【物語は】ETERNAL FANTASIAU:5【続く】

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70メルキゼデグ ◆9..WsvGTOM :2008/02/27(水) 22:06:15 0
ナバル上空に辿り着いたマイラにて。
ジンレインは自分を抱きしめるように両腕を回し、震えていた。
「ふ・・・ふふ・・・情けないわよね・・・。」
自嘲気味に吐き捨てる言葉も、いつもの調子ではない。
17歳でありながら世知に長け、周囲とは必ず一線を画してきた。
冷静沈着な傭兵のジンレインの顔はそこにはなかった。

「ほんの半年前まで、私はどこにでもいる傭兵だった。
しがらみを恐れ、恨みと嫉妬を抱いて、きっと戦場で十羽一絡げで死んでいく。
そんな傭兵だったのに・・・
・・・いの・・・。怖いの・・・。」
そこにいるのは少女趣味で子供と絵本が好きな、17歳の女の子と素顔。
誰にも見せた事のない表情を無防備にセイファートに晒していた。

いきなり世界を背負わされた重みに、その小さな身体は押し潰されそうなのだ。
「ジン・・・大丈夫。
僕も、共に往こう。いつでも側にいるよ・・・。」
ジンレインの背中をそっと抱き、光の翼で身体を包む。
「お願い・・・離さないで・・・ね。」
包まれる心地よさと背中の温かみにジンレインはそっとジュネヴァを自分の胸に当てる。
なぜそうするのかは判らない。
だが、それがごく当然のことのように身体が動く。
レトの民の書である魔剣ジュネヴァがジンレインの内に入っていく。

マイラでは獣人、龍人、人間、エルフの種族も時も超えた歌姫達による演奏が開始されていた。
奏でられる音楽にあわせ、ジンレインの澄んだ歌声が流れる。
〜♪〜♪KIZUNA♪〜♪〜
強く、美しい想いを乗せた歌がマイラに、大陸に、セフィラ全体へと広がっていった。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・
・・・・だが・・・変化は現れない。
命を削り振り下ろされる滅びの巨剣を食い止めるザルカシュとリオン、マリクの吹き出る血も止まらない。
天地を埋め尽くす想いの光の粒子も変らない。
その中で一人天を見上げるはラーナ。
「今!!!ここでやって見せなくて何が愛よ!!!!」
絶叫と共にラーナは見た。
光の粒子のその向こう。
遥か上空で6色のオーロラが輝く事を。
それは上空3万メートルの戦いの成果。
新世界律発動の輝きでもあった。
71メルキゼデグ ◆9..WsvGTOM :2008/02/27(水) 22:08:29 0
歌が半ばまで来たとき、その変化は起こった。
結界を維持するザルカシュたちを助けるのではない。
歌が動かしたのは想いの力。
強く、美しく、優しく思いを込められた歌は、想いの光の粒子のうねりを変える!

「「「「ば、ばかな!これはどういうことだ!?」」」」
突如として拡散し始める巨剣と腕。
ありえない事に世界が、メルキゼデグが呻く。
その呻きに応えるのはラーナ。
「新しき世界律が発動したのよ。
それは【諦めなければ何度でも立ち上がれる!】。」
それはアクアの言葉の通り。
メルキゼデグの強力な統合能力で融合していた融合を拒んだ魂が、弾かれて拡散し始めているのだ。

新しき世界律。
融合を拒む魂。
種族も、時をも越えて初めて実現した世界を一つにする歌。
それらがジンレインという変換制御を経てメルキゼデグの統制能力に対抗したのだ。

「「「「こ、これ以上!!!させるかああ!!!」」」」
世界が震え、巨剣に更に力が込められる。
拡散しつつあるとはいえ、このまま押し切り歌そのものを断ち切ろうというのだ!

################################

「・・・アビサル、待ってな・・・!」
上空で巨大な腕が拮抗している姿を一人の女が見上げ、呟く。
燃えるような髪の毛を持つ『炎の爪のソーニャ=ダカッツ』。
帰滅により強制的に光の粒子と化し融合していたが、その統合力が薄れた事により肉体に戻ってきたのだった。

################################

他にも変化は起こっていた。
結界を維持するために命を削っていたザルカシュ・・・。
彼の周囲に光の粒子が集まり、その内に入っていく。
「ど、どういうこっちゃ?」
ザルカシュ自身も驚きを隠せなかったが、力がみなぎるのが判る。
そして内から叫ばれる声を聞く。

八翼将の種族の魂の連帯システム。
レトの民による命と魂の融合システムの実験の為に与えられた能力。
その能力が今、メルキゼデグと同じように想いの力を統合し、力としているのだ。
本来同一種族限定の共有システムではあるが、今、種族の壁を取り払い想いの力はザルカシュへと集まり力を貸していく。


同様の事はイアルコにも起こっていた。
金鱗を持ち、祖龍の祝福を受け得る器。
ある意味この場の誰よりも想いの力を受けられるのだ。
イアルコの内より響くのは・・・
『クソガキ!ウダウダしてねえでお前の本気を見せてみろよ!』
『小童めが!我らの力、存分に使わんか!』
『イアルコ・・・我が夫!共に往くぞ!』
「ううううおおおお!いわれんでもやってやるわい!!!」
龍の若き覇王の咆哮が響く!
72ソフィー ◆iK.u15.ezs :2008/02/28(木) 00:21:26 0
星界での戦いが始まってからどれぐらいの時がたっただろうか。
最強の人機融合形態《フェニックス》は、この姿をとる事さえも困難を極める。
すでに、人の身で持ちえる精神力の限界をとうに超えていた。
それでもソフィーは戦い抜いて見せた。
そして今、星龍達の加護を受け、最後の一撃を放とうとしている。
最初から生きて帰るつもりなどなかった。
だから、哀れな龍達の魂と共に逝ってあげよう、彼女はそう思った。
――悲しかったよね、辛かったよね……でも今日で終わりだよ――
ソフィーは星龍の加護の光をまとい、リヴァイアサンに向かって一直線に飛ぶ。
全身を聖なる炎と化しながら。
漆黒、純白、真紅、深青、黄土、深緑。
鮮やかに輝く眩いばかりの炎が、憎しみも悲しさも、全てを包み込んでいく。
その時響いたのは、恨みのこもった断末魔ではなかった。
瞬く光の粒子。鳴り響くのは、煌くような美しい音。
――ありがとう……この時をずっと待ってた――
星龍達は、救われた魂達の声を確かに聞いた。
幾星霜もの間、憎しみにとらわれ続けた龍の魂達は今ここに解き放たれた。
六色のオーロラが辺りを覆い、全セフィラに広がっていく。
そして、聖なる炎が消え去った後。
その場所には、気を失ったソフィー達が優しく抱かれるように浮かんでいた。
『我が子よ、よくやった……』
ラハツェンが両腕にそっと抱きとめる。そして、まだ息があることに気付いた。
本来なら生きているはずは無いのに。
『そうか……きっと奴らが助けたのだな』
星龍達は、古き友を偲びつつソフィー達を背に乗せて、地上に向かって降りていく。
73パルス ◆iK.u15.ezs :2008/02/28(木) 00:23:55 0
「アーシェラ! 次の曲次の曲!!」
「はいっ!」
形勢は明らかに変わり始めている。しかし尚、メルキゼデグは力で押し切ろうとしている。
「レベッカちゃん、僕はやることがある」
みんなが次の曲の準備をする中、レベッカちゃんに声をかけて、ゆっくりと前に進み出る。
「パル? どこに行くの!?」
「分かった気がするんだ……僕がアリアンロッドな意味が!」
それは、僕がエルフの女王で、生まれながらにして身に余る力を持っていた本当の意味。
《アリアンロッド》を銀の十字架から取り外し、空に向かって投げる。
思ったとおり、世界と同調して、12色の輝きとなって溶け込んでいく。
普段はあまり気付かないけど、想いを持つのは人だけじゃない。
この世に存在する全てのものが想いを持っている。
物言わぬ木も、草原を駆ける風も、流れる水も、動かぬ大地も全て。
それが、気まぐれで我侭で、善も悪も知らない精霊という名の想い。
だけどこの戦いには必ず力を貸してくれる。彼らは不自然な事が何よりも嫌いなのだ。
「な……なんやそりゃあ!?」
破滅の剣を抑えているザルカシュさんが、横に来た僕に驚いて声を上げる。
正確には、僕が従えた力に驚いて。
セイや暁旅団のみんなには見えていることだろう。
人にあらざる者たちの想いそのもの、世界に満ち満ちる精霊達が!
74『裏方』 ◆d7HtC3Odxw :2008/02/28(木) 23:43:04 0
「くぅのぉお、このイアルコ様の本気、見せてけつかるわ!!」
様々な力に後押しされてビシリとスターグに人差し指を突きつけるイアルコ
「ミセテモラオウカ・・・・ソリュウ!!」
対峙するスターグはいつもの如くその巨体を構える
「ふっ・・・・退却じゃあ!!」
言うが早いかイアルコ坊ちゃまはメリーを抱えて回れ右してもの凄い速度で逃げ出した
流石に呆然とスターグとアオギリはその様子を眺めるだけだったが、
「マ、マテ、ナンダソレハ」
再起動したスターグがイアルコに追いすがる
「ふん!!いちいち肉弾戦で相手していたら痛いだけじゃい!!」
そう言いながらもイアルコ坊ちゃまは頭の中で様々な計画を立て始めていた
ちなみに彼の心の中では、
『お前!!加護受けて逃げるってフザケンナ!?』
『ちょ・・・いきなり逃げの一手って』
『また悪巧みでもしてるのであろう』
『『『オマエナァーーー』』』
『カァちゃん、悲しいわ』
などと散々な言われようだった
「やかましいわい!!卑怯結構!!臆病上等!!生き抜いてこそ結構!!それがこのわしの覇道じゃ!!」
はたから見ればもう滅茶苦茶な言い分ではあるがなぜかこの言葉がアオギリには嫌なものには聞こえなかった
「ぷ・・・・くくく、た、確かにそうかも知れませんね」
イアルコ坊ちゃま、逃げる、逃げる、目指すは大きく天井の開けた剣の見える場所
そこまで辿り着いてようやく坊ちゃまは足を止めた
「ヨウヤク・・・タタカウカクゴガデキタカ?」
スターグがやっと追いついたイアルコに歩み寄る
「うむ、貴様を倒す算段がついたのでな」
自信たっぷりにスターグを見るイアルコ坊ちゃま
75『裏方』 ◆d7HtC3Odxw :2008/02/28(木) 23:44:16 0
「ナラ、ミセテモラオウカ!!」
スターグが飛び掛る と同時に何かの影がスターグを横から吹き飛ばす
「坊ちゃまはメリーが守ります」
それは鉄壁の守護メイド メリー 
逃げ回っている間に回復させていつの間にか別行動で待機させておいたのだった
不意をつかれたスターグはそのバランスを大きく崩す
「影縫い!!」
さらに追い討ちをかける様にアオギリの影縫いがスターグの動きを止めた
「これで仕舞いじゃあ!!」
イアルコがその金鱗の力を最大限に発揮してスターグをブレスで持ち上げる
もともと竜巻すら打ち消す程の威力の強力なブレス、ゴットブレスに金鱗の力が加わったのである
いくらスターグとて空高く持ち上げられた その行く先は滅びを運ぶ剣
「フンコロガシ・・・貴様の敗因はただ一つじゃ、それはの」
ブレスを行使しながらスターグを見つめる坊ちゃま
「力、執念、年季、その他全てお主が勝っておったわ」
スターグも黙ってイアルコを見つめる
「だが一つだけ一番大事な物が、わしがお主に勝っておった、だからわしの勝ちじゃ」
「ホォ・・・・・ソレハナンダ」
まるで憑き物が落ちたかの如く静かなスターグ
「それはな・・・・・悪運じゃ!!わしがお主よりも運が強いから勝った!!」
ブレスで空に、滅びの剣に向かってゆくスターグが笑う、
「ソウカ!!運ノイイ方ガ生キノコロル、自然ダ!!」
今までの事が嘘かの様に清清しく笑うスターグ
「心優シキ新タナ龍ノ王・・・・・・・・サラバダ!!」
その言葉と同時にスターグは剣にぶつかり文字通り消滅した

「本当は彼も理解してたんでしょうね」
アオギリが空を見上げ、スターグの死を見届け感慨深げに呟いた
「祖龍が消え去った事、運だけでは勝てない事とか」
イアルコ坊ちゃまはその呟きには何も答えない
「最後まで憎まれ口で言われても、彼は満足していったと思いますよ」
「ふん、憎まれ口は地じゃい」
二人で空を見上げる、剣がその巨体を拡散し始めていた
「新しい・・・世界率が始まる」
「その様じゃのぉ・・・」
「イアルコ様、お茶のお時間で御座います」
こんな時までもお茶の時間だと言うメリーに苦笑しながらもカップを受け取ってそのお茶をすする
あとはあいつらの仕事だとそこらに転がっている適当な岩に腰掛けた
不思議とお茶がいつもよりもお茶が美味く感じた
76パルス ◆iK.u15.ezs :2008/02/29(金) 00:40:00 0
「リオンちゃん! マー君!」
精神力を使い果たし気を失っていたリオンとマリクがハノンに揺り起こされ、目を覚ます。
聞こえてくるのは、美しい歌声。空に輝くは六色のオーロラ。
「良かったあ、みんな死んじゃうかと思った」
拡散して光の粒子となっていく滅びの剣。
目の前では、なぜか瀕死から復活したザルカシュが次の術を唱え始めていた。
「よっしゃあ、こうなったらとことんやったるで!!」

チェカッサの刀が何度もレオルの体を通り抜ける。
星幽体ゆえに物理的な力では傷つけることが出来ないのだ。
「王子様、何度やっても無駄ですよ」
しかし、六色のオーロラが空を覆った時、レオルの余裕の嘲笑に変化が現れた。
「バカな、世界率が……!?」
チェカッサはその僅かな隙を見逃さなかった。
「はッ!!」
一気に間合いに飛び込み、裂帛の一撃を切りつける。今度は確かに効いた。
「ぐあ……!!」
油断していたところを突かれ、よろめくレオル。
「残念だったな……お前たちの計画は失敗です!!」
二つの口調が混ざったような言葉でレオルに啖呵を切るチェカッサ。
レオルの顔が怒りに歪んでいく。
「我らの崇高な計画が失敗だと……!? ふざけるなああああああ!!」
凄まじい瘴気にチェカッサは吹き飛ばされ、レオルはレトの民の呪文を展開し始める。
77メルキゼデグ ◆9..WsvGTOM :2008/02/29(金) 22:59:39 0
拮抗状態を続ける大守護方陣結界と滅びの巨剣。
拡散を始めながらもその力は凄まじく、ついには結界を粉砕した。
そのままの勢いで振り下ろされる巨剣。
空中に浮かぶマイラに何の抵抗も感じる事無く大地に突き刺さる。
大地に突き刺さった巨剣と腕は霧散し、その姿を消したのだった。

だが、マイラは切り裂かれてはいなかった。
巨剣は拡散し、既にマイラを傷つけるほど形を保っていられなかったのだ。
ザルカシュはその事を見越し、結界維持を取りやめ次なる術を唱えていたのだった。

###############################

一方、地上ではレオルの詠唱が終わろうとしていた。
「我が主よ!完全なる調和の王よ!今こそ私も一つに!!!!」
狂気の笑いと共にレオルは取り出した短剣で己の胸を突く。
それと共にレオルに流れ込む光の粒子。

あまりにも強き光にホワイトアウトが起こり、光が収まったとき。
既にそこにレオルはいなかった。
代わりにメルキゼデグが佇んでいたのだ。
「「「「・・・・・・・・・・・・・・・」」」」
呆然と佇むように何も発しないメルキゼデグをクロネたちが取り囲む。
「もうこれまでやでぇ!こんな力の塊やったとはな!そりゃ無敵なわけや!」
「周到な計画が裏目に出たの。同じ土俵に上がらせてもらった。勝ち目はないぞ?」
リーヴとシャミィの言うとおり、今やメルキゼデグと同じ土俵に立っていた。
歌姫達とジンレインの力により、リーヴたちもまた、世界の想いの力を得ているのだ。
そして大部分の想いの光の粒子はメルキゼデグとジンレインによる統合支配力に引き合いにあい、動けずにいる。

「「「「・・・・・・・・・・・・」」」」
だがメルキゼデグは応えない。
飄々と歩を進め、しゃがみこむ。
拾い上げたのは黄金の仮面。
いつの間にか柄がついており、それを手に向きたった。
まるで剣を持つかのような体制だが、柄と鍔はあっても刀身のない。
奇妙な姿で。
「「「「・・・なぜ・・・お前達は正義を受け入れない・・・?
争いも、差別も、貧困も、苦しみも・・・何もない世界を望んでいるはずだ!!!」」」」
ようやく紡ぎだされた言葉。
徐々にその音量は大きくなり、やがて空間すら振るわせる意思が込められた。
だがそれで怯むものはもはやいない。

「あほんだら!そんなもん世界とちゃうわい!
苦しんで足掻いて精一杯生きる!苦しみがなけりゃ喜びもあらへんやないかい!
一番気に入らんのは自分自身がなくなることや!
そんなもん正義やあらへん!」
リーヴが怒鳴り返すと、メルキゼデグは即座に視線をリーヴに向け応える。
「「「「矮小な自我の物差しで正義を語るな!
正義とは!生存欲に基づく能動的意思そのもの!生命の中全てに正義の因子は存在する!
我は正義に基づき正義を求める生命の組織化であるぞ!!!」」」」

「そう、確かにあなたは全ての生命の正義・・・その理想によって作られた。
でも・・・違うのよ・・・私たちレトの民は大きな間違いをしていた。
その間違いを正さぬままあなたを作ってしまったのは私の罪・・・」
ラーナが応える。
もはや決着をつける方法は一つしかない。
その悲しさに涙をしながら。
78メルキゼデグ ◆9..WsvGTOM :2008/02/29(金) 22:59:46 0

「「「「これは使いたくなかったが・・・」」」」
チェカッサに振るうは刀身のない剣。
「い・・・いかん!」
見えない刀身だとしても、チェカッサは避けられた。
何かを飛ばしたとしても同じだ。
だが、メルキゼデグの持つ剣には何もなかったのだ。
そう、なにも【無い】。

それに気付けたのは400年にわたる戦闘経験による【勘】に過ぎなかった。
クロネがチェカッサを庇い突き飛ばす。
そしてクロネの左腕と、想いの力で形作られた剣が地に落ちた。
「な・・・なぜですか?」
「この戦いも・・・重要じゃが・・お主はその後に必要じゃからしぃ。
古い者は、ここで消えてもいい・・・!からにゃ。」
吹き出る血をそのままに全身の毛を逆立たせ、チェカッサにクロネが応える。
いつもは糸目で見えぬ目を見開きエメラルドグリーンの瞳を光らせながら。

「無間の剣!」
ラーナが悲鳴に似た叫び声をあげる。
それはレトの民が作り出した剣。

【無】とは概念上の存在であり、本来存在し得ないものなのである。
あらゆるものを無くし、最終的には時間も空間も消滅させる。
すると【無】になる。
だが、それを知る者もないのだ。
どれだけ【無】の期間が続こうとも、時間すらない。
結果、時間と空間が消滅した瞬間、新たなる時間と空間が現れる事になる。

だが、レトの民はそれを取り出した。
【無】そのものを取り出し、形成維持をした。
それが刀身の無い、しかしあらゆるモノを、そして想いすらも本当の意味で【無】とする恐るべき剣を作り出したのだ。
それは自身の存在すら無とし、見る事も感じる事もできぬのだ。
これが黄金の仮面の正体。
あらゆる調和の特異点としてメルキゼデグの手にあるのだった。

「「「「想いすら完全に無としてくれる!!!!」」」」
あらゆる存在、あらゆる想い、あらゆる法則を消し去る【無】の具現の刃が縦横に振るわれる。
79『裏方』 ◆d7HtC3Odxw :2008/03/02(日) 19:34:46 0
メルキゼデグは止まらない それは彼の信念なのか、遥か古代からの怨念がそうさせるのか
無、そのものだと言う無間の剣、それを振るい、メルキゼデグの歩みは止まらない
様々な思いを、モノを無の彼方へと消し去りながらその歩みを止めない
「まったく次から次へとはた迷惑なモノばかりだしおって」
無間の剣を振るうメルキゼデグにぽつりともらす
それを聞きつけたメルキゼデグはその無間の剣をシャミィに向けて振るった
「ひゃお!!あっぶなかっしいのぉ」
「「「全て無に帰れ」」」
間一髪一段高い岩の上にシャミィは着地した
「さぁて・・・・賢聖シャミィ 一世一代の大仕事じゃわい」
そう言うとシャミィはオリジンスキャナーを自分の眼前にかざして呪文を唱え始めた
「そういう訳じゃからして、しばらくそやつを引き止めておいてくれんかのぉ」
しれっと他の対峙していた他のメンバーに言い渡す
「無茶言わんといてーーー!!無理無理!!あかんて!?」
リーヴの言う事ももっともである なにせ触れればそこから消滅するのではたまったものではない
「5分あれば十分かにゃ?ご婦人」
真打刀を口にくわえてクロネがメルキゼデグに立ちはだかる
「それだけ稼げれば行幸じゃ」
短い答えと返事の無い了解 瞬時に事は成り立った
シャミィが術式を唱える、体中に紋様が浮かび上がる
禍々しいその紋様を体に刻み込んだまま次はオリジンスキャナーを使用して純粋な魔力のみを集める
その間にクロネはその見事な体裁きで無間の剣を感のみでかわしながらメルキゼデグを足止めした
シャミィの眼前に作り出された純粋な魔力のみの塊それはオリジンスキャナーを介して純粋なエネルギーへと変貌する
「ぐぅうううう」
シャミィの苦しそうな呻き声が聞こえた時、
「「「ぬぅええい、小賢しい!!」」」
ついにメルキゼデグの無間の剣がクロネを捕らえた
「ぐぅああああああ」
クロネの左足が消し飛ぶ
「終り・・・だ」
クロネにむかって剣が振り下ろされようとしたその時だった
純粋なエネルギーの塊がメルキゼデグにむかって発射される
「「「ぬぅええい 無駄な事だ、この無間の剣は全てを飲み込む」」

迫り来る純粋エネルギーを無間の剣は吸い込む 
「それはまさに行幸」
呟く様にシャミィは一言いっただけだった
吸収されるエネルギーを追ってもの凄い勢いで駆けて来るシャミィ
そしてそのままシャミィは無間の剣に飛び込んだ!!
「「「気がふれて自ら死を選ぶか?」」」
メルキゼデグはたいして気にも留めずに無間の剣を振るおうとしたが・・・
「「「な・・・・何だと」」」
そこにメルキゼデグは信じられないものを見た
80『裏方』 ◆d7HtC3Odxw :2008/03/02(日) 19:36:37 0
仮面の真ん中から伸び出ている『目に見える刀身』を

「「「ば・・・馬鹿な・・・・無間の剣は無・・・・存在するわけが無い!!」」」
流石にメルキゼデグも狼狽する
「教えたろか?なんでその剣、目に見える様になったか」
静かに声が響いた 声の主は大司祭ザルカシュ
マイラから遠隔で声を飛ばしている様だった
「「「何を・・・何をしたぁーーーー」」」
激昂するメルキゼデグと対象的にザルカシュは冷静な口調で答えた
「世界樹すら生まれるもっと前、そう、それこそ無の世界の時の話やで」
マイラで遠隔送話しているザルカシュは泣いていた
「無の世界でいきなりものごっつい爆発がおきたんやて、それで、世界が始まった」

シャミィが無間の剣にむかって突撃する少し前
シャミィとザルカシュは念話で最後の会話をしていた
(師匠!?あかん それはあかん)
シャミィのこれからしようとしている事をその魔力の流れで理解したザルカシュはシャミィを止めようとしたが
(この 馬鹿弟子がぁ!!)
しかし逆に怒られた
(なぁ・・・し、師匠・・・・・・)
(ザルカシュよ・・・・今一度、お主に問う、力とはなんぞや?)
(力とは・・・・・)
幾星霜の年月越えての安らかな師弟の語らいだった
(わしもまだわからんわ)
(ししょお・・・・)
(でもな、目の前で出来る事をせぬ、それは力を持っているとは言わぬのじゃ)
一呼吸置いてシャミィが喋り始めた
(お主は最後の最後まで手のかかる馬鹿弟子じゃったのぉ)
ザルカシュは何も答えない、答えられない
(まだまだ卒業するには早いがこれをくれてやるわい)
ザルカシュの前にシャミィのお守りにしているアンクレットが転送された
(では・・・さらばじゃ!!)
その言葉を最後にシャミィはその存在をこの世から消した
「師ぃ匠ぉーーーーーーーー!!」
ザルカシュの絶叫がマイラに響いた
81『裏方』 ◆d7HtC3Odxw :2008/03/02(日) 19:38:22 0
「エネルギーなんか目くらましや、本命は師匠自信だったんや」
シャミィはエネルギーの塊を目くらましにそれ以上の爆発力のあるモノを用意していた
それは 『呪怨弾頭』 呪われた人間そのものを爆弾とする禁断の業
普通の人間ですら破壊力はもの凄い威力がある それを賢聖と言われるシャミィが弾頭となったのならば
その威力は想像する事も難しいだろう
無間の剣とのインパクトの瞬間、シャミィはその巨大な爆発を起こした
それは無に吸収されながら無を揺るがし、無から有を生む大爆発を起こす引き金となる
無から有へ、それこそがシャミィの狙い、無間の剣の破壊方法だった
そしてそれは無ではない刀身が現れるという形で成功を示した

「「「馬鹿な!?嘘だ!?無が消える!?」」」
流石にメルキゼデグも狼狽を隠せない
「くくくく・・・・・当たり前だにゃあ・・・」
満身創痍でやっと立ってるだけのクロネはその姿を見て笑った
「「「何が、何が可笑しい!!」」」
「所詮・・・壊せぬ事、倒せぬ事は無かったって事だにゃあ」
その慟哭ともいえる獰猛な笑みがメルキゼデグを睨み付ける
「なんだかんだ言ってお主もその無の剣とやらも所轄人の手の業」
爛とその目が輝いた
「ならば 壊せぬ、倒せぬ などあるわけなかろうなのにゃあ!!」
その言葉と同時にメルキゼデグの手刀がクロネの心臓を貫いた
その顔に勝利の確信と満面の笑みを浮かべ
『断龍 クロネ』 その生を閉じる
82パルス ◆iK.u15.ezs :2008/03/03(月) 00:58:56 0
「「「貴様……勝ったと思うなあ!!」」」
倒れたクロネの亡骸を前に、メルキゼデグは絶叫する。
最大の武器は逆手にとられ、最後の切り札も封じられた。
それでもメルキゼデグは突き進む。争いの無い世界、【正義】を実現するために。
「どうする!? もう後はないで!」
剣が現れてしまえばしめたもの、全員で取り囲み一斉に斬りかかる。
「「「……こうするまでだ!!」」」
すでに無ではなくなった無間の剣を振るいながら、メルキゼデグは呪文を紡ぎ始める。
「往生際が悪い!!」
ハイアットが世界中の想いの力を宿した銃弾を撃ちこむ。
しかし、メルキゼデグが一閃した無間の剣だったものに触れた瞬間に、跡形も無く消えた。
「な!?」
唖然とする一同に、衝撃の事実が告げられる。
「「「出来損ないのビッグバン……
世界の源とは程遠いが……このセフィラを取り込むには調度良い!!」」」
よく見ると刀身の周りの空間が歪んでいるように見える。
それは、剣から生まれ出でた異質の空間。
「「「よくぞここまで苦労させてくれた。その強き想い……取り込んでくれよう!!」」」
振るわれる剣より出でる、異質の空間が世界を侵食し始める。
しかし、侵食は加速度的には広がっていかない。
先刻から辺りに満ちるは《アニマ》。
世界を侵食する無から有への変換を妨害するのは、やはり無から有への変換の力。
レトの民の技術を元に、世界を形作るために作られた存在。
メルキゼデグは憎しみを込めて、マイラに立つ人影を見つめた。
ここに至ってまた、周到な計画が裏目に出たのだから。

ザルカシュは理解した。師匠が命を使ってまでした事が利用されてしまった事を。
シャミィが自らの命を使って行ったのは、無から有への変換。
世界は無から生まれ出でると同時に、加速度的に膨張を始めた。
先刻の呪文は、世界と同じように現れた剣の実体に膨張のきっかけを与えたもの。
そして一度膨張を始めてしまえば何も手を加えなくても加速していく。
ザルカシュは持てる知力の限り考えた。
師匠の死を無駄にするようなことだけはあってはならない。
行き着く答えは、危険すぎる賭けしかなかった。

「レベッカちゃん、僕は行く……だから歌って!!」
全世界の事象を従え、マイラから飛び降りようとした時、後ろから声がかけられた。
「受け取っていきいや!!」
ザルカシュさんの魔法が僕を包む。
融合を拒む光の粒子が集まってきて、剣に集結していく。
元から想いで出来たものだから、何よりも想いを取り込みやすい。
眩しすぎるほどの輝きを放つ剣を手に、風に乗って飛び降りた。
83メルキゼデグ ◆9..WsvGTOM :2008/03/03(月) 22:44:09 0
輝きを放つ剣を手に、風に乗るパルメリス。
その加速に風景が滲んだ刹那、それを感じた。
懐かしく、憎く、近しいその気配。
「パルメリス・・・」
「レシオン!どうして!?」
その声に強張った声で応えるが、レシオンの口調は不思議なほど穏やかだった。
レトの民の計画に取り込まれ、そして今開放されたのだ。
もはや憎しみも、何も宿ってはいない。
「私も想いの粒子となりメルキゼデグに取り込まれていたのだ。
お前達のおかげで想いの粒子は開放されている。
肉体の損傷が少ない物は元の身体へと戻っていくだろう。」
そう、レシオンだけではない。
ソーニャのように肉体の損傷がそれほど無ければ帰滅や大帰滅によって光の粒子となった者は復活しつつある。
「え・・・じゃあ・・・!」
「あ、私は無理。無事だった肉体をお前にざっくり貫かれたから。」
「う、ごめ・・・」
一瞬の期待をあっさりと否定され、しかもそれが全面的に自分の行いのためと言い切られ言葉が出ないパルス。
「いや、いいのだ。私は250年前・・・いや、もっと昔に既に死んでいたのだから。
それより・・・」
言葉は最後まで続かなかった。
続かせる必要はなかった。
パルスの中にレシオンの想いの力が満ちてくるのだから。

−−−−共に往こう−−−−

と。

##########################################

「「「「無駄な足掻きを!同じ土俵に立った?元々のスペックが違いすぎる事を思い知れ!!」」」」
一斉に切りかかるチェカッサたちを吹き飛ばしながら暴れるメルキゼデグ。
無間の剣が無くともその力は圧倒的だった。
そして世界の侵食に加速的な勢いは無くとも、確実に広がりつつある。

そんな戦いを見守る二人の女。
「アビサル・・・可哀想なもう一人の私・・・。」
涙を流しながら見守る一人はジンレイン。
ジンレインの本体はマイラにてメルキゼデグの統合支配に対抗している。
ここにいるのはジンレインの想いの姿。
光り輝く身体で、メルキゼデグを見守る。
運命の歯車がほんの一つ狂えばあそこにいるのは自分だったのだから。
「・・・あなたなら、助けてあげられる・・・」
そう言いながら、もう一人の女の内へと重なっていった。

「ああ・・・任せておきな。」
力強く頷き、歩み寄るは燃えるような髪の毛を持つ【炎の爪】ソーニャ・ダカッツ。
激しい戦いの渦中にも拘らず、まるで無尽の野を行くかのごとく無防備に近づいていく。
「メルキゼデグ。あんたの一部となって判った事がある。
言いたい事は山ほどあるさ・・・だけど・・・」
そう、ソーニャは一度帰滅によってメルキゼデグの一部となった。
個は全であり、全は個である。
抽象的な意味ではなく、物理的にそうなったのだ。
あらゆる情報を共有し、共に溶け合っていた。
その中で得たものがあったのだ。
84メルキゼデグ ◆9..WsvGTOM :2008/03/03(月) 22:46:26 0
「「「「寄るなあ!」」」」
振るわれる手刀にもソーニャは無防備。
ラヴィが手刀の軌道を逸らさなければその上半身は跡形も残らなかっただろう。
だがそんな事お構いなしに近づいていく。
「あらゆる正義も、理想も、理屈も、全部どうでも良い!唯一つ・・・!」
とうとうソーニャはメルキゼデグの必殺の間合いに入り込んだ。
もはや助けることすらできぬ必殺の間合いに!
「ちいいい!いい加減いけるな!」
その姿を見て叫んだのはディオールだった。
光の粒子に満ちる中、限界まで消えうせた影を使い、ブレスを発動させる。
それは攻撃ではない。
想いを託したのだ・・・・

「あったりまえよ!メルキゼデグ!お前のご自慢の命の統合システムを舐めるなよ!
首を追った程度で今の俺が死ぬかああ!
赤毛!手間のかかるチビを連れ戻してやれ!」
影から現れたのはリッツ。
一瞬の隙を突きメルキゼデグを羽交い絞めにする。

動けないメルキゼデグの胸にソーニャはその腕を突きつけた。
生命の頂点を極めたツワモノ達の剣すら寄せ付けなかったその胸に、ソーニャの腕は何の抵抗も無く突き刺さる。
まるで溶け合っているかのように。
そして・・・
そして肉薄するまで近づいたとき、ソーニャは叫ぶ。

「アビサル!いや、違う!【奈落の大聖堂】なんて計画の一ページなんかじゃない!
帰って来い!ナユタ!」
それが情報を共有し溶け合った時に得た名前。
アビサルが聖星術師としての名前【アビサル・カセドラル】を与えられる前の名前。

力いっぱい腕を引き抜くと、最初に現れたのはソーニャの手を掴む華奢な【左腕】。
そのまま一気に現れた。
ようやく肩まで伸びたぼさぼさの髪の毛、青い瞳。
大きな瞳に涙を浮かべた少女が
「・・・おがあざん・・・!」
星見曼荼羅のローブも太極天球儀も、日輪宝珠も月輪宝珠も、何もない。
聖星術師アビサル・カセドラルになる前のただの少女・ナユタ。
大粒の涙を流しながらソーニャの胸に飛び込んだ。

「「「「お・・おお・・・・おおおお!!!!」」」」
アビサルを引き抜かれたメルキゼデグは絶叫を上げ、暴れ始める。
その凄まじさは、羽交い絞めにしていたリッツが軽く吹き飛ばされるほどだった。
「「き・・きさ・・・きさああ・・・・!!!」」
「「何をしたかわか・・・わ・・わわ・・・」」
「「「わかっている・・の・・・か!?」」」
暴れ苦しむメルキゼデグの輪郭が徐々にぶれていく。
情報生命体であり、あらゆる生命の統合体のメルキゼデグ。
そこから最後の要であるアビサルというパーツが抜けたのだ。
メルキゼデグという存在自体の統合ができなくなり、身体が分裂暴走し始めているのだ。

「「「なぜだ!お・・お前達の内ににも我はある・・はずなのなの・・に!
なぜ・・判らぬ!なぜ・・調和を・・のの望まぬ!!!」」」
メルキゼデグたちの叫びがこだまする!
85パルス ◆iK.u15.ezs :2008/03/05(水) 00:33:12 0
「もう終わりよ……プログラムを停止します!!」
ラーナは瞬時に、その場にいる全員を少し離れた場所に転送した。
そして、メルキゼデグの方に手を伸ばす。
今ならプログラムを解除できるという確信を抱いて。しかし、一瞬遅かった。
間一髪の距離が及ばず、巻き起こった爆発に吹き飛ばされる。

辺り一帯が爆風で何も見えなくなる。
ようやくそれが収まってきた時、誰がいる場所からも巨大な何かが現れたのが分かった。
正確には現れたのではない、存在するべきものが存在するようになっただけなのだ。
メルキゼデグはプロジェクト・エターナル完遂のために作られた情報生命体。
完璧ゆえに融通の利かないスーパーコンピューターは
予定されていない事態に直面したため、システムの大部分が停止した。
自分自身すら侵食に巻き込んでしまった今、本来の姿をさらけ出し
残った僅かなプログラムが暴走を開始する。
「「「殲滅を開始する!!」」」
鐘を打ち鳴らしたような声が鳴り響く。それはこの世界全てへの死刑宣告。
全にして個。個にして全。自律駆動する無数のコンピューターの集合体。
その配列によって自在に姿を変える、機械の巨人。
これこそが、異なるセフィラから飛来し、自在に時を渡り歴史を操ってきた支配者の正体だった。
無機的な起動音が鳴り響き、発射されたミサイルが空を埋め尽くす。

「あ……」
レベッカは、目の前の光景に圧倒されて声も出なかった。
現れたのは、世界を侵食する力を纏う、見た事も無い巨大な化け物。
そして、とてつもなく危険そうな飛び道具が無数に飛んでくる。

今まで実体の見えなかった敵が、ついに現した正体。
神と呼ばれるレトの民が作り出した超科学の産物。
緻密すぎる計算で世界を牛耳ってきたスーパーコンピューターだった。
僕はそれに、物凄い速さで接近しつつある。
相手がどんなに巨大だろうと、不思議と怖くは無かった。
今の僕には最悪だけど最高の味方がついているから。
たった一言発するだけで、全世界の事象が僕の意思に応える。
「【ミサイル・リフレクション】」
吹き抜けるは烈風。ミサイルが全てUターンして打ち出した者自身に向かっていく。
86パルス ◆iK.u15.ezs :2008/03/05(水) 00:34:34 0
「「「ウボァーーーーー!!」」」
あろうことか自分で打ち出したミサイルに爆撃される機械の巨人。
響き渡るどことなく間抜けな絶叫。レベッカは先ほどとは別の意味で驚いた。
「ねえ、今ウボァーって言ったよね!?」
「ああ、言ったな」
「幽霊の正体見たり、ポンコツロボット」
リリスラが頷き、さらにオペラが格言を披露する。

時同じくして、ハノンは飛んでくるペガサスの一団を発見した。
「ああっ! 愛しのフォルティッシモ!」
団長に拉致されたあげく成り行き上放置されて迷子になっていた騎馬達である。
急にやる気に満ち溢れる暁旅団。彼らが真価を発揮するのは空中からの撹乱だからだ。
「パルメリス様……お手伝いします!」
「みんな……邪魔だけはしちゃダメよ!」
レミリアが先陣を切って、空の戦士達は飛び立った。

そして、遥かな上空より姿を現したのは、星界での戦いを終えた星龍たち。
それと同時に、リオンとトム達の武器が雑誌の付録とは思えない輝きを放つ。
「何だ!?」
リオンが目を輝かせながら答える。
「星龍の祝福だ……。もうただの付録じゃない。
たった今、本物になったんだよ! さあ行こう!」
「行こうって……どこに!?」
「嫌だよ! あんなのと戦うのは!」
『そんなんじゃあパンダのバンダナが泣くぞ!! 守ってやるから安心しろ!!』
翠星龍が有無を言わさず5人を背に乗せ、翼を広げた。

着地したのは、浮遊する無数の機械で出来たメルセデギグ自身の上。
次々と飛び移りながら、光の剣で襲い来る装置を破壊していく。
「「「貴様あっ!! ぶちころす!!」」」
メルキゼデグは巨大な拳を振り上げ、僕を叩き潰そうとする。
敢えて避けずに、影の転移術で移動する。
拳を振り下ろした隙に、語りかけるのは水の上位精霊。
「【メイルシュトローム】!」
大量の水が現れ、巨大な渦がメルキゼデグを飲み込む。

その頃マイラでは、レベッカがすっかりいつもの調子でツッコミを入れていた。
「いくらポンコツでも耐水加工はしてると思うよ!」
アーシェラがそんなレベッカを見て、安堵の笑みを浮かべる。
「良かった、いけるようですね」
「もっちろん!!」
アーシェラが刻み始めるのは、軽快にして力強いリズム。
素晴らしい未来を予感させるような曲調にのせて
レベッカ達は希望に満ちた歌詞を高らかに歌い始める。
87パルス ◆iK.u15.ezs :2008/03/05(水) 00:36:38 0
〜♪〜♪Road of Hope♪〜♪〜
星の導く 歴史が 終わるとき
本当の 物語が 始まりを告げる――

届けどこまでも 君に伝えたい
今この場所に 生きている奇跡!
同じ空の下 君と会えた事
この世の何より ステキな贈り物!

まだ見ぬ未来は 誰にも分からないけど
恐れないで 一人じゃないから!
時には嵐に 会うこともあるけれど
雨があがれば 輝く虹の橋がかかる!

新しい風が 雲を吹き散らし
希望の光が 僕らの道を照らす
固く手をつなげば どこまでも行けるよ
今こそ踏み出す 限りない未知
 
それは 果てし無き
――Road of Hope!!
〜♪〜♪〜
88『裏方』 ◆d7HtC3Odxw :2008/03/05(水) 21:10:13 0
その巨大な体を縦横無尽に振り回しメルキゼデグはその怒りを表わす
だがこの場に立っている物に絶望の顔は無かった
暁旅団が空から、メルキゼデグを牽制し、地上では

「合わせろ!!リッツ!!」
「応!!」
黒騎士とリッツが白と黒の閃光となって無数の拳を打ち込む

「こいつで最後や、派手にいくでぇ」
「最大出力っちゅやつや、頼むからきいてくれや」
ザルカシュが最後の魔力を振り絞って砲撃し、リーヴがありったけの力を込めた必殺の一撃の拳で殴る

「いけ・・・・全ての思いを込めて、ジルローヴェンスタン、シューーート!!」
「断空斬りーーー」
ハイアットの銃口が火を噴き、ラヴィの黒包丁が空を斬った

「まったく、往生際の悪い奴じゃ、いい加減にせぬかぁーーー」
「貴方の形見お借りします、吹きとべぇ!!」
クロネの残した刀の柄から光をほとぼらせてチェカッサが斬りつけ
巨大なブレスをイアルコが起こした

「よくも今までアビサル・・・いやナユタを虐めてくれやがったな、オトシマエはつけてもらうよ!!」
「貴方は世界に害悪しか与えない・・・・トドメです」
ソーニャの炎が駆け巡り、アオギリの矢が光となって貫く

「くっそぉ こうなったらヤケだぜ いくぞお前ら」
「「「「了解!!」」」」
星龍の加護を受けた武器を重ね合わせリオンと蜥蜴の尻尾団はファイナルドラゴバズーカを放つ
89『裏方』 ◆d7HtC3Odxw :2008/03/05(水) 21:10:50 0
龍が、人が、獣が、新たな神が、古き神が、未来が、過去が、そして今が
全てに仇なす怨敵を今打ち破らんと一つになる
そしてその力は光の束になってメルキゼデグを打ち据える
「「「「ぐがああああああ!!」」」」
真正面からその光の束を受ける 
「「「「まあぁあだぁぁああだぁあ」」」」
強烈なエネルギー波の猛攻を浴び、無数の拳を浴び、魔力で破壊されて、
両手が吹き飛び、顔面を破壊され半分消し飛び、それでもメルキゼデグは存在していた
「「「「吹き飛べ、次元の彼方へ!!」」」」
メルキゼデグが咆哮する、そして空に裂け目が現れる 
これこそメルキゼデグの最後の手段、異次元の扉を無理やりこじ開けそこに全てを飲みこもうと言う物だった
しかしそれが思わぬ結果を生む事になる

「うぉおおおおお!!」
次元の裂け目から巨大な鉄の塊を携えて一人の男が降ってきた
その男は地面の裂け目に飲み込まれた男、鉄の塊はいつしか消えていた男の友人の武器
その武器には前世界率の名残があった そして落下長い落下の際に巨大な力を蓄えていた
男は地面に飲み込まれたと同時に不安定になっていた空間から異次元へと落ち込んだ
そこでたまたま手にしたのがこの武器だった
そしてメルキゼデグの異次元の干渉で彼らは再び元の世界に戻る
 
武器とメルキゼデグが衝突するその腹部に突き刺さるようにぶつかった鉄塊がその溜まった力を解放する
「「「「がぁあああああ!!!???」」」」
様々な思いと力を解放して壊れて砕けて その武器は役目を終えた 
その最後に残った小さな欠片には小さく銘が刻まれていた
『ONSUROTO』と
落ちてきた男、キャメロンを暁旅団が救出した 幸い気絶しているだけで傷らしい傷も無い

メルキゼデグが苦しむ、その巨体をよじらせて、その腹部に巨大な穴を開けて
すでに次元の裂け目も維持が出来なくなって閉じている
皆が叫んだ、心で、口で、目で、

「「「「「「「今だ!!パルス!!」」」」」」
90パルス ◆iK.u15.ezs :2008/03/07(金) 01:21:44 0
無数の機械の集合体であるメルキゼデグを倒す方法はただ一つ
奥深くに隠されたマザーコンピューターまでたどり着き、プログラムを解除すること。
そして、またとないチャンスは訪れた。全ての願いが、意思が、僕に力を貸してくれる。
「これで最後だ!」
「「「貴様……何を!?」」」
恐怖も、不安も無かった。ただ勝利への確信と、未来への希望だけを抱いて、疾風となる。
――《レクス・テンペスト》!
台本なんて無い本当の未来を掴むため、計画に縛られた歴史を今ここで終わらせる!
それは僕自身の意思でもあり、世界の全ての願いでもあった。
一直線に飛び込むのは、メルキゼデグに開いた巨大な穴!

「「「うわなにするやめろおおおおおおおおおお!!」」」
侵入者を排除しようと暴れまわるメルキゼデグに、歌い終わったレベッカが叫ぶ。
「やめろと言われてやめるやつがあるか!」
永遠とも思える数秒間を待つ。
それは祈りや願いではなく、確信。全員が心の底から勝利を信じていた。

メルキゼデグの中に飛び込んだ僕は、少し開けた空間に出た。
思ったよりあっさりと、目の前に一際大きな装置が現れる。
あとはこれを叩き壊せば勝ちだ。分かっていたけど、そうする訳にはいかなかった。
近くに、この期に及んでまだ取り込まれている人を見つけたから。
装置に半分埋まるように捕らわれているのは、幼い少女だった。
今プログラムを解除したら一緒に彼女まで消えてしまうような気がする。
僕はその人の前まで言って、名前を呼んだ。
「ヒムルカさん……!」
姿は違っても、直感で分かった。
目の前にいるのは、他でもないこの手で止めを刺したはずの、人魚の女王。
少女は、僕のことは覚えていないようだった。ただ、僕を見て祈るように呟く。
「……私のことはいいから……早く」
次の瞬間、僕はものすごい剣幕で叫び返していた。
「よくない!!」
少女を縛る何重もの拘束を叩き切りながら。彼女は尚も懇願するように呟いた。
「ダメ……あなたまで捕まってしまう……」
「無理なんかじゃない! 一緒にみんなの所に帰ろう!」
その時、周辺の防衛システムが起動するのを感じた。
僕を捕らえようとする鎖が伸びてくる。少女の懇願は叫びへと変わる。
「お願い、早く行って!!」
何を言われても絶対に見捨てて行くわけにはいかない。
「あなたは生きてる! 敵の策略だろうと何だろうと……生きてるんだ!!」
鎖に絡みつかれそうになり、防衛装置が続々と集まってくる中、剣を振るう。
そしてついに、少女を縛る最後の鎖を断ち切った。
91パルス ◆iK.u15.ezs :2008/03/07(金) 01:23:00 0
解放された少女を抱きとめた時、信じられないことが起こった。
全ての装置が一斉に停止する。辺りに閃光がはしる。
「え……?」
暫し呆然とする頭の中に、声が響いた。
(もう大丈夫だ、パルメリス……)
それを聞いて、やっと気付いた。勝ったということに。
プログラム解除の鍵にされていたのは、ヒムルカさんだったのだ。
これはきっと、メルキゼデグが仕掛けた最後の罠。
「なんてラッキーなんだ……」
急に眠たくなって、そっと目を閉じる。
意識を手放す間際、深い意味はなく、なんとなく言ってみた。
「おじいちゃん、僕頑張ったよね。褒めてくれる?」
(当たり前だろう。ラッキーなんかじゃない、お前の信念の勝利だ!)

マイラから、事態の行く末を固唾を飲んで見守るレベッカ達。
しかし、待てども待てども何も起こらない。
「さすがにヤバくない!?」
「ウソだろ……!」
最悪の事態が脳裏を掠め始めた時だった。メルキゼデグの中心部から眩い光が放たれる。
聳え立つ巨体が風化するように消えていく。
「やった!」
「「「私は……負けたようだ……」」」
最後の言葉は、使命から解放された安堵のようにも聞こえた。
「そんなの最初から分かりきってたわよ!」

やがて、メルキゼデグは、さっきまでの事が嘘のように跡形もなく消え去った。
その場所に、全員が一斉に駆け寄る。
倒れているのは、エルフの女王。その胸に、幼い人魚を抱いて。
92『裏方』 ◆d7HtC3Odxw :2008/03/08(土) 17:02:14 0
メルキゼデグの体が光の粒となって空に昇って世界に降り注ぐ
世界に雪が降る 黄金の雪が静かに降り注ぐ
それは世界の様々な意志そのもの
この後に神話で語られる未曾有の大惨劇を覆い隠す様に
哀しく、優しく、人々を包み込む

大地は崩壊し、空は暗雲で覆われ、それでも人は諦めなかった
生きる事を、帰る場所に戻る事を、そして明日を

新しい世界率はその意志を汲む、【諦めなければ何度でも立ち上がれる】
それは大雑把で曖昧で雄大かつ繊細なモノ
それは人間達の心そのものではないのだろうか

歌姫達が歌を綴る、生命を、すべての命を歓喜する歌を
世界中に充満した思いの力とあふれ出した魔力、そして生命を歓喜する歌
生き延びた人々に活力を、死する運命にあった人々に祝福を、死を運命として享受した人々には安らぎを

大地はついに訪れた死と降り注ぐ黄金の雪で一個の生命では無く無限を育む場所と生まれ変わり、
その姿を変え、崩壊をやめた
いつしか空も遠くまで青く澄み渡っている

人々は生き延びた喜びの先に気がつくだろう、世界の変革を、そしてそれは平坦な道のりでは無い事を
世界は変わってゆく、人はその命を繋いでゆく、傷つけ傷つき、争う事もあるだろう、
それでも人々は信じて生き抜くだろう より良い明日を信じて

そしてそれはこの激戦を戦い抜いた英雄たちもそうなのだろう
きっとより良い明日を信じて、彼らは生きてゆく どこまでも、そうどこまでも
93パルス ◆iK.u15.ezs :2008/03/09(日) 01:02:44 0
皆がパルスの元に駆け寄っていくのを、少し離れた場所で見ている一団がいた。
「余は湿っぽいのは嫌じゃ」
「坊ちゃま、このような時は死んでいないと昔から相場が決まっております」
イアルコとメリーの何事も無かったような日常会話。
黄金の粒子が降り注ぐ中、ディアナが唐突に切り出す。
「帰りましょう、ドゥエル」
「ええ!? 母さんに挨拶ぐらいしていかなきゃ!」
ディアナは諭すようにゆっくりと首を横に振った。
「バカ! そんな事をしたら困らせるだけですわよ!
それにあの人はもうワタクシ達のお母さんではありませんわ。
これから本当の未来を歩んでいくのだから……ワタクシ達の事は忘れた方がいい」
ディアナが正しい事が分かりながらも、しんみりと頷くドゥエル。
「それじゃあ、あの人を元の時代に帰してから……」
「バカ! ヘタレガンマンはもう返さなくていいですわよ!」
当然のことを言ったはずが、またもバカと言われて驚くドゥエル。
「ええ!? それはまずいよ色々と!」
「ワタクシがいいと言ったらいいのです!」

パルスに抱かれていた幼い少女が目を覚ます。
「大丈夫!?」
誰だか分からないながらもラヴィが問いかける。少女は泣きそうな声で答えた。
「お姉ちゃんが……」
一方のパルスは揺すっても一行に目を覚ます気配が無い。
「パルちゃん起きて!!」
「頼む! 何か言ってくれ!」
皆が騒然とする中、女神ラーナの凛とした声が響いた。なぜかハイアットに向かって。
「目を覚ます方法、教えてあげましょうか」
ラーナは有無を言わさず、一方的にありがたい啓示を授ける。
「そ……それはちょっと!」
「ずっと目を覚まさなくてもいいんですか!?」
「それは困る!」
いつの間にか周囲からは応援とも煽りともつかない声援があがっていた。
「がんばれー!」
観念したハイアットは決死の覚悟でパルスの顔を覗き込んだ。

モーラッドは気付いていた。
祖龍の祝福が消え去り、永遠の冬となる運命だった大地に優しい風が吹いている事に。
彼は吹きぬける風の中に声を聞いた。
(息子よ……)
「父さん!? これは父さんの仕業なのか!?」
(さあ、どうだろう、解放されたメルキゼデグの感謝か……
はたまた人の意思に応えた世界率なのか……。今まで済まなかったな)
「もういいんだ」
散々振り回された相手だが、今では心からそう思えたのだった。
(それとパルメリスなら心配要らない、眠っているだけだ)
「良かった……」
しかし、安心しきってパルスの方に視線を向けた瞬間。
「……」
違う意味ですでに手遅れで、本日最大ダメージを受けた。
94ナユタ ◆9..WsvGTOM :2008/03/10(月) 23:02:33 0
ナユタは生まれて初めて、自分の両足で立っていた。
両手で風を感じていた。
そして・・・初めて自分の目で・・・世界を見ていた。

片手片足、両目と子宮を喪失した状態で生まれたアビサルは、ナユタとして生まれ変わり、五体を得たのだ。
全てが新鮮で、全てに感動していた。
その一方で・・・どうにもならない不安も感じていた。

「・・・これから・・・どうなるの・・・?」

マントを羽織、ポツリと呟く。
大地の崩壊は止まり、生きる事を望む者は生き、死することを教授したものは安らぎを与えられた。
だが、この後・・・体制が崩壊した今・・・

「ナユタ。たとえどんな理由で生み出されようとも、生まれた瞬間から生命は生命の力で生きているんだ。
決められてない事を不安に思う必要はない。
決めていける事に希望を持てばいいのさ。」
不安を口に出す必要はなかった。
ソーニャが余す事無くその想いを受け止めたのだから。

その言葉は届いていないはずだが、チェカッサ、イアルコ、アオギリ、三人の若者は空を見る。
向かう視線はばらばらだが、心の向いている先は同じ。
行く先には様々な困難が待ち構えているだろう。
だが、人も、龍人も、獣人も、図らずも想いは一つになることができる事を体験したのだ。
いかなる困難も越えられる。
そんな確信を抱かせるに十分な体験を・・・。

様々な想いの中で、一つ確かに共通する想いをもって・・・
世界は明日へと繋がってゆく。
95ナユタ ◆9..WsvGTOM :2008/03/11(火) 20:43:40 0
「ほな今週の講義はここまで。明日はハレの日やさかい、二人ともおめかししてきいや。」
「はい、ザルカシュ先生。」*2
あれから一年、いろんなことがあった。
各地で急ピッチで進む復興。
大陸間交流。統一連邦構想。
大きな世界の流れの中、私は東部大陸行政顧問となったザルカシュ先生に弟子入りしていた。
忙しい中、週一度はこうやって講義を開いてくれる。

「ナユタ、明日は何を着ていくの?」
声をかけてきたのはジンレイン。
あの後一緒にザルカシュ先生に弟子入りした。
出合った当初はとても大人びた人で近寄りがたかったけれど、今では一番の親友。
「うーん・・・この間ブルーディさんに買ってもらったワンピース着て行こうと思って。
でもびっくりしたね。ハイアットさんはアーシェラさんのことが好きだと思ってたから。」
「判ってないのね。男と女はそんなに簡単なものじゃないのよ。」
ふふんっと笑うジンレインはこんな時は大人びて見える。
だから、ちょっと私も背伸びをしてみるの。
「ふーん。ところで、セイファートさんは帰って・・・き・・・た・・?」
途中まで言いかけて思わず失敗した!と心の中で叫んでしまった。
「あの馬鹿、夏にふらりと出て行ったまま音信不通よ・・・!明日は来るだろうから・・・
いいわよね、あなたはワンピース買ってもらって・・・。」
おどろおどろしいオーラを醸し出すジンレインに私は顔を引きつらせるけど、うまくフォローができない。
軽く触れてはいけない地雷を踏んじゃったと後悔してオロオロするばかり。
「あ・・・そ、それより、メモリアルテディベアは、で、できたの、かな?」
明日二人に渡すプレゼンのと人形の話にしどろもどろしていると、ジンレインの表情が明るくなった。
上々の出来だそうだ。

私は今、生まれたカルダン諸島に一人で住んでいる。
ザルカシュ先生が各所へのゲートを設置していってくれたので生活に不便はない。
ジンレインも同じように、遠く離れて暮らしているけど、おかげでしょっちゅう会えて楽しい。
いよいよ明日。
一年なんてあっという間だった・・・

########################################

私はゲートを通り、ラーナ様の森に来ていた。

ここは花嫁控え室。
真新しいワンピースに身を包み、久しぶりに会う人達に挨拶をしてまわる。
ソーニャさんは色々忙しくて最近リッツさんに会えないって愚痴ってた。
懐かしい人たちの中、今日の主役の一人がいる。
「パルメリスさん・・・綺麗です。」
思わずため息をついてしまった視線の先には、ウェディングドレスに身を包んだパルメリスさんが座っていた。
その表情は・・・生気が無く、目の焦点が合っていない。
「あ・・・あれ?・・・僕はなぜ・・・?」
紆余曲折を経て、怒涛の勢いだった。としか事情を聞いていない私にはパルメリスさんの心境を知る事はできない。
でも、みんなの笑顔を見れば、とてもいいことだと思う。

そうしていると、扉が開き、もう一人の主役がやってきた。
白いタキシードに身を包んだハイアットさん。
なんだか燃え尽きたように白いのは気のせいかな?
「はっはっは、結婚はいいものだぞぉ!」
ハイアットさんと一緒に入ってきたのはディオールさん。
その後ろには、赤ちゃんを抱いているレジーナさんもついてきている。
この二人、一年前に結婚をし、2ヶ月前に第一子を無事出産した。
今回の結婚式の仲人でもある。
愛の女神ラーナ様の立会いの下、教皇となったシスターキリアが取り仕切る信じられない位の結婚式。
あと一時間もすれば始まる、その瞬間に立ち会えるなんてなんて幸せなんだろう。
96ナユタ ◆9..WsvGTOM :2008/03/11(火) 20:43:48 0
「ほれ、どないしたん。こういう時は【綺麗だよ】って言ってやんのが男っちゅうもんやでぇ。」
リーヴさんに背中を押され、パルメリスさんの前に立つハイアットさん。
多くの人が集まり、周囲からは期待に満ちた視線が集中する。
「パルメリス・・・」
「ハイアット君・・・」
二人は見つめあい・・・
「「・・・オカシクネ?コレ」」
二人が声を併せ言った言葉に、一瞬あたりが凍りつく。
でも二人は急速に生気を取り戻したように立ち上がる。
「「相棒!逃げよう!」」
唖然とする周囲を余所に、二人はてと手を取り合って窓から飛び出した!
息もぴったり、駆ける歩幅も一緒に森を走っていく。

「・・・・逃げたああ!愛の女神である私から新郎新婦が手に手をとって逃げるだなんて!
みんな!追うのよ!逃がしちゃ駄目ええ!!!
どうせ二人で逃げるのなら私の祝福を受けてからにしなさあい!」
ラーナ様の号令一家、全員がパルメリスさんとハイアットさんを追っていく。

「久しぶりにやるか!相棒!」
「よし来た相方!」
逃げるパルメリスさんとハイアットさんがどこからか出したかバナナの皮を大量にばら撒いて逃げる。
「お父さんはこんな結婚認めないぞおお!」と吼えていたモーラッドさんがバナナの皮に滑って盛大に転ぶ。
「わははは!余にこんなものが効くかあ!逃走本能なら余の右にでるものはいないわあ!」
「坊ちゃま、全く自慢になりません。」
そういいながらイアルコさんとメリーさんがバナナの皮をスケートに用に利用して加速しながら叫ぶ。
非常事態だというのに追う方も追われる方もなんだかとても楽しそう。

###########################################

私はとても追いつけずに、はぐれてしまう。
元々あの人たちについていける体力もないのだから。
いつの間にか見た事もない草原に出ると、焚き火を前に座る人影を見つけた。
どこかで見たような、何か懐かしい人影。
惹かれるように近づいていくと・・・その人影は振り返り私に笑いかける。
「「「「久しいな、ナユタ。」」」」
その一言で全てを悟った。
でも、驚きはしたけれど、なぜか警戒も危機感も沸かない。
「メルキゼデグ・・・!なぜ?」
驚いた私にメルキゼデグは優しい笑顔で応えてくれた。
「「「「ラーナから聞いていなかったのか。
諦めなければ何度でも立ち上がれる。新しき世界律のおかげさ。」」」」
「え・・・じゃあ・・・」
「「「「いや、諦めなかったのは、この世界の行く末を見たい、という事さ。
全ての調和を拒否してまで掴んだ未来をどう生きていくのか。情報生命体として見ていきたくなってね。」」」」
応えるメルキゼデグは穏やかで、瞳には嘘は無かった。
私は無言で頷き、その場を後にした。

秋風が軽く頬をなで、気持ちいい日差しが注ぐ中、一本の木の下で私は座り込む。
靴を脱ぎ、幹に背を任せ・・・
今まで起きたこと、そして今日起きている愉快な騒動。
そしてこれから起きるであろう日々に思いをはせながら・・・・私たちは歌を歌う。

知っていたわけでもない、誰に伝えられたわけでもない、ただ、口から流れるままに・・・・
97ナユタ ◆9..WsvGTOM :2008/03/11(火) 20:43:58 0

::::::::::::::::::::::::/            {      // /:::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::;. ''´
::::::::::::::::::/     ヽ、       >、   〃/:::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::/
::::::::::::/       ヽヽ      {:::::l    /:::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::/
::::::/          ヽ. ヽ、   ヾ、ヽ    l:::::::::::::::::::::::::::::::::::::::/  永遠なる物語に・・・
/         ヽ.    `'´Y`ー―'::::::::`ー':::::::::::::::::::::::::::::::::/
            \_______j::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::/
              /::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::/
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               ノ
             ( し
             う (            星があった
           /!  /  !    /
 /し       〆 し    }  ノ  )       光があった
 !/      /         ! f|
  空があり           し' l       r=f::\ 
   ,'   /            |       _|{'- }:::::ヽ、
    〆  深い闇があった!     f´:::/T´ハ:ヾ¨ヽ、
  人/              ヽ    ハ:〈‐、 ,..ヽ::〉  !
、/                  ヽ   l/ }:::〉 !  ///  ヽ
    水 そして岩があり    |  ,イ>/:イ、   〈:{ l!,.rrァ |
              ,,'      |-〈ヽ l/ >ヽ___,.rf>|.!ノ_jー- 、  
        見えないもの 大気があったYシl !;;;:::=''"/ l `:::::ヽ
    "    ,,           ヽ_k  ヾ::) / >'´//      ト、
    ,雲の下に 木があった     し!  `~U´ / / /     !::ヽ
,,"/k;; ''   ,..,:';;::ヽ ,;;  '、      ヽ   ,,. ''   /  木の下に::::::ヽ
フ;;/;/>/;;,./;;;' ..::{ヽ lf! ,,;;'';, ,、     ヽ)''"  /   /     !:::::::ヾヽ
彳''"/",,;;:''/ ,;' /;;;〉ヾl!l:.::;;; :;;:.;;;;,       しヽ/ 息をするものが居た
.;;'/,.,;;''::''ツ   {//;;==!;;!==-;;;;;;;;;;;:;:;:: : :: ..._____)   ヽ、-ー=ーァ、>::ヽ
'"/;;;//」ァ亠 、;;''/-:::::!! !:...__     ................::::三三三ハニニニニ/;;;;;',::::::::::::::::::::::....... .. .
";;;/::/,rニニ、ヽヽ!;;;三!! !三三三二二二二二二二 .::/;;;;;;!三三{;;;;;;;;;!:::::::::::::::::.....
''"三/ /,r ニニ、ヽ', l;;;;三!! !三三三三三二ニニ.:::三三{;;;;;;;;}三三三;;;ノ:::::::::...
98ナユタ ◆9..WsvGTOM :2008/03/11(火) 20:44:10 0
             __   、   \  ,-ヘ \ハ  V!    |
  、_  _∠ニコ   └ '    \   \ ⌒ヾ  1   リ|   | ー〜ーァ'   >
 '            ,、  __ \   \rーヘ 」   | |    !  /`ー  /
        ,,. -==ラ'  ̄¬ '   \   \⌒ヽ   |/   |/    /
    _, -〜ァ   /          \   \ |   |    |       /  r'二⌒
__,/`フ       ´       、_  _ 厶ヽ   ヽ!   l    |    /
   \     >─- __,, ,__,、r<_ー─‐' \   |   !    !   厶-、
     `ーヘ  r ァ   ∠ 'ヽ   >    _ヽ 息をするものは心を持ち
    _. --'"ヽ/    /ー--─' ̄  _ -‐<_ーヘ    i    ,'   || , - ' ̄
   _>    `ー-一'〜<´,.. -─ '"     `ヽ!.: i l  生きるものは
  /                ̄ヽ rァ   `⌒ヽ! /l     !   〈!
_ノ       くフ_,==¬     _,r′       | ' 死ぬ事を知った
       〃 ̄      `フ了  ヽ          | i     l    ‖_,rー、
      ̄      r ァ  ー'   ⌒ヽ 〜ヘ_  一滴の涙から 言葉が育った
ー-、         , -‐'´   7  レー`ーァ/⌒ソ-─‐- 、  :     |‐¬ ト、
   7     _,r'"     ,-‐'     ⌒'   /        ヽ     |    ヽ
    `ヘ_,r'⌒7     _/⌒ー〜-ュ      ,'/  i l ! ハ       !
         `ー‐‐'"´      て      i{{  ,イ /ナ! i |    |  i  __ _,.- '
    こうして            _ _,r ヾ/__,. ー1 ||    | |│-' `'
 我々の物語が育った          く   i ヽ. ' _  | |リ   i  ! {
                         ーー1 i>‐ ' | ├r 、  l  ! |
_,.. -ー─‐-ー- .,_  _               /! | i}   || i/  i  !  l│
  大地と共に  '  `´ ̄ `ー- 、      / ハ!r‐f><} リ {  !  i  { {‐-─
___世界と共に__......,,_      `ー-‐ー/  i l      !  l  U ヽヽ
生命とはなんだろうという問いと共に  ァ′  ハ        |  |   |   ヽー─-
                      /   /' / \ヽ.   i  |   |    \
 -────--─ ,.vwy,、 ..,,vy_,._/  / ヽ \_ ヽ  ||  |   |     ヽ
  歌があった 从w ..,_, -'二 --‐─∠ -─ ' ヽ ニミ -=ヽ! |  繋がっていく命と|
       ,rn  ,,,,.v,,  '⌒,..y_,. -‐ '" \\     ,==-、 l |   繋がっていく未来を
        i  i w,,.y  _,. - ''       ヽ ヽ ffinn〃   ヾト,_ ヽ   \紡ぐ歌
       l  ヽ -‐ '"    _w,.-ー──yvヽニ!  `i   ,rニ7!ー'⌒ヽ ,.v\
       ,,.i   ,,._  -‐,vy,...    ,,,...,.     ヽ  i  /'´,rww,.y
        `ー '^  ″″,,′′丶 ,vwy,,.."世界の真ん中でありながら 隅っこである場所に・・・
           ′    ′ ,,,...  ″  yw ミー ',w

  
99パルス ◆iK.u15.ezs :2008/03/12(水) 00:28:41 0
あれから一年。
ハイアット君と何でも屋をやったりゴーストバスターズをしたり
酒場でデュエットして缶を投げられたり街頭漫才をして缶を投げられたり
さらには不動産屋を始めて三日で潰れたりと忙しい日々を送っていた。
でも勘違いしてはいけない。
飽くまでも全部ハイアット君が元の時代に帰る方法を探すためなのである。
なのに今どうなっているかというと……

「待たんかああああああ! こんのクソガキ共おおおおおおおお!!」
「二人とも坊ちゃまよりは年上で御座います」
逃げても逃げてもバナナを利用して後ろにぴったり着いてくる追っ手達。
捕まったらきっと恐ろしい事になるに違いない。
ハイアット君がいつになく険しい顔で呟く。
「手強いな……」
「こっちだ相棒!」
僕はハイアット君の手を掴んで、道を逸れ、木々の間に飛び込んだ。
「はぎゃ!?」
坊ちゃま、勢い余って木にぶつかって撃沈。
メイドのメリーさんは坊ちゃまの介抱にいそしむ。
「坊ちゃま、目をお覚ましください!」
「ぎゃあああああ!! 余を殺す気かあああああ!!」
哀れ、サンドバック状態になってしまった坊ちゃまの声を後ろに聞きながら
ハイアット君の手を引っ張って奥に入っていく。
伊達に迷宮の森って呼ばれていた訳じゃない。撒いてしまえばこっちのものだ。
やがて、大きな木の前まで来て足を止める。
落ち着いたところで、僕達は今の状況について冷静に分析してみる事にした。
「ハイアット君、これは何かの陰謀だと思うのだけど君はどう思う?」
「うんうん、具体的には某変態女神様の陰謀だよなあ」
相棒も全面的に同意のようだ。
「だってハイアット君は元の時代に帰らないといけないのにね」
時代を超える方法なんて絶対無いと分かっているから平気で言える。
しかし、ハイアット君が返したのは、予想外の返答だった。
「ああ、それはもう諦めたよ。今まで手伝ってくれてありがとう」
「ええ!?」
僕は解雇を言い渡された従業員のような衝撃を受けた。
僕のそんな様子もお構い無しに、ハイアット君は言葉を続ける。
「帰る場所を見つけたんだ。僕の帰る場所は……」
その時、一際強い風が吹きぬけ、木の葉が揺れる。
囁くような声は、その音にかき消されて聞こえなかった。
僕は雰囲気がぶち壊れになるのも構わずもう一度聞いてみる。
「ごめん、もう一回!」
100CAST PC ◆iK.u15.ezs :2008/03/12(水) 00:32:10 0
愛の伝道者  アクア・ウーズ
千年の種子  アビサル・カセドラル(ナユタ)
小さき覇王  イアルコ・パルモンテ
鋼鉄の虎  ゲルタ=ロンデル
黒騎士  ディオール・ライヒハウゼン
剣聖  クロネ・コーフェルシュタイン
不動の砦  ジーコ=ブロンディ
甲殻の戦鬼  ジョン・リーブ
世界樹の剣姫 ジンレイン=ギルビーズ
破滅の翼  トレス=カニンガム
星都の守護者 ハイアット・スタングマン
銀の輪の女王 パルメリス・ディア=メイズウッズ
音界の魔奏者 ブルーディ・ザ・サウンドライフ
黒包丁の申し子 ラヴィ・コッカー
白い牙  リッツ・フリューゲル
星晶の歌姫  レベッカ・ライラック
調和の使徒  レオル・メギド
101ハイアット ◆uNHwY8nvEI :2008/03/12(水) 16:49:17 0
僕はパルスのもう一度という言葉を聞いて少し笑い…語り始める。
「実はね…いつの間にか…僕は元の世界に帰るのを諦めていたんだ。
 というか…帰る気しなくなっちゃってね。」
そう…僕は…元の世界に帰るっていうことを願わなくなっていた…あまりにもパルス達との旅の日々が楽しかった…
パルスや皆との時間は1秒すらもまるで黄金のようだった。
最初に君と出会ったとき、君は僕の信じられないような話を信じてくれた……
君と何度も大笑いをして…時には君に支えられて…時に君を支えて…
「もう一度言うよ。僕は帰る場所を見つけたんだ…
 僕の帰るべき場所…僕が居たいと願うところ。」
そうだ、いつからか僕の過去に帰りたいという想いは君との旅で霞んでいたのかもしれない。
「それは君の隣だよ…そう、帰るべき場所は君の隣さ。」
「ハイアット君……」

…もちろん、僕がこの時代に居てはいけないことは分かっている。だからこそ僕は帰りたいと願っていた…全てを精算したかった。
そして、ハインツェル…救うためとはいえ君を殺してしまったのを最後の最後にもう一度会って謝りたいとも思う…
でも、もう戻れない…僕は心の底からパルスの傍に居たいと想ってしまった、願ってしまったんだ。
そうさ、僕はずっとこの人と寄り添っていきたい。この世界を諦めきれない…皆やパルメリスを諦めることができない…

――いいんじゃないか?君がそう思うんだったら――

驚いて声の方を見ると、そこには…居ないはずの人が見える。
僕のたった一人の兄弟が……いつしか離れてしまった兄弟が…笑ってそこに立っていた。
僕の見ている幻影なのか、それは分からない。だけど確かにそこにハインツェルが立っていた。

――君は心を得たんだ。生まれ変わったんだって言ったろ。これからは…君は君自身を生きろ。アーシェラだってそう望んでいるさ――

その言葉に…自然と涙が溢れてくる……
「ハインツェル…いや、兄さん…ありがとう。そしてごめん…あの時…僕は…兄さんを自由にしたかった。
 だけど……ごめんよ……僕は兄さんを殺してしまったことに変わりは…」

――いいんだ、ありがとう開放してくれて…恥じることも責任を感じることもない。誇りを持ってくれ。君は僕の自慢の弟だ――

その言葉を残しハインツェルはどこかへと消えていった。
胸に一つだけポツンと残っていた突っ掛かりがとれた気がした…
今この心はまさにこの青空のように晴れ晴れしていて…どこまでも澄み切っている。
「ハイアット君どうかしたの…泣いてるの?」
「いや、なんでもないんだ…なんでも……」
涙を拭いパルスの方に向き直り微笑む。そう、心がなかったらできない自然な微笑みを…
そして僕はパルスを何も言わずに抱き寄せる。パルスの顔が少し赤く染まるのが分かる。
「…こ、これからどうしよっかハイアット君…」
「そうだね……また旅したいな…時間ならお互い十分にあるし。今まで忙しかったからね。
 これを機に君と共に世界をゆっくり見つめながら決めてもいいと思うんだ。」
僕の言葉にパルスは満面の笑みを浮かべ、お互いに身を寄せ合って歩きはじめる……僕たちの本当の新しい道を……
102ハイアット ◆uNHwY8nvEI :2008/03/12(水) 16:50:39 0
しかし、そんなことは知ったことかという怒声が響く。
「やっと見つけたぞおおおおおおお!クソガキ共おおおおおおおお!!」
「ですから二人とも坊ちゃまよりは年上で御座います」
眼が血走り怒りに震える坊ちゃマンとそのメイドメリーの姿…坊ちゃマンなんかもう半分ぐらい私怨で追いかけているとしか思えない。
「あちゃー…忘れてた、まだあの結婚押し付け女神様の刺客がいたんだっけ…」
全く凄く良くキメたのにこんなタイミングで出てくるなんて…とんだ愛の女神の使徒だよ。
「どうするハイアット君?」
「どうするもなにも……決まってるさ。」
僕達は一呼吸したあと、同じタインミングでうなずき歩幅も同じで走り出す!
「「逃げるが勝ち!!さあ行こう!!」」
「待たんかおのれらあああああ!!」
「坊ちゃまそんなに走りますと転びますよ。」
「わははははは!余が転ぶわけ…ぶべッ!!」
「「はははははは!!バーカ!!」」
「お、おのれらああああああ!!洗濯物みたいに日干ししてやるうううう!!」
「「あははははははは!!」

日々は続いていく…きっと明日も、明後日も、この陽だまりのような輝く日々は続いていく……そう僕は信じてる……
だってアーシェラ…君が愛した優しくてとても暖かい日々が…今日この日まで終わらずに続いているように……
きっと僕達の日々は終わることなく未来へと繋がっていく。そして、もしまたとてつもない困難がこの先訪れても、
僕の…僕達の愛した日々は壊せはしない…だって…皆となら…きっと立ち向かえる。

そしてパルス…君となら絶対に乗り越えられる…そう心から信じているから……
103名無しになりきれ:2008/03/12(水) 17:05:15 0
人生は続く
104CAST NPC ◆iK.u15.ezs :2008/03/12(水) 22:43:43 0
アーシェラ・ムゥ=セレスティア
アオギリ・コクラク
アスラ
アッシェンプッテル=トーテンレーヴェ
アリス
アルフレーデ=シュナイト
アンナ
イェソド(グレッグス)
イフタフ=パルプザルツ
紅星龍イルヴァン(紅き龍の巫女レーテ)
蒼星龍ウルヴァン
エドワード
オペラ=メルディウス
翠星龍オルホーン
105アクア・ウーズ ◆d7HtC3Odxw :2008/03/12(水) 22:56:38 0
街道を全速力で私の方へ逃げてくる二人を見つめ私はやれやれとため息をつきました
深く被ったフードの下で呟きます
「壮大な照れ隠しですこと・・・・ですが・・・」
私の脇を通り過ぎようとしたパルスさんとハイアットさんをがっちり、それはもうがっちりと両脇に挟んで捕まえました
「ちょ!?は、離して知らない旅の人」
「僕たちは逃げなければならないんだ 知らない旅の人」
パルスさんとハイアットさんが大騒ぎしております
「そうですか・・・でも・・・・・」
お二人を追って皆様が追いかけてきます
「皆様がお祝いしてくれるそうですよ?」
そこまで言ってお二人の顔色が変わりました
「あの・・・・もしかして・・・・」
「どこかで会った事ないですか?」
「あら、まだ思い出して頂けないのですか?」
そこまで言って私は被っていたフードを振り飛ばしたので御座います
「愛があれば何でも出来る!!結婚だって出来ますかーーー!!」
「「アクアさん!?」」

「それでは夫婦そろっての初の愛の卍固め 入ります ダーーーー!!」
「「「痛い!!いたたたあ!?!?」」

世界率が変わって数ヶ月後、私は約束を信じてくれるシスター・キリアの思いに答える形で融合していた自然と
切り離されました ただ復活した場所が何処だか解らない場所で各地を彷徨っていた所、噂でお二方がご結婚なさる
とお聞きし、今、到着したので御座います

どうやら皆様集まって来たようですね、お二方をす巻きにして結婚式場までつれていくようです
中には私の姿を見て驚かれてる方も大勢おられました、ですがシスター・キリアだけは驚くことなく
ただ一言おっしゃいました

「おかえりなさい」

「ただ今、帰りました」
106CAST NPC ◆9..WsvGTOM :2008/03/12(水) 23:07:04 0
披露宴会場では、各自調律や調弦をしていた。
これから始まるであろう、盛大な披露宴を前に準備に余念がない。
そんな準備中の楽隊の耳に入る『新郎新婦逃走』の一報。
「おいおい、何やってんだ?」
呆れたように溜息をつくブルーディだが、その後ろでオペラは笑みを零す。

「ええ〜、ちょっとぅ。仕込みしちゃったのに料理が冷めちゃうよぅ。」
キッチンから飛び出してくるのはラヴィ。
披露宴の食事は仕込から調理、皿出しに至るまで綿密にスケジュールが組まれている。
ベストなタイミングでその一品を出すためだ。
開始が遅れればそれだけ調理作業にも狂いが生じる。
ラヴィが慌てるのは仕方がないのだが、その表情は困ったようでいて笑っているようでもある。
そう、ある種の予感があったのだ。
こうなるであろうと。

「仕方がないですね・・・。」
披露宴会場にいた半人半馬の若武者、アオギリが外に出て、クワッと目を見開く。
千里先の蚊の目玉さえも射抜く神槍天弓の本領がこんなところで披露されるのだ。
「リリスラ、南南西650m!菩提樹の下だ!」
楽隊と共に歌合せをしていたリリスラに声をかける。



アルト=サイカーチス
アミル
イームズ・ギャンベル
エリアス・エンゼルファイア
黄金仮面
ギアルデ・ドラド(黄金の導き手)
キシュー
騎士団長カルナート
キャメロン
ギル
ググさん
クラックオン十烈士
 アント・クラックオン《ジオル》
 マンティス・クラックオン《ザオウ》
 メガボール・クラックオン《ダルゴス》
 ワスプ・クラックオン《ビード》
 ウィーヴィル・クラックオン《ハゾス》
 ロングホーン・クラックオン《キバ》
 ファイア・クラックオン《オウル》
 ビートル・クラックオン《アカイライ》
 ロキュスト・クラックオン《ホンゴウ》
 キャリオン・クラックオン《ユウダイ》
 スカラベ・クラックオン《スターグ》
107CAST NPC ◆9..WsvGTOM :2008/03/12(水) 23:07:50 0
「まいた、かな?」
「手強かったね。強敵と書いて友と呼んであげやう。」
笑いあうパルスとハイアットの鼻先を掠め、菩提樹に突き刺さる一本の矢。
そしてバサっという音とともに、菩提樹の枝にリリスラが降り立った。

「私の賛美歌が聴けないってのかい?」
不敵な笑みを浮かべるリリスラ見つめ、パルスがどこからかナイフを取り出す。
その刃の向かう先は・・・
ガリガリガリ・・・
ナイフを木の幹に走らせ、出来上がったのはハートマーク。
中心は先程刺さったアオギリの矢。
ご丁寧に、ハートの隅にはリリスラ’sハートと彫られていた。

「え・・・ちょ、なに彫ってんのさ!おま、、エルフの癖に樹を傷つけて!」
にんまりとしてマークを見せ付けるハイアットとパルスにリリスラは文句をつける。
だがあまりにも顔が真っ赤すぎ、マークによって与えられた衝撃の大きさを物語ってしまっている。
「よし、いまだ!」
うろたえるリリスラを余所に、二人はまた駆け出した。

その先に待ち構える再会へ吸い込まれるように・・・二人は駆けていく。



ケヴィン
ギュンター=ドラグノフ。
“荒天”のエンラ
“轟天”のセンカ
ゴゴ
ゴミムシ
コル・ウーヌム(至上の至福)
ゴンゾウ=ダイハン。
ジェシカ=アムリアスとサラ
ジェマ四兄弟
 ジェダ、ジェマ、ジェラ、ジェナ
シスター・キリア
ジャックス
十剣者のイェソド
十剣者のメイ
執事ジョージ
シャミィ
“舜天”のシバ
スコット
スリダブ流の人々
 マスター・ホースエリア
 マスター・ジンカキノイ
 マスター・エル・サント
 スリダブの中でも最も芸術的な技を持つと称される。
 フランク
 バッドボーイ
 タルツ
 ハイマスター・ファンク・シニア
 ゼーラス・アマーラ 
 グランドマスター・パワーロード・マウンテン
108 ◆K.km6SbAVw :2008/03/12(水) 23:24:32 O
復興進むロイトンの小さな大衆酒場。

「えぇ〜!終わり〜!?その後2人はどうなったの!?」
物語の続きをねだる子供達に困ったような笑みを浮かべ、赤衣の詩人が椅子を立った。
「そうですね…続きはまた今度にしましょう。暗くなってきましたし。」
涼やかな声が、一見すると女性と見紛う詩人の性別が男性である事を物語る。
「じゃあ明日ね!?絶対のぜーったいだからね!?」
「えぇ、それではまた明日。」
駆けて行く子供達に手を振り、詩人は茜色に染まる空を見上げた。

既に明るい星々は、己の存在を主張するかのように輝き始めている。
詩人はハープを片付けると、酒場を後にした。
帰るべき場所へと帰る為に。
在るべき場所に在る為に。

人の形を保てる“太陽が大地を照らす時間”は終わり、詩人は夜空を瞬く“龍”となった。


世界に散らばる数多の物語を、遥か空の高みより集め。
それをまた地上の人々へと環し伝える。

物語は続く
伝える者が伝える限り
聞く者が聞く限り
そこにヒトがいる限り、世界は物語に満ち溢れているのだから

109CAST NPC ◆d7HtC3Odxw :2008/03/13(木) 20:55:26 0
シルフィール

《黎明の翼》、セイファート・リゲル=メイズウッズ

セリガ・ウ-ズ

『炎の爪のソーニャ=ダカッツ』

ソフィー=ハイネスベルン中将

タード

ダズート将軍

老甲鬼 タナトス 

チェカッサ(王子ライランス)

ディラン・マーベリック

トムと愉快な仲間達


「おい、知ってるか?あの触覚が結婚するらしいぜ」
トムと愉快な仲間達が昼間から酒場で談笑する
「まじかよ!?」
「どうせ、式直前に逃げ出すさ」
「「「ははははは」」」

今日も『吼える坑道亭』は人であふれている
「ああ、いた いた」
「おっ、これはキャメロンさんに若奥様、いらっしゃいませ」
店に入って来たキャメロンとアリスを見て愉快な仲間達はこっそりと裏口から逃げ出そうとして、
「なぁにしてるのかしら?」
待ち構えていたリオンにしっかりと捕まった
「さぁ、みなさんお仕事、お仕事!!」

アリスの声が店中に響く、キャメロンが満足そうに頷く、そして、

「なぁ・・・・俺たちって何目指してたんだっけ?」
「多分、冒険者じゃなかったと思うんだけどなー」
「まぁ、いいんじゃね?」
「いいのかなぁ?」

彼らの愉快な冒険は今日も続いてゆく
110CAST NPC ◆9..WsvGTOM :2008/03/13(木) 21:49:44 0
「ところで、我々はこんなところで湯に使っていていいので?」
「かまやせんわい。のう!」
「わははは!当たり前じゃないか。僕様と裸の付き合いができるなんてめったに無いぞ?」
ここは東方大陸最北端の地、ルフォン。
鉱山は枯れたが、代わりに湯が湧き出し、今や有数の温泉地となっていた。
そこでどっぷり湯につかるのは博乱狂気、万学長の名を欲しい侭にするベルファー・ギャンベル。
共に浸かるのは、“舜天”のシバと“荒天”のエンラ。

盆を浮かべ、酒を交わす三人をいらいらした調子で見つめる男がいた。
湯気にめがねを曇らせハッピを着ているイームズ・ギャンベル。
ベルファーの弟で、この地を統括するものだ。
「ああ、もう、三人で貸切なんてしてないで。
出る気がないのならもういいです。お客様を入れちゃいますからね!」
のんびり湯に浸かる三人に業を煮やしたイームズは勢いよく扉を開けた。
脱衣所から勢いよく入ってきたのは・・・・

「お待たせしました、零嶺幇ご一行様。
先客が降りますが気になさらず【存分に】お楽しみください!」
歓声と共にわらわら入ってくるホビットたち。
荒事に携わっていたが、生来のホビットの気質は抜けるはずもない。
一挙ににぎやかになる温泉だが、さすがはベルファー。
すっかり溶け込みお湯を掛け合いを楽しむのであった。



ドラッド

トーテンレーヴェの姉妹
 シュネーヴィットヒェン・トーテンレーヴェ
 ドルンレスヒェン・トーテンレーヴェ
 ロートケップヒェン・トーテンレーヴェ
 アッシェンプッテル・トーテンレーヴェ

ユウルグ=トーテンレーヴェ

トーマス

二十三代目カリギュラ・モルテスバーデ(暴帝の交剣印)

猫耳神官リオン

ハインツェル

七海十六聖臣
 クラゲ種族のエチゼン
 マーマンのリョウマ
 貝の種族一の使い手シン
 海豹の暴君サムチャイ
111CAST NPC ◆iK.u15.ezs :2008/03/14(金) 00:13:01 0
ディアナ・D=メイズウッズ

ドゥエル・D=メイズウッズ

ヒューア(ティフェレト)

プランセス・カイ

ブルックリン

ベルダン=レーゼンバッハ

風を切って飛ぶ飛空挺。その甲板の上には、暁旅団の面々がいた。
「今回の収穫は上々だったね!」
ハノンが、所狭しと積んである怪しげな物品を見回しながら満面の笑みを浮かべる。
「少しぐらいパクってもバレなくない?」
「そうだ! パクっちゃおう!」
いそいそと物品の物色に取り掛かるハノンとカノン。
しかし、直後にレミリアのハリセンが炸裂する。
「コラー! それはみんなのものよ!」
「いいじゃないですか、慈善事業やってるんだから少しぐらい!」
実はこの人達、各地に散らばる遺跡に潜って便利なものを発掘する任務を任されているのだ。
セイファートが人差し指をびしっと立ててハノンをたしなめる。
「口を慎みたまえ……慈善事業団体じゃなくて空賊団だッ!!」
「あーはいはい、そうでしたねー」
レミリアがどうでもいいように頷いていると、突然マリクが悲鳴の声をあげた。
「今ザルカシュさんからテレパスが来たんですが……パルメリス様が……」
「パルがどうしたって!?」
親友の身に何が起こったのかと顔色を変えるセイファート。
次の言葉は、予想さえしないものだった。
「結婚するって……あと一時間で式が始まるって……間に合わないじゃないですか!」
「いや、間に合わせてみせる! 操縦代われ!!」
マリクを押しのけて操縦桿を奪い取り、アクセルを全開にして飛ばす。それだけではない。
ある意味素晴らしい操縦技術によるアクロバット飛行に、一瞬にして阿鼻叫喚の事態となった。
「「「嫌あああああああああああああ!!」」」
112CAST NPC ◆iK.u15.ezs :2008/03/14(金) 00:14:48 0
『吠える坑道』亭マスター

ボボガ族族長

マイケル(ホッド)

ミゲル・デ・ラマンチャ中佐

メイドのメリー

モグラの爺さん(翠星龍)

そして、ラーナの森の上空まで来た時。案の定、爆破空中分解した。
「「「ぎゃああああああああああああ!!」」」
仕方が無いので【フライト】で脱出する一同。地面に降り立ったレミリアが辺りを見回す。
「約一名除いてみんな無事!?」
約一名というのはもちろんセイファートの事である。したたかに頭を打って気絶していた。
そこまでは想定の範囲内、しかしそれだけではなかった。
「一名じゃありません! 羽の生えた女の人もいます!」
セイファートが目を開けると、そこには懐かしい顔があった。
「あれ……シルフィール? 分離した?」
シルフィールは優しく微笑み、頷く。そして透き通るような声で言った。
「傭兵廃業したか。もうお前の尻に敷かれなくてすむわけだ」
次の瞬間、団員全員の声が見事に被る。
「「「シルフィールがぐれた―――ッ!!」」」
113CAST NPC ◆d7HtC3Odxw :2008/03/14(金) 23:44:33 0
ルーシー

トーマス

戦乙女ルシフェル

ルドワイヤン 

レイン、ジェリーの兄弟

レジーナ=ハイネスベルン

レニー=カーライル

レミリア・エルメリス=ユニコーンフォレスト

ロシェ

ヒロキ

モーラッド

レシオン




小さなの農村にまた収穫の時期がやってくる
一年前の惨劇が嘘の様に人々は畑を耕し、大地の実りを喜び、感謝する。
全てが同じではないが、いつもと変わらない光景に人々は今日も感謝するのだ
「爺サーーン、コノ箱ハ、ココデスカー?」
「おーーう、そいつが終わったら飯にするぞー ちょうど来たしな」
畑の端で叫ぶ声が聞こえる
「お爺ちゃんーー あなたーー お昼よーー今日はシチューよー」
きっと明日も全てが違う変わらない日々に感謝する日が来る事を願って
114CAST NPC ◆iK.u15.ezs :2008/03/15(土) 22:58:26 0
愛の女神ラーナ

カールトン=レーゼンバッハ

シファーグ=ハールシュッツ

ベルファー=ギャンベル

マリオラ=ハイネスベルン

ミュラー=アイゼンボルグ

リオネ=オルトルート

アクアさんとの再会を喜ぶ間もなく簀巻きになって連行される僕たち。
僕たちをぐるぐる巻きにしているのは、黒くて平べったい物体だった。
少女の不敵な笑い声が聞こえた。
「フフフ……妾のワカメから逃げられると思うな!」
あれから少し成長したヒムルカさんが大量のワカメを操っている!
これこそ彼女の恐怖の技、無限に増えるワカメ!
この技の恐ろしさを知っている僕は、もはや逃走は無理だと悟った。
「ハイアット君、覚悟を決めよう」
「そうだね、相棒」
115CAST NPC ◆iK.u15.ezs :2008/03/17(月) 00:48:21 0
ギラクル

ゴウガ

ゴロナー・ゴスフェル

ザルカシュ

スターグ

ヒムルカ・クラド・マーキュス

リリスラ

レベッカちゃんが、ワカメに巻かれて連行されている僕の全身を眺め回す。
「な、何!?」
「すっごく……綺麗だよ! 不思議だなあ、アタシと会った時なんて……」
その先の言葉は大体予想が付いたけど、言われる事は無かった。
「パル!?」
驚かれてはじめて、大粒の涙を流して泣いている事に気付いた。
「あれ? 何でだろう……こんなに嬉しいのに……」
森の中を歩きながら、一年前の、風のように駆け抜けた日々を思い出していた。
酒場の隅で寝ていたハイアット君を叩き起こした事。
それは、本当の未来を取り戻す冒険の始まりだった。
最高の仲間たちと出会って、たくさん笑った。
悲しすぎる出来事に、たくさん泣いた。
何度も死ぬかと思うような目にあって、その度に誰かに助けられてきた。
今となっては何もかもがキラキラ光る宝石のような思い出。
そして、掛け替えの無い日々は、とびっきりの贈り物を残してくれた。
この世の何よりもステキな贈り物。
116劇中挿入歌 ◆iK.u15.ezs :2008/03/17(月) 00:50:37 0
レベッカ
♪Soul Detonation
♪Morning Star
♪Limit Brake
♪A Happy New World
♪Live to Surviv
♪Over the Rainbow
♪song of life 始まりの唄

アスラ
♪イージスの盾
♪旅人の歌

リリスラ
♪審判の翼
♪キミに伝えたい
♪ただひとたびの奇跡
♪SYMPHONY OF HEART
♪力への意志

アーシェラ&オペラ&リリスラ&レベッカ
♪KIZUNA
♪Road of Hope

ナユタ
♪SANSAARA

――パルメリス……良かったね……
声が聞こえたような気がして見上げると、お母さんが木の枝に座って手を振っていた。
「あ……」
――お前はもう呪われた女王なんかじゃない! 運命に打ち勝ったんだ、自信を持って生きろ!
確かに聞いた言葉を胸に刻みつけ、ゆっくりと歩みを進める。
今はこの世にいないはずの昔の仲間たちが、次々と祝福の言葉をかけてくれる。
――パルメリス様、おめでとう!
――文字通り末永くお幸せに!
――すっごくお似合いです!
「みんな……」
そして、最後に現れたのは、本当の自分を取り戻した旅で、本当に大切な事を教えてくれた人だった。
――泣き顔は似合わないぜ! そいつの隣ならずっと笑ってられるだろうよ!
「待っ……」
思わず手を伸ばす。
次の瞬間、吹きぬけた一陣の風と共にみんな消えていなくなった。
元通りの風景が戻ってくる。一年中緑の葉が生い茂る、昔から少しも変わらない風景。
でも、同じはずなのに昔とは全然違って見える。
暖かい木漏れ日が降り注ぎ、優しいそよ風が木の葉を揺らす。
もう逃げようなんて思わなかった。
ハイアット君と最高の笑顔で手を繋ぎ、式場へと向かう。
ラーナ様の御元で、みんながとびっきりの笑顔で祝福してくれる。
もう閉ざされた迷宮なんかじゃない。忌まわしい記憶の舞台なんかじゃない。
悲しかった事の何倍も何十倍もの喜びに彩られた場所になるだろう。

大好きなキミとの、本当の始まりの場所だから。
117パルメリス ◆iK.u15.ezs :2008/03/17(月) 00:52:47 0
「パルメリス……」
「ハイアット君……」
僕とハイアット君は、衆人環視の中で、かれこれ30秒ほど見詰め合っていた。
視線でこんな会話を繰り広げながら。
(うわー出来ないよ! これだから結婚式の主役なんて嫌だったんだ!)
(でもやらなきゃラーナ様が許してくれそうにないよ!)
あまりの恥じらいを見兼ねた周囲から声援があがる。
「ちょ! 照れ過ぎ!」
「二人ともがんばって――!!」
決心した僕は視線で語りかける。
(今回は僕からいくよ!)
(今回はって……知ってたのか!? あれはラーナ様が適当な事を言うから!)
これ以上は間が持たない。問答無用で身を預けるように顔を近づけていく。
ハイアット君は抱き寄せるように僕の背中に手を回す。
どちらからともなくそっと目を閉じて。

そして僕らは――――
118とある参加者(名前は伏せる:2008/03/17(月) 12:51:44 0
これでこの物語は一旦の終演を迎える

だが、これは終りではなく始まりなのだ

人は昨日から今日へ、今日から明日へ、 

過去から今へ、今から未来へ、

親から子へ、子からまたその子供へと、

終わらない物語を綴り続けてゆく、

それはまさに、過去へと遡り未来へと続く


---ETERNAL FANTASIA---

     物語は続く





SPECIAL SANKS 
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今までありがとう
119名無しになりきれ
さあ恒例のキャラクターイメージAAだ