騎士よ、今こそ立ち上がれ!!8

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1 ◆pPAOEY1pWs
サタンの邪悪な野望を阻止するため、再び平和な世界を取り戻すため、
勇気ある騎士よ、今こそ立ち上がれ!!さあ、まずは自己紹介の紙に記入だ!!

【年齢】
【性別】
【職業】
【魔法・特技】
【装備・持ち物】
【身長・体重】
【容姿の特徴、風貌】
【性格】
【趣味】
【人生のモットー】
【自分の恋愛観】
【一言・その他】

※サタン側に参加する人も記入願います。

――――――騎士達の凄まじい戦いの過去だ!!――――――
騎士よ、今こそ立ち上がれ!!〜重なる心と想い編〜(7番目のスレ)
http://etc3.2ch.net/test/read.cgi/charaneta2/1140352917/
騎士よ、今こそ立ち上がれ!〜サタン復活編〜(6番目のスレ)
http://etc3.2ch.net/test/read.cgi/charaneta2/1137064700/
騎士よ、今こそ立ち上がれ!!!α (5番目のスレ)
http://etc3.2ch.net/test/read.cgi/charaneta2/1123051856/
騎士よ、今こそ立ち上がれ!!!!4
http://etc3.2ch.net/test/read.cgi/charaneta2/1118044563/
騎士よ、今こそ立ち上がれ!!!3
http://etc3.2ch.net/test/read.cgi/charaneta2/1105623580/
騎士よ、今こそ立ち上がれ!!
http://etc3.2ch.net/test/read.cgi/charaneta2/1102512969/
騎士よ、今こそ立ちあがれ!
http://etc3.2ch.net/test/read.cgi/charaneta2/1093884248/
騎士よ、今こそ立ち上がれ!!〜行くぜ大決戦!編〜
http://etc3.2ch.net/test/read.cgi/charaneta2/1148035082/301-400
2名無しになりきれ:2006/10/08(日) 23:28:39
いつまでサタンと戦うんだww
3名無しになりきれ:2006/10/09(月) 00:22:39
カイザーと互角にやり合える元騎士の現パン屋店主役でよかったら参加するぜ!
4名無しになりきれ:2006/10/09(月) 00:26:38
まだサタン生きてるのかよ!はよいてまえ
5サンタ:2006/10/09(月) 00:38:00
我は今しばし、眠りにつくとしよう……
人の子らの鐘が福音を告げる刻までな……

(血のように赤い衣を纏い、ねじ曲がった角を持つ獣を従えた男は、
そう呟いて目を閉じた)
6名無しになりきれ:2006/10/09(月) 00:40:07
666の獣(トナカイ)を従えた赤い血に染まった(ような色の)服を着た男だ!!
人間一人入りそうな袋をもったあの男だ!!
7マックス ◆BsGlQvuzhQ :2006/10/09(月) 02:05:43
>315
マックスの怪力を利用して振った長槍の一撃は、ラジャリの驚異の身体能力に軽くいなされた。
手元の長槍は怪力による速度と、男一人の体重の反発を受けたと言うのに、折れそうな気配は全く無い。
「そういうアンタもつくづくデタラメな野郎だなっ!」
マックスの顔は笑っている。サタンとの戦いの時の様に、心底楽しそうに。
マックスは刃を腕で受けた時のラジャリの目の色が、一瞬だけだが変わったのを見逃していなかった。
マックスの強さとは非常識さである。普通と大差無く見えて、実は全く違う戦法である所である。
幾ら相手が強かろうと、彼の様な人間を相手にしたことは殆ど無いだろう。
「暗殺失敗した時点で……」
そう呟きながらマックスの右手が思い切り握られる。
その握力の為に傷だらけの拳が、普通の拳とはまた違う形をしていた。
その拳を思い切り振り被り、力を溜める。完全なる無防備。完全なる前のみへの攻撃態勢。
先程鳴った笛が、チェンバル王の異変を知らせる物であった事など彼は知らない。
だが、何かを告げるという意味はある筈だ。急がねば。そう思った故にマックスが取った行動である。
マックスは確実に前から来ると読んでいた。その読みは当たり、ラジャリは正面から駆けてきた。
だが短刀を投げられた事は読んでいなかった……訳では無い。
マックスは短刀を投げられた刹那、それを抜かんとばかりにスピードを上げるラジャリを見て……。
ニヤリと、笑った。
「アンタの……」

ラジャリと短刀の位置が重なったその瞬間、マックスはこめかみへの激痛と脳への衝撃を感じた。
しかし、その時既にマックスの右拳が姿を消し、同時に短刀を彼方へ弾き飛ばしていた。
マックスの体勢は攻撃を受けて尚、その拳の一撃を放つ為に、寸分崩れる事無く立っている。
次の瞬間にはその拳は、ラジャリの顔面目掛けて動いていた。
8 ◆BsGlQvuzhQ :2006/10/09(月) 02:22:26
訂正です。

>315→前スレ>315
9 ◆HpH6dBLcFw :2006/10/12(木) 15:15:13
前318-321
風に大きく翻る皇国旗目掛けて、巨人は進む。
一歩ごとに地響きを鳴らし、逃げ散る兵隊や、射掛けられる矢をわずらわしげに払いながら。
その足が急に地に貼り付いたまま上がらなくなった。
巨人はいぶかしげに首を捻り、足元を見る。足首から先が厚く氷に覆われていた。
そこから細く一条の氷が伸びている。それを目で追う。
その先にいたのはセシリアだった。すぐさま火球を吐き付けた。

その瞬間、脇腹に衝撃が走る。続いて広がる痛みに思わず身をのけぞらせた巨人を、誓音の斬撃が襲う。
「グアアアアァァァッ!!」
激痛に巨人が咆哮を上げた。しかし右腕は誓音の目論見通りには落ちず、まだ繋がっていた。
のけぞった分だけ、刀が浅く入ったからだ。その右腕を振り、いまだ宙にある誓音の体を地面へ叩きつけ、
腹に刺さった槍を抜き、飛んできたと思しき方向へ投げ返した。
それから自分の足に向かって火球を吐き、氷を溶かす。
プスプスと黒煙を上げる足を半ば引きずるようにして、巨人は前進を再開した。

>7
ラジャリは駆ける。マックスは動かない。
投げた短刀がマックスに届く直前、ラジャリは大きく腕を引き、全力でマックスのこめかみへ叩きつけた。
もちろんこれだけで倒せる相手ではないことは承知の上。本命はこの後。
そのまま左の掌打をもう一発。さらにもう一度右を返す。
相手の脳を強引に揺さぶる技だ。顎先を掠める打撃も同様の効果があるが、
マックスが相手では首の筋力で押さえ込まれる可能性がある。
それゆえにラフなやり方を選択した。
そして二発目の掌打が打ち込まれる。マックスの頭が揺れた。

三発目が入ったかどうかはラジャリに判断できなかった。マックスの拳に殴り飛ばされたからだ。
文字通り宙を飛んだラジャリは空中で体を捻って手を地面につき、ロンダートからバク転で着地する。
額が大きく切れて、血が溢れている。とっさに顎を引いて拳に額をぶつけたからだ。
(顎か顔に食らっていたら間違いなく立てんな…)
額で受けたおかげでダメージはない。
――などと言う事はなく、血が止まる気配も全くない。

「…これでは敵わんな。逃げるが勝ち、か」
ラジャリは踵を返して駆け出す。
しかし最初にマックスへ迫ったときのようなスピードは無く、追えば簡単に捉えられそうだ。
10イル ◆uKCFwmtCP6 :2006/10/12(木) 18:58:11
>9
投げた槍は巨人の脇腹に浅く突き刺さり、誓音の右腕を狙った斬撃は、巨人の右腕を断ち切るに到らずに終わる。
思っていたよりも巨人の耐久力は強い。
中途半端な攻撃では倒せず、こちらの被害が大きくなる一方だ。

巨人は右腕を誓音を振り落とすように振るい、脇腹に刺さった槍を掴むと、イルの方に投げ返す。
勢いよく飛んできた槍はイルの遥か頭上を通過し、地平の彼方へ飛んでいく。
あの勢いを考えると、進行方向に城があったとしても、ものともせずに貫いていくだろう。

とても力が強く、耐久力も凄まじい巨人。
他の兵が放ったと思われる氷の術を、自身の足ごと火炎弾で溶かす。
巨人の足から黒煙が上がり、その半炭化しかけている足を引きずりながらも進む。
理性が消失た巨人は、生半可なことでは止まらない。

イルの現在の打撃力では巨人を倒すことは不可能。
巨人に効くような魔術を使用しても、その魔術の魔力に反応して誘爆する可能性もある。
誘爆などしたら、この模擬戦場にいる騎士達は一人残らず消え去ってしまう。
オーガスは何事もなく生きてそうだが。

イルはローブの袖口から切札とも言える赤い水晶を取り出す。
この水晶を使えば、一時的にだが身体能力や魔力が大幅に上昇する。
だが、イルの肉体では水晶の負荷に耐えられず、水晶の効力が途切れた後に、神経を削り取るような激痛が起きる。
なるべくならこの水晶は使いたくはない。
巨人と騎士達の様子を見て、使わざるを得ない状況を見極めることにした。

11マックス ◆BsGlQvuzhQ :2006/10/12(木) 23:15:15
>9
「お……?」
マックスは確かな手応えと同時に、予想外のダメージを受けていた。
ラジャリは吹き飛ばされはしたものの、空中で体勢を立て直すと、見事に着地をしてのけた。
だが、ダメージは確かに与えたようだ。額から血を流している。
ラジャリは分が悪いと見たのか、踵を返して逃走をはかった。
「……逃げるなら……」
彼は揺れる視界の中、走り去るラジャリの後ろ姿を捉えた。マックスの表情が苦々しげな笑みに変わった。
「……いや……もう遅いな……」
一歩足を踏み出す。揺れていた視界は更に揺れた。だがマックスの足は止まらない。
確実に視界が揺れていた。足腰はふらついていた。だが転ぶことはなく、足の勢いも増していく。
数秒経った頃にはラジャリを、もう十数メートル先の所までに捕捉していた。
「……大人しく……しろっ!」
一気に追い抜き、振り向き様にラジャリの両脚目掛けて蹴りを放つ。
12セシリア ◆TI6/2FuWqw :2006/10/18(水) 02:45:14
>9
氷は巨人の足を捉え、前進を阻む。
だがセシリアが次の一手を打つよりも、巨人の反応のほうが素早かった。
その視界にセシリアが映ったとたんに火球を吐く。
それなりに距離もあり、単発。避けるにあたって難となる事は何一つない。
だが、その威力は問題だった。最小限の動きでは直撃は受けずにすむが、余波が及ぶ。
セシリアは追撃を諦め、大きく横に跳んで火球の炸裂を回避した。

>「グアアアアァァァッ!!」
舞い上がった爆煙と土ぼこりが演習場を渡る風に吹き散らされ始める。
その瞬間、巨人の咆哮が轟いた。セシリアは魔石の力で風を起こし、強制的に視界を確保した。
晴れた煙の向こうには血を流しながらも足を前へ運ぶ巨人の姿があった。
血が出ているのは明らかに刀傷だ。誓音の音撃だろうか。セシリアは考えた。
だが、すぐに思い直す。誰がダメージを与えたかは関係ない。
足止めをしたはずの敵が何事もなく前進していることのほうが重要だ。

――何事もなく?いや、巨人の足からは煙が立ち昇っている。
それでようやく、自分の足ごと氷を炙って溶かしたのだと気づいた。
目指しているのは変わらずに本陣である。
「……ふむ」
セシリアは拳を顎にあてて少し考え込む。
妨害さえしなければ巨人はこちらへ攻撃を仕掛けては来ないというのは良くわかった。
つまり、何よりも本陣襲撃を優先させているわけだ。
では、知能が低そうな巨人が、何を持って本陣の位置を判断しているか。

軽く地を蹴って飛び上がり、そのまま本陣へ向かった。
着地はせずに並ぶ兵の頭上を掠めるように飛行する。
そして本陣を離れたセシリアの手には、旗手からもぎ取った皇国旗が握られていた。
旗は一流だけではないのでまだ本陣にも皇国旗は翻っているが、
目前でこれをちらつかせれば巨人の気は十分に引けるのではないかと考えたのだ。
「さあ、陛下はこちらにおわすぞ!」
セシリアは声を張り上げて巨人の目の前を何度も飛び過ぎた。
13 ◆HpH6dBLcFw :2006/10/19(木) 04:11:12
>11
ラジャリの耳に背後から迫る足音が届く。
地面を踏み締め、蹴り付けるそのリズムは急速に接近してきた。
次の瞬間にはラジャリと並び、さらにその次の瞬間には前に出る。
>「……大人しく……しろっ!」
そして最後の一瞬、足音が止み、代わりに振りぬかれた足が空気を引きちぎる音が木々の梢を揺らす。

そう、丸太程度へし折りかねないマックスの蹴りは、ラジャリの足を刈ることなく『振りぬかれた』のだ。
逃げ出したときとは打って変わり、素早く跳躍して蹴りをかわしたラジャリの口元には笑みが浮かんでいた。
空中でマックスの肩に手を当て、着地と同時に腕を絡ませる。
マックスの蹴りの余勢、着地の反動、関節の反作用、全てを利用して――
「ぉおおおおっ!!」
ラジャリはマックスを投げ飛ばした。そのまま枝をへし折りながら、マックスは森を飛び出す。
良くて肩が抜ける、悪ければ二度とまともに動かなくなるような投げ方だが、
ラジャリの手にはそういった手応えはなかった。

「どこまでも化け物だな。……せいぜい化け物同士仲良くしていることだ」
そう言い残して森の中へ姿を消す。だがそこで膝をつき、崩れ落ちた。
出血が多すぎたせいで、意識が朦朧とし始めている。
「くっ、ここまでか……まぁ、時間稼ぎはアレがやってくれるだろうが……どうなるかな」
『アレ』と口にするのと同時に視線を上げる。重なり合った葉の隙間から、巨人の姿が見えた。
恐らくマックスはその視界に入るだろう。

>12
巨人は進む。止まる気配は微塵も無い。視界に映る旗は急速に大きさを増してゆく。
そして、視界から消えた。
ぶんぶんと左右に首を巡らせる。皇国の紋章が入った旗が飛び回っていた。
>「さあ、陛下はこちらにおわすぞ!」
そうか、ここが本陣か。なら次は――オーガスの打倒だ。巨人は即座に判断し、行動に移した。
目標であるオーガスを探す。…が。当然ここにオーガスはいない。
逃げ遅れている兵士達やマックスが視界に入る。
巨人は目に付くもの全てにて当たり次第に火球を吐き、手足を振り上げ暴れだした。
14巨人:2006/10/19(木) 15:25:28
おーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー!!!
15誓音 ◆aGZ9OPSgQQ :2006/10/20(金) 22:02:52
振り上げられた刀は見事に腕を切断できなかった。
>「グアアアアァァァッ!!」
絶叫する巨人。
そして誓音はふっとんだ。
地面に着地する誓音。
どうやら思った以上に堅いらしい。
これは困ったものだ。
少々しかめっつらをする誓音。
するとどっからか声が響く。
>「さあ、陛下はこちらにおわすぞ!」
セシリアだ。
セシリアの機転で巨人は振り返る。
そしてオーガスを探し出す。
これはチャンスだ。
誓音は怪物の手を下に向け、力を蓄える。
そして巨人が暴れ出した。
誓音は灰色の怪物の手を白く輝かせる。
暴れるという行動は少なからずとも闇の属性を持つ。
即ち光の属性が有効と見た。
じわじわと怪物の手が灰色から白へと変化する。

-武洗白手の砲!発動。

武洗白手の砲、これは誓音が持つ大砲手の一つだ。
これは闇に犯されてる人間の闇その物を攻撃する砲。
対象物の闇の精神のみを攻撃し、浄化するため、
実際の肉体的ダメージはほとんど皆無に違い。
誓音は手を巨人の頭に向けた。

-雪光砲!

白い粒子状の砲が王に向かって放たれた。
16イル ◆uKCFwmtCP6 :2006/10/20(金) 23:28:41
>12>13>15

>「さあ、陛下はこちらにおわすぞ!」
一人の騎士がオーガス皇国の旗を持ち、旗を見せつけるようにして、何度も巨人の前を横切る。
巨人はその旗の動きに反応してか、何かを探すような素振りを見せる。
巨人が何かを見つけることができたかどうかは知らないが、近くにいた兵士達に向けて火炎弾を放ち、手足を振り回して暴れだす。

誓音が暴れる巨人の頭部を狙って、白い粒子の砲弾を放った。
白い粒子の砲弾は魔族のイルにとっては、非常に相性が悪いのか、見ているだけで気分が悪くなる。
巨人にあの砲弾が効くかどうかは分からない。
だから、巨人にはあまり効果がないと仮定して、イルは動いた。

イルはローブの袖下から長剣を取り出し、呪文を唱える。
イルの姿がその場から消えると、次の瞬間には、巨人に狙われた兵士達の目の前に立っていた。

兵士達を狙っていた火炎弾を、イルは魔力を込めた長剣を振るい、かき消した。

17 ◆pPAOEY1pWs :2006/10/22(日) 23:12:49
ランべの呪文詠唱はいよいよ終盤に入る。
じわじわと魔力を上げるランべ。全てこの一発で決まるつもりだ。

そして…これで…

ランべは静かに目を閉じる。
思えばあの時途絶えるはずだった命だった。
あの修羅場とも言える壮絶な戦で死んでいった仲間の事を考えると自分は随分長生きしたものだ。

「(今更悔いなど無い…)」

ランべは目を静かに開いた。
ランべから見る巨人は、濁りに濁り最早そこに何者かがいるという事しか分からない。

強者必衰の理は余りにも残酷だった。

「(これで全てを終わらせる…)」

静かに微笑むランべ。


「(そしてこれで……お別れだ。)」


ランべは上空を見た。
分身のランべとローズは抱えられて以前そこにいた。
口を動かす分身ランべ。そしてそれを黙って聞き入るローズ。
ランべは…再度決意した。
18セシリア ◆TI6/2FuWqw :2006/10/23(月) 02:43:15
>13>15
巨人は周囲を飛びまわるセシリアをしばらく目で追っていたが、
不意に視線を下げ、何かを探すようなそぶりを見せた。
何かを見つけたのか、それとも見つからないゆえの癇癪かはわからないが、
すぐに大暴れを始める。

「花火を見たい気分ではないんだ、すまないが」
空中で旗を地面に向かって投げ、その勢いで一回転したセシリアは呟きながら左腕を構える。
旗が突き立つ。同時にセシリアも撃ちまくった。巨人本体ではなく、火球が狙いだ。
『演習』で兵が死ぬなど、これほど馬鹿らしいことはない。
ところかまわず撒き散らされた火球を次々に落としていく。
撃ち漏らしもあるが、それくらいはまぁ避けるなりなんなりしてもらおう。

セシリアが右手側の火球撃ち落し、真正面から飛んできたものを
半回転してマントで弾くと同時に白光が空へと駆け昇る。
巨人とじゃれている隙に誰かが攻撃を仕掛けたようだ。
なるほど足元から上に向かって放てば周囲の兵も巻き込まずにすむ。
セシリアは光が収まり繰らぬ内に、もう一度氷を放った。狙いも同じく足だ。
ほんの短い間しか足止めできないのは先ほど証明済みだが、
裏を返せばほんの数秒は確実に止められたということでもある。
今放たれた一発で片がつかなかった場合、その『ほんの数秒』で十分追撃は可能になる。
19 ◆HpH6dBLcFw :2006/10/25(水) 15:46:53
>15-18
巨人が吐き出した火球をセシリアがことごとく撃ち落していく。
だが巨人はそれを気にかける様子も無く逃げ散る兵士を蹴り飛ばし、
暴れる馬を引っ掴んで投げ、火球を吐きまくり…
つまるところ何一つ変わることなく淡々と大暴れを続けていた。

だから、下方に白く光るものに気がつくのが遅れた。
そして、気がついてそちらへ目を向けた瞬間、
巨人はその光が誓音からの一撃である事を知覚することも出来ずに撃ち抜かれた。
痛みは無い。だが何か体が溶け落ち、萎んでいく、そんな不快感があった。
実際にいくらか小さくなっている事には気がついていない。
頭を振り乱して悶える巨人の足を、再び氷が覆う。
それでも巨人は苦悶する事をやめなかった。
凍りついた足が折れる。
前のめりに地面に倒れこんだ巨人はなおも足掻く。
――まだだ、まだ目的は果たしていない。

「ガァアアアアア――――ッ!!!」
両腕をついて上体を起こし、そこから飽きもせず火球を吐いていた巨人が大きく咆える。
脇腹から、二対の肢が生えた。先には指は付いていなかった。
体内の魔力が妙な干渉を起こした結果が、肉体に現れたのだろうか。
すねの中程から先がなくなった足も変化を始めている。
急速に長さを増し、その分太さを減じながら何本にも枝分かれし、
最終的には下半身全部がムチのような触手の塊へと変貌を遂げた。

巨人―であったもの―は元からあった両の腕と新たに生えた肢で体を支え、
背からも生えた触手を出鱈目に振り回し、辺り一体をくまなく薙ぎ払い始めた。
合間合間に火球を吐く事も忘れない。
兵士をふっ飛ばし損ねて地面を打ち据える触手が、盛大に土ぼこりを上げていた。
20イル ◆uKCFwmtCP6 :2006/10/25(水) 18:20:29
>18>19
誓音の放った白い光の砲弾が巨人の頭部に当たる。
その効果により巨人の体は若干ながら縮み、頭を振り乱して悶え苦しむ。
空を舞う騎士が苦しむ巨人の足下を凍りつかせ、巨人は前のめりに倒れた。

今が巨人を討つ絶好の機会なのだろう。
名も知らぬ兵士達がこぞって巨人に向かっていく。
だが、巨人の内包する魔力が変異し、さらに危険なものに変わっていくのをイルは感じ、その場から動かなかった。

>「ガァアアアアア――――ッ!!!」
二本の腕で上半身を支え続け、火炎弾を吐き続けていた巨人は咆吼を上げる。
巨人の脇腹から指の無い腕が生え出し、下半身からは触手を生やす。
巨人は巨人でなくなった。
上半身から四つの腕で体を支え、無数の触手のみとなった下半身と、背中から生やした触手をゆらゆらと漂わせている。
巨人の内包していた魔力に何らかの刺激を与えてしまった為に、このような変化を起こしてしまったのだろう。

「もう…使うしかないようですね…」
イルは手にしていた赤い水晶を飲み込む。
体の中で水晶が溶け、体に力がみなぎってくる。
イルは化け物に向かっていった。

化け物は触手を縦横無尽に振り回して暴れ、火炎弾も忘れずに吐いている。
どれだけの兵士達が被害にあったのだろうか。
近くにいたチェンバル国の兵士達は全滅していることだろう。

イルの目の前に触手が叩き付けられた。
土埃が煙幕のようにイルの視界を遮る。
イルは飛び上がって土埃の中から脱出すると、地面を叩き付けた触手の上に乗り、化け物に向かい走る。
触手の終着点、化け物の背中に到達すると、イルは魔力を込めて切味を増した長剣を、化け物の背中に振り下ろした。

21セシリア ◆TI6/2FuWqw :2006/10/28(土) 05:46:39
>19-20
光が失せ、巨人が苦悶する。その足を狙い過たず氷が包んだ。
だが巨人はその身を捩って身悶え続ける。
表面が澄み溶かしていた足がその動きに耐えられなかったのだろうか、
周囲を包んだ氷ごと砕けて折れ、巨人は地響きを立てて倒れこんだ。

巨人はそれでも体を起こし、火球を吐き続ける。
倒れこんだのを好機と見たか、一部の兵士が巨人へ向かっていったが、
彼らは自身が持っている武器が木剣である事を失念しているらしい。
「下がれ、あとは我らがやる!」
だが一喝された兵士らが実際に巨人から離れたのは、巨人の体に異変が起きてからだった。

虫の肢のようなものが脇腹から生え、両腕とともに体を支え、
下半身はばらばらと解れるようにして触手へと変化した。
そしてそれを出鱈目に振り回し始める。人や木や馬が軽々跳ね飛ばされていく。
その光景自体は先ほどとあまり変わらないが、頻度は数十倍だ。
何かを狙っているわけではなく、届く範囲内で闇雲に振っているようで、
草の根ごと抉られた土が舞い上がり、視界を遮っている。
さらに触手の隙間を縫いながら火球も吐き出している。
それを撃ち落したセシリアは、間髪要れずに指輪の魔石を起動した、
地面が隆起し、壁を作り出す。次いで鎧の魔石でその壁を凍らせる。
巨人の頭の位置が下がったため、ほぼ水平に火球が飛んで来るためだ。
撃ち漏らせば背後の味方に被害が出てしまう。

一応後顧の憂いを断ったセシリアの目に、土煙の中を巨人に向けて駆けて行く影が映った。
長髪、身長からすると女性だろうか。この状況下でわざわざ接近を図ろうというのだから、
何がしかの『手段』は持っているのだろう。とめる必要はないと判断したセシリアは巨人の後方へ回った。
のべつ幕なし振り回されている触手を先に何とかしないと、本体へ攻撃を届かせるのは面倒だと見たからだ。
左手を土煙に向かって大きく振る。突風が吹き抜け、舞い上がる土の中に一筋の道を作る。
はっきりと位置を確認したセシリアは、左腕を、今度は振り上げ、さらに振り下ろす。
土で出来た槍が幾本も天へ伸び、真空の刃がそこへ向かって放たれた。
22誓音 ◆aGZ9OPSgQQ :2006/11/01(水) 22:36:06
はっきりと分かる手応え

―効いた…!!

即座に次の攻撃に移ろうと取りかかる・
足が折れても足掻きに足掻く巨人。
ここまで来たら後は押すのみ。
しかし、戦闘とはいつも思いも寄らない事が起こる。
突如変化は始まる。
誓音の全身の肌に寒気が走る。
瞬く間に触覚の塊となる王。
誓音は唖然とする暇もなく背後に飛ぶ。
火球が襲ってきたからだ。
余りにも急な攻撃に避けきることはできなかった誓音。
誓音の怪物の手先に火が当たる。
「っ!!」
誓音は手先を見た。
白さに焦げの黒が混ざる。
誓音は暫くそれをじっと見た後、
巨人をしっかりと睨んだ。
ここまできたら最早救うも何もないような気がした。
しかしここで諦めたらお終いだ。
過去が声掛ける。

―殺ッチマエヨゥ

そう、
ファルコンとカイザーに救われたのにまた落ちてどうする。
誓音は一瞬歪んだ心蔵を手でうつと
軽やかに飛び上がった。
イルの魔力が恐ろしいほど上がる。
誓音は巨人に向けた手は相変わらずの白さを持っている。

「唸れ…」

-白虎砲!!

白き虎と化した砲が巨人の胸元へ飛んでいく。
>19-22
最早国王の状況は最早悲惨の一言であった。
足は折れ、その身は前へ倒れ、足掻くも何も出来ない状況。
まあ、嘗ての戦争の誇り高き勇者達が集団リンチ受けて、
魔術の力で強くなっただけの王様が無傷でいられる事はまず無いと思っていたが…。
まるで最後の悪あがきかのように暴れ続けている巨人をなんとも言えない表情でみつめるローズは呟いた。

「……酷い有様ね…」

そのつぶやきは呆れている様子が伺える。ローズを抱えるランべも黙り込む。
しかし、だからといってその目は完璧な勝利を見ている訳ではなかった。
二人は知っているのだ。
どんな生物でも窮地に追い込まれたときこそ恐ろしい物は無いという事と…

嫌な予感は大抵当たってしまうを。

>「ガァアアアアア――――ッ!!!」

猛獣のように叫ぶ嘗て王だった者。
そしてそいつの肉体に禍々しき変化が起こる。
脇腹に生えた四肢、そして次第にそれは肉体内で繰り返し起こる変化によって大きなものとなっていき…
王はあっという間に触角の化け物と化した。

「これは…」

思わずローズが何か言おうとした次の瞬間だ。
触角の化け物の触角の一部がもの凄いスピードでローズ達を襲ってきた。

「!?!!!キャァアッ!!」

思わずローズが叫ぶ。
しかしランべの分身はローズをいっそう強く抱きかかえるとまるで地上にいるかのように軽やかに左に飛び避けた。
ランべの分身のローブの端が少し欠ける。

ローブの端が欠ける?

一瞬それに寒気を覚える。
ローズはゆっくりと顔を上げる。そう、意識してないのにゆっくりと。
そして…そこに居たのは…

「――――ラン…べ…?」


半分肉体が欠けた、ランべだった。

ローズの顔色が変わる。
ランべは優しく笑う。

地上にいるランべは最後の呪文の一文を叫んだ。

「「Yo !God. It changes into the shuttlecock that brings my soul close to you and
it falls behind!」」


聖なる偉大なマリアの御加護!!!


ランべは巨大な白いマリア像と化すと、光の無数の粒子となり、巨人の餌食となった屍に宿った。
そしてランべの粒子を受けた屍は生き返る。
ローズは凄まじい光の中、自分を抱えているランべの目だけを見ていた。
そして気付く。

嗚呼…この男は…。

そして、生きが返った屍はイル、誓音、セシリアを助けようと生き返った兵達は巨人を押さえつけた。
聖なる御加護を受けた人間の力は凄まじく、
先ほどまで巨人の前ではただの虫けら当然だった者達の力は、まるで狩る側になったかのように豹変していた。

ローズを抱えていたランべに罅が入ったのがわかった。
25 ◆HpH6dBLcFw :2006/11/02(木) 05:10:55
>20
大きく振り上げられた触手の一本が地面を激しく叩く。その上に、何かが乗ったのを巨人は感じた。
すぐさま触手を振り上げてそれを払い落とそうとしたが、その反動すらも利用して一散に駆け寄ってくる。
それがオーガスの手の者―イルであると気づいたときには、その姿は視界から消え、
次の瞬間には背中を激痛が走りぬけた。
「ゴガァァァァァァッ!!」
痛みに身を捩り、背に乗っていたイルを跳ね飛ばす。
長く深く走っていた傷は、薄く煙を上げながら見る間にふさがっていく。

>21
一層激しく振り回し始めた触手の一部が、動きを止める。同時に再びの苦痛。
セシリアの生み出した土の槍によって、下半身部分の触手が串刺しにされていた。
さらに新たな痛み。風の刃が土の槍ごと触手を一気に切り飛ばしていく。
巨人は反射的に残っている触手を振るい、土塊と触手の切れ端をまとめてなぎ払い、
セシリアへ叩き付けた。

>>22-24
後方のセシリアに気を取られている隙に、巨人は完全に兵士たちに囲まれていた。
これまでそうしてきたように、触手を振り回して跳ね飛ばす。
だが、これまでとは違い、跳ね飛ばされた兵士たちはすぐに起き上がり、徐々に包囲を狭めていく。
すぐに一人の兵士が巨人の肢に取り付いた。巨人は肢を振ってそれを振りほどく。
その間に別の兵士がほかの場所に取り付く。
いかに強化されているとはいえ、一人一人では巨人に適うべくもない一兵卒だが、
取り付き、振りほどかれ…と繰り返すうち、巨人の動きは明らかに阻害され始めた。

巨人は先ほど氷から抜け出したように、自分の足元に火球を吐き一気に脱出しようと、大きく胸を反らせ息を吸い込む。
そして体を振り戻した瞬間、その胸元を誓音の技が襲った。同時に火球が炸裂し兵士を吹き飛ばしたものの、
先ほど感じた不快感がより強く巨人を苛む。

「ゴオオオオオオアアアアアアッッッ!!」
一際大きく咆えた巨人の傷が一気に治癒する。――が、それに伴って全体が徐々に萎んでいく。
暴走した魔力は活動の源であると同時に、身体を構成している一部であるため、
急速な身体の再構築によって失われた魔力の分だけ体積が減っているのだ。
やや小さくなったながらも完全に元の姿を取り戻した巨人は、
回りに群がる兵士を触手で遠ざけはするが、しかし動こうとはしかった。

今、巨人と化した王の脳裏にあるのはオーガスの打倒、それのみである。
しかし思考力に乏しいながらも現状の戦力差ではそれが困難であることは理解できた。
(そもそもオーガスがいる場所を間違えているわけだが)
だが、持ち得るすべての手段を用いて、オーガス打倒を果たすという目的は何があっても曲げられない。
――では、どうすべきか。
『持ち得るすべての手段』、その最後に置かれたものをここで使うより他はない。

巨人の体内を魔力が駆け巡る。
兵士達を跳ね除け続ける間にも魔力の加速はとどまる気配を見せない。
やがて巨人の身体が小刻みに震えだす。鍋蓋が蒸気でカタカタと音を立てるように。
放っておけば今にも『蓋』を跳ね飛ばして、何かが弾けだしそうな様子だった。
26イル ◆uKCFwmtCP6 :2006/11/04(土) 22:27:49
>21->25
確かな手応えがあった。
化け物は苦悶の叫びを上げて触手を激しく振り回し、痛みに身を捩らせる。
化け物が激しく動く為、その場に立っていられなくなった。
イルは軽やかに跳躍し、化け物から離れた地面に着地する。

オーガス騎士達の化け物に対する攻撃は止むことはない。
激しく振り回される触手に大きな土の槍が突き刺さり、突き刺されて動かなかった触手を、土の槍ごと真空波が切り飛ばす。
空に忌々しき巨大な聖母の像が現れ、光の粒を戦場にばら蒔く。
倒れた兵達の屍に光の粒が浴びせられ、兵達は死者の国から舞い戻り、再び化け物に挑んでいく。
人間達にとって聖なる加護のバックアップを受けた為、死ぬ前よりも格段に強くなっている。
今度は簡単にやられることは無いだろう。

化け物は、自身の体に張り付いてくるゾンビ兵達を振りほどこうと触手を振り回す。
ゾンビ兵達は振り払われるものの、すぐに化け物にまた張り付きにいく。
そのことに煩わしさを化け物は感じたのだろう。
ゾンビ兵達を一気に焼き払おうと火炎弾を吐く体勢をとる。
火炎弾を吐こうとした瞬間、誓音の虎の形を模したエネルギー体が化け物に当たった。

>「ゴオオオオオオアアアアアアッッッ!!」
化け物は大きな叫び声を上げると肉体を再生させる。
代償として肉体の大きさが縮んでいるが、暴走した魔力が消費している為であるからだろう。
だが、化け物の内包する魔力が急激に高まる。
残りの魔力を無理矢理に高めるそのやり方。
あれでは肉体が耐えきれずに爆発してしまうだろう。

「自爆を狙っているのですか?」
化け物の体が小刻に震え出す。

「そんなことはさせません!!」
イルは化け物に向かって走り、先程と同じ様に触手に飛び乗って、化け物の体を走る。

「その魔力、貰わせていただきます」
イルは化け物の魔力を無害な形で大気中に放出するべく、長剣を化け物の背中に突き刺そうとした。
27セシリア ◆TI6/2FuWqw :2006/11/07(火) 14:05:27
>22-26
隆起した土が触手を縫い止め、動きを止めたところで風の刃が根元からそれを切り飛ばしていく。
巨人は切断された触手が地へと落ちる前に残った触手を水平に振り、
触手の切れ端と抉れた土をまとめてセシリアへ向けて飛ばした。
セシリアはその場でくるりと一回転してマントを大きく振る。
巻き起こった旋風が、飛んできたものを弾き飛ばす。周辺に盛大に土煙が立ち、また視界を塞いだ。

もう一度風を起こして土煙を払うのと、光るものが戦場に降り注いだのはほぼ同時だった。
上空を見上げると聖母像が輝いている。いぶかしみながら視線を水平へ戻すと、
光を浴びた兵士たちが起き上がるのが見えた。折れた腕を揺らし、血の跡を引きずって、
兵士たちは巨人へ向かってゆく。すぐに触手で跳ね除けられるが、即座に起き上がり、また巨人へ向かう。
程なくして巨人の足元は兵士たちに完全に押さえ込まれた。
巨人は煩わしげに大きく身をのけぞらせる。火球を吐いて爆風で兵士を一気に散らすつもりだろう。
反らせた身体を勢い良く前へ戻す。その瞬間、白い光を曳いた虎がその胸元へ飛び込んだ。
同時に火球が炸裂し、兵士と地面を一気に吹き飛ばす。

吹きぬけた風が土煙を運び去った後には、身悶える巨人の姿があった。
大きく咆哮し、身を捩る。と同時に切り落とした触手が次々と再生していった。
それに伴って肉体が縮小していく。回復に要するエネルギーは身体を分解することで得ているらしい。
吹き飛ばされた兵士たちがまた巨人に寄って行くが、巨人は密度を取り戻した触手の攻撃でそれを寄せ付けない。
しかし前進を再開するかと思われた巨人はその場にとどまり、ただ寄ってくるものを跳ね除けていた。

が、すぐにその身体がひきつけを起こしたように震えだし、内在する魔力が急速に膨れ上がるのが感じられるようになった。
「…さしもの陛下と言えどこれに巻き込まれては――」
いや、たぶん無事でいるだろう、とセシリアは思ったが、兵や自分らが無事でいられる自信はない。
なんとしても食い止めなくてはならない。すぅ、と細く息を吸った。
鎧と腕輪とマントの留め金の石がそれぞれ光を放つ。
「ぃ行けぇっ!!」
セシリアが叫ぶと同時に、氷片混じりの旋風が巨人の足元から吹き上がった。
28誓音 ◆aGZ9OPSgQQ :2006/11/10(金) 22:11:09
多大なる猛撃。
復活する兵。
それは、どこか幻想的に感じられる。
誓音は驚いた。
何が起きたのか分からない。
一時的でも、
人が生き返るというのは
そう簡単な事ではない。
兵に抑えられる王。
こんな異様な光景の中、
誓音は王が突如震え始めたのに気付く。
この流れ。
このパターン。
誓音は察した。

「自爆する気ですか…!?」

誓音は地面に手を当てた。
イル、セシリアもなんとか止めようとする。
そして誓音も。
地面が白く輝く。
「我!天神に捧ぐ!」

―白柱砲!!

そして次の瞬間王の胸に一筋の光が地面から出、
王の心臓を貫いた。
最後の精神へのトドメのつもりだ。
一瞬にして
抵抗力を無くさせ神へ屈服させようとする光は、
王を貫き天高く舞い上がる。
誓音は王を睨んだ。

地上の激闘の中、宙は静かだった。

「……ランべ?」

名前をもう一度呼ぶ。しかしランべは何も語らない。目についた十字の罅。
ローズはその罅を見たことがあった。

――それは、医学本に記されたある病気に犯されてる証。
その病は名前は忘れたが確か原因不明の聖病の一つで、よく歴代の英雄達がなると言われており、その症状は…

身体の中をじわりじわりと蝕み、最終的には十字の罅が入り砕け散るという物。

ローズは震えた。そしてスッとランべの顔に触れる。
するとランべのローズを抱えていた腕が砂となり堕ちた。
そしたらローズも堕ちる。

しかしローズは綺麗に宙を一回転するとローズは地面に着地した。

―ストンッ…。

着地し暫く呆然とする。
そして、いずれランべの残っていた身体は灰となり次々にローズの頭上に振ってきた。
気付けば本物のランべも灰と化していた。
戦場の中、ローズだけは水を打ったかのように静かになっていた。

…そしていずれ灰と一緒に手紙が振ってくる。

暫くじっとした後地に堕ちた手紙に気づきそれを拾い上げるローズ。
自爆しようとする巨人。それを止めようとするイル。そしてローズは手紙を開いた。
そしてローズは、そこにあった文字に目を見開く。
そこに書かれた文字の一つ一つを拾い上げる。

――ランべ…貴方…。

「ロ、ローズ殿!!」

するといきなり死んだはずの暗殺者の剣士が駆けて来た。
気付けばマリア像の力を受けた兵達の傷が無くなっている。
暗殺者はおどおどした様子でローズに聞いた。
「い、いいい一体何が起きたんですか!?ききき気付いたらこの状況でありまして。」
「黙れ。」
そう一喝するローズ。それに暗殺者の顔は固まる。
しかしそんな暗殺者に目もくれず、ローズは手紙を丸め剣を抜いた。

「…全く…かっこづけにもほどがあるわね…。」

そう呟くと巨人を鋭い眼光で見る。
そして次の瞬間、ローズは薔薇の種を数個地面に落とす。(>>25)
そして、水筒の水を剣の刃にぶっかけながら、先ほど語ったランべの言葉をローズは思い出した。。

『絶対的不利な状況の中、嘗ての歴代の戦士達に勝利を掴ませた力を知ってるか?』

…それは…。

"大切なモノを護るという意志!!"

そしてローズ種に向かって剣を突き刺した!!

――ザクッ!!!

「「毒炎の赤き薔薇!!発動!!」」

そう大声で叫ぶ。そして次の瞬間地面に一直線に亀裂を入れながら赤い薔薇が巨人へ暴れ狂いながら襲いにかかっていった!
+++++++++++++++++++++++++++++++++++++++
毒炎の赤き薔薇
対象者に蔓をからみつかせ、炎上する薔薇。
31 ◆HpH6dBLcFw :2006/11/13(月) 02:53:19
>26
周囲にいる兵士達を跳ね飛ばし続ける触手に、イルが飛び乗り、走る。
先ほどとまったく同じに巨人の背まで駆け上り、剣を振り下ろした。
切っ先が深々と瀬に埋まる。巨人は即座に触手を伸ばしイルを投げ飛ばした。

>27-30
その瞬間、胸板から背に刺さった剣までを大地から立ち昇った白い光が貫き通した。
完全にイルに意識を取られていた巨人にはそれを避ける術などなかった。
自らの黒々とした部分を照らし出されるのを嫌がるかのように身を捩る巨人へ、
さらに吹雪と炎が襲い掛かる。烈風に吹き上げられた氷片が巨人の全身をくまなく切り裂き、
踊る炎が血の吹き出す傷口を炙る。血と肉の焦げる臭いもまた、
氷片とともに風に巻き上げられて行く。

それぞれが多大な打撃を巨人にもたらした。
負った傷を治癒しなければ魔力が高まりきる前に死に至る可能性がある。
しかし、傷を治すには魔力を消費する。
魔力を消費しすぎると、自爆の威力が小さくなってしまう。
巨人は傷を治癒しないことを選択した。
流れ出る血の量と比例してますます魔力が高まっていく。
ほんの数秒で、針で突付けば破裂するのではないかというほどまでになった。

そして、実際に弾肩口の辺りで小規模な爆発が起き、血と魔力が溢れ出た。
もちろん誰かが針で突付いたわけではない。
深手を負った体は、魔力を循環させ増幅する器としての強度を持たず、
高まった魔力の圧力に負けてしまったのだ。
開いた水門から水が流れ出ていくように、巨人の傷口から勢い良く魔力が流れ出してゆく。
やがて、巨人の身体は砂と化して崩れ落ち、内部に残っていたいくらかの魔力が一気に吹き出して、
跡形もなく吹き散らされた。

あとにはチェンバル王が倒れていた。かたわらには巨人の背に刺さっていた剣が突き刺さっている。
連合側の王の一人がその姿を見つけ、即座に号砲を撃たせた。
――総大将の撃破による、演習の終了である。
やがてチェンバル軍の近衛と典医がやってきて王の身体を調べ始めた。
気を失っているだけとわかると、すぐに王を運んで本陣へ戻っていく。
とりあえずの区切り、というわけである。

『あとのこと』に関してはまた別の話だ。
もっとも補償にいくらかかった、などという話をわざわざ聞きたい者もいないだろうが。

他に言うべきことがあるとすれば――
チェンバル王の器では未来永劫オーガスに勝つのは無理であるということだけだった。
32イル ◆uKCFwmtCP6 :2006/11/13(月) 13:50:01
>27->31
イルは化け物の背に長剣を突き刺すことができた。
そして、これから魔力を放出させようとする矢先、化け物がイルに触手を向けてくる。
イルが触手に気付いた時には、触手はイルを掴み、大地に投げ捨てていた。
イルは地面に叩き付けられる前に、魔力で体を包み込む。
魔力が衝撃を緩和し、激突の際、多大なダメージを負うことはなかった。

イルは身に覆った魔力を消し去り、再び化け物に挑もうとする。
だが、他の騎士達が化け物に対し、大規模な攻撃をしており、迂濶に攻めていっては巻き添えを喰らってしまう。
イルは騎士達の連続攻撃の切れ目を待つことにした。

連続攻撃に切れ目が現れ、イルは化け物に向かう。
化け物の体は今にも張り裂けそうな程、魔力が膨れ上がっている。
魔力を放出させて助けようとするなど、もう不可能である。
殺すしかないと、イルは思った。
だが、事態はイルの予測とは裏腹に、良い方向に向かっていくことになる。

化け物の傷口から小規模な爆発が起こり、爆発が起きた傷口から、血や魔力が流出する。
その流れは止まることはなく、魔力が流れ出るに従い、化け物の体も砂に変わっていく。
化け物の体が全て砂と変わった時、残った魔力が弾け、化け物の体は跡形もなく消え去った。
化け物が居た場所には、チェンバル国王が倒れていた。

模擬戦終了の合図の号砲が鳴った。
チェンバル国王の下に側近等が近付いて、国王を調べた後、国王を自陣に運んでいく。
イルは地面に突き刺さった長剣の下に行き、長剣を地面から抜き、ローブの袖口に入れた。

イルは誓音の方に歩いていく。

「これで私達の仕事も終りでしょう。
 私達も本陣に戻りましょう」
イルは誓音にそう言うと、オーガス軍の本陣に向かい歩いていった。

33セシリア ◆TI6/2FuWqw :2006/11/18(土) 15:37:20
>31-32
渦を巻いた風が勢いを増す直前、白光が巨人を貫く。
間髪を入れずに風が氷とともに荒れ狂う。
そこへ、誰が放ったものか炎が纏わりつき、氷で引き裂かれた巨人の身体を焼く。
背に刺さった剣が、炎を反射してぎらぎらと光っていた。

風と炎が収まりかけ、巨人の姿が見え始める。
黒く焦げた皮膚の隙間から赤い血と肉が覗いていた。
さっき見せた回復力であれば、おそらくこの傷も瞬時に塞げるだろう。
だが巨人はそうしようとはしなかった。
傷口から血があふれる。その流れ出た分を補うかのように魔力が一気に膨れ上がる。
セシリアは魔石を構えた。竜巻で巨人を上空まで吹き上げ、そこでもう一撃食らわせるつもりだ。
だが、風が渦を巻き始める直前、巨人の身体が弾けた。

――間に合わなかった。セシリアはそう思った。だが予想していた衝撃は来なかった。
見れば弾けたのは肩口だけで、そこから血と魔力が流出している。
恐らく、高めた魔力を物理的な力に変換して放出するのに体の強度が追いつかなかったのだろう。
肩の傷から始まった崩壊は全身に及び、やがて砂となって崩れていった。
身体の中心部に残っていた魔力も砂の器を破って弾け、風となって散っていく。
セシリアはマントを口元に当てて砂が運び去られていくのをやり過ごし、
それから草や砂が波紋状に広がる中心に眼をやる。
そこに倒れていたのはチェンバル王だった。
どういう経緯でかは知らないが、恐らく何がしかの術を施されたのだろう。
先陣を切るために、自ら進んで。
伝え聞く王の気質ならそれくらいやるはずだ。
そういう気質自体はセシリアは嫌いではなかった。
(それによってこうむった迷惑を許せるほどではないのだが)

程なくして周囲に舞っていた砂埃が収まり、視界が晴れる。
ほぼ同時に号砲が鳴る。演習終了の合図だ。
すぐに連合軍のほうから馬車を連れた一部隊がやってくるのが見えた。
倒れている王の身体を改め、それから馬車に乗せて後送していく。
この模擬戦は日程の最後、つまり今回の演習はこれですべて完了というわけだ。

「やれやれ、再編にどれほど手間を取られるか……」
セシリアは振り返って呟いた。
騒動の大きさの割には被害は少なくすみそうだが、
使い物にならなくなった兵や装備が皆無というわけではない。
そしてそれらの調達にはまた予算がかかる。
抗魔戦争からまだ間もなく、国土の復興にも同様に予算を取られている現状で、
速やかな再編は望めないだろう。

だが――多くの兵が、本物の死線を潜った。
今回はそれで良しとしなければならないだろう。
経験は金を積んで得られるものではない。
そしてその経験は、これから先起こるであろう戦い、
恐らくは、あるもの全てをかき集めてみてもなお足りない、
そんな戦いへむけ、小さいながらも確実に有利な材料のひとつになる。

セシリアは空を見上げた。
そんな小さな成果を、一体いくつ積み上げれば届くものだろうか、と考えながら。
34名無しになりきれ:2006/11/21(火) 22:42:57
正義とはなんぞ
35誓音 ◆aGZ9OPSgQQ :2006/11/23(木) 00:14:56

チェンバル王に当たった光は胸を貫き、
そしてチェンバル王は燃えていった。
しかしそれでもチェンバル王は挫けない。
王はなんとしてでも自爆する気だった。
まさに満身創痍だ。

「っ…!!」

誓音は防御壁を出そうと構える。
しかしそれは無駄な行動となった。
魔力の循環が上手くいかなくなった国王が自爆する前に魔力漏れをしたのだ。
国王はみるみるうちに元に戻った。
それと同時に鳴り響く模擬戦終了の合図の号砲。

模擬戦はこうして終わった。

呆然と立ってた誓音にイルが話しかける。

>「これで私達の仕事も終りでしょう。
> 私達も本陣に戻りましょう」

「・・・そうですね・・・。」

ぽつりとそう言うと誓音は本陣に向かう。

その後、チェンバル王がどうなったかは誓音は知らない。
薔薇の蔓は巨人を抑えつけ、紅く燃え上がった。
しかしそれだけじゃ収まらない事ぐらい重々承知だ。
体内の魔力の強力な荒れを感じ取るよローズは剣を腹に狙いを定めた。
本来ならば頭に投げつけて殺してやりたいところだが、今回はそういう訳にはいかなかった。
狙いをしっかりと定めるローズ。そして身を反らした!

…が、

―パンッ!!

血管が弾ける音が響く。
「…!?」
ローズは身を反らしたまま刀を落とす。目の前に現れたのは血の赤い大木だった。
大量の血と魔力を吹き出し小さくなっていく王。
ローズは暫くそれを無表情でじっとみると固まっていた腕を下に降ろした。
「…魔力…漏れ……ってやつですか…」
そばにいた暗殺者が呟く。
要するに王の身体は自分の中の巨大な魔力の変化についてこれなかったのだ。
ローズは暫く黙り込むとため息を一つ付き腰に手をついた。
そして暫くぐいっと目を抑えると地面に堕ちた刀を拾い、王に背を向ける。

「ロ、ローズ殿…どちらへ!?」
「家へ帰るわ。」
「え!?雇い主様の家へですか!?」
「…何仰ってるの?私の家よ。もう私は貴方たちみたいな人間に一切触れたくもないわ。」
「い、いや!でも貴方様が消えてしまわれたら…わ、私は、雇い主様にどのように報告すれば…!!」

慌てて訪ねる暗殺者にローズは一つため息をつくと暗殺者の方へ振り返り言った。

「そうね…薔薇騎士ローズは天下の皇帝騎士様様を殺そうとした己の罪の意識に芽生え、
それを償うために『神に最も近い不条理』を殺しに旅立ったとでもお伝えしておけば。

きっと貴方の雇い主様はさぞ、愚かな女の改心を知り顔を青ざめてお喜びなるでしょうし。」
そう言うとローズは再度背を向け歩き出す。
ローズの発言を聞き顔を青くする暗殺者、鳴り響く号砲。
そして次の瞬間風が吹いたかと思うと、足下にローズがくしゃくしゃにしたランべの手紙が張り付いた。
++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++
拝啓、薔薇騎士ローズ様へ

ひさしぶりだな、ローズ。
あの戦い以来、お前が様々な場所、時間を彷徨い歩いているという事を風の噂で聞いている。
お前にはどうやらまだあの戦いの傷が残っているようだな。無論、それは私も同様だ。
あれ以来私は戦に出る度にその傷が疼き、剣を握る手が震える。
しかしそれに耐えても戦に出るのが戦士たるもの、
私はいつもその手の震えを抑えながらあの後も戦に出てきた。しかしだ。
抗魔戦争の時だけは違った。
手の震えはなかった。心臓の鼓動が激しくなることもなかった。

ただ、剣を握る気にならなかったのだ。

そして、悟った。
これは私が死んでしまった事を。
嘗ての勇ましき戦を憎み、愛した男であったランべは死んだのだと。
それならば今の私は存在することに意味など無いだろう。
私はそう思い、自ら命を絶とうとしたの…

だ が、

突如状況は一変した。絶対者の情報が入ってきたからだ。
絶対者の話を聞けば聴くほど絶対者はどうもあの悲劇の根本のような気がしてならない。
そして私は絶対者となんらかの接触をするべきだという考えに至った。
しかしだ、私は先ほど書いたようにもう戦士としては使い道は無い。
そこでお前の力を借りようと考えたのだ。

そうと思えばまずはお前を捜さなければならなかった。
しかし私はお前とは戦上の関係しかない故、家も知らない上、
お前は彼方此方の戦に顔を出す故、なかなか接触が出来ない状況。
なので私は情報を少々操作し、餌を撒かせてもらうことにした。
それがオーガス皇帝騎士暗殺だ。
何、お偉いさんと皇帝騎士に近い人間をちょっくら監禁して化けなければならなかったが
それぐらいは腐れ縁の仲間と一緒にやれば容易い。

そして案の定君は網に掛かってくれた。

それを知り私は大層愉快になった。
やはり人とはいつ騙しても楽しいものだ。
こうなればさらに騙すのが男という者だろう。
そこで今度は私が死ぬという小芝居をする事にした。
まんまと騙されたか?ん?ん?そーれ悔しがればーかばーか。

ま!どうせお前の事だ!人一人殺すのに沢山死者を出すと思って蘇生術も死ぬ前にしてやってやると思うからそれでチャラにしておけ!

…と、言うわけで私は生きている。
取りあえず今回はお前が何処にいるのかいつでも分かるよう超強力な探知魔法を付け、いつでも呼び出せるようにできた事だし、
(実はこの手紙の封筒を開けると魔法が掛かるように設定しておいたのだ。)
絶対者の存在を知らしただけでも十分な収穫だろ。
俺は取りあえずここらへんでドロンする。
また強制的に呼び出すと思うがそんときはよろしく。


では、また絶対者編で会おう!

PS.人とはそう数年で変わるものじゃないぞ?ローズ。

                       Byランべ
39イル ◆uKCFwmtCP6 :2006/11/29(水) 23:13:21
合同演習は終った。
暗殺者のことはオーガスに知られず、チェンバル国王が化け物へと変化したのは、魔力の暴走による事故として処理された。

「くそ……そんな面白そうなことがあったんなら、この俺も遊びに行ってやれば良かったぜ……
 あんまり楽しめそうにないと思ったから魔界に残ったのによぉ……」
地上から帰ってきたイルの土産話を聞いたFALCONは、本当に悔しそうに言った。
サタンとの戦いの後、魔界に帰ったFALCONは、絶対者という底の知れない強敵と戦う為、厳しい修行を日夜行っている。
今回の合同演習の一件は、現在のFALCONの強さを試す、絶好の機会だったことだろう。

「はぁ……FALCONって本当に戦うのが大好きなんだね」
イルは呆れたように言った。
イルはFALCONと一緒に修行をするのは好きだが、戦うことは余り好きではない。

「くくく……当たり前だろ。
 戦闘民族の血を引く俺にとって、戦うことは最高の喜びの一つなんだ」
FALCONは自慢気に答える。
その予想通りの回答に、イルはため息をつく。

「そんなんじゃ、絶対にいつかまた死んじゃうと思う。
 FALCONは魔界でやることがあるんだから、死んじゃいけないの。分かってる?」
現在、FALCONは魔界に領地を持つ魔王の一人に数えられている。
七つの大罪を司るような大魔王ではないが、
ガストラ帝から魔界を救ったことや、仲間と共にサタンを撃退したということで、他の魔族達に高く評価されているのだ。

「あぁ……分かってるさ……
 俺が死ぬ時はな、限界まで突っ走っていった後だ。
 何があっても、俺は立ち止まらないっていう強敵との約束があるんだからな……」
FALCONは着ていた黒いコートのポケットから、黒く塗られたサイコロを取り出す。

「俺は……必ず大切な奴らを守ってみせるぜ……なぁ、ザジン……」
FALCONは黒いサイコロを握り締めながら、あの世にいる強敵に届くよう祈りながら囁く。
そんなFALCONを、イルは暖かい目で見つめ、ずっと支えていこうと心の中で誓ったのであった。


40名無しになりきれ:2006/12/08(金) 18:27:20
カイザーは?
41名無しになりきれ:2006/12/10(日) 22:41:37
人が来ない・・・・
42第六部プロローグ ◆SgWfYeW0n6 :2006/12/15(金) 14:42:08
抗魔戦争から一年の後、法皇庁は黙示録発動を宣言。
時同じくして七人の御使いが天界より下り、同盟諸国に勧告する。
彼らの要求は、皇国及び同盟諸国の即時武装解除と天界への無条件・全面降伏。
これを不服とした皇帝オーガスは同盟軍全軍に徹底抗戦を指示、水面下で「絶対者」討伐隊の出立を促す。


――オーガス城――
猶予として人界に与えられた一ヶ月が過ぎると、天界の軍勢約三万が皇国首都オーガスへ降下を開始した。
対する皇国軍は、大陸随一の実力と名高いオーガス騎士を先鋒とし、城内・城下に防御線を敷く。
天使軍前線は、空を舞う重装歩兵と戦車隊。
一度戦端の口火が切られると、皇国軍の長弓兵が放つ矢と、天使が投擲する魔法の槍とが宙を入り乱れる。
矢と魔法の雨中を掻い潜り城壁へ取り付いた天使たちと、皇国軍兵士たちとが激しく切り結ぶ。
天使軍が目指す場所は唯一つ、皇帝騎士オーガスの座す玉座の間だ。

空中からの攻勢に加え、城下へ着陸した戦車隊が門前に殺到する。
彼らと抗するのは皇国軍最強戦力、オーガス騎士団。


――同刻、フレゼリア城――
教会派に占拠されたフレゼリア城門前へは、
法皇庁勅令により国外追放処分となった、女王ヴェスタのクーデター軍が迫っている。
女王を支持するかつての重臣たちが、同じく女王派の軍人らや農民兵を束ね上げ、反乱軍を組織していたのだ。
反乱軍は装備こそ教会派に劣るが兵力では上回り、士気も高い。
高度に訓練されたフレゼリアの教会騎士団を農民軍の人海戦術で打ち破ると、遂に城下へと達した。

オーガス追従を公言した女王を追放し天界と法皇庁に与した貴族・司教たちは
自軍の劣勢を目の当たりにすると跪き、神に祈った。
「天に召します我等が父よ、どうか! 神徒に弓引く不信心者の軍勢に、今こそ鉄槌を!」
祈りが通じたためかは定かではない。が、彼らの望み通りに天使軍はフレゼリアに下った。

城門に押し寄せていた農民軍の破城槌が、雷に打ち砕かれる。
周囲の兵が雷撃にたじろぎ退いた隙間へ、突如として現れる天使の一団。
各々が銀の鎧で身を固め、剣を手に手に反乱軍と対峙する。
天使の人数はたった数十人と然程も多くはないが、聖魔力を纏い金色に輝くその姿、威圧感は万の兵に値した。
彼らを前にして、農民兵たちは更に後退する。
攻勢は滞り、それまでの勇ましい雄叫びが沈黙とか細い悲鳴に成り代わった。
勝ち戦の昂揚感を奪ってしまえば、
個々人は急ごしらえの木槍か鍬、鋤を一本抱えただけの、兵法も剣も知らない、只のしがない農夫ばかりだ。

後退は留まるところを知らない。特に皆が恐れをなしたのは、一団の先頭に立つ二人の天使だった。
どちらも他の天使とは違っておよそ異様な風体をしているが、二人の尋常ならざる存在感に誰もが気圧された。
緊張に耐え切れず、群集の内の何者かが先頭の天使へ弓を射る。
それに続いて気を取り戻した者達が、天使たちへ次々と弓を射、石を投げつけ始める。
43 ◆SgWfYeW0n6 :2006/12/15(金) 14:43:35
【同盟軍所属のコテさんはオーガス城、
天界所属のコテさんはフレゼリア城から開始して下さい。
各自プロローグと戦闘シーン(これは自由)投下をお願いします。

全員のレス投下が確認されたところで各勢力召集を行います。
敵はNPCなので、決定リールでどんどん狩ってしまって下さい】

騎士スレ避難所4
http://etc3.2ch.net/test/read.cgi/charaneta2/1164892156/l50
44名無しになりきれ:2006/12/15(金) 14:44:24
またフレゼリアかこの男は
45カイザー ◆OrJKdYNK3U :2006/12/15(金) 19:57:14
>42
青々とした大空に程良く白い雲が浮かび、太陽がそれを照らす。
大陸には草木が生い茂り、所々に街や村が見受けられる。
風は緩やかに流れ、人肌には心地良い。

白い大きな翼を羽ばたかせ、雲を割る一つの影があった。
「カイザーさん、絶対者なんて本当にいるんですかね?」
ペガサスが暢気そうな声で、カイザーに話し掛ける。
「俺も信じがたいが、天界の動きが答えだろうな。
 絶対者がいなかったら、あんな行動をする意味がない」

『あんな行動』というのは天界が人界の全面降伏要求をした事である。
一ヶ月という猶予期間を設け、人界に考えさせる期間を与えた。
無論、オーガスがそのような天界に都合の良い要求を呑む筈もなく、人界は戦いの準備を始めた。
だが一ヶ月というものは、何もしないには長いが、何かをやっていると瞬く間に過ぎてしまうものだ。

今日で猶予期間は終わる。つまり、明日から天界との戦争が始まるのだ。
「そのはず、なんだが…」
カイザーは少し先を見ている。
大地には先の戦争での損傷も回復させて本来の姿を取り戻したオーガス城があり、
そして
>皇国軍の長弓兵が放つ矢と、天使が投擲する魔法の槍とが宙を入り乱れる。
>矢と魔法の雨中を掻い潜り城壁へ取り付いた天使たちと、皇国軍兵士たちとが激しく切り結ぶ。
どう見ても戦いが始まっている。

「…カイザーさん、もしかして計算間違えたんじゃ…」
「そんなわけあるか、31日間ぐらい数える事はできる」
「……先月は30日で終わりです。」
「………」

そんな会話をしていると、一本の槍がペガサスの足を翳めた。
「ちっ、天使がこっちに気付いたようだ。
 俺が応戦する。お前は回避行動にだけ集中しろ!!」
「分かりました!」

カイザーが剣を手に取り戦闘体制に入った時には、10人の天使が周りを取り囲んでいた。
オーガス城への攻撃を優先させるため、最小限の天使がこちらに送られている。

10人の天使が一斉に魔法の槍を放った。
ペガサスは急上昇し、その攻撃を回避する。
そして、一人の天使が上を見上げた時、その天使の視界が闇に包まれた。
カイザーがその天使の顔面を蹴ったのだ。
天使は地面に落ちる。そして、蹴った反動を使ってカイザーは次の天使の元へと跳んだ。
魔法の槍が放たれるが、右手に持った剣を振るい魔法の槍を掻き消してゆく。

そして1人の天使が翼を斬られ、地面に落下してゆく。
続いて、落下する仲間に気を取られた天使の翼を光の刃が襲い、そして聖闘気弾が3人の天使を撃ち貫く。

カイザーは再びペガサスに乗った。
「残り5人…待ってろ、オーガス城」
46FALCON ◆uKCFwmtCP6 :2006/12/16(土) 07:21:20
>42
天国から地上を支配する為にやってきた神の使い魔達。
このオーガス皇国には、ざっと三万人位の軍勢がやってきただろう。
これは久しぶりに楽しい戦いができる。
そう思っていたのだが……

「弱すぎんだよっ!」
空の上、天使達が放つ魔法の槍を素手で叩き落とし、気功弾で天使達を迎撃していく。
FALCONが軽く撃った気功弾程度でバタバタと天使達は墜落していく。
雑兵というわけだ。

「オーガス皇国も舐められたものだな……
 俺達はガストラ帝やサタンすらもぶっ潰したんだぜ……
 こんな雑魚共だけで皇帝の首を取れると思ってんじゃねぇっ!」
新兵達の訓練程度には丁度良い強さだが、一人一人が万夫不当の騎士であるオーガス騎士団の敵ではない。

空を舞うようにして戦うFALCONの両手に、凄まじい気が高まっていく。
それに気付いた天使達がFALCONを目掛けて魔法の槍や矢を放つ。
その数は数えきれない程。
だが、その飛び道具はFALCONに届くことはなかった。

「気功砲っ!!」
放電する程の気を纏わせた両手を重ねて銃口を作る。
銃口から放たれるは、万物を打ち砕く気の砲弾。
気の砲弾を遮るものは何もなく。
天使達の放つ飛び道具や天使すらも飲み込んで、空の果てまで飛んでいく。

「へっ……汚い花火にすらならなかったな……」



青い透き通るような空が紫に染められ、

死の警鐘は高らかに鳴り響く。


「お兄ちゃん!お兄ちゃん!」
炎に包まれた建物に囲まれながら一人の少女が涙目で一人の男を揺さぶる。
男はボロボロで、目はすでに死んでいた。希望の光も何もない無の眼球。

しかし彼はまだ生きていた。

彼の耳には聞こえている、自分の心臓の音が確かに自分の耳で。
「〈ま…まだだ…〉」
ドックン…ドックン…
「〈まだ……生き延びなければならない。〉」
男の頭の中は静かに混乱していた。そして光の亡い眼球は燃え狂う野菜屋を映していた。
ここの野菜屋の爺さんは優しかった。よく余り物の野菜を分けて貰った。
どんな人にも優しく、良い老人だった。何も怨まれるような事なんてなかった。

なら何故彼処は燃えているのだろうか?

何故、老人は殺されたのだろうか?何故、いつも神を重んじていた教会が燃やされているのだろうか?
何故、何故、

俺は明日へ生きるという単純な事が出来ない状況にいるのか?

「……誰が…」
消え入りそうな声で男は呟いた。
「誰が……やったんだ?」
ぼろぼろと涙が流れる。俺が何をやったんだ。何故神は俺たちを見捨てたのか。
寄り添っていた幼い少女の目にも涙がスッと流れる。
「お兄ちゃ」

―グシャッ!!

そして次の瞬間幼女の胸元にも血が流れた。
幼女は物質となってあっさり倒れていく。
最早悲観することさえ出来ないかつて兄だった男は、幼女を一目見ると即座にそこに近づく一人の女をみた。
白いおかっぱ、青い瞳、可憐に咲き誇る薔薇の鎧を被った孤高の騎士。
「……お…前…」
男はその女をみた。燃えさか火柱となった教会の前、ローズは無表情で幼女の胸に刺さった矢を抜き取った。
「…お………お前が……やったのか…」
ローズは死にそうな男を黙って塔のごとく見下していた。問いには答える必要などないだろう。
剣をすらりと抜くと男の首もとに向ける。

「貴方が最後よ…もう貴方のお友達は神に召されたわ………良かったわね。
貴方達は何も怯えることなく永遠に神に守られた天国で一緒に楽しく笑って暮らしていけるのよ?」

男はそれを聞いて、軽蔑の目を向けるとまるで見下すかのような笑みを漏らす。
この女に善を求めるのは無理だという事を悟ったのだ。何故なら女の目は人殺しの目を通り越した純粋さを持っている。
しかし……、男は再度尋ねた。

「…お前は…なんで此処に来た?」

そう尋ねられたローズは男の目をキョトンとした顔で見ると、
一瞬で微笑み、燃えさかる村に囲まれ一言答えた。


「私が生きているという事を神様にお伝えする為よ。」


その一言が合図となり、剣は首元に貫かれ、血痕は薔薇の花弁のように地面にぶちまけられた。
仕事は終わった。漆黒の闇に染まっていく空の中、ローズは灯火を消さずに紅い花弁が散らばった村を背後に馬を駆ける。

そして、今も、
+++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++
49名無しになりきれ:2006/12/16(土) 13:39:10
はぁ?なにしてんの
>>42
―――白き美しき聖地、フレゼリア城の塔の上階部。

嘗て、教会は神聖な救いを求める地として人々に重んじられていた。
そこでは神を愛することを良しとし、神を愚弄する者を罵るのが日課だった。
しかし、今はというとその教会は神を愛しすぎたあまり、人々の救いを求める原因となり、
嘗て教会や神を重んじていた人間達はそれに怒り、聖書を捨て教会や天使を殺そうと必死になって武器を取る。
まさに愚かな話だ。結局は誰もが自分の身しか考えずに殺し合いをする。

ま、神を重んじず唯我独尊を貫くフレゼリアの弓騎士、ローズが言える事ではないが…。

ローズは矢を数本持つと素早く弓に設置し放ち、農民兵の胸元を貫いていった。
城の塔の上階部は至って平和だ。たまに反撃の矢が飛んでくるが…城に侵入されない限り接近戦はまず無い。

『―弓矢隊、弓矢隊、前方より後方を集中的に頼む。前方には天使軍がいるからまず安心だ。』
「…分かってるわよとっくのとうに…何度も分かり切った事を馬鹿みたいに言わないで頂戴。」

と言うとローズは薔薇の種数個と水が入った水筒数個を投げつけた。
地面に堕ちていく種。そして種に水がかかる。
そして次の瞬間宙に浮いていた種から炎上薔薇が発芽し、
瞬く間に茨は農民達数十人をドーム状に覆い炎上した。

―ドンッッ!!

「「あぁあああああああああああああああっ!」」
絶叫する農民達、そしてローズは炎から逃げようとする人間を狙い打っていく。
「…取りあえず上層部に印象だけは付けておかないといけないからね…ごめんなさいね。」
そう呟くとローズは次々と後方に炎上薔薇を投げつけていく。
51リュミエール ◆ZV4/qZigOc :2006/12/17(日) 04:31:15
眼科ではなおも戦い、いや虐殺、と言った方がいいのか。
圧倒的な戦力差を見せ付けられながらも絶望的な戦いを続ける
哀れな人間達、その人間達を容赦なく地獄へと追放していく同僚達。

「......醜いわね......それに、勿体無い。」

勿体無い、と言うのはこの戦果で失われる多くの物質の事を指している。
人界の薬学では到底ありえない事だが、リュミエールを始めとした天界薬師の視点から見れば
建物に使われる漆喰やレンガの欠片なども薬や毒の原料となるのだ。
しかし、燃えてしまったものだけは使い道がない。だから『勿体無い』なのだ。

「向こうは彼らに任せておけば終わるでしょ......材料を探しましょ。」

一団を離れ単独で制圧した場所に降りて材料の収集を始める。
元々リュミエールは今回の戦争、に限らず自分を勝手に巻き込む全ての事象に
否定的、非協力的姿勢を貫いてきている。ひたすら自分のやりたい事だけをやっていたいのだ。
だが周りはそれを許さない......頭ごなしに命令された事も重なって従軍が決定した辺りから
慢性的なストレスを感じている。お陰で、気絶している時間の割合が増えてきた......
しかし材料収集と調合をしている間だけは、そうした煩わしさから解放される。

「......でも、人界の物質も殆ど網羅してしまったのよね......
 後は調合済みの、他者の作品か......気が進まないわ。」

ずれやすい特注のメガネのずれを直して収集に励む。
52チキク ◆pO5lc2VJCM :2006/12/17(日) 10:39:49
天使の出現により総崩れになるレジスタンス
戦力の差は圧倒的で虐殺に等しい戦闘が各所で続く
それはチキクのあらわれたレジスタンス本陣でも例外ではなかった

フレゼリア元女王ヴェスタの首根っ子をつかみ高々とかかげる
少し力を加えればねじ切ることすら可能だがそうはしない
自分の体にヴェスタを埋め込んでいく
ヴェスタの太もも辺りまで溶けてチキクの腹筋に同化
続けて肋骨が伸び出てヴェスタの脇腹や背中に刺さり同化して固定
あっという間にチキクの胸から腹にかけてはりつけにされてしまう
「ひきょうな!わらわを人質にしようと無駄じゃ
みなのもの、かまわぬ、わらわごと討ち取れ!」
苦痛と屈辱、そして快感に襲われながらも気丈に言い放つヴェスタにチキクは大爆笑する
「姫様御免!」
一人の騎士が果敢にもヴェスタごとチキクを斬ろうと襲い掛かるが、チキクが軽く手を振るだけでばらばらになってしまう
「オルトロスー!」
生態融合で固定されているので返り血に染まりながら絶叫するしかできない
「ぎゃははは!人質?
ちげーよ、アリーナ席で虐殺ショーを見せてやるためなんだよおおう」
その後は凄惨の一言
運動神経も支配されているので気絶することも発狂することも目をつぶる事も許されず虐殺ショーを見せられ続ける
「神に背を向けたからには神の慈悲を期待してはあかんよ?」
本陣を全滅させたチキクは宮廷魔術師の四肢を切り取り犯しながら笑う
幼い頃より世話役だった宮廷魔術師の凌辱される姿をヴェスタはただ見続けるしかなかった
53名無しになりきれ:2006/12/17(日) 10:47:15
もっとやれFALCON殺せ〜!
54名無しになりきれ:2006/12/17(日) 11:14:31
ここチャッチャじゃないんだけど…
チキクがエヴァの投下した敵用コテじゃなかったら、
相手がNPCでも台詞描写まではやりすぎ
これがコテ相手だったら多分叩かれるとこだよ
決定リールの扱いはスレによって違うから空気読んでね
55パニッシャー ◆Tu2J86FYdE :2006/12/17(日) 16:47:40
雲が割れた。
まばゆい光の塊としてパニッシャーが降臨した。
『天罰覿面!』
あらゆる者の頭に響く厳かな言葉とともに万の雷が降り注ぐ!
自然の雷より数万倍の威力をもつ雷が数万本!
この攻撃によりオーガス軍の半数が死に、生き残った者の半数は戦闘不能だ。
城も半壊している。
『汝等に尋ねよう!汝等は絶対者をなんと心得る!
よもや異世界の魔術師が干渉している程度な認識ではなかろうな?』
厳然たる声が響いた。
56巨大猫:2006/12/17(日) 16:52:29
帰れ!
(パニッシャーを掴んで天へ投げ返した)
炎上薔薇を投げては零れた人間を打つ、なんて事を続けて数分。
すでに敵の四分の一は始末出来ていた。
しかしどんな戦場においても敵はより多く倒しておいて損は無い。
ローズはせめて炎上薔薇の種が切れるまではこの戦いに参加しておこうと決心し、矢を補充した。
まあ炎上薔薇の種が二、三個になる頃には、全ての敵は殲滅されているだろうが…。

+*+*+*+*+*+*+*+*+*+*+*+*+*+*+*+*+*+*

戦闘開始からさらに数十分。
炎上薔薇の種の残りは二、三粒。
ローズは一端弓矢を置き室内にある高級な木で出来た椅子に座り足を組むと、
戦状を正確に確認する為年季の入った黒いオペラグラスを取り出した。
目に当てじっと観察する。炎上する大地、天使達や騎士団により殺められた農民兵の死体、
しかし意外にもそんな状況下でも農民兵達は粘っていた。
圧倒的不利な状況下よく頑張るものだ、
ローズはフッと鮮やかな微笑を浮かべるとまるで日本の地獄絵の巻物を見るかのように、オペラグラスをゆっくり横に動かす。
死体、燃える大地、死体、残忍な笑みを浮かべる堕天使のような天使(>>52)、そして…
「あら…こんな地獄絵には珍しい光景ね。」
ローズのオペラグラスは静止した。

>>51
ローズのオペラグラスに映ったのは農民兵を制圧した場所にぽつんといる一人の女だった。
その女は黒縁眼鏡に白衣といういかにも科学者な女だ。
どうやら研究材料を探している様子だ。女の様子をしばらくじっと観察する。
そして少しオペラグラスを横にずらしてみる。
すると一人の武器を持った負傷した男が女の近くにふらりふらりと歩み寄っているのが見えた。
恐らく怪我をした農民兵がここまで必死に逃げてきたのだろう。いわゆる戦場で言う『負け犬』だ。

ローズは弓矢を片手で構えつつオペラグラスでその様子を静観した。

殺そうと思えば殺せる距離だ。しかし、ローズはあえて弓矢を引くのをためらう。
あの女が負傷した男にどんな反応をするのかを観たくなったのだ。
女に近づいていく男、もし出会ったら混乱し持ってる武器で女に攻撃をするかもしれないが…
女が殺されようがローズにとってはさほど問題じゃない。
ローズは静かに再度弓矢を置くと足下にある荷物袋から林檎を取り出し囓りながら女を観察する。
58カイザー ◆OrJKdYNK3U :2006/12/19(火) 00:02:11
「…こんなものか、思ったより天使の力というものは弱いようだな。」
地面に落下してゆく4人の天使を見据えながら呟き、残りの一人の天使の方へ向く。
「人間の言葉は分かるだろ?
 見逃してやるから、天界のお偉いさんに伝えてやってくれ。
 『前哨戦はいいから貴様が来い』ってな」
その言葉を理解し、分かった。と一言だけ返事をした天使は雲の遥か上へと帰っていった。
カイザーは剣を鞘に納めた。

>46
>「気功砲っ!!」
>気の砲弾を遮るものは何もなく。
>天使達の放つ飛び道具や天使すらも飲み込んで、空の果てまで飛んでいく。

オーガス城の上空で、巨大な気の塊が発せられた。
「あの気は…相変わらず、派手な奴だな」
苦笑気味に、気功砲の光が消えるまでその光景を眺めていた。


「とにかく、オーガス城へ行こう」
「ええ、分かりました」
ペガサスはオーガス城に向けて真っ直ぐ飛ぶ。
途中で数人の天使が道を遮ろうとしたが、天使とはいえ雑兵ではペガサスのスピードには付いていけなかった。

オーガス城の入り口でペガサスは地面に降りた。
「とりあえず今は、ここまででいい。
 また何かあったら呼ぶから、その時はよろしくな。」
「分かりました、お気をつけて!」
そういい残し、ペガサスは光で作られたゲートを潜り抜けて去った。

「さて、天界の動きを見させてもらうか」
上空を突破されたら次は地上が戦場になる。
カイザーは城の外と中を繋ぐ入り口の防御を固めるつもりのようだ。
59 ◆SgWfYeW0n6 :2006/12/19(火) 14:15:08
>46>58
都市上空に到達した飛空戦艦「Little Jennie Anges」のブリッジから、エヴァンスが二人へ念話を送る。
『オーガスの猪武者ども、聴こえるか!?
迎えの船を用意した。屋上に着ける、雑魚には構わず上がって来い』
全長約300メートルの、巨大な黒い十字型の船体で戦闘空域へ分け入り、魔導砲の弾幕で天使の群を追い散らす。
現時点でリーゼン砲の火力は無用だが、アクティブ・ソナーは大型の魔力を高空に感知してもいた。


天使勢は争乱の最中で人界の英雄二人の姿を認めると、彼らにそれぞれ手練の戦車数台を差し向けた。
天界の戦車は二頭立て三人乗りの馬車で、これを牽く馬はカイザーの騎馬に似た、翼を持つ天馬たち。
御者が白縄の手綱を操り、戦士は車の側面に己の身長ほどもある盾を何枚もそばだてて守りを固めると
更に控えた射手が弓を取り、盾の隙間から射掛ける。
放たれた矢は天使の射手に与えられた聖光魔力で一条の光線と化し、FALCON、カイザーへ襲い掛かった。
60FALCON ◆uKCFwmtCP6 :2006/12/19(火) 16:24:16
>59
>『オーガスの猪武者ども、聴こえるか!?
>迎えの船を用意した。屋上に着ける、雑魚には構わず上がって来い』
天使達と遊んでいたFALCONの頭の中に、エヴァンスの声が伝わってくる。
背後から投げられた魔法の槍を掴み取ると、FALCONはエヴァンスが用意したという迎えの船を探し始めた。
周囲を見渡す限り船らしき物体は存在しない。
周りにいるのは全て天使達。

「船なんで何処にもないよな……んっ?」
空にいるというのに日光が何かに遮られている。
雲かと思ったが、ここよりも上で魔力の高まりを感じてしまった。
FALCONの脳裏に嫌な予感が沸いてくる。
その嫌な予感を確認する為、FALCONは上を見上げた。

「ぬっ、ぬわーー!!」
FALCONが上を見上げた途端、上に位置していた超巨大な飛空戦艦が下方にいる天使達に砲台向けて、魔力弾を乱射し始める。
放たれる魔力弾から必死になって逃げ回る天使達とFALCON。
大多数の天使達は砲撃から逃げ回っているのだが、一部の天使は勇敢にも飛空戦艦に立ち向かっているのだった。
だが、その天使達も地上から放たれる矢や魔力弾によって撃墜されている。

「あの飛空戦艦はエヴァンスの用意したやつか……
 それにしても無茶をしやがるぜ……」
後方から放たれた光線を、FALCONは後ろに振り向くと同時に、手にしていた天使達の槍で弾き飛ばす。
前方で構えている、二頭の天馬が引く馬車に乗った天使達を見た。
この天使達は他の天使達よりも強い。
だが、少しだけだ。

「やっぱり……今回攻めてきた奴らは様子見の為の雑兵って奴か……」
右手に直径1m程の黒い気弾を作り出し、段々と小さくさせてテニスボール程の大きさにまで圧縮する。
圧縮した黒い気弾をアンダースローで、天使達の乗る馬車に投げつける。

「さて……もう、魔力弾も射ってこないようだし、エヴァンスの待つ屋上に行ってくるとするか」
FALCONは手にしていた槍を捨てると、城の屋上に向かって飛んで行く。
それと同時に、FALCONの後方で大爆発が起き、多くの天使達が塵も残さずに消し飛んでいった。

61カイザー ◆OrJKdYNK3U :2006/12/19(火) 21:11:06
>59
>『オーガスの猪武者ども、聴こえるか!?
>迎えの船を用意した。屋上に着ける、雑魚には構わず上がって来い』

上を見上げると、威圧感をも感じさせる巨大な戦艦がオーガス城に迫ってきていた。
「…ペガサスを帰すべきじゃなかったな」
城内へ入ろうとした瞬間、足元を矢が翳めた。
カイザーは振り向く。
>天界の戦車は二頭立て三人乗りの馬車で、これを牽く馬はカイザーの騎馬に似た、翼を持つ天馬たち。

次々に矢が迫ってくるが、避けきれない速度ではない。
カイザーは左腕を上げて攻撃回避の体制に移り、迫り来る矢を、ステップでも踏むように避けている。
避け切れない体制ならば剣で矢を振り落とし、天使の攻撃を完璧に攻略していた。

カイザーは上げていた左腕を振り下ろした。
直後、天界の戦車を直径10m程の巨大な光の玉が飲み込んだ。

そして、数秒後には光は消え去り、
始めからその空間には何事も無かったかの様な静寂が流れていた。
「悪く思わないでくれ、急いでいるもんでな」

カイザーはオーガス城の中に入り、屋上へ向けて走り出った
62パニッシャー ◆Tu2J86FYdE :2006/12/20(水) 01:02:42
巨大な猫に投げ捨てられた光の渦は消えた
消えた光の代わりに投げ出された影が空中戦艦の甲板に落ちた
年の頃十歳程でサラサラの黒いロングの髪、真っ白な薄手のワンピースを着た少女
「ふぇ?ううぅ…びぇーん、神よ、何ぞ我を見捨てたもうたーひーん」
甲板に落ちたとき打った額を押さえてきょろきょろすると見る間に涙を浮かべ泣きだす
じたばたと暴れながら泣くがその力は非力で雷も静電気程度でしかない
「ぐすっぐす、この船天界にいくのよね
神の真意を知るために仕方がないから乗っていってあげるわ
私のことはパニパニってよんでよね」
泣き腫らした目でエバンスにそう宣言すると走って物陰に隠れてにらみつける
63名無しになりきれ:2006/12/20(水) 01:04:35
そこへ隕石が降って来てパニッシャーだけを跡形も無くつぶした
64神の啓示:2006/12/20(水) 01:07:44
迷惑だから諦めてFOしろよ
65リュミエール ◆ZV4/qZigOc :2006/12/20(水) 04:40:24
この場で取れそうな材料は粗方採集し終わった。
他の場所に行こうか迷うが、どうせどこも似たような状態だろう。
今集めた物以上の材料が出るとも思えない、帰って調合に取り掛かろう......
そう、結論付けた時だった。

>57
戦いに敗れた人間の男が一人、フラフラとこちらに近寄っているのに気付く。
目が合った。一瞬恐怖に囚われ、次の瞬間には悪鬼の形相で襲いかかってくる。

「......ふぅ......」

今正に振り下ろされようとしていた得物の内側に滑り込み、男を正面から抱擁する。
第三者の目には、男の唖然とした表情がありありと見て取れただろう。

「何をそんなに怯えているの......ここには、あなたを傷つける者などいないのに。」

耳元で呟いて、何事か言おうとした男の口に丸薬を放り込む。
そのまま無防備な腹部を叩いて丸薬を強制的に飲み込ませた。

「今は眠りなさい......そして目覚めた時に捨てた筈の命の使い道を考えることね。
 無駄にするか、それとも大事にするかを......」

強烈な眠気に襲われた男は文句一つ言えぬまま深い眠りへと落ちていった。
強烈な睡眠作用と治癒能力を向上させる天界の治療薬、人間には特に効くだろう。
もしかしたら予想外な結果が出るかも知れない、むしろその方が面白い。

数秒後、何事も無かったかのように隠していた翼を広げ、与えられた一室へと飛んでいく。
人間の薬師達が使っていた研究室、場所はローズの部屋のすぐ隣であった。
>42
「う〜〜〜〜!!獲物獲物!!」
今 獲物を求めて全力疾走してる彼は未開の荒野から来たごく一般的な男の子。
強いてちがうところをあげるとすれば狩りに興味があるってことかナ――――
名前はンバラ・ヒデブ・ヒヒフラハーリ・ウッホッホ・モッホホ。そんなわけでフレゼリアにある城にやってきたのだ。
ふと見ると城門の前にまだ兵士達がいた。
「ウホッ!イイ獲物…」
ハッ
そう思っていると突然兵士達は彼の見ている目の前で城門を破ろうと攻撃し始めたのだ。
「開かないか」
そう言えばこの城は異端者の反乱軍がいることで有名なところだった。
いい神に弱い彼は誘われるままホイホイと天使について行っちゃったのだ?

「アオオオオ――――――ッ!!!!」
とりあえず奇声と共に手に持った槍を振り回しながら突進し、ズタダ――ッと兵士達を弾き飛ばした。
今のンバラは身体を覆うぐらいの大きさの、仮面のような見た目の盾を体の前に着けている。
背中側もミノのような飾りで覆われているため、仮面から手足が生えたモンスターのように見えたかもしれない。
その異様な姿に敵も色々な意味でヒクのだろう。城門で粘ろうとしていた敵は蜘蛛の子を散らすように逃げていく。
もっとも城を攻めている反乱軍は武器さえ揃わない農民兵ばかりで、わざわざ狩るほどの強さは無かった。
厳しい自然の中で生きる彼の集落の者達は、事が起これば女子供であっても武器を取る。
ゆえにこの頼りない相手にも油断するつもりは無かったが、同時にムダに命を奪う気もない。
彼らをかり立てるのは首塊になる存在だろう。蛇を倒すに頭を潰すのと同じように、倒すべきは指導者だ。
そして首を狩る事こそムンババ族の狩猟テクニック。
「イイコト思イツイタ。女王ヲ狩レ!」
>57
敵の本陣へ向かおうとしたンバラだったが、むしろ背中に守るこの城に強者がいる予感を感じる。
自然の中で研ぎ澄まされたンバラの感覚は、離れた場所からでも芳しい匂いと殺気の入り混じる空気を察知していたのだ。
ふと見ると城の塔で一人の若い女が戦っていた。
「ウホッ!イイ薔薇…」
ハッ
彼が注目したのはその女の薔薇を使う戦い方である。
ムンババ族もまた呪術に薔薇を使う部族として知られ、古くは薔薇族と呼ばれ恐れられていた歴史があったのだ。
(悪クナイ)
彼女が種を撒くたびに薔薇が咲き炎が舞い上がる。それはンバラの目にも華麗な業として映った。
そしてムラムラと思う。あの強敵と戦ってみたい。狩るか狩られるかの真剣勝負がしたい。
「冗談ジャネエ、俺ニモもらるガアル。
イクラ強者ヲ相手デモ、味方ヲ無理ヤリ狩ロウトハ思ワナイヨ。ジャナ!」
しばらく塔を見上げていたンバラだがまた背中を向け、女王を目指して敵軍の中へ突っ込んで行った。
「あおおおお――――っ!!!」
68名無しになりきれ:2006/12/20(水) 14:59:29
   私達は極悪非道の死神シスターズ!
   今日もネタもないのにAgeてやるからな!
    ̄ ̄∨ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
         / ̄ ̄ ̄\                _,i-ー/
        / / ̄ ̄ ̄               /  /
    |\/ /                    /ノし/
   /,ヘヾ>'"                   .//)/
  ヽ,ノ. \   _          _     ./ /i/
       '´,   ヽ、      '´   ,ヽ、./ /I/     Age
       i iノノ)))))     (((ハヽ|tl i^ヾ/__/    Age
       | (f!゚ ー゚ノf!      |i、ヮ゚ | i |ヽ、ヽ、      Age
      ノ,⊂)闇iつ\_    ⊂i邪(⊃/ ̄     Age
     '´((ノく/_|〉リ L>  .J!/lj_ヽ>ヽ_)    Age
         し'ノ.         し'J


69 ◆SgWfYeW0n6 :2006/12/22(金) 22:58:28
>オーガス城
>60>61
「Little Jennie Anges」のブリッジは十字の交差部に置かれ、
円形の室内は航空・火器管制系と、何枚もの壁面モニターに囲まれている。
管制系のコンソールにはそれぞれ操舵手、オペレーターが就いて
室内中央に艦長エヴァンスが座し、その脇を黒甲冑を着込んだ四人の「ブレンゲン」が固める。
他に幾人かのクルーが忙しなくブリッジを行き来するが、彼らの軍服は皆
エヴァンスが着たきり雀の軍用コートと同じ、鮮やかなライラック色で染め上げられていた。
「『ブレンゲン』、艦を着けたら奴らを迎えに行け。
放っておいて、砲塔とかエンジンとかとんでもない所に乗り込まれたら面倒だ」

エヴァンスは飛空艦の高度を落とすと、慎重にオーガス城へ接近させた。
誤射を厭わない激しい砲撃に追われた天使軍が更に低空、地上に降り立とうとする中、
四方に建つ見張り塔を避けつつやがて船体が、城の真上に被さる。

船体下部に並んだ昇降タラップが次々と開き、各扉にガトリング銃を据え置く二人一組の兵士が就いた。
進入を試みる多数の敵を防ぎなら、オーガス騎士を船内へ招き入れるためだ。
城壁に取り付いた天使たちは、オーガス軍の兵を押し退けて艦を目指したが
すかさず始まったタラップからの機銃掃射に阻まれた。
白い硝煙が辺りに巻き上がり、それでも怯まず艦へ攻め入った天使たちは尽く撃ち倒される。

タラップとは別に設置された銃眼から、ライフル銃を突き出しての銃撃が加わり、
彼らの援護射撃に紛れて、両手にサーベルと拳銃を携えた「ブレンゲン」が屋上へ降りると
辿り着いたFALCONとカイザーを迎えに出向く。
70 ◆SgWfYeW0n6 :2006/12/22(金) 23:02:41
>フレゼリア城
>52>57>65>66
天使の乱入に混乱し、総崩れとなった反乱軍は城下から撤退していく。
フレゼリア城を守り遂せた教会騎士団が勝ち鬨を挙げる中、
天使長アブデルは広間に配下の天使と、教会派の臣、僧侶を集めた。
奇しくも、剣を掲げる能天使の姿を描いたステンドグラスを背後に置き、
美貌の天使アブデルが副長と共に、広間に並べた戦闘天使を階段の高みから見下ろす。
アブデルは輝く様な金色の長髪を後ろ手に結わえていて、大理石削り出しの真白な肌が黒鉄の鎧に映える。
細く鋭い顔立ちに似合いの、切れ上がった目で部下をひとりひとりねめつけると、

「諸君! 人界の空気はどうだ、戦の匂いは!
あまり容易く終わってしまって詰まらんか。今日は準備体操くらいに思ってくれれば良い。
今頃は、オーガスの方面軍が城攻めの真っ最中だ。
幸運にも彼らが仕損じていてくれていれば、かの武名高きオーガス騎士団を我々が直に相手出来る。
『父』が特別討伐隊の編成を指示されて、我々遊撃隊は志願した! 明日より『騎士』討伐隊として――」

「隊長」
控えていた副長ゾフィーエルが挙手をして、アブデルの演説を遮った。
くしゃくしゃのくせ毛にそばかす、ひねた子供じみた面相のゾフィーエルは
鼠色の羽毛を生やした小振りの翼を他の天使の様に隠そうともせず、貧乏揺すりみたく絶えず羽叩く。
演説を中断されたアブデルの非難の眼差しを意にも介そうとせず、彼は言った。
「一人足りません、リュミエールがまだで」
アブデルが慌てて広間の天使たちを目で数えると、確かに一人足りない。ゾフィーエルを怒鳴りつける。
「お前が呼んで来い! あの男も、『帰依』した男もだ、呼び付けた筈だろうが」
「フェイスペインティングの闖入者?」
「傭兵崩れの奴だ」
「了解で」
返事をするや否や、ゾフィーエルは広間から消える。

次の瞬間には城中の廊下という廊下で、何かが飛び回る音がして
城中のドアというドアを誰かのノックする音が、一斉に響き始めた。
終いにアブデルの背後のステンドグラスが粉々に砕けたかと思うと、鼠色の影が屋外へ飛び出していった。
鼠色の影――ゾフィーエルは、戦場に駆けて行った「フェイスペインティングの闖入者」を探しに向かったようだ。

【オーガス城サイドの二人は、飛空戦艦に乗り込んで下さい。
フレゼリア城はリュミエール氏、ローズ氏、ザック氏、各個自由集合。
ンバラ氏は「ゾフィーエル」で対応しますが、直接集合されてしまっても構いません】
71FALCON ◆uKCFwmtCP6 :2006/12/22(金) 23:54:14
>69
停泊した戦艦に乗り込もうと天使達はオーガス城屋上に向かい、飛んで行く。
途中、天使達を打ち落とさんとする騎士達の攻撃により、大多数が打ち落とされた。
騎士達の攻撃を乗り越えてきた天使達は屋上になだれ込み、エヴァンス達の配下による銃撃によって呆気なく絶命していく。
飛んで火に入る夏の虫というのは、まさしくこの状況を指すのだろう。
仲間達が何人も絶命していくが、天使達に諦める様子は見られない。

「俺も打ち落とされそうだ……」
少し離れた場所から先の光景を見ていたFALCONは、付近の窓から城内に入り、そこから屋上を目指した。

「よっ。久しぶりだな、カイザー」
途中、走っていたカイザーと合流したFALCONは安全に屋上へと到達した。

「出迎えご苦労さん。エヴァンスの奴は戦艦内にいるのか?」
出迎えに来たという黒い甲冑の騎士に引き連れられ、FALCONは戦艦内に入っていく。


72カイザー ◆OrJKdYNK3U :2006/12/23(土) 17:53:17
階段を昇り続けるカイザー、鎧が重いがそんな事は言っていられない。
走り続けるカイザー、マントが空気抵抗をモロに受けるがそんな事は言っていられない。
と、走り続けていると後ろから足音が聞こえてきた。
>71
>「よっ。久しぶりだな、カイザー」

「お、FALCONか。久しぶりだな。
 …と、言うほど、久しぶりに感じないのは何でだろうな」
そんな事を話しているうちに、屋上へと到着した。

>69
屋上に辿り着くと、黒甲冑の兵士が出迎えに来た。
「これは、エヴァンスの艦なのか?
 だとしたら、相当な費用が掛かってるだろうな。」
戦艦を見上げ、率直な感想をもらしながら戦艦に乗り込んで行った。

「絶対者という存在…この目で確かめてやるさ」
周囲にも聞こえない様な声で呟いた。

カイザーは眼下に広がるオーガス城という戦場を見詰め、仲間の無事を祈った。
しかし、祈るという行為が自分らしくも無く、まして神と戦闘している現状でその祈りを聞く存在など居やしない。
くだらない事を考えてしまったな、と一笑した。
73リュミエール ◆ZV4/qZigOc :2006/12/23(土) 19:02:57
窓から部屋に戻って採集した材料をテーブルの上に広げて調合を始める。
ここ数年、人界はとても慌ただしくこそこそと戦場漁りなどをやっているだけでも
今手に入れた物とほぼ同じ物を持ち帰る事ができた。
とは言え、天界では基本的に天使用の薬しか作らなかったため人間にそのまま
飲ませるのは色々と問題がある、とアブデルは言っていた。
だから人間用の薬も調合しろ、とはっきり言われたわけではなかったがそう言う内容である。
癪に障るが、片時も離さない分厚い薬学書はその殆どがいまだ白紙であり、
リュミエールの仕事とアブデルの思惑は一致しているのだから仕方がない。


天界の薬学は人界のそれよりもはるかに発達しており、ごく短時間で
薬を製造する事が出来る。その作った薬を、先の戦いで捕らえた捕虜に投与して
効能を調べる、お決まりのパターン。非人道的な人体実験なのは間違いないが、
人間用の薬を仕上げる為には実際に人間に飲ませないと何も始まらない。
別に毒を飲ませて殺すわけじゃないんだからいいじゃない、と言うのがリュミエールの本音だ。


薬を飲ませてすぐに出てくる変化を無駄の無い文章に思考内で纏めて書き込んでいく。
そのスタイルと言いやっている事といいどこからどう見ても科学者そのものである。


>70

「......うるさいわね......」

そんな中ドアをノックする音が聞こえたが、リュミエールは無視した。
音は聞こえたが、ただのいたずらだろうと相手にしなかったのだ。
広間に集合するように、と言うお達しも聞き逃していたリュミエールが、
ノックの意味に気付いて広間に出てくるわけもなく、ゾフィーエルの行動は徒労に終わったのだった......
74ドグマ・ヴァンサーゴ ◆/YIo9432zc :2006/12/27(水) 00:34:36
ブレゼリア城城外。
屍が散かり血肉が飛び散る凄惨な光景。
幾つかに点在する人間たちの骸により出来た血溜り。
その中の一際大きなひとつに波紋が現れる、その波紋は徐々に広がり始め
やがてその中央から何かが姿を現し始めた。
黒いローブ、顔をすっぽりと包むこれまた黒いフード。
そして暗い中でも一際目立つ緋色に光る瞳。
明らかに他の天界の物とは思えぬほどに不気味で、他とは掛け離れた異質な存在。
黒いローブに身をまとった『それ』はゆっくりと戦場を見渡す。

「おやおや……下等生物ドモはもうお帰りかい?」
うんざりしたような、期待はずれのような声がポツリと漏れた。
くぐもってはいるが、ハッキリとしたやや高い声
「ありゃりゃ、コイツは無駄足だったかねェ。」
それは見た目とは裏腹に子供のように大げさにガックリと肩を落とした
そしてゆっくりと血溜りから足を踏み出す。ベチャリ、ベチャリとした粘着質を帯びた足音共にそれは姿を現し始めた。
ヒョロッとしているが人間で言えば大柄な部類に入るであろう身長に漆黒のローブ。
その姿一言で表すならば不気味の一言に尽きる。
75ドグマ・ヴァンサーゴ ◆/YIo9432zc :2006/12/27(水) 00:36:24
しかし下等生物と言えどもここまで呆気無いとは思わなかった、しばらく歩きふと思う
まぁ思えば下等生物相手に高貴な我輩の力を使うこと自体愚の骨頂だろう。
よくよく考えれば当然の結果だ、うむ我輩は何も間違ってはいない。
しかし、この濁った汚らわしい空気はどうも好きになれない。
下等生物と同じ空気を吸い、同じ地を踏みしめていると考えただけで虫唾が走る。
「キミもそう思うだろうゥ?ペッピーノゥ?」
そう誰かに問い掛けると同時に肘をぎこちなく上げるドグマ、
するとローブの隙間から白い大蛇が顔を出し腕に巻きつき首を擡げる、そして毒々しい瞳でドグマを見つめると
『ウン、ソウダネ、ドグマ君ノ言ウトオリダヨ』
ペッピーノと呼ばれた大蛇は機械的に答えた、
その声はドグマにとても良く似ている
「まったく、あの方のお言葉で無ければこんな事は引き受けはしなかったのだがねェ…」

何やら城内が慌しい様だが我輩たちの知った事ではない。
喧騒溢れる城を見つめながら、事が起こるのを待つ。
それもまた一興である。
そうだ、そもそも我輩から出向く必要性なぞ皆無なのだ
『ウン、ソウダネ、ドグマ君ノ言ウトオリダヨ』
ペッピーノが誰に聞かれるまでも無く答えた。
>>65
女の出した結果は『共存』だった。
薬を飲ませた男は安らかに眠りに落ちる。あの眠り方、恐らく睡眠薬か回復薬の一種だろう。
ぐっすりと眠った男を見る女、ローズはため息をつくと食べかけの林檎を投げ捨てた。
何故か気に入らない結果だった。
確かに女のやってることは普通の『人間』なら大抵そう行動するだろう。
だがだからこそつまらないのだ。
「…変な期待はしない方が得ね。」
ローズはそう言うと別の方向にオペラグラスを移動させようとした、が、次の瞬間だ。

女の背中に無かったはずの純白の羽根が広げられた。

「!…あの女…」
思わず驚嘆の呟きを漏らすとオペラグラスで女を辿る。
あの研究者らしき女の正体は今目の前に広がる地獄絵を作った天使の仲間だったのだ。
天使となった研究者は緩やかな軌道を描きローズに近づくとローズの隣の部屋の窓に入る。
その上どうやら女は自分の隣の部屋を借りているらしい。
ローズはその一部始終を見とどけると何故か無性におかしくなって笑ってしまった。
同意するものには祝福を、反発するものには残酷な無慈悲を見せつける単純で異常な天使の中にもこんな女が居るとは…。
ローズは暫くオペラグラスを置き口元を抑えながら笑う。
そして次の瞬間弓矢を素早く構えあの女が助けた男の頭蓋骨に矢を刺した。
オペラグラスで男の死亡を先ほどとは違う冷酷な楽しそうな目でローズは確認すると、
弓矢をしまい広間に戻る準備を始めた。

弓矢の鞄に設置した盗聴器の受信機から響く戦闘終了の勝ちどきの声と男の叫び声。

>「諸君! 人界の空気はどうだ、戦の匂いは・・・

退屈な『作戦』の日常の中、今日はなかなか愉快な日になりそうだ。
>>70
鞄から流れる男の会話。

――盗聴器を仕掛けたのは勿論ローズだ。

それもこれも全てローズの史上最悪な相方、ランベと二人で仕組んだ『絶対者』との接触の為の作戦。
ユダ作戦と単純に名付けられた作戦の内容は正しくその名通り、
『絶対者』を守る為にある究極に邪魔な存在である教会側を一刻も早く潰す為、
協会側に忍ばせたユダ、即ちローズが同盟軍の作戦に手を陰ながら貸す、というものだ。
その為ローズはこの何ヶ月か読みたくもない聖書を覚え、従う価値もない敵軍の上官に従ってきた。
その成今では弓隊を一つほど任せられるほどだ。

――鞄の盗聴器から流れる男の力強い会話。
どうやら同盟軍がもうそろそろ来るらしい。
そして男の口から遊撃隊が騎士討伐隊に志願した事を聞く。
ローズは思わず笑った。これはこれは非常に都合が良い…。
ローズは黒いマントに身を包むと、部屋を出、鍵を閉めた。そして隣の部屋の扉をふと見る。
するとそこには灰色の男が一人、扉をノックして広間に行くように促す。しかし女からの返事はない。
「……ゾフィーエルさん?そんなにお急ぎになってどうかなさったの?」
そう優しく話しかけるローズ。(教会内ではこういうキャラで生活しているのだ)
するとゾフィーエルは広間に集合して欲しいという事と
中にいる天使、リミュール、そしてフェイスペインティングの闖入者について尋ねてきた。

フェイスペインティングの闖入者…ローズは見覚えがあった。
ローズが先ほどの女とは違う意味で興味を持った男だ。(>>67)
ローズは取りあえず知らないと答えるとゾフィールは消えていった。

…あの男も広間に来る可能性がある…という事は…一刻も広間に行きたいところだが…。
ローズは少し考えるとリミュールの部屋の扉の前に立った。
女が気になったからだ。
あの女は消えてしまった?いや…
ローズは少し考えると、扉をトントントントンと続けて叩いた。
78 ◆SgWfYeW0n6 :2006/12/27(水) 14:14:45
>71>72
艦は二人のオーガス騎士を収容すると、首都オーガス空域から離脱した。
地上の戦闘から空を隔てて遠く逃げ去り、一路フレゼリアを目指す。
やがてブリッジの壁面モニターが、全て青空の青に染まってしまうと
エヴァンスは欠伸して、艦長席に座ったまま伸びをする。
「操舵、自動航行システムに切り換え。奴らは上がったか?」
指揮を終えた彼が座席を回して振り返ると、
「ブレンゲン」に連れられたFALCON、カイザーがブリッジへ現れた。
出迎えたエヴァンスは一年前と何ら変わらない、黒髪の少年の容貌だ。
「あー、『Little Jennie Anges』へようこそ。久々。
昔自分の戦った飛空艇へ、まさか客分で乗る羽目になるとは思わなんだろ。
この艦の主砲にしたって実際、お前らの落としたのに載ってた奴の姉妹機だぜ」
義手の指で、二人に空いた席へ座るよう促す。
「下界の様子はどうだ? FALCONは魔界の……か?
このクソ天気に閉め切ったブリッジで話をせにゃならんのはつまらんだろうが
生憎と甲板は寒いぞ、高度があるからな……空気も薄いし。

ついさっき、下界の連絡員から通信があった。
ガストラとフレゼリアに天使軍が降下、
方面軍主力はオーガスで、散った連中は雀の涙くらいのもんだが何分浮き足立ってたようで
それにここと違って、練度の高い精鋭部隊をピンポイント投下だ。
大軍勢のブラフでなく、政治的攻略で足ると考えたんだろうがこれが的中、
フレゼリアは女王ヴェスタのクーデター軍が都落ち、ガストラも降伏した。

オーガスのみ未だ健在、と言いたいところだがこれも怪しいな。
空から来る相手には籠城の仕様も無し……オーガス城陥落は時間の問題だ。
どうだ、ますます責任重大で血が滾るか?」

エヴァンスは組んだ脚を解き、椅子に腰かけ直すと、二人の側へ身を乗り出した。
口端を歪めて笑み、青い眼が二人の顔を左右に行き来する。
「我々はフレゼリアに針路を執る。が、目標は城ではない。
法皇庁だ。軍勢を地上に送り出すため、天界が『門』を開きつつある。
黙示録成就のためには、今まで三国に使った小規模で、一時的なゲートでは輸送が足りない。
だから、そのための恒久的な出入り口だ。一年前の戦争にも使った聖遺物の力でな。

その、聖遺物が発する膨大な魔力を利用、もとい横取りしてだ。
輸送路の代わりに『絶対者の領域』へのゲートを開いてしまう。簡単な理屈だろ?
この艦の動力はどっかの騎士さんと同じ、聖光魔力を喰って動いてる。
聖遺物の力を艦へ引っ張ればそのまま動力に回せるから。

さて、この作戦に何か質問は?
明日には早くも決戦だ、大した時間は無いぞ。遺書でも書くか?
それにだ、絶対者って一体何だ? 俺たちは一体何と戦うつもりだ?
疑問は尽きんだろうから、俺の知る限りを教える。
何でも訊け、年齢、容姿、職業、収入、身長体重にスリーサイズも」
79FALCON ◆uKCFwmtCP6 :2006/12/27(水) 20:11:48
>78
黒い甲冑の騎士に連れられて戦艦内を見て回る。
戦艦内を見ていると、ガストラ帝の飛空戦艦に突入した時のことを思い出す。
飛空戦艦にはこの回を含めて二回しか乗ったことがないが、どの艦も内部が似たようなものだからだろうか。
それにしても月日が流れるのは早いものだ。
あのガストラ帝との戦いからもう四年も経つのだ。

黒い騎士の戦艦内の案内も終り、最後にたどり着いたのはエヴァンスの待つブリッジ。

>「あー、『Little Jennie Anges』へようこそ。久々。
>昔自分の戦った飛空艇へ、まさか客分で乗る羽目になるとは思わなんだろ。
>この艦の主砲にしたって実際、お前らの落としたのに載ってた奴の姉妹機だぜ」
なんと!この戦艦は四年前の戦艦と同じものだった!

FALCONはエヴァンスに促されて椅子に座ると、黙って話を聞く態勢に入った。




エヴァンスの話が終った。
一言で言えば、地上は天使達の手に落ちた。
ガストラ、フレゼリアといった大国が陥落した今、目下の敵はオーガス皇国のみ。
そのオーガス皇国ですら、エヴァンスが言うには危ういらしい。
このままではサタンの時と同じように、オーガス皇国を失うことになってしまうだろう。
だが、悲観することはない。
サタンの時と同じように、奪われたなら自分達の手で取り返せばいい。

これからの行動として、フレゼリアの法皇庁に乗り込んで聖遺物を奪い取り、それを使って絶対者の居城に殴り込みに行く。
だが、幾らか疑問に思うことがある。
FALCONは高々と手を挙げた。

「俺から遠慮なく質問させてもらうぞ。
 前にサタンが規模は全然違うかも知れないが、同じようにゲートを繋いで乗り込むってことを考えたよな。
 その時は大規模な魔法陣を使って魔力を蓄えなきゃならなかった。
 仮に聖遺物が膨大な魔力を持ってたとしても、一年前に大規模な結界を張った今、そんな魔力が残ってるのか?
 それに確保しなきゃいけない聖遺物は何個あって、それはどんな形をしてる?
 それが分かんなきゃ奪えねえ。
 それで、最後に一番重要な質問。
 今回の戦いは俺を満足させてくれる程、楽しくなりそうか?」

80リュミエール ◆ZV4/qZigOc :2006/12/28(木) 13:08:47
>76-77
粗方調合した薬の効用を書き終えたあたりで、ふと先ほど
薬を飲ませた人間の事を思い出した。趣味=仕事の事には抜け目がない。
窓から覗くと......顔面に矢が刺さっていた。誰の仕業かは分からないが、
あれではさすがに助かるまい。

「......一度捨てた物を拾う事、神はお許しにはならなかった......」

そう呟くと興味を失ったように踵を返し、調合した薬をビンに詰めて棚に並べていく。
この棚は天界から持ち込んだ物で、天界の自分のラボと繋がっている。
必要な物を取り寄せたり、新作を送ったりする為に使うのだ。
ビンサイズの物なら、それほど大掛かりな魔法処置を施す必要もないので重宝している。
もっとも、ここでは手持ちの材料だけでも治せるほどの軽症者しかおらず、
天界からわざわざ効能の強い薬を取り寄せることもいまだないのだが......

一通り作業を済ませた所で湯浴みでもしようと
白衣を椅子の背凭れに掛けた所でまたドアがノックされた。

「......御用があるならどうぞ。鍵はかけておりません。」

外にいるであろう誰かに聞こえるように言ってから服を脱いでいく。
さっきのいたずらとの違い、それは他の部屋のドアをノックしていない事と
ノックの仕方が違う事、この二つ。こんな場末のラボに何の用があるかは分からないが
来る者は拒まず......もしかしたら伝令かも知れない。最もその場合はノックと同時に
所属と聖名、そして用件を言うから違うだろうが......
81カイザー ◆OrJKdYNK3U :2006/12/28(木) 17:44:19
>78
艦は再び浮上した。
離れ行くオーガス城を尻目に、一行が向かう先は…聞かされてないのでカイザーは知らない。

黒甲冑の兵士に連れられるまま足を進め、ブリッジに上がった。
>「あー、『Little Jennie Anges』へようこそ。久々。
そこにエヴァンスは居た。相も変わらず年齢不詳な容姿である。

エヴァンスは話を始めた。
下界の様子、ガストラとフレゼリアが天使軍団に襲撃され壊滅同然、オーガス城すらも現状では危ういと言う。
向かう先はフレゼリアの法皇庁、
そこで聖遺物の力を奪い、天使達が使う門を使用し、絶対者の領域へと踏み込むという作戦だ。
ちなみに、この艦はどっかの騎士さんと同じ、聖光魔力を喰って動いてるらしい。

そして、エヴァンスの話は終わり、代わって質疑応答に移行した。
真っ先にFALCONが挙手をする。
ゲートについて、確保すべき物について、そして戦いが楽しくなるか。
(…最後のは、いかにもFALCONらしい質問だな)
思わず感心してしまったカイザーであった。

「俺も一つだけ質問させてもらう。」
人差し指を立て、軽く上げる。


「この戦艦に仮眠室はあるのか?」
どうやら眠いらしい。
82 ◆SgWfYeW0n6 :2006/12/29(金) 13:11:47
>79>81
>「俺から遠慮なく質問させてもらうぞ。

FALCONの質問を聞き終えると、エヴァンスはコートのポケットを弄って葉巻を取り出した。
先端を義手の尖った指で破く。マッチを取る。ブリッジでは彼ら三人の他に言葉を発する者が無く、ひどく静かだ。
「聖遺物の――」
葉巻にマッチで火を点け、煙を燻らす。一服すると、後を続けた。
「効き目は確かだ。一年前で使い果たしてしまったのなら、連中が今更持ち出す訳がないだろう。
法皇庁が各地から聖遺物の断片を回収してはいるが、メインを張れる程の代物は只一つ。
我々の狙いはフレゼリア正教会お蔵出し、聖槍フィルスティーラ。
四年前の戦役、フレゼリアの教会騎士団でこいつを実戦へ持ち出した男が居た。違うか?」
騎士たちへ尋ねる風に、首を傾げた。
エヴァンスは直接会ってはいないが、当時の調査資料には記述されている。ガストラ戦役で活躍した英雄。
四年前にエヴァンスが見たのは堕ちる艦、戦の跡だけで、地方戦線の記憶を除けば聞き伝えだった。

戦艦が雲に入り、ブリッジのモニターは一面真白に輝いた。エヴァンスの説明が続く。
「聖遺物ってのはそれ自体、天界と地上を結ぶ一種のゲートなんだ。
時々の必要に応じて、神が人界に奇跡をお示しになるための裏口って訳さ。
そして神の力はほぼ無尽蔵だから、我々が使いたい時にちょいと引き出すって事も可能だ。
一年前の大結界が良い例でな。今回は神様が直々に、裏口の拡張工事をやろうって計画なんだろうが――」
義手の指がコツ、コツと肘掛を叩く。

「俺も同じ手で『絶対者の領域』へ至ろうと考えた。
ここから先は俺の仮説だ、実際の所は分からないし確たる証拠も存在しない。
黴の生えた巻物や崩れかけの粘土板、古代の神学者どもの残した戯言が原本だ。
興味が無ければ独り言と思って聞き流してくれ。

天界と魔界は本来、絶対者にその権利の一部を譲渡された『世界』の管理者なんだ。
魔界は内乱が原因で、与えられた管理者としての権力を剥奪されたらしいが
天界は今日の今日まで絶対者の手先として働き続けてきた。建前としての自由意志を有しながらね。

神が天使、聖遺物や教会の儀礼を通じて人界に干渉するように、
絶対者も神と天界を通じて、この世界に干渉している。
文献資料と、黙示録発動に関する一連の事件から推測する内、最も単純明解な解釈だ。
机上論は机上論だが悲しい事に、賭ける卓が他に無い。
綱引きするよりはさっさと綱を切ってしまった方が早いんだが、今回ばかりは遅過ぎた。
ちょいと遠いし暗い場所だが、手探りででも敵の尾っぽに結ばれた綱を切りに行くより仕方あるまい。

楽しいかどうかは知らんが、死に場所には事欠かないようせいぜい危ない橋を選ぶさ。
後は敵さんに期待、かな? 仮眠室は本当にベッドしかないが、足りるなら――案内してやれ」

控えた「ブレンゲン」に手振りで指図する。一人が頷き、カイザーの横に立った。
そこでエヴァンスがFALCONに向く。椅子からやはり乗り出すと、唐突に切り出した。
「お前はどうする? 暇なら余興の席でも設けるぞ、俺たちなりの趣向でな。死人の出ない程度に」
エヴァンスの瞬き一つで、カイザーの案内以外の「ブレンゲン」が一斉に踵を揃えた。
83FALCON ◆uKCFwmtCP6 :2006/12/29(金) 15:54:10
>81>82
FALCONの質問にエヴァンスが答え始めた。
目的の聖遺物は一つだけ。
フレゼリア正教会の秘宝、聖槍フィルスティーラ。
四年前の戦いの時、とある騎士が持ち出したという。
FALCONはその騎士の名前を知っている。
騎士の名はランディ。
フレゼリアの聖騎士にして、共に戦った仲間。
かつての仲間と戦う可能性があると思うと、FALCONの胸に何とも言えないような気持ちが沸いた。

エヴァンスの説明も終り、カイザーは仮眠室に案内される。
FALCONもこれから始まる楽しみの為に、修行できる場所をエヴァンスに用意してもらおうと考えた。

>「お前はどうする? 暇なら余興の席でも設けるぞ、俺たちなりの趣向でな。死人の出ない程度に」
FALCONは修行をしようと思ったが、やめた。
修行より余興の方が楽しめそうだ。

「お言葉に甘えて、メインの料理の前に前菜を食べさせてもらおう。
 さっ、早く試合場に案内してくれ……
 それとも……ここで戦うのか?」
辺りを見回し、殺気立った兵士達を観察する。
どの兵士も、城に攻めてきた天使達よりは美味そうだ。

84ドグマ ◆/YIo9432zc :2006/12/30(土) 00:48:58
待った、たっぷり数分は待った。…しかし何も起こらない
ドグマは不機嫌だった、高貴な我輩を待たせてるとは何と愚かなと…
つまりはただ単に我侭なだけなのだが…しかも扱い的には『遅刻者』なのに…
それにドグマの位は決して高い訳ではない、
今回呼ばれた理由も強いて言うなれば、用心棒かそう言う戦闘員的な役割である

ここにいるであろう天使長アブデルの顔を思い浮かべる
透き通るような金髪に清楚な顔立ち…それは天界人にこそ許された美貌
ああ…美しい……実に美しい。
我輩も美しいが、残念なことに他の者は理解できない模様、まぁ仕方ない事であろう
それに比べ彼の美しさは他の者にも認められている、しかしそれを妬むワケではない。
我輩は優れた者は大好きだ、男女問わずたとえ天界人であろうと糞蟲であろうと。

あぁ……欲しいなぁ…あの他者にも認められる『美しさ』。
―――――――――あぁ…欲しいなぁ…あの『顔』を。

「よーし、気が変わったぞペッピーノ。我輩から出向いてやろうではないか
 久しくあの美しい彼の顔を見たくなった、うむ我輩は優しいからな。」
そうドグマは右腕に巻きついた白蛇に楽しそうに語りかけると歩き出す。
クネクネと、どこかぎくしゃくした歩き方。
そして、ドグマは地面に溶け込むように姿を消した


しばらくしてフレゼリア城の誰もいない広間へ続く裏廊下
そこに血の様な赤い液体が広がり、やがてそれは血の様な水溜りになる。
そしてそこから姿を現したのはやはりドグマだった。
決して空間転移魔法を使った訳ではない。

トントンと広間の扉をノックする。入室の許可を貰う為。
まぁ実際は下手に扉を開いて糞蟲が自分の視界に入ると言う自体を避けるため…ドグマは扉を叩き続ける。
時には激しく、時には優しくトントンと。
>>80
>「......御用があるならどうぞ。鍵はかけておりません。」

「…そう、なら失礼させて貰います。」
そう言うとローズは上品にドアを開けた。
すると目の前には研究室らしい知的な器具達が置いてある部屋が広がる。
そして、その奥にやはりあの天使はいた。
ローズはそれを確認するとチラリチラリと回りに目をやり、エミュールを見た。

「…あら、失礼。私、教会騎士団所属の弓隊として雇われている
ベビーバドル・グリオン・ギャビ・ローズと申します。ご機嫌麗しゅう。
…伝達の人に貴方の事を広間まで連れそっていくように頼まれちゃって部屋を尋ねたのだけど……
支度をなさって貰えないかしら」

そう言うとローズは穏やかな笑みを浮かべる。
勿論ローズはゾフィーエルに連れて行けなんて頼まれてない。が、
リミュールを上官に差し出すことによって上官の心証もよくなる上、
リミュールと会話できる機会が増えると考えたようだ。
まあその代わりゾフィーエルが何かしら上官に仕事の適当さを怒られるのが想像できるが、
あのお子様がどうなろうがローズにはどうでもいい事。

ローズはリミュールの机の上を見た。
薬剤についての教本や乳鉢があるのを見ると、どうやら彼女の専門は『薬』かなにかだろう。
ローズはそう素早く観察すると、以前リミュールに微笑みかけている。
86 ◆SgWfYeW0n6 :2006/12/31(日) 00:23:39
>83
「よし、ラボナ!」
呼ばれた「ブレンゲン」は、六人の内で最も小柄な一人だった。
身長はエヴァンスと然して変わらず、
他の「ブレンゲン」と同じ黒甲冑、フルフェイスの兜からは羊の捩れた角を突き出し、サーベルと拳銃を腰に下げている。
だがラボナは、それらの武器を外すと仲間へ預けてしまった。
「FALCON、剣は無しで構わないか? 流石に死なれると困るからな、念の為」
微笑むエヴァンスだが、言葉の意は彼とラボナのどちらに向けられたものか示そうとしない。
一方、無言のままFALCONの背後に立ったラボナは篭手の拳を打ち合わせ、更に手首の具合を確かめる。
その身振り手振りはしなやかで、見るからに重厚な甲冑を、紙細工の様に易々と着こなす。
エヴァンスは立ち上がり、
「例の寒い甲板に出て貰おうか、ここでやられちゃ適わん。
カイザー、仮眠は止すか? それとも相手を宛がおうか。
何時ぞやの機械人形よりは大分にましな手応えを保証するがね」
ラボナを従え、FALCONを甲板へと誘い歩き始めた。

ブリッジから鉄製の螺旋階段を上り、行き当たった天井の鉄扉を押し開けると
赤い非常灯に照らされた狭い通路に出る。通路を歩いて再び階段。
ようやく甲板へ上がると、三人は吹き流れる雲の中を歩き、舞台の広さを確認した。
甲板は艦の全長より縦横短く、それでも常人が戦うには十分なスペースを確保していたが
FALCONたちに関して言えばその限りではないだろう。
エヴァンスは二人に、それぞれ十字の横線の端に立って見合うよう指示した。

「飛び道具は控えて、出来れば船体を傷付けないようにしてくれ!
相手を落としてしまう心配なら要らん! まあお互い、殺さない程度に軽くにな!」

>84
広間に集合していた遊撃隊は、ノックされた扉を開けようと出向く。
しかし天使長は隊員たちを制止すると
無用なトラブルを避ける為、広間の人間――教会派の大臣、司教らへ退室を命じた。
扉の外の天使、彼を遊撃隊に加える事はゾフィーエルから反対されていたし
アブデルにとっても、彼と自分の隊を並べて衆人環視に晒すのは些か気が引けたからだ。
室内から人間が消えると、遊撃隊の天使によって扉が開かれる。

「ドグマ・ヴァンサーゴ、死の天使」

黒衣の男が放つ禍々しい雰囲気に、天界有数の猛者たちさえも一様に息を呑む。
ただ一人アブデルだけが動じる事無く、ドグマを迎え入れた。
「私が特別討伐隊の長、アブデルだ。貴公の御活躍はかねがね。
此度は人界などと退屈な席へお招きしてしまったかも分からぬが、
まつろわぬ民草を刈り取る事も、天使に課せられた大事な使命の一つには違いない。
まして我々は特に手強い根を絶やさねばらならん、そこで貴公のお力を拝借する次第だ。宜しく頼めるか」
アブデルは手摺りを乗り越えると、翼を広げるまでもなく軽々と広間へ降り立ち、ドグマへ握手を求める。
87 ◆SgWfYeW0n6 :2006/12/31(日) 00:27:08
>83捕捉
【模擬戦初回はこちらで「ラボナ」として対応しますので、対PC戦闘の形式でお願いします】
88カイザー ◆OrJKdYNK3U :2006/12/31(日) 01:08:08
>82>83>86
エヴァンスの説明が終わり、カイザーの横に案内をする兵士が着いた。
「悪いな、案内してくれ。」

カイザーが歩き出した直後、ブリッジ内の空気が変わった。
そして、FALCONはその空気に瞬時に順応した。
(…やれやれ、これから嫌でも戦えるって言うのにな)

>カイザー、仮眠は止すか? それとも相手を宛がおうか。
>何時ぞやの機械人形よりは大分にましな手応えを保証するがね」
エヴァンスの問い掛けに、カイザーは腕を組んで考えた。
が、すぐに組んだ腕を解いた。

「…そうだな、面白そうだし仮眠はやめておくか。
 俺に相手はいらない、その二人の戦いを見学するだけでいいさ。」 
そう言って、甲板へ進んで行く3人の後ろを歩いていった。

カイザーは甲板に進んでいる最中、首に掛けているペンダントを手に取り、ずっと見つめていた。
(…これが、最後の大きな戦いになるかもしれないな。)

カイザーがこの戦いに参加した理由は、単に絶対者を討つだけではなかった。
死んでいった仲間が、もしも生きていたのならば?そんな事を考えるまで甘くは無い。
しかし、今日までの全ての戦争の黒幕が絶対者なのだとしたら…?
答えは簡単だ、元凶を断つ以外に選ぶ道は何も無いのだから。
カイザーが戦いに参加した本当の理由、それは…
絶対者という存在が実際に世界にどのような影響を及ぼしているのかを確かめる事であった。
絶対者が世界をどの程度までコントロールしているのか、
それだけでも分かれば、カイザーが望んでいる平和な世界は、夢物語では無くなるかもしれないのだから。

(このペンダントも、貰ってからずっと使ってるな。
 …ま、これを見れば必ず生きて帰るという決意を思い出せるし、お守り代わりにはなるだろ。)
そして、ペンダントを再び首に掛けた。

カイザーは3人に遅れて甲板に上がった。
>「飛び道具は控えて、出来れば船体を傷付けないようにしてくれ!
>相手を落としてしまう心配なら要らん! まあお互い、殺さない程度に軽くにな!」
エヴァンスの声が響く、まさにこれから戦いが始まるようだ。
「…冗談抜きに寒いな。」
仮眠室に行けば良かったと心の中で後悔するも、見学するといった手前もある。
マントに包まり、少しでも寒さを軽減しようとする。

「FALCON、始めから飛ばして行け!
 オーガス騎士の圧倒的な強さを見せてやれ!」
こんな事を言っているが、寒いから早くブリッジに戻りたいだけである。
89FALCON ◆uKCFwmtCP6 :2006/12/31(日) 02:19:38
>86>88
余興の最初の相手となった黒い甲冑の騎士、ラボナ。
その背丈はFALCONより10cm位小さいといったところ。
ラボナは他の黒い甲冑の騎士に、身に付けていた武器を預ける。

>「FALCON、剣は無しで構わないか? 流石に死なれると困るからな、念の為」
エヴァンスは微笑みながら言う。

「エヴァンス、武道家の俺が素手で挑むってことだぞ……
 後ろの奴にも武器を持たせた方がいいと思うんだがな……
 それに……戦いは死ぬ一歩手前が楽しいってもんだぜ」
後ろの黒い騎士の強さをエヴァンスは信頼しているようだ。
武器が有りならFALCONを殺すことも可能だと言っている。
楽しい戦いが久々にできるとFALCONは思った。
だが残念なことに、エヴァンスは上等な料理に蜂蜜をぶちまけてしまった。

エヴァンスは椅子から立ち上がると、黒い騎士を引き連れて甲板まで案内する。
FALCONは早く戦いたいのだが、甲板までの道はそれなりに長く、FALCONを苛々させた。
甲板に上がると、冷たい風が体に当たって気持ちよく感じる。
エヴァンスに線の端に行けと指示され、同じく反対側の線の端に行った相手と見合う。
あぁ、早く戦いたい……全力で相手と戦い合いたい……
FALCONの頭の中は戦いのことだけで埋め尽されそうになっていく。

>「飛び道具は控えて、出来れば船体を傷付けないようにしてくれ!
>相手を落としてしまう心配なら要らん! まあお互い、殺さない程度に軽くにな!」
FALCONは黒いコートを脱ぎ、その場に置く。
エヴァンスには悪いが手加減ができそうにない。
FALCONの背中から胴着を突き破り、一対の黒い翼が生えてくる。

>「FALCON、始めから飛ばして行け!
> オーガス騎士の圧倒的な強さを見せてやれ!」

「任せろ……」
FALCONの体からは黒いオーラが噴き出ず、代わりに黄金のオーラが噴き出た。
銀色の髪は黄金に染まり、翼も黄金の光を発し始める。
FALCONの全力の証。

「楽しませろよ……」
FALCONは一言だけ言うと、その場から消えたと錯覚するようなスピードでラボナの横に移動。
顔を目掛けて重いハイキックを放った。

90リュミエール ◆ZV4/qZigOc :2007/01/03(水) 01:53:39
>85
入ってきたのは、人間の女だった。
別に人間だろうが魔族だろうが邪魔さえしなければどうでもいい。
チラリとローズの方を見て、ずれたメガネを直す。
自己紹介を、頼んだ覚えもないのに勝手に始めた。そこはいい、
問題は後半の「広間まで連れそっていくように」と言う内容。
これ見よがしに嘆息し、億劫そうに首を横に振る。

「ご丁寧にどうも......そうですか。
 ......はぁ......また無駄に時間を浪費させられるのね......」

しかし、普段から人の話を聞いてないせいで時々呼び出されては
説教されているのだ......ここでも無視しようものなら今までの比ではなかろう。

「(多少の無駄は仕方ない、か......)
 ......分かりました。丁度湯浴みをしようと思っていたところです。
 10分程度で済ませますので、何もない部屋ですがどうぞお待ち下さい......」

そう言って返事も待たずその場で全部脱いでカーテンの向こう側へと消える。
調合関連以外にはまったくと言っていいほど関心を持たないリュミエール、訪問者が男でも
同じ様に行動する。事実、アブデルに「慎みを持て!」と言われた事もあったが......
薬の調合に慎みは必要ないのだから、馬耳東風でしかない。


きっかり10分後、バスルームから出てきて軽く体を拭き新しい服に身を通す。
ほったらかしだった前の服はいつの間にか片付けられていた。ややこしい普段どおりの
髪形を結って、最後にメガネをかけるまで一度たりともローズを見なかった。

「では、行きましょうか......ベビーバドル・グリオン・ギャビ・ローズさん......
 ......ああ、私はリュミエールと言います......」

思い出したかのように名乗る。
91 ◆SgWfYeW0n6 :2007/01/06(土) 14:45:51
>88>89
「FALCONの腕力、脚力は大砲並みだな」
FALCONが黒い翼をひるがえし、彼方に立つラボナへ一瞬で追いすがった。
エヴァンスとカイザーは二人甲板に並び試合を見守る。
「大砲と魔法は戦の神器、過去百年これを欠かして戦争に勝った奴は居ない。
戦場における最強は貴様ら歩く大砲とよく言ったものだが、今日日は違うな。一番の強みは――」
エヴァンスは、甲板へ取り残されたFALCONの金色のオーラへ手をかざす。
義手の指が金の霞を絡め取り、吸い込んだ。
「大砲に怯まない兵隊だ」
FALCONの放った上段蹴りは、×字に組まれた黒甲冑の二の腕に阻まれた。
脚が甲冑に触れた一瞬、円形の魔法陣が空中へ展開すると鎧に代わって蹴撃を受け止め、砕け散る。
ラボナの身体も威力の余分によって後ろに退いたが、ダメージを受けた様子は無い。
相変わらずの軽い身のこなしでステップを踏むと、FALCONから間合いを取った。

「オーガス騎士、流石の腕前ですね」
兜の中でくぐもってはいるが、女の声。
ラボナの甲冑に虹色の波紋が走り、彼女の背中から巨大な蝶の翅が現れる。
そして臀部、尾骨の辺りからは身長ほどもある、蛇腹の鎧に覆われた蜥蜴の尾が生え出した。
「この通り、蹴落とされても平気な体ですから」
体格に不似合いのパーツを持て余す事無く、素早く蹴り込む。
同時に尾っぽが甲板から浮き、繰り出された脚に続いてFALCONの脛を狙った。
92FALCON ◆uKCFwmtCP6 :2007/01/06(土) 18:55:24
>91
放った蹴りは腕から発せられる魔法陣によって受け止められた。
だが、FALCONは蹴りを受け止められたことなど意に介さずに蹴りを振りきった。
魔法陣は砕け散り、ラボナは後方に僅かに吹き飛ぶ。
憎らしいことにダメージを受けたそぶりはラボナにはない。

>「オーガス騎士、流石の腕前ですね」
兜の下から聞こえた声は女の声。
女性の身ながらここまで腕を上げるとは、もの凄い鍛練を積んだことだろう。
FALCONがそう思っていると、ラボナは背中から蝶の翅とトカゲの尻尾が生える。

>「この通り、蹴落とされても平気な体ですから」
ラボナは人間ではなかった。
ラボナの強さは修行によってここまでの力を付けたのではなく、種族的なものなのかも知れない。
そう考えると、FALCONは少し残念な気分になった。

今度はラボナの攻撃から。
素早い動きでFALCONに向かって蹴りを放つ。
FALCONは気を込めた右腕でラボナの蹴りを受け止め、死角から放たれた尾撃を右足で防御。
どちらの攻撃もかなりの威力だ。
FALCONは空いていた左腕でラボナの頭を指差して言った。

「どどん波っ!!」
FALCONの左手の指先から収束された貫通力の高い気功波が放たれる。

93カイザー ◆OrJKdYNK3U :2007/01/06(土) 21:41:48
>91>92
FALCONとラボナの戦いは始まった。
今のところ、両者一歩も引かずと言うべきか、決定的な一撃を受けた者はいない。

>「FALCONの腕力、脚力は大砲並みだな」
>「大砲と魔法は戦の神器、過去百年これを欠かして戦争に勝った奴は居ない。
>戦場における最強は貴様ら歩く大砲とよく言ったものだが、今日日は違うな。一番の強みは――」
>「大砲に怯まない兵隊だ」

不意に激しい突風が吹き、大気が横へ流されてゆく。
「確かに、戦場へ出るのに最も必要とするのは心技体のうち、体でなければ技でもない。
 最も必要なものは、心…それは即ち、勇気」
自らの髪の乱れを直し、戦いの続きを見る。


ラボナの姿が徐々に明らかになっていく。
(亜人か。魔方陣を操るとなれば、注意すべき部分は肉体的な特徴だけじゃ無い)
それをFALCONに伝えようとしたが、これは一対一の戦い。
戦争よりは私闘に近い。ならば手出しも口出しも無用。


「さっき、大砲に怯まない兵が一番の強みと言っていたな。
 それは俺も賛成だ。」
戦闘に目を向けたまま、横に並ぶエヴァンスへ話し掛ける。
FALCONの指先から線状の光がラボナへ向けて放たれた。

「だが、心だけで大砲の一撃は止められない。
 心と技と体、全てが揃わない限り、兵に大砲は壊せない。
 …あのラボナという兵に、大砲を壊すすべはあるのか?」
94名無しになりきれ:2007/01/06(土) 23:53:16
「少佐!シュヴァルツェルヴァイト少佐!」
悲壮な叫びで私の名前を呼ぶ中尉の声で目を醒ました。
「・・・そうか、間に合わなかったか・・・」
長い間眠っていたが、中尉のその声色で全てを悟り小さく呟いた。
そう、我がガストラは敗北したのだ。
抗魔戦争で致命傷を負い、志願して第六世代機械化兵の実験体となった。
実験は順調そのもので、あと少し時があれば私は最強の兵士として戦場に立てたであろう。
だが、事態は余りにも急すぎた。
よもや大戦から一年と経たずに天界との全面戦争に突入するとは・・・。
結局私は完成度が80%の状態で今日この日を迎えたのだ。

私は私の前で泣き崩れる中尉に書ける言葉一つ見つけられなかった。
最新鋭の兵器として一歩手前まで完成しているのに、人間としてはどうしょうもない欠陥品になってしまったようだ。
「そ・・・それで・・・天界は少佐に・・・降伏条件として少佐にオーガスから離脱した空中戦艦を落とす様に、と!
ガストラの粋を集めながら戦場に立てなかった少佐を!同じ人間への尖兵に、と!」
注意は床を叩き、拳から血を流しながら搾り出すように私に告げる。
「そうか、わかった。
データを送ってくれ。装備は超長距離移動ユニット。亜空間転送装備はFコンテナを用意しておいてくれ。」
「!?少佐・・・平気なんですか?」
培養槽から出た私に中尉が驚きの声をかける。
まるで私を裏切り者なのでは、と疑わんばかりに凝視しながら。
「私は生粋の兵士なのだ。そして君は戦士だ。
兵士は照準を選ぶ権利を持たない。
ただトリガーをひくだけ。
ガストラという国からの命令が下ればたとえかつての味方であろうと戦うのみ。」
中尉の肩をたたき、私は出撃するためにバンカーへと向かう。

・・・私は中尉に嘘をいった。
私はもはや兵士ではないのだ。ただ純一なる戦士なのだ。
戦う為に生き、死に、そして再度戦うためだけの生物となった。
だが、戦う事すらできなかった私は『戦え』という命令が何より嬉しかったのだ。
誰の命令でも、相手が誰であろうともはやどうでもいいのだ。
ただ私の存在意義を、全身全霊で立証する!
95名無しになりきれ:2007/01/07(日) 10:05:50
そこにいたかカーマイン
>90
>「では、行きましょうか......ベビーバドル・グリオン・ギャビ・ローズさん......
> ......ああ、私はリュミエールと言います......」

「そう…リュミエールさんっておっしゃるの…宜しくお願いします…。」

そう言うとローズは丁寧に礼をし、部屋を出た。
この基地は広い。下の広間に行くだけでも五分ちょっと掛かる。

「リュミエールさん…はどうやらお薬の研究をなさってるようですね。」

リュミエールに背を向けたままローズは話しかける。
「…ああ、すみません。机の上に薬剤についての本があったので…そうかなって。」
そう言うとローズは首だけ少しリミュールを見て笑うと再度前を見て進む。

「…と言うことはここに来た目的も研究材料目的か何かですか?
……見たところ貴方は戦い嫌いに感じたので…」
97名無しになりきれ:2007/01/07(日) 22:58:27
>91-93
ガストラを発ってから16時間。
試作品とはいえ長長距離移動ユニットは如何なくその能力を発揮しオーガス騎士たちの乗る空中戦艦を補足した。
私の望遠モノアイにもはっきりと映るその姿。
距離5000。当然のように私を細くしているだろうが、まだ反応はない。
単騎ということと航続速度を計算しまだ様子見を決め込んでいるのだろう。
だがこの距離であっても私の血は沸騰し、逆流しそうなほど高ぶっている。
敵だ!闘争ができる!!
この距離は十分に私の射程なのだ。

超長距離移動ユニットにつけられたミサイルポットから14発のミサイルを発射。
新開発された特殊弾頭。
戦艦周囲に張り巡らされた障壁を無効化する!
「落ちろ!我が敵よ!!!」
私の雄叫びと共に100mmレールガンを二連射!
狙いは艦橋と動力部だ。
98名無しになりきれ:2007/01/08(月) 15:53:17
>>97は対空砲火の直撃を受けて死んだ
砲兵「羽虫がいたので撃ち落としときやした!」
砲兵長「そんなもん一々報告すんな」
そんな訳でエヴァンスに知らせる迄もなく誰も知らずに終わった!
99名無しになりきれ:2007/01/09(火) 04:57:25
そして、戦艦の障壁が復活した!!
100名無しになりきれ:2007/01/09(火) 19:25:16
>99
「な!ばかな?01はどうした?」
「完全に沈黙!!」
「ならば機械兵士02いけ!!」
101リュミエール ◆ZV4/qZigOc :2007/01/10(水) 11:50:43
>96
>「そう…リュミエールさんっておっしゃるの…宜しくお願いします…。」

「こちらこそ......それでは、先導をよろしく......」

ベビー(略)ローズは先に部屋を出た。後をついていく。
何しろ必要ないと言う理由で基地内の構造を記憶していないのだ。
どの道誰かの案内無しで広間に行く事など出来ない。
......前を行くローズからこんな質問が来る。

>「リュミエールさん…はどうやらお薬の研究をなさってるようですね。」
>「…と言うことはここに来た目的も研究材料目的か何かですか?
> ……見たところ貴方は戦い嫌いに感じたので…」

「......ええ、と言うかそれしか出来ませんから......
 私の仕事は、薬を作る事......要不要の判断もつけずに材料が失われる......
 材料だけでなく......薬を試せる相手も......嫌い、と言うよりも、無駄......ですね。」

ここ数十年研究内容以外の事を話す事も稀だったせいなのだろうか、
リュミエールの感覚では精一杯話しているつもりなのだが、ローズには
本当に訥々と喋っているようにしか聞こえない。何しろ、これだけの事を言うのに
たっぷり4〜5分はかかっているのだから。
102 ◆SgWfYeW0n6 :2007/01/11(木) 18:19:50
>92>93
>FALCONの左手の指先から収束された貫通力の高い気功波が放たれる。

瞬時に出現した虹色の魔法陣は閃光と共に消えて、
仰け反ったラボナの兜の額を気功砲が、縦一文字に引き裂いた。
ラボナは退くと腰を落とし、拳を固め、追撃を待ち受ける格好で構えた。
翅が微かにはばたき、尾もFALCONの足を押さえるべくゆっくりと指針を定めて甲板を這った。
彼女の黒い兜が勝手に顎部の番いを外して落ち、素顔が露わになる。
「ブレンゲン」のラボナは細面の少女で
こめかみから突き出した角の他、顔立ちは人間に同じ造形だった。

>…あのラボナという兵に、大砲を壊すすべはあるのか?」

「何の為の軍隊だ? 戦争は一人でやるもんじゃないだろ」
エヴァンスはさも不思議そうな面持ちで、カイザーへ答えた。
「今回は相手が味方だ、壊してしまってはまずいから……な」
ふと彼が見上げた方角、雲の切れ目から青い電光が降り注ぎ、甲板上の二人を襲う。
すかさず船体を紫の光の帯が包み、電光は甲板から4、5メートルの中空で弾かれ彼方へと逸れた。
続いて鳴り響く砲撃音、警報。暗い雲の中を、数体の銀影が過ぎった。
砲撃を受けて火を噴く一体が、FALCONらが居る場所から向かいの甲板の端に墜落し爆発、艦を震わす。
逃げた敵を追っての機銃射撃が霧中を縦横するが、他に落ちる者も無く散って消えた。
「お客だ、ラボナ! 降りて銃を使え!」
エヴァンスに呼び掛けられたラボナは構えを解くとFALCONに会釈し、手近な昇降口を開いて艦内へ降りてしまった。
エヴァンスもまた、ペンタグラムを風に流してばら撒いただけでそそくさと降りて行こうとする。

銀影が「Little Jennie Anges」の雲に戻り、再度艦への接近を試みる。
雲を抜けて現れた敵は大型のフライトユニットを背負った、六体の機械兵士。
砲火を掻い潜った三機が船体に肉薄し、内一機が甲板に着陸した。
他三機は甲板上空と艦の左右を併飛行する。位置は僅かな弾幕の死角で、艦からの撃墜が困難だった。
昇降口から艦内に戻りかけたエヴァンスが、残るカイザーとFALCONに叫ぶ。
「お望み通りの真剣勝負だぞ! 上手く敵を艦から遠ざけてくれ、援護するから!」
エヴァンスの姿が甲板から消えた。取り付いた機械兵士はフライトユニットを離脱し、カイザーたちへ向く。
機械兵士は滑らかな銀の装甲で全身を覆った二足歩行・人間型で、
猿のように長く伸びた手足で甲板を駆けると、カイザーへ飛び掛った。

【機械兵士×6、決定リール可ザコNPCです】
103FALCON ◆uKCFwmtCP6 :2007/01/11(木) 20:28:06
>102
ラボナは魔法陣を発生させ、どどん波を防ごうとする。
だが、どどん波の貫通力は魔法陣の防御力を上回るようだ。
どどん波は魔法陣を容易く貫く。
ラボナは魔法陣が壊れるのを見て、顔を仰反らせて回避する。
だが、完全には回避できなかったようで、兜を縦にどどん波が走る。
ラボナはどどん波の後の追撃を警戒してか、後方に待避し、構えをとる。
再び見合う二人。
だが、そんな二人の楽しみを邪魔する無粋なことが起きた。

船の周りに紫色の光の帯が張り巡らされたかと思うと、機械のような物が船の周りを蠅のように飛び回る。
蠅のように飛び回る機械が反対側の端に墜落し、戦艦が僅かに揺れた。

>「お客だ、ラボナ! 降りて銃を使え!」
エヴァンスの呼び掛けによってラボナは構えを解き、FALCONに会釈するとその場を去っていく。
楽しみが消えた。

「あぁ、つまらねえなぁ……」
これから楽しい戦いになっていく筈だったのだが、体が暖まる前に戦いが終ってしまう。
ラボナやエヴァンスが去り、ここに残ったのはFALCONとカイザー、それと鬱陶しい蠅が三匹。

>「お望み通りの真剣勝負だぞ! 上手く敵を艦から遠ざけてくれ、援護するから!」

「ったく……分かったよ。あまり乗り気じゃねえけどやってやるよ……
 じゃ、カイザー。ここは任せる。
 俺はまだ飛び回ってる鬱陶しい蠅をぶっ壊しにいく」
金髪から銀髪に戻ったFALCONは黒い翼を羽ばたかせ、真上を飛んでいる機械兵士の下に飛んでいった。

104名無しになりきれ:2007/01/11(木) 20:51:24
(  ゚Д゚)⊃旦 < FALCON、まあ茶飲め
105カイザー ◆OrJKdYNK3U :2007/01/12(金) 17:40:19
>102>103
FALCONの気功波によって、ラボナの素顔が明らかになる。
(ほう、顔も昆虫みたいなものを想像していたが。
 …そういえば、エヴァンスの部下って女がけっこう多いな。)
などと、どうでもいい事を考えていると、エヴァンスから返事が来た。

>「何の為の軍隊だ? 戦争は一人でやるもんじゃないだろ」
「それでは、ラボナに勝ち目が無いと言ってるような気がするが…」
>「今回は相手が味方だ、壊してしまってはまずいから……な」
(…結局、どっちだよ)
と、心の中で無駄なツッコミを入れながら聞いていると、付近の空に異変が起きた。

カイザーとFALCONが甲板に残される。
>「お望み通りの真剣勝負だぞ! 上手く敵を艦から遠ざけてくれ、援護するから!」
エヴァンスの声が響く。
(別に俺は望んでないんだが…
 と、そんな事をぼやいている場合じゃないか。)

>「ったく……分かったよ。あまり乗り気じゃねえけどやってやるよ……
> じゃ、カイザー。ここは任せる。
> 俺はまだ飛び回ってる鬱陶しい蠅をぶっ壊しにいく」

「ああ、分かってると思うが油断はするなよ。」
FALCONは上空の敵を迎撃する為に飛び立っていった。

>機械兵士は滑らかな銀の装甲で全身を覆った二足歩行・人間型で、
>猿のように長く伸びた手足で甲板を駆けると、カイザーへ飛び掛った。

直後、飛び掛った機械兵の右腕間接部分が爆発した。
カイザーが放った闘気弾が命中したのである。

負傷に驚いた機械兵は一旦距離を保とうと、後ろへ跳んだ。

後ろへ跳び、反撃へ移ろうとした機械兵の背中に、剣が突き刺された。
機械兵は胸から見える剣先を確認し…そして、地面に倒れた。
その光景の一部始終を正確に目視出来た者は、そう存在しないだろう。
機械の目にも止まらぬ速さで、カイザーが敵の背後をとったからである。

カイザーは、突き刺した剣を引き抜き、鞘に戻した。
「…さて、FALCONの攻撃を前にして、この戦艦に降りて来れる奴は存在するのかな?」
空を見上げ、そう呟く。
106FALCON ◆uKCFwmtCP6 :2007/01/12(金) 18:32:12
甲板の真上にいる機械兵士が突然爆発を起こし墜落する。

「この程度の衝撃波で壊れんのかよ……張り合いがねえな……」
機械兵士が浮いていた位置にまでFALCONは浮上する。
機械兵士はFALCONの目から放たれる衝撃波によって、バラバラになってしまったのだ。

「この分じゃ他の機械にも期待はできそうにねぇ……さっさと済ませちまうか……」
FALCONは飛空戦艦の後方まで飛んで行き、その場で静止。
飛空戦艦が宙に浮いているFALCONを置いて、フレゼリア方面に飛んで行くのが見える。
そして、飛空戦艦の横を飛んでいる二体の機械兵士の姿も。

「エヴァンス達の援護の必要なんかなかったな」
FALCONは右腕を右側に位置する機械兵士に向け、左腕を左側に位置する機械兵士に向ける。

「吹っ飛べ」
両腕から放たれる二つの気功波。
機械兵士はその気功波に気付いていなかったのか、気功波はいとも容易く機械兵士を粉微塵に吹き飛ばした。

「よっ、戻ってきたぞ」
空から戻ってきたFALCONはゆっくりと甲板に着地して、
「うぎゃあーっ!まだいたのかぁーっ!」
甲板にいた二体の機械兵士の内の一体の体当たりを喰らい、また空に戻っていった。

107名無しになりきれ:2007/01/12(金) 20:48:34
はぁ!!気孔弾!!
108名無しになりきれ:2007/01/12(金) 20:53:40
はぁ?氣志團?
109カイザー ◆OrJKdYNK3U :2007/01/13(土) 17:01:30
>106
>「よっ、戻ってきたぞ」

「お、早かったな。」
カイザーがそう言った直後、

>「うぎゃあーっ!まだいたのかぁーっ!」
>甲板にいた二体の機械兵士の内の一体の体当たりを喰らい、また空に戻っていった。

「な!?、FALCON!」
遠くへ飛ばされていくFALCONを、見ているしかなかった。
機械兵へ目を遣る。
「貴様…FALCONのカタキを討ってやる!」
カイザーは再び剣を手に取った。

剣の周りに光が発せられ、甲板を白銀に照らし付ける。
カイザーはFALCONを吹き飛ばした機械兵目掛けて駆け出し、剣を振り上げた。
すると、もう一体の機械兵が道を遮った。
「貴様は邪魔だ、どけ!」
剣の柄頭で、その機械兵を殴り飛ばした。
その機械兵は、煙を上げながら艦外へ投げ出され、その10秒後に爆発を起こした。

再び剣を振り上げ、機械兵の胴体に狙いを定めた。
「ブレンテル流、闘気の剣!―――オーラスマッシャー!!」
白銀の光と聖なる剣によって、機械兵の体が一刀両断される。

「…ふぅ、カタキは取ったぞ。FALCON」
そして、剣を鞘に収めた。
110FALCON ◆uKCFwmtCP6 :2007/01/13(土) 20:49:57
>109
>「…ふぅ、カタキは取ったぞ。FALCON」

「カイザーっ!俺はまだ死んでねぇ!」
またもやゆっくりと甲板の上に降りてきたFALCON。
今度は辺りの警戒も怠らない。
辺りに敵の機械兵士がいないことを確認すると、FALCONは一息ついた。

「ふぅ……殺されるかと思ったぞ……」
機械兵士に体当たりを喰らった後、飛空戦艦の機銃に敵と間違われて撃たれ、必死に避けて甲板まで帰ってきたのであった。

「俺はここで機械が来るのを待ってるけど、カイザーはどうするんだ?
 艦内に戻ってるか?」
FALCONは落ちていたコートを拾うと、カイザーに聞いてみた。

111カイザー ◆OrJKdYNK3U :2007/01/14(日) 22:29:10
>110
>「カイザーっ!俺はまだ死んでねぇ!」

「おお、無事だったのかFALCON」
本気で言っているのか冗談で言っているのか、イマイチ分かりにくい口調である。

カイザーは周りを見渡した。
今のところ、周りに敵影などは確認できない。

>「俺はここで機械が来るのを待ってるけど、カイザーはどうするんだ?
> 艦内に戻ってるか?」

FALCONの問いに、悩む素振りも見せずに答える。
「いや、フレゼリアも近づいてきたようだし、俺もここで準備体操をさせてもらう。
 俺の相手は、お前が倒し損ねた奴だけで十分だから、好きに暴れてくれよ。」
112FALCON ◆uKCFwmtCP6 :2007/01/15(月) 20:32:30
>111
>「いや、フレゼリアも近づいてきたようだし、俺もここで準備体操をさせてもらう。
> 俺の相手は、お前が倒し損ねた奴だけで十分だから、好きに暴れてくれよ。」

「じゃあ、遠慮なく戦わせてもらうぜ」
FALCONは翼を消して黒いコートを着ると、その場に座る。

「早く、来ないかなぁ……」
FALCONはそう言うと、目を閉じて精神を集中させる為に瞑想を始めた。

113名無しになりきれ:2007/01/15(月) 22:32:43
>111>112
Little Jennie Anges移動空域より遥か離れた場所で呟く声だけが響き渡る。
***成る程成る程、噂通り。同じ土俵では勝てそうにない。ならばこちらをご賞味あレ***

遥か離れた場所であるにもかかわらず、その声に呼応して空中戦間の前に更に一機、機会兵士が立ちはだかる。
先ほどの機会兵士よりは大型だが、装備性能的にあまり大差はなさそうに見える。
ホバリングで静止状態になると、機械兵士の胸部装甲が開いていく。
装甲が開かれた中は強化ガラスでできた特殊ケースになっており、中には6歳ほどの少女が閉じ込められていた。
少女は泣き叫びながらケースを叩いているが、その声は遮られており外には届かない。

***気の流れが見えるのならば判ろう。機会兵士と少女の生命維持装置が同一だという事ガ!***

機会兵士は無防備にただ艦橋へめがけて突っ込んでいく。
このまま特攻するつもりなのだ。
114カイザー ◆OrJKdYNK3U :2007/01/16(火) 21:31:57
>>112>>113
FALCONは目を瞑り、心を静め始めた。
これから始まる大きな戦いの為の準備なのであろう。

「俺は剣の素振りでもやっているかな。」
そう言って、鞘に収まっている剣の握りに触れた瞬間、空から声が響き渡った。

>***成る程成る程、噂通り。同じ土俵では勝てそうにない。ならばこちらをご賞味あレ***

空に一機の機械兵士が現れた。
大小の違いはあれど、見た目には土俵を変えたようには見えない。
(機械兵士…?―――なっ!?)
カイザーは目を疑った。
開かれた機械兵の胸部には強化ガラスが張られており、なんとその中には年齢は一桁であろう少女が閉じ込められている。

>***気の流れが見えるのならば判ろう。機会兵士と少女の生命維持装置が同一だという事ガ!***
そう言われ、カイザーは気の流れを探る。
そして感じ取ったものは、少しの衝撃を受けただけでも爆発するという、機械兵の極めて危険な状態だ。
(機械兵が爆発すれば、少女も死ぬ…生命維持装置が同一とは、そういう意味か…!!)
敵の行動に対して怒りを覚え、そして言葉を言い放つ。
「神ってのは、卑怯な手を使って勝つ事に喜びを覚えるらしいな。
 …今まで戦ってきた、人間や魔族の奴らの方がよっぽど正々堂々としていた。」

怒りに震える肩と感情を静め、空に浮かぶ機械兵を見据える。
「…こうするより、他の方法は思いつかないか。」
後ろに振り返り、FALCONの顔を見る。
「FALCON!あの機械兵の所まで、俺を投げ飛ばしてくれ!」
115FALCON ◆uKCFwmtCP6 :2007/01/16(火) 22:01:04
>113>114
>***成る程成る程、噂通り。同じ土俵では勝てそうにない。ならばこちらをご賞味あレ***

何者かの声が聞こえる。
FALCONが目を開けると、目の前には一体の機械兵士がいた。
不思議なことに気の流れを感じる。
それもそのはず、機械兵士の体の中には幼い少女が閉じ込められているのだ。

>***気の流れが見えるのならば判ろう。機会兵士と少女の生命維持装置が同一だという事ガ!***

FALCONは「それがどうした。俺には関係ない」
と言おうとしたが、カイザーの怒りの気を感じ、変な確執を生む可能性を考えて言うのを止めた。

>「…こうするより、他の方法は思いつかないか。」
>「FALCON!あの機械兵の所まで、俺を投げ飛ばしてくれ!」
カイザーがFALCONの方を向いて頼んでくる。
特攻してくる機械兵士に向かって投げ飛ばしてくれと。

「分かったよ。あの小さい子を助けに行くんだろ。
 勢いが有りすぎて小さい子まで殺しちまわないように、軽く投げてやるよ」
FALCONは立ち上がると、カイザーの方まで近付く。
カイザーの尻に手を当てて、手の上に座らせると、機械兵士に向かって投げ飛ばした。

116カイザー ◆OrJKdYNK3U :2007/01/17(水) 22:25:10
>115
>「分かったよ。あの小さい子を助けに行くんだろ。
> 勢いが有りすぎて小さい子まで殺しちまわないように、軽く投げてやるよ」
>カイザーの尻に手を当てて、手の上に座らせると、機械兵士に向かって投げ飛ばした。

(腕力のせいか、軽くと言っていた割には速いが…ちょうど良いスピードだ)
頬に風の流れる感覚を覚えながら、一直線に機械兵へ向けて飛んで行く。
これならば、あと一呼吸もすれば辿り付ける…そう思った矢先だった。
機械兵の顔がカイザーへと向けられ、その瞳から血のように紅いビームが放たれたのだ。

「―――ッ!」
カイザーは咄嗟に右手を動かし、ビームを剣でガードする。
ビームと剣の接触点を中心に紅い粒子が撒き散らされ、剣の金属部分は火傷するような熱さになろうとしている。
…が、それ以上、剣が熱くなる事は無かった。

カイザーが機械兵の背部に降り立ったのだ。

剣を鞘に収め、一点を見据える。
「前面が強化ガラスで覆われているのならば、ここしかない!」
カイザーが機械兵の背中に両手を突き刺した。
その次の瞬間…機械兵は大爆発を起こした。
空に大きな煙が舞い上がり、その影響で戦艦上空が覆い隠され、人影すらも確認する事ができない。
甲板部に機械兵のパーツがボロボロと落ちて来るが、その中に人間らしき姿も発見できない。

―――そして、煙の間を裂くように光が溢れ出した。
光は瞬く間に全ての煙を吹き飛ばし、
光の最も強い部分にカイザーと、その腕に抱えられた少女の姿があった。
二人は、ゆっくりと甲板の端に着地した。

光が少しずつ弱まり、数秒後には完全に消え去った。
「…ふぅ、強引な手段だったが、なんとかなったな。」
腕に抱えられた少女は静かな寝息を立てており、命に別状は無いようである。

カイザーはFALCONの方へと顔を向ける。
「とりあえず、この子供を艦の医務室へ連れて行く。
 見た所、外見に傷は無いみたいだから、
 医師に見てもらった後で、意識が戻ったらペガサスを呼んで、すぐにでも帰してやろうと思う。
 この子の故郷が滅ぼされたならば話は別だが…
 そうでもない場合は、こんな戦艦に残されちゃ、不安で仕方ないだろうからな。」
歩き出し、戦艦への出入り口である階段の前で立ち止まり、再び振り返った。

「…おそらく、天界の攻撃はまだ続くだろうが、気を抜くなよ。」
そう言い残し、カイザーの姿は戦艦の中へと消えていった。
117名無しになりきれ:2007/01/17(水) 22:37:50
>116
医務室に行くまでの間に少女は意識を取り戻し、カイザーの腕の中で泣き始めた。
助けられた安堵、今までの恐怖、これからの不安、それらが全て混じりあったような涙だった。
しばらくしたあと・・・
カイザーの腕に抱かれて泣いていた少女の嗚咽が徐々に小さくなっていく。
それとは反比例して、少女の手足は伸び、身体は豊かに、艶やかになっていった。
「あはははは!さすがは優しい騎士様だねえ。聞きしに勝る不用意さ、甘さ。よくそれで今まで生きてこられたものだよ。」
カイザーの腕からすり抜けた少女は、いや既に色香を漂わせる美女はおかしそうに首筋に指をやる。
その場所と同じ場所、カイザーの首筋には真っ赤な一本の線が・・・。
美女の手につままれたルージュでいつの間にか線を引かれていたのだ。
「温室育ちの坊やにはショックだったかい?まぁだからこそ私が呼ばれたんだけどね。
さあ騎士様、『艦長』のところまでエスコートしてくださる?」
妖艶な笑みを称えながらカイザーにへを差し出す美女の招待や如何に???
118名無しになりきれ:2007/01/17(水) 22:44:13
狐看護婦乙
119FALCON:2007/01/17(水) 23:26:10
>116
カイザーが機械兵士の体内から少女を救出し、少女を医務室に連れていくと言う。

>「…おそらく、天界の攻撃はまだ続くだろうが、気を抜くなよ。」

「分かってるって。
 何をしでかすか分からないような奴らに油断をする程、俺はうっかり者じゃねぇよ」
手段を選ばないような奴らには油断することなどできない。
あのカイザーが連れていった子供にも、実は爆弾を仕掛けているということもありそうだ。
カイザーには悪いが、次に機械兵士が人質を連れていても、容赦なく消し飛ばす。
FALCONはそう考えると、仰向けに寝て空を見上げ、敵が来るのを待つ。

寝転んでいても冷たい風が体を触り、気持よく感じた。

「次に来るのはこんな風のような強い奴がいいな……」
120名無しになりきれ:2007/01/17(水) 23:44:35
というわけで、FALCONのためにグレゴリウスを人質にした機械兵がやってきちゃった
121カイザー ◆OrJKdYNK3U :2007/01/18(木) 20:38:02
>117
少女はいつの間にか意識を回復していた。そして泣き出す。
カイザーは何も言わず、ただ医務室へ向けて歩いた。
だが、それは何の意味も成さなかった。

>それとは反比例して、少女の手足は伸び、身体は豊かに、艶やかになっていった。
>「あはははは!さすがは優しい騎士様だねえ。聞きしに勝る不用意さ、甘さ。よくそれで今まで生きてこられたものだよ。」

>美女の手につままれたルージュでいつの間にか線を引かれていたのだ。
>「温室育ちの坊やにはショックだったかい?まぁだからこそ私が呼ばれたんだけどね。
>さあ騎士様、『艦長』のところまでエスコートしてくださる?」

「俺が甘いのは百も承知だ。
 …あの時、気を探った時から薄々変だとは感じていた。
 お前の気は、機械兵の情報しか教えてくれなかった。
 あれだけ泣き喚いていたのに、気の震えも、自身を案ずる気持ちも、何も感じなかったんだよ。
 震えに関して言えば、怒りに震えた俺の方が大きかったぐらいだ。」

そこで声を一旦区切り、小さく溜め息をついた。

「だが、少女はパニックで頭の中が一時的に真っ白になった可能性もある。
 それを信じて…いや、あの時は選択する余裕もなく少女を助けた。
 …ま、その結果は俺にとって些かショックなものだったがな。」

カイザーは首に書かれた線を、指先で擦り、消した。
「これは何のマネだ?
 呪いや挑発なら、俺には効かないと思え。
 それとも…ナイフでいつでも同じ傷が作れた。か?忠告ならばありがたく受け取っておこう。」

そして、美女から身体を背ける。
「残念だが、俺は見も知らない異性をエスコートするようなキャラじゃないんでな。
 付いて来るなら、勝手について来い。
 …エヴァンスに何の用事かは知らないが、おかしな行動をするなら容赦はしないぜ。」
カイザーは足を進めた。無論、相手の動向に警戒しながらである。

(隙を突けば、俺を殺すまではいかないまでも深手を負わせるぐらいならば出来たはずだ。
 この女の目的、一体何なんだ?)
この考えは、カイザーがこの場で美女と戦おうとしなかった理由そのものでもあった。
そして、それを確かめる為にエヴァンスの元へと進んでいる。

ブリッジへの扉が開かれる。
「エヴァンス、お前へのお客さんだ。」
カイザーは、ブリッジの中へ足を踏み入れた。
122名無しになりきれ:2007/01/18(木) 20:55:23
美女はカイザーの三歩下がって付いていく。
不振な動作も、不穏な気配もない。
ブリッジに到着し、エヴァンスを紹介されると美女はするりと歩み出る。

擦れ違いざま、カイザーに悲しげ笑みだけを見せ、何も言わずに通り過ぎた。
ブリッジ中央でエヴァンスに向かい片膝を付き頭を垂れる。

**くかかか、どこまでも愚かな・・・!貴様らを倒せずともこの艦の機能を停止する事はたやすいゾ!**
どこからかまた声が響いてくる。
その言葉に呼応するように片膝を付いた女の魔力が増幅していくのがわかるだろう。
魔道内燃路の過剰燃焼。
すなわち自爆である。

カイザーやエヴァンスは爆発に耐えられるかもしれない。
だが、ここはブリッジ。
空中戦艦の中枢。
動力炉でないので大爆発を起こす事はないが、艦の機能を破壊、航行不能にすることになるのは必死だ。

既に外皮は溶け落ち、剥き出しの機械の身体でそこにいる『ソレ』が爆発するまで数秒とないだろう。
123 ◆SgWfYeW0n6 :2007/01/19(金) 21:01:43
>121>122
艦の各砲座は戦闘配置のまま現状待機を命じられていたが
全面雲の灰色を映した壁面モニターから、戦闘の気配は既に消え去っていた。
オーガス騎士を残してブリッジに戻ったエヴァンスは、艦長席でブレンゲンからの報告を受ける。
ラボナではない、長身の男のブレンゲンが彼の脇に立つ。
「ガストラの機械兵士です。所属部隊、型番の特定は……」
エヴァンスが義手をもたげ、男の話を遮った。
「ガストラ軍機甲部隊に配備予定だった、汎用の長距離航行用装備だ。
戦後は領地分割のゴタゴタで未制式のまま凍結、開発中の機械化重装歩兵と一緒にな。
今更その、眠れる獅子を呼び起こして来たのはせいぜいが天界への義理立てだ。
直接飛んで来た奴らは兎も角として、ガストラ軍が本気でこの艦を落とすつもりは無いだろう。
言っとくけど、捕捉されたからといって航路の変更は一切無しだよ」
「それはあの二人にお教えになるべき事では?」
「あいつらにだって分かるさ」
椅子を回し、後ろに向く。エヴァンスの投げ出した足を避けるため、男は軽く身を引いた。

>カイザーは、ブリッジの中へ足を踏み入れた。
>ブリッジに到着し、エヴァンスを紹介されると美女はするりと歩み出る。

「カイザー、お前が助け出したのはこんな御婦人だったかな?
俺は彼女にさっぱり見覚えが無いんだ、モニターでもな]
カイザーが連れて現れた女は、エヴァンスの前でひざまずいた。
エヴァンスの表情が歪む。すかさず立ち上がり、

>**くかかか、どこまでも愚かな・・・!貴様らを倒せずともこの艦の機能を停止する事はたやすいゾ!**

「良い土産を持ち込んでくれたな」
義手の左手で、ひざまずく女の頭を引っ掴んだ。
女の皮膚は皆焼けて剥がれ落ち、鉄人形に姿を変える。
エヴァンスは爪を立て、剥がれて浮いた頭皮を破ると女の頭蓋に指を埋めた。押し潰す。
ひび割れた鋼鉄のフレームから魔力の光が漏れ出すが
全て女の体を伝わって、エヴァンスの義手へ吸収されていく。

体内の魔力が尽きると、人形は爆発する事の無いままに崩れ落ちた。
部下に人形を片付けさせ、自らは一仕事終えたばかりで煙を上げる義手を外し、椅子に置いた。
「ピクニックに行くんじゃない、余計な荷物を持ち込むな。
最早地上にすら我々の味方は居ない、空から来る奴は尚の事だ。」
カイザーへ、生身の方の手の指を突き付ける。
「とりあえず、明朝の作戦に備えてもう休んでおけ。ガストラ軍の始末は御苦労だった」
124 ◆SgWfYeW0n6 :2007/01/19(金) 21:02:29
>全参加者

――明朝、フレゼリア法皇庁

アブデルの特別討伐隊は法皇庁に到着早々、「門」の儀式の警護へ駆り出された。
中庭で蝋石を持った数百人ばかりの僧侶が黙々と、魔法陣を地面に書き付けるのを
東西南北四方へ各五名の戦闘天使が剣を持ち、護衛する。
彼らの他、各地の教会騎士団が次々に馳せ参じ、法皇庁の守りを固めていた。
教会騎士団は専ら反乱軍の攻勢を警戒していたが、天使団の狙いはオーガス騎士のみ。

オーガス城は戦艦離脱後の天使軍一時撤退により敗戦を免れたが、
籠城に入った皇国軍に対して天界勢力は依然、首都包囲を続けている。
オーガス騎士団さえ始末が付けば、天界は直ぐにでも首都制圧に取り掛かる。
同盟国軍盟主が天界の手に落ちれば、人界は実質としての抵抗戦力を失うだろう。
戦局の一大転換を賭けた騎士団討伐に、アブデルは敢えて、数を頼みの天使軍から自部隊を切り離した。

「たった二、三人だ。たったの二、三人を倒せば世界が買える、地上は安い」
アブデルはゾフィーエルと共に、北棟の尖塔から中庭を見下ろしている。
教会騎士は西方に延びた稜線の彼方を、遊撃隊は空を監視する。オーガス騎士は飛空艦で逃げた。
当ても無く天上を彷徨うよりは儀式に空襲を掛けるが敵の流儀に合うと、彼らは予測した。
「失楽園以来の流刑地ですからね。悪魔は地獄に、人間は煉獄に」
「蟻の様に這いずるが彼らの定めか」
「私たちと違いがあるとすれば、翼の有る無しでしょう」

暗い雲の低く垂れ込めた朝、儀式の準備は大詰めを迎える。
儀式を取り仕切る大司教らが中庭へ集まり、
魔法陣中央には祭壇が設けられ、儀式の中核となる聖遺物を待つばかりだ。
そこへ僧侶たちは馬車を入れると、積まれた聖櫃を慎重に地面へ下ろし始めた。
中身は聖十字架の木片数百で、一つひとつ数を数えて丁寧に小分けにすると袋へ詰め直し
魔法陣の方々へ埋めていく。聖槍フィルスティーラは教会騎士団が持ち運んだ。

槍が祭壇に祀られる。法皇庁の僧侶ニ千人が粛々と行進し、配置に着く。
祭壇では法皇自らが経典を携え、三人の枢機卿が付き従う。
天使、教会騎士団も一様に身構え、儀式の始まりと敵の訪れを待った。
敵に先んじて儀式が始まる。法皇の祈祷に応じて魔法陣が聖光魔力を帯びる。
陣中の聖槍が魔力の集約点となり、一筋の光線を撃ち上げて、空を厚く覆う雲に孔を穿った。
暗雲が開かれ、阻まれていた陽の光は法皇庁の中庭に燦々と降り注ぐ。しかし光は早くも翳った。
驚き、天を仰いだ僧たちは、太陽に被さる巨大な十字の影を見た。アブデルが号令を発する。

「今こそ! 地上の神敵は愚かにも我らに剣を向けた! 敵が掲げた偽りの翼をもげ!
悪しき肉体は地において腐り果て、悪しき魂は炎と硫黄の池に投ぜられ未来永劫、我らの父を愚弄する口を持たん!
全隊、戦闘用意! 奴らが聖地にもたらす血の穢れを、神の御手に代わって贖うが、忠実なる僕の証明と知れ!」

地上の軍勢が揺れ動く。「Little Jennie Anges」のブリッジでは、修理したての義手を抱えたエヴァンスがやはり怒号する。

「オーガス騎士、仕事だ! ブリッジに集まれ、今から一日振りに地面へキスする機会をやろう。
神の犬ども、けばけばしい羽飾りを毟ってやれば大人しくなるか――艦内各位、戦闘配置だ。
現刻を以て作戦名「Tremor Christ」を発動する。繰り返す、現刻を以て作戦名……」
125FALCON ◆uKCFwmtCP6 :2007/01/19(金) 23:41:31
>124
FALCONは閉じた目を開け、上半身を起き上がらせ、大きく口を開けて欠伸をする。

「ふぅ……よく寝てたな」
FALCONが寝ていた場所は甲板。
敵の機械兵士が来るのをずっと待っており、夜中になっても一体も攻めて来なかったので、暇になったから寝たのである。
冷たい風が当たる外で一晩中寝ていたのにも関わらず、些かの不調も無いのは、FALCONの体の中に混じっている戦闘民族の血のおかげだろう。

「さて、飯でも食いに戻りますか」
FALCONは立ち上がると艦内に続く扉の前まで歩いていき、扉を開けて艦内に入ると軽快な足取りでブリッジに続く道を歩いていく。

「おっはよーエヴァンスや黒騎士さんのみんなー!
 飯はまだー?」
ブリッジに着くと場違いなことを言っているFALCON。
エヴァンスの艦内放送は、FALCONが目覚める直前に終っていたのだった。

126カイザー ◆OrJKdYNK3U :2007/01/20(土) 21:00:00
>122>123
>「カイザー、お前が助け出したのはこんな御婦人だったかな?
>俺は彼女にさっぱり見覚えが無いんだ、モニターでもな]

「見覚えが無い?妙だな、お前に会いたがっていたようだが。」

>擦れ違いざま、カイザーに悲しげ笑みだけを見せ、何も言わずに通り過ぎた。
>ブリッジ中央でエヴァンスに向かい片膝を付き頭を垂れる。
>**くかかか、どこまでも愚かな・・・!貴様らを倒せずともこの艦の機能を停止する事はたやすいゾ!**
美女の魔力が増幅してゆく。
皮膚は焼け落ち、金属が見え始める。
狙いは、どうやら自爆のようだ。

「悪いが、想定の範囲内だ…!」
カイザーの右腕に光の闘気が集まり、その腕を振り上げる。
>エヴァンスは爪を立て、剥がれて浮いた頭皮を破ると女の頭蓋に指を埋めた。押し潰す。
>ひび割れた鋼鉄のフレームから魔力の光が漏れ出すが
>全て女の体を伝わって、エヴァンスの義手へ吸収されていく。
カイザーが行動を開始する前にエヴァンスによって自体は収拾した。
カイザーの右腕から発せられていた光が消えた。

>「とりあえず、明朝の作戦に備えてもう休んでおけ。ガストラ軍の始末は御苦労だった」
そう言われ、カイザーは「分かった」と返事すると仮眠室へ移動していった。

>124>125
翌日、カイザーは目が覚めた。
武器や鎧を装着し、戦闘に最適な武装になる。
>「オーガス騎士、仕事だ! ブリッジに集まれ、今から一日振りに地面へキスする機会をやろう。
>神の犬ども、けばけばしい羽飾りを毟ってやれば大人しくなるか――艦内各位、戦闘配置だ。
>現刻を以て作戦名「Tremor Christ」を発動する。繰り返す、現刻を以て作戦名……」

艦内放送が終わり、カイザーはブリッジへ向けて歩き出す。
数分後、ブリッジの前に到着した。
中には、エヴァンスやその部下、FALCONが揃っていた。
(何やら、ブリッジ内の空気が変だが、戦闘前で緊張しているのか?)
その空気が、とある一人の人物によって作られているとは知る由も無いカイザーであった。

「戦闘準備は整っている。
 さあ、さっさと攻め込もう。何ならお前達より先に俺が単騎突入してもいいんだぜ?」
自信が伴う表情から、言葉が発せられた。
127名無しになりきれ:2007/01/22(月) 10:04:03
死、死んでる!!
128 ◆SgWfYeW0n6 :2007/01/22(月) 22:49:27
>125>126
二人の騎士がブリッジに着く。
エヴァンスはFALCONの呆けた言を無視しつつ、カイザーに答えた。
「勿論だ、オーガス騎士は先行突入。他部隊の降下を援護出来るか?
昨日みたいにお上品に着陸・離陸してる暇なんてない。飛び降りてもらう。
FALCONは大丈夫として……カイザー、例の馬は?」

コンソールの管制官たちへ手振りする。
壁面モニターは法皇庁を映し出し、巨大な魔法陣と軍勢、飛び立つ天使隊が確認出来た。
管制官が画面を魔力観測機からの映像に差し替えると、法皇庁は黒地に無数の光点の集合となる。
魔法陣中央の一点が最も強く反応し、眼に焼け付きそうな程に白く輝く。
「今からこの艦で、地上の魔法的防備を解除する。
が、魔法陣の真上は多分蓋してない。通路になるからな。
一応ジャミング装置は投下するし、目眩ましも撒いておくが
お前らなら問題無く着陸出来るだろう。面倒はその後だ、聖遺物に細工をせにゃならん」

モニターを通常のカメラに戻し、法皇庁の中庭をズームすると、魔法陣の中心に造られた祭壇と聖槍が映る。
祭壇にはふためく法皇と枢機卿、そして彼らに儀式を続けるよう説得する天使の姿があった。
「フィルスティーラだ。降下後、工作部隊が聖槍を確保する。
お前たち二人は槍までの道を切り拓き、工作隊の仕事が終わるまでこれを守れ。
聖遺物のゲート魔法に艦の内燃炉を同調させ、ゲートが開通すれば天井ブチ抜きで万歳だ。

ジャミングにより、作戦行動中は地上と艦との通信が一切不可になる。
目測で地点を確認、作戦が終わったら自力で艦に戻れ。どうだ、ゾッとしないだろ?
さあ、まだるっこしいお喋りは終わりだ。お前らはお前らの仕事をしろ、残りは任せておけ」
質問を受けようともせず、ただ二人を追い払うように顎を振って指図した。
ブリッジには、昨日使った上りの螺旋階段の隣に、垂直降下用のハッチへと続く別の階段がある。
ラボナがその階段に立ち、二人を案内する為待っていた。
129FALCON ◆uKCFwmtCP6 :2007/01/22(月) 23:49:35
>126>128
FALCONは今まで自分は何をしようとしていたのか、少しだけ振り返ってみる。
甲板の上で目覚め、腹が減ったのでエヴァンスに食事を要求しにこの場所まで来た。
だけど、皆は腹が減っているFALCONのことを無視して作戦会議に入っている。
……作戦?

(やっべえぇ!!全然聞いてなかったぞぉぉ!!)
FALCONが寝惚けていたり、心の中で自身の過失に対して絶叫を行ってる内に作戦会議は無事終了。
FALCONは何の役目を与えられたのかも分かってはいない。
エヴァンスの表情を見てみると、質問なんかとてもできそうにない。
「すまん。全然聞いてなかった」とか言ってしまったら、この場にいる皆に袋叩きにされてしまうのは間違いないだろう。
顔に血の気がなくなってきた。

とりあえずFALCONはエヴァンスが仕草で行けと訴えていた場所、ラボナの近くにまで歩いていく。
FALCONの心の中は不安で満たされている。
難しい仕事を与えられていたらどうしよう……
そう考えると、FALCONの体は緊張で固くなってしまった。

130カイザー ◆OrJKdYNK3U :2007/01/23(火) 21:21:27
>>128>>129
>「勿論だ、オーガス騎士は先行突入。他部隊の降下を援護出来るか?
>昨日みたいにお上品に着陸・離陸してる暇なんてない。飛び降りてもらう。
>FALCONは大丈夫として……カイザー、例の馬は?」

「(例の馬…ペガサスの事か)
 ああ、既に呼んでいる。
 戦艦の周囲を飛んでいるはずだ。敵と間違えて攻撃するなよ」

それから、エヴァンスの説明が始まった。
降下→周りの敵を倒す→味方が聖槍をいじる→帰る
簡単に言うと、これをやれという事のようだ。

>ブリッジには、昨日使った上りの螺旋階段の隣に、垂直降下用のハッチへと続く別の階段がある。
>ラボナがその階段に立ち、二人を案内する為待っていた。

ラボナが待つ場所へ向けて、足を進める。
何やら異質な空気を感じ、ふと横にいるFALCONの顔を見た。

「……ぅゎ」
その横顔は思わず声を出してしまうほどに血色が悪くなっており、足取りも覚束無い様子だ。
心配になったカイザーは思わず声を掛ける。
「…お、おいFALCON。大丈夫か?
 顔の血色が悪い上に強張っているぞ。」

そこで一呼吸置き、何かを思い出したかのように言葉を続ける。

「…そういえば昨日、あの寒い甲板で寝たらしいな。そのせいで風邪でも引いたんだろ。
 お前はこの艦で休んでおくか?
 病人を戦場に駆り出すのは、どうも気が引けるしな。
 まあ、どうするか決めるのはお前だ。俺は先に行くぜ」
そう言い残したカイザーは、FALCONよりも先にスタスタと歩いていってしまった。

そして、階段で待っているラボナの前に到着し、声を掛ける。
「善は急げだ。
 俺達の来襲で敵は少なからず混乱している、それに乗じるのはこの瞬間しかない。」
威圧感のある戦艦が上空を飛んでいる事実は心の動揺を誘う。
それは戦慣れしている兵であろうとも同じ事である。
131FALCON ◆uKCFwmtCP6 :2007/01/24(水) 19:29:02
>130
>「…お、おいFALCON。大丈夫か?
> 顔の血色が悪い上に強張っているぞ。」
FALCONは横を向いてカイザーを見る。
カイザーは体調を心配してくれているようだが、FALCONの体調はいつもと同じく絶好調。
ただ、精神的な不安があるだけ。

>「…そういえば昨日、あの寒い甲板で寝たらしいな。そのせいで風邪でも引いたんだろ。
> お前はこの艦で休んでおくか?
> 病人を戦場に駆り出すのは、どうも気が引けるしな。
> まあ、どうするか決めるのはお前だ。俺は先に行くぜ」

「いや、俺の体は大丈夫。
 戦いでは迷惑を掛けるつもりは……
 いや、掛けちまうか……
 ごめん!俺!って……」
カイザーは先に指示された場所に行っていた。
これでFALCONの悩みを言うチャンスが一つなくなった。
こんな状態で無事に聖槍を奪えるのだろうか?
FALCONの脳裏に不安が過る。

ラボナとカイザーの待つ場所までたどり着くと、FALCONは与えられる仕事の最終確認をしてくれることを祈ることにした。

132名無しになりきれ:2007/01/27(土) 12:50:05
毎度のことながら、FALCONは異空間に吸い込まれた。
133名無しになりきれ:2007/01/27(土) 13:20:53
カイザーには幼女がよってきた
134名無しになりきれ:2007/01/27(土) 17:46:42
異空間にはイーグルもいた
135名無しになりきれ:2007/01/27(土) 18:09:18
カイザーに寄ってきた幼女は紅牙だった
136 ◆SgWfYeW0n6 :2007/01/27(土) 21:51:11
>130>131
二人を連れて、ラボナが階段を降りて行く。
降りるにつれて、艦内を駆けずり回る戦闘員たちの足音が辺りに響きはじめる。
やがて辿り着いた非常用の小さなハッチが、戦場へ続く門だった。
「お二方に続いて二個小隊が降下します。
彼らが機材を祭壇まで運びますので、周囲の戦力を排除して下さい」
ラボナが膝をつき、鉄製の分厚く重たいハッチを易々と開いてみせる。
ハッチの下、雲よりは低い眺めだが、それでも地上は未だ遠い。
「作戦に際して、ひとつ注意が」

法皇庁の教会騎士団は飛空艦に続く第二攻勢、西方より反乱軍急襲との報に浮き足立っていた。
塔に弩兵を、石塁に大砲を敷いて対空迎撃の準備が整えられるが
どれも空飛ぶ十字架の高度には達せず、降りてくるのを待ち受けるより他無い。
騎馬隊はアブデルの命で、西方の門の守りへ回された。
教会騎士が相手取れる精々の限界は人間の軍隊で、空より来る敵の力には到底及ばない。
一方では天使の尖兵数人が、取り付けはしまいかと船を目指している。
「人間ばかりが何人増えようと、我々の任務に支障は無いというのに
それをあの僧どもはうろたえおって……。最後の審判に適う者が人界にどれ程居る事か、思いやられるわ」
アブデルはどうにか法皇を説得、半ば威圧し、儀式を続行させた。
だが、中庭で戦闘が起これば魔力の流れが乱れ、魔法陣を破壊してしまう恐れがある。
水際での防御が完璧でなければ勝負は負けだ。そこでアブデルは「万全」を期す。
「一歩たりとも敵を立ち入らせるな。ゾフィーエル、貴様の出番だ」
灰色の翼の天使が斧槍を手に、見張り塔から機会を窺う。敵が降りてくる気配は近い。

「決して、魔法陣に直接攻撃を加えないで下さい。
空中で会敵した時、敵が魔法陣を背にしていたら飛び道具は使わないで。
また、着地後の戦闘は白兵戦に限定し、無用な被害を魔法陣に与えないで下さい」
ラボナはFALCON、カイザーに告げ、手をハッチの先に伸べた。
「以上が大佐の指示です。
しかし脱出時には魔法陣を破壊しますので、工作部隊の作業が終わるまでという事でしょう。
健闘をお祈りします。お二方の後からフレアと妨害装置を発射しますので、敵の攻撃と間違えないように」
137FALCON ◆uKCFwmtCP6 :2007/01/27(土) 22:55:14
>136

>「お二方に続いて二個小隊が降下します。
>彼らが機材を祭壇まで運びますので、周囲の戦力を排除して下さい」
それだけでいいのか?と、FALCONはラボナに聞きたかったが、そんなことを言ってしまったら、FALCONがエヴァンスの説明を聞いていなかったことがバレてしまう。
ここは沈黙している方が吉と見て、FALCONは何も語らない。

>「作戦に際して、ひとつ注意が」
FALCONは目を見開き、一言一句逃さず聞いてやろうと身構える。
FALCONの顔はあまりの真剣振りに、鬼気迫るといったような表情になっていた。

>「決して、魔法陣に直接攻撃を加えないで下さい。
>空中で会敵した時、敵が魔法陣を背にしていたら飛び道具は使わないで。
>また、着地後の戦闘は白兵戦に限定し、無用な被害を魔法陣に与えないで下さい」
>「以上が大佐の指示です。
>しかし脱出時には魔法陣を破壊しますので、工作部隊の作業が終わるまでという事でしょう。
>健闘をお祈りします。お二方の後からフレアと妨害装置を発射しますので、敵の攻撃と間違えないように」
この話も先の作戦会議の時にしていたのだろう。
もし、ラボナが作戦の確認をしていなかったら、FALCONは魔法陣のことなど気にせずに気功砲を連射していたことだろう。
FALCONはラボナに感謝の気持ちとして、ぎゅっと抱き締める。

「じゃ、ちょっくら暴れてくっか」
FALCONは背中から黒い翼を生やしてハッチの真上に浮かぶ。

「鶴仙流……鳳凰掌!」
炎のような赤いオーラがFALCONの体から立ち上る。
その状態から縦に体を半回転させて、地上に向けて右手を突き出した。

「うおおおおっっ!!」
雄叫びを上げながら、凄まじいスピードでFALCONは地上に向かって飛んでいった。
もし、下級の天使がFALCONの進行方向に障害物として存在していた場合、FALCONと接触した際に跡形も無く砕け散ってしまうだろう。

138カイザー ◆OrJKdYNK3U :2007/01/28(日) 17:09:13
>136>137
ラボナが簡単に注意事項を話す。
魔方陣への直接攻撃と遠距離技は禁止のようだ。

先にFALCONがハッチから出てゆき、カイザーも続くようにハッチから飛び出す。
付近を飛んでいたペガサスが、落下してゆくカイザーを上手く背中に受け止めた。
(…さて、どう攻めるか)
下に広がる光景を見据え、戦法を思考する。

>「うおおおおっっ!!」
>雄叫びを上げながら、凄まじいスピードでFALCONは地上に向かって飛んでいった。
>もし、下級の天使がFALCONの進行方向に障害物として存在していた場合、FALCONと接触した際に跡形も無く砕け散ってしまうだろう。

「ペガサス、FALCONの上空に移動だ。
 あそこなら前方の敵はFALCONが全部蹴散らしてくれる。」
白い翼を羽ばたかせ、ペガサスは指示された方向へと移動する。
「よし、ここから急降下するぞ」
ペガサスは翼を今まで以上に大きく左右に広げ、風を周囲に撒き散らすように強い羽ばたきを一回。
鷹が獲物を狙うかのような鋭い速さで一気に地上へと向かう。
139 ◆SgWfYeW0n6 :2007/01/28(日) 22:26:33
>137>138
FALCONの急降下が始まると同時に、戦艦は大量の閃光爆弾とジャミング装置を投下した。
戦場の空が真白に輝くと、地上の兵は皆尽く目を伏せた。
空中に留まっていた斥候の天使たちは、視界を奪われ身動きが取れない。
運悪く鳳凰掌に巻き込まれた何人かが翼を引き裂かれ、墜落する。

>「よし、ここから急降下するぞ」

FALCONの後を追うカイザーの、更に後から
ガストラ機械兵の装備に似た、より大型・複座の飛行ユニットを三人一組で背負った工作部隊が降下する。
工作隊の武装は最低限で、オーガス騎士が斬り込むまでは着陸も出来ない。
閃光爆弾の目眩ましは未だ有効だが、地上の敵の有視界範囲内が近付いている。
魔導式熱光学迷彩を発動して姿を隠す。

「先鋒は一人だ、しばらく足止めしろ。使える者が居れば回す」
見張り塔のゾフィーエルが出立準備に入った。出窓から乗り出し、眩く光る空を眺める。
爆弾とジャミング装置の炸裂音が鳴り響き、人間の兵隊は指揮すら間々ならない。
西の山からは、女王の反乱軍が掲げる旗印が見え始めた。
「足止めとは侮られたな。自分ひとりで片付けてみせますよって」
ゾフィーエルは不服そうに呟くと灰色の翼を打ち震わせ、次の瞬間には尖塔の出窓から消えていた。
アブデルが怒号する。
「魔法陣を囲め!」
他の天使隊が素早く動き、地上から魔法陣を包囲する。長弓に矢を番え、飛来する敵を狙った。
教会騎士団の弩隊も天使に倣った。赤い軌跡が魔法陣の上空100メートルを切ると、一斉に矢が放たれる。
140FALCON ◆uKCFwmtCP6 :2007/01/29(月) 01:42:27
>139
目の前の光景が見えない。
全てが白く見える。
今の状況を例えるならば、闇に等しき光に全身を包まれている。

急に眩しい光が放たれて視界を潰されたFALCONだが、鳳凰掌を止めることなく、炎の鳥と化して地上に突き進んでいく。
無防備に動きを止めてしまうよりは、技を出し続けていた方が隙が少なくて済むのだ。

突き出した右手に何かがぶつかっていく度に気が消えていく。
この何かはFALCONを襲いに来た天使なのだろう。

天使を砕きながら進み続けていたFALCONだが、突然の強い衝撃と共に体が押さえ付けられてしまう。
上級の体格の良い天使が体を押さえ付けたのだろうか?
FALCONは体を動かそうとするが、まるで身動きが取れない。
冷たい地面の中に埋められたかのように感じた。

実際にFALCONの上半身は地面にめり込んでいる。
目が見えなかったが為にFALCONは気が付かなかったのだ。
FALCONは自由に動かすことのできる両足をバタバタと振っている。
本人は自身を受け止めている天使に抵抗をしているつもりなのだが、端から見れば滑稽な姿にしか見えなかった。

141神聖皇帝カイザー:2007/01/29(月) 13:17:26
ティウンティウン
142名無しになりきれ:2007/01/29(月) 14:23:57
アゲ アゲ Every 騎士
143カイザー ◆OrJKdYNK3U :2007/01/29(月) 22:42:34
>139>140
不意に光が辺りを覆いつくした。
(これがエヴァンスの言っていた目晦ましか)
耐性の無い者ならば、この光の中では全ての視界が封じられてしまうだろう。
しかしカイザーは光を自在に操る聖なる騎士、戦場の全体像は薄らとだが確認する事ができる。

>「魔法陣を囲め!」
隊長格と思われる天使が叫ぶと、天使の軍勢は魔方陣を中心とした陣形を取り始める。
そして、こちらへ向けて矢が一斉に放たれた。
だが、FALCONの鳳凰掌によってほとんど全ての矢が消し飛ばされてしまう。
残った矢の数もカイザーがペガサスの身を案じながら対応できる程度であった。

カイザーとペガサスは着地に成功し、天使の軍勢を見据える。
「ありがとなペガサス、ここからは俺がやる。
 後で呼ぶから、お前は安全な場所へ退避していてくれ。」
その言葉に、分かりました。と一言告げ、ペガサスは数秒足らずで矢の射程外へと飛び去って行く。

「さてと、遠距離攻撃が出来ないのであれば、力押しで行くしかないな。
 他に方法は思いつくかFALCON?……って、何やってるんだ?」
地面に上半身を埋めて足をブラブラさせて遊んでいると、カイザーの目には映っていた。
(やはり風邪で頭が…可哀相だからこのままにしておくか。)
そう思いつつも、このまま放っておけば敵に集中攻撃されるだろう。というか呼吸ができない。

カイザーはバタつかせている足を避けるようにしてFALCONの腰を掴み、引き上げる。
「…苦しくなかったか?
 とにかく、ここまで来たら後戻りはできない。天使を倒すぞ、いいな」
返事を聞かずして、カイザーは天使の軍団へ向けて走り出した。
144神聖皇帝カイザー:2007/01/30(火) 01:36:35
>>143
バーニングナックルァまだ?
^^
145FALCON ◆uKCFwmtCP6 :2007/01/31(水) 15:22:55
>143
「うおっ!」
何かに腰が当たったと思ったら、一気にスポンと天使の手から抜けた。
視界も通常の状態に戻り、自分を掴んでいた天使の姿を見てやろうと思った。
下を見ると天使の姿は無く、地面に人が入れる位の穴が空いている。

>「…苦しくなかったか?
> とにかく、ここまで来たら後戻りはできない。天使を倒すぞ、いいな」
腰を触っていたのはカイザーだった。
カイザーはFALCONを地面に下ろすと天使達の方に向かって走っていく。

「うへはああ!やべえぞ!何やってんだ!俺はあああああ!!」
FALCONの顔がみるみる内に赤く染まっていく。
こんな時に地面に埋もれるという、ギャグみたいなことをしてしまったことにFALCONは気付いたのだ。

「くそったれがああああ!!!!!」
自身の恥ずかしさを誤魔化す為、天使達の軍勢に向かってFALCONは走り出す。
暴れていれば恥ずかしさも忘れるだろうと思ったからだ。


146 ◆SgWfYeW0n6 :2007/02/01(木) 16:19:11
>143>145
目眩ましの閃光が止むと、地上は俄かに静かとなる。
「直前で減速くらいするかと思ったら……」
灰色の翼の天使が魔法陣の中空に浮かびつつ、呆れ顔で二人の騎士を見下ろす。
片一方の騎士は頭から地面に突っ込んで、上半身を丸ごと埋めてしまっていた。
地上の天使団も皆、魔法陣への侵入をあっさりと許してしまった手落ちすら半ば忘れかけ
ただただ体を引き抜こうとする二人のやり取りを見物するばかりだった。

法皇と僧侶たちはFALCONの墜落に動揺して、祈祷を中断してしまう。
地面に埋もれたFALCONが引き出されるまでの一分足らず、誰もが身動き一つ出来なくなった。

「何を躊躇している、斬り伏せろ!」
頭上から突然降り掛かった天使長の言葉に、遊撃隊が気を取り戻す。
魔法陣を取り囲んでいた二十人程の天使は各々剣を抜き、やがて走り来る二人へ真っ向から斬り結んだ。

【上級天使×20、決リ可NPCです】
147FALCON ◆uKCFwmtCP6 :2007/02/01(木) 19:05:40
>146
>「何を躊躇している、斬り伏せろ!」
魔法陣の上に浮かんでいる天使が指示を下す。
魔法陣を囲んでいた天使がその指示に従って剣を抜き、こちらに向かってきた。
天使達の気を探ってみると、全員がオーガス城に攻めてきた天使達とは比べ物にならない位に強い。
こちらも油断をしているとやられてしまうだろう。

「フルパワーで行くぜっ!!」
天使達に向かって走っていたFALCONの頭髪が黄金に逆立ち、黒い翼も黄金に染まる。
体からは黄金のオーラが噴出し、走る速度も格段に速くなった。

「まずは一人!ぶっ潰す!!」
天使達との距離が近付き、FALCONは地面を蹴って前方に飛び上がり、舞空術を利用して凄まじい勢いを付けた飛び蹴りを放つ。
飛び蹴りを防ごうと一人の天使が剣で防御をするが、FALCONの蹴りは剣を砕き、天使の頭を吹き飛ばした。

「まだまだ戦いはこれからだっ!楽しもうぜっ!」
148名無しになりきれ:2007/02/02(金) 11:16:14
「まだまだ戦いはこれからだっ!楽しもうぜっ!」




応援ありがとうございました!
騎士スレの次回作にご期待ください!
149名無しになりきれ:2007/02/02(金) 12:27:50
俺はまだ登り始めたばかりだからな、
この果てしなく長い騎士スレ坂をよ…
150名無しになりきれ:2007/02/02(金) 12:54:12
↓以下、第7部始動
151名無しになりきれ:2007/02/02(金) 13:52:09
以上、第7部完
152名無しになりきれ:2007/02/02(金) 13:56:01
絶対者との戦いから数年後・・・・
束の間の平和は突然の戦火によって破られた。
新たなる敵の名は異次元軍マーマ・バロウズが首領、次元皇帝セプテンバ!
異次元より来たる異形の怪物たちから世界を守るため!騎士よ、今こそ立ち上がれ!!


キャラテンプレ
【年齢】
【性別】
【職業】
【魔法・特技】
【装備・持ち物】
【身長・体重】
【容姿の特徴、風貌】
【性格】
【趣味】
【人生のモットー】
【自分の恋愛観】
【一言・その他】

※異次元軍に参加する人も記入願います。
153名無しになりきれ:2007/02/02(金) 13:58:21
遥か昔…バーニングナックルゥア!!を我が物にせんとする魔王軍とそこに住まうヒッキーとの戦いがあった…
後に邪魔戦争と呼ばれるこの戦いは魔王が封印され一応の決着をみたと伝えられている…。

それから10年後…大昔のバーニングナックルゥア!!を忘れ人々は平和に暮らしていた。
だがいつからか人々の間に魔王が復活したとの噂が広まり始める。
そして一部のヒッキーはそれがタダの噂ではないということを確信し始めていた…。

俺は神聖帝王カイザー、このパーティのリーダーだ。
このバーニングナックルゥア!!を我が物にしようと企む魔王を倒すため、ともに戦ってくれる仲間を募集している。
さぁ、俺たちと共に打倒魔王の旅に出よう!
154名無しになりきれ:2007/02/02(金) 14:03:21
絶対者との戦いから数年後・・・・
束の間の平和は突然の核ミサイルによって破られた。
新たなる敵の名はキタチョウセン首領、次元皇帝キタノ・ジョンイル!
隣国より来たるミサイルから世界を守るため!騎士よ、今こそ立ち上がれ!!


キャラテンプレ
【年齢】
【性別】
【職業】
【資格・特技】
【装備・持ち物】
【身長・体重】
【容姿の特徴、風貌】
【性格】
【趣味】
【信念】
【自分の日本観】
【一言・その他】

※隣国に参加する人も記入願います。
155名無しになりきれ:2007/02/02(金) 15:45:27
第8部楽しそうだなw
156カイザー ◆OrJKdYNK3U :2007/02/02(金) 18:01:47
>146
天使達が剣を手にこちらへと向かってくる。
一人の天使が振り上げた剣をカイザーへ向けて振り落とす。
カイザーは上半身を反らし、小さな動きでそれを避ける。
反らした身体を元に戻す力を利用し、光を纏った拳を攻撃してきた天使に叩きつける。
一瞬、天使は小さな呻き声を上げ、地面に倒れた。

(…出来る事なら剣を使わずに倒したいものだな)
聖闘気を纏った剣を振るうと、注意していても僅かな光の波動が剣の周りに発生してしまう。
その波動は微弱なものであり、敵に傷を負わせる程の力は持っていない。
だが、光の魔力が放たれている事には変わりない。
それが魔方陣に触れれば、魔方陣の組織を変えてしまう可能性も考えられる。

一人の天使が気配を消し、カイザーの背後に迫る。
その天使が剣を振り上げた瞬間、カイザーの身体から白銀の闘気が放たれる。
闘気が放たれた影響で、激しい風が巻き起こり、砂埃が舞い上がる。
天使は発生した風圧に吹き飛ばされ、仰向けにひっくり返ってしまう。
そこに拳が鳩尾へと叩きつけられる。呼吸が出来ずに悶絶し、やがて気絶した。

カイザーは完全に足を止め、敵を待ち構える体制に入る。
「魔方陣に傷を付けるわけにはいかないからな、ここで迎え撃つ!」
157FALCON ◆uKCFwmtCP6 :2007/02/02(金) 19:58:59
>156
>「魔方陣に傷を付けるわけにはいかないからな、ここで迎え撃つ!」
横に位置するカイザーは魔法陣を傷付けないようにする為、距離を取って天使達と戦う。
魔法陣に気功波や魔法を直接ぶち込まない限り、影響は無いとFALCONは思っている。
その為、カイザーの判断は少し慎重過ぎるのではと思った。

「カイザー!俺は空で戦う!地上は任せたぜっ!」
FALCONは黄金に輝く翼を羽ばたかせて空を飛ぶ。
身に纏うオーラが魔法陣に影響を与えると考えた為に、カイザーは魔法陣から距離を取ったのかも知れない。
もし、身に纏うオーラが魔法陣に触れて、何らかの影響を及ぼしてしまったら……
(任務失敗らしいけど……どうなるんでしょ?)
とにかく万が一のことを考えて、FALCONは身に纏うオーラが魔法陣に触れないように空で戦うことにした。

「さぁ、天使達共!かかってきやがれ!」
天使達は誰も空に飛んでFALCONと戦おうとしない。
天使達は魔法の弓矢を取り出して、空に浮かぶFALCONを狙って射ってきたのだった。

「ちょっと弓矢は待て!天使らしく空を飛んで戦いやがれえっ!!」
FALCONは飛んでくる矢を必死に避けながら叫んでいるが、天使達は淡々と矢を飛ばしていくだけだった。

158 ◆SgWfYeW0n6 :2007/02/02(金) 20:57:39
>156>157
二人の騎士はいとも簡単に、精鋭揃いの遊撃隊を捌いていく。
天界に有数と名高い手練の彼らさえ、その技に気勢を削がれる。

しかし控えるアブデル、ゾフィーエルの観察眼は、オーガス騎士の挙動に残る微かな戸惑いを見抜いていた。
一度地上に降り立った筈のFALCONが、敢えて空中へ河岸を戻した事から
アブデルらの疑念はいよいよ確実なものとなる。
「ゾフィーエル、貴様が当たれ! 小細工する間を与えるな!」
見張り塔からの指示に灰の翼の天使が頷き、やおら手をもたげると
カイザーの闘気にも劣らない陣風が魔法陣に吹き荒れた。
同時に法皇庁の中庭に面した窓が全て開け放たれ、
風に乗せられたように剣、槍、ナイフから調理包丁まであらゆる刃物が屋内から飛び出し、カイザーの身に降り掛かる。

ゾフィーエルの標的はカイザーのみならず、FALCONまでも含まれた。
地上の天使が外した矢、放たれて間も無い矢までが次々と見えない手に牽かれて空中を縦横し、FALCONを襲う。
それら一連の攻撃は、最初の「風」からおよそ瞬き一つの時間で行われた。


魔法陣の戦闘から離れ、法王庁の門には反乱軍が押し寄せる。
首都戦で活躍した農民兵を今回は下げ、フレゼリア国軍女王派を先鋒に進撃し、教会騎士団の砲撃にも怯まない。
兵力に限っては拮抗しているが、建築的に防御力の脆弱な法皇庁を守備するハンデを負った騎士団は圧倒的不利だ。
士気の衰えは連帯を乱し、迎撃に向かう騎馬隊は足並みを揃える事すら間々ならない。
法皇庁陥落は時間の問題だが、アブデルの計画では例え残るが壁一枚でも、儀式を終えるまで保てれば良かった。
敵軍に一時占拠された所で、ゲート貫通後の天使軍で法皇庁を奪還するだけだ。

儀式さえ成功すれば天界の勝利は確実で、審判の日までに余力を蓄える事が出来る。
それだけにアブデルは、オーガス騎士を前にして歯噛みしていた。
「奴等め、人間や妖魔如きを相手に何を遊んでいる」
塔から戦いの様子を見下ろす。手こずるようなら、天使長自らが剣を執る覚悟だった。
人界に残された時間が僅かなように、天界にもまた時間が無い。
「次の戦が近いのだ」
159カイザー ◆OrJKdYNK3U :2007/02/04(日) 07:36:12
>157>158
>「カイザー!俺は空で戦う!地上は任せたぜっ!」

「ああ、地上は俺が受け持つ!」
空へ飛び上がって味方へ声を返しつつも、眼差しは敵から離しはしない。

>風に乗せられたように剣、槍、ナイフから調理包丁まであらゆる刃物が屋内から飛び出し、カイザーの身に降り掛かる。
「…くっ!」
刃物を聖闘気で吹き飛ばすにしても、コンマ数秒の時間はかかる。
その間に何もしなければ吹き飛ばす前に自分の身体に刃物が次々に突き刺さってしまうだろう。
よって、数コンマの間だけでも刃物の対応をしなければならない。

一目に見れば全ての武器が一斉に迫っている様に見える。
だが、カイザーは刹那の差で幾つかの段階的な攻撃になっている事に気付いた。
先ず向かってきたのは併走する2本の長剣、カイザーは身体を屈ませると、剣は両肩の上を通過した。
瞬きする暇も無く、短剣が5本、槍1本、斧2本が迫ってくる。
手を伸ばし、槍の刃物が付いている先端を避けつつシャフト(柄)部分を掴む。
瞬時に槍に闘気を纏わせると手元で回転させ、剣と斧を地面に叩き落す。
槍は衝突の瞬間は耐え切ったが、すぐ全体に罅が走り粉々に砕け散る。

更に包丁などの調理用の器具が無数に迫ってきた。
ここでカイザーの身体から聖闘気による光波動の衝撃が発せられる。
刃物は飛んでいた方向とは逆方向へ吹き飛ばされ、それに巻き込まれた2人の上級天使が心臓を貫かれる等で絶命した。

一瞬、動揺していた天使だが、すぐに冷静さを取り戻してカイザーを見る。
天使は、カイザーの足もとに赤い水滴がポタポタと滴り落ちている事に気付いた。
目線を上に辿ると、カイザーの右腕が真っ赤に染まりあがっているのが分かる。
聖闘気で吹き飛ばす直前、先程の刃物で右肩を負傷したのである。
―――が、不意にその天使の視界の全てが白に染まり、数秒で真逆の漆黒に変わる。
カイザーの光を纏った右拳が天使を吹き飛ばしたのである。

「こんな怪我で怯むと思うな。
 この戦い、致命傷を受けるまで止まるつもりは無い」
160FALCON ◆uKCFwmtCP6 :2007/02/04(日) 09:19:19
>158>159
カイザーに地上を任せ、FALCONは空中でひたすら天使達の放つ矢を避け続けている。
FALCONが矢に当たらないことに苛立ったのか、何人かの天使が剣を手に、FALCONのいる空まで飛び立とうとする。
FALCONの顔に笑みが浮かんだ。

魔法陣の真上で気の爆発が起る。
そんな危ないことをするのは誰だと思い、FALCONは魔法陣の方を見た。
灰色の天使が刃を操るのが見えた。

「うおっ!」
後ろからやってきた何かがFALCONの胸を貫く。
油断していた訳ではない。
後ろには天使の気配は無かった。
胸から突き出したのは矢だった。

「ぐああぁっ!」
続けて先の勢いのある矢程ではないが、矢が四方八方から襲ってくる。
天使の魔法の矢は自由自在に操れるのかとFALCONは思ったが、地上から飛び立とうとした天使は飛び立っていない。
自ら危険に飛込まないように、FALCONの様子を静かに見ていた。

「そうかっ!あの野郎!」
FALCONは感付く。
あの灰色の天使は刃を操っていた。
ならば、この矢もあの灰色の天使が操っているのかも知れない。
FALCONは再び灰色の天使の方を見た。
灰色の天使は今もそこら中から刃を持ってきて、カイザーの方に向けて放っている。

まだ矢を操っていたとは確信は持てないが、あの灰色の天使をぶっ倒せば、カイザーの負担が減ることは間違い無い。

「はぁっ!」
FALCONは体の周りに球状のバリアを張り、四方八方からやってくる矢を防ぐ。
バリアに当たった矢は、何か固い物に当たったかのように弾き飛ばされた。

「突撃だぁ!!」
FALCONは背中から胸に突き刺さった、蒼い血の滴る矢を引き抜き、投げ捨てる。
FALCONは知らないが、この投げ捨てた矢が天使の頭に刺さり、その生涯を終えたのだった。

FALCONはバリアを纏ったまま、灰色の天使を目掛けて猛スピードで突撃しに行く。
狙いは固いバリアを張ったままのタックル。
邪魔なあいつを地の果てまで吹っ飛ばしてやるという意気込みだ。

161 ◆SgWfYeW0n6 :2007/02/06(火) 21:32:19
>159>160
刃の嵐をやり過ごしたカイザーに、業を煮やしたアブデルが自ら剣を向ける。
「下がれ!」
遊撃隊員たちは魔法陣のカイザーから退き、塔から降りた天使長へ道を開けた。
アブデルは仰々しく金色の翼を広げると、大剣を背負って魔法陣に降り立つ。
「貴様が天聖騎士、カイザーだな?」
カイザーと視線を交える。剣をかざし、切っ先を突き付け牽制する。
「見事な技だ。だが、自慢の剣は果たして使わんのか?」
言葉の継ぎ目で、微かにアブデルの視線がカイザーを外す。
天使長は空中のゾフィーエルに目配せしていた。ゾフィーエルが傍には気付かれない程に短く頷く。

>「突撃だぁ!!」

「所詮は猿知恵だな」
FALCONの突撃がゾフィーエルを捉えかけた一瞬、灰色の羽根が散り、天使の姿が霞む。突撃は回避された。
アブデルの剣が同時に動き、間合いをカイザーの側へ一息で詰めて斬り上げる。
しかし剣はカイザーに触れずに、大きく振り被られた。アブデルの翼のオーラが腕を伝い、剣先から光線となって迸る。

回避後のゾフィーエルがカイザーの背後に現れた。首筋目掛け、斧槍が振り下ろされる。
アブデルが放つ金色の光の「剣」は、ゾフィーエルとカイザーの頭を掠めて斜め上、
体当たりをかわされたFALCONの背中を狙った。
162FALCON ◆uKCFwmtCP6 :2007/02/06(火) 22:47:11
>161
灰色の天使にFALCONの突撃は命中したかのように見えた。
だが、次の瞬間には、FALCONの突撃は灰色の天使の体をすり抜けていった。
残像拳のような技術を使って回避したのだろうか?
残像拳ならば、そう遠くには移動してないと思い、FALCONは魔法陣の上空で静止して、近くに灰色の天使の気があるかどうか探り始めた。

突然、左肩に何かが貫通したような痛みが走る。
左腕に何の感覚も伝わらず、まるで動かない。
手で触って確認をしてみると、左肩には大きな穴が空いていた。
前方には誰もいない。
後ろを振り返って見ると、強そうな二人の天使がカイザーと戦っている。
二人の内の一人は、あの灰色の天使だった。

「残りの気はもう少ないか……」
FALCONは右手に残りの気の殆んどを集中させる。
魔法陣はFALCONの下に位置しており、ここで気功波を放っても問題は無いだろう。

「カイザーっ!上手く避けろよっ!」
FALCONは右手を灰色の天使に向けて、特大の気功波を放つ。
残った気の大半を込めた気功波だ。
小さな城なら跡形も無く吹き飛ばす程の威力はあるだろう。

163カイザー ◆OrJKdYNK3U :2007/02/07(水) 17:23:49
天使たちは下がった、そしてその命令を下した人物が魔方陣の中央にいる。
>「貴様が天聖騎士、カイザーだな?」
>「見事な技だ。だが、自慢の剣は果たして使わんのか?」
「さあな、気分が来たら使うかもしれないな」
質問に対して、あえてはぐらかす。

>アブデルの剣が同時に動き、間合いをカイザーの側へ一息で詰めて斬り上げる。
(来るか!?)
身構えた。
>しかし剣はカイザーに触れずに、大きく振り被られた。アブデルの翼のオーラが腕を伝い、剣先から光線となって迸る。
>回避後のゾフィーエルがカイザーの背後に現れた。首筋目掛け、斧槍が振り下ろされる。
「見えているぞ!」
カイザーは後方へ大きくジャンプし、ゾフィーエルの攻撃を避ける。
直後、カイザーは己の左頬に熱さを感じた。
左手で頬に触れてみると、鉄の匂いを放つ赤い液体。つまり血が付着していた。
敵の攻撃を完全には避け切れず、わずかに左頬に霞めていたのである。
「…予想よりも動きは速かったが、それだけだ!」
カイザーは両拳に光を集める、二つの輝きが戦場を照らし付ける。

>「カイザーっ!上手く避けろよっ!」
>FALCONは右手を灰色の天使に向けて、特大の気功波を放つ。

「ああ、決めてやれ!」
カイザーは両拳に集めた光を地面に叩きつける。
その反動でカイザーの身体は上空へと吹き飛ばされ、FALCONの気功波はその下を通過していった。
164名無しになりきれ:2007/02/08(木) 20:37:15
遥か昔…バーニングナックルゥア!!を我が物にせんとする魔王軍とそこに住まうヒッキーとの戦いがあった…
後に邪魔戦争と呼ばれるこの戦いは魔王が封リーダーだ。
このバーニングナックルゥア!!を我が物にしようとカイザー達によって翼竜は全て片付いた。
が、カイザーは緋刃達に言葉を向けた。
言葉を向けられた緋刃は不敵な態度で挑発する。
フレイ「バーニングナックルゥア」
リョウ「バーニングナックルゥア」
レン「バーニングナックルゥア
レンは少しを位置を変えた。 企む魔王を倒すため、ともに戦ってくれる仲間を募集している。
さぁ、俺たちと共に打倒魔王の旅に出よう!れ一応の決着をみたと伝えられている…。

しかもたちの悪いことは面
165名無しになりきれ:2007/02/10(土) 15:18:09
ナイト
166名無しになりきれ:2007/02/10(土) 19:27:09
DJ OZMAのボディースーツ
167名無しになりきれ:2007/02/11(日) 11:12:23
奴は鬼だ!!
168◇SgWfYeW0n6 の代理:2007/02/11(日) 21:44:58
>162>163
アブデルの剣はFALCONの肩を抉ったのみで終わり、反撃として強力な気功波が放たれる。
カイザーと共にゾフィーエルも着弾点から退避し、アブデル一人が残された。
「仕損じた――」
気功波はアブデルを巻き込んで魔法陣の端ぎりぎりの地面を吹き飛ばし、爆風と砂嵐が中庭の僧や天使を襲った。
乗じた工作部隊が熱光学迷彩を解除、姿を露わにして魔法陣に着陸すると
法皇、枢機卿らが祭壇から逃げ出した後を押さえる。

「強引だな」
上空へ逃げたカイザーをゾフィーエルが追う。
中庭の様子は一面砂煙に包まれていて、まるで分からない。
高空で待機する戦艦の影は変わらず太陽に被さり、
時折地上への援護射撃の弾道が稲光の様に、法皇庁周囲の陣中へ降り注いだ。
「人界も天界も、お互い往生際が悪いとは思わないか。
この世界は既に寿命だ。生き残り、新たな世界の依代となる存在は唯一人だろう」
ゾフィーエルは常にカイザーの下を取りながら、目にも留らぬ速さで攻撃・離脱を繰り返す。
天使の矛はカイザーの防御に深く潜り込んで急所を獲ろうとはせず、ただ四肢のみを執拗に狙う。
「人界が用意した『絶対者の種』は誰だ?
そいつが君の命の永遠を約束したとして、信用出来るのかい?」
169代行投稿:2007/02/11(日) 21:45:04
>162>163
アブデルの剣はFALCONの肩を抉ったのみで終わり、反撃として強力な気功波が放たれる。
カイザーと共にゾフィーエルも着弾点から退避し、アブデル一人が残された。
「仕損じた――」
気功波はアブデルを巻き込んで魔法陣の端ぎりぎりの地面を吹き飛ばし、爆風と砂嵐が中庭の僧や天使を襲った。
乗じた工作部隊が熱光学迷彩を解除、姿を露わにして魔法陣に着陸すると
法皇、枢機卿らが祭壇から逃げ出した後を押さえる。

「強引だな」
上空へ逃げたカイザーをゾフィーエルが追う。
中庭の様子は一面砂煙に包まれていて、まるで分からない。
高空で待機する戦艦の影は変わらず太陽に被さり、
時折地上への援護射撃の弾道が稲光の様に、法皇庁周囲の陣中へ降り注いだ。
「人界も天界も、お互い往生際が悪いとは思わないか。
この世界は既に寿命だ。生き残り、新たな世界の依代となる存在は唯一人だろう」
ゾフィーエルは常にカイザーの下を取りながら、目にも留らぬ速さで攻撃・離脱を繰り返す。
天使の矛はカイザーの防御に深く潜り込んで急所を獲ろうとはせず、ただ四肢のみを執拗に狙う。
「人界が用意した『絶対者の種』は誰だ?
そいつが君の命の永遠を約束したとして、信用出来るのかい?」
170名無しになりきれ:2007/02/11(日) 22:11:24
騎士団は西洋の暴走族なんでつか?
171FALCON ◆uKCFwmtCP6 :2007/02/11(日) 23:40:34
>168>169
「ははは……ちょっと計算が違ったかな?」
FALCONの放ったエネルギー波は、狙っていた灰色の天使に直撃することはなく、強そうな金色の天使に着弾した。
強そうな金色の天使を中心に大爆発が起り、着弾点の周辺にいた他の天使や人間達の生命を消していく。
爆発の規模はFALCONが考えていたより広くなり、十分に距離を取ったと思っていたが、それでも少し危うかったようだ。

「一応、魔法陣は何ともないようだけど……」
下を見て確認すると、魔法陣は気功波を放つ前と変わらず、光輝いている。
だが、少しだけ違うところがあった。
エヴァンスの部下達が気功波の爆発に紛れ、無事に魔法陣に到達して作業を始めている。
この状況の中で自分達や天使達に気付かれず、魔法陣の下にまで来るとは。
エヴァンスはとても優秀な部下達を集めたようだ。

FALCONは身に纏っていたオーラを抑え、魔法陣の上に着地する。
作業をする者達の邪魔にならないように、すぐに魔法陣の上から走って抜け出し、周囲の気配を探った。
魔法陣の近くには天使はいないようだが、少し離れた場所には天使達がいる。
FALCONはコートの内から黒い短刀を取り出し、刀に気を通して刀身を引き伸ばす。
動かすことのできる右手で下段の構えを作り、FALCONは魔法陣で作業をする者達の護衛を行った。

172カイザー ◆OrJKdYNK3U :2007/02/12(月) 16:28:22
>>168
FALCONの気弾は地面に直撃し、爆煙を巻き上げる

>「強引だな」
>「人界も天界も、お互い往生際が悪いとは思わないか。
>この世界は既に寿命だ。生き残り、新たな世界の依代となる存在は唯一人だろう」
>「人界が用意した『絶対者の種』は誰だ?
>そいつが君の命の永遠を約束したとして、信用出来るのかい?」

「人界に新たな絶対者など存在しないさ。
 もし仮に居たとしても、信用など出来ないだろうな。」
ゾフィーエルの攻撃は踏み込みが浅い、カイザーは器用に身を動かしながら攻撃の直撃を避けている。
「信用するのは、自分と自分が愛した人。そして親友だけで十分だ。」
地面が近くに迫っているのを確認する。
着地する寸前に闘気を横に飛ばし、下で構えているゾフィーエル、そして魔方陣から離れる。

「それにな、この世界は寿命なんかじゃないさ。
 …さあ、天界の強さを俺達人界に教えてくれよ。」
この位置ならば大丈夫だろうと、剣を鞘から抜いて手に取る。
天使が自分との戦いに集中している間に、エヴァンスの部下が作業を終える筈だ。
173名無しになりきれ:2007/02/13(火) 00:27:27 0
ゴッドレーザ!!
174名無しになりきれ:2007/02/14(水) 14:53:12 0
絶対者とはこの世界というゲームのプログラマーである
175 ◆SgWfYeW0n6 :2007/02/15(木) 21:07:40 0
>171>172
着地したカイザーに追いすがり、ゾフィーエルは尚も攻撃を続ける。
敵が魔法陣から離れた意図はおよそ勘付いていたが、魔法陣の守りは別に残っている。
「『絶対者の領域』を目指しているのではないのか……?」
反撃の隙を与えぬよう地面から建物の壁へ、壁から植木の枝へ飛び跳ね、打ち込みの根拠地を絶えず動かす。
その間、振り立てられる斧槍の速さは残像すら残さない。
剣圧で巻き起こるカマイタチが中庭の土を削り、石塁を撃ち崩した。
「所詮は蛮勇か。ならばこの通り、剣を以て礼しよう」
灰羽の天使は斧槍に加え、翼から発せられるオーラの余波を斬撃に換えて武器とした。
カイザーの周囲の地面はオーラの衝撃波に一瞬で掘り返され、砂煙を起こす。

祭壇の工作部隊をFALCONが守る。聖槍の作業が完了すれば、すぐにでも新たなゲートが開通するだろう。
生き残りの戦闘天使は、各々教会騎士団から奪った大砲を担いで展開する。
真っ向勝負では敵わないと悟った彼らは、聖遺物に細工しようとしている一団から仕留める事を考えた。
教会騎士団の魔導砲は物理固体の砲弾ではない、一人では十字砲火を撃ち落せない筈だ。
且つ、敵は今まで魔法陣を外して攻撃を行っている。力業で止めようとすれば魔法陣を傷付けるかも知れない。
素早く魔法陣を囲むと、天使隊は一斉に砲火を放った。
凝縮された聖光魔力の砲弾は蝋石の魔法陣を掠め、FALCONと祭壇を狙った。
176FALCON ◆uKCFwmtCP6 :2007/02/15(木) 23:57:30 O
>175
魔法陣の護衛をしていたが、天使達は建物の中に引き込もって、中々出てこない。
正直に言うと、結構、暇だ。
後ろの魔法陣の方を見てみると、作業は順調に行われているみたいだ。
天使達の気が動き出した。
今度は天使達は何をしてくるのだろうかと思うと、少しだけ楽しくなってくる。

出てきた天使達は魔法陣を囲むように大砲を設置し、こちらに発砲する準備をする。
この後に及んで近代兵器とは。
近代兵器と武道家達が戦争したら、どちらが勝つか?
こんな問題は幼い子供でも簡単に答えることができる。
勿論、武道家達の圧勝だ。
天使達はそんな簡単なことも習わなかったのだろうか。

天使達が大砲に魔力を充填し、ようやく発射可能になった。
どうせ無駄なことだとFALCONは余裕を表していたが、その慢心が裏目に出た。
天使達が大砲から魔力弾を発射した。

「こんなものを避けられないとでも思っているのかっ!?」
FALCONは天高く跳躍する。
ここから気功弾でも放ってやろうと思ったが、生憎とそんなに気は残ってない。
着地した際、すぐに格闘で倒してやろうとFALCONは思っていた。
そんなFALCONの耳に下から爆音が聞こえる。
FALCONが下を見ると、魔法陣が爆発していた。

「ゲエっ!!魔法陣が爆発している!!」
思えば、自分の真後ろには魔法陣があった。
自分は避けることができても、魔法陣は動かない。
魔力弾が魔法陣の中心でぶつかり、爆発を起こしたのだろう。
FALCONは自身の慢心を空中で後悔することしかできなかった。

177カイザー ◆OrJKdYNK3U :2007/02/17(土) 00:28:35 0
>>175
自分を追い、ゾフィーエルは攻撃を続ける。
>「『絶対者の領域』を目指しているのではないのか……?」
「ああ、目指している」
ゾフィーエルの動きはかなり早い、ヒットアンドアウェイでカイザーの反撃を防ごうとしている。
だが、カイザーも反撃するつもりは毛頭も無い。時間稼ぎさえすれば任務は完了するはずだ。

>「所詮は蛮勇か。ならばこの通り、剣を以て礼しよう」
>灰羽の天使は斧槍に加え、翼から発せられるオーラの余波を斬撃に換えて武器とした。
>カイザーの周囲の地面はオーラの衝撃波に一瞬で掘り返され、砂煙を起こす。
巻き起こる砂塵に視界を狭められながらも、敵の姿だけは逃がさない。
「そんな芸当はいい、さっさと掛かって来い。」
挑発を続ける、そろそろ作業が終わってもおかしくはない時間だ。

>>176
>「ゲエっ!!魔法陣が爆発している!!」

不吉な声が聞こえ、カイザーは敵に注意しつつも声の発生源へと振り向いた。
声はどうやらFALCONが発したらしい。そして、その目線の先には見るも無残な姿になった魔方陣があった。
「…まあ、あれぐらいなら大丈夫……なわけないよな」
カイザーは、出撃前のFALCONの容態があまり良くなかった事を思い出していた。
(…作業続行可能なら不幸中の幸い、違うならエヴァンスの指示が来る筈だ。
 ここは目の前の敵に集中したほうがいいだろうな)
カイザーの剣に光が集まってゆく。
178名無しになりきれ:2007/02/24(土) 15:49:52 0
アルファオメガ
179名無しになりきれ:2007/02/24(土) 16:00:00 O
               _  ∩
          ('、`*  ゚∀゚)彡
           ξ ゚∀ ⊂彡
             |   ノ
       <●>   ( ヽノ
      ●‖●   ノ>ノ
      Λ‖Λ /  ノ
     (/ ⌒ニ =゚ω゚ ノ   /
      || ニ ^o^o^ノ   /|
      ∪亅ω・´/   ノ ゚ゝ
      (´・ω゚/   / ハ\
     ノ  ノ   /  (゚∀゚∀゚)
    (´<_` \_ハ /     ノ
     \<●><●> >< 'A`)
     ( <●><●> -_- ω^)
      ( ,' 3 ゚ー゚* ゚ -゚ノ
        ノ   ミ,,゚Д゚ノ
       ( ヽノ⌒\ノ )
       ノ>ノ   \<\∩
     从ノ ノ/⌒ヽ从 ゚∀)彡
     (゚听 *‘ω‘ ゚听)ξ
     (´<_`´_ゝ`_ゝ`)
   (´<_`  ´∀`∀´>
  (・∀・ *゚ー゚ ,,゚Д゚ノ
 ノ    ゚д゚    ノ
180名無しになりきれ:2007/03/03(土) 22:51:39 0
huruba-suto
181FALCON ◆uKCFwmtCP6 :2007/03/08(木) 00:31:14 O
地面に着地し、FALCONは爆発した魔法陣を見た。
作業員達は魔力弾の直撃を受けて全滅。
魔法陣は聖なる魔力が過剰に加えられてしまった為、今にも何らかの変化を起こしそうだ。
設置されてあった聖槍は魔法陣の上からなくなっている。
魔力弾の爆発によってどこかに吹き飛んでしまったのだろう。

「こりゃ……駄目かな?」
誰がどう見ても駄目だと思うだろう。
任務はFALCONの慢心のせいで完全に失敗。
もう、この場は引くしかない。
魔法陣が何らかの異変を発する前に。

「カイザー!!任務は失敗したみたいだ!!
 とっととこっから退散するぞ!!」
そうカイザーに言うと、FALCONは空を飛んで飛空戦艦に戻ろうとする。
だが、飛ぶことができない。
気の残りが少ないとかではなく、何かに引き寄せられている。
FALCONは後ろを見た。
魔法陣が聖なる光を発し、近くにある全てのものを吸い込むゲートになっている。
行き先は絶対者の場所ではない。
何回も異空間に吸い込まれてきたFALCONの経験がそう言っている。
次元の狭間、もしくはどこか別の場所に現れてしまうだろう。
地上かもしれないし、魔界や天界かもしれない。
どこか別の異世界や時を越えてしまう可能性もある。

「あぁ……懐かしいぃぃぃ!!!」
FALCONは魔法陣に吸い込まれていった。
今度のFALCONの戦場は、果たしてどこになるのであろうか?
182名無しになりきれ:2007/03/08(木) 13:32:05 0
戦闘狂で小児性愛
183サンタ:2007/03/12(月) 23:40:29 0
俺の野望がどうかしたか?
184 ◆uKCFwmtCP6 :2007/03/14(水) 11:47:56 O
ガストラとの戦いから100年が経った。
この100年の間に、サタンや天界の軍勢が地上を攻めて来たものの、現在の三界の関係は良好と言える。

最近、妙な噂を耳にしている。
地上の皇帝、オーガスが世界に対して不穏な気配を見せていると。
少し事情が気掛かりになり、オーガス皇国を調査させ、オーガス皇国が地上を統一させようとしていることが分かった。
それだけならまだ良かった。
問題なのは、皇帝であるオーガスの子孫が邪悪な気に満ち溢れていること。
まるで、100年前のガストラ帝のように。
以前にオーガス皇国で出会った時は、そのような気を感じてはいなかった。
何がオーガス皇帝を変えたのだろうか?

地上のガストラ帝国に向かえ。
この100年間でガストラ帝国は復興し、オーガス皇国に次ぐ国力を保持している。
オーガス皇国が地上を制圧しようと動いている今、多くの難民や勇敢なる者達が集まってくるはずだ。
勇敢なる者達と力を合わせれば、邪悪な気に満ちたオーガス皇帝を止められる。
そして、邪悪な気に満ちた原因をも突き止めるのだ。


「はぁ……そんなことを言われたって……」
そんな重大な使命を負ったFALCONの息子、ホルスはガストラの城下町をさ迷い歩いている。
ガストラの城下町の入口に転移魔法で着き、城を目指して歩いていたのだが、道に迷ってしまったのだ。
果たして、ホルスはオーガス皇帝を止めることができるのだろうか。
185 ◆uKCFwmtCP6 :2007/03/14(水) 11:49:17 O
邪悪な力に満ち溢れたオーガス皇帝を止める為、勇気ある騎士よ、今こそ立ち上がれ!!
さあ、まずは自己紹介の紙に記入だ!!
【名前】
【年齢】
【性別】
【職業】
【魔法・特技】
【装備・持ち物】
【身長・体重】
【容姿の特徴、風貌】
【性格】
【趣味】
【人生のモットー】
【自分の恋愛観】
【一言・その他】


【スレのルール】
・名無しの投下あり
・決定リールと後手キャンセルの禁止
・版権、越境参加OK
・レス順自由
・GMは基本的には無し
・基本はsage進行


【参加するコテに対して】
・荒らしに間違われるようなレスはしない
・スレのルールや世界観を守る
・掛け持ちはしない
・本スレで不必要な雑談はしない
・荒らしはスルーすること
186ホルス ◆uKCFwmtCP6 :2007/03/14(水) 11:51:12 O
【名前】ホルス
【年齢】14歳
【性別】男
【職業】魔導拳士
【魔法・特技】魔術を絡めた格闘戦
【装備・持ち物】魔力を練りこませた編まれた武道着
【身長・体重】145cm、40kg
【容姿の特徴、風貌】短めの蒼い髪に、紅い瞳
背中には黒い翼が生えている
【性格】穏和
【趣味】武術の修行
【人生のモットー】飛ぶことができるなら、どこまでも高く
【自分の恋愛観】特に考えたことはない
【一言・その他】FALCONの息子。
父親から武術を、母親から魔術を習っているが、どちらも中途半端。
父親から受け継がれた人間の血は薄い。
187名無しになりきれ:2007/03/15(木) 11:41:47 0
新規募集
188ゾロリ:2007/03/15(木) 12:56:31 0
立ち上がらなくてもいいぜ。

今日から俺たちがこのスレをいただくのだー!!


どーだどーだ恐れ入ったか!?
189ホルス ◆uKCFwmtCP6 :2007/03/16(金) 01:38:28 O
ガストラの城下町には活気がある。
人々の顔には笑顔が溢れ、良い気に満ちている。
この町を歩いていると、オーガス皇国が戦争を引き起こし、他の国の人々が苦しんでいるという話が嘘に思えてくる。

ホルスは現在歩いている大通りから、城の見える右方向の通りに曲がった。

>187>188
この通りも先の大通りと同じで活気があった。
一軒の店を除いてだが。
その一軒の店が気になり、近付いて店の様子を見ると、店の奥に張り紙が貼ってあった。

「新規募集……?」
張り紙にはその一言だけが、でかでかと書かれている。
この一言だけでは何を意味するかが分からない。
明確な主語がないと。


>立ち上がらなくてもいいぜ。
> 今日から俺たちがこのスレをいただくのだー!!
> どーだどーだ恐れ入ったか!?
店の中にチンピラ風の男が入ってくると、この店は自分達のものだというようなことを言って、そのまま走り去っていった。

「まぁ、この店のことは僕には関係ないか」
どうせこの店は空き家で、新たに入る店を募集していたのだろう。
そう自分で解釈し、ホルスは店から出た。

「新規募集か……僕も仲間を募集していますよぉ!!!」
ホルスは歩いている通りで、大きな声を出した。
ホルスだって、一緒に戦ってくれる仲間が欲しいのだ。
190名無しになりきれ:2007/03/16(金) 18:07:19 O
ホルスの前にフリーザが現れた。
191名無しになりきれ:2007/03/16(金) 18:55:07 O
ピッコロもあらわれちゃった
192名無しになりきれ:2007/03/16(金) 19:40:05 0
ホルスは異次元の穴に吸い込まれた
193名無しになりきれ:2007/03/16(金) 19:58:49 O
もうDBでいいじゃないか
194ホルス ◆uKCFwmtCP6 :2007/03/16(金) 23:25:18 O
>190-193
通りを歩いていると、だんだん城から離れていっているように感じる。
また道を間違えたようだ。

「あの、すみません。城にはどの道を通ればいいんでしょうか?」
目の前の二人の男性、フリーザとピッコロに質問をする。
彼らが言うには、ホルスが進んできた道を戻らないと、城には着かないと言った。

「ありがとうございました」
ホルスはお辞儀をすると、歩いていた通りを引き返した。

ホルスが歩いていると、常人には感知できない空間の歪みを見つける。
その歪みがどんな世界に通じているのか少し興味を持ち、ホルスは吸い込まれるように中に入った。
空間の歪みに入った時、『>もうDBでいいじゃないか』という声のような音が響き、周りの人間をびっくりさせたのはここだけの話。

空間の歪みが通じていたのは、この地上のガストラ城の城門前。
なんともご都合的だが、近道としてホルスは利用させてもらうことにした。

ホルスが急に現れたことにより、門番の兵士達は驚き、ホルスに槍を向ける。

「僕の名前はホルス。
 魔王FALCONの名代として、ガストラ城に馳せ参じました」
そのことを言うと、門番達は槍の構えを解いて、ホルスを快く出迎えてくれる。
予め、魔王であるFALCONが手回しをしてくれていたようだ。
ホルスは門番達のお辞儀をすると、城の敷地内に入っていく。
目的は現在のガストラ皇帝に、オーガス皇帝を止める為の知識を分け与えて貰う為である。
195名無しになりきれ:2007/03/17(土) 00:52:28 0
ガストラ皇帝のメラゾーマ!裏切り者を信用する気は0のようだ
196パパ:2007/03/17(土) 02:03:06 O
ホルス、実は私がお前のパパなんだよ
今まで黙っててごめんな、パパようやく会社の経営が軌道に乗ったんだ
だからお前を迎えに来たんだよ、さぁ帰ろう
家ではママも待ってる、今夜はハンバーグだ!!
197名無しになりきれ:2007/03/17(土) 02:05:25 O
だがしかし、それは罠だった!
ホルス大ピンチ、略してホルンチ!!
198名無しになりきれ:2007/03/17(土) 02:10:36 0
オーガスがガストラ城に遊びに来た
「よう、ガストラ!我輩とキャバクラに行こうぜ!」
ガストラとオーガスは夜の闇に消えていった・・・
199ホルス ◆uKCFwmtCP6 :2007/03/17(土) 05:36:00 O
>195>197
ホルスが謁見の間の扉を開けて入った途端、巨大な火球がホルスに向かって飛んできた。
巨大な火球の大きさはホルスの身長と同じくらい。
ホルスは身構えると、その飛んでくる火球に拳を打ち出す。

「オラァ!」
気合いを込めたホルスの拳は、巨大な火球を床に向かって弾き飛ばし、床に大きな焦げ目を残した。

『うむ。流石は魔王FALCONの息子と言ったところだな。』
謁見の間に拍手の音が響き渡る。
ホルスは拍手の音のする方を睨んだ。

「いきなり攻撃するとは、物騒なご挨拶ですね。ガストラ皇帝陛下」
目の前の二十歳前後の金髪の男、ガストラ皇帝は拍手を続けながら言った。

『なかなかやるようだが……油断大敵だぞ』
ホルスはガストラ皇帝が何を言いたかったか、一瞬分からなかった。
だが、すぐに思い知らされるようになる。

ガストラ皇帝が指を鳴らすと、ホルスの頭に何かがぶつかった。

「タライ?」
その何かとは、落ちてくる物としては王道的なもの。タライだった。

『流石のホルス殿も、この罠には引っ掛かったようだな』
ガストラ皇帝にとって、この仕掛けは罠のつもりだったらしい。

「どこが罠なんですかっ!!」
ホルスは大声で言った。
だが、これが実戦であった場合、今の罠でホルスは死んでいたかも知れない。
ガストラ皇帝の言う油断大敵という言葉をしっかりと胸に刻みこみ、ホルスは肝心の本題へと入った。

「単刀直入にお聞きします。
 オーガス皇帝を止める為、あなた様にお知恵を貸して頂きたい」
ホルスの一言で、ガストラ皇帝の雰囲気が変わった。
その雰囲気は王者にふさわしく、表情も先程とは違って引き締まっている。
ホルスはガストラ皇帝の言葉を待った。
200ホルス ◆uKCFwmtCP6 :2007/03/17(土) 22:46:49 O
>198
ガストラ皇帝はオーガス皇帝と、お忍びで遊びに行ったことを思い返しながら、ホルスに告げる。

『知恵を貸すことは残念ながらできない。
 私達では、魔導に深く精通する魔界の知識には遠く及ばない。
 もし、地上の人間で何者よりも魔導の知識に精通する者がいるとするならば、それは、百年前に在位していたガストラ皇帝だけだ』
ガストラ皇帝ですら、オーガス皇帝の暴走を止める術は分からないのだ。

『だが、一つだけ。一つだけならば心辺りがある。
 七つ集めれば、どんな願いでも叶うという奇跡の石。ドラゴンボール。
 その伝説の石が地上に存在しているのならば、オーガス皇帝を止めることは可能かも知れん』
ホルスもドラゴンボールという言葉を魔界で聞いた覚えがある。
だが、それは古くから伝わるおとぎ話として、父親から聞いただけのものだ。

「ありがとうございました。皇帝陛下」
ホルスはガストラ皇帝に一礼をし、謁見の間から去って行く。
一度、故郷の魔界に連絡を取り、ドラゴンボールについて詳しい話を聞く必要がある。
ホルスはそう考えていた。
201名無しになりきれ:2007/03/21(水) 00:49:33 0
最終決戦!オーガス軍が攻めてきた!!
202名無しになりきれ:2007/03/24(土) 06:18:07 O
宇宙から隕石が降ってきた!!
203名無しになりきれ:2007/03/24(土) 21:23:40 0
世界は滅んだ
204名無しになりきれ:2007/03/31(土) 19:29:21 0
そして100年たった
205名無しになりきれ:2007/04/08(日) 05:48:52 O
         *'``・* 。
        |     `*。
       ,。∩      *
      + (´・ω・`) *。+゚ もうどうにでもな〜れ
      `*。 ヽ、  つ *゚*
       `・+。*・' ゚⊃ +゚
       ☆   ∪~ 。*゚
        `・+。*・ ゚
206名無しになりきれ:2007/04/20(金) 17:23:32 0
コレはひどい
207名無しになりきれ:2007/05/03(木) 11:32:06 0
おわった?いやコレから始まるのだ
208名無しになりきれ:2007/05/07(月) 15:28:23 O
また質雑形式でやらない?
そんなら少人数でも回せるし。
209名無しになりきれ:2007/05/08(火) 12:49:33 O
>>208
やりたければやればいいやないか
この状況で誰かに了承とったり同意をL必要はないべ?
210名無しになりきれ:2007/05/08(火) 19:13:56 0
んじゃここはもう自由に使って良いの?
211名無しになりきれ:2007/05/08(火) 19:53:40 0
避難所でやれ
212名無しになりきれ:2007/05/08(火) 22:29:26 0
騎士スレの続編さえやれば文句も出ないだろ
違う事やるならスレ立てろって言われるだろうけどな
213名無しになりきれ:2007/05/08(火) 22:51:36 O
>>210
仮にそうだとして参加意思があるのか?
GMやれんのか?
214名無しになりきれ:2007/05/09(水) 16:56:34 0
>>213
どうせ使わないなら勝手に適当な騎士TRPGでもやろうかなと。
ストーリーはなりゆきまかせで世界観だけ決めてみたいな。(無論自分は参加しますけど)
215名無しになりきれ:2007/05/09(水) 18:04:19 O
>>214
いいんじゃね?
216名無しになりきれ:2007/05/09(水) 20:33:45 O
>214
208の者だけど、やる気があるなら
こちらもそっちに合わせて参加するよ。
217名無しになりきれ:2007/05/09(水) 21:03:59 0
>>216
OK。わかった。
明日か今日の夜適当に投稿します。
大まかな世界観は中世で。
218名無しになりきれ:2007/05/09(水) 21:29:57 0
あ、そういえば>>212は騎士スレの続編じゃなければならないみたいな事言ってるけど、
それって絶対に続編じゃなきゃ駄目?
正直今からやろうとしてる物語は絶対者編とか過去に全く別物をやろうかと思ってるんだけど。
中世的な世界観の騎士物だけど。
219名無しになりきれ:2007/05/09(水) 21:31:30 0
ヒント:廃スレ
220名無しになりきれ:2007/05/09(水) 22:00:10 0
培われてきた世界観を引き継いでいれば話の筋は何でもいいんじゃね?
オーガス・ガストラ・フレゼリアの三国、天界、魔界、このあたりさえ押さえておけばいいと思う。
そういうの全部なしで、新しい世界観を構築するのなら、わざわざ廃スレ使うより新スレ使った方がいいと思う。
再利用する必要性やメリットがない上、粘着や老害が沸きそうだしさ。
221名無しになりきれ:2007/05/09(水) 22:27:04 O
>>220
確かにそういう粘着も少しはいるだろうな。
まあ無視で十分じゃね?継ぐも継がないもGM次第。
222名無しになりきれ:2007/05/10(木) 15:07:00 O
騎士スレの乗っとり。
コウガ臭がプンプンと漂ってくるぜ
223名無しになりきれ:2007/05/10(木) 16:17:42 O
>>222
そんな雑種がいたな、そういえばw
だが今更乗っとりもクソもないだろ
224名無しになりきれ:2007/05/11(金) 23:56:13 O
>217
どうなすった?
225名無しになりきれ:2007/05/13(日) 22:32:17 0
ファルコン復活キボンヌ
226名無しになりきれ:2007/05/13(日) 22:54:13 O
日曜に来ないんじゃ>>217は望み薄だな。
227名無しになりきれ:2007/05/26(土) 22:18:52 0
ほしゅよ、いまこそあげまくれ!!
228名無しになりきれ:2007/06/05(火) 12:55:29 O
おーーーーーがーーーーすぅーーーー!!
229名無しになりきれ:2007/06/05(火) 13:24:58 O
age
230名無しになりきれ:2007/06/18(月) 02:58:55 O
保守
231柊つかさ:2007/06/21(木) 16:01:07 O
過疎?
どんだけ〜
232名無しになりきれ:2007/06/23(土) 13:42:34 0
死亡確認
233名無しになりきれ:2007/06/27(水) 22:47:09 0
騎士達の戦いは終わった




10000年後
今度は機士と呼ばれるものが活躍する時代となる
234名無しになりきれ:2007/06/29(金) 03:01:26 O
【森の奥】
そこらじゅうで喘ぎ声が上がっている。
深い森の中で三次元的な戦法がこうまで完全に破られるとは・・・!

捕獲は成功し、勃った二人をイカせれば終わるはずだった。
なのに射手は全滅。
全ての手を付くし、完全に捕縛したというのに、性を発する姿はまるで捕まえたという気がしない。
そして今、先に襲い掛かった男が骨抜きになり、自分には凶悪なペニスが向かっている・・・!

「くそぉおお!!!」
深緑装束の男ならそれを回避できたかもしれない。
だが、ただ悲痛な叫びを上げるだけで避けようとはしなかった。
隊が全滅した事により、心が折れたのだろうか?
それとも・・・
何を思って絶叫したかは最早わからない。

ブルーのペニスが男の穴に入る前な、鋭く伸びた木の根がその穴を貫いたのだから!
周囲の木々が怪しく蠢き、そこらじゅうで断末魔が上がる。
石になった男と、土の中でカイザーイカされた男以外はイッてはいなかった。
だが、動く事もできず、深緑装束の男と同様に延びてきた木の根に貫かれる。

木の根は貫いた地走の精を吸い、辺り一帯は淫気に包まれる。
235名無しになりきれ:2007/07/13(金) 21:48:52 0
騎士よ、今こそ立ち上がれ!
236名無しになりきれ:2007/07/19(木) 22:49:50 O
騎士よ、今こそ勃ち上がれ!
237停止しました。。。:2007/07/19(木) 22:53:31 0
真・スレッドストッパー。。。( ̄ー ̄)ニヤリッ
238名無しになりきれ:2007/07/19(木) 22:53:53 0
真・スレッドストッパー。。。( ̄ー ̄)ニヤリッ


239名無しになりきれ:2007/07/20(金) 17:53:45 0
面白い?
240名無しになりきれ:2007/07/26(木) 12:59:43 O
浮上します
241コルム ◆JJXhJ7JMsU :2007/08/05(日) 17:41:06 O
入隊届け…

【名前】コルム・クレイス
【年齢】17
【性別】女
【職業】槍使い
【魔法・特技】初級回復魔法、我流槍術
【装備・持ち物】
装備:尖槍ファレト、タイトローブ改
持ち物:飴の入った瓶
【身長・体重】142cm 35kg
【容姿の特徴、風貌】腰辺りに大きいリボンがついたミニスカ状のタイトローブを着ているため子供と間違えられる、しかも髪は茶色でロングツーテール
【性格】冷静
【趣味】槍磨き、飴を舐める事
【人生のモットー】成せば成る
【自分の恋愛観】…よくわからない
【一言・その他】…これからよろしく…
242名無しになりきれ:2007/08/07(火) 00:54:06 O
では所属軍を教えてくれい
まさかナイトオブロードスとは言わんよな?
243コルム ◆JJXhJ7JMsU :2007/08/07(火) 05:09:14 O
ふう…入隊したはいいが…何処に行っても子供扱いされる…
まったくもって失礼な奴等だ(腕を組んで不機嫌そうに)

…ん?私に質問?

必要とあれば答える


>>242所属軍か…ライゼ王国軍、第6遊撃隊に配属された

騎士とは一風違う奴等が集まっている所だ


時に…ナイトオブロードスとはなんだ?
244名無しになりきれ:2007/08/07(火) 08:23:00 O
ちょw
騎士スレなのに騎士にかすりもしねえのかよwww
245コルム ◆JJXhJ7JMsU :2007/08/07(火) 12:43:45 O
暑い…おっと、今時間はこんにちはと言っておこう


>>244…そう言えば、私は騎士になるべく志願したのに騎士の称号すら受けていない…
気付かせてくれてありがとう

私はこれから抗議してくる
246事務員:2007/08/07(火) 15:12:44 O
騎士になりたい?
あんた騎士について欠片もしらないんだな
騎士は基本的には世襲制
十代前半に従者として騎士につき、十代後半には叙勲を受ける
つまりあんたはあらゆる意味で手遅れだよ
装備も姿形もお遊び遊撃隊にぴったりじゃないか
さっさと帰んな
247名無しになりきれ:2007/08/07(火) 16:14:34 O
騎士になるには大きい手柄を立てないとね
ロードスの騎士は世界を救った男の称号
おまいもがんばれ
248名無しになりきれ:2007/08/07(火) 16:32:40 O
要するに自分が騎士になるまでのお膳立てを用意しろって事か
GMやるどころかストーリーの主役気取りなんて甘えるのもいい加減にしろ
249コルム ◆JJXhJ7JMsU :2007/08/07(火) 18:04:54 O
今日も暑かったが…こんな日の魔物狩りは爽快感がある


>>246一概に手遅れだとも言えないだろう?勲功をあげる事が出来さえすれば、な

…まあ、女が騎士になる事自体に否定的な輩も存在するものだ

ああ、それと遊撃隊をお遊びと宣うのはやめたほうがいい
個々の力は並の騎士など到底太刀打ち出来ない奴等が多い上に、隊長は騎士なのでな

>>247世界を救った男の称号か…まあ、その称号を受ける事が出来るかどうかはわからないが、私なりに頑張ってみるさ

……ありがとう

>>248甘えてなどないしお膳立てなどいらん

人が集まれば自ずと真の騎士への道が開かれる
250兵士A:2007/08/07(火) 18:28:13 0
お前さんの短い足であぶみに届くのか?
お嬢ちゃん、悪いこと言わないからウチに帰んな
騎士は読んで字のごとく馬上での戦闘が主となるんだ
性別以前にお前さん適正検査で不合格だ

今からでも遅くない、斥候とかもっと自分に向いた仕事を探しな
251兵士A:2007/08/07(火) 21:24:23 0
>>250続き)
それともお嬢ちゃん、騎士に何か深い思い入れでもあるのかね?
252コルム ◆JJXhJ7JMsU :2007/08/07(火) 22:00:12 O
もう夜か、だいぶ涼しくなった気がする


>>250ふん、背が低くて悪かったな(兵士を軽く睨み)


…何といわれようと私は正騎士になる

中途半端な状態で諦める訳にはいかない


例え無駄な足掻きだとしてもだ…(目を臥せる)
253お偉いさんっぽい雰囲気の男:2007/08/07(火) 23:46:24 0
なに、気にすることはない。
馬上戦が本業と言えど、騎馬を失えば徒歩ででも戦わねばならぬのだ。
そのような事態に陥ることは出来得る限り避けねばならぬのは言わずとも知れようが
今は地に足をつけ、基礎を固める雌伏の時と心得よ。
道は一朝一夕で築けるものではない。

長話ついでに、ひとつ聞かせてもらおうか。
何故、騎士を目指す。単なる憧れか、地位か、愛国心か。
254停止しました。。。:2007/08/08(水) 00:44:22 O
真・スレッドストッパー。。。( ̄ー ̄)ニヤリッ
255コルム ◆JJXhJ7JMsU :2007/08/08(水) 18:46:43 O
ふう…夕方は風が涼しくて心地良い


>>253(お偉方の人間か…?)…わかっている。訓練を受けていない私が簡単に騎士になれたら騎士の安売りになってしまいかねないからな(考えるように腕を胸の前で組む)

馬だって私が乗れる馬があるはず…(小声)


騎士になる理由…?減るものではないゆえ話しても構わないが、掻い摘んで話すぞ?

…私は小さい頃、槍を持った聖騎士に命を救われた事があるのだ

それから騎士に憧れるようになった。そんな感じだ(目を瞑ったまま微かに微笑む)
256ぼろぼろの兵士A:2007/08/09(木) 08:43:30 0
た・・・大変だ!国境付近で皇国の連中が6万の大軍を派遣したらしい!
付近で演習していた第三騎士団は安否不明!
国王から緊急に先遣部隊を編成しろとの通達だぞ!
257名無しになりきれ:2007/08/09(木) 08:49:42 O
と言うデマだった
258コルム ◆JJXhJ7JMsU :2007/08/09(木) 12:50:31 O
>>256何…?6万の大軍だと…?

そんなものに攻め込まれたらひとたまりもないぞ…ひょちすると、我々第6遊撃隊にお鉢が回ってくるのではあるまいな


準備をしておくか
259ハゲデブ将軍:2007/08/11(土) 01:03:01 O
皇国軍6万が攻めてきたとかデマだったとか正しい情報が伝わってこない
そこできさまら第6遊撃隊に栄誉ある先遣部隊としての任務を与える!
…聞こえなかったのか?
聞こえたなら任務内容を復唱してはやく出発しろ!
死んでこい!
260名無しになりきれ:2007/08/11(土) 08:44:04 O
敵はプランクトン6万匹だった
261名無しになりきれ:2007/08/20(月) 23:36:20 0
262グラスマン ◆4hcHBs40RQ :2007/08/22(水) 01:06:50 0
「ふう、今日もいい感じに暑いな。」

季節は夏真っ盛り。陽炎の立ち上る猛暑だ。
彼らはその炎天下で重たい荷物を運んでいるのだから、感じる暑さもまた一入である。

「任務と体力トレーニングが同時に出来るなんて、まさに一挙両得だよな。そう思わないか?コルム。」
ライゼ王国第6遊撃隊・隊長。
グラスマン・グラスハーツは、そう冗談めかして言ってちょっと気まずそうに笑った。


今回彼らに与えられた任務は、ライゼ王国から南西に位置する小都市ポロロッカの偵察である。
ポロロッカは昔からライゼ王国と親交があったのだが、最近はどうもライゼ王国への態度が悪く、
ガストラ連邦寄りになっているのではないかとの憶測が立っている。
ライゼ王国とガストラ連邦は戦争にこそ至っていないものの、その仲の悪さは周知の事実だ。
旧友を宿敵に取られたとあっては、ライゼ王国としては非常に面白くない事態である。
というわけで、旅商人に扮してポロロッカに潜入し、その真偽を確かめて来るようにとのことだった。

そしてその任務が、我らが第6遊撃隊に回ってきた理由はひとつ。
正規の騎士には、旅商人の変装などさせられないということである。

だが、変人揃いの第6遊撃隊の面々には、このようなある種の繊細さを持つ任務に適正のある者が少ない。
その上、先日酒の席でやらかした大乱闘で数名が負傷して寝込んでいる。
結局グラスマンは、今回の任務にはコルムだけを伴っていくことにしたのだった。
(ちなみに第6遊撃隊は、隊の中から更にメンバーを選出して任務にあたることが多い。
よく細かい任務で便利屋のように使われるため、今回のように少人数の方がやりやすい任務も多いことと、
喧嘩や無茶な戦闘で負傷者が絶えないためにメンバー個々のコンディションが一定しないことが理由に挙げられる。)
263グラスマン ◆4hcHBs40RQ :2007/08/22(水) 01:07:57 0
しかし。
正規の騎士を目指すコルムに、よりによって正規の騎士にやらせられなくて回ってきた商人の真似事の任務。
内容からしても、騎士を目指すための武勲などとは繋がりようもない。
この異常な暑さも相俟って、グラスマンは今回相当コルムに負い目を感じているのだった。


「いや、コルムがいてくれて本当に助かったよ。ゴロモンやバル・バス・バウには絶対に出来ないからな。
人当たりや頭の回転とか、忍耐とか。そういうものを求められる任務にはやっぱコルムだよ。
もし任務中に敵に襲われたとしても、やっぱりコルムがいれば安心だもんな。最近だいぶ腕上げてきたしな。
今回の任務が無事に終わったら、コルムの日頃の頑張りを上にしっかり伝えておくよ。
いやー、それにしても暑いね。ちょっと南に行くだけでこんなに変わってくるものなんだな。」

商人姿のグラスマンとコルムは、アイテムのたっぷりと詰まった包みと巻き絨毯を背負い、ポロロッカの町並みを歩く。
ポロロッカは大きくはないが活気に溢れた都市で、大通りは賑やかである。
往来の隅では、絨毯に荷物を広げた旅商人の姿もちらほら見える。

「まあ、そういうことで、取り敢えずは今回の任務を一緒に頑張ろうな。
さて、まずはどうしようかね。この辺りで商売しつつ情報集めをするのもいいし、
どこか気になる町の施設があれば行ってみるのもいい。差し当たってその辺の飯屋で腹ごしらえするのもありだな。」

グラスマンは歩きながら地図を広げた。
町長の家や教会や酒場、占いの館や図書館など、目ぼしい施設の位置は一通りチェックしてある。
264アゼル ◆F/ATTd3VB. :2007/08/23(木) 00:17:56 O
>262-263
>「まあ、そういうことで、取り敢えずは今回の任務を一緒に頑張ろうな。
>さて、まずはどうしようかね。この辺りで商売しつつ情報集めをするのもいいし、
>どこか気になる町の施設があれば行ってみるのもいい。差し当たってその辺の飯屋で腹ごしらえするのもありだな。」
地図を広げながら道を歩くグラスマンの後ろから、黒いフードを目元まで深く被った男が、二人に向かってこっそりと忍び寄っていく。

「たいちょ〜、私はお酒が飲みたいです〜」
その男は二人のすぐ後ろに着くと、コルムの声とほぼ同じ声でグラスマンに話掛けた。

「で、隊長達はこんな所で何をしているんですか?
 もしかして、デートですか?」
再び男が二人に話掛ける。
今度は先程のコルムに似た声とは違い、少し低めの男性の声だった。
265名無しになりきれ:2007/08/23(木) 11:24:12 O
アゼルの無遠慮な声は通りの雑踏と喧騒のなか掻き消えて行く
しかしそれを耳ざとく拾う者には緊張感が走った
商人の井手立ちなので商隊の隊長かもしれない
だが商品を担いだ状態でデートなどありえない
とすると偽装であるという可能性がでてくる
時期的に、情勢的に微妙なポロロッカの町
グラスマンたちを中心に水面下で慌ただしく動き出す
266グラスマン ◆4hcHBs40RQ :2007/08/23(木) 19:16:18 0
>>264
>「たいちょ〜、私はお酒が飲みたいです〜」

「酒か…酒場は確かに情報収集の基本だから、酒を飲みつつ辺りに耳を傾けているのも悪くないな。
しかしコルム。その若さで昼間から酒を飲みたいっていうのはお兄さんちょっと感心しないぞ。
未成年は飲酒禁止なんて野暮な事は言う気はないけど、それでもバルみたいな悪い大人になりたくなかったら、
飲酒は夜だけにして量もあまり飲み過ぎないよう一日一杯くらいを心掛けて……ってオイ。」

フードの男にびしっと右手でツッコミを決めた。
隊員のボケにはノリツッコミをするのが隊長の義務だ。
それから、改めて少し驚いた表情になる。
「って、その声はアゼルだよな?」

>「で、隊長達はこんな所で何をしているんですか?
> もしかして、デートですか?」

「馬鹿言え、世界の美少女コルムたんが俺なんか相手にしてくれるわけないだろ。任務だよ。情報収集。
で、お前こそこんな所で何してるんだ?お前は確か……」

言いつつ、アゼルを今回の任務に組み込まなかった理由を反芻する。
267アゼル ◆F/ATTd3VB. :2007/08/23(木) 22:45:31 O
>266>267
>「馬鹿言え、世界の美少女コルムたんが俺なんか相手にしてくれるわけないだろ。任務だよ。情報収集。
>で、お前こそこんな所で何してるんだ?お前は確か……」
アゼルは目元まで被っていたフードを取る。
短い金の髪と、エルフ特有のとんがった耳がフードの中から現れた。

「特に理由なんかはないですよ。
 俺達エルフは受肉した精霊。
 俺は風の精霊が受肉した存在です。
 風は吹くところを選びませんからなぁ。
 ただ、旅をしたくなったから旅をして、偶然にもこの町でお二人にあっただけです」
アゼルは二人を見る。

「ふむ。お二人と一緒に酒でも飲みたかったが、生憎と俺は商人の姿をしていない。
 お二人は任務中ということですし、私は邪魔になるだけですな。
 今日のところは酒を酌交すのを諦めましょう……」
アゼルは二人の顔を見て、にやりと笑いながら続きを言う。

「とでも言うと思いましたか?
 このアゼル、酒を飲みたいと思ったら酒を飲む。
 人に奢らせたいと思ったら奢らせる。
 例え任務中だろうと、容赦せん!
 さぁ、酒を飲みに行きましょう!」
アゼルは実は穏和であるが、それに負けず劣らず強引であった。
268コルム ◆JJXhJ7JMsU :2007/08/24(金) 12:49:58 O
(暑すぎる…)
うだるような暑さ。重たい荷物を持ち、話す気力すら失せかけたコルムに一人の男が話し掛ける

>>262-263
>「ふう、今日もいい感じに暑いな。」
>「任務と体力トレーニングが同時に出来るなんて、まさに一挙両得だよな。そう思わないか?コルム。」

何となく気まずそうに話す彼の名はグラスマン・グラスハーツ…コルムが所属することになった第6遊撃隊の隊長だ

「…私には、この暑さのせいで効率がよくないように感じられますが…」
別に効率など気にしてるわけではないのだが、小声で皮肉っぽく返しておくことにする。
ここで相づちをうってしまうとグラスマンの後々の態度が馴々しくなりそうなのでそう言っておくだけ
…別に彼が嫌いなわけではない、庇ってもらったり助けてもらったりしてるので好意はある。要はコルムなりの人との接し方なのだ。

ちなみに今回の任務はライゼ王国に対して友好的であるはずの小都市ポロロッカへの潜入捜査だ。
最近ポロロッカがライゼの敵対国と言ってもいいガストラ連邦寄りになっているという噂や憶測が飛び交っているので、その真偽を確かめてくる事
そんなわけで旅商人に扮してポロロッカに潜入したコルムとグラスマンの両名。何故この二人が選ばれたのかは、深く詮索しなくてもみなまでわかる
更にこの任務が廻ってきた理由をコルムは知っていたが、最近はここ(第6遊撃隊)にいるのも悪くはないなと思ってきているので憤りは少なかったわけだが

>「いや、コルムがいてくれて本当に助かった〜(略)今回の任務が無事に終わったら、コルムの日頃の頑張りを上にしっかり伝えておくよ。
いやー、それにしても暑いね。ちょっと南に行くだけでこんなに変わってくるものなんだな。」

(…何だろう、この違和感は)コルムはそう思う。もともとグラスマンは冗舌ではないにしろコルムよりはよく喋るのだが、
今日は幾分喋りすぎのような気がする。気を使ってるのがひしひしと伝わってくるようだ

「そんなに気にしなくても良いんですけどね…」
グラスマンに聞こえるか聞こえないか位の小声でフォローしておいた。顔は笑顔だったかもしれない

>「まあ、そういうことで、取り敢えずは今回の任務を一緒に頑張ろうな。
さて、まずはどうしようかね〜(略)」

グラスマンは歩きながら地図を広げる。彼が言うには私に選択権を委ねてくれるようだ
…頷きながら、とりあえずはこの荷物をどこかに置きたい。そう考えたコルムがことばを発せようとした時だった
269コルム ◆JJXhJ7JMsU :2007/08/24(金) 12:52:59 O
>>264>>266
>「たいちょ〜、私はお酒が飲みたいです〜」
後ろから自分の声でありえない台詞が聞こえたので急いで振り向く
…フードをかぶった人物がそこに立っていた…誰だろう?

「………」

パンチしようかと思ったが…誰か分からないのでさすがに出来るはずもなく、ぐっとこらえる

>「酒か…酒場は確かに情報収集の基本だから、酒を飲みつつ辺りに耳を傾けているのも悪くないな。(中略)
飲酒は夜だけにして量もあまり飲み過ぎないよう一日一杯くらいを心掛けて……ってオイ。」

コルムの代わりに男?に右手でツッコミをびしっと決めたグラスマンだが、驚いた表情になって

>「って、その声はアゼルだよな?」
>「で、隊長達はこんな所で何をしているんですか? もしかして、デートですか?」
>「馬鹿言え、世界の美少女コルムたんが俺なんか相手にしてくれるわけないだろ。任務だよ。情報収集。
で、お前こそこんな所で何してるんだ?お前は確か……」

二人は変な漫才のように言葉を交わしていくが、突然考え込むグラスマン…コルムはと言うと、美少女と言われた事で耳まで真っ赤になっていた

>>267フードの人物は目元まで被っていたフードを取ると、短い金の髪と尖った耳がフードの中から現れた。…確か、アゼルだったか?

>「特に理由なんかはないですよ。
 俺達エルフは受肉した精霊〜(略)〜ただ、旅をしたくなったから旅をして、偶然にもこの町でお二人にあっただけです」
>「ふむ。お二人と一緒に酒でも飲みたかったが〜(略)今日のところは酒を酌交すのを諦めましょう……」
どうやら酒を飲みたいらしいアゼルは諦めた。訳ではなく、にやりと笑いながら続きを言う。

>「とでも言うと思いましたか?
 このアゼル、酒を飲みたいと思ったら酒を飲む。
 人に奢らせたいと思ったら奢らせる。
 例え任務中だろうと、容赦せん!
 さぁ、酒を飲みに行きましょう!」

「……」
なんて強引なんだろう…エルフはもう少し控えめで物静かなイメージがあったので、最初は面食らったものだ

「…アゼル先輩、私はお酒が苦手なのですが…」
お酒には少々苦い思い出がある…と言うより容姿のおかげで酒場には門前払い。体よく入れたとしても、お酒を注文しようものなら摘み出されるのだ
そんな事を言ったらきっと笑われる。だからお酒を飲んだ事はないが、苦手と言うことにしているコルムなのであった
270グラスマン ◆4hcHBs40RQ :2007/08/24(金) 21:49:33 0
>>267
>「ふむ。お二人と一緒に酒でも飲みたかったが、生憎と俺は商人の姿をしていない。
> お二人は任務中ということですし、私は邪魔になるだけですな。
> 今日のところは酒を酌交すのを諦めましょう……」
>「とでも言うと思いましたか?
> このアゼル、酒を飲みたいと思ったら酒を飲む。
> 人に奢らせたいと思ったら奢らせる。
> 例え任務中だろうと、容赦せん!
> さぁ、酒を飲みに行きましょう!」

「おいおい、僕達は……ま、いっか。情報収集の手始めには悪くないしな。」
苦笑を浮かべるグラスマン。
第6遊撃隊隊員の基本は、人の都合を考えないことだ。
こういう展開にはもう慣れっこの隊長である。

「ただし、アゼル。奢ってやるけど二つ条件がある。
ひとつ、せっかく居合わせたんだから任務を手伝っていくこと。内容は酒場への道すがら説明する。
ターバンと上着だけなら予備があるから、着衣して商人っぽく振舞ってくれ。
もうひとつ、コルムの荷物を持ってやれ。隊長命令だから逆らったら減俸な。」

>>268-269
>「…アゼル先輩、私はお酒が苦手なのですが…」
「まあまあ。」
コルムの肩に手を置き、グラスマンは困ったように笑う。
「悪いんだけど今回は付き合ってやってくれ。お前は飲まなくていいからさ。」
271グラスマン ◆4hcHBs40RQ :2007/08/24(金) 21:50:54 0
酒場。
一歩踏み込めば充満した酒の匂いが鼻をつき、賑やかな笑い声が幾重にも聞こえる。
時間はまさにまっ昼間ではあるが、駄目な大人達には関係ないらしい。
なかなかの盛況ぶりである。

グラスマン達は三人掛けサイズの円形テーブルに着いた。
すぐにウエイトレスが人数分の水を運んで来る。
「ご注文は?」
「ジョッキ2つと、あとミルクを2つ。」
「ミルク?」
「連れのこの娘、未成年なんだ。だから酒は飲ませられん。あと何年で成人するんだけどな。」
「はあ、しかしご注文の数が合いませんが…」
「こいつとはビールを飲み交わす。この娘とはミルクを飲み交わす。数はぴったりだよ。いいから持って来てくれ。」

そして、テーブルに注文したものが運ばれてくる。
取り敢えず、軽く乾杯。それからグラスマンは言う。
「あのウエイトレス、スカートの丈際どかったな…じゃなくて、取り敢えずは暑い中お疲れさん。
この一杯を飲み終わったら、アゼルはあっちの淑女達、コルムは向こうの紳士に何か売って来てくれ。値段は任せるよ。
続きの二杯目以降はそれが終わってからだ。OK?やり方は二人のアドリブに任せるよ。」

グラスマンの用意した商品包みには、今回の任務で与えられた予算で買い集めた、
地方限定品などの様々な「ちょいレア」アイテムが入っている。
しかし、もちろんそれらを使って真面目に商売しろと言っているのではなく、商売にかこつけて会話することで、
ボロロッカの現在の状況やライゼ、ガストラへの思惑などを探って欲しいという指令だ。

アゼルに指示した「淑女達」は、まさに町のおばさんといった趣きの三人組。
ゲラゲラと笑いながら井戸端会議に花を咲かせている。
そしてコルムに指示した「紳士」は、酒場の隅のテーブルに一人座った眼鏡の老人。
ちびちびと酒を飲みつつ、暇そうに天井を仰いでいる。

「上手くいったら気の済むまで飲ませてやるよ、アゼル。
コルムにはご褒美にほっぺにチューを……いや嘘嘘、怒るな。とにかく頑張ってな。」
272アゼル ◆F/ATTd3VB. :2007/08/24(金) 23:33:56 O
>269-271
>「ただし、アゼル。奢ってやるけど二つ条件がある。
 省略
>もうひとつ、コルムの荷物を持ってやれ。隊長命令だから逆らったら減俸な。」
>「…アゼル先輩、私はお酒が苦手なのですが…」

「まぁ、いいでしょう。
 本来なら休暇中の任務なんていう面倒なことはしたくなかったのですが、隊長に頼まれたのならば話は別。
 奢ってくれなくても引き受けますよ」
アゼルは背中に掛けてある矢筒とロングボウを外し、黒いフード付きのマントとレザーアーマーを脱ぐ。
グラスマンからターバンと上着を受け取り、着替えてみたのだが、商人には見えない。
腰に取り付けてあるショートソードを外し、コルムから荷物を受け取る。
荷物のおかげで少しだけ商人に見えるようになった。


場面は変わって酒場の中。
三人は円形のテーブルに着き、隊長がビール二杯とミルク二杯を注文。
注文したものが運びこまれて、三人は乾杯を上げる。

>「あのウエイトレス、スカートの丈際どかったな…じゃなくて、取り敢えずは暑い中お疲れさん。
 省略
>続きの二杯目以降はそれが終わってからだ。OK?やり方は二人のアドリブに任せるよ。」
アゼルは後ろを振り返り、ターゲットの淑女達を見る。

「ふむ。あのお嬢さん達に何かをお売りすれば良いのですね」
アゼルはビールを一気に飲み干すと、商品包みを引っ付かんで、おばさん達の方に歩いていく。

「そこのお美しいお嬢様達。
 今よりももっとお美しくなるつもりはありませんか?」
アゼルはおばさん達のテーブルの前に着くと、どっかりと床に座り込み、自身も把握していない商品の入った包みを開けた。
273名無しになりきれ:2007/08/25(土) 22:49:51 O
誰に断って商売しているんだ?
ショバ代払うか叩き出されるかどっちがいいんだ!?

チンピラ十人が襲いかかってきた
274太った用心棒:2007/08/26(日) 12:16:01 0
>>274
ま、待ってけろ〜!
おらを置いていかないで〜!
(ぶくぶくに太った、普通の大人の3倍はありそうな大男が後から駆けて行く)
275名無しになりきれ:2007/08/26(日) 12:20:11 O
「お前ら店の中でも暴れるな!」
全員マスターに叩き出された
276ルゥ ◆c8mKoM5yZ6 :2007/08/27(月) 00:04:20 O
砂嵐が吹き荒れるガド砂漠、見渡す限り広がる黄砂の波の中に黒点がひとつ、若い女だ。
砂を踏み、休まず歩き続ける女の背中で、歩調に合わせ巨大な鉄塊が揺れている。
ハンマーだ。しかしそれを背負う女の体躯には大き過ぎる代物といえる。
にもかかわらず女は軽い足取りで、灼熱の砂漠を黙々と進んで行く。

女が身に纏うのは、ガド砂漠に住まうムルム族の戰装束。美しい紋様が目を魅く。
闘争と錬磨を美徳とする一族であるムルム族は、砂漠を旅する者にとって脅威だった。
非常に好戦的なムルム族は、武器を持つ者に問答無用で襲いかかる。
武器を持たない者には無害だが、砂漠には危険なモンスターも多いのだ。
武装せずにガド砂漠を旅するのは自殺行為に等しい。
故に商隊や旅人は西のメルポタ台地を抜ける迂回路を通る。砂漠には決して近付かない。

不意に女が歩みを止めた。
「おい、コイツは数えてやってもいいぜ。砂蜘蛛にしちゃあ相当デカイからな。」
「本当ッスか?よーし!!」
女の肩にしがみつく砂漠リスが喋った。それに対して普通に応える女。
常人からすれば異様なやり取りだったが、彼女達には当たり前のような会話。
「ケケケ…但し条件があるぜ、いくらデカイからって所詮は砂蜘蛛だからな。」
意地悪そうに笑いながら、やはり流暢な共通語で話すリスに、女は目を丸くした。
「条件?……何スか、それ。」
「たかが砂蜘蛛1匹だ、これ(武器)は置いて行け。」

砂嵐が少し和らいだ。が、女とリスが話している砂蜘蛛とやらの姿は全く見えない。
それもその筈、砂蜘蛛は普段から地中をテリトリーとして棲息し、獲物を攻撃する時
に限り地上に現われる。砂漠ではかなり厄介なモンスターだ、油断は出来ない。
「くるぜ?」
リスがそう言った途端、女の足下が隆起して斑模様の巨大な蜘蛛が飛び出した。
突き上げられた毛むくじゃらの前脚に撥ね飛ばされたのは、女が背負っていた鉄塊。
「てやああああっ!!!」
間一髪で奇襲を躱した女が、砂蜘蛛の複眼に手刀を突き込んだ。
堅い外殻に守られていない、唯一の場所へと的確に叩き込まれた一撃。これで決着となる。
肘まで深く突き刺さった腕を引き抜き、女は溜め息を吐いて呼吸を整えた。

「な?『置いて行って』正解だったろ?」
口元を吊り上げ得意気に笑うリスとハンマーを拾って、蛮族の女は再び歩き始めた。
「記念すべき最初の1体にしちゃ少し弱かったな。次は厳しくいくぜ、覚悟しろよ?ルゥ。」
「上等ッスよ、ムタ。次こそ『この子』を思いっきりブン回してやるッス。」
そう言うと背負ったハンマーを大きく揺らす。こうして1人と1匹の長い試練の旅が始まった。
277コルム ◆JJXhJ7JMsU :2007/08/27(月) 21:43:44 O
>>270-272
隊長はアゼル先輩にお酒を奢る事を承諾するかわりに任務の手伝いと私の荷物を持つ事を条件に出した
アゼル先輩はそれを承知し、手早く着替えて私の荷物を半分以上持ってくれた…

〜〜〜酒場に入ってテーブルに座った私達…だけど、隊長がお酒を飲めない私に注文してくれたのはミルクだった…
ミルクが嫌いなわけじゃないし、隊長も一緒に飲んでくれる優しさが嬉しい。が、
せめて果物のジュースとかを注文してほしかったなと思いながらミルクを飲む

>「あのウエイトレス、スカートの丈際どかったな…じゃなくて、取り敢えずは暑い中お疲れさん。
〜(略)〜続きの二杯目以降はそれが終わってからだ。OK?やり方は二人のアドリブに任せるよ。」
>「上手くいったら気の済むまで飲ませてやるよ、アゼル。
コルムにはご褒美にほっぺにチューを……いや嘘嘘、怒るな。とにかく頑張ってな。」

「…っ!…隊長…いやらしい…」
意表を衝かれた言葉にミルクを吹き出しそうになるが、何とかこらえてジト目で隊長を非難。
気を取り直して振り替えるとウエイトレスが見えた、なるほどスカートの丈が短い。…じゃなくて…
男の人は瞬時にそんな細かいところまで見るんだなと、感心半分呆れ半分になる

…いやいや落ち着けコルム。そんなことよりターゲットとなる紳士の姿を確認せねばならない
辺りを見回すと端の方にいる紳士―眼鏡をかけた老人―を早急に発見できた

向かう前にちょっと悪戯を思いついたので隊長に話し掛ける…
「…隊長…首尾よく成功したらご褒美、いただけますか?」
顔を赤らめつつ自分の唇に人差し指を当てながら、グラスマンに尋ねる

「……なんて嘘ですごめんなさいっ!行ってきますっ!」
ほんの悪戯のつもりだったのだがこっちの方が恥ずかしくなってしまい、そそくさと老人の元へ向かう
…向かう道すがらに激しく自責の念。だが、老人の所につくとすぐに気を取り直して話し掛ける
「御老人、ちょっと良いか?…私は見ての通り旅の商人なのだが、何か買っていただけないだろうか?」

コルムがそこまで言ってから周りのテーブルで笑い声が漏れだす
「…?」
何故急に笑うのだ…?わからずに怪訝に思ってると、老人も優しい口調で話し掛けてくる
『可愛いお嬢ちゃんじゃのう。お父さん達のお手伝いかい?』
満面の笑顔で言われてしまった…
「……私は子供じゃな〜〜〜い!!」
278コルム ◆JJXhJ7JMsU :2007/08/27(月) 21:46:00 O
…ファーストコンタクトは最悪、勿論商売交渉は失敗し。悄気ながら元来た道を戻る…

>>273-275
>誰に断って商売しているんだ?
ショバ代払うか叩き出されるかどっちがいいんだ!?
>ま、待ってけろ〜!
おらを置いていかないで〜!

その途中にチンピラ達が因縁をつけて襲ってきたのだが、丁度イライラしていた所だ…ストレス発散と行こう。

相手は三人。武器は使えないので近くのテーブルに置いてあったお酒の瓶を二つ、それぞれ両手に一つずつ持つ
最初に来た一人目の頭を打っ叩き、続く二人目の後頭部を打っ叩く…酒瓶は粉々に割れ、叩かれた二人はその場に倒れる
仲間をやられて逆上した三人目のチンピラが飛び掛かってきたが、回避するとテーブルにぶつかり自爆してしまった

「相手を選んで喧嘩を…うあっ!?」
チンピラを三人倒したコルムの服の首辺りが突如引っ張られ、宙に吊されるようになる
恐る恐る見るとエプロンをつけた屈強な男に持たれているのが確認できた

>「お前ら店の中でも暴れるな!」
どうやら酒場のマスターらしい。店の中をめちゃくちゃにされるのを黙って見ていられなかったのだろう
コルムは首根っ子を掴まれたまま入り口まで持っていかれ、外に放り出された

脱力からか、その場でがっくりとうなだれる
279名無しになりきれ:2007/08/27(月) 21:57:26 0
お前ら何やってるんだ!!街中で乱闘騒ぎとは許せん!
コルムは現れた警備隊に逮捕され、連行されていった。

隠密だと言われていたにもかかわらず、自制出来ずに乱闘騒ぎを起こしたのだ
当然といえば当然の結果である。
280名無しになりきれ:2007/08/27(月) 22:10:20 0
その後コルムは取り調べの結果、隠密であるということが露見した
凄まじい拷問を受けた末に精神魔法で秘密を吐かされ、処刑されてしまう
哀れで愚かな最期であった
281アゼル ◆F/ATTd3VB. :2007/08/28(火) 01:24:11 O
>273-278
おばさん達との交渉は上手く行った。
包みを開けて出てきた商品は、運良くアゼルが旅をした時に見たことのある商品。
ライゼ王国より、ずっと北方の雪国に生えている薬草だった。
アゼルはこの薬草の効能と、用い方をおばさん達に教える。
この薬草の効能は荒れた肌を綺麗にする。
そのことと、ただ擦り潰して肌に塗るだけという用い方がおばさん達に受けが良く、薬草を三人のおばさんに売ることができた。

「隊長、すいませんでした。
 売ることに夢中になってしまって、情報をまったく聞き取ることができませんでした」
この任務は情報を収集することが目的であり、商売をすることではない。
だが、アゼルの心は達成感に満ち、アゼルの顔は輝いていた。

>誰に断って商売しているんだ?
>ショバ代払うか叩き出されるかどっちがいいんだ!?

「アーッ。もしかして、隊長。
 この筋の方達にショバ代を払ってなかったんですか?」
アゼルは周りにいる八人のチンピラと、隊長の顔を交互に見る。
おそらく、この八人のチンピラは商人ギルドの手の者で、無断で商売をしてる自分達を戒めに来たのだろう。

>「お前ら店の中でも暴れるな!」
喧騒と一際大きな怒鳴り声が耳に入り、アゼルはチラリとそちらの方を見る。
その視線の先には、倒れたチンピラ三人と、酒場のマスターに摘み出されるコルムの姿が見えた。

「はぁ……隊長、ここの人達に大人しくショバ代でも払って下さい。
 こっちが先に手を出してしまったのですから、今の内に払うものを払っておかないと、後々問題になります」
そう言うとアゼルはターバンと上着を脱いで、レザーアーマーとショートソードを装着し、黒いフード付きのマントを被る。

「俺は先に外に行かせて貰いますよ。
 この騒ぎを聞き付けて、警備隊の人がコルムを逮捕してしまうかも知れませんしね」
アゼルは売り上げ金をテーブルの上に置くと、コルムの荷物と自身のロングボウと矢筒を持って、酒場の外に出た。
幸いなことに、外には警備隊の者は居らず、コルムがショボくれているだけだった。

282ルゥ ◆c8mKoM5yZ6 :2007/08/28(火) 20:36:38 O
「お腹ペコペコで死にそうッス…。」
今にも倒れんばかりの顔で悲壮感たっぷりの呟き、ルゥは空腹に悩まされていた。
もう丸々3日の間、水しか飲んでいないのだ。如何に戦闘民族といえど、空腹には勝てない。
「だらしねぇ奴だなぁ、チンタラやってっと百倒す前に二十歳になっちまうぜ?」
ルゥの肩の上で、旅を監視する祖霊である砂漠リスのムタが叱責した。
「うぅ…、ムタは腹ペコじゃないんスか?」
「たりめーだ、俺様はテメェと鍛え方が違うんだよ、鍛え方が。」
恨めしそうに見つめたルゥにムタが容赦無き返答を叩きつける。

ルゥは知らないのだが、実はムタは別に鍛えている訳ではないし、その必要も無い。
祖霊とは名の通り先祖の霊。成人の儀式に部族の長に召喚され、動物の剥製に宿る。
つまりムタは何も食べなくても、全く問題無いのである。そもそも物を食べられない。
それをルゥが知らないのをいいことに、好き勝手な事を言っているのだ。
空腹に苦しむ姿を半ば楽しみながら、ムタは更なる嘘っぱちをルゥに教えた。
「いいか、極限まで鍛え抜いた身体ってのはな、1ヶ月飲まず食わずできるんだぜーッ!」
「は!?マジッスか!?じゃあルゥも鍛えたら腹ペコにならなくなるんスね!!」
「おうよ。せいぜい頑張るんだな、ケケケ。」


今ルゥとムタはガド砂漠を抜けて、メルポタ台地を縦断する街道にて野営していた。
街道は北に行けはポロロッカ、南に行けばボスロム、西に行けばグインズ伯爵領に続く。
この街道は大陸中部の交易に於いて重要な役割を持つ、交通の大動脈であった。
メルポタ台地からは魔の森を一望することができる。更に西にはガストラ連邦。
ライゼ王国の属領であるグインズ伯爵領との関係悪化が噂される、大陸最大の国家だ。
だがそんな世界状勢なぞ知る訳もなく、ルゥがここにいるのは魔の森に向かうためだった。
魔の森という名に相応しく、凶悪なモンスターが闊歩する危険地帯である。

砂漠では結局4体しか倒せなかった。期間は1年あるが、この調子では少し遅い。
『1年もある』では駄目なのだ。『1年しかない』と考えるべきである。
何故なら途中で1度でも敗北した場合、それまで倒した敵の数が0に戻ってしまうからだ。
残りの期間が少なくなれば、その分連続して戦わなければならなくなる。
残りの数が少なくなれば、その分敵の採点評価が厳しくなり、戦いは激しさを増す。
1年間で100体。簡単なように聞こえるが、実際には至難を窮める死闘の1年だ。


「おやぁ?何かこっち来るッスよ。」
ルゥは遠くへと目を凝らす。馬車だ。しかも複数で隊列を組んでいる商隊だ。
その周囲にはおそらく商隊の雇った護衛だろう、武装した傭兵らしき人影が多数。
「おい、ルゥ。どうすんだ?やるか?」
「もっちろん、奴等たくさんいるから数稼ぐッスよ!!」
獲物を前にして戦闘民族の血が沸立つ。いつの間にか空腹も忘れて、ルゥは笑っていた。
笑う口元から覗く少し長めの八重歯が、まるで獰猛な肉食獣を彷彿とさせる。
岩に立掛けていたハンマーを乱暴に担ぎ上げ、美しき獣はすぐさま風の如く駆け出した。
283グラスマン ◆4hcHBs40RQ :2007/08/30(木) 23:24:58 0
>>277
>「…隊長…首尾よく成功したらご褒美、いただけますか?」
>顔を赤らめつつ自分の唇に人差し指を当てながら、グラスマンに尋ねる
>「……なんて嘘ですごめんなさいっ!行ってきますっ!」
「おう…」
思わずテーブルに吹き零したミルクを拭いつつ、その背中を見送るグラスマンだった。
「ま、まさかコルムがああ来るとは…僕もまだまだ修行が足りないな……。」

しかし、これはいい兆候ではある。
入隊直後は真面目過ぎるきらいがあると少し気にしていたのだが、
このくらいの下らない冗句にも付き合ってくれるようになったということは、
第6遊撃隊の空気に少しずつ溶け込んで来ているといって良いだろう。
ただ、コルムに対して使う冗句にセクハラ発言を選び過ぎている気がするので、
間違った方向に育たないかがちょっと心配だ。
「それはそれでアリか…いや駄目だ、真人間としてそこは駄目だと思わねば。」

ただ心配といえば、隊に溶け込んできている分、変な部分まで影響されていないかが気掛かりでもある。
バルの「酒の席で暴れ出す奴は周りの迷惑になる前に一瞬で叩きのめすのが正義」を始め、
喧嘩っ早い連中の血の気の多い言葉が、成熟しきっていない生真面目なコルムにどこまでどういう形で浸透しているか。
それが問題だ。
そんな事をぼんやりと考えていると、アゼルが戻って来た。
284グラスマン ◆4hcHBs40RQ :2007/08/30(木) 23:25:49 0
>>281>>273-275>>278
>「隊長、すいませんでした。
> 売ることに夢中になってしまって、情報をまったく聞き取ることができませんでした」
清々しい顔のアゼルに、グラスマンは呆れた顔を向ける。
「おいおい、本物の商売人になってどうするよ。ま、いっか。とりあえず…」
言い掛けた時、何やら騒ぎが聞こえてきた。
見ると、どうやらチンピラ達がショバ代を払えとコルムに絡んでいるようだ。
「なんだ、あいつら?」

>「アーッ。もしかして、隊長。
> この筋の方達にショバ代を払ってなかったんですか?」
アゼルが言う。
「え、そういうものなのか?すまん、その手の話には疎くてな…」
曲がりなりにも騎士の出のグラスマンは、世間の事情には中途半端に疎い。
本来ならば、商売を始める前には申し出が必要なのだ。
ふらりと現れた旅人の無制限の商売を許していたのでは、地元の商売人には悪影響しか出ない。
ひいては町の不活性化にも繋がる。

「うーん、仕方ない。僕の責任だ。取り敢えずコルムに替わって2,3発シバかれてから謝るか…と、おお?」
グラスマンが再び目をやった時には、既にコルムがチンピラの内の3人を倒していた。
自分と同じく少し世ズレしたコルムにも、チンピラ達がただの酒乱漢にしか見えなかったのだろう。
「…ま、まあ、取り敢えずいわれの無い攻撃を受けた時の第6遊撃隊隊員のスタンダードな行動だしな…うん。」
コルムも間違い無く第6遊撃隊色に染まってきている。
状況が状況だけにかなり複雑な心境だが、それでもほんの少しだけ嬉しくもあるグラスマンだった。
285グラスマン ◆4hcHBs40RQ :2007/08/30(木) 23:26:19 0
その直後、店長に摘み出されていくコルム。
>「はぁ……隊長、ここの人達に大人しくショバ代でも払って下さい。
> こっちが先に手を出してしまったのですから、今の内に払うものを払っておかないと、後々問題になります」
>「俺は先に外に行かせて貰いますよ。
> この騒ぎを聞き付けて、警備隊の人がコルムを逮捕してしまうかも知れませんしね」
アゼルが言う。
グラスマンは苦笑しつつ、アゼルの置いた売り上げ金を握りつつ立ち上がった。
「おう、了解。こっちは任せとけ。コルムの方は頼む。」


所変わって酒場の外。
アゼルとコルムの元に、人の良さそうな老人がやって来た。
「おや、旅の方たちですかな。ごきげんよう、私はこのボロロッカの町長です。この町はいかがですかな?」
286アゼル ◆F/ATTd3VB. :2007/08/31(金) 08:03:35 O
>285
アゼルは落ち込んでいるコルムの隣まで行くと、コルムの荷物を置いて、その場に座り込む。

「まぁ、気にすることなんてないですよ。
 失敗なんてのは誰にでもあります。
 俺や隊長だってよく失敗しますし、他の隊の皆だって失敗をする。
 そして、皆その失敗から学んで成長をする。
 その失敗して学ぶについては、この第六遊撃隊は最適です。
 本物の騎士になる前に、この隊で挑戦して失敗を続けるのはどうでしょうか?
 成功なんて、本物の騎士になってからでもできるんですしね」

>「おや、旅の方たちですかな。ごきげんよう、私はこのボロロッカの町長です。この町はいかがですかな?」
アゼルがコルムを励ましてから暫くして、町長と名乗る人物が現れる。

「まだ少ししか町を見ていませんが、活気が有っていい町だと俺は思います。
 もし、町長さんにお時間があるとしたら、この町について色々と教えて貰いたいのですが……
 町長さん、どうですかね?」
287グラスマン ◆4hcHBs40RQ :2007/09/05(水) 22:04:23 0
町長は上機嫌そうに頷いた。
「ふむ、この町は他の町にはない沢山の見所があります。じっくりお話ししますぞ。
この町のよさをじっくり味わっていただいたら、是非故郷の町に戻った折には沢山のお友達に広めて下され。
……しかし」
そこまで言って、町長の表情が少し曇る。
「…かといって良い部分だけをお伝えするわけにも行きますまい。
町の噂で聞き及んでおるかもしれませんが、実は最近、この町はひとつの大きな問題を抱えておるのです。
旅人さん達の無事に関わる問題ですので、お話しておきましょう。」

町長は二人の隣に腰を下ろした。
禿げ上がった額に光る汗を、一度ハンカチで拭う。
「実は最近、この町の近くで旅人や商隊を狙った連続襲撃事件が発生しているのです。
命こそ奪われてはおりませんが、屈強の兵士や戦士が次々とその被害に遭っております。
それも、証言から犯人はたった一人…それも女の子だそうなのです。
とりあえず、便宜上我々は彼女を『ムルムの砂嵐』と呼んでいます。」

その少女の出で立ちから、南方の蛮族ムルムの者らしいこと。
そして、ムルム族について詳しい事は分かっていないことを町長は話す。

「我々は町人の、そして旅人の皆さんの無事を守るため、あのライゼ王国に対処を求めました。
この辺りはライゼ王国第十七騎士団の巡回地域になっているため、彼らに砂嵐の討伐を求めたのです。
彼らは最初はそれを快く引き受けたのですが…数日後、掌を返すように態度を変えました。
たった一人の賊くらいに動くつもりはないと。つまり自分たちで何とかしろと。
それがライゼ王国の答えであると!」

町長は怒りをあらわに声を張る。
「長年の友として付き合ってきたライゼの返答がそれだったのです!
私達はもちろん騎士団を通じて何度も抗議しましたが、結果は変わりませんでした!
そしてその間も被害は増える一方でした!苦しむ我々をライゼは見捨てたのです!
暴れる賊を討伐しないのなら何のための騎士団なのですか!?」

そこまで怒鳴って言葉を止め、しばし肩で息を切らす。
「…しかし、もうライゼなどどうでもいいのです。
我々はガストラ連邦に使者を送り、砂嵐の討伐のための戦士を派遣していただく約束を取り付けました。
ガストラが事件を解決してくれれば、もうライゼとの関係は完全に終わりですな!」

その時、午後三時を告げる鐘が町に響いた。
町長は我に返ったように空を見上げる。
「…おっと、熱くなりすぎてしまいましたな。大変お見苦しいところを御見せしました。
とにかくそういう次第で、あと数日中にでも事件は解決を見るでしょうから、
旅人さん達はもうしばらくは町の外へ出ないようにしてください。
本当はこれから町の見所のお話などをしたかったのですが、残念ながらこれから会議でして。
この数日でゆっくり町を回り、良いところをたくさん発見していってください。それでは…」
町長は腰を上げた。
288グラスマン ◆4hcHBs40RQ :2007/09/05(水) 22:12:06 0
ちょうど同じ頃、ボロロッカの町に近づくひとつの影があった。
闇色の外套で全身を覆った、凍りつくような冷たい目の男。
この暑さの中にあっても、汗一つ見せる様子は無い。

「クク…早く出て来い、砂嵐。私を楽しませてくれ…。」

男の名はエルガイア。
ガストラから派遣された殺し屋である。
289アゼル ◆F/ATTd3VB. :2007/09/05(水) 23:59:54 O
>287
アゼルとコルムは町長の話を黙って聞いた。

アゼルが出した結論から言うと、この町がガストラ寄りになったのは、ライゼ王国の騎士団の弱さが原因である。
おそらく第十七騎士団は、そのムルム族の女の子に惨敗したと考えられる。
討伐依頼に対する態度が急変したのも、ムルム族の女の子にもう一度負けるのを恐れた為。
ライゼ王国の騎士団は、女の子一人討伐出来ないような無能共の集まりだということを、この町やこの町と交流がある国に知られたくないのだろう。

「はぁ……ライゼ王国も駄目そうだな。
 こんなことじゃ、遥かな未来にまで生き残れない……」
アゼルは町長がこの場から立ち去った後、コルムにも聞こえないような小さな声で、そう呟いた。

「さて、俺は町長さんから聞いた話を隊長に伝えてきます。
 コルムは酒場の前で待ってて下さい」
そう言って、コルムを酒場の前に待機させて、アゼルは隊長に町長の話を伝え、これからどうするか相談をする為に、酒場の中に再び入っていった。
290グラスマン ◆4hcHBs40RQ :2007/09/06(木) 19:38:14 0
>>289
酒場の中は、何事もなかったように元通りになっていた。
倒れた机や散らかった床は元に戻り、チンピラ達も元の席で酒を飲んでゲラゲラと談笑している。
そしてグラスマンはというと、酒場の隅で仰向けにひっくり返っていた。
青痣とたんこぶが幾つも出来ている。

「おー、いつつ…あ、アゼルか。」
グラスマンは腫れ上がった頬を擦りつつ起き上がり、苦笑してみせた。
「たはは、まあ、見ての通り何とかなったよ。
売り上げを取られて商品は半分に減ったが、ギルドさんから商売の許可は貰えた。
これからは気兼ねなくバシバシ情報収集するぞー。ところで、コルムの様子はどうだった?」
291アゼル ◆F/ATTd3VB. :2007/09/06(木) 20:11:21 O
>290
酒場に入ったアゼルは、自分達が座っていたテーブルの方を見るが、そこには隊長の姿がない。

>「おー、いつつ…あ、アゼルか。」
隊長の声のした方を見る。
酒場の隅で悲惨な顔になって倒れている、隊長の姿がそこにあった。

「隊長……大丈夫ですか?」
アゼルは倒れている隊長の下まで歩いていく。

>「たはは、まあ、見ての通り何とかなったよ。
>売り上げを取られて商品は半分に減ったが、ギルドさんから商売の許可は貰えた。
>これからは気兼ねなくバシバシ情報収集するぞー。ところで、コルムの様子はどうだった?」

「あー……コルムの方は大丈夫なんですが……
 ちょっとだけ、ヤバイことを知ってしまいました」
アゼルはその場に座り、町長から聞いた話の内容を隊長に話した。
292グラスマン ◆4hcHBs40RQ :2007/09/06(木) 23:33:16 0
>>291
グラスマンとアゼルの座談会。

「…なるほどね。十七騎団絡みか」
話を聞き終わり、グラスマンは苦々しげに吐き捨てた。
周囲の様子を窺い、少し声を潜めて言う。
「…多分、お前の推測はほぼ正解だ。町長さんから聞き出した手際といい、さすがアゼルだな。
ただ、町の皆の抗議が十七騎団を通して行われてたってのがどうにも臭い。
恐らく、今回の件を十七騎団の連中は本国に届けてなんかいないだろう。
自分達がたった一人の女の子に勝てなかったなんて絶対に報告しそうにない連中だからな…。」

第十七騎士団。
それは、老兵ばかりを集められた二十人程度の規模の騎士団である。
年齢によって戦力を落としている彼らは、重要な任務や戦場は任せてもらえず、
当たり障りの無い地域の巡回任務ばかりを任されている。
ありていに言えば、第六騎士団とは違った意味でのお荷物が集められた閑職だ。
しかし、ン十年も騎士として戦ってきた彼らはプライドは非常に高く偏屈で、
水面下ではそのプライドの高さに起因した問題を色々と起こしているらしい。

「…やれやれ、砂嵐に十七騎団、それにガストラの使者か。
問題は山積だな。ったく、超面白くなってきやがった。」
グラスマンは心底つまらなそうにため息をつく。
「さーて、これからどうすっかな。聡明なアゼル君はさしあたって何をすべきだと思う?」
293アゼル ◆F/ATTd3VB. :2007/09/07(金) 00:32:35 O
>292
>「…やれやれ、砂嵐に十七騎団、それにガストラの使者か。
>問題は山積だな。ったく、超面白くなってきやがった。」
>「さーて、これからどうすっかな。聡明なアゼル君はさしあたって何をすべきだと思う?」

「そうですね……
 ガストラの手の者を探し出して、獲物を盗られないように先に始末する……
 と言いたいところですが、そんなことをしてガストラ側にバレたら、外交問題が厄介なことになりますしね……
 その前に、今どこにいるのかも分かりません。
 ガストラの使者を探している間に、ガストラの使者が女の子を討伐したなんてことになったら、笑い話ではすみませんよ」
アゼルは立ち上がり、出口の方に向かって歩いていく。

「とりあえずは町の外に出て、砂嵐の女の子でも探しましょ。
 それで見付けたら暴れないように説得し、この町の近隣から出ていかせる。
 説得に応じないようなら、俺達がその女の子を第十七の名前を借りて討伐する。
 こんなものでいいでしょうかね?隊長」
アゼルは一度立ち止まって隊長に微笑んだ後、酒場から出ていき、酒場の前で待っているコルムにも、これからの話を始めた。

294アイザック ◆6GJ7GJlyDU :2007/09/07(金) 12:49:35 0
グラスマンとコルムが到着して一悶着起こしている頃、
アイザックもまたポロロッカに到着した。
出立したのは、グラスマンとコルムが出た次の日。
その日は自身が任務を終えて帰ってきたばかりだったのだが……。


「アイザック、お疲れのとこ悪いんだけど隊長と新入りの
 手伝いに行ってくれないかい?二人だけじゃ心許ないからね。」

アイザックは話しかけてきた女性、BBBを一瞥し
「……任務か。」
と。その一言を聞いてBBBは深い溜息と共に
「……任務だよ。二人のいでたちと目的地は――――。」
必要事項だけをメモして早々に寝床へと引き下がる。
そうした性格をBBBも熟知していて必要事項だけを伝えたのだが。
相変わらず可愛げの無い奴、と勝手な事を呟いてBBBもその場を後にした。


大した荷物がない分、アイザックのペースは二人よりも速い。
特に急いでいたわけでもないのに間が空かなかったのはそういう事だ。
商人に擬装しているとなれば、この時間は酒場で軽食を取っているか
商人ギルドに登録料を納めに行っているか……どちらにせよ、
「小柄な女連れの」旅の商人は珍しいので聞き込みをすれば
すぐに見つかるだろう、と考えてまずは酒場へと向かった。
295グラスマン ◆4hcHBs40RQ :2007/09/08(土) 01:33:42 0
>>293
アゼルの提案に、グラスマンは頷いた。
「うん、妥当なところだな。それでいこう。
相手は二つ名持ちだ、接触の際にはちょこっと気合いを入れて臨んでくれ。」

基本的に、二つ名の存在は戦闘力の高さを測る目安とされている。
二つ名が広まるには、ある程度の戦果や実績、強烈な戦闘力を示している必要があるためだ。
今回の『ムルムの砂嵐』についても、名称不明のために便宜上与えられた名前ではあるが、
戦力と戦果によって畏怖されていなければ付与される事のなかったあだ名である。
もちろん、二つ名の付けられた地域の戦闘力水準や付けられた理由、挙げた戦果の実容などによって、
実際には二つ名に見合うだけの戦闘力を持たない場合も多い。
一般的には二つ名は持ち数が多い程、また少なくても知名度が高い程強いとされている。

話が終わりアゼルが酒場を出るのを、グラスマンはぼーっと見送っていた。
「しかし、砂嵐か…。昔やり合った『ワルワの砂荒らし』を思い出す二つ名だな。
あの時は奇襲とはいえ二人くらいノされたっけ。なんとか退けたが、ありゃあ強かった。
本名はなんつったっけな…エラ…エレ……あ、そうそう。」
グラスマンはぽんと手を打った。

「エルガイア」
296グラスマン ◆4hcHBs40RQ :2007/09/08(土) 01:34:30 0
酒場から出ると、アゼルがコルムに状況説明をしているところだった。
「おす、コルムたん。」
コルムの肩をぽんぽんと叩きつつ、その隣に腰を下ろす。
「あっはっは、まだまだ未熟だなー、コルムは。僕だったら5人は倒してたな。
でも僕より先に攻撃した俊敏さは褒めておこう。ちぇ、折角ストレス発散しようと思ってたのにコルムに取られちゃったよ。
お陰で今回は僕が事後処理に回るハメになった。次回は僕が暴れてコルムに事後処理してもらうからなー。
さて、そんな些事よりこれからの事だ。っても『二人のこれから』じゃなく任務の事だから勘違いしないよう…と、あれ?」

>>294
道の向こうに見慣れた人影が見えた。
目を凝らしてみる。
「…うーん、あれ、アイザックじゃないか?おーい、あっちゃーん!こっちこっち!」
ぶんぶんと手を振りつつ、グラスマンは声を張り上げた。
297アゼル ◆F/ATTd3VB. :2007/09/08(土) 02:18:07 O
>294>296
>「…うーん、あれ、アイザックじゃないか?おーい、あっちゃーん!こっちこっち!」
酒場から出てきた途端にコルムに絡み始めた隊長が、この場にいる筈のないアイザックに向かって呼び掛ける。
アゼルも隊長の見ている方を見た。
確かに、道の向こう側からアイザックがこちらに向かって歩いていた。

「アイザックがこんな所にまで来るなんて、何か隊長達に用事でもあるんですかね?
 彼は俺みたいに、無意味にどこかにふらつくタイプでもないですし。
 まぁ、アイザックが何の任務を頼まれていようが、もうこっちの手伝いをして貰うのは、俺の独断で決まっているんですがね。
 ねぇー、たいちょー」

298アイザック ◆6GJ7GJlyDU :2007/09/08(土) 12:44:42 0
>296-297
予想は当たっていた……半分だけ。
意外だったのは、この場にアゼルがいた事だ。
そう言えば見かけなかった……放浪癖は相変わらずらしい。

人の流れに逆らいながら三人のいる場所へ着いて早々
「……聞いた事が無いな。用心棒を置いてけぼりにする商人など。」と言い放った。
あっちゃん、などと呼ばれたことはスルー。入隊当初からこう呼ばれている。
以前一度だけ注意したが直らなかったのでそのままだ。互いに通じればいいと言うことなのだろう。
そして、自らを用心棒と言ったのは相手が商人ならその護衛として振舞っていれば武装してても怪しまれない。
そんな常套句的な計算からの発言だ。特徴的な顔立ちのせいで変装しづらいからこその苦肉の策なのだが。

ちなみに、コルムが第六遊撃隊に入隊した時にはアイザックは任務で不在だった。
これが初顔合わせという事になるが、アイザックは特に気にも留めずに全員を一瞥し、小声で
「アイザック・ワレンスタイン、命令によりグラスマンチームに合流する。」
「それで……任務内容は?」
アゼルの独断もあまり意味が無かった。任務内容はグラスマンチームの助っ人なのだから。
299ルゥ ◆c8mKoM5yZ6 :2007/09/08(土) 16:33:23 O
思わぬ狩り場の出現に、ルゥは上機嫌だった。じっと待てば敵が現われるのだ。
あれから1週間。既に4組の討伐隊を撃退して、ムタが数えた敵は7人。
満天の星空の下、ルゥは街道の端で火を焚き、干し肉を焼いて食べていた。
「この調子でガンガン倒せば楽勝ッスね。食べ物だって手に入るし、チョロいッス♪」
干し肉にかぶりつき、水の入った革袋をグイッと飲み干す。完全に油断していた。
考えが甘かった。さっさと魔の森に向かったなら、こんな事にはならなかっただろう。
ルゥは襲った商隊の者達も、撃退した討伐隊の兵達も、誰一人として殺していない。
『殺人禁止』それが旅の掟だったからだ。しかしルゥはその掟の持つ真の意味を知らなかった。
逃げ去る者へ呑気に手を振って見送った結果が、今ようやく現われたのだ。
騎兵隊の戦馬が土煙を上げ、ルゥに向かって一直線…その数ざっと数えて20騎。
「ケケケ、ようやくお出ましだ。頑張れよぉ〜♪」
ムタの邪悪な笑顔と対照的にルゥの顔からはサッと血の気が引いた。
不殺の掟がもたらすものは『復讐』だったのである!!

「ちょ!?無理無理!!いくらなんでもアレは無理ッス!!!」
慌てて荷物を抱えると、一目散に逃げ出したが…人の足と馬の脚、その差は歴然。
「待あぁてゴルァアアーッ!!!」
瞬く間に追い付かれ、怒声と共にロングスピアの穂先がルゥの頬をかすった。
「敵に背中向けるたぁ恥だな恥、ムルムの名が泣くぜぇ?」
ケラケラ笑うムタが底意地悪い嫌味を囁く。一瞬だがルゥの中で怒りが沸点を越えた。
しかしあまりにも多勢に無勢、このまま戦ったところで敗北は必至だ。
「死ね!!」
後ろからランスの突進をまともにくらい、街道を外れて坂になった岩場を転げ落ちた。
久しく味わっていなかった痛みに、ルゥの闘争本能が燃え上がる。
『よくもやりやがったなクソ野郎!!』と、怒りが頭の中で暴れ狂った。
これはもう狩りではない、戦争だ。ルゥと騎兵隊による『小さな戦争』だ。
やるなら徹底的にやってやる、少なくとも謝られたとて許すつもりは毛頭無かった。

騎兵隊は坂を降り追いかけて来る。向こう側もやる気だ。
ここでルゥは気付く。今自分がいる場所が、騎兵隊にとって不利な地形である事に。
目の前の敵が多いなら、少なくすればいい。頭数を減らせば戦えるのだ。
そうだ。真っ正面から戦うだけが『戦い』ではない。
幸いにもここは岩肌の剥き出しになった荒地帯、街道を出れば騎馬の機動力は激減する。
切り立った岩の合間を縫うように駆けていくルゥを、騎兵隊は上手く追えない。
それどころか隊列は乱れ、また夜間の見通しが悪い事もあって騎馬同士の衝突が多発した。
「群を叩く時は先ず…『頭』からッ!!」
辺りをぐるりと見回すと、先程のランスが突き刺さった右肩がズキリと痛んだ。
この傷でハンマーを振るうのは難儀だろう。左手でハンマーの柄を握り締めて歯ぎしりした。
300ルゥ ◆c8mKoM5yZ6 :2007/09/08(土) 16:34:38 O
ムルム族は基本的に刃物を好む。刃を研ぎ澄ます行為が、技を磨く修練と重なるからだ。
焼けた鉄を打って鍛える行為が、己の身体を鍛える鍛錬に重なるからだ。
そんな中でルゥは異端だった。斬るよりも砕く、その性質が好きでハンマーを選んだ。
もちろんその選択に後悔は微塵も無い。しかし予備の武器を持たなかったのは失敗だと思う。
ギリリと奥歯を噛み締める。胸の奥底から込み上げてくる苛立ちが止まらない。
この痛みは『罰』だ…1度でも敵に背を向けて進んだ『罪』に対する罰。
犯した罪は償わなければならない。それは『戦い』によってのみ、果たされる。
ムルムの掟は絶対だ。ルゥも例外ではない、戦士の誇りが掟を守らせる。
「ああああああああああああああああああああああああああああああああ!!!!!!!!!!!!!!!」
ルゥが吠え、夜闇を照らす松明の灯は、野獣の如くギラギラと輝く眼を騎兵隊に知らしめた。

赤子ですら立ち上がることを覚えた瞬間から、鍛錬の日々が始まる砂漠の蛮族が…
その生涯全てを闘争と錬磨の中で過ごし、寿命で死ぬことを『最大の恥』とする一族が…
もしも本気でキレたなら、その怒りを鎮めるには絶対的に数が足りなかった。
たかが20人程度の騎兵隊が、勝てる相手ではなかった。
血に餓えた獣と化したルゥ。狂戦士の本質が剥き出しになり、破壊衝動のみが魂を支配する。
まだ彼等は数秒後には隊の半数を再起不能にされるとも知らず、勝利を確信していた。
自らの間違いに気付いた時には、もう遅かった。あまりにも遅すぎた。
彼等は『狩る者』ではなかった、ムルムの戦士の前では『狩られる者』でしかなかったのだから。


「ケケケ、いい暴れっぷりだったぜ?あ、コイツらは数えてやらねえぞ、弱すぎだ。」
「………………………。」
「だがよ、まだ殺さねえ程度に手加減する判断力が残ってんのは上出来だったな。」
そこら中で苦悶の呻きが聞こえる。その場に立っていたのはルゥだけだった。
当然の結果ではあったが、ルゥは不満を隠せない。敵の弱さにではなく、自分の弱さにだ。
20人の騎兵隊が全滅するまでに、要した時間は僅か1分足らず。
それでも不満が残る結果だった。
ルゥの父親はこの成人の儀式をたった2ヶ月で達成し、部族の最速記録を持っている。
母親もまた、5ヶ月で達成という第二位の記録保持者だ。
部族最強夫婦の間に生まれた1人娘である現実は、今のルゥにとって重荷であった。
越えるべき目標の筈の両親は、越えられない壁となって、目の前に立ち塞がり続けている。

「ムタ……次は頑張るッスから……。」
その声に普段の力強さが無いのは、戦いの疲労だけが原因ではないようだ。
「ケッ、らしくねぇな。オメェはオメェだろうがよ。親の影引きずるのはアホのやるこった。」
「ちょ!?何でわかったんスか!?ルゥは何も言ってないのにーッ!!」
「ケケケ、単純なヤツ。ま、オメェは間違いなく親父似だよ。頭の中身とかよォ、そっくりだぜ♪」
沸騰したヤカンみたいに怒りだしたルゥと、ケラケラ笑い転げるムタ。
1人と1匹はまだ知らない。自分達を狙っているのが、先程倒した騎兵隊だけではない事に…。
301グラスマン ◆4hcHBs40RQ :2007/09/10(月) 01:23:27 0
>>297
>「アイザックがこんな所にまで来るなんて、何か隊長達に用事でもあるんですかね?
> 彼は俺みたいに、無意味にどこかにふらつくタイプでもないですし。
> まぁ、アイザックが何の任務を頼まれていようが、もうこっちの手伝いをして貰うのは、俺の独断で決まっているんですがね。
> ねぇー、たいちょー」
「コラコラ、さすがに他の任務の最中なら手伝ってもらうことはできんよ。
つうか無意味にどこかにふらつくタイプなんてお前以外にどこにいるんだよ。」
グラスマンは苦笑しつつアゼルに応じる。
その間に、アイザックがこちらに到着した。
「や、あっちゃん。」
挙手で挨拶するグラスマン。
「久し振り。こんなとこで出会ったのは奇遇かな?」

>>298
>「……聞いた事が無いな。用心棒を置いてけぼりにする商人など。」
相も変わらず無愛想に、アイザックは言った。
「え?あ、あーあー。」
その言葉から、恐らくは任務の概要を大まかには把握しているのだろうと、グラスマンは推測する。
「すまんね、はぐれちゃって。
向こうの豪邸でボディコン美女が窓を開けたままシャワーを浴びてるって小耳に挟んだもんで、三人でおっとり刀で向かったんだ。
でも噂がデマだったばかりか、僕だけ警備の兵士さんに見つかってしこたま殴られてこんなになっちゃったよ。」
腫れ上がった自分の顔を指しながら言う。
これではコルムまで覗きに行った事になってしまうが、もちろんグラスマンの故意である。

>「アイザック・ワレンスタイン、命令によりグラスマンチームに合流する。」
>「それで……任務内容は?」
小声になり、アイザックが尋ねる。
グラスマンは小さく頷き、アゼルとコルムに立ち上がるよう促した。
「さーて、あっちゃんも合流できたし、休憩時間はそろそろ終わりだ。そろそろ商売に取り掛かかろうか。」
302グラスマン ◆4hcHBs40RQ :2007/09/10(月) 01:24:08 0
そして商売を再開する、ということはもちろんなく、人気のない路地まで移動した。
「さて、アイザック。」
グラスマンは仕切り直して、アイザックに目をやる。
「タイミング的に、前に頼んだ任務が終わってすぐに追いかけて来てくれたのかな。ご苦労様。
今までに集めた情報も含めて、任務内容とこれからの動きについて話そう。
アゼルとコルムもよく聞いておいてくれ。」
そして、グラスマンは説明を始めた。

今回の任務は、ライゼ王国の旧友であるボロロッカの町が最近急に態度が悪くなったため、その原因を探ることである。
情報を集めた結果、その原因は、最近町の周辺に現れた無差別襲撃魔、
通称『ムルムの砂嵐』に対してライゼ王国が何も対処しようとしない事らしい。
しかし恐らく本国はこの件について知らず、この辺りを哨戒しているライゼ王国第十七騎士団が、
『砂嵐』に挑んで敗北したことを隠すためにこの件を黙殺しようとして、
勝手にライゼ王国の名で無干渉を宣言している可能性が高いと思われる。
ボロロッカは既にライゼの仇敵ガストラ連邦に助けを求めており、ガストラはこれに応えて使者を派遣。
ガストラの使者が『砂嵐』を討伐してしまえば、最早ライゼとボロロッカの関係修復は不可能となるだろう。

「ということで、これからやるべきことはひとつ。
『砂嵐』がガストラの使者の手に掛かる前に、ライゼの名の下に倒すことだ。説得に応じるようならそれでもいい。
その後で、ボロロッカには今までのは全て十七騎団の独断だったことを告げて、
謝礼と菓子折りと十七騎団の罷免状でも持ってしっかり謝ろう。」

グラスマンは一旦皆を見回し、そして話を続ける。
「じゃあ、これからの動きだ。ボロロッカのライゼへの心象は時間が経つほど悪くなる一方だろうし、
ガストラの動きも気になる。従って、早急に『砂嵐』を何とかする必要がある。
だからここから先は2班に分かれて行動しよう。僕とコルム、アゼルとアイザックで組んで、町の外を探索する。
首尾よく『砂嵐』が襲い掛かってきたら二人掛かりで全力で対応してくれ。
しかし相手も二つ名持ちだ、あまりに強かったらいったん退いて合流し、4人掛かりで何とかしよう。
それと、ガストラの使者にはくれぐれも気をつけてくれ。
恐らくガストラは自身の強さを示すため、二つ名持ちの有名どころを送り込んでいるはずだ。
僕たちがライゼと知ったら襲い掛かって来ないとも限らん。
それっぽい不審者を見つけたら、見付からないようにかつ目を離さないようにしてくれ。
以上、何か質問は?」
303アゼル ◆F/ATTd3VB. :2007/09/10(月) 02:53:36 O
>298>301>302
アイザックと合流した一行は、人気の無い路地に入り、任務内容とこれからの動きを確認し始めた。

>「じゃあ、これからの動きだ。ボロロッカのライゼへの心象は時間が経つほど悪くなる一方だろうし、
 省略
>以上、何か質問は?」

「俺からは特に任務についての質問は無いですね。
 それよりも隊長に聞きたいのは、先の飲み放題の話はまだあるのかってことぐらいですよ。
 だって、まだ俺は二杯しか飲んでないんですからね」

「アイザック。
 チームを組んだのは何回かありますが、二人だけというのは今回が初めてです。
 俺はいつも通りに後ろに徹しますから、前は任せましたよ」
アゼルは微笑みながら、アイザックの肩をポンポンと軽く叩く。

「さぁ、皆で任務を頑張りましょうか!」

304アイザック ◆6GJ7GJlyDU :2007/09/10(月) 18:49:39 0
>301-303
>「すまんね、はぐれちゃって。
> 向こうの豪邸でボディコン美女が窓を開けたままシャワーを浴びてるって
> 小耳に挟んだもんで、三人でおっとり刀で向かったんだ。
> でも噂がデマだったばかりか、僕だけ警備の兵士さんに見つかって
> しこたま殴られてこんなになっちゃったよ。」
恐らく即興で考えた言い訳のつもりなのだろう。
「……それが本当なら、自業自得だな。
 むしろその程度で済んで儲けものと思うべきだ。」と返しておく。
とにかくも、任務の確認のためその場を後にした。

>「さて、アイザック。」
>「タイミング的に、前に頼んだ任務が終わってすぐに追いかけて来てくれたのかな。ご苦労様。
> 今までに集めた情報も含めて、任務内容とこれからの動きについて話そう。
> アゼルとコルムもよく聞いておいてくれ。」
路地でグラスマンから語られた任務内容は、第六遊撃隊らしからぬ
かなり重大なものだった。仮にも同盟関係にある自治地区の信頼回復など
普通は正規の騎士団の仕事だ。が、当の騎士団がそれに失敗した上に事実の
隠蔽を図ったせいでこちらにその尻拭いが回ってきたと言うことになる。

>「じゃあ、これからの動きだ。〜以上、何か質問は?」
「……特に無い。行動を開始する。」

>「アイザック。
> チームを組んだのは何回かありますが、二人だけというのは今回が初めてです。
> 俺はいつも通りに後ろに徹しますから、前は任せましたよ」
「……」
頷きだけを返して水筒の水を一口飲んだ。
肩を叩かれても一瞥すらしない。そのまま路地を出て行く。
305グラスマン ◆4hcHBs40RQ :2007/09/11(火) 00:28:26 0
>>303
>「俺からは特に任務についての質問は無いですね。
> それよりも隊長に聞きたいのは、先の飲み放題の話はまだあるのかってことぐらいですよ。
> だって、まだ俺は二杯しか飲んでないんですからね」
グラスマンは苦笑した。
「そういやそうだったな。分かった分かった、この任務が無事に終わったらしこたま飲ませてやるよ。
だからもうちょっとだけ頑張ってくれ。アテにしてるからな。
コルムもアイザックも、皆栄えある第六遊撃隊の精鋭達だ。戦果に期待してる。
何かあったら携帯花火を打ち上げてくれ。勿体振らずヤバくなる前に上げてな。
日が暮れるまで何もなかったら一旦さっきの酒場に集合。と、まあそういう感じで頼む。んじゃ解散!」

>>334
アゼルがアイザックの肩を叩き、笑顔で声を掛けている。
当のアイザックはと言うと、やはりほとんど無反応。グラスマンは思わず苦笑してしまう。
「おーい、聡明なアゼル君。」
アイザックが路地を出て行くと、グラスマンはアゼルに近寄って耳打ちした。
「根はいい奴なんだ、悪く思わんでくれ…とはお前には言うまでもないだろうから言わんよ。
で、そんな『分かってる』お前にしか出来ないミッションだ。
今回の任務が終わるまでに、アイザックを一度でいい、笑わせてみてくれ。
ある意味『砂嵐』よりガストラの使者より手強い相手だ、
これが出来るのは第六遊撃隊広しといえどお前しかいない。コンプ時の報酬は期待してくれ。頼むな。」
グラスマンは困ったような笑顔でウインクして、コルムと共に町の外へ向かっていった。

アイザックが皆に溶け込まないのを、グラスマンはいつも気に掛けていた。
コルムが溶け込みきれていないのは新人だからと言う部分が大きいために時間の問題だろうが、
アイザックはより根の深い問題を持っている。そしてそれは、一朝一夕に取り除ける深さではない。
今回敢えてチーム分けしたのは、作戦的な意味以上に、気さくなアゼルと二人きりにすることで、
アイザックが何かしらのプラスエネルギーを得られないかという試みであった。

「さーて、僕たちも気合いを入れていくぞ、コルムたん。」
306アゼル ◆F/ATTd3VB. :2007/09/11(火) 01:12:03 O
>304>305
>「おーい、聡明なアゼル君。」
アイザックが僅かな反応を示して路地から出て行った後、隊長がアゼルに向かって呼び掛ける。

「何ですか?」
アゼルが隊長に問掛けると、隊長はアゼルの下に近寄り、耳打ちをする。

>「根はいい奴なんだ、悪く思わんでくれ…とはお前には言うまでもないだろうから言わんよ。
 省略
>これが出来るのは第六遊撃隊広しといえどお前しかいない。コンプ時の報酬は期待してくれ。頼むな。」
隊長がアゼルに直接頼んだ任務。
それはアイザックを笑わすという、とても難しい任務だった。

「隊長……俺は芸人の経験は有っても、お笑い芸人なんてやったことは無いんですからね……
 一応は頑張ってみますが、この任務だけは期待はしないで下さいよ」
そう言うと、アゼルは走って路地から出て、アイザックを追い掛けた。

307ルゥ ◆c8mKoM5yZ6 :2007/09/11(火) 20:50:10 O
「うわぁ…人がたくさんいるッスね。薬なんて何処に売ってるのか、さっぱりッス…。」
小規模ながらポロロッカも交易都市だ、市場は人で溢れて賑わっている。
そんな市場通りの隅をコソコソと歩く騎士が1人。
着ている鎧は酷く痛んでおり、更にはサイズが合っておらず、見るからに怪しい
「おいコラ、あんまりキョロキョロすんじゃねーよ…怪しさ爆発だぜ。」
騎士(?)の肩にしがみつく砂漠リスが、小声でそっと忠告した。
「ムタは心配しすぎッス。この変装はカンペキじゃないッスか、大丈夫ッスよ。」
何故ルゥ達が街中にいるのか、そしてこの格好は何なのか。
時間は6日前にまで遡る…。


騎兵隊を倒したルゥだったが、最初に受けたランスの傷は思ったよりも深かった。
止血は間に合ったものの、翌日には大きく腫れ上がり、痛みを伴う発熱が始まったのだ。
おそらく傷口から雑菌が入ったのだろう。化膿して腫れは酷くなる一方だった。
「街に行けば薬があるぜ?どうするよ、腕1本オシャカにするか?」
「絶対に嫌ッス!!!」
という経緯で、目的地を魔の森からポロロッカへと変更したのである。
しかし街に行くには問題があった。ルゥの着ている服だ。ムルム族の戰装束は目立つ。
ただ目立つだけなら問題はない。だがムルム族の危険性は、砂漠の近隣都市では有名だ。
ましてやルゥは街道で暴れていたのだ、その存在は既に知れ渡っていると考えて間違いない。

『街道で次々と人を襲うムルム族の女』

襲った相手を殺さずに逃がしてやってたのだから、ルゥの外見特徴も詳細に伝わるはず。
なら街に行くにはどうすればいいか?頑張って考えた結論が『変装する』である。
幸いにも、倒した騎士達の傷を応急処置してやった時に、まるごと脱がした鎧があった。
ムタは反対したが、止めようとまではしなかった。ある意味これも経験だと判断したのだろう。


こうしてルゥは今、騎士の格好でポロロッカにいるのである。
「傷の具合はどうだ?」
「膿はちゃんと出してるから平気だと思うんスけどね。痛みは日に日に酷くなってるッス。」
口調こそ平然としているが、その足取りは少々頼りない。
街の近くに荷物を埋めているため、今は手ぶらだ。しかし金属鎧を着るのは苦手らしい。
歩き方もどこか不自然で、ムタの言う通り怪しい人物そのものである。

>>304-306
フラフラと歩いていると、少し離れた路地から出て来た1人の男が目に止まった。(>>304)
格好から見る限り、一般市民ではなさそうだ。今はお尋ね者の身、気をつけるに越した事はない。
ルゥはなるべく道の端を通って、男を避けるように注意深く歩いてみたのだが、
いきなり路地から飛び出して来た誰かと、勢いよくぶつかってしまった。(>>306)
308アゼル ◆F/ATTd3VB. :2007/09/11(火) 21:58:05 O
>307
走って路地から出ようとした瞬間、鎧を着た騎士風の人物が唐突に現れ、アゼルはその騎士風の人物にぶつかり、押し倒してしまった。

「あたたたた……
 すみません。こちらの前方不注意のようで……」
アゼルはすぐに騎士風の人物の上から退き、アイザックの方を見た。
アイザックはこちらのことに気付いていないのか、それとも無関心なのかは知らないが、そのまま道を歩き続けている。

「えーっと、怪我は無いですよね?
 では、俺は相棒が我が道を突き進んでいるので、俺はここらで失礼します」
そう言って、アゼルは騎士風の人物をその場に残し、アイザックを追う為に再び走り始めた。

309アイザック ◆6GJ7GJlyDU :2007/09/12(水) 20:31:27 0
>307-308
アゼルは路地から出る前にグラスマンに呼び止められていた。
隊長もすっかりアイザックの扱いには慣れたようで、アゼルに
何か思い出したことでも伝えているのだろう。

町の出口に向けて歩を進めていたが、後ろで
誰かが転んだような音がした。振り返った時には
既にアゼルはこちらに向かっていたので何があったのかは
分からないが……その時、アゼルの向こう側に見える人物に違和感を感じた。

「(……挙動がおかしい。まるで怪我をしているかのようだ。)」
普段なら放置するアイザックだが、「ムルムの砂嵐」や「ガストラの使者」と言った
危険人物がポロロッカ近辺に潜伏中である事から
「(襲撃されたのかも知れんな。もしそうなら情報を聞きだせるかも知れん。)」

追いつく為に小走りになっていたアゼルの横をすり抜けて
アゼルとぶつかったその人物へと近づいていく。
「……失礼、もしや怪我をされているのでは?」
拒絶されるなら深入りはしないが、確実な任務遂行の為に
少しでも情報が欲しいところだ。
310ルゥ ◆c8mKoM5yZ6 :2007/09/13(木) 00:19:00 O
>>308
>「あたたたた……
 すみません。こちらの前方不注意のようで……」
ぶつかった人物は、エルフの男だった。すぐさま謝り立ち上がる。
>「えーっと、怪我は無いですよね?
 では、俺は相棒が我が道を突き進んでいるので、俺はここらで失礼します」
なるほど、先程の男のとは仲間のようだ。ルゥはうんうんと頷いて、無事を応える。
関わったらマズい事になると思った。もしもこの2人がルゥを狙う討伐隊の者なら…
今のルゥには荷が重い。傷による疲労に加え、不馴れな鎧、そして武器を持っていないからだ。

しかしエルフの男はそのまま先を行く男を追って行った。
(うわ…あぶねーッ!!ヒヤッとしたぜ。ルゥ、さっさとここから離れろ!!!)
エルフとの距離は既に10mくらい離れていたが、ムタは声を出さずに堪える。
ムタの声が『絶対に聞こえたらいけない』からである。
エルフは聴力に優れた種族、街中を歩く『騎士』が『喋るリス』を連れているのは『不自然すぎる』。

>>309
なんとか起き上がると、ふらつく足を必死に踏み締めてルゥは路地に入ろうとした。
(…やばいッス、変装はカンペキだったはずなのに…。)
ルゥは知らなかった。今自分の着ている鎧が『どこの国の騎士団の鎧』なのかを!!
(チィッ!気付きやがった!!)
エルフが後を追った男が、こっちを見ているではないか!ムタは流れるはずのない冷や汗を感じた。
男はエルフの横を擦り抜けて、まっすぐにルゥの所へと向かって来る。

>「……失礼、もしや怪我をされているのでは?」
抑揚の無い声に無表情な顔。
果たしてこの男はルゥの正体に気付いたのでは…そう思わずにはいられない。
ムタは考える、僅かな時間を最大限に使って考えている。
この状況を『どうやって切り抜けるか』、ただそれだけを必死に考えた。
「む…ムルム族に…やられ…た…。」
「!?」
男の問い掛けに応えた声は、ムルム族の女ではなく、嗄れた男の声だった。

(ムタ!?何やってんスか!?)
思わず声が出そうになったが、間一髪で間に合った。ルゥはムタのやろうとしている事を理解したのだ。
「ヤツは…恐ろしく強い……今街の近くにいる…。俺のことはいい、至急向かってくれ!」
いかにも苦しそうな声で、ムタは男に頼んだ。慌ててルゥは来た道を振り返ると指差す。

ぶつかって転んだ時に、ムタはちょうどルゥの背中にしがみついていた。
この角度ならば、男からはムタの姿がギリギリで見えない位置にある。
ルゥの顔が兜のフェイスプレートで完全に隠れているからこそ出来る『賭け』だった。
311アゼル ◆F/ATTd3VB. :2007/09/13(木) 01:37:58 O
>309>310
珍しく興味を持ったのか、アイザックが振り返ってアゼルの方を見る。
そして、アイザックはアゼルの方に向かって走り出し、そのまま横へとすり抜けていった。
どうやら、アイザックはアゼルとぶつかった騎士風の人物に興味を持ったようだ。
エルフ特有の優れた聴覚が、珍しく他人に向かって話し掛けるアイザックの声を集めている。
怪我をしていないかと聞いているようだ。
アゼルは走っていた足を止めると、今度は後ろ向きに走り出した。

>「ヤツは…恐ろしく強い……今街の近くにいる…。俺のことはいい、至急向かってくれ!」
アゼルはアイザックの二歩程後ろで立ち止まると、くるりと振り返って、騎士風の男に話し掛ける。

「情報提供ありがとうございます。
 それと、先程は怪我をしているとは知らず、強引にその場を去ってすみませんでした。
 俺達はこの町にこれ以上に被害が広まらないように、そのムルム族の少女を説得するか、討伐する為に急いでいたのです」
そして、アゼルは騎士風の人物の鎧に、ライゼの紋章が付いていることに気付いた。

「どうやら、あなたは第十七隊の方ですね。
 先程のお詫びもしたいところですし、治療をさせて下さい」
アゼルはアイザックよりも一歩前に出ると、騎士風の人物に向かって手を差し出した。

「すみませんが、治療はそこの路地でさせてもらいますよ。
 色々と聞きたいこともありますしね。
 アイザックも構わないでしょう?
 治療ついでに色々と聞き出しても」

312ルゥ ◆c8mKoM5yZ6 :2007/09/14(金) 21:55:41 O
>>311
>「情報提供ありがとうございます。
 それと、先程は怪我をしているとは知らず、強引にその場を去ってすみませんでした。
 俺達はこの町にこれ以上に被害が広まらないように、そのムルム族の少女を説得するか、討伐する為に急いでいたのです」
>「どうやら、あなたは第十七隊の方ですね。
 先程のお詫びもしたいところですし、治療をさせて下さい」
(やっぱりルゥを狙ってる連中だったか…あぶねぇあぶねぇ。)
エルフの男が放った言葉を聞いたムタは、自分が『賭け』に『勝った』と悟った。
まさかこの鎧の持ち主が、2人の知っている人物だとは確かに予想外だった。
しかし、この状況は逆に利用できる。要は『事実を少しすり換える』だけでいいのだ。
(ケケケ、なるほどなぁ…コイツは使えるぜ。)
そう、むしろ2人があの時の騎兵隊を『知っている』という事が切り札となるのである。

「治療だと!?ふざけているのか!?ヤツは今もこの街に向かっている最中なんだぞ!?
他の仲間は皆とっくに逃げ出した!残されたのは俺だけだ!!臆病者のッ…ゲホゲホッ!」
息吐く暇も無くまくし立てると咳込んでしまう。…が、当然ながら演技である。
呼吸を必要としないムタは、その気になれば延々と喋り続ける事も可能なのだから。
「ハァ…ハァ…ちくしょう!後少しでヤツを追い詰めて生け捕りにする事が出来たのにッ!!
頼む、ヤツを捕まえるのを手伝ってくれ!治療なんか後回しで構わん!急げ!!ヤツは『手負い』だ!!」
(ムタ…なんかノリノリッスね、ルゥも頑張るッスよ!)
演技に併せて身振り手振りを加え、この変装した騎士に『焦る様子』を持たせていく。
2人の男はおそらく騎兵隊とは別の隊だ。でなければ変装した鎧にすぐ気付く。
更にはわざわざ『第十七隊の方』と呼んだ。これは彼等が別の部隊である証拠。
ムタは考える、この2人の戦力はどの程度か。またこの2人以外の仲間がいるのかどうか。

「ところで、まさかとは思うが君達は2人かね?格好からして我々とは所属が違うようだが…
騎士団に君達みたいな者がいたとは知らなかったな。あぁ自己紹介が遅れた、俺は
第十七騎士団のマルコだ。頼む、俺に力を貸してくれ!今なら手柄は俺1人の物になるんだ!!」
マルコという名は偽名ではない。ムタがまだ『生きていた頃の本名』であった。
そしてあの騎兵隊の連中が、負傷した仲間を平気で押し退けて逃げ出した挙げ句に、
敵に対して泣いて命乞いをするような屑である事も、きっちり再現して見せる。

歪んだ自尊心と、自身の実力に不相応な功名心。
奇しくも第十七騎士団の悪評は、アゼルもアイザックも知っていた。
ここまでの時点で、ムタは嘘を言ってはいない。ただ『事実を少しすり換えた』だけだ。
313アイザック ◆6GJ7GJlyDU :2007/09/14(金) 23:04:41 0
>310-312
>「む…ムルム族に…やられ…た…。」
>「ヤツは…恐ろしく強い……今街の近くにいる…。俺のことはいい、至急向かってくれ!」

>「すみませんが、治療はそこの路地でさせてもらいますよ。
> 色々と聞きたいこともありますしね。
> アイザックも構わないでしょう?
> 治療ついでに色々と聞き出しても」
「……怪我の治療が最優先だ。アゼルに賛成する。」
「ムルムの砂嵐」が手負いと言うのは以外に有益な情報だが、
任務を優先して手当てもしなかったとなればそれはそれで難癖をつけてくるのも
第十七騎士団の連中だ……言質を取ったと言っても、人間都合が悪くなれば
手の平を返すなど平気でやらかすもの。禍根の元を放置するのは得策じゃない。

「……鎧兜を脱ぐんだ。そうしなければ、手当てが出来ん。」
治療に使う道具を取り出して相手を見る。
何か戸惑っているようだ、怪我のせいで一人で脱げないのだろうと判断して
「アゼル……準備を進めてくれ。俺は脱がせるのを手伝う……。」
「負傷兵」に近づき、まずは兜を脱がせようと手を伸ばす……
表情は相変わらず能面の様で、感情を読み取る事ができない。
314アゼル ◆F/ATTd3VB. :2007/09/15(土) 00:07:21 O
>312>313
男は自分の治療よりも、ムルム族の女の子が手負いの状態でこの町に向かっているので、さっさと捕まえに行けと言う。
アゼルは男の言葉に違和感を感じ、その違和感が何なのかを考え始めた。

>「アゼル……準備を進めてくれ。俺は脱がせるのを手伝う……。」
アゼルは考え事を止めた。
自身が感じた違和感は、どうせ十七隊の者の言うことだから、自身の汚名を隠す為に嘘を吐いたとうことで結論付けた。
アゼルは治療の為に精神を集中させ、自身の魂から風の持つ癒しの力を抽出し、右の手に集めた。

「こっちは準備が完了しましたよ」

315ナナミ ◆LV/6jLYLCk :2007/09/15(土) 03:25:31 0
>288
闇色のマントを纏っている人物の傍らには、それとは対照的な白い布で全身を覆った何かが従っている。
それは遠目には絵本に出てくるお化けのように見えるが、よく見れば中に人が入っているのがわかる。
一応、砂漠の直射日光から身を守る為の布だというのも理解できなくはない。
ただ、その着こなしがあまりにも下手なだけで。

>「クク…早く出て来い、砂嵐。私を楽しませてくれ…。」

「張り切ってるわね、『ワルワの砂荒らし』さん。
 でも、『月夜の巫女』と一緒に仕事することを忘れてもらっちゃあ困るわ」
ナナミと名付けられた人型のアンデッドモンスターは、とりあえず何か喋っていないと落ち着かないのか、エルガイアに言葉を返した。
月夜の巫女。それは彼女自身が単に東洋の巫女で、
どうやら月の神を信仰しているらしいということから名付けられた、安直だが的を射ている異名である。

彼女は更に言葉を続けた。
「今回はこのわたしが居るんだもの。そして、貴方が居る。
 それこそ、楽しむ間も無く、あっと言う間に終わってしまうかも」
その口調は自信に満ちており、余裕が感じられる調子ではあったものの、
今の彼女は自らを覆う白い布のことでいっぱいいっぱいのようであり、つまり動きと台詞が全く一致していなかった。
暫くの間、彼女は歩きながら布と挌闘していた。

やっと動きが落ち着いてきた頃に、徐に彼女は口を開いた。
「しっかし暑いわねー。砂漠は初めて来るけど、できれば二度と来たくないものね」
彼女はそう言うが、実際には暑さなど全く感じていない。
これは強靭な精神力とかではなく、単に彼女がアンデッド、それも骨だけの状態なので、痛覚等が基本的に無いのだ。
もちろん、この暑さで汗一つかいていないところを見られようものなら、自分の正体を勘付かれる可能性もあるので、真っ白の布で全身を覆っている。
「あっ、見えてきた見えてきた。あれがポロロッカの町よね?」
316ルゥ ◆c8mKoM5yZ6 :2007/09/15(土) 22:15:07 O
>>313-314
>「……鎧兜を脱ぐんだ。そうしなければ、手当てが出来ん。」
>「アゼル……準備を進めてくれ。俺は脱がせるのを手伝う……。」
無表情な男が兜に手を伸ばすが、ルゥは軽く払いのけた。
「俺が名乗ったというのに貴様達は名乗らないとは何だ!?我々が誰だか知っての無礼か!!」
突然キレたムタに合わせて勢いよく立ち上がるルゥ。だんだん慣れてきたらしい。
「…だがまぁ所詮は雑兵だろうからな、特別に許してやっても構わん。治療を頼もうか。」
さっさと肩当ての止め具を外し、袖を上まで捲り上げる。肩の傷が顕になった。
赤黒く腫れ上がり、見るからに重い傷だ。
「歴戦の騎士である俺も流石に味方のミスまでは想定外でな。この傷が無ければ今頃は
ヤツを捕まえていただろう。逃げるふりをしながら罠までおびき寄せたが、仕留めきれなかった。」
確かに傷はランスによる『刺傷』に間違いない。アイザックには見慣れた傷口だった。

「砂漠を5日間も小競合いを続けたが、ヤツのハンマーは厄介だ。俺は剣を2本共に折られた…
しかしな、ヤツを罠にかけて左腕を切り付けてやったのだ!片手では武器も持てまい、チャンスなのだよ。」
興奮するムタの演技に少々呆れながらも、ルゥは高慢な騎士を演じ続ける。
>「こっちは準備が完了しましたよ」
「さあ早く治療しないか、グズグズするな!まぁ俺程の騎士なら武器さえあれば構わんがな!
肩以外に傷は無いし、少し休んだから疲れも和らいだ。味方も2人増えたし次こそはヤツの最期だ!!」

(ケケケ、素直に治療するとは思ってねーよ、テメェらは『まだオレを疑ってる』だろうしな。)
ムタは確信していた。2人は間違いなく疑っていると。根拠もある。
彼等はムタの名乗りに応じず、兜を脱がそうとした…中の顔を『確かめる』ために!
鎧を脱がそうとしたならば自然だが、彼は『鎧兜を』と言ったのだ。
顔や頭部に治療が必要な怪我を負った者が兜を被るだろうか?当然答えは『NO』である。
しかし最初に兜を取る事を優先した。あまりにも不自然だ。

ムタは既に『肩以外に傷は無い』と言ってある。これでも兜を取る事を要求してきたなら…
(さあて、これで兜にこだわるならクロだな。さっさとその魔法で傷を治してみろよ、ケケケ♪)
仮に彼等がムタを信用していたとしても、それはそれで好都合。
当初の目的通り傷は治るし、街の外におびき寄せたら勝てる算段もあった。
だが彼等はおそらくまだ兜にこだわるだろう。
無表情な男は何か『まだ考えがある』ように思う。もちろんムタにも『その時』の用意があったが。
(スゲーッ!ムタが輝いてるッス!ルゥだったら絶対に即バレる自信あるッスよ…。)
ルゥは知らなかった。まだ生きていた頃、ムタが何をしていた人物なのかを。
砂漠に点在する蛮族を1つの部族として纏め上げ、蛮族達に社会性を根付かせた人物…
マルコ・ラムタ・ムルム。一代で砂漠の王者となった、ムルム族の初代族長だったのだ!!
317アゼル ◆F/ATTd3VB. :2007/09/16(日) 00:24:28 O
>316
>「さあ早く治療しないか、グズグズするな!まぁ俺程の騎士なら武器さえあれば構わんがな!
>肩以外に傷は無いし、少し休んだから疲れも和らいだ。味方も2人増えたし次こそはヤツの最期だ!!」
アゼルの男に対しての違和感はどんどんと高まっていき、男の傷口を見た時にその違和感は最高潮に達した。
男が見せた肩の傷は酷いものだ。
だが、アゼルが注目したのは、とても老人の肌とは思えないような、すべすべとした肌の方だ。

声と肌のミスマッチ。
サイズの合っていない第十七隊の鎧。
鎧には傷が有ったが、肩の部分にランスが貫通したような跡も無い。
最初に出会った時の重傷の怪我人の様子も今は無し。
この男は第十七隊の鎧を被った何者か、とアゼルは結論を付けた。
ガストラの使者がライゼの騎士に成り変わる理由は無いので、ガストラの使者という線は除外。
アゼルが考えた残りの線はと言うと、ムルム族の女の子だけだ。

「では、治療を始めます」
アゼルは偽者の騎士に近付き、肩の傷口を左手と右手で挟んで押し潰して、膿を出す。
右手に傷口から出た膿が張り付くが、傷口から右手を離して風で膿を吹き飛ばす。
そして、傷口に触れないようにして、右手に溜めておいた癒しの風を傷口に吹き付ける。
これですぐにとはいかないが、完全に回復するだろう。

318アイザック ◆6GJ7GJlyDU :2007/09/16(日) 01:00:47 0
>316-317
>「俺が名乗ったというのに貴様達は名乗らないとは何だ!?我々が誰だか知っての無礼か!!」
「(予想以上に激昂するのが早かったな……。)」
内心で呆れながらも手を引っ込めた。
いきり立っている相手ほど厄介なものもそうは無い。
向こうの方から傷ついた部位を晒してくれたのだからそれ以上は
火に油を注ぐのと同じである。

>さっさと肩当ての止め具を外し、袖を上まで捲り上げる。肩の傷が顕になった。
兜を脱がせるのを諦めて傷の具合を確かめようと目を向けて飛び込んできたのは……
「(……褐色の肌……か。)」

こんな暑い中兜を被りっ放し、面頬を落としっ放しと言うのは不自然極まりない。
確かに、極度の緊張状態にあって外す事が出来ないと言う事は十分考えられる。
しかし、援軍と合流して安堵すれば、安全を考えても面頬ぐらいは上げる筈なのだ。
だのに頑なに兜を脱ごうとしない……その上捲り上げた袖の下は褐色の肌。
これはもう十中八九間違いない。すぐに遭遇するとは、運がいいのか悪いのか。

>「では、治療を始めます」
アゼルが傷を治し始めた。止める気は無い。
ガストラの使者なら止めさせていたが……。
「アゼル……傷はどれくらいで回復する。」
かなり深い傷だった。相当強力な力でないと
短時間での完治は難しいと見ている。だがそのランスの一撃を
あの程度で済ませたと言う事実は、そのままムルム族らしき人物の
実力の高さを表してもいる。だが連絡する余裕は無い。
「……ムルム族、だな?」
319グラスマン ◆4hcHBs40RQ :2007/09/16(日) 01:28:16 0
>>318
「いたぞー!」
その時、わっと彼らの元に子供達が押し寄せてきた。
ざっと見て30人はいるだろうか。

「ライゼの騎士だな!」
「臆病ものめ!」
「お前なんか町から出ていけー!」
「お前たちも仲間だな、やっつけてやる!」
「えい、えい!」
三人を掴んだり引っ張ったりぽかぽかと叩いたり、もみくちゃである。
素手の子供のため腕力も攻撃力も皆無に近いが、滅茶苦茶に騒ぎ回る子供達で辺りは大混乱になった。

「いたたたた!ぼくを叩くなよ!」
「えーん、転んだー!」
「いたい!足踏まれた!」
「ぎゃあぎゃあ」「わいわい」「がやがや」

そして喧騒のさなか、空に赤い花火がぼんと上がるのが見えた。
320グラスマン ◆4hcHBs40RQ :2007/09/16(日) 01:29:32 0
>>315
>「今回はこのわたしが居るんだもの。そして、貴方が居る。
> それこそ、楽しむ間も無く、あっと言う間に終わってしまうかも」
「クハハハハ!確かに。『砂嵐』がどれほどのものかは知らぬが、我々二人を向こうに回して1分でも持ったら大したものだ。」
エルガイアは高らかに嗤った。
「『月夜の巫女』よ、私は本来連れを伴うのは好かん。いつも勝手に私の技の巻き添えになって死ぬからだ。
弱い奴が死ぬのは勝手だが、味方を殺すと本国の連中が五月蝿いのだ。
クハハ、だが貴様は別だ!ナナミよ。貴様は巻き添えで死ぬようなタマではないからな。
足手纏いがおらぬ任務とは何と楽しいものよ!クハハハハ。」
人を褒めることの少ないエルガイアが、妙にナナミを持ち上げている。
本国を出発する前にナナミとひと悶着あったらしく、その時に少しやり合った結果、その実力を知って上機嫌になったらしい。

>「しっかし暑いわねー。砂漠は初めて来るけど、できれば二度と来たくないものね」
外套と格闘していたナナミが、唐突に口を開いた。
エルガイアは得意げに鼻を鳴らす。
「ふん、この程度の暑さで音を上げるとはまだまだよな。ワルワ砂漠はこんなものではないぞ。
貴様のようなモヤシではワルワ砂漠では10分で音を上げるだろうな。クハハハハ。」
世界一過酷な砂漠といわれる地、ワルワ。
そこで無差別に人々を殺し続けていた殺人鬼がこのエルガイアである。
殺していた理由は、殺し屋として殺人の感触を常に忘れないようにするためという至ってシンプルなものだった。
スカウトを受けガストラの子飼いになってからは、様々な条件と引き換えに無駄な殺人は控えているらしい。

>「あっ、見えてきた見えてきた。あれがポロロッカの町よね?」
エルガイアは頷いた。
「うむ。では敵と接触する前に、一応任務内容の確認をしておこう。
今回の任務の本旨は言うまでもなく、『ムルムの砂嵐』を殺すことだ。
そして、任務の邪魔になるものは我々の裁量に任せて好きにして良いと言われておる。」
エルガイアの口の端が吊り上がる。
殺人鬼の裁量に任せれば、対応などもちろん一つしかない。
「ライゼは何故か今回は動かんようだが、他所から他にも『砂嵐』の首を狙ってやって来ている者がいるかもしれん。
もし現れたら、それはつまり『砂嵐』を殺すべき我々の任務の邪魔になっているということになるな。
二つ名持ちの邪魔者など間違っても出てこないと良いなあ、出てきては仕方なく殺さなくてはならないではないか。
クハハハハハ…!」
有名どころの二つ名持ちを殺せば、自分の名の価値はさらに上がる。
結果として今後の契約金も一気に跳ね上がるだろう。

「ハハハ…そして、『砂嵐』を殺した後はガストラの軍事力をボロロッカに売り込む。
ガストラの精鋭の騎士団を町に常駐させ、その数を徐々に増やしてボロロッカの政治機構にプレッシャーをかけていき、
いずれはこの町をガストラの事実上の植民地とするのだ。まあ、そこまでは我々の関わるところではないがな。
さて、我々は我々の仕事をしようではないか。…む?」

その時、彼らの前に一人の男が現れた。
「よう…。」
第六遊撃隊隊長、グラスマン・グラスハーツである。
321グラスマン ◆4hcHBs40RQ :2007/09/16(日) 01:31:42 0
数分前のこと。
「…たは〜」
岩陰から、グラスマンとコルムはその白黒二人の様子を窺っていた。
グラスマンは滅茶苦茶嫌そうな笑顔を浮かべている。
「遠いから話し声は聞こえないが、片方の黒い奴…ありゃ間違いなく『ワルワの砂荒らし』だ。
なんでこんな所にいるんだよ、あいつ。あんな化け物と二度と関わりたくなんかないっつうの。
もう一人の白い奴は誰だろうな…ここからじゃ顔がよく見えない。大きさからして女か子供…」
その時、グラスマンはピンと閃いた。
閃いてしまった。
「『砂』の二つ名、無差別攻撃、暑いのに妙に体を隠した女…そういうことか!
コルム、ちょっとふたつ用事を頼まれてくれ。」


そして現在。
「正体はお前らだったのか…『ワルワの砂荒らし』、いや『ムルムの砂嵐』!」
グラスマンは高らかに宣言した。
エルガイアはというと、珍しくきょとんとした顔をしている。
「…は?」
「とぼけても無駄だぜ。『砂嵐』という二つ名から、おそらくホシは砂を使う奴だろうとアタリを付けていた。
砂を使い、無差別に人を襲い、一個騎士団を壊滅させ得る戦闘力を持った奴。それはお前しかいない!
今この場にいるのが動かぬ証拠だ。違うか?」
「…貴様、いきなり現れて何を言っている?大体『砂嵐』は女だろうが。」
呆れ顔のエルガイアにグラスマンは得意げに笑い、ナナミを指差した。
「彼女。お前はムルム族の格好をした女性を用意し、自分の犯行と気付かれないよう矢面に立てて隠れ蓑にしたんだ。
その白い外套を取れば、下にはムルムの民族衣装を着ているはず。言い逃れはもうできんぞ。」

コルムに頼んだ用事は、ひとつは数分後にここを通る予定だった商車に迂回させること。
グラスマンの推理が正しければ、その商車が『ムルムの砂嵐』であるナナミ達の手に掛かるはずだったからだ。
そしてもうひとつは、アゼル達への連絡用の赤い花火を上げること。
グラスマンはというと商車を追いかけられないよう、また打ち上げた花火に気付かれないよう、
彼らの気を引き足止めをせんと立ち塞がったのである。

エルガイアはもうモノも言えないといった表情で、ナナミに顔を向けた。
322ルゥ ◆c8mKoM5yZ6 :2007/09/16(日) 03:40:20 O
>>317-318
>「では、治療を始めます」
傷口を圧迫する時の痛みはあったが、すぐに穏やかな風が痛みを取り去っていく。
(…どういうことだ?コイツはルゥの正体を疑ったまま治療しやがった。)
ムタはエルフの行動に戸惑った。その時に思い出す、最初にエルフが言った事を。
ルゥは全身の怠さが無くなり、清々しい気分だったが油断はしていない。
未だ目の前の2人が、自分を狙う討伐隊の者である事に変わりはないからである。

>「アゼル……傷はどれくらいで回復する。」
無表情の男は相変わらず抑揚の無い声で、治癒の魔法を使ったエルフに尋ねた。
傷は大部分が治っている。しかしまだ完全に回復したという訳ではない。
見た目には酷く腫れていた傷はほぼ見えなくなり、少し丸い跡が小さく残っているだけだが。
(まだ『あの子』をブン回すのはキツいッスね…。)
グッと拳を握っては離し握っては離して感覚を確かめる。
>「……ムルム族、だな?」
単刀直入の一言がやってきた。ルゥは開いた手を強く握り締め、いつでも殴りかかれるよう構えた。

「止めとけ、コイツらは敵じゃねーよ。ったく…久しぶりに頭フル稼動したぜ。」
ムタは兜の上まで駆け上がると、尻尾をヒョコヒョコ揺らしながら大袈裟に溜め息を吐く。
「え!?どういうことッスか?」
ムタが思い出したアゼルと呼ばれたエルフの言葉、『説得するか、討伐する為に』である。
つまり話し合いが可能ならば、戦う意思は無いという事だ。
だとしたら先程の治療にも頷ける。そしてアゼルが見せた『誠意』を無視はできない。
「テメェらの目的がオレ達だってのは分かった。そうさ、コイツがお尋ね者のムルム族だよ。」
そう言うとムタが前足で兜をコツコツと叩く。
「おいコラ、受けた恩には何を返すんだ?あぁ!?」
「あ、感謝の言葉ッスね?…えーと、どうもありがとうッス!おかげで元気出たッスよー♪」
ルゥが慌てて手甲を脱いで、アゼルに握手を求め、手を差し出した。
「ルゥ、とりあえず先に兜は脱いどけ。」

>>319
ムタはニヤニヤ笑ってはいたが、実際は内心冷や汗ものであった。
もしも2人に『第十七騎士団は全員帰還した筈だが、ここにいるお前は一体誰だ?』
などとカマをかけられたなら、即座に切り返せる自信は無かったからだ。
故に自ら名乗りを上げたのは、あのやり取りの中でも最大の博打だった。
結果としては別の要因によってバレたのだが。
「ところでよぉ、テメェらは…って何だ!?何だ!?」
>「いたぞー!」
>その時、わっと彼らの元に子供達が押し寄せてきた。ざっと見て30人はいるだろうか。

>「ライゼの騎士だな!」
>「臆病ものめ!」
>「お前なんか町から出ていけー!」
>「お前たちも仲間だな、やっつけてやる!」
>「えい、えい!」
「ちょ!!ライゼの騎士!?誰ッスかソイツはッ!?」
理由も分からず子供達に完全包囲され、ポコポコと叩かれたり物を投げられたり…。
突然始まった容赦無きリンチに、ルゥは訳が分からず軽いパニックに陥った。
323アゼル ◆F/ATTd3VB. :2007/09/16(日) 07:25:04 O
>318>319>322
>「アゼル……傷はどれくらいで回復する。」
>「……ムルム族、だな?」

「もうそろそろ治るころですね」
アイザックに問われ、アゼルは答える。
偽者の騎士の肩の傷は殆んど消え、アイザックが偽者の騎士がムルム族かどうか確認する時には、もう傷は完全に癒えていた。

>「止めとけ、コイツらは敵じゃねーよ。ったく…久しぶりに頭フル稼動したぜ。」
>「え!?どういうことッスか?」
リスが偽者の騎士の頭の上に乗り、偽者の騎士に話し掛ける。
どうやら偽者の騎士の声は、このリスが出していたらしい。
本当の偽者の騎士の声は女の子の声だった。

>「テメェらの目的がオレ達だってのは分かった。そうさ、コイツがお尋ね者のムルム族だよ。」
>「おいコラ、受けた恩には何を返すんだ?あぁ!?」
>「あ、感謝の言葉ッスね?…えーと、どうもありがとうッス!おかげで元気出たッスよー♪」
偽者の騎士はお尋ね者のムルム族の女の子で正解であった。
女の子は手甲を脱いで手を差し出す。
アゼルもそれに応じ、女の子と握手をした。

>「ところでよぉ、テメェらは…って何だ!?何だ!?」
突然、町の子供達がこちらに押し寄せてくる。
どうやら第十七隊の騎士達を探していたらしい。
子供達はこちらを囲んで、石を投げたり叩いたりしてくるが、所詮は子供の力。
全く痛くない。

「困りましたね……
 町の子供達に嫌われる程、ライゼのイメージが悪くなっているとは」
アゼルが子供達の為すがままにされているその時、空に赤い花火が打ち上げられるのが見えた。

「アイザック、隊長達に何かが起ったようです。
 それにリスさんとルゥさんでよかったんですっけ?
 こんな所では話もできません。 三人とも、場所を移動しましょう」

324アイザック ◆6GJ7GJlyDU :2007/09/16(日) 22:55:53 0
>319-323
>「テメェらの目的がオレ達だってのは分かった。そうさ、コイツがお尋ね者のムルム族だよ。」
「そうか……。」
確認が取れた。意外だったのは、リスが喋っていた事だ。
聞かされていた情報では、ムルム族は女だったという事で、
先程までの声はどこから聞いても男のものだった。お陰で
確証を得られなかったのだ……。

>「いたぞー!」
>「ちょ!!ライゼの騎士!?誰ッスかソイツはッ!?」
話を進めようとして、突然町の子供達が乱入してきた。
どうも町を見捨てたライゼの騎士に純粋な怒りをぶつけに来たらしい。
自分達にとってはいい迷惑だが、子供に道理は通じない。事実でもあるのだから。
「(……自業自得、か。)」
「ルゥ、だったな。今お前が着ている鎧の元の持ち主……
 それがライゼの騎士だ。そしてお前も、同じように見られている……。」
状況をすぐに把握できないあたり、どうも中身の方は咄嗟の判断と言うものが苦手らしい……。

>そして喧騒のさなか、空に赤い花火がぼんと上がるのが見えた。
視界の端に赤色が飛び込んでくる。
そちらを向いて確かめると、それは連絡用の花火だった。
「(……向こうで何かあったか。ムルム族がここにいると言う事は……
  ガストラの刺客と遭遇した……と見るべきだな。)」

>「アイザック、隊長達に何かが起ったようです。
> それにリスさんとルゥさんでよかったんですっけ?
> こんな所では話もできません。 三人とも、場所を移動しましょう」
アゼルが移動を促している。異論は無い。
「こちらでも確認した……急いだ方がいい。
 話は途中でも出来るからな……。」
そう言って路地を出て花火の方角へと歩いていく。
出来れば走りたかったが、不自然すぎる。余計な関心を引くのは
避けるべきだから。それでも出来るだけ速く歩いている。
道中、ムルム族に尋ねた。交渉の下準備も自分達の役目だ。
上から見下ろす形になってはいるが、ムルム族と視線を合わせて
「……何故人を襲った。」と動機を聞き出そうとする。
325ナナミ ◆LV/6jLYLCk :2007/09/17(月) 16:59:22 0
>320>321
ナナミはエルガイアの言葉を聞けば聞くほど、この人物とはウマが合わなさそうだと思った。
彼は殺しを楽しんでいる気がする。少なくとも、彼女はそう感じた。
彼女はそれまでは喋っていないと落ち着かなかったが、急に黙り込んでしまった。
布の下には、彼への不快感を隠そうともしていない表情のナナミが居た。

そんでもって、いきなり敵らしき人物に声をかけられた。
ガタイが良く、いかにも強そうだ。ライゼ側の騎士か何かだろうか。
>「彼女。お前はムルム族の格好をした女性を用意し、自分の犯行と気付かれないよう矢面に立てて隠れ蓑にしたんだ。
>その白い外套を取れば、下にはムルムの民族衣装を着ているはず。言い逃れはもうできんぞ。」

>エルガイアはもうモノも言えないといった表情で、ナナミに顔を向けた。

「そうね、仮説としては面白いんじゃない?だけど残念、それはハズレね」
ほとんど簀巻き状態になっているので、派手な動作でマントを脱ぎ捨てるといった、比較的外面の良い動作はできなかった。
時間をかけ、もぞもぞと全身をくねらせながら、絡まった布をほどいている。
布の中身は、もっと身だしなみをしっかりしていればヤマトナデシコと呼べなくもない、そんな和風な少女だった。
さて布は捨て去ったが、どっちにしても涼しそうな格好には見えない。
「で、この状況はどうするんだっけ……」
ボケを装いながらも、右手を後ろに回して、相手に見えないように虚空に呪文を描いている。
向こうが少しでも妙な動きをすれば、悪臭雲(卒倒するほどの悪臭を放つ煙幕を発生させる)を出して敵をKOする気である。
……ここでエルガイアを巻き込む可能性は無視している。
326ルゥ ◆c8mKoM5yZ6 :2007/09/18(火) 20:15:02 O
>>323-324
>「ルゥ、だったな。今お前が着ている鎧の元の持ち主……
> それがライゼの騎士だ。そしてお前も、同じように見られている……。」
「それじゃルゥは人違いでボコられてるんスか!?悲しすぎて目から心の汗が止まらないッス!!」
「つーかテメェらこの街で何やらかしたんだよ!?痛っ!このクソ餓鬼ァ!!」
子供達の猛攻は一向に収まる様子は無く、3人は好き放題されっぱなしだ。
>「困りましたね……
> 町の子供達に嫌われる程、ライゼのイメージが悪くなっているとは」
どんなに頑張ったところで所詮は子供。その攻撃は痛くも痒くもなかった。
が、無抵抗で叩かれ続けるのも、あまり気分の良いものではない。
短気なルゥにとって、相手が子供であっても無抵抗で堪え続けるのは難しかった。

「だあああぁーッ!!!ちくしょう!!!!ルゥは何も悪くないッスよーッ!!!!!!!」
子供相手にマジギレしたルゥが拳を振り上げたその時、アゼルが提案した。
>「アイザック、隊長達に何かが起ったようです。
> それにリスさんとルゥさんでよかったんですっけ?
> こんな所では話もできません。 三人とも、場所を移動しましょう」
幸いにもルゥがキレて殴ろうとしたため、子供達は蜘蛛の子を散らす様に逃げている。
>「こちらでも確認した……急いだ方がいい。
> 話は途中でも出来るからな……。」
今ならばこの包囲網から脱出するのは容易いだろう。
3人はそそくさと退散した。まだしつこく追って来る子供もいたが、ルゥに睨まれ諦める。

暫く歩いていると、アイザックが静かに尋ねてきた。
>「……何故人を襲った。」
「んあ?…まさかルゥに言ってるんスか?」
目をぱちくりさせてルゥがアイザックを見上げる。どうやら質問の意味が分からないようだ。
「ルゥは誰も襲ったりなんかしてないッス!!ねぇムタ!そうッスよね!?」
ルゥはぷんぷん怒りながら、頭上のムタに同意を求めるが、頭上にはムタの姿は無かった。
「……ありゃ?ムタはドコに行ったんスか?」


ルゥがムタのいない事に気付いた頃…
「わあぁ!超カワイイーッ!!」
「ずる〜い!あたしにも抱っこさせてよ。」
「砂漠リスだぁ、珍しいね見せて見せて〜。」
「俺にも触らせろよぉ!」
ムタは子供達に捕まって、未だにもみくちゃにされっぱなしだった。
ルゥがキレた時、頭上から落ちたのだ。しかしルゥはそれに気付かぬまま行ってしまったのである!!
327アゼル ◆F/ATTd3VB. :2007/09/18(火) 20:52:23 O
>324>326
ルゥが怒鳴り声を上げて子供達を追い払い、三人は子供達が逃げた隙を突いて、急ぎ足で路地から出た。

>「……何故人を襲った。」
>「んあ?…まさかルゥに言ってるんスか?」
花火の打ち上がった方向に向かって歩いている途中、アイザックがルゥにこの度の犯行の動機を聞いた。

>「ルゥは誰も襲ったりなんかしてないッス!!ねぇムタ!そうッスよね!?」
>「……ありゃ?ムタはドコに行ったんスか?」
ルゥはアイザックの質問に対して、自分は何もやっていないと答え、そのことに対してリスに同意を求めた。
だが、そのリスは何も答えない。
というより、姿がどこにも見当たらない。
はぐれてしまったのかも知れないと思い、アゼルは探しに行こうと考えたが、隊長の方を優先と考え、このまま歩き続けた。

「ですが、ルゥは現実にお尋ね者になっていますし、あなたに襲われたと証言する方が何人もいます。
 それに、あなたの着ている鎧は第十七隊の鎧です。
 そんな鎧を着て、さっきまで自分の正体を隠そうとしたのでは、信憑性がありませんよ」
そうこうと話している内に、三人は町の入り口付近まで来ていた。

328グラスマン ◆4hcHBs40RQ :2007/09/18(火) 21:10:19 0
>>325
>「そうね、仮説としては面白いんじゃない?だけど残念、それはハズレね」
「え?」
今度はグラスマンがきょとんとした。
そして、もぞもぞと絡まった布をほどいていくナナミ。
「え?あ…あれ?」
徐々に引きつった笑顔に変わっていくグラスマン。
ほどけていく布の隙間から見える衣服は、どう考えてもムルム族のそれではない。
そして、完全に布を脱ぎ終わって着ていたものは、グラスマンのよく知る東洋のミコ装束だった。
和服美少女だ。

「…え〜と、ひょっとして、あれかな?僕の勘違いかな…かな?」
グラスマンは引き笑顔のまま一歩後ずさる。エルガイアは同じ歩幅で一歩進んだ。
「当たり前だ。大体今回は死人が出ておらんらしいではないか。私だったら襲った相手を生かして帰すと思うか?」
「しええ。そこまで知らなかったんだよ。」
また一歩後ずさり、また一歩進む。
「我々は今回ガストラの使者として『ムルムの砂嵐』の殺害にやって来た。
こいつは私の相棒だ。『月夜の巫女』…といえば貴様にも聞き馴染みがあろう?」
「『月夜』だって!?有名どころも有名どころじゃないか。
ちょ、お前と『月夜』の組み合わせって、ガストラはどこの国の軍隊を一個師団相手にする気だよ。」
期せずして地雷を踏んでしまったとは思っていたが、超大型地雷だった。
片方だけでも、こちらが何人掛かりだろうと決して向こうに回しては関わりたくないというのに。

>「で、この状況はどうするんだっけ……」
ナナミがとぼけたように言う。
「えーと、そりゃもちろん同じ『砂嵐』討伐を志す同志として共に協力し」
「却下だ。」
すかさず食い付いたグラスマンに、エルガイアがぴしゃりと言い捨てた。
「分かっておらんようだな。ガストラが『砂嵐』を討伐することに意義があるのだ。
貴様はその邪魔になるから死んでもらうぞ。クハハ、貴様の仲間も来ておるだろうから纏めて皆殺しだな。」
「ち。んなこと言われたらこっちもやるっきゃないっての…!」
グラスマンの纏う空気が、逃げ腰のものから戦意を持ったものに変わっていく。
しかしその頬には、暑さによるものとは違った汗が幾筋も伝っている。

エルガイアは楽しそうに嗤った。
「クハハハハ…久々の殺し解禁だ、楽しくなってきたぞ。おい『月夜』、あれはライゼの『鉄人』グラスマンだ。
見ての通りの馬鹿だが、あれで相当の化け物だ。二対一とはいえ油断はするなよ。確実に殺せ。」
エルガイアは嫌らしい笑みをナナミに向ける。
彼女が殺人を好む自分に向けていた視線には気付いていたらしい。
「クハハ、当然否応はないな?何せ任務だからな。邪魔者は除かねばならん。
なに、貴様が追い払うだけに留めようとも、私がきっちりとどめを刺してやるから安心するがよい。クハハハ!」

「たはは…」
グラスマンは口元に苦笑を浮かべ、ナナミを見やる。
「『月夜』のおねーさん…僕女の子は殴りたくないんだよ。そんな殺人狂はほっといてさ、僕と一緒に来ない?
前から君みたいな可憐なミコさんの友達が欲しかったんだよ。これも何かの赤い糸だと思ってさ、仲良くしようぜ?」
もちろん本気の勧誘ではないが、余裕の振りのひとつでも見せないとやっていられない。
言い終わると、すうっとひとつ息を吸い込んだ。
329 ◆4hcHBs40RQ :2007/09/18(火) 21:32:56 0
>>324>>326>>327
「きゃああああ!!」
そのとき、子供たちの多重の悲鳴が聞こえた。

さっきの路地の方角だ。
そこにはなんと、巨大な大蛇のようなモンスターが、天を突くように伸び上がっているのが見える!

「助けてー!!」
子供たちの数人がアイザック達の元に駆け寄ってきた。
彼らの服を掴んでめちゃくちゃに叫ぶ。
「みっちゃんが、みっちゃんがあの蛇に飲み込まれちゃったの!!」
「うわぁぁぁぁん!うわぁぁぁぁん!!」
「みっちゃんが溶かされちゃう!!」
「みっちゃん死んじゃうよー!みっちゃんを助けて!!」
「いやあああああ!!」

蛇に気付いたのか、町のあちこちからも悲鳴が上がっている。
その蛇はというと、体を這わせてこちらの方向に移動してきているようだ。
よく見ると、喉元のあたりがぷっくりと膨れている。
飲み込んだ子供はどうやらまだその辺りで止まっているらしいが、長くはもたないだろう。


【名前】サンベルトスネイク
【種別】モンスター
【戦闘力】C
【得意技】巨体を活かした体当たり、毒牙、丸呑み
【備考】本来は砂漠に潜む魔物だが、突如町中に現れた。通常のものの倍近い10メートルもの体長を誇る。
330名無しになりきれ:2007/09/18(火) 21:57:58 0
「みっちゃんが、みっちゃんがあの蛇に飲み込まれちゃったの!!」
「うわぁぁぁぁん!うわぁぁぁぁん!!」
「みっちゃんが溶かされちゃう!!」
「みっちゃん死んじゃうよー!みっちゃんを助けて!!」
「いやあああああ!!」

うぜぇ・・・
331アイザック ◆6GJ7GJlyDU :2007/09/18(火) 23:19:19 0
>326-329
>「それじゃルゥは人違いでボコられてるんスか!?悲しすぎて目から心の汗が止まらないッス!!」
>「つーかテメェらこの街で何やらかしたんだよ!?痛っ!このクソ餓鬼ァ!!」
こちらの内情を知らないとは言え、その一端に自分達が関わっているかも
知れないという可能性をちっとも考えられないようだ。無理もないが。
「……お前がライゼの騎士を倒してくれたおかげでな……
 この町との関係が悪化した。半分はお前達のせいなんだよ。」
互いに互いの常識に疎い結果がこれだ。
異文化同士の不用意な接触は大概争いへと歪んでいくそのいい例、と言える。

>「んあ?…まさかルゥに言ってるんスか?」
「……そうだ。」
>「ルゥは誰も襲ったりなんかしてないッス!!
>「ですが、ルゥは現実にお尋ね者になっていますし、あなたに襲われたと証言する方が何人もいます。
「……そう言うことだ。お前達は何をしに、ここまで出てきたのだ?」
ルゥの常識はムルム族の常識、しかしその常識が外の世界でも
通じるわけじゃない。外の世界での経験が足りないのだろう。
だからと言って、他人に迷惑をかけた事も事実。それはきっちりと認識させなければならない。
ついでと言うわけじゃないが、もう一度、今度はきちんと動機を聞き出そうとして……
路地の方から甲高い悲鳴と妙な地響きが聞こえてきた。

>そこにはなんと、巨大な大蛇のようなモンスターが、天を突くように伸び上がっているのが見える!
>よく見ると、喉元のあたりがぷっくりと膨れている。
>飲み込んだ子供はどうやらまだその辺りで止まっているらしいが、長くはもたないだろう。
振り返ると、街中にはいない筈の魔物が現れこちらに向かってきている。
このタイミングで街中に魔物が現れる……ガストラの使者の差し金なのだろうか?
それにしても、先程まで怒りの捌け口にしていた相手に助けを求めるとはなんと虫のいい話か……
子供とは、やはり自分勝手だ。が、聞き入れないわけにはいかない。

もしここで見捨てたら「砂嵐問題」を解決してもライゼとの関係修復は
不可能になる。逆に言えば、助ければかなり有利な材料となる。

とは言え、二方向に手を回すには人員が不足している。こういう場合は
グラスマンの方に人員を割いておけばとりあえずは何とかなる筈だ。
服を掴んでいた子供の手を払いのけて剣を引き抜き大蛇へと歩を進め、指示を出す。
「……アゼル、ルゥを連れて隊長とコルムの所に行け。
 向こうは俺が片付ける……。」
332名無しになりきれ:2007/09/19(水) 01:31:13 0
この展開とそっくりなアニメがあったんだけど偶然か?
333アゼル ◆F/ATTd3VB. :2007/09/19(水) 02:39:39 O
>329>331
後ろの方から子供の悲鳴が聞こえ、アゼルはそのことが気になり、後ろに振り返った。
振り返った先にいたのは巨大な大蛇の魔物。
何かを飲み込んだのか、喉の辺りが少しだけ膨れている。

>「助けてー!!」
>「みっちゃんが、みっちゃんがあの蛇に飲み込まれちゃったの!!」
>「うわぁぁぁぁん!うわぁぁぁぁん!!」
>「みっちゃんが溶かされちゃう!!」
>「みっちゃん死んじゃうよー!みっちゃんを助けて!!」
>「いやあああああ!!」

子供達がさっきまで敵視していた自分達に助けを求めている。
飲み込まれたのは子供達の友達、愛称はみっちゃん。
アゼルは可愛い子供達の為に動こうとしたが、それよりも前に、アイザックが剣を手に取り前に出る。

>「……アゼル、ルゥを連れて隊長とコルムの所に行け。
> 向こうは俺が片付ける……。」

「了解しました。
 じゃ、子供と町の安全を任せましたよ」
次にアゼルは子供達の方を見て、大声で言った。

「君達のお友達は、あの無口なライゼの騎士のお兄さんが必ず助けてくれまーすっ!
 だから、良い子の皆は家の人を心配させないように、家に帰ることですっ!
 ほらっ、ゴーゴーッ!」
アゼルはそう言って、子供達を安全な場所に行くように追っ払うと、ルゥの手を握って町の外に向かって走り出した。

「俺達も急ぎますよ!」

334ナナミ ◆LV/6jLYLCk :2007/09/19(水) 04:01:45 0
>328
>「『月夜』のおねーさん…僕女の子は殴りたくないんだよ。そんな殺人狂はほっといてさ、僕と一緒に来ない?
>前から君みたいな可憐なミコさんの友達が欲しかったんだよ。これも何かの赤い糸だと思ってさ、仲良くしようぜ?」
「おねーさん……」
外見年齢はそうでもないのだが、もしここで「オバサン」呼ばわりした場合、彼をその場で始末しようとしていただろう。ナナミはそういう奴である。
しかし、彼の言葉には心を動かされつつある。
彼の言うとおり、殺人狂が隣に居るのは、どうにも心が落ち着かないのだ。
それに、女の子を殴りたくないというのも、良い心がけだと感心した。
「いえ、気持ちは嬉しいんだけど、これも仕事だし。悪く思わないで。
 という訳で……」
しかし、旅を続けるためにも、此処は冷徹にならなければならない。
彼女は再び呪文を書く手を再会した。

>「クハハ、当然否応はないな?何せ任務だからな。邪魔者は除かねばならん。
>なに、貴様が追い払うだけに留めようとも、私がきっちりとどめを刺してやるから安心するがよい。クハハハ!」
が、すぐに呪文を書く手を止めた。エルガイアの言葉にまたしても反応したのだ。
無駄な犠牲を避けるために悪臭雲で気絶させようと思ったが、気絶したところで止めを刺されるのでは意味が無い。
エルガイアともども悪臭雲に巻き込めるかどうかは難しいところでもある。
「んー、でも、どうしようかなー?」
口調はからかうような調子だが、実のところ、ナナミは本気で迷っている。
ここでエルガイアを始末しておかないと、無駄に死人が出ることは間違いない。血の雨が降るだろう。
しかし、この任務を達成できないと、様々な意味で旅を続けることは難しい。
「よしっ、決めた!『砂荒らし』!」
普段あまり使わない頭を使いぬいた彼女は、ある事を閃き、決断し、即座に実行に移した。
335ナナミ ◆LV/6jLYLCk :2007/09/19(水) 04:09:51 0
>328続き
ナナミは相棒の二つ名を呼ぶと、懐からポーションの入った瓶を取り出した。
瓶の中のポーションは血のように真っ赤な液体だった。
実際、透明度は無く、本物の血のようにも見えた。
「月は出ていないけれど、お日様は熱く眩しく輝いてる。
 気に入らないけど、日の照る灼熱の砂漠は『砂荒らし』の独壇場。
 ……月も出ていないことだし、ここは、貴方の腕の見せ所じゃないかしら?
 という訳で、はい」
『砂荒らし』と呼ばれるほどだ。砂漠での戦いも手馴れたものだろうと、ナナミは思っている。
少なくとも『月夜の巫女』に比べれば、砂漠そのものには慣れていることは間違いない。
そして、血のように赤い液体の入った小瓶をエルガイアにパスした。
瓶には、中の液体を保存する為の呪文が刻まれている。
「そいつは短時間だけど、あんたのパワーを何倍にも増強する薬よ。それ飲んで、さっさと殺っちゃって。
 わたしは貴方と違って、あんまり人殺しは好きじゃないの。
 ほら、飲んでる間くらいは私がこいつを抑えとくから」
ナナミは嘘は言っていない。
人殺しも好きではないし、あの薬は、確かに飲めば使えばパワーアップする。
本国を出発する前に一悶着あったあの夜に、ナナミはこの薬を注射されたゾンビをエルガイアにけしかけた。
ただのゾンビが、この薬を注射された瞬間、素早い動きと恐ろしい怪力を備えた強敵になったのだ。
そして、飲めと言っている以上、飲んでも効果があるものには違いない。

ナナミはグラスマンの前に立ちはだかって、先ほど中断していた悪臭雲の呪文を再び手で描き始めた。
ここは砂漠だ。日差しが強く、灼熱地獄と呼んでも良いほどの熱気に包まれている。
まともな人間なら、日差しに体力と水分を削がれ、あまり長時間戦えないだろう。
それに対して、ナナミは熱さも寒さも感じないアンデッドだ。この状況で不利になる事は無い。
336グラスマン ◆4hcHBs40RQ :2007/09/19(水) 20:47:38 0
>>334-335
ナナミは何か思いついた様子で、エルガイアに赤い液体の小瓶を手渡した。
飲むと大幅に強くなるらしい。
エルガイアは渡された小瓶を見つめるエルガイア。
「ふむ…。」
「おい!」
そこに、怒号のようなグラスマンの声が飛んだ。
「この『鉄人』グラスマンを舐めてくれたもんだね、どうも。
二対一ならとにかく、お前らがどちらか片方でも一対一でこの僕を抑えられるとでも思ってるのか?
なあ、弱っちそうなおねーさん。それと、僕に一度負けてる『砂荒らし』さんよ。」

エルガイアは小瓶からグラスマンに視線を移す。
「…あの時は四対一だったろうが。貴様に負けたわけではない。」
「はっ、じゃあ実力でそれを証明してみたらどうだい?そんな薬に頼らずに。」
エルガイアはくつくつと嗤い出す。憮然とするグラスマン。
「…何が可笑しいんだよ?」
「らしくない挑発などするものではないな。この薬を飲まれたくないだけというのがバレバレだぞ?」
グラスマンは黙り込む。
図星だった。ただでさえ強いのに、これ以上パワーアップなどされては完全にお手上げだ。

「どうしようかなぁ~…クックック。」
小瓶を摘んでぷらぷらと玩びつつ、エルガイアは愉快そうに嗤う。
「…飲ませんぞ。」
グラスマンは走り出す構えを取った。エルガイアの目が三日月のように愉悦に細まる。
すぐに飲まず楽しもうという腹らしい。
「クハハハ…!ならばその女のガードを掻い潜って私を止めてみるが良い!」
「やってやるさ!!」

地面を蹴り、駆け出すグラスマン。
それを合図にしたかのように、彼らの立つ大地に無数の丸い影が現れた。
空から何かが高速で降ってきているようだ。
「何だ!?」
思わず足を止めるグラスマン。
「クハハハ!ただし私ももちろん手は出すがなぁ!さぁぁ戦え『月夜』!」
降り注ぐのは、岩石のように固められた幾つもの砂の弾丸。
その攻撃範囲は広く、ナナミの立ち位置も完全に収まっている。そこに味方への配慮は全く見られない。
337 ◆4hcHBs40RQ :2007/09/19(水) 20:48:57 0
>>331>>333
高速で道を這い進むモンスター、サンベルトスネイク。
どうやらルゥ達の方に向かっているようだ。

>「君達のお友達は、あの無口なライゼの騎士のお兄さんが必ず助けてくれまーすっ!
> だから、良い子の皆は家の人を心配させないように、家に帰ることですっ!
> ほらっ、ゴーゴーッ!」
「わかったぁ!」
「頑張ってねおにいちゃん!」
「みっちゃんを助けて!」
「お前はぼくが見込んだ男だ!」
「あんなの早くやっつけて!やっつけて!」

子供たちはめいめいに言いながら、家の中や路地裏などに駆けて行く。
家々の窓からは、様子を覗き見る大人の顔もちらほら窺える。

「こ、この蛇野郎!止まれ!俺様が相手だ!!」
町に滞在していたらしい、戦士風の男がサンベルトスネイクの進路に立ち塞がった。
しかし蛇は意に介した様子もなく、速度を落とさず突っ込んでくる。
「と、止まれと言ったぞ!止まれ止まれ止まやめうわぁぁぁぁぁ!!」
蛇は頭から戦士に体当たりし、そのまま首を勢いよく持ち上げて彼を放り投げた。
大きく宙を舞い、近所の家の屋根を突き破って家の中に突っ込む戦士。
人々の悲鳴が上がる。

そして、サンベルトスネイクは自分の進路に立ち塞がる別の男を見つけた。
能面のように無表情の男、アイザックだ。
しかし蛇はやはり速度も進路も変えず、同じように体当たりして投げ飛ばさんとアイザックに向かう!
338Nyarl ◆.na7e/oUik :2007/09/19(水) 20:59:24 0
クスクスクス……。
アクマの侵略は防げても、旧支配者にはかないませんよ?
クスクスクス……。
339ルゥ ◆c8mKoM5yZ6 :2007/09/19(水) 22:58:44 O
>>327>>329>>331>>333
>「ですが、ルゥは現実にお尋ね者になっていますし、あなたに襲われたと証言する方が何人もいます。
> それに、あなたの着ている鎧は第十七隊の鎧です。
> そんな鎧を着て、さっきまで自分の正体を隠そうとしたのでは、信憑性がありませんよ」
>「……そう言うことだ。お前達は何をしに、ここまで出てきたのだ?」
至極もっともな意見に、ルゥは黙り込んだ。どうやら自分なりに事情を把握しようとしたらしい。
暫くの間、重い沈黙が続いた。

「変ッスね…ルゥは強そうなヤツに戦いを挑んでただけッス。武器を持ってない人には
何もしてないし、倒したヤツにもちゃんと手当てしてたッスよ。…あ、もしかしたら
食べ物を勝手に食べたのがダメだったんスか?」
いろいろと考えてみたが、やはり無駄な努力に終わったようだ。
そもそも価値観が世間からあまりにもずれているムルム族だ。当然の結果といえる。
「それから何をしにきたかは、ルゥが大人になるためッス!100回勝ったら…」
>「きゃああああ!!」
>そのとき、子供たちの多重の悲鳴が聞こえた。

>さっきの路地の方角だ。
>そこにはなんと、巨大な大蛇のようなモンスターが、天を突くように伸び上がっているのが見える!
>「……アゼル、ルゥを連れて隊長とコルムの所に行け。
> 向こうは俺が片付ける……。」
そう言うとアイザックは蛇に向かった。アゼルは即座に頷き行動に移る。
>「了解しました。
> じゃ、子供と町の安全を任せましたよ」>「君達のお友達は、あの無口なライゼの騎士のお兄さんが必ず助けてくれまーすっ!
> だから、良い子の皆は家の人を心配させないように、家に帰ることですっ!
> ほらっ、ゴーゴーッ!」
>アゼルはそう言って、子供達を安全な場所に行くように追っ払うと、ルゥの手を握って町の外に向かって走り出した。

>「俺達も急ぎますよ!」

「あぅ?なんかよくわかんないッスけど…ついていくッス!!」
こうしてアゼルと一緒に走り出した時には、すっかりムタの事を忘れていたのであった。
340アイザック ◆6GJ7GJlyDU :2007/09/20(木) 23:38:54 0
>333、>337、>339
>「了解しました。
> じゃ、子供と町の安全を任せましたよ」
>「あぅ?なんかよくわかんないッスけど…ついていくッス!!」
「……任せたぞ。」
聞きようによっては今生の別れとも言えるような
やり取りをして、アゼルとルゥはその場を離脱した。
視線だけ送って、走り去っていくのを確認し前へと視界を戻す。

>そして、サンベルトスネイクは自分の進路に立ち塞がる別の男を見つけた。
>しかし蛇はやはり速度も進路も変えず、同じように体当たりして投げ飛ばさんとアイザックに向かう!
その少しの間に自分よりも先に蛇に立ちはだかった者がいた。
大した見せ場も無く、実に呆気なく吹っ飛ばされて宙を舞ったが。
「……蛇に言葉が通じるか。しかし……」
まだ完全に腹に収まってないとは言え、食事をした生物の動きとは思えない。
空腹が満たされてないからなのか、操られているからなのか……
ずるずると、その巨体をくねらせながら反則的な速度で迫ってくる大蛇。
「……今だ……!」
ぎりぎりまで引き付けてその頭突きを横っ飛びに交わし、頭に渾身の一撃を振り下ろす!
341ナナミ ◆LV/6jLYLCk :2007/09/21(金) 00:11:24 0
>336
「月が出てなくても……貴方を抑える事くらいは容易いわ」
月夜の巫女はディフェンスに定評がある。特に、満月の夜は不死身との評判だ。
それは月の神の加護と、アンデッドの負の生命力の成せる業である。
日が出ている間でも、守りは相当堅くてしぶとい。

さて、とりあえず自分が攻撃に巻き込まれたので、こっちもエルガイアごと巻き込んでやろうと考えた。
もっとも、直接的に殺るほどの攻撃は行わない。
「さて……何処まで耐えられるかしら?」
彼女は大麻(お祓い棒)を振って祈祷するような動作をとった。
それに応じて、虚空から無数のゴーストが召喚され、砂の中に次々と潜っていった。
すると、砂の中から大量の骸骨が現われた。

スケルトンは武装していないが、手は青白く光っている。
素人目に見ても、こいつらは手で触れてエナジードレインを仕掛けてくるように見えた。
また、沢山の悪霊が砂そのものに宿って手の形を形成し、エルガイアやグラスマンの足を掴んで動きを阻害しよう蠢いている。
こちらの砂の手も、案の定青白い光を放っており、エナジードレインを使うことは間違いない。
ちなみに、これらのアンデッドは召喚されただけで全くコントロールされていないので、最も近くに居る者から無差別に襲い掛かる。
無論、生命力もへったくれもないナナミにはエナジードレインは効かないので、これらのアンデッドは彼女にとっては全く脅威にならない。
それどころか、攻撃が効かないことを理解せずにナナミに寄ってくるので、エルガイアの砂つぶてに対する防壁に利用される。

とはいえ、この骸骨や悪霊どもの戦闘能力はそれほど高くなく、他の者にとっても数が多いだけだ。
しかし、このアンデッド召喚は数の重圧で相手を少しでも焦らせる事が目的で、それさえ達成できれば良い。
今はあまり積極的に殺す気は無いので、これくらいで良いだろうと彼女は考えている。
この骸骨どもが殲滅されるまでに多少の時間がかかり、それゆえに少しくらいは相手を消耗させられるよう、数だけは呼んだつもりだ。
342アゼル ◆F/ATTd3VB. :2007/09/21(金) 00:41:26 O
>336>341
アゼル達が町から出て少し経ち、台地から砂漠に移り変わろうとする場所で何かが見えた。

「んー?あれは石ですかねぇ?」
花火が上がった方角の先に石のような物が、雨のように降っているのが見えた。
石が降っているという通常では考えられない事態。
その事に加え、石の降っている先は隊長達が上げたと思われる花火と同じ方向。
隊長達が何者かに襲われているのかも知れない。
アゼルは足に突風の力を込めて、急いで現場に向かった。

アゼルがその現場に着いた時、その場は少し混沌とした状態に陥っていた。
降ってくる石の雨に、スケルトン達の大群。
更には砂に宿った負の力を持った霊達が無数にいる。

「隊長っ!
 何か酷い状況になってますが、手助けって必要ですかぁ?
 それとコルムはどうしたんですかぁ?」
アゼルは石の雨の真っ只中にいる隊長に聞いた。

343 ◆4hcHBs40RQ :2007/09/21(金) 01:09:48 0
>>340
サンベルトスネイクの高速での体当たりは、空振りに終わった。
当たるはずの攻撃を空かしたことにより、その動きに一瞬の隙が出来る。
そこへアイザックの渾身の一撃!!

「ギャガァァァッ!!」
青い血が飛び散り、のたうつ蛇。周囲の家々からおおっと歓声が上がる。
しかし、蛇は切られる瞬間僅かに頭部を逸らしていた。
左頭部を深く切り込まれたが、脳の小ささと強靭な生命力で致命傷は免れたようだ。
「おお!あの戦士強いぞ!」
「でもまだみたいだ!」

蛇は首をずるりと持ち上げ、残った片目を怒りに震わせてアイザックを睨みつける。
そのまま口を大きく開き…
「シャガァ!!」
猛毒の牙を持って噛み付きに掛かる!
344ルゥ ◆c8mKoM5yZ6 :2007/09/21(金) 13:14:19 O
>>342
>「んー?あれは石ですかねぇ?」
アゼルの呟きにルゥも前方の空を見る。確かに石らしき物が、雨のように降注いでいた。
「んあ!?何スか!?」
突然アゼルが加速した。足下を突風が纏りつき、凄まじい速度で走り出したのだ。
あっという間にルゥとアゼルの距離が広がり、置いてきぼりになってしまう。
「んん〜、誰かいる…ッスね。あれが隊長とかいう人ッスか?」
目を凝らすと、アゼルが向かった先に3つの人影。
どうやら戦闘中のようだ。だからアゼルは急いだのだろう。
「戦うならルゥも手伝うッスよ、肩の怪我を治してくれた恩返しッス!!」

両の拳を打ち合わせ、気合い充分。だが丸腰では足手まといになるかもしれない。
幸いにもルゥが荷物を隠した場所はすぐ近くだった。急いで武器だけでも準備せねば。
今着ている鎧は半ば諦めた。全部脱いで着替える時間的猶予は無い。
岩陰にひょっこり生えた鉄の棒、それはハンマーの柄だ。
荷物と一緒に埋める際に、目印として柄だけは地上に露出させていたのである。
「肩の調子もバッチリ全快ッス!!」
柄を掴み、いとも簡単にハンマーを引き抜いて、土と砂を払うため大きく振り回した。

規格外の特大ハンマー『一撃丸(ルゥが命名した)』が、陽光を受けて鈍く輝いた。
重量240kg、もうそれはハンマーというよりも単なる鉄塊と表現した方が早い。
不細工な直方体の鉄塊に、鉄の棒が1本付いただけの代物。
見た目にもおよそ武器には見えない。常識的に考えて、『これ』を振り回せる者などいない。
ここにいるムルム族の戦士を除いては!!

「よーし、待ってるッスよ!今行くッス!!」
柄を肩に架け、ルゥは走り出した。
魂が戦いを渇望し、そしてその渇望を満す相手がいる。
何も問題は無かった……筈だった。
345グラスマン ◆4hcHBs40RQ :2007/09/23(日) 15:36:54 0
>>341>>342>>344
空中から次々と飛来する砂の弾丸。
再び駆け出したグラスマンにどんどん命中していく。
しかし、当たった砂が砕けて飛び散るばかりでグラスマンにダメージの様子はない。
「…いくら固めようと、砂が僕に効くか。」
鉄人、グラスマン。その二つ名は伊達ではない。

竜鱗の呼吸。
丹田法の一種であり、呼吸を止めることによって体の強度と重量を飛躍的に上げる技術である。
吸い込んだ息の量によって硬度が変化し、大きく吸い込めばそれは金属強度を凌駕するほどになる。
しかし、吸い込みすぎると重量の増加によって軽快な動きは取り辛くなるのだが。
肉弾戦では無類の強さを誇る強力な技術なのだが、呼吸を発動媒体としているために数知れない欠点を持つ。
例えば、暑さや低酸素など呼吸を乱される環境用件。
例えば、体力低下による呼吸の乱れ。
例えば、息付く暇のない雑魚の群れ。

しかし、駆けるグラスマンが突然すっ転んだ。
「ぐぇ」
危うく竜鱗の呼吸を解除しそうになるが、留まる。今解除しては砂の弾丸にボコボコにされてしまう。
グラスマンは自分の足を見た。なんと地中から生えた砂の手が、その足首をしっかと握っているではないか!
「くっ!」
その砂の手を上から握り潰して破壊し、グラスマンは立ち上がった。
いつの間にか、辺りには砂の手やアンデッドモンスターが無数にうごめいている。
「ちぃ…『月夜』の使徒か。それにしても。」
砂の弾丸はナナミや亡者達をも狙い、亡者達はエルガイアをも襲っている。
この二人の間にコンビネーションは皆無のようだ。そこが唯一の付け入る隙となりうるか?
しかし、転んだ時に息を吐きすぎてしまった。鉄化状態もそろそろ限界だ。
一刻も早く弾丸の有効範囲から出なければ…と思っていた時、その声が聞こえた。

>「隊長っ!
> 何か酷い状況になってますが、手助けって必要ですかぁ?
> それとコルムはどうしたんですかぁ?」
「アゼルか!?」
思わず鉄化状態を解除してしまったが、砲撃は来なかった。
346グラスマン ◆4hcHBs40RQ :2007/09/23(日) 15:40:30 0
「鬱陶しい亡者どもめ…。」
ちょうどその時、エルガイアは砂弾砲撃を中止したのだった。
原因は、わらわらとやって来るアンデッド達。
魔力と集中力を浪費する広範囲攻撃は、術者が狙われている状況では使えないのだ。
「ふん!」
エルガイアは砂に手を置き、魔力を込めた。
彼の足場の砂が円形に切り取られ、数メートルの高さの柱となって持ち上がる。
岩石硬度の砂の柱。パワー型でなくエネルギー吸収型のアンデッドの腕力ではおそらく破壊はできまい。
「クク、面白い術を使うな、あの女。まるでリッチだ。さて、しばらくは高みの見物を…む?」
魔法とアンデッドに集中していて気付かなかったが、グラスマンの仲間らしき男が一人やってきたようだ。
そしてしばらく後ろからもう一人…


「えっとな!掻い摘んで説明するぞ!」
向かい来るアンデッドモンスターの群れに悪戦苦闘しつつ、グラスマンは叫んだ。
息が上がりかけているために鉄化が乱用できず、おまけに敵の数も多すぎる。
これではなかなか突破口が開けない。
「コルムは別働で商車を護衛誘導中!で、こいつらはガストラの使者だ!
『ワルワの砂荒らし』と『月夜の巫女』!説明する余裕がないんであとは察してくれ!」
しかし、先ほど砲撃の中で長時間息を止めて活動していたとはいえ、体力の消耗が早すぎる。
この暑さも勿論要因ではあるだろうが、それを差し引いても少しおかしい。
そういえば、さっきからアンデッドに触られるたびに少し力が抜けているような…。

「こんな連中相手にしてちゃ命がいくつあっても足りん、アイザックが到着次第逃げるぞ!
無理しない程度に援護してくれ!ちょっと僕もヤバくなってきた!」
何故アゼルがアイザックと別行動しているのかは分からないが、聞く余裕はない。
何にしろアイザックも花火を見てここには来るだろうから、それまでは敵を食い止めておくしかない。
自分たちが逃げた後でアイザックが単独で敵とハチ合わせてしまっては洒落にならないからだ。
コルムには商車をしっかり目的の町まで護衛誘導するように伝えてあるため、しばらくはこの辺りに戻って来ない。
本物の『砂嵐』に襲われる可能性はあるが、その時はその時で頑張ってもらうしかない。

任務の継続については、アイザックと合流して無事に逃げおおせた後でゆっくり考えるしかない。
しかし、最悪の場合でも『ムルムの砂嵐』はこの二人が退治してくれるだろう。少なくとも町の安全は守られる。
ライゼとボロロッカの関係悪化は痛いが、自分たちはあくまで情報収集目的の小隊なので、仕方がないとは言える。
何せこんな敵が出てくると分かっていれば、本国も強力な騎士大隊を2つは動かしただろうから。

しかし、その時だった。
「クハーッハッハッハ、ようこそ『ムルムの砂嵐』!!」
高所から、エルガイアの高嗤いが辺りに響いた。
347グラスマン ◆4hcHBs40RQ :2007/09/23(日) 15:42:43 0
グラスマンはびくりとして辺りを見る。
その時、アゼルの後ろから誰かがやって来た。やたら巨大な獲物を持つ、ライゼ騎士団の鎧を着込んだ女の子だ。
エルガイアはというと、愉快極まりない様子で嗤い続けていた。
「下手な変装をしても無駄だぞぉ『砂嵐』!砂漠に長年住んできたもの特有の濃ゆい砂漠臭が鎧ごしでも臭ってきおるわ!
私はエルガイア、通称『ワルワの砂荒らし』!貴様を殺す者の名だ、よぅく記憶しておけい!
クハーッハッハッハ!!さぁ『月夜』、敵が増えたぞ、じゃんじゃん死者どもを出せい!」

「…え、え〜っと、アゼル君。いまいち状況が掴めないんだけど、そちらさんはどなた?敵?捕虜?お友達?」
困惑気味のグラスマン。しかし気を逸らした隙に、一斉に残りのアンデッドに取り囲まれてしまった。
「うおっとと、やばっ!」
348アイザック ◆6GJ7GJlyDU :2007/09/23(日) 16:30:11 0
>343
一撃で終わらせるつもりだった。
別働隊と合流しなければならないし、飲み込まれた子供の事もある。
何より、大型の敵相手に長期戦は危険だからだ。

しかし、わずかに逸れた。いや逸らされた。
仕留め切れなかった大蛇は本能的な怒りに身を任せて
報復とばかりに必殺の一撃を仕掛けてきた。毒牙である。
「……!」
もっとも、毒など無くてもこのサイズの蛇に噛まれれば十分致命傷となる。
咄嗟に背負った盾を差し込んで噛み付きと突進を止めたが、
サイズに由来する顎の力は想像以上でそう長くは保たないだろう。
実際、鋼鉄製の盾が既に曲がり始めているのだ。
「……っくっ!」
盾を支えている手はそのまま蛇との力比べをしている。
下手に支えをなくせばそのまま毒牙が襲い掛かってくるので左手は使えない。
そのまま片手で剣を逆手に持ち替えて、蛇の眉間に向かって全力で突き出した!
349 ◆4hcHBs40RQ :2007/09/23(日) 23:01:24 0
>>348
サンベルトスネイクの噛み付き攻撃を、アイザックは盾で受け止める。
「ば、馬鹿野郎!」
さっき吹き飛ばされて屋根に突っ込んだ戦士が、その家の窓から身を乗り出して叫ぶ。
「その蛇のパワーを見なかったのか!真正面から受けたらあっという間に吹き飛ばさ…れ?」
しかし、アイザックは蛇のパワーを真っ向から受け止めていた。
さすがに盾はひしゃげ始めているが、それでもまだ力負けしていない。
ありえない光景に、戦士は目を丸くする。
「尋常な強さじゃねえ…!な、なんだあいつは…!?」
それを聞いたちびっこの一人が、路地裏から得意げに叫んだ。

「あのね、あのおにーさんはね、ライゼ王国の戦士さんなんだよ!」


サンベルトスネイクは戸惑っていた。
自分のパワーが人間にまともに受け止められたことなど今までになかったのだ。
「ジュ、ジュララララ…!!」
ムキになって押す力をさらに強める。
そして、ムキになり過ぎてアイザックの次の動きに気付く余裕を無くしていた。
アイザックは逆手に剣を持ち替えており、それを蛇の眉間に向け、そして…

「グギャアアアアアアアアアアアァァァァァァァァァァ!!!!」
蛇の眉間に、アイザックの剣が深々と突き刺さった!
蛇は首を大きく振り、苦しそうにじたばたと地面をのた打ち回り、動きはやがて小さな痙攣に変わっていき…
そして、ついに息絶えたのだった。

生命を失ったその体は砂となり、崩れていく。
崩れきったあと、砂山の中、ちょうど頭のあった辺りに指輪が埋まっていた。
それは淡く光を放ち、光の塊となって、町の外へ向かって飛んでいく。
その指輪の主、砂使いエルガイアの元へと。
350 ◆4hcHBs40RQ :2007/09/23(日) 23:02:33 0
「みっちゃん!!」
路地から家々から、子供たちがわっと沸いて出てきた。
蛇の砂山の中に、ぐったりとした様子の子供の姿が見えたのだ。
子供たちが協力して引っ張り出す。大人達も少し遅れてやって来て、その子供の様子を見始めた。
「…生きてるぞ!ミッチェルは無事だ!」
わっと辺り一体から歓声が上がった。

アイザックの元に人々が続々と集まってきて、労いや感謝の言葉をかける。
「ありがとうございました!ライゼの戦士様!」
「いやぁ強い!こんな強い戦士を見たのは久し振りですぞ!」
「さすがはぼくの見込んだ男だ!」
「まだ震えが…!戦士様がいなかったと思うとぞっとしますわ。」
「兄さん、かっこよかったぜ!」
どんどん増える人達。かなり分厚い人垣となってしまい、なかなか抜けられそうにない。

そして、人垣の隙間が少しできたと思うと、そこから一人の老人がアイザックの前にやってきた。
禿げ上がった頭を深々と下げる。
「私はこの町の町長です。この町を…そして、私の息子を助け出していただいて、本当にありがとうございました。
感謝の気持ちは言葉では尽くせません、ライゼの戦士様。あの…」
「おにーさん怪我ない?だいじょーぶ?」
「だいじょーぶおにーさん?」
町長の言葉を遮り、子供たちがどどっと割り込んでくる。
「これあげるよー!やくそう、どくけしそう、ちからのたね!」
「あとね、これも持ってっていいよ!爆弾石!ぼくの宝物だけど、お前はぼくが見込んだ男だからな!」

*アイザックは以下のアイテムを手に入れた!
薬草:飲むと傷をある程度治す草
毒消し草:飲むと毒をある程度中和する草
力の種:飲むと体力をある程度回復する種
爆弾石:衝撃を与えると小規模だが強力な爆発を起こす危ない石
351 ◆4hcHBs40RQ :2007/09/23(日) 23:03:40 0
「こ、こら、お前達、私はこの戦士様と話が…ぐえ」
言いかけた町長の口を子供たちが飛びついて塞ぎ、取り抑える。
「おにーさん、さっきのおともだちを追いかけないと行けないんでしょ?」
「急ぐんでしょ?でしょ?」
「ぼく達が道を開いてあげる!」
「お前はぼくが見込んだ男だからな!いくぞーボロロッカ少年戦士団!」
「「「「「おー!」」」」」

途端に子供たちが人垣のあちこちから飛び出し、暴れ始めた。
大人たちを抑え押しのけ、人垣を割り、アイザックの前に道を開いていく。
352ナナミ ◆LV/6jLYLCk :2007/09/24(月) 02:54:19 0
>346>347
「……人使いの荒い殺し屋さんだこと!」
ナナミはあからさまに不機嫌そうな態度で返した。

此処に来て、実はナナミは、グラスマンとその仲間に対して内通することを企んでいる。
もっと言えば、どさくさに紛れてエルガイアを始末する算段を立てている。
(アレさえ飲んでくれれば、あとは勝手に事が運ぶから、楽で良いんだけど……)
もしかしたら、エルガイアはあの液体の正体に気付いているのではと不安になった。
とはいえ、まだ種明かしには早い。
今は別の手段を考え、まあさっさと飲んでくれたらラッキー、という程度に考えることにした。

今度は人差し指で点を指し、指先から無数の光弾を打ち出した。
とは言いつつも、光弾は八方に飛び散った後、弧を描いてまた戻ってきて、そのまま弾けて消滅した。
この光弾は命中しても特に害は無いだが、迷える魂を導く力がある。
即ち、ここでナナミが召喚したゴーストとは別の、砂漠に元々漂っていたものを寄せ集めるのに使う術だ。
ちなみにこの術は、本来は迷える魂を正しく導き、成仏させるための術なのだが……
光は天に昇っていかず、ここで消滅してしまったため、ここまでしか導かれなかったのだ。
ほどなくして、おびただしい数の亡霊達が光に導かれて集まってきた。
「望みどおり呼んでやったわよ!文句ある!?」
ナナミは思い切り怒鳴った。
この発言で、チームワークの無さを完全に露見している。
353ナナミ ◆LV/6jLYLCk :2007/09/24(月) 03:20:27 0
>346>347
さて注意すると、新たに召喚されたゴーストのうち、かなりの数がエルガイアへ向かって攻撃を仕掛けている。
それもそのはず、二度目のナナミの召喚に応じた亡者は「そういう奴」が多いからだ。
これは「砂漠を彷徨う亡霊を手当たり次第こちらへ引き寄せた」ことに起因する。

『命を返せ!』
『私の身体を返せ!』

新たに呼び出されたゴースト達は、そのような叫びをあげている。
そう、この声の主は、砂漠にてエルガイアに殺された者達の怨霊である。
もちろん、これらはナナミに支配されている訳ではない。
ナナミはただ、近くに漂っていたそれらを光によって導き、此処へ誘導しただけだ。
あとは、放っておいても勝手にエルガイアに襲いかかる。
この亡霊たちは不屈の闘志(底無しの怨念とも言う)で、確実にエルガイアを追い詰めていくだろう。
単なる悪霊よりも、強い想念から成る怨霊の方が、より恐ろしいのだ。
そして、この亡霊たちの声は、エルガイアの良心に対する攻撃であり、挑戦である。

もちろん、カムフラージュのために、その他の砂漠で勝手に野垂れ死んだ人の亡霊も大量に寄せ集めるのは忘れない。
と言うか、あの術は明確な意思があれば抵抗できる程度で、特定の性質の亡霊だけを導くというような、高度な使い方はできない。
ただ「適当に数だけ呼んだ亡霊の中に、たまたまエルガイアを恨んでいる奴が沢山居た」だけである。
とは言っても、砂漠中の亡霊を寄せ集めれば、殺し屋であるエルガイアを恨む亡霊の1人くらいは居るだろう。
そう考えたからこそ、この術を使って呼んだのだ。
それが、思いのほかエルガイアを恨む者が多く、呼び出したナナミ自身も面食らっている。
354アゼル ◆F/ATTd3VB. :2007/09/24(月) 07:30:47 O
>344-347>352-353
>「えっとな!掻い摘んで説明するぞ!」
>「コルムは別働で商車を護衛誘導中!で、こいつらはガストラの使者だ!
>『ワルワの砂荒らし』と『月夜の巫女』!説明する余裕がないんであとは察してくれ!」
隊長の様子を見るからに、この熱さと骸骨の群れの中で、長々と竜鱗の呼吸法を使って戦っていたようで、隊長の呼吸は荒く乱れている。
やはり、隊長と言えども二つ名持ちの相手が二人では分が悪いようだ。
アゼルは隊長と相対している二人を見る。
砂の柱に乗っている男がワルワの砂荒らしで、東洋風の服を着た女が月夜の巫女。
アゼルはそう判断した。

>「こんな連中相手にしてちゃ命がいくつあっても足りん、アイザックが到着次第逃げるぞ!
>無理しない程度に援護してくれ!ちょっと僕もヤバくなってきた!」
今、アイザックは大蛇と戦っている。
アイザックの力量なら、あの大蛇と一人で戦っても勝てるとアゼルは信じている。
だが、あの大蛇は異常な程の大きさをしていた。
その体格に比例して、大蛇の耐久力も増していると考えられる。
もし、アイザックがあの大蛇を一撃で仕留めることが出来ないのならば、長丁場になるのは必須。
アイザックが大蛇と戦っている間にこちらが全滅する可能性もある。

>「クハーッハッハッハ、ようこそ『ムルムの砂嵐』!!」
男がルゥのことを呼んだ。
アゼルは後ろを振り向くと、人よりも大きな鉄塊を担いだルゥが走ってくる。
このハンマーの大きさにはアゼルも少し驚いた。

355アゼル ◆F/ATTd3VB. :2007/09/24(月) 07:32:25 O
>「下手な変装をしても無駄だぞぉ『砂嵐』!砂漠に長年住んできたもの特有の濃ゆい砂漠臭が鎧ごしでも臭ってきおるわ!
 省略
>クハーッハッハッハ!!さぁ『月夜』、敵が増えたぞ、じゃんじゃん死者どもを出せい!」
女が指先から無数の光弾を放つと、その光に導かれた強力な負の力を持った幽霊達が集まってくる。
その幽霊達は敵味方、別け隔てなく襲いかかろうとする。
あの女が霊達を操っているようではないようだ。

>「望みどおり呼んでやったわよ!文句ある!?」
女は男に向かって怒鳴り声を上げる。
女と男の仲は良いという訳ではなく、自分達にも付け入る隙があるかも知れない。
こっちの戦力を確認すると、二つ名持ちが二人に自分。
それと遅れてくるアイザック。
単純に考えればこちらの戦力の方が上だ。

>「…え、え〜っと、アゼル君。いまいち状況が掴めないんだけど、そちらさんはどなた?敵?捕虜?お友達?」
アゼルは近寄ってきた骸骨や霊体達を、体全体から放った突風で吹き飛ばし、隊長の下まで歩いていく。
骸骨達や霊達は何度も何度も吹き飛ばされながらも、アゼルに向かっていく。
学習能力は死んでしまった為に無いのか、それとも生有る者に対しての怨みが引くことを良しとしないのだろうか。
アゼルは隊長の近くにまでたどり着くと、近くにいた骸骨や霊達に両手を向け、掌から放った突風でその場から吹き飛ばす。

「えー、隊長。
 これには深いような訳がありまして……」
アゼルは隊長にこれまでに起ったことを話し始めた。
勿論、途中で近寄ってきた骸骨や霊達を吹き飛ばすのも忘れてはいない。

356ルゥ ◆c8mKoM5yZ6 :2007/09/24(月) 15:54:17 O
>>346-347
>「クハーッハッハッハ、ようこそ『ムルムの砂嵐』!!」
>「下手な変装をしても無駄だぞぉ『砂嵐』!砂漠に長年住んできたもの特有の濃ゆい砂漠臭が鎧ごしでも臭ってきおるわ!
>私はエルガイア、通称『ワルワの砂荒らし』!貴様を殺す者の名だ、よぅく記憶しておけい!
>クハーッハッハッハ!!さぁ『月夜』、敵が増えたぞ、じゃんじゃん死者どもを出せい!」
高台の上で笑う男、その高台の周りを囲む亡者の大群。そしてその亡者と戦う者。
さっぱり状況が見えないが、これだけは理解出来る。
高台の上にいる男は敵だ。自分に喧嘩を売った敵だ。ならばルゥのすべき事は1つ。
「『ムルムの砂嵐』!?誰ッスかソイツは!?ルゥはルゥって名前ッス!!」
襲いかかる亡者を力任せに薙払い、ルゥは怒鳴った。
「ムルムの戦士、サンガとジーラの子、ルゥ!!勝手に変な名前付けんなッ!!!」

亡者の群は倒しても倒しても起き上がってくる。中途半端な攻撃では死体が残るからだ。
二度と起き上がることが出来ない程、徹底的に破壊しなければならない。
「全身ッ!全霊ッ!!全力ッ!!!全ッ開ッ!!!!どおりゃああああああああああああああ!!!!!!」
竜巻。まるで竜巻としか例え様のない回転。砂塵を巻き上げて破壊力の渦が、前進を始めた。
ハンマーの大きさは、凄まじい回転速度によって壁と化し、ルゥを守る。
そして回転速度はハンマーの破壊力を、最大限にまで発揮させる。
隙無き攻守一体、これこそがルゥの編み出したハンマー戦法の最終形!!

竜巻の如き回転は、今や本物の竜巻となって亡者を粉砕していく。
数十体を一瞬で破壊した…………が、竜巻は突然止まった。
そしてその中心にいたルゥは、酔っ払ったような千鳥足で目を回していたのである。
「…………き、きぼぢわる゙い゙……ッス。」
残らず胃の中身を吐き出して、ルゥはガクリと膝をついた。
超回転は確かに隙が無い攻守一体の技だが、回転が激しい程自身にも被害が出る。
人体の構造上、ある意味仕方ない事ではあったが、この状況で無防備なのは非常に危険だ。
敵は遠隔攻撃が可能なのだから、今のルゥは格好の『的』といえる。


一方その頃…ポロロッカ市街地。
「ぶはぁ!!ちくしょう!災難ってモンじゃねーぞ!!」
サンベルトスネイクの残骸となった砂山から、必死に這い出してきたムタが不満をぶちまける。
見るとアイザックが街の住人に取り囲まれていた。
先程までとは真逆の対応に、一瞬呆れたが、置き去りにされた筈だった事を思い出す。
「ん?そういや何でアイツだけなんだ?もう1人とルゥは何処行った?」
首をかしげると、すぐさま街人の足下を走り抜け、アイザックの肩へと駆け登った。
「おい、ルゥは何処行った?あのバカを1人にしたら、シャレになんねぇくらいマズいんだよ。」
人々に怪しまれぬよう、そっとアイザックに耳打ちする。

ムタは嫌な予感が止まらない。
もしも今ルゥが《狂乱》してしまったら…間に合わないのだ。
357グラスマン ◆4hcHBs40RQ :2007/09/25(火) 21:01:36 0
>>352-356
>「……人使いの荒い殺し屋さんだこと!」
>「望みどおり呼んでやったわよ!文句ある!?」
「うむ、ご苦労。」
ナナミの怒声を、エルガイアは普通に聞き流した。
味方から怒声をかけられることなど日常茶飯事なのだ。
そして、今度は敵から怒声が飛んでくる。
>「『ムルムの砂嵐』!?誰ッスかソイツは!?ルゥはルゥって名前ッス!!」
>「ムルムの戦士、サンガとジーラの子、ルゥ!!勝手に変な名前付けんなッ!!!」
「クハハハ。貴様の本名などに興味はないわ。貴様はただ私の二つ名撃墜記録の一人として朽ちてゆけ、『砂嵐』。」
ルゥの名乗りを、エルガイアは逆撫でるように嗤った。


その頃、グラスマンに群がっていたアンデッド達を、彼の元にやって来たアゼルが突風で一掃していた。
「ぷは。助かったよ、アゼル。」
一息つき、座り込むグラスマン。敵の群れのど真ん中での休憩は、アゼルの力への絶対の信頼の証である。
それを砂柱の上からエルガイアが見咎めた。
「余裕だな、『鉄人』。仲間が来たとはいえ、まだまだアンデッドは大量におるのだぞ?」
突風で一度吹き飛ばされただけでは機能停止しないアンデッドが多いうえ、
先ほどナナミによって追加されたゴーストも油断ならない。
「うちの天才アゼル君を舐めないで欲しいな。この程度のアンデッドじゃアゼルの風は破れないよ。
それより自分の心配でもしたらどうだい?さて、アゼル。」
グラスマンは回転攻撃でアンデッド達を吹き飛ばすルゥに目をやり、言う。
「あの子強いね。潜在能力は僕以上かもしれないな。じゃあ、その深いような訳ってのを聞かせてくれ。」


その休憩の隙をついて攻め込む、という訳にはいかないエルガイアだった。
高所に登るだけでは防げない飛行するゴーストが、さっきまで以上の比率で自分に向かってきているのだ。
>『命を返せ!』
>『私の身体を返せ!』
「ふん、小賢しいわ!」
エルガイアは足場の砂に掌を置いた。魔力が砂柱を伝い、砂漠に流れ込んでいく。
その途端、幾本もの太い砂の鎖が砂漠から伸び出した!
砂の鎖は生き物のようにうねり、込められた魔の力でゴースト達を撃墜していく。
「クハハ、下級霊どもが。私個人に恨みがあるらしいが、二度も殺されにくるとは愚かの極みよ。」
しかし、エルガイアは違和感を感じていた。
下級霊にしては妙に耐久力がある気がする。殺しても殺してもなかなか消滅しない。
「ちぃ、しつこい連中め…。少しばかり本気で相手をしてやろうか?」
怨霊たちの底無しの怨念を前に、徐々に苛立ちを見せるエルガイア。
その時だった。

「おい、『砂荒らし』!!」
突然グラスマンの怒号が飛んだ。
358グラスマン ◆4hcHBs40RQ :2007/09/25(火) 21:03:18 0
「前に会った時にお前、メガトン級の大蛇飼ってただろ!あれが町に出たらしいぞ!
モンスターを飼うなら暴れないようにしっかり管理しておけよ!被害が出たらどうするつもりだよ!」
「は?」
エルガイアは面倒そうに答える。
「何を言っておるのだ。しっかり管理しているからちゃんと町中に出たのではないか。」
「なに?」
グラスマンの表情が強張る。
「…ちょ、ちょっと待てお前。じゃあ何か?お前が町へ行くように仕向けたってことか?」
「ああ。町の中に『砂嵐』が潜伏しておる可能性もあっただろう?
だが町まで虱潰しに探すのも面倒なのでな、蛇を先行させて地下から濃ゆい砂漠臭を探知させておいたのだ。
まあ、ああして本人が目の前に現れた以上既に意味はなくなったのだがな。」
あくまで面倒そうに応対するエルガイア。
グラスマンは焦燥に似た表情を浮かべて食い下がる。
「ま、待てって。端っことはいえ、ここも砂漠だぜ?いくら砂漠蛇でも砂漠臭なんて正確に探知できるかよ。
間違えて町の人を襲ったらどうするつもりだ?旅人の中には濃い砂漠臭の染み付いた人がいるかもしれないしよ。
それに、例えば本当に潜伏していたとしても、『その臭いの染み付いた持ち物か何かを落としていて、
それを町の誰かが拾っていた場合、その誰かを誤って襲う可能性もある』んじゃないのか?
それに上手く町中にいたあの子本人を正確に探知できたとしても、
あんな化け蛇が町中で暴れたらどれだけの被害が出るかぐらい想像が付かないとは言わせないぞ?」
「五月蝿い男だな…。」
砂の鎖を繰りながら、エルガイアは言う。
「どうせ『砂嵐』が暴れておったのだ。今更怪我人や死人が20や30増えたところで大して変わるまい?
私は面倒が嫌いなのだ。それに、どうせ今なら何をしたって『砂嵐』のせいになるだろう?
あの蛇も『砂嵐』が呼び寄せたことにでもしておけ。」

「アゼル!!!!」

グラスマンの咆哮に、辺り一体の大気が振動した。
「それと砂…いや、ルゥ!逃げるのはやめだ、あの野郎をぶっ飛ばすぞ!!」
グラスマンの珍しい激怒である。
「…クハハハ。」
不機嫌そうだったエルガイアの顔が、一転して愉快そうに嗤った。
「できるものならやってみるがよいわ。逃げ腰の貴様らを相手にするのは退屈だったのだ。
だが、今しがた貴様が呼びかけたあの小娘は3秒後には生きておるのかな?」
言い終わると、エルガイアは口からサッカーボール大の砂の塊を吐き出した。
それは硬質の弾丸となって、目を回しているルゥの元へ飛んでいく!
「しまった!危ないぞ、ルゥ!」
「クハハ、あの小娘、立ち回りを見た限りパワーは中々のようだが、まだまだ荒削りだ。このまま死ぬが良いわ!
そして貴様らもだ!いつまでも図に乗るな!!」

気合いとともに、エルガイアは魔力を増幅した。
さらに太く激しくなった砂の鎖の攻撃が、次々とゴーストを撃墜していく。
しかしその時、空から何かが光の尾を引いて飛んできた。徐々に失速し、エルガイアの足元にころりと落ちる。
「ば…馬鹿な?」
それを見たエルガイアの顔が、驚愕に歪んだ。
割れた指輪。それは、指輪によって操っていたサンベルトスネイクの敗北の証だった。
「あの大蛇が…この私の最強のしもべが、まさか敗れたというのか!?」
359アイザック ◆6GJ7GJlyDU :2007/09/25(火) 23:30:19 0
>349-351、>356
>生命を失ったその体は砂となり、崩れていく。
>崩れきったあと、砂山の中、ちょうど頭のあった辺りに指輪が埋まっていた。
倒した大蛇は自然の存在ではなかった。
何者かが指輪に魔力を込めて仮初めの命を与えていたらしい。
相当な手練である事は疑いようが無かった。

>「…生きてるぞ!ミッチェルは無事だ!」
それはそれとして、どうやら間に合ったようだ。
飲み込まれた子供は気を失っているだけらしい。
怪我をしてないので毒にやられていると言うことも無さそうだ。
しかもその子供は町長の息子だったことも分かった。
おかげでライゼの信用も大分挽回できただろう。
>首をかしげると、すぐさま街人の足下を走り抜け、アイザックの肩へと駆け登った。
町長の話を聞いていると、いつの間にか、ムタが肩に乗っかっていた。
蛇に子供ごと飲み込まれてたようだ。

>町長の言葉を遮り、子供達がどどっと割り込んでくる。
「……ああ。」
子供達から手渡されたアイテムを腰袋に入れる。
それだけじゃなく、まだ任務が残っている事も察したようで
周りの気を引いて道を作り、別働隊へと向かいやすくもしてくれた。
「町長……話は後で聞く。まだ、任務が残ってるからな……。」
言いつついったん剣を鞘に収め指輪の向かった方へとアイザックは走り出す。
既に指輪は視界から消えているが、合図が上がった方角だったのは覚えている。
去り際に一度だけ右手を持ち上げて、見送る町人達に見せながら向かう。

>「おい、ルゥは何処行った?あのバカを1人にしたら、シャレになんねぇくらいマズいんだよ。」
そうして人垣から脱出してムタに語りかけたが。
「……先に町の外に出てもらった。今そこに向かって……っ。」
左手に痺れを感じて角を曲がったところで壁に寄りかかり、左腕を見る。
うっすらと何かで引っかかれたような傷跡があった。その正体は毒牙だ。
盾を口に差し込んだ時に掠ったらしい。傷自体は大した事はないのだが、
この様子だと傷口から毒が入り込んだのは間違いない。裾を引き千切って
口と右手で肩口をきつく縛り……先程もらった薬草、毒消し草、力の種を飲み込んだ。
「……この毒に、効けばいいが……。」
大蛇との力比べで体力は枯渇寸前、蛇の毒で左腕は痺れて使えない、
盾は拉げて盾ではなくなっている、毒消しが効かなければその内完全に動けなくなる。
目立った外傷こそないが満身創痍と言える。だが体力の回復や毒消しの効果発揮を
待ってはいられない。一刻も早く合流する為、町の外へ出ようと出口へ歩いていく。
「そう言えば……まずいと言ってたが、どうまずいんだ……。」
ムタはルゥの何を警戒していると言うのか……?
360ルゥ ◆c8mKoM5yZ6 :2007/09/27(木) 00:34:25 O
>>358
>「できるものならやってみるがよいわ。逃げ腰の貴様らを相手にするのは退屈だったのだ。
>だが、今しがた貴様が呼びかけたあの小娘は3秒後には生きておるのかな?」
>言い終わると、エルガイアは口からサッカーボール大の砂の塊を吐き出した。
>それは硬質の弾丸となって、目を回しているルゥの元へ飛んでいく!
>「しまった!危ないぞ、ルゥ!」
グラスマンの叫びも虚しく、砂の弾丸は俯せたルゥに直撃した。
着弾と同時に大爆発が起こりルゥの姿は舞い上がった砂塵が覆っていく。

弾丸は単に砂を固めた物ではなかった。数トンに及ぶ大量の砂を魔力で圧縮した物だったのだ。
敵に命中したら圧縮された砂は解放されて、爆発に似た衝撃を周囲に撒き散らす。
エルガイアの得意技の1つ、『砂爆砲(さばくほう)』である。
明らかに直撃を受けて無事に済む類の技には見えない。それは爆発時の衝撃波が物語る。


>>359
場所は変わってポロロッカ市街地。
>「そう言えば……まずいと言ってたが、どうまずいんだ……。」
毒が回り、足取りも重いアイザックだったが、それでも前に進むことを止めようとはしない。
どうやら神経毒のようだ。獲物を身動き出来くするためなのだろうか。
身体の自由が利かなくなるのが先か、薬が効果を発揮するのが先か、それは判らない。
「どうって、そりゃお前…とんでもないコトになるぜ?俺がわざわざ頭フル稼動させて
テメェらをやり過ごそうとしたのも、ルゥにあれ以上の怪我をさせないためだ。」
真剣な顔で(リスの真剣な顔…というのも妙な話ではあったが)、ムタは続けた。

「ムルム族はな、デカイ怪我をしたりするとキレちまうんだよ。そいつはな、普通
のキレ方とかの比じゃねぇ、敵味方関係無しだ。
周りに動くモンが『一切無くなるまで』絶対に止まらねぇんだよ。
だからあの時テメェらとルゥを戦わせる訳にゃいかなかったのさ、街中で『そうなって』みろよ、
死人の数は百やそこらじゃきかねえ。ある程度の怪我ならオレが『止められる』がな、
その『ある程度』を超えちまったら…もうお手上げバンザイしかねーよ。」

ここまで言ったムタだが、内心ではまだ最悪の事態にはならないと思っていた。
僅か数分後にルゥが、『ある程度』を余裕で超える致命傷を負うことを知らないのだから……。
361ナナミ ◆LV/6jLYLCk :2007/09/27(木) 03:29:01 0
>357
話を聞けば聞くほど、ナナミの心はエルガイアからますます離れていった。
彼の心を試してみたが、この人物からはまるで良心の呵責などは感じる事はできなかった。
挙句、自分のやらかした事を他人のせいにしてしまえば良いという発言。
「もう頭きた。こんな奴と組むのはもうたくさん!」
ついにナナミの堪忍袋の緒が切れた。
ナナミはアンデッド召喚をやめ、先ほどの光を飛ばして、幽霊たちを退散させた。
幽霊や先ほどの赤い液体ではエルガイアを殺せないとわかると、やはり確実に仕留めるのは自分でやるのが一番だと再認識したのだ。
彼女はもうエルガイアの味方をするのはやめたとばかりに、あからさまに攻撃を仕掛け始めた。

「アンタが空気を吸ってる事自体が不愉快だわ!」
ナナミは忌まわしい術の代表とされる「創傷」を、エルガイアに用いた。
これは、治癒魔法を逆利用して敵に直接傷を負わせる攻撃魔法である。
原理が原理なので、防ぐ手段はほぼ存在しない。
本来ならば威力そのものは高くはないが、ナナミが用いれば全身が傷だらけになる程の威力がある。

「まったく!あんたがさっさとアレを飲めば、一瞬で事が片付いて楽だったのに!」
実はあの赤い液体は吸血鬼の薬で、人間が飲めば吸血鬼になるという代物だ。
そして今は、太陽は燦然と輝いている。
今、この場で吸血鬼に変化したら、そのまま陽光に焼かれて一握の灰になることは避けられない。
ナナミの狙いは最初からそれだったが、いつまで経っても飲まないことに痺れを切らしたのだ。
思い通りに事が運ばなくてイライラしている彼女は、感情が不安定になっているので、肉が透け、骨が見えている。
眼球の部分は爛々と赤く光っているように見えた。
362アゼル ◆F/ATTd3VB. :2007/09/27(木) 04:48:40 O
>356-358>360-361
>「アゼル!!!!」
>「それと砂…いや、ルゥ!逃げるのはやめだ、あの野郎をぶっ飛ばすぞ!!」
アゼルは隊長の怒号を聞くと、口許をにやりと歪めて、背に掛けていたロングボウを手に取る。

「俺は戦いは意外と好きなんですよぉ……
 ただ、戦う相手を傷付けるのが嫌なだけでね。
 相手が戦う力を持っていないような人を平然と傷付けるような奴なら、俺も容赦なく戦うことができる」
アゼルは矢筒から矢を一本引き抜くと、常人なら立つこともできないような突風を体から放ち、邪魔になる骸骨や霊達だけを吹き飛ばす。
アゼルの近くにいる隊長には一切の風圧も来ない。
まるで、風が意思を持っているように隊長を避けて、骸骨や霊達だけを吹き飛ばしていく。

>「もう頭きた。こんな奴と組むのはもうたくさん!」
女が砂荒らしに向かって言った。
彼女も砂荒らしのしている行為に愛想が尽きたのだろう。
女は砂荒らしに向けて攻撃をし始めた。

>「しまった!危ないぞ、ルゥ!」
アゼルがルゥの方を向くと、ルゥのいる場所から大爆発が起った。
空気が爆音によって震える。
アゼルが女の動向を見ていた時に、砂荒らしが何かをやらかしたのだろう。
ルゥは大丈夫なのだろうか?

「ルゥ!大丈夫ですか?」
アゼルは突風の力を足に込めて、その場から一気に駆け出す。
進行上にいる骸骨達や霊達を全て吹き飛ばしながら、大爆発によって巻き起った砂埃の中にアゼルは突っ込んだ。
アゼルが砂埃の中に入ったせいで、砂埃は内側から吹き飛ばされ、大爆発の後がよく見えるようになった。

363グラスマン ◆4hcHBs40RQ :2007/09/28(金) 01:41:52 0
>>360-362
エルガイアの砂漠砲はルゥに直撃し、大爆発を引き起こした。
「クハーッハッハッハ!まずは一匹ぃ!」
「くそっ、やりやがった!!」
突風の力で駆けるアゼルに続き、グラスマンも駆けていく。
巻き起こる砂煙で様子は見えないが、あれでは生きていたとしても極めて重傷だろう。
何より無事の確認が先決だ。
しかしその時、グラスマンの耳にナナミの怒声が聞こえた。


>「もう頭きた。こんな奴と組むのはもうたくさん!」
>「アンタが空気を吸ってる事自体が不愉快だわ!」
ナナミはアンデッド達を消し、エルガイアに直接魔法攻撃を仕掛けた。
「クハハ、面白い。裏切りか?」
エルガイアは両手を合わせ、全身から魔力を放出する。
自分に効果を出そうとする魔力を外向きの魔力の放出で拒む、かなり荒っぽい防御技だ。
しかし、拒みきれなかった魔法効果がエルガイアの体に幾つもの傷を創る。
エルガイアは自らの腕にできた長い裂傷を見つめ、流れる血をべろりと舐めた。

「…ふん、単純な魔力放出力は貴様が上か。しかし忘れてはいまいか?
奇しくも貴様の言った通り、今は日中で貴様は『月夜』。ここは砂漠で私は『砂荒らし』だ!
クハハハ、私に楯突いたことを3分で後悔させてくれるわ!!」
高嗤いとともに、エルガイアは右手に魔力を込めた。


一旦足を止め、グラスマンはその様子を見ていた。
ルゥを介抱している隙に後ろから撃たれるのが一番怖かったのだが、その心配はないようだ。
「ふう、なんか知らないけど仲間割れしてくれてラッキーってとこだな。
しっかしあいつら、本当に湯水の如く魔力を使うな。どれだけあるんだよ。
まあ、とにかく勝手に共倒れしてもらってる隙に僕はルゥの容態を…。…。」
364グラスマン ◆4hcHBs40RQ :2007/09/28(金) 01:44:06 0
>「まったく!あんたがさっさとアレを飲めば、一瞬で事が片付いて楽だったのに!」
正体を透かしつつ憤るナナミに、エルガイアは嗤った。
「クハハハ、見くびるな。私が味方に毒を盛られたことが何度あると思っているのだ?
私は誰も信じぬ。仲間など所詮は見え透いた幻想に過ぎぬのだからな!」
魔力を込めた右手を、足場に勢いよく突っ込んだ。
その途端、ナナミの目の前に、ちょっとした小屋なら握り潰せそうなサイズの硬砂の手が現れた!
「しかし驚いたぞ、その姿。貴様まさか本当にリッチだったとはな!
まあどちらでも構わん、貴様もここで死して私の二つ名を輝かせる磨き布となるのだ!」
巨大な右手はナナミを叩き潰さんと倒れ掛かる!

しかし、それはナナミに届くことなく、空中でバラバラに弾け飛んだ。

「ぬう?」
「…おねーさん。」
硬砂の破片の降り注ぐ中、着地した男は言う。
「あの男に飽きたなら、今度は僕に乗り換えない?
二人でなら色々と楽しい思い出を作っていけると思うんだ。例えばあの砂野郎をぶっ飛ばした事とかね。」
飛び蹴りで砂の手を粉砕したグラスマンは、ナナミに振り返って笑った。


この行動に至るまでに、グラスマンの中で様々な葛藤があった。
傷ついた少女に駆け寄り無事を確かめたいのは山々である。
しかしグラスマン自身が「天才」と呼ぶアゼルが向かった今、間違いなく適切な処置はなされることだろう。
治癒魔法のひとつも使えない自分が行っても、ただ見守ることしかできない。
ならば、ここはアゼルの背中を守り、エルガイアを食い止めておくのが自分の仕事だ。
エルガイアに反旗を翻したとはいえ、ナナミが後ろへの流れ弾に気を配ってくれるとまでは期待できない。
だが、そういうことを差し引いても。
虚勢としての冗談とはいえ最初にナナミを勧誘したのは自分である。
そのナナミが敵を裏切って戦おうというのなら、仲間も同然だ。見捨てるわけにはいかない。


「アゼル!そっちは任せたからな!!」
グラスマンは振り切るように叫び、構え直した。
「ふん、小賢しい。貴様らごときがこの私に勝てると思うな!」
エルガイアは呪文を唱えた。
途端に二人の足場が大きな円形に崩れ、内向きに向かって吸い込むように砂が流れ出す。
「流砂か!?」
「それだけではないぞ!」
エルガイアが両腕を鎌のように何度も振るう。
硬い砂を纏った衝撃波が幾つも発生し、足場を崩された二人に襲い掛かる!
365ルゥ ◆c8mKoM5yZ6 :2007/09/28(金) 18:39:50 O
>>362
>「ルゥ!大丈夫ですか?」
>アゼルは突風の力を足に込めて、その場から一気に駆け出す。
>進行上にいる骸骨達や霊達を全て吹き飛ばしながら、大爆発によって巻き起った砂埃の中にアゼルは突っ込んだ。
>アゼルが砂埃の中に入ったせいで、砂埃は内側から吹き飛ばされ、大爆発の後がよく見えるようになった。
そこにルゥはいなかった。少なくともアゼルが知っているムルム族の女戦士は…。
代わりに『そこにいた』のは、人の『形』をした『獣』だった。

どす黒い肌に、所々ざらざらした質感の鱗。髪は長くデタラメに伸び、地面に垂れている。
膨張した筋肉は騎士鎧の止め具を張り詰め、如何にも窮屈そうに見えた。
『獣』はぼんやり立ち尽くしていたが、やって来たアゼルに気付き、ゆらりと向き直る。
その瞳は既に理性の光を欠いており、まるで爬虫類を彷彿とさせる縦長の瞳孔がアゼルを睨んだ。
「…………………グルルルル…。」
低く唸るや否や、恐るべき速さでアゼルに飛び掛かってきた。
今の『獣』にはアゼルが誰なのかなど、どうでもいいのだ。『動くモノ』は全てが破壊対象なのである。

ハンマーは爆発時に吹き飛ばされたらしく、『獣』を挟んでアゼルから15m程の距離にある。
今の『獣』が素手とはいえ、巨大なハンマーを軽々と振り回していた怪力だ。
もしアゼルが捕まってしまったならば、エルフ族の身体は簡単に『壊されて』しまうだろう。
366アゼル ◆F/ATTd3VB. :2007/09/28(金) 20:25:46 O
>365
「…………あれ?」
砂埃の中から現れたのは鎧を着た魔物。
体中を漆黒の鱗で覆い、長く延びた髪を地面に垂らしている。
着ている鎧と魔物がいる場所から、その魔物がルゥと辛うじて分かる。
ルゥの面影は全く無い。
アゼルと魔物化したルゥの目が合った。
その目は人の形をしておらず、正しく魔物の目であった。

>「…………………グルルルル…。」
魔物化したルゥはアゼルを襲う。
そのスピードは鍛えられた兵士でも、目で追うのがやっとのスピード。
突風の力を宿したアゼルのスピードに匹敵する速さだ。
アゼルはルゥの襲撃を間一髪のところで真横に避けると、跳躍してルゥから大きく距離を取った。

アゼルはルゥの姿を見る。
弓矢での攻撃はルゥの漆黒の鱗を見るからに、効きそうにない。
目や急所を狙えば弓矢での攻撃も通るのだろう。
だが、ルゥの体に一生残るような傷は、本当にどうしようもなくなった時以外には使いたくない。

「これは暴風の力を使うしかないようですねぇ」
自身の魂から暴風の力を肉体に宿す。
アゼルの肉体から暴れ狂う風の力が全方位に放たれる。
近くにあったルゥの巨大な鉄の塊のようなハンマーが、隊長達の近くまで吹き飛んでいく。

「さぁ、始めよう」
アゼルは両手に持つ弓矢を、体から放たれている暴風の力で遠くに飛ばし、腰に差してある片手剣を引き抜いた。

367ルゥ ◆c8mKoM5yZ6 :2007/09/30(日) 13:56:51 O
>>366
「グォアアアアアアッ!!!!」
『獣』はアゼルに再度突進した。しかし周りを吹き荒れる暴風に弾き飛ばされる。
受け身もとらずに砂の地面に叩き付けられて、盛大に砂塵を巻き上げた。
アゼルは…正確には『魔法使い』というタイプの『敵』は、『獣』にとって未知の存在だった。
何が起きたのか理解出来ないのか、目をぱちくりさせて『獣』はアゼルを見る。
ほんの一瞬だが、『獣』は考えた。『そいつ』に近付くにはどうするかを。
まともな思考能力こそ欠落しているものの、本能は働くようだ。

近付くと風が邪魔で、離れても風が来る。
弓矢は手放したが、アゼルは剣を抜いた。つまり白兵戦の心得もあるという事だ。
風による全方位攻撃と、剣による接近戦を如何にして捩じ伏せるか…。
闘争本能は目の前の強敵をどうやって倒すかを『獣』に問い掛ける。
そしてその『答え』は意外にも単純なものだった。

「グルルルル…。」
姿勢を低くして身構える。どうやら再び突進するつもりらしい。
みしみしと筋肉が軋み、両の足は砂を踏み締める。
「ゴルァアアアアアアアッ!!!!!」
ドン!!足下の砂が爆発したかに見える程、勢いの付いた飛び出し。
『獣』はもう一度アゼルに向かって一直線に突き進む!!
368アゼル ◆F/ATTd3VB. :2007/09/30(日) 19:23:41 O
>367
暴風の力を身に纏ったアゼルに、再び魔物化したルゥが襲ってくる。
だが、ルゥの爪はアゼルには届かず、ルゥの体はアゼルの暴風のバリアによって弾き飛ばされてしまった。

アゼルは暴風のバリアを段々と薄めていき、自身の肉体の強化や手にした剣の方に暴風の力を回していく。
アゼルが手にした片手剣ではルゥの鱗の前に、あっさりと折れてしまう。
片手剣を暴風の力によって折れないように強化しても、通常のアゼルの力ではルゥの鱗を切り裂くことができない。
だが、二つの力を合わせればルゥの鱗を切り裂くことができると、アゼルは考えている。
アゼルの体から放たれている風はそよ風程度にまで治まり、手に持つ片手剣の刀身は暴風の力によって淡く輝く。
三度目のルゥの突進。
アゼルは初回の時と同じように横に避け、後方に跳躍して距離を取る。
アゼルは片手剣を持った腕を前に、姿勢を低くして構える。
どのタイミングで狙いを付ければいいか、アゼルには大体だが分かってきた。
次の突進時、アゼルは勝負を仕掛ける。
369ナナミ ◆LV/6jLYLCk :2007/09/30(日) 23:33:50 0
>364
>「クハハハ、見くびるな。私が味方に毒を盛られたことが何度あると思っているのだ?
>私は誰も信じぬ。仲間など所詮は見え透いた幻想に過ぎぬのだからな!
「権力者でもないのに何度も味方に毒を盛られるなんて、大した人徳だこと。
 誰も信じない?要は他人を信じるのが恐いだけでしょ?
 そんな何でもない事を恐がる玉無しの相手なんて、月が出てなくても十分よ!」
さっきまで他人を陥れようとしていた人物の台詞とは思えない。どの口で言っているのだろう?
そしてメタな話をすると、リッチは普通はダンジョンの奥深くでボスキャラをやっているので、
本来なら戦士・盗賊・魔法使い・僧侶の4人組パーティで挑むのがセオリーである。
気をつけろ!こいつは凶悪な召喚魔法も使うぞ!1人で挑んだら危ない!
今すぐ酒場へ行って、バランスの良いパーティを揃えないと危険だ!今は無理だが。

>「あの男に飽きたなら、今度は僕に乗り換えない?
>二人でなら色々と楽しい思い出を作っていけると思うんだ。例えばあの砂野郎をぶっ飛ばした事とかね。」
確かにこの人物は、自分を助けてくれた。エルガイアならありえない行動だ。
少なくとも、悪い印象は持っていない。
「そうね―――これからの事はともかく、アレをぶっ飛ばして良い思い出を作ろうっていう提案には賛成。
 ……後ろのあの子のことも気になるし、速いとこアレを片付けましょう」
ナナミが左手を前にかざすと、冷気をまとった青白い光の奔流がエルガイアに襲い掛かった。
正確には、エルガイアの放った砂や流砂の類を包み込んだ。
370ルゥ ◆c8mKoM5yZ6 :2007/10/01(月) 01:53:30 O
数分前、ポロロッカ市街地。
「…おい、テメェら話が違うんじゃねーか!?ルゥに何しやがった!!」
突然ムタが声を荒げた。アイザックは一体何の事だか把握出来ない。
肩にしがみつくムタは震えていた。その震えは、紛れも無く『恐怖』によるものだ。
「どうした?……!…まさか…。」
アゼルとルゥは合図の花火へと向かったのだ。そこで何か緊急事態が発生したと判断する。
その緊急事態とは…おそらくガストラの刺客に遭遇したのだろう。
「コラ急げ!テメェの仲間に早く教えるんだ!!『全力で逃げろ』ってな!!」
解毒作用が効いたのか、先程よりは身体が軽い。
アイザックは少しずつ歩調を早め、次第にゆっくりと駆け出した。
「言われるまでも無い、ちゃんと急ぐさ。しかし何が起きたんだ?」
「始まったんだよ、《狂乱》がな!!」


ポロロッカ郊外、砂漠荒地。
『獣』は駆ける。狙うはアゼル、迷いの無い一直線の加速。
相手は『剣を抜いた』のだ、ならば剣が当たる前に風で『獣』が吹き飛ばされたら意味が無い。
思った通りアゼルは風のバリアを解除した。だが剣には魔力が込められている。
こちらの突進にタイミングを合わせて、反撃を切り込むつもりなのだろう。

さあ来い、やれるものならやってみろ!そう『獣』は笑う。
肉を斬らせて骨を断つ。最初から『獣』にはそれしか出来ないのだから。
光を放つ剣の一撃は、『獣』にとって確実に大打撃となるのは間違いない。
だがそれがどうしたというのだ。
微塵も死を畏れず、唯々ひたすらに戦うしか出来ぬ『獣』に、迷いも躊躇も存在しない。


再び数分前のポロロッカ市街地。
「…狂乱?それは先程言っていた『キレる』という事か?」
「あぁそうだ。ブチキレちまう中でもな、『とびきり質が悪い』キレ方だよ。」
ムタは不安そうに前方の空を見る。うっすらと見えるのは『獣』が放つ呪いの波動。
できるなら二度と見たくなかった、《旧き砂龍》の怒りと憎しみの波動…。
「ムルム族ってのはな、みんな生まれた瞬間から『ある呪い』と戦う宿命を背負ってんだ。
今から遠い昔にとんでもねぇバカやらかしやがった、1人の男のせいでな…。」
ムタは意を決し、語り始めた。
砂漠に住まう、戦いに支配された蛮族の秘密を。

「昔はムルム族なんてのは無かった、砂漠には家族単位の小さな集まりがあっただけだ。
ソイツらは仲が悪くてな、いつも殺し合いばっかり飽きずに繰り返してたもんさ。
その頃から砂漠の外に住む街の連中は、何度も討伐隊を向かわせてた。
砂漠を迂回すりゃ時間がかかるからな、商売人には蛮族達が邪魔だったのさ。
さっき言った『とんでもねぇバカやらかした男』ってのも、そんな討伐隊の1人だったよ。」
371ムタ ◆c8mKoM5yZ6 :2007/10/01(月) 01:56:07 O
蛮族って言ってもな、全員が戦い大好きって訳じゃなかった。
中には一族同士の戦いを望まないヤツも何人かいたんだよ。そりゃそうだわな。
そこでバカ野郎のお出ましだ。
ナニ考えてんだか知らねーが、そのバカ野郎は連中に『ある事』を吹き込んだのさ。
そしてソイツらは砂漠に点在する蛮族を1つに纏め上げるための計画を立てた。
だが『力こそ正義』な蛮族達を纏めるなんざ普通に考えて絶対無理だろ?
だからソイツらは挑んだんだ。砂漠に住むエルダードラゴンにな。
一番強いヤツが正義なのさ。蛮族達にその『力』を示さなきゃならねえってよ。

パーティーは全部で5人、たった5人でエルダードラゴンにケンカ売ったんだぜ?
それがバカじゃないなら何がバカだよ。しかもソイツらマジで倒しちまったんだ。
この世で一番ヤバイ生物って言われてる、エルダードラゴンをな!!
結果、蛮族の4人は死んで、部外者だったバカ1人が生き残った。
バカは戦うフリしてただけで、実際には蛮族の4人だけが戦ってたんだからな。

で、ドラゴンは死ぬ間際に呪いをかけた。生き残ったバカ野郎と、砂漠の蛮族全員にだ。
一族同士の戦いを終わらせるための戦いは、『永遠に終わらない』戦いの始まりだったんだよ。
蛮族達はバカ野郎をドラゴン殺しの英雄と勘違いしやがってな、部族の長に祭り上げた。
砂漠の蛮族は1つの部族となって、その名前にパチもんの英雄から取って部族名を付けたよ。
ソイツの名前はマルコ=ラムタ=ムルム。龍殺しの英雄なんかじゃねぇ、ただのケチな冒険者さ。

呪いは厄介なものでな、解くには戦い続けるしかねぇんだよ。数えて100体。
しかもただ100回戦ったらいいって訳じゃねぇんだ。『強敵』を100体だ。
クソみてぇな呪いだろ?更に笑えねぇのは戦い続けなけりゃ化物になり果てるオマケ付きだ。
でもってオマケはデカイ怪我をしたりしても発動する。
そうさ、単にブチギレるのとは話が違うんだよ。龍の呪いは身体を乗っ取るからな。
放っておけばソイツはやがて龍になる。あのエルダードラゴンは新しい身体を欲しがってるからだ。
呪いを解くには戦い続けるしかねぇ、解かないとドラゴンが甦る。
だからといって戦ってりゃ怪我をしたりする。そしたらやっぱりドラゴンが甦る。
もしドラゴンが甦ったら、どうなると思う?
とりあえず手始めにこの辺一帯をブッ壊すだろうな。次にムルム族を皆殺しだ。
分かったか?このままだとルゥの身体を乗っ取って、エルダードラゴンが復活しちまうんだよ。


アイザックの足音が、街の石畳から砂混じりの乾いた土に変わった事で消えた。
礼に貰った薬草はアイザックの身体を、走れる程にまで回復させている。
事態の転がる方向は『最悪』の2文字。ここまで来る間に聞いた、ムルム族の秘密…
そしてガストラの刺客。問題は山積みで、軽く苛立ちすら覚える。
だがやはりアイザックは遠くに見えてきた戦場を、感情の無い顔で見据えていた。
372ナナミ ◆LV/6jLYLCk :2007/10/01(月) 03:58:56 0
>364続き
さてこの冷たい光の奔流に包まれたところで、例によって生物には何の害も無い。
だが、流砂が止まった。衝撃波が消えた。砂の塊は勢いを失って地面へ落ちた。
そう、この術は魔法解除のための魔法で、本来は付与魔法を無効化することに使われる。
この術を発展させると、ある程度までのレベルの魔法ならば、種別を問わずに発動そのものを打ち消すことができる。
後ろを配慮したうえでとった行動だ。術そのものを発動させなければ、自ずと後ろも無事である。
助けてもらったのだ、こちらもこれくらいはしなければ罰が当る。

「―――私の見てるところで、そんな魔法が使えるわけないでしょ」
リッチを相手に魔法で勝負を挑む事自体が戦術ミスだ。
ただでさえリッチには魔法が効き難いのに、こういう強力なディスペルを完備しているのが普通ときている。
ターンアンデッドやネクロマンサーの術も効くことは効くが、それらに何の対策もしていないリッチは存在しない。
そのため、白兵戦が最も有効だ。
「あんたはリッチを甘く見過ぎよ。
 何百年という時間の大半を、魔力の鍛錬と魔法知識の収集にばかり費やしてきたようなヤツに、
 まさか生身のまま魔法で戦いを挑む莫迦が居るなんて思わなかったわ」
とは言うものの、ナナミは聖域の守護もしているので、あながち知識と魔力の強化にばかり時間を使っているわけではない。
月の神の加護を差し引くと、ナナミはリッチとしてはそこまで強くない。
だが、リッチはリッチだ。凶悪な呪いを扱うことには変わりはない。
「今度はこっちの番!
 ……創傷でそこまでの傷を負った時点で、もうこれを防ぐことはできないけどね!」
今度は先ほどとはうって変わり、赤黒いオーラがエルガイアを襲った。
こちらは明らかな殺傷力を持つ呪い、『死の宣告』だ。
『創傷』と違い、完全に防ぎきれなければ、その場で死ぬ可能性が十分にある、強力な呪いだ。
ナナミは目の前の相手よりも、むしろ背後から感じる猛烈な闘気を気にしていた。
嫌な予感がする。
373アゼル ◆F/ATTd3VB. :2007/10/01(月) 14:37:34 O
>370
四度目。
ルゥがアゼルに向かって駆ける。
その速さは前よりも一段と速くなった気がする。
近付いてくる強力な威圧感の中に飛び込むのかと考えると、気が重くなる。
だが、アゼルは引くつもりなど無い。
魔物化したルゥを止めると自分で決めたのだ。
止めてやる。
その決意は何が有ろうとも揺らぐことは無い。

「行くぞぉっ!!」
アゼルもルゥに向かって駆ける。
二人の距離は一瞬にして詰まり、アゼルは軽くルゥの爪によって吹き飛ばされた。
空高く吹き飛ばされ、きりもみ回転をしながらアゼルは地面に激突する。
374アイザック ◆6GJ7GJlyDU :2007/10/01(月) 22:58:54 0
>370-371、>373
>「…おい、テメェら話が違うんじゃねーか!?ルゥに何しやがった!!」
「さっき上がった花火は、緊急事態を知らせるものだ……。
 ガストラの刺客が「ムルムの砂嵐」……つまり、お前達を
 始末する為に送り込まれている事は分かっていた。
 ……恐らくそれと交戦状態に入ったからこその知らせだ。」
ムタの怯えにも似た恐れも意に介さず、淡々と慣れぬ説明を行う。

「話が違う、と言うが……たとえそれを知ってお前達が退いても
 ガストラ側はポロロッカに干渉する為の材料として……お前達を
 執拗に追跡しただろう。我々とお前達の利害は一致しているし、
 話が通じるからこちらから危害を加える気は既に無かった……
 独断ではあったが、そう判断したからアゼルに付いて行かせた。
 ……だが隊長の予想通り、相手は二つ名持ちだったらしい。
 そうでなければ、そもそも花火を使わなかった筈だからな……。」
必要に迫られなければ喋ろうと思わないアイザックにとって
ここまで長々とした説明をしなければならないと言うのは辛かった。
だがしなければしなかったで煩くなるので、せざるを得ない。

>ムタは意を決し、語り始めた。砂漠に住まう、戦いに支配された蛮族の秘密を。
ムタから聞かされた内容は、感情の揺れ幅が極端に小さいアイザックをして
衝撃を受ける内容だった。よくも今までその龍が目覚めなかったものだ。
だが……
「……それが、成人の儀式とやらの真相か。
 そんな理由で他者に迷惑をかけるとは……独善、だな。」
アイザックは容赦しなかった。する理由がないから。
「復活しかけているなら……殺すしかない。
 殺して復活が止められれば、の話だが……な。」
人なら既に殺している、そこにムルム族が加わるだけ。
……ムルム族「だった」ものと言うべきかも知れないが。

>空高く吹き飛ばされ、きりもみ回転をしながらアゼルは地面に激突する。
戦場に向かって走り続け、ようやく到着したときに目に飛び込んだもの。
それが、アゼルが宙を舞いそしてボロ雑巾の様に地面に叩きつけられる光景だった。
「……アゼルがここまでやられるとはな……。」
なんでもありでお互い全力を出したらアゼルは確実にアイザックよりも強い。
恐らく全力を出したであろうアゼルが勝てない相手……普通に考えれば
アイザックに勝ち目などない。ましてや今のアイザックは毒こそ大分中和されているが、
体力も装備も万全とは言いがたい。万に一つの勝ち目があれば御の字だ。

「……危険な状態だが、まだ息はあるか。」
アゼルはアイザックの方に吹き飛ばされたので、すぐに様子を見る事が出来た。
早々に治療をすれば助かるかも知れないが、目の前の敵はそれを許してはくれまい。
既に覚悟は出来ている。アイザックは再び剣を構えた。相手は大分痛めつけられているが、
その気違いじみた戦闘力と破壊衝動を抑え込むほどではないように見える。
375ルゥ ◆c8mKoM5yZ6 :2007/10/02(火) 19:36:19 O
>>374
>「……それが、成人の儀式とやらの真相か。
 そんな理由で他者に迷惑をかけるとは……独善、だな。」
>「復活しかけているなら……殺すしかない。
 殺して復活が止められれば、の話だが……な。」
どうやらアイザックは戦うつもりらしい。ムタはその事に驚いた。
「ッ!?テメェ話聞いてなかったのか!?『全力で逃げろ』って仲間に伝えるんだろうがよ!!」
無理もない。一度《狂乱》が始まれば、止めるのは不可能に近い。
「ムルム族が自分を鍛えるのは、《狂乱》の呪いに打ち勝つためだがな…それだけじゃねぇ、
あの呪いに『負けた』ヤツを倒すためでもあるんだ、正直言ってテメェじゃあ無駄死にだぞ!?」

確かに毒は中和され、かなり回復している。しかしまだ本調子には到底見えない。
それなのにアイザックは剣を構えた。相変わらずの無表情だったが、おそらく腹を括ったのだろう。
ムタには理解出来ない。ルゥの姿を見る限り、呪いの侵蝕は相当進んでいる筈だ。
ムルムの戦士ならば迷わず戦うだろう。旧き砂龍を甦らせないために。
だがアイザックは違う、今すぐ仲間と共に逃げ出したって構わない立場なのだ。
「ケッ…テメェみたいなアホタレ見てっとよ、イライラするぜ。勝手にしやがれ。」
ムタは小さく呟いた。あの時と同じだ…かつて龍に挑んだ時、「無理だ」と真っ先に諦めた自分と…。


呆気ない決着に『獣』は苛立ちを募らせた。
アゼルの剣は僅かに届かず、『獣』の身に纏う鎧を切り付けただけに終わった。
鋼で造られた騎士鎧の胸当が、まるでバターのように裂け、地に落ちる。
ボロ布のようになったアゼルが地面に叩き付けられたと同時に『獣』の左胸から血が滴った。
斬撃の威力は大部分が鎧に阻まれてしまったのだ。届かなかったというのにこの威力!!
もしも直撃していたなら、『獣』は一撃で命を落としたかもしれない。

死に限り無く近い、技と技、力と力の激突こそが『獣』にとって悦びだった。
だがその『悦び』を与えてくれる敵(アゼル)は、倒れたまま動かない。
「グゥゥウ……。」
『獣』は苛立った。だがそれ以上に楽しかった。
だからアゼルが起き上がるのを、少しだけ待つことを選んだのだ。
>「……アゼルがここまでやられるとはな……。」
>「……危険な状態だが、まだ息はあるか。」
現われた男、アイザックは剣を構える。『獣』は新たな獲物の出現に、牙を剥いて威嚇した。

『獣』は迷った。アゼルが起き上がるのを待つか、アイザックを攻撃するか…。
迷うことは嫌いだ、故に『獣』は決めた。
『獣』は近くにあった大岩を、力任せに蹴り付けたではないか。
岩は半分を残して砕け散り、その飛礫は砲弾に等しい破壊力を秘め、アイザックを襲う!!
376アゼル ◆F/ATTd3VB. :2007/10/02(火) 21:30:25 O
>374>375
自分は何故か空を飛んでいる。
魂の本質が風の精霊である自分なら、風を操って空を飛ぶことも可能だ。
だが、自分は魔物化したルゥと戦っており、空を飛ぶつもりは無い。
ルゥはどうしたのだろうかと辺りを見回すと、アゼルの斜め下で威嚇をしているルゥの姿が見えた。
視線を斜め下のルゥから真下へと移す。
そこにはアイザックと倒れている自分の姿が見えた。
そこでアゼルは自身に何があったか理解する。
ただ単に肉体から本体が叩き出されただけだと。
今のアゼルは肉体を持たない風の精霊。
意思を持った風の力そのものである。
アゼルは肉体のある下へと降りていく。
もし、肉体が完全に機能を停止しているのならば、自分は精霊の国であるアルフヘイムに帰らなければならない。
自身の修行の為に受肉して地上に来たのに、修行の途中でアルフヘイムに帰ったとならば、主のフレイ様から笑われることだろう。
他の精霊達にも笑われるかも知れない。
幸いなことに、アゼルの肉体は完全に機能を失ってはいない。
身に付けていた皮鎧と暴風の力で肉体を強化していたお陰で、傷は脇腹の裂傷とあばら骨が数本折れただけ。
下が砂地であった為に落下による怪我は無し。
体はかなり悲鳴を上げるだろうが、脇腹の裂傷を塞いだら十分に戦える。

アゼルが自分の肉体に戻ろうとした時、ルゥのいる方向から破砕音が聞こえた。
ルゥの方向を見ると、岩の散弾が自分達に向かってやって来る。
このまま岩の散弾がアゼルの肉体に当たれば、確実に肉体はぶっ壊れる。
アルフヘイムに帰ることは確定事項になってしまう。
アゼルは急いでアイザックの前に出て、下から上へと突風を吹き上げさせる。
岩の散弾はコースを反らし、斜め上へと直進していく。
アゼルはこれ以上肉体を放置しておくと危険なので、急いで肉体へと入っていった。
377グラスマン ◆4hcHBs40RQ :2007/10/02(火) 22:34:54 0
>>364>>372
「やば…!」
足元に現れた蟻地獄のような流砂に、向かい来る無数の砂の衝撃波。
グラスマンにとっては天敵のような組み合わせである。
衝撃波を防ごうと竜鱗の呼吸を発動すれば、硬度とパワーに比例して増加する重量によって
あっという間に流砂に沈んでしまう。
かといって竜鱗を使わずに衝撃波を避けようにも、足場のせいで動きが取れない。
素の状態で当たればなます切り間違い無しだ。ピンチである。
しかし。
それらの全てが、ナナミの放った光の奔流によって力を失った。

「何だと!?」
さしものエルガイアも驚く。

>「―――私の見てるところで、そんな魔法が使えるわけないでしょ」
>「あんたはリッチを甘く見過ぎよ。
> 何百年という時間の大半を、魔力の鍛錬と魔法知識の収集にばかり費やしてきたようなヤツに、
> まさか生身のまま魔法で戦いを挑む莫迦が居るなんて思わなかったわ」
「ぬう…!」
戦闘経験の永いエルガイアといえど、リッチの相手は初めてである。
本で読んだ知識で浅く知ってはいたが、ここまでの魔物とは。

「助かったよ、やるなあ、おねーさん。よーし、じゃあこちらも反撃開始と行こうか!」
グラスマンは砂から足を抜き、構え直した。
エルガイアも構えを取る。
「ふん、勝ったつもりか!それならそれでやり方はまだまだあるのだ!」

しかし、次の瞬間グラスマンとエルガイアは同時に意識を他所に逸らすことになる。
378グラスマン ◆4hcHBs40RQ :2007/10/02(火) 22:37:00 0
地面に激突したアゼル。
「アゼル!?」
その音に、グラスマンとエルガイアは同時に目をやった。
倒れていたはずのルゥが消え、代わりに謎の怪物がいて、それにアゼルが吹き飛ばされたらしい。
「な、何だあれは!?」
驚くグラスマン。まさか、あのアゼルが一対一でやられるなど。
「あの砂漠臭…さっきの小娘か!」
「何だって!?」
染み付いた砂漠の臭いで相手を判別できるエルガイアの言う事なので、恐らく間違いはない。
しかし、ならば彼女の身に一体何が起きたというのか?

エルガイアはグラスマンとナナミに視線を戻し、逡巡した。
いくら砂漠のエルガイアといえど、接近戦で鉄の硬度を超えるグラスマンを倒せる道理はない。
『鉄人』、奇しくもエルガイア自身がグラスマンに付けた二つ名であった。
そして、遠距離戦では魔法を無力化できるナナミがいる。
万能怪奇の砂魔術といえど、無効にされてはどうしようもない。破るには今回は準備が足りなさ過ぎる。
かといって肉弾戦で倒そうにも、グラスマンがガードについていてはこちらが返り討ちだ。

この二人を破ったとしても。
ターゲットの『ムルムの砂嵐』があの変化を遂げた状態では、消耗した身で勝つのは難しい。
もはや戦闘継続のデメリットがメリットを大きく上回っている。
エルガイアは殺人のための戦闘を愉しむ性であって、戦闘のための戦闘を愉しむ性ではない。

>「今度はこっちの番!
> ……創傷でそこまでの傷を負った時点で、もうこれを防ぐことはできないけどね!」
その時、ナナミがエルガイアに向けて赤黒いオーラを放った。
呪いのオーラはエルガイアを包み込む。
「ぐはぁっ!」
エルガイアは血を吐き、地面をのたうち回る。
死の呪いが効いたのだ。
「ば、馬鹿な!?この私が、『ワルワの砂荒らし』がこんな事で…っ!」
しばらく転げ回り、そして痙攣しながら喉からひゅーひゅーと音を立てるばかりとなった。
「が……ま」
そして、エルガイアは完全に活動を停止した。
その身は砂となり、さらさらと大地に還っていく。

「勝った…!」
グラスマンは構えを解いた。
しかし、その表情は釈然としていない。
「…勝った…のか?あの男の最期にしては呆気なさ過ぎる…。
いや、今はそれどころじゃないな。おねーさん、お陰で助かったよ、ありがとう!
僕はあれを何とかしてくるから、おねーさんは巻き込まれないように早めに退散しておいてくれ!」
ナナミに言うと、グラスマンはアゼルたちの下へと駆け出した。
379グラスマン ◆4hcHBs40RQ :2007/10/02(火) 22:39:50 0
>>373-376
こちらの戦場では、どうやらアイザックが合流したらしい。
アゼルを庇うように立ち塞がっている。
そのアイザックに向け、ルゥが岩石弾を放つ。その威力はエルガイアの砂の弾丸を更に上回るだろう。
「やばい、間に合わないか!?」
焦るグラスマン。
しかし、その弾丸はふいに軌道を上に逸らし、アイザックとアゼルを避けていった。
「何だ?いや、とにかく助かったな。」
魔力や霊感の類を全く持たないグラスマンには、精霊化したアゼルの姿は見えないのだった。

そして、グラスマンは跳躍する。
アイザックを跳び越し、ルゥとアイザックのちょうど中間に勢い良く落ちてきた。
空中で竜鱗の呼吸を発動し重量を超増量して着地したために、辺りに衝撃と砂塵が舞い飛ぶ。
威嚇のための演出だ。

グラスマンは着地した姿勢のまま、振り向かずにアイザックに言う。
「…アイザック、ご苦労様。アゼルに聞いたよ、エルガイアの化け蛇とやりあったらしいね。
その様子だと勝ったみたいだね、流石だ。お疲れのところ悪いんだけど、もう一つだけ任務を頼む。
アゼルを連れて避難するか、僕と一緒にあいつと戦うか、どちらか好きな方でいい。」

そして、立ち上がってルゥをしっかり見据えた。
ちょいちょいと手招きする。
「事情は分からないけど、喧嘩相手が欲しいんだろ?
見たところ力自慢みたいだけど、そっちが最強の矛なら僕は最強の盾だ。
この『鉄人』グラスマン、退屈はさせないよ。…かかって来い。」

言葉通り本当に事情の分からないグラスマンだが、ライゼの騎士としてあれを野放しにはしておけない。
そして第六遊撃隊隊長として、仲間を傷付けられて黙ってはいられない。
グラスマンは再び息を大きく吸い込み、竜鱗の呼吸を発動した。
380アイザック ◆6GJ7GJlyDU :2007/10/04(木) 17:48:02 0
>375-379
>「ムルム族が自分を鍛えるのは、《狂乱》の呪いに打ち勝つためだがな…それだけじゃねぇ、
> あの呪いに『負けた』ヤツを倒すためでもあるんだ、正直言ってテメェじゃあ無駄死にだぞ!?」
散々な言われようだが、初めから退くつもりなどない。
恐怖を感じていないから、だけじゃないのは自覚している。では何か?
「……甘く見られたものだ。
 無駄かどうか、よく見ておけ……。」
元々は負けず嫌いだったアイザック。
気づいたら火がついていた、のかも知れない。

>岩は半分を残して砕け散り、その飛礫は砲弾に等しい破壊力を秘め、アイザックを襲う!!
相手も自分を見くびっている。これがその証拠だ。
わざわざ相手をするまでもない……そんな、嘲りにも似た気配を感じた。
……アイザックは、あえて真正面から受け止めようとした。
動けば背後のアゼルにとって止めとなってしまうし、
避け切れない速度の攻撃を無理に避けようとして体勢を崩すなど以ての外。
かつて盾だったもので顔を庇い、岩礫を待ったが……

>アゼルは急いでアイザックの前に出て、下から上へと突風を吹き上げさせる。
>岩の散弾はコースを反らし、斜め上へと直進していく。
突風が礫を全て逸らした。無風状態だった事を考えるとあまりにも不自然。
となれば、考えられることは一つ。
「……アゼルか。」
横目でちらりと見た限りでは先ほどよりも心なしか血色が良くなった様に見えた。
力を使った以上、目覚めはそう遠くないだろう。
……魔法的な才も身体的な才もない、凡庸な存在であるアイザックに
魂そのものとも言える精霊状態のアゼルが見えるわけがないのだ。
見えたからと言って、何が変わるわけでもないが……。

>「…アイザック、ご苦労様。アゼルに聞いたよ、エルガイアの化け蛇とやりあったらしいね。
> その様子だと勝ったみたいだね、流石だ。お疲れのところ悪いんだけど、もう一つだけ任務を頼む。
> アゼルを連れて避難するか、僕と一緒にあいつと戦うか、どちらか好きな方でいい。」
グラスマンの言い草は任務を言い渡す……命令とは程遠いものだった。
どちらか好きな方でいい……ではなく、どちらかをきっぱりと言い切るべきだったのだ。

>見たところ力自慢みたいだけど、そっちが最強の矛なら僕は最強の盾だ。
「……盾では槍は折れない。柄を折る斧が必要だ……。」
呟きつつ、ゆっくりとルゥだったものへと近づいていく。
……その顔に、この任務で初めて何かの感情を浮かべながら。
「隊長……後は、お任せします。」
盾を投げ捨て、振り向かないままグラスマンに語りかけ……
次の瞬間、剣を腰の高さでルゥに向けながら走り出した。
381ルゥ ◆c8mKoM5yZ6 :2007/10/04(木) 20:00:33 O
>岩の散弾はコースを反らし、斜め上へと直進していく。
思った通りだった。やはりアイザックも風のバリアを持っている。
『獣』はそれを確かめるために、飛び道具(?)を使ってアイザックを攻撃したのだ。
どうやらコイツも風のバリアを標準装備しているらしい。
ならば迂闊に近付くのは危険だ。かといって近付かないと話にならない。

『少し賢い野生動物』程度の知能しか無い『獣』は、勘違いをしてしまった。
当然ながらアイザックは風を操る魔法を使えない。使ったのはアゼルだ。
しかし『獣』には精霊状態のアゼルを視認出来ない。更にアゼルは倒れたままだったからだ。
だから『獣』には盾を構えたアイザックが、風を操ったように見えたのである。

そしてもう一人の乱入者、グラスマン。コイツも風を操るのだろうか?
>「事情は分からないけど、喧嘩相手が欲しいんだろ?
>見たところ力自慢みたいだけど、そっちが最強の矛なら僕は最強の盾だ。
>この『鉄人』グラスマン、退屈はさせないよ。…かかって来い。」
明らかな挑発だったが、言葉を理解する知能すら存在しない『獣』に意味は通じない。
しかしグラスマンの発する『やる気』は、しっかり伝わったようだ。
遂に『獣』は考えるのを止めた。結局は力任せなのだから正しい判断といえる。
風のバリアを破る方法も、さっきの激突で『学習』済みだ。相討ち狙いで潰せばいい。

何も考える必要は無い、力が力を捩じ伏せるだけだ。
至極単純な結論。だからこそ『獣』は強い。

>「……甘く見られたものだ。
> 無駄かどうか、よく見ておけ……。」
「ぐお!?やっぱりコイツ分かってねーよ!!オレが言いたいのはそうじ…ッ!!」
飛んで来る岩石弾を見て、ムタは言いかけた台詞を飲み込んだ。
このままだと直撃コースなのは間違いない。なのにアイザックは壊れた盾を構えた。
しかしいつまで経っても岩石弾は当たらない。アゼルが軌道を逸らしたからだ。
『獣』とアイザックのちょうど中間に勢い良く落ちてきた人物が、背を向けたままで
アイザックへと話し掛けた。
>「…アイザック、ご苦労様。アゼルに聞いたよ、エルガイアの化け蛇とやりあったらしいね。
>その様子だと勝ったみたいだね、流石だ。お疲れのところ悪いんだけど、もう一つだけ任務を頼む。
>アゼルを連れて避難するか、僕と一緒にあいつと戦うか、どちらか好きな方でいい。」

アイザックに指示を出したという事は、この男が『合流する予定の隊長』らしい。
ムタはアイザックの肩から飛び降りると、グラスマンに向かって怒鳴った。
「テメェがこのアホタレの面倒見てんのか!?だったら今すぐ全員連れて逃げろ!!
アレは『普通の人間』がどうこう出来るような相手じゃねーんだよ!!」
グラスマンが『普通の人間』ではないと、ムタは知らない。
いや、グラスマンだけではない。第六遊撃隊の面々は、皆『普通の人間』ではないのだ!
382ルゥ ◆c8mKoM5yZ6 :2007/10/04(木) 20:02:10 O
>「……盾では槍は折れない。柄を折る斧が必要だ……。」
そう言い残してアイザックが『獣』へと歩いて行く。次第に歩みは走りに変わり、
>「隊長……後は、お任せします。」
>盾を投げ捨て、振り向かないままグラスマンに語りかけ……
>次の瞬間、剣を腰の高さでルゥに向けながら走り出した。

「おいおいおい…マジかよ!!」
走り出したアイザックを、信じれないといった感じでムタは呆れた。
と同時に、そんな無謀ともとれる行為が羨ましかった。
信念が彼等を奮い立たせるのか、それとも別の『何か』なのか…。
グラスマンが戦う気でいるのは分かる。彼は事情を知らないからだ。
だがアイザックはどうか。彼は事情を知っている。自分が『何』に戦いを挑んでいるのかを!!

「グルルルルアアアアアアアアアアアアッ!!!!!」
走って来るアイザックを迎え撃つため、『獣』も拳を固めて勢いよく駆け出した。
先程までと比べて、更に速い。いよいよ呪いは『次の』段階に差し掛かろうとしているからだ。
「テメェら全員アホばっかだ!!だったらオレもアホになってやらあ!!!」
ムタは力の限り叫んだ。一刻も早くこの場から逃げ出したい衝動を堪えて叫んだ。
「チクショーッ!!『右肩』だ!!そこを狙いやがれッ!!!絶対に外すんじゃねーぞ!!!!」
383ナナミ ◆LV/6jLYLCk :2007/10/05(金) 03:27:36 0
エルガイアのあっけない最期に、ナナミは苛立ちを覚えた。
「……ただ死ぬくらいで済ませると思ったら大間違いよ。後で見てなさい」
ナナミはそう吐き捨てて踵を返し、グラスマンが相手をすると宣言した、あの獣を見据える。
普通、リッチは殺した相手をその場でアンデッドにして自分に従わせ、魂を半永久的に支配する。
リッチが恐れられるのは、こいつらに殺された場合、ただ死ぬだけでは絶対に済まないからにほかならない。
まだ善良なナナミにしても、悪逆非道な輩や聖域を侵す不届き者に然るべき罰を与える意味で、必ず上記の仕打ちを強いる。
が、今は目の前の事象に対処しなければならない。
見るからにヤバそうな獣が近くに居ては、アンデッド・コントロールに精神を集中することもできない。
「で、何よあれ?」
ナナミは身構えた。身構える、といったこと自体が久しぶりだ。

「ディフェンスに定評があるのは、あんただけじゃないのよ!」
更に守りを固めるべく、彼女は手印を切り、空に魔法陣を描く。
彼女の周りに護法のルーンが飛び交い、物理的な障壁を作り出す。
これは広範囲をカバーするための障壁だ。前に突っ込んでいった無謀な者達の生存率を少しでも上げることを目的としている。
普段は障壁など張らなくても大抵の攻撃(特に魔法)は無効化するか、相手が攻撃する前に仕留めている。
障壁、それも見たところ凄まじいパワーを秘めている野獣の攻撃を防ぐための壁を作るなどという、慣れないことをするのは疲れるのだ。
現に人間の姿が保てておらず、本体の骸骨が透けて見える。
閉じる瞼は既に無いので、彼女は心を無心にし、ただ障壁を維持するために精神を集中している。
>「チクショーッ!!『右肩』だ!!そこを狙いやがれッ!!!絶対に外すんじゃねーぞ!!!!」
反射的に右肩を見た。リッチの視覚は多分に魔法的だ。実体は骸骨なので、視神経は元より通っていない。
「な、何よアレ!?」
どうやらナナミですら見たことの無いようなものが見えたようだ。
384アゼル ◆F/ATTd3VB. :2007/10/05(金) 08:28:08 O
>377-383
アゼルは肉体に宿った。
背中がヒリヒリと痛い。
脇腹は熱さ以外は何も感じない。
腹の奥はズキズキと痛む。
ダメージは見てる以上に大きかった。
アゼルは右手に自身の魂から作り出した癒しの風を集め、傷口のある脇腹に添える。
魂の方はまだまだ元気だが、肉体の方は限界に近い。
アゼルは目を閉じて、仰向けのまま肉体を落ち着けながら治療に集中する。
脇腹の裂傷を治療するにはまだまだ時間が必要だ。
385ルゥ ◆c8mKoM5yZ6 :2007/10/05(金) 20:44:56 O
>>383
>「な、何よアレ!?」
ナナミが驚くのも無理はない。『獣』の右肩に在ったモノ…それは桁外れの怨念だ。
死と転生、魂と構成に精通するリッチだからこそ『見えた』のだ。
禍々しい障気を放つ1枚の鱗。他の鱗よりも大きなそれが、『獣』の正体だった。
「《狂乱》が始まったら最初に『逆鱗』が現われるんだ!!そいつをブッ壊したら《狂乱》は止まる!!!」
ムタは周りの全員に聞こえるよう、声を張り上げる。これは賭けだ。
止まると言ったものの、今回は呪いが進行し過ぎている。確実に止まる保証は全く無い。

ムルム族の《狂乱》が発生すると、身体のどこかに必ず1枚の鱗が生える。
この鱗がエルダードラゴンの魂であり、『呪い』の本体だ。
この段階ではまだムルム族は自身の意識を失うことはない。外から『逆鱗』を
攻撃することで、強制的に《狂乱》を停止させる事も可能だ。
ムルム族が防具を身に着けないのは、この理由からだ。
発生と同時に即停止させる事が出来れば、仲間を殺さずに済む。
一刻も早く『逆鱗』を見つけなければ…次の段階へ進む。
次に逆鱗の周囲から次第に肌が黒く染まり、あちこちに鱗が生え始める。
この段階で初めて『獣』の意識がムルム族を乗っ取るのだ。
『獣』はそのムルム族の持つ闘争本能が暴走したもので、厳密には龍の意識ではない。
ここまでが『助かる可能性』があると言われている範囲だ。

更に段階を経て、次に髪が伸び、眼が変化する。筋肉も増大し、『獣』の本質に近付く。
本人の意識はほとんど消えており、『獣』はその身体を本格的に乗っ取り始める。
今のルゥがまさにこの状態だ。そして次の段階で初めて『獣』を押し退け『龍』が姿を現す。
背を破り翼膜が迫り出し、鱗は全身を覆い尽くし、爪は鋭く尖り、ドラゴンの意識が甦るのだ。

限定条件によって転生の器を絶さぬよう、永遠に支配する呪いの連鎖。
エルダードラゴンの呪いは、条件を満して解除しない限り決して消えることはない。
例え《狂乱》を停止させても、それは一時的な処置に過ぎないのだ。
ムルム族は幼少時から厳しい鍛錬を重ねて、呪いと戦う準備を済ませる。
《狂乱》は二十歳を迎えると発生率が爆発的に増大し、上記の処置でも防ぐのは難しくなる。
発生率が低い未成年の間に、来るべき試練に備えなければならないのである。
これが『成人の儀式』の真相だが、成人には別の意味合いもある。
呪いを解かないとムルム族は『子を孕むことも孕ませることも』出来ないのだ。
親となるには儀式を完遂し、呪いを解いた者でなければならない。

今年の儀式に挑んだのはルゥだけだった。
子の数は減り続け、やがては滅びる宿命の蛮族…それがムルム族なのである。
386グラスマン ◆4hcHBs40RQ :2007/10/06(土) 01:08:38 0
>>380-383
>「テメェがこのアホタレの面倒見てんのか!?だったら今すぐ全員連れて逃げろ!!
>アレは『普通の人間』がどうこう出来るような相手じゃねーんだよ!!」
「ん?」
聞き慣れない声にグラスマンは思わず竜鱗の呼吸をやめ、振り返った。
声の主はリスのようだ。口振りからして関係者らしい。
「…たはは」
グラスマンは苦笑する。
「逃げたいのも山々なんだけど、普通の人間がどうこう出来ない相手をどうこうするのが僕達の仕事でね。」

リスと話しているうちに、アイザックがグラスマンの横を通り過ぎた。
>「……盾では槍は折れない。柄を折る斧が必要だ……。」
>「隊長……後は、お任せします。」
「え?」
グラスマンが振り返ると、アイザックは既に走り出していた。
「お、おい!無茶はするな!」
グラスマンは慌てて後を追おうとするが、敵の攻撃から守るにはとても間に合いそうにない。
しかし、その時だった。

>「ディフェンスに定評があるのは、あんただけじゃないのよ!」
ナナミの声とともに、広範囲に障壁が発生した。
「おねーさん?」
グラスマンは振り返る。
てっきりエルガイアを倒したら用無しとされると思っていたが、これは心強い。
「『月夜の巫女』がサービス残業までしてくれるとは助かるよ。しかし…」
骸骨のようなナナミの姿に少し言葉を失ったが、今は気にしている場合ではない。
「…いや、何でもない。できたらそこで傷付いて寝てるエルフの面倒も見てやってくれ!行くぞ!!」
掛け声とともに、グラスマンはアイザックを追うように駆け出した。
「リス君、右肩を狙えって言ってたっけな。よし!」
387アイザック ◆6GJ7GJlyDU :2007/10/07(日) 19:01:04 0
>381-386
>走って来るアイザックを迎え撃つため、『獣』も拳を固めて勢いよく駆け出した。
>先程までと比べて、更に速い。いよいよ呪いは『次の』段階に差し掛かろうとしているからだ。
全てが遅く感じる。猛スピードで突進してくる相手も、
それに向かって走っている自分自身も亀の歩みよりも遅い、と。
「……。」
何度か経験した感覚。そう、これは……『死』が近い証。
人は『死』が迫ると己の半生を一瞬の間に振り返ると言う。
振り返っている間、時の流れが遅く感じられるのだとか。
……アイザックに、振り返る半生などもはやない。
ならば何故、そんな感覚に陥っているのか……?

>「ディフェンスに定評があるのは、あんただけじゃないのよ!」
>「チクショーッ!!『右肩』だ!!そこを狙いやがれッ!!!絶対に外すんじゃねーぞ!!!!」
>「《狂乱》が始まったら最初に『逆鱗』が現われるんだ!!そいつをブッ壊したら《狂乱》は止まる!!!」
次々と聞こえてくる怒声の意味を考えている余裕も、ない。
自らの手で賽を投げたのだ、待ったと言って止められる段階はとうに越えたのだ。
「右肩……ランスで傷つけられた場所。そこが、弱点なのか……。」
刻々と迫り来る相手の右肩には、確かに一際大きな鱗が見えた。
だが考えて欲しい。龍鱗を砕けるほどの力が、アイザックにあるのかと言う事を。
……アイザック『一人』では不可能だ。ならば、どうしようと言うのか?

アイザックは剣を左手に持ち替え、右手の甲を剣の柄につっかえとして掛けた形で
龍へと突き出した……同時に、龍の拳が問答無用で胴体へと打ち込まれるのを覚悟の上で。
エルガイアと戦っていた巫女の張った防御結界もこの暴力の前には気休めにしかならないだろう。
388ルゥ ◆c8mKoM5yZ6 :2007/10/08(月) 19:36:36 O
>>387
『獣』の拳がアイザックを捉えた、その瞬間バキバキと音を立て、血が飛び散った。
肉が裂け、骨が砕け、突出した拳は薄い硝子のような壁に阻まれたのだ。
ナナミがアイザックの周囲に張り巡らせた防御隔壁は、想像を超える強度を持っていた。
右腕が肘まで『縮み』、『獣』は体勢を崩す。そこにアイザックの剣が風を切って突き進む。
ヂッ!!切っ先が逆鱗を掠める。浅かったが、逆鱗にはくっきりと傷が入っている。
「グォオオオアアアアアアあああああああああぁーッッ!!!!!」
堪らず『獣』は後退するが、かなりのダメージなのだろう。足はもつれ、動きが鈍い。
傍目には大した傷ではないのだが、逆鱗への攻撃はドラゴン種にとって必殺の一撃となる。
逆鱗はアイザックの予想より遥かに脆かった。

比類無き超生命体であるエルダードラゴンの、唯一の弱点。
竜との戦いを題材にした数多くのサーガにも、竜の弱点は逆鱗であると記されている通り
この『獣』の弱点もやはり逆鱗なのである。形こそ呪いによる転生だったが、龍は龍なのだ。
その莫大な魔力と生命力の根源を失えば、《狂乱》を持続させる事も不可能となる。

「やったか!?………クソッタレ!よくわかんねぇ!!」
ムタは『獣』から2m程離れた所まで駆け寄って《狂乱》の停止を確かめる。
「油断すんじゃねーぞ、今のは結構浅かったからな。まだ元に戻っ…??」
跳ね起きると共に、凄まじい速度で振り抜いた手刀がムタの身体を両断した。

足りなかった。
アイザックの攻撃では、まだ『獣』を止めるには僅かに足りなかった。
チャンスを逃したのは痛い。『獣』は学習した。やはりバリアを持っていると。
流石にここまでの痛手を負えば、いくら動物並みの知能でも警戒を始めるだろう。
そしてその分時間が過ぎれば、『龍の呪い』は完全に侵蝕を終えて…《砂龍ガラテア》は甦る!!
389ナナミ ◆LV/6jLYLCk :2007/10/08(月) 20:32:55 0
「月さえ出てれば、このまま大人しくさせることくらいはできそうだけど……」
ナナミのような月の神の巫女は、魔物を鎮めるために祈祷を生業としているのだ。
月、特に満月が出ているときは、神々や魔物を鎮めるための祈祷を効果的に行うことができる。
こと、このように、本能の赴くままに暴れる獣には効果的だ。
だが、月の魔力も何もない昼間には、この祈祷の効果はほとんど発揮されない。
つまり、今の状態では目の前の相手を鎮静化することはできない。
「まだよ!今度は一気に決めて!よく狙って!」
再び反撃を開始する前に、できるだけ有効な打撃を与えるには、防壁を張るよりも呪縛で動けなくした方が効果的だ。
『逆鱗』なんてものがある時点で、おそらくはヤツはドラゴンか何かだ。
ドラゴンといえば最強の魔獣だ。『普通の』リッチであるナナミでは分が悪い。
だが、向こうはまだ不完全な状態。
エルダードラゴンは最強の魔獣ならば、完全なリッチも最強のアンデッドだ。
ナナミはリッチとしては不完全(4段階のうちの2段階目)だが、不完全なのは相手も同じ。
少なくとも彼女はそう思っているので、一か八かの呪縛の術を試みた。
相手が不完全ならば、まだ呪縛の効き目はあるはず!
あのパワーを防壁で防ぐことを思えば、こちらの方が効果が期待できそうだ。

「そういえば、『逆鱗』って触るとヤバいのでは……」
東洋の諺には『逆鱗に触れる』というものがある。西洋ではどうだか知らないが。
東洋においては、ドラゴンは逆鱗を触られるととても怒り、触った人を必ず殺してしまうのだと伝えられている。
390アゼル ◆F/ATTd3VB. :2007/10/08(月) 21:25:08 O
魔物化したルゥの悲鳴が聞こえ、アゼルは上体を少しだけ起こし、今の戦況を確認する。
リスが両断される姿が見えた。
あの喋るリスはルゥと共に行動していた。
そのリスをルゥは躊躇いもせずに殺してしまう。
リスが言っていたように狂乱してたとはいえ、あっさりと殺す様を見てしまうと、アゼルの心は悲しくなった。
そして、魔物化したルゥを止めると決めたのに、止めるどころか動けない自分に怒りが沸いてきた。
だが、今の自分には傷の治療以外にできることは無い。
治療をしないまま迂濶に動いてしまえば、大きく開いた脇腹の傷口が拡がり、更に血が漏れてしまう。
今の状態でさえ血が足りなくて気分が悪いのに、これ以上出てしまうのならば、確実に貧血で倒れてしまう。
そうなれば戦うどころか、味方の足を引っ張ってしまうだけだ。
アゼルは隊長達がルゥを止めてくれることを信じ、再び目を瞑って傷口の治療に専念した。
391グラスマン ◆4hcHBs40RQ :2007/10/09(火) 22:21:19 0
>>368
「いい仕事だよ、アイザック!」
駆けてきたグラスマンが敵の正面に躍り出る。
「さーて、仕上げと行こうか!何とか抑え込むからもう一撃だけ頼むよ!」
大きく息を吸い込むグラスマン。
さらに吸い込み、さらにさらにさらにさらに吸い込み続ける。
吸い込んだ分、その上半身はどんどんと膨れ上がっていく。


竜鱗の呼吸には、5つのレベルが存在する。(名称と硬度は一致するわけではない)
Lv.1ロックマン。Lv.2ブロンズマン。Lv.3アイアンマン。Lv.4ダイヤマン。
そしてLv.5オリハルコンマン。
レベルを上げるごとに硬度と重量、それらを扱うパワーも比例して増加していく。
中でもLv.5のオリハルコンマンの硬度は凄まじく、
その硬度を破れるモノと対決することは一般レベルではまずないため、これ以上のレベルの存在は必要ない。

…というのが、この技の原型を教えた彼の先生の言葉である。
しかし、グラスマンはもうひとつ上のレベルを極めていたのだった。


グラスマンの吸気が止まった。
「ふっ!!」
腰を落として思い切り気合いを込める。
膨らんでいた上半身が一瞬にして元に戻り、溜め込まれた大量の空気が一気に全身を駆け巡る!
有り余るエネルギーは全身に高熱を与え、蒸気が全身から立ち上る。
完成したのは、オリハルコンマンをさらに凌ぐグラスマン最強の戦闘形態。
竜鱗の呼吸Lv.MAX、ドラゴスケイルマン!!!!

「…さて。」
硬度と重量に縛られたぎこちない動きで、グラスマンは構えた。
元々燃費の悪い技なので、あまり悠長には構えていられない。

ドラゴンが加速度的に強くなってきていることは、グラスマンも気付いていた。
このまま時間が経てば、すぐに自分の全く手の届かない次元にいってしまうであろうことも。
しかし、今ならまだギリギリ叩ける。
自分の速度ではさすがに庇うであろう弱点の右肩を捉えきれないだろうが、
注意を逸らして動きを封じれば、後はアイザックが決めてくれるはずだ。
最強硬度による攻撃力と防御力で、ドラゴンに挑むはノーガードの足を止めての乱打戦!!

「いくぞ!」
グラスマンは全身の関節を総動員して拳の速度を上げ、ドラゴンの全身に乱打攻撃を浴びせかける!
392アイザック ◆6GJ7GJlyDU :2007/10/09(火) 22:48:07 0
>388、>391
>ナナミがアイザックの周囲に張り巡らせた防御隔壁は、想像を超える強度を持っていた。
>右腕が肘まで『縮み』、『獣』は体勢を崩す。そこにアイザックの剣が風を切って突き進む。
色々な意味で予想外、と言わざるを得なかった。
多少値が張る程度の、魔法で強化されてるわけでも強力な金属で
出来てるわけでもない普通の剣で龍に傷を付けられた事も、巫女の防御障壁を
打ち抜くことが出来なかったのも……変態が終わってない内は脆いらしい。
「……。」
ムタが近寄って確認している……次の瞬間、ムタは二等分されてしまった。
手応えがなかった事を鑑みれば至極当然なのだが、まだ足りないようだ。

「なら……収まるまで付き合ってやるよ。」
逆鱗を剥がし、この戦いを終わらせる。
その為にすべき事……まずは、龍の動きを止める事だ。
どう動こうとも反応できる様にしながら、ゆっくりと龍へと歩み寄っていく。
龍は自分を警戒している、その隙をグラスマンが突けばと考えていたが……

>「さーて、仕上げと行こうか!何とか抑え込むからもう一撃だけ頼むよ!」
「……了解。」
グラスマンは全力を以って龍を抑え込む腹積もりの様だ。
命令と言う形で止めを任された以上、無様な姿は晒せない。
ガードがこじ開けられ、逆鱗が露出した一瞬を狙うことにした。
じりじりと巻き込まれないように周囲を移動しながら独特の構えを崩さずチャンスを待つ。

「(……突き、か。この構えを取るのも久しぶりだ。
  こうなると分かっていたなら、エストックも持ってきたものを……。)」

アイザックが一番得意とするのは実はレイピアの類だ。
技を磨けば非力でも致命傷を負わせられる、刺殺攻撃のみに特化した武器である。
しかし、その取り回しの難しさから刻一刻と状況が変化する遊撃隊任務には
向かないと判断して長いことレイピアを握っていないのだがそのレイピアの修練が
こんな所で役に立つとは……苦笑いで顔が歪んだ。まだまだ読みが甘い、と。
393ルゥ ◆c8mKoM5yZ6 :2007/10/11(木) 11:20:33 O
ルゥは何やってンスか?めちゃめちゃ全身が痛いッスけど…。
てゆーかココはドコ?なんか寒いし、真っ暗だし、心細いッス……。
…ん?何スか、アレ。明かりッスかね?
よくわかんないけど…こんなトコ居たくないし、行ってみるッスか。


そこは闇だった。ルゥの精神に潜む、業の闇。
明かりと思ったのは、明かりではなく…怒り狂う龍の魂の輝き。
「ゴアァアアアアアアアアッ!!!!!」
250年もの間、己を殺した5人の末裔を、一瞬たりと許すこと無く猛り狂う呪い。
その根源を前にして、ルゥは言葉を失った。あまりにも巨大、あまりにも莫大。
「………誰ッスか?」
やっと搾り出した声は、場の空気をぶち壊しにする。
恐ろしくない訳ではない。両足は震えが止まらず、今にもへたれ込みそうだ。
「グゥウ……。」
呪いはルゥの存在に気付き、灼熱の如く紅い眼を向けた。
「え〜…っと、こんにちはッス。」
恐る恐る手を上げて挨拶するルゥに、呪いは牙を剥いて吠えた。
「ゴルァアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアッ!!!!!!!」
「はわわっ!?何スか!?やっぱり真っ暗だから『こんばんは』だったんスかーッ!?」
この場にノリの良いツッコミ役がいたら、間違いなくルゥは頭を叩かれているだろう。


ナナミが放つ呪縛の魔法が『獣』を捉えた。しかし『獣』は全く動きを止めない。
『呪い』の上から『呪い』を『上書きする』には、ナナミの魔力では届かなかったのだ。
だが、不完全ながらも、呪縛の効果は現われた。『獣』の右腕が再生を止める。
2種類の『呪い』が干渉した結果、一時的に龍の呪いは力を弱めたのである。
リッチの魔力だからこそ発生した呪法間干渉、並みの魔法使いには到底不可能な荒技だ。
そしてその結果は、呪縛による拘束よりも『獣』にとって脅威だった。

ダメージを回復出来ない。武器は己の四肢のみという『獣』には致命的な効果。
右腕は潰れたままで戦わなければならなくなったのは厳しい。
更にアイザックを仕留め損ねたのも、今となっては重大な失点だ。
まっすぐに逆鱗を狙ってきた。つまりヤツは逆鱗が弱点だと『知っている』に違いない。
見れば剣を構え、こちらの隙を探っている。
待っているのだろう、『もう一人』が作るであろう『隙』を。

394ルゥ ◆c8mKoM5yZ6 :2007/10/11(木) 11:22:27 O
その『もう一人』が、準備を済ませたらしい。身体からは闘気が溢れ、いかにも強そうだ。
『龍鱗の呼吸』の最終形態、奇しくも相対するは『本物の龍』。
激突が始まった。
どちらが先かは判らない。しかし身体と身体の激突は確かに始まったのだ。
互いに足を地に踏み降ろし、一切の守りを棄てた殴り合い。あまりにも単純な結論。
だが、『どちらが強いのか?』それを確かめる方法としては、最も適した『結論』だった。


ナナミの魔力によって一時的に弱まった呪いだが、徐々に本来の力を取り戻しつつあった。
既に激突は2分を経過した。グラスマンの最終形態は確かに攻防共に優れている。
だが、その防御力故に身体の関節可動域は大きく制限を受けるのだ。
超硬質化した身体を動かすのに必要な体力は、とうに底を尽いたも同然。
また、『獣』も無尽蔵の体力を持っていても、鉄人の防御力の前に苦戦を強いられた。
いくら体力が続こうとも、相手にダメージを与えられないと意味が無い。
グラスマンの攻撃力の高さも厄介だった。『攻撃は最大の防御』を地で行く男。
『獣』にとって一番苦手な部類に入る存在。同じ力任せだが、何か違う存在。

死力を尽くす戦いの最中、『獣』は『鉄人』に対して奇妙な親近感が芽生えていた。
そして遂に、2体の激突に終りが訪れた。
先に体勢を崩したのは『獣』だった。凄まじい衝撃を耐え続けた両足が、限界に達したのだ。
ナナミが引き起こした呪法間干渉が無ければ、負荷に耐えることも出来ただろう。
しかし、再生が追い付かなかった。とうとうグラスマンの攻撃が『獣』の耐久力を上回った。
堪らず後退する際に、『獣』の右肩がピッタリとアイザックの正面を向いた。

この機会を逃せば次は無い。
グラスマンも限界である。もうこれ以上『獣』を押さえ込む事が出来る者はいないのだ。
『絶対に外してはならない』一撃、この戦いの決着となるそれが、今アイザックに託された。
395名無しになりきれ:2007/10/11(木) 16:13:35 0
世界はどうなる?
396グラスマン ◆4hcHBs40RQ :2007/10/11(木) 22:40:00 0
>>394
ライゼ王国城下町、とある鍛冶屋。
第六遊撃隊御用達。
「ゲンさーん、ヌコが来たニャ。」
「ん?」
鍛冶屋ゲン・カツギは、鉄を打つ手を止めて来客に顔を向けた。
やって来たのは、猫目と八重歯が印象的な小柄な少女。猫系亜人とのクォーター、第六遊撃隊隊員ヌコ・ノーネームだ。

「ヌコか。今日は遊んでやれねえぞ。」
「今日は違うである、隊長に頼まれてたお使いニャ。これを売りに来たのだ。」
ヌコは牛乳瓶を取り出し、蓋を開く。
瓶が一瞬輝き、中から1m程のいびつな金属の塊が飛び出した。
「ほう…?」
ゲンは立ち上がってそれに歩み寄り、顔を近付けて嘗め回すように眺める。
「…こりゃシュプール鋼じゃねえか。純度も高い。よくこんなに大量に手に入ったな。」
「前の任務で出てきたでっかいゴーレムを隊長が『丸めた』ニャ。ホントはこの倍くらいあったのだ。」
両腕を広げて大きさをアピールするヌコ。
訝しげな目を向けるゲン。
「は?丸めた?鋼鉄より硬いシュプール鋼のゴーレムを?どんな道具を使ったって言うんだよ。」
「道具もマタタビも何も、これだけである。」
ヌコは拳を握り、もう片手でそれを指差してみせる。

「ドラゴスケイルマンのパワーの前では、シュプール鋼だって粘土みたいなもんなのだ。」

-------------------------------------------------------------------------------

「っおおおおおっ!!」
足腰を踏ん張り、関節駆動で速度と体重を乗せ、左右交互に繰り出す遠心力も利用して殴る殴る。
対する敵はと言うと、こちらも足を止めての乱打戦に応じてきた。
互いにノーガード、そして相手がこの相手でなければ一撃必殺の威力。
一歩も譲らない激しい殴り合いだ。
「へへっ、言っちゃいけないんだけど、楽しいな!
本気の本気で喧嘩が出来る相手になんて滅多に出会えないからね!あんたもそうだろおっ!」
死力を尽くす戦いの最中、『鉄人』は『獣』に対して奇妙な親近感が芽生えていた。

超硬度・超重量・超パワーを誇るドラゴスケイルマンは、
発動中は攻撃を受けても何もないかのように完全に無視して一方的に攻撃できる程の性能を持つ。
はずなのだが、その重さ数トンにも及ぶドラゴスケイルマンが、
さっきから敵の攻撃で普通の人間のように仰け反ったりノックバックしている。
(こいつ、何てパワーだ…こりゃ一瞬でも鉄化を緩めたら即死するぞ。)
しかし、既に体力も呼吸も活動限界を超えている。いつ効果を切らしてもおかしくない状況だ。
「でもあんたもそろそろ限界だろ!どっちが先に根をあげるか勝負だ!らあああっ!」

たった2分ほどの、しかし永遠とも思えた殴り合い。
その終わりはついに訪れた。蓄積したダメージに敵が体勢を崩したのだ。
「っぷは!」
それを確認したグラスマンは息を吐き、膝をがくりとついた。
「げほげほ!い、今だアイザック、頼む!」
397アイザック ◆6GJ7GJlyDU :2007/10/11(木) 23:31:04 0
>393-394、>396
>ダメージを回復出来ない。武器は己の四肢のみという『獣』には致命的な効果。
>右腕は潰れたままで戦わなければならなくなったのは厳しい。
先程まで見せていた再生能力が、何故か突然発揮されなくなった。
術的素養など欠片も持ち合わせていないアイザックには、それが
ナナミの仕業だと分からなかった。だからこそ、警戒する。
「(……回復・防御を捨てて、一撃必殺の為の力を蓄えているのか……?)」

しかしそれはただの考えすぎだった事をすぐに思い知る。
グラスマンと龍の足を止めての殴り合いがその証拠だ。
永遠にも感じられるほどの、実際は2分程度しか経過していない格闘戦の
勝者は……グラスマンだった。圧倒的な拳の弾幕が龍の堅牢な肉体と精神に
命の危険を植えつけ、龍をたじろがせた。その動きのさなか、『逆鱗』が
真正面に晒されたのをアイザックは見逃さなかった。

>「げほげほ!い、今だアイザック、頼む!」
「了解……。」
誰の目から見ても絶好のチャンス、ましてや直接殴りあった
グラスマンから見れば付け入る隙そのものである。気力はともかく、
体力が充実していたならば確実に畳み掛けていただろう……それほど、
この肉弾戦が苛烈なものだったと言うことでもある。


     ……さようなら、だ。


レイピア特有の、瞬発性だけを求め洗練された構えから
一気に踏み込み、両手で剣の柄を握り瞬間的突進力を、手に、剣に
伝え『逆鱗』めがけて突き出した。その突きの切っ先は寸分違わず『逆鱗』の
中心に突き刺さり、それを真っ二つに割って、向こう側へと貫通した。
そう、第十七騎士団によってつけられアゼルが治し塞いだ傷をもう一度付けたのだ。
398ナナミ ◆LV/6jLYLCk :2007/10/14(日) 02:41:03 0
呪縛が効かないとなると、この局面で有効そうな魔法のネタは撃ち尽くした。
マジック・ミサイル(衝撃波)や魔法の矢(光線)といった攻撃魔法はいくらでもあるが、多分狙ってない人にも当るだろう。
衝撃波なんてピンポイントに肩だけ狙うのには向いていない。
相手を警告なしで射殺しても大丈夫な状況であれば、まだ殺人用の術が幾つかあるが、どうやらそういうことは非推奨のようだ。
(落ちつけナナミ、冷静になるんだ。そうよ、ここはクールになって策を練らなきゃ駄目よ)
リッチの習性。それは時間を無駄使いする傾向にあることだ。
奴等はもはや死に怯える必要が無いので、限られた人生を上手く生きようとか、そういったことは絶対に考えない。
そのため、邪悪な陰謀を練るときなどは、何百年も計画練ったまま実行しないことも多々ある。
そして、その何百年分の陰謀を世間にぶつけて、目も当てられないような大惨事を起こしたりする。
だが、ナナミは目的はあっても邪悪な野望などは無いし、リッチとしてはかなり頭の悪い部類に入る。
そのため、戦闘であっても、このように思慮に時間を費やすことがある。
399ルゥ ◆c8mKoM5yZ6 :2007/10/15(月) 00:55:41 O
>>397
>レイピア特有の、瞬発性だけを求め洗練された構えから
>一気に踏み込み、両手で剣の柄を握り瞬間的突進力を、手に、剣に
>伝え『逆鱗』めがけて突き出した。その突きの切っ先は寸分違わず『逆鱗』の
>中心に突き刺さり、それを真っ二つに割って、向こう側へと貫通した。
その瞬間、『獣』が纏う怨念の障気が霧散した。
割れた逆鱗が砕け散り、ほぼ全身を覆う鱗も消えて、肌の色も褐色に戻った。
肩口から鮮血が滴りアイザックの剣を赤く染める。
戦いは終わった。確かに終わった。
もうルゥからは『獣』の気配は全く感じられない。《狂乱》は完全に停止したのだ。

断末魔の叫びすら無い、呆気ない最期だったが、油断は出来ない。先程のムタの例もある。
しかし皆疲労している。もうこれ以上の戦闘は厳しい。
倒れ伏したことで、突き刺さった剣がずるりと抜けた。果たして本当に元に戻ったのか。
沈黙が続く中、豪快な『いびき』が聞こえてきた。
その『いびき』の主は、ムルム族の女戦士…ルゥであった。

どうやらグッスリ寝ているようだ。
肩に剣が刺さり、右腕は潰れ、両足の筋肉は何ヶ所も断裂しているというのに。
「マジで止めやがった…。テメェらスゲーな、こんちくしょう。」
ムタが称賛する。上半身だけで器用に前足を駆使し、アイザックに駆け寄った。
少し離れた場所に下半身が置き去りになっているが、本人は気にしていないらしい。
祖霊は依代である剥製が燃やされる等、完全に破壊されなければ問題は無いのだ。
「ルゥはまだ生きてるな。しかしあそこまで侵蝕が進んだ《狂乱》が止まるたぁ本当に驚きだぜ。」
400アゼル ◆F/ATTd3VB. :2007/10/15(月) 01:20:32 O
>399
>「マジで止めやがった…。テメェらスゲーな、こんちくしょう。」
>「ルゥはまだ生きてるな。しかしあそこまで侵蝕が進んだ《狂乱》が止まるたぁ本当に驚きだぜ。」
死んだと思っていたリスの声が聞こえた。
ルゥの狂乱が止まったと言っている。
アゼルは目を開けて上体を起こし、現在の状況を確認する。
確かにルゥの姿は元に戻っており、右肩に剣が刺さっていながらも、穏やかな顔をしながら眠っている。
剣が突き刺さっていることから考えて、ルゥを止めたのはアイザックだろう。
まだ肋骨が折れて痛むが、脇腹の裂傷は塞がり、動くことはできる。
アゼルは脇腹の治療を続けながら起き上がり、ルゥ達の方に向かって歩いていく。

「いやー、皆さんの役に立てなくて申し訳ありませんでした。
 まだまだ、この俺も未熟者だったということで許して下さい。
 で、隊長。
 これからルゥのことはどうするつもりですか?」
401アイザック ◆6GJ7GJlyDU :2007/10/15(月) 19:52:21 0
>399-400
>割れた逆鱗が砕け散り、ほぼ全身を覆う鱗も消えて、肌の色も褐色に戻った。
>肩口から鮮血が滴りアイザックの剣を赤く染める。
『逆鱗』はやはり脆かった。
レイピアよりも明らかに刺突に向かない広刃の剣での突きでも
貫けたのだから。もしこれが完全な龍鱗だったら、たとえエストックでの
万全の突きでも貫けなかったはずなのだ。だが『逆鱗』が砕け散ったことで
姿かたちは元に戻り、怨嗟の妄獣は再び檻の中へと。
何はともあれ危機は脱した。奇跡的に犠牲を出すこともなく―――。
剣についた血を払って鞘に収めルゥに簡単な血止めを行う。
ムルム族がどの程度肉体的に優れているかは分からないが、さすがに
重傷を放置しては命に関わるはずだからだ。アゼルが治すまでの間に合わせでもある。

>「マジで止めやがった…。テメェらスゲーな、こんちくしょう。」
>祖霊は依代である剥製が燃やされる等、完全に破壊されなければ問題は無いのだ。
>「ルゥはまだ生きてるな。しかしあそこまで侵蝕が進んだ《狂乱》が止まるたぁ本当に驚きだぜ。」
なんと、ムタは生きていた……常識を疑うような状態でこちらへと向かってくる。
ムルムの常識はライゼの非常識、逆もまた然りとは言え……
血止めを終えたアイザックはおもむろにムタの首の皮を上から摘んで目線を合わせ
「だから言っただろう……甘く見すぎだ。」と―――。
……何故かこのまま下半身とくっつけたら繋がるかもしれないと思い、
アイザックはムタの下半身を拾う為に置き去りのままのところへと歩いていく。

>「いやー、皆さんの役に立てなくて申し訳ありませんでした。
> まだまだ、この俺も未熟者だったということで許して下さい。
> で、隊長。
> これからルゥのことはどうするつもりですか?」
アゼルはやはり無事だった。戦闘中起き上がらなかったのは
傷の治療に専念していたからだろう。早速ルゥへの処遇へと話を進めている。
「ルゥに関して、俺の意見を言わせてもらう……
 ムルムに関する知識を知るために、またルゥがこちら側でこれ以上の
 無用な混乱を起こさぬように、我々と行動を共にさせるべきだと思う。」
アイザックがこう言ったのには色々と理由があるが、
話せば長くなるから聞かれない限り答えようとは思ってない。
402グラスマン ◆4hcHBs40RQ :2007/10/16(火) 01:07:14 0
>>399-401
アイザックの剣がついに敵の弱点を貫いた。
纏っていた異様な雰囲気が霧消し、少女の姿に戻っていく。

「グッジョブ、アイザック!はーっ、もう復活しないだろうな…。」
グラスマンは足を放り出し、楽な格好で座り直した。
天を仰ぎ見る。
「相手が本調子だったら危なかったな…。ここまで実力差を感じた敵はいつ以来だろう。
『ジェルマンの快楽地獄』や『弱腰のクロバスキー』クラスか…。
いや、あのまま強くなっていったらその辺りの有名どころよりも強くなってたかもしれないな。
僕もまだまだ修行が足りない。」

>「マジで止めやがった…。テメェらスゲーな、こんちくしょう。」
「餅を売るのは餅屋の仕事だからね。…なんてカッコつけても、実は相当危なかったんだけど。たはは。」
グラスマンは苦笑して言い、それから改めてムタに振り返った。
「…って、あれ?」
上半身と下半身が分断された時、確かに死んだかと思ったのだが、どうやら生きているらしい。
無事は無事で素直に喜ぶべきなのだが、そういえば突然現れたこのリスは何者なのだろうか。
「そういえば、とりあえずドラゴンは倒したけど話の筋から置いてきぼりになってたなぁ…。
いや、それより『月夜』のおねーさん、助かったよ。ありがとう。おねーさんがいなけりゃエルガイアに殺されてた。
このままじゃガストラにも戻れないだろうし、良かったら本当にこっちに来ない?」
さり気無く勧誘するグラスマン。

>「いやー、皆さんの役に立てなくて申し訳ありませんでした。
> まだまだ、この俺も未熟者だったということで許して下さい。
> で、隊長。
> これからルゥのことはどうするつもりですか?」
倒れていたアゼルも起き上がり、歩いてくる。
「あ、傷が酷いだろう。まだあんまり動かないほうがいいよ。しばらく横になって体を休めてな。」
グラスマンは立ち上がり、大きく伸びをした。
「…役に立たなかったなんてことはないよ。アゼル君が食い止めててくれなけりゃ
エルガイアとの挟み撃ちになって僕がやられてた。で、この子のことか……おっとと」
グラスマンはふらつき、真横に倒れた。
「…たはは、情けないが僕も結構限界みたいだな。まさかドラゴスケイルマンをあんなに長く使うことになるとは。
あの『快楽地獄』だって当てたら一撃で沈んでくれたのになぁ。まったく、世界はまだまだ広い。」
コルムを場から離れさせておいたのは正解だったと、グラスマンは改めて思う。
このレベルの戦いに参戦するには、あの子はまだ早い。
403グラスマン ◆4hcHBs40RQ :2007/10/16(火) 01:08:15 0
>「ルゥに関して、俺の意見を言わせてもらう……
> ムルムに関する知識を知るために、またルゥがこちら側でこれ以上の
> 無用な混乱を起こさぬように、我々と行動を共にさせるべきだと思う。」
リスの上半身を拾ったアイザックが言う。
しかし、グラスマンは意外にも難しい顔をしていた。
「ムルムに関する知識は必要だと僕も思う。彼女を親善大使にしてムルムとの交流を深めれば、
今回のような事件はもうなくなるだろう。しかし、ボロロッカがそれを許してくれるかどうかが問題なんだよね。
ライゼの僕達がこの娘の今回の罪へ何の落とし前もないままに連れ歩いていたら、恐らくボロロッカは激怒する。
ムルムと僕達の法が違うって分かった上でもね。それだけの被害を被っていたんだから。
そもそもライゼ自体を許してくれるかどうかも分からない状況なんだ。
確かに『砂嵐』は止めた。原因は文化の違いだった。でも、交渉を有利にするためにはカードが足りない。
悪い言い方をすれば、ボロロッカに売れる恩が足りない。
頑張って【ガストラを退けたのも、ボロロッカ的には別に意味のない事】だしね。
ボロロッカが僕達に対して十分に恩義を感じてくれれば、
ライゼを許してくれるだろうしこの子への情状酌量もあるだろうけど…。」

グラスマンは座り直し、皆を順繰りに見ながら言う。
「そういえばアイザック。君が彼女を僕達と行動させるべきだと思った理由を教えてくれないかい?
リス君は、今回の件についての関係者だよね。詳しく事情を教えて欲しい。
アゼル、君の考えも聞きたいな。君の頭脳はいつも頼りにしてる。
そして『月夜』のおねーさん。何かいいカードを持ってないかな?例えば【エルガイアが何か言っていた】とか。」
404ルゥ ◆c8mKoM5yZ6 :2007/10/16(火) 20:53:13 O
>剣についた血を払って鞘に収めルゥに簡単な血止めを行う。
>血止めを終えたアイザックはおもむろにムタの首の皮を上から摘んで目線を合わせ
>「だから言っただろう……甘く見すぎだ。」と―――。
「そう言うなって。確かにオレはテメェらをナメてたけどな、普通に考えてみろよ。
不完全とはいえ相手はエルダードラゴンなんだぜ?そりゃ止めるってばよ。」
まるで悪びれた様子も無く、プラプラ揺れながらムタは笑った。
>「餅を売るのは餅屋の仕事だからね。…なんてカッコつけても、実は相当危なかったんだけど。たはは。」
グラスマンも相当疲労しているようだ。しかしまだ冗談を飛ばす程度の余力は残しているらしい。
>アイザックはムタの下半身を拾う為に置き去りのままのところへと歩いていく。
「お?助かるぜ。キレイに真っ二つだからな、縫い合わせるのが楽で良かったぜ。
ルゥに裁縫は無理だろうしな。あ、綿が落ちる落ちる!ととと…あぶねーッ!!」
慌てて腹を押さえ、中の詰め綿を落とさないようもがく。

>「いやー、皆さんの役に立てなくて申し訳ありませんでした。
> これからルゥのことはどうするつもりですか?」
>「ルゥに関して、俺の意見を言わせてもらう……
> ムルムに関する知識を知るために、またルゥがこちら側でこれ以上の
> 無用な混乱を起こさぬように、我々と行動を共にさせるべきだと思う。」
アゼルがグラスマンに指示を仰ぐと、アイザックの口から意外な言葉が出た。
確かにムルム族の戦闘行為は一般市民には問題だ。
互いの文化の相違を差し引いても、やはり被害の大きさは拭えない。
>「ムルムに関する知識は必要だと僕も思う。彼女を親善大使にしてムルムとの交流を深めれば、
(中略)
>ライゼを許してくれるだろうしこの子への情状酌量もあるだろうけど…。」

「まぁオレもルゥもこんなザマだしな、トンズラって訳にゃいかねぇし。」
苦笑いするムタはルゥを見る。
「それによ、テメェらには『借り』が出来ちまった。このまま『はいサヨナラ』ってのは良くねぇ。
おとなしくテメェらの判断に従うさ。ま、オレは別に死刑とかになっても平気だしな〜♪」
祖霊は元々死んでいる人間の魂を一時的に冥界から現世に召喚しているだけだ。
つまり死刑になったとしても、単に冥界に帰るのと大して変わらない。
だがルゥは何も知らない内に自分が極刑になるかもしれない。
ちょっぴり同情はしたが、結局はルゥの責任なのだ。ムタはあくまでも採点者でしかないのだから。
405アイザック ◆6GJ7GJlyDU :2007/10/18(木) 02:01:05 0
>403-404
>ボロロッカが僕達に対して十分に恩義を感じてくれれば、
>ライゼを許してくれるだろうしこの子への情状酌量もあるだろうけど…。」
なるほど、グラスマンの指摘することはもっともだ。
伊達に隊長を務めていない、懸念されることをきちんと挙げていた。
「隊長、恩ならある……合流する前、街中にサンベルトスネイクが
 現れて子供を一人飲み込むと言う事態が起きた。合流が遅れたのは
 この大蛇に飲み込まれた子供を救出したからだが、偶然にもその子供は
 ボロロッカの町長の息子であってその一部始終を多くの町人が見ていた。
 ……これでも、まだ足りないか?」

合流前に起こったこととあえて分けて別件を報告する。
「なお、サンベルトスネイクは魔道によって作られた存在と思われた。
 死骸は瞬く間に砂となり、額に埋め込まれていた指輪らしき物が、
 確かにこの辺りへと飛んでいくのを見た……ガストラの刺客の仕業だろうか?」
アイザック自身は『ワルワの砂荒らし』エルガイアの事を知らなかった。

>「そういえばアイザック。君が彼女を僕達と行動させるべきだと思った理由を教えてくれないかい?
聞かれるだろうとは思っていたが案の定で、また喋らなければいけないのかと
うんざりした様子を顔に出してしまった。戦いの興奮か別の何かか、とにかく心に波風を
立てる何かがまだ収まっていないようで、普段からは想像できないほど感情的になっている。
二度三度深呼吸して感情を落ち着かせてから返答を始めた。

「第一に、曲がりなりにも古龍を止められたと言う事。
 今回に限らず、強敵と戦い続けねばならない以上必ず同じ事が起こり、その時に
 対処法を知る者がいなかったら甚大な被害が予想される。その予防が一つ。」

「第二に、ムルム族の事情に多少なりとも周囲より詳しいと言う事。
 知っていると言うことはそれだけ行動予測やフォローがしやすく、
 普段からの無用の衝突や暴走を未然に抑止できることにも繋がる。
 腕試しや武道大会などで強者と半ば合法的に戦う場も設けられるだろう。
 以上の理由と今回の件を踏まえ、このまま一人で行動させるのは危険と判断したのが二つ。」

「第三に、第六遊撃隊はその性質上余計な規律がなく同行させるのに支障が少ないという事。
 こちら側に属する第六遊撃隊だが、他とは違う感性の持ち主が多い隊だ。
 さほどの混乱やしがらみもなくルゥを迎えられるはず。常に監視できるだけでも
 危険度は大幅に下がるだろうし、こちら側にいさせれば常識を教えやすい。
 たとえ道を分かつにしても、多少なりとも常識に則った言動ができれば――――と言うのが三つ。以上だ。」

しかし、長々と喋って疲れた……

>「それによ、テメェらには『借り』が出来ちまった。このまま『はいサヨナラ』ってのは良くねぇ。
> おとなしくテメェらの判断に従うさ。ま、オレは別に死刑とかになっても平気だしな〜♪」
応急処置的にムタの胴体を包帯できつく縛る。一応これでずれない筈……
しかしこれだけの騒ぎを起こしておきながら張本人の片割れのムタはずいぶん気軽だ。
極刑に処される可能性があると言うのに、よく見られるようなネガティブな雰囲気は微塵もない。
それが表面上なのか本音なのかまでは分からないが……自分だけは助かるつもりなのか?
「ずいぶんと冷たいんだな。」
人のことが言えるほどアイザックも情に厚くはない。お互い様だ。
406アゼル ◆F/ATTd3VB. :2007/10/18(木) 21:15:02 O
>401-405
アイザックが言い終わり、今度はアゼルが自分の考えを述べる。

「俺はこのままボロロッカに引き渡した方が良いと思いました。
 ですが、ボロロッカには第十七隊が駐屯しています。
 このままルゥを引き渡すとしても、アイザックの言う通りに第六隊と一緒に行動させるにしても、第十七隊の方達は手を出してくると思います。
 ルゥを引き渡した場合は、第十七隊の方達が前にやられた借りを返す為に、ルゥに不必要な暴行を与える可能性がある。
 この場合、良くてその第十七隊の方達が返り討ちにあう。
 最悪の場合、ボロロッカの町が地図から消えますね」

「俺達がルゥと行動を共にする場合、これは第十七隊の人達にとって最も面白くない。
 自分達をやっつけた敵が同じライゼの部隊にいる。
 しかもその部隊はかの第六遊撃隊で、自分達の場所で手柄を立てた。
 無駄にプライドの高い第十七隊の人達は、こっちを勝手に敵と見なして色々とやってくると思います」
アゼルは脇腹の治療を止めて、更に話を続ける。

「ですから、俺達はルゥに逃げられたってことにするのはどうでしょう?
 俺達はルゥと交戦したが、相手は一人で一部隊を撃破する程の強者。
 途中、ガストラの者もこちらに加勢をして何とか優位に立つことができたが、後一歩の所で逃げられてしまった。
 ルゥは魔の森の方角に逃げてしまい、我々は負傷した者がいる為に追うことができなかった。
 で、俺達はそのことをボロロッカの町長さんに報告をする。
 魔の森には最奥の遺跡に封印された魔狼の魔力によって、魔物が集まってくるせいで、普通の人間達は近寄りません。
 町の人もルゥがこの町に現れなければ、魔の森の魔物に殺されたと思い、その内に忘れてしまいますよ。
 ルゥの方は魔の森の付近に待機でもして貰い、後で俺達が迎えに行って本国に連れて帰ればいい。
 本国にはルゥのことを知ってる人はいませんからね」
407グラスマン ◆4hcHBs40RQ :2007/10/19(金) 17:03:34 0
彼らの話し合う様子を、遥か遠く丘の上から眺める者達がいた。
馬上の騎士、凡そ20騎。

「戦闘は終わったようですね、団長。」
「うむ。」
団長と呼ばれた老騎士は、不敵に笑う。
「『月夜の巫女』や『ワルワの砂荒らし』は出るわ、『ムルムの砂嵐』は変身するわでどうなるかとは思ったが、
結果としては予定通りだ。連中は皆披露困憊、『砂嵐』も戦闘不能。」
「あとは奴らを纏めて一網打尽にするだけですね、団長。」
「うむ。運が向いてきたぞ、我ら第十七騎士団に!行くぞ!我らの手に栄光を!」
「おおーっ!」
第十七騎士団団長エビタフ・カーンは仲間を鼓舞し、踵を返して馬を走らせる。


第六遊撃隊が出張ってきた時はピンチだった。
『砂嵐』を王命を騙って放置したことが本国にバレれば、重刑は免れられない。
かといって、腕っ節だけが自慢の第六遊撃隊の野蛮人達を秘密裏に始末するだけの力は彼らにはない。
しかし、彼らは考えた。どちらも規格外の力同士の『砂嵐』と遊撃隊がぶつかればどうなるだろうか?
どちらが勝つにしろ、勝った方も無事では済むまい。
そこに乗り込んで生き残った者を皆殺しにすれば、事件を揉み消すどころか
『野蛮人達の勝てなかった二つ名持ちを討伐した』として自分たちの手柄、名誉になるのではないか。
どうせ野蛮人達もすぐに『砂嵐』のことを嗅ぎ付けて討伐に向かうだろうと彼らは当たりをつけ、
しばらく静観するに至ったのだった。

どこもかしこも穴だらけの計画である。想定外の出来事もいくつも起こった。
しかし、奇跡的に事は上手く運んだ。
それどころか、あの『ワルワの砂荒らし』撃破の手柄を横取れるオマケまでついたのだ。
もう一人の『月夜の巫女』が生き残ってはいるが、きっと大きく消耗はしているはず。
あの『月夜の巫女』まで倒せるチャンスだ。
自分たちも病み上がりとはいえ、負傷消耗真っ只中の彼らには確実に勝てる。
向かう先にあるのは、無防備に転がる大量の手柄。ついに彼らの時代が来たのだ!

意気揚々と砂漠に馬を走らせる十七騎団員達。
しかし、その目論見は露と消えることとなる。
408グラスマン ◆4hcHBs40RQ :2007/10/19(金) 17:05:04 0
>>404-405
>「隊長、恩ならある……合流する前、街中にサンベルトスネイクが
> 現れて子供を一人飲み込むと言う事態が起きた。合流が遅れたのは
> この大蛇に飲み込まれた子供を救出したからだが、偶然にもその子供は
> ボロロッカの町長の息子であってその一部始終を多くの町人が見ていた。
> ……これでも、まだ足りないか?」

「おお、助けた子供が町長の息子か。さすがあっちゃん。日頃の行いがいいね。」
アイザックの話に、グラスマンが少し驚いたように言う。
「巨大な蛇に敢然と立ち向かって子供を助けたとなればちょっとした武勇伝だ。しかも町長の息子。
こっちから言うまでもなく、十七騎団の連中が特別に駄目なだけだって分かってくれるだろう。
うん、それはかなり強力なカードになるよ。少なくともライゼとボロロッカの友好は保てるはずだ。」

そしてアイザックは続けてサンベルトスネイクの死に際の一連の様子から、
それがガストラの刺客の魔道生物ではないかと推測を語る。
グラスマンは困ったように笑った。
「うーん、実はその通り。さっき僕が戦ってたの、いつか話した殺しスキスキ『ワルワの砂荒らし』でね。
『砂嵐』を探しに町まで入るのが面倒臭いから適当に蛇を放ったんだって。
僕も昔先生に習ったよ、倒されたら砂になるのは砂魔導の擬似生命体の特徴…って、あれ?」
【砂の擬似生命体は、倒されたら砂になる】。
自分で言った言葉だが、何かグラスマンの中で引っ掛かった。
しかし、今は差し当たってそんな事はどうでもいいと、気にするのをやめる。

それから、アイザックがルゥの同行について推薦したことについて訊ねると、
面倒そうにしながらも三つの観点から語ってくれた。
その考察に、グラスマンも唸る。
「うーん、なるほど。確かに今回の砂龍の件について身をもって知ってるのは僕達だけだしね。
それに、まともな部隊に組み込めるだけの社会性はこの子はまだ持ってない。
第六遊撃隊にいればどちらも解決って寸法か。そもそもうちの隊にも社会性を持ってる面子が少ないしね。
そういう意味では【木の葉を隠すなら森】…いやその逆…じゃなくて裏返しかな。まあいいか。
ご苦労様、アイザック。」

そしてムタも、ルゥとともに従うことを決めてくれたようだ。
409グラスマン ◆4hcHBs40RQ :2007/10/19(金) 17:09:01 0
>>406
アイザックに続き、アゼルが自分の考えを述べる。
「ルゥには逃げられたことに…ね。なるほど。悪くない。」
グラスマンは頷く。
「上手くこの場を収めても、その後僕達が連れ歩く以上は何かの弾みで
ボロロッカの誰かに見付かる可能性がなくはないけど、その可能性は大きいとは言えない。
僕達がボロロッカ方面にルゥを近づけないよう気をつける事を考えれば、
有意水準下で棄却できる程度の確率かな。」

グラスマンは少し考え、それから背筋を正し、言った。
「よし。今回の一連の事件に関しては、第六遊撃隊隊長グラスマン・グラスハーツが個人の責任で裁定する。
ルゥが人々に与えた被害は決して小さくなく、僕達の法で裁くに十分に値する。
しかし、問題の根源はルゥ個人ではなく、お互いの文化の違いを理解していなかった歴史的土壌にあると言える。
そこで、ルゥ及びリス君。君たちには服役を免ずる代わりにライゼ王国第六遊撃隊に合流し、ムルム族についての知識を僕達に与えること、
また僕達についての知識をムルム族に還元すること、そして双方の理解と友好のために尽くすことを、
グラスマン・グラスハーツが第六遊撃隊隊長の名において命じる。」

そして、グラスマンは笑顔を見せた。
「…なんて、つまりは僕達とお友達になろうって事だ。リス君、彼女の目が覚めたらその旨を伝えておいてくれ。
うちに来ればさしあたって喧嘩相手には困らないしね。いや、僕は多すぎて困ってるけど。
さて、それじゃ事後処理に動こうか。これからが大変だぞ!」

★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★

ところ変わって第十七騎士団。
突如盛り上がりうねり始めた砂漠に、馬が次々と転倒させられていた。
あちこちで悲鳴が上がる。
「な、何事だ!?」
団長エビタフが叫んだ。
騎馬達があらかた転ばされたところで、砂の波は収まった。
そして今度は、細い砂の柱が彼らの周囲から狭い間隔で幾本も伸び始める。
「だ、団長!これは一体!?」
「わ、分からん!何が起こっているのだ!?」
砂の柱達は上の方で少しずつ内側に曲線を描き、地上4メートルほどの高さで全てがくっついた。
出来上がったそれは、まるで錘状の砂の牢。
「何だこれは!?お、おい、ここから出せ!」
騎士達は砂の柱を殴ったり斬ったりするが、硬い砂でできたそれにはびくともしない。
彼らは続く攻撃に脅えたが、しかしいくら待ってもそれ以上の攻撃は来なかった。
やがて敵は去ったのだと気付き安堵する騎士達だが、その安堵も長くは続かなかった。

牢に閉じ込められたまま、数時間経過。
騎士達は砂漠の猛暑に体力を失い、ばたばたと倒れ始めていた。
団長も鎧を脱いでぐったりとしていた。
「見逃してもらえたのかと思ったが…違う。殺す気十分だ。この敵は我々を放置してミイラにするつもりなのだ…」
410グラスマン ◆4hcHBs40RQ :2007/10/19(金) 17:10:34 0
それから。
ルゥとムタを隠し、ボロロッカに戻った第六遊撃隊は、思わぬ歓迎を受けることとなった。
アイザックが去った後、やはり怪しいガストラよりもライゼと友好を保ちたいという声が大きく上がり、
化け蛇から息子を助けられた町長もその例外ではなかったのだ。
しかし、そのライゼにも『砂嵐』の放置を決め込まれたことは事実である。
だがそれは第十七騎士団の独断であり、彼らは後で厳重に処罰しておくことを遊撃隊から伝えられ、
実際に蛇を退治してくれた彼らをボロロッカは信用すると決めたのだった。
『砂嵐』は捕獲こそ出来なかったものの撃退には成功し、
痛い目を見せて魔の森に追いやったためにもうこの辺りには近づかないだろうことも伝えられ、
町民達は安心しつつも一抹の不安は残したが、平穏な時の経過がやがてその残りの不安も解消していった。
そしてボロロッカの人々の盛大な見送りの後、遊撃隊はこっそりルゥ達を回収し、本国へ連れ帰っていった。

こうしてライゼとボロロッカとの不仲は解消され、ルゥは新しく第六遊撃隊に迎えられる運びとなったのだった。


後日談1。
本国に帰ったグラスマンは意気揚々と報告書を提出したが、大事なことは大方伏せておいたために、
彼らの功績よりもむしろ第十七騎士団の犯した罪にばかり注目が集まり、
結局第六遊撃隊はいつもどおり苦労に見合うだけの称賛は得られず仕舞いとなった。

後日談2。
商車の護衛をしていたコルム。
ボロロッカに戻る途中、大きな鳥かごのようなものを見付ける。
駆け寄ってみると、中に入っていたのはぐったりした第十七騎士団の面々。
彼らは辛うじて生きており、救出されたあとは命の恩人のコルムの前に殊勝にお縄についたという話だ。
そして、コルムは砂カゴの柱の一本にガストラ文字でこんなメッセージが書いてあったと報告している。

【 一つ貨しだ。また会おう。『鉄人』と『月夜の巫女』 】



そして舞台は日常、ライゼ王国へと戻る。
411アゼル ◆F/ATTd3VB. :2007/10/20(土) 19:34:59 O
ライゼ王国に帰還して数日後。
アゼルは次の任務に参加して自分を鍛える為、第六遊撃隊隊舎で待機していた。
前回の戦闘で自分の未熟さを改めて認識した。
このままではアルフヘイムに帰った時、地上で何をしていたんだと言われても仕方がない。
一から自分を鍛え直す為には、今までよりももっと任務に参加するのが最善だと考えているのだ。
だが、そんなに任務が直ぐに第六遊撃隊に任務が回ってくる訳は無い。
この一週間後にはアゼルはとっくに任務に参加する気は失せ、面白いことは無いかと城下町をぶらぶらと歩いているのだった。
そんなアゼルに昔から付いている二つ名は、『ライゼの給料泥棒』
勿論、ライゼの者が付けた不名誉な二つ名であった。
412アイザック ◆6GJ7GJlyDU :2007/10/20(土) 20:18:25 0
>408
>「おお、助けた子供が町長の息子か。さすがあっちゃん。日頃の行いがいいね。」
グラスマンのこの一言にアイザックは片眉をつり上げたが、
その段階で怒りを抑え込んだ。いざこざを起こしても気が晴れるわけでもないからだ。
「(行いがいい、だと……?そんな奴が、人を殺すものか……!)」
顔には出さないが心の内で発散して、心を落ち着ける。
そして、サンベルトスネイクが『ワルワの砂荒らし』の作った存在であると
グラスマンは言った。予想は当たっていたが、思った以上の大物だった。
「……任務、了解。」
後始末、それもまた任務……と、いつもの調子を取り戻した。


ライゼに帰還したアイザックは、一度も足を運んだ事のなかった
『友』の墓へと向かうことにした。自分が負わせた怪我で命を落としたとだけ
伝えられ放逐され、当時は近づくことさえ許されなかった。
あれから五年……いい加減、会いに行くべきだろうと決めたのだ。

「……。」
墓はきれいだった。最近誰かが掃除したのだろう。
アイザックも、形だけではあるものの墓の周囲を掃除する。
掃除が終わり、持ってきた花と友の好物だった菓子をいくつか供え手を合わせる。
「……。」
終始無言で墓参りを済ませ、墓地を出ようとして……背中から熱い物が皮膚を、
筋肉を、繊維を断ち切り腹へと貫通した。首を回して目に飛び込んできたのは
友の父親だった。その顔は、おぞましいほどの憎悪一色に染まっていて……
アイザックは肘で男の横っ面を殴りつけて振りほどき、突き刺さった剣を抜かずに
歩いてどこかへといってしまった。血痕は途中で途切れ、行方不明扱いとなり……
死体はいまだ見つかっておらず、それらしい男の死亡報告は届いていない。
413ルゥ ◆c8mKoM5yZ6 :2007/10/20(土) 21:43:28 O
あれから1週間が経った。ルゥが目を覚ますと、そこは見知らぬ部屋。
質素ではあったが布団がかけられ、ルゥはベッドに横たわっていた。
少し身体を起こして辺りを見回すと、ベッドに凭れ掛かって寝息を立てる少女がいる。
そしてその少女の頭上には、見知った砂漠リスが丸まって尻尾を揺らしていた。
「お?やっと起きたか、寝過ぎだろオメェはよぉ。」
「……ここは?」
「あ〜、話せば長くなるぜ?オメェが意識トバしてる間にな、いろいろあったんだよ。」
苦笑しつつムタは少女を起こさぬよう、そっとベッドに飛び移る。
「コイツに後で礼を言っとけよ?付きっきりでオメェを看てたんだからな。」
「………誰ッスか?」
「コルム…とか言ってたっけな、確か。」
まだ僅かに寝ぼけた表情のルゥにムタが教えてやる。
あの戦いの途中から、何が起きたのか…その全てをのんびりと語り始めた。


「じゃあ旅はどうするンスか?このままだとルゥは大人になれないッスよ!?」
「コラ、もうちょい静かにしろ。コイツが起きるだろうがよ。」
これまでの経緯を聞いて開口一番に声を荒げたルゥを、指を立てて制した。
「まぁ確かに成人の儀式はひとまず終わりってこった。だがよルゥ、ちょいと考えてみな。
コイツらと一緒にいれば敵には苦労しねぇぞ?何やら貧乏クジ引かされる連中みたいだしな。
そうそう、あのエルフにも礼を言っとけ。オメェが死なずに済んだのはヤツが魔法で治してくれたんだからよ。」
そう言い残してムタは窓枠に飛び乗り、窓を開けた。
「ありゃ?ドコに行くんスか?」
「決まってんだろ、1週間もこの部屋でカンヅメくらってたんだぞ?退屈過ぎて死ぬっつーの!」

朝日が遠い空を白く染め始めて、窓の外から入って来る風はまだ少し冷たい。
ルゥは自分の置かれた立場を整理しようと努力したが、面倒臭くなって結局は再び眠ることにした。
414グラスマン ◆4hcHBs40RQ :2007/10/22(月) 23:47:26 0
ライゼ王国へ帰還し、ルゥに関するあれこれを済ませたグラスマンは、
ふらふらの足取りで自室へ向かっていた。
「はー、なにが『また会おう』だよ、あのコロシスキー。こっちはもう二度と会いたくないっての。
ドラゴンといい、あんな連中と遣り合って五体満足でいられた奇跡をお星様に感謝したいくらいなのに。」
歩きながら一人ごちるグラスマン。
しかし、今回は悪いことばかりではない。新しく隊に加入した仲間もいるのだ。
存在だけで国際問題クラスだが、本人は決して悪い子ではない。きっとすぐに皆とも打ち解けるだろう。
「あ、そういえば何人かにお土産頼まれてたっけな…。
今回はいっぱいいっぱいですっかり忘れてた。こういう時ってバルやヌコ辺りが怖いんだよな。
前に忘れた時は相当酷い目に遭わされたっけ。まあ、しばらくこそこそと身を眩ましていればそのうち忘れてくれるだろう…。」
そして自室の前に辿り着き、扉を開けた。


「おかえりニャ〜。」
猫系亜人のクォーターの少女、ヌコがベッドに座って本を読んでいた。
思わず固まるグラスマン。
「…えーと、何で僕の部屋にヌコさんがいらっしゃるんでしょう?」
「お土産お土産。いの一番に貰うためである。」
本を畳み、満面の笑みでエッグポーズするヌコ。
「ボロロッカ名物オシクラ饅頭、1ダース。頼んであったよね?
今回は情報収集なんて楽〜な任務だったんだから、買い忘れたなんて言わせないのだ♪」

「えーとね…。冷静に聞いてくれ。」
グラスマンはヌコの横を抜け、ベッドに仰向けに寝転がった。
「実は今回は情報収集だけのはずが、何故か二つ名持ちが三人も現れて大乱闘になってね。
挙句の果てには伝説のドラゴンまで復活しそうになって危機一髪だったんだよ。
そんな次第で今回はお土産を買う余裕なんてどこにもありませんでしゲブゥ!」
全体重を掛けた肘落としが見事にグラスマンの鳩尾に決まった。
ヌコの猫目がさらに釣りあがり、怒りで光っている。
「…そんな子供が考えたような適当な言い訳で誤魔化せると思ってんのかいワレェ。」
「い、いや、マジなんだって!嘘みたいなホントの話!事実は小説より奇なり、みたいな?」
「みたいな?じゃねえ!さっさと出すニャー!ないなら今から買ってこんかーい!」
「しぎゃあああああ!!」

こうして大暴れしたヌコにより、結局『砂荒らし』やドラゴンとの戦闘よりも
大きなダメージを負ってしまったグラスマンなのだった。





こうして、今回の任務は無事に幕を下ろした。
決定的な問題が取り除かれた今、ライゼとボロロッカの仲も少しずつ元通りになっていくだろう。
そして迎え入れた新たな仲間、ルゥとムタ。忽然と姿を晦ましたアイザック。
そんなこんなで、第六遊撃隊は相変わらず厄介事だらけの落ち着かない日々を送っている。
果たして、彼らを次はどんな任務が待ち受けているのだろうか?

〜Mission1『the Sandstorm of Mulm』 is the end.
415名無しになりきれ:2007/10/28(日) 16:48:43 0
終了?
416名無しになりきれ:2007/10/28(日) 18:02:30 0
なんか騎士スレっていうより、なな板TRPG物語スレって感じだな
417名無しになりきれ:2007/10/28(日) 19:00:20 O
この後に及んで難癖付けしてどうすんだよ
残された本当に数少ないスレなのに
今更騎士スレらしさもへったくれもないべ
418名無しになりきれ:2007/10/28(日) 19:40:59 O
419GM ◆c8mKoM5yZ6 :2007/11/02(金) 23:49:05 O
ここは魔の森、樹齢数百を数える巨木が乱立する大自然が作り上げた魔境だ。
日中であるにもかかわらず、地面まで届く陽光は少なく、薄暗い樹海の光景が広がっている。
そんな魔の森に住む住人達の集落は、薄暗い地上ではなく、樹の上に在った。
樹上の集落に住むのは、この世で最も精霊に近いとされる種族…エルフ達である。
何故エルフが樹の上に村を作るのか、学説によれば『樹は最も精霊の加護を受ける』からだそうだ。
大木の幹に打ち立てられた階段を登った先にて、3人の人影が見える。

1人は小柄で、もう1人は対照的に巨体、残る1人は普通といったところか。
第六遊撃隊の隊員、ヌコ=ノーネームと、第十重装騎士団の騎士、ガルド。
そしてその2人をこの集落まで案内したエルフ族の女性、ミリア=ブライトアイズ。
「着きましたよ。ようこそ、グリューンバルトは貴方達を歓迎するようです。」
ミリアは集落の中でも一番大きな古樹を見上げた後、2人へと振り返った。
グリューンバルト。エルフ族は魔の森をそう呼んでいる。
森には意思があり、来訪者を受け入れるか否かを決めるというのだ。
「さあこちらです。我々の長がお待ちしております。」
そう言ってミリアは歩き始めた。大木の枝の上に敷き詰められた木の床を静かに進んで行く。

今回の任務にアゼルは参加することが出来なくなったため、友人のミリアに案内を頼んだのだ。
急な依頼要請だったが故に、第六遊撃隊には手の空いていた者はおらず、ヌコが抜擢された。
グラスマンとバル、そしてアゼルは別件で手が放せず、ゴロモンは休暇から戻っていない。
新人のコルムは連絡待機任務中で、同じく新人のルゥはまだ療養中だった。
必然的にヌコに頼むしかなかったのである。しかしヌコも遊撃隊の古株、実力もある。
だからこそグラスマンはヌコに今回の任務を任せた。
だがこっそり施政院に連絡を取り、ベルグドル准将に口利きしたのは秘密である。

結果、ヌコのサポートに第十重装騎士団から派遣されたのが、ヌコの隣りに立つ巨漢…ガルドだ。
ヌコと比べると大人と子供のような体格差がある(実際に大人と子供だが)。
人間としても破格の体躯を持つこの重騎士と、猫人の血を引く少女。
なんとも珍妙な組み合わせであった。

420GM ◆c8mKoM5yZ6 :2007/11/02(金) 23:51:01 O

「もう追って来ないようだな…一体何なんだ『アレ』は?」
調査隊隊長ジョルジュ=マッケランは、壁に寄り掛かり憔悴しきった顔で呟いた。
ここは遺跡内部、地下4階の小さな部屋。
遠くで地響きが聞こえる。おそらくは先程まで戦った怪物が暴れているのだろう。
調査隊の面々は皆疲労に立ち上がることも出来ないようだった。
無理もない。彼等は本来なら机と椅子が職場なのだ。このような状況は無きに等しい。
「くそ、なんでこんな事になったんだ…。」
手に持っていた地図を握り潰す。絶望が心を砕いたのか、それきり黙り込んだ。

調査は順調だった。地下4階に降りるまでは、だが。
冒険者が地下2階の床が崩れているのを発見し、更に地下が存在するのを報告したのが始まりだった。
この遺跡を調べたグラスマン達が調査隊に同行する筈だったが、任務で出払っていたのだ。
そのため第六遊撃隊から調査隊に派遣されたのが、レフトハンドと霊鬼の2人である。
危険なモンスターもおらず、地下3階の調査は順調に進んでいた。
2人には退屈な任務だと思えてきた頃、突然『それ』は姿を現したのだ。

まるで昆虫を思わせる6本の脚、しかし関節部に節目は無く、出来損なった粘土細工に見える。
表面は不気味な光沢を放ち、液体の如くタプタプと音を立てながら動き回る異形の存在。
胴体であろう中央の球体の頂点から、1本の短い突起物が伸び、そこから熱線を発射する。
強敵だった。最初は簡単に撃破出来た。しかし恐るべき速度で復元し、再び襲ってきたのである。

そして数回に渡って撃退を繰り返し、今に至る。どうやら見失ったらしい。
この部屋は小さく、調査隊7人とレフトハンドと霊鬼の9人には狭いくらいだ。
上の階に登る階段に続く通路は崩れ、別の脱出ルートを探す必要があった。
更に厄介なことに、調査隊のメンバーが戦闘中に次々と意識を失ったまま目覚めないのだ。
霊鬼達が戦闘に専念出来なかったのも、倒れたメンバーの安全を最優先したからである。

外には謎の強敵、かといってこのまま部屋でじっと救助を待つのも危険だ。
原因不明の症状が、いつ2人の身に襲いかかるか全く予測が出来ないのだから!!
421霊鬼 ◆F/ATTd3VB. :2007/11/03(土) 00:57:52 O
>420
今、この場所に不釣り合いな一人の少女がいる。
美しい黒髪に清んだ赤い瞳。
遺跡の探索には全く似合わない、町中で娘達が着ているような服装。
その服には汚れ一つ見当たらない。
彼女は壁に背を預けながら、手にした瓢箪を口許に運び、一気にあおる。
酒を飲み干す彼女は、実に満たされた表情をしていた。

「レフちーレフちー、楽しんでるー?」
彼女は近くにいた男に話掛ける。
この男との年の差は見た目だけなら二十程度、この少女と離れている。
だが、実際はこの少女の方が遥かに年上なのだ。

「私はねー、今、すっごく楽しいよー。
 こんな燃えるシチュエーションなんて、すっごく久しぶりだしね。
 いつもの任務もこんくらい歯応えがあると私も嬉しいんだけどねー」
笑いながら瓢箪に霊力を注ぎ込み、再び酒を飲み干す少女。
彼女の名は霊鬼。
数ある種族の中でも最強クラスの力を持つ種族、鬼である。

「ジョルジュたいちょー。
 私達は休憩は後、どんくらいの時間ですかー?」
霊鬼の持っていた瓢箪がいつの間にか無くなった。
代わりに、霊鬼の身の丈程の大きさもある巨大な金棒が、いつの間にか霊鬼の隣に立掛けられていた。
422名無しになりきれ:2007/11/03(土) 00:58:17 O
サイト?
423ヌコ ◆4hcHBs40RQ :2007/11/03(土) 01:12:58 0
◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇

数日前、隊長の部屋にて。

隊長は、あちこち包帯ぐるぐる巻きでベッドに横たわっている。
昨日まで行っていた任務での蓄積ダメージが予想以上だったらしい。
最終形態ドラゴスケイルマンまで使ったらしいから当然だ。あんなに体に負担の掛かる技はない。
馬鹿の使う技である。

「たはは、我ながら情けない限りなんだけどね。」
まったくその通りなので手を叩いて爆笑してやった。
あ、微妙な表情になった。

「…で、今回呼び出したのは、ちょっと任務をヌコにお願いしたくてさ。
霊鬼ちゃんご一行が任務先で行方不明らしいんで、ちょいと迎えに行ってあげてくれないかな?」
普通に引き受けるのも癪なので丁重にお断りしてみた。
「頼むよ、信頼できるヌコだからこそ頼めるんだ。」
信頼という言葉が安っぽいので丁重にお断りしてみた。
「分かった、隊費から臨時ボーナス出すよ!イヤこれはお得だなぁ。」
金で釣れる安い女と思われたくないので丁重にお断りしてみた。
「あ、向こうにはレフティさんもいるよ?ヌコ実はレフティさんお気に入りでしょ。」
なんかムカついたので丁重にお断りしてみた。
「あ、ヌコ最近可愛くなったよね!この調子でいけば10年後はライゼ王国一の美女に変貌するだろうな〜。」
もう既にライゼ王国一の美女なので丁重にお断りしてみた。
「お願い!マジのお願い!」
断り!マジのお断り!
「ぬがー!」
ニャー!

…そんな問答の結果、結局引き受けることになった。
「いや、本当に助かったよ。こうしてる間にも霊鬼ちゃんの幼い肢体が未知の魔物に汚されてないかと思うと不安でさ。」
発言がキモい。
ていうかレフティのことは心配じゃないのかよ。
「え?ああ、あの人は別に大丈夫でしょ?心配するだけ損損。」
野郎には適当だこの駄目男。
それがレフティへの信頼の顕現ということは、そりゃわかってるけど。

それから少し雑談した後、退室しようとするウチを引き留め、隊長が言う。
「…ちょっと真面目な話をするけど、気を付けてね。
レフティさんがいれば何があっても大丈夫だとは思うけど、今回は何だか胸騒ぎがするんだ。
僕が行けたら良かったんだけど、この通りの体だし、別件の任務も控えてるしね。
充分に気合いを入れて臨んで欲しい。大変だろうけど、何とか全員無事に連れて帰って来てくれな。」

胸騒ぎ。
おそらく別件の任務がなければ、この馬鹿隊長はこの体でも自分で向かっていただろう。
どうせ胸騒ぎなんか当たらないだろうが、この心配性はいつまで経っても成長しないから困る。
まったくもう。
とりあえず、ウチがいれば万事オーライなことを主張して怪我人を安心させてやった。
「うん、頼りにしてるよ、先輩。」

満足そうに頷く隊長に、ちょっと気を利かせて怪我を労いながら部屋を出ようとすると。
「え、心配してくれてるの?ありがたいねぇ。あ、実はヌコって僕の事が…ってぎゃー!」
激しくムカついたので怪我人に机を投げてやった。

◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇
424ヌコ ◆4hcHBs40RQ :2007/11/03(土) 01:14:15 0
>>419
木々が織り成す集落を、エルフ族の女性ミリアの案内で歩く二人。
第六遊撃隊のヌコと、第十重装騎士団のガルドだ。

「は〜あ、隊長に一杯喰わされたのだ。」
浮かない顔のヌコ。
行方不明の調査隊の捜索とは聞いていたが、それがまさか魔の森とは。
自由奔放のヌコでもあまり近付きたくはない場所である。
残念ながらグリューンバルドは歓迎してくれたようだが、拒絶されていたらスキップして帰宅していたところだ。

「しかも相方が巨漢のオッサン。最悪ニャ。」
ちらりとガルドを見る。
そしてため息。
「…あーあ、この巨大なオッサンを割ったら中から二人のイケナイ美少年が出てこないものかニャ〜。」
無駄な期待を口にしてみるヌコだった。
「とにかく、足だけは引っ張らないように頼むである。オッサンがピンチになっても助ける気はないからそのつもりで。」

そして、ミリアの後について木の床をとことこと歩いていく。
425レフトハンド ◆6Mrl/jPPh. :2007/11/03(土) 11:18:07 0
参ったねぇ・・・あっしはツイてない。たぶん人生で五指に入る最悪ってヤツだ。
かれこれ1時間。この部屋に逃げ込んだはいいものの、まるで先が見えやしねぇ・・・。
調査隊の皆さんは死人みてぇにヘコんでやがる。元気なのはお嬢だけ。
>「くそ、なんでこんな事になったんだ…。」
「いけねぇいけねぇ、すっかり諦めムードじゃあないですか。そいつは感心できねぇ。
 隊長さん、心が折れちまったら見えるモンも見えなくなっちまう。しっかりして下せぇ。」
気休めにしかならないでしょうがね、あっしはやつれた隊長に声をかけやした。
今回の任務はこの人達を守り抜くこと、鉄人の旦那の顔に泥は塗れねぇ。
何がなんでも絶対に、あっしらは折れる訳にゃいかねぇンですよ。

>「レフちーレフちー、楽しんでるー?」
>「私はねー、今、すっごく楽しいよー。
 こんな燃えるシチュエーションなんて、すっごく久しぶりだしね。
 いつもの任務もこんくらい歯応えがあると私も嬉しいんだけどねー」
この葬式会場みてぇに沈んだ中で、やっぱり頼りになるのがお嬢だ。
見た目は小さな子供ですがね、お嬢を甘く見ちゃいけないンでさァ。
ひょろっとした手でしょう?でもね、騙されちゃあ痛いメにあうンですって。
かく言うあっしもね、その見た目に騙されちまったクチで。鬼って知ってますかい?
そうそう、“鬼に金棒”の鬼。あのまんまの意味ですよ。
こういう時にゃホントに頼りになる人でしてね。だからこそあっしは“お嬢”と呼んでるんです。

「お嬢、ちょっくら外を見てきます。どうやら“ヤツ”は遠くに行ったみてぇですし。」
あっしは扉に手を掛け、お嬢に提案しやした。
ここでじっとしてたって、仕方ないでしょうしね。それに・・・実はあっしもね、楽しいんですよ。
ほら、『退屈は人生を腐らせる毒』って言うじゃあありませんか、ねぇ?
この遺跡にゃ“何か”がある。あっしの勘がね、さっきからそう言ってるンでさァ。
426ガルド ◆zCCyDiTaeI :2007/11/03(土) 19:14:33 0
>419
ガルドは魔の森にあるエルフの集落にいる。

何故こうなったかと言えば、遺跡に異常あり、調査隊の消息不明との
一報がボロロッカに向かった第六遊撃隊が帰還した直後に入ったからだ。
施政院のお偉方は、探索隊が第六遊撃隊のみで構成されているのを
いいことに正規の騎士団の出動を許さないつもり、だったのだが・・・
比較的常識も良識も持ち合わせている方である一議員が事の大きさゆえに
第六遊撃隊だけに任せて何かあったらどうするのだ?と発言した事を皮切りに
議会は紛糾、結局騎士団員一名を探索補助として出向させることで合意した。
無論これは建前で本音はとにかく暴走しやすい遊撃隊の監視、場合によっては
力ずくでもこれを抑え込むことが本来の任務であった。

などと様々な思惑が渦巻く中、泰然とヌコの隣を歩くガルド。
集落の造りは見た目以上に頑丈なようで、今のところ床が抜けたと言うことはない。
しかし一歩踏み出すたびにミシ・・・ミシ・・・と嫌な音を立てており、
常人ならいつ抜けるか、と躊躇するところだろう。だがガルドの心臓は
きっと毛むくじゃら、まるで気にする様子もなくミリアの後を付いていく。

>424
ライゼからここまで、ガルドは一言も喋らなかった。しかし、
>そしてため息。
ヌコのため息が耳に入った。
「ニュコ殿よ、ため息は同時に幸せや運気をも逃がすものだぞ。
何ゆえため息をついたかは知らぬが、笑って事にあたれば↑↑↓↓→←→←AB。」
最後何を言っているのか、人間が出す声じゃなかった。

>「とにかく、足だけは引っ張らないように頼むである。
>オッサンがピンチになっても助ける気はないからそのつもりで。」
「うむ、俺のことは心配するぬあ。
互いに己が身は己で守れば、助けなど必要∧д〇_b。
しかし頼もしい、俺も安心できると言うものよ。はっはっはっはっは。」
笑い声で薄い壁がびりびりと振動する。うるさい。
427GM ◆c8mKoM5yZ6 :2007/11/03(土) 22:49:49 O
>「いけねぇいけねぇ、すっかり諦めムードじゃあないですか。そいつは感心できねぇ。
> 隊長さん、心が折れちまったら見えるモンも見えなくなっちまう。しっかりして下せぇ。」
レフトハンドの言葉に、ハッと我に返るジョルジュ。絶望の闇に光が射した。
「……そうだな、確かにそうだ…こんな所で死ぬ訳にはいかんな。」
険しい顔で握り締めていた地図を開き、描かれたダンジョンの構図をじっと睨んだ。
「今我々のいるのがここだ。さっき崩れたのがここ、もしも遺跡が左右対照なら…」
地図の一点をペンで指し、丸を付ける。
「左側のルートを迂回すれば、階段前の三叉路まで戻れるかもしれない!」

>「ジョルジュたいちょー。
> 私達は休憩は後、どんくらいの時間ですかー?」
「そうだな、これで休憩は終わりにしよう。少しでも可能性があるなら、私はそれに賭ける。」
「隊長、僕達は助かるんですね!?」
「あぁ…神様ありがとうございます。早く家に帰りたい。」
霊鬼の問いに力強く答えたジョルジュを見て、ボブとマリアの顔にも再び希望が宿る。
>「お嬢、ちょっくら外を見てきます。どうやら“ヤツ”は遠くに行ったみてぇですし。」
そう言ってドアを開けようとするレフトハンドに、ジョルジュは立ち上がった。
「行くならくれぐれも気をつけて行ってくれ、我々は今から出発の準備に取り掛かる。
眠って動けない3人を背負ったままでは、いざという時に素早く走れはしないからな。
だから背負う者と背負われた者をロープでくくり付け、離れないように固定する。」
荷物からロープの束を取り出して、ジョルジュはボブとサムに渡した。



ミリアの後をついて暫く歩くと、集落の中でも一際大きな家に到着した。
「ここが私達の長の屋敷です。さあ中へどうぞお入り下さい。」
屋敷の中は見た目通り広く、沢山のエルフ達が待っていた。
中には床に寝転がった者の姿も見える。というより、寝転がった者の方が多い。
「よくぞいらしてくださいました。ボクがこのグリューンバルトの長、タイレルと申します。」
奥から現われたエルフの少年が、2人にペコリと頭を下げてお辞儀する。
エルフ族の長というからには、髭を伸ばした老人を連想させるが、意外な展開である。
「タイレル様は先代のアトス様の跡を継ぎ、去年から長となったのです。」
ミリアがそっと2人に耳打ちした。

「ミリアに貴方達をここへ案内させたのには訳があるんです。ここに寝ている者達を見て
お二方はどう思いますか?この者達は数日の間、眠ったまま目覚めないのです。」
悲しげに辺りを見回すと、再び2人に向き直り、説明を続けた。
「グリューンバルトにある遺跡へ人間の一団が入ってからです。この不可解な現象が起きたのは…。」
428霊鬼 ◆F/ATTd3VB. :2007/11/04(日) 05:39:21 O
>425>427
>「そうだな、これで休憩は終わりにしよう。少しでも可能性があるなら、私はそれに賭ける。」
>「隊長、僕達は助かるんですね!?」
>「あぁ…神様ありがとうございます。早く家に帰りたい。」
レフちーに励まされたジョルジュ隊長に力強さが戻った。
脱出ルートも考えたようで、休憩はもうそろそろ終わり。
マリアとボブも力強さの戻った隊長の言葉を聞いて、元気を取り戻している。
この状況に霊鬼も内心嬉しく思っている。
この状況で不謹慎だけど、ようやく暴れられるから。

>「お嬢、ちょっくら外を見てきます。どうやら“ヤツ”は遠くに行ったみてぇですし。」
レフちーが外の様子を見てくるって言って、部屋の扉に手を掛けた。
レフちーが扉を開ける前に、ジョルジュ隊長が立ち上がる。

>「行くならくれぐれも気をつけて行ってくれ、我々は今から出発の準備に取り掛かる。
>眠って動けない3人を背負ったままでは、いざという時に素早く走れはしないからな。
>だから背負う者と背負われた者をロープでくくり付け、離れないように固定する。」
ジョルジュ隊長は荷物からロープを取り出して、ボブとサムに渡した。
当然のことながら戦闘員である霊鬼には渡されない。

外に出ようとするレフちーに、霊鬼は声を掛ける。
「レフちー、ジョルジュ隊長もそろそろ出発するって言ってるから、早めに帰って来てよねー。
 私はレフちーとここで今生の別れなんて嫌だからね」

霊鬼は脱出の準備には役に立たない、この場に居たってジョルジュ隊長達のやっていることを見ているだけ。
だが、霊鬼はこの場にいることが大事なのだ。
この小さな部屋だって遺跡の中の一部屋、ここだけ虫が出ないということは無いと思う。
だからこそ、霊鬼は戦いが本職ではない調査隊の近くから離れてはいけないのだ。
429レフトハンド ◆6Mrl/jPPh. :2007/11/04(日) 20:55:15 0
>「……そうだな、確かにそうだ…こんな所で死ぬ訳にはいかんな。」
そうそう、それでいいんです。諦めちまったら、そこで終わりでやすからね。
どうやらあの一言が、この人達をもう一回奮い立たせたみたいで。
あっしも嬉しいですよ、言った甲斐があるってモンでさァ。
>「今我々のいるのがここだ。さっき崩れたのがここ、もしも遺跡が左右対照なら…」
>「左側のルートを迂回すれば、階段前の三叉路まで戻れるかもしれない!」
なるほどねぇ、言われてみりゃあ確かにそうだったかもしれやせん。
あんまり似たような景色が続くモンでして、遺跡やらはズブのシロウトなあっしは
今そうやって言われるまでちっとも気付きやせんでしたよ。

だがその話を聞いて俄然やる気が出てきやした。
早い話が“追っかけっコ”だ。あっしは逃げ足にゃ自信がありましてねぇ。
まだコソドロだった頃は、そりゃもう生きる為に必死で走って逃げてたもんです。
まぁ“ヤツ”に見つからないように行けりゃ、それに越した事はございやせんが。

>「行くならくれぐれも気をつけて行ってくれ、我々は今から出発の準備に取り掛かる。
>眠って動けない3人を背負ったままでは、いざという時に素早く走れはしないからな。
>だから背負う者と背負われた者をロープでくくり付け、離れないように固定する。」
おお、それならおぶってても揺れないし、両手が空くって寸法ですかい?
「隊長さん、そいつはいいアイディアです。そしたらこっちも安心して“ヤツ”を引き付けられる。」
あっしは親指を立てて、隊長さんに答えやした。
>「レフちー、ジョルジュ隊長もそろそろ出発するって言ってるから、早めに帰って来てよねー。
> 私はレフちーとここで今生の別れなんて嫌だからね」
「ありがてぇ言葉です。なぁに、心配は要りやせん。ちょっくら見てくるだけですから。」

全くありがてぇこって・・・ホントにお嬢ってば優しい人だ。
そうまで言われちゃあね、張り切らないってのは嘘でしょう?燃えるじゃあないですか。
「そいじゃ、行ってきやす。」

廊下は暗くて湿っぽい。暗闇にゃ慣れっこですからね、別に困る事ァございません。
ですがね、湿っぽいのは好きじゃあありませんや。
なんて言うんでしょうね、息が詰まるって言えば宜しいンですか?そんな感じでして。
入口から15mくらい離れた時でしょうか。曲がり角に着きました。
まっすぐに行く道と左に曲がる道、その2つです。あっしは聞き耳を立てると、奥の音を探ってみやした。
430ヌコ ◆4hcHBs40RQ :2007/11/04(日) 23:07:01 0
>>426
ヌコのぼやきやため息にも、豪快な反応を返すガルド。
小生意気なヌコにも動じない性格のようだ。
壁を振動させる笑い声に耳を塞ぎながら、眉間にシワを寄せて幸せや運気を逃がす息を漏らすヌコ。
「このオッサン、うるさい上に所々何て言ってるのかよく分からないのだ…。
耳の錯覚かコナミコマンドみたいなのが聞こえた気すらしたである。」
言ってからコナミコマンドって何だ?と自分で首を傾げ、しかしすぐに気にするのをやめた。
くるりと振り返って指を差し、怒鳴るように言う。
「とーにーかーく!ウチの邪魔にだけはならないよーに!あとニュコって呼ぶな!」

>>427
そしてミリアに案内された先は、長の住むという屋敷だった。
エルフがたくさん控えているが、その大半は寝転がって眠っているようだ。
「そういえばうちの隊のアゼルもエルフだったのだ。エルフってみんな普段は怠惰な生活してるのかニャ〜。」
『給料泥棒』の二つ名で知られる同僚を思い出しながら、眠るエルフ達を眺めつぶやく。
聞こえると失礼な独り言でも、ヌコは特に相手に聞こえないような配慮はしない。

そして、置くから少年のようなエルフが現れ、自らを長と名乗った。
ミリア曰く、先代の後を継いで去年から長になったばかりらしい。
恐らく先代が急死でもしたのだろう。

>「ミリアに貴方達をここへ案内させたのには訳があるんです。ここに寝ている者達を見て
>お二方はどう思いますか?この者達は数日の間、眠ったまま目覚めないのです。」
>「グリューンバルトにある遺跡へ人間の一団が入ってからです。この不可解な現象が起きたのは…。」
長タイレルが言う。
ヌコはそれに答えず、懐からまほうビンを取り出し蓋を開けた。
中から羽毛が大量に飛び出し、それがヌコの前に全て集まって大きなふかふかのクッションを作り出した。
ヌコはその上に丸くなり、ガルドに言う。
「オッサン、話が終わったら起こすニャ。皆が寝てるところを見てたらウチも…ぐー。」

寝てしまった。
431GM ◆c8mKoM5yZ6 :2007/11/05(月) 19:15:05 O
>まっすぐに行く道と左に曲がる道、その2つです。あっしは聞き耳を立てると、奥の音を探ってみやした。

すると薄暗い廊下、左方向へ分かれた通路の奥から、微かに声が聞こえたような気がした。
確信は持てない。単に風の音を聞き間違っただけかもしれない。
しかし、何故か気になるのだ。聞こえた声は、クスクスと笑う女性の嘲笑に似ていたのである。
この遺跡には現在、調査隊一行しかいない筈だ。
もちろんだが調査隊の後から来た者が絶対にいないとは限らない。
だがポインターフラッグ条約がある。遺跡に入る前に、調査隊が確かに立てた。
その前に立っていたフラッグは無かったので、遺跡には誰も入ってない筈だ。

レフトハンドはこのまま通路を進んでもいいし、一旦戻って声のことを報せてもいい。


レフトハンドが偵察に出てから、約2分くらい経った。
「よし、こんなもので大丈夫だろう。」
ジョルジュはキャサリンを背負って立ち上がる。しっかりと固定されたようだ。
これなら多少の激しい動きでも、背負ったキャサリンを落とさないだろう。
両手が空くので、地図とランタンを持つ事も出来る。
他の2人もそれぞれ準備が調ったらしい。空いている手に荷物を持っている。
ジョルジュがキャサリンを、ボブがマクレーンを、サムがピーターを背負っている。
マリアは女性なので自分の荷物とジョルジュの荷物を持っていた。
「霊鬼さん、我々の準備は完了した。レフトハンドさんの帰りを待つか?どうする?」
ジョルジュは辺りに目を光らせている霊鬼に話し掛けた。

霊鬼はレフトハンドの帰りを待ってもいいし、待たずに後を追いかけても構わない。
432ガルド ◆zCCyDiTaeI :2007/11/05(月) 20:11:04 0
>427
ミリアについていくと、やがて大きな家へとたどり着いた。
>「ここが私達の長の屋敷です。さあ中へどうぞお入り下さい。」
中に入るように促される。
「うむ、失礼いたす。」
入ろうと身をかがめる。足りなかった。どーんと勢いよく梁にぶつかって
家が、歩いてきた床が、隣の足場までもが揺れる。それでも壊れない梁。頑丈である。
「おっと、言葉どおり失礼ITAMESI。俺はここで話を伺わせて「」:@;ぴ。」
相変わらず何を喋ってるのか聞き取りづらい・・・。

>「よくぞいらしてくださいました。ボクがこのグリューンバルトの長、タイレルと申します。」
長、と名乗ったのは少年エルフだ。しかしエルフは超長命種。
或いは1000年を超える時を生きているのかもしれない。
「丁重なる挨拶痛み入ります。ワタクシはライゼ第10重装騎士団のガルド・バクォーと申します。」
長ったらしい台詞を快活な発音でこなしたガルドだった。

>「ミリアに貴方達をここへ案内させたのには訳があるんです。ここに寝ている者達を見て
>お二方はどう思いますか?この者達は数日の間、眠ったまま目覚めないのです。」
>「グリューンバルトにある遺跡へ人間の一団が入ってからです。この不可解な現象が起きたのは…。」
「その一報はライゼにもすぐに齎されましたぞ。何分情報がまったくと言って良いほど
揃っておらず、手前の拙い推測になりますが・・・やはり、探索隊の活動によってこの奇怪至極な
現象の原因が解き放たれた、と見るべきかと。」
長い説明に一度も噛まず、誰にでも聞き取れる言葉で話していく。
もちろんその声も大声なのだが、家が揺れるほどの声量の中エルフは眠り続けている。
物理的にどうこうできる代物じゃないことだけは確かなようだ。

>430
>眉間にシワを寄せて幸せや運気を逃がす息を漏らすヌコ。
言ったそばからため息。
「いかん、いかんぞニュコ殿よ。
二度もため息などついては、寿命が1ヶ月は縮まくぁwせdrftgyふじこlp;。」
今度は発音不明瞭ではない、舌を噛んだのだ。

>「とーにーかーく!ウチの邪魔にだけはならないよーに!あとニュコって呼ぶな!」
おかしな事を言う。確かに俺はヌコ殿と呼んだ。
きっと俺の発音が悪いのだろう、気をつけねば。
「すまぬスマヌ、以後気をつけるぞニュコ殿。」
人生37年ただの一度も気づけなかった、ゆえに直らなかった致命的な欠点、
今言われて直るようなヤワなもんじゃない。結局言い間違えたが、ガルドは気づいてない。

>「オッサン、話が終わったら起こすニャ。皆が寝てるところを見てたらウチも…ぐー。」
>寝てしまった。
なんとヌコは眠ってしまった!
(「やれやれ、やはり子供には退屈な話か。
・・・しかし生意気盛りとは言えやはり女子、寝顔は無邪気なものよ。
今は寝ておけ、次はいつ寝れるか分からんからのお。」)
緊迫した状況のはずなのにヌコの寝姿に和み癒されるガルド。起こすつもりは毛頭ないらしかった。
433霊鬼 ◆F/ATTd3VB. :2007/11/05(月) 20:15:47 O
>429>431
レフちーが偵察に行って数分が経過。
調査隊の起きているメンバーは寝ているメンバーを背中にしっかりと固定し、荷物を持って準備完了。
霊鬼は横に立掛けておいた金棒を片手で担いだ。
霊鬼の準備はこれにて終り。
瓢箪や調査に必要な物はちゃんと隠している為、手で持っていく必要は無いのだ。

>「霊鬼さん、我々の準備は完了した。レフトハンドさんの帰りを待つか?どうする?」
ジョルジュ隊長が霊鬼に聞いてきた。
霊鬼は少し考えて、答えを返す。

「帰りを待ってましょ。
 今から探しに行ったって、レフちーがどこまで探索に行ったかなんて分かんないし、探し回ってたらお互いが迷子になっちゃうのがオチだよ。
 レフちーは絶対に帰ってくる。
 だから、私を信じて待っててくれない?」
434レフトハンド ◆6Mrl/jPPh. :2007/11/05(月) 20:26:33 0
>>431
>すると薄暗い廊下、左方向へ分かれた通路の奥から、微かに声が聞こえたような気がした。
「むぅ・・・なんでしょうかねぇ?」
あっしは自分の耳を疑っちまいやした。考えてもみて下せぇ、笑い声ですぜ?
しかもその声は女の・・・とびきり性格がネジ曲がってそうな女の笑い声ときたもんだ。
こいつァ妙じゃないですか。どう考えても妙でさァ。

ワケ判らねぇ化けモンがうろちょろしている遺跡にゃ、ちょいと不釣り合いってもんで。
おまけに、この遺跡にゃポインターフラッグを立ててるンですよ。
もしも声がホンモノの女の声なら、そりゃ国際条約をシカトって事になりやす。
『入る前に立てる。立ててるトコには入らない。』
そのどちらも破ってるんですからね。

ですがね、その声が気になってンのも事実。あっしは忍び足で左側の通路へ進みやした。
すぐにでも戻って、お嬢に知らせるべきだったんですがね、目先の欲に負けちまった。
条約違反したヤツを取っ捕まえたら、きっとお嬢はあっしを褒めてくれる・・・
 鉄人の旦那だって『よくやったなレフティ!流石だ!』って褒めてくれるはずだってね。
今思えば、この時のあっしは少しばかり舞い上がってたんでしょうね。

あっしが尊敬する鉄人の旦那を、毎日のように苛めやがるクソ猫じゃあありやせんが、
 “好奇心がブッ殺すのは猫だけではない”って事を、あっしは身をもって知りやした。
435GM ◆c8mKoM5yZ6 :2007/11/06(火) 20:27:51 O
>寝てしまった。
なんと寝てしまったではないか!超絶マイペースなヌコに、その場にいた者は唖然とする。
眠ることは死に等しい現在のグリューンバルトのエルフ達にとって衝撃的だったのだ。
「お…起きてーッ!!!」
ミリアが放つ電光石火のビンタが、ヌコのツヤツヤほっぺに容赦無くめり込んだ。
直後、ハッとして戸口で佇むガルドに慌てて弁明する。
「あ、いえ…その、とにかく今は眠ることは危険なんです!ここに寝ている者達は皆、
夜に寝てそれきり目覚めない者達ばかりでして、貴方達まで眠りから覚めないことに
なってしまったら我々は困ります。阻止出来なかった罪悪感も残りますし…。」
本来なら他人にビンタなど絶対にしない人のだろう、非常に申し訳なさそうな顔だ。
よく見れば、ミリアの目元にはうっすらと隈が出来ているのが判る。
ミリアだけではない。この場にいたエルフは全員、隈があり睡眠不足のようだった。

「コホン、えーと…話を続けてよろしいでしょうか?」
小さく咳払いして遠慮がちに手を上げ、タイレルがボソッと呟くように存在を主張した。
彼も例外ではなく、やはり目の下には隈があった。
もっとも彼の場合、単なる睡眠不足だけが原因ではなさそうではあったが。
>「その一報はライゼにもすぐに齎されましたぞ。何分情報がまったくと言って良いほど
>揃っておらず、手前の拙い推測になりますが・・・やはり、探索隊の活動によってこの奇怪至極な
>現象の原因が解き放たれた、と見るべきかと。」

「そうなんです、我々もそう考えています。故にアゼルを通して王国に協力を求めて
みたのですが…肝心な情報、つまりこの奇病に関して我々の治療魔法も効果が無く、
全く正体が判らず…。あの遺跡があった場所については古文書にて調べている最中です。」
答えたタイレルの表情は暗い。まだ若い彼に長の重責は堪え難い圧力となっているのだろう。

「お願い致します!貴方達の任務が調査隊の救出である事は重々承知しています、
ですがこの奇病の原因が遺跡内にて発見出来たなら、それを根絶していただきたいのです。」
タイレルを始めとして、エルフ達の懇願の視線がガルドとヌコに集まった。
今回の任務はあくまでも調査隊の探索と救出である。しかし困っているエルフ達を放っておくのは忍びない。

君達は任務の途中で、奇病の原因を突き止めたなら、それを何とかしてもいいし、放置しても構わない。
436ヌコ ◆4hcHBs40RQ :2007/11/06(火) 21:29:11 0
>>435
>「お…起きてーッ!!!」
「げふー!」
ミリアにビンタされ、ヌコは血を吐きながらくるくると飛んで壁にぶつかった。
そのままずるずると落下。
「い、いいビンタ持ってるニャ…ギャグ漫画じゃなかったら死んでるところである。
あとで覚えとくのだミリア…。」
びくんびくんと痙攣しながら意味の分からない事を呟くヌコだった。

その後、タイレルとガルドが事態について話をしているが、
ヌコはぶすっと口を尖らせるばかりで聞いているのかいないのか。
「ミリアのばーか…ミリアのばーか…」
尖った口からなんだか呪詛のような呟きが聞こえる。

>「お願い致します!貴方達の任務が調査隊の救出である事は重々承知しています、
>ですがこの奇病の原因が遺跡内にて発見出来たなら、それを根絶していただきたいのです。」
>タイレルを始めとして、エルフ達の懇願の視線がガルドとヌコに集まった。
「あっかんべ〜。」
ヌコは懇願の視線に舌を出して応えた。
「そんなのウチには全然関係ないのだ。ちょっと外の空気吸ってくるからオッサンあとは任すニャ〜。」
そして入り口でつっかえているガルドの股をくぐり、家の外へ出ていってしまった。
437GM ◆c8mKoM5yZ6 :2007/11/07(水) 23:14:43 O
>ですがね、その声が気になってンのも事実。あっしは忍び足で左側の通路へ進みやした。

薄暗い廊下の先にぼんやりと光る人影が見えた。丈の長いドレスだろうか?
風も無いのに裾はゆらゆらと揺れ、人影は滑るように音を立てずに遠のいて行く。
まるで幽霊のようだ。
そして、またもや笑い声を残して、人影は見えなくなった。

と同時に聞き覚えのある音が聞こえた。
ペタペタと粘着質な足音…あの正体不明の追跡者が、いつの間にか背後まで迫っている!
何故こんなに近付くまで気が付かなかったのか、それはレフトハンドにも分からない。
だが追跡者はそんなレフトハンドにはお構いなしに、ビームを撃ってきた!!


>「帰りを待ってましょ。
> 今から探しに行ったって、レフちーがどこまで探索に行ったかなんて分かんないし、探し回ってたらお互いが迷子になっちゃうのがオチだよ。
> レフちーは絶対に帰ってくる。
> だから、私を信じて待っててくれない?」

霊鬼がそう言ってから更に2分程の時間が経った。
『ちょっくら見てくる』にしては、流石に遅いような気がする。
「別に君達の実力を疑っている訳ではないんだ。出自の特異性から実力を正当に評価して
もらえない部隊という事も知っている。だからこそ気になってな…」
ジョルジュも不安を隠せない様子だ。偵察に出た者の実力を知るからこそだろう。

もしかしたらレフトハンドの身に何かしらのトラブルが発生したのかもしれない。
再び部屋に沈黙が訪れたその時、遺跡内に轟音が響き渡った。
音の大きさと揺れの強さを考えると、部屋からはさほど離れていないようだ。
438霊鬼 ◆F/ATTd3VB. :2007/11/08(木) 07:55:58 O
>437
更に数分が経過した。

>「別に君達の実力を疑っている訳ではないんだ。出自の特異性から実力を正当に評価して
>もらえない部隊という事も知っている。だからこそ気になってな…」
レフちーがまだ帰って来ないせいで、ジョルジュ隊長は不安になり始めている。
霊鬼はレフちーのことを信用している。
人柄にしても、実力にしても。
だから、少し遠くまで探索に出ただけだと思っていた。
霊鬼が皆に大丈夫だと言おうと口を開いた矢先、遺跡全体を揺るがすような爆音が鳴り響いた。

「ジョルジュ隊長!私、ちょっと……」
行ってきますと続けようとして、霊鬼は口を閉じた。
爆音の大きさとそれに追随して起きた揺れから、近くで何かが起ったのは間違いない。
次に何が起ったかだが、霊鬼の頭の中では先の会話から、レフちーに何かあったと既に決定してしまった。
レフちーのことも心配だが、霊鬼一人が先走って行動してしまえば、調査隊の皆が危険に陥ってしまう。
レフちーがやられてしまい、霊鬼がここを離れた隙に、この部屋に虫が詰め寄って、調査隊が全滅させられてしまう。
こんな最悪なパターンには絶対にしたくない。

「……今言おうとしたこと、やっぱ無しね。
 私はジョルジュ隊長の判断にお任せするよ。
 私が勝手にここから出たら皆が危ないしね。
 それに、やっぱり私はレフちーを信じてるもん。
 絶対に大丈夫だって」
レフちーも第六遊撃隊の隊員。
そう簡単にくたばることは無いと信じ、霊鬼はジョルジュ隊長の判断に身を任せることにした。
439レフトハンド ◆6Mrl/jPPh. :2007/11/08(木) 19:15:47 0
>>437
やっぱり女がいたようです。ですが、何やら光ってンのが気になりやした。
あっしはね、超が付く程ニガテなんです。幽霊ってヤツがね。ありゃホント駄目ですわ。
勿論こんな古い遺跡です、幽霊くらい出たって何も不思議じゃあごさいやせんが・・・
ニガテなものはどうやったってニガテでして。
カッコわるいのは承知の上、あっしは完全に逃げ腰でしたよ。
一目散に回れ右して全力疾走って具合です。え?ヘタレ野郎だって?
勘弁して下さいや、あっしは鉄人の旦那の為なら何でもする自信がありやすが・・・
正直ね、幽霊だけは別ってコトで。いやホントに。

まぁそういう訳で回れ右したまでは良かったンですよ。
でもやっぱりこの時のあっしは判断力がさっぱり抜け落ちてたようでしてね。
どうして気付かなかったのか、振り返った途端“ヤツ”と『お見合いモード』ですぜ?
そりゃもう心臓が止まるかと思いやしたよ。
>だが追跡者はそんなレフトハンドにはお構いなしに、ビームを撃ってきた!!
あーあ、あっしはどんだけツイてないんでしょうねぇ。
いや、実はツイてるのかもしれやせん。少なくとも心臓はこの通り動いてますし。
だからね、左腕のガントレットで咄嗟に庇いやした。

このガントレット、特注の品でしてね。あっしの“左手”の為に造られたンですよ。
あらゆる魔力を遮断する魔法金属《ディスペラタイド》。
そのおかげで日常生活が随分と便利になりやした。ちゃんと左手が“使える”ンですから。
撃たれたビームをこのガントレットで弾けば直撃だけは免れる、そう考えてたんでさァ。
しかし世の中ってのはホント上手くねぇ、あっしの予想は見事にハズレ。
魔力を遮断する筈なのに、ビームはあっしを直撃したンですよ。これには驚きやした。
ガントレットの曲面が、ビームの威力を受け流してくれなきゃ、死んでましたね。
拡散したビームは壁をブチ破って通路の風通しを良くしてくれたようで。
あんなのまともにくらっちゃあ、あっしは間違いなく百回は死ねるんじゃないでしょうか。

「やれやれ、そんじゃあ見せてあげましょうかね。あっしの“奥の手”ってのを!!」
ガントレットに付いた鎖を、一気に引っこ抜きやす。この鎖は全部の止め具に繋がってましてね。
引っこ抜けばホラ、あっという間にガントレットを外す事が出来るンでさァ。
ジャララララララッ・・・ガシャン!!
腕を覆うガントレットが外れて床に落ちた後、そこに在ったのは真っ黒な霧・・・
パッと見はそう見えるンですが、これでもあっしの“左手”なんです。

昔ヘマやらかした代償と、その代償のおかげで手に入れた左手、それがこの《魔神の左手》。
「あっしは荒事ァ専門外ですがね、“やられた分は利子付けてやり返す”主義なんで、そこんトコよろしく頼みまさァ。」
440ガルド ◆zCCyDiTaeI
>435
>「あ、いえ…その、とにかく今は眠ることは危険なんです!ここに寝ている者達は皆、
>夜に寝てそれきり目覚めない者達ばかりでして、貴方達まで眠りから覚めないことに
>なってしまったら我々は困ります。阻止出来なかった罪悪感も残りますし…。」
ミリアの必死の弁明にいちいち頷くガルド。
「なるほど、それではいたし方あ「@p;い。
我らは今のzsxcfgvbhjとる訳ではないので気がつかなんだ。
ニュコ殿に代わって礼をさせていただく。」
深々と礼をする、やっぱり梁にぶつかって家が揺れた。
さっきよりも軋みの程度や音がヤバイ、あと二、三回で壊れそうだ。

>「コホン、えーと…話を続けてよろしいでしょうか?」
「おっと失礼いたしました、お願いいたしますぞ。」

>「お願い致します!貴方達の任務が調査隊の救出である事は重々承知しています、
>ですがこの奇病の原因が遺跡内にて発見出来たなら、それを根絶していただきたいのです。」
しごく真っ当な依頼だが、施政院からの命令書にはその件について何も書かれていない。
こういう場合、独断による行動を咎められまいと無視することが多いのだが・・・
実際は何も書いてないと言うことはその場の判断に任せると言う意味なのだ。

>436
>「あっかんべ〜。」
>ヌコは懇願の視線に舌を出して応えた。
>「そんなのウチには全然関係ないのだ。ちょっと外の空気吸ってくるからオッサンあとは任すニャ〜。」
>そして入り口でつっかえているガルドの股をくぐり、家の外へ出ていってしまった。
そんなことを考えているとヌコが嫌がり、ガルドが何か言う前に隙間から外に出て行ってしまった。
後姿を見送るガルドの顔には苦笑が浮かんでいる。真顔に戻して振り返って
「物理的に破壊できる代物ならばお任せ下されよ。ただ、魔術的な物だった場合
排除するのに時間がかかる場合もありますがな。あと、ニュコ殿を悪く思わんで下され。
着任してからどうも虫の居所がよろしくない様なので。ああ言ってはおりますが、
心根の優しい素直な子なのです。種々諸々の波風立てる心持ではありましょうが、
ここは私に免じて荒ぶる気持ちをお収め下さいまするよう。このとおり。」
今度はきちんと距離をとって・・・なんと土下座をした。
ガチガチに鎧を着込んでいる筈なのに、まるでカエルの様にぺたんこに体を折り曲げている。
これ以上ないほど見事な土下座、教本に載せられるほどだ。