明けない夜が無いように、止まない雨が無いように、
生きる者は、誰しも同じ場所にとどまり続けることは叶わない。
それぞれの過去を乗り越え、少女達は今日も未来に向かって歩き続ける。
物語の輪は、まだ回り続けているのだから。
―――― 魔法少女達と冒険するスレ 6thシーズン 〜胡蝶の夢〜 ――――
願わくは、良い結末が与えられますように…
〜アンジェリーナ〜
2
テンプレはこちらです。
名前・
性別・
年齢・
髪型・
瞳色・
容姿・
備考・
(以下は任意解答欄)
得意技・
好きな食べ物・
好きな偉人・
好きな生物・
嫌いな食べ物・
嫌いな金属・
今一番欲しい生物の毛・
保険に入りますか?・
【備考】
全部埋める必要はありません。
テンプレはあくまでキャラのイメージを掴みやすくしたりするものです。
また使える技や魔法も、物語をより楽しむためのエッセンスです。
余り悩まず、気楽に行きましょう。
ただ、今は学園が舞台なので、知り合いの度合いにあわせてある程度データを明かして下さると嬉しいです。
(たとえばクラスメートなのに、どんな人なのか全く知らないのでは変ですから)
それ以外の、たとえばキャラの過去などは、レスの中で徐々に明かして下さいね。
【テンプレ記載例】
名前・ リリアーナ
性別・ 女
年齢・ 17
髪型・ 金髪のストレートロング
瞳色・ 青
容姿・ 色白で華奢。背はあまり高くない。スタイルは年相応 ←
備考・ カドゥケウスと呼ばれる杖の所有者。だがそれに伴い、学園で習う魔法が実質上使用不可に。
杖を装備した時に限り、空間、回復、蘇生、即死魔法が使用可能。
ただし使用自体リスキーなため、自ら進んで杖を装備することは無い。
得意技・応急手当、薬草等の調合
ロックバスター(精神エネルギーを弾丸に変化させて攻撃する召喚銃の一種。左腕に装着して使用)
好きな食べ物・甘いもの
好きな偉人・(なぜか赤面)・・・ナ、ナイショです。
好きな生物・犬
嫌いな食べ物・ゲテモノ系
嫌いな金属・合金。(肌が弱いので、肌に直接触れるものだとかぶれる場合があるのよね)
今一番欲しい生物の毛・ フェニックスの羽根。・・・あ、これって毛じゃないよね。
保険に入りますか?・学園入学時に強制加入した気が・・・あれ?気のせいかな?
※パラメーター遊び(任意)ご希望の方は、避難所でお知らせくださいね。
【学園についての説明】
・舞台はファンタジー世界。フィジル島にある魔法学園が主な舞台です.。
フィジル島は「魔海域」と呼ばれる、法則を無視した魔の海域の中にあります。
(魔海域は、「法則を無視した潮流、乱気流」「突然の魔法無効旋風」
「召喚生物強制送還地帯」などが特に有名です)
・一度学園に入学したら卒業(三等課程合格)まで島を出ることは叶いません。
・学園は全寮制、男女共学です。
・魔法学園の施設は西洋のお城のような外観をしています。
・女子寮、男子寮は校舎と同じ敷地内にあります。カフェテリア等一部の施設は男女共通です。
・女子寮内外には侵入者避けのトラップがあります。要注意。
・校舎には校庭があります。
・校舎の裏手には霧のかかった森があります。 森の奥深くには強力な魔物や貴重な生物が住んでいるという噂です。
・森の奥深くには庭園があり、近くにはかつて新魔法研究の為に使われていたらしい施設があります。
施設の中には何に使うのか分からない装置が置いてあります。
・描写されていない施設等に関しては、整合性さえ保っていれば好きに設定投下してOKです。
(図書館およびDレベル階層について)
・学園地下には広大な図書館があります。管理人はオルビア・ターナー先生です。
・薄暗く本を読む時は上に持っていく、またはランプを貸してもらうという珍しい図書館です。
・置いてある本は古今東西から集められたもので膨大です。
・なお、一般生徒立ち入り禁止区域であるDレベル以下の階層には危険な本が多く保管されています。
地下にどれだけ広がっているのか不明の階層で、そこに在るのは全て魔本です。
本から漏れ出たモンスター、怪異現象が巻き起こっている世界でもあります。
【学園生徒関連】
・女子寮には、生徒で結成された白百合騎士団という自警団がいます。
・男子寮では、 隠密魔法戦隊というグループが人知れず暗躍しています。
・三等過程合格者には指輪が与えられ、学園内の立ち入り禁止区画に出入り可能となります。
また、「ゲート」を使用し街へ出られるなど、一般生徒より優遇されます。
・寮部屋に関しても一般生徒は大部屋ですが、三等課程卒業者以上になると個室が与えられます。
・ただしカップルなど、当事者同士の間で合意があれば、特例として相部屋も認められます。
・生徒での参加者は、基本的に三等過程卒業者以上とさせていただきます
【カリキュラムについて】
卒業までには幾つか試験があります。
最初の試験(卒業試験という名称)に合格すると、三等課程合格という事になります。(第一部参照)
・次に各分野を広く浅く学ぶ二等課程へ進学します。二等過程卒業すると、一等課程へ進学。
・一等課程は二等課程で選択した分野を使った応用編。より実践的な分野を深く学びます。
・なお、二等課程からは月一の割合で課題や指令が出されます。
(参考資料)
【第一部】
念願の試験にみんなで合格しました!
これで卒業と喜んだのもつかの間・・・なんと私達、卒業までに受ける試験のうち一
番最初の試験にパスしただけでした。
学ぶべき事も、覚えなくてはならないことも山積み。
卒業までの道のりは、まだまだ遠く険しいみたいです・・・。
【第二部】
闇の魔法使いマリアベルによる、学園襲撃事件の顛末です。
幾つもの人格を持つマリアベルは、ある生徒に成りすまし学園内に侵入しました。
マリアベルの人格のうちの一人は、学園内に大量の悪魔を召喚し、混乱に乗じて建物を破壊し塔へと再構築させました。
襲撃の際殆どの生徒たちは転移ゲートから島の外へ避難しましたが、学園に残った生徒や教師もゼロではありませんでした。
彼らは協力し、悪魔やマリアベルに戦いを挑みました。
激戦の末、マリアベルは退けられ学園に平和が戻りました。
事件直後にはさまざまな憶測が流れていました。
マリアベルは何らかの儀式を学園で行おうとしたとも、何かを探していたとも囁かれていましたが、
何れも噂の域を出ることはありませんでした。
そうこうするうちに夏期休暇に突入したため、事件は徐々に人々の記憶から薄れつつあるようです。
※一般生徒、教師用に発表された説明を基にしているため、事実と異なる部分があります
真実を知りたい方は過去ログ参照。
【第三部】
魔法学園の日常編
夏休み明けの始業式の朝。
なぜか猫化してしまった女子生徒を人間に戻すべく奔走した友達と、巻き添えを食らった方々のお話。
この日に関する噂話一覧
・転入生がやってきた。
・朝、食堂に悪臭が立ち込めた。その後100匹の猫が現れ、招き猫広場まで暴走後、解散。
・中庭に野人出現
・男子生徒が女子寮に侵入しトラブルになったが、実は寮生のリリアーナが、ロックを自室に招き入れたらしい。
(しかもそのときリリアーナは服を着ていなかった)
・その後食堂でリリアーナとロックが口論。リリアーナとフリージアはロックが偽者だと糾弾。
・直後、ロックの死体が出現。すぐに人形だと判明したが、混乱に乗じて偽ロック(?)は逃走。
・リリアーナの視覚的に刺激的かつ衝撃的な告白(!)シーンが、食堂で大々的に上映される。 orz
・男子寮のロックの部屋に、謎の美少女出現。しかもトップレスだった。
・新しい非常勤の女医は美人
・ずっと元気が無かったレイド先生が復活したらしい。
【第四部】
始業式の翌日、ロック・ウィルは無断欠席をしました。
あるものはお見舞いに、またあるものは成り行きで男子寮の自室を訪れます。
ですが部屋にいたのはロックではなく、記憶をなくした見知らぬ少女でした。
残された手がかりは、部屋に残されたメッセージと、少女が持っている一本の杖だけです・・・・。
はたして少女の記憶は戻るのでしょうか?
そして私達は、行方不明のロックを無事に見つけ出す事ができるのでしょうか?
テンプレは以上です。
・・・・・・では、素敵な学園生活を!
青い瞳の少女はロック・ウィルの母親とまるで同じ、
そして記憶を喪失しており、筆跡はロック・ウィルと同じであるということ。
そしてコンコンという謎の人物。今分かっていることはこのぐらいだ。
>「知らなかった・・・まさかあのロックに、そんな趣味があったなんて・・・・・・・」
リリアーナを言葉を聞く限りどうやらこの情報で大体が分かったようだ。
ならばそろそろここに居る必要もない…それどころかかえって話しづらい。
今ここにだれか入ってきたら危険なことになる。ロック・ウィル暗殺計画とかまで作られるぐらいだ。
>>270-271 >>274-
とりあえず場所を変えるにしてもどうしようかと思っている、床が凄まじい勢いで揺れはじめる。
相当大きい地震だ、正直立っているのも辛いほどの大地震。
>「えっ、何?!きゃあああ!!」
ミシュラは恐怖というものは感じなかったが、普通は感じるのが当たり前だろう。
ましてや周りの状況も自分も分からない人間だったらパニックに陥ってもおかしくはない。
しかし、ミシュラはなんといっていいか分からなかった。おそらく自分が何を言っても効果は薄いと分かっていたからだ。
どうしようかと思っているとリリアーナが先ほどまでの焦りが消え少女を優しくなだめはじめる。
>「大丈夫。絶対大丈夫だから」
その光景を見て安心したかのように少し笑うミシュラ。どうやら焦りから消えていた思いやりの心が戻ってきたのだろう。
>「ここは魔法学園よ?魔法実験の影響で地震が起きるなんて良くある事なの。
>それにね、この部屋には頼りになる男子が二人もいて、何があっても守ってくれる。
>ね?だからあなたは、何も心配しなくていいの」
「その通りだ。大丈夫だ、一時的なものなはずさ。万が一に何かあっても俺と彼が何とかする…
それにキサカは俺とは違って中々に使い勝手がいい魔法を覚えているようだしな。何とかなるさ。」
正直一時的なものかどうかなど分かりはしなかったが、不安を煽るよりもこう言った方がいいに決まっている。
しかし幸いにすぐに地震事態は収まった。しかし、まるで図ったかのように壁がない。
もはや作為的なものすら感じるがそんなことよりも駆けつけてくる野次馬をどうしようか考える。
なにせ野次馬なんていうものはまるで蟻のように沸いて出てくるものだ。
しかし、それよりも今のこの状況で脅威になるものがあった。教員だ。
声を聞く限りレイド教師のようだ。野次馬を引かせてくれたのはありがたいが…
この状況を見たら何を言われるか分かったものではない。
それにまだ問題はあった、もう一つ動く集団があったのだ。隠蔽してはいるが声も聞こえるしミシュラには姿も見える。
>(おうよ!不幸は分かち合うが幸せは叩き潰すのが男子寮の掟!)
彼らの中の1人、この言葉を吐いた人物を見てミシュラはちょっと悲しくなった。
そう、ジミーだったのだ。確かについさっきまでロックを許さないとは言っていたが…
ジミーが実際に行動に移すとは思えなかったしこんな言動を言うとも思っていなかった。
どうやら相当振られたショックにより精神的に追い込まれているらしい。
>「“彼らよ吹高く舞死上がり、神させはそのオセ追う”
>“風は空け、いを目覚め秘家る後を……までロ ”」
そして飛んでいくジミー、それを見てミシュラは悲しそうにつぶやく。
「…そうか…そんなに振られたのが辛かったのか……すまない。
もう少し真剣に慰めてやるべきだったかもしれないな…」
今度あったらもっと真剣に話しを聞こうと思っていると煙の中からレイド教員が現れる。
>「………俺が納得出来るように状況を説明してもらえるかな〜君達?」
やはりセオリー通りの質問だ。キサカのどうしようという困った表情にミシュラが自分が行こうか?と合図を送った時だった。
目の前でレイド教員がとび蹴りを受け凄い勢いで蹴り飛ばされ、当の蹴りを入れた本人は空中で回転し決めポーズを取る。
何というシュールな光景……ミシュラは赤髪の男はとりあえず置いておいて、
蹴り飛んだレイド教員の下に駆け寄る。かなり意識は朦朧としているが肋骨や内蔵に支障はないようだ。
「大丈夫ですか?しっかりしてください……保健室行きますか?」
「…ねぇリリアーノ。」
ブランエンは顔を伏せたまま、側にいたリリアーナに尋ねた。
「教えて、私はロック・ウィルの何なの?親子?姉妹?それとも恋人?
それに、ロックはどこに行ったの?そもそも、彼はどんな人なの?」
ブランエンは立て続けに質問した後、ちょっと間を置いてこう言った。
「…いずれにせよ、彼がだんだん許せなくなってきたわ。」
ブランエンが顔をあげると、そこには怒りの表情が浮かんでいた。
「絶対に私と無関係なはずないのに、私を置いてどこかへ消えるなんて!」
そのころ、ブランエンの怒りを知ってか知らずか、ロックが行動を開始していた。
しかし、ここで特筆しておかなければならないことがある。
そのロックが、よくできた偽者であるという事だ。
「おばちゃん、稲荷寿司を頼む。無論、大盛りだ。」
>「ねぇ、さっき男子寮がガタガタ揺れてたけど、ありゃなんだったんだい?」
「誰かが魔法の実験でもして失敗したんだろうな。よくある事だ。」
偽ロックは皿を受け取ると、むしゃむしゃと稲荷寿司を食べ始めた。
中途半端な時間だったおかげで、食堂に人はほとんどいなかった。
名前・偽ロック完全体
容姿・全てロックと同じ
備考・ロックの記憶を奪ったことで、より本物に近づいた偽ロック。
中の人はコンコンである。
名前・ルピア・ルー
性別・♂♀
年齢・12歳以下(?)
髪型・蒼い髪。先日櫛をいれられたおかげでさらさらとした長髪になっている。
瞳色・蒼
容姿・つるぺたロリっ子。フリルのついたドレスを着せられ、ちょっと上品な少女にも見える。
備考・でも中身は野生児。右腕を人に見せようとしない。
得意技・視線魔術[火](声を媒介とせず、視線のみで発動させる。)、サバイバル
好きな食べ物・肉(主に鳥、生でも可)
好きな偉人・イジン・・・?(言葉が伝わっていないようだ)
好きな生物・食える生き物
嫌いな食べ物・食えれば嫌いなものはない
嫌いな金属・食えないのは好きじゃない。
今一番欲しい生物の毛・毛よりも肉。
保険に入りますか?・保険の意味がわからないようだ
ある日差しのうららかな朝。学校の保健室の真っ白なシーツの上で、その少女は寝転んでいた。
猫のように体を丸めていた少女が寝返りを打つ・・・と。
ずるっ
ひゅっ
ごいん
「う〜〜・・・・・・っ」
頭をさすりながら少女は起きた。狭いベッドで寝返りを打てばそれは落ちる。
で、無意識の動作だったせいか魔力のかかったベッドから抜け出したルー。
四つんばいのまま手を床についてぐーっっと背筋を伸ばす。
で、ルーは保健室を抜け出して槍を探したのだが・・・どこにもない。
そこで見かけたのは以前肉をくれた人(レイド先生)。
なんとなく食事にありつけるんじゃないかと期待しながら、ルーは男子寮へとほいほいついていったのだ。
レイド先生の後方700mをあるく、青いフリルドレスを着た裸足の青い少女。
どう見ても夢遊病者です本当にありがとうございました。
もちろん男子寮は女人禁制なんてことを知らないルーは気配をひた隠しにしつつ進入していったのだ。
で・・・
>277
吹っ飛んできたレイド先生の下敷きになってしまいましたとさ。
「あーうー・・・・・・・・・・・・」
>276>「…ゴメン、止まれないー!センセーどけぇー!!」
「ん?…ぐぁっ!!」
脇腹にグレイルのドロップキックがめり込む。
俺は3tトラック衝突されたマネキン人形のように吹き飛んだ。
「こんちくしょう…教師の脇腹にいきなりドロップキックかます奴があるか…。
下手したら骨砕けるぞ…。」
>11「あーうー・・・・・・・・・・・・」
ん?地面から声が??
うわっ…この娘は確か……この間の…。
「おい、大丈夫か?
どこか怪我してないだろうな…。」
俺は少女を立たせ外傷を探すが、幸いかすり傷程度で済んでいるみたいだ。
「ったく、何でお前がこんな所に居るんだ?
ここは男子寮…って言っても分からんか…。
ほら、あめ玉やるからじっとしてろよ。」
あめ玉を一つ手渡し、かすり傷に手をかざすと、淡い光が集まり少女の傷を癒す。
これは基本中の基本の回復魔法で、キュアとかホイミとか呼び方は様々ある。
と、そこへミシュラが俺の元へ駆け寄ってきた。
>「大丈夫ですか?しっかりしてください……保健室行きますか?」
「…ああ…俺は大丈夫だ…。
それよりこの娘を頼む…。
俺の下敷きになっちまったみたいだ。
俺も確認したが、念のため他に外傷が無いか調べてくれ。」
それにしても意外と可愛くなったな、あの娘。
あ、いや、俺はロリコンじゃあないぞ。
「あ〜…とりあえずスーツに穴空かなくて良かった…。」
スーツに付いた土と埃を払い、怒りと憎しみのこもった笑顔でグレイル語りかける。
「なあ、グレイル…反省文30枚書くのと200kg以上の負荷を背負って地面に這いつくばるの、どっちが良い?
グレイズとブレイブに相談して決めても良いんだぞ?」
>279 >8 >9
「あれ?皆ウケてないなー。」
【当たり前だよ!レイド先生を蹴り飛ばすなんて!もう学園生活の終わりも近いよー!】
青ざめたグレイズが言う。
部屋の中に居た人の片方の男子――キサラは硬直し、もう片方の男子――ミシュラはレイドに駆け寄っていった。
リリアーナと少女はなにやら話をしている。
グレイルはそれを見て、少し考える。
「さて、どうしよーかなー!情報聞いた方が良いよなコレ!よし、聞くか!」
【今の状況で聞ける訳無いよ!ああ、もうどうしよう…。】
>13
と、その時、3人の後ろから怨念のこもった視線が感じられた。
【…こ、この威圧感は…あああああ不味い不味い不味い!】
【……R、後ろを向け。既に居るぞ。】
「ん、後ろ?わぁお!レイド先生無事だったんだ!」
グレイルはまるで他人事かのように言った。
>「なあ、グレイル…反省文30枚書くのと200kg以上の負荷を背負って地面に這いつくばるの、どっちが良い?
>グレイズとブレイブに相談して決めても良いんだぞ?」
「えー、だってさぁスピード落としきれなかったしさー!
あのままだったら生徒の俺が怪我をしてたかもしれないんだし、センセーがそれを庇ってくれたっていう事で別に良いじゃん!
あ、それとSが何か良いたいそうだから替わるぜ!」
そう言って頭を軽く回し、髪と瞳が黒くなる。
耳も狼に戻り、何処から持ってきたかさっきのドレスシャツと学ランを着る。
そしてぱちくりと目を開き……ほぼ90度の角度で腰を曲げ、謝罪をする。
「す、すみません!!本当にすみません!!!」
よく見ると、異様なまでに震えている。
「あ、Rが…グレイルが大変失礼な真似をしてすみません!!
ですが罰則だけは止めてください!考え直してください!!」
グレイズはいつも真面目である。
だが、何故グレイズがこう言ったかというと、グレイルが困るとグレイズも困るからである。
3人が1つの身体を共有している。そうすると、身体が苦痛を受けるとそれも共有する事になる。しかも同時に。
誰かが指を怪我すれば他の2人も傷付き、睡眠時間を削るなら他の2人も巻き添えを食らう。
負荷を背負って這い蹲ればそれだけの痛みを同時に味わう。
反省文も頭の悪いグレイルが30枚書くのなら間違いなく徹夜しても書けず、一睡も出来ないだろう。
だからだ。
「御願いです!罰則だけは!こっちも辛いんです!寧ろこっちが辛いんです!!」
レイドにまるで恐ろしい上司と部下の関係のように必死に懇願をするグレイズ。
【なんかSが可哀想だな!プッククク!】
「(誰のせいだかわかってよー!R!)」
前方には殺意の波動に目覚めた教師。
背後には憤慨する情緒不安定な女子。
……これなんてサイドアタック?
逃げ道は二つだ。
教職員に不意打ちを決めた命知らずな男子生徒を囮にして、正攻法で通路から逃げ出すか。
もしくは、先刻から不穏な気配を放っている後ろの二人をやり過ごして窓から脱出するか。
……逃走路! 逃げずにはいられないッ!
でもここで逃げたら後でどんな目に会うかわかったものではない。
エスコートを放棄して逃げ出したなんて知られたらもうくぁせふじこな目に会う。絶対会う。
アルナワーズに関われば不幸になる。ある意味、この学園での常識だ。
どうやら唯のトラブルメーカーと侮っていたらしい。真に恐ろしいのは禁術でも魔獣でもなく人間である。
……まあ、全部仕込んであったわけじゃないとは思うけど。
そういう星の下に生まれているのだろう。運命って素敵ですね。
寮室から顔を出した時点で、今日のキサカの幸運は使い切られていたのだ。多分。
キサカは傍観する事に――考えるのをやめたわけではなく――何もしない事にした。
下手に口を出して飛び火を被るよりは、話から置いていかれるほうが幾分マシだろう。
……隠れててもどうせ巻き込まれるし。
突如室内に充満した謎の煙は、キサカが即座に換気を実行したため実害は無かった。
煙越しに、何人かの男子生徒が廊下を弾丸のように飛んでいったような気もする。
リリアーナはごしごしと目を擦ってみたが、よく分からなかった。
焦りまくっていたリリアーナの前に現れた救世主は、レイドだった。
「レイド先生の声だわ!・・・助かったぁ・・・・・」
レイドは野次馬たちにラーメンを奢ると約束し、部屋に戻らせた。
>「野次馬は追い払ったぜ、リリアー…」
>再び廊下に静寂が戻る。
レイドの表情の変化に気づいてないリリアーナは、ただただ安堵して目を潤ませていた。
>「………俺が納得出来るように状況を説明してもらえるかな〜君達?」
困り顔のキサカとリリアーナに気づいたのか、ミシュラが説明しようと一歩前に出た途端。
レイドが突然現れた乱入者に吹き飛ばされた。
>「イエイ!……ってあれ?これってまずいかな?」
> ポーズを決めた赤髪の青年が立っていた。
吹き飛ばされたレイド自身は無事なようだが、小さな女の子を下敷きにしてしまったようだ。
「何で男子寮に女の子が・・・・・・?」
>「なあ、グレイル…反省文30枚書くのと200kg以上の負荷を背負って地面に這いつくばるの、どっちが良い?
>グレイズとブレイブに相談して決めても良いんだぞ?」
さて、女の子に回復魔法を施しミシュラに託したレイドは激怒していた。当たり前である。
一方そんなレイドに平謝りしている少年の頭の色はなぜか黒に戻っていた。おまけに耳も獣耳になっている。
「・・・・・・もしかして、お友達?」
リリアーナはグレイズとキサカの耳を交互に指差し「お揃い」と笑った。
犬系が好きという割に、リリアーナは狐耳と狼耳の見分けがついていないようだ。
>「…ねぇリリアーノ。」
ずっと黙り込んでいた黒髪の少女が、ようやく口を開いた。
>「教えて、私はロック・ウィルの何なの?親子?姉妹?それとも恋人?
> それに、ロックはどこに行ったの?そもそも、彼はどんな人なの?」
リリアーナは困った。それは正直自分が彼女に聞きたい質問だ。あなたは、本当はロック本人じゃないの?と。
だがなんの確証も無いのに、記憶喪失の少女に向かって
「実はあなた男の子かもしれないのよっ キャハッ☆」―――― なんて、口が裂けてもいえない。
>「…いずれにせよ、彼がだんだん許せなくなってきたわ。」
リリアーナの沈黙をどう取ったのか、少女は怒りに震えていた。
>「絶対に私と無関係なはずないのに、私を置いてどこかへ消えるなんて!」
「ちょっと待ってよ」
リリアーナは慌てた。
「私はね、ロックの・・・友達なのよ。だからロックの事は良く知ってる。
ロックはそんな無責任なこと絶対にしないわ!保証する」
リリアーナは少女と手を繋ぐと、宥めるように微笑みかける。
「いい? これにはきっと何か訳があるのよ。
もしあなたさえ良かったら、記憶が戻るまで私があなたの力になるわ。・・・それじゃダメ?」
リリアーナはここで口を噤むと、落ち着かない様子でぐるりと周囲の状況を見た。
「とりあえず長話するには時間も場所が悪すぎるわ。移動しましょう」
リリアーナは必死で考えた。
アルのように上手い説得は出来ないが、何とかこの場を丸く治めようとしたのだ。
その結果導き出された答えといえば・・・。
「レイド先生見てみて、猫 耳 の 美少女ゲットしました!」
リリアーナは少女の耳と顔が良く見えるよう、自分の身体をちょっとずらした。
「でも彼女、地震でショック受けてるしぃ〜レイド先生の剣幕に少し怯えているみたいなんですぅ〜。
かわいそうだから男子寮の外に連れ出しますね〜ん」
リリアーナは少し芝居がかった言い方をすると、回りのメンバーをぐるりと見渡した。
「それにほら、そろそろフーチさんが駆けつける頃だと思いませ〜ん?リリこわーい☆
もしかしたらこの壁を壊した犯人だと思われて後始末押し付けられるとも限らないしぃ〜?」
前>271
>「おい、女の子の声がしたぞ!」
「わたくしのこと・・・ではないですわね さっき来たばかりですもの」
ねえ・・・と傍らの名も知れぬ男子生徒に問い掛けるフリージア
69号室の方向からは埃がまっている
>17
その次の瞬間!すごい剣幕で69号室の方へ走っていくフーチさんを遠目で見たフリージア
「ま、不味いですわね」
見つからないようにあわててその姿を隠す
「芸術をつかさどる色彩の精霊よ!この壁と同じ模様を我が氷壁に与えよ!!」
説明しよう!フリージアは氷の壁に壁と同じ模様を作り出しその間に入ることによって姿を隠すことが出来るのだ!!
・・・・・・横から見たらすごく間抜けである
それは兎も角、水玉模様しか作り出せなかった過去に比べフリージアの色彩魔法もかなりレベルアップしているようだ
これを応用すればいつでも着替えられる簡易更衣室も作れるだろうし
もしかしたら簡単な鏡も作れるかもしれない・・・・まあどうでもいいことだが
何とか気が付かれずにすんだようだ
フーチさんはフリージアの横を通り過ぎていった
「それにしてもあの方向は69号室・・・ロックさん・・・もといロックの部屋ですわね」
はて?ロックは今行方不明なのでは?
フリージアはてっきりロックが何だかよく判らないものに変えられたと思っているのだ
まさかそのロックが・・・いやロックだったものが自分の部屋にそのままいるなんて思いもよらなかったのだ
灯台下暗しとはまさにこの事だ
(その頃のギズモ)
「・・・・・多分 オカアサンハ ロックオニイチャンノ ヘヤダ」
ギズモはまさかフリージアがもけもけした生き物を探すなんてわけの分からない行動を取っているなんて思いもよらず
素直にロックを探しにロックの部屋に行ったものだと思いその小さな翼をはためかせ男子寮へと飛んで行くのであった
(再び フリージア)
「さて・・・このままフーチさんを追いかけ69号室に行くのは危険ですわね」
下手をすれば・・・いや下手をしないでも問答無用で追い返されるだろう
とりあえず中から誰か出てくるのをそのまま隠れて待つことにしたフリージア
・・・・だから横から見たら間抜けなんだってば
>14>「えー、だってさぁスピード落としきれなかったしさー!
(中略)あ、それとSが何か良いたいそうだから替わるぜ!」
別に良くないから俺は怒ってるんだよキミ。
お前にドロップキックをくらってまで俺はお前を庇いたくないっての。
と、ここでグレイル改めグレイズが現れた。
色々と忙しい奴だな。
> 「す、すみません!!本当にすみません!!!」
>「あ、Rが…グレイルが大変失礼な真似をしてすみません!!
ですが罰則だけは止めてください!考え直してください!!」
>「御願いです!罰則だけは!こっちも辛いんです!寧ろこっちが辛いんです!!」
………何だか改めて考えると気の毒な奴だな、コイツ…。
「しかしだなあ、グレイズ、罪には罰を与えなけりゃならんのだ…。
お前には気の毒だが…」
>17>「レイド先生見てみて、猫 耳 の 美少女ゲットしました!」
……で?
確かにナイスな猫耳だがそれとこれとの関係性が見当たらないぞ。
>「でも彼女、地震でショック受けてるしぃ〜レイド先生の剣幕に少し怯えているみたいなんですぅ〜。
かわいそうだから男子寮の外に連れ出しますね〜ん」
ちょっと待たんかねキミ。
俺は君達が何故男子寮に居るのかを尋ねて…
>「それにほら、そろそろフーチさんが駆け付ける頃だと思いませ〜ん?リリこわ〜い☆
もしかしたらこの壁を壊した犯人だと思われて後始末押し付けられるとも限らないしぃ〜?」
む…確かにそれは困る。
俺は修理費なんか払っている余裕は無いのだ。
それにしても最近リリアーナのやつアルナワーズに似て、人を丸め込むのが上手くなってきたような…。
俺がリリアーナの親だったら泣くぞ、マジで。
「しょうがない…バックレるぞ。
グレイズ、今回だけは特別に処分を免除してやる。
次は無いぞ。グレイルにもよ〜く言っとけ。
リリアーナ、後できっちり事情を説明してもらうから、よろしく。
んじゃお先に失礼。」
とりあえず男子寮の外に出よう。
話はそれからだ。
「あらあら、お見舞いに来たはずなのに、いったい何がどうなったのかしら?」
苦笑と共にあきれたような声が室内に届く。
音源は窓の外。
そこには、ギズモを抱いたアルナワーズが翼をはためかせながら宙に浮いていた。
とてもとても楽しそうな笑顔を浮かべて窓から入ってくる。
室内にはグレイズ・レイド・ミシュラ・キサカ・リリアーナ・謎の女の子。
ルーの存在はミシュラの陰になっていて気づかなかった。
野次馬がいないのは想像通りだったが、野次馬をひきつけてくれるはずのグレイもいるのにと少々不思議だがこの際気にしないことにする。
おそらくレイドが追い返したのだろうから。
「キサカ、エスコートお疲れ様。リリィの周りにはトラブルばかり起こるから大変だったでしょう?」
小さく手を振りながらキサカの労をねぎらい、謎の女の子へと歩み寄る。
「はぁい、はじめまして。私はアルナワーズ。よろしくねぇん。この混乱の渦から救い出しに来たのぉん。」
柔らかな笑みと共にそう言いながら、ひょいと謎の女の子を抱き上げ、窓の外へと。
ドーパーにより筋肉増強作用を得ているからこそできる芸当だ。
アルナワーズはこの女の子を話すつもりはない。
何者であるかはわからないが、これからロックとリリアーナを引き合わせるにあたってなくてはならない【爆弾】と認識しているからだ。
そんな面白爆弾を男子寮に放置し、騒ぎによって駆けつけたフーチーに事情聴取で何時間も引き渡せておけるわけがない。
そして窓の外からリリアーナに呼びかける。
「リリィ。ロックが食堂にいるって聞いたから教えに来たの。さ、行きましょ。これだけの騒ぎだとすぐにフーチさんあたりが飛んでくるわよぉ〜。」
ロックの居場所を伝え窓際からパタパタと遠ざかりながら手招きをする。
「ほら、せっかくの幻術も解けているし、見つからないように出るには窓からしかないわ〜。
大丈夫、一歩踏み出して、右足が落ちる前に左足を上前方に出し、左足が落ちる前に右足を再度上前方に出す。
これを繰り返せば空中歩行の完成よ〜。
大丈夫、愛の力があればできるわぁ〜。」
ほっほっほっほ!と笑いながら空へとリリアーナを誘うのだ。
『はぁい、キサカ。ありがとぉん。お礼に私たちについてくると面白いものがアリーナ席で見られるかもよぉん。』
キサカの耳元で幻聴魔法による囁きが流れるのだった。
>21
「えっ?ちょっ、え?!」
わけがわからないブランエンは、
アルナワーズに拉致されてキレそうになったが、
アルナワーズが絶妙なタイミングでギズモをブランエンにパスした。
「…何これ?」
みるみるブランエンの顔が笑顔に変わってきた。
「か〜わ〜い〜!あなたのペットなの?」
ブランエンはギズモを愛でながらアルナワーズに聞いた。
>17 >19-20
>「しかしだなあ、グレイズ、罪には罰を与えなけりゃならんのだ…。
>お前には気の毒だが…」
「そ、そんなぁ…!」
グレイズが諦めかけたその時、リリアーナがレイドに話しかけた。
>「レイド先生見てみて、猫 耳 の 美少女ゲットしました!」
>「でも彼女、地震でショック受けてるしぃ〜レイド先生の剣幕に少し怯えているみたいなんですぅ〜。
>かわいそうだから男子寮の外に連れ出しますね〜ん」
>「それにほら、そろそろフーチさんが駆け付ける頃だと思いませ〜ん?リリこわ〜い☆
>もしかしたらこの壁を壊した犯人だと思われて後始末押し付けられるとも限らないしぃ〜?」
どうやら単に此処を出たいだけらしい。
その様子を見たトリニティー・グレイは言う。
「…なんか、アルナワーズみたいだね。」
【……同意だ。】
【でもまだまだ未熟じゃねー?あいつには色々な意味で敵わないだろーコレー。】
「ところで結局罰則は受けるんだろうなぁ僕ら…嗚呼、痛みか不眠か…。」
グレイズは諦めた。
だが、思った以上にレイドはリリアーナに甘かったようである。
>「しょうがない…バックレるぞ。
>グレイズ、今回だけは特別に処分を免除してやる。
>次は無いぞ。グレイルにもよ〜く言っとけ。
>リリアーナ、後できっちり事情を説明してもらうから、よろしく。
>んじゃお先に失礼。」
「え!?有難う御座います!よかったぁ…。」
とりあえずは安堵するグレイズ。
「リリアーナさんだよね。おかげで罰則を免れたよ…ありがとう。」
そしてリリアーナの方に向き、疲れた笑みを浮かべながらお礼を言う。
と、その時窓の所から呆れた声が聞こえた。
「あらあら、お見舞いに来たはずなのに、いったい何がどうなったのかしら?」
「アルナワーズ…。今日『僕が』会うのは初めてだね。というか何やってるんだよー?
さらに言うと少し期待外れみたいな表情してないー?」
グレイズは疲れた表情をしながら言う。
「…で、水面歩行ならぬ空中歩行のやり方はいいから早く脱出しようよ。
フーチさんの荒々しい足音がすぐ近くまで迫ってるからね。」
今もフーチの足音は大きくなってきており、多分2分くらいで来るだろう。
「アルナワーズ、ちょっとそこをどいてくれる?」
アルナワーズが移動したのを確認すると、グレイズは詠唱しながら勢いよく窓から飛び降りる。
「……昇れ風、我の下方より!」
すると、小さく強力な上昇気流が行き成り吹き上げる。
それによりグレイズは減速しながら着地する。
「……っふう。皆ー!上昇気流が消えないうちに早くー!」
【ふむふむ風なら上昇気流かー。俺だったら何やって降ろしたかな!】
【お前なら人任せだ…R。俺なら氷の板を作って出す…。】
「ふーん、一番良いのはBの方法だね…失敗したかな。」
>17>20>21>23
リリアーナは態度と容姿を一変させた命知らずを見て、次にこちらを見て、
「・・・・・・もしかして、お友達?」
俺は仕置きされる道に喜び勇んで飛び込むような馬鹿ではありません。まあイヌ科だけど。
それはない、と手を振って否定してみせ、彼女が少女をたしなめるのを傍観。
するとリリアーナは何を思ったか、
「レイド先生見てみて、猫 耳 の 美少女ゲットしました!」
全員が一瞬固まった。
キサカはとりあえず内心で、
……それが何だと。猫耳はやはりブームですかこの学園?
「でも彼女、地震でショック受けてるしぃ〜レイド先生の剣幕に少し怯えているみたいなんですぅ〜。
かわいそうだから男子寮の外に連れ出しますね〜ん」
そしてリリアーナは一行を見渡し、少し悪戯っぽく笑ってみせる。
「それにほら、そろそろフーチさんが駆けつける頃だと思いませ〜ん?リリこわーい☆
もしかしたらこの壁を壊した犯人だと思われて後始末押し付けられるとも限らないしぃ〜?」
……ああもうどうツッコんでいいかわかんないや。
演技にしたってもう少し……まあそれも個性か。価値観の相違。経験則の回答。
レイドという名らしい教師はリリアーナの話に納得したのか、呆れたのか、それとも感動したのか、
「しょうがない…バックレるぞ。
グレイズ、今回だけは特別に処分を免除してやる。
次は無いぞ。グレイルにもよ〜く言っとけ。
リリアーナ、後できっちり事情を説明してもらうから、よろしく。
んじゃお先に失礼。」
つまり俺は免罪。――その心の広さに感謝するとしようかムッツリ先生。
さて、ここから人目を避けてどうやって出ようか、とキサカは思案する。
やはり窓? と無茶を検討するその最中、
「あらあら、お見舞いに来たはずなのに、いったい何がどうなったのかしら?」
後方から何かを隔てたような声が聞こえた。
この感じは外。
――外?
計540度回転(1.5)で更に振り返ってみれば、翼を背に黒長髪の女性が窓から入ってきていた。
キサカは一秒ほどフリーズしてから、
……アル様来たぁ――!?
こここここで御登場ですかようこそいらっしゃいましたと表に出さずうろたえる。
う、うろたえるんじゃあない! ドイツ軍人は(ry
余計な事を考えていただけにデフォで読心されそうで怖い。
身が引き締まる思いでアルナワーズを見ていると、一同を見渡してからまずこちらに視線が来た。
いきなり俺――!? これなんのフラグ?
「キサカ、エスコートお疲れ様。リリィの周りにはトラブルばかり起こるから大変だったでしょう?」
あ、なんか普通の話っぽい。
とりあえずキサカは地を隠さず正直に、
「勿体無いお言葉。――いい体験が出来たし、引き受けてよかったよ」
内容は言わぬが華。
「リリィ。ロックが食堂にいるって聞いたから教えに来たの。さ、行きましょ。これだけの騒ぎだとすぐにフーチさんあたりが飛んでくるわよぉ〜。」
マジで?
段々と状況の説が固まってきた。
・少女はロックの管理外で部屋に放り込まれた?
・ロック自身はどこかに幽閉、または食堂で呑気に食事?
・ロックは少女に何らかの方法で変身させられ、食堂の方は偽物の成り代わり?
言い方は悪いが、話に聞く熱血馬鹿であるロックには、いたいけな少女を自室に置き去りにしていくなどという裏のありそうな行動は出来ないだろう。
拉致監禁なら別だが。
ぐちゃぐちゃと纏まらない思考を何とか形にしていると、少女を人形のように抱き上げたアルナワーズが、窓の外からリリアーナに向かって、
「ほら、せっかくの幻術も解けているし、見つからないように出るには窓からしかないわ〜。
大丈夫、一歩踏み出して、右足が落ちる前に左足を上前方に出し、左足が落ちる前に右足を再度上前方に出す。
これを繰り返せば空中歩行の完成よ〜。
大丈夫、愛の力があればできるわぁ〜。」
これまた古いネタを。ニュートンの法則って知ってます?
でもある程度の粘性があれば、液体の上を走る事も可能だから世界って素敵。
グレイズが起こした上昇気流を、一方向だけの単純な命令なら燃費は良い、と概念的に理解しようとしていると、
『はぁい、キサカ。ありがとぉん。お礼に私たちについてくると面白いものがアリーナ席で見られるかもよぉん。』
この騒動に参加した発端と同じ幻聴が聞こえた。
今度は本気で驚いた。こみ上げた畏怖はフラッシュバックに近い。
ゆっくりと息を整え、思う。
……アリーナ席とは豪勢な事で。
つまり飛び火予備軍。犠牲者筆頭。保健室予約。
いい加減引用は限界だ。先刻ミシュラが無茶な事を言っていたが、物事には対価が必要。
キサカの引用譜は、自由度のために燃費を犠牲にしているのだ。それは揺るがない事実。
――だが関わる。
いざとなったらなりふり構わず逃げよう。そう決めて、キサカはグレイズに続いた。
「悪いが遠慮させてもらうでおじゃるよ」
そういって、キキは火翔を詠唱し、空へ舞い上がる。
「……一足先に食堂へ向わせてもらうでおじゃるよ…そこまで頭の回る奴じゃ、無策で来るとは到底思えんでおじゃる」
クルっとその場で方向転換したときのキキの表情はアルとは真逆の真剣な表情をしていた。
例えるなら『ゴゴゴ』という擬音や、煙草の煙のようなモヤモヤが漂っても馴染むくらいの凄みがあった。
「それにな…麿は…犬が苦手でおじゃる」
幼い頃に野犬に角を齧られ2、3日寝込んだことがあり、それ以来犬を見るただけで冷や汗ものなのだ。
正直、グレイの犬耳を見ただけで滝のように汗が噴出してたぐらいだ。
「………それに…奴は麿の触れられたくない部分に触れたでおじゃるしな」
聞こえないようにボソリと呟くと火の尾を出しながらキキは食堂へ向った。
稲荷寿司を食べるロックの背後から何かが迫っていた。
そいつは息を乱さず、1歩ずつ音を立ててロックへ近づいていくと
肩を二回叩き、ロックを振り向かせた。
振り向いたロックの視線に入るものは鏡に映したようにいる自分の姿である。
「……驚かないということは…殺したと判断しても問題無いでおじゃるな」
食堂の入り口にて、大理石で出来た何かに腰をかけるキキの姿があった。
>27
ところで、キキがつくったロックもいわば偽ロックであるが、
便宜上こちらをキキロックと称することにする。
キキロックに肩を叩かれ、振り向いた偽ロックは驚かなかった。
むしろ、待っていたとばかりの表情で椅子から立ち上がると、キキロックを睨みつけた。
> 「……驚かないということは…殺したと判断しても問題無いでおじゃるな」
このキキの言葉は偽ロックの耳には入らなかったようだ。少なくとも、外見上はそうだ。
というのも、偽ロックはキキロックをすぐさま蹴り飛ばしたのだ。
「はははっ!待っていたぜ変身野朗!まさか、こんなに早く現れるとはな!」
偽ロックは、自分の事を棚にあげてこんな事を言い出した。
しかし、あくまで偽ロックは本物のロックのなりきりをしているのだから、
そういう意味ではごくごく当然の反応には違いなかった。
「稲荷寿司につられたとは言え、俺の前にノコノコ現れたのはうかつだったな!
お前は俺がどんなにすごい奴か知らないんだろう?教えてやるよ!」
偽ロックは親指で自分をびしっとさしながらキキロックに説明を始めた。
「いいか、よく聞け!俺はな…
物理学の成績ランキング 第1位!
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リリアーナに殴られた回数ランキング 第1位!
リリアーナに馬鹿と言われた回数ランキング 第1位!
要するに、この俺が学園のナンバー1だ!!」
偽ロックのこの言葉に嘘は無かった。
「さあ、覚悟しやがれ。この俺が、たっぷりと料理してやるぜぇ!!」
>20
アルの手口と口調を真似て、事態を収拾するべく説得を試みたリリアーナ。
みようみまねだったが、首尾は上々。
>「しょうがない…バックレるぞ。
呆れ半分の複雑そうな表情ながらもレイドは折れてくれた。
グレイズ達のお咎めも無かった事に内心で小躍りする。
(すごい私!偉い私! 頑張った私!!)
自分で自分を誉めていたリリアーナだったが
>「リリアーナ、後できっちり事情を説明してもらうから、よろしく。」
やっぱりそう何もかも上手くはいかないようだ。
「はい・・・」と答えたリリアーナはがっくりと肩を落とした。
>「リリアーナさんだよね。おかげで罰則を免れたよ…ありがとう。」
「え?あ、うん。そっか、良かったわね!」
そういえば彼はさっきから、耳とか髪の色がコロコロ変わってる。
もしかして変身魔法を使えるのだろうか?そう質問しようとした矢先、それは現れた。
>「あらあら、お見舞いに来たはずなのに、いったい何がどうなったのかしら?」
ギャー!!くろいあくまキター!!
声無き悲鳴をあげつつ、リリアーナは思いっきり後ずさりした。
>「キサカ、エスコートお疲れ様。リリィの周りにはトラブルばかり起こるから大変だったでしょう?」
「いや私何にもしてないし!っていうかこれ私のせいじゃないし!」
リリアーナのしどろもどろの説明も、アルは
>「リリィ。ロックが食堂にいるって聞いたから教えに来たの。」という一言で黙らせた。
「ロックが食堂に?」
確かにフーチが駆けつけるのなら、一刻も早く移動すべきだろう。
そんなことを考えていると、なんとアルは少女を掻っ攫うなり、窓から飛び降りてしまった。
>「ほら、せっかくの幻術も解けているし、見つからないように出るには窓からしかないわ〜。
>大丈夫、(中略)これを繰り返せば空中歩行の完成よ〜。
>大丈夫、愛の力があればできるわぁ〜。」
「空中歩行?うん、あるあるあ・・・・・・・って無いわよー!
大体こんな風の中じゃ、飛び降りる時スカートの中身が見えちゃうじゃないのよ!!」
>「…で、水面歩行ならぬ空中歩行のやり方はいいから早く脱出しようよ。
「狼耳少年!人の話を聞きなさいよ!」
びしい!と指差すリリアーナに構わず、狼耳少年は窓から飛び降りた。
下から吹き上げる風が着地の衝撃を和らげている。
>「……っふう。皆ー!上昇気流が消えないうちに早くー!」
「うううぅぅぅぅぅうううう!!何で私ばっかり〜!!」
女の子が気軽に飛び降りる高さではない。だがフーチは怖い。迷っている暇は無い。
リリアーナは滝のような汗を流しつつ、覚悟を決めた。
「狼耳少年、こっち見たらただじゃ済まないわよ!!!」
(一歩踏み出して! 右足が落ちる前に左足を上前方に出し! 左足が落ちる前に・・・・・・)
「やっぱり無理いぃぃぃい――――アルの意地悪うううぅぅぅぅぅぅうう!!」
――――べしょ!
しーん。
「・・・・・・・・・・・・・・。」
リリアーナは何事も無かったようにスカートの裾を直すと、むくっと起き上がった。
「・・・・・・・・・見たわね?」
リリアーナは埃を叩きつつ、グレイズをじと目で睨みつける。
「まあいいわ。助けてくれてありがとう。
でもこれからは魔法の種類を考えるか、もう少し労わってくれると嬉しいわ。それよりも――――・・・」
アルに文句を言おうとしたリリアーナだったが、お姫様抱っこされた上機嫌の少女を見て口を噤んだ。
少女はギズモを抱っこしながら、上機嫌でアルに話し掛けている。
(・・・・・・・・なぁんだ)
この分なら、付き添いがリリアーナでなくても構わないようだ。
そもそも、別にあの子に助けてくれと頼まれたわけでもない。
むしろ最悪の初対面だったリリアーナより、アルの方が適任かもしれない。
>ミシュラさん、ルーさん
リリアーナは降りてきたミシュラとルーに視線を移した。
「心なしか懐かれてない? オウジくん、もしかしてその子知ってるの?」
リリアーナはミシュラが連れている幼女を指差した。
(気のせいかな?何か・・・昨日の野生児に似てるような似てないような・・・?)
だがこんなかわいい服を着ている女の子を、野人と混同しては気の毒というものだ。
「野人が持っていた槍も持っていないようだし、きっと別人よね、うん!――――ああごめん、こっちの話」
リリアーナは誤魔化すように手をぶんぶん振った。
「やっぱりオウジって名前だけあって、女の子に大人気だなぁと思って。
そういえばついこの間告白してた男子がいたんだけど、こっぴどく振られてかわいそうだったな。
オウジ君ファンの子はミーハーそうに見えて意外と一途だからね〜」
>21
「――――言い忘れたけどアル、何かこの子記憶喪失らしいから」
リリアーナは少女に視線を移した。
「この人はアルナワーズ・アル・アジフ。催眠術や他人の深層心理を覗く術に長けているの。
アルならあなたの記憶を取り戻す手助けをしてくれるはずよ。じゃあ幸運を祈るわ」
リリアーナはひらひらと手を振ると、少女に背を向けた。
「レイド先生、寮での出来事は歩きながらお話します。
皆、レモンパイとかぼちゃジュースでよければ奢るわ。キサカさん、バスケット忘れずに持ってきてね」
リリアーナは一方的に会話を切り上げると、食堂に向かってすたすた歩き始めた。
「ロックだって食堂にご飯食べにいけるくらいなら、きっと元気なんだわ。
ああ分かった!きっとロックは昨日のことが恥ずかしくて授業サボったんだわ。そうに決まってる!
あー馬鹿馬鹿しい。一瞬たりとも女の子をロックだと勘違いするなんて」
リリアーナはなにやらブツブツ呟いている。
「まあ別にロックが部屋に女の子を連れ込もうと何しようと、私にはぜんっぜん!関係ないけど!」
>>12 >>17 >>21 >>23 レイド先生に見たこともない幼女を渡される。
外傷がないかと言われたので一応のこと確かめてみるが
特に問題ないようだ。幼女に何か物欲しそうに見つめられたので、
ミシュラは何かないかとポケットを探る、するとキャラメルが出てきたので少女の口に入れる。
「…いつ買ったんだろうか…覚えがない……」
しかし、それにしても美味しそう食べてるのを見ているとどうでもよくなってくる。
>「それにほら、そろそろフーチさんが駆けつける頃だと思いませ〜ん?リリこわーい☆
>もしかしたらこの壁を壊した犯人だと思われて後始末押し付けられるとも限らないしぃ〜?」
「それはまずいな……あういうタイプの人間は偏屈でどうしようもない。
事情など言う暇もなく俺らのせいになるだろうな。」
あまり時間というものは残されていない。今にもすごい剣幕でここに来るか分からないからだ。
すると窓からアルナワーズが見える。この状況ももしかしたらアルナワーズが故意的に…とも考えたが、
ともかく今はそんなことをしている暇などないので黙っていることにした。
>「……っふう。皆ー!上昇気流が消えないうちに早くー!」
上昇気流を使いグレイズが飛び降りる、そしてそれに続くようにキサラ。
本当なら窓から飛び降りるのはあまり好きではないが、フーチの足音はどんどん大きくなっている。
ミシュラはキャラメルを舐めている幼女を抱きかかえ少し助走をつけ思いっきり窓から飛ぶ。
>>29>>30 上昇気流のおかげもあってか非常にうまく着地できた。
足首が少し心配だったが特にいためている様子もない。
ミシュラは抱きかかえている幼女を降ろそうとするが、降りる気はないといった感じで
ミシュラに?まってキャラメルを食べている。
>「心なしか懐かれてない?オウジくん、もしかしてその子知ってるの?」
「いや、レイド先生から渡されたんだ。俺自身はこの子のことは知らないな。
というか…懐かれているのか?」
ミシュラはキャラメルを食べきってまた物欲しそうにしている幼女の口に、
もう一個キャラメルを食べさせる。これを見る限り懐かれているというよりは餌付けしているように感じる。
>「やっぱりオウジって名前だけあって、女の子に大人気だなぁと思って。
>そういえばついこの間告白してた男子がいたんだけど、こっぴどく振られてかわいそうだったな。
>オウジ君ファンの子はミーハーそうに見えて意外と一途だからね〜」
(言えんな、今更俺の名前はオウジじゃないなど……)
「さて、どうするか、プリントは幸い部屋から持ってきたが…」
するとリリアーナは青い瞳の少女をアルナワーズに託すとロックに会うために食堂に向かう。
>「皆、レモンパイとかぼちゃジュースでよければ奢るわ。キサカさん、バスケット忘れずに持ってきてね」
その時、抱えている幼女のお腹がグ〜ッと鳴り始める。
「ロックにプリントも渡さねばならんし……ここは好意に甘えて奢ってもらうとしようか。」
そう言ってミシュラもリリアーナの後ろに付いていくことにした。
>21>「あらあら、お見舞いに来たはずなのに、いったい何がどうなったのかしら?」
……やっぱりお前が一枚噛んでたか…。
何がどうなってるのかは俺が聞きたいっての。
多分、今現在此処に居る連中の中で状況を一番理解出来てないのは俺だ。(幼女除く)
まあ良い、とりあえずアルナワーズは無視だ。
アルナワーズに関わると俺でさえロクな目に遇いかねん。
この学園の暗黙の了解みたいなもんだ。
頭がキレすぎるってのも問題だな、ったく…。
俺はひとまず危険区域から脱け出す事に成功した。
>30>「レイド先生、寮での出来事は歩きながらお話します。」
お。
お前らも無事に脱出したみたいだな。
良かった良かった。
「よ〜し洗いざらい正直に話せよ?
嘘ついたら……」
俺は歩きながらポケットから銃を取り出し銃口をリリアーナに向ける。
「……クククッ。冗談だよ、冗談。そんな顔すんなって。
リリアーナは俺に嘘なんかつかないもんな〜?」
>25 >29-30 >31 >32
グレイズが降りてからキサカが続く。
彼も軽やかに降りれている。
だが、問題なのは次の女性―――リリアーナである。
「(あ、やっぱり失敗だったなぁ…女の子がいるの忘れてたよー。)」
女生徒、服装はスカート。それで窓から降りれば…言うまでも無い。
>「狼耳少年、こっち見たらただじゃ済まないわよ!!!」
彼女が降りる直前、グレイズは叱咤された。
「…ごめんなさい。」
【迂闊だったな…。】
【プクククク、面白ェー!】
「うるさい!R!」
そうこう言っているうちにリリアーナが降りる。
足を前に出したりしている。空中歩行をやろうとしているのだろう。
>「やっぱり無理いぃぃぃい――――アルの意地悪うううぅぅぅぅぅぅうう!!」
「アルナワーズの言った事信じたの!?――あ。」
直後、べしょというあまり気分のよくない音が聞こえた。
リリアーナが地面に衝突した音である。
数秒間、広場は静寂に包まれた。だが、
>リリアーナは何事も無かったようにスカートの裾を直すと、むくっと起き上がった。
>「・・・・・・・・・見たわね?」
ここで「何を?」というツッコミを入れてはいけない。それは暗黙の了か…
「…何を見たと?」
…入れてしまった。が、呟いた程度なので彼女には聞こえてはいない。
>「まあいいわ。助けてくれてありがとう。
> でもこれからは魔法の種類を考えるか、もう少し労わってくれると嬉しいわ。」
「…ごめんなさい。今度からは気をつけるよ…。」
苦笑しながら詫びるグレイズ。
すぐ後にミシュラが降りてくる。
何故か幼女…ゲフン、少女を抱きながら。
「この子どうしたんだろう?何処にいたんだろう?」
【あー…センセーをぶっ飛ばしたときに巻き込まれてた子じゃん!】
「ふーん…って馬鹿!謝らなきゃ…って、アレ?」
リリアーナがミシュラに話している。
だが、グレイズは何か違和感を感じる。
「…彼って、ミシュラ・キャパシェンだよね?ファンクラブもあるって言う噂の。」
【そうだな…どうした?】
「いつからオウジって名前になったのかな。」
【ファンクラブで付けたあだ名らしい…。】
そんなこんなしていると、なんだか無駄に物騒な雰囲気を纏っているレイドも合流していた。
そしてリリアーナが一声。
>「皆、レモンパイとかぼちゃジュースでよければ奢るわ。」
>「ロックだって食堂にご飯食べに(中略)私にはぜんっぜん!関係ないけど!」
…なにやら最後は独り言を呟いているようだが、普通に聞こえている。
「(ロックの事がそんなに心配なのかな?)…やることもないし、ついていこうかな?R、B。」
【構わないが……。】
【オッケーオッケーバリバリオッケーだぜー!】
3人(内2名幽体、1名身体)で小会議をした後、グレイズも彼女らについていった。
>29>30>31
足首から背中まで全身の筋肉と関節を使い、体を押し潰すように衝撃を和らげながら、
吹き上がる気流の揚力で減速、キサカは大した音も立てず地面に降りる。
悲鳴と共に「落ちた」リリアーナをどうする事もできず、
緩衝方法なんていくらでもあるだろうに、と半ば呆れながらも、
何事も無かったかのように立ち上がった彼女を見て一息。
足をばたつかせていたのが凄く滑稽だった事をそっと胸に仕舞う。
「・・・・・・・・・見たわね?」
残念ながら位置的に無理だった。
続いて幼女と共にミシュラが降りてくる。
幼女は機嫌良さそうに何かを食べており、それを複雑そうな顔でミシュラが抱えていた。
すごく……ロr余計な事を言わないのも礼儀。
「心なしか懐かれてない? オウジくん、もしかしてその子知ってるの?」
「いや、レイド先生から渡されたんだ。俺自身はこの子のことは知らないな。
というか…懐かれているのか?」
懐かれている様に見えます。
「やっぱりオウジって名前だけあって、女の子に大人気だなぁと思って。
そういえばついこの間告白してた男子がいたんだけど、こっぴどく振られてかわいそうだったな。
オウジ君ファンの子はミーハーそうに見えて意外と一途だからね〜」
ふ、とミシュラの表情が僅かに暗くなったのは気のせいだろうか。
とにかく、この光景を何とかしてファンの皆様に伝えたい。アングルによってはゴシップ新聞に売れる。
二股疑惑でリリアーナ氏スキャンダル発覚。一面決定。告白上映の悪夢再び。
空想にふけっているとレイドが合流。
リリアーナはアルナワーズに少女の事情を掻い摘んで説明し、食堂の方向に歩き始める。
「レイド先生、寮での出来事は歩きながらお話します。
皆、レモンパイとかぼちゃジュースでよければ奢るわ。キサカさん、バスケット忘れずに持ってきてね」
アッー!
「……急いで取ってきます……」
自虐的な狼少年のインパクトが強すぎて記憶から消し飛んでいた。
軽く駆け出しながら、半分は自分に、半分は他者(複数)に向けて、キサカは胸中で叫ぶ。
__ l 〃 --+-- ノ‐+− _⊥- 、ヾ ┃┃
´ , '~l~ヽ ト、 _く,ム ‐+‐ ノ l 、________ ┃┃
、__ ヽ_ノ ノ | l三l三l ‐‐┴‐‐ ´ `′ ア ツ ・ .・
, -―‐- 、_ ,__,、__, -=―=-.、__,、___,
/'シ -==ヾ ` 、 \ ノ::::::::V::::::::゙、 /
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((| ● ● ),)').) ヾ;「'VWWWWV|;;/
))⊃ 、_,、_, ⊂⊃川( /⌒ヽL/WWWWN」 /⌒ヽ
/⌒ヽj|l\ ゝ._) シノ ?/⌒i:::::;;ノ~- _ノハヽ_ -~l;;;;:::::::::l
\ /:::ヽ,_、>、 __ , /メ,_、/::::::/''''' ー、_ ,−' , ""''';
ヾ::::ヾ ?《、__》 〉 人::::::∧\ == == / 、 ノ.l
別に行く先のものを暗黒空間にバラ撒いたりはしないが。
>22
初めて見せるブランエン(仮)の笑顔に満足しながら着地。
ゆっくりと立たせながら質問に答える。その子はギズモよぉん。
「あら、そんなに気に入ってくれたなんてうれしいわぁ〜。
でも私のじゃないの。フリージアって子の何だけど・・・いないわねえ。」
ギズモと合流した際に、フリージアがロックを探しに男子寮に来ている旨を聞いていたので近くにいるはず・・・
そう思いながら辺りを見回すがフリージアの姿は見つけることはできなかった。
「ギズモ、あなたフリージアとファミリア(使い魔)契約しているのなら主人とテレパシーくらいできるんじゃないの?」
首をかしげながら覗き込むようにギズモに尋ねる。
>23>28>29
その後降りてきたグレイズが上昇気流を発生させ、後続を促すのを見て笑みを押し殺すことはできなかった。
グレイズは意図したことではないだろうが、結果は確実についてくるのだから。
その後キサカが降りてきて、リリアーナが続く。
お約束の王道を地で行くリリアーナの着地は予想の結果と寸分もたがわぬものだ。
ニヤニヤとしながら肘でグレイズを突っつく。
「期待はずれ?とんでもないわぁ〜。」
密かにそんなことをしていると、リリアーナがブランエン(仮)について説明をする。
>「――――言い忘れたけどアル、何かこの子記憶喪失らしいから」
「あらまあ、そうなのぉ〜。」
あらかたの事情はチャネリングによって把握しているが、勿論そんな素振りは見せない。
大げさに驚いた振りをしてみせる。
リリアーナはアルナワーズがブランエン(仮)の記憶喪失を治療することを願っているだろう。
だが、アルナワーズはそれを治療対象とは見ていない。
アルナワーズにとっては面白爆弾の【信管】としか映っていないのだから。
ただ、リリアーナは世話好きというより、奉仕する事に己の存在意義を見出しているところがある。
そんなリリアーナからブランエン(仮)を取り上げるということは、少々拙かったかと内心舌打ち。
しかもここに至っては返しても意味はないだろう。
リリアーナを玩具にすることに歓びを感じているアルナワーズではあるが、傷つけるのは本位ではないのだ。
「ええ、わかったわぁ〜。多分手伝ってもらうことがあると思うけど、そのときは宜しくねぇん。」
そんなわけで、快く承諾の返答をしておくに留まるのだった。
>31>32>33>34
その後、リリアーナはロックの居場所がわかったことで安心したのか、みんなで食堂へと行くことを提案。
それに従いぞろぞろと歩いていく。
ミシュラがなぜか幼女を連れていたりすることも気になるが、今はあえて気にしないでおこう。
『リリアーナとミシュラに隠し子発覚?』
『微妙な表情変化に見る王子キサラのリリアーナへの秘めた想い』
などというタイトルをぐっと頭の隅へと押しやる。
それより優先事項があるのだから。
レイドが職務を全うしようとすることを何とか妨げようと考えを巡らせているのだ。
巡らせた挙句、レイドを妨害するより、リリアーナを暴走させるほうが手っ取り早いという結論にたどり着いた。
バスケットを忘れたと走って行ったキサカを見送った後、リリアーナへと視線を移動させる。
その表情から見て取れるのは、安堵・怒り・困惑・嫉妬・戸惑い・・・そして、寂しさ。
「リリィ、悪いけど私は先に行くわ。
ロックの場所を小耳に挟んだ時、キキも一緒だったんだけど・・・
鬼気迫るオーラを醸し出しながら飛んで行っちゃったからちょっと心配だから〜。
喧嘩でもしてなければいいけどぉん。」
これだけ言えば十分だろう。
ロックの場所を知ったキキが怒って飛び出す。
それだけで食堂のロックが偽者かもしれないという可能性を示唆するのに十分だ。
そして、それに気づけばリリィは悠長に歩いてなどいられないだろうから。
「そういうことは先に言え!」と言わせる隙を作るほど迂闊ではない。
「ギズモをちゃんと抱いていてねえん。」
安心させるようにブランエン(仮)に囁き抱えると、あっという間に飛び去ってしまった。
食堂のロックが本物か偽者かはわからない。
偽者だとすると、本物がどこにいるかも。そしてブランエン(仮)の正体も。
わからないことが多すぎるが、だからこそ、楽しいのだ。アルナワーズは飛びながらこれからの接触で起こる面白イベントに思いをはせていた。
>31 >33
>「ロックにプリントも渡さねばならんし……ここは好意に甘えて奢ってもらうとしようか。」
>「…やることもないし、ついていこうかな?R、B。」
うんうん、と頷くリリアーナ。
「了解〜。あの部屋の惨状じゃドサクサにまぎれてプリント無くなりそうだしね」
「それと狼耳少年、私はリリアーナよ、よろしくね。
ところでさっきから気になってたんだけど、あなたさっきから誰と喋ってるの?」
>34
単なる雑談の延長でバスケットの話をしたのだが、話題にした途端キサカの顔が強張った。
>「……急いで取ってきます……」
「あっ?! いやキサカさん、バスケットの中身も皆に振舞おうと思っただけで別に取りに行くほどじゃ・・・・・。
あーあ、行っちゃった。フーチさんと鉢合わせにならなきゃいいんだけど」
>32
キサカを見送ったリリアーナ達は、ぞろぞろと移動を始めた。
>俺は歩きながらポケットから銃を取り出し銃口をリリアーナに向ける。
「ひどい・・・レイド先生が私のこと疑った・・・・・・・・」
レイドに銃口を向けられ、リリアーナはうるっと目を潤ませた。かなりショックを受けているようだ。
>「……クククッ。冗談だよ、冗談。そんな顔すんなって。
リリアーナは俺に嘘なんかつかないもんな〜?」
>「アルじゃあるまいし!! それに私はレイド先生のこと尊敬してるし大好きだもん!
・・・・・・・でも、そういえば最近フリージアにアルの影響受けてると言われたっけ・・・」
もしかしてブラック化してる?と考え、リリアーナは盛大に落ち込んだ。
―――リリアーナの口ぶりではまるでアルが嘘つきのようだが、実のところアルは真実しか言わない。
ただ、事実を誤認させるような言い方を好むだけであることを、蛇足ながら付け加えておく。
>36
「ああ、すみませんレイド先生。男子寮であった事を説明するんでしたよね?」
どうにか気を取り直し、リリアーナは男子寮での事を話そうとした。
「先生、実は私、ロックのおm」
>「リリィ、悪いけど私は先に行くわ。
>ロックの場所を小耳に挟んだ時、キキも一緒だったんだけど・・・
>鬼気迫るオーラを醸し出しながら飛んで行っちゃったからちょっと心配だから〜。
>喧嘩でもしてなければいいけどぉん。」
そういい残すと、アルは少女とギズモを連れてあっという間に飛び去ってしまった。
後に残されたのは、大口を開けてポカーンとしているリリアーナ。
「そういう大事なことをどうして先に言わないのよ ――――――― っ!!
大変だわ、キキさんはきっとロックが偽者だと疑ってるのよ!止めなくちゃ!!
皆、悪いけど私先に食堂に行くから!レイド先生、話はまた後で!!」
そういい残すなり、リリアーナは猛ダッシュで走り始めた。
食堂の中では何か揉め事が起きているようだ。
そろそろ込み合う時間だけあって、入り口には野次馬が集まり始めていた。
「ちょっとごめん、通してくれる? ――――ロック、 キキさーん!!」
生徒達をかきわけ、どうにかリリアーナは食堂へとたどり着いた。
>27-28
そこで見たものとは――――。
>「さあ、覚悟しやがれ。この俺が、たっぷりと料理してやるぜぇ!!」
「ロ、ロックが二人?」
リリアーナは二人のロックを交互に見比べ、困惑しきった表情を浮かべた。
にっくきレイドの弾丸をくらって、地面を這いずり周囲を威嚇すること数刻。
ようやく重力の効果が消えて自由の身になり、「むきー!」と猿のごとく吼えた。
思うことはただひとつ、こんな目に会わせたあの下郎に『あっ』と言わせて土下座で謝らせる事。
ぎしりと鳴らす歯と復讐に燃えてぎらついた眼が、この吸血鬼が本気であることが伺えよう。
まだかすかに残るレイドの血の匂いを犬のように嗅ぎ取って憎い敵の消息を追う。
時にあらぬ方向へ行ったり、人に聞いたりしながらとうとう男子寮へとたどり着いた。
日差しがきついところは気の利かせたオルビアから譲りうけた七つ道具のひとつ、小さな傘があったため難なく通ることができた。
「んむ?」
69号室…つまりロックの部屋前でフーチと黒装束を着た妖しい五人の軍団が話し合っている。
この五人こそ男子寮での治安維持部隊『隠密魔法戦隊』の方々である。
激情をあらわにするフーチに対して、冷静沈着な五人は静かに部屋の現場検証と生徒の聞き込みの結果を報告していた。
さてこれから彼らはどう行動していくのか?気になるが、事件について事情も知らぬヴァンにはあまり関係のないこと。
ハテナと疑問を浮かべるものの、いまはレイドへの復讐のほうが先であることを思い出し捜索開始した。
腹が減っては戦はできぬ。
結局レイドの行方を追ってはいるが、その姿を確認できぬままでとうとう空腹も我慢の限界に達した。
出発の際にオルビアより『食事をとるなら食堂へ行くのがおすすめです』といわれているので地図を頼りに食堂へ。
「そこの人間、血をよこせ」
>「なんだい突然?」
おばちゃんの疑問もしょうがない。
メニューにのっていない隠しメニューならば確かに存在するが、小さい子供が人間の食べ物でない『血液』を注文してきたのだから。
>「血ならあそこに血気盛んなのが複数いるから、言うならあいつらにいいな」
おばちゃんが大声が聞こえてくる騒動の中心部を指差す。
そこには偽ロックとキキが対峙していて、険悪な空気が漂う嵐の真っ只中であった。
「わかった。
礼を言うぞ人間」
>28
人の波が邪魔だったので空を飛行することにより食堂内を移動する。
>「さあ、覚悟しやがれ。この俺が、たっぷりと料理してやるぜぇ!!」
いまにも決闘開始しそうな雰囲気に「血をよこせ」と割り込むことができない。
仕方が無いと近くの席につき、律儀に事の次第が終わることを待つことにしたようだ。
「はやく終わらないかなー」
足をぶらつかせてまだかまだかと待つ姿はまったく優雅とは言えず、貴族の面影はまったくなかった。
>38>「ああ、すみませんレイド先生。男子寮であった事を説明するんでしたよね?」
そうそう、男子寮であった事を説明するんでしたよ。
>「先生、実は私、ロックのおm」
おm?
オムライスでも作りに行ってたのか?
>「そういう大事な事をどうして先に言わないのよ(中略)レイド先生、話はまた後で!!」
「おっ、おい……アルナワーズの奴、リリアーナに何を吹き込みやがったんだ?
……追いかけるか…。」
リリアーナの後を追いかけ食堂に辿り着く。
そこには対峙している二人のロックの姿があった。
「おいおい…どうなってんだこりゃ?全く状況が掴めん…。
とりあえず止めるか……ん?」
>39あそこの席に座ってるチビ……
>「はやく終わらないかなー」
足をぶらつかせながら席に座っているチビの後頭部に銃を突きつける。
「よお、クソチビ吸血鬼。元気にしてたか〜?
…で、お前こんな所で何してんの?優雅に飯でも食おうとしてる様には見えんな〜。」
偽ロックは周りのギャラリーを全く気にすることなく、
キキが作ったロックに殴りかかっていった。
>34 >35-36 >37-38
>「それと狼耳少年、私はリリアーナよ、よろしくね。
> ところでさっきから気になってたんだけど、あなたさっきから誰と喋ってるの?」
背後に妙な亜人らしきものを出しているように見えるキサカが寮に駆けていくのを見送ってから、グレイズは言う。
「うん、よろしく。狼耳少年って…僕はグレイズ。
あ、そうだなぁ…。じゃあまずは僕自身の説明をしなきゃいけないね。
僕には…ってあらら。レイド先生が先かな?」
とりあえず、歩きながら二人の話を聞いていたが、リリアーナに何か言ってから突然アルナワーズが飛んでいった。
勿論何かというのも聞いていた。
「…キキさんが?」
【なんだかおもしれー展開の予感!?楽しみだ!!】
【自重しろ、阿呆。…アルナワーズのあの笑顔……絶対何かある…。キキか…彼女は聡明そうだったな…。
……もしや、何かに気付いたのか?】
「…って、リリアーナさんッ!?ちょっと待ってーっ!」
ハイウェイスターも吃驚なスピードで走り出したリリアーナ。
すぐにレイドをはじめ、後続も次々と追っていく。
グレイズも勿論追っている。
だが、運動神経は中の上くらいのグレイズでは中々追いつけない。
「…あー!追いつけない!どっちか替わってよー!?」
【よっしゃオッケ【お前だとさっきの二の舞になりかねない…俺が行く。】ちぇー!】
即座にグレイルが出ようとしたが、グレイブに抑えられる。
走りながら瞳と髪の毛が青くなっていき、耳もヒトのものになり、切れ長の目になる。
グレイブの登場である。今は事情が事情につき、学ランの前を開けるだけにしておく。
「さて…スピードを上げるか……。」
>26-27 >28 >38 >39 >40
【走るよりも目の前の地面凍らせてアイススケートで行った方が速いんじゃないかー?これってさー!】
【…その前に魔力が持たないんじゃない?】
「…だな。しかももう食堂に到着だ…。どけ、お前ら……。」
食堂到着。野次馬を掻き分け、そこで見たものは。
>「さあ、覚悟しやがれ。この俺が、たっぷりと料理してやるぜぇ!!」
2人のロックの姿だった。
>「ロ、ロックが二人?」
ちなみに近くでリリアーナも混乱しているようだ。
【ロックが二人…でも、なんか発音が違う気がするなぁ…?】
【気のせいだろーきっとー!】
「…この騒ぎを止めるべき人間のレイドは…ガキに構ってるな……。肝心なときに役に立たない…。」
【そんなこと言ったら駄目じゃん!】
【Rは人の事言えないよ!】
レイドは何処かで見たような子供に構っている。
アルナワーズは騒ぎを起こす方の人間だ。治める方ではない。
キサカは問題外。恐らく自分らよりも早く此処に着く事は不可能だ。
じゃあ誰か。キキか。否、自分らが治めるしかない。
>41
とその時、片方のロック(関係上こちらをロック1とする)がもう片方のロック(関係上こちらをロック2とry)に殴りかかっていった。
【え、ちょ、なになになにが起きる!?】
「五月蝿い…黙っていろ…!”脚を凍らせ止めよ、我の眼前の幾人の”……!」
グレイブが詠唱、目の前の2人のロックの脚を瞬時に凍らせ、氷で地面に固定する。
ちなみにロック2はまだ何もしていなかったが、念の為にという事で止めた。ちなみに他にも何人か凍りついている。
グレイブはロック達が混乱している中に歩き出る。
「…さて……どっちが偽者か……いや、どっちも偽者か?
…おい、リリアーナ。」
ここで忘れてはいけない。彼らはさっき初めて会った。なのに呼び捨てである。なんと図々しい。
【初対面で呼び捨ては駄目なんだけどなぁ。】
「……こいつらが本物か偽者か、判断してもらう…。
おまえらは噂に聞くと『公認カップル』らしいしな。…本物くらいわかるだろう
「・・・ふう、ここに戻ってくるのも・・・久し振り・・・かな」
学園の男子寮前、一見するとまるで華奢な女性のような少年、キサラ・トールフェルドは立っていた
マリアベルの一件で、なりゆきでこの学園に編入したキサラは、しばらく初期研修として、魔法の基礎中の基礎から学んでいたのだ
その結果、彼には特に氷の魔法の適正があり、しかも素質から見れば、フリージア達に負けず劣らず、もしくはそれ以上の素質を秘めていたことが判明し、
氷の魔法のほか、闇属性の魔法を覚えて、学園に帰ってきたのだ
なお、キサラでも少しキツいと思うほどのなかなかのスパルタ特訓だったのだが、本人にその自覚はなかったらしい
・・・まあ、もっとも、相変わらず人と関り合うのがあまり得意ではないのと、女性が異常なまでに苦手なのも変わりないようだが
そして彼、久々に学園に戻ってきたはいいが、そのため当然現在の学園の状況はつかめていない
そう、たとえこの学園が今大変なことになっていても、彼はまったく何がどうなっているのか知らないのである
「・・・えっと・・・まず寮の先生に部屋の場所を聞いて・・・それが終わったら・・・」
当の本人は入寮やらなんやらで一応忙しいようだが、このあとそれどころじゃなくなることを、当然今は知る由もなく、一人平和に寮の玄関をくぐるのであった
「………ほぅ、あくまでも本人として話を進める気でおじゃるか…」
ロックの反応を確認し、座ったままの状態で指揮者のように両腕を振り上げるとキキロックは両足を振り回して飛び起きた。
そして、何も言わず一歩一歩静かにロックへと歩み寄る。
「……口上は済んだか」と言わんばかりにキキロックはロックを睨んだ。
お互いがお互いを射程距離に入れ、場には決闘時に流れる独特の緊張感が漂う。
ここでキキが先手を打たないのはお国柄なのか?それとも家庭的(主に父親)事情なのか?
キキの脳内には、「先に動けば負ける」その言葉で一杯だった。
だが、相手は自信があるのか、それともそこまで考えていないのか定かではないがロックは拳を繰り出した。
もちろん、キキロックも反撃の蹴りを放とうとした…その時
「……ッ!」
歯車に何か挟まったように、不規則に振っていた腕が止まり、ロックの顔面を捉える右足は爪先が少し浮いた状態で氷漬けにされている。
周りを見回すとまた先程とは容姿の違うグレイがリリアーナに話しかけている様が見えた。
「………決闘の最中に割り込むなど…少々…いや、大分無粋でおじゃるぞ」
立ち上がりながら、グレイとリリアーナに聞こえるよう大声
を出し、火翔を用いて近づきたかったがそうもいかない。
何せ、今は犬耳を生やしていないものの「狼男」がリリアーナの近くにいるからだ。
しかし、あの様子を見ろ…近づいてどちらが本物か確かめるつもりだ。
それはつまり、奴がリリアーナに何かする最高のチャンスだと言うことを意味する。
催眠、幻術…最悪殺害すら可能な距離だ。
「………決闘の真っ最中でおじゃるぞ…それ以上近づくでない」
なら、これしか無い…が、すんなりと引き下がるような聞き分けのいい者でも無いだろう。
「……それにな…本物だとしても、一度こうでもしないと麿の気がすまないでおじゃるよ」
>12>31
まるで借りてきた猫のようにあっち(レイド先生)からこっち(ミシュラ)へと渡されるルー。
一応大人しくはしているのだが、ふとした拍子にミシュラと目が合ってしまった。
――野生の世界では視線が合うということは、一種の宣戦布告に等しい意味を持つ。
故に野生の獣達は視線を逸らした側が襲われる事になる事を忘れてはならない。
―ミンメイブックス「あにまる★さばいばる〜ボクの無人島漂流記〜」より抜粋―
などという文章をミシュラが思い出したのかはさておき、視線が合った瞬間に
ルーはその青い目をまんまるくして、視線を外そうとしない。
ミシュラがポケットを探ろうとした瞬間、ぴくりと少女の目がそれを捉えたが・・・
キャラメルを放り込まれたので、ルーはとりあえずそれを味わうことにした。
「〜〜♪」
>「…いつ買ったんだろうか…覚えがない……」
男子寮から降りた後も、ミシュラが下ろそうとしているのをルーは理解できていなかったようだ。
またキャラメルをくれたのでもきゅもきゅと味わっている。とても幸せそうな表情をしているのだが
くーきゅるるる、きゅ〜〜z__
根本的にキャラメルで空腹を満たすのは無理があったらしい。
ルーもまたミシュラに抱えられて食堂へ向かう事になった。
(ところでミシュラはルーをどうやって抱きかかえているのだろう?
抱きかかえ方によってはあらぬ誤解を生むやもしれない、という直感がミシュラの脳裏によぎる)
>40
ヴァンが絶え間なくブラブラと動かしている足がぴたりと止まる。
>「よお、クソチビ吸血鬼。元気にしてたか〜?
>…で、お前こんな所で何してんの?優雅に飯でも食おうとしてる様には見えんな〜。」
後頭部にあたる硬く冷たいものは憎き報復の相手からの不意のアクション。
銃を突きつけるということは、その時点ではまだ撃つ意思がない事を意味している。
「みぃつけた」
虚をつかれるが臆病にあらず、笑みを浮かべるが愚にあらず。
狼が牙を剥くがごとく笑い、眼は獲物を逃がさんと瞳孔を猫科動物のように大きくさせた。
普段より黒く染まった影から蝙蝠の使い魔が無数に飛び交いレイドを怯ませる。
ヴァン自身も大型蝙蝠に変化することで群れの中へ乱舞しかく乱を狙う。
その途中でそこらで拾った適度な大きさの石をレイドの銃口にねじ込むことでちょっとした細工をする。
黒き濁流は巧みに障害物を避けて壁の隙間や窓の外へ逃げ、後には使い魔の蝙蝠も吸血鬼もいなくなった。
静かに吸血鬼の魔手が迫る――。
レイドの背後から空を切る風の音、その音は聞き逃すにしてはあまりに大きすぎである。
影を媒介に隠れしヴァンエレンがうっすらと姿を形作り、荒ぶる爪が刀身殺気を帯びて凶器となり下からえぐるようにレイドを襲ったのである。
しかし、攻撃の対象前で「くう」とお腹が鳴ると大きく軌道を反れて腹を抱えて一言。
「も、もうだめぽ…」
『もう駄目っぽい』の略だと思われる。
「ぐおぉぉ、血をおくれ〜消滅してしまう…」
>45>46
> 「………決闘の最中に割り込むなど…少々…いや、大分無粋でおじゃるぞ」
「そうだ!今転入生がいい事を言ったぞ!」
偽ロックも一緒に怒鳴った。
> 「………決闘の真っ最中でおじゃるぞ…それ以上近づくでない」
「そうだ、そうだ!転入生がさらにいい事を言ったぞ!」
> 「……それにな…本物だとしても、一度こうでもしないと麿の気がすまないでおじゃるよ」
「そうだ、そうだ!転入生………何だって?!」
偽ロックはすっとんきょうな声をあげた。
「お前、もしかして俺から産まれた事を怒ってんのか?」
偽ロックは、まわりからすればかなり意味不明なことを言った。
この言葉の意味はキキとリリアーナにしかわからない。
>43
「貴様!誰だか知らないが、俺とやりたいなら後にしてくれ!
そもそも、『公認カップル』って何の話だよ!天地がひっくりかえっても、
俺とリリアーナがそんな関係になるわけがないだろ!!ぬおおおっ!?」
偽ロックはリリアーナを見てびっくりした。
彼女はずっとグレイの隣に居たのだが、熱くなりすぎて目に入らなかったらしい。
「なんだ、リリアーナ!人間に戻れたのか!いや、それよりも居るなら居るって言ってくれよ!!」
偽ロックはグレイを見た。
「だいたいお前は馬鹿者だ!まだ、両手が動かせるじゃないか!見てろ!」
偽ロックは両掌をキキロックに向けて構えた。そして、呪文を唱える。
「ヘクト・プレッシャー!!」
偽ロックの掌から圧力波が放たれた。簡単に言えば、相手を吹き飛ばしてしまう魔法だ。
>41
二人のロックはギャラリーなどお構いなしに戦っている。
>42
>「…さて……どっちが偽者か……いや、どっちも偽者か? …おい、リリアーナ。」
「何よグレイズ。っていうかまた変身したの?忙しない人ね」
リリアーナは、今はグレイズからグレイブに入れ替わっていると気づいていなかった。
耳こそ人間のように変わっているが、やっぱり何となく狼っぽい感じが残っている。
>45-46
>「………決闘の最中に割り込むなど…少々…いや、大分無粋でおじゃるぞ」
二人居るうち、一方の声を聞き、あら、とリリアーナの眉が上がった。
どうやらロックのうち、片方はキキが化けているようだ。
もう一人のロックが賑やかに同意する。
>「そうだ、そうだ!転入生がさらにいい事を言ったぞ!」
> 「……それにな…本物だとしても、一度こうでもしないと麿の気がすまないでおじゃるよ」
>「お前、もしかして俺から産まれた事を怒ってんのか?」
リリアーナがげんなりとした顔になった。
「・・・・・・・・いや、それは多分違うと思うわよ」
夢幻の世界に囚われていたロックを助けるため、昨日キキは尽力してくれた。
その際キキが作った現実世界と夢幻世界の間の「接点」が、たまたま「ロックの腹部」だっただけの話だ。
「ねえキキさん、何でロックの格好して喧嘩してるの?
とりあえずどっちがどっちか分かりにくいから、元の姿に戻ってくれると嬉しいな」
>43 >49
>「……こいつらが本物か偽者か、判断してもらう…。
>おまえらは噂に聞くと『公認カップル』らしいしな。…本物くらいわかるだろう」
「・・・・・・・・・え?えええ?」
不意打ちを食らったリリアーナは赤面した。
まさかついさっき知り合ったばかりのグレイブにまで公認カップル扱いされるとは。
>「貴様!誰だか知らないが、俺とやりたいなら後にしてくれ!
> そもそも、『公認カップル』って何の話だよ!天地がひっくりかえっても、
> 俺とリリアーナがそんな関係になるわけがないだろ!!」
(・・・・・・・・・・ええ、ええ、そうでしょうとも!!)
「じゃあロック、本命の女の子くらいもっと大事にしてあげたら?
記憶喪失の女の子を、部屋に一人きりで放っておくなんてどういうつもり?」
>「なんだ、リリアーナ!人間に戻れたのか!いや、それよりも居るなら居るって言ってくれよ!!」
ロックは今初めて気が付いた、と言わんばかりにリリアーナに話し掛けてくる。
だがこの言葉を聞いた途端、リリアーナの表情が明らかに変わった。
「居たら悪い?―――っていうか、気安くリリアーナって呼ばないでくれる?」
リリアーナはロックバスターを召喚した。
「私は昨日の時点で人間に戻ってるわ。その事は、居合わせたロックが一番良く知ってる。
ロックの顔してるあなたは誰?」
リリアーナは更に問い詰めようとした。
>48
だが運悪く、ヴァンエレンがリリアーナの側頭部にクリティカルヒットした。
リリアーナは隣に立っていたグレイブを巻きぞえに、床へと倒れ込んだ。
>48>「も、もうだめぽ…」
>「ぐおぉぉ、血をおくれ〜消滅してしまう…」
……こんにゃろ…一瞬焦ったじゃねぇか。
俺は銃口に入った小石を取りながら腹を抱えるクソチビ吸血鬼に話かける。
「ケッケッケ…。不様だな〜クソチビ吸血鬼。
腹が減って動けませ〜んってか?
面倒だな〜吸血鬼ってのは…普通の飯じゃ飢えが凌げないなんてよ。」
あ、やっと石が取れた。
「さて、全く反省の色が見えないクソチビ吸血鬼君には罰が必要だな…。
が、しかし俺だって悪魔じゃない。腹が減って消滅なんて可哀想過ぎる話だ。おい、血が欲しいか?」
当然の如くクソチビ吸血鬼は首を縦に振る。
「よ〜し、ちょっと待ってろよ。俺がとびっきり美味い血を貰ってきてやる。」
俺はニヤニヤしながら食堂のおばちゃんの方へ向かう。
「おばちゃん、トマトジュース1つ。特急で。」
早速貰ったトマトジュースを餓死寸前と言わんばかりの吸血鬼の元に持って行く。
「ほ〜ら美味しいトm…ゲフン、ゲフン。
今採ってきたばかりの美味しい血だ。存分に飲め。罰はそれからだ。
っと、俺はちょっとやる事があるんでな、失礼。」
トマトジュースの入ったコップをテーブルの上に起き、決闘に割り込む。
「お〜しお前ら、動くなよ〜。」
>49>「ヘクト・プレッシャー!!」
ロックがロックに向けて圧力波を放つ。
う〜ん、非常に説明しにくいね。
俺は圧力波を放ったロックに銃口を向ける。
「聞こえなかったのか?俺は動くなと言ったんだ。
次は無いぞ、ロック。それともお前は偽者か?」
>41
二人のロックはギャラリーなどお構いなしに戦っている。
>42
>「…さて……どっちが偽者か……いや、どっちも偽者か? …おい、リリアーナ。」
「何よグレイズ。っていうかまた変身したの?忙しない人ね」
リリアーナは、今はグレイズからグレイブに入れ替わっていると気づいていなかった。
耳こそ人間のように変わっているが、やっぱり何となく狼っぽい感じが残っている。
>45-46
>「………決闘の最中に割り込むなど…少々…いや、大分無粋でおじゃるぞ」
ロックそっくりの人形を操るキキの言葉に、もう一人のロックが賑やかに同意する。
>「そうだ、そうだ!転入生がさらにいい事を言ったぞ!」
> 「……それにな…本物だとしても、一度こうでもしないと麿の気がすまないでおじゃるよ」
>「お前、もしかして俺から産まれた事を怒ってんのか?」
リリアーナがげんなりとした顔になった。
「・・・・・・・・いや、それは多分違うと思うわよ」
夢幻の世界に囚われていたロックを助けるため、昨日キキは尽力してくれた。
その際キキが作った現実世界と夢幻世界の間の「接点」が、たまたま「ロックの腹部」だっただけの話だ。
「ねえキキさん、何でわざわざロックの人形を出して戦ってるの?」
何か思うことがあるのだろうか?
>43 >49
>「……こいつらが本物か偽者か、判断してもらう…。
>おまえらは噂に聞くと『公認カップル』らしいしな。…本物くらいわかるだろう」
「・・・・・・・・・え?えええ?」
不意打ちを食らったリリアーナは赤面した。
まさかついさっき知り合ったばかりのグレイブにまで公認カップル扱いされるとは。
>「貴様!誰だか知らないが、俺とやりたいなら後にしてくれ!
> そもそも、『公認カップル』って何の話だよ!天地がひっくりかえっても、
> 俺とリリアーナがそんな関係になるわけがないだろ!!」
(・・・・・・・・・・ええ、ええ、そうでしょうとも!!)
「じゃあロック、部屋に連れ込んでいたあの猫耳美少女は本命なのよね?
だったらもっと大事にしてあげたら?
記憶喪失の女の子を、部屋に一人きりで放っておくなんてどういうつもり?」
>「なんだ、リリアーナ!人間に戻れたのか!いや、それよりも居るなら居るって言ってくれよ!!」
ロックは今初めて気が付いた、と言わんばかりにリリアーナに話し掛けてくる。
だがこの言葉を聞いた途端、リリアーナの表情が明らかに変わった。
「居たら悪い?―――っていうか、気安くリリアーナって呼ばないでくれる?」
リリアーナはロックバスターを召喚した。
「私は昨日の時点で人間に戻ってるわ。その事は、居合わせたロックが一番良く知ってる。
ロックの顔してるあなたは誰?」
リリアーナは更に問い詰めようとした。
>48
だが運悪く、ヴァンエレンがリリアーナの側頭部にクリティカルヒットした。
リリアーナは隣に立っていたグレイブを巻きぞえに転んでしまった。
>「ヘクト・プレッシャー!!」
「さあ、いまよ。さん、はい!」
ロックから放たれた圧力波に衝撃波がぶつかり、キキの目の前で空中で破裂する。
いつの間にか人ごみ最前列に、アルナワーズに手を添えられたブランエン(仮)が杖を突きつけて立っていた。
#################################################
一足先に食堂に着き、人ごみにまぎれていたアルナワーズとブランエン(仮)&ギズモ。
二人のロックの決闘を傍観しながら説明をしていたのだ。
決闘をしているのがロックであり、ブランエン(仮)がいた部屋の主だと。
どちらが偽者かはわからないが、何らかの事情を知っているであろうということも。
#################################################
リリアーナたちが食堂に入り、グレイズが決闘に割って入ったのを見て準備に入っていたのだ。
そして今、術は発動する。
食堂を飛び回る黒い蝙蝠たちが見る間にピンク色になっていく。
それは徐々に広がりやがて食堂全体を桜吹雪の風景へと変えていくのだ。
だが、桜吹雪も風景も長くは持たず、天井には巨大な満月、付加一面には風にそよぐススキが立ち並ぶ。
「風に舞う桜吹雪!月夜のススキ!とっても粋で素敵だわぁ。
でも・・・そんな粋な風景も塗りつぶすものがある・・・それは紅蓮の炎!」
芝居がかった台詞と共に、食堂はあっという間に逆巻く炎の海へと変わる。
勿論幻術による映像投射なので熱はない。
「決闘に水を挿すのは無粋の極み。
でも、その極みすら乗り越えるのが女の情念!
この炎はリリィの嫉妬の炎なのよぉ!・・・あら?」
仰々しく宣言に追従するように炎の竜巻がリリアーナの背後に立つのだが、肝心のリリアーナの姿がない。
それもそのはず、おなかをすかしたヴァンエレンの墜落の巻き添えを喰らって床に付しているのだから。
間の抜けた空気が食堂を支配するが、ケホンケホンと咳払いをして仕切りなおし、言葉を続ける。
「キキ、ごめんなさい。悪いけどこちらを先に済まさせて頂戴?
この偽ロックを煮て焼こうがどうしようがかまわないけれど、その後じゃこちらの用事ができなくなるもの。」
申し訳なさそうにキキに話すと、偽ロックへと向きかえる。
食堂についてから二人のロックを観察していたのだ。
片方のロックはキキの操演術の傀儡であるのはわかっている。
だが、もう片方のロックは仕草、反応、どれをとってもロックそのものだった。
唯一つ、致命的な間違いを除いては。
「レイド先生、このロックは偽者よ。
あなた、ロックに化ける割にはロックのことを知らないのねえ。
今日授業を休んだロックをお見舞いに男子寮のロックの部屋に行ったリリィは驚きの対面をしたわ。
ロックの部屋に記憶喪失のこの子がいたのだから。
ねえ、あなた、何か事情を知っているのではなくて?」
いつもは言葉が足りないことが多いアルナワーズだが、今日に限って余分なことを言っちゃっているのは気にしてはいけない。
人ごみから一歩前に出て横のブランエン(仮)を満座に紹介しながら偽ロックに問いかけるのであった。
「・・・困ったなぁ・・・」
寮の玄関をくぐったはいいが、何故か学園内を歩き回っているキサラ
どうにも、寮管理人が不在なのか、はたまたキサラが見つけられていないだけか
とにかく、自分の部屋に案内してもらうこともできないので、途方に暮れているのだ
(・・・早いとこ銃のメンテナンスとかしたいんだけどな・・・あとシャワーも浴びたいし・・・)
・・・という願望(?)から、とりあえず人がいそうな場所を探して歩き回っているのである
・・・そして、先程から何やら色々大騒ぎしている食道に向かうのも、ある種当然といえば当然である
「・・・こ、こんにちはー・・・?」
キサラはゆっくり、そっとドアを開ける
食堂に入る際は普通こんにちはとは言わない気もしなくもないが
見ると、中には知ってる顔も知らない顔もいて、挙句の果てにはなぜか顔見知りの・・・確かあれはロック・・・って人だっけ?が2人もいることだ
とりあえず・・・ひとつ確かなことは、また何かに巻き込まれるという、キサラの直感だった
「・・・これって・・・とりあえず・・・修羅場・・・っていうんですよね」
何か勘違いしてる気もするが、そんな修羅場に入っていくキサラであった
>45-46
2人のロックの近く、野次馬達の渦の中心に進み出ると、キキが立ち上がった。
>「………決闘の最中に割り込むなど…少々…いや、大分無粋でおじゃるぞ」
「何?知るか、そんなこと…。」
一触即発のような状態のキキに対し、同じように一触即発の態度で答えるグレイブ。
>「………決闘の真っ最中でおじゃるぞ…それ以上近づくでない」
「…知るか、と言っているだろうが…。知ってるか?一度で良い事を二度言うって事は、そいつが馬鹿だって事だ…。
食堂でこんな真似されたら困る…。」
横でロック1が何か言っているが、完全に無視。
お互いに睨みつけ、今にも『┣¨┣¨┣¨┣¨┣¨』という効果音が出そうな雰囲気で話す。
>「……それにな…本物だとしても、一度こうでもしないと麿の気がすまないでおじゃるよ」
「…だからどうした?やるんだったら他でやれ……。」
【ああ、もう不味いよ!喧嘩腰!?】【おもしれーし、いいじゃん?】
>49 >50 >52
キキとにらみ合っている間、ロック1は勝手に喋っていた。が、ある一言でグレイブはロックのほうへ向いた。
>「……大体お前は馬鹿者だ!まだ、両手が動かせるじゃないか!見てろ!」
ピキリ。少しばかりキレるグレイブ。
「…誰が馬鹿だと?低能…。」
>「お〜しお前ら >「ヘクト・プレッシャー!!」
「!…”立ちはだかれ氷の壁よ、我の――”………っ?」
ロック1がロック2に放った魔法を止めようと詠唱する。
が、突然リリアーナが倒れてきた事により阻止されてしまう。
とりあえずリリアーナを抱きかかえて仰向けに倒れるグレイブ。
…この体勢は誤解されるんじゃないか?
>54
しまった、あたってしまう―――と思ったその瞬間
>「さあ、いまよ。さん、はい!」
掛け声と共に衝撃波が飛び、圧力波が相殺される。
アルナワーズと先程の少女だった。杖を持っている。
そしてアルナワーズの幻術によるパフォーマンスが始まった。
>「風に舞う桜吹雪!月夜のススキ!とっても粋で素敵だわぁ。
>でも・・・そんな粋な風景も塗りつぶすものがある・・・それは紅蓮の炎!」
>「決闘に水を挿すのは無粋の極み。
>でも、その極みすら乗り越えるのが女の情念!
>この炎はリリィの嫉妬の炎なのよぉ!・・・あら?」
野次馬の影に隠れ、見つからなかったようだ。
今の(リリアーナを抱きかかえている)状況ならラッキーと言えるだろう。
妙な雰囲気が食堂を包んだ。
だが、アルナワーズは気を取り直してキキやレイドに話しかける。その間にグレイブは立ち上がる。
騒ぎの中心、ロック1に問いかけるアルナワーズ。
>「ねえ、あなた、何か事情を知っているのではなくて?」
グレイブはアルナワーズ達に近寄り、ロック1に言い放つ。
「…ここから逃げ出せはしない……正直に答えたほうが身の為だぞ…。
ああ、あと俺に馬鹿と言った分 覚 悟 し ろ 。」
…結構キレている模様。
>21>22>35
フリージアは待っていた
69号室から誰かが出てくるのを
フリージアは待っていた
フーケ氏がいなくなるのを
フリージアは待って(ry
「・・・・・・・出てきませんわねえ」
どうやらフリージアは待つことに飽きてきたようだ
「・・・・・・・・・もう帰ろうかしら」
あまりにも飽きてきたのでそんな事を言い出すフリージア
(ギズモ)
「ニンゲンッテ トベルンダ・・・」
空を飛ぶアルナワーズを見てギズモはそう呟いた
69号室へと急いでいたギズモちゃん
気が付いたらアルナワーズが真後ろを飛んでいた
「エトネ エトネ カクカクシカジカナノ」
とりあえず一人よりは二人がいいとアルナワーズと合流し
事情を説明するギズモであった
>「か〜わ〜い〜!あなたのペットなの?」
69号室で見知らぬ女の子に愛でられるギズモ
かわいいといわれてちょっとご満悦である
「エヘヘヘヘ・・・・」
「あら、そんなに気に入ってくれたなんてうれしいわぁ〜。
でも私のじゃないの。フリージアって子の何だけど・・・いないわねえ。」
「・・・オカアサン イナイ」
ギズモも周りを見渡す・・・・がアルナワーズの言うとおりフリージアは発見できなかった
>「ギズモ、あなたフリージアとファミリア(使い魔)契約しているのなら主人とテレパシーくらいできるんじゃないの?」
「・・・・・・・オオ!!」
ぽんっと小さな手を打つギズモ
・・・・・どうやら本気で気が付いていなかったらしい
早速ギズモはテレパシーを試みた・・・・グレムリン語で
「#()'!")"~!)"'(#"!=!#"'#&(""」
(フリージア)
「・・・・?ギズモちゃんの声がしますわね・・・・・・
でも何言ってるかわからないですわ」
とりあえずフリージアは人の言葉で伝えてくれと心に思った
「・・・・え?食堂に集合ですの?わかりましたわ」
そしてフリージアは空飛ぶ雪の結晶に乗り静かに男子寮から飛び立った
ちなみに雪の結晶の底部には色彩の精霊の力を借りて空の色と同じに塗られており
下から見られても下着を見られるなんてことは無い
そして食堂に着いたフリージアが見たものは
対決する二人のロックであった
「ロ、ロックが二人いますわ!?」
あっと驚くフリージア
「ど、どういうことですの!?」
とりあえずわけのわかっていないフリージアは近くにいるものへと詳細を聞くのであった
もう少し前に着いてたらアルナワーズの「レイド先生、このロックは偽者よ」
というセリフが聞けたのに・・・
ちなみにギズモはかわいい女の子に抱きかかえられており
「エヘヘヘヘ・・・・・」
・・・・・・すごく幸せそうです
偽ロックはブランエンを見てびっくりした顔をした。
といっても、これもなりきりの一環で、ロックらしい反応だ。
「なんで皆俺を偽者扱いするんだよ!何か証拠でもあるのか!?」
偽ロックは座っていたブランエンを指差した。
「彼女が俺の部屋に居たって?そんなの知るものか!
俺は彼女の顔を…いや、一応見た事あるけどさ…それはまた別問題で…
とにかく、俺と彼女とは何の関係もないぜ!!どうだ、気がすんだか!!」
今度は倒れているリリアーナを見た。
「おい!相変わらず、おっちょこちょいのリリアーナ!
お前が人間に戻った時に誰が居合わせたか知らないが、
昨日はお前がまだ猫の時に別れただろ!森の中で!
忘れたのか!俺が一緒に寝ようと言ったすぐ後だ!!」
その時、「うわああん」という泣き声が食堂に響き渡った。
偽ロックはびくっとして、そちらに視線を移した。
両手で顔を押さえて泣いていたのはブランエンだった。
「ひどいわ、ロック!私の事を“知らない”だなんて!」
ブランエンは「うわああん」と泣き声をあげながら、指の隙間から偽ロックの様子をうかがった。
実は、ブランエンは嘘泣きをしているのだ。
「私達は恋人同士じゃない!私の事を愛してるって言ってくれたのは嘘だったの?
卒業したら結婚しようと言ったのは、ただの気まぐれだったの?」
「けけけっ…結婚だとぉお!!」
ロックの反応を見て思わず吹き出しそうになるのを我慢しながら、ブランエンは続けた。
「そうよ!今日だって、あなたが帰ってくるのをベッドの上で待ってたんだから!全裸で!」
最後の「全裸で!」の部分は特に効果的だったらしい。
偽ロックのまわりにいるギャラリーの目が、男女問わず険悪なものに変わった。
ブランエンはいい気味だと思った。
>54これはまた随分と派手な登場だこと…。
この派手好きめ…。
>「キキ、ごめんなさい。(中略)その後じゃこちらの用事ができなくなるもの。」
な〜る…もう一人のロックはキキだったのか。
んじゃコイツは誰だ?
外部の人間か?
>「レイド先生、このロックは偽者よ。(中略)ねえ、あなた、何か事情を知っているのではなくて?」
ほ〜…リリアーナはロックのお見舞いに行ったのか。
お熱いことで…。
で、あの娘は何故かロックの部屋に居た、と。
情報提供ありがとう。
アルナワーズは基本的に嘘は言わないからな。
言葉が足りないだけでさ。
>59>「うわああん」
なに、今度は何よ。
>「ひどいわ、ロック!私の事を“知らない”だなんて!」
>「私達は恋人同士じゃない!(中略)
卒業したら結婚しようと言ったのは、ただの気まぐれだったの?」
おいおい…何だかややこしくなってきたなあ、おい。
>「そうよ!(中略)全裸で!」
………問題発言キターーー。
俺は偽ロックに向けていた銃を一旦外し、頭をポリポリと掻く。
「おい偽ロック。お前、…あの娘とどこまでいったんだ?
全裸で待たせる位まで関係が発展してて、何もしてませ〜ん、なんて通じないからな。」
>54
「あいたた・・・・・・ご、ごめんね巻き込んで!」
リリアーナは微かに頬を赤らめながら、グレイズの上から飛びのいた。
「そ、それにしても私、一体何にぶつかったのかな?」
話をそらせようと、リリアーナはキョロキョロした。すると程なく、近くに倒れている子供を発見した。
「ちょっとボク、大丈夫?」
変わった羽根を持っていて、どこかで見たような気がする。でも誰だか思い出せない。
とりあえずリリアーナは、子供をトマトジュースが置いてあるテーブルの上に寝かせた。
「熱は無いし、特に外傷もないわね。疲れて寝てるだけならいいけど・・・・・・。
一応保健室に連れて行ったほうがいいのかしら? ねえ、グレイズはどう思う?・・・グレイズ?」
リリアーナはグレイブをなにげなく見上げて、顔を引きつらせた。
「・・・・・・・・・・もしかして、さっきの事すごーく怒ってる?」
>58-59
>「おい!相変わらず、おっちょこちょいのリリアーナ!
リリアーナの頬が引きつった。本物でもそうでなくても、ロックの顔で言われたくない。
>「昨日はお前がまだ猫の時に別れただろ!森の中で!
> 忘れたのか!俺が一緒に寝ようと言ったすぐ後だ!!」
それでは昨日、ロックがギズモと行動している間に偽者と入れ替わったことになる。
「ギズモ、昨日ロックが野人を保健室に連れて行ったとき、何か不審な点は無かった?
それとロック、あなたは私を人間に戻そうとあんなに意気込んでたはずでしょう?
私を元に戻してコッポーだかカッポーだかを試みるよりも重要なことって、一体何だったの?」
リリアーナはロックに質問したのだが、回答したのは思いも寄らない人物だった。
>「私達は恋人同士じゃない!私の事を愛してるって言ってくれたのは嘘だったの?
> 卒業したら結婚しようと言ったのは、ただの気まぐれだったの?」
>「けけけっ…結婚だとぉお!!」
>「そうよ!今日だって、あなたが帰ってくるのをベッドの上で待ってたんだから!全裸で!」
婚約者が急にロックを訪ねてきたのなら、途中で姿を消したのも頷ける。
その間に偽者とロックが入れ替わったと言う可能性もあるだろう。
そして今の話から、リリアーナ達は黒髪の少女に一杯食わされたと言うのも判明した。
「グレイズ」
リリアーナは、静かにグレイブの肩を叩いた。
例えグレイブがどれほど激怒していたとしても、振り向かせるだけの何かを秘めた声だった。
「悪いけど、私の代理で皆に奢ってくれる?――― 良いわよね?」
リリアーナはロックから視線を外さないまま、グレイブの手に紙幣を何枚か押し込んだ。
リリアーナはロックと食堂の上部を何度か見比べると、天井に向けてロックバスターを何発か撃ち込んだ。
大きなシャンデリアがロックの頭上へと落下した。
たとえ直撃したとしても、本物のロックなら問題無い。
背後のけたたましい落下音を聞きながら、リリアーナはつかつかとブランエン(仮)に歩み寄った。
「昨日の噂を真に受けてしまったのならごめんなさい。でもあれはちょっとした行き違いがあっただけ。
誓って私は、あなたのロックとは何の関係も無いわ。――――だけどね」
リリアーナは平手をブランエン(仮)に振り下ろした。
「婚約者なら婚約者とはっきり言えばいいじゃない!どうして記憶喪失なんて嘘をついたの?!」
リリアーナは珍しく本気で怒っていた。
「 ―――― ねえ、楽しかった?面白かった?
私や皆があなたのことを心配してる間、あなたはずっと内心で嘲笑っていたのよね?」
リリアーナはもう一度平手を振り下ろした。
「あなたは人として最低だわ!顔も見たくない!」
リリアーナは涙声でそう叫ぶと、ブランエンに背を向けた。
先ほどのテーブルへ足早に戻ると、子供を背負って食堂を突っ切っていく。
皆がリリアーナに道を譲ってくれた。
だが顔を挙げる気力も無い。
昨日の今日だ。またこんな騒ぎを起こして、一体どんな目で見られているのやら。
「後の事はグレイズに頼んであるから。皆、悪いけどレモンパイは彼と食べてね」
>59
>「彼女が俺の部屋に居たって?そんなの知るものか!
> 俺は彼女の顔を…いや、一応見た事あるけどさ…それはまた別問題で…
> とにかく、俺と彼女とは何の関係もないぜ!!どうだ、気がすんだか!!」
「……俺は済んでないがな…。」
首の骨、指の骨をコキリコキリと鳴らす。
そして詠唱を始めようとしたとき、
>「うわああん」
泣き声が聞こえた。少し演技臭い泣き声だ。
>「ひどいわ、ロック!私の事を“知らない”だなんて!」
>「私達は恋人同(中略)待ってたんだから!全裸で!」
やはりロック似の少女だった。何故か震えている。
幽体のグレイズが近寄り、指の隙間から覗いてみると、
【……な、泣いてるんじゃなくて笑ってるよ!嘘泣きだぁ!】【うは、コイツすっげー!】
そう、手で覆っている顔には笑いを堪えた顔があった。
>61
>「グレイズ」
リリアーナに肩を叩かれ、グレイブは振り向く。
「……?」
>「悪いけど、私の代理で皆に奢ってくれる?――― 良いわよね?」
有無を言わせぬ口調。手に紙幣を押し込まれた。
リリアーナはグレイブの反応を待たず、ロックの頭上のシャンデリアを撃った。
「……なっ………!」
リリアーナはロックを見ず、少女の方へ歩み寄る。
罵倒をし、平手打ちをし、また同じように罵倒をし、また平手打ちをする。
>「あなたは人として最低だわ!顔も見たくない!」
>リリアーナは涙声でそう叫ぶと、ブランエンに背を向けた。
>先ほどのテーブルへ足早に戻ると、子供を背負って食堂を突っ切っていく。
野次馬達も関係者達も動かなかった。否、動けなかった。
リリアーナの怒りに、呆然と見ているしかなかった。
そんな中いち早く硬直から解けたグレイブ。
【流石に、不味いよなぁ…。コレはさー?】
【…早く、追わなきゃ!替わって!】
「……わかっている…!」
すぐに替わりながら駆け出すグレイ。
食堂を出て、周りを見渡す。
既にリリアーナはいなかった。
「……何処だろう、早く見つけなきゃ…!B、誰かと通信して見つけられない!?」
【生徒の大半が食堂に居た…あいつらも食堂で見かけた。まず無理だ…。】
「…駄目か…。じゃあ何処か、行きそうなところ…何処か、リリアーナさんにとって安心できそうな場所……わからないかな…?」
実は、騒動が起こる少し前にエミューは食堂に来ていた。
メラルにお使いを頼まれ、ついでに食事の金も渡されていたのだ。
そしてエミューはお使いなどは後回しにして先に食事することを選んだのだ。
そして、エミューがもり蕎麦を自分で注文に行き、一人で食べていた。
食堂のおばちゃんもさほど驚いた顔はしていなかった。
注文を使い魔に任せる主人は、多くは無いが二等課生以上になると
けして少ないわけでもないのだ。
そして、氷の幼龍の姿で(どこに収まっているのかはともかく)蕎麦を食べていると、
知った顔が食堂に続々とやってきた。どうも揉め事らしい。
(面倒だがヨ、これをしっかり覚えとかねーと後々面倒だからナ。)
エミューは蕎麦をさっさと食べ終え、水晶球のみの状態に戻ると
野次馬に紛れて状況を見守っていた。ただ、静かに。
色々と邪魔立てが入り、キキの怒りのボルテージも限界に達していた。
だが、たった2発の平手打ちとリリアーナの言葉でその激情は驚くほどの速さで静まっていった。
「あ……え……」
暫く思考が停止して、動けない…グレイがリリアーナを追って食堂を後にした、暫く後キキは落ちてきたシャンデリアに近づき
先ほどとは、冷めた口調でロックに話しかける。
「……まず…麿が御主に怒っていた理由はこの際おいておくとして、御主がリリアーナにした仕打ち
…あれは男…いや、人として最低でおじゃる………
>>59-62 なんだか食堂内がどんどんヒートアップしている様子
キサラはその食堂の入口・・・にすら入っておらず、一度は開けたドアを閉め、ドアのすぐそばの壁によりかかって、中の様子に聞き耳をたてていた
何故中に入らないか?それはキサラにそこまでの勇気はない、というか、面倒事にまた巻き込まれるのが嫌というか、要はそんな感じなのである
>>61 すると突然、数発の発砲音、そして何かガラスの割れるような音がする
キサラは思わず耳をふさぐが、中で聞き覚えのある声が聞こえてきたので、それを解除した
(あの声って・・・リリアーナさん?)
その様子に、ドアを開けて中の様子を伺おうかと思ったが、その前にドアが開いた
中からリリアーナが出てきたのである
「あ・・・リリアーナさ・・・」
と声をかけた(というには微妙な声量だ)が、リリアーナは自分の存在に気付くことなく、顔を下に向けたまま食堂を出ていく
(・・・何か・・・あったのかな)
キサラはリリアーナの後を追う
状況は全然わからない
だが、以前キサラがリリアーナ達と敵対したとき、自分を助けてくれたのは、リリアーナだ
だからなのかどうなのか、彼は少しでもリリアーナの助けになりたいと思っての行動だった
>60
> 「おい偽ロック。お前、…あの娘とどこまでいったんだ?」
「俺は彼女と一緒にどこにも行ってませんよ!」
と偽ロックは叫んだが、レイドに聞こえたかどうかは正直怪しい。
>61
なぜなら、その直後に偽ロックの上にシャンデリアが落ちてきたからだ。
偽ロックは命の危険を感じたが、逃げるわけにはいかない。
それは、本来のロックの能力を超えてしまうからだ。
ロックならきっと、堂々とこれを全力で受け止めるだろう。
そしてシャンデリアは落ちた。
>64
> 「……まず…麿が御主に怒っていた理由はこの際おいておくとして、御主がリリアーナにした仕打ち
> …あれは男…いや、人として最低でおじゃる……… 」
シャンデリアの下敷きになった偽ロックは、それを聞いても一言も言い返さなかった。
いや、聞いているかどうかも怪しい。
偽ロックは目をつぶり、ピクリとも動かなかった。
偽ロックの中の人こと、コンコンは失敗したのだ。
> たとえ直撃したとしても、本物のロックなら問題無い。
そうリリアーナが考えたのはわけがある。本物のロックはハードニングという、
体を鉄のように硬くする魔法が使えるのだ。シャンデリアくらいへっちゃらだ。
では、何故コンコンはそれを使わなかったのか?ヘクト・プレッシャーは使えたのに。
その疑問はもう永遠に解決しないだろう。すくなくとも、今はそのように見えた。
「そんな……狂ってる…」
涙ながらにそう言ったのはブランエンだ。今度は本気で泣いている。
唯一の手がかりだと思ったロックが自分の事を何も知らなかったのもショックだし、
リリアーナを本気で怒らせたのもショックだ。きっと、もう私のためには力を貸してくれないだろう。
そして、今一人の人間が死んでしまった。私のせいだ…私が変ないじわるを思いつかなければ…
「あぁ…私なんか生まれてこなければ良かったのに…」
>66俺の答えに偽ロックは何か叫んでいたみたいだが、リリアーナが偽ロックをシャンデリアの下敷きにした事によって答えは聞き取れなかった。
いや、聞き取れていたがショックで忘れてしまったのかもしれない。
>61それにしても…リリアーナ……君って奴は…。
どーすんのよ、これ。
シャンデリア壊したなんて洒落にならんって…。
あ〜ヤバい。
今の状況で見付かったら俺が責任取らされる。
最悪の場合、弁償&減給3ヶ月&ボーナス無し…。
洒落にならん!どうやって暮らしていけばいいんだよ!
朝から晩までパンの耳生活は嫌だ…。
つーか普通シャンデリア落とすか…?
おっそろしいな…。
さて、これからどうしようか。
選択肢は3つ。
1、シャンデリアを修復し、リリアーナを追いかける
2、シャンデリアの修復は諦めすぐにリリアーナを追いかける
3、この場に残る
う〜ん…まず1は面倒だからパス。修復だの回復魔法は苦手だ。
2か3だな………。
しょうがない、3だ。リリアーナは生徒達に任せて俺はこの最悪の状況を何とかしよう。
偽ロックにキキが話かけているが、返事は無い。
死んでんじゃないだろうな…?
>「そんな……狂ってる…」
ああ、狂ってるな。実にクレイジーな事をしてくれた。
クレイジーな娘は嫌いじゃないが、後始末はちゃんとして欲しいよなぁ…。
>「あぁ…私なんか生まれてこなければ良かったのに…」
……こら。
そんな事言うもんじゃないぞ。
俺は泣き崩れている少女の元へと歩み寄る。
「今度は俺にビンタされたいのか?」
銃を持ってない方の手をヒラヒラと彼女に見せる。
もちろん冗談だ。
俺は女の子には手を上げるつもりは無い。
「生まれてこなければ良い人間なんてこの世に居ないんだよ。
君は記憶喪失らしいが、人間ってのは必ず何らかの理由や目的があって生きてるんだ。俺も、君もな。
だから生まれてこなければ良かったなんて言うんじゃない。分かったかな?」
「駄目じゃない、結界解いちゃぁ〜。」
「無理。あのリリアーナの勢いでこられたら地獄門だって開くって。」
人垣の後ろでアルナワーズが一人の生徒に文句をつける。
そう、人垣の後ろで。
アルナワーズとブランエン(仮)は床に書かれた魔法陣の上に立ち、人垣の後ろにいたのだ。
正体不明の偽ロックとキキの作り出したロックドールの決闘。
そこにアルナワーズは身を晒して割って入るだろうか?
否!断じて否である。
ロックの圧力波を相殺した後、食堂全体を包む幻術にまぎれて人垣の後ろに下がっていたのだ。
ならばリリアーナがビンタした相手は・・・?
リリアーナが去った後、アルナワーズ、ブランエン(仮)&ギズモから大量の灰が舞い散る。
「リリアーナオネエチャン・・・コワイ・・・」
それと共に三人の姿は歪み、残ったのは涙目で頬を腫らすギズモだけだった。
幻術にまぎれて人垣の後ろに下がる際、ギズモに灰をかけて幻術をかけたのだ。
後は、魔法人を介して動きをトレースさせていたわけだ。
一番損な役回りを押し付けられた格好なギズモに合掌。
ゆえにブランエン(仮)自体は傷一つついていないのだが、心に刻まれた傷は本物であった。
リリアーナの怒りとシャンデリアの下敷きになった偽ロックのショックに涙して泣き崩れる。
そっと寄り添いながら人垣を越え、食堂中央へと歩み出る。
「はいはい、落ち着いて。嘘はいけないわ〜。思わぬところで人を傷つけちゃうもの、今みたいに、ね。
リリィは素直な子だからショック受けやすいのよぉ。
後でちゃんと訳を話して謝れるわね?」
アルナワーズにはブランエン(仮)の言葉が嘘だとわかっていた。
食堂に来る間に密かに調べていたのだから。
記憶喪失かどうか。
その結果はいわゆる記憶喪失ではない、だ。
そう、【忘れている】のではなく【元からない】のだ。
詳しく調べていないが、まるで作られたばかりのホムンクルスか記憶を奪われた者かのように物理的に記憶が存在しなかったのだ。
つまり、ブランエン(仮)がロックとの関係を言えるはずがない。
でなければ逆行催眠でもかけて記憶を取り戻しているのだから。
いまだ泣き続けるブランエン(仮)をレイドに預け、シャンデリアの下敷きになっている偽ロックの元へと向かう。
アルナワーズは後悔していた。
止むに止まれぬ状況で人が見せる反応を見るのは大好きだ。
だが、傷つけてしまう事は趣味ではない。
リリアーナは本気で傷ついていた。そのことを思うと面白くあろうはずもない。
「キキ、死んでいたら死霊科にまわすけど、その前にちょっとごめんなさい。」
偽ロックの近くで香炉を置きながらそっとしゃがみこむ。
「ロックはね、何があっても女の子に手を上げないのよ。あなたはキキに攻撃した。それだけでもう致命的だったの。」
ぴくりとも動かない偽ロックに語りかけながら、香を炊き更に続ける。
「ホントはこういうの趣味じゃないの。
薬や催眠で操るより、ロジックの破綻をついたり状況的に動かざる得ないように仕向けるほうが素敵じゃない?
でもそうも言ってられなくなっちゃったから・・・」
甘い香りが偽ロックを包みこむ。
そしてコンコンの意思へと直接介入し始める。
「さあ、話なさい。あなたは何者?何が目的?そしてあの子(ブランエン仮)は?」
アルナワーズの質問は強力な呪詛となりコンコンの意思をこじ開ける。
>「ギズモ、昨日ロックが野人を保健室に連れて行ったとき、何か不審な点は無かった?
>それとロック、あなたは私を人間に戻そうとあんなに意気込んでたはずでしょう?
>私を元に戻してコッポーだかカッポーだかを試みるよりも重要なことって、一体何だったの?」
「・・・・ソウイエバ」
とギズモが答えようとしたその時である
>「私達は恋人同士じゃない!私の事を愛してるって言ってくれたのは嘘だったの?
> 卒業したら結婚しようと言ったのは、ただの気まぐれだったの?」
>「けけけっ…結婚だとぉお!!」
>「そうよ!今日だって、あなたが帰ってくるのをベッドの上で待ってたんだから!全裸で!」
「な!?」
それを聞き、顔が真っ赤になるフリージア
伊達にユニコーンに触れられるわけではない
「ど、どういうことですの!!」
あまりの一言に混乱してわけがわからなくなるフリージア
そしてもっとわけがわからないことが起きる
リリアーナがロックバスターでシャンデリアを打ち落とし
ブランエン(仮)にびんたを食らわせたのだ
>「あなたは人として最低だわ!顔も見たくない!」
そう言うとリリアーナは走り去ってしまった
「リ、リリアーナさん!?」
と声をかけようとした時にはもうその姿は無く
グレイたちの姿も無くなっていた
「・・・・・・リリアーナさん」
食堂はシャンデリアが落ち、めちゃくちゃになっている
フリージアはどうすればいいかわからなかった
「トリアエズ シャンデリア ナントカシタラ」
そこにいつもどおり空気が読めてないグレムリンがアドバイスをする
「そ、そうですわね フリージングドール・マリオネット!!」
とりあえずフリージアは氷の懸糸傀儡を作り出しシャンデリアの撤去作業に移るのであった
(数分後)
「後は私の雪の結晶で替わりのシャンデリアを作るだけですわね」
以前フリージアは雪で城を作ったことがあり
その城は魔法の炎以外では溶けることは無いという代物であった
さすがに今の環境では建物一個は無理があるがシャンデリアぐらいなら何とかなるだろう
「デ、リリアーナオネエチャン ドウスルノ?」
作業に夢中で他のことに目が言ってないフリージアの突っ込むギズモ
「あ」
沈み行く太陽が、最後の残照で学園を紫色に染めている。
薄暗くなった廊下は、そろそろ夕食時のせいか人影もまばらだった。
背中の子供は眠っているのか、今のところぴくりともしない。
ずり落ちそうな子供を揺すりあげ、リリアーナは保健室を目指して黙々と歩いてい
た。
―――― 頭の中がぐちゃぐちゃで、何も考えられない。
>62 >65
中庭に面した回廊に差し掛かったところで、リリアーナはぴたりと足を止めた。
「・・・・・・誰かそこにいるの?」
少し掠れていたリリアーナの声が、現れた人物を見て少し弾んだものに変わった。
「キサラ!それにグレイズ?何でここにいるの?・・・・・・・やだな、変なところ見られちゃった」
リリアーナは顔を手の甲でぬぐうと、グレイズとキサラにグレイズに微笑みかけた。
「グレイズ、もうレモンパイを食べ終わったの?
―――― ああそっか、私がシャンデリア落としちゃったからそれどころじゃなくなったのね」
リリアーナは申し訳なさそうに肩をすくめた。
夕食の時間だというのに、学園の皆に悪いことをしてしまった。
特にオウジが抱っこしていた女の子など、おなかがすいてしょうがなかった様子だったのに。
「二人とも心配して見にきてくれたの?ありがとね。
ああ、そうだった。紹介するわグレイズ。彼はキサラ、初期研修に行っていた私の友達よ」
リリアーナは水色の髪をした生徒を紹介した。
ちなみに初期研修の参加者は魔法の魔も知らないような初心者である。
グレイブは、リリアーナの説明でどんな印象を抱くのだろうか?
「キサラ、いつこっちに帰ってきたの?
初期研修はどうだった? 参加した生徒達は皆、親切にしてくれた?」
リリアーナが矢継ぎ早に話題を振るのは、バツが悪かったり何かを誤魔化したいと思っている時の癖だ。
どうやら食堂の件については触れられたくないらしい・
「この子を保健室に連れて行きたいから、歩きながら話してもいい?
理由はわからないんだけど、なぜかずっと意識が無いの。病気かしら?
・・・・・・ところでグレイズ、実は私ちょっと苦しくなってきたんだけど・・・・・・交代してって言ったら怒る?」
リリアーナはふうふう言いながら、ずり落ちそうなヴァンエレンをもう一度揺すり上げた。
宿敵レイドとの決着がいまつかんとするそのとき、空腹の限界へとたどり着きカオスを越えた。
体が言うことを聞いてくれず、倒れる際にリリアーナを巻き込みながら気絶してしまう。
吸血鬼は意識を失い、彼の世界は暗転して闇に染まった。
普通ならココで悲しい過去など本人に結びつく何かを夢で見るような展開なのだが、
その夢の内容が空気を読まずあまりにも普通すぎてつまらないので、時間をすっとばして飛び越えさせることにする。
ぐうすか眠りこけている間に食堂は二日連続でエライ騒ぎに巻き込まれて、気づいたおばちゃんがまた白くなってしまうのは後々のこと…。
>71
食堂の騒ぎの中心人物の一人のリリアーナは吸血鬼とはまったく気づかずに、負ぶさり保健室へ運ぼうとする。
グレイブとキサラが合流し、リリアーナも歩みを止めて二人に応える。
自己紹介は子守唄代わりにはならなかったようで、眠っていた血を吸う童が目をこすりながら起きだした。
見知らぬ人間の背とこれまた見知らぬ人間が二人、そしては一体ここはどこなのか。
「うーん、わからん」
わからないことはいくら考えたってどうにでもなることではないので、考えずに状況に身を任せることにしたようだ。
そのときまたも「くう」とお腹が空腹を訴えて、あまりにもお腹が空きすぎて気絶したことを思い出したようだ。
「俺様は吸血鬼だ。
はやく血をよこさないとイタズラするぞ!」
本人は脅迫のつもりで言っているようだが、はたから見るとハロウィンでお菓子をもらいに来た子供のように見えるだろう。
>68
「でも、私はここに存在する理由がわからないわ。」
ブランエンがレイドにそう答える最中。
>69
コンコンこと偽ロックは、アルナワーズの問いに対して口をぼそぼそと動かしたが、
あまりにもか弱く、聞き取れるものではなかった。
しかし、すぐにアルナワーズの頭にあるイメージが送られてきた。
コンコンの過去、そして心の傷が。
そこは劇場だった。客席にはアルナワーズが腰掛けている。
その隣にはロックも腰かけていた。きっとそれが、コンコンが奪ったロックの記憶なのだろう。
隣にアルナワーズが居るというのに、まるで眼中に無いようだ。
ほどなくブザーが鳴り、『コンコン 愛の劇場』と書かれた舞台の幕が上がった。
【第一幕】
舞台には一人の少年が立っていた。
少年はぴょんと飛び跳ねる度に姿をころころと変えて遊んでいた。
ある時、少年は思った。
「僕のお母さんは誰なんだろう?」
少年はウサギを見つけたので、ウサギに姿を変えて聞いてみた。
「ねえ、僕のお母さんを知らないかい?」
>「さあ?でも、きっとウサギだよ。」
そう言ってウサギはぴょんぴょん跳ねて去っていった。
今度は熊を見かけたので、熊に姿を変えて聞いてみた。
>「お前の母さん?さあ?でも、きっと熊だよ。」
今度はキツネを見かけたので、キツネに姿を変えて聞いてみた。
>「お前の母さんなら知ってるよ。」
「本当かい?」
>「でも会わない方がいいよ。あれは魔女だ。
どうしても会いたいというなら、居場所は教えるけど。」
舞台から少年が消えた。しかし、少年の心は希望に溢れていた。
【第二幕】
舞台には少年と婦人が立っていた。少年の心は希望に溢れていた。
少年は彼の母に会いに来たのだ。
しかし、母の態度は少年の想像とは異なるものだった。
>「たしかにあんたは私から生まれたわ。」
「じゃあ、あなたは僕のお母さんだ。」
>「違うわ、だって愛が無いもの。」
「愛が無いって?」
>「興味が無いって事。邪魔だって事。うっとうしいという事。わかった?」
そして、母親ではない女性は去っていった。
舞台には一人の少年が立っていた。少年はまた一人になった。
【第三幕】
少年は舞台に立っていた。しかし、一人ではなかった。
裁縫屋が言った。
>「あら、ハサミが無いわ。」
すると、少年が裁縫屋に近づいて言った。
「僕がハサミになるよ。」
>「本当かい?すまないねぇハサミ君。」
今度は木こりが言った。
>「しまった!斧を湖に落としてしまった!」
「僕が斧になるよ。」
>「悪いな、斧の少年!あれ…何か泉から人が出たような…」
今度は老婆の姿をした狼が言った。
>「赤頭巾がいつまでたってもこないなぁ…」
「僕が赤頭巾になるよ。」
>「ふうん…そうか、君が赤頭巾ねぇ…」
「ねえ、おばあちゃん。なんでそんなに口が大きいの?」
>「それはだね…お前を…ガッ!!」
少年は舞台に立っていた。しかし、一人ではなかった。
【第四幕】
舞台には一人の少年が立っていた。しかし、少年の心は希望に溢れていた。
少年は叫んだ。
「僕はみんなに愛されている!みんなが僕を必要としているし、
誰もが僕を見てくれる!だから、僕はここに居てもいいんだ!」
すると、猟師の娘が現れて少年に言った。
>「あんたは夢を見すぎだわ。みんなはあんたの事を愛しているわけじゃない。
> あんたはよくできた紛い物で、都合のいい何かの代用品でしかないわ。」
少年は反論した。
「違う!僕は代用品なんかじゃない!僕は何にでも変身できるんだ!
みんなが必要なものに!みんなが好きなものに!」
>「だけど、あなた自身はどうなの?本当のあなたは?」
「本当の僕?」
少年は大声で叫んだ。
「ねえ!僕は一体誰なの!」
すると遠くから返事が帰ってきた。
>「お前はハサミだよ!」
「違う!!」
少年はうめいた。
「ねえ!僕は一体誰なの!」
>「お前は斧だよ!」「違う!!」>「お前は赤頭巾!」「違う!!」>「お前はトラだ!」>「お前は車だ!」>「お前はウサギだ!」>「熊だ!」
>「母親だ!」>「マリアベルだ!」>「魔法使いだ!」>「ペンだ!」>「美少女だ!」>「剣だ!」>「ボールだ!」>「ケーキだ!」
「ああぁあぁああああああぁぁああああああああぁあぁああああああああぁあああああああああ!!!!」
少年は悲痛な叫び声を上げた。
「…僕は誰?」
>「あんたは全てのものだけど、同時になにものでもないのよ。
> この世に生きる全てのものは“特別な一人”だけど、あんたは違う。
> 所詮あんたは何かの模造品、“特別な一人”には永遠になれないわ。
> うふふ…もう死んじゃえば?あんたなんて、空気みたいなもんなんだから。」
ここで劇場が急に真っ暗になり、すぐにまた明るくなった。
ナイフを持った少年は舞台に立っていた。足元には、猟師の娘が血を流して死んでいた。
【第五幕】
猟師の娘は舞台に立っていた。手には死んだウサギが握られていた。
「お父さん、見て!私一人でウサギをとったわ!」
猟師が現れて言った。
>「おう!よくやったな!早速さばいて食べてしまおう!」
猟師はウサギを手早く解体し、鍋に放り込んだ。
猟師と娘は仲良くそれをわけて食べた。
猟師の娘は舞台に立っていた。そして、心は希望に溢れていた。
“特別な一人”になる方法を見つけたのだから…
>70フリージアによってシャンデリアは撤去された。
そして今、フリージアは代用の氷で出来たシャンデリアを作成中だ。
「良かった…これでなんとか最悪の事態は避けられそうだ。」
>73>「でも、私はここに存在する理由がわからないわ。」
せっかく最悪の事態を避けられたってのに、暗いなぁ。
「別に今すぐ分かる必要なんて無いんだよ。君に限らず存在理由が分からない奴なんて大勢居る。
そいつらは日々自分の存在理由を探してるんだ。
だがしかし、今の君はどうだ?自ら存在理由を探そうとしてるか?
俺にはそういう風には見えんがね。
そんな調子じゃいつまで経っても自分の存在理由なんて見つからんよ。」
…ちょっとキツい言い方しちゃったかな?
でもこの位言わないと分かってもらえなそうだったからさ…。
「ま、まあとりあえず俺が言いたいのはだな、今すぐ存在理由を見つける事はない。
これからの人生の中で理由を見つけられればそれで良い、って事。
俺が言いたいのはそんだけ。
……あ、そういや君、リリアーナに謝りに行った方が良いんじゃないか?
ありゃマジで怒ってたぞ?」
>65 >71
とりあえず歩き回るグレイズ。すると、他の人とは違う方向に進んでいる男子を見つけた。
「誰かな…食堂から遠ざかってる。」
【あいつ、もしかしたらリリアーナを追っていたりするんじゃねーの?】
「まさか。そんな都合よく…って、居た!」
【な?俺の言ったとーりだろ!】
【お前にしては珍しく、な…。】
中庭に面した回廊、そこにリリアーナはいた。
>「・・・・・・誰かそこにいるの?」
泣いたのだろうか?掠れた声だった。
>「キサラ!それにグレイズ?何でここにいるの?・・・・・・・やだな、変なところ見られちゃった」
「何でって…うーん。」
リリアーナは微笑み、話しかけてくる。
>「グレイズ、もうレモンパイを食べ終わったの?
> ―――― ああそっか、私がシャンデリア落としちゃったからそれどころじゃなくなったのね」
「あ、そういえばそうだったね…。」
【こういうとき困るよなー!プックク!】
「そうだけどなぁ…。」
隣の少年は誰だろうか、と3人が思っていると、リリアーナが説明してくれた。
>「二人とも心配して見にきてくれたの?ありがとね。
ああ、そうだった。紹介するわグレイズ。彼はキサラ、初期研修に行っていた私の友達よ」
「初期研修?へぇー。僕はグレイズ。よろしくねーキサラ君。」
軽く自己紹介を済ます。
そして彼女がキサラに話しかけている間に第2回トリニティー・グレイ会議開催。寧ろQ&A。
「Q.初期研修って?」
【A.初期研修といえば…魔法超初心者達が参加する研修だったか…。】
「へぇー。じゃあ魔法苦手なのかな?」
【女顔だからじゃねー?】
「関係ないよ多分…いや絶対。」
グレイブが説明をし、何か想像を膨らますグレイルと突っ込むグレイズ。
今更ながらこいつらは案外騒がしい。
話が終わったのか、リリアーナがこっちを向き子供を揺すり上げながらグレイブに
>「この子を保健室に(中略)・・・交代してって言ったら怒る?」
と頼む。それに対しグレイズは、
「いや、別にいいよー。」
っていうか何で怒る必要があるの?とからかいを含んだ語調で話す。
>72
ふと子供を見ると起きていたようで、目をこすっている。
そのまま見てるとくう。と可愛らしい虫の音が鳴った。
それを合図にしたのか、こちらに話しかけてきた。
>「俺様は吸血鬼だ。
> はやく血をよこさないとイタズラするぞ!」
…なんとも可愛らしい。
「…じゃなくて、吸血鬼?」
【此処にガキの吸血鬼なんて居ないと思ったが…。】
「……なんか、誰かに似てるなぁ?血なら僕があげようか?」
と、その時グレイルが珍しく慌てた様子で話しかけてきた。
【お、おいSー!俺と替われー!】
「ん?なんで行き成り?」
【成る程…もう日の入りだ……!】
「…あ!R、替わっ―――」
その瞬間、日が完全に沈んだ。
同時に、グレイズに異変が起きる。
「あ…あぐ……ううううう…!」
目がギラギラした黄色に変わり、歯が尖った物になり、全身に毛が生えてくる。
顎が突き出、背骨が曲がる。鼻も爪もイヌ科の物になった。
―――人狼となったグレイズがそこに居た。
「グルルルル………。」
人狼は周りを見渡すと、廊下を物凄い速さで駆け出した。
目的地は男子寮、グレイズの部屋。
>75
広い広い劇場の中、観客はたったの二人。
アルナワーズとロックのみ。
並んで座る二人はそっと根を重ね合わせ、言葉を発することなくただ淡々と目の前で繰り広げられる『コンコン 愛の劇場』を見続けていた。
それは一人の少年の物語。
誰にでもなんにでもなれるが、それゆえに自分が何者でもないという。
そのことを猟師の娘に突きつけられ苦悩する少年。
己と己の存在意義を求め、彷徨う。
劇が終わり、劇場には拍手が鳴り響く。
「素晴らしいわ!なんていう悲劇!なんていう喜劇!
迷い、苦悩し、そして何も気付けぬ道化!
すでにある答えを拒否し、他人に答えを求め、それすらも拒否するなんて!」
立ち上がり喝采と簡単の言葉を浴びせるのだった。
一通り拍手をし終えると、大きく息を吸い込み最後の言葉を紡ぐ。
「ねえコンコン、それは【特別な一人になる方法】ではなく、【特別な一人の真似をする方法】ではなくて?
認識の多面性を理解できず結局【誰でもない自分】から抜け出せていないのよ!」
舞台に向かい叫ぶと同時にアルナワーズは劇場から姿を消した。
########################################################
一種のチャネリング状態から戻ったアルナワーズはゆっくりと目を開く。
シャンデリアはすでに撤去され、ロックの姿をしたコンコンは床に伏したままだ。
そんなコンコンに悲しげに囁く。
「誰かの特別な一人であることに何の意味があるというの?」
>>77 引き続き、リリアーナを追うキサラ
相手のスピードがスピードなので、追うというほどのことでもないのだが
距離はそれなりに近く、話しかければ気付く距離なのだが、どうにも声をかけづらい雰囲気なのである
そんなとき、後ろに別の気配を感じたので、思わず銃に手をかける、が
(・・・そうか、もう警戒して過ごさなくていいのか・・・)
と思い直し、その手を離した
見ると、黒髪の少年がそこに立っていた
ほぼ間違いなく、この学園の生徒なのだろう
>>71 >「・・・・・・誰かそこにいるの?」
・・・というところで、リリアーナがこちらに気付く
「あ・・・え・・・っと・・・」
相変わらずの反応である
まあ、どう声をかけたらいいものか困っていた最中なので、当然と言えば当然なのだが
その声は少し掠れていたが、次の声は少し弾んでいた
>「キサラ!それにグレイズ?何でここにいるの?・・・・・・・やだな、変なところ見られちゃった」
>「二人とも心配して見にきてくれたの?ありがとね。
ああ、そうだった。紹介するわグレイズ。彼はキサラ、初期研修に行っていた私の友達よ」
とりあえず、この人はグレイズというらしい
>「初期研修?へぇー。僕はグレイズ。よろしくねーキサラ君。」
「・・・こちらこそ・・・よろしく、お願いします」
軽く自己紹介してきたグレイズには、丁寧に小さくお辞儀をして返す
>「キサラ、いつこっちに帰ってきたの?
初期研修はどうだった? 参加した生徒達は皆、親切にしてくれた?」
「・・・はい、大丈夫でした。・・・魔法も・・・まだよくわからないけど・・・少し覚えてきたし」
リリアーナが矢継ぎ早に話しかけてくる
状況こそわからないが、やはりさっきのことには触れられたくないのだろう
>「この子を保健室に連れて行きたいから、歩きながら話してもいい?
理由はわからないんだけど、なぜかずっと意識が無いの。病気かしら?
・・・・・・ところでグレイズ、実は私ちょっと苦しくなってきたんだけど・・・・・・交代してって言ったら怒る?」
>「いや、別にいいよー。」
という一連の流れの中で、リリアーナが背中に背負っていた何かにやっと気付く
(・・・あれ?どこかで見たことあるような・・・?)
と思っていると、
>「俺様は吸血鬼だ。
はやく血をよこさないとイタズラするぞ!」
・・・という自己紹介
「・・・・・・ああ、どこかで見たと思ったら」
ジャキン、とヴァンエレンにこめかみに銃を突き付けるキサラ
「・・・あのときの吸血鬼さんじゃないですか、お久しぶりです」
口調は穏やかだが、行動がそれに反している
なぜ銃をつきつけているか、というと、条件反射らしい
・・・と、その直後、何やらグレイズが騒ぎ出した、というか様子がおかしい
>「あ…あぐ……ううううう…!」
すると、グレイズがまるで狼のような姿に変貌する
警戒すべきかと思ったが、その前にすごい勢いでどこかに行ってしまったので、やりたいようにさせておくことにしました。
「・・・世の中・・・色んな事情の人がいるんですね・・・」
君も人のことは言えません、キサラくん
「・・・はい、大丈夫でした。・・・魔法も・・・まだよくわからないけど・・・少し覚えてきたし」
キサラがいつもどおりの口調で返事をする。
「そっか、魔法使えるようになったんだ。おめでとう!じゃあ機会があれば、今度使って見せてね!」
>「Q.初期研修って?」
「ん?ああ、グレイズは知らないのかな。初期研修っていうのは、魔法初心s・・・・・・・・」
>「へぇー。じゃあ魔法苦手なのかな?」
「え?なんだ、やっぱり知ってたの?」
>「関係ないよ多分…いや絶対。」
「・・・・・・・・・・・・?」
グレイズとは微妙に会話がかみ合わない。リリアーナと会話しているわけではないらしい。
一体誰と話しているのだろうと興味が湧くものの、
『実は俺、見える人なんだ』なんて言われると怖いので黙っていた。
リリアーナは『見えない』幽霊が苦手なのだ。
子供を背負うのを交代してあげるよ、とグレイズは気さくに応じてくれた。
だがリリアーナが背中からおろそうとした時、子供が目を覚ます。
>「俺様は吸血鬼だ。
> はやく血をよこさないとイタズラするぞ!」
>「……なんか、誰かに似てるなぁ?血なら僕があげようか?」
>「・・・・・・ああ、どこかで見たと思ったら」
>ジャキン、とヴァンエレンにこめかみに銃を突き付けるキサラ
>「・・・あのときの吸血鬼さんじゃないですか、お久しぶりです」
「きゃー!!キサラ止めなさい!!
例え吸血鬼でも、こんな小さい子供に銃を向けたらダメでしょう!
それにヴァンエレンなはず無いでしょう?あの吸血鬼が短パンなんて履くはず無いじゃない。
多分隠し子か何かに決まってるわ。」
大人気ない!と戦闘モードのキサラを説得している間に、異変は起こった。
>―――人狼となったグレイズがそこに居た。
グレイズはあっという間に駆け去ってしまった。男子寮のほうに向かった気がする。
追いかけようにも子供を背負っているリリアーナにはどうにもならない。
リリアーナはしばし迷った末、背中の子供を先にどうにかすることにした。
「ボク、お名前は?こんなにおなかがすいてるのに、いきなり血を吸ったりしないのね。感心だわ」
リリアーナは子供を地面に降ろすと、目線を合わせた。
「血を分けてあげるのは構わないけど、お返しに、あなたは私に何をしてくれるの?」
>76
「わ、わかりました。」
ブランエンは、アルナワーズがチャネリングをしている最中、
リリアーナに謝るべく食堂を出て行った。
自分の存在する理由はわからない。しかし、一つだけはっきりしている。
いま自分がすべき事は、自分の気まぐれによって傷ついた、一人の女の子を慰めることだ。
しかし、この時彼女は認識していたのだろうか?
自分が記憶喪失で、この学園の地理など何一つ知らない事に。
>79
> 「誰かの特別な一人であることに何の意味があるというの?」
アルナワーズのチャネリングが終わった。
すると、偽ロックの口から小さな光の玉が吐き出され、食堂から勢いよく出て行った。
そして、すぐに炭酸がはじけるような音がしたかと思うと、
偽ロックはみるみる溶けて、金色のどろりとした液体に姿を変えた。
その頃、ブランエンはと言えば学園の中をあてもなく彷徨い歩いていた。
リリアーナがどこに行ったのかなど、わかるはずも無かったのだ。
と、その時、ブランエンは背後から何かが迫ってくる気配を感じて振り向いた。
それは、小さな光の玉だった。光の玉は、驚くブランエンに直撃した。
ブランエンは、恐る恐る目を開いた。そして、ほっとした。
どうやら、死んだわけではないらしい。
「何だったのかしら、今の?」
ブランエンは再び歩き始めた。しかし、先ほどとは違い、
その足取りには、確かな自信がみなぎっていた。
>80
グレイズもリリアーナも吸血鬼の正体に気がついていないようだが、唯一キサラだけは察知できたようだ。
>「・・・・・・ああ、どこかで見たと思ったら」
>「・・・あのときの吸血鬼さんじゃないですか、お久しぶりです」
この日はなんと同じような場面に遭遇する奇怪な日なのだろうか…額の中心の急所めがけてキサラが銃をつきつけていた。
殺気はないがその行動は敵意があるものとみなされるのは当然。
いかに引き金に手をかけずともいかに敵意がなかろうと、その行動は攻撃がされてもしょうがない理由付けになってしまう。
>81
>「きゃー!!キサラ止めなさい!!
> 例え吸血鬼でも、こんな小さい子供に銃を向けたらダメでしょう!
> それにヴァンエレンなはず無いでしょう?あの吸血鬼が短パンなんて履くはず無いじゃない。
> 多分隠し子か何かに決まってるわ。」
リリアーナはその体勢ゆえに気づかず、グレイズは自身の変貌ゆえに見れる状況になかった。
唯一、正面にいるキサラだけは幼きヴァンエレンの髪が波たち瞳が真紅に染まっていく様を目撃できたのだが、グレイズの変化に夢中のようだ。
眠り子が起きたので背負う必要がなくなったリリアーナはヴァンを背中から下ろした。
>「ボク、お名前は?こんなにおなかがすいてるのに、いきなり血を吸ったりしないのね。感心だわ」
実はおなか空きすぎて戦闘になった場合、全力が出せなくてやられたら困るという理由だったりする。
それでも素直に褒められたことに先ほどの怒りも忘れて、「当然だ」と言わんばかりにふんぞり返る。
>「血を分けてあげるのは構わないけど、お返しに、あなたは私に何をしてくれるの?」
「ほほう何をしてくれるとな?
俺様は吸血鬼のヴァンエレン様だからな。
なんだってできるんだぞ!」
わっはっはっはと高笑いのオプション付きでさらにふんぞり返る便利吸血鬼(使い魔付属)をリリアーナたちは手に入れ……た?
ちなみにお願いひとつにつき相応の量の血液を代償とする。
>>81 >「そっか、魔法使えるようになったんだ。おめでとう!じゃあ機会があれば、今度使って見せてね!」
リリアーナが先ほどまでの暗い雰囲気を跳ね飛ばすかのように、普段の明るさに戻る
「え?あ・・・はい・・・機会が・・・あったら」
―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
>「きゃー!!キサラ止めなさい!!
例え吸血鬼でも、こんな小さい子供に銃を向けたらダメでしょう!
それにヴァンエレンなはず無いでしょう?あの吸血鬼が短パンなんて履くはず無いじゃない。
多分隠し子か何かに決まってるわ。」
「・・・え・・・?別の人物なんですか・・・?・・・っていうか、短パンはくのは・・・関係あるんでしょうか・・・?」
ヴァンエレンは人ではないので、『人物』という単語が使えるのかどうかわからないが
(・・・でも・・・あのときの吸血鬼と・・・同じ『感じ』はするのに・・・まあいいか)
・・・と、一瞬諦め、銃をしまったが、
>「ほほう何をしてくれるとな?
俺様は吸血鬼のヴァンエレン様だからな。
なんだってできるんだぞ!」
というセリフを聞いた瞬間
「・・・やっぱりこれ、撃っていいですか?」
と再び銃を抜こうとする
・・・どうも彼とは合わないらしい
――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
グレイズが去り、その場にはリリアーナ、キサラ、そして吸血鬼
さきほどからリリアーナはその話題に触れてほしくないことは、キサラにもわかっている
・・・だが、聞かずにはいられないのだった
「・・・・・・ねえ、リリアーナさん
・・・その・・・何かあったんですか?僕・・・さっき来たばかりで、状況・・・何一つわからないし」
もちろん、何かあったことはわかっている
それが、さっきのロックさん絡みのことであることも、当然予想はついている
しかしキサラは、『何かあったのか』というところから聞くのであった
>83
血の代償を問われた子供は、えっへんとばかりに胸を張った。
>「ほほう何をしてくれるとな?
> 俺様は吸血鬼のヴァンエレン様だからな。
> なんだってできるんだぞ!」
「な、ヴァンエレンですってぇ?!」
リリアーナは素っ頓狂な声をあげた。どうやらキサラの直感は正しかったようだ。
だがどうも様子がおかしい。そもそも本当にヴァンエレンなら、リリアーナのことを貧(ry と呼ぶはずなのだ。
「私のこと、覚えてないみたいね。もしかして幼児化したときに記憶も退行しちゃったのかしら?」
リリアーナはキサラに耳打ちするが、初期研修を修了したばかりの彼には答えようのない質問である。
「幼児化するメリットが考えられないから、偽者の線は薄そうね。やっぱり本人・・・・・・・なのかしら?」
リリアーナは改めて俺様吸血鬼に視線を戻した。
さあ願いを早く言えと言わんばかりにふんぞり返っている。
かなり可愛い。
大人バージョンとのギャップに噴出しそうになるのを堪えつつ、リリアーナは願いを口にした。
「ねえ、ロックって人を探してるんだけど、あなた心当たりはない?
――――ごめん、知らない人間を探してくれなんてさすがに虫が良すぎよね。
じゃあね、食堂が今どうなっているかと、狼男になったグレイズが今困っていないかを調べて欲しいの。
二つのお願い、私の血で賄えそうかな?」
リリアーナは血を吸いやすくするために、服のボタンを外した。
>84
またヴァンエレンに銃を向けたキサラを見て、リリアーナはため息をついた。
「キサラ、銃を降ろしなさい。ここは戦場じゃないのよ?
何でも力で解決しようとするのはあなたの悪い癖だわ」
リリアーナは少し考えた後、わざと意地の悪い笑顔を浮かべた。
「もしかして吸血鬼が怖いの?違うわよね?
だったら銃をしまっても、キサラはちっとも困らないわよね?」
>「・・・・・・ねえ、リリアーナさん
>・・・その・・・何かあったんですか?僕・・・さっき来たばかりで、状況・・・何一つわからないし」
リリアーナはすぐに返事をしなかった。
「何もないわ。・・・ロックに婚約者がいただけ」
リリアーナは自らの膝を抱えた。
「ああ、そう言えば昨日ロックの偽者が現れたのよね。
なぜかは分からないけど、偽者はキツネうどんが大好きみたいよ?」
ブランエンは歩きながら、不思議な感覚に驚いていた。
自分がどこから来たのかわからない。
自分の本当の名前すらもわからない。
けれども、自分が今歩いている建物の地理がわかる。
そう、確かにわかるのだ。
「右にあるのが3年B組、その先にあるのが理科室で…
左に曲がったから学園長の部屋…」
ブランエンは会ったことも無いはずなのに、
白ひげのあの老魔術師のやさしい笑顔を容易く想像できた。
ブランエンは、もしかしたらと思った。
もしかしたら、失われた自分の記憶が(理由はわからないけど)
戻ってきたのではないだろうか?
きっと、そうかもしれない。今なら、ロックの事もよくわかる。
茶髪で、髪を白い布で束ねてて、眼鏡をかけている。
>「おい、そこの女!」
そうそう、こんな感じの声だった。いかにも、眉毛が太そうな男の声だ。
>「こら!無視をするな!」
ブランエンは、我にかえってびっくりした。
そこにはロックが居た。そう、間違いなくロックだが、
まるで幽霊のように半透明なロックだった。
そういうわけだから、ブランエンが勘違いして合掌したのも、
決して無理のない話しだった。
「きゃー!!ごめんなさい!!ごめんなさい!!」
>「なぁ、おい…ちょt」
「私が悪かったわ!あなたの婚約者だなんて嘘をついて!
悪気は…あったけど、あなたを殺すつもりはなかった…
ちょっと放置プレイされたような気がして…つい出来心で…」
>「わかった、わかった!わかったからちょっと頭をh」
「ひぃい!お願い…私を呪い殺したりしないでぇ!うぅ…」
ブランエンは座りこんでついに泣き出してしまった。
「ひぐっ…うぅう……あれ?」
気がつくと、半透明のロックは居なくなっていた。
「…私、許してもらえたのかしら?」
ブランエンは立ち上がろうとしたが、立てなかった。
「…え?あれ?なんで!?」
ブランエンは腰をぬかしてしまい、立ち上がれなくなったのだ。
>>86 >「キサラ、銃を降ろしなさい。ここは戦場じゃないのよ?
何でも力で解決しようとするのはあなたの悪い癖だわ」
吸血鬼にイラっときて銃をまた向けたが、リリアーナが制する というか怒られる
色々言い返すべきタイミングだが、やはり相手が女性ということもあるのか、それともリリアーナに怒られることが多いから苦手なのか、いずれにしろキサラは言葉につまる
そして更に、意地悪い顔を浮かべ
>「もしかして吸血鬼が怖いの?違うわよね?
だったら銃をしまっても、キサラはちっとも困らないわよね?」
と追撃
・・・ここまで言われたらもう大人しく銃を下げるしかない
----------------------------------------------------------------------------------――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
>「ねえ、ロックって人を探してるんだけど、あなた心当たりはない?
――――ごめん、知らない人間を探してくれなんてさすがに虫が良すぎよね。
じゃあね、食堂が今どうなっているかと、狼男になったグレイズが今困っていないかを調べて欲しいの。
二つのお願い、私の血で賄えそうかな?」
リリアーナが吸血鬼に願いを言う
そこまではよかった
そこまではキサラ的にもまったく問題なかった
問題は次のリリアーナの行動である
その意図は吸血鬼に血を吸わせるためなのだろうが、リリアーナが服のボタンを外し始めたからである
「うわっ!?わ、わわわっ!!!ちょっと、リリアーナさん!!」
皆さん予想どおりのオーバーリアクション
顔を真っ赤にし、後ろを向きお、距離をとる
そこまでする必要は普通ないと思うのだが、壁の後ろに隠れてしまった
本人にとっては気絶寸前なのだが、気絶寸前で止まったのはだいぶ生長した方である
「・・・リリアーナさん、さすがに・・・ちょっと」
ちょっとの先はご想像にお任せしましょう
―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
質問から少し間を置いて、リリアーナが口を開く
>「何もないわ。・・・ロックに婚約者がいただけ」
吸血鬼は食堂に向かい(キサラは壁から出てきて)、リリアーナと今二人きりだ
リリアーナは膝を抱えて座り込んでしまった
>「ああ、そう言えば昨日ロックの偽者が現れたのよね。
なぜかは分からないけど、偽者はキツネうどんが大好きみたいよ?」
やはり執拗に話をそらそうとする
・・・ところでそのきつねうどんの情報必要?というツッコミを心の中でとなえつつ
「・・・何もないわけ・・・ないじゃないですか」
リリアーナの会話を遮って、キサラが口を開く
「・・・そんな単純な話じゃないでしょう?・・・僕は・・・そんなに信用できませんか
・・・僕はリリアーナさんにあの塔で助けてもらった・・・だから、今度は僕がリリアーナさんを助けたいんです
・・・何もできないかもしれないけど・・・それでも・・・僕にできることがあれば・・・」
そこまで言って、一度言葉を切る
「それでも話せないなら・・・話したくないなら、それでもいいです
・・・けど・・・僕にできることがあったら・・・言ってください」
>79さてと…彼女も行ったところだし、あとは偽ロックを捕まえるだけなんだが…。
お取り込み中みたいだしなぁ…つってもロックは床に伏したままだけど。
「アルナワーズ、そいつ逃がすなよ?俺ちょっと飯食……」
>82俺が飯食う宣言をしようとした瞬間、偽ロックは溶け、金色の液体になっちまった。
「???」
またもや状況が理解出来ない。
まあ、理解出来てないのは俺だけじゃないと思うけど。
………とりあえず、飯でも食って落ち着こう。
腹が減ってる状態だと頭が上手く働かないからな。
「おばちゃん、天ぷら蕎麦一つ。」
……困った。
実に困った。偽ロックがあんな状態になっちまうとは…。
瓶にあのドロドロした液体を入れて「偽ロック確保完了!」って訳にもいかないし。
「そこの君、七味取って」
ど〜すっかな………あっ!!
やべっ!七味入れすぎた!
あ〜もう…ロクな事が無いな…。
シャンデリアを弁償する事にならなかったのがせめてもの救いだ…。
つーか辛いなこの蕎麦…もう蕎麦じゃねぇよ、七味そのものだよ。
>88
>「それでも話せないなら・・・話したくないなら、それでもいいです
>・・・けど・・・僕にできることがあったら・・・言ってください」
「キサラはいい子ね」
リリアーナはしみじみと呟いた。そしてしばし逡巡した後、ようやく口を開く。
「――――ねえ、キサラは女の子に向かって
『ぴったり密着して一緒にベッドで寝てくれ』なーんてお願いできる?」
キサラの分かりやすい反応を見ながら、リリアーナはうんうん、と頷いた。
「まあ普通はそうよね。でもロックはね、平気で私にそんなお願いを口に出来ちゃう大馬鹿なの。
―――― これがどういう意味なのか、キサラにはわかる?」
リリアーナは深いため息をつくと、くしゃくしゃと長い髪をかき乱した。
「まあ一言で言うとね、私とロックはただのお友達なの。今までも、これからもね。
だから婚約者の件に関しては、『友達』の私が出る幕じゃないわ。
彼女がロックの母君そっくりでも、二人がお互い好きあっていて、ロックが幸せになれるなら、それでいい。
私はただ―――― ロックがまたどこかへ消えてしまいそうで心配なの。ただ、それだけなの」
俯いてしまったため、リリアーナの表情は見えない。
「今から思えば、あの子にもひどい事言っちゃったかな。
婚約者の部屋で全裸で待っていたのに、いきなり女の子が訪ねて来たら気を悪くして当然よね・・・・・・」
リリアーナはしばし黙り込んだ後、えいっと勢いをつけて立ち上がった。
「気にしてくれてありがとね、キサラ。ちょっと喋ったら気が紛れたわ。
そうね、もし恋愛ごとで困った時には我らがキサラ先生に相談するわ。その時はよろしくっ!
・・・・・・それにしてもヴァン君遅いわねぇ。やっぱり自分で見に行かないとダメかしら?」
リリアーナは一方的に話を切り上げると、パタパタと服についた埃を叩いた。
リリアーナは食堂へ歩き始めたが、数歩進んだところでぴたりと足を止めた。
「・・・・・・・・ねえキサラ、もし良かったらちょっと付き合ってくれない?
さっきちょっと食堂のシャンデリアを落としちゃったから、 一人じゃ戻りにくくって」
リリアーナは申し訳無さそうに両手を胸の前であわせると、「お願いっ」と可愛くキサラを拝んでみせた。
>83
少し歩いたところで、リリアーナ達は見覚えのある子供を見つけた。
背中の羽根をパタパタさせている吸血鬼だ。だが同じ場所をぐるぐるしているのを見ると、どうも道に迷っているらしい。
「こらー!何でこんなところで道草食ってるのよー!!
もう、あんまり遅いから自分たちで様子を見に来ちゃったわよ。
働かざるもの食うべからず!食堂偵察分のお願いは、何か別の形でかなえてもらうからねー!!」
リリアーナはヴァンエレンの短パンを掴むと、再び食堂へと歩き始めた。
どうやら献血の分だけ働いてもらうまで、俺様吸血鬼を逃がす気が無いようだ。
>79
食堂付近の開けた場所には、壊れたシャンデリアが捨ててあった。
どんな魔法を使ったのか、気を利かせた誰かが外へ運び出してくれたようだ。
>89
そして今。
リリアーナはキサラの肩の上に乗っかって、食堂の小窓から中の様子を覗き込んでいた。
「うわー。レイド先生が苦虫噛み潰したみたいな顔で好物の御蕎麦食べてる。やっぱり怒ってるのかな〜。
シャンデリアは誰が後片付けしてくれたみたいね、下敷きになったロックは・・・・・・
あーもう!!ここからじゃ良く見えないのよー!!」
リリアーナは爪先立ちで、一人プリプリしながら独り言を呟いている。
さて。
本来食堂に入り辛いのは騒ぎを起こしたリリアーナのみであり、キサラ等は全くの無関係だ。
つまりキサラかヴァンエレンに様子を見て来てもらえれば何の問題も無い・・・・・・はずなのだが、
今回リリアーナが訳のわからない迫力で押し切ってしまったため、このような覗き作戦になってしまったのだった。
「・・・・・・ちょっとキサラ、揺れるからちゃんと支えててよ!キャッ!上向いちゃダメ・・・きゃあああっ!!」
リリアーナは体勢を崩し、地面へと落っこちてしまった。
落ちた痛みに呻くリリアーナの上に、月明かりの元長い影が落ちた。
その影は…リリアーナにつられてバランスを崩したキサラ。
しかも、両手をリリアーナの傍らに突いた形の為に
傍目にはキサラがリリアーナを押し倒す形になって、である
>85
代償の血を捧ぐことにより願いを叶える、ヴァンはまるで自分が悪魔にでもなったかのような気分でリリアーナの願いを聞いた。
>「ねえ、ロックって人を探してるんだけど、あなた心当たりはない?
> ――――ごめん、知らない人間を探してくれなんてさすがに虫が良すぎよね。
> じゃあね、食堂が今どうなっているかと、狼男になったグレイズが今困っていないかを調べて欲しいの。
> 二つのお願い、私の血で賄えそうかな?」
これといって困難でもなく、別にヴァンに頼まなくても誰でもできそうな二つの願いが提示される。
永遠の若さとか強力な力が欲しいだとか、そういう大層な願いを待っていたがこれには聞いた本人も拍子抜けてしまう。
「そ、そんなくだらんことでいいのか?
もっとこう…悪魔のような力が欲しいだとか、世界が欲しいだとか。
まあよい、代償は先払いだ遠慮なくいただくぞ」
血を吸いやすいように気を利かせたリリアーナの肌が露になると、柔らかな肩にがっついて歯を突きたてた。
うじゅうぅぅぅと血を吸い上げて空腹だったのが満たされ、モリモリと力が湧いてきて魔力がみなぎってくるのがわかる。
匂いの割にあまり好みの味に合わなかったようで、そんなに味わうことなく腹五分ほどで吸うのをやめた。
口から溢れて血が伝うのを純白のハンカチで拭いてからふぅと一息つく。
「うむ、満足である。
悪魔との契約確かに成就したぞ。
その願い、このヴァンエレンが確かに聞き入れた!」
吸血鬼の周囲に黒い霧が立ち込め、それは無数の蝙蝠となって廊下を羽ばたく音をたてながら飛び去っていった。
去り際の子供の妖しい笑い声は不気味な余韻を残して、キサラとリリアーナの二人に少しの間、静寂が訪れることとなった。
>90
「あうぅ…」
威勢よく飛び出していったはいいがかなり参ってしまっている。
記憶もない場所でただ闇雲に元いた食堂を目指しているが、同じところをグルグル回るだけであった。
この近くには道しるべとなるものがなく、校内を確認できる地図すらない。
使い魔の蝙蝠を偵察に行かせればいいのだが、焦りと不安で次第にそういうことにも頭が回らなくなっていき迷宮の泥沼にはまってしまった。
>「こらー!何でこんなところで道草食ってるのよー!!
> もう、あんまり遅いから自分たちで様子を見に来ちゃったわよ。
> 働かざるもの食うべからず!食堂偵察分のお願いは、何か別の形でかなえてもらうからねー!!」
迷子になってしまった吸血鬼を見かねたリリアーナはズボンを掴んで、そのまま前へずんずんと歩き出した。
そこには落ち込んでいたリリアーナはおらず、普段よりもちょっぴり強気な少女がいた。
「あーうー」
飛行中に強引に進路変更させたものだから、バランスを崩して空中で回ってしまうがそれでも食堂への歩みを止めようとしない。
食堂につく頃には完全に眼を回してふよふよと空中を漂うだけであった。
倒れこんだリリアーナはうっかり吸血鬼の拘束を解いてしまうが、まだ大回転によるダメージが回復していないために逃亡ならず。
>91
いくらか三半規管も正常になっていったところでリリアーナがキサラに押し倒されている。
噂に限りがなく着実に恋人を増やしているリリアーナよ、今度の相手は年下の男子生徒か!?
「おー、これはなにやら面白そうな予感だ」
ギズモに言われた慌てふためくフリージア
「り、リリアーナさんを探しに行きますわよ!!」
食堂から出ようと扉を開けた
>90>91
がらがらがら・・・・・・・ピシャン!!
が、開けた次の瞬間に扉を閉めるフリージア
「い、いま玄関でリリアーナさんがキサラちゃんに押し倒されていたような・・・・・気のせいですわよね」
気のせいだと自分に言い聞かせ今度はゆっくりと扉を開く
・・・・・がらがらがら
「ふう・・・やっぱり気のせいでしたわね
リリアーナさん戻ってらっしゃったのね・・・・なんで二人とも顔が真っ赤なのかしら?(ぼそり)」
「キサラちゃんも元気そうで何よりですわv」
久しぶりに会った少年を見てうれしそうなフリージア
そしてその様子を見て自分も美少年だったならばと謎の闘志を燃やすギズモ
「イツカハボクモ・・・」
とりあえずこうしていても仕方が無いので
リリアーナがいなくなっていた時に起こった出来事を赫々云々と語り始めるのであった
「・・・・というわけですのよ」
そして自分の考えをリリアーナに伝える
「きっと本物のロックはなんだかよくわからないモケモケしたものに変えられてしまったのですわ」
「ナンノコンキョモナイケドネ」
とギズモはフリージアのオオボケに突っ込みを入れるのであった
>92
「・・・・でこの子は一体誰なのかしら?」
フリージアにはそれがまさかヴァンエレンだとはまったく判らなかった
>>90 >「キサラはいい子ね」
一通り言い終わったあと、リリアーナはしみじみと呟いた
言葉の意味が分からず、首をかしげていると、しばらくしてリリアーナが再度口を開いた
>「――――ねえ、キサラは女の子に向かって
『ぴったり密着して一緒にベッドで寝てくれ』なーんてお願いできる?」
「そっ・・・そそそ・・・そんなこと・・・!!」
またも顔を真っ赤にするキサラ
女性側からしたら、これほどからかいやすい相手もいないだろう
>「まあ普通はそうよね。でもロックはね、平気で私にそんなお願いを口に出来ちゃう大馬鹿なの。
―――― これがどういう意味なのか、キサラにはわかる?」
「・・・・・・?」
>「まあ一言で言うとね、私とロックはただのお友達なの。今までも、これからもね。
だから婚約者の件に関しては、『友達』の私が出る幕じゃないわ。
彼女がロックの母君そっくりでも、二人がお互い好きあっていて、ロックが幸せになれるなら、それでいい。
私はただ―――― ロックがまたどこかへ消えてしまいそうで心配なの。ただ、それだけなの」
そういって、リリアーナはうつむいてしまう
>「今から思えば、あの子にもひどい事言っちゃったかな。
婚約者の部屋で全裸で待っていたのに、いきなり女の子が訪ねて来たら気を悪くして当然よね・・・・・・」
・・・よくわからないが、なんだか大変らしい
色々と危ない発言な気もするんですが
と、色々考えながら黙っていると、リリアーナは気が晴れたのか、元気に立ち上がった
>「気にしてくれてありがとね、キサラ。ちょっと喋ったら気が紛れたわ。
そうね、もし恋愛ごとで困った時には我らがキサラ先生に相談するわ。その時はよろしくっ!
「や・・・やめといてください・・・困ります・・・僕が」
異性が苦手なキサラにとって、恋愛などもっての他だ
・・・リリアーナは、わかったうえでからかっているのか・・・それとも素か
リリアーナは食堂へ歩き始める
・・・状況はまだやはりわからないが、話したことで気が晴れたなら、それでよかったと喜ぶべきだ
>「・・・・・・・・ねえキサラ、もし良かったらちょっと付き合ってくれない?
さっきちょっと食堂のシャンデリアを落としちゃったから、 一人じゃ戻りにくくって」
・・・もとより断る理由はない
だが、両手を胸の前であわせ、「お願いっ」などといわれては、どちらにせよキサラは断りきれないだろう
―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
そしてときは進み・・・リリアーナと共にキサラは食堂に来ていた
本人は徹底的に拒否したのだが、リリアーナのわけのわからない迫力の前に結局断りきれず、キサラは今リリアーナを肩の上に乗せているわけなのだが
>「うわー。レイド先生が苦虫噛み潰したみたいな顔で好物の御蕎麦食べてる。やっぱり怒ってるのかな〜。
シャンデリアは誰が後片付けしてくれたみたいね、下敷きになったロックは・・・・・・
あーもう!!ここからじゃ良く見えないのよー!!」
「・・・あの、つま先が肩に刺さって痛いんですけど・・・」
・・・と小声で呟いたが、聞こえたかどうかは定かではない
あと本当に小声だが、「重い」とつぶやいていたのは内緒だ
聞こえていたら確実にただではすまない
(・・・というか・・・僕かあの吸血鬼が中の様子を伝えればいい・・・って何度も言ったのに・・・)
つまるところ、押しが弱いのである
>「・・・・・・ちょっとキサラ、揺れるからちゃんと支えててよ!
とか何とか考えているうちに、リリアーナに怒られる
その拍子にバランスを崩し(たのは実際リリアーナなのだが)、リリアーナが上から落ちてきて・・・
・・・・・・以下略
ちなみに、リリアーナを押し倒した格好になっている際、当然の如くキサラは気絶していたため、数分間記憶がないのである
・・・あるいは、誰かが後で消したか、のどちらかだ
>91 >94 >93
倒れこんできたのはキサラだった。
軽く脳震盪でも起こしているのか、反応が無い。
彼の両手はかろうじてリリアーナの両脇についているため潰されてはいないが、アングル的に非常によろしくない。
>「おー、これはなにやら面白そうな予感だ」
リリアーナはさーっと青ざめた。こんなところをまた『くろいあくま』に目撃されでもされたら
「キサラしっかりしてー!ちょっと吸血鬼、ニヤニヤしてないで助けなさいよ!!」
ガラガラと食堂の扉が開く音がし、リリアーナはぎくっとそちらに目を向けた。
そして、運悪く出てきた人物とばっちり目が合ってしまった。
「ふ、フリージア、これには色々事情が・・・・・・」
フリージアは問答無用でぴしゃりとドアを閉めてしまった。
(ぎゃ――――!!!)
フリージアが何に驚いたかは手に取るように分かった。
――――そして、火事場の馬鹿力は偉大だ。
再びゆっくりと食堂の扉が開いた時には、リリアーナは瞬間移動でもしたかのようにキサラと距離を取っていた。
>「ふう・・・やっぱり気のせいでしたわね
> リリアーナさん戻ってらっしゃったのね・・・・なんで二人とも顔が真っ赤なのかしら?(ぼそり)」
「き、気のせいよ〜。えーとその・・・そう!キサラとさっきそこでばったり会ったの!無事初期研修が終ったんだって!」
>「キサラちゃんも元気そうで何よりですわv」
起き上がったキサラは、にこやかにフリージアと挨拶を交わしていた。
あんなに女性と接触するのが苦手だったのに、今の彼には全くそつが無かった。
少し違和感を覚えたものの、フリージアの話に気を取られたリリアーナはそのまま忘れてしまった。
>「・・・・というわけですのよ」
「そっか、シャンデリアを片付けてくれたのはやっぱりフリージアだったのね、ありがとう。
そういえばキサカさん見かけた?もしかしてフーチさんに捕まって絞られてるのかな?
オウジくんや女の子にパイを振舞ってくれてるといいんだけど」
リリアーナは髪に手を差し入れると、くしゃくしゃとかき回した。
「あーもう、やっぱりロックは偽者だったのね!
でも・・・それにしては随分とロックに詳しかったわね。話してた言葉はまさに本人そのものだったのに」
>「きっと本物のロックはなんだかよくわからないモケモケしたものに変えられてしまったのですわ」
>「ナンノコンキョモナイケドネ」
リリアーナはフリージアの言葉にこくりと頷いた。
「私も・・・・・・フリージアの言うとおり、ロックはロック以外の何かに姿を変えられたんだと思う。
モケモケしてるかどうかまでは分からないけど。
だって、もし誰かに成り済まそうとした時に一番困る事態は何?―――― 本物が現れることよ」
あえてロックが殺されている可能性は口にしなかった。
「キサラ、あなたはどう思う?」
リリアーナはロックと同じ筆跡の、水晶のような目をした女の子のことを思い出していた。
(あの子・・・・・・本当に記憶喪失と偽って、私達を騙してたのかな?)
落ち着いて考えれてみれば、男子寮で見せたあの戸惑いや怯え方、とても演技とは思えない。
「とりあえずロックと、例の黒髪の少女を探しましょう!あの女の子は、絶対何かの手がかりになるはずなのよ!」
リリアーナ達は校舎の方へと移動し始めた。
>92
歩きながら、リリアーナは男子寮で見聞きした事と食堂から飛び出した後の事を軽く説明した。
「そんなわけで、彼は偉大なる吸血鬼、ヴァンエレン様らしいわ。さっき血を分けてあげたの。
ドーナツとオレンジジュースの代わりに二つお願い事をしたんだけど、ひとつは保留になってて・・・・・」
リリアーナは首を傾げた。願い事に関連して、何か大事なことを忘れている気がする。
「そうそう、そういえば、キサラは黒髪の女の子を目撃してないのよね」
リリアーナはポケットから天使の人形を取り出した。
「このお人形に猫耳がついてる、赤いワンピースの女の子なの。探して―――― あっ!」
リリアーナは両手を合わせると、拝むような仕草でキサラに頭を下げた。
「そうだった!キサラは今日研修から帰ったばかりなのよね?ごめんね、ちっとも気がきかなくて。
私たちの事は気にしないで休んでくれていいのよ?本当はものすごく疲れてるんじゃない?」
床に伏せたままの偽ロック(コンコン)に声をかけた後、ようやくゆっくりと立ち上がる。
「キキ、お待たせしちゃってごめんなさいね。
こちらの用事は終わったから後は煮ようが焼こうが良いわよぉん。」
そしてキキに向かい微笑みかけた。
用事は終わったのだ。
そんな事をしていると、背後では異変が起こっていた。
しかし何が起こったかは後ろに目がついていないアルナワーズの知る由もない。
認識できたのは突如として光の玉がアルナワーズの横を飛び去っていったということだけ。
そこでようやく振り向き、偽ロックがみるみる溶けて、金色のどろりとした液体になった事を目撃する。
その様子を見つめ、少し考え・・・
「誕生日おめでとう、コンコン。」
一言だけ残し、今度こそその場から離れていく。
そして振り返った先に、レイドとブランエン(仮)を探すのだが、その姿は見えず。
>「アルナワーズ、そいつ逃がすなよ?俺ちょっと飯食……」
代わりにレイドからのんびりとした声が届くのであった。
「レイド先生、私のような非力な生徒に無理な指示はやめてくださいな。」
レイドの支持をさらっと断り、ブランエン(仮)をきょろきょろと探す。
ブランエン(仮)は状況的に見て記憶を奪われ姿を変えられたロックであることも間違いないだろう。
そして先ほどの光は恐らく奪われていたロックの記憶。
あのリリアーナがこれだけの事をしたのだ。
頭が冷えれば様子を見に帰って来る事はわかっている。
戻った記憶とすでに芽生え始めた自我との摺り合わせに調整が必要なのだが、リリアーナが戻ってくる前に下準備は済ませておきたかった。
にもかかわらず、ブランエン(仮)がいないのだ。
「ねえ、レイド先生?記憶をなくした哀れな女の子のエスコートのほうはどうなっているのでしょうか?
ちょっと・・・姿が、見 え な い よ う で す が ?」
そばを食べるレイドの正面に座り、両肘を突き絡め合わせた両手の上に顎を置き尋ねるアルナワーズ。
その表情は微笑を湛えていたが、妙に影が濃かったりもした。
【シャンデリア落下から時を遡ること数十分】
リリアーナのバスケットを取りに行ったキサカは、それを小脇に寮の廊下で談笑していた。
話し相手は悪友だ。男子寮にいるのだから格好は男子制服。
「しっかし、ついに君も「あの人達」に手を出したか。苦労するよー。僕が言うんだから間違いない」
白い短髪に蒼と翠のオッドアイ。顔つきはやはり、どこか女性的。
「現時点では結構楽しいかな。ある程度の距離を保ちつつ緩々やるさ」
「本気でのめりこむと凄い事になるからそれだけは覚えとくといいよ。ところで」
「何さ?」
び、と白髪はキサカを指差し、素早く払いのけられ、
「君さ、リリアーナに抱きついてなかった? 加えてうら若い乙女に触手」
「前者は百合フラグって事でどうよ。マジ返しするとあれは救出活動。異論は認める」
「……もしかして君「無かったり」する?
僕としてはそれはそれで全然構わないというかむしろ歓迎したい事実なわけで」
「少し頭冷やそうか」
「解ったから冗談でもそんな眼はやめれ」
全く、とキサカは吐息し、白髪は苦笑。
互いに冗談であると解っている上での掛け合いだ。だが一部本気なのは至極当然。
「で、触手は? 苦しい言い訳の場合はムーンウォークで食堂まで行って頂くよ」
「特殊性癖」
「最悪だね」
「本当だったらな」
僅かな沈黙の後、やれやれ、と今度は白髪が一息。
キサカは壁から身を離し、
「じゃあ俺そろそろ行くよ。いい加減食堂で騒動が始まるだろうし」
「ああ、そういえば食堂にロックが現れたんだっけ」
「何処からの情報?」
「アル様絡み」
「怖いくらい確かだな」
ではまた、と歩みだすキサカに、白髪は、
「キサカ、逆、逆。もしかしてムーンウォークで行く気?」
「いや、だって自室寄ってくし」
「何故に?」
キサカは喉を親指で指し示し、
「緊急出撃で携帯し忘れてた喉飴。引用って結構喉とかに負担がかかるのよ。多重詠唱すると更に」
「あー、便利で面白いけどペナルティはちゃんとあるんだよね。律儀なもんだよ」
すると白髪は思い出したように、
「そうそう、二人いるんだってさ」
「誰が?」
「ロック・ウィル」
「食堂に?」
「らしいよ。両方偽者って意見が上がってるけど」
「あ、お前ら一定条件下で意識共有が使えるんだっけ。dクス」
では失礼、と手を振るキサカを、ちょっと待って、と白髪は呼び止める。
「で、恒例だけども」
ニヤニヤ、と白髪は期待を孕んだ笑みを浮かべ、
「確かに恒例だな。敢えて聞くが何?」
呆れ顔のキサカに、白髪は凄く笑顔で、
「本格的な女装の道に――踏 み 込 ま な い か」
独特の発音と共にポージング。体の傾け具合と手が重要だ。
「知覚催眠まで使って男装してるお前と一緒にするな。耳でバレる」
「その時は白百合騎士団にフルボッコされて素敵儀式だね。退廃的音楽と共に邪神召喚さ万歳サクリファイス」
「痛い目に会うのは熱血馬鹿の役目だろうに」
「確かに」
ですよねー、と同情も無く二人は笑う。
食堂へ辿り付いたキサカはロック同士の騒動を眺めながら、なるべく目立たないように人込みを抜けていく。
当人達の騒動に割り込む「義務」は無いからだ。そもそもキサカは首を突っ込んだだけである。
……空気を読む。――風が、蝿の動きだ。
タイミングを見計らって横槍。美しく在れ。
本日の食堂は蝙蝠が飛び散ったり蒼氷色の竜が蕎麦を食べていたりとカオスな空間だが、
一番目立つ双子的コンビの言ってる事も意味不明なのでどうでもよくなってくる。
騒ぎを眺めるギャラリーも多いが、何事も無いかのように静かに食事をしている連中も少なくない。
後者の振りをして、カウンターのおばちゃんにヘルスィー定食(発音が難しい)を注文。
受け取った野菜と穀物中心の食事を持って、騒動から微妙に離れた位置に座って食事を開始する。
なんということでしょう。
一歩間違えれば中途半端と称される絶妙な味付けと、考え抜かれた栄養バランスに十分なボリューム。
特製ドレッシングを掛けて口一杯に頬張れば、世界と食生活と胃腸の調子が一遍に一変。
御馳走はさておきロック達だが、
「………決闘の最中に割り込むなど…少々…いや、大分無粋でおじゃるぞ」
「そうだ!今転入生がいい事を言ったぞ!」
「………決闘の真っ最中でおじゃるぞ…それ以上近づくでない」
「そうだ、そうだ!転入生がさらにいい事を言ったぞ!」
「……それにな…本物だとしても、一度こうでもしないと麿の気がすまないでおじゃるよ」
「そうだ、そうだ!転入生………何だって?!」
演劇じゃないんだからもう少し静かにやれと。そして漫才は他所でやれと。
と、視界の端に金髪やら狼耳やらが写った。それらは即座に騒ぎに加わり、
……なにゆえ俺より遅いのさ。――時間が消し飛ばされた?
だがそれが世界(ザ・ワールド!)と意味も無く締め、食事を続行。
「……こいつらが本物か偽者か、判断してもらう…。
おまえらは噂に聞くと『公認カップル』らしいしな。…本物くらいわかるだろう」
「貴様!誰だか知らないが、俺とやりたいなら後にしてくれ!
そもそも、『公認カップル』って何の話だよ!天地がひっくりかえっても、
俺とリリアーナがそんな関係になるわけがないだろ!!」
「じゃあロック、部屋に連れ込んでいたあの猫耳美少女は本命なのよね?
だったらもっと大事にしてあげたら?
記憶喪失の女の子を、部屋に一人きりで放っておくなんてどういうつもり?」
「なんだ、リリアーナ!人間に戻れたのか!いや、それよりも居るなら居るって言ってくれよ!!」
「居たら悪い?―――っていうか、気安くリリアーナって呼ばないでくれる?」
修羅場だぁ〜と目を輝かせている女子がちらりほらり。すごく平和ですね。
ギャラリーって楽だけど暇だな、と思いつつ、キサカは手と口を動かし続ける。
――嗚呼、それにしてもシャキシャキ感が至福。野菜ウマー。
もぐもぐやってるとリリアーナが子供に吹っ飛ばされた。しかしキサカは動じず、
……あれは脳震盪コースだね。乙。
箸を置いて合掌。
それに連なるように何かが破裂し、桃色の花弁が食堂全体を舞う。舞う。舞う。
そして料理に落ちる。迷惑そうに顔をしかめる者も居たが、幻術なのですぐ消える。
次いで地面から吹き上がるように首をもたげた穂が生まれ、照明を覆い隠すほどの夜空が投影される。
「風に舞う桜吹雪!月夜のススキ!とっても粋で素敵だわぁ。
でも・・・そんな粋な風景も塗りつぶすものがある・・・それは紅蓮の炎!」
演出効果上手いねぇとキサカが眺めるそばから、ススキが燃え上がるように世界が赤く灼けていく。
驚く者はもう少ない。
だが、そのリアルさを味わっているのか今後の展開に期待しているのか、笑みを浮かべる者は居る。
「決闘に水を挿すのは無粋の極み。
でも、その極みすら乗り越えるのが女の情念!
この炎はリリィの嫉妬の炎なのよぉ!・・・あら?」
キサカは聞こえない程度に、
「甘いぜアル様。“無粋に対して無粋で返すのは無粋の極みぞ。せめてこちらは小粋に決めたいではないか”」
聞き齧りな上に魔力も練ってないので意味は無い。独り言をぶつぶつ呟いている様は明らかに気違いだ。
……で、何をしておいでですか?
リリアーナを強調しようとしたのだろうが、当の本人はグレイブとキャッキャウフフ。
アルナワーズは決まり悪そうに、偽者らしいロックに猫耳少女を紹介する。
だがキサカは食事を続けた。サラダの残りと共に豆御飯を咀嚼。
「なんで皆俺を偽者扱いするんだよ!何か証拠でもあるのか!?」
「彼女が俺の部屋に居たって?そんなの知るものか!
俺は彼女の顔を…いや、一応見た事あるけどさ…それはまた別問題で…
とにかく、俺と彼女とは何の関係もないぜ!!どうだ、気がすんだか!!」
「ひどいわ、ロック!私の事を“知らない”だなんて!」
「私達は恋人同士じゃない!私の事を愛してるって言ってくれたのは嘘だったの?
卒業したら結婚しようと言ったのは、ただの気まぐれだったの?」
「けけけっ…結婚だとぉお!!」
キサカは箸を止めた。絶句ではなく、呆然として。
数秒で再起動し、
…………まあ、悪くない手かな。後先考えてないのは別として。
「そうよ!今日だって、あなたが帰ってくるのをベッドの上で待ってたんだから!全裸で!」
群集が山彦のようにどよめきを返す。人間って変な構造してるなと思いつつ、最後の一口で食事終了。
御馳走様、と手を合わせるのを忘れないのは呑気なのか馬鹿なのか
その時殺気に似たものが漂っていると気付いたのは、キサカだけではなかっただろう。
連続した炸裂音。数拍の後、大質量の物が粉砕する衝撃と大気の鳴動。
余韻の中で聞こえたのはリリアーナの怒声だ。
「婚約者なら婚約者とはっきり言えばいいじゃない!どうして記憶喪失なんて嘘をついたの?!」
「―――― ねえ、楽しかった?面白かった?
私や皆があなたのことを心配してる間、あなたはずっと内心で嘲笑っていたのよね?」
肉を打つ音。向きの関係で見辛いが、恐らく平手。殴った音ではない。
「あなたは人として最低だわ!顔も見たくない!」
リリアーナの行く先を阻む者は無く。声を掛ける者も、かといって逃げる者もいない。
そんな中キサカは、カウンターにトレーを返しながら冷静に思う。
傍観していて良かった、と。
違う意味での時が止まった世界で、最初に動いたのはグレイブだった。容姿を変えながら慌てて駆け出す。
同時にアルナワーズ達から灰が舞い上がり、ああ幻術の灰か、とキサカは視線を横へ。
派手に飛び散ったシャンデリアの塊に黒髪の女性が話し掛けている。
そんな悲劇の跡を、キサカは空きテーブルに座って、冷めた思考で眺めていた。
加わる必要は?
……全く無い。俺はただのギャラリー。依然変わりなく。
手を引く?
……冗談じゃない。
面倒事を避けて何が悪いといえるだろう。反撃確定なら横槍を入れる意味は無い。
余計な事はせず要点を突けば良いのだ。物事とはそういうもの。
キサカは口を開いて引用の独り言を始め、
「“今は退くのだ。俺には頂点に返り咲ける能力が――”
…………」
馬鹿らしくなってやめた。
フリージアが指揮する氷の人形がシャンデリアを撤去し終えた時には、キサカは暇を持て余していた。
時刻は昼をとうに過ぎている。
泣き止んだブランエンはリリアーナの後を追い、フリージアはシャンデリアを生成中。群衆は散った。
騒動が終わって少し経った後、瞑想していたアルナワーズが少し身動きした。
直後、血塗れだったロックが金色の液体と化し、魂のようなものが食堂の外へと飛んでいく。
それをキサカは驚きもせず、ただ眺めていた。
どうでも良くなっていた。
アルナワーズに中庭で声を掛けられたとき、恐怖と同時に刺激の充てが見つかった喜びを感じていた気はするが、
……何しに来たんだったか。
昼食? NONONONONO.
仲裁? NONONONONO.
「…………」
やっていてすぐに飽きた。今までに無い倦怠感。
自室に帰って寝よう、と、そんな考えすら「面倒」と切り捨てられる「何もしたくない」という怠惰。
視界の隅でフリージアが食堂が出て行くのを捉えながら、気だるい身体を持ち上げてキサカは立ち上がり、
食堂を出て行く生徒の集団に紛れて廊下へと出た。手は無意識にバスケットを持っている。
とりあえず、自室へ行こう。何か暇つぶしを探そう。図書館へ行くのも良いだろう。
徒然なるままにぼんやりと足を進めながら、キサカは食堂を後にした。
俺は激辛蕎麦と数分間の死闘を繰り広げていた。
水は既に6杯も飲んでいる。
「やるじゃねぇかこの蕎麦野郎…。」
>96独り言を呟く俺に忍び寄る女の影。
アルナワーズだ。
>「ねえ、レイド先生?(中略)ちょっと・・・姿が、見 え な い よ う で す が ?」
………マズイ。蕎麦じゃないぞ。この状況が非常にマズイのだ。
あの少女はリリアーナの元に行かせちまった…。
どうする俺!しらばっくれるか…素直に謝るか…。
「いや…あの……なんて言えば良いのかな〜?
ほら、アレだよ!彼女がどうしても今すぐリリアーナに謝りたいって言うからさ…。」
うわ〜嘘ついちゃった。
十中八九気付いてるだろうけど…。
「で、俺も行かせるかどうか迷ったんだけどさ、謝るのは早い方が良いかな〜と思って…リリアーナの元に行かせちゃいました……。」
サングラス掛けてて良かった……無かったら確実に目でバレる。
絶対に視線があちこちに行ってるだろう。
軽く汗も出てきた。
これは七味の手助けもあるが…。
つーかなんで俺がこんな尋問みたいな事をされなきゃならんのだ!
ま、自業自得なんだけど…。
「………情に流されるなんて…麿もまだ幼いでおじゃるな」
変な表情をしながら、キキはアルナワーズにそう返し、再度偽ロックに近づいた。
ちなみに、キキロックはシャンデリアが落ちた衝撃でバランスが崩れ倒れている。
「あやつの様子を見る限り、やはり、貴様は偽者として判断して…ッ!!」
どんな拷問をしてやろうかと思っている最中、偽ロックの体はみるみるウチに金色の液体に変わっていく。
だが、キキはその様を間近で見ているのに眉一つも動かさなかった。
「……なるほど…キツネかタヌキの類とばかり思っていたでおじゃるが…
オリジナルが存在しないからこそ…個にこだわり…いや…また誰かの真似でおじゃるか?」
そういいながら、キキは黄金の液体を無視して、落下したシャンデリアを青い炎で燃やし錬成する。
みるみるウチに姿を変えるシャンデリアは、何があったのかわからないが、自棄食いする女子生徒と皿と料理が重なる食卓の像
に、その姿を変えた。若干ではあるが、像の女子は若干リリアーナに似ているのは気のせいだ。
「………『怒食』と名づけるでおじゃるかな…」
キキは錬成した像を銘を付け、再度冷めた視線を足元の金色の液体に落とした
>102
捨てられていたシャンデリアはぱっと青い炎に包まれたかと思うと、広場から姿を消した。
ちょうど同じ頃、食堂の片隅でヤケ食いする女子生徒の姿が発見された。
いつのまにか彼女の周りには、料理や皿が積み重ねられていた。
>>95 >「私も・・・・・・フリージアの言うとおり、ロックはロック以外の何かに姿を変えられたんだと思う。
モケモケしてるかどうかまでは分からないけど。
だって、もし誰かに成り済まそうとした時に一番困る事態は何?―――― 本物が現れることよ」
>「キサラ、あなたはどう思う?」
「・・・どう思う・・・と聞かれても・・・
・・・・・・・・・僕がその偽物なら・・・ロックを殺します
・・・自分が本物になるために・・・・・・ッ」
そこまで言って、自分がとんでもないことを口走っていることに気付き、口を噤むキサラ
「ご・・・ごめんなさい・・・リリアーナさん・・・僕・・・」
キサラにとっては、冷静な判断の上、自分の考えを述べたつもりだった
しかし、それがたとえ事実でなくても、リリアーナを傷つけることになる、ということまでは、まだ瞬時に判断できなかった
そして、リリアーナもその可能性を考えているであろう、その上で、あえて言葉に出さなかっただろうに
―――だが、それでも初めて彼女らが彼に会った頃に比べれば、そう、アルワナーズが彼の心理強制を外す前なら、ここで言葉を止めることもなかっただろう
>「とりあえずロックと、例の黒髪の少女を探しましょう!あの女の子は、絶対何かの手がかりになるはずなのよ!」
そうリリアーナが言ったので、とりあえずついていくことにした
>「そうそう、そういえば、キサラは黒髪の女の子を目撃してないのよね」
「・・・ええ・・・まあ・・・はい」
そういうと、リリアーナはポケットから天使の人形を取り出した
>「このお人形に猫耳がついてる、赤いワンピースの女の子なの。
(・・・猫耳・・・って・・・・・・流行ってるのか?)
確か以前にも猫耳をつけられたことがある気がするし、
またある時は、猫耳の変なおじさんがいた気もするが、どちらもいい思い出ではないので、思い出さないことにした
>「――――あっ!そうだった!キサラは今日研修から帰ったばかりなのよね?ごめんね、ちっとも気がきかなくて。
私たちの事は気にしないで休んでくれていいのよ?本当はものすごく疲れてるんじゃない?」
「・・・ああ、そのことも別にいいです 気にしないでください・・・疲れてませんし」
キサラはこれ以上言わなかったが、もちろん元々の目的を忘れたわけではなかったし、もうこうやって巻き込まれるのも、若干慣れてきたようだ
>104
天使の人形をキサラに見せると、彼はほんの僅かだが微妙な表情を浮かべた。
だが特に何も言わなかったので、リリアーナも深く追求する事はしなかった。
>「・・・ああ、そのことも別にいいです 気にしないでください・・・疲れてませんし」
「本当に?無理してない?ならいいんだけど・・・・・・疲れたらちゃんと言うのよ?
ちゃんと口にしないと伝わらない事って、世の中には沢山あるんだからね」
リリアーナ達は少女を探すべく、人影の無い校舎の中へと入っていった。
「な、なんか夜の校舎って、昼間と全然雰囲気違うわよね・・・・・・・・」
フリージアの後ろにぴったりくっつきながら、リリアーナがおどおどと呟いた。
そんな時、と背後から誰かに肩を叩かれる。リリアーナは文字通り飛び上がった。
「キャ――――――― っ!!お化けっ!!フリージア、お化けが出た―― っ!!」
リリアーナはフリージアに飛びつきキャーキャー叫んでいたが、
肩を叩いたのがヴァンエレンだと教えられ、ようやく落ち着きを取り戻した。
「な、何だ・・・・・・もう、あんまり脅かさないでよね!!」
リリアーナは一人ぷんすか怒っていたが、何か思い出したらしく再び大きな声をあげた。
「ちょっと!そう言えば私の最初の願い事は?!
確か私、グレイズ達を見に行ってくれと頼んだ筈よね? そっちは一体どうなってるのよ?!」
>105
遠くから響く女性の悲鳴に、ブランエンはびくりと体を震わせた。
と言っても、何かできるわけではない。
腰をぬかしたブランエンは立つこともできず、
校舎の壁によりかかって座っていたのだから。
でも、今度はブランエンが悲鳴をあげる番だった。
「ギャー!!ギャー!!また出たー!!」
また出た半透明のロックは負けじと大声で怒鳴った。
残念ながら、聞こえるのはブランエンだけである。
>「口を閉じろブランエン!!さもないと今度こそ呪い殺すぞ!!」
これを聞いたブランエンは、ひっと息を飲み、黙り込んだ。
>「それでいい。なあ、ブランエン。俺が一度でも女に乱暴した事があったか?
俺はお前に危害を加えたりしないぜ。だから恐れるな。俺はお前の味方だ。
わかったら、口を開いてもよしだ。」
「…でも前にアンg」
>「彼女に乱暴した分はノーカウントにしてほしい。たしかに酷い事をしたが…
俺だって我慢できない事があるんだ。それにしても、その事を思い出せるということは、
随分記憶が戻ってきたみたいだな。」
「私…立てないんだけど。」
>「それは俺がした事ではない!自分で勝手に腰をぬかしただけだろ?」
ブランエンは、むっとした顔でロックを睨んだ。
「ねぇ、あなたは私の一体何なわけ?」
>「婚約者でないのは間違いないなぁ、ブランエン。信じられないかもしれないが、
お前はo」
その時、ブランエンは人の気配を感じて振り向いた。
そこにいたのは…
陽が沈めば空は暗くなり、残月は光を帯びて通常の月に変わるのは当然のことである。
欠けた月を見据えながらボォーっとしているのは、ささやかな光で地上を照らしている様があまりに美しいためであろう。
「ね、眠いぃ」
このまま何も言わなければ少しはかっこよく終われたのだが…子供は目をこすりながら睡眠欲には勝てなかったようだ。
うつらうつらと眠たそうに欠伸をかいている時、やっとこさ影より現われたのは男子寮へ解き放っていた使い魔の狼だった。
赤い眼二つに影と同化せんばかりに全身が黒い狼はゆっくりと主だけと眼と眼で会話をする。
主と使い魔との間にはこれだけですべての意思疎通が可能であるので、もう用は済んだとばかりに狼も振り返ることなく影へと消えていった。
狼がヴァンに送った記憶には男子寮で起きた事件はもうすでに収まりがついたようで、野次馬はいまではすっかりいなくなっていた。
フーチは怒りすぎによる高血圧でダウンしてしまい保健室に運ばれることになり、隠密魔法戦隊の面々は事件の解決に早々に撤収したようだ。
用務員の猫耳のおっさんの魔法での修繕により壁はすっかりと元通りに直っていて、その請求書はレイド宛になっている。
しっかりと目撃していた生徒が隠密魔法戦隊にちくったので、まんまと逃げおおせたと思っているレイドは給料を確認した時に絶句することだろう。
ここの状況はわかったので、次に人狼と化したグレイズのもとへ影を伝って移動していく。
匂い彼の元へ辿り着いて鍵つきの扉もなんのそのと、隙間から部屋の内部へ不法侵入する。
そこには布団をかぶって人に見られないようにしている人狼の姿があった。
使い魔が受けた命令はグレイズを見てくれという状況確認だけなので、見つからないうちに影へ潜んで姿や匂いを完全に消す。
>105
意識がこちらに向いていないので、願いを叶えるべく報告を聞いてもらおうと肩を叩くが吃驚したリリアーナに叱られてしまう。
別に悪いこともしていないのに大きい声を出された挙句に怒られてちょっと不機嫌になるが、約束は守らなければならない。
「グレイズとかいうさっきの人狼は部屋で布団かぶって縮こまってるよ。
別に怪我をしたとか、病気にかかったとかじゃないから安心するがいい。
それで、お腹もいっぱいになったし眠くなったから俺様は帰るからな」
「バイバーイ」と手を振ってまたも欠伸をしつつ返事を待たず、テクテクと歩いて帰っていった。
>104>105>106>107
>「・・・どう思う・・・と聞かれても・・・
・・・・・・・・・僕がその偽物なら・・・ロックを殺します
・・・自分が本物になるために・・・・・・ッ」
その言葉を聞き唯でさえ青白い顔をさらに真っ青にするフリージア
「ま、まさか・・・大丈夫ですわ!誰もまだロックの幽霊を見てませんもの」
フリージアは知らなかったそのときにブライエン(仮)がちょうどロックの幽霊(?)に出会っていることを
「ユウレイッテ・・・・」
「あら?アルテリオンさんの事を忘れたのかしら?死人は雄弁ですのよ
誰も幽霊を見てないって事はロックは生きてますわ」
ものすごく薄い根拠であった
そしてリリアーナと共に人気の無い校舎に
>「キャ――――――― っ!!お化けっ!!フリージア、お化けが出た―― っ!!」
「リリアーナさんそれはヴァンエレンさんですわ・・・・まあ吸血鬼ですからある意味お化けであってますけど」
「ボクモ オバケ?」
ギズモは首をかしげた
そして帰っていくヴァンエレン
「・・・・・大丈夫かしら彼、元に戻れるのかしら?
まあリリアーナさんも元に戻った事だしヴァンエレンさんやロックもきっと大丈夫ですわ」
フリージアはロックが何かに変身させられたと決め付けているようだ
「ツギアタリ オカアサンガ ヘンシンシタリシテ」
「・・・・・・・考えたくも無いですわ」
次って何だろう?謎である
>101
レイドが熱いのだが冷たいのだかわからない汗をダラダラと流しながらそばを食っている間、アルナワーズは何も言わなかった。
いつもの微笑を湛えたままレイドの説明を聞いている。
だけのはずはない。
傍目にはわからないが、無言のプレッシャーを駆け続けていたのだ。
ようやくレイドが食べ終わると、ゆっくりと口を開く。
「レイド先生の人を思いやる心にはいつでも感服しますわぁん。
でも私ってぇ、ちょっと心配性なんですよぉ〜?」
コツコツと足音を立てながら座るレイドの背後に回る。
そして背中から抱きしめるようにレイドに抱きつき、耳元で囁くのだった。
コンコンとチャネリングして得た情報を。
悲劇であり、喜劇であるその傷は伏せながらコンコンの変身能力だ。
それは唯の変身能力ではない。
恐らくは他者の願望の力を利用して変身する能力だ、と。
また、黄金の液体となった偽ロックの中にロックの記憶があったこと。
それが先ほど光球となって出て行ったこと。
情報を総合し、状況から推測すると、ほぼ間違いなくあの少女はロックの変身『させられた』姿だ、と。
「既に芽生えた自我と戻った記憶のズレで混乱していると思うわ。
早く保護してあげたいんです。
でもわたしってぇ、体が弱くて探し回るのは苦手なんです。
だ か ら ・・・」
すっと体を離しにっこりと微笑むが、目の奥は【今すぐ探してきて!】と言っていた。
校内に散らばっているアルナワーズ情報網の面々が殆ど集まっている。
いつも通りに見物に来ているのだろうが、今回はそれが災いした。
「誰か〜、ダウンジングか何かできる人いないかしらぁ〜。」
レイドには体を張ってもらい、自分は動くことなくブランエン(仮)とリリアーナを探そうとするのであった。
―――グレイの部屋。
グレイズはベットの上で考えていた。
自分が人狼であることがバレてしまった事についてだ。
先程の二人と普通に関わっていけるだろうか?そのことについて悩んでいた。
昔住んでいた場所ではいやな目に会ったのか、人狼を迫害する場所だった。
其処で人狼の一家である事がバレて酷く迫害され、友達からも差別された事があった。
その時は迫害のされない場所に引っ越したが、グレイズはそれが少しトラウマと化している。
「がううう(どうしよう)…。」
【…まーさ、バレちまったのは仕方ねーしさー?】
【……襲い掛かるわけでもないし、事情を話せば良いだけの話だ。
しかも此処は魔術学園。同じような奴らはわんさかいる…問題ない。】
「がうう(でも)……がう?(ん?)」
【……布団を被ってろ。】
【なんか来てるっぽい〜。】
>107
グレイズが布団を被ったその瞬間、妙な影の狼が入り込んできた。
そして何の目的か、グレイズを観察?し始めた。
幽体のグレイブとグレイルはグレイズの様子を確認する狼を観察する。
…シュールである。
狼は数秒すると何処かへ行ってしまった。
様子からして二人の方には気付いてなかったようである。
【……オッケ、妙なのは行ったぜー!】
「…がう。(わかった。)がうが、がるるがう?(でもなんだったんだろう?)」
【……誰かの使い魔だな。だが、知り合いや…今日会った生徒や教師も含めあんな使い魔を使役している奴はいなかったが。
………もしや吸血鬼のガキの?】
グレイブの推測は正しい。が…
【あ〜成る程ーへ〜。】
やる気を出さないグレイル。やる気出せよ。
>105 >106
それから2,3分すると何故か立て続けに2回悲鳴が聞こえた。
「……がうっう、ぐるがーるがう?(あれって、リリアーナさんの声?)
…ぐるるがうがるがあうる。(それとロックの部屋に居た子。)」
【まあそれはほっといてさー、どうするよ?会いに行くとするにしても!】
【…言葉が伝わらないしな……スケッチブックとペンを持っていけ。】
「がうー。(成る程ー。)」
【筆記か!でもさ、顔とかどーすんのー?擦違う人とか吃驚しちゃうじゃん!】
【…入学祝に大叔父(人狼)に貰った成人用ローブがあるだろ…。あれとマフラーで顔を隠して、あとは手袋で十分だ。】
「がる。(オッケー。)」
5分後、そこには見るからに怪しい格好をしたグレイズが!
…悪ふざけは置いといて、部屋から出てリリアーナ達の方へ向かう事にした。
>>108 >「ま、まさか・・・大丈夫ですわ!誰もまだロックの幽霊を見てませんもの」
キサラの発言のあと、フリージアがフォローするように発言する
>「ユウレイッテ・・・・」
>「あら?アルテリオンさんの事を忘れたのかしら?死人は雄弁ですのよ
誰も幽霊を見てないって事はロックは生きてますわ」
「・・・・・・人が死んだら何でもかんでも幽霊になるんですか?」
ちゃんとツッコミは欠かさないキサラ
もしそうなら、世の中生きている人間より幽霊の方が多くなって大変だろう
>「な、なんか夜の校舎って、昼間と全然雰囲気違うわよね・・・・・・・・」
そのまま夜の校舎に入っていくキサラ達
幽霊という存在を信じていないキサラにとっては、恐怖感もなにもないらしい
・・・と
>「キャ――――――― っ!!お化けっ!!フリージア、お化けが出た―― っ!!」
>「リリアーナさんそれはヴァンエレンさんですわ・・・・まあ吸血鬼ですからある意味お化けであってますけど」
耳を劈くような叫び声をあげたリリアーナに対し、冷静に返すフリージア
リリアーナはフリージアにとびついているのだが、さきほどリリアーナを肩車した自分としては、
(・・・フリージアさん、絶対僕より力あるよね・・・)
と思わざるを得ないのであった 余談だが
>「ちょっと!そう言えば私の最初の願い事は?!
確か私、グレイズ達を見に行ってくれと頼んだ筈よね? そっちは一体どうなってるのよ?!」
驚かされたテンションのままで、今度はリリアーナが吸血鬼に怒りだす
・・・もうちょっと落ち着いて、と止めたいところだが、止めたら今度は自分が危ない気がしなくもないのと、
正直吸血鬼の自業自得な気もしなくもないので、あえて止めないでおいた
・・・頑張って
>109無言のプレッシャーを受けながら食う飯はまあ、なんとも美味くないもんだ。
ま、こんなに七味が入った蕎麦が美味い筈はないんだが…。
無言のプレッシャーが不味さを後押ししやがる。
やっとこさ食い終わったと思ったらアルナワーズが口を開く。
>「レイド先生の人を思いやる心にはいつでも感服しますわぁん。
でも私ってぇ、ちょっと心配性なんですよぉ〜?」コツコツと足音を立てながら俺の背後に回り込む。
しまった、背後を取られた!
チョークか?ヘッドロックか?最悪、後頭部をガツンってか?
そんな俺の不安を裏切り、アルナワーズは俺に抱きついた。
おい、ちょっち待て。マズイって。俺にはアルテリオンが…。
って思ったが、どうやら俺に先程の偽ロックに関する情報を教える為らしい。
アルナワーズの話によればあの少女はロックの変身させられた姿らしいが、それを知ったところで少女を探すアテにはならない。
>「既に芽生えた自我と戻った記憶のズレで混乱してると思うわ。(中略)
だ か ら ・・・」
責任取って今すぐ俺に探して来なさいと?
そういう事ですかい、その目は?
こんな時だけ体が弱いのを棚に上げやがって…。
>「誰か〜、ダウンジングか何か出来る人いないかしらぁ〜。」
俺はダウンジングなんか出来んぞ。
そういうのは俺の専門じゃねぇし。
「なあ〜アルナワーズ〜、あの少女の事はリリアーナ達に任せておきゃ良いじゃねぇか。
今更俺達が探しに行ったところで何か意味があるとは思えないが…。
そりゃ、心配なのは分かるが、彼女は誰かに狙われてるって訳でもないしよ。」
>108 >111
>「リリアーナさんそれはヴァンエレンさんですわ・・・・まあ吸血鬼ですからある意味お化けであってますけど」
>「ボクモ オバケ?」
ヴァンエレンに八つ当たりしていたリリアーナは、ふとギズモに視線を移した。
「ギズモは怖くないわよ。だってグレムリンだもの。あっごめんねフリージア」
リリアーナはフリージアにしがみ付いていた腕を解き、背中から降りた。
キサラの物言いたげな視線を誤解したリリアーナは慌てて咳払いをして弁解を始めた。
「いや、『吸血鬼』とか『グレムリン』とか『悪魔』とか、ちゃんと理解できるものは怖くないの。
アルテリオンさんみたいに『ゴースト』だってちゃんと分かれば平気。
だけど・・・・・・目に見えなかったりよく分かんなかったりするお化けは怖いのよ〜〜」
良く分からない理屈だが、どうもリリアーナの中では、魔物より実害の無い『お化け』の方が怖いらしい。
驚いた恥ずかしさもあいまってハイテンションで質問してしまった。
ミニミニ吸血鬼はなんで「俺様が」といわんばかりに唇を尖らせつつも、質問に答える。
>「グレイズとかいうさっきの人狼は部屋で布団かぶって縮こまってるよ。
> 別に怪我をしたとか、病気にかかったとかじゃないから安心するがいい。
> それで、お腹もいっぱいになったし眠くなったから俺様は帰るからな」
「あ、ありがと。そっか、具合が悪い訳じゃなかったのね。良かった・・・・・・ってちょっと、どこ行くのよ!」
>「バイバーイ」と手を振ってまたも欠伸をしつつ返事を待たず、テクテクと歩いて帰っていった。
「もう!私の二つ目の願い事叶えてもらってないのに!!」
>「・・・・・大丈夫かしら彼、元に戻れるのかしら? 」
「吸血鬼は夜目が利くらしいし、帰り道くらい分かるんじゃない?」
微妙に話がずれているようだ。
「・・・・・・・そう言えばさっき、『そんな願い事でいいのか?』とかなんとか言ってたわよね?
――――頼めば・・・おっきくなったりするのかしら?」
リリアーナは胸を両手でぱふぱふしながら、一人ブツブツ呟いていた。
>106
遠くから女性の叫び声が聞こえてきた。
「皆、今の悲鳴聞こえた?・・・・・・あっちょっとキサラ!待ってってば!!」
足音も立てずに走り出したのはキサラだった。
ワンテンポ遅れてフリージアとリリアーナが追うが、そのときキサラは既に次の角を曲がるところだった。
キサラの足取りに迷いは無い。多分声の主がどこに居るのか見当がついているに違いない。
「ま、待ってよ〜」
だが今のリリアーナには、キサラの背中を見失わないのが精一杯だ。
何度か角を曲がったところで、リリアーナは誰かの背中に思いっきりぶつかってしまった。
「〜〜〜〜〜〜〜〜〜!!」
リリアーナはぶつけた鼻を押さえ、恨みがましそうな目で相手を見上げた。
「ふぁふぃおフィファラ、ふぉんなふぉふぉろふぇふぁふぃどふぁっふぇふふぉふぉ〜!」
(訳:何よキサラ、どうしてこんなところで立ち止まってるのよ〜!)
キサラはシッと口に指を当て、リリアーナの抗議を遮った。
そして壁越しにそっと向こう側の様子をうかがっている。
(あっちには確か、学園長室や3年の教室なんかがあった筈よね?)
リリアーナもキサラを真似てそっと向こう側を覗いてみた。
とはいえ訓練をつんでいるキサラや魔法障壁のあるフリージアと違い、
魔法を使えないリリアーナの気配など、相手にはバレバレだろう。
床の上に座っているのは、リリアーナ達が探していた黒髪の少女だった。
良く聞こえないが、宙の一点をじっと見つめてブツブツ呟いている。
「だ、誰と話しているのかなっ?!」
何だかイヤ〜な地雷が埋まってる気がする。
リリアーナはすすす〜っと後ずさりしていった。
>110
後ずさりするリリアーナの背後にもあやしい人影が迫っているなど、神ならぬ彼女が知る由も無かった。
>114
「リリアーナ!」
ブランエンは、壁越しにこちらをうかがっていたリリアーナを発見した。
> 「だ、誰と話しているのかなっ?!」
そう言ってリリアーナは後ずさりした。
「ごめんなさい!ごめんなさい、リリアーナ!」
ブランエンは涙目で叫んだ。ちなみに、この時点では、
キサラとフリージアの存在に気がついていない。
「聞いて!私がロックの婚約者って言ったのは全部嘘なの!
彼に放置プレイをされたかと…彼が私の記憶を奪ったのかと…
そう思ったから、ただちょっとロックを困らせたかっただけだなの!
だけど、あなたを傷つける事になるとは思いもしなかった!」
そう言った後、ブランエンはちょっと怒ったように言った。
「でも、リリアーナ!どうしてロックを殺したの!?
あなたと彼は友達だったんじゃなかったの!?
あなた達はお互いを愛してたんじゃなかったの!?…きゃっ!」
ブランエンはそこまで言って急に耳を押さえた。
なんのことはない。怒れるロックが耳元で怒鳴ったからだ。
ブランエンの脳内のロックが…だが。
「嘘!じゃあなんで一緒に寝ることにしたのよ!このスケベ!」
ブランエンは何もない所に向かって叫んだ。これでは、まるっきり不思議ちゃんだ。
「…どうして…どうして見えないの?ここにいるじゃない!ロックが見えないの!?」
ブランエンはリリアーナに、先程までの半透明のロックとのやり取りを説明した。
>113
アルナワーズがレイドに捜しに行くように促しても、レイドは重い腰を上げようとしなかった。
それどころか、リリアーナ達に任せておくことを提案する。
それを聞いたアルナワーズは大げさに驚くようなそぶりのあと、芝居がかった台詞が始まる。
「ああ、なんていうことなの!私はなんて浅はかな女だったのでしょう!
レイド先生の生徒への信頼!素晴らしいわ!教育者の鏡だわ!
教頭先生、この感動を 共 有 できたことを誇りに思いますわぁん。」
泣き崩れるようにテーブルの上に置かれたティーカップに語りかけるのだった。
そう、アルナワーズがレイドの対面に座っていたとき、その手元にはティーカップがあった。
無言で見つめていた為に口をつけていなかったように見えて、実は口をつける訳には行かなかったのだ。
『ほほう!生徒の保護放棄か。見事な教育者ぶりだな、レイドぉ?
探す目がなくとも探し回る足はあるだろうが、なぁ。
今すぐ駆けずり回るか、冬のボーナス全額カットか選ばせてやるぞ!?』
ティーカップの水面に映るのは教頭の顔。
紅茶の色以上に赤い顔でおどろおどろしいうなり声が映っていた。
男子寮近くの木立で使った水面を利用した通信魔法だとわかるだろう。
それがいつから発動していたかは・・・言うまでもない。
「ああ、教頭先生のお顔が感激のあまりにこんなに真っ赤に・・・あっ・・・」
教頭の怒りのオーラがティーカップ越しからも立ち上がるのを見てアルナワーズは感嘆の声を上げる。
が、唐突によろめき、ティーカップを倒してしまった。
テーブルの上に広がる紅茶に、既に音声が途切れた教頭の怒りの顔が一瞬ドアップで映り消えてしまう。
少しよろめきながらにっこりと微笑み、レイドを見上げ、
「レイド先生、人の心はとっても複雑。
記憶の奪われている間に芽生えた自我が確立してしまえば、記憶が戻った時にどんな作用が起きるかはわかりませんの。
あの少女にロックの記憶は戻っているでしょうけど、早く適切な処置をしないと・・・
もしかしたら二重人格・・・いいえ、オカマロックが出来上がっちゃうかも!
想像してみてください。女装趣味なロックなんて見たいですか?」
女装趣味なロック、という台詞のときに小さく身震いをしながら首を振る。
熱血な性格でおねえ言葉でゴスロリファッション、でも姿かたちはロック。
そんなものを想像すればられもが振り払おうと首を振ってしまうだろう。
少し息をつき、目を伏せながら最後に言い放つ。
「でも・・・教頭先生も【激励】してくださったことだし、レイド先生の信頼する気持ちも尊重したいわ・・・。
だから、どうするかはお任せしますわん。
私、今日はチャネリングや召憑術使って疲れちゃったから、一旦部屋に戻って回復してきますので、ごきげんよう。」
そういい残し、生徒の一人に居場所がわかったら通信魔法で伝えるようにいい、食堂を後にした。
小さく舌を出しながら。
教頭とそう易々と通信できるものではない。
あの水面に映った教頭はアルナワーズの幻術により映し出されたものなのだから。
勿論、それをレイドは知る由もないが・・・
>110>111>114>116
>――――頼めば・・・おっきくなったりするのかしら?」
自分の胸を揉むリリアーナを見てフリージアは思った
私も14の頃はあれくらいの大きさでしたっけと
フリージアの胸は今でこそ大きいが昔は俗に言う貧乳に属していた
しかし色々な体操をしたり大きくなると言われている栄養素を取ったりという努力の結果
今のプロポーションを実現したのだ・・・・・それでもまあウエストの方は無理やり作っているのだが
(ファイトですわ!リリアーナさん!!)
フリージアはそう心の中でリリアーナにエールを送るのであった
そして女性の悲鳴に走り出すキサラとリリアーナ
当然フリージアも追いかける
そこでフリージアが見たものとは・・・・なんか空中に話しかけている例の少女であった
「ア、ボクヲダッコシテクレタ オネエチャンダ」
空気の読めないグレムリンは普通に話し掛けようとする
「だ、駄目よギズモちゃん!なにか取り込み中みたいだから話し掛けちゃ駄目」
フリージアはギズモを止めようとするが・・・・明らかにその声の方が大きい
「精霊さんと話してるのかしら?」
フリージアはその様子に首をかしげた
だが精霊なら魔法使いであるフリージアにも姿が見えるはずである
その少女いわくロックと話しているそうだ
>「…どうして…どうして見えないの?ここにいるじゃない!ロックが見えないの!?」
「ま、まさかロックの生き霊ですの?」
まだロックが生きているという考えが捨てられないフリージアは生き霊と言う表現を取った
そしてふと思った・・・アルテリオンさんはどんな人にでも見えたのにと
「なぜ・・・なぜ私にはロックが見えませんの?」
そして後ろから迫る謎の影
果たして何者なのだろうか?
「ダレ?」
最初にその人物に気が付いたのは意外なことにギズモであった
「どうしたのギズモちゃん?・・・・!?」
フリージアはその怪しい格好に驚いた
・・・・・この学園ならまだ元の姿のほうがましだったかも知れない
「あ、あなたは誰かしら?」
よく考えたら人の姿をしていない知り合いも結構いることに気が付いたフリージアは
冷静を装ってそう尋ねてみるのであった・・・・・怪しいと言っても猫耳のおっさんよりはまだましだし
ちなみに一瞬問答無用で攻撃しようかと思ったのは内緒である
>115 >118
>「ダレ?」
>「どうしたのギズモちゃん?・・・・!?」
>「あ、あなたは誰かしら?」
それに反応したのか、聞こえるは
「……グルル…。」
という獣の唸り声。
フードから覗くは獰猛な黄色をした目。
言わずもがな、人狼になったグレイズである。
ちょっと時間を戻す。
>114-116
男子寮を出て校舎に入り、先程リリアーナ達が居た場所に到着したグレイズ。
誰かに見つからないようにしたいと願ったせいか、
校舎に来るまで誰とも擦違いもしなかったのでスムーズに移動できた。まあそれはぶっちゃけ余談であるが。
そこまでは良かったのだが……誰もいない。いわゆる本末転倒というやつだろう。
「…がるがうぐるう。(此処なんだけどなぁ。)」
【何処かに移動したんだろう…。】
【うーん、なんかメシでも喰いに行ったんじゃねー?】
「がるぐうう…がうぐるっるぐう?(とりあえず…もう一つの悲鳴のほうに行ってみよう?)
ががるぐうがうぐるがーう。(もしかしたらいるかもしれないし。)」
…そして、今。リリアーナ達に追いついたわけだが、戦闘体勢に入られたのである。
その格好で唸り声では当たり前というべきか、勘違いされているようだ。
「がっ、がぐるがう!(えっ、ちょっと待ってよ!)」
グレイズは手袋を脱いでカキカキ、とスケッチブックに文章を書き、ドン!と前に突き出して説得を試みる。
『待って!僕は此処の生徒だよ!喧嘩しに来たわけじゃないんだ!』
…果たして伝わるだろうか?暗い校舎である、読めないかもしれない。
もし攻撃されたらグレイズは自身の爪と今使える魔法で応戦するだろう。
>117くそっ……卑怯だぞアルナワーズ!
なんで教頭を出してくるんだよ!
つーか教頭!アンタもたまには動けや!
なんでいっつも俺だけなんだよ!たまには他の職員も働かせてやれよ〜!
確かに俺だって女装趣味なロックなんざごめん被りたいけどよ…。
しっかしまあ、手がかり無しで人捜しなんて無茶を言いやがる…。
水中に居る魚を手で捕まえろって位無茶だ。
…学園内に居るって事は確かなんだけどなぁ…。
さ〜て……どーしましょ…?
とりあえず食堂を出るか。
現在地、廊下。
当たり前の事ながら彼女の姿は見当たらない。
「やれやれ…。」
一人事を呟き、タバコを口にくわえる。
ふぅ……俺にダウンジングの能力があればなぁ…。
何か良い方法は無いものか…。
………あ、そうだ。
リリアーナ達にテレパシーで聞けば良いんだ!
俺天才!冴えてる!
ちょっと考えれば解るだろ、ってツッコミは受け付けません。
でももしリリアーナ達が彼女と合流してなかったらマジで手がかりが無くなるな…。
ま、とりあえずやってみますか。
『………もしも〜し、リリアーナ?俺だよ俺。ちょっと事故っちゃって、お金を……ゴメン、冗談。
レイドだよ。あのさ〜、お前ら今、自称ロックの婚約者と一緒じゃない?』
>118
ブランエンは、はっと気がつき、曲がり角の向こうに声をかけた。
「そこに誰かいるの?…フリージアなの?」
ブランエンは、なぜか会ったことのないフリージアの名前を口にした。
「ねぇ、顔を見せてくれない?」
>119
その時、曲がり角の向こうから唸り声が聞こえた。
ブランエンの顔からさっと血の気が引いた。
それは、まちがいなく狼の唸り声だったからだ。
「ごめん、やっぱり無理に顔をださなくてもいいわ。」
>116
「ごめんなさい!ごめんなさい、リリアーナ!」
「は?」
いきなり謝られ、リリアーナは驚いて足を止めた。
>「聞いて!私がロックの婚約者って言ったのは全部嘘なの!
リリアーナは鳩が豆鉄砲を食らったような顔をした。
> 彼に放置プレイをされたかと…彼が私の記憶を奪ったのかと…
> そう思ったから、ただちょっとロックを困らせたかっただけだなの!
(・・・・・・そっか、そうだったんだ。・・・・・・・・なあんだ)
>「だけど、あなたを傷つける事になるとは思いもしなかった!」
少女の言葉をかみ締めていたリリアーナだったが、この言葉ではっと我にかえる。
「いや、ちょっと待ってよ!べ、別に私はその・・・ち、ちっとも傷ついてなんか無いわよっ?!
っていうか、どうして私のことをリリアーノって呼ばなくなったの?」
一気にまくし立てられ、リリアーナはメを白黒させた。
記憶がないという割にさっきよりもしっかりした対応の少女に、リリアーナも少し混乱ぎみのようだ。
少女はちょっと怒ったような顔で、「なぜロックを殺したのか」とリリアーナを責めた。
「いや、あのくらいじゃロックは死なないし。そもそもあの馬鹿は私のことなんかなんとも思ってないと・・・・・」
>「嘘!じゃあなんで一緒に寝ることにしたのよ!このスケベ!」
ブランエンとしては見えないロックに言ったのだろうが、リリアーナが知る由もない。
「す・・・・・・スケベ・・・・・・・・」
ブランエンに罵倒された(と思った)リリアーナは、泣きそうな顔でふらふらと角の向こう側へ引っ込んだ。
その後フリージア達と二言三言話していた気もするが、残念ながらリリアーナの耳には入っていなかった。
>118-119
>「ダレ?」
ギズモが背後の闇に誰何するのと、リリアーナの背中に何かが当たったはほぼ同時だった。
「え?」
リリアーナの前方にはブランエン、フリージアとギズモ、それにキサラ。
(じゃあ・・・今私は、一体誰とぶつかったの?)
リリアーナはギギギ、と音がしそうなくらいぎこちなく振り向き――――そのまま固まってしまった。
リリアーナの背後には、全身すっぽりとローブを被った大きな人影が立っていた。
人影はグルグルと狼のような唸り声を上げながら、黄色く光る目でリリアーナを見下ろしている。
「キャー!!キャー!!キャー・・・・・・・あれ?」
あやしさ万点の格好だが、特に敵意は感じられない。
>「あ、あなたは誰かしら?」
物言いたげな瞳を見上げていたリリアーナはぴんと閃いた。
「も、もしかして・・・・・・・あなた、ロックなの?」
巨大な人影は手袋を外すと、手元のスケッチブックに何か書き込み始めた。
リリアーナは、熱心に書き込んでいるスケッチブックを覗き込もうと近づいていった。
だが。
>グレイズは手袋を脱いでカキカキ、とスケッチブックに文章を書き、ドン!と前に突き出して説得を試みる。
「―――― きゃう!!」
思いっきり突き出したスケッチブックは、運悪くリリアーナの顔面にクリーンヒットしてしまった。
今日は良くぶつかる日だ。
リリアーナはそのままばったりと倒れこみ、のびてしまった。
>120
ちょうどその頃、レイドがテレパシーでリリアーナに呼びかけていたのだが、残念ながら応えはなかった。
レイドの能力をもってしても、相手が気絶しているのではどうしようもなかったのだ。
>118-119
「痛たた・・・・・・もう、馬鹿になったらどうしてくれるのよ・・・・・・」
リリアーナは痛む頭を擦りながら起き上がった。
傍らには先程のローブ姿の影。大柄な身体を身をかがめて、居心地悪そうに立っていた。
どうも気絶していたのは短い間だったらしい。
角の向こう側にいるブランエンは、リリアーナの位置からは見えない。
フリージアとキサラが今のドタバタを目撃していたようだが、
さすがの二人もあっけにとられてしまっている。
リリアーナは「大丈夫大丈夫、なんでもない」というように手を振って見せると、
グレイズの差し出すスケッチブックを声に出して読んだ。
「『待って!僕は此処の生徒だよ!喧嘩しに来たわけじゃないんだ!』
うんうん、ちゃんと分かってるわよ。大丈夫大丈夫、私は猫より犬派だし。
それに学園には『獣化解除全書』があるんだもの。きっと元の姿に戻れるからね、ロック」
最後の一言にグレイズが過剰反応しているようだが、床から立ち上がったリリアーナは気づかなかった。
>121
気を取り直したリリアーナは、廊下の角からおずおずと顔を出す。
また罵倒されるかと思ったが、倖そんなことは無かった。
というよりも、少女は精神的にかなりに詰まっている様子だった。
>「…どうして…どうして見えないの?ここにいるじゃない!ロックが見えないの!?」
リリアーナはものすごく困惑した顔をして、傍らのグレイズを見上げた。
「・・・・・・・・もしかして、あなたはロックじゃないのかな?」
グレイズが慌てて何かスケッチブックに書き込んでいる。
「えーと、ロックじゃなかったけど学園の生徒で悪さはしないみたいよ」
苛めないでね?と警戒心ばりばりのキサラと少女に釘をさす。
そんなことよりさっきの話。ねえ、ロックがここにいるってどういうこと?」
>ブランエンはリリアーナに、先程までの半透明のロックとのやり取りを説明した。
リリアーナはじっと考え込んだ後、「フリージアはどう思う?」と質問した。
「私は随分おかしな話だと思うわ。だってロックは魔法使いなのよ?
もし本当に死んで、私たちにメッセージを伝えようとしてるのなら、
ロックの姿が彼女にだけに見えて、魔力のあるフリージア達に見えないというのは不自然だわ」
リリアーナは、ブランエンの話をどこまで鵜呑みにしていいか分からない様子だった。
「ねえ、本当にロックが見えるのなら、彼に質問してくれない?
今ロックの身体は今どこにあるの?ロックは本当に死んでしまったの?もし死んでるなら、いつ、誰に殺されたの?」
リリアーナは躊躇った後、おずおずといった感じで更に付け加えた。
「どうして自分の部屋に、お母様そっくりの女の子を連れ込んでいたの?」
>123
ブランエンは虚空に向けて口を開きかけたが、すぐに閉じた。
ブランエンの耳はロックの耳である。
> 「ねえ、本当にロックが見えるのなら、彼に質問してくれない?」
リリアーナがそう切り出した時から、ロックがべらべらと話し始めたのだ。
ブランエンは、リリアーナ達をちらりと見て確認した。
やはり、彼女達にはロックが見えないらしい。
「…ロックが言ってる事を、私がそのまま言うわね。」
ブランエンは、はぁっと長いため息をついた後、話始めた。
「なあ、リリアーナ。俺にも正直、今回起こった事はよくわからないんだ。
でも、ただ一つ確かな事がある。それを聞けば、少しは状況がわかるんじゃないか?
…ってロックは言っているわ。」
ここまで話した後、ブランエンは自分の耳を疑った。
そしてロックに尋ねた。
「…ごめんロック、さっき言った事がよく聞こえなかったわ。もう一回言って。」
そうブランエンに言われたロックは、きっともう一回言ったのだろう。
しかし、ブランエンは納得しなかった。
「…意味がわからない。」
どうしたのか?と聞かれたブランエンはこう答えた。
「ロックが言うには、私がロックなんだって。それ…なんて暗号?」
「やん。いたっ・・・でもちょっと気持ち良いかも・・・。
あ、待って、私って熱いのちょっと苦手〜。」
「うるせえよ。時間がねえのなら黙ってろ。」
「や〜〜ん。もっと優しくしてぇ〜。」
女子寮アルナワーズとリリアーナの部屋で二人の声が響き渡る。
床に伏したアルナワーズにもう一人の女子生徒が馬乗りになって身体をまさぐっている。
「おらよ。終わったからあたしゃもう行くからね。」
「はぁ〜い。昨日の分も合わせてそのうちお礼はたっぷりするわぁん。」
しばらく二人のやり取りが続いた後、一人は部屋を出て行った。
残されたのは服をはだけさせ、半裸状態で床にうつ伏せのアルナワーズ。そしてなぜか隣に居座る蜘蛛が一匹。
床にうつ伏せといっても、下には豪華なペルシャ絨毯は敷いてあるのでかなり寝心地はよさそうである。
そして、服がはだけ露になった背中全体には無数の鍼と、煙を上げる灸が乗っていた。
レイドにリリアーナとブランエン(仮)の捜索を押し付けた後、アルナワーズは女子寮に帰ってきていた。
消耗した体力と精神力、そして魔力を回復させる為に。
寮入り口で夕食をとりにでてきた薬学科のベアトリーチェに会い、治療を頼んで今に至る。
アルナワーズの隣に居座る蜘蛛はベアトリーチェの創造生物であり、鍼と灸の回収役として残されたのだった。
余談ではあるが、リリアーナを猫にしてしまったアルナワーズに朝の6時前から起こされて解除薬を作らされたのも彼女だったりする。
しばらくすると、寝そべったままぴくりとも動かないアルナワーズの前に置かれた水晶球が鈍く光を放ち始める。
食堂でダウンジングによる捜索を依頼された友人からの通信だった。
「あらぁん。ありがとう〜。本当にいい友達に恵まれて助かるわぁ〜。」
寝そべったまま礼を言い、座標図を送ってもらって通信を切る。
そう、鍼と灸が背中にのったままの状態では動くことすら間々ならないのだ。
「この蜘蛛ちゃんが動かないって事はだましばらく動けそうにないってことなのよねぇ。
困ったわぁ〜・・・もう時間が残り少ないのに・・・
仕方がないわ。ムガル〜お願い〜。」
うつ伏せに寝そべったままアルナワーズが呼びかけた。
すると、アルナワーズは寝そべった状態のまま、ゆっくりと宙に浮き始める。
ロックの故フォルテッシモやメラルの杖など、魔法使いは空を飛ぶためのアイテムを持っている場合が多い。
アルナワーズもやはりそういった一品を持っているのだ。
それが今寝そべっているペルシャ絨毯である。
いわゆる魔法の空飛ぶ絨毯。
杖や箒のように高速飛行はあまり期待できないが、重心移動などの操作を必要としない。
2m*3mという大きさで、今のアルナワーズのように寝そべったままでも使える乗り心地のよさを気に入っていた。
窓を通過する際には筒状になってすり抜け、部屋から出て行く。
まるで月光浴をするかのように、月明かりを反射して背中の鍼を煌かせ、煙を引いたまま向かう先は校舎である。
>118
>「そこに誰かいるの?…フリージアなの?」
なぜ私の名前を知っているのかしら?
フリージアは疑問に思った
そしてその疑問は意外な形で答えが出ることに
>119>122
>「も、もしかして・・・・・・・あなた、ロックなの?」
目の前にスケッチブックを突き出す謎の人物
それを覗き込もうとしたリリアーナの頭にクリーンヒット
>「―――― きゃう!!」
「・・・・・ちょ、ちょっと大丈夫ですの!リリアーナさん!!」
「・・・・イマノハ リリアーナオネエチャンガ ワルイ」
>123
そして気絶から回復したリリアーナはスケッチブックを読む
>「『待って!僕は此処の生徒だよ!喧嘩しに来たわけじゃないんだ!』
それを見たリリアーナは彼がロックだと思い込んだようだ
がどうやらブライエン(仮)や謎の人物本人の反応を見る限りそれは間違っていたらしく
>「・・・・・・・・もしかして、あなたはロックじゃないのかな?」
と言う答えをリリアーナは出すのであった
>「フリージアはどう思う?」
「私は・・・」
リリアーナはこう続ける
ロックがブライエンにしか見えないのはおかしいと
「確かにそのとおりですわ!私もさっきから何で見えないか疑問に思ってましたのよ」
そしてリリアーナはさらにブライエンに問いかける
>「どうして自分の部屋に、お母様そっくりの女の子を連れ込んでいたの?」
>124
そしてロックが語る驚きの真実とは
「ロックが言うには、私がロックなんだって。それ…なんて暗号?」
「な、なんですって!?」
フリージアは驚いたそれが確かならこの少女はロックの別人格のようなものだということになる
「ツマリ ドウユウコト?」
疑問に思うギズモ
「ロック・・・あなたまだ別の人格がありましたのね」
まだ・・・というのは当然マリアベルのほかにもと言う意味である
「つまりあなたは多分肉体を変化させられた時生まれたロックの別人格だったのですわ!!」
フリージアはわけの分からない回答を見出した
>124
ブランエンは長いため息をつくと、ロックの話を通訳し始めた。
>「なあ、リリアーナ。俺にも正直、今回起こった事はよくわからないんだ。
> でも、ただ一つ確かな事がある。それを聞けば、少しは状況がわかるんじゃないか?
> …ってロックは言っているわ。」
リリアーナは半信半疑ながらも頷いた。
だが次の瞬間、ブランエンは平手で頬を叩かれたような顔になった。
ブランエンは見えないロックと何度か問答した後、何がなんだかわからない顔で通訳する。
>「ロックが言うには、私がロックなんだって。それ…なんて暗号?」
>「な、なんですって!?」
フリージアが驚いている。
「・・・・・・・・・・・。」
リリアーナは真っ白な頭のまま、ふらふらとブランエンに近づいていった。
あと一歩でブランエンにぶつかる距離まで接近すると、
「ちょっとしつれいするけどいいよね」
答えは聞いてない、とばかりに、両手を前に突き出す。
ぽにゅ。
「ほ・・・・・・・本物・・・・・・?!」
リリアーナはブランエンのワンピースの胸元をつまむと、びよーんと手前に引っ張った。
ブランエン自身とリリアーナだけに胸が覗き込める角度だ。
リリアーナは、ブランエンが鼻血を出すかどうか試してみたのだ。
あんまりな仕打ちにブランエンが怒り出すより早く、リリアーナはワンピースから手を離した。
顔色が真っ青だ。
「ロックがブランエンなら、確かにいろんな辻褄が合うわ。
でも・・・・・・・でも!何でこの顔なのよ!!しかも私より豊かってどういう事なのよ――― っ!!」
リリアーナは絶叫した。
「ちょっとあなた、あんまりだと思わない?!」
リリアーナは謎のローブ男に同意を求めた。
「まさか・・・・・・ロックに負ける日が来るなんて・・・・・・」
何を?と聞いてはいけない。
リリアーナはその場に蹲ると、ブラックホールのようなネガティブフィールドを展開し始めた。
>126
>「ロック・・・あなたまだ別の人格がありましたのね」
リリアーナははっと我にかえった。
フリージアの静かな一言に込められた意味に、リリアーナが気づかぬ筈が無い。
>「つまりあなたは多分肉体を変化させられた時生まれたロックの別人格だったのですわ!!」
「な、何ですって?!この女の子がギr・・・・・・ゲフンゲフン!!ロックの別人格だって言うの?!」
リリアーナは衝撃を受けた。
ブランエンが本当にロックの別人格なら、彼女を倒さない限りロックが元の姿に戻れない事になるのだ。
「でも・・・・・なんかそれは違う気がするわ。その・・・あの・・・ごめん、上手く言えないけど・・・・・・・・・」
リリアーナはなんとか説明しようとしたが、直感的なものなので上手く言葉に出来ない。
「ねえロック、それにブランエン。あなた達、本当に何にも心当たりが無いの?
ロック、誰かに女の子になりたいと打ち明けたり、ブランエン関係のお願いをした覚えは?」
リリアーナははっとした。
「そうだわ!ねえロック、たしか昨日夢の世界で、「あいつ」に何かお願いしてなかった?!
ねえ、あの時ロックは一体何を願ったの?!」
>127
> 「ちょっとしつれいするけどいいよね」
「リリアーナ、目が怖い…ひゃっ!?」
> ぽにゅ。
> 「ほ・・・・・・・本物・・・・・・?!」
リリアーナが真っ青になったのと対照的に、ブランエンは耳まで真っ赤になった。
> 「ロックがブランエンなら、確かにいろんな辻褄が合うわ。
> でも・・・・・・・でも!何でこの顔なのよ!!しかも私より豊かってどういう事なのよ――― っ!!」
「…スケベ。」
>126
>「ロック・・・あなたまだ別の人格がありましたのね」
「ええ?」
>「つまりあなたは多分肉体を変化させられた時生まれたロックの別人格だったのですわ!!」
> 「な、何ですって?!この女の子がギr・・・・・・ゲフンゲフン!!ロックの別人格だって言うの?!」
「私を多重人格者みたいに言わないでよ。私がロックの別人格って…
私がロックと同じ人間なわけないじゃない!常識で考えて、あり得ないわ!
だって…彼は男で、私は女なんだもの!」
> 「でも・・・・・なんかそれは違う気がするわ。その・・・あの・・・ごめん、上手く言えないけど・・・・・・・・・」
「当然よ。」
> 「ねえロック、それにブランエン。あなた達、本当に何にも心当たりが無いの?
> ロック、誰かに女の子になりたいと打ち明けたり、ブランエン関係のお願いをした覚えは?」
> 「そうだわ!ねえロック、たしか昨日夢の世界で、「あいつ」に何かお願いしてなかった?!
> ねえ、あの時ロックは一体何を願ったの?!」
ブランエンはまわりを見渡し、そしてびっくりした。
いつの間にか知らないが、ロックが消えてしまったのだ。
ブランエンは知らなかった。己の自我が、次第にロックを否定しだした事を…
「…ロックが見えない、どうしてかしら。」
そして、それは突然始まった。ブランエンの頭の中に突如浮かびあがる情景。
>そこは、のどかな草原だった。天には雲ひとつ無い青空が広がり、
>時々吹くそよ風が草と、その草原にいる者達の頬を優しくなでている。
>草原にいる者達…頑固そうな少年、角をはやした少女、金色の猫、そして金髪の女性。
>そのうち、頑固そうな少年が金髪の少女に迫った。
>「ちょっと待てよ!!最初に願いを叶えてやると言ったのはこの俺だろ!
> まず最初に俺の願いを叶えてくれよ!!」
>>「やっぱり、左目を元に戻したいの?」
>金髪の少女が答えた。
>「違う!」
少年は赤面しながら金髪の女性に近づき、ささやいた。
「俺は知りたい…母というものが、どういうものかを。」
視界が真っ白になり、再び目に飛び込んできたのは、こちらを熱心に見つめるリリアーナだった。
「母というものが、どういうものか…」
ブランエンはそうつぶやいた後、少し沈んだ顔をした。
自分が今ここに存在する理由を…ブランエンもようやく理解しだしたのだ。
「ねえ、もしも私がロックだとしたら…みんなは、私がロックに戻ってほしいと思うの?」
みんなの反応を受けたブランエンは、悲しそうに言った。
「当然よね。どこの誰でもない私なんかより、ロックに戻ってきてほしいと思うにきまってるわよね。
…でも、私はどうなるの?ロックが戻ったら、私はどこに居ればいい?
私は消え去るしかないの?…そんなの嫌、せっかく生まれてきたのに…
私だって…私として生きる権利があるわ!!」
ブランエンはすくっと立ち上がった。もう腰抜けのブランエンではない。
「私の名前はブランエン・ウィル!それ以外の、他の誰でもないわ!」
ブランエンはそう叫び、その場から全力で逃げ出した。
>129
「母というものが、どういうものか…」
リリアーナには、今の一言で十分だった。
またブランエン自身も、なぜ自分が今ここに存在しているのかを悟ったようだ。
気詰まりな沈黙が落ちる。
>「ねえ、もしも私がロックだとしたら…みんなは、私がロックに戻ってほしいと思うの?」
リリアーナは答えなかった。いや、答えられなかったというのが正しい。
沈黙をどう取ったのか、ブランエンは肩を落とした。
>「当然よね。どこの誰でもない私なんかより、ロックに戻ってきてほしいと思うにきまってるわよね。
> …でも、私はどうなるの?ロックが戻ったら、私はどこに居ればいい?
> 私は消え去るしかないの?…そんなの嫌、せっかく生まれてきたのに…
> 私だって…私として生きる権利があるわ!!」
「でも――――それでもあなたはロックなのよ?」
>「私の名前はブランエン・ウィル!それ以外の、他の誰でもないわ!」
>ブランエンはそう叫び、その場から全力で逃げ出した。
「ま、待って!!フリージアに謎の生徒君、後を追うわよ!!」
リリアーナも慌てて後を追った。
「なんでこんな事になったの?!ロックはただ母親に会いたかっただけなのに!」
それもこれも全部、昨日夢の中で出会った偽ロックのせいだ。
少なくともリリアーナはそう考えていた。
>120
何度目かの角を曲がった時、薄暗い廊下で鉢合わせた誰かにぶつかりそうになった。
避け損ねたリリアーナは尻餅をつく。
「誰―――― レイド先生?!」
リリアーナはレイドの言葉を遮るように叫んだ。
「あの黒髪の少女を追ってください!ブランエンの、あの子の正体は変身させられたロックなんです!!」
視界の隅では、ブランエンが次の角を曲がろうとしているところだった。
リリアーナも慌てて立ち上がり後を追ったが、結局ブランエンを見つけることは出来なかった。
「見失っちゃった。これからどうしよう・・・・・・?」
リリアーナは深い深いため息をついた。
「食堂で金色の液体に変化したっていう偽者を見に行くべきかしら?
それとも、そもそも事件発端になった森へもう一度入ってみるべきかしら?」
テレパシーを送ってから十数分。
なんの音沙汰も無し。なんだこの放置プレイは。
どうすっかな…探しに行くの面倒くせぇ…。
何で俺だけが探しに行かなきゃならんのだ。
アルナワーズと教頭も少し位手伝ってくれたって良いじゃねぇか…。
その方が絶対に早く見つかるだろ。
…はぁ…文句を言ってても仕方が無い。
探しに行きますか、と角を曲がろうとした瞬間、何者かと鉢合わせになった。
>「誰―――レイド先生?!」
「お、その声はリリアーn」
>「あの黒髪の少女を追ってください!ブランエンの、あの子の正体は変身させられたロックなんです!!」
それは俺も知ってる。アルナワーズに聞いた。
っていうか何で彼女は君達から逃げてるのさ?
何か変な事でもしようとした?
>「食堂で金色の液体に変化したっていう偽物を見に行くべきかしら?
それとも、そもそも事件発端になった森へもう一度入ってみるべきかしら?」
「あの金色の液体を見に行ったところで多分何の情報も掴めないと思うぞ。
行くならその森だな。こんだけ暗くなってから森に入るのは危険だと思うが…。
ま、そこはリリアーナの判断に任せるよ。」
本来ならそういう事の判断は俺がしなきゃならないんだけどね。
子供の自主性を育むって事で。
>129>130>131
>「私の名前はブランエン・ウィル!それ以外の、他の誰でもないわ!」
こう叫び逃げ出すブランエン
>「ま、待って!!フリージアに謎の生徒君、後を追うわよ!!」
「わ、わかりましたわ!ほら名の知れぬあなた一緒に追いかけますわよ」
なにげに狼男も一緒に巻き込まれている
「ケッコウハヤイネ」
ブランエンは思ったよりも走るのが速いようである
>「なんでこんな事になったの?!ロックはただ母親に会いたかっただけなのに!」
「すべてはあの金色が悪いんですわ!!」
「オカアサンノ カミモ キンイロ」
ギズモよ・・・それは今はどうでも良い
そして廊下で何かにぶつかるリリアーナ
>「誰―――― レイド先生?!」
>「あの黒髪の少女を追ってください!ブランエンの、あの子の正体は変身させられたロックなんです!!」
そしてリリアーナはレイド先生の指示を仰ぐ
これからどうすればいいのかを・・・・
>「あの金色の液体を見に行ったところで多分何の情報も掴めないと思うぞ。
行くならその森だな。こんだけ暗くなってから森に入るのは危険だと思うが…。
ま、そこはリリアーナの判断に任せるよ。」
その言葉を聞いてフリージアは考えた
「・・・・ねえわん・・・もとい狼さん?あなた鼻が良く効きませんこと?」
そしてもう一言
「リリアーナさん何かロックの臭いがついた物とか持ってませんこと?」
とりあえず狼の獣人っぽい彼の能力に賭けてみようとフリージアはそう思ったのである
>122-123
「…がう?」
今スケッチブックを出したときに妙な感触があった。
下を見ると…リリアーナがいた。
しかも気絶している。
【阿呆だな…。】【バッカでー!プククク!】
グレイズが心配そうに覗き込むと特に別状は無かったのか、すぐにリリアーナが起き上がった。
そして後ろに手を振ってから
>「『待って!僕は此処の生徒だよ!喧嘩しに来たわけじゃないんだ!』
> うんうん、ちゃんと分かってるわよ。大丈夫大丈夫、私は猫より犬派だし。
> それに学園には『獣化解除全書』があるんだもの。きっと元の姿に戻れるからね、ロック」
…なにをどう間違って解釈したのか、勘違いされた。
思い切り首を振ってみたけども気付かず。
と思いきや、奥に居た例の少女の言葉により違うとわかったようだ。
「(…これから間違われないように一回書き溜めておこう。)」
>124 >127
そうしているうちにも話は進んでいく。
>「ロックが言うには、私がロックなんだって。それ…なんて暗号?」
【……別人格か?】【俺らみてーだな!】
【…俺達とは違うだろう……。だが、さっきから見ていると似ているな…ロックの魂は見えないが。】
【ふーんへーえほーおはーあひーい。…ん?リリアーナは何やってn】
>「ロックがブランエンなら、確かにいろんな辻褄が合うわ。
> でも・・・・・・・でも!何でこの顔なのよ!!しかも私より豊かってどういう事なのよ――― っ!!」
真っ青な顔をして叫ぶリリアーナ。
>「ちょっとあなた、あんまりだと思わない?!」
>「まさか・・・・・・ロックに負ける日が来るなんて・・・・・・」
>何を?と聞いてはいけない。
「……がうが、がう?(何が、何を?)」
…この人狼、(リリアーナにとっての)NGワードを何故こうも的確に言うのだろうか。伝わらないだけマシだが。
>129
そんなこんなしていると、ブランエンが皆に問いかけてきた。
>「ねえ、もしも私がロックだとしたら…みんなは、私がロックに戻ってほしいと思うの?」
…誰も答えなかった。後ろで騒がしくしていた幽体の2人も何も言わなかった。
>「当然よね。どこの誰でもない私なんかより、ロックに戻ってきてほしいと思うにきまってるわよね。
> …でも、私はどうなるの?ロックが戻ったら、私はどこに居ればいい?
> 私は消え去るしかないの?…そんなの嫌、せっかく生まれてきたのに…
> 私だって…私として生きる権利があるわ!!」
>「私の名前はブランエン・ウィル!それ以外の、他の誰でもないわ!」
>ブランエンはそう叫び、その場から全力で逃げ出した。
ポカーンとしているグレイズに二人から声が掛かる。
>「ま、待って!!フリージアに謎の生徒君、後を追うわよ!!」
>「わ、わかりましたわ!ほら名の知れぬあなた一緒に追いかけますわよ」
「…がう。」
生返事をして走り出す。
走りながらグレイの3人は考える。
ブランエンの言葉はグレイにとってこう置き換えられるだろう。
『自分を消して二人だけにするしかないのか?』
そう考えると境遇が同じである。
だが、ブランエンの場合はどうだろう?
ロック=自分だからロックの『別人格』と言われ、次には自分が消されるかもしれない。
【…酷い運命だな……。】
【そうだなー…どうせなら俺らみたいな方がよかったのにー。】
>130-132
そしてレイド先生登場。リリアーナが尻餅をつく。
その隙にブランエンに逃げられてしまった。
とりあえず二人の話を聞いているとフリージアに
>「・・・・ねえわん・・・もとい狼さん?あなた鼻が良く効きませんこと?」
【わんこって言おうとしたよ!こいつー!ぷっくくく!】
【五月蝿いぞ、阿呆。】【何をー!】
>「リリアーナさん何かロックの臭いがついた物とか持ってませんこと?」
鼻が利くか?と聞かれてロックの臭いのついた物が無いか、と言っているところからすると…
「…ぐーがるぐがるおうぐる?(…嗅覚に頼る気?)」
そうは言いながらもグレイズは頷く。
「………どうするでおじゃるか…」
リリアーナらのやりとりを上空で眺めていたキキが呟く。
本来ならば下に降り、瓶詰めしたコンコンを渡すつもりでいたが、生憎、天敵が近くにいるため出来るだけ近付きたくない。
二の足を踏むさなか、遂にブランエンが啖呵を切ってどこかへと走り去ってしまった。
その瞬間、コンコンを封じていた瓶が破裂するように割れ、中にいたコンコンは物凄い速さで飛んでいくのが見えた。
破裂した衝撃で、一時的に火翔が解かれキキはそのまま落ちていった。
「しまっ………たぁぁぁぁぁぁぁぁぁ」
>135
月明かりの下、校舎に向かって飛ぶ魔法の絨毯。
その上に寝そべるのはアルナワーズ。
ブランエンを確保した後のことを考えていると、頭上から叫び声が。
>「しまっ………たぁぁぁぁぁぁぁぁぁ」
うつ伏せの体制のままなので、上を向くことはできないが、何があったかは直ぐにわかった。
前に置かれた水晶球に落ちてくるキキの姿がぐんぐんと大きくなってくるのだから。
「あらあら〜。ムガル〜、受け止めてあげてぇ〜。」
ポンポンと絨毯を叩くと、それに応えるように絨毯に変化がおきる。
魔法の絨毯ムガルは中央に幾何学的な模様。そして周囲にはタペストリーがごとく神話のレリーフが編みこまれている。
そのレリーフの一体を編みこんでいた紐が解けて立体を持つ。
とはいっても、糸で輪郭だけをかたどった人型ではあるが・・・
速度や持ち運びの自由さを犠牲にした代わりに、居住性やこのようなギミックを仕込んであるのだ。
絨毯から出現した紐のゴーレムは、落下してきたキキを見事に受け止めたのであった。
そして絨毯におろし、元のレリーフへと戻っていった。
「はぁい。月に見とれちゃってたのかしら?
こんな格好でごめんなさ〜い。ちょっと時間がないから。」
相変わらず背中を露にし、鍼と灸を乗せたまま起き上がることもできずに挨拶をする。
ようやくベアトリーチェの蜘蛛が治療の完了された鍼や灸を回収しだすのだが、全てが終わるまではもう少しかかりそうである。
「助けた恩を売る、というわけじゃないけど・・・ちょっと手伝ってほしいことがあるのん。」
背中に蜘蛛がはいずるのをそのままにしながら、今までのこととこれからの事を話し始める。
ロックがブランエン(仮)に変身させられて、記憶が奪われていたこと。
記憶を奪われたブランエン(仮)に自我か芽生えて確立しようとしていること。
戻った記憶と新たに発生した自我をすり合わせるためにブランエン(仮)を保護する必要があるということを。
そして、ロックとブランエン(仮)に共通して影響を深く与えているリリアーナをすり合わせに使うつもりだと。
「我思う故に我あり。じゃないけど、刺激しないように繊細な作業が必要になってくると思うのね〜。
レイド先生なら上手にエスコートしてくださるでしょうけど、もしもの時は・・・。」
そういいながら校舎へと飛んでいく。
アルナワーズはまだ知らない。
既にリリアーナとブランエン(仮)が接触し、拒絶反応まで引き起こしてしまっていることを・・・。
レイド、フリージア、ローブ姿の生徒はしりもちを着いていたリリアーナの元に戻ってきた。
「キサラの姿が見えないわね。ブランエンを追いかけていったのかも」
あのキサラのことだ、ブランエンに気づかれぬよう尾行するくらい訳もないだろう。
>131
校舎と校舎をつなぐ長い渡り廊下は屋根が無い。
校舎の壁伝いに掲げられた松明と月明かりが、リリアーナ達の足元に濃い影を落としていた。
「・・・というわけなんです。」
リリアーナ達は渡り廊下を歩きながら、なぜブランエンが逃げ出したのかをレイドに説明した。
レイドは、リリアーナがブランエンの胸を確認したくだりからなんとも言えない顔をしていた。
「お、女の子同士なんだから良いんです!!・・・・・・と思います!・・・そ、そうよねフリージア?」
そういえば、確か彼女はワンピースを直に着ていた気がする。
・・・・・・・今から思えば、やっぱり色々まずかったもしれない。
>「あの金色の液体を見に行ったところで多分何の情報も掴めないと思うぞ。
>行くならその森だな。こんだけ暗くなってから森に入るのは危険だと思うが…。
>ま、そこはリリアーナの判断に任せるよ。」
その言葉を聞くなり、リリアーナはきらーんと目を輝かせた。
「そうですか!!嬉しいな、さすがに夜だしちょっと心細かったんですー。
やったー! レイド先生が手伝ってくださるなら百人力だわ〜!!」
リリアーナはレイドの腕に自らの腕をがっちりと絡めると、心底嬉しそうに笑った。
>132-134
走ったせいか、なぞの生徒のローブがずれて素顔が覗いていた。
見覚えの毛並みに、リリアーナの眉が上がる。
「ねえ・・・・・・もしかして、あなたグレイズなの?」
リリアーナはグレイズの手袋のはまったほうの手を取った。
「良かったー。さっき急に走っていっちゃったから心配してたのよ。
まあ、さっき吸血鬼が様子を見に行ったから、怪我や病気じゃないのはわかってたんだけど!」
わあ長い爪!といいながら、リリアーナはグレイズの肉球をぷにぷにする。
「ところでそんな格好で暑くない?あっ、元に戻ったとき裸になっちゃうからダメなのか。
でもマフラーくらい脱げばいいのに。ねえレイド先生?」
>「・・・・ねえわん・・・もとい狼さん?あなた鼻が良く効きませんこと?」
>「…ぐーがるぐがるおうぐる?(…嗅覚に頼る気?)」
何を言っているかはわからないが、グレイズはこっくりと頷いた。
>「リリアーナさん何かロックの臭いがついた物とか持ってませんこと?」
「ん?ああ、うん」
リリアーナは、短い杖と天使の人形を取り出した。
「巾着袋に入れて私が持ち歩いていたんだけど・・・・・・これで大丈夫かしら?
あとはこっち」
リリアーナは両手を差し出した。さっきブランエンに触れたから、少しは参考になるかもしれない。
>135-136
何かが割れるような音と、女の子の悲鳴。
ふっと視界が翳り、リリアーナ達は上空を見上げた。
「アル!それにキキさん?!」
そのまま校舎に向かおうとする魔法の絨毯に、大きく手を振ってみせる。
「ねえ、ブランエンを見かけなかった?あの子はロックと同一人物らしいの。
でも彼女それを知ったとたん、自分の人格が消されるのを恐れて逃げちゃったの!」
>135
金色の液体は、流れ星のように綺麗な尾を引きながら森に飛んでいき、池に落ちた。
コンコンが入った池の底は、金箔をしきつめたようになった。
コンコンはまた一人になった。一人になったコンコンは絶望とともに嘆いた。
僕はどうしても、“誰でもない自分”から抜け出せないらしい、と。
>「寂しい…もう生きたくない…自分がわからない…僕の居場所はどこ?…誰か僕を見てよ…」
「ぐだぐだとうるせぇぞ、パツキン野郎!」
>「誰?」
「俺様だ!忘れたとは言わせねぇ!」
コンコンは驚いた。自らの精神世界の中で、ロックが自分に話しかけたのだ。
そんな馬鹿な、とコンコンは思った。ロックの精神はさっき自分の体から去ったはずだ。
(錯覚ではない、僕から光る玉が出るところを、アルナワーズも見たじゃないか。)
「確かにそうだ!」
半透明のロックは、コンコンの心に応えた。
(!!僕の考えた事がわかるのか!?…わかったぞ。
きっと、ロックの精神の一部がまだ僕の心の中に残ってたんだ。)
コンコンはそう結論づけた。ロックはこの結論が正しい事を証明するように、
その事についてはそれ以上何も言わず、次のように言った。
「さぁ、コンコン。今度は俺様がお前の願いを叶えてやろう!」
>「僕の願い…頑張ったけど…手に入らなかった…僕の居場所…
>見てほしい…みんなに僕を見てほしい…認めてほしいんだ!僕の存在を!」
「誰からも愛されたいと思って、お人好しだったのがそもそもの間違いだ!
コンコン、お前がその気なら俺様に力を貸せ!
そうすれば、全ての者がお前の存在を認めるようになるだろう!」
池の底からで眩しい光がほとばしり、そして中から何かが飛び出した。
それは、輝く金色の髪をなびかせるロックだった。
こいつこそは、コンコンの力を得て実体化した、ロックの心の中にあった悪そのものだった。
金髪のロックは辺りを見回して、ため息をついた。夜の森は静寂に包まれている。
「静かで、平和な場所だなぁ…気に入らねーぜ!」
金髪のロックは両掌を上に向け、呪文を叫んだ。
「スカラ・プレッシャー!!」
まるで金髪のロックから爆発が起こったように、辺り一面の樹木が圧力波でバキバキとなぎ倒された。
スカラ・プレッシャー、それは周囲全体を圧力波で吹き飛ばす迷惑な魔法だ。
荒れ果てた周囲を見て、金髪のロックは満足気に高笑いをした。
「はははははっ!コンコン、いずれ全ての者がお前を見るだろう…恐怖と憎悪の目でなぁ!!」
髪型・輝く金色のロングヘア。ロックとは違い髪は束ねていない。
瞳色・青。ロックとは違い眼鏡はかけていない。
容姿・基本的にロックと同じ。
備考・コンコンの心に残っていたロックの精神の一部である“悪い心”が、
コンコンの力で実体化した存在。
もともとのロックにあった女性に対する遠慮は皆無であり、
自分の欲望を満たすためなら手段を選ばない。
得意技・魔法のコピー。瞬間移動。変身。
>137>「・・・というわけなんです。」
廊下を歩きながらリリアーナの説明を頭の中に叩き入れる。
今日は状況を整理するだけでも精一杯だ。
とりあえず彼女に変な事はしてないって事と、リリアーナが彼女の胸を揉んだという事だけは理解した。
……いや、リリアーナが彼女の胸を揉んだ時点で既に変な事してるか…。
リリアーナは女の子同士だから良いとかなんとか言ってるけど、俺には言い訳にしか聞こえませ〜ん。
>「そうですか!!(中略)レイド先生が手伝って下さるなら百人力だわ〜!!」
百人力まではいかないと思うけど多分15、6人力位にはなれるかな。
ってか、そんなにくっついたら胸が…って、当たる程無かったね、胸。
>「ねえ・・・・・・もしかして、あなたグレイズなの?」
そういや俺もずっと気になってたが、どうやらグレイズで正解みたいだね。
>「ところでそんな格好で暑くない?(中略)ねえレイド先生?」
確かにな。見てるだけでも暑くなる。
むしろ暑苦しい…。
ま、ロックよりは暑苦しくないが。
と、軽くグレイズに目配りをし、タバコに火をつけた。
生徒達の会話に耳を向けつつボ〜っとしながら歩き続ける。
が、リリアーナの一言によりボ〜っとしていられなくなった。
>「アル!それにキキさん?!」
なにっ!なんでアルナワーズが!
驚きのあまりタバコ落としちまうところだったじゃないか。
見ると、魔法の絨毯に乗り校舎の方へ向かうアルナワーズとキキの姿があった。
駄目だ、リリアーナ!今ここでアルナワーズを呼んではいけない!
見付かったら怒られるかもしんないだろ!俺が!
……とりあえず少しでも顔を見られないように下向いてよう…。
頼むから気付かないでくれ…。
>137>140
ふよふよと高度を下げ、地上30センチくらいで止まる絨毯。
ブランエン(仮)のいた座標のはずだが、そこにいたのはリリアーナ、フリージア、獣人・・・そしてレイド。
「はぁ〜い。皆さんおそろいで。」
軽く挨拶をして、事情を聞こうとしたのだがその必要はなかった。
リリアーナが聞かれるまでもなく説明をしてくれたのだから。
「ええ・・・!?ちょ!いた〜い!!」
しかし、その言葉にアルナワーズは思わず立ち上がろうとして、できなかった。
背中を這い回って鍼と灸を回収していた蜘蛛が、アルナワーズの背中を噛んで抽入を注入したからだ。
鍼や灸を背中に乗せたまま立ち上がることはとても危険なのだ。
そうさせないように、蜘蛛が麻痺毒を抽入して動きを止めたのだった。
「し、しびびび・・・」
つぶれるようにうつ伏せの体制に戻りながら考えていた。
名前を与えられて自我の第一段階が成立した。
そして今、存在の危機に晒されそれを自覚することによって、より一層自我が確立し始めたのだろう。
こうなると統合することは難しくなる。
となれば、ロックの体質を利用するか、分離するか、このままブランエンとするか・・・
>138
考えを巡らせていると、森のほうからバキバキ!と何かがなぎ倒されるような音が響き渡る。
「こ、ころ音は・・・もひかして、存在の危機を自覚ひてあの子が暴走しているのかも・・・
こふぁい看護婦さんが怒るから、先、行ってて。ころひちゃらめよ・・・ね、レ イ ド ひぇんひぇい?」
本来ならここぞとばかりにプレッシャーをかけるのだが、さっぱりだった。
痺れているため、うまくろれつが回らないままうつむいているレイドに語りかけるのが精一杯。。
続けて、治療が完了するまでは自由に動かさせてもらえそうにないという状態を説明して、皆を先に行くように促した。
そういわれた蜘蛛は、丁寧に治療の終わった鍼や灸を回収し続けている。
だが、フリージアに気づくと、【カッ!カッ!】と小さく威嚇してそっぽを向いてしまう。
ベアトリーチェに作られた生命体であるので、創造主の意思が影響しているのだろう。
シャンデリアが落ちてきたりなんだりと大騒ぎをしている間野生少女は何をしていたのか。
ただキャラメルを舐めた後は何をするでもなく様子を見ていただけである。
やがて食堂の騒ぎが収まった頃、いまだに微動だにしないミシュラの様子を見ていたルーは
むにーっと頬をつまんでみたが尚反応がなさそうである。
ぐぐぐぐるぐるぐきゅきゅ〜〜〜
いい加減空腹も限界。槍がなければ効率が落ちるが・・・こうなれば狩りをする他にはない。
するするっとミシュラの腕から降りたルーは、ぺこっとお辞儀をしてから森へ駆け出した。
>138
そ し て
小動物を狩って飢えをしのごうにもやはりドレスは動きづらく、獲物はルーの手にはかからない。
そこにバキバキと異音が聞こえてきた。なんとなく、その異音に釣られるようにルーは森の奥へと向かった・・・
もちろん枝伝いに、である。
>143
「あ?なんだありゃ?」
枝伝いにこちらにやって来たルーに気づいた金髪のロックは、
そう言って、片方の眉を吊り上げた。
「まあ、いいか。退屈だから殺そう。」
ここは森。金髪のロックは手ごろな石を手にとり、
もてあそび始めた。“手ごろな”といっても、
人間の頭ほどある大きなその石は、なかなかの重量を持つ。
ロックがそれを軽く扱えるのは、物体操作の魔法が使えるからだ。
物体操作の魔法は日常生活に便利だ。重い物も簡単に運べるし、
本を高い書棚に戻す時、わざわざハシゴを使う必要もなくなる。
ただし、この魔法にはもっと暗い使い方もある。
それは、重い物を気に食わない相手に思い切りぶつけることだ。
「バレット!!」
金髪のロックの叫びと共に、持っていた大きな石がルーに向かって飛んでいった。
そして、金髪のロックはつぶやいた。
「簡単に殺させてくれるなよ。」
>141 >134
レイドが煙草を吸いたそうにしているので、リリアーナは組んでいた腕を解いた。
アル達に声をかけたとき、レイドがちょっと焦っていたような気もする。だがきっと考えすぎだろう。
「グレイズ、どうだった? 匂いでブランエンを追跡できそう?」
戻ってきた人形と杖を受け取りながら、リリアーナは心配そうにグレイズの顔を覗き込んだ。
>135 >142
リリアーナの説明を聞き、アルは驚きを隠さなかった。
思わず起き上がろうとして、付き添いらしき蜘蛛に待ったをかけられる。
>「し、しびびび・・・」
「だ・・・・・・大丈夫?っていうか何て格好!風邪引くわよ?治療が終ってから来れば良かったのに」
リリアーナはアルの肩に何かかけてやりたかったが、手ぶらではどうしようもない。
「で、でね、さっきの話だけど、もしかしたらブランエンはキサラがついてくれてるかもしれないわ。
ただ、首尾よく彼女を確保出来たとしても一体どうしたらいいのか・・・・・・。
そもそもブランエンは、ロックの別人格の一人かもしれないし・・・・・・」
ロックの別人格なら倒せば消えるが、何も悪い事をしていない彼女に危害を加えるのは躊躇われる。
「アル、それにキキさん、一体どうすればいいと思う?」
アルは口を噤んだまま、じっと何かを考え込んでいるようだった。
>138
考えを巡らせていると、森のほうからバキバキ!と何かがなぎ倒されるような音が響き渡る。
>「こ、ころ音は・・・もひかして、存在の危機を自覚ひてあの子が暴走しているのかも・・・
>「こふぁい看護婦さんが怒るから、先、行ってて。ころひちゃらめよ・・・ね、レ イ ド ひぇんひぇい?」
「分かった、じゃあ後でね!さあ皆、行きましょう!」
数歩駆け出したところで、リリアーナはぴたりと足を止めた。
「ここからなら雪の結晶で飛んだ方が早いわ。フリージア、先に行って!!」
リリアーナはそう叫ぶなり、今度こそ後ろも振り向かずに森へと向かった。
寮や食堂のあたりでは、物音を聞きつけた生徒達が野次馬よろしくたむろしていた。
彼らの脇をすり抜け、森の中へと向かう。
奥に分け入るにつれて、森の惨状の様子がはっきり見えてきた。
森の一部の梢がごっそり消えている。大きな爆弾でも爆発したかのように、木がへし折られたのだろう。
だが不思議な事に、火薬や木が焦げたような異臭は全くしなかった。
「ひどい・・・・・・まるで巨人になぎ倒されたみたいだわ。これ、本当にブランエンがやったのかしら?」
ブランエンとは少ししか話していない。だから彼女の事を知っているというのはおこがましい話だ。
だが、ブランエンは自分の嘘を悔いて必死で謝ってくれた。人の痛みが分かる女の子のはずだ。
「もしブランエンの仕業なら、一刻も早く止めないと」
我に帰ったとき彼女が後悔するのは目に見えている。
リリアーナは更に先を急いだ。
途中、リリアーナは命からがら逃げ出してきたピクシーと出くわした。
ピクシーはレイドの姿を見つけるなり、キイキイと喚き始めた。
>「お前たち、ロックの仲間だな? ロック森を壊した!!」
>「ロックひどい!ロックひどい」
「ロックが?ちょっと!もっと詳しく話を・・・・・きゃっ?!」
ピクシーは小石をリリアーナに投げつけ、姿をくらましてしまった。
「一体どういうことなの?今のピクシー、ロックがやったって言ってたわよね?」
森の奥で暴れているのはブランエンではないのだろうか?
>144
月明かりのもと、金色に光る何かが見えてきた。
>144
>「バレット!!」
池のそばに佇むその人影はいきなり巨大な石塊を飛ばしてきた。
避けられるほど遅くはないし、石も小さくない。
ルーはシーツに包まれた右腕を振りかぶり、飛んできた石に向かってたたきつけた!
そして響く轟音。衝撃にシーツは裂け、隠された右腕が肩口まで露わとなる。
石は、ルーの立つ巨木の根に半分ほどまで埋もれてしまう。
警戒の為なのかルーが右腕で己の顔の前を遮った瞬間、ロックの周囲が炎の壁に覆われた。
そして火にあぶられたロックが熱いと感じるより尚早く、炎の壁を突き破るように石で出来た巨大な針が腹部目掛けて飛んでくる!
炎の向こうにいたのは、いつの間にやら地に下りたのか・・・蒼い髪を逆立て、その青い瞳の中心に赤い光を宿し
様々な宝石にの組み合わさった右腕を眼前に掲げる野人であった。
「う゛ー・・・ぐるるる・・・」
― ロック(?)VSルー 戦闘開始 ―
>146
ボンという音とともに、ルーの後ろに煙があがり、
その中から金髪ロックが現れた。
炎の壁の中にいたはずの金髪ロックのお腹には、
しっかりと石で出来た巨大な針が刺さっている。
この瞬間移動はコンコンの十八番である。
おとなしく燃やされるのを待つほど、金髪のロックはお人好しではないのだ。
ルーの後ろに回った金髪ロックは、
実に…実に楽しそうな笑みを浮かべて、ルーに両掌を向けた。
「死ねぇい!ヘクト・プレッシャー!!」
今一度説明すれば、これは圧力波で相手を吹き飛ばす術だ。
金髪ロックは、よりにもよってルーがつくった炎の壁に向けて、
ルーを吹き飛ばそうとしているのだ。
>142>「はぁ〜い。皆さんおそろいで。」
うへぁ…悪魔が来やがった。
とりあえずうつ向いたまま知らないフリを決め込む。
>「ええ・・・!?ちょ!いた〜い!!」
リリアーナの説明を聞いた次の瞬間、アルナワーズが思いもよらぬ声を上げた。
痛い?何で?
痛い原因を見ようとアルナワーズをチラ見する。
>「し、しびびび・・・」
うつ伏せ状態のアルナワーズの背中には蜘蛛が乗っていた。
なるほど、あの蜘蛛が…。
とりあえず原因を理解出来たのでまたうつ向く。
>138すると突然森からバキバキと木のへし折れるような音が聞こえてきた。
>「こ、ころ音は・・・(中略)ね、レ イ ド ひぇんひぇい?」
「へ〜い…なるべく殺さないように気を付けま〜す。」
俺はうつ向いたままそう答えた。
無論、殺す気なんてサラサラ無い。
アルナワーズは治療が完了するまでは来れないらしい。
>145リリアーナの合図によって俺達は森へと向かった。
少し奥へと進むと森の一部の梢が消えていた。
「これは…何者かになぎ倒されたみたいだな…。」
木を調べていると目の前にピクシー達が現れ騒ぎ始めた。
>「お前たち、ロックの仲間だな?ロック森を壊した!!」
>「ロックひどい!ロックひどい」
ピクシー達は一方的に言いたい事を言った挙句、リリアーナに小石を投げつけ姿をくらます。
なんだってんだ、ったく。
ピクシー達の襲撃(?)を受けつつ、俺達は更に奥へと足を運ぶ。
なにやら嫌な予感がする。これ以上森の奥に行っちゃ駄目な気が…。
考え過ぎかな…?
>144>146>147否。考え過ぎではなかったみたいだ。
森の奥で金髪の少年と青髪の少女が闘っているシーンなんて死ぬまでに何度お目にかかれるだろうか?
俺の目の前では今実際に闘っている訳だが。
「なあ、どうする、リリアーナ?ただの喧嘩…には見えないよなぁ…。」
呆れたように呟き、短くなったタバコを携帯灰皿に入れる。ポイ捨ては良くないからね。
そしてまた新しいタバコを一本取り出し火をつける。
「このまま此処で一服しながら傍観ってのもアリだな。
あの少女が殺られそうになったら助ければ問題無いし、上手くいけばあの少女が金髪ロックを弱らせてくれるかもしれん。
で、弱ったところを生け捕り〜ってどうよ?」
………却下だろうな、多分。
>142>145
>【カッ!カッ!】
蜘蛛に威嚇されるフリージア
「な、なんで威嚇されてるのかしら?」
フリージアはそれを不思議に思った
「とりあえずギズモちゃん!威嚇し返してやりなさい」
フリージアはそうギズモに命令する
「キ、キシャア・・・・コレデイイノ?」
ギズモはやる気なさげだ
>「ここからなら雪の結晶で飛んだ方が早いわ。フリージア、先に行って!!」
「わかりましたわ!ギズモちゃん行きますわよ!!」
とフリージアは言われたとおり飛んで行くのであった
144>146>147
そして・・・・
「あ、あれはロック・・・ですの?」
暴れまわるロックにあっと驚くフリージア
「デモ イロガ チガウヨ」
ギズモは疑問点を述べる
さらに女の子に攻撃を仕掛けるロックを見て驚くフリージア
「ロックは女の子を傷つけないはずじゃ?偽者かしら?」
「デモ トコロドコロ トガッテナイ」
ギズモは偽者の美学を語る・・・・なぜそんな知識があるのかは謎だ
そんなこんなしているとどうやらリリアーナ達もこっちに着いたようである
「とりあえず合流しますわよギズモちゃん!!」
「ガッテンショウチ!!」
・・・・ほんと何処でそんな言葉覚えたんだろう?
リリアーナは折れた木を跨ぎ、何度も転びそうになりながら森の奥へと向かった。
そしてようやく、小さな池がある開けた広場のような場所にたどり着いた。
もっとも広場といっても、半分以上がなぎ倒された木々で埋め尽くされていたのだが。
>148 >133(グレイズ)
リリアーナ達が目にしたのは、森の奥で金髪の少年と青髪の少女の戦闘だった。
金髪の方も青髪の少女もリリアーナには見覚えがあった。
>「なあ、どうする、リリアーナ?ただの喧嘩…には見えないよなぁ…。」
レイドはそう言って新しい煙草に火をつけた。
短い言葉の中に込められた意味に、リリアーナが気づかない筈が無い。
「ねえグレイズ。あの金髪の偽ロックは、私がさっき渡した杖や人形と同じ匂いがする?」
女の子に攻撃するロックが本物である筈が無い。レイドもリリアーナも分かっていた。
だが、それでもリリアーナは確認して安心したかった。
アルが指摘していたように、ブランエンが暴走して金髪ロックになった可能性も捨てきれないからだ。
>「このまま此処で一服しながら傍観ってのもアリだな。
>あの少女が殺られそうになったら助ければ問題無いし、上手くいけばあの少女が金髪ロックを弱らせてくれるかもしれん。
>で、弱ったところを生け捕り〜ってどうよ?」
「冗談にも程があります!あんな小さい女の子をひとり矢面に立たせるなんて!」
リリアーナはレイドの言葉をぴしゃりと遮った。
まさかフリルを着た可愛い女の子が、昨日襲ってきた野生児と同一人物などとは夢にも思わないようだ。
>147
>ルーの後ろに回った金髪ロックは、 ルーに両掌を向けた。
「あっ!危ないっ!」
リリアーナは思わず木陰から飛び出すと、こちらに背を向けている金髪ロックに小石を投げつけた。
さすがにロックそっくりな相手に、いきなり背後から撃つ気にはなれなかったようだ。
小石では物理的効果はゼロだろうが、気を散らすくらいの事は出来るはずだ。
「小さい女の子相手に何てことするのよ、この偽者!
しかもみんなの森を滅茶苦茶にしてどういうつもり?
そもそもあなた、昨日からずっとロックに執着してるみたいじゃない!一体何が目的なのよっ!!」
>150
上空でフリージアがこちらに気づき降下しようとしている。
だが、リリアーナはまだ気づいていないようだ。
>151
> 「小さい女の子相手に何てことするのよ、この偽者!
> しかもみんなの森を滅茶苦茶にしてどういうつもり?
> そもそもあなた、昨日からずっとロックに執着してるみたいじゃない!一体何が目的なのよっ!!」
「うるせぇ、くそアマぁ!!」
話のかみあわない金髪ロックは、反転してリリアーナにキックした。
その後金髪ロックははっとして言った。
「なんだ、よく見たらリリアーナじゃねぇか!」
そこまで言って、金髪ロックは思い出した。
ずっと前にリリアーナに言われた屈辱的な言葉をだ。
> 「・・・まさかこれで終わりじゃないでしょうね?
> レイド先生を理事長室へ押し込める「とっておき」とやらは、いったい何時になったら見せてもらえるの?
> それとも何?あんなに特訓してた割に、ロック・ウィルの実力ってこの程度なわけ?」
金髪ロックは憎悪の炎を心に燃やしながらリリアーナを見つめた。
そして間もなく、その炎は文字通りの炎となってリリアーナを襲うことになる。
「リリアーナ、“ロック・ウィルの実力”ってやつを、存分に味わえよ!!」
金髪のロックは右腕を自分の顔の前を隠すように構えた。
するとリリアーナの周囲に炎の壁が上がった。
金髪のロックは、ルーの魔法をコピーしたのだ。
「全てが気に食わねぇんだよ…お前も!おめーらも!!」
そのころ、リリアーナ達から逃げたブランエンは学園の校舎の屋上に来ていた。
行き場所の無い、帰る場所も無いブランエンは、思いつめた顔で屋上から地上を見ていた。
森の方から、金色の綺麗な光がちらちら見えるが、ブランエンは、そんなのどうでもいいと思った。
ブランエンは途方に暮れていたのだ。これから自分はどうやって生きていけばいいのだろうか?と。
>151>「冗談にも程があります!あんな小さい女の子をひとり矢面に立たせるなんて!」
…だよな〜やっぱり。
さっきの俺の案を了承したらリリアーナは大人になった証拠だ。
一番犠牲が少なく済む方法だからな。
でも、きっぱり俺の案を却下したところを見ると、どうやらまだ子供のままらしい。
俺は良いと思うけどね、子供のままで。その方がリリアーナらしいし。
>「あっ!危ないっ!」
「おいっリリアー…!もう手遅れか。」
ここからなら俺の魔法を使って簡単に気絶させる事も出来ただろうに…。
ま、リリアーナらしい反応だ。これ位ならまだ想定内。
しかし小石って君ね…流石に背後からいきなり攻撃って気にはなれなかったか…。
だが、その甘さが命取りになったみたいだ…。
>152>「うるせぇ、くそアマぁ!!」
>「なんだ、よく見たらリリアーナじゃねぇか!」
あの偽物野郎…俺の生徒に蹴りかますとは良い度胸じゃねぇか。
おまけに炎の壁とはね、なかなか高度な魔法をお使いのようで。
「フリージア!消火は任せた!!」
さて、こっからが本番か。
>「全てが気に食わねぇんだよ…お前も!おめーらも!!」
気が合うな。俺もお前が気に食わない。
「おいこら偽物野郎。今ならまだ許してやる。黙って俺達に付いて来い。」
「のぅアル…麿にいい考えがあるでおじゃるが…聞くでおじゃるか?」
リリアーナ達の後を追わずに、まだ絨毯に腰を降ろしているキキがアルナワーズに尋ねる。
先程の音は少々気にはなるが、ブランエンの問題を放っておくわけにもいかない。
レイドもいる訳だし、大事にはならない筈だ。
「向こうの学校で作った失敗作が今、麿の部屋にあるでおじゃる…いや、失敗作ではあるが、そういう物理、美術的失敗ではなく…」
アルの返事を聞き、キキは話始めた。
今、自分の部屋に自我をもった人形の失敗作、つまり、自我がない人形があり
それに、ブランエンという自律した精神を移せばどうだろうか。
「……しかしな、麿にはそんな芸当は不可能でおじゃるから…そこはどうにか出来ないでおじゃるかな?」
>147>152
>「死ねぇい!ヘクト・プレッシャー!!」
突然背後に現れた【敵】にルーは驚愕する間もなく吹き飛ばされた。
宝石の煌めきを纏ってきりもみ状態で炎の壁へとすっ飛んでいった。
「がぁぎゅぅるるるるるる・・・・」
すぐさま炎の壁の向こうから出てきた黒い影は全身が炎に包まれてその姿は定かではない。
ごろごろと無様に草の上を転げ周り、炎にもだえ苦しんでいるように見える・・・。
それに安心したのかロック(金)は炎の壁に背を向けた・・・。
>「リリアーナ、“ロック・ウィルの実力”ってやつを、存分に味わえよ!!」
吼えるロック(金)はなんとルーの視線魔術をもコピーしてしまっていた。
森に棲むディープドラゴンと呼ばれる竜族の一種が元祖とされている視線魔術は軽々に人間の扱えるものでない。
元来人間が音声によって呪文をつむぎ魔術を発動させるのはそれが人間にとってもっとも容易な魔力制御法だからだ。
だから、音声を用いず視線だけで魔術を発動させようと思えば人間であれば相当に長い間の修行か
幼い頃からの環境に因って覚えていく以外に術はないとされているのだが・・・。
ロック(金)背を向けた向こうでようやく炎の壁が鎮火してゆく。そこに立っていたのは・・・
瞬間、ロックの足元、周囲に爆炎が渦巻く。ロックの背中越しから見ている魔法使いたちには見えただろう
青い髪に紅い瞳を持った野人を、彼女の目から疾る透明な魔力の奔流がロック(金)にたたき付けられ炎と化したのを。
「ぐうううう゛う゛・・・!」
宝石の腕を持つ彼女は怒りに青い瞳を真紅へと変え、焼き殺さんばかりの敵意をロック(金)へと向けている。
その敵意すらも炎と化してロック(金)の周囲と、ロックの魔術の防護結界を焼いている。
ただ手をこまねいていれば防護結界をも炎が貫いて身を焼きにかかるだろう。
>154
リリアーナたちが森に向かい暫くして・・・
森の方向から閃光と共に轟音が鳴り響く。
そんな様子を遠くに見ながらアルナワーズはうつ伏せのままキキの提案を聞いていた。
「ふふふ・・・ご苦労様。もういいわよぉん。」
その言葉に答えるように蜘蛛は鍼と灸の回収を終え、絨毯から去っていく。
そしてアルナワーズは服を着ながらにっこりと笑う。
麻痺毒を抽入されたのは事実だが、あくまで寝させるためだけの麻痺毒。
長く効果のあるものではない。
それでも痺れた振りをしていたのは、リリアーナたちを先に行かせるためだった。
あからさまな戦闘音に攻撃能力を持たないアルナワーズ自身が駆けつけても大した役には立たないだろう。
それよりもやるべきことがある。
そのやるべきことも、キキの方から提案してくれたのでまさに願ったり叶ったりだ。
「ロック人形を見た時からそれはお願いするつもりだったのよん。
あくまで保険程度だったけど・・・聞いた限りでは自我が確立しちゃっているようだし、ね。」
そう、元々キキを戦力として頼ろうとは思っていなかった。
ロック人形やシャンデリアを加工しての人形生成を見て当たりをつけていたのだ。
一度出来上がってしまった自我を消したり封じたりすることはリリアーナたちでは決断できないであろうから。
「器を用意してもらえれば、そこから先は私の領分だもの。
気力も十分。任せてえん。」
たたずまいを正してキキに両手で握手した。
移動元と移動先の合意があり、設備が整っていればアルナワーズでも不可能なことではない。
移動先は自我を持たぬ生人形。
元々が空なので拒否反応の心配も少ない。
設備も学園にあり、レイドの口添えがあれば使用可能だろう。
そう、ブランエン(仮)を分離し、新たな器に移し変えるという選択肢。
絨毯は二人を乗せて女子寮へと飛んでいく。
「・・・でも・・・意外と優しいのねぇ。
まだであって二日目でキキのことがいろいろ知れて嬉しいわぁん。」
上機嫌なアルナワーズの声が夜空に尾を引いていく。
>137 >145
> 「ねえ・・・・・・もしかして、あなたグレイズなの?」
突然かけられた言葉。
「(…え!?気付かれた!?どうして…あ、ローブが!)」
慌ててフードを被り直すが時既に遅し。
>「良かったー。さっき急に走っていっちゃったから心配してたのよ。
> まあ、さっき吸血鬼が様子を見に行ったから、怪我や病気じゃないのはわかってたんだけど!」
「…がう?(へ?)」
…発せられたのは案外、いや凄いナチュラルな言葉。
どうやらこの人たちは突然『僕は吸血鬼です!』言われても驚かない人種の方らしい。
ほっと胸を撫で下ろす。
ブランエンを探すための手懸かりとして両手と人形、杖の臭いを嗅ぐも、ブランエンとロックでは何処か似ていて違う臭いである。
とりあえず人形と杖を返す。
>「グレイズ、どうだった? 匂いでブランエンを追跡できそう?」
『微妙だね』と書いて見せる。
>142
がちゃん、と音がする。そして上から声が聞こえた。
「はぁ〜い。皆さんおそろいで。」
「が、がるがわーる!?(あ、アルナワーズ!?)」
キキをつれてアルナワーズ登場である。キキは何故かグレイズを見ようとしない。
リリアーナが簡単な説明すると、アルナワーズは驚いて立ち上がろうとし…
>「し、しびびび・・・」
蜘蛛に刺されてまた横になる。
そして森の方から何か音が聞こえた。
>「こ、ころ音は・・・(中略)・・・ね、レ イ ド ひぇんひぇい?」
>「分かった、じゃあ後でね!さあ皆、行きましょう!」
リリアーナがそう言うと、グレイズは急な展開についていけていないが
「が、がうっう。(わ、わかったよ。)」
返事をしてリリアーナ達と一緒に音のほうへ。
>151
途中ピクシー達が騒いで石を投げていったりしたがなんとか現場に到着。
其処ではなんと青髪の少女と金髪のロックが戦っていた。
【一体なんだ?これは…何かおかしい。】【ロックは女子になんかする筈ねーしなー?】
「…がうがる。(…変だね。)」
臭いもさっきの人形の臭い…つまり普段のロックの臭いとそれとは他に違う臭いが一体になっている。
リリアーナ達もおかしいと思っているらしく、
>「ねえグレイズ。あの金髪の偽ロックは、私がさっき渡した杖や人形と同じ匂いがする?」
と訊く。グレイズは『半分だけ、同じだよ』と書いて見せた。
「ぐるーる、がうあうぐる…が、がうがーががる!(うーん、なんでだろう…って、リリアーナさん!)」
金髪ロックにリリアーナが小石を投げつけていた。しかも説得を試みている。無謀な。
>152 >153
>「うるせぇ、くそアマぁ!!」
金髪ロックはリリアーナのほうに向いて蹴りを放つ。
更に炎の壁をリリアーナの周りに作り出した。
>「全てが気に食わねぇんだよ…お前も!おめーらも!!」
そして憎悪のこもった言葉。
予想外のロックの言動にぽかーんと見つめていたが、段々グレイも腹が立ってきた。
【……何でこっちに怒りをぶつけるか…。】
【そんなのは知らねーけど!】
「……がるる、グルルル…!(好い加減こっちも怒るよ…!)」
レイドの方を見るとどうやらこっちも怒っているようである。
>「おいこら偽物野郎。今ならまだ許してやる。黙って俺達に付いて来い。」
多分許す気0である。
>155
と、その時ロックが爆炎にのみこまれた。
ロックの後ろからは…先程吹き飛ばされた少女が唸り声を上げていた。
>「ぐうううう゛う゛・・・!」
【おー、すっげぇ炎!】【やるな……S、今だ…!】
「がう!(わかったよ!)」
(――"切り裂け風の渦よ、目の前の者を"!)
非常に集中力を要し、更に疲れる無詠唱で風の渦を作り出し、金髪ロックを攻撃する。
159 :
名無しになりきれ:2008/01/18(金) 14:10:47 O
へんなひとたちがいる
>153
> 「おいこら偽物野郎。今ならまだ許してやる。黙って俺達に付いて来い。」
「“今ならまだ許す”ってのは、傷にならねぇように真綿で包むって意味なのか?
69ポンドもする学生服には大穴が開いちまったけどよ。」
金髪ロックはレイドを挑発した。
「俺を連れて行きたいなら力づくでこいよ!お前に遠慮は似合わねぇぜ!
…さあ、怒れよ。憎しみの瞳で俺を見るがいい!
俺に生きる実感を味あわせろ!!」
>155>158
しかし、金髪ロックには憎しみの瞳を向けていたのはレイドではなくルーだった。
> 「ぐうううう゛う゛・・・!」
金髪のロックは瞬く間に爆炎に包みこまれた。
さらに、グレイズの放った風の渦が炎にたっぷりと新鮮な空気を送り込み、
大きく膨れ上がった炎はまさに大きな柱のようだ。
「痛ぇし、熱い…だから人間だろ?」
炎に包まれたロックはそう言った後、ボッと大きな炎を上げて燃え上がった。
「ありがと…よ……」
そして、そこには炎だけが残された。
>152
>「うるせぇ、くそアマぁ!!」
>金髪ロックはリリアーナのほうに向いて蹴りを放つ。
召喚していたロックバスターの砲身を咄嗟に盾にしたおかげで、直撃は免れた。
だがフリージアやクドリャフカならともかく、リリアーナに衝撃を殺しきれる筈も無い。
リリアーナは吹き飛ばされ、倒れていた木の幹に嫌というほど叩きつけられた。
>「なんだ、よく見たらリリアーナじゃねぇか!」
ロックはリリアーナを見下ろした。彼の底冷えするような瞳の奥には憎悪の炎が燃えている。
>「リリアーナ、“ロック・ウィルの実力”ってやつを、存分に味わえよ!!」
だが炎の壁に囲まれても、リリアーナはピクリともしなかった。
―――― 炎の輪は徐々に狭まり、今にも彼女を焼き尽くそうとしていた。
「う・・・・・・いったー・・・・・・」
目を覚ましたリリアーナは呻いた。
頭は痛いし、ぶつけた背中もずきずき痛む。
今日は本当に最悪だった。
だがリリアーナの長い一日は、まだまだ終りそうに無い。
「あれ・・・・・・?ここは・・・・・・私、一体どうなったの?」
リリアーナは痛む頭を擦りながら、まだ混乱している頭で必死に考えた。
(確か――――そうだわ、金髪ロックに蹴り飛ばされた後焼き殺されそうになったんだわ!)
「あんの金髪ロック、よくも私を蹴り飛ばしてくれたわねっ!!
偽者はどこっ! まさか本当にブランエンだったんじゃ無いでしょうねっ!?!」
リリアーナは飛び起きると、ロックの姿を探してキョロキョロした。
「・・・・・・・・・・・あれ?」
リリアーナは訳がわからないといった顔をした。
親切な誰かが、まだ混乱している彼女に状況説明してやる必要があるかもしれない。
162 :
代理:2008/01/19(土) 19:07:54 0
『ブランエンSide 屋上』
夜光と室光が混じり合い、闇に陰影が生まれる。
それから逃げるように、屋上に佇んでいる少女がいた。
時間が時間だ、風が冷たい。
だがお構いなく気流は少女の背を、足を、首筋を、力の無い頬を撫でていく。
「こんなところで何してんのさ」
不意に響いた声に驚いた少女の背中、被さってくる物がある。
上着だ。生暖かい男子用の制服。
振り向けば、いつ背後に回ったのか、狐耳の少年が少女を眺めていた。
>160>「“今ならまだ許す”ってのは、傷にならねぇように真綿で包むって意味なのか?
69ポンドもする学生服には大穴が開いちまったけどよ。」
>「俺を連れて行きたいなら力づくでこいよ!(中略)俺に生きる実感を味あわせろ!!」
「ふんっ…誰がそんな下らない挑発に乗るかってんだ。俺がちょこっと本気出せばお前みたいな…」
>155>158> 「ぐうううう゛う゛・・・!」
え?あ、ちょっとそこの君!?
何してるんすか!!?
駄目だって!そんな威力の魔法使っちゃ!
そいつは生け捕りする予定……もう手遅れだな。
グレイズの奴…余計な真似を…。
>「痛ぇし、熱い…だから人間だろ?」
>「ありがと…よ……」
そう言って偽ロックは炎だけを残し消滅した。
結局生け捕りは失敗…後味の悪い結果になった。
>161ここで気絶していたリリアーナが目を覚ます。
今の彼女には状況が全く理解出来てないだろう。
「グレイズ、リリアーナに状況を説明して差し上げろ。」
状況説明をグレイズに任せ、青髪の少女に近寄る。
「あの炎を出したのは君だな?一体何処で覚えたんだ?
君位の年齢であの威力の魔法を使える奴なんて滅多に居ない…。
もし良かったら魔法の勉強をしてみないか?」
しかしルーには言葉が通じない!!!
>162
>「こんなところで何してんのさ」
憂鬱そうな顔をしていたブランエンは、突然の声と上着の温もりに驚き、
そして声の主を見て表情をかたくした。
無理もない。なぜならこの狐の耳を持つ少年との初対面は、
ブランエンにとって、この上もなく最悪なものだったからだ。
ましてや、今のブランエンは恐れているのだ。
誰かが自分をロックに戻し、そして自分という存在が消える…
あるいは、ロックの一部として吸収されてしまうのではないかと。
「紳士ぶるのはやめてよ。」
ブランエンはそう言って上着を狐耳の少年に返した。
そして、そのまま走り去ろうとしたが、何を思ったのか突然立ち止まり、
そして狐耳の少年に尋ねた。
「ねぇ、あなたはどうして生きているの?」
二つの青い瞳が狐耳の少年をうつしている。
「私はわからないわ。これからどう生きればいいのか。
私達はどうして生きたがるのかしら?
死ぬのが恐いから?それとも、満たしたい欲望があるから?
いつか必ず来る死が私達を消してしまう事がわかっているのに、
それでも私達はどうして生きたがるのかしら?」
>153
「フリージア!消火は任せた!!」
「わかりましたわ!!」とフリージア
雪と氷の精霊フラウに命じ局地的な雪を降らせる
「Снежный apparition living персоны! Мои сестры!
Пожалуйста одолжите силу к мне и будьте
более лучшим! !」
舞い踊りなおかつ呪文を唱えることにより魔法の完成を早めるフリージア
次第に火は消えていく
「サ、サムイ・・・・・」
フリージアの頭の上にいるギズモは凍えているようだ
>152>155>158>160>161
蹴り飛ばされるリリアーナ
「リリアーナさん!?」
>「リリアーナ、“ロック・ウィルの実力”ってやつを、存分に味わえよ!!」
「よ、よくもリリアーナさんを!!」
フリージアは友人を傷つけた偽ロックに攻撃をしたかった・・・しかし今はこの炎を消すことが肝心
そう思い術を再開する
「Дух снежка запроса! Пожалуйста поверните
это увеличение пламени!!」
そしてルーによりあっけなく灰にされる偽ロック
「・・・・・これが最後の偽ロックとは思えませんわ。そのうち第二第三の偽ロックが・・・」
あまりのあっけなさに思わずぼけをかますフリージア
「ドコノ キングオブモンスター カ!!」
やっぱり突っ込んでしまうギズモ
>「あれ・・・・・・?ここは・・・・・・私、一体どうなったの?」
>「あんの金髪ロック、よくも私を蹴り飛ばしてくれたわねっ!!
偽者はどこっ! まさか本当にブランエンだったんじゃ無いでしょうねっ!?!」
>「・・・・・・・・・・・あれ?」
「お〜ほっほっほ!安心しなさいもう偽物はやっつけられていなくなりましたわ」
何もしてないフリージアは偉そうに胸を張ってそう言うのであった
「ヤッツケタノハ オカアサンジャナイケドネ」
「紳士ぶるのはやめてよ」
……だってそれが俺だもの。
突っ返された上着を着る気も起きず、キサカは立ったまま動かない。
少女の視線はこちらに向いてはいるが、警戒と恐怖の色が混じっている。
加えて、嫌悪。
まあ初対面であんな事をすれば当然と言えば当然なのだが、良い気分ではない。
風が冷たい。
耳も冷たい。
視線が痛い。
……いきなり帰りたくなってきた。
生きる理由を聞いてくる少女の表情は力が無い。
何かあったのか、という問いは無粋だ。質問に質問で返すと怒られる。
キサカは実情をよく知らない。
ヒステリーを起こしてリリアーナ一行から逃げ出したらしいと情報が入ったが、そんな軽い事ではないとわかっている。
が、
……予想以上に重いかもわからんね。
「率直に言って、俺の答えは参考にならないと思う」
出来るだけ機嫌を損ねないように、と思ってしまう自分がいやらしい。
「やりたい事や一緒に居たい人、そんなのは欲望の一つでさ、理由じゃないと思う。
……後世に何かを残すとか、そういうのも自己満足だし」
自分でも何が言いたいのか、上手く纏まっているわけではない。
「死にたくない、と、生きていたい、の違いを問う人もいたかな。結局は個人の定義になるんだけどさ」
だがそれは多分、向こうも同じで、
「生きるか死ぬか、なんて、結局選択肢だと思うよ。死ぬ事に意義を見出したなら、死ねばいい。
死ぬ理由が無いなら……それこそ、誰かに「君は死ななくてはならない」って言われたような小さい理由なら、抗えばいい」
gdgd語っててもしょうがない、とキサカは息を吸ってタメを作り、
「――俺は「死ぬ必要も理由も無い」……それだけ」
>167
> 「――俺は「死ぬ必要も理由も無い」……それだけ」
キサカの答えを聞いても、ブランエンの表情は変わらなかった。
「それが、あなたの生きる理由…」
ブランエンはキサカを罵倒したくなった。あんたみたいな消極的な生き方してる人間に、
どうして命が与えられているのよ!?と。しかし、我慢した。
生きる理由がわかっていない自分が、そんな事を他人に言えるわけがない。
私こそ、命をもつ資格などないのかもしれない。ブランエンはそう思った。
「答えてくれてありがとう。
ところで、あなたは“私を追いかける必要も理由も無い”わよね?
もう会うこともないでしょう…さよなら。」
ブランエンは屋上を後にした。
ブランエンはその後、男子寮に向かった。
時間が時間だけに、幸いにも他の男子生徒に目撃されることはなかった。
ブランエンが目指しているのは男子寮69号室、ロックの部屋。
半壊していたこの部屋も、今はすっかり元通りだ。魔法ってすごい。
さて、どうしてブランエンがここに来たのか?それは、
ブランエンが体を休める場所として、他に思いつく良い場所が無かったからだ。
しかし、そんなブランエンを悲劇が襲う。
ドアが開かない!!
「…なんで、どうして?」
うろたえるブランエン、しかし助けを呼ぶわけにはいかない。
なにしろ、ここは男子寮なのだから。
一方、森の方ではある変化が現れていた。
金髪のロックが立っていた場所は、まだ煌々と炎が燃えている。
その炎の中から、突然何か小さな物が飛び出した。
それは、まるで青い雷を球状に丸めたもののような…電気玉とでもいうのだろうか?
悪のオーラを漂わせる電気玉は、目にも止まらない速さで飛んで行った。
行き先はただ一つ、男子寮にいるブランエンだ。
電気玉が飛んで行って間もなく、燃えていた炎が消えた。
よく見れば、炎が燃えていた場所に何かが横たわっている。
それは、キツネ…もっと正確に言えば、ロックに化けていた謎の生命体…コンコンだった。
コンコンは瀕死の状態だ。
>160
グレイズの放った風の渦は幼j…少女の炎に空気を送り込み、巨大な柱のようになって金髪ロックを飲み込んだ。
【ひゃっほー!すっげぇ炎ー!】【五月蝿いぞ、阿呆…。】
>「痛ぇし、熱い…だから人間だろ?」
>炎に包まれたロックはそう言った後、ボッと大きな炎を上げて燃え上がった。
>「ありがと…よ……」
そう呟くと、炎に紛れて消えた。
「………がる?(へ?)」
【…呆気なさ過ぎるな……まあそうに越したことは無いが。】
「(おかしいなぁ……何か引っ掛かるなー…。)」
憎悪に燃えていた奴がこうも簡単に消えるだろうか、何故『ありがとう』と呟いたのか、そして…
>161 >163
レイドから『余計な事しやがって』的な視線が送られて来ている。
「(…に、睨まれてる!?あああああ怖い怖い!!)」
それは置いといて、リリアーナが気絶から回復したようである。
リリアーナ は こんらんしている!とテロップがつきそうな感じにキョロキョロと周りを見ている。
それを見兼ねたのか、レイドから
>「グレイズ、リリアーナに状況を説明して差し上げろ。」
と、直々に指令が与えられた。グレイズにしてはさっきの視線より数倍マシである。
グレイズはリリアーナにすぐさま駆け寄った。
>166
近寄ると、ちょっとだけフリージアが説明していた。
>「お〜ほっほっほ!安心しなさいもう偽物はやっつけられていなくなりましたわ」
>「ヤッツケタノハ オカアサンジャナイケドネ」
ナイスツッコミだ、ギズモ。
多分まだ分かっていない彼女に状況の説明の為、スケッチブックを見せた。
『〜今の状況〜
リリアーナさん気絶
↓
青髪の子が炎の魔法を撃つ
↓
金髪のロック消滅
↓
リリアーナさん気絶から回復←今ここ』
…何気にグレイズが消滅に加担した事は伏せてある。
まあフリージアが言わなければバレないだろう。
>168
そうこうしていると、向こうで何か青く発光する球体の物が飛んでいった。超高速で。
「ぐる、がう?(あれ、何?)」
【……さあな。俺にもわからない事はある。】
【プックク、馬鹿ジャン!】
【……お前、自分で今何が起こっているかすら把握できて無いくせに何を言っている………。】
「ぐる、ぐるうるがるぐうがうがう。(いや、球体じゃなくてあれだよ。)」
恐らく球体が有ったと思われるところを見ると…キツネがいた。いや、あったと言った方がいいのだろうか。
殆ど動いていないのである。
グレイズは恐る恐る近づいて、息があるか確かめてみた。
「……がうがる!(生きてる!)」
「何をいうでおじゃるか?麿は友好的に接する者らに答えているだけでおじゃるよ」
キキは、何か考えがあるように微笑みそう返す。
アルナワーズのことだ。きっとこの一件も面白い方向へ持っていくつもりだろう。
自分で仕掛けた悪戯を見るのもいいが、他者の仕掛けた喜劇を見るのもその次にいい。
その為なら、自己最高の失敗作を差し出してもいいし、また、それ用に仕掛けるのも……
と、そうこうしている内にキキの部屋に着いた。
窓を開け、すぐさま部屋に入るとベットの隣に置いてある馬鹿でかいトランクを持ち上げる。
重量反転を付与させたトランクなので、持ち運ぶだけなら問題なく出来るぐらいの重さになっている。
トランクを絨毯に乗せ、キキは火翔で飛び上がり移動しようとした時、キキはあることに気が付く
「ところで……肝心のブランエンは何処にいるでおじゃるか?」
>163-164
>「グレイズ、リリアーナに状況を説明して差し上げろ。」
そういい残し、レイドは蒼い髪の少女に歩みより何か話し掛けている。
グレイズが何か一生懸命書いている間、リリアーナはぼんやりとレイドと少女を見つめていた。
だかレイドの言葉に、少女は不思議そうに首を傾げている。
もしかして言葉が通じていないのだろうか?
「レイド先生、テレパシーテレパシー!!
単語じゃなくイメージでテレパシーを送ると、動物や異国人相手でも通じやすいんですって」
>166
>「お〜ほっほっほ!安心しなさいもう偽物はやっつけられていなくなりましたわ」
>「ヤッツケタノハ オカアサンジャナイケドネ」
「そっか・・・・・・・あっ、でも私を助けてくれたのはフリージアでしょう?」
リリアーナはぐるりと周囲を見渡した。
燃え盛る炎の壁があった場所にはこんもりと雪が積もっている。
誰がどうやってリリアーナのピンチを助けてくれたのかは一目瞭然だった。
「ありがとうフリージア、また貴女のおかげで命拾いしたわ。
やだ、ギズモったら、貴方の頭の上に雪が積もってるわよ?!」
立ち上がろうとしたリリアーナは痛そうに顔を顰めた。
どうやら派手に叩きつけられた弾みで、少し足を捻ってしまったようだ。
>169
グレイズがスケッチブックを見せてくれた。
「え?それ本当?消滅したのは本当に偽者だったのねっ?!」
リリアーナは何度も何度もフリージアとグレイズに念を押していた。
「じゃあ、偽者は本当に燃やされちゃったんだ・・・・・・・」
リリアーナは複雑そうな顔で、偽ロックが立っていた場所の炎を見つめていた。
>その炎の中から、突然何か小さな物が飛び出した。
「―――― え?何?」
リリアーナは吃驚した。
変だ、消えたのは偽者のはずなのに、あの邪悪な光からなぜかロックの気配を感じる。
ロックのことを良く知る人間ならきっとリリアーナと同じ事を思った筈だ。
「どういうこと?金髪ロックは偽者じゃなかったの?!」
リリアーナは後を追いかけようとして転んだ。何だかひどく胸騒ぎがした。
「誰かあの光を捕まえて!―――― 早く!!」
グレイズは何か見つけたようだ
リリアーナは光が飛んでいった方向とグレイズを交互に見た。
そして迷いを振り祓うように、グレイズの方へと歩み寄る。
グレイズの足元には、何かが横たわっていた。
>「……がうがる!(生きてる!)」
「ちょ、ちょっと見せてくれる!」
そこには金色の狐が横たわっていた。
ひどい怪我だ。リリアーナが触れても逃げ出すそぶりすら見せなかった。
「かわいそうに、きっと金髪ロックの巻き添えを食らったんだわ」
リリアーナはその場に膝をつくと、大急ぎでウェストポーチから薬草セットを取り出した。
「今治して上げるからね。あっグレイズ、悪いけど今の言葉、狐語で翻訳してくれない?」
どうやらリリアーナは、狼も狐もごっちゃにして考えているようだ。
金色の狐はうっすらと目を開けた。リリアーナはこの青い目に見覚えがあった。
「・・・・・・もしかしてあなた、昨日の狐さん?!」
>170
女子寮キキの部屋の窓に横付けしていた絨毯に、大きなトランクが置かれる。
重量感に満ち溢れるトランクではあったが、重量反転を付与されている為、それ程重さは感じられない。
用意もできたことだし、早速、といった段でキキが根本的な疑問を口にする。
>「ところで……肝心のブランエンは何処にいるでおじゃるか?」
「とりあえず森まで行きましょう〜。」
森での衝撃音がブランエンの暴走によるものか、別のものかは判らない。
それでも対処に当たったリリアーナたちと合流するだけでもいく価値はある
>168
森に向かい飛び立ってから直ぐ。
夜空を疾走する青い雷球が視界に入る。
「ストップしてぇ〜。あの雷球を追いましょ。あれはきっと・・・何か関係あるものよ。」
【それ】が今回の事件に関係ある。根拠があるわけではない。
根拠を聞かれれば、『女の勘』と応えるだろう。
本能的にそれを察知して、絨毯の進行方向を変えて雷球を追っていく。
魔法の絨毯ムガルはスピードが出る飛行アイテムではない。
ぐんぐん離されていくが、それでも見失わずついていけるのは今が夜で、雷球はやたらと目立つからだった。
雷球を見てなぜ関係があると思ったのか。
飛びながらアルナワーズは自分自身の直感に理由付けをしていた。
「そうだわ。コンコンから飛び出ていったロックの記憶、光玉とどことなく似ているのよねぇ〜。」
色々な事を並べ立て、整理し、たどり着いた結論がこれであった。
この結論すら理論的や根拠というものからは程遠いが、アルナワーズは確信に近いものを感じていた。
>171
> 「・・・・・・もしかしてあなた、昨日の狐さん?!」
狐ことコンコンは、リリアーナを見ると口角を吊り上げた。
見方によれば幸せそうに笑った顔に見えるだろう。
事実、今のコンコンは幸せだった。
そもそも、悪ロックは一体何がしたかったのか?
コンコンの力をフルに使えば、悪ロックが負けるはずがない。
無限の名前を持つというのは決してハッタリではなく、
例えば、この場で太陽に変身すれば、
灰になったのは悪ロックを倒そうとした彼らだっただろう。
なら、なぜ金髪のロックはこれほど簡単に灰と散ったのか?
悪ロックが本当に殺したいと思ったのはコンコンだったからだ。
悪ロックがコンコンに言った事も、あながちまちがいではなかった。
短い時間だったが、みんな確かに金髪のロックに夢中だった。
今までも自分に夢中になる人間はいた。
しかし、彼らが夢中になったのはあくまでコンコンが変身した物だった。
今回もそうだ。みんなが見ていたのはコンコンではなく金髪のロックだ。
たとえその目が愛情でなく、憎しみを込めたものであっても、結局は何も変わらない。
そう、コンコンはついに悟ったのだ。
自分は一生どこかの誰かの偽者でしかないことを…
そして、その運命からついに解き放たれることを…
コンコンはゆっくりと瞳を閉じると、そのまま動かなくなった。
>173
名前欄の訂正
ブランエン(仮) ◆jWBUJ7IJ6Y ×
↓
コンコン◆jWBUJ7IJ6Y ○
>173
>狐は、リリアーナを見ると口角を吊り上げた。
>見方によれば幸せそうに笑った顔に見えるかもしれない。
だが、狐の目を覗き込んだリリアーナは、そうは感じなかった。
コンコンはゆっくりと瞳を閉じると、そのまま動かなくなった。
「――――ダメ!ちょっと!しっかりしなさい!!」
このまま放っておけば、間違いなく死ぬだろう。
野生の生き物なら、それが自然な事なのかもしれない。
だがリリアーナは見てしまったのだ。
狐の目に宿る理性と、全てを諦観したような光を。
リリアーナはきゅっと唇をかみ締めた。
ここにはグレイズ達という目撃者がいるが、迷っている暇はない。
「・・・・・・・今から私がやることは、出来れば内緒にして欲しい」
リリアーナは目を閉じ、左手を翳して何か呪文のようなものを口にした。
『来たれ、カドゥケウス!』
程なく彼女の掌の上空に、淡く輝く銀色の二匹の蛇が出現する。
彼女の身体が淡い水色のオーラに包まれると、二匹の蛇はみるみるうちに杖へと姿を変えた。
リリアーナが今握っている杖こそが、伝説の杖カドゥケウスだった。
リリアーナは狐の上でカドゥケウスを一振りした。
狐の傷が見る見るうちに塞がっていった。
いや、生と死を操れるこの杖の前では、どんな重傷でも意味をなさない。
もし動物のために杖を使ったとばれたら、後で大目玉を食らうかもしれない。
リリアーナが杖を使うたびに、所有者が誰か特定されやすくなってしまうからだ。
(でも――――良いよね?)
多分カドゥケウスの力は、こんな時のためにあるのだろう。
何も知らないリリアーナは、横たわる狐の頭をそっと撫でた。
「さあ、さっきの光を追いかけないと!・・・・・・あれっ?どっちに向かって飛んでいったかしら?」
>163
【敵】はなぜか自分の想像よりもはるかに巨大になってしまった炎に消えていった。
それにしてもお腹が減ったなぁ、とぎゅるぎゅるうるさいお腹に視線を落としていると
肉をくれた人が近づいてきた。
>「あadの炎dを出cしfaたのは君だraな?一体h何h処で覚nmえmたjんだ?
>君位の年齢であの威力のd魔法を使える奴なんて滅n多に居ない…。
>もしv良mかっumたら魔pi法のu勉強uをしtてみなqrいaか?」
ボクにはこんな感じに聞こえる。何を言っているのかよくわからない。
ちょっとだけはわかるんだけど。だから・・・とりあえず説明してみる事にした。
足元に転がっている石ころを右腕で拾い上げて、イメージする。
宝石で出来た腕につかまれた石ころからゆっくりと石像が浮かび上がる。
いや、這い出てくるの方が正しいかも。
石ころから出てきた小さな石像。体を横たえる黒っぽいドラゴンと
そのお腹のあたりに同じ格好で蹲る女の子。つまり私。
それを肉をくれた人に示す。
「・・・。」
伝わらなさそうだから、足元においてちょっと工夫してみる。
ノ木ム→。●←立木見
足元に置いた【●】がドラゴンで【。】が私。
そして地面の一部を焼いて上のような矢印と字を作る。
言葉・・・通じないかな。
男子寮69号室のドアの前で困っていたブランエン。
その時、暗い廊下の向こうで何か青い光が見えた。
気のせいではない。さっきからその光がだんだん強くなっている。
何か来る!
ブランエンはとっさにそう感じた。そして、それはやってきた。
青い電気玉、それがブランエンの顔に目がけて…
>172
それは数分前の事だった。アルナワーズの追いかけていた電気玉は、
ますますスピードを上げて男子寮に飛んでいった。
電気玉は男子寮の上空までやってくると、少し迷ったが、
すぐに通風孔の小さな隙間から男子寮に侵入した。
全てはブランエンに会うために…
そして、現在。まぶたを固く閉じて硬直していたブランエンは、
おそるおそる目を開いた。雷を丸く固めたような電気玉が、
ブランエンの目の前でふわふわと浮いている。
電気玉は、ブランエンをよく観察するかのように、
彼女の周りをぐるぐる回った後、また目の前で止まった。
「…綺麗。」
ブランエンは、これはどんな魔法なのだろう?と思いながら、
そして半分恐れながら、その電気玉に手を伸ばした。
最初に感じたのは“背徳感”だった。ブランエンはぞくぞくしながら、
電気玉を掴んだ。
その瞬間、ブランエンの心の中に強い気持ちがこみ上げてきた。
それは、さっきまでの自分の悩みなど軽く吹き飛ばしてしまうほど強い気持ちだった。
綺麗な服を着たい…おいしい物が食べたい…暖かい布団でごろごろしたい…
可愛いペットがほしい…誰かにほめられたい…素敵な家にetc
そうだ…せっかく命を持ったのだから、楽しい事をして遊んで暮らせばいいのだ。
ロックが消えても、それでリリアーナ達が悲しんでも、所詮は他人事ではないか。
ブランエンはそのように考えるようになり始めていた。
ブランエンの手には電気玉がしっかりと握られていた。
>171>「レイド先生、テレパシーテレパシー!!
単語じゃなくイメージでテレパシーを送ると、動物や異国人相手でも通じやすいんですって」
ああ、そういやこの娘には言葉が通じないんだったか…。
忘れてた。
それならばと、テレパシーをしようとするが、少女が動き出した。
>176>足元に転がっている石ころを右腕で拾い上げて、イメージする。
>宝石で出来た腕につかまれた石ころからゆっくりと石像が浮かび上がる。
これもこの娘の能力…なのか?
なんだか得体の知れない能力の持ち主だな…。
>伝わらなさそうだから、足元においてちょっと工夫してみる。
ノ木ム→。●←立木見
……なんだこりゃ。
暗号か?苦手なんだよこういうの…。
>「誰かあの光を捕まえて!―――早く!!」
リリアーナが何か叫んでいる。
ごめん、ちょっと待って。今考え中だから。
…頭から煙が出そうだ…しかし、せっかく少女が頑張ってくれたんだ、なんとか解読しなくて……解った!!
閃いた!
ノ木ム=私
立木見=親
……つー事はあれか?この娘はドラゴンの子なのか?
サングラス越しに少女を凝視するがどうみても普通の少女にしか見えない…。
今度は俺が少女にイメージをテレパシーで送る。
勿論学園のイメージだ。
教室で勉強しているシーンや実戦訓練のシーンだけではなく、食堂で飯を食ってるシーンも送ってやる。
この娘にはその方が効果的だと思ったからだ。
花より団子タイプの娘だな。
餌で釣るような気がして少し心が痛むが、今から真面目に勉強すれば将来は素晴らしい魔法使いになれる可能性を秘めている。
そんな娘を野生に放っておくのは勿体無いじゃないか。
>171
>「ありがとうフリージア、また貴女のおかげで命拾いしたわ。
やだ、ギズモったら、貴方の頭の上に雪が積もってるわよ?!」
「お〜ほっほっほ!お友達として当然ですわ」
フリージアはふんぞり返っている
「ユキフラセタダケジャン」
そう突っ込み
ギズモは自分の頭に積もっている雪を振り落とした
痛そうに顔を歪めるリリアーナ
だがフリージアには治療するすべが無い
「・・・リリアーナさん」
心配そうに声をかけるフリージア
>「え?それ本当?消滅したのは本当に偽者だったのねっ?!」
「間違いありませんわ」
「ウンウン」
>「じゃあ、偽者は本当に燃やされちゃったんだ・・・・・・・」
そして飛び出す小さな光
「これは・・・一体?」
フリージアは混乱している
その光にロックの気配がしたからだ
>「誰かあの光を捕まえて!―――― 早く!!」
「わかりましたわ!!」
その光に飛びかかろうとするフリージア・・・しかし逃げられてしまう
「アッチイッタヨ!」
ギズモはそうフリージアに呼びかける
「待ちなさい!」
>177
「この方向は・・・・男子寮ですの?」
さてどうしよう?幸いにもフーチさんはいないようだが・・・・
「行くしかありませんわね!!」
そう言ってフリージアは男子寮へと走っていった
リリアーナは狐の周りに簡易結界を作った。
せっかく治したのに、また獣とかに襲われたら意味ないから、ということらしい。
グレイズは何か言いたそうだったかもしれないが、リリアーナは気づいていない。
「早く治療して、電気玉とブランエンを追いかけなくちゃ!」という思いで頭が一杯だったからだ。
「・・・・・これで良し。さあ、早くさっきの電気玉を追いかけなくちゃ!」
リリアーナは、怪我をしていた方のを地面にトントンさせ具合を確かめていた。
>179
「レイド先生、私達一足先に行ってますね!早くあの電気玉捕まえないと大変だもの!」
それ以上言わなくてもレイドにはきっと通じるだろう。
何せレイドも、夏休み前に起きた事件―― ロックの別人格が深く関与している ―― の当事者なのだから。
「それと、いい加減その子を連れて移動した方が良さそうですよ」
森を荒らした犯人扱いされるのは、少女もレイドも本意ではないだろう。
「さっ、グレイズ行きましょう!さっきの電気玉、どっちに飛んでいったか分かる?」
グレイズは戸惑った様子ながらも、視線を学園の方へと向けた。
「寮の方角へ行ったのね? よし分かった行きましょう。
グレイズ、悪いけど私を連れてってくれる?夜目が利かない私が自力で走るより、きっと早く着けると思うの」
そう言うとリリアーナは、おんぶをせがむ子供のように両手を前に突き出した。
・・・・・・・・人狼姿のせいか、どうもリリアーナはグレイズが男子生徒ということを忘れがちのようだ。
さて、ブランエンがいくら意識改革したところで、
鍵のかかったドアを開ける事などできるはずもなかった。
フーチさんに相談するわけにもいかない。何しろ自分は、
言ってみれば不審者なのだから。
そうだ、食堂に行こう。
食堂に行けば、何かおいしいものが食べれるに違いない。
そして、お腹を満たしたら図書館に行こう。
図書館にはきっと開錠の呪文が書かれた本があるだろう。
最後にまたこの部屋に戻ればいい。
柔らかい布団でぐっすりと眠るのだ…全裸で。
思案したブランエンはこう考えた。
>180
そうして男子寮からこっそりと出たブランエンだが、ここで思わぬ事が起きた。
ばったりとフリージアに出くわしてしまったのだ。
ブランエンは慌ててフリージアから逃げた。
向かったのは食堂の方向だ。
>182
闇夜に目立つ雷光を追って男子寮付近まで飛来したアルナワーズ。
だが、そこで見失ってしまう。
さすがに通気候の小さな隙間に入られてはその光を追うことはできないからだ。
男子寮の上空でどうしたものかと考えていると、幸運は向こうからやってきた。
アルナワーズは知る由もないが、フリージアに遭遇して慌ててでてきたブランエンを見つけることができたのだから。
早速降下を開始する。
さほどスピードのでない魔法の絨毯ではあるが、流石に走るよりはスピードが出る。
走るブランエンに併走して。
そしていつも通りのおっとりとした口調で声をかけた。
「はぁい。ちょっと目を離したらなんだか雰囲気変わったわねえ。」
その手に持たれる雷球と、直感的にわかるブランエンの変化を観察しながら。
やさしく微笑みかけながら更に続けた。
「そんなに走って疲れるでしょうに。
記憶喪失を治療するって話してたの覚えているかしらぁ?
そろそろ始めたいのだけれど、こっちにこない?」
ポンポンと絨毯を叩きブランエン(仮)を促した。
>171
>「ちょ、ちょっと見せてくれる!」
近づいていたリリアーナが叫ぶように言い、キツネに触れる。
診たところ火傷か何かしているらしい。
>「かわいそうに、きっと金髪ロックの巻き添えを食らったんだわ」
>リリアーナはその場に膝をつくと、大急ぎでウェストポーチから薬草セットを取り出した。
可哀想であるが、何かやはり引っ掛かる。
ロックの周りにもリリアーナの周りにも生き物は居なかった筈である。
にも関わらず巻き添えを食らうだろうか?
一応臭いを嗅いでみると、金髪ロックのロックじゃない方の臭いがあった。
「(…あのロックは懐にでもキツネを入れる趣味でもあったのかな?)」
考えに没頭していてリリアーナの翻訳してという声も聞こえていなかった。
>175
>「――――ダメ!ちょっと!しっかりしなさい!!」
はっとリリアーナの方を見ると…キツネが息絶えたところだった。
酷く傷つけば死ぬ。そういう自然の摂理である。
グレイズはちょっと可哀想だな、と思ってリリアーナのほうを見る。
リリアーナもそんな感じだろうと思いながら。
―――実際は違った。可哀想に、と哀れむ目じゃなく、何かを覚悟した目。
>「・・・・・・・今から私がやることは、出来れば内緒にして欲しい」
いつに無く真面目な声。リリアーナは答えを待たずに何かを唱えた。
>『来たれ、カドゥケウス!』
彼女の翳した掌に2匹の蛇が出て、オーラとともに一本の杖となった。
【……………カドゥケウス…?】【知ってるのかー?】
【……知恵と癒しの杖と知られてるが……古い文献や本によると自然の摂理を覆す杖とも、世界に破壊を齎す杖とも、女神の祝福を受けた杖とも…。】
リリアーナが一振りすると、傷が塞がっていく。
グレイの3人は目を丸くしながらそれを見守った。
181
リリアーナは結界を作り、レイドに報告してからグレイズに問いかけてきた。
「さっ、グレイズ行きましょう!さっきの電気玉、どっちに飛んでいったか分かる?」
慌てて視線を寮のほうへ向ける。それを確認すると、
>「寮の方角へ行ったのね? よし分かった行きましょう。
> グレイズ、悪いけど私を連れてってくれる?夜目が利かない私が自力で走るより、きっと早く着けると思うの」
…おぶって走れと。
理由も納得できたので、グレイズは頷いてリリアーナに背を向けてしゃがむ。
そして肩に手をかけられた時点で、
「(…女性を運ぶんだよ?ちょっと待ってくぁwせdrftgyふじこlp)」
今更だが慌てる。遅いぞ。
気付かれにくいが顔が真っ赤に染まっているグレイズの背中にリリアーナの胸が…
ぺたっ
パニックから一気にクールダウンする。ああ、そうだっけ、噂通り胸ないもんね、と。
こんな事を考えていたらグレイズの頭に衝撃がきた。何か雰囲気みたいなもので気付かれたのか?
>181-182
頭をブッ叩かれたグレイズは、男子寮の方向へ足を動かす。
道中内心重いなーと思っていたらまた殴られたが、寮の入り口が見えてきた。
どんどん近くに寄っていくと、なにやら人影が二つ見えた。
寮から出てくる人影と入ろうとする人影。
寮から出てきた人影が食堂のほうに駆け出す。
>183
> 「そんなに走って疲れるでしょうに。
> 記憶喪失を治療するって話してたの覚えているかしらぁ?
> そろそろ始めたいのだけれど、こっちにこない?」
ブランエンは内心、なんて白々しい!と思った。
アルナワーズも自分の正体を知っているに違いないと思ったからだ。
ブランエンは立ち止まってアルナワーズに言った。
「ごめんね、アルナワーズ。私はもう記憶喪失じゃないの。
私がどうして生まれて、そして何をして生きるのかも、
あなたから教えてもらう必要はないわ。」
さらにブランエンはこう付け足した。
「私は私として生きていくわ。例えその結果、一人…」
言いかけてブランエンはやめた。
「とにかく、さようなら。もう会うこともないでしょう。元気でね。」
ブランエンは再び食堂へ歩きだした。
>182>185
「え!?」
突然の事に驚くフリージア
光を追いかけていたらばったりとブランエンに出会ってしまったのだ
そして逃げ出すブランエン
「ちょっと!お待ちなさいな!!」
フリージアの制止の声も聞かずに遠くに行ってしまう
「・・・・・行ってしまいましたわ」
このまま追いかけてもまた逃げられるだけだろう・・・そう思いフリージアは立ち止まる
それにしてもあの光はどこに行ってしまったのだろうか?
「誰かに聞くしかありませんわね・・・ギズモちゃん!」
とりあえず情報を集めようとギズモに声をかけるフリージア
「ン?ナニオカアサン?」
「ちょっと男子寮の生徒に光の玉を見なかったか聞いてきてちょうだいな」
さすがに二回も三回も女生徒が男子寮に入り込むのはまずいと判断したフリージアは
男であるまあ使い魔だから関係ないかもしれないけれども
ギズモに情報を集めてくるように命じる
「ワカッタ」
命令されたギズモはふよふよと男子寮の方向へと飛んでいった
「頼みましたわよ!!」
どうやらフリージアにはブランエンが光の球を持っているなんていう発想は出来なかったようだ
「さて・・・これからどうしましょ?」
ギズモは行ってしまいフリージアは途方に暮れる
「ここから動くとサマルトリア現象が起きそうだし・・・・リリアーナさん達が来るまで待とうかしら?」
サマルトリア現象・・・それは入れ違いになり
なかなか目的の人物と会えなくなってしまうという現象である
竜の探求二章なる物語より由来するらしい
そうして待っていると向こうからリリアーナをおぶさった狼男が走ってきた
「残念ながら光は見失ってしまいましたわ・・・
そうそう女の子になったロックさんとさっき会ったんだけど逃げられてしまって・・・」
「あっちの方向ですわ」
と食堂の方へと指を指すのであった
>184-185
リリアーナは、グレイズが失礼な事を考えるたびにぺちっと頭を叩く。
まるで読心術か悪口反応センサーを装備しているのか?と思うくらいの正確だ。
だがグレイズは特に気分を害した風でもなく、リリアーナを連れて森を抜けた。
>182 >187
暗くてリリアーナには良く見えなかったが、グレイズには寮から走り去る人影がはっきり見えただろう。
「フリージア!フリージア!!」
リリアーナはフリージアに大きく手を振った。
「グレイズ、ここでいいわ。ありがと、降ろしてくれる?」
リリアーナはグレイズの背から飛び降りると、フリージアの元へと駆け寄った。
「ねえ、例の光はどうなった?」
>「残念ながら光は見失ってしまいましたわ・・・
> そうそう女の子になったロックさんとさっき会ったんだけど逃げられてしまって・・・」
「えっ、ブランエンが?で、どっちに行ったの?」
>「あっちの方向ですわ」
フリージアは食堂の方を指差した。
「そっか・・・・・・・じゃあ差し当たりブランエンの方を優先させましょう。
ところでフリージア、ギズモはどうしたの?さっきから姿が見えないけど?」
別れた時には確かフリージアの頭に乗っかっていた筈なのだが。
リリアーナはグレイズをじっと見つめた。
「グレイズ、勝手をいって申し訳ないけれど、人助けだと思ってもうちょっと付き合ってくれない?
こうなった以上貴方の嗅覚だけが頼りなの」
リリアーナは申し訳無さそうに拝む仕草をした。
さっきまでグレイズの頭をぽかぽか叩いていたとは思えない程の殊勝さだ。
>183
食堂方面に移動する途中、見覚えのある人影を見つけた。
「アル!それにキキさんも!」
リリアーナは息を切らしながら魔法の絨毯に駆け寄った。
「ねえ二人とも、ブランエンを見かけなかった?――――あっ!」
リリアーナは手にもっていたカドゥケウスを慌てて後ろ手に隠した。
「えーと、あの・・・・その・・・。そ、そうだわアル!大変なの!
さっき森の中で暴れていたのはブランエンじゃなくて、金髪の悪人ロックだったわ!
まあそっちはグレイズと蒼い髪の女の子が倒してくれたんだけど、一体何人偽者がいるのかしらねっ?!」
189 :
(キ)キルメテウス軍 BG母艦 ◆2LEFd5iAoc :2008/01/26(土) 22:58:19 0
糞スレサラシアゲ
>>189 と叫んでいる声が男子寮から聞こえるどうやら魔法の実験のようだ。
ブランエンは食堂についた、
が目の前に開かない扉がまたしても立ちはだかる。
時間が時間だけに食堂はもうしまっていた。
しかし、ブランエンは困らなかった。
なぜなら…
ガシャーン!
食堂の裏手にまわったブランエンは、窓に大きな石をぶつけて割った。
他人の所有物を破壊することにいくらかの罪悪感を感じたが、
ブランエンは次のように自分を弁護した。
「…しょうがないじゃない、お腹減ってるんだもの。」
ブランエンは、窓の割れた箇所から手を差し入れ、鍵を外した。
割れていない方の窓をずらして、そこから厨房に侵入したのは、
割れたガラスで足を切らないための彼女なりの工夫だ。
散らかしてしまって申し訳ないと感じたが、
ブランエンは次のように自分を弁護した。
「…しょうがないじゃない、お腹減ってるんだもの。」
ブランエンは食品棚を見つけた。中にはバターとチーズ、
ふかふかのパンが入っていた。
両手でそれらをかき集めながら、
ブランエンは次のように自分を弁護した。
「…しょうがないじゃない、お腹減ってるんだもの。」
ブランエンはパンにバターを塗り、それを口一杯に頬張った。
「……あの…少しばかりいい難いんでおじゃるが…」
リリアーナから偽ロックの話を聞いたキキは少々バツが悪い表情をしながら、喋り始めた。
「…実は…な、アレは食堂に居たのと同じというか…麿の手違いでな……その…逃げ出した訳で…ははは…スマナイデオジャル」
話していくさなか、空気が段々と刺さるようにピリピリしはじめたのを感じたのか。若干、棒読み気味に事情を説明したキキはなんとかこの空気を変えようと手元のトランクをポンっと叩き
「…しかし、麿も如月の女でおじゃる。このようにロックとブランエンのためにコレを用意しておいたでおじゃる……が
先ほどの玉とブランエンを様子を見るに……」
必死で弁明している最中、あることに気が付き言葉を止める。
「………ジキルとハイドを知っているでおじゃるか?…知ってても知らなくとも急ぐでおじゃる!最悪の結末になるやも知れぬ」
>186>192
スタスタと食堂へと歩いていってしまったブランエンを見送り、アルナワーズは大きくため息をついた。
想像していた以上にブランエンの自我が確立してしまっているからだ。
手に持っていた雷球の影響でもあるのだが、それを知る術はない。
それよりも判っていることは、このままではロックの意識が塗りつぶされてしまうこともありうる、ということだ。
そこへやってきたリリアーナとフリージア、そしてグレイズ(獣人モード)。
リリアーナの言葉を聴きながら考えをめぐらせる。
「そうなの〜・・・ところで、レ イ ド 先 生 は?」
やってきた面子の中にレイドの姿がないのにアルナワーズの眉が僅かに吊り上げられる。
時間の経過と共に事態はどんどん悪くなっていっている。
キキの言葉に促され、食堂に向かいながら状況とこれからの行動を説明する。
ブランエン(仮)は独立した人格ではあるが、その肉体はロックのもの。
肉体に戻ったロックの意識はブランエンの意識に塗りつぶされるかもしれない、と。
「だからぁ、キキが用意してくれたこの空の体にブランエンの自我を移して丸く収めようと結論づいたのね。
先生ならともかく、私がやるとなると強制はできないの。
ブランエンとロック、双方の了承がないと、ね。
時間もないし、次は逃がしたくないの。協力、してくれるわよね?」
一同を見回し、念を押す。
時刻は既に8時を越えていた。
>「そうなの〜・・・ところで、レ イ ド 先 生 は?」
「えっ?!あれっ?さっきまで一緒にいたんだけどなっ!いつの間にはぐれちゃったのかなっ?!
グ、グ、グレイズ、レイド先生知らないかなっ??」
しどろもどろの口調は、まるでどこぞのオニギリ画伯である。
リリアーナは冷や汗をだらだら流しながら、フリージアとグレイズの背中へと回り込んだ。
>192
「……あの…少しばかりいい難いんでおじゃるが…」
天の助け!とばかりにリリアーナはキキの話に食いついた。
リリアーナから偽ロックの話を聞いたキキは少々バツが悪い表情をしながら、喋り始める。
>「…実は…な、アレは食堂に居たのと同じというか…麿の手違いでな…
>…その…逃げ出した訳で…ははは…スマナイデオジャル」
話を聞いていたリリアーナの顔から次第に表情が消えていく。
不穏な空気に気づいたのか、キキは絨毯の上に載せられたトランクをぽんと叩いた。
リリアーナは首を傾げた。異国風の大きな箱だ。中にリリアーナ一人くらいならすっぽり収まりそうである。
キキはリリアーナの質問には答えず、この箱はロックとブランエンのために用意したと説明し、ふいに口を噤んだ。
>「………ジキルとハイドを知っているでおじゃるか?…知ってても知らなくとも急ぐでおじゃる!最悪の結末になるやも知れぬ」
キキの気迫に押され、リリアーナはこくこくと何度も頷いた。
「ところでジキルトハイドって何?魔法の一種?」
>193 >191
食堂に向かいながら、アルはこれからの行動の指針を説明してくれた。
難しい理屈はわからないが、このままだとロックの人格が消えてしまうらしい。
>「だからぁ、キキが用意してくれたこの空の体にブランエンの自我を移して丸く収めようと結論づいたのね。
>先生ならともかく、私がやるとなると強制はできないの。
>ブランエンとロック、双方の了承がないと、ね。
>時間もないし、次は逃がしたくないの。協力、してくれるわよね?」
「もちろんよ!そうとわかればさっさと行きましょう!!」
遠くからガラスの割れるような音がした。
「食堂の方だわ、急がなくちゃ!!ちょっとアル、自分たちばっかり楽してずるいっ!絨毯に乗せてよ―――― っ!!」
リリアーナは息を切らしながら、魔法の絨毯を必死で追いかけた。
>レイド先生、>ルーさん
食堂の扉は固く閉ざされていた。リリアーナは裏口へ回ってみた。厨房の窓ガラスが派手に割られている。
窓からそっと中を覗き込むと、黒い髪とピコピコ動く猫耳が見えた。
「見つけた。――――とりあえず私は正面の扉から中に入る事にする。皆、ロ・・・ブランエンを逃がさないよう力を貸して」
リリアーナは食堂の正面扉の前に立ち、カドゥケウスを振り下ろした。
食堂の扉に重なるようにして、蒼い扉が浮かび上がる。
リリアーナは扉に手をかけた。彼女は空間操作の力で、食堂の扉を壊さずに中へ入るつもりなのだ。
「・・・・・・・・・・あれ?」
だが扉の向こう側は食堂ではなかった。
レイドの事を考えていたせいで、間違った場所に扉をつなげてしまったようだ。
『レイド先生何してるんですか、その子の勧誘はひとまず後にしてこっち来て下さい!!ロックの一大事なんですよ!!』
リリアーナは口をパクパクさせながら、レイドを必死で手招きした。
蒼い髪の少女には、たくさんの食べ物のイメージを送りつけてみる。
テレパシーだけでは弱いと思ったのか、リリアーナはポケットに入っていたチョコレートバーもちらつかせてみた。
気を取り直し、再びリリアーナはカドゥケウスをを構えた。再び出現した蒼い扉を潜ると、今度こそ食堂の中だった。
食堂の隅でヤケ食いしている人形に死ぬほど驚きながらも、そろそろと奥へとすすむ。
「ブランエン、話が――――」
厨房で声をかけようとしたリリアーナだったが、途中で言葉を失ってしまった。
「まさかそれ全部一人で食べるつもり?・・・・・じゃなくて!」
リリアーナはぐぅぐうなっているおなかの音を誤魔化すように咳払いした。
「アルとキキから大事な話があるの。食べている間だけでいいから、私たちとお話しない?」
ブランエンを制するように、リリアーナは声を張り上げる。
「あなたの身体は本来男性のものなの!!いつまでも女性の姿で悪影響がないとでも思ってるの?!」
もちろん口からでまかせだが、要はブランエンの足を僅かでも止められればいい。
「お願いだからアルたちの話を聞いて。とても大切なことなの」
>194
> 「まさかそれ全部一人で食べるつもり?・・・・・じゃなくて!」
聞き覚えのあるその声に、ブランエンはぱっと振り向いた。
リリアーナを見たブランエンは急いで口の中の物を飲み込むと、
厨房の調理器具をガチャガチャ落としながら、慌てた様子で窓から外に飛び出そうとした。
しかし、次のリリアーナの一言が、彼女をあと一歩のところで外に出さなかった。
> 「あなたの身体は本来男性のものなの!!いつまでも女性の姿で悪影響がないとでも思ってるの?!」
この言葉にはブランエンもびっくりだ。自分でも思いもよらなかった可能性だったからだ。
自分の股間がもっこりする様子を思い浮かべたブランエンは、顔を真っ青にした。
> 「お願いだからアルたちの話を聞いて。とても大切なことなの」
この言葉を聞くと、ブランエンの様子が変わった。
やっぱりアルナワーズは自分の正体を知っていたのだ。その上であんな事を平気で言ってくるなんて!
ブランエンはアルナワーズに対してそう思った。
そしてリリアーナに対しても、次のように思った。
彼女もきっと私をだまそうと考えているに違いない、と。
ブランエンは変な笑いを浮かべながらリリアーナを見つめた。
「ふ〜ん、そういう事ね。」
窓から逃げようとしていたブランエンは厨房まで戻ると、
ちょうど床に落ちていた大きな中華包丁を手にした。
丁寧に磨かれた刃が、厨房に差し込む月明かりで鈍く光る。
「やっぱり、あなたとアルナワーズはグルなのね?親切そうな顔して人に近づいて…
でも本当は自分達の事しか考えてないんでしょう?嘘をついてまで、私を消してロックに戻したいの?」
危ないブランエンはリリアーナに近づいた。
窓の外から、夏の終わりを嘆くようなフィジルカエルの鳴き声が聞こえる。
「魔女って…恐い生き物ね…どんな色の血を流すのかしら?」
ブランエンはさらにリリアーナに近づいた。
あと一歩近づけば、彼女の包丁がリリアーナに届くだろう。
>194>195
説得するリリアーナに中華包丁を手にしたブランエンがにじり寄る。
その目に宿る光は冗談などではない。
あと一歩踏み込めば包丁が届くその緊迫した場面で渇いた音が鳴り響いた。
***スッパァァーーーン!***
どこから持ち出したのか、アルナワーズがリリアーナの後頭部をスリッパではたいたのだ。
「はぁ〜やっと判ったわ。話が混乱するわけね。ブランエンって誰よ?
名前がわからないからってまったく・・・」
ため息をつきながらスリッパを放り投げて一歩出てリリアーナに並ぶ。
そしてブランエンに向かって言葉を綴る。
「あなた、自分がブランエンだと思ってるの?
どうして?リリアーナにそう呼ばれたから?
それから、どういう結論にたどり着いているかは知らないけど、それが本当に正しいの?
その根拠は?ねえ、【エルザ】?」
淡々と語り、最後に口にした名前はブランエンの心に染み込むだろう。
その名前に何の意味もない。アルナワーズが今思いついた名前だ。
だが、ブランエンにとっては意味はわからなくとも(元々ないのだから)、不思議と心に染み込んでくるのだ。
そうなるように、アルナワーズがその名前に渾身の言霊を込めたのだから。
心に染み入る感覚に疑念さえ抱いてくれればいい。
自分が結論付けた行動原理にヒビさえ入ればいいのだ。
「【エルザ・フォン・ブラハント】!あなたは魔法により魂を別の肉体に入れられているのよ。
そして私はあなたの本来の身体を取り戻してきたの。
あなたがあなたとして生きていくのは誠に結構なのだけれど、その為にもあなたに戻らなければいけない。
そうは思わないかしら?」
そういいながら絨毯に乗り、トランクを開く。
中には眠っているような少女が入っていた。
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・」
リリアーナとはぐれてしまったキサラはとりあえず途方に暮れていた
最初はあの吸血鬼がいたのだが、吸血鬼もどこかにいってしまったので、実質迷子である
(・・・でもまあ・・・大体音のする方に移動すれば大抵いるんだよね・・・あの人)
要は、騒ぎの中心を探せば、おのずと合流できるだろうと踏み、とりあえず歩き出すのだが
「・・・あれ?」
結局、またあの食堂に来てしまったのであった
(でも確かに・・・ここが一番うるさい・・・気がする)
そっと扉を開けるキサラ
そこでキサラの目に映ったのは、リリアーナに包丁を向ける少女の姿だった
「・・・・・・・!!」
半ば条件反射で銃を抜くが、間に合わない!
と、思ったその時
>***スッパァァーーーン!***
と、その緊迫した雰囲気に合わない乾いた音が響く
その音を出した本人の顔を見て、キサラが珍しく一瞬焦ったような表情になる
「あ、あの人は・・・っ!」
彼女の名は、アルワナーズ=アル=アジフ
正直なところ、キサラが最も再会したくなかった人物である
>181>「レイド先生、私達一足先に行ってますね!早くあの電気玉捕まえないと大変だもの!」
「りょーかい。頑張ってくれたまえ」
>「それと、いい加減その子を連れて移動した方が良さそうですよ」
「あい、なるべく急ぐ。」
……5分経過
……10経過
駄目だ。これ以上は待ってられん。
ここは一旦この場からずらかるのが先か…。
>194そこへ丁度良く青い扉が現れ、リリアーナが顔を出し、口をパクパクさせる。
>『レイド先生何してるんですか、その子の勧誘はひとまず後にしてこっち来て下さい!!ロックの一大事なんですよ!!』
そして少女を誘惑するようにチョコレートバーをちらつかせる。
『分かった分かった。行くぞ少女よ。』
少女を抱き抱え、青い扉の中に入る。
するとその扉は食堂の正面扉に繋がっていた。
「あらま…なんでこんな所に繋げてるんだ?
あれ…リリアーナ?」
何処に行ったのか…考えるまでも無いか…。
この青い扉の向こうだな、多分。
少女を抱き抱えたまま青い扉をくぐると中華包丁を手にした例の彼女(ブランエン)がリリアーナに近付いている場面に遭遇してしまった。
「おいおい冗談だろ…」
いや、あの目は冗談言ってる目じゃねぇな。
>195>「魔女って…恐い生き物ね…どんな色の血を流すのかしら?」
>あと一歩近づけば、彼女の包丁がリリアーナに届くだろう。
「ちょっと待っ…」
>196>***スッパァァーーーン!***
アルナワーズが何処から持って来たのか分からないスリッパでリリアーナの頭をはたく。
それと同時に俺は扉の陰に隠れる。
今アルナワーズに見付かってはいけない。
絶対に怒られる。
だって俺、例の彼女捜せって言われたのに全く捜してなかったもんね…。
人差し指を口の前にかざし、『し〜っ。』と少女にも一応注意をする。
何やらアルナワーズが例の彼女を諭しているが、俺の耳にはほとんど内容が入ってこない。
どうやってアルナワーズに言い訳をしようか、それが問題だ…。
>192>193>194
>「そうなの〜・・・ところで、レ イ ド 先 生 は?」
「そういえばいつのまにかいませんわねえ?」
はて?何処に行ったのであろうか?
>「えっ?!あれっ?さっきまで一緒にいたんだけどなっ!いつの間にはぐれちゃったのかなっ?!
グ、グ、グレイズ、レイド先生知らないかなっ??」
>「………ジキルとハイドを知っているでおじゃるか?…知ってても知らなくとも急ぐでおじゃる!最悪の
結末になるやも知れぬ」
>「ところでジキルトハイドって何?魔法の一種?」
「リリアーナさんジキルとハイドと言うのは有名な昔話のひとつですわ」
それは悪の人格と善の人格二つを持った人間のお話
確か最後にもうひとつの人格・・・悪の人格を殺すために自殺を・・・・
「た、確かに不味いですわね」
そして一行は食堂にたどり着く
>「・・・・・・・・・・あれ?」
「あら?」
「エ?」
扉を開けるとなぜかそこにはレイド先生と野人
気を取り直して・・・
リリアーナはブランエン(仮)に語りかける
>「あなたの身体は本来男性のものなの!!いつまでも女性の姿で悪影響がないとでも思ってるの?!」
そうですわよ!本来の姿では無い姿でいつまでもいられると思って!」
>「お願いだからアルたちの話を聞いて。とても大切なことなの」
>195>196
「魔女って…恐い生き物ね…どんな色の血を流すのかしら?」
リリアーナが刺されると思ったその次の瞬間である
***スッパァァーーーン!***
アルナワーズが思いっきりスリッパで殴りそれを止める
そしてアルナワーズは彼女がブランエンではない別の名を持つ人間だと言い始めた
「そうですわ!ブランエンはロックのお母様の名前!あなたの名前ではないはずですわ!
それともあなたはロックのお母様なのかしら?」
>196
> 「あなた、自分がブランエンだと思ってるの?
> どうして?リリアーナにそう呼ばれたから?
> それから、どういう結論にたどり着いているかは知らないけど、それが本当に正しいの?
> その根拠は?ねえ、【エルザ】?」
「何ですって?」
不思議とエルザという名前に深い親しみを感じる。
リリアーナに初めてブランエンと呼ばれた時と似た気持ち、いやそれ以上だ。
エルザ…それが私の名前?ブランエンの心が揺れた。
>200
> 「そうですわ!ブランエンはロックのお母様の名前!あなたの名前ではないはずですわ!
> それともあなたはロックのお母様なのかしら?」
「フリージア、あなたは勘違いしているわ。いい?私がブランエンを名乗っているのは、
ただその音の響きが気に入っていたからよ。私はロックのお母さんじゃ…」
ブランエンは少しムキになって答えた。
> 「【エルザ・フォン・ブラハント】!あなたは魔法により魂を別の肉体に入れられているのよ。
> そして私はあなたの本来の身体を取り戻してきたの。
> あなたがあなたとして生きていくのは誠に結構なのだけれど、その為にもあなたに戻らなければいけない。
> そうは思わないかしら?」
「………」
ブランエンはそれから何も言わなかった。
もし、アルナワーズの言うことが本当なら、ブランエンにとって決して悪い話ではない。
ブランエンは淡い期待を持ちながら、アルナワーズが開けたトランクの中を覗いた。
「………」
ブランエンは何も言わなかった。しかし、
先ほどとは全く違う意味での沈黙だった。ブランエンの心に疑惑が広がる。
先ほどアルナワーズにエルザと呼ばれた時のあの不思議な気持ち…
ところがどうだろう。このトランクの少女からはそれが感じられないのだ。
「…わかったわ、アルナワーズ。」
ブランエンはそう言って、中華包丁を棚に置いた。
はたから見れば、ブランエンが納得したように見えるだろう。
>195-196 >200-201
>「ふ〜ん、そういう事ね。」
逃げるのを止めたブランエンは、嫌な笑みを浮かべた。
予想外のリアクションに、リリアーナが何度か瞬きをする。
ブランエンは厨房に取って返すと、落ちていた中華包丁を拾った。
巨人族の血を引くシェフ愛用のそれは、包丁というよりまるで斧や鉈のようだ。
>「やっぱり、あなたとアルナワーズはグルなのね?親切そうな顔して人に近づいて…
> でも本当は自分達の事しか考えてないんでしょう?嘘をついてまで、私を消してロックに戻したいの?」
リリアーナは頬をおもいきりひっぱたかれた後のような顔をした。
確かにブランエンを引き止めるために悪影響の話をしたが、全くのでまかせというわけでもないのだ。
「・・・・・・前にロックの部屋で私が話したこと、もう忘れちゃった?」
リリアーナはじっとブランエンを見つめた。
>「魔女って…恐い生き物ね…どんな色の血を流すのかしら?」
>ブランエンはさらにリリアーナに近づいた。
リリアーナは悲しそうに目を伏せると、持っていたカドゥケウスをポケットに片付けてしまった。
「違う。・・・・・あなたが本当に恐がっているのは、魔女じゃ無・・・」
>***スッパァァーーーン!***
リリアーナの話は、アルナワーズが振り下ろしたスリッパの一撃で中断された。
張り倒されたリリアーナは、まるで踏み潰されたフィジルガエルよろしくたおれている。
>「はぁ〜やっと判ったわ。話が混乱するわけね。ブランエンって誰よ?
>「そうですわ!ブランエンはロックのお母様の名前!あなたの名前ではないはずですわ!
後頭部から白い煙を出しつつ起き上がったリリアーナは、涙目で口をパクパクさせた。
> 「あなたはロックのお母様なのかしら?」
フリージアの質問に、ブランエンは向きになりつつもきっぱり否定した。当然といえば当然である。
> 「【エルザ・フォン・ブラハント】!あなたは魔法により魂を別の肉体に入れられているのよ。
> そして私はあなたの本来の身体を取り戻してきたの。
「そ、そうだったのっ?!――――ごめっ!続けて続けて!!」
>「 あなたがあなたとして生きていくのは誠に結構なのだけれど、その為にもあなたに戻らなければいけない。
そう言って、アルはキキが用意したという箱を開いた。リリアーナは思わず身を乗り出した。
箱の中には、まるで眠っているような少女が収められていた。
>「…わかったわ、アルナワーズ。」
>ブランエンはそう言って、中華包丁を棚に置いた。
納得してくれたのだと思ったリリアーナは、ほっと肩の力を抜いた。
「でもアル、どうやってエルザの魂を元の身体に戻すの?
ロックと魂を共有してた別人格のマリ・・・・・ゲフンゲフン!『例のあの人』の時は、アイテムが必要だったでしょ?」
まあギルハートの鏡を使っても、ロックと闇の魔法使いマリアベルを完全な形で分離出来なかったのだが。
「儀式のために何かそろえなきゃいけないものとか、私達にも手伝えるようなことってある?
言ってくれたらなんでも協力するわよ、ねえ皆?」
リリアーナはフリージアだけでなく、初対面に近いグレイズやキキまで協力してくれると信じて疑わないようだ。
リリアーナは嬉しそうに笑うと、エルザに抱きついて喜んだ。
「良かったわねエルザ、本当に良かった!
これでもう『ロックのために自分が消されるかもしれない』なんて怯えなくてもて済むのね!」
たった今包丁を向けられていたはずなのだが、全く気にしていないないようだ。
リリアーナはうっすら涙ぐんでいた。ホッとしていたのだ。
これでもう、エルザとロックのどちらかを選ばずに済むと思ったからだ。
(エルザがギルハートやセブンのように明確な悪ならば、きっと、今よりずっと話は単純だっただろう)
「大丈夫よエルザ、アルやキキさんが居るからきっと元の姿に戻れるわ。私たちも協力するし。
誰が何のために呪いをかけたのか理由がわからないけど、心配しないで、悪い奴がきてもきっと守るから。
レイド先生ももうじき来ると思うし、一緒に事情を説明しましょう! ――― エルザ?」
様子がおかしい事にようやく気づいたリリアーナは、腕を緩めると心配そうにエルザの顔を覗き込んだ。
>202
「なんでもないわ。」
エルザはリリアーナに短くそう答えた。
そして、すっとリリアーナから離れた。
エルザは考えていた。アルナワーズが見せた、
トランクスの中に納まっているこの体についてだ。
エルザは疑問に感じていた。何故、この体を見ても、
エルザという名前ほどの愛着を感じないのだろうか?
もちろん、本来であれば見慣れた顔だからなのかもしれない。
しかし、それなら何故エルザという名前にだけこうも反応するのか?
エルザはそのギャップに戸惑い、そしてある結論を出した。
私の名前はエルザ…でも、これは私の体ではない。
それでは、自分の目の前にあるこの体は何なのか?
エルザは、トランクの少女の頬に触れてみた。
冷たい…でも確かに存在している。
どうやら、幻術でつくられたものではないらしい。
では何なのか?…誰か別の人間の死体?
いや、ありえない。と、エルザは考えた。
ロックの記憶があるので、アルナワーズの事がある程度わかる。
そして、アルナワーズが誰かの死体を用意するとはとても思わなかった。
となると…考えられる可能性は一つだ。
エルザはアルナワーズに尋ねた。
「ねぇ、この体はどこで見つけたの?」
フリージアの言葉もあり、ブランエンは中華包丁を置いた。
ひとまずは信じてもらえたようだ。
エルザに喜び抱きつくリリアーナを見ながら安堵の息をついた。
しかしその安堵も長続きはしなかった。
エルザの冷淡な反応。そして決定的な言葉。
>「ねぇ、この体はどこで見つけたの?」
この体・・・その言葉にアルナワーズは心の中で小さく舌打ちするが、表に出すことはない。
これもある程度想定していた質問だからだ。
瞬時に物語を組み立て、いつもの微笑を湛えたまま淀みなく応えはじめる。
「話すと長くなるのだけれどぉ、結論だけ言うと私の作ったマジックアイテムの中よ。」
そう切り出すと虚実を織り交ぜた経緯を話し始めた。
卒業制作の試作品として作った移動型金庫。
それは幻術の防犯機構を仕込んだ亜空間付のマジックアイテム。
テスト中に記憶を喰らう魔獣がその中に住み着き、ロックを虜にした。
しかし、その魔獣はそれ以前に虜にしていた身体があった。
それがエルザなのだ、と。
魔獣は、魔法使いで耐性がある上特異体質のロックの記憶を喰らうことができなかった。
そこでロックの意識との記憶を塗り潰す為に、エルザの自我をロックの身体に移植した。
ロックの記憶は喰らえなくとも、エルザが得た記憶ならば喰らえるからだ。
エルザがロックを塗りつぶすまで、怪しまれないように魔獣はロックに成りすましていた。
そしてエルザの肉体は放置されていた、と。
更に既に魔獣はグレイズ達によって倒されたことも付け加えておく。
「人間というのは生体とあると同時に情報の総合体でもあるのね。
先天的特長、学習による記憶。そこから生まれる感情。
それらの情報分子の配列を統合したのが個としての人格なのよ。
まあこれ以上は難しい魔法理論になるから省くけど、あなた自身の身体を見て不思議に思うのも判るわ。
だって、自分の身体を他の目から見ることってないじゃない?
これって鏡で見るのとはまったく別次元の話なの。
それに対して、名前は情報として自我に刻まれているから、肉体が変わっていようとも何か思い当たるものがあるのよ。
古来から真の名を真名といい、召喚では欠かせない情報というのはここら辺からきているのかもねぇ。」
流れるように並べ立て、口からでまかせを補完していく。
エルザの抱く疑問を一つ一つ潰していくように。
「さ、難しい話はここら辺にして、始めましょ。
ロックは自分の身体を取り戻す。エルザは本来の身体に戻る。
誰を消すとか物騒な話じゃないわ。
ここで陣を広げるから、夜食漁りに来る人に邪魔されたくないし、みんな誰も入ってこないようにして頂戴。」
パンと手を合わせ、後ろに振り返ってフリージアやグレイズに指示を出す。
が、その目は笑っていなかった。
これは言葉通りの封鎖ではない。
むしろ逆。万が一にもエルザが逃げ出さないように封鎖するように、という意味なのだから。
「エリザとロックの承認。それに特殊な陣があれば私でも移植は可能なのよ〜。
さ、真ん中の椅子に座ってリラックスしてねえん。
ムガル、お願い〜。」
もう一度エルザのほうへ振り向いたアルナワーズの表情は元に戻っていた。
リリアーナの質問に答えつつ、エルザに椅子に座るように指示。
その間にも魔法の絨毯ムガルはひとりでに解けていき、魔方陣を形成し始めた。
そして数分後、出来上がった二つの魔法陣。
片方にはエルザの肉体、すなわちキキの生き人形が腰掛けていた。
>204
> 「エリザとロックの承認。それに特殊な陣があれば私でも移植は可能なのよ〜。
> さ、真ん中の椅子に座ってリラックスしてねえん。
> ムガル、お願い〜。」
「…ちょっと待ってよ。」
エルザはアルナワーズに言った。
「ねえ、あなたはさっきこう言ったわよね?」
>「あなた自身の身体を見て不思議に思うのも判るわ。
> だって、自分の身体を他の目から見ることってないじゃない?
> それに対して、名前は情報として自我に刻まれているから、肉体が変わっていようとも何か思い当たるものがあるのよ。」
「あなたの言っている事は確かに正しいわ、アルナワーズ。
私はエルザという名前を聞いた時に深い愛着を感じたし、
今見ている体に違和感のようなものを感じているわ。…でも、なぜあなたがそれを知っているの?」
エルザはゆっくりと屈みながら続けた。
「一歩譲って、私がその体を見た時の反応がおかしかったから、
私が体について違和感を感じた、とあなたが判断したと仮定しましょう。
でも、名前に愛着を感じたことを何故あなたが知っているの?
私はエルザという名前については何も言及していないわよ?
もし私がエルザという名前を聞いた時の反応がおかしかったというなら、
それは体を見た時の反応と変わらないんじゃない?」
エルザは自分のスカートをめくると、下着に挟んでいた杖を取り出した。
ロックの部屋で目覚めた時、白いフクロウがエルザに渡した杖だ。
「アルナワーズ、まさかあなた…」
エルザはアルナワーズに近づいて言った。
「…私の心の中を覗いたわね?」
この瞬間、アルナワーズの勝利が確定した。
「もう、人の心を勝手に覗かないでよね。」
エルザは今度はリリアーナに近づき杖を差し出した。
「私とロックが分離したら、この杖を彼に渡してあげて。
きっと、この杖は彼の大切な物だと思うから。」
エルザはここまできて、やっと安堵の表情を浮かべた。
「それじゃ、アルナワーズ。あなたに任せるわ。
ロックの承認は…とらなくてもいいんじゃない?
どうせ彼だって元に戻りたいはずよ?」
エルザはそう言って椅子に腰掛けた。
>206
>「アルナワーズ、まさかあなた…」
エルザの言葉にアルナワーズの顔が引きつる。
だが、それが表に出ることはない。
なぜならばアルナワーズの顔には幻術が施してあり、微笑を湛えたままの表情が崩れることがないのだから。
頭の中で必死に嘘の整合性を整えていると、助けはエルザ自身からやってくる。
>「…私の心の中を覗いたわね?」
この一言で全ては決まった。
名前を知っているのは肉体を調べたからと言い繕えるが、その反応を知っていたことまではまとまってなかった。
今回都合よく通ったのはまさに紙一重。
ほんの一瞬の間からでも積み重ねた嘘は破綻する。
そして待っているのは嘘をつかなかったとき以上の被害だ。
だからこそアルナワーズは基本的に嘘はつかないのであるが・・・今回は急を要しているのだ。
心臓に悪い・・・そう思いつつ、エルザに謝罪した。
エルザは安堵の表情を浮かべ椅子に腰掛ける。
後は儀式を開始するのだが、その前に一つやっておくことがある。
「そういう訳にはいかないのよぉ〜。勝手に引きずり出せるだけの技量はないの。」
要するに、アルナワーズが実質的にできるのはロックの肉体からエルザの肉体に帰る道を開くこと。
そして、移動する補助をする程度なのだ。
戻ろうとするエルザの意思と、それを後ろから押してロック自身に収まろうとするロックの力がいるのだ。
有体て言えばトコロテン方式のようなものか?
しかしそれをするにはロックの自我があまりにも弱くなりすぎている。
「はい、出番よ〜。」
そういって呼び寄せるのは杖を受け取ったリリアーナ。
差し出されたメモ帳には次のように書かれていた。
【『ロック、帰って来て。あなたじゃないと駄目なの。お願い!帰ってきて!』
強く念じながら大きな声で呼びかけ、キスをする。】
「ロックの自我を引き起こす強烈なメッセージが必要なの〜。
エルザとロックに共通して関連の強い人物であること。
そして視覚・聴覚・嗅覚・味覚・触覚の五感を総動員して呼ぶのが効果的なのよねぇん。
いやなら私がやるけど、一応言っておくわね、ごちそうさま。」
そういいながらアルナワーズの姿が徐々に変っていく。
数秒後にはニタリと厭らしい笑みを浮かべ下で唇を湿らすリリアーナになっていた。
方法論としては真実なのだが、その台詞や接触方法が恣意的なのはアルナワーズの趣味である事は言うまでもない。
メラルは放課後になると、すぐさま森の奥の旧魔法実験室跡にある一室に来ていた。
彼女の友人の生徒が、学園にいた頃に術の訓練のために使っていた場所である事は
十分類推できたため、そこをこっそり使っていたのだ。
もちろん、人にはあまり明かしたくない術の訓練のために。
しかし…それは途中で聞こえてきた轟音により、中断される。
そう、金髪ロックの術による轟音によって。
メラルは、自らの周囲に漂わせていた藍色の霧を霧散させると、左目を手で押さえた。
「相変わらず、ここは事件が絶えないわね…。…エミューは今頃は寝ていて連絡は無理ね。…はぁ…。」
暫くして、左目が普通の紫色に戻ると訓練中に乱れた服を調えて部屋を出た。
先程聞こえた音と、魔力を元に騒動の現場を探そうとしたところ…
明らかに全方位攻撃の術によって木がなぎ倒されたとしか思えない場所があり、
その近くに…結界に守られている狐…コンコンがいた。
(…どういう事かしら?)
下手に魔力を調べたが故に…メラルは現場の状況を理解出来なくなった。
まず、結界の魔力。メラルは当然最初はコンコンの物と思ったが
実際は何故かリリアーナの物だった。
そして、現場の狐。この魔力は偽ロックのそれであった。
しかも、その狐の漂わせている雰囲気は…安堵でも怒りでもない。
そして、薙ぎ倒された木。これも偽ロック…コンコンの魔力と感じられるが
どこか違和感を感じる。何かを見落としているようなそんな違和感である。
メラルは近寄って、コンコンの目を見る。
その目は…何かに絶望したような…そんな風に見えた。
それを見て…メラルはコンコンに聞いた。
偽ロックに変身して会話をこなしていた事から、
話す事はできるだろうと確信して。
「ねぇ。…何があったのか、私に教えてくれないかしら?」
食堂での騒動の際に作った自棄食いする人形の影からキキは様子を見ていた。
何故そうしたのか?
今日、キキはこの場にて二回人形を作ってみせた。
見てたのかは知らないがそれを操り、ロックの前に姿を表したし、コンコンがいる前で作っても見せた。
仮に、現在のブランエンにその時の記憶があったとすれば、「エルザ」という肉体が実は人形だと気付かれるからだ。
故に、姿を見せずにこうして隠れている訳だが
「(人の失敗作に勝手に名前をつけるのはどうかと思うでおじゃる)」
>207
> 「ねぇ。…何があったのか、私に教えてくれないかしら?」
コンコンはゆっくりと頭を持ち上げてメラルを見た。
「…どうして?」
コンコンはそう短く答えた。これは、
なぜ僕がそんな事を言わなければいけないのか?と、
どうして君はそんな事を知りたいのか?という二つの意味があった。
はっきり言って、コンコンはメラルに対して何の執着も情もない。
コンコンがロックに化けていた時の、ギャラリーの一人でしかないのだ。
ゆえに、コンコンがメラルに協力する理由など全くないように思えた。
コンコンは頭を下げると、こんな事をつぶやき始めた。
「…スカラ・プレッシャー…圧力の魔法…方向性の無い圧力波を放つ…
…ヘクト・プレッシャー…圧力の魔法…方向性を持たせた圧力波を…
…ホクト・プレッシャー…圧力の魔法…内部………………
…シャイン・フ…………光の魔……ひ………」
だんだんつぶやきが小さくなり、そして黙りこんでしまった。
死んだわけではない。といっても、生きる気力の無い今のコンコンを、
生きていると表現できるかは微妙だ。
コンコンはこれからどう生きればいいのかわからなかった。
>204 >184
リリアーナはハラハラしながら、アルとエルザのやり取りを見守っていた。
そしてアルの説明が魔獣とロック、そしてエルザとの関連性に差し掛かる。
神妙な顔で聞いていたリリアーナだったが、次第に顔色が悪くなってきた。
「ねえグレイズ、まさかと思うけど、森の中で怪我してた狐さんってもしかして・・・・・・」
そこから先は言葉にならなかった。
>200
『フリージアフリージア、どうしようー!!私うっかりアルの話に出てきた魔獣治療しちゃったよー!!
こ、こ、これってやっぱり滅茶苦茶まずいわよね っ?!どどどどうしようっ!』
リリアーナは引きつった笑顔を顔に貼り付けながらフリージアにテレパシーを送った。
>199
>ここで陣を広げるから、夜食漁りに来る人に邪魔されたくないし、みんな誰も入ってこないようにして頂戴。」
アルに命じられて外部からの侵入者に備えてはいるが、(リリアーナはアルの頼みを額面どおり受け取った)
いかんせん動揺しまくっている心理状態では、すぐ側に潜んでいるレイドに気づける筈も無い。
それどころかリリアーナは、森の中に居るはずのレイドに一方的なテレパシーを送りつけている。
『あーあーレイド先生、聞こえますか聞こえますかー。こちらリリアーナです。大問題発生です。
アルの情報では、さっき私が治療した狐、あれは今回のトラブルの原因だったそうです。
もしまだ森の中なら、狐の様子を見てきてくださいどうぞー』
>205
エルザはおもむろに自分のスカートをめくった。
「きゃー!!グレイズ見ちゃダメ――――!!」
反射的にグレイズの前に飛び出したリリアーナは、手をバタバタさせて視界を遮った。
当のエルザは全く頓着した様子も無く、リリアーナに近づき杖を差し出した。
>「私とロックが分離したら、この杖を彼に渡してあげて。
> きっと、この杖は彼の大切な物だと思うから。」
「私が預かってもいいの?アルじゃなくて?」
リリアーナは戸惑った顔で、杖とエルザの顔を交互に眺めた。
エルザにとってリリアーナの印象は、お世辞にも良かったとはいえないはずなのに。
「・・・・・・わかった。必ず渡す。約束する」
信頼してくれてありがと、とリリアーナも嬉しそうに笑った。
>206
エルザが魔方陣の中に置かれた椅子に座った。
あとは儀式をするだけ!と思っていたのだが、ちょっと考えが甘かったようだ。
>「そういう訳にはいかないのよぉ〜。勝手に引きずり出せるだけの技量はないの。」
「えっ?!じゃあどうするのよ〜!!」
思わず食って掛かったリリアーナを、アルは手招きした。
>「はい、出番よ〜。」
アルはリリアーナを手招きすると、満面の笑みを称えながら一枚のメモを握らせた。
「え?なによこれ・・・・・メモ?えーとなになに・・・・・
【ロックかえってきて、あなたじゃないとだめなの。おねがいかえってきて
つよくねんじながらおおきなこえでよびかけ、キっ・・・・・?!!】」
リリアーナはぽんっと頭から湯気が出そうなくらい赤くなった。
手からひらひらとメモが落ちる。
「あ、あ、あ、アルっ!!何よこれ、この期に及んで何の嫌がらせなのよ――――っ!!!」
>「ロックの自我を引き起こす強烈なメッセージが必要なの〜。
>エルザとロックに共通して関連の強い人物であること。
>そして視覚・聴覚・嗅覚・味覚・触覚の五感を総動員して呼ぶのが効果的なのよねぇん。
アルは涼しい顔をしてそう言い放った。
アルの言っている事は分かる。儀式の成功率を上げるためなら何だってする覚悟はある。だが。
「な、なんでキ・・・なのよっ?!本当にこれ必要なのっ?!単なる趣味とか言うんじゃないでしょうね?」
リリアーナは赤くなったり青くなったりしている。
どうもラルヴァのとき以上に心理的抵抗があるようだ。
>いやなら私がやるけど、一応言っておくわね、ごちそうさま。」
「―――― だっ!ダメっ!」
しまった!と口を押さえるが、時既に遅し。
「・・・・・あーもう分かったわよ!やればいいんでしょっ、やればっ!!」
『また嵌められたームキー!!』と髪をくしゃくしゃにしつつ、リリアーナはどうにか心の整理をつけたようだ。
「でもまた幻灯機とかで録画してたら、絶交だからね」
すれ違いざまにそう釘をさす。
リリアーナは魔方陣の中に入ると、エルザの前に立った。
「女の子相手じゃ抵抗あるだろうけど、身体に戻るための試練だと思って我慢してね」
リリアーナは跪くと、エルザの手を握り額に押し当てた。
目を閉じ、ロックの姿を脳裏に思い浮かべる。
「『ロック、帰って来て。あなたじゃないと駄目なの。新しい友達のためにも、お願い、帰ってきて!』」
言われたとおり大声で叫んだリリアーナは、伸び上がってエルザの頬に手を添えた。
「・・・・・・・・・・・・。ごめんエルザ。目、閉じてもらってもいいかな?」
>210
>『フリージアフリージア、どうしようー!!私うっかりアルの話に出てきた魔獣治療しちゃったよー!!
こ、こ、これってやっぱり滅茶苦茶まずいわよね っ?!どどどどうしようっ!』
「・・・・・!?」
リリアーナの言葉を聴いたフリージアの顔はただでさえ青白いのにさらに青くなる
「・・・・どうしましょ」
「ドウシタノ オカアサン」
とギズモは心配そうにフリージアの顔を覗き込んだ
「いえ・・・なんでもないですわ」
ほんと・・・どうしようか?
フリージアは頭を抱えたい気分になった
>204
>「さ、難しい話はここら辺にして、始めましょ。
ロックは自分の身体を取り戻す。エルザは本来の身体に戻る。
誰を消すとか物騒な話じゃないわ。
ここで陣を広げるから、夜食漁りに来る人に邪魔されたくないし、みんな誰も入ってこないようにして頂戴。」
「 わかりましたわ!!」
とりあえずこうしていてもなんともならないと思ったフリージアは
早速、扉や窓を凍らしていく
いわば氷のバリケードだ
「オワッタアト ドウスルノ?」
あまりにも分厚い氷のバリケードにギズモは不安そうだ
「大丈夫、心配しなくても後で解除は出来ますわ」
自分の生み出した氷なのだから自分で消すことは出来る
そのはずである・・・・たぶん
「あとは無事に術が成功するのを祈るだけですわ」
「ダレニ?」
この世界に神様はたくさんいる
これはフリージアにとっても常識であった
だからギズモはどの神様に祈るかフリージアに問いかけたのである
「・・・・・サイコロの神さまにでも祈ろうかしら?」
なんでそこでサイコロの神様なのかは・・・・謎だ
「ファンブールさま・・・・」
しかも名前がすごく不吉だ
どうやら、騒動のおかげで(?)キサラは誰にも存在を気付かれていないようだ
あのアルワナーズですら、気づいていない・・・ように見える
彼女のことだから、油断はならないが
>>206>>210>>211 ―――とまあ、リリアーナさんが色々騒いでいる
またどうせアルワナーズさんに虐められているんだろうけど・・・
緊迫した空気はいまだ変わらないが、ここに隠れていても仕方ないので、キサラはゆっくりと中に入る
リリアーナ達は気付く余裕もないだろうが、他のメンバーはキサラの存在に気付くはずだ
銃もしまい、ゆっくりと中に入っていくキサラ
リリアーナが落とした紙が、彼の靴の下にあることに気付くのも、またそれがどんな内容なのかも、気づくのはまた後の話である
>211
半ば自棄になりながら了承するリリアーナの言葉を受けて、アルナワーズは元の姿に戻った。
実際に自分でするつもりなど毛頭なかったのだ。
アルナワーズがその役をすると、儀式をする人間がいなくなってしまうのだから当然である。
だが、こうすれば否が応でもリリアーナが自分でやると言い出すのはわかっていた。
すれ違いざまに釘を刺されてアルナワーズは苦笑いを浮かべる。
密かに幻灯機で録画して白百合騎士団に流出させようと思っていたのだが、その計画を白紙に戻した。
片方の魔方陣にエルザとリリアーナが入り、頬に手を添えている。
女同士とはいえ、なんとも言えない光景である。
そんな二人をニヤニヤとしながら咳払いを一つ。
「えーと、リリィ?口実ができて嬉しいのはわかるけど、そんなにがっつかないで。
ロックとのお楽しみタイムは儀式が佳境に入ってからでいいのよぉん。」
まさに思う壺。
意を決した勢いで済ませてしまわせるなどさせるわけはない。
それどころか、二度おいしいわなだったのだ。
「それじゃあ、詠唱に少し時間がかかるから、合図をしたらお願いねぇん。」
リリアーナの反応をたっぷり楽しんだ後、ようやく呪文の詠唱を始めた。
歌い踊るような詠唱を始めて十数分。
魔方陣全体が光を帯び、エルザとキキの人形が光の糸で繋がり始める。
「リリィ!」
最後の呪文をつむいだ後、リリアーナに合図を送る。
これでロックの意識が活性化すれば、儀式は成功するだろう。
>179>194
レイド先生から送られてくるテレパシー。
どうなったかといえば大分混線していた。
頭の中に送られたイメージみたいなものを、曖昧にぼやけたそれをルーは必死でつかもうとしていた。
そして、ようやく見えたのは美味しそうなご飯、ご飯!
「!?」
喜色満面でルーはレイド先生に抱きついた。
傍から見るといろいろとアレである。
そんな体勢のまま異空の扉を超えて食堂へ・・・
レイド先生の首に抱きついている為、食堂の扉の影に引っ張り込まれたルーは
きょろきょろと周りを見渡して食料を探している!
>「…どうして?」
「別に、強要するつもりはないわ。嫌なら…それで構わない。
簡単に話せる事じゃないのはわかっているつもりだから。」
コンコンの当然の問いに対して…メラルは一度周囲を見回してから答える。
ただ呟きに関しては、何ら興味を示していなかったようにすら見えた。
そこに反応しすぎては、コンコンにただの能力目当てに寄ってきた人間と見られると判断したのだ。
最も、その呟きがメラルに"やはりこの破壊はコンコンが原因だ"と確信させるのだが。
そして、話を続けた。
「…勘違いならごめんなさい。でも…私には、今のあなたは何かに絶望して、
死にたがっているように見えるの。…私には…見なかった事には出来ないのよ。
私も死にたがっていた時、周りの人間に救われた事があるから…。」
言った後で、メラルが少し視線を落とした。やはり今でも…過去の
"最初の"暴走事件前後の事についてはあまり思い出したくないようだ。
>216
>「…勘違いならごめんなさい。でも…私には、今のあなたは何かに絶望して、
> 死にたがっているように見えるの。…私には…見なかった事には出来ないのよ。
> 私も死にたがっていた時、周りの人間に救われた事があるから…。」
「君が今生きているのは、死にたいと思った理由が解決したからだよ。
そして、僕にはそれが解決できなかった。
それが全てだよ。その上、僕は死ぬこともままならないらしい。
僕なんか生まれてこなければよかったのに。」
さて、こっからどう動くかが問題だ…。
このまま此処に隠れていたら見付かるのは時間の問題かもしれん。
しかし今の状態で移動をするのは非常に困難を極める…。
>215何より幸いなのはこの少女が全く騒がない事だ。
今騒がれたら一発で終わる、全てが。
一瞬で俺が怪しい先生に認定されてしまう。
少女はキョロキョロと何かを探しているみたいだが、多分食料だろ。
分かりやすくて非常に助かる。
「もうちょい待ってくれよ、な?後で美味いもん食わしてやるからさ。」
通じないだろうが、小声で少女に話かける。
>210移動しようかこの場で待機しようか悩んでいるとリリアーナからテレパシーが入る。
>『あーあーレイド先生、聞こえますか聞こえますかー。こちらリリアーナです。大問題発生です。(中略)
もしまだ森の中なら、狐の様子を見てきてくださいどうぞー。』
しかもテレパシーを受けてる最中にリリアーナは俺のすぐ近くにまで来た。
(気付くなよ〜!頼むから気付かないでくれー!)
………良かった…助かった。
ったく…なんでこんなにドキドキせにゃならんのだ…。
失敗したな…どうせなら森の中に居れば良かった…。
……ん?そうだ!俺にはテレポートがあるじゃないか!
テレポートなら全然問題無く移動出来る。
よーしそうと決まれば早速……。
いや、その前に一旦部屋に何か食い物を取りに行くか。
「え〜と確かこの変にお菓子があった筈だが…あった。」
自室にこんな幼い女の子を連れて来たのは今日が初めてだ…。
一歩間違えたら犯罪だな。
「ほら、とりあえずこれでも食って我慢してくれ。」
少女に板チョコを渡し、また抱き抱える。
「それじゃあ森に行きますぜ。」
「え〜と…確かこの辺だったよな……ん?あれは……メラル?」
狐の傍にメラルらしき後ろ姿発見。
近付いてみる。
どうやら正解みたいだ。
「お前も来てたの?…あ、この娘は違うからな。決して俺の娘とかじゃないから。
この娘はアレだよ…アレ。金の卵。
今はまだ勧誘中なんだが、学園に入学させる予定。」
そこまで言って狐に目線を移す。
「おい、狐。お前が今回のトラブルの犯人だって話が出てるんだが、そこんとこどうよ?
正直に答えてくれると助かるね。」
覚悟を決めていざ!と唇を寄せた時、わざとらしい咳払いが聞こえてきた。
>「えーと、リリィ?口実ができて嬉しいのはわかるけど、そんなにがっつかないで。
>ロックとのお楽しみタイムは儀式が佳境に入ってからでいいのよぉん。」
硬直していたリリアーナの顔が、見る見るうちに真っ赤になった。
「そ、そういう事は先に言いなさいよ ―――― っ!!!!
それにがっつくって何よっ?!これはあくまで治療目的なんだからねっ!!」
キーっ!!と拳を振りまわして抗議しているが、いかんせん顔が真っ赤なので迫力は今ひとつだ。
>「それじゃあ、詠唱に少し時間がかかるから、合図をしたらお願いねぇん。」
リリアーナはぶーっと拗ねた顔もままで手を上げる。
だがアルが向こうを向いた途端、思いっきり舌を出していた。
アルが呪文を詠唱している間、リリアーナはなんともばつの悪い思いで『出番』を待っていた。
(えーと・・・・・何か言ってリラックスさせてあげた方がいいのかなっ?!)
そんなことを考えていると、ぱちっと目が合ってしまった。
「あ、あのねっ!・・・・・あの・・・えーと・・・・・さ、さっきエルザの胸確認しちゃってごめんね。
けど私、別に変な趣味は無いから!!
アルは口実とか何とか言ってたけど、間に受けないでねっ!!」
言ってから「しまった!」と思ったが、もう後の祭りである。
>「リリィ!」
エルザの手を握りしめ、リリアーナはもう一度例の台詞を叫んだ。
そして意を決すると、椅子に腰掛けているエルザの上にかがみこむ。
「・・・・・・アル、これで良かったの?」
>219
>「おい、狐。お前が今回のトラブルの犯人だって話が出てるんだが、そこんとこどうよ?
>正直に答えてくれると助かるね。」
「…それが全てだよ。」
コンコンは力無く繰り返した。
>220
さて、こちらは食堂。リリアーナはエルザに話しかけていた。
> 「あ、あのねっ!・・・・・あの・・・えーと・・・・・さ、さっきエルザの胸確認しちゃってごめんね。
> けど私、別に変な趣味は無いから!!
> アルは口実とか何とか言ってたけど、間に受けないでねっ!!」
「ええ…」
エルザもばつが悪そうな顔をしている。
「よく考えたら、あなたがキスをするのはロックの体でも、心は私なのよね…」
>「リリィ!」
> エルザの手を握りしめ、リリアーナはもう一度例の台詞を叫んだ。
>「ロックかえってきて、あなたじゃないとだめなの。おねがいかえってきて !」
エルザも意を決して目をつぶり、リリアーナに体をゆだねた。
…しかし、何も起こらない。不審に思ったエルザは恐る恐る目を開けた。
そして気づいた、リリアーナが自分の横の椅子に座る少女にキスをしている事を、
さらに、その少女が自分の体(正確にはロックの体)であることを。
では、今自分の体を見ている私は誰なんだろうか?
> 「・・・・・・アル、これで良かったの?」
「…うまくいったんじゃない?」
アルナワーズに代わり、キキの人形がそう答えた。
「ねぇ、うまくいったんでしょう?」
エルザは喜びを隠しきれなかった。
少なくとも、エルザの心はうまく移動できたようだったからだ。
では、ロックの方はどうなのだろうか?
エルザは、元の自分の体を見た。その時だ。
パァーーン!!
「いやぁあああ!!」
エルザは悲鳴をあげた。ロックの体が破裂音と共に破裂して、
細かい血しぶきとなって辺りに飛散したからだ。
ロックの体から比較的近い位置にいたエルザとアルナワーズは、
その血しぶきで服が真っ赤になってしまった。
しかし、もっと最悪なのはロックの至近距離にいたリリアーナだ。
「どうしょう!?どうして!?そんな…」
エルザは激しく狼狽したが、心配には及ばなかった。
辺りに飛散した血しぶき…それがまるで時間を巻き戻したかのように、
ロックが座っていた場所に集まりだしたのだ。
服にべったりとついていた血も、まるでそんなことなど最初から無かったように、
綺麗にはがれて椅子の方へ飛んで行った。
そうして集まった血はある形をつくり始めた。
それは紛れもなく人の形…ロックの形だった。
真っ赤な血が、髪に、皮膚に、肌に、目に、そして服に変わっていく。
たった今、ロックが帰って来たのだ。ロックは不思議そうな顔で周りを見ている。
「…ロック?」
エルザは恐る恐る彼に声をかけた。
「なんか、感じが変わった?」
エルザは同意を求めるようにリリアーナに聞いた。
というのも、今のロックは今までのロックと何か違うような気がしたからだ。
さらに、ロックの第一声は、ロックらしからぬ素っ頓狂なものだった。
>「ふぃ〜、お互いに元に戻れて良かったのだ。おめでとうなのだ、エルザ。」
名前・ロック・ウィル
性別・男
年齢・16歳
髪型・ショートヘア。基本的に茶色の毛髪をしているが、
毛の先端に向かってだんだん黒色に変わる。
瞳色・水晶風の青、左目は義眼。
容姿・赤い学ランを着用。白く長い布を鉢巻のように額に巻いている。
備考・学園の男子生徒の一人。第四部における壮絶な体験(?)により、心身共に変化した。
得意技・物理的な魔法。
好きな食べ物・レモンパイ。
好きな偉人・エイティ先生…え?偉人じゃない?
好きな生物・かわいい生物全般。ただし、ロックの視点なので注意。
嫌いな食べ物・生の肉。焼いてほしいのだ…
嫌いな金属・レアメタル等、魔力を帯びた金属全般。
保険に入りますか?・当然入っている。決まりなのだ!
【備考】
アウル…ロックのペットふくろう。雪のように白い体が特徴。どういうわけかベジタリアン。
アンジェリーナ…学園の教師の一人。初等部以下の魔法薬学が担当なので、
二等過程以上の生徒とはほとんど面識がない。ロックの親戚でもある。
フォルティシモ…ロックの所有していた箒。第二部において闇の魔法使いマリアベルに破壊された。
>222
>パァーーン!!
グレイズは破裂音で体をビクリと震わせ、目を瞑って首を左右に振った。
…実の事を言うと、先程までずっと眠気に襲われていたのである。大体リリアーナを下ろしたあたりから。
ブランエン→エルザとかアルナワーズがまた何かやったとか、薄ぼんやりと話は分かっているが。
>「いやぁあああ!!」
「(…悲鳴……?)」
悲鳴という非常事態を知らせる鐘を聞いて、再び目を開ける。
そこは、血塗れの部屋だった。
視線を自分の服と、血塗れの椅子と、部屋に当てる。
「………がうぐがっるる?(何があったの?)」
【えーと…ろ、ロック?エルザ?の体が…。】
【……弾け飛んだ……。】
「…が、があぐるがうっる…。(じゃ、じゃあこれって…。)」
【…………ロックの、血だ。】
「……があああぁぁぁ!!(うわああぁぁぁ!!)」
一呼吸置いて、思い切り叫ぶグレイズ。
知り合いが目の前で血飛沫になったらどうするだろうか。
大概の人は混乱、いや、狂乱する。しない方が無理というものだろう。
だが、心配には及ばなかった。
>それがまるで時間を巻き戻したかのように、 ロックが座っていた場所に集まりだしたのだ。
更にその血がロックに変わっていく。なんとも奇妙な光景だ。
そして全員か定かではないが、その奇妙な光景を唖然と見ている。
>「…ロック?」
>エルザは恐る恐る彼に声をかけた。
>「なんか、感じが変わった?」
>「ふぃ〜、お互いに元に戻れて良かったのだ。おめでとうなのだ、エルザ。」
……沈黙が周囲を包んだ。
そして、グレイズが手袋を着けていない方の手で指差し一声。
「がるがああああぁぁぁぁ!!?(誰だああああぁぁぁぁ!!?)」
…まあ、伝わらないだろうけど。
>213>220>222
二つの魔方陣の光が最高潮に達し、やがて消えていく。
静まった食堂内にリリアーナの不安そうな声が。
その言葉にアルナワーズが答えるより先に、そしてアルナワーズの言葉より説得力のある答えがエルザによってもたらされる。
>「…うまくいったんじゃない?」
その言葉にアルナワーズは大きく息をつき、安堵の表情を浮かべた。
「あらぁん、キサラ、いつの間に?ちょうどいいわ、肩を貸してちょうだい?」
今まで時間に追われ、儀式に集中していてまったく気づかなかったが、ここきにて漸くキサラの存在に気づいた。
汗で首筋に黒髪を張り付かせたまま振り向き、キサラに声をかけた瞬間にそれは起こった。
破裂音と飛び散る血飛沫。そしてエルザの悲鳴。
全身を紅く染めながらアルナワーズは声も出さず目を見開きその様子を見ていた。
服に染み込んだ血すら戻り、ロックを形成していくその過程を。
その様子を見ながら仮説を立てていく。
これはまるで蛹化のようだと。
昆虫は幼虫時の細胞を酵素により分解し、脳神経臓器を除いてドロドロのコロイド状態になる。
蛹の中で、神経系、筋肉、内臓の細胞が分裂増殖し、成虫の姿に完全変態する。
これは実に興味深い状況なのだ。
アルナワーズ自身は肉体構造より、精神構造の方に興味があるので調べてみようとは思わない。
が、そちら系統に興味がある人間が見れば解剖してでも調べたくなる光景なのだ。
などと思いつつ、殆どロックになったところでエルザに向きかえる。
「お互い無事元に戻ってよかったわぁん。
エルザ、あなたがどれだけ肉体を離れていたか知りようもないけど、調子はどう?
馴染むまで時間がかかる程度なら問題ないけれど、ね。」
そういいながらふらつき、キサラに寄りかかる。
そして微笑みながら、これからについてはレイド先生が全てやってくれる。と付け加えた。
「ええ、そのくらい当然のようにやってくれるはずよぉん。」
という最後の締めくくりの台詞のときに、キサラだけは感じただろう。
表情や声のトーンは変わらなくとも、かけられた手にアルナワーズにしては凄まじい力が加えられていたことに。
「リリィ、ムガルをお願い。その子一度完全に解けると自力では戻れないの。
もちろん、頼めるわよねぇん?」
にっこり笑いかけながらリリアーナに頼むのだが、その瞳の奥はまったく笑っていなかった。
アルナワーズは反省したいたのだ。
面白楽しくする為に首を突っ込んだのだが、いつの間にかつまらなくしない様にする為に動いていた。
その結果、活動限界時間を過ぎてしまっている。
深いため息をつきながら寄りかかるキサラはいつの間にか女になっていた。
いや、正確には服装だけ女物になっていただけなのだが。
自分で歩くのが面倒くさいが絨毯は糸になっている。
誰かに連れて行ってもらいたいのだが・・・
キキは自分以上に体が弱そう。
リリアーナはロックとエルザの相手。
フリージアは加減ができなさそうなので弱っている時は避けたいところ。
グレイズは獣人状態で全身に幻術をかける余裕はない。
結果、消去法でキサラを女装させて女子寮まで運ばせることにしたのだ。
戻ろうと一歩踏み出した瞬間、素っ頓狂な声で場の空気が固まった。
>「ふぃ〜、お互いに元に戻れて良かったのだ。おめでとうなのだ、エルザ。」
え・・・えええええええ????
アルナワーズは心の中で叫び声をあげるのだった。
「そういえばギズモちゃん?」
と何かを思い出したかのごとくギズモに問いかけるフリージア
「ナアニ オカアサン?」
不思議そうな顔でフリージアを見上げるギズモ
「光の弾はどうなったのかしら?」
フリージアはいつの間にか自分の元に戻っていたギズモに一番聞きたかったことをたずねた
「ダンシリョウノ ヒトタチニ キイテミタケド・・・・ダレモシラナイッテ」
男に話しかけるなんて真っ平なギズモ、それでも頑張って情報を収集してきたのだが・・・どうやら駄目だったようだ
「そう・・・じゃ仕方が無いわね」
フリージアにとっては今はそんなことよりもロックが元に戻るかどうかそれが重要であった
>220>222>224>225
そしてリリアーナはロックに口付けをする
>「・・・・・・アル、これで良かったの?」
>「…うまくいったんじゃない?」
>「あらぁん、キサラ、いつの間に?ちょうどいいわ、肩を貸してちょうだい?」
>「ねぇ、うまくいったんでしょう?」
「うまくいきましたのよね?
「セイコウ?」
とロックの体に顔を近づけたその時である
パァーーン!!
>「いやぁあああ!!」
「なんですのぉぉぉぉぉ!?」
「ナンジャコリャァ!?」
まさに阿鼻叫喚スプラッター劇場であった
ロックの体が弾けて血が飛び散ったのである
そしてその飛び散った血は一箇所に集まりロックの形を成していった
一時はどうなることかと思われたのだが・・・どうやらロックは元に戻ったようだ
少なくとも見た目は・・・・・・
見た目と言えばキサラちゃんが女の子の格好をしているのはわたくしの気のせいかしら?
「キサラサンハ オトコ キサラサンハ オトコ キサラサンハ オトコ・・・・」
頭の上ではギズモが理性と戦っていた
>「ふぃ〜、お互いに元に戻れて良かったのだ。おめでとうなのだ、エルザ。」
「・・・・・・何だかいつもと口調が違うような気がしますわね」
「ウン、ナンダカチガウネ」
>「がるがああああぁぁぁぁ!!?(誰だああああぁぁぁぁ!!?)」
>「君が今生きているのは、死にたいと思った理由が解決したからだよ。
そして、僕にはそれが解決できなかった。
それが全てだよ。その上、僕は死ぬこともままならないらしい。
僕なんか生まれてこなければよかったのに。」
(確かに、私が生きているのは解決した…いえ、解決しつつあるから。
でも…それはけして独力で解決した訳じゃない。だから、今度は…)
メラルが、コンコンの言葉に対し、何か言いかけて…止める。
二人の近くに、気になる魔力が唐突に出現したからだ。
最も、魔力の主が誰かはすぐにわかったため、わざわざ振り向く事はしなかったが。
少し待っていると、レイド先生が声をかけてくる。
>「お前も来てたの?…あ、この娘は違うからな。決して俺の娘とかじゃないから。
この娘はアレだよ…アレ。金の卵。
今はまだ勧誘中なんだが、学園に入学させる予定。」
その後で、コンコンと話を始めたようだ。
>「おい、狐。お前が今回のトラブルの犯人だって話が出てるんだが、そこんとこどうよ?
正直に答えてくれると助かるね。」
>「…それが全てだよ。」
(最悪の事態かとも思ったけど…これはむしろ好都合かもしれないわね。
あの子には少々かわいそうな気もするけど…。)
事態が更に面倒になり、問題の"解決"にはレイド先生を抑える必要もでてきた…が、
そこには"解決の糸口"もあった。メラルはレイド先生の方に視線をやってから言った。
「やっぱり…"この学園"の対応は慈悲深いですよね。マリアベルの一件はともかくとしても、
配慮の余地のある相手であれば一歩間違えれば大事になったような行動も不問とする。」
そして、メラルが続ける。
「この破壊の跡にはそこにいる狐の魔力に近い魔力が残っているみたいです。
でも…どこか、変なんです。この子にしても、これだけの事が出来るなら
あれくらいの結界なら自力で抜け出せるはずなのに、私が来るまで
大人しくしていたみたいですし…それに、何があったかを聞くことはできませんしたが、
どこか投げやりです。と言うより…死を望んですらいます。」
(これで多少は…レイド先生も下手な動きが取りにくくなるはずね。後は…)
そして、少しの沈黙の後で続ける。振り返って、コンコンを見て。
「この学園には…陳腐な言い方に聞こえるかもしれないけど…
"いい人"が多くてね。私の問題が解決した一因は…間違いなく"この学園"なの。
それに…元々敵対的な行動を取っていた人が今は学園にいる…
そういう例だって少なからずあるわ。
あなたの問題も…今までは解決しなかったかもしれない。でも…最後に
"この学園"での解決に賭けてみるのも悪くないんじゃないかしら?
死を望むような状態なら…今さら恐れるものはない…そうでしょう?」
>227
「うん、言いたい事はよくわかったよ。」
コンコンは頭を上げて、メラルを見た。
「たしか…メラルといったね?たしかにそうだ。
どうせ死ぬつもりなら、どうなったって構わない筈なんだ。
騙されたと思って色々見てみるのもいいかもね。でも…」
コンコンはまた頭を下ろした。
「今は僕にかまわないで…何だかとても眠いんだ。」
コンコンはそう言った後、すやすやと小さな寝息を立て始めた。
>222 >224-226
「…うまくいったんじゃない?」
リリアーナの問いに答えたのは、なんと隣の椅子に腰掛けていた少女だった。
エルザは元の体に戻れたらしい。ではロックは?
外見はまったく変化が無い。
リリアーナはぐったりと自分にもたれている少女を軽く揺すった。
「ロック、私の声が聞こえる?ロッ・・・・・」
破裂音と生暖かい液体。そしてエルザや仲間達の悲鳴。
目の前で起こったことが信じられなかった。否、信じたくない。
全身を真っ赤に染めたリリアーナは、血だまりの中放心して座り込んでいた。
口の中に広がる血の味と、赤くかすんだ視界。
なぜ?どうして?という言葉が頭の中でぐるぐる回っていた。
唐突に視界が晴れたのと、目の前の椅子に真っ赤な血の人型が現れたのはほぼ同時だった。
リリアーナは全身にかかった血飛沫が、きれいに消えているのにいまさらながら気づいた。
彼女はもう一度目の前の椅子を見た。
真っ赤な血塊が髪に、皮膚に、肌に、目に、そして服に変わっていく。
>「リリィ、ムガルをお願い。その子一度完全に解けると自力では戻れないの。
>もちろん、頼めるわよねぇん?」
リリアーナはこっくりと頷いたが、ちゃんと聞こえたのかは怪しい。
エルザが何か話し掛けてきた気がするが、まったく頭に入っていなかった。
「なんか、感じが変わった?」
リリアーナは唇をかみ締め、顔を伏せた。ぎゅっと膝の上でこぶしを握り締める。
>「ふぃ〜、お互いに元に戻れて良かったのだ。おめでとうなのだ、エルザ。」
「・・・・・・・・ロック!」
リリアーナは立ち上がり、ロックに手を伸ばした。
そして―――― 。
リリアーナの平手が思いきり振り下ろされた。
「ロック!これであんた、一生私達に頭が上がんないんだからねっ!!
―――― さあ、なぜこんなことになったのか、洗いざらい話してもらおうじゃないのっ!!」
激昂したリリアーナはぜいぜいと肩で息をしていたが、ふいにくしゃっと顔を歪めた。
「・・・・・・あ・・・あんまり心配させないでよ・・・・・・馬鹿・・・!!」
リリアーナはその場にへたり込むと、声をあげて泣きだした。
ではでは、参加をさせて頂きます。
名前・ソフィア・ベル
性別・ 男
年齢・ 17
髪型・ 黒くてやや長めで乱れがち
瞳色・深い黒
容姿・ひょろりとした印象を与える中背の優男
幼く、彫りが浅めな顔立ちは東洋人を思わせる。
得意技・詠唱の省略
好きな食べ物・白身の魚 甘味 茶
好きな生物・マンタ
嫌いな食べ物・貝類
【備考】
経歴と名を偽って入り込んだ東洋の某国の貴族の長子。
呪術、式神、魔術、魔術工芸に抜群の才を示したがそれと引き替える様に奇人の如くに振る舞い、危うく座敷牢にされるところで出奔。今にいたる。実は魔術工芸師としても有名である。
素直で、少し変なヒト。工芸品、生き方に対して強い美学をもっている。
>224>226
> 「・・・・・・何だかいつもと口調が違うような気がしますわね」
> 「ウン、ナンダカチガウネ」
> 「がるがああああぁぁぁぁ!!?(誰だああああぁぁぁぁ!!?)」
「ん?フリージア、いつから狼を飼うようになったのだ?」
>229
> 「ロック!これであんた、一生私達に頭が上がんないんだからねっ!!
> ―――― さあ、なぜこんなことになったのか、洗いざらい話してもらおうじゃないのっ!!」
「洗いざらい話すと言っても…
アルナワーズが言った以上の事は俺にもわからないのだ。」
ロックは困ったように、リリアーナに殴られた頬をさすった。
> 「・・・・・・あ・・・あんまり心配させないでよ・・・・・・馬鹿・・・!!」
> リリアーナはその場にへたり込むと、声をあげて泣きだした。
ロックはとことん困った顔をしたが、ほどなくして顔に笑みを浮かべた。
「心配かけてすまなかった。…感謝するのだ。」
ロックはそう言ってリリアーナを抱きしめた。
そのとたん、ロックはびくっとした。
なんとも言えない、殺気のようなものを感じたからだ。
振り向いたロックはその殺気の正体に気づいた。…エルザだ。
>「………」
「エルザ、そんな恐い顔してこっち見んな。」
エルザはリリアーナとロックを見比べた後、不快そうな顔をしてそっぽを向いた。
リリアーナとロックの、仲がいいことが気に食わないらしい。
>221俺の問いかけに狐はあっさりと答えた。
>「…それが全てだよ。」
予想外デ〜ス。こうもあっさり認めるとは思わなかった。
>227>「やっぱり…"この学園"の対応は慈悲深いですよね。(中略)
大事になったような行動も不問にする。」
>「この破壊の跡にはそこにいる狐の魔力に近い魔力が残っているみたいなんです。(中略)
と言うより…死を望んですらいます」
>228そして暫しの沈黙の後、メラルは狐を学園に勧誘し、狐もそれを了承したようだ。
「ふう、一件落着って事で良いかね?」
俺の方は全然落着じゃないけど…。
「狐は寝ちまったし、これからどうする?
俺はリリアーナに言われて狐の様子を見に来ただけだからよ。」
とりあえず今から食堂に戻るのだけはご免被りたい。
「狐も寝てる事だし、俺らもちょっと一休みするか?
あ、そうだ。メラル、この娘抱いてみるか?結構可愛いぞ、ほら。」
半ば強引にメラルに幼女を渡す。
「はははっ、なかなか絵になってるぞ?本物の姉妹みたいだ。
俺の娘にしたいくらいだぜ。
なんなら二人共俺の娘になるか?
……あ、いや、冗談だけどな…。」
ロックの変化には戸惑ったが、一件落着大団円を見て小さく息をつく。
その後、どこからか羊皮紙を取り出すと、念を込めて口付けをする。
「グレイズ〜。噂には聞いていたけど、実際に見るのは初めてねえ。
まあいいわ。
鼻が利くならレイド先生にこれを渡して。お願い。」
グレイズに有無を言わさず押し付けると、キサラの方に捕まりながらよろよろと歩いていく。
渡した羊皮紙にはキスマークがついているだけで、まったくの白紙だった。
「さ、キサラ。部屋までエスコートお願いねぇん。」
これまた有無を言わさぬ口調で。
これ以上この場にいるのはアルナワーズにとって無理なのだから。
アルナワーズは規則正しい生活習慣を送っている。
22時に寝て、5時におきるのだ。
しかし現在既に21時に指しかかろうとしている。
いつもならばゆったりとお風呂を楽しんで、髪を乾かしている頃だ。
そう、この時間帯にこうやって外に出て活動していることは本来ありえないのだ。
消耗以上にヘロヘロなのは、身についた体内時計に逆らっているからなのだった。
キサラは女装させられたまま女子寮アルナワーズの自室まで運ばされた挙句、放り出される運命になるのは言うまでもない。
######################################
グレイズに託されたキスマークだけの羊皮紙。
これは、レイドの魔力に反応して発動するアルナワーズの報告書だった。
レイドが受け取れば、【丸秘報告書。必ず一人で見てください。】
という前置きと共に、ミニアルナワーズの幻影が羊皮紙に現れるだろう。
そして今回の事件の顛末。
その為についた嘘が、パンチの効いた嫌味と共に再生されることになる。
最後にロックの変貌についての報告と、エルザの処遇の学園長への報告。
それに伴う手続き、根回し、口裏あわせ、などなど。
「 も ち ろ ん ! お願いできますわよね?」
と念を押して、お約束どおり羊皮紙は小さな爆発を起こすことになるのであった。
食堂。さっきから、うるさくて堪らない。
込み入った話があるならば人目は避けるべき。情事に及ぶにも人目は避けるべき。と思う俺は古い人間なんだろうか?
それとも彼らは観られて興奮するタイプ?
なら煽ってやるべきか?
いいぞ、もっとやれー!とか。
…………肉塊がまた破裂しそうだ。入ってきた瞬間にあれで食欲を削がれた身としてはもう、ご勘弁願いたい。
あと、ホントによそに行ってほしい。
今、感動の再会か何かをやっている様だが、ここはガツンと言うべきか?
………あのぅ、食堂からお出になられては………?
あぁ、どこら辺がガツンなのかオレも訊きたいね、この根性無しめ。
いざ行かん、毅然とした態度で!
私と彼の愛を確かめる行動の邪魔をしないで! バキ!!
なんてことにはならないよね?………多分、恐らく、希望的観測にのっとると。
ぱんぱん
注意を向けたいから、柏手。
自分のやり方を守れば相手には呑まれないだろう。という観点からに過ぎないけど。
「他の場所でやるのはだめなのか?」
今後この方々とつるむ事が有るならば、多分恐らく最悪の第一印象を与えたろう。
今更ながら一期一会なんてのが思い浮かぶ。
一回毎の出会いは大切に。きっと社会を巧く生きるコツ。
もっと早く思い出せよ、オレ。
>>225 「あらぁん、キサラ、いつの間に?ちょうどいいわ、肩を貸してちょうだい?」
今まで儀式に集中していたからか、自分の存在に気づいていなかったらしい
アルワナーズさんにしては、ちょっと意外だった
「・・・個人的にはものすごくお断りしたいんですけど
・・・そうもいってられなさそうな状況ですから・・・」
(・・・というか、有無を言わせなさそうだし・・・この人・・・)
と、その時
大きな破裂音とともにロックの体がはじけ飛んだ
「アルワナーズさん・・・これって・・・大丈夫なんですか?」
周囲で大騒ぎするフリージア達に比べれば、キサラは比較的落ち着いていた
アルワナーズを信頼している・・・というよりは、アルワナーズの表情を見てのことだろう
>「お互い無事元に戻ってよかったわぁん。
エルザ、あなたがどれだけ肉体を離れていたか知りようもないけど、調子はどう?
馴染むまで時間がかかる程度なら問題ないけれど、ね。」
アルワナーズが自分に寄りかかってくる
毎度お馴染なのでキサラがどういう心境にあるのかは、もはやご想像にお任せしよう
>「ええ、そのくらい当然のようにやってくれるはずよぉん。」
どぎまぎしているキサラだが、一つの異変に気づく
口調や声のトーン、表情には一切出していないが、肩をつかむアルワナーズの腕には、凄まじい力が加えられていた
なお、この段階では自分が女装させられている事実に気づいていなかった
アルワナーズを心配しながら、食堂を出ようとした瞬間
>「ふぃ〜、お互いに元に戻れて良かったのだ。おめでとうなのだ、エルザ。」
え・・・えええええええ????
キサラとアルワナーズの心の声がシンクロしていた
>「さ、キサラ。部屋までエスコートお願いねぇん。」
結局(予想通り)有無を言わせない口調のアルワナーズ
「・・・いくつか・・・質問しますけど」
その女子寮への道の中、キサラはアルワナーズに問う
「・・・まず一つ目
・・・単刀直入に・・・大丈夫なんですか?アルワナーズさん」
彼にとって、アルワナーズがこのような姿になっているのは、想像がつかない姿であったからだ
「それから二つ目
・・・・・・その・・・なんですか・・・この・・・恰好」
さっき気付いたらしい
フリージアやリリアーナ達にこの恰好を見られていたとなると・・・
・・・・・・色々大変そうである
>234
> 「他の場所でやるのはだめなのか?」
「ん?誰だ?」
ロックはソフィアの方へ振り向いた。
「お前はこんな夜遅く食堂に何しに来たのだ?
それに食堂のドアには鍵がかかってたはずなのだ。
…なんだかお前はとても怪しいのだ。」
ロックは自分の事を棚にあげて、ソフィアを疑り深い目で眺めた。
>234 >236
ロックの身体が不意に強張った。リリアーナは伏せていた顔を上げた。
>「………」
>「エルザ、そんな恐い顔してこっち見んな。」
リリアーナはエルザと、フリージア、グレイズ、最後にロック見上げてカーッと赤くなった。
「こっ・・・・・これはっ・・・その・・・・・・べ、別に変な意味では・・・・・」
リリアーナはそそくさとロックから離れると、さして乱れてもいない髪を何度も直した。
「と、とにかく無事でよかったわ・・・・・・あっ!そうだ、ロックに預かっていたものがあるのよ」
リリアーナはポケットから杖を取り出そうとしたが、不機嫌そうなエルザを見て手が止まった。
ポケットとエルザを何度か見比べ、少し顔を曇らせる。
だが何かを振り切るように首を振った後、リリアーナはそっぽを向いたままのエルザに歩み寄った。
遠慮がちに彼女の腕をちょんちょんとつつく。
「ね、この杖、やっぱりエルザから渡してあげて」
リリアーナは何度かためらった後、ぎこちなく笑った。
ね?と、ロックから見えない位置で杖を渡そうとする。
「最悪の事態に備えて、私に頼んだんでしょう?急に儀式なんて言われてきっと怖かったよね。
エルザ、ロックを助けてくれてありがとう。あなたの勇気のおかげよ!本当にありがとう!!」
リリアーナはエルザに杖を握らせても手を離さず、握手とばかりに上下にぶんぶん振った。
「ねえロック、エルザから渡したいものがあるんだって!」
リリアーナはエルザの背を押して、ロックのほうへと押し出した。
「さーって、これで一件落着、かなっ?・・・・・あれ?ねえアルは?」
杖をじっと見ているエルザをそっとしておくことにしたリリアーナは、アルの姿を探した。
「さっきキサラが居たような気がしたんだけど、目の錯覚かしら?
・・・んもう、アルったらどこに行ったのかしら?お礼をいおうと思ってたのに」
拍手の音に何気なく振り向いたリリアーナはぎょっとした。
いつのまにかオリエンタルな雰囲気の青年が食堂に立っていたからだ。
>「他の場所でやるのはだめなのか?」
「えっ何が?」
よもや逢引きと勘違いされているとは夢にも思わない。
>「お前はこんな夜遅く食堂に何しに来たのだ?
> それに食堂のドアには鍵がかかってたはずなのだ。
> …なんだかお前はとても怪しいのだ。」
(アルの姿も見えないから、どこかから出入りできるんじゃないかな〜?)
そう思ったものの、口には出さなかった。
「ねえ、一体いつから食堂に居たのかな〜?どこから見てたのかな〜?」
事と次第によっては、口止めをしなくてはならないだろう。
>「お前はこんな夜遅く食堂に何しに来たのだ?
それに食堂のドアには鍵がかかってたはずなのだ。
…なんだかお前はとても怪しいのだ。」
怪しいのか、オレは。まぁ、別に構わないけど。
「俺はここの生徒。ソフィア・ベル。
鍵なんて掛ってたとして開けられない訳じゃないしさ。やり方は教えないよ?企業秘密ということ。
この年頃だとお腹が減るわけ。んで、忍込んだ。
こんなバカが出来るのは今くらいだから。」
にははっ、と笑う。
確かに言われてみれば、怪しさ全開だと思った。
将来は泥棒か何かを目指してると思われたのかもしれない。
今にして思えば「俺様の名は、○パン三世。」なんてギャグも良かったかも。
なんて軽い妄想の世界に浸っている間にも怪しい一団の会話は続いているようで。
こんな言葉が耳に入ってきた。
>「ねえ、一体いつから食堂に居たのかな〜?どこから見てたのかな〜?」
「言えるか。つまりは黙秘ということ。」
飛び散る肉塊を思い出させないでくれ。でも余裕があることをアピールするためにやっぱり、にははっ、と笑う。
「若いからね。色々たまってるんだろうと予測して、黙っているよ。沈黙は美徳、ということ。」
さて、俺はどうも大変に立ち入った話に首を突っ込んだかも知れない。
「誰だって情事を見られるのは良い気はしないだろうからね。
うん、気にしないから続きをどうぞ」
面倒ごとはゴメンだから、少しはぐらかしてみた。
どう転ぶかは他人まかせの運まかせ。
どうか明日のお日様も見れます様に。
>237
> 「ね、この杖、やっぱりエルザから渡してあげて」
無銘の杖が再びエルザのもとへ戻ってきた。
> 「最悪の事態に備えて、私に頼んだんでしょう?急に儀式なんて言われてきっと怖かったよね。
> エルザ、ロックを助けてくれてありがとう。あなたの勇気のおかげよ!本当にありがとう!!」
「私は…別に…」
エルザは恥ずかしそうにそう答えた。
> 「ねえロック、エルザから渡したいものがあるんだって!」
>「何なのだ?」
リリアーナに背中を押されたロックはエルザに近づいた。
「………」
エルザは、言うことなんて何もないわ。とばかりに、無言で杖をロックに差し出した。
>「…うん。」
ロックの方も事情を察しているのか、言葉少なく杖を受け取った。
無銘の杖は、やっと真の持ち主の手に戻ったのだ。
>「他の場所でやるのはだめなのか?」
> 「えっ何が?」
>「お前はこんな夜遅く食堂に何しに来たのだ?
> それに食堂のドアには鍵がかかってたはずなのだ。
> …なんだかお前はとても怪しいのだ。」
> 「ねえ、一体いつから食堂に居たのかな〜?どこから見てたのかな〜?」
>238
> 「誰だって情事を見られるのは良い気はしないだろうからね。
> うん、気にしないから続きをどうぞ」
エルザはロックの方を見た。ロックはとんでもないことを口走った。
>「そうさせてもらうのだ。」
>235
「だめねえ、人間体内時計には逆らえないのよぉん。」
女子寮に向かいながらかけられたキサラの問いにゆっくりとしたペースで答えていく。
肉体的疲労というより、精神的疲労が大きいのだ。
アルナワーズには憑き物が二つ宿っている。
それを精神力でねじ伏せているので、生活リズムを崩すということは、常人のそれ以上の負担と意味を持つ。
「もう時間がないけれど、急いでもしわ寄せが来るだけだしぃ。
今日はお風呂も入れず寝るだけねぇん。」
小さくあくびをしながら、もう一つの問いに答える。
「あら、気に入らなかった?ごめんねぇん。女子寮に入るのだからそれなりの変装はしなくっちゃ、ね。」
微妙に論点をずらしながら二人は女子寮へと入って言った。
そして自室まで着くと、アルナワーズはさっさと部屋に入ってしまう。
取り残されたキサラに、ドアの隙間から顔を出し笑いかける。
「キサラ、ありがとう。お礼は後ろに用意してあるわぁん。」
いつの間にかキサラの背後には四人の女子生徒が立っていた。
「アル、いくらなんでもこの服はないわ。キサラタンにはこれしかないのよ!」
一人がゴスロリメイド服を突きつけながら一歩前に出る。
「ちょっと、そんなゴスロリでスベスベのお足を隠すなんて犯罪よ!」
そういいながらもう一人がフレアのミニスカートを片手に一歩出る。
「あんた達、服より前に下着からでしょ?」
更に一人が女物の下着を広げながら一歩前に出る。
「はいはい、何でもいいけど、メイクは私にさせてよねー!」
最後の一人が化粧箱を持ってにじり寄る。
「ショタを愛するお姉様の会・キサラに女装をさせたい支部のみなさんよぉん。
お姉さまに可愛がってもらう男のロマンコースを楽しんでねぇん。
あんまり騒ぐと白百合騎士団が来るから、暴れちゃだめよぉん。」
そういいながら無常にもドアは閉められた。
バタンという音はキサラにとっては絶望の鐘にも似た音色だろうか?
ホラー映画よろしく四人のお姉さまの影がキサラにのしかかっていくのであった。
一方、部屋に戻ったアルナワーズは着替えもせずにベッドに転がっていた。
転がったまま動きもせずに、ボーっと考えていた。
今日は労力に見合った収穫がなかった・・・。
キサラを含め、ところどころ遊んではみたが、それでも生活リズムを崩したことに見合うものではない。
だがそれでもアルナワーズは満足していた。
今日は種をまいたようなものだ。
意図的な台詞選びも、触覚がキスである必要もないのにあえてそう仕向けたのだ。
弱り、消えかけていたロックの深層心理の五感にリリアーナが刷り込まれたはずだ。
朴念仁のロックがこれからどう変り、どう交わっていくか・・・
あの変貌振りには驚いたが、まだまだこれからなのだ。
そう・・・実が成り美味しく食べるのはまたあとでもいいのだから。
>「だめねえ、人間体内時計には逆らえないのよぉん。」
「・・・・・・・・・・・・・・」
アルワナーズはそう言ってはいるが、人間生活習慣がたった一日ズレた程度で、ここまで衰弱するものだろうか?
それこそ、一人で歩けなくなるほどに・・・
>「もう時間がないけれど、急いでもしわ寄せが来るだけだしぃ。
今日はお風呂も入れず寝るだけねぇん。」
「時間が・・・ない?」
先ほどの魔法の影響なのだろうか
魔法のことはあまりよくわからないキサラは、勝手に推測した
普段なら追求したいところだが、今のアルワナーズに聞くのも、なかなか無理な話だろう
>「あら、気に入らなかった?ごめんねぇん。女子寮に入るのだからそれなりの変装はしなくっちゃ、ね。」
「・・・・・・いや、正論といえば正論・・・って一瞬納得しかけましたけど
それなら誰か女の人に連れてきてもらえばよかったじゃないですか・・・」
軽くため息をつきながらも、なんだかんだで女子寮に来てしまうキサラ
要は断りきれないのだった
「・・・ここで、大丈夫ですか?」
寮のアルワナーズの部屋と思われる場所の前につくと、アルワナーズは部屋に入ってしまった
>「キサラ、ありがとう。お礼は後ろに用意してあるわぁん。」
「・・・気にしなくていいですから・・・ゆっくり休んでください・・・って・・・後ろ?」
そのとき言われて、やっと気付いたのだった
・・・その・・・殺気というか・・・なんというか・・・
>「アル、いくらなんでもこの服はないわ。キサラタンにはこれしかないのよ!」
>「ちょっと、そんなゴスロリでスベスベのお足を隠すなんて犯罪よ!」
>「あんた達、服より前に下着からでしょ?」
>「はいはい、何でもいいけど、メイクは私にさせてよねー!」
いつの間にか、4人の女子生徒がキサラの背後に立っていたのであった
「な・・・・・・っ!!」
>「ショタを愛するお姉様の会・キサラに女装をさせたい支部のみなさんよぉん。
お姉さまに可愛がってもらう男のロマンコースを楽しんでねぇん。
あんまり騒ぐと白百合騎士団が来るから、暴れちゃだめよぉん。」
「ぼ・・・僕としたことが背後の気配に気づかないなんて・・・じゃなくてっ!!
よくわからない単語が沢山出てきてるんですけど!!」
突っ込みどころはそこでもないというツッコミはなしの方向で
「・・・しかもドア閉めた!開かない!!
ま・・・っ!ちょっと!!」
誰かが助けに来るのを願うばかりである
>231
>「ん?フリージア、いつから狼を飼うようになったのだ?」
近くにいたからか、ロックにフリージアのペットと間違えられたグレイズ。
「違う!違うよー!!」と言いかったが、言葉が言葉なので「うがー!」と牙をむいて否定しておく。
>233
>「グレイズ〜。噂には聞いていたけど、実際に見るのは初めてねえ。」
狼になるという噂なのか、人狼であるという噂なのかはわからないが、
グレイズはギクリ!と音が出そうなくらい驚いた。
>「まあいいわ。
>鼻が利くならレイド先生にこれを渡して。お願い。」
深く追求しないでくれるのはありがたかった。が、アルナワーズに押し付k…渡されたのは妙な羊皮紙だった。
「(…………白紙?)」
よくわからないが、後でレイドに渡せばいいだろうと考える。
>229 >231 >237
ロックを殴り、へたり込んで泣きじゃくるリリアーナ。
困った顔をしてから微笑みを浮かべてリリアーナを抱きしめるロック。
その様子を睨み付けるエルザ。
そしてリリアーナが真っ赤になって誰も求めていない弁解を始める。
【これなんて三角関係?プッククク!】
【……まあ、これで一応騒動も終了か…ん?】
>234
ぱんぱん、と柏手が聞こえる。
何事かと振り向くと、見慣れない顔の男子が居た。
キキのように東洋風の顔つきをしている。
>「他の場所でやるのはだめなのか?」
…要は場所変えろやオンドゥルァと言いたいらしい。
「(でも、その前に喉渇いたし、お腹も空いたし…厨房行こう。)」
目の前の事を差し置いて人狼はふらりと厨房のほうへ赴く。
>238 >239
>「誰だって情事を見られるのは良い気はしないだろうからね。
> うん、気にしないから続きをどうぞ」
ソフィアの何気ない言葉。情事とは色事の事。
それを知ってか知らずか、爆弾発言で答えた人物が居た。
>「そうさせてもらうのだ。」
ぶーっ!!が、がふっがふっ…
前は厨房の方でグレイズが口に含んだ水を思い切り吹きだした音、後ろはむせた音。
とんでもない発言に驚き笑った結果だ。
>238-239
人を食ったような態度の青年はソフィア・ベル。この学園の生徒だという。
(ソフィアは小腹がすいたから食堂に忍び込んだのね)
そしてどの場面から見ていたのかという質問には答えようとしない。
なんともつかみ所が無い人物だが、表情から察するに礼のスプラッタシーンはばっちり目撃したっぽい。
これはどうしたものだろう。
リリアーナは頭痛がしてきたが、当のロックは平然としたものだ。
ソフィアはさらに続ける。
>「若いからね。色々たまってるんだろうと予測して、黙っているよ。沈黙は美徳、ということ。」
「わあ、内緒にしてくれるの?助かるわ〜ありがと〜!!」
リリアーナはソフィアの言葉に何かひっかかるものを感じつつも、話はついたとばかりにエルザへ歩み寄った。
「どうかな?元の身体に戻って、少しは自分のこと、何か思い出せた?」
リリアーナはエルザの事をもっと知りたかった。
儀式前、アルがエルザに話した説明。
一つ一つはそれなりに納得できるのだが、並べてみるとどうも腑に落ちないのだ。
たとえば、「母親がどういうものか知りたい」というロックの希望とエルザがどう結びつくのか理解できない。
もちろん説明は可能だ。だが・・・うまく言えないのだが、どうもいつものアルらしくない。
何かを誤魔化している感じだ。
(まあ、ロックの危機に焦っていたと言われてしまえばそれまでなのだが)
「ごめん、焦らせるつもりはなかったの。時間はたっぷりあるんだから、ゆっくり思い出していけばいいのよ。
エルザのことは、レイド先生がきっと力になってくれるわ。私に協力出来ることがあったら何でも協力するからね!
それから・・・・・あの・・・・・・ 」
ここでリリアーナは、言いにくそうに目を伏せた。
なんと言ったものか考えあぐねている様子だ。
「・・・エルザは、ロックの記憶を全部覚えてるの?・・・たとえば、夏休み前の事件のこととか。
あの・・・・・ね・・・その・・・マリアベルとロックのこと、内緒にしてって言ったらエルザは気を悪くする?」
>「誰だって情事を見られるのは良い気はしないだろうからね。
>うん、気にしないから続きをどうぞ」
突然の爆弾発言に、リリアーナは拾い集めたばかりのムガルを取り落とした。
足元に散らばる大量の糸。
だが驚くのはまだ早い。ロックはさらにとんでもないことを口走った。
>「そうさせてもらうのだ。」
リリアーナは絶句して、ロックの顔をまじまじと眺めた。
「・・・・・・だ、誰とっ?!」
>242
厨房では誰かが盛大に咽ている。大丈夫だろうか?
>227-228 >232
折れた枝や葉を踏みしめる複数の足音が聞こえてきた。
>「すみませんね、お休みのところお呼び立てして」
>「いいえぇ。もしかしたら生徒の誰かが魔法実験に失敗したのかもしれませんもの。
> 校医がお供するのは当然の義務ですわ。うふふ」
森の異変に気づいた学園関係者が、すぐそこまで迫っているようだ。
また食堂は、そろそろ見回りが巡回する時間だ。だが色々ありすぎて、皆すっかり時間のことを忘れているようだ。
果たして彼らの運命やいかに!
「そういえばギズモちゃん?」
とまた何かを思い出したかのごとくギズモに問いかけるフリージア
「ナアニ オカアサン?」
二回目なので別段表情を変えないギズモ
「何処からこの食堂に入ってきたの?」
完全に締め切ったはずに食堂にいつの間にか入っていたギズモに疑問を持ったのである
「エ〜トネ アソコカラ」
ギズモは天井を指差した
「あれは・・・空調用の小窓ですわね」
なるほど体の小さい・・・なおかつ空を飛べるギズモならあの窓から入ることは可能だろう
「なるほどね」
フリージアは納得した
>231
>「ん?フリージア、いつから狼を飼うようになったのだ?」
「別に彼はペットじゃなくてよ 私達と同じこの学園の生徒ですわ」
とフリージアはロックに説明した
>234>238
>「他の場所でやるのはだめなのか?」
「え?え?えぇぇぇ!?」
なぜこの締め切った食堂に知らない人がいるの?
フリージアはそれに疑問を持った
>「お前はこんな夜遅く食堂に何しに来たのだ?
それに食堂のドアには鍵がかかってたはずなのだ。
…なんだかお前はとても怪しいのだ。」
「そうですわ扉には鍵どころか氷の壁やバリケードを張った筈ですのに?」
>「ねえ、一体いつから食堂に居たのかな〜?どこから見てたのかな〜?」
そういえばいつの間にやらアルナワーズとキサラがいない
出て行けるのなら入り込めるんだろう
フリージアはそう自分を納得させた
>「誰だって情事を見られるのは良い気はしないだろうからね。
うん、気にしないから続きをどうぞ」
「って情事ってなんですの!!」
フリージアは思いっきり突っ込んだ
>239
>「そうさせてもらうのだ。」
「ってえぇぇぇぇ!?」
フリージアはいいのか?と言う表情でロックを見た
「ボケ役ノ オカアサンガ 突ッ込ムナンテ」
ギズモは別のことで驚いていた
>243
>「・・・・・・だ、誰とっ?!」
「ってだから情事じゃありませんことよ!!」
フリージアは気づけなかった・・・食堂に人が接近していると言うことに
>243>244
> 「・・・・・・だ、誰とっ?!」
「誰と?」
> 「ってだから情事じゃありませんことよ!!」
「みんなジョージが大好きなのだ!」
ロックはリリアーナとフリージアの言った意味がわからなかった。
「ん〜、まぁいいか。エルザ、俺と一緒に来るのだ。」
そう言うとロックは、掃除道具の入ったロッカーを開け、
中からボロボロの箒を取り出した。
「コメット1986…」
ロックは箒の型番を読み上げた。
「古いけど大丈夫。コメットシリーズは疲労強さには定評があるのだ。」
>「…えっ?」
エルザはロックの言った意味がわからなかった。
まさかこの後、自分がロックと共に空を飛ぶなど夢にも思わなかったのだから。
「ほれ、しっかり持つのだ。」
>「……こう?」
ロックに促されるまま、エルザは箒にまたがった。
「それじゃあ、みんな!今日はもう遅いから俺は部屋に帰って寝るのだ!
バイバイなのだ〜!」
ロックはエルザの後ろから箒にまたがった。
>「ちょっ!ロック!…きゃぁあ!!」
エルザはロックに抗議しようとしたが、その前に箒が急発進した。
>「いやぁあ〜〜!!」
ロックとエルザの乗った箒は勢いよく暖炉に突進した。
そして彼らは食堂から出て行った。勢いよく煙突をつき抜けながら…
エルザの視界は真っ暗だった。
ただ、ごうごうという風を切る音が耳に響いてくる。
いや、それだけではない。
>「エルザ…エルザ…」
そんな声が後ろから聞こえてくる。
エルザの脳裏に、ふと先ほどまでのやりとりが浮かんできた。
>243
自分の足がまだ地に着いていた時のことだ。
> 「どうかな?元の身体に戻って、少しは自分のこと、何か思い出せた?」
リリアーナがほがらかに自分に話しかけてきた。
「あぁ…ごめん、まだ私にもわからないの。」
エルザはうつむきがちにそう答えた。
> 「ごめん、焦らせるつもりはなかったの。時間はたっぷりあるんだから、ゆっくり思い出していけばいいのよ。
> エルザのことは、レイド先生がきっと力になってくれるわ。私に協力出来ることがあったら何でも協力するからね!
> それから・・・・・あの・・・・・・ 」
「なに?」
> 「・・・エルザは、ロックの記憶を全部覚えてるの?・・・たとえば、夏休み前の事件のこととか。
> あの・・・・・ね・・・その・・・マリアベルとロックのこと、内緒にしてって言ったらエルザは気を悪くする?」
「…まあね。」
思い出したくもないような事まで頭に入っているのだからたまらない。
いつかロックの記憶は消してもらおう。
「マリアベルとロックの関係は黙っててあげるわ。ただし、私の事も秘密にしてくれるならね。」
エルザはリリアーナの手をとり、彼女に言った。
「私はこの学園で暮らすことにするわ。他に行くところもないし…
それに…私…」
エルザは言葉を詰まらせた。リリアーナに本当の気持ちを言ったら、
もしかしたら彼女の気を悪くするかもしれないと思ったからだ。
エルザは静かにリリアーナの手を離した。
>「エルザ!」
そんな大声が、エルザを現実に引き戻した。
自分の足が宙に浮いているという、恐ろしい現実にだ。
声の主はわかっている。自分の後ろで箒にまたがっているロックのむかつく声だ。
>「エルザ、そんなに肩に力を入れてたら箒を操作できないのだ。
> もっとリラックスするのだ。」
「そんなこと言ったって!」
エルザは固くとじていたまぶたを、恐れながら少しずつ開けてみた。
そしてエルザは驚いた。
「…すごい。」
エルザの目に飛び込んできたのは、満点の星空だった。
>「空を飛ぶってのはだな、エルザ。とっても気持ちがいい事なのだ。
> 空をとぶってのはだな、空と一つになる事なのだ。」
後ろからロックの声が聞こえてきたが、エルザは先ほどよりはむかつかない声だと感じた。
「ねぇ、ロック。これからどこへ行くの?」
>「アンジェリーナの部屋なのだ。エルザには寝る場所が必要なんだけど、
> 俺は男だからエルザと一緒の布団じゃ寝れないのだ。
> だからエルザはアンジェリーナと一緒に寝るのだ。」
さて、その後エルザはアンジェリーナに保護される事になる。
そして、ロックは男子寮の自分の部屋に戻ったとたん、
管理人のフーチさんに大目玉を喰らうことになるが…
それはまた、別の話である。
>242 >244-245
ロック達が立ち去った後も、リリアーナはその場に立ち尽くしたままだった。
「・・・・・・エルザなら箒に乗せてあげるんだ」
長い沈黙の後、リリアーナはぽつりと呟いた。
あのやり取りを聞かされて、ロックがエルザと消えた意味がわからないほど子供でもない。
「そっか、そうなんだ。やだな、じゃあ口止めなんて必要無かったんじゃない。
・・・・・・ねえ、もしかしてあの二人のこと、フリージアは知ってたの?」
だったら自分だけ蚊帳の外で、馬鹿みたいだと思う。
仮にリリアーナが二人の関係を知っていたとしても、ロックを助けるために同じ行動を取っただろう。
でももし知らされていたのなら、男子寮までのこのこ出向いたりしなかったのに。
「ホント、馬鹿みたい」
大きなため息をついたリリアーナは、少し疲れて見えた。
「帰る。じゃあソフィアさんとやら、あとはごゆっくり」
リリアーナはきびすを返すと、厨房に戻った。
勝手知ったるなんとやらで、隠し食料庫の中からソーセージやパン、チーズ、ワインらしきビンを取り出す。
「グレイズ、おなかすいてない?やっぱり狼だけに肉系が良いかな?」
リリアーナは大きなスモークハムの塊をグレイズに投げた。
「これはフリージアのお夜食」
くるくると動く割に、リリアーナ自身空腹というわけではなさそうだ。
動いたほうが気が紛れるのかもしれない。
>「おい!誰か食堂の中に居るッスか?!ここを開けるッス!!」
どうやら見回りが着てしまったようだ。
鍵を外したようだが、氷のバリケードに阻まれて扉を開けることが出来ないらしい。
>「開けないつもりッスか?じゃあ扉を壊してでも中に入るッス!!」
「私はいったん森の中に戻るわ。レイド先生に頼んだ例の魔獣の様子が気になるし」
ロックの変わりようも、と言いかけリリアーナは口をつぐんだ。
「皆はどうする?」
ドォン!と体当たりする音がした。ぐずぐずしている時間は無い。^
リリアーナはカドゥケウスを一振りした。
森の中と食堂をつなぐ蒼い扉が再び召喚された。
ようやく見回りが踏み込んだ時には、既に厨房はもぬけの殻だった。
「あー危なかった〜!!」
森の中に再び舞い戻ったリリアーナは、ほっと胸をなでおろした。
手にはちゃっかり食料と糸の束が握られている。
「レイド先生、例の狐・・・じゃなかった、魔獣はどうしてます?―――あれっメラルさんじゃない!どうしてここに?」
頭から人の事を不審者扱いした無礼な輩は箒に跨り何処かへ消えた。
いやしかし、ホントに箒で空を飛べるものなんだな。飛ぶのに向いている形状ではないだろうに。
今度、機会があれば鳥の紙型を貸してやろう。
で、その逢い引き相手と思われる人は
>「ホント、馬鹿みたい」
と不貞腐れていた。女心は解らんね。きっと女も男心は解るまいが。
>「帰る。じゃあソフィアさんとやら、あとはごゆっくり」
言葉を返すと一悶着ありそうな雰囲気だからひらひらと手を振っておく。触らぬ神には祟られないらしいから。
そして慣れた風に厨房へヅカヅカ入り込んでいく。
あぁ、この方も常習犯か。などと見ていると、目当ての物をやはりヅカヅカと仲間と思われる者達へと渡していく。
解ってないな。微量にチョロ撒かすのが一番安全かつ難しいのに。
お腹と在庫とで相談して微量を盗る。
ねっ、言ってみると難しそうだろ?しかしこの場合難しいとは楽しいと同義でもある。
しかしと言おうか、やはりと言おうか、見回りさんがここに誰か居るらしいと気付いたようだ。
氷なんて張るから目立つんだよ、もっと賢くやれよと入り口を明らかに何か違いますと言わんばかりに氷漬けにした方に言ってやろうか。
とか考えてると相手さんも強行手段に出たようで、扉をぶち破るつもりらしい。行動的だな。
>「皆はどうする?」
「まぁ、行かなきゃだ。つまり逃亡ということ」
しかし何処へ?生憎と紙型も術符も持ってない。そんなにマメではない。
見回りさんを殴り倒すか?しかしやはり体術に絶体の自信はない。
暗い所に出た。何故かは知らないし、何処かも判らない………訳じゃない。
多分、学内の森の中。
脈絡がない訳でも場面や人が変わった訳でもない。
さっきまで確かに食堂にいたんだから。きっと、誰かが転移を使ったのだろう。恐らくは逢い引き相手に逃げられた彼女が。
何だかなぁ………
「女人は慎みと可愛げが肝だと誰かが言っていたよ」何故ここでこの言葉?いや、それは確かに彼女には慎みも可愛げも欠片も見られないけれど今言わなくてもいいだろうに。
>248>「レイド先生、例の狐・・・じゃなかった、魔獣はどうしてます?―――あれっメラルさんじゃない!どうしてここに?」
森の中で暇を潰していた俺達の目の前に食料と糸の束を持ったリリアーナが現れた。
「そこですやすや眠ってるよ。つーかお前、食料パクって来たな?
まあ、良い。その娘にもちょっと分けてやってくれ。」
メラルに抱かれている少女を指差す。
「あ、そこの狐、メラルの強〜い要望により学園に入る事になったから。
まあ、仲良くしてやってくれ。」
そして食料を美味そうに食っている少女に近寄り、頭をポンポンと軽く叩く。
「後はお前が学園に入ってくれれば万々歳なんだがね……ん?」
>243僅かだが複数の足音が聞こえる。
そして話声も。
「ちっ、まずいな。
今見付かったら色々と面倒だ。(主に状況説明が。)
よし、バックレんぞ。
よいしょっと。」
メラルから少女を渡してもらいリリアーナからは少し食料を分けて貰う。
「この娘はまだ交渉中だからな。きっちり話をつけないと。
さ、お前らもさっさと逃げろよ?じゃあな。」
>「うん、言いたい事はよくわかったよ。」
> 「たしか…メラルといったね?たしかにそうだ。
どうせ死ぬつもりなら、どうなったって構わない筈なんだ。
騙されたと思って色々見てみるのもいいかもね。でも…」
>「今は僕にかまわないで…何だかとても眠いんだ。」
コンコンが寝始めた。…解決には程遠いが、少しは前進したようだ。
(…一旦…そっとしておいてあげたほうがいいわね。)
メラルは、レイド先生に視線を移した。
>「ふう、一件落着って事で良いかね?」
「はい。」
>「狐は寝ちまったし、これからどうする? 俺はリリアーナに言われて狐の様子を見に来ただけだからよ。」
>「狐も寝てる事だし、俺らもちょっと一休みするか?
あ、そうだ。メラル、この娘抱いてみるか?結構可愛いぞ、ほら。」
「…その子(コンコン)を適当な所に保護するつもりですけど………」
誤魔化せた雰囲気ではないが…黙認してもらえるのならそれに越した事はない。
そういう考えで大人しくしていたが…メラルの目がジト目になっていく。
因みに純粋なメラルの力では渡された子を支えられない為、
こっそり重力の術を利用していたりする。
>「はははっ、なかなか絵になってるぞ?本物の姉妹みたいだ。
俺の娘にしたいくらいだぜ。
なんなら二人共俺の娘になるか?
……あ、いや、冗談だけどな…。」
そしてトドメにこの一言。メラルが軽く溜息をついてから言った。
「……先生も相変わらずですね。でも…早々にこの場を立ち去った方がよさそうです。」
そして、コンコンのすぐ近くで周囲に視線をやり始めた。
周囲の物音に気づいたのだ。そして…扉の術で森に移動してきたリリアーナと目があった。
>「レイド先生、例の狐・・・じゃなかった、魔獣はどうしてます?―――あれっメラルさんじゃない!どうしてここに?」
「派手な物音がしたから来たら、この子(コンコン)がいたのよ。で、色々と訳ありみたいだったから、
保護しようとしていたんだけれど…。」
メラルは、森の奥で特訓をしていた…その一点のみは隠して事情を説明した。
食料の事にしろ、魔獣のことにしろ…聞くべき事は多いのだがあえてそれは聞かなかった。
藪蛇になりそうだからだ。
>「あ、そこの狐、メラルの強〜い要望により学園に入る事になったから。
まあ、仲良くしてやってくれ。」
>「(前略)さ、お前らもさっさと逃げろよ?じゃあな。」
「わかりました。」
レイド先生に少女を渡すと、メラルはコンコンに張られた結界目掛け、術を放ち、
結界のみを取り除いてコンコンを抱えあげると、その場に来た皆に言った。
「解呪………リリアーナ達も早くこの場から離れた方がいいわ。
そんな物を持っているのならなおさらね。」
コンコンの話にはあえて触れようとしない。それですべてが済むとは思っていないが、
今この場所でその話で揉めるのは危険だと考えたのだ。
>249
「女人は慎みと可愛げが肝だと誰かが言っていたよ」
リリアーナは一瞬だけ傷ついた表情を見せた。
「・・・・・・もしかして、ソフィアも昨日食堂に居たの?」
昨日アルが食堂で大公開した映像を見ていたのなら、慎みがないと思われても仕方が無い。
確かに映像の中でリリアーナは、猫耳と猫尻尾だけを身につけてロックときわどい会話をしていた。それは事実だ。
だが、映像が必ずしも真実を語っているわけではないのだ。
相手の反応を見たリリアーナは軽く肩をすくめた。
「あなたの国では、助けてもらった相手に憎まれ口を叩くのが礼儀なの?」
>250-251
>「派手な物音がしたから来たら、この子(コンコン)がいたのよ。で、色々と訳ありみたいだったから、
> 保護しようとしていたんだけれど…。」
「コンコン?ああ、狐の名前ね。ちょうど良かった、私もその子に用があるのよ」
>「そこですやすや眠ってるよ。つーかお前、食料パクって来たな?
リリアーナは慌てて後ろ手に食料を隠したが、時既に遅し、である。あははと笑って誤魔化してみる。
>「まあ、良い。その娘にもちょっと分けてやってくれ。」
リリアーナは気前良く少女に食料を渡した。
「そ、そんなに慌てて食べなくても・・・・・・もっといる?」
よほどお腹がすいていたのだろう。リリアーナは食料袋の残りを眺めた後、あきらめたようにため息をついた。
「誰も盗らないから、ゆっくり食べるのよ?」
リリアーナは袋ごと少女に渡すと、レイドに頭をなでられている少女に微笑んだ。
>「あ、そこの狐、メラルの強〜い要望により学園に入る事になったから。
>まあ、仲良くしてやってくれ。」
「メラルさんが?――――なぜ?」
リリアーナは明らかに胡散臭い顔をした。
メラルとコンコンの接点は無いに等しい。なのに、なぜそのメラルがコンコンにそこまで肩入れするのだろう?
>「(前略)さ、お前らもさっさと逃げろよ?じゃあな。」
>「わかりました。」
>「解呪………リリアーナ達も早くこの場から離れた方がいいわ。
> そんな物を持っているのならなおさらね。」
「狐に用があるといったでしょう?聞こえなかった?」
リリアーナはポケットの中のカドゥケウスを握り締めた。
すぐに取り出し、術を放てるように。
「――――そもそもあなた、本当にメラルさんなの?」
メラルの魔法に気づいたのか、近づいてくる足音が早足になった。
リリアーナはカドゥケウスを振った。
メラルの周りに蒼い扉が無数に現れる。
「その子をこちらに渡しなさい。大丈夫、ロックがおかしくなったから、ちょっと話を聞きたいだけ。
そして私は、友達の顔をした相手に手荒なことはしたくない。私が言ってる意味、わかるかしら?」
杖を向けたまま、リリアーナはゆっくりとメラルに近づいてくる。
どうやら本気のようだ。
>248>250>252>253
>「そっか、そうなんだ。やだな、じゃあ口止めなんて必要無かったんじゃない。
・・・・・・ねえ、もしかしてあの二人のこと、フリージアは知ってたの?」
「・・・・・・」
フリージアは答えられなかった・・・というよりわからなかったのだ
「私は全然知りませんでしたわ」
と答えることしか出来ないフリージア
ただでさえフリージアはこういう恋愛関係には疎いのである
そして・・・
>「これはフリージアのお夜食」
食べ物を渡されるフリージア
「せっかくだからもらっておきますわ」
と受け取るフリージア
>「皆はどうする?」
「そうですわね・・・私も気になりますわ」
とリリアーナについていくと決めるフリージア
そして開かれた蒼い扉に入る
>「あー危なかった〜!!」
「間一髪でしたわね」
>「レイド先生、例の狐・・・じゃなかった、魔獣はどうしてます?―――あれっメラルさんじゃない!どうしてここに?」
>「そこですやすや眠ってるよ。つーかお前、食料パクって来たな?
まあ、良い。その娘にもちょっと分けてやってくれ。」
そしてリリアーナは食料を少女に渡す
ついでにフリージアも「この前は氷漬けにしてごめんなさいね」と食料を手渡した
「マダ エズケ アキラメテナインダ」
とギズモはいらないことを言う
「そ、そんなんじゃなくてよ!」
そんな会話をしていると・・・・
>「――――そもそもあなた、本当にメラルさんなの?」
と何があったのかリリアーナはメラルに杖を向けたのであった
「ちょ、ちょっとリリアーナさん!落ち着きなさいな!!」
「イチバン オチツキガナイ オカアサンガ オチツキナサイッテ・・・」
とやっぱりいらないことを言うギズモであった
>「その子をこちらに渡しなさい。大丈夫、ロックがおかしくなったから、ちょっと話を聞きたいだけ。
そして私は、友達の顔をした相手に手荒なことはしたくない。私が言ってる意味、わかるかしら?」
「だから落ち着きなさいってば!そこに偽者に変身していた狐がいるんだからメラルさんが偽者のわけがないじゃないですわ!!」
そう言いながらもフリージアは心の中では疑問を持ったのであった
メラルさんもなんでこんなのに肩入れするのかしら?そういえばあの狐他人を変身させられたのでは・・・と
>250
「おやすみなさい、レイド先生。説得がんばってくださいね!」
バイバイ、と女の子に手を振る。
「それにしても餌付けって何のこと?フリージア」
リリアーナは昨日自分を襲った野生児が、さっきの蒼い髪の少女と同一人物だと未だに気づいていないようだ。
>254
>「だから落ち着きなさいってば!そこに偽者に変身していた狐がいるんだからメラルさんが偽者のわけがないじゃないですわ!!」
「―――― 本心からそう思ってる?」
リリアーナはメラルを見据えたまま答えた。
二人の間で張り詰めた空気が流れる。足音はますます近づいてきた。
「・・・・・・・・・・なぁんて、ね」
ふっと微笑んだリリアーナは、メラルから杖先を外した。
「残念ながら時間切れみたい。メラルさん、わかった。コンコンをこっちに渡せとはもう言わないわ。
そのかわりコンコンごと一緒に来てちょうだい」
リリアーナは紳士のように扉のひとつを押し開けると、メラルを中へ促した。
扉の向こうは森の奥の旧魔法実験室跡、メラルがさっきまで訓練に使っていた施設だった。
「もちろんフリージアも来てくれるわよね?」
リリアーナは扉を閉めようとして、こちらを興味深げに見ているソフィアに気づいた。
「あなたも早く逃げたほうがいいわよ?じゃあね〜、おやすみなさーい」
パタン。
扉が閉ざされたとたん、無数にあった蒼い扉は全て跡形もなく消えてしまった。
「さーて、質問ターイム!フリージア、用意はいい?」
リリアーナはぽきぽきと意味もなく指を鳴らした。
「そういえばコンコン、さっきはよくも私を足蹴にしやがったわね?!!えーい、仕返しよ!!」
こうしてやる!と叫んだリリアーナは、コンコンの耳の後ろや顎の下をこしょこしょし始めた。
「・・・・・・・・起きないわね。じゃあこれでどうだっ!」
金色の頭や背中をもふもふしたり、肉球をぷにぷに触ってみたりする。
「ロックは元の姿に戻れたけど、なんかいつもと感じが違うのよ!これってコンコン、あなたの仕業じゃないの?
エルザもエルザでいまいち記憶を取り戻していないのって、あなたが記憶を盗っちゃったせいなんでしょう?
かわいそうだからちゃんと返してあげなさいよね。・・・・・・ちょっと、私の話聞いてる?!」
食堂到着前にアルから説明された話と、彼女が食堂でエルザに方便として話した説明がごっちゃになっている。
これでは訊ねられたコンコンとしても、何のことかさっぱりだろう。
>ソフィアさん
その頃。
森の中に取り残されてしまったソフィアの前に、一組の男女が現れた。
彼らは森の惨状を見渡した後、苦虫を噛み潰したような顔になる。
>「またこれは・・・・・・・ずいぶんと派手にやったもんですね」
現れたのは学園教師のエース、そしてもう一人は見慣れない女性だった。
女性は折れた木々の間から糸くずを疲労と、興味深げに観察していた。
>「えーと君は確か・・・・・ゾフィー君だったか?」
>「エース先生、ソフィアさんですわ。ソフィア・ベルさん。確かそうでしたわよ・・・ねぇ?」
茶髪の女性はポケットに糸くずをしまうと、何事も無かったかのように立ち上がった。
>「ああそうだったか、失礼。ではソフィア、こんな時間に森の中でいったい何をしてたんだい?
> まさかとは思うが、森をこんな姿にした犯人は君なのかい?」
「さあて、これからやる事が山積みだな…。」
少女の説得、狐の入学手続き、その他もろもろ…。
そういや例の彼女はどうしたんだろ?
まあ、あの場にはアルナワーズが居たから何とか丸く治めてくれただろう。
リリアーナも怪我してなかったみたいだし。
つーかこの少女を何処に住まわせるかが今は一番の問題か。
寮に入れるようになるまで俺の部屋に住ませるってのもアリだが、ちょっとなぁ…。
ナナ先生にでも頼もうか。
「色々あって疲れたろ?とりあえず今日は俺のベッド使わせてやるから寝とけ。」
少女をベッドまで運び、自分は床に布団を敷く。
一緒に寝たら犯罪になりかねないからな。
「寝る前に一服といきますか…。」
部屋の窓を開け、タバコに火をつける。
空には星が輝いている。
星を眺めながらタバコを吸う事数分、そろそろ眠くなってきたので火を消して窓を閉める。
「よし、寝る。お休み。」
布団に潜り、寝る体制になる。
しかしなかなか眠れない。
何故だか嫌な予感までする。
誰かが不幸を運んで来る。そんな予感が…。
儀式が成功したのを確認すると、キキは誰にも気付かれないようにこっそりと窓から抜け出していた。
ロックのしゃべり方が変わっていたのには少々驚いたが、後天的な二重人格が解消されたときによくあることなので、時間と本人の意思さえあれば1週間程度で直る…筈だ。
そして、今は自室に戻り、人形(フィギュア)造りに勤しんでいる。
何せ今回提供した生人形には今まで貯めてきたお年玉を注ぎ込んだ失敗作なのだ。
本来ならば時間をかけ、原因を追求し、自我を持たせるように作り直す予定であった。
こうなった以上、初めから作るしか手段が残ってはいない。
大団円の中に割り込み、「あなたは人形なの」とエルザにいう程鈍感ではない。
「1日百体売れば来月あたりには材料が買えるでおじゃるな」
あまり広くはない机の上に並べられた人形(フィギュア)を見て、明日から始める商売に期待を寄せる。
絶対ではないが其なりに売れる自信はあった。作りの細やかさもそうだが、他の人形(フィギュア)とは違い。技術次第ではあるが、指を動かすだけで生き生きと動く細工もしている。
が、そのとき上の階が騒がしく、『ドスン』の音と共に
積み木崩しのように小気味のよく机の人形が全て倒れた。
倒れた様を見たキキは、苛立ちの表情を出し、おもいっきり机を叩く
実は、こうなったのはこれが初めではなく三度目なのだ。
此方がこう苛立っているのにも関わらず、上の階の住民は黄色い声をあげはしゃいでいる。
「もう…我慢ならぬでおじゃる」
階段でいくのは面倒なので、火翔を使い窓から直接向かうことにする。
上の階の窓を叩き、本人を呼ぶ、まさか窓から文句をつけるとは…ならば、ここでやってしまおうか…
あぁ…やはり、ここは退屈とは無関係で良い
>「狐に用があるといったでしょう?聞こえなかった?」
「その用は…ここでしか出来ない事なのかしら?」
とりあえず、この場で無駄に揉めることは避けたかった。
しかしもちろんコンコンを渡す気はない。
だが、事は…そう簡単にはいかなかった。
>「――――そもそもあなた、本当にメラルさんなの?」
>「その子をこちらに渡しなさい。大丈夫、ロックがおかしくなったから、ちょっと話を聞きたいだけ。
そして私は、友達の顔をした相手に手荒なことはしたくない。私が言ってる意味、わかるかしら?」
リリアーナが杖を向け、臨戦態勢をとってくる。
メラルは、表情一つ変えずにリリアーナに言った。
「渡さなければ…力ずくでも奪う。そういう事?」
(私を偽者だと思っているみたい。…こんな誤解まで生むのは想定してなかったわね。
そもそも、そもそもリリアーナのあの結界は明らかに………なのに。
…この状況…まずいわね。先も読めないし…。)
メラルは…コンコンを抱え、杖を握ったまま相対し…しかし動く様子はない。
>「・・・・・・・・・・なぁんて、ね」
>「残念ながら時間切れみたい。メラルさん、わかった。
コンコンをこっちに渡せとはもう言わないわ。
そのかわりコンコンごと一緒に来てちょうだい」
(…いくらリリアーナの言葉でも…信じられないわね。
でも…場所を変えるのは問題ないわ。特に、あの場所なら。)
「ええ。わかったわ。」
メラルは開いた扉の行く先を確認し、素直にその扉に入った。
リリアーナがコンコンを弄繰り回している事に対しては何も言う気はなかった。
今のところけして暴行と呼べる物でもなかったからだ。だが…それでもメラルにとって
はっきりさせるべき事はあった。リリアーナを睨みすえて言った。
「リリアーナ。今さっきの事…忘れた訳じゃないわよね?悪いけど…さっきので
解決させる気はないわ。これからも事あるごとに謂れのない疑いを
かけられたりしたらたまらないから。…はっきりさせて。」
杖を持つ方の手を左目にやり、続けた。
「リリアーナ。…まだ、疑ってるの?…そして、もしそうなら…根拠は?」
もちろん根拠について全く想像がつかないわけではない。
が…それでもあえて聞いた。無用な疑念の芽を摘むために。
>255>260
>「それにしても餌付けって何のこと?フリージア」
「え?まだ気が付いてませんの?」
「ボクガ サイショニ キガツイタ ノニ」
フリージアはリリアーナに説明をする あの子はあの野人だと
「人間ハ 見タ目ダケデ 判断スルカラナァ」
ギズモはちょっとそれっぽいことを言うのであった
>「―――― 本心からそう思ってる?」
「そ、それは私も一瞬コンコンがメラルさんに化けてて
メラルさんはコンコンの姿にされたとか考えましたけど・・・・・そんなわけないですわ」
「ウン チャント メラルオネエチャンノ ニオイダヨ(魔力的意味で)」
「ほらね ギズモちゃんもそう言ってますし」
>「もちろんフリージアも来てくれるわよね?」
「 仕方ありませんわねえ・・・」
(旧魔法実験室跡)
>「さーて、質問ターイム!フリージア、用意はいい?」
「用意って・・・これですの?」
フリージアはなぜか羽箒を持っていた
これでコチョコチョやるつもりなのか
「チモナミダモナイネ・・・」
ギズモは少しコンコンに同情した
>「ロックは元の姿に戻れたけど、なんかいつもと感じが違うのよ!これってコンコン、あなたの仕業じゃないの?
エルザもエルザでいまいち記憶を取り戻していないのって、あなたが記憶を盗っちゃったせいなんでしょう?
かわいそうだからちゃんと返してあげなさいよね。・・・・・・ちょっと、私の話聞いてる?!」
「そうですわよ!何かおっしゃいな!!」
フリージアは羽箒でコンコンの鼻の部分をこしょぐりはじめた
>「リリアーナ。今さっきの事…忘れた訳じゃないわよね?悪いけど…さっきので
解決させる気はないわ。これからも事あるごとに謂れのない疑いを
かけられたりしたらたまらないから。…はっきりさせて。」
>「リリアーナ。…まだ、疑ってるの?…そして、もしそうなら…根拠は?」
「仕方が無いですわよメラルさんには操られた前科がありますもの そのてん私はお〜ほっほっほ!!」
そういうフリージアだったが・・・あの時フリージアが元に戻ったのは偶然である
「・・・・まあ冗談はさておき、なんでこの子にこんなにこだわるのかしら?良かったら理由を聞かせてくださいます?」
>255
>「・・・・・・・・起きないわね。じゃあこれでどうだっ!」
リリアーナにいじられたコンコンは、目をしぱしぱさせた。
「〜〜〜??」
>「ロックは元の姿に戻れたけど、なんかいつもと感じが違うのよ!これってコンコン、あなたの仕業じゃないの?
> エルザもエルザでいまいち記憶を取り戻していないのって、あなたが記憶を盗っちゃったせいなんでしょう?
> かわいそうだからちゃんと返してあげなさいよね。・・・・・・ちょっと、私の話聞いてる?!」
「………」
>261
> 「そうですわよ!何かおっしゃいな!!」
> フリージアは羽箒でコンコンの鼻の部分をこしょぐりはじめた
「!〜ヘブッシ!!」
コンコンは大きくくしゃみした。
>260
>「リリアーナ。今さっきの事…忘れた訳じゃないわよね?悪いけど…さっきので
> 解決させる気はないわ。これからも事あるごとに謂れのない疑いを
> かけられたりしたらたまらないから。…はっきりさせて。」
メラルの声を耳にしたコンコンは気持ちの整理をつけた。
どうやら、このまま寝たふりを続けてもしかたがないらしい。
>「リリアーナ。…まだ、疑ってるの?…そして、もしそうなら…根拠は?」
> 「・・・・まあ冗談はさておき、なんでこの子にこんなにこだわるのかしら?良かったら理由を聞かせてくださいます?」
「それは他者を見捨てる自分を許せないからじゃないのかな?」
コンコンは自分を撫で回していたリリアーナにしっかりと目線を合わせた後、
ボンと(心なしかいつもより大きな)煙を上げて、その場から消えてしまった。
しかしすぐに、リリアーナ達から少し離れたところに煙が上がった。
煙はすぐに晴れ、そこには金髪碧眼の少年が立っていた。コンコンである。
コンコンはやさしい口調でリリアーナ達に語りかけた。
その口調とは裏腹に、内容は辛辣なものだった。
「リリアーナ、まず僕にはエルザが誰なのかわからないし、ロックは僕の手に負えないよ。
君も見ただろう?あの凶暴な金色のロックを。僕の方こそむしろ君達に聞きたいね。
僕の体から飛んで行った、ロックの“最後の心”は一体誰が今持っているの?」
コンコンはリリアーナ達の反応を待たずに続けた。
「まあ、別にいいけど。ロックが変わったって?その原因を調べてどうするつもりなのさ?
ロックを元に戻すように勤めるのかい?ロックの変化が良い事か悪い事かも知らないのに、
君達にそんな事をする資格があるのかな?」
コンコンはリリアーナ達が何か言う前に、さらにまくしたてた。
「個人的な好奇心や知識欲を満たすためだけだとしたら、僕はさらに軽蔑するだろうね。
例えそれが好意からだとしても、干渉される相手からすれば迷惑だと知るべきだ。」
コンコンはメラルを見た。
「君もそう思わないか?」
コンコンは、必ずしもメラルが自分に賛同するとは思わなかった。
メラルはリリアーナに疑われていると思い、その疑いを晴らそうと考えている。
そんな時に安易にコンコンに同意しては疑いを増すばかりだ。
しかし、だからこそ試すのだ。自分がどこまでメラルを信用していいのかを…
ロック達が箒に乗って出て行ったあとまで、グレイズはずっと咽ていた。
あんな発言で驚かない人が居るだろうか?
>248
もう一杯水を呷っていると、リリアーナ達がずかずかと厨房に入ってきた。
グレイズが言えた話ではないが。
>「グレイズ、おなかすいてない?やっぱり狼だけに肉系が良いかな?」
リリアーナが隠し食料庫から取り出したものは…スモークハム。
魚系が好きなグレイズは少し不満だったが、仕方が無いという事で一応貰った。
ついでにサンドイッチ用パンとレタスを数枚ずつ頂戴しておく。
用務員と思われる方が来た様なのでリリアーナが呼び出した扉をくぐった先は―――
森だった。
レイドや先程のキツネ、あともう一人女生徒が居た。
其処からまた話が有ったのだが、人狼だと集中力が持たないのかぼぉーっといていた。
>250
>「ちっ、まずいな。
>今見付かったら色々と面倒だ。(主に状況説明が。)
>よし、バックレんぞ。
>よいしょっと。」
ん?と、顔を上げれば、少女を抱えたレイドが逃走していた。
ロリコンという言葉が頭を過ぎるが、それよりも大事なことがあった筈…
うんうんと唸りながら考え込む。そして先程の事を思い出した。
>「鼻が利くならレイド先生にこれを渡して。お願い。」
そう、アルナワーズに押し付けられた白紙…いや、よく見たらキスマークが付いている羊皮紙。
「……がっあ!(やっば!)」
だが、時既に遅し。
もう姿も見えなくなっていた。
さてどうする。今更だが複数の足音が此方に近づいている。
【とりあえず…レイドを追いかけろ。】
「がう。(うん。)」
レイドが向かった先にこそこそと逃げ出す。
>257
もう時計の短針は22時を回ろうかという頃。
グレイズが漸くレイドの部屋の前まで辿り着いた。
そこまでの道のりは職員の目を掻い潜りながらだったが、それは余談としておこう。
正直疲れているが、やっぱり渡さなきゃ後がなんとなく怖い。
早く部屋に戻りたいのを我慢し、扉をノックした。
>260-261
>「リリアーナ。今さっきの事…忘れた訳じゃないわよね?悪いけど…さっきので
> 解決させる気はないわ。これからも事あるごとに謂れのない疑いを
> かけられたりしたらたまらないから。…はっきりさせて。」
「・・・あ」
リリアーナは目をぱちくりさせたあと、ぽんと手を叩いた。
「そう言えば、メラルさん今日ずっと姿が見えなかったんだっけ」
リリアーナは今日起きた一連の騒動を手短に話した。
>「リリアーナ。…まだ、疑ってるの?…そして、もしそうなら…根拠は?」
「さっきの話だけど、今はもう疑ってはいない。ギズモのお墨付きもあるしね。
でも、メラルさんの行動はかなり不自然だった。だから私がメラルさんにカマかけたことに関しては謝罪しない」
>「仕方が無いですわよメラルさんには操られた前科がありますもの そのてん私はお〜ほっほっほ!!」
リリアーナは苦笑いを浮かべた。さすがはフリージア、いつも的確に痛いところをついてくる。
「・・・・・・そもそも、コンコンの周りに残っていた魔力や結界を見て何も感じなかった?」
メラルなら、コンコンに治療を施したのも、結界で守っていたのもリリアーナの術だと気づいたはずだ。
普通なら保護していた相手に保護対象を引き渡すのが自然な流れであり本来の筋というものだ。
なのにメラルは拒否した。今回の件に関してはまったくの無関係なはずなのだ。
>「・・・・まあ冗談はさておき、なんでこの子にこんなにこだわるのかしら?良かったら理由を聞かせてくださいます?」
リリアーナも頷いた。ちゃんとした理由を聞かないと、やっぱり納得できない。
だが、返答は意外なところから返ってきた。
>262
>「それは他者を見捨てる自分を許せないからじゃないのかな?」
いつのまにかコンコンは目を覚ましていた。
「わっ!!」
ボン!と大きな煙を上げて消えうせたコンコンだったが、少し離れたところに煙とともに再び姿をあらわした。
>そこには金髪碧眼の少年が立っていた。
リリアーナは少年と自分の手を何度も見比べた後
「こ、これって俗に言う逆セクハラ―――― っ?!」
・・・・・と絶叫した。
「や、やましくなんかないもん。ちょっと犬に似てたからもふもふしちゃっただけだもん」
としゃがみこみ床に指でのの字を書くリリアーナ。
そんな彼女に、コンコンはやさしい口調で語りかけてきた。
>「リリアーナ、まず僕にはエルザが誰なのかわからないし、ロックは僕の手に負えないよ。 (中略)
> 僕の体から飛んで行った、ロックの“最後の心”は一体誰が今持っているの?」
今の説明で、リリアーナは全て理解した。
どうやら食堂につく前にアルから説明された話が真実で、エルザに説明したアレは真っ赤な嘘だったようだ。
アルが嘘をつくのは非常に珍しいが、理由はなんとなくわかっていた。
多分エルザとロックの両方を助けようとしたのだろう。
あのまま放置すれば、エルザはロックの心を自分で塗り潰していたかもしれないのだから。
(・・・・・あれっ?!ということは情事って・・・・・・・何?)
>「まあ、別にいいけど。ロックが変わったって?その原因を調べてどうするつもりなのさ? (中略)
> 君達にそんな事をする資格があるのかな?」
リリアーナはふっと現実に引き戻された。
コンコンはリリアーナ達が何か言う前に、さらにまくしたてる。
>「個人的な好奇心や知識欲を満たすためだけだとしたら、僕はさらに軽蔑するだろうね。
> 例えそれが好意からだとしても、干渉される相手からすれば迷惑だと知るべきだ。」
「ねえ、何でコンコンがそんなにムキになるの?」
あまりの剣幕に、リリアーナは毒気を抜かれているようだ。
「私がロックを気にかける理由は、一時でも彼の記憶を共有したコンコンが誰より知っているはずよ。
・・・・・ロックの最後の心がロックのものだったとしても、まあ別にどうということは無いわ。蹴られて腹立つけど。
どんな聖人君主さまだって、心の奥底に暗い闇を飼ってるものよ。
悪い心と良い心の両方あって当然だわ、だってそれが人間なんだもん。
大事なのは嫌なことから目をそらさず、少しでもいい方向に進めるよう自分を磨くことじゃないかな〜?」
本当はそんなに簡単な話ではない。それはリリアーナ自身が一番良くわかっていた。
リリアーナはそこで少し考えた後、ぽんと手を叩いた。
「・・・・・・そういえばアルが前に言ってたのよね。
相手が言葉で攻撃してきたり、必要以上に感情的になったりする時は、たいていそれが相手のトラウマなのよ〜って。
ねえコンコン、最後の言葉はロックのこと?それとも、自分自身のことかな?」
リリアーナは立ち上がると、服についたほこりをはらった。
碧い目の少年をまっすぐに見詰め返し、リリアーナは軽く首をかしげる。
「・・・・・・・・コンコンは何でそんなにロックになりたかったの?
言っとくけど『ロックの願いをかなえるためだよ☆』なーんていい訳は通じないからね」
本当にロックの願いをかなえるだけなら、コンコンがブランエンそっくりに化ければすむ話なのだ。
ロックの記憶を奪って姿を変えさせ、自分が成りすます必要などどこにも無い。
「言っとくけど都合悪くなったからって逃げ出すなら、一生軽蔑するからね」
>265
リリアーナにロックに化けた理由を聞かれたコンコンは、
わりと素直に理由を話そうと考えた。
そもそもコンコンの目的は、ロックやリリアーナ達と敵対することではないからだ。
「リリアーナ、僕は何に見える?」
金髪碧眼の少年に対して、ごくごく当然の答えが返ってきた。
「…どうかな。」
コンコンは宙返りをすると、亀に姿を変えて地面に落ちた。
「リリアーナ、僕は何に見える?」
コンコンは宙返りをすると、狸に姿を変えて地面に落ちた。
コンコンはこの後も次々と姿を変え、リリアーナ達に尋ねた。
そして、最後に再び金髪碧眼の少年に姿を戻した。
「見ての通りだよ。僕は何にでも姿を変える事ができる。何にでもだ!
僕は個でありながら無限の存在なのさ、君らとは別次元の存在なんだよ。
ふふふ…はははははははっ!」
コンコンは狂ったように馬鹿笑いをしたが、すぐにおとなしくなった。
「…そして、僕は虚ろだ。僕はどこの誰にも姿を変えれるけれど、
結局どこの誰でもない自分でしかないのさ。
この全能たる虚しさは君達にはわからないかもしれないね…」
コンコンはため息をついた。
「僕は君達がうらやましい。例えば、フリージアがフリージアなのは、
他にフリージアがいないし、フリージアはフリージア以外のものに変わらないからさ。
フリージアがフリージアたるのは、フリージアには両親がいて、
フリージアは両親から生まれた事を認識しているし、
フリージアの両親はフリージアが自分達から生まれた事を認識しているからさ。
僕にはいずれも足りない…自分らしさとか…名前とか…親とか…
僕はロックになりたかったわけじゃない。誰かの特別な一人になりたかったんだ。」
>263扉をノックする音が聞こえる。
やっぱり誰か来てしまったようだ。
渋々布団から這い出て、扉を開けた。
「どちらさん…ワオ。グレイズじゃないか、何か用でも?」
するとグレイズはキスマークだけの羊皮紙を渡してくる。
「わざわざ届けに来てくれたのか?悪いな。今度食堂で何か奢るよ。」
上がって茶でも飲んでけと言いたいところだが、時間が時間だし、正直眠い。
「他の教員に見付からないように帰れよ?じゃあな、お休み。」
バタン、と扉を閉め、キスマークだけの羊皮紙をまじまじと眺める。
すると突然ミニアルナワーズの幻影が現れ、今回の事件について報告と説明を始めた。
「ふっ…結局、面倒な事は全部俺に回って来るって事か…。」
良いよ、面倒事には慣れっこさ…。
俺はそういう星の元に生まれた。
そう思って諦めるしかない…。
どのみち狐の分の手続きもしなきゃならんと思ってたしな…。
「はあ……明日は一段と忙しい日になりそうだ。」
ポツリと呟き、俺は眠りについた。
>>267 グレイズが帰ってから数分したあと、レイドの部屋の扉が再び叩かれた
扉が開けられると、そこに立っていたのはキサラ(女装)だった
「・・・夜分遅くにすみません
それから色々言いたいことはわかるんですけどあえて何も言わないでください・・・お願いします」
レイドに色々言われる前に先に釘をさしておくと、キサラは続けて要件を言う
「・・・あの・・・寮に行きたいんですけど・・・もうこんなに遅いし・・・
教師の方で知ってる人っていったらレイドさんとあの剣士の人しかいなくて・・・それで・・・その・・・」
忘れている人もいるかもしれないが、実はキサラ、まだ寮の管理人に挨拶もしていないのだ
だがまぁ、色々やっているうちにこんな時間になってしまい、ついでに寮の場所もわからなくなったというので、頼りにできるひとを探してここまできた、というのだが
ちなみに、彼のいう剣士の人というのは、アルテリオンのことである
「それで・・・あの・・・なんとかならないでしょうか・・・と・・・思って・・・」
>267
無事レイドに羊皮紙を渡し終えたグレイズ。
はっきり言って疲れきった。普段何事も無く過ごしているだけ、リリアーナ達の『日常』は辛いものがある。
…まあ、グレイズに限れば、だが。
「がう、ぐるるがうる…。(さて、帰ろうか…。)」
【そーだな!】
のこのこと歩くグレイズに、グレイブが一言。
【……お前、何しに此処まで付き合ったんだ?】
少し沈黙が流れる。
「………がうぐる(帰ろう。)」
【……ああ。】
その時だ。
>「おい〜っすWAWAWA忘れもn…だ、誰だお前は!」
左から突然職員が出てきた。何処のT口だ。
それは兎も角としてこのまま捕まれば間違い無く説教である。
え?グレイズはどうしたか?
勿論脱兎の如く逃げ出した。それも人狼の能力をフルに使って。
次の日、でいりぃ・ふぃじるに『驚愕!職員寮に謎のフード男現る!』と小さく載っていたのは言うまでも無い。
そしてそれを毛が抜けたせいでちょっとげっそりしたグレイズが読んでいたのも言わなくてもいいだろう。
ここの人間はどうなっているのか。俺が馴染めているから相当な変人の集まりだろうと予想していたが、大当たりらしい。
人の独り言を何を勘違いしたのかややキレてくってかかったりして。
弁明が必要だったろうか?あまり謝罪は得意ではないのだけれど………
それより、友に武器を向けるのはいかがなものだろう?
疑心暗鬼にかかったら枯れ尾花も幽霊に見えるというのに。
けれど、持論としては自分の持つ感性と自分の培ってきた感覚以上に信じられるものはないからあの方がそう判断したなら、それでいいのだろう。
所詮、私の世界には何の干渉も起こし得ない事象なのだから。
………なんて下らない思考をしていると、人気。多分恐らく、学内の関係者。
辺りの悲惨な状況をしげしげと観察、一言。
「えーと君は確か・・・・・ゾフィー君だったか?」
ジュワ!とか、ヘアッ!とか言ったら良いのだろうか?
ボケのスキルは余り高くないんだけれど………
かと言ってツッコミに才があるかと言えば、ないとしか言い様がない。
言葉とは難しい。
「ああそうだったか、失礼。ではソフィア、こんな時間に森の中でいったい何をしてたんだい?
まさかとは思うが、森をこんな姿にした犯人は君なのかい?」
なにが失礼だったのか、話半分で話術についての考察をしていたらから聞いてない。
こっちの方が失礼だ。
が、質問に答えなくては。「何って…………散歩かな?怖いもの見たさですかね。自分の行動に理屈なんてイチイチつけませんよ。
感性の人間ですから。
あと困ったもので、私は非力なのに力があると皆勘違いをなさる。
そういう事です」
淡々と言い、ふらふらと寝床へ。疲れた。あの若者達に関わると、俺はきっとろくな目に合わない。
でも、きっと関わるんだろうなぁ………
だって、そう思うから。感性の人に理由や理屈はないものだ。
>263>265>266
くしゃみをするコンコン
フリージアはあわてず騒がずギズモを盾にした
「ヒドイヤ オカアサン」
「文句言わないの男の子でしょ」
>「や、やましくなんかないもん。ちょっと犬に似てたからもふもふしちゃっただけだもん」
フリージアは何かを納得したかのごとくうなずいた
「気持ちはわかりますわ」
もしコンコンが猫科の動物であったら同じことをしていただろう
アルテリオンにはしなかったのは彼女の姿が人間よりだったためである
>「僕の体から飛んで行った、ロックの“最後の心”は一体誰が今持っているの?」
フリージアはその一言でやっとあの光の弾の正体が判った
「・・・・そういうことでしたのね」
>「僕は君達がうらやましい。例えば、フリージアがフリージアなのは、
他にフリージアがいないし、フリージアはフリージア以外のものに変わらないからさ。
フリージアがフリージアたるのは、フリージアには両親がいて、
フリージアは両親から生まれた事を認識しているし、
フリージアの両親はフリージアが自分達から生まれた事を認識しているからさ。
僕にはいずれも足りない…自分らしさとか…名前とか…親とか…
僕はロックになりたかったわけじゃない。誰かの特別な一人になりたかったんだ。」
「そうですわね・・・私にはお父様も・・・もう死んでしまったけれどお母様もいますもの」
その死んだ母親もフリージアが臨死体験をすると必ず顔を見せてくれる
たまに連れて帰られそうになるが・・・
「でも姿を変え他人と入れ替わってもその人そのものにはなれませんわ・・・
私がだんなに頑張ってもギズモちゃんの本当の母親になれないようにね」
「オカアサン・・・・」
ギズモは考えた・・・そういえば自分の本当の両親は何処にいるのだろうか?
やはり魔界なのだろうか・・・と
「逆に自分にとっての特別な一人がいない人は逆に誰かの特別な一人になれないのではなくて?」
>536……誰かが再度扉をノックしている。
誰っすか。何の用っすか。
勘弁して下さいよ先輩。
自分かなり眠いんすよ。
「…今度はどちらさn…?」
>「・・・夜分遅くにすみません
それから色々言いたいことはわかるんですけどあえて何も言わないでください・・・お願いします」
>「・・・あの・・・寮に行きたいんですけど・・・もうこんなに遅いし・・・
(中略)・・・それで・・・その・・・」
>「それで・・・あの・・・なんとかならないでしょうか・・・と・・・思って・・・」
なんとかならないでしょうかって君ね……。
はぁ…仕方無い。
「その格好でウロウロすんのもアレだしな…。
とりあえず今日は泊まってけ。そこに布団敷いてあるから使って良いぞ。」
んじゃ俺は少女と一緒にベッドで…って訳にもいかないよな…。
「よし、準備完了。」
散々悩んだあげく、台所に布団を敷く。
「早く寝ろよキサラ〜。
明日は俺もちょっと用事があって朝早いからさ。
そいじゃお休み。」
ふぅ…やっと眠りにつける…。
じゃ、お休みなさいっす。
>271
> 「逆に自分にとっての特別な一人がいない人は逆に誰かの特別な一人になれないのではなくて?」
コンコンはフリージアのその言葉を受けてギクリとした。
たしかに自分は誰かから愛されることを切に願っていたが、
逆に愛されたいと切に願っていた者に愛を与えた事が今までにあっただろうか?
「わからないよ、フリージア。僕が誰なのかわからないように、
僕が誰を愛せばいいのかを。
僕は誰かから本気で愛されたことがないんだ。
そんな僕が、どうして他人を愛する方法を知っているというんだい?」
コンコンは横を向いた。
「君達のような哺乳類は親から愛を教わるものだ。
さっきも言っただろう。僕にはそれが足りないんだ。」
コンコンはあきれたように両手を持ち上げた。
「そういう意味では、ロックには共感がもてるね。
彼は母の愛というものを知らないんだ。」
>>272 扉を開けたレイド先生は、明らかに眠そうな顔をしている
おそらく寝る前だったのだろう、知らなかったとはいえ、申し訳なく感じてしまう
>「その格好でウロウロすんのもアレだしな…。
とりあえず今日は泊まってけ。そこに布団敷いてあるから使って良いぞ。」
>「早く寝ろよキサラ〜。
明日は俺もちょっと用事があって朝早いからさ。
そいじゃお休み。」
「あ・・・お・・・おやすみなさい」
お言葉に甘えて布団に潜り、しばらくしてから先生の寝息が聞こえてくる
・・・と、そういったところで、ふと気がついた
(・・・僕のこと・・・覚えてくれてたんだ・・・)
それはとても些細なことだが、彼にとっては、当たり前とはいえないことなのだった
組織にいたときは、仲間・・・と呼べるかも怪しい同僚は、全て番号で呼ばれ、名前という名前があったのは、自分を含むほんの数人だったからだ
(・・・・・・なんだろう・・・・・・この・・・感じ・・・)
そう思いながら、キサラは気付けば眠りについた
>271 >273 >266
コンコンはリリアーナ達の目の前で、次々姿を変えていった。
最後に元の少年の姿に戻った時、リリアーナは思わず拍手しそうになったくらいだ。
再びコンコンは少年の姿に戻った。
>「見ての通りだよ。僕は何にでも姿を変える事ができる。何にでもだ!
> 僕は個でありながら無限の存在なのさ、君らとは別次元の存在なんだよ。
「・・・・・・自慢?ねえ、これってどう見ても自慢よねっ?!」
変身術の適性が無いリリアーナは、コンコンを指差し小声でフリージアに訴えた。
だが、狂ったように笑い出したコンコンの悲痛な声に、ようやく居住まいを正す。
>「…そして、僕は虚ろだ。僕はどこの誰にも姿を変えれるけれど、
> 結局どこの誰でもない自分でしかないのさ。 (中略)
> 僕にはいずれも足りない…自分らしさとか…名前とか…親とか…
> 僕はロックになりたかったわけじゃない。誰かの特別な一人になりたかったんだ。」
どうやら本当にトラウマだったらしい。
なんだかこれでは弱いもの苛めをしているようだ。
> 「でも姿を変え他人と入れ替わってもその人そのものにはなれませんわ・・・
>「逆に自分にとっての特別な一人がいない人は逆に誰かの特別な一人になれないのではなくて?」
>「わからないよ、フリージア。(中略)僕は誰かから本気で愛されたことがないんだ。
> そんな僕が、どうして他人を愛する方法を知っているというんだい?」
>コンコンは横を向いた。
>「そういう意味では、ロックには共感がもてるね。
> 彼は母の愛というものを知らないんだ。」
「・・・・・・私も生まれた時母を亡くしたから、母親の愛は知らないわね」
ずっと黙っていたリリアーナが口を挟んだ。
「とりあえず、さ。コンコンは迷惑かけた皆にちゃんと謝ること。
もう悪いことしないって言うのなら、今日までのことは全部水に流してあげるわ」
リリアーナは困ったように頬を人差し指でかきかきした。
「コンコンの考え方だと、孤児の人はどうなっちゃうのかな?
・・・・・・・あのね、私が思うに、愛する心を育てるのは血の繋がりじゃなくて、関係性じゃないかな。
愛だってそんな特別なものじゃなくて、誰の心の中にもちゃんと備わってるものだと思う。だから、大丈夫。
コンコンは今まで魔法に頼りすぎてたから、きっと気づいていないだけじゃないかな」
リリアーナは一旦言葉を切り、コンコンを見つめた。
「そう言えばさっきメラルさんは、コンコンを私に引き渡そうとしなかったのよね。
そりゃもう断固断るって感じで、私と争うのも辞さない構えだったのよ? 何でかしらね?」
リリアーナはいたずらっぽい目で、相変わらず無表情のメラルに「そうよね?」と笑いかけた。
「誰かの特別な一人になるために、コンコンの魔法はいらないんじゃないかな。
無理やり誰かの真似をする必要なんて無いのよ。そんな時はね、こう言うの。『友達になって!』―――― ってね!」
リリアーナはコンコンを刺激しないよう、そっと移動した。
一歩足を踏み出せば触れられる位置で足を止め、じいっとコンコンの表情を伺う。
「私達は普通の人間だから、本当の意味でコンコンの苦悩は理解できないのかもしれない。
ううん、例え人間同士だとしても、他人の苦痛は自分の物差しで察してあげるくらいしか出来ないの。
どんなにもどかしくても、身代わりにはなってあげられない」
リリアーナは遠い目をした。もしかしたら夏休み前の事件のことを思い出しているのかもしれない。
「でもね、そんな私でも、コンコンの『特別な誰かを探す手助け』ならきっと出来るわ。
お母さんにはなれないけど、友達にならなれると思わない?
困った時にはそばに居て、一緒に悩んであげることだって出来る。・・・・・・それじゃダメかな?」
人慣れない動物にするようにそっと手を差しのべる。
「私はリリアーナよ、あなたはコンコン・・・でいいのかな?
もし名前が無いのなら、私達が名付け親になってあげる。好きな名前で呼んであげるわ。
――――ねえ、コンコンは何て呼ばれたい?」
>「・・・・まあ冗談はさておき、なんでこの子にこんなにこだわるのかしら?
良かったら理由を聞かせてくださいます?」
>「・・・・・・そもそも、コンコンの周りに残っていた魔力や結界を見て何も感じなかった?」
メラルは返事に困った…いや、話す事を躊躇った。
フリージアもリリアーナも自分も昔の事を知っている。
しかし…コンコンは知らないのだ。もちろん、メラルの力の事も。
すでに克服しつつあるとはいえ、まだ簡単に割り切って話せる事でもなかった。
>「それは他者を見捨てる自分を許せないからじゃないのかな?」
コンコンの言葉が聞こえた。しかし…的を射ているようで少しピントがずれている。
しかし…それを指摘する事は話す事と同義の為、それ以上を言う気にはなれなかった。
これで解決するのならそれでもいいのではないか?とも思った。
そしてコンコンは転移…と同時に擬態の術も使ったのだろう。少年の姿になり、話し始めた。
コンコンのリリアーナに対する厳しい言葉を聞き…メラルはけして表情には出さなかったが、
それでも…メラルを試す、と言う意味においては最適に近い効果を出していた。
最も、メラルにとっては、試されているのは全く別のことなのだが…。
(表向きはロックのことを話しているけど…これはこの子にもそのまま繋がる事。
死にたがると言う状態がけしていい状態でないとわかるのは確かでも…
個人的な好奇心…自己満足などで人を助けようとしているとすれば
コンコンにとっては迷惑。という事。そして、コンコンの持ち出した理由は…
助ける事によって自己満足を得ようとしていると言う事。)
俯いたまま、話すかどうか躊躇っている間にリリアーナとコンコンの話はどんどん続き、
リリアーナに笑いかけられ…ようやく決心がついたのか、話し始めた。
「リリアーナ達には、前にも話したわよね。…私にも、普通の術とは明らかに違う
特殊な力がある事を。…これが…そう。」
メラルは、空いた手を改めて左目にあて…本来の目を隠している術を解除する。
そして、瞳を取りまくようにして書かれた文字が輝くと同時に…
メラルの全身が藍色の霧に包まれた。と言っても、霧が広がりを見せる事はないが。
そして、事情を知らないはずのコンコンにもわかるよう、ある程度の説明を加えつつ続けた。
「知っての通り、私は昔、この力の暴走で大惨事を引き起こして…ね。その後、私は…
まるで生ける屍のようだった。私は幸い、環境にも仲間にも恵まれて
自分を取り戻せたけれど…そうじゃない人もいる。だから私は、
"自分の意思で自由な行動を取れる"間くらいはそういう人の為に環境を整えて、
立ち直る手助けをしていきたい。それが…この子に肩入れする理由。」
そして、一呼吸ついてから続ける。
「最初、あの森でこの子を見た時は…正直、状況がつかめなかったわ。
でも…リリアーナがこの子を保護しようとしていた節は見えた。
そして、目を見て…昔の私を見ているような錯覚に捕らわれて…
それで話を聞くことにしたの。でも…その後で、リリアーナ。あなたは…
この子を魔獣扱いした。だから…この際はっきり言うわ。
この件に関して…あなたを敵と見做した。それが引き渡さなかった理由。」
次に、メラルはコンコンを見て言った。
「さっきの質問だけれど…あなたの言う通り、そんな資格も無ければ干渉される方からすれば迷惑でしょうね。
でも…いい事か悪い事かを判断して悪い事なら元に戻すように働きかけ、
いい事ならばただ見守る。これは、例えその時干渉される相手にとって迷惑でも
結果的に相手に悪いようにはならない。私はそう思うわ。私は実際に、それで救われたから。
それと…」
メラルは、一度リリアーナとフリージアを見てからコンコンに視線を移して、話を続けた
「言いたい事はほとんど二人が言っちゃったみたいだけど…私からも一つ言っておくわ。
確かにあなたはいろんな物に変身できるみたい。でも、けして無限の存在なんかじゃないわ。
…変身しても、あなたは変身した時に起きた事も、見た物も覚えているでしょ?
…そういうものを見てきたあなたの心。そして、変身しても変わらなかった
あなたの魔力。そして魂。きっと…それこそがあなたのあなたらしさであり、あなたそのものなのよ。
一度、変身をせずに、元の姿で生活して、自分を見つめなおしてみるといいかもしれないわ。
そうすれば、それを実感できるかもしれない。」
そして、メラルはコンコンの目をじっと見つめた。
>275
> 「・・・・・・私も生まれた時母を亡くしたから、母親の愛は知らないわね」
> ずっと黙っていたリリアーナが口を挟んだ。
> 「とりあえず、さ。コンコンは迷惑かけた皆にちゃんと謝ること。
> もう悪いことしないって言うのなら、今日までのことは全部水に流してあげるわ」
「うん、わかった。ごめんよ、みんな。僕がわがまますぎたんだ…」
> 「(前略)愛だってそんな特別なものじゃなくて、誰の心の中にもちゃんと備わってるものだと思う。だから、大丈夫。
> コンコンは今まで魔法に頼りすぎてたから、きっと気づいていないだけじゃないかな」
「気づいていない、だって?魔法の力を持つからこそ見えないものがあるのかい?」
コンコンは理解に苦しんだ。
> 「そう言えばさっきメラルさんは、コンコンを私に引き渡そうとしなかったのよね。
> そりゃもう断固断るって感じで、私と争うのも辞さない構えだったのよ? 何でかしらね?」
コンコンはメラルの方を見た。
>276
> 「リリアーナ達には、前にも話したわよね。…私にも、普通の術とは明らかに違う
> 特殊な力がある事を。…これが…そう。」
メラルは自分の能力とそれにまつわる過去、そしてコンコンを助ける理由を話した。
コンコンはそれを黙って聞き、そして考えた。
> 「(前略)確かにあなたはいろんな物に変身できるみたい。でも、けして無限の存在なんかじゃないわ。
> …変身しても、あなたは変身した時に起きた事も、見た物も覚えているでしょ?
> …そういうものを見てきたあなたの心。そして、変身しても変わらなかった
> あなたの魔力。そして魂。きっと…それこそがあなたのあなたらしさであり、あなたそのものなのよ。
>
> 一度、変身をせずに、元の姿で生活して、自分を見つめなおしてみるといいかもしれないわ。
> そうすれば、それを実感できるかもしれない。」
メラルはコンコンの目をじっと見つめた。 コンコンもじっとメラルを見つめ返した。
横からリリアーナの声が聞こえてくる。
> 「誰かの特別な一人になるために、コンコンの魔法はいらないんじゃないかな。(中略)
> もし名前が無いのなら、私達が名付け親になってあげる。好きな名前で呼んであげるわ。
> ――――ねえ、コンコンは何て呼ばれたい?」
「ヘレン、僕が初めてあった人間が僕を呼んだ時の名前だよ。君に呼んでほしい。」
コンコンはメラルを見つめたまま言った後、リリアーナの方を見た。
「正直に言うとね、僕は自分の本当の姿がわからないんだ。
今は男の姿をしているけど、本当は女かもしれない。
雌雄さえあいまいなんだよ。僕はその時その時都合のいいように変身してきた。
でも、それはもうやめる。僕はこれから先ずっと、ただの少年へレンだ。」
コンコン改めへレンは全員に背を向けた。
「メラル、僕はこの学園でいろいろ見てみるとは言ったけど、学生になるつもりはないよ。
僕がヘレンとして人間に馴染むにはまだ時間が必要なんだ。
僕らが友達になることができるなら、またきっと会うことがあるだろう。
その時まで…」
ヘレンはメラルを指差した。
「君が僕の」
ヘレンは最後まで言わなかった。「僕の」とまで言ったところで、
彼の体が煙に包まれ消えてしまったからだ。
>271 >276 >277
「・・・・・・・また会えるわよ。そう遠くないうちに、きっとね」
リリアーナはぽん、とメラルの肩を叩いた。
もしヘレン少年と再会できたら、シャンデリアではなく狐うどんで歓迎してあげよう。
リリアーナはそんなことを考えていた。
「さ〜って!これにて一件落着・・・・・・なんだけど」
リリアーナは、はあ〜、っと大きなため息をついた。
「ねえフリージア、ロックのハイパーバカボンパパモードは、いつになったら解除されると思う?
ロックは他人の精神と共存可能な特異体質だけど、やっぱり今の状態はエルザの心が欠けた影響なのかな?
・・・・・・そのうち『アンジェリーナのパ〜パなーのだ〜!!』とか言い出しそうで・・・・・私・・・・・・」
ここでリリアーナのお腹がぐうとなった。
リリアーナは真っ赤になってあたふたした。そういえば昼から何も食べていなかった。
「・・・・・・帰ろっか」
リリアーナはカドゥケウスを使った。
蒼い扉をくぐり、リリアーナは寮の裏手の林に移動していた。
「本当は私の部屋と直接繋げたかったんだけど、残念ながら無理なんだよね〜」
空間系の魔法を使えば寮母にばれてしまうし、それ以前の問題でリリアーナの自室は幾重にも結界が張られている。
空間をつないで結界を壊したら・・・・・・・考えるだけで恐ろしい。
リリアーナはカドゥケウスを握ると、小さく呪文を唱えた。
カドゥケウスは応えるように淡く輝き、無数の光に姿を変え霧散する。
「じゃあね、また明日!」
「――――あらぁ、こんな夜更けにお散歩?」
寮の廊下で呼び止められ、リリアーナはぎくりと足を止めた。
ゆっくりと振り向いた先には、満面の笑みをたたえた白衣の女性が立っていた。
「え・・・・・あの・・・・・ははは。まあそんなところで・・・・・・・」
「ご存知かしら?今日ねぇ、食堂に金色のネズミが入ったんですってよ。
そのネズミは氷のバリケードで食堂を封鎖した挙句、厨房を荒らしていったそうよ〜。
居合わせた猫耳さんが嘆いていらっしゃったわぁ。
それとねぇ、森の奥で誰かが魔法実験を行ったそうよぉ。
私もエース先生について視察にいったんだけど、木が折れたり焼けたりしてそれはもうひどい有様だったわぁ」
リリアーナは居心地悪そうに身じろぎした。
どれも心当たりがあるが、どんな意図で話しているのかとっさにわからなかったのだ。
「ねえ、散歩していたのなら何か知らないかしら?」
「いえ、何も」
「あらそう?」
白衣の女性はころころと笑った後、ポケットの中から小さな何かを取り出し、リリアーナに手渡した。
リリアーナの顔が明らかに強張る。
手渡されたそれは、アルに頼まれて回収した、『魔法の絨毯』の一部だった。
「まあ、しょうがないわねぇ、知らないのでは、ね」
>277>278
>「君が僕の」
そう言ってコンコンは・・・いやへレンは姿を消した
「メラルさん・・・あの子は最後に何が言いたかったのかしら?」
「トクベツナヒトリ・・・カ」
感慨深げに呟くギズモ
>「・・・・・・・また会えるわよ。そう遠くないうちに、きっとね」
「私もなんとなくそんな気がしますわ」
「コンキョナンテヒツヨウナイネ」
今まで散々何の根拠間無いけどねと言ってきたギズモはこのときばかりはこう言った
>「ねえフリージア、ロックのハイパーバカボンパパモードは、いつになったら解除されると思う?
ロックは他人の精神と共存可能な特異体質だけど、やっぱり今の状態はエルザの心が欠けた影響なのかな?
・・・・・・そのうち『アンジェリーナのパ〜パなーのだ〜!!』とか言い出しそうで・・・・・私・・・・・・」
「さあ?でも今まで何とかなってきたんだからそのうち何とかなるんじゃありませんこと」
「ナンノ(ry」
「ギズモちゃん・・・最近それが口癖になってませんこと?」
>「・・・・・・帰ろっか」
「・・・・・そうですわね」
そして
>「じゃあね、また明日!」
「ええ・・・また明日」
「モウネムイヨ オカアサン」
「そうね・・・お肌にも悪いしとっとと寝てしまいましょうか」
本当に今日は色々あった
特に出会いというイベントに関してはこれまでの人生で一番多かったのではないだろうか
そう思いつつ氷の棺に身を納めるとフリージアは静かに目を閉じた
明日はいい日になりますように・・・・
答えに窮したリリアーナの視界がふっと翳った。
びくっと飛び上がり反射的に後ずさりしようとしたリリアーナの頬を、白衣の女性の手が包み込む。
足が動かない。まるで床に縫い付けられてしまったようだ。
蛇に睨まれた蛙はきっとこんな感じを言うのだろう。
>「じゃあ・・・・・何か思い出したらよろしく、ねぇ?」
リリアーナが死に物狂いで頷くと、白衣の女性は嫣然と微笑み立ち去っていった。
「な、何だったの今の・・・・・・・・・・」
リリアーナは寒そうに二の腕を摩った。まだ夏なのに、なんだか寒気がした。
「ただーいまー!アル、言われたムガルもって帰って・・・きた・・・ょ・・・」
リリアーナの声が次第に尻すぼみになっっていった。
灯りがついているから起きているとばかり思っていたのだが、あらためて時計を見ると10時を回っていた。
リリアーナはそっと扉を閉めると、忍び足でベッドに近寄った。
「アル、風邪ひくわよ」
同室のアルナワーズは目を閉じてベッドに横になっていた。珍しく服も着替えていない。
普段の彼女からは考えられないことだ。よっぽど疲れたのだろう。
リリアーナは申し訳ない気持ちでいっぱいだった。
「今日は本当にありがとね。おやすみなさい、良い夢を」
薄手のタオルケットを取ってくると、そっとアルの上にかけ灯りを消した。
リリアーナは戸棚の中からパンとチーズを取り出した。
今から食べると太るかもしれないが、背に腹はかえられない。
パンを食べながら、今日の出来事を思い返す。
今日は本当にいろんなことがあった。
金狐だったヘレン少年は、メラルがついている。だからきっともう大丈夫。
問題は、ロックとエルザのほうだ。
(・・・・・・そう言えば、ロックはエルザのことどう思ってるのかな?)
「やっぱり元は同じ人間だから、強く惹かれ合っちゃったりもするのかな・・・・・・」
心の中で言ったつもりだったのに、いつのまにか口に出していたようだ。
慌てて口を押さえてベッドのほうを伺うが、幸いアルが目を覚ました気配は無かった。
ショタになってしまった吸血鬼の事。
バスケットを持っていったまま行方不明になってしまったキサカのこと。
結局レモンパイをおごり損ねてしまったミシュラ。
いつのまにか姿を消していたキキ。それから・・・・・・。
一生懸命違うことを考えようとしているのに、気づけば結局最初の考えに戻っている。
エルザとロックのことだ。
エルザのことを考えると、なんだか胸の中がザワザワして落ち着かない。
今度会った時、友達みたいにちゃんと普通に話せるだろうか?親切に出来るだろうか?
こんな事ばかり考えてしまう自分が情けない。
ヘレンになら自然に出来る自信がある。なのに、どうしてエルザだとこんなに構えてしまうのだろう?
この先エルザには試練が待ちうけているとわかっているくせに。
―――― エルザの魂はロックと同一なのだから、今のエルザの器は当然彼女の肉体ではない。
(アルがエルザの身体をどうやって調達してきたのかまではわからないが、
いくら魔法学園とはいえそんなに都合よく人間の身体が落ちているとも思えない)
そう遠くない未来、エルザは自分の真実に気づくだろう。
出来ることなら、その時彼女の力になりたいと思う。
その気持ちは本心だ。
確かにそのはずなのに、耳元で囁く声がする。
――――偽善者、と。
リリアーナは殆ど手をつけていない夜食を皿に戻した。
「もう寝よ・・・・・・・・」
身支度を終えたリリアーナは、そっとアルの隣に潜り込んだ。
だが熱帯夜でもないのに、その夜なかなか寝付くことが出来なかった。
>「ヘレン、僕が初めてあった人間が僕を呼んだ時の名前だよ。君に呼んでほしい。」
>「正直に言うとね、僕は自分の本当の姿がわからないんだ。
今は男の姿をしているけど、本当は女かもしれない。
雌雄さえあいまいなんだよ。僕はその時その時都合のいいように変身してきた。
でも、それはもうやめる。僕はこれから先ずっと、ただの少年へレンだ。」
>「メラル、僕はこの学園でいろいろ見てみるとは言ったけど、学生になるつもりはないよ。
僕がヘレンとして人間に馴染むにはまだ時間が必要なんだ。
僕らが友達になることができるなら、またきっと会うことがあるだろう。
その時まで…」
>「君が僕の」
コンコン…いや、ヘレンは煙に包まれ消えてしまった。メラルは、
"霧"を解いてヘレンが消えた点を見つめて、呟いた。
「…ヘレン…。」
メラルの様子が、どこか寂しそうに見えたのだろうか。
リリアーナに声をかけられた。
>「・・・・・・・また会えるわよ。そう遠くないうちに、きっとね」
「そう…ね。」
しかし、メラルの様子にあまり変化は見られなかった。
どこか落ち込み気味なままである。
リリアーナ達と森で別れた後、メラルはすぐに自室に戻った。
メラルはベッドに腰掛け、机に置いた水晶球を眺めつつ呟いていた。
「相手が言葉で攻撃してきたり、必要以上に感情的になったりする時は、
たいていそれが相手のトラウマ……これを隠せないのが…
私の未熟さの表れなのかもしれないわね。実際、私は…
恩人の一人でもあるはずのリリアーナに対してあそこまで感情的になっていた。
それに…」
しばらく、場を沈黙が支配する。暫くして、唐突に声が響いた。
「やめときナ。考えても…どうにかならない事もあるんだからヨ」
もちろんエミューの声である。メラルもその声に表向きは大人しく同意した。
「そうね…。エミュー。…おやすみなさい。」
しかし…口ではそう言っていたが…内心は考えまいとしても考えてしまう、
といった感じだった。目を閉じて、しかし考えてしまう。
(…それに、理由はそれだけじゃない。多分私は、リリアーナと…)
この日…メラルは…久々に眠れぬ夜を過ごす羽目になった…。
ここまでの話をセーブしますか?
Yes ←
No
フィジル島にも秋がやってきました。
とある秋の午後。
心地よい秋風に吹かれながら三人の女子生徒がお茶会をしていた。
とはいっても、カップに手をつけているのはただ一人。
他の二人は目に置かれた怪しげな赤黒い液体を前に、その存在を全力で無視していた。
女が三人集まれば咲くのは恋の話。
しかしこの三人の会話は一般のものとは少し違っていた。
「まあ判ってるんだけどね、所詮は生体反応さ。」
「あら〜、そんな事はないわよぉん。」
気だるそうに言い捨てる言葉に、面白そうな匂いが込められた言葉が否定をする。
「オメーだって判ってんだろ?
精神や脳みそ弄繰り回してる術をやってれば辿り着いちまうんだから仕方がねえよ。」
「その割には行動が伴わぬでおじゃるな、お主は。」
ぴらっと取り出した一枚の写真に飛びつく女子生徒にもう一人が呆れ顔で呟いた。
ばつが悪そうな顔をしながらしっかりと写真を懐に入れる女子生徒。
そんな様子を微笑ましく見守っていた一人の女子生徒が言葉を綴る。
「そういう矜持を持っている貴女の事、好きよぉ〜。
じゃあ・・・一つ賭けをしましょうか。
今度のバレンタインデー。そして学園イベント。そこで【ソレ】の存在の有無を確かめましょう?
私は存在する方にベットするわよぉん。」
言葉を締めくくりニタリと笑みを浮かべるその顔に、他の二人もそれぞれ笑みを浮かべ顔を寄せ始める。
錬金術・薬物・幻術の三人のエキスパートが咲かせる恋の話はいつの間にか学園を巻き込む陰謀へと変っていった。
麗らかな秋の日の午後。
赤のバレンタイン戦争はこの日この場を以って始まりを告げるのであった。
―――― 魔法少女達と冒険するスレ 7thシーズン ――――
スレのお約束は>3
テンプレは>4
学園の説明は>5
今までのあらすじは>6を参照。
【今回のイベント&ルール概要】
今回のイベントは、亜空間魔本『リバース』の中が舞台。
参加者達は魔本の中で戦い、相手が持つペンダントを奪い合います。
ある一定の数のペンダントををごみ箱に捨てることが出来た者の前には、宝箱へ至る道が示されます。
誰かが宝箱をあけ外の世界への鍵を手に入れた時点でゲームは終了し、現実世界に帰還できます。
上位3名までが表彰されます。
本来は生徒及び教師達の交流・レクリエーションが目的であるイベントです。
しかし今回は、とある女子生徒を巡っての争奪戦も兼ねているらしいです。
(秋のバレンタインで彼女が配ったチョコを食べた人間が、全員彼女に惚れてしまったらしいです。
媚薬の治療薬入手には時間がかかるため、
事態の収拾案として今回のイベントの優勝者に彼女を進呈するという条件が出されました。
参加者の一部が無駄に気合が入りまくっているのは、おそらくそれが原因かと思われます。
今回の魔本『リバース』への参加ルールは以下のとおり。
@勝負は仮想現実の世界で行われる。つまり死んでも死にきれない。
A各プレイヤーには、自分そっくりの小さな人形がついたペンダントが渡される。
ペンダントは自分が持っていてもいいし、どこかに隠してもいい。
誰かに預けるのも自由である。
ただし、ペンダント自体に細工はできないし、魔法もかけられない。
微弱ながらオーラが出ているので、隠すことは出来ても所在がばれる可能性がある
Bフィールドには魔法のゴミ箱が設置される。
プレイヤーは自分のペンダントをゴミ箱に投下されると負け、
その世界におけるゴーストになる。
Cプレイヤーが他のプレイヤーに倒された場合、
そのプレイヤーはゴミ箱の前で復活する。
そのプレイヤーが持っていた人形(自分の物も含む)だけはその場に残る。
自分の人形が残ってさえいれば、何度でも復活できる。
Dゴーストは戦いやペンダントには干渉できないが、偵察等の協力はできる。
誰に協力するかは自由である。
E他人のペンダントを奪ったり、待ち伏せすることが出来る。
ただし幻術などでペンダントの偽造は不可。ペンダントに似た波動を使って罠を張るのも不可。
Fペンダントは破壊しても自己復元する。また、教師のペンダントは生徒3人分の価値がある。
G戦闘中リアル事情で3日以上動けないとわかっている場合、避難所で連絡すること。
事後の処理は本スレ内で対処するのが望ましいが、無理なら「逃亡した」「敗退した」など、方針だけでも伝えること。
連絡無しで3日経過した場合、対戦相手は決定リールで相手を倒せる。
Hメ欄か文章の最後に、収集アイテムの所持or管理数、ごみ箱に投下した個数を記入。
I魔本の中でアイテム獲得は可能だが、効力は本来の1/3程度。必要なものはあらかじめ持参すること。
開始時に学園からアイテムの箱が支給される。中身はあけてのお楽しみらしい。 .
(参考資料)
※一般生徒、教師用に発表された説明を基にしているため、事実と異なる部分があります
真実を知りたい方は過去ログ参照。
【第四部】
始業式の翌日、ロック・ウィルは無断欠席をしました。
あるものはお見舞いに、またあるものは成り行きで男子寮の自室を訪れます。
ですが部屋にいたのはロックではなく、記憶をなくした見知らぬ少女でした。
残された手がかりは、部屋に残されたメッセージと、少女が持っている一本の杖だけです・・・・。
はたして少女の記憶は戻るのでしょうか?
そして私達は、行方不明のロックを無事に見つけ出す事ができるのでしょうか?
(この日に起きた事件、および関連する噂話一覧)
・吸血鬼がショタ化。
・ロックが女の子を連れこんでいた。その日爆発騒ぎが起きたが、なぜか修理費はレイド先生持ち。
・食堂でキキにロックがバトルを仕掛けた。
・ロックに婚約者がいたと知ったリリアーナが、食堂にいたロックにシャンデリアを落とし、婚約者をひっぱたいた。
・シャンデリアを落とされたロックは実は偽者だった。金色の液体と化した偽者はキキが回収していった。
・森の奥で誰かが魔法実験を行ったらしい。森が破壊されたため、エース先生を始めとする学園関係者が様子を見に行った。
・人間時計のように規則正しい生活のアルナワーズが、この日の夕食にもお風呂にも来なかった。
・夜、食堂に食料泥棒が入ったらしい。
・ロックがかわいい女の子と二人、箒で空を飛んでいた。
・レイド先生に隠し子がいたらしい。
・キキが動く精巧なフィギュアを校内販売するらしい。
・夏なのにフード+手袋+マフラー姿の怪しい大男が校内をうろついていた。
・・・・・・テンプレは以上です。
では、素敵な学園生活を。
某日、フィジル島魔法学園、某大広間。
集まった生徒達は複数にグループ分けされ、それぞれの中央には一冊のハードカバー本が置いてある。
今回のイベントの舞台である亜空間魔本『リバース』だ。
設定した空間の左右反転世界を内部に作り出す、正に競技用の代物。
生徒及び教師達の交流・レクリエーションが目的であるイベントが、あと数分で開始される。
事前のルール確認が行われる最中、ついにこの日が来た、と思う者は果たして何人いるだろうか?
バレンタインチョコの騒動より幾日幾夜、爪を研いで牙を磨き続けたのも、全てはこの日のため。
彼女を彼奴らの魔の手から守るには、自分の手で覆うしかない。その為にも絶対な勝利が必要となる。
《今度の反転世界で行われる模擬戦で勝った人のもの、というのはどうかしら?》
某トラブルメーカーの言葉が脳裏に蘇る。
懐にある獲物の感触を確認。体調は良い。身体も軽く暖めてある。
負ける要素は薄い。
「……手は綺麗に、心は熱く、頭は冷静に」
全ては、彼女のために。
「今日の勝利は、君に捧げよう――愛しのリリアーナ」
――では、以上で事前確認を終了します。本の中に入ってください――
戦が、始まる。
それは10分くらい前の出来事だった。
ここは、学園の女性教師アンジェリーナの部屋。
殺風景なこの部屋のテーブルには、大きな水晶の灰皿と、
部屋の無機質からは似合わない可愛らしい箱が二つ置かれている。
大きい箱と小さい箱があるが、小さい箱は既に開けられたようだ。
部屋には二人の人間がいた。
その一人、エルザはベッドに腰かけながら、
念入りに柔軟体操をしているもう一人…ロックを見ていた。
「ずいぶんやる気まんまんね、ロック。」
エルザはにこやかな表情でロックに話しかけた。
>「むふふ、当然なのだ!」
ロックは朗らかにそう答えた。
「今度のバトルロイヤル…優勝者には宝箱と…」
>「そう、リリアーナなのだ。リリアーナは俺の嫁なのだ、むふふ。」
「…私でも。」
ロックは、えっ?と思ってエルザの方へ振り向いた。
ロックの目に入ったエルザは、既に重い水晶の灰皿を高々と構え、
それをロックの頭に目がけて振り下ろしている最中だった。
ゴッ!!
馴れ合いでも、戯れでもない。渾身の、殺意を込めた一撃だ。
ロックは床にうつ伏せに倒れた。
ゴッ!!ゴッ!!ガッ!!ゴン!!ガッ!!ガッ!!…
エルザは倒れたロックの後頭部目がけて、何度も灰皿を叩きつけた。
何度も、何度も、何度も、何度も…
「はぁ…はぁ…はぁ……」
エルザは肩で息をしながら、もう動かなくなったロックを見下ろしていた。
暴れる心臓に苦悶の表情をしていたエルザだが、しだいに口角がつりあがってきた。
「…アハ……アハッ…あはははっ、ははははははははっ!はははははははは!!」
エルザは悪魔のような笑いを浮かべながら、動かないロックに言った。
「ガキはガキらしく夢だけ見てれば良かったのよ。」
エルザはアンジェリーナの部屋から出て行った。
ロックに代わってバトルロワイヤルに出場するために…
名前・エルザ・フォン・ブラハント
性別・女
年齢・16歳
髪型・黒いロングヘア。赤いリボンで束ねている。
瞳色・黒
容姿・東方の白装束を着用。
備考・意思を持った人形。ただし、本人は自分の事を人間であると信じて疑っていない。
自分がどこから来たのか全くわからず、現在アンジェリーナに保護されている。
ちなみに、『ロックがかわいい女の子と二人、箒で空を飛んでいた。』
の“かわいい女の子”がエルザである。
得意技・衝撃波と硬化魔法。
好きな食べ物・すっぱい物。
好きな生物・かわいい動物全般。
嫌いな食べ物・生肉はちょっと…
嫌いな金属・よくわからない。
保険に入りますか?・別にいいです。
【備考】
ロック…学園の男子生徒の一人。エルザと何か因縁があるらしい。
事前説明が行われる中、アルナワーズはゆっくりと全体を見回していた。
教師も含め、ほぼ全ての学園関係者が一堂に介しての模擬戦だ。
とはいっても、それほど殺伐としている事はない。
所詮はリクリエーション。
普段の修行の成果を存分に振るったり、日頃は接点のない者との意外な接触など。
本来は交流イベントだ。
が、勿論それだけではない者もいる。
日頃恨みの溜まった教師への復讐を目論んだり、武道大会よろしく大真面目に最強を目指す者もいる。
そういった事も含めて、例年と変わりない・・・はずだった。
そこかしこに必要以上にマジックアイテムを抱えたり、地図を広げて準備に余念のないものがいる。
マジックアイテムは鏡面世界でも手に入れられるが、効力は1/3程度だ。
必勝を期すのならば持ち込むほうが賢明といえよう。
また、魔本【リバース】の中は鏡面世界。
慣れている場所だけに、その反転配置に戸惑う事もあるだろう。
そんな一部の者達を見てアルナワーズは小さく笑みを浮かべる。
これから始まるであろう激闘を思い浮かべて。
そして、事前説明は終わり、いよいよ魔本【リバース】の中へと送られた。
光に包まれ視界がホワイトアウト。
気づいた時には既に反転世界に立っていた。
あたりをキョロキョロと見回して、アルナワーズは歩き始める。
その足取りに迷いはなく、一直線に・・・
「うふふ、無事に辿り着いちゃった。これも日頃の行いねぇん。」
ここまでくる途中、いくつかの気配は感じたが、襲われる事はなかった。
開始直後だから様子見をしたのか、あまりに無防備に歩く姿を見て警戒したのか、はたまた別の理由か・・・
ともかく、アルナワーズはゴミ箱の前にと辿り着いていた。
そしておもむろにペンダントを外すと、ゴミ箱の上に差し出し・・・手を離した。
「みんな、がんばって頂戴ねぇん。」
ペンダントはゴミ箱の中に消え、アルナワーズは微笑を浮かべたままゴーストとなった。
半透明の姿のままふよふよと浮き、上昇を続け、やがて姿は消えてしまった。
アルナワーズ・・・【リタイア】
キサラは寮の先生―――フーチに『とりあえず他人と関わるいい機会だ』と言われ、大広間にやってきた
事前説明の中、説明こそ聞いていたが、キサラの主な意識は、別のところに向いていた
(―――血の匂いがする―――)
匂いは僅かなものだったが、確かに感じ取れた
そして、その匂いの元を辿っていくと―――
(あれは…確か…先日の―――)
そして更に周囲を見回す
案の定―――というべきなのだろうか
(―――ロックが…いない…か)
彼の性格からして、このようなイベントに不参加―――ということはないだろう
むしろ、一番やる気で来そうなものだが―――
(これは…何もなく終わりそうには―――ない、な)
>――では、以上で事前確認を終了します。本の中に入ってください――
視界が開けると彼の目の前には―――図書館
「…どうも…僕も運がいいみたいだね」
キサラは図書館の中に入っていく―――その手には、一つの携帯電話―――皆からすればこの世界では見られない、異質なものだろう
そう―――キサラがリリアーナ達と出会ったとき、その手に持っていたものと同じものが握られていた―――
大広間での退屈な説明。つまりはお遊びで戦のマネ事をするという行事のあらかたの説明。
そんなモノに興味は無いし、だいたいにして工芸家や文官は戦わない者だ。
ドンパチやるならアクセサリーの一つでも作っていた方が良い。
かといってサボる程に図太くはなく、ノリ易い俺は、戦えるだけの用意はして臨んでいる。
しかし、一部の野郎共(と女性も少々)はなんか殺気だってるな。今にも食い殺してやろうとする気まで漂ってくる。
何だか高々レクリエーションにしてはイヤにノリが良すぎる。これは裏に何か有ると見るが妥当か?
少し煽ってみよう。好奇心には逆らえんのさ。
「とばっちりは勘弁しろよな。
ヘタクソに限って加減ってのを知らない」
一同、ギロリ。
おぉ、怖っ!思わず口許が緩む。
空気が揺らぐ。周りが引くのが判る。
きっと傍目にはヤバい笑い方に見えてるんだろうな。生まれつきそんな笑い方なんだけど。
ただ、言ってる内容には自信がある。自分と相手の都合に第三者を巻き込むのはバカかヘタクソだ。
どっちにも関わりは持ちたくない。見る度に思慮と思いやりは忘れてはいけないと心には刻めるけど。
その教訓が活かされてるかはまた別の話。
「じゃあ、お先」
そんな捨てセリフを残して本へ。きっとイヤミなヤツだ。
場所は寮の前。ただ、見慣れたハズの物が微妙に変わっていると、頭が言う。違和感が拭えない。
これは動くとボロがでるな………
まずは馴らすか………
ゆっくりと、寮に入る。床を、踏みしめる。
無くした何かを取り戻すように。新たに掴んだ何かを確かめるように。
学園長にエルザと少女の入園手続きを申請してから数日、俺は普段通りの学園ライフを満喫していた。
訳の分からん修理費の請求が来てたり、少女に入園について説得したり忙しかったのも事実だが。
まあなんだかんだで少女もエルザも無事に入園が済んで良かったって話。
狐については後日リリアーナから話を聞いた。
でもアイツもそのうちひょっこり学園に顔を出しに来るかもしれない。
その時には俺が責任を持って入園手続きを申請してやろうと思う。
さて、これは数日前の話であり、本題はここからだ。
俺が学園長に入園手続きの申請をしに行って、帰りに少し職員室に寄った時のこと。
>「レイド先生、そろそろ「あの日」ですね。」
俺の一番仲の良いエース先生が話しかけてきた。
「あの日?何の話だ?」
>「忘れたんですか?ほら、レクリエーションですよ、生徒と教師混合の。」
「……俺はそんな話聞いとらんぞ…。」
>「そういえば会議の時レイド先生は眠っていたかもしれませんねぇ。」
「……で、一応聞くがそれは誰が発案した?」
>「勿論、学園長先生に決まっているじゃありませんか。」
「…何をするんだ?」
>「どうやらルールを聞く限りペンダントの奪い合いのようです
その後、エース先生から細かいルール、日時、開催場所を聞いた俺は職員室を後にした。
「ま、生徒の成長ぶりを見るには丁度良いかもしれんが…。
…早速説明してやらんとな。」
その日は休暇だった為、俺は部屋に戻り少女にテレパシーでレクリエーションの説明をした。
きっとある程度ルールは分かっただろう。
そして今、俺は大広間でレクリエーションという名の戦が始まるのを待っている。
今回の戦は亜空間魔本の中で行なわれるらしい。
「しっかし皆気合い入ってんな〜。そんなに表彰されたいかね?」
>「いえ、どうやら皆さん別の目的があるみたいですよ。」
「ああ、そういや優勝者にはリリアーナが付いてくるっつってたな。
皆それが狙いなのか?」
>「ええ、どうやら。」
「な〜る。」
俺が優勝したらロックにでも譲ってやろうか…。
「…なあ、エース先生?」
>「なんです?」
「久々に…共闘といきますか?」
>「ふふっ…喜んで。生徒の皆さんには少し気の毒かもしれませんね…。」
「な〜に、敵キャラはちょっと強い位が丁度良いんだよ。」
今ここに、最凶教師タッグが結成した。
>――では、以上で事前確認を終了します。本の中に入ってください――
光に包まれ、気が付くと俺とエース先生は職員室に居た。
「エース先生、ちょっとペンダント貸して貰える?」
>「?ええ、どうぞ。」
ペンダント自体に細工は出来ない。
なら隠すしかない。
どこに?ポケット?
いや、ペンダントからは微弱ながらオーラが出てる。
なら俺専用の空間に隠せば良い。
「アナザーゲート」
これで俺とエース先生のペンダントは大丈夫。
>「良いんですか?」
「俺をギブアップさせたら渡してやるさ。ギブアップさせられたらな。」
>「そうですか…これからどうします?
教師のペンダントは3倍の価値がありますから狙ってる生徒は多いと思いますよ。」
そう、すなわち俺とエース先生のペンダントを入手出来れば6人分のペンダントを入手した事になる。
一発逆転も夢じゃない。
「とりあえずその辺歩き回ろうぜ。相手が6人以上なら逃げる。
5人以下なら2、3人分のペンダントを頂いて逃げる。
最初はこんなもんでどうよ?」
>「了解です。」
打ち合わせを終えた俺達は職員室を後にした。
カレンダーに×印をつけ、リリアーナはげっそりしていた。
「ああ、とうとうこの日が来てしまった・・・・・・・」
事の始まりはこうだ。
秋のバレンタインに、リリアーナはいつもお世話になっている友達に手作りチョコを贈った。
どうやらその中に媚薬らしきものが混入していたらしい。
まあ青酸カリや毒ニンジンでなくて良かったと思うべきかもしれないのだが。
媚薬のヨクホレールとは系統が違うため、解毒剤の入荷にはしばらく時間がかかるらしい。
だから時間稼ぎのため、アルは「今日のレクリエーションの優勝者にリリアーナを進呈する」と説明した。
アル、なんて事言うのと食って掛かると、アル曰く、
「いくらなんでも当日までには解毒剤が届くんじゃなぁい?」
・・・・・・・・その時はいいアイディアだとリリアーナも思った。
解毒剤が届けば全てが解決する、そう考えていたからだ。
だが。
「まさか今日になっても解毒剤が届かないなんて・・・・・・・・」
>――では、以上で事前確認を終了します。本の中に入ってください――
リリアーナはぐっとこぶしを握り締めた。
こうなった以上、自分で優勝するしかない!
リリアーナはマジックアイテムが入ったポーチを腰に装着すると、意を決して物陰から出てきた。
「俺の嫁!」などと叫ぶ面々がこちらに気づいたようだが、問題ない。
リバース内でのスタート地点はランダムなため、チョコ被害者の面々と顔を付き合わせる可能性は低いのだから。
秋のさわやかな風を頬に感じながら、リリアーナはゆっくりと目を開けた。
そこは屋上だった。
「わー。本当に右と左逆転してるのね」
上から見下ろす学園内の風景は、まさに鏡に映したようだった。なまじ知っている場所だけにこれは混乱しそうだ。
驚くことは他にもあった。
何時の間にか自分そっくりの人形がついたペンダントを首に下がっており、見知らぬ箱も持たされていた。
おそらく参加者全員に配られるアイテムボックスだろう。
>292
箱をあけようとしていたリリアーナは、ふと、中庭を横切っていく見慣れた人影に手を止めた。
「アル!すごい、もう誰か戦闘不能にしたの?!」
手には何ももっていないが、どうやらごみ箱に用があるようだ。懐にでもペンダントを隠しているのだろうか?
リリアーナは首をかしげた。
たしか説明では、学校をいくつかのブロックに分けており、そのブロックに一つ人形投下用のごみ箱が出現するはずだ。
そして誰かに倒された人物は、人形をごみ箱に捨てられない限りごみ箱の前で再生する。
となると、アルが倒した相手はごみ箱の前で待ち構えているはずなのだ。なのに、その姿が無い。
バグ?と悩んでいると、アルはペンダントを外すと、ゴミ箱の上に差し出し・・・手を離した。
>「みんな、がんばって頂戴ねぇん。」
「アルったら何ひとりで楽してるのよ――――!!っていうか、今回私が困ってるの知ってるんでしょ――――!!
ペンダント要らないならどーして私にプレゼントしてくれないのよ――――っ!!」
屋上で絶叫しているリリアーナを尻目に、半透明の姿のままふよふよと浮き、上昇を続け、やがて姿は消えてしまった。
リリアーナははっと我に返るなり、身を翻し校舎の中に入った。
とりあえず中庭のごみ箱に向かおうと思う。誰かと合流するのもいい。
「そうよ、何も私が優勝しなくてもいいんだわ!私なんて趣味じゃない誰かが優勝してくれれば万事解決じゃない!!」
ナーイスアイディア!とリリアーナは一人頷いた。
とりあえず今は中庭のごみ箱に向かおう。間に合えばまだアルの置き土産が転がっているはずだ。
開始前…それこそ、メラルは…普段のこういったイベントの時と全く変わらない…
そう、周囲からは…やる気がないわけではないが、何が何でも優勝しようとするわけでもない。
ただ…冷静にそれなりの力を見せられればいいや、といった感じに見えた。
外見で差があるとすれば…普段に比べ、つけている指輪が一つ増えていること、
そして水晶球を手持ちしている事くらいである。
それゆえ、けして目立つこともなく事前確認を聞いていた。
(派手に目立つのも、本気で優勝を狙っていると思われるのも得策じゃない。
もちろん、逆にカモと思われてもならない。目に留まるべきじゃないのよ。
勝つ為にはね。…エミュー、…荷が多いのと気迫が違う連中をチェックしておきなさい。)
(…了解っと…俺が自由に暴れられる機会なんてめったにねぇしヨ…思いっきり楽しませてもらうゼ?)
エミューは、メラルの羽織っているローブの中で…かなり小さい氷の人形の姿をとって
メモを取っていた、その体の中心には…銀色のカードの束がある。
(ええ、頼りにさせてもらうわ。……リリアーナ。どうせあなたは自分で優勝して、
アルの馬鹿けた提案をなかった事にしようとするんでしょうけど…その願いは、叶わない。)
>――では、以上で事前確認を終了します。本の中に入ってください――
メラルは、演技を一切崩すことなく本の中に入っていった…。
「…ここは……ありがたいわね。」
メラルの出現位置は、とある教室だった。
鏡面のようになっているが…条件はみな同じ。
ならば、周りが戸惑っている間にペンダントを稼ぐのが正解だと考えていた。
メラルは周囲を見回すと、すぐに首にかかっているペンダントを手に取り、言った、
「エミュー。」
「あいよ。」
言葉に反応し、エミューがローブの中から出て来て、体を構築する氷から
カードを1枚を残し、全てメラルに手渡した。そして、ペンダントを氷に取り込むと
ローブの中に潜り込む。そして…新たに増えていたメラルの指輪が輝くと、
アイテムボックスが唐突に消えた。この指輪は、運搬用のマジックアイテムなのだ。
作業を済ませると、今度は周囲の魔力を探り…即座に術を唱え、杖を壁の方に向けて放つ。
しかも術を唱えている間に、エミューがまたローブから飛び出し、透化した氷の鳥の姿に変じている。
しかし、何故か""ペンダントは氷の鳥に取り込まれていない。""
「…重力陣。」
そして…壁が崩落し…何と、上から瓦礫と共に男子生徒が一人落ちてきた。通常なら姿勢制御も
出来るのだろうが、開始してすぐの不意討ちだった為に少し反応が遅れていた。
当然だろう。皆がこの世界に出現してからメラルが術を放つまで、20秒も建っていない。
教室のような、一見安全に思える場所ならば、周囲の状況確認の後にアイテムの確認を
している頃だろう。そしてこの校舎。当たり前だがかなり広い為、術を唱えたからと言って
対象が自分とは限らない。そもそも今の術はあくまで"対象物の下の地面"にかける術である。
そして…その男子生徒が地面に叩きつけられ、同時にメラルが術を解除した。
しかし、解除したのは倒したと思ったからではない。次の攻撃の為だ。
どこかに隠そうとしていたのだろう。倒れた男子生徒の手に握られているペンダント目掛け、
エミューが突撃をかけていた。と同時に、倒れている男子生徒の動きを止めるため、
メラルが連射系の氷結の術を唱える。
「コールド・ファランクス」
だが、エミューが取り憑いた氷の鳥自体はとっさには見にくく、
カードが飛んできたようにしか見えない。
もちろん、氷結の術も…ただ氷を当てるだけの連射系の術としか思われない。
まして崩落のせいで埃も舞っている状況ではなおさらである。
その為、男子生徒はカードを術で迎撃し、防御の術で氷を防ごうとした。
しかし…当然ながら完全に裏目に出た。
男子生徒が迎撃の為に放った光弾はエミューにかわされ、氷結の術は
相手の防御の術に命中してメラルと男子生徒の間に氷の壁を作る。
そしてエミューがペンダントを掠め取り、崩落によって出来た縦穴から
エミューが屋上に飛び出した。そして男子生徒がエミューに意識を向けつつ立ち上がり、
飛び上がろうとした頃には、とっくにメラルは窓から飛び出していた。
(そう。あくまで目的はペンダントの奪取と廃棄。そして…"倒さずに奪えばゴミ箱の近くでの戦闘はない。")
そしてエミューとメラルは空中で合流、中庭のゴミ箱にペンダントを一つ叩き込んだ。
「…まず、一つ…次行くわよ?」
「あいよ。」
そしてメラルとエミューは校舎上空に行く…。
>298
校舎内…リリアーナの前に生徒の姿が見え、その女子生徒が振り向こうとした直後、
その女子生徒の足元に魔法陣が出現し…動きが不自然に止まり、
…その女子生徒の上の天井だけが崩落して、女子生徒を瓦礫に飲み込んだ。
そして、数秒して…埃の中からメラルが現れた。その手には、今さっき瓦礫に飲み込まれた
女子生徒のドックタグが握られている。そして、メラルがリリアーナに声をかけた。
最初はいつも通りの落ち着いた声だった。
「…安心して、リリアーナ。今ここであなたとやりあう気はないわ。でも。」
しかし…ここからが違った。メラルは明らかな敵意の篭った声で言い放ったのだ。
「今日はあなたと手を組む気はないし…あなたの優勝は断固阻止するわ。
私の家名とその誇りにかけて。」
"私の家名とその誇りにかけて。"メラルがこの言葉を口にするときは…
駆け引きとは無縁の、一切の冗長性のない本気の時。それだけである。
そして、メラルはそれを言い残すと…露骨に、白い魔力の篭ったカードを3枚地面に放り捨て、
自らの作った縦穴から飛び立って行った。追撃は可能だろうが…普通に考えれば放り捨てた
カードは罠である。追撃には危険が伴うのは言うまでもないだろう。
この学園に吸血鬼が降り立ち、過ぎる年月を幾つ経たことか。
相も変わらず騒動が絶えず、生徒や教師たちを飽きさせることなく日常が続いている。
この間起きた事件の日に図書館の管理人にして絶対的支配者のオルビア・ターナー氏におしおきをされて年端もいかぬ子供の姿にされてしまう。
人間を恐怖のどん底に陥れるはずの吸血鬼は、また一歩その夢より遠ざかってくのであった。
大広間の片隅でジミーを中心とした男子の集団が円陣を組んでいた。
グループ分けされたうちのひとつの生徒の集団だろうが、その盛り上がりようが異常である。
「すべては『つるぺた』のために!」
「「「天命は我らにあり!!!」」」
世に聞く変態紳士の大号令である。
誰もが眼を逸らしてしまう無駄に団結力が高い集団をたった一人「おー」と関心の声で見つめる魔物が一匹。
「気合と根性でこの戦いを乗り切ると言うすさまじい気迫を感じる。
うーむ、あの集団は一番厄介かもしれんな」
精神と身体が少年化したその翌日にその術は解けて、元の臆病ヴァンエレンに戻ったわけだ。
しかし、少年のときの記憶はなく、その一日だけがすっぽり抜けている。
オルビアに問いかけても適当にはぐらかされる始末で、最終的にまぁいいかと研究に没頭していた。
ちなみにバレンタイン事件の際にずっと地下図書館にもぐっていたので例のチョコは食べていない。
今回のこのイベントはただオルビアに『この戦いに勝てば、(もしかしたら)学園から出られますよ?』の一声で参加を決定した。
生徒じゃない自分が出られるのか、との問いには「学園長は特に気になさらないでしょう」と言われて納得してしまう。
そんなわけで今回のこのイベントにどさくさで参加することになってしまったのだが、いまのところ勝算があろう策はなにひとつなし。
>――では、以上で事前確認を終了します。本の中に入ってください――
意を決して変態紳士組が入っていった本に触れて世界が反転する。
気づけばそこは森の中だった。
さらさらと風が流れるように吹き抜けていくが、ここはもう作られた世界で現実ではないのと同時に戦場でもある。
首に下がった人形とペンダント、そして箱には一冊の書物が入っていた。
内容を確認するに一部は解読できないがどうやら魔法書のようだ。
「よしよし、周囲に人間の気配はない。
まずは身を隠して敵が減るのを待つべし…!」
図書館へ入ると、そこには管理人―――オルビア・ターナーが普段通り仕事をしていた
(…競技中でも図書館の管理人の仕事…か
…これはちょっと…計算外……仕方ないか)
どうにも暗いので、ランプを貸してもらうことにする
どうやらこの先生はこのイベントの戦闘には関わる気はないらしく初対面のキサラに対しても快くランプを貸してくれた
歴史関係の本の場所を聞くと、キサラはランプを手に、その方向へ向かっていく
(予定が狂ったから仕方ないか…少し探したら外に出よう)
手に取ったのは、魔法に関する歴史が記された本だった
キサラは確かに、初期研修で簡単なことは学んだが、詳しくは知らない
―――魔法についてさらに詳しく知るため―――にも見えるが
キサラはページをぱらぱらとめくっていく
速読―――というものではなく、明らかに何かを探しているようだ
「…やっぱり…載ってない…か」
パタンと本を閉じ、もとあった場所に戻す
(メラルさんとかアルワナーズさんとかに聞けば…わかるのかもしれないけど…
…下手なことをして怪しまれるわけにもいかない…また機会はある…次を待とう)
ターナー先生にランプを返し、図書館を出る
思いのほか時間は経っていないらしく、5分と経っていない
(…どこになにがあるかわからないのは…ちょっと不利かな…
左右反転になっても知らない場所同然だからその点は関係ないけど…)
当然というべきなのか、キサラは魔力を感知する能力はほぼ皆無に近い
よって、正直なところペンダントのオーラなどはほとんど感じられないのだ
(…とりあえず近くの気配に行ってみればいいか…
不意打ちで一撃で倒されさえしなければ…そこにいるのが敵なら倒す―――協力関係を結ぶべき相手なら…そのときはそのときか)
キサラはとりあえず近くに感じた気配に向かって歩き出す
と、その前に重要なことに気付く
(ペンダントむき出しじゃまずいよな…)
そう思い、ペンダントを腕に巻く
首に巻くよりは取られにくいだろう
破損する可能性もあるが、破損しても自動修復するらしいので問題ない
何重にもぐるぐると腕に巻くと、ちょうどいい長さで手首に巻けた
「…さて……それじゃあせっかくだし…イベントに参加しておこうかな…」
そう言って魔力を足に集中させ、高速で走る―――否、跳ぶ
もとよりのキサラの脚力に魔力が加えられ、それは最早常人では見えないほどの速さとなり、彼は壁を蹴り近くの気配に向かっていく
キサラがとらえた気配―――メラルの元に
メラルの姿を確認したキサラは、メラルの前方に着地する
不意を突いて攻撃することは簡単だったが、このゲームを一人で優勝するのも簡単なことではない
優勝賞品に興味はないがやるからには優勝を狙うタイプなのである
そして面識がある相手な以上、希望は捨てないでおくということだ
「メラルさんに……エミュー…でしたっけ
研修が終わってからは…まだ会ったこともありませんでしたよね」
そう言い、ふとメラルの持つペンダントに目を向ける
「…さすが…ですね
まだ開始から10分と経ってないのに…」
そう言いつつ、突然の攻撃に警戒していないわけでもない
腰にある2つの銃は、いつでも抜ける
メラルさんは直接戦闘は苦手なはずだから、相手がたとえ突然魔法を使ってきても、それより先に相手を撃てる自信があるのだった
それは10分くらい後の出来事だった。
ここは、学園の女性教師アンジェリーナの部屋。
殺風景なこの部屋の床には、大きな水晶の灰皿と、
赤い学ランの少年がうつ伏せに倒れていた。
部屋には二人の人間がいた。
床にうつ伏せに倒れている少年ロックと、
この部屋の主であり、学園の教師の一人であるアンジェリーナだ。
アンジェリーナは部屋にある大きな鏡にクリームを塗りたくり、
雑巾でゴシゴシと磨いた。ふとその手を止め、ロックに言った。
>「いつまでそうやっているつもりなの?」
「…むふふ、むふふふふ。」
さっきまで死体のように動かなかったロックは、笑いながら顔をあげた。
「アンジェリーナ、全ては計画通りなのだ。」
>「そうみたいね。」
アンジェリーナは鏡を磨き終わると、鏡をベッドのすぐ横まで運んだ。
ロックは立ち上がると、さっきまでエルザがそうしていたように、
ベッドに腰かけて鏡を見た。
鏡には、食堂の風景が映っていた。
それも、ただの食堂ではない。左右が反対になった、
魔本『リバース』における食堂だ。
薄暗い厨房で、なにやら少女がごそごそ動いている。エルザだ。
アンジェリーナはテーブルの上にあった大きい箱を手にとり、
ロックのすぐ横に腰かけて、同様に鏡を見た。
>「エルザは一体何をしてるの?」
「ああ、支給されたアイテムボックスの中に空き瓶をたくさん詰めているのだ。
きっと元々中に入っていた物は捨てちゃったんだな。
たぶんエルザにはそのアイテムの効果がわからなかったのだ。」
ロックはしばらく鏡に映るエルザを見た後、アンジェリーナの横顔を見た。
「アンジェリーナ、正直な話をしようじゃないか。彼女についてどう思う?」
>「リボンがかわいいわ。」
「そうそう、エルザは赤いリボンのおかげで可愛さ3倍なのだ。でも実際は3割増しで…
って!違うのだ!」
ロックはのりツッコミをした。
>「エルザに関して思っている事はあなたと同じよ。
> 間違いなく、エルザはあなたよりもずっと強いわ。」
「その通りなのだ。そして彼女にはアレができるはずなのだ。
俺の力では到達できなかったアレが…」
>「ハードニングを超えるハードニング。スーパーハードニングね。」
アンジェリーナは手に持っていた箱を開けた。中身はチョコレートだった。
>「ねぇ、ロック。大事な話があるんだけど。」
「後にしてほしいのだ。エルザが移動を始めたのだ。」
鏡に映るエルザは食堂から出て行った。きっとこれからリリアーナに会いに行くのだろう。
なぜなら、彼女はリリアーナを…
>「ロック、できれば今聞いてほしいの。大事な話だから。」
「う〜ん、アンジェリーナ。これが終わったら聞いてあげるから待つのだ。」
>「…わかった。」
アンジェリーナはチョコレートを口に入れた。
「さぁ、エルザ。お前の本当の力を見せてもらうのだ。」
鏡に映るエルザは校舎の中を走っていた。
この世界のどこかにいるリリアーナを探し出すために…
「……なあ?」
>「はい?なんです?」
「な〜んでこうなるかな?」
>「さあ…。」
こんな会話をしているが、俺とエース先生は今、10人以上の男子生徒から逃げている。
話は5分程遡る……
ガラッ。
職員室を出て廊下を少し歩いていると、待ってましたと言わんばかりに待ち構えていた男子集団に遭遇。
ちくしょうめ、マジックアイテムでも使いやがったな。
>「待ってましたよエース先生!!」
>「俺の彼女を返せー!」
>「皆、かかれー!」
なるほど、大体お前達の言い分は理解した。
「え〜っと…。数えなくても6人以上居るな。
……また会おう諸君!
ブラックミスト!」
>「仕方がありません。一旦戻って職員室の窓から逃げましょう。」
そして現在に至る。
なんとか無事職員室に逃げ込む事が出来たのだが、最初からこれじゃ先が思いやられる。
「はぁ…エース先生、下手にモテるってのも考えものだな。」
>「僕はモテてなんかいませんよ。」
「知らないうちに人を傷付けるタイプだよ、君は。」
>「ささ、そんな事より早く逃げないと大変な事になりますよ?」
「へ〜い。じゃ、行きますか。」
職員室の窓から外に逃げ出す事に成功。
だがこれから何処に向かおうか…。