騎士よ、今こそ立ち上がれ!!8

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391グラスマン ◆4hcHBs40RQ :2007/10/09(火) 22:21:19 0
>>368
「いい仕事だよ、アイザック!」
駆けてきたグラスマンが敵の正面に躍り出る。
「さーて、仕上げと行こうか!何とか抑え込むからもう一撃だけ頼むよ!」
大きく息を吸い込むグラスマン。
さらに吸い込み、さらにさらにさらにさらに吸い込み続ける。
吸い込んだ分、その上半身はどんどんと膨れ上がっていく。


竜鱗の呼吸には、5つのレベルが存在する。(名称と硬度は一致するわけではない)
Lv.1ロックマン。Lv.2ブロンズマン。Lv.3アイアンマン。Lv.4ダイヤマン。
そしてLv.5オリハルコンマン。
レベルを上げるごとに硬度と重量、それらを扱うパワーも比例して増加していく。
中でもLv.5のオリハルコンマンの硬度は凄まじく、
その硬度を破れるモノと対決することは一般レベルではまずないため、これ以上のレベルの存在は必要ない。

…というのが、この技の原型を教えた彼の先生の言葉である。
しかし、グラスマンはもうひとつ上のレベルを極めていたのだった。


グラスマンの吸気が止まった。
「ふっ!!」
腰を落として思い切り気合いを込める。
膨らんでいた上半身が一瞬にして元に戻り、溜め込まれた大量の空気が一気に全身を駆け巡る!
有り余るエネルギーは全身に高熱を与え、蒸気が全身から立ち上る。
完成したのは、オリハルコンマンをさらに凌ぐグラスマン最強の戦闘形態。
竜鱗の呼吸Lv.MAX、ドラゴスケイルマン!!!!

「…さて。」
硬度と重量に縛られたぎこちない動きで、グラスマンは構えた。
元々燃費の悪い技なので、あまり悠長には構えていられない。

ドラゴンが加速度的に強くなってきていることは、グラスマンも気付いていた。
このまま時間が経てば、すぐに自分の全く手の届かない次元にいってしまうであろうことも。
しかし、今ならまだギリギリ叩ける。
自分の速度ではさすがに庇うであろう弱点の右肩を捉えきれないだろうが、
注意を逸らして動きを封じれば、後はアイザックが決めてくれるはずだ。
最強硬度による攻撃力と防御力で、ドラゴンに挑むはノーガードの足を止めての乱打戦!!

「いくぞ!」
グラスマンは全身の関節を総動員して拳の速度を上げ、ドラゴンの全身に乱打攻撃を浴びせかける!
392アイザック ◆6GJ7GJlyDU :2007/10/09(火) 22:48:07 0
>388、>391
>ナナミがアイザックの周囲に張り巡らせた防御隔壁は、想像を超える強度を持っていた。
>右腕が肘まで『縮み』、『獣』は体勢を崩す。そこにアイザックの剣が風を切って突き進む。
色々な意味で予想外、と言わざるを得なかった。
多少値が張る程度の、魔法で強化されてるわけでも強力な金属で
出来てるわけでもない普通の剣で龍に傷を付けられた事も、巫女の防御障壁を
打ち抜くことが出来なかったのも……変態が終わってない内は脆いらしい。
「……。」
ムタが近寄って確認している……次の瞬間、ムタは二等分されてしまった。
手応えがなかった事を鑑みれば至極当然なのだが、まだ足りないようだ。

「なら……収まるまで付き合ってやるよ。」
逆鱗を剥がし、この戦いを終わらせる。
その為にすべき事……まずは、龍の動きを止める事だ。
どう動こうとも反応できる様にしながら、ゆっくりと龍へと歩み寄っていく。
龍は自分を警戒している、その隙をグラスマンが突けばと考えていたが……

>「さーて、仕上げと行こうか!何とか抑え込むからもう一撃だけ頼むよ!」
「……了解。」
グラスマンは全力を以って龍を抑え込む腹積もりの様だ。
命令と言う形で止めを任された以上、無様な姿は晒せない。
ガードがこじ開けられ、逆鱗が露出した一瞬を狙うことにした。
じりじりと巻き込まれないように周囲を移動しながら独特の構えを崩さずチャンスを待つ。

「(……突き、か。この構えを取るのも久しぶりだ。
  こうなると分かっていたなら、エストックも持ってきたものを……。)」

アイザックが一番得意とするのは実はレイピアの類だ。
技を磨けば非力でも致命傷を負わせられる、刺殺攻撃のみに特化した武器である。
しかし、その取り回しの難しさから刻一刻と状況が変化する遊撃隊任務には
向かないと判断して長いことレイピアを握っていないのだがそのレイピアの修練が
こんな所で役に立つとは……苦笑いで顔が歪んだ。まだまだ読みが甘い、と。
393ルゥ ◆c8mKoM5yZ6 :2007/10/11(木) 11:20:33 O
ルゥは何やってンスか?めちゃめちゃ全身が痛いッスけど…。
てゆーかココはドコ?なんか寒いし、真っ暗だし、心細いッス……。
…ん?何スか、アレ。明かりッスかね?
よくわかんないけど…こんなトコ居たくないし、行ってみるッスか。


そこは闇だった。ルゥの精神に潜む、業の闇。
明かりと思ったのは、明かりではなく…怒り狂う龍の魂の輝き。
「ゴアァアアアアアアアアッ!!!!!」
250年もの間、己を殺した5人の末裔を、一瞬たりと許すこと無く猛り狂う呪い。
その根源を前にして、ルゥは言葉を失った。あまりにも巨大、あまりにも莫大。
「………誰ッスか?」
やっと搾り出した声は、場の空気をぶち壊しにする。
恐ろしくない訳ではない。両足は震えが止まらず、今にもへたれ込みそうだ。
「グゥウ……。」
呪いはルゥの存在に気付き、灼熱の如く紅い眼を向けた。
「え〜…っと、こんにちはッス。」
恐る恐る手を上げて挨拶するルゥに、呪いは牙を剥いて吠えた。
「ゴルァアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアッ!!!!!!!」
「はわわっ!?何スか!?やっぱり真っ暗だから『こんばんは』だったんスかーッ!?」
この場にノリの良いツッコミ役がいたら、間違いなくルゥは頭を叩かれているだろう。


ナナミが放つ呪縛の魔法が『獣』を捉えた。しかし『獣』は全く動きを止めない。
『呪い』の上から『呪い』を『上書きする』には、ナナミの魔力では届かなかったのだ。
だが、不完全ながらも、呪縛の効果は現われた。『獣』の右腕が再生を止める。
2種類の『呪い』が干渉した結果、一時的に龍の呪いは力を弱めたのである。
リッチの魔力だからこそ発生した呪法間干渉、並みの魔法使いには到底不可能な荒技だ。
そしてその結果は、呪縛による拘束よりも『獣』にとって脅威だった。

ダメージを回復出来ない。武器は己の四肢のみという『獣』には致命的な効果。
右腕は潰れたままで戦わなければならなくなったのは厳しい。
更にアイザックを仕留め損ねたのも、今となっては重大な失点だ。
まっすぐに逆鱗を狙ってきた。つまりヤツは逆鱗が弱点だと『知っている』に違いない。
見れば剣を構え、こちらの隙を探っている。
待っているのだろう、『もう一人』が作るであろう『隙』を。

394ルゥ ◆c8mKoM5yZ6 :2007/10/11(木) 11:22:27 O
その『もう一人』が、準備を済ませたらしい。身体からは闘気が溢れ、いかにも強そうだ。
『龍鱗の呼吸』の最終形態、奇しくも相対するは『本物の龍』。
激突が始まった。
どちらが先かは判らない。しかし身体と身体の激突は確かに始まったのだ。
互いに足を地に踏み降ろし、一切の守りを棄てた殴り合い。あまりにも単純な結論。
だが、『どちらが強いのか?』それを確かめる方法としては、最も適した『結論』だった。


ナナミの魔力によって一時的に弱まった呪いだが、徐々に本来の力を取り戻しつつあった。
既に激突は2分を経過した。グラスマンの最終形態は確かに攻防共に優れている。
だが、その防御力故に身体の関節可動域は大きく制限を受けるのだ。
超硬質化した身体を動かすのに必要な体力は、とうに底を尽いたも同然。
また、『獣』も無尽蔵の体力を持っていても、鉄人の防御力の前に苦戦を強いられた。
いくら体力が続こうとも、相手にダメージを与えられないと意味が無い。
グラスマンの攻撃力の高さも厄介だった。『攻撃は最大の防御』を地で行く男。
『獣』にとって一番苦手な部類に入る存在。同じ力任せだが、何か違う存在。

死力を尽くす戦いの最中、『獣』は『鉄人』に対して奇妙な親近感が芽生えていた。
そして遂に、2体の激突に終りが訪れた。
先に体勢を崩したのは『獣』だった。凄まじい衝撃を耐え続けた両足が、限界に達したのだ。
ナナミが引き起こした呪法間干渉が無ければ、負荷に耐えることも出来ただろう。
しかし、再生が追い付かなかった。とうとうグラスマンの攻撃が『獣』の耐久力を上回った。
堪らず後退する際に、『獣』の右肩がピッタリとアイザックの正面を向いた。

この機会を逃せば次は無い。
グラスマンも限界である。もうこれ以上『獣』を押さえ込む事が出来る者はいないのだ。
『絶対に外してはならない』一撃、この戦いの決着となるそれが、今アイザックに託された。
395名無しになりきれ:2007/10/11(木) 16:13:35 0
世界はどうなる?
396グラスマン ◆4hcHBs40RQ :2007/10/11(木) 22:40:00 0
>>394
ライゼ王国城下町、とある鍛冶屋。
第六遊撃隊御用達。
「ゲンさーん、ヌコが来たニャ。」
「ん?」
鍛冶屋ゲン・カツギは、鉄を打つ手を止めて来客に顔を向けた。
やって来たのは、猫目と八重歯が印象的な小柄な少女。猫系亜人とのクォーター、第六遊撃隊隊員ヌコ・ノーネームだ。

「ヌコか。今日は遊んでやれねえぞ。」
「今日は違うである、隊長に頼まれてたお使いニャ。これを売りに来たのだ。」
ヌコは牛乳瓶を取り出し、蓋を開く。
瓶が一瞬輝き、中から1m程のいびつな金属の塊が飛び出した。
「ほう…?」
ゲンは立ち上がってそれに歩み寄り、顔を近付けて嘗め回すように眺める。
「…こりゃシュプール鋼じゃねえか。純度も高い。よくこんなに大量に手に入ったな。」
「前の任務で出てきたでっかいゴーレムを隊長が『丸めた』ニャ。ホントはこの倍くらいあったのだ。」
両腕を広げて大きさをアピールするヌコ。
訝しげな目を向けるゲン。
「は?丸めた?鋼鉄より硬いシュプール鋼のゴーレムを?どんな道具を使ったって言うんだよ。」
「道具もマタタビも何も、これだけである。」
ヌコは拳を握り、もう片手でそれを指差してみせる。

「ドラゴスケイルマンのパワーの前では、シュプール鋼だって粘土みたいなもんなのだ。」

-------------------------------------------------------------------------------

「っおおおおおっ!!」
足腰を踏ん張り、関節駆動で速度と体重を乗せ、左右交互に繰り出す遠心力も利用して殴る殴る。
対する敵はと言うと、こちらも足を止めての乱打戦に応じてきた。
互いにノーガード、そして相手がこの相手でなければ一撃必殺の威力。
一歩も譲らない激しい殴り合いだ。
「へへっ、言っちゃいけないんだけど、楽しいな!
本気の本気で喧嘩が出来る相手になんて滅多に出会えないからね!あんたもそうだろおっ!」
死力を尽くす戦いの最中、『鉄人』は『獣』に対して奇妙な親近感が芽生えていた。

超硬度・超重量・超パワーを誇るドラゴスケイルマンは、
発動中は攻撃を受けても何もないかのように完全に無視して一方的に攻撃できる程の性能を持つ。
はずなのだが、その重さ数トンにも及ぶドラゴスケイルマンが、
さっきから敵の攻撃で普通の人間のように仰け反ったりノックバックしている。
(こいつ、何てパワーだ…こりゃ一瞬でも鉄化を緩めたら即死するぞ。)
しかし、既に体力も呼吸も活動限界を超えている。いつ効果を切らしてもおかしくない状況だ。
「でもあんたもそろそろ限界だろ!どっちが先に根をあげるか勝負だ!らあああっ!」

たった2分ほどの、しかし永遠とも思えた殴り合い。
その終わりはついに訪れた。蓄積したダメージに敵が体勢を崩したのだ。
「っぷは!」
それを確認したグラスマンは息を吐き、膝をがくりとついた。
「げほげほ!い、今だアイザック、頼む!」
397アイザック ◆6GJ7GJlyDU :2007/10/11(木) 23:31:04 0
>393-394、>396
>ダメージを回復出来ない。武器は己の四肢のみという『獣』には致命的な効果。
>右腕は潰れたままで戦わなければならなくなったのは厳しい。
先程まで見せていた再生能力が、何故か突然発揮されなくなった。
術的素養など欠片も持ち合わせていないアイザックには、それが
ナナミの仕業だと分からなかった。だからこそ、警戒する。
「(……回復・防御を捨てて、一撃必殺の為の力を蓄えているのか……?)」

しかしそれはただの考えすぎだった事をすぐに思い知る。
グラスマンと龍の足を止めての殴り合いがその証拠だ。
永遠にも感じられるほどの、実際は2分程度しか経過していない格闘戦の
勝者は……グラスマンだった。圧倒的な拳の弾幕が龍の堅牢な肉体と精神に
命の危険を植えつけ、龍をたじろがせた。その動きのさなか、『逆鱗』が
真正面に晒されたのをアイザックは見逃さなかった。

>「げほげほ!い、今だアイザック、頼む!」
「了解……。」
誰の目から見ても絶好のチャンス、ましてや直接殴りあった
グラスマンから見れば付け入る隙そのものである。気力はともかく、
体力が充実していたならば確実に畳み掛けていただろう……それほど、
この肉弾戦が苛烈なものだったと言うことでもある。


     ……さようなら、だ。


レイピア特有の、瞬発性だけを求め洗練された構えから
一気に踏み込み、両手で剣の柄を握り瞬間的突進力を、手に、剣に
伝え『逆鱗』めがけて突き出した。その突きの切っ先は寸分違わず『逆鱗』の
中心に突き刺さり、それを真っ二つに割って、向こう側へと貫通した。
そう、第十七騎士団によってつけられアゼルが治し塞いだ傷をもう一度付けたのだ。
398ナナミ ◆LV/6jLYLCk :2007/10/14(日) 02:41:03 0
呪縛が効かないとなると、この局面で有効そうな魔法のネタは撃ち尽くした。
マジック・ミサイル(衝撃波)や魔法の矢(光線)といった攻撃魔法はいくらでもあるが、多分狙ってない人にも当るだろう。
衝撃波なんてピンポイントに肩だけ狙うのには向いていない。
相手を警告なしで射殺しても大丈夫な状況であれば、まだ殺人用の術が幾つかあるが、どうやらそういうことは非推奨のようだ。
(落ちつけナナミ、冷静になるんだ。そうよ、ここはクールになって策を練らなきゃ駄目よ)
リッチの習性。それは時間を無駄使いする傾向にあることだ。
奴等はもはや死に怯える必要が無いので、限られた人生を上手く生きようとか、そういったことは絶対に考えない。
そのため、邪悪な陰謀を練るときなどは、何百年も計画練ったまま実行しないことも多々ある。
そして、その何百年分の陰謀を世間にぶつけて、目も当てられないような大惨事を起こしたりする。
だが、ナナミは目的はあっても邪悪な野望などは無いし、リッチとしてはかなり頭の悪い部類に入る。
そのため、戦闘であっても、このように思慮に時間を費やすことがある。
399ルゥ ◆c8mKoM5yZ6 :2007/10/15(月) 00:55:41 O
>>397
>レイピア特有の、瞬発性だけを求め洗練された構えから
>一気に踏み込み、両手で剣の柄を握り瞬間的突進力を、手に、剣に
>伝え『逆鱗』めがけて突き出した。その突きの切っ先は寸分違わず『逆鱗』の
>中心に突き刺さり、それを真っ二つに割って、向こう側へと貫通した。
その瞬間、『獣』が纏う怨念の障気が霧散した。
割れた逆鱗が砕け散り、ほぼ全身を覆う鱗も消えて、肌の色も褐色に戻った。
肩口から鮮血が滴りアイザックの剣を赤く染める。
戦いは終わった。確かに終わった。
もうルゥからは『獣』の気配は全く感じられない。《狂乱》は完全に停止したのだ。

断末魔の叫びすら無い、呆気ない最期だったが、油断は出来ない。先程のムタの例もある。
しかし皆疲労している。もうこれ以上の戦闘は厳しい。
倒れ伏したことで、突き刺さった剣がずるりと抜けた。果たして本当に元に戻ったのか。
沈黙が続く中、豪快な『いびき』が聞こえてきた。
その『いびき』の主は、ムルム族の女戦士…ルゥであった。

どうやらグッスリ寝ているようだ。
肩に剣が刺さり、右腕は潰れ、両足の筋肉は何ヶ所も断裂しているというのに。
「マジで止めやがった…。テメェらスゲーな、こんちくしょう。」
ムタが称賛する。上半身だけで器用に前足を駆使し、アイザックに駆け寄った。
少し離れた場所に下半身が置き去りになっているが、本人は気にしていないらしい。
祖霊は依代である剥製が燃やされる等、完全に破壊されなければ問題は無いのだ。
「ルゥはまだ生きてるな。しかしあそこまで侵蝕が進んだ《狂乱》が止まるたぁ本当に驚きだぜ。」
400アゼル ◆F/ATTd3VB. :2007/10/15(月) 01:20:32 O
>399
>「マジで止めやがった…。テメェらスゲーな、こんちくしょう。」
>「ルゥはまだ生きてるな。しかしあそこまで侵蝕が進んだ《狂乱》が止まるたぁ本当に驚きだぜ。」
死んだと思っていたリスの声が聞こえた。
ルゥの狂乱が止まったと言っている。
アゼルは目を開けて上体を起こし、現在の状況を確認する。
確かにルゥの姿は元に戻っており、右肩に剣が刺さっていながらも、穏やかな顔をしながら眠っている。
剣が突き刺さっていることから考えて、ルゥを止めたのはアイザックだろう。
まだ肋骨が折れて痛むが、脇腹の裂傷は塞がり、動くことはできる。
アゼルは脇腹の治療を続けながら起き上がり、ルゥ達の方に向かって歩いていく。

「いやー、皆さんの役に立てなくて申し訳ありませんでした。
 まだまだ、この俺も未熟者だったということで許して下さい。
 で、隊長。
 これからルゥのことはどうするつもりですか?」
401アイザック ◆6GJ7GJlyDU :2007/10/15(月) 19:52:21 0
>399-400
>割れた逆鱗が砕け散り、ほぼ全身を覆う鱗も消えて、肌の色も褐色に戻った。
>肩口から鮮血が滴りアイザックの剣を赤く染める。
『逆鱗』はやはり脆かった。
レイピアよりも明らかに刺突に向かない広刃の剣での突きでも
貫けたのだから。もしこれが完全な龍鱗だったら、たとえエストックでの
万全の突きでも貫けなかったはずなのだ。だが『逆鱗』が砕け散ったことで
姿かたちは元に戻り、怨嗟の妄獣は再び檻の中へと。
何はともあれ危機は脱した。奇跡的に犠牲を出すこともなく―――。
剣についた血を払って鞘に収めルゥに簡単な血止めを行う。
ムルム族がどの程度肉体的に優れているかは分からないが、さすがに
重傷を放置しては命に関わるはずだからだ。アゼルが治すまでの間に合わせでもある。

>「マジで止めやがった…。テメェらスゲーな、こんちくしょう。」
>祖霊は依代である剥製が燃やされる等、完全に破壊されなければ問題は無いのだ。
>「ルゥはまだ生きてるな。しかしあそこまで侵蝕が進んだ《狂乱》が止まるたぁ本当に驚きだぜ。」
なんと、ムタは生きていた……常識を疑うような状態でこちらへと向かってくる。
ムルムの常識はライゼの非常識、逆もまた然りとは言え……
血止めを終えたアイザックはおもむろにムタの首の皮を上から摘んで目線を合わせ
「だから言っただろう……甘く見すぎだ。」と―――。
……何故かこのまま下半身とくっつけたら繋がるかもしれないと思い、
アイザックはムタの下半身を拾う為に置き去りのままのところへと歩いていく。

>「いやー、皆さんの役に立てなくて申し訳ありませんでした。
> まだまだ、この俺も未熟者だったということで許して下さい。
> で、隊長。
> これからルゥのことはどうするつもりですか?」
アゼルはやはり無事だった。戦闘中起き上がらなかったのは
傷の治療に専念していたからだろう。早速ルゥへの処遇へと話を進めている。
「ルゥに関して、俺の意見を言わせてもらう……
 ムルムに関する知識を知るために、またルゥがこちら側でこれ以上の
 無用な混乱を起こさぬように、我々と行動を共にさせるべきだと思う。」
アイザックがこう言ったのには色々と理由があるが、
話せば長くなるから聞かれない限り答えようとは思ってない。
402グラスマン ◆4hcHBs40RQ :2007/10/16(火) 01:07:14 0
>>399-401
アイザックの剣がついに敵の弱点を貫いた。
纏っていた異様な雰囲気が霧消し、少女の姿に戻っていく。

「グッジョブ、アイザック!はーっ、もう復活しないだろうな…。」
グラスマンは足を放り出し、楽な格好で座り直した。
天を仰ぎ見る。
「相手が本調子だったら危なかったな…。ここまで実力差を感じた敵はいつ以来だろう。
『ジェルマンの快楽地獄』や『弱腰のクロバスキー』クラスか…。
いや、あのまま強くなっていったらその辺りの有名どころよりも強くなってたかもしれないな。
僕もまだまだ修行が足りない。」

>「マジで止めやがった…。テメェらスゲーな、こんちくしょう。」
「餅を売るのは餅屋の仕事だからね。…なんてカッコつけても、実は相当危なかったんだけど。たはは。」
グラスマンは苦笑して言い、それから改めてムタに振り返った。
「…って、あれ?」
上半身と下半身が分断された時、確かに死んだかと思ったのだが、どうやら生きているらしい。
無事は無事で素直に喜ぶべきなのだが、そういえば突然現れたこのリスは何者なのだろうか。
「そういえば、とりあえずドラゴンは倒したけど話の筋から置いてきぼりになってたなぁ…。
いや、それより『月夜』のおねーさん、助かったよ。ありがとう。おねーさんがいなけりゃエルガイアに殺されてた。
このままじゃガストラにも戻れないだろうし、良かったら本当にこっちに来ない?」
さり気無く勧誘するグラスマン。

>「いやー、皆さんの役に立てなくて申し訳ありませんでした。
> まだまだ、この俺も未熟者だったということで許して下さい。
> で、隊長。
> これからルゥのことはどうするつもりですか?」
倒れていたアゼルも起き上がり、歩いてくる。
「あ、傷が酷いだろう。まだあんまり動かないほうがいいよ。しばらく横になって体を休めてな。」
グラスマンは立ち上がり、大きく伸びをした。
「…役に立たなかったなんてことはないよ。アゼル君が食い止めててくれなけりゃ
エルガイアとの挟み撃ちになって僕がやられてた。で、この子のことか……おっとと」
グラスマンはふらつき、真横に倒れた。
「…たはは、情けないが僕も結構限界みたいだな。まさかドラゴスケイルマンをあんなに長く使うことになるとは。
あの『快楽地獄』だって当てたら一撃で沈んでくれたのになぁ。まったく、世界はまだまだ広い。」
コルムを場から離れさせておいたのは正解だったと、グラスマンは改めて思う。
このレベルの戦いに参戦するには、あの子はまだ早い。
403グラスマン ◆4hcHBs40RQ :2007/10/16(火) 01:08:15 0
>「ルゥに関して、俺の意見を言わせてもらう……
> ムルムに関する知識を知るために、またルゥがこちら側でこれ以上の
> 無用な混乱を起こさぬように、我々と行動を共にさせるべきだと思う。」
リスの上半身を拾ったアイザックが言う。
しかし、グラスマンは意外にも難しい顔をしていた。
「ムルムに関する知識は必要だと僕も思う。彼女を親善大使にしてムルムとの交流を深めれば、
今回のような事件はもうなくなるだろう。しかし、ボロロッカがそれを許してくれるかどうかが問題なんだよね。
ライゼの僕達がこの娘の今回の罪へ何の落とし前もないままに連れ歩いていたら、恐らくボロロッカは激怒する。
ムルムと僕達の法が違うって分かった上でもね。それだけの被害を被っていたんだから。
そもそもライゼ自体を許してくれるかどうかも分からない状況なんだ。
確かに『砂嵐』は止めた。原因は文化の違いだった。でも、交渉を有利にするためにはカードが足りない。
悪い言い方をすれば、ボロロッカに売れる恩が足りない。
頑張って【ガストラを退けたのも、ボロロッカ的には別に意味のない事】だしね。
ボロロッカが僕達に対して十分に恩義を感じてくれれば、
ライゼを許してくれるだろうしこの子への情状酌量もあるだろうけど…。」

グラスマンは座り直し、皆を順繰りに見ながら言う。
「そういえばアイザック。君が彼女を僕達と行動させるべきだと思った理由を教えてくれないかい?
リス君は、今回の件についての関係者だよね。詳しく事情を教えて欲しい。
アゼル、君の考えも聞きたいな。君の頭脳はいつも頼りにしてる。
そして『月夜』のおねーさん。何かいいカードを持ってないかな?例えば【エルガイアが何か言っていた】とか。」
404ルゥ ◆c8mKoM5yZ6 :2007/10/16(火) 20:53:13 O
>剣についた血を払って鞘に収めルゥに簡単な血止めを行う。
>血止めを終えたアイザックはおもむろにムタの首の皮を上から摘んで目線を合わせ
>「だから言っただろう……甘く見すぎだ。」と―――。
「そう言うなって。確かにオレはテメェらをナメてたけどな、普通に考えてみろよ。
不完全とはいえ相手はエルダードラゴンなんだぜ?そりゃ止めるってばよ。」
まるで悪びれた様子も無く、プラプラ揺れながらムタは笑った。
>「餅を売るのは餅屋の仕事だからね。…なんてカッコつけても、実は相当危なかったんだけど。たはは。」
グラスマンも相当疲労しているようだ。しかしまだ冗談を飛ばす程度の余力は残しているらしい。
>アイザックはムタの下半身を拾う為に置き去りのままのところへと歩いていく。
「お?助かるぜ。キレイに真っ二つだからな、縫い合わせるのが楽で良かったぜ。
ルゥに裁縫は無理だろうしな。あ、綿が落ちる落ちる!ととと…あぶねーッ!!」
慌てて腹を押さえ、中の詰め綿を落とさないようもがく。

>「いやー、皆さんの役に立てなくて申し訳ありませんでした。
> これからルゥのことはどうするつもりですか?」
>「ルゥに関して、俺の意見を言わせてもらう……
> ムルムに関する知識を知るために、またルゥがこちら側でこれ以上の
> 無用な混乱を起こさぬように、我々と行動を共にさせるべきだと思う。」
アゼルがグラスマンに指示を仰ぐと、アイザックの口から意外な言葉が出た。
確かにムルム族の戦闘行為は一般市民には問題だ。
互いの文化の相違を差し引いても、やはり被害の大きさは拭えない。
>「ムルムに関する知識は必要だと僕も思う。彼女を親善大使にしてムルムとの交流を深めれば、
(中略)
>ライゼを許してくれるだろうしこの子への情状酌量もあるだろうけど…。」

「まぁオレもルゥもこんなザマだしな、トンズラって訳にゃいかねぇし。」
苦笑いするムタはルゥを見る。
「それによ、テメェらには『借り』が出来ちまった。このまま『はいサヨナラ』ってのは良くねぇ。
おとなしくテメェらの判断に従うさ。ま、オレは別に死刑とかになっても平気だしな〜♪」
祖霊は元々死んでいる人間の魂を一時的に冥界から現世に召喚しているだけだ。
つまり死刑になったとしても、単に冥界に帰るのと大して変わらない。
だがルゥは何も知らない内に自分が極刑になるかもしれない。
ちょっぴり同情はしたが、結局はルゥの責任なのだ。ムタはあくまでも採点者でしかないのだから。
405アイザック ◆6GJ7GJlyDU :2007/10/18(木) 02:01:05 0
>403-404
>ボロロッカが僕達に対して十分に恩義を感じてくれれば、
>ライゼを許してくれるだろうしこの子への情状酌量もあるだろうけど…。」
なるほど、グラスマンの指摘することはもっともだ。
伊達に隊長を務めていない、懸念されることをきちんと挙げていた。
「隊長、恩ならある……合流する前、街中にサンベルトスネイクが
 現れて子供を一人飲み込むと言う事態が起きた。合流が遅れたのは
 この大蛇に飲み込まれた子供を救出したからだが、偶然にもその子供は
 ボロロッカの町長の息子であってその一部始終を多くの町人が見ていた。
 ……これでも、まだ足りないか?」

合流前に起こったこととあえて分けて別件を報告する。
「なお、サンベルトスネイクは魔道によって作られた存在と思われた。
 死骸は瞬く間に砂となり、額に埋め込まれていた指輪らしき物が、
 確かにこの辺りへと飛んでいくのを見た……ガストラの刺客の仕業だろうか?」
アイザック自身は『ワルワの砂荒らし』エルガイアの事を知らなかった。

>「そういえばアイザック。君が彼女を僕達と行動させるべきだと思った理由を教えてくれないかい?
聞かれるだろうとは思っていたが案の定で、また喋らなければいけないのかと
うんざりした様子を顔に出してしまった。戦いの興奮か別の何かか、とにかく心に波風を
立てる何かがまだ収まっていないようで、普段からは想像できないほど感情的になっている。
二度三度深呼吸して感情を落ち着かせてから返答を始めた。

「第一に、曲がりなりにも古龍を止められたと言う事。
 今回に限らず、強敵と戦い続けねばならない以上必ず同じ事が起こり、その時に
 対処法を知る者がいなかったら甚大な被害が予想される。その予防が一つ。」

「第二に、ムルム族の事情に多少なりとも周囲より詳しいと言う事。
 知っていると言うことはそれだけ行動予測やフォローがしやすく、
 普段からの無用の衝突や暴走を未然に抑止できることにも繋がる。
 腕試しや武道大会などで強者と半ば合法的に戦う場も設けられるだろう。
 以上の理由と今回の件を踏まえ、このまま一人で行動させるのは危険と判断したのが二つ。」

「第三に、第六遊撃隊はその性質上余計な規律がなく同行させるのに支障が少ないという事。
 こちら側に属する第六遊撃隊だが、他とは違う感性の持ち主が多い隊だ。
 さほどの混乱やしがらみもなくルゥを迎えられるはず。常に監視できるだけでも
 危険度は大幅に下がるだろうし、こちら側にいさせれば常識を教えやすい。
 たとえ道を分かつにしても、多少なりとも常識に則った言動ができれば――――と言うのが三つ。以上だ。」

しかし、長々と喋って疲れた……

>「それによ、テメェらには『借り』が出来ちまった。このまま『はいサヨナラ』ってのは良くねぇ。
> おとなしくテメェらの判断に従うさ。ま、オレは別に死刑とかになっても平気だしな〜♪」
応急処置的にムタの胴体を包帯できつく縛る。一応これでずれない筈……
しかしこれだけの騒ぎを起こしておきながら張本人の片割れのムタはずいぶん気軽だ。
極刑に処される可能性があると言うのに、よく見られるようなネガティブな雰囲気は微塵もない。
それが表面上なのか本音なのかまでは分からないが……自分だけは助かるつもりなのか?
「ずいぶんと冷たいんだな。」
人のことが言えるほどアイザックも情に厚くはない。お互い様だ。
406アゼル ◆F/ATTd3VB. :2007/10/18(木) 21:15:02 O
>401-405
アイザックが言い終わり、今度はアゼルが自分の考えを述べる。

「俺はこのままボロロッカに引き渡した方が良いと思いました。
 ですが、ボロロッカには第十七隊が駐屯しています。
 このままルゥを引き渡すとしても、アイザックの言う通りに第六隊と一緒に行動させるにしても、第十七隊の方達は手を出してくると思います。
 ルゥを引き渡した場合は、第十七隊の方達が前にやられた借りを返す為に、ルゥに不必要な暴行を与える可能性がある。
 この場合、良くてその第十七隊の方達が返り討ちにあう。
 最悪の場合、ボロロッカの町が地図から消えますね」

「俺達がルゥと行動を共にする場合、これは第十七隊の人達にとって最も面白くない。
 自分達をやっつけた敵が同じライゼの部隊にいる。
 しかもその部隊はかの第六遊撃隊で、自分達の場所で手柄を立てた。
 無駄にプライドの高い第十七隊の人達は、こっちを勝手に敵と見なして色々とやってくると思います」
アゼルは脇腹の治療を止めて、更に話を続ける。

「ですから、俺達はルゥに逃げられたってことにするのはどうでしょう?
 俺達はルゥと交戦したが、相手は一人で一部隊を撃破する程の強者。
 途中、ガストラの者もこちらに加勢をして何とか優位に立つことができたが、後一歩の所で逃げられてしまった。
 ルゥは魔の森の方角に逃げてしまい、我々は負傷した者がいる為に追うことができなかった。
 で、俺達はそのことをボロロッカの町長さんに報告をする。
 魔の森には最奥の遺跡に封印された魔狼の魔力によって、魔物が集まってくるせいで、普通の人間達は近寄りません。
 町の人もルゥがこの町に現れなければ、魔の森の魔物に殺されたと思い、その内に忘れてしまいますよ。
 ルゥの方は魔の森の付近に待機でもして貰い、後で俺達が迎えに行って本国に連れて帰ればいい。
 本国にはルゥのことを知ってる人はいませんからね」
407グラスマン ◆4hcHBs40RQ :2007/10/19(金) 17:03:34 0
彼らの話し合う様子を、遥か遠く丘の上から眺める者達がいた。
馬上の騎士、凡そ20騎。

「戦闘は終わったようですね、団長。」
「うむ。」
団長と呼ばれた老騎士は、不敵に笑う。
「『月夜の巫女』や『ワルワの砂荒らし』は出るわ、『ムルムの砂嵐』は変身するわでどうなるかとは思ったが、
結果としては予定通りだ。連中は皆披露困憊、『砂嵐』も戦闘不能。」
「あとは奴らを纏めて一網打尽にするだけですね、団長。」
「うむ。運が向いてきたぞ、我ら第十七騎士団に!行くぞ!我らの手に栄光を!」
「おおーっ!」
第十七騎士団団長エビタフ・カーンは仲間を鼓舞し、踵を返して馬を走らせる。


第六遊撃隊が出張ってきた時はピンチだった。
『砂嵐』を王命を騙って放置したことが本国にバレれば、重刑は免れられない。
かといって、腕っ節だけが自慢の第六遊撃隊の野蛮人達を秘密裏に始末するだけの力は彼らにはない。
しかし、彼らは考えた。どちらも規格外の力同士の『砂嵐』と遊撃隊がぶつかればどうなるだろうか?
どちらが勝つにしろ、勝った方も無事では済むまい。
そこに乗り込んで生き残った者を皆殺しにすれば、事件を揉み消すどころか
『野蛮人達の勝てなかった二つ名持ちを討伐した』として自分たちの手柄、名誉になるのではないか。
どうせ野蛮人達もすぐに『砂嵐』のことを嗅ぎ付けて討伐に向かうだろうと彼らは当たりをつけ、
しばらく静観するに至ったのだった。

どこもかしこも穴だらけの計画である。想定外の出来事もいくつも起こった。
しかし、奇跡的に事は上手く運んだ。
それどころか、あの『ワルワの砂荒らし』撃破の手柄を横取れるオマケまでついたのだ。
もう一人の『月夜の巫女』が生き残ってはいるが、きっと大きく消耗はしているはず。
あの『月夜の巫女』まで倒せるチャンスだ。
自分たちも病み上がりとはいえ、負傷消耗真っ只中の彼らには確実に勝てる。
向かう先にあるのは、無防備に転がる大量の手柄。ついに彼らの時代が来たのだ!

意気揚々と砂漠に馬を走らせる十七騎団員達。
しかし、その目論見は露と消えることとなる。
408グラスマン ◆4hcHBs40RQ :2007/10/19(金) 17:05:04 0
>>404-405
>「隊長、恩ならある……合流する前、街中にサンベルトスネイクが
> 現れて子供を一人飲み込むと言う事態が起きた。合流が遅れたのは
> この大蛇に飲み込まれた子供を救出したからだが、偶然にもその子供は
> ボロロッカの町長の息子であってその一部始終を多くの町人が見ていた。
> ……これでも、まだ足りないか?」

「おお、助けた子供が町長の息子か。さすがあっちゃん。日頃の行いがいいね。」
アイザックの話に、グラスマンが少し驚いたように言う。
「巨大な蛇に敢然と立ち向かって子供を助けたとなればちょっとした武勇伝だ。しかも町長の息子。
こっちから言うまでもなく、十七騎団の連中が特別に駄目なだけだって分かってくれるだろう。
うん、それはかなり強力なカードになるよ。少なくともライゼとボロロッカの友好は保てるはずだ。」

そしてアイザックは続けてサンベルトスネイクの死に際の一連の様子から、
それがガストラの刺客の魔道生物ではないかと推測を語る。
グラスマンは困ったように笑った。
「うーん、実はその通り。さっき僕が戦ってたの、いつか話した殺しスキスキ『ワルワの砂荒らし』でね。
『砂嵐』を探しに町まで入るのが面倒臭いから適当に蛇を放ったんだって。
僕も昔先生に習ったよ、倒されたら砂になるのは砂魔導の擬似生命体の特徴…って、あれ?」
【砂の擬似生命体は、倒されたら砂になる】。
自分で言った言葉だが、何かグラスマンの中で引っ掛かった。
しかし、今は差し当たってそんな事はどうでもいいと、気にするのをやめる。

それから、アイザックがルゥの同行について推薦したことについて訊ねると、
面倒そうにしながらも三つの観点から語ってくれた。
その考察に、グラスマンも唸る。
「うーん、なるほど。確かに今回の砂龍の件について身をもって知ってるのは僕達だけだしね。
それに、まともな部隊に組み込めるだけの社会性はこの子はまだ持ってない。
第六遊撃隊にいればどちらも解決って寸法か。そもそもうちの隊にも社会性を持ってる面子が少ないしね。
そういう意味では【木の葉を隠すなら森】…いやその逆…じゃなくて裏返しかな。まあいいか。
ご苦労様、アイザック。」

そしてムタも、ルゥとともに従うことを決めてくれたようだ。
409グラスマン ◆4hcHBs40RQ :2007/10/19(金) 17:09:01 0
>>406
アイザックに続き、アゼルが自分の考えを述べる。
「ルゥには逃げられたことに…ね。なるほど。悪くない。」
グラスマンは頷く。
「上手くこの場を収めても、その後僕達が連れ歩く以上は何かの弾みで
ボロロッカの誰かに見付かる可能性がなくはないけど、その可能性は大きいとは言えない。
僕達がボロロッカ方面にルゥを近づけないよう気をつける事を考えれば、
有意水準下で棄却できる程度の確率かな。」

グラスマンは少し考え、それから背筋を正し、言った。
「よし。今回の一連の事件に関しては、第六遊撃隊隊長グラスマン・グラスハーツが個人の責任で裁定する。
ルゥが人々に与えた被害は決して小さくなく、僕達の法で裁くに十分に値する。
しかし、問題の根源はルゥ個人ではなく、お互いの文化の違いを理解していなかった歴史的土壌にあると言える。
そこで、ルゥ及びリス君。君たちには服役を免ずる代わりにライゼ王国第六遊撃隊に合流し、ムルム族についての知識を僕達に与えること、
また僕達についての知識をムルム族に還元すること、そして双方の理解と友好のために尽くすことを、
グラスマン・グラスハーツが第六遊撃隊隊長の名において命じる。」

そして、グラスマンは笑顔を見せた。
「…なんて、つまりは僕達とお友達になろうって事だ。リス君、彼女の目が覚めたらその旨を伝えておいてくれ。
うちに来ればさしあたって喧嘩相手には困らないしね。いや、僕は多すぎて困ってるけど。
さて、それじゃ事後処理に動こうか。これからが大変だぞ!」

★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★

ところ変わって第十七騎士団。
突如盛り上がりうねり始めた砂漠に、馬が次々と転倒させられていた。
あちこちで悲鳴が上がる。
「な、何事だ!?」
団長エビタフが叫んだ。
騎馬達があらかた転ばされたところで、砂の波は収まった。
そして今度は、細い砂の柱が彼らの周囲から狭い間隔で幾本も伸び始める。
「だ、団長!これは一体!?」
「わ、分からん!何が起こっているのだ!?」
砂の柱達は上の方で少しずつ内側に曲線を描き、地上4メートルほどの高さで全てがくっついた。
出来上がったそれは、まるで錘状の砂の牢。
「何だこれは!?お、おい、ここから出せ!」
騎士達は砂の柱を殴ったり斬ったりするが、硬い砂でできたそれにはびくともしない。
彼らは続く攻撃に脅えたが、しかしいくら待ってもそれ以上の攻撃は来なかった。
やがて敵は去ったのだと気付き安堵する騎士達だが、その安堵も長くは続かなかった。

牢に閉じ込められたまま、数時間経過。
騎士達は砂漠の猛暑に体力を失い、ばたばたと倒れ始めていた。
団長も鎧を脱いでぐったりとしていた。
「見逃してもらえたのかと思ったが…違う。殺す気十分だ。この敵は我々を放置してミイラにするつもりなのだ…」
410グラスマン ◆4hcHBs40RQ :2007/10/19(金) 17:10:34 0
それから。
ルゥとムタを隠し、ボロロッカに戻った第六遊撃隊は、思わぬ歓迎を受けることとなった。
アイザックが去った後、やはり怪しいガストラよりもライゼと友好を保ちたいという声が大きく上がり、
化け蛇から息子を助けられた町長もその例外ではなかったのだ。
しかし、そのライゼにも『砂嵐』の放置を決め込まれたことは事実である。
だがそれは第十七騎士団の独断であり、彼らは後で厳重に処罰しておくことを遊撃隊から伝えられ、
実際に蛇を退治してくれた彼らをボロロッカは信用すると決めたのだった。
『砂嵐』は捕獲こそ出来なかったものの撃退には成功し、
痛い目を見せて魔の森に追いやったためにもうこの辺りには近づかないだろうことも伝えられ、
町民達は安心しつつも一抹の不安は残したが、平穏な時の経過がやがてその残りの不安も解消していった。
そしてボロロッカの人々の盛大な見送りの後、遊撃隊はこっそりルゥ達を回収し、本国へ連れ帰っていった。

こうしてライゼとボロロッカとの不仲は解消され、ルゥは新しく第六遊撃隊に迎えられる運びとなったのだった。


後日談1。
本国に帰ったグラスマンは意気揚々と報告書を提出したが、大事なことは大方伏せておいたために、
彼らの功績よりもむしろ第十七騎士団の犯した罪にばかり注目が集まり、
結局第六遊撃隊はいつもどおり苦労に見合うだけの称賛は得られず仕舞いとなった。

後日談2。
商車の護衛をしていたコルム。
ボロロッカに戻る途中、大きな鳥かごのようなものを見付ける。
駆け寄ってみると、中に入っていたのはぐったりした第十七騎士団の面々。
彼らは辛うじて生きており、救出されたあとは命の恩人のコルムの前に殊勝にお縄についたという話だ。
そして、コルムは砂カゴの柱の一本にガストラ文字でこんなメッセージが書いてあったと報告している。

【 一つ貨しだ。また会おう。『鉄人』と『月夜の巫女』 】



そして舞台は日常、ライゼ王国へと戻る。
411アゼル ◆F/ATTd3VB. :2007/10/20(土) 19:34:59 O
ライゼ王国に帰還して数日後。
アゼルは次の任務に参加して自分を鍛える為、第六遊撃隊隊舎で待機していた。
前回の戦闘で自分の未熟さを改めて認識した。
このままではアルフヘイムに帰った時、地上で何をしていたんだと言われても仕方がない。
一から自分を鍛え直す為には、今までよりももっと任務に参加するのが最善だと考えているのだ。
だが、そんなに任務が直ぐに第六遊撃隊に任務が回ってくる訳は無い。
この一週間後にはアゼルはとっくに任務に参加する気は失せ、面白いことは無いかと城下町をぶらぶらと歩いているのだった。
そんなアゼルに昔から付いている二つ名は、『ライゼの給料泥棒』
勿論、ライゼの者が付けた不名誉な二つ名であった。
412アイザック ◆6GJ7GJlyDU :2007/10/20(土) 20:18:25 0
>408
>「おお、助けた子供が町長の息子か。さすがあっちゃん。日頃の行いがいいね。」
グラスマンのこの一言にアイザックは片眉をつり上げたが、
その段階で怒りを抑え込んだ。いざこざを起こしても気が晴れるわけでもないからだ。
「(行いがいい、だと……?そんな奴が、人を殺すものか……!)」
顔には出さないが心の内で発散して、心を落ち着ける。
そして、サンベルトスネイクが『ワルワの砂荒らし』の作った存在であると
グラスマンは言った。予想は当たっていたが、思った以上の大物だった。
「……任務、了解。」
後始末、それもまた任務……と、いつもの調子を取り戻した。


ライゼに帰還したアイザックは、一度も足を運んだ事のなかった
『友』の墓へと向かうことにした。自分が負わせた怪我で命を落としたとだけ
伝えられ放逐され、当時は近づくことさえ許されなかった。
あれから五年……いい加減、会いに行くべきだろうと決めたのだ。

「……。」
墓はきれいだった。最近誰かが掃除したのだろう。
アイザックも、形だけではあるものの墓の周囲を掃除する。
掃除が終わり、持ってきた花と友の好物だった菓子をいくつか供え手を合わせる。
「……。」
終始無言で墓参りを済ませ、墓地を出ようとして……背中から熱い物が皮膚を、
筋肉を、繊維を断ち切り腹へと貫通した。首を回して目に飛び込んできたのは
友の父親だった。その顔は、おぞましいほどの憎悪一色に染まっていて……
アイザックは肘で男の横っ面を殴りつけて振りほどき、突き刺さった剣を抜かずに
歩いてどこかへといってしまった。血痕は途中で途切れ、行方不明扱いとなり……
死体はいまだ見つかっておらず、それらしい男の死亡報告は届いていない。
413ルゥ ◆c8mKoM5yZ6 :2007/10/20(土) 21:43:28 O
あれから1週間が経った。ルゥが目を覚ますと、そこは見知らぬ部屋。
質素ではあったが布団がかけられ、ルゥはベッドに横たわっていた。
少し身体を起こして辺りを見回すと、ベッドに凭れ掛かって寝息を立てる少女がいる。
そしてその少女の頭上には、見知った砂漠リスが丸まって尻尾を揺らしていた。
「お?やっと起きたか、寝過ぎだろオメェはよぉ。」
「……ここは?」
「あ〜、話せば長くなるぜ?オメェが意識トバしてる間にな、いろいろあったんだよ。」
苦笑しつつムタは少女を起こさぬよう、そっとベッドに飛び移る。
「コイツに後で礼を言っとけよ?付きっきりでオメェを看てたんだからな。」
「………誰ッスか?」
「コルム…とか言ってたっけな、確か。」
まだ僅かに寝ぼけた表情のルゥにムタが教えてやる。
あの戦いの途中から、何が起きたのか…その全てをのんびりと語り始めた。


「じゃあ旅はどうするンスか?このままだとルゥは大人になれないッスよ!?」
「コラ、もうちょい静かにしろ。コイツが起きるだろうがよ。」
これまでの経緯を聞いて開口一番に声を荒げたルゥを、指を立てて制した。
「まぁ確かに成人の儀式はひとまず終わりってこった。だがよルゥ、ちょいと考えてみな。
コイツらと一緒にいれば敵には苦労しねぇぞ?何やら貧乏クジ引かされる連中みたいだしな。
そうそう、あのエルフにも礼を言っとけ。オメェが死なずに済んだのはヤツが魔法で治してくれたんだからよ。」
そう言い残してムタは窓枠に飛び乗り、窓を開けた。
「ありゃ?ドコに行くんスか?」
「決まってんだろ、1週間もこの部屋でカンヅメくらってたんだぞ?退屈過ぎて死ぬっつーの!」

朝日が遠い空を白く染め始めて、窓の外から入って来る風はまだ少し冷たい。
ルゥは自分の置かれた立場を整理しようと努力したが、面倒臭くなって結局は再び眠ることにした。
414グラスマン ◆4hcHBs40RQ :2007/10/22(月) 23:47:26 0
ライゼ王国へ帰還し、ルゥに関するあれこれを済ませたグラスマンは、
ふらふらの足取りで自室へ向かっていた。
「はー、なにが『また会おう』だよ、あのコロシスキー。こっちはもう二度と会いたくないっての。
ドラゴンといい、あんな連中と遣り合って五体満足でいられた奇跡をお星様に感謝したいくらいなのに。」
歩きながら一人ごちるグラスマン。
しかし、今回は悪いことばかりではない。新しく隊に加入した仲間もいるのだ。
存在だけで国際問題クラスだが、本人は決して悪い子ではない。きっとすぐに皆とも打ち解けるだろう。
「あ、そういえば何人かにお土産頼まれてたっけな…。
今回はいっぱいいっぱいですっかり忘れてた。こういう時ってバルやヌコ辺りが怖いんだよな。
前に忘れた時は相当酷い目に遭わされたっけ。まあ、しばらくこそこそと身を眩ましていればそのうち忘れてくれるだろう…。」
そして自室の前に辿り着き、扉を開けた。


「おかえりニャ〜。」
猫系亜人のクォーターの少女、ヌコがベッドに座って本を読んでいた。
思わず固まるグラスマン。
「…えーと、何で僕の部屋にヌコさんがいらっしゃるんでしょう?」
「お土産お土産。いの一番に貰うためである。」
本を畳み、満面の笑みでエッグポーズするヌコ。
「ボロロッカ名物オシクラ饅頭、1ダース。頼んであったよね?
今回は情報収集なんて楽〜な任務だったんだから、買い忘れたなんて言わせないのだ♪」

「えーとね…。冷静に聞いてくれ。」
グラスマンはヌコの横を抜け、ベッドに仰向けに寝転がった。
「実は今回は情報収集だけのはずが、何故か二つ名持ちが三人も現れて大乱闘になってね。
挙句の果てには伝説のドラゴンまで復活しそうになって危機一髪だったんだよ。
そんな次第で今回はお土産を買う余裕なんてどこにもありませんでしゲブゥ!」
全体重を掛けた肘落としが見事にグラスマンの鳩尾に決まった。
ヌコの猫目がさらに釣りあがり、怒りで光っている。
「…そんな子供が考えたような適当な言い訳で誤魔化せると思ってんのかいワレェ。」
「い、いや、マジなんだって!嘘みたいなホントの話!事実は小説より奇なり、みたいな?」
「みたいな?じゃねえ!さっさと出すニャー!ないなら今から買ってこんかーい!」
「しぎゃあああああ!!」

こうして大暴れしたヌコにより、結局『砂荒らし』やドラゴンとの戦闘よりも
大きなダメージを負ってしまったグラスマンなのだった。





こうして、今回の任務は無事に幕を下ろした。
決定的な問題が取り除かれた今、ライゼとボロロッカの仲も少しずつ元通りになっていくだろう。
そして迎え入れた新たな仲間、ルゥとムタ。忽然と姿を晦ましたアイザック。
そんなこんなで、第六遊撃隊は相変わらず厄介事だらけの落ち着かない日々を送っている。
果たして、彼らを次はどんな任務が待ち受けているのだろうか?

〜Mission1『the Sandstorm of Mulm』 is the end.
415名無しになりきれ:2007/10/28(日) 16:48:43 0
終了?
416名無しになりきれ:2007/10/28(日) 18:02:30 0
なんか騎士スレっていうより、なな板TRPG物語スレって感じだな
417名無しになりきれ:2007/10/28(日) 19:00:20 O
この後に及んで難癖付けしてどうすんだよ
残された本当に数少ないスレなのに
今更騎士スレらしさもへったくれもないべ
418名無しになりきれ:2007/10/28(日) 19:40:59 O
419GM ◆c8mKoM5yZ6 :2007/11/02(金) 23:49:05 O
ここは魔の森、樹齢数百を数える巨木が乱立する大自然が作り上げた魔境だ。
日中であるにもかかわらず、地面まで届く陽光は少なく、薄暗い樹海の光景が広がっている。
そんな魔の森に住む住人達の集落は、薄暗い地上ではなく、樹の上に在った。
樹上の集落に住むのは、この世で最も精霊に近いとされる種族…エルフ達である。
何故エルフが樹の上に村を作るのか、学説によれば『樹は最も精霊の加護を受ける』からだそうだ。
大木の幹に打ち立てられた階段を登った先にて、3人の人影が見える。

1人は小柄で、もう1人は対照的に巨体、残る1人は普通といったところか。
第六遊撃隊の隊員、ヌコ=ノーネームと、第十重装騎士団の騎士、ガルド。
そしてその2人をこの集落まで案内したエルフ族の女性、ミリア=ブライトアイズ。
「着きましたよ。ようこそ、グリューンバルトは貴方達を歓迎するようです。」
ミリアは集落の中でも一番大きな古樹を見上げた後、2人へと振り返った。
グリューンバルト。エルフ族は魔の森をそう呼んでいる。
森には意思があり、来訪者を受け入れるか否かを決めるというのだ。
「さあこちらです。我々の長がお待ちしております。」
そう言ってミリアは歩き始めた。大木の枝の上に敷き詰められた木の床を静かに進んで行く。

今回の任務にアゼルは参加することが出来なくなったため、友人のミリアに案内を頼んだのだ。
急な依頼要請だったが故に、第六遊撃隊には手の空いていた者はおらず、ヌコが抜擢された。
グラスマンとバル、そしてアゼルは別件で手が放せず、ゴロモンは休暇から戻っていない。
新人のコルムは連絡待機任務中で、同じく新人のルゥはまだ療養中だった。
必然的にヌコに頼むしかなかったのである。しかしヌコも遊撃隊の古株、実力もある。
だからこそグラスマンはヌコに今回の任務を任せた。
だがこっそり施政院に連絡を取り、ベルグドル准将に口利きしたのは秘密である。

結果、ヌコのサポートに第十重装騎士団から派遣されたのが、ヌコの隣りに立つ巨漢…ガルドだ。
ヌコと比べると大人と子供のような体格差がある(実際に大人と子供だが)。
人間としても破格の体躯を持つこの重騎士と、猫人の血を引く少女。
なんとも珍妙な組み合わせであった。

420GM ◆c8mKoM5yZ6 :2007/11/02(金) 23:51:01 O

「もう追って来ないようだな…一体何なんだ『アレ』は?」
調査隊隊長ジョルジュ=マッケランは、壁に寄り掛かり憔悴しきった顔で呟いた。
ここは遺跡内部、地下4階の小さな部屋。
遠くで地響きが聞こえる。おそらくは先程まで戦った怪物が暴れているのだろう。
調査隊の面々は皆疲労に立ち上がることも出来ないようだった。
無理もない。彼等は本来なら机と椅子が職場なのだ。このような状況は無きに等しい。
「くそ、なんでこんな事になったんだ…。」
手に持っていた地図を握り潰す。絶望が心を砕いたのか、それきり黙り込んだ。

調査は順調だった。地下4階に降りるまでは、だが。
冒険者が地下2階の床が崩れているのを発見し、更に地下が存在するのを報告したのが始まりだった。
この遺跡を調べたグラスマン達が調査隊に同行する筈だったが、任務で出払っていたのだ。
そのため第六遊撃隊から調査隊に派遣されたのが、レフトハンドと霊鬼の2人である。
危険なモンスターもおらず、地下3階の調査は順調に進んでいた。
2人には退屈な任務だと思えてきた頃、突然『それ』は姿を現したのだ。

まるで昆虫を思わせる6本の脚、しかし関節部に節目は無く、出来損なった粘土細工に見える。
表面は不気味な光沢を放ち、液体の如くタプタプと音を立てながら動き回る異形の存在。
胴体であろう中央の球体の頂点から、1本の短い突起物が伸び、そこから熱線を発射する。
強敵だった。最初は簡単に撃破出来た。しかし恐るべき速度で復元し、再び襲ってきたのである。

そして数回に渡って撃退を繰り返し、今に至る。どうやら見失ったらしい。
この部屋は小さく、調査隊7人とレフトハンドと霊鬼の9人には狭いくらいだ。
上の階に登る階段に続く通路は崩れ、別の脱出ルートを探す必要があった。
更に厄介なことに、調査隊のメンバーが戦闘中に次々と意識を失ったまま目覚めないのだ。
霊鬼達が戦闘に専念出来なかったのも、倒れたメンバーの安全を最優先したからである。

外には謎の強敵、かといってこのまま部屋でじっと救助を待つのも危険だ。
原因不明の症状が、いつ2人の身に襲いかかるか全く予測が出来ないのだから!!
421霊鬼 ◆F/ATTd3VB. :2007/11/03(土) 00:57:52 O
>420
今、この場所に不釣り合いな一人の少女がいる。
美しい黒髪に清んだ赤い瞳。
遺跡の探索には全く似合わない、町中で娘達が着ているような服装。
その服には汚れ一つ見当たらない。
彼女は壁に背を預けながら、手にした瓢箪を口許に運び、一気にあおる。
酒を飲み干す彼女は、実に満たされた表情をしていた。

「レフちーレフちー、楽しんでるー?」
彼女は近くにいた男に話掛ける。
この男との年の差は見た目だけなら二十程度、この少女と離れている。
だが、実際はこの少女の方が遥かに年上なのだ。

「私はねー、今、すっごく楽しいよー。
 こんな燃えるシチュエーションなんて、すっごく久しぶりだしね。
 いつもの任務もこんくらい歯応えがあると私も嬉しいんだけどねー」
笑いながら瓢箪に霊力を注ぎ込み、再び酒を飲み干す少女。
彼女の名は霊鬼。
数ある種族の中でも最強クラスの力を持つ種族、鬼である。

「ジョルジュたいちょー。
 私達は休憩は後、どんくらいの時間ですかー?」
霊鬼の持っていた瓢箪がいつの間にか無くなった。
代わりに、霊鬼の身の丈程の大きさもある巨大な金棒が、いつの間にか霊鬼の隣に立掛けられていた。
422名無しになりきれ:2007/11/03(土) 00:58:17 O
サイト?
423ヌコ ◆4hcHBs40RQ :2007/11/03(土) 01:12:58 0
◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇

数日前、隊長の部屋にて。

隊長は、あちこち包帯ぐるぐる巻きでベッドに横たわっている。
昨日まで行っていた任務での蓄積ダメージが予想以上だったらしい。
最終形態ドラゴスケイルマンまで使ったらしいから当然だ。あんなに体に負担の掛かる技はない。
馬鹿の使う技である。

「たはは、我ながら情けない限りなんだけどね。」
まったくその通りなので手を叩いて爆笑してやった。
あ、微妙な表情になった。

「…で、今回呼び出したのは、ちょっと任務をヌコにお願いしたくてさ。
霊鬼ちゃんご一行が任務先で行方不明らしいんで、ちょいと迎えに行ってあげてくれないかな?」
普通に引き受けるのも癪なので丁重にお断りしてみた。
「頼むよ、信頼できるヌコだからこそ頼めるんだ。」
信頼という言葉が安っぽいので丁重にお断りしてみた。
「分かった、隊費から臨時ボーナス出すよ!イヤこれはお得だなぁ。」
金で釣れる安い女と思われたくないので丁重にお断りしてみた。
「あ、向こうにはレフティさんもいるよ?ヌコ実はレフティさんお気に入りでしょ。」
なんかムカついたので丁重にお断りしてみた。
「あ、ヌコ最近可愛くなったよね!この調子でいけば10年後はライゼ王国一の美女に変貌するだろうな〜。」
もう既にライゼ王国一の美女なので丁重にお断りしてみた。
「お願い!マジのお願い!」
断り!マジのお断り!
「ぬがー!」
ニャー!

…そんな問答の結果、結局引き受けることになった。
「いや、本当に助かったよ。こうしてる間にも霊鬼ちゃんの幼い肢体が未知の魔物に汚されてないかと思うと不安でさ。」
発言がキモい。
ていうかレフティのことは心配じゃないのかよ。
「え?ああ、あの人は別に大丈夫でしょ?心配するだけ損損。」
野郎には適当だこの駄目男。
それがレフティへの信頼の顕現ということは、そりゃわかってるけど。

それから少し雑談した後、退室しようとするウチを引き留め、隊長が言う。
「…ちょっと真面目な話をするけど、気を付けてね。
レフティさんがいれば何があっても大丈夫だとは思うけど、今回は何だか胸騒ぎがするんだ。
僕が行けたら良かったんだけど、この通りの体だし、別件の任務も控えてるしね。
充分に気合いを入れて臨んで欲しい。大変だろうけど、何とか全員無事に連れて帰って来てくれな。」

胸騒ぎ。
おそらく別件の任務がなければ、この馬鹿隊長はこの体でも自分で向かっていただろう。
どうせ胸騒ぎなんか当たらないだろうが、この心配性はいつまで経っても成長しないから困る。
まったくもう。
とりあえず、ウチがいれば万事オーライなことを主張して怪我人を安心させてやった。
「うん、頼りにしてるよ、先輩。」

満足そうに頷く隊長に、ちょっと気を利かせて怪我を労いながら部屋を出ようとすると。
「え、心配してくれてるの?ありがたいねぇ。あ、実はヌコって僕の事が…ってぎゃー!」
激しくムカついたので怪我人に机を投げてやった。

◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇
424ヌコ ◆4hcHBs40RQ :2007/11/03(土) 01:14:15 0
>>419
木々が織り成す集落を、エルフ族の女性ミリアの案内で歩く二人。
第六遊撃隊のヌコと、第十重装騎士団のガルドだ。

「は〜あ、隊長に一杯喰わされたのだ。」
浮かない顔のヌコ。
行方不明の調査隊の捜索とは聞いていたが、それがまさか魔の森とは。
自由奔放のヌコでもあまり近付きたくはない場所である。
残念ながらグリューンバルドは歓迎してくれたようだが、拒絶されていたらスキップして帰宅していたところだ。

「しかも相方が巨漢のオッサン。最悪ニャ。」
ちらりとガルドを見る。
そしてため息。
「…あーあ、この巨大なオッサンを割ったら中から二人のイケナイ美少年が出てこないものかニャ〜。」
無駄な期待を口にしてみるヌコだった。
「とにかく、足だけは引っ張らないように頼むである。オッサンがピンチになっても助ける気はないからそのつもりで。」

そして、ミリアの後について木の床をとことこと歩いていく。
425レフトハンド ◆6Mrl/jPPh. :2007/11/03(土) 11:18:07 0
参ったねぇ・・・あっしはツイてない。たぶん人生で五指に入る最悪ってヤツだ。
かれこれ1時間。この部屋に逃げ込んだはいいものの、まるで先が見えやしねぇ・・・。
調査隊の皆さんは死人みてぇにヘコんでやがる。元気なのはお嬢だけ。
>「くそ、なんでこんな事になったんだ…。」
「いけねぇいけねぇ、すっかり諦めムードじゃあないですか。そいつは感心できねぇ。
 隊長さん、心が折れちまったら見えるモンも見えなくなっちまう。しっかりして下せぇ。」
気休めにしかならないでしょうがね、あっしはやつれた隊長に声をかけやした。
今回の任務はこの人達を守り抜くこと、鉄人の旦那の顔に泥は塗れねぇ。
何がなんでも絶対に、あっしらは折れる訳にゃいかねぇンですよ。

>「レフちーレフちー、楽しんでるー?」
>「私はねー、今、すっごく楽しいよー。
 こんな燃えるシチュエーションなんて、すっごく久しぶりだしね。
 いつもの任務もこんくらい歯応えがあると私も嬉しいんだけどねー」
この葬式会場みてぇに沈んだ中で、やっぱり頼りになるのがお嬢だ。
見た目は小さな子供ですがね、お嬢を甘く見ちゃいけないンでさァ。
ひょろっとした手でしょう?でもね、騙されちゃあ痛いメにあうンですって。
かく言うあっしもね、その見た目に騙されちまったクチで。鬼って知ってますかい?
そうそう、“鬼に金棒”の鬼。あのまんまの意味ですよ。
こういう時にゃホントに頼りになる人でしてね。だからこそあっしは“お嬢”と呼んでるんです。

「お嬢、ちょっくら外を見てきます。どうやら“ヤツ”は遠くに行ったみてぇですし。」
あっしは扉に手を掛け、お嬢に提案しやした。
ここでじっとしてたって、仕方ないでしょうしね。それに・・・実はあっしもね、楽しいんですよ。
ほら、『退屈は人生を腐らせる毒』って言うじゃあありませんか、ねぇ?
この遺跡にゃ“何か”がある。あっしの勘がね、さっきからそう言ってるンでさァ。
426ガルド ◆zCCyDiTaeI :2007/11/03(土) 19:14:33 0
>419
ガルドは魔の森にあるエルフの集落にいる。

何故こうなったかと言えば、遺跡に異常あり、調査隊の消息不明との
一報がボロロッカに向かった第六遊撃隊が帰還した直後に入ったからだ。
施政院のお偉方は、探索隊が第六遊撃隊のみで構成されているのを
いいことに正規の騎士団の出動を許さないつもり、だったのだが・・・
比較的常識も良識も持ち合わせている方である一議員が事の大きさゆえに
第六遊撃隊だけに任せて何かあったらどうするのだ?と発言した事を皮切りに
議会は紛糾、結局騎士団員一名を探索補助として出向させることで合意した。
無論これは建前で本音はとにかく暴走しやすい遊撃隊の監視、場合によっては
力ずくでもこれを抑え込むことが本来の任務であった。

などと様々な思惑が渦巻く中、泰然とヌコの隣を歩くガルド。
集落の造りは見た目以上に頑丈なようで、今のところ床が抜けたと言うことはない。
しかし一歩踏み出すたびにミシ・・・ミシ・・・と嫌な音を立てており、
常人ならいつ抜けるか、と躊躇するところだろう。だがガルドの心臓は
きっと毛むくじゃら、まるで気にする様子もなくミリアの後を付いていく。

>424
ライゼからここまで、ガルドは一言も喋らなかった。しかし、
>そしてため息。
ヌコのため息が耳に入った。
「ニュコ殿よ、ため息は同時に幸せや運気をも逃がすものだぞ。
何ゆえため息をついたかは知らぬが、笑って事にあたれば↑↑↓↓→←→←AB。」
最後何を言っているのか、人間が出す声じゃなかった。

>「とにかく、足だけは引っ張らないように頼むである。
>オッサンがピンチになっても助ける気はないからそのつもりで。」
「うむ、俺のことは心配するぬあ。
互いに己が身は己で守れば、助けなど必要∧д〇_b。
しかし頼もしい、俺も安心できると言うものよ。はっはっはっはっは。」
笑い声で薄い壁がびりびりと振動する。うるさい。
427GM ◆c8mKoM5yZ6 :2007/11/03(土) 22:49:49 O
>「いけねぇいけねぇ、すっかり諦めムードじゃあないですか。そいつは感心できねぇ。
> 隊長さん、心が折れちまったら見えるモンも見えなくなっちまう。しっかりして下せぇ。」
レフトハンドの言葉に、ハッと我に返るジョルジュ。絶望の闇に光が射した。
「……そうだな、確かにそうだ…こんな所で死ぬ訳にはいかんな。」
険しい顔で握り締めていた地図を開き、描かれたダンジョンの構図をじっと睨んだ。
「今我々のいるのがここだ。さっき崩れたのがここ、もしも遺跡が左右対照なら…」
地図の一点をペンで指し、丸を付ける。
「左側のルートを迂回すれば、階段前の三叉路まで戻れるかもしれない!」

>「ジョルジュたいちょー。
> 私達は休憩は後、どんくらいの時間ですかー?」
「そうだな、これで休憩は終わりにしよう。少しでも可能性があるなら、私はそれに賭ける。」
「隊長、僕達は助かるんですね!?」
「あぁ…神様ありがとうございます。早く家に帰りたい。」
霊鬼の問いに力強く答えたジョルジュを見て、ボブとマリアの顔にも再び希望が宿る。
>「お嬢、ちょっくら外を見てきます。どうやら“ヤツ”は遠くに行ったみてぇですし。」
そう言ってドアを開けようとするレフトハンドに、ジョルジュは立ち上がった。
「行くならくれぐれも気をつけて行ってくれ、我々は今から出発の準備に取り掛かる。
眠って動けない3人を背負ったままでは、いざという時に素早く走れはしないからな。
だから背負う者と背負われた者をロープでくくり付け、離れないように固定する。」
荷物からロープの束を取り出して、ジョルジュはボブとサムに渡した。



ミリアの後をついて暫く歩くと、集落の中でも一際大きな家に到着した。
「ここが私達の長の屋敷です。さあ中へどうぞお入り下さい。」
屋敷の中は見た目通り広く、沢山のエルフ達が待っていた。
中には床に寝転がった者の姿も見える。というより、寝転がった者の方が多い。
「よくぞいらしてくださいました。ボクがこのグリューンバルトの長、タイレルと申します。」
奥から現われたエルフの少年が、2人にペコリと頭を下げてお辞儀する。
エルフ族の長というからには、髭を伸ばした老人を連想させるが、意外な展開である。
「タイレル様は先代のアトス様の跡を継ぎ、去年から長となったのです。」
ミリアがそっと2人に耳打ちした。

「ミリアに貴方達をここへ案内させたのには訳があるんです。ここに寝ている者達を見て
お二方はどう思いますか?この者達は数日の間、眠ったまま目覚めないのです。」
悲しげに辺りを見回すと、再び2人に向き直り、説明を続けた。
「グリューンバルトにある遺跡へ人間の一団が入ってからです。この不可解な現象が起きたのは…。」
428霊鬼 ◆F/ATTd3VB. :2007/11/04(日) 05:39:21 O
>425>427
>「そうだな、これで休憩は終わりにしよう。少しでも可能性があるなら、私はそれに賭ける。」
>「隊長、僕達は助かるんですね!?」
>「あぁ…神様ありがとうございます。早く家に帰りたい。」
レフちーに励まされたジョルジュ隊長に力強さが戻った。
脱出ルートも考えたようで、休憩はもうそろそろ終わり。
マリアとボブも力強さの戻った隊長の言葉を聞いて、元気を取り戻している。
この状況に霊鬼も内心嬉しく思っている。
この状況で不謹慎だけど、ようやく暴れられるから。

>「お嬢、ちょっくら外を見てきます。どうやら“ヤツ”は遠くに行ったみてぇですし。」
レフちーが外の様子を見てくるって言って、部屋の扉に手を掛けた。
レフちーが扉を開ける前に、ジョルジュ隊長が立ち上がる。

>「行くならくれぐれも気をつけて行ってくれ、我々は今から出発の準備に取り掛かる。
>眠って動けない3人を背負ったままでは、いざという時に素早く走れはしないからな。
>だから背負う者と背負われた者をロープでくくり付け、離れないように固定する。」
ジョルジュ隊長は荷物からロープを取り出して、ボブとサムに渡した。
当然のことながら戦闘員である霊鬼には渡されない。

外に出ようとするレフちーに、霊鬼は声を掛ける。
「レフちー、ジョルジュ隊長もそろそろ出発するって言ってるから、早めに帰って来てよねー。
 私はレフちーとここで今生の別れなんて嫌だからね」

霊鬼は脱出の準備には役に立たない、この場に居たってジョルジュ隊長達のやっていることを見ているだけ。
だが、霊鬼はこの場にいることが大事なのだ。
この小さな部屋だって遺跡の中の一部屋、ここだけ虫が出ないということは無いと思う。
だからこそ、霊鬼は戦いが本職ではない調査隊の近くから離れてはいけないのだ。
429レフトハンド ◆6Mrl/jPPh. :2007/11/04(日) 20:55:15 0
>「……そうだな、確かにそうだ…こんな所で死ぬ訳にはいかんな。」
そうそう、それでいいんです。諦めちまったら、そこで終わりでやすからね。
どうやらあの一言が、この人達をもう一回奮い立たせたみたいで。
あっしも嬉しいですよ、言った甲斐があるってモンでさァ。
>「今我々のいるのがここだ。さっき崩れたのがここ、もしも遺跡が左右対照なら…」
>「左側のルートを迂回すれば、階段前の三叉路まで戻れるかもしれない!」
なるほどねぇ、言われてみりゃあ確かにそうだったかもしれやせん。
あんまり似たような景色が続くモンでして、遺跡やらはズブのシロウトなあっしは
今そうやって言われるまでちっとも気付きやせんでしたよ。

だがその話を聞いて俄然やる気が出てきやした。
早い話が“追っかけっコ”だ。あっしは逃げ足にゃ自信がありましてねぇ。
まだコソドロだった頃は、そりゃもう生きる為に必死で走って逃げてたもんです。
まぁ“ヤツ”に見つからないように行けりゃ、それに越した事はございやせんが。

>「行くならくれぐれも気をつけて行ってくれ、我々は今から出発の準備に取り掛かる。
>眠って動けない3人を背負ったままでは、いざという時に素早く走れはしないからな。
>だから背負う者と背負われた者をロープでくくり付け、離れないように固定する。」
おお、それならおぶってても揺れないし、両手が空くって寸法ですかい?
「隊長さん、そいつはいいアイディアです。そしたらこっちも安心して“ヤツ”を引き付けられる。」
あっしは親指を立てて、隊長さんに答えやした。
>「レフちー、ジョルジュ隊長もそろそろ出発するって言ってるから、早めに帰って来てよねー。
> 私はレフちーとここで今生の別れなんて嫌だからね」
「ありがてぇ言葉です。なぁに、心配は要りやせん。ちょっくら見てくるだけですから。」

全くありがてぇこって・・・ホントにお嬢ってば優しい人だ。
そうまで言われちゃあね、張り切らないってのは嘘でしょう?燃えるじゃあないですか。
「そいじゃ、行ってきやす。」

廊下は暗くて湿っぽい。暗闇にゃ慣れっこですからね、別に困る事ァございません。
ですがね、湿っぽいのは好きじゃあありませんや。
なんて言うんでしょうね、息が詰まるって言えば宜しいンですか?そんな感じでして。
入口から15mくらい離れた時でしょうか。曲がり角に着きました。
まっすぐに行く道と左に曲がる道、その2つです。あっしは聞き耳を立てると、奥の音を探ってみやした。
430ヌコ ◆4hcHBs40RQ :2007/11/04(日) 23:07:01 0
>>426
ヌコのぼやきやため息にも、豪快な反応を返すガルド。
小生意気なヌコにも動じない性格のようだ。
壁を振動させる笑い声に耳を塞ぎながら、眉間にシワを寄せて幸せや運気を逃がす息を漏らすヌコ。
「このオッサン、うるさい上に所々何て言ってるのかよく分からないのだ…。
耳の錯覚かコナミコマンドみたいなのが聞こえた気すらしたである。」
言ってからコナミコマンドって何だ?と自分で首を傾げ、しかしすぐに気にするのをやめた。
くるりと振り返って指を差し、怒鳴るように言う。
「とーにーかーく!ウチの邪魔にだけはならないよーに!あとニュコって呼ぶな!」

>>427
そしてミリアに案内された先は、長の住むという屋敷だった。
エルフがたくさん控えているが、その大半は寝転がって眠っているようだ。
「そういえばうちの隊のアゼルもエルフだったのだ。エルフってみんな普段は怠惰な生活してるのかニャ〜。」
『給料泥棒』の二つ名で知られる同僚を思い出しながら、眠るエルフ達を眺めつぶやく。
聞こえると失礼な独り言でも、ヌコは特に相手に聞こえないような配慮はしない。

そして、置くから少年のようなエルフが現れ、自らを長と名乗った。
ミリア曰く、先代の後を継いで去年から長になったばかりらしい。
恐らく先代が急死でもしたのだろう。

>「ミリアに貴方達をここへ案内させたのには訳があるんです。ここに寝ている者達を見て
>お二方はどう思いますか?この者達は数日の間、眠ったまま目覚めないのです。」
>「グリューンバルトにある遺跡へ人間の一団が入ってからです。この不可解な現象が起きたのは…。」
長タイレルが言う。
ヌコはそれに答えず、懐からまほうビンを取り出し蓋を開けた。
中から羽毛が大量に飛び出し、それがヌコの前に全て集まって大きなふかふかのクッションを作り出した。
ヌコはその上に丸くなり、ガルドに言う。
「オッサン、話が終わったら起こすニャ。皆が寝てるところを見てたらウチも…ぐー。」

寝てしまった。
431GM ◆c8mKoM5yZ6 :2007/11/05(月) 19:15:05 O
>まっすぐに行く道と左に曲がる道、その2つです。あっしは聞き耳を立てると、奥の音を探ってみやした。

すると薄暗い廊下、左方向へ分かれた通路の奥から、微かに声が聞こえたような気がした。
確信は持てない。単に風の音を聞き間違っただけかもしれない。
しかし、何故か気になるのだ。聞こえた声は、クスクスと笑う女性の嘲笑に似ていたのである。
この遺跡には現在、調査隊一行しかいない筈だ。
もちろんだが調査隊の後から来た者が絶対にいないとは限らない。
だがポインターフラッグ条約がある。遺跡に入る前に、調査隊が確かに立てた。
その前に立っていたフラッグは無かったので、遺跡には誰も入ってない筈だ。

レフトハンドはこのまま通路を進んでもいいし、一旦戻って声のことを報せてもいい。


レフトハンドが偵察に出てから、約2分くらい経った。
「よし、こんなもので大丈夫だろう。」
ジョルジュはキャサリンを背負って立ち上がる。しっかりと固定されたようだ。
これなら多少の激しい動きでも、背負ったキャサリンを落とさないだろう。
両手が空くので、地図とランタンを持つ事も出来る。
他の2人もそれぞれ準備が調ったらしい。空いている手に荷物を持っている。
ジョルジュがキャサリンを、ボブがマクレーンを、サムがピーターを背負っている。
マリアは女性なので自分の荷物とジョルジュの荷物を持っていた。
「霊鬼さん、我々の準備は完了した。レフトハンドさんの帰りを待つか?どうする?」
ジョルジュは辺りに目を光らせている霊鬼に話し掛けた。

霊鬼はレフトハンドの帰りを待ってもいいし、待たずに後を追いかけても構わない。
432ガルド ◆zCCyDiTaeI :2007/11/05(月) 20:11:04 0
>427
ミリアについていくと、やがて大きな家へとたどり着いた。
>「ここが私達の長の屋敷です。さあ中へどうぞお入り下さい。」
中に入るように促される。
「うむ、失礼いたす。」
入ろうと身をかがめる。足りなかった。どーんと勢いよく梁にぶつかって
家が、歩いてきた床が、隣の足場までもが揺れる。それでも壊れない梁。頑丈である。
「おっと、言葉どおり失礼ITAMESI。俺はここで話を伺わせて「」:@;ぴ。」
相変わらず何を喋ってるのか聞き取りづらい・・・。

>「よくぞいらしてくださいました。ボクがこのグリューンバルトの長、タイレルと申します。」
長、と名乗ったのは少年エルフだ。しかしエルフは超長命種。
或いは1000年を超える時を生きているのかもしれない。
「丁重なる挨拶痛み入ります。ワタクシはライゼ第10重装騎士団のガルド・バクォーと申します。」
長ったらしい台詞を快活な発音でこなしたガルドだった。

>「ミリアに貴方達をここへ案内させたのには訳があるんです。ここに寝ている者達を見て
>お二方はどう思いますか?この者達は数日の間、眠ったまま目覚めないのです。」
>「グリューンバルトにある遺跡へ人間の一団が入ってからです。この不可解な現象が起きたのは…。」
「その一報はライゼにもすぐに齎されましたぞ。何分情報がまったくと言って良いほど
揃っておらず、手前の拙い推測になりますが・・・やはり、探索隊の活動によってこの奇怪至極な
現象の原因が解き放たれた、と見るべきかと。」
長い説明に一度も噛まず、誰にでも聞き取れる言葉で話していく。
もちろんその声も大声なのだが、家が揺れるほどの声量の中エルフは眠り続けている。
物理的にどうこうできる代物じゃないことだけは確かなようだ。

>430
>眉間にシワを寄せて幸せや運気を逃がす息を漏らすヌコ。
言ったそばからため息。
「いかん、いかんぞニュコ殿よ。
二度もため息などついては、寿命が1ヶ月は縮まくぁwせdrftgyふじこlp;。」
今度は発音不明瞭ではない、舌を噛んだのだ。

>「とーにーかーく!ウチの邪魔にだけはならないよーに!あとニュコって呼ぶな!」
おかしな事を言う。確かに俺はヌコ殿と呼んだ。
きっと俺の発音が悪いのだろう、気をつけねば。
「すまぬスマヌ、以後気をつけるぞニュコ殿。」
人生37年ただの一度も気づけなかった、ゆえに直らなかった致命的な欠点、
今言われて直るようなヤワなもんじゃない。結局言い間違えたが、ガルドは気づいてない。

>「オッサン、話が終わったら起こすニャ。皆が寝てるところを見てたらウチも…ぐー。」
>寝てしまった。
なんとヌコは眠ってしまった!
(「やれやれ、やはり子供には退屈な話か。
・・・しかし生意気盛りとは言えやはり女子、寝顔は無邪気なものよ。
今は寝ておけ、次はいつ寝れるか分からんからのお。」)
緊迫した状況のはずなのにヌコの寝姿に和み癒されるガルド。起こすつもりは毛頭ないらしかった。
433霊鬼 ◆F/ATTd3VB. :2007/11/05(月) 20:15:47 O
>429>431
レフちーが偵察に行って数分が経過。
調査隊の起きているメンバーは寝ているメンバーを背中にしっかりと固定し、荷物を持って準備完了。
霊鬼は横に立掛けておいた金棒を片手で担いだ。
霊鬼の準備はこれにて終り。
瓢箪や調査に必要な物はちゃんと隠している為、手で持っていく必要は無いのだ。

>「霊鬼さん、我々の準備は完了した。レフトハンドさんの帰りを待つか?どうする?」
ジョルジュ隊長が霊鬼に聞いてきた。
霊鬼は少し考えて、答えを返す。

「帰りを待ってましょ。
 今から探しに行ったって、レフちーがどこまで探索に行ったかなんて分かんないし、探し回ってたらお互いが迷子になっちゃうのがオチだよ。
 レフちーは絶対に帰ってくる。
 だから、私を信じて待っててくれない?」
434レフトハンド ◆6Mrl/jPPh. :2007/11/05(月) 20:26:33 0
>>431
>すると薄暗い廊下、左方向へ分かれた通路の奥から、微かに声が聞こえたような気がした。
「むぅ・・・なんでしょうかねぇ?」
あっしは自分の耳を疑っちまいやした。考えてもみて下せぇ、笑い声ですぜ?
しかもその声は女の・・・とびきり性格がネジ曲がってそうな女の笑い声ときたもんだ。
こいつァ妙じゃないですか。どう考えても妙でさァ。

ワケ判らねぇ化けモンがうろちょろしている遺跡にゃ、ちょいと不釣り合いってもんで。
おまけに、この遺跡にゃポインターフラッグを立ててるンですよ。
もしも声がホンモノの女の声なら、そりゃ国際条約をシカトって事になりやす。
『入る前に立てる。立ててるトコには入らない。』
そのどちらも破ってるんですからね。

ですがね、その声が気になってンのも事実。あっしは忍び足で左側の通路へ進みやした。
すぐにでも戻って、お嬢に知らせるべきだったんですがね、目先の欲に負けちまった。
条約違反したヤツを取っ捕まえたら、きっとお嬢はあっしを褒めてくれる・・・
 鉄人の旦那だって『よくやったなレフティ!流石だ!』って褒めてくれるはずだってね。
今思えば、この時のあっしは少しばかり舞い上がってたんでしょうね。

あっしが尊敬する鉄人の旦那を、毎日のように苛めやがるクソ猫じゃあありやせんが、
 “好奇心がブッ殺すのは猫だけではない”って事を、あっしは身をもって知りやした。
435GM ◆c8mKoM5yZ6 :2007/11/06(火) 20:27:51 O
>寝てしまった。
なんと寝てしまったではないか!超絶マイペースなヌコに、その場にいた者は唖然とする。
眠ることは死に等しい現在のグリューンバルトのエルフ達にとって衝撃的だったのだ。
「お…起きてーッ!!!」
ミリアが放つ電光石火のビンタが、ヌコのツヤツヤほっぺに容赦無くめり込んだ。
直後、ハッとして戸口で佇むガルドに慌てて弁明する。
「あ、いえ…その、とにかく今は眠ることは危険なんです!ここに寝ている者達は皆、
夜に寝てそれきり目覚めない者達ばかりでして、貴方達まで眠りから覚めないことに
なってしまったら我々は困ります。阻止出来なかった罪悪感も残りますし…。」
本来なら他人にビンタなど絶対にしない人のだろう、非常に申し訳なさそうな顔だ。
よく見れば、ミリアの目元にはうっすらと隈が出来ているのが判る。
ミリアだけではない。この場にいたエルフは全員、隈があり睡眠不足のようだった。

「コホン、えーと…話を続けてよろしいでしょうか?」
小さく咳払いして遠慮がちに手を上げ、タイレルがボソッと呟くように存在を主張した。
彼も例外ではなく、やはり目の下には隈があった。
もっとも彼の場合、単なる睡眠不足だけが原因ではなさそうではあったが。
>「その一報はライゼにもすぐに齎されましたぞ。何分情報がまったくと言って良いほど
>揃っておらず、手前の拙い推測になりますが・・・やはり、探索隊の活動によってこの奇怪至極な
>現象の原因が解き放たれた、と見るべきかと。」

「そうなんです、我々もそう考えています。故にアゼルを通して王国に協力を求めて
みたのですが…肝心な情報、つまりこの奇病に関して我々の治療魔法も効果が無く、
全く正体が判らず…。あの遺跡があった場所については古文書にて調べている最中です。」
答えたタイレルの表情は暗い。まだ若い彼に長の重責は堪え難い圧力となっているのだろう。

「お願い致します!貴方達の任務が調査隊の救出である事は重々承知しています、
ですがこの奇病の原因が遺跡内にて発見出来たなら、それを根絶していただきたいのです。」
タイレルを始めとして、エルフ達の懇願の視線がガルドとヌコに集まった。
今回の任務はあくまでも調査隊の探索と救出である。しかし困っているエルフ達を放っておくのは忍びない。

君達は任務の途中で、奇病の原因を突き止めたなら、それを何とかしてもいいし、放置しても構わない。
436ヌコ ◆4hcHBs40RQ :2007/11/06(火) 21:29:11 0
>>435
>「お…起きてーッ!!!」
「げふー!」
ミリアにビンタされ、ヌコは血を吐きながらくるくると飛んで壁にぶつかった。
そのままずるずると落下。
「い、いいビンタ持ってるニャ…ギャグ漫画じゃなかったら死んでるところである。
あとで覚えとくのだミリア…。」
びくんびくんと痙攣しながら意味の分からない事を呟くヌコだった。

その後、タイレルとガルドが事態について話をしているが、
ヌコはぶすっと口を尖らせるばかりで聞いているのかいないのか。
「ミリアのばーか…ミリアのばーか…」
尖った口からなんだか呪詛のような呟きが聞こえる。

>「お願い致します!貴方達の任務が調査隊の救出である事は重々承知しています、
>ですがこの奇病の原因が遺跡内にて発見出来たなら、それを根絶していただきたいのです。」
>タイレルを始めとして、エルフ達の懇願の視線がガルドとヌコに集まった。
「あっかんべ〜。」
ヌコは懇願の視線に舌を出して応えた。
「そんなのウチには全然関係ないのだ。ちょっと外の空気吸ってくるからオッサンあとは任すニャ〜。」
そして入り口でつっかえているガルドの股をくぐり、家の外へ出ていってしまった。
437GM ◆c8mKoM5yZ6 :2007/11/07(水) 23:14:43 O
>ですがね、その声が気になってンのも事実。あっしは忍び足で左側の通路へ進みやした。

薄暗い廊下の先にぼんやりと光る人影が見えた。丈の長いドレスだろうか?
風も無いのに裾はゆらゆらと揺れ、人影は滑るように音を立てずに遠のいて行く。
まるで幽霊のようだ。
そして、またもや笑い声を残して、人影は見えなくなった。

と同時に聞き覚えのある音が聞こえた。
ペタペタと粘着質な足音…あの正体不明の追跡者が、いつの間にか背後まで迫っている!
何故こんなに近付くまで気が付かなかったのか、それはレフトハンドにも分からない。
だが追跡者はそんなレフトハンドにはお構いなしに、ビームを撃ってきた!!


>「帰りを待ってましょ。
> 今から探しに行ったって、レフちーがどこまで探索に行ったかなんて分かんないし、探し回ってたらお互いが迷子になっちゃうのがオチだよ。
> レフちーは絶対に帰ってくる。
> だから、私を信じて待っててくれない?」

霊鬼がそう言ってから更に2分程の時間が経った。
『ちょっくら見てくる』にしては、流石に遅いような気がする。
「別に君達の実力を疑っている訳ではないんだ。出自の特異性から実力を正当に評価して
もらえない部隊という事も知っている。だからこそ気になってな…」
ジョルジュも不安を隠せない様子だ。偵察に出た者の実力を知るからこそだろう。

もしかしたらレフトハンドの身に何かしらのトラブルが発生したのかもしれない。
再び部屋に沈黙が訪れたその時、遺跡内に轟音が響き渡った。
音の大きさと揺れの強さを考えると、部屋からはさほど離れていないようだ。
438霊鬼 ◆F/ATTd3VB. :2007/11/08(木) 07:55:58 O
>437
更に数分が経過した。

>「別に君達の実力を疑っている訳ではないんだ。出自の特異性から実力を正当に評価して
>もらえない部隊という事も知っている。だからこそ気になってな…」
レフちーがまだ帰って来ないせいで、ジョルジュ隊長は不安になり始めている。
霊鬼はレフちーのことを信用している。
人柄にしても、実力にしても。
だから、少し遠くまで探索に出ただけだと思っていた。
霊鬼が皆に大丈夫だと言おうと口を開いた矢先、遺跡全体を揺るがすような爆音が鳴り響いた。

「ジョルジュ隊長!私、ちょっと……」
行ってきますと続けようとして、霊鬼は口を閉じた。
爆音の大きさとそれに追随して起きた揺れから、近くで何かが起ったのは間違いない。
次に何が起ったかだが、霊鬼の頭の中では先の会話から、レフちーに何かあったと既に決定してしまった。
レフちーのことも心配だが、霊鬼一人が先走って行動してしまえば、調査隊の皆が危険に陥ってしまう。
レフちーがやられてしまい、霊鬼がここを離れた隙に、この部屋に虫が詰め寄って、調査隊が全滅させられてしまう。
こんな最悪なパターンには絶対にしたくない。

「……今言おうとしたこと、やっぱ無しね。
 私はジョルジュ隊長の判断にお任せするよ。
 私が勝手にここから出たら皆が危ないしね。
 それに、やっぱり私はレフちーを信じてるもん。
 絶対に大丈夫だって」
レフちーも第六遊撃隊の隊員。
そう簡単にくたばることは無いと信じ、霊鬼はジョルジュ隊長の判断に身を任せることにした。
439レフトハンド ◆6Mrl/jPPh. :2007/11/08(木) 19:15:47 0
>>437
やっぱり女がいたようです。ですが、何やら光ってンのが気になりやした。
あっしはね、超が付く程ニガテなんです。幽霊ってヤツがね。ありゃホント駄目ですわ。
勿論こんな古い遺跡です、幽霊くらい出たって何も不思議じゃあごさいやせんが・・・
ニガテなものはどうやったってニガテでして。
カッコわるいのは承知の上、あっしは完全に逃げ腰でしたよ。
一目散に回れ右して全力疾走って具合です。え?ヘタレ野郎だって?
勘弁して下さいや、あっしは鉄人の旦那の為なら何でもする自信がありやすが・・・
正直ね、幽霊だけは別ってコトで。いやホントに。

まぁそういう訳で回れ右したまでは良かったンですよ。
でもやっぱりこの時のあっしは判断力がさっぱり抜け落ちてたようでしてね。
どうして気付かなかったのか、振り返った途端“ヤツ”と『お見合いモード』ですぜ?
そりゃもう心臓が止まるかと思いやしたよ。
>だが追跡者はそんなレフトハンドにはお構いなしに、ビームを撃ってきた!!
あーあ、あっしはどんだけツイてないんでしょうねぇ。
いや、実はツイてるのかもしれやせん。少なくとも心臓はこの通り動いてますし。
だからね、左腕のガントレットで咄嗟に庇いやした。

このガントレット、特注の品でしてね。あっしの“左手”の為に造られたンですよ。
あらゆる魔力を遮断する魔法金属《ディスペラタイド》。
そのおかげで日常生活が随分と便利になりやした。ちゃんと左手が“使える”ンですから。
撃たれたビームをこのガントレットで弾けば直撃だけは免れる、そう考えてたんでさァ。
しかし世の中ってのはホント上手くねぇ、あっしの予想は見事にハズレ。
魔力を遮断する筈なのに、ビームはあっしを直撃したンですよ。これには驚きやした。
ガントレットの曲面が、ビームの威力を受け流してくれなきゃ、死んでましたね。
拡散したビームは壁をブチ破って通路の風通しを良くしてくれたようで。
あんなのまともにくらっちゃあ、あっしは間違いなく百回は死ねるんじゃないでしょうか。

「やれやれ、そんじゃあ見せてあげましょうかね。あっしの“奥の手”ってのを!!」
ガントレットに付いた鎖を、一気に引っこ抜きやす。この鎖は全部の止め具に繋がってましてね。
引っこ抜けばホラ、あっという間にガントレットを外す事が出来るンでさァ。
ジャララララララッ・・・ガシャン!!
腕を覆うガントレットが外れて床に落ちた後、そこに在ったのは真っ黒な霧・・・
パッと見はそう見えるンですが、これでもあっしの“左手”なんです。

昔ヘマやらかした代償と、その代償のおかげで手に入れた左手、それがこの《魔神の左手》。
「あっしは荒事ァ専門外ですがね、“やられた分は利子付けてやり返す”主義なんで、そこんトコよろしく頼みまさァ。」
440ガルド ◆zCCyDiTaeI
>435
>「あ、いえ…その、とにかく今は眠ることは危険なんです!ここに寝ている者達は皆、
>夜に寝てそれきり目覚めない者達ばかりでして、貴方達まで眠りから覚めないことに
>なってしまったら我々は困ります。阻止出来なかった罪悪感も残りますし…。」
ミリアの必死の弁明にいちいち頷くガルド。
「なるほど、それではいたし方あ「@p;い。
我らは今のzsxcfgvbhjとる訳ではないので気がつかなんだ。
ニュコ殿に代わって礼をさせていただく。」
深々と礼をする、やっぱり梁にぶつかって家が揺れた。
さっきよりも軋みの程度や音がヤバイ、あと二、三回で壊れそうだ。

>「コホン、えーと…話を続けてよろしいでしょうか?」
「おっと失礼いたしました、お願いいたしますぞ。」

>「お願い致します!貴方達の任務が調査隊の救出である事は重々承知しています、
>ですがこの奇病の原因が遺跡内にて発見出来たなら、それを根絶していただきたいのです。」
しごく真っ当な依頼だが、施政院からの命令書にはその件について何も書かれていない。
こういう場合、独断による行動を咎められまいと無視することが多いのだが・・・
実際は何も書いてないと言うことはその場の判断に任せると言う意味なのだ。

>436
>「あっかんべ〜。」
>ヌコは懇願の視線に舌を出して応えた。
>「そんなのウチには全然関係ないのだ。ちょっと外の空気吸ってくるからオッサンあとは任すニャ〜。」
>そして入り口でつっかえているガルドの股をくぐり、家の外へ出ていってしまった。
そんなことを考えているとヌコが嫌がり、ガルドが何か言う前に隙間から外に出て行ってしまった。
後姿を見送るガルドの顔には苦笑が浮かんでいる。真顔に戻して振り返って
「物理的に破壊できる代物ならばお任せ下されよ。ただ、魔術的な物だった場合
排除するのに時間がかかる場合もありますがな。あと、ニュコ殿を悪く思わんで下され。
着任してからどうも虫の居所がよろしくない様なので。ああ言ってはおりますが、
心根の優しい素直な子なのです。種々諸々の波風立てる心持ではありましょうが、
ここは私に免じて荒ぶる気持ちをお収め下さいまするよう。このとおり。」
今度はきちんと距離をとって・・・なんと土下座をした。
ガチガチに鎧を着込んでいる筈なのに、まるでカエルの様にぺたんこに体を折り曲げている。
これ以上ないほど見事な土下座、教本に載せられるほどだ。