に彼がその手を翻し、翳す、彼の眼前に在る七つの欠片がそれを合図に一斉に彼女に飛び掛った。

その時彼女はようやく動いた、後手にしていた腕を解き、逆袈裟に振り上げた、同時に血飛沫が舞い上がり、それに巻き上げられた欠片は粉々に粉砕された。

「アナタ…どういうつもり…?」

「おっと…今のは軽いジョークですよ…そう怒らずに話をすすめようじゃないですか」

笑顔を作り、両手を挙げ参った、とでも言いたげな姿勢を取る、非常に滑稽だ。

ふん、囮になって怪我した?、そんなのアナタの勝手じゃない、囮が怪我しないものだ何て私は聞いた事も無いわ、怪我したのはアナタが悪いのよ、
そんなのだからアナタは道化だって言うの、吸血鬼になりたいなら…、吸血鬼にでも相応しく棺桶にぶち込んでアゲルワ!!――――…
64七草 ◆O93o4cIbWE :2009/01/09(金) 00:40:07 0

――…と彼女は言おうと思ったとか何とか、それはさておき今の彼女の行動を冷静に見ていた神重は彼女の能力を分析し、結果こう判断したのだろう、

「今のを見るとやはりそうですね…あなたの能力は血を媒介に何かを発動させる能力…
 または何かを媒介に対象を切断及び破壊する能力…とでも言った感じでしょうか?」

彼の分析は大方当たりである、彼女もその事を認めたのか

「ええ、そうね、大体合ってるわ、一つ付け加えるなら、そうね」

そう言い彼女は右腕を広げ、その手を翻す、すると先程粉砕されたはずの七つの硝子の欠片が、先程そのままの形で、彼女の手の中に現れた、
そして彼女はその欠片を神重の足元へ向かって手裏剣の様に投げつけた。

神重の足を縫う様に地面に突き当たった欠片は、砕け散ると言うよりはまるで溶けていくかのように消えて行き、文字通り消滅した。

「一つ付け加えるならその能力を刻んだ対象に一種の干渉ができるの、
 だから切った物体を復元させたりも出来るし消滅させる事もできる……だからね…」

彼女は自身有り気に話す、そして

「このビルを元に戻したり、その気になればこの地球を真っ二つにして消滅させる事も出来るの――…」

彼女は腰に手を当て大げさに胸を張った、そしてその後彼女はなにやら口元を抑え、俯き、肩を震わせている、

そして、神重が、まるっきり信じていない冷めた目で見つめているのを見て七草は、堪えていた笑いを解き放った。

「――…クス…ウフ、ウフフ、アハハハハ、アーハハハハハ」

彼女は急に笑い出した、しかしその声は声量控えめである。

「アハ、アハハ、クス…、ごめんなさい、ちょっと大げさがすぎたわ、ウソよ」

こればかりは彼女の大嘘、ハッタリである、ビルを元に戻す事はあながち嘘ではないが、流石に崩した際の連鎖破壊までは復元できない、あくまで復元できるのは能力で切断した部分のみなのだ、
故に先程戦った少女、"伊賀 響"、彼女の傷を治したがあれも偏に能力で切断した傷ならばこそなのである、そして、死んだ生命は復元できない、
一方消滅の力は刻んだ存在自体に概念を刻む、刻んだ物体がその後どうなろうと消滅させる事ができる、しかし、生きているモノにはその概念が通用しない、
次に地球の切断、これも理論上は、できるという話であり、現実問題を挙げたらきりが無い。

神重は、流石と言うべきなのか最早彼女の言動には慣れた、と言わんばかりに今の彼女をあっけらかんと眺めている。

彼女は、それを見て、さっと取り繕い何時もの調子に戻った。

(はぁ…此処まで笑ったのは久しぶりだわ…出来ればもっと大きな声で笑いたかった…、さて)

「さて、本題に入りましょうか?私はとりあえずアナタに協力して上げようと思ってるんだけど…アナタはどうなのかしら?」

【七草:神重に協力すると言っている】
65織宮京 ◆9uPeCvxtSM :2009/01/09(金) 20:22:45 0
>>62
朝の光が窓から差し込む、それが眩しいせいで俺はいつも早くに起きてしまう。
ベッドの位置を変えればいいとか思うかもしれないが俺の何代か前の神父が何を思ったか固定しやがったせいで動かしようにも動かせないのだ。
これのおかげで朝早く教会にくる人にも対応できるんだけどな。
時計を見ると5時少し前、いつもより若干早く起きたみたいだ。

「そういや、昨日変なの拾ったんだったな、ちょっくら様子を見てくるか」

俺はキッチンからフランスパンを取り出し、適度に温めるとバターを塗りかじりつく。
ついでにもう一つフランスパンを取り出す、俺も他人に情けをかけるほど余裕のある生活をしているわけではないが拾ったモンには最後まで責任もたなきゃな、バターはつけないが。
まさかまだ起きていないだろうし、腹の上にでも置いといてやろうと思って階段を降りていると、教会の扉が開く音がして、何やら話し声が聞える。
様子をうかがってみると俺が昨夜拾った男とともに黒髪のスタイルが良い美人の女が居た。

「ほう、何やっているのかと見に来たら貴方はこの神聖な教会に女を連れ込んだのですか。
人がせっかく運び込んだって言うのに貴方は……図々しくも女を連れ込むとはうらや……無礼者。
お前には神の天罰が下るだろう、いや下ってもらう、主なる神よ、どうかこの輩に神の鉄槌を……」

相手の男は何が何やら分からない様子で俺を見る。
何だこいつ、自分の罪が分かっていないのか?まじ断罪モンだわこいつ。

「何か弁解があるのですか?
いや、ないでしょう、よって私は神に代わり貴方を裁く」

角の方から箒とファブリーズを持ってくる。

「これでこの塩を全て掃き、その後ファブリーズで臭いを消しなさい。
このフランスパンは一応あげます、掃除が終わったら呼んで下さい」

男にフランスパンを押しつけ、俺はまた二階に上がる。
なんだかんだで、俺もまだまだ甘いな。
【織宮京:恋島と姫野の関係を勘違いし、掃除を押しつける】
66 ◆qqu0tZFsYU :2009/01/09(金) 20:46:47 0
──夜明けを迎えたナガツカインテリジェンスビル。
大理石に囲まれたその一階出入り口には、朝焼けの空を見つめながら立ち尽くす、一人の男がいた。
黒服に身を包み、サングラスをかけ、スキンヘッドが特徴のこの男──
まるで何かを待っているように、先程から無言を貫いたままである。
と、そこへもう一人同じような黒服に身を包んだ茶髪の男が現れ、無言のままの男に何事かを伝え始めた。
これまで無言だったスキンヘッドの男は、そこに来てようやく口を開き始めた。

「そうか、やはり昨晩の襲撃には『山田 権六』や『池上 燐介』が関わっていたのか」
「はい。『曾壁』様が集めた異能者の中に、彼らを見た者がおりました」
「侵入者は全員排除したと聞いたが、殺したのだろうな?」
「いえ……恐らく生きているかと……」

そう言って茶髪の男は、スキンヘッドの男に何かを手渡した。
それは昨晩、『曾壁』がビル防衛の為に一般人から選定した22人のデータが記載された書類。
その中の一枚には、昨晩ビルに侵入を図った者達を撃退した男のデータが綴られていた。
スキンヘッドの男はそれに目を通し終えると、舌打ちをしながら手渡された書類を放り投げた。

「"対象者をこの現実世界のどこかに転移させる"──撃退した男とやらは、それをやっただけか。
これだから貧弱な一般人などアテにできんのだ。それを曾壁の奴め……」
「ですが、この数日で我が機関は、虐殺部隊やセカンドナンバーを始め多くの犠牲が出ております。
一般人から戦力を補充するのも、止むを得ない事態ではないかと」

茶髪の男はそう言いながら、スキンヘッドの男が地面に投げ捨てた書類を拾う。
スキンヘッドの男はそれを見据えながら静かに、それでも明らかに怒気を込めて言い放った。

「……No.10〜No.19のセカンドナンバー幹部連も、今やNo.11のポポフスキーとNo.13のオマエ……
No.16のスティクスが消息不明ということは、実質俺を含めた三人しか残っていないわけだ。
セカンドナンバーの頂点に立つ者共が、何とも情けないことよ……!」
「……『衣田』様、まさか……!」

茶髪の男は何かを悟ったようだったが、
『衣田』と呼ばれたスキンヘッドの男は、何を言うこともなく無言で大理石の空間を後にしようとする。
茶髪の男は思わず声を挙げて、衣田を制止させた。
67 ◆qqu0tZFsYU :2009/01/09(金) 20:54:20 0
「お待ち下さい! 衣田様はビル周辺の警護の要! ここは……」
「私達にお任せを……とでも言うつもりか? セカンドナンバーの幹部でさえやられている中、
お前らが行った所で何になる? 奴らを倒せるのは、もはや残った機関の幹部連だけなのだ。
かといってファーストナンバーのお力を借りては、我々セカンドナンバーの面目が立たぬ。
だから、この俺も出向かなくてはならなくなったまでのことだ」
「ですが、奴らが生きているなら再びここに現れるでしょう。討つのはその時でも宜しいはずです。
それに、まだ奴らが飛ばされた場所も特定できていません……」
「奴らに再度の襲撃の機会を与える必要は無い。時を与えれば、今度こそビル内を蹂躙しようと
十分な戦力を蓄えて来るだろう。そうなる前にこちらから出向いて、早々に奴らを片付けなくてはならん」

衣田はそう言いながら、かけていたサングラスの蝶番部分を弄り始めた。
すると、レンズ部分にデジタル文字が浮かび上がり、微かな電子音を発し始めた。

「それに、昨晩の襲撃に加わった者の中に山田や池上がいると分かれば、探し出すのは容易い。
奴らとは以前に出会っているからな。異能力の波長パターンはこいつに記憶されている」

このサングラスには特殊な気、すなわち異能力と呼ばれる力を感知する
コンピュータが内蔵されており、感知の結果をレンズに映し出すことができるのだ。
機関の人間の中で異能力を感知することができる人間は珍しくはないが、
特にそれが実力の優劣を決めるものにはなりえないので、
実力者の中にもこれと同じコンピュータを内蔵した機械を使う者の例は少なくは無い。

「フン……どうやらレーダーは奴らの波長と一致するものを見つけたようだ。
場所はここから東におよそ2km……港の方か。都合よく二人とも同じところにいるようだが、
データにないもう一つの反応は奴らの仲間かもしれんな。
フッ、まぁ誰であろうとまとめて片付けてやるだけだが……。

──一時間だ。一時間後には奴らの亡骸をまとめてここに積み上げて見せる……!」

衣田はそう言い残すと、炎を全身に纏いながら勢い良く飛び上がった。
そして噴き出す炎を推進力としたことで得た超人的な跳躍力とスピードで建物の屋上から屋上へと渡り続け、
彼はわずかものの数秒でナガツカインテリジェンスビル周辺から姿を消すのだった。

【時刻AM5:00〜5:30頃。衣田が出陣する】
>>59

永瀬の下を去ってからもう何年も経つ……。
その間に彼女は一体どれくらいの経験を積んだのだろうか。
そんな事を考えていると、ふと自分の考えに疑問を持つ。
――永瀬や香坂が戦闘に出る事を望んでいるのか、私は。
機関にいる事に疑問を持っている訳ではない。彼女達が"戦う事"は意味があるのだろうか。
私は……彼女達にもう少し別の未来を差し出せなかったのだろうか?

そういえば、自分が初めて実戦に出たのも丁度永瀬くらいの歳だったな。
そうだ、あの頃は今の永瀬と香坂のように二人だった。
私の横には何時もアイツがいた……。

――城栄金剛。

私よりも先に師に拾われた男。同じ夢を共有した仲間。
69レオーネの回想(二回目) ◆GWd4uIuzU6 :2009/01/09(金) 23:24:53 0
――正直、"正座"という物がこんなにもキツイとは思わなかった。
もう既に足が痺れて感覚が薄い。隣の短髪の少年も今のオレと同じ感覚なのだろう。
しきりに後ろ足をモゾモゾと動かしている。この木造のフローリングは堅くて足に負担が掛かるようだ。

「今日の修行はここまでにしよう。二人ともよくやった」

足の痺れと格闘しているオレ達二人を真正面に見据える師――コウセイの声は
何処と無く機嫌が良さそうである。
それもその筈だ。先日行われた機関の異能大会でオレ達"二人"は最高の成績を収め、
有終の美を飾ったからだ。
良く解らないが、相手はあの摩訶不思議なチカラ『異能』を訓練していた、
云わば異能者養成所の生徒だったらしい。師も他の幹部達の鼻を明かしてやれたようだ。
機関に属する異能者ならば、養成所に送られる筈だが、オレは養成所には送られていない。
多分、コウセイの思惑があっての事なのだろう。オレはそれに従う。

それにしても、例の大会の時も思ったのだが、隣に居るこの少年の実力には驚かされる。
何か底知れぬ力を持った奴だ。確か名前はシロサカエと言ったな。
オレよりも年下の筈なのだが、既に達観している節がある。
横目でシロサカエを見ると、奴と目が合った。
奴の鋭い眼光が弧を描き、口元は僅かに緩んだ。

「にしても……機関の異能者ってのは、
 もうちぃっと歯ごたえのある連中だと思ってましたがねェ。

 ぬりぃぜ。なァ、レオーネ?」

どうもこのシロサカエという少年は、自分の実力に相当の自信を持っているようだ。
あの圧倒的なまでの戦いを見れば、そんな性格になるのも頷けるのだが……。
師はそんなシロサカエを"いつもの如く"嗜める。
シロサカエは何が気に食わないのか、事ある毎に師に突っかかるな。

「増長するな、金剛。お前はまだ甘い」

一オクターブ低い師の声を、シロサカエは鼻の笑いで掻き消した。
70レオーネの回想(二回目) ◆GWd4uIuzU6 :2009/01/09(金) 23:25:50 0
>>69
――"機関"
オレを拾った男ナガツカコウセイはある極秘組織のトップだった。
それは実体を持たない闇の組織。地下深くに潜伏し、世界のあらゆる現象に介入する。
実質的に世界の支配者である彼が求めたのは、とある素質を持つ子供。
あの冬のミラノでオレを拾ったのは、オレにその"ある素質"を見出したから。

それが、オレとシロサカエが鍛錬している"異能"と呼ばれる力だった。
ここ日本の"貳名市"にやって来て、既に一年が経つ。
オレは師の下で様々な異能の訓練を受けた。シロサカエと共に。
奴とは最初話しもしなかったが、オレは年下は嫌いじゃなかった。
孤児院でもそうだったからだ。ある日奴が修行中の怪我で
動けなくなっている所を、オレが屋敷まで背負って歩いている道中、
シロサカエが始めて口を開いた。
――"外人はみんな金髪なのか?"
オレはすぐさま、"もしそうだったら地球が金色に見える"、と返した。
それが奴のツボにハマッたのか、折れた足の痛みを忘れて大笑いしていた。
その時初めてシロサカエの事が理解できた気がした。
ぶっきら棒で近寄りがたい雰囲気を漂わせているが、
根はジョークを理解できるイイ奴なんだ、と。

それ以来、オレ達は友達になった。お互い抜きつ抜かれつつ過酷な修行に耐えて来た。
その成果が例の異能大会の優勝だった。

コウセイの考えは解らないが、オレは彼の指示に従い機関で働く。
世界に動かされる方から、世界を動かす方に回るんだ。

いつか世界をこの手で、誰もが笑っていられる世界にしてみせる。
それが、オレが死んでいった家族達にしてやれる最高の手向けだから……。

【レオーネの回想2:終了】
【回想…残り4回】
71リン&桐北 ◆u5ul7E0APg :2009/01/10(土) 23:57:19 0
>>51

「!?だ、誰かいるんですか!?お願いです!ここから出してください!」

ドアについた小さな扉からリンの怯えた小さな顔を確認した桐北は、必死にドアを叩いて懇願した。

(誰だかはわからないけど…、つかまっているみたい。私のこのカードキーで…開くわけないか。)

リンがポケットから取り出したカードキー。それは空雲から手渡された、このフロアのセキュリティロックを解除する鍵だ。
大して期待もせずにリンがカードを端末に翳すと、ドアが音もなく開き、中にいた桐北が勢いよく飛び出してきた。

「おわぁぁあっ!!?」
「…って、開いたぁ!?」

助けられた方も、助けた方も、双方驚きの声を上げる。
それにしても、仮にも囚われの身にあるはずのリンに他の監獄部屋のロックを明けるキーを手渡すとは、なんという不用心であろうか。

(…それだけ私は、ナメられてるっていうこと…?私がこの子と仮に手を組んだとしても、どうせ何もできないだろうっていう…)

そう思うと、リンは無性に腹がむかむかしてくるのを感じた。

「あててて…、た…助かったぁ…。」

ふと、リンは目の前に飛び出してきた、自分と同じように捕らえられた少年に目を向けた。
白い短髪をなびかせる彼は、意外に背が高く、リンは立ち上がった彼を見上げる姿勢になった。

「あ、ありがとう。キミが助けてくれたんだ。キミは見た感じあの黒服軍団とは違うみたいだけど…。」
「わ、私は…。」

機関とは無関係、とは言えなかった。最後に見た戦場ヶ原の疑惑の瞳が、また彼女の胸を苛んでいた。
口ごもる彼女を見て、桐北は頭を掻いて少しバツが悪そうな顔になって、言葉をつないだ。

「あ…言いにくいことなら言わなくてもいいよ。とにかくキミは俺を助けてくれたんだ。だから敵じゃない…と思う。…たぶん。」

自分の言ったことに自信がないのか、彼は照れ笑いを浮かべて頬をポリポリと掻く。
しかしその姿は、リンにとって緊張をほぐすには十分だったようだ。リンは安心したように少し笑みを浮かべて、眼を桐北に戻した。

「ごめんなさい・・・、でも、ありがとう…。私はリン。煌神リンです。」
「俺は修貴。桐北修貴だ。黒服の連中に拉致られて、こんなところに何十時間も閉じ込められてたんだ。だから助かったよ〜…、キミが来てくれてさ。」

長い時間孤独が堪えたのだろう。桐北は初対面のリンを前にしてべらべらとしゃべりだす。
しかしそれはリンも同じだったようで、桐北のこれまでのいきさつを、ただ黙って微笑みながら聞いていた。

(…なんだろう。この人、初めて会った気がしない…。)

リンは、己の胸の内に静かに鼓動する『何か』の変化に気づいていた。
それが彼女と彼を、この数奇な運命に導いた原因であるとも知らずに―――…

【リン:桐北と合流。現在位置:ナガツカインテリジェンスビル上層。時刻:3日目深夜】
72神重智&敬 ◆6eLTPQTFGA :2009/01/11(日) 08:50:49 0
>>64

七草は神重が予測した能力に加えて、さらにもう一つの能力を所持していた。
(切断及び破壊に加えて再生能力ね…まるで敬の亜種だな)
(おいおい、俺のというよりはもともとは智の能力なんだぜ、これは)

ところが能力を説明したのがよほどおかしかったのか彼女は急に笑い出した。
「アハ、アハハ、クス…、ごめんなさい、ちょっと大げさがすぎたわ、ウソよ」

こちらが少し冷ややかな目でもしていたのだろうか、能力の一部を否定したものの、彼女の目は自身に溢れている。
おそらくその能力発動条件に何かが絡むのであろう。細かいところまでは言えないというような顔だった。

(…兄弟…俺はやっぱりこいつと付き合うのは疲れるぞ)
(私はもう慣れましたよ。こういうのは慣れたほうが疲労は減ります)

七草はひとしきり笑ったかと思うと、こちらに本題を向けてきた。
その内容は協力するか否か。しかし七草が何故そこまで神重に執着するのかはわからない。

「協力…といえば聞こえはいいかもしれませんが、あなたの本当の目的はなんでしょうか?
 単なる興味?それとも金?はたまた私が敵対する側に個人的な恨みでをもっているのか?
 そこを答えてもらわねば私は協力するかしないかの返答はできませんね」

興味、なら邪魔になるから切り捨てる。
金…これはこちらに用意できるものではない。おそらく機関側に回るだろう。
機関に対する個人的な恨み…これなら少しは協力する意味もあるというものだ…。

特に金…機関側に回りそうな人間なら能力は不安定だがここで始末するっ…!

【神重:七草が協力を求める意味を知りたい】
73姫野 与一 ◆LuqsQs0P4w :2009/01/12(月) 15:39:14 0
>>62,>>65

>「悪いけど俺は神父さんじゃない。ただのジャーナリストだ。ちょっとした事情でこの近くの教会に泊まっててね。
 身の上話は教会に行きながら話そう」

この人は自分をただのジャーナリストと名乗った。こんな服装の神父さんが居る訳ないもんねぇ。
私の置いた空き缶をゴミ箱に捨て、歩きながら話は続いた。

>「俺の場合は色々とゴタゴタがあってさ……今向かってる教会の近くで気を失ってたんだ。
 それでその教会に住んでる……と思う本物の神父さんが、俺を教会まで運んでくれてさ。
 そんで、朝まで寝た後、目を覚ましてほっつき歩いてたら、君を見つけたって訳」

…つまり私と同じように近くに倒れていたところを神父さんに助けてもらったと。
でも私はなぜ?いなくなったハチとこの体は?嫌な予想を考えてしまった…この話はしばらく忘れよう
教会は既に目の前だった。扉は私たちよりも遥かに大きくて威圧感さえ感じた。

>「そうだ、入る前に一つ。今はまだ起きてないけど、本物の神父さんが起きたら、君の事をどう説明したらいいかな?」

「え?あ…そのぉ…」

>「ええっと、変な意味ではないんだ。ただ、神父さんが君に対して疑問を持つかもしれない。
 その時に適当な言葉で誤魔化さないと色々と不利になりそうじゃないか。そういう意味で聞いたんだけど……」

思えば私はこの人に名前しか名乗っていない。どうしてここにいたと聞かれても自分でも分からないし…
一般の人に機関と言っても分からないだろうし、私がビルの警備員と言っても怪しまれる。
今は隠れているけど胸の血痕も説明出来ない。それに、もしこの人が異能者だったら…

>「ま、その時はその時で今は教会に入ろう。あ、それと何故か塩の臭いが凄いから、その手袋で鼻を塞いだ方が良い」

私の考えを断ち切ってくれるように言葉を放ってくれた。いつかはこの人にも私のことを話さないといけない時が来る。
忠告を受け、手袋で鼻を覆うように塞いで、中へと入る。

>「あぁ、そういや俺も自己紹介しないと。俺は恋島達哉。歳は……あれ、なんだったっけ?」

恋島…達哉…恋島達哉…あまり聞かない名前だなぁとか思ったり。とても人の事を言えないけど。
中に入ると、強烈な臭いが私を歓迎してくれた。
74姫野 与一 ◆LuqsQs0P4w :2009/01/12(月) 15:40:38 0
「ウッ…ス、スゴイ…」

まさに想像を絶する臭い。塩の臭いはとてつもなく酷かった。
これじゃポチが嫌がるのも当たり前かも…

だが臭い以外は正真正銘本物の教会。丁寧に並んでいる長椅子、奥には大きな像、蜘蛛の糸?
そして、上からフランスパンを持って現れた(多分)本物の神父さん。
神父さん若いなぁ。長い顎鬚がすごい…
その若い神父さんが恋島さんの前に立ち、口を開く

>「ほう、何やっているのかと見に来たら貴方はこの神聖な教会に女を連れ込んだのですか。
人がせっかく運び込んだって言うのに貴方は……図々しくも女を連れ込むとはうらや……無礼者。
お前には神の天罰が下るだろう、いや下ってもらう、主なる神よ、どうかこの輩に神の鉄槌を……」

カ、カッコいい…
じゃなくて、この神父さんは私が来たことに文句を言っている?
このままでは恋島さんに天罰が…

>「何か弁解があるのですか?
いや、ないでしょう、よって私は神に代わり貴方を裁く」

どこに行くのかと思ったら神父さんは角の方から箒とファブリーズを持ってきた。

>「これでこの塩を全て掃き、その後ファブリーズで臭いを消しなさい。
このフランスパンは一応あげます、掃除が終わったら呼んで下さい」

と、恋島さんにフランスパンを託し、箒とファブリーズを残して神父さんは去っていった。神父さんってとんでもないなぁ…
罰が当たったのが恋島さんとはいえ、大半が私の責任だ。ここは飲み物のお礼も兼ねて

「じゃあ、箒は私が…やります。パン食べるならジャム…どうぞ。」

椅子に置いたバッグから使いきりのビニール包装のジャムを取り出し渡す

爪は鋭いが触れなければ問題はない。物もちゃんと掴める。
これなら装弾物語を使う分には問題ない。
私は箒を片手に床を掃き始めた。

「…神父さんって色々とすごい人なんですね…意外でした」

【掃き掃除を始める】
【恋島に愚痴をこぼす】
75恋島達哉 ◆KmVFX58O0o :2009/01/13(火) 00:26:36 0
>>65>>72-73
自己紹介しようとして言葉に詰まってしまう。思えば姫野さんとはあってすぐの仲だ。友人ではないし、知人にもなっちゃいない。
まぁでも、名前だけ覚えてもらっても良かった。にしても慣れたと言ってもこの臭いはかなりキツイな。
周囲のステンドガラスから光が差して来た。そろそろ神父さんが起きて来るだろうと思った矢先。

>「ほう、何やっているのかと見に来たら貴方はこの神聖な教会に女を連れ込んだのですか。
  人がせっかく運び込んだって言うのに貴方は……図々しくも女を連れ込むとはうらや……無礼者。
  お前には神の天罰が下るだろう、いや下ってもらう、主なる神よ、どうかこの輩に神の鉄槌を……」
うわっ! 気づけば神父さんが、俺達の目前にまで近づき、俺に対して渋る様な低い声でそう言った。
手元に旨そうなフランスパンを持っている。もしや俺の為に持ってきてくれたのだろうか。……いや、問題はそこじゃない。
あのですね、神父さん。彼女を連れてきたのには深い訳が……ってそう言ったら逆に怪しまれるな。どう説明すれば良いんだ。
てか神の天罰って何ですか!? もう十分不運な目にあってますよ! これ以上不幸な出来事に巻き込まれたら今度こそ俺は……!

>「何か弁解があるのですか?
  いや、ないでしょう、よって私は神に代わり貴方を裁く」
全く変わらないトーンの口調で、神父さんがそう続ける。……神父さんが俺を裁くんですか?
ヤバイ、マジでヤバイ……。もしかしたら不法侵入で警察に突き出されるのだろうか。それとも天から雷が落ちてくるとか?
どっちにしろ、俺は神父さんに裁かれるのであろう。リアクションに困って表情には出ないが、俺の鼓動は異常に早くなっている。

すると神父さんはどこからか箒と……何だ? コンビニのトイレとかでよく見る防臭剤みたいな……。
あぁ、ファブリーズか。ファブリーズと箒で、俺にどんな罰を……段々分かってきた。
>「これでこの塩を全て掃き、その後ファブリーズで臭いを消しなさい。
  このフランスパンは一応あげます、掃除が終わったら呼んで下さい」
神父さんはそう言いながら、箒とファブリーズを床に置くと、持っていたフランスパンを俺に半場強引に押し付けた。
……やっぱり良い人みたいだ。まぁ迷惑掛けた事には変わりないし、コレくらいやらない事には神父さんに感謝の意を示せないだろう。

そうだ、神父さんがくれたこのフランスパンは……姫野さんにあげよう。いや、まるまるあげると遠慮されるかな。結構大きいし。
そう思い声を掛けようとした、が姫野さんは俺が動くより先に傍らのバックに手を伸ばすと、小さなビニールパックを取り出した。
コレって……ガキの頃に給食とかで良く見たイチゴジャムの包装パックか! 凄いなぁ、何でこんな持ってんだろう。姫野さん。
懐かしさのあまり、俺は姫野さんからそれを受け取る。アレ、でもコレじゃ……。
76恋島達哉 ◆KmVFX58O0o :2009/01/13(火) 00:28:27 0
>「じゃあ、箒は私が…やります。パン食べるならジャム…どうぞ。」
……渡されたからには使わない訳にもいかない。俺は頷いて、フランスパンを二つに割り貰ったイチゴジャムの縁を開ける。
姫野さんは置いてある箒を手に取ると、黙々と入り口付近を掃除し始めた。なんか悪いなぁ、うん、凄く悪い。
けど……ううむ、耳鳴り〜、俺はどうすりゃ良いんだ? ……まだ寝てるのかよ。ホント、今敵でも襲って来たらどうすんだっての。

>「…神父さんって色々とすごい人なんですね…意外でした」
掃きながら姫野さんが呆気に取られた様な口調でそう言った。確かに色々凄いよね、神父さん。
「ホント、俺マジで天罰食らうかと思ったよ。色々と思い当たるからなぁ、罰当たりな事が」
と軽く返すが実の所、いつか本気でしっぺ返しが来ると俺は思っている。実質……いや、止めとこう。
昨日が転換期だったと俺は思う。常識的感覚も、倫理観も。だからって覚悟が出来たかと思えばそれは違う。

未だに迷ってる事には変わりない。分からない。俺は何をしたいのか、この町でどうしたいのか。
それが分かれば楽になれるのかもしれないが、その時こそマジで死ぬかもしれない。
漠然とした恐怖と不安と焦燥が、心の中で渦巻いていた。

「……変わるよ。大体、俺が受けるべき罰だからね」
腹が空いていたからか、フランスパンを数分で平らげ、俺は姫野さんに掃除を変わると言った。
姫野さんは一瞬考える動作を見せたが、箒を渡してくれた。
箒の変わりに割ったフランスパンを手渡す。これくらいなら女の人でも食べきれる……と思う。

姫野さんが手早く掃除してくれたお陰で、あらかた片付いた。後はファブリーズで匂いを完全に消すだけだ。
ファブリーズを噴射しながら、この後どう動くか考える。取りあえず薬局に向かわなきゃならない。俺のバックがあるからな。
携帯はマスターの店に置きっぱなしのままだが、正直あの区域には行きたくない。悪い予感しかしない。
……そう言えば、姫野さんはどうするんだろう。まぁ明朝だから学校だろうが会社だろうが間に合うとは思う。この町に限定すれば。

なんとなく聞くのも失礼な気がするし。まー良い。自己紹介も兼ねて、雑談するか。
「イチゴジャム、最高に旨かったよ。マジで有難う。ところで姫野さんはこういうのは何処で入手したんだい?
 なんとなく記者の血が騒いでね」
純粋に知りたい。イチゴジャムというか、俺はあーいうの感じでチョコとホワイトチョコが半々のが好きだったんだよなぁ。

【教会:AM5・45】
【フランスパンを半分に割って平らげる。イチゴジャムの入手先が知りたい】
>>73-74のレス間違いです、すみません】
77七草 ◆O93o4cIbWE :2009/01/14(水) 23:16:42 0
>>72

おどけてばかりいる七草に対し、神重は冷静に切り込む

「協力…といえば聞こえはいいかもしれませんが、あなたの本当の目的はなんでしょうか?
 単なる興味?それとも金?はたまた私が敵対する側に個人的な恨みでをもっているのか?
 そこを答えてもらわねば私は協力するかしないかの返答はできませんね」

的確な意見だ、相手の目的も何も知らない相手とはいそうですか、と手を組める筈が無い、
もっとも、彼を納得させるだけの理由が彼女にあるかというと、

「目的ねぇ…、ん〜〜」

彼女は暫し考える素振りを見せた。

目的――、私の個人的な目的は他人を巻き込むような事ではない、
私は柴寄の奴を平穏な暮らしに返してやりたいと思う、だから災いの芽は全て刈り取らなければならない、
まあ、私自身の愉しみも入ってるんだけどね、
正直の所、機関が何をしようと知った事ではない、
私が先生に協力してあげようと思うのは、単に先生が気に入ったから、後、楽しそうだから。

「そうねぇ、機関には借りがあってねぇ、そろそろ借りを返したいと思ってるのよ、
 あとは…、先生の事が気に入ってるから、じゃあいけないの?」

とりあえずは無難な返答を返す、本当は、先生ともっと遊びたい、それだけなのだ

【七草:神重の問いに答える】
78姫野 与一 ◆LuqsQs0P4w :2009/01/15(木) 22:32:26 0
>>75-76

お腹が空いていたのか、恋島さんはすごい勢いでフランスパンを食べている。
そういえば私も夜から何も食べてなかったな…

>「ホント、俺マジで天罰食らうかと思ったよ。色々と思い当たるからなぁ、罰当たりな事が」

「罰当たりな事…ですか。やっぱり誰でも一つはそういうもの、抱えていますよね…」

思えばこの戦いが始まって何人殺したんだろう…考えたこともなかった。
今までは何も考えないでただ、仕事として人を狙撃していたけど、殺される人はやっぱり怖いと思う…
でも、殺さなきゃ殺される。この戦いに参加してしまったからにはこれを当たり前と思わなきゃならない。
特にアイツに会ってからはそれを痛感した。今度アイツに会ってしまったら殺される…生きるための…力がほしい。

ん…?木の上に誰か立っている…?女の人…だ。長い黒髪と着物が綺麗…こっちを見て微笑んでいる…

>「……変わるよ。大体、俺が受けるべき罰だからね」

フランスパンを持った恋島さんがいつの間にか後ろに立っていた。
半分以上は終わってるし…元々は恋島さんが受けた罰だから、渡した方がいいのかな。

「え?あ、はい、すいません。…どうぞ」

恋島さんに箒を渡し、彼が二つに割ったフランスパンを受け取り、もう一度あの女の人の方を見る。
すでに女の人の姿はなく、朝の日差しが教会に暖かい光を放っていた。あの人、綺麗だったなぁ…

恋島さんは既に床を掃き終えていて、ファブリーズを噴射してた。
塩の臭いも少し弱くなっている。私もフランスパンを食べ終え、長椅子で座っていた。

>「イチゴジャム、最高に旨かったよ。マジで有難う。ところで姫野さんはこういうのは何処で入手したんだい?
 なんとなく記者の血が騒いでね」

「あれですか…あれは実家の母が小学校の給食センターで働いていて
余った物をよく送ってくれるんですよ。あ、ジャムは切らしちゃいましたけどね。
あれ食べると給食が懐かしく思えます…

あ、そういえば…恋島さんはこれからどこか行く予定とかあるんですか?
その…いつまでもここに居るのも神父さんに悪い気がしますし…」

そう。ずっとここに居る訳には行かない。ハチを探さなければいけないし
もしかすると、機関の人たちが来るかもしれないから…

【恋島と今後の事について相談】
【六時前】
【''着物の女''は与一にしか見えない】
79レオーネ ◆GWd4uIuzU6 :2009/01/15(木) 23:55:35 0
>>66-68

一階ロビーへ戻ると、我々の姿を見つけた茶髪の男が近づいてきた。

「No.6、今しがたNo.17の衣田様が御出撃なされました。
 襲撃者達の追撃はサードナンバーに任せて頂きたいと申したのですが……」

そう言った男の顔は明らかに困惑していた。如何にも"不味い奴に見つかった"という顔だ。
衣田……? あぁ、No.8お抱えの異能者か。
衣田という男、以前まではサードナンバーの下っ端に過ぎなかったが、
No.8にその実力を買われて、現在では『機関一の炎の使い手』と認められるまでに成長した。

彼は三桁番号から一気に二桁番号の上位に登りつめた実力者だ。
力が有るのは認めるが、敵の正確な数が解らん内から出撃するのは愚策だな。
まぁ、サードナンバーが向ってどうにかなる連中ではないのは確かだ。

「問題ない。君達は今まで通りの任務に当たれ。
 ここは一つ、No.17に任せてみようじゃあないか」

男や永瀬たちを置いてエレベーターに向うと、上昇のボタンを押す。
腕時計を見ると、まもなく朝六時になろうとしていた。
……通りで外が明るい訳である。
エレベーターを待っている間、彼らに向き直ると"一つの命令"を下した。

「私はこれから用事を済ませてくる。
 君達は交代で仮眠を取れ」

男は疑問の様相を呈したが、永瀬と香坂は私の言葉に素直に頷いた。

「君は養成所で習わなかったのかね?
 寝れば精神力、即ちメタトロンは睡眠時間に比例して回復する。
 これからの戦いに備えて、コンディションを万全の体勢に整えておくべきだ。

 ……違うかな?」

男は納得の表情でポンと手を叩いた。
――私は永瀬達に何かあったら連絡を寄こすように伝えると、
やって来たエレベーターに乗り込んだ。

目的地は十階、社員食堂のある階だ。
一昨日の晩から何も食べていない。流石にこの歳で丸一日食事抜きは堪えたな。
昨日の朝方ハーケンに勧められたインスタント麺を食べておくべきだったか?
……いや、駄目だ。食べなくて正解だ。
容器からの有害物質が気になるし、そもそも私はインスタントが余り好きではない。

確かこの街には美味い食堂があった筈だが、
なにぶん最後に行ったのが十七年近く前の話だ。
まだ経営しているかどうか定かではない。
オムライスが非常に美味しかった記憶が在る。

――エレベーターの密室に腹の鳴る音が木霊した。

【レオーネ:現在地 ナガツカインテリジェンス本社ビル】
【時刻:5:40 A.M.】
【社員食堂へ向っている】
80レオーネ ◆GWd4uIuzU6 :2009/01/15(木) 23:57:45 0
日付を入れ忘れたorz

>>79の訂正
【四日目 時刻:5:40 A.M.】
81恋島達哉 ◆KmVFX58O0o :2009/01/16(金) 23:49:54 0
>>78
もう大体終わった……な。ガンマンの様にファブリ−ズのトリガー部分をくるくると回す。俺一人だったらかなり時間が掛かってただろう。
パンの件も含めて姫野さんには感謝しないとな。もちろん泊めてくれた神父さんにも。

>「罰当たりな事…ですか。やっぱり誰でも一つはそういうもの、抱えていますよね…」
姫野さんが、俺のさっきの罰当たり発言でそう呟いた。何故だかその時の横顔が妙に物寂しい気がした。
まぁ誰しも大なり小なり、清算したい罪はあるもんだ。それが清算出来るかはともかく……。
ふと、姫野さんの目線が妙に外を向いているのが気になる。……まぁ良いか。

そうだ、それよりもあの昔懐かしイチゴジャムの入手方法だ。俺は姫野さんの回答に耳を澄ます。
>「あれですか…あれは実家の母が小学校の給食センターで働いていて
  余った物をよく送ってくれるんですよ。あ、ジャムは切らしちゃいましたけどね。
  あれ食べると給食が懐かしく思えます…
身内か! その線は考えてなかったなぁ。給食のオバサン(失礼)がお母さんとは……なかなか羨ましい……のか?
しっかしこれほど旨い物を残すガキンチョは度がし難い。大人になったら中々食えないんだぞ、給食自体。
つか、給食自体にノスタルジックを感じる年でも無いがな。まだ20代だし。オッサン化は外見だけで勘弁だぜ。

>あ、そういえば…恋島さんはこれからどこか行く予定とかあるんですか?
 その…いつまでもここに居るのも神父さんに悪い気がしますし…」
パッと、姫野さんが思い出したようにそう言った。あぁ、そうだった……。
いつまでもココに留まってる訳にもいかない。取りあえず薬局に向かうのが先決だ。無きゃ困る物がある。
けど、それはあくまで俺の事情だ。姫野さんを同行させるわけにはいかん。

「ん……俺はこれからちょっとした野暮用で、この先の薬局に行くんだ」
ぶっちゃけ昨日の路地並みに行きづらい場所ではある。流石にもうあの二人はいないと思うが。
国崎があの日以来戻って来ていないという可能性は無いし、この町の状況だ。暴漢が店を占拠してるって・・・・・・考えるのは心配しすぎか。
コレはあくまで俺の事情だ。他人を巻き込む義理は無いだろう。

「姫野さんはこの後どうするんだい? おれの用事は別に何時だって良いんだ。
 良ければ職場にでも学校にでも送るけど」
……姫野さんが凄く怪訝な表情で俺を見つめた。あ、あれぇ……? さっきからどうにも決まんないな、俺。
髪の毛をボサボサと掻く。そういや風呂っつーかシャワー浴びたいな。塩だの埃だので体が妙にべた付く。

「まぁ……良いさ。取りあえずこの教会からは出よう。神父さんに礼を言わないと」
俺は置いてある箒を持ち、ファブリーズと一緒に用務倉庫にしまう。そして神父さんが上がっていた2階に向かって大声で伝える。
「掃除は終わりましたー! 泊めてくれた上、フランスパンを下さり、本当に有難うございました!」

神父さんに感謝(もしかしたら寝ていたかもしれないが)の意を伝え、姫野さんに振り返る。
「それじゃ……どうしよっか?」
【教会・AM6:00】
【自分の目的地は伝えるが、行動は姫野に委ねる】
82小村 禅夜 ◆3LPMHhiq9U :2009/01/17(土) 03:11:29 0
>>26-27「全く、なにがなんだか……」
天井の大きな穴を見つめ、呟いた。
さっきの突然の閃光。あれはこの地下一階に待機していた異能者による攻撃らしい。
この連中服装は虐殺部隊のものだが、挙動や言動から機関の者ではない事が分かった。
大方、そこらへんの一般異能者を金か催眠か何かで連れてきたんだろう。
全く……機関は異能者を雇いたいのか、殺したいのか、増やしたいのか分かりませんね。
「…それでは、私はこれで。まだ送迎をしなければいけないお方もいるので。」
初老の男性はそういい残し、車に乗って外へ出て行った。
一階から落ちてきたセカンドナンバーの少年に一瞥もせず、階段のほうへ向かった。

「おや、夜が明けましたか。」
階段で一階に昇ると、ガラス張りの正面玄関から朝日が差し込んでいた。
エレベーター付近で、レオーネが永瀬達と会話を済ませ上階に向かうところだった。
私もそろそろ、休みましょうか。流石に゛この体゛も疲れは紛らわせないですし。
レオーネがエレベーターに乗り、永瀬達が解散した後にエレベータへと向かっていった。
エレベーターの呼び出しボタンを押すとほぼ同時に、
さっきまで居た階段から灰色の作業服を着た集団が駆け下りてきた。
あの集団は確か【抹消部隊】。虐殺、暗殺などの機関に幾つかある特殊部隊の一つだ。
彼らは主に、異能者による戦いの痕跡を消すために活動している。
具体的には破損した器物の修繕や、目撃者の記憶修正。
現場だけでなく、世界規模に異能力に関する報道の規制や抹消。
今日に至って、異能力が世界的にまだゴシップ雑誌の噂程度でいるのも彼らのお陰だ。
ある意味虐殺部隊よりも過酷な労働をしている連中だ。
83小村 禅夜 ◆3LPMHhiq9U :2009/01/17(土) 03:13:03 0
「……昨日ビルを壊してしまった私にとって、あまり一緒に居たくありませんね…」
エレベーターが来たので、さっさと乗り込み目的の階のボタンを押した。
扉が閉じていき、閉じたときの僅かな音だけがせかせかと働く抹消部隊に別れを告げた。
「ふぅ……おや、もうこんな時間ですか……」
長かった…というか一日にこんなに戦うなんて何日ぶりだろう…
そういえばアーリーはどうしただろうか。まぁ、大丈夫だろう。
足は遅いけど、逃げるのは得意だろうし。
ああ、それと―――
(……本部でそんな事考えていると、心読まれてばれちゃうかもヨー)
「な……!!」
頭に響く突然の声。驚きに戸惑ったが、数秒後呆れたように溜息をつき首を振った。
(全く、何の用です。…それより、あなたアフガンで潜入任務じゃなかったんですか。)
(ヘヘ、あんなつまんない事さっさと終わらせて来ちゃったヨー。
こっちのほうが楽しそうだし。)
(…それより、いつ゛入り゛ました。)
(えっとねー、地下一階に居たの雑魚どもの一匹に混ぜておいて、小村が近づいたときにー)
(……さっさと出て行きなさいよ。こっちも疲れてるんですから)
(あ、今面倒臭いって思ったでしょ。ヒドーイ、金剛様に言いつけてやるんだから。じゃ〜)
その言葉を最後に頭にあった違和感がとれ、声も聞こえなくなった。
「全く…なんであいつはあんなに面倒くさい奴なんだ…」
ブツブツと、一人エレベーターで愚痴っているとエレベーターが目的の階に到着した。
エレベーターを出ると、右手の通路から男性が走り寄ってきた。
「小村禅夜様ですね。社長より伝言です。6時に23階の総合会議室で会議です。」
それだけ言い残し、男は小村がいま乗ってきたエレベーターに乗り込み、違う階に行ってしまった。
「はぁぁぁ………面倒…くさいですね…」
疲れた溜息をまた吐き出し、とりあえず一回休もうと奥の部屋に歩いていった。

【小村:ナガツカインテリジェンスビルの一室で休憩】
【他の幹部には機連送で連絡が行き届く】
84クロノ ◆SoGLnhQ8WY :2009/01/17(土) 12:34:38 0
日が昇ったばかりの人気の無い静かな公園。
そのベンチにタキシードの男と、メイド服の女が座っている奇妙な光景がそこにあった。
男は手にしているナイフに爪でガリガリと傷を付けていて、刃から柄の部分まで傷だらけにすると袖口にそれをしまう。

「――ナイフ2ダース、確かに受け取りマシタ」

タキシードの男――クロノはそう言って横倒れの形になると、ベンチの隣に座るメイド服の女性の膝に頭を乗せる格好になる。

「ついでに出撃の時間まで少し眠っていたいのデスガ、膝枕でも頼めマスカ?」
「…貴方のレジスタンスのメンバーは寝込みを襲って仲間を殺しても、罪にはならないそうですね?」
「貴女の膝元で死ねるなら本望デス」
「……」

クロノの持っている異能力は、眠っている最中であろうとナイフや銃弾のレベルでは全く受け付けさせない。
なので本来ならばこれは余裕の表れに聞こえなくもない。
しかし今彼が相手にしているのは葛野美弥子――異能力の無効化を行える中和能力者である。
そして彼女に対するクロノの評判も例外なく悪い。そんな彼女の前で眠ってしまえば、ナイフの一本で殺す事も容易だ。
この男がその事を知ってて言ってるのかはわからないが――

「申し訳ありませんが、仕事がありますのでこれで失礼します」

葛野はそう言って立ち上がるとクロノはベンチに頭をぶつける。
彼はそのまま動かず、頭をぶつけて気絶したかのように振舞っている。
彼女はそのまま振り返らず公園を後にした。

【クロノ:葛野美弥子から武器を補充、公園で寝ている】
85ゴールドウェル ◆fEvO9ByRpU :2009/01/17(土) 23:52:04 0
その日私は01より日本本部へ来るように召集をかけられた。
そういえば、今日本で選定が行われているという話だったな。
私は中東地区の総轄を部下達に代行させて機関本部、貳名市へと向かった。


――あれから4日。
飛行機がハイジャックされたりして数日のタイムロスがあったものの、無事日本に到着。
しかし時間が遅れたのもあるが、なんだかんだで到着予定と違う空港に降りた為、出迎えの者はいない。
それに情報部に問い合わせたところ、ここ数日で何故か構成員が大幅に減っており、今も本部が強襲されようとしていて人員を割ける余裕もないという。
そこで開かれる6時の緊急会議にはなんとか間に合わせたい。だがここ黒礫市から貳名市の本部まで徒歩で向かっては間に合わん。
人気の少ない時間帯とはいえ見つかるリスクがあるが止む終えまい。

『浮遊能力(フロートアビリティ)』発動!

私は『浮遊兵器(フロートオクトパス)』の二つ名の所以となる異能力を解放し、地面を蹴ると自分自身を空中に浮かせる。

『反重力の応用(アンチグラビティアプリケーション)』

そして上空200m付近まで浮かび上がると、見えない壁を蹴るようなモーションに傾き、まるで"横に落ちる"ようなスピードで空中を移動する。
通常上から下に落ちる重力に反して、反重力をかけて"下から上に落とす"のが『浮遊能力』
能力の使い手…つまり私自身の向きを変える事で、反重力の働く向きを変えて発動する応用技が『反重力の応用』だ。
さて、市民に見つからない内に早く到着せねばな。

【ゴールドウェル:日本上陸、黒礫市から貳名市上空を飛行してナガツカインテリジェンスビルの方角へ移動している】
86宗方零 ◆idMa0miDD. :2009/01/18(日) 02:09:09 0
冷たい感触がした。
金属製の手術台に横たわっていた。
眼を開くと無機質な光が眼を刺す。
視線をあげると白衣を着てゴーグルをつけた男たちが見下ろしている。

「被験者A14号施術開始」
男たちの中心人物らしき男が厳かに告げると、男たちは脇にあったトレイから禍々しい器具を手に取る。
メス、鉗子、穿孔機、回転鋸、異様に膨れ上がった注射器、etcetcetcetcetc...............
恐怖に体が強ばり、すぐさまそこを離れようとするが体が動かない。
金属製の手枷足枷で四肢は完全に固定されている。

中心となった男は「私」をメスで切り――待て、私とは誰だ――鉗子で傷口を広げ、鋸で断ち、穿孔し、薬品を注ぎ込み・・・
「私」は瞬時に絶命する、ほどなくして新しい「私」が運び込まれてくる。
その後意識は別の「私」に移り――「被験者A14号施術開始」――メス、鉗子、穿孔――狂っている、「私」にはとても耐えられそうにない――「私」とは一――「被験者Z11001号施術開始」――発狂、投与、監禁、耐熱性実験、耐冷却実験、真空曝露、
―苦痛――「被験者γ14号施術開始」―やめろぉぉぉおぉお!俺はもう耐えられ――退屈さまぎれの開腹、縫合、夥しい死体の山
―夥しい苦痛が繰り返された、「私」、否「我々」は無惨にも殺されては破棄された

機関に殺された能力者、失敗作、葬られたものたち――――
これはその記憶だ。
それを見せられているのだ。

頭のどこかで何千、何万の「私」が囁く。
「私/我々/”明滅<Xペクターはこの苦痛を忘れぬ」
「スペクターは亡霊、スペクターは囁くもの、スペクターは既に死すが故に死なず、眠らず」
だが、何千何万もの死を見せられている「私」とは何者だ――

―そうだ思い出した――私の名前――
私は宗方零、元警官、今探偵、”明滅<Xペクターの能力者、目的は、ゲームの勝利――

何万もの声が囁く
――目覚めよ
       ――目覚めよ
              ――目覚めよ
87宗方零 ◆idMa0miDD. :2009/01/18(日) 02:16:41 0
冷たい感触がした。
固く、冷たいものの上に横たわっている感触。
全体を把握する、五体満足、欠損なし、ただし傷だらけで何も着ていない。
ここはどこだ――――そこで唐突に思い出す。
 ――長束誠一郎、池上、桐北、無謀な賭け、協力者、神重、病院――
そう、思い出した。
「私」宗方零は神重と共に桐北少年を探して病院へと赴いた。
だが、病院は既に機関の者達が待ちかまえていた。
――そこで――私は一度死んだ。
能力者を倒したはいいものの、第二派が来ることは明白だった。
そこで私の能力の根元である亡霊どもが――心臓を強制的に止めた。
その後の記憶はない。

察するに、私は「死んだフリ」をさせられていたようだ。
まあいい、ともかく今はここから出ることを考えよう。
だがここはどこだ?暗い・・・
ガクン、と体が引かれ、突然明かるい場所へ引きだされる。
見上げると、白衣を着た男がこちらを凝視していた。
どうやらここは病院の霊安室らしい、奴らは私を死んだと判断したのだろう。
私は一糸まとわぬ姿で、死体ボックスのトレイに収納されていたようだ。

男は目を見開いていた、まあ死んでいたのだし仕方ない。
「な・・・・・・死体・・・が・・・ああ・・・ぐっ」
男は壁沿いにずるずると崩れ落ちた。気絶したようだ。

私は遺品箱から服と所持品を見つけると、それらを身につける。
携帯の電池は――残り一本だがなんとかなりそうだ。
神重にメールを打つ。
『宗方だ、なんとか生きている。そちらはどうだ?』
メールを打ち、霊安室を出ようとすると、足下で男が伸びている。
多分、私のエピソードは確実に何年か後に怪談と化すだろう。

幽霊探偵の営業再開に相応しい幕開けだな──やれやれ。

私は霊安室のドアを開け、そこを後にした。
【宗方零 1日目開始】
【病院の霊安室から脱出】
88廻間 統時 ◆7VdkilIYF. :2009/01/18(日) 23:57:09 0
俺は暗黒の中を歩いていた。
光も音も何も無い『黒』の中を歩き続ける。
俺は、これがすぐに夢の中なのだと実感した。
先ほどまで会った身体のだるさが無くなっている。
いくら一晩寝たからといって、すぐにとれるものじゃあ無いだろう。

「おーい」

……俺を呼ぶ声が聞こえ、
ペチペチと誰かが俺の顔をはたいている感触が頬に走る。
それに伴い、目の前の『黒』に光が差し込んできた。

「おぉ〜い」

……誰だ、俺を起こすのは……
多少イラッとしながらも、目を開ける。
すると、そこにいたのは……

「お〜、やっと起きたな」

こいつは……この見覚えのあるこの顔は……
俗に言うイケメンだが、どっちかと言えば綺麗と言う顔のコイツは……
俺のクラスメイトで、友人の一人……

「リース?」
「そうそう、リース」
「なんでここに……?」

俺は率直な意見をぶつける。
事情は知らないが、何でこんなところにリースがいるんだろうか?
学生が朝っぱらから、薬局に一人で来るなんておかしい。
……まあ、俺は例外としてだ。
そういえば、ここは薬局なんだな……
って、事は元の場所に戻されたんだな。
それにしては、戦場ヶ原やアニキの姿が見えないが……まあ、探しに行けばいいだろう。

「いや〜、トージを探してたんだよ。
 同じクラスメイトのお前が、数日前から学校に来なくなったからよ〜」
「……ちょっと事情があってな……」
「事情ねえ?
 そんな刀を大事そうに握り締める事情ってよぉ〜、一体なんなの?」
「っ!!」

し、しまった!
『紅い月』を握り締めたまま、気絶してたのか……!!
どうする、どうする、どうする俺……!
回転させろ、頭を回転させろ、この場を乗り切る知恵を授けろ……
う、うーむむむ……

「あ、いや、ちょっと居合の模範演技で……」
「こんな所で?」
「うっ」

……不味い、墓穴を掘ったか。
こりゃもう駄目かな……
89廻間 統時 ◆7VdkilIYF. :2009/01/18(日) 23:58:09 0
「トージ、お前異能者なんだろ?」
「そう、異能……者っ!?」

なんでリースが異能者の存在を知っている!?
確かに、こんな所で短刀を握り締めて気絶している人間は
普通の人間じゃあないって予想はつくが……
それに質問の仕方もおかしい……
唐突に俺が異能者だと言い放った……まるで、異能者が極々当たり前に存在するように。
……まさか、リースも?

「実はよぉ〜、俺も異能者なんだ」

リースはそう言って、手のひらの上に小さな氷を作り出した。
俺はその氷を手にとって見る。
……見間違いや幻じゃない、確かな冷たさが存在する。
って事は、これは本物……

「……メール、来たんだな?」
「まぁ〜ね……胸糞の悪いメールがな……トージは参加しているのか?」
「参加はしているが、殺しちゃいないさ。
全員生きてるよ、今は病院で治療中さ」
「そ〜かい……」

俺に向けていた視線が、多少鋭くなる。
仕方ないとは言え、やはり友人が殺し合いに参加しているのは嫌なのだろう。

「……俺はこの殺し合いの原因である、ある組織を突き止めた」

唐突に、俺は話を切り出す。
何故だかは分からないが、今切り出さないといけない気がしたからだ。

「何だって!?」

リースが俺の発言を聞くと、すぐに驚きの表情に染まった。
俺が原因を突き止めているとは、夢ほどにも思ってなかったんだろうな。

「そして、俺は仲間を見つけてその組織と戦う事にした。
 ……今すぐにでも襲撃をかけたいところだが、
 ちょっとした理由で仲間とはぐれちまった。
 だから、今からその仲間を探しに行こうと思う。お前も来るか?」

リースは俺の誘いにしばらく考えるように、顔を伏せる。
そして数分考えた後顔を上げ、俺にこう言った。

「よ〜し、俺も一緒に行くぜ。
 そんなヤツラは放っとけないしな」
「……悪いな」
「気にするなよ〜、俺とお前の仲だろ?」

そういってリースはバシバシと俺の背中を叩く。
俺は立ち上がり、紅い月を鞘に収めて懐に仕舞う。
そして俺達は薬局の入り口を開け外に出た。

「さて、どこから行こうか?」
「人がたくさんいる方が情報は集まりやすいと思うからよ〜。
 駅前とかに行ったほうがいいんじゃないか?」
「じゃあ、そうするか」

【廻間:リースと共に駅前へと移動。
    特に情報が集まらなかったら、一旦戻ってくる】
90池上 燐介 ◆qqu0tZFsYU :2009/01/19(月) 03:13:23 0
──俺は、岸辺を叩きつける波の音で目が覚めた。
目を開ければ、そこは砂浜の上。腕時計を見ると、時計の針はとっくに5時を回っていた。
空から発す白々とした光が海岸を照り付け始めている所を見ると、
どうやら意識を失ったまま夜を明かしてしまったらしい。

俺はふらりと立ち上がりつつ、服についた砂を払った。
そしてふと辺りを見回すと、割と近くの海岸に港らしきものが設けられていることに気がついた。
いや、それは港の面影を残した何かと言った方が正しいだろうか。
良く見てみると、そこは大地震にでも見舞われたかのように大地が荒れ果て、
建造物の多くが地に伏し瓦礫と化しているのだ。そして当然のように人の気配もまるで感じられない。

一瞬、どこかの国のゴーストタウンにでも来てしまったのか、と思ってしまったが、
その先で広がる見覚えのある景色によって、俺はこの場所がどこであるのかに気付くのだった。
──見覚えのある場所。そう、ここは紛れも無い貳名港近くの海岸だった。

「そうか……あの光でビルからここまで飛ばされてしまったのか……」

そう呟き、自分の身に起こったことを理解しながら、俺は体の調子を確かめるように拳を強く握り締めた。
妙な気だるさや脱力感は微塵も感じない。異能力の発動も何度か試してみたが、
これといった異常は感じない。つまり、どこにも不調はないということは直ぐに判明したのだ。
昨晩、あの妙な光を浴びたことで、体に何かしらの変調があるのではないかと不安に感じていた俺は、
思わず安堵の溜息をついた。

そこで背後で鳴り続ける波の音につられるように、俺はふと背後に広がる海岸に目を向けた。
そこには先程の俺と同じように、砂浜に伏せる二人の人間がいた。
一人はあの女剣士。もう一人は山田。どうやら俺とこの二人は同じ場所に飛ばされたらしい。
廻間やその兄という男の姿が見えないのは、恐らく俺達とは別の場所に飛ばされたからだろう。
(やれやれ、振り出しか……)

思いながら、俺は二人を起こそうと歩みを進めた──そんな時だった。
俺の背後で、強い異能力の存在を感じたのは。俺は即座に歩みを止め、振り返った。
──そこには、黒服に身を包んだ見覚えのある男が立っていた。
そいつは機関のNo.8──夜叉浪という男の命を受けたとかで、
俺が長束に会ったと同じ日に俺の前に現れた、衣田という男に違いはなかった──。

「池上 燐介……。後ろにいるのは山田 権六……そして新手の仲間か。
昨晩の襲撃に参加した奴らは少なくとも五、六人いたという話だが、
その様子だとやはり貴様ら三人だけはまとめてこの場所に飛ばされたようだな」

衣田は静かにそう切り出すと、こちらへゆっくりと歩みよりながら火炎を纏い始めた。

「全く、貴様らも随分と派手にやってくれた。お陰で我々は多くの同胞を失い、
加えて今やファーストナンバーの信頼さえ失いつつある。
もはやこれ以上、貴様らを生かしておくわけにはいかん。この俺の手で始末させてもらう」
91池上 燐介 ◆qqu0tZFsYU :2009/01/19(月) 03:27:05 0
「始末……? できるのか、お前に?」

俺がそう言うと、衣田は身に纏った火炎を自身の右腕へと集約させ、強力な火炎を現した。
奴はこちらとの距離10メートル程の位置で歩みを止めたにも関わらず、
その位置から炎は俺に皮膚が焼け焦げそうだと感じさせる程の熱気を放っている。

「こいつを受けてみれば分かる……『ヘル・フレア』ッ!!」

衣田の掛け声と共に、奴の右手から凄まじい灼熱の火炎の渦が放たれた。
いつぞや見た奴の同じ技とは熱気も、渦の規模もまるで違う。
だが、俺は避けようともせず、ただ平然として火炎の接近を許していた。
かといって、勿論むざむざとくらうつもりなどない。
──炎の渦が目の前にまで迫ってきたその瞬間、俺は異能力を発動。
同時に厚さ何十センチもあろうかという一枚の氷の壁が、瞬時に炎の前に立ち塞がった。
『氷壁』──。これはその変形版だ。
炎の熱は俺に届く前に突如として出現した氷の壁によって吸収され、次々と白い水蒸気と化していった。

が、俺には攻撃を防いだと気を緩める間も与えられなかった。
立ち上る水蒸気の中から、不意に無数の炎の塊が俺へと目掛けて一斉に飛び出して来たのだ。
不意を突かれた俺は本能的に回避することを決め、その退路を空中へと求めた。
足の先から一瞬だが凍気を放出させ、水蒸気の立ち込める地上から視界の良い宙へとジャンプすると、
炎の塊は紙一重の差で俺に触れることなく砂浜を直撃した。
しかし衣田はそれを予想していたのだろう。奴は既に追撃の一撃を空に向かって放っていた。

それは奴が『ヘル・フレア』と呼んでいた炎。
再び回避する間も『氷壁』によって防ぐ間もなく、俺の体は今度こそ灼熱の火炎に包まれた。
──人間がこの一撃をくらえば、瞬時に火葬とされることは間違いないだろう。
しかし、俺を包んだ火炎は直ぐに消え去り、俺の体は無傷で済んでいた。
勿論、これは奇跡などというものが起こした結果ではない。この結果は火炎に包まれた瞬間、
その下から体を覆うように発した凍気によって火炎の熱が中和されたからに他ならない。
再び追撃弾を放とうとする様子を見せない衣田を見据えながら、俺は無事重力のままに砂浜に着地した。

「あれだけの炎を連続して撃てるとは大した奴だ。だが、相手が悪かったな。
お前と俺の異能力は表と裏、正と負。他の奴ならいざ知らず、俺に単純な力技は通用しない」
「フフフ……どうやら認めなくてはならんようだ。俺にとっての天敵が、お前であったことをな。
──いいだろう。天敵が相手とあらば見せてやらねばなるまい、この俺の真の力をなッ……!」

衣田から放たれる殺気が、これまでに無いという程、強く鋭いものへと変わった──。

【池上 燐介:海岸にて衣田と戦闘を開始】
92レオーネ ◆GWd4uIuzU6 :2009/01/19(月) 21:49:04 0
>>79

ここは食堂なのかと目を疑いたくなる。
所狭しと並べられた料理は、和洋折衷――様々な国の料理が並べられていた。
ナガツカインテリジェンスは国際企業である為、様々な国の人間が入社してくる。
必然的に社員食堂のメニューのバリエーションも多彩になってくるという訳だ。
都内の三ツ星レストランでもこのような光景は滅多に見られない。
私が来た時、閑散としてはいるものの、食堂自体は開いていた。
これは残業や夜勤の社員も利用できるように、休み無しで営業している為だ。
食堂は俗に言うバイキング形式で料理人の姿は食堂からは見えないが、シェフは交代で調理しているらしい。

私のトレーにはトマトソースパスタにオムレツとスクランブルエッグ――
ゆで卵のサラダが盛り付けられている。
私のトレーを見た人間はその量に驚きそうだが、これでも少ない方だと思う。

ナイフとフォークを器用に使いオムレツを食しながら、頭の片隅でこれまでの状況の整理をする。

間も無く炎魔が復活する。その為に城栄はアブラハム――
先天性異能者の中でも特別な存在をピックアップし、
私にその情報を調べさせていた。

しかしながらそのタイミングで、No.5外道院柚鬼がちょっかいを出してきた。
彼女の持つ粛清部隊の一員 紅原が最初に接触したアブラハム恋島達哉を襲撃するが、
彼に返り討ちにあってしまう。
93レオーネ ◆GWd4uIuzU6 :2009/01/19(月) 21:54:59 0
>>92

紅原との一件で負傷した恋島を治療する為に、
私は治療できる人間である香坂織重と連絡を取れる人物、
かつての教え子である永瀬翠に連絡を取った。

彼女と喫茶店『Swallow Tail』で待ち合わせをしていたが、永瀬は来なかった。
代わりにシルクハットを被った怪人が恋島を挑発し、彼らは夜の闇へと消えていった。

その後連絡が在り、反抗勢力である殲滅結社が
機関本部を襲撃するという情報が入った為帰還せよ、
という命令を受けた私は、機関本部へ戻ると
永瀬、香坂――そしてあのシルクハットの男と再会する。

味方の異能者による攻撃で地下駐車場へと落ちたシルクハットを追撃するが、
既に奴の姿は無く、振り上げた拳で空を切った感じだった。

――以上がこれまでの情報の大まかな纏めである。

情報を纏め終わる頃には、既にトレーは空に差掛かっていた。
しかしながら、このパスタは美味しい。
まぁ、私が作るパスタの方が美味いがね。

自分で言うのもなんだが、料理にはかなり凝っている方だ。
調味料から隠し味に至るまで、全てを自分の手で仕込む。
味も然る事ながら、やはり達成感が大きいな。
とは言っても、手間が掛かる為、最近は外食ばかりだが……。

他人の作るパスタが美味いと感じたのは久しぶりだな。

感慨に浸っていると、私の機連送の着信メロディである『青く美しきドナウ』が聞こえてきた。
懐から取り出し、受話ボタンを押すと男が話しかけてくる。

「No.6、ロンバルディーニ様。No.1よりの伝言です。六時に二十三階総合会議室で会議です。
 遅れずにご出席下さい。それでは失礼します」

一方的に話を終わらせると、男は電話を切ってしまった。
――会議、か。やれやれ、落ち着く暇も無いのか……。
ま、尤も、本部が攻撃を受けたという事は由々しき事態であるからして、
緊急会議が開かれるのは当然の事だがな。

私は空になったトレーを片手に持つと席を立った。
そして、入り口の横に設置された使用済み食器の棚に置くと、
二十三階――総合会議室を目指した。

【レオーネ:現在地 食堂前通路】
94神重智&敬 ◆6eLTPQTFGA :2009/01/19(月) 23:04:15 0
>>77 >>87

「そうねぇ、機関には借りがあってねぇ、そろそろ借りを返したいと思ってるのよ、
 あとは…、先生の事が気に入ってるから、じゃあいけないの?」

素直な答えなのだろう。作った嘘にしては下手すぎる。
後半の言葉はどう取ればいいかはわからないが…機関を潰すという目的で動くなら利害は一致する。

(にしても単純だよなぁ…単純すぎて逆に不審にも思っちまうぜ)
(敬…お前も似たような物だと思うがな)

返事を待っている七草に向かって神重は言う。
「いいでしょう。機関に対抗する意識がある…というのならば一応は協力といきましょうか
 ただそれが貴方の行動次第で瞬時に敵に回るということをお忘れなく…」

一応の停戦、そして同盟と言ったところか。
だが今から行動するにはあまりにも遅い。そして同盟を組んだといっても完全に信頼したわけではない。
その時だった

ピピピピ!
携帯のメール着信音が鳴り響く。マナーにしてなかったのは教師として如何な物か。
しかしこの気まずい沈黙を破るには十分だった。
携帯を開くと宗方からひとまず無事であることのメールが着ている。
返事を打つ

私も少し能力が不安定だが無事だ。
とにかく一旦そちらの事務所で落ち合いたい。少し遅いが構わないだろうか?

それを送信してから七草にもう一度向き直る。
「今から行動するには少し遅い…明日の朝から行動を開始しましょう。
 私は今から仲間のところへ戻ります…そして貴方ですが………一緒にきますか?」

七草が本当のところ何を考えているかはわからない。
しかし宗方と一緒ならば七草がたとえ敵であろうと負けるはずがないという確信があっての誘いだった。

【神重:七草と休戦、探偵事務所に誘う 宗方に事務所で落ち合う旨のメールを送る】
95姫野 与一 ◆LuqsQs0P4w :2009/01/19(月) 23:34:07 0
>>81

>「ん……俺はこれからちょっとした野暮用で、この先の薬局に行くんだ」
ジャーナリストとしての仕事の一つ…なのかな?こんな朝早くから…?
薬局ねぇ…確か…この街のどこかの薬局には異能者がいるって聞いた事が…
>「姫野さんはこの後どうするんだい? おれの用事は別に何時だって良いんだ。
  良ければ職場にでも学校にでも送るけど」
この人は優しい人なんだな…出会ったばかりなのに素性も分からない私を友人のように扱ってくれる。

それなのに、それなのに私はいつまで嘘をつき続けるんだろう…

>「まぁ……良いさ。取りあえずこの教会からは出よう。神父さんに礼を言わないと」
再び、考えを断ち切ってくれるようにして恋島さんが話し掛けてくれた。
そして恋島さんは神父さんの上がった二階へ顔を向け、感謝の言葉を…叫んだ。

>「掃除は終わりましたー! 泊めてくれた上、フランスパンを下さり、本当に有難うございました!」
短い時間だけど私もここに居たんだからお礼くらい言わなきゃ。

「えと、ありがとうございました!」
二階にも聞こえるような声で簡単なお礼を伝えた。
バッグから予備のコートを羽織り、恋島さんとこの教会を出る

>「それじゃ……どうしよっか?」
「いや、特に私も用事はないので、その…薬局に行きませんか?
私の事は気にしないで下さい。実は今日、仕事が休みなので…」
また嘘をついた。これはあまりにも無理がある。けど案外嘘ではないな…と思ったり。
ポチも気配に気付いたのか、トボトボこちらに歩いて来た

バッグが小刻みに震えている。携帯電話が鳴っているという事だ。偉い人からの、殺人命令。
質素な銀色の携帯電話を開きメールの内容を読み上げてみる………殺す相手を示す目標という欄に書かれていた名前は…

恋島、達哉。

【教会前】
【機関から恋島の抹殺命令が来る】
96 ◆SoGLnhQ8WY :2009/01/20(火) 16:57:00 0
「貴方は誰デスカ?」

その問いに答える白き仮面。

「私はオマエですよ」

そう言って白き仮面『オマエ』は『私』を傷つける。
ここでいう傷つけるとは文字通り身体に傷を刻んでいる行為である。
しかもその傷を刻む得物は『オマエ』の伸びきった爪によるものだ。
メスで手術をするような体勢で行われているが、実爪はそれほど器用に切れる代物ではない。
力強く肉を引き裂き刻印を刻まれる。この儀式に麻酔などの他の薬を投与させる事はできない。
なのに『私』は激痛に対して身動き一つする事さえできない。物理的な束縛をかけられているわけでもない。
『嘲る周波数(パペットマスター)』の能力による神経束縛。異能力を持たない当時の『私』には全く抵抗できる力はなかった。
傷の刻印を刻まれる度に激痛が全身を駆け巡り気絶する事もできない。
そんな傷の刻印を身体中に刻み終えるとようやく解放されその日は眠りにつく。

夢は決まって死後の世界と現世の狭間で『彼ら』と会話する。当時『私』のいた所はまさしく死後の世界に近い場所だったのだろう。
地獄の日々を過ごしていた『私』は早くそちら側へ逝きたかった。しかし『彼ら』は『私』をいつまでも受け入れてくれなかった。

「……嫌な夢デス」

"当時の『私』の夢"を言っているわけではない。
この回想全てがクロノにとって思い出したくない記憶の夢である。
しかし夢と解っていながら目覚める事はできなかった。


十六夜 美月
二つ名は『黒の物語(イヴィルクラスタ)』
眠りについている相手を記憶の夢に縛り付ける能力を持ち、その夢に手を加えて記憶を捏造する事もできる。
この力を用いれば起きている間はどんなに強力な能力を使う相手でも、変に複雑な心をしていなければ大抵は無力化を維持できる。
しかしこの力が通用するのは眠っている相手(気絶している相手)だけであり、この能力を生かしてバトルロイヤルの"勝ち"を得る為には殺す手しかない。
今までも疲労などで眠った異能者のところへ赴いてはいたものの、その事への躊躇いが彼女に戦いの勝ちを与えていなかった。

彼女も曾壁によって集められた22人の異能者の中に含まれており、ナガツカインテリジェンスビル一階ロビーで他の異能者の光に巻き込まれた内の1人だ。
そして偶然にもクロノの立ち寄ったこの公園近くの林の中に飛ばされていた。もちろん自分達の相手となるクロノの顔も記憶に残っていた。
自分が目覚めた時には近くのベンチでその男が寝ている。当然彼女はこの好機を逃したりはしない。
そして今彼女の心は曾壁の能力によって相手を殺す事へ躊躇いはない。
彼女はクロノを記憶の夢に縛り付けて起きなくさせると、その服の中から見つけたナイフで身体を刺した。
しかし手応えが無い。服には刺さっているが、身体は空っぽな感じで不思議な感覚だった。
そしてクロノ自身の寝息も止まず、皮膚の出ている頭部に直接刺してみるとすり抜けてしまう。
彼女はこの男が化け物と称されるレベルの異能者である事を悟った。
だがそれでも睡眠を必要とし、おそらく夢縛りの能力も効いている。何か手はあるはずだ。
彼女はとりあえず彼の服の中から見つけ出した2ダース分のナイフを、彼の全身に刺しておいて林の中に隠れ潜んだ。

【クロノ:十六夜 美月が近くにいる事で能力により眠りから目覚める事ができない】
97宗方零 ◆idMa0miDD. :2009/01/20(火) 17:18:56 0
私は霊安室をのドアを抜けると、病院の廊下へと急ぎ足で一歩を踏み出した。
暗い、携帯の時刻はかなり遅い時間だった。
携帯が鳴る。発信者は神重だった。
「キャアアアアッ!」叫び声があがる。見ると女性看護士が、懐中電灯を片手にへたりこんでいた。
ひとまずメールを確認。
>> 私も少し能力が不安定だが無事だ。
>>とにかく一旦そちらの事務所で落ち合いたい。少し遅いが構わないだろうか?

無事だった事を確認し、ひとまず安心する。
メールを返信。
「了解した、事務所で待つ」
送信完了。

私は急いで廊下の端まで歩き、壁を手探りする。
あった、蛍光灯のスイッチ。片っ端からON。
PAN!
廊下が明るくなる、これだけの”光源≠ェあれば移動可能だ。
私は安らかな笑みを浮かべつつ看護士に告げる。
「――これで神の御許へゆける、どうもありがとう」
移動能力『ルクスドライブ』を発動、テイクオフ。
姿がかき消え、滑走路の誘導灯が消えるように蛍光灯が消灯。
廊下の光を取り込み体を光に変換、廊下を滑走路のようにして飛ぶ。
私が最後に見たのは、卒倒する女性看護士の姿だった。
――やりすぎたかもしれない

光となって病院の地下から、地上へ抜け、受付を通り過ぎ、窓を通って夜の街へ飛ぶ。
上空まで飛翔、夜の街から光を取り込み、その後急速下降、光源が尽きて自由落下。
玩具のような街が眼下に広がり、それがどんどん近づいてくる。
ビルのネオンの横を落下し、光源を吸収。ネオンが消灯。再度ルクスドライブ発動。
事務所の破れた窓へと一気に突入。
そこで光源が尽き、私は事務所の床に顔から着地――する前に前転、受け身をとって転がりつつ
壁の前で停止した。

「いい着陸だ、機長」

事務所の中は闇だった。光源は尽き、私は文字通り事務所へ転がり込んだ。
懐かしい事務所に居た。
私はいつもの勘で壁を手探りし事務所の電気を点ける。
明かりがつくと、私はブラインドを閉じる。事務所は変わりなかった。

「ひどいナイトフライトだったな、ともあれ神重を待つか・・・」
私はそう呟くと。戸棚からタバコを取り出して火をつけた。
【宗方零 事務所へ移動 神重を待つ】
98恋島達哉 ◆KmVFX58O0o :2009/01/20(火) 23:05:20 0
>>95
俺が姫野さんに後の行動を尋ねると、姫野さんは神父さんのいる二階へと目線を向けた。
そして振り絞るような大きな声で言った。

>「えと、ありがとうございました!」
良い子だなぁ……。むしろ塩を掃いてくれた事に俺が君に感謝しなきゃいけない。いづれ、借りを返せればいいのだが。
まぁ、姫野さんの目的地まで送っていければ借りを返したことになるだろう。どちらにしろ、彼女とはココまでの縁だ。
その後はどうするか正直全く決めていない。確か薬局の近くかに銭湯があった気がする。そこで体の汚れを落とすか。

神父さんに御礼を伝え、俺達は教会を後にする。既に太陽が上がっていて、俺の目を眩しく刺激した。
しかしどれだけ空が晴れていても、俺の感情はもやもやの曇り空のままだ。一生晴れる気がしないほどの。
これほど意義について考えるなんて俺は中学生か何かか? 乾いた笑いが、自然に口元から溢れる。

と、横を歩いていた姫野さんが俺の駄目エスコート発言に答えを返した。
>「いや、特に私も用事はないので、その…薬局に行きませんか?
  私の事は気にしないで下さい。実は今日、仕事が休みなので…」
良いのかい? と口から出そうになる。薬局までついて来てもらっても俺はそれ以上の事は出来ないんだが……。
けれど姫野さんがそう望むなら拒否できないな。承諾しようとした瞬間。

姫野さんが担いだバックから携帯電話を取り出した。無駄な装飾の無いシンプルなフォルムの携帯だ。
何やらメールが着たらしい。同僚とか友達かな? 俺が関与する事ではないが。
そういや俺の携帯はどうなったんだろう。マスターが取っておいてるか、それとも……それも後々考えなきゃ。

ふと、姫野さんが立ち止まっている事に気づく。振り向くと何故だか浮かない顔で姫野さんが携帯の画面を見続けていた。
何か居心地の悪い事でもあったのだろうか。姫野さんの顔に斜陽が掛かって余計に不安そうな表情に見える。
……この妙な胸騒ぎは何だ? 俺の足は自然に姫野さんの方へと歩んでいた。
「……姫野さん? 大丈……」

大丈夫? と言いかけて久々にあの声が、俺の意識下に話しかけてきた。…・・・よう、元気だったか?
『達哉、早速で悪いがとても悪い情報と非常に悪い情報の二つ、君に伝えなきゃならない』
いきなり出てきてご大層な事ですねぇ。つか俺は今色々忙しいから、早めに頼むぜ。
『あぁ……。まずとても悪いほうの情報を教えよう』
ってちょっ、選ばしてくれないのかよ、おい。

『少しばかりやる事が多すぎて、しばらく助言が出来なくなる。もしも厄介事に巻き込まれたら……』
巻き込まれたら? いや、言わずもがな、何となく分かるけど。
『自分の力で頑張ってくれ。それよりも非常に悪い方だが、聞きたいかい?』
どうせすぐ近くに「機関」の奴らが大勢見回ってるとかそんなのだろ? ・・・…話してみろよ。


――――耳鳴りの言葉に、一瞬頭が真っ白になる。違う。そんなの――――嘘だ。
『一応知らせるべき事は知らせた。しばらく出てくる事は出来なくなるが、頑張れよ、達哉』
耳鳴りがそう言うが、俺は返事が出来ない。返事が浮かばない。返事が思いつかない。
目の前のいる華奢な女性が、昨日の――――誰か嘘だって言ってくれ。こんな気持ちが凹んでる時になんて事言いやがるんだ、耳鳴り……。

落ち着け、慌てた所で俺に何ができる。今俺に出来る事は――――。
「分かった。取りあえず薬局に行こう。でもホントに良いのかい? 俺なんかの都合に合わせちゃって」
もしも耳鳴りの語った情報が本当だとしても、俺は――――姫野さんを傷つける事は出来ない。
【AM6:35】
【姫野に再度、行動の任意を尋ねる】
99ゴールドウェル ◆fEvO9ByRpU :2009/01/20(火) 23:45:32 0
>>90-91
海沿いを飛んでいると、近くに異能力を察知した。
サイボーグ化した際に備わったプログラムと、第三の目が訴える共鳴。
人間であった時には感じる事の無かったものが今の私には嫌でも感じてしまう。なので普段は機関の構成員の中でも異能力を持たない部下を付けている。
だが、そんな私に嫌な感覚を呼び起こさせるには早い。本部までまだ距離があるはずだ。
当初の選定は3日の予定と聞いていたが…延びているのか?それとも本部を襲撃しようとしている"敵"が動いているのか。敵なら無視していくわけにはいかない。
私が異能力を察知した地点に向かうと火の気が見えた。だが私には内包されたプログラムにより異能力によって発生したものと認識される。

炎を発生させていた異能者――機関構成員17『炎熱暴動(ティーンエイジフレイム)』と照合一致。

私の中の構成員メンバーのデータと照合した結果、案の定片方は機関の構成員だった。
17という事は会議に参加する幹部の1人のはずだ…なら、こんなところで油を売っている理由があるとすれば"敵"の出現。
奴らは我々が本部に集まり、体制を立て直す前に叩こうとしているのだな。姑息な。
海の近いこの場で17に地の利があるとも思えん。

『浮遊能力』解除。

私は徐々に反重力を解いていき、重力に従って降下していく。
彼らが戦いに夢中とはいえ既に気付かれている可能性は充分あるが、飛んでいればいずれにしろ異能力を察知されるだろうからな。

「こんなところで何をしているのかね17。会議に遅れるぞ」

――『浮遊膜(フロートフィルム)』

私は不意な攻撃にも対応できるように、今度は自身ではなく自身の周囲を覆うように反重力をかけて2人の間に現われる。
範囲は極力抑えて1mにも満たないものの、私の周りの空気が巻き上げられるのが伝わる。形容するならオーラを纏っている感じだ。
まあこの技は長く使い続けているわけにはいかないがね。

【ゴールドウェル:海岸に着地。池上と衣田の戦闘に介入】
100戦場ヶ原&屡霞 ◆u5ul7E0APg :2009/01/22(木) 12:25:26 O
>>91>>99
突き刺すような殺気を感じ、戦場ヶ原は本能に従って跳び起きた。
現状把握をする間もなく、彼はすぐに臨戦体制をとる。
しかし、その殺気が自分に向けて放たれたものではないことに気付き、初めて彼は辺りを見回した。
朝日が水平線からまばゆく彼等を照らす。そう、ここは海岸だ。
屡霞との死闘ののち、戦場ヶ原が打ち上げられた海岸だった。あの時自分の傍らにいたのは、今は亡き猿飛。
しかし今彼のそばにいたのは―――…
「どうやらあの時受けた閃光で、ビルからここまで空間転位させられたようだな。」
屡霞が落ち着いた口調で言った。
彼女もまた戦場ヶ原と同じように先程の殺気に反応して目を覚ましたようだった。
現状をおおまかに把握した戦場ヶ原が次に気付いたのは、すぐそばでぶつかり合う二つの殺気だ。
視線の先には、彼等と同じように飛ばされた池上と、黒服をまとったスキンヘッドの男が対峙していた。
どこかで見たような光景だ。
互いの闘気が今まさにぶつかり合わんとしている時、意外なところからさらなる加勢が入った。
上空から現れた謎の男。黒服をまとった闖入者は、確かに空から舞い降りてきた。
「あそこにいるのは…例の氷使いか!相手は機関の構成員のようだ。
…どうする?戦場ヶ原。加勢するか?」
状況を分析しながら屡霞は、判断を戦場ヶ原に委ねた。
しかし、彼女の話しかけた方角に、既に彼はいなかった。

「朝っぱらから機関の連中とデートとは、お盛んなこったな、池上燐介!」

戦場ヶ原はいつの間にか池上たちのそばに立ち、自慢の大声を張っていた。
「くっ!あの馬鹿…」
相変わらずの彼の軽率さに毒づきながら、屡霞も彼のもとへ駆け寄った。
「この喧嘩、俺も混ぜやがれよ。」
戦場ヶ原は不敵な笑みを浮かべて池上に言いながら、対する黒服の男二人を見比べた。
彼は、ムシャクシャしていたのだ。昨夜の一件は、彼としても不本意なものだった。
リンを助けようと意気込んだ先で、あっさりと門前払いをくらってしまった。
その憂さを晴らすために、今の彼には闘いが必要だった。

戦場ヶ原の乱入にまったく動じない二人の様子から、敵の二人は機関でもかなりの使い手だろう。
しかし、屡霞はある違和感を感じていた。
敵のうち一人からは、異能の気がまったく感じられないことに―――…

【戦場ヶ原:池上VS衣田の闘いに乱入する】
101姫野 与一 ◆LuqsQs0P4w :2009/01/22(木) 17:53:58 0
>>98

……なぜこの人が?
恋島さんは異能者だった?そんな……
この人は…誰かに憎まれるような人ではない。とても良い人だ。
それを、それを知っていて、この人を殺せるわけがないよ…

――そうだ。偉い人から届くメールの最後にはいつも標的の画像が添付されている。きっとこれは間違いなんだ。本当は別人なんだ…
でも、そんな事はなく、画像に写っていた人は隣にいる恋島達哉、その人だった…
その時、私を心配してか恋島さんが話し掛けてきた。けれど…

>「……姫野さん? 大丈……」

途端、言葉を切り、驚きの表情を浮かべた後、一人黙り込んだ。
もしかして…気付かれた?この人の能力は人の思考を読み取る力?そうだとしたら今までの事は……そんなことはない!
心の中で強く否定した。私を助けてくれたのは恋島さんの善意。それを疑ってしまうなんて…最低だ…

再び口を開いた恋島さんは普段どおりの口調で――

>「分かった。取りあえず薬局に行こう。でもホントに良いのかい? 俺なんかの都合に合わせちゃって」

そうだ。これは私が自ら引き受けたことだ。それを破ることは出来ない。
そして、私はこの人を殺したくない。それが命令違反、職務放棄、反逆行為だとしても。

「えーと…はい。私は構いませんので…
…こんな所で時間を潰すのもあれですしそろそろ行きませんか?」

私の言葉に恋島さんは頷き、私たちは目的の薬局へと歩き出す。
わだかまりが一つ消え、少し落ち着いた…
だけど、これだけは今、ここで確認するべきだと思う。彼の為にも、私の為にも。

「恋島さんは……異能力を知っていますか?」

【薬局への移動を開始】
【恋島に質問】
102クロノ ◆SoGLnhQ8WY :2009/01/22(木) 22:27:38 0
朝も夜も関係ない。
目が覚めればそこに白い仮面があり、身体が動くくらい回復するまでは勉強をさせられる。
外の世界の常識を叩き込まれる。膨大な知識を頭の中に刻まれるのである。
その間、"食事"は身体に直接栄養素を注入される事でまかなう。
そして自分の意思でなく『オマエ』の意思によって操られて運動をし、身体は作られていく。
その繰り返しで身体が壊れる直前になると例の儀式で古傷を抉られて気絶して眠る。
毎日がそんな繰り返しだった。

その日も終わろうとする頃、いつものように傷を抉られていたが、『オマエ』は新しい所に爪を突きつけていた。
既に人間の身体について学び尽くしていた『私』は、そこを深く抉られれば確実に死ぬ事が解っていた。
飽きられたのか…それでもようやく終わりが来た。ようやく解放される。
心臓の上を浅く十字を切るように爪でなぞられる。
狭い世界で生きながらもいろいろな事を教わった。しかし最期まで何の為に自分が生まれてきたのかは知らされなかった。
…ずっと願っていた事なのに、いざ死が目前に迫ってその事を思うと急に死を恐ろしく感じた。
死にたくない。
その気持ちをトリガーにその能力は覚醒した。

「私にとってこれ以上の悪夢はありませんヨ?いい加減諦めてくれませんカ?」

クロノは夢の外に向けて話しかける。それを聞く者はいなかった。
>>101
一方、十六夜は林の中から、公園前を通りかかる姫野と恋島を見つける。
そこで姫野がこの男に襲い掛かって返り討ちにあった光景を思い出す。
確かにあの攻撃も全く効いていなかったようだが、自分よりはこの男を倒す攻撃手段を持つだろう。
そう考え彼女は昨夜と同じ虐殺部隊の格好のまま姫野の元に向かった。

【クロノ:十六夜 美月が近くにいる事で能力により眠りから目覚める事ができない】
【十六夜美月:恋島と共に薬局に向かう途中の姫野に接触】
103七草 ◆O93o4cIbWE :2009/01/22(木) 22:45:03 0
>>94

「いいでしょう。機関に対抗する意識がある…というのならば一応は協力といきましょうか
 ただそれが貴方の行動次第で瞬時に敵に回るということをお忘れなく…」

神重は、思っていたよりも素直に協力を受け入れた、しかし言いつつも釘を刺して置く処がこの男らしい。

七草はきっと内心笑みを浮べているのだろう、今にも表情に表れそうといった所だ、と、その時であった

ピピピピ!

甲高い機械音が四方の石壁に反響する、幸か不幸か、この沈黙を先に破ったのは七草ではなく携帯電話であった。

神重は後ろを振り向き携帯を開き、内容を確認している、神重にとっては、この着信は神の贈物だったのかも知れない、一方。

(何よ何よなんなのよ、折角良い所だったのに邪魔しないでよ!、空気を読みなさいよ!
 大体そんな惰弱な物があるから人間腐って行っちゃうのよ…、心しておきなさい、その惰弱な機械が、人類を壊死させるのよ)

とにもかくにも、携帯が嫌いな彼女であった。

曰く惰弱な機械を操作している神重先生は用事が済んだのか此方に向き直りこう話す。

「今から行動するには少し遅い…明日の朝から行動を開始しましょう。
 私は今から仲間のところへ戻ります…そして貴方ですが………一緒にきますか?」

一緒に来ますか、とは神重の誘い、普段の彼女なら嬉々として付いて行ったところだが。

「……ネエ、先生…今ノ電話…、ダレカラ…?」

"仲間のところへ"という話を、聞いていなかったのだろうか、大方想像が付くのだろうが、
彼女の考えは、どうやらまったく違う方向へと向いているようである。

「…ソウヨネ…モウイイ……」

「え……」

うろたえる神重を尻目に彼女は、

「先生のバカ!」

とだけ言い放ち、夜の闇へと駆け出していった―――
104恋島達哉 ◆KmVFX58O0o :2009/01/22(木) 23:06:41 0
>>101>>102
耳鳴りの不吉な情報のせいか、俺は額に妙な汗を掻いていた。一筋二筋だが。
正直、耳鳴りの言葉を完全に否定できるほど、今の俺の心に余裕は無い。今までの事を考えれば無下に人を信じる方が馬鹿だ。
しかし俺は信じたい。姫野さんが――――例の奴らと関わりが無い事を。それは甘えかもしれないし、弱みかもしれない。けど。

姫野さんは俺の質問に少し迷う仕草を見つけた。やっぱり困るのかな〜……?
>「えーと…はい。私は構いませんので…
  …こんな所で時間を潰すのもあれですしそろそろ行きませんか?」
あ、あぁ。そうだね……。流石に考えすぎか。幾らなんでも疑心暗鬼過ぎだな、俺。
無言で頷き、俺は薬局へと足を早めた。出来ればこのまま、静かに薬局に向かわしてくれ。

まだ早朝な為だろう。人通りが少ない。というか、殆ど人は歩いていない。
まるで三日間の出来事が嘘みたいだ。前までのありふれた日常が戻ってきたかのような錯覚を覚える。
「機関」の連中と戦っていくうちに自分が狂人になっていく感覚がたまらなく怖い。いつか本当に狂っちまうんじゃないかと思うと。
常人であろうと心の均衡を保ってるつもりだけど、いつかどこかでブチンと、その均衡が崩れるかもしれない。

その時には俺は――――俺自身でケリをつけよう。誰も傷つけず、誰にも迷惑を掛けず。
けど何もしないで逝っちまうのは癪だな。散々虐めてくれた「機関」の奴にトンでもないしっぺ返しをしてやりたい。
でもやっぱ暴力はアレだ、嫌だ。俺自身の武器で奴らに痛手を与えてやりたい。

……そういや、俺ってココに取材に来てたんだよな。異能力っつーか、謎の現象(まぁ異能力だが)を調査しに。
今から地道に捜査でも始めるか? ていうかこの町って……。いかんいかん、また思考が迷路化しちまう。

>「恋島さんは……異能力を知っていますか?」
「え?」
一瞬、姫野さんの言葉の意味が理解できずポカンとする。今、はっきりと異能力って……?
鼓動が、脈が速くなる。誰か否定しろよ、耳鳴り、耳鳴り! 
「ご、ごめん。ちょっと考え事しててね……悪いけど覚えが無いな。SFの用語か何かかい?」
なるべく姫野さんに表情を悟られないよう、顔を背けて返答する。不安というモヤモヤが肥大化している。杞憂であってくれ……。

と、気づけば薬局の玄関口まで着いていた。ん? なんで開いてるんだ……? 
「すまない、ちょっと待っててくれないか? 様子を見てくる」
姫野さんに待っててもらい、一抹の不安に駆られながら、店内の様子を確かめる。耳鳴りがいれば面倒な手間がいらないんだが……。
薬局から居間まで巡ってみたが特に危険は無さそうだ。これなら姫野さんを店に入れることが出来る。
「待たせてごめん。入っていいよ」

手招いて、姫野さんを店の中に入れる。一応警戒し解かないと。入れ替わるように玄関口に出て、周囲を見渡す。
……誰かが走ってくる。妙にゴテゴテした服装の……女の子?
【薬局:玄関口】
【姫野を薬局に入れる。十六夜に気づく】
105レオーネ ◆GWd4uIuzU6 :2009/01/22(木) 23:20:47 0
>>92-93
食堂を出てから、通路をエレベータ前に向って進んで行く。
埃一つ無く磨き上げられた床から、
コツコツと革靴の小気味良い音が聞こえてくる。

「お・じ・さ・ま!」

不意に呼び止める声が聞こえたが、構わず先へ進んで行く。
声の主は慌てた様子で、駆け寄ってきた。

「わわっ! 無視するなんてヒドイですねぇー……」

私は少し笑うと、彼女に振り返った。

「どうした、永瀬。香坂と一緒じゃないのか?」

喧嘩でもしたのかと少々心配になったが、
如何やらそうでもないらしい。

「織重ちゃんは先に寝ちゃったんですよぉー」

永瀬は拗ねた様子で腕を後ろに組んだ。
流石に本部で一人で居るのもつまらなそうだ。

「そうか……」

右手を額に当てて思案を張り巡らせる。
数秒後、考えが纏まった為、永瀬に視線を戻した。

「――なら、一つ頼まれてくれるかい?」

数分後、永瀬は私の頼みを聞いて意気揚々と戻ってきた。
私は彼女にある物を取ってきてほしいと頼んだからだ。
それは小さく、銀色に輝くICレコーダーであった。
何処から持って来たかは聞かないで置こう。
早速レコーダーの録音ボタンを押す。
"彼"には放しておく事があるからだ。

「このテープを君が聴いてくれているという事は、
 お互い無事四日目の朝日を拝む事が出来たという訳か。
 それは何よりだ」

「昨日の様子だと、君はもうあの店には近寄りそうもなかったのでね。
 君の携帯電話は私が預かっておいたよ。
 目の前の少女に持たせた、返しておく」

窓の外を眺めながら話を続ける。朝焼けの空が眩しく輝いている。

「なに、心配は要らない。小細工はしていない。
 疑うのならば調べてみると良い」

窓に備え付けられた手すりに持たれ掛かると、
永瀬も真似をして持たれ掛かった。

「さて、昨日の事で機関が一枚岩の組織ではない事が解った筈だ。
 恐らく君には様々な刺客が送り込まれるだろう。
 連中の目的は君の抹殺だ」

「正確には君の中に居る"もう一人の君"だ。
 尤も、これは私の仮説が正しければの話だが……」
106レオーネ ◆GWd4uIuzU6 :2009/01/22(木) 23:25:53 0
>>105
私や恋島のように生まれながらにして異能を扱える人間を"先天性異能者"と呼んでいる。
そして、その中でも『ヤハウェ』と呼ばれる内なる存在を秘めた先天性異能者を、
我々は『アブラハム』と名付けた。
その後、私は研究と調査を重ね、一つの仮説を導き出した。
それは二重人格やそれに順ずる症状を持った人間が、
『アブラハム』である可能性が極めて高い、と――。
だから、彼は狙われるのだ。炎魔復活の妨害として……。

「私としても君の才能は評価している。
 出来れば死んで欲しくない」
「そこでだ。私が戦闘技術を教え込んだ生徒に君の護衛を命じておいた。
      ナガセ ミドリ
 彼女は永瀬 翠。優れた異能者だ」

隣から小さな悲鳴が聞こえた気がした。

「彼女に守って貰うか貰わないかは君が決めたまえ」

私は次の言葉を捜し、永瀬も黙っている為、暫し場を静寂が包んだ。
意を決してレコーダーを口へ近づけた。

「……最後になったが――
 昨日は要らない揉め事に巻き込んでしまった様で申し訳無い。

 済まなかった」

テープを切ると溜め息を吐く。どうも感傷に浸りすぎるな。
この街に着てから"人間"に戻って来ている。これは良くない傾向だ。
永瀬を見ると、かなり意外そうな顔をしていた。
まさか自分がお守をさせられるとは思っていなかったのだろう。

「聞いての通りだ、永瀬。
 君はこれから恋島達哉という男を探し出して、このレコーダーを聞かせろ。
 そして、コイツを恋島に返してやってくれ」

スーツの内ポケットから恋島の携帯電話を取り出すと、永瀬に渡す。

「もし恋島が守って欲しいと言えば、彼を守ってやれ。
 そうでなければ、陰ながら彼の敵を排除しろ。
 恋島に死んでもらっては困る」

予想では恋島の異能は直接的な戦闘能力を持たないタイプだ。
仮に持っていれば、紅原との戦いで異能で反撃している筈だからだ。
故に、これから恋島は戦力的にかなり厳しい戦いを強いられる事になる。
ヤハウェを持っている筈の者に死んでもらっては困る。
あれは炎魔に捧げられるべき代物だからだ。

「任せてくださいよぉー! 翠、チョー頑張っちゃいますからー!
 敵はぜーんぶ殺っちゃってイイんですよねー?」
「……うむ、頼んだ」

続いてICレコーダーを永瀬に手渡すと、彼女は疾風の如く去っていった。
……階段ではなく、エレベータを使えば良かろう。
全く……。元気が在り過ぎるのも考え物だな。

私は苦笑いを浮かべたが、すぐさま表情を整えた。

【レオーネ:会議室へ移動中】
【言葉を録音したICレコーダーと携帯電話を持たせた永瀬を恋島の下へと向わせる】
107姫野 与一 ◆LuqsQs0P4w :2009/01/23(金) 20:24:08 0
>>102,>>104

>「え?」  
>「ご、ごめん。ちょっと考え事しててね……悪いけど覚えが無いな。SFの用語か何かかい?」

一瞬隙を突かれたような顔をして、覚えが無いといった。怪しい挙動。
でも本当に知らないかもしれない。そうだとしたら、私が恋島さんを守らないと。

話している内にいつの間にか薬局に着いていた。結構近くにあったんだなぁ…
薬局のすぐ近くにはトイレといくつかの遊具があるだけの小さな公園がある。昼間は子供達で賑わっているだろうな…
けれど今の時間、道を歩く者はいなく、静まり返っていた。そして、薬局の扉は開いている。
まるでここ一帯が廃墟のよう。恋島さんが異変に気付き、中に向かっていった。

>「すまない、ちょっと待っててくれないか? 様子を見てくる」

私とポチだけが残される。今まで口を開けなかったポチが話し掛けてきた。

『ねぇ、与一…聞いて…』
いつものポチの調子じゃない…何かを…悲しんでいるような
「何?…ポチ?」
『与一の体の異変はハチ……!』

ポチが公園の方を向き。身構える。公園の方から現れたのは…黒いライダースーツの女の人。
私は…あの服装を見た事がある…確か…昨日ビルで見かけた、感じ悪い人の連れていた集団…
ということはあの人は機関の人間。私の代わりに恋島さんを…?
だけど、その女の人はその場から動かず、何も話さない。ひたすら私を見つめている。
沈黙を打ち破るように恋島さんが薬局から声を掛けてきた。

>「待たせてごめん。入っていいよ」
「あ、はい。おじゃま…します」
恋島さんに呼ばれ、中へと入ったけど、ポチは入ってこない。依然、女の人と睨みあってる。
そこに恋島さんが出ていき玄関口から見渡す。あの女の人がどんな異能使いなのかは分からない。
そして、なぜかこっちをひたすら見つめている。私は恋島さんの隣に立ち、ただ一言、彼女に呼びかけた。

「私に…何か…?」

女の人は私の声に気付き、ピッと後ろを指差した。
指差した先には昨日の金髪の男が異様な状態で寝ていた。

「あ……あ…あぁぁ…!」

どんな攻撃も効かず、恐ろしい身体能力を持つ男。それがあんな間抜けな状態で寝ている
体が動かない。足から力が抜け、倒れこんでしまった。私は、アイツが――怖い。

【薬局:十六夜と背後のクロノに気付く】
【ポチ:異能力未展開】
108神重智&敬 ◆6eLTPQTFGA :2009/01/23(金) 20:31:53 0
>>97 >>103

「……ネエ、先生…今ノ電話…、ダレカラ…?」
(おい…なんかアイツ様子おかしくないか…?)
神重にメールが着て、質問をしたはずなのに質問で返してきた七草。
それに声はやや、いやかなり不機嫌そうだ。
「…ソウヨネ…モウイイ……」

神重の質問に答えず
「先生のバカ!」

とだけ残して闇夜へ七草は消えていった。
あまりにも突拍子の無い行動に神重はただ呆然と立ち尽くすだけだった。

(私は一体何か悪いことをしたのでしょうかね…敬)
(いやー…おれには全くわかんないな……あ!)
と敬が思い出したかのように声を上げる。気になった智は
(何かな?今の行動に何か心当たりがありますか?)
何が原因で七草があの行動に出たのかが知りたかった。しかし
(アレだろ!アイツは世間一般で言うヤンデレなんだ!)
(……………………さて、さっさと宗方のところへ行きましょうか)
得られたのは敬のこれまた謎な知識だけだった。

「ふうっ……」
瓦礫の中から出て夜風を浴びる。少し強いがこの回りの血の臭いを吹き飛ばすには十分だ。
「ここから宗方の事務所まで……少しかかるな……」
病院で宗方と別れてから随分はなれた場所まできたのである。この辺りは入り組んでいるため視界も悪い。
「…飛ぶか……」
自身の重力をゼロにまで落とし浮遊する。しかし能力が不安定なため高くは飛び上がれない。
(智、背中に少し傷を作ってみろ)
(わかった)
もう智は敬の言葉を疑わない。近くに落ちていた硝子の欠片で背中に軽く切り傷を入れる。
そこから流れ出た血が少しずつ形を整えやがて赤い巨大な蝙蝠の翼となった。
「これは……随分と楽ができそうだな」
(兄弟の無重力と血の翼があれば楽に飛べるぜ)
パンッ!
地面を蹴り飛ばして宙に飛ぶ。上昇した体はやがて空中で停止し無重力と翼でバランスをとる
「宗方の事務所は……あっちだな」
ビュウンッ!
翼を羽ばたかせて事務所へ向かう。後に巨大蝙蝠の記事が書かれることになるとは神重は知りもしないだろう。
事務所へ向かう途中巨大な…まるで鬼の咆哮のようなものが響いていたが神重は無視して飛び続けた。

「ついたか……」
さすがに宗方のような瞬間移動…とまではいかない。少し時間をくってしまった。
事務所内に入ると既に明かりはついていて、宗方が5本目の煙草を吸おうと火をつけようとしていたところであった。
「やれやれ、君はヘビースモーカーなのですか。
 少し時間がかかったことは詫びますが…煙草の吸い過ぎは体に良くないと保健の授業で習いませんでしたかね」

若干の嫌味を込めて、宗方に半日ぶりの挨拶をする。
半日なのに懐かしい気がするのは……何故だろうか?
実際に半日前に"この体"であったのは敬だからか…あるいは…

【神重:事務所に到着 能力に若干変化あり?】
109スティクス ◆6eLTPQTFGA :2009/01/23(金) 20:42:15 0
バチッ…バチバチッ

あたりに黒い電撃が走る。
その電撃の中心には黒い巨大な球体が浮遊していた。

バチバチッ…バリバリバリッ
その球体の周囲の電撃は更に強さを増し

球体は、炸裂した。

「グオアアアアアアアアアッ!?」
炸裂した球体の中から弾き出された人間。
黒いボディースーツを着用し、髪は銀色、肌は白く美しい。
だがその美しい肌は切り刻まれ、赤に染まっていた。

「戦場…ヶ…原ァ……天……!」
傷だらけの体を起こし、自分の顔に泥を塗った相手の名を呼ぶ。
そう、彼は戦場ヶ原と闘った虐殺部隊隊長スティクスだった。

「ハァッ…ハァッ…」
肉体的損傷は彼にとってはそれほど重大な物ではなかった。
問題は彼のプライドがズタズタなことである。
かつての虐殺部隊隊長、東雲を下し、山田権六が脱退したことによって彼は地位を手に入れた。
その山田権六が己の名前を変え、その山田権六…いや、戦場ヶ原天に敗北したのだ。

「俺達に…失敗は許されねぇ…!」
虐殺部隊に失敗は許されない、すなわち失敗者には死があるのみだ。
勿論隊長格である彼にその罰が下されるわけではないのだが…彼には己の敗北自体が許せなかった。

「殺す…絶対に殺してやるぞ戦場ヶ原天…必ず!この俺の手で!」

シュウウウウウッ
彼の体が蒼に包まれていく

「オォォォォォォアァァァァァァァッ!!!」

復讐鬼の叫び声が夜の街に響き渡る。
その叫び声を聞いて恐怖する者もいたかもしれない。

「…………殺してやるぞ………戦場ヶ原………」
叫びを終え、少し落ち着いたスティクスは復讐する相手の名前を呼ぶ。
戦場ヶ原天、彼がスティクスから逃げることはできないだろう。
110スティクス ◆6eLTPQTFGA :2009/01/23(金) 20:42:41 0
「―――少しは落ち着いたか?スティクス」

突然背後から名前を呼ばれスティクスは驚いて振り向く。
そこには少し形状が違うものの、同じ黒い戦闘服に身を包んだ銀髪の男が一人立っていた。

「セ……セルゲイ……」
そう、そこに立っていたのは虐殺部隊幹部の一人、セルゲイだった。
「どうして…お前がここに……」
動揺を隠せずにスティクスは訊ねる。勿論ある程度は頭で整理できていたが聞きたかった。

「お前の敗北報告をさきほど諜報部隊から聞いたからな…探しにくればお前の咆哮が聞こえたわけだ。
 ちなみに地来は撤退、拳は死亡したようだが…………」

フッと笑って他の隊員はどうでもいいことのようにセルゲイは次の話へ移る。

「お前が生きているならば虐殺部隊は安心だ…これならば作戦に全く支障は――
「待て…そんなくだらないことを言いにわざわざ俺を迎えに来たわけじゃないだろう…
 …一体なんのためにこれほど急いで俺を回収しにきたんだ?」

隠し事ができないのが二人の間柄であった。
ため息を一つついてセルゲイは言う

「お前と私…東雲は死亡したが…残る二人の幹部が到着した。
 それによって…あのお方から…虐殺部隊の隊長及び幹部は召集命令が下された」

【スティクス:復活 現在位置不明】
111 ◆O93o4cIbWE :2009/01/23(金) 21:21:10 0

――――――……

ここは貳名市に在る山の一角
ここからはこの貳名市を一望できる

そして貳名市を見つめる一人の影があった。

「本社襲撃は失敗、か…」

彼は昨日の本社襲撃の件を思い出していた、
意気往々と攻め込んだのは良いものの、結果文字通りの門前払い
大した損害も与えられず
ただただ機関側に警戒を強めさせる結果になってしまった

      ファルス
「まるで"茶番"だ……」

彼は自嘲気味に呟く、
そも機関を相手に真っ向からの戦力で勝負するのは無謀だ、
最早機関に相対するには『戦力』では駄目なのだ

        チカラ
確固とした『能力』こそが必要なのだ、そう、絶対的な、

「やはり…このままでは無理、か…」

「…力……ヤハウェ………神………」

「……統時……」

彼は口々に呟く、その中には、自身の弟の名も含まれていた。

「…いずれは…お前も…」

雲の隙間から朝日が差し込む――、次の瞬間、彼は朝日に溶け込んだかのように姿を消した。

―――最早猶予が無い、俺がココにいる意味も、必要なのは――……

【廻間幻十:早朝・何処かへと姿を消し、音信不通となる】
112池上 燐介 ◆qqu0tZFsYU :2009/01/24(土) 00:26:21 0
>>99-100
>「こんなところで何をしているのかね17。会議に遅れるぞ」
──突然、空から発せられたこの言葉に、俺と衣田の二人は思わず顔を上げた。
そこで二人が見たのは、一人の男が今まさに空より舞い降りんとする瞬間だった。

「No.7……!」

それを見た衣田がそう呟くと、男は音も無く静かに衣田の傍へと降り立った。
一見すると口周りと顎に髭を蓄えた単なる老人にも見えるが、
心を見透かすような妙な目つきは、見る者にはっきりとタダ者ではないという印象を与えるものだ。
いや、実際ただの老人ではないことは確かだ。       ファーストナンバー
空より飛来し、しかも衣田に『No.7』と呼ばれる男──機関の実力者に違いないのだから。

いくら敵が強大であろうと負ける気はないが、現状ではこちらは一人、敵は二人。
しかもどちらも雑魚の部類には入らないとあれば、流石に苦戦は免れないだろう。
そう自分の劣勢を思い心の中で舌打ちをすると、その直後に俺の耳を騒音のような声が突き刺した。
それは、いつの間にか目を醒まし、女剣士と共に俺の傍へと来ていた山田の声だった。

「心臓に悪い奴だ。大して威力もない黒球を使うより、
そうやって不意に耳元で叫ぶ戦法の方が敵にダメージを与えられるんじゃないのか?」

俺は少々大げさに指で耳を弄るリアクションを取りながら、厭味交じりに洩らした。
その時の表情もまるで寝ていてくれた方が良かったといいたげではあったものの、
内心ではこれで戦力比が三対二と逆にこちらに有利となったことは事実と認めていた。
敵はそれを見てどう出るか。やはり、二人がかりで来るだろうか。
あれこれと敵の出方を予想しながら、俺は山田から衣田へと視線を移し様子を窺うが、
彼らが選択した行動は意外なものだった。

「No.7……私のことはお気遣い無く、どうかこのまま何も言わず会議の場へお向かい下さい。
私にはまだやるべきことがありますので、ここに残らねばなりません」

衣田はそう言い、一歩、二歩とこちらへ歩み寄りながらも尚、言葉を続ける。
   セカンドナンバー        セカンドナンバー
「そう、我々が受けた不名誉は、我々の手によって払拭されなくてはならない……。
ファーストナンバーのお力で貴様らより勝利を得たとしても、それでは我々にとって何の意味もない。
結果の問題ではない。これは我々にとっての名誉の問題なのだ……」

衣田は歩みを止めると、再び炎を纏い始めた。
俺の隣では、山田が衣田の気迫を見て今にも飛び掛りそうだったが、
俺はそんな山田よりも早く、前へと一歩、足を進めた。
113池上 燐介 ◆qqu0tZFsYU :2009/01/24(土) 00:31:45 0
「……お前達は手を出すな。あの男は、俺が一人で片付ける」

それだけ言うと、俺は更に前に五、六歩ほど足を進め、そこで止めた。
こちらが三人がかりで闘う道を選んでも、衣田はそれを甘んじて受け入れるはずだ。
俺が敢えて一対一の道を選んだのも、どこか奇妙ではあるが、
奴の幹部としての『覚悟』と『誇り』に一人堂々と応えてやりたくなったからだ。

「池上 燐介……貴様には『真の力』を見せると言ったな。約束通り見せてやるぞ……ッ!
────『アトミック・ヘル・ヒート』ッ!!」

瞬間、衣田がこちらに向けた両手の平から、超高熱の衝撃波が放たれた。
俺の体は凍気のガードで覆われていたが、奴が放った衝撃波の高熱は容易く俺の凍気のガードを破ると、
ガードが破れた箇所である、肩や腕、脚から瞬時に炎を発生させ、焦がし始めた──。
(──チッ! 予想以上の力だッ!)

俺は自らの体を守る為に、体を覆う凍気を強めると、
それによってこれまで体を燃やしていた炎が次々と鎮火されていく。
炎が全て鎮火された時には既に高熱の衝撃波は治まっていたが、
辺りは焼け焦げた臭いと共に煙に包まれ、俺の視界を遮っていた。
この煙に乗じて何かしらの攻撃をしてくると考えた俺は、即座に右手に凍気を集約させ迎撃に備えた。

──これは『氷雪波』。相手を一撃で戦闘不能に追い込む程の強力な凍気放出技だが、
多くのエネルギーを消費する為に、他の技に比べて出し渋ることが多い。
そんな俺にしては今回は早くも使用を決断したが、それは衣田がそれだけの強敵であると
悟っているからである。

「……これ以上、もたもたしていたら取り返しのつかないことになりそうだ。
もはや出し惜しみもしてられん。次で決着をつけてやるよ……」

辺りに立ち込めた煙は海風に吹かれて徐々に視界から消えていく──。
それと共に、今まで煙で隠されていた衣田がその姿を現した。
奴は高熱の衝撃波を放ったその位置から一歩たりとも動いてはいなかったが、
奴もまた、どうやら既に必殺の一撃を放つ準備を完了させているようだった。

「ククク……次で決着だと……? ──馬鹿め、それはこちらの台詞だ!」

衣田は右腕だけを天へと向け、その手の平の上で凄まじい大火球を作り上げていたのだ。
熱気と、燃え盛る炎の勢いはこれまでの技とは比べ物にならない。
いくら瞬時に炎を作る異能者とはいえ、あれだけの大火球を作り上げるには時間がかかるはずだ。
つまり初めの一撃は、あれを作り上げるための時間稼ぎだったのだろう。

「触れるもの全てを焼きつくす地獄の火球──。
────受けろッ!! 『バーニング・ヘル・コロナ』ァァーーッ!!!!」

【池上 燐介:全身の数箇所に火傷を負うが戦闘に支障はない。次で決着をつける予定】
114ゴールドウェル ◆fEvO9ByRpU :2009/01/24(土) 02:42:49 0
>>100>>112
>「No.7……!」

ちゃんと覚えていたか。感心だな。あまりに雰囲気が変わっているので私は視認では気付かなんだよ。
……いや、あいつは2年前に死んだのだったな。こやつは08が気に入ったという成り上がりの若造か。
まあ空飛ぶ爺など私をおいて他にいないだろうし、わかって当然――

>「朝っぱらから機関の連中とデートとは、お盛んなこったな、池上燐介!」
>「この喧嘩、俺も混ぜやがれよ。」

第三者の乱入――検索――過去の構成員100『地核招来(ハードコアキャンディ)』に照合一致。

過去の構成員…敵か味方か判断が難しいところ――
――いや、

関連項目:離反事件

――なんだ。01の不手際で起きた例の事件の首謀者か。
もとをただせば01が100を裏切る真似をしたのが原因で起きた事なのに、
追撃の指揮をしていた男だけが失態を咎められナンバーを剥奪された理不尽な事件だ。
まあ彼がナンバーを剥奪された理由の真実は別のところにあったのだがな。
当時ファーストナンバーの彼ならば他にやりようもあっただろうに、こそこそ裏切るような形を取るから悪い。
…おっと、考えがそれているな。まあそれなら100はどちらかと言えば敵の可能性が高いな。

>「くっ!あの馬鹿…」

>「心臓に悪い奴だ。大して威力もない黒球を使うより、
>そうやって不意に耳元で叫ぶ戦法の方が敵にダメージを与えられるんじゃないのか?」

…そして彼の元に駆け寄る女や、17と対峙する男は過去も今も機関の構成員には登録されていない。
だが私の第三の目が反応しているのはこの2人であり、只者でない事は間違いない。

「やれやれ…君も苦労するね」

そして彼女はどちらかといえば私の方を気にしている様子だ。
115ゴールドウェル ◆fEvO9ByRpU :2009/01/24(土) 02:43:36 0
>>113
>「No.7……私のことはお気遣い無く、どうかこのまま何も言わず会議の場へお向かい下さい。
>私にはまだやるべきことがありますので、ここに残らねばなりません」
>「そう、我々が受けた不名誉は、我々の手によって払拭されなくてはならない……。
>ファーストナンバーのお力で貴様らより勝利を得たとしても、それでは我々にとって何の意味もない。
>結果の問題ではない。これは我々にとっての名誉の問題なのだ……」

彼女に視線を向けていると17から返事が返ってきた。
不名誉?やはり機関の襲撃者と戦っているのか?
構成員が減っていると聞いていたが、この男のはりきり様から幹部もやられているな。

「まあ君がそこまで言うなら私は行くがね」

家柄で元々ファーストナンバーの地位を得ていた私には無い悩みだが、
成り上がりはこういうところで成果を上げておきたがるものだ。
だが、これだけは忠告しておこう。

「空きがあってところで、会議にもろくに出ない者がそう簡単に出世できると思わない事だ」

私の忠告が聞こえていたかわからないが17は能力で攻め始めた。
だがその攻撃は確実に1人を対象にしており、このまま去ろうとすれば残りの2人を相手に背を向ける事となる。
だが『浮遊能力』を使って飛んでいく移動手段を取るとなると『浮遊膜』は解かねばならん。
だが『浮遊膜』を張ったまま、ここから本部へ徒歩で行って間に合うか…

「…私はもう行こうと思っているのだが、いいかね?」

敵の可能性は高いものの、2人が自分をどのように思っているのかはわからない。
敵意を向けてくるようならこの場は寝ていてもらうしかなさそうだがな。

【ゴールドウェル:戦ヶ場原&屡霞の反応を窺う】
116恋島達哉 ◆KmVFX58O0o :2009/01/24(土) 11:15:07 0
>>107
女の子は立ち止まるとじっとしたまま、俺の方を凝視したままだ。照れるというか……不気味だ、なんか。
何か用があるなら早急に頼みたい。色々とあってもうクタクタなんだ。正直寝たい。
そういや、さっきから妙な気配を感じるんだよな……。敵意とかそうゆう物騒なものじゃないけど、何かが付いてまわってる様な。

と、流石に気になったのか、姫野さんが戸を開けて外に出てきた。コレは多分厄介事だ。
戻った方が良いと言おうとした瞬間、姫野さんは目の前の女の子に向かって言った。
>「私に…何か…?」
……アレ? 女の子は俺じゃなくて姫野さんに用があるのか? ならそれはそうと言ってくれればいいのに。

だが女の子は微動だにしない。本当に何がしたいんだ? 聞いてみた方が早そうだと思い、一歩足を出す。
すると女の子は無言のまま、体をひねると背後を指差した。確かあっち側は公園だったな。それが何か?
茂みの奥のベンチに誰かが寝ているだけだ。にしても公園のベンチで寝るなんて変わった人だな。野宿ならもっと良い場所があるだろうに。
けどどこかで会った様な……あのスーツ、金髪の……。

マジかよ! クロノじゃねえか! なんでこんな所にいやがるんだ、あの野郎は!
って事は、この女の子はクロノの手下か何かか? それなら俺の方に用事があるんじゃないかと思うんだが。昨日の報復とか。
ちくしょう参ったぞ。俺だけならともかく、今は姫野さんが一緒だ。アイツが俺だけでなく姫野さんにも危害を与える可能性は無くは無い。
いや、あのサド野郎の事だ、嬉々として手を掛けてくるに違いない。無事に戻ってこれたと思った瞬間コレだよ! どこまで不運なんだ、俺。

>「あ……あ…あぁぁ…!」
「姫野さん!?」
女の子がクロノのほうへと指を指した途端、姫野さんはクラクラとその場に倒れこんだ。
まさかこの女の子の異能力か? そうだ、もしこの女の子がクロノの手下だったら、明らかにこの場に留まってちゃ危ない。
俺はすぐに姫野さんを抱えて、急いで薬局へと駆け込んだ。今は姫野さんの安全を確保するのが先だ。

急いで靴を放り店内に上がり込み、姫野さんを畳の部屋に寝かせる。凄く震えてる……。
クロノ、いや、クロノの手下め、姫野さんに何をしやがったんだ! 自然に俺の両手は握り拳を作っていた。
しかしどうする、どうすれば良い? このままじゃどっちにしろ、薬局に奴らは入ってくるだろう。
そうなれば俺も姫野さんも無事で済む訳が無い。なら……ならどっちにしろやらなきゃならない事は決まる。

俺は姫野さんに近寄り、出来るだけはっきりと伝えるべき事を伝えた。
「姫野さん、落ち着いたらで良い。この畳の部屋を出て左を行くに、裏の玄関口がある
 もしも身の危険を感じたら、すぐにその玄関口から逃げるんだ。それで警察にでも何でも良い。安全な場所に駆け込んでくれ」
聞こえているかは分からないが、とにかく姫野さんには無事でいてほしい。俺の事情で彼女が危険な目にあるのは絶対に見たくない。

「それじゃ、短かった時間だったけど、楽しかったよ。また……」
っつ! やべえな、ヤバイ雰囲気がプンプン漂ってきやがる。俺は立ち上がり、何か武器になりそうな物を探す。
孫の手……は駄目だ。タンスなんて持っていける訳が無い。何か無い……な。
いや、無いよりはあったほうがマシだろう。俺は落ちている孫の手を拾い、畳の部屋から出た。向かうはもちろん外だ。

俺の力じゃ何も出来やしないが、姫野さんが逃げる時間くらいは稼ぐ事が出来るだろう。
それに正直耳鳴りがいた所で、俺自身の身体能力で奴らに太刀打ちできるわけが無い。
「……力が欲しいぜ、たくッ」
そうぼやきながら玄関を空け、俺はクロノとクロノの手下が待っているであろう、外へと駆け出した。
【薬局玄関前】
【十六夜と対峙。クロノに気づく】
117戦場ヶ原&屡霞 ◆u5ul7E0APg :2009/01/24(土) 12:26:43 0
>>112-115
「心臓に悪い奴だ。大して威力もない黒球を使うより、
そうやって不意に耳元で叫ぶ戦法の方が敵にダメージを与えられるんじゃないのか?」
「…ふん、相変わらず口の減らねぇ野郎だ。」
池上が鬱陶しげにこぼした皮肉に、戦場ヶ原は額に癇筋を走らせながらも笑って答えた。
敵の二人は上司と部下のような関係らしく、上司であろう空から飛来した老兵の言葉を制し、スキンヘッドの男は殺気十分にこちらへにじり寄った。
そこで戦場ヶ原は思い出した。スキンヘッドの男は、かつて池上と初めて会った時に彼と戦っていた機関の炎使いだ。
名前は確か――…「衣田」と言っていた。
「面白ェ…、貴様にやれるかどうか試して――…」
殺気に反応した戦場ヶ原の言葉は、しかし眼の前に出た池上によって遮られた。
「……お前達は手を出すな。あの男は、俺が一人で片付ける」
池上の表情は相変わらずの氷のように冷たい無表情だったが、戦場ヶ原はそこから何かを感じ取ったのか、
「フン」と鼻を鳴らすとくるりと背を向けて、少し離れた場所にどっかと腰をおろした。
「5分だ。それ以上は俺の疼きが抑えられん。」
戦場ヶ原は不敵に笑い、腕を組んで眼を閉じた。
池上と衣田から、自分とスティクスのような因縁を感じ取ったのだろう。
闘いとなると羅刹のごとき戦場ヶ原だが、東雲から学んだ『戦士の魂』は確かに彼の中に脈々と受け継がれていたのだ。

二人の『戦士』の一騎討ちが始まる傍らで、屡霞はずっともう一人の敵から視線を外さなかった。
濃い紺色の軍服に身を包んだ老人。
そのたたずまいから唯者でないことは察することができた。
しかし、そこから放たれる気が他の異能者のそれとは大きく異なることと、彼の何の感情も籠められていない人形のような瞳が、屡霞の関心を捉えて離さなかったのだ。
「…私はもう行こうと思っているのだが、いいかね?」
老人はまるで関心がないようにこちらを一瞥して言葉を投げ掛けてきた。
戦場ヶ原はもはや戦意を解除し、無干渉を心に決めていたが、屡霞は老人への警戒から刀の鯉口は切ったままだった。
「待て!」
屡霞が咄嗟に出した声に、老人はその足を止める。

「貴様…機関の異能者だな?何者だ!名を名乗れッ!」

すぐさま抜刀するような勢いで、屡霞は老人に向けて言った。

【戦場ヶ原:池上に関しては無干渉。ゴールドウェルにも関心はない。】
【屡霞:衣田のことは池上に任せるとして、ゴールドウェルに敵意を向けている。】
118永瀬翠 ◆GWd4uIuzU6 :2009/01/24(土) 19:29:18 0
レオーネと別れた翠が向った先は階段、それも緊急時の非常階段であった。
ドアを開けると朝日を浴びた街並みが展望できる。
火災等の災害が起こった場合、ここから一気に地上へと降りる事が出来るのだ。
翠は何を思ったか傍にある階段には目もくれず、ビルから勢い良く跳び降りた。
普通の人間ならば自殺志願者かと正気を疑われる所業だが、
生憎翠は自殺志願者でも、そして普通の人間でもない。

飛んだと同時に立方体を程よい高さの場所へ形成し、そこへと着地する。
作っては跳び、作っては跳びを繰り返して、家々が玩具に見えるほどの高さもあるビルから
ショートカットで地上へ降りてきた。

「あ、そのコイシマって人の人相を聞くのすっかり忘れてたなぁー!
 いいや、おじさまに聞いちゃおっと」

首を傾げると、ポケットの機連送を取り出す。
彼女の機連送にはマスコットの人形やアクセサリーの類がぶら下っており、
それらがちゃらちゃらと音を立てている。

画面を見るとメールが届いている。差出人は翠の"おじさま"からであった。

『張り切るのは良いが大事な事を忘れるのは良くないな。
 恋島達哉のスナップをメールに添付しておく。
 髪の毛はその写真よりも短くなっており、眼鏡も外している。

 先程私の所に入ってきた情報では、今は住宅街にいるらしい。
 No.3やNo.5、それに加えてNo.4の暗殺部隊も動く可能性がある。
 出来るだけ早く彼と合流しろ。

 会議が終わったらまた連絡を入れる』

No.3の方はともかくとして、粛清部隊や暗殺部隊と戦うのは翠としても遠慮願いたい所だ。
レオーネの言う通り、ここは早めにこの恋島と言う男を見つけるべきだろう。

添付された画像ファイルを開くと、明らかに見覚えのある男性が写っていた。
以前、彼女の前に"しゃしゃって来た"何の役にも立たなそう男……。

「あれぇー? この人、おとといのメガネくんじゃないですかぁー!」

レオーネはこんな奴が役に立つと本気で思っているのだろうか?
疑問が浮かぶが流石に翠もエージェントの端くれ、すぐさま疑問の靄を打ち消した。

「ま、いっかぁー! ちょこちょこっとお話をして見れば分かる事でしょー。

 さぁ、しゅっぱーつ!」

翠は勢い良く朝の市街地へと駆け出して行った。

【永瀬:市街地を目指している】
119姫野 与一 ◆LuqsQs0P4w :2009/01/24(土) 22:07:49 0
>>116

その場で倒れこんでしまった私を恋島さんが抱えて運んでくれて、和室に寝かせてくれた。
私、この人に迷惑掛けてばかりだ……恋島さんが口を開いた。

>「姫野さん、落ち着いたらで良い。この畳の部屋を出て左を行くと、裏に玄関口がある
 もしも身の危険を感じたら、すぐにその玄関口から逃げるんだ。それで警察にでも何でも良い。安全な場所に駆け込んでくれ」

丁寧にしっかりと事を説明してくれた。
でも、まるで自分が庇うかのような言い方だ……

>「それじゃ、短かった時間だったけど、楽しかったよ。また……」

そんな言い方…恋島さんは立ち上がって、周囲の家具を物色し始めた。
そして、最終的に手にした孫の手を持ち外に出て行った。本当に異能力者じゃないの…?
なら、尚更危険だ。多分あの女の人は機関の人だろうけど、寝ているアイツがいつ、目を覚ますか分からない
『一般人』の恋島さんなら殺されてしまう。私は、まだ一緒にいたい。死なせたくない…

――ふと、横に気配を感じた。この姿は…さっき、教会の木の上に立っていた着物の女の人。
近くで見れば見るほど綺麗な顔。それが私の足元まで動いて、少しずつ傾き、私に倒れこむ。
倒れる直前、女の人の体がだんだん薄れていき、最後には消え…――

なんだったんだろう……でも、それより今は。
孫の手一本でアイツに挑むなんて無謀すぎる。それにあの女の人を敵だと思っている。
少なくともあの人は私の味方だ。でなきゃビルの中にいるはずがない。もしかしたら…彼女は私に助けを求めていた?
こうしちゃいられない。立ち上がり、バッグから弓を取り出す。体が軽い。震えも止まっている。

今から私が行う手段は、あまり良い手段ではないのかもしれない。でも、これ以上は隠していられない。
和室を出て真っ直ぐ走り玄関口を出る。二人は向かい合うように立っている。
私は間を割って彼の道を塞ぐように立ち、後ろの恋島さんに呼びかけた。

「死にたくなければ…その場に止まってください…恋島さん。そうしなきゃ、私の矢があなたを貫きます…」
これだけの言葉なのに、言うことが辛い…そして次は…

「私は…No.20、姫野与一です。あなたの所属と状況を説明してください」
正面の黒いライダースーツの女の人に説明を求める。これでも二桁番号だ。
流石に固い口を開いてくれるはず。視線を感じ、後ろをふりむくと恋島さんが呆気に取られている。
ここで私は…言い訳を並べることしか出来なかった。

「今まで…隠していてごめんなさい…恋島さん…これが私の仕事。機関の二桁番号、No.20として、これまでたくさんの人達を殺してきました…
馬鹿な私は…こんな手段しか取れません…でも、今は…今だけでも…私の言うことを聞いて…ください…」

抑えていた…涙が…止まらない…

【恋島に正体を明かす】
【十六夜に質問】
【7:10】
120ゴールドウェル ◆fEvO9ByRpU :2009/01/25(日) 00:04:32 0
>>117
>「待て!」
>「貴様…機関の異能者だな?何者だ!名を名乗れッ!」

案の定、彼女の方は私を行かせようとしなかった。
しかし初対面の私にこの物言いはなんだろうな…ああ、17は不名誉を受けたと言っていたな。
内の肩書きを使った敵が、機関のイメージダウンを計っているのかもしれん。
…いや、一概にそうとも言えん。トップがあの男に代わってから部下の躾がまるでなっていないようだからな。
今にも刀を抜こうとする姿勢を取る彼女に対して、私は手で制する形を取る。

「内の者が何か迷惑を掛けたのなら話を窺おう。だが――」

無礼な物言いと敵意を向けてくる主に対して正面から見据える。
若いな。この場にいる者の仲では一番若い。

「剣の道を心得る者なら礼儀をわきまえるものだ。
 人に名を聞く時は自分から名乗るものと教わらなかったかね?」

彼女もまた躾が行き届いていない人間のようだ。若者を躾けるのは年寄りの役目だが、
ここで聞く耳を持たず暴力に訴えるような若者なら、私のように力を持つ年寄りが躾けていかねばならんだろう。

【ゴールドウェル:屡霞の反応を窺う】
121宗方零 代理:2009/01/25(日) 00:34:59 0
>>108


五本目の煙草に火を点けたとき、神重が入ってきた。

「やれやれ、君はヘビースモーカーなのですか。
 少し時間がかかったことは詫びますが…煙草の吸い過ぎは体に良くないと保健の授業で習いませんでしたかね」
多生の嫌みを込めたコメント。だが、神重敬ではなく神重智か。
私は煙草を灰皿でもみ消しつつ言う。
「随分早かったな”先生=Aつまらんところではぐれてしまってすまなかったな」

どこか違う。雰囲気、いや”風格≠ニも言えるものが感じられる。
岩に刺さった王の剣をおもむろに引き抜いてきた、とでもいうような。
とにかく、私が死んでいる間に彼は能力者として成長を遂げたらしい。
(この半日間でこうも違うとは・・・これで”不安定=H空恐ろしい男だな・・・)

「探偵業は暇が多くてね、廃業するまで禁煙は無いだろう。
それに、今の状況では肺ガンで死ぬ心配はないさ、別の理由で心臓に穴が空く・・・まあ座ってくれ」
私は軽口を叩きつつ、神重に椅子を勧める。

6本めの煙草に火を点けようとし――突然体が明滅し始める
別の意識が、体に入り込んで来る―

―私/我々/スペクター―亡霊が私に憑依する
――亡霊は囁く、亡霊はのぞき見る―――

大量の情報が頭に流れ込んでくる――私と神重の間に浮かぶ、立体映像――
これは、私の能力の根元。
死んだ能力者達の残留思念、怨霊が・・・覗き見ていた映像。
長束インテリジェンスビル――池上―戦場が原―見知らぬ青年―攻勢――離散による失敗――
――少女、神父、青年、教会―
「初、め、は、桐北、だった、次に、必要、な、能力者、は、別に、いる」――私は何を喋っている?
「彼、を、アブラハム、を、探、せ」――口が勝手に動く、憑依が解けない
立体映像とともに、亡霊が浮かぶ。
何万もの”雑魚≠スち、異能者の残留思念。

―私/我々/スペクターは宗方零の身を借りて警告する―
 ―アブラハム、に、注、意、せよ、機関、の、城を、落とせ、―
   ―そのための、情報を、与える、――
    ―機関に、死を、滅びを、苦痛を―
        ―健闘、を、祈る―
          ―光、あれ―

立体映像と亡霊が消え失せ、私は正気に戻った。
神重の顔を見て、私は凄惨な笑みを浮かべた。
「私も所詮、化け物さ」

そしてデスクの机からおもむろに地図を取り出し、マジックペンで一心不乱に地図にマーキングをする。

「・・・だが”アブラハム≠ニは何だ?、まあ、そこにいけば分かるだろうな
それとも池上と合流するか?とにかくこれを見れば一目瞭然、のようだ」

宗方が地図を指さす、そこには――
そこに描かれていたのは、この街の異能者の現在位置だった。
池上、桐北、宗方の知らぬ異能者達、だが地図の1カ所だけ、名前が無い。

【宗方零 事務所で神重と合流】
【能力者の”現在位置≠把握、ただしあくまで”現在位置≠ナありキャラが移動すればトレース不可】
【宗方零 能力の過剰解放により 生命力を能力に吸われる】
122七草 柴寄 ◆O93o4cIbWE :2009/01/25(日) 01:29:05 0

…―――このままでは、いけないのかも、ね、

ここ二日間で、本当に色々な事があった、
機関に存在を知られた以上、今までの様に平穏に暮らすことはもう出来ないかもしれない

"あの日"以来、"私達"の時間は止まったまま、
止まった時間を動かす事は私"一人"では出来ない

そして柴寄も、柴寄にはこのまま何も知らずに生きていって欲しかった、
けどそれも限界に近い、本当は柴寄だって気付いている筈なんだ
そもそも私のしている事が矛盾しているのは解っている、それでも私は―――

――私達の止まった時間を動かす時が来たのかも知れない、
それには何か、きっかけが必要だ、それがたとえ、柴寄を危険な目に遭わせるとしても―――。

―――――――………

――――

――

「ッ……――」

(―――まただ、俺は、何をしているんだ?――)

―――人を、殺したいという、"欲求"ではなく、人を"殺す"という"信号"

そして、俺の身体は、女の子の首を、この手で絞めていた――――

――アレは――夢じゃない――

目が覚めれば、布団の中だった、夢だと思った、しかし、この手が、身体が、
そして夢と呼ぶには余りに現実的過ぎる感情、感覚、記憶、―――
全てが、アレが現実にあった事である事を告げている、
そう、昨日の出来事が、全て現実であった事を、

(俺は…俺は…本当に…人殺し…なのか…?)

自分を心配して追いかけて来た娘を絞め殺そうとした、そこから先の記憶は、思い出せない。

(俺は、何をしたのか、記憶の無い間、何をしていたのか、それを、知らないと)

昨夜何があったのか、それを追いかけよう、
記憶にはないけど、その場所に行けばきっと思い出す、そんな気がする―――
123七草 柴寄 ◆O93o4cIbWE :2009/01/25(日) 01:30:00 0

――…グゥゥゥゥ…

「…」

決意を固めた刹那、胃が空虚を訴える、腹が減っては戦は出来ぬとは誰が言ったものか。

まだ朝も早く、日も出ていない、外へ出かける時間ではない、
比較的早起きな彼は、毎日一日を過ごす為の身体を朝早くから作る、
二度寝をすると、何故か起きれない、一度目が覚めたときが、一番冴えているのだ、昔それを一度して、大変な事になった事を思い出した。


炊飯器の蓋を開ける――それはものの見事な、デンプン質の結晶を成していた

最後に開けたのは、何時だったっけ?

こうなっては、流石に食べられない、彼は食物に一礼し、申し訳無さそうにそれを処理した、

続いて冷蔵庫を開けてみる、とは言え彼の拘りで既製品は一切置かれていない、
故に中には野菜以外の食物は殆ど無い、さて、如何したものか、

手っ取り早く作るのなら、西洋風のあれかな。

そして冷蔵庫から人参とトマトを取り出す、次に傍の棚からじゃがいも、玉ねぎ、にんにくを取り出す

まな板を準備し、キッチンから包丁を取り出す、まずは人参の皮を剥く
道具は使わず、包丁一本で人参を鉛筆を削る様な要領で削いで行く、
それなりには慣れた手付きで食材の下準備を進めて行く、
料理鍋にオリーブオイルを垂らし、そのプールの中に微塵にしたにんにくを加える
そしてコンロに火を付け、香りを油へ移して行く、適度な色に変わったところで
今度は適当な大きさに切り揃えた野菜達を順に加えてゆく、
程よく火が通った所で、角切りのトマトを加えて潰して行く
暫しトマトの水気で煮詰め、頃合になった所で水を加え、煮立てる、
塩を一撮みし、微妙な加減で加え出来上がりだ。

俗に言う、ミネストローネ、野菜スープである。

別に汁物なら味噌汁でも良かったし味噌汁の方が好きだ、
だが味噌汁が在るなら米が欲しい所、しかし今はその米が無い、
いや、あるにはあるのだが、焚いている時間が惜しい、
それだからこの料理に落ち着いたのだが
味噌汁があると米が欲しいように、ミネストローネもこれだけでは物足りない、
冷蔵庫を空け、紙袋を取り出す、霜を払い、食卓に置き、中身を皿に取り出す
中身は、手頃な大きさに切り分けられた、フランスパン、この形はバタールと呼ばれるものだ、
せっせと隣の部屋の物置からオーブントースターを取り出し予熱をする、
予熱が済んだら、パンの切れ端を加え、加熱してゆく、その間に、器に先程の野菜スープを盛り付け、卓に置く、
加熱し終えたパンを皿に寄せて準備完了。
124七草 柴寄 ◆O93o4cIbWE :2009/01/25(日) 01:30:42 0

「いただきます」

最初にミネストローネを口に含み、野菜を味わった後飲み込む
口の中に汁気が無くなった所でパンをかじる、汁気と一緒に食べたら、食感が無くなってしまう
まぁパンはどちらかと言うと米の代わりかな。

このパンは、貳名市に在るパン屋"ムッシュイノウ"の物
店の細かい内容は此処では避けるが彼の評価は高い。

で、そのパンを半分切り分けて、買った時に入れられた紙袋に入れ直して冷凍庫にしまったわけだが
余り紙袋のまま冷凍処理するのはよろしくない、品質の劣化が早くなる、とはいってもやってしまったものは仕方がないが。

(それにしても、冷蔵庫といい、オーブントースターといい、便利な物だ、自分が子供の時はこんなもの無かった…
 ん?なんか変だな、あれ?何言ってるんだ俺?、まぁいいや)

――――

「ご馳走様…」

返事を返すものは誰もいない、食卓にいるのは彼一人だ

一人だけの生活、それももう慣れた、俺を育ててくれた祖父は去年、癌が原因で無くなった
そのショックで祖母も、後を追うように入院した、俺には何もできる事が無かった、

祖父も祖母も、俺には"迷惑を掛けてごめん"と、謝っていた

どうして謝るのだろう、謝るべきは、何も出来なかった俺自身、むしろ恨まれても仕方が無い筈なのに、

見舞いに行くのも辛い、行ってあげた所で、実際には何も出来ないのだ、そして何も出来ない自分を恨まれてるかもしれない、その事に対面するのを考えるだけで、
自然に病院への足取りが重くなる、そして、こうして孤独を感じている時以外は、祖父達の事を忘れてしまうのだ、
本当は片時も忘れてはいけないはずなのに、日常生活の中で、何か、街を歩いてその雰囲気に浸る時、祖父達の事を完全に忘れている、

何なのだろう、自分は、"ひとでなし"なのだろうか?、祖父が死んだときも、葬式の時も、涙も出なかった、
淡々と事実だけを受け入れている自分を知って唯々自分の事が嫌になった。

125七草 柴寄 ◆O93o4cIbWE :2009/01/25(日) 01:31:42 0

出掛ける仕度をしながら、思考を続ける、外ははまだ暗い。

人としての行き方を教えてくれた祖父、人の道だけは外すなと教えてくれた祖父、その思いは、今も俺の中に生き続けている。

その俺が、ひとでなしだけではなく、最も人の道を外れた"人殺し"かも知れないのだ、

もしかしたら、祖父達はその事を知っていたのかもしれない、そうだとしたら、全ては俺の――
いや、考えても始まらない、ならどうする、先に進むしかない、自分が何者なのか、それを突き止めよう、
そしてもし自分が本当に人殺しだったとしたら、その時は―――

その時は、どうすればいいのだろう?、この罪は、とても償えるものではないと思う

扉を開け、外に出る、歩きながら、思考を続ける。

昔から、何を得ても満たされる事は無かった、同時に、何を失っても、何も感じることは無かった、
祖父の時もそうだ、友人との付き合いも、何も、全てが無価値に思えた、

他人と付き合うときは何時も仮面を被っていた、人当たりの良い、無垢な仮面を、その時の感情に嘘は無い、嘘はないのだけれど、それも無価値に思える、

何故なんだろう、本当の自分の中に在るのは"虚無"しかない、何故だろう、俺は既に、全てを失っている気がするんだ、

(ならいっそのこと……―――ッ!!………駄目だ、考えるな)

ソノ先を考えようとすると頭が痛くなる、何時もなんだ、ソノ事を考えようとすると何時も、考えられなくなる。

たとえ償えなくても償うしか無い、という事なのだろうか、神がいるのなら、俺にはその宿命が与えられたとでも言うのか。

――「それでもいいさ…」―――

朝日が射してきた、朝日に晒されたその顔は悲しんでいる様にも、何かを決意したようにも見えた。

―――神がそれを与えたというのなら、俺はそれを全うしよう、もとより俺には、何も無いのだから、―――

【七草:早朝・人格が元に戻る、街の何処かを歩いている】
126神重智&敬 ◆6eLTPQTFGA :2009/01/25(日) 10:48:18 0
>>121

「探偵業は暇が多くてね、廃業するまで禁煙は無いだろう。
それに、今の状況では肺ガンで死ぬ心配はないさ、別の理由で心臓に穴が空く・・・まあ座ってくれ」

嫌味に対して宗方は軽口で返す。
神重は椅子に座ることを勧められ、宗方が新たに6本目の煙草をつけようとしたときだった。
宗方の体が明滅、そして現れたのは謎の立体映像。
蝙蝠達の映像を立体化するとこうなるのだろうか?と考えながら宗方の言葉を待つ。
「彼、を、アブラハム、を、探、せ」
(アブラハム…?)
(知っているのか?敬)
(いや、何処かで聞いたような気が…)

次に目に入ったのは宗方から現れた亡霊達。
これが宗方の能力の根源なのだろうか…?

「私も所詮、化け物さ」
亡霊達が放った言葉と宗方が放った言葉は明らかに違う。
あれは恐らく機関に殺され、恨みを持った霊の集合体。
(だが、俺達は俺達のやり方がある。目的は同じかもしれんがな)
(そういうことですね。亡霊達に従うっていうのも納得がいきませんしね)

「・・・だが”アブラハム≠ニは何だ?、まあ、そこにいけば分かるだろうな
それとも池上と合流するか?とにかくこれを見れば一目瞭然、のようだ」

地図を取り出し、マーキングを続けていた宗方が言う。
神重の知っている名の異能者と…全く知らない異能者。
そして空白の一箇所。ここに何かがある。あるのはわかっているのだが――

「今日は随分遅い。活動するからなら明日からの方がいいでしょう
 とにかく今日は体を休めて明日に…それまでの追跡は"彼ら"に」
念のためにともってきた硝子の欠片を使い、自分の手に切り傷を与える。
流れ出た血液は少しずつ形を形成し、やがて赤い蝙蝠となる。

「"彼ら"は追跡専門の蝙蝠です。やられない限りは大丈夫でしょう
 いざとなれば吸血蝙蝠でも補充が利きますし…ね」

神重が令を下すと待っていましたと言わんばかりに蝙蝠達は事務所を出て行った。
それと同時にまったく違和感無く能力を発揮していた自分に寒気が走る。

(だいぶ馴染んできているようだな…元々の自分の能力が)
(さて、それはどうですかね…前の能力も使えるのですから)

少し置いてけぼり感をくっている宗方に神重は説明する
「さて、休む前に一つ…今の私の現状をお話しましょうか。
今私は神重智と神重敬の能力…つまり二つの能力を不安定ながら操ることができます」

証拠に、と灰皿に無重力を与える。それと同時に残っていた血液で爪楊枝ほどの針を作り出し、灰皿に突き刺す。
宗方は少し驚いているようだが……。すぐに顔色が戻ったところを見るとやはり只者ではないということがわかる。

「と…まあこれが私の現状です。
 そちらの話したいことが無ければこのまま休息といきましょう」
言いたいことだけを言い、あとは宗方の話があれば聞くという状態だ。

【神重:宗方に能力を説明。宗方の能力で判明した能力者全員に追跡蝙蝠を放つ】
127クロノ ◆SoGLnhQ8WY :2009/01/25(日) 21:42:31 0
『私』の心臓に突き刺さった『オマエ』の爪。
その時『私』はこれまで学んできた人の身体をしていなかった。

「実験は成功しマシタ」

そう言った『オマエ』の後ろには、その仮面と同じ白に身を包んだ者が何人も集まり、部屋中が拍手に包まれていた。
その日から『私』はほんの少しずつ自由を手にし始める――

強い意志によって発動する貫通の異能力。
発動条件はその異能者である『私』に傷つけられる事。
『私』によって傷つけられたその身体は死を逃れようと、あやゆるものをすり抜ける力を得る。ただしその命を預かるのも『私』
この身に刻まれた傷も命の危機を感じさせる目的などではなく、その発動条件を満たすためのもの。
しかしこの傷は『オマエ』によって傷つけられたもの。つまり『私』は『オマエ』。
遺伝子的な問題である。『私』は『オマエ』のクローンだった。異能力が覚醒した日、それにちなんでclone→クロネ→クロノと名付けられた。
そして名前を得たその日から生活も大きく変わっていく…

まず一番大きいのは傷が刻まれる儀式が必要無くなった事。
異能力の覚醒した時点で無数の傷が刻まれた身体は健康体のベースとして認識され、異能者としての回復によっても永久に塞がらない。
それはいかなる状況においても自分の身は確実に護れるように異能力を使えるようにする為。
だが異能力が覚醒し、儀式自体は無くなっても、今後は代わりにそれを使いこなす為の訓練が必要とされる。
その訓練とは今までと同様に神経束縛によって身動きを封じられ、殺傷武器によって攻撃される。
しかし今までと違い、異能力を持ったためかその状況でも僅かながら身体は自由に動くし、意志だけで使える異能力がある。
やる事は同じ、むしろ死ぬ可能性の高いものとなっている。
しかし異能力のあるとないで抵抗できない儀式なのか、抵抗する訓練なのかは大きく変わる。
唯一今までと違い辛かったのは、眠っている間も攻撃が来る事。眠っている間にも異能力を使えるようになるまでは落ち着いて眠る事はできなかった。
それでも束縛されない自由な力の存在はクロノに希望を与えていた。

そして希望を持ち続けて過酷な日々を耐え、ついに『オマエ』のもとから離れる日がやってきた。

「…見ていマスカ?これからだんだん私は幸せになってしまいマスヨ――オヤ?」

クロノは無数のナイフでベンチに釘付けにされながら、その寝顔はニヤリと醜く歪んでいた。

「嗅ぎ覚えのある人のにおいがしてきましたネ」

【クロノ:十六夜 美月が近くにいる事で能力により眠りから目覚める事ができない。嗅覚が回復してきている】
128 ◆SoGLnhQ8WY :2009/01/25(日) 21:43:11 0
>>116>>119
「…私の能力でしばらく起きない、仕留めるチャンス」

姫野に説明を求められた十六夜は眠っているクロノを指差してそれだけ答える。これで答えになったのかはわからない。
だが拉致され、異能力によって心を黒く染め上げられているだけの彼女に、機関のナンバーや所属などわからない。
自分が何故そこに飛ばされてきていたのかもわからない。
姫野が何故ぼろぼろと涙を流して泣いているのかもわからない。
わからない事だらけで普段なら不安で押しつぶされそうな状況だが、そこに曾壁の能力は作用して不安を打ち消している。
その能力は恋島から向けられる敵意に対しても不安を打ち消している。

「切れない、刺さらない。でも起きない。手はあるはず」

彼女は恋島の持つ孫の手、姫野の持つ弓などに視線を向け、店内の薬棚などにも目を光らせる。
二人の間の空気などまるで読む気もなく、確実な敵であるクロノを殺す手段だけを考えていた。

【十六夜美月:姫野の質問に答え、クロノ殺害に有効な手を考案中】
129恋島達哉 ◆KmVFX58O0o :2009/01/26(月) 00:22:24 0
>>119>>128
――――姫野、さん? 俺は状況が把握できず、自分の頭が遂に可笑しくなったのかと思った。
だが、そんな現実逃避も数秒後には無駄だと分かる。しっかりとこの目で俺は見つめている。――――姫野さんの後姿を。
彼女は言った。確かに言った。自分を、「機関」の一員だと。自然に彼女の言葉が反芻される。

>「死にたくなければ…その場に止まってください…恋島さん。そうしなきゃ、私の矢があなたを貫きます…」
>「私は…No.20、姫野与一です。あなたの所属と状況を説明してください」

姫野さんはクロノの手下である少女にそう言った。いや、違う。少女はクロノの手下じゃない?
姫野さんの発言からすると、姫野さんと少女は顔見知りみたいだ。「機関」の仲間として。
それじゃ少女は……姫野さんに助けを求めていたのか?

クロノを倒す為に? それなら俺をスルーしているのも分かる。
何処の馬の骨な俺よりも「機関」の仲間である姫野さんに用があるのは当たり前だ。
が、一つだけ腑に落ちない事がある。認めたくは無いが、クロノほどの異能者が、どうしてこの少女に対して行動を起こさないんだ?

……本気で奴は寝ているだけなのだろうか? こちらの油断を誘っているのではないのか?
それとも――――この少女の異能力で? ……だとしたら大した異能力だ。それだけの異能力を持ってて、何で止めを刺さないんだ……?
と思うが、じっとクロノの方に目を向けると、クロノの周辺に何本か大きなナイフが突き刺さっているのが見えた。
そうか……あいつ、大概の物理的攻撃を通り抜けるんだったな。ナイフはもちろん、俺の一魂を込めたバックドロップも。
あいつに通用する為には、あいつと同じくらい反則級の異能力じゃないと……。それも災害レベルの。

……なんで冷静に分析に浸ってんだよ、俺。あぁ、やっぱそうだったのか。そうだったとしても心の奥底じゃ嘘だと思いたい。
でないと俺は――――いや、違う。俺は、俺は姫野さんが「機関」側だったとしても傷つけないって、決めたじゃないか。
だけど、良いのか? 今まで俺は「機関」に何をされたと思う? 尊厳も肉体も日常もぐちゃぐちゃにされたじゃないか。
それでも尚、姫野さん――――姫野与一を信用するのか? 彼女は――――恨むべき敵じゃないのか?
どうした、どうして思い切れない? 目の前に敵がいるのに、どうして割り切れないんだ、俺は。

>「今まで…隠していてごめんなさい…恋島さん…これが私の仕事。
  機関の二桁番号、No.20として、これまでたくさんの人達を殺してきました…
  馬鹿な私は…こんな手段しか取れません…でも、今は…今だけでも…私の言うことを聞いて…ください…」
姫野さんが俺の方に振り向き、か細い声で――――……涙を流しながら、そう言った。
言葉が、出てこない。どんな返答も無意味な気がして、俺はただ――――姫野さんに目を合わせることしか出来ない。
情けないな、俺。もし俺がもっと男らしかったら、今すぐにでも姫野さんを赦して抱きしめる事でも出来るだろ――――。

あ? 

俺の視線は何故か宙を向いていた。 あれ、あれ? 俺の意思とは無関係に、俺の体が動いてい、る?
瞬間、俺の脳裏に昨日の喫茶店と同じ不気味で無慈悲な痛みが奔った。同時にオルゴールのように流れ出す何かの映像――――。
その痛みに俺は頭を抑え体を曲げようとするが、そうすればするほど、俺の体は仰け反る。
姫野さんの姿も、あの少女の姿も見れない。それほど痛みが俺の体を支配していた。

歯を食いしばり、唇を小さく噛むと少しだけ、頭の痛みが緩和されている。そして脳裏で浮かぶ映像の内容が把握できる。
これは……初めてこの町に来た時の永瀬戦か? それにこれは……確か池上って名の青年と戦った――――病院裏の……。
何だ、何なんだ? 何で俺は記憶を辿っているんだ? こんな緊急時に。コレは――――お前の仕業か、耳鳴り?
お前はココに来て、俺に何を――――。


『達哉


 やっと定まったよ。俺達の敵が。今は――――ヤスメ』
力が――――抜ける。消えていく、目の前の視界が。耳鳴り、お前……。
【薬局前・7:15】
【何らかの要因で気を失う。倒れてはおらず、片膝を着き俯いているだけ】
130姫野 与一 ◆LuqsQs0P4w :2009/01/26(月) 20:51:30 0
>>127-129

私の質問に対し、女の人は、アイツの方を指差し、答えた

>「…私の能力でしばらく起きない、仕留めるチャンス」
切れない、刺さらない。でも起きない。手はあるはず」

この人は多分「暗示・催眠系」の異能力と言ったところか…
使用者があまり力を持たない者でも相手の隙を突くだけで倍以上の効果がある。
考える時間は充分にあると言う事。焦るな…冷静になるんだ。

こちらの戦力は恋島さんを含めれば四。アイツは…?確かアイツは反機関組織の一員だったはず。いつ仲間が助けに来るか分からない。
私の力で倒す?これは不可能。矢を何発撃ったって、アイツは効かない。下手に刺激を与えて効果が切れたら
目を覚ましてしまうかもしれない。そうしたら近接型のポチでもアイツ相手は辛い。
誰か機関の人を呼ぶのは…いや、それも不可能。命令に背き、更にその標的と行動しているんだ。その情報はもう本部の耳に入っているはず…
逃げる?それは可能かもしれない。だけどこの女の人はどうなる?アイツに能力をかけている限りここからは離れられないはず。
アイツが自身の力で打ち破ったら、この人は間違いなく、死ぬ。今の''私の力''では間違いなく勝てない。
どうする?どうすればいい?

――突然、後ろで音がした。
背後では、恋島さんが異様な動きをしている。なにか、痛みに耐えているような。
そして、突然動きが止まり、片膝を着いて気を失ってしまった。

「…恋…島…さん?」

どうすればいい?落ち着け、焦るな、冷静になるんだ。
目の前には気絶した恋島さん。助けを求めている鉄のような人。そして、背後には寝ているアイツ。指や足が僅かながら動いている。
どうしよう?どうする?どうすれば?全てがプレッシャーとなって私に雪崩れ込んでくる。抑えられない。

「…無理だよ…私の力じゃ…誰か…助けて…」

――" 私に身を委ねなさい 望む力を与えましょう "―――

声を聞いた。辺りが暗くなり、目の前にはあの着物の女性がいた。

――" さぁ…私の手を掴みなさい…あなたは…力を手にする権利がある… "――

恋島さんを、女の人を、助けたい。私は、迷わず差し伸べられた手を掴んだ…

【与一、力を手にする?】
【時刻7:20】
131??? ◆KmVFX58O0o :2009/01/27(火) 22:07:42 0
>>130
――――なるほど、現状を把握する。「俺」、否「彼」と姫野与一に増援を要求した女性は他人から干渉を受けているようだ。
標的を倒すという思考が厳重に固定されている為、一時的にだろうが無感情になっている。その標的が「彼」の憎むべき敵であり――――。
「俺」が定めた敵でもあるクロノの様だ。思い返すとクロノは「機関」と敵対関係である事を自ら示唆していたな。
女性とクロノがどの様な関係なのかは不明だが、女性が姫野与一と同じ「機関」所属の人間と同じであるに我々に増援を求めたのは可笑しくない。

しかし奇妙だな。先ほど姫野与一は「機関」からの命令で「彼」の抹殺命令を受けていたはずだ。
その時点で姫野与一が命令を実行しなかったのは幸運だったと思う。その時の第三段階の発現率は15%。
使える「能力」は即座に発動できる物ではなかったし、何よりも姫野与一の異能力に対してそれは相性が悪いからだ。
「機関」の連中と思えば今までの経緯からして「彼」に対して一切の情を挟まぬ殺人行為を行うと思ったが、どうやらあの男と同じく……。

姫野与一は「彼」の存在に何らかの意義を見出しているようだ。幸か・・・・・・否、不幸だ。
このまま同行していけばいずれ「機関」の刺客が我々を襲ってくる事は目に見えている。それだけじゃない。
「機関」の一員と同行していると分かれば元から遠慮が無い彼奴等は想像以上に熾烈な行為を、我々に対して吹っ掛けてくるはずだ。
「俺」はともかく姫野与一まで防衛する事は「俺」の力をもってしても不可能だ。それに姫野与一に危害が加わった場合「彼」の存在が揺るぐ事が……。
何よりも恐ろしい。「彼」の存在こそが「俺」の存在を確固たるものとしている。自らそれを危めるのは愚の骨頂である。

先の事を考えるのは何時でも、「彼」の中にいる時に出来る。今は目の前の障害を取り除く事が先だ。
使える「能力」は……これでいい。寧ろ充分なくらいだ。この場には少々過剰かもしれないが「彼」の雪辱戦と考えれば惜しくない。
洗脳されている女性の思考を解く為の「能力」はまだ解読できない。それならそれでいい。
クロノには挨拶を決めるだけだ。後はその場の状況を見計らいながら離脱する。スムーズにいけばな。

それにしても……「俺」は右腕に握っている健康用具、通称孫の手をまじまじと見つめた。
こんな物で本気で「彼」はクロノに対し抵抗しようとしたのか。毎度ながら「彼」の無謀と無茶には呆れる。
しかし、いやだからこそ「俺」は「彼」に興味が沸くのだ。ずっと昔――――「彼」と出会った時から。
自然に口元に笑みがこぼれる。尚更「彼」を死なせるわけにはいかなくなったな。……ん? 待て。

コレは面白い。そうか、孫の手か。「彼」が何を考えたかは分からないがせっかくだ。
有効に使わせてもらおう。手首を捻りながら孫の手を弄くる。一発勝負だからな。用心に用心を重ねる。
訳でも無いが、何年かぶりに「彼」と意識を入れ替えたんだ。肝心な時に体が動かないなんて事態だけは避けたい。
もう一度状況を確認する。味方は姫野与一と女性、敵はクロノ一人。姫野与一の「能力」はクロノの「能力」で無効化の可能性が高い。
女性の「能力」は未分析だが推測するに一定状況下で効力を発揮するが、直接的な攻撃は行えない。クロノの「能力」は言わずもがな。

そういや制限時間があるとは言え、姫野与一と女性には後々自己紹介をせねばな。
普通の話し方では「彼」の人格が疑われる事になる。……趣味では無いが気障な口調を気取るか。
思考が纏まった所で閉じていた目を開き、ゆっくりと立ち上がる。「彼」には謝罪しなくてはな。詳しく話す事は出来ないが。
閉じていた目をゆっくりと開き、孫の手を剣を構える様に持ち替えて、着いていた膝を上げて立ち上がる。状況は……ん?

一瞬、気圧されるような力の感覚が「俺」を襲った。大したエネルギーだ。どこから……? と思うがすぐに理解する。
「私の出る幕は……どうやら無さそうですね」
【恋島達哉の意識が少年の声と入れ替わる】
【残り3分】
【7:25】
132 ◆KmVFX58O0o :2009/01/27(火) 22:10:26 0
>閉じていた目をゆっくりと開き、孫の手を剣を構える様に持ち替えて、着いていた膝を上げて立ち上がる。状況は……ん?
の部分はコピペミスです、すみませんorz
133宗方零 ◆idMa0miDD. :2009/01/27(火) 23:29:02 0
地図に描かれた情報、神重はそれを一瞥する。
表情はいつも通り冷静そのもの、だが内心は納得などしていないだろう。

「今日は随分遅い。活動するからなら明日からの方がいいでしょう
 とにかく今日は体を休めて明日に…それまでの追跡は"彼ら"に」

神重は硝子片で手を切る、血が流れ、数多の蝙蝠となって羽ばたく。
「"彼ら"は追跡専門の蝙蝠です。やられない限りは大丈夫でしょう
 いざとなれば吸血蝙蝠でも補充が利きますし…ね」

蝙蝠たちは神重の号令一下、窓の外へ羽ばたいていった。
なるほど、吸血鬼の従者には蝙蝠というわけか。
頷きつつ言う。
「"彼ら"が様子を探るのであれば確実だな。これで明日の街の状況は掴めるだろう
しょせん亡霊の戯言かもしれんし保険はかけておいたほうがいいだろうしな」

敵情と地勢を確実に知ることが大事なのは、警察時代に学んだ。
それは、戦争でもそうだ。そしてこの男は、それを瞬時に行った。
神重の全てを見そなわす眼――私の背後にいる亡霊ども――これを利用しない手はない

だが、この男はこれだけの能力を解放して涼しい顔をしていられるのは何故だ?
「さて、休む前に一つ…今の私の現状をお話しましょうか。
今私は神重智と神重敬の能力…つまり二つの能力を不安定ながら操ることができます」

神重が灰皿に視線を向けると、灰皿が浮く。
(――! これは・・・彼は重力も操れるのか?)
と思うと今度は血が針となり、灰皿に突き刺さる。
ツェペェシュ公が好んだ”串刺し≠フミニチュア・モデルがそこにあった。
(――見事なものだ、だが神重らしい芸当だな)
なるほど、神重の成長とは”智≠ニ”敬≠フ能力の合一という事か。

つまり、能力者二人分のキャパシティを持つということ――!
やはりこの男を味方に付けて正解だったようだ。

「と…まあこれが私の現状です。
 そちらの話したいことが無ければこのまま休息といきましょう」
神重もそれなりに消耗しているようだった。

「戸棚に寝袋がある、勝手に使ってくれて構わん――」

私は突然急激な疲労感に襲われる、死からの復活と能力の過剰な解放。
――ドスン 今日のところは限界のようだ、椅子に崩れ落ちる。

そこで神重の顔を見据える。
「さっきの亡霊どもの事だが、察しのとおりアレが私の能力の根元だ。
最近煩くなってきていてね――あんた”達≠ヘあいつらが信用できないようだな
――私も同感だ」
全身から力が抜け、背もたれに頭を凭れる、瞼が重い。
「これは生きている人間の闘いだ。私は使える情報なら何でも利用する。
だが、亡霊共のいいなりになどなってたまる――か――」

私の体は寿命が切れかけた蛍光灯のように明滅し、瞼がシャッターのように閉じる。
意識は闇へと落ちていった、できれば夢など見ないことを希望する。
悪夢は起きている間だけで十分だ。
【宗方零 休息】

134影渓 木陰 ◆O93o4cIbWE :2009/01/28(水) 21:40:45 0
俺が連れてきた異能力者は食事の途中に様子がおかしくなり外へ飛び出していった、
響が後を追い、暫らくすると帰ってきたのは響一人、あの異能力者は帰って来なかった、
話を聞いてみると、人格が豹変して戦闘になり、負けてしまい口止めされて帰ってきた、とのことだ。

そして籐堂院も後を追って出て行ってしまった、仮にも歓迎会の主賓が抜けてしまうとは、どういったものか。

「ふむ…」

相槌を打つ、彼はあまり多くを語りたがらない、それ故、他人に固い印象を与えているのは否めない。

「ふむ、じゃないよ!、大体、どうして影渓さんはあんな子連れてきたのさ!」

「…幽玄様が、面白そうな異能力者を連れて来いと…」

「む〜…、、面白そうな異能者?、あ〜あ〜、アブラハムの事?」

アブラハム?、何だそれは?

僅かながら首を傾げる、響はその雰囲気を察したのか説明を始めた

「そっか、影渓さんは知らないんだ、ウチは最近そのアブラハムの捜索に躍起なんだよ?
 何でも特別な異能者で、ある計画に必要なんだって」

「なるほどな、だがそれは機関の計画だろう…」

幽玄様は仰せられた、連れて来いと、あの方のお考えは別の所にあるのかも知れない。

「ま〜ね〜、正直あの爺さんの考える事は良くわかんないし」

「…で、どうだったんだ?」

「え…?」

「戦ったんだろう?、何か感じた事はないのか?」

「……」

響は急に黙り込んでしまった、悪い事を聞いてしまったな。

「悪かった…籐堂院が奴を追い掛けているようだし、籐堂院に任せておくとしよう」

「うん…ボク…もう寝るね…」

そう言って部屋に駆け込んでいった、自分はどうしたものかとしばらく考えていると、響の部屋から声が聞えてきた。

泣いているのか?、負けた事がショックなのか、それとも、よほど酷い目に遭わされたのか、まさかな、何にせよ、盗み聞きする趣味は無い。

そして彼はシナゴーグを後にした。

(アブラハムか、機関の計画の鍵だと言うが…機関はそれを集めて何をしようと言うのか?そして幽玄様は何をお考えなのだろうか…)

幽玄様が機関の思惑とは別の所で動かれているのは知っている、幽玄様は、機関とは別の目的でアブラハムを探しているのだろうか?

(俺が連れてきた異能力者は、無責任だが籐堂院に任せるとして、俺はそのアブラハムを探すとするか…)

「行くぞ…オルカ」

(アブラハム…どんなものかは知らないが、戦ってみれば解るだろう…)

そして彼は、闇の中へ溶けていった―――
135姫野 与一 ◆LuqsQs0P4w :2009/01/28(水) 22:30:24 0
>>131

……再び意識が現実に戻った。目の前にいる恋島さんはまだ気を失ったままだ。
私はすぐそこに駆け寄ろうとしたが―――
体が動かない。麻痺しているというのか、自分の体があるという感覚がない。
…! 突然、体が…視点が動き、空を見上げた。

「アハハ…アハハハ…アハハハハハハハ!良いわ!これが肉体!自分の体ァ!
ちょっとこの手足はアレだけど…髪は黒くなって、毛がフサフサで気持ち良いわぁ…
それにこの子…メタトロンは少ないけど、入る器が果てしなく大きい…うーん…もう最高よ!」

何?何を言っているの?喋っていないのに声が出ている。口調も違う。
また視点が動き、気を失っている恋島さんの方を向いた。手袋と弓も投げ捨てた。

「さて…と。この子の願いを叶えてあげなきゃね。確かあなた恋島とか言ったわね…
……あぁん?あんた…恋島じゃないわね?他の神族はこの街に彼女しかいないし…あんた誰?」

やっぱり私から声が出ている。この子とは私のことを指しているの…?
なら、今喋っているのは…私に話し掛けてきた着物の人…?

―そういう事よ…あなたの事は今まで監視させてもらったわ。あなたの体を手に入れる為にね。
 大分時間が掛かったわぁ…体に異物も混じっちゃったしねぇ。―

声が私に答えた!?監視?時間?異物?何が、私に起きているの…
答えるなら答えて下さい!あなたは何ですか!

―そうね…まずは自己紹介から。私の名前は卦宮夜。神族。えーと…あれよ。本で見たことあるでしょ?かぐや姫。
10年前だったっけ。あなたがエレベーターに閉じ込められた時からずっと見ていたの。あなたの体と能力は理想体だったからねぇ―

かぐや姫…?竹取物語のかぐや姫…それが私をずっと監視していた…自分の体を手に入れる為に…

―異物ってのは…あなたも気付いているわよね。人間のものではない手、足、黒くなった髪。それはあなたがアイツと呼んでいる男に刺された
傷を癒す為に身を投じた犬…確か…ハチ?の異能力の物。主人を助けるなんて勇敢な忠犬よねぇ…―

電流が走った…感じがした。これはハチの体……ッ!視界がグルグルと回り、そして…
懐かしい光景が目に映った。エレベーターの角でうずくまっている私。それを上から見下ろしている。再び視界が閉じ
次は家族との光景、その次は学校での日常、ビルの入社試験、異能力の検査、ハチ・ポチ、狙撃した人たちの死体、アイツの姿
折川君、レオーネさん、貫かれている私、それを運ぶハチ、私に融合しているハチ、教会、神父さん、女の人、恋島さん…
そして最後に卦宮夜と名乗った女性の姿。意識が薄れていき…
136卦宮夜 ◆LuqsQs0P4w :2009/01/28(水) 22:31:28 0
「あらら…こんなに弱い子じゃないのにねぇ…今、見せるのは失敗だったわ…
ええ…と…あんた。本体よりは役に立ちそうね。私の名前は卦宮夜。あの男を倒して、あんたを守るっていうのが私の器の願いでねぇ
面倒臭いだろうけど、手伝ってもらうわよ。私の能力でもアイツは厄介なのよ…」

器の…与一の意識は深く閉じた。今はこっちの方が好都合。恋島―だった物はこちらをじっと見つめている。
そんなものは気にせず、体を慣らす為に屈伸運動という行動を行った。良く出来ている体ね…目が良くて胸も大きいし…
しっかし…あのマヌケに寝ている男…私の体に傷つけて、しかも直接触るなんて…ムカツクわねぇ…

「ちょっと、アイツに一発ぶちこんでくるわ」

無駄だろうけど、イライラが収まらない。何もしないでひたすら立ち尽くしている女の横を通り過ぎる。
「あぁ、アンタはもうここにいなくても大丈夫よ。後は逃げるなりなんなり自由にしなさい。
あとアンタ、もう少し喋りなさいよぉ?」
コクリと頷いただけで立ったまま。つまらないわねぇ…

ベンチには針山…もといナイフを体に突き刺しまくった男がニヤニヤしながら寝ている。
「良い旅夢気分ってか…そんな熟睡王子様に過激なお目覚めをプレゼント。」

頭上に槍が出現する。数は少しずつ増えていき1…10…20…30…40…50。
その全てが男の体に目掛けて―落ちていった。

【卦宮夜覚醒、与一意識不明】
【クロノとの間合い10m】
137ゴールドウェル ◆fEvO9ByRpU :2009/01/29(木) 00:15:49 0
>>120
彼女は私に対して相変わらず敵意を向けたまま何も応えてこない。
しかしいつまでもこんな所で道草を食っているわけにはいかない。話が無いようなら行かせてもらう。

『浮遊膜』解除――

だが、能力を解除するその時を待っていたと言わんばかりに、彼女は勢い付けて踏み出してきた。
最初から話合う気などなかったような態度。17が相手にする気が無さそうだったが、彼女も明確な敵だったかな。
そのように思考を巡らせる間にも彼女は距離を詰める。だが――

『浮遊能力』発動。対象は彼女――

その時、視界に17と対峙する男と『地核招来』が映る。
この戦いで命が燃え尽きそうな男と、その戦いに手出しする事を拒否され決着を待たされる男…か。

私の発動した能力によって対象はふわりと浮遊する。
だが彼女の足は地に着いた状態を維持している。
しかしそれは私の能力にあがなえたわけではない。私の能力は見事に掛かり、彼女を足止めする事に成功している。
彼女はつまづきそうな体勢で、しかしそれ以上に硬直を余儀なくされた状況にあった。

私が『浮遊能力』を掛けた対象は彼女のスカート。
彼女は前のめりになった状態でスカートを抑えている形だが、後ろにまで手は回っておらず、
私達機関組には見えないが、他の2人の位置なら、目を向ければ丸見えになっている。
もっとも彼らが見えるかどうかが重要なのではなく、彼女がそれを意識するのが重要なのだ。
さて、隙ができたところで――

「貴様あああああああああ!!!」

次に自分に『浮遊能力』を掛けて飛んでいこうとすると、彼女の複雑な怒りが既に私を捕らえていた。
そして抜刀すると同時にその場に強力な風が巻き起こり、私を空高く舞い上げる。
攻撃のつもりか、仕返しのつもりか、能力の及ばない範囲まで飛ばしたかったのか――
いずれにしろ私にとっては都合がついた。

『反重力の応用』

空高く舞い上がった私は、先程のように空中移動の技を用いてさらに離れていき、再び本部を目指して飛んでいった。

【ゴールドウェル:その場を離れ、再びナガツカインテリジェンスビルへ移動】
138小村 禅夜 ◆3LPMHhiq9U :2009/01/29(木) 01:31:15 0
>>81-82
小村が来たこの階は機関のセカンドナンバー以上の者の為の小部屋が幾つか設けられている。
会議までの時間はここで休憩しようと考え、指紋ロック式の扉を開けて中に入っていく。
この機能によって、だれが何時利用したかというのが分かる仕組みだ。

部屋の中は家具がシングルベッド、イス、クローゼットぐらいのシンプルな空間だ。
そこら辺の安ホテルと大して変わらない。フタツナスカイホテルの方が何倍も上等だ。
一息つこうとイスに腰掛ける。その際にひやっと冷たい感覚がし、自分の血で服が汚れているのを思い出した。
「まずは着替えますか……って、あー…しまった。」
着替えようと立ち上がると同時に、自分の失態に気づいた。
着替えやその他もろもろが入ったカバンをアルトが
キャンプを張っていた廃墟地帯に廃車と化した車と一緒に置いてきたのだった。
「まぁ、着替えぐらいは部屋に備え付けてあるでしょう。安物だが…」
別にレオーネのようにあーだ、こーだ言うつもりではないが、なんだか嫌なのだ。
「それも人間っぽさを出すためのこだわりー?」

もう聞きたくないと思っていた声にウンザリしながらも振り向く。
何時の間に侵入したのか、ベッドに一人の女性が腰掛けていた。
座っていても分かる長身にスレンダーな体、暗い赤のコートに腰まで行きそうな黒の長髪。
顔を見る限り、二十後半ぐらいだろうか。鋭い眼光に、口をキュッとむすんでいる。
しかしその顔立ちからは不自然と言えるほど、明るい声が発せられている。
「そのヘンテコなしゃべり方も人間に近づくため?
確かに前までのしゃべり方は無愛想でボクは嫌いだけどネー。
まぁ今もじゅう〜〜〜〜ぶん、無愛想だけネー。あははは」
冷静沈着そうな大人の女性の顔からは、まるで女子高校生のようなテンションの声が出てくる。

「……うるさいですね、ルージュ。私は今から着替えるので出て行ってくれませんかね。」
ルージュと呼ばれた女性のおしゃべりをそっちのけで、クローゼットから安っぽい黒色のスーツを取り出す。
「うん?別に、ボクは気にしないヨー?小村の裸なら三年前、神器の儀で見てるし。
あれは凄かったネー。だって今まで試してきた人体はどれも拒絶反応で吹き飛んだのに、小村は生きてたからネーって…ウッ!!」
「一ついいですか……それ以上、あのときの事を掘り返すんじゃないぞ?」
139小村 禅夜 ◆3LPMHhiq9U :2009/01/29(木) 01:33:44 0
一瞬でゴッドバルトを呼び出しその腕でルージュの首を掴み、すぐ近くの壁に押し付ける。
小村の形相は一昨日の戦場ヶ原にみせたそれより数倍はすごみを増していた。
「あ、昔の口調になったヨー、そんなに苦痛だった?
にしても、これも使いこなせてるんだー。人間やれば何でも出来るもんだね。
まぁ、小村はボクと同じバ・ケ・モ・ノ、だけどネー」
ルージュは全く苦しくないかのようにペラペラとおしゃべりを続けた。
私はそれをまるで汚い物でも見るような目で眺めた。
「…ゴッドバルトの爆破能力で吹っ飛ばそうか…どうせ、その体もコレクションの一つなんだろ」
命令を下そうと手を差し伸べた。
「ゴメン、ゴメン。怒ったんなら謝るから。これ結構気に入ってるんだからドカーンはやめてヨー。ネ?」
ルージュはさっきまでとは打って変わって苦しそうにアピールをし、ウインクまでしてきた。
「………」
その様子に呆れてゴッドバルトを引っ込め、ルージュを開放する。

ルージュは首を摩るだけで、咳き込みもしなかった。
「もー、ヒドーイ。首曲がったらどうすんだヨー。」
「…一つ聞きたいんですが、もしや、あなた以外の忘却数字-ロストナンバー-もこの街に着てるんでか?」
「うん。ボクの他に何名かネー。でも詳しくは知らないし、知ってても教えないけどネー。」
さっきのことで怒っているわけではない、こういうところは昔からだ。
茶化すくせに、重要なとこはしらばっくれる。本当に面倒くさい。
「そういや、そろそろ会議があるんじゃないノー?ボクは特に幹部でもなんでもないから
行かないけど、小村は特別幹部とかなんとかだよネー?」
「……だからさっさと出て欲しいんですけどね」
さっきゴッドバルトをだしたせいで、落ちたスーツを拾いつつそう急かした。
「わかったヨー。出て行きますヨーだ。」
次の瞬間、顔を上げてルージュを見てみるとそこにあの長身の姿は無かった。
「全く……なにしに、来たんだか」
意味もなく茶化しに来るのも昔からだ。まぁ、私が少し感情的になったのを見て満足して帰ったんだろう。
それから時間が迫ってることに気づき、大急ぎで着替えて部屋を後にした。

【小村禅夜:服を血だらけカッターシャツとズボンから黒スーツに】
【会議室に向かう。到着は始まるニ、三分前】
140池上 燐介 ◆qqu0tZFsYU :2009/01/29(木) 03:13:23 0
──衣田が右腕を勢い良く振り下ろす。
瞬間、燃え盛る紅蓮の大火球が、彗星のような尾をなびかせながら俺に向けて接近を開始した。
衣田との距離はほんの10メートル程度──火球の大きさからしても避けられるものではない。
かといって、『氷壁』による防御も期待はできないだろう。恐らく、壁ごと俺の体は燃やされる。

回避も防御も不可能。──ならば、こちらも必殺の一撃で迎え撃つしか道はない。
──俺は接近する大火球に向けて、迷い無く右手に集約された凍気を解き放った。
青白い光を伴って放たれた超低温の凍気の塊は、瞬時に雪や氷を生成しながら
赤色の輝きを放つ灼熱の炎に向かい────そのまま激突した。
瞬間、とてつもない轟音と、赤と青の閃光が周囲に走った。

互いに絶対の自信を持つ異能の技であったせいか、互いにエネルギーはその威力を譲らず、
技が激突したその位置のままで衝突を繰り返している。
エネルギーの多くは低温と高温の狭間で瞬時に破壊され完全に消失していくが、
中には衝突の余波により四散されていくものもある。
それは俺の方向には冷たく、衣田に向かっては暖かい、両極端な温度を持つ爆風となって散っていた。

「クッ……!! これほどまでの威力とは……ッ!!」
「なッ、なにィッ!! ま、まさか──『バーニング・ヘル・コロナ』と拮抗する力だとォッ!?」

「バチバチ」といった衝突音が鳴り響き、二つの閃光が入り混じる空間の中で、
二人は相手の技に対する驚嘆の声を挙げた。
しかしその間も尚、依然として双方共に気を緩められぬ均衡の状態が続く──。
──だが、そんないつ終わるとも知れない壮絶な撃ち合いは、突如として終わりを告げた。
俺が"全力"で撃てる『氷雪波』の一発分のエネルギーを撃ちつくした時、
同時に衣田の火球もその姿を消したからだ。

「「──互角ッ!?」」

二人は思わず口を揃えてそう叫んだ。──だが、そう驚きつつも、俺は次の一手を早々と指していた。
双方の技の威力が互角と認識したその次の瞬間には、即座に衣田に向かって走り出していたのだ。
──自棄になったのだろうか? いや違う。俺は、冷静そのものだった──。
141池上 燐介 ◆qqu0tZFsYU :2009/01/29(木) 03:17:54 0
『冷翼』の応用によって、俺の移動速度は通常時より増していたが、
それでも機関の異能者である衣田に捕らえきれないスピードではないだろう。
そしてこちらが真正面から接近を始めたことで、俺の目的は奴にも発覚してしまうはずだ。
すなわち、接近戦──。

「なるほど、あれだけの大火球を放った直後では炎も碌に使えないと見て、直接殺りに来たか」

俺は右腕に氷を纏い、先が鋭利な氷の剣を作り出した。
これは『氷柱弾』を右腕に纏ったとものと言い換えてもいい。
接近戦という思惑を当然のように看破されたが、俺はただ無言のまま衣田に接近し続ける。
そんな俺を見て、衣田は不敵な笑みを浮かべながら両腕を後ろに下げる構えを取ると、
俺に向かって勢い良くその両腕を突き出した。

「──だが、俺の異能力を甘く見たなッ! それが貴様の命取りとなるッ!!」

衣田の両腕から炎の渦が飛び出し、それは俺へと目掛けて一直線に飛んでいく。
こちらが接近していたこともあって、二つの炎は完全にダメージ不可避のタイミングで放たれていた。
先程の大火球と比べればその威力は小さなものであろうが、
それでも全力で『氷雪波』を放った直後であった為か、体がほとんど凍気で覆われていない
今の俺が直撃を許せば、致命的なダメージにもなりかねない。
そしてそれは、既に勝利を確信した笑みを浮かべている、衣田の知るところでもあったようだ。

──しかし、そんな衣田の笑みは、突然、驚愕の表情へと変貌を遂げた。
完全に直撃するタイミングの炎が、気付けば俺を『無傷』のままにその背後を『通過』していたからだ。
衣田の視点から見たままに表現すれば『目の前の俺に直撃はしたが、何故か炎は俺をすり抜けた』
というものだったろう。
そして俺は、衣田がこうした狐につままれた気分に陥っている間に生まれた一瞬の隙を、見逃さなかった。

「見極めの甘さが命取りとなったのは──お前の方だったな」

この言葉と共に、俺は衣田のすぐ傍へ、それも彼が予期せぬ位置から現れた。
そこは彼から見て、炎が通過した『目の前の俺』より、数十センチほど『右』にずれた位置。
予期せぬ出来事の連続により瞬間の防御すら忘れた隙だらけの彼の体に、
俺は右腕に纏わせた氷の刃を、無言のまま思い切り突き立てた──。
142池上 燐介 ◆qqu0tZFsYU :2009/01/29(木) 03:24:31 0
「ズン」という鈍い音が響き渡る──。その直後に、赤い人間の血が地面に滴り落ちていく。
これは氷の刃により、胸板を完全に貫かれた衣田から流れたものだった。
急所を貫かれる致命傷──。そのショックにより、彼は口から吐血し、全身は軽く痙攣している。
もはや彼にアリ一匹殺すだけの力も残っていないことは、誰の目にも明らかであった。
だが、そんな彼にもまだ話す力は残っていたのか、すぐ傍で右腕を突き出している俺に対し
消え入りそうな声で何かを呟き始めた。

「ば……バカ、な……! 一体……どうして……」

彼は更に吐血しながらも、先程の出来事について詳しい説明を求めてきたのだ。
俺は一つ溜息をついた後で、ゆっくりと語り始めた。

「……炎によって暖められた空気と凍気によって冷やされた空気、
その二つが生じさせた光の屈折によって、お前は俺の位置を誤認させられていたのさ。
蜃気楼と同じ原理だ。つまり、お前が攻撃をした俺は単なる『幻影』だったということ──」
「そ、そうか……お前が敢えて接近戦に……望んだの、も……」
「そう……俺が接近戦に望んだのは、"お前が炎を禄に使えない"と踏んだからじゃない。
初めから幻のトリックを用いて早々に決着をつける為だったのさ。
お前との撃ち合いで、お前の炎の前には俺の凍気もほぼ無力だということが判明したからな。
ならば凍気を極力使わずに勝負を決めることが最も合理的──そう即断するのに迷いはなかった」

俺はそこまで言ったところで、衣田の胸に突き刺さっていた氷を引き抜くと、それを蒸発させて消した。
体重を支えていた刃が無くなったことで、彼は力なく地面に倒れこんだ。

「言っただろう? "単純な力技は通用しない"とな。
……異能力だけで天敵に勝てるのなら苦労はないだろう?」

地面に背をつけ、うつろな目で空を見上げる衣田を見据えて、俺は冷たく言い捨てていた。
だが、その目に憐れみや蔑みの色が全く無かったのは、それは闘う前に彼から感じた
一組織の幹部に値する『覚悟』や『誇り』の存在に、一種の敬意を表したからかもしれない。

「フフ、フ……俺の完敗……ということ、か……。まっ……たく……大した奴……だ…………」

この言葉を最後に、衣田は永久に口を開くことは無かった。
衣田の最期を見届けた後、俺は山田と女剣士のいる方向に顔を向けた。
その時、俺は微かだが確かに呟いていた。
「……お前もな」──と。

【池上 燐介:負傷箇所は変わらず、戦闘を終える。現時刻AM6:00】
【機関No.17衣田、死亡】
143神重智&敬 ◆6eLTPQTFGA :2009/01/30(金) 15:57:46 0
「戸棚に寝袋がある、勝手に使ってくれて構わん――」
宗方が指差す場所にはなるほど、確かに寝袋がある。
「さっきの亡霊どもの事だが、察しのとおりアレが私の能力の根元だ。
最近煩くなってきていてね――あんた”達≠ヘあいつらが信用できないようだな
――私も同感だ」

能力の根源でありながらそれを否定するとは。
最初の私と敬のようなものなのだろうか…。尤も、今でも認めたわけではないが。

「これは生きている人間の闘いだ。私は使える情報なら何でも利用する。
だが、亡霊共のいいなりになどなってたまる――か――」

「私も同感だ。
 もし宗方…君が私の障害となるようならば………」

すべてを言い切る前に宗方は深い眠りに落ちたようだった。

(ったく…呑気なやつだぜ)
(そういうな、敬。彼も色々あって疲れたんだろう。しかし毛布も被らず寝るとは…風邪をひくぞ)

血の毛布でも作ってやろうかと考えたが、寝起きに血の臭いで目が覚めるというのはお世辞にもいい朝とは言えない。
そこで宗方の事務所のどこかから毛布をひっぱりだし、かけておいた。

「やれやれ、これでまだ三日目が終わったというのだからタチが悪い…
 さっさと悪の根源…とやらを倒さないといけませんね」

寝袋を出し、それに入って眠りにつく。
しかし智は気づいてなかった。いや敬ですらも。
寝袋の周りに自然と血が集まりいつの間にか棺桶を形成していたことを。

宗方の朝はやはり悪夢ではじまるようである。

【神重:眠りにつく。寝袋の周りが棺桶で覆われる】
144囁く少年 ◆KmVFX58O0o :2009/01/30(金) 21:48:10 0
>>135-136
孫の手で背中を掻きながら「俺」は姫野与一の覚醒を静観する。しかし偉くタイミングの良い事だ。
まるでこの状況を待っていたかのような覚醒。戦況的にはプラスではあるが妙に腑に落ちない。
この湧き上がるような不愉快な感覚は何故だろうな。姫野与一の意思による覚醒か? 否――――コレは――――。

「俺」の疑念はすぐさま答えが出た。姫野与一は異能力によって形成された弓と手袋を投げ捨てると「俺」に振り向いた。
その表情には姫野与一のか弱く儚げなイメージは既に無く、妖艶で軽薄な悪女の笑みが浮かんでいた。
>「さて…と。この子の願いを叶えてあげなきゃね。確かあなた恋島とか言ったわね…
  ……あぁん?あんた…恋島じゃないわね?他の神族はこの街に彼女しかいないし…あんた誰?」

「人に名前を聞く前に、自分から名乗ってはどうです? お嬢さん」
と半ば姫野与一――――を掌握している「それ」に「俺」は返事を返した。だが残念な事によっぽど姫野与一を我が物にした事が嬉しかったのか……。
恍惚とした表情を浮かべたまま、「それ」は「俺」の返事を聞き流した。まぁ、現状自己紹介し会えるほどの余裕は無いのだが空しいな。
「それ」は「俺」の事など露知らず、すやすやと眠り呆けているクロノの方を向いた。

>「あらら…こんなに弱い子じゃないのにねぇ…今、見せるのは失敗だったわ…
  ええ…と…あんた。本体よりは役に立ちそうね。私の名前は卦宮夜。あの男を倒して、あんたを守るっていうのが私の器の願いでねぇ
  面倒臭いだろうけど、手伝ってもらうわよ。私の能力でもアイツは厄介なのよ…」
どうやら完全に「それ」によって姫野与一は精神的にも肉体的にも操り人形になってしまったようだ。「俺」が言える立場ではないが。
しかし「それ」、いや、掛宮夜と名乗ったか。掛宮夜は姫野与一に対し配慮する事を考えていないようだ。
いづれ姫野与一と乖離してしまうかもしれん。まぁ……「俺」がどうこうする訳では無いのでどうでもいいがな。

それにしても先ほどから姫野与一の思考には驚くばかりだ。標的を庇い尚且つ難敵を自ら打破しようとは。
何がそこまで姫野与一を突き動かすのかが知りたい。人間の感情について「彼」との経験で幾度か勉強したつもりだがまだまだ勉強不足だ。
少しばかり考えが逸れた。掛宮夜はクロノに対して交戦するようだ。無論「俺」もそのつもりなので協力関係は喜んで引き受けよう。
けれど掛宮夜はクロノにどんな攻撃を行うつもりだ? 姫野与一の異能力ではクロノの異能力に歯が立たないのは分かっているはずだが。

>「ちょっと、アイツに一発ぶちこんでくるわ」
そう「俺」に告げると掛宮夜は笑みを浮かべて熟睡中のクロノへと疾走した。やれやれ……感情で動くとは姫野与一を傷つける気か?
                                       コピーブレイク
「俺」は呆れて掛宮夜の動向を見守りながら、「俺」が持つ唯一の技――――模倣迎撃のテストを行う。
邪魔になる為、孫の手を背中に入れる。どんな「能力」を使用したいかを脳内で思い浮かべ――――口に出す。
「陰翳幻覚」
瞬間、「俺」の両腕を黒く濃い霧が覆う。思考に薬局のビジョンが浮かび、「俺」はそのビジョンに「彼」のバックと姫野与一のバッグを見つけ出す。
同時にそのバッグ目掛け腕を伸ばすイメージを想像する、と、右手に「彼」のバックを、左手に姫野与一のバッグを掴む感触が奔る。
良し、上々だ。バックを掴み、『陰翳幻覚』を解く。「俺」の両腕を覆っていた霧が晴れる。
戻ってきた両腕が万全な事を確かめ、持って来た二つのバッグを肩に掲げる。実に良い能力だ、コレは。汎用性に富んでいて尚且つ扱いやすい。

ふらっと一瞬めまいが起きる。流石にいきなりはきついか。「彼」の体の為にも早めにケリをつけねばな。
【掛宮夜の攻撃を静観】
【模倣迎撃を使用。薬局に置いた恋島と姫野のバッグを取り戻す】
【残り2分30秒】
145レオーネ ◆GWd4uIuzU6 :2009/01/30(金) 21:49:03 0
>>105-106

総合会議室に着くと、部屋は既に重苦しい空気に包まれていた。
セカンドナンバーたちが座る椅子は、大部分が空席となっている。
機関が被った被害の大きさが垣間見えた気がする。
まぁ、世襲幹部の連中はともかく、"私たち"には関係ない話だがね。

部屋はウィンドウを締め切り、明るい蛍光灯が日の光の代わりを務めている。
広い空間を長方形のテーブルと椅子が占拠し、部屋の正面には巨大なスクリーンがあり、
時折ナガツカインテリジェンスのロゴマークが浮かび上がって来ていた。

私の席は……。――! No.5と目が合ってしまった。
朝から最悪の気分に包まれながら、ファーストナンバー用の席へと腰を下ろした。

外道院の奴には私の話し掛けてくれるなというオーラは感じ取って貰えなかったようで、
彼女は嫌な笑顔を浮かべながら小声で話しかけてきた。

それにしても、今朝の彼女はいつもの巫女装束とは違い、オレンジの生地に黄緑色の花の刺繍が入った着物を身に着けている。
普段であればただ下ろしているだけの長髪は、綺麗に頭の後ろに纏められており、
目のクマも今や影も形も無くなって、一見すれば別人に思えた。
しかし私とて戦いの世界に身を置いている者の端くれ、
この女に漂う死臭の香りを見過ごす程間抜けではない。

「無事四日目を迎えられたようじゃな。実に結構……」

そうでなくては困るといった面持ちに吐き気がしたが、
相手にする事も在るまい。無視をする事に決めて城栄の到着を待つ。
時刻は……五時四十九分。奴の事だ、時間前には来るだろう。

視線を泳がせて周りを見渡してみる。No.2のツバサを始め、No.4とNo.7、それにNo.8、No.9の席が空いていた。
No.4の北村とNo.8夜叉浪は構わないが、ツバサ達は世襲幹部である身、立場を考えて行動して欲しいものだ。
これで機関の要職を担っているというのだからお笑いだ。
尤も、集まりが悪いのはいつもの事か……。

小村禅夜も見当たらないな。
誰に何と言われようとも、幹部であるのだから参加すれば良いのだが……。
最近、城栄は彼にキツく当たり過ぎている面がある。
今度諌めて置くべきだろう。

「うひゃぁー! 遅刻する所だったぁー!」

ツバサが勢い良く部屋へと入ってくる。相変わらず世襲幹部にしては型破りな男だ。
私はそんな彼が他の世襲幹部ほど嫌いではなかった。

――セカンドナンバーたちの視線を一身に受けながらも、平然と席へと着席するツバサを見て、
私は少し笑みを浮かべた……。

【レオーネ:現在地 総合会議室】
【時刻:五時五十分】
146クロノ ◆SoGLnhQ8WY :2009/01/31(土) 00:00:50 0
第十三異能者養成所
13『オマエ』の管理する養成機関、もとい実験場。
クロノはそこに過ごすように命じられ、他の"同類"達と共に本格的に"戦い"を覚える。
…いや、同類だと思っていた他の者は生贄だった。
クロノの異能力に対して他の異能者達は、ほとんどがただの身体強化レベルのもの。
それはクロノにとって戦いにならない相手。クロノの攻撃が効かないレベルの者もいたが、クロノに攻撃を効かせる事はありえない。
そしてクロノの攻撃が"効く"相手は死ぬ。攻撃が効く敵なら確実に殺す。
生きるか死ぬか、それが戦いの基礎。
放っておけば死ぬと言って止めを刺さなければ相手は必ず生き残り復讐してくる。
クロノはそう教わった。実際自分は止めを刺されていない事で生き残っており、いつか『オマエ』を殺す気でいる。
そして『オマエ』が言うには、この手は異能者の血を浴びる事で硬さを増すという。異能者の血液にはいろいろ能力があるのだと興味深そうに話していた。
最初は貫けない身体をしていた敵もその内攻撃が効くようになった。
相手を殺して力を増して…傷つけられて死と隣りあわせだった頃と正反対のその生活がクロノにとって楽しくなっていた。
そして10代半ばでそこを卒業する頃には、その養成所はクロノ1人となっていた。

そしてクロノは完全に『オマエ』の管理下から離れ『虐殺部隊』に配属される。
これまでのように同僚を殺す事は許されないが、その役目はクロノにとって生きがいとなった殺人が主であり、自分の人生の始まりを予感した。
そして運命の時がやってきた。
機関の幹部、藤堂院神の離反である。
彼は反機関組織を結成し、機関に対して何度も妨害工作を仕掛けてきており、虐殺部隊も相手をする事となった。

そこで彼女に出会った。
今まで幾人もの人間の身体を貫いてきたクロノが心を貫かれた。
一目見た時から身体の芯まで熱くなり、近づくにつれて心の奥底までとろけてしまった。
戦場にあって他の者とはまるで違う目で人を見ていた。
その目は命を尊ぶような、それでいてどこか自分に近い感情が込められているような不思議な感じがした。
とても人間とは思えない行動も取り、その一挙一動に見惚れている自分がいた。
だからなのか彼女を殺す事はできなかった。他の仲間達も彼女を仕留められなかったのだから彼女が純粋に強かったのかもしれないが。
彼女の手に掛かるなら構わない。かつて自分が死を恐れたのは、その死に意味を感じなかった事が原因であり、彼女の手に掛かり死ぬ事には意味を見出せた。

それからしばらくして彼女に近づきたい一心で機関を裏切りレジスタンスに入った。いつか再会できる事を願って…

>>136
身体中を駆け巡る痛みにクロノは目が覚めた。
十六夜の異能力は夢に気付こうと痛みが走ろうと解けるものではないが、本人が離れたり意識を失うなどして途切れれば解ける。
だが十六夜はそうしたつもりはないし効果範囲内にいる。
原因は彼の感じた痛みに直結している。
クロノの身体に無数に刺さった槍。
それが十六夜の目覚めさせない異能力と、クロノの透過させる異能力の双方を打ち消していた。

「……」

クロノの身体から流れ出る血がベンチを赤く染め上げる。
首が横に傾け、その朦朧とする視界の中に1人の少女を映す。

「…貴女では……無いのですがネ――」

クロノは口元をにやけたまま硬直し、その目は瞳孔が開ききるとそのまま動かなくなった。

【クロノ:死亡】
147囁く少年 ◆KmVFX58O0o :2009/01/31(土) 11:00:12 0
>>146
それでだ……。せっかくの機会だ。出来るだけ派手にかましたい。思わず笑みが浮かぶ。
まさか全ての元凶となったあの女の異能力を使う事になるとは、「彼」が知ったらどう思うだろう。
「増殖立体」

そう呟くと、俺の周囲をゴルフボール大の小さな箱が一つ、二つ、三つと形成されては地に落ちていく。
色彩も指定できるようで、クロノはもちろん余計な邪魔が入らぬよう女性や掛宮夜にも悟られぬように……。
無色透明な箱をテトリスのように積み上げていく。
さて、コレをどう使うかな……。そうだ、「彼」はクロノにかなり驚かされたようだ。それならそれ相応の報復をせねばな。

――――あれ? クロノの気配が掴めない? 「俺」はその感覚に一瞬戸惑う。まさか、いやまさかな。
いくら掛宮夜の攻撃が強烈で脅威的な物だとしても、あの男に通用するとは――――いかん、混乱している。
自ら確かめる他無い。「俺」は顔を上げて、掛宮夜とクロノの方へと歩き出した。

クロノの寝ていたベンチの周囲に、掛宮夜の異能力であろう、刃が非常に鋭利で2m前後の槍がバラバラと大量に突き刺さっている。
これだけ無茶苦茶しておいて、後処理はどうするつもりだ? と口に出そうになるが留めておく。問題はそのベンチに寝ていた男だ。
クロノに目を移し――――「俺」はその姿に目を丸くした。数本の槍が完全にクロノの体を貫通している。無論異能力ではない。
各部に突き刺さったその槍はベンチ共々貫通しており、青く塗装されていたベンチの色を鮮烈な真紅色に染め上げていた。

掛宮夜を見ると、「俺」と同じくクロノが死んだ事に驚いている様だ。目を見開きクロノの死体を凝視している。
警戒を解くわけではないが、「俺」はクロノに近づき生死を確かめる。首筋や脈を調べる。まだ体温は暖かいが、やはり……。
何故だ? クロノの異能力を無効化する要因が分からない。掛宮夜の槍か? それとも我々に助けを求めたあの女性の所業か?
どちらにしろ「彼」を苦しめたクロノという男は死んだ。それだけは確固たる事実だ。

「……このような男でも、人間の血は流れていたのですね」
皮肉ではない。喫茶店での「彼」との戦いでは「俺」はクロノに全く人間らしき感情を感じなかった。
まるで精密機械を思わせるその手腕と異能力の使い方はクロノが「彼」に自嘲めいた「普通の人間」の域を当に越していたからな。
その男が今、目の前で数本の槍に貫かれて絶命した。全く……「俺」は間の抜けた笑いを浮かべた。

「俺」はクロノに刺さった槍を抜き、その場に投げ捨てる。これだけの質量だ。さぞ痛かった事だろう。
死体を両腕で持ち上げる。実際に抱いてみると分かる。目を背けたくなるほどの裂傷でクロノの体はボロ布の様だ。
ベンチの下に死体を置き、模倣迎撃を発動する。
先ほどは確認のために口に出していたが、別に頭に思い浮かべるだけでも行う事は出来る。
『貫通狂喜』

瞬間、クロノの死体は地面にずぶずぶと沈んでいく。お前自身の技で埋葬してやろう。
「彼」を苦しめ侮蔑した事を赦すつもりはさらさら無いが、手合わせし、「俺」の覚醒を促した難敵の死を認めぬほど俺は愚直じゃない。
クロノの死体を沈めると同時に俺の両腕も地面に静める。そして――――。

「哀れで愚かなる殺人者よ――――母なる大地に――――還れ」
『拡散』
瞬間、クロノの死体は地中に光となって四散する。例え神であろうと、クロノを蘇らせる事はもう出来ない。
そうだ、正直面倒くさいが、掛宮夜の異能力の後処理をせねばな。後方で積み上げた箱を「俺」達の頭上まで移動させる。

「危ないですからその場を動かないでください」
掛宮夜にそう告げながら両腕を高く上げる。そして――――、一気に振り下ろす。
瞬間、散らばった槍を重量を足した箱が粉砕する。『貫通狂喜』を兼ねたその箱は、音も無く静かに地へと落ちていく。
クロノに突き刺さっていた槍を束ねて持ち、地面に落とす。もちろんこの槍も地に――――。

流石に血で染まったベンチまで面倒は見切れない。それに、そろそろ『彼』の体も限界の様だ。
掛宮夜の方を向き、姫野与一のバックを受け渡す。
「さて、当面の危機は去りましたが、貴女は如何しますか?」
【クロノと掛宮夜の槍を処理する】
【残り30秒】
148蠢く少年 ◆KmVFX58O0o :2009/01/31(土) 11:01:14 0
囁くではなく蠢くでしたorzコテ間違いすみません
149七草 柴寄 ◆O93o4cIbWE :2009/01/31(土) 22:22:45 0

ここ最近意識が無くなることが非常に多い、
特にこの数日間の記憶は途切れ途切れだ、
記憶には無いが身体が勝手に動いている、違う場所に居る、
そう、昨日も訳の解らない所で倒れていた。

そこからが不可解な出来事の連続だ、銃を持った黒尽くめの人間に殺されそうになり
男の人に助けられたと思えばその男の人にトランクに詰め込まれた、しかもトランクの中は大量の水が入っていた、
あの時は溺れて死ぬかと思ったな、今考えればありえない出来事だった、
それにその後目が覚めたら目の前の女の子にいきなり、
"機関"だの"シナゴーグ"だの良くわからない単語を並べられた上に
"暗殺部隊"に入らないか?、何て聞かれちゃったし、
後でそれはジョークだって言っていたけど―――

――あながちジョークとも言い難いな、

今冷静になって考えれば、銃を持って武装した人間達がうろついているのだ、
この時点でまずありえる話ではない、機関だの暗殺部隊だの、あれと同じ類で、在るのかも知れない。

そして――アレ――だ、自分の中で湧き上がった衝動、そして自分はあの娘を――

いったい自分は記憶の無い間何をしているんだ?

自分の中にもう一人の自分が居るのだろうか?
意識の無い間はその、もう一人の自分が動いていてそいつが――

だとしたら、自分は既に――ヒトゴロシ――

「―――ッ……」

頭が、痛い、まただ。

頭痛に襲われ、傍の鉄柵に倒れこむ、その音で周囲の人間の視線は彼に集まった。

「……あ…」

人が一杯居る、気が付けば駅の近くに来たみたいだ、
ああ、参ったな、人が多い所は、余り好きじゃないんだ。

彼に向けられた人々の視線はすぐに、興味を失い解かれた、
彼はそのまま、暫らく鉄の格子に身体を預けていた。

「………」

【七草:駅前、フェンスに倒れ掛かっている】
150永瀬翠 ◆GWd4uIuzU6 :2009/01/31(土) 23:55:30 0
>>118>>135-136>>147

「んもぅー、その恋島さんってのはどこにいるのかなぁー……」

翠がNo.6に頼まれて恋島達哉を探し始めて彼此1時間以上は経過している。
彼女は今ベンチに座って空を見上げていた。
空は澄み切っており、所々雲が見える。
本部を文字通り飛び出してから、道行く人々(勿論異能者だ)を捕まえては、
恋島達哉のスナップ写真(勿論盗撮だ)を見せて聞き込みをしたものの、
市街地の広大さに負け、休息を入れる為に公園のベンチで一休みをしていたのだった。

「この街無駄に広すぎっしょー……。

 大体、一人で――」

言いかけた瞬間背筋が寒くなる。それは異能だけが発する波動……。
翠はすぐさま"それ"が何であるか理解した。
かつてレオーネに教わった異能者だけが発する事の出来る特殊な気配、
今回のは翠が体験した事のある波動の中でも特別に強かった。
おかげで翠は驚いた猫のように飛び跳ねて、通行人に奇異の目で見られる嵌めになってしまった。
しかし、彼女の顔は別段驚きの表情をしてはいない。
むしろ、ニコニコとした溢れんばかりの笑みを浮かべていた。
翠を知る者は、その向日葵を思わせる愛くるしい笑みをこう呼ぶのだ。
――"営業スマイル"、と。

「ヤバい、超ヤバい! こんな人がまだ街に残っていたんだぁー!」

今日は朝からツイている。こんなに強い波動を出せる異能者だ、
機関の為の即戦力になってくれる事は確実だろう。

こんなに強い異能者なら色々な敵と戦っているだろうし、その分情報も手に入れているだろう。
まさに一石二鳥である。上司の命令をクリアすると共に、レオーネの依頼もクリアできる。

「わー! 翠ちゃん、朝からラッキーじゃん!」

先程までの疲れを忘れ、早速その発信源に向って全力疾走する。
まるで虫が花の甘い香りに惹かれるように……。

波動を追って一直線に進んで行くと、
住宅地の中にぽつんと取り残されたように薬局が建っていた。
朝だというのに店は開いているように思える。

その場に着いた翠を驚かせたのは、
昨日彼女と大親友の香坂織重を襲撃したあの男がベンチに鎮座していた事だった。
その傍には恋島達哉と見知らぬ女性が二人、男をどうするか相談らしきものをしている。
何とも間抜けな光景だと思いながら、取り敢えず固唾を呑んで見守る翠。

>「アハハ…アハハハ…アハハハハハハハ!良いわ!これが肉体!自分の体ァ!
>ちょっとこの手足はアレだけど…髪は黒くなって、毛がフサフサで気持ち良いわぁ…
>それにこの子…メタトロンは少ないけど、入る器が果てしなく大きい…うーん…もう最高よ!」

突然、弓を持っていた女が笑い声を上げたかと思うと、
男の頭上に槍らしきものを複数生成し始めたではないか。

しかし、そんな物でどうなるものか……。
翠には解る、あの男には物理的な攻撃は一切意味を成さない。

(あれれ? それは無駄だよぉー。だってすり抜けちゃうんだから……)
151永瀬翠 ◆GWd4uIuzU6 :2009/01/31(土) 23:58:37 0
>>150

だが、そんな翠の考えは杞憂であったようだ。
男は呆気無くベンチごと串刺しになり、下には血の池が出来始めている。

(おっ! スッゴーイ! やるじゃん!)

女の攻撃によって絶命した男、その死体は無かったかのように地面へと"沈んで"いく。
まるで土葬である。
いとも簡単に倒れた男を目の当たりにして、
翠は何か裏があるのではないかと警戒したが、一向に男が這い出てくる気配は無い。
どのような手品を使ったかは知らないが、何はともあれ間違いなくあの男は死んだのである。

(本当に今日はツイてるなぁー!
 強い異能者に恋島さんがいっぺんに見つかるなんてぇー)

日頃の行いが良いお陰だと翠は思うが、
もしかりにこの場に香坂が居たならば、その考えは否定されていたであろう……。

「あのぅ〜……。お取り込み中すいませーん。
 恋島…達哉さん、ですよねぇー?」

恋島に近寄ると一応確認を取る。眼鏡は掛けていないし、髪も短くなっている。
この男は恋島と人相が一緒だっただけかもしれない。
因みに、翠は未だに営業スマイルを顔に貼り付けたままだ。

「あ、先日はどうもお世話になりましたぁー。
 メガネ……じゃなかった、恋島さんに私の知り合いの人から宅配便でぇーす」

恋島に丁寧にお辞儀をすると、
翠はじゃじゃーんと言って懐から恋島の携帯電話と
レオーネのメッセージが録音されたICレコーダーを取り出すと、
一方的に恋島に手渡した。

「今日は戦いに来たんじゃありませんよぉー。
 こう見えても翠は自制できる子です、えっへん!」

【永瀬翠:薬局前】
【レオーネの言葉に関しては>>105-106をご参照下さい】
152クロノ ◆SoGLnhQ8WY :2009/02/01(日) 00:06:47 0
>>133
そこには亡者の魂の集っていた。だがここは天国でも地獄でもない。
肉体が滅びてもやはり死後の世界から自分は拒否される存在だった。

自分の動きを支配する過去の『オマエ』
戦場の中、熱を操り周りの人間を溶かし、さらにそれを食べ物のように口に含む含む女性…十数年前のアルト
箱を作り出す少女…永瀬翠
自分の攻撃を予測した動きをする恋島達哉
機関に対抗するレジスタンスの存在
闇に紛れ相手からあらゆる情報を得られる闇の解析者
空間を切り裂き次元を越えて移動できる能力を持つ廻間幻十
幻十と共にナガツカインテリジェンスビルに来た池上燐介、廻間統時、戦ヶ場原天、神野屡霞
敵対する中にいたレオーネ、曾壁、姫野与一、彼女を助けた薄闇を使う高橋、膨張した後藤
虐殺部隊の格好をした者達、その中で強力な光を発して周囲を吹き飛ばした者の存在
それらほとんどの自分に向けられた攻撃を透過する様相
葛野美弥子、そして最期に映る自分の能力を無効化して貫いた槍とぼやける視界の中の姫野与一

眠るまでの間クロノの目に映った出来事、そして走馬灯のごとく目覚めないように見せられ続けた過去の記憶が印象強く残っており、
蠢く少年によって光にされたその身に宿っていた魂は、光を操り亡霊をつかさどる『明滅(スペクター)』に情報を与え、自身もその一部となった。

【クロノ:死後、宗方の夢の中に様々な記憶の情報を映して亡霊の中に加わる】
153廻間 統時 ◆7VdkilIYF. :2009/02/01(日) 00:21:30 0
>>149
俺とリースが行った仲間に関して情報収集は、大して実を結ばなかった。
あの氷使いの男と戦場ヶ原と屡霞とアニキ。
氷使いの男とアニキは……まあ目立ちはするが、あまり関わりたくないだろう。
だから、覚えてる人間も少なかった。
戦場ヶ原と屡霞は、着物姿の人相の悪い男とモデルのような美女のコンビだ。
一度見かけたら、そのイメージのミスマッチさで覚えてしまうだろう。
まあ、戦場ヶ原と屡霞のコンビは一応覚えてる人は多かったのだ。
しかし、それは俺が求めてる情報ではなかった。
「最近」見た、というだけで「今さっき」見たという情報ではないのだ。
俺が元に戻されてからの情報が欲しいのだから、最近じゃあ意味は無い。

「リース、収穫は?」
「まったく」

そう言ってリースは肩を竦める。
どうやらリースの方も駄目だったようだ。

「それにしてもよ〜、腹が減ったな。
 俺、朝飯食って無いんだね……」
「そういや俺も食ってないな……
 ラーメンでも食うか?」
「そうすっか」

俺とリースはラーメンのチェーン店に入る。
財布の中身は十分に入っているから、金欠の心配は無いだろう。

急いでるわけでもなかったが、それなりに早く食べ終わった。
ラーメンを食べ終えると、代金を払って店から出る。

「ん?」

何気なく周りを見回していると、異変を見つけた。
どうやら人が倒れているようだが、大丈夫なのか……?
俺とリースは急いで駆け寄る。
そして、とりあえず肩を揺すって意識があるかどうか確かめた。

「おいっ、大丈夫か?」

【廻間:七草に近寄り、意識があるかどうか確かめる】
154卦宮夜 ◆LuqsQs0P4w :2009/02/01(日) 00:24:13 0
>>146-147,>>150-151

男目掛けて落下していった槍は囲むように落ち、その数本が"命中"した。
確かにある程度の異能力は無効化できるけど、アイツのものまで無効化できるほど優秀ではないはず…
衣服に無残な姿になった男の血が付着していた。確かに槍は命中している。
薬局の方から"恋島だった者"もやって来た。そういえば彼も既に別人だったわねぇ…

>「…貴女では……無いのですがネ――」
男は辛うじて原型を留めている口で喋った。そして、この言葉を最後に口を開くことも無く―――絶命した。

「…あれ……?ホントに死んじゃったの…?これだけじゃないでしょう?ズブズブと刺さってもムクリと起き上がらないのかしら?
アハ…アハハハハハハハハハハハハ!チッ、つまらないわねぇ…」

気分は悪いわ、頭は痛いわでホンットに不愉快だわ…与一の意志も戻りかけているようだしねぇ…
突然"恋島だった者"が男の目の前まで動き――私の槍を全て引き抜き、両手で抱え、地面に寝かせた。

>「……このような男でも、人間の血は流れていたのですね」

そして、抱えられていた男の体が恋島の腕ごと地面へと沈んでいく。
これは……コイツの異能力?たった今、絶命した男の能力と同じ能力。
似た異能力を使うことはそう珍しいことでもないが―――

「哀れで愚かなる殺人者よ――――母なる大地に――――還れ」
地面の中で光が四散した。これは間違いなく「貫通」の能力ではない。「爆破」の類かしら?恋島に巣食っているコイツは何者よ?
更に、今まで気付かなかったが頭上には「箱」まで出現している。

>「危ないですからその場を動かないでください」
やはりコイツのものか。「箱」は落下し、私の槍を粉砕して、破片ごと地面に溶け込んだ。
「貫通」「爆破」そして「箱」 二つの能力を手にすることはよくあることだけど…私でも二つよ?
それに私の場合は一つが補助だし…三つも並行して使うなんてなんて聞いたことが無いわ…

>「さて、当面の危機は去りましたが、貴女は如何しますか?」
作業を終えた"恋島だった者"からバッグを受け取る。弓と手袋は入って…ないか。後で拾うの面倒臭いわねぇ…

「そうね…如何すると言っても与一の目的はアンタを守りたいって事だったし…
 私は…実際に行動するにしても手がかりが無さすぎるのよね…うーん…適当に街を歩いてようかしら…」

私は一つの組織の人間を殺してしまったことになる。それにあの男の実力…多分組織でも上位の人間だわ
追っ手やらが現れるのは…時間の問題かしらねぇ…その前にこちらの戦力はできるだけ多く把握したいわ

「それより…そろそろ貴方の事を教えてくれないかしら?魔法使いさ……あん?」

タイミングを測っていたかのように物陰から人が現れた。女か…与一と同じくらいかしら?
どうでもいいけど、妙にわざとらしい笑顔ねぇ…それに、最近どこかで見た気がするわ…

>「あのぅ〜……。お取り込み中すいませーん。恋島…達哉さん、ですよねぇー?」
どうやら恋島にようがあるようだ。だがコイツは既に恋島ではない。どう対処するつもり?
女は一方的に話を続けた。

>「あ、先日はどうもお世話になりましたぁー。メガネ……じゃなかった、恋島さんに私の知り合いの人から宅配便でぇーす」
ポケットから取り出したのは…携帯電話と…録音機?この時代に珍しいわねぇ…

「今日は戦いに来たんじゃありませんよぉー。こう見えても翠は自制できる子です、えっへん!」
…思い出したわコイツ。昨日の夜、与一が刺されるのを見ていた女の一人だわ。
ならコイツも機関の人間かしら。…あらあら…面倒臭いことになりそうねぇ…

【クロノ殺害 与一の意志が徐々に戻りつつある】
【蠢く少年に質問 永瀬とのやり取りを静観】
155戦場ヶ原&屡霞 ◆u5ul7E0APg :2009/02/01(日) 02:02:23 0
>>137
「剣の道を心得る者なら礼儀をわきまえるものだ。
 人に名を聞く時は自分から名乗るものと教わらなかったかね?」
老人は屡霞の殺気などものともしない態度で落ち着いて答えた。
しかしそれに屡霞は答えない。
老人に対す殺気が彼女を忘我させたのか、はたまた彼の闘気に気圧されたのか。
老人はそんな彼女のようすを見て溜息をつくと、軽く右腕を上げた。
「!?」
刹那、屡霞は自身の異変に気がついた。
身体がふわりと浮きあがるような浮遊感に見舞われ、彼女は大きく体勢を崩したのだ。
老人の異能力か―――…?それにしては攻撃とも呼べないずいぶんとちゃちな攻撃だ。
屡霞がそれに気を取られている間に、老人は浮上してゆく。
「貴様ああああああ!!!!」
老人の小馬鹿にした態度が彼女の逆鱗に触れた。崩れた態勢のまま彼女は禍ノ紅を抜き放ち、老人へと襲いかかった。
しかしその刀身が彼に触れることはなく、老人は虚空の彼方へとその姿を消していった。
「逃がし…たか…!」
虚しく空を切った刃に目を向け、彼女は悔しそうに毒づいた。
一体彼は何者なのか?ただの異能者ではないことだけは確かなようだ。

「貴様も女だったみてぇだな。」

屡霞の背後に戦場ヶ原の声がかかる。
なんのことかわからず、屡霞はとぼけた顔で彼に向き直る。
「…なんのことだ?」
「フンドシでも穿いてんのかと思ってたぜ。貴様は。」
戦場ヶ原が池上たちの戦いから視線をはずさずに、さらっととんでもないことを言い出す。
屡霞はしばらくほおけていたが、事態がのみ込めた途端、顔を真っ赤にした。

「みみ・…み…見たな・・・?」

さきほどの老人の能力で彼女のスカートはめくれあがり、戦場ヶ原からその中が丸見えになっていたのだ。
「見たくて見たわけじゃねぇよ。」
さほど興味のなさそうな戦場ヶ原の態度がさらに彼女の羞恥心と怒りを倍増させる。
「…斬る!」
恥ずかしさに耐えきれなくなった屡霞が顔を真っ赤に紅潮させて、戦場ヶ原に切りかかろうとしたその時、戦場ヶ原の視線の先から放たれていた殺気が、急速に収束していくのを感じた。

「…勝負、あったか。」

戦場ヶ原が静かに唸るのを見て、彼女もまた池上に視線を移す。
その先には、息絶えて地に伏す衣田と、手傷を負いながらも無感動にこちらへ歩み寄る池上の姿があった。
戦場ヶ原は立ち上がって彼を迎えた。

「因縁の敵との勝負はついたかよ。色男。」

戦場ヶ原が嫌味じみた口調で話しかけるも、池上はそんなものじゃないとでも言いたげなそぶりで彼の前を素通りした。
その様子に戦場ヶ原は「フン」とだけ鼻を鳴らし、池上と同じ方向へ歩きだす。

「ただケンカをふっかけられたから買ってるだけってことはねェだろう。貴様にもなにか機関との明確な因縁がある…、違うか?」

池上と並んで歩きながら話しかけるが、池上はやはり答えない。
しびれをきらした戦場ヶ原は、彼の前に立ちふさがって、その切れ長の目で池上の暗い瞳を睨みつけた。

「池上燐介…、貴様はなぜ機関と戦っている?」

眼の前で繰り広げられた死闘を目の当たりにして、戦場ヶ原はその男への関心を増大させていた。
【戦場ヶ原:池上に随行。池上に興味を抱く。】
156宗方零 ◆idMa0miDD. :2009/02/01(日) 05:15:10 0
悪夢は速やかに訪れた。
また何かを見せようと言うのか。

闇の向こうから、誰かが一人来る。
集合意識ではなく単一の意識、彼≠ヘ私にまっすぐ向かってきた。
奇妙な男だった。
年の頃は30代、パリッとしたタキシードを身に纏った金髪の紳士。
まるでサイレントムービーか、ゴシックホラーの登場人物だ。
彼は優雅な物腰で会釈をすると、彼の背後にスクリーンが開く。
彼の物語が始まった。
彼は機関で『オマエ』という研究者のクローンとして生まれた。
父親に支配され、同朋を殺し、機関員として敵を殺した。
彼を愛した者は居なかったが、彼はひとりの女性を愛した。
――彼女の名は葛野美弥子 死神のようなメイド
――彼の名はクロノ 全世界指名手配の殺人鬼
彼は機関を裏切ってレジスタンスへと走り、そしてまた殺した。
そして弐名市での闘争。彼が見た全ての能力者たち。
葛野美弥子との邂逅。
そして、彼は無惨にもベンチの上で無数の槍に貫かれ、生き絶える。
「…貴女では……無いのですがネ――」
―fin―
そこで映画は終わった。
彼は虚空へと手を伸ばす。
右手で存在しないダンスパートナーの背中を抱き、左手でその手を優しく握る。
優しく、優雅にステップを踏む。
虚空の中で、彼は存在しない想い人と踊っていた。さも楽しそうに。
マイノリティダンス――どこまでも果てしない孤独の舞い。

そこで彼は足を止め、微笑んでみせた。
底の見えない闇のような笑顔、私はそれから目をそらせなかった。
クロノはそこで優雅に会釈をすると、後ろを向いて闇の中へと歩き去る。
――私はお涙頂戴の映画は嫌いだ。
――私は殺人嗜好者もスプラッタ映画も嫌いだ
――だが私は、彼を捨て置くことなどできない。

「彼女に伝えるよ、あなたが彼女を愛していたことを。
殺人鬼からの愛を伝えるなんて事は探偵にしかできない」
彼は振り返らなかった。
彼は私の一部となった。そして多くの死が私の一部で、ほぼ全体を成していた。
私は今気づいた。多くの者が私と繋がっていたのだ。

私は闇の中へと手を伸ばす。
――光、あれ。
157宗方零 ◆idMa0miDD. :2009/02/01(日) 05:17:57 0
悪夢は速やかに訪れた。
また性懲りもなく闇か。また何かを見せようと言うのか。
闇の向こうから、誰かが来る。
集合意識ではなく単一の意識、彼≠ヘ私にまっすぐ向かってきた。
奇妙な男だった。
年の頃は30代、パリッとしたタキシードを身に纏った金髪の紳士。
まるでサイレントムービーか、ゴシックホラーの登場人物だ。
彼は優雅な物腰で会釈をすると、彼の背後にスクリーンが開くと、映画が始まった。
彼の物語が。
彼は機関で『オマエ』という研究者のクローンとして生まれた。
父親に支配され、同朋を殺し、機関員として敵を殺した。
彼を愛した者は居なかったが、彼はひとりの女性を愛した。
――彼女の名は葛野美弥子 死神のようなメイド
――彼の名はクロノ 全世界指名手配の殺人鬼
彼は機関を裏切ってレジスタンスへと走り、そしてまた殺した。
そして弐名市での闘争。彼が見た全ての能力者たち。
葛野美弥子との邂逅。
そして、彼は無惨にもベンチの上で無数の槍に貫かれ、生き絶える。
「…貴女では……無いのですがネ――」
―fin―
そこで映画は終わった。
彼は虚空へと手を伸ばす。
右手で存在しないダンスパートナーの背中を抱き、左手でその手を優しく握る。
優しく、優雅にステップを踏む。
虚空の中で、彼は存在しない想い人と踊っていた。さも楽しそうに。
マイノリティダンス――どこまでも果てしない孤独の舞い。

そこで彼は足を止め、微笑んでみせた。
底の見えない闇のような笑顔、私はそれから目をそらせなかった。
クロノはそこで優雅に会釈をすると、後ろを向いて闇の中へと歩き去る。
――私はお涙頂戴の映画は嫌いだ。
――私は殺人嗜好者もスプラッタ映画も嫌いだ
――だが私は、彼を捨て置くことなどできない。

「彼女に伝えるよ、あなたが彼女を愛していたことを。
殺人鬼からの愛を伝えるなんて事は探偵にしかできない」
彼は振り返らなかった。
158>>157の続き:2009/02/01(日) 05:23:09 0
闇を祓った。

突然闇が晴れ、そこは真っ白な虚無の空間となる。
宇宙空間から闇を取り除けばこうなるだろうか、そこは光に満ちていた。
そこに多くの者が居た。彼ら一人一人の顔が見えた。
男、女、子供、老人、・・・
それぞれのざわめき、戸惑い、恐怖、歓喜、様々な感情が入り交じっていた。

私は彼らに告げる。
『礼を言わせて貰おう、あなた方のお陰で私は色々なことを理解できた』
『私はあくまで私だ――この体も渡す気はない』
『だが聞いてくれ、機関を倒すためにはあなた方が必要だ――私に力を貸してくれ――』

ざわめき、だがそれはすぐに静まった。
そこで全ての者が私を取り囲み、告げる。
―――宗方零/私/我々/スペクター 死霊の王、光の簒奪者、現世における代言者、
――我らの王となるか?我らの怨念を、生を、記憶を、全て受け入れる覚悟があるか?

『来い』

強烈な光の洪水が、私を飲み込んだ。
苦痛、悲嘆、孤独、この世のありとあらゆる悲惨さの全てが押し寄せ、私を飲み込んでいった。
【宗方零 クロノの記憶を得る スペクターとの合一を行う】
159宗方零 ◆idMa0miDD. :2009/02/01(日) 05:30:55 0
訂正
>>156>>158という順番
>>157は誤記載です
160蠢く少年 ◆KmVFX58O0o :2009/02/01(日) 11:30:40 0
>>150-151>>154
掛宮夜からすれば平然と立っている様に見えるだろうが――――「彼」の体は殆ど限界に近い。
両腕が石のように固くなり動かない。無理をしすぎたな……。「俺」は内心舌打ちをする。
もしも掛宮夜が攻撃を仕掛けてきたら非常に困る。再び「陰翳幻覚」を発動。

悟られぬよう、足元で円状に広げていく。30秒経過と同時に、霧を纏いこの場から離脱する。
掛宮夜は姫野与一のバックを受け取ると、「俺」に顔を向けた。

>「そうね…如何すると言っても与一の目的はアンタを守りたいって事だったし…
  私は…実際に行動するにしても手がかりが無さすぎるのよね…うーん…適当に街を歩いてようかしら…」
この女は姫野与一と記憶を共有していないのか? 否、もしくは姫野与一が情報を持ち得ていないのか。
表情をじっと見ていると本当に分からないようだ。珍しい事もあるものだ。所詮「俺」には関係ないが。
残り20秒……もう時間切れだな。

>「それより…そろそろ貴方の事を教えてくれないかしら?魔法使いさ……あん?」
>「あのぅ〜……。お取り込み中すいませーん。
  恋島…達哉さん、ですよねぇー?」
掛宮夜が「俺」に自己紹介を頼みかけた、その時。「俺」は別の気配を感じ、背後を振り向いた。
学生服を思わせる服を着た、年相応の少女――――凶器を秘めた幼い瞳が俺と掛宮夜を映す。
……貴様、何しに来た?「彼」をこの世界に巻き込んだ女――――永瀬翠が立っていた。残り10秒。

そう言えば一つだけ真下に下ろしていない箱があったな。少しでも妙な動きを見せれば躊躇無く……
が、「俺」の警戒とは裏腹に何故か永瀬は「俺」にお辞儀をし、こう言った。

>「あ、先日はどうもお世話になりましたぁー。メガネ……じゃなかった
  恋島さんに私の知り合いの人から宅配便でぇーす」
永瀬は言い終わると共に上着のポケットから何かを取り出した。……「彼」の携帯電話だ。
確かクロノと戦う為に「彼」が喫茶店から飛び出した際に、置き忘れた携帯か。
あの時店にいたのはマスターとレオーネ……と、言うことはだ。
つまり永瀬はレオーネのメッセンジャーとして我々の前に現れたという訳かな?

少なくとも我々に敵意は無いわけだ。「俺」は永瀬の頭上に眼を移し、箱を消滅させた。
しかしテンションの高い娘だ。レオーネは永瀬翠の扱いには手を焼くだろうな。
っと、後5秒か……そろそろ霧が「俺」の全身を覆えるほどに広がったようだ。

……ん? 永瀬は「彼」の携帯と共にコンパクトなICレコーダーを手渡してきた。
レオーネから「彼」にメッセージか? 穏やかな内容ではないだろうな。
今後の指針を決めるには最適だが、「彼」がどう動くか……出来れば戦って欲しくは無いが無理だろうな

>「今日は戦いに来たんじゃありませんよぉー
  こう見えても翠は自制できる子です、えっへん!」
永瀬は「俺」にレオーネから託された品物を渡すと誇らしげに胸を張った。
この若さは危うい。自ら自制心を口に出す者ほど、緊急時には脆いものだ。
レオーネはそこも見据えて教育してるのか? まぁ……「俺」には関係ないがな。

タイムアップだ。俺は足元に溜めていた霧を一気に全身へと昇らせる。その前に……。
「先ほどの質問ですが、答える訳にはいきません。少なくとも、貴女にはね」
掛宮夜には伝えるべき事を告げ、永瀬の方を向く。
「それと永瀬翠。一つだけ言っておく。敵を見誤らない事だ。自分の為にもな」

瞬間、「俺」は全身を霧で纏い、別の場所へとワープする。
……しまった。余力を使い果たしたせいで場所を指定できない。すまない、達哉――――。
161恋島達哉 ◆KmVFX58O0o :2009/02/01(日) 11:32:14 0
……ん? ここは……どこだ? あれ? 俺は確か……。
あ! そうだ、確かクロノとその手下を倒す為に薬局を飛び出したんだっけ。で、姫野さんを守る為に……。
俺は武器となる孫の手……孫の手、孫の手が無い!? 右往左往して探すがどこにも……なんか、背中が痛い。
俺は右腕を伸ばして背中を探ってみた。妙な感触がする。すーっと首筋まで伸びてるけど……。

何で孫の手が背中に? てかバックも一緒だ! いや待て、落ち着け、落ち着くんだ恋島達哉。
取り合えず状況判断だ。ええっと、俺は確か薬局に着いてたんだ。それで姫野さんを店内に入れた。
そしたらクロノと、クロノの手下が現れた。すると姫野さんが倒れて、俺は慌てて孫の手を持って外に――――。

で……だ。店内を飛び出した事は確かなんだが……俺の目の前に広がってる光景はどこなんだ?
偉く雑多な場所だな……。鉄筋を剥き出しにした建設中のビルやら、シャッターが閉まったスナックやらが立ち並んでいる。
俺が東京で住んでた場所みたいだ。こう……じめじめしてて空気が悪いって言うかさ……。
何かさっきから凄く大事な事を忘れてる気がするけど、何だっけなー。思い出せな――――。

『達哉、無事か?』
み……耳鳴りっ! お前、お前あの時……。
『……すまない。君を救う為には仕方なかったんだ』
俺の事は良い! 姫野……姫野さんはどうなったんだ? まさか、まさか……。

『彼女の事なら心配ない。「機関」の仲間とやらが助けに来てね。彼女を連れて行ったよ。
 達哉、君は彼女のついでに助けられたんだ。それで適当な場所に捨てられた。異能力を持たない一般人って事でね』
……なぁ、耳鳴り。それがマジなら姫野さんは……本当に「機関」の人間だったのかな。
俺……分かんなくなっちゃったよ。「機関」の連中って皆、悪い奴だと思ってたけど彼女は……。上手く言えないけど違うんだ。
甘いのかな。どうしても戦わないといけないのかな。答えが出せないよ……。

『達哉……。今は生き残る事だけを考えるんだ。だから』
「分かってるよ!」
ハッとする。気づけば俺は耳鳴りに大声を上げていた。こんな事、言いたくなかったのに。
自分自身の情けなさに呆れを通り越して怒りも通り越して……どうにもならなくなってる。目元を掌で隠す。
じっと湿っていた。クソッ、何で泣いてんだよ、俺。今はただ歩くしかない。前を。
162恋島達哉 ◆KmVFX58O0o :2009/02/01(日) 11:33:16 0
そういや腹が減ったな……。久々に動きまくったせいかフランスパンだけでは物足りないみたいだ。
……突然怒鳴ってごめんな、耳鳴り。どこかコンビニとか近くに無いか? 腹ペコなんだ。
『いや、俺も悪かったんだ。すまない。コンビニエンスストアか……。この先500mを左に行った曲がり角にあるぞ』
おう、サンキュー。にしてもどうもさっきから腕が痛いんだよなー。筋肉痛みたいな。それに首も何かに噛まれたみたいだ。ちくちくする。

耳鳴りの助言の通り歩いていくと、ポツンとどこか淋しい雰囲気のコンビニが待ち構えていた。
中に入ると、一人のくたびれた店員のおっさんがレジでうつらうつらとしていた。大丈夫かぁ? この店……。
バックから財布を取り出し、陳列棚にある焼きそばパンと牛乳パックを手に取りレジに向かう。
俺に気づいたのかおっさんは寝ぼけ眼を開くと、億劫そうにレジを打ち始めた。もっとテキパキ打ってくれ……。

「……ここらで見ない顔だね、あんた。どこから来たの?」
おっさんが俺の顔をちらちら見ながらそう呟いた。客にあんたってアンタ……まぁ、今の時間帯だと客がいないからなー。
暇だし話しかけてきたのか。事務的な会話しかコンビニの定員と話した事が無いから、話しかけてくる店員は初めてだ。
「えっと、東京から来たんですよ。ちょっとした仕事で……」

おっさんはふぅんと鼻を鳴らして、俺に商品の入ったレジ袋を渡した。
「いやぁね、ココにはいつも同じ客が来るからさ。あんたもそうだと思ったのよ」
コンビニに固定客なんて珍……しくもないか。しかしどこからの客なんだろう。かなり興味がある、
質問しようとした矢先、おっさんはどこかの方向を指差した。俺は無言でその指の先を追う。

「あそこの探偵事務所からさ、依頼主かなぁ? みたいなのが出てくるんだよな。
 それも老若男女色んなのが。不思議な事にその依頼主がいつもココで買い物してくれるんだよ。
 どんな奴かは知らないが、そこの探偵さんには感謝様様ってな」

おっさんが指を指した先には、かなり昔から建っていたんだろう、外壁が茶色く染まり、蔦が絡まったアパート? の様な建物が見えた。
あんな所に探偵事務所が? どうにも疑い深い。おっさん、寝ぼけてるんじゃないか? 若干からかう口調で聞いてみる。
「本当ですか〜? なんて名前の事務所なんですか?」

おっさんは寝ているか寝ていないか分からない動作で首をひねると、小さく顔を上げた。
「ええっとなぁ……確か、宗方探偵事務所って言ったかなぁ。小耳に挟んだ程度だから詳しくは知らないんだ」

御代を払ってコンビニを後にする。探偵事務所……か。……賭けてみる価値はあるかもしれない。
【現在地:宗方の探偵事務所近く】
【模倣迎撃を使用し、公園から場所を移動。肉体の主導権が恋島達哉に戻る】
【神重の放った追跡蝙蝠に噛まれる】
163卦宮夜 ◆LuqsQs0P4w :2009/02/01(日) 14:51:00 0
>>161

コイツは…何かに焦っているのか…?恋島の目の前に立っている女の頭上には箱が置いてあり――
そして消した。直後、恋島の足元から黒い霧が全身を覆うように昇ってきた。
気付くのが遅かったわ…コイツ、ここから逃げる気ね。

>「先ほどの質問ですが、答える訳にはいきません。少なくとも、貴女にはね」

コイツ――最初から私を警戒していたと。それもそうよねぇ。確かにいきなり出てきたものね…
まぁ、そこまでコイツの事を知る必要も無いだろう。こんな大きな街なんだから、もう出会うこともないわね…
皮肉を込めて、舌打ちを返してやった。と同時に霧が恋島の体を覆い、消えた。どうやら本当に魔法使いみたいだわ…

残されたのは仕事を終えた学生風な女と行く当てのない私。遠くにはまだ、助けを求めた女までいるわ。
そういえばコイツ、与一の顔を見てるのよねぇ…ここで騒ぎを起こすのは正直面倒臭いわ…

「まったく…つまらないわね…じゃ、私も行くわ。ここには用済みだし。じゃあねぇ〜」

女に手を振って、公園を出た。女は困ったような怒ったような曖昧な表情を作っている。
ま、朝から騒ぎを起こすほどこの女は頭が悪くないだろう。問題はこっちだ。薬局の前にずっと立っている女。

「あら…アンタまだ居たの…これが、運命ってやつかしらねぇ…あんた名前は?」

「十六夜……美月。能力は黒の物語。夢を縛る。」
「ふぅん…アンタにお似合いの結構いい名前じゃない。能力は金縛りの類かしら?」
美月と名乗った女は少々照れてるように見える。まったく…子供みたいねぇ…与一を暗くしたらこうなるのかしら?

「いいわ。アンタ、私と一緒に来なさい。どうせここから動かないだろうしね。」
コクンと頷き、私の後ろを付いて来る。その服装で街を歩くのかしら…
そういえば、私の服も血まみれだわ…仕方が無いわねぇ…着替えていくことにしよう
手袋と弓を拾って、無人となった薬局の中へと入った。中は誰もいなく、無防備。中の物盗み放題だわ。

「えーと…服、服と…あらら…男物ばっかねぇ…」
タンスやクローゼットをくまなく探しても、男物ばっかり。着れるのは…黒いスーツがあった。それを拝借し、美月に渡した。
私は代えのセーターが何着か入っていったのでそれに着替え、外へ出た。
どうでもいいことだけどさっきから"何か"に見られているような…?

「さて…どこに行きましょうかねぇ…」

【国崎薬局前 7:40分】
【美月と行動開始】
164七草 柴寄 ◆O93o4cIbWE :2009/02/01(日) 21:14:11 0
>>153

「おいっ、大丈夫か?」

男の声、そして突然肩を揺すられる、そんな事されなくても、大丈夫だよ。
そう思いつつ男の方を見る、自分の肩を掴んでいたのは、高校生位の男の子、その後ろには金色の髪の男の子が居る。
目の前の男の子は、、服の上からでも解る、良い体格をしている、恐らく武道をやっている、それもかなりの物を、それに若いなりにも経験を積んだような顔つきだ。
後ろの子は、外国人か、金色の髪が良く似合う綺麗な顔付きをしている、
それに、この子も恐らく何かスポーツの類をやっているな。

話し掛けて来た二人を見るなりふとそんな事を思った、
そしてこの子達が自分に話し掛けてくる理由は何だろう?お金でもたかろうと言う魂胆か?
参ったな、、お金なんて持ってないしこれから行かなければならない所があるのに、、

「うん、大丈夫だよ、ありがとう…」

そう言って愛想笑いをする、しかし彼の手は肩を掴んだままだ。

「…その手、離してくれないかな?」

今はもう、騒ぎを起こすのも人と関わるのも避けたい、何にせよ、自分と関わっても、ろくな事は無いよ。

それに、この子からは何か嫌な臭いがする。

【七草:手を離して欲しい】
165池上 燐介 ◆qqu0tZFsYU :2009/02/01(日) 21:59:43 0
>>155
衣田との闘いを見て、戦場ヶ原は俺の過去に興味でも持ったのか、機関との因縁について問い始めた。
俺はそれについて答えるつもりがなかった為に初めは無言を貫いていたが、
そんな俺の反応を見て彼は更に興味を持ってしまったのか、ついには俺の行く手を阻むように
立ち塞がってしまうのだった。──俺はやむなく足を止めると、無表情のままに、
それでも「やれやれ」といわんばかりに一つ溜息をつき、静かに口を開いた。

「……因縁か。……さぁな。
もしかしたら過去に何らかの形で奴らと関わったことがあるのかもしれんが、
それが事実であるのかどうかは今の俺には知る術もないことだ……」

言いながら、俺は無意識の内に右手で左肩に受けた火傷に手を当てようとする。
その時、手は左の胸ポケットに仕舞われた硬い何かの感触を受けた。
一体何かと手でポケットをまさぐると、そこから出てきたのはタバコの箱とライターであった。
これはクラコフ戦で得た戦利品──。俺は何を思ったか箱からタバコを一本取り出すと、
ライターを点けタバコに火を点し、そして吸い始めた。

「……そう、今更知る術も……な」

俺はどこか意味深な台詞を煙と共に吐き、静かに目を瞑った。
──暗闇の世界の中では、何故か五年前の友の最期の姿が映像として再生されていた。
『"奴ら"に気をつけろよ……"奴ら"は……何かを企んでやがる……』

──俺は既に友の一件は終わったことだと、思わず頭から振り払うようにして目を開けた。
眼前では、相変わらず戦場ヶ原がその鋭い眼で睨みつけていたが、
俺は特に気にする素振りも見せず、慣れないタバコの煙に少々むせながらも、再び口を開いた。
           ヤツラ
「まぁ、俺にとって機関が危険な存在であるということに何の変わりもない。
どの道、奴らはこのゲームの参加者を一人残らず殺すつもりだろうからな。
ならば殺られる前に殺る以外に道は無い──俺はそう考えたまでのことだ」

闘う理由についてそう話すと、俺は加えていたタバコを砂浜の上に落として火を消し、
今度は視線を女剣士へと向けた。

「それより、お前は辱めを受けたことに腹を立てていたが、ダメージがそれだけで済んだのなら
むしろ喜ぶべきだったかもしれんぞ。先程の妙な老人……あの男は間違いなく機関の異能者だ。
それも恐らく、ファーストナンバーと呼ばれる機関の最高幹部の一人──」
166池上 燐介 ◆qqu0tZFsYU :2009/02/01(日) 22:04:54 0
──女剣士は老人の正体に気がついていなかったのか、俺の言葉を聞いて何か思うことが
あるようだったが、俺はそんな彼女にはおかまいなしに今後の行動について話し始めた。

「それはそうと、まずは廻間達と合流しておくか。奴らの連絡先も、奴らがどの場所にいるのかも分からんが、
向こうも俺達の居場所を把握していないなら、いずれ我々五人の出発点に手掛かりを求めに行くだろう。
つまり、国崎薬局にな。──従って俺達はまず薬局に向かうことにするが、異論はないな?」

そう言うと、俺は二人の意見も聞かずして、町の中心部へと向かって歩き出した。
──歩きながら、携帯を取り出して画面を見てみると、そこには『着信一件』の文字。
登録されていない番号からの着信だったが、着信時間が昨晩のものであった為、
これは籐堂院からのものであることは直ぐに分かった。
俺は昨晩に薬局で起きた出来事を報告すべく、すぐさま発信のボタンを押した。
しかし、朝もまだ早いせいか、彼女は電話には一向に出ない。
するとその内、鳴り続けたコール音は留守禄の音声へと変わっていった。
だが、用件は報告のみ。留守禄のメッセージでも良いだろうと判断した俺は、
「ピー」というお決まりの発信音の後に言葉を吹き込み始めた。

「──池上だ。昨晩薬局で収穫があったんでな、ちと遅れちまったが結果だけ報告しておこう。
こっちは何人かの協力者を得て、そして機関の本拠地を掴んだ。
本拠地は『ナガツカインテリジェンスビル』──。今すぐにでも攻め込みたいが、協力者の何人かと
はぐれてしまったのでな。お前を含めてそいつらと合流する方が先となるだろう。
ただ、ビル前に直接集まるわけにもいかんからな、とりあえず合流地点は国崎薬局にしておく。
……師のこともあって考えることは多いだろうが、闘う気を失っていないなら来るがいい。以上」

通話終了ボタンを押し、再び携帯を仕舞う。
──時間は午前6時10分。視線の遥か先に朝日に照らされた広大な市街地が確認できたが、
俺はその中でも、最も大きく聳え立つナガツカインテリジェンスビルだけをいつまでも見つめていた。

【池上 燐介:籐堂院に連絡を済ませながら国崎薬局へと向かう】
167宗方零 ◆idMa0miDD. :2009/02/03(火) 20:12:52 0
気がつくと、私は椅子に腰掛けていた。
ところで私は誰だったか?言うまでもなく宗方零。
元警官、今探偵、調査よろず請負、趣味は映画鑑賞、読書、アイロンがけ、貯金が別名義の闇口座に500万、暗証番号は・・・
とりあえず己のパーソナリティを確認するが、どうやら元の侭のようだ。ほっと息を吐く。
亡霊たちとの合一は筆舌に尽くしがたい体験だった。
下手をすれば死ぬどころか、記憶と個性を失い廃人になりかねなかった。
体には、未知の力が溢れている。これが能力者としての成長なのか。
だが生きている。どうやらもう朝のようだ、毛布が掛けられていたところを見ると神重の気遣いだろう。

私は毛布を四つに畳んでひとまず机に置く。
椅子から立ち上が――ろうとして何か見えたぞ、今。
デスクから2、3、メートル先にそれが置いてあった。

――縦長のスマートな六角形の立方体 つまり、棺桶。

――棺桶? カラオケでも完パケでもなく、無論趣味がいいから買っておいた≠ニいうお洒落なインテリアでもなく。

――棺桶。 自分用?ご冗談を。二度死ぬのは007であって私ではなくというかもう一度死ぬのは御免だ。

呆けた頭で状況を整理する、気づくと棺桶の周りを歩き回っている。
『おかしいな――まだ眠っているのか私は、だとすると悪夢だ。
こんな事をし得るのは悪魔か吸血鬼、ああ、そうか神重か全くなんでこんな――』

ガッ

と、気づいたところで私は棺桶に足を引っかけて盛大に転ぶ。
【宗方零 4日目開始 スペクターとの合一を果たしたため能力成長】
【神重の棺桶で転ぶ】

168永瀬翠 ◆GWd4uIuzU6 :2009/02/03(火) 22:01:04 0
>>160>>163

携帯電話とレコーダーを恋島へと渡した直後、不思議な事が起こった。

「あれれ〜? 消えちゃったぁ……」

恋島は突如として翠の前から消えたのだ。
まるでこの世界から存在が消されたかのように、一瞬で……。
あれも彼の持つ能力の一片なのだろうか? それを調べる術は今は無い。
それよりも重要なのが隣にいる女性だが……。
彼女は翠に興味が無さそうで、既に踵を返していた。

「もう! 翠にこれからどうしろって言うんですかぁー!」

去り行く女性に彼女の言葉が聞こえたかは定かではない。

何はともあれ、レオーネからの頼み事は一先ず完了した事になる。
後は恋島の邪魔をする奴を排除すれば良い。
どうもあの男は強い異能者と惹き合う星の下に生まれているようだ。
一昨日の白衣の男にしても、今日の白いコートの女性にしても、
皆一般レベルを一回り飛び抜けた才能を持っていたようだった。

一段落した事をレオーネへと報告する為、機連送を取り出すとダイヤルを軽やかに押していく。
ほんの少しも待たずに電話は直ぐに繋がった。

「あ、もしもし おじさま?」

「翠か……。例の件はちゃんと出来ているか?」

どうもレオーネは外に居るようで、声が小さく聞こえる。
受話器越しに聞こえる音は、鳥の鳴き声だろうか?
169永瀬翠 ◆GWd4uIuzU6 :2009/02/03(火) 22:01:32 0
>>168

「もちろんデスヨー。でも、恋島さんには逃げられちゃいました……。
 翠ちゃん、ショック」

――あの逃げ足、只者じゃない。次こそは逃がさない。

まるで珍獣を惜しくも逃してしまったハンターのように、翠は決意を新たにした。
そんな翠の決意を感じ取ったのか、レオーネは溜め息を吐いた。

「気張るのは良いが、あんまり無茶はするんじゃない。
 恋島には傷をつけるなよ」

付き合いの長い翠には、レオーネの感情が容易に読み取れた。
恩師の声は少し怒っているように思える。
流石に気まずくなった翠は、話題を逸らす事にした。

「えー…っと、おじさまは今どこなんですかぁ?」

小鳥の囀りが聞こえると言う事は、少なくとも街の中心部ではないだろう。
確かこの街には、河を挟んだ北側に山があった筈だ。
……レオーネは山に居るのだろうか?

「私は墓参りさ。また何か在ったら連――。……やはり来たか。

 すまない永瀬、一旦切るぞ」

レオーネは何かに気付いたようで、一方的に会話を終了させてしまった。
それにしても、墓参りとは何だろう? そもそも誰の墓なのか?
翠の頭の中で泡のように疑問が浮かび上がってくる。
しかし、翠には持ち前の明るさがある。

(まずわぁー、目の前の事柄を片付けよっと。考えるのはその後でいっかー)

楽天的過ぎるのも問題だが……。

去り際に恋島はこう言った。
――敵を見誤るな、と……。
敵、それは翠にとって機関の邪魔をする人間の事であり、
裏を返せば彼女にとって機関は絶対の存在なのだ。
それは子供の頃から替わっていないし、この街で起きている事にも良心の葛藤も無い。
そんな翠の心の壁を、恋島は打ち破れたのだろうか?
兎にも角にも、彼の言葉は翠には解せない言葉だった。

「"敵"なんて区別、簡単じゃないですか……」

呟きは虚しく朝日に飲み込まれ、翠は再び街へと繰り出して行く……。

【永瀬:公園から市街地へ移動中】
【時刻:8.00.AM】
170廻間 統時 ◆7VdkilIYF. :2009/02/03(火) 22:37:46 0
>>164
>「…その手、離してくれないかな?」
「ん……あぁ、すまない」

どうやら、力を込めすぎていたようだ。
常人じゃない俺に握り締められているんだ、そりゃあ痛いに決まっている。
とりあえず俺は肩から手を離した。
しかし、どういうわけか……嫌な視線を向けてくるな……
俺、何もして無いんだがな。

「とにかく無事で何より」

とりあえず俺は屈んでいた状態から立ち上がる。
そして、軽いため息をついた。

「な〜んで何でこんな所で倒れていたんだ?
 別に言いたく無いなら言わないでもいいけどさ〜」

後ろからリースが目の前の男に向かって声をかける。
確かに、俺も何でこんな所で倒れていたのか気になるな。

「とりあえず、立てるか?」

そう聞くと、男は無言で立ち上がる。
こうしてみると、年は俺とそう変わらないか?
……まあ、年はどうでもいいか。

「あんたが俺達を信用する義理もないしな……
 でも、個人的に言えば気になるな。
 まっ、ただの行き倒れってんなら……警察のお世話になった方がいいと思うけどね」


言ったとおり、この男が俺たちを信用する義理は何一つ無い。
たまたま、俺たちが倒れていたのを見つけただけ。
それを言ってしまえば、周りにいる人間だってそうなる。
だけど、俺は聞きたい。これは単純な好奇心だ。

……そういや、今の俺嫌なヤツになってないか?

【廻間:七草が倒れていた理由を聞きたい】
171七草 柴寄 ◆O93o4cIbWE :2009/02/03(火) 23:31:55 0
>>170

「…その手、離してくれないかな?」

「ん……あぁ、すまない」

柴寄の肩を掴んでいる黒髪の少年は手を離す、柴寄の雰囲気から場に気まずい空気が流れる、
その空気を払うべく少年は切り出した。

「とにかく無事で何より」

少年は立ち上がり、軽く息を吐き出した、
そして次に、彼の後ろにいるもう一人の、金髪の少年が口を開いた。

「な〜んで何でこんな所で倒れていたんだ?
 別に言いたく無いなら言わないでもいいけどさ〜」

思っていたよりも友好的なんだ、まあ、だからこそ声を掛けてくれたのかな、
それにしても、日本語が上手だな、
何故倒れてたか、言うほどの事でもない、強いて言うなら、頭痛。

続けて黒髪の少年が、

「とりあえず、立てるか?」

そう言われたので立ち上がる、彼は少し困惑してるようだけど、別に此方は敵意を持っている訳ではない、
その事で困らせてるとしたら、申し訳ないと思う。

黒髪の少年は、立ち上がった柴寄を軽く一瞥し話し出す。

「あんたが俺達を信用する義理もないしな……
 でも、個人的に言えば気になるな。
 まっ、ただの行き倒れってんなら……警察のお世話になった方がいいと思うけどね」

この子は、若いながらも物の言い方が芯が通ってる、
こういう言い方は聞き手によって印象が違うけれど
自分はこういう言い方は嫌いじゃない、
寧ろ、他の人達の様な本心を隠した喋りより、此方の方が余程信用できる。

この子達が話しかけてきたのには純粋な心配と多少の好奇心なんだろう、そこに悪意は無い、

「ありがとう、少し、頭が痛くてね…心配してくれる程のものじゃあないよ、
 それに朝食ならちゃんと食べたさ、いき倒れじゃあないよ」

軽く冗談を交えて答える、それにしても、参ったな、この頭痛は、考えれば考えるほど酷くなってくる。

とりあえず、この子達を如何するかな?悪い人じゃあないし、巻き込みたくはないんだけど。

【七草 柴寄:廻間達に返答、廻間達に対して多少は打ち解けた】
【一人でいると頭痛が酷くなる】
172恋島達哉 ◆KmVFX58O0o :2009/02/04(水) 19:28:04 0
いざ探偵さんに頼ろうと言っても、動いて貰うための立証がある訳ではない。その前にここらで情報をまとめておこう。
コンビニから出た俺は設置された適当なベンチに腰掛け、バックからここまでまったく出番が無かったメモ帳を取り出す。
この町……いや、ひいてこの町で蠢めいている「機関」なる奴等の明確な情報をココに留めて置く。

まず一つ、奴等は何らかの目的があって暴力行為、または殺人行為を行っている。これは重大事実として強く書き込んでおく。
何時か(一週間どころか三日も経ってないが)の病院戦、また服屋戦で「機関」の構成員――――で良いのだろう。
彼らは常々、標的を前にこう口ずさむ。「異能力者」と。言葉の意味は不明。超能力者と同義で良いのだろう。
俺に対しても異能力者と呼ぶから、俺も異能力者なんだろう。その異能力者を殺す、または捕獲する事が奴等の目的だろう。

そのニ。手段を選ばない。女性でも子供でも目的の為になら躊躇しない。MAD。実にMADな連中だ。
その手段は多種多様で直接的な行動に走る奴もいれば、他人を意のままに操る奴もいる。各々の性格やスタイルだろうか?

三。これはレオーネ……さんとの会合で分かった事だが、「機関」は派閥というか様々な勢力に分かれている事だ。
詳しい内部事情など知る由も無いが、トチ狂って「機関」に入ろうとした俺の前に現れたあの男は、俺を殺そうとしていた。
あの時のレオーネさんの口調からするに、あの男、紅原と言ったか。紅原はレオーネさんとは敵対している勢力に所属していたようだ。
もしも……いや、絶対無いけど「機関」を敵に回す場合、この勢力図を利用して内部分裂を起こさせることが出来るかもしれない。

最後に……これは保留と言うべきかな。個人的に気になることなのだが。
「アブラハム」
……口に出すと微妙に恥ずかしいのだが、上記の紅原が言っていたワードで、このワードにレオーネさんは妙に反応が鋭かった気がする。
アブラハム=異能力者では無い様だ。紅原以前の刺客(こう書くとかっこいいな)が一度でもアブラハムと言った覚えは無い。
本来の目的である異能力者以上に重大な秘密かもしれない。俺はアブラハムを何度も丸で囲った。

……ここまで書いといてなんだが、情報が足り無すぎる。なんと言うか「機関」の連中に対する重要なファクターが一つも無い。
これじゃあ殺し合いが大好きな電波集団だ。いや、異能力者だの訳分かんない事を言う連中だから普通じゃない事は確かなんだが。
しかし「機関」が一枚岩じゃないとして、レオーネさんやさっきまで同伴してた姫野さんは「機関」じゃどういう立場なのだろう。
あの人達が紅原以前の……以下にも争い事を好むような連中と同じとは俺にはどうも思えない。
「機関」に居なければならない理由があるのだろうか? 表社会で生きる訳にはいかないのだろうか……

……また深みにはまりそうになった。バックから煙草と100円ライターを取り出し、一本出して火を点ける。
小さな充足感が胸の中に広がっていく。あぁ……そうそう、これこれ。欲しかったのはこの落ち着きだよ。
頭が冴える訳ではないが、幾分心身が落ち着いてきた気がする。さて、そろそろ出発しようかな。
煙草を携帯灰皿にもみ消し、ベンチから立ち上がる。その時。

カタンと、何かがズボンの後ろポケットから落ちる音がした。振り向くとその何かがベンチの上に落ちていた。
……これは俺の携帯じゃないか。確か喫茶店に置き忘れたはずだったけど……何で?
マスターが届けてくれるわけないし、レオーネさんが? それこそあり得ない。あんな大事で逃げ出した俺に会いに来るなんて……。
アレ? それにこの小さな物体は……何だ? ICレコーダーっぽいけど。どうしてこんな物が?

あ〜……すっごく胃が痛くなってきた。また厄介事かよ……。
とにかく早い所、宗方って名前の探偵さんに会って依頼しないと。
「機関」の素性調査なんて依頼できる訳ないし、変な奴に狙われてて、そいつをとっ捕まえて欲しい……とでも言っておくか。
ICレコーダーらしき物を手に取ってみる。これが証拠になるかな……? あぁ、胃も頭も痛い。
【コンビニ→宗方の探偵事務所】
【永瀬から渡された携帯電話とICレコーダーに気づく。移動中】
173戦場ヶ原&屡霞 ◆u5ul7E0APg :2009/02/04(水) 21:02:34 O
>>165-166
「……因縁か。……さぁな。
もしかしたら過去に何らかの形で奴らと関わったことがあるのかもしれんが、
それが事実であるのかどうかは今の俺には知る術もないことだ……」
池上は意味深な言葉を戦場ヶ原への返答とし、煙草をふかした。
(こいつ…、記憶喪失……か何かなのか?)
戦場ヶ原は彼の言葉から推測をしたが、答えは見つからない。
表情からは一切の感情が汲み取れず、己のことを滅多に話そうとしない。
彼の持つミステリアスな空気は、戦場ヶ原が今まで会った異能者が持っていなかったものだった。
戦場ヶ原は池上の言葉をうけて更に彼への興味を深めた。
一方、屡霞の関心はまったく別の所にあった。
先ほどの老人がファーストナンバーの幹部―――…
その事実で頭がいっぱいだった。
「あの老兵が、機関ファーストナンバー…?
私は…あの男の掌で踊らされただけだというのか…?」
彼女の肩はいななき、背負った禍ノ紅から妖気が滲み出ていた。
「…おのれ……!この私を……侮辱して……ッ!」
歩き出した池上と戦場ヶ原にも気付かず、彼女はただその場に立ち尽くしていた。
今まで押さえ込んでいた彼女の中の狂気が、老人との対峙をきっかけに暴れ出さんとしていたのだ。
「おい、屡霞。何ボサッとしてやがる。国崎薬局だ。戻るぞ!」
戦場ヶ原の言葉も今の彼女には届かず、彼が振り返った時には、彼女はすでにそこにいなかった。
「!?」
周りを見渡すが、彼女の姿はどこにもない。ただその場から離れていく凶大な殺気がひとつ、感じられるだけだった。
「…!…あの馬鹿。ついに爆発しやがったか。…未熟者が…!」
舌打ちする戦場ヶ原を見て、池上が「あいつはどうする?」とでも言いたげな視線を送って来た。
「…気にするな。奴もそれなりの使い手だ。その辺の雑魚で死ぬタマじゃねぇ。…それに。」
戦場ヶ原は池上に向き直り、彼のあとに続いた。
「何をしでかすかわからねぇ分、機関連中の撹乱にもなるかもしれねぇ。」
非情にとれる言葉を残し、砂浜をあとにする。
しかしその言葉の裏には、戦場ヶ原の共に闘った戦友に対する信頼があったことに、池上は気付いていないだろう。

「行くぞ。貴様の過去に何があったか、今は無理には聞かねぇがな。
『あそこ』をブッ潰したあとに、すべてを話してもらうからな。」

そう言ってあごでしゃくった先にあったのは、朝日を受けて煌々と輝くナガツカインテリジェンスビル。
二人は、国崎薬局へと歩き出した―――…。

【戦場ヶ原:屡霞と離別。池上に随伴する。】
【屡霞:ゴールドウェルへの敵意が狂気を呼び覚まし、暴走。機関を無差別に狙う人斬りとなる。】
174神重智&敬 ◆6eLTPQTFGA :2009/02/04(水) 21:26:56 0
>>167

ここは――どこだ?
宙に浮いている気分。自分がまるで幽霊になったかのように壁をすり抜けることができる。
見覚えのある景色……そうか……ここは……。

智ではなく敬だった時の記憶の場所。
曖昧だが何かを思い出せそうだ。実験室、白衣をきた男や女。幼かった私。
切り刻まれた記憶がある、でも痛くない。腕が?がれても足を?がれてもすぐ血で繋がるから。
流れてる血から剣が出来上がる。それを手に研究者たちを切り裂いて暴れる私。こんなに幼かったのか。
実験?なんの実験だ。
能力を使うためなら既に完了していたんじゃないのか?だが耳が聞こえない。研究者達が何を言ってるかわからない。
私が私で無くなるかもしれなかったあの実験。
私は――わたしは――ワタシハ――

「カミシゲサトシダ」


………
随分悪い夢を見た。悪夢とでもいうべきか。
鳥のさえずりが聞こえてると言うに回りは暗い。
寝袋に入ったところまでは覚えているがそれにしても暗い。
まるで何かの中にいるかのような………

ゴッ!

何かがこの何かに当たる音がする。
やはり私は何かの中にいたわけだ。
寝袋から手をだして近い天井のような物を押す。
光が差し込む――

なるほど、外に出てみるとこれは赤い棺桶。宗方がアンティーク用にととっておくのは随分悪趣味だ。
となると犯人は……
(お前が犯人か、敬)
(俺は知らないね、たとえこれで寝たかったとしても主導権は智が握っているんだから俺は何もしようがない)
(そうか………)

と、ここで盛大に床に倒れている宗方を見つける。
椅子で寝てたはずではなかったのか。随分と寝相が悪い男である。

「おはようございます 宗方さん
 昨晩は椅子で寝ていたはずですが、随分と寝相が悪いようで」

朝一番の言葉がこれでは、棺桶に引っかかった宗方は浮かばれないだろう。

【神重;謎の夢を見る 宗方に朝の挨拶を済ませる】
175 ◆qqu0tZFsYU :2009/02/05(木) 00:20:29 0
──ナガツカインテリジェンスビルのとある一室に、二人の人間がいた。
一人は黒いスーツに身を包み、茶色の髪の毛をした男──。彼はおよそ一時間前、
池上らの襲撃者討伐の為に、ビルより出動した衣田を唯一見送った人物である。
もう一人は彼と同じく上下黒服の──とはいっても、茶髪の男とは違い、ボタン止めタイプではなく
ファスナー止めタイプの服であり、スーツというよりは学生服や海軍服を思わせるデザインをしている。
更に、彼の両肩からには、自身の両足の踝辺りにまで達する長い黒マントが着用されている。
このような特徴ある服装の人物──髪は黒く短くも、どこか女のような顔つきをしている。
女のような顔つき──そう、つまりこの人物は女ではなく、中性的な顔をした男なのである。
そんな彼に向かって、茶髪の男は沈痛な面持ちで跪き、あることを伝え始めていた。
──それは衣田の生命反応が途絶したということ。つまり、衣田の敗死を告げたのだ。

「……衣田様は『夜叉浪』様の片腕とも称されたお方。夜叉浪様のご心中、お察しいたします」

茶髪の男は、報告の終わりにそう付け加えた。
しかし、『夜叉浪』と呼ばれた女顔の男は、彼に対し無感情に言い捨てた。

「何を悲しむことがある? 『駒』は所詮『駒』──使い捨てに過ぎぬ。
手持ちの『駒』を失ったのであれば、またどこからか補充すれば良い。それだけの話だ──」
「──ッ!」

夜叉浪の冷たい無機質な表情を見て、茶髪の男は思わず寒気を感じずにはいられなかった。

「だが、衣田が有能であり忠誠心厚き男だったことは事実。彼の精神には酬いてやらねばなるまい。
そうだ衣田よ、貴様への鎮魂曲は、奴らの断末魔の悲鳴をもって奏でることとしよう──」

言いながら、夜叉浪は部屋の壁に設置された時計に目をやる。
時間は午前6時──。会議の時間が来ていた。

「──クククク──フハハハハハハハハ──!」

夜叉浪はマントをなびかせながら部屋を後にした。
その時彼の右手には、一体どこから取り出したのか、いつの間にか金色のフルートが握られていた。

【夜叉浪 稔次:会議室へ向かう】
176卦宮夜 ◆LuqsQs0P4w :2009/02/05(木) 23:13:55 0
>>163

流石にこの手を剥き出しではマズイので仕方がなく手袋だけ取りバッグを美月に託した。毛の質はいいけどしょうがないわよねぇ…
このまま誰も現れなければ、本当にこの街の観光でもしようかしら…

「さて美月。このまま進んでいると…どこに着くのかしら?」
「……駅かも」
「駅?なるほど。人が集まるわね…ま、行くあてもないことだし、色々街をふらついてみましょ。」

ぐうぅ〜
と、突然間抜けな音が響く。私ではないから…美月か。予想通り。隣では美月が顔を赤くして俯いている。
「アハハハ!可愛い音ねぇ。お腹が空いているなら言いなさいよ?何か買ってあげるのに」
丁度、目の前にはコンビニがある。与一もパン半分しか食べてないはずだし…補給しておくかしら。

中には中年の男が一人居眠りをしている。仕事中に眠ることっていいのかしら…
"誰もいない"のでホットな飲料とインスタント麺を二つほど拝借することにした。
そして、困った。

「……で。この「給水機」という物はどう使うのかしら?美月?」
「……分からない。私は知らない。」
「あんた、ホントに現代人なの…?まったく…うーん、このボタンかしら?ジョボボボボ………うわ!あっつぅ!」
「んんぁ?あ、おい!お前ら何やってんだ!カップ麺の代金払ってから使えよ!」

コンビニは恐ろしいところね…あの"ポット"は油断した相手に熱湯をかけて火傷させるのが狙いかしら…結局店員は起きちゃうし…
私たちは朝食を取る為コンビニから少し離れた小さな公園で休みを取ることにした。二人ベンチに並んで腰掛ける。

実際、異能者と戦うのって結構辛いのよね…うーん…あれができるかしら…
槍を右手に創り出す。この槍はいつもは、弾丸として創り出す物だけど――

「『装弾物語』を応用して…と。」
右手に持っている槍が少しずつ短くなり、同時に形を変えていく。それは十つ、ビーダマサイズの鉄球に変化した。
横に座っている美月も不思議そうに見ている。

「あら、出来ちゃったわ。流石私ねぇ…これをね…上に飛ばして保険を掛けておくの。いつ誰が襲ってくるか分からないからね…」
十つの球は一気に加速し、常人では見えない程の高さで停止した。
「あれは貫通力はイマイチだけど誘導性が良くてね。しかも私の意志で自由自在に操作可能な優れモノよ。
そしてあなたにはコレ。弾丸はしっかり込められているわ。使い方は分かるわね?」

これはあの薬局で見つけた拳銃と呼ばれる物。性能は分からないけど人を威嚇するくらいは出来るでしょう。
美月が持つと、なんかカッコいいわね…黒スーツ補正かしら?それにしてもあの薬局なんでこんな物があるのかしら…しかも何丁もあった。

後は…この体か。与一の意志が戻ってきているから私を拒絶している体がそろそろ限界…実際喋るのも一苦労だわ…
短時間の内に体に異物が混ざりすぎたからか…いや違う。もしかして…異能力の発動?これはあの犬の能力?まさかあの能力は――
自分を物質に融合させる能力ではなく自分を媒介に"モノ"を取り込む能力―――!拒絶ではなく取り込もうとしているというの?

そういうこと…もうほとんど時間も残されていないということね…
…一度だけでもいいから見たこともない私の仲間を見てみたい…どんな姿をしているのだろう…
とにかく、ここで立ち止まっていては何も起きない。何でも行動しなければね…

【罠を設置。卦宮夜が自由に操作出来る】
【耐えているが体はほぼ満身創痍の状態】
【先とは別の公園AM8:10】
177宗方零 ◆idMa0miDD. :2009/02/06(金) 23:25:16 0
派手に倒れている私の背後から声がする。
「おはようございます 宗方さん
 昨晩は椅子で寝ていたはずですが、随分と寝相が悪いようで」
慌てて立ち上がると、神重が起きていた。
棺桶の蓋は開いていた、やはりコイツか。
「おはよう。随分と古風な寝具だな・・・教師を廃業して家具職人にでもなったか?」
むろん家具職人は棺桶など作らない、だがそんな事は知ったことではない。

今は腹が減った、そういえば何も腹に入れていない。
事務所の隅の小型冷蔵庫を開ける。
「とりあえず飯だな・・・適当に作る、食いたかったら食え」

中身はビール、食パン、ハム、マーガリン等。
材料を掴んで小さな給湯室券キッチンに入る。
数分後、紅茶とサンドイッチを乗せたトレイを持って戻る。

無言でトレイをデスクに置くと、地図を睨みつつサンドイッチにかじり付こうとした。
Zaaaaaaaaaaa.........
体に投影されるホワイトノイズ.......能力者か?
事務所の入り口に立つ人影が見えた。
「神重、どうやらお客さんのようだ。」

私はいつものように応える。
「ご用ですか?生憎現在休業中なのですが、話があるなら伺いましょう。」

【宗方零 事務所に接近した恋島を感知する】
178虐殺部隊隊長及び幹部 ◆6eLTPQTFGA :2009/02/06(金) 23:58:13 0

コツッ コツッ コツッ
通路を歩く四つの黒。
先頭に一つ、そのあとに三つの黒が続く。

まずは三つの黒を見よう。

左の黒は小さな少年。一見少女にでも見間違えそうな少年。
その顔立ちとは裏腹に彼の心は冷たく、鋭い
虐殺部隊幹部の一人、ロルト・F・フォルトニック

右の黒は女性だろうか。しかし女性が持つは余りにも重い大剣を背に。そして腰には刀。
彼女こそ剣と刀を極めんとす大和撫子
虐殺部隊幹部の一人、黒神 雪那

真ん中の黒は男性か。銀の長髪。そして彼を覆う死臭は周囲に恐怖を与える。
人の魂を嬲り、操りそして使役する。
虐殺部隊幹部の一人、セルゲイ・ロルトニクス

そして先頭の黒
銀の逆立った短髪。彼を見るだけで弱きものは戦意すら失うだろう。
"新しき鬼ども"を束ねる恐怖の象徴
虐殺部隊隊長、スティクス・ガノスビッチ

彼らは今、ナガツカインテリジェンスビルの内部にいた。
その目的は会議に出席するため。スティクスが敗れたことにより若干遅れたようだが…まだ会議は始まっていない。

後ろの三人はともかく、スティクスは服こそ新品そのものを着ていたが、顔には切り傷のあとが残っていた。
時間が無かったのと…この傷を異能力で癒すのはスティクスのプライドが許さなかったのだ。

「スティクス大隊長でも、負けちゃうことってあるんだねー
 ボク、はじめて知っちゃったよ〜」

ロルトが挑発的に言う。その言葉にスティクスは歩みを止める。
「クソガキが……今ここで死にてぇのか…?」
明らかに怒気を含んだ声でスティクスは言う。
その言葉に気圧されながらも、ロルトの言葉は止まらない。

「ボクの体に触れると思ってるの?
 このボクの影に勝てるとでもっ………金剛さまに気に入られてるからって……!」

「おっと…そこまでだよ、ロルト
 ここでくだらねぇことしてると"コンゴウサマ"に嫌われちまうぞ」
言葉を続けようとした時に、黒神が間に入る。
セルゲイはやれやれと言った顔で首を横に振るばかり。
スティクスは舌打ちをしながらも、会議室への通路を進んだ

「ついたか………」
会議室に到着した四人はそれぞれ多少険悪であっても、金剛に対する忠誠心は同じだった。
全員に会議室のドアを開ける瞬間、緊張が走る。

スティクスが会議室のドアを開ける。
まず確認するのは我らが主、城栄金剛の席。それは空席だった。
つまりまだ到着していないのだろう。少しだけ緊張が解けた四人は各々の席へと着く。
他のファーストナンバーやセカンドナンバーからそれぞれに軽蔑の視線が送られるが、彼らはそれを気にしない。
むしろその視線を送った人物に殺気を放つほどだった。

【虐殺部隊隊長及び幹部:会議室に到着、席に着く】
179ゴールドウェル ◆fEvO9ByRpU :2009/02/07(土) 00:16:31 0
>>139>>145>>178>>175
そろそろだな…
現時刻――5時57分45秒
本部までの距離――1.5Km
移動速度――時速約80km
目的地到着予定時刻5時59分00秒

よし、充分間に合うな。
しかし今思えば17をあの場に残すべきではなかったな。
彼女もあれだけの力を持っていたし、やはり第三の目を持つ者は違う。
あの男からも第三の目が反応したし、あの殺気だった者達のいる所では17も空席になると見ていい。
――いや、すぐに補充されるかもしれないな。この街にはナンバーを与えられてしかるべき者達も集っているようだ。
そんな事を思考しているとナガツカインテリジェンスビル本部に到着する。

――23階総合会議室。
50階建てのビルから一瞬でその位置を特定する。簡単な事だ。
そこから無数の異能力が感じ取れるからな。

『反重力の応用』解除。

徐々に空中移動の速度が収まっていく。
階の高さ、会議室の窓に位置に向きを合わて『反重力の応用』の余力で滑るように移動していく。
こちらの様子に気付いた中の者が窓を開けて私を招き入れる。

『浮遊能力』解除。

部屋の中に入ると私は着地すると同時に向かいのドアが開き、01が2人の秘書を連れて入る。
我々は互いを一目睨みあうと各々自分の席に着いた。
ファーストナンバーは04、08、09を除いた計5人。
セカンドナンバーは13、16、22、24、30、34、42、77、99の9人。
他に『絶滅魔神(ナパームカーニバル)』『幻惑傀儡(デイドリームイミテーション)』『掟(トリプルバインド)』の3人の異能者、
そして01の後ろに立つ2人の秘書を合わせて20人揃っている。
気を利かせて窓を開けたのは――99『人形(アイミーマイン)』九十九 次無…か。

「では始めようか」

時計が6時を指すと同時に01により会議が始まる。

そこへ遅れて08が入室してきた。

【ゴールドウェル:ナガツカインテリジェンスビル23階総合会議室到着】
180恋島達哉 ◆KmVFX58O0o :2009/02/07(土) 12:16:38 0
>>177
探偵事務所に足を進めながら、携帯を開けて俺は九鬼にメールを入れる。何ヶ月も連絡を入れてない……錯覚に陥る。
実際この町だけ時間が止まってて、外の世界だともう1年2年ぐらい経ってんじゃないか? と思ってしまう。
今までの出来事から考えるとそんな事になってても何ら可笑しくない。一種の閉鎖空間じゃないか? この町は。
取りあえず生存報告……と。良かった、電波は通じるみたいだな。

ボーっとしていても仕方ないから「機関」についてでも考えるか。確か……メールのデータフォルダを開く。
所見は一笑してたけど、今はただただ薄ら寒いな。このバトルロワイヤルのメール。力を奪うだの、七日だの。
もう期日は殆ど無いが、その期日を過ぎたらどうなるのかな。……ふと頭の中で何かが弾ける音がした。
「機関」の連中が異能力者を殺したり、捕獲するのに躍起になるのは、その期日が関係あるんじゃないか?

あくまで仮説でしかないが、「機関」は異能力者を捕獲対象と殺害対象に分けているのかもしれない。
そして捕獲に価しない異能力者を篩いに掛ける――――つまり殺す。そしてそれ以外の異能力者……。
つまり期日までに捕獲対象を捕まえる事が「機関」の狙いだ。もしや、その捕獲対象の名称が……。

「アブラハム……か」
いや、いやいやいや。それなら俺が捕獲対象ってことになるぞ。ありえん。
俺みたいな三下を「機関」が欲しがるわけが無い。レオーネさんは俺の馬鹿度胸を認めただけで、実力を認めた訳じゃないだろう。
レオーネさんより前の奴等は俺をガチで殺しに掛かって来た訳だし。どうも腑に落ちないな。いろいろと。

ふと妙案がよぎる。もしも「アブラハム」と呼ばれる連中を「機関」の奴等より先に集める事が出来れば、「機関」に対抗できるんじゃないか?
「アブラハム」って言葉の響きからして(俺除く)強者な感じがぷんぷんするし。問題は俺にそれが出来るバイタリティも人脈も無いことだ。
しかし「機関」の強大さを思うに、こうでもしないと対抗できないと俺は思う。個人で立ち向かった所で呑まれるだけだ。
俺が力を持っていれば……関係ないな。それは。

『もうすぐ着くぞ、達哉。気をつけてくれ』
分かってるよ、耳鳴り。目的地にどうやら着いたみたいだ。近くで見ると……ううむ。
なかなか老朽化が激しいな……。今から昇る階段が酸で塗装が禿げてる。ボロボロだ。
まだ会ってもいないのに不安を抱くのは失礼だとは思うが、些か不安だ。心配性の気は無いんだけどな。

ギシギシと音を立てる階段を昇り、先ほどコンビニのオッサンが指差したその部屋に直行する。
一見、変哲も無い只のドアだがこの先に探偵事務所があるらしい。何故だか鼓動が早くなる。
どうしよう……取りあえずこいつに頼ろう。耳鳴り!

『生体反応を確認。……二人だ。周囲の反応も確かめるかい?』
いや、この事務所だけで良い。二人か……誰か居る事は確かなんだな。良かったぁ。誰も居なかったらどうしようかと思った。
けど二人……? 探偵さんの助手かな? ここは最悪のケースを考え……い、いててて、胃が……。

ええい、当たって砕けてみよう。ドアをノックしようとした瞬間。
>「ご用ですか?生憎現在休業中なのですが、話があるなら伺いましょう。」
「は、はいぃ?」
思わず声が裏返った。まさかあっち側から声をかけられるとは思いもしなかったからだ。
俺が来る事を知っていたのか? いや、まさか。もしや探偵さんの感って奴か? まぁ何にせよ手間が省けた。

「ごめんなさい、ちょっと風邪気味で……。お休みの所すみません、取りあえず中に入っても構いませんか?」
【宗方事務所前】
【宗方に事務所に入ってもいいかを聞く】
181池上 燐介 ◆qqu0tZFsYU :2009/02/07(土) 16:33:05 0
>>173
海岸より離れていく気配が三つ──。だが、その内の二つは国崎薬局へ向けられ、
残る一つは全く違う方向へと離れていく。
二つの気配の内、一つはこの俺。もう一つは山田権六。
となると、俺達二人とは別の方向へと向かう一つの気配は、あの女剣士ということだ。
後ろを振り返り、女剣士の姿が無いことに気付いたのだろう山田は、舌を鳴らしている。

「未熟者か……。沸点の低さといい、お前といい勝負だと思うがな」

言いながら、俺も後ろを振り返る。そして視線を山田へと向け、無言ではあるが女剣士についての意見を求めた。
俺の顔を見て何が言いたいのかを悟った山田は、「気にする必要はない」と即答した。
確かに三人で行動するのが最良策ではあるが、どこに去ったかも分からない彼女を追いかけることで、
我々二人まで余計な危険と出くわす事態は避けなくてはならない。
それに、山田が自信を持って「それなりの使い手」というくらいだ。放っておいても死ぬことはないだろう。
俺がそう納得したところで、山田があごで朝日に照らされたナガツカインテリジェンスビルを指して言った。

>「行くぞ。貴様の過去に何があったか、今は無理には聞かねぇがな。
>『あそこ』をブッ潰したあとに、すべてを話してもらうからな。」

「……フッ」

俺は鼻で笑みを零しながら、再び国崎薬局へと歩き出した。
山田は俺の反応に少々不満気な顔をしながらも、これ以上何も言うことはなく無言で後に続いた──。

──どれだけ歩いただろうか。既に俺達二人は海岸沿いから遠く離れ、町中へと入ろうとしていた。
市街の中心部に向かえば向かうほど、道を行く自動車や自転車の通行量が増えていく。
同時に俺達二人に突き刺さる視線の数も増していた。
それもそのはず、俺は着ているシャツが所々焦げ、そこから多数の火傷が顔を出している。
そして山田も闘いの後を思わせるようなボロボロの浴衣姿。目立たないはずがない。
しかし割と町の中心に位置する国崎薬局に向かう以上、どの道を通っても人の目は避けられないもの。
気にしても仕方がないだろう。

そう割り切り、平然として歩き続ける俺の頭に、ふとあることがよぎった。
それは、山田のパートナーと思われる存在が、この一日で変わっているということであった。
(少なくとも俺の家に来た時までは女剣士ではなかった。確かあの時は……)

どこか気になった俺は、一度歩みを止めて山田に訊ねた。

「……おい、前までお前と一緒にいた『煌神』とかいう女はどうしたんだ?」

【池上 燐介:戦場ヶ原に煌神のことを訊ねる。現時刻、AM6:30】
182神重智&敬 ◆6eLTPQTFGA :2009/02/07(土) 17:50:38 0
>>177  >>180

「おはよう。随分と古風な寝具だな・・・教師を廃業して家具職人にでもなったか?」
目には目をといったところか。棺桶を作ったのは無意識なのかもしれないが引っかかったのは宗方だ。
「おやおや、最近の家具職人は棺桶まで作るのですか…不景気とは困りますねぇ」
「とりあえず飯だな・・・適当に作る、食いたかったら食え」

「………………」
さすがに朝から嫌味の言い合いは疲れたか、神重の次の嫌味を無視し、宗方は冷蔵庫から食材を取り出し
キッチンへ向かい紅茶と簡単なサンドイッチと作って戻ってきた。

横からサンドイッチを一つもらい棺桶を椅子がわりにし座って食べる。
簡単ながらもやはりサンドイッチはうまい。
(サンドイッチといえば、昔サンドイッチ伯爵がポーカーをするために作ったものだったな)
(また無駄な雑学を知ってますね、敬)
二口目にかかろうとした時
「神重、どうやらお客さんのようだ。」

こんな朝早くからお客とは。宗方の探偵事務所というのはそれなりに繁盛しているのだろうか。
やはり異能力を使った調査か?いやまぁそれはとりあえずおいておこう

宗方がドアの前にいるらしき人物に声をかける。
その返答は―――
「ごめんなさい、ちょっと風邪気味で……。お休みの所すみません、取りあえず中に入っても構いませんか?」

声の雰囲気だけで感じた感想を言うと…荒々しくは無い声だ。
敵意は無いのだろう今のところ……声の主に裏が無ければ、の話だが。

「宗方、どうする?
 ここは私の出る場所ではないと思いますが……」
さすがに宗方の仕事の客が探偵事務所とはいえ赤い棺桶があるというのも随分不気味だろう。

念のため棺桶を血に分解して体にとりこむ。
ところで、自然な動作でやってしまったがこの棺桶もやはり血でできていたというわけだ。

【神重;宗方の反応を伺う 棺桶を取り込んでしまっておく】
183廻間 統時 ◆7VdkilIYF. :2009/02/07(土) 23:18:50 0
>>171
>「ありがとう、少し、頭が痛くてね…心配してくれる程のものじゃあないよ、
  それに朝食ならちゃんと食べたさ、いき倒れじゃあないよ」

……少し、程度の頭痛なら倒れることは無いと思うんだが。
だけど、この男が嘘をついているようには見えない。
言えない理由があるのか、それとも倒れるまでの記憶が無いのか……それは分からない。

「そうか?
 この辺も最近は物騒だからよ、気をつけたほうがいいぞ」
「ま〜、声をかけたのが俺達でよかったな」

後ろでリースが笑う。
俺もそれにつられて笑う……ような事は別になかった。

「とにかく、こんな所で倒れてちゃあ危ない。
 休むなら自宅とか、友人の家とか、ホテルとか……そういうところで休んだ方が賢明だぞ」

とは言ったものの、ここから住宅街は少し距離がある。
この男がこの変の人間じゃないなら、ホテルに止まる事になるがそのホテルも橋を越えた先のところにある。
全てが機関のせい……と言う訳ではないが、機関の影響でここは大分治安が悪くなった。
わずかな距離とは言え、機関の連中に襲われる可能性が無いわけじゃあない……
それに、見たところ機関は機関の連中は異能者のみにターゲットを絞るだろうけど……
無差別に攻撃を加える、という可能性が無いわけじゃあない。
……この男が一般人か異能者か、それは分からない今は……
ここは家に送っていったほうがいいだろう。

「リース、ここはこのお……この人を目的地にまで送っていこうかと思ってるんだが」
「俺は別にいいけど?」

俺の問に、リースは軽くうなずく。

「……って、わけだ。
 もしあんたがよかったら、家まで送って行ってやろうかと思ってるんだが。
 どうだ?」

【廻間:七草を行きたい所まで送っていこうと提案する】
184影渓 木陰 ◆O93o4cIbWE :2009/02/08(日) 22:11:58 0

――――…

「―ッ!……」

ひとりの男が、声にならない声と共に、その場へ崩れ落ちた、

「…こいつもか」

その一部始終を見ていたもう一人の男、男は蒼い髪の奥から炯々とした赤い瞳を覗かせそう呟いた。

殺しては居ない、少し眠って貰っているだけだ、
こいつも、俺の求めている者では無かった。

空を見上げる、
蒼色の空を背景に、下から昇る朝日の赤橙が、徐徐に、徐徐に、その境界を染め上げていく。

男は、その光景を眺め、その瞳の奥で、何を考えているのだろうか、その姿は感傷に浸っているようにも見える。

PPPP!!

男を現実に戻したのは、無機質な機械音だった、男は腰のホルダーからその音の発生源を取り出し、その貌の傍らへ寄せる。

――…何だ?――

――あ!影谷さん?おはよう、アブラハムは見つかった?――

――…いや、そう簡単に見つかるものでもないようだな――

――そりゃそうだよ〜、で、ところで、ちょっと今すぐシナゴーグに戻ってきてよ――

――…何故だ?そんなに急な事態なのか?――

――うん、神さんが、戻ってこないんだよ、やられちゃったってことは、無い…と思うんだけど…とにかく話したい事があるから戻ってきて――

――…解った――

そう言い、通信を切る、これは面倒な事になった――――
185影渓 木陰 ◆O93o4cIbWE :2009/02/08(日) 22:13:57 0

――――――…

テラスから、朝焼けが差し込む、そう、此処は昨夜歓迎会が行われたシナゴーグ。

「…で、如何するんだ?」

昨夜の青年を追ったまま籐堂院が帰ってこないとは、確かにこれは問題だ、まだ追い掛けているのか?、やられてしまったとは考えにくいが。

「どうするって…、恥だよ!このままじゃ暗殺部隊の名折れだよ!!なにが何でも捕まえてやるんだから!!」

どうやら昨夜の決着が納得行かないらしい、そしてそれを俺にも手伝わせようと言う魂胆か?――面倒だ、
籐堂院が未だ捉えていないのに、我々が出て行った所でどう探すのだろうか?
まあそもそもあの青年を連れて来たのは自分なのだから、捕らえる責任は俺にあるのだが。

「…だからどうやって探すんだ?付けて置いた発信機は効かなくなったのだろう?」

「むふふ〜、そう思って昨夜一晩で作ったのがこれさ〜、じゃじゃ〜ん!」

そういって響が取り出したのは、あの青年の写真を纏めたものだ、ああ、これは昨夜介抱してる内に撮ったものだな、
しかし――これは―――――

「………お前……それ…いつ撮ったんだ………」

その写真集は、最初の方こそ、響がまともな服を着せたためまともな写真だったが、後半になるにつれ、服を着ていなかったり、
俺には理解できないような服装をさせられているものもあった。

「え〜昨日あの子を着替えさせてた時だよ〜〜どうかしたの?」

「……そうか…で、それを…如何するつもりだ……」

「どうするって?、決まってるじゃん!街で見せて聞いて周るんだよ〜、
 捜査は足から、っていうでしょ!」

「…それを、見せて周るつもりなのか…」

「うん、そうだけど、どうかした?
 見事な仕事だと感心はするけど、どこもおかしい所はないでしょ?」

自分で見事な仕事とか言うんじゃない、それにしても昨夜部屋に籠ったのは、泣いていたのではなくて、これを作っていたのか
しかし響は、あの青年に余程恨みがあると見て間違いないだろう、俺ならこんな写真を撮られたら、明日の朝日を拝めるか解らないな。

そも、これでは暗殺部隊でも何でも無いではないか、

「…お前まさか…」

俺は確かにこう呟いた

「?、どうしたの影谷さん、さっきからちょっとおかしいよ?寝不足?」

「……」

「だいじょぶだね、じゃ〜いこう!」

「……いや、俺はアブラハムを探しに行かなくては…」

そう言い、俺はこのシナゴーグから逃げるように去っていった、、、
早くアブラハム――いや、それよりもあの青年を見つけなければ――。
186戦場ヶ原 天 ◆u5ul7E0APg :2009/02/09(月) 23:37:19 0
>>181
まだ日も明けきらぬ早朝。動き出した街中を颯爽と歩く二人の『異形』がいた。
池上と戦場ヶ原は、ボロボロにすりきれた服を纏って、国崎薬局目がけて歩いていた。
その奇異な風貌に道行く人はみな振り返って彼らに視線を突き刺したが、戦場ヶ原も池上もどちらも、衆目を気にするような人間ではなかった。
並んで歩いてはいたが、二人の間に親しい歓談が飛び交うことはなかった。
彼らは『友達』ではない。同一の目的のもと共闘しているだけの間柄だ。しかも二人は二日前には殺し合いまでした仲なのだ。
仲良く雑談をしている方がよほど無気味である。
二人の間の沈黙を、先に破ったのは池上だった。

「……おい、前までお前と一緒にいた『煌神』とかいう女はどうしたんだ?」

なんの脈絡もなく突然投げかけられたリンの名に、戦場ヶ原は一瞬どきりとした。
しかしその様子を池上に悟られまいと彼は皮肉めいた笑みを浮かべて返答する。

「フン…、貴様が他人に関心を持つとは珍しい。今日は雨が降るか?」

しかし池上の表情は変わらず、相変わらずの冷たい瞳で戦場ヶ原の顔を凝視していた。
戦場ヶ原はあきらめて、溜息まじりに池上に背を向けて、街の中心にそびえる敵の居城をあごでしゃくった。

「…、あそこだ。」

苦々しげに低い声で呟いた。

「俺の連れ…煌神リンは一昨日、機関にさらわれたんだ。機関のナンバー2、『ツバサ・ライマース』とかいう奴にな…!」

思い出すたびに虫唾が走る。あのNo.2を名乗る優男の鋭い目線。
『俺が用があるのはそこにいる…妹だけだ』
『リンがどういう風に世話になったかは知らんが、もうリンにかかわるな』
戦場ヶ原の記憶はそこで途切れていた。

「俺はなんとしてでもリンを救い出す…。そのためだ。貴様とこうして手を組んだのはな。」

彼はそこで自分の握りこぶしに力が入りすぎて血を流しているのに気づき、自嘲気味に笑った。
「…フッ、沸点が低い、か。俺もまだまだ未熟者だな。」

【戦場ヶ原:池上に随伴して国崎薬局へ移動中。】
187ロウェル・Bフォックス ◆LuqsQs0P4w :2009/02/10(火) 10:53:32 0
朝が訪れた。ここはナガツカインテリジェンスビルの屋上。…妙にゴミが散らばってて汚ねぇな…
何でも昨日まではここにあの装置に登録されている能力の「オリジナル」が居たとか。こんなとこでご苦労な事。
今回の俺達の任務はナガツカインテリジェンスビルに集まる機関の幹部達の護衛だとか。極少数だが機関に刃向かう奴らも動くらしい。
しっかし、おっさんが空飛んできたときはびっくりしたね。ホント。あれも幹部かぁ?
おっと、時刻は…5:55分か。頃合か。俺は機連送を通じて、仲間に作戦内容を伝える。

「あー…あーあー、こちら…フォックスだ。全員予定位置に着いているな?
よーし。じゃあ右手の異能再現装置ってやつをを起動しろ。能力名は「装弾物語」だ。」

この機械も造り主もなーんか胡散臭いだよなぁ…魔姫…だったっけな?ま、弾代が浮くのは良い事だしな。
使える物はちゃんと使わないとな…――あ?なんだよコレ。起動しねぇな…

「おいおい、この状況で故障してしまうんですか?マジかよ…チッ、しょうがねぇなぁ…」
俺自身の能力で戦えってか。折角この能力ともおさらば出来ると思ったのになぁ…

「どうかしましたか?フォックス?」
「おう。わりぃ何でもねぇよ。よし、作戦開始時はロクマルマルだ。それ以降、ビルに近づく奴らはみんな殺して構わないぞ。
小せぇ油断がでけぇミスへと繋がるからな。間違っても相手に情なんか移すんじゃねえぞ?」
「ハハハハハ!冗談は止してくれやフォックス!俺達は一応プロだぜ?仕事と私情くらい分けられなきゃ食っていけねぇぜ!」
「フォックス!Aウルフ!メインの登場だ!数は…八人!」
「やっと来たか!作戦開始と同時にスタートだ!お偉いさん方が見てるんだ!俺達の実力を見せてやろうやぁ!」

通信を切り、ライフルに弾を込めて作戦開始を待つ。狙いは中央を走る若い男。こちらには全く気付いてない
当たり前か。こんな高いところに居るんだし、"気配がないからな"
なんだろうな…風がなく…妙に静かだ…嵐の前の静けさってやつかな。開始まで5…4…3…2…1…0。

引き金を引く。弾丸は男の脳天に吸い込まれるように飛んでいき、頭を貫通した。
更にそれを追うように数発の弾丸が男の顔面を打ち抜く。ったく…こりゃ、猟犬じゃなくてただの野犬だな……

「死んだかどうか分からねぇんだぜ?これも一種の安楽死だ…感謝しろよ。」
この年で独り言か…寂しいねぇ…ま、この能力がある限りは一生、女なんか出来ねえか。ハハ…

【6:00】
【ビルに乗り込もうとしている異能者集団(無名)を狙撃】
188池上 燐介 ◆qqu0tZFsYU :2009/02/10(火) 19:10:19 0
>>186
山田が語る俺の家を出てからの『煌神 リン』のその後は、俺が予想していないものだった。
話によると、彼のパートナーであった『煌神 リン』は機関のファーストナンバーにさらわれたというのである。
俺と手を組んだのも、どうやら彼女を救い出す為であったらしい。

俺は無言だが、「なるほど」というように軽くうなずいた。
だが、山田が煌神についてを打ち明けたことによって、俺はまた別の引っ掛かりを感じていた。
それは──「殺された」ではなく「さらわれた」という点からである。
山田はどうか知らないが、少なくとも俺は、これまでに我々に差し向けられて来た機関の異能者の
やり方を考えると、殺さぬまま生かして捕らえる──等という行動が、どこか不自然に思えたのだ。
(山田の言うことが事実であれば、機関が煌神を捕縛したのは、何か『理由』があってのことか──)

そう思った時、俺の頭にかつての山田の言葉が突如として蘇った。
──『ただ、『ヤハウェ』とかいう種類の人間から『何か』を集めている…』──
──バトルロイヤル──ヤハウェ──捕縛──
この時、俺の中で、これらのキーワードが示す答えが、分かったような気がした。

「……『ヤハウェ』。……もしこのゲームが、その人種を探し出す為に行われたとしたら。
煌神が連れ去られたのもそこに理由があるなら、奴らが敢えて捕縛という手段に出たのも合点がいくな」

俺は再び歩き始めながら、思わず自分の仮説を声に出して言っていた。
当然のことながら山田の耳にも俺の声は届いていただろうが、その時の彼がどういった反応を
示していたのかは、国崎薬局に通じる前方の道路にのみ視線を向けていた俺には分からなかった。

俺は「煌神を救い出す」と力強く語った山田の手前、これ以上は何も言わなかったが、
俺は仮設を立てた段階で、煌神の安否に関して、一つの可能性を考慮せずにはいられなかった。

かつて山田が語った『天音 滴』という人物に起こった悲劇同様、機関に捕らわれている限り、
煌神にもその運命が──すなわち『死』が待ち受けることは、確実視しておいてもいいだろう。
捕らえられてより、一分一秒ごとに彼女に死の危険が迫る中、
山田の話によれば、煌神が捕らえられてから既に丸一日の時間の経過を許してしまっている。
これはもはや、死んだものとして割り切った方が良いのかもしれない。
仮に今も生きていたとしても、それでも機関が彼女に与えた時間は残り少ないはずだ。

山田自身はそれに気がついているのだろうか。
女剣士のやり取りを見た以上では、それを承知の上で戦力の充実を待っているようにも見えるが、
仮に気がついていないとするなら、今後それに気がついた時、彼は果たしてどう動くだろうか。
場合によっては、俺は燃え上がる炎を鎮火させるがごとくの対処しなくてはならないだろう。

「そうなると手がかかるな……。
ま……お前も少しは冷静な面を見せたんだ。一応、そいつに期待させてもらうぜ」

昨晩から常に外しっぱなしになっていた黒の手袋を、俺は思い出したかのように右手にはめると、
その手で山田の肩を「ポン」と一叩きした。

【池上 燐介:国崎薬局へ移動中】
189レオーネ ◆GWd4uIuzU6 :2009/02/10(火) 21:05:09 0
>>179

籐堂院神の一件が、籐堂院の機関への復帰という思いも因らない形で
                         ファンダメンタルデリート
一先ずの終焉を迎えたかと思えば、今度は『殲滅結社』か。
敵が多いのは構わないが、"このタイミング"は少々厳しい物が在る。
何れにせよ、策は練っておかなくては為らないだろう。

セカンドナンバー達の方を見てみる。彼らも気が気ではないようだ。
そういえば、No.11のポポフスキーが見当たらないな。
彼女も相当の使い手、倒されたとは思えんが……。

気が付くと窓を覆い朝日を遮っていたウィンドウは開けられ、陽光が部屋へ差し込んでいた。
誰かが開けたのだろう。私としてはどちらでも構わない。
窓の一点、正確には空の彼方に米粒ほどの物体が見える。
それは急速に拡大されて行き、やがて"それ"は窓の前で物理法則を無視したかのようにピタリと停止した。

やれやれ、"ブリキ君"は常識を忘れてしまったらしい。
窓から入るとは何事だ。
心の中で毒づくと顔を背ける。

ブリキ君こと……ジャッキー・G=ゴールドウェル。
機関の世襲幹部にしてファーストナンバーであるNo.7を担うこの軍服男は、
他の人物と比べてどこか無機質な印象を受ける。
それもその筈だ。彼は既に人間を止め、機械になったのだから。
ゴールドウェルは籐堂院のレジスタンス活動の際に、親類と自身の生身の体を失った。
世襲幹部が減る事を恐れた機関(正確には他の世襲幹部達)は、
彼の体に義体としての命を与え、ゴールドウェルはサイボーグとなったのだ。

セカンドナンバーの一人が窓を開けてNo.7を迎え入れた。

ふと、ゴールドウェルが歩いた後に何かを発見した。これは……砂、か?
ゴールドウェルの足跡に、微量ではあるが砂が落ちている。
妙だな……。――まぁ、大した事ではないだろう。
心の片隅にでも留めておく程度にしよう。
190レオーネ ◆GWd4uIuzU6 :2009/02/10(火) 21:05:57 0
>>189

ドアが勢いよく開けられ、城栄が側近達を連れて入室してきた。
……部屋の温度が一気に下がった気がする。

>「では始めようか」

城栄が会議の開始を宣言すると、側近の立花は我々に資料を配り始めた。
時刻は六時ジャストである。うむ、正確なのは良い事だな。

やや遅れてNo.8の夜叉浪が会議室のドアを開けた。
彼はスーツはスーツなのだが、ファスナーで止めるタイプの所謂海軍服を着用しており、
肩で留めたマントをなびかせて空いている席へと腰を下ろした。
No.8、時間は正確に……。

もう一人の側近である桜庭が、プロジェクターを起動させ、スクリーンに何かしらの映像を映し出す。
これは……。昨日の、いや正確には今朝の本社ロビーでの出来事か?
スクリーンには半裸の男がNo.20姫野与一と交戦している様子が映し出されていた。
どうやらロビーの監視カメラで撮影した物を引っ張り出してきた様子で、多少画像が荒い。

「汚らわしい……」

外道院は苦虫を噛み潰した様な顔で、そう吐き棄てた。
珍しく彼女と意見が合ったな。今日は雨でも降るんじゃないか?

「――レオーネ、見た所貴方はただぼーっと立っているだけの様ですが?」

No.3に痛い所を突かれたな。視線を城栄に向けると奴はニヤリとしていた。
"始まったぞ"と言わんばかりの顔だ。

「私の力は必要ではないと判断したまでだ。
 それに……」

「私の広域戦闘に貴重な戦力を巻き込んでしまう恐れも在った」

『幻覚投影』と『思考強制』は無差別型だからな。
かと言って『精神構造迷宮化』は奴相手にはリスクが大き過ぎる。
しかしながら、『フェイズ2』を使う程の事ではない。
結果として私は先の戦闘には不参加と言う形と相成ったのだ。

――No.3は何処か不満げな表情を隠そうとはしなかった。

【レオーネ:現在地 総合会議室】
191廻間幻十 ◆O93o4cIbWE :2009/02/10(火) 22:28:59 0
>>176

背景には生い茂る木々が、大地には緑が茂る。

場に聞えるのは鳥達の囀りと、微かに聞える木々のざわめきしかない。

中心から広がる草原と外周部分との境に敷かれた石畳の上に、おもむろに備え付けられた長椅子に腰掛ける少女が二人。

一人は黒い髪をなびかせ、全身を黒一色で統一した少女、その瞳は大きく開かれ、その表情に変化は無くまるで人形のようでもあった。

もう一人は後手に髪を纏め弦楽器を収める様な型を携えている、
その姿は少女であるが、彼女から感じられる気風は少女のそれでは無く、彼女から流れる異端な気質を物語っている。

今は彼女達二人だけの空間、その空間に突如として"闇"が現れた。

闇は、始めは点であった、刹那、それを起点に亀裂が走る、闇は大きくその口を広げて行き、やがてその闇は人一人を飲み込める程に広がった。

広がった闇は、覗き込めば飲み込まれそうで、それでいてその向こうは、何が在るのかさえ解らない混沌へと通じているようにも思える。

その狭間から一人の、漆黒の外套に身を包んだ男が現れた。

「――神の憑き物か…」

その男――廻間幻十は腰掛ける少女を一瞥し、そう呟いた――――

【廻間幻十:卦宮夜と接触】
192七草 柴寄 ◆O93o4cIbWE :2009/02/10(火) 23:27:52 0
>>183

柴寄の答えに少年は少し満足が行かない様子だった。

「そうか?
 この辺も最近は物騒だからよ、気をつけたほうがいいぞ」

「ま〜、声をかけたのが俺達でよかったな」

そうだね、この辺は最近、物騒だから――

「とにかく、こんな所で倒れてちゃあ危ない。
 休むなら自宅とか、友人の家とか、ホテルとか……そういうところで休んだ方が賢明だぞ」

所がそうも言ってられないんだ、これから確かめないといけない事があるから。

少年は少し思案し、こう言った。

「リース、ここはこのお……この人を目的地にまで送っていこうかと思ってるんだが」

後ろの少年も相槌を打つ。

「俺は別にいいけど?」

"このお……"の部分が気になった、何を言い詰ったんだろう?

「……って、わけだ。
 もしあんたがよかったら、家まで送って行ってやろうかと思ってるんだが。
 どうだ?」

駄目だ、それは、今の自分は"機関"と名乗る組織に目を付けられている可能性がある、
それに、もしまた"アレ"が起きた場合自分がどうなるか解らない、だから、この子達を巻き込みたくないんだ。

「…うん、本当に大丈夫だから、ありがとう…
 君達も気を付けて、この辺りは、物騒だから」

そう言って彼らと別れようとした時、ふと、彼の上着の下に隠れていた物が目に入った、
あれは――刀、どうしてそんな物を持っているの?もしかして、この子達も―――

その場から立ち去ろうとした柴寄の足は止まり、ある疑惑に囚われた。

【七草:紅い月に疑問を持つ】
193ゴールドウェル ◆fEvO9ByRpU :2009/02/11(水) 00:18:04 0
>>190
スクリーンに昨日の襲撃の様子が映されているようだが、画像が荒くあまり参考にもならないだろう。
それよりも01の側近より配布された資料に目を通し、選定開始からここ4日の状況を頭に入れる事としよう。
…なんだこれは?

3月11日
『選定』開始のメールを貳名市在住の異能者に送信。送信時の異能者数100。
3月12日
参加者の戦意を促す事を目的に機関の構成員を参加させる。
3月13日
参加者から構成員の不足を補う事を目的に構成員を参加させる。『選定』の期限が1週間に延期。
異能者数528、うち38人死亡と報告。01により市内に『虐殺部隊』、セカンドナンバー投入。
3月14日虐殺部隊本格始動、『殲滅結社(ファンダメンタルデリート)』による本部強襲。『ハウンドドッグ』投入。

『虐殺部隊(ジェノサイドフォース)』に与えた任務――スコアの低い者、機関に敵対する者を抹消する事。
だが成果といえばスコアを達成していた機関の存在を知っていたとは思えない異能者を隊長の16が殺害。
そして裏切りの気配があったわけもなく11の部下を数名殺害。他は数十名の隊員が返り討ちに合うだけで抹消できた者無し。
支給品についても鬼の紋章の発動による自滅、虐殺部隊用別異能再現装置(仮)の紛失。

「…いくつか質問があるのだがいいかね?」

私は22を挟んだ16〜34の並んだ席の方に目を向ける。

「どうも資料には『虐殺部隊』が命令をまるでこなさず、味方の人員だけ無駄に消費してる
 役立たずの邪魔な存在としか思えないのだが、資料に重要な記入漏れはないだろうか?」

そもそも敵対する者はともかく、スコアの低い者に対してわざわざ介入する必要性など無いだろうに。
――01、このような選定のシステムをとっておきながら、そんなにこの街の異能者を生かしたかったのか?
それが機関の構成員を生贄にしようとも…

【ゴールドウェル:『虐殺部隊』の投入及び実績について疑念】
194煌神リン&桐北修貴 ◆u5ul7E0APg :2009/02/11(水) 01:28:32 0
>>71
「ねぇ…、あの…こっちで本当に合ってるのかな?」
「わかんないけど…、とにかく下に行けば出られるよ!きっと!」
どちらが上か下かもわからない闇の中に、若い二人の男女の囁き声がひびいた。
そこはナガツカインテリジェンスビル23階と24階の間の通気口。
煌神リンと桐北修貴の二人は、大胆にもこのビルからの脱出を試みているのだ。
「はぁ…、はぁ…、ちょ、ちょっと待って…。」
リンはもはや疲弊を隠せない表情で、前を進む桐北に懇願した。
彼女がこうも疲れているのは当然だ。彼らは一晩中こんな行動を続けているのだから。

遡ること4時間。ビル上層でリンは幽閉された桐北を助け出した。
互いの身の上を確認しあったのち、桐北は辺りに人影がないのを確認すると、リンにこう言い放った。
「ここにいちゃ何をされるかわからない…、今のうちにここから脱出しよう!」
言うが早いと桐北は早速リンを引きずってエレベータへと駆け寄る。
が、エレベータはセキュリティロックがかけられており、リンの持つカードキーでもロックを解除することはできなかった。
不安な表情を浮かべるリンを尻目に、桐北は静かに意識を集中させ始めた。
「弾け出すイメージ……、『放電(スパーク)』!」
パシッと一瞬火花が飛んだかと思うと、エレベータのコンソールはショートし、電源が落ちていた。
「さぁ!ここから下に降りよう!」
そう言いながらエレベータのドアを手動で開ける。
その後はワイヤーを伝ってうまく下まで行ったものの、そのエレベータは24階までしか続いておらず、その階の下の通風口に入らざるを得なくなったというわけだ。
そして、今に至る―――…

桐北は依然何かに取りつかれたように先を急いでいる。
リンは、自分の懇願をまるで無視する同行者にため息をついたが、同時に彼の様子の異変に気がついた。
(…震えてる?)
桐北の肩が、小刻みに震えていたのだ。

「…もうたくさんだ。何が『ヤハウェ』?何が『アブラハム』だよ?
 そんなワケのわからない言葉で、俺の人生はメチャクチャだ…。
 俺はただいつもみたいに、昼や夜たちにエサやって、普通に学校行って…そんな生活を続けたかったんだ。
 それなのになんで…!クソッ!籐堂院さんや戦場ヶ原さん達とは、俺は違うんだッ…!」
「!」

錯乱しつつある桐北の独り言に、よく知る名前が挙がったのに気づき、リンは身を乗り出した。
「ねぇっ、桐北さん。あなたは―――…」
バァン!
リンの言葉はしかし、すぐそばで鳴った大きな音によって遮られた。
「では始めようか。」
物音のした方向からは、数人の人間の声とともに、リンのよく知る人物の低くよく通る声が響いた。
(――城栄金剛…!!?)
二人は慌てて口をつぐみ、声のする方向を見下ろした。
桐北の足もと、ダクトの僅かな隙間から見えた光景は、何かの会議室のようだった。
(城栄だけじゃない…、兄さんも…!)
最上座に座る金剛の傍らに、にやけた顔で携帯をいじる兄の顔を見つけた。
機関のNo1とNo2が列座している―――、どうやらリンたちの真下の会議室では、たった今から機関の幹部会議が始められようとしていたのだ。
リンと桐北の二人は緊張からその場をピクリとも動くことができず、ただただ己の口をふさいで会議の光景を見ているほかなかった。

【リン&桐北:ナガツカビル23階通気口。会議室の光景をおびえながら傍観している。】
195宗方零 ◆idMa0miDD. :2009/02/11(水) 01:50:26 0
「ごめんなさい、ちょっと風邪気味で……。お休みの所すみません、取りえず中に入っても構いませんか?」

神重は私にまかせるつもりのようだった。
私はサンドイッチを皿に置くと、玄関へと歩き出す。

ドアを開ける。
控えめで真面目そうな青年だった。
「どうぞお入りください、なにぶん朝食前でして、食べながらでもよければどうぞ」

私は彼を事務所の奥へと招き入れ、椅子をもう一脚ひっぱりだして勧める。
「宗方零です、そちらは仕事仲間の神重。
では、お話を伺いましょうか」

【宗方零 恋島を事務所へ入れる】
196卦宮夜 ◆LuqsQs0P4w :2009/02/11(水) 09:52:12 0
>>176

空になったインスタント麺を捨て、ベンチに二人並んで座っていた。
まだ午前中のはずなのに太陽は暖かい陽気を放っている。まるで午後のようだわ。
そして、私はこんな事を語っていた

「………神族の遣いとして日本にやってきたかぐや姫は心優しき老人に拾われ、育てられた。
かぐや姫は老人から色々なことを教えてもらった。自分達の事、国の事、異能力の事。
老人は成長したかぐや姫に異能力の事を教え込んできた。かぐや姫は力は持ってなくても
素質はあった。老人はそれに目を付け、かぐや姫に戦闘術を教え込んできた。」

美月は夢中で聞いていた。フフ、まるで子供みたいねぇ。

「――かぐや姫は成長して美しい娘になった。ある日、五人の若い男がかぐや姫に求婚を迫った。どの男も屈強な若者で容姿端麗
しかも異能力者としてもかなりの実力を備えている。かぐや姫は困った末こう答えた
『私の求める宝を持ってきた屈強な異能者と婚約しましょう』と。
欲に駆られた男達はすぐさま自分の持ち得る財力を使い宝を探した。だけど一人の男は嵐に遭遇し、一人の男は絶命した。
でも、残りの三人は――…どうしたか分かるかしら?」

「…偽者を持ってきた」
「そう。三人は手に入れるものは不可能だと判断して、模造品を造りだした。異能力を行使する者までいた。
だけど結局は偽の物。全てバレてしまい、かぐや姫は外の人間に対し心を閉ざしてしまった。
そんなある日、帝が会いに来た。彼は無敵の強さを誇る異能者だった。彼も求婚を求めたが
かぐや姫を一目見て人ではないと判断した。そして結局、帝も婚約を諦めてしまった。自分には相応しくない――と。」

……妙な気配を感じるわね…並の異能者じゃない…

「帝との別れから早や数年。夏の夜、かぐや姫は月を見て涙を流すようになった。
老人が何故泣くのか、と質問するとかぐや姫は自分が人ではなく神の存在で、もうすぐ仲間の下に帰らなければならないと言う
この言葉はどこからか帝の耳に届き、十五夜の月の晩、かぐや姫を守る為に無数の軍勢が屋敷を取り囲んだ。
だけど、天から舞い降りた圧倒的な神の軍勢に人は士気を失い、かぐや姫は月に帰ってしまった…―――
これで竹取物語はお終い。まだ続きがあるけど――聞きたい?」

「聞きたい」
恐ろしい速さで即答してきた。興味津々ね…
「―かぐや姫は神の遣いとして人の監査の為に地上に降りた。だけどそのかぐや姫は途中で月に帰ってしまうことになる。
そこでかぐや姫は自分に模した代理を地上に残すことにした。模造品に名付けられた名は――卦宮夜。
使命を果たす為、卦宮夜は人との接触を試みたが実体を持たない卦宮夜は誰とも話す事が出来ない。
特殊な異能者からは『悪魔』とも呼ばれていた。辛かった。寂しかった。孤独は嫌だった。
その思いに押し潰されそうになり卦宮夜は最低の手段に出た。『神人憑依』。融合とは違って強制的に体を掌握する
リスクはお互いの命を削り、最悪、死へと繋がる禁忌。こんな事をしてでも誰かと一緒に居たかった。
今もこうして罪もない少女に憑いている。でもこの少女、与一は私を拒んだ。
度重なる憑依で削った命ももう僅か。私は相応の罰を受けいれなければならない。」

それは――与一の体の一部となることを受け入れ、彼女の"力"になること。
私は死んではいけない。こんな所では朽ち果てない。
その為にも――今は眼前の敵を殺す。
197卦宮夜 ◆LuqsQs0P4w :2009/02/11(水) 09:53:12 0
>>191

「さっきから見てる奴…いい加減出てきなさい…!」

突然、何もない空間が漆黒に染まりはじめ、ある程度広がった後、中から人が現れた。
黒い外套に身を包んだ青年。まるで死神ねぇ…その青年は私に対してか、呟いた。

>「――神の憑き物か…」

こいつは"与一の中身"のことを知っている。本当に只者ではないようね…
「あら?私を知ってるのかしら?へぇ、すごいじゃない。」

間違いなくコイツは危ない。美月を危険に晒すことは出来ない。
「美月…ここから出来るだけ離れなさい……大丈夫。私は死なないから。」

美月は少し躊躇いながら言った。
「――卦宮夜はもう一人じゃない。私がそばにいるから。だから…生きて。」
こう、一言呟き離れていった。強い子ね…涙が…出そうだわ…
でもごめんね…私はもう帰ってこない。さよなら…美月。

「さぁ…これで一対一よ。さて、あなたは私に何の用かしら?死神君。」

こいつがどんな異能力者かは分からない。さっきのモノから考えると空間操作ってところかしら
ここで罠が役に立つとは思わなかったわ。アイツは気付いてないようだし…

多分これが私の最後の仕事。私の魂が尽きるまでに…どこまで戦えるかしら…――

【幻十に質問、美月を逃がす】
198恋島達哉 ◆7/AlezFVy6 :2009/02/11(水) 12:29:39 0
>>182>>195
探偵さん――――いや、宗方さんの返事を待つ。奇妙な緊張感が俺の周囲を漂っている。
宗方さんにどう依頼を切り出そうかこの期に及んで悩んでいる。というのもどうも自分が臆病者に感じるからだ。
そりゃあこれまでの件から考えて、危険から身を守る為に護衛を頼むのは至極当たり前だ。訳の分からない連中を探求するよりは賢い選択だと――――。
だが……俺はバックに入ったカメラに目を移した。俺がこの町に来た理由は――――……。

>「どうぞお入りください、なにぶん朝食前でして、食べながらでもよければどうぞ」
気づけば宗方さんが、ドアを開けて俺を招いていた。この人が宗方さん……。カッコいいなぁ。
ハードボイルドな小説とか出てくるような、ストイックな雰囲気。優しさを浮かべたその目には、鋭い光が宿っている。
この人なら信用できるかもしれない。まだ何も話していないけど、俺は宗方さんを見てそう感じた。

俺は小さく頭を下げて、宗方さんの事務所へと足を踏み入れた。と、入るとすぐに一人の男性と目が合う。
この人が耳鳴りが言っていた、もう一つの気配か……。凄く理知的な人だ。言うなれば先生の様な……なんか怒られそうで怖い。
その人にも頭を下げる。にしてもこの人と宗方さんはどんな関係なのだろう。まず秘書ではない。仕事仲間か友人……それか俺と同じ依頼者かな?

宗方さんが奥から一脚の椅子を取り出して、俺の前に置いてくれた。申し訳無いです……。
テーブルの上には朝食中だったのだろう、サンドイッチや牛乳パックが並んでいる。俺の買ったコンビニ食よりうまそ……。
駄目だ。休職中だったのを押しかけた上に朝食まで頂くのはあまりにも図々しすぎる。唾を飲んで食欲を無理やり自制する。
そうだ、俺がここに来たのはこの人に俺の護衛を頼む為だ。椅子に座って、目を覚ますために太ももを小さくつねる。

>「宗方零です、そちらは仕事仲間の神重。
  では、お話を伺いましょうか」
宗方さんはもう一人の人に目を向けながらそう言った。神重さんか……覚えやすい名前だ。それに宗方さんの仕事仲間らしい。
宗方さんも神重さんも仕事が出来て頼れそうな人だ。俺の判断は間違っていなかったとしみじみ思う。
さて……依頼を申し込もう。ええっと……。

……言葉が出てこない。こんな所で悩むとか馬鹿の極みだな、何やってんだ俺。
簡単じゃないか。この町に来て以来、変な連中に狙われている。数日間だけ俺の身を守ってほしい、と、そう言えば良いだけだ。
お前は自分の命が惜しくないのか。今まで運良く生き残ってきたけど、今度こそマジで死んじまうぞ。ほら、早く言えって。
気づけば俺は視線を落としていた。両手が無意識に握り拳を作っていて、甲にじわりと汗が滲んでいた。

二人が俺を不思議そうな眼で見ている……多分。事務所まで来て依頼にドモる依頼者なんて聞いたことないぞ。
本当に駄目だなぁ、俺。判断力も無きゃ決断力も無いのか。思えば耳鳴りにも頼りっぱなしだし……。

……良いのか? 本当にそれで? 耳鳴りは何も答えない。俺にはその事が、耳鳴りからのメッセージに思える。
自分で考えろ、自分の為すべき事くらい――――と、ポケットに入れた携帯が震えた。一応マナーモードにしてたからな。
俺は二人に断って、携帯を開けた。そこには……九鬼からのメールが入っていた。
199恋島達哉 ◆7/AlezFVy6 :2009/02/11(水) 12:30:52 0
何だ、死んで無かったのかよ(笑)
お前みたいなゴキブリ並みにしぶといのが死ぬわけないしな
つーか、自費で出張した事忘れて遊んでるんじゃねえよな?
良いか、でかいスクープ取って来るまで帰ってくんじゃねえぞ

それで一回り男になって帰って来い。発泡酒で、乾杯しようぜ

……あの、馬鹿野郎。心配してくれるんじゃ……無いのかよ……。携帯を握っていた手が、なぜだか震えていた。
あれ、何で泣いてんだ? 携帯をしまい、潤んでいる両目を腕で拭う。黙って俯いて泣いて……まるで変人じゃないか、俺。
「ごめんなさい、ちょっと花粉症が……」
我ながら馬鹿な事言ってると思う。けど上手い言い訳が思いつかない。

良いんだ。世界を守る為とか、「機関」に復讐したいとかそんな大それた目標なんか無くて良い。
俺はスクープを取る為にこの町にいるんだ。「機関」なる組織が、異能力者を集めて行おうとしているとんでもない悪事を暴く為に。
それにもう一度会って、本音を聞きたい人が「機関」に二人いる。その二人に会うために、俺は……。

「先ほどは待たせてしまって申し訳無かったです。ちょっと眩暈がして……
 自分が貴方に依頼した理由は一つです」

宗方さんの目を見据える。その眼光に一瞬怯みそうになるが、目を離さない。

「この町に潜伏している、ある組織を調査して欲しいんです。……自分はその組織に狙われていましてね。
 その組織の素性を暴いてほしいのと、自分自身やられっぱなしなのが癪に障るのでね……。引き受けてもらえますか?」
【事務所内】
【宗方に依頼を申し込む】
200虐殺部隊隊長及び幹部 ◆6eLTPQTFGA :2009/02/11(水) 18:47:12 0
>>193

虐殺部隊隊長及び幹部が席に着き、数分後には機関No.7ゴールドウェルが到着。
それに続くようにNo.1城栄金剛、そのすぐあとにNo.8夜叉浪が到着する。

資料が配られ、城栄の側近桜庭によるプロジェクター映像が映し出される。
時刻や映像状況から判断するに昨夜の襲撃と一致する。
もっとも、我々虐殺部隊は街中に散らばっているためほとんど参加はしなかったのが現実だが…。

「多少は楽しめそうな相手だが…ヤツほどではないな。」
スティクスが独り言を呟く。勿論ヤツとは戦場ヶ原以外の何者でもない。

セルゲイは資料を見て顔を僅かにしかめ、黒神もまた映像に注目していた。
相変わらずロエルは城栄のほうを見ていたようだが……。

「…いくつか質問があるのだがいいかね?」

No.7ゴールドウェルの視線が虐殺部隊の着席しているほうへ向けられる。

「どうも資料には『虐殺部隊』が命令をまるでこなさず、味方の人員だけ無駄に消費してる
 役立たずの邪魔な存在としか思えないのだが、資料に重要な記入漏れはないだろうか?」

「なんだと!?
 黙っていればいい気になりやがってこのクソジジイッ!」

逆上したロルトが椅子から襲いかかるぞと言わんばかりの高い声を上げると
黒神がそれを手で制し、ロルトを落ち着かせる。

「クックク…申し訳ないNo.7……我々は少々気が荒い連中が多くてね。」

スティクスはロルトを怒るわけでもなく、馬鹿にしたような態度でゴールドウェルに謝罪する。
その態度が金剛にどう映ったのかはわからないが、金剛の視線を感じスティクスも態度を改める。

その件については、No.24が説明してくれますよ と一言加えながら

セルゲイは椅子から立ち上がり、全員に説明を開始する。
「まずゴールドウェル様のご質問にお答えいたしましょう。
 我々虐殺部隊は機関に敵対する者もしくは一定スコア以下の者を狙うという指令を受けていましたが…
 後者での一定スコアを達成していても漁夫の利でスコアを得た者は全て殺害するという密命もありました。」

「そしてこの資料にある鬼の紋章による自滅…加えて異能再現装置のお話ですが…
 これは異能再現装置開発者のNo.30にお話してもらいましょうか。」
セルゲイは席に着き、変わりに黒神が椅子から立ち上がり説明する。

「まず鬼の紋章、これは現在持続時間強化実験中です。自滅したのはその実験体のうちの一人ですが
 持続時間が依然と比べ、僅かばかりではありますが増加しております。自滅したとはいえいい研究結果でしょう
 なお、異能再現装置の件ですが…スティクス大隊長にお渡ししたのはプロトタイプのため、問題ありません。
 信号も途絶えているため、完全に使用不可能な状態になっており、解析も不可能でしょう。」

黒神が説明を終えると最後にスティクスが言う

「最後に…隊員の戦果はその資料に書くほどのものではないと割合となっているだろう
 それともわざと書かなかったか…それは我々が関与するところではありませんな。
 被害を受けてるとはいえ、実際はセカンドナンバーに劣らないほどの戦果をあげておりますよ。」

説明をし終えたところで、スティクスらは他に何か質問がおありかな?というような態度をとった。

【虐殺部隊隊長及び幹部:ゴールドウェルの質問に答え、他に質問があれば受け付ける態度】
201名無しになりきれ:2009/02/11(水) 20:02:40 O
【科学】米・ラドス博士、“NEO時空突破装置『β-2Z』”の作成に成功!期待膨らむ「タイムマシーン誕生の日」


「夢」が「現実」になる日は近い‥!
今月2日、アメリカのラドス・F・ハンソン博士が“NEO時空突破装置『β-2Z』”を作り出したのだ!
これにより、「タイムマシーン」を作りだす事は遠い夢ではなくなった!

タイムマシーンとはご存知の通り「過去や未来を行き来できるマシン」である。
子供達の‥いや、人類の夢とも言えるもの。当然、そんなモノ作れる訳もなくただの夢物語…‥だった。
しかし、“NEO時空突破装置『β-2Z』”の完成でソレは夢ではなくなる!

どのようにして過去や未来へ行くのか?
ここからは少々ムズかしい話になる。正直、博士から話を聞いた私もチンプンカンプンだった。

“NEO時空突破装置『β-2Z』”の持つ高エネルギー体「ダルミラ」がパンテー効果によって《デミラー現象》を引き起こし極小の時空穴を作り出す。
三次構造の三角地帯の中のペリンコ空間をミクロン刹那で通り抜けると共に、二次元から四次元の《次元チャック海溝》をリミュウート電波で開き、サンポリュートカルカスXを展開する。
すると、擬似七次元の海(通称ナルハーラ・マイマインズ・シー)が発生し、エイテットサークルの作用で右方向に《ライオンド亀裂現象》が起こる。
《ライオンド亀裂現象》は三次元の空間構造の100断層を破壊し、二次元転換の原因となる危険な現象だ。
そこにシャイトフォースXを左方向に向けて撃つ。こうする事により、左右からの《相互回帰運動》が発生し、それを利用して《ライオンド亀裂現象》を抑えるのだ。
その後、擬似七次元の海の最奥にあるマンレントンゲート※1を開くためにアイリンシューラ※2を発動させる。
それにより極小時空穴が緩み、外部干渉操作が可能となる。そこに超極小LLLのブラックイリスエネルギー(別名:E.71)で更に穴を広げ、固定する。
そうすると簡易タイムゲートの完成である。【トムモム理論】
この時、逆平行インパクトによるサブル崩壊が起こる危険もあるが、ダメインミサイルの空間補填による自動治癒効果で対処可能で危険性はほぼ0に近いと言う。
※1マンレントンゲートとは、過去や未来へ通じている所謂『トビラ』の様なモノ。ラドス博士が発見し、名前をつけた。
※2アイリンシューラはマンレントンゲートを開く『鍵』の様なモノ。コレもラドス博士が発見し、名前をつけた。

この夢のタイムマシーンだが“現時点”では、行ける時間までは決める事は出来ず、しかも一方通行だという。
しかし博士は「この問題は時間が解決してくれる。来年には完全完成するだろう。」と語った。
http://gimpo.2ch.net/test/read.cgi/news2/1221494175/
202廻間幻十 ◆O93o4cIbWE :2009/02/11(水) 21:13:04 0
>>197

「あら?私を知ってるのかしら?へぇ、すごいじゃない。」

ああ、"貴様等"のことなら、とても良く知っている。

廻間幻十は何処か達観視したような、それで居て鋭い目で少女を見つめながら口元を僅かに歪ませた。

「美月…ここから出来るだけ離れなさい……大丈夫。私は死なないから。」

彼女は隣の少女にこの場から離れるよう促した。

そして、美月と呼ばれた少女は

「――卦宮夜はもう一人じゃない。私がそばにいるから。だから…生きて。」

――それは二人だけの間だけに交わされた会話、そして約束。

美月と呼ばれた少女は去り、残った少女は寸刻――感傷的な素振りを見せたがそれを振り払う様に――

「――さぁ…これで一対一よ。さて、あなたは私に何の用かしら?死神君。」

鋭い目で男に対して語りかけた。


「――女は逃がしたか、まぁ、あの女は"力"にもならんな、それでいい…それにしても……クク…死神、か」

男は静かに口を開き、そして笑う、その笑いには何処か狂気が含まれている。

「貴様達の事は良く知っている、とてもとても良く…な」

男は、未だ開いている大きな闇に手を入れる、引き抜くとその手には一振りの刀が握られていた、
長さは二尺八寸、刀身は反り、一般的な日本刀と同じ型をしている。

男は手にした刀を一振りする、刃は風を切り裂き鳴く、そしてそれを合図にするかのように開かれていた闇は口を閉ざした。

「その力、貰い受ける」

男は唯一言、それと共に刀を構える、刹那――男は漆黒の矢となり少女に駆け寄り、すれ違いざま風の様に切り付ける。

――パキ――

その刃は少女には届かない、まるで目に見えない何かに遮られたかのように弾かれ、刀身は中心から二つに分かれて、その片割れが宙を舞った。

男は少女に振り返り刀を見やる、その表情に驚愕や落胆は無くむしろその結果に満足しているように見える、
そして手にした刀をおもむろに放り投げる、どさ、と二つの刀身は同時に大地を抉った。

「いいぞ…そうでなくてはな…」

それは、歓喜の声、それは賞賛の声、それは、安堵の声―――

【廻間幻十:卦宮夜に切り掛かった後対峙】
203卦宮夜 ◆LuqsQs0P4w :2009/02/12(木) 00:06:49 0
>>202

>「――女は逃がしたか、まぁ、あの女は"力"にもならんな、それでいい…それにしても……クク…死神、か」

男は美月が去るのを見て―不気味に笑った。ここで見逃してくれるのはこちらとしてもありがたい…が
不気味な男ねぇ…こいつも"力"…を求めているのかしら。けど、私の正体を知ってて襲ってくるってただの馬鹿だわ。

>「貴様達の事は良く知っている、とてもとても良く…な」

遠まわしなストーカー宣言と思っていいのかしらね…男は自分が出てきた暗黒空間から一振りの長物―刀を取り出した。
もう戦う気満々ね…やはりこの男、空間を操る能力者。さっきの貫通男といい、面倒臭い相手ばかりねぇ…
男が刀を振ると、風は切裂け、暗黒の空間は閉じた。そして男は、刀を構えた。

>「その力、貰い受ける」

と、宣言して、疾風の如く駆け出し、すれ違い様に斬りかかって来る。正面から斬るだけの単調な攻撃。
これくらいはねぇ…――先程、空に打ち上げた十の小鉄球を落とし、その一つに刀を受け止めさせた。

――パキ――

異能で出来た小鉄球と正面から打ち合った刀は刃にひびが入り、二つに砕け宙を舞った。
こちらの鉄球は無事に他の鉄球と共に私の周りを回っている。
男は折れた刀を地面に放り捨て、特に悔しんだ様子もなくむしろ―――嬉しそうな表情を作っている。

「いいぞ…そうでなくてはな…」
まただ…!こいつは絶対に上から物を言う。
これでも私は神族の一人。人間の無礼な態度は許せない。いや、許さない。

「あんたのその態度―――ムカつくのよねぇ…!」

――生かしては帰さない…絶対に。

「これが最初で最後。『串刺し猟奇』の力――御覧あれ――」

私が両手を広げると、男を中心に10m程の紅い血のような円が現れる。
円の空間内には――弾となる槍が創りだされ、少しずつ数を増していく。
槍の数は…数百を超え、その全てが男の方を向いて狙いを定め――

「聖なる槍よ――悪しき人の魂を打ち祓いたまえ――」
聖職者顔負けの合図と共に男へ向かい飛んでいった。…並の異能者ならこれで死ぬけど…奴は死なない。

槍が土煙を巻き上げてしまい、相手の姿が分からない。私はすぐに円を伸ばし、同じように槍を創り、更に上空にも槍を創り出す。
今の範囲は…この公園全体といった所ね…さぁ…どこからでも来なさい…

【数百の槍が幻十に襲い掛かる】
【卦宮夜の周りでは鉄球が動いている】
【相当数の槍が創りだされている】
204ゴールドウェル ◆fEvO9ByRpU :2009/02/12(木) 00:08:50 0
>>200
「…玩具については別に構わないさ。だが――」

各々の反発、反論を一通り聞き終えると私は質問を重ねる。

「君達のその戦果というものが具体的にどんなものなのか知りたいのだよ。
 実際に抹消できている者、生き残っている者がこの街にどれだけいるのか、
 漁夫の利でスコアに達した者…抹消対象とした者はどういった者なのか解っているのか、
 現在のこの街の異能者についての戦績、データが正しく取れているのか」

スクリーンに目を戻す。荒い映像の中から私の目が20の存在を示す。
死亡報告書と照らし合わせると、日本在住のセカンドナンバーはあの少女とこの場にいる者で全てか。
だがもう1人いるべき者がいない。

「正しく取れているのなら、11はどうしたのだろうか?」

死亡報告書には虐殺部隊が殺した11の部下達、彼女の側近の21が載っている。
なので彼女も来ているはずだが、この場にいないし死亡報告書には彼女は載っていない。
他の死んだ者に関してはわりとどうでもいい存在だが、世襲幹部の彼女はそうはいかない。
十数年前に行方が途切れた時も、あの忌々しき『私と私の世界(フラクタル)』に左目をやられていた。
もう片方の目も失っているような事になれば、私の時のように第三の目を移植されるかもしれない。
右手に巻かれた包帯越しに、自身に移植されて出っ張っている第三の目をなぞる。これは地獄だ。
もっとも事の発端は、奴の女を殺した彼女にあったとも言えるがな。

「君も気にならんかね?『絶滅魔神(ナパームカーニバル)』」

彼女の名前を検索しながら辺りを見回すと、彼の"関わりの深い人物"にその存在がヒットしていた。
…ん?

関連項目:離反事件

先ほど海岸にいた男と同様の項目――
――この男が例のナンバーを剥奪された男か。どことなく変わってて最初は気付かなかったが…
まさか本当にナンバーを無くなっただけでこうして幹部の席にいるとは思わなかったな。

【ゴールドウェル:街の異能者の戦績などちゃんと取れているのか疑念】
205廻間幻十 ◆O93o4cIbWE :2009/02/12(木) 21:51:46 0
>>203

「あんたのその態度―――ムカつくのよねぇ…!」

男の態度に少女は業を煮やし――

「これが最初で最後。『串刺し猟奇』の力――御覧あれ――」

そう言い両手を翳す、真紅の円が男の足元を中心に描かれて行く、
そしてその空間に槍が――、何処からとも無く現れる、
槍は尚も数を増して行き、その数は―――無数――
幾重にも幾重にも張り巡らされた槍の陣は時が止まった戦場の様に静止する、その光景はとても幻想的で
なんと神秘的なモノだろう―――

その静止は、嵐の前の静寂――鳥達は、嵐を察知し飛び去って行く―――

「聖なる槍よ――悪しき人の魂を打ち祓いたまえ――」

刹那――嵐が吹き荒れた、槍は怒号を上げて男に向かって飛んでゆく、
今までの制止は、そう、戦闘機を射出する際のカタパルトの様に、射出の力を蓄えていたのだろう、
槍は、放たれた―――

――粉塵が巻き起こる――最後に見えた男の表情は、尚も笑っていた、後に残ったのは、無残に抉られた大地と、針の山。

本来なら在る筈のアカイロも、串刺しにされたヒトガタも、そこには無い、
それはすなわち、槍は男の身体を穿つ事は無かったと言う事実に他ならない、なら、男は何処に消えたのだろうか――

――男は、少女の後方へ立っていた、其処は最初に男が現れた場所、少女もその場を動いては居ない、奇しくも二人の立ち位置は最初と同じ、振り出しに戻る、
ただ、始めと違いを挙げるなら、時の止まった戦場は、二人の空間を埋め尽くす程に膨張している事。

―――これだけの規模の能力を何の"補助"も無く単体で展開できる、クク、本当に面白い、貴様達は―――
206廻間幻十 ◆O93o4cIbWE :2009/02/12(木) 21:52:48 0

「今度は俺の"力"を見せてやろう――」

少女は振り返る。

男は再び"闇"もしくは"混沌"の中へ手を入れる、其処から抜き出されて行くソレは、
刀身の部分は混沌と同調するかの様な、アカイロが凝り固まったようなソノ色は、赤黒く、禍々しい、
そのフォルムは先端に行くにつれ細く鋭く、太古の剣を彷彿させる、
剣は禍々しさと神々しさを同時に内包し、混沌と形容するに相応しいモノを放っている。

その剣は、かつては神聖の在る物だった、そう、この男、廻間幻十が手にするまでは―――

「貴様も知っているだろう?まぁそんな事はどちらでも良いがな…」

     アマノムラクモノ
―――『天叢雲剣』―――この剣は伝承では壇ノ浦の戦いで消失したと言われているが真実は違う、
もっとも、俺はこの剣を『草薙の剣』と呼んでいるがね、そしてこの剣の能力は――

―――天叢雲剣は、かつて八岐の尾より出でて天照に献上された、
顕幽両界を支配する天照の加護が宿ったこの剣は、権力の象徴であり、支配の象徴である、
故に、この剣は、全ての剣を支配し操る事が出来る。

そしてこれが―――

「――『天羽々斬』――神の宿りし『十拳剣』の一振り…もっとも、神に嫌われている俺には、力を引き出すことは出来ないがね、
 辛うじて扱えるのは、こいつだけだ――」

そう言い廻間幻十は手にした天叢雲剣を振り払う、すると空間の狭間が産まれ、其処から様々な剣が顔を覗かせ廻間幻十の周囲を覆う。
次の一振りで狭間は少女の周囲を覆い、同じく様々な剣が顔を覗かせ少女を取り囲む。

「―――ッ――」

              ムラクモ
―――朽ちろ―――『天叢雲』――――

放たれた刃は同時、互いが互いを穿つべく放たれる―――

【廻間幻十:空間に無数の剣を召喚し卦宮夜を取り囲み射出する】
【廻間幻十の周囲の剣は卦宮夜の槍を迎撃、天羽々斬は廻間幻十を守る様に浮遊している】
207卦宮夜 ◆LuqsQs0P4w :2009/02/12(木) 23:40:12 0
>>207

やったのかしら?舞い上がった砂煙は無残に散っていき徐々に晴れていく。
命中したのならあの男の姿が――無い。代わりに嫌な笑い声が…幻聴かしら?

>「今度は俺の"力"を見せてやろう――」
後ろで男の声がした。振り返ると、男は自分が出てきた空間を再び作り出し――手を入れている。
瞬間、男が手にしていた異形のソレは――

>「貴様も知っているだろう?まぁそんな事はどちらでも良いがな…」

「―――天叢雲剣……!」

形はまさに神剣のソレだが、かつての輝きを失い禍々しい――言うならば魔剣となっている。

「――『天羽々斬』――神の宿りし『十拳剣』の一振り…もっとも、神に嫌われている俺には、力を引き出すことは出来ないがね、
 辛うじて扱えるのは、こいつだけだ――」

男は天叢雲剣で虚無を切裂いた。直後、切裂いた虚無から様々な剣が出現し男の周囲を浮遊している
多分私の槍は、あの現れた剣に阻まれたのだろう。
さらにもう一振りすると、空間は私を覆うように現れ、同じように剣が出現する。
刀、短刀、小剣、大剣、長剣、対剣、銃剣――――!
あらゆる種類の剣が私に刃を向け、そして放たれた。

「最高神の鎧よ!」
私の周りから四本の柱のような光り輝く巨槍が現れ、全ての剣を打ち弾く。
「神の領域」が出ている限り、私に攻撃は通らない。そして、領域は消えることは無い。私が死なない限り…

「神剣を扱いきれてないようね…それに、それはアンタの"力"ではない…!
さて、その剣を汚した罪は死んで償ってもらおうかしらね…!」

最早、手加減など出来ない。この男は神を邪な物に染めた…
それに私の魂も限界…腕が不規則に光り、発動の準備を始めている

「抵抗しなくていいわ……黄泉の国への案内は私の魂がしましょう…」

「神の領域」は十分な範囲に広がった。紅き「空間」は外部との繋がりを完全に遮断する血の「結界」へと変わる。
上空を数を増した槍が覆い尽くす。私の全てを賭けたこの槍達は、完全に全ての異能力を無効化する事ができる。


「さぁ…これで終幕よ…!」

全ての神槍は激流の如く、落ちる。全てを無へと飲み込む為に―――



――そして、私の魂は"彼女"の一部となって、そして、消えるだろう―――
―――美月……短い間だけど……とても楽しかった…そして嬉しかった…またどこかで会いましょう…同じ時を生きるものとして―――
―――与一…この力を上手く扱えるかは…あなた次第…そして、本当に手に入れなければならない物は他にある……―――
―――『嗜骨断片』と…恋島達哉に潜む闇に気をつけなさい…あなた達は近い時、再び巡り合う事になるでしょう……―――
――あぁ…最後に……一目で…いいから…仲間……に会い…たか………った……――――

【卦宮夜、消滅】
【あらゆる異能を打ち消す槍×500が襲い掛かる】
208レオーネ ◆GWd4uIuzU6 :2009/02/13(金) 01:01:52 0
>>200>>204

配布された資料に目を通す。全て既知の報告ばかりであり、
特に興味を引く内容の物でもなかった。
それにしても、この会議は茶番だな。
まるで会議と呼べる物ではない。これでは反省会だ。
ブリキ君ことゴールドウェルは資料を見て眉をひそめた。
まぁ、当然の帰結だな。私でも愕然とするよ。
世界規模の組織である機関が、こんな地方の片田舎で
これ程無残な戦果しか挙げられていないとなるとな……。

>「…いくつか質問があるのだがいいかね?」

ゴールドウェルはNo.16から34が連座しているテーブルへと視線を向ける。
その目は無機質な中にも若干の憤りを感じさせていた。

>「どうも資料には『虐殺部隊』が命令をまるでこなさず、味方の人員だけ無駄に消費してる
>役立たずの邪魔な存在としか思えないのだが、資料に重要な記入漏れはないだろうか?」

資料に書いてある文字だけを見ればそう思うのも無理はないな。
だが、彼らはよくやってくれていると私は思う。
城栄と私の理想の世界実現の為に身を粉にして障害を取り除いてくれている。
実際問題、虐殺部隊の投入が無ければセカンドナンバー達だけでは、
こんな悠長に会議など開いている場合ではなくなっていた筈だ。

ゴールドウェルの問いに対する虐殺部隊長を勤め上げるスティクスの答えが見物だな。
私は祈るように手を組むと、好奇の目でスティクスを見つめた。

>「なんだと!?
>黙っていればいい気になりやがってこのクソジジイッ!」

先に食って掛かったのはNo.34を"継いだ"少年フォルトニックであった。
この一見すると少女に見えなくも無い儚そうな少年は、前任者を倒してその地位を手に入れた
筋金入りの異能者だ。確か城栄の奴を盲信していた筈だ。
っふ……。羨ましいな、城栄。
先程のお返しとばかりに奴を目で笑ってやった。

>「クックク…申し訳ないNo.7……我々は少々気が荒い連中が多くてね。」

スティクスはフォルトニックのように逆上していきり立つ訳でもなく、
挑発するような言い回しでゴールドウェルへ詫びた。
最近思うのだが、スティクスの奴が城栄に似てきた気がする。
私も城栄と一緒に何度会議の場で追及を受けた事か……。

虐殺部隊の面々がそれぞれの報告を終えると、静かに口を開いた。
ふと気になったが、奴はどのようにして声を発しているのだろう?
……人口声帯か?

私はゴールドウェルが喋り終えた合間を見計らって、偶々傍に居た立花にコーヒーを頼むと
彼は機敏な動きで会議室を後にして行った。

「すまない、No.1。葉巻は有るかな?」
209レオーネ ◆GWd4uIuzU6 :2009/02/13(金) 01:03:37 0
>>208

今の今まで会議そっちのけで携帯電話(機連送だとは思う)の画面を
食い入るように見つめていたツバサが、初めて視線を私のほうへと向けた。

「えっ? レオーネってば、禁煙してたんじゃないの?」

身を乗り出して聞く程の事でも在るまいに……。

「――もう止めだ」

二年か……。今にして思えば随分長い事続けていたな。
自分でも正直驚いている。

城栄から投げ渡された葉巻の吸い口を鈍く光るシガーカッターで切り落とす。
これではギロチンのようだな……。そう見えるからこそ、
このタイプのカッターはギロチンカッターと言う名称なのだがな。
炙るように火を点けると、口に含む。銘柄はダヴィンチのモナリザか? 

煙を吐き出して一呼吸した後に、ゴールドウェルに対して口を開いた。

「心配ない。全て怠り無く進んでいるよ。
 データの方も正確に取ってある」

ゴールドウェル、お前のデータもな……。
炎魔復活に役立たせてもらうよ。

漸くコーヒーを沸かし終えたと見える立花が、室内へと舞い戻ってくる。
立花に礼を言うと、再び視線をゴールドウェルへと向き直す。

「付け加えて言うのであれば、"鬼達"は良く働いてくれているよ。
 彼らが居たからこそ、これだけの被害で済んだのかも知れないだろう?」

コーヒーを一口飲み込む。……美味い。
優雅な朝のひと時であれば格別なのだが……。
こんな殺伐とした状況で飲まなければならないとはな。

「それに――。本会議が開かれた意味は敵対勢力に対する物だ。
 追及や足の引っ張り合いは遠慮願いたい。

 先ずは全員一丸となって対処策を練る事が先決だ。
 ……違うか?」

――葉巻を吸い直すと久しぶりに吸う所為か、以前よりも非常に苦々しく思えた……。

【レオーネ:総合会議室】
210宗方零 ◆idMa0miDD. :2009/02/13(金) 12:09:08 0
嫌な予感がした。
彼が事務所の扉を開けてからというもの、妙な緊張感が場を覆っている。

彼は何者だろう?
服装は簡素で機能的、だが見たところ、この街で普通に暮らしている者ではないようだ、
どちらかというと、いつも何かに追われているような、そんな仕事をしているのだろう。
そしてすかさず彼を異能力の眼でスキャンする。
私の視界の中で、彼の体がサーモグラフィ状になる。
武器無し、バッグの中身はカメラ、それとポケットにはICレコーダー。
彼は記者か、雑誌のカメラマンと言ったところだろう。
私にとっては見慣れた人種だった。

神重に「問題なし」という視線を送る。
ついでに神重の眼球内に、微細な光波を送る。
視神経を痛めない光で文字を作り、神重の視野へ直接投影する。

「イライニン、ブキナシ、イマノトコロモンダイナシ」
「コウモリ、ガ、カレヲ、トラエタカ、カクニンサレタシ」

彼は椅子に座ると、しばらく話を切り出さなかった。
視線を外し、何かを言おうとしているが、言葉にでせなくなっているのは明白だ。
自省、無力感、焦燥感、羞恥心、様々な感情が彼からは見て取れる。
あり得ない経験をしてそれを誰かに伝えたい、だがそれを言葉にする術がないというような。

とても嫌な予感がした。
こんな依頼者が来るときは、極め付きの”ヤバい話≠抱えて来るものだ。

彼は両拳を握り、何かに耐えている。
いや、誰かからの助言を待っている――?

突然携帯電話の振動、彼は断りを入れて携帯の画面を確認した。
肩が震えていた、彼は泣いている。
「ごめんなさい、ちょっと花粉症が・・・」
それはないだろう、何故なら泣きやんだ後の彼の顔は違っていた。彼の顔にはもう、焦燥や迷いは無かった。
人は精神に受けた衝撃から立ち直るために涙を流す。
今まで私は多くの涙を見てきた、犯罪者や被害者や依頼人達もそうだった。
いわば儀式のようなものだ。
「先ほどは待たせてしまって申し訳無かったです。ちょっと眩暈がして……
 自分が貴方に依頼した理由は一つです」

彼は口を開く、私は静かに煙草に火を点けた。
彼の儀式は終わったようだ、
211宗方零 ◆idMa0miDD. :2009/02/13(金) 12:15:17 0
「この町に潜伏している、ある組織を調査して欲しいんです。……自分はその組織に狙われていましてね。
 その組織の素性を暴いてほしいのと、自分自身やられっぱなしなのが癪に障るのでね……。引き受けてもらえますか?」

私の口元から、煙草が落ちそうになった。
やはり嫌な予感は的中する。

クロノから引き継いだ記憶に出てきた人物。
恋島達也その人だったからだ。

私と神重はとんでもない爆弾を抱えたことになる。
彼が組織に狙われているなら、彼はおそらく――

「その依頼を引き受けましょう。
ですが条件があります、あなたの持っている情報を全て提供してください。」
組織に追われている理由、その証拠。それから――」

私は苦笑しつつ言う。
「まだお名前を伺っていませんね。
名前と職業くらいは教えていただいても良いでしょう?
こういう場所に依頼をするときは誰しもとまどうものですが――
ご安心ください、守秘義務は守ります。」

【宗方零 神重に恋島がどこにいたか確認する】
【恋島からの依頼を受ける ただし恋島の事は知らないフリをする】
212廻間幻十 ◆O93o4cIbWE :2009/02/13(金) 22:00:21 0

「最高神の鎧よ!」

少女の周りを光り輝く四方の柱が覆い、全ての刃を弾く。

「抵抗しなくていいわ……黄泉の国への案内は私の魂がしましょう…」

――次の瞬間――セカイが――紅く染まる―――

―――空は――アカイ――紅い極光が降り注ぎ――槍は滴る鮮血の様に――その雨を降らさんとする。

――「さぁ…これで終幕よ…!」――

紅い極光は、セカイの終焉、振り降る神槍は、全てを無に帰す終焉の執行者―――

―――――

セカイは蒼天を取り戻し、後には少女だけが残った。
大地は無に返る、モノの形を映すのは、少女以外に何も無い。

――開闢の後、最初に生まれたのは、混沌――

男は三度、混沌より出でる。

「……ハァ……ハァ………」

男は混沌より出でてその場に崩れ落ち、ゆらりと起き上がる。

「………コレが無ければやられていたな……ッ!ガハッ!!…ッ…ァ……」

男はその場に蹲る、異能力と、神剣の力の過度な行使、
神剣の力は本来彼が扱って良い力では無い、
神剣を邪に染め上げ魔剣に変え、その力を更なる力を持ってして行使する、そうする事で彼はやっとその力を使う事が出来た。

力を行使するために更なる力を使う、その連鎖は彼を確実に破滅へ追い遣っていた。

「…ッ…ハァッ……ハァ………クク…黄泉の国へは…未だ逝くわけにはいかないのでな……
 折角の女神様直々のご案内も…ご遠慮させて貰うとしよう…ッグハッ!!」

男は再び崩れ落ち、次に亡者の様に起き上がる。

「……後少しだけ――…れ……仕上げ…だ」

呟きながら、少女へ近づいて行く。

「…あ、あなたは…?」

少女が口を開く、先程までのそれとは違い今の彼女の声はは見た目相応の少女の声だった。

「……!」

男は立ち止まり、今までと違う表情を見せ、そして一人納得した。

「そうか…そういうことか…」

【廻間幻十:姫野と対峙・相当消耗している】
213姫野与一 ◆N8yTRtOcY2 :2009/02/14(土) 11:56:23 0
>>212

長い夢をずっとずっと見ていた気がする。あれからどれだけの時間が過ぎたのだろう?
目を開いて最初に映った光景は、私以外何も無い荒地。所々がボコボコにへこんでいて、しかも周りはなぜか住宅街だ。
バッグがない。私の全てが入っているバッグが。その代わり、ズボンのポケットには一丁の拳銃。

いつのまにか、荒地の中央、何もなかった場所で、「黒」が蠢いている
そこから男が現れ――その場で崩れ落ち、再び立ち上がった。

>「………コレが無ければやられていたな……ッ!ガハッ!!…ッ…ァ……」
現れた男は酷く消耗しているようだ。この男は――異能者だ。なぜ――こんな所にいるの?

>「…ッ…ハァッ……ハァ………クク…黄泉の国へは…未だ逝くわけにはいかないのでな……
 折角の女神様直々のご案内も…ご遠慮させて貰うとしよう…ッグハッ!!」

何を言っているの?
男は力尽きたのか、その場で倒れたが、どこからそんな力が出ているのか
再び立ち上がると、少しずつ、少しずつ私に近づいてきている。

>「……後少しだけ――…れ……仕上げ…だ」

この男は私を殺そうとしている。相手は、酷く消耗しているんだ。止めを刺すなら今しかない。

だけど――弱っている人間を殺してどうする?そんなものはただの殺人者でしかない。
そんな事は出来ない。私は今にも倒れそうな異能者に駆け寄り、手を差し伸べた。

「…あ、あなたは…?」
>「……!」

男の人はハッ、と目を見開き、何かに気付いたのか、立ち止まり考え込み……

>「そうか…そういうことか…」
一人で納得して、再び体制を崩し、転んでしまった。すぐ、私は彼に手を差し伸べた。
男の人の弱々しい手が私の手を掴む。

―――その瞬間、薬局の前で見せられたような光景が頭の中で流れていく――
あの後、卦宮夜が私を乗っ取り、あの男を殺したこと、恋島さんが異能者で姿を晦ましてしまったこと、機関の人に出会ったこと
私に助けを求めた女性―――美月を連れて街を歩いたこと、そしてたった今までこの場で死闘を繰り広げていたこと。
何百年もの間ずっと孤独だった神の物語の終焉。その壮絶な最後を飾った異能者こそ、この男だった。

神と殺し合いをしていた男が、今、私の手を掴んでいる。私は反射的にその手を振り払った
自ら差し出した手を、私は振り払ってしまった……このままでは殺される。
それでも、男は私に近づいてくる。私は使ったことも無い拳銃を男に向けて構えていた。

「いや…いやだ…そ、それ以上近づかないで…!」
男の頭上では―――三本の槍が彼を狙っていた。

【卦宮夜の1300年の記憶と能力が全て与一に引き継がれる】
【銃を幻十に構えていて、無意識に槍を創り出している】
214小村 禅夜 ◆3LPMHhiq9U :2009/02/15(日) 01:17:02 0
>>200>>204>>208
ツバサ=ライマースが慌てて入室したのでなんとも入りづらい空気だったが、
小村にとっては特に気にすることでもなかった。
普通に入り、普通に着席した。

着席後、左右に目を配り出席者について見まわした。
金剛はまだ来ていないようだがあとものの数分で来るだろう。
セカンドは欠席なのか殺られたのかは分からないがかなり空席が目立った。
カテリーナも居ないのが多少は気になったが、まさか朝まであの図書室で
倒れてるわけじゃあないだろう。
あの額への打撃は脳震盪を引き起こす程だっただろうが、異能者の回復力ならそこまで深刻にはならない。
だから心配にもならない。

カテリーナについて思慮していると、黒い一団が席に着いた。
『虐殺部隊』の新幹部達か。女、子供も居るとは虐殺部隊も大分変わったようだ。
虐殺部隊は昔から嫌いだ。理由は彼らが必要以上の殺しをするからだ。
それは今も変わっていないだろう。
別に人殺しは良くないとは――アーリーには悪いが――綺麗事は考えていない。
しかし必要以上にだすのもどうかと考えている。

虐殺部隊について思慮していると、今度は窓からの来訪者だ。
機関お手製のカラクリ人形 ジャッキー=G=ゴールドウェルだ。
この場において、軍服の年寄りは異質な存在に見えた。
窓からの入室にレオーネの顔に懸念の色がうかがえた。
これは、珍しくレオーネと意見があったな。
窓から入室など、浮遊してる姿を一般人に見られる可能性もあるだろうに。

(ビルヲ破壊シタ人物ニハ言エルコトデハナイガ…)
(うるさいですね。静かにしてなさい。)

精神内でのゴッドバルトの小言をあしらった。
その後時間ちょうどに金剛が到着し、それに続いて8も到着した。
215小村 禅夜 ◆3LPMHhiq9U :2009/02/15(日) 01:17:51 0
>>214
会議が始まると資料が配られた。
その内容は機連送のメールなどで知らされてるものなので別段良く見る必要も無かった。
スクリーンの昨夜の本部襲撃の様子もある程度見るぐらいにした。
幹部間の話し合いはゴールドウェルが虐殺部隊の幹部達に非難の声を浴びさせいた。
全く、協調性が無い奴らだ。
虐殺部隊の奴らにそんな言葉をかけたらどうなるか分かるものを…

(協調性……)
(なんですか?ゴッドバルト?)

「君も気にならんかね?『絶滅魔神(ナパームカーニバル)』」

虐殺部隊新隊長のスティクスが場を落ち着かせ、カテリーナについての話がこっちに振られた。

「別に、『浮遊兵器(オクトパスフロート』)。彼女には部下が結構居ますし、心配は無いでしょう。
 それともう一つ、あなたはもう少し年相応の態度をとって貰いたいものですね」

60歳か70歳か知らないが、いい年をした男性が私より年下の人間を責めるとは情けない。

(協調性……)
(だから、なんですかゴッドバルト。)

皆が口を閉じるとレオーネがタバコに火をつけ、口を開いた。
驚きましたね。てっきり舌が鈍るとかの理由で吸わないのかと思っていましたが。
優雅にコーヒーも飲み、こう言い放った。

「それに――。本会議が開かれた意味は敵対勢力に対する物だ。
 追及や足の引っ張り合いは遠慮願いたい。

 先ずは全員一丸となって対処策を練る事が先決だ。
 ……違うか?」

一日で二度も意見が合うとは、レオーネに拍手を贈りたいところですね。

【小村:会議を静観】
216ゴールドウェル ◆fEvO9ByRpU :2009/02/15(日) 08:46:41 0
>>209>>215
>「別に、『浮遊兵器(オクトパスフロート』)。彼女には部下が結構居ますし、心配は無いでしょう。
> それともう一つ、あなたはもう少し年相応の態度をとって貰いたいものですね」
>「心配ない。全て怠り無く進んでいるよ。
> データの方も正確に取ってある」
>「付け加えて言うのであれば、"鬼達"は良く働いてくれているよ。
> 彼らが居たからこそ、これだけの被害で済んだのかも知れないだろう?」
>「それに――。本会議が開かれた意味は敵対勢力に対する物だ。
> 追及や足の引っ張り合いは遠慮願いたい。

返ってきた答えはこれだった。
正確にデータを取っていながら11の所在はつかめてないのか、それとも見せられないのか。
詳細なデータを私にも見せてもらいたいのだが、コンピュータへのアクセス権も拒否されるし
この場でもどうしても私には見せる気がないようだ。だが――

「……」

04がいない事で隣り合っている03と05に気付く。
…まあ陰謀があるのはお互い様だがな。しかし貴様らがそういうつもりなら私にも考えがある。

「ああわかった。この事についてはもう深く問わんよ。だがな…」

私は再び『虐殺部隊』の隊長たる16を見る。

「わざわざ『鬼神機関(グレネイドサイクル)』を引き戻しながら、何故君が『虐殺部隊』の隊長を続けていたのだ?
 歴代最強の先々代隊長たる彼を引き戻しておいて"分隊長"レベルに置くのはおかしいだろう。
 君は結局司令塔から離れて戦いに赴き、結果半日中不在となって部隊の損害も"これだけ"大きくなったわけだしな。
 こういう部分を目を瞑っていれば勝てるものも勝てんよ」

かつて機関三大将軍として"海のポポフスキー"、"空のゴールドウェル"たる私と並んで称された"陸の東雲"
我々にあって彼に無かったのは家柄だけ。多少のコネでもあればファーストナンバーにもなれた程の男である。
肉体は老いたとはいえ、その経験に関しては誰よりも豊富であり、彼を配置する場所が間違っていたのはあきらかだ。
次に22を過ぎながら先程の幹部組みの席に目をやる。とくに私を敵視する34に。

「隊長不在の間25は隊員死亡者の魂を逃さないように集めておき、30は玩具のデータを取っていたのだな?
 そうなると一番手が空いていたのは34という事になるが、君のような子供に司令塔が勤められたのだろうか?」

私の配下で異能力の強化手術で成長の止まった者が出た事例はある。
異能力で若返った姿を維持する存在も聞いた事はある。
だがこの少女のごとき少年からそういったものは感じられない。
この歳なら戦場で役立つ力を持っていたとしても養成所で異能力の訓練、コントロールを学ぶ必要がある。
現にこの子の左手には制御装置が付いたままだ。緊急で戦場に借り出されてもこのような場に来れる立場にはならない。

「こういった落ち度から見直すべきだと私は思うのだがな。
 34、君をセカンドナンバーに任命したのは誰だ?何故君はその席に選ばれたのかね?」

【ゴールドウェル:虐殺部隊の構成について疑念】
217神重智&敬 ◆6eLTPQTFGA :2009/02/16(月) 16:39:26 0
>>211
宗方が招き入れた仕事の客…を眺めながら神重はサンドイッチを食べる。
だがこの青年はどこかで見たことが…という疑念が神重の脳裏に浮かぶ。

依頼者が宗方と会話をしている間、疑問が疑問を呼んだ。
(念のためだが……蝙蝠の記憶を探りなおすか)
(それがいいと思うぜ、兄弟)

この街に放たれた数百匹を超える吸血蝙蝠。
彼らは軽い監視カメラのようなもので、異能者を捜索していた。
追跡用蝙蝠と違うのは情報が最高まで引き出されないこと…音声、映像どちらかが吸血蝙蝠にはかけている。
それを補ったのが追跡用蝙蝠だ…代わりに彼らの戦闘能力は皆無と言ってよい。

彼らからの情報を辿るが…いい物は無かった。
次に吸血蝙蝠からの情報を検索する。

イライニン、ブキナシ、イマノトコロモンダイナシ
コウモリ、ガ、カレヲ、トラエタカ、カクニンサレタシ

急に視界に文字が浮かび上がる。最初は戸惑ったもののそれが宗方の能力だと知ると検索を再開する。
(さすが俺の認めたヤツだな……俺と同じく鋭い勘してやがるぜ)

ザザッ――
吸血蝙蝠たちの情報の中に彼を……見つける。
だが同時に……神重は彼を疑う映像を見つけてしまう。
ザザザ――ザッ――

映ったのは、この依頼者。
そしてもう一人……あの"機関"と呼ばれる物に所属していると思われる娘…箱を操る残忍な少女。
依頼者と彼女は退治してるわけでもなく、何かの受け取りを行う…つまり……。

「この町に潜伏している、ある組織を調査して欲しいんです。……自分はその組織に狙われていましてね。
 その組織の素性を暴いてほしいのと、自分自身やられっぱなしなのが癪に障るのでね……。引き受けてもらえますか?」

情報検索はこの言葉でまた遮られることとなった。
しかし再検索をする必要は無いだろう。

「まだお名前を伺っていませんね。
名前と職業くらいは教えていただいても良いでしょう?
こういう場所に依頼をするときは誰しもとまどうものですが――

その言葉とほぼ同時に窓から追跡用蝙蝠が一匹事務所に入ってくる。
追跡用蝙蝠とは本来一体のターゲットに絞って捜索する追尾用蝙蝠だ。
それが入ってくるということは………つまり………!!!
(智…こいつは…"アブラハム"だ…間違いない
 偵察用蝙蝠一匹に一部映像が入ってなかった場所がある…ソイツはアブラハム用に放った蝙蝠…
 そして…この依頼主の首筋を見ろ)

智が目をやるとなるほど、確かに小さな点がポツポツと二つ見える。
彼が"アブラハム"だというのは間違いないだろう。
しかし、いきなり捕まえて逃げられでもしたらそれこそ機関の人間だ…何があるかわからない。

宗方の近くにある紙にうっすらと血文字でこう記す。

カレ ガ アブラハム 
キカン ノ ニンゲン ト セッショク シテイル
チュウイサレタシ

さて…宗方はこの紙に気づいてくれるだろうか……
【神重:傍観しているが、状況を判断している 恋島を機関の人間と若干勘違い気味】
218恋島達哉 ◆7/AlezFVy6 :2009/02/16(月) 21:45:24 0
>>211>>217
宗方さんの返答を待っている時間が異様に長く感じられる。この感覚はレオーネさんに「機関」入りを志願した時以来だ。
この時点で完全にレオーネさんとは敵対する事になるだろう。それでも俺はこの決断を悔いる気は無い。
あの人には同じ人間として聞きたい事が山ほどある。「機関」の幹部としてではなく、同じ人間として。
今度こそタダじゃすまないかもしれない。だが、もう逃げるのはやめだ。男としても、ジャーナリストとしても。

すると宗方さんは吸っていた煙草を灰皿に置き、俺の目を見据えた。息を呑む。
「その依頼を引き受けましょう。
 ですが条件があります、あなたの持っている情報を全て提供してください。」
 組織に追われている理由、その証拠。それから――」

マジですか……! 俺は自然にテーブルの下の両手を握っていた。俺の目標実現が一歩始まったんだ。
と、興奮気味な俺を諭すように宗方さんは柔らかい笑みを浮かべながら言葉を続けた。

「まだお名前を伺っていませんね。
 名前と職業くらいは教えていただいても良いでしょう?
 こういう場所に依頼をするときは誰しもとまどうものですが――
 ご安心ください、守秘義務は守ります。」

あ〜……精神的にテンぱり過ぎてて自分の事を何一つ、宗方さんに教えてなかった……これじゃあ先が思いやられるぜ。
ガサゴソとカバンを漁り、メモ帳を取り出す。ぶっちゃけ証拠になる物なんて無いぜ……服屋で知らないおばさんに刺された時に巻いた包帯とこれくらいだ。
宗方さんが俺が提示した情報を信じてくれるとは正直思えない。だって俺でさえ、まだ半信半疑だからな……
まぁ、マイナス思考になっててもしょうがない。俺は軽く頷いて返答した。

「紹介が遅れてしまってすみません。自分は恋島達哉。こいは恋人のこい、しまは八景島のしまで、たつは達するの達、やは……
 あ、書いた方が早いですね」
下手な例えで説明した事が妙に恥ずかしくなり、俺はメモ帳の一ページを切り取り自分の名前を書いて宗方さんの前に置く。

「東京の方で出版社に勤めておりまして、この町には取材の為に来たんです。えっと……」
名刺……名刺……あれぇ? なんで何処にも無いんだ? 出し慣れている筈の名刺が全く見当たらない。
輪ゴムで束に重ねてあるから無くしてもすぐに見つかると思うんだが……まぁ無い物は仕方ない。

「ごめんなさい、ちょっと名刺を無くしてしまったみたいで……。
 あまり大きい声で言えないんですが、自分が勤めているのはマイナー系のオカルト雑誌を出版している会社なんです。
 それで、巷に流れる都市伝説を調べるという名目でこの町に来たんです。で……」
ここから本題だ。宗方さんは俺の話を静かに聞いている。神重さんも朝食を取りながら耳を傾けている……様に見える。
219恋島達哉 ◆7/AlezFVy6 :2009/02/16(月) 21:46:16 0
「自分が初めてこの町に来た時に、妙な箱を使って男性に暴行を加えている少女を見かけたんです。その少女は自分にも暴行を加えてきて……。
 どうにかその場は凌げたのですが、それからだったかな。取材を進めるたびに、妙な連中に絡まれるんです。まるで俺の行動を把握してるみたいに。
 その連中と最初に遭遇した少女は自分たちを「機関」と呼称していて、自分以外にも……そうですね」
手元のメモを見る。てかやけに口が滑るな、俺。

「普通の……一般人も手に掛けてる節があります。催眠かはわかりませんが。とにかく恐ろしい連中で、幾度か死にかけた事もあります」
俺は椅子から立ち上がり、服の裾を掴んでたくし上げた。他人のこの貧弱な体を見せるのはいささか恥ずかしいが、どうこう言ってられない。
目線を下に向けると、国崎が巻いてくれた包帯が露わになった。流石に血は止まっているが、血の跡である薄い朱色が全体に広がっていた。

「これはその「機関」に操られた人が自分を刺した時に負った傷です。あと少しで死ぬかと思いましたよ……」
実際、あの時はもう駄目かと思った。ただのおばさんがあれほど強い力で襲ってくるとは思いもしなかったからだ。
もし包丁がもっと深く刺さっていたら……と思うと鳥肌が立って背筋がぞっとする。宗方さんと神重さんの反応を見るのが恥ずいのですぐに服をしまい椅子に座る。

「自分が考えるに、「機関」に狙われる理由はたぶん彼らに関する何らかの秘密を知ってしまったからだと思います。それが分かれば何とかなりそうなんですよね……。
 証拠は先ほど貴方たちに見せた包帯、および傷跡です。……恥ずかしながら、「機関」に関する情報は何も掴めて無いんです。ただ」
「機関」が派閥に別れている事は伏せておこう。なんとなく「機関」の隙に付け込めそうな情報だからだ。
それと当り前の事だが、レオーネさん、いや「機関」に志願した事は黙っておこう。あれはアレだ。……気の緩みだ。
……でだ。宗方さんにこれから伝える事は、俺が一番重要視している事項だ。多分これが一番「機関」の真実に近づけると思う。

「彼らは「アブラハム」と呼ばれてる人物を探しているみたいです。正確には「アブラハム」って能力ですかね……。
 その「アブラハム」を集めて何かを行おうとしている。それが「機関」の目的だと、自分は確信しています」
再度立ち上がり、宗方さんに顔を向けた。俺の決意を察したのか、静かに話を聞いてくれていた宗方さんが俺に目を合わせてくれた。
俺は宗方さんを見据えながら、言った。

「このままだと、この町の人たちが「機関」の闇に飲まれると、自分は危惧しています。その前に「機関」の支柱を叩き潰す。
 その為には貴方の力添えが必要なんです。……馬鹿な男の妄言だと思って貰っても構いません。ですが、自分は本気です」
宗方さんの前に置いた、自分の名前を書いた紙を手元に戻すと同時にカバンからボールペンとキャッシュカードを取り出す。
……良し、これでいい。ボールペンをしまい、紙にキャッシュカードを添えて再び宗方さんの前に置く。

「そのカードには自分の全財産が入っていて、そして紙にそのカードの暗証番号を書いておきました。
 ……宗方さん、自分はこの件に人生を掛けるつもりです。もし自分と共に「機関」の暗部を暴いてくれるならそれを受け取ってください」
そして俺は……宗方さんに深く頭を下げた。これが今の俺が出来る限りの誠意だ。
今はただ、俺は俺の信じる方向に進みたい。たとえその先が真っ暗闇でも。
【事務所内】 
【宗方に自己紹介を行う。再度、宗方に依頼を申し込む】
220恋島達哉 ◆7/AlezFVy6 :2009/02/16(月) 21:49:55 0
訂正すみません
×他人のこの
○他人にこの
221戦場ヶ原 天 ◆u5ul7E0APg :2009/02/17(火) 02:01:45 0
>>188
「……『ヤハウェ』。……もしこのゲームが、その人種を探し出す為に行われたとしたら。
煌神が連れ去られたのもそこに理由があるなら、奴らが敢えて捕縛という手段に出たのも合点がいくな」
池上は戦場ヶ原の言葉を聞くなり、少し考え込むしぐさを見せると、誰に言うでもなくひとりごちた。
『ヤハウェ』―――…
聞き覚えのある言葉に戦場ヶ原は眉間にしわを寄せた。
池上は、リンがその『ヤハウェ』であるがゆえに、あの場でNo.2に殺されることはなく捕縛されたと言ったのだ。

(『ヤハウェケース2の反応を補足。作戦行動に移ってください。』)
「!!」

戦場ヶ原の脳裏に、忌々しい3年前の光景がよみがえった。
天音 滴―――。戦場ヶ原に人の心を与えた彼女は、『ヤハウェ』という言葉の許に金剛に殺された。
金剛が滴の体から青白く光るエネルギーのようなものを抜き出して殺した光景が、戦場ヶ原の脳裏に浮き上がる。
(リンが…、滴と同じ『ヤハウェ』―――…?)
そして彼はようやく、今までリンに感じてきた滴との共通点、その違和感の答えに気がついた。

「…そういうことかよ。」

戦場ヶ原もまた池上と同じようにひとりごちた。
リンが滴と同じ理由で狙われたのだとしたら、リンの末路は決まっている。
金剛によって異能力を吸い取られ、殺される。
そこで戦場ヶ原の肩に、体温の感じられない手がポンと置かれた。
「そうなると手がかかるな……。
ま……お前も少しは冷静な面を見せたんだ。一応、そいつに期待させてもらうぜ」
そう言う池上の顔はいつもの無表情ながらも、どこか憐みを込めた顔に見えた。
沈着冷静な彼のことだ。おそらく戦場ヶ原の話を聞いてリンのその後を予想でもしたのだろう。

「フン…。リンはもう死んでいるとでも言いたそうな顔じゃねぇか。」

肩の手をどかして、戦場ヶ原は言い返す。
意外そうな顔をする池上からナガツカビルに視線を移して、戦場ヶ原は言葉を続けた。

「リンは生きている。…根拠はねぇさ。ただ、俺はそう信じている。理屈じゃねぇんだ。
 底の底まで信じ通せる存在…。池上燐介。貴様には一生わかんねぇ感覚だろうがな。」

一匹狼の池上への皮肉で言葉を締めると、戦場ヶ原は国崎薬局へと歩き始めた。

「話は終わりだ。無駄口叩いてるヒマはねぇ。先を急ぐぞ。」

【戦場ヶ原:国崎薬局へ移動。】
222廻間幻十 ◆O93o4cIbWE :2009/02/17(火) 22:17:19 0
>>213

(そうか…そういう事か、成る程な――)

今のこの女は、神であって神ではない。

目の前の女は倒れた俺に手を差し伸べて来る、酷く困惑した瞳、何も覚えていない、か。

「…」

差し出されたその手を掴み改めて目の前の女の顔を見る。

―――!――

次の瞬間目の前の女は何かに撃たれた様に動きが止まり蒼白になる、
そして、女の様子が変わる、掴んだ手を払い、後退りする、その表情は、まるで死神でも見るような眼だ。

「いや…いやだ…そ、それ以上近づかないで…!」

ここに来て今までの記憶が戻ったか、いや、それ"以上"の記憶も戻っている、
女は拳銃を此方に構えて拒絶する、俺に殺されると思っているのだろう、拳銃を握るその手は震えている。
彼は静かに立ち上がる。

「…」

彼は何も答えない、代わりに、彼女を見るその"眼"が、言葉以上の全てを物語る。
彼女は動けない、その眼を見た瞬間、全身は強張りその引き金すら引けなくなる、
滴る汗は喉首を降り彼女の体をなぞって行く。
喉は渇き、それはもう喘ぎ声しか出せなくなる。

「……う…ぁ……」

金縛りに遭った様に動けなくなる彼女をその眼で見つめながら彼は彼女に語りかける。

「…聞け、今のお前の中には恐らく神の"記憶"と"力"が内包されている」

彼女は聞えているのかいないのか、動けない彼女はただ彼の言葉を聞く事しか出来ない。
彼はすっと眼を閉じ、同時に彼女を縛っていた柵が解かれる。

「……此処からが本題だ、お前は、その神の遺産を持って何を成す?」

静かに眼を開き、今度は彼女に問い掛ける、その瞳からは彼が何を考えているのかは解らない、
ただ、その瞳は、彼が初めて見せた一人の人間を見る瞳であった。

―――その答えは、すぐに見つかるものでもない、だが、だから今此処で問う必要が在るのだ、と。

【廻間幻十:姫野与一に問い掛ける】
223虐殺部隊隊長及び幹部 ◆6eLTPQTFGA :2009/02/18(水) 20:54:36 0
>>216

「隊長不在の間25は隊員死亡者の魂を逃さないように集めておき、30は玩具のデータを取っていたのだな?
 そうなると一番手が空いていたのは34という事になるが、君のような子供に司令塔が勤められたのだろうか?」

「こういった落ち度から見直すべきだと私は思うのだがな。
 34、君をセカンドナンバーに任命したのは誰だ?何故君はその席に選ばれたのかね?」

「クククク……ハーッハハハハ!」
話を聞いていたスティクスが突然大声で笑った。

「いや…失礼した…"歴代最強"というのは過去の話
 老いた彼の力では…俺はおろか、No.34といい勝負といったところですよ」

スティクスは笑いが堪えられないと言わんばかりに手を振りながら答える。
もっともそれは、ロルトが暴走状態なら…の話だがと頭の中で付け加える。

「それに今の彼ではまともな戦況判断は不可能だったでしょう。
 我々の部隊に引き戻すため…かなりの薬を投与しましたので…
 それともあなたは、忠誠心が無い者を隊長に立てて、第二の離反事件を起こしたいのですか?
前No.100…山田権六が引き起こしたあれほど大規模な離反事件を……機関へのダメージは恐ろしい物と思いますが?」

スティクスに変わり、セルゲイが東雲のことについて反論する。
セルゲイは冷ややかな目をでゴールドウェルを見たが、彼の視線はロルトにあった。

それに気づいたロルトはゴールドウェルを睨み付けながら言う。
「僕をNo.34に任命してくださったのは、金剛様だ
 あまりに調子に乗っていると今この場でお前を僕の能力で――!!!

「いいから、お子ちゃまは座って会議を聞いてな」

黒神がロルトの頭を抑えて椅子に無理やり座りなおさせる。
黒神はゴールドウェルの方を向いて、話し出す。

「前No.34も虐殺部隊幹部でしたが、ロルトとの実験途中で死亡
 その能力をお買いになられた金剛様によってロルトはNo.34に任命されたのです」
それから……とゴールドウェルのもう一つの疑問に黒神は答える。

「戦場では司令塔が倒されることによって部隊が総崩れになる場合があります。
 その場合、異能力がより優れ、生存能力が高い戦士を司令塔に置くことは当然のことと思いますが?
 実際No.34は今までの実戦でほとんど傷を負ったことが無い戦士ですよ」

「それとも……No.7は我々に長々と嫌味をいうためにこの会議にご出席されたのですかな?」

クックック、と笑いながらスティクスはゴールドウェルに会議が進まないことの嫌味を放った。
彼らには彼らなりの自信があったからだ、勿論それが金剛の目にどう映るかは別であるが……。

【虐殺部隊:ゴールドウェルに反論する】
224姫野与一 ◆N8yTRtOcY2 :2009/02/18(水) 21:02:31 0
>>22

公園だった荒地の中央。
倒れていた男はゆらりと立ち上がり、私を見た…いや、睨みつけた。

あ…れ…体が動かない?震えも止まり、体が岩のように強張り動かない。
怖い…怖い怖い…怖い…!…これが死ぬ時の気分なのかな…体中から汗が止まらない。頬も涙で濡れているのが分かる。
私と男の立場は一気に逆転し、男は……私に話し掛けてきた。

「…聞け、今のお前の中には恐らく神の"記憶"と"力"が内包されている」
彼は静かに眼を閉じ話を続ける。
「……此処からが本題だ、お前は、その神の遺産を持って何を成す?」

神………卦宮夜の"力"。私はあの時、あの男から、美月を、恋島さんを守りたいと願い、この力を手に入れた。
命を削ってまでして手に入れた力。誰かを守る為に誰かを犠牲にするという矛盾を抱えた強大すぎる力。
だがそれがなんだ?この力で何をしたい…?あの男も倒してしまった。守りたいと思った人も行方を眩ましてしまった。
だけど、だけど私は―――

「何がしたいかなんて…分からない。だけど…今は…――この力を使って私は生き抜かなきゃならない。」

そう――再び―――彼と巡り合う為に―――
私は異能者と正面から向き合って、しかも会話をしている。
男の眼には強い意志が篭っているように見える。
この男には聞きたい事がたくさんある。今なら…

「なぜ、あなたは私を…いいえ、卦宮夜を襲った?なぜ古の神剣を手にしている?あなたは…何者ですか」

心が落ち着いてきた。拳銃は私の手から零れ落ち、頭上の槍もいつの間にかなくなっていた。
もしかするとあれは私の心に反応して創り出されたのか…

いつのまにか荒地の外で人が立っている。服装が変わっているがあれは…美月……
あれ……真っ暗になって力が抜け―――て―――まだ……

【幻十に質問】
【与一気絶、美月が現れる】
225池上 燐介 ◆qqu0tZFsYU :2009/02/18(水) 22:17:53 0
>>221
>「リンは生きている。…根拠はねぇさ。ただ、俺はそう信じている。理屈じゃねぇんだ。
> 底の底まで信じ通せる存在…。池上燐介。貴様には一生わかんねぇ感覚だろうがな。」
彼の言葉は、彼自身が言っているように理屈でなければ根拠もないものだ。
だが、「生きていてくれ」というような一抹の期待感から飛び出した言葉でもなさそうであった。
つまりはそう、確かに彼は心の底から彼女が「生きている」と信じ切っているのだろう。
「──まるでエスパーの世界だな。馬鹿馬鹿しい」。──俺がそう否定しなかったのは、
一瞬でも『信じている』という言葉だけで、どこか万人を納得させる力があるように感じられたからだろう。
だが、それでも今の俺には、それが山田の言うとおり理解し難い感覚であることには変わりない。
俺は伸びた前髪を軽くかき上げながら、静かに呟いていた。

「そう……かもな……」

これ以降、俺は煌神については何も聞かず、山田と並んでただ道を歩き続けた。

──時は進み、午前8時調度。俺と山田の二人は国崎薬局前に辿り着いていた。
店の中からは人の気配が感じられない。どうやら廻間らやそして店長も不在にしているようだ。
だが、それも想定内である。俺は店のドアを開けると、山田と共に店内へと入っていった。

「やはり昨晩のままか……。廻間もまだ来ていないらしい。まぁ、待っていればその内来るだろう。
ここでしばらく待たせてもらうとしようか」

昨晩とどこか変わった点はないかと店内を一瞥しながら、俺は店内奥へと進んで行った。
奥の部屋には大きなタンスが置いてあったので、中を物色してみると、
その中には俺が着ていたのと同じ白いワイシャツが仕舞われていた。
俺はそれを手に取ると、今まで着ていた無数の焦げ痕がついたシャツを脱ぎ捨て、
代わりに手に取ったワイシャツを着込んだ。
俺より身長があり、体格の良かった国崎の家のタンスで見つけたもののせいか、
俺には少し大きめのサイズであったが、それでも焦げて穴だらけのシャツを着ているよりは
人目に関しても、そして恐らく防御の面に関しても多少はマシとなっているだろう。
着替えを終えた俺は、部屋に敷き詰められた畳に腰を下ろした。

そこで俺は、目的地に到着して何もすることがなくなったせいだろうか、
今になって体に受けた火傷が強くズキズキと痛み訴えていることに気がついた。
(……傷、か……)

服越しに火傷を手で触りながら、俺は国崎との闘いで見た彼の異能力を思い起こしていた。
国崎の異能力──見た限りでは、彼は確かに損傷した体組織を再生させる力を有していた。
(奴を協力させれば、怪我に関しての心配は無用になるかもと考えていたが……アテが外れたな。
朝になっても戻って来た気配がないところを見ると、もはや奴が戻ることはないと考えるべきなのだろう)

これから先の闘いは、少しの傷でもそれが命取りになりかねない。
俺は一つ溜息をついたあと、少しの後悔の念を持って、呟いた。

「誤算……だな。やはりあの時、無理にでも織宮を引き入れておくんだったか……」

【池上 燐介:国崎薬局に到着して服を代える。現時刻AM8:00】
226ゴールドウェル ◆fEvO9ByRpU :2009/02/18(水) 22:33:57 0
>>223
「…ふっ。どうやらお前達は重大な思い違いをしていたようだな」

なるほど…『鬼神機関(グレネイドサイクル)』ともあろう男が落ちぶれてしまった理由はそこか。
薬付けにしてまで引き戻していったい戦力になると思ったのか…実際彼は1人も倒せずに死んでいる。
まあ死んだ者の話をいつまでも引きずる性分ではないが、せっかくだからダシにさせてもらおう。

「まず『鬼神機関(グレネイドサイクル)が機関を辞退している理由は反感を持っていたからではない。
 そもそも前隊長による離反事件の起きた原因はその01にあったのだよ」

話題に挙げられている01の方を向く。

「この男が間違う事などたくさんある。34の人選もあきらかなミスだろう。
 私は34のような子供が駆り出されるなら、前線に出るべきだと言いたいわけだ。
 司令塔で生き残っていた所で役には立っていないではないか?
 セカンドナンバーの投入に関してもそうだ。何人死んでいる?
 この男が言うように、この投入が選定の参加者を減らす目的なら失敗しているな」

この男の采配が間違っていた、参加者の想定外の強さを持っていたなどで片付けば簡単な話である。
だが――

「もっとも…"それ"を狙っていたのなら――貴様の本当の目的が、行動が全て
 "自分の意に沿わぬ構成員の排除"なら計画通りと進んでいると言えるがな」

01を睨んで一瞬置くと、次に05の方に目を向ける。

「05にはその権限を持たされた『粛清部隊』がある。
 だがそこに属さない者はファーストナンバーであろうと直接構成員を手にかける事は許されない。
 例え相手が裏切りを画策していようと、自分が襲われようともな」

横暴なやり口の01であるが、この基本的な規則は忘れていない。
資料には117の裏切りが記載されているが、それを彼は声を封じるだけで手に掛けるような真似はしていない。
117を殺したのも『鬼神機関(グレネイドサイクル)』を殺したのも海岸で会ったあの男か…
自分以外の者が手をかけるならなんら問題はない。
資料によれば01はこの男に再会して交戦となりながらも生かしていたというしな。
『虐殺部隊』達を向き直る。

「11の部下を君達の部下が粛清したとあるが、このような権限は無い事をちゃんと教えておきたまえよ」

その当人達は既に死亡してるという話だがな。
再び01へと目を向ける。

「さて01。気に入らない者がいても粛清の権限の無い君のした事だ。このような理由だとしても咎めはしない。
 だがもしそうなら抜けたナンバーを埋める者は用意してないなどという事もあるまい?」

【ゴールドウェル:城栄金剛の思惑に疑念】
227廻間 統時 ◆7VdkilIYF. :2009/02/19(木) 23:09:55 0
>>192
「そうか、だったら俺達はもう行くけど……」
「あんまりよ〜、無理しない方がいいと思うぞ」

そういって、その場を立ち去ろうとした時に男の視線がある一点に注がれている事に気付いた。
視線の先は……紅い月?
不味いな、こんな時にこれの存在がバレるなんてな。
これを持ってたことで何か騒ぎが起きるなんて、冗談じゃあない。
ここは適当な嘘をついて誤魔化すか。

「ああ、これが気になるか?
 ちょっと俺の通ってる道場で模範演技を頼まれてね。
 そのために持ってるってわけだ」

……怪訝な顔はしているが、一応は納得してくれたらしい。
納得してくれたならこれ以上ここに留まる理由も無いな。
俺達は適当な挨拶をし、その場を足った。

「で、これからどーするんだ?」
「特に情報も集まらなかったからな。
 一旦薬局に戻ってみよう、もしかしたら仲間がいるかもしれない」
「わかった」

俺達は路地裏を通り、薬局に向かった。

【廻間:情報は集まらなかったので、一旦薬局に戻る。
    リースも同行】
228宗方零 ◆idMa0miDD. :2009/02/20(金) 01:55:19 0


恋島はキャッシュカードを机に置く、彼の全財産。
これで私を雇うと言うのだ。

だが私は既に真相にたどり着いていた。
神重の血文字で綴った紙片。
そこに書かれていた事実。

カレ ガ アブラハム
キカン ノ ニンゲン ト セッショク シテイル
チュウイサレタシ

彼が話を続ける間にそれを読みとって破棄することは簡単だった。
そのかわり私は、内心の驚愕を消し去るために長年培った自制心を総動員しなければいけなかった。

しかし、何かおかしかった。
彼は事件の真犯人を捜しているつもりなのだろう。
だが自分自身が事件のキーパーソンだとは気づいていないのだ。

しかし・・・彼が真にアブラハムであるならば、私は彼を見捨てることはできない。
私が許せないのは、何の事情も知らない他人を勝手な都合で弄ぶことだ。
それに、探偵が依頼人を裏切るなどもってのほかだ。

「恋島さん、残念ですがそれは受け取れませんよ。
全財産というのは流石に気の毒ですし。」

私は笑みを浮かべつつ言う。
ここで彼に警戒されるのはやっかいだ。

「それから、あなたは一つ私に明かしていない情報があるのではないですか?
あなたは記者だとおっしゃいましたが、そボイスレコーダーやカメラはお持ちでしょう?
もしよければ、それを見せていただけませんか?」

私は慎重に言葉を選んだ。
私達が異能者である事を明かすのは、まだ早い。
【宗方零 恋島にさらなる情報提供を促す】
229蠢く少年 ◆7/AlezFVy6 :2009/02/20(金) 12:36:57 0
>>228
ここまで静観していたが、なかなか賢いじゃないか、この探偵とやらは。「彼」に不信感を持たせぬ理知整然とした話術は見事だ。
しかし驚いた。宗方零も仕事仲間を装った神重智という男も上級の異能者だとはな。しかし一つだけ妙な事がある。
神重智の異能力が「重力連鎖」だけではない様だ。この男も掛宮夜と同類なのか? それにしては精神に乱れが見られない。
一人の人間に二つあるいは多重の人格が潜むのは何ら不思議な事ではない。だが異能力とあれば話は別だ。
                                          
普通、異能者が発現する異能力は一つのみだ。所有しうる異能力以外の異能力を持つ事は本来ありえない。
非常に特殊だが他の異能力を得る方法はある。対外から処置を施されるか、あるいは掛……いや、姫野与一の様に超常的な要因が絡むか。
いや、姫野与一の件は非常にイレギュラーなケースだ。異能力を持つ幽霊とは「俺」の経験上……。
初めてでもないがな。しかし厄介だ。「俺」が解析しえない異能力を持っているこの男の存在は。その別の異能力を持つ人格が出てきてくれる事を願おう。

それにしても奇妙な構図だ。「彼」が語るアブラハムが「彼」自身であるとはな。まるで笑い話だ。
先ほどから感じているこの空気の違和感は、神重も宗方も早々に「彼」がアブラハムである事に気付いている為だろう。
「彼」は宗方に自らの境遇を熱心に話していて気づかないが、宗方は視線を「彼」に向けてはいるものの、時折手元を覗いている。
一見、何の変哲も無いただの白紙だが、うっすらと神重のメッセージであろう赤い文字が浮かんでいる。「彼」の方向からは詳細はうかがえない。

どうにも「彼」及び「俺」達に状況は不利な様だな。今の彼らには機関が欲しているアブラハムがある。まぁ、「俺」の事だが。
もし彼らが「機関」の手により絶望的な状況に陥った時、「俺」達を交渉の手段として利用する可能性が無いとも言えない。
「彼」は決意を固めた為、宗方と神重に現状では多大な信頼を寄せている。もしも、だ。そういった最悪の状況下に陥った場合……。
考えただけでも恐ろしいな。無論そういった事が起きないように、今から「俺」は「彼」には悪いが主導権を握らせてもらう事になる。

「彼」は前日の過ちを隠そうと考えた様だが、この二人にはすぐにバレるだろうな。
前々から分かっているが、「彼」の不運と間の悪さは気の毒なほどだ。状況が好転するとはとてもじゃないが思えん。
その矢先、宗方は「彼」にさらなる情報提供を求めた。やっぱり。けれどこれは「彼」にも落ち度がある。

取材と言った限りカメラやボイスレコーダーを持っているのは至極当然な事だ。
しかし最初にそれらを掲示しないという事は、私はまだすべての情報を貴方に渡していないと言っているのと同じだ。
「彼」はバックの中から所有物をすべて出した。カメラに財布、メモ帳に勤めている出版社の雑誌に文庫本に煙草……それだけだ。
ボイスレコーダー、およびそれに準ずるものを持っていないのは単純に「彼」のミスだ。本社のデスクに放置してある。

問題はそう、永瀬翠から受け取ったレオーネからのICレコーダー。これが見つかれば一気に「彼」への疑惑が濃厚になる。
「彼」はポケットを探り、自らの携帯電話と携帯灰皿、そしてそれを見つけた。「彼」は不安げな表情になると、まずは携帯電話を取り出した。
……「俺」はすかさず、「彼」に対して言った。
『すまない、達哉』
瞬間、「俺」は「彼」の意識を閉じ肉体の主導権を握る。彼らからみれば意識を失って椅子から転げ落ちた様に見える、筈だ。
230蠢く少年 ◆7/AlezFVy6 :2009/02/20(金) 12:37:40 0
……目を開けると淡い蛍光灯の光が両目に映った。入れ替わる事が出来たようだな。
時間は無い。「俺」は立ち上がり、椅子に座りなおす。宗方と神重が何事かと言いたそうな目で「俺」を見ている。
「俺」は二人の視線も気にせず「彼」がテーブルに並べた物をバックに戻し、携帯をポケットにしまう。
どう話を切り出そうかな? 無駄な雑談からゆっくりと真相を話すか。いや、3分しかないんだ。それに彼らも真実を知りたいだろう。
                                           ウィアードワイアット
「初めまして。私が恋島達哉の異能力にして、貴方達が求めているアブラハムその物です。名は「蠢く少年」とでも言いましょうか。
 神重さん……でしたっけ? あなたがおっしゃる通り、恋島達哉は機関に接触しております」

「俺」はそこで笑顔を作りながらバックから煙草を取り出す。一本取り出し一服。携帯灰皿に灰を落とす。
「けれど、彼を責めないでください。恋島達哉はあくまで……何と言いましょうか。守りたい者を守りたかった末の行動でしたから。
 それと神重さん。恋島達哉が機関に接触した事で疑いを持たれている様ですがとんでもない。機関は紛れもなく私達の敵ですよ。幾度か危険な目に会ったのも事実です」

ポケットから例のICレコーダーを取り出す。正直反応が楽しみだ。
「このレコーダーには恋島達哉がその際に接触した幹部からのメッセージが入っています。と言っても大した内容では無いでしょうが」
言うが早くICレコーダーを宗方に放り投げる。宗方はそれを黙って受け取った。

「そう言えば……その幹部が恋島達哉を高く評価してるみたいで、機関から監視役を派遣したようです。
 あぁそうそう。恋島達哉とは別に私も機関に接触しています。が、そのICレコーダーを監視役に渡されただけですよ。
 先ほど調べましたが、ICレコーダーに発信器や盗聴器はついてません。それに……」
煙草を灰皿に揉み消す。「俺」は苦笑しながら、両腕をテーブルに乗せ両手を組む。視線を外に移す。

「その監視役がドジっ子の様でね。私の事を見失ったみたいです。
 さて、困った事に私がこうして表に出れるのは3分程度でしてね。他に何か質問があれば受け付けますよ」
【恋島達哉と意識が入れ替わる。宗方にICレコーダーを受け渡す】
【残り2分】
231戦場ヶ原 天 ◆u5ul7E0APg :2009/02/20(金) 13:03:37 O
>>225
「そう……かもな……」
厭味のひとつでも返してくると思った戦場ヶ原は、意外にも素直だった池上の反応に多少戸惑った。
しかし彼がそれ以上追及することをしなかったため、戦場ヶ原もまた何も答えなかった。

沈黙が二人の包みながら、彼等は目的地である国崎薬局へと到着した。
店内は閑散とし、昨夜彼等が店を出た時から人が出入りした形跡はなかった。
「やはり昨晩のままか……。廻間もまだ来ていないらしい。まぁ、待っていればその内来るだろう。
ここでしばらく待たせてもらうとしようか」
池上が呟いた提案に、戦場ヶ原は無言で頷いた。
家の中を物色し始めた池上の後ろで、戦場ヶ原は憮然と腕を組んでどっかと畳に腰をおろした。
今こうしている間にもリンは危険に晒されているかもしれない。昔の戦場ヶ原がここにいれば、こんな悠長なことをしている暇はないと一目散にナガツカビルへ駆け出していたことだろう。
しかし今の彼は黙して語らず、ただ岩のように座っていた。
二度の金剛との戦い。そこから彼が学んだものは、己の無力さと軽率さ―――…
十分な戦力を整えて立ち向かわなくては、金剛には勝てはしない。
彼の心境の変化には、どんな時にも冷静さを見失うことのない池上という男の存在も大きく影響を与えているのかもしれなかった。

戦場ヶ原が鋭い目でじろりと部屋の中をねめまわしたところ、視界の隅に季節はずれの着流しがかけられているのが見えた。
立ち上がってそれを手にとってみると、それは黒地に燃え盛る炎が描かれた、なんとも悪趣味でインパクトの強い浴衣であった。
(ここの店主のセンスも悪くねぇ…。)
しかし戦場ヶ原はにやりと笑い、ぼろきれとなった浴衣を脱ぎ捨ててそれを羽織った。
得意げな顔になった戦場ヶ原の後ろで、傷の手当てを終えた池上が呟くのが耳に入った。
「誤算……だな。やはりあの時、無理にでも織宮を引き入れておくんだったか……」
「…『織宮』?誰だそいつは。異能者か?」
聞き覚えのない名前を聞いて、戦場ヶ原は尋ねた。

【戦場ヶ原:現在位置:国崎薬局】
232レオーネ ◆GWd4uIuzU6 :2009/02/20(金) 22:23:04 0
>>223>>226

ゴールドウェルと虐殺部隊幹部との舌戦は尚も続いている。
ゴールドウェルの次なる標的は、"フォルトニックをNo.34に指名した人物"へと移行したようだ。
奴め、その人物が誰であるのか知らん訳では在るまい。
虐殺部隊をその傘下に置く人物、そして彼らから絶対の信を置かれている人物……。
そう、フォルトニックをNo.34に任命した人物とは、城栄金剛であるのだ。
どうもこのブリキ君は疑う事が趣味らしいな。ふっ、全くイイ趣味だよ。
鼻で笑い飛ばすと、コーヒーの最後の一口を胃へ流し込む。

それにしても、先程から押し黙ったままの城栄の様子が気になるな。
ゴールドウェルの言動に対して不快感を感じていなければ良いが……。
いつ活火山が噴火するかと、私は肝を冷やす他無かった。
葉巻をふかしながらゴールドウェル達の様子を冷ややかな目で見つめる。

>「この男が間違う事などたくさんある。34の人選もあきらかなミスだろう。
>私は34のような子供が駆り出されるなら、前線に出るべきだと言いたいわけだ。
>司令塔で生き残っていた所で役には立っていないではないか?
>セカンドナンバーの投入に関してもそうだ。何人死んでいる?
>この男が言うように、この投入が選定の参加者を減らす目的なら失敗しているな」

ゴールドウェルめ、No.34をダシに使ったな……。

「ふっ……口で言うだけなら何とでもなるがな」

小声でそう呟くと、私はまた煙を吐き出した。

私は世襲幹部が大嫌いだ。憎悪していると言っても良い。
個人的な恨みが無い訳ではない。だが、一番の理由は我が師長束公誠の影響だろう。
師の横で城栄と共に見てきた世襲幹部達の怠慢ぶり……。
師が我々を機関に引き入れたのは、他の世襲幹部達に対するけん制や戒めの意味が在った。
だがしかし、師の亡き後の彼らを見てみると、どうもその効果が在ったとは思えない。
私はその事に腹が立つのだ。
何も変わろうとはしない、ただ生きているだけの無意味な生。
それは死んでいるのも同然だ。そこからは"進化"は生まれない。

ゴールドウェルは虐殺部隊の責任の追及を言うのであれば、
自身の配下でも送り込んでみて欲しいな。
尤も、今は会議に集中し一刻も早く対策を立てるべきであろう。

>「さて01。気に入らない者がいても粛清の権限の無い君のした事だ。このような理由だとしても咎めはしない。
>だがもしそうなら抜けたナンバーを埋める者は用意してないなどという事もあるまい?」

一理在るな。確かにナンバー不在のままにして置くのは問題だ。
抜けた穴は埋めなければ、落とし穴に繋がるやも知れない。

「確かに、それは同意できる。
 No.1、すまないが具体的な解決方法を聞かせて欲しい」

城栄の事だ、ちゃんと解決策を用意している筈だ。
しかし、その解決策がどのような物なのかは解らん。
よもやとは思うが……"連中"で補うつもりではないだろうな……?
233レオーネ ◆GWd4uIuzU6 :2009/02/20(金) 22:28:05 0
>>232
                       ファーストナンバー
「すまないな、No.34。No.7の非礼は同じ一桁番号である私の顔に免じて許してやって欲しい。
 
 しかしな、君は少し落ち着きという物を覚えると良い。
 No.1もきっとそう言うよ。

 その歳でセカンドナンバーになれるのだ、大した実力じゃないか。
 後は徐々に戦士として冷静な対処が出来るようにしなければな」

まだまだ子供のフォルトニックに諭すように言い聞かせ、
その若い感情をなだめる。
彼はこれで良いかも知れないが、問題は"コイツ"だな。

「No.7も昔の事を引き合いに出すのであれば、
 No.3の落ち度についても引き合いに出して欲しいな」

No.3は過去に籐堂院神の組織を機関が壊滅させた際に、作戦の総指揮を執り行った。
しかし、肝心の中心人物である籐堂院本人を、生死の確認をせずに見落としてしまい、
結果として今回不安定要素が混じってしまった。
当のNo.3は突然振られた自身のミステイクに、その表情を曇らせた。
昔からの事だが、彼女は表情という物を隠そうとしないな。

「――本当の事を言ったまでだ」

No.3からの視線を葉巻の煙で遮る。この際だ、彼女のミスは放って置こう。
それよりも問題なのは、No.4――北村幽玄にあの籐堂院神が組した事だろう。
一刻も早く奴らを滅し、炎魔再臨の準備に取り掛からねば。
最早時間は残り僅かなのだ。

私は常々思う。この星を支配するべきなのは、絶対足る存在であるべきだと。
それを神と言わずに何と呼ぼうか?
世界を人の手から神の手へと返すのだ。それこそが世界を平和にするプロセスなのだ。
234レオーネ ◆GWd4uIuzU6 :2009/02/20(金) 22:33:32 0
>>233

「流石は『ヤハウェ』を覚醒させた男じゃ。言う事がきついのう」

No.5はさも愉快そうにケタケタと笑う。正直な話、奴の顔面に裏拳を一撃入れたい所だ。
だが、既に私には『ヤハウェ』は存在しない。炎魔復活の為に城栄の力を借りて抜き取ってある。
命こそある物の、『アブラハム』としての生命は終わっているのだ。
だが、それを他人に覚られるのは不味い。抽出の際も極秘裏に事を進め、情報も一切を封印してある。
故に『ヤハウェ』に関する情報を持っている他の人間は、未だに私の中に『ヤハウェ』が在ると思っている。

「前No.1がレオーネ……そなたをどれ程可愛がられていたか、
 そなたがヤハウェのケースナンバーから削除された事からも窺えるの。

 ほほほ……」

機関が公式にその存在を認めたのは煌神リン以降だ。
それ以前は全て非公式の記録として処理されている。
私や誠一郎等がそれに当たり、全て公にされておらず閲覧できる人間もごく僅かだ。

「ヤハウェ……ですか。
 シスター・アンジェラの事を思い出しますね」

No.3がボソリと呟いた言葉を私は聞き漏らさなかった。それが幸か不幸かは別として……。
アンジェラか、懐かしい名前だ……。
ヤハウェの存在を機関に知らしめた時空間を支配する魔女。
本当の意味での最初のケース。アンジェラ・エインズワース……。

――彼女の名前を聞くと自分の中の古傷が疼くような気がして、そっと顔を俯かせた。

【レオーネ:総合会議室】
【城栄にナンバーの抜けた穴をどのように埋めるのか、その方法が知りたい】
235廻間幻十 ◆O93o4cIbWE :2009/02/20(金) 23:35:36 0
>>224

「……此処からが本題だ、お前は、その神の遺産を持って何を成す?」

彼の問いに、彼女は寸刻、迷いを見せ、それに答えた。

「何がしたいかなんて…分からない。だけど…今は…――この力を使って私は生き抜かなきゃならない。」

生き抜く、か、それが間違った方向へ行かなければ良いがな―――

言い終えた後、彼女は何か決心した瞳で彼に今度は問い掛けた、その時拳銃は、地面に零れ落ちた。

「なぜ、あなたは私を…いいえ、卦宮夜を襲った?なぜ古の神剣を手にしている?あなたは…何者ですか」

「…」

彼はそれに答えるより先に、人の気配を察知し、其方を向いた。
振り向けば、目に入るのはおよそ焦土と化した大地と、その先に佇む一人の少女の姿があった。
それは先刻―――美月と呼ばれていた少女その人である。

美月、と呼ばれていた少女から彼女に向き直す、次の瞬間―――

――どさ。

彼女は前のめりにふらりと揺らぎ、倒れ掛かった、彼――廻間幻十は彼女を受け止め、どさり、と彼女は彼の腕の中に倒れ込んだ。
そして彼女を見下ろす彼の瞳はなおも無機質で、しかしながら他の者が見れば、それは何処か慈しむ様にも見えた。

その実、彼が何を考えているのかは解らない、唯、その瞳には悪意や害意といった類のものは見られなかった。

美月と呼ばれていた少女は二人の許へ駆け寄る、荒れ狂った大地に足を取られる為暫し時間が流れる。

廻間幻十は、彼女を抱えた腕はそのままに空を見上げる、表情は見えないが、その背中からは、ある種のセンチメンタリズムを感じさせる。

「………」

少女――美月が二人の傍まで駆けつけ、押し黙って此方を見詰める、
美月は語らず、その瞳と身振りだけで此方に話しかける。

「…ふ、御迎えがきたな…」

そう呟き、彼女を美月に引き渡す、別れ際、最後に廻間幻十は背中越しにこう告げた。

「目覚めたら伝えて置いてくれ、道を誤るな、と、お前は俺の様に―――」

そこで彼は語るのを止め、首を振り、正面を見据える、手を翳し、それを降ろすと、空間が裂け、その狭間の中へと消えていった。

――あの娘は、酷く純粋だ、これから何色にも染まるだろう、もし道を誤ったなら、その時は―――

狭間が閉じ、荒果てた大地に二人の少女が残された。

   アナザーレクイエム        イヴィルクラスタ
――『装弾物語』:姫野与一、『黒の物語』:十六夜 美月、此処から先は、彼女達の"物語"――――

【廻間幻十:十六夜美月に姫野与一を引き渡しこの場を去る】
236池上 燐介 ◆qqu0tZFsYU :2009/02/21(土) 20:26:56 0
>>231
>「…『織宮』?誰だそいつは。異能者か?」
俺の独り言が聞こえていたのか、山田は織宮という名の人物について尋ねてきた。
別に隠しておく必要は無いので、俺は目だけを山田に向け、一呼吸置いた後に織宮について話した。

「……昨日出会った、お前の失った右腕すら治せるかもしれん程の治癒能力を有した異能者の名だ。
使い物になると思い協力を要請したんだがな。奴は首を縦に振らぬまま、それっきりだ……」

俺達の相手は物量で圧倒的に勝る機関。
好戦的で自分の身体状況を省みず猪突しがちな山田とて、サポート要員の必要性は理解するだろう。
しかし、治癒能力者がほとんど存在しない事実は、これまでの経験から確かであるはずだ。
だからこそ織宮については悔いが残るのだが、かといってそのことを悔いたり、
愚痴を零したところで過去をやり直せるわけではないことも確かであるのだ。
(……唯一、奴の居場所を知っている籐堂院が、彼に再び協力を要請していることを期待しよう)

俺はそう前向きに考えたところで、織宮に関しての思考を打ち切った。
そして再び沈黙が二人を包み込もうとした時、今度は俺が山田に尋ねた。

「ところで、何て言ったかな? あの女剣士の名は」

俺の問いに対し、山田は「神野 屡霞」と答えた。
女剣士の名前を把握した俺は、続けて口を開いた。

「……神野か。一つ忠告しておいてやるが、今度からあのジャジャ馬の手綱はよく握っておくことだ。
さもないと、いつかは奴を失うこととなる。俺にとっては一致した目的のために動く一人の協力者に
過ぎないが、お前にとってはそれだけの存在とも言い切ることはできまい」

静かな、だがはっきりとした声が、店内に響き渡った。

【池上 燐介:国崎薬局にて廻間らの到着を待っている】
237十六夜 美月 ◆N8yTRtOcY2 :2009/02/21(土) 22:46:53 0
>>235

神と悪魔の戦い、とでも呼ぶべきだろう。
二人が居る公園から伸びていた紅い柱が消えた時、戦いは終わったのだと感じた。
だけどそれは――卦宮夜が力尽きたという事――

小鳥の歌が聞こえた喉かな公園は今、抉れた大地と残骸が散らばっているだけの、まるで地獄を現したような場所となっていた。
その中央で対峙している一対の男女。女――与一は男に震える手で銃を構えていて、男はそれを見据えている。
やがて、与一は構えていた銃をその手から落とす、そして力尽き、男の腕の中で倒れた。

私はすぐさま駆け出し与一を助けに走り出した。が大地が荒れていて上手く歩けない。
ここまで荒れているんだ。相当な激戦だったのだろう。
与一を抱えて男は私を待っていた。

>「…ふ、御迎えがきたな…」
そう一言呟き、与一を私に引き渡した。幸い、与一に怪我は全く見当たらない。
身軽になった男は体を後ろに向け、私に告げた――

>「目覚めたら伝えて置いてくれ、道を誤るな、と、お前は俺の様に―――」
と言いかけ語りを止め、首を振り、真っ直ぐに前を見て、手を翳す、手を下ろすと空間が黒く塗り潰され
男はその虚空の闇の中へと消えていった。お互いに殺しあっていたのではなかったの?

さて、どうしたものか。
どこに行けばいいのか分からない。与一を知っている人はいないのか…
機関…?確かあの時、誰かと行動していた、けれど都合よくここを歩いている訳がない…
第一、貫通男に消されてしまったじゃないか。

「ぅ…うぅ…」
良いタイミングで与一が目を覚ましてくれた。
けれどその声はとても弱々しい。再び倒れてもおかしくないはず。

「…機関の………会堂…が……この近くに……無人の洋館が…そこ……に」
言葉を言いかけて、力尽きて眠ってしまった。
けれど規則的に寝息を立てている。多分、相当な疲労が溜まっているだけだろう。
私は与一に向かって優しく囁いていた。

「大丈夫。私が守っているから。今は休んで…」

けれど…機関の会堂……きっと、大丈夫だろう。
私は与一を背中に背負って、洋館を探す為、歩き出した―――

【美月、与一を連れて街へ繰り出す】
【現在9:00分】
238城栄 金剛 ◆3LPMHhiq9U :2009/02/22(日) 22:12:25 0
>「さて01。気に入らない者がいても粛清の権限の無い君のした事だ。このような理由だとしても咎めはしない。
>だがもしそうなら抜けたナンバーを埋める者は用意してないなどという事もあるまい?」

>「確かに、それは同意できる。
>No.1、すまないが具体的な解決方法を聞かせて欲しい」


「…ゴールドウェル、俺が大嫌いなタイプの人間を知ってるかァ?」
葉巻を一旦灰皿に置き、ゴールドウェルに問いをだした。
金剛の重低音な声は部屋全体を威圧し、セカンドナンバーの数人はその身を震わせた。

「俺ァ、まだ働いてもいねぇのにグチグチ能書き垂れてる人間が……大っ嫌いなンだよ!!」
叫ぶと同時にゴールドウェルの体が『光る数式』によって金剛に吸い寄せられるかのように宙を舞った。
それを金剛は立ち上がって胸ぐらを左手で掴み、キャッチした。

「いいか!!てめーの様なジジイの小言を聞く暇なんかこっちにはねェンだよ!!」
ゴールドウェルの体は軍人のようにガッシリとしていて大きく、そうそう簡単には持ち上がらないだろう。
だが、今その体は大きさが二周りも上回る大男に片手で締め上げられ、地に爪先もついていない状態だった。

「俺や虐殺部隊に文句があるンなら、まずテメーが戦果を上げるこったなァ」
それだけ告げると締め上げていた体をもとあった席へ放り投げた。
八十キロはあるだろう体を片手で投げるなど常人じゃ、到底無理なことだ。
しかし、金剛の体は異能力を使わなくても十分のバケモノ。そんなこと何とも無いことだ。

「…だが、スティクス。お前も威張れた立場じゃねェなァ。今度、又おまえが山田の野郎に負けるようなら…」
金剛は席に着き一拍置いた後、
「…脆弱な負け犬は俺が直々に殺す。わかったな?」
この言葉には皆が恐怖した。1が『自分が直々に殺す』といった相手は今まで誰も生きてはいない。
それは『完全なる死』。もう二度と失敗は許されないという烙印。
そして、これはもし自分がミスを犯せば自分にも降りかかってくる言葉なのだから。
部屋の中に緊張がまるで水面に響き渡る波紋のように広がっていった。
「それからロルト、オメェにも期待しているからな。」
その中でロルトだけはこの言葉によって上機嫌になっていたが…
239名無しになりきれ:2009/02/22(日) 22:14:29 0
>>226>>223-224
安価入れ忘れ
240城栄 金剛 ◆3LPMHhiq9U :2009/02/22(日) 22:14:57 0
既に会議室内の雰囲気は最初とガラリと変わっていた。誰も無駄口を叩こうとはしない。
「じゃあ、話を本題に戻すか。人員補充についてだったな、それなら心配いらねェ、こいつらが入るからな。」
金剛がテーブルの中心を指差すといつの間にかに、一人の女性がテーブルの上に立っていた。
金剛以外の誰もが驚きの反応を見せる。一秒よりも短い時間の前には確かに誰も居なかったのだ。驚いて当然だ。
その女性の容姿は200センチはあるだろう長身にスレンダーな体、暗い赤のコートに腰まで行きそうな黒の長髪。
そして固く結ばれた口に、青い目が鋭い眼光を放っている。
「フフフ…フ………アハ…アハハハハハ!!」
女性が落ち着いた微笑から子供の様な大笑いに変えるという行為に皆が唖然とした。
その笑い声は女性の容姿からは全く持って似つかわしくない声色で、ある種の恐怖すら感じられる。
「あー、みんなサイッコーだネー。その驚いた反応。アハハハハ…ハ…あ…えっと…じゃ、じゃあ自己紹介いっちゃうヨー。」
女性は金剛の視線に気づき、パッと笑うのをやめた。
「ボクの名前はルージュ。ホントはYH-7823っていうんだけどボクはこれが嫌いだからネー。
えっと、それで今日から雑魚いセカンドナンバーの代わりにボクが入ってあげるんだけど、何か質問あるかナー?」
セリフの一部に虐殺の連中が少し反応したが、噛み付いてくることはなかった。
「こいつァ、俺の実験の作品の一つなンだが勝手に死んでいった野郎どもよりかは働くと思うぜ。」
会議のメンバーの大半はポカンとしていた。そのなかで一人だけ、小村だけは溜息をついていた。

【ルージュ(YH-7823)登場】
【質問があるならルージュが答える】
241ゴールドウェル ◆fEvO9ByRpU :2009/02/22(日) 23:26:49 0
>>232-234>>238-240
>「すまないな、No.34。No.7の非礼は同じ一桁番号である私の顔に免じて許してやって欲しい。
 
> しかしな、君は少し落ち着きという物を覚えると良い。
> No.1もきっとそう言うよ。

>その歳でセカンドナンバーになれるのだ、大した実力じゃないか。
>後は徐々に戦士として冷静な対処が出来るようにしなければな」

ふっ、やはり見立ては間違っていないではないか。このような新米がセカンドナンバーとは機関も安くなったものだ。
……まあ資料を見る限りこの子供に限った事ではないがな。
死亡した内15は言葉も話せない異能獣というし、戦闘に使えそうな異能力を持っていれば
早い者勝ちで入れられる感じで埋めていくような人事が行われていたようだ。
…このような体制で34を執拗に責めるのも悪かったかもしれんな。おかしいのは組織そのものだ。

>「No.7も昔の事を引き合いに出すのであれば、
> No.3の落ち度についても引き合いに出して欲しいな」

03の昔の落ち度……どれの事を言っているのだろうな?
今私が引き合いに昔の事で引き合いに出したのは離反事件、それが起きた原因を責める為01を引き合いに出した。
似た出来事――03が関係する事といえば『私と私の世界(フラクタル)』の件か?
だがその原因は11が奴の女を殺した事にある。彼女はここにいないしな。
03のその件に対する落ち度があるとすれば作戦指揮にある。お門違いだ。
それを責めるなら離反事件に戻って『絶滅魔神(ナパームカーニバル)』も責めねばならんしな。
…面倒だ。聞き流そう。
しかし何故今になってあの男の話題を出すのだろうな。
古傷を抉るただの嫌みか?それとも今隠し立てしてる情報と関係してるのか?
…これだけファーストナンバーを集めておいて、やられたわけでもなくこの場にいない者がいる事と関係してるのか?
まあここで聞いたところでまたはぐらかされるだけだろうし、自分で調べるしかなさそうだな。

>「…ゴールドウェル、俺が大嫌いなタイプの人間を知ってるかァ?」
>「俺ァ、まだ働いてもいねぇのにグチグチ能書き垂れてる人間が……大っ嫌いなンだよ!!」

気付くと私の身体に見慣れた『数式』が纏わりついていた。01の異能力だ。
長時間に亘りこの街全体を一般大衆の目から『虐殺部隊』を隠す結界を張るという"無駄な労力"を行っていたようだが、
未だにこんな無駄撃ちをする力が残されているとは驚いた。
そして彼は私の胸倉を掴みかかりながら怒鳴る。

>「俺や虐殺部隊に文句があるンなら、まずテメーが戦果を上げるこったなァ」

――『浮遊能力』発動。

言って投げ飛ばされるが、私は身体を浮かせて床との衝突を避ける。
乱された衣服を整えているとテーブルに大女がいた。…ふむ、"他にも"いたか。

>「フフフ…フ………アハ…アハハハハハ!!」
>「あー、みんなサイッコーだネー。その驚いた反応。アハハハハ…ハ…あ…えっと…じゃ、じゃあ自己紹介いっちゃうヨー。」
>「ボクの名前はルージュ。ホントはYH-7823っていうんだけどボクはこれが嫌いだからネー。
>えっと、それで今日から雑魚いセカンドナンバーの代わりにボクが入ってあげるんだけど、何か質問あるかナー?」
>「こいつァ、俺の実験の作品の一つなンだが勝手に死んでいった野郎どもよりかは働くと思うぜ。」

「…どうもこれ以上ここにいても時間の無駄のようだ」

先程から椅子には座らずに浮いた状態のままドアの方へ歩みを進めつつ、テーブルの中心に立つYH-7823を見やる。

「今主力の『虐殺部隊』は何を言っても自分らのやり方を変える気はないようだし、
 01も私個人に戦果というものを期待しているようだからね。
 私はもう会議を抜けて構わんかね?」

【ゴールドウェル:会議を抜けていいかルージュに質問】
242戦場ヶ原@代理:2009/02/23(月) 04:34:01 0
>>241

「まぁ待ちなよ、オジイチャン。」

うんざりしたようすで会議室をあとにしようとするゴールドウェルに対して、軽い調子で声をかける男がひとりいた。
最上座に位置する金剛のすぐ隣に坐す優男――――…機関No.2、ツバサ・ライマースであった。
ゴールドウェルが文字通り機械のように無機質な視線をじろりとむけると、この若い世襲幹部はおどけたようすで肩をすくめた。

「あんたの言うことはもっともだ。
 ここが只の組織ならば、計画を発案し推進した上で、多数の犠牲を出して、
その上成果の上げられない金剛さんは、糾弾されて然りだろうね。」

ゴールドウェルを擁護するように聞こえるその口ぶりに、周囲の目がツバサへ注がれるが、彼はにやけた顔を崩さずに同じ言葉を続けた。

「――そう、『ここが只の組織ならば』…ね。生憎ここはタダの組織じゃぁない。」

「金剛さんのやり方が荒っぽいのも今に始まったことじゃないだろう?
 目的を達成するためにはあらゆる犠牲を惜しまない…。彼はそのやり方で今まですべての計画を成功させてきた。
 だから彼は今僕たちのトップに君臨しているんだ。違うかい?」

「自信たっぷりな大言壮語。それを裏打ちする実力。実績。
 それがあるからみんな金剛さんについていくのさ。彼を信じられないというなら、オジイチャン。
 あんたも籐堂院や元No.100のようにここを離れていくのが老後のためだよ。
 あ、最近じゃファンダメンタルなんとかいうのが出てきたらしいからね。好都合じゃないか。」

バンッ

べらべらとよく動くツバサの口を止めたのは、金剛の机をたたく音だった。
しゃべりすぎだ、と言わんばかりに金剛はツバサを睨みつける。
内容こそ金剛の擁護であったが、どうにもその口調は金剛への皮肉のように彼には聞こえた。
世襲幹部であるのだから、少なからず金剛を疎んでいるのは事実であるのだが、しかしツバサはわからない。
いつも飄々として真意を掴ませない。しかし今回のことで言えば『ヤハウェ』の捕獲など、金剛の期待以上の実績を叩きだすからこそ、金剛はツバサをNo,2においているのだ。
一般人ならばあまりの恐怖に卒倒するような金剛の睨みを受けても、ツバサは素知らぬ顔で眼の前に現れた美女に対して上機嫌な様子で手を振っていた。

【ツバサ:会議の空気を愉しんでいる。】
243ゴールドウェル ◆fEvO9ByRpU
>>243
>「自信たっぷりな大言壮語。それを裏打ちする実力。実績。
> それがあるからみんな金剛さんについていくのさ。彼を信じられないというなら、オジイチャン。
> あんたも籐堂院や元No.100のようにここを離れていくのが老後のためだよ。
> あ、最近じゃファンダメンタルなんとかいうのが出てきたらしいからね。好都合じゃないか。」

01が机を叩き、辺りが静まり返る。この机が簡単に壊れる素材でない事は明白だな。
私はそちらに目を向けずに02に話し返す。

「…君も何か勘違いをしているな。私は別にこの男に不満を持っているわけではない。
 ――仮に私が不満を持っていたとしても、何故私の方が離れていかねばならんのかね?」

私は別に01についているわけではないし、ファーストナンバー内に上下関係などない。
02も自分が私より上の立場にいるとでも勘違いしているのではないだろうか?
先代ライマースが『私と私の世界(フラクタル)』に殺された事で、他にいないから君のような若造がその席を担っている。
その事を君はどう思っているのだろうね。

「それに、今君の出した者達は想い人を個人的に殺されて、機関そのものを憎むような矮小な男達だ。
 一緒くたにせんでもらいたいものだ。とくに『私と私の世界(フラクタル)』のようなクズとはな」

君が今の地位にいられるのはそのクズのおかげとも言えるがな。
セカンドナンバー、サードナンバーであった彼らは私と違い組織を動かす力など無かったのだから離れる他あるまい。
だが私は代々続く世襲幹部の1人だ。組織へ口出しする権限も、独立して総轄する地区もある。
組織が気に入らないのなら自分で変えればいいし、私が離れなければならない必要性など無い。
だが我々にとって不都合もないし、私は口出しできなかったのではなくやらなかっただけだ。
なので仮に比較するなら適しているのはこの2人ではない。

「今私と重ねて挙げるとしたら『冥界解体(アンノウンブレイカー)』のような奴だろう。
 …もっとも、アレの行動も所詮自分で思うように変えられない組織からの"逃げ"に過ぎん」

奴が離れた理由は01が炎魔の復活を口にしたからという話だったか?
…全く、"そんな事"を鵜呑みにしてせっかく生まれもって与えられていた地位を自ら手放したのだから愚かしい事この上ない。
それを欲しても叶わない者がどれだけいるのか考えないのだろうな。
我々にはそれを受け継いだ時に軽々しく投げ出してはいけない責任を自覚せねばならんものを。
――そういえば彼のデータはまだ残っているな。この件はまだ片付いていないのか。
話の流れが変わるので、机を叩いた姿勢のまま立っている01の方を向く。

「…だが、彼の所在など当の昔からわかっている事なのだろう?
 邪魔と思いながら、いつまでも自分で赴かない君も彼から逃げていると言えるがね。
 それとも彼も君の計画に携わっているのかな?
 まあ彼が邪魔というのが本当なら君の得意とするやり口はあるだろう」

どこかこの男は全ての者に対して"万能"を求めている節がある。自らも含めてな。
ならば適材適所というものを教えてやらねばなるまい。

「"表の顔"で堂々と追い込めばいいだよ"社長殿"?
 "裏の顔"で物騒な部隊の将など気取るよりも君には適任してると私は思うよ」

まあ既に手を尽くしていながら敵わないでいるかもしれんが、私の知ったところではない。
先程のように暴力に訴えるような節も強いが、彼の実績はどちらかといえ"表の顔"によるものだ。
それが敵わず"裏の顔"で実績の埋め合わせをしようとしているのなら、これも『鬼神機関(グレネイドサイクル)』のように
優れた才能を引き出せずに朽ちるのがオチだ。せっかくなら役立たせる方向で生かしておきたい。
却下されたところで別に構わんが、ここでまた反発されても面倒なので言うだけ言って出て行こう――
――としたところでふと思い出す。