>>84-88 戦場に向かうにあたって、ヴァイスは情報の収集を徹底させた。
コロニーから発進させる情報は事態をリアルタイムで把握する材料になる為、映像音声問わず収集の必要があったからだ。
勿論、それら全てが鮮明なものとなってくるわけではないが、
現時点で大まかな情勢くらいであればぎりぎりわかるレベルにあった。
「…複合的に判断するに、アルゴビー側の船団はコロニーを盾にして戦っている模様ですな」
「解せんな。コロニー側の艦隊が取る行動としては理に適っていないぞ」
ヴァイスも副官も首をかしげた。コロニー側と目される艦隊が守るべき住処と住民を盾にし、
攻撃をしかけた帝国軍がそれに気を取られ、遅延と損害を余儀なくされているという状況が不可解でだったからだ。
(攻撃側は…ひょっとしたらアレフティナ司令かもしれんな)
確信に足る材料は無いが、彼女以外の軍人で民間人に躊躇して消極的対処を取る者は中々いないだろう。
だとすれば、彼女はいかなる指令の元にコロニーに攻撃をしかけなければならないのか。
ダイクは先ほどアルゴビー側からの攻撃の可能性を諮詢したが、どうにも納得しかねる。
あるいはあのマッドサイエンティストが、帝国軍が動かざるを得ない情報を意図的にリークしたのだろうか。
(いずれにしろやりきれん…住民にとってはたまったものではないぞ)
大抵のスペースコロニーには、デブリに備えてバリアコーティングが成されている。
勿論、万が一側面壁に穴があこうが火災が発生しようが、即時対処できるシステムも存在した。
が、戦闘に巻き込まれればそれらの仕組みが何ら効力を成さないことは映像音声によって十分に伝わってくる。
露骨な言い方をすれば、攻撃に晒されたコロニーは薄壁一枚で作られた棺桶に過ぎないのだ。
逃げ場も無くサンドバックにされ、内部の大気が炎に包まれた時の凄惨な光景には、ヴァイスにも覚えがある。
───なんとかならないものか!?───
大隊が現場に到着するにはまだ時間がかかる。焦燥感が場を支配した。