──第二理科準備室
…ふう、三年分の掃除を一度にした心地だな。
ひとつ窓でも開けて夜風を取り込むか…
…ん?
……ふむ、これは…いい「風」だ。
…折角だ。気晴らしに久々の夜歩きと洒落込むかな。
ちー
(紫苑の方をじっと見つめる)
ちーちー
(その辺にあった角砂糖をがじがじ齧る)
ちー
タタタッ
(食べおわると外へ駆け出していく)
ちょっと、チューハイなんて飲ませたら余計に具合悪くなるでしょう
とりあえずどこかで水でも飲ませて、救急車呼びましょう。俺が何とかします
…どうも。通りすがりの青年です。初めまして
しかしどうしたんでしょうね、この人。ストレスが祟ったんでしょうか…
うーん、しかし暑い。地球温暖化というやつの影響ですかね
(『通りすがり』の周囲の気温が上がっていく)
それとももしかして、もっと単純な問題だったりして…
例えば、俺とか。もしくは、俺とか。あるいは、俺とか
(気温は上がり続ける)
…御童蝶子だな。訳あって、俺はあんたをさらわなきゃならない
おとなしくついてきてくれ。何かの弾みで、あんたを殺してしまったら本末転倒なんだ
(あちらこちらに陽炎が発生する)
それとも、激しいのがお好き?
―校庭
(空間に光の球が現れ弾け、そこに氷道・神野・アッシュ・コウダイ・陰陽師全員・ティアマトが出現して消える)
さて・・・もどっドサッ!たドササササササッ!n・・・ (氷道の上に全員が降って来て氷道埋まる)
(生暖かい風・・・妙だな)
鉄ちゃん、先戻っててください
僕はリオン探さないと。まだお店の近くをうろうろしてるかもしれないから
じゃあこれ、盗んだもの渡しとくね。頼んだよー
・・・行った、か。仮面つけなおして、マント羽織りなおしてっと
コソ泥ごときに幹部クラスが動くなんて随分人手不足なんですね、結城財閥は
いや、害をなすもの全てを全力で消しに来るところは流石はミカドさんらしい・・・
害をなせば悪、それを排除すれば正義。なるほど、わかりやすい組織ですね
琥珀の場合
「いやー、すいませんでした」
と、ざーとらしく言いながら氷道を絶対に踏むように気をつけながら降りてゆく
リュウヤの場合
さも当然のように踏みつけながら去ってゆく
クロウドの場合
氷道をなぜか睨み付けてから踏まないように立ち去る
神野の場合
1m離れた場所に埋まっている
アスカの場合
自分の胸が直前まで氷道に付いていた為
顔を真っ赤にしながら「ご、ごめんなさい」
と、なぜか謝ってから去っていく
な、鳴いた!かわいい!ああ何てつぶらな瞳!抱き締めたい!
(え?トカゲって砂糖食べるの?身体に影響はないの?)
あ、待ちなさい!勝手に出てっちゃ駄目だよ!おまけに鍵がかかってるから出れないよ!
あ、そっか…ごめんなさい、慌ててしまってつい…どうも、初めまして。
うあ、暑いな…まだ夏まっさかりって訳でも無いのに…
……それって誘拐するって事?ついてこいって言われてついてく馬鹿が何処にいるのよ。
小学生だって引っ掛からないわよ。第一、何で私が誘拐されなきゃならないのさ。
おまけに知らない奴に名前を呼ばれるのは不快なの。まず名乗りなさい、通りすがりさん。
ジャコン
(腰のホルスターから金属製の警棒を引き抜く)
……ま、何処のもんか大体の予想は付くけど。
余程大変な環境におるのだな…ワシの知り合いにも似たような奴はいるが…
正直、奴らの部下はよくやっていると思う。
仕事に励むのも良いが、仕事にのめり込み過ぎると体を悪くする。休む時は休め。
……そうか。だが、最近はゆっくり過ごせん。それでもいいとは言っておるが…
辛い思いをさせておるだろう。…フン、これでは伴侶失格だな。
まあ、そんな所だ。少し前、決着の着かなかった相手がおってな。
またここで修行をしておると言う訳だ。……だが、最近ふと思う。
例え拳を極めたとして、その先には何があるのだろうと…
(リムジンから下りて歩いてくる。運転手は灰になっている)
お褒めにあずかり光栄ですよ。ですが、今回の『狩り』は僕の高貴なにして明晰な対応なのですので、
あのような実験動物の発想と同一視してもらっては困りますねぇ。
始めまして、侵入者様。先程は録な対応をせずに申し訳ありませんでした。
僕は結城財閥本社会長秘書『水無月』。
早速ですが―――死んでもらいましょう。
(瞬時に接近し、触れれば一瞬で灰になる手刀を頭部に対し放つ)
ビチン!!
(ガラス戸に思いっきりぶち当たる)
ちぃ・・・ちーちー!!
(どうやら怒っているようだ)
ボンッ
やだやだやだー!!!類のとこ帰りたーいー!!
あけてあけてあけてー!!!!サラ姉ぇとマリ姉ぇのとこ帰るー!!
お外出たいー!!
…スタナー・スパイク。けど、名前なんて今の世の中大した意味を持たないんじゃないかな
理由はね、あんたの父親のような人が意地を張った上に駄々をこねたから
おかげで俺の同胞みたいな物が、見苦しいオブジェにされてしまったんだ。まあそれはアレの失策の結果として…
とにかく、だからあんたを人質にとる。そして脅す。さすれば、意地は剥がれて駄々はこね終わるかもしれない
まさか自分の娘のような人の命と、他の物を天秤にかけるとは思えない
それに、娘のような人の死に顔を見て、まだ張り続けのこね続けをするのか試してみたいし
…いや、俺の考えじゃない。俺の上司だ
年寄りって意地が悪いよな。あの人は生まれたころから性根が腐ってそうだけど
…徹底抗戦? 黙ってついてくる方が、互いの幸せのためだと思うけどな
警棒は置いた方が良い。金属なんだろ。金属は熱されると溶けるよついでにあんたの体も発火するかもしれない。気をつけて
(警棒の先端が僅かに融解する)
…さて、じゃあ。そうだな。ついてくる気になったら言ってくれ
あんたの身柄が必要なのであって、殺しにきたわけじゃないんだ
それに、暴れたりしなければバアさんも――俺の上司だけど、危害を加えたりはしないと思うよ
一番賢い選択は何なのか考えてくれ。僕もあんたも、傷つけたくないし、傷つけられたくないはずだよ
社長秘書の水無月さんですか、どうもはじめまして、侵入者です
ペコリ
(ミカドさんを実験動物扱い、か。いるんだよねぇ、こういう内部反乱のときの首謀者タイプの人って
おまけに社長秘書なんて典型的にも程があるよ)
あいさつもそこそこに『死んでもらう』なんて気が早すぎますよ
パシッ
(うってきた手のくびを捕まえる)
炎術の基本は炎消すところから。今回は手の炎を消しちゃいましょう
パキパキパキッ
ああ、勘違いしないでくださいね。これ、冷やすわけじゃありませんから
いったん消えた炎は戻りませんからご注意を
…そうかもね。私の名前も親っさんから貰ったものだし。
親っさんが何したか知らないけど…親っさんを苦しめる為に私に手出しするような
卑怯者に従う気なんてない。やるんならもうちょっと堂々とねえ……
(ちっ…先が溶けてやがる。『天誅』ならこんな筈じゃないのに…
もう少しコンパクトだったら…)
はい、置いたよ。…丁度良かった、私も戦う気はないのよ。
でもついてく気もないの。と言う訳で……逃げます。あばよ少年!
捕まえられるもんなら捕まえてみな!
(全速力でダッシュする)
言わんこっちゃない、やっぱりぶつかった。しかし綺麗に入ったなぁ…
(怒ったのもかわいいなぁ…癒されるよ)
やや、喋った!しかも変身した!すごーい!
…まあ落ち着いて、君。僕もルー君の所に返したいけど、今は夜中だ。
真夜中は危険が一杯。もしかしたらもうルー君と会えなくなるかも。
今日は僕んとこに泊まっていった方がいい。ルー君には連絡しとく。
…蝶子、寝てるとこごめん。黒炎君の電話番ご……あれ?……いない。
また夜の散歩か……携帯は持ってるみたいだけど…連絡網は…
(プリント類の散乱する机を見る)
どれがどれだか解らん。蝶子が帰るのを待つしかないか。
少年… 俺ってそんなに若かったかな。老けてはないか
…逃げられた? 速いな。走って追いつけるスピードじゃないか
だったら届かなくなる前にこいつを投げよう…
ビュッ
持ってて良かったFQO−1の細胞。後は上手くくっついてくれればな…
適当に絡みついて動きを封じてくれるだろう。くっつけばの話だけど
しかし細胞の主が主だしな。絡みつく以外に何か余計なことするかも…
ヘンなことする前にひっぺがして、さっさと御童さんを連れ帰らないと
…息切れない程度に走ろう
がふっ!(踏むな!何がすいませんだこの)
ぎぐげっ!(くそっいい度胸だな若いの…霜焼を作りたいか?んん?)
…ん?(何だ?)私の顔に何か?……おい!待て!(揃いも揃ってなんなんだいつらは…もうゆる)
あわっ!ああ…これは…失礼した。私の方こそすまない。さあ行ってくれ
(起き上がる)ああもう、スーツが足跡だらけだぞ…全く…
とにかく二人を運ぶか、あと…(ちらりと埋まってる神野を見る)
(視界を戻してまた見る)あー、……まさか…「抜けなくなった」とか言うんじゃないだろうな…?
……そうなのか?そーなのか!?自分で埋まっておいて?お前いくつだ!?
あああああもう!手を貸せ!引くぞ!せえのおー!っ(叫びが校庭に虚しく響く)
(嗚呼…いい夜風だな…帰って寝たい、切実に。)
……ふう、結構遠くまで来たわね…軽い運動にはなったかしら?
(けどまだ完全に撒けた訳じゃない…少し眠れる時間位には帰りたいな)
(触手が身体に巻き付く)
うわっ、何これ!こんな所で変態プレイする気はないわよ!く、首!首絞まる!
ぐく……ふざっけんじゃないわよ、八卦眼『坎ノ型』、開眼!
(蝶子の体を水滴が舞う。同時に触手が氷つき、地面に落ちる)
……取れた。あいつの能力からして『水』かなーとは思ったけど…どうやら正解だったみたい。
…よし、何もついてないな。それ逃げろ!
(もう暫くしたら親っさんに連絡しよう。どうせバレる頃だろうし)
ひぐっ・・ぐすっ・・・帰りたいよー・・えぐっ・・
ポンッ
ちー
ヨジヨジ
(紫苑をよじ登っていく)
ポフン・・・・クークー
(頭に到着すると丸まって寝息をたてる
どうやら泣き付かれたようだ)
ほう、僕の攻撃を止めるとは、中々楽しめそうですねぇ。
ですが、賎民の分際で僕に触ろうなどと……
……!?
(手のが……麻痺?いや、手だけが死んでいる感覚?)
ふん……どうやら、中々面白い芸を使われるようですね。ですが、まさか選ばれた人間である僕が
凡百の愚民と同じ結末を迎えるとお思いですか?
―――――吸命眼発動『生贄の緑』!!
(跳躍で距離をとり、地面に掌を着けると、周辺にあった植物が存在する為の
あらゆる力を吸い取られ、一斉に灰になる。
そして、同時にそれは邪気となり水無月の手に集束する)
やはり、植物は味が悪いですねぇ。
(炎が消された筈の腕を普通に動かしながら)
クハハハ、驚かれましたか?あなたの技など僕の前では児戲なんですよ!!
さあ、生きますよ?
今度は先程の突きのような甘い物ではないので、
死にたくないのならば必死に避けてくださいませ
結城流死闘術改―――『吸眼朧手』喰らいなさい!
(一発につき二発、全く同時に放たれる、触れたヵ所が灰になる拳を何度も放つ)
「うむ、落下の衝撃を和らげようと地面を軟化させてみたのだが思いのほか巧く行過ぎた」
「結果、腰まで埋まり、もがけばもがくほど沈んでゆく恐怖の穴が完成したのだ!」
「・・・歳か?36だが?」
「おっと、言い忘れていたが・・・『クロウド』が睨んでいたのは『アスカ』が、その・・・なんだ・・?」
…追いついたよ、御童蝶子。随分走ったみたいだな
触手を振り切ったのか? 凍らせて… 勘が良いんだな
けどそれ、温めさえすればすれば何度でも蘇るんだ。不気味だよねところで援軍を呼ばせてもらったよ。あんたがずっと逃げるもんだから
(いつの間にか、何人ものスタナーが蝶子を囲んでいる)
…逃げるのはあんたの勝手なのだけど、こっちはそうもいかない
バアさんにきつく言われてるんだ。しくじったら… 夜の相手をさせられるかもしれない
…どうしても来てもらうよ。もうあんな思いは御免だ!
…バアさんから貰ったシール型簡易版転移魔法陣。こいつをあんたに貼り付ければ俺の勝ち
俺たちをかわして、見事逃げ切ればあんたの勝ち
もっとも、多勢に無勢とはよく言ったものだけど
(スタナーたちが一斉に襲いかかる)
おお、強い強い
流石ミカドさんの下にいるだけはありますね
(生命エネルギーを吸い取るタイプか・・・触れたら即死、やっかいだなぁ)
いやいや、驚きませんよ
戦場に身を置いていると、ときたま技の効かない人見ますから
それに、一般市民に本気出しちゃ大人気ないですし
ミカドさんの下、ということは一般市民のかた以外考えられませんから
その中での『選ばれた人間』なんですよね?水無月さんは
うわっ!危ない危ない
当たったら灰になっちゃいますね
サラ、『黒煙の長壁』!
(類を囲むようにして長い煙の壁が出現する)
煙といえど壁ですから、ある程度は防げます。黒いからこの時間だと見えませんしね
物理攻撃は効かないですよ。どうします?
うわお、いつの間に…同じ顔ばっかって気持ち悪いわね。
夜の……何か大変なとこにいるみたいね。だからってついてく理由にゃなんないよ!
張り付けられなきゃいいんでしょ、だったら…水壁展開!
(薄いが弾力性のある水の壁が周囲に展開する)
ちょっとやそっとじゃ破けないわよ。ついでにこいつもプレゼント!
ダンシングブルー
『蒼水舞踏』!
(水の針がスタナー達に刺さる)
安心しな、タマは取らないよ。少しの間体の自由を奪うツボを突いただけ。
五分、いや三分位は痺れるんじゃないかな。
よしよし、明日になったらルー君が来るからもう泣かないで、ね?
……寝ちゃった。でも何故頭の上…いっつもこうやって寝てるのかな。
うーん、中々にバランスが取りにくい。
―――は?ふざけないでくださいよ、カスが。
名門出身のこの僕が一般人?ましてやあんな実験動物に選ばれただと?
……ああ、尋問の為に魂だけは吸わないでおいてあげようと思いましたが、
どうやら愚図なあなたには魂の存在すら勿体ないようですね。
ふん、物理が効かないのならば魔術で対応すればいい。
『―――従え炎と風よ 命ずるは原初の地獄に吹き荒れし魔王の吐息』
フ ェ ー ン
合成魔術――――灼熱の暴風!!!!
(四方から超高熱の高等魔術による質量風が煙を吹き飛ばしながら進み類を襲う)
クハハハハ!!!!さあ、燃え付きなさい炎使い!消し炭になった後で魂を搾りだしてさしあげましょう!!
名門出身なのに社長秘書どまりなんですか。実力はたかが知れてるってことですね
ふぅむ・・・どうやら人を蔑むのがお好きなようで
あんまり調子に乗ってると足元すくわれますよ。お・馬・鹿・さん♪
あらら、消えちゃった
・・・炎使いに炎で攻撃なんて、馬鹿のすることですよ。もしかして僕のことなめてます?
(暴風の勢いはそのままに、炎だけが消えていく)
暴風でも目はあるんですねぇ。『たまたま』目の中に入れてよかった
ーーーーー我が名において汝に命ずる。我がゆく道を阻まんとする者に罰を!
黒炎式炎術攻撃の型《猛火炎上花吹雪舞》!!!
(懐から扇を取出し優雅に舞うと、暴風が逆回転をはじめ、水無月の方へ戻ってくる)
(その後も舞い続ける)
ハズレ。こいつら全部蜃気楼だよ… そう。こんなに近くで、蜃気楼。本物はこっち
触手を凍らせるために発生させた水気が裏目に出たな。勘は良いけど、読みが甘かった
その壁も水なんだろ。水は熱で蒸発する
…今度は蜃気楼を作る程度じゃない。完全な乾燥。湿度ゼロ。…そらっ
(高熱で水壁が消滅する)
俺の勝ちだ。では遠慮なく、ペタッとな──
いや、私と直接関係あるのは正義馬鹿だけだから。
あいつはまあ……ちょっとおかしいけど悪いやつじゃないし。
うん、体には気をつけないとね。今回のことでよくわかったよ。
そうだね…時々は会いに行ってあげたほうがいいと思うよ。事情があるならせめて電話ぐらい、さ。
あんたは何も悪くないと思うけど、こういうのはいい悪いの問題じゃないからね。ああ、そんなに気にしないで。
ふうん。まあ大丈夫だよ。深淵ってのは案外深いもんさ。
極めたつもりでもまだまだ先があるんじゃないかな。
それにさ。自分を鍛えるなんて、究極的にいえば自己満足の世界さね。
そこに到達するまでがんばって、目標にたどり着いてうれしい。それで十分だと思うよ。
また新しい分野に挑戦したら?彫刻とか絵画とかさ。
とまあ外野からの意見じゃあこういうことになっちゃうね。
きっと私なんかには与り知れない苦悩があるんだろうけど……こんなことしか言えなくてごめんね。
しまっ……
(シールを張られた…と思いきや、蝶子の体が水となり四散する)
なんてね。ここで捕まったら私のメンツが大暴落よ。もすこししたら捕まってもいいかな?
いやー急ごしらえで作ったダミーだからいつバレるかヒヤヒヤしたよ。
(空中に巨大な氷塊。その上には蝶子)
読みが甘いのは認めるわ。親っさんにもよく言われてるし直さなきゃなーなんて思うのよ。
その分、私は気合と根性が当社比三割増。往生際の悪さは神様からのお墨付きよ。
――そらっ!
(氷塊を地面に蹴る。高熱で辺りは水蒸気に包まれ)
…水は蒸気に、蒸気は水に。小学生の理科よね。いい煙幕にはなったかしら。
さて、今の内に制空権を取らないと。
(空中の水分が凍りつき、道が出来る)
……氷が溶かされるのが先か、私が逃げ切るのが先か。
これで駄目だったら、はは、捕まっても仕方ないかもね。
…ん?学校から…ああ、氷道が帰ってきたのか。
ま、あっちは氷剣に留守番させてある。大丈夫だろ。
しかし…ふむ、たまには散歩もしてみるものだ。…面白いものに出会える。
(いつのまにやらFQO−1の入った試験管を持っている)
お?そのシール…ふむ、自家製か。……ほう、こいつは中々良く出来ているじゃないか。
(更にいつのまにやらシールが握られている)
…面白い。貴様、どこの組織だ?
よければ貴様の首領に「流命寺有栖」が会いたがってたと伝えてくれ。
あ、遅れたが御堂、暇つぶしに来たぞ。…加勢しようか?
クク、あなたの矮少な組織では解らないでしょうね。僕のこの位置の偉大さが。
ですが、貴方の判断もあながち間違いではありません。そう!僕はもっと上に行くべき人間なのです!!
いずれは結城財閥、憎きカノッサ、他全ての組織……いや、世界の頂点に!!!
ふん、まさか君ごときを相手に僕が本気をだすと……!?
馬鹿な!僕の魔力の風だぞ!?
ッチィ!魔力供給解除!消えろ!!
(風が徐々に霧散していく、そして中から傷が高速で回復中の水無月が現れる)
……貴様、よくも愚民の分際で僕に傷を付けてくれましたね。
よくも……よくもよくもよくも!!この羽虫がぁ!!!!!!
魔導術式『土・金』!!!
『―――這い出よ這い出よ這い出よ!
創造するは魂無き身体 紛いの人型 仮染の映し身
神の業より尚暗く ただ渇望 求むるままに!!』
ゴッズハンド
現れよ―――――『魔神の掌』!!!!
(30m程の巨大な二本の土腕と15m程の8本の金属の腕、普通の大きさの無数の土と金属の腕が
地面から生え、伸縮しながら類を襲う)
―――クハハハハ!!!!見なさい!!これが禁忌を越えた魔術と眼の融合です!!
クク、その腕には、この僕の眼と同じ力が宿っています。
もっとも、僕程には強力ではありませんがね。
ですが……貴様を消すのには十分過ぎる力だろう!?
さあ、吸い付くされろ!!!!
・・・・・・。
(ただ無言で舞い続ける)
ヒユッ ヒユッ
(舞いながら華麗に腕をよけていく)
ヒラヒラ
(どこからか桜の花びらが舞い落ちてくる)
! …読みが甘いのはお互い様らしい。いやにあっさり過ぎるとは思ったが
視界を遮ったつもりなのか。駄目だな。直接俺の目を潰すくらいはしないと意味はない
…水と蒸気の関係はあんたの言う通り。だが、イメージと現実にはギャップがある
あんたのイメージする蒸気とは、『湯気』だろう。液体と気体の中間だ。さしずめ、蒸気のできそこない
そこから更に熱すると、水滴は蒸発しきって形を失う
(スタナーが目を細めると、霧が晴れる)
本当の意味での水蒸気は、インビジブルなんだ
…今度こそ捉えたよ、御童蝶子。あんたの能力は俺とは相性が悪い。おとなしく──
…二人はお友達みたいだな。大変困ったことになった
流命寺で良いのかな。あなたからの伝言は伝えよう。だから、試験管とシールを返してくれ
御童蝶子。あんたが加勢を頼むことに文句はつけない
しかし曲がりなりにも、これは俺とあんた、一対一の勝負だよ
この血気盛んそうな男を俺にけしかけることは、あんたのメンツには何らの関係もないのかな
…流命寺さんも。御童蝶子の友人ならば、彼女のプライドの高さを知っているはず
その上で、この勝負に横槍を入れる気なのかな
…実際、御童蝶子の言うメンツというのも口先だけだろうし
流命寺さんも、人の気持ちを知って知らぬふりをしそうなタイプだし
どうかな、お二方。あなたたちが加勢について決定するまで、俺は待っているよ
地面に底なし沼だと?そんなものを校庭に作るな・・・生徒が沈んだらタダではおかんぞ。
とにかくこの二人を運ぶ、場所は・・・第二理科準備室だな。今のところ、私たちのテリトリーはあそこくらいなものだ。
―なんだ?この全身が泡立つような嫌な感じ・・・?しかもこの「風」は・・・?
―『永久氷眼』発動―
フィールド オブ クワイェット!
『 静か な る 伶 域 』(学校全体とその周辺を領域で包み込み、周囲の温度をほんの少しだけ下げる)
温度を下げ、熱源を探知する・・・校内に熱源反応なし。親和性のある反応はフェンリルか。となると流命寺は留守のようだな。
・・・・いた!少し温度を下げたというのに・・・学校に接近する強い『熱源』がある。そこの空気だけが妙に暑苦しい。
サーモスタットサーチ・・・(氷道の視界に、移動する乗用車の形がサーモゴーグルのように映る)
熱源の大きさと排気量から見て・・・高級車か・・・やけにゆっくり進んでいる・・・少し探査範囲を車内に絞る
乗員の一人の熱源・・・もう一人いるようだが・・・おかしいな、そいつからは何の熱も感じられん。
―これはあきらかに、奴か・・・こんな時におでましとはな 進路はこちらに向かっているようだが・・・
まあいい・・・せっかくだからな。挨拶でもしてくるか。
いちおう奴にメールでも打っておこう。
―Pi『氷道だ、散歩でもしてるのか?ところで有栖川が来た、奴の狙いを知る必要がある。こちらで適当にもてなしておくので心配するな』
「!!?『火気』『水気』『木気』『金気』『土気』全てに異常?戦闘でも起こっているのか?」
なんだあの動きは……だが、いくら回避しても攻撃は無尽蔵!
そして、尚絶望を差し上げましょう!奴を絡めとれ腕共!!
さあ、押し潰されろ羽虫!!!
(無数の吸命腕が類の周り360°に五重展開し、触手の様に伸びて縛り上げ、上から巨大な土腕が振り下ろされる)
クハハハハ!!愚者が!思い知りましたか!!!
ザアアアアアアアアア
(桜吹雪が吹き荒れ、土腕を包み込む)
・・・・・散れ。『大輪華』!
ドゴオオオオオン
(大爆発が起きる)
けほっ・・・やれやれ、ちょっと威力が強すぎて余波受けちゃいました。仮面取れてませんよね?
あーあ、マント焦げちゃったよ・・・後で買いなおさないと・・・
一寸の虫にも五分の魂。昔の人はいい事を言ったものですね
あなたの足元、僕の桜が囲んでるはずですよ
これは・・・そうですね、小型爆弾というところでしょうか。一つ一つが爆発するんです
避けれるものなら避けてみてくださいね
・・・発火!
―――空間移動の際に見られる小規模の時空震を確認しました。
更に、恣意的な温度の下降も感知。
目的に該当する方々が帰宅したと推測されます。
故に、指示に従いミカド様の起床誘発を実行します。
『それじゃあ、実験体αとσにモルモットから得たデータに基づく投薬実行……しかし、実験体も大分減ったな』
『まあな。基本生存確率20%位の投薬と改造ばっかだし、共食いさせたりもしてるからな』
『……なぁ、俺が言うのも何だけど、あいつらよく平気で殺しが出来るよな。
今の奴らも無表情で殺し合ってたぜ』
『あぁ?当たり前だろ?脳味噌弄り回されてる上に感情なんて余計なプログラミング
はしてないんだからな。
それよりも、俺はあのモルモットの方が気になるね。普通あんな実験されたら死ぬだろ?』
『だよなー!確かあいつは――――……
……ん。
ああ、おはよう……いや、今晩はか?違うな……うむ!
やあ、おはばんわ空君。
ふむ、ようやく彼等が帰宅したと。
……。
いや、今真剣に学舎に向かうかこの天国のひざ枕体制を維持するかについて悩んでいてね。
ははは!私はいつだって本気だとも!
そうだね。名残惜しいが向かうとしよう。空君、一緒に付いて来てくれたまえ。
(車を降り、来客用のチャイムを鳴らす)
やあ、全く怪しい者ではない超絶カッコイイ正義の味方と、言葉で表現できない程に素晴らしい空君だ。
早速だが中に入らせてもらうよ。
「!!この気配はあの『セイギ』のミカタ!?どうする・・・」
爆弾?
ククッ……クハハハハ!!
『土腕壁!!』
(花びらごと巻き込んだ土の腕が水無月の周りをドームの様に囲み直後爆発する)
ッ……フッ、その程度ですか?
(可視できる程の邪気を纏った土腕と片腕が吹き飛んでいるが、やはり再生していく水無月)
驚かなくてもいいでしょう?
火は土を生かす。相生というやつですよ。僕の眼で強化したね。
ククッ、そして土は金を生み、金は大地から魔力を奪い取る……
(地面から爆発で溶け焼失したのと同じ量の金腕が生える)
これがどういう意味か理解できますか?炎使い。
つまり、貴方が炎使いな限り、この技は絶対に破れないのですよ!!
(再び腕の乱撃が始まる)
ああ、流石の威力だ!力が漲る……クハハハハ、禁忌とされるだけの事はありますねぇ!
この力は選ばれた者にこそ相応しい!!
(身体の末端に再生しない小さなひび割れができ、徐々に広がり初めているが、気付いていない)
五行全てを習得されているのは厄介ですね
同時にいくつもの力を使うことができるのですから
選ばれた者というのは制御もできてはじめてそう呼ばれるものです
・・・やはり、あなたは『ミカドさんの下』どまりでちょうどいいのかもしれませんね
!!!
(なんだあれ・・・再生してないひび割れ・・・ひょっとすると禁忌の代償?力の使いすぎ・・・となれば・・・)
いいですよ。何度でも壊して差し上げましょう。・・・発火!
(桜吹雪が腕を包み爆発していく)
でもこれじゃいつまでたっても決着つきませんよねぇ
僕を羽虫だとおもうなら、おもいっきり叩き潰してみてくださいよ。そう、この桜吹雪が包み込めぬほどの力で
・・・まさかとはおもいますが、『できない』なんてことありませんよね?エリートさん
(なるべく相手に力を使わせて・・・こちらの行動が読み取れないように舞う!)
(挑発するように再び舞い始める)
ギャー言った側から晴れてやがる!おまけに道が溶け……ぐえっ!
(脇腹を地面にしたたかにぶつける)
…いただだ。あ、流命寺。おばんです。
何言ってるのよ、友達なんかじゃないし第一こんなトーヘンボクに加勢して貰う程
落ちぶれてないわよ!相性が悪いなら…変えればいいだけ!『
坎ノ型』閉眼!そのまま『巽ノ型』開眼!
(水滴の代わりに気流が蝶子を取り巻く)
集まれ、風よ……起風千方!
(四方八方から熱風がスタナーに吹き付ける)
自分の熱、台風レベルでじっくり味わいなさい。…さて、この間に逃走っと。飛翔風!
スタナーくん、さらばだ!あっーはっはっはっは!………あらら?
(空中に舞い上がるが、徐々に高度が落ちていく)
(あれ、おかしいな。これじゃあ飛んでるって言うより落ちてるだけじゃない。
あ、そっか…閉眼してすぐにまた開眼したもんな…銀兄さんの時も一回開眼したし…
つまり…処理落ち?…あー…結局こうなるのね………たはは……)
ドシーン
(スタナーから100m先に落下する。気絶したのか蝶子は動かない)
クハハハ!!安い挑発ですねぇ!!?
ですがいいでしょう!今の僕はとても気分がいい!!
望み通り僕の究極の魔導で、徹底的にすり消してさしあげますよ!!!!
『―――這い出よ湧き出よ生まれ出よ
隷属させるは火水土木金
世界を創る五つの元素
従え従え従え
汝等を統べるは世界に非ず
王とは即ち我が邪気なり
想像されよ創造されよ葬像されよ
偽りは真実に現実は虚構に
生まれ出よ―――』
false satan
『 魔 王 』
(大地を揺らし、全長120m以上の漆黒の巨人が、悲鳴の様な咆哮を挙げて這い出てくる)
クハハハハハハハハハハハハハハ!!!!!!
凄い!スゴイぞ!!
さあ、悔やみながら喰らいなさい!!回避不能の絶対の破滅!!魔王の裁きを!!!!
J u d g m e n t
『 審 判 』
(もはや範囲攻撃クラスのあまりに巨大な魔王の拳が類を中心に超速で振り下ろされ、
瞬間、直径2km以内の全ての生命体が灰になり、無生物も衝撃波で粉々になり吹き飛ばされる)
クハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハ!!!!!!!!!!!!
(ヒビが全身に広がっているが、気付かない。いや、気付けない)
…お、メールか。
何…あの正義馬鹿がやってきた、と?…ま、なんとかすると言っているからなんとかなるのだろう。
とりあえずそっちは氷道に任せて…
ヒュゥゥゥ…ドシーン
…あ?
(御堂の元へ駆け寄る)
…あー…。
…さて、スタナー君。御堂はこの通りぶっ倒れた。
不本意かもしれんが、私が代わりに相手をさせて頂こう。
…御堂は、まだ若い。
このまま見過ごして、私達のようにはしたくないのでな。
(こいつ馬鹿だ!安く乗ってくれた)
ってええええええ!!!
これやばいでしょ!反則級だって!!魔王レベルとかよくできるな・・・
って感心してる場合じゃないない!来・・・
ドゴゴゴォォン
ゴォォォォ
(突如魔王の腕が振り下ろされたところから黒炎が吹き出し、腕を焼き払う)
―――間一髪。コーヒー飲むのが遅れてたら死んでたぜ
(炎の中から一男性が躍り出る)
いやーお見事!あそこまででかいの久しぶりに見たよ!やりゃできんじゃねーかよーみなちゃん
おっと失礼。自己紹介まだだったな
黒き炎の類を司るモノ、黒炎類。人呼んで『灼眼』。以後、お見知り置きを
ところで、体大丈夫かい?みなちゃん
喧嘩するほど仲が良いのかな。俺には関係無いけど
風か、厄介だな。…風というのは防ぐには難しいけど、曲げるのはそれほどでもない
熱による上昇気流で、充分反らせられるんだ。後は、体勢を低くすれば問題ない
…とは言うけれど、現実は甘くないね。熱い… 熱かったよ
…それで。流命寺さん。あなたは少しばかり勘違いをしているようだ
俺は誰彼構わず喧嘩を売りに来たわけじゃない。御童蝶子に用がある。あなたじゃくて
だから、あなたが俺を相手にしても、俺はあなたを相手にしない
…もっともあなたはそんなことお構いなしなんだろうけど。大方、喧嘩がしたいだけと見た
さてね。あまりしつこいようだと警察を呼ぶよ。ここは法治国家、日本なんだろ
…遠慮なく御童蝶子を連れて行かせてもらうよ。シールは一枚だけというわけではないしね
(神野を引っ張りあげる)
しかし無限の底無し沼か…使えるな。
神野、ついて来い。いざという時にお前が必要だ。
ー学校正門ー
さて…ようこそ。とでも言えば満足かな…執事殿。
例の施設の下見に来たのならどうぞお好きに。ここはもう結城の所有物だからな。
だが施設は初めて来るのだろうし…私が案内しよう。なに、せめてもの親切だ。
ついてこい、こっちだ。
ー「閉鎖施設」入り口ー
開いたぞ、ここが施設だ。最下層だろう?お前のお目当ては。
あれくらいしか考えられんからな。だが…私には邪魔する理由もない。
さあ、こっちだ。
(かくして扉は開かれた。有栖川、お前の「策」しかと見届けさせて貰おう)