1 :
名無しになりきれ:
キャラは考え付いたけど、
TRP系スレに参加するほど余裕はない。
キャラに合う世界観のスレがない。
このキャラを受け入れてくれるか怖い。
自分で主催するのは無理。
文章書く練習でもしたい。
周りが引くのを気にせずに趣味全開なレスを投下したい。
受けがよさそうなら本格参戦させたい。
それでもそんなキャラを活躍させたい。そんな世の中舐めた奴等の為のスレだ。
SS投下してすっきりしろ。
間違ってもTRP系スレに無理やり参加してFOしないように。
暇な奴が添削や改善点を指摘してくれるかもしれん。
叩かれても気にするな。誰にも迷惑はかけていない。
参考にしたいときだけ耳を傾ければOK。
2get
もうすぐ2chも終わるってのに何を言ってるんだね、君は。
もし素敵なSSができるのなら4様も登場させてほしいですね ´ー`
5 :
名無しになりきれ:2007/01/15(月) 01:03:08
ho
6 :
名無しになりきれ:2007/01/23(火) 01:11:55
SS投下
( ゜Д゜)奪おー
8 :
名無しになりきれ:2007/01/30(火) 16:35:20
戦えカイザー
保守
沈みっぱなしながらも保守しますですよ
11 :
名無しになりきれ:2007/02/16(金) 22:08:43 0
上げるぜ!!セイントカイザー!!
12 :
名無しになりきれ:2007/03/01(木) 10:43:39 0
再利用
13 :
名無しになりきれ:2007/03/09(金) 18:15:41 0
浮上させるぞ・・・この場所が消えてしまわぬように。
く...iコiiii,,_
,, ‐'"゛;∠;;;;;、``ヘ、
,イ ._, 、、 \
lr'″ `゙ー、 _ .- 、 .l
゙' lr;;_,゙,゙__";;rミ〃 i'"` } l 俺の名前は
(,_,,......,,、.`''ミ./ <彡'",! ジーコたんだおー!
,i'" .`-..,,/ ! l
! ,! ヽ
ヽ_ _.. ッ". -'''" ̄ ̄^ニv..........,、
,.. -―'''';;]_,゙二二__,,/ _..-''" ゙゙゙̄''ー `'-、
,,-'"゙゙,゙ニ=ー''''"゙゙シ'"_,゙,゙,,,,,,,_ `'''T゛ \
/_..-'"″ '''^゙>'''"゛ ´ `!、
_..イ'"゛ ./ \ ,..-''''''''''''''ー.., .l
/ / ./ ワンコ萌え `゙''‐ .、 \.,,,│
/ l 「 l " .`''、
/ l゙ i ! .,! . .,!
! ./│ ._/ .ヽ,_, ,│ │ ! .!、
,, -ー¬'''" ./ .ヽ _.. ‐″ .`'. " `゙''―- ....,,,_ _.../ │ l 丿 .′
′ .i゙'''゛ `'''r‐―‐'´ ヽ .l _,. .ヽ
|, _,,,,,....、 / .‐ , .`'i .`'' .″ ヽ
,,.. . .ヽ. .ン._,,,,,,... .、,`'ー、、 ,. _..l, │ / ヽ .../ '
゙l、.i ′ ゛ `"´ '"´ ,.ゝ ! .| l/
‐'│゙.l i ,r'" " l .l ,, 'ソ゛ `
,i゙.l .\ ‐- ........ ‐' 、 ,r‐'' |, .ヽ _,, イ゛ .'、
/ l. | _i,,,...... -----.... ....;;_ / " ....l .ヽ .,/´ .ゝ .ヽ
_,,, ‐" l",゙,,...... ---――ー- ....,,,,,,_"'''ー ..,,_ ,L-'゛ ヽ } / / ヽ `
-'" ̄ ̄゛ .!.´ `"'ー ..,゙.\.l .,/ ヽ ゙./ .l .`_,,,,,
| /´'i /゙''i `'-/ \ ./ _.. -''" ./
| .ゝ′ ! ./ | ゙'l゙ .,/゛ ._,,、l゙
,| ._,,..........--―¬''''¬- ....,,,,_ .| ヽ ,/ .,..-" . l
, !`')″ l .! .,l゙ ./ `゙'''ー ..,,│ l"., ー''''.! ヽ
,i/"./ .`‐l゙ .l゙ ./ . / `'┐ !″ '′ .ヽ
, '゙ ) \ヽ ,.
,ノ!,' ◎/\ / \ _,.イ / ,. ,.
,,.. --─- ノ゙!,/ ,' \.\ ./ .\ ─┼─ ./| _,.イ,,.ィ'
 ゙̄'i; ノ゙!,!゙ ゙i, ノ \ \.\ / \ .ノ .....| ....| |.イン....
゙'゙ ,!V ,゙゙ :, .\\\.\
!!.,i ノ゙, .'., \ `゙''‐、 ...\ | ./ ./
! !_!_ ,'゙ i.,_ ゙, \ `゙''‐、_\ | / /
! .!_! ,゙ ゜ ゙!i,' .┌(⌒ヾ┐──−‐‐‐ *←ハイアット&パルス
. i..i'i ,゙ \ .ん `yノ,,> ./ / | \
゙.. ', ! _,ゝ,iノノ' / / .| \
'!,', ! ..__/.) , `ヽ / / .|∴・
' , ',, ...`つ/ ,.イ /i ...../ .∵|:・.∴・
\ ' ., /./ミノ__ /.ノ ....../ .∴・|∵' ∵・
\,. ゙' , .....,//..,∠∠_/゙〈 ミ、、
゙ ' ;"てuノ巛く{ヽ、./ `゙Y} ゙
ヽノ|⌒`i'
ソ /
レベッカ
ノ / / n 、 ヽヽ
. ( L/ ノ ! 、_ i丶 )ノ
.f′ ィ / ィ/⌒ヽ`} 〉 ノ{ ( 、ヽ、
ノ ( / . // rヘ く( /n. 〉! 、 } }
r‐' i /ノ 、ソ }l_ノ.{ソ { |_ { r'′
/ /7 ノ、 {.{ ゝ--‐'' リ ヽ-' l 〕 ,.ノ
7 ,r‐‐! /_ゝ ,ィ ノ (_/
ヽi `' {::.::.レ':.、`丶、 `'''~''"/
}:::.:::.::.::\ r'`丶
ラヴィ
l ヽ/ U ヾ.、 //; /; / .;;/ |
.|: |.... U;、.、 ./;. ,.、 /; / | 心 オ き
.|::..|::. / ヽ .:/;. / ヽ、'ー-ーー-=ー
.||::.. / ; 、 ... ;/
|:.|:::: / ∧ :.:|__;;;-ー-ヽヽ .ヽ ヽーーーー
..|";...=,/ l,!i ..;i ;i. .| ゙|゙i ゙ヽ ヽ ;;; '´
|;;.. |. :l,! .;::i ...i:..| ,, _ ..i..i.i;;.. ゙ヽ、;゙ヽ"
.|;;;,;_.i :l,.! .:i_. ..i..:i:.__ _∠_ _,.i.i i;;;. ヽ ;.、゙ヽ
..i;;;;::..i l,!.i .::i ...!..i: ;.__..|.i__..i;;.. ..i ゙.ヽ
.,へーi:...l,!i ::i..___,..::!.i:______,,,,-‐'レ`.,,.i|;i;;;;.i:: .:::i |
.|:ヘヽ;;i l,!i i_-,.. !.i _,,;:'''' ̄'"''';′|;i;;;;::i:: .:::i
..i;ヽ;;;;..i;l..!i....i,,.;;:-ー..!.i~;.. ..::|i;;;;/i:: ..:.i
.iiヽ;;.il;..!i...i- .!i .! .::|i|;/i...i: .:i
ヽヽ;;;;;:.!i..i .i ! ;;i/ i: i
..ヽ:;...!..i ______ .:/ .i:.i
、,!..iヽ.、,, ' .,./ .i.i
..i:::ヽ`丶、、.、.,.,/ヽ .!
,/.:;;.......\′゛i:::;;;;;;|...::,;..\
/.;::... ´";;;:;::/.. |;.\、
..,/.;;::... ;;;. i, iヽ、
.,、-'´ 、 i .i,,-`ヽ、
/ `‐ 、.__.....、 i,,,-‐,i ヽ、
i .:ノ ヽ、 ` 、.、 ,,,;-i'' i i;; ..i
リッツ
r''~ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ヽ
,.. -/ ニ` / ,r‐ ゝ、
,,.. -‐ ''"´ i゙ ; i / //''ー- 、
,,.. -‐''" i 〃 | i / / ``''ー 、
,. -'" ヾヾ | ヽ_、 、 、 、 、ヽ | レ/=@ `''-、
.ー-、ー=ニ_'─-- 、,_ i ______ し /〃 _______ `''‐ 、
``''ー、 `'ー、_ i`,ゝ、>‐'''''''~  ̄`'''''i:::r-─`''''‐- 、_,.. -‐''─''''ヽ"~ , -''" , ‐'
``'-、 `''-、 V |:i ヽ / , -‐''~ _, -‐''~
`''‐、_ / ‐=;:;==- V, ‐'"´ ,. -‐'"
'i \. || / 、'~ , -''"
i ヽ''i
| 、.,_ __. |
| \ `''‐ 、_ ,,.. -‐ '"/ .i
. i, \ 'i:::\ , -''"i:::::::/ / i
ヽ `'- ヽノ..ゝ ‐~--- ヽ-' '~ /
. \ ,...., /
\ . Y /
`'‐、/ , 、_,:亠:、_, \ , ‐'" いい湯でござ候
/``''/、、,______,ヽ......\'~''ヽ
/ / / i''‐、_,..ヽ' i\ ヽ
/ / / ,i. ヽ, i \ i、
クロネ
,,,,.. -ー ‐- ...,,_
,,.r''" ` '‐..,_
./ ` ‐..,_
./ ヽ.
/ ,.' ,ヘ. /'', .', ', ヽ
,' ,i' ,i ;iヾ::ヽ i〃',. ', ',. !
i ,i' ,i i'i';;:ヾヾヽ''" '' , ', ', !
l :: . i , ,i i'i' ', ', ', i
l ::: :: : .:i . ,' i'i ii ,,.k 'i,i i,
l :::: ::::. i :::i .. ., i' 'i i! ,r'",!::i i,i, ',
! :::!: ::::::i. i ::::i. .. ,i' .i' i.li ,,.. ir",.r::::i i,i,i.',
,' ::l::. :::::::l:..i :::::i. :: .;i' .i' ,.ィi"´,.: ,ィ::i,.!:::::i i,i,i'i,i,
/::i ::l:::.::::::::l:::i.::::::i i:: i' .i'",..ii'",.ir !''"´ !::::::i i'i,i 'ii,
/.:/l.::l!:::::::::::l:::i;::::::i i:: i' i' ,,..ィ'::::i,. ヽ, i!::::::i i i! i
. ,.イ" !::l'i;:::::::::::!::i;:::::i i:: i i'´ー‐''"´ / /i'i::::i i i
l:l i;:::::::::i;:l:::i:::::i ii:.i i ,,. /i:i:i' 'i:::i'i i
il i;::::::::ii;:l:::i;:::i i'i;i i、 '´ / `トi i:i' i.i
. '! 'i;::::::i'i;:l:::ii;::i'ii 'i,i `゙'';‐----''.:.:.:.:.:.::i i i' ,リ
,イ 'i;::::i 'i;l::i 'i;i,'! ! ,'ヽ.:.:.:.:.ヽ..:.:.:.:. i 'i
,r" :.:.:.'i;::i 'i;:i, 'i, ,' ヽ.:.:.:.:.ヽ.: i 'i
,r'、 .:.:.:.'i;i 'i! ヽ. ,.ヽ.:.:.:.:.i i 'i
/ ヽ. .::.:.'iヽ. ' .::.::ヽ.,,,...、 ' i. :. i i 'i
アビサル
,ヘ /i
,_/__|_/,/
,へ、 `i
rー'´ヾ凵____,/'{
i `ー-ノ ノ| 'ヽ、
`ー―-、,/,,/〈} _ノ
ノ_/ ,〉___.レ'´
{二二二二}、
ノ[] [] [] [] 「_ゝ
ゴウガ
i::::::::::::::::::::::::::::: l:.:.:.l: . : . :l
|::::::::::::::::::::::::: |:.:.:.!. : . : |,ィ
!:::::::::::::::::::: l:.:.:.| . ://!
i::::::::::::::::: ,,-''"゙゙゙゙゙"'' / l
!::::::::::::: ,,,r'.. r''""ゞ、 ヾ
|:::::::::,,-''''"" ';:::ミ ;;;,, 〉 .:ミ
i::::;:' .::ミ:::.. .::ミ
レ':. , '""''-,,_ てlフ=====i~i=ニニ0
ミ::: ミ )ニー'"tュi三三iミ'"ゞ二≡≡ニニ二二()
ミ::: ''""ヽi i i j'_ノノーi・ ̄二,ミ ミ──’
ミ:: 、 "'''"ミ ̄ヽ └─''"""'''''"
彡:. ヽ:. '"⌒ヽ::::ヽ \"'-,; . : ."''-,,_
ヘ:::.. ノ::.. .:::t-、_::ヽ \:."'-,, . : . :"''-
/i,,- t -<;;;;、;;;;、,,、,、;;、;;;i_ゝ::::ヽ \:.:.:"'-,,. : .
/ ゙''ー-゙ー':::::::::::::::::::::::::::::: ::::::ヽ \:.:.:"'-,,:
/ .::::::::::::::::::::::::::::: :::::::ヽ \:.:.:.:.:
/ ....::::::::::::::::::::::::::::: :::::::ヽ \:.:.:.
シャミイ
,. - ''"  ̄` `` 丶 、
,. '" `ヽ、
,/ / ',
/, / ヽ
// // / ヽ
// ,/ / / ',
/ i / / // //// i
/i| /| / ///,.// ,// / / |
,/ ! i |! /// //く// /// / i
| l || |/ /イ////// // / // /
Nl V,.ィ' / l' __ //// / / / / /
i.ソ '"´ `ソノ''" / / / / / /
/ リ/ /// / , '
く, ... / ///i /./
Z..__ レ'ノイ /リ! | ,{__
{ヽ--``‐一' ,. '´ '" Nl/:::iヽ
`; ,. '´ /:::/ ヽ
L__, べ. , ':::/ / \
`ヽ、 /::::/
リーヴ
_...、、、, _
_ ,::'´ ::::ヽ.
/./ ヽ,:' __,,, :::::i
l / l/ ̄ :::::::!
/ ⌒ヽ_/;; :::::!
ヽ_ノへ ';, :::::/
/'ー' 〉 ゝ、,,_ ;:_:ン゙
´ ̄
スターグ
\ /
_,.r'´ ̄ ̄ ̄\` ー一'´丿 \._____
_,..r'´,,.... _ ヽ `ヽ、
,'´ _,r'´ ⌒ヽ< /_∠、_ 〃′ __ `ヽ、
i ,r'´ ` `/ ⌒ ⌒ヽ' ̄ `ヽ `)、
!_ ⌒/ ,r'´ ̄ _ , ;;,,, ヽ.
,r' ,′ / ばなな ヽ、 i
/ ! ,′ ′ !
,i !、 i 二段構え 入. _,、_ ,. !
!/ ト、_,.-‐´ `、 ノ / `´ `Y'´ Y
,イ ⌒ヽ、 ,!、 ` ‐ 、. ′,′ `i
_ノ、 Y、i、 _,..-―-.、_ ` ヽ 、_,.-l,i .l !
./ .!、 `ト、_ \!' `ヽ、_ ,; イ il , i __、 )
〈 ヽ `ヽ、_. `ヽ、 、 、_人 Y 〉 ' V
`、 ヽ、 ヽ、>ー-- !^ ,l、|_, ! !
`;、 ` \__,..--..、 ヽ ',r'´ 〈. !
ヽヽ、 ,r'´ ̄ ヽ ̄`、 ヽ-‐'´ ̄ ) !
`ー-、.._ ,-.、_,-v'´ _ヽ _ヽ -`;ー! `ニ=┬' !
`>、__  ̄⌒``ヽ i i |`´ 一' ̄´_,r'´ 〈
/ ー<> lニ!ニ!.ニ'  ̄´ 、 !
25 :
名無しになりきれ:2007/03/13(火) 23:58:08 0
騎士も頼む
スターグ酷くね?せめて人型にしてやれよ・・・
AAは板違いだ
消えろ
にゃぁ〜…みゅ?
ふみゃぅ…ここ、どこぉ…?
まずは君が何者か教えてもらおうか
ここはキャラのSSや小説投下するところ
板違い
もしレスしたいなら、留架のSS投下汁
僕の父は人間学を研究している。
何故、突然父の話から始めるのかと言うと、
今、僕の現状を説明するのにはまず、父の人柄を説明しなければいけないからだ。
父は最近、俗に言うクローンというものを作ろうとしているらしい、
その為に、一般的な主婦であったはずの母が
全く関係の無いはずの研究所という場所に父の手によって隔離されている。
母が研究所でどんなことをさせられているのかは知らないが。
まあ、両親が何をしていようと僕には関係の無いコト。
義務教育を無事に終わらせ、高校に入る為の資金だって今まさに僕の手元にあるのだ。
十六にもなれば大抵の事は1人でもできる。
僕はこのまま、1人で大きくなっていくのだ、などと思っていた矢先…
突然、彼女はやってきた。
ピンポーン!
春の陽気を浴びたカーテンが揺れ、数回響いたチャイムの音も眠りの中に消えようとしていた。
そんな、あたたかな朝のこと…
ピンポーン!
「……。」
先ほど言ったように、僕の家には両親は居ない。
したがって、来客は僕が迎えなければいけないわけだ。
しぶしぶ身体を起こし、パジャマ姿のまま玄関先へ向かう。
ピンポーン!
「…はいはい。今開けます。」
ガチャ…
そこに立っていたのは、1人の少女だった。
>25
騎士はもう昔やったのよ。
>26
ま、オチってことで。
自分で書いているわけでなく、AA板で拾ってきた奴だから希望通りにはいかないのだ。許せ。
>27
了解。
1レスの容量もAA貼るの辛いし、続きはまとめサイトにスレ立ててやるわ。
かつて男達は愛をかけて戦い、天と地に散っていった。
しかし、伝説は終わらない。
そう、そこにキノコがあるかぎり!!
【新マリオ伝説】
マリオとクッパの激闘から既に20年がすぎた。
マリオとピーチの息子マーチはルイージのもとで厳しい修業を行っていた。
ルイージ「マーチ、話がある。」
マーチ「はい、師匠。」
マーチは自分の叔父であり師匠であるルイージがいつもと様子が異なる事に気づいた。
ルイージ「君は既に星の拳を全て会得した。
もう私が君に教えることは何も無い。」
マーチ「………」
ルイージ「君に授けたい物がある。」
そう言うとルイージは古くてボロボロの赤い帽子を出した。
マーチ「これは!?」
ルイージ「そう、今は亡き君のお父さんの帽子だ。
永遠の二番手と言われた私だが、君が多くを学んでくれたことを誇りに思う。
さあ、行くのだマーチ!この世界を再び平和にするために!」
マリオの息子マーチの伝説が今始まった!!
35 :
名無しになりきれ:2007/03/31(土) 18:24:57 0
お前は俺だ
18:00 ロックブリッジ
吹き荒れる嵐の中、そこかしこでうめき声がする。
少し前までは叫び声も随分混じっていたのだが、随分と静かになったものだ。
吹き荒れる雨は容赦なく体温を奪い、負傷者の命をかき消していく。
嵐の中、負傷者を一人、また一人と引き上げどれだけ立っただろうか。
30人ほどを集めてソーニャは両膝を着いた。
自分を含め誰一人として無傷のものなどいない。
こうやって歩ける自分は幸運なのだろう。
それでも・・・もう、疲れた・・・
何が起こったかわからぬまま部隊は壊滅。橋は崩壊寸前。
嵐と川津波が追い討ちをかけた。
何もかもに疲れてしまった。
僅かに残った心も、徐々に大きくなる空の黒点を見て折れてしまったのだ。
公国軍飛竜部隊。
「ちっ・・・この嵐の中で掃とう戦とは・・・まったく・・・」
「ソーニャ、お前だけでもいい・・・逃げてくれ・・・」
「ああ、俺達はもう駄目だ・・・畜生・・・公国の野郎にせめて一矢・・・」
ソーニャの諦めたような声に応える仲間達の声。
その声はまだ諦めていなかった。
動けるソーニャは心折れ、諦めていたというのに、傷つき動けない仲間達は諦めず自分に思いを託そうとしている!
「ばっ・・・・・・・」
お前達を置いて行ける訳ない!その言葉が出てこなかった。
ぐっと飲み込み、決意する。
「もうすぐ公国の飛竜部隊がくる・・・。逃げる事も出来ない。
・・・だから・・・だから・・・あんた達の命の炎・・・あたしにくれ・・・・!!」
搾り出すようなソーニャの声。
その意味は語らずとも皆に伝わり、理解させる事が出来た。
誰とも言わず、ソーニャの手に血塗れの手を重ねる。群がるように、次々と。
一つの塊となったソーニャたちは眩く輝き、一本の巨大な炎と化す!
レジスタンスたちの命の炎を文字通りソーニャは想いと共に受け取ったのだ。
その巨大な炎が公国軍飛竜部隊との戦闘の狼煙となった。
18:30 ロックブリッジ
今のソーニャは人の形をした火災旋風も同然。
炎の竜巻を自在に操り空を飛ぶ飛竜を次々と落としていく。
野生の飛竜ならば持ちこたえもしたかもしれない。
しかし飛ぶ為だけにいびつに姿を歪められた飛竜はその余波だけでも身を焼かれ、落ちていく。
たけり狂うソーニャだが、突如としてその動きを止める。
その場の空気を支配する圧倒的なプレッシャー。
ソーニャを畏れる事もなく悠々と近づく隻腕の男。
「野にこれ程の剛の者がいるとはな。私はドラグノフ公国カールトンレーゼンバッハである。」
「ああそうかい。」
通常なら金縛りになるであろうプレッシャーを受けならが、ソーニャは動いた。
ドラグノフ公国の大貴族。
その認識がプレッシャーを打ち破ったのだ。
カールトンの胸板を貫いたと同時に炎で焼く。
そのまま炭と化す筈だった。
だがカールトンは微動だにしない。
ソーニャもまた動きを止める。
精霊獣による炎化とブレスによる炎化。
共に炎の化身同士その身と心が今一体となり究極の相互理解状態となっているのだ。
お互いの憎しみ、葛藤、苦しみを理解した。
そしてソーニャはカールトンの知る全てを知った。
「・・・お互い譲れぬ思いはある。だが、今は、協力してくれまいか・・・
これから裂き片腕では少々辛そうなのでな。」
「そんな・・・本当なのかい・・・?」
「この状態でどうして嘘をつけようか。いつでも分離してくれていい。が、今だけ・・・頼む・・・」
「・・・・・・・・・・・・・」
長い沈黙の後、二人を包む炎は消えうせ、その場に立つのはカールトンただ一人。
「トーテンタンツ!我らを運んでくれ!ライキュームまで!」
高々と左腕を上げ、ライキュームを指差すのであった。
ボツにしたけど、やっぱり一度書いたものはどこかに投下したい
という事でお借りしました
39 :
名無しになりきれ:2007/04/07(土) 18:13:10 0
good
ではないなw
41 :
名無しになりきれ:2007/04/12(木) 22:17:23 O
こういう スレは ageとく べ き だと思うなん
42 :
名無しになりきれ:2007/04/12(木) 22:20:32 O
オリキャラスレって結構あるけど、どれも過疎気味だな。
一カ所にまとまってやればいいだろうに…。
43 :
名無しになりきれ:2007/04/12(木) 22:24:34 0
世界観違うから無理
44 :
名無しになりきれ:2007/04/12(木) 22:27:53 O
こりゃ失礼。
あげとくか
ホテル「スウィートスポット」。
何の変哲もないこのホテルで、未曾有の大惨事が巻き起ころうとしていた。
「アッー!」
掃除に入った従業員ヴァン(17歳)は、その部屋の惨状を見て悲鳴を上げた。
枕がいくつも破れて散乱し、壁の至る所にひびが入っているのだ。
その上、なぜか床には多数のバチが転がっている……。
直前にここを使った客は一体何をしていたのだろうか。
「ムセテンナヨ!」(ふざけんなよ!)
腹を立てながらも、毛布をはたこうとベッドから引っぺがす。
引っぺがした下には……筋肉ムキムキの脂ぎった裸男がいた。
史上最悪の置き土産である。筋肉男は笑顔でヴァンに襲い掛かった!
「イェア!」
「ツカマラナイオ!」(捕まらないぞ!)
ヴァンは猛ダッシュで逃げた。が、残酷にもバチに足をとられて転んでしまった。
「らめぇええええええええええええ!」
彼が、この事件の最初の犠牲者となった。
「一等室を片付けに行ったヴァン君がいつまでたっても帰ってきません」
「見に行ってきなさい」
こうして、ふたり目の従業員が恐怖の部屋に入ることとなった。
扉を開く。そこには誰も居なかった。ただ散らかった部屋の光景があるだけだ。
しかし彼は、部屋の真ん中にあるベッドが少し盛り上がっていることに気付いた。
「ヴァン君みーつけた!」
毛布を引っぺがす。すると、中から二人の筋肉男が飛び出してきた!
「「イェア!」」
「らめぇえええええええええ!!」
犠牲者が二人に増えてしまった。
この後、何人もの従業員が出向くも、誰一人として帰って来る者はいなかった。
「私を差し置いて皆で一等室で遊ぶとは……許さん!」
さすがに何かおかしいと思った経営者は、自ら部屋の様子を見に行った。
少しだけドアを開けて、中の様子を伺う。
「…………」
彼が見たものは、この上無く不気味な光景だった。大勢の筋肉男達が所狭しと部屋を占拠しているのだ。
「あぁ……」
経営者は意識を失ってその場に崩れ落ちた。
物語でキャラ人気投票やろうぜ!
筋肉男に一票!
リーブの突っ込みに1票
寂れてるし、そろそろ騎士スレ妄想を再開しようぜ。
参加は無理でも妄想ぐらいはできるだろ。
騎士サッカーチーム
・第1部
オーガス学園
↑ デュラン カイザー ファルコン
レナス
ジェノ レイチェル
ランドール
ユメモチ 剣崎 日本兵
オーガス
フェンリルガストラSC
↑ シェザハット フェンリル
狼餓 ワーゲル マンチャーダ
ガストラ
パピオニ エリシール ベルゼバブ カノン
イングラム
・第3部は人数の都合で無理だった
・第4部
混合チーム
↑ ファルコン
マックス 辻斬り
カイザー
セシリア 冴波
マリス シズネ ラック エヴァンス
誓音
・オールスター
主人公役代表
↑ ファルコン マックス
カイザー
セシリア 誓音
フンバルト
ランドール レイチェル マリス ユメモチ
オーガス
敵役代表
↑ 辻斬り
エヴァンス フェンリル
ガストラ 冴波
ワーゲル ローズ
イングラム
ラック ヴォルフ
シズネ
マリス・ユメモチが脆いと思ったら、対ペド用に機能していることに気付いた
考えているな
54 :
名無しになりきれ:2007/04/21(土) 13:44:38 0
ペド?
筋肉漢衆の振り撒くウホウィルスにいつの間にか冒されてしまった物語スレの愉快な仲間達。
ハイアット「はぁ……最近みんなおかしいよ。僕の方を怪しい目で見てくるし……」
リーブ「ワイは正常や!」ズボッ(突然後ろから襲い掛かる)
ハイアット「アッー!どう考えても異常だって!」
セイファート「しばらく黙っとけ!」ズボッ(ペガサスに乗って上から登場して襲い掛かる)
ハイアット「ムグッ!」
パルス「いいなぁ、楽しそうだなあ〜」
ラヴィ「そんな場合じゃないよぅ!二人にハッちゃん取られてるよぅ!」
アクア「パルスさんを差し置いて他の人と仲良くするとはきつくお灸を据えなければ」
アビサル(なるほど……あれは友情を深める行為なのか…)「僕に任せてください」
(パルスに魔法をかける)ドーン!もくもく
パルス♂「わーい、懐かしの♂バージョンだ!アビちゃんありがと〜」
アクア「私の欠片も協力するのでハイアットさんをヒィヒィ言わしてやりなさい!」
パルス♂「ハイアットくーん、前がガラ空きだよ〜♪」(トロロッ、ズブッ)
ハイアット「アッーパルチャンノトロロアニャル―!!」
ラヴィ「作戦大成功だよぅ♪」
レベッカ「イヤーーー!!みんなお願いだから正気に戻ってええええ!!」
ジンレイン「毎日毎日騒がしい奴らね」
シャミィ「全くじゃ」
キモイ
まぞ
昔々、ある所に王子様が住んでいました。
王子は幼少時から英才教育を受け、学力だけでなくあらゆる武術・魔術をも極めていきました。
そして王子が年頃になると、国王と王妃が何者かに暗殺される事件が起き、若くしながら王子は世界の覇権をも手にしたのです。
王子は手始めに世界の掃除をと、人々を苦しめている鬼の殲滅を開始しました。
今夜その鬼退治に向かわせる者を選出するべく、舞踏会に扮した徴兵がお城で行われます。
ここはシンデレラ城
舞踏会には世界各地から老若男女異種混合と、選り取り見取りの面子が集まっていました。
王子「この舞踏会、誰にでも参加を許しているからな…女なら私、男ならお前目当てでの参加も多いだろう。
中には武道会と間違えて来る者もいるだろうし、見出すのは頼んだぞ白雪姫」
舞踏会の行われている光景を高みから見物している王子。その隣には妃の一人白雪姫が同じ光景を眺めている。
名前:白雪姫
年齢:10歳
性別:♀
種族:アンデッド
容姿:雪のように白い肌、バラのように赤い唇、黒檀のように黒い髪を持つ少女。
考察:一度魔女の毒林檎によって命を落とすも、王子の死霊魔術によって蘇る。
死んでいる身の為に歳を取らず、ロリコンでネクロフィリアの王子は妃の中でも大層気に入っている。
また、彼女から醸し出されるフェロモンは人間の男性はもちろん動物、ドワーフなどの異種族、果ては魔鏡さえも魅了する。
白雪姫「います…この中に、鬼さえも凌ぐ強大な力を持つ者がいると鏡さんも示しています」
かつて自らを命の危険に陥れた魔鏡も今では白雪姫の力となっていました。
続きもまあ気になるんだけど、そのトリよく見るんだよね
本人?それとも偶然か?有名なキーなんだろうか…
>>60 相談所にしか書き込んでないけど、確かに良く使われそうなトリではあるし変えておくわ。
強大な力を持つ者を示している鏡には、3人の姉妹が映っていました。
ユーフロニア&シャーロット「……」
名前:ユーフロニア&シャーロット
年齢:18歳
性別:♀
種族:人間
容姿:オッドアイ
考察:シンデレラの義姉で双子の姉妹。
姉のユーフロニアは極悪非道の継母の性質をそのまま受け継いだが、妹のシャーロットはツンデレラ。
ユーフロニアは毎日取れたての獣肉が食べたいと我侭を言って、シンデレラを危険な森に送り込んでいた。
一方シャーロットは誰にもバレないように、白鳩にシンデレラの手助けをさせていた。でもその異名を付けたのも彼女。
エラ「こんばんは、お義姉さま…」
名前:シンデレラ(本名:エラ)
年齢:16歳
性別:♀
種族:魔女
容姿:体中灰で汚れているが、素材は良い。歳のわりに足が小さい。
考察:意地悪な継母と二人の義姉と暮らしており、日々過酷な戦いを強いられている。
あらゆる敵を焼き尽くし、死の灰を被るその姿からシンデレラ(Cinder-Ella 灰まみれの魔女)の異名が付く。
また、炎を操る以外にも白鳩を使い魔とする魔女であり、自分にかかったいかなる魔法も0時に解ける無効化体質である。
この日、本来シンデレラは舞踏会に来るはずはありませんでした。
ユーフロニアお義姉さまは今日も熊肉を取って来いなどと難題を押し付けた。
でもそれは私を舞踏会に行かせたくないから意地悪をしているだけ。だって夕食はお城で食べるでしょう?
そうとわかっていても私は逆らわずに良い子であり続ける。最後に笑うのはひたむきでマジメな奴だってお母さんも言ってたもの。
そう信じてた…
私の繰り出す灼熱の炎で、熊が良い感じに悲鳴を上げている所にその男は現れた。
奴はユーフロニアから私の暗殺を請け負った森の猟師。
現王女も昔命を狙われたようだが、その色香で見逃してもらったという。
だが私はそうはいかない。対峙したとなれば戦うしかない。
駄目だった。
さすがプロの殺し屋。私の能力への対策は万全でまるで敵わない。
私は逃げた。逃げて逃げて逃げ回るうちにどうにか敵は撒いたものの、森の中で遭難してしまった。
すっかり日が暮れてしまったが、火をおこすと猟師に見つかるかもしれない。
お腹が空いた…火が使えないとなると獣肉を焼いて食べるという手段が封じられるし、この暗がりでキノコの判別は難しい。
もう駄目かもしれないと思った。が、その時微かに甘い匂いを感じた。
その匂いの方角へ歩を進めると、そこには噂に聞いたお菓子の家があった。
しかしそれもまさしく甘い罠だった。
名前:サン・ジェルマン
年齢:25歳ほど
性別:男
種族:ホムンクルス
容姿: 背中までの金髪を束ねている。一重切れ長。180センチ。細身。赤いコートを着込みしっかり襟を閉じている。
出典:太陽と北風
考察:旅人。コートは堅く封印されていて、脱ぐ事ができない。手袋、ブーツを履き、外に露出しているのは頭部のみ。
封印解除用に作った人工太陽と北風を生む雲を左右の袖に隠している。
華やかな舞踏会会場で、壁にもたれかかっている男が一人。
まるでその男の周囲だけ別の空間のように、周囲の人たちはサン・ジェルマンの存在に気付きません。
白雪姫「この双子の姉妹は普通の人間のようですが、他の映っている方々からは人間とは思えぬ力を感じます」
鏡には壁にもたれ掛かったサン・ジェルマンと姉妹に接触したシンデレラなども映っています。
両者共に舞踏会へ来た格好とは思えません。
シンデレラ「どうしてやりましょうか…」
シンデレラはここに来た経緯を思い出していた。
お腹の空いていた私はお菓子の家を勝手に食べ始めた。
よく考えれば家具に使われているお菓子を食べるなど危ないと気づいたはずだったのだが、生存本能なのか魔法の力なのか。
アップルパイの装飾を食べた時だった。その味は人間の食する事のできる許容範囲を遥かに超えていた。
実際そのパイに使われていた林檎は毒だったので当然ではある。
走馬灯が駆け巡り始めた時、お菓子の家の中から一人の魔女が出てきた。
名前:グレーテル
年齢:15
性別:♀
種族:魔女
容姿:甘くてとろけるような瞳をしている。
考察:ヘンゼルと双子の兄妹で、お菓子の家の2代目当主。
森で迷った者を甘い罠に掛け、魔法でお菓子に変えて食料か家具として使う。
兄のヘンゼルを使い魔とし、毎晩甘い夜を過ごす。
その魔女は私をお菓子に変えて食べると言った。
私は覚悟を決めた。どうせ死ぬなら誰かが生きるための糧となるのが良いと思ったし。
だが私の潔い様子を見たその魔女は何を思ったのか、死ぬ前に一つ願いを叶えてくれると言った。
私はお城の舞踏会へ行く事を望んだ。従順な良い子を貫いてもこの結果だった。もうお義姉さまの言いなりになる事もない。
そして私は此処に来た。かぼちゃの馬車は用意してもらったけど、衣装はそのままです。
何年か前家族で海水浴に出かけた時の事です。
初めての海にはしゃぐ息子を私はビデオで撮影していました。
しばらくして少し離れた波打ち際に人だかりができているのに気づきました。
人々の視線をカメラ越しに辿っていくとちょうど息子と同い年位の男の子が溺れています。
なぜあんな浅瀬で?と思いつつ撮影し続けました。
帰宅後、ビデオを編集していると問題のシーンにさしかかりました。
私はゾッとしました。
そこには男の子を引きずり込もうとする無数の手が写っていたのです。
次の瞬間私は家を飛び出しあの海水浴場へと車を走らせました。
海に着くとすぐに車を降り浅瀬に飛び込みます。
すぐにワラワラと無数の手が伸びてきましたが一匹ずつ倒し続けました。
倒しても倒してもキリがないほど出てくる手をもう数千匹は倒したでしょうか・・・
「そろそろいいかな・・・」
最後は全体攻撃魔法で一挙に方をつけると莫大な経験値が。
高らかに鳴り響くファンファーレはいつまでも鳴り止みませんでした。
壁に寄り添いながらも決して壁に背をつけることなく、サン・ジェルマンは佇んでいます。
その姿はとても舞踏会に来た様な服装ではないですし、その態度もまた然り、です。
浮いた服装や態度のサン・ジェルマンですが、周りの人はその存在にまるで気付きません。
なぜならば、サン・ジェルマンには生き物特有の気配や生気というものが殆どないのですから。
サン・ジェルマン自身も舞踏会に来たつもりはないのです。
この舞踏会が徴兵である事を察知し、雇ってもらいに来たのです。
錬金術にはお金と施設が必要です。
それを提供してくれるパトロン探しの一環なのです。
「・・・それにしてもどうしたものか・・・」
気配を探れば強い力を持つものが揃っているのですが、今のところは本当に舞踏会をやっているのです。
売り込み方法を思案しながら佇んでいるわけです。
暫くした後、会場がほんの少し、寒くなっている事に気づいた人はいるでしょうか?
いつの間にか足元には薄い靄も漂っています。
壁際に佇むサン・ジェルマンのコートの袖からうっすらと溢れ出る靄が、冷気を伴って会場を覆おうとしているのでした。
大学2年の夏休みに、ある有名な心霊スポットへ、深夜に車で行ってみたんです。
トンネルを抜けると急なカーブがあって、そこが有名な心霊スポット。
トンネルを抜けると、突然目の前にふっと女の人の白い影が!
あ! と思って、慌ててブレーキを踏んで降りてみたところ、そこに人影はなく、目の前は崖…
ガードレールが壊れていて、ブレーキを踏んでなかったら落ちてしまっていたかもしれない。
「あの幽霊は助けてくれたんだ」
そう思って、そこで手を合わせ、お祈りして帰路についた。
トンネルを引き返す途中、ふとミラーを見ると、後部座席に先ほど目の前を横切った女の人の姿が……。
その女の人は、こう呟いた。
「死ねばよかったのに」
「いや、でもホント助かったよ。ありがと」
「ば……ばかっ、あんたなんか死んじゃえばよかったのよ!」
「お礼しないとな。また来週きてもいいかな」
「ダ、ダメっ! また落ちそうになったら迷惑よっ!!!」
翌週、なんか弁当用意して待っててくれてました。
たまたま作りすぎただけで、決して僕のために用意したんじゃないそうです。
70 :
名無しになりきれ:2007/05/28(月) 15:19:36 0
怖い話が地味に面白いなwwもっと読みたいから頑張って書いてくれ
童話もガンガレ
>>70 ∧_∧
( ・ω・) 実はとあるスレからのコピペだお。
//\ ̄ ̄旦\ 一応は自分で書いてたりもするけどね。
// ※\___\ 評判の良かったやつをこっちにコピペしてるお。
\\ ※ ※ ※ ヽ
\ヽ-─────ヽ
コピペだったんかwwまあそれでもいいや、頑張ってくれ
17 名前: おさかなくわえた名無しさん 投稿日: 2005/05/15(日) 18:22:26 ID:O3FtHvSC
昔実家に視聴率レコーダーがありました。
よく○○調べって出ている所のものです。
ちなみに近所の人の紹介だったので、
うちの近所で持っている人はかなり多かったようです。。。
18 名前: おさかなくわえた名無しさん [sage] 投稿日: 2005/05/15(日) 17:44:10 ID:6P3rz+mJ
>>17 もう少しくやしく。
19 名前: おさかなくわえた名無しさん 投稿日: 2005/05/15(日) 18:22:26 ID:O3FtHvSC
昔実家に視聴率レコーダーがありました。
よく○○調べって出ている所のものです。
ちなみに近所の人の紹介だったのでうちだけだったと思ったら、
近所で持っている人は一杯いたみたいです!!(# ゚Д゚) ムッキー
( `Д´)フォオオオオオオオオオ!
20 名前: おさかなくわえた名無しさん [sage] 投稿日: 2005/05/15(日) 19:31:43 ID:6P3rz+mJ
>>19 ちがうちがう。
もっとくやしくおながいします。
22 名前: おさかなくわえた名無しさん [sage] 投稿日: 2005/05/15(日) 20:47:33 ID:O3FtHvSC
昔実家に視聴率レコーダーがありました。
よく○○調べって出ている所のものです。
ちなみに近所の人の紹介だったのでうちだけだったと思ったら、
近所で持っている人は一杯いたみたいです!!!(ノ#`Д´)ノ⌒┻━┻
ヽ(`(`(`(`ヽ(`Д´)ノ ファ・フォァ・フワォオオオオオオオオオオオン!!
23 名前: おさかなくわえた名無しさん [sage] 投稿日: 2005/05/15(日) 21:37:13 ID:6P3rz+mJ
ちょwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwww
木枯らしの吹く舞踏会会場。
そこに佇むのは赤いコートを纏ったサン・ジェルマンただ一人。
【三日以内におって通達を出す。】
舞踏会で王子はそういって幕を閉じた。
既に舞踏会閉幕から5日がたつ。
「いくらお試し期間とはいえ・・・残念だ・・・」
白はもぬけの殻で、誰もいない。
徴用されなかったということだろう。
小さく息をつき、城を後にする。
いつものように、変わりなくあてのない旅に出た。
>>74 別の意味で怖いなwwてゆーかどこの板だ?
>>74 17と18と19の投稿時間がおかしくない?
それかコピペに見せた創作文かもしれんしな
名無しを見る限り、生活板か?
177 名前:本当にあった怖い名無し [sage] 投稿日: 2007/06/3(日) 23:00:31ID:+mJG120O
私は友人Aからしつこく肝試しに誘われ、G県のとある心霊スポットに向かった。
友人の車には私の他に、3人の知り合いB・C・Dが同乗し、5人で目的地を目指す。
しかしその心霊スポットはマイナーで、地元の人しか知らないような場所らしくて、道に迷った。
「まいったね、また分かれ道だよ。どっちに行く?」
運転手のAが助手席の私に尋ねる。当時カーナビはさほど普及しておらず、私も判断に戸惑った。
一応ロードマップを確認するものの、自分達が今どこにいるのかすら分からない状況だった。
夕方に出発したので、辺りは既に真っ暗だった。山道は不気味な雰囲気が漂い、車内も静まり返った。
その時、突然Dが悲鳴を上げた。それが原因で車内はパニックになり、私も怖くて目を閉じていた。
『………こっち…………こっち………』
かすれた子供の声が聞こえた気がして、ふと顔を上げた瞬間、フロントガラスに血塗れの子供が!!
Aも見たらしくて叫びながらアクセルを踏み、がむしゃらな運転で山道を爆走し始める。
30分くらいの間、ライトに照らされた細い山道を、転落ギリギリの運転が続いた。
私は嫌な予感が止まらなかった。この道は子供が言ってた『こっち』なのではないかと。
そしてその予感は見事的中した。山道は途切れて、崖になっていたのだ。
Aが慌てて何度もブレーキを踏むが、車はまるで停まる気配すら無い!!
私達は崖から転落した。全員即死だった。
178 名前:本当にあった怖い名無し [sage] 投稿日: 2007/06/3(日) 23:02:54 ID:SP/m1p20
じゃあお前はどうやって2chに書き込んだんだよwwwwwwww
179 名前:本当にあった怖い名無し [sage] 投稿日: 2007/06/3(日) 23:05:14 ID:+mJG120O
気合いです、気合い。
なんか最初の頃とレスの趣旨が微妙に変わってないか?ww
てっきり怖い話をギャグ改変するコンセプトだと思ってたが・・・
個人的にはツンデ霊とマドハンド増殖がツボったから楽しみにしてる
82 :
怖い話:2007/06/06(水) 16:01:40 O
>>81 ごめんなさ〜いねッと♪いやぁ実はネタ切れ気味なもんでして…
暫くの間はちょいと忙しいから、たぶん投下は無いよ。
保守
84 :
魔王:2007/06/21(木) 13:29:23 O
こんな夜更けに、闇と風の中に馬を走らせるのは誰だろう。
それは父と子だ。
父はおびえる子をひしと抱きかかえている。
父「息子よ、なぜ顔を隠すのだ」
子「お父さんには魔王が見えないの。かんむりをかぶって、長い衣を着ている・・・」
父「あれはたなびく霧だ・・・」
魔王「かわいい坊や、一緒においで。Yo、party time!」
魔王の娘「パティーターイ!」
子「ボンバヘッ!(ボンバッヘッ!)ボンバヘッ!(オトーサーン!)
燃っえっだっすよーなー!あっつい魔王!」
父「Oh、Year!」
魔王「ボッ、ボッ、ボンバヘ!ボッボッボンバヘッ!」
子「ボンバヘッ!(ボンバッヘッ!)ボンバヘッ!(オトーサーン!)
無っ茶っしって知ったー!ホントの魔王ー!」
父「get down!」
魔王「Everytime wont you!何時でもFound you!逢いたいおーもいが〜ぁ〜!」
子「ボンバヘッ!(オトーサーン!)ボンバヘッ!(オトーサーン!)
魔王がぼくを見つけてKiss you!今夜も熱くなる!!」
父親はぎょっとして、体を全力で踊らせ歌った。子供を両腕に抱え、 やっとの思いで歌い終えた・・・
腕に抱えられた子はすでにボンバヘッ♪
85 :
名無しになりきれ:2007/06/22(金) 09:48:12 0
fvf
>>84 ちょwwww父親自重しろwwwwwwwwww
3人の兄弟が山登りに行って遭難した。夜になって、「このまま死ぬのか?」と思ったとき、1件の民家が見えた。
助かったと思い訪ねてみると、その家には美人の娘と、めちゃくちゃ怖そうな親父が住んでいた。
「よそ者は泊めない」という親父を、「かわいそうだから」と娘が説得し物置小屋に一晩泊めてもらう事に。
しかし、その娘のあまりの美しさに目がくらんだ3兄弟は、夜中にトイレに起きてきた娘に襲いかかった。
しかしすぐに親父に取り押さえられ、「お前等、全員殺す!!」と日本刀を抜かれた。
だが3兄弟は土下座して必死に謝った。父親は、「ここは山奥で食料も少ない。
山から食料を持ってきたら、山のふもとへ抜ける裏道を教えてやろう」と、条件を出した。
3人はすぐに小屋の近辺を探した。
はじめに戻ってきたのは次男だった。次男は、山ブドウを持ってきた。
それを見た父親は、「それをケツの穴にいれて見ろ」と言った。
次男は言われるまま、1粒のブドウを自分のケツの穴に入れた。そして次男は裏道を教えてもらい、無事山を降りた。
次に、三男が大きく実った栗を沢山抱えて戻ってきた。父親は同じようにケツの穴に入れることを命じた。
三男は必死に頑張って、栗をケツの穴に入れ始めた。
もう少しで入るという所で、三男は何故か笑ってしまい、栗はケツの穴からいきおい良く飛び出した。
三男は、そのまま父親に殺された。
三男は見てしまったのだ。 嬉しそうに、スイカを抱えてこちらに走ってくる長男の姿を・・・
西瓜の種詰めればいいんじゃね?
「プロジェクトX〜挑戦者たち〜
ミートホープの挑戦。奇跡の牛肉抜き牛肉風味コロッケ」
メーカーから、もっと安い牛肉コロッケを作れと迫られていた。
思案に暮れていたとき、社長は意外な事を言った。
「牛肉を抜いてみたらどうだろう」
工場長は戸惑った。
牛肉コロッケから牛肉ミンチを抜いたら牛肉コロッケでなくなってしまう。
「無理です。出来ません」工場長は思わず叫んだ。
「俺たちがやらずに誰がやるんだ。俺たちの手で作り上げるんだ!」
社長の熱い思いに、工場長は心を打たれた。肉屋の血が騒いだ。
「やらせてください!」
それから、夜を徹しての偽装ミンチ作りが始まった。
牛肉の代わりに、豚でも鶏でも、肉ならなんでもミンチにして混ぜた。
しかし、本物の牛肉コロッケの味は出せなかった。
工場長は、来る日も来る日もミンチと戦った。
いっそ、自分がミンチになれば、どんなに楽だろうと思ったこともあった。
追い詰められていた。
そこへ社長が現れた。そしてこうつぶやいた。
「発想を変えるんだ。牛は肉だけで出来ているんじゃない」
そうだ。血だ!牛の血があった。暗闇に光が射した気がした。
工場長は何の肉を入れたかよくわからないミンチに牛の血を混ぜてみた。
牛肉ミンチ特有の鮮やかな赤みが蘇った。
「これだ、これが探してた俺たちのミンチなんだ!」
牛肉抜き牛肉風味コロッケの誕生だった。
社長と工場長と従業員は、工場の片隅で朝まで飲み明かした。
工場長は、充足感に包まれ、涙が止まらなかった。
「社長、この涙も混ぜていいですか」工場長は言った。
「ああ、いいとも。塩っ辛くならない程度にな」
社長は自分のジョークに、肩を揺らして笑った。
>90
ワロタwwwwしかしこれはいくらなんでも不謹慎じゃないか?
ネタを選ぶのにも気をつけてないと予想外の攻撃をされることもあるんだぜ?
ちょwww時事問題www
もはやTRPと無関係なネタスレになってるwwww
>>91-92 確かに不謹慎でした、しかもTRPG関係無いですねw
次回からはTRPGスレのキャラパロSSとか書いてみます
という訳で本当にあった怖い話、最後に最凶のエピソードを…
先日、俺が妹の部屋で大便していたら、旧・日本兵の格好をした見知らぬ男が入ってきた。
最初は泥棒かと驚いたんだけど、無言のまま血走った眼でこちらを睨みつけてくる。
ちょっと薄気味悪くなって、「貴方は誰ですか、何をしているんですか?」って尋ねたら、
「バカヤロー!」って叫んでそのまま霞みたいに消えてしまった。
その後、帰宅した妹に事情を話したんだけど、泣き叫ぶばかりで話にならなかった。
両親も怒鳴ったり喚いたりするばかりで、その男の話は何も出来なかった。
もしかすると家族は俺の知らない秘密を抱えているんだろうか?
いま思い出しても背筋が凍る思いだ。
>93
ちょwww妹の部屋で何してんだよwww
主人公より幽霊がまともだwww
>>93 最初は話のオチがわからんかったが、読み直して1行目で吹いたwwww
そりゃ妹も泣き叫ぶわwwwwww
97 :
名無しになりきれ:2007/07/01(日) 19:22:00 0
んこ
>>93 無理にTRP系のものを書かなくてもいいじゃん
今のままでも十分面白いよ、TRPキャラのSSは荒れる可能性があるし
俺はTRP系の読んでみたいけどな
自分以外の人間が自分のキャラ動かすとどんな感じになるか見たいからな
つかTRPキャラ使わないならスレ違い
「オリキャラ」実験室だからTRPキャラでもオリキャラでもいいんじゃない?
オリキャラいいならこのままで大丈夫。
でも正直すれ違いの感は否めないな
面白いけどマルチだし
オリジナルでもいいからSSっぽいのきぼん
>>98-102 様々な意見ありがとうございます。
私個人としても、現状のままではスレ違い気味だとうすうす感じていましたww
確かにTRPGスレのキャラパロは、そのスレのファンから叩かれたりしますしね。
場合によっては荒れる可能性もありますから、題材選択は慎重に行うつもりです。
とは言ったものの、参加してないスレのキャラを題材にするのは難しいです。
過去ログ読むのは苦労しますから、TRPGっぽいオリジナル物を書こうかとも考えてます。
なんだかんだで結構このスレを読んでくれている人がいるので私も頑張ってみます。
参加してたTRPGスレが終わってるなら、それをの題材にしてSS書いても別段問題ない気がする
過去に稼動中のスレのSS投下されたけど、さほどあれてなかったような
いずれにせよTRPGの二次創作はいろいろ大変なようだから、無理しない方がいい
書きたいものを書いておくれ
>>103 参加してたスレのでも良いからTRPGパロ読んでみたいぞお
以前は自分の贔屓スレ以外のSSをこき下ろす奴もいたようだけど、今は見かけない品
>>105 そりゃそうだろうよ、最近はSS書いてる奴がいないんだから
ここの投下人が書き始めたら、またボウフラみたいに湧いて出るに1000チャッチャ
あれからいろいろ考えてみたのですが、最終的にオリジナル物に落ち着きました。
ゾンビ物ですが、バイオスレとは違って正統派ロメロゾンビ系です。
主人公は都内の小学校に通う12歳の少年で、典型的な現代っ子。
その主人公を保護したヒロインは、優しい看護学校生。
血と肉と死が満ち溢れた世界で、2人は命懸けの逃避行を始める。
といった感じのストーリーを予定していますが、大丈夫ですよね?
一応バイオスレを読みましたが、あんまりゾンビ出てないし被ってはないかと。
それに登場する人物は皆、銃や戦闘能力を持たない一般人ですから。
被っていても被っていなくても構わない
元々パロ、二次作投下スレなのだから
気にせず好きにやればいいw
>>107 バイオも最初の頃はゾンビは脅威だったけど、最近は障害物程度の扱いが多い品
映画みたいな普通のゾンビ物でもいいんじゃない?俺は読みたい
つーか主人公が小学生ってのも珍しいなwwそれだけで十分興味が湧いたww
>>109 小学生で思い出したけど、バイオに幼女いるよ
8歳だか10歳だか忘れたけど、ごく普通の小学生だったはず
最近入ってきたっぽいね、バイオの幼女。てか子供も居たじゃんww
しかし女子供みたいに非力な立場のキャラが話のメイン張るのは珍しいな
>>111 女性が主役やるのってゾンビ物では結構一般的だぞ?
まぁ大抵の場合は相方が頼れる男性で、恋仲に発展する訳だがw
>>111 いや、確か第三部の初期、2年以上前からいる
9歳の幼女ってバイオでも最年少じゃないかな
バイオコテ=肥満
投下にwktk^^
――2007年7月9日。恐怖の大王は8年に及ぶ大遅刻の末に、この星へと現われた。隕石の飛来である。
直径60m程の隕石が北海道釧路市に落下。市街地の大半をクレーターに変えたその隕石こそが全ての始まりであった。
――2007年7月13日。釧路市郊外の仮設住宅地にて、大規模な暴動が発生。避難住人の9割が死亡する大惨事だった。
対処に駆り出された自衛隊にも大勢の負傷者を出したこの暴動で、責任を問われた多くの自衛官は皆揃ってこう証言している。
「あれは絶対に生きた人間じゃなかった。」と。
――2007年7月25日。東京都中野区。
秋山拓也(あきやまたくや)は夏休みの宿題を“如何に早く”処理するかに全神経を集中させていた。
彼のクラス担任は普段から宿題の量が多い。夏休みともなればその量は劇的に増加する。
綿密な計画を立てて確実に取り掛からなければ、絶対に終わらないような量なのである。
拓也は不満でならなかった。去年の夏休みも宿題に追われる日々だったからだ。今年こそは遊びに行きたい。
夏休みの子供キャンプだ。毎年中野区が小学生を対象に開催する行事で、拓也も去年以外は欠かさず参加している。
「あーあ、このヒマワリ観察日記が邪魔なんだよなぁ・・・。」
ああでもないこうでもないと、鉛筆の端をくわえて、拓也は気怠そうに椅子の背に身体を預けた。
「ちぇ、ゴリ本の奴・・・死ぬばいいのに。」
拓也は担任の森本(通称ゴリ本)に怨みの言葉を向けて、携帯のワンセグ放送のスイッチを入れる。
『引き続き北海道からの中継です!死者が甦って生きた人々を襲う・・・』
またこのニュースだ。と拓也はうんざりした顔で、溜息と共にワンセグ放送のスイッチを切った。
約2週間前に起きた『釧路暴動』以来、道内で次々に発生した猟奇殺人事件。
6時台のニュースで、実際に死者が人を襲う映像が全国に流れてからは、ずっとこの話題ばかりだ。
そのせいで毎週楽しみにしているアニメが緊急特番で潰れ、拓也はこの話題が大嫌いになった。
「てゆーか時間考えて放送しろよ、子供が見てんだぜ?不二TVのクソッタレ!!」
乱暴に携帯を机の上に置いて、ベッドに寝転がった。死者が甦って生きた人々を襲う?
「バカバカしい、映画じゃあるまいし。」
この時の拓也はきっと想像もしていなかっただろう。
自分が3日後には、その“バカバカしい映画のような悪夢”の登場人物になる事を・・・。
>>116 想像してたより全然面白そうで吹いたwwww
今までがバカすぎた分、ギャップがwwwwww
ここじゃなくバイオのSSスレに投下すればいいのに
その方が喜ばれるよきっと
>118
どうせ勧めるならオカルト板の小説ZOMBIスレを薦めてやれよ
――2007年7月15日。函館市内。
函館市立河西病院に医療研修生として勤務する赤城麻由美(あかぎまゆみ)は、憂鬱に暮れていた。
隕石が落下した日から院内は戦場の如く慌ただしい毎日だったからだ。
運ばれて来るのは皆、口を揃えて「ゾンビにやられた」と泣きわめく。これはあまりにも酷い。
麻由美とてニュースくらいは目を通していた。最初こそ信じられなかったが、こうなってくると真実味が出てくる。
そして先日の『釧路暴動』だ。
運ばれて来る怪我人は一層増えるだろうと、今朝の会議で外科医長の中村義文(なかむらよしふみ)が言った。
中村は麻由美の義兄に当る人物で、去年の9月に麻由美の姉の由香と結婚したのだ。住む家は割りと近い。
「あ、あの・・・中村さん、医療疎開の件で少し話がしたいんですけど・・・。」
「あぁ麻由美ちゃんか、今は手が離せないんだ。後にしてもらえるかな?」
そう返事をして振り返ると、中村は恐る恐る声を掛けた麻由美を、怪訝そうな顔で見やった。
忙しさに寝る間も無く働いているのか、目元には隈が出来ており、少しやつれて見える。
「なんだか顔色が悪いみたいだね。麻由美ちゃん、きちんと休憩してるかい?」
「はい、さっき15分くらいいただきました。でも中村さんこそ、隈が出来てますよ?」
「アハハ、まいったな。実は一昨日から泊まり込みなんだ。後で由香に怒られるかも。」
おどけた調子で笑うと、駆け寄って来た看護婦に連れて行かれた。どうやらまた新しい怪我人らしい。
「ハァ・・・結局話せなかったなぁ・・・。」
麻由美は溜息を吐き、ナースステーションに戻ろうと、トボトボ歩き始めた。
麻由美には父親がいない。20年前に事故で他界したからだ。当時2歳の麻由美は父に関する記憶は無い。
以来、母親の美由紀が女手ひとつで姉妹2人を育て上げた。麻由美にとって母は最も尊敬する人物だった。
そんな美由紀も、去年の由香の結婚を堺にめっきり老け込んだ。安心がそうさせたのだろうか。
今年に入ると早々に腰を悪くして通院している。麻由美はそんな母に甘えないよう、努力した。
だが不安は尽きない。今の北海道は死人が歩き回る地獄のような場所なのだから。腰が悪い母は危険だ。
だから麻由美は函館市の緊急疎開登録に飛び付いた。疎開先は埼玉県、これだけ離れていれば安全だと思った。
――2007年7月24日。青函トンネル。
平和な国、日本。誰がこのような光景を想像出来ただろう。トンネルの入口付近は完全に封鎖されていた。
『釧路暴動』以来、道内の主要陸路には徹底的に検問封鎖が行われている。
“感染範囲の拡大”を防ぐためである。そう、甦った死人は増え続けているのだ。人を襲う事によって!!
>>118 バイオSSのスレなんてあるんですか?知りませんでした。
でもバイオとは全く路線が違うので、スレ違いと言われる気がします。
>>119 勧めるもなにも、私はそのスレから来たんですよw
それとZOMBIEですよ?『E』が足りません。
さてさて本編では説明しきれない部分を、この場を借りまして説明致します。
この話を書く際に最初の設定から少し変更した部分も有ります。
麻由美は看護学校生の予定でしたが、形を変えて医療研修生にしました。
『釧路暴動』に関する真相は、この先登場する“3人目”の主人公が明らかにします。
>>121 まじな物書きがどんな経緯でなな板に流れついたのかがしりたい
>>122 なな板のTRPGにも参加してたみたいだし、流れ着いたのとは違うだろ
どちらかと言えば、出戻りじゃね?
つーかゴリ本ゾンビ化フラグ立ってるなwww
名前に()で読み仮名振ってるキャラは重要人物か?
>>124 たぶんそうじゃね?詳しい解説っぽいのが出てるし
しかし地味だが良作の予感、派手な戦闘とかはあるんかねぇ…
舞台が日本だからまともな武器を持ってるのは自衛隊くらいだしな
ゾンビ映画で銃が普通に使えてるのはアメリカが銃社会だからね
派手な戦いは無いんじゃない?釧路暴動での自衛隊が少し銃撃戦やるくらいと予想
――2007年7月21日。函館市内。
朝から降り続く雨の中、車を運転しながら麻由美は悩んでいた。それは母の美由紀のことだ。
医療疎開登録は滑り込みで間に合ったが、疎開に美由紀が首を縦に振らなかったのである。
「どうせ死ぬなら生まれ育った故郷で死にたい」と、頑として承知しない。これには麻由美も困った。
口論になったが、話は互いに平行線のまま今に至る。疎開の日は1週間後に迫っている以上、説得を急ぐ必要がある。
噂では北海道を完全に封鎖する計画を政府が容認したという。勿論それは噂でしかないが、現実味があり過ぎた。
実際に数キロ毎に検問があり、何やら検査する機械を導入している。
あまりにも物々しい装備に、一般人は強い不安を感じるだろう。まるで検疫のようだと。
ゾンビ騒動が新種ウイルスによる伝染病ではないかとも噂されているのも、あの厳重な検査を見れば納得出来た。
まだ本州にはゾンビの目撃情報が無い事から、北海道さえ隔離すれば確かに騒動の拡大は防げる。
しかしそれでは北海道で生活している人々はどうなるのか。麻由美は最悪の結末を想像して青ざめた。
だからこそ急ぐ必要があるのだ。少なくとも行政が管理する疎開なら、まだ安心できる。
この機会を逃したら、次もまた同じような機会があるとは限らない。考えれば考える程に思考は後ろ向きになった。
「お母さんの分からず屋・・・どうして分かってくれないのよ、もう・・・。」
夕方だというのに、道路には車はほとんど見掛けない。外出に規制が掛かっているためだ。
いつもなら帰宅ラッシュにブーブー文句を並べる時間帯の筈だった。
「まるでゴーストタウンね、歩いてる人も全然いないし。・・・早く帰らなきゃ。」
アクセルを強く踏み、麻由美は帰路を急いだ。
――2007年7月13日。釧路市郊外の仮設住宅地。
「今が夏で良かったよ。冬場にあんな薄っぺらい壁じゃ凍死しろって言ってるようなもんだ。」
仮設トイレに行った帰り道に中年の男がぶつくさと愚痴をこぼす。無理もない、急ごしらえの仮設住宅だ。
ライフラインの復旧すらままならない状況で、あまり贅沢は言えない。まだ屋根があるだけマシ。
そう自分に言い聞かせ、男は夜道をゆっくりと歩いて行く。この中年男の名前は丸山大輔(まるやまだいすけ)。
今から数分後に起こる日本史上最悪の惨劇を生き延びた、数少ない“非感染生存者”の1人だ・・・。
>>127 毎日投下乙
そういえばこの話のタイトルは?
もしかしてまだ決まってないのか?
タイトルとかいらなくね?
>>129 タイトルは特に必要じゃあないが、あったらあったで作品の顔になるし意味はあるよ
ところで3人目は絶対に自衛隊員だとオモタが予想が外れたわ
すいません、今日の投下はお休みします。プロット再構成をしていますので。
さてさてさて、それではまた解説をば。
派手な戦いの描写ですが、基本的にありません。ごめんなさい。
これは日本という舞台を活かすためだと理解下さい。アメリカ映画との差別化です。
次に作題ですが、これは後でドドーンと出ます。まだオープニングなんです。
映画だとメインクレジットが流れている時間帯だと思って頂ければ幸いです。
最後に3人目の主人公、丸山大輔ですが・・・彼は突然閃いたキャラです。
どうしてもゾンビに対する経験を持ったキャラが必要になったので用意しました。
ちなみにサラリーマンなので戦闘能力は低いです。
昨日は投下無かったんだな、ちょっと残念だ
>>132 気持は分かるがプレッシャーになりかねん
こんなときは
再構築お疲れ様
焦らなくともいい
書くことを楽しんでくれ
それがROM人の楽しみにもなるから
と応援しよう
――2007年7月13日。釧路市郊外仮設住宅地。
最初の悲鳴は若い男のものだった。被災者の死体を輸送していた災害救助隊の隊員だ。
担架から突然起き上がった死体に噛み付かれ、痛みと混乱から悲鳴を上げたのである。
すぐに別の隊員が駆け付けたが、結局はその隊員も同様に悲鳴を上げただけに終わる。
次第に騒ぎは方々で起き始めた。
死体が動き始める。常識では絶対に起こり得ない出来事が、起こった。
仮設住宅に住む住人達は、靴も履かずに逃げ惑い、甦った死者はそれを追い回す。
「おい・・・なんだありゃ?」
大輔は、よたよたと歩いて来る“顔が半分近く剥がれ落ちた”女性を見て、咥えていた煙草を落とした。
「ぁあ・・・あああ・・・ああああ」
声にならない呻きと共に、すぐそこまで近付いて来た女性。大輔は軽いパニックに陥った。
薄暗い夜道に出会うには“刺激が強過ぎる”タイプの女性だ。至極当然の反応といえる。
「う・・うあああああああああああああっ!!!!来るなっ!来るなあぁ!!」
今し方トイレで小便を済ませていたのは幸か不幸か。大輔は尻餅をつきながらも後退り、逃げ出す。
が、やはり上手く身体が動かない。高校時代は野球部に所属していたし、運動神経には多少の自信はあった。
だが今はそんな遥か昔の栄光は見る影も無く、やはり普通の中年男性でしかなかった。
「くそ!メタボリックか!?メタボリックのせいか!?」
パニックに陥った大輔は緊急事態にもかかわらず、場違いな言葉を悔しさと一緒に吐き出した。
そんな大輔の心境など知った事かと、女性の死体は迫って来る。口から涎を垂れ流し、迫って来る。
「ちくしょおおお!!!」
覚悟を決めた。歯を食いしばり、目を閉じて、死を受け入れる。
パンパンッ!!
耳が騒音に堪えられず、キーンと耳鳴りがする。恐る恐る目を開けると、ライフルを持った自衛隊員がいた。
助かったのだと理解するのに、たっぷり数秒掛かった。だが未だに身体は震えて動かない。
何か喋ろうにも、上手く呂律が回らない。39年間の人生で、初めて体験する類の恐怖が自由を奪ったのだ。
「大丈夫か!?おい、大丈夫か!?」
「・・・は・・はいっ!!」
自衛隊員に肩を揺さぶられ、ようやく大輔は喋ることが出来た。と同時に涙が溢れた、歓喜の涙だった。
この夜、釧路郊外仮設住宅地で起きた事件は、翌日には「暴動」と報道された。
だが、事件の当事者達は知っている。あれは「暴動」などではないと。
身を守るために必要な“正当防衛”だったのだと。
その認識は、やがて事件が北海道から本州へと広がる際に、皆が気付くことだろう。
“奴ら”には疲れも痛みも存在しない。
“奴ら”に命乞いは通じない。
そして、“奴ら”に噛まれると・・・
これは間違いなく良スレ
ゴリ本は国語教師? 体育教師?
>>136 良スレというにはまだ微妙だろ
しかし投下人がマジでロメロファンなのはガチ
「奴らに命乞いは通じない」は初代ゾンビのキャッチコピーだし
>>137 それって確か日本公開時のポスターに書かれてたヤツだな
しかしロメロ3部作のどれ基準だろうな、ゾンビの強さ的にランドかな?
>>137 ごめんロメロってなに?
バイオは全然知らないのよ
ゲームも一作目最初のゾンビで挫折したし
こんな話は共同避難所ですべきかな?かな?
>>138 しかも日本版パンフに変なオリジナル設定書き足してファンから叩かれてたなww
ゾンビの戦闘力は俺もランド準拠だと予想しているよ
ナイトやドーンじゃ日本という銃無し設定でもヌル過ぎるしな
>>139 ゾンビ映画界の巨匠、ジョージ・A・ロメロ監督のことだよ
ジブリの宮崎駿みたいなもんだ
バイオハザードは関係無いからな
>>140 トンクス
ゾンビ映画って見たことも聞いたこともないや…
みんな物知りだなぁ
まだプロローグなんだよな
どれだけ長編になるかちょっと怖い
――2007年7月15日。函館市内。
大輔はあれから自衛隊によって保護された。同様に保護された者も大勢いるようだった。
「検査を受けろって言われてもなぁ・・・。」
指示された通りに函館市立河西病院の受付に向かう。病院の中は騒然としており、道を尋ねる雰囲気ではない。
それでも早く検査を済ませて帰りたかったので、近くにいた看護婦に声を掛ける事にした。
「あの・・・受付カウンターはどこですかね?自衛隊から検査を受けるよう言われて来たのですが。」
「あぁ!話は聞いております。担当の者を今呼びますので、少々お待ち下さい。」
看護婦の対応に一瞬不安を感じた。『話は聞いております』と、確かに看護婦は言った。
(どういうことだ?やけにスムーズじゃないか。)
大輔は怪訝そうな顔で、廊下で立ち話をしている医師に話し掛ける看護婦を見つめ続けた。
「アハハ、まいったな。実は一昨日から泊まり込みなんだ。後で由香に怒られるかも。」
「中村先生、自衛隊の依頼です。先日の感染検査かと・・・」
「分かった、すぐに行く。麻由美ちゃん、話はまた後でね。」
不安げな若い看護婦を置き去りにして、医師が先程の看護婦と共に大輔の所にやって来た。
大輔はその若い看護婦の不安げな表情が印象に残った。なんだか胸の奥が熱くなる。
「はじめまして、僕は医長の中村です。今回の件で感染検査を担当しています。よろしく。」
「はぁ、どうも・・・。丸山です、よろしくお願いします。」
笑顔と一緒に差し出された手を握り返し、大輔もぎこちなく笑い返した。
何故かはわからない、だがその笑顔が恐ろしかったのだ。
――2007年7月24日。千歳空港。
麻由美と美由紀は疎開先の埼玉県に向かうため、千歳空港に来ていた。空港施設内は厳重な警戒態勢である。
今や北海道から出ることが出来る、唯一の場所なのだから当然だ。絶対に感染した者を道内から出す訳にはいかない。
『13:30発、羽田行が6番ゲートに到着致しました。』
空港のアナウンスに耳を傾けて、辺りをキョロキョロと見回す麻由美の頭を、美由紀は優しく撫でた。
「そんなに慌ててどうするんだい?まだ飛行機は間に合うよ。」
「う、うん。そうだね・・・でもほら、用心に越したことはないでしょ?」
照れ隠しに車椅子を押す速度を少し早めて、麻由美はそっぽを向いた。
母を説得することに成功したのは麻由美にとって嬉しい出来事だった。一時は諦めていたのだから。
中村と由香が説得を手伝ってくれたのが大きかった。渋々ではあったが、美由紀は了承したのである。
(これでいいのよ、母さんは安全な所にいた方がいいに決まってるもの。)
ついつい自然と笑みがこぼれる。無理もない、ここ最近はずっと悲惨な現場を見てきたのだ。
「そういえば東京の宏一叔父さんに何かお土産買って行こうよ。」
「あらあら、飛行機が間に合わないんじゃなかったっけ?」
意地悪そうに笑う美由紀に、麻由美は頬を膨らませて「知らない!」と返した。どこから見ても幸せそうな母娘であった。
さてさてさて、いよいよバラバラだった時間軸が交差し始めました。
「おい、まだゾンビ1回しか出てねーよ」というツッコミが入りそうなスロー展開です。
もう少しお待ち下さい。拓也編からいきなり地獄のサバイバルキャンプが始まりますので。
ではこの辺で名無しの皆様にお答えしていきたいと思います。
先ずはゾンビの強さ。これは悩みました。新丼(リメイク版ドーン)では即死ですからね。
かといって旧丼(原作ドーン)ではゾンビは動くカカシみたいでつまらない。
という訳で、ランドのゾンビ程度の強さを採用しています。
次に作品の長さですが、それほど長くはありません。全部で40レス程度です。
40レスと聞くと長く感じるかもしれませんが、実は文庫換算で20ページ弱です。
読切短篇と同じくらいです。ね、そんなに長くないでしょう?
最後に、私がロメロファンだと予想している名無しさんがいますが・・・はい正解ですww
というよりもゾンビ映画そのものが大好きです。ロメロ監督の3部作はその中でも特に好きですね。
ザッピングktkr
>>144 やっぱりランドくらいが無難か。しかし自衛隊の動きが気になるな
もしかしてTRPGに移行する計画とかあったりするのか?
なにげに裏設定みたいなのをちゃっかり用意してそうな希ガス
>>145 そういえば奴もゾンビ物が好きみたいだな、昔リビングデッドスレにいたし
自衛隊は既にゾンビがウイルス感染で増えることを知ってるような展開だね
丸山がこの後どうやって真由美と拓也に合流するんだろうか…
地味に盛り上がってきてるなww
最初の頃の怖い話の方が好きだったが
これならそこそこ楽しめるかも
>>144 後40って言い切れるのがすごいな
プロットは練り終わってるって事か
ところで後40だと少なくね?
漏れはゾンビもの始めて見るからwktkなんだが
>150
そんなもんでしょ。文字通りのショートショートなんだから
じっくり描写する長編と違ってかなり削ってるようだし
個人的には長編として読みたいけどね
なな板の基準kwsk
SS関係ないがなな板の基準
【なりきりなんでもあり】=【なりきり(とマナーと常識)の範囲内においてどんな使い方をしてもいい】
散々ほったらかしといて、人が使いだしたら文句いいに湧いて出る奴はなんなんだろな
煽りでも何でもなく、なぜTRPGに掠りもしないSSを投下するのかが不思議
前の怖い話は問題外だが、今回のゾンビネタもオカルトのSSスレが該当スレだと思うんだが
別に叩いてるわけじゃなく、悪しからず該当スレの方がより大勢の人に見てもらえるんじゃ?と思っただけ
SSスレだとSS職人もいるし、ROMもレベルがたかい
その点ここなら向こうでみ向きもされないレベルでもマンセーしてもらえる
>>158 オカ板のゾンビスレを読んできた
ここの投下人のレベルなら向こうの方がマンセーして貰えそうだw
きっと叩かれに来たんだよ。なな板ならマンセーよりも叩きの方が多いからなw
どんだけ〜wwwwwwww
つーか思うんだけどさ。
ここの投下人って、最初は御伽話やってる時に、完全にスレ違いのコピペレスを何度も垂れ流してたじゃん。
普通に荒らし行為じゃね?
そのコピペを面白いって言われて調子に乗って、今度は自慢のSSを披露しようって今に至るわけだ。
そんな輩のSS投下をヤンヤヤンヤと持て囃して、ちょっとみんな安くないかね。
安いな
163 :
106:2007/07/13(金) 21:38:16 O
俺が予想した通り 涌 い た な
この惨状には辟易するが、
>>163のインチキ占い師みたいなのにもウンザリだな。
>>106は
>>105に対してのレス
>>105は2次SSに対しての叩きのことであって、今喚かれているTRP系スレと関係ないSSだからという事とは関係がない。
にも拘らずわざわざ間違えているのは、本物のアホか詭弁を使う卑怯者かどっちだ?
とはいえ投下人(仮名)には何も関係ないことだな。
空気は悪くなったが、気にせず続けてくれ。
楽しみにしてる。
他板の輩がTRPGの庭で荒らしまがいの真似してくれたんだ。
そいつが自分の住処を明かしたんだから、そんな事をするのは論外のクズだって前提で言うが、
そいつの住処に乗り込んで同じ事をやり返そうってくらいの気概は欲しいもんだがね。
気概だけで本当にやっちゃいけねーが。
投下人本人にしろ、どう考えてもTRPGと関係ないことしてんだから、
僕はこのスレで書いてます遊びに来てねーって宣伝するに留める程度の分別は欲しいもんだ。
物書きは色んな人に読んで欲しいってサガなのは分かるが、TPOくらいは弁えようぜ。
廃墟っつってもここはTRPGのオリキャラ実験室、
性質上普段はあまり使われないが、いつ本来の用途で使われるか分からないモンなんだから。
で、その使われてる時にコピペ攻撃したのは立派な荒らし行為なんだぜ、分かってんのか?
コピペだけしてるうちはドコのダレとも分からんただの小荒らしだから見過ごしてたが、
本格的に遣り始める気なら色々と文句もつけたくなんぞ。
>>165 熱くなるなよ、投下人が本当にオカ板から来たかどうかもわからないんだぜ?
167 :
165:2007/07/13(金) 22:17:25 0
すまん、熱くなった。
俺もただの荒らしには成り下がりたくはねーから、言うのは
>>161と
>>165だけに留めとく。
投下人がそれでも続けようが、これ以上は文句は言わん。
だが、煽りじゃなくこういう風に思ってる奴もいるって事だけは脳髄に打ち込んで覚えといてくれ。
>>165 乗り込んで同じことって事はつまりゾンビSSを書いて投下するって事だな!
これも一種の異文化交流だな!
と、ぼけてみる
>>165>>168 よっしゃ!それじゃあ俺が向こうに乗り込んでゾンビSS書いてくるぜ!!
そしてなな板のレベルの高さをオカ板に思い知らせてやるるぅぅあ!!!!
>>169 なな板の恥にはなるなよ?まずここに投下してからにしろ
つーか勝手になな板代表とか名乗ってんじゃねーよwww
いざ書くとなると結構ムズイなwwTRPしかやったことねーから苦戦中だぜ…
>>170 明日には投下するよ、台風で仕事休みだしな
TRPGやってたんならSSもそれなりに書けるもんじゃないのか?
形がちょっと違うだけで、結局やってることは同じだろが
廃スレ今までほったらかして再利用が始まったら叩きとかアホか
でも異文化交流はいいことかもしれんな
なな板対オカ板みたいなw
ただSSとTRPGは全然違うのでそこを忘れないように
他人にネタふるんじゃなくて自分で落とすんだからな
なな板代表は結局逃げたか…
ゾンビの続き楽しみにしていたのに
他の二次作も投下できる雰囲気じゃなくなったし
最悪だな糞名無し
>>177 いまパロ投下したら、そいつか叩いて追い出したような印象出るもんな
>>177 俺だって続きが楽しみじゃないわけじゃないが、過度の期待もしてない
該当スレが見つかったら、投下人も「ここに書いた」と誘導してくれるだろ
つかさ、スレ違いなんて本人も最初からわかってたはず
当然のことを指摘されて投げ出すようなら、どのみち最後まで書き上げるなんて無理
SSは最後まで書きあげてこそSSと呼べるんだからな
>>179 指摘の仕方が最悪だって言ってんだろクソが
ってことじゃないのか?
お題目並べるのは結構だが、言葉ぐらい選べよってことだろ
俺もお前も
二次ネタ閃いたけど、今はとても投下できる空気じゃないね
夏休みもあるし、このままもうちょっと暖めとこ
そういや前スレでカイザーを筆頭としたTRP系キャラクロスオーバーSS書くって言ってた名無しがいたね
気長に待ってるんだけど、やっぱりぽしゃったのかなあ
何か知らんがカイザー粘着もいるし、
出来上がってても空気がコレだし中々難しいんだろう
この部屋に立籠もって今日で10日になる。
窓の外は、日に日に地獄のような光景が広がっていった。
そこに生きた人間なんかいなかった。
TVも、映すのは砂嵐ばかり。
この部屋に立籠もった俺を含む4人は、みんな限界が近付いている。
食料は2日前に尽きた。
水も今日中に無くなるだろう。
これからどうするか、誰もが思っていながら口に出せない。
部屋を出たら命の保証は無い。
かといってこの部屋から動かなくても、いずれは餓え死にする。
生き延びるためには食料が絶対に必要だ。
だが、誰も食料を取りに行くとは言い出さない。それが苛立った。
みんな死にたくないのは同じなのだから当然といえば当然だろう。
今とまったく同じ状況が、6日前にもあったからだ。
1人を犠牲に下の店舗から食料を取ってきた。
最初は5人だった。このコンビニに勤める店員2人と客3人。
立籠もって4日目で食料が尽き、俺と同じ店員の山田が下に行った。
床1枚向こう側には食料が沢山あるのに、手が届かない苛立ちが、俺達を狂わせた。
てな感じの導入部分までは考えた。
自分でも何が死体のかさっぱりわからん。
やっぱ本職には勝てんわ…orz
>>175 逃げてねーよ、時間がかかっただけだ。
>>183 時間がかかった割りにその程度か?がっかだよ
スレ汚しすいませんでした。続きはオカ板で書きます。
残念だ。
これに呆れずに、今度はスレ趣旨にあった投下を待っているよ。
雑談所とここを見た感じ、SS書きたがってる人は結構いるみたいだから、皆で一緒に書き始めない?
一人で書くと追い出した奴と思われたり空気悪かったりでキツいけど、何人かで一緒に連載すれば割と大丈夫じゃないかな。
もちろん投下人(仮名)氏のリターンも大歓迎。トリ付きで3人集まったらスタートしたいな。
>>187 SSといってもTRPGスレに無関係なものを投下したら、また同じ事の繰り返しだよ?
だがひとえに二次創作といっても、他人のキャラを借りてきてレス書く行為って、相当消耗する
物語の脱落者が多い原因の一つは、これだとひそかに思ってる
>>188 もちろんTRPGの二次創作とかその類ね。
その消耗を気合いで乗り切れたり、荒らしや煽りに負けない人でSS書きたい人、一緒にやりたいな。
なんか勘違いしている奴ばかりだね
>>1を声に出して読み返せばいいと思うよ?
TRPGは関係無くても構わないんだからさ
書きたい奴が書きたい物を書きたい時に書きなよ
>>190 いや、自分が読み返してみることを勧める
声に出すだけじゃなく文の前後の意味の繋がりを考えてな
ここはなな板なんだぜ
さらに言うと、このスレは物語よりキャラが先にありきの煩悩吐き出しスレ
当時暴れまわっていたコウガ対策用のスレとして立てられたのがそもそもの始まり
だからSS投下するためにTRPGっぽいSS書くって言うのはちょっと違う気がする
完全に投下に適したスレがあるのなら、そっちに投下した方が良いに決まってる罠
つか、投下人が投下内容と完全に符合するスレから来たなんて言うからややこしい事になったんだよ
単にゾンビTRPGしたいけどできないからSSにして吐き出す!っていうんなら話は簡単だったのに
>キャラは考え付いたけど、
>TRP系スレに参加するほど余裕はない。
>キャラに合う世界観のスレがない。
>このキャラを受け入れてくれるか怖い。
>自分で主催するのは無理。
>文章書く練習でもしたい。
>周りが引くのを気にせずに趣味全開なレスを投下したい。
>受けがよさそうなら本格参戦させたい。
>それでもそんなキャラを活躍させたい。そんな世の中舐めた奴等の為のスレだ。
>SS投下してすっきりしろ。
>間違ってもTRP系スレに無理やり参加してFOしないように。
>暇な奴が添削や改善点を指摘してくれるかもしれん。
>叩かれても気にするな。誰にも迷惑はかけていない。
>参考にしたいときだけ耳を傾ければOK。
確かにTRPに関係ないと駄目だというルールは無いな、基本は書き捨てのスレみたいな感じか?
てことは誰が何を書こうがOKじゃね?そんな世の中舐めた奴等の為のスレなんだからな
ゴミ箱みたいなもんだ、遠慮するなよお前ら
>>193 コピペはいいが、文の頭を1つ空けてある部分や改行までちゃんと再現しような
その辺をわざわざ詰めてるところを見ると、自分でも意味の繋がりに気付いてるんじゃないかね
ゾンビTRPGしたいけどできないからSSにして吐き出してもいい?答えは聞かないけど
ここはSS用のごみ箱らしいし、もやもや吐き出してすっきりしたいしさ
答えは聞かないなら質問せずにさっさと落とすといいんじゃない?
みんな難しく考えすぎ。
>>34とか
>>46みたいなしょーもないのもOKなんだから好き放題投げとくべし。
>>195 なんでゾンビTRPG出来ないの?スレ建て相談所で募集すればいいんじゃね?
バイオと被ってるからか?バイオのせいなのか?そもそもバイオはゾンビ物か?
>>199 バイオバイオ五月蠅い、お前はバイオ村に帰れ
こうして見るとなな板は腐ってるなぁ・・・まるでゾンビみたいだ
だが実際問題、今のなな板にゾンビTRPGの需要があるかが疑問だ
それこそバイオで充分みたいな言われ方されて終わりだろうな…
>>199 ロメロゾンビスレ過去にあったよ、とっくの昔に過疎でdat落ちしただけの話
マジレスすると、ロメロゾンビはマニアックすぎて一般受けしなかった
(俺もググッてロメロゾンビがどんなものか知ったくらいだからな)
どうしてもやりたいならオカ板にTRPGに近いゾンビスレが存在したはず
今もあるか知らんが、そっち行った方がいいんじゃね?
>>198が真理
追い出されただの何だの、関係無いからさっさと書けよ
>>187 みんなでリレー小説やろうと言うのか、いまの空気辛いけど一斉に投下しようというのか、どっち?
前者ならスレ立て相談行きを勧めるが、後者なら番外編を一つ書いてみようかと思う
>>203 マジレスするとあのスレはTRPGじゃなかったんだがな
オカ板のゾンビごっこもTRPGよりも第一部物語スレに近い
>>203 リビングデッドは名無しも1人の登場人物として参加する特殊なスレだからな
そもそもロメロ系は終わらせ時が無いから、ストーリーを提供する人が居ないと無理
しかしマニアックさでならバタリアンスレ最強
誰も来ないで終わったからなwwwスレ立てた俺涙目wwww
ロメロもバタリアンも救いが無いから敬遠されるのかな?
逃げ場が無いから必ず最後には自分が死ぬことになる
つか、いいかげんスレ違いだから雑談所に移動しようぜ
>>205 もし後者なら俺も何か考えてみようかな
だが書きたいスレがまずいんだよな、いろいろと
>>207 でもLIVING DEADはpart2まで続いたじゃないか
GM無しでも意外と参加者が勝手にイベント始めるよ
つーかバタリアンなら参加したかったな
開始5レスくらいで死ぬピザやりてえなぁ…
たしか1スレ目も足切りで落ちたはずだが?
>>205 もちろん後者。
皆で別個のSSを同時スタートする感じね。
>>208 SSの内容がまずくない限りは選ぶスレはどれでも大丈夫じゃないかな?
でも、俺には想像が付かないけど、あんまりマズそうなスレなら慎重になった方がいいのかも。
企画段階は盛り上がっても実際参加する奴はいないのがなな板クオリティー
SSはある程度まとまってから投下するもんだぜ
鳥つけて参加表明
番外編ちょっと投下するヨ
>>213 時期的な問題もあるし、SS書く人や書きたい人も準備があるだろうから、
次の次の土曜日、7/28を一応開始予定日にしておこうかな。
それまでにあと2人以上酉付きで参加表明してくれたら企画として決行します。
と言ってもあと1人でも来てくれたらやると思うけどね。
他の人が参加表明してくれた時期によっては、その人の準備期間を作るために開始日延ばすかも。
>>216 よろしく!番外編楽しみにしてるよ。
いつもと変わらねえ酒場、相変わらず俺は端のテーブルで飲んだくれていた。
蟹小僧達が狩りに出てもう3日になる。暇で暇で堪らなかった。
「なぁなぁオッサン、あんたここじゃ長いんだろ?狩りの話とか聞かせてくれよ。」
不意に声をかけられ、俺はジョッキを傾ける手を止めた。
見れば新米よりはマシって程度の装備に身を固めた若いハンターが立っている。
「人の話聞くより自分で狩りに出りゃ、嫌でも狩りを知ることが出来るぜ?」
「狩りに行きたいけどさ、生憎と依頼が無いんだよ。どうせオッサンも暇だろ?」
こいつ…口の達者な野郎だ。まぁ確かに暇だしな、たまには語るのも悪くねぇか。
「おいマスター、エール2杯だ。勘定はこいつ持ちだ。」
「意外に安い講演料だなぁ。」
馬鹿野郎、新米のしょっぱい財布に優しい講演料だろうがよ。
ウェイトレスが運んできたジョッキを掴むと、俺はグイッと一気に飲み干した。
「そうだな、俺がまだテメェくらいの駆け出しだった頃の話をしてやるよ。」
密林の蒸し暑さと、なかなか居なくならねぇランポスの群に苛々していた。
ガノトトスの背鰭が見え隠れしているってのによ、邪魔なランポスが居やがる。
釣りカエルで釣り上げる予定だったんだが、これじゃあ無理だろうな。
「クソッタレが…先に掃除しとくか。」
愛剣のバスターブレイド改に手を伸ばす、ランポスは目に見える限り4匹。
手早く片付けたらガノトトスには見つからないかもしれねえ。
「一か八か、こりゃ分が悪い賭けだな。」
藪から飛び出して1匹目のランポスをぶった斬るのと、ガノトトスが跳ねたのは同じ時だった。
頭の上を横切ってく馬鹿でかいガノトトスにはマジでビビった。
ガレオスなんか比べ物になりゃしねえ。俺は完全に奴のペースに呑まれちまった。
どんだけ経験を積んだところでよ、本能には勝てねぇのさ。恐怖ってヤツだ。
飛竜に睨まれちまうと身体が一瞬だが、主人を裏切るんだ。
こればっかりはどうにもならねえからな、俺も動けなくなっていたよ。
気が付いたら俺は盛大に地面を転がってやがる。
ランポスに吹っ飛ばされたと分かるまで、たっぷり2秒はかかったぜ。
だがよ、そのおかげで水流のブレスに当たらなかったのは不幸中の幸いだった。
俺の代わりに真っ二つになったランポスを見て、背筋が凍ったさ。マジで震えたよ。
あの時の恐怖を忘れてねぇから、俺は今までやって来れたんだ。
「で、ガノトトスは?」
「あ?」
「いや、だからガノトトスはどうやって狩ったのさ。」
「その後すぐに川へ戻りやがってな、全然陸に上がらねえから時間切れでクエ失敗だったぜ。」
「…………………………………」
キョトーンとした顔で固まった若僧を置き去りにして、俺は酒場を出た。
さぁて、今日もガッツリと特産キノコを拾うとするか!!ガハハハ!!!
すまんすまん、誤爆しちまったぜ!!ガハハハハ!!!
とうとう髭が酒場を見限ったのかとオモタヨ・・・
誤爆で安心した
>>218 酒場を出た髭の前にローブ姿の女性が現れた
「あらあなた、死相が出ていますよ?今日は家にいた方がいいわ」
キリ番ゲットで投下予告だ
なんだかんだで人数揃ったね、投下に少しだけ期待
あと10日も先か
熱が覚めないうちに投下できる奴から順次投下したらどうだ?
>>224 お前が冷めても、書いてる連中は冷めない
今も書いてる最中だろうし
がっついてないで黙って待ってろよ
スタートが迫ってきたわけだが、進行具合いはどうだ?
スタートなんてありませんよ?
まあ待とうや、当日になっても投下が無ければその時叩けばいいんだし
個人的には投下人みたいに毎日少しずつ投下してくれた方が嬉しいがね
28日だけど、花火大会があって行くから投下は遅くなるか翌日になるかも。
そんなわけで、他の人は気にせず先に投下しちゃってください。
いよいよ明後日だな
83283以外消えてるオカン
密かに投下を企んでいる奴がいるオカン
誰も投下しないオカン
悲しいね・・・こんなんだったら投下人の方がマシだったかも
毎日投下してROMを飽きさせない内容だったしさ・・・
誰も投下しないなら何か小ネタ考えてみるか
今日はちょっと無理だけど
ところで現行はNGだっけか?
>>233-234 今日はまだ3時間半も残ってるんだよ?
信じようよ、きっと投下してくれるってば。
>>235 別に現行スレネタNGしなくてもいいだら
好きに投下してくれ
ヒィィ…名前欄そのまま書いちゃった…すいません。
訳:俺様が投下してやるってば
>>236 こんな所で油売ってないで自分のスレの続きを早く書きなされ
なんだ物語コテか
7月28日も残り20分を切ったな
後20分ないよ
投下人追い出した人責任とって書きなさい^^
>>243 そう書いとけば誰も投下できないもんな
ってアフォか!
追い出した本人乙
そもそも開始日時を決める必要性を感じられない
ぎりぎり59分で投下してみんなをヒヤヒヤさせるのが狙いだよ、たぶんww
つまり話題性狙いか
結局はまたこのスレは廃墟に逆戻りかww
名無しがウザすぎて書く気が失せたんじゃね?俺なら確実に失せる
と言えば投下しない責任を押し付けれるわな
ついでに雰囲気が悪くなるように燃料投下すればうやむやと
祭り状態だもんな
小ネタ出そうと思えば出せるけど、ここよりまとめサイトにメールしたほうが荒れなくてよさげ
言い訳モードに入ったようだ
投下人は偉いよな、誰にも頼まれてもないのに毎日書いてたんだから
それに引き換え名乗りを上げた3人は逃げた
なな板の住人は口先だけのゴミばかりですね
投下人は投下人で笑わせるが
あれ?誰も書かなかったのか?
スレ違いな宣伝が始まりますた
まあやっぱりこんなオチだと思ってたよ。
くやしいのう・・・くやしいのう・・・
投下人の話題が出たので、今オカルト板見てきたよ
もしや完結してるかとwktkしたのに、全然続き書いてないんだよな
ここのコピペしただけならマルチになっちまうよ
何だかなあ
もしかしたら三人は夜中にこっそり投下するつもりなんだよ
そしたら朝起きて俺達ハッピー♪
花火大会から帰ってきたけど、誰も投下していないのか・・・orz
サッカーの決着を見たら投下するよ
そうか乙
今更感はあるけどな
>>260 言い訳みたいですが、実は書き溜めたレスを編集している最中です。
なな板と違ってオカ板は1レスに書き込める文字数に制限があるんですよ。
このスレの1レスが向こうでは1レス半になるんです。
元より1日に1レスずつ投下というスタンスで構成した文章なんです。
オカ板での文字数に合わせて、現在編集作業中です。
投下開始の目処は来週中にはなんとか。こことは関係無いレスすいませんでした。
まだ張り付いてたんだ?
つーか板ごとにレスの文字数制限があるなんて知らんかった
なな板はオカ板より多く書けるのか?
>>266 知らん奴もいるんだな、常識だと思ってた・・・
>>267 無知ですまんね、普段そんなの気にしてなかったんだよ
投下人の反応が早過ぎることにビクーリ
おいおい…マジで誰も投下してないって…
2週間も準備しててこの様か?
>>269 そりゃあもちろん私も皆さんの投下を楽しみにしていますからね。
待ち侘びているんですよ。早く投下されないかなってね。
うまい事言ったつもりなんだろうな
>>271 つーかこんなとこに張り付いてないで編集とやらを終わらせろや
続きを待ってる奴もちゃんといるんだからな
>>271 すげえ嫌味だなw
そんなに恨むなよww
流石オカ板コテww呪いとかピッタリだwwww
>>271 言ってることは無難なんだけど、何かモニョる
悪意と自己顕示欲隠し切れてないよ
今に祭りやってるのが投下人かとエスパーする奴が沸くぞ
正直言うとひいた
書き溜めてから投下ってスタンスなら、マルチする前にもっと書き溜めればよかったのに
前スレ落ちてから本投下しても意味ないジャン
ってすれ違いもいいところだな
>>271 追い出されたからって粘着か?チンカスだな
さっさと巣に帰れば?邪魔だから
【魔法学園天下一武道会・プロローグ】
ある麗らかな春の日。
ほんの些細なきっかけだったと思う。
本当に些細な・・・
それは頬を撫でる風が暖かくなったとか、花に蕾がついたとか、そんなレベルのお話。
そんな些細なきっかけで、学園長は思いついてしまった。
フィジル島全体が学園都市となっており、総人口は1万とも言われ、生徒の数も膨大になる。
そんな生徒達の中で、誰が一番強いのか・・・?
勿論魔術師たるもの、単純な戦闘力で強さを競うなど愚の骨頂。
でもたまにはそんな愚に興じてみたくなったりもするのが人間というものだった。
授業で戦闘訓練などもあるが、学科問わず全生徒で競う武道大会など前代未聞。
にも拘らず、さくっとトーナメント表を作って2週間後に開催決定してしまうあたりが魔法学園のすごいところ。
しかしもっとすごいところは、こんな急遽決まった大会にも拘らず、生徒達はそれを受け入れ、既にお祭り騒ぎになっているところだったりする。
試合形式は一対一。
選手が特殊魔法人の中に立てば、中央箱庭試合会場にそれぞれの思念体が現れる。
まともにやり合えば死傷者続出は必死だが、この方法ならば多少のフィールドバックはあっても生死に関わる事はまずない。
思う存分に戦えるというものだ。
中央箱試合会場は15メートル四方の石板。それを取り囲むように海、火山、森、砂漠など各フィールドが配置。
自分の得意フィールドに誘い込む戦術も必要となってくる。
勝敗は基本的に思念体消滅か審判である教師がストップをかけるまで。
ギブアップは相手選手が認めれば成立するが、基本的にはデスマッチ推奨。
「では、第一回、魔法学園天下一武道会を始める!」
あっという間に二週間が過ぎ、学園長の宣言と共に武道会は開始された。
痛くなりそう
>>271 これはひくわ…
すげー根暗なオタクっぽい
投下自体は好きだったのに…
自分だって事情があったとはいえオカ板で書いてなかったじゃんと言いたくなるよ
>>279 乙〜
無理のないペースで頑張ってね
厨臭いのが好きそうな魔法スレ住人にならウケるんじゃね?
>>279 約2週間も準備期間があったのにたったこれだけ?
SS書くのってそんなに大変なもんなのか?
いや、あれだけなら3日で十分だw
>>285 一回の投下が一レス分であって、総数がどれだけかはわからんぞ
とはいえいいだしっぺ逃亡で投下したのが一人だけと言うのは情けないわな
書き手個人の能力差というのもある訳で
投下人みたいに1日1レスのスタイルかもしれんしな
自己満足の1レス投下で勿体つける意味あるの?
リレーSSでも個人のスレでもないんだから、
長期連載でずっとマンセーなんて期待されてると迷惑
>>291 間を空けずに読む側を飽きさせない工夫じゃんか
2週間であれっぽっちよりは1日1レスの方が良いよ
間空けないなら一度に投下すりゃいいんじゃね?
>>294 じゃあお前がやってみろよ。1度に投下とか出来ないからいろいろ考えてやってるんだ。
そもそもお前はROMしかしないくせに文句言いすぎだよ。少し黙れ。
そもそも自己満足のスレである件
騙りでマッチポンプいい加減ウザ
のんびり次の投下待ち
以後何事も無かったかのように投下待ち↓
この前からずっと思ってたんだが、ここで何か書こうとしてる奴を意図的に潰したがってるのがいるな
>>295 お前の理屈だと俺にそれを強制するお前は漏れなく書き手って事になるな
で、書き手以外の住人には意見する権利もないと?
毎日乙と言われたいだけの構ってちゃんは自サイトでも作ってやってりゃいいんだけど
ないだろww名無しの意見に何の力があるんだ?
自分が叩かれると意図的だとか責任転嫁したがる奴いるよね
携帯厨=投下人
なるほど、携帯か。
反論できないとレッテル貼りか
予想通りの展開ワロタ
予想と釣り宣言は後出しした物勝ち
>>305 携帯でレスする人が全部投下人とは限らんよ
くやしいのうwwwwwwwwwくやしいのうwwwwwwwwwwwwwww
はだしのゲン乙
なぜか携帯厨には頭の痛い奴が多いな
同一人物かもしれんが
携帯が気に入らないとエスパーする痛い奴がいるだけだろ
おまえらごちゃごちゃ言ってないで投下しろよ
揃いも揃って叩き煽りでじゃれあってんじゃねえよ
ごちゃごちゃ言ってないで一度に投下しろよ
携帯厨の連続攻撃!!
とただの厨が言っております
携帯レスすれば投下人の荒らし行為に見せることが出来ると思ってるんだろ
いいぞもっとやれ
>携帯レスすれば投下人の荒らし行為に見せることが出来ると思ってるんだろ
いつものヤム飯が粘着してるようにしか見えない
出たよエスパー
せめて携帯以外で書き込めw
でもヤムとは違う気がするんだよね
あまりに安っぽい、ヤムならもっと真性キティでしょ
パソなら自演は自由みたいだね
どうでもいい
投下を楽しめばいいし、楽しめないならみなければいい
投下ならなんでも楽しめるなんて幻想だよ
>>328 残念だが投下はもう無い。ここは罵り合う携帯厨をあたたかくヲチるスレになります
331 :
名無しさん@そうだ選挙に行こう:2007/07/29(日) 16:59:55 0
そんなのやーだー
携帯厨wwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwww
厨、黙って
携帯厨wwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwww
335 :
ヤム飯:2007/07/29(日) 17:30:38 O
どっからでもかかってこいや!
偽者乙
338 :
投下人:2007/07/29(日) 17:37:23 O
どっからでもかかってこいや!
携帯厨wwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwww
もうSSよりもこの流れの方がおもろいwwww
誘導あるんだから続きは雑談所でやれよ
マッチポンプしてまでスレ落としたいのか
祭り好きは雑談所へGO
今のノリは雑談所向けだな
議論厨も揃ってるし、あっちの方が盛り上げると思うぜぇ
そうだな、投下するふいんきじゃなくなるもんなww
すでにそうなってるYO
あらゆる困難が科学で解決するこの平成の時代…
人々の閉ざされた心の闇に蔓延る魑魅魍魎が存在していた…
科学の力ではどうしようもできない、その奇怪な輩に立ち向かう。
珍妙不可思議にして胡散臭い男が一人…その名は…
『矢部彦麿』
そう…人は彼を…陰陽師と呼ぶ
「死して尚 この世に未練残せしは魑魅魍魎と…成り果てる…
その悪しき血を清めるが…陰陽の道!」
人の世に〜生まれし悪を〜闇にへと〜屠むれや〜
悪霊退散悪霊退散、困ったときは
ドーマンセーマン ドーマンセーマン
助けてもらおう陰陽師!!レッツゴー!!
「生きながら恨み憎しみ…集いしは悪鬼悪霊…よびさます
その激昂を…なだめるが陰陽の道!」
さむっ
【魔法学園天下一武道会・フリージア編】
「本日より第一試合。いきなりフリージア選手の登場です!
対するは肉体強化系のグラチ選手ですが、どうでしょうか?」
「先ほど行われた自由参加のデモンストレーションでは圧倒的な氷結攻撃を見せたフリージア選手。
アレで一躍優勝候補に名を連ねましたからね。
一方グラチ選手は、肉体強化の上接近戦に持ち込み力で押すタイプです。」
「つまり、勝負の鍵はグラチ選手が如何に間合いを詰めるか、でしょうか?」
「そういいたいところですが、フリージア選手の氷結棍の実力はかなりのものです。
接近したからといってそのまま勝てるというのは・・・」
「なるほど!やはりフリージア選手の勝ちは揺るがないでしょうか?
ここでいよいよ試合開始です!」
実況者と解説者の話を区切るかのように特設試合会場にフリージアとグラチが姿を現す。
そして告げられる試合開始の声!
開始と同時に肉体強化呪文を自分にかけ、見る見る間に筋肉の固まりになっていくグラチ。
対するフリージアは、氷結棍を作り出し構えるだけで、グラチを見ている。
まるで全力を出せるまで待っているように。
「余裕だな、フリージア。せいぜい後悔するがいいさ!」
あらゆる肉体強化を終えたグラチが飛ぶ!
その衝撃で石畳は砕け、あっという間に間合いを詰める。
その瞬間フリージアもまた驚異的な反応速度で動いていた。
空を切る豪腕を棍でいなし、一呼吸で十の突きを的確に叩き込む。
まさに目にも止まらぬ応酬だが、接近戦においてもフリージアに軍配が上がった。
「ま、こんなものですわね。」
数度の打ち合いの後、溜息混じりに呟くフリージア。
いいようにあしらわれ続けるグラチは叫びながら打ち込もうとするが、足を滑らせ転倒。
リング隅まで滑っていってしまう。
そう、打ち合いをしながらフリージアは冷気を発し、リング全体を凍らせていたのだ。
スケートリンクのようになったリングではグラチの肉弾戦も役に立たない。
「お〜っほっほっほ!華麗に決めて差し上げますわ!」
高笑いと共に舞うような仕草。
「氷結のフリージア最大の奥義!フリィィィィジング!ディストラクション!!」
観客もアナウンサーも歓声を上げ、グラチは最後の呪文を唱える。
フリージアの拳を突き出した方向にまるで光の国の住人が出す極太の白銀光線のような目に見える冷気が発射される。
いかな防御呪文を唱えようと、グラチの力量では氷の像になるしかないその攻撃。
にもかかわらず、グラチに当たる直前、真っ二つに割れた!
氷結攻撃の余波による煙とダイアモンドダストの立ちこめる中、フリージアが血を吹いて倒れた。
受身も取れず、顔からリングに崩れるフリージア。
煙の漂う中、小さく、小さく声が漏れる。
「にゃ〜」
グラチのいた地点に、小さな毛玉生物。子猫がフルフルと震えながら丸まっていた。
「おーっと、これはどうした事か?グラチ選手は防御と同時にカウンターの一撃を放っていたというのか?」
誰もが思う疑問を代弁してくれるアナウンサー。
それに応える解説者は、しばしの沈黙の後・・・
「・・・・・・・判った!
グラチ選手は肉体強化の極地、獣化魔法を使ったのです?」
「は?」
「獣化魔法でグラチ選手は豹でも狼でもなく、あの子猫に変身したのです!」
「はぁあああ?」
あまりのことに「は?」しかいえないアナウンサーに解説者はその仕事を始める。
「データによりますとフリージア選手は猫好き。
子猫になったグラチ選手を攻撃などできるはずありません。」
「なんと!では、フリージングディストラクションを真っ二つに割ったのはグラチ選手の防御魔法ではなく、フリージア選手自身だった!と?
しかし、あの血は?」
「そうです。ある意味グラチ選手の戦略勝ちですが、直接的に真っ二つに割ったのはフリージア選手自身。
そしてあの血は、子猫が可愛すぎて鼻血を出して倒れたのでしょう。」
「・・・・・・どんだけぇええ???」
まさに解説者の言うとおり。
フリージングディストラクションの命中直前にフリージアは見てしまったのだ。
筋肉達磨のグラチが消え、うるうるお目目の毛玉生物子猫が現れるのを!
解説が進む間にも、子猫が「にゃー」となけばリングを染める血の池の面積も一回り増すというおちょくった展開が続く。
ついにはリング全体が真っ赤に染まり、フリージアの思念体は形を保てなくなり勝敗が決した。
「なぁあーんと!大番狂わせ!グラチ選手の戦略を褒めるべきか、フリージア選手の猫馬鹿を笑うべきか!
グラチ選手ニ回戦進出っっ!!」
アナウンサーの高らかな宣言と共に、試合会場は歓声に包まれた。
よくある厨展開じゃよね
目が覚めた。
昨日あれだけの事があったにも関わらず、目覚めは快調だ。
この世界にちょっと慣れつつある自分に少し呆れる。
「ふあ…」
大きく伸びをしつつ、テントの入り口を捲ってみる。
途端に差し込んだ強い日差しが目に痛い。
目が慣れるまで少し待って、それから外に出た。
かんかん照りの太陽。
まるで雲のような白くてフワフワした大地。
木々のようにあちこちに生えた(刺さった?)巨大なお菓子やフルーツの数々。そこから立ち込める甘い香り。
辺りにゆらゆらと漂う大小様々なしゃぼん玉。
目が覚めるたびに、昨日までの出来事は夢だったんじゃないかと淡く期待してしまうが、
冗談のようにファンシーなこの世界は、やっぱり冗談ではないらしい。
「あれ?」
テントの前の二つの寝袋は、もぬけの空になっている。
どうやら、二人は先に起きて行動を開始しているらしい。
この手記も4日目にもなれば流石に細かい説明は要らないだろうが、
ムラサマさんはとにかくもう一人まで早起きしているなんて珍しいことだ。やっぱり私が寝坊しただけだろうか。
「おー、ようやくお目覚めか」
声の方に振り向くと、フルーツを抱えたレイド先生が歩いてくるところだった。
「レイド先生…ど、どうしたんですか?」
「見ての通り、朝寝坊なお前の為に朝飯を集めてきたぞ」
「え?ははーん、さては先生に化けた魔物ですね?残念ですが先生はそんなことをする人じゃありません。
本物はいつも誰かが朝ごはんの準備をしてくれるまでひたすら寝たふりをしてるんですよ。さあ本物をどこに隠したんですか」
「おいおい、お前俺を相当誤解してるね。いつも目に見えないところで働いてる俺に向かって何てことを言うんだ」
「じゃあたまには目に見えるところで働いてください」
そんな問答をしていると、レイド先生の後ろからムラサマさんがやって来た。
「あ、ムラサマさん、おはようございます」
「お早う。たまにはそのズボラな男にも働かせようと思って叩き起こして朝飯採集に使った」
「ええ、そんなところだろうと思いました」
「酷いねお前たち。普段の隠れた頑張りをひた隠しにしてる俺の無口な心が分からないのかい」
「私の国ではム口な心と書いて怠けると読みますよ、レイド先生」
まあ、なんだかんだ言っても、昨日といい一昨日といい、レイド先生が頼れる時には頼れる事は分かっているけど。
私達は朝食を取りながら、今日の活動について話し合った。
とりあえずは、昨日得た情報についての整理。
突然召喚されて以来訳も分からずに這い回っていたこの世界の全容が、昨日の事件でようやく判明した。
昨日の分の手記に詳しく書いたが、クリスタルとか何とかいう名の悪魔の暇潰しのために作られたこの世界に、
私達は様々な世界から適当に呼び出されたのだ。私達からすればまったく迷惑極まりない。
とにかく、魔物や中ボスの攻撃を掻い潜ってこの世界のへそを見付けられれば、元の世界に戻れるらしい。
「しかし、昨日現れた化物がへそを守っているのなら、如何に我輩とて容易には辿り着けんぞ」
「そうですね、ムラサマさん。昨日は辛うじて何とかなりましたが、できれば二度と戦いたくないですよね…」
「う〜ん、やっぱ他の連中も捜すしかないな」
レイド先生の言葉。そう、クリスタルは他にもたくさんの人間をあちらこちらの世界から召喚したと言っていた。
私はたまたま初日にこの二人に会えたけど、捜せば他の人も見付かるかもしれない。
とはいえ、あんな化物がいるからには、スーパーサイヤ人でも見付けない限り元の世界に戻るのは難しそうだ。
「じゃあ他力本願っていうことで、とりあえず強い仲間を捜す方向で行きましょうか」
「賛成。俺の生徒も来てるかもしれんから、帰る前に拾っていってやらんとね」
「我輩も異論ない。元の世界で受けたままの依頼もあるし、何より甘い食い物ばかりのこの世界になるべく長居したくないのだが、
現状他に選択肢はないようだ。これも我が腕の未熟ゆえ、仲間探しの傍ら剣の腕も磨いておくことにしよう」
「真面目だな〜、ムラさん」
「ムラさんと呼ぶな。そもそも我輩は貴様の如きいい加減な男と同行するのは本来御免。気安くしないでもらおう」
どうもこの二人は相性がいまいちのようだ。先が思いやられる。
「ま、まあまあ。じゃあ、今日はどっちに行きますか?昨日は北に行ったから今日は…」
言いかけた時、南の方角から女性の悲鳴が聞こえてきた。
私達はほとんど一斉に立ち上がる。
「とりあえず今の声のかわいこちゃんを助けに行くか」
「かわいこちゃんかどうかは分からないじゃないですか」
「無駄口はいいから急げ、レイド、テイルズキャット!」
私達三人は、声のした海の方へと駆け出した。
○テイルズキャット(高坂真奈)《リングの女神》 勝ち星の少ないアイドルレスラー。
○レイド《魔法少女と冒険するスレ》 おちゃらけたところのある魔法学園教師。
○ムラサマ《ニードル・スパンクとその仲間》 ストイックなサムライの傭兵。
投下ktkr!待ってたよ〜。
>>353 頑張ってるな。その調子で続けてくれよ?
ウホッ良い話激しくwktk
遅筆でもいいならヴァンエレンを主人公にして書いてみようかな
異世界で冒険する似たような話になりそうだけど
世界観合わせると迷惑かけそうだしなー
>359
そういう頼まれ待ちみたいな書き方はやめとけ
書きたいなら書けばいいしやめた方がいいと思ったらやめとけばいい
363 :
名無しになりきれ:2007/07/30(月) 14:13:17 0
グッド ジョブ
>>350-351 GJ!キャラの特徴を掴んでてすげー面白かった。
オチに笑ったけど、フリージアなら無いと言い切れないところがミソだな。
フリージア編ということは他のキャラ編もあり?続きが楽しみ。
>>354-355 GJ!中〜長編で読み応えありそうだな。
投下は自分のペースで十分なので、ラストまで息切れしないよう頑張って欲しい。
>>359 ガンガレ。投下ペースは気にしないでいいんじゃね?
この手の書き込み、作品全部をほめるフリして自分のをほめるのが目的
【魔法学園天下一武道会・アルナワーズ編】
第一回戦が始まり、三日目。
いよいよアルナワーズの試合が始まろうとしていた。
相手は火炎魔法を得意とする女魔法使い。
「さあ、次の試合は注目のアルナワーズ選手の登場です。
口喧嘩なら優勝候補に挙げられるアルナワーズ選手ですが、いかがでしょうか?」
「流石に試合で口喧嘩は無理でしょうw。
幻術は虚をついてこそ効果を発揮するものであり、こういった正面から試合開始、には向きません。
一方、対戦相手の選手は直接攻撃が得意な火炎系術者です。
身体能力なども考えても・・・。」
「なるほど、ワンサイドゲームになりそうですか。」
「はい、通常ならば・・・・。」
「といいますと?」
「アルナワーズ選手は南方辺境部族出身です。
そこでは我々の知るものとは別の、独自の呪術体系をなした召憑術なるものがあるといいます。」
【召憑術】
自分の身体を依り代にして召還・使役する術。『神降ろし』とも『悪魔憑き』とも呼ばれる。
アルナワーズの部族の分類によれば、魔界に住む魔族、精霊界に住む精霊、その他召喚獣などは人間と生態や性質が
違うだけで一括りに『生き物』として分類される。
召憑術で召喚するのはそれら『生き物』ではない。
生き物の意識は理性や本能で作られる自我で構成されており、更に無意識の自我がある。
階層を更に掘り下げていくと種としての共有自我に行き着き、最下層では生き物全体の共有自我というものに行き着く。
最下層の『生き物の共有自我』によって構成された『モノ』を自らを呼び水として引き出し、自分の身体を依り代として名を
与えることによって具現化させる。
召喚されたモノは生き物の意思・意識の集合体はあって、それ自体に知性や感情はない。
何がしかのベクトルを持って突出したエントロピーが具現したものに過ぎないのだ。
「アルナワーズ選手がその召憑術の使い手だと?」
「おそらく・・・未確認情報ですが、アルナワーズ選手は嵐の具現を二つ身に宿しているといいます。
更に多数の『具現』を操れるのであれば・・・実物を見たことがないのでなんともいえませんがかなりの脅威となるのではないでしょうか?」
「驚きの情報です。ともすれば、アルナワーズ選手の真の実力が明らかになるかもしれないという事ですね!?」
「はい、そういった意味でも、注目の試合です。」
実況アナウンサーと解説者のやり取りの後、その試合は始まった。
試合開始7秒。
小さな小さなファイアーボールが30センチも横を通って行ったにも拘らず倒れ、ギブアップを宣言したアルナワーズ。
そしてそれを認める対戦相手。
あっけにとられる観衆。
「・・・これは、どういったことでしょうか?」
「うーん、何か不正の匂いが・・・試合後に何か動きがあるかもしれません・・・」
「やーん。頑張ったけどあなたって強いわ〜。力及ばず・・・
でもやっぱり優しいから好き(ハート)」
試合終了後、対戦相手の女に抱きついて感謝するアルナワーズの姿があった。
・・・・試合前、控え室にて。
「アル!あんたにゃいつも酷い目に遭わせられているからね。覚悟しておきなよ?」
「ねぇ、元々私って戦闘向きじゃないし、大体幻術を正面からかけても意味ないじゃない?
これって酷いと思わない?」
日頃の恨みを今こそ晴らすといわんばかりに宣言する対戦相手に、アルナワーズは上目遣いで抗議とも同意を求めるとも知れぬ言葉で返す。
そんな表情に気を良くしたのか、対戦相手の女は満面の笑みを浮かべた。
「まあこういうこともあるってもんだ。リングに上がれば純粋な力だけがモノをいうからね。
いつものように口で煙に巻こうったってそうは行かないよ!」
「ええ〜。私、平和主義者だしい。勝ちを譲るからギブアップ、認めてくれない?」
「・・・そうだねえ・・・私の気が晴れるまでいたぶった後でならね。」
一体何をされたんだというほど、対戦相手の女は意地悪く返す。
「・・・仕方がないわね・・・正々堂々、頑張りましょう?」
交渉の無駄を悟ったか、そっと手を差し出すアルナワーズ。
それを見て、力が抜けたのか、意地の悪い表情が緩み小気味よい笑顔に戻る対戦相手の女。
元々恨みがあるような仲ではない。
ただ、いつも酷い目にあわされたり、口八丁で煙に巻かれていた手前、立場が入れ替わって調子に乗っていただけなのだ。
「ま、たまにはあんたも痛い目見たりのされてみなよ。」
勝ちを確信しているが、既に言葉に棘はない。
試合前にぎゅっと握手を交わし・・・た瞬間。
アルナワーズがそっと身体を寄せて耳元で囁く。
「ねえ、あなたって××××を×××で××××××なんですってね?」
とたんに硬直し、愕然とした表情から血の気が引いていく対戦相手の女。
小さくニタリとした表情を残し、試合準備の声に応えアルナワーズは歩いていった。
こうして観客をあっけにとらせる試合が始まったのであった。
>>367-368 GJ
前作といい今作といい、設定きちんと把握してるのが好感度高い
他のバージョンも楽しみ
また一部投下か
>>371 毎日投下の方がいいよ。退屈せずに読める
ダラダラと間を空けられるよりはマシ
最初から全部投下すりゃいいって話だろ
>>373 お前が投下する時は一度に投下すればいいがな
自分のやり方を他人に押し付けないでください
人は一人ずつ違うんです
そんなことより次はどのキャラか予想しようぜ
本命はリリアーナ
対抗はロック
大穴はキサラかユユかラルヴァ
猫耳のおっさんに一票
あのおっさん実はカスタトロフ家の末裔と見た
381 :
名無しになりきれ:2007/07/31(火) 20:32:09 0
なにこの自画自賛スレ
大穴にすら入っていない私は…ヤムチャですか?
383 :
名無しになりきれ:2007/07/31(火) 21:01:10 0
コテ君臨ww自演バレ自重www
レイドとアルテリオンは教師じゃないかwwwww
きっと教頭に言いつけられて審判させられてるんだよ
>>455 大地に生えた大きなお菓子や果物たちは、南に進む程にバナナの比率を増していき、
やがて密集したバナナだらけになった。
中途半端に皮を剥かれたバナナ達は木々を表しているようで、差し詰めここはバナナの森といったところだろう。
この絵面がファンシーなのかシュールなのかは迷うところだ。
森を抜け、一気に視界が広がる。そこには海が広がっていた。
強い陽差しと潮風が気持ちよく、泳ぐには絶好の日和だ。
もちろん今はそんな場合じゃない。
「あそこだな」
レイド先生が駆け出す。
その先には、三人の女性と魔物の姿があった。
魔物は墨一色で塗りつぶしたようにただ真っ黒で、輪郭は幻影のように少しブレている。
だいたい狼をホッキョクグマくらいに大きくしたような姿で、地面に埋まってでもいるのか上半身しか見せていない。
ヘドロのようにボトボトと体の一部?を垂らす様がなんとも不気味だ。
大柄な体と比べても割合的に大きすぎる前足には、村娘らしい出で立ちの女性が握られている。気を失っているようだ。
そして、それに対峙する二人の女性。
片方は青系統で統一された衣類に帽子と丸眼鏡。もう片方は短髪で私より少し背が低い。
様子から察するにかなり苦戦しているようだ。
【#が$になってた…酉変えますorz】
「あれは…アトラス殿!」
その光景をみたムラサマさんが叫ぶ。
その声で短髪の女性がこちらに振り向き、驚いたように目を見開いた。
「ムラサマさん!?貴方もここに…わわっ!」
魔物の腕がゴムのようにしなって伸び、短髪の女性の頭上からハンマーのように襲い掛かる。
すかさず駆け込んでいたレイド先生が女性に飛びつく。間一髪、魔物の拳はレイド先生の背中を掠め、地面を穿った。
二人はそのまま抱き合う格好で地面を転がる。
「なんだありゃ、腕が伸びたぞ!」
「頭も胴体も伸びますわ!」
青い服の女性が叫び、自分の口に指を二本当てた。投げキッスのように指を離すと、口からハート型の炎がいくつも飛び出す。
それらは一瞬空中で停滞してから、炎の尾を引いて魔物に襲い掛かる。
槍のような炎が魔物の体に幾つもの風穴を空けた。
「やった!」
「いや、テイルズ殿、まだのようだ!」
ムラサマさんが言う。その通り、敵は穴が空いたことなど気にも留めず、さっき振り下ろした腕を横に薙いでいた。
青い服の女性は両腕でガードするが、そのまま10mくらい吹き飛ばされて波打ち際に落ちる。
「だ、大丈夫ですか!?」
私は慌てて駆け寄る。しかし、青い服の女性はすぐに起き上がった。
「当然ですわ!…っ痛ぅ…」
「おっとと」
よろめいた彼女に肩を貸して支える。
わざと大きく飛んで衝撃を逃がしたようだが、それでもダメージは大きそうだ。
魔物を見ると、空いたはずの穴はいつの間にか全て閉じており、全く弱った様子はない。
今はレイド先生が敵をひきつけてくれているが、
下手な攻撃をすれば捕まっている女の子に当たりかねないために防戦一方で攻めあぐねているようだ。
ムラサマさんはアトラスさんというらしい短髪の女性と接触している。
「アトラス殿、久し振り…と言いたいところだが」
「ええ、今はまず彼女を助け出しましょう。でもあの影みたいな敵、どんなに攻撃をしても一向に弱る気配がありません」
影みたいな敵?
そういえば、よく見ればバナナの森から長い影が伸びて魔物に繋がってるような…
「お〜い、ムラサマ。なんとか隙を作るからあと頼む。召喚!グラビティ!」
レイド先生が呪文を唱え、黒いハンドガン二丁を召喚する。
召喚したのは、昨日の戦いでも活躍した、一発ごとに当たったものに20kgの重力をかける銃弾を放つ銃だ。
それを両手に構え、敵に向かって走る。対する魔物は口を大きく開くと、首を伸ばしてレイド先生に噛み付きにかかった。
「あらよっと」
レイド先生はひらりと跳んでかわし、敵の額に乗って二つの銃口を突きつける。
すかさず10発の零距離射撃。
敵の動きが止まる。いくら剛力の敵でも、200kgの負荷を受けては今まで通りには動けないはずだ。
レイド先生は着地し、一息つく
「ふ〜。いい子だからおとなしくしろよ」
「危ない!」
アトラスさんが叫ぶ。
動けないはずの敵が、レイド先生に向けて今まで通りの速さで腕を振り上げていたのだ。
レイド先生が反応するが、かわすには一瞬遅い。
振り下ろされる腕。しかし、その刹那にアトラスさんがレイド先生の前に割り込んでいた。
アトラスさんは両手を上げてその拳を受ける。受け止める。受け止めきった。凄い腕力だ。
そして、その隙にムラサマさんが敵の懐に入り込んでいた。
「御免!」
刀を一閃。村娘風の女性を抱えていた腕がぼとりと落ちた。
地面に溶けていく腕からレイド先生が女性を救出する。
溶けた腕は地面に影のように染みていき、そして地面から本体に集まり、元通りに腕を再生させた。
やっぱりダメージはないようだ。
「よーし、あとはトンズラするぞ!ブラックミスト!」
レイド先生が呪文を唱えると、黒い霧が辺りを包む。
霧に乗じて私達は全力で走り、なんとか逃げ切ることができた。
しかし、後から思えば、今日の戦いで本当に大変なのはここからなのだった…。
○テイルズキャット(高坂真奈)《リングの女神》 勝ち星の少ないアイドルレスラー。
○レイド《魔法少女と冒険するスレ》 おちゃらけたところのある魔法学園教師。
○ムラサマ《ニードル・スパンクとその仲間》 ストイックなサムライの傭兵。
○アトラス《ニードル・スパンクとその仲間》 怪力の特殊能力を持つ生真面目な保安官。
○ブルー《俺はカイザー、共に打倒魔王の旅に出よう!》 ツンデレの大泥棒。
>>384 アルテリオンは用務員だから参戦ありなんじゃ?
まぁ駄目なら覆面参戦とかどうよ。
獣騎士サンダーライダーてどうよwww
レスアンカーも間違えてたorz
×
>>455→○
>>355 >>361 362さんの言う通りで、ご想像にお任せです。
>>364 ドモです。遅筆というより色々とリアル事情があるので、投下ペースは遅めだと思います。長い目で見てやってください。
あと、キャラのイメージが本物と違ったりするのは自分の力不足なので、生温かい目で見てやってください。
>>389 用務員だけど体育教師の補助とかやってるって話
あと警備員とか
つーか自分職人じゃないから
ごめん
【魔法学園天下一武道会・キサラ対メラル編】
「いよいよ一回戦も最終試合。キサラ選手対メラル選手です!」
膨大な人数のトーナメント第一回戦は膨大な試合数に及ぶ。
しかも、実力が伯仲した者同士だと、試合も長引き、時に数日に及ぶ事もある。
複数の試合会場が設けられているが、それでも一回戦全ての試合が終わるこの日を迎えるに、実に10日を要していた。
にも拘らず実況者の、そして全生徒のテンションは下がる事を知らない。
「最後の最後に好カードが組まれていましたね。」
「はい、メラル選手は最近成績を落としていますが、かつては戦闘訓練ではトップクラスにい続けていた実力者。
魔力そのものもですが、分析力にも長けている知能派です。
一方、キサラ選手は魔法の存在しない辺境からの留学生。
まだ魔法の実力は高くないですが、その身体能力は驚異的なレベルです。」
「なるほど、それにしても小さい&細いですね、両選手。」
「ええ、メラル選手はその小ささから見るとおり、非力です。
しかしキサラ選手はあの細さは速さに特化する為に必然的になった体型といえるでしょう。」
「完全術者タイプのメラル選手とスピード特化タイプのキサラ選手。良い試合が期待できそうです!」
いつもの実況と解説者の掛け合いの後、試合開始が告げられる。
距離を置いて向き合うメラルとキサラ。
試合開始を告げられても動こうとはしない。
「メラルさん・・・あの・・・ギブアップ、してください・・・」
「・・・どうして?」
「その・・・あの・・・」
銃を抜こうともせず、メラルにギブアップを要請するキサラ。
メラルは杖を軽く握ったまま、サングラス越しに冷たい視線を突きつける。
そんな視線に耐えられないように、応える事もできず俯くキサラ。
そう、キサラには女性免疫がなく、こうして正面向いて話すことすらままならず精神力を削られていく。
「いいわ。私が女だから戦えないのならこうしましょう?
私が避けられない間合い、タイミングで銃を突きつけるだけでいいわ。
それをやられたら負けを認めてギブアップする。これでどう?」
「・・・・・・・わかりました・・・・」
メラルの提案にようやくキサラの顔が上がり、その目に決意の炎が宿る。
「試合開始したにも拘らず、二人で相談しています!」
「うーん、これは、ロックパターンですね。」
「え、ロックパターンというと、大会6日目。対戦相手の女性とは戦えないと言い張って力づくでギブアップを認めさせて敗退したロック選手ですか?」
「はい、彼の場合女性と戦えないでしたが、キサラ選手の場合どうやら女性免疫がないからのようですね。
それに配慮してメラル選手からの提案で今話はまとまったようです。」
「これは、自信なのか貫禄なのか、優しさなのか!メラル選手の粋な計らいに観客からも拍手が起こっています!」
そんな外野のやり取りを他所に、メラルとキサラはいよいよ戦闘を開始しようとしていた。
「行きます!」
ポツリと呟いたキサラの身体がぼやける。
超スピードで移動した為、残像だけが残ったのだ。
「ギびゃぎがああああああああああああああああ!!!!!!!!」
次の瞬間、キサラはメラルの脇を通り過ぎ、盛大に転んでリング外まで転がり落ちる事になる。
あまりの速さのため観客からは勝手に転んだ自爆にしか見えないが、その実、凄まじい攻防が繰り広げられていたのだ。
「自信過剰ね、あなた。
フリージアみたいにリング全体を凍らせなくても運動能力、思考パターン、戦略、精神状態、武器特性を考えればこれで十分なのよ。」
とことことゆっくりとキサラの転がり落ちたリング隅まで歩くメラルの足元の床には、30センチ四方の氷が作られていた。
キサラは超スピードを生かして、メラルの背後に回り込み、頭に銃を突きつけるつもりだったのだ。
しかしそれを見越したメラルは、予めキサラの到達予想地点をピンポイントで凍らせておいた。
結果、グリップを失ったキサラは自分の超スピードの制御を失い転がり落ちてしまったのだ。
「ギブアップしてください」と、かっこよく決めるつもりが「ギびゃぎがああああ!!!」と訳のわからない叫び声になってしまったのが悲惨さを際立たせる。
「それに、何かに特化するという事は何かにその歪みが出るということよ。
あなたはスピードという身体能力を特化させたのに、耐久性や筋力に歪みを出している・・・バランスが悪いのよ。」
漫画などでは一点集中した時のリスクは言及されていても、実際にそれが足を引っ張ることは殆どない。
ただ一点集中した利点のみが強調されているが、現実に一点集中特化ほどバランスが悪く脆いものはない。
それが今のキサラの状態が実証していた。
キサラは悠々と近づいてくるメラルの存在がわかっていても、まだ起き上がることすらできていなかった。
「無駄よ。あなたの耐久度とスピードを考えれば起き上がるまでにあと十数秒。
そして私の攻撃をかわせるようになるまで三十秒ほどかかるもの。
勿論それを待つほど私はゆっくりしていない。
・・・これでもう立ち上がれない。」
メラルが杖を振るうと、起き上がろうとしていたキサラが叩きつけられるように地に伏した。
重力魔法で20キロの負荷がキサラの全身にかかっているのだ。
常人なら起き上がれない重さではない。
だが、超スピードを手に入れた代償ともいえるだろう。
キサラは起き上がることが出来なかった。
「・・・ギブアップすれば認めるわよ?」
試合開始直後とは全く逆の立場。
しかも、実力と結果の伴った言葉。
キサラは震えながらその言葉を口にした。
己の無力さを噛み締めながら・・・
「すごーーーーーーい!メラル選手!圧勝です!」
「すばらしい試合展開でしたね。まさに詰め将棋。キサラ選手何もさせてもらえなかったですが、恥じる事はありません。
もうメラル選手を褒めるしかないのですから!」
大歓声に包まれる試合会場だが、退場するメラルは首をかしげていた。
(・・・ただ勝つだけでよかったのに、私、なぜ教師みたいにアドバイスしてたんだろう・・・)
そう、わざわざ相手の欠点を教えたりする必要などないのに・・・
自分でも判らない自分の行動に戸惑いを隠せないでいた。
そんな戸惑いを見せるメラルに熱い視線を注ぐ二人がいた。
「メラルさん、キサラにアドバイスしながら戦うなんて。もしかして・・・」
「もしかして、なんだ?」
「鈍いわね。雪山ではキサラが熱い視線をメラルさんに送っていたし、結構いい感じじゃない?」
「・・・そんなもんか?」
「もう!たぶん自覚できていないみたいだし、ここは友人として応援してあげたいな、って思わない?」
あまり感心なさ気な男の気の抜けた合いの手に頬を膨らませて抗議する女。
そんな二人の背後に近づくものは・・・
「あ〜ら、面白そうな話してるじゃなぁい?おそろいの眼鏡で仲よさそうね?」
女が文字通り椅子から飛び上がったのは、背後から急に声をかけられたからではない。
その声の主が誰だかわかったからだ。
「いやぁん、そんなに驚かないでぇ?愛のキューピッドがやりたいのならレクチャーするわよぉん?」
だらだらと大量の脂汗を流しながら、首が千切れんといわんばかりにぶんぶんと横に振る女。
もはや声すら出ない。
そんな様子をくすくすと面白そうに眺める背後の声の主。
男はそんな様子に入っていくことも出来ず、バツが悪そうな顔をし、はっと思いつく。
「じゃ、俺はキサラを見に行ってくるよ。こういう時は男同士のほうがいいからさ!」
『ちょっ!自分だけ逃げる気ぃいいい!!!???』
女は声にならない叫びと共に涙目で手を伸ばすが、男はそそくさとその場を離れて行ってしまった。
「うふ、じゃ、私達は女同士で・・・」
「あ、こんなところにいましたね!アルナワーズさん、あなたの試合について学園長から裁定が下ります。
すぐに来てください。」
怪しい手に絡めとられそうになった女を救ったのは、獣人騎士のようないでたちをした用務員、アルテリオンだった。
「あなたと一切の交渉を持つなといわれていますので、有無を言わさずに連れて行きますよ。」
本当に有無を言わさずアルナワーズの首根っこを掴むと、そのまま引きずって行ってしまった。
一方、キサラは敗戦の悔しさに一人会場を抜け出て、森にいた。
「・・・速さだけじゃ・・・力が必要だ・・・」
腕に顔を沈め、溢れ出る熱いものをそのままに決意を固める。
「・・・男はそうやって成長していくんだ。」
そっと陰からキサラを見守っていたロックは、呟きを残してその場を離れた。
ただ一言も声をかけることなく。
しかし、声はかけずとも、キサラの決意は十分感じ、安心していたのだ。
事実この後、キサラは氷の魔法を開花させていくのだった。
こっこれは大穴的中…
やっぱり外しとけばよかった…
GJ
キラサの厨設定完全否定だなw
どっちも面白い、GJ!
自分たちのペースでいいからマターリ汁
でも続きは心から楽しみにしてるよ!
【魔法学園天下一武道会・ラルヴァ編】
一回戦が全て終わり、リリアーナたちはアフタヌーンティーを楽しんでいた。
「それにしても、私達の中で二回戦に進めたのはメラルさんだけね。」
一堂を見回し、リリアーナがしみじみと呟く。
「フリージアは相手が悪かったわよね・・・」
「おーほっほっほ!一片の悔いもなしですわ。」
子猫を思い出してか、フリージアはどこか遠くを見たままうっとりとしている。
「アルはアルテリオンさんに連れて行かれたし、ユユも惜しかったかな。
クドリャフカさんは図書館にもぐって不参加。ロックは・・・」
「俺は女とは戦えない。これは俺の信念だからな。」
リリアーナが指折り数えてそれぞれの試合を思い起こしていると、ロックがやってきた。
「キサラは?」
「ああ、あいつなら大丈夫さ。きっと強くなるぞ。」
「そう、良かったわ。」
ロックは最終試合でメラルに完敗したキサラの様子を見に行っていたのだった。
キサラの様子を聞き、リリアーナはほっと息をつく。
「フリージア、クドリャフカは二回戦に進むと思ったんだけどな。」
「そうよね。こうなったらメラルさん、頑張って優勝狙ってね!」
「ありがとう、頑張るわ。でも・・・」
短く応えるメラルが、何かを言おうとして口をつぐむ。
それに端を発し、一同が違和感に包まれた。
・・・何かを忘れているような・・・
「・・・マスターは残念ながら一回戦で敗退しております。
私を召喚してもらえればこのようなことには・・・」
誰もがはっと気付き、その方向を見るとラルヴァがティーカップを両手で持ち、後ろでルーナが立っていた。
「あ、ご、ごめん。ラル君、えーっと・・・残念だったよね。」
全員がすっかりその存在を忘れていた。
慌てて取り繕おうとするが、リリアーナの言葉の微妙な間がラルヴァの試合内容すら覚えていない事を物語っていた。
その横で、ロックがルーナの肢体の為に鼻血を噴出して椅子から転がり落ちていた。
「気にしないで。それより、夕方から教師による模範試合がるらしいよ?」
封印の為、その存在や印象を極力なくしてしまうので、忘れられていた事を責めるつもりはない。
といっても気にされてしまうので、ラルヴァは慌てて話題を変えようとするのだった。
満天の星空を映し出すティーカップに口をつけ、中身を飲み干す。
その至高の味と香り。まるで世界を味わうかのような感覚をしばし楽しむ。
僕であり、良き理解者でもある蝙蝠達に囲まれて、
私、ヴァンエレン・ブランカートは夜のティータイムを楽しんでいた。
ふっ・・・今の幸せ度は百点満点だ・・・
マントの中にカップを戻し、また取り出す。
カップの中は、再び最高級の紅茶で満たされていた。
時々、それだけの事でなぜ新しい紅茶を出せるのか?
と尋ねられる事があるが、これは闇の貴族が最初に身につける初歩の作法。
決して手品などではなく、文字どうり種も仕掛けもないのだ。
最高品質の紅茶を出せるようになるため、それなりの苦労はしたのだが。
「こんな所でティータイムとは風流じゃの。
余も呼んでもらえていれば、茶菓子の1つも土産に持ってきたのじゃがなあ」
「イアルコ坊ちゃんかね?大丈夫。名月は逃げたりしない。
坊ちゃんも一杯飲んでいくと良い」
幸せは人を寛大にするらしいが、吸血鬼も例外ではないようだ。
いつの間にか近くにいたイアルコにも、紅茶を一杯振る舞うことにした。
しかしこうして2人顔をつきあわせていればさすがに黙ったままという訳にはいかないな。
なにか会話の糸口を探してみるか・・・
「しかし、お互い妙なことに巻き込まれたものよのう」
おっと。坊ちゃんの方が話しかけてきたか。
「召喚主の考えには逆らい難いのだが、出来ればこんな仕事は遠慮しておきたいな」
返す言葉に思わず本音が出てしまった。
あれは昨日のこと。奇妙な魔物に召喚された私が受けた仕事の内容はこうだった。
「この世界の秩序を破壊する、絶対者を倒してほしい」
絶対者が何者なのかは分からないが、部下である天使を使って悪事を働いているらしい。
他にも召喚された者達はいて、(イアルコもその1人だった)
そいつらに任せて私は安全な場所に隠れているつもりだった。
だが現実はそんなに甘くはなかった・・・
「有能な敵より無能な味方の方が怖いと言うが、無能でなくても怖い味方もいるとは・・・」
「怖くはないが、あれは確かに困ったものじゃ。
平和主義者の余を無理矢理戦いに引っ張り出すと・は・・」
ん?イアルコの様子がおかしいぞ?
「どうかし」
そこまで喋った所で背中に衝撃が走り、私の体は豪快に地面にダイブした!
ちょっとだけ様子見もかねて投下しました
他の投下人のレベルの高さ、投下の速さにガクブル状態です
お二人ともGJ
あ〜
ついに変な名前付きが
キャスティングの時点で失敗してるなww
そんなに悪くはないと思うがな
期待している
今までの過疎が嘘のようだな
盛り上げ工作も入っているので
409 :
名無しになりきれ:2007/08/02(木) 16:56:24 0
絶対シャー3倍
他のスレより盛り上がってるような
教師による模範試合か
よかったな、アルテリヲンw
413 :
名無しになりきれ:2007/08/02(木) 20:10:08 O
>>412 きっと教頭対体育教師(エースだっけ?)とやったあと、「おめぇの出番だ!アルテリオン」
もし、教頭が全若本キャラの能力をもっているなら、最強じゃね?
エィティ先生の試合にwktk
417 :
名無しになりきれ:2007/08/02(木) 22:42:46 0
サクシウム光線
【魔法学園天下一武道会・レイド対ヴァンエレン+アルナワーズ編】
「第一回戦が全て終了しましたので、ここで教師による模範試合を開始します。
武闘派教師の中でもトップクラスの実力を誇るレイド先生!
対するは、闇の眷族の頂点に立つヴァンパイア!ヴァンエレン!」
「レイド先生は現在減法三ヶ月、ボーナス50%カットの処分が課されています。
この試合で模範的な試合をすれば処分取り消しになると教頭から言われていますので、普段以上の実力を発揮するでしょう。
対するはヴァンパイア、それだけでもう説明不要でしょう。
闇の眷属を束ね、不死の貴族であるヴァンエレン。これは凄まじい勝負となるでしょう。
ちなみに、ヴァンエレンが負けた場合、死霊科のリコが実験に使うから引き取ると願い出て受理されている模様です。」
歓声に包まれる試合会場にアナウンサーの紹介と共に現れるレイドとヴァンエレン。
「ま、そんなわけだから、生活の為にも全力でいかせて貰うぞ、ヘボ吸血鬼。」
力みのない口調だが、言っている事は恐ろしい。
目には炎が宿っていた。
それに対するヴァンエレンは更に不敵な笑みを浮かべている。
「ふん、人間の茶番に付き合ってやるのもたまにはいいだろう。」
本音同時翻訳『ひいいぃィ無理無理無理無理!お前ら公開処刑が好きなのか!それでも人間かッ!
ただ殺すだけでなく、その後実験材料にするのか!こんちきしょぉおおお!』
一見悠々と構えているように見える二人だが、既に水面下では火花が散っていた。
そんな二人の火花散らす試合会場に、もう一人の人物が現れる。
アルナワーズである。
「おおぉっと!一回戦で敗退したアルナワーズ選手が乱入か!?」
「あ、ただ今学園長から通知が届きました。
生徒の中でもトップクラスの知能犯・・・ゲフンゲフン、策士のアルナワーズ選手。
一回戦では敗退しましたが、誰かと協力することでその真価が発揮される。
故に、ヴァンエレンと共にレイド先生と試合をする!との事です!」
建前上はその通りなのだが、実際は一回戦での交錯が発覚し、罰として模範試合に出させられた、のが事実だ。
「こういう工作も含めて魔法使いの強さではなくって?」という抗議は認められなかったようだ。
「ねえ、ヴァンエレンさん?レイド先生は強いわ。でも、協力すれば大丈夫だと思うの。
だから、ちょっと打ち合わせしましょう?」
「協力?人間と?馬鹿馬鹿しい。どうせくだらない浅知恵だろうが、勝手に動かれて足手纏いになると困るから聞いてやる。」
本音同時翻訳『まじっすか女神様!あの悪魔に勝てるんすか??聞かせてください、お願いします!』
不遜に立ったままのヴァンエレンにアルナワーズは一礼し、耳打ちをする。
「おーい、お二人さん、もういいかー?」
待ちくたびれたレイドが声をかけると、ヴァンエレンが勢い良く振り返り構える。
「ぬはははは!もう試合は始まっているというのに甘いな!」
「お、なんだこいつ!?」
振り返った瞬間、笑いと共にレイドに襲い掛かるヴァンエレン。
突然の変わりように驚き、防戦一方のレイド。
ヴァンエレンの攻撃が凄まじいというわけではない。
突然の態度の変貌に何か策があるのかと様子見をしているのだ。
だが、その様子見をさせることこそが二人の策なのだ。
「いざや聴け 喚起されしモノ うぬが見立て 七とせの 鼓を打つ響きの間を以って 五芒の戒め六芒の枷、呪詛の楔を樽緩めん」
その間にアルナワーズは呪文を詠唱する。
その身に施した封印を説く為に!
「聖地バラナシより轟け 地霊を目覚まし 負界の底より 鳴動せよ 我が啓示となりて 汝が名はタイフーンアイ!」
その身に宿した嵐の具現を呼び起こす為に!
詠唱が終わると同時に、アルナワーズの胸の谷間にソフトボール大の黒い球体が現れ、ギロリと中央に大きな目を見開く。
台風の目の具現化したものである。
その力は即座に効果を現す。
試合会場に暴風雨が吹き荒れ、雷がなり、大粒の雨が降り出した。
「ふふふふ、ヴァンパイアである私は嵐の中での闘いはなんの負荷にはならぬが、人間のお前はどうかな?
もはや目も開けて・・・あつっ!・・・え?酸性雨??ちょ・・・あちちち、いだだだ、溶ける!」
そう、アルナワーズの術で嵐を呼び、圧倒的有利な状況で戦いを進めるのだ。
事実嵐の召喚に成功したのだが・・・雨はヴァンエレンの身体を焼き、溶かし始めている。
なのにレイドは、雨の為視界が確保しにくそうではあるが焼け爛れているような事はない。
「あちちちち!ちょ、待った!これもしかして、聖水の雨!?」
のた打ち回り転がりながらアルナワーズのところまで下がって確認。
「あ、ゴメンなさ〜い。この子がドライアイになったって言うから目薬さしてみたの。
そしたら間違えて聖水垂らしちゃったみたいでぇ、その影響で聖水の豪雨になっちゃったみたい(テヘ)」
「殺すきかああ!」
「そんなに怒らないで。ほら、私を中心とした半径1メートルは台風の目で安全地帯よ。
そんな命の恩人に、そんなに怒るなんて人として道を外れてなぁい?」
「う・・・それもそうだな・・・ごめんなさい」
元凶である事もいつの間にか摩り替えられ、命の恩人と丸め込まれてしまったヴァンエレン。
うっかり素直に謝ってしまうその背に、レイドが立っていた。
「あ〜お前ら、漫才はその辺でいいか?」
滝のような豪雨の中、レイドは有無を言わさず銃を撃つ。
給料がかかっているという事で今日は特製、一発当たりの負荷は200kg!
如何にヴァンパイアといえども、1トン以上の負荷をかけられては崩れ落ちるしかなかった。
崩れ落ちるヴァンアレンを盾として、無傷のアルナワーズがここで攻勢に出る。
「レイドせんせぇい?猫耳大盛りっ!」
ヴァンエレンの影から現れたのは猫耳でGカップのアルナワーズだった。
「・・・・・アルナワーズ、いい事を教えてやる。俺は猫耳と巨乳を見る時は心眼で見るんだ。
そんな虚乳なんぞ通用しないぞ。
お前はやりすぎだ。巨乳を汚した罰だ、しっかり反省しろ。」
一瞬の沈黙の後、火を吹く銃。
あっさりと幻術が見破られ、成す術もなくアルナワーズも地に伏せた。
「おおおおおっと!レイド先生強い!あらゆる策をあっさり破り圧勝かぁ!?」
「流石レイド先生。巨乳に対する執着が心眼を開眼させたのですね!
心眼を開眼されては幻術も役に立ちません。」
「貴様・・・巨乳好きだったのか・・・」
アナウンサーだけでなく、観客全てがレイドの勝利を確信したとき、ゆらりと立ち上がるヴァンエレン。
重力弾の負荷だけでなく、時間稼ぎにおいてもかなりのダメージを受けているはずなのに。
なのにヴァンエレンは立ち上がった!
「なぜ私が立ち上がれたか、不思議そうだな。
教えたやろう・・・この私がおっぱい星人ごときに負けるわけがないからだ!!!」
凄まじい希薄と共に宣言。
「寝てろよ」というレイドの更なる銃撃も全く効いていないようだ。
びしっとレイドに指を突きつけ、更に言葉を続ける。
「聞け!巨乳、爆乳、魔乳と、おっぱいが大きければそれでいいなどと言う原理主義者め!
おっぱいとは大きさだけに在らず!
大きさ、色、艶、張り、弾力、感触、感度、乳輪、乳首、身体とのバランス、顔とのアンバランス・・・
これらの総合したおっぱい黄金比率を持っておっぱいの価値を測るのが漢であろう!!!」
凄まじい迫力の宣言に水を打ったように静まり返る会場。
そしてレイドは・・・大粒の涙を流しながら銃を落としていた。
「ま、まさか・・・五十年前、おっぱい学会に出された、おっぱい相対性理論とそこから導き出されるおっぱい黄金比率の存在を示唆した論文・・・
確か匿名でB・Bだったが・・・」
「ヴァンエレン・ブランカート・・・。私は今もおっぱい黄金比率の実在を信じ探求しているのだ・・・」
「え、えーと、訳のわからない世界に突入しておりますが・・・」
「そのもの黒き衣を纏いて人々を美乳の野に導くべし・・・おおお・・・古き言い伝えは真であった・・・!」
「お前もかよ!!!!」
実況のしようがなくなってきた試合展開だが、解説者は涙を流しながら感動をしていた。
一般人には理解しがたいが、今ここに、伝説のノーブルおっぱい星人が現れたのだった。
「ヘボ吸血鬼・・・いや、ノーブルおっぱい星人・・・お前にとって、おっぱいは・・・なんだ?」
「おっぱいとは・・・・世界だ!!!」
ヴァンエレンの発する言葉一つ一つが強力な言霊を持ち、レイドを圧倒していく。
「・・・スケール勝ちがう・・・俺の・・・ま、け・・・だ」
「ぶぁああああかむおおおおおん!!!」
両膝をつき、力なく負けを認めようとするレイド。
だが、その台詞を遮るように教頭の怒声が会場に響き渡る。
そして降り注ぐ巨大な雷。
試合会場の三人を一発で黒焦げにし吹き飛ばす。
「全く、模範試合でなにやっとるんじゃい!
アホらしいことで生徒に言いくるめられとるんじゃないわい!!」
試合会場に降り立ったのは教頭。
その台詞の意味することは・・・
「うう、、、私はおっぱい星人なんかじゃないぞお・・・。私は胸より鎖骨派なのだ・・・」
ヴァンエレンの呻き声に答えがあるのだった。
こうして模範試合は無効に終わった。
魔法学園天下一武道会はまだまだ続くが、それを語るのはまた別の機会にしよう。
421 :
名無しになりきれ:2007/08/02(木) 23:04:03 0
おっぱいおっぱいノシ
リアルタイムに立ち会えた〜今日はとってもラッキー!
乙ぱいw
そんでもってGJ!
ツマンネ
なんという肥満
我等のおっぱいのために!
GJです
取り合えず誰かを批判する俺格好いい
そろそろわざとらしい
orz
越境死ね糞が
>>428 機会があれば再登場するかもしれないよ
無かった場合は自分が何か考えてみる
夏が終わるまで気長に待ってて
つまりここに参拝したコテは職人様にSS書いてもらえると
お前らコテ出すなら今がチャンスだぞ
432 :
ヤム飯:2007/08/03(金) 08:34:28 O
呼んだ?
433 :
名無しになりきれ:2007/08/03(金) 13:11:27 O
黒刃ってNG?
434 :
名無しになりきれ:2007/08/03(金) 13:15:20 0
NG
>>433 判断を人にまかせるなよ
自分で決めればいい
436 :
コロン:2007/08/03(金) 15:44:15 0
こんにちわコロンです
>>388 とある場所。
コウモリ型の使い魔【コウ】は、彼のマスターの部屋をノックした。
「マスター、お茶が入りました」
「ありがとね〜、コウ君。入って入って」
コウは扉を開ける。
彼のマスターは、例によってテーブルに置いた水晶球に齧り付いていた。
コウはその傍らにカップを置き、紅茶を注ぐ。ハーブの香りが部屋に広がる。
淹れてから、コウは尋ねた。
「どうですか?」
「聞いてよコウ君、今面白いことがあったんだよ〜」
マスターは、子供のように無邪気な笑顔で応える。
コウはそんなマスターに、微笑ましさ半分呆れ半分といった心境だった。
「あのね、シャドウビーストのマハ君とテイルズちゃん達のチームが戦ったんだよ」
「シャドウビーストというと、あの影念獣ですね。確かほしふり村近辺に配置したボスキャラだったかと」
「そう、そのマハ君。ほしふり村の女の子を襲ってたみたいなんだけど、そこにまずアトラスちゃん達が駆けつけてね」
「アトラスとブルーのチームですよね。やっぱり殺されましたか?」
コウが訊ねる。
ボスキャラ仕様に強化してあるマハを相手にして、長時間立っていられるプレイヤーはあまりいないはずだ。
しかしマスターは首を振った。
「ううん、そこに我らがテイルズちゃんチームが駆け付けて、どったんばったんの大立ち回り。
女の子も助けて、なんと全員無事で逃げ出せたんだ。すっごいよね!あ、リプレイで映像見る?」
マスターが水晶球に魔力を送ると、そこに映っていた映像が巻き戻っていき、再生される。
コウはそれを見ながら感心の溜め息をついた。
「やっぱり強いですね〜、このチーム。さすがマスターのお気に入りだけありますね」
「アトラスちゃん達も加入するだろうし、だいぶ戦力増強されるよね。でも、大変なのはこれからだよ〜」
「これから?」
マスターは映像を切り替えた。
「あ、マハが走っていますね。なんだか怒っているようにも見えます」
「逃げられてちょっと悔しかったんだろうね。ほしふり村に向かってるみたいだよ」
「なるほど、彼らはあの娘を村まで送り届けにくるでしょうからね。先回りして待ち伏せするつもりでしょうか」
「さらにさらに」
映像がまた切り替わる。ほしふり村のようだ。
そこに映し出された4人組に、コウは目を見張った。クリスタルはその反応を楽しそうに伺う。
「どうどう、面白くなってきたでしょ?」
「お、面白いも何も…これじゃ、ほしふり村に行ったらあのチームはおしまいですよ。確実に全滅します」
「ふふ〜、どうかな?でも確かに絶体絶命のピンチには違いないよね。
あのチームがどんなミラクルを起こしてくれるか楽しみだな〜。早くほしふり村に行かないかな〜」
「ミラクルですか…。今回ばかりは無理だと思いますけどね」
夢見心地のマスターに、今度は呆れるばかりの心境のコウだった。
そもそも、暇なあまりにこんな箱庭世界を作り出して、
方々の世界から召喚した人間をプレイヤーにしたゲームに夢中になっていること自体が、彼には理解のしがたいことだ。
「あ、そうだ。コウ君、ちょっとお使い頼まれてくれない?」
「…仰せのままに。マスター、クリスタル様」
今回のことの元凶。
上級魔人クリスタルは、その返事に満足そうに頷いた。
439 :
名無しになりきれ:2007/08/03(金) 18:17:54 0
判りにくい
だが北斗4兄弟に撃破される
魔法少女スレの皆さん、勝手に使わせてもらって感謝。
今回登場しなかったキャラの皆さん、ゴメンね。
私の場合、一話当たり構想3秒書き込み30分という思いつきで書いています。
なので、キャラのことを良くイメージできていないと書けないのよ。
アルテリオンさんは英霊化してからまだ間もないので、キャラのイメージが掴めていなかったという、まあ力不足ゆえです。
楽しみにしてもらっていたのにごめんなさい。
魔法少女スレもその参加者もみんな大好きです。
本編楽しみに読ませてもらい、また暇があれば二次作かかせてもらうのでヨロシク。
>>441 超乙!!楽しかったよ、ありがとう。
次回作がある事を祈ってる
「いったいここはどこなんですかぁ制服も私のじゃないし」
現役女子高生東屋実咲は困惑していた。
あの時、死んだはずの自分がいつの間にか校門の前にいたからだ。
「…行くべきなのかなぁ」
制服に着用し、尚且つ校門前にいるのだ。
しかし、ここは帰宅したほうが丸く収まるはず
と実咲は半歩下がり帰ろうとした瞬間、後ろから下手くそな歌が聞こえる。
まさかと思い、実咲は振り返った。
「ウチの鞄にお日さん一つ、明日の分のぉ♪」
榛 原 さ ん !
声の主は今は亡き番長スタイルの榛原であった。
ショックで放心状態になる実咲に対し、榛原は平静と実咲を見つける
「よぅ!嬢ちゃんやないか!はよ教室行かんと遅刻になるで」
実咲は自慢長髪をブンブンと振り、拒否する。
「東屋さん!学校をサボっちゃいけませんよ」
また聞き慣れた声が聞こえる。
今度は自分よりも幼い少年の声だ。
少々、ウンザリしながらも声の主を確認する。
その時であった。実咲の背筋が凍りついたのは…
声の主は振り返った、やはりスーツ姿の崎島瓜夜だった。
そして、崎島の後方でこちらを睨んでいる女生徒の姿だった。
奇怪な声を上げて崎島を睨む女生徒の姿はさながら、亡霊のようだった
「ひぃやぁぁぁぁぁぁぁぁ!」
恐怖で実咲は校内へ走り去ってしまった。
後半へ続く
【インタールード】
白「ところで…さっきから変な視線を感じるが…」
崎「多分彼女ですよ…」
イオ「………」
崎「紹介します。留学生のイオさんです。」
白「……そうか」
崎「彼女、凄い人見知りなんですよね。」
「サッサと席につきなさい」
実咲は机に突っ伏したまま動かなかった。
いや、いろんなことに疲れはて動きたくなかった。
いっそこのまま眠ってしまえたらどんなに楽なのだろうか?
心地よい睡魔の誘惑に瞼が重くなる。
ズギューン!
「あら、東屋実咲さん。いい度胸ね?私の前で居眠りなんて」
銃撃で完全に実咲の目は教卓に向かう。
そこには、拳銃を構えていた担任の条咲だった。
「いや…あの…適役だったので、ついつい安心して…」
「そう、じゃあ安心ついでに教室掃除でもやってもらおうかしら」
「えぇ!そんなぁ」
その時、実咲の頭にある予感が走った。
そういえば…まだ布津野さんが出てきてないな
一瞬、脳裏にある団長のコスプレをした布津野さんがあの戸を勢いよく叩き開けるシーンが頭を過った。
さすがにそれはないか、常識は私よりある人だしね。
着席し、実咲は早くこのHRが早く終わることを祈った。
だが、その祈りは叶わなかった。
勢いよく戸が開いた瞬間、実咲は後方へぶっ倒れた。
とりあえず、様子見のつもりでブラックラグーン一巻の巻末漫画風に書いてみました。
とはいえ、オリジナルよりもかなりキャラが変わっているかもしれません。
(特に崎島と白川はあやふやで、もしかしたら一番の突っ込みポイントかも)
次はアルテリオンさんVS黒刃メンバーを予定しちゃってますが、皆さんの評価次第じゃ変えるかもしれません。
まぁ言いたいことは一つ。
俺は叩かれる覚悟は出来ている。お前らはどうなんだ?
叩きでもマンセーさえあれば平気
だからみんなボクを応援してくだちゃい
>>446 そんなビクつくなよ
もっと自信を持てよ
面白かったぞ
紅茶が!飲みかけの紅茶が顔に!!
「ぎゃぁーっ!熱い!痛い!い、いきなり何をするんですか?!」
妙な敬語を使いながら、自分を蹴り倒したであろう相手を振り返ると。
「こんな所で出会うなんて奇遇ですね。ヴァンエレンさんにイアルコさん」
視線の先には予想どうりの人物が、槍を片手ににこやかに笑っていた。
超紅と名乗るこの人間・・・いや、存在と出会ったのは昨日のこと。
それはいい。問題なのは、こいつが私の事を新しいおもちゃか何かだと勘違いしていること。
何かあるたびに人の事に首を突っ込み、時には今のように理不尽な暴力をふるわれている。
「うむ!超紅の言うとうりだな!
この大事な時に紅茶を飲んでのんびりするなどと、まさに外道!
このイアルコがラーナに代わって天誅を・・・ってぬおぉおぉっ?!」
いきなり保身に走る坊ちゃんが、猫の子みたいにひょいと持ち上げられた。
イアルコを持ち上げたのは、蒼い鎧を身につけ輝くペンダントを持った聖騎士カイザー。
これまた私には相性の悪い仲間だ。性格が、ではなく、職業が。
吸血鬼は闇に属する種族であり、聖なる属性を持つ攻撃にはとことん弱い。
つまり戦いの時カイザーの発する聖闘気は、近くにいるだけで私を消耗させるのだ!
2人とも敵に回せば恐ろしいが、味方にしても恐ろしい・・・。
「えーい!離せ!離さぬか!年長者に少しは敬意を持てい!」
じたばた暴れるイアルコを降ろすカイザー。
「あのまま放っておいて蹴り飛ばされてもまずいかと思ってな。
俺なりに考えて行動したんだが、すまなかった。
超紅もいきなり蹴り飛ばすことはなかったんじゃないか?」
「あれぐらいしないと気づかれないと思ったので」
「む。そういうことなら仕方がないが・・・」
納得しかねるような顔だがイアルコ坊ちゃんも蹴られるのは嫌なようだ。
しかしカイザーよ・・・その優しさをこちらにも示してほしかったぞ・・・
「これに懲りたら、敵が近くにいるときには用心する事ですね」
「敵?!どこにいるんだ?!」
思わず取り乱しながら超紅の指さす先を見たが、変わらぬ夜空が広がっているだけ。
「ふん。敵などいないではないか」
「いや、確かにいるな・・来るぞ!」
イアルコに答えたカイザーが聖剣を構えると同時に、空から光と共に稲妻が降りそそいだ!
「おわーーーっ!!」
バックステップを連発して、稲妻を回避。見れば他の仲間も稲妻を避けている。
やがて光が消え、後には8人の輝く羽を持つ天使が立っていた。
それは絶対者の僕、神罰の代行者。人間ならばその姿を恐れ、ひれ伏す事だろう。
もちろん私は、何もせずに殺されるような特殊な趣味は持っていない。
戦って勝てるか?と聞かれれば、無理っす。と答えるしかないが・・・
「お約束の人数割り振りでもしましょうか。半分は引き受けましょう。後はご自由に」
超紅がさっさと決めて飛び上がると、4人の天使が迎え討つ。もしかして聞こえてたのか?
「次はこっちの番か。2人とも、戦いは苦手だったな?」
「これは自慢じゃが、余は戦うより逃げる方が自信があるぞ」
「苦手っす。無理。勝てません」
「わかった。出来るだけ速く片をつける。しばらくの間持ちこたえてくれ」
おおぉ、カイザーの体から後光が差して見える。いやあれは聖闘気か。
2人の天使がカイザーを挟み込むように動き、残った天使は2体。
「ふっ。1人1殺か・・悪くないのう・・・」
うそぶく坊ちゃんとニヤリと不敵に笑いあい。
「「転身!」」
同時に後ろを向いて逃げ出した!
現在の登場キャラと出典スレです。各コテの皆様に感謝を。
ヴァンエレン・ブランカート【魔法少女】
イアルコ【物語】
カイザー【カイザー】
超紅【なんでも】
遅筆人の名前はSSが気に入らない方用のNGワードです。
453 :
名無しになりきれ:2007/08/04(土) 10:13:05 0
超紅かよ
>遅筆人さん
キャスティングが穴をついてる感じで面白いwww
ジグザグに走ったり急に横に飛んだりしながら、走る走る走る。
あんな天使が放つへなちょこ光の矢に当たってたまるか!
天使の標的には当然イアルコも含まれる。
後ろにいる坊ちゃんには悪いが、弾避けに役立ってもらおうか。くくく・・・
などと考えていると。横をすごい速さでイアルコ坊ちゃんが追い抜いていった。
ちょっと待てーいっ!吸血鬼より逃げ足が速いとは何事だーっ!
「はーっはっはっはっ!!スタミナ!スピード!タフネス!
三拍子そろった余の逃げ足をなめるでない!ダンゴムシさえ振り切る速さなのだぞ!」
あの足の遅いダンゴムシを振り切った自慢とは・・・恐怖のあまり錯乱したのか・・・
坊ちゃんの冥福を祈るため黙祷していると、目の前に天使が降りてきた!
しまった!1人ずつ始末する気か?!
慌てて坊ちゃんの方を見るが、その姿はもう闇夜の向こうに消えていた。
まずい!これは本格的にまずい!!どうする?どうする?どうする?!
迷い、混乱しているうちに天使が剣を抜き放ち。切りかかってきた!
「ぎゃーっ!!やられたー!」
意識が遠のいて視界が暗くなる。ああ・・・こんなところで私は消えてしまうのか・・・
蝙蝠達が身体を叩き、励ましてくれるのが分かる。
おまえ達、情けない主人を許してくれ・・・私は身体が痛くてもう動けな・・
あれ?痛くない?生きてる?
恐る恐る目を開けると、そこには聖闘気を身にまとうカイザーが立っていた。
「少し遅れたが、なんとか間に合ったようだな。」
「はははは。遅かったなカイザー。ちょっとピンチを演出したくなったじゃないか」
精一杯強がりを言ってみたものの、こ、腰が抜けた・・・
天使達とカイザーの戦いは、一方的なカイザーの勝利で終わった。
天使達の攻撃は完全にカイザーに見切られ、反撃の剣は天使に致命傷を与える。
ものの数分で敵を片づけ、構えを解く。
「弱いな。おそらく天使の先兵・・・様子見部隊だな」
その弱い相手に手も足も出ずに逃げ回っていた私の立場はどこに・・・
「こちらの敵もいなくなったようですね」
声をかけながら降りてきた超紅を見て。見て・・なんだあれは?!
「ぶわっはっはっは!!なんじゃ!その頭は!」
「あー。なんというかその、あれだ。ずいぶん独創的なヘアースタイルだな」
笑うイアルコとなんと言っていいのか分からないカイザー。
それもそのはず。超紅の髪型はアフロになっていたのだ!
「あまり似合いませんかね?」
「雷でも落とされたのか?」
首を傾げる超紅に話しかけるカイザーと、笑いが止まらないイアルコ坊ちゃん。
私は必死に笑いをこらえるのに精一杯で話しかけるどころではない。
なにしろうっかり笑ったら殺されかもしれないのだ!
「この髪型は、道を開くためのものですよ。絶対者の居場所までのね」
超紅が指を鳴らすと、さっき天使が降りてきた空からまた光が降りてきた。
光はカイザーと私の上に優しく注がれて・・・だからなぜ私が入っているのだ?!
逃げだそうとしても身体が動かない!
「超紅は行かないのか?」
ゆっくりと浮き上がるカイザーの問いに首を振る超紅。
「退路の確保が必要かもしれません。ここに残ってお待ちしていますよ」
ここでがしっとイアルコの肩をつかんで
「話し相手・・・ではなくて遊び相手のイアルコさんもいることですし」
「建前を隠して本音を言ってどうするんじゃああぁあ?!
だっ、誰か助けてくれーっ!!」
助けて欲しいのはこっちの方だぁーーーっ!!!
急に持ち上がる力が強くなり、周りがどんどん明るくなる。
超紅もイアルコも夜の世界も、視界の中でグルグル渦巻きと共に消えていった。
>453
絶対者の居場所に道をつなげられるキャラが欲しかったので。
他の候補としてはアビサル氏や妖怪GMもどき氏がいましたが
いろいろな事情のため超紅氏に決まりました。
>454
ありがとうございます。
次からの登場キャラはわかりやすいキャラになる予定です。
>>441 超乙。面白かった!
もし次があるなら、そっちも楽しみにしてる
>>446 んだ。おもろいよ
布津野がどうやって登場するのか気になるw
>>458 ワロタw
あと携帯投下マジで乙
460 :
名無しになりきれ:2007/08/06(月) 09:22:43 0
グッド!!
皆
敬
遠
か
?
なら、そろそろ書こうかな?
【 序 章 】
ねぇ知ってる?新しい都市伝説の話?
知らないの?昨日テレビで入ったんだよ。
え………どんな話だって?
えと…死を招く猫女っていう話なんだけど…
猫娘じゃないのかって?猫女でいいんだよ。年齢が20ぐらいらしいから
始めに目撃したのは某ラーメン屋のアルバイトらしいんだぁ
ゴミを捨てに行ったときに、ゴミ箱を漁っていた、なんかボロボロの布切れを羽織ったホームレスがいて
まぁ当然追い払うよね。
んで、追い払っている最中…布切れが落ちたわけて…顔が見えたわけよ
一瞬、白人のホームレスだと思ったらしいけど…その人…耳がなかったの…
正確にいえば、一般人の耳がある位置にないだけ
そう…頭に大きなネコ耳がね
下らない?まぁ怖くもなんともないよね。
ここまでは…ね
この話の一番怖いところはね…そのネコ耳女を見た人は、皆怪物に襲われて死んでるんだって………
ほら………最近多いじゃん?エグなんとかっての
B l a c k E d g e
〜tread on feline〜
【 序 章 】
ねぇ知ってる?新しい都市伝説の話?
知らないの?昨日テレビで入ったんだよ。
え………どんな話だって?
えと…死を招く猫女っていう話なんだけど…
猫娘じゃないのかって?猫女でいいんだよ。年齢が20ぐらいらしいから
始めに目撃したのは某ラーメン屋のアルバイトらしいんだぁ
ゴミを捨てに行ったときに、ゴミ箱を漁っていた、なんかボロボロの布切れを羽織ったホームレスがいて
まぁ当然追い払うよね。
んで、追い払っている最中…布切れが落ちたわけて…顔が見えたわけよ
一瞬、白人のホームレスだと思ったらしいけど…その人…耳がなかったの…
正確にいえば、一般人の耳がある位置にないだけ
そう…頭に大きなネコ耳がね
下らない?まぁ怖くもなんともないよね。
ここまでは…ね
この話の一番怖いところはね…そのネコ耳女を見た人は、皆怪物に襲われて死んでるんだって………
ほら………最近多いじゃん?エグなんとかっての私らも気を付けないと…………
B l a c k E d g e
〜tread on feline〜
酷い誤爆だ!
スマン、次からはないようにする。
まぁグダグダな序章だが、長い目で見過ごしてくれ
本編は黒刃本スレのパラレルワールドの話
だから、本スレとは違う点を先に挙げさせてもらう。
1、東屋実咲は物語の初めからエグゼム、アマテラス所属
2、白川はWEではなくBE
3、ツクヨミはアマテラスの存在をまだ知らない
4、阿久津はエグゼムとしてまだ覚醒せず
5、都市は復興してます。
此ぐらいかな?
まぁ此ぐらいのことは劇場版仮面ライダーによくあることだから目くじらを立てないで欲しい。
アルテリオンのスペックは現本スレの状態でいく
後づけ設定?そんなの関係ねぇ!
>465
GJ!
ドンマイ気にスンナ。
誤爆も演出だと言い切っちゃうくらいの図太さがあってもいいと思うぞw
「どうやら到着したようだな」
どれぐらいの時間がたったのか、昇るような感覚はいつの間にか消えていた。
カイザーが言うように絶対者の住まいとやらについたのだろう。
まさかいきなり天使軍団のお出迎えなどないだろうな・・・
閉じていた目を恐る恐る開けてみる。幸い、予想していたようなお出迎えはなかった。
廊下のような、床も壁も天井も純白に輝くかなり悪趣味な場所に立っている。
絶対者とやらはファッションセンスが全く無いようだな。
もっと配色のバランスを考えた方がいい。
この私に一言いってくれれば、住みやすい場所にリフォームしてやれるのに。
全体的に落ち着いた黒色に変え、さらに日当たりをぐっと悪くすれば・・・
現実逃避の考え事は爆発音で中断させられた。な、なんだ?今の音は?
「向こうで誰かが戦っているようだな。行ってみよう。
もしかしたら、この世界に呼び出された仲間かもしれん」
「なるほどな・・・では私は後ろを警戒しながら進もう。カイザーは前から来る敵を頼む」
走り出すカイザーに数歩遅れてついていく。
これで私がいきなり狙われる事はないだろう。
ふっ・・我ながら完璧な作戦だ・・
廊下の行き止まり、荘厳な謁見の間を思わせる造りの部屋が戦いの舞台だった。
輝く剣と盾を持つ六枚羽の天使に立ち向かう2人の男。
1人は武道家風の男で、体術や気功を武器に接近戦を仕掛けている。
もう1人のスーツ姿で前髪を垂らした男は魔法を主軸に攻撃を仕掛けていた。
あっ!あのスーツは前に雪山で私を吹き飛ばした男じゃないか!
確か・・レイド先生と呼ばれていたな・・・
「FALCONか?!お前も呼ばれていたのか!」
カイザーは私とは逆に武道家風の男と面識があるようだ。
「カイザー!いいところに来たな!
俺がこれからこいつを倒すところを特等席で見学させてやるぜ!」
こちらを向いて余裕の表情のFALCONだが、戦闘中に敵から目をそらすなーっ!
隙を見逃さず切りかかる天使の斬撃をFALCONは空に飛び上がってよけた。
天使はさらに追い打ちを仕掛けるために剣に光を集め出す!
「おいおい、俺もいるって事を忘れてんじゃないか?こいつで目を覚ましな!」
レイドの両手に炎と雷の渦が・・・あれは前に見せた大業か?!
「クレイジーストーム!」
絡み合う2つの渦が一直線に天使に向かって放たれた。
レイドのクレイジーストームは天使に直撃し、巻き上がる爆炎と魔力の余波が視界を遮った。
「かなりの破壊力の魔法だな・・・倒したか?」
「いや。当たってはいないな」
カイザーの質問に答える私には、天使の力がまだ感じられた。
伊達に吸血鬼などしているわけではない。相手の存在と力量は見なくてもわかる。
視界が戻ったとき、やはりそこには盾を構える天使の姿があった。
あの盾で魔法を防いだのか?なんて頑丈な盾なんだ。
だが・・・そこまでだ。もはや天使に勝ち目がないのは、私にはよくわかった。
「楽しかったぜ、あばよ!気功砲!」
空中で気を集めていたFALCONの両手から、まさに砲弾と呼ぶにふさわしい威力の気功が撃ち出される。
レイドの魔法を止めていた天使に別の方向からの攻撃を止めることはできない。
空から撃ち落ろされた気功砲に飲み込まれ、天使は光の中に消え去った・・・
「相変わらずだな、FALCON。少し見ない間にまた腕を上げたか?」
「カイザーこそ聖闘気を練り上げてきたんじゃないか?
この仕事が終わったらまた手合わせしてくれよ」
男の友情を確認しあうカイザーとFALCON。なんと素晴らしい場面なんだ。
それに引き替え。
「よう、ヘボ吸血鬼。どこかに隠れてないで大丈夫なのか?」
知り合いに会ったのは同じなのに、この違いはいったいなんなのだ・・・
しかし絶対者とか名前からして強そうだから、ここでレイドやFALCONと合流できたのは心強い。
性格はともかく能力は超一流の2人は、この先心強い味方になるだろう。
「絶対者を倒すにはやはり全員の力を合わせなければならんな。
これからは4人で助け合いながら進むことにしよう」
ちょっと良いこと言ってみた私の言葉に頷いたのはカイザーだけだった。あれ?
「実はな。ヘボ吸血鬼」
FALCONがばんばん肩を叩きにくる。お前まで私をヘボ吸血鬼と呼ぶのか!
「さっき俺が倒した天使なんだが、あれが絶対者なんだぜ?」
な。な。な・・・なんだってぇー?!最終目標のはずの絶対者をもう倒してしまったのか?!
現在の登場キャラと出典スレです。引き続き各コテの皆様に感謝を。
ヴァンエレン・ブランカート【魔法少女】
カイザー【カイザー&騎士】
レイド【魔法少女】
FALCON【騎士】
携帯からなので見にくいかもしれません。
指摘していただければ出来るだけ直していきたいと思います。
最近忙しくて遅筆人の名に恥じない遅れっぷり・・・
>>472 GJ!!!
既に絶対者倒したって……ちょwwwwっうぇwww
続きが気になるけど、自分のペースでガンガレ
『第六遊撃隊の洗礼』
【名前】バル・バス・バウ
【年齢】23
【性別】女
【職業】工兵・ 第6遊撃隊工兵班班長
【魔法・特技】召喚術
【装備・持ち物】異界召喚門【TORI−E】、安全ヘルメット、工具セット、流星錘
【身長・体重】160cm 49kg2000グラム
【容姿の特徴、風貌】青瞳金髪ショート外はね、ニッカポッカ、地下足袋、腹巻
【性格】 サバサバぶっきら棒
【趣味】金勘定
【人生のモットー】限りなく楽な人生の為に怠ける事はしない
【自分の恋愛観】王子様を待つなんて糞、好きになった男を王子様に仕立て上げてしまえ!
【その他】 第六遊撃隊工兵班班長、といっても工兵班はバル一人しかいない。
だが、召喚能力があるため、ドワーフやゴブリンを召喚し土木作業を指揮するのでその能力は一個招待に匹敵する。
また、異界召喚門【TORI−E】は狭い範囲ではあるが異界そのものを召喚する事が出来る。
砂漠に森を出現させたり、街にジャングルを召喚したりなど。
召喚した異界は開放型異空間で、もとのフィールドと混在する形で出現する。
範囲や継続時間は元のフィールドと召喚するフィールドの相性による。
能力的には高く評価されるが、性格的に軍機からはみ出る事この上なし。
扱いにくさの為に第六遊撃隊に配属される。
『第六遊撃隊の洗礼1/5』
コルム・クレイスは志願兵としてライゼ王国からの任命書を受け取ったとき、愕然とした。
配属先は第六遊撃隊。
騎士を志望した筈なのに、騎士団はどころか、どこの方面軍でもない。
いや、遊撃隊自体は莫迦にする訳ではないのだ。
固定した任務ではなく、臨機応変に友軍の救いとして機動力を存分に発揮する隊だ。
あらゆる状況を想定して力を発揮する、ある意味エリート部隊でもある。
・・・と言うのも第五遊撃隊まで。
第六遊撃隊は別名独立愚連隊ともいわれ、正規軍より傭兵隊に近いというのが一般の認識だ。
正規軍が行うような国境警備や軍事演習、都市の治安などとは縁遠い存在。
軍単位で動くには余りにも小さな仕事や、殆ど上層部の認可や指示の必要のないとされる任務が主だ。
隊長が騎士だという事が唯一の救いだが、年齢21歳と言う若年から大方の察しはつくというものだ。
自分でも冷静だと思っていたコルムだが、この処遇には我慢できなかった。
登城すると同時にまず行ったのは軍事務所だ。
騎士となるべく志願したのにこの扱い。
懸命の抗議にも拘らず、あっさりと門前払いを喰らってしまう。
悔しさと納得いかぬ思いで廊下で呆然と立ち尽くしていると、初老の男が話しかけてきた。
「なぜ騎士になりたいのか」と。
見たところお偉方の人間のようだが、あいにくコルムにはそれが誰かと言うまでの知識は無かった。
が、それでも良かったのだ。
正直誰でも。
この鬱憤たる思いを噴出せるのならば。
小さく咳払いをして、自分が騎士になりたい理由を初老の男に話していると・・・
突然後ろから髪の毛を引っ張られた。
しかもかなり強く引っ張られた為、首の筋が違えてしまったようで痛みが走る。
「だ、誰だ無礼な!」
首筋に手を当てながら振り向くと、女が笑顔で立っていた。
日に焼けた肌、安全ヘルメットからはみ出す外っはねの金髪、皮の鎧、腹巻、ニッカポッカに地下足袋。
背中には何故か朱塗りの気を不思議な形に組み合わせたものを背負っている。
ちょっと変わっているが、土木作業員そのものの姿をした女。
仮にも騎士を志す自分に対して無礼な仕打ちをしたのがこのような女だというのが腹が立つが、もっと腹が立つことがある。
それは土に汚れた軍手をしたてで、コルム自慢のロングツインテールの髪を握っていることだ。
頭一つ分高いの女をコルムが睨みつける。
「やあ、あんたがコルムだね。
あたしは第六遊撃隊工兵班班長、バル・バス・バウっての。
入隊の歓迎会やるから迎えにきたんよ。
それじゃ、ベルグドル准将、お話中すいませんが失礼します。」
笑顔のままバルは自己紹介と敬礼をし、その場から離れていく。
コルムの髪の毛を引っ張ったままに。
『第六遊撃隊の洗礼2/5』
コルムは二重の意味で驚いてあっけに取られてしまっていた。
この無礼な女が自分の隊の同僚だという事。
工兵とはいえ、先輩だし、班長だ。地位も上なのだろう。
だからといってこんな初対面で無礼な仕打ちは笑って許せる範囲ではない。
更にもう一つ。
自分が話していた相手が【准将】だったということだ。
ベルグドルについては何も知らないが、准将と言う以上軍の主要人物だ。
そんな人物に憧れとも鬱憤ともつかぬ事を話していたとは・・・
自分の失態に気が遠くなってしまうコルムであった。
事態の展開に気が遠くなってしまっていたが、現状はそれどころではない。
自慢のロングツインテールを引っ張られているのだ。
いくら先輩でも許しては置けない。
「ちょ、いい加減にしてください。バル班長。失礼ではないですか!」
足を踏ん張り、髪の毛を掴んで引っ張り返す。
ようやく髪の毛は解放されたが、バルからは謝罪も反省の色も受け取る事が出来なかった。
「いや〜、ゴメンゴメン。掴みやすそうで便利だったからさ。面白い髪型しているね。
それからあたしの事はバルでいいよ。班長ったって工兵班はあたししかいないんだから。」
この反応でコルムはいくつもの情報を得ていた。
工兵班は一人だけ。
想像以上に酷い隊に配属されてしまったものだと落胆してしまう。
だがそれ以上に重要な事。
バルに全く謝る気がないという事だ。
ぶっきらぼうに短く切っただけのような髪形をしている女に、自分の自慢のロングツインテールについてとやかく言われる筋合いはない。
猛然と怒りがこみ上げてくる。
大方配属に不満を持って抗議をした私を苛めているのだろう。
新兵イジメとは腐った女だ。
「さ、第六遊撃隊秘密の溜まり場で歓迎会開くから、行こうか。」
笑顔のまま促すバルに、コルムはじっと睨みつけただけで返事をしなかった。
ただ黙ってバルの後ろについていったのだった。
黙ってついて行ったが、すぐに何かがおかしいという疑念を持ち始める。
なぜならばバルは城を出て、森に入っていったからだ。
だが【秘密の溜まり場で】と言われているので、疑念を持ちつつも付いていくしかない。
『第六遊撃隊の洗礼3/5』
森に入るといっても、道を行くのではない。
鬱蒼とした木々と藪に埋め尽くされた森を掻き分けるように進んでいくのだ。
藪の背は高く、バルは太もも辺りまでだが、背の低いコルムは腰まで藪に埋もれてしまう。
地面はデコボトとして歩きにくく、笹や枝が太ももを引っかいたり腰のリボンに引っかかって歩きにくい事この上ない。
「ねえ、コルムは布槍術でも使うの?にしても無駄なリボンだよねえ。」
唐突に声をかけるバル。
城でコルムがバルを無視してから二人とも沈黙したままここまで来たので、突然沈黙を破られ驚いてしまう。
それに質問の意味がわからなかった。
布槍術とは、帯などを水に浸したり、気を通す事によって槍と化す高度な槍術だ。
本来武器でないものを武器とする暗器術でもあるが、わざわざリボンにしておく必要はない。
とはいえ、コルムは布槍術自体知らないので、応えようもない。
ただ、自分の腰のリボンが馬鹿にされているとなんとなく感じてはいた。
そんな反応のコルムにバルから更なる追撃が降りかかる。
「そのミニスカタイトローブ、可愛い以外何かとり得あんの?
こんな藪の中、引っかいて痛くない?破風症にでもなると大変よ〜。」
この言葉を聞いてコルムは確信した。
バルは自分をいたぶる為にここに連れてきたのだ!と。
言われた通り、コルムの太ももやふくらはぎは切り傷や蚯蚓腫れが無数について痛みを発信し続けている。
確信したコルムの眼にはバルの張り付いた笑みがニヤニヤといやらしい笑みになっているように見える。
だがここで弱みを見せては負けだ、と言う気がしてならない。
ギリっと刃を噛み締め、尖槍ファレトを回転させるように横薙ぎに一閃。
「心配無用です。回復魔法が使えますので!」
コルムの半径1メートルほどの藪が綺麗に切られ、開けた空間となる。
その中心でなるべく感情を抑えながら、バルに言い返して自分の足に回復魔法をかけていく。
藪に埋もれて見えなかったが、自分の想像していた以上に脚には切り傷が多い。
「あらら、こんな風に派手に切り取って痕跡残してどーすんのよ。
それにさ、敵が親切に回復魔法をかける暇与えてくれると思ってんの?」
綺麗に刈り取った藪に驚くわけでもなく、感心する訳でもなく、与えられたのは侮蔑の言葉。
そして足元にめり込む拳大の球。
驚いて見上げると、冷たい表情のバルが球を手繰り寄せていた。
長い紐の両端に錘をつけた奇妙な武器だ。
「珍しいでしょ。流星錘っての。ちょっと遊んでみよっか。」
紐を回転させながらじりじりと寄ってくる。
この状況において、コルムの頭の中で小さく何かがきれる音がした。
「先輩と思って黙っていたが、もう我慢できない。
工兵が先輩風吹かせて新兵いびるつもりなら相手が悪かったと思え!」
散々いたぶられ、我慢の限界に来ていたところで先に手を出してくれたのは助かった。
これで相手を叩きのめそうと正当防衛だ。
いや、正直正当防衛でなくてもいい。
いっそこの件で除隊処分でも下ったほうがありがたいというものだ。
尖槍ファレトを構え、一気に攻勢に出た。
『第六遊撃隊の洗礼4/5』
コルムは我流とはいえ磨き続けた槍術を持っている。
藪を掻き分けながらでも切れ目ない攻撃を続けバルを追いかけていく。
だがバルの表情からは余裕が消えない。
それもそのはず、バルは流星錘を回転させたまま殆ど使わずコルムの槍を避けているのだ。
「ちょこまかと・・・!これなら!」
突きと言う点の攻撃では躱されてしまう。
ならば・・・突き!
だがこれはフェイント。躱されるのはわかっている。
そのまま槍を戻さずに手を離し、コルムもバルに向かって突進。跳躍して飛び蹴りを見舞う。
身の軽いコルムだからこそ出来る奇襲技。
「我流って教科書にないトリッキーな動きがあるけど、いかんせん軽すぎるんだよねえ。」
槍ばかりに気を取られているところに、槍を手放すという意外。
そしてとび蹴りが来るという想定されていない攻撃だったにも拘らず、バルはコルムの蹴りをガードしていた。
転がす事が出来なかったが、それすらもコルムの想定のうちだ。
バルを踏み台にするように更に飛び、手放した槍を追うように着地。
計算されつくした位置だ。
振り向きざまにその回転運動そのままに槍を持って薙ぎ倒す!
・・・はずだった。
だが槍は横薙ぎに一閃する前に木に食い込み動きを止めてしまう。
深く突き刺さった為コルムが引き抜こうとしても抜けないのだ。
「状況を見て横薙ぎしなきゃ。こんな森の中でなにやってんの?」
心底馬鹿に知るようなバルの言葉に、コルムの顔が赤く染まる。
更に驚く事に、槍にはいつの間にかバルの流星錘の紐が絡み付いている。
軽く手首を捻っただけで槍は木から抜け、バルの手元に手繰り寄せられてしまう。
「それに、戦場では一度手放した武器は戻らないと考えるのが当然よ。」
余裕なのか馬鹿にしているのか、バルは槍をあっさりとコルムに投げて渡した。
槍を受け取りながら、コルムは羞恥と自分への怒りで頭が熱くなるのを感じていた。
だが、今はそんな余裕などありはしない。
ヒュンヒュンと不気味な音を立てながら流星錘を回転させるバルが迫ってきたのだから。
木々と言う障害物がまるでないかのように。
いや、障害物を利用するように攻撃を仕掛けるバル。
流星錘は紐の持つ場所によって間合いを自在に変えられるし、紐と言う特性上、木に引っかかってもそれを障害になる事もない。
むしろ木に引っ掛ける事によって軌道を変えコルムを打ち付ける。
「我流って守勢に回ると途端に脆くなるのよねえ。」
ぶつぶつと愚痴を言いながら流星錘を打ち付けるバル。
軌道も間合いも読めないような武器を持っておいてそんなことを言うな!
そう思っていてもすでにコルムには言い返す力は残っていない。
「それにさ、ほら、足元がお留守だし。」
「!?」
その指摘通りコルムは足を滑らせてしまう。
腰まである藪の中での戦いだ。
足元がどうなっているかだなんてわかるはずもない・・・
そう、わかるはずもないのだ。
なのになぜバルが判ったのだろう?
「あーあ、格好ばかり気にしてヘルメットの一つも被らないから、ちょっとこけただけで随分な痛手ね。」
こんな時になぜこんな事が思い浮かぶのか不思議だった。
転倒して頭を打ったせいか、視界がぶれる。
そんなぶれた視界の中、スローモーションのように流星錘が迫ってくるのが見えた。
そこでコルムの視界は暗闇に包まれた。
『第六遊撃隊の洗礼5/5』
視界が暗闇に包まれたといっても、気絶したわけではない。
何かが覆いかぶさって視界を遮ったのだ。
続いて『ゴン』という何かがぶつかった音。
驚いていると、ようやく視界が開けた。
そこには一人の男が立っていた。
「ちょっとグラスマン隊長!あんたなんで出てきてんのよ!」
「いや、もういいだろう?見てられなくってさ。」
「はぁ?あんたって人は。名前どおりガラスの心か?ちったあ厳しさを身につけなよ!」
バルと突然現れた男のやり取り。
話によると、男はグラスマン隊長。そう、第六遊撃隊の隊長の名だ。
そんなやり取りの間中、バルは流星錘をグラスマンに打ち続けているのだが、全て弾き返している。
グラスマンの竜鱗の呼吸という身体効果術なのだが、このときのコルムは知る由もない。
「まったくさー、今出てこられたらあたし嫌な女なだけじゃん。」
暫くのやり取りの後、バルはぶつぶつ言いながら背中の朱塗りの木を組み合わせたものを下ろし、小さく呪文を唱える。
すると鬱蒼としていた周囲の森が瞬時に消えうせ、小高い丘と丸太小屋が姿を現した。
「すまないな、コルム君。いささか手荒い洗礼だが我々の任務は常に危険が付き纏う。
彼女もそれが判って欲しかったからこそだ。気を悪くしないでくれ。」
「おーおー、自分だけいい子ちゃんになれてよぉござんしたね。」
コルムに優しく説明をするグラスマンの後ろでジト目で文句をつけるバル。
そしてコルムは今までのことを思い返していた。
確かにバルに指摘された数々の事は自分の欠点そのものだ。
その一つ一つが戦闘において死に直結する。
もしバルがその気だったのなら、自分は何度死んでいただろうか・・・。
怒りの感情は消え、己の力なさに恥じ入りただ俯くばかり。
「まあさ、初対面で悪かったよ。
第六遊撃隊はきっつい任務が多くてね、今ここにいるのも私と隊長だけ。
後は死んだか入院中か出張中なんだよね。
生半可な気持ちは入隊してさくっと死んで欲しくないのよ。
今なら私にいびられたと訴えれば転属も出来るけど・・・?」
先ほどまでの表情とは打って変わり、申し訳なさそうな顔のバルの言葉。
優しい言葉だが、今のコルムにはそれが辛いのだ。
「・・・ありがとうございます。自分の力の無さを痛感しました。」
「そうか・・・うん。」
コルムの言葉にがっくりと項垂れるグラスマン。
こうなるのは判っていても、やはり初の新兵配属を楽しみにしていたのだ。
「でも・・・私はこの隊で、強くなりたいです。
未熟者ですが、ヨロシクお願いします!」
力強く宣言する言葉に、項垂れていたグラスマンの顔が勢い良く飛び上がる。
ちょっと涙ぐんでいるグラスマン隊長の元、三人だけの第六遊撃隊歓迎会が始まりを告げる。
こうしてコルム・クレイスの第六遊撃隊員としての生活が始まったのだった。
そんなん書いてる間に騎士スレにテンプレ落として来りゃいいのに
それともコルムの中の人が人寄せのために書いた宣伝SSなんですかい?
騎士スレに参加したいけど、9月から忙しくなりそうだから参加断念したのよ。
これが精一杯の騎士スレ支援の形だお。
へえ
>>481乙
騎士スレ行けば盛り上がりを見せそうな人材だけに残念だよ
484 :
名無しになりきれ:2007/08/18(土) 20:30:24 0
騎士は死んだ!!なぜだ
厨だからさ
今日もwktkしながらSS投下待ってまつ
>>486 わかったわかった。
明日の仮面ライダーを諦めてオッカナビックリでガクブルしながら第一章を書いてくるよ。
【第一章 私の死後に不幸は絶えない】
1日目 気が付いたら見知らぬ土地にいた。
とりあえず、通りすがりの人に話しかける。
なんか嫌な視線を感じたが、言葉は通じたようだ。
耳について「本物か?」と聞かれたので「本物です」と答えた瞬間、叫び声を上げて逃げていった。
その数分後、けたたましい音ともに鉄の箱に囲まれる。
なんとか逃げられたが、剣猫の毛皮が使用不可能になった。
2日目 とりあえず、人目につくとマズイのでなるだけ路地裏等で隠れようとしたが、
浮浪者の群れに高確率で遭遇、後、襲われかけたがなんとか脱出、ボロ布を奪取…臭気の凄さに吐いた。
その夜、異形の怪物と遭遇、後戦闘、空腹と疲れ、そして、手合わせしたことのない相手になんとか辛勝
3日目 青い箱に質は最悪だが、食料があることを発見、早速食事をしようとした所を見つかり逃げることになる。
ボロ布のお陰で大事にはならなかったが、その夜…昨日とは違うタイプの怪物と遭遇。
戦闘中に変わった甲冑を装着した輩が怪物を攻撃、留めを刺した瞬間。私に襲いかかる。
人の姿をしているので怪物より、やりやすかったがバルムンクで斬ろうとしても切れない。
現状不利と判断し逃亡
4日目………………………
スマン、続きが気になると思うが明日になる。
マジでごめんなさい。
別に気にならないから謝らなくてもいいよ
491 :
486:2007/08/19(日) 07:17:46 0
キタ━━━━(゚∀゚)━━━━!!
wktkしながら続き待ってるお
他の職人さんたちもガンガレ
「・・・すまん。詳しく説明が欲しい。
俺は絶対者を倒せばすぐ元の世界に戻れると思っていたんだが、違ったのか?
倒したのは間違いなく絶対者なんだな?」
そう。カイザーの言うように、絶対者の撃破が帰還の必要条件だったはずだ。
それなのに。絶対者を倒したのに。そんな雰囲気は全くない。
おいおいおい話が違うじゃないか、それともすぐには戻れないのか?
後何年くらい待てば帰れるんだ、1年か2年か10年か?!
いや待て考えろ実は倒したのは絶対者の偽物で本物はLV90以降でないと倒せないとか!
「落ち着けよ。まず倒した天使がが絶対者なのは間違いない。
本人がぺらぺらしゃべってたからな。ただし奴はまだ死んじゃいない。
実は俺たちが絶対者をぶっ倒したのはもう三回目なんだ。
倒す度に強くなってまた生き返ってきやがるからな」
俺は楽ませてもらってるぜ、と続けるFALCONの顔を唖然として見る。
ヤバい。本気だ。私は戦闘狂じゃない、ノーマルなんだ!
そんな不死身の敵と永遠に殴りあうなんて趣味じゃないんだーっ!!
「なにか弱点はないのか?完全に不死身の敵なんていやしない。
奴を不死身にしている何かがあるんじゃないのか?」
493 :
遅筆人 ◆.ZxbYvlgPY :2007/08/20(月) 05:14:38 O
カイザーの言葉は日光を遮断するカーテンみたいに希望をもたらした。
そうだよ!弱点だ!!
何かあるだろう?ニンニクが嫌いとか十字架がダメだとか川を横切れないとか!!
「俺の生徒も同じ事を言ってたよ。なにか仕掛けがあるはずだってね。
今彼女は仕掛けを探しに他の場所を見て回ってるから、取りあえず報告待ちだ」
そうかレイドの生徒はなかなか優秀だな。
その仕掛けさえ壊せば絶対者は倒せる。こんな物騒な所からはおさらばだ!
「話中に悪いが、そろそれ敵さんのおでましだぜ」
FALCONに言われて見ると、絶対者の倒れた場所に霧のような物が集まっていた。
ちらちら羽が見えているから、あれは回復だか再生だかしている途中なんだろう。
「俺はここに残って絶対者をくい止めるのを手伝う。
ヴァンエレンはレイドの弟子と合流して、奴の弱点を探ってくれ」
「仕方がないな。私がその危険な任務を引き受けよう。
必ず絶対者の弱点を見つけてみせるから、それまで死ぬんじゃないぞ」
やった!あんな化け物と戦わずに済んだぞ!
内心の喜びを押し殺してシリアスな表情を作り、カイザーとうなずき合う。
「まあ、お前みたいなヘボ吸血鬼に居られても邪魔だからな」
レイド・・・頼むから水を差さないでくれ・・・
霧の中から六枚羽の天使が進み出る。
盾にもその姿にも、今の戦闘の影響が全然残っていない。
なるほど。いつかは消耗したこちらが倒れるのは明白だ。
だが私が不死身の再生力の元を断てばそれで話はおしまい。
ふっ・・戦わずして敵を倒すとは私にふさわしい勝利だな・・・
「よし行け!後は任せたぞ!」
レイドに背中を押され、私は振り返ることなく飛び上がった。
待ってろよ!必ずあの化け物の弱点を見つけだして来るからな!
しかし・・・どこを探せばいいんだ?
入ってきたのとは違う扉から外に出たはずなのに、同じような景色が広がっている。
つまりは長い廊下と部屋の入り口が沢山見えているのだ。
試しに近くの部屋に入ってみると、質の良い調度品と家具が置いてある。
次の部屋もその次の部屋もまったく同じ。絶対者の弱点らしき物などどこにもない。
ええい!こうなったら端から順番に全部調べていってやるわ!
意気込んで開けた部屋の中には先客がいた。
「ぎゃーっ!天使ーっ!!」
叫んでその場で回れ右。部屋を飛び出した所で気づいた。
あんな背の低い天使はいない。そもそも天使は漆黒のローブなど着ていない。
もう一度部屋を恐々のぞくと、人間が一人。驚いたような顔でこちらを見ていた。
見覚えのある顔だ。あの雪山で見知った顔で・・・確かメラルと呼ばれていたな。
石を踏んづけて転ぶドジっこだ。この子がレイドの言っていた教え子か?
「あー。えー、コホン。君はレイドの生徒だよね?
私はレイドに言われて、絶対者の弱点を探しに来たんだ。
何か見つかったかい?」
「あなた・・・あのときのヴァンパイア?」
もう驚いてはいないが警戒を解いてもいないようで、質問に質問を返される。
「うむ。そのとうり。
だが安心したまえ。今は絶対者と戦う仲間だ」
得意そうに言ってみたが、前髪とサングラスのせいでメラルの表情が読めない。
果たして信用されたのだろうか?
私がヴァンパイアだと分かっていて警戒しない人間などいないだろうが・・・
しばらく何かを考えていたメラルがこちらを見た。
「そうね・・・あなたならできるかもしれない・・・
ついて来て。あなたを絶対者の心臓に案内するから」
「できるって言ってたが、私に何ができるんだ?」
メラルに案内されるまま歩きながら、説明を要求する。
頼むから私にも分かりやすいように説明してくれよ。
「いいわ。じゃあ、順に説明するわね」
メラルの説明は筋道立っていて分かりやすかった。
彼女の説明によると、絶対者は他の世界に自分の分身を送り込んでいるらしい。
分身と本体をつなぐのは、魔力の源となる水晶球。
それを壊さない限り、分身は永遠に倒されない。
しかしその水晶球は強力に封印されている。
そのために純粋な闇属性の存在にしか破壊できないのだそうだ。
「・・という訳ね。図書館で読んだ本の知識が役立つ時がくるなんて思わなかったけど。
着いたわ。この扉の中に水晶玉があるの。」
話しているうちに目的地についたようだ。
複雑な模様が描かれた扉は、聖域の心臓部分にふさわしい。
よし!ここは気合いを入れ直して開けるぞ!
「え〜ごめんください」
なぜか口から出てきたのは気弱な言葉だったが、ともかく中に入る。
そこで私が見たものは、巨大な水晶玉に攻撃を仕掛けるロックとリリアーナの姿だった。
な、何をしているんだ?闇の存在である私にしか壊せないんじゃなかったのか?
現在の登場キャラと出典スレです。引き続き各コテの皆様に感謝を。
ヴァンエレン・ブランカート【魔法少女】
カイザー【カイザー&騎士】
レイド【魔法少女】
FALCON【騎士】
メラル【魔法少女】
ロック【魔法少女】
リリアーナ【魔法少女】
なんとか次回書き込みが最後になりそうです。
夜遅くまでご苦労様
今回もGJですぞ
キャラの魅力を引き出せない人がキャラを借りてSS書くのは難しい
中途半端におわったあのスレッドをSSという形で終わらせてくれ
>>498 GJ
細かいところまでよく見てるなと感心した
>>499 自分のキャラでも難しいのに他人のキャラだと難易度倍増
>>505 島スレ2の事だな
詳しくはまとめサイトで見てき
今日もwktk
明日もwktk
これじゃ年がら年中wktkwktk♪
職人さん、いつも楽しませてくれて有難う
マターリうp待ってるお
【突撃!隣の晩御飯】
ライゼ王国西に広がる森林地帯。
その広大な森には古代魔法文明の遺跡が集中している。
今も尚、人に知られず森に埋もれている遺跡は数え切れない程と云われる。
その影響か、木々の育成が異常に早く、森に一歩はいれば方向感覚が狂う。
エルフや亜人種の集落がいくつか存在するが、モンスターが闊歩し、一歩道からはみ出れば簡単に迷ってしまう。
それ故人々はこの森林地帯を【魔の森】と呼び、恐れ近寄るものは少ない。
しかし、遺跡には現行文明を遥かに超越する遺物も多数あるといわれ、周辺国は競ってその発掘に力を注いでいる。
この日、ライゼ王国は多くの人々で賑わっていた。
祭りがあるわけでもなく、集まっている人々も重装備でとても観光できたようには見えない。
この人出は、一週間前に起きた地震が原因である。
魔の森は埋もれている遺跡群の影響か、数ヶ月に一度のペースで地震が起きる。
周辺国には影響が出ない魔の森限定の不思議な地殻変動。
だがそれは森に埋もれている遺跡が、崖崩れなどで新たに発見できるチャンスでもあるのだ。
広大な森の探索に軍を派遣できるほど国力のある国はまだ無く、探索は冒険者達を雇うことになる。
地震が起きれば各国は大量の探索者(エクスプローラー)を雇い、探索隊を出すのだ。
そして新たなる遺跡が発見されれば、その時こそ正規の軍の出番となる。
小さな遺跡であれば探索は容易だが、大きな遺跡ともなると、軍が総力を挙げても探索しきれない事は珍しくないのだ。
「と言うわけで、先週起こった地震により探索令が出された。」
第六遊撃隊の詰め所でグラスマンが地図を広げながら隊員たちに切り出した。
地図といっても殆どが空白となっている魔の森の地図だ。
いくつかのブロックに区分けられており、第六遊撃隊の探索担当地域を指差す。
本来正規軍部隊の仕事ではないんだが、もはやその事について口を出すものはいない。
「では今回の探索メンバーは、バル、コルム、俺、そして、アゼル、道案内を頼むぞ。」
メンバーの名前を確認するように呼ぶ。
それぞれ既に魔の森探索の為の装備は整えており、この打ち合わせも単なる確認に過ぎない。
「俺だって魔の森全部知っているわけじゃないんですけどね。」
魔の森のエルフの集落出身のアゼルが軽口を飛ばしながら荷物を担ぐ。
もはや慣れたもので、メンバーも地図の確認が終わり次第、さっさと出発しようとする。
「あぁ、待て!待て!肝心な事がまだだ!
よっぽどないと思うが、他の国の探索チーム、特にガストラとかな。
かち合っても絶対戦闘はいけないからな。ポインターフラッグ条約を忘れるなよ。」
もはや改めて説明するまでもないのだが、それでもグラスマンは言わずにはいられなかった。
遺跡探索は各国が力を注ぐ国家事業である。
とはいえ、魔の森はどの国にも属さぬ地帯。
機密性、有用性を考慮し、魔の森周辺国は一つの条約を結んだのだ。
遺跡探索で無用な戦闘、それによる突発的な戦争を防ぐ為に。
大規模な探索隊派遣は地震発生してから二週間まで。
新たなる遺跡を見つけたものは【ポインターフラッグ】という旗を遺跡の入り口に突き立てる。
【ポインターフラッグ】は探索魔法がかけられており、後から遺跡を探すときに迷う事はない。
また、刺した時間の記録が出来、特別な儀式魔法でないと抜けない事から遺跡探索権の印ともなる。
ポインターフラッグの立っている遺跡には不介入。
それがポインターフラッグ条約の概要であり、ライゼ王国もガストラ連邦もその条約機構に加入している。
こうして打ち合わせが終わり、一行は魔の森に出発したのだった。
また宣伝乙か
>>508 GJ
続きが気になるがタイトルも気になるw
【突撃!隣の晩御飯】
ライゼ王国を出発して二日目。
一行はアゼルの案内の元、魔の森探索担当地点に到達していた。
幸い途中でモンスターや他の探索チームと遭遇することなく、担当地域の探索を始める。
殆ど人の入った事のない原生林は視界が悪く、異界に踏み入れたが如き感覚に襲われる。
「・・・すごい・・・360度、天地全部木に覆われているみたい・・・。」
圧倒的な森の中で、コルムが思わず呟く。
他のメンバーは既に何度も探索を経験しているが、コルムは今回が初めての探索なのだ。
「いやまあ、慣れちゃうと鬱陶しくあっても凄くはないんだけどね。」
グラスマンもバルも魔の森の奥と言うことで少々緊張気味だが、アゼルは殆ど緊張した様子はない。
人間年齢に換算すると17歳と言う青年であるが、エルフの寿命は人間のそれとは桁が違う。
どれほどの歳月をこの森で過ごしてきたかは誰も知る由もないが、おそらくはこの中では最年長であろう。
そのアゼルの目から見れば、異界の如き魔の森の奥も慣れ親しんだ日常の一部なのだ。
「よーし、適度に散会して。探索を始めるぞ。」
グラスマンの号令の元、メンバーはお互いのフォローのできる距離を保ちつつ広がり、探索を開始する。
魔の森に入り、探索を開始して三日目。
洞穴らしきもの発見。
大型肉食獣の巣だった。風のように逃げる。
五日目。
探索可能最終日。
広大な魔の森の中、探索が空振りに終わることなど珍しくない。
が、一行の目の前に明らかに人為的に作られた洞窟の入り口が口をあけていた。
崖崩れによってその姿を現したのだ。
「良かったよ。無駄足になると出費も無駄になるからねえ。懐が辛くって。」
「バルさん給料僕らよりいつも余分に貰ってるじゃないですか。」
「あたしのは必要経費なんだよ!」
愚痴をいうバルに唇を尖らせてアゼルが抗議するが、短く遮断する。
そしてバルはツルハシやスコップを担いだゴブリンを数体召喚。
入り口に半ば塞いでいた土砂を綺麗に取り除かせたのだった。
「あんたの精霊召喚と違ってね、あたしの召喚するのは自我もあれば社会もある土木作業員なのさ。
時も場所も選ばずにホイホイ召喚できるって訳じゃないんだ。
こいつらだって生活があるんだからさ。
だから予め1週間とか期間を決めて召喚待機契約を結んでおくのよ。
で、一週間召喚してもしなくても拘束代金は払わなきゃならないし、仕事があれば別途支給。
それに対して軍から支給される給料は少なくてねえ、やりくり大変なんだよ?」
「・・・魔法っていってもシビアですね・・・」
「ま、ま。さあ、めでたく遺跡を発見できた事だし、きっと金一封くらい出るぞ?よかったよかった。」
単純に感心するコルム。
それとは裏腹に、隊長という役職上バルの視線が痛いのはグラスマンだ。
話題を変えようとポインターフラッグを突き立てながら冷や汗を流すのであった。
【突撃!隣の晩御飯】
「さて、めでたく探索は終了だ。帰ろうか。」
グラスマンが汗を拭って振り返るが、そこには誰もいない。
土砂を取り除いた遺跡入り口をバルが丹念に調べており、アゼルとコルムはそれを興味深そうに見ている。
何度も探索にでて、遺跡を見つけたのもこれが初めてではない。
だが、ほぼ完全に原型を留め、これほど立派な遺跡は誰にとっても初めてなのだ。
「ねー、たいちょー。このまま帰るのって、もったいなくない?」
アゼルが意味深な笑みを浮かべる。
コルムも口には出さないが、初めての探索で初めての遺跡。
しかもこれほどの規模の遺跡、中に入ってみたいし、何かあるかもしれない。
そんな予感に胸を膨らませていた。
そしてそれはグラスマンも同じだ。
ただ隊長という責任上言い出せなかっただけなのだから。
「バル、なにか判るか?」
「・・・こりゃすごいわ。ここんとこ、メイズメーカージュヌヴィエーヴってある。
もうちょっとまってな。」
グラスマンの問いにバルが門柱らしき物の隅を指差す。
言われなければ気付かないであろう場所に、うっすらと【メイズメーカージュヌヴィエーヴ】と刻印されている。
大規模な古代遺跡の四割がジュヌヴィエーヴ作である事から、その名の意味するところは大きい。
それがグラスマンの背中を押す最後の一押しとなった。
「うん、せっかく見つけたんだし、コルムは初めてだしな。
何事も経験をつませなければならないというのも隊長の務めであって・・・」
「・・・ジュヌヴィエーヴ【ろ-8式改】だね。この型番ならいける!」
「たいちょー、ぶつぶつ言っていないで、バルさん分かったって。」
「あ、ああ。うん。」
「・・・・。」
自分自身に色々良い訳をしているグラスマンを他所に、バルはダンジョンの構造を把握していた。
気のない口調でトリップしているグラスマンに呼びかけるアゼル。
そしてそんなやり取りにちょっと気の抜けるコルムであった。
バルはおもむろに入り口付近の壁にノミを入れ始める。
響き渡るノミ打つ音。
暫くの後、遺跡の壁の一角がくりぬかれた。
「やっぱりねえ。魔法集積回線がここを通ってる!」
刳り貫かれた壁の向こう側は空洞となっており、魔力が循環する回線が何本も走っていた。
小さく呪文を唱えると、バルはその穴に手を突っ込む。
数分後遺跡は鳴動を始め、目の前に見えていた入り口が沈んでいく。
その代わりに新たなる入り口が姿を現した。
バルが魔法集積回線を組み替えて、正しい入り口を出現させたのだ。
「まだ奥の方の組み合わせとかトラップ解除あるから、先行ってて。」
手探りで操作をしながらバルが三人を促す。
「よ、よし!みんな・・・あれ?」
「たいちょー、早く行きましょうよ。」
「・・・。」
熱血をするグラスマンを残して既にアゼルとコルムは遺跡の中に入っていたのだった。
【突撃!隣の晩御飯】
すっかり空回りをし、あたふたと遺跡に入るグラスマン。
既にウィル・オー・ウイゥプを召喚して光源の確保をしているアゼルとは対照的である。
そんな姿に突き刺さるコルムの冷たい視線。
三人の遺跡探索が今始まったのであった。
遺跡には守護モンスター・遺跡の影響で異常繁殖した動植物・トラップ・遺跡の実験の産物など、様々な危険が溢れている。
だがそれと同様に、ともすればその危険そのものが大いなる宝となる。
限られた光と澱む空気の中、否が応でも三人の緊張感は増していくのだった。
時折震動と共に鳴り響く轟音。
罠の作動なのか、バルの操作による遺跡の作動なのか。
それすらも判らぬ中、三人は進んでいく。
バルの操作のおかげでもあるのだが、遺跡内は全くといっていいほど分岐がない。
不思議なことに、何らかの部屋などすらもないのだ。
一本道で奥へ、そして下へと続いていく。
「たいちょー、これって・・・」
「うむ・・・」
「この構造、地下に隔離実験室でもあるような感じですね。」
流石に不思議に思ったアゼルに、コルムが冷静な意見を述べる。
分岐や部屋の少なさもさることながら、守護モンスターや動植物も全くない。
またアゼルからこの遺跡内に全く精霊力が感じられない、と言う意見も出る。
俄然コルムの意見が信憑性が増すというものだ。
もしこの地下隔離実験遺跡なのでは?という意見が正しいとすれば、かなり重要な遺物の発見も期待できるのだ。
慎重に歩みを進めて行き、どれほど立っただろうか?
三人は空気に湿気が混じり始めた事に気がついた。
だが通路は唐突に終わりを告げていた。
「バルがいると助かるのだがな、仕方がない!」
行き止まりの通路だが、その壁だけは他の壁に比べて損傷がある。
いかにも【更に続いています】といっているのだ。
グラスマンは大きく息を吸い込むと、助走をつけて体当たり!
見事にその壁を粉砕したのだった。
「地底湖だ!」
壁を粉砕して向こう側に転がったグラスマン。
そして通路から覗き込むアゼルが驚きの声を上げた。
通路の向こう側は開けた空間となっており、十数メートルの岸の向こうには広大な地底湖が広がっていたのだった。
最奥の空間に入る三人がまず見つけたのは、岸に横たわる大きな魚。
先ほど岸に上がったばかりなのだろうか?まだピクピクと動いていている。
不思議そうに見るグラスマンとアゼル。
コルムは地底湖を覗き込んでいた。
初めて見る地底湖の珍しさもあったが、湖底に光る何かが視界の隅に映ったから。
揺らめく湖面を不思議そうに見つめるコルム。
その小さな波の間から突然何かが飛び出してきた。
「キャァアア!」
突然の事に回避も出来ず、湖から伸びてきた何本もの触手に搦め獲られてしまった。
触手は不気味な発光をしてぬめりを強調させている。
コルムの太ももや腕、首や腰に巻きつき四肢を封じて、湖に引きずり込もうとする!
?/?と表記するなら一辺に投下してくれ
他の投下人が、あんたのレスの間に書き込むのをためらうだろ?
【突撃!隣の晩御飯】
地底湖に響く絹を裂くようなコルムの悲鳴。
辺りを探索していたグラスマンは恐るべき速さで駆けつけた。
「コルム!力を入れろ!」
「は、はいっ!」
湖に引きずり込まれないよう力を込めるコルム。
そしてグラスマンは剣を抜き、上段から振り下ろす!
が、伸縮性に飛んでいる上、粘液に覆われている触手は伸びこそすれど断ち切られはしなかった。
達人が剣を振るえば、喩えこの触手といえども両断す事は出来ただろう。
しかしグラスマンは剣術が下手糞で、さほど鍛錬もせずに徒手空拳に頼ってきた。
そのツケがこのような形で現れるとは!
己の不甲斐なさに奥歯がギリリと音を立てる。
だが今はそんな場合ではない。
予想はしていたが、コルムが力なく倒れようとしているのだから。
「糞!やっぱりな!」
このての触手には大概毒や麻痺の効果があるものだ。
装備の関係上、地肌の露出が多いコルムはまともにその効果を受ける。
剣と盾を投げ捨て、コルムの胴に手を回し引き摺り込まれるのを防ぐ。
グラスマンにも触手は這いよってきたが、鉄の鎧を着込んでいる為、麻痺攻撃を受けることはなかった。
だが、このまま引き合いを続けていても負けることはあっても勝てることはない。
相手は触手を離せばすむのだが、こちらはコルムの体力の問題もある。
「アゼル!」
叫ぶグラスマンだが、既にアゼルは行動に移っていた。
弓を引き、じっと湖面に狙いをつけているのだ。
そして・・・放つ!
矢は勢い良く湖に沈んでいく。
湖底は暗く、当たったかもわからないが数瞬後・・・。
コルムに巻き付いていた触手が飛び上がるように離れて湖に戻っていく。
「でかした!」
「いや!手ごたえはあったけど急所じゃなかったっぽい。来ます!」
突然終わった引っ張りあいの為、コルムを抱えた為転がるグラスマン。
アゼルは真っ暗な湖底が見えていたのだろうか?
いまだ警戒を解かずに二の矢を湖へと放つ。
次の瞬間、湖面が大きく膨らんだかと思うと、何か大きな塊が飛び出してきた。
「任せろ!!」
麻痺したコルムを入り口付近に寝かすと、飛び出てきた何かに向かってグラスマンが飛び出す。
湖面高くに飛び出したそれは、重力の助けも得て勢い良くグラスマンに飛び掛った。
大きく息を吸い込み、竜鱗の呼吸を発動。
身体硬化と持ち前の身体能力でがっちりと落ちてきたそれを受け止めた。
【突撃!隣の晩御飯】
湖面から飛び出てきたそれをクロスガードでがっちり受け止めるグラスマン。
暗い地下空間の中、ウィル・オー・ウィスプの光に照らし出されるそれはまるでタペストリーの一部のようだった。
身体硬化しているとはいえ、上から圧し掛かるそれを抱えあげていることは流石に出来ない。
体捌きを以ってそれを投げ飛ばそうとするグラスマンは・・・すぐ横でショートソードを抜くアゼルは・・・
光に照らされたそれを見た。
全長2mほどの異形の姿。
大きな渦を巻き、突起のある殻を背負い、多数の節足脚、巨大な鋏を一対。
そして殻からでている一目で人とは違うといえるが、人型をしている身体。
人型部分の頭とわき腹にはアゼルの矢が深々と突き刺さっている。
馬と人が合成させた姿がケンタウロスならば、これはヤドカリと人が合成した姿だ。
「「ゴ、ゴロモン!?」」
「あ、隊長?」
グラスマンとアゼルが驚きの声を上げるが、ゴロモンと呼ばれたそれも驚きの声を上げていた。
しかし時は止まってくれない。
驚きのあまり体捌きを謝り、息を吐き出してしまったグラスマンはゴロモンの重さを支えきれず倒れてしまった。
「・・・あんたら何やってんの?」
地底空間入り口、すなわち遺跡の終点にやってきたバルがランタンで照らしながら目を点にしていた。
この場面だけ見れば、ゴロモンがグラスマンを押し倒しているようにも見えるのだ。
「えっと・・・ゴロモンが隊長を押し倒してるとこ。」
「人の趣味や恋愛にとやかく言う来はないけどさぁ・・・」
「ち、ちがーう!ゴロモン!早くどけ!」
アゼルが説明するが、嘘は言っていない。呆れるバル。
グラスマンの抗議の声が虚しく響くのだった。
「で、お前なんでこんな所にいるんだ?別荘建てるからって長期休暇とったんじゃなかったのか?」
ようやく一息つき、グラスマンが不機嫌そうにゴロモンに尋ねる。
コルムはバルに粘液を洗い流してもらい、アゼルの応急薬によって麻痺状態から回復していた。
まだ少し痺れが残るものの、不思議そうなゴロモンを見ている。
この二人は今回が初対面だったのだ。
「そう、俺、別荘建てた。湖の中。
晩飯食べてたら急に隊長、入ってきた。飯の邪魔する奴悪い奴。強盗かと思って様子見てた。」
ゴロモンは半水棲亜人で、地下水脈を辿り地底湖を見つけた。
そしてここに別荘を建てようとにしようと休暇をとっていたのだ。
岸に打ち上げられていた魚は晩御飯だったというわけだ。
ゴロモン視点から見ると突然何者かが壁を突き破って侵入してきたというわけだった。
「・・・そうか。晩飯中邪魔しちゃって悪かったな・・・」
どっと疲れるグラスマンだが、悪い事は続くものだ。
頬をかきながらバルが口を開く。
「えっと、隊長?あれから色々調べてみたんだけどさ。
どうやらこの遺跡はジュヌヴィエーヴのダンジョン試作品みたいで・・・」
この遺跡は何らかの為に作られたものではなく、単にダンジョンそのものの習作だったのだ。
ダンジョンの構造や仕掛けの作動テストの為に作られたダンジョン。
当然部屋もないわけだし、遺跡そのものは歴史的価値はあるとしても、遺物もあるわけもないのだった。
「・・・あ、あの、まあいい経験になりましたし・・・。」
がっくりとうなだれるグラスマンを何とか慰めようとコルムが声をかけるのだが、他三人の笑い声にかき消されてしまうのであった。
【突撃!隣の晩御飯】
【名前】ゴロモン
【年齢】35
【性別】雄
【職業】第六遊撃隊隊員
【魔法・特技】 液体の支配・触手・電撃・再生
【装備・持ち物】 なし
【身長・体重】 2m*2mほど・200キロ。身体を構成する水の量により大きさ重さ共に変動する
【容姿の特徴、風貌】ヤドカリに人間の上半身が生えているような外見。
【性格】 結構素朴
【趣味】食べる事
【人生のモットー】食う・寝る・戦う
【自分の恋愛観】子宮があれば種族問わず
【一言・その他】
半水棲亜人種マルムンド族。
ヤドカリに人間の胴体が生えているような外見。
しかし人間部分は魔法動作を行なう為に発生した擬態であり、生命活動には影響がない。
本体の頭は人間部分の下腹部にある。
人間部分は緑色でぶつぶつが多く、鰓や鰭がある。表情はなし。
この生物ヤドカリから進化したように見えるが、実は海月から進化した生き物。
身体の90%が液体で出来ている。
ヤドカリ部分は液体に高圧をかけているためかなり硬い。
そのはさみや殻の攻撃・防御力はかなり高いといえる。
反面人間部分は柔らかく、軟体生物の様相を呈している。
液体支配能力と、海棲生物の特徴をいくつか併せ持つ。
その代表的なモノは電気鰻の電撃であったり、頭(人間部分の下腹部に当たる)からの神経毒を持つ複数の触手攻撃であったりする。
また、基本的に下等動物なので再生力も高い。
ちなみに電撃は再生能力の高さを当て込んだ半自爆技。
体のつくりからして、後方が完全な死角になる。
陸上活動も可能だが、乾燥状態では余り長時間は耐えられない。
種族としては大河・海岸岩場などに集落を作り、人間と交易ができる程度の知能知性、社会性を持っている。
基本は蛮族。なのでゴロモンのように兵として軍に入るのは稀なケース。
戦闘能力は高いが、当然のように規格化などできるはずも無く、第六遊撃隊にまわされる。
ちなみにゴロモンと言う名前は仮名。
本来の名前は人間には発声不能な為、グラスマンがそれっぽい発音を宛てた。
やっと終わりかな?
じゃ、SS書き師は続きを頼むわ
ゴロモン乙でした、GJ!
騎士のメンバーはキャラ作って早々に自分たちのアナザーストーリー見れてちょっと裏山w
では他の職人さん達を待つとするよ
+ +
∧_∧ +
(0゚・∀・) ワクワクテカテカ
(0゚∪ ∪ +
と__)__)+
【第一章Aパート】
「もぅ…うんざりです!全く、なんで私がこんな目に会わなきゃいけないんですか!」
今まで散々な目にあってきた彼女だが、今回の一件に関しては怒りを抑えきれないようだ。
ブチブチと愚痴を垂れながら、宛もなく彼女は用水路をどぶねずみのように歩き回っていた。
前日の戦闘にて、不幸にもこの用水路に落ちてしまい。出られないのだ。
水路なのだから、きっと出口はある!
そう信じて半日以上歩いたが、結果はネズミ、ゴキブリ等の大群と厄介なアレに襲われるぐらいだ。
疲れを感じたのか、彼女はあまり汚れていない所に腰を下ろした。
気が付けばまともな食事と睡眠を3日以上とっていない、それと毎夜の如く現れる敵との戦闘。
流石の彼女でも、限界がある。
「…………すぅ………駄目だ!」
否応なしに襲いかかる睡魔を追い払い気を保つ。
だが、抵抗も虚しく瞼はゆっくりと締まる。
その瞬間、大量の汚水が上から流れ落ち、彼女を起こした。
「……………あ……あ……」
汚水に汚れた両手を見ながら、彼女は絶望にも似た表情を浮かべる。
しかし、悪臭の中に混じった食欲をそそる匂いに、彼女の表情は希望に満ち溢れる。
恐る恐る両手の汚水を舐める。
ゴロモン乙
グラスマンのセリフ一つからキャラ産み出した根性に乾杯
ちょwクロww
弱気な名前とは裏腹な強気な展開にwktkだ
「………美味い」
多少、ゴミの味はするが此は鳥のスープだ。
「…………まさか!」
上を見上げると、そこにはまるで切り取られた夜空が見える。
すぐに辺りを見回すと、やはり、そこにソレはあった。
鼻息を荒立て、彼女は梯子を伝い這い上がり、鉄格子を力ずくで開けた。
地上に出た彼女はすぐ、肺に溜まった腐った空気を吐き出すかのように大きく深呼吸をした。
「……まるでどぶねずみね」
背後からの声に彼女は凍りついた。
ただ単に、驚いた訳ではない。
彼女は直感的に感じたのだ。背後にいる何者かの狂気に似た気味の悪い気配を
すぐに背負った大剣を抜き、構える。
「我名はアルテリオン・カタストロフ!その言葉、侮辱と判断する」
月明かりに照らされ、シルエットが明らかになっていく中、猫耳の騎士はそう名乗った。
その意外な反応に驚いた彼女だが、悪びれもせず、薄ら笑いを浮かべる。
「名乗って頂けて光栄よアルテリオンさん。でも、私は正直な感想をいったまでよ…あぁ、私は布津野珠美……これで満足?」
これが、布津野珠美とアルテリオンの初めの邂逅であった。
布津野ナツカシス
凄い組み合わせだw
[闇の住人]
薄汚れた路地裏に二人の男の姿があった。
一人は前髪の長い青年。
もう一人は40代前後の男。
「悪いな・・・。
こっちも仕事なんだ。」
スーツを着た青年の長い前髪の間から真っ赤な眼が光る。
青年は手に握っているサイレンサー付の銃を男の額ににつきつけた。
「たたっ、頼む!!
命だけは勘弁してくれ!!」
「・・・スマン。」
プシュッ。
青年の顔に返り血がかかる。
「・・・・。」
青年は死体の首をナイフで切り取り始めた。
【屋敷】
「コイツで間違いないな?」
雇い主らしき男の目の前に先程の首を差し出す。
「オーケー、オーケー。
ご苦労様。
相変わらず仕事が早いね、レイド君。
これ約束の金ね。」
そう、この青年こそがレイド。
後に魔法学園の教師になる人物である。
「次は・・・誰だ?」
「ハイハイ、ちょっと待ってね〜。」
男はゴツい感じの男が写った写真を差し出す。
「次はコイツを始末して欲しいなあ。
名前はダイラン。
確か炎と氷の魔法を使う・・」
「説明は要らん。
どんな奴だろうが俺は負けないからな。」
「随分強気だね〜。
まあレイド君は悪魔から力を授かってるんだから強いに決まってるよね〜。
良いなあ、僕も欲s・・!!!」
「黙れ・・・!
それ以上俺の気に触れる事を言ったら、貴様の頭を吹き飛ばすぞ・・・!!」
レイドは男に向かって本気の殺意を向けていた。
「ご・・ゴメン、ゴメン。
じ、冗談だよ冗談。」
「・・・フンッ。
金の用意を忘れるなよ。
3日以内に首を持って来てやる。」
レイドは写真と金を受け取り屋敷から出て行った。
ロックが操る巨大鉄球の攻撃でも。
リリアーナの撃つロックバスターでも。
絶対者の弱点らしい水晶玉に、傷一つ付けることができなかった。
それでも諦めずに2人は攻撃を繰り返している。
お〜い。私の出番はどこにあるんだ〜?
「・・2人とも、何をしているの?
この水晶球は私たちには壊せないって、言っておいたはずだけど」
少しだけ呆れたような声で、メラルが話しかけた。
「それは違うぜメラル!少しでも可能性があれば、未来を信じて突き進む!
その漢の熱い心で、未来に進む道は開けるんだ!」
「え〜っとね、別にメラルの言葉を信じなかった訳じゃないの。
ただ、先生たちが頑張っているから、私たちにも何か出来る事はないかなって・・・
そ、そうだわ!何か水晶球を壊せそうなアイテムは見つかった?」
ひたすら熱血するロックと、気まずくなったのか話を逸らそうとするリリアーナ。
熱血、冷静、中間、とこの3人はなかなか性格的にバランスが取れているな。うむ。
「アイテムは見つからなかったけど、水晶球を壊せそうな人を見つけたわ。
ヴァンパイアの彼なら、きっとできるはずよ」
リリアーナとロックの視線がこちらを向いた。
なんだ、その今始めて気づきました、みたいな顔は。
「また会ったね、諸君。私はヴァンエレン・ブランカート。
高貴にして偉大なる闇の支配者たる、吸血鬼だ。
今回は特別に、私が君たちの手助けをしてあげる事になったのだよ。光栄に思いたまえ」
普段から練習しておいた、威厳の出そうなポーズ付きで自己紹介する。
よし、一度も間違わずに言えたぞ。
「そうか!吸血鬼なら闇の一族だから、絶対者の力の元を破壊できるんだな!」
「すごいじゃない、メラル!どうやって吸血鬼を説得したの?!
やっぱり使い魔のコウモリを人質に取ったの?」
あんな極悪な事を考えるのは、あなたぐらいです。
しかし2人共、私の熱演にもまるで威厳を感じていないようだ。
あれ?おかしいな・・目から心の汗が流れてくるぞ・・・
「よし!じゃあ俺たちの命、あんたに預けたぜ!
ガツンと一発ぶち壊して、絶対者を倒してくれ!」
ロックがさわやかに私に全てを託してくれる。
本来なら敵対関係の相手に、なぜ命を預けると簡単に言えるのだ?
なんという甘い考え方だ。
これはこの人間たちの将来のために、考え方を矯正してやらなければなるまい。
「もちろん私もそのつもりだ。
ただ、今の私は大変お腹が空いていて、あまり力が出ない。
君たちの中の誰かが血を分けてくれれば、すぐにでも壊してやるのだが・・・
そうそう。この事はレイドも了承済みだから、安心してくれたまえ」
私の言葉に人間たちは顔を見合わせた。
そう。本来、人間は我々吸血鬼の餌であり、我々の顔色を伺いながら生きていく弱虫!
私はようやく人間たちとの『正常な関係』を取り戻すことに成功したのだ!
「・・・本当にレイド先生が、そんな事を了承したの?」
明らかに疑いの眼差しで、メラルが疑問を口にした。
もちろんレイドがそんな事を言うわけがない。
しかし!それを確かめる、時間も方法も無いはず!ここは押しの一手だ!
「本当に決まってるじゃないですか、やだなぁ。はははは」
メラルの信用度0パーセントの視線が痛い。
やっぱり泣き落とし作戦にすべきだった・・・
「分かったわ。私の血をあげる。
確かあなたに血を吸われても、吸血鬼にはならないのよね?
その代わり、水晶球をちゃんと壊してレイド先生たちを助けてあげて」
思い切ったようにリリアーナが腕を差し出してきた。
おおぉーーーっ!作戦大成功かっ?!
「女の子にそんな事をさせるわけには行かない。
俺の血を吸ってくれ。別に男でも女でも、血ならいいんだろ?」
なんとロックも腕を差し出してきたぞ!
そりゃもう、血ならえり好みなんかしませんよ〜。さぁ〜腹一杯飲むぞ〜!!
「ロック。あなたはさっきからの戦いで疲れてるでしょ?
ここは私に任せて欲しいの。
そりゃ私は頼りないかもしれないけど・・・」
「目の前で女の子に血を出させて、自分は何もしないなんて、俺の信念が許さないんだ。
だからリリアーナ。俺に任せてくれ」
お?なんだこの展開は?
お互い自分が血を提供すると言って聞かず譲らず。
2人の痴話喧嘩(?)を聞いているとなんだかイライラしてきたぞ・・・
「えぇい!やかましいわぁぁあ!!」
勢いよく叫んで、2人の間にちゃぶ台返しのポーズで割って入った。
「黙って聞いていれば何をごちゃごちゃと!
いいか!社会に出れば周りは全て自分の敵!
友達や仲間などは、しょせん夢!幻!妄想にすぎん!
他人とは、利用するか利用されるかの関係なのだぁあ!」
人間たちの偽善ぶりごっこを見せられたからか、他に何か理由があるのか。
訳もなく怒りの感情がこみ上げてきた。
私は絶対者の命の源である、水晶球をにらみつける。
この理不尽な怒り!すべてお前にぶつけてやるぞ!
「うおぉおぉぉおおおぉおぉぉおお!!」
吠えながら、全力ドロップキックを叩き込むべく、水晶球目掛けて疾走する!
後五歩・・後三歩・・後一歩・・・ここだ!
まさに私が飛び上がろうとしたその時、水晶球は白く輝き、時間が停止した。
いや、実際に時間が止まったわけではない。
その証拠に考えることができる。
周囲から音が消え、体が動かせないだけなのだ。
だが、今や水晶球は山のように大きくなり、私を押しつぶそうとしていた。
それだけではない。水晶が放出する聖なる光は、私の体を消し去ろうとしていた!
寿命を捨て去った代償は、聖なる力による消滅という弱点。
なぜだ?!ロックやリリアーナが近づいても、何も起きなかったではないか!
答えは1つしかない。
この水晶球を壊せる存在。魔の属性を持つ者に反応するトラップが仕掛けてあったのだ。
絶対者が自分の命を守るため、この程度の準備をするのは当たり前ではないか!
そ、そうだ!もしかしてロック達が助けてくれはしないか?!
淡い期待を抱いて、メラルやロックやリリアーナの方に視線をむけた。
人間達も同じように固まってしまったのか、ピクリとも動かなかった。
それでも、こちらを見ている人間達の表情に驚いた。
それは私を信頼している目だった。
それは私の身を心配する顔だった。
まるで昔からの仲間を見守るように、こちらを応援しているのだ。
以前敵だった相手を応援する?普通、魔物には考えられないことだ。
馬鹿なことを。と思う反面、信頼と心配をうれしくも思った。
体に力がみなぎってくるのがわかる。
それは吸血時に得る力とは違うものだったが、なぜか心地よいものだった。
これが人間達の持つ強さの秘密なのだろうか?
互いを信じ、仲間を助け合う事が?
水晶球からの圧力は、もう全く感じなかった。
今ならできる!絶対者を倒し、元の世界に帰るのだ!
私の体はひらりと舞い上がり、矢のような蹴りを 目標に向かって放った。
一撃を受けた水晶は粉々に砕け散り、破片は空に昇っていく。
まるで夜空へと星が帰っていくように。
気がつけば、私はティーカップを片手に夜空を見つめていた。
雲一つない空から、月や星がこちらを見下ろしている。
あれ?!ここは絶対者の領域ではなかったのか?!
落ち着け落ち着け。今までの自分を思い出すのだ・・・
そうだ。確か私は、今日もこの学園から脱出する方法を探していたのだ。
そしていつもどおりそんなものは見つからず、勝手に占拠した部屋でふて寝しようとしていた。
・・夢か。・・ずいぶんリアルな夢だったな・・・
吸血鬼も夢を見る事はある。そんな所は人間と変わらない。
たぶん閉じられた場所から出たいという欲求が、あんな夢を見せたのだろう。
冷静に考えれば、あんな事が現実に起こるはずがないのだ。
なぜか少し落胆しながら、すっかり冷めている紅茶を飲もうとして
「あ〜ら、こんな所にいたのね。探したわよ〜」
後ろからの声に驚き、盛大に飲み込んだ紅茶を吹き出した。
「な、な、な・・・なぜお前がここにいるのだ!
だいたい戸には鍵が掛けてあっただろう!不法侵入だ不法侵入!」
「やーん。闇の貴族のあなたが、そんな細かいこと気にしちゃダメよ(はぁと)」
声の主、アルナワーズは獲物を見つけた猫のようにニタリと笑った。
「実はね。今度学園で武道大会が開かれることになったの。
そこであなたに、模範試合に出場して欲しいのよ〜」
「断る。人間となれ合う気はない」
そんなお遊びをしている暇はない。
学園に縛り付けられた我が身を、速く解放しなければならないのだぞ、まったく。
「そう・・・確かにそうね・・・
模範試合で勝てたら、学園長が解放のため尽力してくれるはずだったけど
そんな報酬で、ヴァンパイアを動かせるはずないものね・・・」
「まあしばらくは暇だから、格の違いを見せてやるのも悪くないな。
今回は特別に、嫌々ながら参加してやろう」
なんて破格の条件!そんな大事なことは先に言ってくれ!
アルナワーズが差し出した参加用紙に、大急ぎでサインする。
気が変わったなどと言い出されては困るしな。
「はい。これであなたの参加が正式に認められたわよ〜
私はこの書類を提出しに行ってくるわね」
速く行け行け速く行け。
人間の子供が相手なら、さすがに1対1でも遅れはとらない。
武道大会の日は、私の解放を意味する素晴らしい日になるのだ!
戸を開けた所で、アルナワーズは一度こちらを見た。
「ちなみに、対戦相手はレイド先生。
あなたが負けたら、死霊術課の生徒のモルモットになる契約だから、がんばってねぇ(はぁと)」
バタン。
閉まった戸を眺めつつ、しばらく心の中で今の言葉の意味を考える。
対戦相手はレイド?そして負けたらモルモット?!
「ちょっと待てぇぇえ!それじゃ公開処刑と変わらんだろうがぁ!」
慌てて外に飛び出すと、角を曲がって階段に向かう、アルナワーズの姿がちらりと見えた。
よし!十分追いつける距離だ!
「やらせはせん!やらせはせんぞぉぉおおお!!」
全力で私はアルナワーズの後を追いかけた。
提出前に参加用紙を押さえればこちらのものだ!ふはははは!!
ヴァンが走り去ってからしばらくして、戸の陰からアルナワーズが顔をだした。
ヴァンが追いかけたのは幻で、本人はここに隠れていたのだ。
「あらあら、焦っちゃって。
あんなに慌てなくても、もう参加は決まってるのにね〜」
魔法の参加用紙は、契約書の意味合いも持つ。
ヴァンがサインしたその時に、すでに勝敗は決まっていたのだ。
「ん。何かしら?」
別の場所に行こうとしたアルナワーズは、ヴァンのいた場所に光る物が落ちているのに気づいた。
好奇心に導かれるまま近寄り、うっかり触らないよう注意しながら、持ち上げる。
それは、小さな水晶のかけらだった。
吸血鬼にも、そのすみかにもふさわしくない聖なる光を放ちながら、
アルナワーズのハンカチの上で、星のかけらのように輝いている。
「ふぅん。なんだか面白い物を持ってたのねぇ〜」
吸血鬼と聖なる水晶にどんな関係があるのか。
今度会った時に問いつめてみれば、案外面白い話が聞けるかもしれない。
アルナワーズは鼻歌まじりの上機嫌で、水晶のかけらをポケットに入れ、窓の外を見た。
見えたのは、夜空のどこかで誰かが水晶玉を叩き割ったみたいな、満天の星空だった。
>>534 超GJ!!
好きなシリーズのリアルタイム投下に立ち会えたのなんて初めてだ。
キャラの特徴もよく掴めててリアリティがあったよ、すごく良かったし面白かった。
次回作があるのかどうかはわからないけど、もし機会があったらまたここで読めるのを楽しみにしてる。
乙でした。
途中送信orz
>>524 新シリーズ楽しみにしてる
最終話でのキャラと出典スレです。引き続き各コテの皆様に感謝を。
ヴァンエレン・ブランカート【魔法少女】
アルナワーズ・アル・アジフ【魔法少女】
メラル【魔法少女】
ロック【魔法少女】
リリアーナ【魔法少女】
このキャラはこんな事言わない!しない!等の苦情を頂ければ、脳内データを変換します。
それから ◆83283JSjbUさん、勝手にネタを使ってしまいごめんなさい。
思いつくまま書いてしまったorz
またネタを思いつければ、何か書くかもしれません。思いつければ・・・
>537
GJ!
そう繋げてきたかあ!と言う感じで楽しませてもらいました。
ありがとう!
また何か思いつくことを期待しています。
追伸
ドズル中将ネタにしてやられましたw
釣られなくていい
540 :
名無しになりきれ:2007/09/04(火) 21:31:16 O
期待age
【バーバリアンズ】
ポロロッカで仲間になったルゥが隊員に顔見世をしていたある日。
砂漠の蛮族ムルム族のルゥと水棲亜人種の蛮族マルムンド族のゴロモン。
本来出合うはずのない二人が運命の悪戯により今出会ってしまった。
「・・・・・」
「・・・・・」
まじまじと見詰め合う二人。
そこに言葉はない。
しばしの沈黙の後、動いたのはゴロモンだった。
「・・・食うか?」
「食うっす!ゴチになるっすよ!」
どこからか取り出した大きな魚を受け取り、齧り付くルゥ。
「うーん、蛮族同士通ずるモノがあったようだな。」
様子を見ながら安堵の息をつくグラスマン。
それとは裏腹に小さく舌打ちをする他のメンバー達。
蛮族同士の対面に必ず戦いになるだろうと第六遊撃隊のメンバーは密かに賭けをしていたのだった。
「プハー!うまかったっす!」
「お前の食いっぷり、イイ。」
「見たところ、強いっすね?」
「俺、マルムンドの戦士。強い。そして弱さも知っている。」
「上等!」
周りから見ると会話が成立しているのかどうかもわからないやり取りの後、それは起こった。
**パァンッッ!!**
弾ける様な音が響き渡る。
直後、ゴロモンの頭部が粉々になって飛び散った。
恐るべき速さのバトルハンマーの一撃が炸裂したのだ。
まさに一撃必殺。
・・・それが人間相手ならば・・・
ゴロモンの人間部分は魔法動作を行う為の擬態でしかない。
それが切り取られようと潰されようと生命活動には支障がないのだ。
振りぬいた体制のルゥに襲い掛かるゴロモンの巨大な挟みの一撃。
横薙ぎされた一撃はルゥを吹き飛ばすに十分な威力を持っていた。
頭を潰し勝っていたと思っていたところの一撃をまともに喰らい吹き飛んだ。
ゴロモンもこれで倒せたなどとは思っていない。
追撃するべく、節足を忙しく動かし襲い掛かる。
「たいちょー、どう見ます?」
「うん、スピードやバネはルゥ。パワーは互角。特殊能力はゴロモン。」
「頭潰されてるし、肉弾戦だとルゥですかー。」
「そうだな。ゴロモンはフィールド効果によって強さの幅が大きいしな。
長期戦に持ち込まれて頭が再生すると魔法が使えるようになるから代わってくるかもしれん。」
そんな外野の話を他所に、ルゥとゴロモンの戦いは続く。
閉じれば巨大なハンマーと化すゴロモンの鋏。
それを容赦なく叩き込む!
だがルゥの素早く体勢を立て直し、なんと片手で受け止めたのだ。
ギリギリと力比べをする中、余った手でハンマーを叩き付ける。
片方の鋏で受けるが、ゴロモンの体勢が大きく傾いた。
ゴロモンは一見して甲殻類のような身体だが、その実海月の一種である。
降格部分は内部の水に圧力をかけて硬くしているのだ。
剣や矢に対しては強い耐性を持つが、ハンマーのように衝撃を中に伝えるものには弱い。
水は固体より振動を伝えやすいのだ。
とはいえ、生半可な衝撃が効くような体ではない。
ルゥの一撃が如何に凄まじいかを物語っているといえよう。
体勢の崩れたゴロモンに更に一撃を加えようと振りかぶったルゥだったが、恐るべき速さで距離をとる。
戦いの中で培われた第六感がその危機を伝えたのだ。
ゴロモンの下腹部から・・・正確に言うと本体の口からだが・・・
触手がルゥを追って伸びてくる。
「い・・・いやぁああああ!!!」
触手を見てルゥは叫びながら近くにあった木に飛び登り距離をとる。
「おい、テメェなにやってんだ!?」
「いや、あれは無理っす!キモイっす!生理的に駄目っす!!」
戦いを見ていたムタがルゥに檄を飛ばすが、ルゥは涙目で首を振るのみ。
全身に鳥肌がたつほど嫌悪感に襲われていたのだ。
それもそのはず。
ルゥが育った砂漠ではただいるだけで水分が奪われていく。
そこで触手のようなモノを出そうものなら即座に水分が奪われ死に絶える。
故に砂漠にはこのような生命体はいないのだ。
ヌタヌタと粘液にまみれ蠢く内臓が如き触手は普通の人間が見ても生理的に嫌悪感を引き起こす。
それが砂漠で育ち始めて見た、そしてそれが自分を襲ってきたとなれば逃げたくなるのも当たり前だろう。
「おい、お前それでも戦士かよ?逃げるのか?」
「ううぅ・・・」
木の上でそんなやり取りをしている中、木の下ではゴロモンが機を窺っていた。
殆ど頭も再生し、魔法も使えるようになった。
勝負どころと、ゴロモンは巨大な鋏でルゥのいる木を切り倒しにかかっているのだ。
「むがあぁぁあ!」
メキメキと音を立てながら倒れだす木の上で、ルゥは一つの決意を固めた。
叫び声と共に跳躍。
着地したのはゴロモンの背負う渦巻状の貝殻の上。
そこら中に突起がでているのでつかまるには不自由しない。
「や、やっぱりここには届かないっすね!?」
激しく動いて振り落とそうとするゴロモンにルゥが不敵な笑みを浮かべながら確認。
そして殻の部分にハンマーを叩き込む。
一撃、ニ撃・・・
鋏は届かず、視線も通らないので触手も上手く攻撃できない。
もはや打つ手なし・・・
と言うわけではない。
「・・・?降参するっすか?」
動きを止めたゴロモンに首をかしげながら声をかけるが、それがルゥの最後の言葉となった。
突然襲い来る強力な電撃。
ゴロモンの最後の切り札だ。
バチバチバチと言う音が響き、ゴロモンとルゥは閃光に包まれる。
そして暫くした後。
微妙にいいにおいを放ちながら黒焦げになった二人が倒れて動かなくなっていた。
「なんだこりゃ?ったくしゃあねえな。今回はノーカンにしておいてやるぜ」
溜息をつきながらムタが首を振って戦いの終わりを告げた。
ゴロモンGJ
次も期待してる
GJ!
ゴロモン騎士スレにはいかないんだろうか
普通に参加してもいけそうな
【第二章 月を見る者、星を見る者】
名乗った布津野はゆっくりと語り始めた。
己の身に何が起こっているか、それの原因はエグゼムと言うウィルスだと、布津野はアルテリオンをAクラスのエグゼムと仮定して語る。
もちろん、アルテリオンのは呪いなので無関係である。
無論、彼女は訂正しようとしたが熱弁する布津野を見るとその気も失せてしまう。
そして、布津野は続ける。
これは人類に与えられた試練だと、死を乗り越え新しい扉を開くのだと、だから私はその為に全人類に試練を与えると
「…だから、貴女にも協力して欲しいの」
一頻り語ったあと、布津野はアルテリオンに誘いをかける。
だか、布津野の頼みとは裏腹にアルテリオンは怒りで顔を歪ませている。
「試練を乗り越えられない人々は……どうするんですか」
吹き出している怒りを必死で抑えつつ、訪ねる。
「そんな劣等種の生き死になんて知らないわ…あと、貴女が一昨日殺した低脳なのもね」
その答えを聞いた瞬間、アルテリオンの何が音を立てて切れた。
吹き出す怒りに身を任せ彼女は剣を振りかざす。
「……貴様は死ぬべきだ!」
斬りかかるアルテリオンを冷ややかな目で見つつ、布津野は返す。
「それが進化よ!」
結果は一目瞭然だった。
量産機のBEにさえ傷を付けられぬ大剣で最強の防御力を持つ布津野を倒せるわけがない。
木の枝だけで戦車に戦いを挑むようなものだ。
廃墟にて血だるまになり血に伏せるアルテリオンを布津野はまるで壊れた玩具を見るような冷徹な視線を当てていた。
「……あれだけ言ってこれだけなの?」
なんの感情もない言葉を吐きつけるとそれに反応して、アルテリオンはまた立ち上がろうとする。
しかし、悲鳴を上げている体は血で濡れた地面に虚しく滑る。
初めはこの光景を見る度に布津野のサディズムを刺激したが、それにも飽きた。
止めを刺すべく、布津野の髪はアルテリオンの首に縛りつき掲げる。
力尽きたのかアルテリオンは無抵抗だった。
いや、その表情は苦しみに歪むどころか、あの時の表情のままだ。
試しに力を加えてもそのままだ。
それを見た布津野の中で、また興味が再び湧きあがったのは言うまでもない。
髪をほどきアルテリオンを解放する。
再び血に伏せるアルテリオンを尻目に布津野は立ち去る。
「強くなりなさい。私を殺したいならね…」
去り際に布津野はアルテリオンにそう言い残し、闇へと消えた。
一人廃墟に残されたアルテリオンは芋虫のように這って布津野を追うとするが、次第に意識が遠退き、そして、気を失った。
一つ謝ることがある。俺のSSはあと14章もあるぞ。
だから、ゴロモンさんが忠告されたように一気に行けそうにない。
長くてごめんなさい。
gdgdにならないよう頑張るから!俺頑張るから!大目にみて
えとタイトルにはちゃんと意味があって単にジョジョをパクっただけじゃないよ。
>>547 ありがとう、救われる。
布津野さんはかなりキャラ立ってたからやりやすかったよ。
でも、しばらくは表に出ないかも
>>549 もともと複数作品同時進行の呼び掛けで始まったのだし、気にすることねえべ。
連載しているから他が投下できないなんて、的外れもいいとこなイチャモンだから気にしなくていい。
>>549 GJ!そして乙
長編の方が読みごたえあって良いよ
細かいことは気にせず、楽しんで投下してホスイ
[新しい道]
あれから2日間、レイドはダイランの行動パターンを観察していた。
(今日の夜だな……。
見た所、大した実力者でもなさそうだ…。)
夜になるとレイドはライフルを持参し、ビルの上に立っていた。
標的はもちろんダイラン。
スコープを覗き込み、ダイランの頭に標準を合わせる。
引き金を引こうとした瞬間―――
「これこれ若いの。
何をしておるんじゃ?
お主、血の匂いがスゴいぞ。」
レイドの背後で老人の声が聞こえた。
「!!?……じいさんが何の用だ?
人の仕事の邪魔をしないでいただきたい。」
(こいつ…ただの爺さんじゃねぇな。
声をかけられるまで全く気付かなかった…。)
「死にたくなかったらさっさと失せろ。
仕事の邪魔だ。」
「ホッホッホ。
口は達者なようじゃな。
しかし、お主じゃ儂を殺せんよ。
まだまだ力不足じゃからのぅ。」
「何だと?だったら試してみるか?」
レイドはライフルを一旦置くと老人を睨み付けた。
「グラビティ!」
レイドは召喚した銃を老人に向ける。
「ボコ殴りにしてやるっ…ガハッッ!?」
鈍い音と衝撃が体を貫き、レイドは地面に倒れこんだ。
(攻撃が見えないだと!?馬鹿な!)
「ほれほれ、どうした若いの?
そんなもんかお主の全力は?」
「このクソジジイがぁぁ!?
死にやがれ!!
クレイジーストーム!!!」
「ほほう。大したもんじゃ。
だが……ブラックホール。」
レイドの放った攻撃は老人のブラックホールに完全に飲み込まれてしまった。
「なっ!!チッ……もう良い。
俺の敗けだ。殺せ。」
「随分と諦めが良いのう。
ならばその命、この老いぼれに託してみんか?」
「何だと?」
「儂はこれでも魔法学園の長を務めておるのじゃ。
そこで、お主を教員としてスカウトしようと思ってな。」
「???クックック…。
アーハッハッハ。
マジで言ってんのかよ?」
「マジもマジ。
大マジじゃよ。」
「そうか……。そうだな。
あと4年待ってくれ。
あと4年したら絶対にアンタの学園に教員として行ってやる。」
「4年の間に何をするんじゃ?」
「勉強。」
「ホッホッホ。面白い男じゃの。
ならば待とう。頑張って勉強するのじゃぞ。」
そう言って学園長は姿を消した。
レイドはライフルをケースに入れ、雇い主の元へ行った。
「お前との付き合いも今日で終わりだ。」
「え?何を言い出すんだいレイド君?
君は僕専属の殺しy…!」
「誰がお前の専属になるなんて言ったよ?
俺はこれから俺より強い人の元に就く。
じゃあな。」
「コイツっっっ!
誰でも良い!この男を始末しろ!!」
「やれやれ…。お前は馬鹿か?
俺の強さは此処の人間が一番よく知ってんだろ?
誰が俺に手を出すと思う?
素っ裸でライオンに立ち向かうようなもんだよ。
そんじゃ、バイバイ。」
それから4年後、レイドは無事に就職し、魔法学園の教師となる。
レイドの過去を知る者は学園内にはほとんど居ない……。
END。
>>553 GJ、そして乙
レイドの過去が垣間見えて面白かったぉ
乙
ちょっとあっさり気味だったかな
組織抜けるときに一悶着入れるとよかったかも
次回作に期待
【Another one 01】
目を醒ますとそこは薄暗い部屋だった。
「目を醒ますと」といっても、別に寝ていたわけではない。
気がつくとここに立っていた。
ここがどこなのかも全く分からない。
それは自分だけでなく、その部屋に居合わせた全員がそうであるとわかるまでそれほど時間は必要なかった。
窓一つない部屋。
部屋の真ん中にはテーブルとその上に何故か湯飲みが一つ。
頼りなさ気なランプが壁に掛かりかろうじてお互いの顔を見ることが出来る。
ラルヴァ・レイド・フリージア・キサラ・メラル・ロック・リリアーナ。
七人が顔を見合わせていると、唯一の出口である扉が勢い良く開いた。
「はぁ〜い!バトルフェアリー・アルナワーズよぉん!」
後光を背負って室内に入る褐色の女、アルナワーズの登場に全員が理解した。
ああ、これは幻術なんだ、と。
げんなりとした顔をする七人の反応を無視して、アルナワーズは話し始める。
「ようこそ!七人のミサキへ!早速勝利条件を説明始めるわね。
ルールは簡単、襲ってくるクレイゴーレムにその湯飲みを破壊されなければいいのよ。」
「アル・・・何のゲームか知らないけど・・・」
「駄目よ〜。私はバトルフェアリー・アルナワーズ。アルじゃないわ〜。
そしてあなた達は幻術に陥っているわけじゃないのよ?」
呆れながら説明を求めようとするリリアーナの言葉を遮り否定するアルナワーズ。
随分と楽しげな表情に訳も判らぬ一同に苛立ちが募り始める。
そんな表情を見て、爽やかな笑みを湛えながらアルナワーズは宣言をする。
「ほらほら、湯飲みを置きっぱなしでいいの?
スタートを宣言するわよ〜。では、クレイゴーレムたん、スタートよぉん。」
その言葉と共にアルナワーズの姿が半透明になっていき、やがて消えてしまった。
直後、扉を潜り部屋に飛び込んでいたのは2m程のクレイゴーレムだった。
【Another one 02】
「ちっ!訳がわからないが仕方がないな。」
「ですわね。」
幻術と判っていれば心落ち着けていれば実際に傷つく事はない。
が、僅かでも疑念が残れば肉体に影響が現れる。
それにアルナワーズ自身が【幻術ではない】と明言しているのだ。
アルナワーズは歪曲したり複雑な言い回しをすることはあっても、めったに嘘はつかないと言う事は周知の事実。
現実を幻術と錯覚し無抵抗に倒される愚は犯せない。
ならば訳は判らずとも、判っている範囲内で出来うる行動をするしかないのだ。
クレイゴーレム一体、このメンバーであれば然程恐れる相手ではない。
だが狭い部屋で暴れられると思わぬ不覚を取ることがある。
レイドが素早く湯飲みを手に取り、全員が戦闘体制をとる。
七人の反応のよさも意思を持たぬクレイゴーレムには何の警戒を持たせることもできない。
ただ決められた行動をするだけの土くれの人形。
それは素早い動きでラルヴァに襲い掛かる。
「ルーナ!」
ラルヴァ自身は格闘能力が無くとも、ラルヴァの召喚する使い魔は恐るべき格闘能力を持つ。
ルーナは虎の獣人でパワータイプ。
クレイゴーレムとまともに組み合っても当たり負けする事はない。
が、ラルヴァの呼びかけにも拘らず、ルーナは現れなかった。
結果ラルヴァはクレイゴーレムの一撃をまともに喰らい、壁を突き破って吹き飛んだ。
穴の開いた壁から流れ込むのは潮の匂い、そして船音。
ここにいたり、六人はこの部屋が船室である事を知った。
だが、それよりラルヴァが攻撃を喰らった事が六人に衝撃を与える。
その一瞬の隙は感情のないクレイゴーレムにとっては十分な隙だった。
次の標的は湯飲みを持つレイド。
「ちっ!!貴様ああ!!アナザーゲート!!!」
目の前で生徒を攻撃され血走った叫びと共に虚空に手を伸ばす。
レイドの武器は亜空間のパーソナルスペースに収納されているのだ。
そこからは様々な武器を用途に合わせて引き出せる。
蒸発させてもまだ飽き足らぬ勢いで武器をとろうとするが、手は虚しく空を掴むばかり。
「・・・!?」
その無防備なレイドの胸板にクレイゴーレムの拳が叩き込まれる。
ベキバキボキ・・・
肋骨が砕け、内臓がつぶれる音が響くが、それでもレイドは吹き飛ばされずにクレイゴーレムの腕を掴み動きを封じていた。
「くそ・・・マジかよ・・・」
血と共に吐き出る言葉。
「「うわああああああ!!」」
叫び声と共にクレイゴーレムの背後からロックの鉄球とフリージアの氷結棍が叩き込まれる。
ほんの数瞬で二人の仲間が目の前で攻撃を受けた事に、恐慌状態に陥ったのだ。
身動きの取れないクレイゴーレムはロックとフリージアの攻撃を受け、砕け崩れるがそれでもまだ倒すには至らない。
「く・・・リリアーナ・・・!これをもって・・・逃げろ!!」
レイドは既に致命傷だという事を自覚していた。
これが幻などではなく現実のものだと。
そしてこのクレイゴーレムのカラクリを実感したが、もはやそれを伝える猶予はない。
湯飲みをリリアーナに投げとよこし、レイドは咥えていたタバコをぷっと吐き出した。
単なる吸殻ではない。
レイドの魔力を詰めた一種の爆弾である。
第三過程終了試験でいやと言うほど味わったロックとフリージアにとっては一種のトラウマとなっている。
恐慌状態であったが、それを元の状態に戻すほどの。
「イヤーーーー!レイド先生!!!」
「リリアーナさん!いけませんわ!」
「逃げるぞおお!」
湯飲みを持ったまま絶叫するリリアーナをロックは掴み逃げ出す。
それにメラル、キサラも続き、フリージアが殿を務める。
レイドのタバコの吸殻爆弾の威力は凄まじい。
氷結のフリージアの氷の盾を持ってしても防げぬほどなのだ。
全力で逃げながらも、最後尾のフリージアが氷の盾をいくつも精製しながら逃げる。
巻き込まれないように、隔壁代わりとして。
そして、最初にいた部屋で大爆発が起きる!
爆圧に砕ける壁。燃える床。
その威力に吹き飛ばされ、五人は甲板に投げ出された。
【Another one 03】
あまりの爆風に炎はかき消されたようで、焦げ臭い匂いはするものの炎に包まれる事は無かった。
半ば放心状態のリリアーナ・ロック・フリージアを他所にキサラとメラルは状況を確認していた。
周りは霧の深い海。
どんよりと曇った空は星によって位置を知ることも出来ず。
船は巨大なガレオン船で、後ろには大きな穴が開いている。
それがレイドの墓標だと否応なしでも実感させる迫力がある。
「・・・どうして・・・どうしてよ・・・!!」
最初は呟くような、だがそれはすぐに絶叫に変わる。
目の前で二人の仲間を失った・・・生死は確認できていないが、本能的に察していた。
ラルヴァとレイドは死んだのだ、と。
その悲しみと不条理さにリリアーナは叫ばずにいられなかったのだ。
「どうして?と尋ねられれば応えてやるのが世の情け。
バトルフェアリー・アルナワーズ、登場よ〜。」
悲痛な叫びと重い空気をぶち破るアルナワーズ。
いつもの笑みでリリアーナの目の前に現れた。
「この船では召喚魔法・空間魔法・フィールド魔法は封じられているのよ〜。
あ、位置確認も一種の空間魔法だから無駄よ。」
密かに位置確認魔法を試みようとしていたメラルがその手を止める。
メラルの方を向いているので、リリアーナがゆらりと立ち上がったのにアルナワーズは気付かなかったろう。
「・・・アル・・・なぜそれを最初に言ってくれなかったの?」
「だって聞かなかったのだもの。」
あらゆるものを抑え、搾り出すように質問を投げかける。
それに対する答えは、余りにも軽く単純なものだった。
リリアーナの頭の中で何かがまとめて切れる音がした。
「あなたって人は!!!!」
言いたい事は色々あったはずだ。
だが、人は本当に怒ると出せる言葉は本当に僅かでしかない。
リリアーナが生きてきた16年で一度もしたことのない程の怒りの表情でアルナワーズを睨み、右手を振り上げた。
強烈な拳がアルナワーズの頬を捉えるはずだった。
いくらリリアーナが格闘向きでないとは言え、アルナワーズはそれ以上に格闘向きではない。
そして何よりアルナワーズは微動だにしなかった。
にも拘らず、リリアーナの拳は当たる事は無かった。
なぜならば、アルナワーズを捉える直前、手首より先が切り取られてしまったのだから。
「・・・・!!!!」
「だめよぉ〜。バトルフェアリーに攻撃したら十倍以上のダメージが与えられるのだからぁん。」
血の吹き出る右手首を押さえ、声にならない叫び声をあげるリリアーナを睥睨しながら言い放つ。
その表情には一片の曇りも見られない。
「アルナワーズ!許さんぞ!」
「駄目よ、ロック。まだ・・・駄目・・・!」
リリアーナとアルナワーズのやり取りに激昂するロック。
それを止めたのはメラルだった。
「あら、メラルは流石にわかっているわねえん。」
「ええ、【まだ】ね。無駄な労力はしない。確実にあなたを罰するまでは我慢してあげる・・・!」
留めに入ったメラルだが、平気なわけではない。
ロックを止めながらも、自身も今にも襲い掛かりたい衝動を抑えているのだ。
今は判らない事が多すぎる。
だが、解析できれば必ずこの報いは受けさせるという決意に漲っていた。
「やっぱりメラルは私を一番ゾクゾクさせてくれるわあ。
ご褒美にサービス。他には回復魔法も無効よぉん。だから、リリアーナの処置も急いだ方がいいわよぉ。」
くすくすと笑いながら説明するアルナワーズの前にリリアーナが立ち上がっていた。
右腕の切断面が凍らされている。
「ええ、ご親切にどうも!何のつもりかなんてもうどうでもいいわ。絶対に許さない!」
「私も同感ですわ。コキュートスすら暖かく感じる思いをプレゼントして差し上げます。」
左肩をフリージアに支えられながら凍りついた表情で言い放った。
怒れるリリアーナの右手に跪くように手を当てるのはキサラだった。
才能を開花させてきたとはいえ、まだ未熟な魔法技術しか持たないキサラ。
実践でどれだけ使えるかは未知数だ。
ならば実戦経験豊かなフリージアがリリアーナの傷の氷結に魔力を使うより、自分がやった方が効率がいいという結論に達したのだ。
そして傷口の氷結が成功した今、キサラは次の作業に入っていた。
精神同影・・・
対象の精神に同調し、それを心の中に投影するスキル 。
アルナワーズになりきってその心を読み取り意図を探ろうとしているのだ。
「あら怖いわ〜。そんなに嫌わないでぇん。
嫌われたくないからもう一つサービス。あなた達を襲うクレイゴーレムはさっきの一体だけよぉ。
それから、キサラァ?私はそんなにぬるくないわよぉん。」
睨みつけるフリージアとリリアーナを軽くいなし、キサラに笑いかける。
アルナワーズは幻と精神のエキスパート。
幾重にも思考デコイを張り巡らせ同調を遮る。
キサラの試みを嘲笑うかのようにまた風景に解けて消えていった。
精神同影は周囲との干渉を一時的に断つほどの集中を要する。
成功しても失敗しても精神的な疲労は極大となってキサラに襲い掛かる。
玉のような汗を額に浮かべ「駄目だ・・・」と小さく呟くのが精一杯だった。
精神的に疲労困憊に陥ったキサラが超反応を使用できないのは自明の理。
床板を突き破って現れたクレイゴーレムの腕から逃れる事は出来なかった。
声を上げることも出来ず引きずり込まれるキサラ。
そして、代わりに現れたのは完全に復元したクレイゴーレムだった。
【Another one 04】
「ロックさん、リリアーナさんをお願いします!」
支えていたリリアーナをロックに投げ渡すようにして、フリージアが跳ぶ!
共に氷結魔法を学ぶキサラをやられ、フリージアの最後の理性は吹き飛んだ。
氷結棍最上段から振り下ろす。
だが、先ほどクレイゴーレムを砕いた氷結棍は今度は逆に乾いた音共に砕け散った。
驚きの声を上げることも許されずクレイゴーレムの大きな手で掴まれてしまう。
メキメキといやな音がなるが握りつぶされずにすんだのは鋼鉄製のコルセットのおかげだろう。
即死は免れたが、かといってこの手から逃れる術はない。
ロックがその手に鉄球を打ち込むが、めり込んだだけで砕くには至らなかった。
握る手に更に力を入れられもがくフリージア。
否。
これはフリージア最後の禁断の魔法の動作なのだ。
自分の中の魔力のオーバーロード。
周囲の空間ごと凍り付いていく。
「いけない。すぐにこの場を離れて!」
同じく氷結魔法を修めるメラルにはフリージアが何をしようとしているかが判った。
氷結とはつまるところ分子運動の減速。
その極地は分子運動の停止。
フリージアは自分ごと超極低温による分子分解を行おうとしているのだ。
ただただ首を振り動こうとしないリリアーナを無理やり抱き上げ逃げるロックとメラル。
その背後で光すら凍りつき停止するフリージアの禁断の魔法が発動した。
音も光も全てが凍りつき、停止した静寂の世界。
もはやフリージアもクレイゴーレムの姿もない。
ただ塵だけが漂っていた。
【Another one 05】
船の先端部分まで来た三人は当たりに何の気配もないことを確認し、思考をめぐらせていた。
リリアーナの頬は赤く腫れている。
落ち着かせる為にメラルが張ったのだ。
親友であるフリージアを失った事はリリアーナに今まで以上の衝撃を与えていたのだった。
今は落ち着いてはいるが、まだ不安定なところが隠し切れていない。
「おかしいのよ。」
「ええ、何もかもがおかしいわ!」
「違うの、アルよ。」
思考のまとまりきっていないまま、メラルが口火を切ると、リリアーナが投げ捨てるように同意する。
だが本当の意味などわかってはいない。
メラルは丁寧に説明を始める。
「アルは面白半分で人を窮地に追い込んだりするわ。
でも、その時は必ず大義名分を翳すの。
喩えどんなときでもアルを責めるに責められないような理由付けを。」
「確かに、今はそういう理由が一切ない・・・。」
リリアーナに比べれば、だがまだ落ち着いているロックがメラルに言われそのことに気付いた。
曲解、歪曲、拡大解釈など、あらゆる事をするが一応の筋を通している。
だからこそアルナワーズと論ずるのが至難であるのだが、今回はそれがない。
「それからあのゴーレム。確実に強くなっているわ。
最初はフリージアやロックの攻撃で崩れていたのに、二回目は一切効かなかった。」
ありのままを並べるメラル。
そのデータから導き出されるのは恐るべき結論だった。
クレイゴーレムは一体しかいない。
そして、受けた攻撃を学習し、耐性をつけていく。
今までレイドの炎系である爆弾。
ロックの鉄球による物理攻撃。
フリージアの氷結棍による物理攻撃。
そして先ほどフリージアの超極低温に依る分子分解。
もし分子分解をもってしても倒せず、耐性をつけて現れたのであれば・・・残ったリリアーナ、ロック、メラルではもう倒す術がないのだ。
「フリージアの攻撃のあと、何の変化もないからクレイゴーレムは復活してくると考えた方がいいと思うの。
何度でも復活し、その度に強くなるクレイゴーレム。
この理不尽な敵に、逃げ切れない船の上。勝利条件がその湯飲みを・・・そうだったのね!つまり・・・!」
話しながら思考をまとめているメラルだが、最後まで言葉を続ける事は出来なかった。
メラルがいた場所にクレイゴーレムが立っていた。
その足元に滲み出る血だけがそこにメラルがいた事を語っていた。
クレイゴーレムは最初より2倍ほどに巨体となっており、リリアーナとロックの前に立ちはだかったのだ。
【Another one 06】
学園地下。円卓に八人が座っている。
皆意識がないようで、ピクリとも動かない。
まともに座っているのは三人だけで、五人は円卓に突っ伏していた。
円卓の中心には一冊の本。
鎖を模した飾りカバーでしっかり封をしてあるその分厚い本が怪しげな光を放っていた。
「なあ、成功すると思うか?」
「ふん、人間の考える事は分からん。
無限に復活し強くなるゴーレム相手に勝利などできるわけがない。」
「だよなあ。」
円卓の八人を眺め、小さく溜息をつくのはユユだった。
それに対するのはヴァンエレン。
学園に縛られた吸血鬼だ。
「ええい、口惜しい!私が生身の人間であれば!」
苛立ちのあまり剣を石畳に突き刺しながら激昂するのは英霊かを遂げた獣人騎士アルテリオン。
次々と円卓に突っ伏していく姿を見て居ても立ってもいられなくなっているのだ。
「仕方があるまい。参加資格は「成長する」者。既に死屍たる我らにはどうにも出来んのだからな。」
本音同時通訳(ラッキー!こんなおっそろしい事に道連れにならなくて最高!死んでる私を褒めてあげたい!)
アルテリオンをなだめながらも心の中で幸せを噛み締めるヴァンエレンであった。
「やれやれ、一人救う為に負うリスクにしては大きすぎなんだよ。」
そんな二人のやり取りを脇目に、ユユは溜息をつきながら円卓の儀式を見続けるのであった。
【Another one 07】
「く、くそお、リリアーナ!逃げろ!」
突然現れたクレイゴーレムを前に、ロックが叫ぶ。
もはや絶望的な戦いでしかないのわかっている。
リリアーナを押して立ち向かおうとするロックにリリアーナが縋りつく。
「駄目よ!行っちゃ駄目!もう、嫌なの!!」
メラルが目の前で踏み潰され、もう勝てないと判っているのだ。
ロックを足止めに自分だけ逃げるなどリリアーナにはできるはずも無かった。
だが、右手は切断され、左手に湯飲みを持つリリアーナはロックを掴む事すらできなかった。
ロックはリリアーナを振り払いクレイゴーレムに向かった行く。
そして殴り飛ばされる。
硬化魔法をかけているため、一撃で死ぬ事は無かったが、ダメージは大きい。
足はガクガクと震え、立っているだけで精一杯。
そんなロックなど眼中にないようにクレイゴーレムはゆっくりとリリアーナへと向かう。
「お前の相手は俺だろおおお!!」
叫び声と共にクレイゴーレムの背中に鉄球を打ち込むが、全て弾かれてしまう。
鉄球で効果がないため、震える足を叩きロックはその背中に掴みかかる。
それでもクレイゴーレムは全く意に介さない。
ロックを背中に乗せたまま、リリアーナに手を伸ばす・・・
リリアーナの全身がクレイゴーレムの影に隠れ、もはや逃げる事すら叶わなくなったとき、その動きが止まる、
ぼこぼこと全身が波打ち蠢きだす。
ロックがクレイゴーレムの土を媒介にゴーレムを作っているのだ。
土を分散させ、ゴーレムの支配権を奪う為に!
しかしこれは魔法力の勝負。
ロックのゴーレム作成能力は元々格闘トレーニング用に作り出す為に身につけたもの。
それほど強いわけではない。
発想は良かったが、あらゆる攻撃を学習し耐性をつけるこのクレイゴーレムには足止め程度にしかならなかった。
分裂しかけたクレイゴーレムは急速にその支配権を取り戻し、身体を元に戻していく。
そして再度リリアーナに手を伸ばし始めた。
しかし、その僅かな時間でリリアーナの表情は一変していた。
怯えた表情は無くなり、焦燥しきってはいるが、覚悟を決めた表情に。
「こんな、こんな湯飲みを守る為に訳も判らず皆が・・・!
こんなもの!なければいいのよ!!」
意図を察したか、急いで手を伸ばすが、一瞬遅かった。
リリアーナは大きく振りかぶり、床に湯飲みを叩きつけた!
乾いた音が響き渡り、湯飲みは砕けた。
そしてそれと同様に、クレイゴーレムも砕け散った。
【Another one 08】
「おめでとう〜。」
クレイゴーレムの変わりに現れたのはアルナワーズ。
事態の変化に反応できず呆然と立ち尽くすリリアーナの視界が暗転する。
そして視界が開けたとき、リリアーナは円卓に座っていた。
周りにはラルヴァ・レイド・キサラ・フリージア・メラル・ロック・アルナワーズが座っている。
そしてテーブルには一冊の本とクドリャフカが横たわっていた。
「おお、クリアーしたよ!マジかよ!」
「うそおおおおお!!」
「皆さん!信じていました!よかったあああ!」
地下室に響くユユとヴァンエレンとアルテリオンの三者三様の声。
リリアーナは、いや、円卓に座る八人は全てを思い出していた。
氷漬けを避けるためにクドリャフカが魔本の中に逃げ込んだ。
だが、その本は【擬戦盤】という、本来修行目的の本だったのだ。
本の中の仮想世界で設定した条件をクリアーするという。
だが、ただの修行で終わらないのが魔本たる所以。
条件をクリアーできなければそのまま本に閉じ込められてしまうのだ。
クドリャフカは半死半生で中に入った為当然クリアーできず。
魔本に取り込まれていたのだ。
助け出す為の手順もわかっていた。
助け出す為の条件を魔本の中に入ってクリアーするだけだ。
進行役一人、救出チーム7人の【七人のミサキ】。
倒せない敵、破壊させない条件。
結論から言えば湯飲みが湯飲みでなくなれば破壊のしようがない、と言うわけだ。
砕けた湯飲みは既に湯のみではないのだから。
だが、本に入った時点でその記憶は消され、純粋にその場の戦闘と知恵でクリアーする必要がある。
誰か一人でもクリアーできればいいが、失敗すれば二次遭難の如く八人全員が魔本に取り込まれてしまうという危険な救出劇。
それを見事クリアーして、還ってきたのだ。
それぞれ抱き合って喜ぶメンバーを他所に、微笑を浮かべたままそっと立ち上がる一人。
アルナワーズ。
「あ、あの、本の中で酷いこと言って、ゴメンね・・・」
そんなアルナワーズに最初に気付いたのはリリアーナだった。
本の中での記憶はしっかり残っている。
全員の一致した賛成のもと行われたとはいえ、今回の救出劇の立案者である負い目もあったからだ。。
気付かなければいいのに、気配り上手なのも損なものだ・・・
そう思いながらもアルナワーズは口には出さない。
ただ・・・
「いいのよぉ〜。憎まれ役は慣れているもの。」
「そんな、アル・・・そんな事いわないで・・・辛い役をさせて、ゴメン・・・」
消え入りそうな声で俯いたが、すぐに後悔する事になる。
まるでその言葉を誘導したかのようなしてやったりのアルナワーズの表情を見てしまったから。
その笑みはリリアーナにとって最大の恐怖だった。
その恐怖を和らげるものは・・・
がっしりとリリアーナの肩を抱く大きな手。
「リリィさん、ほんにありがとうの。
アル、元々は私を助ける為の事じゃきい、この借りは全部私につけておいてくれんかのぉ?」
起き上がったクドリャフカが力強く立っていた。
「あら、クドリャフカさんだけのためでなく、私達の友情のためですもの。
借りも貸しも全員で共有しますわよ?」
リリアーナとクドリャフカの後ろには皆が笑顔で並んでいる。
心は一つだ。
「あらあら、熱いわねえ。じゃ、全員で共有してもらうわ。
早くこんな実験室からは出て、食堂へ行って全員で祝勝会をしましょう?」
くすくすと笑いながらアルナワーズはパーティーの開催を促すのであった。
fin
一日一話のつもりだったけど、諸事情により一喝投下。
ラルヴァの異形態とか、メラルの黒天砲とか、色々入れられなかったネタが多かった・・・
かませ状態で人様のキャラを次々と殺してしまってすいません。
魔法少女スレ完走記念、と言うことで。
こんな扱いしてしまったけど、魔法少女スレのみんな大好きです。
いい時間をありがとう。
恩返しになっていないけど、精一杯の気持ちです。
ありがとう!
>>567 GJ!
本編ではありえないような話を見れてよかった!
花火の灯で仄かに照らされる寝室、本当なら外に出て注意しにいくべきなのだが、今の二人はそれどころではない。
ちょっと離れてベッドに腰を掛ける男女。
男は相手が初めてということなので、遠慮してしまい動けない。
女は女でOKサインを出したにも関わらず。緊張と少しばかりの恐怖に若干怯えて、今にも顔から火が出んばかりに赤面し、まともに男の顔が見れないありさま
しばらく沈黙が続く…だが、古今東西先に動いてしまうのは男の方で、ゆっくりと肩にてを回し、距離を縮める。
そして、優しく且つ強引に女の顔をこっちへ向かせて唇を軽く重ねる。そして、すぐに放しお互いの吐息を感じ合う。
女の震えるような甘い吐息は、男の肌、鼻、耳を過剰に刺激し、その度に男の中で、劣情鬼と淫魔が暴れだし理性を吹き飛ばそうとする。
目の前の女性が彼女以外ならば、このまま獣のように貪るが、男は必死でソレを抑えつつもう一度唇を近づけ、また唇を重ねる。だが、先ほどとは違って今度は相手を貪るように唇を重ね…………………………………………
「……あン…Zz……そこは駄目で…ZZ……いや…Zzz……」
朝日が射し始めた廃墟にて、豪快に鼻血を足らしながらアルテリオンは爆睡していた。
あの傷なら、今頃呑気に寝てはいられないのだが、あの後に布津野が呼んだ救護班の応急処置のお陰で一命はとりとめたのだ。
普段の彼女ならこんなことはしないだろう。
傷の手当てならば、彼女の能力「ルルドの息」で充分だし、進化論に従うならば放置する。
しかし、彼女はそうしなかった。
彼女がそうしなかった理由は2つある。
一つは反撃される可能性、ルルドの息を使った瞬間、彼女が再び剣を握り立ち上がるかもしれなかった。もちろん布津野にとって今のアルテリオンは敵ではないが…下手をして殺しかねないからだ。せっかくの研究材料(ライバル)を失うのは口惜しい。
そして、一つ…これは、布津野の仮説を否定しかねないものだ。
………アルテリオンは実はエグゼムではないのかもしれない。
確かにクラスAにしては弱すぎるし、能力もない。それに今までのクラスAとは明らかに反応が違った。
ルルドの息はエグゼム以外の生物には猛毒でしかない。
だから、布津野はあえて救護班を呼んだのだ。
もちろん、ただ応急処置を施しただけじゃない。
血液サンプルとバルムンクをとって徹底に調べるつもりだ。これならば、研究材料を殺さず、矛盾しか答えのない疑問も晴れる。
そんなことを露知らずに、この女は夢の中で二回戦を始めている。
「……Zz…らめぇ…Zzz…これ以上はぁ……んぁ?」
一気に現実に戻され、アルテリオンは少し天井を見上げながら呆ける。
そして、ゆっくりと脳が動きだしさっきまで見てた淫夢を思いだし、温度計のように顔が徐々に赤くなる。
「……………なんちゅ〜夢を見てんだ…わ…た…しは?」
起き上がった瞬間、アルテリオンは違和感を感じた。
ふと昨日の戦いを思い出し、違和感の元を明らかにする。
そうだ…あんなに切り刻まれたのに一晩でここまで良くなる訳がない。
髪の毛で貫かれた腕も足も、トドメの腹部への一撃も全て嘘のように治っている。
試しに立ち上がり、適当に暴れても、動かない部位も痛む部位もない。
それに服装も違っている。頭の耳がすっぽり隠れるフード付きのコートに、ジーンズと半袖のシャツ…そして、下着もかなり色気があるものに変わってる。
言われなくても解る。
「…布津野…どこまで愚弄すれば気が済む」
怒りに任せて服を破り捨てようと思ったが止めた。
これなら…これならば問題なくあの街に潜むことが出来る。
バルムンクは奪われたが…ただ劣化していく剣など無価値にすぎない筈だ。
いや、ある意味研究対象になるかもしれないか…
とにかく布津野を追えば回収出来るだろう。
「…待ってろ…フツノ」
そう意気込み、アルテリオンはまた街へ向かった。
エロシーンに気合い入れすぎてごめんなさい。
本編のあのシーンに納得が出来なかったんだ…だって、肝心な部分を二文字で終わらせていきなりピロートークはねぇだろ?
出きりゃギリギリまでやって欲しかったんだ。
でも、そんなこといったら荒れるから我慢して…でも諦められなくて…ゴメン
>573
乙。黒刃はよく知らないから続きに期待してる
>574
アルテとレイドどっちに言ってるのかわからんが、行為の二文字と思う
SSならともかくTRPじゃ無理ってもんだろ
ピンクで魔法少女SAGAをやるのはどうだ?
黒刃本編ではないんだ魔法少女のほうなんだ。
うん…俺だってガキじゃない…それぐらい分かってるさ。
だから、こっちでギリギリのシーンを書くことにしたんだ。
ピンクで書くのもいいんだが…元ネタを知ってるせいか
途中でアイアスが乱入したり、ナナが最後に酒渡して「一杯やんな」と別に綺麗でもないオチになるから遠慮する。ゴメン
∧_∧
( ・∀・)ワクワク
oノ∧つ⊂)
( ( ・∀・)ドキドキ
∪( ∪ ∪
と__)__) 職人さん達、投下楽しみにしています。
「おかしいですわ・・」
フィジル島にある学園の一角、通称招き猫広場でフリージアは首を傾げていた。
広場の名前の由来となっている、巨大招き猫の像が無くなっていたからだ。
像が消えることはそんなに珍しくもない。
以前にも某野球チーム優勝記念に、川に放り込まれた事があった。
酔っぱらった生徒達が、寮にお持ち帰りしたこともあった。
なのになぜ今回はこんなに気になるのか?
それは、最近頻発している猫誘拐事件と関係があった。
飼い猫から野良猫に至るまで、島内の猫達が次々に行方不明になっているのだ。
最初は気にも止めなかった生徒達の間にも、噂は尾鰭を付けて広まっている。
自他共に認める猫愛好家の一人として、フリージアも事件解決に力を貸すことにした。
そして最初に発見した異常が、招き猫の消失だったのだ。
二つの事件は何か関係があるのだろうか?
考え込むフリージアは、さっきからリリアーナが声をかけている事にも気がつかなかった。
「フリージアーっ!フリージアってばーー!!」
肩を揺すられてようやくリリアーナに気づく。
「あ、あらリリアーナさん。何かご用ですの?」
おーっほっほっほと、照れ隠しのためか高笑いするフリージア。
「もう。フリージアったらしっかりしてよ。
あなたまでアルみたいに、おかしくなったのかと思っちゃった」
「アルナワーズさんがどうかしましたの?」
「うん・・・実はね・・・」
リリアーナの説明によると、アルナワーズはヴァンエレンと一緒に何かをしているらしい。
ヴァンエレンが学園に呪縛され、その呪いを解くために努力しているのは周知の事実。
最初はそのために協力しているのかと思っていたが、それにしては行動が奇妙すぎた。
夜中のうちにネコミミを付けて寮を抜け出す。
毎日毎日違う猫を連れて歩いている。
巨大招き猫の像を磨いている。
そこにきて今回の猫誘拐騒ぎだ。
アルナワーズが事件に関与していると考える人間は、決して少なくはなかった。
「ほら、こんな記事にまでされちゃってるし」
リリアーナが見せたのは、学園新聞【でいりぃ・ふぃじる】。
三流ゴシップ記事が売りの新聞だが、時々大きな事件をすっぱ抜くのでも有名だ。
愛読者も多く、学園長も読んでいる、との噂もある。
その一面にデカデカと書かれた文字を見て、フリージアの顔が凍り付いた。
『記者は見た!これぞ猫連続誘拐事件の真実!?』
本日未明、数匹の猫を連れたアルナワーズ氏を、本誌記者が発見。
突撃インタビューを行った。
同氏は猫連続誘拐事件への関与を全面否定。
ただ、連れている猫をどうするのか。との質問には明言を避けた。
さらに記者が質問しようとした所、幻術を使用して逃走。
本誌は、アルナワーズ氏がなんらかの形で今回の事件に関与しているものと考え(ry
「あ、ありえませんわ。アルナワーズさんがそんな事を・・・」
否定しようとして、フリージアの目は続く記事に釘付けになった。
そこには学園に伝わる言い伝えが紹介されている。
『満月の夜、巨大招き猫の像に千匹の猫を生け贄に捧げよ。
されば、古代猫神に封印されし邪神は、再度解き放たれん』
「大変ですわ!!!」
「そうなの大変なのよ。邪神の復活なんて信じる人はいなくても・・って、フリージア?」
フリージアはリリアーナの腕を掴んで、ずかずか歩きだした。
「友人として、仲間が間違った道を歩いている時は、正さないといけませんわね!
ご心配なくリリアーナさん。
この氷結のフリージア、必ずやアルナワーズさんも猫ちゃん達も救って見せますわ!」
「え?え?フリージア、どうしちゃったの?」
事情がよく分からないリリアーナは、引きずられながら困惑するしかなかった。
「あれが、アルナワーズさん達の隠れ家ですわね・・・」
あれからしばらく。
2人は森の中、花畑の近くにある小屋を監視していた。
かなりの額の金を情報屋に払い、昨晩、ヴァンが小屋に招き猫を持ち込んだ事を知ったのだ。
リリアーナはこっそり小屋に近づき、窓から中をのぞき込む。
薄暗い室内には、装置の残骸らしいガラクタが放置されていたが、招き猫は無かった。
「やっぱり、中には何もないみたい。偽情報だったんだよ」
「大甘ですわ、リリアーナさん。アルナワーズさんの特技は幻術ですもの」
「・・それはそうなんだけど・・・」
この間のパーティーの時の騒動が、リリアーナの頭をよぎる。
それでも、アルが邪神を復活させるとは、とても思えない。
「ねえ。フリージアは、本気でアルが邪神を復活させるって考えてるの?」
「私もそこまで仲間を信じていない訳ではありませんわ。
でもアルナワーズさんなら、疫病神くらいなら復活させてもおかしくないと思いますわ」
フリージアの言葉を、リリアーナは否定できなかった。
確かにアルなら、あまり害のない神の封印くらい、喜んで解きそうに思える。
例えそれが邪神と呼ばれるような存在でも。
もし、この事件が猫でなく犬誘拐事件だったなら。
フリージアは邪神復活など馬鹿らしいと、笑って聞き流しただろう。
もし、事件に関係しているのが、アルナワーズ以外の誰かだったなら。
リリアーナは、それを止めようとは思わなかったはずだ。
だが状況は二人に疑問を挟む事を許さなかった。
そうだ。アルがまた誰かを困らせようとしているなら、止めなくちゃ。
もし勘違いなら、その時はきちんと謝ればいい。
アルも普段から言動には気をつけてよね!同室の私も大変なんだから!
と、文句の一つも言いながら。
そう考えたリリアーナは、意を決して小屋に近づき、二・三回ドアをノックした。
「アル・・・?中にいるの?」
当然だが返事は帰ってこなかった。
ドアには鍵が掛かっているのか、押しても引いてもびくともしない。
「リリアーナさん。ここは私におまかせくださいな」
フリージアはいつの間にか手にしていた氷結棍で、ドアに突きをお見舞いする。
しかしドアは魔法で閉ざされているのか、傷一つ付けることは出来なかった。
「やっぱり、勝手に入るのは良くないと思うの。
レイド先生を呼んで、ドアを開けてもらった方がいいんじゃないかな。
」
「そんな暇はありませんわ!」
フリージアは思わず大声で叫んだ。
「こんな事をしている間にも、猫ちゃんたちが生け贄にされているかもしれませんのに!
どこにいるか分からない、レイド先生を捜しに行く時間なんてありませんわ!
こうなったら、この技を使うしかありませんわね!!おーっほっほっほ!」
高笑いと共にフリージアは、フリージングドール・マリオネットを造りだす。
氷の人形の手には、同じく氷で出来た破城鎚。
「ちょ、ちょっと待って!そんな事をしたら・・!」
リリアーナの制止を振り切り、人形は壁を力一杯殴り付けた!
魔法少女と冒険スレの妄想SSです
登場各キャラのみなさまに感謝を
夏休み中辺りの話と考えていますが、夏ぜんぜん関係ないです
夏らしい話思いつかなかった・・・
引き強すぎ!
めっさ続きが気になるぞ
GJ!
応援してます
いつも楽しみにしているぞ!
GJ!
【隊長の称号】
三年前、グラスマンは第六遊撃隊隊長の任を拝命し、詰め所へと向かっていた。
騎士の叙勲を受けてからというもの、馬に乗れば落馬し、ランスのトーナメントでは相手はシード状態と笑われる。
剣術でもまともに打ち合うことすらままならない。
そんな状態で戦場に出ても隊列を乱しこそすれど、戦果を挙げるなどあるはずもない。
その結果が第六遊撃隊隊長任命だ。
前任の隊長が部下に叩き出された為、その後任を押し付けられたというわけだ。
傍から見ればどう見ても左遷。
騎士としての出世の道は閉ざされたも同然である。
だが、グラスマン本人は至って平然と受け入れていた。
堅苦しい部隊に配属されるよりは、自由が効く第六遊撃隊は望むべくところだったからだ。
しかし、そんな喜びも第六遊撃隊詰め所の扉を潜った瞬間、脆くも打ち砕かれることになる。
抽象的な意味でなく、物理的に、だ。
「おはよう!このたび隊長に任命されたグラスマン・・・・だ!」
扉を開き挨拶をした瞬間、コメカミに鈍い衝撃が走り意識は暗闇へと落ちていった。
どのくらい意識を失っていただろうか?
覚醒し、慌てて起き上がると正面には骨太な女が座っていた。
無造作な髪、日焼けした肌、あからさまに土木作業員の姿。
そして何よりも自分を見下す目線が印象的だった。
「起きたかい、坊ちゃん。あたしはバル・バス・バウ。ここの工兵班班長だ。」
「あ、ああ、よろしく。」
覚醒して間もない為まだはっきりしない頭でとりあえず返答をする。
室内にはバル・バス・バウの他、剣士と重戦士と怪しい生物がいた。
「俺、××ご・ろ×△×・×モン××。」
順に自己紹介をするメンバーだが、最後の怪しい生物の名前は聞き取る事が出来なかった。
声の大きさが悪いのではなく、人間には聞き取りも発音も不可能な音だったからだ。
「ああ、そいつはマルムンドの戦士でね。ソレとかオイとか呼べばいいよ。」
???な顔を浮かべるグラスマンに気付いたのかバルが補足を入れる。
だがグラスマンはその説明には納得がいかなかった。
仲間をソレやオイと呼ぶような扱いはしたくないのだ。
「いや、そういう訳には行かないだろ。」
「はぁ?坊ちゃん、なに言い出してんの?」
自分の説明にはむかったのが気に入らなかったのか、バルがグラスマンを睨みつける。
だがそれをあえて無視してグラスマンは考え込む。
「よし、お前は今日からゴロモンだ。
僕が隊長になった以上、みんな仲間だ。愛称でもいいから名前で呼ぼうよ。」
「わかった。俺、今日からゴロモン。」
「・・・っち。好きにすればいいさ。そんなことより仕事が入ってんだからさっさと行くよ。」
なるべく穏やかに言ったつもりだったが、それでもバルには気に入らなかったようだ。
険悪な空気に場が凍りつくが、ゴロモンがあっさりと受け入れた為、バルもそれ以上追求しなかった。
机の上に地図が広げられ、バルが任務の説明をし始める。
ライゼ王国、東に流れるタータルス大河。
その対岸の商業都市ハイネスに大規模な盗賊団が現れ、流通が滞りがちになっている。
河族ならライゼも対抗しやすいのだが、盗賊団が現れるのは商業都市ハイネスの更に東。
アナキア大砂丘に出没するのでライゼとしても表立って討伐対を出す事が出来ないのだ。
商業都市としてあらゆる勢力の傘下にはいる事を拒むハイネスはライゼ王国からの討伐隊の提案を拒否している。
そこで、第六遊撃隊がその身分を隠して討伐するとなったのだ。
バル・バス・バウが説明している間、剣士がグラスマンに小声で事の成り行きを話していた。
グラスマンが扉を潜った瞬間、その腕を見るために流星錘でコメカミを一撃した事がバルであることを。
そしてあっさりと倒されて失望している、とも。
その話を聞いてグラスマンは思い出していた。
前任の隊長が戦闘中に逃亡しようとしたのを見て、バルが半殺しにしたことを。
「おいおい、坊ちゃん。号令かけとくれよ。あんたの仕事だろ?」
「あ、うん、そうだね。それじゃ早速準備を・・・ああ、みんな出来てるみたいね。じゃあいこうか。」
説明を終えたバルが馬鹿にしたようにグラスマンを促す。
戸惑いながらも声をかけ、部屋を出た。
四人を率いるが誰もグラスマンを隊長と認めていないことは明白すぎる。
いきなりのされ、初日から盗賊団討伐の為に国外へ出発。
前途は多難であった。
【隊長の称号】
ハイネスに到着し、数日後。一行はアナキア大砂丘を歩いていた。
大河タータルスが悠久なる時間をかけて形成した大砂丘。
河砂は通常の砂漠の砂とは違い細かく、足をとられやすい。
気候が安定していて暑さがないのが救いだろうか。
見渡す限りが砂の世界であった。
ここまでの道のりは順調そのものだった。
船の手配、ハイネスへの通行許可、宿の手配、討伐傭兵への登録。
バルが全ての段取りを取っていたのだ。
曰く、工兵の仕事は土木作業だけでなく事前の手配全般と後始末なのだそうだ。
そして今、地図と六分義を持つバルを先頭にして、目的の商隊と合流を果たしたのだ。
商隊頭に討伐傭兵証みせ、隊列に加わる。
広大な砂丘を闇雲に探すより、こうやって商隊に加わって襲ってくるところを迎撃するのだ。
護衛にもなるし、それがそのまま討伐に繋がるというわけだ。
討伐の時はあまりにまあっけなく訪れる事になる。
商隊に加わったその夜にそれが起こったのだから。
野営地を襲う突然の砂嵐。
砂漠ならともかく、河砂によって出来た砂丘に起こる様なものではない。
当然気付く者はその異常さに気付くが、篝火をなぎ倒し灯りを消し去るほどの砂嵐を前に何が出来るというのだろうか?
ただただ飛ばされぬように身を固めるだけであった。
砂嵐自体は数十秒で去って言ったが、当然のようにそれだけで済むはずもない。
代わって訪れるのは矢の雨。
狙って放たれたものではないが、あちらこちらで運の悪い者の悲鳴が上がる。
嵐で機先を制し、矢の掃射の後訪れるものは当然のように略奪者の襲撃。
下卑た咆哮をあげながら駆け寄る無数の殺気の塊。
僅かに残った篝火の残りかすと雲に隠れがちな月明かりの中、始まる戦い。
ここに至り商隊の護衛に統制など望めるはずもなく、その戦いは一方的なものとなっていく。
まともに戦えば勝てない相手ではない。
だが既に戦意は喪失し、打ち合うよりも背中から切られる方が多いくらいだ。
そんな中、ただ一角、盗賊達を退ける一団がいた。
かける声も併せる目もない。
ただ掻い潜った修羅場の数ゆえに成り立つ意思疎通。
剣士は素早い動きで相手の手と足を斬り、戦闘力だけを奪い次の相手へと向かう。
重戦士とゴロモンはその装甲を生かし、突き進んでいく。
その頃グラスマンはというと、盗賊の一人に剣を叩き落されていた。
勝ちを確信し切りかかろうとする盗賊に、グラスマンは徒手空拳で対抗しようと構える。
が・・・盗賊のコメカミに錘が食い込み血飛沫が舞う。
グラスマンを殴ったときの錘は硬く紐を丸めたものであったが、今は実践と言うことが鉄の錘になっている。
「坊ちゃんよ!あんた弱いんだから隅っこに隠れてなって。」
流星錘を振り回しながら怒鳴りつけるバル。
グラスマンが礼を言う暇もなく一瞥もせずに次なる相手を求め乱戦へといってしまった。
盗賊にとっては予期せぬ出来事だった。
本来ならばこれは狩りだ。
周到に用意し、相手の反撃も殆どない一方的な殺戮のはずだった。
事実そうなっていたのだが、思わぬ反撃で動揺が広がる。
「く、くそう。だがな、こっちにはつぇえ味方がいるんだ!絶望しやがれ!
先生!ワルワの砂荒らし!出番だぜええ!」
手下全体に広がる動揺を収めようと、盗賊頭は切り札を切る。
爆発音と共に砂丘の一角が消え去り、代わりに巨大なサンベルトスネイクが現れた。
そしてその頭に乗る黒衣の存在。
その黒衣から放たれるプレッシャーは辺り一面を覆い、それが間違いなく悪名高き『ワルワの砂荒らし』エルガイアであることを物語っていた。
「・・・・!な、なんだって?」
絶句の後に搾り出されるバルの言葉が全てを物語っていた。
が、それ以上の時間も与えられなかった。
【第四章 行動と結果】
都会に再度潜り込んだアルテリオンは早速行動を始めた。
三日目に現れた騎兵…彼らはエグゼムを優先して攻撃した。そして、自分も
フツノは自分のことをエグゼムと勘違いしていた。もし彼がフツノの部下ならば自分に危害を加えるだろうか?
否、上司が直々に誘った相手ならば手は出せないはず…つまり、彼はフツノとは無関係いやもしかしたら対立する存在なのかも知れない。
ならば、彼いや彼らに協力を求めることが出来れば、フツノを止められる筈だ。
この世界に来てから今日までの行動を振り返ってみると彼らに会うには酷く簡単だった。
人前に現れればいい。たったそれだけで彼らは現れる。
しかし、それだけではただ自分の命を危険に晒すだけで意味がない。
簡単だ。メッセージを残せばいい
幸いにも『クソガキ』共から戴いたエアスプレーという便利な道具がある。
これで「フツノに気をつけろ」とメッセージを残せば彼らも協力者の存在に気づいてくれるだろう。
昔偉い人は言っていた。
「口だけなら寝たきりの老人ですら海賊になれる。難しいのは其を実行すること」
ただ人前を通り過ぎただけで、エグゼムに襲われる日々…バルムンクが無いこの状態じゃ逃げるだけで精一杯だ。
誇り高い騎士が逃げの一手しかないとは屈辱の極みだ。塩ッ気のある血の味を何度味わったことか…
その屈辱的な日々が1週間過ぎた頃…遂に変化は起きた。
人通りの少ない路地裏…アルテリオンは物影に隠れ蜘蛛のように獲物が現れるのを待っていた。
「カツーン…カツーン…」
ゆっくりと獲物が近づくと共に自慢の猫耳を露にする。
「………あと少し」
アルテリオンがそう呟いた瞬間
「クククッヒャハハハハァ」
耳障りな笑い声と共に黒い戦斧振りかざす騎兵が目の前に現れた。
【インタールード 異端】
布津野珠美は研究班から来たレポートを難しい顔で睨んでいた。
そこに書いてあることを分かりやすく説明するとアルテリオンはエグゼムでも、人間でもない未知の生物であると書かれている。
「………人間の遺伝子に酷似した遺伝子配列……そう…なのね」
その結果を素直に受け止め、布津野はレポートを屑籠に投げ捨てた。
そして、また別の仮説を立ててみた。
人類が誕生してたった1億と少ししか立っていない。
だが、その短い期間の中で異端が現れる可能性はいくらあるだろうか?
「………アルテリオン…あなたはその異端だというの……」
布津野は邪悪に微笑みつつ、保存液内で朽ちていく大剣を見た。
本当は遅筆人さんが書き終わってから書こうとしたんだけど、この状況じゃしばらく書けそうになかったから強行策に出させてもらいました。
ごめんなさい。
本来なら襲撃するのは白川あたりにしたかったけど、あまりインパクトがなかったから御堂さんを使わせていただきました。
まぁ後から出すので関係ありませんが…
ところで、今回はちょっと書き方を変えてみましたがどうですか?大差ないですかね?
>>598 乙。
誰かが投下し終えるまで待つ必要は無いと思うよ
それより気になるのは、SS投下の間隔がリアルで書いているように間延びしていること
SSはメモか何かに書いて、投下するときは間を空けずに一気にやったほうがいい
でないと他の職人さんのSSとバッティングして読みづらくなる場合があるから
SSの書き方については、職人さんの書きやすいほうでいいんじゃね?
【隊長の称号】
巨大なサンベルトスネイクはその巨体に見合わぬ動きで滑るように野営地まで到達。
その巨体を存分に活かしてあらゆるものを跳ね飛ばす。
護衛・馬車・盗賊・・・
更に降り注ぐは岩石のように固められた砂の雨。
「な、何しやがる!俺たちまで殺す気かああ!!」
「クハーッハッハッハ!貴様らが弱いからいけないのだ!」
敵味方問わず加えられる攻撃に盗賊頭が吠えるが、エルガイアはまるで意にかえす様子はない。
うろたえる盗賊頭を後ろからゴロモンが挟みで切り取る。
本来ならこれで依頼主死亡だ。助っ人であるエルガイアは戦う理由はなくなる。
しかしそこはエルガイア。
目的の為の戦いではなく、戦いの為の目的でしかない。
盗賊頭を殺した直後、ゴロモンは巨大サンベルトスネイクに飲み込まれてしまった。
「ちっ!いくよ!蛇相手にしても埒が明かない。見た感じありゃ作り物だ。
作り主の方を潰せば消える!」
召喚術を修める者としてのバルの見立ては正しかった。
砂術師であるエルガイアが強化し作り出した半擬似生命体。確かにエルガイアが倒されれば無力化するだろう。
だが、間違いは巨大なサンベルトスネイクよりエルガイアの方が圧倒的に強いという事だ。
ゴロモンは飲み込まれ、剣士は岩砂の雨に撃たれ気絶。
エルガイアに立ち向かうのは重戦士とバルの二人だけなのだ。
厚い装甲で被弾に構わず重く強い攻撃を仕掛ける重戦士。
変幻自在な間合いと軌道の流星錘で攻撃をするバル。
そして砂を操り、様々な攻撃を繰り出すエルガイア。
この三人の戦いは苛烈なものになったが、やはりバルが最初に脱落した。
攻撃手段を持っていても所詮は戦いが本職ではない工兵なのだ。
三人の中では戦闘力で大きく劣る。
砂の弾丸を無数に受け、砂丘を転がり落ちる事になる。
一方、重戦士は砂の弾丸を受けてもその厚い装甲が防ぎ、かまわず一撃を加えるのだがまるで当たらない。
重戦士とエルガイアの速度の差は大きく隔たりを持ち、戦いが進むに釣れその差は更に大きくなっていく。
「クハハハハ!弱い!弱すぎるぞ!」
エルガイアが早くなっているのではない。
砂の粒子が鎧の間接部分に詰まり、重戦士の動きを封じているのだ。
やがて動く事が出来なくなった重戦士はエルガイアの作り出した流砂にただ徐々に沈んでいく恐怖を味わう事になる。
「詰まらんな。せめて断末魔くらいは楽しませてくれ。」
既に腰まで沈んだ重戦士を放置して、ようやく起き上がったバルへと向きかえるエルガイア。
その背には砂で作られた矢が無数に浮かんでいる。
「死ね!」
絶望的な宣言と共に砂の矢が飛ぶ。
もはや防ぐ事も出来ず、目を硬く閉じるバルに降りかかる砂。
そう、砂の粒なのだ。
恐る恐る目を開けると、バルの前にグラスマンが仁王立ちをしていた。
「・・・なんで?」
「僕は隊長だよ?部下を守るのは当然さ。」
驚きのあまり言葉の出ないバルにグラスマンがにっと笑いかける。
「貴様、どういうことだ?確かに矢に当たったはず・・・。」
「・・・」
突然の乱入者にエルガイアも不思議そうに声をかけるが、グラスマンは応えない。
雲が風に流され月明かりが差し込む中、グラスマンの顔がいつもからは考えられないほど険しく変わった。
それは味方であるバルすらも言葉を失うほど・・・。
いや、味方であるからこそ、その変わりように言葉を失ってしまったのだ。
【隊長の称号】
舞い上がる砂を残し、グラスマンの身体が消える。
エルガイアの横を通り過ぎ、既に首まで沈んだ重戦士を片手で掬い上げる。
「貴様・・・」
その行動にプライドを傷つけられながらも、力量を読み取りエルガイアは喜んでいた。
久しぶりに殺し甲斐のある相手に恵まれた、と。
気絶した重戦士、剣士を抱えバルの元へ降ろすまでエルガイアは何もしなかった。
これは「殺しの感覚を忘れない為の殺し」ではない。
「殺しを愉しむ為の殺し」なのだから。
不意打ちで殺すのは容易いが、それではエルガイアの気がすまない。
「あんた・・・」
穏やかな顔で二人を降ろすグラスマンに声をかけようとするが、バルの口からはそれ以上の言葉が出てこない。
そんなバルにグラスマンは竜鱗の呼吸の説明を手短に済ます。
その能力と欠点を。
呼吸を止めるという制限の為、長くは持たないであろう事も。
だから・・・エルガイアを足止めしているうちに二人を起こして逃げるように、と。
「・・・一分でいい。戦い続けとくれ。
一分後、逃げていい。行きがけの駄賃であの蛇を砕いてくれればね。
あれは砂を媒体にした擬似生命体だ。飲み込まれた・・・ゴロモン、は溶かされちゃいないだろ。
後はこっちで何とかするからさ。」
絶望的な戦いに赴こうとするグラスマンにバルが声をかける。
振り向いたその目に映るバルの瞳は自己犠牲を決意した者の目ではなかった。
だから・・・
「わかった。」
短く言い残し、エルガイアの元へと進んでいった。
「私はエルガイア、通称『ワルワの砂荒らし』!貴様を殺す者の名だ、よぅく記憶しておけい! 」
もちろん逃がす気などなかったが、逃げもせずに向かってくるグラスマンを見てエルガイアの目が三日月のように愉悦に細まる。
そうして、二人の熾烈を極める戦いが始まった。
砂が吹き荒れ、槍と化し、壁と化す。
だが鉄の硬度を持つグラスマンはそれをことごとく砕いていった。
間合いを取り砂での攻撃を仕掛けようとするエルガイアに、間合いを詰めて近接格闘線に持ち込もうとするグラスマン。
両者の戦闘は拮抗したものだった。
ガードを固めあらゆる攻撃を打ち砕くグラスマン。
装備も軽装なので重戦士のように鎧の隙間に砂が詰まって動けなくなることもない。
しかしそれもほんのわずかな間でしかない。
ただの組み手ならばいざ知らず、『ワルワの砂荒らし』の二つ名を持つエルガイアを相手にするのだ。
その運動量は比類なきものとなり、グラスマンの体内酸素は急激に消費されていく。
更に細かすぎる砂は機動力だけでなく、その拳の威力まで奪っていく。
「クハハハ!貴様、鉄の体を持っているのか!?だがもう切れがなくなってきているぞ!」
砂の壁を砕く文字通りの鉄拳を喰らい身をのけぞらしながらも、その余裕は失われない。
傷やダメージ自体はエルガイアのほうが負っているにもかかわらず、だ。
徐々に戦いの趨勢は逆転していく。
【隊長の称号】
砂の中から飛び出た砂の塊に顎を直撃され吹き飛ばされるグラスマン。
拳大の砂塊だが、その実数トンの砂を魔力で圧縮した砂爆砲なのだ。
「ぐはっ!!」
強い衝撃とともに呼吸が切れ、鉄の硬度が失われてしまう。
そこに容赦なく追撃の砂弾が降り注ぐ。
永遠にも似た一分にようやく到達しようとした時だ。
「久しぶりに楽しかったぞ!『鉄人』の二つ名を俺自らが与えてやろう。
あの世へと持っていけい!」
とどめを刺そうと砂に魔力を込めるエルガイアの背後に、巨大な槌が形成されていく。
かける時間に見合うだけのものだった。
砂爆砲の数十倍の威力を持つ恐るべき攻城槌は周囲の砂を巻き上げ引き込み続ける。
「・・・ああ、ありがとうよ!一分だ!」
最後の力を振り絞り、大きく息を吸い込んで跳躍!
エルガイアの槌の形成はまだ終わっていない。
「最後に悪あがきを!逃がすものかよ!」
跳躍したグラスマンをさえぎるように首をもたげるのは巨大なサンベルトスネイク。
だがそれはかえって好都合というものだ。
狙いは逃げることではなく、サンベルトスネイクなのだから!
鋼鉄の弾丸と化したグラスマンはサンベルトスネイクの頭を一撃で打ち抜く。
サンベルトスネイクは大きく反り返りその巨体を砂に落とし、だらしなく顎を広げている。
通常蛇類はその柔軟にして強靭な筋肉と体構造から打撃は効き難い。
にもかかわらず、一撃で顎の骨を砕き脳に衝撃を伝えたグラスマンの体当たりの威力を推して知るべし!
それと同時に砂丘は湿原へと姿を変えていた。
「異界召還!スネイル大湿原!!ゴロモン!きっちり仕事しな!」
突然の異変の元はバルだった。
朱塗りの異界召還門を地面に突き立て、この一帯に大湿原を呼び寄せたのだ。
通常の砂漠ならばこのような召還はできなかっただろう。
ここが河によって作られた砂丘であり、水属性が強かったからこそ、だ。
崩れ落ちるサンベルトスネイクの顎から這い出たゴロモンは複雑な呪印を紡ぎだす。
その周囲に集まる水の量は圧倒的なものだった。
一方、いきなり媒体であり武器である砂漠が湿原に変わってしまったエルガイアの砂の槌は途中で形成が止まってしまう。
「ええい、させるかああ!」
ぬかるんだ足を何とか踏みしめ、砂の槌をゴロモンへと放った。
このまま手をこまねいて術の完成を待っているわけにはいかないのだ。
未完成とはいえ、呪文詠唱中のゴロモンを殺すだけの威力は十二分にある。
職人支援age
【隊長の称号】
放たれる砂の槌がゴロモンに到達する瞬間。
粉々に砕けて四散した。
未完成とはいえ、全てのものを貫通粉砕するだけの威力はあったはずなのに!
「ば、馬鹿な!化け物か!?」
驚きのエルガイアの声にこたえるように砂煙の向こうに現れたのはグラスマン・グラスハーツ!
グラスマンが身を挺してゴロモンの盾となったのだ。
そして呪文は完成する。
「重水蛟瀑布!!」
湿原だからこそ成し得た超高レベルの水呪文。
繰り出されるは津波の具現。
巨大な水塊は恐るべき圧力を以って凡てを打ち砕く砲と化す。
ここが砂丘ならばエルガイアはこれを防ぐこともできたかもしれない。
だが今は大湿原。
身を守る砂はない。
「ぐがあああああ!おのれえええええ!」
まともに術を喰らいながらも大気を震わせる咆哮を残し押し流されていくエルガイア。
「これで死んだとも思えないが・・・な・・・。」
グラスマンが崩れ落ちながら零した呟きとともに、戦いは終わりを告げたのだった。
「隊長、気づいたかい?」
目を覚ますと、すぐ脇にバルの顔があった。
気絶したグラスマンに肩を貸し、ハイネスに向かって歩いているのだ。
剣士と重戦士はまだ気づいていないようで、ゴロモンの背に乗せられている。
「はは・・・やっと隊長って呼んでくれたね。」
自分で歩きたいが、力がまったく入らない。
仕方がなくバルに肩を貸してもらったまま答えるが、バルは顔を背けてしまった。
「勝てると思ってたわけじゃないよね。何で逃げなかったんだい?」
暫くの沈黙の後、顔を背けたままのバルがボソッと呟くと、グラスマンの顔にもう一度笑顔が宿る。
「僕は隊長だよ?僕が隊長になったからにはみんな仲間だ。」
「・・・っち。あんた騎士の癖に隊長に向いてないよ。」
「・・・はは・・・まあ、そうだよね。こうやって部下に肩を貸してもらえないと歩けもしないんだから。」
切って捨てたようなバルの返答に弱弱しい笑みで俯くグラスマン。
「だけど・・・あたしらは仲間だ。
肩書きだけの奴の踏み台になるのは真っ平ごめんだけどね、戦友に肩を貸すのは悪くないもんさ。
これから頼むよ、グラスマン隊長。」
「ああ!」
ようやく顔を向けるバルに力強くうなづくグラスマン。
こうして第六遊撃対隊長グラスマン・グラスハーツが誕生したのだった。
了
>>605 乙なんだけど、中途半端な内容のレスを毎日投下なので、最後まで読めても感動が薄い
1レス1レスに盛り上げる要素を盛り込むわけでないから中弛みするし
一気に投下してとは言わないから、せめてもう少しまとめてから投下して欲しい
話は少し前にさかのぼる。
場所は同じ、花畑の近くの小屋。
数匹の猫を連れ、ネコミミまで付けたアルナワーズがドアをノックしている。
「どうぞ」
中からの返事にドアを開けると。
そこには数十匹に及ぶ猫の群と、猫の世話に奮闘するヴァンエレンの姿があった。
部屋の中央には巨大招き猫が据え付けられ、まるで猫のテーマパークのようだ。
「よしよし。ほ〜ら、ミルクとネコ缶だぞ〜
あっこら!私のマントにおしっこを引っかけるなー!」
「猫ちゃんのお世話、ご苦労様ね〜
ほら、こちらもちゃんと連れてきたわよ。これで丁度百匹目」
「そうか!ついに百匹の猫がそろったのか!」
ヴァンエレンの声には、押さえきれない喜びが混じっていた。
そもそも、地下図書館で見つけた一冊の本が全ての始まりだった。
『巨大招き猫の像の周りに百匹の猫を集め、自身猫となりて「ねこじゃねこじゃ」を踊れ。
古に封印されし偉大なる猫神は、汝の望みを叶えるであろう』
その言葉を信じ、猫を集めようとしたものの、なかなか上手く行かなかった。
そんな時だった。落ち込むヴァンエレンの前に、アルナワーズが現れたのは。
彼女は、今のヴァンの窮状は自分達にも責任がある、と謝罪し、協力を申し出た。
そしてアルナワーズの協力のもと、ついに儀式の条件がそろったのだ。
「お前には世話になったな。私が解放されたら、褒美の品をくれてやろう」
「身に余る光栄、つつしんでお受け致します」
ふんぞり返るヴァンエレンと、優雅に一礼するアルナワーズ。
だが、伏せられたアルナワーズの笑顔は、優雅どころではなかった。
この儀式は絶対に成功しない事を、アルナワーズだけは知っていのだから。
実は、学園に伝わる伝説を少し改訂したものを、アルは図書館に何冊か仕掛けてあったのだ。
つまりヴァンエレンが信じ込んでいるのは、まるっきりの作り話。
協力を申し出たのも、ヴァンエレンを信用させ、作戦の成功を近くで見るため。
落胆する吸血鬼を楽しみつつ、恩を売る事ができる一石二鳥の作戦だ!
「幻術で小屋の中は見えないし、音も外には聞こえない。
ドアには封印が施してあって、すぐ破ることは不可能。
儀式を始めるなら、今すぐが一番よ〜」
「それもそうだな!では早速始めるか!!」
待ちきれないとばかりに、ヴァンエレンはネコミミを装着。
ついに儀式は始まった。
まずは巨大招き猫の周囲に描かれた魔法陣に、100匹の猫を配置。
ヴァンエレンとアルナワーズは、それぞれネコ耳をつけて向かい合わせに立った。
「さ〜あ、みなさん!お手を拝借ぅ〜!」
ぱぱんがぱん!
ヴァンエレンの手拍子にあわせて、陽気な音楽が流れ出す。
曲は【クック・ロビン音頭】
昔フィジル島を根城にしていた海賊、キャプテン・クックの死を悲しむ歌だ。
お祭り好きな性格だったクックは、自分の葬式用にこの歌と踊りを作成したと言われている。
事の真偽はともかく、何もかもでたらめな儀式が始まる。
百匹の猫と像は集めた。
だが自分が猫になるためには、ネコ耳をつけただけ。
踊りは【ねこじゃねこじゃ】ではないし、そもそも情報源が創り話だ。
すべてはアルナワーズの手のひらの中。
今のヴァンエレンは、まるで踊らされ続ける哀れな操り人形のよう。
だが、しかし。奇跡は起こった。
魔法陣の中心に据えられた巨大な招き猫の像が立ち上がり、音楽に合わせて踊り始めたのだ。
それとは逆に集められた猫たちは、所定の位置に座ったままぴくりとも動かない。
驚いたのはアルナワーズだ。
絶対に失敗すると確信していた儀式魔法が、成功しているのだから。
それでも、驚きがほとんど顔に出なかったのは、さすがと言うしかない。
素早く頭を切り替えて、次にすべき事を考える。
奇跡は起こった。儀式は成功しているように見える。
では、嘘から出た真実の結末はどうなるのだろうか?
鬼がでるか蛇がでるか、誰でも知りたくなるんじゃない?
一方のヴァンエレンには、そんなアルナワーズの心の中が分かるはずもない。
やはり言い伝えは正しかった!長い間の苦労が、ついに報われる時が来たのだ!
嬉しさのあまりオーバーアクションになる時もあるが、それもご愛嬌。
もうすぐ光臨する猫神の力で、私は自由を勝ち取るのだ!
それぞれの思惑を胸に踊る2人と1体を、二百個の瞳が静かに見つめていた。
異変が起きたのは、曲が2番に入ったときだった。
ドアをノックする音がして、リリアーナが中に呼びかけてきたのだ。
「アル・・・?中にいるの?」
ヴァンエレンは驚いて、目でアルナワーズに話しかける。
『気づかれたのか?!このままではまずいぞ!』
「そんなに警戒しなくても大丈夫よ〜。
言ったでしょ?中の様子は外からは見えないし、音も聞こえない。
ドアには封印を施してるから、教師クラスの魔力がないと突入も無理。
それより急がないと、レイド先生を呼ばれたりしたら大変よ?」
アルナワーズの言うように、誰かがドアを攻撃しているようだが、ドアはびくともしない。
「分かった!急いで儀式を続けるぞ!」
慌てて踊りを再会するヴァンエレン。
だがその時、ドアの横の壁が轟音と共に砕け散った!
「おーっほっほっほっほっほっほ!!
アルナワーズさん!あなた達の悪巧みもここまでですわよ!」
「フリージア!やっぱりアルは中にいたの?!」
壁の穴から入ってきたフリージアとリリアーナが見たのものは。
変なポーズのまま硬直している、ヴァンエレンと百匹の猫。
そして巨大招き猫と踊り続けるアルナワーズの姿だった。
それからはいろんな事が一度に起こった。
百匹の猫たちを見たフリージアは、自分が何をしに来たかも忘れて猫を抱きしめに向かった。
リリアーナはアルナワーズを止めようとして転び、魔法陣の上をヘッドスライディングした。
ヴァンエレンは硬直したまま、フリージングドール・マリオネットに跳ね飛ばされた。
そしてアルナワーズは儀式の失敗を悟り、逃げ惑う猫たちをすり抜けて外に逃げ出した。
ドアの外に出たアルナワーズは、軽くため息をついく。
「もうちょっとで儀式が成功したのに、残念ね〜
最初の目的は達成できたから問題は無いんだけど」
どのみち失敗する事は分かっていた儀式だ。
好奇心を満たせなかったのは残念だが、十分満足できる結果だろう。
後は、落ち込むヴァンエレンの心の傷に、どうやって塩を塗り込むか考えればいい。
そう自分を納得させて、窓から部屋の中をのぞき込んだ。
部屋の中の混乱はますます深くなり、まるで魔女の煮込んだ大鍋の中身のよう。
アルナワーズという名の魔女に踊らされた人々が平穏を取り戻すのは、まだまだ先のようだった。
数日後、招き猫広場で【驚異的な人数でクック・ロビン音頭を踊る会】が開かれた。
イベントは大成功だと言っていいだろう。
驚異的とまでは言えないが、夏休み中にしてはかなりの数の生徒が集まったのだから。
やはり学園の生徒は、こんなお祭りごとが大好きなのだ。
そして踊る生徒たちと巨大招き猫を、再び集まった4人は少し離れた場所から眺めていた。
「それにしても、夏休みに楽しい思い出ができて良かったわ〜
みんなも楽しそうに踊ってるじゃない?儀式は大成功ってところね」
「アル!今回は偶然何事もなく済んだけど、毎回うまくいくとは限らないのよ!
あんまり変な事ばかりしてると、どうなっても知らないんだから!」
事件発覚後、学園側はすぐに調査チームを設置して、招き猫の像を徹底的に調べあげた。
結果、招き猫の像はある種の音楽に反応して踊り出す、一種のゴーレムであることが判明。
特に害はないとの判断により、再び広場に像を戻すことにした。
だが、この調査結果を疑問視する声もある。
招き猫に首輪と鎖がつけられて、持ち運べないようにされた事がその理由だ。
リリアーナの言葉どうり、何事も起きなかったのは幸運だったのかもしれない。
「まあまあ、リリアーナさん。そんなに怒らなくても大丈夫ですわよ。
猫ちゃんたちも無事に戻ってきましたし、終わりよければ全てよしですわ。
おーっほっほっほっほ!!」
百匹の猫達に囲まれるという猫好きの楽園を体験したためか、フリージアは上機嫌だった。
その横の日陰では、ヴァンエレンが虚ろな目で座っている。
期待が大きかっただけに、落胆も大きかったのだ。
「もう。そんなに落ち込んでちゃだめよ。今回の失敗を次回に生かさなきゃ。ね?」
「そうですわ。今度から猫ちゃん達を集める時は、私に言ってくれれば手伝いますわよ」
リリアーナとフリージアの励ましも、ヴァンエレンの耳には届いていないようだった。
「あ。あなたに渡すものがあったのよね〜。はい、これ」
そんなヴァンの目の前にアルナワーズが差し出したのは、一枚の表彰状だった。
学園の秘密を解き明かした功績を称え、これからも秘密解明に尽力して欲しいと書かれている。
表彰状を見るヴァンの瞳に、みるみる生気が戻ってきた。
「負けん!私は負けんぞーっ!必ずこの学園から脱出してみせるからなーーっ!!」
ヴァンエレンの叫びは、高く高く夏の青空に吸い込まれていったのだった。
魔法少女と冒険スレの妄想SSです
登場各キャラのみなさまに感謝を
もっとキャラを出したかったのですが、できなかった・・・
クロバスキーさん遅筆ですみませんorz
他の職人さんたちのGJな投下と、読んでくれた人の感想が生きる支えです
>>615 超GJ!面白かった!
遅筆人氏はヴァンとアルのコンビが本当に好きなんだな、
実際見てて飽きない
また機会があったら投下して欲しい、ワクテカしながら待ってる。
最近読み応え多いSSが増えたな
一時の過疎が嘘のようだ、職人さん皆乙
焦らず自分のペースで頑張って欲しい
職人に聞きたいけど、パロしやすいキャラしにくいキャラってある?
>>617 明確な行動理由を持つキャラは、ネタを思いつきやすいかもしれません
深い背景があってそれがまだわからないキャラや
ある程度行動が予測できないキャラは難しいです
どちらにしても他の人のキャラを動かすのは冷や汗ものです・・・
619 :
名無しになりきれ:2007/10/04(木) 08:43:12 O
がんば
>617
わかりやすいキャラ、無駄のあるキャラだとネタにしやすい。
顕著な例だと、魔法少女のフリージアの猫好きなんてストーリーに何の関係も無い無駄な設定だけど、だからこそキャラが生きるしネタにしやすい。
逆にミッション達成のために最適化されたようなキャラとか、表面上現れないけど奥底に何かがあるキャラは扱いにくい。
あと、立ち居地がはっきりしているキャラは使いやすい。
魔法少女のアルナワーズだと後ろで糸を引っ張るポジション、ヴァンエレンだとピエロ的ポジションと、立ち居地がはっきりしている。
立ち居地がはっきりしていると、どういう行動をとるかもわかりやすいから。
>>617 キャラが立ってる人、目的意識がある人、ある程度考え方が予測できる人は使いやすいですね。
作中じゃ布津野が一番いい例、サドキャラにテロ
アルテリオンも薄幸キャラとして立ってるし、性格等はアの付く聖騎士とか騎士王に似た部分もあるのでやりやすいです。
誰かと似たようなキャラや、特に目立った特徴がなあキャラも使いにくいですね。
黒刃だと崎嶋と条咲あたりが難しいっす。
とりあえず、アドバイスもらったんでプロバイダ契約して来ました。来週あたりに書きます。
アのつく聖騎士って現カイザースレのアルラック?
>622
ヒント:アグ+○○○式海岸
オルランドゥのかませ犬の方が分かりやすい。
○○○式って見た瞬間反射的に108式と入れてしまったw
【月と森と毒茸@】
大陸と島を分け隔てる大海。
そこは大渦巻きと竜巻が群発発生する恐るべき海域である。
人魔共にそこを越える事は至難を極め、それ故お互いの交流は無いも同じであった。
しかし今ここに大陸側へと向かう一隻の船がある。
一転して凪の海で周囲を深い霧に包まれながらも、快調に船は駆けてゆく。
波を切る音も無く、静かに、滑るように・・・
その船の甲板に一人の女が立ち、気持ちよさ気に夜空を見上げていた。
この深い霧の中にあっても天に輝く月の光を確実に捕らえているのだ。
そして数日後。
相変わらず霧に包まれている船はようやく陸に到着した。
だが接岸することなく、そのまま内陸へと進んでいく。
音も無く、揺れる事も無く進む船には既に生きているものは誰一人としていなかった。
触れれば切れてしまいそうな鋭く尖る三日月を見上げる女を含めて誰一人、だ。
浜辺を越え、森に差し掛かったところで女は船を下りた。
さまよえる霊魂によって作られた船は音も無く、また海へと帰っていく。
「・・・ここからビスティーム大樹海ね。50年も前の地図だけど、あってそうじゃない。」
地図を広げながら見上げる女の先には巨大な木の群れが立ちはだかっていた。
大陸と東の島を隔てるもう一つの障壁。
方向感覚を狂わせ、危険な生態系をなす大樹海。
しかし何より恐ろしいのは、樹海そのものが一つの生命のように蠢き、開拓者を拒む事だった。
それが大陸中央にある魔の森と双璧をなすビスティーム大樹海なのだ。
「着いた早々ビンビン来るわ。月の波動・・・。思ったより早く旅は終わりそうね。」
それを知ってか知らずか、女は何の迷いも無く樹海へと入っていく。
東の島で聖域を守っていたが、モンスターによりご神体を破壊され、代わりとなるものを求めてやってきた女。
巫女でありながら使命の為にリッチと転生したナナミである。
ナナミが一歩樹海に足を踏み入れたとたん違和感を覚える。
まるで異世界に入り込んだ異様な感覚。
しかしナナミが求めるに足る月の波動はこの奥から発せられているのだ。
こうしてナナミの樹海探索が始まった。
広大な樹海であるが、ナナミは迷うことは無い。
強き月の波動に向かい一直線に歩いていくだけなのだから。
そしてこの危険な樹海の中を一直線に歩けるだけの力も持っていた。
樹海に入ってから数日。
朝と無く夜と無く襲い掛かる危険な生物や奇怪な植物を切り払い、ただひたすら前へ前へ。
そしてついには開けた土地へと行き着いたのだった。
そこでナナミが見たものは・・・
それを目にしたときはさすがにナナミも驚いてしまった。
森が突如として途切れ、一転荒涼とした大地。
その中心にまるで絡み合うように立つ二本の木。
その枝が抱きかかえるようにソレはあった。
まるで満月のようなその球体。
その球体こそが、ナナミがたどってきた強い月の波動を醸し出していたのだ。
「やった!これこそご神体にふさわしいわっ!」
思わず声を上げ喜ぶナナミ。
その喜びゆえにまったく気づかないものがあった。
【月と森と毒茸A】
「おや、怪しい来訪者ですねえ。」
声をかけられて初めて気づいた。
木の近くに誰かがいたのだ。
それをよく見ると・・・
(キノコがシイタケ焼いてるううううぅ!?)
人間大のキノコ・・・いや、キノコ型の怪人が串で刺したシイタケを焚き火にかざしていたのだ。
「怪しいってあんたにだけは言われたくないわよっ!」
思わず本音が口から出てしまってからあわてて口を押さえるがもう遅い。
串シイタケを齧りながらキノコ怪人が近寄ってくる。
密かに悪臭雲の呪文を虚空に描きながら、様子を見るナナミを上から下まで見回すキノコ怪人。
よく見ると白い白衣を着込んでおり、片手には酒の瓶が握られている。
暫く見回すと、キノコ怪人の表情が和らいだ。
「きゃははは!なかなか言いますねえ。私はドクターマッシュ。
その格好からするとタカマガハラからですかな?
50年ほど前にタカマガハラの大妖が戯れに魔海域を作ってからパッタリと来訪者が途絶えていたものですが・・・
ようこそ、タカマガハラの友人よ。歓迎しますよ〜。」
酒臭い息を撒き散らしながらドクター・マッシュは名乗り、ナナミを焚き火のほうへと案内をした。
意外と友好的な対応に、悪臭雲の呪文をキャンセルしてついていくことにする。
何かあればいつでも倒せる。
それよりも情報を引き出すだけ引き出してから、という判断の元だ。
焚き火までくると、酒瓶や樽が散乱している。
かなり酔っ払っているようで、ナナミが勺をしながら話を促すとドクター・マッシュは聞きもしないような事まで話してくれた。
元々は人間の巫蠱の徒だったが、キノコの味付けを錬金術的に味付けをして食べたらこのような体になってしまったということ。
年齢は100程までは数えていたがもう何歳かも覚えていないなどなど。
「元の体に戻ろうと研究をしているのですか?」
というナナミの問いに、ドクターマッシュは大爆笑しながら答える。
「そんなつもりはまるで無い」と。
キノコ怪人の体になってから頭脳は冴え渡り、人の寿命の枷も取り払われた。
それより何より、自身から生成される胞子は様々な巫蠱の術の材料となってくれるのだから。
そして話はこの場所についてに移って行く。
「このビスティーム大樹海は一つの生命体と言って良いでしょう。
しかし、この沙羅双樹はその中にあって異端の存在なのです。
見なさい、この荒涼とした大地を。
沙羅双樹が大地の養分を全て奪い、他者を駆逐した結果なのですよ。
そしてその集大成があの枝に包まれた抱月という果実なのです。
私はこれが何なのかを研究しているのです。」
高らかに宣言するドクター・マッシュの話を聞きながらナナミは状況を整理していく。
この沙羅双樹と抱月と呼ばれる果実が何なのかはわからないが、これだけ強く月の波動をかもすものならばご神体として申し分ない。
ぜひとも聖域に持って帰りたい。
これを研究しているというからにはそれを申し出たとしても譲ってもらえることは無いだろう。
見たところ酔っ払いの狂キノコだ。それほど力を持っているとも思えないが、既に仕込みはしてある。
【月と森と毒茸B】
様々な打算と計算を寄り合わせ、ナナミは決意をした。
「ドクター・マッシュ。私はタカマガハラから来た月の巫女です。
この沙羅双樹と抱月をご神体として持ち帰ることに決めました。」
にこやかに宣言すると、ドクター・マッシュの表情が険しいものへと変わった。
「ほう、そうですか。しかし私もこれを研究する者。その申し出は了承するわけにはいけませんねえ。」
酒を瓶からラッパのみをしながら帰ってくる言葉は想定済みのものだ。
ナナミはに立ち上がりながら更に宣言する。
「それでは、力づくでも・・・!」
「よろしい!では私も力に訴えることにしましょう!魔道カルタ展開!!」
妖艶な笑みを浮かべるナナミに対し、ドクターマッシュも立ち上がる。
どこから持ち出したのか、数枚の板が宙を舞い分解、その周囲へと散らばっていく。
「いまさら何をしても無駄よ。すぐに私の下僕にしてあげる。」
ナナミの戦闘は酒を飲み交わし始めたときから始まっていたのだ。
勺をするのに見せかけ、酒にアンデッド化の薬を混ぜておいたのだから。
指先一つでその効力を発揮し、ドクター・マッシュの体を蝕み始める。
「きゃははは!既に一服盛っていたとは見事です!
しかし私とて巫蠱の徒の端くれ!この程度・・・!」
身体を蝕む薬に気づき、白衣を広げる!
白衣の内側には無数の試験管が取り付けられており、すばやい手で何本かを取り出し飲み込んでいく。
更にはまるで頭を掻きフケを落とすかのように胞子を落とし飲み込んでいく。
「ヤモリの目玉!ムカデの左32番目の足!サルファバルーンの汁!ヨウ素!そしてぇワタクシ特製胞子!
それらを体内溶解炉で調合!!・・・ぼぇええええ・・・」
むぐむぐと飲み込んだ後、派手な嘔吐をするドクター・マッシュの姿にナナミの妖艶な笑みも引きつってしまう。
だがそれは酔っ払いが吐いた訳ではなく、体内で調合した薬がナナミの薬を除去したのだった。
「ふぅ〜。分析によると、あなた、リッチですね?」
吐き終わってすっきりしたのか、また酒を飲みながら展開した魔道カルタを操作しながらナナミの正体を言い当てる。
あっさりと片がつくと思っていたが、意外と力を盛っていたことに対し驚きはしたが、負ける気はしない。
なぜならばナナミの二つ名は月夜の巫女。
沙羅双樹と抱月から放たれる強い月の波動はナナミを極限まで強くしてくれるのだから。
「おとなしく下僕になっていれば幸せだったものを!」
力溢れるその手を振るい、放たれる術は「創傷」。
治癒魔法を応用したその術は防ぐ手立てが殆ど無い上、今のナナミが使えば致命傷を与えて有り余り威力を発揮する。
実際にドクター・マッシュの身体には無数の傷ができ、その傷一つ一つが恐ろしく深いものだった。
あまりの大きさに傷はダメージだけでなく、身体的機能すらも奪っていく。
沙羅双樹にもたれるように寄りかからなければ立っていることすらできないように。
「きゃははは!すばらしい!あなたはこの沙羅双樹と抱月から出る力を自らのものとしているわけですか!
しかぁあし!それは何もあなただけの特権ではないのですよ?」
狂気を含んだ笑いをあげながら、この期に及んでまだ分析を続けているのだ。
そして、おもむろに沙羅双樹に手を当てると・・・致命傷だった無数の傷が瞬時に消えた。
「このキノコの身体になってから、このような事もできるようになりました。
キノコと同じように、他の生物からエネルギーを簡単に吸収できるようにね!」
ずいと寄るドクター・マッシュに思わず一歩引いてしまうナナミ。
酔っ払い特有の酒気と、得体の知れない狂気、そして何より、自分の手が二つ潰された事に対し警戒を強めたのだ。
「だったらこういうやり方だってあるのよ!」
気圧されながらも人差し指を掲げ、光弾を発生させる。
これほどの大樹海ならそこに飲まれた死者の数も夥しいものになるだろう。
本来呼び寄せるだけのものだが、今ならどれだけの死者でも操ることができる。
・・・が、光弾が導く霊はただの一体たりとてなかった。
【月と森と毒茸C】
「ん〜〜、それは霊を導きアンデッドモンスターを召還する術のようですねぇ。」
展開する魔道カルタを操作しながら術を見極めるドクター・マッシュの声が続く。
「しかぁし、残念ながらこのビスティーム大樹海には死者は存在しません。
なぜならば、この樹海自体が一個の生命体であり、生も死もその活動サイクルの一環でしかないのですから。」
それはナナミにとって衝撃的な宣告だった。
今の状態でアンデッド召還ができないと言う事が、その言葉が正しいことを証明している。
すなわち、リッチとしての能力も大きく制限されるということなのだから。
「せっかくなので、私も似たようなことをして差し上げましょう!出番ですよ!」
その言葉と共に周囲の地面が割れ、うめき声を上げながら這い出てくる無数の人影。
ぼろぼろの服に、傷ついたからだ。虚ろな目。
その姿はまさにゾンビそのものだったが、唯一つ特徴があった。
それは頭に生えたキノコだ。
「開拓者やあなたのように沙羅双樹を狙うもの達です。
もっとも、今ではよき協力者ですけどね。」
得意げに話すドクター・マッシュにナナミは強い嫌悪感を抱いた。
この這い出てきたものたちは死んではいない。
だが、生きてもいないのだ。
「協力者って、キノコを脳に寄生させて操っているんじゃない!」
「きゃははは!それは主観的問題であり、私にとっては間違いなくよき協力者ですよ。
それに、あなたは死者を操る。私は生きたまま操る。何か違いがありますか?
魔法によって操っているわけではないので、ディスペルでも防げません、念のため。」
吐き捨てるように言うナナミの声もドクター・マッシュの狂気には届かない。
おいしそうに酒を煽りながら無数のキノコに操られた者達に襲われるナナミを見物している。
「・・・使いたくなかったけど、楽にしてあげる意味でも、ね!!!」
ナナミの身体から赤黒いオーラが放たれて広がっていく。
『死の宣告』
即座に命を奪う強力な呪である。
赤黒いオーラに触れたキノコに操られたものたちはバタバタと倒れていく。
その死体は即座に土に返っていくのは沙羅双樹が養分として吸収しているからだった。
沙羅双樹の周りの土地が荒涼としているのはこういったわけなのだ。
本来生物が入り込める場所ではない。
ナナミのように沙羅双樹によって力を得るか、ドクター・マッシュのように更に養分を吸収するもので無ければ・・・。
バタバタと倒れていくキノコ人を見ながらドクター・マッシュはあわてていた。
分析結果はすぐに出たのだ。
赤黒いオーラは留まる事を知らぬように広がり、このままでは自分までその効力を受ける、と。
「大技を出してきましたね!それでは、決着をつけようではありませんか!
きゃはははは!ミノフスキー胞子散布開始ぃ!!!」
大きく酒をかっ喰らうと酒瓶を放り投げ、ドクターマッシュは頭の笠をかきむしる。
そこから溢れる胞子は鈍く光りながら広がっていった。
その胞子がナナミの赤黒いオーラに触れると強く光、その数を増していく。
まるで侵食されるかのように、その光と勢いを増していくのだ。
「くくくく、その胞子は魔力を無限に消費するだけのものです。
しかぁし、リッチであるあなたはそれだけで十分な危機となるのですよ!」
その言葉通りだった。
赤黒いオーラを侵食しきり、いまやナナミを囲むように漂う。
火を起こそうとも風を起こそうともその発動体が魔力である以上、それは胞子に餌をやっているに過ぎない。
手に持つ大麻を振るおうともそれは胞子をかき混ぜるにしか過ぎない。
そして何よりも、ナナミがリッチである事が致命的なのだ。
【月と森と毒茸D】
本来アンデッドモンスターはこの世界とは相反する存在である。
生命を捨て、負の命を魔力によって保っている。
ターンアンデッドでアンデッドモンスターが消滅するのは聖なる力で負の命を保てなくするためだ。
この場合は保っている魔力自体を消し去ってしまうのだが・・・
魔力を奪われるにつれ、ナナミの姿が変貌していく。
少女の風貌が徐々に肉が透け、眼球部分が爛々と赤く光っている。
「きゃはははは!安心しなさい。程よく消えたらこのフラスコに入れて私の研究材料の一つにして差し上げますのでね。」
勝利を確信したドクター・マッシュの声が響き渡る。
リッチとなり、強力な力を得たのだが相性が悪すぎる。
だから、ナナミはリッチであることを捨てた。
正確にはリッチであることの特性、利点を、だ。
足に力を込め、一歩、また一歩と歩み寄る。
それはより濃いミノフスキー胞子に身を晒す事でもある。
近寄るにつれどんどんナナミの姿は変貌し、今や完全に骨だけの身体となってしまっている。
「ん、ん、ん〜〜。自棄はいけませんねえ。
あまりそういうことをやられると捕獲するタイミングを逸して完全に消し去ってしまうではありませんか、キャハ!」
楽しげに見つめるドクター・マッシュだが、ナナミは自棄になったわけではない。
一種の賭けではあるが確信めいたものを持っていた。
そしてその確信めいたものはこの一歩で事実となる!
更に一歩踏み出したとき、ナナミの身体の崩壊が止まったのだ。
それはミノフスキー胞子による魔力吸収と、沙羅双樹と抱月からの月の波動の加護の鬩ぎ合い。
近づけば近づくほど月の波動の加護は強くなり、この一歩で魔力吸収量を超えたのだ。
「???」
ドクター・マッシュも即座に異変に気づくが、理解するには至っていない。
理解するまで数秒とかからないだろうが、それで十分だ。
一気に駆け寄ったナナミは術ではなく、手に持った鈍器でドクター・マッシュを殴り倒した。
「ぶべっ・・・ひぃいいいい・・?!」
思考の最中、突然の物理的な攻撃になすすべも無く転がり悲鳴を上げたのだった。
そんな這い蹲るドクター・マッシュに差し伸べる手は青白く光っていることは言うまでも無い。
「あなたもライフドレインできるのでしょう?じゃあ、力比べしてみましょう?」
ギュッと握り笑みを浮かべながら提案しているのだが、その行動は凶悪そのものだった。
この力比べ、既に結果がわかっているのだから。
キノコのように他の生物のエネルギーを吸収するドクターマッシュのライフドレイン。
そう、【生物】からだ。
当然【死者(リッチ)】であるナナミからエネルギーを吸収できるはずも無い。
更に殴り倒したのは生命エネルギーの供給源である沙羅双樹から引き離すと言う目的もあったのだ。
その意図と結果を理解したドクターマッシュは慌てた。
急いで試験管を何本か取り出し、口に放り込む。
「水銀!ムルム族の髪!黒胡椒!リン!金毛羊の蹄!胞子!・・・雷火網!!」
むぐむぐと租借しすると、爆炎と雷が網のようになって口から吐き出される。
それ自体は恐るべき破壊力を持つものであったが、今のナナミの魔法無効化能力はそれを遥かに上回る。
雷火網を掻き分け、がっちりとドクターマッシュの手を握り締めた。
完全なる【詰み】の状態である。
「ひょ・・・ひょええええ・・・・・」
「ほっほっほっほ!こう干からびてしまっては胞子も出せないでしょう?」
見る見るうちにドクター・マッシュは干からびていってしまった。
反面、ナナミは力を取り戻し身体も元に戻っていく。
カサカサと音がしそうなくらい干からびたドクター・マッシュは即座に土へと帰り沙羅双樹の養分になってしまった。
起死回生の攻撃で見事ナナミが勝利を飾ったのであった。
【月と森と毒茸E】
「きゃはははは!やりますね!まさか私を倒すとは思いませんでしたよ!」
ナナミが振り向くと、沙羅双樹の根元にドクター・マッシュが生えていた。
確かに殺し、その身体も魂も沙羅双樹の養分になったはず。
にも拘らず、可笑しそうに酒を煽っている。
「基本ですよ基本!重要システムのバックアップをとっておくことなんてね!」
にやりと笑いながら不思議そうな顔をするナナミに説明をする。
そう、ドクター・マッシュは最初から沙羅双樹の根元に自分の胞子を付着しておいたのだ。
有り余る養分を吸収し、菌糸の状態から一気に身体を生成したのだった。
「さて、既に分析は終わっています。一応聞きますが抵抗しますか?」
「ふん、酔い醒ましも作れず酔っ払ったままの奴に私がやられるとでも?」
完全に勝ちを確信したその言い草にナナミの頬が引きつる。
分析されてしまっていては確かに分が悪いだろう。
それでも言わずにはいられなかったのだ。
だが、その言葉がドクター・マッシュの心に突き刺さった。
「失礼な!酔い覚ましくらい・・・・体内溶解炉調合!!」
勝利を確信していたからこそ反応してしまったその言葉。
安い挑発に乗ってしまった。
実際酔い覚まし程度どれだけでも作れる。
見る見るうちにドクター・マッシュから発せられていた酒気が消え酔いは完全に醒めた。
そう、醒めてしまったのだ。
「ふふふふ、いかがですく・・・く・・・くぁああ・・・
ひっ・・・ひいいいい」
勝ち誇り酔いのさめた声でナナミに宣言していたドクターマッシュに異変が起きた。
ガクガクと震えだし、表情が怯えたものになる。
魔力を消費する胞子を放出するのもとまり、頭を抱えてうずくまってしまう。
「ひっ・・ち、違うんです、これはカリでは無く笠なんです!
そんな目で見ないでくださいっ!」
ドクター・マッシュは錯乱して転がっていた。
「胸を張っていただけじゃないですかっ!反り返るなんていわないでっ!
違う!私は猥褻物じゃないぃぃぃいい!!」
アルコール中毒感謝の禁断症状である。
あまりの錯乱ぶりにあっけに取られるナナミだが、我に返りドクター・マッシュの首根っこをつまむ。
このままもう一度ライフドレインを行えば今度こそ終わりだろう。
「おっお願いです・・・お酒・・・くださいぃ・・・」
命より酒を懇願するその姿は先ほどまでの狂気も何もあったものではない。
もはや見苦しいまでの域にナナミは眉をひそめながら別の感情がわきあがっていた。
哀れすぎる・・・、と。
このまま殺されると悟ったドクター・マッシュは、錯乱する中で何とか頭を回転させることに成功した。
「待ってください。み、見たくは無いですか?あれの正体を・・・!
成長が早すぎてじっくり研究できないから・・・リミッターをつけてあるのですっ!
それを解除します。だから・・・!」
本来なら苦し紛れの言い訳にしか過ぎないだろうと切って捨てるところだ。
だが、酔っ払っている時のドクターマッシュは紛れも無く狂気の天才。
実際に何かが仕掛けてあっても不思議ではない・・・
【月と森と毒茸F】
暫くの逡巡の後にナナミは酒瓶を手にとっていた。
「げふぃぃ〜〜〜。生き返りましたよ。
ああ、安心してください。取引したからにはもう危害を加えることはありません。」
一瓶一気飲みをして正気(?)を取り戻したドクター・マッシュはいやらしい笑顔を浮かべながら沙羅双樹の根元へとしゃがみこんだ。
魔道カルタを展開させて形成された実験器具を使い、一つの薬品を作り上げていった。
「さて、これをかけると私の仕込んでおいた菌糸が死滅して沙羅双樹は本来の力を発揮するでしょう。
その結果、どのようなことが起こるかは私にもわかりません。
一つの生命体ともいえるビスティーム大樹海にあって唯一の異端。
それを解き放つことになりますが、よろしいですか?」
「ええ」
もって回った言い方で警告するが、ナナミの返事には躊躇が無かった。
そんな迷いの無い反応に不満そうにしながらその手に持つ試験管から薬液をたらした。
「・・・・・・」
「・・・・・・」
しばしの沈黙の後・・・抱月に異変が起こっていた。
抱月が放っていた鈍い光は強さを増して集約し、一直線に点に光る月へと突き刺さる。
そしてゆっくりと、ゆっくりと抱月が割れた。
そこから現れたのは十二単を身にまとった光り輝く美しい女だった。
『私の枷をはずし、月の神の巫女が我が復活に立ち会うとは何たる縁。
私は月の精霊、カグヤ・バンブーステイ。
汝に祝福があらんことを・・・
そして大地よ、森よ、ありがとう・・・』
実際に見るのはナナミも初めてだった。
それは月の神に仕える精霊だったのだ。まさかこのような異邦の地で目にすることになるとは。
ご神体にふさわしいと思うのもそのはず。まさに神の使いそのものだったのだから!
深々と頭を下げるナナミに鈴のような声をかけた後、カグヤ・バンブーステイは光を辿り月へと昇っていった。
その光景の余韻からさめるまでたっぷり数分を要した。
ナナミが我に返ると、沙羅双樹はすっかり枯れ落ちもはや月の波動は感じられなくなっていた。
結局ナナミの目的は果たせることができなかったが、それほど落胆は無かった。
リッチである自分には時間が十分にある。
それより、着いた早々これほどの体験をしたことに喜びを感じていた。
これから先、どれほどのことが待ち受けているのだろうか、と。
それから暫くドクター・マッシュと旅を続け、別れてからもご神体探しの旅を続けている。
今でも時々天の月を見上げながら思い出す。
時間感覚の希薄なナナミにとって、ビスティーム大樹海での出来事が去年のことだったのか100年前のことだったのかはっきり覚えていない。
だがドクター・マッシュとカグヤ・バンブーステイの事は鮮明に覚えている。
生態は真逆でも共に時間に囚われぬ生物なのだ。
また会うこともあるかもしれない。そんなことを思い浮かべながら・・・
【名前】ドクター・マッシュ
【年齢】100以上
【性別】男
【職業】巫蠱の徒
【魔法・特技】 巫蠱術・錬金術
【装備・持ち物】魔道カルタ・薬品入り試験管多数・酒
【身長・体重】 170センチ65キロ
【容姿の特徴、風貌】人間大のキノコに手足顔がついている。白衣着用
【性格】 マッドサイエンティスト・躁鬱病
【趣味】研究
【人生のモットー】エンジョイアンドエキサイティング
【自分の恋愛観】なし
【一言・その他】
錬金術的味付けをしたキノコを食べてきのこ怪人になってしまった男。
酒が手放せず、常に酒気を纏酒臭い。
酔っている時は狂気全開のマッドサイエンティストだが、酔いが醒めると錯乱して欝状態になる。
巫蠱:言うならばバイオテクノロジスト。毒と薬のエキスパート。
乙なんだがナナミもマッシュもメインに据えるにはキャラがいまひとつかも
次回もガンガレ
これで騎士全員のSSが出たな
>635
アイザックがまだ。
それと旧キャラもまだ。
>638
今騎士にいる中でも一番ネタにしにくいキャラじゃないか?
>>639 しにくいというより出来ないと思う
下手に書くと中の人の設定に抵触する可能性大だし
20XX年。世界は混沌と爛れていた。
正義は死滅し悪が街に蔓延り、人々は恐怖に包まれていた。
日が落ちればどこからか怪人が現れ、弱肉強食の戦いを繰り広げていたるのだ。
怪しいカルト教団が終末を唱える。
あらゆる悪を売り出す秘術商人。
秘密結社AMATERASU!この爛れた世界を作り出した元凶!
美しき凶気で世界を包もうとする首領。
堕ちた最後の正義。
凶悪な怪人たちを生み出す狂科学者。
殺戮の限りを尽くす怪人たち。
絶望に満ちた街の住人達から上がるのは怨嗟の声。
しかし、その怨嗟の声が一人の男を蘇らせた。
蘇ったのは正義ではない。
最強最悪の血族!
そんな街に蔓延る悪を駆逐せんとその男はたった一人で立ち上がる!
敵か味方か!?男の前に気まぐれに現れては笑いながら死地に誘導する謎の美女。
様々な思惑と陰謀が渦巻く中、最後に立っているものは!?
キャスト
教祖:サドゥ(ハンタ)
闇商人:馬(派手)
首領:布津野(黒刃)
黒騎士:カイザー(カイザー)
狂科学者:ドクターマッシュ
怪人:カルビ(黒刃2)
怪人:コーダック(RED)
謎の美女:アルナワーズ(魔法少女)
主人公:ヴァンエレン(魔法少女)
投下予定なし!予告編だけでお腹が一杯です。
ちょwwwwキャラwwwwww
ワクテカしながら職人さん待ち
∧_∧
( ・∀・)ワクワク
oノ∧つ⊂)
( ( ・∀・)ドキドキ
∪( ∪ ∪
と__)__)
そういえば弱腰さん、パソコン無事ゲトできたのかな?
買いましたし、繋ぎましたよ。
休日中に投下を予定しているのでお楽しみに
俺…このSSが終わったら…新都社に殴り込むんだ…
【第五章 黒き狗は水面に映る夜空を見ない】
…夢でも見ているのか?
血に染まった路地裏で、アルテリオンは呆然と立っていた。
その視線の先に居るのは、血まみれの斧を持った騎兵と…人だった肉片があった。
数十秒前、騎兵の攻撃を辛うじてかわした瞬間、絹を裂くような悲鳴が響き渡った。
もちろんアルテリオンのではない。その場にいた女性のものである。
当然の結果だ…暗い夜道の中、まるでB級ホラーの殺人鬼のような奴が目の前に現れたのだから…
いや…『ような』は語弊なのかもしれない。
何を思ったか騎兵は、その女のほうに視線を向け、ゆっくりと近づいていった。
「…ヒッ…いやぁ…いやぁあぁぁあ!」
不幸な女性は腰が抜けたのか、尻餅をついたまま必死で後ろに後退している。
それを見た騎兵は耳障りな笑い声をあげる。
その光景を音だけで感じていたアルテリオンに悪寒が走った。
「…逃げろぉ!!!」
声を荒立て、路地裏から現れた瞬間…心臓が止まるような感覚に襲われた。
「クゥ…ハハハァアアアアァ!!!もう遅ぇんだよぉぉぉぉ!」
ソレは無残に切り取った足を弄びながら、そこにいた。
まだ女は生きていたが、恐怖と激痛でショック死寸前の状態で逃げることが出来ない。
「………」
あまりの光景に言葉が詰まり、地面がなくなったかのように視線がグラグラする。
それを尻目に騎兵は…いや、狗は改めて獲物を見ると大きく血に濡れた『狂気』を振り上げる。
「ビンビンだぜぇぇぇえぇヒハハハハハハハハハハハハハハ」
「…いやぁぁぁぁぁぁ…あ゛ッ!!!」
狗は女の頭にソレを叩きおとしたあとも、何遍もソレを振り下ろし、人を肉片にする作業に没頭していた。
「…たんねぇ…こんな雌豚じゃ満足しねぇ…」
無残に散った肉片を見ながら、狗は冷めた口調でそう言って立ち上がる。
「………な…なんで殺したぁ!!!」
布津野と対峙した時よりも怒り顔を歪ませてアルテリオンは問うた。
振り向いて答えた狗の理由は、ひどくシンプルなものだった。
「気持ちいいからに決まってンだろ?」
【第五章Bパート 紅き旋風】
そのとき、アルテリオンの中で何かが弾けた。
激情に身を任せ、自身の保身など毛ほど考えず…殴りかかっていった。
鈍い金属音と共に、狗の顔面に拳が当たる。
「…お前を殺せば…久々に満足できるかもなぁぁぁぁぁあ!!!」
狗はアルテリオンの腹を蹴り飛ばし、殺人意欲が戻ってきたみたいだ。
一方、蹴り飛ばされたアルテリオンは、痛みのお陰で激情の熱が引き正気に戻った。
「…逃げなくては…ここで倒れるわけには・・・いかないッ!」
すぐに立ち上がり、逃亡を始める。
目標は布津野だ…あの狗は何百殺しても殺したりないが、ここで倒れる訳にはいけない。
「鬼ごっこか!?…いいぜいいぜぇぇヒャハハハハハハァ!!!」
狗はこの趣向が気に召したらしく、相変わらず耳障りな笑い声を上げながら追跡を始める。
アルテリオンはB級ホラーのヒロインのように狭い路地を駆け抜ける。
だが、その奇妙な鬼ごっこはすぐに終わることになるとは二人共思わなかった。
「動くな」
路地を抜けて大通りに出た瞬間、左右から静止の声が聞こえる。
1つは狗とは違う男の声、もう1つは年端もいかない少年の声だった。
声にしたがって足を止めて姿を確認する。やはり、声の主たちも騎兵だった。
「……あなた達には絶望した…」
俯きながらアルテリオンは拳を固め、腕を震えさせた。
「絶望するなら勝手にしろよ化け物」
黒色の短剣を握る男は冷淡にそう吐き付ける。
「じゃあ正々堂々と一対一で戦いましょうか?」
少年はアルテリオンの怒りを知らず、ずれた事を言う。
アルテリオンの中で激情の温度が上がり始める。
「…民のためにあなた方は戦っていると思っていた…だが、違う!!!お前らは違う獣だ!!!人じゃない!!!人殺しだ!!!」
吐き出すようにアルテリオンは怒りの言葉を叫んだ。
「……よく…そんなことが言えるな!」
「…人殺しはあなたじゃないですか!」
アルテリオンの言葉が止まった。
「路地裏での連続殺人事件発生の直前、黒いフードを着た不審者を見たとの報告が入っている」
「それに、被害者の大半は死ぬ直前に『猫女』を見たと何かしらの連絡手段で知り合いに伝えています」
「違う!殺してはいない!メッセージだって残している」
必死で弁明するが、火に油を注ぐ結果になった。
「…嘘をつくならもっとマシな嘘をつけ!」
「現場にはメッセージなんてありませんでしたよ」
左右の騎兵は改めて自分の得物を握り直し、戦闘意欲を露にする。
この絶望的状況下、アルテリオンには布津野の冷笑が聞こえたような気がした。
(そうゆうことか…布津野…)
その時だった。嵐のような突風が吹き乱れ、その場にいる皆の視界が乱れる。
「……ブラフアウト!!!」
轟風の中、少女の声が聞こえたと思った瞬間、風が収まっていった。
風が止み、視界が戻った時、三人の目に入ったのは
2m弱の日本刀で胸を貫かれ、標本のように地面に突き刺さった御堂の姿と、その上に立ち腕を組む長髪少女の姿だった。
「いや〜どうも、3対1の戦いってのは好きじゃないんですね〜数の暴力って奴?」
長髪の少女は悪びれもせずそう言って刀から降り、男と少年を睨む。
その目は明らかに人間の物ではなく、爬虫類をイメージさせた。
その場にいる皆が唖然としている中…赤髪の少女は続ける。
「それに・・・さ、この人が怒るのも無理無いよ…だってこの人ジェイソンも裸足で逃げ出すぐらいアレすぎるしw」
そういって少女は狗の頭を二、三度蹴る。狗は力学法則にしたがって頭を揺らすだけ
「・・・嘘…だろ?」
「確かに御堂さんはアレでしたけど…でも・・・」
明らかに動揺する2人を尻目に少女はアルテリオンに歩み寄る。
もちろん、アルテリオンだって動揺しているし、警戒もしている。
お互いの手が届く距離までくると、少女は無邪気に微笑み手を差し出し握手を求めた。
「私の名前は東屋実咲…あなたは?」
差し出されたその手には、この世界に来て初めて感じた優しさがあったような気がする。
アルテリオンは力強くその手を掴み、名乗った。
「アルテリオン…アルテリオン・カタストロフ」
「アルテリオンさんね……わかった。ちょっと力抜いててね……ブラフ!!!」
東屋がそう唱えた瞬間、彼女を中心に再度、風が吹き始めた。
風が止んだとき、東屋とアルテリオンの姿は消えていた。
ごめんなさい。前回いただいたアドバイスのことをすっかり忘れてました。
次からはこんなに時間かけません。
とりあえず、メインのうちの三人を出してみました。
キャラ崩壊しないように意識してましたけど…どうでしょうかね?
じゃあ寝ます。
>>648 乙、そしてPCゲトおめ
黒刃詳しくないので、少年が誰かわからなかった
瓜?
∧_∧_∧
___(・∀・≡;・∀・) ドキドキドキ
\ss/(つ/と ) _
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☆ パリン 〃 ∧_∧ |
ヽ _, _\(・∀・ ) < 職人さん、おかわり くだs
\乂/⊂ ⊂ ) _ |_ _ _ __
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|  ̄  ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄:| :|
| .|/
_ ___
\>,\/
<⌒/ヽ-、_ _
<_/____ノ
保守
652 :
名無しになりきれ:2007/10/21(日) 19:49:03 P
仄々希望
653 :
名無しになりきれ:2007/10/23(火) 22:01:11 0
うふんあっはん
654 :
名無しになりきれ:2007/10/25(木) 07:18:39 O
エロいやつ
655 :
名無しになりきれ:2007/10/27(土) 08:38:05 O
ばいお
はクソ
『幻のMidnight Run』
「そ、その血染めの特攻服、鎖の襷!間違いねえ!無礼武十八代目総長【噴血の鬼姫】バルさん!」
「何だって!?無礼武唯一の女総長!?」
「あの喧嘩相手を全員顔面噴水状態で血まみれにしたって言う!?」
「押忍!自分、弐拾五代目総長張らしてもらってますヴェロッキーニっス!」
「押忍!同じく親衛隊長ガンスミルっス!」
「押忍!同じく特攻隊長ヒュルガっス!」
「漢ってえのは性別じゃないんだよ!?。称号でもましてや職業でもない!
漢ってえのは生き様だろぉおおお!!
このあたしの前で芋ひいてんじゃないよ!気合入れな!!!」
「「「「押忍!!!!!」」」」
一方その頃レフトハンドが闇ギルドと接触に成功
没にするのはもったいないからアナザーストーリー書いてみようと思ったけどグシャグシャになった。
なんとなく浮かんだシーンだけポロッと投下
一応保守しておくかな、また職人の投下があるかもしれんし。
659 :
名無しになりきれ:2007/11/16(金) 18:48:14 0
ageroyo
あげ
661 :
名無しになりきれ:2007/11/25(日) 01:04:18 O
そのうち番外編とか没エピソード投下があるさ
職人さんカモン
とある酒場である男が酒を飲んでいた。
「昔はね・・・よかったんだよ・・・・昔はね・・・・・・・・」
男は昔を精一杯懐かしんでいた。
あの頃は皆新しい挑戦に心を躍らせていたもんさ、その頃俺は駆け出しでね、先走りしすぎて失敗したりもしたり、
ベテランさんにも迷惑かけったっけか・・・・・そのうち人が一人、二人って見えなくなって、さ
男は一気に酒を煽った。
いつだったかな、ついに纏め役が消えちまった。そりゃあ、焦ったさ、何せいきなりの非常事態だからな、
残った奴らも少しづつ見かけなくなっていったよ・・・・・
男はため息をついた。それは心の底まで疲れたため息だった。
え、俺は何で出て行かないのかって?・・・・・・・・・そうだな・・・・恥ずかしいけど
男は本当に恥ずかしそうで真っ赤になりながら頭をかいていた。
忘れられないんだよな、あの冒険の感触が、それとさ、誰かが戻ってきた時に誰もいなけりゃ寂しいだろ?
懐かしむ男と別れて酒場を出た。外の風は寒い冬の風だった。
ーーーーーー某スレ 残された男の心境 より
名前出せば少しは感情移入できたが、負け犬の遠吠えにしか聞こえん
昔栄えて今過疎で昔から生き残ってる人がいるスレ…どこだろう。
読後感がなんかもやもやすると思ったら…
残された男が、今参加してるスレであんま楽しそうじゃないせいか
そもそも今のスレからして(ry
>>663 なんだかなあ
私は優しくていじらしいんですよって殊更に主張してるみたいで微妙
【恋する乙女1】
「ねえねえ、知ってる?いよいよ決行するらしいわよ。」
「え、あの子の事?」
「もちろん。レオ先生の事になると止まらなかったけど、この頃更に磨きが掛かってるから。」
「え〜そうなんだー。でも上手くいくかしら?」
「恋に障害は付きものって言うけど、あれはねー。」
「やーねー、障害が大きいほど燃え上がるのよ。」
「そうそう、近くで見てると鬼気迫るものがあるもの。」
「方向性は間違いすぎているけどね。」
「ぷっ・・・あははは・・・」
それは麗らかな午後のお茶会での事。
たわいもない恋の話で盛り上がる女子生徒たち。
そんなやり取りをにこやかに聞いていた一人がカップを更に置きながら口を開く。
「あらあらまあまあ。それは面白そうねぇ。」
その目に輝く愉悦の光を隠そうともせずに。
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それから暫く後。
アルナワーズは地下図書館へとやってきていた。
(ある意味)愛すべき吸血鬼の元へと。
「はぁ〜い。偉大なる吸血鬼!夜の眷属!不死の王!ヴァン・エレンさまぁ〜ん!」
甘ったるい声で呼ばれたヴァンエレンはビクッと肩をいからし、読んでいた本をお手玉してしまう。
吸血鬼の威厳も糞もなく椅子から転がり落ち、本に埋もれながらアルナワーズの姿を確認していた。
「き、貴様!何しにきた!どうせまた私を苛めにきたんだろ!もう騙されんぞ!あっち行け!」
床に這い蹲ったまま立ち上がらず、そのまま机の下に引っ込みながら罵るのだった。
なんとも情けない反応ではあるが、これには相応の訳がある。
アルナワーズに甘ったるい声で呼びかけられた時は必ずといっていいほどいいように利用され、酷い目にあわせられるのだ。
以前、死刑宣告同然のレイドとの試合契約書にサインをさせられた事があった。
また、呪いを解けるといわれ、猫にまみれた事もあった。
その他騙され酷い目にあったことは数知れず。
ヴァンエレンはもうアルナワーズには関わらないと固く心に誓っていたのだ。
「いやぁん。そんなに邪険にしないでぇん。
今までのお詫びに、学園一濃厚な血を持つ女の子を紹介しようと思ってきたのにぃ。」
「嘘だ!絶対嘘だぁ!」
机の下にもぐりこんだヴァンエレンに目線を合わせようとしゃがみこむアルナワーズ。
しかしヴァンエレンの態度は頑なで、ぷいっと横を見てしまう。
そんな駄々っ子のような対応に小さく息をつき真剣な口調で続ける。
「今まで不幸が重なったり、ちょっと言葉が足りなかったけど。今度は本当よぉ。
たぶん血の濃厚さで言えば学園長より上。
もしその子の血を飲めれば貴方の力は何倍も上がって呪いを力づくで破れるかもしれない、と思って。」
「ほ・・・本当か?」
いつにない真剣じみた口調に、学園長以上の濃厚な血といわれれば興味を引かれずにはいられない。
しかしそれでも今までの事を思い出すと踏ん切りが付かないでいた。
そこにアルナワーズがずずいと机の下にもぐりこんでくる。
「本当よぉ?ほら、この目を見て。この目が嘘をついているように見える・・・?」
間近なのでどうしても目と目が合ってしまう。
まるで吸い込まれるようなアルナワーズの瞳は真剣そのもののように・・・ヴァン・エレンには見えた。
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【恋する乙女2】
「お疲れ様ですわ。」
挨拶をして道場から出てくるフリージア。
格闘技の師匠であるレオとの訓練を終えたところ。
いい汗をかいてすがすがしい顔をしているフリージアを、怨念交じりに見つめる目が一つ。
「おうこら、腐れドリル頭!」
ドスの効いた声と共に現れたのはマントとフード、そしてフェイスベールで全身を覆った一人の女であった。
目しか見えない姿だが、その眼光は雄弁に憎悪の色を湛えている。
現れた女を見てあからさまに嫌な顔をするフリージア。
こうして声をかけられたのは初めてではなかった。
もう何度目だろうか。
「また貴女ですの?」
うんざりした様子でその女、ベアトリーチェに応える。
「テメー前に言ったよな?レオ先生に近づいたら殺すって。」
「格闘技を教わっているだけです。あなたにとやかく言われる筋合いはありませんわ。」
軽くあしらってさっさと立ち去ろうとするのだが、ベアトリーチェはそれで済ます気はない。
フリージアの進行方向に立ちふさがり、鬼気迫る勢いで睨めつける。
ベアトリーチェはレオに恋をしており、格闘技の訓練とはいえフリージアがレオに近づくのは許せないのだ。
「・・・どいてくださらない?」
ベアトリーチェの怒りの波動に当てられてか、フリージアの声にも少し怒気がはらんでくる。
が、相手も元々喧嘩腰。それでひるむような事はない。
睨み合う二人だが、突然フリージアが身を仰け反らした。
直後、背後で「カツッ」と起きる音。
ベアトリーチェがフェイスベールの奥から含み張りを飛ばし、それをとっさに躱したのだった。
「よけてんじゃねえよ!せっかく苦しまずに死ねる毒を塗っておいてやったのによ!」
「やるというのでしたら受けてたちますわよ!」
流石にこの行動と言葉に怒ったフリージア。
急速にあたりの温度が下がり、フリージアを中心に氷が形成されていく。
その変化にベアトリーチェは間合いを取り、フェイスベールを剥ぎ取った。
が、その表情は読み取れない。
フードを被っている事を差し引いてもあまりにも暗く、何かが渦巻いて顔を隠してしまっているからだ。
「元々そのつもりできてんだ。一番苦しむ毒をくれてやんよ!」
ベアトリーチェの顔で渦巻いていたのは高濃度の瘴気。
毒体質であるベアトリーチェはそれを意図せずとも生み出すのだ。
溢れ渦巻く瘴気がフリージアの低温域と触れ合い、バチバチと音を立てる。
片や空気をも凍らす凍気。
片や大地をも腐らす瘴気。
その力は拮抗し、触れあうところでは氷の生成と氷が腐り落ちる、そしてまた凍るをめまぐるしく繰り返していた。
その中でもじりじりとにじり寄る両者。
まさに一触即発、刀光剣影。
【恋する乙女3】
だが、その均衡状態を崩す者が現れた。
「何の騒ぎだ?」
レオが騒ぎに気付いて現れたのだった。
その声が届いた瞬間、恐るべき速さでベアトリーチェはフェイスベールをつけ、渦巻く瘴気も跡形もなく吸い込んでしまう。
そうなると困るのはフリージアである。
今の今まで拮抗した状態で押し合っていたのに、突然その相手がなくなるのだ。
まるでつんのめったかのように魔力が暴走し、あたり一面の空気を凍らせた。
「きゃぁ〜。助けて〜。」
押し寄せる氷の波動から逃げるベアトリーチェ。
その悲鳴は先ほどまでのドスも怒気も微塵にも見せず、か弱げなものになっている。
しかもレオを見上げる目は怯えすら浮かべたものだ。
その様子にレオは飛び出て、拳を以って冷気と氷をなぎ払い、ベアトリーチェを守るのだった。
「ああ〜ん、私のために。ス・テ・キ。」
満面の笑みを浮かべてレオの背中にしな垂れかかるベアトリーチェは本当に幸せそうだった。
「一体何事だ!?」
「そ、それはベアトリーチェさんが・・・」
とりあえず訳も判らず助けたレオが事情説明を求めるが、フリージアに説明の機会は与えられなかった。
もちろん真実を告げられて困るベアトリーチェが動いたからだ。
「私がフリージアちゃんに氷の術を見せてって頼んだからちょっと暴走しちゃったみたいなんですぅ。」
「え、ちょ・・・」
「なんだお前達知り合いだったのか?」
「もちろんですぅ。私達親友、よ・ね!」
素早くフリージアの横に回り、腕をかけながら発言する間を与えない。
レオからは見えないが、肩を組んでいるように見えるその手はフリージアの首に突きつけられており、爪先が今にも刺さりそうなのだ。
(テメーわかってんな。おら、調子合わせろよ。)
にこやかな目と口調とは裏腹に、耳元で囁く口調はしっかりとドスが効いていた。
「え、ええ・・・」
頬を引きつらせながら調子を合わせるのだが、それはベアトリーチェに脅されたばかりではない。
頭の中に『今は調子を合わせて』という声が響いたからだ。
「・・・そうか、それならいいが。」
「それよりぃ、薬学の事でちょっと質問があるのですけれどぉ〜。」
甘い声でレオにまとわり付くベアトリーチェ。
その様子をただ呆然と見送るフリージア。
呆然としてしまうのは、フリージアとベアトリーチェでは見えているものが違うからなのだ。
フリージアには真実の姿が見えている。
吸血鬼ヴァンエレンとそれに甘えてまとわり付くベアトリーチェが。
ベアトリーチェにはヴァンエレンがレオに見えているが、それは単に幻術に陥っているからなのだ。
そしてその幻術はすぐに効力を失う事になる。
【恋する乙女4】
今の今まで甘え腕に絡み付いていたベアトリーチェが、その腕がレオのものでなく身も知らぬ吸血鬼と変わるのだから。
「はぁあああああ!!!???テメエ誰だゴラァァ!!!!」
「え、いや。ヴァンエレンと・・・ぐ・・・げはぁ・・・!」
ヴァンエレンは自分がベアトリーチェにレオと認識されていたとはまったく知らなかった。
紹介してもらった女子生徒は確かに極上の血の匂いがした。
そしてピンチだったので助けた。
その恩もあってか、甘えて擦り寄ってきた。
アルナワーズの段取りのよさに感謝していたところだったのに、いきなりのこの変わりよう。
訳も判らず名乗ろうとしたが、こみ上げてくる血の為、それ以上続ける事ができなかった。
もちろん怒れるベアトリーチェの仕業である。
ヴァンエレンの腕に絡み付けていた手でそのまま爪を立てたのだ。
その強力な毒は吸血鬼であるヴァンエレンすら見る見るうちに肌が緑色に変色し、血を吐かせるのだった。
ここに至ってヴァンエレンは身を以って気付いた。
この女の血の匂いは確かに極上で濃厚だが、毒が濃厚なのだ、と。
何故今までそれに気付かなかったのか・・・!
もちろん図書館でアルナワーズと目をあわした時点で催眠状態になっていたのだ。
が、それに気付くより先に毒により意識が遠いところに旅立ちそうである。
「さ、今よぉ〜。」
「・・・ですわね。」
半ば呆れながらも促される声のままフリージアは氷の結晶を飛ばし、ベアトリーチェとヴァンエレンの周囲に配置する。
氷の結晶はぐるぐると回りだし、やがて超低温結界となるのだった。
数秒後。
痴話喧嘩をしているような姿のまま二人は巨大な氷柱に氷漬けとなっていたのだった。
「ごめんなさいねぇ〜。ベアトリーチェが喧嘩するって聞いたから、止めにきたの。」
フリージアとベアトリーチェがまともにぶつかればお互い唯ではすまない。
当事者だけでなく、周囲にも大きな被害が及ぶだろう。
かといって、幻術に陥ったままの状態だと更に状況が悪くなる。
レオとの一時を守ろうと実力以上の力を発するだろうから。
そこで、幻術を解き怒りがヴァンエレンに向かっているところを仕留めることにしたのだ。
「でも、何故ヴァンエレンさんですの?」
「ほら、あの子って毒がすごいじゃない?生身ではちょっと辛いから、アンデットなら平気かなぁって。」
「・・・緑色ニナッテタケド・・・」
ころころと笑いながら説明するアルナワーズに、隠れていたギズモが突っ込みを入れる。
「大丈夫よぉ〜。ベアトリーチェの毒で氷は解けるだろうけど、その前にレオ先生に助けてもらうようにするから。
逆に感謝されちゃうかもねぇん。
うふ、なんにしても争い事を事前に止められてよかったわぁ〜。
フリージアもベアトリーチェも私の大切なお友達だものぉん。」
上機嫌に足取りも軽く去っていくアルナワーズと、氷漬けになっているベアトリーチェを見てフリージアは思った。
「・・・つ・・・疲れましたわ・・・。」
恋する女の暴走とそれを玩具にする女に巻き込まれてしまったフリージア。
そんな彼女が猫以外に恋をする日は来るのだろうか?
今回の事で恋をしようという気持ちが一歩後退したかもしれない。
【恋する乙女5】
名前・ ベアトリーチェ
性別・ 女
年齢・ 17
髪型・ 白・ショートカット
瞳色・ 限りなく白に近い灰色
容姿・ 常にフェイスベールで隠しているので目つき以外不明。
ボディーラインは豊満で艶がある。
備考・毒舌・毒体質の恋する乙女。レオに片思い中。フリージアを敵視。
とある暗殺組織で『贈り物』として育てられた少女。
生まれた時から少しずつ毒物を与えられ、12歳の時点で体内に蓄えられた様々な毒物により毒体質になる。
様々な毒物を体液として抽出可能であり、流れる血や吐く息までも強力な毒気を帯びる。
本来は暗殺者として敵対人物に送られ、抱かれることにより相手を毒殺を目的とする。
しかし送られる前にベアトリーチェを育てた組織が壊滅。
その際に学園に引き取られる事になる。
周囲に毒の効果を及ぼさないようにフェイスベールは欠かさない。
全身が透き通るように白いのは体内の砒素による沈色効果のため。
体質的に毒物を常用しなくてはならない。また、怪我などをすると血も毒である為治療行為は困難を極める。
得意技・ 薬学
好きな食べ物・ 砒素
好きな偉人・ レオ先生(はーと)
好きな生物・ バジリスク
嫌いな食べ物・ なし
嫌いな金属・ 金
今一番欲しい生物の毛・特にない
保険に入りますか?・ 無理
【ベアトリーチェ】
STR(力) 10
VIT (体力) 10
AGI (素早さ) 10
DEX (器用さ) 10
INT(賢さ) 30
MAG (魔力) 20
MEN (精神力) 20
LUK (運) 40
毒体質 Lv9
毒舌 Lv6
薬学 Lv5
植物栽培 Lv4
動物飼育 Lv4
鉱物採集 Lv4
恋する乙女 Lv8
GJ!
ベアトリーチェなつかしー。
っていうかこんな性格になるとは。
恋する乙女恐るべし。
誰だよヘアトリーチェって?
なな板のTRPGもわけわからなくなったな
>>675 あんまり職人のやる気を削ぐような言い方をしてやるなよ
厨ニ病を除いたら久々の職人さんなんだから
>>676 したり顔で一番卑しいタイプだな、おまえ
>675-679
不要
で、マジでベアトリーチェって誰なの?
>>680 確かベアトリーチェは、2年位前に登場したキャラ。
(ROMってただけなのでスレ名は忘れてしまった。内容はTRPGというよりはSSスレっぽかったと思う)
でもいろいろあって、結局ベアトリーチェはお蔵入り、新キャラでの仕切りなおしになった。
自分はベアトリーチェの元気な姿をもう一度見られて嬉しかったけど、知らなくても何の問題もない。
ただの没キャラじゃねえかw
>>673 GJ!!
恋する乙女とか聞いてクド思い出したw
ヴァンエレンは可哀想だが、こんな役回りがよく似合う
この調子でまた職人に戻ってきて欲しいな
お蔵入りの没キャラ大絶賛www
保守
687 :
名無しになりきれ:2007/12/28(金) 06:31:46 0
d
けっさく
【胡蝶の夢1】
「朋、遠方より来る・・・か・・・」
「極めし者の悲哀ですな。」
「ああ、止まる事はできまいいて。」
「あなた方の決着、私がいても?」
「ふふふ・・・それもまた、魔術の真理の一つだよ。」
朝焼けの空を見ながら二人が物悲しげに言葉を交わしていた。
###################################
その日は、何か特別な日だったという訳じゃない。
ただ、秋風に暑さも和らぐ何の変哲もない一日。
日常の一コマ。だったはずだったのだ。
登校するその瞬間までは。
リリアーナがいつも通り学園へと入ると、なにやらグラウンドが騒がしい。
毎日何かかにかイベント(トラブル)の起こっている学園において騒がしいのは珍しいことではないが、それでもその規模は目を引くのに十分だった。
何しろ100人単位の生徒が集まっているのだから。
そして聞こえてくるスプレッシュコールは・・・
「おっぱいみな兄弟よぉん!」
「「「おっぱいみな兄弟!!!!」」」
「大きいおっぱいも小さいおっぱいもみんなおっぱいよぉ〜」
「「「大きいおっぱいも小さいおっぱいもみんなおっぱい!!!」」」
グラウンド中央、お立ち台の上で声を上げるアルナワーズ。
それに続く数百人の生徒の声。
しかも言っていることがあまりにも馬鹿馬鹿し過ぎて、リリアーナはしばらく呆気に取られてしまった。
数瞬後、正気に戻り、首をぶんぶんと振る。
またアルナワーズが何かを始めたのだ。巻き込まれる前に一刻も早くこの場を離れるべき。
全力で理性がそう告げ、それに従おうと思うのだが、行動に移すことはできなかった。
群がる生徒の中にロックの姿を見つけてしまったのだから。
「ちょっとロック!何をしているのよ!」
呆れながらも人ごみに割って入り、ロックの腕をつかむ。
こんな馬鹿馬鹿しい集会にロックまでいるとは呆れるやら情けないやらでとりあえず連れて帰ろうと思ったのだ。
だが、ロックのところまで辿り付き、さらに呆気にとられることになる。
遠目ではわからなかったが、壇上のアルナワーズの左右にはレイドとヴァンエレンが立って叫んでいるではないか。
「リリアーナ!いいところに来た!一緒に叫ぼう!おっぱいの夜明けに!」
腕をつかまれたロックの訳のわからないことを言ってリリアーナを逆に捕まえる。
「な、何を言っているのよ。ロック、あなたそんなことに興味あったの?」
思いがけないロックの言葉に思わずうろたえるリリアーナ。
リリアーナの知るロックはおっぱいはもとより、男女の区別があまりついていないのではと思うほどの朴念仁・・・ではなく、熱血漢だ。
そんな戸惑いをよそに、周囲の熱気は異常なまでに盛り上がり、おっぱいコールが続いている。
そしてロックも叫び続ける。
あまりの出来事に思考が停止しし始めたとき、リリアーナの肩をつかむものがいた。
突然肩をつかまれ急激に思考が現実の戻されると、後ろにはミシュラが立っていた。
「リリアーナさん、とりあえずこっちへ。ここにいては危険だ。」
そういうとミシュラは強引にリリアーナの手を引いていく。
「え、ちょ・・・ロック!」
そのままぐいぐいと引っ張られ中庭へと連れて行かれた。
【胡蝶の夢2】
「ねえミシュラ、危険ってどういうことだったの?」
中庭に着き、ようやく落ち着きを取り戻して尋ねる。
「あの集会は一種の催眠状態で成り立っているんだ。」
その言葉を聞きリリアーナははっと思い起こす。
確かにロックの様子が変だった。
それに、呆気にとられたとはいえ簡単に思考停止になり、その空白におっぱいの言葉が流れ込んできたことに気づいたからだ。
ミシュラは幻術や催眠術に耐性があるのでそのことにいち早く気づいたのだろう。
「アルの仕業ね。でも、いくらアルでもあんなに大勢に催眠術をかけられるのかしら?」
音頭をとっていたアルナワーズの存在を思い出したが、その規模の大きさに疑念が持ち上がる。
「人数は関係ないでおじゃる。むしろ多いほうが好都合のときもあろうて。」
「群集心理、というやつだな。」
その問いに答えたのはミシュラではなくキキとグレイブだった。
この二人もリリアーナ同様ミシュラによって中庭に救出(?)されてきたのだ。
大方の理屈はわかったが、アルナワーズが何の目的でこの様な大規模な集会を開いたかはわからない。
だが相手はアルナワーズ。その理由を考えるだけ無駄であることは誰しもがわかっている。
今のところ実害もないので下手に手出しして巻き添えを食うよりは火の子の届かないところで静観したほうがよい。
という結論にしか辿り着かなかったのだが・・・
その後、目立ったトラブルもなく時は昼へと移る。
学園の雰囲気は微妙に変わってきているようには思えるが、特に何かが起こるわけではない。
しかしリリアーナの脳裏にロックとレイドの顔がちらつき続けていた。。
レイドは自他共に認める巨乳好き。
だがロックは・・・
どちらにしても催眠状態で集会に参加させることはあまり感心できないでいた。
そんな気持ちで食堂へ行くと、食堂は大混雑していた。
原因は朝の集会である。
その規模は千人単位まで膨れ上がっていた。
食堂中央、いつの間にか作られた壇上ではアルナワーズほか数人が仰々しく何かにサインをしていた。
「今ここにヒンヌー教とキョニュリスト教の歴史的和解が成立したわぁ〜。」
厳かに宣言するアルナワーズ。
壇上にいるのは学園内の貧乳マニアと巨乳マニアの代表者たちなのだ。
彼らは長年お互いの嗜好を巡って対立していたのだが、どうやら和解したらしい。
「「「「おっぱいみな兄弟!!!」」」」
アルナワーズの宣言と共に食堂を振るわせる数千人の大号令。
「アル・・・もしかして学園の二大勢力の和解のために・・・?」
その様子を見ながら思わずつぶやいたリリアーナだが、さらに驚きの光景を発見してしまうことになる。
アルナワーズの横にはキサラが真っ赤な顔をして硬直しているのだ。
首に腕を絡み付けられ、遠目でもその狼狽振りがよくわかる。
朝いたレイド、ヴァンエレン、ロックの姿もある。
さらにフリージアまで楽しげにおっぱいコールをしながら巨大な氷の胸像を作り出していた。
静かに、そして確実に【おっぱい】は学園を侵食していたのだった。
【胡蝶の夢3】
「もう!ロック!もう気が済んだでしょう!馬鹿なことしていないで、ちょっとこっち来て。」
アルナワーズの目的は果たされた以上、これ以上騒ぎが大きくなることはないだろう。
ならばいち早くロックだけでもこの場からつれて帰りたかった。
「嫌だ、俺は世界おっぱいのためにここにいるんだ!」
訳のわからない理屈で一向に帰ろうとはしない。
なぜならば、アルナワーズの目的はまだ終わっていなかったのだから。
「おっぱいを分断する悪しき力を滅するのよ!諸悪の根源は学園長の持つ巻物にありよぉ〜ん!」
こんな訳のわからない宣言を高々と掲げてしまったのである。
しかしこんな訳のわからない宣言であっても、催眠状態にある群集にとっては絶対の言葉。
たちまち『おっぱい!』の掛け声が食堂を震わせ、さらには『学園長を倒せ!』などという物騒な声まで上がっている。
異様な雰囲気に包まれる食堂で、リリアーナは叫ぶが所詮は一人の叫び。
数千人からなる群集の波に逆らえるはずもない。
人並みに飲み込まれ、意識が遠のいたそのとき、人ごみが割れた。
まるでモーゼの奇跡の一つよろしく真っ二つに。
そこを悠々と進んでくるのはアルナワーズ。
「ちょっと、アル!いくらなんでも悪ふざけが過ぎるわよ!」
数千の群衆の中、ポツンと投げ出され視線が突き刺さる中でこれだけの啖呵を切れたのは見事としか言いようがない。
さすがに学園長を襲撃するとなっては悪戯では済ませられないのだ。
そんな事の重大性がわかっているのかいないのか、アルナワーズは膝を折り、リリアーナに目線を合わせる。
「リリィ?おっぱいみな兄弟なのよ?」
妙に神妙な表情とは裏腹に、出る言葉は相変わらずのおっぱい三昧。
しかしその言葉より強烈なのは合わせられた目である。
あわせられたが最後、離そうとしても離せられない。
それどころかどこまでも吸い込まれてしまうような感覚に襲われる。
転落感覚とともに入り込むおっぱいの言葉に意識が白くなりそうになったリリアーナを救ったのはグレイブとミシュラだった。
両肩をそれぞれがつかみ、強引に引き寄せる。
半催眠状態から強制的に引き戻され、リリアーナの焦点が合わさるまで数瞬。
群集は人垣のように三人を包囲し、アルナワーズはゆっくりと立ち上がる。
「グレイブ、そんなに酔っ払っていて大丈夫なの!?」
強い口調で向けられるその言葉。
勿論グレイブは昼間から酒を飲むことはない。当然酔ってもいない。
が・・・言葉を向けられたと単にグレイブは酩酊状態に陥り、その表情が見る見るうちに崩れていく。
特に準備がしてあるわけでもなく、特殊な装置があるわけでもない。
ただ一言発しただけでグレイブは催眠術により酔っ払った状態にされてしまったのだった。
「うへへへ、おっぱいなら何でも好きだぜぇ?」
そしてグレイブは普段は沈着冷静なのだが、酔うと途端に女好きになってしまうのだ。
「え?え?」
「くっ・・・まさか、これほど強力な!」
急激な変化にリリアーナはついていけず、ミシュラは慌ててリリアーナを引き寄せグレイブから引き離す。
周囲は数千人に囲まれ、共に助けに来たグレイブはアルナワーズの手中に落ちた。
そして今、二人は向かっている数千の手を前にどうすることもできずに捕らわれるしかなかった。
【胡蝶の夢4】
二人が数十の手によって担がれた時、あたり一面が眩い閃光によってホワイトアウトした。
閃光が収まった後、リリアーナとミシュラは忽然と姿を消していた。
辺りを探し回る生徒達だが、見つけることができずにいる。
「まあいいわぁ。みんな、学園長を倒しに行きましょう〜。」
リリアーナたちの探索に時間をかけるより学園長を倒すことを急ぎたかったのか、アルナワーズが声をかける。
その声に従い、生徒たちはいっせいに食堂から学園長室へと向かう。
最後の一人が出て行ってしばらくした後、食堂の角の壁が溶けてなくなった。
その中にいたのはリリアーナ、ミシュラ、キキ、メラル、フリージア。
種明かしとしては簡単、群集に紛れ込ました人形を使いリリアーナとミシュラを捕らえる。
そして火術を応用したフラッシュで目を眩ます。
メラルが催眠解除したフリージアが食堂隅に迷彩を施した氷に壁を作りその中に隠れていたわけだ。
「大変だわ!学園長室を襲うなんてすぐに止めなきゃ!」
慌てて後を追おうとするリリアーナをミシュラが止める。
今行っても無駄だ、と。
それよりも分析をし、対応策を練らなければならないのだから。
「・・・本気で学園長を襲う気なのかしら?」
「ふむ・・・思ったとおり催眠状態で個々の能力は殆どないも同じでおじゃる。」
「ええ、探知魔法を使われたらすぐに見つけられていたはずですわ。」
「とすると、集団戦ではなく大規模儀式魔法による魔力要員が目的か?」
焦るリリアーナをよそに、メラル、フリージア、キキ、ミシュラの話は続く。
そして分析は徐々に核心に近づいていく。
アルナワーズは大規模儀式魔法によって学園長を倒すつもりだ、と。
生徒と教師あわせ、数千人に上る大規模魔法。
それが成就すれば如何に学園長といえどもひとたまりもないだろう。
「ねえ、ちょっとまって。何か変よ。」
そんな結論に近づいたとき、リリアーナには抗い難い違和感を感じていた。
恐らく一番アルナワーズに玩具にされてきたであろう被害者としての勘。
それが言葉にできず、ずっと黙っていたが、ついに言葉として吐き出されたのだ。
一度口に出されると、それは堰を切ったようにあふれ出す。
「アルの目的がなんにしても、それは手段でしかないはずよ。
アルは結局のところ、みんなで楽しみたいのだもの。
その、雪山のこととか・・・森のロックの事とが・・・ごにょごにょ・・・」
以前、自分のことがネタにされ、殆ど全校生徒の前に晒されたことを思い出し言葉がにごるが、まだとまらない。
「暴露しちゃったりしても、それが必要だったって言う状況を作り出すから文句も言いにくいのだけど・・・ああ、違う!
そうじゃなくて!
アルが大きな騒動を自分から起こすことはないのよ。
小さな騒動をかき回して未曾有宇の大騒動にしちゃうことはあるけど、違う・・・違うわ!
そうじゃなくて・・・その・・・」
結局のところうまく言葉にできずに迷走し、言葉に詰まるリリアーナであった。
【胡蝶の夢5】
だがメラルとミシュラがそれを継いだ。
「いいの、何が言いたいかはわかったわ。
アルナワーズが先頭に立って学園長打倒を指示した、これだけでも不自然。
でも、一番不自然なのは数千人、ほとんど学園教師・生徒全員を催眠状態にして操っているのが一番不自然なのよ。」
「そうか!アルナワーズが好むのは劇場型のトラブル。
だが、全員が催眠状態でトラブルに参加させていては【観客】がいない!」
「そう!そうなのよ!」
自分がうまく言葉にできなかったことを綺麗にまとめてもらえ、リリアーナが跳ね回って喜ぶ。
「あやつ自身も操られておるか、偽者である可能性が高いということでおじゃるな?」
キキが結論を出すが、今の会話についていけていない人物が約一名。
「・・・ほっほっほっほ、そうですわね。」
「ワカッテナイクセニ・・・」
笑いながらごまかすフリージアに突っ込みを入れるギズモであった。
そんな突っ込みと共にギズモ自身を押さえつけ、フリージアが言葉を続ける。
「それで、どうしたらよいのかしら?」
「・・・・」
「・・・・」
「・・・・」
「・・・・」
苦し紛れに放たれたフリージアの一言は核心をついており、わかったところで対策が立てようもないのだ。
数千の群集を前に、個人の力など無に等しい。
ただ突っ込んでいっても数に圧倒されるだろう。
沈黙の支配する五人に救いの手が差し伸べられるのはそのすぐ後だった。
「蛇は頭さえ潰せば死ぬものなんだぜ?今の学園の状況ダ」
テーブルの上にミニチュアの学園映像が映し出される。
メラルがエミュに学園の様子を探らせていたのだ。
映像には数千人が魔方陣を描くように配置されている。
そして校舎屋上には数人の生徒を連れたアルナワーズ。
「数千人が数人になったな。」
すでに儀式魔法の配置は済んでいる。
もはや悩む時間はなかった。
四人はすぐさま立ち上がり、駆け出した。
儀式の最中は群集は群集として機能しない。あくまで魔法装置の一部なのだから。
「しかし、アルナワーズの催眠は強力だ。グレイブが声をかけられただけでああなった。」
走りながらこれから起こるであろう戦いの対策を立てていた。
声をかけられるだけで催眠状態に陥ってしまうのだ。
下手をすれば先頭にすらならないかもしれない。
「多分・・・声じゃないわ。目よ。食堂で感じたのだけど、まるで光線に射抜かれたようだったの。」
リリアーナの言葉に、メラルが思考を巡らせる。
「そう、それなら何とかなるかもしれない・・・」
メラルはフリージアに目配せをしながら走る。
そしてフリージアは力強く応える。
「ほーっほっほっほっほ、お任せになって!」
「・・・ワカッテナイクセニ」
ギズモが小さく突っ込みを入れたのは秘密だ。
【胡蝶の夢6】
屋上に着くと、そこにはアルナワーズが立っていた。
その周囲をレイド、ロック、ヴァンエレン、キサラ、グレイブ、キサラが囲む。
「あらぁん、もうお祭りも佳境なのにいまさら飛び入りは無作法だわぁ。」
リリアーナたちが屋上に到着するのを知っていたかのようにアルナワーズが出迎える。
そう、儀式魔法の最中であるにもかかわらず、だ。
ならば儀式魔法を取り仕切っているのは?
それはアルナワーズの背後にいた。
ローブを深く被りその顔はわからないが、複雑な動作で呪文をつむいでいる。
「アル!あなたが操られているなんて!目を覚まして!後ろの人は誰?」
「それは崖崩れのように・・・目に見えて確認できる時には全てが完了した時なのよん。」
崖崩れは突然起きるわけではない。
山に大量の雨が降り、水を含み地盤を歪ませる。
だが、それは見た目ではわからないのだ。
わかるのは崖が崩れるその瞬間なのだから。
「彼の名はカシンコジ。あなたたちの主人となる者の名よぉん!」
「カシンコジじゃと!?」
その名に反応したのはキキだった。
東方ではその名を知らぬ者のいない幻術の名手。
生きながらにして伝説として語り継がれているのだから。
「さあ、おとなしく虜になりなさぁい!」
レイドたちが襲い来る中、アルナワーズの目が見開かれる。
その瞬間、フリージアとメラルの合体魔法が炸裂する。
フリージアが大容量の魔力で巨大な氷壁を作り出す。
そしてメラルの精密作業によって、氷壁は巨大な鏡と化したのだ。
その結果はメラルの思惑通り。
強力な催眠の視線は鏡によって跳ね返され、アルナワーズはもとより、殺到していたレイドたちをも射すくめたのだ。
倒れるアルナワーズたちに駆け寄るリリアーナ。
「う・・・う・・・あれ、リリアーナ?ここは?」
最初に気づいたのはロックだった。
それに続くように次々と気づく一同。
どうやら催眠状態から抜け出しているようだ。
「もう!大変だったんだから!」
うっすらと涙を浮かべながら安堵するリリアーナだが、事態は終わっていない。
学園全体が鳴動し、光を帯びる。
そう、儀式魔法は完成してしまったのだ。
【胡蝶の夢7】
屋上に学園長室が出現し、その中央では光の柱によって動きを封じられた学園長がいた。
「うはははは!久しぶりだな!さあ、われらが師より授かりし物を奪いにきたぞ!」
高らかに宣言するカシンコジにリリアーナたちの顔色がさっと変わる。
事情はわからなくとも、今の切迫した事態はわかるからだ。
「あのカシンコジという人が学園中を利用して学園長を倒しにきたのよ!」
早口でリリアーナが説明するが、誰しもがわかっていた。
ビジュアル的にものすごくわかりやすい学園長の危機なのだから。
「なんか知らんがこの俺を操っていた代償は高いぞ!」
レイドが銃を取り出し、フリージアが舞う様に魔法動作に入る。
これも思惑通り。
アルナワーズが操られているにしても、偽者だとしても背後に倒すべき敵がいる。
催眠反射で皆を正気に戻した後、全員で敵を倒す、という計画なのだから。
一斉にに攻撃を仕掛けようとしたとき、キキだけが悲痛な叫びを上げる。
「いかん!そやつに手を出してはいかん!」
キキは知っていた。
この計画の誤算は、背後に隠れていた敵があまりにも強すぎる、だったのだから。
そう、このような回りくどいことをしなくとも、正面きっての闘いで自分たちを全滅させられる程に。
東方の伝説の一節にある。
カシンコジに相対したものは全て己の術によって倒される、と。
だがその叫びもむなしく、レイド、フリージア、グレイブ、ロック、キサラという武闘派は攻撃を仕掛けてしまった。
そしてそれぞれの最大の術はカシンコジの手前で方向を変えそれぞれへと飛来する。
「引用!逆転の法則により地は天に、天は地に。そして進行方向も歪む!それが世界の芯なる姿!」
声が響いたとたん、重力が反転したようにリリアーナたちは空に向かって落ち始める。
しかし、カシンコジの力が加わり反転してきた攻撃魔法はその効果を受け付けず直進することになる。
その結果、大魔法をジャンプしてかわした状態となったのだ。
この危機を救ったのはキサカだった。
引用によって言葉を顕在化させる能力。
「キサカさん!催眠術にかかってなかったの?」
どこからか現れたキサカにリリアーナが驚きの声を上げる。
それに対するキサカはあまりはっきりしない。
実はすっかり寝坊をしていたのが幸いし、騒動に巻き込まれずにいたのだ。
しかも騒動に気づき、食堂を出たあたりからリリアーナたちの後をつけていたのだが、なかなか出る「間」をつかめなかったなど、言えるわけはない。
「そこで見ておれ!」
着地した一同に降りかかる厳かな声。
カシンコジの声だった。
だが、ただの声ではない。
耐性のあるミシュラでさえ抗えぬ絶対の声なのだ。
「ええ、俺、出てきた瞬間にやられちゃうの?」
キサカの言葉も通り、全員がその場に棒立ちすることになる。
ぴくりとも動けなくなった一同を省みることもなく、カシンコジは学園長へと向き変える。
「さて、もはや動くことも叶うまい。さあ、渡してもらおうか。」
「はて、何のことかな?」
学園の生徒全てを虜とされ、自身も光の柱により動きを封じられているにもかかわらず学園長は動じることはない。
それどころかにやりと笑いとぼけて見せる。
「ふざけるな!師は我らに奥義書を渡した。
俺には幽玄庵天の巻を。そしてお前には地の巻きを!」
とぼけた態度の学園長に逆上したカシンコジが叫ぶと、その言葉と共に学園長室には炎が渦巻き、氷に埋め尽くされる。
【胡蝶の夢8】
「最高の幻術って現実にも影響を与えるって言うけど、ここにいても辛いわぁ〜。」
「あ、あれが幻術ですの?」
ただ見ているだけしかない一同は、学園長とカシンコジのやり取りの余波だけでかなりの消耗を強いられている。
にもかかわらず、動くことすらできない学園長にはまったく影響がないかのようだ。
「カシンコジよ。お主は師の天の巻きにより1000の幻術の奥義を極めた。
それで良いではないか。」
「やかましい!地の巻きには何がかかれてあった!それを我が物にせねば極めたことなどにはならぬは!」
鳴り響く轟音と共にあふれる雷の渦。
激昂するその姿に、学園長は深い、深いため息をつく。
「・・・仕方がない。レイド君、そして我が生徒たちよ。私は今動けぬ故に代わりに頼む。」
その言葉と共に一同を固まらせていた呪詛が霧散した。
突然の開放に体制を崩す驚くレイドたちだが、それ以上に驚いたのはカシンコジである。
己の絶対の幻術が破られたのだから。
思考を取り戻したのは同時。
駆け寄るレイドたちにカシンコジは厳かに声をかける。
「奈落に落ちよ!」
途端に屋上は千尋の谷と化し、レイドたちはなすすべもなく転落・・・することはなかった。
浮遊術すらかけられぬ強力な幻術であるというのに、レイドたちは一直線にかける。
最初に到達したのはキサラだった。
そしてレイド、ロック、グレイブ、フリージアと続く。
カシンコジの幻術は完全に封じられていたのだ。
そうなってはもはや勝敗は火を見るよりも明らかである。
カシンコジが倒れたことにより、操られていた生徒たちは放心状態となり儀式も中断。
自由の身となった学園長は肩を叩きながら歩み寄る。
「・・・なぜだ・・・我が奥義が尽く封じられるとは・・・ま、まさか・・・!」
「すまん・・・幽玄庵天の巻には1000の幻術の奥義が記されておった。
だが、地の巻には1000の幻術破りの奥義が記されておったのだ。」
「く・・・くくくく!ふははははは・・・!なんと愚かな!・・・なんと・・・!」
起き上がることもできぬカシンコジは学園長の言葉を聞き、全てを悟った。
カシンコジは幻術の才能が類まれにあり、本人もそれを自覚じ、幻術を極めた。
そんなカシンコジに全ての幻術を破る術の書かれた地の巻を渡すことはあまりにも残酷だったのだ。
結局はその存在を身をもって知らしめることになってしまったのだが・・・
「くははは!所詮は幻。ありもしないまやかし!
なんと滑稽な!まさに俺そのものではないか!くははははは!」
響き渡る自嘲と共にカシンコジの姿が薄れていく。
最後には涙声となった笑い声だけを残し、完全に消えてしまった。
【胡蝶の夢9】
「今回は私の私事で巻き込んでしまってすまなかったね。」
深々と頭を下げる学園長に、一同は声をかけることはできなかった。
あまりに無残、そして哀れな魔法の一面を目の当たりにしてしまったのだから。
「・・・えっと、いや、このくらいいつもの事ですし、できればボーナス上乗せしてもらったりしたら・・・」
レイドがこの気まずい雰囲気を打破しようと何とかおどけた声をかけるがそうは問屋が卸さない。
「ぶぅわかもんが!日頃からおっぱいおっぱい言っておるから能天気に幻術にかかるのじゃ!」
雷を落とすのはご存知教頭先生。
学園長室の置くから巻物を持って現れた。
考えてみれば単純な話である。
学園長は儀式魔法によって学園長室ごと屋上に引きずり出され、身動きできなかったのである。
そんな状態で幻術破りができるはずがない。
学園長は自らを囮としてカシンコジの注意をひきつけ、影で教頭が幻術破りをしていたのだ。
「ま、これが幻術の本質、というものじゃて。」
夕日に伸びる影と共に、学園長の笑いが響いた。
その後、夕食に食堂に集まる面々。
催眠状態から脱した生徒たちは、今日の出来事の記憶がはっきりしていないようだ。
しかし、その最中にいた一同はしっかりと覚えている。
その中にアルナワーズの姿はいなかった。
「アルが操られていたなんて、ショックだったでしょうね。」
「超強力な視線による催眠も一時的にカシンコジに与えられていた能力だったようでおじゃるな。」
「幻術の限界を見せ付けられちゃったのだからな。」
「いや、少しくらい落ち込んでくれたほうが平和かも・・・。」
「なに?落ち込んでいるのか?よし!仲間として励ましに行かなくちゃいけないな!」
「待て待て、下手な慰めは逆効果だぞ?」
「それより・・・女子寮に行くつもり・・・ですか?」
鍋をつつきながら心配するのだが、リリアーナはくすりと笑う。
「そんなに心配しなくても大丈夫のようよ?」
そう視線を向かわした先には、いつもの食堂隅ののぼりへと注がれる。
いつもはヴァンエレンの献血コーナー(?)になっているのだが、のぼりに書かれた文字が変わっていた。
【来たれ美乳派!】【おっぱいは世界を救う!】
明らかに催眠状態のヴァンエレンがそこにいた。
何かの署名をしているようだ。
そしてそこには、のうのうと署名をし、ヴァンエレンに声援を送るアルナワーズがいた。
リリアーナたちに気づくと、笑顔で近づいてくる。
「はぁい、皆さんおそろいで。
キョニュリスト教とヒンヌー教の二分では面白くないわぁ〜。
第三勢力立ち上げて盛り上げようと思っているのだけど、みんなもどぉ?」
いつもと変わらぬアルナワーズの微笑と既に巻かれたトラブルの種に全員が苦笑するしかなかった。
学園全体を巻き込む騒動も日常のひとコマでしかない。
学園生活は今日も続いていく。
乙
ちょっと詰め込みすぎ感は否めないけどよかった
これはSSではなくシナリオ投下した方が生きる気がする
長くて読む気にならんのが残念だ
おっぱいwでもGJ!
自分もこれシナリオでやったら面白かっただろうなと思った
確かにw
でもSSとしても面白かったぞGJ!!
催眠術で参加キャラの行動権を奪う必要があるからシナリオとして成り立たせるのは無理っぽくね?
>>702 シナリオの方がいいっていうのは遠回しに微妙なSSだって伝えてるだけで
みんな本気で言ってるわけじゃないの
空気嫁
[プロジェクトπ 変態という紳士たち]
「………諸君、今夜もお集まり頂きまことにありがとう…」
とある一室にて、その会合は静かに始まった。
彼らの名前は巨乳聖教…女性豊かな胸を愛し、そこに世界心理を見い出す研究者である。
「…さて、今日集まって貰ったのは他でもない」
皆,一様に一つ目のマスクを被り、特に幹部らしい装飾を施された一つ目が話を進め始める。
他の皆は幹部が何をいうか理解していた…いや、理解せざるを得なかった。
「我々の唯一神………アルテリオン様が…この学園を去られて早2ヶ月…」
皆は騒がず、その言葉を受け止めた。
そして、少し間を置いて、幹部は続ける。
「…これにより…我が聖教の力は弱まっているのは、諸君らも理解しているな…」
「畜生!レイドの野郎…俺達の味方だと思っていたのに…裏切ったな、俺達を裏切ったな!」
「落ち着け『C』…彼は裏切ってはいない……彼は我々の教えを守ったからこそ、祝福されたのだ」
「しかし…『G』」
「我々には悲しむ時間などない…すぐに新たな女神を探さねばならない…」
「………『G』」
「お言葉ですが『G』…先日の騒動にて『レジェンド』はもう…」
「……彼の存在は惜しいが、今は足手まといだ…なんとか彼抜きで女神を探す方法は無いだろうか」
Gが首を傾げ考え込むと皆も考え始める。
三人よれば文殊の知恵というが、煩悩にまみれたこの一室内では至極意味がないだろう。
それから一時間の沈黙が続いた。
「………所で『A』…その足元の荷物はなんだ?さっきから気になってしょうがないんだ」
Gのその一言が、沈黙を破っただけではなく、起死回生の奇策を発案するきっかけを作ったのは、誰も知るよしもなかった。
Aが徐に取り出したのは、少々地味な水着をきた人形(フィギュア)だった。
「……男子寮の前で転校生が露店を開いていたので…つい」
「なるほど……しかし、その衣装、シンプルというか地味じゃないか?」
「これは学校指定水着通称『スク水』という水着だそうで、向こうではかなり人気の衣装みたいです」
「……う〜ん、確かに良く見てみると…なるほどな」
「…そう言えば…最近プールが出来たそうですね…水泳部用の競泳プールから他学生用の流水プールまであるそうで、そうだ!我々も足を運びに」
「バカ!我々の目的がバレたら………」
このとき、Gに電流が走る。
水着…………プール…………ジャジャ丸……ピッコロ…ぽ〜ろり……
「そうだ!ティンと来た!……私にいい考えがある!」
ΩΩΩ「なんだって」
「…………以上だ」
「そうか!その手があった!」
「これから忙しくなるぜ!」
そうして、熱い夜は幕を閉じた。
「…………こちらロリータ…敵会合の盗聴に成功した。」
「よくやったぞロリータ…でどうなんだ…」
「…奴ら、水上大運動会をやるつもりだ…」
「ッ!!!それは本当かロリータ……大変なことになってしまった……ロリータ、一刻も早くジョルジュギアを破壊するんだ!」
「?…大佐……運動会は」
「………安心しろ、我々のエージェント(アイドル)を侵入させる」
「……………」
続かない
ちょっww
続けよ!
なんか気になるじゃねぇか
一瞬pinkと間違えたかと
【レイド先生の日常】
この物語は魔法学園の教師であるレイドの日常を描いた物である。
「・・・ぐ〜・・・ぐ〜・・・」
自室のベッドで気持ち良さそうに眠っている男こそがこの物語の主人公、レイドである。
「くおぉぉらぁぁぁー!!レイドぉぉぉー!!貴様いつまで寝とる気だぁー!」
レイドの脳内に教頭のテレパシーが響く。
「ん・・なんすか・・・うるさいなぁ・・。・・ぐ〜・・・。」
「寝るなぁぁぁぁ!今日は職員会議があると昨日言っただろうがぁ!」
「・・・そういや〜そんな事を言ってたような言ってないような・・」
「いいから早く着替えて会議室に来い馬鹿者!!」
「へいへい・・解りましたよ。なにも朝っぱらからそんなに怒鳴らなくても・・・。また血圧上が・・すんません、何でも無いっす。」
危険を察知したレイドは全てを言う前に謝罪をした後、スーツに着替え会議室に向かった。
「失礼しま〜す。寝坊しました、すんません。」
まったく反省の色が見られない様子で会議室に入り、エースの隣に座る。
「さて、今日集まってもらったのは他でもない。今日から3日間の間のテストについてじゃ。」
ホワイトボードにはテスト中の注意事項や採点についてなどが書かれている。
眠そうな顔で学園長の説明を聞いているレイドにエースが小声で話掛ける。
「今朝も大変だったみたいですね。カンカンでしたよ、教頭。」
「本当に毎朝毎朝ご苦労な事だよ・・あんな大声朝っぱらから聞かされる俺の身にもなってほしいもんだ。」
「あなたが早く起きれば良いだけの気もしますけどね。」
「それを言っちゃあお仕舞いだろ〜。」
「以上で今日の会議は終了じゃ。なお、最もテストの点数が低いクラスの担任は3ヶ月間給料80%カットじゃからの。心しておくように。ほっほっほ。」
「・・・おい、今の話聞いたか、エース先生?」
「ええ、確か昨日も言っていたと思いますが?」
「何でそんなに余裕なんだよ!!3ヶ月間給料80%カットだ!?アホか!」
「僕のクラスは皆優秀ですから。」
焦るレイドに対し笑顔で対処するエース。
「・・・終わった。」
うつ向きながらトボトボと職員室へ向かうレイドに一人の男子生徒が近寄ってくる。
「先生!おはようございます!今日も良い天気ですね!まるで俺の心を映し出しているようです!」
朝からこんなに元気が良い生徒は一人しか居ない。
ロックだ。
「んあ、おはようさん。今日も朝から熱いね、お前は。」
「朝だからこそ熱くならないと駄目なんですよ!あっ、そうだレイド先生!折り入って相談があるんです!」
「何?言っとくけど恋愛の相談はお断りだからね。」
「違いますよ!俺は先生と1対1で勝負がしたいんです!」
ロックの目には炎が宿っている。
どうやら本気のようだ。
レイドはロックの様子を見て額に手をあて「やれやれ」と呟いた。
「なあ、ロック勝負っつったって今日からテストなんだぞ?それに俺だってこう見えて暇じゃない。
丸つけをしたり点数をまとめたり忙しいんだ。」
レイドの言葉を聞き、ロックは残念そうに項垂れる。
「そうですか・・残念です・・・。」
諦めて教室に帰ろうとするロックをレイドはすかさず引き留める。
「だが、1つだけ俺と勝負出来る方法があるぞ。」
「・・本当ですか!?なんですかそれは!?」
「今回のテストで平均80点以上だったら相手してやるよ。」
意地悪そうにニヤけるレイドに対しロックは一瞬躊躇するが・・・
「解りました!!絶対ですよ!平均80点以上とったら相手して下さいね!!
そうと決まったら早速勉強だー!!それじゃあ失礼します!!」
ロックは全速力で教室に戻って行った。
1限目までまだ数十分はある。頑張れば10〜20点位は上がるだろう。
「よ〜しこれでちょっとは点数アップに繋がったかな?」
職員室で暫しの休憩タイムを満喫し、テストを手に取り教室に向かった。
「おはよう諸君。皆知ってると思うが、今日から3日間はテストだ。気を引き締めて頑張るように。
特にうちのクラスは最近下から1、2番目という非常によろしくない成績だ。
学年でトップのクラスになれとは言わん。最下位だけは免れようじゃないか。」
「せんせー、いきなりどうしたんですか?いつもは『赤点じゃなけりゃ良いよ。』って言うのに・・」
「いや〜それが・・・ちょっと面倒な事になっちまって、今回のテストでうちのクラスが最下位だったら俺が担任から外されちまう事に今日の会議で決まってな・・・」
「えー!?それホントですか!」
「ああ、ホントだ。120%真実だよ。だから、頑張ってくれよ、な?」
「だ、だよな〜。本当に酷い話だぜ〜。俺はこのクラス以外の担任なんてやりたくねぇってのに・・」
と、そこへリリアーナもやってくる。
「何の話してるの〜?二人共深刻そうな顔しちゃって。」
「レイド先生の担任を・・」
「いや〜リリアーナとロックはいつ見てもお似合いだよな〜、って話をしてたんだよ。」
「な、なな何でそんな話を深刻な顔して話してるんですか!」
「生徒の将来ってのは教師にとっちゃ深刻な問題なんだよ。メラルはクラスメートとしてお前に協力してやりたいんだってさ。」
「えっ・・先生何を・・」
「メ、メラルさんまで・・い、いいわよ!そんなに気を使わなくて!」
「良いじゃないか、せっかく協力してくれるってんだから協力してもらえばよ。
おっと、もうこんな時間だ。んじゃ、次のテストを持って来るわ。」
「あ、逃げないで下さいよレイド先生ー!」
多分続く
魔法少女か
期待してるよ
715 :
名無しになりきれ:2008/01/10(木) 18:30:41 0
GANNBARE
>712と>713の間が抜けてた・・・すまん。
という事で>712の続き追加。
「よ〜し、そういう事なら皆、頑張るよー!」
「おー!」
「うぅ・・・ありがとう皆。俺はお前達のような生徒を持てて幸せだよ・・。
よ〜しそれじゃあテストを渡すぞ〜。」
テストの時間は50分。生徒達は50分間集中してテストに取り組む。
そしてレイドは・・・教卓で熟睡していた。
キーンコーンカーンコーン
1時限目を終了するチャイムが鳴り響く。
「・・・ん・・あ、終わったか・・。よ〜し後ろからテストを回収しろ〜。」
テストを回収し次のテストを持って来ようとするレイドにメラルが寄ってくる。
「ん?どうしたメラル?」
「・・先生、さっきの最下位だったら担任から外されるって話、本当ですか?」「ああ、本当だとも。何?心配してくれてるのかな〜メラルちゃ〜ん?」
「いえ、別に・・。」
「あらそう・・・」
「ただ何かおかしいと思って・・確かに私達のクラスは最下位か下から2番目が多いけどいきなり担任から外すなんて・・」
この時レイドの「ギクッ」という表情にメラルは気付いただろうか?
「そうね・・・例えば一定期間の間給料を減らす、とかなら納得出来るんだけど・・・。」
【騎士よ、今こそ立ち上がれ#Old age】
世界の開闢神話は数あれど、それを確かめる術はない。
唯一ついえることは始まりがどうであれ、ここに世界があり、勃興を繰り返すということだけだ。
そして今、一つの世界がその隆盛を極めようとしていた。
多種多様な生物が満ち溢れ、力を、知恵を、文化を花開かせる。
大地に広がる文明は燦然とした光を放ち、そして、翳ってゆく。
この世界に起こった文明は魔力と科学を融合させ、爆発的にその版図を広げていった。
話はその文明の中心地。
重力や物理法則を無視した無数の塔の一つ。
埃一つない廊下を歩く一人を、もう一人が見つけ声をかけるところから始まる。
「フリーザァアア!俺は人間をやめるぞおおお!!」
「おや、ディオさん。とうとう機士になられるので?」
呼び止められ、嬉しそうに応えるのは小柄で尻尾の生えた無毛の男。
その体は肉ではなく、機械によって構成されている。
魔道科学が発達したこの世界で、人は不安定な肉体を捨て機械の体へとシフトチェンジするものが増えてきていたのだ。
声をかけた方は金髪にて痩身。しかし筋肉はその服の上からもその存在を誇示している。
だが、何より特徴的なのは口からはみ出る牙と漆黒の瞳。
その瞳に湛えられるのは純然なる悪、だった。
「ああ、来月の四日にな。」
興奮気味に告げるディオの言葉に少し考えるフリーザ。
そしてにやりと笑う。
「さすが我が友ディオさんです。来月四日を抑えるとは・・・」
フリーザの笑みに応えるようにディオもにやりと笑う。
「ああ、大安吉日だ!」
親指を立てて力強く応える。
しばしの談笑の後、話はディオの父親へと移る。
「しかしよくカーズ博士がお許しになりましたね。」
「親父は確かに偉大だけど、考えが古いんだよ。
いつまでも不安定な受肉状態に拘っているからな。
説得に今までかかってた。」
「確かに・・・しかし博士は偉大な方ですし。
この間見せてもらいましたよ。フェンリルという新生物。
まだ幼体でしたが、博士の唱える究極生物の研究から生まれたそうで。」
ディオの父親カーズはこの世界でも有数な魔道科学博士である。
七魔王による感情エネルギー変換システムを実用化させ、それを平行世界によって運行する。
後の魔界と呼ばれる世界を作ったのだ。
システムはこの世界の根幹を成すものの一つとなっている。
そのほかにも、遺伝子操作によってさまざまな生物を創造している。
遥か後の世に、モンスターと呼ばれるものたちだった。
しかし、世論は機械化に傾いており、カーズ博士と議会の間で軋轢が生じていた。
「説得に成功したということはあれの小型化に成功したので?」
「ああ、これさ。」
そういって差し出したのは掌に乗せられた黒い箱。
これを見てフリーザは驚いた。
それはスタンド発生装置。
最小のものでも1Mをきることはなかった装置が掌サイズになっているのだから。
「驚きました・・・まさかこれほどとは・・・!カーズ博士も認めるわけですね。」
「クロロ博士の幻影旅団チームが総力を傾けた結晶さ。」
フリーザとディオの談笑は続く。
その頃、カーズ博士は培養槽の前で物思いに更けていた。
傍らには巨大な狼、フェンリルが丸くなっている。
世界は機械化に進み、息子ディオまでも自分と道を違えた。
まるで自分の今までのことを全否定されたかのように感じていたのだ。
議会で惑星機械化政策を告げられた時よりも打ちひしがれている。
「私は・・・私の夢は・・・間違っていたのか・・・?セルよ!」
培養層の中、形成されつつある緑色の人型生物に力なく語りかける。
この数十年後、カーズ博士と究極生物軍団と機械化へと進む世界との戦いが始まるのだった。
機械化した者【機士】と生物の頂点を目指す【騎士】の戦いが・・・
遥かなる未来、古代文明としか語られぬ失われた文明【エデン】の物語である。
オープニングだけで完!
何処のジョジョとハンターハンターとドラゴンボール?
面白かったよ
>>716 GJ!やっぱ一レス抜けてたのかww
続き楽しみにしてるよ
>>719 騎士スレで版権ありをやってみたかったんだよ。
ガストラとかが掘り起こしていた機械兵が作られたような時代を舞台に。
でも無理っぽいから吐き出してみた。
>721
一部の悪質なコテが版権を笠に暴れまわったのが鬱陶しがられた理由な訳で
今あたりなら多少はマシなんじゃないか、と思うのは俺だけなんだろうかねぇ
どうしてもやりたい!って気持ちが抑えられなくなったらお手伝いするがね
>716
GJ
>717
まあなんだ、乙
>>722 やりたいって衝動が押さえられないようなら、とっくに一人でも始めてるはず
今はそっとしとこうや
>>722 悪質なコテって、ファルのことか?
最後の時期を見誤ったのは兎も角、最後までカイザーと一緒に頑張っていたのに、その言い方はちょっと酷いんじゃないか?
マッチポンプ乙
容量がもったいない
続きは雑談所で聞こうか
補習
727 :
名無しになりきれ:2008/01/27(日) 21:55:59 0
sage
ほ
今日はヴァンエレンの誕生日バレンタインデー
朝日が昇り、日の光がフィジル島を照らす。
日の光を浴びて、森では花々が蕾から彩り鮮やかに花びらを広げていく。
そんな光景が森の奥にひっそりと作られた庭園でも繰り広げられていた。
その庭園に咲く花々は全て毒を含み、その毒気に当てられて周囲は沼と化していた。
そんな毒々しい庭園の中心で、咲き乱れる毒の花をうっとりと見つめる女生徒が一人。
おもむろに葉っぱを毟り取り、慣れた手つきで器具に入れていく。
「ふぅ〜・・・コカの葉と鉛のブレンドもいいわー。」
独自のレシピで作った水タバコを満喫し、はねてきた赤と黒の水玉模様の蛙をなでる。
暫く時間をすごした後に、女生徒は立ち上がる。
「さて、いきますか!」
フェイスベールをつけて、颯爽と庭園を後にした。
######################################
『ロック、帰って来て。あなたじゃないと駄目なの!』
『ロック、帰って来て。あなたじゃないと駄目なの!』
『ロック、帰って来て。あなたじゃないと駄目なの!』
朝の日差しの中、響き渡るリリアーナの声にリリアーナが飛び起きた。
「ちょ・・・なななな!?・・・!」
大慌てで枕元に会った目覚ましを叩き、繰り返される自分の声を止める。
寝起きにもかかわらず、すっかり目が覚めてしまった時刻はまだ7時前だった。
折角の休日、惰眠を貪ろうと思っていたのに、思ってもいない方法で叩き起こされたので。
「ちょっとアル!って・・・・」
辺りを見回すが、室内はしんと静まり返っている。
どうやら既に部屋はいないようだ。
これは別段珍しいことではない。
同居人は22時に眠り5時におきるという生活習慣の持ち主だ。
そしてとてつもなく気まぐれな性格なので、リリアーナが目覚めて姿が見えないということなどごく当然のことなのだから。
不本意にもまるで取り残されたような感覚に襲われながら、のろのろとベッドから這い出す。
そう、判っていたのだ。
あの時確かに幻灯機とかで幻灯機とかで録画してたら絶交、といった。
だから録音にしたのよぉん。といけしゃあしゃあと言う姿が目に浮かんでしまったのだから。
朝から不機嫌な顔で洗面所で身づくろいをし、キッチンで朝食を用意。
食卓に座ったとき、テーブルに置かれた紙袋に気がついた。
袋には『リリアーナへ』と、同居人の字で書かれている。
嫌な予感がしつつも中身を空けると、中にはカードと黒光りする何かの布が。
広げてみると、それはラバーと皮でできた全身スーツだった。
顔の部分はガスマスクになっており、足のつま先から頭のてっぺんまでぴっちりと包み込む服だ。
『リリアーナへ。誕生日おめでとう。あなたにぴったりのように作ってもらいました。
今日はこれを着ているとラッキーかもよん?』
カードにはこんなメッセージが書かれているが、リリアーナの顔は露骨に嫌そうな表情になる。
「・・・私誕生日今日じゃないし・・・どこに売っているのよ、この悪趣味な服は!」
両手で広げ、つい毒づいてしまうのだが、それは仕方がない。
だが、すぐにプレゼントの趣味の悪さ以上に気にすべきことに気づいてしまう。
『あなたにぴったり』
そう、この悪趣味な全身タイツはリリアーナのためだけに作られたのだ。
つまり、自分が寝ている間に採寸されたということだろうか?
最悪『型取り』すらされている可能性すらあるのだ。
そこら辺をはっきりさせないと、と服を袋に戻そうとした瞬間、リリアーナは自分の体の異常に気がついた。
体が動かないのだ。
まるで全身石になったかのように動かない。
半面意識ははっきりしており、見る、聞く、考えることはできる。
服に呪いでもかけられていたのだろうか?
いや、着てもいないのに発動する呪いなんて反則過ぎる。
そんなリリアーナの思考をさらに掻き乱す事が起こる。
ブスブスと何かが溶ける音がするのだ。
動かない体で必死に目だけ動かし辺りを見回すと、その音源を発見できた。
ドアのノブが薄い煙を開けながら溶け始めているのだ。
ここに至り、リリアーナの脳裏に『襲撃』の二文字が浮かび上がる。
しかし、この部屋は特殊結界が施されており、その副次作用として敵性魔法は無効化されるはず。
動けないまでも可能性を一つ一つ消していき、一つの結論に辿り着いた。
これは魔法ではなく、麻痺毒だ!と。
ヒーラーを志すリリアーナは薬学にも精通している。
指先の微かな痺れ、動かない身体。反面はっきりしている意識。
これは獲物を生きたまま貪り食うコルヒチン大ミミズの毒症状にそっくりだということに気づいたのだ。
そう悟った時、背中に寒いものが走る。
今、ドアノブを溶かしている者が当然この危険な毒物を散布したのは間違いない。
声すら出せないこの状況で、一体どうなってしまうのか?
ただただ嫌な汗を流すしかできない状況で、とうとうドアが開かれた。
「だっはっはっは!ザマアミロ!流石に朝から来るとは思ってなかっただろう!」
勢いよく開かれた扉から現れたのはローブにフードを目部下に被りフェイスベールで顔を隠した女生徒だった。
顔は見えないが、リリアーナはそれが誰だか知っていた。
話した事はないが、薬学講座で一緒になる。
そして時々フリージアの愚痴に出てくる生徒。
毒・薬物のスペシャリスト、ベアトリーチェだと。
ベアトリーチェは無遠慮に室内に入り込み、きょろきょろと何かを探すように見回していた。
「おろ?あの腹黒女どこ行った?」
その言葉に、【また巻き込まれた!】と思いつつ、唯一動く目だけでベアトリーチェを睨み付ける。
朝も早くから突然危険な毒物を撒き散らしての登場。
しかも無遠慮に部屋の中に上がりこむ非礼に怒っていたのだ。
が、指一本動かせぬ身では文句の一つも付けられない。
やがてベアトリーチェはリリアーナの元にしゃがみ込む。
「あんた、確か・・・って、なにこれ・・・?」
覗き込むベアトリーチェの視線がリリアーナからはずれ、すぐ横に移っていく。
そこにあるものは・・・アルナワーズからの誕生日プレゼントだった。
「おいおい、なんてえか、エロイって言うかグロイな。どんな趣味だよ?
まあこのくらい変態じゃないとあの腹黒女のルームメイトはできんって事か。」
うんうんと納得するベアトリーチェにリリアーナは脳内で転がり断固とした抗議の声をあげていた。
(ちがーーーう!私の趣味じゃないいいい!
それに変態だからルームメイトになったんじゃなくて、ルームメイトになったから変態みたいに仕立て上げられてるのよおお!!)
きいいい!と叫びたいが、声一つ上げられないので、それが伝わることはなかった。
その証拠に、広げた服と転がるリリアーナを見比べ、苦笑を浮かべている。
苦笑の意味は、最大限の衝撃を持って言葉にされる。
「まあ、人の趣味にどうこう言わないけどさあー。
こういうボディーラインを強調しまくるようなのは身体の凹凸がはっきりしてないと似合わないんじゃないの?」
クスクスと嘲笑混じりに見下ろすベアトリーチェの言葉に・・・
そして、ローブの隙間からでもはっきりわかってしまう豊満なボディーラインを見て・・・
リリアーナは脳天を打ち抜かれたような衝撃を受けていた。
動かないまでも、力を込めていたのだが、それも断ち切られガックリとなる。
肉体以上に精神的に打ちひしがれて、力を込める気力すらも刈り取られてしまったのだ。
そんなリリアーナの鼻先に、豪華な香炉が置かれる。
「巻き込んじゃって悪かったわね。これですぐに動けるようになるから。」
倒れたリリアーナを覗き込むベアトリーチェの瞳には悪意を感じられなかった。
多分、自分の言葉がリリアーナの心を滅多打ちにしたなどと自覚すらないのだろう。
リリアーナを椅子に座らせ、ベアトリーチェも向かいの椅子に座る。
まだ麻痺毒の効果が切れていないのだが、そんなことお構いなしだ。
「巻き込んじゃってごめんね。リリアーナ、だよね。
私ベアトリーチェ。本当は腹黒女の方に用があったんだけれどさ。」
悪びれる様子もなく、自己紹介と挨拶を始める。
フェイスベールで顔は隠れているが、にこやかな表情なのはうっすらと透けて見えた。
その頃にはようやく麻痺毒の効果も切れ、一言文句を言おうと息を吸い込んだとき、ベアトリーチェが言葉を続けた。
「前に腹黒女に朝6時に叩き起こされてね。朝六時よ?
魔法実験が失敗して友達が猫になっちゃったから解除薬を作ってくれって懇願されたわけよ。
まったく迷惑な奴とは思っていたけれど、あの時程むかついた事はなかったね。」
出鼻をくじかれた格好の上、出た言葉が以前猫になってしまった時の話だったのだ。
喉まで出ていた文句の言葉が一気に引っ込んでしまった。
あの時、解除薬と走らなかったとはいえ、一目散に逃げ出してしまったのだ。
結果、ベアトリーチェは無駄に叩き起こされたことになる。
リリアーナにその責任があるわけではないが、性格的に責任を感じてしまい、文句を言うにいえなくなってしまったのだ。
そんなリリアーナを余所に、ベアトリーチェは更に続ける。
「それで取引をしたのね。必ず借りは返す、って。
その約束の日が今日の昼な訳だけど、あの女の腹黒さは尋常なないでしょ?
下手な小細工させないように朝市で襲撃に来たんだけれど・・・ちょっと待たせてもらうよ。」
理由が理由だし、返答するにも困る。
アウアウ応えるのが精一杯なリリアーナはうろたえながらもとりあえず席を立つことにした。
状況はつかめたが、あまりに突然で対処が追いつかないのだ。
「あ、あの・・・お茶入れてくるね。」
一端席をはずし、奥のキッチンへと入っていく。
大食堂はあるが、寮の部屋にも簡易キッチンはある。
多少の料理くらいは作れるのだ。
キッチンに引っ込んで深呼吸をしながら戸棚を漁る。
すると、これ見よがしに昨日までなかった箱が置いてあった。
蓋には同居人の字でメッセージが刻まれていた。
【リリアーナへ。困ったお客様が来たときに使ってください。きっと助けになるはずです。】
「ア・・・アルゥ・・・・!でも助かったわ!」
メッセージを見て全てを悟った。同居人はベアトリーチェが朝襲撃に訪れることを知っていたのだ。
怒りがこみ上げてきたが、それどころではない。
同居人の性格からして、言葉通りのお助けアイテムが入っているはずなのだから。
喜んで蓋を開けると、中には小さな小瓶が二、三はいっていた。
取り出してみると、どれもラベルには髑髏マーク。
慌てて箱に戻し、蓋を閉める。
「トリカブトに毒ニンジンに有機水銀?・・・私をヒットマンにするきい???」
下手に薬学を専攻しているが故にその小瓶の意味を理解し、恐ろしさに震えが来てしまう。
結局、いつものコーヒーを入れて戻ることになるのだった。
戻るとベアトリーチェはローブとフェイスベールを取っていた。
透き通るような白い肌・・・でも、あまりにも白く、むしろ病的な白さに驚いた。
「あ、あの、クリープと砂糖は・・・?」
おずおずと声をかけるとベアトリーチェは微笑みながら首を振る。
「ここの部屋いいわね。結界のおかげで楽だわ。
私はクリープも砂糖も要らない。自前で用意してあるから。」
そういいながらすそから出すのは、先ほど箱に入っていた小瓶と同じものだった。
驚くリリアーナに構いもせずに、トリカブトとドクニンジンと有機水銀をカップに注いでいく。
澄んだこげ茶色だったコーヒーは途端に赤黒くなり、怪しげな煙を上げる。
「え、ちょ・・・」
そして止めるまもなく、ベアトリーチェはそれを飲み干してしまった。
致死量に達しているかとかいうレベルではない飲み物を飲んでしまったのだ。
ドキドキしているリリアーナにベアトリーチェがぐいっと顔を寄せた。
「ねえ、ちょっと・・・」
「は、はい!」
カドゥケウスの杖を召喚しようか迷っていたところに突然声をかけられ飛び上がるように返事をするリリアーナ。
そこにかけられた言葉は・・・
「・・・チョコレート作ってるの?」
昼にさしかかろうとしていた時、部屋の中は戦場と化していた。
「じゃあここでシナモンパウダーを・・・ちょ、駄目ーそれ青酸カリ!それ駄目ー!」
「大丈夫、冷やすのは冷却呪文使うから!その薬しまって!」
バレンタインデーを翌日に控え、リリアーナはチョコレートを作っていたのだ。
レオに思いを寄せるベアトリーチェだが、料理が苦手なので一緒に作ってくれるように頼まれたまでは良かったのだが・・・
無意識に毒物を入れてしまうベアトリーチェにリリアーナは振り回されっぱなしになっていた。
「あらあら、なんだか凄いことになっているわねぇ〜。」
そこに現れたのは、大きな紙袋を抱えた同居人、アルナワーズだった。
この状態を全て予想していたかのような笑みを浮かべながらはいってくる。
「まったく、ひどい散らかりようでおじゃるな。」
その後ろにはなぜかキキも立っていた。
「てめえ、どこに逃げてたんだ。」
ようやくチョコ作りを終えたベアトリーチェがキッチンから出迎える。
が、その姿は全身チョコ塗れで、アルナワーズとキキの苦笑を誘うだけだった。
「どこにって、約束はお昼でしょう?
この間のお礼の品を用意していたのよぉん。」
そういいながら紙袋から出したのは古ぼけた白衣だった。
「レオ先生がね、古い白衣を捨てるっていうからもらってきたの。
ベアトリーチェが喜ぶだろうとおもってぇ〜。」
にこやかに差し出された白衣を前に、ベアトリーチェの表情がみるみる間に険しくなる。
「おめーはボケか?プレゼントされたものならともかく、捨てるもん渡されて喜ぶわきゃねえだろ!」
火を吐きそうな勢いだが、アルナワーズの微笑を湛えた表情は変わらなかった。
「あら〜。そうよねぇ。私が馬鹿だったわぁん。気持ちも篭ってないものなんて価値がないもの。
ごめんなさぁい。じゃあこれは私が捨てておくわ。」
大げさに白衣をひらひらさせて引っ込めようとする。
が、それを反射的に掴む手があった。
「ま、待て!お前みたいな奴に任せたらどんなことに悪用されるかわかんねえじゃねえか!
わ・・・私が捨てるから!寄越せ!引っ張んな、すぐ手を離せ!」
ベアトリーチェの過剰反応を十分楽しんだ後、白衣から手を離した。
まるで毟り取ったかのような勢いで白衣を抱えると、ギクシャクとしながらベアトリーチェはドアへと向かう。
「ベアトリーチェ?ごめんねぇ。代わりのお礼をするからちょっとまってぇん。」
「う、うるせえよ。お前の礼なんてもういらねえよ!」
「あ、あの、チョコ・・・」
捨て台詞を残して出て行こうとするのを見て、リリアーナが慌ててチョコを手渡した。
「お、おう、ありがとう。じゃ!」
チョコを受け取ると、凄まじい勢いで駆けて行き、リリアーナが廊下に顔を出したときにはその姿は既になかった。
そして残されたのは大量の毒物と化したチョコの群れ。
明日はバレンタインデーというのに、全ての用意が無に帰したのだ。
「アルゥ・・・!」
ベアトリーチェが消えた後、リリアーナが振り返る。
全ての原因はそこにあるのだから。
「あらあら、折角防毒服用意してあげたのにぃ〜。生身であの子の相手よくできたわよねえ。」
黒い怪しげな服を片手に呆れた顔には、全て思惑通りと書いてあった。
散々ひどい目にあって、更に明日のチョコの用意まで台無しにされたのだ。
その挙句にこの言葉。
怒りにぶるぶる震えるリリアーナの肩にそっとアルナワーズが手を当てる。
「リリィ、安心して。ちゃんとチョコは買ってきたし、キキにもお手伝い頼んできたから。」
その言葉と共に、キキが大きな紙袋から大量のチョコレートを取り出していた。
「三人でかかれば明日には間に合うでおじゃろう。」
「・・・え?」
ひどい仕打ちと絶妙なフォローの連続でなんとなく助けてもらえたような錯覚に陥ってしまうリリアーナ。
「それにしても、あの子くらいならあれに気づいてそうなのに・・・よくやるわよねえ。」
「あれって?」
「薬学や精神魔法をやっていると気づいちゃうことがあるでおじゃるよ。」
「???私も薬学やっているけど・・・わかんない。なになに?」
「おぬしのは治療のための薬学でおじゃるからのぉ。」
「ふふふ・・・リリアーナは知らなくていいことよぉん。」
遠い目をするアルナワーズに今日のことをすっかりうやむやにされてしまったリリアーナであった。
この後、三人は協力してバレンタインチョコを作ることになる。
もちろん、アルナワーズとキキが組んで事を成し、まともな結果が怒るわけはない。
翌日、このチョコが原因で学園全体を巻き込んだリリアーナ争奪戦が起こるとも知らず・・・
後に【赤のバレンタイン戦争】と呼ばれる前日の出来事だった。
超GJ!!
まさかバレンタインに投下されてるとは思わなかった!
続き楽しみだ
GJ
もしかしてシナリオフラグかこれ?
>735
ありがと。
魔法少女スレの避難所でバレンタインネタと次のバトルロイヤルシナリオの話が出ていたのを見て、
思いつきで書きなぐった奴なので続きはないです。すみません。
>>737 これほどのSSが投下されたなら…GJと言わざるをえない!
保守派
消えた職人
今参加中
742 :
名無しになりきれ:2008/03/12(水) 09:22:23 0
あげるの
特製雪山折檻フルコース(ちょっぴり性的な意味で)
なんてないよなぁ
某所のやり取りを見て閃いたよ
皆二次好きなのは分かるが熱くなりすぎだお
キサラ「何だかメラルさんに嫌われたみたいで……でも、どうやって仲直りしていいのか…よく…わからなくて…」
ミルク「で、何でそれをあたしに聞くわけ?」
キ「え…「シスター」って人は、何でも相談に乗ってくれる人じゃ…無いんですか?」
ミ「(こめかみを押さえつつ)それ、誰から聞いたの?」
キ「アルナワーズさんから…です」
ミ「……」
キ「……」
(どかーんとミルクを突き飛ばしてユリ参上!)
ユリ「まーキサラちゃん悩み事?この学園のことなら何でもござれのユリ様が相談に乗ってあげるわ!
もうね、何っでも!遠慮なく聞いてちょうだいっ!!(メモ片手に目キラキラ)」
(どかーんとユリを突き飛ばしてお姉さま方参上!)
ショタを愛する(ry「いいえ、私たちがお役に立つわよっ!んもう手取り足取り腰取り教えちゃうわぁん!!」
ミ「……」
キ「……」
でも、あんまり相談しそうに無いな。
GJ!
某所でもいいがこんな小ネタもここに投下すればいいのにな
746 :
名無しになりきれ:2008/03/27(木) 03:20:51 O
保守
第1部騎士コテのSSキボンヌ
オーガスマンセー
カイサーファルコンユメモチスゴススコス
749 :
名無しになりきれ:2008/04/13(日) 14:33:52 0
あった
【ベアトリーチェ・キャロル @】
暗殺用の毒物の条件。
即効性遅効性、効果などなどは用途によって様々だが・・・
無色透明無味無臭。
これだけは外せない絶対条件である。
あらゆる暗殺毒に当てはまる事。
そう、あらゆる暗殺毒。
【毒姫】であっても例外ではない。
中央大陸西部、カンタレラ地方に聳えるビーシュ山脈の谷間の集落【ラパチーニ】。
堅牢なる山々に囲まれ交通の便は悪く、古代の魔法実験の影響が今も色濃く残り土地は痩せ毒を含み作物は育たない。
そんな不毛な地に住む人々は一つの産業を確立していた。
最初は揺り篭の下に毒草を・・・
次は布団の下・・・ そして衣服の中に・・・
更に乳に混ぜ赤子に与える
こうして徐々に毒に慣らされた子供は
全身が猛毒の【毒姫】となる
特別な血筋も 特別な才能も要らぬ。
毒性を残す土地に自生する様々な毒物で作成材料は賄える。
魔の力による施術も必要のないので魔法探知による判別にもかからない。
育成に10余年と期間はかかるものの、作成方法さえ確立してしまえば安定供給のできる製品なのだ。
決して安くは売りはしないが、権謀術数渦巻く王侯貴族の権力争いにおいては高いといえる額でもない。
実際に戦を起こす事に比べれば・・・
その機密性故に王家の格別の加護を受け、険しい山々より更に厳しく集落は孤立していく。
毎年の様に多くの女児の赤子が送られ、美しき毒姫となって出て行った。
毒見係として、護衛の盾として、好事家のコレクションとして、そして、【贈り物】として・・・
ある年、ラパチーニでは一つの変事が起こっていた。
王家より一度に100人の毒姫の発注があったのだ。
納期は5年後。
新しく宮廷魔術師となった者の注文であったが、一度にこれだけの大量発注は異例中の異例。
毒姫の生産は12年で終わるものの、その用途上、寵姫としての教育期間や発育期間が必要となる。
当時の村長はそう説明したが、宮廷魔術師は教育・発育は条件とせず、【毒姫】である事のみを条件とした。
故に、12歳以上の製品は全て出荷されたのだった。
その中に、後にベアトリーチェと呼ばれる少女の姿もあった。
出荷される・・・
少女達はその意味を皆知っていた。
が・・・その意味以上に過酷な運命が待っているなどと、誰も予想できはしなかった。
狂気の魔術師、ベアトリスの儀式が待っているなどと・・・
【ベアトリーチェ・キャロル A】
王都から離れた小高い丘に建つ離宮。
少女は老魔術師ベアトリスの前に立っていた。
美しかった金色の髪は全て白く染まり、健康的な褐色の肌も病的な白と成り果てた。
青かった瞳も限りなく白くなり、仄暗い視線は何も映してはいない。
「良くぞ生き延びた。D−9−359。」
首輪に付けられた認証札を見ながら満足気に老魔術師ベアトリスが声をかける。
毒姫には名前を与えられない。
人間ではなく、人の形をした毒なのだから。
『贈られる』時に形式的に名前を与えられるのみ。
それまでは製品番号で呼ばれる。
「いや、今日からお前は私の娘。ベアトリーチェだ!」
厳かな宣言と共に、D−9−359の瞳に光が宿る。
ベアトリスが名前をつけたのは何も気まぐれではない。
名前、真名は人格形成上呪的に重要な役割を果たすのだから。
ここにベアトリスの禁術が完成した事を顕していた。
禁忌の術の達成と成功に喜び、笑い声は離宮全体に響き渡る。
その笑い声が終わると、一つ息を付き扉に向かい声をかける。
「遅かったではないか、我が弟子よ。そして我が命を断つ刺客よ。
見よ!私の理論は正しかった!素晴らしかろう!」
その言葉に応えるように扉から姿を現したのはレオだった。
ベアトリスは元々魔法学園の薬物学教師。
優秀な魔術理論を持つ男。
そしてレオの師匠。
禁忌の術に手を染め、魔法学園はおろか魔法界自体から追放されていた。
中央大陸西部に流れ、禁忌の術を始めている情報を受け、レオが刺客として放たれていたのだ。
レオはベアトリーチェを一目見て師匠であるベアトリスの術を見抜いた。
その成果を。その危険性を。
「・・・素晴らしい?そう言えたかも知れません・・・
地下で99人の少女の死体を見なければ!」
【ベアトリーチェ・キャロル B】
一ヶ月前・・・
ベアトリスに買われた100人の毒姫たちは、離宮の地下に閉じ込められた。
そこが呪的に設計された特殊な館であり、地下である事は知る由もない。
毒姫達を前にベアトリスは残酷に言い放つ。
「殺しあえ!一人になるまで!」と。
そして地下は閉ざされた。
一欠片のパンも、一滴に水もなく・・・
本来毒姫たちは毒体質ということを除けば非力な少女となんら変りもない。
戦う術も、生き残る力もない。
地下に閉じ込められ、生き延びる方法はただ一つ。
殺す為に自分を相手に喰らわせねばならない。
生き延びる為に誰かを喰らわなければならない。
誰も彼もが人の形をした毒である中、より強い毒を持つ者が相手を殺し、喰らい生き延びた。
喰らった毒姫の毒を体内に取り入れ、より強力な毒姫となる。
それはまさに【蠱毒】なのだ。
一ヶ月の間にどのような戦いが行われ、少女達を蝕んでいったかは想像に難くない。
剥き出しになった人間性、裏切り、阻害・・・凄惨の一言を極めたであろう。
極限状態の中、100人の毒姫たちは最後の一人になるまで喰らいあった。
そこに必然などなかった。
ただたまたま強い毒をもち、より多くの毒姫を喰らったD−9−359が最後の一人になっただけ。
しかし、ベアトリスにとってはその過程などどうでもいいのだ。
蠱毒の儀式を終え、100人の毒姫の毒性を取り込んだ娘を手に入れられるのであれば。
「悲しいかな我が弟子よ。所詮は袂を別つた者か。」
悲しげにふるふると首を振るとベアトリス。
元々学者肌のベアトリスはベアトリーチェを作り上げて何をするという目的はない。
己の理論を実践し、それを証明する事自体が目的なのだから。
既に目的は果たされたのだ。
「・・・御免!」
迫りくるレオをただただ狂気の笑みを浮かべ迎え入れる・・・
#########################################
「任務は果たしました。が・・・残念ながら儀式は完了しておりました。」
「そうか・・・しかし、なぜ殺さなかった?」
魔法協議会の大会議室でレオは報告をしていた。
居並ぶ評議会員はざわめきと共に返事をする。
狂気の魔術師ベアトリスの討伐は果たされた。
しかし、その遺産の処理に戸惑っていたのだ。
狂気の蠱毒によりベアトリーチェはただの毒姫ではなくなっていた。
世界有数の毒姫。
処理を間違えれば強大な災厄となろう。
不用意に殺せばその血、その躯は大地を穢し恐るべき毒地を広げる。
それよりも何よりも、有名になりすぎた。
【暗殺】を主目的とする毒姫としての用途も果たせはしない。
砒素の沈色効果により色は抜け落ち、毒物以外を受け付けない・・・否、毒物を摂取し続けないと生きていけない身体。
それでは一般社会生活もままならない。
「僅か12歳の少女を・・・儀式の犠牲者である少女を殺す事に正義があろうか?
皆さん、彼女の処遇は私にお任せいただけまいか?」
一段高い席に鎮座する魔法評議会理事、そして魔法学園の学園長が立ち上がる。
その後議論は紛糾したが、結局のところ学園長の意見が通り、ベアトリーチェは魔法学園へと引き取られる事になった。
薬物・催眠術・封印術などあらゆる手段を持ってベアトリス教授の記憶を消す事を条件に。
【ベアトリーチェ・キャロル C】
数日後、魔法学園学園長室に舞台は移る。
室内に三人の男。
「一足早いが紹介しておこう、レオ君。
この春から君の同僚になるレイド先生だ。」
部屋の隅に立つ男にレオの眉がピクリと上がった。
その男はまるで闇の具現というに相応しいオーラを発しながら立っていた。
「彼が・・・本気ですか?」
二十歳そこそこに見える若者に驚いていた。
闇の世界では知らぬ者のいない名前だ。
学園長自らが討伐に向かったと聞いていたが、何がどうなってか春から同僚になるという。
「勿論じゃとも。我が学園はあらゆる者を受け入れる!」
にんまりと笑みを浮かべ応える学園長。
それとは対照的にレオは溜息をつき、仕方がないといわんばかりに笑みを浮かべた。
「やれやれ、ベアトリス教授の遺産【蠱毒の毒姫】に【赫き闇の皇子】と言われた彼を共に受け入れるとは・・・
教頭先生の額がまた面積を広げそうですな。」
今から五年前。
レイド20歳、ベアトリーチェ12歳の春の出来事であった。
######################################
ベアトリーチェが学園に入り2年目。
ようやく毒物以外を口にできるようになった頃・・・
彼女は魔の森の奥に庭園を見つけていた。
そこは咲く花から棲まう生物、庭園を形作る石柱に至るまで全て毒を含んだ庭園。
あまりの毒素のために周囲を沼と化してしまっている。
程なくして庭園の地下に庭園と同じだけの大きさの空間があることに気付く。
考えうるあらゆる器具が、材料が備わった実験室。
なぜここに、どうしてこんなものがあるか。
そしてなぜかこの場所に安心し、親しみを感じるのかは知る事はない。
それがベアトリス教授のラボであった事など・・・
「願わくば彼女が道を誤らぬ事を・・・」
庭園に通うようになったベアトリーチェの背に学園長はそっと祈りを捧げるのであった。
毒物の研究に生涯と理性を捧げたベアトリス。
それを討った弟子レオ。
ベアトリスの遺産、ベアトリーチェ。
輪になり踊る毒の賛歌に・・・・
【アルナワーズ・ラプソディー】狂想曲
魔法学園では二等課程の授業の一環として課外授業がある。
机上では決して学べない実地の体験を学ぶために。
二次といえど世界の広さを垣間見た
久々に職人降臨!
GJ!面白かった。
職人キタ━━━(゜∀゜)━━━!
超GJ!!
>>753 もちつけw
名前wコピペ範囲にw
アルナワーズ編も期待してる
GJ!
アルナワーズ編wktk
リクエストにも答えずこれだもんなあ
補習
761 :
名無しになりきれ:2008/05/11(日) 19:16:26 O
がんば
762 :
名無しになりきれ:2008/05/19(月) 23:28:09 0
臨時ニュースを放送します。
斉藤五郎の処刑が法務大臣により発表されました。
罪状は強姦殺人。
見かけたものは速やかに特殊警察か警察に知らせてください。
電話番号110−2371。
繰り返します―
テレビで俺の名前が通知された。
心臓が早鐘を打ってる。
動向が開き、体中の筋肉がこわばるのが分かる。
怖い。すごく怖い。
殺される。あいつ等と同じように殺される。
目の前にテラードジャケットを人間が映し出された。
襟首には☆印が一つつけられている。
手には日本刀。マスクを身につけ、口元を覆い隠している。
特別高等警察のものだ
「ターゲット確認。これより、処刑を執行する」
くもぐった声が聞こえてくる。
仲間達が棒やらナイフやらをつかみ、走り出した。
目の前に立っている立っているものはみじろきひとつしない。
切っ先が首筋の方に向って走り出し、棒が頭部や腕に向かって振り下ろされた。
パン、パン。
銃声がした。
当たり所が悪かったのか、赤い液体のようなものが体から噴出した。
赤い斑点がマスクや制服にいくつか付いた。
目の前に立っている人間が動き出した。
手が左から右に動き、ぎゃあという声がした。
「た、頼む・・・助けてくれ」
「オマエは被害者に苦しみを味合わせた。助けを呼ぶ資格など無い」
制服を着た男が蹴りをいれた。
げほと空気が吐き出される音がした。
「苦しみながら死ぬといい」
ぷすと日本刀が刺さる音が聞こえてきた。
嫌だ。嫌だ。
ああはなりたくない。
布団をかぶった。
初めて涙が出てきた。
怖い。スゴク怖い。
ドアが開く音がした。
フトンがひきはがされ、空気が肌に触れた。
「特別高等警察。強盗殺人の罪により処刑する」
パンと乾いた音がした。
自分の体に向かって何かが打ち込まれるのが分かった。
暖かい何かが広がっていく。
同時に俺は意識を失った。
【レイドには女難の相が見えるのだ】
リバースの中、学園長室で一人の女が紅茶を飲んでいた。
端整な顔立ちで、白い髪をポニーテールにしている。
しかしその美しい顔立ちとは対照的に禍々しい文様の入った黒い毛皮のローブを身に纏っている 。
さらに、その死んだ魚のような目が女の顔を「美しい」という形容詞から遠ざけていた。
女の目の前には水晶球が置かれており、その中には戦いの様子が映し出されている。
「いかがかな?エスト君。」
そっと声をかけるのは学園長。
学園長は女の事をよく知っていた。
エストは数年前まで学園の生徒であり、今は卒業生だ。
その目的を聞き、リバースの中へと招待したのだった。
声をかけられた女の眉はみるみるつりあがり、怒りに顔は赤く染まっていく。
水晶に映し出されるのはレイド。
ベアトリーチェを倒したあと、止めを刺さずに健闘を褒め、自分のペンダントを渡したところだったのだから。
「こんなの・・・私は認めません!」
飲み干したカップを叩きつけるようにテーブルに戻し、エストは立ち上がる。
学園長は肩を竦め、部屋から出て行くエストを見送るのみだった。
「全く、レイドめ。自分で撒いた種だ!」
エストが出て行ったあと、教頭が呆れたように呟く。
「まあ、若いときは何かとあるものじゃよ。」
小さく息を付きながら学園長が教頭の呟きに応えるのだった。
##########################################
「ねえ、あなた。ちょっといいかしら?」
夕暮れ時に突然声をかけられ、文字通り飛び上がるリリアーナ。
出会えば即戦闘が認められるこのイベントにあって、当然といえば当然だろう。
戦闘力皆無に等しいリリアーナが一人でいるところに声をかけられたのだから。
「ああ、安心して頂戴。ちょっと話が聞きたいだけだから。」
リリアーナの様子に困ったように笑みを浮かべながら表れたのはエストだった。
まるで夕闇の影からにじみ出るかのように。
「私はエスト。この学園の卒業生でね。ちょっと聞きたいことがあるの。」
「あ、ああ、そうでしたか。私はリリアーナといいます。」
敵意のない自己紹介にリリアーナも安心して自己紹介をし、話は進む。
エストの尋ねた事はレイドについて。
現在の一般性とがレイドにどのような印象を持っているか、を。
「え、レイド先生ですか?
・・・尊敬しています。
頼りになって、気配りができて、それに・・・とっても優しいんです。」
嬉しそうに応えるリリアーナにエストの表情が徐々に険しくなっていく。
ほのかに見える恋心にも似たリリアーナの表情が過去の自分に重なってしまったから。
「あ、あの・・・どうかしましたか?」
その表情の変化に気付いたリリアーナがおずおずと尋ねると、エストは自分の表情の変化にようやく気付いた。
慌てて咳払いをして表情を消し・・・いや、消せなかった。
まるで哀れみを含んだような目でリリアーナに諭すように応える。
「いいえ、レイド先生の事を何もわかっていないようだから・・・。」
エストの言葉が理解できないかのように首を傾げるリリアーナに更に畳み掛ける。
「レイド先生はね、女生徒を食い物にしてボロ雑巾のように捨てる裏の顔を持っているのよ?」
「・・・」
【レイドには女難の相が見えるのだ】
リリアーナにはエストが何を言っているか理解できなかった。
が、その言葉を理解したとたん、リリアーナは真っ赤になって口を開く。
「レイド先生はそんな事しません!
私は何度も助けてもらったし、食い物なんかにされてませんもの!
あなたこそレイド先生のこと何もわかってないわ!」
「可哀想に・・・。」
力強く反論するリリアーナの姿もエストには哀れにしか映らない。
禍々しい文様の入った黒い毛皮のローブから五つの魔武具が出現する・・・
「教えてあげる・・・!レイド先生の本当の姿を!」
###########################################
「レイド先生、久しぶり。随分と早かったわね。」
校舎屋上にて、息を切らせて現われたレイドに吐き捨てるように声をかけた。
テレパシーでリリアーナを人質にした事を伝え、屋上に呼び出したのだ。
「エスト、久しぶりだといってやりたいが、何の冗談だ?リリアーナを離せ!」
エストの腕には気絶しているのか、ピクリとも動かないリリアーナが抱かれている。
「随分とこの子にご執着のようね。この子が私の後釜というわけ!?」
エストの絶叫にも似た叫びと共に、レイドの周囲に五つの魔武具が現われ突き刺さる。
それぞれの武具は強力な魔力が付与されており、陣を組む事によって強力な結界を作り出す。
結界により動きを封じられたレイドを前に、エストがゆっくりと語りだす。
「卒業の日、あなたは言ったわ。だからこそ、諦めたのに!
用務員のアルテリオンと付き合ってるって本当?」
「う・・・本当だ・・・。」
エストは在学中、レイドに好意を寄せていた。
が、レイドはその想いを受け入れなかった。
生徒と教師ということもあり、まだ特定の女性と付き合うつもりなどなかったから。
泣きながらレイドの元を、そして魔法学園を卒業していったエストの顔がレイドの脳裏に浮かぶ。
「裏切りだわ!」
「・・・裏切りと取られても仕方がない。
復讐したければどれだけでもされてやる。だから、リリアーナを離せ。」
結界に動きを封じられながらもレイドは応える。
アルテリオンとの事は後悔もしていないし、それによって復讐されるのであれば甘受する。
だが、エストはそれでは収まらない。
女の情念は往々にして直接男には向かわず、その周囲へと向かう。
アルテリオンのいない今、向かう先は・・・
「この子、随分とレイド先生を慕っていたわよ?
まるで昔の私を見ているよう。
先生にとっても大切な子なのでしょう?
だから・・・レイド先生の目の前でこの子を壊してあげる!」
死んだ魚の目のようだった瞳が、レイドを前に狂気に染め上げられている。
リリアーナを抱く手に力が込められたその時・・・レイドから搾り出すように言葉が綴られる。
「やめろ。俺の生徒に手を出すのなら・・・エスト、お前でも許さんぞ!」
「許さない?それだけがっちり陣にはまっては内側からは崩せないわよ。どうやって私を止めると?」
エストの高笑いが響く。
その爪がリリアーナの細い首に食い込んだ瞬間、レイドの瞳が赫く光る。
「力づくでだ!!!!」
レイドの叫びと共に気が吹き荒れ、陣を作っていた五つの魔武具がマッチ棒のようにへし折られ砕けた!
吹き荒れる闇の瘴気と共に、レイドの周囲の空間が歪曲していた。
あまりにも禍々しく、そして昏いオーラはレイドの身体を数倍に見せる!
【レイドには女難の相が見えるのだ】
#######################################
綺麗さっぱり屋上がなくなった校舎で、リリアーナはレイドの背負われていた。
既にエストの姿はどこにもない。
「レ、レイド先生・・・あの・・・ありがとうございました。」
レイドの広い背中に顔をうずめ、小さく礼を言うリリアーナ。
しかしそれ以上の言葉が出てこない。
動けなかったが意識はずっとあった。
レイドの卑怯な行動を見せようと眠らせたようにしていたのだ。
エストの思惑は外れたが、この一件はリリアーナに複雑な思いをもたらしたのだ。
エストの歪んだ恋心とレイドとアルテリオン。
その関係にどう言葉を綴ればいいのかわからなかったから。
「お、おろ?起きてたのか?まあ・・・今回は俺の私事に巻き込んで悪かったな。」
「いいえ、助けてくれて嬉しかったです。」
照れくさそうに言うレイドの背中に更に顔をうずめ、もう一度礼をう言うリリアーナ。
夕日は沈み、夜の帳が落ちようとしていた。
#######################################
「気がすんだかね?」
学園長室でエストの手当てをしながら学園長が声をかける。
だが、エストからの答えは返ってこない。
ただ目に涙を浮かべ、エストはリバースから去っていった。
「ふう。思春期の想いは純粋だがそれ故に歪み易いもの。
彼女の歪みもようやく正されたか。
レイド君を褒めてやらんとな。」
「何を甘い事を言っておるのですか!
結局は自分で撒いた種を刈っただけの話。
生徒の心のケアまで出来て一人前の教師です!」
「ほっほっほっほ。厳しいのう。」
水晶球に映るレイドとリリアーナを慈しむ様な目で見ながら学園長は安堵の息を付くのであった。
はいはい、すごい文章ですね
>763-765
GJ!面白かったよ〜!
これ(
>>767)って、スプリクトか何かか?
毎回同じことしか言ってないし
ちょwwエストwwww
スクリプトでは無いと思うけど、たぶん毎回同じ人が同じ事言ってるんだと思われ
771 :
名無しになりきれ:2008/06/06(金) 17:31:21 0
え〜と誰?
GJ。
レイドは封印を吹き飛ばしただけでバトルしなかったんだな
元教え子だもんな
このスレも寂れたな
元ネタが何かは知らんがSS書く奴+GJ言ってばっかりの自演マンぐらいしか人いないんじゃないか?
GJ!エストが誰か一瞬思い出せなかったので吊ってくる
GJ!今回はパラレルなんだな
本編で同じことがあったら、リリのレイドに対する尊敬の念も微妙に変化しそうだ
つうかテンプレ投下までしておいてなぜここでやる?
本スレでやれよ
【クドリャフカ・マーチ】
フィジル島魔法学園地下図書館。
奈落の底まで通じているのではないかと噂されるその図書館は深く、広大である。
しかもDレベルと称される階層を越えると、様々な魔本が並んでおり、その危険度は並にダンジョンを軽く超える。
危険性から一般生徒の立ち入りは厳しく制限されている。
しかし、ここに一人の女子生徒が足を踏み入れていた。
既にDレベルの階層から更に下に潜り、辺りは本から漏れる魔力が渦巻いている。
筋骨粒々で全身にツギハギ状の傷跡。
長い三つ編みに無骨なガントレット。
その場に相応しい重装で望んでいはいるが、その表情に余裕などない。
この女子生徒の名はクドリャフカ。
その身に着けてしまった呪いのアイテム【サクリファイスジャンクション】の解呪方を求め、地下図書館を彷徨っているのだ。
サクリファイスジャンクションは透明の薄い手袋。
傷ついた対象に右手をかざせば、たとえ致命傷であっても跡形も無く消し去る事が出来る脅威のアイテム。
しかし、呪いのアイテムたる由縁はここから始まる。
対象の傷は消し去ったわけではなく、【吸い取った】のだ。
吸い取った傷は、左手をかざす事により、誰かに移すことが出来る。
誰かを救うために誰かの犠牲を要する。
そして移された傷は魔法で回復させる事は出来ず、移された者の自然治癒でしか回復する事はない。
もしも誰かの犠牲を用意しなかった場合・・・その傷は吸い取った本人、すなわちクドリャフカが負う事になる。
クドリャフカのツギハギ状の傷跡はそうして付いたものなのだ。
握り締めた手はガントレットが無粋な音を鳴らす。
その音を聞き、クドリャフカは決意を新たにこの危険な地下図書館に幾度と無く潜るのだった。
そして今、冷たい靄の立ち込める区画に辿り着いていた。
ここの辺りは冥界が溢れている。
間違って冥界へ引き込まれることも危険だが、そこから溢れてくるモンスターも脅威であった。
クドリャフカの使う術は付与魔術と舞闘術。
密着格闘戦による打撃・関節技がメインなのだ。
ゾンビやスケルトンなど筋肉や腱に関係なく作動する身体を持つモンスターには相性が悪い。
なるべく早く通り過ぎたい区画ではあるが・・・
足を速めるクドリャフカの前に立ちふさがる影があった。
「あ、あんたぁ、あの時の・・・!」
黒いマントに身を包んだスケルトンが一体。
以前この区画で遭遇したモンスターだった。
「待ちかねたぞこの時を!この間のようには行かぬからな!」
何も入っていない真っ黒な眼窩の奥から赤い光でクドリャフカを睨みつける。
「いあ・・・あん時っちゅうて・・・」
対峙するガシャ髑髏とクドリャフカは、初めて出合った時の事を思い出していた。
############################################
【クドリャフカマーチ】
靄のかかる地下図書館のアンデッド区画(クドリャフカ命名)。
そこに足を踏み入れるのは初めてではなかったが、緊張感は初めてのときと変らない。
そんなクドリャフカの前に現われたのが一体のスケルトンだった。
「戦いのセオリーその13!間合いを得る者は勝利も得る!」
そう言うスケルトンの手には刀身が2mにもなろうかという日本刀が握られていた。
「ふふふ、ただのスケルトンだとは思うなよ?
この7尺刀で己も今宵から我らが眷属だ!」
「・・・。」
突きつけられた7尺刀をみて、クドリャフカは言葉が出なかった。
ただ目がゴマのようになっているのみ。
そして大きく溜息をつきながら構える。
「スケルトンちゅぅんは脳みそがないとおもうちょったけど、どうやら脳ミソが腐っとるんもおるようじゃね。」
その反応に今度はスケルトンが言葉に詰まった。
7尺刀を持っているのは、長い武器で相手をびびらせる事が第一の理由。
それで逃げてくれれば嬉しいのだ。
でも逃げてくれなくとも、長い武器なら相手を近寄らせずに戦えるという二段構えの理由だったのだ。
しかし目の前のクドリャフカは特に怯んでいる様子はない。
それどころか妙な威圧感がある。
そもそも巨躯でツギハギだらけの身体。
生者特有の生気が無ければもう「あんたもアンデッド?」ってご挨拶したくなるような状態である。
それが既に構えて、指先をくいくいと曲げて来い!と挑発している。
カッコいい台詞で出てきた以上、もう抜き差しできない。
「ち・・・ちきしょう!!」
もうどうにでもなれといわんばかりにガシャ髑髏は7尺刀を上段から振り下ろす!
刃が脳天を真っ二つに断ち割る直前、クドリャフカは身体を横にずらし躱す。
躱されたからといって刃が止まってくれるわけではない。
振り下ろしきったところでその切っ先をクドリャフカが踏みつける。
「こんだけ長いと刃の軌道も読みやすく躱し易いんじゃ。
しかもこうやって踏まれるともう動けんじゃろ?」
「チョ・・・待った!今のなし!ノーカン!もう一回!」
呆れたように解説するクドリャフカに慌てるスケルトン。
言われたとおり7尺刃は踏まれてびくとも動かないのだ。
焦って訳のわからないことを口走ってしまうのだが、意外にもクドリャフカは足をどけてくれた。
願いを聞き届けてくれた事に驚いたが、すぐに気を取り直して刀を構えなおす。
「げひゃひゃひゃ、馬鹿め!まぐれでも勝てる機会を捨てたことを後悔するがいい!」
そう言うや否や、今度は横薙ぎに7尺刀を振るう!
「我が肉体に付与する!鉄の硬度を!」
短く呪文を唱えるとクドリャフカは刃が迫るのを躱そうともせずに一気に間合いを詰めた。
2mの間合いはクドリャフカにとっては一足で詰められる間合い。
ではあるが、先に刀が振られている。
しかも短くとも呪文を唱えてからの行動。
これでは流石に刃が身体に到達するほうが先である。
【クドリャフカマーチ】
間合いを詰めたところで7尺刀がクドリャフカの脇腹に当たった。
双方共に動きを止めた一瞬。
スケルトンとクドリャフカの視線が絡みある。
「あんたさん武道をやったことありゃせんじゃろ?
刀の有効斬撃範囲なんぞ切っ先から三分の一がいいとこじゃきい。
こがぁに長い刀身じゃあ一歩前に出られたらろくすっぽ斬れやぁせんてえ。
迅き一閃に命を賭ける刀に長さを求めてどがあすんぢゃ。
長いのが好きなら剣にしんしゃい!」
そう、切っ先部分ならば遠心力も相まって切れ味も増すだろう。
しかし根元部分では切れ味は鈍ってしまう。
その上胴体に鉄の硬度を付与してあるので、たとえクドリャフカがその刃を受けたとしても傷つける事は出来なかったのだ。
これが剣ならばその重量を持って叩き切れたのであろうが・・・
諭すように呟くと、刀身を握り無骨なガントレットを叩き付けた。
まさにハンマーの一撃!
7尺刃は刀身の根元で叩き折られてしまう。
そうなるともはやスケルトンに残された道は一つ。
「た、戦いのセオリーその2!36計逃げるが勝ち!だから俺の勝ちだーい!」
そういい残すと刀を捨てて一目散に逃げ出すのであった。
###########################################
「あー・・・あんときの・・・もう長い刀はやめたようじゃね。感心感心。」
初遭遇の状況を思い出したクドリャフカは笑いをかみ殺しながら応えた。
一方のガシャ髑髏は正反対の雰囲気を醸しだす。
前回の屈辱に加え、完全に安心したようなクドリャフカの反応が気に入らないのだ。
完全に舐められている!と。
事実クドリャフカは安心していた。
死者の王の領域において、唯一といっていいような安全牌な敵なのだから。
「そうやって笑っていられるのも今のうちだぞ。
貴様!なぜ私以外のアンデッドが出ないか判っているのか?
前回の屈辱を晴らすために死者の王に手出ししないように嘆願したのだ!」
「そりゃ義理堅いことじゃね。」
ガシャ髑髏の復讐心を聞いて、クドリャフカの表情から笑みが消える。
舞闘家として、闘う者への礼儀は弁えている。
まるでダンスを誘うような構えを取ると、それだけで全身から隙が消えうせた。
もはや語る言葉はなく、武を以って語り合う。
眼光はそう告げている・・・のだが・・・
ガシャ髑髏には武術の心得などない!
故にクドリャフカから隙が消えた変化など気付かないし、その眼光が告げる意図も通じもしない。
だからこそガシャ髑髏は自分のペースを崩す事はないのだ。
「ふははは!見て驚け!!!」
クドリャフカにお構いなしに黒いマントを脱ぎ捨てると、そこには異形と化した体があった。
【クドリャフカマーチ】
肩から伸びるのは三対六本の腕。
それぞれの手には剣が握られている。
「前回のように長い刀ではなく、剣だ!しかも六本だ!!
お前がどう攻撃しようと六対二だ!どうだ驚いたか!!」
高笑いが響く中、クドリャフカの目はゴマとなっていた。
まじめに構えた自分がちょっと馬鹿っぽく思えて後悔したが、今更口に出そうとは思えない。
だから・・・そっとスカートの裾をつまんで上げて見せる。
スカートの中から落ちてきたのはトマホーク。
「汝が斧に付与する!回転する力を!」
クドリャフカの呪文によって回転力を付与されたトマホークは凄まじい勢いで回転を始める。
そして、はじかれたようにガシャ髑髏に向かって飛んでいく。
「我が肉体に付与する!鉄の硬度を!」
更にはクドリャフカも呪文を唱えながらバトルアクスを追うように間合いを詰める。
一方、ガシャ髑髏も迎撃体制は万全。
一歩も退かずに迎え撃つ!
「馬鹿め!俺には六本の剣があるのだ!」
その言葉通り、二本の剣を交差させ回転する斧を防ぐ。
が、斧の威力は凄まじく、防いだ剣も腕ごと弾かれた。
通常ならばこれでガシャ髑髏は無防備となり、斧の背後から間合いを詰めてきたクドリャフカに粉砕されるだろう。
しかし、今はまだ四本の剣が残っている。
弾かれた斧の直後、間合いに入ったクドリャフカに二本の剣が突き出される。
が、寸前のところでステップを入れ剣を回避。
ガシャ髑髏の左に回りこむ。
「無駄無駄無駄無駄ああ!!!」
クドリャフカの圧倒的な運動量も、ガシャ髑髏の圧倒的攻撃回数を上回る事は出来ない。
左に回りこんだクドリャフカを待ち構えていたのは最後のガシャ髑髏の剣だった。
完全なる待ち伏せ状態で剣は横薙ぎに振られ、クドリャフカの脇腹に命中した。
その瞬間はタペストリーに縫いこまれた神話の戦いのように。
ほんの一瞬の出来事だが、時間が停止したが如く二人は固まっていた。
最初に動いたのはガシャ髑髏。
「な、何で?」
動いたのは口のみ。
吐き出されるのは疑問の言葉。
「腕がいくつ増えようとも軸は一本じゃけえの。」
ガシャ髑髏に応えつつ、更に間合いを詰める。
そう、舞闘家の間合いに。
【クドリャフカマーチ】
パンチとはどういう動作によって成り立つかご存知だろうか?
ただ拳を前に出せばパンチになるわけではない。
足を大地に踏みしめ、力場を作る。
膝から腰、そして肩にいたる重心移動。
そこから繰り出される力を背中から拳の一点に集中させて繰り出される一撃なのだ。
腕だけの動作で繰り出されるパンチなど、手振りと言われ威力などないも同然。
ガシャ髑髏は斧と前面への攻撃のため体の軸が前方に傾いていた。
その状態で横へ薙ぎの一撃など力は伝わらず、腕の移動でしかない。
そのような一撃が硬度を付与されたクドリャフカの肉体を傷つける事が出来ようか?
いいやできるはずもない。
「ただでさえ軸の判りやすい体でボケた事するけえの!」
バラバラとなって吹き飛ぶガシャ髑髏にクドリャフカが勝ち誇って言い放つ。
「ち、ちきしょー!おぼえてろよー!」
流石はアンデッド。
バラバラになっても死ぬこともなく、吹き飛ばされた勢いを利用して捨て台詞と共に逃げていく。
「ああ、再戦をまっとるけぇの。」
わざわざ追う事はなしない。
スケルトンは復讐のために他のアンデッドが自分に手出ししないように根回しをしてくれているのだ。
ここで殺すより、組し易い敵を残しておくのもまた戦略なのだから。
クドリャフカの強行軍はまだまだ終わりが見えない。
その身に取り付いた呪われたアイテムを解除する方法を示した本を見つけ出すまで・・・。
その時まで、目先の勝ちに拘っていられないのだから・・・
スケルトンのお陰でクドリャフカは今回も無事死者の王の領域を抜ける事が出来るのだった。
一方、スケルトン・・・
「ち、ちきしょう!普通の武器じゃ勝てない!何か強力な武器を!」
バラバラになった体を組み立てながら呟くのだった。
それは妖刃むらましゃを手に入れる二日前の出来事だった。
ガシャ髑髏GJ
GJ!
クドリャフカがむらましゃで切られるのもちょっと見てみたかったかも
ドツボに嵌りそうだが
つまらんGJ
ツンデレGJ
【ぐーとぱー】
女子寮二階談話室の隣。角部屋。
そこにアルナワーズとリリアーナの部屋がある。
ドアの前でエルザは深呼吸をしていた。
これから行う事を前に、心落ち着けるために・・・
*コンコン*
「エルザだけど、いる?」
数回の深呼吸の後、ドアをノックする。
「はぁ〜い。どうぞ〜。鍵は開いてるわよぉん。」
中からの声はアルナワーズ。
その言葉に従い、ゆっくりとノブを掴み扉を開く。
入るとちょうどアルナワーズがお茶をテーブルにおいているところだった。
「あらあら、ごめんなさいねぇ。今リリィはお出かけ中なのぉ。」
知っていた。
わざわざリリアーナが出かけるのを確認してから来たのだから。
エルザの目的はアルナワーズにあるのだ。
「・・・そう。中で待たせてもらうわね。」
少し声が裏返ったか?と不安に思ったけれど、どうやら気づかれていないらしい。
アルナワーズは「どうぞ」と出迎えに近づいてきている。
その間合いが一刀足に入った瞬間。
「ありがとう!」
アルナワーズに向ける手向けの言葉。
そのままエルザは手に持っていた包丁を突き出し、アルナワーズの胸に突き刺した。
肉が凝縮して刃を押し出そうとするが、力を込めて押し込む。
確実に心臓まで達しただろう。
アルナワーズは不思議な顔をしたまま硬直している。
「ふふふふ・・・あははは!これはリリアーナのためなのよ!」
ゆっくりと包丁を抜くと、アルナワーズの胸から鮮血が迸りエルザの頬にかかった。
一言も発せずに倒れたアルナワーズを見下ろし、エルザの笑いは更に高まっていく。
「あははは!これでリリアーナは私のものよ!もう邪魔するものはいない!
あははははははは!」
「おほほほ〜」
自分の笑い声に重なるように響く笑い声に驚き、目が見開かれる。
笑い声の方向に振り向くと、そこにはアルナワーズがテーブルに座って笑っていた。
「まあまあ、エルザ。立ち話もなんだから座って。ちょうどお茶を入れたところなのよ〜。」
「・・・幻術・・・。」
エルザは理解した。
包丁で刺したのはアルナワーズの作った幻影だったのだと。
その証拠に、先程まで血を流して倒れていたアルナワーズは血痕すら残さずに消えているのだから。
【ぐーとぱー】
穏やかな笑みを湛えながら手招きをするアルナワーズを睨みつけ、術を発動する。
「う・・・うああああ!スーパーハードニング!!!」
エルザの全身が銀色に変っていく。
スーパーハードニングによってエルザは鋼鉄の身体となったのだ。
そして凄まじい勢いで間合いを詰め、テーブルをなぎ倒しアルナワーズに文字通りの鉄拳を繰り出した。
肉が潰れ、骨が砕ける感触が拳に伝わる。
バラバラになったテーブルの破片と共に、肉塊と化したアルナワーズが吹き飛んでいった。
「あっはっはっは!この部屋は敵性魔法を無効化する。それで油断したわね!
スーパーハードニングは肉体強化に属するから無効化されないもの!」
アルナワーズの強みは用意周到な仕掛けに起因する。
その最たる例がこの部屋だ。
アルナワーズの憑き物を封印する部屋はその副次作用として敵性魔法を無効化してしまう。
だが、実際にかけ引き抜きの戦闘となればその強さなど多寡が知れている。
事実こうして一撃で倒してしまったのだから。
相性的にエルザとアルナワーズは天敵関係にあるといえる。
喩えるのならば、じゃんけんのグーとパーのように。
あとはアルナワーズの死体を隠蔽し、失踪したようにすればいいだけだ。
と、一歩踏み出した瞬間、テーブルもアルナワーズの死体も消えてしまう。
「ま、また幻!?」
「違うわよ〜。ちゃんと手ごたえあったでしょう?」
応えたのはアルナワーズ。
しかし、一人ではない。
エルザを囲むように10人のアルナワーズがにこやかに笑っている。
しかも部屋の中のはずなのに、家具も壁も、天井も床すらもない。
真っ暗な広い空間にエルザは10人のアルナワーズに囲まれていた。
「まあまあ、落ち着いて〜。どうして私を襲うの〜?」
「決まっているわ!あなたがリリアーナの為にならないからよ!」
質問に答えながら質問したアルナワーズに殴りかかるが、間合いは全く近づかない。
まるで夜空の星に手を伸ばしているかのような感覚。
手を伸ばせば届くようなところにいるように見えるのに!
「それは違うわよぉん。」
別のアルナワーズが応え、更に別のアルナワーズが言葉を継いだ。
そして次々にアルナワーズ達が言葉を紡ぐ。
「エルザはリリアーナが好きなのでしょう?」
「でも、目利きはエルザだけじゃないのよぉん。」
「リリィって可愛いわよねえ。」
「芯は通っているけど押しに弱いところあるじゃない?」
「告白されたとき、土下座して頼み込まれたら押し切られて付き合っちゃう・・・事もありそうよねえ。」
「今までそうならなかったのは・・・どうしてかしらぁ?」
全方向から響き渡るアルナワーズの言葉。
その言葉にエルザは答えに辿り着いていた。
【ぐーとぱー】
今までリリアーナが男達に言い寄られてこなかったのは、アルナワーズという邪魔者がピッタリとくっついていたからだ、と。
リリアーナにお近づきになるという事は、当然トラブルメーカーたるアルナワーズともお近づきになることになる。
しかもただのお近づきではなく、玩具にされることは必至。
そう考えが至った瞬間、不意に視界が開けた。
場所は部屋に入ったところ。
足元には複雑な魔法陣。
目の前にはアルナワーズ。
エルザは部屋に入った瞬間、アルナワーズの催眠術に陥っていた事を理解した。
幻ではなく催眠術だからこそ、手応えもあったのだ。
「・・・」
部屋に入って一歩も動いていなかった事と、完全に手玉に取られていた事で言葉が出ないエルザ。
そんな様子にお構いなしにアルナワーズはそっと語りかける。
「エルザがリリィの事が好きなのは構わないのよぉん。
でも、それだけで決められることではないでしょう?
リリィ本人の気持ちが大切なのだから。
押し切るのではなく、自発的な気持ちが、ね。」
【害虫駆除のお勤めお疲れ様。
あとは私がリリアーナと一緒になって幸せになるから。】
そう言おうとしたが、エルザの口から発せられる事はなかった。
アルナワーズの言葉の最後に付け加えられた一言の為に。
「それは情なのかしら?愛なのかしら?迷わずいえる?リリィのキ・モ・チ。」
と・・・。
リリアーナは誰にでも優しい。
自分にも好意を持ってくれているけど、自分が一方的に押し付けていてそれに付き合っているだけなのかも。
そんな疑念が心に浮かんでしまったから。
「エルザ、焦る事はないのよ。
愛はいきなりできるものではなく、育んでいくものだもの。
私は協力もしないし、邪魔もしない。
でも歪んだ形にしようとするのはいただけないわぁ〜。お友達としてのチ・ュ・ウ・コ・ク。
二人の自然な合意があれば喜んで祝福するわよぉん。
はい、これ、お土産よ。」
「うぅ・・・」
にっこりと笑いながら差し出すのはリリアーナの水着姿の写真だった。
こうまで言われてしまってはエルザに返す言葉はない。
当初の目的ももはや果たせる気もしないのだから。
今、目の前にいるアルナワーズが本体なのか幻なのか、催眠術による脳内の姿なのかもわからない。
戦闘となれば相性的に絶対勝てると思っていたのだが、その実全く逆だった。
自分がグーで、アルナワーズがパーだったのだ。
後できることと言えば、差し出された写真を受け取って帰っていく事だけだった。
「今度はゆっくりお茶しましょうね〜。」
全く危機感のないアルナワーズの声を背に、エルザは今度は下着姿の写真があるか聞いてみようと思いつつ部屋へと急ぐのであった。
超GJ!!二人の会話が目に浮かぶようでした。
そのうちエルザが入り浸るか、なし崩し的に3人同室になりそうな気が・・・しないでもない。
そうなったら設定上、3人仲良く川の字になって寝そうですね。
GJ
写真ワロス
GJ
これはいい写真Gj
GOD
【ジレンマ】
地価図書館レベルC階層の最奥。
直ぐ先には厳重に封印の施された扉がある。
そこから先は同じ図書館であっても別世界。
Dレベル階層の入り口。
その危険性ゆえ生徒の入室には多くの制限が伴う。
その扉の正面に一人の男が座っていた。
ボサボサの頭、ボロボロの制服。
かろうじて判別できる魔法学園の紋章がなければ浮浪者と見間違えそうないでたち。
名をコルッシ・オダーネンという。
コルッシオは祖父に無理やり魔法学園に叩き込まれたのだが、本人に魔法使いになる気はない。
とはいえ、卒業しなければ簡単に学園を出ることも出来ない。
だから、コルッシオは魔法学園を脱走する事に決めたのだ。
そのために必要な転移禁術。
あらゆる干渉を乗り越え空間を越える術が記された書物を探すために地下図書館に足しげく通っているのだ。
が、それほどの魔法書が一般図書にあるわけもない。
そうなると自ずと目的地はDレベル以下の階層となってくる。
生徒の立ち入り制限は伊達ではなく、自分の力ではそこまで辿り着く事は出来ないだろう。
判っている。
こうして扉の前にいるだけで、その中の危険度が肌で感じられるのだから。
かといって諦める事も出来ぬコルッシオは今日も待っていた。
自分と志を同じくする者が帰ってくるのを。
****ギィイイイイ****
扉が開き、待ち人は現われた。
こうして向かえるのは何度目だろうか?
久方ぶりに見る待ち人は今日も笑顔でDレベル以下の階層から生還したのだった。
「コルッシオさん。相変わらずの身なりじゃねえ。」
「ははっ。それはお互い様だろう?」
「そりゃいえちょうね。」
大きく見上げながら軽口を交わす相手はコルッシオより頭一つ大きな巨躯。
重装備であったが、コルッシオと同じような痛み具合は【中】で何があったかを雄弁に物語っていた。
全身ツギハギの傷に、ボロボロの重装備。
帰還したのはクドリャフカであった。
クドリャフカもコルッシオと同様に魔法学園においては特殊な存在だった。
魔法使いになることは目的ではなく、あくまで手段。
己の身に憑いた呪いのアイテムの解除法を探りに地下図書館に通っているのだ。
コルッシオと違う点は、武舞術という武術の達人であり、Dレベル以下でも闘える力を持っているという事。
だから・・・自分では取りにいけない転移禁術を【ついで】に取りに言ってもらっているのだ。
【ジレンマ】
「収穫はどうだった?」
一応聞いてみるが期待はしていない。
底の知れぬ広大な地下図書館でどこにあるかもわからぬ一冊の本を見つけるのは絶望的だ。
それでもクドリャフカに縋らねばならぬ。
いつも通り困った顔で首を横に振ると思っていたが、今回は違った。
「コルッシオさん、最近よくない噂ばかり聞いとります。
授業はちゃんと出たほうがいいですよ?」
意外な言葉にコルッシオの顔が自嘲的に歪む。
「俺は魔法使いになる気なんかないから。」
その言葉にクドリャフカの眉が下がり、鞄の中に手を突っ込む。
「ふ〜〜・・・仕方がないですのぉ。
目的物ではないですが、これ・・・。」
一瞬期待するも、クドリャフカから差し出された本は転移禁術ではなかった。
なぜこの本を?と首をかしげていると、クドリャフカが言葉を続ける。
「転移禁術ではありゃぁせんですが、同じ著者のもんです。
ちょっと読んでみてつかぁさい。」
クドリャフカの意図はわからなかったが、著者が同じとなると気が引かれるというものだ。
適当にページをめくってみるが、思わず硬直してしまう。
開かれたページに書かれているものが、文字なのか図形なのか、はたまた絵なのかすらも判別できなかったからだ。
「お互い古代文献に相当する本が目的じゃけえね。
本はあくまで知識を記したもの。
それを読み解き使えるかどうかは別問題じゃけえ・・・のぅ。」
困った顔したままのクドリャフカはそれだけ言うと歩み去っていった。
残されたコルッシオは解読できぬ本を手に、ただただ立ち尽くすばかり。
魔法使いにはなりたくない。
だが、魔法使いにならないため、自由を得るため、脱走するには魔法使いにならなければいけない。
このジレンマに身動きが出来ないでいたのだった。
うお、GJ!
クドもそろそろ戻ってこないかぬー。
GJ
こりはgjですたい
GJ!
【アルナワーズ・ラプソディー】
魔法学園では二等課程の授業の一環として課外授業がある。
机上では決して学べない実地の体験を学ぶために。
学園が斡旋した『外』の世界の依頼をこなすのだ。
依頼内容は千差万別。
魔物の封印から謎の解明まで。
適性に応じて3人ほどのチームを組み、引率に一人の教師が付く。
そしてこの日、島外に出るゲートの前に4人が集まっていた。
ミルク、メラル、リリアーナ。
そして引率のレイド。
見知った顔ばかりの三人で喜ぶリリアーナとミルクだが、メラルだけは一人考え込んでいた。
二等課程の生徒に限定してもかなりの人数になるはずだ。
それがこうも知り合いが集まり、更には引率がレイド。
何か意図的なものを感じ取っていたのだ。
「レイド先生、行き先と依頼内容、そろそろ教えてくれてもいいんじゃないですか?」
ゲートを前にリリアーナがレイドに問いかける、
「ん、ああ・・・もう一人メンバーがいるから、揃ったら、な。」
が、レイドの反応はイマイチはっきりしなかった。
もう一人?
レイドの言葉に首を傾げるリリアーナの目に映ったものは・・・
ゆったりと歩いてくる褐色の肌、漆黒の髪、そして特徴的な民族衣装。
そう、最後のメンバーはアルナワーズなのだ。
その姿を見た時、リリアーナは何か猛烈に嫌な予感がした。
メラルは感じ取っていたものが確信に変った。
「よ、よし。揃ったところで出発だ!
行き先は南部大陸ペロシャ地方のアリーカリフだ。ちょっとした気象変化の調査、だよ。ハハハ。」
一堂がゲートに入り、光を放ち始めた頃、レイドが渇いた笑いと共に行き先と目的を告げる。
しかしそれを聞いたメンバーは首を傾げるばかり。
ペロシャ地方のアリーカリフなど聞いたことがなかったのだから。
いや・・・一人だけ知っている人間がいた。
「あらあら、ペロシャ地方のアリーカリフだなんて。驚いたわぁ〜。」
「え、アル!知ってるの?」
驚き聞くリリアーナに、アルナワーズはニタリとした恐い笑みを浮かべて応える。
「知っているも何も、私の故郷だものぉん。」
「・・・・」
「・・・・」
「・・・(やはり・・・決まりね)」
誰も声の出せぬ衝撃事実。
数秒間の沈黙の後・・・
「ヤ、ヤダーーー!レイド先生!私!お腹痛くなったので帰ります!」
「ちょ、リリアーナ!もう転送始まってる!時空の狭間に落ちたいの?」
半泣きで帰ろうとするリリアーナをミルクが慌てて止める。
そんな二人を余所にメラルはこのまま行くか、時空の狭間に落ちるかどちらがマシか真剣に検討していた。
「まあまあ、言ってみれば里帰りなわけだし。地元民がいると楽かもしれないじゃない。」
ミルクが慰めるが、メラルはそうは思わなかった。
むしろ真逆の事を考えていた。
そしてそれが正しいという事はあえて何も口にしないレイドだけが知っていたのだった。
いきなり波乱含みでリリアーナたちはゲートから転送魔法で消えていった。
【アルナワーズ・ラプソディー】
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「なぜ生徒を行かしたのですか?危険すぎます!」
学園長室にて、エースが抗議の声を上げていた。
その言葉を受けるのは学園長。
「百歩譲って生徒を行かせるにしても、引率は僕の方が相性的にも!」
珍しく興奮するエースを見ながら学園長の表情は笑顔だった。
「確かにエース先生のいう事は正しい、が・・・」
学園長に代わって応えたのは教頭。
苦々しげな表情を浮かべながら学園長を横目で見る。
「ほっほっほ、先方には連絡済みだし、あの子達なら大丈夫ぢゃろう。
レイド先生もたまには苦労せんとの。」
「・・・そういう事だ。」
まだ納得していないエースに教頭も気持ちは同じだといわん顔をしながらも学園長の言葉を以って応えにかえた。
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見渡す限りの砂・砂・砂・砂・・・
照りつけるは炎天の太陽。
ここは南方大陸ペロシャ地方、ネフド砂漠。
あまりの暑さに大気は歪み陽炎を立ち昇らせる中、一列になって進む人影がある。
アルナワーズの故郷アリーカリフには転送陣がないため、近くの町にテレポートアウト。
そこからは歩きなのだが、その行程は過酷を極める。
「アルナワーズ・・・一体いつになったら付くのよー!」
「そんなに慌てないで〜。半日も歩けば見えてくるからぁん。」
ミルクの血の叫びにあっさりと絶望的な答えを返すアルナワーズ。
既に歩き始めて2時間。
砂はさらさらと流れ、脚から力を奪っていく。
太陽は中天に位置し、気温は50度に達しようとしていた。
ミルクの絶望感も深いものだが、それ以上に深刻な状態に陥っている者がいた。
「メラルさん・・・大丈夫?」
「・・・ありがとう・・・でも、動けそうにない・・・わ・・・」
途切れ途切れ応えるメラルは横たわったまま起き上がることも出来なかった。
暑さに弱いメラルは着いた早々倒れ、今はアルナワーズの魔法の絨毯【ムガル】に横たわり運ばれていた。
「ミルクさんも、無理せず乗ってね。私は・・・暑いのには強いから・・・。」
一歩一歩砂を踏みしめるリリアーナだが、当然そんな余裕は全くない。
それでも他人への気遣いを優先させるのはサガとしか言いようがないだろう。
そんな様子を見ながらムガルの上で胡坐をかくアルナワーズが微笑んでいた。
夕日が照りつける中、砂漠は終わりを告げ荒野に踏み入れていた。
やがて蜃気楼のように浮かび上がる広大な遺跡。
それこそがアルナワーズの故郷、アリーカリフである。
漸くアリーカリフに辿り着いた時には既に太陽は地平に半身を沈めていた。
暑さも和らいできて、町に入るとまばらながらに人影が。
その中の一人が一向に気付く。
「ア、アルナワーズか?」
「あらぁんロレンのおじ様、おひさしぶりぃ。」
驚きと共に尋ねる男にアルナワーズはにこやかに手を振る。
その言葉に男の顔はみていて判るほどに蒼くなっていく。
しばしの沈黙の後、男は震えながら漸く声を振り絞った!
【アルナワーズ・ラプソディー】
「ア、ア・・・アルナワーズだあぁぁ!アルナワーズが帰ってきたぞおお!!」
町中に響くような声でアルナワーズの帰還を知らせる。
が、その言葉に歓迎の感情は感じられなかった。
むしろモンスターの襲撃を伝えるかの如き切羽詰った感情が込められている。
事実、その言葉に反応する町は蜂の巣をつついたような状態になった。
「何だって!?本当か!」
「馬鹿な!今年の節はもうだってのか!?」
「急げええ!皆!高台に逃げるんだ!!」
「荷物は諦めろ!」
怒号の飛び交う中、取り残される一行。
「アルナワーズ、あんた故郷で何したのよ・・・」
「やだわぁん、ただ二回ほど嵐を引き起こして洪水になって人口を4割程度減らしただけよぉん。」
目を点にしながら尋ねるミルクに事も無げに応えるアルナワーズ。
柔らかな言葉だが、その語る意味はミルクとリリアーナに声にならない叫びを上げさせるのに十分だった。
そしてメラルがそんな二人に止めを刺すような解説を呟く。
「軍隊が壊滅って言うのは部隊の三割が戦闘不能になった状態なのよね・・・」
アルナワーズは壊滅以上の被害を故郷に与えていたというのだ。
そう考えれば町の人々の反応もごく自然のモノと言わざるえないだろう。
大混乱の町とは対照的に静寂な存在が一行に近づいてきた。
フェイスベールにローブ、深く被ったフードの四人が担ぐ輿に乗った老婆。
静かにレイドの前に降り立つと、深々と頭を下げる。
「レイド先生、お久しぶりですぢゃ。今年はエース先生は・・・?」
挨拶をしながらリリアーナ、ミルク、メラルを順に目をやる。
「どうもお久しぶりです。今年はこの面子でという事で。
いやなに、可愛い顔して私より優秀なくらいですから安心してください。」
笑いながら応えるレイドの言葉を聞き、老婆は顔をしわくちゃにして三人に深々と頭を下げる。
そしてアルナワーズに向きかえり、それまでとは違った厳かな声を発する。
「アルナワーズ、我が孫娘。少しは成長したかえ?」
その言葉、そしてかもし出す雰囲気。
今までの空気が一変し、緊張した空間が老婆を中心に広がるのがわかるだろう。
が、アルナワーズはそれがわかっていないのか、いつもと代わらぬ穏やかな口調で応えるのだった。
「あるがままよぉん、お婆様。」
そんな態度に緊張した空間が瞬く間に消えうせる。
「うむ。では皆さんを部屋に案内するぢゃ。」
そういうと老婆はまた輿に乗り、去っていく。
「じゃあ皆〜、案内するわよぉん。」
老婆が立ち去ると、アルナワーズが先導し、遺跡の中へと入っていった。
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「ねえ、ここって・・・。」
「部屋というより祭壇ね・・・。」
アルナワーズが案内したのは遺跡の最上階。
そこには篝火が炊かれ、部屋というにはあまりにも様相がおかしい。
天井もとって付けられたような天幕である。
食べ物飲み物がふんだんに用意してあった。
とうに夜の帳は落ち、夜中にさしかかろうとしている。
当然のようにアルナワーズは部屋の真ん中で眠りに落ちている中、残った四人は輪になって話しこんでいた。
【アルナワーズ・ラプソディー】
砂漠の夜は昼とは対照的に氷点下まで下がり、お陰でメラルも復活していた。
「レイド先生、もう話してもいいんじゃないですか?」
「ん〜〜・・・ああ・・・」
メラルが口火を切るが、レイドの口は重い。
勿論ここに来た目的についてだが・・・
三人に見つめられ、レイドは漸く口を開く。
「いやー、気象変化の調査は間違いはないんだが・・・原因はわかってる。
今回の目的・・・というか敵は・・・アルナワーズなんだ。」
レイドが漸く応えるが、それを聞いた三人は意図が掴めない。
「どういうこと・・・ですか?」
しばしの沈黙の後リリアーナが漸く口を開く。
たった一言だが、ミルクとメラルの代弁に足る言葉を。
そしてその答えをレイドは用意していた。
「うん、アルナワーズはな、正確にいうと人間じゃないんだ。
いつも着ているあいつの民族衣装は【幽玄の衣】っていう強力な幻術がかかっている服で、その姿を人間に保っているだけで。
年に一回、制御が外れてその正体が露になるのよ。
毎年俺とエース先生が相手してたんだけど、今年は友情を深めてもらおうってことで。」
応えるには応えているが、結局肝心なところは何も答えていない。
結局はアルナワーズとの闘いだけとしか。
「まあいいんじゃない?
アルナワーズは面倒な相手だけど、正面切手の戦いなら何とかなるよ。
交渉ごととかじゃ勝ち目ないけど、火力なら負けないからね。」
ミルクにすればそれで十分だったのだろう。
図式が単純であれば曖昧でも十分だ。
やることは結局一つなのだから。
しかし、そう考えられないのがメラルだった。
「・・・レイド先生。正確に言ってください。
町の人の反応。アルナワーズの憑きもの。教師二人掛りでの戦い。そしてこの祭壇。
これだけでも単純にアルナワーズと闘うでは済まされないと推測できます。
もしかして、私たちは自然災害二つ相手にするのと同義なのでは?」
じっと見つめるメラルに思わず目をそらすレイド。
しばしの逡巡の後、引きつった笑みを浮かべた。
「いや、大丈夫。ちゃんと戦力バランスとってあるから。
火力のミルクに頭脳のメラル。学園でも屈指の組み合わせだぞ?」
レイドの応えに更なる疑惑を募らせるメラル。
確かにミルク、メラル、レイドの組み合わせは戦力的にもバランス的にも屈指といえるだろう。
逆に言えばそれほどの戦力が必要となる、という事なのだ。
しかしそれ以上に引きつった顔をするのはリリアーナだった。
「あ、あの、私はなぜ選ばれたんですか???」
そう、既に涙目になっているリリアーナ。
この中で戦力的に桁はずれて落ちているのはわかっている。
そう問われてギクリとした顔を一瞬浮かべるレイドの反応だけで十分だった。
「い、いや、ほら。リリアーナはアルナワーズのお気に入りのオモ・・・」
「え・・・先生、それって囮って・・・こと?」
「ち、違うぞ!回復薬が必要だからであって・・・」
「いやー!私、帰ります!無理ですー!」
引きつるレイド、半泣きで帰ろうとするリリアーナ。
それを止めようとするミルク。
三人のどたばた劇の中、メラルが冷静にただ一言発する。
「・・・もう無理みたいよ。」
メラルの背後、祭壇の中央。
アルナワーズの気が急速に膨れ上がっていくのが肌で感じられたから。
【アルナワーズ・ラプソディー】
時はキッチリ0時を指し示していた。
【それ】は始まった。
「いざや聴け 喚起されしモノ うぬが見立て 七とせの 鼓を打つ響きの間を以って 五芒の戒め六芒の枷、呪詛の楔を樽緩めん!」
「聖地バラナシより轟け 地霊を目覚まし 負界の底より 鳴動せよ 我が啓示となりて 汝が名はタイフーンアイ!」
「爆風よ デカンの怨嗟よ ポタラの果て 銀影の彼方 全ての軸を歪ませ吹き荒れよ 汝が名はクラウドオブダウンバースト!」
眠っているアルナワーズががくがくと痙攣し始め、確かな声で歌うように唱え始める。
その言葉と共に天幕は吹き飛び、アルナワーズの姿が消える。
変わって上空には分厚い暗雲が渦巻き、中央には巨大な目玉現われる。
轟く雷鳴、降り始める豪雨、吹きすさぶ豪雨。
うねる雲は一瞬アルナワーズの顔を形作り、直ぐにまた形を変えていく。
「これが・・・アルナワーズの正体!
アルナワーズの頭脳を持ち合わせる二つの自然災害が私たちの相手なんですね・・・!」
「・・・すまん。中々上手くいえなくって。」
「レイド先生のアホー!こんなんどうしろっていうのよ!」
「いやー、私帰るー!」
「はっはっは!大丈夫、倒す必要ないから。力を削げばいいから死なない程度に頑張ろう!」
これが儀式の始まり、そして天災との戦いの始まりであった。
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「この地方は厳しい環境に生きていくために、【節の日】に嵐を呼ぶんだ。
嵐の恵みで土は潤い、畑を耕すに足る土地となる。
ただ、何年か前にちょっとした手違いで嵐を身に宿しちゃったお転婆な巫女がいてな。
しかも一つで十分なのに二つも。
それからは嵐を呼ぶと自動的に二つの嵐が来ちゃって滅茶苦茶になるわけよ。
だから、毎年俺とエース先生が抑えていたわけだけど、今年は生徒にも体験させてみようって学園長が・・・ハハハ。」
一晩中かかった戦いは終わり、ぐったりとしながらレイドがそう告げる。
だがそれが耳に入った者がいたかどうかは疑問である。
アリーカリフに【適度】な嵐の恵みが訪れた。
しかしその代償は・・・
####################################################
「ねぇ〜。ちょっと変じゃなぁい〜?」
刺す様な日差しの砂漠を行く一行に声がかけられる。
「あーもう、うっさい!これでいいのよ!」
切って捨てるようなミルクの返事。
今一行はアルナワーズの故郷の帰り道。
行きと違うのは、魔法の絨毯に倒れるように寝ているのがメラルだけでなく、ミルクとリリアーナが加わっている事。
そしてアルナワーズが歩いている事だった。
「意地悪だわぁん。でも、なんだかぐっすり寝たようで体が軽いし〜。私くじけずに頑張る!」
にこやかに笑いながら砂漠を歩くアルナワーズ。
しかし、そんな言葉は三人の神経を逆撫でするのであった。
「アルのこと・・・嵐のような人だと思ってたけど、認識が甘かったわ。」
「・・・そうね。嵐のような。ではなく、人の形をした嵐だわ。」
「うん、しかも×2」
ぐったりとして呟くリリアーナに応えるメラルとミルク。
「えー皆ひそひそ話してなんだかイジワル〜。」
一人元気なアルナワーズとぐったりとした四人の帰り道はまだまだ先は長いのであった。