【兵員】第二次銀河大戦【募集】

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「──!? れ、レーダーに艦影多数! 我が艦隊に向かっています! これは、連合軍の艦隊です!」

「チッ、もう臭いを嗅ぎ付けてきたか。左翼と右翼を戻らせな! 陣形を整える!」
「はっ!」

キャプテン・ヴェインと称された男は、しばらく艦橋が慌ただしくなる様子を眺めていたが、
自分が周囲から放置されていることに気がつくと、ばつが悪そうに呟いた。

「あ、あの〜……あっしはどうすれば……?」
「あんたは捕虜だ。戦闘が終わったら帝国へ送り届けることになる。そこでたっぷり縄をちょうだいするんだね」

それは絞首刑宣告であった。
海賊であればその処罰も妥当なものであるだろうが、ヴェインはそれを知らなかったのか、
彼は今初めて、自分の置かれた立場というものを理解するのだった。

「お、おい! 俺は捕虜だぞ! 捕虜には保護が約束されてるんじゃないのか、おい!!」
「それは海賊には適用されないのよ。残念ね? ──牢にぶちこんどけ!」

アレフティナは髪をかきあげて、軽くウィンクをしながらヴェインに現実の非情さを告げると、
迫りつつある連合軍を捕えたメインスクリーンに目を向けた。

「どうやら絶対数においてはまだ我が艦隊に分があるようですな。
 しかし、連戦ともなれば兵士の士気の低下は免れますまい」
「無理をする必要は無い。我々は第二陣が到着するまで死守すればいい」
(新たな敵の出現とはいえ、何もせず逃げ出したとなれば、今度こそ私も死刑台送りになるやもしれないからねぇ……)

思いを巡らす内にも、敵艦隊は着々と距離を詰めている。
そして陣形の再編が完了しない内に、ついに敵艦隊が射程距離内へと突入した。

「再編率は80%といったところか……しかし、止むを得ない。全艦、攻撃開始ッ!!」

こうしてアルゴビー宙域の戦い、第二幕が始まった。
89ヴァイス中佐 ◆6k2N0.Pf9Y :2008/11/05(水) 00:20:14 0
「どうかね中佐、出発前に例の”特別大尉”と挨拶してみるかね?」

口調こそ穏やかな質問調だが、実質的には命令である以上「お断りします」などと言える訳も無い。
モニターが切り替わり、アブラクサスのメインブリッジが映し出される。
艦長席に鎮座して菓子を貪り食らう巨漢からは、おおよそ緊張感と呼べるものは感じられなかった。

艦長たる特別大尉が身につけたヘルメットは、無数のコードを介してコンピュータに接続されている。
視認すれば非常にわかりやすいこの設備こそが、感応リンキングシステムの根幹なのだろう。

特別大尉がこちらを見る目は怪訝だ。年の差を考えれば小僧と思われても仕方が無い。
かといってあまり舐められる訳にもいかないので、せめて将校らしく毅然とした態度で臨む。
無言の彼を他所に、ヴォルフガングはダイク相手に不満をぶつけ始めた。
だが会話を聞く限り、粗野な傭兵は自分の領分を踏み越えるような迂闊さは持っていないようだ。

(いいだろう…どうせこちらは引くも進むも地獄。ならこの男と組んでみるのも一興だ)

そのうち男がこちらに向けて、不遜な態度を崩さぬまま挨拶してきたが、もとよりその態度を咎めるつもりも無い。
自分にも覚えのあることだし、従順で規律に満ちた態度を目の前の傭兵に求める方がお門違いと言うものだろう。

「こちらこそよろしく頼むぞ、特別大尉殿。
 そこまで大言壮語したからには、卿の経歴と戦闘に対する意欲は大いに活用させてもらう」
「カカカカ、お互いに自己紹介が終わったようじゃの。それでは向かうとするか」

モニター通信が切られ、変わりに目標までの地図が表示される。
ブリッジの左舷にはアブラクサスに加速用のブースターが取り付けられている様子が見て取れた。
ダイクの説明によれば長時間の使用に耐える代物ではないらしいが、そもそも長期的に加速させる必要も無いから十分である。
いずれにしろ、戦場までは牽引する必要がある。数隻の駆逐艦からケーブルが延び、巨大なCWと連結した。

「発進!」

号令と共に、CW1個大隊がアルゴビーに向けて発進した。
90ヴァイス中佐 ◆6k2N0.Pf9Y :2008/11/05(水) 00:21:41 0
>>84-88
戦場に向かうにあたって、ヴァイスは情報の収集を徹底させた。
コロニーから発進させる情報は事態をリアルタイムで把握する材料になる為、映像音声問わず収集の必要があったからだ。
勿論、それら全てが鮮明なものとなってくるわけではないが、
現時点で大まかな情勢くらいであればぎりぎりわかるレベルにあった。

「…複合的に判断するに、アルゴビー側の船団はコロニーを盾にして戦っている模様ですな」
「解せんな。コロニー側の艦隊が取る行動としては理に適っていないぞ」

ヴァイスも副官も首をかしげた。コロニー側と目される艦隊が守るべき住処と住民を盾にし、
攻撃をしかけた帝国軍がそれに気を取られ、遅延と損害を余儀なくされているという状況が不可解でだったからだ。

(攻撃側は…ひょっとしたらアレフティナ司令かもしれんな)

確信に足る材料は無いが、彼女以外の軍人で民間人に躊躇して消極的対処を取る者は中々いないだろう。
だとすれば、彼女はいかなる指令の元にコロニーに攻撃をしかけなければならないのか。
ダイクは先ほどアルゴビー側からの攻撃の可能性を諮詢したが、どうにも納得しかねる。
あるいはあのマッドサイエンティストが、帝国軍が動かざるを得ない情報を意図的にリークしたのだろうか。

(いずれにしろやりきれん…住民にとってはたまったものではないぞ)

大抵のスペースコロニーには、デブリに備えてバリアコーティングが成されている。
勿論、万が一側面壁に穴があこうが火災が発生しようが、即時対処できるシステムも存在した。
が、戦闘に巻き込まれればそれらの仕組みが何ら効力を成さないことは映像音声によって十分に伝わってくる。
露骨な言い方をすれば、攻撃に晒されたコロニーは薄壁一枚で作られた棺桶に過ぎないのだ。
逃げ場も無くサンドバックにされ、内部の大気が炎に包まれた時の凄惨な光景には、ヴァイスにも覚えがある。

───なんとかならないものか!?───

大隊が現場に到着するにはまだ時間がかかる。焦燥感が場を支配した。
91ヴァイス中佐 ◆6k2N0.Pf9Y :2008/11/05(水) 00:22:23 0
大隊メンバーの焦燥感がピークに達しようとしていた頃、モニターの表示情報に変化が訪れた。

「帝国艦隊、後退していきます」
「いよいよ強硬手段に出たか…同じ状況下にいれば俺も同じ手段を取らざるをえんだろうな」

軍帽を被りなおし、頭を抱える。敵の司令の心中は察するに余りあった。

「帝国軍、攻撃を再開しました!」

帝国の艦隊から生み出されたミサイル斉射と言う名の洗礼が、円筒状コロニーに次々と突き刺さっていく。
逃げ場の無い筒の中で、無数の熱と光がみるみる広がっていき、最後には大爆発となって深淵の宇宙を照らす。
結果論でしかないが、ヴァイス達は間に合わなかった。沈痛な面持ちがブリッジを支配する。
だが、その直後に傍受された通信はそんな精神状態を吹き飛ばすには十分すぎる代物だった。

「海賊だと!?帝国軍は海賊退治のためだけに非武装中立地帯を蹂躙したのか?」

これには流石にヴァイスも驚いた。条約に抵触する軍事行動ともなると国家と国家の衝突になる。
大戦略レベルでの判断は、一介の艦隊指令にはとてもではないが許されるものではない。
もっと上、それこそ参謀本部が絡んでくる…そこまで考えて、彼は非常に嫌な予感に囚われた。
もしこれがあのダイクの策略に端を発していたとしたら、その政治的影響力は敵の高位高官にまで及んでいることになる。

(こいつはとんでもないババ(ジョーカー)を引かされたかもしれんぞ)

内心の身震いを隠しながら、彼は戦闘態勢を整えるように指示を飛ばした。
全体の陣形が縦陣形からより鋭利で突撃を意識した紡錘陣形へと変化する。
その最先端には、牽引艦からワイヤーを外されたアブラクサスが鎮座する格好となった。
アブラクサスには追加ブースターが取り付けられている。
よって移動速度という面では味方の足を阻害しないギリギリの線まで取り繕うことが可能となっている。
92ヴァイス中佐 ◆6k2N0.Pf9Y :2008/11/05(水) 00:23:36 0
当然こちらの接近も敵艦隊の知るところとなり、それに伴って鶴翼陣形へと移行しようとしていた。
こうなれば先手必勝である。敵に連戦を強いてその行動の余地を狭めるのが定石だろう。

「ゲイボルグ特別大尉、卿には大隊の最先鋒として突貫してもらう。
 側面と背面のサポートはCW隊の先鋒が勤める」
「良いのですか?相手の方が数では勝っておりますが」

副官の懸念を持って口を挟むのも最もである。だが彼はそれを片手で制すると命令を続ける。

「中衛は前衛に後続してアブラクサスがこじ開けた傷口を押し広げ、強引に突き抜ける。
 旗艦ブラオ・メーアを含む後衛もそれに続くのだ!」
「すると、敵を突破した後衛は最後尾にあってその追撃を受け止め、味方の脱出の時間を稼ぐのですな」

副官の新たな問いかけには、今度は意を得たといわんばかりに頷く。

「そうだ。しかる後に、先鋒は蛇の頭が如く取って返し、再び敵を撃つ、これを繰り返す
 もとより数で劣っているのだから、増援が来るまで持ちこたえるには他に手が無い!」

今までの焦燥感や悲壮感とは違う、明確な緊張感と高揚感がブリッジに浸透していく。
その熱気が一つの渦となって、指揮を取るヴァイスへと集約されていくのだ。

「全艦!突撃開始!」

本来非武装中立が約束されていた筈の場所で、凄惨な戦いの火蓋が切って落とされた。
93 ◆6k2N0.Pf9Y :2008/11/05(水) 00:37:08 O
プロバイダーが永久アクセス規制となったので、代行依頼スレに依頼しました。
向こうのスレでトリップを晒したので、これからはトリップを変更します。
94└|∵|┐:2008/11/07(金) 16:49:47 O
└|∵|┐ポッ!ポッ!
(長き眠りから目覚める)
>>89-92
「敵艦隊突撃してきます!」

オペレーターが艦内全てに響き渡るような声で敵の動きを艦橋の司令部に報せる。
しかし、そんなことは敵の陣形を目の当たりにした司令部の人間にとっては予想済みのことであった。

「陣形とその動きを見る限りでは、敵の目的は短期決戦にあるように思われますな。
 すなわち、狙いは旗艦クラスナーエ一つである可能性が高いのではないかと。
 元々敵は絶対数で劣っておりますので、玉砕覚悟の賭けに出たとしても不思議はございますまい」
「うーん……」

アレフティナは副官の言葉に頷きながらも、直ぐに具体的な対抗策を述べようとしなかった。
そんな彼女の態度に痺れを切らしたように、副官セドリックは続いてその対抗策を進言した。
しかし、次に発せられた彼女の言葉はその策に対しての可否ではなく、彼が全く予想だにしないものだった。

「中央部は弾幕を張り続け敵の進撃を阻む間、伸びた両翼は敵の退路の断ちに向かわせ、
 しかる後に前後左右から砲火を浴びせ一挙に殲滅に移るべきです」
「……少佐。思ったんだけど、連合軍はどうしてこうも早くアルゴビーにかけつけたと思う?」

彼は思考の整理もあって、一瞬その回答に躊躇したが、直ぐに現実的な回答を述べた。

「はっ。敵の艦数から考えれば、アルゴビー近くの連合領を航行中の地方艦隊が我々の動きを察知し
 自らの意思によって急行したか、あるいはアルゴビー政府から救援要請を受けたのか……」
「そうだよねぇ。けどそのいずれにしても、本国にそのことが伝わっていないはずがない。
 ……いずれこの宙域には連合の正規艦隊が殺到してくるよ」

彼女がそう言い終えてから、彼は彼女のいわんとすることに数秒の間気付けないでいたが、
それに気付くと、思わず目を見開いて呟いた。

「……まさか!」
「黙ってても増援が来るのだから、あの艦隊は初めから自分達だけで勝つつもりはないのかもしれないねぇ。
 仮にそう考えているとすれば、勿論この突撃は、玉砕覚悟のものであるということがなくなる」
「……すると、敵の意図は短期決戦とは全く逆の、増援が来るまでの間の時間稼ぎにあると?」
「確信してるわけじゃない。あくまでの私が考えた可能性の一つさ。この可能性について、少佐はどう考える?」

確かに確証があるわけではない。しかし、彼にとっては自分が勧めた作戦を執るより、
司令官である彼女が考えているであろう作戦の方が、既に有効であるように感じられていた。
「……十分にありえるでしょう。それで、提督は敵の作戦をどうお読みになりますか?」
「今にしても思えば、数の少ない敵が敢えて防御の弱い突撃陣を形成したのは、こちらが包囲陣を敷くように誘導
 するためだったのかもしれないな。とすれば、敵は包囲網を形成される前に層の薄い中央部を突破しようとするだろう。
 しかし我々の後背にあるのは帝国領オレンボー。敵が少数であの広大な星域を占領しようという気がなければ、
 敵の選択肢は絞られる」
「つまり突破後、急速に反転回頭して背を向けた我々中央部を再び撃つ、と……。
 反撃しようと全艦が躍起になればそれこそ敵の思う壺になるでしょうな」
「まぁ、あくまで時間を稼ぐつもりならこちらも望むところではあるのさ。アルゴビーへの奇襲を察知してから艦隊を
 差し向けた連合より、作戦開始から順次艦隊を差し向けている帝国の方が、第二陣の到着が早いはずだからね。
 だけどかといって敵の思う通りに動けば、こちらの戦力の消費も馬鹿にならない。だからここは敵の突破を阻止する」
「やはり中央部の弾幕を厚くさせますか?」
「それもあるけど……何もこちらがただ敵の接近を待つことはないのさ。つまり、全軍を敵の進撃速度と方向に
 合わせてスライドさせていけば、こちらは常に左右前方の三方向から砲火を浴びせることができるだろう?
 そこで広げられた左右の翼を上手く閉じることができれば、敵は前後左右の十字砲火に晒される」
 
彼女はいつになくキッパリと対抗策を言ってのけたが、内心ではあまり自信を持っていたわけではなかった。
それには生来の性格以前に、彼女自身がこの作戦の問題点に大きな不安を抱いていたからだった。
だが、彼女がそれを言うまでもなく、副官セドリックもその問題点に気がついていた。

「突破を許さず、尚且つ敵を包囲し続け絶え間なく砲火を浴びせる……成功すれば間違いなく有効でしょうが、
 問題があるとすれば、各艦がちゃんと連動して動いてくれるかどうかですな」
「そう……。しかも両翼は広げている分、敵の動きに合わせつつ翼を閉じようとする時の負担は計り知れない。
 秒単位の正確さが求められるだろうからねぇ……。しかし、これ以上他の策を練る時間もない」
「加えて我が艦隊は遠征連戦続きでただでさえ兵士の士気の低下が懸念されますからな。
 これは提督の無理はしないとの前言を、撤回しなくてはならないでしょう」

彼のこの言葉に、彼女は腕を組みながら顔を下に向け一つ溜め息をついた。
その顔には、自分の思い通りにはいかない世の厳しさを改めて知ったといわんばかりの表情が浮かんでいた。
再び彼女が顔を上げた時、メインスクリーンには間近まで迫った敵の先陣が映っていた。

「提督! ご命令を!」
「少佐、全艦に今の作戦を通達! そして10秒後に全砲門を開いて弾幕を張り、敵の進撃速度に合わせて後退!
 これより作戦に入る! 総員、心してかかれ!」
>>95ー96
ヨハンは敵の巨大CWに注目していた。
何故あのような巨大兵器が投入されたのか?
地方のパトロール艦隊がこのような兵器を所有しているはずがない。
敵の目的は新兵器の性能実験ではないか。
「意見具申。敵の目的は新兵器の性能実験である可能性があります。よって小官は敵の巨大CWに攻撃を集中させるべきであると考えます」
98 ◆6k2N0.Pf9Y :2008/11/10(月) 22:33:08 O
今から投下依頼してきます。
鳥はuruQDYw3oです。
99ヴァイス中佐 ◆uruQDYRw3o :2008/11/10(月) 22:41:13 0
>>95-97
艦隊戦というものは、指揮官の性格や選択によって様々な局面を見せる。
配置上の関係から部隊の責任度合いというものも変わってくることもあり、結果的に遊兵が出現してしまうことも珍しくない。
その意味では、鶴翼の包囲陣において責任の軽い部隊など一つもなかった。

中央の部隊は敵の突進を受け止めねばならず、左右両翼は敵より素早い行動によって蓋を閉めねばならない。
仮に敵を完全に包囲下においたとしても、艦隊を一個の円として運用する以上その線は細くならざるを得ず、
ほんの僅かの緩みを見せたが最後、蟻があけた小さな穴から堤が決壊してしまうように、敵の突破を許してしまう羽目になる。

故に包囲殲滅線は困難を極めるのだ。それは時と場所を違えても決して変わらない。
古来に伝わる英雄によって確立された戦術が、銀河暦を迎えた今でも士官学校の教本に残っている所以である。

それを避けるべく銀河の端で一個大隊の指揮を取る男が、低くうめいた。

「…これは」

数で勝る相手の包囲陣形に対して時間を稼ぐ為に、突破してこれをかき乱す。
巡洋艦巡洋艦ブラオ・メーアのメインブリッジにいたヴァイスは、そう判断して突撃命令を出したのだが、
モニターに表示される敵艦隊の動きを見つめるうち、指揮官としてその脳裏に違和感と疑念が生じさせていたのだ。

「…敵左翼が若干ブレてますな」

副官を務めるこの男もまた、敵の動きに訝しげに見ている。
こちらを包囲せんと動き出した敵左翼の中に、僅かながら後退しているものを見つけたのだ。

(間違いない!)

命令を出した直後に彼が抱いた懸念、それは敵が移動包囲戦をしかけてくる可能性だった。
片方の突貫にあわせて引く、数に驕らず有機的かつ柔軟な戦法を選択している。
指揮官はアレフティナであるというヴァイスの推察は確信へと変わった。
100ヴァイス中佐 ◆uruQDYRw3o :2008/11/10(月) 22:43:42 0
「敵は後退しながらこっちを包み込む気か!」
「中佐!」

副官も言葉に出してこそ言わないが、その表情が突撃命令の撤回を訴えていた。
だが、放り投げたサイが元に戻らないように最早停止命令を出すことも出来ない。
命令を出しても、それが正確に伝達されるまでは若干の時間を要する。
既に先鋒では弾幕の張り合いが開始されていた。この段階で反転後退と命令を出そうものなら…

「それこそ敵の包囲殲滅にどっぷりと嵌るぞ」

前衛は最早とめようが無いし、全体の動きを止めるのも危険だった。
それならば、ポイントを変えてせめてその方向を変えるしかない。

「目標を変更する。中衛を右翼、後衛を左翼としそれぞれ敵左翼、後衛は敵右翼を叩く!」
「兵力を分散するのですか!?」

兵力を集中させるのは兵法の定石であるのに、あえて無視しようと言うのだから副官の驚きは当然と言えた。
ましてや戦力では敵の方が勝っているのだから、正気の沙汰ではない。

「敵の両翼、個々の艦船で見れば操船は決して悪かないが、
 後退しながら敵の包囲を行うには運用レベルでの訓練が足りとらん」
「そこで敵の虚をつくと?」

中央突破を改め、挟み撃ちのつもりでいた敵への奇襲に切り替えようと言うのだ。
味方の艦隊が来るまで時間を稼がねばならない事情故の苦肉の策のつもりが、
先鋒のアブラクサスがどうにも目立ち、次第に敵の矛先を引き受けていったことが僥倖となった。
その分連合側の両翼には枷がついておらず、より自由な戦術的行動を取れるからだ。

(とはいっても、選択肢は限られているがな)

彼の作戦とはこうだ。帝国軍は蛇を誘い込みながら両の手でその頭を捕まえようとしている。
それならば新たに二匹の蛇を出現させ、その手首に噛み付かせるまでだ。
こうして敵が怯んだ隙にそのまま敵後方に回り込み、先鋒とあわせて敵中央部を挟撃する。
問題があるとすれば、敵の両翼を混乱させても尚、味方が数で劣っている点だった。

「敵側面を横殴りにしてすり抜けろ!…さぁて、うまくいくだろうかねぇ」

頭痛薬を口に放り込みながら彼は自嘲気味に呟いた。
>>97
主任参謀シェーンブルンが敵の先陣に紛れた、特殊な形の攻撃艦を発見したのは、
アレフティナが全艦に向けて移動包囲戦の指令を出した直後だった。
艦橋にいる司令官と副官の二人は、とっさにメインスクリーンに目を向けた。

「確かに見ない形の戦艦だな。いや、戦艦というよりは、巡洋艦に近い大きさだが」
「形は主任参謀の指摘する通り、CWを連想させるものですが……」

副官セドリックはそこで言葉を詰まらせた。当然である。
形を見ればCWと判断できるかもしれないが、艦船に見えるのもまた事実であり、
しかもあれ程巨大なCWなどこれまでに例がなかったのだから。
いずれにせよ、「あれは新兵器」であろうという認識においては、既に艦橋の三人の考えは一致していると言えた。

「小官も主任参謀殿の意見に賛同いたします。巡洋艦であれCWであれ、性能が未知数である以上、
 どんな破壊兵器を備えているか分かりません。いずれにせよ、とにかくあの兵器は鹵獲、または破壊すべきでしょう」
「ふむ……。分かった、貴官らの言に従おう。だがその前に、あの妙な形の艦船についてのデータを出来る限り
 集めておこう。主任参謀、頼まれてくれるね?」

アレフティナはシェーンブルンにそう伝えると、次に新兵器への集中砲火を命じた。
次にオペレーターの報告を聞く時は、敵新兵器の撃沈が確認された時であろうと艦橋にいる誰もが
考えていただろう。ところがそこに予想だにしない報告が、司令部の三人のもとへと届けられるのだった。
>>99-100
「……? て、敵が三つの部隊に分散しました! その内二つは味方右翼、左翼に向かっています!」

三人の内誰もが耳を疑っただろう。
だが彼らはオペレーターに問い直すこともせず、無言の内に互いに目だけを合わせて、
敵の意図について素早く考えを巡らし始めていた。

「とても正気とは思えませんな。これでは数の劣勢を補うどころか、逆に自らを窮地に追い込んだようなものです。
 こちらの作戦に気が付いて、起死回生は不可能と判断し自棄になったのでしょうか?」
「そうだと有り難い。けど、こちらの作戦に気が付いたなら、それを逆手に取った敵の作戦と考えるべきかな。
 とするならば、だ……やはり……動きが"雑"な両翼の隙を敵が見逃さなかったということか……。
 分散した敵の両翼が我々の両翼の動きを牽制する間、敵先端部のみが中央部への突撃に徹するのか、
 それともやはり分散しても敵全ての最終的な狙いが我々中央部への攻撃にあるのか……」

彼女はそこまで言うと、肘をついて頬を手に乗せ、逆の手の指でデスクを「トントン」と突き始めた。
瞬時に明確な答えを出さずにいた彼女には、どこがその表情に焦りの色が浮かんでいるようだったが、
次の副官の一言が、彼女からそれを振り払わせた。

「……いずれにしましても、敵の策が諸刃の剣であることは確かでしょう。
 形勢は未だ我々の優勢です。こちらが必要以上に警戒して、予防線を張ることもないと存じますが」
「……ふむ……そうか、そうだな……。ならば、こちらは単純に分散した敵の弱点を利用するだけにしようか。
 全艦に"我が方優勢。怯まず、一つ一つ慎重に目の前の敵を墜とせ"と伝えな」
(やれやれ……慌てるのが私じゃね……。これじゃどっちが司令官だか……)

軍帽を被り直しながら、彼女は自分自身に苦笑していた。
102 ◆6k2N0.Pf9Y :2008/11/16(日) 19:15:28 0
惑星ホンから出動したロゼアン連合軍の艦隊は、最大限の速力を持ってアルゴビー宙域を目指していた。
その勢いたるや、司令官の名前にもある猛牛の突進を連想させるものがあった。

「急げ、4億の民衆が窮地に晒されているのだ」

旗艦ビャウォヴィエジャの艦橋で、老提督は静かながらも力強さを持って厳命する。
既に一基のコロニーが塵芥と化している以上、一刻の猶予も無いのだ。

司令官たるジャック=バイソン大将が率いるのは4個艦隊4000隻、動員している将兵の数にして80万は下らない。
だが、アルゴビー救出という戦略上の目的を果たすに十分と言い切ることは出来ないだろう。
帝国軍は明確な意図によって攻撃を開始した以上、後続の艦隊が確実に押し寄せてくる。

「それにしても厄介なことだ。敵は予め可能な限りの用意をできるのに比べてこちらは…」
「即時に投入できるだけの戦力には限度があるでしょうな。後手に回っている弱みでしょう」

参謀のマサムネ=ヤギュウ准将の応答に頷くも、表情は冴えなかった。
だが、彼らの元にその曇りがちな表情が一変する情報が齎される。
人道支援と証したノルド共和国の救助部隊が既に出発しているというのだ。

「対応が早すぎますね」

救援要請が届いてから行動を起こせば、今ようやく救助部隊の編成と収集が始まったくらいであろう。
ホンから出たこの艦隊とて先のオカダ大将(死後二階級特進)の襲撃戦からの臨戦態勢があった故である。
にもかかわらずノルド側が既に出発しているとなると、救助部隊には事前に指示が出ていたことになる。

「今回は連合側の方が敵の内部情報を事前に掴んだ…ということか?」
「いえ、それでしたら我々に伝わらないという道理がありません…あるいは…」

ヤギュウ准将の脳裏には、ノルドが描いた絵というものがおぼろげながら浮かんできた。
103 ◆6k2N0.Pf9Y :2008/11/16(日) 19:17:15 0
ロゼアナ連合において、”国家”などというものは規模の大小に関わらず地方行政の単位の一つでしかなく、
各国の元首などはその選抜方法の違いを問わず酋長と呼んでしまってもいいくらいの扱いである。
ロゼアナの政治体制は、複数の国家からなる選挙区から選出させた三百人あまりの議員達によって決定されるのだ。

連合はより大勢の人間の支持で成り立つ民主主義を人類史上至高の政治体制と認識し、崇拝している。
だがそれは51%を抑えれば勝利できる故に49%を切捨てという露骨な言い方をすること出来る。
51%の支持を得た候補者を送り出した国家が、その選挙区で51%の勢力を得ていればそのまま議員当選という按配だ。

連合の制度上議員はまず一つの国家から候補を一人推薦することが許されている。選出方法に規定は無い。
国内において、連合議会の選挙権を国民による投票で過半数を得た──いわゆる民主的な方法で選出された候補者は、
その過程で投票された全ての票を、議員選挙の本選において己の票として扱うことが出来るのだ。
これは、膨大な量となる開票作業を可能な限り短縮するために設けられた規則である。

「時期を考えれば自ずと正解が見えてくるかもしれません。今は11月の半ばですので…」
「連合議会の選挙が近いということか」
「亡命者や難民は、正式な手続きを踏んだ上であれば連合議会における選挙権が与えられますからね」

簡単に言えば、億単位の難民はそのまま億単位の票となり、選挙区内部での自国の影響力を高められるのだ。
連合に送り出す議員を選出する際に、より自国の意思が反映されやすくなるから当然票田を欲する。
看過しがたかった。参謀の推察が正しければ、ノルド共和国は何らかの形で情報を掴んでおり、
独自に救助部隊を編成しておきながら、連合軍全体に情報を共有しなかったということになる。

「結果的に、コロニーの住民はノルドの地位向上のための道具とされたと言うことか!」
「しかも現場に急行したのはダイク技術将官お抱えの実験部隊の模様です」

またあやつか──!あの老人は一体どういうつもりなのだ──!バイソンは溜息と共に天を仰いだ。
攻撃を仕掛けた帝国側の意図はわかる。空白地帯を飛びぬけて敵地に攻め入るという発想は古来から存在するのだ。
それに付け込んだノルド側の目的も見えてきた。国益に沿った行動でしかない。
だが、あの科学者の思考だけは皆目見当がつかない。司令官の苛立ちは募る一方であった。

「閣下、いずれにせよ今は我々の成せることを成す。それだけでしょう」
「そうだな。貴官の言うとおりだ」

深く椅子に座りなおすと、今は目の前の事態に備える以外のことを脳裏から排除した。
104ヴァイス中佐 ◆6k2N0.Pf9Y :2008/11/16(日) 19:19:47 0
その頃、戦場となったアルゴビーでは、戦局は刻一刻と変化しつつあった。
移動包囲戦術をとった帝国軍に対し、寡兵の連合側が戦力の分散を持って応じた為である。
純戦術的に見ても非常に稚拙極まる決断をした指揮官は、旗艦の艦橋で注意深くモニターを見つめていた。

「敵は中々に慎重だな…」
「我々は数で劣っています。各個撃破を狙っているのでしょう」

その言葉どおり、目前の敵は積極的には動かず有効射程内に相手が入ってくるのを待ち構えているようだ。
相手が寄せてくれば迎え撃ち、取って返すようならそのままジリジリと寄せてくる心算だろう。

「ならば、さらに二手にわかれる。敵左翼に相対している右翼にも同一行動を取るように伝達しろ」
「正気ですか中佐!?」

言葉遣いとしては不適切だが、副官はそれを意識する精神的余裕をほんの一瞬失っていた。
だが、それとは裏腹にヴァイスの表情には先ほどの頭痛による苛立ちから、次第に不敵な笑みのような余裕あるものへと姿を変えていく。

「各艦、戦術端末のBB5回路を開き、暗号ファイルを解答せよ」

若き指揮官は自身を持ってその指示を出した後、徐に立ち上がった。

「全艦!全速前進!」
105ヴァイス中佐 ◆6k2N0.Pf9Y :2008/11/16(日) 19:20:18 0
駆逐艦からなる両翼は、敵に向かって悠然と突進したと思うとそれぞれ敵両翼の有効射程範囲外で二手に分かれた。
挟撃する気か?と連合側の指揮官が防戦に努めるべく指示を出したが、その予想を大いに裏切り、
連合軍の駆逐艦達は彼らの目の前を悠然と通り過ぎ、後方で合流後してそのまま前進を続けたのである。

───俺達を平然と無視して中央を狙う気か!──

帝国軍の両翼の指揮官がどのような心理状態に陥ったかを想像するのは容易かろう。
そのまま行かせてなるものかとばかりに急速反転して敵の後背を撃たんとしたが、包囲隊形を取りつつ押し寄せたことが仇となった。

「な、なんだこれは!?」
「機雷です!うわああぁああ!」

機雷を即席の撒き菱として活用したのである。手段としては単純極まりないものだし、確実性にかける。
それでも少数の敵から無視されたことで視野狭窄に陥っていた敵の両翼は簡単に罠に嵌った。
機雷により爆発、座礁した艦船が後続の艦船の前方を塞ぐ格好になっている以上、
帝国側の両翼は即時追撃を断念せざるを得なかった。

仮に相手が体勢を立て直しても、船足を考えればしばらくはこちらの優位を保てる筈だ。
敵は彼の狙い通りに見事分断された。後は3隊による敵中央部挟撃を貫徹するのみである。

「突撃!ただし敵の機雷原や罠には最新の注意を払いつつ…な」
106名無しになりきれ:2008/11/16(日) 22:21:18 0
現在の登場人物

帝国側
バルテル・ハインリッヒ・フォン・ベッカート上級大将
アレフティナ・レオーノフ中佐
ヨハン・フォン・シェーンブルン少佐
セドリック少佐
ユリア・フォン・シェーンブルン技術大尉(ヨハンの姉)

連合側
ジャック・バイソン大将
オカダ少将→大将(戦死後二階級特進)
マサムネ・ヤギュウ准将
ダイク技術将官
ヴァイス・パピア・フォン・ゼカルテ中佐
ウォルフガング・ゲイボルグ特別大尉

その他
キャプテン・ヴェイン(海賊)

抜けがあったらよろ
107└|∵|┐:2008/11/16(日) 22:29:00 O
└|∵|┐ポーッ!

(大地を割り登場)
>>104-105
スクリーンを通して戦況を見つめるアレフティナは思わず舌打ちをした。
傍らに立つ副官セドリックの表情も、苦虫を噛み潰したようなものとなっていた。
それは敵の動きに関する誤算からくるものであったが、
彼らはその表情とは裏腹に、至って冷静ともいえる会話を続けていた。

「敵が接近してきます。艦長として、ここは旗艦を下がらせることにしますが、よろしいですな?」
「艦長の良きように。……中央部を敵の動きに合わせて更に後退。両翼はそれぞれ時計回り、
 反時計回りに機雷原を迂回させて、後方で合流させるよ」

両翼は混乱の中にある以上、勿論この命令が忠実に実行されるかどうかは甚だ疑問である。
かといって中央部だけの兵力では劣勢は明らかであり、迫り来る三つの艦隊を各個撃破、
あるいは後退から一転逆進して敵の一つを突破し、自ら両翼と合流を果たす等という戦術を
成功させうるだけの余地があるかと言えば、それこそ疑問であるだろう。
いずれにせよ"守"に徹しなければならないということは当人達の一致した結論であり、
彼らはその姿勢に相当する指令を命じたに過ぎないのである。
もっとも、感情的な司令官であったなら、中央だけでも敢えて"攻"に回っていたかもしれない。
内心、煮え繰り返るものがありながらも彼らがそうしなかったのは、
それぞれが作戦の根幹を沸き立つ感情で忘れ去ることがない人間であったからだろう。

「両翼の兵士達には気の毒なことをさせてしまいましたな」
「力無きものがここまで罪深いとはね。全く、今後のいい勉強になるよ」

アレフティナは真顔でそう呟いた。
副官には指令席に力なく肘をついたその姿に、どこか哀愁のようなものが漂っているように感じられた。
そして副官がそんな彼女から視線を外した時、オペレーターが艦影発見の報せを司令部にもたらすのだった。
「艦影発見! これは……オレンボーからの艦影です! その数およそ3000隻!!」

敵か味方かを訊ねることなく、彼らは安堵の表情を浮かべた。
敵の増援が帝国領を経由して来るという可能性がほとんどない以上、
発見された艦影が何を意味するものであるかは明らかであったからだ。

「味方です! アレニウス艦隊、マッカラム艦隊、アングラード艦隊の帝国軍第二陣です!!」

敵とアレフティナの艦隊を合わせた数の、およそ60倍以上の艦隊が急速に接近する姿を
敵もキャッチしたのか、敵は前進を止め、中央部を牽制しながら急速に後退していった。
アレフティナ艦隊の両翼は混乱の中にありがならも何とか迂回を進めており、
これが逆に後方の脅威を無くした敵に速やかな後退を許す結果となっていた。

多数の味方の来援で、アレフティナ艦隊は失いつつあった活気を再び取り戻しており、
アレフティナにはここで追撃の命令を下すこともできたであろう。
だが追い詰められた鼠に噛まれるが如くの事態を恐れた彼女は、分断された自軍の再集結を最優先とした。

「ゴングに救われたな。勿論、我々が……だが」

彼女がそう自嘲気味に呟いた時、艦橋に来援艦隊からの通信が入るのだった。
回線を開くとメインスクリーンに映ったのは、青い瞳に銀髪、既に40代半ばの年齢でありながら
まだ若き青年を思わせるような風貌の、アレニウス艦隊司令、オッシアン・アレニウス中将であった。
艦橋にいる司令官やその幕僚は即座に席から立ち上がり、敬礼を始める。
彼はスクリーンを通して彼女らの姿を視認すると、ようやく喋り始めた。
「私は第二陣の指揮を任されたオッシアン・アレニウス中将である。
 貴官が当作戦の第一陣を務めたアレフティナ・レオーノフ中佐か?
 貴官の任務であるアルゴビーが不当に有した軍事兵器および軍事基地の破壊はどうなったのか?」
「アルゴビー宙域への侵入と同時におよそ30隻あまりの攻撃艦が出現しましたが、
 そのことごとくを殲滅いたしました」
「そうか。では先程まで貴官らが交戦していた相手は連合軍というわけだな。ご苦労であった。
 奴らの処理も後は我々に任せ、貴官は第三陣が到着するまで後方へ下がるがよい」

彼はそこまで言うと通信を切ろうとしたが、彼女はそこに待ったをかけた。

「お待ち下さい! 実はアルゴビーの軍事力についてお話しておかなければならないことが……」
「中佐、我々は与えられた任務を実行に移すだけだ。私は他の二艦隊と共に、この宙域と首都コロニーを
 早々に制圧せねばならない。間もなくベッカート閣下が直々に指揮なされる第三陣がここに到着する。
 その時閣下に直接伝えればよかろう……。では」

彼はそう言い残すと、画面から姿を消した。
敬礼を解いて、彼女は疲れたように司令席へと腰を下ろした。

「第二陣が3000隻とは……第三陣はもっと大規模な戦力であることが予想されますな」
「……」
(第三陣がどの程度の規模のものなのかは分からないが……
 軍事力を有していると想定される一国の首都とその領域を制圧するのに、
 3000隻というのはむしろ少なくはないのか? アレニウス中将の態度といい、
 やはりお偉方はアルゴビーに軍事力などないと知っていて……)
「……いずれにしろ、確かに直接聞けば分かることか」

いきなり独り言のように呟いた彼女を見て、副官は不思議そうに尋ねた。

「……なにか?」
「いや……なんでもない。とにかく後方に下がって良いと言われたんだ。そうしようじゃないか。
 こちらの被害を算出しながら、高みの見物と決め込むとしよう」

こうして合流した両翼と共に、アレフティナ艦隊は前線より退いていった。
111ヴァイス中佐 ◆6k2N0.Pf9Y :2008/11/19(水) 23:34:52 0
>>108-110
帝国軍の中央部を補足しえた時、ヴァイスは作戦の成功を半ば確信していた。

もともと3倍の敵を相手に救難信号が出たから拠点防衛に赴けと言うこと事態が、
順軍事的に考えれば常軌を逸するどころか自殺願望の域に達している。
だが軍隊にいる以上命令は絶対なので、極限の中で手段を選択していく他はない。
そこで彼は3倍の敵に対してその兵力を分断し敵中央を包囲するという博打をしかけたのだ。

小規模の戦闘ながらそれを果たしつつある今、彼自身経験したことの無い充実感と高揚感に満たされ、
血沸き肉踊る軍記物の人物になりおおせたかのごとき錯覚まで見えていた。

「敵両翼が機雷を迂回しつつあります」
「包囲を諦めんつもりだろう。その前に叩いておこうか」

この時ヴァイスの脳裏には、敵増援が出現する可能性が浮かんではいたものの、
成功を前に都合の悪い予想を排除したがる人間の性の虜とならざるを得なかった。
彼が再びその因子に思い至るのは、けたたましいアラートと共に齎されたオペレーターの悲鳴によってだった。

「新たに艦影出現!その数およそ三千!」
「戦力差がゲオルギウスの5倍だな…話にならん」

はき捨てるように言うと、先ほどまでブリッジに充満していた高揚感はどこか遠いところへ消え去っていた。
勝利を目前に滾らせていた熱気に対し、真っ向から冷や水を浴びせられたのもあるが、
これからまさに帝国軍の攻撃に晒されることになるコロニー住民を見捨てざるを得ないことの方がより大きかった。

「三十六計逃げるに如かず…か、撤収だ!」

彼らの本質的な任務はコロニー防衛ではなく新兵器の実戦データ収集にある以上、全滅しては元も子もないのだ。
借り物は責任を持って返却する、などというのは幼年学校に入る前の児童ですらわかりきっている理屈である。

幸い、逃げるには労力を要さなかった。元々足回りの早い駆逐艦で構成された船団であったし、
相手が包囲をしこうとして機雷原を迂回したことで直線的な逃走経路が出来上がっていたからである。

「この場は、逃がしてくれた…と見るべきだろうな」

敵の待ち伏せなどを警戒し火力で圧倒できるアブラクサスを先頭に、殿には防御力で勝るブラオ・メーアを宛がって戦場を離脱した。
112 ◆6k2N0.Pf9Y :2008/11/19(水) 23:35:31 0
─ 一ヶ月前 ─

アルゴビーの首都最大のホテル「メリッサ」で、あるプロジェクトの成功を祝う記念式典が開かれていた。
政財界はもとより各国の著名人やマスコミがつめかけ、ホテルの周囲までもがお祭り騒ぎの様相を呈していた。

「このすばらしい今日と言う日を皆さんと共に迎えられたことを感謝します」

大勢の賓客を前に老科学者が控えめな言葉で喜びを口にすると、壇上に向けて拍手とフラッシュが一斉に巻き起こる。
コロニーで形成されたこの国が、3年もの時間をかけて配備した自給計画は今ここに実を結んだ。
その最大の功労者は先ほど挨拶を行ったカーペンター博士であろう。
エナジーサイクルシステム(ESS)をはじめとした数々の新技術を開発し、計画の中心的存在となった人物である。

エネルギー、食料…どちらも人間が文明社会を営む上で必要不可欠だが、賄うのは容易ではない。
農業は水耕プラントを用意すればいいが、アルゴビーにとってエネルギーに関しては原料を輸入する以外に手は無かった。
そのエネルギーをコロニー1基単位で自給する為の画期的な仕組みが「エナジーサイクルシステム」である。

コロニーの外側に球体のエナジープラントが連なってリングを形成している。その光景は数珠を思わせるものがあり、
後にニュースを拝見したヴァイスなどはコロニー本体が攻撃に無力なことから棺桶に喩え、
また新造されたミラー壁──太陽光発電とESSのサポートの為のハード──が見方によっては十字架にも見えることから、
「合わせて葬式三点セットだ」などと不謹慎極まる感想を脳裏に抱いている。

VIPに囲まれ、上機嫌で自らの発明について嬉々として語る博士の姿は、おおよそ好々爺の範疇を出ていない。
だが、パーティーの中で気づいている者はおそらく一人として存在しなかった。
彼らの中心にいる老科学者が、場所を変えれば名前も地位も尽く変える人物であったとを──!
113 ◆6k2N0.Pf9Y :2008/11/19(水) 23:36:33 0
現在

一ヶ月前、上機嫌でホテル「メリッサ」の記念式典に臨んだ老科学者は再びアルゴビーを訪れた。
ただし、今回はアルゴビーが用意したクルーザーではなく、軍の連絡艇に搭乗しており、
出迎えるのもホテルの従業員ではなく、戦艦マフートの無機質な収容口だった。

ノルド共和国から発進した救援部隊と称するそれは、まだ帝国と連合の小規模戦闘の最中にアルゴビーの反対側に到着していた。
だが、3個艦隊、及び多数の工作船からなるその船団はおおよそ救援という言葉には似つかわしくない様相を呈している。

「お待ちしておりました。ダイク博士」
「思ったより速くついたのぉ、結構結構」

旗艦ポロットのメインブリッジで、艦隊司令官たるイカロス中将の形式どおりの挨拶に軽口で応じると、
ダイクはそのままメインスクリーンに目を移した。
無数のコロニーが深淵の宇宙にその巨体を横たえており、その円筒をESSが数珠状に取り囲んでいる。
自身の作品が現状問題なく作動していることを満足げに確認すると、再び司令官の方に向き直った。

「しかし驚きましたな。帝国軍が本当に攻めてくるとは」
「攻めてこざるをえんじゃろうなぁ。
 帝国軍、とりわけ…確かベッカートと言ったかな。奴さんにはその事情がある」

ベッカートという名前には心当たりがある。帝国軍上級大将だが、統帥本部次期総長と呼ぶべき人物との情報だ。
現在の総長であるフォン=バイエルン元帥が定年間近の老齢につき精彩を欠いていることから、
その元帥府も実質彼が統治しているようなもの──と目の前の老人が付け加えた。

敵側の人物の動向や情勢を、この老人は何ゆえ詳しく知っているのか?
イカロスは口外こそしないが、一体何を企んだのだという目線を送りつけた。
最も、目の前の老人はそのようなことは一向に意に介さず、発言を続ける。

「ま、今回の主眼はコロニーの民衆を無事逃がすことにある」

口で言うのは簡単だが、億単位の人口を一挙に輸送するのは極めて困難である。
ノルドの船団も数は多いがそれだけの輸送船を動員している訳ではない。
司令官たるイカロスとて詳細は聞かされてはいないが、おそらく鍵はこの工作船にあるのだろう。
114 ◆6k2N0.Pf9Y :2008/11/19(水) 23:37:45 0
「あの船は最後の仕上げをちょこっとやってもらうだけじゃ
 前準備はESSを取り付ける段階でもう終わっとるわい」

エネルギー物資を循環再利用する為の仕組みのESS取り付けに乗じて、ダイクは既に工作を施していたようだ。
アルゴビー側の人間が知ったらどんな顔をするのか、さぞ見ものだろうとイカロスは内心思った。

「ワシが組み込んだのは単純なワープアウトの為のシステムじゃよ。規模で言えば前代未聞じゃがの」

計画の実を始めて聞かされたイカロスは大胆かつ突飛な発想に半ば呆れた。
何しろ400個あまりの直系50キロ、幅10キロ以上の円筒形の物体が、一度にワープアウトしようというのだ。
予め用意が成されているとはいえ、その実現には輸送船より工作船の動員が必要なのは言うまでも無い。

「しかし、帝国軍の攻撃によって失敗することもありえるのでは?」
「そうじゃの、明後日の方向へと吹っ飛ぶ可能性もゼロではない」

老科学者が口の端を持ち上げたその表情を、イカロスは気にも留めなかったが、
もう少し突っ込んでおけば、この時点でのダイクのもう一つの発想もこの時点で明らかになっていたかもしれない。

「ま、仮にそうなったとしても3億以上の人間が無事にノルド領内にワープアウトできる算段じゃ」

だから安心せいと言わんばかりの老人に対し、数の問題ではないのではないか?という疑問を口にしようとした時、
けたたましいまでのアラームが帝国軍の第2陣の到着を告げた。

「来なすったのぉ、そろそろワープアウトの準備を始めんと…な」

結論から言えば、ダイクの思惑は成就した。
帝国軍の第2陣が攻撃を開始した瞬間、無数のコロニー群が突如として光の彼方に消え去ったのである。
それを見た連合軍の側は、事情を知っていも尚驚きを隠せなかったのだから、
全く知らされていなかった帝国軍にどれほどの衝撃を齎したのか、想像しても余りあるものがあったが、
後続の第3陣と合流した帝国軍は更なる驚愕と恐怖を、ゾルタウ消滅という凶事によって思い知ることになった。
115 ◆6k2N0.Pf9Y :2008/11/19(水) 23:41:17 0
ゾルタウ要塞

帝国領オレンボー星系存在する帝国の軍事拠点であり、アルゴビー攻撃のために出陣した帝国艦隊の塒でもある。
直系はおよそ120km、人口天体としての規模は帝国内部でもトップクラスであり、
極めて頑強な装甲と液体流金属、さらにはバリアフィールドによって守られた難攻不落の城であった。

要塞司令官は総帥本部総長バイエルン元帥の元帥府に所属しており、
元帥府をそのまま派閥と言い換えればバイエルン派の根城と言い換えても良い。
揮下の艦隊を全て収容できるドッグを持ち、要塞主砲の一撃は一個艦隊を容易に殲滅し得る。
バイエルン派の長が事実上引退寸前の今、ゾルタウはベッカートの権力の象徴だった。

その要塞に、突如として無数のコロニーが亜高速で突入してきたのである。
これこそがダイクの最大の目的、質量をぶつけて質量を無効化するという作戦だった。
だが、コロニーを弾丸に見立てて攻撃するというのは聊か問題になりやすい。
そこで方便として帝国軍の攻撃による一部コロニー群のワープ失敗という形式を取ったのだ。
116 ◆6k2N0.Pf9Y :2008/11/19(水) 23:41:48 0
本来であればその衝撃を吸収するべきバリアーは、ミラーに模した中和システムで半ば無効化され、
液体金属も度重なる衝撃を吸収しきれず捲れ上がり、衝撃は要塞に直に響き鉄壁の装甲が幾度と無く悲鳴を上げる。
こうなると銃弾の如く突き刺さってくるコロニーが要塞の核融合炉に致命的なダメージを与えるのに時間はかからなかった。

帝国軍の誇る要塞の一つであるゾルタウが、光の玉となって消えうせる頃、
惑星ホンから出撃したバイソン大将の4個艦隊と、イカロス中将の3個艦隊が合流を果たし、
コロニーの消えうせたアルゴビーで帝国軍に対して攻撃を仕掛ける。
今ここにアルゴビー会戦の幕が切って落とされたのだ。

その時には、立役者だったダイクは既に工作船と共に戦場を離脱していた。

帝国軍は要塞を失った衝撃を隠せぬまま会戦に及んだのに対して、
ロゼアン連合は会戦が始まると同時に議会がアルゴビーに対する帝国の非道な攻撃を映像つきで全土に伝え、
そのプロパガンダを持って内部に浸透していた厭戦の機運を吹き飛ばすし、
地方自治体としてのノルド共和国がその発言権を増大させるに至るところを聞いたとき
ヴァイスは背筋が寒くなるのを感じた。

帝国軍にもそれ相応の思惑があったろうが、結果だけを見ればその差は歴然としており、
アルゴビー会戦において両軍が衝突する前に今回の事態の総括として老人の一人勝ち以外の何者にも思えなかった。
117名無しになりきれ:2008/11/20(木) 00:32:15 0
…少しやりすぎじゃないか?
帝国側最大級の要塞をいきなりぶっ潰すとか一人で話飛ばしすぎ
118 ◆6k2N0.Pf9Y :2008/11/20(木) 07:23:01 0
すいません
ノリでやりすぎました

要塞云々のくだりは無しで、
目標を要塞から帝国艦隊へ変更ってことで…
119エイク・リ・パブリク ◆K7L81OAJSo :2008/11/20(木) 17:35:20 0
名前:エイク・リ・パブリク
階級:技術大尉
役職:連合軍第1特務実験戦隊(α部隊)指揮官
性別:男
年齢:33歳
身長:178cm
体重:87kg
容姿:平均的だががっしりとした体付き
    長い白髪を後ろ手に纏めている
出身惑星:惑星バイラック
人物紹介:
 元々は本星勤務の技術仕官だったが、ダイク技術将官の機嫌を損ね左遷されてしまう。
 その後は、ワケの分からない試作兵器の運用試験を行う実験戦隊の指揮を任される。
 慣れない指揮業務のためかストレスが溜まり、金髪は白髪に変わり大分老けて見える。
 かつては堂々とした性格だったが、現在では誰に対しても下手に出る臆病な性格である。
 ダイク技術将官の前に出ることを最も苦手としている。

【第1特務実験戦隊】
通称「α部隊」とも呼ばれ、エイク技術大尉が指揮官を務める特務部隊である。
その任務は兵器の試験運用及び評価にあり、データを纏めて開発本部に報告する。
データ収集艦「α」と二隻の護衛艦によって構成される。

名前:α
全長:200m
武装:旋回式2連ビーム砲、対空ミサイルランチャー、対空機関砲
兵器紹介:
 エイク技術大尉の乗艦で、α部隊の旗艦でフラッグシップ的存在のデータ収集艦。
 艦内には様々な機器が搭載され、それなりの情報処理能力と管制力を持つ。
 元々は旅客船だったものを改造したもののため、装甲は薄く武装も貧弱である。
 そのため、何らかの護衛が無ければ単独行動はできない。
 唯一の取り柄は、黒い船体と特務艦並みに強化されたステルス性能である。
 ハンガーには、様々な珍兵器が溢れかえったまま放置されている。

名前:試作型特別攻撃艦
全長:400m
武装:偏向ビーム砲、ビーム誘導用自律ユニット
兵器紹介:
 ダイク技術将官が開発した特殊な性能の試作艦。
 正四角錐の流線型ボディに黄緑色の船体が非常に特徴的である。
 砲塔の類いは無く、船体側面にあるクリスタルから偏向ビームを撃ち出す。
 それらを直径数十mほどの自律ユニットを操作して、増幅・誘導することができる。
 また、その形状から耐弾性が高く、先端の衝角は敵艦に対する特攻や突入に役立つ。
 しかし、それ以外の武装を積んでおらず、近距離防御力は皆無に等しい。

名前:試作型多目的防衛艦
全長:400m
武装:全方位バリア発生装置、多目的バリア展開用自律ユニット、対空パルスレーザー
兵器紹介:
 同じくダイク将官が開発した特殊な性能の軍艦。
 武装はほとんど搭載しておらず、バリア展開による防御にのみ徹底的に特化している。
 自艦の全方位にバリアを張れるほか、攻撃艦と同様の自律ユニットでインスタントバリアを展開できる。
 そのため、自艦以外の艦を保護することも可能。
 しかし、武装の少なさから、総合的な火力は旗艦α以下である。

120エイク・リ・パブリク ◆K7L81OAJSo :2008/11/20(木) 17:58:12 0
「技術屋の我々に実戦をやれと?
 正気ですか、閣下!」
司令官「アルゴビー宙域での戦闘で、帝国の増援が確認されている。
     数で勝っているとはいえ、向こうに援軍が加われば我が方は持たん。」
「彼のヴァイス中佐の指揮される部隊なのでしょう?
 不利な戦況ならば、鮮やかに撤退されるはずです。
 そもそも我々などを援軍に回さずとも…。」
司令官「今、アルゴビーに回せるだけの戦力は無いのだ。
     撤退の手助けぐらいならできるだろう?
     無理して戦えと言っているわけではない。
     頼んだぞ、直ぐに向かってくれたまえ。」

はっきり言って、鬱になりそうである。
今まで駄作兵器の評価手続きを片付けてきただけの我が隊に、初実戦をやれと言うのだ。
技術屋とは言え軍人である以上、上からの命令には逆らうことはできない。
落ち込む者、いきり立つ者、クルーの反応も様々である。

そもそもα部隊は兵器の試験運用・評価を行う、技術屋の集まりである。
技術に貢献する栄誉ある部隊にも見えるが、実際そんな甘いものではない。
いや、甘いどころか厳しい世界だ。
データ収集艦を使っての性能評価など、最早旧式化したシステムなのだ。
我が隊も、かつて無数に存在した特務実験戦隊の最後の生き残りである。
つまり、本来であれば存在価値の無い部隊なのだ。

ここに所属することは即ち、左遷されることと同意なのだ。
私を含め、部隊の面々は皆左遷されてきた問題人。
言わば、負け組の掃き溜めである。
オンボロで安易な名前のデータ収集艦が旗艦。
護衛艦は、私を左遷した忌まわしき男の開発したトンデモ試作艦2隻。
どこに行っても馬鹿にされ、奇異の目で見られる存在である。
121名無しになりきれ:2008/11/20(木) 21:06:23 0
ワープで敵にぶつけて吹っ飛ばすってのはSFの禁じ手だよなw
でもまー主役であるアレフティナやヴァイスの及ばぬ話だし別にいいんじゃね?
人命軽視の戦法とかマッドサイエンティストがいかにもやりそうだし
何度もやられると萎えるが
122名無しになりきれ:2008/11/20(木) 23:42:25 0
>>119
耐弾性が高いのに防御力が皆無とはこれいかに
123名無しになりきれ:2008/11/21(金) 09:04:45 0
>>119>>122
防御力というより、迎撃力が無いんじゃねえの?
124名無しになりきれ:2008/11/21(金) 21:47:58 0
>>118
後続の艦隊をふっとばしたらアレフティナ関連の話がぶっ壊れちゃうやん
要塞なら話に破綻を齎さないからそっちの方がいいだろ

>>123
取り付かれたら終わりか
何となくラミエルみたいのを想像したけど
125名無しになりきれ:2008/11/22(土) 00:21:05 0
ふと思ったけど参加者将校将官ばっかやな
つか登場人物に将校以上しかおらん気が
126名無しになりきれ:2008/11/22(土) 00:23:38 O
↑上げるな!!
127名無しになりきれ:2008/11/22(土) 00:30:55 O
このスレの避難所か雑談所を作って自己紹介、注意、変更など会議室的なスレを作ってみれば?
あと荒らし対策をしないとね(^∪^)
128名無しになりきれ:2008/11/22(土) 10:45:11 0
そもそもスレのシステムに問題あるんじゃね?
艦隊戦が基本みたいだからね
たかだか一機のCW出したところで、やれることはたかが知れてる
必然的に将校じゃないと活躍できなくなるわけだ
艦載機はほとんどMOBにならざるを得ないだろう
>>113-116
「駆逐艦18隻、巡洋艦7隻、戦艦1隻が大破撃沈。尚、CW48機が撃墜されたとのことです」

艦隊を後方に下げたアレフティナは兵力の再編制を終えてからしばらくして、幕僚から損害の報告を受けていた。
艦隊の半数を失ったとの報告に、アレフティナは思わず溜息をついていた。

「現時点で兵士の生存と死亡率は半々かい。……やってくれるよ」
「やはり連戦続きであるということを、軍首脳部が軽視していた結果であることは否めませんな」
「責任は私にもある。それも否定できない事実さ」

彼女は自らを嘲るようには言わず、真顔でそう呟いた。
副官は何も言おうとはしなかったが、これは兵士達の命を預かる司令官の言として、
自然、あるいは当然な認識であったからだ。二人はこのやりとり以降、互いにしばらく口を閉ざした。
疲労により無駄口を叩く気力も失せていたのだろうか。だが、それは彼ら二人だけではなかったらしい。
先程までの騒がしさとは打って変わって、艦橋はしばらく異様なほどの静けさを取り戻していた。
しかし、それを破ったのは、スクリーンが映し出した"コロニーの一斉消失"の瞬間であった。
だが驚きはこれでは済まなかった。あまりの出来事に一同が唖然とするそんな中、
タイミングを見計らったかのように出現した新たな艦隊がアルゴビーへ殺到してきたのだ。
その数、およそ7000。第二陣の倍以上の数である。アレフティナは純粋に目の前の事態に驚きながらも、
同時に帝国に差し迫った危険性を感じていた。
何故なら敵が帝国軍の動きを事前に察知していなければ、とても考えられぬ程の素早い対応であるのだ。
すなわち情報が筒抜けであった可能性が極めて高いのではないか。
そうであれば、今後も帝国軍の作戦を逆手に取られることも否定できないのだ。

「……まずいな」

アレフティナはそう呟いたが、それは倍以上の艦隊に囲まれて見る見る内に撃ち減らされていく
第二陣の艦隊を見て言ったものなのか、それとも脳裏に浮かぶ危険な疑惑に対し言ったものなのか。
──恐らく、その両方であっただろう。
ゾルタウ──。それは帝国領オレンボーに浮かぶ巨大要塞の名である。
ゾルタウ要塞は帝国側アールガウ回廊の守備の要であるアールガウ要塞と、
オードルド星系のアクサナ要塞と並んで帝国三大要塞の一つに数えられている。
つまるところそれだけ巨大で、難攻不落として名を馳せたということなのだが、
アルゴビーで帝国軍が連合軍と砲火を交えている調度この頃、ゾルタウは忽然とその姿を消していた。
その原因は大質量物体を用いた連合軍の攻撃を受け、その思惑通りに完全に破壊されたからである。
アルゴビー宙域の帝国軍がこの事実を知るのは戦闘が終結してからのことであるのだが、
彼らにとってはそれが幸いしていたとも言える。
何故なら、仮にこの時彼らに要塞消滅の報がもたらされていれば、彼らの多くは驚愕し、
ただでさえ劣勢の中で急速に失いつつある戦意を更に加速度的に損失していたはずであるのだから。

だが、アルゴビー攻撃に関わる帝国軍全ての指揮官の中で、ただ一人だけ要塞消滅の事実を知る人間がいた。
それは他でもない作戦の最高責任者ベッカート上級大将である。
彼はこの事実を知ると憤怒し、拳を強く握り締めてデスクを叩き周囲に自身の心中を露にしたという。
しかし、内心では胸を撫で下ろしていたという一面もあったことは知られていない。

彼は当初、"ゾルタウ要塞をワープによりアルゴビー宙域に移動"させ、要塞を拠点にアルゴビーを連合領侵攻の
橋頭堡とする構想を持っていた。ところがゾルタウは直径120kmにも及ぶ大質量の人口天体である。
これ程の天体をワープさせる例はこれまでになく、多くの高いリスクが彼の前に立ちふさがった。
かといって大型のブースターによって移動させる、というやり方では時間がかかりすぎるなどの
幾多の技術的困難を解決することもできず、結局のところこの構想は実行に移されず、
代わりに"ワープが可能な範囲にあり、防衛拠点として十分機能する"代用品をもって実行されることとなった。
その代用品に選ばれたのが、オレンボーの端でひっそりと浮かぶ"ダルルーボ要塞"である。

ダルルーボ要塞。複数の小惑星を結合させ、表面を加工し特殊な防弾鋼板で覆うことで綺麗な正八面体の
姿をなす、高さ40kmのこの要塞は、かつてチェーンスト公国と呼ばれた国の最終防衛ラインの拠点であった。
後に要塞を接収した帝国が長らくの間オレンボーの防衛拠点として使用していたが、
巨大なゾルタウ要塞の誕生以降、ダルルーボは影を潜め要塞としては半ば引退気味となっていた。
しかしそんなダルルーボに目をつけたことが、結果的にベッカートの命を救ったといえる。
本来であれば直接彼自身がゾルタウに乗り込んで指揮をとることになっており、
そうなっていれば今頃はゾルタウと共に宇宙の塵と消えていたであろうことは明白であったからだ。
だからこそ、彼自身もこの事態を複雑に感じざるをえなかったのである。
彼はそうした様々な思いをオレンボーに残しながらも、ダルルーボ要塞とその艦隊を率いて、
アルゴビーへとワープを開始していた。
アルゴビーで帝国軍は、時間が経つごとに徐々に劣勢へと追いやられていた。
敵は倍以上の兵力であるのだから当然の成り行きともいえたが、実際に戦っている人間にとっては
後続が到着するより先に壊滅の不安が頭にちらつく中で、冷静に達観してもいられないだろう。
後方で戦況を見つめているアレフティナは戦闘にこそ参加しなかったが、
コーヒーの入ったカップを持つ手は小刻みに震え、一人焦っていることは誰の目にも明らかであった。

「……これじゃ全滅の方が早いかもしれないぞ。第三陣はまだか!?」
「まだ、確認されておりません」

いやに冷静な幕僚の一言に、彼女は内心怒りを感じたが、
そのことで八つ当たりしてもどうにもならないことは理解していたので、
結局何も言えずただ何もかもに耐える時間を送り続けていた。
そんな彼女の我慢が限界に達しようとした時であった──。

「──後方から何かがワープアウトしてきます!」

咄嗟に彼女はスクリーンを後方の映像へと切り替えさせ、司令席から身を乗り出した。
映像は空間が歪んでいく様をとらえ、その歪みの大きさから一個艦隊レベル以上の物体が
出現することは明らかであった。この時、誰もが第三陣の大艦隊だろうと思ったことだろう。
彼女もそう思い顔に一瞬安堵の色が浮かべたが、それは直ぐに驚嘆へと変わった。

「──!?」
「おお! あ、あれは! ダルルーボ要塞……!!」

驚いたのは紛れも無く艦橋にいた全員であっただろう。
彼女は持っていたカップを落としそうになりながら、冷め切ったコーヒーを一気に飲み干した。

「あれが……ベッカート閣下の指揮される第三陣……。とんでもない物を運んできたな……」

要塞の後をついてくるように、アルゴビーには続々と新たな艦隊が姿を現していた。
その数、およそ3000。要塞内に更なる艦隊が収容されていると仮定するなら、
いまや状勢は一変したと言っていいだろう。
次々と予想外のことが起きるこの戦場で、アレフティナ艦隊の人間はただ唖然とするだけであった。
132ヴァイス中佐 ◆6k2N0.Pf9Y :2008/11/27(木) 00:27:00 0
青天の霹靂、寝耳に水…突然の驚愕を表すための言葉は数多く用意されており、
人の一生が常にそういったものに脅かされている証拠といえた。
当然それは人類が銀河を寝床とするようになってからも変わる訳ではなく…

「あ、アルゴビーが…消失いたしました!」
「どういうことだ!」

ブラオ・メーアの艦橋にてヴァイスが発した一言は、まさに彼の部隊の全員の心情を代弁していた。
コロニー国家の突然の消失、その事象の報告を受けた指揮官は無意識下のうちに立ち上がっており、
通信士はその事態に報告を復唱する以外になす術を知らなかった。

「…まぁいい、こうなったら俺らがこの宙域で這いずり回る理由も無い」

既に守るべきコロニーが無ければ彼らがここにいる道理は無い。
全艦惑星ホンへの帰還を…と発しかけた彼の命令を打ち消したのは、連合艦隊からの通信である。
メインブリッジのモニターに映し出された顔を見た彼は、たちどころにげんなりとしていくのを自覚した。
元凶たる張本人はそんなヴァイスの様子には一切の注意を払わず、自分の用件だけを伝える。

「α部隊との合流ですか?」
「うむ、今後は実験系の部隊を合流させ、実戦部隊として再編することにしたのじゃ

アルゴビーの第11艦隊旗艦ポロットに居座るダイクの顔は上機嫌そのものだった。
コロニー消失という事態が恐らく彼の計算の範疇にあったであろうことは想像に難くない。
そもそもこの宙域に何故ノルド共和国の艦隊が先行して到達しているのか…
知らせを受けて急行中の惑星ホンからの艦隊すら、まだ姿形も見えていないというのに…

(問いただしたところで、答える筈も無いがな…)

半分諦めの境地に入らざるを得ないので、思考を転換することにした。
133ヴァイス中佐 ◆6k2N0.Pf9Y :2008/11/27(木) 00:27:30 0
>>119-120
連合軍第1特務実験戦隊、通称α部隊。ダイクの発明品を評価する為の部隊といえば聞こえはいいが、
老人の趣味でこさえた発明品と言う名の玩具を転がす為の実験室と表現した方が的確だろう。
後方勤務の中でもハズレくじに分類される部署であり、左遷同然の人間が送り込まれる流刑地と大差無かった。

指揮官はエイク・リ・パブリク技術大尉。
連合の首都星「アルトネリコ・ローゼス」に勤務する技術屋きってのエリートだったのだが、
どこかの老人から睨まれたのが運の尽き、出世街道から弾き出された。
太陽に照らされた稲穂を連想させる豊穣な金髪も今ではすっかり色あせており、
威風堂々と評されたその物腰も、ストレス故かすっかり萎縮してしまっている。

ヴァイスにとっては軍人としても人間としても先輩にあたり、
あのマッドサイエンティストの機嫌を損ねたらどうなるかという見本でもあった。

(バイソン大将が露骨に嫌な顔をする訳だ…)

そこまで思いをはせていたところに、味方の艦影がさらに4000程増したとの知らせが入る。
彼の思考の端にあったホン司令官のバイソン率いる艦隊が到着したのである。

「この上は、我々の役目もありませんな。ただちに後方に下がりα部隊と合流します」
「うむ、是非そうしてくれたまえ

こうして彼は一度前線を退き、α部隊と合流する。
その場で初めて、彼はコロニーの行き先の一つがノルド共和国であったことを知らされたのである。
134 ◆6k2N0.Pf9Y :2008/11/27(木) 00:28:52 0
>>128-131
惑星ホンを出発した艦隊ははアルゴビーを目指して来ており、今まさに到着した筈だった。
にも関わらず、彼らの眼前に広まっていなければならないコロニー国家はどこにも存在しなかったのである。

「どういうことだ…!」
「攻撃によって消失した可能性は低いでしょう…ワープアウトの類かと」

参謀のヤギュウ准将も半ば信じられないという表情を浮かべながらも、持ちうる理性を総動員して推察する。
そこにノルド共和国の3個艦隊が出現したことにより、准将には一つの確信が生じた。

当のノルド側の艦隊にはホン艦隊程の驚愕は広がってはいなかった。
巨大なコロニー群が視界から消えうせる様は、視覚的に衝撃の大きい事態ではあるのだが、
それでも事前にワープアウトの計画を知らされていたことが大きかった。

「おそらく…コロニーはノルド共和国へと移送されたものと思われます」
「…ノルドめ、何が救援部隊か!これだけの艦隊を用意しておったとはな!」

バイソン大将は苛立ちを隠そうとはしなかった。
だが、帝国の3個艦隊が出張ってきている以上、これを見過ごす道理も無い。
今のところ連合側には敵の2倍以上の数が揃っており、包囲して敵を殲滅すべく艦隊運動を開始した。
先ごろから帝国側に先手を取られてやられっぱなしということが多かった分、
連合側の兵士の敵愾心も相当に高まっており、今までの仕返しとばかりに攻撃は熾烈を極めた。

連合の猛攻に対しアレニウス中将中将揮下の艦隊が帝国軍の矜持を保っていたが、
他の艦隊は次々に打ち減らされていき、こうなると統制は難しかった。
大破轟沈などして消失する艦、損害の大きさ故に逃散する艦が相次ぎ、全軍崩壊も間近だった。

だがこれで戦いは終わらなかった。
今までアルゴビーのコロニーが存在した場所に、帝国軍のダルルーボ要塞が出現したのである。
無傷の3個以上の艦隊と要塞が一挙に押し寄せると言う事態によって、連合の圧勝に終わる筈の戦局は一変した。

戦闘能力を完全に失い、虫の息の状態で逃散していた帝国軍の艦船が次々と要塞へと群がっていく。
午前0時14分、両軍共未だにゾルタウの消失を知らなかった。
135 ◆6k2N0.Pf9Y :2008/11/27(木) 00:29:54 0
「ほっほーぅ、敵は代わりに要塞を移動させてきおったのか。中々どうしてやるもんじゃのぉ」

連合軍の大半が驚愕を持って迎えた事態に対し、ダイクは半ば無感動に呟いた。
ある程度予想していたのもあったし、今まさに自分が似たような手品を見せたばかりなのだ。
無論、あの程度の規模の要塞であれば複数個のコロニーをぶつければ宇宙の塵と化すことも不可能ではない。

とはいえ、いかにダイクとてコロニーを用いた2度目の質量攻撃を行うことは出来なかった。
ゾルタウ要塞を破壊する為に、既に5000万を超える犠牲がアルゴビーから出ている。
それもこれも”ワープ中の敵の妨害”という理由付けがあって始めて発射出来たのである。
もしこれ以上方便もなしに犠牲者を増やせば、誰にとっても不都合な事態を招くことは明白だった。

かといって、他のコロニーを用いる為には用意するにも時間がかかる上、
住民を排除する必要がありこれもまた人道上の観点から糾弾される可能性が極めて高い。
老科学者としてはどのような手段を用いても恥じるところが無いが、わざわざ自己の立場を悪くする必要も無かった。

問題があるとすれば、帝国側が同様の戦法を取る危険性だが、これについてはダイクは左程懸念してはいない。
帝国の社会構造は、平民による無条件の奉仕が貴族という特権階級を支えることで成り立っている。
だが、数十年続いている大戦によって平民が矢面に立ち続けた結果、その意識にも変化が生じていた。

昨年のゼカルテ中佐亡命事件以来、門閥貴族の横暴に対する不平不満は常に何らかの形で噴出の兆しを見せている。
仮に戦略上の目的の為に無辜の民衆をコロニーから追い出す、または死に追いやろうものなら、
平民達の怒りが特権階級たる貴族を脅かす結果を招きかねないのだ。

連合側は人道及び政治的な理由から、帝国側はその情勢故にコロニーによる質量攻撃を行うことが出来なかった。

無論、上記の理由だけであればあらかじめ無人のものを用意してワープアウトさせることも出来るかもしれないが、
質量が大なるものをワープさせること事態にリスクを伴うし、相手の座標に対する正確な情報が求められる。
ダイクにせよベッカートにせよ、事前に対象地区の情報を入手していなければ計画を遂行出来なかった。
人工物を新たに製造するにせよ、小惑星を流用するにせよ、必要数用意するには時間とコストがかかりすぎる以上、
余程のことが無い限りこの作戦が用いられることは無いと断言できるだろう。

「ま、局所的な戦局にまでワシが責任を持つ必要もないでな」

マッドサイエンティストと悪名高い老人は、飄々とした声で呟いた。
136ヴァイス中佐 ◆6k2N0.Pf9Y :2008/11/27(木) 00:32:48 0
α部隊と合流したヴァイス率いる船団は、アルゴビー宙域の外延からその様子を眺めていた。
連合艦隊の勝利に終わると思われた戦局が、予想外の事態により再び混迷に戻ったのには流石に驚きを隠せなかった。

「ダルルーボ要塞をワープさせるとはな…」

彼がモニターを眺める目は非常に冷ややかなものがあり、その視線は主に自分の所属するノルド共和国を見据えている。

政治的な思惑からダイクにコロニーを動かさせたまでは良かったが、
敵の要塞が入れ替わるようにワープしてきたとあっては、わざわざ窮地を運んでやったようなものである。
防衛拠点としても橋頭堡としても利用可能な代物がやってきたというのだから穏やかではない。

「ゾルタウでは無いようですな…恐らくリスクとコストの面からダルルーボが選ばれたのでしょう」
「それにしても…懐かしいな」

彼らもまた未だにゾルタウの消失を知らない為、副官も敵が効率を考慮した上でのダルルーボ出現と判断した。
そして胸に去来するの懐かしさもあった。士官学校の訓練に良く用いられたこともあって感慨深いものを感じる。

「ま、懐かしさに浸っていても何ら益になるところが無い。不毛のきわみだ。
 何にせよ手をこまねいていられる状況じゃない。合計20隻の愚連隊だが…可能な限り動いてみようか」

エイク大尉とゲイボルグ大尉をブラオ・メーアの艦橋に招き、それ相応の手立てを打つことで合意した。

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『メーデーメーデー!こちら第7艦隊所属の輸送船団!敵の攻撃を振り切れない…至急応援を求む!』

混迷する戦況の中、通信を受けたダルルーボ要塞の駐留部隊のひとつが現場に急行すると、
青い色の巡洋艦を先頭にした小規模船団が、輸送艦、及びその護衛艦からなる船団に対し
いたぶるかのごとく執拗に付回している様が見て取れた。

仲間の窮地に悠然と立ち向かわんとした帝国軍に対して、連合軍側は戦火を交えないうちから逃走。
結果として駆けつけた部隊と連合側の部隊との間に戦闘は行われなかった。

負傷した船団の長がかろうじて通信に応じると、2、3言葉を交わしただけで部隊長は通信を切った。
陰惨な状況の中でかろうじて生き延びた味方を一刻も早く連れ帰らねばならない。
輸送船や護衛艦の数は撃ち減らされた挙句能力を激減させており、そんな彼らを牽引するようにして要塞へと戻っていた。
137 ◆ojH9XuT2Sg
都合によりしばらく書き込めそうにありません
ですので私を待たず先に話を進めても構いません