>314
残骸は物の見事に真っ二つに断たれた。
(まぁ、そんな事だろうとは思ってはいたがな)
こもれ想定の範囲内である。この程度でダメージを与えられるような、そんな生易しい相手ではないのは
分かりきっている。だからこそ自分が派遣されたのだ。その為のグレイゴーストだ。
>それぞれの腕がハルバードを振るい、MOEとグレイゴーストに投げ付けられた刃が迫る!!
それは避けるまでもない一撃だった。
元々、グレイゴーストは宇宙空間での戦闘を主眼に開発された制宙AMだ。
搭載された戦闘用AIは電力とローレンツ力で発射されるレールガンの超高速の弾道を見切り、
豪雨のように降り注ぐミサイルの弾幕から最適の回避コースを瞬時に割り出せる。
ただ、投げつけられた飛翔物体ごときが避けられない筈が無い。
でなければ高い開発費は何だったのか。
127mm突撃銃の銃身下部に装着された発射器から400mm擲弾を撃ち出す。
飛翔する擲弾は狙い違わず、迫り来るハルバードに直撃した。
盛大な爆発が起こり、予想通りにハルバードの軌道が逸れる。
此処はほぼ無重力に近い状態だ。
別の方向からの強烈な運動ベクトルを加えて軌道を逸らせば簡単に無力化できる。
なるべく推進剤を節約する事が宇宙での戦闘に於ける鉄則だ。闇雲にバーニアを吹かして機動を
行えばやがて燃料が尽き宇宙を放浪する事になる。
そうなったら生還する確率は格段に低下する。宇宙空間では燃料も酸素も有限だ。
限られた状況の中で如何に効率よく仕事をこなせるかが、宇宙でのミッションの成功を左右する。
それが出来ない者は遅かれ早かれ死ぬ。
>316
最小限度の速度ベクトルの変化でミノタウロスと距離を置いている最中に通信が入る。
>「こちら月面第六基地よりの最深部アタックチーム、ラティフだ。そちらの所属を。」
「LF1stAS所属、クラウス・M・ウェクマン大尉だ。そちらの援護に来た」
通信を送ってきた機体、ディープシーカーの隣で静止する。
途中、その機体からロックオン用のレーザーが照射されたが仕方が無いだろう。
クラウスが派遣されるのを彼らは知らされていないのだから。
「撃たないでくれ。私の派遣は急遽決まったものだ。君達が知らないのも無理は無いだろう」
月面軍からの正式な命令書をディープシーカーのパイロットに送る。
それにはクラウスの素性と細かな経歴も添付されていた。
勿論、金属製の殻に覆われたモノアイしかない無機質な顔の写真も。
>325
そうやっている間にもミノタウロスには変化が起きていた。
(まったく、これだから訳の分からない超古代文明とやらは嫌なんだ)
ミノタウロスが溶け崩れたその上に立つ少年の姿に、クラウスは内心からうんざりした。
>テセウスが手を横に振る。ただそれだけの動きが、凄まじい衝撃波を生む!!
>人間サイズであるにもかかわらず、その威力はミノタウロスを遥かに陵駕していた!!!
それが何だったのかはクラウスには解らない。
ただ、AIの観測結果によると、それは太陽風のように電離した粒子の奔流らしい。
要はちょっとした荷電粒子群の不規則な熱運動にベクトルが加わったものとでも言おうか。
兎に角、目には見えない力にグレイゴーストは弾かれた。
「くそ…まったく、これだから現代科学で図れない物事は嫌なんだ」
吹き飛ばされながらも巧みに機体を操作して慣性を打ち消し、静止する。
これ以上、相手が何をするかは分からない。
ならばさっさと先手を打って牽制なり打撃を与えるなりするべきだろう。
バーニアを噴射して少年の真上に占位し、127mm突撃銃で弾倉一個分の濃密な弾幕射撃を加え、
止めとばかりに400mm擲弾を三発も撃ち込み、そして直ぐに離れる。
>325
息もつかせぬ攻防の後、阿修羅の十文字斬りがミノタウロスを切り裂く。やったか……!?
>『(だ………めだ……にげ………………ろ……)』
M(ミーちゃん!? まだだ……何か来る!!)
MOEがいち早く危険を告げた。あらゆる種類の攻撃に備え、プロテクションを準備する。
変化はすぐに起こった。切断面が不気味にうごめきだす。
変化が終わったとき、そこに立っていたのは人間サイズの人影。
(ウソだろ……)
金色の髪と整った顔立ちの見慣れた少年だった。
>『久し振りだな、ケイ。どうして早く殺しに来てくれなかったんだ?』
M(惑わされないで! こいつはもうてっちゃんじゃない!)
MOEの声で我に帰り、プロテクションを発動する。
持続時間は一瞬ながらもあらゆる攻撃に対応した最強の防御手段。
それでもなお、その場に踏みとどまるのも危ういほどの衝撃波が走る。
『もう楽にしてくれ…“壊す”のは疲れたんだよ…』
「分かった……友達なら最後の頼みぐらい聞いてあげなきゃね」
演算回路をフル回転させる。
解析すると身長は生前と一緒、だけど体重は桁外れに重く、密度がバカ大きい。
要するに体積辺りに存在する原子が滅茶苦茶多い。
物質を最小単位にまで分解するディスインテグレートならおそらく一撃。
ただし発動条件は接触。あんな化け物にどうやって触れろというのか……。
>326
ウダウダ考えている間に灰色の機体が弾幕を浴びせる。
演算結果は一向に出そうに無いが、便乗して爆発系能力で追撃をかける。
――――フォースエクスプロージョン!
>>326 お前避難所GMに言われたことまったく理解していないな
軍オタの常識が世間で通用すると思うなよ
少しは読み手や受け手の事を考えろ
>>328 別にオタしか読んでないから平気だよ
気に入らなきゃ飛ばして読むし
>>326-327 雨が降る。鋼の雨が降ってくる。死の雨が俺を打ち付ける。
更に爆発。撒き散らされた床の破片は、重力の存在しない世界で舞い踊った。
『お前か?俺を殺してくれるのは…』
灰色のAMを見上げた。大層な装備だ。遠慮するなよ、全部吐き出せ。
『だったら早く殺してくれよ。』
命が命でなくなる瞬間を見続けるのは、もうウンザリだ。
この手で、数えるのも面倒なくらい“壊し”た。
もう嫌だ。
“俺達は”楽になりたい…
爆炎が霧散した後の黒煙の中から、ゆっくりと歩いて出る人影。
グレイゴーストが放った弾丸は、全て着弾と同時に蒸発していた。
故に、無傷。
この世界で最も死を望みながら、最も死から遠い存在…
『どうした?まだ“ある”んだろ?』
グレイゴーストを見据えて、掌を翳す。まるで救いを求めているかの様に。
『はやく、おれをころしてくれ。』
言葉が終わるや否や、グレイゴーストの周囲に無数の斥力場が発生した。
不可視の激流がクラウスを押し潰そうと迫って来る!!!
>――――フォースエクスプロージョン!
巻き起こる大爆発が、テセウスを飲み込む。しかし結果は同じだった。
爆発が収まった後には無傷の魔人が悠然と佇んでいる。
『ん?おまえもか?………だれでもいいから、はや…く…ううぅ…』
どくん!
魔人の身体が傾き、不思議な脈動がセンサー越しに伝わって来る。
先程から行なっていたMOEの解析が完了した。テセウスの異常な質量の正体…
それはミノタウロスに破壊された、遺跡守護ロボット達のエネルギーコアだ。
異空間内に凝縮されて詰め込まれた、数千体分のコアが魔人の心臓だったのだ。
『は…や……………く…』
悶え苦しみ始めたテセウスが、MOEの周囲にも無数の斥力場を発生させる。
(頼む!俺が…俺でいられる内に…俺を殺すんだ!ケイッ!!)
内なる叫びも虚しく、目に見えぬ破壊の奔流はMOE目掛けて殺到した!!
>>316 温かい…何だろ、この温もりは…
優しくて…でも…力強くて…
アタシの体を包んでいく…
>「エル!目え覚ませ!起きろ!」
ッ!?何!?ラティフ!?一体どうなってんの!?
あれ程ボロボロになってた体が、何も無かったかの様に元通り。
それどころか全身に力が漲ってる。
辺りを見渡し、ナグルが見当らないのに気付く。レーダーにはかなり遠くで反応。
それだけじゃない。戦艦も、2体の古代ロボも同じ座標に居る。
「どうしてアタシが無事なのかは分からないけどさ、早いとこ追っかけるわよ!
あの化物は連中に任せりゃいい。コウタが心配だし、急いで此処から離れるよ!!」
とてもじゃないけどアタシ達の機体で連中の戦いに加わるのは無謀だしね。
なら、やるべき事は仲間を追いかけるしかない。
……何か嫌な予感もするし。
意識を失ってる間に、ハリネズミはH.S.T.Hから通常モードに戻っていた。
何故かエネルギー残量もフル充填になっていて、これなら後2回はH.S.T.Hを使える。
武器が何も無いのはマズいので、辺りを探してみると、ナイスなモノが在った。
近くに突き立っているハルバードを、強引に引っこ抜いて軽く振り回す。
「長柄物は初めてだけど、まぁ何とかなるかな。」
ハリネズミのコンディションはオールグリーン。
アタシはレーダーの座標に向かうよう、自動操縦に切り替える。
とりあえず武器は手に入れた。後はアタシがH.S.T.Hに耐えられるかどうか。
咄嗟の判断で起動させたのは、マジで失敗だったからね。
シートの下にあるキャビネットから、パイロットスーツを引っ張り出した。
ダサい。いつ見てもダサ過ぎる。でもコレがアタシを守ってくれる筈。
アタシは四苦八苦しながら、着慣れたトライアンフのPスーツを脱ぎ始めた。
ハリネズミ“専用”のPスーツを…パトリックの想いが込められたスーツを着るために…
【報告書を書き終えたドレイクは艦橋に戻り
部下から最深部にたどり着いた事を知る
そして、座席の傍らに控えていたウェルナーはいくつかの報告をした】
ウェルナー「先程 閣下が仰られいた、我々以外の部隊を発見しました…
また遺跡の防衛兵器であろう物体との交戦していたのも確認済みです…
そして我々に同行していた古代兵器も戦闘に加わっておりました…」
【ドレイクは顔を真正面に見据えたまま微動だにせず
テーブルの上にあるカップにゆっくりと口をつけた】
「…あれは幻ではなかったのか
さて、目標地点にも付いた事だ
準備はどうなっている」
ウェルナー「資源探索員に変装させた特殊工作班
並びに歩兵は第二種装備にて待機
また機動兵器は御命令が有りしだいいつでも出撃可能です
所で外にいた連中は如何するおつもりですか?」
「駒は多い方が有利だ…
奴らを上手く利用できれば事も有利に進むだろう…
一段落済んだらアルラウネに収容してやれ
奴らが潰し合ってくれれば我々は最後の一撃を加えるだけでいい…」
ウェルナー「了解しました
つかぬ事ですが歩兵部隊の指揮は誰が?」
「ふふふ…心配するな君以外に誰がいるというんだ…
だが今はそんな事より外を眺めていろ…滅多に見れん光景だぞ…」
>>330 ゲイザム「俺様を放っておいて何どんちゃん騒ぎしてやがる!」
【怒り交じりの一声と共に、凄まじいプラズマエネルギーの束が撃ち放たれる】
【それはテセウスの破壊の奔流とぶつかり合い、互いに打ち消しあった】
【通路から、一頭の巨大なメカゴリラが腹部の装甲を展開して歩いてくる】
【展開された装甲には、ゴリラカノンの砲門が見えていた】
ゲイザム「へへへ、恐ろしいもんだな
俺様のゴリラの切り札を簡単に打ち消しちまうんだからな
一応アレ、フルパワーだったんだぜ?」
【各機のモニターに、ハゲた大男が映し出される】
ゲイザム「おい、事情は知らんが早いとこ決着着けちまいな!
苦しそうにしてるじゃねえか、そのガキはよ!
俺様は苦しんでる奴をそのままにしておくのは性に合わねえんでな
きっちり止めさしてやれよ…
…あとエル、さっさとその貧相な体スーツにしまって手助けしてやれや
俺とゴリラはもう限界だぜ…」
【言うが早く、機体から煙を噴出してゴリラは倒れてしまった】
>>333は取り消します
すみませんでした
いろいろとKYなレスのため無効にします
>317
ようやく扉の前まで来た……が、そこにも先客がいた。
しかも、戦艦も一緒……ちょっと待った。
『コウタ、どういうこと?』
「……くそ、まさかあれも“あいつ”の玩具だったとはね。
読みが外れたよ……もっとも、さっきのミノタウロスもそう長くは保たない。」
『どうして言い切れるのさ?』
「……ナグルを通して伝わってくるんだ。
あれは、もうただの怨念。終わりを求めてさ迷う哀れな奴……。
ここまで届いてくるよ、“あいつ等”の苦悶と怨嗟の叫びが。」
聞き慣れない単語から察するに、ナグルにはまだまだ多くの謎があるらしい。
そしてそれは、コウタにも言えることだ……信じているのだから、全部話してほしいと思う。
>『良くぞ来た、我らが子らよ。文明を継ぎし子らよ。
> 私は箱舟『ムーン』のプログラム・ノア。』
コウタを問い質そうとしたとき、頭の中に直接声が響いた。
扉の方を向くと、さっきまでいなかったはずの巨大な老人がそこにはいた。
この声は、この老人……ノアのもののようだ。
「やっぱり、ここは『ムーン』だったわけか……。」
『……知ってるの? コウタ、君はいったい……』
「色々と訳ありなんだ。だけど、おかげで目的を果たせる。」
そうコウタが言ったと同時にまたコントロールを持ってかれた……。
>『わが子等に問う。何故ここに来た?』
『!? こ、これは……頭に、何かが……!』
「……ノア、コウキには特に理由はない。
だけどこの僕……コウタには理由がある。
【神の眠る地】に至るため、箱舟に遺されたはずの『門』を開きたい。」
神の眠る地? 門? いったい何のことだ?
語りかけても答えは返ってこない……コウタにとってよほど大事なことなんだろうけど、
僕らは一心同体、とまでは行かなくても同じ体を共有する間柄なんだ……
知らないところで話を進めるのはアンフェアだろ!
「コウキ……目的が果たせそうになったら全部話す。
少なくとも、これ以上君の不利益になるような事じゃないのだけは保証する。
だから……もうしばらく、わがままに付き合ってくれないか?」
『……分かったよ、でもそう言ったからには全部話してもらうからね。』
ノアの返答を待つ間、コウタはガーディアンであるはずのメデューサに
通信を入れた。どうやらメデューサには、コウタの知っている誰かが乗っているらしい。
「あんたもわざわざここまで来たのか……懲りないねぇ。
前にも言ったけど、こっちの用事さえ済ませてくれるなら
敵対はしないよ……二度もナグルを壊されたくないし、あんただって
痛み分けになってまた出直し、なんてのはごめんこうむるだろ?」
なんだって? 前にも言った? 二度もナグルを壊されたくない?
何を言ってるんだよ? ……事情が飲み込めないから割り込むことも出来やしない。
だけど、古代ロボに乗ってから生まれたはずのコウタと、メデューサの
パイロットは以前敵対していた……理由は目的の不一致、と言ったところだろうか……?
『コウタ、いいのかい? 巻き込みたくないとか言ってたけど、
ここにはほかの人……もいるみたいだけど―――。』
「悪いけど、会ったばかりの人間にまで愛着は持てないって。
残りの奴らは……ぶっちゃけ、僕から見た場合限りなく敵に近い立場だし。
まとめて“喰われて”もいいさ……そこのデカブツだけは気が引けるけどね。」
>326
ヘッジホッグに引きずられていると、正体不明気からの応答があった。
「LF1stAS所属、クラウス・M・ウェクマン大尉だ。そちらの援護に来た」
それと共に送られてくるデータを見て思わず顔をしかめちまった。
月面軍内部の事にはさほど詳しいわけじゃない。
所属を言われてもイマイチピンとこないし、何よりもそのサイボーグ丸出しの姿に驚いちまってな。
科学が発達すると人間簡単には死ねないらしい。
まあ、色々感想はあるがそういうのは後回しだ。
必要な事はこの大尉が味方であるって事だ。
「了解、大尉。大変ありがたい。
奴は古代兵器の中でも飛び切りの化け物のようだが相手を頼む。」
ミノタウロスから出てきたのテセウスを見ながら通信を返す。
あんたも人間の中では飛び切りのようだがな、という言葉はぐっと飲み込んでだ。
見た目はあのクソガキそのものだ。
だが、「アレ」はもうテセウスじゃない。
何かを確かめたわけじゃないが、俺の中の勘がそう断言していた。
そう、あれば【亡霊】だ。
>327>330>331
モエとグレイゴーストを相手に人間大のテセウスが戦いを繰り広げるのを見ながら小さく歯軋りをする。
テセウス・・・
生意気なクソガキだったが、それでも共に死線を乗り越えた仲間だ。
その仲間に俺は何もしてやることが出来ない・・・
>「どうしてアタシが無事なのかは分からないけどさ、早いとこ追っかけるわよ!
> あの化物は連中に任せりゃいい。コウタが心配だし、急いで此処から離れるよ!!」
そうしているとエルの意識が戻り、通信が入る。
ついさっきまで瀕死の状態だったのだが嘘のようだ。
おちょくってんのかと思ってしまったあの古代文明ロボの力だろうが・・・
ここまでくると己の無力さを嘆くのを通り越して笑っちまうな。
しかし情けないことに、この混乱の中、コウキが先行している事に気付けなかった。
エルの言葉通りコウキがいない。
レーダーでは30キロ先の通路東に曲がったところだ。
「だから餓鬼は嫌いなんだ・・・!」
歯軋りしながらディープシーカーを進めるが、俺の手が止まる。
目的は一つ。
優先順位ははっきりしてる。
だが、ここでこのまま行くのか?
あのクソガキをほっとくまま?
だからといて俺に何が出来る?
長い長い一瞬の葛藤。
これが悲しいところだな。
無駄に歳を食っちまった。
ここで全部なげうって勝てない相手に特攻かますほど青臭くないし、そのまま素通り出来るほど人間できていねえ。
「ああ、いくさ。だがあの餓鬼は俺の仲間だった奴でな。
行きがけの駄賃くらいやらしてくれ!」
俺は奥に進みながらミサイルを一発放つ。
対亡霊用の虎の子の一発だ。
ミサイルは複雑な機動を描きながら魔人テセウスの真下から進む。
そしてミサイルは四つに分裂し、テセウスを囲み、特殊磁場を発生させた。
爆発なんてしないさ。
アレは磁場発生装置。
亡霊の正体はわかっていないが、特殊な磁場を纏っている事はわかっている。
つまり、磁場乱流を起こしてやれば・・・何が起こるかは知らねえが嫌がらせくらいにはなるだろう。
「あばよ、テセウス!口うるせえオッサンからの手向けだ!受け取れ!」
結果がどうなるかは見ない。
やる事はやったんだ。後は任務に戻るさ。悲しいけど俺、大人なのよね!
ナグルの反応を追いながら俺はエルとの回線を密かに切った。
「っち。俺はパイロットスーツは着ない主義だったんだけどな。」
得るがパイロットスーツを着込むのを見て、俺もパイロットスーツを引っ張り出した。
必ず生きて帰る。
その決意の現われでもあったんだが、ここから先はそんな事言ってられなさそうだからな。
・・・それにしても、カネス、あんたの妹はいい女になってたよ。色んな意味でな。
「ゲイザム、途中化け物がいるが相手にするなよ。
この先に更にバケモンがいるはずだからな。俺の勘だが。
ビーコン撒いとくから辿って来い。」
どうやら応急処置が終わったのか、接近を始めたギガテックゴリラの反応に気付いて通信を入れておく。
いよいよだ。
もう直ぐこのクソッタレな遺跡の正体に辿り着く・・・!
>>330 予想したことではあるけど、あれだけの爆発にも拘らず全くの無傷。
普通の攻撃は一切効かないだろうという直感が確信に変わる。
>『ん?おまえもか?………だれでもいいから、はや…く…ううぅ…』
(どうしよう……どうすればいい!?)
そういえば僕はいつからこんな風になったんだろう。
この時代に目覚めたばかりの頃は迷うことなんて何もなかったのに。
M(ごめん……MOEはオバカだからデータを出すしかできない!)
明らかになったのは、異常な質量の正体。
異空間に詰め込まれた膨大なエネルギーは、今までに破壊された守護ロボット達の核。
この時代の科学では、実体のない物が現象に作用することは実証されていない。
だけど目の前にいる者は、怨念の結晶そのものだった……。
MOEのデータの助けがあって、閃いた。
手を伸ばせば触れられるほど近づける反則技。捕らわれた親友を救える唯一の方法。
そして、その方法を可能にするための禁じ手。
でも……どれもこれも危険すぎて出来ない! 戦ってるのはMOEなんだから。
>『は…や……………く…』
周囲に無数の斥力が発生する。
僕は当然のようにプロテクションを使って防御しようとした。でも、MOEは動かない。
(え……!?)
MOEは僕に逆らってまで自ら攻撃を受けた。
M(こう……だよね? 考えてることが筒抜けだお!)
容赦のない力の激流にさらされる。
メイド服の形をした装甲の至る所がボロボロに朽ち果てていく。
M(迷うのはキミが優しくなったからだよ。てっちゃんのおかげだね。
でも今は覚悟を決めて……! MOEも覚悟を決めるから!)
力の奔流が過ぎ去った時。
装甲は原型をとどめず、あと一撃でも受ければ堕ちるという二重の意味で際どい状況。
でもこれも、最後の一手のための作戦のうち。もうやり抜くしかない!
あとは……ユーリと阿修羅がうまくやってくれるのを信じるだけ。
「さっきみたいに連携攻撃だ……思いっきり叩き切って!!」
本当は普通の物理攻撃が効かないのは分かっている。
でも1秒、それが無理なら一瞬でも気を引いて、動きをとめてくれればいい。
その隙を突いて僕達が……。
>>325>>338 今までの人生でこれほど異常で非常識で奇妙でなにより恐怖する対象を見たことがなかった
見た目は人間だが質量は膨大、攻撃力は絶大、今回は死ぬかもしれないと本能で感じ取った
できればこんなやつとは戦いたくない、今すぐにでも逃げたい、ユーリは心の底から思った
しかし、一方で勝負したい、勝ちたいと思う気持ちが心の片隅に存在していた
そしてその気持ちはこの突き刺さるような緊張感で徐々に大きくなっていったのだった
いつの間にかユーリの笑っていた、小さな子供がお気に入りのおもちゃを見つけたときのようなそんな無邪気な笑顔だった
その極上のおもちゃが手を横に振った
阿修羅に凄まじい衝撃が走る、ユーリはその衝撃の中テセウスから目を離さなかった
一瞬でも目を離したくなかった。その芸術的なまでの力を
『もう楽にしてくれ…“壊す”のは疲れたんだよ…』
「望み通りしてやる」
ユーリはそう答えると両手に持っていた剣を鞘に納め今まで一度も使わなかった左腰にある四つ目の刀「鬼神丸」に手をかけた
右足を一歩前に出し、両膝を軽くまげ腰を低くしやや前傾姿勢を取った。
ユーリの緊張感は最高潮に達した。心地よく頭は驚くほどクリアだった
>>「さっきみたいに連携攻撃だ……思いっきり叩き切って!!」
耳に響くケイの言葉、その言葉が合図だった
阿修羅は引いてある左足で地面の渾身の力で蹴り、目にも映らないような早さの加速を見せた
その蹴りと同時に鞘から滑り出しさらに加速させ抜刀、腕の関節の一つ、一つでさらに加速させる
蹴り、鞘、関節、この三つのプロセスを経て加速された鬼神丸はもはやこの世の物をすべて断ち切らんとする勢いだった
・・・それほどの一撃、阿修羅とユーリが持てる力のすべてを使った一撃・・・
(この化け物には効きはしない)
本能的にそうユーリは悟った。悔しい、自分の力はこの程度しかないのかと
だがしかし、同時にある種の満足感も胸に広がっていた。これほどの一撃を放てたこと、一撃必殺の境地が垣間見えたこと
そして・・・『俺はまだまだ強くなれる』と
「ケイ、モエ満足か?望み通りの一撃か?」
>>337-339 >ミサイルは複雑な機動を描きながら魔人テセウスの真下から進む。
>そしてミサイルは四つに分裂し、テセウスを囲み、特殊磁場を発生させた。
>「あばよ、テセウス!口うるせえオッサンからの手向けだ!受け取れ!」
『…………?』
魔人の表情に初めて明確な変化が生じる。
それは、困惑だった。
魔法。超常の力によって万物事象へ干渉する、摩訶不思議な技術。
大抵の人はその様な認識だろう。しかしそれは違う。
魔法は決して不可思議な存在ではないのだ。ただアプローチの方向が違うだけ。
化学に事象を解き明かす『式と記号』が在る様に、魔法にも同様の法則が存在する。
魔法は『種も仕掛けも在る』ただの技術にすぎない。
この場合もそうだ。魔人の周囲に生じた小さな磁気嵐は、あるプログラムを狂わせた。
MOEのセンサーは、その変化を捉える。
魔人を魔人として構成させる“記号”に、僅かな乱れが生まれたのを…
>「さっきみたいに連携攻撃だ……思いっきり叩き切って!!」
斥力の渦を耐えたものの、MOEのメイド服型装甲は半分以上が破壊された。
それでも尚、ケイとMOEの瞳から闘志の輝きは消えない。
>「望み通りにしてやる。」
その言葉に応えるは阿修羅。
引いた脚が地を蹴るや、目にも留まらぬ早業で駈けた。
流れる様な一連の業は更に疾く、鞘から抜き放つ白刄の鋭さを加速させる。
肩から肘へ、肘から手首へ、より疾く…より迅く…全身が余す事無く個と変わる。
>蹴り、鞘、関節、この三つのプロセスを経て加速された鬼神丸は、もはやこの世の物をすべて断ち切らんとする勢いだった。
偶然ではない、必然である。
誰かが教えたわけではない。そうさせたのは戦士の本能。
刄の閃きは…魔人に生じた記号の綻びを断ち切った。
『あ、あぁ…ああぁ……ああああああああああああああああああああああああああああああ』
内に秘めた数千の怨念、それを繋ぎ止めた檻が開こうとしていた。
魔人の中で急速に進む異空間の崩壊。今や完全に動きが停まり、無防備となる。
(そうだ!それでいい、今ならコイツの動きを押さえておける!!)
テセウスの魂が深層結界を突破して、ケイ達にテレパシーを送る。
(頼んだぜ?俺とミノタウロスと…こいつらを“奴”の呪縛から解き放ってくれ!!)
341 :
名無しになりきれ:2008/10/04(土) 18:26:09 O
age
342 :
名無しになりきれ:2008/10/04(土) 19:08:29 O
から
>330
「……これだから嫌なんだ」
掠り傷さえ負っていない少年の姿にクラウスは恐怖を覚える前に呆れていた。
あれだけの砲弾を撃ち込んでもなお健在。普通だったらそんなのは有り得ない。
だが、超古代の遺産とやらは現代の常識では計れないものらしい。
人は理解不能なものに対して恐怖を抱く。ゆえに肌の色や生活習慣の違いから
何度も馬鹿げた争いを繰り返した。相容れないと断じたからこそ、相手を暴力に
よって意のままに従えようとする。
しかしその暴力さえまったく通じなければ?
>言葉が終わるや否や、グレイゴーストの周囲に無数の斥力場が発生した。
>不可視の激流がクラウスを押し潰そうと迫って来る!!!
AIが周囲の微かな重力変動を察知した時には遅かった。
「全く…常識で計り知れないというのは」
不可視の檻に囚われたかのように、バーニアを最大出力で吹かしてもぴくりと動けない。
次々と表示されるエラーメッセージ。機体の各所が軋み、強固なコクピットブロックさえも
歪んで不気味な音を立てている。このままでは、数分ともたずに、まるで卵の殻のように
くしゃりと潰されてしまうだろう。
>337>338>339
クラウスの窮地を救ったのは他の三機による少年への攻撃だった。
如何いった訳か、物理攻撃を悉く無効化する少年に対して何らかの有効打を与えられたようだ。
斥力場が消え、グレイゴーストは最大戦速で離脱してから態勢を立て直す。
「本当に物理攻撃が効かないのか…試してみるか」
慎重と臆病は紙一重だ。
クラウスとしては不用意な近接戦闘は仕掛けたくなかったが、かといって好機を逃す訳にはいかない。
>340
突撃銃を後腰装甲のラックに固定し、背部ウェポンラックから長大な対装甲重剣を抜く。
そして一気に高度を下げ、床面すれすれを飛行する。床面からは僅か数十cm程度しか離れていない。
操縦を少しでも誤って床面や漂う残骸に接触すればそれだけでバラバラに分解してしまうだろう。
しかし、ただ恐れているだけでは駄目だ。時に大胆に行動しなければ最大の勝機を逃す。
「頼むからこれで終わってくれよ」
少年とグレイゴーストの距離が縮まっていく。真空の無重力空間を、音速を遥かに超える
速度で移動しているのだ。それはほんの瞬きに過ぎない時間だったが、クラウスには長く思えた。
少年と擦れ違う瞬間、グレイゴーストは対装甲重剣を横薙ぎに振り払っていた。
攻撃が成功したかどうかは分からない。しかしそのまま確認する事無く急上昇して離脱した。
>323>335
プログラムノアの問いかけに、レイとナグルいや、コウタがそれぞれ応える。
レイは真実を知る為、と。
コウタは神の眠る地への門を開く為、と。
それぞれの答えを聞き、それでもなおノアは沈黙を保ったままだった。
いや、ただ沈黙していたわけではない。
コウキとレイの脳を通し、人類の歴史をスキャンしていたのだ。
「・・・構わぬさ。ここに至っては君はなくてはならない駒だからね。
私は邪魔はしないさ。」
ノアが沈黙を保っている間、クリスタルスカルはコウタに応える。
その直後、沈黙を守っていたノアが言葉を紡ぐ。
『我らが子等よ。哀れな・・・汝らにはその資格はない。
しかしここまで辿り着いた事に経緯を評し、見せてやろう。歴史を・・・真実を・・・!
クリスタルスカルよ、裏切りしものよ。汝が歴史も解き明かせ!』
ノアは眩い光を発し、メデューサを包む。
メデューサを包んだ光は赤く変色し、広がっていく。
その光はレベル5領域全体を包み、そこにいる全ての人間に見せるだろう。
その脳裏に直接!
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遥かなる昔、二隻の箱舟は知的生命体となりうる生物が発生した地球と火星の衛星軌道上へと辿り着いた。
箱舟から大量に星に降り立つ神々、悪魔、英雄、怪物・・・
それぞれが様々な立場に立ち神話を織り成し、知的生命体となりうる生物達の進化を促し、文明を授ける為に。
その中にはモエとケイの姿もあった。
しかし、地球では予想外の事が起こった。
氷河期の到来である。
地球に降り立った神々は氷漬けとなり、その活動開始を大幅に遅らせることになる。
一方、火星では順調に進化の促進と文明の育成がなされていた。
急速に発展していく文明。
地球で氷河期が終わり、漸く神々の活動が開始された頃、火星の文明は一つの到達点へと達していた。
星の引力を振り切り、宇宙空間への進出。
それと共に一組のホムンクルスは箱舟『フォボス』へと帰還する。
モエとケイに似て非なる一対のホムンクルス。
彼らの役割は進化の促進でもなく、文明の授与でもない。
それは知的生命体の監視。
文明の水準が一定に達した時、知的生命体はそれに相応しいかを監視する為の。
程なくして火星の知的生命体はフォボスの謎に気付く事になる。
それと同時だった。
火星の文明が滅びたのは。
いや、滅ぼされたのは。
フォボスより降り立った終末の獣により、完全に滅ぼされたのだ。
こうして役割を終えたフォボスは命のともし火を消し、過去の遺物となった。
一方、地球では順調に文明が発達していた。
それをつぶさに監視するケイとモエ。
そんな二人の前にクリスタルスカルが現われる。
まだ神々の役割が終えておらず、同胞との接触と油断していたケイとモエをクリスタルスカルは襲ったのだ。
殺さなかったのは、不測の事態で信号が途絶えればプログラムノアが再起動する為だった。
記憶と役目を奪い、クリスタルスカルの暗躍が始まる。
神々の時代が終わり、箱舟から降り立った者達は眠りについた。
しかしクリスタルスカルは眠る事はなかった。
あらゆる国家に干渉し、戦争を起こし、平和を起こし、人類を発展させていく。
急速に人類は発展し、ついには宇宙へとその勢力を進めるに至る。
だが、それをノアに知らせるケイとモエは未だ眠り続けていた。
人類がゴルディアスに気付き、探索を開始してもなおプログラムノアは再起動していなかった。
それが故にテクノ・アーノルドは最深部まで到達できたのだ。
最深部へと到達したテクノ・アーノルドは巨大な門を前に畏れ慄いていた。
そこに現われたのがクリスタルスカルだった。
「この門は超古代文明のメカニズムを以ってしか開きはせぬ。
その身を犠牲にしても次代へと探求の志を継ぐというのならば鍵をやろう。」
テクノ・アーノルドはクリスタルスカルの提案を呑んだ。
その身を犠牲にして、門の鍵たる超古代文明ロボを引き抜いたのだ。
そう、後にテクノ・ジャイアントと呼ばれる超古代文明ロボと自身を融合させて。
ここにいたり、プログラムノアが再起動を果たす。
遺跡は組み変り、夥しい超古代文明守護ロボが侵入者達を全滅させた。
ただ一人、超古代文明ロボとの融合を果たしたテクノ・アーノルドを除いて。
クリスタルスカルはこうなる事が判っていたのだ。
人類に超古代文明ロボの乗り手たる資格はない事を。
乗ろうとしても乗れない。
人類には乗る術がない。
クリスタルスカルを以ってしても超古代文明ロボに取り込まれ、融合してしまうのだから。
だからこそ、クリスタルスカルは古代文明ロボの乗り手として人類を改造した。
未だ生まれぬ子供達の遺伝子を改竄し、時を待ち、過去の神々を蘇らせていった。
#########################################
『我らが子よ。そなたら人類は進化し切れなかった。
心の進化を・・・!』
光が収まると、メデューサはバラバラに砕け散っていた。
プログラムノアは悲しげに呟く。
その声は映像同じく、レベル5領域の全ての人間の脳裏に響き渡る。
『そなたらに遺産を手にする資格はない・・・。
全てを無に帰す時が来た。
・・・滅びるが良い!』
荘厳に宣言すると、プログラムノアをその巨大な手を振り下ろす。
コウタとテクノジャイアントを押し潰さんと。
『くくくく・・・裏切りとはな。狂ったプログラムめ。
恐れるな。既に閂は外された。
もはやプログラムノアには力などない。扉を打ち破れ。』
どこからともなく響くクリスタルスカルの声。
しかし、メデューサの残骸は既に消えうせ、どこにもなかった。
>339-343
阿修羅が渾身の一撃に打って出た瞬間、一気に距離を詰めて機をうかがう。
そしてすぐに、待っていた時は来た。
>「ケイ、モエ満足か?望み通りの一撃か?」
ユーリの顔は、満足感に満ちて笑っているようにすら見えた。
こんな時に……いや、こんな時だからこそ暗い顔はダメだよね。
最後は笑って送ってあげなきゃ。これからやるのは一つ目の反則技。
次の瞬間、僕たちは手を繋いで、空間に浮かんでいた。連結を完全に解いたわけではない。
互いに独立しながら、固く繋いだ手を通して繋がっている。
半連結……言わば連結する途中のような不安定で中途半端な状態。
今みたいに不安定な状態じゃないと持続できない。
それが、モエがわざと攻撃を受けた一つ目の理由。
傍から見たら一瞬消えたように認識される、その隙を突くのが狙い。
あと少し、あと少しで手が届く……。
>『あ、あぁ…ああぁ……ああああああああああああああああああああああああああああああ』
聞こえるはずのないテセウスの声が聞こえてくる。
>(そうだ!それでいい、今ならコイツの動きを押さえておける!!)
手を伸ばせば届く距離まで来た。
今まさに触れようとした時、すごく大きい剣が目の前の少年に掠るか掠らないかの軌道でくる。
(邪魔っ!)
考える前にプロテクションで防いでいた。隣でモエが苦笑する。
(ケイ君……何ワケわかんないことやってるのですか?
モエ達はてっちゃんを倒しにここまで来たんだお……)
(……あ)
よく考えると我ながら意味不明である。でも、今度はモエが満面の笑みを浮かべた。
(だがしかし……結果オーライです! 今ので残り“えむぴー”ジャスト1!)
それは、二つ目の反則技をするのにジャストな状態を意味していた。
他の者から力を奪う、癒し手の僕たちには禁忌の技は
自分が弱っている時ほど強力になる。それがわざと攻撃を受けた二つ目の理由。
>(頼んだぜ?俺とミノタウロスと…こいつらを“奴”の呪縛から解き放ってくれ!!)
モエにつられて僕もとびっきりの笑顔で、今度こそ、金髪の少年の頬にそっと手を触れる。
(テセウス……)
(ミーちゃん……)
((苦しかったよね……今助けてあげるよ))
――――エナジードレイン!!
普段なら力を奪う禁忌の技。でも今は親友を、そしてたくさんの同胞たちを救うために。
僕たちに受け止めきれるだろうか……感じるのは、ほんの少しの恐怖。
(大丈夫……キミは一人じゃない! モエがついてるです)
モエが繋いだ手をぎゅっと痛いほど握り締める。
そうだ、そもそも守護ロボット達を解放するためにここに来たんだ。
これぐらい救えなくてどうする!
(さあ、おいで……!)
>344>345
コウキに追いつくべく急ぎディープシーカーを進めるが、遅々として進まない。
いや、着実に進んでいるんだが、感覚的にだ。
後ろのテセウスたちが豆粒程になっているが、それでも今の俺には遅すぎる。
焦っている中、突然光が俺を包む。
直後頭に流れる映像。
まるで白昼夢のようだが、俺の中のどこかがこれは現実のものだと言っている。
火星と地球の歴史。
そう、作られた歴史。
滅ぼされた火星。
そして俺達がここに至る理由。
映像が途切れた後、声だけが響いてくる。
>『そなたらに遺産を手にする資格はない・・・。
>全てを無に帰す時が来た。
>・・・滅びるが良い!』
それは絶対的な声だった。
覆りようのないと直感させる、そしてそれが実現するという言いようのない確信。
いや・・・これはもう事実だ。
そんな圧倒的な事実を前に、俺のハラワタは煮えくり返ってきていた。
あまりに圧倒的過ぎて感覚が麻痺していたのかもしれない。
どこのどいつかも知れねえ奴の気まぐれで育てたり滅ぼしたり・・・
こんな穴倉に潜ってどれだけの仲間が飲み込まれていったか!
「俺たちゃ神様とやらのモルモットだってのか!
ふざけやがって!
大人しく殺されるモルモットかどうかキッチリ判らしてやる!!」
正直我を忘れてなきゃいえない台詞だし、出来ない行動だろうな。
実際ブチキレてた。
神も運命も毛ほども信じちゃいないが、どうにもならないほどブチキレてた。
漸く曲がり角に辿り着き、俺が見たものは。
冗談みたいにクソデカイ爺がナグルともう一機の古代文明ロボを押し潰そうとしているところだった。
>>343>>346 >(テセウス……)(ミーちゃん……)
>((苦しかったよね……今助けてあげるよ))
>――――エナジードレイン!!
魔人に差し延べられた優しい手。光が、その場を包んでいく。
輝きの粒子に変わり、魔人の肉体が徐々に消え始める。
無数の魂がケイとMOEの中へと流れ込む。
救われぬ魂を救うと誓った、旧き裁定者の新たな命となる為に…
(ありがとよ…ケイ。)(我々の命は汝らに託そう。)
テセウスとミノタウロスが光となってケイ達に重なった。
次々に魂達が光となってMOEに向かう。
しかしMOEのキャパシティーは限界が近付いて来る。全てを救うのは不可能だった。
(諦めるな!お前達は“奴”と違うだろ!!)
(然様だ!怨嗟で縛るのではない…愛で包む汝らならば、必ずや出来る!!)
かつて共に旅をした戦友2人が、ケイとMOEを激励する。
そして…奇跡は起きたッ!!
テセウスとミノタウロスの魂が、無数の魂達とケイ達を繋ぐ架橋となったのだ!!
眩い光の波動の中で、MOEの姿が変わってゆく。
破れたメイド服が甦り、白を基調としたデサインに可愛いフリルが付加ッ!
折れかけたモップが、新たな力を得て燃えたぎるロッドになった!!
頭のカチューシャも、新たな力を得て萌えたぎるネコミミバージョンに進化ッ!!!
総数3333!全ての魂を受け入れて…今ッ!!AKB/EX-MOE2(萌え×燃え)爆誕ッ!!!!
『バカなッ!何故だああああああぁ!!!!』
叫んだのは水晶髑髏が創りし呪詛。全ての魂を失い、怒り狂っている。
未だにテセウスを模した姿のままで、その顔を怒りに歪めMOE2を睨んだ。
『こうなったら貴様を乗っ取ってくれるわ!!!』
呪詛の鋭い爪がMOE2に迫った!!ミノタウロスを支配した時と同じ様に!!
が、しかし!!
>少年と擦れ違う瞬間、グレイゴーストは対装甲重剣を横薙ぎに振り払っていた。
一刀両断!超音速の剣撃は力を失った呪詛を、いとも容易く斬り裂いた。
『ぎゃああああああああ!!!!!』
断末魔の悲鳴が響き、これで魔人を構成していた全ての要素が消滅する。
こうして遂に呪われた魂は全て救われた。
だが安心するのはまだ早い。
突如として脳に直接送られてくる映像…そう、戦いはまだ終わっていないのだから!!
真の邪悪、水晶髑髏との…そして遺跡の中枢で目覚める破壊の権化との最終決戦が始まる!!!
>344
>「・・・構わぬさ。ここに至っては君はなくてはならない駒だからね。
> 私は邪魔はしないさ。」
返答は、とても友好的とは言えないものの邪魔はしない、と言うもの。
正直信用できない、あからさまな駒扱いもそうだし、何よりも……
こんな水晶髑髏、信じろって言うほうが無理でしょ。
「まぁいいさ……邪魔しないのならどういう風に見てようがね。
前に戦りあったのも、お互いの石頭のせいだった訳なんだから。」
>『そなたらに遺産を手にする資格はない・・・。
>どこからともなく響くクリスタルスカルの声。
『っ、くあああぁっ!!!』
しかし、どうやらノアはこちらを拒絶したようだ。
同時に脳裏に強制的に流し込まれる箱舟と宇宙の歴史、
その事実以上に、脳のキャパシティを超えかねないほど膨大な情報を
一度に流し込まれてコウキは激しい頭痛に襲われ、頭を抱える。
その痛みに堪えている内に、ノアは文明を滅ぼす狼煙代わりとばかりに
こちらを潰すべくその巨大な手を振り下ろしてきた!
「やられてなんかやるものか……!
僕は、還さなくちゃならない、“彼ら”を神の下へ!
そうしなければ、ナグルは本来の姿と力を取り戻せない……!」
『……ここまで、自分ひとりの力じゃなくても……来れたんだぞ。
やっと、少しだけ、自分を好きになれそうなんだぞ……それを、
邪魔するって言うのかよ! 自分たちが文明を与えたから、
思い通りに行かなかったら消してもいいって!? 傲慢だ、傲慢だよ!
そんな独り善がりで、下らない理由で、殺されて、たまるかぁーっ!』
コウタはコントロールを強制的に奪い取られたこと、それ以上に
異常なまでのコウキの怒りの感情に驚きを隠せなかった。
今までどんな理不尽な事があっても、ここまで感情を爆発させる事のなかったコウキが
ここまではっきりと……変わった、と言うことなのだろう。
コウキは怒りに任せて、振り下ろされたノアの手を避けざまに
胸部エネルギーキャノンをノアに向かって撃ち込んだ……!
ガレキオンほどではないが威力があり、ガレキオンよりはエネルギー的に
リーズナブルな武装なのだが、射角とエネルギー消費量の問題で
雑魚戦には不向きと言う、強敵用の兵装。しかし今回は考えなしに撃っている。
自力での帰還と言う重要事項が頭の中から抜け落ちているのだろう。
>>344-345>>347>>349 「ああぁキツい!てゆーか狭いッ!!」
Pスーツを脱ぐのは思った以上に苦戦した。狭いコックピットの中だから当たり前。
これは『スキンタイト』と呼ばれる、身体にピッタリしたタイプのスーツ。
だから脱ぐのは超大変。今みたいにね!!ああムカつく!!
こんな状況で通信なんか入ったらマジ最悪だわ。急げ!アタシ!!
やっとこさ脱ぎ終わった今の格好は下着だけ、見ればやっぱり怪我は完治していた。
「あのメイドがやったのかな?」
不思議な能力を持ってる古代ロボは珍しくない。むしろ古代ロボ自体が不思議な存在だ。
そんな中で治療をする能力が在っても全然不思議じゃないのかもしれない。
「ハァ、まさかコレを着る日がくるなんてね…」
半世紀前の宇宙服を彷彿させるクソデサインの専用スーツを見て溜め息を吐く。
>その光はレベル5領域全体を包み、そこにいる全ての人間に見せるだろう。
>その脳裏に直接!
着替え中に突然頭の中で流れたクソタレドキュメンタリー。開いた口が塞がらない。
>『我らが子よ。そなたら人類は進化し切れなかった。心の進化を・・・!』
>『そなたらに遺産を手にする資格はない・・・。全てを無に帰す時が来た。・・・滅びるが良い!』
着替えも忘れてポカーン。でも段々と怒りが込み上げて来た。
「ふざけんなクソ野郎ッ!!人間ナメてんじゃねーぞゴルァ!!!」
悲しいけどアタシ、“瞬間湯沸かし器”なのよね。
自動操縦解除!ブースター出力全開!!超特急で着替えも済んだし…殺るよ!!
「ラティフ!!今の聞いた!?アタシちょっくらカミサマのケツにガツンと1発ブチ込んでくるわ!!!」
怒りに歯軋りしながら曲がり角を抜けてディープシーカーを追い越す。
するとアホみたいな大きさのジジイ型ロボ(?)がコウタに拳骨くれてやろうとしてた。
「いくよ相棒!!“H.S.T.H”スタート!!!」
もう仲間が死ぬのを見るなんて絶対に嫌だ!!死なせるもんか!!
円状の衝撃波と蒼い淡光を残して、変形完了したハリネズミが消える。
次の瞬間にはナグルの真横。急停止と急加速、轟音が遅れてやって来た。
パイルトルネード。アタシが“連れて来た”とびっきりの“音”が追い付いたんだ。
流体の運動を急停止すると、運動エネルギーは遮られる面に激突し、急激な圧力が発生する。
この圧力変化は圧力エネルギーとなり、衝撃振動(圧力波)として経路内部を伝播する。
音速域で発生させたフォトンストリームのトンネルを直進する圧力波の渦が、パイルトルネードだ。
ナグルの胸から発射されたビームと一緒に、超振動の竜巻がジジイロボの拳を直撃した。
まずは挨拶、これからが本番だよ。
「抜け駆けなんて寂しいじゃない、コウタ。アタシらチームだろ?お姉さん泣いちゃうぞ?」
>348
(ありがとう……)
流れ込む凄まじい数の魂。新たな力を授かったモエと、再び連結する。
それと同時に蘇る記憶の断片。
彼らは神の箱庭に降り立った神々の中でも、特殊な役目を与えられた二柱。
外界からの干渉を阻止する守護者にして、来るべき時に審判を下す裁定者。
神話の時代が終わった後も人類を監視し続ける存在のため、人間の姿を与えられた。
そのうちの男性の姿をした方が、空に輝く月を見上げ、誰に言うでもなく呟いた。
「神話の時代の終わりが近づいている……」
そこにやってくるのは、籠一杯の野菜を持ったもう一人の裁定者。こちらは女性の姿。
「ケイ君、こんなにたくさんもらいました。
皆が頑張ってここまで文明を発展させたお陰ですね。一緒に食べましょう」
「……人間と馴れ合うのはやめろ。我々の役目を忘れたのか?
彼らがこの箱庭の外に踏み出した時……」
「何を案じているのですか? 大丈夫、皆澄んだ心を持っているではありませんか」
「分かっている。だけど彼らが高度な文明を持ったとき、そのままでいられるだろうか?
身の丈に合わない文明は悲劇しか生まない……。
第四惑星がどうなったかお前だって知っているだろう?」
「でもここもそうなるとは限りません。
わたくし達には何も出来ないから……せめて信じましょう」
――――人間たちがどうか優しい心を忘れませんように
それが二人の、たった一つの願いだった。
(今のが……僕たち!?)
今の僕たちときたら、人間の少年と一緒に駆けずり回って、バカみたいに笑いころげて
時にはくだらない事でケンカして、とても裁定者なんて雰囲気じゃない。
でも、不思議と自分たちの正体をすんなりと受け入れていた。
(そっか……僕たちがここに来たのは、偶然じゃなかったんだね)
しかし、どうして役目を忘れてつい数年前まで眠っていたのかという疑問が残る。
そこに突如として送り込まれる映像。それは、疑問を解くには十分なものだった。
>344-345
(クリスタルスカル……!)
見るからに怪しさ全開だった彼こそが、監視役の僕達を眠らせた上
好き勝手に歴史を操ってきた存在だった。
一体何を企んでいるのかと思うと同時に、少しだけ複雑な気分になる。
もしも眠らせられずに使命を全うしていたら……どう裁定を下していたんだろう。
悲劇しか生まない世界は滅びたほうが人類のため
……そう考えてやっぱり滅ぼす方を選んでいたんじゃないかな。
あの頃の僕達は籠の鳥を愛でるような気分で人々を見ていたから。
白昼夢が終わり、我に帰る。
こうしちゃいられない、大変だ! 伝わってくるのは僕たちの主、ノアの意思。
彼は地球を滅ぼす決断をしたようだ。
その上レイがいつの間にかいなくなってる。きっと今頃危ない目にあってるに違いない。
灰色の機体に通信を送る。
「さっきは助けてくれてありがとうございました。
簡単に言うと地球の危機なので力を貸してください!」
いきなり地球の危機とか言われてもドン引きだろうけど丁寧に説明する暇は無い。
今度はユーリに通信を送る。
「今のに僕たちが出てたの気付いた? 実は人間じゃないんだ。
地球を箱庭にして遊んだ創造主の臣下……。
でも……一緒に来てくれるよね? 君たちとならきっと……勝てる」
目指すは最深部。ノアの破壊の波動が伝わってくる方向。
石頭で分からず屋の君主に辞表を叩きつけてやるのだ!
>345>349>350
>「ラティフ!!今の聞いた!?アタシちょっくらカミサマのケツにガツンと1発ブチ込んでくるわ!!!」
エルからの通信。
どうやら同じものを見せられていたらしいな。
クソデカイ爺様がナグルとテクノジャイアントに手を振り下ろさんとしていた時にその言葉は飛び込んできた。
この状況で、あの未知なる敵。
そして人類の真実の歴史。
これだけでも相手が恐るべき敵だって事は十分わかっていたさ。
正しい選択肢は一旦月面に戻って軍を引き連れてくる、だ。
こんな時だからこそ、冷静にならなきゃいけない。
だから俺はエルに応えたさ。
「おうよ!ケツに一発ぶち込んでやれ!切れ痔程度で済ませるんじゃねえぞ!!」
ああ、言っちまったよ。
悪いがこんな状況で冷静でいられるほど人間できていねえからな!
俺の通信が終わるよりも早くヘッジホッグは変形を完了し、ディープシーカーを抜き去っていく。
その先で見たものは、コウタの胸部エネルギーキャノンとエルのパイルトルネードがクソデカイ爺様をぶちのめすところだった。
二人の攻撃を喰らった爺様は着弾点を中心に大きく歪む。
波紋のようにその体に広がる衝撃が輪郭を崩していく。
この奇妙な現象をディープシーカーのセンサーが解析してくれた。
どうやらあの爺様はロボではなく、エネルギー生命体の一種だったようだ。
グニャリと曲がり、その体を散り散りにして姿が消えていく。
『愚かなリ、我が子らよ。
進化しきれぬ者が我らが遺産を手にしても待ち受けるは他星系を巻き込んでの破滅。
門を開いても抗う術など無いというのに・・・
既に裁定は下ったのだ・・・滅びよ・・・・』
多分これもさっきと同じく全員の頭の中で響いただろう。
ノアの不吉なる断末魔は、その意味を直ぐにわからせてくれた。
遺跡が、即ち月全体が鳴動し、動いていく。
レベル5への門を開いた時同様に、遺跡全体が組み変り始めているのだ。
様々な音が鳴り響き、壁や通路は派手に動き回る。
そして音が鳴り止んだ時、俺の背後には地球が見えていた。
その時はわかるはずも無かったが、遺跡が組み変り、大回廊と直結したんだ。
簡単に言えば、最深部の門から月面までの長大な穴。
味方を変えてみれば信じられないほどの【砲身】が出来上がったわけだ。
背後に砲身ができたとなれば、当然前にいるのは【弾】だ。
最深部の門はプログラムノアが消えると同時に大きく、大きく開いていく。
その中にあったものは・・・玉だった。
最深部の中心に居座っていたのは黒い玉だ。
八本のケーブルで宙吊りになっている。
だが、それがただの玉であるはずがないわな。
よくよく見てみると、それはクソデカイ鎖の毛玉だ。
「はは・・・成る程な。なんでこの遺跡が【ゴルディアス】って呼ばれているか判ったぜ。」
多分作られた人類の遺伝子の奥底に刻み込まれていたのだろう。
本能的にゴルディアスと名づけたわけが今わかった。
ゴルディアスの鎖・・・古の昔、ゴルディアスに複雑に絡み合った鎖があった。
言い伝えによれば、この鎖を解いた者は覇王たる力を得るだろう、と。
そしてアレクサンダー大王はゴルディアスの鎖を一刀両断し、覇王たる力を得たという。
そのオリジナルがこれというわけだ。
鎖の玉の直系は約1キロ。
それを繋いでいる八本の鎖も長さ一キロというところか。太さは50m近い。
『アレは神へ至る門にして世界を滅ぼす終末の獣【ヤマタノオロチ】。
地球に落ちれば地殻に達し、反作用を起こし星は滅びる。火星のように。
八つの頭のどれかに解除し門を開ける鍵たる剣、【星薙ぎの剣】があるはずだ。
奴をここから出すな。』
ご丁寧に解説が俺の頭の中に響く。
他の奴らの頭にも響いているのか?
ノアの声じゃないし、誰のかはしらねえが、攻略法を教えてくれるってのなら乗っかっておくさ。
そんな事を思っている間に、鎖の玉を繋いでいた八本のケーブルが外れ、動き出す。
それはまさに蛇。
ヤマタノオロチとはよく言ったものだ。
「全員、今の聞いたか?
ほんとかどうかしらねえが、人類の危機で、ご丁寧に攻略法まで教えてくれた。
だがよ、正直人類の危機より俺は俺のムカツキを押さえられねえ!
逃げたい奴は逃げてくれ。
ただし俺を止めようとしてくれるなよ!!」
どうせここで逃げても地球自体潰されるんじゃ意味ないしな。
人類を救うなんぞ柄でもないが、どうせならやりたいことやってやるさ!
ゆっくりと鎌首をもたげる八本の首に俺は向かってディープシーカーを奔らせた。
########################################
>351
ユーリと阿修羅、コウキとコウタ、レイ、そしてケイとモエはノアの言葉が、そして最後に響いたクリスタルスカルの言葉は事実だとわかっただろう。
星を滅ぼす終末の獣ヤマタノオロチ。
そしてそこに隠された解除キーたる【星薙ぎの剣】。
この【星薙ぎの剣】こそ、阿修羅が、コウタが、そしてテセウスが・・・
いや、全ての超古代文明ロボが求めていた【剣】だという事を。
超古代文明の粋を集めた剣。
それは超古代文明そのものを相続する為の鍵だったのだから。
>>345>>348 充実感が心を、体を満たしているときにユーリの頭の中に過去のこの世の始まりとも言える映像が直接頭に流れ込む
(邪魔するんじゃねぇよ・・・)
ユーリにとって過去のことなどはどうでもいいことだった。
神々が人類に英知を授けた?くだらない、過去はそうだとしても俺には関係ない
ユーリは心の底からそう思っていた
だから・・・
「今のに僕たちが出てたの気付いた? 実は人間じゃないんだ。
地球を箱庭にして遊んだ創造主の臣下……。
でも……一緒に来てくれるよね? 君たちとならきっと……勝てる」
こいつらはやっぱり馬鹿だ。俺が今までこいつらのことを人間だと思っていたと思ってたらしい
本当に馬鹿だ。初めてこいつらを見たとき、モエの姿、誰だってそう思うだろ・・・
「最高の馬鹿共だな・・・」
小さく呟く、ユーリの顔はもちろん笑っている
「俺は神なんて信じていない、だから今から倒しにいく奴はただの敵だ」
静かにそう言ってケイとモエの前を行き一気に諸悪の根源のもとに向かう
ユーリになりにクールに決めたつもりだろう
>>353 ヤマタノオロチ、古事記に記される最強最悪の魔物。
その姿は8つの谷、8つの峰にまたがるほど巨大とされている。
まさに伝承通りの大きさである。ユーリはその姿を見て伝説の魔物を思い浮かべた
「スサノオでも呼んでくるか」
目の前の存在のあまりの大きさに冗談を言う他なかった。
だがしかし、ユーリの闘志はさらに燃え上がった。
そんな時頭の中に声が響く
『アレは神へ至る門にして世界を滅ぼす終末の獣【ヤマタノオロチ】。
地球に落ちれば地殻に達し、反作用を起こし星は滅びる。火星のように。
八つの頭のどれかに解除し門を開ける鍵たる剣、【星薙ぎの剣】があるはずだ。
奴をここから出すな。』
『星薙ぎの剣』この単語がユーリの闘志をさらに燃え上がらせた。
ついについに出会えるのだ
阿修羅と初めて出会ったときに聞いた伝説の剣とついに相見えれるのだ
ユーリの鼓動が最高潮に達する。ときめきを感じていると言い換えてもいい
自分の旅の意味、月に着くまでの幾多の戦い、月に着いてから戦い、それらで得た高揚感、先ほどの一撃の充実感を凌駕する感情がユーリ全体を支配していた
もう何も考えてはいなかった。ユーリはただ言われるがままにヤマタノオロチの頭に切り掛かっていた
本能的に『星薙ぎの剣』位置が分かっているかのように
>350
>「抜け駆けなんて寂しいじゃない、コウタ。アタシらチームだろ?お姉さん泣いちゃうぞ?」
横から何か来た……それはヘッジホッグ、の本体。
引き連れてきたのは物騒な振動波、こっちの攻撃と共にノアに
直撃し、その姿を霧散させた。そのお陰か、少しばかり落ち着いてきたようだ。
同時に通信が入ってきた。相変わらずゆるい人だ。
『……僕はコウキです、コウタじゃありません。
置いてったのは申し訳ないと思ってますけどね……
わがままに付き合っただけですよ。』
仕方ないこととはいえ、エルの目にはコウタとしか映っていない事に
少しばかり気分を害したようだ。もっとも、そうであっても
今までは文句ひとつ言わなかった、言えなかった事を考えると進歩したと言う事か。
『詳しい説明は後です、今はあれを止めることに専念しましょう。
僕個人にそんな義理はありませんけど、アレには本気でムカついてますから!』
>352
>どうやらあの爺様はロボではなく、エネルギー生命体の一種だったようだ。
「コウキ、もう交代しろとは言わない。君にはこの窮地を乗り切れるだけの
技術と機能の説明はしたつもりだ。自立のための最後のテストだ……
がんばって、一発合格してくれよ?」
言われるまでもない、おんぶに抱っこをせがむのはもう終わり。
自分の足で歩いて、自分の目で、耳で、虚実を見極めて、自分の身一つで
生きていかなくちゃいけないんだ。
霧散したノアの残りかすを、右手で啜ってナグルに取り込む。
剥き出しのエネルギーであり、かつナグルの現時点での機能が万全だからこそ
出来る芸当だ。30、50、80、120……本来ならありえない、
250%まで充填できたのはそれだけノアを構成するエネルギーの密度が
濃かったからだろう……ごちそうさま。
>『アレは神へ至る門にして世界を滅ぼす終末の獣【ヤマタノオロチ】。
> 地球に落ちれば地殻に達し、反作用を起こし星は滅びる。火星のように。
> 八つの頭のどれかに解除し門を開ける鍵たる剣、【星薙ぎの剣】があるはずだ。
> 奴をここから出すな。』
これは……メデューサから聞こえてきた声だ。
歴史を好き勝手に弄くった、もうひとつの元凶……シメるのは後。
『間違ったことは、言ってないんだろうね? コウタ。』
「今のは本当のことさ……ったく、ノアの早合点のおかげで
不完全なまま決戦に挑むことになるなんてね。」
『だからこそ、やり遂げる事に価値がある。そういう事さ。
……【星薙ぎの剣】、ね。どこだ……どの部位にある?』
「頼むよコウキ。あれがないと、門が開けなくて骨折り損になっちまう。」
ナグルのセンサーを最大稼動させて、恐らくは同一の物体であろう
オロチの頭部の中から異質なものを発見しようとする。
『……あそこか!』
見つけたようである……本当に正しいかは別として、コウキは
ナグルを頭部の一つに向かわせた。コウタのわがままを、叶えるために。
―――一方、月面基地―――
『ゴルディアスから異様な反応だと?』
「はっ、探索チームが何がしかの機構を作動させたのではないかと愚考いたします。
月面で地震があったと言うだけでもそれがどれほどの物かお分かりいただけるかと。」
『ぬぬぬ……このままでは各所に動きがあったことが露見してしまう。
直ちに軍を動かし、ゴルディアスを制圧せねばなるまい……。』
「その前に、偵察が必要でしょう。」
『それもそうか……直ちに斥候を出せ、人選は任せる。
いいかね、もはや時間の猶予はない。迅速な行動を期待するよ。』
「はっ、それでは失礼いたします。」
制圧作戦総指揮官であるジェリドは、ゴルディアスに異変ありと言う報告を聞いて
右往左往する無能な上官の部屋から退出し、その足で格納庫へと向かう。
ライラ「ジェリド、あんた本気なのかい?
その様子だと、自分で偵察に行くつもりだろう?」
ジェリド「ああそうだ、他人の報告なんぞどうしても信用できなさそうなんでな。
止めても無駄だぜ、もう決めたんだ。」
カクリコン「止めはしねぇよ、ジェリド。」
ジェリド「すまんな。後の事は任せる……こっちの作戦は俺が出た直後に実行してくれ。
本当は制圧作戦完了後に回すつもりだったんだが。」
ライラ「分かったよ……けどいいのかい? 軍を動かす必要が
あるような緊急事態だったら、かえって裏目になるよ。」
カクリコン「だからこそ迅速な行動がいるんだろ、ライラ。
俺たちの任務は、後顧の憂いを断つことだ。
ジェリド、こっちは任せておけ。すぐに片を付けて追いかけるからよ。」
ジェリド「頼んだぞ、カクリコン、ライラ。
ジェリド・ミラ、ハーディ、発進する!」
名前:ハーディYカスタム
サイズ:30m
運動:A
装甲:D
移動:A
地形適応:宙A 空A 陸B 海―
【武装】
多機能ビームライフル(ライフルモード、マシンガンモード、狙撃モードの切り替えが可能)
ライフル付属グレネード×4
兵装スラスター内蔵高出力ビームキャノン×2門
兵装スラスター内蔵小型ミサイルランチャー×6
15mm頭部バルカン砲
【機体解説】
その名の通り、ジェリド専用のハーディYのカスタム機。
ハーディYを元に現行パーツのみを流用してカスタマイズした機体。
主兵装である多機能ビームライフルは炸裂弾を発射することもでき、
規格さえ合わせれば散弾も装填できると言う現場主義の仕様で、ベテランに評価の高い装備。
各所に姿勢安定および急停止からの切り返しなどを行うための小型スラスターを増設、
エネルギー問題を解決するためにバックパックタイプのサブジェネレーターを搭載し、
航続距離と最高速度を伸ばす為の大型スラスターをサブジェネレーターに直結することで
スラスター付属の高出力ビームキャノンまで使用可能にしたエース機なのだ。
それでいて現行パーツの流用による部品調達の容易さまで加わった、軍メカニックの
誇りとも技術力の高さの証明ともいえる機体に仕上がった。
だがその代償として装甲を可能な限り削ったため、一度の被弾が致命傷となる上に、
不慣れな人間が乗っても機体性能を引き出せないと言う、機体そのものの汎用性が
失われており、ジェリドクラスの技量があって初めて戦力として数えられる機体である。
>352-354
>「俺は神なんて信じていない、だから今から倒しにいく奴はただの敵だ」
「ただの敵……そっか。そうだよね!」
最初はハラハラしながら見ていた阿修羅の後姿が、今はとても頼もしく見える。
それはきっと気のせいではない。
M(ユーリ君……かっこよくなりますたね、惚れちゃいそうです。
ウカウカしてると置いていかれるお!)
(コラーーーーー!!)
最深部につくか着かないかの間に遺跡が組み変わっていく。
僕たちに一言の相談もなしに最終兵器のお出ましですか。気が早いよ……ジジイ!
僕達は業務怠慢でとっくの昔にリストラ済みだったらしい。
むしろ辞表を出す手間が省けていい。
たった今から僕たちのご主人様は、ユーリであり、レイであり、エルさんであり
後ろに見える綺麗な青い星から生まれた全ての人々。
>『アレは神へ至る門にして世界を滅ぼす終末の獣【ヤマタノオロチ】。
地球に落ちれば地殻に達し、反作用を起こし星は滅びる。火星のように。
八つの頭のどれかに解除し門を開ける鍵たる剣、【星薙ぎの剣】があるはずだ。
奴をここから出すな。』
響いてくるのはクリスタルスカルの声。
どうしょうもなく胡散臭い奴だけど、今回ばかりは紛れもない真実を告げている。
>354-355
鎌首をもたげる8つの首。星薙ぎの剣の在り処を解析する。
と、阿修羅が一つの首に向かって飛び出した。もう分かったの!?
M(多分阿修羅くんには分かるんだ……。理屈を超えた直感で……)
もう一体の古代文明ロボも同じ首に向かっていく。間違いないみたい。
きっと彼らは僕たちとは違って文明を授ける役目を担っていたから分かるんだね。
となると、僕らがやるべきことは……残りの首を撹乱することだ!
((GO!))
燃えたぎる炎のロッド初の高速飛行。我ながら滅茶苦茶速い。
人間だったら即死するぐらいに。多分その姿は例えるなら……
M(速い速い。名付けて……シューティングスター!)
……先に言われたあ!?
>344
(何だ…これは……?)
五感を機械化し、脳の一部にもサイバネティクス化が施されているクラウスには、
自身の脳内に直接流れ込んでくる情報の奔流が何であるかを理解出来なかった。
「くそ、一体何だ? お前らは一体何だ?」
恐れにも不安にも似た焦燥感が、クラウスの心を圧迫した。
「お前らは一体何なんだよぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉおぉぉぉ!!!!!!」
合成音声の咆哮が狭いコクピット内で反響する。
目を失い、耳を失い、鼻を失い、舌を失い、肌を失い、およそ人間らしいものは何一つ残っていない。
人間らしい要素を失った自分には理解出来ない事が、まるで『お前は人間ではない』と
否定されているような気がして、怒りが込み上げて来た。
>351
>「さっきは助けてくれてありがとうございました。
>簡単に言うと地球の危機なので力を貸してください!」
「さて、如何かな。私に出来る事なんて何一つなさそうに思えるものだが…」
先程の少年との戦闘が脳裏に蘇る。最先端科学技術の結晶のAMの武装の悉くが
通用しなかったのが、最先端科学技術の結晶の機械の身体の己をも否定された
ような気がした。まるで『ここはお前の出る幕などではない』とでも言われたかのように。
「まぁ、最善は尽くそう」
>357
突撃銃から弾薬の尽きた弾倉を取り外し、新たな弾倉を装填する。
ついで背部ウェポンラックから570mm無反動砲を取り外し、左脇に抱える。
「どうせ私の攻撃は通用しないのだろう。しかし、牽制ぐらいの役には立つか」
フルスロットルでバーニアを吹かし、巨大なメイドロボの背後に追従する。
「手伝おう。雀の涙ほどの火力の使い道はこれぐらいしかないものでな」
そして一気にメイドロボを追い抜き、先頭に出る。
グレイゴーストは機動性が売りのAMだ。その加速性能は現行機に於いてはほぼトップクラス。
複雑な機動を描きながら首へと肉薄し、至近距離からの突撃銃の濃密な弾幕射撃と
無反動砲の強烈な一撃を撃ち込んでいく。
ジジイの呆気ない瞬殺に、アタシは拍子抜けした。
>『愚かなリ、我が子らよ。
(中略)
>既に裁定は下ったのだ・・・滅びよ・・・・』
好き放題に言ってくれちゃってさ、アタシの親はずっと昔に死んでるっての。
テメェみたいなデカブツが軽々しく“親”とか名乗んじゃねーよ!!
他星系を巻き込んで破滅?ハッ、笑わせるな!そいつをオシャカにする為に来たんだ。
あのイカレ会長の戦争原理主義にトドメ刺してやるってな!!
――月面都市バエトゥサ、トライアンフ本社
遺跡が組替わった振動は地表の人々にもはっきりと分かる程の強さだった。
地上888mの会長室とて例外ではない。
幾重もの耐震構造に守られていても、地の底から響く星の叫びまでは防げない。
「………始まった…まさかエルは間に合わなかった…のか…」
床に倒れ、血を吐くパトリック。悔しさに握る拳から力が抜けていく。
「賭けは私の勝ちだな、タカハシ君。もうすぐ地球は死の星に変わる…火星と同じ様に!!」
クラインが己の勝利を確信し、指をパチンと鳴らした。
途端に窓の外に広がるバエトゥサの夜景が暗転して、代わりに映し出されたのは…
ゴルディアスの入口と、その奥にて鎮座する星砕く魔物…ヤマタノオロチ!!
「唯一残念なのは地球に住む人間が人間の手で死なない事だが、まあいいだろう。
これから人類は母星から銀河に巣立つのだからな!そして戦争の環は広がって行くのだ!!全宇宙に!!」
(エル、僕は信じているよ。君なら…必ず出来る、だから…君も……信じて…)
――遺跡中枢、獣の縦穴
デカい。最初に頭ン中で浮かんだ3文字がコレ。マジでハンパないわ。
何処に攻撃を当てても効きそうに見えない。てゆーか無茶苦茶だっつーの!!
>『アレは神へ至る門にして世界を滅ぼす終末の獣【ヤマタノオロチ】。
(中略)
>【星薙ぎの剣】があるはずだ。奴をここから出すな。』
親切なアドバイスが聞こえてくる。だけど、まさに雲を掴むような話だ。
首の数は8本でしょ?てことは何?1本ずつブッ壊して探せって?
仮定だけどこの大回廊そのものが1本のドデカい射出用カタパルトだとしたら…
そんな時間無いじゃない!!もう動き始めてるし、これからは加速していく筈だ。
>「全員、今の聞いたか?
(中略)
>ただし俺を止めようとしてくれるなよ!!」
アハハ…やる気だよ、アイツ。でもちょっと安心したかも。
「誰も逃げないっしょ、そんでもって誰も止めないってさ!!」
ハリネズミを追い抜く機影が3つ、あのメイドロボと灰色のAMと阿修羅だった。
>『……僕はコウキです、コウタじゃありません。
(中略)
> 僕個人にそんな義理はありませんけど、アレには本気でムカついてますから!』
「ん?間違えて名前覚えてたってコト?まぁいいや、“後で”ちゃんと聞くよ…」
最初に見た時から随分と印象が変わった気がする。上手く言えないけど。
「だから、絶対死ぬんじゃないよ!」
迷わず1本の首へと向かって行ったコウキに檄を飛ばす。
そんなコウキと同じ首に斬り掛かる阿修羅。やはり迷いが無い。
「ひょっとして…あの子達には星なんちゃらの剣が在る場所が見えてんの?」
だったらアタシのやるべき事は1つだけだ。
あの子達が他の首に邪魔されないようカバーしてあげなきゃね!!
>354>355
首をもたげる八本の大蛇、ヤマタノオロチ。
その中の一本に阿修羅が切りかかる。
それは本能だろうか?
いや、超古代文明ロボに刻み込まれた記憶。
星薙ぎの剣を持ち、神の遺産を相続する為の記憶がそうさせたのだろう。
正確に星薙ぎの剣の埋め込まれた頭にその剣は叩きつけられる。
が・・・刃が頭に近づくにつれ、強烈な反作用が働くのに気付くだろう。
それは濁流を切りつけた時にかかる凄まじい力。
それは磁石の反作用のように弾く力。
不可視の力場により一撃の鋭さは失われ、頭の鱗一枚切り裂く事は出来なかった。
阿修羅の刃が停止するのを待っていたかのように、巨大な蛇の頭は跳ね上げられる。
それだけで生まれる凄まじい衝撃はテセウスのそれを凌駕するものであった。
弾き飛ばされる阿修羅の方向には、同じく星薙ぎの剣の位置を知るナグルが向かっている新路上だった。
このまま行けば阿修羅とナグルは激突してしまうだろう。
だが、それを悠々と待つほどヤマタノオロチは大人しくない。
頭を跳ね上げるのと同じくして、その口を大きく開いていた。
間髪いれずに吐き出される無数のビーム。
それはまるで雨のように広がり、阿修羅とナグルへと降り注ぐ。
雨の様にと形容したが、それは首の大きさかに比べるとそうなるだけである。
一本一本のビームは戦艦の主砲クラスの太さとそれに見合う威力を持っている!
>357
燃え滾るロッド初の高速飛行はそれだけで既に光の矢と化していた。
モエを迎え撃とうとした首はその動きについていけず、その腹を晒すことになる。
そして、激突。
質量の差を補って有り余るその運動エネルギーは首を大きく弾き飛ばした。
大きく弾かれる首の後ろから、隣の首が、巨大な顎が牙を剥き開かれる。
首との激突を経た一瞬の硬直時間を狙ったかのように。
そしてその速さゆえに回避する間を与えずに。
モエの高速移動とタイミングを合わせ、その顎が閉じられる!
>358
グレイゴーストの複雑な軌道に巨大な首はついてはいけなかった。
うねり追う隙を縫い、肉薄したグレイゴーストは至近距離からの突撃銃の弾幕射撃を行う。
その射撃の前に砕け散る鱗。
剥き出しになった首に叩き込まれる無反動砲の一撃。
太さ50mを誇るヤマタノオロチの首の太さからすれば570mm無反動砲も致命の一撃とはなりえない。
だが、それでもその一撃は大きなダメージを与え、首はのけぞり引いていく。
阿修羅の強烈な斬撃でさえかすり傷一つ与えられなかった。
モエの超高速移動での一撃すら仰け反らせすらしても、破壊するには至っていない。
両者の攻撃に比べればグレイゴーストの攻撃は豆鉄砲に等しかったはずなのに。
これが歴史を操ってきたクリスタルスカルの最大の策略だったのだ。
文明を与え、資格が満たされていれば戦いは発生せず、星薙ぎの剣を授与されたであろう。
だが、資格なき場合、そして抵抗される場合を考えヤマタノオロチは設置されていたのだ。
文明を与え、監視するホムンクルスは文明の育成を管理し続ける。
その文明は神々の文明の模倣。
そして最終的には超古代文明ロボに乗りやってくることになる。
火星でのケースがそうだったように。
しかし、地球ではその役割をケイとモエからクリスタルスカルが奪った。
それ故に、本来ありえぬはずの独自のロボ、AMが発生したのだ。
精神に頼らず、鉄と機械を介したロボ。
それはビーム兵器や対古代ロボへの防御を万全に作られたヤマタノオロチの防御機構【銀鱗】をやすやすと打ち砕く。
>359
四本の首がそれぞれ阿修羅、モエ、グレイゴーストと戦っている最中、残りの四本も動き出す。
それぞれが大きく口を開き、体当たりを敢行し、ビームの雨を降らせる。
巻き起こる衝撃波、煌くビーム。
この場にいる全ての命へと猛威が降り注ぐ。
>359
>「誰も逃げないっしょ、そんでもって誰も止めないってさ!!」
「ははっ、ちげえねえ!」
エルの返事に笑いながら返す。
そりゃそうだ。
ここまできて逃げようも止めようもないもんな。
ヤマタノオロチに向かいながら全力で解析を始める。
先に行った阿修羅の攻撃を全く寄せ付けない装甲。
モエの超高速アタックを弾かれるだけで済ます巨体。
アレを見た後じゃ、ディープシーカーの全兵装つぎ込んでも役にたたねえ。
筈だった。
だが、グレイゴーストの攻撃で煙を上げる首に驚いた。
そりゃディープシーカーに比べれば恐ろしい火力を持っているのだろうが、この場のレベルからすればディープシーカーと大して変らないレベルのはずだ。
にも拘らず、初撃としては唯一の有効打撃。
怪訝に思っていると、解析結果がでた。
【鱗に特殊力場を発生させる力がある】
曖昧な解析だが、これだけで十分だ。
どんな理由かはしらねえが、古代兵器ではかすり傷一つ付けられなくても、鉛の玉ならできるって事だ。
その時、巨大な首が持ち上がり、大きな口を開ける。
眩く輝く口内から発射される無数のビームの雨霰。
「人間様ナメんなよ!」
相手がビームなら全財産かけたこの鏡面装甲がものをいう。
ヘッジホッグの前に出るとビーム撹乱幕を散布し、ビームの雨を装甲で弾く。
だが、ヤマタノオロチのビームは半端なかったようだ。
一斉掃射を弾いた後、コックピットに赤い光が灯り、警報音が鳴り響く。
鏡面装甲といえども無限にビームを弾けるわけじゃない。
戦艦の主砲クラスとなれば尚更だ。
警報は鏡面装甲がビームの熱で溶けかけている事を示していた。
「コリャ何発も喰らってられねえな。
全員、聞いてくれ。解析が出た。
奴の鱗は特殊力場を発生させ、古代文明ロボの攻撃を減退・ほぼ無効化させるらしい。
だが、鉛の弾には案外脆いらしいぜ?なあ、大尉!」
AMの攻撃で鱗は砕けても、火力が小さく首を落とすには至らない。
首を落とせる力を持つ古代兵器ロボは鱗で無効化される。
そうなればやることはひとつな訳だ。
「何がヤマタノオロチだ!蛸だって足は八本あるんだぜ!」
ビーム掃射の後、俺は一気にディープシーカーを首に肉薄させテンタクロスシステムを全解放させる。
ディープシーカーのずんぐりむっくりな体系はその内部に予備の腕を収納させる為なのだ。
ワイヤーにつながれた腕は広がり、首の一本の四方八方から攻撃を仕掛ける。
腕に内蔵された小さなバルカン砲だ。
ダメージを与えられるなんて思っちゃいないさ。
ダメージを与えるのは他の奴に任せればいい。
俺はただ、鱗を剥ぎ取れさえすればな!
>357-362
>となると、僕らがやるべきことは……残りの首を撹乱することだ!
なんだろう……この感覚。まるで機体そのものが自分の体のように、
後ろから確かに感じる、この暖かい気持ち……援護してもらってるのか?
『……っははっ……なんだろうな、変な気持ちだ。
これが、人の力なのかな。』
同じ首に向かう古代ロボに併走しながら、その気持ちを発している機体に通信を入れる。
余裕があるわけじゃない、でも言っておきたい事がある。
言えなくなる前に、言える今のうちに。
『ありがとう、そこのメイドさんとそのご主人様。
君たちの気持ち、しっかりともらったよ。だから、無理はしないで。』
これだけ。言いたい事の一割も言えてないけど、今はこれで十分だ。
>「ん?間違えて名前覚えてたってコト?まぁいいや、“後で”ちゃんと聞くよ…」
>「だから、絶対死ぬんじゃないよ!」
エルさんは相変わらずだ、この状況にビビるどころかむしろ奮い立っている。
僕は知らないけど、戦場のジャンヌ・ダルクってこんな感じだったのかもね?
『なに当たり前の事言ってるんですか?
お姐さんこそ、そんなせかせか動き回って流れ弾に当たったりしないで下さいね。
……また後で。』
これも相変わらずの軽口の叩き合い、だけど僕には本当はそんなゆとりはない。
それでも余計な心配をかけまいと、精一杯の虚勢を張る。
……後ろ向きな気持ちを口に出すと、飲まれてしまいそうだから。
せっかくもらった暖かい気持ちを、無駄にしたくないって言うのもある。
>このまま行けば阿修羅とナグルは激突してしまうだろう。
>それはまるで雨のように広がり、阿修羅とナグルへと降り注ぐ。
先んじて、接近戦主体であろう古代ロボがオロチの首に斬りかかったが、
傷をつけるつけないの問題でなく、その斬撃は届いていないようだった。
そのまま跳ね飛ばされ、直撃コースに乗った。しかもご丁寧に追撃の
極太ビームを吐き出して、確実に仕留めようとする始末。
……自分だけなら回避軌道は取れる、しかしこの古代ロボは?
慣性を殺しきる前に主砲クラスのビームに焼かれてお陀仏だろう。
幸い、今は普段の倍以上のエネルギーがある……なら、取る方法は一つだ。
阿修羅に殺傷能力のないエネルギーワイヤーを放ち、腰に巻きつけて
思いっきり振り回し、途中で解いて逃がす。新しい慣性が加わった軌道の前にはさすがの
予測射撃もついていけず、誘導を切られたビームは直進し始めた。
自分の方に来たビームは外壁にワイヤーアンカーを撃ち込んで回避する。
自覚はなかったが、どうもハイになりすぎて頭が冴えに冴えてるようだ。
>「コリャ何発も喰らってられねえな。
(中略)
> だが、鉛の弾には案外脆いらしいぜ?なあ、大尉!」
ラティフさんからの通信内容に半分納得、半分呆れたように何度か頷く。
だから古代ロボの攻撃は効果が薄く、現代兵器の攻撃は効くのか……
『コウタは知らなかったの?』
「僕にだって知らない事はあるさ……
“完璧じゃない”事が前提だったからね。
それに、オロチの事は僕らの管轄じゃなかったし。」
また何か引っ掛かる言い方をしているがそれに言及するのもあとあと。
ならこっちは……と、次の手を打とうとしたとき通信が入った。
「まったく、お前らだけでパーティやってんじゃねぇ。
こちらジェリド、これより援護する。第六基地探索チーム、それに
第四基地探索チームもいいな?」
レーダーに反応……後ろ?カメラを向けると、モニターには
月の一角にぽっかりと口をあけた大回廊の出入り口から
見慣れない機体がこちらに向かってくる光景が写った。
今の通信を加味するに、あれにはジェリドが乗ってるんだろう。
『ジェリドさん? ……ちょうどクライマックスにご登場ですか。
エリート様は美味しい匂いとかにも敏感なんですかね?』
「んだと? ……はっ、いっぱしの口利きやがって。
まぁいい、止めは任せる。陽動と皮むきは俺みたいな奴の仕事だ。
エレクトラ、そっちに回るぞ。そんなスリムなハリネズミじゃ、
鱗を剥ぐのも大変そうだからな。」
事情もろくに聞かず、状況を見ただけでジェリドは何をすべきか理解していた。
これぐらい頭が回らないとエースになる前に死んでいる、ディアナーンは伊達じゃない!
と言うことか。エレクトラに近い首に直線的ながら方向転換時にほとんど速度を
落とさずに接近し、攻撃をいなしつつ肉薄、挨拶代わりにグレネードを撃ち込んでやる。
(「しかし、こんな事になってるなら実弾メインのオプションにしておけばよかったぜ……!」)
正直言ってビーム兵器がメインな今の武装だと、決定打に欠ける気がするのだ。
援護に徹するとは言え、やはり手数を稼げないのは痛い。
その辺は周りに期待するしかないのだろう。
>358
>「手伝おう。雀の涙ほどの火力の使い道はこれぐらいしかないものでな
まだ最大速度になる前とはいえ、グレイゴーストが僕たちを追い越した。
M(すごい加速だお……現代機でここまで……)
(古代ロボであんなのいるかな? 現代機だからこそ、かも)
僕たちが能天気に寝てる間に発展を遂げた現代文明は
古代文明とは違う方向に発展したもので決して劣化コピーではない。
だから僕達の仲間はただきっかけを与えただけ
文明を築き上げたのは紛れもなく人間自身の力だ。
>363
『ありがとう、そこのメイドさんとそのご主人様。
君たちの気持ち、しっかりともらったよ。だから、無理はしないで。』
「違うよ、ご主人様は君たちだ」
M(こんな状況で気づかってくれてる……)
(あの頃の僕たちの願い、叶ったんだよね……)
僕たちがなんで人間に惹かれるか、分かったような気がする。
人間は不完全な存在。だからこそどこまでも成長できるんだ。
テセウスの真っ直ぐな心、ユーリの瞳の輝き
エルさんの仲間を守り抜く意思、この少年の優しさ……。
愛しくて、キラキラ光る宝石みたいで、少しだけ羨ましい。
だから、彼らが紡ぐ未来を守り抜いてみせる。それはきっと素晴らしいものだから。
>360
さすがのリーサルウェポンのヤマタノオロチ君もこの飛行速度には着いて来れない。
MOEはフリル付メイド服とネコミミによって今や無敵の装甲。
(一気に突っ込むぞ!)(おk!)
夜空を翔ける流星のごとく腹部に突撃する。
その首を大きく仰け反らせるヤマタノオロチ。少しは効いたかな……?
だがしかし。進行方向に大きく開かれた顎に飛び込みつつあった。
((ぎゃああああああああああああ!!))
間髪入れずに顎が閉じられる。隣の首に喰われたようだ。
すぐに粉砕されなかったのは不幸中の幸いだけど……まずい!
多分吸収してエネルギーにするつもりだ!
>362
僕達は当然これと戦うことを想定されていないから詳しいデータは知らない。
慌てふためいている時、ピカピカの鏡面装甲の機体の人、ラティフさんから通信が入った。
>「コリャ何発も喰らってられねえな。
全員、聞いてくれ。解析が出た。
奴の鱗は特殊力場を発生させ、古代文明ロボの攻撃を減退・ほぼ無効化させるらしい。
だが、鉛の弾には案外脆いらしいぜ?なあ、大尉!」
当然鱗は外側にある。内側からの攻撃なら通用するかもしれない!
試しに炎を壁面に押し当ててみると、少しだけ焦げた。
((うおりゃあああああああああ!!))
壁面を殴る蹴るの大暴れを敢行する。
>361-362
>>364 >巻き起こる衝撃波、煌くビーム。この場にいる全ての命へと猛威が降り注ぐ。
いよいよ奴も本格的に動き出した。そりゃサンドバックじゃないからね。
当然の如くやられたらやり返すのは普通でしょ。
>「コリャ何発も喰らってられねえな。
(中略)
>だが、鉛の弾には案外脆いらしいぜ?なあ、大尉!」
なるほどね、そういうカラクリだったの。だったら尚更アタシは援護に回らなきゃ。
H.S.T.Hは後1回しか使えない。
残りのエネルギー残量を考えたら、使うのを渋りそうなくらいギリギリ。
帰る途中でまず間違いなく燃料切れになるだろう。
そうさ、アタシってば帰りの燃料を心配していた。負ける気がしないから!
だけどビームが効かないのはちょいとキツいね。
通常モードに変形して、アタシは首が撃ったビームを次々に避けていく。
H.S.T.Hの起動限界時間はジャスト99秒。
それ以上の超音速戦闘は、ハンマー効果の自励震動に機体が耐えらず木っ端微塵。
飛行機とAMじゃ対抗値が違い過ぎる。だからフォトンストリームを展開するんだ。
粒子加速作用で臨界流体になった陽電子の規則運動、それがフォトンストリーム。
でもいくら摩擦係数を減らしたって、それはゼロにはならない。
大気の抵抗が在る以上は、当然だけど機体の負荷は絶対に避けられない。
アタシがまだ小さい頃、兄貴が言ってた事を思い出した。
『音速の壁を破るってのはな、“覚悟を決める”のと同じ事なんだよ。』
覚悟か…確かにそうかもね。機体を信じて、自分の腕を信じて…
アタシは今までやってきたんだ。
これからだってそうさ、自分を信じられない奴は永遠に三流だからね!!
「覚悟完了とか…とっくの昔に済んでるっつーの!!」
此処は大回廊と繋がった1本の巨大な縦穴。
超えてやるよ、兄貴!!アタシはこのハリネズミと一緒に超えてやる!!!!
最初に異変に気付いたのはラティフだった。風が吹いているのだ。
ディープシーカーのセンサーが捉えた異変の正体。
空から、いや違う。先程までは大回廊の最深部だった場所から降り注ぐ残骸の雨!!
それは第四基地チームが撃墜し、爆発四散した巨大パンプシャーストーンの残骸だった。
>「まったく、お前らだけでパーティやってんじゃねぇ。
(中略)
> エレクトラ、そっちに回るぞ。そんなスリムなハリネズミじゃ、鱗を剥ぐのも大変そうだからな。」
降り注ぐ残骸を掻い潜り、フルカスタマイズされたハーディがやって来た。
乗ってるのはジェリド少佐。まさかの乱入者にちょっとびっくり。
「出張って来るにゃ早過ぎじゃないか、てっきりコトが済んだ後だと思ってたよ。
それとね、ハリネズミをナメてると痛い思いするよ!弾道計算はするけどさ…」
H.S.T.Hモードに変形!!アタシは地上に向かってデタラメな軌道で加速する。
何故に武器を持たない高機動モードのH.S.T.HがFCSに直接リンクしているのか。
今からその理由を教えてあげる!!
「もし当たっちゃったらゴメンよ!!」
今はただの風だ。遺跡内と地上との気圧差が起こした緩やかなそよ風。
月面の人口大気が一度に流れ込むには大回廊は広過ぎたから。
だけどこれから吹くのは“そよ風”なんかじゃない……
……“嵐”だ!!!
>362
ディープシーカーはビームを凌ぎきり、テンタクロスシステムによって全包囲攻撃を仕掛ける。
その火力は微々たる物ではあったが、確実に鱗を削いでいく。
ワイヤーによって繋がれた予備の腕はヤマタノオロチにとってはあまりにも小さすぎた。
小さすぎるが故に、一つ一つを追っていられないのだ。
だから・・・オロチは口を大きく開け、咆哮をあげる。
それは衝撃の奔流。
音の壁となってディープシーカーに迫るのだった。
>363>364
投げ飛ばす事により阿修羅をビームの雨の範囲外へと逸らす事に成功したナグル。
ナグル自身もワイヤーによって危うくも回避する。
だが、追撃の手は更に迫っていた。
刹那、ナグルのいた空間が質量によって埋め尽くされた。
それは巨大な蛇の首。
頭はアンカーが打ち込まれた外壁にと埋まっていた。
超ド級の攻城槌と化したオロチの首が突き刺さったのだ。
エレクトラに近い首に直線的な動きから殆ど速度を落とさず方向転換し接近したジェリドがグレネードを打ち込んだ。
舞い散る鱗。
だが、外壁に突き刺さった首はそのままびくとも動きはしない。
肉薄していたジェリドにとっては壁そのものと言ってもいいだろう。
そこへ別の首が大きく口を開けて光を放つ。
一面を完全に塞がっている状態へのビーム掃射。
グレネードを受けた首ごとジェリドを焼き尽くさんとする一撃だった。
>365
モエを飲み込んだ蛇の中。
本来ならば飲み込まれた瞬間に完全粉砕されているはずだった。
それを免れたのはモエとケイがホルムンクスだったからに他ならない。
プログラムを外れた存在とはいえ、同種なのだ。
粉砕ではなく吸収する為だった。
外壁から無数に湧き出るチューブが鋭く牙を剥き、全方位から襲い掛かる。
一本の蛇の首の動きが不意に止まる。
それはモエを飲み込んだ首。
もこもこと蠢動し、次の瞬間、大きな爆発と共に弾け飛んだ。
渦巻く業火の中で、爆発の衝撃を受けながらモエは立っていた。
全身至る所に突き刺さるチューブをぶら下げながらも生還を果たしたのだ。
激しい戦闘を繰り広げ、首の一本を失ってもヤマタノオロチの動きは鈍る事はない。
ゆっくりだが徐々に上昇を続けていく。
大回廊へと至り、地球へと射出されるが為に。
>364>366
距離をとりながらテンタクロスで首を攻撃していると、上方に警報有。
気圧の変化、そして熱源。
何かと思えば青い地球を背負って少佐の登場だ。
「エリートってやつぁムカつくほど絵になるな。」
思わず毒づいてしまったが、正直ありがたかった。
相手がデカ過ぎて先が全く見えない戦いだったからな。
それにしてもバックに地球。
そして一緒に振ってくる残骸。
絵になるが迷惑な登場の仕方って奴だ。
あの化け物に肉薄なんざ凡人にはとても無理だからな。
そう思いつつ残骸の軌道計算をして回避行動をとろうとしていた。
>367
だが、悠長にそんな事させてくれるわけがない。
ああ、わかっていたさ。
蛇の口が開いたのを見てチャフを射出するが、どうやら学習機能付だったらしい。
迫るのは音の壁。
こうなると、テンタクロスシステムを全開にしていたのが仇になった。
音がここに届くより前に、ワイヤーが巻き込まれディープシーカーの動きを止める。
慌ててワイヤー切断して急上昇を始めたが、俺に許された時間はそこまでだった。
ディープシーカーの鏡面装甲が粉々に砕けキラキラとモニターを彩った。
それがディープシーカーのモニターに映った最後の映像だった。
直後にくる凄まじい衝撃。
弾かれ天地無用の回転の後、何かが圧し掛かる衝撃。
たぶん振ってきた残骸だろう。
「まだまだああああ!!」
コックピットにラティフの叫びが響きながら、ディープシーカーは残骸と共に沈んでいった。
>>360>>36 阿修羅の一撃がヤマタノオロチに迫る・・・
ユーリは殺ったとそう確信した。あいては動きを見せず、自らの刃を確実に首を断ち切れる
そう思った刹那。
「な、なんだと・・・」
阿修羅の刃はヤマタノオロチに届くことはなかった。その白く美しい姿からユーリは『小烏丸』と名付けて
刃は不可視の障壁に阻まれユーリの手には今まで体験したことがない奇妙な感触だけが残った。
そのすぐ後にユーリの視界いっぱいに黒が広がった
一瞬、なにか分からなかったがすぐに理解できたヤマタノオロチの首だと
衝撃、勢い良く吹き飛ばされる阿修羅、追い打ちをかけるようにヤマタノオロチの口が開く
ビームの攻撃がくるのが分かった。
ユーリは覚悟した。死を・・・そして、目をつぶった。
体に何かまとわりつく感触と同時に軌道が変わったのが分かった
また衝撃・・・意識はある。
ユーリはゆっくり目を開ける。体もある。どうやら壁にぶつかっただけで生きているようだ
「あいつが助けてくれたのか」
壁にぶつかった衝撃ですこし意識が朦朧としていて視界もぼんやりとしていた
「助かった」
コウキに簡潔にレイを言い、すぐに立ち上がるそこにラティフから通信がはいる
>>362 「コリャ何発も喰らってられねえな。
全員、聞いてくれ。解析が出た。
奴の鱗は特殊力場を発生させ、古代文明ロボの攻撃を減退・ほぼ無効化させるらしい。
だが、鉛の弾には案外脆いらしいぜ?なあ、大尉!」
俺は役立たずか・・・ユーリは希望を失いかけた。その時阿修羅から声が聞こえユーリにある言葉を授けた
そして、ユーリはその場の全員に呼びかける
「聞いてくれ、星薙ぎの剣が奴を倒す唯一の手段らしい、阿修羅があれがあれば倒せると言ってるから多分本当だろう
だから全員俺に協力してくれ!俺に星薙ぎ剣を使わせてくれ」
ユーリは力の限り皆に訴えかけた。この思いが伝わると信じて
>361
蚊ほどのダメージも与えられないと思っていたが、砲弾が命中する度に粉々に砕けた
ガラスのように、ヤマタノオロチの体表を覆う鱗状の装甲が剥がれ落ちていく。
「少々、拍子抜けだな」
しかし効果があるのに越した事はない。
グレイゴーストは新たな弾倉を突撃銃に装填し、再度攻撃を試みようとする。
>それぞれが大きく口を開き、体当たりを敢行し、ビームの雨を降らせる。
反転しようとしたところでけたたましい警報が鳴る。
首の一つが口を開き、そこから膨大な量のエネルギーが観測された。
(戦艦の主砲以上のビーム攻撃…か)
肩装甲にある、液体炸薬の爆発によって急激な運動を行うインパルス・スラスターを
咄嗟に起動させる。生身のパイロットであればすぐにでもブラックアウトしかねない
横殴りのGがクラウスを襲うが、伊達に機械化されている訳ではない。
Gに耐え切った直後、通過する熱量に備えてシールドを構えた。
ビームはシールドの表面を掠っただけだったが、その余波で表面が融解し始めていた。
「直撃していれば一瞬で蒸発、か」
すぐに機体のコンディションをチェックする。
シールド表面が溶けかかった以外は何も問題はない。戦闘の続行は可能だ。
その直後、直径50mにも達するヤマタノオロチの首の一本が体当たりを仕掛けてきたが
軽くいなし、すれ違い様にシールドの裏面に装備されているパイルバンカーを突き立て、
首の表面に張り付いた。
「零距離からの射撃ならばどうだ!?」
突撃銃の銃口を押し付けるようにして連射し、最後に無反動砲をありったけ撃ち込んだ。
>>368 再びデタラメな軌道を描くハリネズミが更に加速していく。
時速2274km。専用のパイロットスーツでも限界はある。体がバラバラになりそう。
それでも止めるワケにはいかないんだ。まだまだ足りないから。
この大回廊を“砲身”に変える為にはまだ全然足りない。
センサーが休まずに気圧の変動を計測し続けてる。“嵐”がやって来るのは46秒後…
それまでに完成させなきゃ、あのデカブツには勝てない。
アタシが待ってるのは気圧の差がぶつかる“壁”だ。
大気は薄い所に流れ込む時、その速度に時間差が発生する。
こんなクソ広い場所だからこそ起こる気圧の衝突こそがアタシの待つ“嵐”。
チャンスは一度きりの一発勝負だけど、ビビってちゃ話にならないよ。
オウガバトルは大回廊を彷徨う残骸をロックオンし終わった。
このペースなら間に合う筈だ。
>コックピットにラティフの叫びが響きながら、ディープシーカーは残骸と共に沈んでいった。
「え?ラティフ?ちょっとラティフ!返事して!!」
有り得ない出来事だった。小回りの利く機体だし、パイロットの腕前も一流。
なのに撃墜されたんだ。俄かには信じられなかった。
「ラティフ!何やってんのよ!!……なんで信号が消えてんの!?ラティィィフ!!!!」
アイツが最後にいた場所から識別信号が消えた。
何が“生還者”だ!いきなり死んでんじゃないよ!!ちくしょう!!!
急いでロックオンを手動に切り替えて、最終位置の辺りに掛かったロックを解除する。
だけどこれでは“嵐”の到達時刻に間に合わない。
時速2274kmで移動中のハリネズミにはアタシが必要だ。
正直な話、手動でFCSを操作しながら機体の制御が出来る程アタシは器用じゃない。
「お願いだよ…返事して……ラティフ…」
おそらく機体がシステムダウンしたんだろう、完全に反応が無い。
どうする?このままだとラティフを巻き込んでしまうよ?『答えは………No』
生きてる可能性に賭けるかい?『………………答えは…Yes!』
生きてる保証のない1人の為に予定を変えるの?『そうだよ!仲間は絶対に死なせない!!』
「ラティフ!今そっちに行くからね!!アンタは絶対に死なせないよ!!
死んで行ったアタシの兄貴の分まで生きなきゃ…絶対に許さないんだから!!!」
叫びながらアタシはオウガバトルの高性能っぷりを呪った。
大体の目星は付けてるけど、完全にラティフの位置は特定出来なかった。
だから直接探しに行くしかない。到達時刻まで、残り28秒。
正直ギャンブルは嫌いだけどさ、仲間を見捨てるくらいなら賭けてやるよ!!
賭けるのは…アタシの命と、みんなの命と、地球の未来だ!!!
>366
>「出張って来るにゃ早過ぎじゃないか、てっきりコトが済んだ後だと思ってたよ。
> それとね、ハリネズミをナメてると痛い思いするよ!弾道計算はするけどさ…」
>「もし当たっちゃったらゴメンよ!!」
「時期尚早は承知の上だが、これを逃したらたぶん次はないと思ってな。
はっ、そのハリネズミは見えない針を持ってる、か?
ふん、そんなヘマ誰がしてやるかよ。」
エレクトラの狙いは分かってる、昔と変わらない大胆な戦法だ。
確かに模擬戦では完勝したが、それは結果でしかない。
実はそのたった一回の模擬戦中に、エレクトラはジェリドの予想を超えた行動を起こしている。
そしてジェリドはそのセオリーを無視した規格外の行動に内心混乱して動きが鈍ってしまったのだ。
エルは知らないが、その一件がジェリドの伸び続けていた鼻をきれいにへし折って
陰で努力するようにさせ今のジェリドを作り上げたのだ。
>367
>刹那、ナグルのいた空間が質量によって埋め尽くされた。
ビームの集中豪雨を避けて油断したのか、あるいは予感があったのか。
回避行動も許さない一撃で、ナグルはオロチの頭部ごと外壁に押し込まれてしまった。
とっさに両腕で防御姿勢を取った事で一命は取り留めた……とは言え、
その両腕は完全に砕け、胸部もひしゃげてしまっている。
その分がコックピットにまで到達して、内部部品やら何やらがコウキを押し潰していた。
『かはっ……いったい、なにが……』
意識を取り戻したコウキだったが、状況を把握できていない。
呟いたとたん口いっぱいに広がる鉄の味、それが自分の血の味だと
気づくのに数秒かかった。
「コウキ……君は、ナグルごとオロチの頭部によって押し潰された。
その衝撃で数秒ほど気を失っていたんだよ……。」
コウタの声も弱弱しい、それも当然だ……コウタはナグルそのもの。
自分の体がボロボロにされているのだから―――。
そしてコウキは直感的に悟った……致命傷を受けたことを。
朦朧とする意識の中、コウキは一つの決断を下す。それは……
『っぐぅっ……! っはぁっ、はぁっ……コウタ。
……ニュートリノ、バーストを…………』
「コウキ……!? ……それは許可できない、そんな事をしたら……!」
『いいんだ……もう、長くない………このまま、無に帰るぐらいだったら…
せめて、最後に……生きた、証を………頼むよ…………。』
「……。分かった………。 ……すまない………コウキ……!」
『こっちこそ……テスト、落ち、ちゃって……ご、め………………………。』
頭部が外壁から引き抜かれると、壁に埋まっていたボロボロのナグルが
壁からはがれて……降ってきた残骸が直撃し計らずもディープシーカーと
同じように、スクラップの塊となって大回廊の底へと落ちていった。
>一面を完全に塞がっている状態へのビーム掃射。
並の機体なら一発で仕留められるほどの強力な奴を装填したはずだが、
オロチにはそれでも蚊が刺したほどでしかないようだった。
その事実に舌打ちしていると、アラートがけたたましく鳴り響く。
別の首が袋小路に入り込んだジェリドの機体を仕留めようと、
誤射もお構いなしとばかりにビームを放ってきたのだ。
「ええい、くそっ!」
次々と降り注ぐ太細様々なビームを、回避に専念することで
何とか直撃を免れて一時後退を果たしたが、無傷とは行かずかすった際のビームの熱量で、
小型スラスターが何基か使えなくなってしまった。もっともその程度の損傷で済ませられたのは、
間違いなくジェリドが今までに磨いてきた技術と天性の才能の賜物なのだろう。
「ちっ、やっぱりビクともしちゃいねぇ。
自分の攻撃で傷つかないと分かってるから、あんな無茶苦茶を平然とやりやがる!
……とっととあの首を落とさねぇと―――!?
そんな……バカな……くっそぉぉぉぉぉぉ!!!」
ナグルの熱源反応が消失!? 注意を払いつつ頭部が引き抜かれるのを見ていたら、
ちょうど残骸に当たって落ちていくのをジェリドは目撃してしまったのだ!
「この蛇野郎! よくもやってくれやがったな!
この落とし前、きっちり付けさせてもらうぞ!」
現代兵器とは言えビーム、効く保証はなかったが頭に血が上ったジェリドは
お構いなしにマシンガンモードに切り替えビームキャノンも同時に乱射をはじめた。
何度も目の前で誰かが死ぬ様を見てきたが、ジェリドはこれにだけは決して慣れる事はなかった。
>369
>「だから全員俺に協力してくれ!俺に星薙ぎの剣を使わせてくれ」
回避しつつ応戦していると通信が入る。発信源はあの古代ロボ……登録名は阿修羅。
星薙ぎの剣があれば倒せる、だから星薙ぎを飲み込んでいる頭部を落としたいと言うことだ。
「このクソ忌々しい蛇野郎を落とせるならガキの提案に乗るのも吝かじゃないがな、
高みの見物してるようじゃ任せられんな! 欲しいもんは自分の手で掴むもんだろうが!
まだ攻撃が効かないってんなら、せめて囮役でもこなせ! こうも睨まれてちゃ
お前らにとって邪魔くせぇウロコ剥がし終える前にこっちがやられちまう!」
ジェリドにも余裕がない、だから地である口の悪さが前面に出てしまっているのだ。
>371
>「ラティフ!今そっちに行くからね!!アンタは絶対に死なせないよ!!
> 死んで行ったアタシの兄貴の分まで生きなきゃ…絶対に許さないんだから!!!」
ラティフの駆るディープシーカーの反応がロストしたのは分かっていた。
そこまで気を回してる余裕がなかっただけだからだ。だがそれに対する
エレクトラの行動まではさすがにほったらかしと言うわけにもいかない。
「よせ、エレクトラ! 今行ったらお前まで巻き込まれるぞ!
ミイラ取りがミイラになっちまっちゃあ……くっそ!」
ジェリドの言葉は明らかに届いていなかった。その様子に顔を歪めるジェリド。
正論だらけの制止に目もくれずディープシーカーを追いかけていったヘッジホッグに、
ジェリドはあきらめた様に改めて通信を入れる。
「……エレクトラ、多分そっちにナグルも行くはずだ。
どうするかはお前に任せる……こんなつまんねぇ事で死ぬんじゃねぇぞ……!」
いまさらながら、己の無力さに歯噛みするしか出来ない自分を呪うジェリド。
しかし自分までここを離れることは出来ない。自分の仕事は、蛇の相手なのだから。
>367
暴れている間にも突き刺さったストローみたいなものにエネルギーを吸われる。
崖っぷちかと思われたが、ある事が閃いた。
そういえば日本の神話でもヤマタノオロチは若い娘を食べていた……
つまりセクハラオヤジだ! この無茶な仮説を基にMOEの限界突破出力を引き出す。
(全力でのセクハラオヤジの成敗を許可する!)(おk!)
((鉄・拳・制・裁!!))
巻き起こる爆発と共に周囲を取り囲んでいた壁がはじけ飛ぶ。
蛇の首が一本とんだ。死ぬかと思ったけど結果オーライだ。
>371
出てこれたのは、鱗の秘密を教えてくれたラティフさんのおかげ。
「ありがとう……あれ!?」
ディープシーカーは古代ロボに埋もれて沈みつつあった。
「今行くよ!」
蛇の中で暴れている間に少し上昇したらしく、地面が遠くなっている。
刺さっているチューブを引っこ抜きながら地面に向かう。
>369
M(エルちゃん……またあの形態になってる。大丈夫かな?)
複雑な軌道で動くヘッジホッグのやろうとしている事がなんとなく分かった。
普通なら古代機の超能力でしかありえないような広範囲攻撃を
現代機の力でやろうとしているのだ。条件が整う、一瞬で一度きりのチャンスにかけて。
巻き込まれる前に救出しなければ!
しかし、エルさんは予想外の行動に出た。
>「ラティフ!今そっちに行くからね!!アンタは絶対に死なせないよ!!
死んで行ったアタシの兄貴の分まで生きなきゃ…絶対に許さないんだから!!!」
自らラティフさんを探しに行こうというのだ。
「エルさん……ダメだ!」
この判断は決して賢明とはいえない。
救出なら僕たちのほうが適任だし、何より彼女にはやらなきゃいけない事がある。
だけど静止の声は届くはずもなく。
M(仕方ないです。モエ達は人間のそんな所が好きになったんだから)
モエは最後の一本のチューブを腕から抜き、紙吹雪でも撒くように腕を振った。
まだ治癒する前の傷口から
血というべきか燃料というべきか、いわゆる不思議パワーの源が宙を舞う。
それは金色の粒となってヘッジホッグに降り注ぐ。
僕たちに出来る、勇壮なる戦乙女への精一杯の加護……。
>369 >372
>「聞いてくれ、星薙ぎの剣が奴を倒す唯一の手段らしい、
阿修羅があれがあれば倒せると言ってるから多分本当だろう
だから全員俺に協力してくれ!俺に星薙ぎの剣を使わせてくれ」
ユーリの声に応え、阿修羅の援護へ向かう。
その途中、最初に声をかけてくれたあの少年の機体が堕ちるのが見えた。
酷く潰されたらしく、原型を留めていない。
一瞬助けに行こうとして、すぐに思いとどまる。
M(……ケイ君!? 助けに行かないの!?)
(あれは……もう……)
多分死んでる、そう思った。
それにおそらく、星薙ぎの剣を使ってトドメをさせるのは阿修羅だけ。
ここで助けにいったばっかりに地球が滅びたら本も子も無い
なんて事を冷静に考えてしまう。
やっぱりどんなに人間の真似をしても人間にはなれないのかな……。
>「このクソ忌々しい蛇野郎を落とせるならガキの提案に乗るのも吝かじゃないがな、
高みの見物してるようじゃ任せられんな! 欲しいもんは自分の手で掴むもんだろうが!
まだ攻撃が効かないってんなら、せめて囮役でもこなせ! こうも睨まれてちゃ
お前らにとって邪魔くせぇウロコ剥がし終える前にこっちがやられちまう!」
ハーディYの少しアレンジしたような機体の人の説教が、迷いを振り切ってくれた。
「僕からも……お願いします!」
阿修羅とハーディYカスタムにむけて超能力を展開する。
――――ヘイスト!!
単に動きを速くするのではない。対象の時の流れを早めるのだ。
それは、移動速度、認知能力などが飛躍的に上昇する事を意味する。