フシュー!
その泣き声は独特であった
触手攻撃
【名前】ムラサマ・ウィズ・アードリィ
【愛称】ウィズ
【性別】男
【年齢】20歳
【性格】自分に厳しく、他人に優しく。几帳面ではあるが、他人にそれを強いることは無い。
【身長】172p
【体重】108kg
【容姿】黒髪、短髪。『日本人』の標準サンプル。ただし体の何割かは機械に置き換えてある。
【趣味】”ワザモノ”探し。より強く美しい刀(あるいは刀剣型の武器)を求めている。
【得意なこと・もの】戦闘、(意外にも)事務作業、掃除や洗濯といった秩序維持。
【苦手なこと・もの】だらしないもの(人を含む)、退屈、大量の甘いもの、ピエロ。
【一言】「2秒で片付けてやる。」
何となく興味がわいたので、機会があればよろしくお願いします。サムライです。
ここに来たのは特定ミュータントの殺害と一部のデータ奪取が目的。
アトラスとミュータントの戦闘を確認したら加勢するでしょう。
武装はサムライと名乗っていますが何でも屋の傭兵みたいなものです。
>181
グローリー社内部にいるムラサマには、少し前から警報音が響くのがわかった。
行く手を阻むロボットはあまり強くはなかったが、進む道の所々に分厚い隔壁が降りている。
進むにしても逃げ道を探すにしても、選択肢は多くはない。
まるで誰かに誘導されているように感じるかもしれない。
やがて、1つだけ開け放たれたドアの近くを通る事になる。
部屋の中からは戦いの音が聞こえてくる。
どうやら中で戦闘が行われているようだ……
「むぅ、予想以上に堅牢ではないか。」
ミュータントを倒しに着たのに出てくるのは機械ばかり。
足りない分は足で探すしかあるまいと思い切るが道は少ない。
やがて強化された聴覚が一つの戦闘音を聞きつけた。
「先客?いかん…報酬を貰いそびれる。」
右手にカタナ、左手に拳銃を。
かくて運命の扉は開かれた。
前進する怪物を牽制するように剣を構える。
怪物の武器は長い腕の爪と接近しての牙。
鱗という鎧をつけている事も考えると、組み付かれたらおしまいだ。
「せいっ!」
先手必勝。剣を両手に持ち、必殺の気迫で切りかかる。
セラミックの刃とアトラスの怪力は、怪物の右肩を易々と切り裂いた。
これなら勝てる。アトラスがそう考えた時、怪物はフシュー!と独特の声で泣いた。
同時に首を狙って、ロープのようなものが襲いかかってくる。
「なっ!?」
一本目はなんとか振り払った。
だが二本目のそれは、アトラスの首に巻き付き絞めあげる。
ロープに見えたのは、怪物の顔から伸びた触手だったのだ。
触手に力が込められるのがわかる。
外そうとしても徐々に視界が歪み、体から力が抜けていく。
「ふむ。期待していたのだが、あっけないものだな」
怪物の後ろから聞こえる男の声が、ずいぶん遠くから聞こえてきた。
最初に進入者に気づいたのは、怪物だった。
開いたドアから入ってきたムラサマを見ながら、奇怪な威嚇音を上げる。
怪物を操る男も、ムラサマに気づき話しかけてきた。
「どうやら迷い込んだという訳ではなさそうだな。
連邦の人間ではないようだし、他の企業にでも雇われたのか?
はじめまして、ようこそ私の研究室へ。そしてさようならだ。」
最後の一言は、怪物に対しても発せられたようだった。
主の意向を受けた怪物は、アトラスを壁に投げつけてムラサマに突進する。
長い手の爪は十分な威力を持つが、もし捕まれば鋭い牙で引き裂かれる事になるだろう。
迫り来る怪物に対して構える。回避ではなく攻撃こそが道を作る。
向かってくる怪物に牽制しようと何発も拳銃を撃つが大した効果は得られなかった。
「チッ、こういうミュータントがいるって聞いてたら装備も変えようがあったが!」
引き付けて、間合いに入ると同時に相手の腕を完全に破壊すべく斬撃を繰り出した。
先ほど与えられていた傷をさらに別方向から切り込まれ、怪物は右腕を失う。
至近距離で怪物は顔から再び触手。
「おのれ、早い!」
捕縛!鋭い牙が俺に襲い掛かる。
「…かかったな!この距離で拳銃を叩き込めば先ほどのようには行くまい?」
同じような場所に何度も何度も何度も銃弾を叩き込み、放り投げられる寸前に刃を突き立てる。
繰り返しの銃撃で鱗は剥がれ落ち、テラテラと光る皮と肉が見えていた。
カタナは吸い込まれるように深々と突き刺さり、怪物は暫くのたくった後、完全に動きを止めた。
「頭部破壊は定石。こやつもまた例外ではなかったか…せめて安らかに眠れ。」
念のために行動にかかわる部位を軽く抉っておく。人間とは訳が違うからだ。
「ちぃ、刃こぼれが激しい…研ぎに出さねば。やはり単分子ブレードとは違うな…」
軽くぼろ布で体液を拭って静かに収刀。研究員とアトラスを交互に見て、研究員に言った。
「詰んだのではなかろうか?」
要するに、降伏勧告である。
ストリートサムライか・・・
サイボーグでもない生身でよくもまあ
189 :
名無しになりきれ:2007/07/19(木) 19:31:27 0
さあ殺せ
怪物に投げつけられたアトラスは、そのままの勢いで壁に衝突した。
打撲による激痛が背中に走り、同時に締め付けから解放された肺が新鮮な空気を求める。
アトラスはせき込みながらも、なんとか視線を怪物に戻そうとした。
戦いの中で敵を見失うことは、そのまま死を意味するのだから。
最初に目に入ってきたのは、新しく部屋に入ってきた男が怪物の右腕を切りとばす所だった。
だが近い間合いは、触手の届く範囲でもある。
「危ないですよ!触手が伸びてきま……いたた」
自分が捕まっていたのは男も知っているはずなのだが、叫ばずにはいられなかった。
助けに行こうにも、すぐには体が動きそうにない。
だが助けに行く必要はなかった。近い間合いからの銃撃と斬撃が怪物を襲う。
捕まったように見えたのは、男の作戦だったのだ。
頭を破壊された怪物は、やがて完全に動きを止めた。
>「詰んだのではなかろうか?」
刀を収めた男が研究員に言った。
「 ストリートサムライか・・・
サイボーグでもない生身でよくもまあ、私の作品に勝てたものだ」
研究員は呆れたように首を振りながら前に歩いてきた。
そのまま、何も持っていない事を見せるように軽く両手をあげる。
「私の負けだな。 さあ殺せ」
「あなたをここで死なせるわけにはいきません。法廷であなたの罪は裁かれます。
悔やむ気持ちがあるのなら、すべてを明らかにして罪を償ってください」
拘束用の道具を取り出し、研究員を取り押さえる。
一応警戒はしていたのだが、観念したように研究員はされるがままだった。
後はもうすぐやってくる、火星保安局に任せればいい。
事後処理を終えて、アトラスは自分を助けてくれた男に話しかけた。
「さっきは危ないところをありがとうございました。
私はアトラス。地球連邦のエージェントです」
助けてくれたお礼と、簡単な自己紹介。
ストリートサムライと呼ばれた相手の事情も気になったが
初対面の人にそんな事を聞くのは失礼だと考えたので、言わなかった。
>サイボーグでもない生身で…
「鍛錬と薬、一部を置き換えるだけで十分にやっていける。この血肉と骨は、多少なりとも愛着もあるのでな」
まったくの生身というわけにはいかない。この世界には恐るべき力を持った者が多くいる。
鍛錬のみでは追いつかない、生物としての差を感じさせるような相手。
それに勝つためには多少の犠牲は必要不可欠なものだ。
>「さっきは危ないところをありがとうございました。
>私はアトラス。地球連邦のエージェントです」
「我輩はムラサマと言う。ここへはミュータント退治に来た……大半はアトラス殿のお陰で片付いたがな」
楽をさせてもらったよ、と感謝の意を述べる。皮肉ではなく純粋な気持ちである。
そもそもここに来たのは、さる企業の依頼だったのだが、そんなことは彼女には関係あるまい。
「そこの男の言葉通りの職業だ。聞こえはいいが単なるゴロツキと思ってくれて結構。
金さえ頂戴できれば汚れ仕事も辞さない、『影をひた走る者』だ。依頼があれば受けるが逮捕礼状ならお断り。」
外から聞こえてくるアラート音を聞いて鮫のように笑い、きびすを返して立ち去ろうとする。
「さて、たたけば埃の出る身だ。ここらでお暇させて頂く。では、さらば。」
>「我輩はムラサマと言う。ここへはミュータント退治に来た……大半はアトラス殿のお陰で片付いたがな」
「ムラサマさんですか。そんなお礼を言われるような事ではないです。
ここに来たのも怪物を倒したのも、偶然みたいなものですし」
逆にお礼を言われるとは思っていなかったので、なんとなく照れくさい。
>「そこの男の言葉通りの職業だ。聞こえはいいが単なるゴロツキと思ってくれて結構。
> 金さえ頂戴できれば汚れ仕事も辞さない、『影をひた走る者』だ。依頼があれば受けるが逮捕礼状ならお断り。」
「『影をひた走る者』、ですか……」
アトラスも聞いたことがある、フリーの傭兵のような人々の事だ。
中には、金次第で密売屋の護衛や暗殺まで請け負う者もいる。
ムラサマの言う『汚い仕事』がどの程度のものかは分からないが。
> 「さて。たたけば埃の出る身だ。ここらでお暇させて頂く。では、さらば。」
「あ!えーと。ちょっと待ってくださいね」
考え事をしているうちに立ち去りそうになったムラサマを呼び止める。
なにか助けてもらったお礼にできる事がありますか?
アトラスがそう尋ねようとした時、数名の男が部屋に入ってきた。
先頭に立って入ってきた無表情な男は、アトラスの上司ワイズマンだった。
目つきの鋭いその顔は、なんとなく爬虫類を連想させる。
「ワイズマン局長!こんな所にどうして!?」
「匿名の通報が入ってな。来訪者絡みの事件となれば、君一人に任せておくわけにもいくまい」
アトラスと話しながら、ワイズマンが合図を送ると
一緒にいた男達が、研究員の確保や来訪者の死骸の処理を始めた。
「次の任務についてアトラスに指示したい事がある。
少し場所を変えて話し合いたいので、ついてきてくれ」
「はい!わかりました!」
ワイズマンは次にムラサマの方を見た。
「うちのエージェントを助けてくれた事に感謝するよ、ムラサマ・ウィズ・アードリィ君。
君の戦闘力を見込んで、依頼したいことがある。
別に逮捕しようなどと考えている訳ではないから、一緒に話を聞いてもらいたい」
言いたいことだけ言い終わると、ワイズマンはさっさと部屋を出ていこうとした。
ムラサマが断るなどとは考えてもいないようだ。
悪の野望
196 :
名無しになりきれ:2007/07/29(日) 21:23:07 0
まともな報奨金は出るようだ
そして一時支援age
私は恐竜人類ではない!!
>>196-194 「もう調べ上げたのか?ふむ…仕事の依頼なら聞かずに帰る理由は無いな」
確かにそのとおりである。必要とされる仕事は達成し、現状あとは帰るのみ。
武装に若干の心配はあるが話を聞くだけでも損は無いだろう。
特に疑うことなく頷いた。マトモな報奨金も出るような話らしいが…
> 「もう調べ上げたのか?ふむ…仕事の依頼なら聞かずに帰る理由は無いな」
「さすがムラサマさんです!正義の依頼を断るはずないですよね!」
うんうんとうなずくアトラス。
連邦の任務は、すべて正義のためと信じて疑っていないのだ。
アトラスとムラサマは、グローリー社の応接室に連れていかれた。
「隣の部屋の少年から話を聞いたのだが、グローリー社は
近くにある来訪者の遺跡から死体を発掘、蘇生させていたらしい。
今時時代遅れの悪の野望も無いだろうが、調べておく必要がある。
アトラスは明朝、遺跡の探索を行うように」
「了解しました!」
アトラスの返事を聞いて、ワイズマンはムラサマに話しかけた。
「ムラサマ君にはアトラスの護衛、ならびに存在するならばミュータントの掃討を依頼したい。
来訪者絡みの事件となれば、連邦政府からまともな額の報奨金が出るだろう」
「私1人の任務じゃなかったんですか?」
エージェントの任務は、よほど危険と判断されない限り単独行動が基本となる。
アトラスが不思議に思うのも無理はなかった。
「私は君たちが言うような、恐竜人類ではない。
部下を無駄に死に追いやるのは冷血ではなく、ただの無能者だ」
「い、いえ別にそんな意味で言ったわけでは……」
ワイズマンはその風貌や作戦の容赦のなさから、あれは恐竜人類に違いないと陰でささやかれている。
それを皮肉って言ったのだろうが、さすがにアトラスも反応に困った。
「今回の任務の危険性を考えてのことだ。
遺跡からは、それこそ本物の恐竜が出てきてもおかしくはない。
両名ともに十分に注意するように」
「わかりました!……ムラサマさん。よろしくお願いします!
一緒に悪の野望を打ち砕きましょう!」
アトラスも、ムラサマが断るかもしれない。などとは考えてもいない。
弱い人を助けるのが、強い者の義務だと考えているからだ。
「今日は疲れているだろうから、VIPルームで休んでいけばいいだろう。
必要な物があれば知らせてくれ。今晩の内に用意させる」
ワイズマンが2人に言った。
フォッフォッフォッフォ・・・・
遺跡からは妖しい声がする
「弾薬代持ちとは気前がいい。後でリストを送るから、それを可能なだけ用意してくれ」
部屋に戻り、消耗した弾薬と追加の炸裂弾、小火器etc..一通りのリストを作る。
部屋を抜けてクライアントには自ら出向き、結果はどうあれ依頼の完遂を告げて報酬を受け取った。
VIPルームに通されると、遠慮なく天然の酒を注文してじっくりと味わい、そして軽く瞑想して眠る。
翌朝、迎えが来るより少し早めに目覚めると、軽く体をほぐして連絡を待った。
「貧乏ヒマ無し…労働は尊い、か」
203 :
名無しになりきれ:2007/08/03(金) 15:03:11 0
そして日は昇る
> 「弾薬代持ちとは気前がいい。後でリストを送るから、それを可能なだけ用意してくれ」
「私も銃の弾がほとんど無くなったので、補充をお願いします」
特別製の大口径の銃は、威力はあるのだが弾数に不安が残る。
飛び道具は苦手だが、危険な任務に行くのだからと少し多めに銃弾を用意してもらった。
用意された部屋は豪華だったが、疲れていたのか部屋に入った後
何をどうしたのか全く記憶が無く、目を開けたときには次の日の朝だった。
そして日が昇る。
あれだけ疲れきっていたのに不思議なもので、いつも起きている時刻に目が覚めた。
日課になっている軽い運動とシャワーを済ませ、服を着た頃には約束の時間だった。
「おはようございます!
今日の仕事も張り切っていきましょう!」
部屋をノックし、すでに起きていたらしいムラサマと合流する。
> 「貧乏ヒマ無し…労働は尊い、か」
「そうですよ。他の人の笑顔を守るための任務なんですから」
そんな事を言いながらグローリー社の外にでると、地上車が一台止まっていた。
車には、頼んでおいたリストの物がすべて積まれていて
乗り込めば自動運転で目的地に着くようになっているようだ。
お世辞にも高級とは言えないような車で、目的地に向かう。
目指す遺跡は意外に近い場所にあった。
人目につかないよう隠されてはいたが、地図を見ていればすぐにわかる。
フォッフォッフォッフォ・・・・
近づけば、 遺跡からは妖しい声がする。
「人の気配はないようですが、警戒は解かない方がいいですね」
ムラサマに話しかけたとき、遺跡の中から怪物が飛び出してきた。
人間のような外見だが、その体は甲殻で覆われ両手はエビのようなハサミになっている。
怪物はハサミを振り回しながらこちらに突進してきた。
我々はヴァルタァン!決してバルタンではない
声は遺跡の中から聞こえる
「―――いきなりか!」
突っ込んでくる相手にこちらも接近、3歩前で歩みを止めて居合いの構え!
隙間を狙い――
「チェストオォォォ!」
断つ!
「我々はヴァルタァン!決してバルタンではない」
「そうか。さらばだヴァルタァン…いま、我々と?」
アトラスに確認する。こんなのが何体もいてはたまらない!
ムラサマの攻撃で、怪生物は一刀両断にされて地面に転がった。
> 「そうか。さらばだヴァルタァン…いま、我々と?」
「確かに我々と言っていましたね。
それに、会話能力を持っているなんて……」
謎の生物の言葉を信じるなら、まだ奥には仲間がいることになる。
ヴァルタァンがなにを指しての言葉か分からないが、高い知能を持っていたことは驚きだ。
「あ、なんだかまだ声が聞こえますよ」
ムラサマに声をかけて遺跡から聞こえる音に耳を澄ます。
笑い声のような奇妙な声が、まだ遺跡から聞こえていた。
「敵の不意打ちがあるかもしれません。
この先は慎重に行きましょう」
言いながら遺跡の中に足を踏み入れた。
遺跡の中は人工の明かりがついていて、ライトなどは必要なさそうだった。
よく見えるほど明るくはなかったが、探索に苦労するほどでもない。
壊されたらしい入り口から入ると、通路が奥に向けて続いている。
手前には部屋に入る入り口も見えた。
「声は奥から聞こえてきますが、手前の部屋も気になります。
どちらから探索しますか?」
部屋の中はガラクタの山
「手前から虱潰しだな。複数いる可能性がある以上、挟撃になったら目も当てられん。」
手前の扉に突入し、銃を構える。敵の動きを察知すべく、気を配り、部屋を見回す。
「こ、これは!?」
どうみてもガラクタです。本当にありがとうございました。
「……――奥に、進もうか。」
何故かガッカリしているムラサマであった。
212 :
名無しになりきれ:2007/08/13(月) 08:31:58 0
奥にはヴァルタァン人が2,3人
> 「……――奥に、進もうか。」
「あ、あはは。敵がいない事が確認できただけでも良いじゃないですか」
ガッカリしているムラサマに答えながら戻ろうとして
何かを踏んづけたアトラスは思いっきりバランスを崩した。
「うわわわわっっ!?」
バランスを取り戻そうとする努力も無駄に終わり、背中からガラクタの山に倒れ込む。
「イタタ……ちょっと失敗しちゃいました」
派手な音はしたが別にダメージを受けたわけではない。
すぐに立ち上がろうとして、右手の側にある物に気がついて驚いた。
それは人間の頭蓋骨だった。
注意してみれば、他にも人の骨らしい物が沢山ガラクタと一緒に置いてある。
墓地ではないようだから、まだ新しいその骨はここに捨てられたのだろう。
「ムラサマさん、やはり奥には危険な生物がいるようです。
注意して進みましょう」
見つけた骨の事を伝えながら、さらに奥を目指した。
隠れた施設らしくそれほどの奥行きは無いようで、苦労せずに最後の部屋に到着。
部屋の中からは怪しい笑い声と一緒に、うなり声や壁を蹴るような音も聞こえてくる。
フォッフォッフォッフォ・・・・
我々のことを来訪者と呼んでいるそうだな
手から怪光線発射!
1歩1歩と進み最後の部屋に到達する。
はたして、そこにいたのは無数のヴァルタァンであった。
「我々の事を来訪者と呼んでいるそうだな」
「いかにも」
複数いるということに少々面食らってしまうが、それでも倒すことに変わりは無い。
///////////
ヴァルタァンが何か語るべき事があればそれを聞くこともあるだろう。
もし特に言うこともなければ手から怪光線が放ってくるようなので
「もはや問答無用!」といってムラサマは戦闘を開始するだろう。
//////////////
217 :
名無しになりきれ:2007/08/18(土) 10:10:12 0
ぺんとらぺんとらすぺーすぴーぷる
最後の部屋の中では、合計9体のヴァルタァンが待ちかまえていた。
フォッフォッと笑いながら話すヴァルタァン。
自分達の呼び名を知っているのだから、人間の事もある程度調べてきたのだろう。
> 「いかにも」
「ぺんとらぺんとらすぺーすぴーぷる。
我々は宇宙船に乗ってやってきた移住者だ。
この火星と呼ばれている星に、我々は住みたいのだ」
スペースピープルは宇宙人の意味だと思えるが
ペントラがなにを意味するのかよく分からない。
ただヴァルタァン達の目的が火星に住むことにあるのはわかる。
「……移民が目的だったんですか?
えーと。こんな時はまず連邦移民局に連絡して……
でも高い知能をもっている来訪者との接触は初めてだし……」
まじめに考え出したアトラスだったが、次のヴァルタァンの言葉に驚いた。
「火星に住んでいる人間の立ち退きに協力すれば、報酬を与える。
グローリー社と名乗っていた者達に教えたのと同じ科学力を与えよう。
断れば我らの光線を受けて骨になり、ゴミ捨て場で後悔する事になる。
好きな道を選ぶがいい」
「侵略なら話は簡単だ。交渉決裂!」
視覚とリンクしたコンピュータ制御の銃撃で手近な3体を銃撃する。
目的が人間の排除である以上、それに従う道理はなく無いのだ。
続けざまに発砲し、確実にしとめた!そう思った。
しかし動揺するようなそぶりこそ見せたが、依然として9体のヴァルタァンが存在している。
「チッ、どうやってるか知らないが、こいつら実際の数より少ない!」
先手必勝とはいかないようだ。
アトラスの行動を邪魔しないよう気をつけながら距離をとる。
カタナよりも今は銃で援護に回るべきだと思いながら。
> 「侵略なら話は簡単だ。交渉決裂!」
ムラサマが放った銃弾は、なぜかヴァルタァンのうち2体の体をすり抜けた。
残る1体は甲殻に当たったようで、動揺するようなそぶりを見せる。
同じように動揺しているヴァルタンが2体いたが、その体は蜃気楼のように薄く見えた。
> 「チッ、どうやってるか知らないが、こいつら実際の数より少ない!」
ムラサマの攻撃がすり抜けたことを思い出したアトラスの頭に、答えが閃いた。
「わかりました!
ヴァルタァン達は幻を作り出しているんです!」
体に当たる光を屈折させ、別の場所に自分の体を映し出す生物の話を聞いたことがある。
もしかしたら、立体映像を作り出す能力をヴァルタァンは持っているのかもしれない。
「そうとわかれば……突撃!」
ムラサマの攻撃を受けて怯んだヴァルタァンに狙いを付け、ロボ用ソードで突撃する。
ヴァルタァンは防戦一方で、幻も消えてしまっていた。
仲間を助けるために、残った2体がアトラスとムラサマに手から破壊光線を打ち出す。
それぞれ同じ動きをする幻が2つついているので、発射の瞬間まで本体を見分けるのは難しい。
「幻――くっ!?」
アトラスに任せてばかりで、こちらの銃撃は空しくヴァルタァンを透過していく。
しかし、そのミスは無駄ではない。見極める助けになる。
確率は徐々に高まっていくッ!そして――
光の奔流!
破壊光線に、活路を見た。
「だが幻では再現できない要素もある!例えば音!例えば熱!」
僅かな動作音に、本体を捕捉した。
そして自分の片腕を焦がしていく熱!
「そこかッ!」
愛銃の『プレデター』が射出した炸裂弾が、ついに1体に命中した。
> 「だが幻では再現できない要素もある!例えば音!例えば熱!」
> 「そこかッ!」
本体を見切ったムラサマの炸裂弾は、ヴァルタァンの頭を吹き飛ばした。
ほぼ同時にアトラスの大剣がもう1体を両断する。
だが不完全な体制から破壊光線を完全に避けるのは無理だった。
「うぐっ!」
焼け付くような痛みが走る。
なんとか直撃だけはさけたが、体にあまり力が入らない。
「敵は後1人だけです!一気に終わらせましょう!」
やはり怪我をしたらしいムラサマに話しかけ、速く勝負をつけようとした。
「フォッフォッフォッ……これで勝ったと思うなよ!」
ヴァルタァンは幻を消して代わりに体を巨大化させ始め、見る間に3メートル近い巨体になった。
「潰れろ!虫けらども!」
天井まで届きそうな体を揺らしながら、両手のハサミを振り回す。
目測を間違ったのか当たりはしなかったが、一撃を受けた壁や床が砕け散る。
「フォッフォッフォッフォッフォッ」
笑いながらヴァルタァンは、ムラサマとアトラスを叩きつぶそうとした。
「させん!」
炸裂弾をありったけ叩き込む。超精密射撃――コムリンクの成せる技ではあるが――だ。
マガジンが空になるとそのまま銃を放り投げてカタナを抜く。
調息。脳内でヴァルタァンを斬る事の出来る箇所を推測し、一気に駆けた。
「関節を断って解体してくれる!」
要所要所でバイオウェアによりブーストされた関節が、筋肉が、暴力的な切断を行う!
「二之太刀不要!」
刃を垂直に立て、踏み込み、袈裟に切る。
単純な動作だが人間相手なら次は無い。それでスライスされるのだから。
相手は来訪者。しかし、この攻撃が無効だとは思わない。
「つまるところ、本質は単純――そこに在らば、斬る。」
一撃でカタナは折れた。だが、同時に相手の片足だけが、ゆっくりと地面に転がった。
モノフィラメントで構築された軍用ナイフを左右に逆手で構え、距離をとる。
「人間や『火星人』をなめてくれるなよ、『来訪者(ヴァルタァン)!」
火星人というのはアトラスやその他亜人、あるいは火星生まれのゴロツキを指すスラングである。
脳内麻薬の分泌が終わり、ゆっくりとクリアーな気分になる。
そのままアトラスの攻撃の支援に回るつもりだ。
こういうガチンコ勝負の際にこれだけの傷を負わせれば、後は短期決戦か持久戦と踏んだからだ。
> 「人間や『火星人』をなめてくれるなよ、『来訪者(ヴァルタァン)!」
「そのとうりです!
私たちの大切な場所を荒そうとする輩に、負ける事などできません!」
カタナを折りながらもヴァルタァンの片足を切って捨て
距離をとるムラサマと入れ替わるように、アトラスは大剣を構えて突撃した。
「破ッ!!」
気合い一閃、火事場の馬鹿力を込めて切りかかる。
ヴァルタァンは腕で攻撃を受け止めようとしたが、残った片足では攻撃を支えきれなかった。
鈍い音がして、ヴァルタァンの体は地面にぶつかりながら吹き飛び壁に衝突する。
一方アトラスも力を使い果たしたのか、荒い息をつきながらがっくりと膝をついてしまった。
「フォッフォッ……お前たちも道連れだ……」
ヴァルタァンの右手が輝き始めると、遺跡を揺るがすように地震が起こった。
壁や天井に亀裂が走り、ぱらぱらと破片が落ちてくる。
このままだと、まもなく遺跡は崩壊するだろう。
225 :
名無しになりきれ:2007/08/27(月) 22:46:23 0
私が死んでも代わりがいるもの・・・・
それがヴァルタァン最後の言葉であった
そして・・・上げる
「いかん、力尽きたか」
アトラスを抱え上げ、急いで外に向かう。
私は死んでも変わりはいるもの。そういったヴァルタァンを一瞥すると
「いいやヴァルタァン、お前はお前だよ。我らと戦い、そして倒れした」
強かった、と思う。間違いなく一人では負けていたろう。
「さらばだ。彼方より現れし来訪者」
急いで駆け抜ける。とはいえもう一人を担いでいるので早歩きくらいの速度ではあるが。
ヴァルタァンの最後の言葉を聞きながら、アトラスはムラサマに担がれて脱出する。
外に出てしばらくすると、轟音と振動が地下遺跡の崩壊を教えてくれた。
「ムラサマさん、私たち、勝てたんですね……」
相変わらず体に力が入らないので、担がれながら話しかけた。
気を抜けばすぐに意識を失いそうなほど疲れていたが、まだ倒れるわけには行かない。
「車は自動操縦に切り替えてくれれば、保安局まで戻ってくれるはずです。
あんまり速くはないですけど、こんな時には便利ですよね」
時間はかかってもそれほど問題は無いだろう。
帰ったらワイズマン局長に報告する内容を、考える時間も必要なのだ。
「……ヴァルタァンと名乗る来訪者……か。
二人とも任務ご苦労だった。
しばらくゆっくり休んで、今回の事件の疲れを取るといいだろう」
事件の報告を聞き終わったワイズマンは、二人の前にそれぞれ紙切れを置いた。
そこには破格ともいえる金額が、報酬として支払われると書かれている。
「これは多すぎます、局長。私は正規の額で十分です!」
「相変わらず堅い考え方だが、これには事件の口止め料も入っている。
お偉方を安心させる為にも、受け取っておけ」
ワイズマンは、ムラサマにカタナを渡す。
「君には折れたカタナの代わりに、これも報酬として渡そう。
地球から取り寄せた物で、銘は聞いたが忘れてしまった。
ともかく今回の事件、口外は一切無用でお願いする」
笑いながら言ったのは、職業柄ムラサマが口が堅いのを、知っているからだろう。
守秘義務を守れない者は、長生きの出来ない時代なのだ。
「ムラサマさん。本当にお世話になりました。
もし困ったことがあれば、いつでも訪ねて来てください。
必ず手助けしますから!」
アトラスはムラサマに深々と頭を下げた。
始めて出会ってから、そんなに時間は立っていないのに、別れる時には寂しい気持ちになる。
一時的にでも、一緒に戦った仲間との別れなのだから。
「それでは局長、私もこれで失礼します」
ムラサマと一緒に出ていこうとしたアトラスを、ワイズマンが呼び止めた。
「ゆっくりするのは構わんが、ニー様の報告書も速く提出してくれよ。
おまえの友達が、提出が遅いと怒り狂っていたぞ」
聞いたアトラスの顔から、音を立てて血の気が引く。
そもそもアトラスの任務は、失踪したニードル・スパンクを探し出すことで
海賊や来訪者のことは完全に任務外の仕事。
いくらワイズマンの命令とは言え、せめて報告書くらいは作成しておくべきだったのだ。
「すっ、すみませんでした!すぐに報告書を作成します!」
慌てたのか、扉にぶつかりながら飛び出していくアトラスを見送り
ワイズマンは、手元のコンピューターに視線を落とした。
そこには、ヴァルタァンの最後の言葉が記録されている。
『私が死んでも代わりがいるもの・・・・』
「代わりがいる……か。
代わりとやらが来るのは、何年か後になるのか、それとももう来ているのか」
ワイズマンの独り言に、画面の中の文字は何も答えはしなかった。