【TRPG】ヴァンパイアの学園祭(人∀・)チャッチャ6
我等のTRPGスレにようこそ。生と死の交錯する冒険の旅に出かけよう!
あなたのまえに非日常世界の扉が開く。
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【TRPG】いまこそ幻想界に飛び込もう(人∀・)タノム!・第二部『ヴァンパイアの学園祭』編
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学園に恐るべきヴァンパイアが潜む。頻発する怪現象。次々と犠牲になる生徒。
果たして誰が吸血鬼なのか。学園を舞台にした壮絶な戦いが始まる。
■舞台は現代日本。神奈川県立上湘南第一中学校(かみしょうなん)
■参加はキャラは普通の在校生でも、魔物退治のスペシャリストでもなんでも可。敵役大歓迎。
■上湘南第一中学は帰国子女も通学している中学校。外国人キャラでも参加可。
■学園が舞台だからといって参加資格は学生キャラのみではありません。
■オリジナルキャラクターでも版権キャラクターでも参加できます。
■途中参加コテ大大大大歓迎!
我等の冒険のルールは以下の通り。
■怒涛のネタフリキャッチング
物語に取り入れられるネタフリは積極的に拾おう!
けど自分のレスで全部拾う必要はありません。それはムリ!
誰かが誰かのネタフリを物語に取り入れていればいいのです。
みんなでひとつの物語を創りましょう。
■運命の決定書き
他のキャラクターの行動結果を必要に応じて断定的に描写してかまいません。
戦闘シーンや窮地の場面では迫力を生むので、どんどん使って下さい。
遠慮無用! やりすぎ暴走大歓迎!
■自在の変換受け
例えば「○○に銃弾が命中!」のあとに次の人が「と思ったがぎりぎり避けた!」のように
後に書き込む人(後手)がその前に書いた人(先手)の物語展開を自由に変えて受けることができます。
後からレスする人は前の人のネタフリを拾いやすいように変換できます。
振られたネタをそのまま拾うもよし。予想外の拾い方をするもよし。
後手に書き込むあなたの自由です。
我等のスレのもっとも大切な基本ルールはこれ
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TRPGキャラのなりきりとして成り立っているのであれば 「なんでもあり」で「なにしてもいい」
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求めるのは驚きのある物語!欲するのはドラマチックな愛憎!望むのは心踊り心酔わせる大冒険!
■ターン制の不採用
順番制はないので好きな時に書いて下さい。但しチャット状態はついていけない人が出るので禁止です。
■レスアンカーの不採用
基本的に使わなくていいですが必要ならば使用してかまいません。
■荒しは徹底スルー
当スレは「なんでもあり」で「なにしてもいい」であっても無制限に何をしてもいいのではありません。
あくまでもTRPGスレのなりきりとして成り立っていることが条件です。
悪意のあるネタフリや物語の破壊を狙ったネタフリ、脈絡の無いレスは当然不採用!
荒し叩き自治は華麗に優雅にスルー。
コテへの中傷や他の人のレス非難する者は相手にしない。徹底無視をプレゼント。
あなたの分身、あるいはあなたの真実の姿であるキャラクターを登録してください。
キャラクターデータ
―名前・
―性別・
―年齢・
―髪色・
―瞳色・
―容姿・
―学年・
―部活・
―備考・
■人物の外見のみ記載。
キャラの生い立ちや過去、目的目標、性格、癖、特技など内面的なものは劇中で明かしていくように。
備考には補足を。出典がある場合にはその作品名を書いてください。
第一部のキャラクターデータにあった「身長」「体重」の欄は省きました。
数字が書いてあったもわかりにくいので、背が高い、痩せている、など身体的特徴をキャラが持つ場合は
「容姿」欄に記載してください。
では物語を始めよう!
6 :
名無しになりきれ:2006/10/06(金) 14:01:19
うんこスレ乙!
あたしはやっと落ち着いて治療できそうな場所を見つけた。
イチョウ並木通りに隠れるのに調度いい店があった。
店の庭にたくさん木が植えられて、隠れるのによさそう。
ダイビング用品専門店「ルビーマーメイド」って看板にある。湘南らしい店ね。
営業時間が終わっていて店内の照明は消えている。人の気配もない。駐車場にも車は停まっていない。
あたしは店の庭に入っていった。太いヤシの木が三本あって、その根元はガジュマルの茂み。
通りからも見えない。
あたしは庭木の中に座った。救急車内で上は脱がされて半裸だから、葉が当たってチクチクした。
傷を確認してみると、あー。なんてかわいそうなレイジさま。
お腹にべコッと5センチ四方の穴。カウボーイの撃った魔弾は貫通していて背骨も少し粉砕している。
痛かっただろう。
でももう大丈夫。あたしが同化しているからね。
あたしは寝そべった。
レイジさまの肉体再生を行う。同化したあたしはレイジさまの細胞に完全に変異してしまうので、このあたしは死ぬ。
でもいいわ。あたしの破片たちがいるから。
あたしは自分の細胞をレイジさまの細胞へと急がずにゆっくりと変えていった。
順調に治療は進む。
レイジさまの体が再生していく。
「ん?」
・・・むー。
やだ。レイジさまったら。某所が硬くなっていくけど。
「んん?」
なにかしら。
口の中に変な快感が。・・・ぬるり、ぬるり、ぴちゃ、くちゃ、と舌に触感を感じるけど。
何これ?
レイジさまの魂が、なにか、う。
ううん。
あ。
気持ちいー。
あ。
ア。
あん。
アーーーーーーーーーーーーー!ぅぅ。
・・・汚しちゃった。
怒られちゃ・・・
「あ・・・。首が死んだかも」
「うん。そんなシンクロ波を感じたね」
「レイジさまの蘇生に成功したかしら?」
「多分。殺された死に方の念波ではなかったわ」
「でも・・・快感を感じてなかった?」
「昇天!ってかんじだったけど?」
「さー」
「あ!見て!空!」
小人のあたしの一人が空を指した。黒い影が飛んでいる。見失っていた獣毛の鬼だ。
「霊鏡を持っているわ!」
>水無月つかさ
>つかさは、携帯電話を片手に、グリフォンに乗って、ウギ・リギリの死体(と言うか残骸)の近くに降り立った。
「水無月ー!」
あたしたちは鷲馬に乗った水無月に走りよった。
水無月が地面に向かって何かしている。
「あら。またホムンクルス霧津の残骸?なんで?」
「見てこっち!ギコが寝てる!」
「このヤロー。なにやってんのよ!」
「ギコのばか!(キック!)」
「あほ!(キック!)」
蹴る、殴る、蹴る、蹴る、殴る、蹴る、殴る。
「合体しよ!あの鬼を追わないと!」
「うん」
「うん」
「うん」
「(略)」
「合体!」
「水無月!学校に連れてって!グリフォンに乗せて!」
首だった質量が無くなった分、合体したけどあたしはまた背が低くなっちゃった。
>リリ
「この僕になんとも勇敢な弁舌だ。
命燃え尽きる事を恐れていないみたいだね?は!死んだ事も無いくせに。
あのね、リリ。きみは間違っている。きみのその強さは命終われば全ては終わると思っているからだ。
死は全ての苦しみの終わりと勘違いしている。罪人には始まりなんだ。
愚かな娘よ、心して聞け。人は死ねば必ずこの三途の川のほとりにやってくる。
つまりきみは死ねば、再び僕の川に来るのだ。無力な死者としてね。
人間が僕に逆らう事など出来ないのだ。
いますぐに僕の靴を舐めろ。そうしなければ死後、永遠に続く地獄の労役につかせてやる!」
無慈悲な笑みを浮かべて死の川の水面に浮くゼフィールは、死の水に足濡らすリリに言い放った。
今までおとなしく伏せていたゼフィールの大猪が鼻を鳴らして立ち上がった。
ゼフィールは目をそばめた。
「スパーダか」
>スパーダ
>近づいて来るのは、 きっちりとしたオールバックにモノクルを付け、中世貴族を髣髴とさせる
>古めかしい礼服に身を包んだ紳士だった。故に、背負う禍々しい大剣・・・
「久しいね。何をしにきたんだい?生死を司る僕に願い事をしに?
妻が欲しければ、いくらでも創造してやるけど?
ひっこんでいろ」
楽しげに哄笑するゼフィールだったが、声が止まった。
ゼフィールの顔が嫌悪に歪む。
「嘘だろ」
三途の川が波立つ。地響きが轟き、耳障りな鉄の軋む音が響き渡る。
>アッシュ
>テンポーが居る別次元の岩壁にアンカーを撃ちこんだ。
>ボクを通して、三重世界を同化させる。
>祭壇も、三途の川も、バタフライ・エフェクトでみんな現実界に揚げてやる。
>礼司
>三途の川の対岸が盛り上がり、何か巨大な建物がせりあがる。「相模国造の屋敷!」
ゼフィールが金の蛇の鞭をアッシュの鉄塊へと放った。
数百メートル離れたアッシュの鉄船にまで、鞭は伸び届く。
細い鞭が重厚巨大な鉄塊に敵う筈もない、そう思えたが違った。
鞭先端の蛇頭が装甲に接触した刹那、蛇頭を中心に眩い金色の光の円が生じた。
光の輪は広がり、アッシュの鉄塊を包んでいく。
光の輪の中は、波ガラスを透して見るかの様にさざ波に歪んで見える。鉄の装甲が歪んでみえる。
円が広がりきって途切れて消えた時、アッシュの鉄塊の半分が消滅していた。鉄塊が傾く。
バランスを崩すアッシュに、遥か遠くに位置するゼフィールは巻き戻した鞭を放った。
無限に伸びる鞭をアッシュに巻きつかせる。
「僕の川を現世につなげるだと!愚か者!」
乱暴に鞭を手繰り寄せた。
アッシュが首も風圧で折れそうな勢いで引き寄せられ空中に舞い上がる。ゼフィールは宙であえて鞭を緩めた。
アッシュは大きな水柱を立てて川に落ちた。
ゼフィールは怒りのままにアッシュに歩みよろうとしたが、止まらざるをえなかった。
立っている三途の川の流域が川底ごと浮遊しだした。
三途の川全域が、ではない。見たところ四方5キロメートルの岩盤が浮き上がっていくのだ。
見えない巨大なスコップで掬いあげられたかのように。
それでいて水は流れ落ちたりはしない。
相模国像の屋敷と共に、上へと加速して昇っていく。
目眩を感じさせるような上昇感がその場にいる全員を襲った。
>ベル
>「「「久しぶりね。最後の夜だから必ず逢えると思っていたわ」」」
冥府の花を散らし、轟音をあげ昇っていく相模国像の屋敷。
屋敷もまた岩盤ごと一塊に浮遊していく。
館の窓に女王然としたベルがいた。
「叢雲!」
叫んだゼフィールだが、顔色が今までとは全く違っていた。
不敵な表情が消えている。明らかに怯えの表情があった。
ゼフィールはベルから目を逸らすと、礼司もリリもスパーダも眼中にない様子で三途の川の上を
必死の形相で走った。向かった先は、ようやく水面に身を起こしたアッシュだった。
「こいつ!」
ゼフィールは左手でアッシュの首をつかむと、水面から軽々と持ち上げた。
「敖遊の儀に僕は直接かかわれないのに!」
アッシュをつかんだまま左手を上げていく。アッシュの体が浮く。足が虚しく宙を漕ぐ。
「乙事主(おつことぬし)!」
ゼフィールが大猪を呼んだ。
乙事主は身震い一つすると、豚鼻に声を共鳴させ、耳をつんざくとてつもない音量で鳴いた。
どこからともなく消えていた霧が立ち込めだした。
「三途の川は元の生死の狭間に戻す。
ベルよ、お前の館だけが現世に弾き出されるがいい」
その言葉が言い終えられたのと同時に、続いていた上昇感とは逆の感覚がリリ達を襲った。
果てしなく落ちていく。
霧がこもりよくは見えないが、上に見えた上湘南の雨雲が遠ざかり消えていく。
要塞の様な相模国造の屋敷が昇っていくのが見える。
どんどん遠ざかる。
切り取られた三途の川は、元の位置に静かにぴたりと納まった。
「アッシュ、よくも!エッケザックスで魂を切り刻んでやろうか?」
駆け寄ってきた礼司にゼフィールは言った。
「礼司、きみは現世に帰る時がきたようだ」
目線である方向を促す。
三途の川の現世側の岸に、蝙蝠の翼の生えた奇怪な少女の首が現れ転がっていた。
古代日本の建造物の様な伏魔殿の動きが止まる。
燃え尽きた校舎に代わって魔の館は地中から聳え立った。
鋭太郎は思った。
ゲームの中にいるみたいだ。
鬼武者かGENJIの世界だな。暗黒ジパングファンタジーと表現したらよさそうな趣味の建物だ。
鋭太郎は一跳びに館の入り口へと行った。
>前スレ340
>「ようこそ!リアル三途の川へ!」
大きな鋼鉄の門の前に着地。すると声がした。足元の床に槍が刺さる。
>【流河の音発動!!】
>巻き込まれる時は柔らかい地面ですが、填ってしまえば硬いコンクリートの地面となり、一生出られない状態になります。
「何者だ!?」
鋭太郎は恫喝した。その間にも粘液は硬化していく。跳躍して逃れようにも足が抜けない。
>牙の主天保
>「我が僕よ、よくやったと誉めおきたいところだが、その鏡の中身はすでに藤田礼司に乗り移っている」
天保のテレパスが頭に響いた。姿は見えない。
「成る程・・・道理で手に入れた時に何もそれらしい気を感じなかった筈だ。
>「お前は邪魔者を排除せよ。それくらいの試練、乗り越えられるであろう?」
「ははっ!」
鋭太郎はこの場にはいない主に頭を下げた。
「ゴアアアア!」
鋭太郎は拳で固まっていく粘液を殴った。だが砕けない。
金護の腕が館の外壁を指し示す。気配を感じる。複雑な悪魔風のデザインの装飾がでこぼことあり、隠れている者を肉眼では
確認できない。
「隠れているつもりか?ふ!術者を狙うしかないようだな!ゴアー!」
鋭太郎は金護の腕を振りかぶった。まるでボクサーがアッパーでもするように。
殴るような動作をした。あたかも左アッパーだ。
太いゴムが切れるような音がした。
金護の腕が鋭太郎の肩から外れ回転しながら術者に飛んだ。
術者に直撃。術者は地面に落ちた。術が解けた。粘液が消滅する。
腕がブーメランとなって戻ってきて、鋭太郎の肩に戻った。鋭太郎は野獣の咆哮をした。獲物との戦いに喜んだのだ。
13 :
名無しになりきれ:2006/10/07(土) 03:22:59
我が血の洗礼を受けよ・・・・・
「やめて!」
アッシュの首を絞めつけるゼフィールに僕は走りよった。
ゼフィールの腕にしがみつく。けれどもアッシュを解き放てなかった。
恐ろしい魔力を持つゼフィールは、アッシュのしようとしたことの半分を駄目にした。
三途の川を冥府に戻してしまった。
相模国造の館だけが現世に浮かび上がって、三途の川はもとのまま静かに霧につつまれている。
>ゼフィール
>「礼司、きみは現世に帰る時がきたようだ」
>目線である方向を促す。
>三途の川の現世側の岸に、蝙蝠の翼の生えた奇怪な少女の首が現れ転がっていた。
「ラスティーリア…… なんて姿に……」
ここに彼女は来てしまった。きっと僕の体を治して替わりに死んだんだ。また助けられた。
「ごめん」
現世での僕の肉体は蘇生したのだろう。感じる。現世に引き戻される。
僕はゼフィールの腕から放れた。
ゼフィールはアッシュの首を持ったままだ。しかたない。放してくれない。
リリさんはゼフィールの言った死後の罰を怖がっているだろうか。
僕だってあんなことをいわれたら、とても怖い。耐えられない……
でも、道はある。
見つけたよ。アッシュ。
「ゼフィール。アッシュから手を離してください。お願いです」
僕はゼフィールにお願いした。
「あなたの願いもきいてあげますから」
ゼフィールがわざとらしく驚きの表情をする。
それがすぐに本気の驚きの表情になった。
これから僕が言うことを、人の心を読むゼフィールは察知したんだ。
当のゼフィールはもう知ったことだけど、僕はみんなに聞かせたくて声に出して言った。
「ゼフィール。あなたは僕ら人間がかなわない圧倒的な存在なのかもしれません。
三途の川を支配するあなたは、命の有無を操る恐ろしい方です。
僕はあなたが無敵なのかと恐怖に思っていました。
でも、アッシュのおかげで、僕はあなたの限界に気がつけました」
そうだよ。アッシュ。
「ゼフィール。不可能もなく無敵のようなあなたにも限界があるんだ。
あなたは、敖遊の儀には出れないんだ。
自分で霊宝を手にすることはできない。
自分で出来ないから、僕らに命令しているんだ。
ノスフェラトゥだって、前の代の牙の主のハットなんとかだって、テンポーだって、ベルだって、
……魔物も人も霊宝争奪の祭祀に参加している。巻き込まれているっていったほうが僕らにはいいけれど。
それなのに、あなた一人が、ものすごい力を持っているのに、参加しない。
どうして出来ないんだろう。
人間とも、魔物とも、あなただけが違うんだ。
それはなんだろう。
そう考えて、僕は思ったんです。
ここは三途の川だ。
死者の来るところだ。
ゼフィール。あなたも死者なのではないですか?
霊宝の祭祀に参戦する条件は、霊具を持っていることだけではない。
命を持っている者しか参加できないんだ。
死霊は、霊宝の所有者になれない。……そうなんでしょ?
ゼフィール。あなたは絶大な力を持つけど、死霊なんだ」
「無礼者メ!」
霊獣大猪の乙事主は藤田礼司の言葉に激怒した。
「ブモォーーーーー」と咆哮する。
三途の川がぼこぼこと泡立つ。川底の骸骨石の眼窩や鼻穴や口孔から黒紫の蛇の様なものが這い出してくる。
上湘南に降下した「タラコ」に似ている。色と大きさが異なるだけだ。
夥しい数の蛇が水面にもつれ合いながら、あちらこちらで塊りとなる。
塊りに二つの赤い光が点る。それは目か?
塊りから足のようなものが8本生えだし、その足で塊りは川を這いだした。
「タタリ神ヨ、無礼ナ霊魂ヲ喰ッテシマエ!」
―名前・ 乙事主 オッコトヌシ
―性別・ オス
―体毛・ 白
―備考・ 白い猪で乙事主とくれば「もののけ姫」の猪神乙事主の筈。
ぐぐってみると、諏訪湖の神、乙事諏訪神社にも当たるけど。
―名前・ 塊り=タタリ神(神と名がつくが低級霊)
―備考・ 「もののけ姫」冒頭に登場した、暴走するタタリ神・ナゴの守と同じ姿。数は八頭。
英国魔術師教会の者達が学校の近くへ向かっているようです
ラストバタリオンのヘルゴラント級は、ドラゴン・レイディが放つ鞭で半分に千切られてしまった。
片翼となった船体が傾き、よろけた拍子に今度はボクが巻き取られた。
広域知覚が災いして集中力を欠いたか、抵抗する間もなく空中へと放りだされ、全身を川面に強く叩きつけられる。
慣れない精神体は反応も鈍る。どうにか持ち直して、起きあがったところを捕まった。
不意に水中から浮く身体は、喉下を掴むボンデージ・ドラゴンの細腕一本で支えられている。
究極美形は憤怒の形相に歪み、左手は自ずと締り、ボクの気道と頚動脈を潰しにかかるが
咄嗟に差しだした両手が彼女の腕を押さえ、多少なりとも重心移動を助けていた。
肉の身体ならとうに「落ち」てただろうに、精神体は鈍い代わりに、頑丈さじゃかなり融通が利く。
>「敖遊の儀に僕は直接かかわれないのに!」
笑った。
理屈は知らない。
彼女が誰なのかをレイジに聞きたかったが、声を出すのがいささか億劫だ。
しかし、どうやら彼女はボクの名前を御存知の様子。黒幕、また黒幕。
ドラゴンが「川」を上湘南から切り離し、一時晴れた霧がまた辺りにたちこめる。
ヤツの「場」だから、コイツはホームタウン・ディシジョン。
あの御柱だけでも引き揚げられたから、苦労はまるきり無駄骨って訳でもない、
それにヤツは怒ってる。ボクが何か嫌味を突いたから。弱点が見えれば後は簡単だ。
>「やめて!」
レイジは駆け寄ると、ドラゴンをボクから離しにかかった。
応援はありがたいけど、彼の腕力で敵いはしないだろう。
現実界なら4WDだって投げ飛ばせるボクにも抵抗できない力だった。
力尽くで無理だと知ると、レイジはドラゴンを懐柔にかかる。
二人のやり取り。
>僕はあなたが無敵なのかと恐怖に思っていました。
>でも、アッシュのおかげで、僕はあなたの限界に気がつけました」
レイジの舌鋒は、次第に懐柔から挑発へと変わっていく。
ボクもいい加減の無抵抗に、萎えはじめたリビドーがゆっくりと攻撃欲に変貌していくのを感じた。
早い話が、面白くない。
きっとそれはレイジの言葉遣いであるとか、
リリやバージルの態度から感じる、ちょっとした緊張であるとか、そんなものが原因なのだろうけど。
なにより、彼女の高圧的な終劇間近、偉そうなデバガメを殴るのは主人公特権。
>ゼフィール。あなたも死者なのではないですか?
>ゼフィール。あなたは絶大な力を持つけど、死霊なんだ」
死霊とは丁度いい。
「オー、ベイビー、ベイビー……ケツをお舐めよ」
片手を、彼女の腕から離した。散る火花。
触媒なしの魔力だけで、強引にサラマンダーを召喚すると、剣の平で思いのきりゼフィールを殴った。
瞬間に解放されたボクは、三途の川に落ちてもがく。
剣を手に水を掻き、砂利を跳ね、すぐさま起きるとドラゴンへ向き直った。
お供の猪豚がブラックキューピーを増援に呼ぶが、邪魔な数匹を「メギド」の触手で貫いた。
ヤツが前後不覚になっている間は、アウェーでも対等に戦えるらしかった。
「全員、岸に上がれ! リリ、バージル、まだ間に合う。何処でもいいから風穴空けて、学校に戻るんだ――
――おおっと、ベイビー。キミはこっちだ。メキシカン・スタンドオフでいこうぜ」
殴られたゼフィールが、般若の相でボクを睨む。手を出される前に、ボクも剣を突きだした。
さっきからの手ごたえじゃ、「川」で殺る考えは難しい。せめて時間を稼ぐ。
「アフラーーーック!」
公園の池の底で、邪神モトの魔力を注入されている途中のゴドーの生首を
大きなアヒルの口ばしが挟み込んだ。
「よくやった!モーツァルト!」
暗い公園の散策路を豚人間が手下の獣人を引き連れてやってきた。
外灯の明かりの下に現れたのはムアコック。ムアコックがアヒル男を褒める。
アヒルの獣人モーツァルトは、人間1にアヒル2の比率で混ぜたような姿をしていた。
顔はアヒルそのもの。腕と脇腹にかけてが翼になっている。手には五本の指。足は水かきのあるアヒルのままだ。
身に着けているのは黒いネクタイ一本だけ。しかしこれでも黒衣の戦装束だ。
「やあ、ゴドー。ずいぶんコンパクトになったな!俺の敏感なお鼻で、あんたの居場所を突き止めたんだ。
あんたには卑怯者の臭いがプンプンするからねえ。ぶひひひひひ」
フェレット獣人のバッハがノートパソコンを抱え、ムアコックに操作しやすいようにしている。
「このパソコンはあんたの部下からいただいた。
あんたんとこの魔道科学は立派なもんだなあ!あんたに取り憑こうとしている悪魔だって判別できるぜ。
反応パターンFaa群に該当。死神だそうだ」
モーツァルトの口ばしに挟まれたままのゴドーの首が憤怒の怒りに歪む。
「さてとクリッククリック。逆召還プログラム起動。死神よ、消えうせろ、とな!」
霊感の無いムアコックや獣人達には見えなかったが、冥府神モトの霊気が追い払われていく。
「ゴドー。悪ぃけどよー、あんたに強い力を持たれたら困っちまうんだわな。
なぜかっつーとよ、霊宝争奪の戦いのライバルは少ねーほうがいいじゃねーか、なあ。
ぶひゃひゃひゃひゃひゃひゃ!」
下水道の下でゴドーに人間にしてほしいと懇願したのは嘘であった。
「モーツァルト!パス!」
命じられてアヒル男はムアコックにゴドーの首を放り投げた。
キャッチするムアコック。
「あんたの脳をくれ。いただきます!」
ムアコックはゴドーの生首を喰い始めた。
理利は困惑していた。ゼフィールは一体何のために私を召喚したのだろう、と。
藤田に霊宝を掴ませたいなら、理利をここに引き止めるのは間違っている。
理利は藤田を霊鏡保持者として護り、力を貸すつもりだったのだから。
そのつもりだった。
――――だが、今は決意が揺らぎ始めている。藤田は心が弱すぎる。
おまけに理利とゼフィール、どちらの言う事を信じるかを答えなかった。
選べなかったのだと理利は理解した。藤田にとってはどうでもいいことなのだろう。
理利は失望していた。レテ川のほとりでの一連の藤田の行動、理利の期待をことごとく裏切るものばかりだった。
だが――――ではゼフィールは、自分に藤田の脆さを見せつけてどうしたいのだろう?
>愚かな娘よ、心して聞け。人は死ねば必ずこの三途の川のほとりにやってくる。
>つまりきみは死ねば、再び僕の川に来るのだ。無力な死者としてね。
>人間が僕に逆らう事など出来ないのだ。
>いますぐに僕の靴を舐めろ。そうしなければ死後、永遠に続く地獄の労役につかせてやる!」
理利は冷めた目でゼフィールの言葉を聞き流した。特に目新しくも無い脅しだ。
更にいうなら、靴を舐めようが舐めようまいが、結果は大して変わらない。
理利の手は血まみれだ。
今まで数知れないほど魔を消し去ってきた。魔に取り込まれ、元に戻れなくなった人間もだ。
クリスやジョリアルも、二度目は理利が殺したようなものだ。
理利は自分が罪人だと自覚していた。
だが、藤田は違っていたようだ。明らかに地獄の労役の話を聞いて動揺している。
理利は愕然とした。信じられなかった。
「藤田君、まさか自分が天国にいけるとでも?――――あれだけ殺しておいて?」
ここにきて、ようやく理利も理解した。
藤田は他人を殺す覚悟はあっても、殺した事に対しての責任を取る覚悟は持ち合わせていないのだ、と。
藤田のゼフィールに対する話を聞いて、更に失望は深まった。
もっと早く悟るべきだった。この場に召喚された意味も、一連のゼフィールの行動の意味も。
ゼフィールは、藤田ではなく理利に霊鏡保有者になれと言っているのだ。
確かに理利なら、藤田を殺さずに権利だけ奪う事が出来る。レテ川のほとりだからこそ出来る芸当だ。
だが迷っていた。
>「タタリ神ヨ、無礼ナ霊魂ヲ喰ッテシマエ!」
――――藤田の話を受け、乙事主は怒り狂った。
それはそうだろう、神が死霊に使えていると断じられたのだから。
「今度こそ私を助けてね!」
理利はスパーダに巨大な猪の処遇を一任した。
>「全員、岸に上がれ! リリ、バージル、まだ間に合う。何処でもいいから風穴空けて、学校に戻るんだ――
アッシュの声を受け、理利はレテの水面の上に浮いた。
つま先から雫が滴った場所から、凍るはずの無い川がみるみる凍りついていく。
まあ、氷に足を挟まれるのはタタリ神くらいのものだが。
「凍らせたのがそんなに意外?」
アッシュのメギドから逃れたタタリ神は全て氷柱と化し、砕け散った。
「ゼフィールは守り人失格ね」
彼は常世の住人に手ひどく嫌われていたようだ。
そしてゼフィールが糧としていた住人の思念は、今は彼を恐れなかった理利へと向けられていた。
常世の住人の思慕や畏怖の思いを受けて、理利の力は飛躍的に増大していく。
愛や畏怖を失った神は糧を失うのと同じ事。例え超越者といえども例外ではない。
まあゼフィールと進んでやりあう気は無いし、この程度の事でどうにかなる相手ではない。
そこで霊宝の出番になるのだが、――――肝心な藤田があれでは・・・。
理利は、ちらりと藤田の無防備な背中を見つめた。
まあ・・・霊鏡保持者として認めるかどうかは、藤田の演説を聞いた後でも遅くは無いだろう。
ダメなら理利がなり代わるだけの話だ。あまり気は進まないが。
上一中に出現した相模国造の屋敷と捻じ曲がった御柱は、異様な存在感を示し辺りの空間を捻じ曲げていた。
絶えず発せられる黒い稲妻は当たり構わず触れた物を無と化していく。
「「「・・・仕方がないねえ。」」」
おもむろに叢雲剣の刀身の腹に腕を突っ込む。
厚さのない刀身だがベルの腕は突き破る事もはじかれる事もなく、その中へと入っていった。
【三途の川】
「「「生死を超越した者に死霊とは、ピント外れもここまで来ると芸術じゃないか。」」」
三途の川の一部が盛り上がり、蛇のように鎌首を持ち上げ声をかけた。
ベルが叢雲剣の刀身を通してゼフィールの三途の川に干渉しているのだ。
「「「乙事主も手出しできないからって形だけ取り繕うものでないよ?対抗しえるなんて勘違いさせては可哀想
だろうて。」」」
ゼフィールが藤田に使命を与えている以上、それを邪魔するような事を実際にできるわけはない。
それでも怒りの収まらぬ乙事主の思念のなせる業なのだろうが・・・
「「「リリ、超越者の理論ほど馬鹿らしいものはないとは先刻承知の上でなかったのかな?
見極めていられるほど時間が残っているわけでもあるまいに。
さあ、おいでよ。戦う相手を間違えないでおくれ?この身体を通って現世で決着をつけようじゃないか。」」」
蛇は宙を舞い自分の尻尾を加えて円となる。
その円の中は現世へと繋がる穴となっており、本来ここにいるべきものでない者を吸い込もうとする。
「「「ゼフィール、君が恐れているのは私たち叢雲剣などではないと正直に言ってあげなよ。
恐れているのは私たちを作り、敖遊の祭祀を繰り広げたものが人、聖、魔、のいずれのものでない。定命の者
でない事にあると。
今となっては私達は誰が祭祀を完成させようが構わないのだよ。
誰が何を願おうと祭祀さえ完成させてくれればね。
だから人である藤田を拒む理由はない。
お互い融通を利かせあえば丸く収まるのではないかな?」」」
巨大な暗黒のマニトゥの到来を感じて、公園の池に沈む首だけのゴドーは狂喜していた。
死に臨み、太古の邪神の降臨に出会えるとは何と言う僥倖であろうか。
霊脈の乱れる上湘南のこの地この時なればこそだろう。
ゴドーは両耳か強力な霊気の固まりが頭の中に入ってくるのを感じた。
まずは裏切り者ウギ・リギリを始末し分解してくれる!出来損ないめ!
ジョジョとかいうふざけた奴にも惨たらしい死を与えてやる!
召還師の女は命乞いするまで陵辱してくれる!
アマナは洗脳し僕にしてくれよう!
霊宝の所有者となって世界を征服してくれる!
復讐と野心にゴドーの顔は愉悦に満ちていた。
さあ!私に力を与えたまえ!偉大な古きマニトゥよ!
しかし、その喜びは断ち切られた。
>モーツァルト
>「アフラーーーック!」
ゴドーの顔面と後頭部をアヒルの化物がその黄色い嘴で咬む。
ゴドーは池から掬い出された。
>ムアコック
>「やあ、ゴドー。ずいぶんコンパクトになったな!」
「ムアこック・・・」
ゴドーは絶句した。
>「さてとクリッククリック。逆召還プログラム起動。死神よ、消えうせろ、とな!」
>冥府神モトの霊気が追い払われていく。
「ナ、なんとイうことを!貴様!きサま!」
呪詛を繰るしかゴドーにはできなかった。太古のマニトゥの気が消えていく。
「わたシは・・・死にタくな・・・」
それとともに生首であるゴドーの意識も消えていく。唯の切り落とされた生首でしかない。
>「モーツァルト!パス!」
>「あんたの脳をくれ。いただきます!」
ムアコックがゴドーの首にむしゃびりついた時には既にゴドーは死んでいた。
ウガリットの荒ぶる神にして、豊穣の神バアルの敵対者、猛炎と死と乾季の支配神、邪神モートは
公園上空に渦巻いていた。
砂嵐の様な茶色の風が公園の上に竜巻状に浮かんでいるのが、霊感の強い者には見えただろう。
「新たなる苗床を我は見つけたり。ノスフェラトゥめ、ハットゥシリめ、歯軋りするがいい。
ベルカーマン、アマヤス、震え上がるがいい」
久々に吐気がするような、とてもとてもドス黒い光景を、ジョジョは目撃した。
ジョジョはスタンドと融合したまま、空を飛んで学校の方面に向かおうとした。
だが、建物の近くでドス黒い邪悪な念を感じ、そのことが気にり、その邪悪な念の溢れ出る場所に行ったのだ。
獣人達がいる真上。
そこにジョジョは浮いている。
獣人達はそのことには気付いていない。
何故なら、夢中になって機械を操り、狂笑しながら死体を貪り食う。
即座にバールのような物でぶち殺したくなる光景だ。
昔、そこら辺の公園で繁殖していた糞蟲を虐殺した時に使っていたバールがある。
それを取りに行こうと思っていた矢先、ジョジョの真上。
先程、ジョジョ達がいた建物よりも更に高い場所。
何か強い力を感じる。
周囲に危険を及ぼしそうな力だが、下の獣人達よりはドス黒くない。
ジョジョは接触することにした。
更に上空に舞い上がる。
力が現れた場所と同じ高さに浮かぶ。
声が聞こえてきた。
>「新たなる苗床を我は見つけたり。ノスフェラトゥめ、ハットゥシリめ、歯軋りするがいい。
>ベルカーマン、アマヤス、震え上がるがいい」
声は眼前の竜巻から発している。
ウルトラマンの力を使い、観察してみた。
どうやら、この竜巻自体が意思を持った霊体。
強力な悪霊といった感じだ。
「少しお聞きしましょう、悪霊殿。
あなたは天保のことを何故知っておられる?
あなたも牙の主の下僕ですか?」
>アッシュ
>リリ
タタリ神が倒される。しかし乙事主は豪快に笑った。
「ブワッハァッハァ!ここは三途の川だ。タタリ神は無限におるわい!」(声・森繁久爾)
水面が泡立ち次々と塊りが川底から這いずり出る。
ゆらゆらと蠢く蛇の体毛が赤い猛毒を滴り落とす。
それでいて、その毒は川の水の上に表面張力で楕円となって滑る。(もののけ姫のクライマックスを連想せよ)
リリ達にプルプルした毒の粘体と、タタリ神達が襲いかかる!
「ブフォォーーーー!」
乙事主はアッシュに突進した。
死川の支配者ゼフィールに許されざる無礼!
「踏み潰してくれるわい!」
>23
上空から強い妖気を感じたつかさは、黙祷を中断し、顔を上げる。
そこには、竜巻のようなものがあり、それは意思を持っているようだった。
「恐怖大魔王復活!?」
邪神モトが降臨する様を見たつかさは、普段の冷静さからは想像もつかなほど驚いていた。
驚きのあまり、謎の語句『恐怖大魔王』が口からこぼれ出る。
そして、電話の電源が入れっぱなしだったので、その叫びは電話の向こう側に居る者にも聞こえたのだ。
『復活だなんてそんな。恐怖大魔王は、まだまだご存命よ』
電話の向こうの声の主は語る。
ノリで言った『恐怖大魔王』が本当に居ることを知り、二度驚きである。
つかさは深呼吸して冷静さを取り戻そうと図り、とりあえず心臓の動悸を平常に戻した。
「ごめん、うっかりしてたわ。で、あの竜巻は何?」
『モト神よ。でも、気にせず黙祷を続けなさい』
>9
そうして、上空のモト神の存在によるプレッシャーを受けながらも、
再び黙祷を続けていたところで、ラスティーリアが後ろから水無月つかさに話しかけた。
顔はこちらを向いてはおらず、彼女がどのような表情をしているかはわからない。
ゆっくりと後ろに振り向く。
「あら、ラスティーリアさん。見ないうちに、また縮んだのね」
少し間を空けて返事を返したが、その間は微妙に不自然だった。
「えっと……グリフォンに乗せて欲しいのね?
良いけど、結構スピードが出るから、しっかり捕まってないと落ちるよ。気をつけてね。
あ、それと……藤田くんは?」
>「何者だ!?」
黒鋭童子さんはまんまと填りました。
その上この一喝…本当に忘れてしまってるらしいですね。
私は思わず吹き出してしまいそうになります。だって…面白くありません?彼は元々…私達と同類だった。
即ち其れは…ま、勘の良い方はお気づきでしょうが…。
そんな中奴の声が響き渡ります。
そう…元上司様の声が…。
>「我が僕よ、よくやったと誉めおきたいところだが、その鏡の中身はすでに藤田礼司に乗り移っている。奴を殺せば力は返って来る。
>こちらは余自らが戦うゆえ、お前は邪魔者を排除せよ。それくらいの試練、乗り越えられるであろう?」
…どうやら私がおねんねしてる間に事態は牙の主有利になってるそうです。
しかも、目の前に元同士が一人。
こりゃいけませんね。それでも笑いが止まりませんが。
…とこんな事してる間に彼は地面を必死に抜け出そうとしてます。
>「ゴアアアア!」
「…無駄ですよ。私の術は我ながら結構やるもんですし…」
そう言うと私はより強く地面を動かし締め付けます。
しかしなかなか気絶しません。つかこいつ堅!
暫くじわじわと締め付けてるウチに向こうがついに切れたようです。
>「隠れているつもりか?ふ!術者を狙うしかないようだな!ゴアー!」
そう絶叫すると近くのお仲間さんに左アッパー、そしてそれと同時に腕がぶーん(^ω^)つ
「うご!」
それは顔面突撃。おかげで飛ぶのが苦手な雛は地面に堕ちてしまいましたとさ。
――どさん!!
しかし、私は体勢をとっさに整え着地。大けがにはなりませんでした。少々手足がしびれましたが。
そして彼は野獣の咆哮を一つ。
それを私はキョトンと一瞬見ました。
そして…
「クックック…アーッハッハッハッハッハッハッハッハッ!!」
思わず大笑いしてしまいました。だって…!だてこの人…!私は暫く大笑いした後、黒鋭童子を指さし言います。
「なーんだかよくわかりませんけど!すっかりお変わりで!戸田君!」
そう言うと周りの地面をグニャリと変えていきます。そして私の周りに奇妙なオブジェが三個構成され、魔法陣が構成されます。
…やっぱり彼に目をつけといてよかった!彼は素晴らしい!まさにうってつけだ…
「悪いですがね、戸田くん!
君はまだ何も思い出してないから言うけど…今やってるバトルって結構残忍なんですよ?」
そう言うと私は戸田君に素早く近づきました。
そして一発右のほを殴りにかかります。
そして殴りに掛かったあと即座に回し蹴りを一発!
…ついでに刺しておいた槍を掴むと私の周辺の地面を針山にしました。
こうすれば戸田君の近くにいるお友達にもあたるはずです。
私は飛び上がると針の一本の上に立ちました。
「戸田君。」
そう言うと戸田君を見ました。
「私が何故わざわざ貴方の元に現れたかおわかりですか?」
そう訪ねると私は無表情になりました。
今夜は私にとってお祝いの日です。
そして…貴方にとっても…
私は戸田君の霊鏡を見ました。そして戸田君を見てから一言言います。
「…貴方に一つ提案してもいいでしょうか?戸田君。」
そう言うと鮮やかに笑います。
そして…私は戸田君に言いました。
「私と契約しません?」
愛犬家とは愛犬の為ならば毎日決まった時間に散歩に連れて行くものだ。
上湘南五丁目に住む会社員の長沢さんは、愛犬のブッシュを連れていつもの夜の散歩にジョギング姿で出発した。
近くのマンションが火事だとかでサイレンがうるさい。見物にも行くつもりだった。
「ワン!ワン!ワンワンワンワン!クンクン!ウーワン!」
愛犬ブッシュがいきなり吠え出した。ダイビングスポーツ用品店のルビーマーメイドの店先だ。
ブッシュは小さい体で必死に店の駐車場横の庭木に駆け寄ろうとしている。長沢さんはブッシュの行きたいようにさせてやったら驚いた。
「おいボク!どうしたんだ!?」
上半身裸でズボンは血まみれの少年が倒れている。見た感じ少年に外傷は無いが意識は無い。
ブッシュがしきりに少年の股間に鼻を押し付けているが犬はよくする行動だ。
「どうした?しっかりするんだ!」
長沢さんはケータイを取リ出した。警察に通報だ!
大爆発だー!
>水無月
>「「あら、ラスティーリアさん。見ないうちに、また縮んだのね」
>「えっと……グリフォンに乗せて欲しいのね?」
>「あ、それと……藤田くんは?」
「レイジさまはあたしの一部が救出に行ったわ。きっと助かったと思う。
んしょ!」
あたしはふかふかの羽毛の生えたグリフォンの背に乗った。
背が縮んだから乗るのに手間取った。
「騒ぎが収まったら、小学部に編入しよっと」
あたしは夜空を見上げた。雷鳴が轟いて気持ちの悪い憎悪の霊流に満ちている。
上湘南の敷地の外でバトルをしたから、人間達が大騒ぎしている。
上湘南第一中学校の方を見ると、悪魔の宮大工が建てた様な奇怪な神社もどきが屹立している。
それは敷地内なのでマンション周辺やこの辺りでパニッくってる凡人の人間には見えないようだ。
「霊宝の儀はいよいよ山場なのね」
気がついたら、霧の中にいた。視点がとっても低い。寝転がってる?
そっか。あたしは首だけのままだっけ。首だけであたしはなんか川の岸辺に転がっていた。
「死界の川?」
そっか。あたしは死んだんだ。てことはレイジさまを助けられたかもしれない。
俗世のことはあたしの残りの部分達に任せよう。
>乙事主
>「ブフォォーーーー!」
豚の大音響の泣き声が薄暮の三途の川に轟く。
「レイジさま!」
あたしはレイジさまを遠くに見つけた。川の向う岸のそばにいらっしゃる。よく見えないけどたしかだ。
リリもいる。アッシュもいる。バージルもいる。バージル老けたなあ。あれはベル?
それと知らない少女。ちがった。男の子だ。ものすごい美形。
「レイジさまー!」
あたしはレイジさまを目指して大慌てで飛んだ。レイジさまに三途の川を渡られたら大変!
「渡らないで!」
黒紫のミミズのかたまりみたいな妖怪がいくつも出てるけど、すりぬけて飛んだ。レイジさま以外じゃま!
「レイジさま!お体はもう治りました。早く魂がもどってもらわないと!」
あたしはレイジさまの前に空中停止。
それからあたしはレイジさまの胸にドンと当たって、レイジさまを現世側の岸に戻るよう催促した。
そうしたら、あたしはビュンとなにかに引っ張られた。向う岸に引き寄せられる。
わかってる。
あたしは死んだから、冥府があたしを呼んでいるんだ。
あたしはきれいなお花畑に引き寄せられた。
向う岸に着いた時、あたしは光に包まれた。死の世界だ。
でもあたしは満足。レイジさまを現世にお戻しでき・・・
ゴドーの脳髄を飲み込んだムアコックは絶叫した。
「おお!凄まじい力が来る!
来る!来る!来る!
┏━┓
┃ ┃ ┏━━━━━━━┓
┏━━┛ ┗━━┓┃ ┃
┃ ┃┃ ┏━━━┓ ┃
┗━━┓ ┏━━┛┃ ┃ ┃ ┃
┏━━┛ ┗━━━┛ ┗━━━┛ ┗━━━━━━━━━━━
┃
┗━━┓ ┏━━━┓ ┏━━━┓ ┏━━━━━━━━━━━
┃ ┃ ┃ ┃ ┃ ┃
┃ ┃ ┗━┛ ┃ ┃
┃ ┃ ┃ ┃
┗━┛ ┗━┛ 」
ムアコックの攻撃力が10000倍になった。
ムアコックの守備力が7000倍になった。
ムアコックのすばやさが600倍になった。
ムアコックの運の良さが3倍になった。
ムアコックのかしこさはマックスなので変化無し。
ムアコックはメラゾーマをおぼえた。
ムアコックはベギラゴンをおぼえた。
ムアコックはバギクロスをおもえた。
ムアコックはディバインスペルをおぼえた。
ムアコックはマホトラをおぼえた。
火炎系と風系の魔法を習得した。
ゴドーを触媒にしようとしていた邪神モートは、ムアコックに絶大な魔力を授けた。
ムアコックの容貌が変異していく。もはや豚ではない。
牙が見る見る伸びだし、頭には曲がりくねった悪魔じみた角が四本生えだした。
皮膚は赤黒くなり鎧の様に硬くなった。肩や背中からも角が生え出す。
目は爛々と凶暴に輝く。口や豚鼻から漏れる息は炎だった。
彼は豚人間ではない。獰猛な魔獣オークへと変貌した。
韮沢靖にデザイン依頼した様な醜悪凶暴なオークだ。
「力がみなぎるぜ!御前等にも分けてやろう!」
ムアコックは獣人達をそれぞれ見た。
目で魔力を注ぐ。
獣人達は仮面ライダーシリーズに出てもおかしくない凶悪な怪人の姿になっていく。
「相模国造の屋敷に進軍!余が霊宝の所有者になる!ぶひひひひひひひひ!」
「クッ!」
屑船の連続攻撃に鋭太郎は片膝を突いた。
「神崎だったのか?闘気が変わったようだが」
屑船は魔法陣を巧みに造り上げ、生じさせた針山の一本に立っている。
「図に乗るなよ!屑船!グルルルルルアー!」
鬼伏せの魔法陣に抗い、鋭太郎は立ち上がった。魔法陣結界は鋭太郎の体に数十トンの重力を加している。
野獣の力を持つ鋭太郎はその重い枷を破り、金護の腕を伸ばして屑船の立つ針をへし折った。
屑船が飛び退るのを逃さずに、金護の腕で屑船をつかむ。
鬼の体の鋭太郎に比べれば、屑船は華奢だ。
「血を吸い喰い殺してやる!」
鋭太郎は叫んだ。
だが屑船の脳には鋭太郎の念波が届いた。(前スレ>186 接触念話)
『俺は牙の主の牙を受け、鬼の身となった。俺は今の牙の主天保光の奴隷として生きるしかない。
その縛をお前は解けるのか?俺に自由を与えてくれるのか?
それとも新たにお前の奴隷になるだけか?どっちだ。教えてくれ』
>ジョジョ
>「少しお聞きしましょう、悪霊殿」
砂の竜巻がジョジョの言葉に勢いを増した。
回転数を上げて猛り狂う。ジョジョの顔を砂が高速で当たっていく。
「我の許しなく我に話しかけてはならぬ」
砂嵐が荒れ狂った。
凄まじい風音が鳴り響き、熱風がジョジョを襲った。その熱風は鉄も溶かす灼熱でジョジョを焼いた。
地中海沿岸に吹く熱風の神モートの豪風がジョジョを濁流に翻弄される木の葉のように天空を舞い上がらせる。
ジョジョは墜落した。
「誰にも我の復活を妨げさせはせぬ」
邪魔者を排除したモートは、相模国造神殿へと進むムアコックらを見下ろした。
「我が豚が霊宝を得る時、諸人は古代ローマ人の様に豚を崇め敬うであろう」
ガリア人に至っては豚に神聖を見出し、豚神モックゥスを崇拝した。
モートは砂嵐の体をムアコックへと降下させた。これより進むムアコックの周りには熱風が吹くこととなった。
モートはムアコックを守護した。
上湘南地区が聖杯戦争の戦場として決定された。
ムアコック
アマナ
つかさ
ゼフィール
礼司
ベル
アッシュ
の目の前にサーヴァントが召還される。
ちなみに、サーヴァントのクラスは原作どおりではない。
吹き荒れる風が砂と共にジョジョの顔、体に当たってくる。
>「我の許しなく我に話しかけてはならぬ」
相手を怒らせてしまったようだ。
嵐は勢いを増し、荒れ狂い、燃え盛る。
熱を伴った砂風がジョジョの体にぶつかる。
スタンドと融合した状態の今、そんなにダメージはない。
ウルトラマンの体は、本気になれば一兆度の炎を耐えることができるように、とても頑丈だ。
だが、砂嵐の勢いが強すぎる。
熱風に吹き上げられ、そのまま落ちていく。
空を飛べるジョジョはその場で体を静止させ、ゆっくりと着地。
眼前では豚の中に悪霊か入り込み、更に化け物化が進む。
他の獣人達も同様。
まるで、秘密結社が作った怪人のようだ。
>「相模国造の屋敷に進軍!余が霊宝の所有者になる!ぶひひひひひひひひ!」
怪人達のリーダー格らしき豚は、何処かの屋敷に集団で攻め行って、宝を奪うと言っている。
目の前での大胆な反抗予告。
これは止めるしかない。
いや、殺っちゃっていいだろ。
糞蟲に似てるし。
ジョジョは血に濡れたブレザーを投げ捨てた。
今まで使わなかった、腰に差してある刀を抜き、獣人達に向かい駆ける。
ジョジョの間合いに入った瞬間、横一閃。
一匹、最後尾にいたアヒル野郎を上半身と下半身に分けてやった。
「正義の味方……ウルトラマンジョジョ!参上!」
獣人達が見てる中、決め言葉を放つ。
悪を見つけた時のウルトラマンは強いぞ。
「アフラーック!ぐは!」
>ベルさん
「「「リリ、超越者の理論ほど馬鹿らしいものはないとは先刻承知の上でなかったのかな?
見極めていられるほど時間が残っているわけでもあるまいに。
さあ、おいでよ。戦う相手を間違えないでおくれ?この身体を通って現世で決着をつけようじゃないか。」」」
理利は苦笑した。
「ベル、あなた天の沼鉾はどうしたの?あれがあるならさっさと楽になれると思ったのに。残念ね。
――――それにしてもべル。あなた随分と物分りがよくなったのね。叢雲剣と妖花に丸め込まれた?
胸焦がす恋も知らず、愛の歓びを感じること無く終焉を迎えても平気だなんて。ベルらしくないんじゃない?」
>乙事主さま
>「ブワッハァッハァ!ここは三途の川だ。タタリ神は無限におるわい!」
森繁おじさまに似た声の猪は吠えた。
さすがは猪。猪突猛進。だが目的を取り違えている。
「死者は死者らしく、安らかに眠らせてあげたら?
それから乙事主様、ゼフィール坊ちゃまのお望みはなんだったかしらね」
川の中から現れたタタリ神は、理利の造った氷の岸に触れた途端不気味な氷のオブジェと化した。
川面を覆っている氷は、僅かな時間なら理利が消えてもタタリ神や毒液を封じ込めるはずだ。
理利は手を一閃した。
アッシュに突進しようとした乙事主の肢を凍らせた。轟音を立てて乙事主が転倒した。
常世から与えられた力を使うたびに、少しづつ自分が変質していくのを感じていた。
だが、別に構わない。
>藤田君、ラスティーリアさん。
ラスティーリアはレテ川のほとりに現れる事で、造られた存在でも魂と心を持つことを証明した。
だが出来れば、もっと違う形で知りたかった。
「レイジさま!お体はもう治りました。早く魂がもどってもらわないと!」
>それからあたしはレイジさまの胸にドンと当たって、レイジさまを現世側の岸に戻るよう催促した。
押し出された形になった藤田の身体が、理利の方へとよろめいた。
考えるよりも早く手が動いた。
淡く輝く理利の左腕が、藤田の背中に入り込んだ。
お互い霊体なので、理利の手は泥に手を沈めるように、すんなりと藤田の中へ入り込む。
念のために癒しの力まで注ぎ細心の注意を行っているので、藤田の霊体を傷つける事は無いだろう。
一瞬の接触で、理利は藤田の体内から霊鏡の力の一部を抜き出した。
僅かな量なので、恐らくは藤田自身すら気づかないだろう。
藤田から霊鏡保有者としての力の一部を抜き取ったのは、保険のようなものだ。
これで霊鏡を狙うものは、保有者である藤田を殺すだけでは権利を得る事が出来なくなった。
また、抜き取った量はごく僅かだ。
霊鏡を狙うものは藤田から力を奪い取らない限り、彼の持っている霊鏡の力が完璧でないとは気づかないだろう。
ベルの言うとおり時間がない。
だが、抜き取った力を誰に託すかは、霊宝争奪戦の行く末を見届けた後でも遅くない。
切り札は、最後の最後まで伏せておくものだ。
「藤田君、ゼフィールの望みはベルを懲らしめ祀りを成就することよ。
アッシュ 魔剣士!火遊びもいいけれどほどほどにね!」
――――もしゼフィールにも望みがあるとしたら、それは自らの消滅かもしれない。
走りながら、理利はそんな埒も無い事を考えていた。
藤田と霊鏡を通して繋がったので、この場にいなくても知ることが出来る。
最後まで見届ける必要は無くなった理利は、蛇が作り出した輪の中に身を躍らせた。
>礼司
>「ゼフィール。あなたは絶大な力を持つけど、死霊なんだ」
その言葉にゼフィールは驚いた。
「汝の慧眼の鋭き事、あたかも森闇に深く潜む獲物を射る狩人の如し。
我、汝の言に驚嘆し賛嘆して嘉せん。汝は鋭利なり」
ゼフィールは礼司の言葉に心底、仰天していた。
だがゼフィールの、その間隙をアッシュは見逃さなかった。
>アッシュ
>「オー、ベイビー、ベイビー……ケツをお舐めよ」
魔剣を触媒無しに強引に召還したアッシュが、その剣身でゼフィールの横っ面を叩いた。
ゼフィールの手から逃れたアッシュは三途の川に濡れたが、張り倒されたゼフィールは波紋こそ起こしたものの、
水面の上に倒れて滑った。
>「全員、岸に上がれ! リリ、バージル、まだ間に合う。何処でもいいから風穴空けて、学校に戻るんだ―― 」
剣先を向けるアッシュにゼフィールは憤怒相で睨みつけた。
「困ったな」
ふっとゼフィールは怒りを消し、ため息をついた。
「僕は礼司やリリを死界に留めようなんて思ってないけど。むしろ生きて欲しいと願っているんだけど。
アッシュ、君が時間稼ぎをする必要はないだろう」
ゼフィールは、やれやれと首をふりながら立ち上がった。
「乙事主、鎮まれ。ああ、ほら、リリがものすごく怒っている」
タタリ神がリリの凍結魔法に凍らされていく。
気がおさまらない乙事主はタタリ神をさらに呼ぶ。
ゼフィールが乙事主を宥めようとした。ゼフィールの目がなにかに気づいた。
「しつこい蛇だ…」
三途の川の水面が三角錐状に立ち上がりはじめた。
「叢雲!遮断したのに、まだ来るか!」
>ベル
>「「「お互い融通を利かせあえば丸く収まるのではないかな?」」」
「僕の許しなく、僕に話しかけてはならない」
怒りのあまり熱情ではなく冷酷な響きを声にはらみ、ゼフィールはまた拍手(かしわで)を打った。
一回。
だがベルの思念は消えない。
今度は大きく拍手をゼフィールは打った。彼の憤然たる思いを乗せてか、打つ手と手の間には稲妻が走った。
ようやくベルの念を三途の川から追放した。
「忌々しい蛇だ。段々、僕の力では抑えられなくなってきた」
蛇に構っている間にリリによって乙事主が転倒させられる。
ゼフィールはわざとらしく困った表情でリリに告げた。
「リリ、きみも勘違いしている。
僕はきみをここに呼んではいない。死にかけたきみが三途の川面に来ただけさ。
たしかに僕が声をかけたけどね」
>ラスティーリア
>「レイジさま!お体はもう治りました。早く魂がもどってもらわないと!」
礼司の下僕が主人を現世に戻そうと献身的な行動に出る。
「待った。まだ礼司とは話しがある。ごめんね。すこし時間を」
礼司の手首にゼフィールは黄金の鞭を巻きつけた。引き寄せる。
自分を狙うアッシュには牽制で鞭の柄尻を向けた。柄の底に鎌の刃が形成されていく。
アッシュに見せ付けるようにゼフィールは礼司に頬をすりあわせた。
礼司はアッシュの前でも抵抗しなかった。
鋭い眼光をアッシュにそそいだまま、ゼフィールは現世に戻ろうとするリリに叫んだ。
「リリよ、己に待つ死後の裁きを恐れぬ汝の気高さに、我は心より敬意を抱かん。
汝の為に趣向を凝らした地獄の刑罰を用意しておこう!
僕とのここでの会話を現世に戻ったきみが、覚えているのかはわからないけどね。
三途の川は忘却の川だよ、リリ」
現世にリリは帰った。
「霊宝の戦いをどうするか迷っている礼司の相談相手に来てもらったのになあ。
とっても怒っていたね。
けど、彼女はきつい言葉を使うけれども、彼女の不幸な生い立ちが冷徹な自分を演じさせている。
本当は、けなげな可愛い女の子だよ」
礼司にいたずらっぽく微笑む。
「だが、彼女は叢雲の術中に、はまったかもしれないね。蛇の側についたかもしれない。
少なくとも霊宝所有者にならんとする野心が彼女の中に灯ってしまった。
僕にもわからないのは叢雲の心底だ。自らの滅びを望んでいるようだ……。
神々の様に本当の全知が僕に備わっていれば、容易いんだけどな。
……聞いているのか礼司!」
ゼフィールは顔で、礼司の顔を抑えている。礼司は首を動かせない。
ラスティーリアの消えた対岸を、礼司は泣きそうな顔で目で追っていた。
よく見えない霧の中、必死にラスティーリアを目で捜している。
「ラスティーリアは三途の川を渡りきって冥府に行った。
……対岸の奥がどうなっているのかは僕にもわからない。
僕はここに止まるだけだ……。
礼司、きみは神学も仏道も学んでいないというのに、よくぞ冥府の理を見抜いた。
死界の守り人は皆、死者だ。
東洋人の知る冥府の裁判官、閻魔大王は人類最初の死者だ。
地球に生きる者が死していく世界、すなわち三途の川の対岸の冥府、ここの守り人は皆、元は人間だ。
地球に生きている者は人間だけではないから、牛頭馬頭の様にあらゆる生命が冥府の番人になっているけど。
僕がゼフィールを継承できたのも、僕が死者だからだ」
>34
>「神崎だったのか?闘気が変わったようだが」
…どうやら少々記憶を思い出してきたらしいですね。
私は 持っていた槍を一回転させます。
しかし…どうやらこちらの要求は読んでくれないようです。
>「図に乗るなよ!屑船!グルルルルルアー!」
>鬼伏せの魔法陣に抗い、鋭太郎は立ち上がった。
「…それなら仕方がないですね…」
私は槍を構えました。交渉決裂。。。
すると戸田君は私が立っている針をへし折ります。
私はすかさず飛び退きます。
向こうが殺す気ならこちらも殺す気にならなければなりません。私は好かさず闇の波動を一発槍の先から出しました。
しかし、闇の波動は彼のほをかすっただけです。
何故かというと戸田君の腕が腰を掴んできたから。折られる?ちょっとやばい…
戸田君は叫びます。
>「血を吸い喰い殺してやる!」
おー!恐!まっぷたつ路線まっしぐらか!?
私は思わずぞくっとしかけました。
しかし、
そう彼が言った途端、脳内に声が響いてきたのです。
>『俺は牙の主の牙を受け、鬼の身となった。俺は今の牙の主天保光の奴隷として生きるしかない。
>その縛をお前は解けるのか?俺に自由を与えてくれるのか?
>それとも新たにお前の奴隷になるだけか?どっちだ。教えてくれ』
「……!!」
これは…。
私は目を見開きました。
次の瞬間私は黒鋭童子に投げ飛ばされます。
針の一本に背中が激突しました。
―バギッ!
「くっ!!」
思わず顔を歪めます。
なるほど…
私は思わず少し笑ってしまいそうになります。
…どうやら内側はお変わりじゃないようです。
私はゆっくりと立ち上がると彼を見ました。
そして…私はあえて声に出して答えるのです。
「…くだらないと思いませんか?上下関係など…。」
そう言うと私は針をひっこめ普通の平らな地面に戻すと戸田君を睨みました。
「私には理解しがたいですね!貴方が何故そこまで牙の主との上下関係に拘るのか!」
すかさずそう叫ぶと私は戸田君にむかってめいいっぱい槍を上げると振りおろしました。
そして次の瞬間私は再度槍を持ち上げ、人が変わったかのように槍を振るいます。
「私はね!そういう階級ってのがすっごくだいっきらいなんですよ!
上下関係?家族?教師?糞食らえ!そんな凸凹な醜い汚れた構図が大嫌い!
それに縛られてる奴も大嫌い!…ドド先生に縛られてる間はなんとか仲間面してヘラヘラして無理矢理人間を保ってた。
しかし…人間から悪魔に進化した今は違う!…気付いたんですよ。私はドド先生なんか大嫌いだったって事に!
あー!糞めんどくせぇえ!こんなことなら殺しときゃよかった!」
そう叫ぶと私は槍の攻撃を辞め、槍を地面に刺しました。
―ザンッッ!!!!
そして暫く息を整えるとはっと何かに気付いたかのように私は彼を見ました。
暫くじっと彼を見ると一瞬にこっと笑い再度槍を構え彼に振るいます。
―ガン!!
『だから私は貴方を縛る事なんてしません。何故なら貴方は私の元クラスメイトですしね。』
私はテレパシーを使って戸田君の内側に話しかけます。
戸田君は元々ドド先生が担任だった私達三年B組の再起不能になった仲間の一人…。
牙の使徒になった事で再起不能から復活した男…それが…彼。
だから彼の事は充分知っております。
だから彼に目をつけた…。
私は暫く槍を振るうと戸田君の肩、脇腹に浅く切り込みを入れます。
そして次の瞬間私は戸田君の手を掴みました。
―がしっ!
「…そういう意味では感謝しなきゃなりませんね。牙の主には…。」
『…戸田君…もう一度聞きます。私と契約しませんか?』
私はそう言うと笑います。
「なんせ…あやつは私に真実を教えてくれたのだから…・。」
『私は先ほど言った通り人間から悪魔へと落ちてしまいました。…まぁその課程は省かせていただきますが…。
…そんな私が今唯一望むこと…それは…元同士の貴方に今回の祭典の勝者になってもらう事…』
「もうそろそろ本格的に殺させていただきましょうか?」
私は次の瞬間自分の身を液体化しました。
―どろん…。
そして私は地面に一回堕ちると、私は戸田君の身体に巻き付き強く締め付ける…振りをします。
『私の体内にはドド先生が作った第二の霊玉が存在しています。』
そうテレパシーを送ると戸田君の目の前を液体化した自分の身体で覆い、ドド先生が作った霊玉の一部分を見せます。
そして私は再度戸田君にテレパシーで言います。
『ギリギリこれで霊玉の役目を果たすことが出来ます…本物の霊玉に力的にはまったく及びませんが…。』
(消セ…。)
しかし彼にはきっともう一人別の人間の声が聞こえたような顔をします。
一瞬それに疑問を感じつつ…
私は話を続けます。
『契約してくれると言うなら…私はこれをあげても構わない…。
お願いです…私と共に…この祭典の勝者として生きていきましょう。』
「…さよなら。戸田君。」
先ほどつけた傷口に液体化した私の身がスルリと入り込みます。
そして次の瞬間私は本気で戸田君の身を全力で締め付けました。
本気で殺す訳じゃありません。…これは悪魔の契約の儀式の始まりの合図。
私は待ちます。
彼の最後の答えを…。
>ラスティーリア
>「レイジさま!お体はもう治りました。早く魂がもどってもらわないと!」
>それからあたしはレイジさまの胸にドンと当たって、レイジさまを現世側の岸に戻るよう催促した。
「ラスティ――リア!」
叫んだ時には可愛そうな首だけのラスティーリアは岸辺へ……冥府の岸へと連れさらわれるように飛び去っていく。
またラスティーリアの犠牲の上に、僕は生き延びるのか?
激しい後悔が胸をしめつけた。
「あ…」
不意に僕は背中に暖かさを感じた。まるでよく晴れた春の日の日差しのよう。
目に見えない力が僕を引っ張る。
現世が僕を呼んでいる。ラスティーリアとは対照に。
現世側の岸が僕を引き寄せる。
まだ生きろって……
>リリさん
>「藤田君、ゼフィールの望みはベルを懲らしめ祀りを成就することよ」
リリさんが僕になにかを仕掛けた。
僕のオーラの一部を抜いたような……?
リリさんが現世へと渡っていく。
リリさん!僕はリリさんの言っていることのほうが……あっ!
>ゼフィール
>「待った。まだ礼司とは話しがある。ごめんね。すこし時間を」
僕の右手首を金色の鞭が巻きつく。僕はゼフィールに手繰り寄せられた。
ゼフィールが僕を後から抱きしめる。
アッシュの目の前で。
「はぁっ」
だめ。
ゼフィールは触れるだけで僕を堕とす。
>「礼司、きみは神学も仏道も学んでいないというのに、よくぞ冥府の理を見抜いた」
>僕がゼフィールを継承できたのも、僕が死者だからだ」
ゼフィールの言葉に僕は衝撃を覚えた。
これはなに?
似たようなことが起きるのはなぜ?
「テンポーくんは牙の主を継承してしまった。
それと同じようにゼフィール。あなたもゼフィールを継いだのですか?」
サーヴァント召還の儀は霊宝の影響をうけて
対象者ではなく、魔力が強い(将来的に強くなる)人物の前に召還される。
>ジョジョ
>一匹、最後尾にいたアヒル野郎を上半身と下半身に分けてやった。
>「正義の味方……ウルトラマンジョジョ!参上!」
>アヒル獣人モーツァルト
>「アフラーック!ぐは!」
意気揚々とムアコックと手勢が上湘南第一中学校の校門を通り抜けていく。
そこに空から襲撃者が降りてきた。
モーツァルトが腰斬され、断末魔の泣き声をあげる。
「不埒な狼藉者を排除せい。余は小物に関わっている暇は無い」
魔豚ムアコックは襲撃者を詰問もせずに、部下に命じるとそのままモートの吹きつける風の中、進軍した。
>>36 >「聖杯戦争〜」
「18禁ゲームもしている暇はない」
迷い出た秋葉原系自爆霊をムアコックは踏み潰した。
アキバ霊は「大爆発だー」と絶叫した。
「ぶひ?」
ムアコックは新たなる霊体を感じた。
>46
「余には千客万来だな!」
着実にムアコックの魔力は増大していった。
一方、ジョジョは本命の豚の妖獣を追えず、足止めをくっていた。
ブルドック獣人ガイア。
ドーベルマン獣人オルテガ。
シベリアンハスキー獣人マッシュ。
三頭の犬の獣人がジョジョの前に立ちはだかった。
「我等は忠犬三連星!来たる世界の皇帝ムアコック陛下の御下命によりコスプレオタク男!オマエを噛む!」
犬どもが牙を剥く。ヨダレが滝の様に流れ落ちるがまるで火の付いたガソリンの様だ。
燃えるヨダレであった。
ガイア「オルテガ!マッシュ!ジェットストリームアタックをかけるぞ!」
ジョジョに必殺の攻撃をしかけた!
ムアコックはジョジョの始末を犬の三連星に任せると上湘南中学校の敷地内に到達した。
そびえる魔界の祭城を見上げムアコックは豚鼻を鳴らした。
「ぶひ!相模国造の館か。いい趣味をしているな!トットコ!」
ハムスター獣人のトットコが前に進みでる。
「壁に穴を開けよ!」
ハムスター獣人は相模国造の屋敷の壁に穴を開け始めた。
トットコは掘削機を思わせる凄まじい歯の連打で、あっという間に壁に大穴を開けた。
ムアコックは相模国造の屋敷内に侵入した。
「まずは霊具を持っている祭祀参加者を捜せ!」
>礼司
>「テンポーくんは牙の主を継承してしまった。
>それと同じようにゼフィール。あなたもゼフィールを継いだのですか?」
「ほとほと感心するよ!
きみは自覚していないだろうけれど、宇宙の摂理の片鱗を語っているんだ。
東から昇った太陽が西に沈み、また東から昇るように、この宇宙は繰り返しなんだよ。
神々の深遠なる叡慮によって営まれる敖遊の儀の全てを、きみに語る事は僕には出来ない。
言える範囲で伝えよう。
いつの世でも敖遊の儀は円滑に行われなければならない。その為に神々は祭祀の番人を置かれたもうた。
簡単に言えばレフェリーだよ。
それが僕。
それでだ、霊宝の神力は絶大だ。罷り間違って番人が霊宝を持ちたいなんて大欲を持たれたら困るだろ。
神々すなわち“大いなる存在”は霊宝所有者の条件に、生者であること、としたのさ。
だから僕は敖遊の儀には直接は介入できない。
でも干渉することは大いに出来る。
人間などを使ってね。
しかしこれにも禁止事項がある。
敖遊の儀にはもうひとつ禁忌があって、霊具が霊具所有者を操ってはならない、だ。
霊祭の参加者は自分の意思で敖遊の儀に参じること。
だから霊具の叢雲が、ここまでベルの精神を汚染するとは信じられないよ。
今回は異常な展開になっている。
リリは答えを僕からもらう前に、せっかちだから現世に帰ってしまったけれど、
僕は礼司にずっと言っているだろ、僕はきみにお願いをしているんだ。
霊宝の所有者になってほしいって」
ゼフィールは礼司の手首を縛っていた鞭を解いた。
「叢雲のように僕は人間の精神を操ったりはしない。
僕に出来ることは、僕の望むことを選んだ人間にも共感してほしい。
僕を同じことを心から思ってほしい。
それなら、僕がやらせているんじゃない。僕は声をかけ、そう思うように気づかせただけだ。
そうさ、僕は気づきを与えるだけなのさ。
分からず屋には厳しくもするけどね。
決めるのは自分さ。
だから礼司が霊宝所有者になるつもりはない、そう心に決するのなら、それはそれでいい。
仕方が無いよ……。
決めるのはきみだ。
リリの凍った心を春解けさせ、たわいもないオカルト好きの少女にベルを戻せるのはきみしかいないかもしれないけどね。
さあ、もうお行き。ラスティーリアにわるい」
ゼフィールは礼司の背中を軽く押した。
礼司が現世の岸に引き寄せられていく。
冥府の岸に去ったラスティーリアと違って、礼司はここに未練が残るからなのか、ゆっくりと岸へと進む。
あらがっているのかもしれない。
去りいく礼司にゼフィールは優しく言った。
「豚には気をつけるんだよ」
「カナン・ウガリットの死霊モートが地上では画策している。
奴もまたその名が示すが如く死せる悪霊だ。冥府の者だ。
奴めは己が死霊であり、参加資格がないのに、豚を操って霊宝を強奪しようとしている。
しかも豚は霊鏡も霊玉も、無論、霊剣も持ていない無資格者なのに。なんとも強引な奴だ。
でも侮れない。
豚はキリストも認める恐ろしい触媒の獣だ。なんでも吸い込む。聖書に書いてあるよ。
おっと、三途の川は忘却の川だ。現世で目覚めた礼司が僕を覚えているかわからないね」
礼司は現世の岸へと消えていった。
礼司を見送ると、ゼフィールはアッシュを見下ろした。
「スパーダは僕に震え上がって声も出せない。アッシュ。きみはどうかな?
敖遊の儀の歴史の中で、きみほど、めちゃくちゃにしてくれた奴はいない。
相模国造の屋敷を現世に押し上げるとはね、あきれるよ」
ゼフィールは三途の水面に腰を降ろした。
「せっかく冥府のほとりの川に来てもらったけれど、きみと僕とが戦う理由はなくなったかな?」
ゼフィールが少々おどけた表情で付け加えた。
「僕は礼司の精神を操って誘惑したんじゃないよ。
勝手に彼が感じたんだ」
アッシュを見るゼフィールの目がうるむ。
胸にふくらみが現れてくる。
「メキシカン・スタンドオフは、ねえ、終わりってことでいい?」
ゼフィールの性が変わっていく。
「こっちが本当の性。僕は本当は私」
拍手をゼフィールは打った。
「三途の川の番人をしていると、いい加減飽きがくる。死界には変化が無い」
霧の濃度が増す。
「いろんな死者が来るから、中には相当な魔道士もやってくる。ちょっと役得で、こんな目くらましも教わった」
うっすらと見えていた両対岸も見えない。視界は一メートルも無いだろう。
「アッシュ、あなたの、みなぎる精が欲しい。そうすれば私も…」
アッシュにはゼフィールの顔が変わったように感じられた。
アンジェリーナに似ている。
どうして今まで気がつかなかったのだろう。
「私よ、アッシュ」
アヒルの獣人が心地良い悲鳴を上げ、その儚い生命を散らす。
「久しぶりの糞蟲駆除ですからねぇ。
十分に楽しませて貰いますよ。」
アヒルの血の付いた刀を舌で舐め取る。
その味わい。非常に甘美なり。
身震いする程気持ちよい。
だが、感じている暇は今はない。
ここにいる獣人全匹を駆除する仕事が残っている。
ジョジョは体を捻り、勢いを付けて横に一閃。
猫の獣人の首がスパッと胴体から離れる。
次の獲物は猿の獣人。
縦に一閃。
気持ち良く真っ二つ。
笑いが止まらなくなる程、超!快感!
これだから糞蟲の駆除は止められない。
次の獲物は、三匹が犬。
ブルドック、シベリアンハスキー、ドーベルマンの獣人。
わざわざ食われに前に出て来てくれた。
>「我等は忠犬三連星!来たる世界の皇帝ムアコック陛下の御下命によりコスプレオタク男!オマエを噛む!」
犬達は侮辱してしまった。
誇り高きウルトラ一族の血筋を侮辱してしまったのだ。
これは万死に値することだ。
低俗な地球の犬畜生の糞蟲如きが、ウルトラ一族を辱める。
絶対にあってはならないこと。
茶の間でお茶を飲みながら、ジョジョの監視をしていたゾフィーもこれには激怒した。
犬達は三身一体の攻撃を仕掛けようと動き出す。
だが、それよりも前にジョジョは動いていた。
刀を鞘に収め、犬達の懐に潜り込む。
『ジュワジュワジュワジュワァァァアア!!!!』
三匹の犬に音速を超えるラッシュを叩き込む。
『ジュワジュワジュワジュワァァァアア!!!!』
まだまだ叩き込む。
『DESUUUU!!!』
止めに入った他の獣人達にもラッシュを叩き込む。
『DEATHHHHH!!!!』
もう動かなくなった挽き肉犬三匹、その他の糞蟲にもまだまだ叩き込み。
『ジュワッチィィイイ!!!!!』
もう、完全に全滅してる糞蟲共に最後の一撃。
空高く跳び上がり、右腕にマイナスエネルギーを、左腕にプラスエネルギーを。
両腕を交差させ、二つのエネルギーをスパークさせる。
光が放たれた。
それは、地球人類が文明を持つ前から宇宙の悪を滅してきた正義の光。
スペシウム光線。
「少しだけやりすぎたでしょうか……?」
ジョジョは大きなクレーターの真ん中に立っている。
見境なくラッシュを叩き込み、必殺のスペシウム光線を放った。
結果は、ただ大きなクレーターがあるのみ。
スペシウム光線の威力が強過ぎて、全てを消し飛ばしてしまったのだ。
「まぁ、一般人に被害が出ていないようですし、さっさと学校の方に行きましょうか」
ジョジョは糞蟲を全滅したと思い、学校への道を走り出す。
それは、邪神と魔獣が進んだ道。
ジョジョにとっての苦難の道。
必要の無い場所に長居する気は無かった。
アッシュがレテ川に現れた時点で、ゼフィールの課した理利の表向きの役割は終わっている。
相談ならアッシュとすればいいのだ。理利には理解できないほど、深い「お友達」なのだから。
それにゼフィールが、本気で藤田への相談相手として理利を選んだのなら人選ミスだ。
理利は、超越者を心底嫌っているのだから。
――――今更、魔剣士の話に耳を貸す気も無い。
悪魔には悪魔の流儀があるのかもしれないが、結果的にあの男はまた自分を助けなかったのだから。
目覚めは最悪だった。
肉体に戻った理利は、まず全身を蝕む痛みに耐えなくてはならなかった。
レテ川で異質の力を取り込み行使した反動だ。
だが、ゼフィールの別れ際の言葉どおり、理利はレテ川での一連の出来事を覚えていなかった。
理利はぼんやりと周囲を見渡した。
どうやらここは、外に配置された部室か体育用具倉庫のようだ。
だが、さっきまでは理科室にいた筈だ。アッシュかギルバがここまで運んだのだろうか。
起き上がろうとしたが、あちこちひどく痛めているようだ。膨大な魔力を無理やり体に宿したようだ。
だがそんな事をした覚えは無い。眠っている間に一体何が起こったのだろう?
外が騒がしい。気になるが、外を見ようにも窓ははるか頭上にある。みる事は出来ない。
「マスター!!心配したですぅ!」
ジョリアルの遺したフランス人形が理利に抱きついてきた。中身が実装石だと悟るまでに少し時間がかかった。
「無事でよかった。でも、あなたもずいぶん実装石の範疇から外れたわね。
・・・・ああ、無理に元の姿に戻る必要は無いのよ。今の人形の体が気に入ったのなら。ええと・・・」
そういえば、名前を付けていなかったことに気づく。
もし名づけるならジョリアルにするのが自然な流れかもしれないが・・・無理だ。
かつての母を狂わせた原因である知将ジョリアルを、そう簡単に赦すことは出来ない。
かといって古いカバンに記されていた名前も、オカルト好きのフランス少女を連想させる。
「・・・・アリア。あなたの名前はアリアよ。人形の持ち主が愛した人の名前で、詠唱って意味もあるわ。
アリア、早速で悪いけれど、これを部屋の隅に配置して。それから、私の代わりに外の様子をみてくれる?」
理利は痛みを堪え、ロザリオから魔法石を外しアリアに渡した。
今の最優先事項は、身の安全の確保と回復だった。
だが、異変は突然訪れた。
回復を図っていた理利の体に、何かが干渉してきた。
冷たい床の上に横たわっているはずなのに、背中に何かの気配を感じる。
「な・・・何・・・?あ・・・!」
染み入ってくるのは甘い疼き。思わず床から跳ね起きた。注意深く周囲を探るが何もいない。
だが背に感じる疼きが壮絶な快楽に変わるのに3秒とかからなかった。理利は思わず床に爪を立てた。
何が起こっているのか理解できなかった。
そう、彼の声を聞くまでは。
>「礼司、きみは神学も仏道も学んでいないというのに、よくぞ冥府の理を見抜いた」
――――ゼフィール!あいつ・・・!!
全身に冷や水を浴びせられたような衝撃の中で、理利は全てを思い出した。
そして悟った。理利の魂が今感じていることは、藤田の霊体が感じていることなのだと。
霊鏡を通じて繋がっているので、全ての感覚がダイレクトに伝わってしまうのだろう。
ゼフィールは理利にとっては冷徹な守人だったが、藤田にとっては、触れるだけで性感を支配する魔性だったのだ。
蟲惑的な声。同じゼフィールの声をレテ川で聞いた筈なのに、理利と藤田とではこうも違って聞こえるのか。
忌々しかった全身の痛みも、今となってはありがたい。お陰で甘美な感覚に思考が蕩けなくて済む。
理利は慎重に、藤田の魂魄から伝わってくる視覚と聴覚以外のイメージを遮断した。
そして、近くて遠いレテ川のほとりでのやり取りを、理利は現世で聞いた。
あの場に残らなくて正解だった。ゼフィールに感じた毒婦という印象は、あながち間違いではなかったのだ。
ゼフィールは自分と言うものをよく分かっている。自分の望みどおり事が運ぶように、藤田を誘導したのだ。
彼は嘘と真実を上手に使い分けている。飴と鞭も。
そして元が人である故に公正ではない。
そもそもゼフィールの語った説明には無理がある。
死霊が霊具の持ち主になれないというのなら、牙の主だったハットゥシリはどうなるのだ。
ゼフィールは確かにハットゥシリは処刑され死んだと語った。
なのに、敖遊の儀に死者は関われないと言う。
霊宝所有者の条件に、生者であること、とした筈なのに、遠い昔に胎児のまま死んだ筈の彼女が、
横浜ランドマークタワーで滅ぶまで生者だったとでもいうのだろうか?
百歩譲って、生死を操る祭祀の番人ならば死んだ者を蘇らせる事も可能だとする。
だがこれと選んだものに新たな肉体を与え、霊具を持たせて敖遊の儀に参加させることは、
儀式への干渉以外の何者でもない。
ゼフィールの語ったことは真実とは思えない。――――信じたとしたなら、藤田は甘すぎる。
こんな事なら手加減などせず、霊鏡の力を全て抜き取るべきだった。
なぜあの時、藤田から全部取り上げなかったのか。自分でも分からない。
まだ心のどこかで、藤田の可能性を信じているのだろうか。――――だとしたら、私も甘すぎる。
理利は藤田との接続を切った。長く使うと気取られるかもしれない。
「これからどうするですか?」
アリアは外の様子を報告した後、おずおずと問い掛けてきた。
「どうしようかしらね・・・・・・・」
ため息混じりに呟く。
救いたかった相手はことごとく死に絶え、世界は破滅の一途を辿っている。
もう理利だけの力ではどうすることも出来ない。
霊宝を使うしかないのだろうか。ゼフィールやベルの望みどおり踊らされて、全て無かった事にするしか。
理利は服の上から、胸元にしまった2枚の古びた鏡に触れた。
立ちふさがるか、道を譲るか。――――結局は、藤田の行動一つなのだろう。
深く物思いに沈んでいた心の琴線に、何かが触れた。
窓を見上げた理利は、複雑そうな顔で見えざる存在を見つめた。
「レテ川で常世から力を集め、私に手を貸したのはあなたでしょう?
・・・ありがとうと言うべきなのかしらね。 ハットゥシリ。
――――馬鹿な子。 霊宝なんかに囚われず、ただ転生の機会を待てば良かったのよ」
理利はゆっくりと立ち上がった。負担がかからないように壁に手をつき、呼吸を整える。
「だけど、私にはあなたの気持ちが痛いほど分かる。
おいで、ハットゥシリ。牙の主だったもう一人の私。あなたが私を選び、願うのなら・・・共に行きましょう。
あなたが工藤先輩達にした仕打ちは許せない。けれど・・・そばにいてあげる。
私の命が尽きるまでの間なら、ね」
立ち上がり、ハットゥシリに手を差しのべる。
そのまま彼女の手を取り、理利は自らの身の内に招き入れた。
理利はアリアを抱き上げると、魔法石を片付け外に出た。
燃え盛る校舎は火の勢いを衰えない。ケルベロスと呼ばれる悪魔が氷柱や吹雪を吹いて火の勢いを調整している。
「延焼を防いでくれるのは助かるけれど、炎は消さないで。アッシュが戻って来れなくなるから」
二つの世界が入り混じったグラウンド。
だが、死者の壁に行く手を遮られた理利は、グラウンドではなく校門へと向かった。
転がる牙の使徒の骸をみるたびに、胸が締め付けられる。
ハットゥシリも痛みを感じてくれればいいと思う。
「遅くなってごめんなさい」
理利は、ジョリアルから託されたベルを鳴らした。
清らかに澄んだ硬質な音色が、上一中の空に木霊する。
理利にもようやく白いベルの使い方が理解できた。これは、自らの命を削って鳴らすのだと
とりあえず10年単位で寿命を奪う話がハッタリでよかった。でないと肉体に戻る前に寿命が尽きていたのだから。
「ゼフィールは私のために特別な刑罰を用意してくれるといったけれど・・・準備は間に合うのかしらね?」
古来より日本では、鈴には魔を払う効果があるとされていた。
だが、霊具を保有している天保や生き残った牙の使徒達には、どの程度の効果があるだろう?
――――まあ全く効かなければ、次の手を考えるだけのことなのだが。
>天保光・前スレ341
天保が出現させた黒き血の精霊達の周りに一陣の風が吹いた。
灼熱の熱風で、忽ち精霊達を干からびさせ、塵芥に帰した。
天保光の前で風は、相模国造の館の高い天井と床を結ぶ見上げる様な竜巻となった。
焼ける砂を轟々と散らしながら風は言った。
「程なく霊玉と霊鏡を徴する為に、皇帝が来臨するであろう。
御主の持つ霊玉を皇帝に献上するが賢明である。
さすれば貴殿は皇帝の臣下の末席に列する栄誉が与えられよう」
竜巻の回転速度が増した。
「返答や如何に?」
>ムアコック
同時刻、ムアコックの脳にモートの思念が告げた。
「霊玉所有者、牙の主アマヤスの居場所を教えよう。ついてまいれ」
ムアコックの足元に小さな竜巻が沸き起こった。
竜巻は道案内をしながらムアコックをおどろおどろしい相模屋敷の奥へと誘った。
>53>54
汚れた精霊が館の内部を覆い尽くし、汚染している中でお互いが持てるすべての武器で攻撃し殺しあっている。
眼もなくただ闘争心と食欲のみで生まれた醜き精霊たちは、ただ目の前にいる自分そっくりの同族を食い殺す。
殺しては死んだ同胞を食って成長を遂げ、次をまた食い荒らし続けるごとに化け物と化していく。
黒い血の精霊たちは気配のする者、無差別に攻撃を仕掛ける。それゆえ力の分別もできずに余を襲う者が後を断たない。
勿論、そんな運のない輩は刀を一閃するだけで真っ二つになり消滅する。
精霊たちの叫び声の中、透き通った風が猛威をふるう。それに吹かれた精霊たちは煙をたてて蒸発していた。
熱き風が吹いた時、余以外のすべての存在は浄化されていくように一つの悲鳴もなく崩壊していく。
一瞬の出来事ですべての精霊が消滅しきったその時、音が聞こえて館の床に脱力し四つん這いになる。
霊玉による供給がなければ肉体を放棄するどころか魂の消滅さえありえた。
息が荒く悉くの能力が低下している中、必死に回復をはかる。次にこの音が鳴れば消失は逃れられない。
魂に刻まれるほどのあの音をもう一度やられてしまえば、防ぐ術は持ち合わせていない。
力の完全回復を待っている時間はなく、藤田礼司殺しも儀式も完全ではない。ここまで事が進んでから戻すのは惜しい。
しかし場合によっては一年ほど戻さなければならないかもしれない。いや、しかし…、くっ……。
親指の爪を噛みながら流れるのは一筋の汗。思念を巡らすほど泥沼に落ちていく、ここまで悩まされたのは前に来た異端殺しの時以来。
やはりここで時間を戻すことはなく、要はこの愚か者と音の術者を殺せばよいことで、いまここにある脅威はたったそれだけ。
使える使徒を捜してみるが先ほどの『音』に相当やられたようだ。唯一生き残った者はわずか数名だけ。
霊脈から霊気を吸い上げるが、そんな簡単に力は戻るはずもない。
>「程なく霊玉と霊鏡を徴する為に、皇帝が来臨するであろう。
>御主の持つ霊玉を皇帝に献上するが賢明である。
>さすれば貴殿は皇帝の臣下の末席に列する栄誉が与えられよう」
「断る」
この者は図々しくも霊玉をよこせという。愚かしくも笑えぬその思想、万死に値するわ!
「どう喚こうが、描く天下の絵図に貴様はいない。邪魔だてするなら容赦はせぬぞ?」
剣の刃を威嚇するように向ける。それが目の前にいる『何か』に対して虚勢になるか、自信になるかは相手次第。
この異常事態により、自衛隊(もちろんこういうときの為の特殊なの)が出動してきましたよ
忌ま忌ましいリリによって転ばされた乙事主は立ち上がった。
リリは現世に戻ったのか三途の川辺にはいない。
踏み潰そうと狙ったアッシュはどこだ?
どういう訳だ。この霧の深さは。
自分の鼻っ面すら見えないではないか。しかも視界だけではない。音も聞こえない。無音化の結界の霧か?
乙事主は舌打ちした。
「ゼフィールめ。欲情しておるな」
あやつは、まぐわろうとしておる。また霊魂を喰いものにしようとしているのだ。生命エネルギーを吸収
しようとしているのだろう。何度目だ。
「叢雲が狂っておるとゼフィールは責めるが、霊宝の儀の番人としては、あやつも狂っておるわい」
此度の霊宝争奪の祭儀は奇妙だ。モートすら危険を冒して直に策動しすぎだ。
乙事主は深い霧の中、立つ尽くした。晴れるまで待つしかない。
帰宅の最中、彼女はこの町の異変に危機感を覚えていた。
異常な魔力の集まり、霊気の乱れ、それはこの町へ来たときよりも激しさを増していた。
しかし、彼女はその時それを問題とはしていなかった。
もうそれ用の班が対策を打っていたことを彼女は知っていたから
しかし、その対策も無駄だったようだ。
天地がひっくり返りそうなこの状況を無視出来ない状況まで発展した。
今さらながら、彼女は後悔した。
手をもっと早く打っておけばこんな事態にもならないですんだはずなのに
「----考えないで行動したほうがいいですね---
まずは------霊脈へ行ったほうがいいでしょうね---
それに-----なにか居るみたいですし----」
そう言いながら、彼女は振り返り、学校へ走り始めた。
学校についたとき、彼女の目には血の池とかした学校の校門が目に入った。
無残に食い散らかされた死体がそこら中に捨てられていたのだ。
もちろん、その中には魔術協会の人間の姿もなんとか確認できる。
「----やはり、襲撃を受けたようですね。---
安心して眠っていてください---魔女狩りの名において、協会に反するものには死の制裁を----」
そう言って立ち上がり、あたりを確認する。
>「ぶひ!相模国造の館か。いい趣味をしているな!トットコ!」
声が聞こえ、そちらに振り向くとそこには醜い獣人がいるのが確認できた。
彼女は直感した-----こいつだ。こいつがこれを作ったのだ。
幸いにもあっちは気がついていない。
手を前に出し、詠唱を唱える。
「我、焔の矢を射て、すべての不義を貫かん----サラマンドラ」
手の平から音も無く打ち出された炎の矢はムアコック目掛けて疾走した。
「ク、ククククク!ハハハハハハ!」
屑船の奇怪な攻撃を受けながら鋭太郎は笑った。
>屑船
>『私は先ほど言った通り人間から悪魔へと落ちてしまいました』
屑船の言葉に鋭太郎は笑わずにはいられなかった。
同じじゃないか!
俺も屑船も、・・・金護も運命が狂って人間をやめざるをえなかったのだ!
鋭太郎は接触念話のまま屑船に答えた。
『俺は何者にも従うつもりは無い。仕えるか否かで、俺は・・・かけがえの無い親友を殺した』
鋭太郎は金護の腕を見た。
後悔の念が鋭太郎を責める。
『第二の霊玉など興味は無い。俺が求めるのは自由だ。
自由なんだ!
屑船!
俺を裏切らないのならば、俺はお前に協力しよう・・・』
>31
>「霊宝の儀はいよいよ山場なのね」
「そう、山場よ。
参加もせず、審判みたいな役割も果たさず、
ただ客席から見てるだけの人がもし居たとしたら、手を叩いて面白がってるでしょうね。
何だかんだで盛り上がってるから」
そんな話をしながらも、つかさはグリフォンを急がせる。
凄まじいスピードで一直線に飛び、禍々しい変化を見せた学校へと向かってゆく。
校門前に辿り着いた後に、掴まっていたラスティーリアを降ろして、つかさはグリフォンを収納した。
「わたしは此処までよ。あとは、どうする?敵の方が多そうだけど……わたしはとりあえず、頭数だけでも増やしときましょ」
つかさは、またもやピクシーを呼び出した。
ピクシーはつかさが最も信頼している仲魔であり、長らく戦いの経験を積み重ねて強化されている。
そしてピクシーなので、敵の油断を大いに誘う代物である。
見上げれば、古めかしい和風の神社仏閣がある。アレが相模国造の館か!
此処には、神の住まいはあるものの、神の領域とヒトの領域を区切る鳥居が無い。
いずれ、もっと混沌とした状況に陥るだろうと、つかさは考えている。
>59
>「我、焔の矢を射て、すべての不義を貫かん----サラマンドラ」
「あら、あそこにアマナさん―――まだ居たのね」
遠くから、アマナの戦いを眺めている。
上着の内ポケットから、何か適当なマジックアイテムを取り出して様子を見ている。
刀は鞘に収められており、銃型COMPをいつでも操作できるように、右手の人差し指を引き金に添えている。
アマナの放った炎の矢は、渇きの波動を身に纏った豚の獣人へと向けられていた。
曲がりなりにも神の加護、それも渇きと荒廃を司る邪神の力を得た怪物だ。果たして炎が通じるのやら。
豚の獣人・ムアコックの方を見やり、つかさは勝手な評価を始めた。
「アレじゃ、魔術協会の人に眼の仇にされても、しょうがないわね。
ピクシー、アマナさんが死んだら寝覚めが悪いから、何かあったらあの子の援護をしてあげて」
ピクシーに待機命令を出したが、少し離れた距離だ。駆けつけるのにも、数瞬ほどタイムラグが発生するだろう。
だが、近寄りすぎてムアコックに知覚され、
先手を打たれて回復魔法を妨害されるのも厄介だと思って、ギリギリの距離を保っている。
犬の三連星を葬ったスペシウム光線によって造られたクレーターからムアコックを追って出ようとしたジョジョを
笑う者がいた。
「フォフォフォフォフォフォフォフォフォフォフォフォ!」
校門の前に、なんと!バルタン星人が立っていた。
「俺はエビ獣人バルタン!」
名前はバルタンだがバルタン星人ではなかった。なかったがそっくりだ。
正体は観賞魚売り場で売っていたヤマトヌマエビだ。草食性でコケを食べるので、水槽に入れておくとガラスに
ついたコケを食べて掃除してくれる。一匹おおむね50円。
だがモローのコーンフレークとモートの魔力贈与で、大きなはさみを持つ恐るべきエビの獣人に変身していた。
背もジョジョよりも頭一つ分は高い。
「俺はほかの獣人とは違う!フォフォフォフォフォフォフォ!」
ジョジョめがけバルタンは突進した。
鋼鉄製の様な堅固なハサミがジョジョの顔面に迫る!
>62
>「フォフォフォフォフォフォフォフォフォフォフォフォ!」
耳障りな笑い声が聞こえる。
ウルトラ一族の宿敵とも言える者達が笑うような声。
ジョジョは笑い声がやってくる方を見た。
校門の前に誰かが立っている。
両腕に巨大な鋏を持つ、宇宙最強の忍者一族。
バルタン星人!
>「俺はエビ獣人バルタン!」
……じゃなかったみたい。
本当によく似てるんだが、まったくの別物。
>「俺はほかの獣人とは違う!フォフォフォフォフォフォフォ!」
「はぁ……」
バルタン星人ならともかく、ただの獣人とウルトラ一族では、力量が天と地程の差がある。
獣人達はそれを分かっているのだろうか?
力量の差を考えずに、エビはジョジョに突進してくる。
巨大な鋏がジョジョの頭部を断ち切ろうとする。
ジョジョは鋏を右に回りこむようにして回避。
そのままエビのバックを取って、エビの両腋から腕を通して、後頭部でロック。
その状態のまま、ジョジョは綺麗なブリッジを描く。
エビの両腕は極められたまま、受け身も取れずに首からアスファルトに叩き付けられる。
そして、ジョジョはそのままフォール。
『1!2!……』
密かに地球の様子を見ていたタロウが、カウントを密かに数えていた。
リリが現世へと脱出した後、残されたボクらは中々気まずい。
戦う理由がないと言われても知ったことじゃないボクはしかし、
ゼフィールにレイジを抱かれたせいで簡単には潰しが利かなくなり、剣を向けたまま動くに動けない。
接近戦に持ちこもうにも、凍った水面では足場もおぼつかない。八方ふさがり。
とりあえず、ドラゴンの話を終いまで聞くよりなさそうだ。
>「霊宝の戦いをどうするか迷っている礼司の相談相手に来てもらったのになあ。
リリのことだ。思った通り彼女は、最後までレイジとは一線を相容れなかった。
彼女の目的は、彼女の願望とは直接に一致しない。
役割や責任を果たす事が彼女の望みであるとしても、その役割自体は彼女が望んでのものではない。
ボクらのように目的と手段を混在させるという適応を放棄した、ストイックさ。
比べてレイジは、もっとずっと衝動を頼みの原動力で動いている。
感情を理性で整合し切ろうとしないから、リリとはまた別の形で破滅的な生き方を、隠さない。
ボクはどちらかと言えば勿論、レイジに近い側。
ただ、どんなにひどいザマを見ても最終目的を忘れない。
救いの光は常に一方向から差し込んでいて、回り道をしながらも見失うことはない。
だから是非ともゼフィールをファックしたいんだけれども――
>いつの世でも敖遊の儀は円滑に行われなければならない。その為に神々は祭祀の番人を置かれたもうた。
>簡単に言えばレフェリーだよ。
>それが僕。
儀式は自然の摂理で、その営みを見守る緑の巨人がゼフィールって訳だ。
何をやるにしても、コイツはいまいち邪魔だと考えたけど、
ヤツがレイジを利用する気なら、恭順か反抗かはレイジに決めてもらおう。
リリはそこら辺、レイジを信用できなかったみたいだけど。
>敖遊の儀にはもうひとつ禁忌があって、霊具が霊具所有者を操ってはならない、だ。
フランス女の暴走が、ヤツにわざわざ儀式へ手心を加えようとさせる根拠。
暴走の原因は分からないが、とにかく彼女に儀式を操られると困るらしい。
ゼフィールは言い含めて、レイジを捕らえていた鞭を解く。
レイジはボクを軽く見遣ると、ゆっくり岸へ歩きはじめた。
「別にアイツは――レイジはボクのモノじゃない。欲しければ奪うまでさ。
屋敷? 山車がわりだよ、せっかくお祭りなんだろ? 毎度同じじゃ、神様だって飽きが来るかと思ってさ」
三途の川に、一歩先も見えないほど濃い霧がたちこめる。ゼフィールの仕業だ。
ヤツはすっとボクに近づくと、抱きついた。抱き返す。
温もりは殆ど感じないのに、想像の下半身が肛門姦に似た、前立腺の疼痛と冷たい熱に苛まれる。
神界の祭事を切り盛りする立場というだけあって、彼女は器用に化ける。
気づかぬ間に、ドラゴンの顔はアンジェリーナの面影を真似ていた。
>「アッシュ、あなたの、みなぎる精が欲しい。そうすれば私も…」
彼女と唇を重ねる瞬間、身震いが襲った。
頭の中が爆発しそうになる、あまり穏やかではない。
自分は寝たいのだろうか? ドラゴンの、背中に回した手を肩甲骨に沿って、うなじまで。
キスを解いて首を動かすと耳たぶを、首筋を愛咬する。
現世の、肉の体が形を残していたなら射精していただろうが。
「キミの後ろに全部あるだろうに。ボクの半分はソレだ」
アンジェリーナに似てたから抱くのとは違う。本当のアンジェリーナとはずっと繋がったままだから。
だが、レイジの心が固まるまで新しい結末を考える余裕がない。
ドラゴンの身体を開けたなら、次に刺す手も浮かぶだろうに。
>29
>「どうした?しっかりするんだ!」
「う……」
僕は体を激しく揺すられていた。まぶたを開けたら見えたのは、僕の顔を覗き込んでいる知らないおじさんだ。
>「ワン!ワン!ワンワンワンワン!」
「わー!」
犬が僕の股に顔をつっこんでくる。
僕は跳ね起きた。
おじさんが驚いた顔で僕を見ている。
「ここは……」
どこ?
あ。
僕はどうして上だけ裸?
ベルに借りたタキシードのズボンだけだ。しかもズボンは血だらけでぐっしょりしていて気持ち悪い。
ブルーフまできっと濡れている。
あ!
そうだ。僕はカウボーイの魔術師に撃たれて……
おなかを見る。どこにも傷は無い。当たったはずだ。激痛を覚えている……
そうだ!シーラ・ドド先生!
先生が……
いや、僕は拒んだ。拒んだのに……
ああ。
「……ラスティーリア」
ランドマークタワーの地下駐車場のエレベーター。あのときも僕は不覚にも重傷を負って、ラスティーリアに助けられ……
あのときときっと一緒だ!
またラスティーリアに命を助けられたんだ。
僕はラスティーリアに申し訳ないっていう気持ちが溢れ、その場にうずくまりそうになった。
迷惑ばかりかけてごめん。ラスティーリア。
いや。
だめ。今は泣いている時ではない。
泣くのは全てが終わってからにしよう。全てが終わったら思う存分泣けばいい。
僕はもう一度あたりを見回した。
ここはどこ?
ダイビング用品店ルビーマーメイドという看板がすぐそこに見えた。
この店は知っている。ここは僕の登下校の道じゃないか。
マンションからどうしてここに?ラスティーリアが僕をここまで避難させたのか?
ラスティーリアはどうなった?
ギコはどこ?
学校は!?
僕は学校へと走った。
後でおじさんが「だいじょうぶか?」みたいなことを叫んでいる。
「もうだいじょうぶです!」
僕は走りながら振り向いて答えた。
走っていくうちに町が大変なことになっているのがわかってきた。
倒壊している家々、けたたましいサイレンを鳴らして僕を抜き去るパトカー、消防車、救急車。
「あ。あ……」
なんだあれは。
まだ遠くだけど、普段なら学校が見える方角に、ここらへんの道路からだと学校屋上の時計塔が
ほんの少し民家の屋根の向こうに見えるだけの位置だけど、それなのに学校のある筈の場所に
替わって魔道的な建造物が出現しているのが見えた。
叢雲剣の刀身に突っ込んでいた左手を抜き出す。
否、はずすといった表現のほうが正確だろう。
刀身に入っていた肘から先は消失していたのだから。
三途の川でゼフィールに消されたのだ。
「「「さても虚実混濁・・・。過保護が過ぎるから相手は単純な事実を複雑怪奇に見ようとしてしまうというのに。
さてリリよ。何故全てを奪わない?
冥府ならばともかく現世に戻れば・・・わかっているのか?
貴女は藤田を殺すことも、藤田に殺されることも、自ら死ぬ事もできるだろう。
だが、藤田は貴女に殺される事はできても、貴女を殺す事はおろか、貴女を死なせることすらできないというのに。」」」
三途の川からベルの変化したゲートを通る間際、リリに問いかけた言葉。
それを思い出しながら再生した指先をペロリと舐め、目を伏せた。
「「「にしても・・・この期に及んで安い挑発を忘れないとは健気な・・・」」」
トリニティーを三者共同と願っているのだろう。
だが、トリニティーとは三者一体。
もともと何の資質も霊力もないベルが、あらゆる偶然の積み重ねとはいえ神器たる叢雲剣と妖花アルラウネを押
さえて12時間以上持ったこと自体が僥倖以外何者でもない。
もはやベルという個人の意識は完全に消失している。
厳密な意味では、叢雲剣・妖花アルラウネですら本来のものではなくなっているのだ。
三者が融合し新たなるひとつの人格を形成しているのだ。
館の中心の御柱。それを囲う池。
その岸に根を下ろし、どれだけ足っただろうか?
すでに根は張り巡らされ、葦の生える範囲は館を出て学校敷地内を満たそうとしている。
校舎を包む紅蓮の炎にすらその葉一枚焦げ付かせることなく広がっていった。
上一中敷地。それが今回用意された『祭壇』の範囲でもある。
礼法に依らず、アッシュの力によって無理やり引き上げられた為、異界と現世の歪は黒い雷となってあたりに降り注ぐ。
全てを無と化す雷は、祭壇たる上一中を残しやがては全てを消失させるだろう。
心地よく響く稲妻の音をさえぎるようにベルの音が葦を揺らして響き渡った。
その音は破魔の鈴の音。
「「「これはこれは、あらゆる『魔』の属性を持った者にはたまるまい。さて、牙の主はこれを機に真の神保兵となれた
かな?」」」
今、天保は『魔』の属性を持つ牙の主となっている。
だが、敖遊の極地にあって神保兵を内在させている。
それだけでも十分な力であろうが、この破魔の鈴の音によって『魔』のからが消失したとき。
それは押さえ込んでいた殻が割れるかのようなものだ。
聖も魔もない純然たる神の力が解放されるだろう。
邪神・魔人・悪魔・魔女、そして使命を帯し者。
あらゆるものが混在し、この地に集っている。
「「「これぞまさに敖遊の祭祀。急いて急いて来ませ。」」」
ベルは満ち足りた表情でその刻を待つ。
礼司を見つけたにゃ!
ボクは立ち並ぶ家の屋根の上にいたにゃ。道路を走っていく礼司を見つけた。
ボクの霊感レーダーは性能がいい!
ボクは塀の上に飛び降りて礼司を追った。しかし礼司はボクに気がついていない。
「(カラン!)礼司ー!!!!!!!!」
ボクは叫んだ。そうしたら口にくわえていた物を落としてしまった。すぐ拾うからいいにゃ。
ボクの声に礼司が立ち止まる。こっちに来る。
ボクは塀から降りて、アスファルトの上に落ちた物をまたくわえたにゃ。
礼司の鞭にゃ。礼司のオーラが注がれていないので棒状になっている。
近寄ってきた礼司にボクは後ろ足で立って黒の棒を渡したにゃ。
「礼司!腹のキズが無いにゃん!それはもしかしてラスチーが?」
礼司は重くうなずいた。
「そうか。ラスチーは礼司を助けてまた死んだかにゃ。
それに比べてボクは礼司にあやまらないといけないにゃ!ごめんにゃしゃい!
霊鏡を誰かに奪われたにゃ。
鬼からはうまく逃げていたのに突然気を失ったにゃ。痺れたにゃ。訳がわからないにゃ。
気がついたら霊鏡は無くなっていたにゃ!
すまん。ほんとにすまにゃい!」
ボクは礼司に土下座したにゃ。世界でも土下座する猫は他にいにゃいにゃ・・・
「イタタ」
体を動かすと痛いにゃ。ぶったり殴られたりしたみたいに全身が痛いにゃん。ふしぎにゃん。
「ひとりぼっちだったので、もとのマンションに戻ったにゃ。
そしたら礼司の鞭がマンションの庭の芝生に落ちていたにゃ。
せめてこれを礼司に渡そうと思って捜したにゃ!渡せてよかったにゃん。丸腰じゃ戦えにゃいからにゃ!」
ボクは学校の方角を見たにゃ。
とんでもない魔気を撒き散らす異界の神殿が見えたにゃ。おそらくは相模国造の屋敷にゃ。
「急ごう礼司!・・・・・元気出すにゃ!ラスチーリアは一部分が残っていれば再生するにゃ!
戦場である学校に行けば絶対会えるにゃ。多分」
校門付近でウルトラマンジョジョがヤマトヌメエビ獣人バルタンをフォールしていた頃、
上一中グラウンドに浮上した相模国造屋敷外壁では・・・
ハムスター獣人トットコの開けた穴にムアコックが入ろうとしていた。
そこをアルマが襲撃をかけた。
>アルマ
>「我、焔の矢を射て、すべての不義を貫かん----サラマンドラ」
>手の平から音も無く打ち出された炎の矢はムアコック目掛けて疾走した。
火炎矢の照らす光に、鋭敏な獣人が気がついた。ムアコックより一回り小さな獣人が。だがそれでも巨体だ。
緑色に赤や黄色の斑点模様の体色のカエルの怪人。
ムアコックをかばい弾道上に立ちはだかると、カエル獣人は口から水飛沫を噴霧した。
アルマの矢を消し飛ばす。
「ムアコック陛下の御命を狙うとは、うつけもの!」
カエル獣人は伸びる舌を高速で発射した。
アルマの首に巻きつく。
カエル獣人は身を反らせた。
アルマは舌に巻き取られて百メートル以上は宙を舞った。グラウンドの片隅のサッカーゴールポストの支柱に激突。
「陛下、ここはわたくしめにお任せあれゲコゲコ」
―名前・ ゲヒーガ
―性別・ オス
―年齢・ 約一歳
―容姿・ ベルツノガエル。
―備考・ ペットショップで販売される南米産カエルの中で最もポピュラー。飼育しやすい。頭骨が特に大きなカエル。
※水無月は間合いをとっているので、ゲヒーガは彼女と彼女の使い魔には気がついていない。
「藤田礼司君」
礼司とギコが声に振りむいた。後にふかわりょうが立っていた。
ところが奇妙な身なりをしている。大河ドラマに出てきそうな公家風の衣装であった。
束帯を纏い、頭には垂纓冠を被り、靴は浅履、手には笏を立てて持っていた。陰陽師の正装姿である。
「今だけ会う事が出来る。三途の川を支配する渡り守の監視の目が途絶えた」
>ゼフィール
>拍手をゼフィールは打った。 霧の濃度が増す。
>うっすらと見えていた両対岸も見えない。視界は一メートルも無いだろう。
>乙事主
>しかも視界だけではない。音も聞こえない。無音化の結界の霧か?
>「ゼフィールめ。欲情しておるな」
「肉体は精神を縛していると言われるが本当だね。これほど霊目霊耳が冴え渡ったのは初めてだ。
私の本体は病院で手術中なんだ」
ふかわはくすりと自嘲した。
「いやはや、どうしても引っ込んでいられない。子供達が命を賭けて戦っているのに。
けれども私の立場が赦してくれない。だからせめてこれを」
ふかわは笏を懐にしまうと両手で印を何度も結んだ。聞き取れない小声で早口で呪を唱えた。
「ふん!」
気合を込めた。同時に礼司の持つ黒の棒が青白く光り始めた。
「源三位頼政公が鵺退治の褒美として二条天皇より賜った土岐の名刀、師子王ノ大太刀(ししおうノおおだち)、
その神気を付与した。鞭にしてごらん。この魔具は鞭であり、しかも剣になった。伸縮自在の如意の剣だ。
私は敖遊の儀に関与はしていない。友人の藤田君に贈り物をあげただけだ。としておいてくれ」
ふかわは微笑んだ。
「君に汚れた格好は似合わない。これはおまけです」
ふかわはまた印を結んだ。
忽ち礼司の血みどろのズボンもソックスも靴も下着も浄化された。クリーニングに出したかのようだ。
礼司がきれいになったズボンに目をやり喜び、再び顔を上げた時には、ふかわりょうの姿は消えていた。
全くの同時刻
「華山理利さん」
校門前で宝鈴を鳴らすリリの背後で声がした。聞きなれた声にリリは振りむいた。
陰陽師の正装のふかわりょうが立っていた。
<位置関係整理>
校門付近
校門を挟んで外側、学校の敷地外の道路上=ジョジョ対バルタン
校門を挟んで内側、学校の敷地内=リリと実装石アリア
グラウンド=水無月、ラスティーリア。アマナ対ゲヒーガ
グラウンド相模国造屋敷外壁某所=黒鋭童子、屑船
相模国造屋敷内部=ムアコック
内部奥=天保
内部深奥=ベル
リリの鳴らした鈴は上湘南の空に響き、魑魅魍魎どもを退散させていく。
けれども低級霊にしか効き目が無いようだ。
「その鈴でどうにかできる段階ではないよ」
ふかわは愛しそうにリリを見た。
「はじめて会った時はハイハイしている赤ちゃんタレントだったのに、大きくなった」
ふかわは掲げていた笏を小袖の中に納めると両手で印を結んだ。陰陽道の神句を詠唱した。
「ふん!」
リリの手にしていた鈴が緋色に変わり眩い光を放ち出した。
「私も君達と共に戦いたかったが禁忌が私を赦さない。卑怯な私に出来るのはせめてこれぐらい。
天鈿女命(アメノウズメノミコト)の招霊(オガタマ)の神楽鈴、その霊気を宿した。
リリの破魔の術を飛躍的に強める。術を放ったリリが驚く程に。
宝鈴の音は魔を討つだけではなく、リリの身も心も清ませ弾ませるだろう。
簡単に生きることを諦観してはいけない。命を悟るには君は若すぎる」
言い残すとリリの見ている前でふかわりょうの生霊は消えていった。
>ジョジョ
>エビの両腕は極められたまま、受け身も取れずに首からアスファルトに叩き付けられる。
>そして、ジョジョはそのままフォール。
「フォ…フォフォフォォ!」
地面にめり込んだバルタンは嘲笑った。
足に反動をつけて揺さぶり、ジョジョのフォールを振りほどいた。
「チ、チ、チ、チ!」
バルタンはハサミを振った。
恐らく人間なら指を一本、顔の前に立てて左右に振る動作だ。
「オマエは三つ考え違いをしている。
一つ!
俺はエビ!甲殻類だ!頑丈な俺に打撃は効かない!
二つ!
俺はほかの獣人とは違う!そう言っただろう?見ろ!俺の胸に刻まれた悪魔の数字記号を!」
バルタンの右胸には意味不明な英数字があった。AIm3OH.P0w。
ただのでたらめな羅列に見えるが。
「悪魔の子ダミアンに悪魔の数字666が刻まれている様に!これはウガリット神の契約の文字!AIm3OH.P0w!
この魔記号のある獣人は、他の雑魚の獣人とは違うのだ!上位の獣人、獣人将軍だ!
三つ!
オマエはムアコック陛下の守護神モート大神の威力を理解していない。
特撮のバルタン星人など比較にならない力が俺には与えられている!
フォフォフォフォフォフォフォフォフォフォフォ!」
獣人将軍バルタンは両手のハサミから破壊光弾をジョジョに発射した。その威力はスペシウム光線と同格だ!
―名前・ バルタン
―性別・ オス
―年齢・ 3ヶ月齢
―髪色・ 体毛無し
―瞳色・ ゴールド
―容姿・ バルタン星人に似ているが、パワード版バルタン星人にそっくり気味
ttp://www.geocities.jp/monstersempire/monster/powerd.html(パワードバルタン画像)
しかしバルタン星人との因果関係は無い。ムアコック(モロー脳)は配下にふざけた名前をつける為
この名前であるにすぎない。
―武器・ 赤色凍結光線、破壊光弾、光波バリヤ、スペルゲン反射板ぽいもの。モート神の魔力。
>71
>「フォ…フォフォフォォ!」
エビの余裕が現れるような笑い声。
脊椎を破壊するように投げたのだが、エビにとってはダメージがなかった。
やはり、無脊椎動物だからなのだろうか。
エビは勢いを付けて足を振り、ジョジョのフォールから逃れる。
>「チ、チ、チ、チ!」
間合いを取り直した二人。
エビは鋏を振って鳴き声を上げている。
エビの習性として、敵に対する威嚇行為なのだろう。
だが、何となくだが僅かに苛立つ。
>「オマエは三つ考え違いをしている。
>一つ!
>俺はエビ!甲殻類だ!頑丈な俺に打撃は効かない!
>二つ!
>俺はほかの獣人とは違う!そう言っただろう?見ろ!俺の胸に刻まれた悪魔の数字記号を!」
エビは胸に刻みこまれた英数字を自慢気に話す。ジョジョにはただの英数字の羅列にしか見えない。
何かしらの力があるようにも見えない。
>「悪魔の子ダミアンに悪魔の数字666が刻まれている様に!これはウガリット神の契約の文字!AIm3OH.P0w!
>省略
>フォフォフォフォフォフォフォフォフォフォフォ!」
ジョジョは思った。
絶対に適当に付けられただろ、と。
「一つ目と二つ目は分かりますが、三つ目だけは間違いですね。
バルタン星人の能力は全宇宙の中でも最強の部類に入ります。
地球に存在する上級の神霊にも決して遅れを取ることはない」
エビの鋏から強力な破壊弾が放たれた。
その威力はとても凄まじいものがある。
ジョジョは右腕だけを構えると、大きく振り被って、裏拳を放つように破壊弾を跳ね返した。
「言い忘れていましたが、あなたの崇拝する神様。
下級神ですよ」
余裕の表情のまま、ジョジョは告げた。
礼司とギコの前に上位獣人のウコッケイ怪人カーネルが舞い降りてきた。
「霊具の霊気がするコケーッコ!」
礼司の三倍はある体格の凶鳥の魔人だ。着地の羽ばたきでギコは吹き飛んだ。
鋭い嘴でカーネルは礼司を突いた。
礼司の心臓をめがけて。
>『第二の霊玉など興味は無い。俺が求めるのは自由だ。
>自由なんだ!
>屑船!
>俺を裏切らないのならば、俺はお前に協力しよう・・・』
「裏切り?そんな…恐れ高い。」
そう呟くと私は戸田君を強く締め上げていたのを緩ませました。
締め後には私と同じ黒い入れ墨が浮かび上がります。…これで牙の主との関係は絶たれました。
そして私は次の瞬間戸田君の口内に入り込み、胃の中へ私を飲ませましたます。
―グチャッ!グガガガッ!
猛スピードで私の身は戸田君に流れ込みました。勿論霊玉も一緒に…
戸田君の身に吐き気と苦しみが襲います。
荒れて、荒れて、荒れて。
今までに無いほどの大量の力が自分の身に入ってきた時、人はとてつもない苦しみに襲われるものです。
しかし、その後にあるのは強者の素敵な甘い蜜。
暫くとてつもない苦しみは続き、そして、戸田君の中に完璧に入り込んだ私は胃の中から話しかけます。
『こんにちわ…そしてよろしく、戸田君…。
契約は終了しました。なーに安心してください…私は此処にいてたまに貴方が望んだ力を貸したりするだけですから。
今から貴方は自由です。
あ、そうそう…私の新しい名前を教え忘れてましたね。
私の名前は『ベルゼブブ』。
素敵な名前でしょ?全てを食い尽くす暴食の悪魔です。
ま、そんなのどうでもいいですがね。
さーて!前を見ましょう!戸田君。
そして軽快にタップダンスでもしながらご一緒に歩き出しましょう!
貴方は籠から出た自由な渡り鳥!渡り鳥様、まずは何をおやりになられるのです?』
そう明るく言う私。
胃の中に入った黒い霊玉が静かに黒い輝きを相変わらず帯びていらっしゃります。
++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++
誰もいなくなった音楽室。
そこは最早誰の歌声も、楽器の音も聞こえない。
そんな中、一つの鍵が開いた鳥かごがユラユラと揺らめいていた。
食い残した餌の虫、そして青い羽根。
それは自由の証とも見えたが、
何者かに襲われたのかのようにも見える。
食い残しの虫が静かに動き出した。
えっちらおっちら…
ゆっくりと動く虫。
そして次の瞬間虫は、一瞬止まったかと思うと、
その虫は死んだ。
「ぶひいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいい!」
降伏勧告をする竜巻モートに対峙していた天保の背後をムアコックが襲った。
>天保
>「どう喚こうが、描く天下の絵図に貴様はいない。邪魔だてするなら容赦はせぬぞ?」
>剣の刃を威嚇するように向ける。それが目の前にいる『何か』に対して虚勢になるか、自信になるかは相手次第。
ムアコックは大の字に手足を広げ、時速300キロで天保に体当たりした。
ムアコックの腹に激突され天保光は吹っ飛んだ。
衝撃は凄まじく、天保は屋敷の壁を何層も突き破った。30メートルは飛んだだろう。
天保に当たった反動でその場に足をついたムアコックは、疾走して倒れ伏した天保を3追った。
呻く天保にムアコックは馬乗りになった。
モートの魔力で悪魔化したムアコックの体重は20トンを擁した。重量が天保を攻める。
巨体のムアコックの臀部に圧し掛かられ、天保はムアコックの股間下に顔を出しているだけにすぎない。
ムアコックは天保光の顔面に棘だらけとなった拳を叩きこんだ。目にも止まらぬ速さで殴った。
一発、二発、三発、四発。
五発目でやめた。
ムアコックは周囲に気がついた為だ。
「ぶほほほ。妖剣の女王ベル・カーマン?だよな」
そこは相模国造の深部の大広間、邪神を崇める祭壇とでもいった様な場所だった。
そこにベルがいた。
>ギコ
>「礼司ー!!!!!!!!」
「ギコ!」
ギコが来てくれた。僕の黒のムチまで持って。ギコには重かったろうに。
「ギコは無事だったんだね!よかった。体中が痛い?でも、それくらいならよかったじゃないか!」
僕はギコを抱きかかえた。涙がこぼれそうになるのをこらえた。ギコ。よかった。
抱いたギコの命のぬくもりを感じたら、ラスティーリアの安否がとっても気になって……
>「急ごう礼司!・・・・・元気出すにゃ!ラスチーリアは一部分が残っていれば再生するにゃ!
>戦場である学校に行けば絶対会えるにゃ。多分」
「うん」
ありがとうギコ。
僕はギコを地面に降ろした。ギコのほうが僕より足が速い。
学校に向かってふたりで走り出そうとした。でも声が後でした。
>ふかわさん
>「藤田礼司君」
「ふかわさん!……あ」
僕のオーラはふかわさんの存在感がおかしいのにすぐに気がついた。衣装も変わっている。
霊体!
ふかわさんは死んでしまったのか!?
目の前が真っ暗になりかけたけれども、そうではなかった。
ふかわさんは幽体離脱した霊魂であると自分を言った。
ほっとしたけれど……みんな命を危険にさらしている。
たくさんの犠牲者も出ている。
こんな祭礼は二度とあってはいけない。
僕の心にある考えが生まれた。
僕が霊宝所有者になって、こんな悲しい世界を、もっといい世界に変えられないだろうか……
>「ふん!」
>「源三位頼政公が鵺退治の褒美として二条天皇より賜った土岐の名刀、師子王ノ大太刀(ししおうノおおだち)、
>その神気を付与した。鞭にしてごらん」
黒のムチが変わった。
黒色から青に。
「はい」
僕はムチにオーラを込めた。今まではオーラを受けて真紅に輝いた。それがきらめく青の光を放つ。
その青さは南の海のよう。美しいコバルトブルー。
ムチの断面は丸いもの。それが日本刀の刃のように細く平べったい。片側がきらきらとかがやく刃になっている。
きれい。
>「君に汚れた格好は似合わない。これはおまけです」
>忽ち礼司の血みどろのズボンもソックスも靴も下着も浄化された。クリーニングに出したかのようだ。
べたつく汚れが光の粒に変わって消えていく。できれば着替えたいと思っていたぐらいだった。うれしい。
「ありがとう。ふかわさ…… ふかわさん!?」
いない。
消えてしまった。
肉体に帰ったんだ。きっとそうだ。
どうか、手術が成功しますように。
ふかわさんのために僕は祈った。
「進もう!ギコ」
僕らは走り出した。
学校に近づくにつれ、近所に住んでいる人たちが道にあふれでている。
あんな異常なものが学校に突然あらわれたら当然だ。
……と、思ったけれど違った。
野次馬の人たちの目は、学校そばのマンションのほうを見ている。
僕らがカウボーイの魔術師と戦ったあのマンションだ。
火は見えないけれども屋上から煙がたなびいている。
距離的には学校のほうが近いのに、そっちを見る人はだれもいない。
結界によって普通の人には、あの恐ろしい建物が見えないんだ。
僕らはマンションへむかう人の波に逆らって、学校にむかった。
カウボーイはどうしたか気になったけれど、学校を優先させた。
アッシュたちに会えるはずだ。
空間転移の失敗でマンションに僕らが飛んでしまったのだから。
みんなは無事か。僕の心は不安と、はやる気持ちに比べてもどかしい僕の駆け足の遅さにいらいらしていた。
近道しようと路地に入ったときだった。
>カーネル
>「霊具の霊気がするコケーッコ!」
ゴウっと風が起きた。ギコがころころと転がされる。
一瞬だけ目を閉じた僕の前に、空から大きな鶏もどきがやってきた。
また魔獣が上湘南に引き寄せられたのか?
鶏怪人は僕の裸の胸を狙ってくちばしを当てに来た。
鋭いくちばしが僕の胸に!
武士と武士の戦いを見たことがある。
テレビで、だけど。
刀を鞘から稲妻のような速さで抜く。抜くのと斬るのが同時。勝敗はあっという間。
まさにそれだった。
僕は黒のムチを刀にしたのと、それで斬りかかったのを同時にした。
体がそう動いた。
胸を狙う鶏のくちばしを僕は上体をそらしながら避けつつ、剣のムチで下から斬りあげた。
ムチの剣を握った手にずっしりと重みがかかり、かかったかと感じる間もなく消えた。
僕は鶏怪人の首を斬りおとした。
ゴトン、と鶏の首が落ちた。
礼司の師子王剣によって切断されたカーネルの首は地面に落ちて一声鳴いた。
「コケッ!」
カーネルは死んだ。
モローのコーンフレークの効力と、モートの魔力が抜けて、カーネルの首は小さなウコッケイの首に戻った。
胴体はもんどり後に倒れ、これもまたウコッケイの体に戻った。
ボクは鳥の魔物の風にあおられて道路脇の雨水排水溝に落ちたにゃ。ドブの水が枯れていて助かった。
ボクはすぐに跳ね起きたにゃ。
礼司があぶない!
しかしボクが見たのは礼司の勇姿だったにゃ!
「す、すごいにゃん」
ボクはU字溝から顔を出して礼司の戦いぶりを見た。
勝敗は一瞬。空から降りてきた鳥の魔物は礼司に一斬りにされたにゃ。
ボクは礼司に駆け寄った。
礼司も鞭剣の切れ味に興奮している。
「さすがは陰陽師ふかわりょう。ただのヘルメット頭なだけではにゃいにゃ!」
魔物は首と胴体に分かれて礼司の足元に転がっているにゃ。正体は烏骨鶏にゃ。
ちょーっと食欲が刺激されたけど、やめとくにゃ。
「学校に急ごう!なにも校門から入る決まりはにゃいにゃ!こっちにゃ!」
ボクは礼司を秘密のルートに誘ったにゃ。単に人の家の庭を進むだけだけどにゃ。
路地から住宅に踏み込んで、人の家の庭を何軒か越えて、学校の敷地を囲むフェンスまで来たにゃ。
フェンスの下には金網が開いている穴がある。ボクはそこをくぐった。礼司はフェンスをよじ登ればいいにゃ。
「おわわ」
フェンス一つ越えただけで霊気が全然違うにゃ。妖気が満ちている。
そびえたつ魔の神殿は目の回る様な邪気を放射している。気持ちをしっかり持たないと失神しそうにゃ。
「礼司!あれを!」
神殿のそばに一匹の鬼がいたにゃ。下半身を獣毛に覆われた修羅!
「マンションで霊鏡を持ったボクを追い回した奴にゃ!あいつの手を見ろ礼司!左手!霊鏡にゃ!」
>ふかわ当主
鈴を鳴らし終えた理利は膝をついた。胸を押さえて浅い息を繰りかえす。
対牙の主の呪いという話だったが、一部の使徒にも有効だったようだ。
だが、代替わりした天保にはどうだろう。
効果を試すためにももう一度だ。立ち上がり、もう一度鈴を鳴らそうとする。
>「華山理利さん」
>校門前で宝鈴を鳴らすリリの背後で声がした。聞きなれた声にリリは振りむいた。
「ふかわ当主!」
>「その鈴でどうにかできる段階ではないよ」
ふかわのまなざしは慈愛にみちていたが、理利は今にも泣き出しそうだった。
期待に応えられなかった事が、身の置き所が無いほど情けない。だがそれ以上に、ふかわの身が案じられた。
理利がふかわの生霊に逢ったのは何もこれが初めてではない。
だが直感していた。今日、ふかわの身に生死に関わるようなことが起きたのだと。
>「はじめて会った時はハイハイしている赤ちゃんタレントだったのに、大きくなった」
理利はふっと泣き笑いの表情を浮かべた。
だがそれも、ふかわが陰を結び陰陽道の神句を詠唱する前までだった。意図に気づいた理利は血相を変えた。
「おやめください御当主!お身体に障ります!」
>「ふん!」
白かったベルが赤く変わり、眩い光を放ち始める。
理利は思わず身震いした。さっきまでの鈴とは格が違う。
「ああ・・・御当主、これは・・・」
>「私も君達と共に戦いたかったが禁忌が私を赦さない。卑怯な私に出来るのはせめてこれぐらい。
理利は何度もかぶりを振った。ふかわが卑怯など、とんでもない話だ。
>天鈿女命(アメノウズメノミコト)の招霊(オガタマ)の神楽鈴、その霊気を宿した。
>リリの破魔の術を飛躍的に強める。術を放ったリリが驚く程に。
>宝鈴の音は魔を討つだけではなく、リリの身も心も清ませ弾ませるだろう。
「御当主・・・・・・ありがとうございます」
胸がいっぱいで、気のきいた言葉一つ出なかった。
天鈿女命とはまた意味深だ。心を読まれているのかもしれないが、ふかわになら構わない。
自らの命が危ないというのに、それでも助けに来たのだと知っていた。
敬愛するふかわの回復を、遠く離れた地でただ祈るしかないのが苦しい。
そもそも、稀代の陰陽師であるふかわを害せることができる存在は限られている。
今回ふかわの身に降りかかった災いも、藤田たちに力を貸したことと全く無関係のはずが無い。
>簡単に生きることを諦観してはいけない。命を悟るには君は若すぎる」
返す言葉も無い。
ふかわの生霊が去っていくのを見送りながら、理利は深く一礼した。
「誰ですか?」
黙って事の成り行きを見守っていたアリアがおそるおそる尋ねてきた。理利は振り向いた。
「日の本に無くてはならない、尊きお方よ。
御身の危険も顧みず、敖遊の祭祀に巻き込まれた子供たちのためにお出ましになって下さったの。さ、行くわよ!」
赤くかがやく宝鈴を胸に抱き、邪魔な葦を掻き分けながら理利は思いをはせた。
藤田は無事肉体に戻れたのだろうか。ラスティーリアは。
レテ川のほとりで見かけたラスティーリアは首だけだった。
首しかなかったのだから、胴体はまだ生きているに違いない。二人とも水無月と合流できればいいが。
彼らのことは水無月に任せてある。冷静な彼女ならきっと暴走を押さえてくれるだろう。
蔓城の姿は昼からずっと見えない。
霧津と同時に消えたところをみると、もしかしたら救出に向かったのかもしれない。そうであって欲しい。
アッシュの肉体は燃えさかる理科室の中。手の出しようがない。
ギルバはきっと地割れの中だ。霊脈の元へ走ってくれたに違いない。
酒呑童子が待ち構えているかもしれないが、ギルバならうまくやるだろう。
公安――公安特殊人工魔道兵器部隊の出方も気になる。
やらなければならないことは山積みなのに、身が一つしかないのが歯痒い。
でも最優先しなくてはならないのは、あの黒い御柱からほとばしる稲妻だ。
あれは危険だ。全て消しさる、存在してはならない光だ。
このままでは街どころか全て消滅してしまう。だが、霊宝を揃えないと鎮めることは難しい。
結局ゼフィールやベルの望みどおり踊らされるのは業腹だが・・・目を瞑ろう。
相模国造の屋敷内に入ろうとした理利は、異形の兵たちに行く手を遮られた。
牙の使徒ではない。誰の手のものだろうか。いずれにせよ露払い役は私らしい。
攻撃をかわしながら左手を一閃させると、あたり一面が凍りついた。巻き込まれた数体が物言わぬ氷柱と化す。
だが、氷魔法は、あくまで時間稼ぎだ。
宝鈴に額を押し当て、理利は慎重に祓う相手を選別した。
鈴の音は無差別に魔をはらう。だが、全ての魔が敵というわけではない。
祓うのは――――上空の魔から力を与えられ、人や街を荒らす獣。
邪気。
上一中の子供たちに害なそうとする存在。
だが、攻撃をよけた弾みで魔人の爪が腕を掠めた時、理利の表情が変わった。
痛ましげに魔獣達を見つめる。
「またなの?また・・・一体誰が・・・」
魔獣達は工藤たちと同じだった。無理やり今の姿に作り変えられている。
「ごめんね。――――今、楽にしてあげるわ」
理利は高く宝鈴を掲げた。
先程とは比べ物にならないほど澄んだ破魔の音色が高らかに響く。
ひとふりで、目の前にいた下級魔獣達が消滅した。
結界の外で跳梁跋扈するものたちも、下級霊ならば影響を受けただろう。
身体に負担が全く無い訳ではないが、宝鈴が力を貸してくれる。
>ギコさん、藤田君
さらに奥を目指そうとしたところで、少し舌足らずの可愛い声が聞こえてきた。ギコだ。
>「マンションで霊鏡を持ったボクを追い回した奴にゃ!あいつの手を見ろ礼司!左手!霊鏡にゃ!」
「遅い!かよわい私に露払いさせるなんて!!どこで油売ってたの!!」
理利は藤田を睨みつけた。この際自分のことは完全に棚上げだ。
戸田はさっき見かけた時とは気配が違う。姿も多少変わったようだ。
不確定要素が大きいが、手を貸す気は無い。
藤田が、自分の力の象徴を自分の力で取り戻せないのではお話にならない。
「藤田君、レテの川辺での出来事を覚えている?自分の持ち物くらい自分で何とかできるわよね?」
ゼフィールは忘却の川だと称していた。理利は偶然記憶を取り戻したが、藤田はどうだろうか。
>さてリリよ。何故全てを奪わない?
>冥府ならばともかく現世に戻れば・・・わかっているのか?
ふと、現世に戻る寸前ベルに問い掛けられた言葉が脳裏をよぎる。
ベルは気づいていないのだろうか。藤田は殺すことに躊躇しない。たとえ相手が私でもだ。
理利は戸田の動きを警戒しつつ、奥へ駆けだすタイミングを密かにはかっていた。
>>68 >ムアコックをかばい弾道上に立ちはだかると、カエル獣人は口から水飛沫を噴霧した。
アマナの矢を消し飛ばす。
>カエル獣人は伸びる舌を高速で発射した。
アマナの首に巻きつく。
「え---」
突然目の前に現れた獣人により矢は消され、そして、間を入れずに首に舌が巻きつく。
そして、間髪もいれずに----
>カエル獣人は身を反らせた。
アマナは舌に巻き取られて百メートル以上は宙を舞った。
アマナを空高く持ち上げ、叩きつけようとする。
「---なめるなぁ!!!」
「ゴシカァン!!!」
>グラウンドの片隅のサッカーゴールポストの支柱に激突。
「フーフー------ありがとう、助かりましたヘイトレット」
惨めに折れ曲がった支柱には巨人にお姫様抱っこされたアマナの姿があった。
この巨人もアマナのレギオンの一群、ヘイトレット(憎悪)
ギルトやフロウドのような目立った属性は存在しないが、怪力と体術においてはトップクラスのレギオンだ(しかし、魔力消費量がハンパないので一体のみしか召還できないのが玉に瑕)。
そして、このヘイトレットを支柱に衝突する前に召還し、衝撃を防いだのだ。
「ウボァァァァァ!!!」
轟くように叫んだヘイトレットはゲヒーガの舌を千切れんばかりに引っ張り、ゲヒーガを自分らの目の前に跪かせた。
あまりの握力にアマナの首を絞めてした舌は外れ、赤紫色に腫れあがる。
「流石はヘイトレット----素晴らしいです。-----さて-----」
ヘイトレットを褒めつつ、肩へ移動しゲヒーガを見下ろす。
「名前を聞くのが面倒です。「ケロさん」と呼ばせてもらいます。
さて----ケロさん、うちの校門をあのようにしたのは----あなた達ですね
もちろん---正直に答えれば緩めますし---嘘を言えば----」
冷酷な表情でゲヒーガを睨み下ろす。
突然の轟音。破られる壁。
そこから飛び出してきたのは天保だった。
直後、それを追うように飛び込み、天保の上に圧し掛かったのはムアコック。
一方的な攻撃を目の当たりにしながらも、ベルの表情は満ち足りたまま変わらない。
>「ぶほほほ。妖剣の女王ベル・カーマン?だよな」
その問いかけに目を見開き笑みを浮かべて答えを返す。
「「「君はタバコに火をつけるライターと、家に火をつけるライターの名前を区別するのかな?
無意味な装飾は物事の本質を無為に雑多にするだけだぞ。
叢雲剣と妖花アルラウネ。そしてベル・T・カーマンである。トリニティーと呼ぶのが最も本質がつかめる呼び名であろう。
それにしてもずいぶんと姿を変えたな、モロー博士。」」」
叢雲剣を地面に突き立て、一歩も動かぬまま返答をする。
ムアコックではなく、モロー博士、と。
一歩も動かぬのではなく、すでに根を張り、儀式の一部と化しているので動けないだけなのだが。
そこへ高らかに鳴り響く宝鈴の音。
先ほどの破魔の音の数倍の威力を持って魔の属性を持つものたちを打ち据えるだろう。
それは『牙の主』という魔の属性の殻を破り、天保が真の神保兵となることを意味するのでもあるが・・・。
「「「悪魔化した身にはこの音は余計堪えるだろう。
モロー博士よ、霊具を揃えず未だ荒魂に転じていない今、ただの儀式プログラムの一つに過ぎない私達に用はあるまい。
それより注意すべきこと、成す事は多いぞ?」」」
神気の溢れる学校内において、正確に広域知覚を持って宙に目をやった。
ゼフィールはアッシュの腹から立ち上がった。
営みの間、三途の川の上にあげられたアッシュは、果てて意識を失っている。
可愛らしい寝息すら立てている。
眠るアッシュを見下ろしながら、ゼフィールは白い指先を舐めた。
両手の指を一本一本、舌できれいに舐めとると、へその下に両手をあてた。
さする。
彼女は笑みを浮かべた。
アッシュを十分に含めたから。
白霧に二人の服は溶けて消えて、三途の川面は揺れる絹の床となった二人を支えた。
濃密なエクトプラズムは空ろな魂に肉体の感触を与えていた。
アッシュは途中からは自分が霊体なのか、肉の体を持った生者なのか、わからなかっただろう。
ゼフィールの指や唇、波打つ腹や反る背中、踊る髪、熱い息、したたる蜜はアッシュを
とろかし狂わせ野獣にした。幾度も幾度も押し寄せる快感の波に自我を保てはしなかった。
ゼフィールは拍手を一つ打った。
霧の濃度が下がる。
乙事主は冥府の岸に戻り、伏せている。
「あきれている?」
乙事主は不満気だ。
ゼフィールは腕を組んで、いかにも心外だ、という表情をつくって抗議した。
「でも欲情だけでしているわけではないよ。ハットゥシリに出来る事なら僕にだって……
ん?
ああ、どうも腕に何か当たると思ったら、胸をつくったままだった」
ゼフィールは乳房に手を当てて押した。胸が平らになる。
男性になったゼフィールはくやしそうに爪を噛んだ。
「リリは誘惑する前に逃げられちゃったよ」
ゼフィールは下を見た。
「突いてやろうと思ったのに」
乙事主が更に不機嫌そうだ。
ゼフィールは舌を出して肩をすくめた。
「それはまたあとででいいか。機会はすぐに来るもんね」
拍手をもう一度打った。
霧が集まり黒く光るゼフィールの服となった。
「アッシュよ、汝は現世に戻るがいい。僕と契る為にきみはここに来た。もう役目はすんだよ。忘却の川をお渡り」
眠るアッシュをゼフィールは蹴った。
アッシュは現世側の岸まで勢いよく滑って消えた。
濃霧を晴らしたゼフィールは現世の様子を霊視するために膝をついた。
三途の川を覗き込む。
ゼフィールの目にはそこに地上の有様が見えた。
途端に笑い転げる。
「府川め!あいつ、僕が乱れている間に!
そのぐらいのサポートは許してやるかな。直接介入ではないからなあ。平気だろう。
あ、なんだこれ。霊鏡の器に擬似霊玉。二つ揃えたか、黒鋭が厄介だな。所詮は不完全な偽者だけど」
ゼフィールは胡坐をかいて地上を観察した。
「今宵の敖遊の儀は異例尽くしだ」
ゼフィールは微笑んだ。
「ふーん。ならば望む名で呼ぼう。聞こえはしまいが。
トリニティよ、儀式の囚われ人よ、大蛇に縛られし者よ。
最後の勝者に成りて万象の理運を変転せしめるは、ふふ、この僕さ」
>ジョジョ
>「言い忘れていましたが、あなたの崇拝する神様。
>下級神ですよ」
「フォオオオオオオオ!」
バルタンが激怒した。
「余裕のつもりか!自分の手を見てみろ!」
バルタンの破壊光弾を裏拳で弾き飛ばしたジョジョの右腕はひどい火傷を負っていた。
「偉大なる凶風モート神の真価を知らないのだ!」
ハサミから真っ赤な光線をバルタンは発射した。
毒々しい赤い光は凍結光線だ。
当然のことジョジョは避けるだろう。
しかし避けた先にもう一頭、バルタンがいた。
「分身の術だ」
しかも幻ではない実体化した分身。分身のバルタンは赤色凍結光線をジョジョに浴びせた。
本体のバルタンが突進してくる。
右手のハサミがジョジョの顔面を挟んだ。
「粉砕!」
>87
>「フォオオオオオオオ!」
自身の崇拝する神を侮辱されたのが、余程頭にきたのか、バルタンは怒りの声を上げる。
>「余裕のつもりか!自分の手を見てみろ!」
バルタンの言ったとおり、自分の手を見る。
破壊弾を弾き返した右手は酷い火傷を負っている。
だが、それがどうかしたのだろうか?
あの威力の破壊弾を何の力も込めずに弾き返せば、こうなることは当然だ。
>「偉大なる凶風モート神の真価を知らないのだ!」
「やれやれ……あなたの神様自慢も度が過ぎていますねぇ…
狂信者と言ったところですか」
ジョジョの言葉が言い終わらない内に、バルタンが赤色の光線を放ってくる。
周囲の大気をも凍らせながら進む赤い光。
姿だけでなく能力もバルタン星人に似てるとは。
ジョジョは軽々とそれを避け、お返しの技を放とうと力を腕に送る。
>「分身の術だ」
「なっ?!!」
ジョジョの後ろから声が聞こえる。
恐るべきバルタンの声。
ジョジョが振り向くとバルタンが鋏を構え、冷凍光線を発射。
冷凍光線を、力を送った右腕で抑え込もうとするが、その威力の高さは予想外。
ジョジョの右腕は凍りついてしまう。
ただのエビにこれだけの力を与える神。
たかが下級神と、ジョジョは少し侮り過ぎていたことを後悔した。
分身したバルタンが消えると、死角から本体のバルタンが現れ、ジョジョの顔面を鋏で挟む。
>「粉砕!」
「させるかぁっ!!」
バルタンが力を込めるその瞬間の前に、ジョジョはバルタンの腹部をドロップキックの要領で蹴り飛ばす。
その反動でバルタンの鋏の間合いから逃れたジョジョ。
すぐに立ち上がると、同じくドロップキックによって倒れていたバルタンに向かって走り寄る。
相手に動く暇も与えない程の素早い動きで、バルタンの足を左手で掴むと、空中に放り投げた。
左腕にはまだ力が残っている。
その力は、スペシウムエネルギー。
ジョジョは左腕のエネルギーを丸ノコの形に作り、手裏剣を投げるようにして丸ノコをバルタンに投げた。
「八つ裂き光輪だ!」
>アマナ
>「もちろん---正直に答えれば緩めますし---嘘を言えば----」
ヘイトレットに押さえつけられたゲヒーガは答えた。
「ゲココ!正直に言う!
正直に言えば・・・俺は時間稼ぎよ!
ムアコック皇帝陛下の邪魔をせんとする者を足止めさせるのが、俺の使命!俺の存在理由!存在価値!」
ゲヒーガの皮膚のイボから紫色の煙がもうもうと噴き出しはじめた。
麻痺毒だ。
「妖魔も痺れる魔界の毒だ!」
直撃を受けたヘイトレットがひるむ。その隙にゲヒーガはジャンプした。
体の三分の一が顔のベルツノガエルは、大口をくわっと開けてアマナに喰いかかった。
ゴ、ックン。
アマナを飲み込んだ。
胃酸でたちまちの内に消化されるだろう。
正面に気を取られていてしかも魔を払う音もあってかなり弱りきっている中で、背後からの攻撃には備えられなかった。
まったくの無防備だったために力に抗うことはまったくできずに、壁を貫きかなりの距離を飛ばされたようだ。
かすかに見えるのはなにか重いなにかに殴られていること、本来ならば害成す者が現れたのなら即刻討ち払いそれを排除する。
目の前にいるのはよくよく見れば、家畜の類ではないか。排除など簡単にできようものだがそれは既に遅かった。
……音が聞こえた。二度目の世界越えを果たしたその音は前回とは比べ物にはならないくらいの力を秘め霊玉の防壁を破った。
己が媒体である剣にヒビが入る。それは牙でできており、この二千年間あらゆる攻撃より耐えてきた。
鈴の音色の演奏者も見ず、藤田礼司殺しや果ては宿敵との決着も成してはいない。
配下に人格と知識を遺伝させて生き長らえてきた。滅ぶことを認めぬままに牙として生まれその身も心も剣と化した二千年。
この場をもって敗北という形で締めくくってもいいのではなかろうか?
ただそこにじっとしているベルの姿を見る。あの表情はまだ余に期待を残している。この後に及んで何を期待するものがあるというのだ?
鈴の音二つでもはや器変えさえままならない、虫の息で敗者寸前の余に対して一体なにを…。
柱が、儀式を待ち望む太古の霊たちが唸りをあげる。それは死を認めず、まだ役割が終えていないと言っているように聞こえた。
響く執念という言霊はやがてドス黒い色を持ち、形を成して倒れ伏せている余の前へと現れた。
煙のような暗闇の雲が見下したように前にたたずんでいる。牙は牙でしかないと思っていたが、融合という形で更なる高みへ行くというのか。
「そろそろそこをどいたほうがよいぞ豚。一緒に取り込まれて神の兵となりたいのなら別だがな」
その台詞を言い終えたと同時に、合図となり黒き煙は余を包み込んだ。なにもかもなにもかも覆い尽くされる。
進化の途上を遂げる先は美しき蝶となるか、それとも醜き毒を撒き散らす餓となるのか。
どちらにせよ支配権はこちらにはありそうにないが、最初にやりそうなことといえば予想はできる。
世界を新しく始めるにはまず、いまある世界を消し去らなければならない。この屋敷を除いてすべての地を無に帰す。
いまとなって考えたところでどうにもならない。自分という存在に与えられた仕事はもう眠りにつくことしか許されていないのだから。
【三途の川】
うわ…俺なんにもしてねぇのに死亡かい。
川岸にたたずむ仇名ヤスこと天保光は牙の主に支配されて色々あった結果、魂は解放されたみたいです。
一体どこで死亡フラグたったのかなぁ。『生きて帰れたら結婚してくれ』なんて告白もしてないし。
三途の川って本当にあったんだね。信じてなかったからあんまりよく知らないけど、ここを渡ったらあの世にいける手筈。
「死んじゃったらしゃあねぇわな。よっしゃ覚悟決めて行くべ!」
足を進めるごとに川が深くなり、死んでいるからなのかまったく冷たく感じないまま川を渡っていく。
>>89 「どうですか?『自分の舌』の味は?」
ゲヒーガに飲み込まれたはずのアマナがそこに居た。
「驚きですよね?そうまるで奇術を見ているような感覚
簡単な幻惑魔術ですよ。非常に簡単な
睨みつけたときにはもう掛かっていたことに気がつかなかったんですか?」
動かないゲヒーガの周りを歩きながら話す。
「あ---そうそう、金縛りを解除を忘れていました」
振り向きながら指を鳴らすとゲヒーガは何かに押されたかのように倒れる。
それと同時に胃液に溶かされた舌の激痛が体を駆け巡らせる。
「ムアコックですか----魔術師相手に自分の主君の名前を明かすなんて----
ふー----殺ってくださいヘイトレット」
アマナの命令と同時にヘイトレットはゲヒーガのマウントをとり、ゲヒーガの息が途絶えるまで殴り続ける。
ゲヒーガの断末魔を背中で聞き、アマナはムアコックを追った。
>ジョジョ
>「八つ裂き光輪だ!」
「攻め手に芸が無い!」
バルタンは空中で態勢を整えると、空中でジョジョに向き直り両手を広げた。
「光波バリヤー!」
ジョジョの八つ裂き光輪を跳ね返した!
>>71 >―武器・ 赤色凍結光線、破壊光弾、光波バリヤ、スペルゲン反射板ぽいもの。モート神の魔力。
「バルタンは八つ裂き光輪を跳ね返す光の盾、光波バリヤを持っていたのである。
これは『ウルトラマン』第16話“科特隊宇宙へ”に登場した二代目バルタン星人と同じ防御法である。
二代目バルタン星人にウルトラマンは八つ裂き光輪を放つが、光波バリヤによって跳ね返されたのである。
ムアコックはこうなる事を予知していたのかは不明だが、獣人バルタンに光波バリヤを装備させていたのである」
『ウルトラマン』ナレーション石坂浩二の声で朗読。
「フォフォフォフォフォ!そう攻めるとは期待通りだ!」」
ジョジョの前に着地するバルタン。
バルタンは右のハサミでジョジョの左手を、左ハサミで右手を挟んだ。
「これでも吸血鬼の一族なのでね!」
バルタンの口はセミに似ている。セミの口は注射器状の口吻である。ちなみにバルタン星人もセミのような口である。
獣人将軍バルタンは太い針のような口をジョジョの右胸に突き刺した。
鋭太郎は呻いた。呻き吼えた。
「屑船ー!誰がお前と同化すると言った!?俺の中から出て行け!
>屑船
>「私は此処にいてたまに貴方が望んだ力を貸したりするだけですから」
「グルルルルルルルル!
グアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!」
黒鋭は絶叫した。大気は震えた。
鋭太郎の姿が膨れ上がっていく。より凶暴な力を秘め、その器に相応しい肉体に膨張していく。
もし、である。もし虎と熊を融合して一頭のキメラを造ったとしたら、その姿は現在の鋭太郎に似ただろう。
鋭太郎は元のおよそ二倍の体躯に変化していた。虎とも熊ともつかない巨体の野獣に鋭太郎はなった。頭の角も
肥大しまるで水牛の角のようだ。
力と自由を求めた鋭太郎はそれを得た。究極の自由。それは理性も思考も無い境地である。鋭太郎は野獣と化した。
野獣鬼コクエイは涎を垂らし、獲物を探す。
フェンスを跨ごうとしている礼司を見つけた。野獣鬼コクエイの瞳孔が礼司を見つめる。
「霊・・・鏡・・・気」
霊鏡の気を礼司に感じ取った。屑船と同化する前の鋭太郎には無かったオーラを感じ取る能力である。
野獣鬼は左手に握ったままの霊鏡をふと見た。見たがそれが何かすら認識する思考は無かった。
コクエイは戦うのに邪魔な鏡を捨てた。礼司に霊鏡の気を感じたのに、器である鏡を捨ててしまった。それ程に
コクエイの思考は死んでいた。己の一部となってくれた金護の事も忘却していた。
完全な野獣が獲物を狙う。礼司を襲おうと一歩踏み出す。疾走し礼司の首に牙を立てるのだ。
>リリ
>「ごめんね。――――今、楽にしてあげるわ」
>理利は高く宝鈴を掲げた。
「グアアアアアアアアアガアアアアアアアアアアアアア!」
野獣鬼コクエイは頭を押さえて悶絶した。リリの魔を討つ鈴の音は迷霊だけではなく野獣鬼コクエイをも苦しめた。
野獣鬼はリリに狙いを定めた。こっちの獲物からも気を感じる。コクエイはリリに突進した。
その速度はリリであっても避けられなかった。リリに巨大なコクエイの角が激突する。
>92
>「攻め手に芸が無い!」
>「光波バリヤー!」
バルタンは空中で態勢を整えると、両手を広げてバリアを張る。
そのバリアが必殺と思われていた八つ裂き光輪を、なんと跳ね返したのだ。
八つ裂き光輪はジョジョの方に跳ね返ってくる。
ジョジョは右に踏み込んで回避した。
>「フォフォフォフォフォ!そう攻めるとは期待通りだ!」
「私としては、そのまま八つ裂きになってくれる事を期待してたんですがね…」
光波バリヤーを持っていることは、スペルゲン反射板も胸の中に装備しているだろう。
八つ裂き光輪のことを期待通りと言ったことから、ジョジョの戦いをよく研究していると思われる。
ウルトラアイスポットも簡単に当たってくれないだろう。
こんなことなら、TV局に圧力を掛けて、放送をさせなければ良かった。
>「これでも吸血鬼の一族なのでね!」
「ほぇ?」
バルタン対策に思考を巡らせていたせいか、肝心のバルタンの接近に気付かずに、まぬけな声を上げるジョジョ。
右腕を左の鋏で、左腕を右の鋏で挟まれ、動かすことができない。
バルタンの太い針状の口がジョジョの胸に深く刺さる。
針は心臓にまで突き刺さり、バルタンは血を吸い続ける。
一つの命が尽きた。
残りは二つ。
「さて……殺りますか。
この場所ならあなたは避けることもできないですしね」
殺しても死なない男、ジョジョは目から威力の無い光線をバルタンに当て、高速で回転してバルタンを弾き飛ばす。
弾き飛ばしたバルタンに再度、八つ裂き光輪を発射。
今度は、バリアなど張ることはできないだろう。
ウルトラアイスポットを当てて、バルタンのバリア機能を無効化させたのだから。
95 :
名無しになりきれ:2006/10/18(水) 13:28:34
>94
吸血宇宙人サラセニアンけんざん
96 :
仮面ノリダ〜&チビノリダ〜は電車男:2006/10/18(水) 13:32:40
もろこしたいそーっ♪
(V) ∧∧ (V)
ヽ(・ω・)ノ
|_|
] [
虫さされた手に
∧∧
(・ω・) モロコッシ♪
/ヽ /ヽ
ノ ̄ゝ
虫さされた足に
∧∧
(・ω・) モロコッシ♪
ノヽノ_ヽ
ゝ ヾ
かゆいとこーろに♪
∧∧
(・ω・)
/ヽ /ヽ
ノ ̄ゞ
もろこし♪もろこし♪
((((V) ∧∧ (V))))
ヽ(・ω・)ノ
|_|
] [
きもちいーっ♪
(V) ∧_∧ (V)
ヽ( ・ω・)ノ
/ /
ノ ̄ゝ
ギコの道案内で学校への近道を進んだ。
それは人の家の庭や塀の上を歩く猫の道だった。
学校に近づくにつれて僕は頭痛がしてきた。
「ひどいオーラ……」
僕の母校、上湘南第一中学校は変わり果てていた。校舎は炎上中。校庭には異形の伏魔殿。
なのに一般の人はこの怪奇現象に気がつかない。強力な魔法結界がされているんだ。
>ギコ
>「礼司!あれを!」
ギコが後足で立って前足で指さす。
僕は戦慄した。なんだあれは。牛の様な角を生やした化物。体格は熊で、腕や顔は虎に似ている。
体毛もブラックとイエローのツートンカラー。とても大きい。バスくらいはあるだろう。
獣鬼から僕が感じたオーラは三つあった。
「戸田くん…?金田…くん?」
あと一つ、なんだ?だれ?…まさか。屑船くん!?
つづけて僕を驚かせたのは、野獣の持つ小さな円盤だった。
「霊鏡!」
声に野獣の鬼は僕を見た。
僕は急いでフェンスから飛び降りた。頭痛はピークに達していた。
ところが浄化の澄んだ鈴の音が鳴り響いた。
リーン
リーン
リーン
>リリさん
>「遅い!かよわい私に露払いさせるなんて!!どこで油売ってたの!!」
>理利は藤田を睨みつけた。
「リリさん!無事でしたか!よかった!」
喜んだのもつかのま。リリさんの打ち鳴らした鈴に苦しんだ野獣の鬼はリリさんをにらんでいる。
>「藤田君、レテの川辺での出来事を覚えている?」
「あぶないリリさん!」
僕は叫んだ。
野獣の鬼がリリさんに突進する。
頭の左右に張り出した太い角がリリさんに迫る。右の角の腹でリリさんを打つつもりだ。
猛牛の突進を連想させた。
「師子王!」
僕はムチにオーラを込めた。青くムチが光る。
僕はムチを野獣鬼の角めがけて撃ちこんだ。刃になったムチが宙を伸びる。
ムチの刃は野獣の鬼の角に命中した。
でも切断できない!
離れているのに柄に伝わる衝撃!なんて硬い角!
だめだ。リリさんが!
野獣の鬼は右の角をリリさんに激突させた!
「リリさん!」
リリさんが飛ばされる。
けれどもリリさんに当たった瞬間に角は砕けた。切れ込みを入れるのには成功した。
威力は半減しただろう。リリさんへの致命傷は避けられたはずだ。
リリさんならきっと、きっと、きっとだいじょうぶのはず!
リリの宝鈴の音、更にムアコックに圧し掛かられて身動きさえできない天保。
だが、そのおかげともいえるだろう。
そのみに大きな変化が訪れた。
黒き煙に包まれ、ムアコックは紙風船のように吹き飛ばされたのだ。
真の神保兵の誕生の瞬間であった。
「「「モロー博士よ、知らぬ仲でもないから忠告しよう。
いまや牙の主は神保兵となった。
もはやそれは聖でも魔でもない、神気。純粋なるエントロピーの塊。ごく小規模ではあるが、荒魂ともいえよう。
それに霊玉も内在していることにより、比類なき存在となっている。
邪神の加護を得ているといえでも分の悪い戦いであるぞ?
対抗するには霊鏡を得ることだ。あちらのほうは所有者も所在もばらばらの様だからな。」」」
未だ煙の晴れず、その姿は見えないが、天保だった者を中心に恐るべき力が渦巻いているのがわかる。
邪神の加護を受けたムアコック。
擬似霊玉を持つ神崎を内在させ理性すら吹き飛ばした黒鋭童子。
ゼフィールからのギフトを受け取っているも、霊鏡所有権を不完全なものとされた藤田。
藤田から霊鏡所有権をわずかながら奪い取ったリリ。
英国魔術師協会、宇宙の使者、藤田とともに歩むもの。
霊玉を内在させ、真の神保兵となった天保。
さまざまな思惑が交差し、戦いは続いていく。
「獲ったどー!」
どうしたのかクマトラオニは霊鏡を地面に落としたにゃ!捨てた?
地面に転がる霊鏡をボクは滑り込みダイビングキャッチしたにゃ!
やった!
霊鏡を取り戻したにゃ!
でも、わー!
「リリ!」
倒れたムアコックだったが、また風が吹き始めた。
焼けた砂粒が高速でムアコックを中心に吹き荒れる。
>天保
>「そろそろそこをどいたほうがよいぞ豚。一緒に取り込まれて神の兵となりたいのなら別だがな」
>ベル
>いまや牙の主は神保兵となった。
砂嵐は言った。
「ベルカーマン。アマヤスに力を宛がおうと益は無い。
牙の主二世、貴殿の恫喝に力は無い。貴殿の心中に不安と諦めの色濃く、戦いながら己の先の見通し無く
自暴自棄に近しい。貴殿に覇気は無い。勝利への執念すら無し。貴殿は霊玉を所有するには値せず」
モートは天保の闇の力を恐れてはいない。
「アマヤスの心臓に霊玉は同化している。ムアコック、アマヤスの胸を砕き霊玉を引き抜くべし。アマヤスに永久の眠りを
望み通り与えてやるのだ」
モートは暴風となって神殿深部に熱風を逆巻かせた。
「手駒の質の差が出たようだな」
>ベル
>「モロー博士よ、霊具を揃えず未だ荒魂に転じていない今、ただの儀式プログラムの一つに過ぎない私達に用はあるまい」
>「対抗するには霊鏡を得ることだ。あちらのほうは所有者も所在もばらばらの様だからな。」」」
「ベルカーマン。貴殿の唱えるプログラムなるものに我は従うつもりは無い。
霊具なく参陣した我とムアコックが貴殿の定めた禁令に従うと思うのか?笑わせるな。
敖遊の儀の作法に我は従わぬ。
敖遊の儀に囚われる貴殿の思う様に事は進まぬ。ベルカーマンは敖遊の儀の奴隷である。奴隷に従う云われは無い。
霊玉、霊鏡、霊剣、この三種の神器を揃え、我が霊宝を召還する術を創成し行う。
驚愕したか?驚愕するがいい!
霊具に未曾有の魔力が宿るとはいえ魔具に過ぎない。宇宙を震撼させる大神力を持つのは霊宝のみ。
三種の霊具は霊宝を呼ぶ魔道儀式の触媒。所詮は道具に過ぎない。
霊具一つ一つならば、我の力が勝っている!
我はウガリットの乾季の神。熱風の破壊神。豊穣の水神バアルも我には屈服する。
三途の川の水で構成された体を持つ天叢雲よ震え上がれ。
ヤマタノオロチと仰々しい名前を持とうが水蛇は水蛇。ヒドラから生じた魔剣に貴殿は過ぎず。
あらゆる水の属性の魔は我の敵ではない。愚か者!」
数十万度の灼熱の熱風がベルを襲った。
「ウ、ウルトラ眼光か!」
光波バリヤが中和され消滅してしまった。
バルタンの体を縦に八つ裂き光輪は切り裂いた。
バルタンは両手を広げて死の万歳をした。
「狂風モート邪神様は偉大なり!ムアコック陛下万歳!フォフォフォフォ・・・フォォォォォォ」
右と左に真っ二つに割れて、獣人将軍バルタンは倒れた。
野獣と化した戸田を痛ましげに見つめる。
虎と熊のキメラというしかない外見だった。だが外見だけでなく、中身もキメラだと気づいた。
恐らくは藤田も悟っただろう。
「親友の屑船君を救ってと、私はジョリアルから頼まれていたのに・・・」
戸田だった存在は、ゴミでも捨てるかのように霊鏡を投げ捨てた。
ギコが走った。邪魔も入らず無事キャッチできた事に安堵する。
だが、一瞬なりとも戸田から目を離してしまったのは失敗だった。
>「あぶないリリさん!」
警告を受けたが手遅れだった。巨体からは考えられないような敏捷さで戸田が理利に肉迫する。
もとより力で叶う相手ではない。なす術も無く吹き飛ばされた。
屋敷の壁をいくつも突き破り、瓦礫の山を築いてようやく止まる。
だが、もし藤田が鞭を使わなければ、理利はシールドを張る間もなく壁の染みと化しただろう。
瓦礫と土煙が邪魔をして、藤田や戸田からは理利がどんな状態かは見えない。
だが生きてはいるようだ。土煙の中から再び宝鈴の音が鳴り響いた。
至近距離で破魔の鈴の音を聞かされ、戸田は悶絶する。
『ここは私に任せて先へ行って!と言いたいところだけれど・・・今は色々まずそうね。
藤田君、ここは無理せず漁夫の利を狙ってみる?』
念話の口調はいつもと変わらないが、実際に声を出すのはかなり勝手が違うようだ。
『Sonnons une cloche de Dieu.
Une cloche de Dieu, ……veuillez sauver l'homme qui est devenu le diable』
破魔の呪文を詠唱する声は、理利のものとは思えないほど低く掠れていた。
宝鈴は理利の破魔の術を飛躍的に強める。
今の理利の浄化魔法を受ければ、いくら戸田でも無傷では済まないだろう。
「白猫たん、危ないからこっち来るです」
アリアがギコの尻尾をがしっと掴んだ。
そのままギコを引っ張り、藤田の背後へと移動しようとする。
「御意。モート大神は偉大なるかな!我等の神は絶大なり!
霊具一つ一つは魔具に過ぎず。大なる力を持つのは霊宝のみ。
仮に霊具単体に絶大な力があるのなら、藤田礼司とアッシュ如きに霊鏡所有者ノスフェラトゥが
日中に襲撃されたとはいえ敗走しましょうや。
天保光に霊玉の力ありと謂えども、水蛇の申す程の力は無しと推察いたします」
『Lumiere de purification, ecrasez mon ennemi!
Effacez un mauvais diable!』
理利は呪文の詠唱を終えた。
戸田の足元に浄化の魔法陣が発動する
眩い浄化の光が戸田を直撃した。
>101
再度放った八つ裂き光輪は、バルタンを真っ二つに両断する。
この勝負、ジョジョの勝ちだ。
「あなたはとても強かった。
私の命を一つ奪ったのです。
あの世でそのことを誇ると良いでしょう」
ジョジョは再び進み出す。
バルタン達、獣人が崇拝している神の力の残り香を伝い、校門を抜けて学校に入る。
学校の敷地内に入ると、そこはもうかつての面影が殆んど無かった。
校舎は何故か知らないが、炎上している。
校庭には、何時立てたのか知らないが、禍々しい力に覆われた屋敷がそびえ立つ。
ジョジョが学校から離れて、そう時間は立っていないはず。
邪神の力の残り香は屋敷の方に続いている。
色々と見て回りたかったが、まずは獣人達にウルトラ一族の強さを見せるのが先だ。
ジョジョは屋敷の方に進み始めた。
「屑船ー!誰がお前と同化すると言った!?俺の中から出て行け!
グルルルルルルルル!
グアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!」
「…!?」
戸田君の様子が急変しました。
霊玉が黒く光り輝きます。
>鋭太郎の姿が膨れ上がっていく。より凶暴な力を秘め、その器に相応しい肉体に膨張していく。
「霊・・・鏡・・・気」
そう言うと彼は鏡を投げました。
…ちっ!
…体内に入り込んで霊鏡をゲットするつもりだったのに…
私はふと彼の体外で見かけた気配を感じました。
…恐らく華山リリ……。!?…アリアのオーラの温もりを少々感じさせます。
…いやまさか…彼女は死んだはずじゃ……。
「ごめんね。――――今、楽にしてあげるわ」
>理利は高く宝鈴を掲げた。
「グアアアアアアアアアガアアアアアアアアアアアアア!」
体内が揺れます。
「っくあ!!」
中に居る私にも影響が出ます。リリが持ってるベルを超音波で見ます。あれは…恐らく…ドド先生の…!
っく…!あの糞婆が持ってたベルがなんであの女の所に!?
…今出ても狙われるし中にいてもやばい…全く面倒な事になった事!
ふと私は霊玉を見ました。
…ふつふつと怒りが出てきます。
…そもそも私はこんな物に…!
私は彼の体内で腕を伸ばし霊玉を握りしめました。
そもそも私は…!別にアリアがどうなろうがどうでもよかったのです!
ドドが私が過去自宅に自ら放火し、親族を殺したという情報をどっからか掴み…脅され彼らに乗ったというだけ!
なんとかあのドドに目を付けられぬよう必死で仲間を装っていたが…実際はあの女共などどうでもよかった!
実際は奴らが霊玉と霊鏡を持った時点で奪ってとんずらでもしようと思っていただけ!
私は全てを消し去る力が欲しかっただけなのだ!
牙の主についたのも…俺がクラスメイトみーーーーんな喰ったのも!全て!全て!ああああああ!
しかし…しかし!ああああああああああ!っもーーーー!
苦々しい顔をします。くそくそっ!くそっ!殺してやりたい!こんな石…!
するとどこからか声がしました。
(屑船…。)
「…!?ひっ!」
私は驚きます。鳥肌がぶわーと立ちます。
私は周りを見た後、霊玉を静かに見ました。
…すると霊玉に私は一人の人間を見ました。
私の顔色が変わります。その人間は話を続けます。
(主等ハ余リニ愚カナリ…コンナ物ノ為ニ必死デ働キ、様々ナ犠牲ヲ重ネスギタ。)
「だ、誰だぁあああ!お前は!」
(コノ闘イノ勝者ナド、最初カラ決マッテイルノダ…)
「…俺が聴いてるんだ…答えろ!!」
私は液体化していた体で霊玉を包みました。
しかし霊玉からは以前苦痛の言葉が溢れていました。
(シカシ…ア奴ニ勝タセテハイケナイ!
ア奴ハココニイル者達ヨリ数億倍賢イ…ソシテ恐ロシイ闇ヲ持ッテイル。
アア!恐ロシイ!恐ロシイ!アノ男ハ…オゾマシイ!オゾマシイ!!嗚呼!
オゾマシイ!
壊サナケレバナラヌ!
シカシ今ノ私ニハ無理ダ!
何故ナラ…私ハ今肉体ヲ持ッテイナイ。
……持ッテイナイダカラ託サナケレバナラヌ…
アノ戦士ニ…)
「何…?…!!!」
(ダカラ…ダカラ…
…我レハ…霊玉、霊鏡ノ創造者ハ…
伝エナケレバナラナイ。
彼等に…
もっと命を駆けて闘って貰わなければならない。
勝たなきゃならない理由をもっと作らなければならない。
…ダカラ…ダカラ……ダカラ…ダカラ……
屑船、主の身を少々借りるぞ?)
「…え!?!?!?!う、うわぁあああああああああああぁあああああ!!!!」
+++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++
>『Lumiere de purification, ecrasez mon ennemi!
> Effacez un mauvais diable!』
リリがそう叫ぶと聖光があふれ出した。
そんな中、魔力をある程度持ってる人間なら黒鋭童子の体内になにやら異変が起きてる事を知るだろう。
しかし次の瞬間、突如黒鋭童子の進化バージョンの足下が歪むと、
黒鋭童子の半身が黒鋭童子ではなくなった。
金剛童子の腕が大きく振るわれる。
そして次の瞬間、なんと実装石が引っ張っていた擬古の手元にある鏡をどろどろにした。
そしてそれと同時に黒鋭童子の目から大量の液体が零れる。
―どばっ!
そしてその謎の液体は素早く動くと液体化した鏡と同化し
次の瞬間、リリにその液体は絡みついた。
そして霊鏡の液体のみまるでスポンジにしみこむようにリリにしみこむ。
絶叫する誰かの声が聞こえる。
しかしその声が屑船と気づく事は誰にもできなかった。
屑船はすでに死んだも当然の状態になっていた。
リリに霊鏡の器はしみこんでいき…
そしてリリの目の前に倒れたのは…
まるで爺さんのように老けきった屑船だった。
「あ・・・・・・あ・・・・・・・・・・恐ろし・・・い・・・」
糞船
「チクー!」
天保に獣人ダイソウサソリは尻尾を突き刺した。
モートによって数万倍に強化された猛毒が天保の細胞を麻痺させ壊死させていく!
―名前・ジーガー
―性別・雄
―年齢・2歳
―髪色・青
―体色・青
―容姿・サソリ人間
―学年・無し
―部活・無し
―備考・ダイオウサソリのデータ
―原産国・アフリカ
―飼育難度・易(サソリ飼育入門種)
―入手難度・易(取り扱いペットショップ多し)
―お値段・¥2500程度
「レイジさま?」
あたしはピクってした。
あたしはずっとレイジさまを見失っていた。あたしの首が命を救ったと信じてるけれど、レイジさまの居場所がわかんない。
心配だった。
水無月のグリフォンに乗って学校に着いても、カエルの戦いを目にしただけでレイジさまの気配を感じなかった。
レイジさまがご存命なら霊宝の儀が行われる上湘南中学校にいらっしゃると思ったのに。
でも突然にレイジさまの気をあたしは感じた。
>レイジさま
>僕は急いでフェンスから飛び降りた。頭痛はピークに達していた。
レイジさまの気を感じる!レイジさまの命を感じる!
あたしはレイジさまの忠実なメイドなので、御主人さま第一優先主義!
「あたし、行く!」
水無月にそう言うと、あたしは背中にコウモリの翼を作った。飛ぶ!
まだ肉体のダメージは残っていたけれど、かまわない!
「レイジさまー!」
レイジさま発見!
着地!
「レイジさま!あー。レイジさまー!」
あたしはレイジさまに抱きついた。
「わ〜。上半身はだかだ、レイジさま」
>ギコとアリア
>「白猫たん、危ないからこっち来るです」
>アリアがギコの尻尾をがしっと掴んだ。
「あり?ギコ。なんであんたまでここにいるの?」
吹き荒れる熱風はベルに向かう途中その熱と勢いを失い、到達するころには秋のそよ風のようになっていた。
気持ちよさ下にその風を頬で受け、ベルは小さく笑う。
「「「さすがは冥府神モート。ただの言葉で驚愕あまり私の目を胡麻にし腹筋を破壊するとは見事だ。
根本的なことを間違えているのは藤田に通じるものがあるな。」」」
穏やかな笑みを向けながら説明を続ける。
第一にベルにとって、そして敖遊の祭祀において敵味方の概念などない事。
ムアコックも、天保も藤田もリリもジョジョも・・・上一中に集い戦うもの全てが儀式の参加者というカテゴライズ
でしかない。
第二に、霊宝とは霊具の総称。
霊具とは儀式に使う道具。今回の儀式についての代表的なものは霊玉、霊鏡、霊剣。
それは世界法則をなす相模国造を呼び起こし、新たに世界法則を書き換えることが目的であること。
道具が戦うのではなく、道具を持って儀式を進め事をなすだけの話だ。
第三にベルはすでに儀式の一部、根を通じて御柱融合しており、それは世界法則にも接続している書き込み装置となっていること。
「「「状況把握不足ではないかな?天礼法に従わぬのならば最初から頼らず一人でやり給えよ。
鏡と玉をそろえてこればこのような問答などせずとも剣とこの首をくれてやるというに。」」」
そう締めくくったベルの目にはムアコックの肩越しに現れたジョジョの姿が映っていた。
「---困りましたね」
アマナは困っていた。ムアコックを追って屋敷に入ったはいいもの
肝心のムアコックが見つからない、かつ、何者かが空間を捻じ曲げたらしく屋敷の中は迷宮になっていたからだ。
「---やれやれ---私を避けたかったかの---それとも別の侵入者か---とにかく、早くどちらかに出なければどうにもなりませんね」
そういいながら同じようなドアを開き同じような廊下をグルグルと歩く
もちろん、彼女もこれでは脱出は不可能だと理解している、彼女は待っているのだ。
強力な魔力による時空の捩れを
「そろそろですかね」
ドアノブを握りながら彼女は言った。
この屋敷の迷宮はドアから別ドアへと動く移り変わる仕組みだ。
そして、今そのドアは微量ではあるがカタカタと震えている。
これは何かの影響でドアとドアを繋げる魔術的なバイパスがメチャクチャになっていることを示す。
ドアの振動が止まったと同時に開けてみるとそこにムアコックは存在した。
そして、その背後には、今一番会いたくないアイツも居る。
だが、アマナにとってそれはどうでもよくなっていた。
アマナの目はベルを見ていた。
「---なるほどなるほど---原因はあなただったんですね
ここの土地の魔力と霊力のバランスを崩して---冥府の門でも開けるつもりですか?」
そういっている彼女の腕にはギルトのキーホルダーが握られている。
屋敷の中を進んでいくジョジョ。
屋敷の中は迷宮になっているが、邪神の残り香が強く残っている為、道に迷うことはない。
段々と残り香の匂いが強くなっていく。
豚臭さがプンプンと匂っている扉の前に来た。
この部屋の中に奴らはいる。
ジョジョは目の前の扉を開けた。
部屋の中には獣人達と、ちょっと雰囲気の変わった、確かベルと言った女の子がいた。
どちらも信じられない程の強い力を保持している。
何があったのかは知らないが、厄介なことになりそうだ。
>「---なるほどなるほど---原因はあなただったんですね
> ここの土地の魔力と霊力のバランスを崩して---冥府の門でも開けるつもりですか?」
後ろから声が聞こえる。
振り向くと魔術協会のアマナがいた。
何でこんなところにいるかは知らないが、獣人達の味方という訳ではないだろう。
こちらの味方をしてくれると嬉しいのだが…
「すみません。
私はちょっと詳しい事情を知らないので、一から説明してくれませんか?
確か、今日の夜は吸血鬼達が戦いをすると聞いていたのですが……
もしかして私、場所を間違えましたか?」
>ベル
>黒き煙に包まれ、ムアコックは紙風船のように吹き飛ばされたのだ。
「ぴぎー!」
巨体のムアコックが浮遊し壁に激突した。
だが守護邪神モートの風がムアコックを受け止める。
>モート
>「アマヤスの胸を砕き霊玉を引き抜くべし。アマヤスに永久の眠りを望み通り与えてやるのだ」
ムアコックは邪神モートの言葉に無言で頷くと、天保に突進した。
身構える天保。
>ジーガー
>「チクー!」
天保の背後からサソリ獣人が天保に毒針を刺した。天保がひるむ。ムアコックの拳が天保の胸に炸裂した。
天保を打ちのめしたムアコックはベルを指した。
「我が守護神モート神の劫火の熱風を無効化できたつもりか?三途の川の水で出来た剣魔よ。それは無理である。
貴様の顔がひび割れている。気がつかないのか?」
ムアコックは天保の息の根を止めるよりも、ベルを攻撃するのを選んだ。
御柱に同化して動けないベルに歩みよると、目にも止まらない速さで手を突き出した。神殿内に激突音が響く。
ベルはムアコックの手の平に押しつぶされた。
根を張り(
>>84)神殿と御柱と同化しているベルは避けようにも動けず、まともに殴打されねじ伏せられた。
「余は史上最高の天才モローの脳と、北米原住民魔道の使い手ゴドーの呪術、そして偉大なるモート神の加護を受けた皇帝である。
余に不可能は無い。我が神の元で新たな霊宝召還の術を創造してやる。心配するには及ばん」
「マニトウ!マハニトウ!マハウルム!マベトルムクロートン!」
ムアコックはゴドーのマニトゥ召還呪文を唱えた。
ムアコックの頭上の空間に詠唱の終りと共に火花が散った。雷鳴が轟く。
蜘蛛の体にコンドルの頭を持つゴドーの雷霊の蜘蛛が現れた。マンション屋上に召還された時よりも一回りは大きい。
「投影、重装、我が骨子は捻じれ狂う。真・螺旋剣カラドボルグ」
サーヴァントの聖杯呪文すらムアコックは唱えた。
コンドル蜘蛛の前の足一脚の先が変形していく。眩しい雷光が光り剣に変形していく。
“雷の激烈な一撃”の意味を持つ魔剣カラドボルグが形を成した。
空中から降り立つとコンドル蜘蛛は天保に向き直った。雷電の剣をかざし突進する。
>アルマ
>ジョジョ
「獣人将軍達よ!余の邪魔をする者を近寄らせるな!」
ムアコックは配下に背後を守らせた。
「余は汚れた悪霊の縁者。七つの大罪『暴食』を背負う豚。余はあらゆる秩序の貪欲な破壊者である。敖遊の儀も例外ではない。
霊玉、霊鏡、無論余が手中にする。しかしまずは霊剣を余に捧げればよいのだ」
ムアコックが叢雲の剣に手をかけた。
「奪うだけでは得たとは言えないようだ。三位一体の器を破壊しなければな」
哄笑しながらベルを御柱から毟り取り始めた。御柱に亀裂が走っていく。
>114
>「すみません。
> 私はちょっと詳しい事情を知らないので、一から説明してくれませんか?
> 確か、今日の夜は吸血鬼達が戦いをすると聞いていたのですが……
> もしかして私、場所を間違えましたか?」
「本当にねえ」
ジョジョの後ろから、傷も付いていなければ、返り血一つ浴びてもいない水無月つかさが現われた。
この激戦の中にあって、不気味なほど綺麗な状態である。
いつの間にか別の誰かに摩り替わってるんじゃないか、という懸念にかられるほどに。
だが、きちんと悪魔召喚プログラムが組み込まれた銃型COMPは持っているし、ピクシーだって連れている。
「吸血鬼、宇宙人、悪魔に邪神、魔女に戦士。あと足りないのは、怪獣、魔王辺りかしら?
これから、もっともっと混沌とした状況になると思うのだけど。
それもこれも、ここで行われてる儀式のせいね。
三種の神器を手にした人が、世界の法則を書き換えることができるとかできないとか。
何にしても、すごい事ができるみたいだから、皆必死なのよ―――っと」
不意打ちを仕掛けてきた、ショッカーの怪人似の吸血宇宙人(>95)を迎撃する。
腰から下げている刀は何のためなのか、悪魔は何のために連れているのか、
その細腕に似合わぬメガトンパンチによって、吸血宇宙人は吹き飛ばされ、星になった。
そしてすぐさま、悪魔召喚プログラムで向こうの竜巻を分析し、熱風の正体がモト神であるという情報を得た。
デビルサマナーは、ある程度神話などの知識に通じているものだ。
英雄に退治された怪物を相手にする際に、その怪物がいかにして倒されたかを知ることにより、弱点を突くことができるためである。
「モト神が相手なら、剣で全身を引き裂いて臼ですり潰して、燃やしてばら撒くと良いわ。彼の精神的な弱点よ。
眷属にも有効なんじゃないかな?ほら、こうやって―――」
そう言って、ムアコックの背後を守るべく立ちはだかった獣人のうち一匹を捕まえて、自ら述べた例の行為をそのまま行った。
即ち、敵の全身を刀でバラバラに切り裂き、ピクシーの電撃で破片を焼き尽くした後に、灰を集めて辺りにバラ撒いたのである。
あまりに凄惨なその行いによって残った敵は怯んだが、この行為はただ凄惨なだけではない。
これらの過程は、バール神の妻である女神アナトが、報復のためにモトを殺害したときの手法である。
「あはははははははははははは!」
上記の凄惨な行為に加えて、返り血を浴びて歓喜の笑みを浮かべるその様は、闘争と殺戮の女神アナトに酷似していた。
結果、モト神のトラウマが呼び起こされる形となり、これが眷属にも影響を与える形となる。
>「獣人将軍達よ!余の邪魔をする者を近寄らせるな!」
「はっ!」
カメレオン型獣人将軍ジ・アルマは侵入者たちの前に部下を配置した。
「バラバラに引き裂いてやる!」
配下にジョジョを任せたジ・アルマは水無月に襲い掛かった。
しかし、バラバラにされたのはジ・アルマの方だった。
「ぎゃあああああああ!」
水無月の手によって、獣人将軍ジ・アルマは絶命した。
リリに強烈な角の一撃を喰らわせた。リリが吹っ飛ぶ。
だが同時に右の角が砕け散った。牙を剥きコクエイは礼司を睨みつけた。野獣は礼司を狙う。
「グルル!」
>リリ
>至近距離で破魔の鈴の音を聞かされ、戸田は悶絶する。
「ゲアアア!」
野獣鬼コクエイは頭を押さえよろめいた。魔神殿の壁の右左に体を次々ぶつけ苦しがる。
リリの破魔の鈴と浄化の呪文はコクエイの力を奪っていく。コクエイの体が痩せ細っていく。
その上にコクエイの体内では裏切りが行われていた。
>屑船
>金剛童子の腕が大きく振るわれる。
>そして次の瞬間、なんと実装石が引っ張っていた擬古の手元にある鏡をどろどろにした。
>黒鋭童子の目から大量の液体が零れる。
「く・・・!」
鋭太郎は壁に寄りかかったままズルズルと崩れた。肉体の魔獣化に異変が起きる。
鋭太郎は中学生の少年の姿になった。人間の姿に戻ってしまったのだ。服は無く全裸である。
ひよわそうな細い体の少年だ。
だが片腕だけが違う。金護の腕だけは人間の腕になってはいなかった。鬼の腕のままである。
太い金護の腕は鋭太郎の身長よりある。いびつな異形の少年に鋭太郎はなってしまった。
「屑船!」
野獣鬼になっていた時には自我は消滅していたが、今の鋭太郎は全てを鮮やかに覚えていた。
体内寄生を勝手にした事、自分を利用するつもりだった事、屑船に激しい怒りを鋭太郎は感じていた。
なによりも親友金護の腕を屑船が操った事が最も許せなかった。
金護の腕で天井をつかむと、振り子になって鋭太郎は移動した。
着地しては天井をつかむ。鋭太郎の移動速度は凄まじかった。
>屑船
>そしてリリの目の前に倒れたのは…
>まるで爺さんのように老けきった屑船だった。
>「あ・・・・・・あ・・・・・・・・・・恐ろし・・・い・・・」
「ほざけ!卑怯者!」
鋭太郎は屑船の背後に降りた。老人と化した屑船の後頭部を金護の腕で殴打する。血肉を入れたビニール袋が
裂けた様な姿になって屑船は床に散乱した。
鋭太郎は自分の腕をリリに伸ばした。少女のリリにとっては男の力である。引き寄せられる。リリの首に噛みつ
こうと鋭太郎は口を開ける。犬歯が牙である。血と液化した霊鏡を吸い取るつもりだった。
『霊鏡を返せ!・・・これは!・・・霊鏡の気が、膨れ上がる?』
三途の川で礼司から幾分吸い取った霊鏡の気がリリの体の中で、霊鏡と融合し元に戻ろうとしている。霊感の無い
鋭太郎ですら神気を感じた。鋭太郎がマンションで手にした霊鏡は中身の気が既に抜けていた。それが今、霊鏡の
気が霊鏡に満たされていっている。
だが鋭太郎はリリをあざ笑った。
「天保光は霊鏡の所有者はノスフェラトゥから藤田礼司に移ったと言っていたが華山。おまえも礼司から盗んだか。
おまえも薄汚い卑怯者だな」
毒が注入されているが、苦しむことはなくうつむいたまま。強靭な肉体の鉄拳に胸を打たれようがまったくの無抵抗。
人形のように力なく倒れ伏す。棚の上の操り人形はあくまで作りものでありさまざまに動く。
しかし、ひとたび操り手がいなくなればなにもできなくなる。牙の主とはそういったものだった。
遺伝するものはわずか人格と前牙の主の記憶と力のスイッチだけ。それが吸血鬼となった瞬間に潜在能力のひとつとして潜む。
前牙の主の存在が消滅した瞬間に、その配下の中で最も潜在能力が高い者を一人選定して決められる。
牙の主を継承したものは新たな牙の主として君臨し、力のスイッチが入り人格と記憶が呼び起こされるということ。
霊宝を手に入れられることができるのは生きているものだけ。そもそも牙の主というものはシステムであって生き物ではない。
宿主という生き物を介することによってこの戦争の参加権を得ていたわけだが、ここにきて宿主の魂を解放した。
魂のいない肉体など、数分も持たぬうちに文字通り死に体となる。ならばこの肉体に新しい魂を注ぎ込めばいい。
それも、人間のような惰弱なものではなくもっと神聖な存在。この場所にはその類の霊がうようよいる。
いっそ欲をかいてすべてと融合してしまおうか?いやいや、偽りの霊体を作るというのも悪くはない。
雷の属性をもつであろう蜘蛛なのか鳥なのかわからないキメラが向かってくる。
黒い霧は凶兆に急き立てられ、どこから開いたのか地獄の穴から骸たちを乗せて這い溢れていた。
骸たちは己が無念を晴らすために霊宝を得ようと駆けずり回る。黒い霧はいわば悪霊たちの怨念である。
その悪霊の中には、その時代時代を生きていた反英雄たちもいる。優れた力と何人も寄せ付けぬ具を持ちながら死んでいった者たち。
額に刻まれた刻印が光を宿す。まず最初に天保の肉体に入った魂は日本一有名な剣豪によって倒された魂。
「蜘蛛殺しはあまり記憶にないが、鳥殺しなら飽きるくらいにしたことはある――そういう意味でも適任ということか」
霧より出現した圧倒的なほどの長さを誇る野太刀を構えて、信じられないほどの長刀を手足のように操り、脆弱なはずの刀身を悪夢のような鋼に変える。
鳥もなかなかやるようで一撃を避けるがその行動が命取り、私はそのような鳥を何匹も殺してきた。
「燕返し」
避けたその先へ刀を切り返しで風を縫うようにして切っ先を放り込む。鳥は見事に斬られて屍を地にさらした。
「なあに野望などない。少々この時代のものたちに剣技を自慢したくてね。二刀流のあやつもいないこの場は早々に退場しよう」
歴史に埋もれた英雄の魂は肉体から漏れ、また新たな魂が憑依する。
御柱のある最深部に続々と集まってくる儀式の参加者たち。
戦いが渦巻く空気をベルは心地よく感じていた。
アマナがベルに目的を尋ねる。
腕に握られたキーホルダーがその使命感の強さを表しているようだ。
「「「目的?それは私達を使う者に聞いて欲しいな。
私達を攻撃するつもりなら止めておくがいい。そこで哄笑しながら自分の腕を引き抜こうとしている者と同じ結果が待っているぞ?」」」
ベルの周囲では御柱の影響で時間潮流や空間連結に異常が発生している。
更に強力な神気によって望んだ未来を見やすくなっているのだ。
ムアコックは確かにベルに歩み寄った。
だが、ある一線を越えた瞬間その意識が認識するものはムアコックが望んだ願望となり、空間連結の異常によりジョジョたちの真後ろに出てしまったのだ。
だが、そのことにも気づかずムアコックは哄笑しながら自分の腕をむしろうとひっぱている、
肩には亀裂が生じ、血が噴出しているがそれにも気づかぬまま、願望の世界でベルを毟り取っているのだ。
「「「哀れな。不可能がないのならばこのような儀式に頼らず自力で世界法則を変えればいいだけ。
そんな簡単なロジックにも至らぬとはな。」」」
水無月のモート神と女神アナトの戦いの再現劇を見ながら小さく溜息を漏らした。
実に効率のいいやり方だ。モートだけでなく、その眷族にも累が及ぶ。
ベルはモートを邪悪な存在とは思っていない。
モートもまた旱魃をあらわす世界法則の一部といえるのだから。
ベルの瞳に哀れみの影がわずかに映った。
願望の世界に陥っているのはムアコックだけではなかった。
ベル自身もまた願望の世界に迷い込んでいた。
モートの熱風で叢雲の剣を構成する三途の川の水成分は蒸発していっているのだ。
それにベルトリニティーは気がつかない。
ベルの顔がひびわれていく。
>>115 >貴様の顔がひび割れている。気がつかないのか?」
御柱は軋み揺らぎ狂いが生じていた。
う…うろたえるんじゃあないッ!ウルトラ一族はうろたえないッ!
ジョジョの顔は蒼白となっていた。
世界法則を書き換える為の儀式。
光の国からは何の情報も与えられていない。
恐らくは、地球のマイナー過ぎた儀式の為に知らなかったのだろう。
規模も宇宙全体の法則を変えるのではなく、この地球全体だけなのだろう。
もし、ジョジョがこの地球の儀式に下手に介入してしまえば、光の国に帰った時に逮捕されてしまう。
その星の住民達のみがやらなくてはならない使命に、勝手に他星の者が介入するのは禁止されている。
異星人が介入してしまった為に、惑星間戦争が行われてしまうのはよくあることなのだ。
「私はこの儀式には参加するつもりはありませんからね。
私はこんなところで残りの余生を棒に振りたくはない!」
ジョジョは、獣人達を笑いながら解体していくサディストな水無月や、
ジョジョの後ろに走って行き、自分の腕を千切り取ろうとしている豚、
ぶつぶつと何かを呟きながら、ひび割れて呆けた顔に涎を垂らして、どこか遠くを見てるベル、
ジョジョと同じように蒼白な顔をしたアマナに話し掛ける。
だが、聞こえてる人は少なそうだ。
「うはwwwテラカオスwwww」
登場したラスティーリアに、アリアはぽかんとした。
「小悪魔ちゃんです!
急に尻尾を引っ張る手を緩めたせいで、ギコは派手に転んだ。
瓦礫に半身を押さえつけられていた理利に、屑船の液体を回避できる筈も無かった。
霊鏡を溶かし込んだそれを全身に浴びる。
「あぁぁぁぁああぁぁぁぁ!」
理利は絶叫した。まるで熱湯でもかけられたかのような断末魔の叫びだった。
苦しげにのた打ち回っていたリリの動きが緩慢になり・・・やがて、鈴を握ったままだった手が力なく地に落ちた。
宝鈴が手から滑り落ち、理利の目から光が消えた。
屑船の身体が砕かれ、そばにいた理利も頬に返り血を浴びた。だが、何の反応も示さない。
戸田が瓦礫の中から理利を引っ張り出した。
引き寄せられ、大きく傾いだ理利の頭が戸田の肩口にぶつかった。
ようやく理利の目にも生気が戻った。
>「天保光は霊鏡の所有者はノスフェラトゥから藤田礼司に移ったと言っていたが華山。おまえも礼司から盗んだか。
>おまえも薄汚い卑怯者だな」
覗き込む黒い瞳に冷笑を返す。
「お前に私の何がわかる?戦闘不能の屑船を背後から襲った卑怯者が。分かったような口をきくな。
―――いつまで私に触れているつもりだ?」
手をかざす。今度は戸田が吹き飛ばされる番だった。
「ラスティーリアも無事で何よりだ」
ラスティーリアと藤田の視線に気づき、リリはさびしそうに笑った。
「私は自分が今夜死ぬと知っていた。死ねば所有権は藤田に戻る。
だから藤田から霊鏡の所有権の一部を得ても問題ないはずだった。
――――まさか、こんな形で人の生が終わるとは思ってもみなかったからな。
もし霊鏡が欲しいのなら私を食らうがいい。――― 命が惜しくなければ、だが」
戸田がリリの血を吸わなかったのは、本能的に危険を察したからに他ならない。
今の彼女を食らう事は、破邪の光を身のうちに取り込むも同然だった。だが藤田にとってはどうだろうか、と。
>戸田君
「なあ戸田よ。ものは相談だが・・・手を組まないか?」
戸田は不快そうに顔を顰めた。思わず苦笑いする。無理も無い。
リリはさっきの液体から、ある程度屑船の情報も読み取っていた。
「お願いしているだけだ。強制する気も無いし、お前達とひとつになる気も無い。
私は霊鏡と同化してしまったが大勢に影響は無い。
霊鏡をお前に渡す事は出来ない。
だが、私の望みは敖遊の儀を廃すことだ。犠牲者を救い、消滅しかけた世界を元に戻すことだ。
お前にとってもそう悪い話ではないと思うのだが?」
リリは一旦言葉を切った。
「よく考えろ。――――他の霊具保有者が霊玉を得たとき、私たちと願いを口にすると思うか?」
>屑船君
リリは床に散らばった屑船を見下ろした。しばし見つめた後、手をかざす。
さっきの液体がリリの傷口からどろどろと零れ落ち、屑船の上に降り注いだ。
液体は屑船の身体を瞬く間に溶かした。完全に溶けたのを確認し、リリは赤い液体に手を浸した。
おかしな光景だった。赤い液体は床の上に零れたはずなのに、リリは二の腕まで浸していた。
「お前のせいで華山理利は消えた。楽には死なせない」
リリは液体の中から屑船の身体を引き出した。屑船は老人ではなく、少年の姿に戻っている。
「目を覚ませ。私に手を貸してくれ」
リリは屑船の上にかがみこみ、口づけた。
リリの祝福を受けた屑船の瞼が震えた。
「起きろ屑船。一体何があった?」
戸田と分離する前の屑船は混乱していたらしく、情報を得ることは出来なかったのだ。
リリは手を伸ばし、落ちていた宝鈴を拾い上げた。
用心のために銀のナイフを手に、同じ質問を猛1度繰り返した。
己の腕を引き抜こうとしているムアコックを哀れんだ目で見るベル。
だが、それすらもベルの願望でしかなかった。
ベルも身柱の影響を受けていたのだ。
現実にはムアコックにむしられ、御柱にはひびが走る。
恐るべき力で毟り取られ、ついには完全に柱から分離した。
そしてムアコックのとった行動は・・・『暴食』に相応しく、ベルをむさぼりは締めたのだ。
ベルは貪られながらも御柱の影響から抜け出せず、願望の世界を見ている。
完全に食われ尽くしてもその世界から出ることはできなかった。
ムアコックには霊剣の力、霊草の力、そして御柱の力が注ぎ込まれることになる。
霊剣と例草を取り入れたことにより、鏡と玉さえそろえれば御柱の制御ができる能力も備わった。
>124
だが、現実にはムアコックに食われたのではなかった。
ムアコックはジョジョの後ろ、アマナの隣で狂いながら自身の腕を貪っている。
「デプププ」(うまいでぇす。このお肉)
ベルを食していたのは、ムアコックを遥かに越える、暴食……七つの大罪の権化。
実装石の糞蟲タイプだったのだ。
実装石はムアコックの獣人達と一緒にこの場所まで来ていたのだ。
実装石に霊剣、霊草の力が備わってしまった。
そして、実装石はヤム飯となった。
実はヤム飯ではなく、ただの実装石のままだった。
何故なら、ヤム飯は機械兵士と戦っているから。
実装石はヤム飯になるのに憧れているのだ。
>目的?それは私達を使う者に聞いて欲しいな。
「え---!?」
この異様な状況を作り出した張本人は意外な返答を返した。
「私の目的はこの豚です。
しかし、この状況を作り出したあなたとその上の人間は見過ごせません。
この状況が長く続けば続くほど強大な霊的災害が起こりうる可能性が起こります。
---!!!」
何かに気がついたかのように目を大きく見開く
その前に説明が必要になるかもしれん。
霊的災害とは、土地の霊力が乱れや魔力の異様な集中した土地で起こる災害で
一見自然災害に見せかけたものもあれば、原因不明の大爆発やドーン・オブ・ザ・デットのような死者がよみがえる現象
といった法則を無視した災害の総称で英国魔術協会はこれを起こさないように善処している。
しかし、このような災害が起こる地域は稀で、世界中探しても数えるのは片手で十分なぐらいだ。
オマケに、この上湘南は入っていないはずだった。
しかし、その条件がそろっていない土地でもそれを起こすことが可能なのだ。
そう例えば、大量の霊力と魔力を消費する儀式
その儀式でムアコックとあの少年に起こった現象を含めて考えると出てくるワードは一つ
そう『聖杯戦争』
聖杯戦争とは、某市で行われる「聖杯の争奪戦」である。
ここで言う聖杯とは『万能の能力を持つ魔術品(聖遺物)』で、これを手にした者はあらゆる願いを叶える事ができると言われている。
ただしその為にはサーヴァントと呼ばれる「使い魔」を召喚・使役し、他の参加者を打ち負かして最後の勝者にならなければならない。
いわば聖杯を巡る魔術師同士の殺し合い。それが聖杯戦争。
セイバー・アーチャー・ランサー・ライダー・バーサーカー・キャスター・アサシンのうちのいずれかが重複しないように7人の魔術師に召還される。
(著 民明書房「『やさしい解説の』新・魔術師の常識」より)
しかし、それには聖杯が必要となってくる。
その聖杯は、高校生魔術師らの手によって破壊されたはず---
いや、出来る。あの三位一体の霊具、それが聖杯のかわりとなって---
つまり、『霊杯戦争』ってことになる。
「---ジョジョさん!水無月さん!彼女を止めてください!
このままでは上湘南は死の街になります。
---ギルト!その豚に止めを刺しなさい」
ジョジョと水無月らに協力を仰ぎ、その次にギルトを召還し、ムアコックに攻撃をさせる。
行動が実行されたことを確認し、アマナはベルに向かって突撃する。
「前言撤回させてもらいます。やはり、あなたはここで倒さねばならないようです。
---アマナの名において宣言す、ここに無限牢に封ぜし魔銃を我の前に解き放たん」
左手に浮かび上がるどす黒い魔術陣、それからは巨大な拳銃がじょじょに姿を現す。
「第39式魔術銃 アガルタ
どんなにあなたが次元を捻じ曲げようともこの魔銃の弾丸から逃れられるでしょうか?」
魔銃 アガルタ とある魔女が作り上げた大量破壊魔術兵器
108の魔術師の魂と666人分の血と骨が練成魔術によって作られた魔銃
それから放たれた魔弾はあらゆる法則を無視し、目標を射殺す。
が、これは使用者の魔力が十分に溜まっている状態での話
ギルトを召還し、魔銃を呼び出したことでアマナの魔力は常態の1/8まで減っている。
魔弾の威力は対戦車ライフルと同じぐらいだし、影響もかなり受けるだろう。
「魔女狩りの名の下に、断罪を!!!」
ベルに向かってアガルタから放たれた魔弾が襲い掛かる。
混沌としたこの状況に危険極まりない物が乱入してくる。
その物の名は実装石。
しかも糞蟲種。
実装石の目を見れば、糞蟲かそうでないかは分かる。
糞蟲は目の底が淀んでいるのだ。
実装石は何を思ったのか、崩壊しつつあるベルの肉体を食べ始める。
気持ちの悪い笑い声を出しながらムシャムシャと。
ベルの肉体を半分くらい食べた頃だろう。
実装石は、「私はヤム飯ですぅ!!」と言った。
何故かは知らないが、近くにバールのようなモノがあった。
ジョジョはバールのようなモノを拾うと、大きく振り被って、実装石に投げる。
バールのようなモノは実装石の偽石のある部分に突き刺さり、実装石は絶命。
>「---ジョジョさん!水無月さん!彼女を止めてください!
> このままでは上湘南は死の街になります。
> ---ギルト!その豚に止めを刺しなさい」
アマナは何を言っているのだろうか?
彼女とは実装石のことか?
実装石は他に何百体もこの場にいる。
そいつらを全部殺せというのか?
それとも、既に死んでいるベルのことを言っているのだろうか?
アマナは自身の守護者を召喚すると、後ろの豚を一方的に殴らせる。
豚はそれに気付かないで、まだ自分の腕を食べている。
アマナの方は実装石の方に突撃すると、手にしていた大型の拳銃を発砲。
実装石の何匹かは死んだだろう。
この混沌とした空間は何なのだろうか?
皆が幻術に掛っているようだ。
もしかしたら、自分も幻術に掛っているのかもしれない。
その証拠に少し離れた場所に牙の主に似た人物が、古の英雄の真似をしている。
こんなことができる存在はただ一つ。
初期型実装石だ。
結局、ジョジョはただ皆を見守ることにした。
見ていて面白いから。
野獣の鬼がタックルしてリリさんは相模国造神殿の中に吹っ飛ばされた。
だいじょうぶ。
僕にはリリさんがシールドを張ったのが見えた。角も砕けて衝突の打撃は軽くなったはずだ。
大事な角を折られた野獣鬼は、憎しみの目で僕をにらむ。
来る!
僕は師子王剣をかまえた。
>ラスティーリア
>「レイジさま!あー。レイジさまー!」
>あたしはレイジさまに抱きついた。
>「わ〜。上半身はだかだ、レイジさま」
「ちょ!ちょっとー!ラスティーリア!」
突然ラスティーリアが空から降りてきて、僕にしがみついた。
やっぱり生きていた!よかった!背がなんかまた小さくなった気がするし……また素っ裸なんだけど……
「ま、まって。今はちょっと、離れて!」
野獣の鬼が僕に来る!
リーン。リーン。リーン。
リリさんの聖なる鈴の音!リリさんは無事だ!
鬼が向きを変えて、リリさんを追い屋敷の中に行く。
僕は鬼を追って屋敷へと入った。
屋敷の中で僕が鬼に追いついた時、鬼はすでにいなかった。
いたのはリリさんと……戸田くん!
戸田くんが牙の使徒になってしまった姿は見た。あの熊のような虎のような鬼まで戸田くんだったなんて。
それがいま戸田くんは元の人間の姿に戻って……ない。
腕が……
>リリさん
>「なあ戸田よ。ものは相談だが・・・手を組まないか?」
リリさんの言葉が聞こえた。
僕は息をのんだ。
誰?
あなたはだれ?そこにいるのはほんとうにリリさん?
屋敷の奥から叫び声がかすかに聞こえてくる。
>「うはwwwテラカオスwwww」
>「デプププ」(うまいでぇす。このお肉)
>「魔女狩りの名の下に、断罪を!!!」
鋭い頭痛が僕を襲った。
ベル?
ベルが死んだ?
どうしてベルがここに?
ベルの命のオーラが散ったのを奥から感じた。
僕はあやしいリリさんに目をそらさずに注意しながらギコに言った。
「ギコも感じる?この屋敷の中、とっても霊脈が変だ。みんな変になっている」
ラスティーリアに言った。
「おねがいがある。ラスティーリア。僕をベルの家に連れてって。いますぐ」
>アリア
>急に尻尾を引っ張る手を緩めたせいで、ギコは派手に転んだ。
「わにゃ!」
か、顔を地面にぶつけたにゃ。猫の尻尾を握るとはこいつは極悪人にゃ!
>ラスティーリア
>「あり?ギコ。なんであんたまでここにいるの?」
「礼司と合流したからにゃ。でも大変だったにゃ。なぜか気を失って気がついたら、
だれかにリンチされたみたいに体中が痛かったにゃ。ふしぎにゃ。
うにゃ!そんなことより、あの鬼め。霊鏡をよくも!」
ボクは大鬼を追う礼司についていったにゃ。
>礼司
>「ギコも感じる?この屋敷の中、とっても霊脈が変だ。みんな変になっている」
「うむー」
礼司の言いたいことはわかるにゃ。
あのリリは人が変わったみたいにゃ。けれど。でも。
「あれが本当のリリなのかもしれにゃいにゃ」
>「おねがいがある。ラスティーリア。僕をベルの家に連れてって。いますぐ」
「ベルの家に飛んでどうするつもりにゃ?」
ボクは礼司の顔を見上げた。礼司の足に抱きついたにゃ。さ、いつでもいいにゃラスティーリア!
裏儀式
「ベルの家に?わかりました御主人さま」
あたしはレイジさまの手をとった。どうするおつもりなのかはわからんない。
けどレイジさまがそうなさりたいのなら、召使いのあたしは御期待に答えるだけ!それが正しいメイド!
「では、いきます!」
そのまえに。
「リリ!目つき悪いわよ!」
空間転移!
「ビカイアマバル!」
レイジさまと足に抱きついているおまけのギコと、アリアもついでに一緒に飛んだ。
無事つくかしら。
空間転移のアウトポイントは晩餐したベルの洋館の食堂をイメージした。食堂に飛ぼう!
ドタ!
「お」
っと。これはなにかしら。
目の前にある白いつやつやしたもの。
あー。便器だ。
ここはトイレね。しかもなんかとってもセレブなトイレ。壁紙も床の絨毯もなにもかも異常に豪華。
皆でトイレにテレポートアウトしてしまいました。
けど広いトイレでよかっ……ひー。あたしはレイジさまの上にいた。
レイジさまから飛び降りる。
「ごめんなさいです!」
あたしは慌てた。ここはどこのトイレ?トイレのドアを開けた。
「やた!ベルの家です。ここ!」
廊下は見覚えがある。間違いない。ここはベルの家。セレブなトイレなのでそうかと思ったけど当りだ。
やっぱり霊脈が乱れていたけど、だいたいオッケーよね。カウボーイの魔術師みたいに霊脈を意図的に外に引っ張っている
のがいなかったからだわ。ずれたけど、まーまーオッケー。
あれ?ギコがいない。
あ、いた。ちゃぷちゃぷ音がする。
あたしは便器の蓋を開けた。ギコ発見。
「きゃはははは」
戸田の攻撃も避けられず、分散される屑船。
屑船はそれでも尚静かだった。
リリ、否、霊鏡は呟く。
>「お前のせいで華山理利は消えた。楽には死なせない」
そういうと屑船の修正へ取りかかる。
みるみるうちに屑船は元通りに戻っていった。
>「起きろ屑船。一体何があった?」
しかし屑船の顔は硬直したままだ。
リリは再度ナイフを向け問う。
すると…
突如屑船は口をぱくっとあけた。
黒い霊玉が屑船の喉から出ていく…
そして黒い霊玉は一つの映像を脳内にたたき込んだ。
おれは学園外の様子だった。
+++++++++++++++++++++++++++++++++++
事態は急激に狂い始めていた。
ベルの死、リリの霊鏡との合成…。
その祭典の狂いは世界に影響を与えていく…。
藤田達が見た、外の世界は風は止まり、
いつもより濃い闇に包まれている。
それはベルの家を訪ねている三人にも分かるだろう。
+++++++++++++++++++++++++++++++++++
その様子を暫くじっと見せる。
そして屑船の口はぱくぱくと動き始める。
(ヤハリ…無理ダッタカ…アノ男ノ力ヲ止メルニ…ハ…)
そう言うと暫く口を閉じる屑船。
(…ナントシテデモ華山リリノ消去ヲ防ゴウトコノ男ノ身ヲ使ッタガ…
ア奴トノ屑船ノ取リ合イニ私ハ負ケテシマッタ…
運命ニ逆ラウ事ハ…無理ダッタトイウノカ…)
そう言うと屑船の無機質な目はボロボロと涙を零し始めた。
まるでこの霊玉の気持ちを表してるかのように…。
そしてまが玉は呟いた。
(裏儀式…。)
そう言うと霊玉は口を早く動かす。
(オ前等ハ踊ラサレテルダケダ、ベルノ消滅、華山リリノ体ト融合サレタ霊鏡…ソシテ…
アノ男…ゼフィールガコノ祭典ノ勝者ニナルコトモ…
ソシテ私モ…
全テハ一人ノ人間ノシナリオ通リ…
奴ハコノ祭典以上ノ禁忌ノ祭典ヲ犯ソウトシテイルノダ…
華山リリヨ…恨ムナラソ奴ヲ恨メ…
シカシ…
……華山リリ…
我を忘れるな…
私ノ魂ガ知将ジョリアルノ手ニヨッテフランス人形ニ雇ワレ…
ソレヲオ前等ガ倒シ…コノ巨大ナチカラヲ宿リシ霊玉ノ一部トナッタトキ…
私ハ確カニ運命ガ変ワル気配ヲオ前等ニ感ジタ…
…最モ…コノ霊玉ノチカラダケデハ防グコトハデキナカッタガ…
…今回ノ敵ハ藤田ダケデハ倒セナイ…
華山リリ…オ前ノチカラモ必要ダ…
…ア奴ノ攻撃ヲ受ケタワタシハ…モウ消滅シナケレバナラヌガ…
華山リリ…オ前ハ……マ……ダ…)
屑船の顔に罅が浮き出る。
そして…
屑船は砂になった。
ぜんまいが切れたようにアリアは動きを止めた。
そして、ラスティーリアのテレポートでその状態のままベルの家に運ばれた。
目を開けたときには、相模国造の屋敷内ではなかった。
陶器のようにつるつるしたものの上に寝転がっている。
起き上がると、そこはバスタブの中だった。
全体的にサイズが大きい気がする。
腕ほどはありそうな巨大な金色の蛇口に、猫足のバスタブ。重厚なシャワーカーテンを引くと、隣はトイレだった。
「きゃはははは」
全裸のラスティーリアが便座をあけて爆笑している。中にはギコ。
ギコはまるでアルピノの山猫のようだった。
床の上には上半身裸の藤田が座り込んでいた。
肩をすくめると宙に浮き上がり、置いてあったバスローブをつかんだ。
ラスティーリアの上にかぶせる。
力尽きたようにアリアは床に落ちた。
再び起き上がったアリアは、きょろきょろと周りを見渡した。
・・・?!
・・・・・!!!!
「うわあああん!ここどこですか!!マスターがいないですぅ!!!」
アリアは絶叫した。
移動したことに、全く気づいていなかったようだ。
>125->129
館内に手を叩く音が響いた後、ひとつの静寂が訪れる。
その場には糞蟲種の実装石などいない。あるのはベルの食べ残しとそれを貪る豚、そして音の発信源である天保が座していた。
幻術を見せられていたアマナが放った魔弾の向かう先には、ベルのいなくなった歪んだ柱に衝突する筈。
しかし、それは第三者の介入によって衝突する前に勢いを止める。
「幻術に気が付かず踊らされて大立ち回りを演じ、挙句切り札を敵に奪われる。とんだ失態だな女」
手に九字の極意を記した五枚の呪符を出現させて、腕を横に振る。静止していた魔弾はきっかけを得て、いまだベルをむさぼっているムアコックへ落下した。
すさまじい轟音と衝撃が周りを巻き込み揺れる館、神の加護を受けた豚は断末魔をあげて死体の欠片も残らぬほどに消滅した。
彼の足元には不思議なことに常に灰色の煙が立ち込めていた。黒い霧は灰色の煙を避けるかのように動いて彼を包囲する。
「わかるか?ここより後に残るのは生死を分かつと覚悟を決めた者だけ。
まともな死を迎えたいのならば帰れ、いまならまだ間に合う」
呪符を扇いで微笑を絶やさず今宵は刻限であり、世界を始まりに戻す惨劇の終幕。これより先の日は許さず、夜が開けることはもうない。
それを告げて覚悟を二人に問う。返答を待つ間に隙をみた黒い霧の一部が肉体をよこせと一直線に襲い掛かる。
それを見た彼の頬は邪悪に歪む。彼はひとつの動作もなく、黒い邪悪の化身を散り散りに消し去った。
叫び再び地獄へと舞い戻ってゆく彼らを横目にし、口からなにかを取り出す。
それは天保の心臓と一体化していた霊玉だった。それをころころと掌でいじくりまわしている。
「腐れ侍が最初にでしゃばったおかげでちと遅くなったが、これでこの世界は終わりだの」
霊玉が強く光る。この輝きだけは二千年の間、わずかたりとも濁ったことはない。
この館とは別、本来の世界が異変を起こす。月隠れた空は七色に輝き、星が消える。
地上にある植物は成長を止め、土へと身を潜めて種に変わる。これは地の時がすさまじい勢いで戻っている証拠である。
< 三途の川。ゼフィールがアッシュを犯し終えた直後。>
三途の川の彼岸は冥府。四季に囚われない花々が咲き乱れ、霧越しにも神秘な美しさに輝く岸辺。
此岸は現世。雑草が生い茂りどこかの田舎の川岸と言われても得心しかねない。
現世の岸の草むらを揺らして一匹の鼠が川へと走りこんだ。
死せる魂は三途の水に濡れる。だがその鼠はアメンボが水面に浮く様に、足元に水紋を広げて水の上を
ちょこまかと歩いていく。
薄暮の死の川を渡り、胡坐をかき川面に映る地上を観察しているゼフィールの元に鼠は来た。
死水に浮く鼠にはもう一つ奇妙な部分があった。鼠は人面であった。
鼠は皺枯れた老人の声でゼフィールに話しかけた。
「おぬしとて全知全能には遠いのう。モートの力量を見誤っておったようじゃ」
>>100 モート
>「敖遊の儀に囚われる貴殿の思う様に事は進まぬ。ベルカーマンは敖遊の儀の奴隷である。奴隷に従う云われは無い」
老人の顔を持つ鼠、ノスフェラトゥは笑った。この鼠はノスフェラトゥの魂の姿である。
大地があるかぎり不滅の命を持つ邪悪な地の精霊ノスフェラトゥは、ゼフィール同様に三途の川の水を超越していた。
「崇拝する信者も絶え、死滅した宗教の神にこれほどの神力がまだあろうとはのう。
ウガリットの風神モートは霊宝を得んと目論むだけではなく、敖遊の儀自体を己の支配下に置くつもりのようじゃ。
たまげた奴よのう!三位一体者ベル・カーマンも戸惑うたことじゃろうて。
おぬしが御しえなかった叢雲をモートは歯牙にもかけておらぬぞ。おぬしの力を超えておるのではないか?」
ゼフィールは怒ったのか視線すら合わせない。下界を覗いたままだ。
「世間話をしに折角久しぶりに来たんじゃ。愛想の無い奴め」
ノスフェラトゥは愉快になった。
>>116 水無月
>「あはははははははははははは!」
>返り血を浴びて歓喜の笑みを浮かべるその様は、闘争と殺戮の女神アナトに酷似していた。
>結果、モト神のトラウマが呼び起こされる形となり、これが眷属にも影響を与える形となる。
「小気味良い小娘じゃ。わしの肉体が滅んでおらなんだら配下にしてやったのにのう。
・・・肉体を失うとは寂しいものじゃ。物理世界の現世で是といった事が出来ぬ。惨めよのう。
さて、じゃがこの小娘、モートの暴虐を見誤っておるわい。心を挫くどころか怒りの炎を燃え上がらせるだけじゃろうて」
>>115 ムアコック
>「余は汚れた悪霊の縁者。七つの大罪『暴食』を背負う豚。余はあらゆる秩序の貪欲な破壊者である。敖遊の儀も例外ではない」
> 哄笑しながらベルを御柱から毟り取り始めた。御柱に亀裂が走っていく。
ノスフェラトゥの顔色が変わった。ゼフィールに叫ぶ。
「よいのか?御柱が倒れるぞ!」
>>121 >御柱は軋み揺らぎ狂いが生じていた。
「豚め、やりおった!御柱を傾かせおったぞ!よ、よいのか?ゼフィール!おうおう、見よ。因果律が狂い出したぞ」
ノスフェラトゥは恐れ慄いた。何もしないのか、と叱責する目でゼフィールを見る。
しかし下界のある様子に気がつき表情が冷徹な策略家に戻った。
「初代牙の主ハットゥシリが失脚して後は、牙の一族は総崩れじゃのう。なあ、そこを間抜け面で逝く二代目よ!」
三途の川を遠く渡り行く天保光の魂に笑いかけた。
「我が友ゼフィール!わしにもまだ勝機はありそうじゃ!迂闊な牙の主殿のおかげでのう!」
>>90 天保
>「死んじゃったらしゃあねぇわな。よっしゃ覚悟決めて行くべ!」
>足を進めるごとに川が深くなり、死んでいるからなのかまったく冷たく感じないまま川を渡っていく。
>>119 神憑るもの
>「なあに野望などない。少々この時代のものたちに剣技を自慢したくてね。二刀流のあやつもいないこの場は早々に退場しよう」
>歴史に埋もれた英雄の魂は肉体から漏れ、また新たな魂が憑依する。
混沌の坩堝と化した相模国造屋敷神殿に皺枯れた老人の声が突如として響き渡った。
「応とも!わしが憑依してくれるわい!」
其の時、幾つもの空隙が重なっていた。
其の時、ベル・トリニティはムアコックに喰われつつあった。
其の時、実装石は混沌を助長していた。
其の時、狂風の神モートを挑発する豪胆な少女がいた。水無月はモートを侮辱し、モートの気を引いていた。
其の時、牙の主は宿主の天保光の魂を死後の世界に追放した。
其の時、牙の主は自らが己に宿る魂を求めた。宿る魂が無ければ死に体となる弱点を晒した。
そこに老獪なノスフェラトゥが乗じた。
ランドマークタワーで肉体を失ったノスフェラトゥは霊体となり、再起の機会を伺っていた。不死のノスフェラトゥにとって
年月を持つのは苦役ではない。己の肉体再生までじっくり時を経るつもりだった。
霊宝争奪の儀から退場せざるをえなかったノスフェラトゥだったが、この千載一遇の好機を見逃さなかった。
強引にノスフェラトゥの魂魄は牙の主の肉体に憑依した。
『牙の主、ぬかりおったのう!』
>>138 霊玉
>「腐れ侍が最初にでしゃばったおかげでちと遅くなったが、これでこの世界は終わりだの」
『道具である霊玉よ、黙りおれ!霊剣叢雲の愚を冒す勿れ。霊具は己の意思で介入を禁ずるが敖遊の儀ぞ!』
牙の主の肉体を乗っ取ったノスフェラトゥは両手を組むと、胸を強烈に打った。肋骨が砕け、肺などの臓器が飛び散る。
「げええふ」
ノスフェラトゥに体の自由を奪われた牙の主は嘔吐した。
足元に霊玉が落ちた。
「牙の主!この肉体はもう駄目じゃな!」
牙の主の体に致命傷を負わせるとノスフェラトゥの魂は体外に出た。
水無月の挑発に動揺するモートに為す術なく立ち尽くす獣人の一体に人面の鼠霊はすぐさま入り込んだ。
ハムスター獣人トットコは肉体を乗っ取られた。
「やはり鼠が馴染むわい!」
しかし巨大な霊力を持つノスフェラトゥの魂の器としては人間は勿論、獣人の体でも持たない。
トットコの毛穴という毛穴から流血が始まる。肉体が崩壊しだす。そのためにノスフェラトゥは安易な憑依が出来なかったのだ。
だが勝算があった。
「魔法術式で練り上げ造った肉体ではないが、土台の弱い肉体でも構わぬ!これが手中にあるのなら!」
トットコは霊玉を拾い上げた。
霊玉の霊力を使い、ノスフェラトゥはトットコの肉体を瞬時に組み替えた。
鼠に良く似た貧相な老人の姿になった。
霊玉の力によって完全なる肉体をノスフェラトゥは手にいれた。
いきなり誰かがこの部屋に突入してきたかと思うと、すぐに空間転移をしてこの部屋から出ていった。
いったい何がしたかったのだろうか。
屋敷内に手を叩く音が聞こえた。
その音と同時に、何百もの実装石が獣人に変わり、豚がベルの肉体を美味しそうに食べている。
どうやらジョジョも幻術に掛っていたようだ。
獣人達の糞蟲っぷりに、頭の隅で本当に実装石と混同していたようだ。
音の発生源の方を向くと、牙の主が五枚の札を持ち、アマナの放った銃弾を空中に静止させている。
今、気付いた。
この土地の霊脈の力や、この場の力の流れが整えられている。
寸分の乱れも無い程に。
霊脈の流れ全てを牙の主が掌握しているのだろうか。
兎に角、牙の主が幻術を解いてくれたのは確かだ。
牙の主はアマナの銃弾を操ると、まだベルの肉体を食べている豚にぶち当てる。
屋敷内に衝撃と轟音が走る。
今の銃弾の威力はとんでもなく凄い。
あの豚が影も形もなくなっている。
>「わかるか?ここより後に残るのは生死を分かつと覚悟を決めた者だけ。
>まともな死を迎えたいのならば帰れ、いまならまだ間に合う」
「私は暇を潰したいだけですしぃー
復讐の機会が無くなった今、霊宝を巡る戦いなんて興味ありませんー」
ジョジョは完全に舐めきっている。
だが、そんなジョジョに驚愕の事態が!
突如、屋敷内に変な、そして聞き覚えのある老人の声がした。
その声が聞こえた次の時、牙の主の力の質が変わると、急に自身の体を傷付け始めた。
牙の主の足下に玉が落ちると、牙の主の力の流れは元に戻る。
一人の獣人が玉を拾い上げると、魔法少女のように変身。
禿げ爺になった。
あの禿げ爺を見ていると、自分が宇宙警備隊を除名されたことを思い出す。
完全に自分の責任なんだが、あの禿げ爺に会っていなかったらと思うと……
ジョジョは腰に差してある刀を抜こうとしたが、何故か遠くの床に突き刺さっている。
幻術により、バールのようなモノだと思って、投げてしまったのだ。
近くに何かないかと探すと、豚がいた場所の近くに一振りの剣が落ちている。
確かベルが持っていた剣だと思ったが、所有者がいないのだし、勝手に使っていいだろうとジョジョは思った。
ジョジョは霊剣を拾い上げると、禿げ爺の近くまで歩いて行き、剣の平で禿げた頭を軽く叩いた。
「テメーのせいで仕事がクビになっちまっただろうが。
どう責任取ってくれんだよ、おい」
完全に責任を禿げ爺に擦り付けているジョジョであった。
>リリ
>「なあ戸田よ。ものは相談だが・・・手を組まないか?」
>「よく考えろ。――――他の霊具保有者が霊玉を得たとき、私たちと願いを口にすると思うか?」
「どいつも・・・こいつも・・・」
鋭太郎の顔は悲しみと怒りに歪んだ。
「どいつもこいつも俺を利用しようとする!
華山!お前も俺にそう誘うのか!!お前も!」
鋭太郎は金護の豪腕でリリを殴り倒した。
礼司達も屑船も眼中には無い。もしかしたらリリも。
「グアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!」
鋭太郎は気を放ち鬼化した。筋骨隆々の半鬼半獣の牙の使徒に。ところがもう一度咆哮した。
「ゴアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!」
変異第二段階。
体が肥大しあの熊と虎を掛け合わせた野獣鬼の姿になった。しかし今度は屑船の助けなく独力でだ。
変身の記憶を頼りに強引に変異した。
その為に野獣鬼コクエイは不完全な変異体に留まった。
皮膚は巨大化に合わずに、ところどころ裂けて筋肉組織が露出している。血が滴り落ちている。
双眸から流れる血は涙のようだ。
「俺は!俺は!俺が望むのは、自由!それだけだ!ああ!ああ!牙の主の牙を受けなかったら!
上一中に霊宝の呪われた祭祀が無かったら!皆、皆、穏やかに、平凡な中学生活があったのに!
あの頃に戻してくれ!あの頃に!ああ!ああ!あああ!金護!殺すつもりはなかった、ああああ。
殺したくなかった、なかった。あああああアアアアアアアア!
グアアアアアアアアアアアアアアアゴオオオオオオオオオオオオオオオ!」
鋭太郎の精神は崩壊した。
「オオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオ!」
本当の狂気に突入した。本物の野獣に落ちた。
リリをつかみあげるとまた殴った。
リリは吹っ飛び、奥へと猛烈な勢いで転がった。
野獣鬼コクエイが獣の様に四足になって走り追う。
屑船の遺体の砂を踏みにじり追う。
「グルルルルルルルルル」
コクエイは御柱の間にまで来た。
>ジョジョ
>「テメーのせいで仕事がクビになっちまっただろうが。
>どう責任取ってくれんだよ、おい」
「グアウ!」
コクエイは金護の腕を伸ばした。腕が十数メートル伸びてジョジョの背中を襲う。
ジョジョは吹っ飛んだ。
「グルルル?」
金護の腕で霊剣をコクエイは握った。
しかしそれが何か狂気に落ちたコクエイには判らなかった。
「ゴオオオオオオオオオオオオオオオウ!」
目の前の者を攻撃する狂戦士と化していた。
水無月とアマナに狙いを定めた。嫌な聖者の臭いがする。
鋭太郎に吹き飛ばされた拍子で、ジョジョはノスフェラトゥにキスをし、ノスフェラトゥの金玉を潰す程、思い切り力を込めて握り締めてしまった。
水無月の挑発にモートは一時怯んだ。渦巻く砂嵐の回転速度が弱まり、渦の太さも減じた。
しかしそれは怒号の爆発の溜めに過ぎなかった。
「我を愚弄するか、不遜な小娘!」
雷鳴の様な大声が轟いた。魔神殿が揺れる。
灼熱の熱風が水無月を襲った。しかし風は止まった。
>ノスフェラトゥ
>「魔法術式で練り上げ造った肉体ではないが、土台の弱い肉体でも構わぬ!これが手中にあるのなら!」
>霊玉の力によって完全なる肉体をノスフェラトゥは手にいれた。
「高慢無礼な汚らわしい鼠!何故!
牙の主か!下策をしおって!」
>アマナ
>「---ギルト!その豚に止めを刺しなさい」
「我の守護せし皇帝に触れてはならぬ!」
ギルトが灼熱の豪風と、高速で飛散来襲する砂礫に灰燼と化す。
砂の竜巻は唸り、アマナと続いて水無月に降りかかった。熱風は二人から離れない。二人を包んだままだ。
「ファラフェルにしてくれる」
シリア(ウガリット)の揚げ物料理の様に二人を焼き殺すつもりだ。
>コクエイ
>「グルルル?」
>金護の腕で霊剣をコクエイは握った。
>水無月とアマナに狙いを定めた。嫌な聖者の臭いがする。
二人に逆巻きながらモートはコクエイに告げた。
「既に小娘どもは火鉢の中におる。狂気の野獣よ。我が主君になってやろう!」
霊剣をモートを徴収する!
「この剣は皇帝ムアコックの物である。受け取れ我の皇帝よ」
モートの手が滑り、霊剣は天保の手に渡った。
だが、霊剣の所有資格者は、天保でも、ムアコックでも、ノスフェラトゥでも、ジョジョでも、コクエイでもなく、ベルのままだった。
モートは砂嵐の塊りで、手は無いのでは?
物の例えと言うものであった。
モートが飛ばした霊剣が天保の手に渡ったのは事実だ。
>129
>「---ジョジョさん!水無月さん!彼女を止めてください!
「あははははは、あは、あははははははははははははははは!」
水無月つかさは正真正銘の狂気に陥っているわけではないが、自分の演技に酔い痴れている。
こんな状態では、暫くは何者の言葉も届くことはないだろう。
ただひたすら、近くに居る獣人を惨殺し続けていた。
>140
「あは―――あら、懐かしい顔が居るわね」
鼠のような姿をした男の存在に気付き、何故かピクシーをCOMPに戻して、解体作業を中断した。
つかさが声をかけるよりも前に、ジョジョに絡まれている。
「まあ、良いか。前夜祭で脱落するようなのに、今更何ができる訳でもないし。
それより―――」
ノスフェラトゥをも無視し、渦巻く砂嵐を見上げる。
>「我を愚弄するか、不遜な小娘!」
「お気に召さなかったかしら?演技力には自信があったのだけど―――」
>145
つかさが言葉を終えないうちに、強烈な熱風がつかさを襲う!
だが、つかさの着ている服は特別な代物―――呪練制服だ。
霊的な存在と戦うことを前提に作られているため、霊的にも物理的にも高い防御効果を発揮する。
一般的な魔術はおおよそ無効化するのだが、それでもモト神は腐っても神、呪練制服の防御効果を以ってしても、その身を焼かれる事になろう。
モト神の思惑通り、全身を焼かれ、真っ黒な灰が残された。
>「幻術に気が付かず踊らされて大立ち回りを演じ、挙句切り札を敵に奪われる。とんだ失態だな女」
動きを止め、辺りを確認する。
蟲、豚、ジョジョ、水無月、そして、あの男
「---なるほど、ここの異様な雰囲気はそのせいだったのですか
で---先ほあの人の主人は---あなたなんですかね?」
さぁという感じで空中に留めた弾丸を豚に撃ち込む。
魔力計算をし忘れていた。本来はあんな呪符で止められるような代物じゃない。
ただ、魔力を使いすぎた状態で撃ったから、弾丸も弱体化したのだろう。
>「わかるか?ここより後に残るのは生死を分かつと覚悟を決めた者だけ。
まともな死を迎えたいのならば帰れ、いまならまだ間に合う」
「ご冗談を---我々魔女狩りに棺は無用
肉は土に、骨は塵に、血は水 私に墓は無いのですよ
まともな死などこの体は望めないように呪われているんですよ
だから、退きません。魔術協会の人間としてこの事態を収めなくてはならない」
そう自分の覚悟を言い、銃を構えなおす。魔力は少しずつだが回復し、4/8まで溜まった。
もう半分はギルトらに分け与えたので回復はしないだろう。
だが、これならばあの呪符で止められないだろう。
>「やはり鼠が馴染むわい!」
ムアコックの獣人が老人へ変身していたのが見えた。
何者かは知らないが、かなりの魔力を有するのは理解できた。
ジョジョが絡むのも見える。因縁があるのだろう。
>「グアウ!」
そのジョジョが突然の乱入者に弾き飛ばされる。
この状況なら何が出てきてもおかしくはないことはわかっているが、
鬼が出るとは思わなかった。
>「ゴオオオオオオオオオオオオオオオウ!」
>水無月とアマナに狙いを定めた。嫌な聖者の臭いがする。
どうやらこちらに敵意を持たれたようだ。
二対一いや二対一対一か、あまりいい状況でもないか
>「我の守護せし皇帝に触れてはならぬ!
>ギルトが灼熱の豪風と、高速で飛散来襲する砂礫に灰燼と化す。
いや、もう一人いたか、
ギルトが攻撃をうけたことを察するが、別にそう驚かない。
ギルトの属性は炎、いくら強力な火炎と砂塵の攻撃でも彼らを滅することはできない。
消えたのは彼らの判断、元々の攻撃対象を失ったのだから、存在する意義は無かったからだ。
>砂の竜巻は唸り、アマナと続いて水無月に降りかかった。熱風は二人から離れない。二人を包んだままだ
「くッ!焼き殺すつもりですか!!!」
そういって避けようとするも避けられずに砂嵐の中に巻き込まれる。
無常なる砂嵐は中の二人を焼き殺そうとする。
轟音が部屋の中に響く
「---レギオンたちの歴史は古く、我々魔術師協会が誕生する前から存在していたそうで」
砂嵐の中からアマナの声が聞こえる。
「邪神アズライールを屠ったのも、彼らレギオンだったそうです」
砂嵐の中から徐々に人影が浮き出てくる。
「そんな彼らをあなたのような三級神にやられるとでも?」
出てきたのは、ギルトの鎧と剣を纏ったアマナとその腕に抱えられた水無月だった。
「危ないところでした。もう三秒詠唱が遅かったら二人とも焼かれ死んでいましたから」
アマナはレギオンを召還するのではなく、装甲として身に着けたことにより、砂嵐から身を守ったのだ。
ちなみに灰になったのは、二人の上着。
そういいながら不適にアマナは笑った。そして、モートを見て
「しかし、あなたも間抜けですね
守るべき主人も無くなったというのに」
と一言言って壁にアガルタを向ける。
「すいません、二回目の前言撤回です。
この場は退散させてもらいます。」
轟音と共に壁に大きな穴が開かれ、外へ通じる。
「ジョジョさん!この場での戦いは不利です。ここは退くことを勧めます。」
「うわっ!」
背中に何かがぶつかり、それによりジョジョは前に押し出されてしまう。
目の前にいるのは、禿げた爺の吸血鬼。
悲惨なことになってしまった。
ジョジョは禿げ爺の唇にキスをしてしまう。
何故か屋敷内に、ズキュウウウウン!といった効果音が鳴り響く。
「す…すみません。
な、何者かが私を押し飛ばした……と、兎に角、事故ですからねっ!!」
ジョジョは吸血鬼に弁明をするが、聞いてもらえるだろうか?
吸血鬼のあそこを思い切り握ったことで、もしかしたら、やらないかという状況になるかもしれない。
そのことに、ジョジョは何よりも恐怖した。
ウルトラマンだって、後ろの穴は処女でいたいのだ。
>「ジョジョさん!この場での戦いは不利です。ここは退くことを勧めます。」
アマナが撤退の為に、屋敷の壁に大穴を開ける。
アマナはジョジョに忠告をするが、ジョジョにとっては余計なお世話だ。
「大丈夫ですよ。私はこの人に責任取ってもらうだけですから。
それに、私は儀式の為に戦わないって言ったでしょ。
私はM78星雲で犯罪者にまで落ちぶれたくない」
ジョジョはノスフェラトゥの腕を掴むと、アマナに対して言った。
【ベル宅】
藤田、ラスティーリア、ギコ、アリアがベル宅のバスルームにテレポートアウト。
ギコは便器の中につかり、ラスティーリアの笑い声が響き、隣では混乱したアリアが絶叫を響かせる。
そんな四人の前に一人の執事が立っていた。
「時空震を感じてやってきてみれば、ベルお嬢様の御学友藤田様、ラスティーリア様、ギコ様、そして見知らぬ人形・・・
学校へ行かれたと安心しておりましたのに、如何なさいましたか?」
突然の出現に慌てるでもなく、丁重に挨拶をする執事、ジョドーだった。
上一中に出現した柱から発せられる黒い稲妻により、神湘南一帯は消滅しつつあること。
儀式が行われている上一中がもっとも安全である事を藤田たちに伝える。
「ただいま留守を守る私たちが総出で結界を張り事象の歪みを抑えております。
しかし、消滅の黒き稲妻、世界律の歪み、時間の逆行を止める術はございません。この屋敷も時間の問題かと・・・。」
そう締めくくったその顔には何の表情もなかった。
ただ淡々と事実のみを伝えるジョドーだった。
三途の川から下界を見下ろしていたゼフィールは、ノスフェラトゥが来訪したのに気がつきながら
目すら合わせなかった。
>ノスフェラトゥ
>「おぬしが御しえなかった叢雲をモートは歯牙にもかけておらぬぞ。おぬしの力を超えておるのではないか?」
「僕の立場が僕の枷になっているだけさ」
小さく呟いたがノスフェラトゥには聞こえなかったようだ。
ゼフィールは胡坐座で右ひじを右ひざに乗せ、その手で顔を支えている。人差し指で頬をさっきからトントンと
叩いている。ゼフィールは苛立っていた。
憎らしくもノスフェラトゥの嫌味は図星だ。
「あ、……もう」
ゼフィールが膨れっ面をする。
不快な出来事が別の所でも起きた。
>ドドの第二霊玉
>アノ男…ゼフィールガコノ祭典ノ勝者ニナルコトモ…
「目聡いリリにいらない事を吹き込むなよ、もう。やだなあ」
>ノスフェラトゥ
>「豚め、やりおった!御柱を傾かせおったぞ!よ、よいのか?ゼフィール!おうおう、見よ。因果律が狂い出したぞ」
ノスフェラトゥは慌てたが、ゼフィールは膝を打った。立ち上がる。
「やったああああーーーーー!やったやった!やった!」
ゼフィールは飛び上がって喜んだ。
「ベル・カーマンの三位一体をムアコックの奴、解除した!
叢雲の野心を砕いたぞ!」
しかしすぐにゼフィールは眉をしかめた。
>牙の主
>歴史に埋もれた英雄の魂は肉体から漏れ、また新たな魂が憑依する。
「魂が無いから他の魂を呼ぶだって?やめておけ……。あっ」
>ノスフェラトゥ
>「応とも!わしが憑依してくれるわい!」
ノスフェラトゥの鼠形の霊魂が現世の岸へと走り去る。
ゼフィールは肩をすくめた。
「冷静沈着なノスフェラトゥが……。なんとまあ、霊宝争奪の祭礼は心を狂わせるね。
豚には気をつけるんだな、ノスフェラトゥ。豚は怖いよ」
「乙事主!」
ゼフィールは忠実な従者、乙事主を呼んだ。
アッシュとの交わりに遠慮して乙事主は冥府側の岸辺にまで下がっていた。水の上に伏せて待っていたが、主人を
迎えにやってきた。
「ノスフェラトゥはまた肉体を手にいれた……僕はうらやましいよ。
肉感を感じるほどエクトプラズムを濃密にしようとも、本物の肉体とは違う。
肉体を失った者は惨めさ」
三途の川を勇んで渡っていく天保光の魂をゼフィールは見た。肩をすくめる。
>天保
>「死んじゃったらしゃあねぇわな。よっしゃ覚悟決めて行くべ!」
生者と死者の決定的な差。
それは暖かい血の通う肉の体を持つか否かである。
ゼフィールは三途の川の水面に映るノスフェラトゥ復活を寂しげに見つめた。
ゼフィールの瞳に妖しい光が点る。
「僕も肉の体が欲しい」
ゼフィールは乙事主に跨った。
「霊具叢雲は沈黙し敖遊の儀はようやく本来の形に戻りつつある。行くよ乙事主。僕の仕事も仕上げの時だ。
……ん?」
>礼司
>「おねがいがある。ラスティーリア。僕をベルの家に連れてって。いますぐ」
ゼフィールは礼司のしようとしている事を感じ取り、まぶたを閉じて首を振った。あまりにも美味なワインでも
飲んだかのように。
「礼司、きみは本当に期待を裏切らない。素晴らしいよ、大好きだ」
礼司はベルを救うつもりなのだ。
「僕の言った通りだろ」
乙事主に自慢気にゼフィールは言った。
>48
>「決めるのはきみだ。
>リリの凍った心を春解けさせ、たわいもないオカルト好きの少女にベルを戻せるのはきみしかいないかもしれないけどね。
>さあ、もうお行き。ラスティーリアにわるい」
ゼフィールらは三途の川の、霧の中に消えた。
?????????????
がぼごぼがぼごぼがぼ。あっぷあっぷ。うにゃー。ひー。
>ラスティーリア
>あたしは便器の蓋を開けた。ギコ発見。
>「きゃはははは」
「ふ、ふ、ふ、ふ、ふ、ふ、ふ、ふ、ふ、ふざけるにゃああああああああああああああああああああ!」
ボクはわき目もふらずひたすらラスチーに爪攻撃したにゃ!
この女は一度シメておかないといけにゃい!
「それは余の剣である!よこせ!」
自らの爪と、アマナの銃撃によって血達磨になったムアコックが叢雲の剣を奪い取る。
遂に霊具の一つ、霊剣・叢雲の剣をムアコックが所有した。
「うおう!」
ムアコックの怪我が瞬く間に治癒する。
「ぶひひひひひひひ!これが霊剣!偉大なる哉!モート風霊神!
霊鏡はどこだ。霊玉はいずこだ!余に差し出せ、下郎どもよ!
モート大神より王権を神授された余が全てを握るのだ!」
>ノスフェラトゥ
>混沌の坩堝と化した相模国造屋敷神殿に皺枯れた老人の声が突如として響き渡った。
>「応とも!わしが憑依してくれるわい!」
>「魔法術式で練り上げ造った肉体ではないが、土台の弱い肉体でも構わぬ!これが手中にあるのなら!」
>霊玉の力によって完全なる肉体をノスフェラトゥは手にいれた。
黒い鎧まで生成し威風堂々と立つ吸血鬼の長ノスフェラトゥの突然の出現にムアコックは固まった。
ノスフェラトゥを凝視する。
金縛りにでもかかったのか?
「お、おお」
数瞬の沈黙の後、ムアコックが低く重く吐息した。
ノスフェラトゥに近づく。
邪魔なジョジョをなぎ倒す。
ムアコックはノスフェラトゥの前で、身をかがめた。
叢雲剣を地に刺し、手と手を組み、両膝をつき、臣下の礼を取った。
「ノスフェラトゥ様、モローでございます。私の研究成果である豚人間を御覧頂きたく・・・」
言葉が途切れた。
ムアコックが組み合わせた自分の手を不思議そうに見つめる。
紅蓮の色の皮膚に棘だらけのオークの手だ。
「この手はどうしたことか?私は・・・」
「霊剣は私のものだ!貴様らのものではない!!」
何の脈絡も無しにフリーザが館の中に現れる。
TRPG系スレにとっては日常のことだから、誰も騒ぎはしない。
フリーザはムアコックが手中にしていた霊剣を奪うと、近くに座っていたベジータを無理矢理立たせ、ベジータの尻穴に霊剣の柄をぶっ差す。
「アーッ!」
これはムアコックが自分の手を見て、脳内で閃いたことであった。
だが、この光景を他の者達も脳裏に描く。
この光景で何かを思い付く者もいるだろう。
面白き事態に繋がるよう、どこかの誰かは祈っていた。
このままでは地球が崩壊するぞ!
藤田達は瞬間移動を行った。行き先はベルの家のようだ。
「困った奴だ。助けるべきものに優先順位をつけられぬとは」
言葉とは裏腹に、リリの表情は穏やかだった。
再び腕の中の屑船に視線を落とす。
屑船―――いや、第二の霊玉はリリに周囲の状況を見せた。
裏儀式。用意されていた奇跡。そして、約束された勝利。
今回私たちは抑止力として召喚されたはずだった。だがそれすらも、仕組まれていたという訳か。
話し終えた屑船の身体は、砂と化し床に崩れ落ちる。骨すら残らなかった。
これが、最期の最後まで自分らしく生きられなかった少年の最期だった。
砂の中に落ちていた霊玉を拾い上げる。
玉の表面に水滴が落ちた。ひとつふたつ。みっつ。
リリは目元を拭った。
「人の命を糧とした霊玉よ、忠告には心から感謝しよう。
だが、それでも行かねばなるまい。時間も無い。・・・藤田か。間に合えば良いのだがな」
>戸田君
>「どいつもこいつも俺を利用しようとする!
>華山!お前も俺にそう誘うのか!!お前も!」
「利用だと?自惚れるな!戦う意志がないなら今すぐ去れ!
神ですら理に縛られている。愚か者め、真の自由などどこにも存在しない!」
戸田は理利を殴り倒した。それが答えだった。リリの細い身体は軽々と飛ばされた。
地面に激突し、体を丸めて痛みに耐える。
戸田は血を吐くような告白をした後、完全な野獣と化した。
彼が渇望していた自由とは、死んだ友人を蘇らせ人に戻ることなのだろう。
「・・・お前の望みを叶えると言っただろう?なぜ信じなかった。
野獣に堕ちて逃避する気か?そんなものは贖罪にすらならぬわ!」
口にしてから気づいた。今の戸田ならばハットゥシリの気配を感じても不思議ではない。
そういう意味では、理利がハットゥシリを受け容れたこと自体が仇となったと言えるだろう。
戸田はリリを掴みあげた。 狂った戸田の攻撃は力を増していたが、理性が無いため隙も大きい。
だが避けなかった。
ダメージを回復しきっていないところに、狂戦士と化した戸田の一撃が襲った。
シールドでも、全てのダメージを遮断する事は出来なかった。
リリの体は血の帯をえがき、床に崩れ落ちた。
再び目を開けたリリは苦しげに咳きこんだ。ゴボッとくぐもった音がして血の塊を吐き出す。
戸田の姿は既に消えていた。
喉が潰されなかったのは僥倖だった。浅い呼吸を繰り返しながら、自らに回復魔法を施していく。
再び起き上がれるようになるまでには、しばらく時間が必要だった。
「・・・・・・・・・・・・・・・人の体だと思って、随分好き勝手やってくれたじゃない?」
回復した理利はくしゃくしゃと髪をかき回そうとして顔を顰めた。
手が血で穢れている。宝鈴に血がつかなかったことが救いだった
舌打ちして体に残った血を消し去り、立ち上がる。
随分と空間がねじれているようだ。そして、扉一枚向こうは館の最深部らしい。
理利は、手にもったままだった第二の霊玉を眺めた。
ひび割れた玉は崩壊寸前だ。放っておけばやがて消滅するだろう。
理利は逡巡の後、僅かに残った屑船の液状化能力を使って霊玉を取り込んだ。
「人でもない、霊具でもない。ましてや神でもない・・・ここにいる私は一体何かしらね」
自重気味に呟いた理利は、自らの力以外をすべて封印した。
最深部の状況がわからない以上、所持しているものを悟られる訳にはいかなかった。
御柱の間にたどり着き、まず最初に目に付いたのは獣人達の死骸だった。
狂った戸田が手当たり次第に攻撃している。雑魚はあらかた息絶えたのかもしれない。
アマナと水無月の姿には気づかなかった。
・・・牙の使徒達はどうしたのだろう。
そう考えた理利の脳裏に、おかしなビジョンが脳裏を横切った。
・・・今のは何?ノスフェラトゥと牙の主との関係を暗示するもの?
・・・だとしたら、我ながら趣味が悪すぎる!
動揺しつつも理利は気を取り直し、再び周囲を観察した
冥府神モートを見つけ、ざわつくハットゥシリをどうにか押さえる。
ジョジョはオークに突き飛ばされていた。そして・・・
「ノスフェラトゥ!もう復活したの?!」
霊玉を手にしたノスフェラトゥ。その前には、霊剣を持って臣下の礼を取るオーク。
理利の目が隅で止まった。そこには霊玉を抉り出された牙の主――― 天保が倒れていた。
天保の体にはアサシンのサーヴァントとノスフェラトゥの痕跡が残っていた。
一体何があったのだろうか。
二代目牙の主だったとはいえ、天保の傷はどう見ても致命傷だ。
理利は迷った。生き返らせるか、それとも放置するか。
魔力を無駄にするなとハットゥシリが囁く。正論だが理利は首を横に振った。
「天保君には借りがあるの」
天保の周囲に結界を結ぶ。獣人程度の攻撃なら十分耐えるだろう。
「天保君。あなた立派だったわ。最期の最期まで牙の主に抵抗していたわね」
牙の主となった天保は、圧倒的有利な状況であっても止めを刺さなかった。
天保の意識が邪魔をしていたとしか考えられなかった。
「生き返ることが幸せかどうかは分からないけれど・・・このまま死ぬなんて悔しくない?」
理利は治療を施した。蘇るか、このまま常世の住人になるかは運と本人の気力次第だ。
天保から離れ、極力目立たないようにして移動を開始した。
混沌とした状況が味方してくれる。
目指すは、傾き因果律が崩壊しかけている御柱だ。
このまま放置すれば、地球はおろか上一中を除いた全てが無に還る。
どこまで鎮められるかは分からないが、足掻いてみるしかないだろう。
>ムアコック
>「ノスフェラトゥ様、モローでございます。私の研究成果である豚人間を御覧頂きたく・・・」
>「この手はどうしたことか?私は・・・」
「其方の肉体は滅んだのじゃ。だが案ずるには及ばん。其方は新たな強靭な肉体を得たのじゃ。
其方の寵愛した豚の体じゃよ」
跪くムアコックが突き刺し立てた叢雲の霊剣の柄をノスフェラトゥは握った。引き抜く。
右手には煌く叢雲の剣、左手には輝く霊玉。
混沌の坩堝の中、ノスフェラトゥは二つの霊具を所有した。
「わしが最後の勝者となるようじゃのう」
感慨深く矜持を誇りながらノスフェラトゥは嘯いた。
そのノスフェラトゥに精神までも獣に堕ちた黒鋭が唸る。
「鎮まれ野獣よ」
一瞥で圧倒し黒鋭童子をノスフェラトゥは黙らせた。
黒鋭童子は、調教師に睨まれたサーカスの熊の様に縮こまった。
吸血鬼の始祖ノスフェラトゥに、黒鋭の吸血鬼の血が服従した。
ノスフェラトゥは霊玉をムアコックにかざした。霊玉の中に赤い小さな稲妻が走り出す。
稲妻の一つが霊玉の表面を越え、光の線となってムアコックの額に突き刺さった。
ムアコックを放電が包む。
「死滅した信仰の暗黒神モート。其方の頼ったムアコックは消滅しおった。ここにおるのはわしの忠実な家臣モローよ。
冥府の神モートよ。其方も己の肉体を持たぬ死霊に過ぎぬ。肉体を持たぬが故にムアコックを使役したのじゃろうて」
ノスフェラトゥは霊剣を振り上げた。
「天叢雲剣(あまのむらくものつるぎ)の本来の名は草薙剣(くさなぎのつるぎ)じゃ。
一振りにて多くを薙ぐ水霊の剣よ。この剣はこう使うのじゃ!」
ノスフェラトゥは霊剣をモートへと振った。
水流の竜巻が剣先から発生し砂嵐のモートを襲った。凍える水竜巻がモートの炎熱を殺いでいく。
「霊鏡をわしは永く所有してきたのじゃ。霊具の扱い方は誰よりも詳しいぞ!」
その頃、地球の反対側では、全ての魔の頂点であり絶対的な存在である神祖ドラキュラ大魔王と
ベルの親戚のベルナールが地球の命運を掛けて戦っていた。
しかし、この世の誰もが上一中で起きている霊杯戦争を知らぬように、
ここの者達も、よもや同じ時間に別の場所でも地球の危機が起こっているとは知るはずが無かった。
だが、その霊宝を巡る戦いの裏で行われている地球の危機は、USDマンの手により回避された。
「ぬわーッ!」
ジョジョは誰かに押し退けられた。
今度は豚だ。
最近の奴らは、人の会話中に割って入る礼儀知らずが多いようだ。
ちょっと小一時間ばかし説教をしてやりたい気分だ。
豚達の方はというと、ジョジョを押し退けたことを意に感さずに、世間話らしきことに興じている。
元よりの知り合い、主従関係だったようだ。
禿げ爺は豚の持っていた霊剣を奪う。
禿げ爺は霊剣を奪ったことで、子供のように喜んでいる。
その喜びように唸りを上げていた獣を、禿げ爺は威圧。
ジョジョは気付いた。
ジョジョが話の中に入れていないことに。
「これではこの場所にいる意味がないですね…
ここまで無視されたり、邪険に扱われたりしますと、流石の私も泣きますよ」
ジョジョはスタンドを消して、床に突き刺さっていた刀の元まで歩いていき、刀を引き抜いて鞘に納める。
その時、ジョジョは見てしまった。
確か、リリと言っていた女性が、こっそりと移動をしていることに。
そこでジョジョも移動を開始した。
「…ウルトラマンは寂しかったり暇だったりすると死んじゃうんですよぉ…」
リリの後ろから、こっそりと耳元で囁いた。
今度は無視されたりはしないだろう。
>150
全身を焼かれつつあったつかさを助けようとしたアマナが、瞬きをしたその一瞬のことであった。
つかさの身に、何らかの魔法がかけられた。
それからほどなくして、つかさはアマナに救出され、被害が上着だけに留まった。
「あの上着、高かったのに……悲しいけど、諦めるしかないわね」
アマナに抱えられながら、名残惜しそうに上着の残骸を見つめていた。
彼女の言うとおり、呪練制服はきわめて高価な防具である。
だが、確実に値段に見合った働きをするため、これが有るのと無いのとでは随分違う。
「ところでアマナさん、ここはあまり背を向けるのは得策じゃないと思うの。
例えて言うなら、そう、熊に遭遇したら、慌てて逃げるのがいちばん良くないって言われてるのと同じことね。
それに―――これははっきりしてることだけど、今逃げたら死ぬことになるわ。それも無様に」
つかさはころころと表情を変え、よく喋るのだが、その瞳には生気が欠けている感じがする。
彼女の言うとおり、ここから立ち去っても危険は常にアマナの周りにつきまとうだろう。
撤退を良しとしない意見は、多分に憶測からなるものなのだろうが、言い回しと目つきに、妙な迫力がある。
「ま、そういうわけだから、わたしはあっちへ行くわ。貴女はどうするの?」
アマナの腕を振り解くつかさの力は、まるで万力か何かのようで、明らかに化物じみていた。
不気味な変化を見せた彼女は、再びモト神とノスフェラトゥが戦っている方へと歩いていく。
「ああ、わたしのことは、心配要らないわ。だって、わたしは不死身だから」
>ジョジョさん
>「…ウルトラマンは寂しかったり暇だったりすると死んじゃうんですよぉ…」
「〜〜〜〜!!!!」
突然耳元で囁かれ、理利は仰天した。耳を押さえて慌てて飛びのく。
と、そこには見知った顔が。
「あ・・・ジョジョさんじゃない。びっくりした。あんまり驚かさないで」
理利は胸を撫で下ろした。そしてジョジョの言葉を反芻する。
「・・・・ウルトラマン?」
理利はあらためてジョジョを見つめた。
・・・なるほど、気配が全く異質だ。
とっぴも無い話だが、理利は信じたようだ。
「すごいわ!光の国もチャッチャクエストと同じで実在していたのね!」
信じるだけでなく、頬を上気させ、子供のように目をキラキラさせている。
そう。怪獣の名前を諳んじるほどでは無いが、理利はウルトラシリーズが大好きだった。
マネージャーが気を利かせて、4歳の頃ウルトラシリーズの撮影に参加した事もある。
ウルトラマンに逢えると喜び勇んで向かった現場だったが、そこで理利はウルトラマンが着ぐるみだと知る。
プロ意識で撮影こそ無事こなしたが、後で大泣きしたのは言うまでも無い。
「ねえねえ、ベータカプセルは?今回地球には何の目的で?
あ!上一中にいらしたってことは、もしかして地球を救いに来てくれたの?」
本物のウルトラマンを前に、理利はすっかり舞いあがっているようだ。
状況も忘れ、期待に目を輝かせながらジョジョを見つめている。
「違う」と否定されるとは夢にも思っていない雰囲気だ。
>「あ・・・ジョジョさんじゃない。びっくりした。あんまり驚かさないで」
「それはそれはすみませんでしたぁ」
リリはジョジョの側から慌てて飛び退く。
敵だと思われたのだろうが、ジョジョの顔を見た途端に安心したようだ。
>「・・・・ウルトラマン?」
>「すごいわ!光の国もチャッチャクエストと同じで実在していたのね!」
「それは私が許可を出しましたからねぇ…
まぁ、ウルトラシリーズを放映することにしたのは、私の薔薇実装の出した案なのですよ。
私が宇宙でこなしてきた活躍を皆に教えたかったということらしいです」
>「ねえねえ、ベータカプセルは?今回地球には何の目的で?
> あ!上一中にいらしたってことは、もしかして地球を救いに来てくれたの?」
「私のはベータカプセルじゃないんですねぇ」
ジョジョはズボンのポケットから変身用のスティックを取り出す。
「ベータスティック。これが私のでした。
まぁ、こんなのを使わなくても変身できるんですがね。
よかったらあげますよ。」
ベータスティックをリリに手渡し、ジョジョはスタンドを出現させる。
「私はゾフィーに力を封印され、人型のビジョンとして出すしかなくなった。
俗に言うスタンドってやつですね
じゃ、変身」
ジョジョはスタンドの力を使い、スタンドと本体を融合。
ジョジョの姿は本来のウルトラマンの姿に戻った。
「私がこの星に来た理由は、他の異星人からこの未開の惑星を警備することです。
ついでに実装石の糞蟲種という、実装シリーズの汚点を全て滅ぼすことも私の使命ですね」
「他に聞きたいことはないですか?
なければ私から質問をさせてもらいます。
何故、あなたはこんな場所にいるんですかぁ?
あなたも霊宝とやらを奪いに?」
いまベルの家に戻ってどうなるのか。それはじつのところ、僕自身にもわからなかった。
わからないけど、なにか大切なことに僕は気がついている。気がついている気がする。
それがはっきり僕自身にもわからない。わからないけど、僕の心が僕に教える。
ベルの家に行ったほうがいいよって。
>ラスティーリア
>「ベルの家に?わかりました御主人さま」
>「ビカイアマバル!」
「ありがとうラスティーリア」
空間転移が始まる。
ぐらりと目眩に似た感覚が押し寄せる。
声。
美しいきれいな声が聞こえる。
>「礼司、きみは本当に期待を裏切らない。素晴らしいよ、大好きだ」
天保くんの攻撃を避けるために、ラスティーリアが校舎の屋上に空間転移しようとした。
けれども霊脈が乱れていて、近所のマンション屋上に出てしまった。
空間を越える移動魔法は不安定なんだ。
ラスティーリアのテレポートが発動した瞬間に、目の前が真っ白になった。
それは霧。
冷たい霧の川。
霧にけむる川が見えて、美しい少女のような少年が見えた。
川の水の上を歩く不思議な白い猪に乗った少年。
ゼフィール!
思い出した。ゼフィール!僕はあなたに会った。
死後の世界の入り口で、生と死を分けて流れる川、三途の川での出来事の全てを僕は思い出した。
>ドタ!
「いて!…うわっ、うっぷ」
>ラスティーリア
>ひー。あたしはレイジさまの上にいた。レイジさまから飛び降りる。
>「ごめんなさいです!」
「うう。ラスティーリア……」
感触が……
僕らはベルの家のトイレの中に出た。
>ギコ
>「ふ、ふ、ふ、ふ、ふ、ふ、ふ、ふ、ふ、ふざけるにゃああああああああああああああああああああ!」
>アリア
>「うわあああん!ここどこですか!!マスターがいないですぅ!!!」
「落ち着いて落ち着いて!
シ!だれか来た!」
>ジョドー
>学校へ行かれたと安心しておりましたのに、如何なさいましたか?」
「ど。どーも。おじゃましてます……ベルさんを迎えに来ました」
執事さんはそういう僕の言葉にも表情を変えない。
けれどもラスティーリアやギコは驚いたみたいだ。アリアは……泣いてる。
アリアをよしよしと泣き止むように背中をなだてあげながら、僕は霊感レーダーのギコに言った。
「ベルの気配を感じない?この家にベルがいるよ。きっと」
まったく意味がわからないという顔を二人はしている。
「さっき学校でベルが死んだ感じを受けたよね?
でも僕にはそれがとっても変なふうに感じられたんだ。
僕は……バルンディノでも、ランドマークタワーでも、人が死ぬ瞬間のオーラをたくさん感じてきたから、わかるんだ。
ベルの死の感じは、なんていうか、希薄な印象なんだ。
人が死ぬときの死のオーラのほとばしりは、もっと切羽つまってひどいものなのに」
その点にはギコも同意してうなづいた。
「ほんの数時間まえ、僕らはベルのこの家の食堂でディナーをごちそうになって、ホムンクルスの霧津さんが爆死して、
ベルが黒こげになって、……そのあと僕らは日の沈んだ学校に戦いに行ったけれど、ベルはいっしょに来てないよね。
そうさ。ベルはずっと来てないんだ。
ベルは家から出ていない。
ギコ。僕の言っていること、意味がわからないだろうけど、ベルの気を捜して。ベルはこの家にまだいる」
執事さんは無表情で話が通じないので、自力で捜す。
ギコが理解できなさそうだけど、オーラの探知をしてくれる。ギコは目を閉じて、気を読み始めた。
僕も目を閉じて、ベルのオーラを捜した。
ラスティーリアの空間転移は霊脈の乱れの影響を受けて、一瞬、死後の世界に通じた。
そして僕は三途の川でのこと、すべてを思い出した。
僕自身がなんなのかわからなかった僕が感じていた違和感、その正体がわかった。
キーワードは三途の川だったんだ。
広い屋敷の中を歩く。僕はベルの気を追いながらギコに話した。
ギコに話しているけど、ギコには意味が把握できないだろう。
考えをまとめるために、僕は独り言していた。
「三途の川で、僕、リリさん、アッシュは死後の世界の超越者ゼフィールに会った。
僕はカウボーイ魔術師の銃撃を受けて瀕死で霊魂、リリさんも瀕死で霊魂、アッシュは僕らを追いかけて肉体を置いてきた。
アッシュも霊魂だった。バージルさんに似た人もいたけど、きっと霊体だったろう。ラスティーリアの首だって霊魂だった。
あのとき、三途の川にいた人はみんな霊魂だった。
三途の川だもん。肉体でいける世界じゃない。
あのとき、アッシュは魔道的荒業で相模国像の屋敷を三途の川に上げた。ベルも三途の川にあのとき来た。
なら。そう。そうだよ。ベルも霊魂だったはずだ。
生身の者が三途の川にいけるものか」
ギコがある部屋のドアで立ち止まる。
僕は躊躇なく開けた。
少女趣味の部屋だった。アフリカのお面とか、薔薇の棘に絡まれた十字架とか、拷問大全とか変な本があるけど……
ベルの部屋に間違いない。オカルトなアイテムはベルが好きそうだ。
でもベルはいない。
「ここじゃない」
広い家の中、ベルの気を辿って歩く。
「ゼフィールの話しによると……」
ゼフィールに触れられた感触をおもいだして、僕は身震いした。それを振り払う。
「ゼ、ゼフィールの話しによると、ベルは三位一体になったらしい。
霊剣と、……アルラウネ。霊草。
霊的なものとベルの魂は融合したらしい。霊的なものとだよ!
霊的なものに生身の肉は邪魔だからね。ふかわさんも肉体を離れると霊感が増すって言っていたし。
ベルの肉体は、きっと置いていかれたんだ。
ベルは幽体離脱して、三位一体者ベル・トリニティーになったんだ。
だからベルの肉体は、この家に置き去りになっているはずだ。
僕やリリさんやアッシュが三途の川に渡った時に、肉体を現世に残したみたいに。
ベル・トリニティーは濃密なエクトプラズムだったにちがいない。肉感があるほどにね。
ギコが立ち止まる。
お風呂?……かな。ここも。
なんて大きな洋館なんだ。バスルームが二つもあるのか。
「あ!」
脱衣室に黒く煤けた女物の服が脱ぎ捨てられている。
僕はお風呂だけども、迷わずにガラッとドアを開けた。
花の香り。
プールのように広い浴槽いっぱいに、たくさんの花が浮かべられている。
ライオンの彫像の口からトプトプお湯が出ているそこに、いた。
ベルがいた。
ベルが湯に浸かっている。ライオンの湯口に首をあずけて目を閉じている。いまにも湯の中に沈みそうだ。
「ベル!」
僕はじゃぶじゃぶと浴槽の中に入り、ベルを抱き起こした。
「三位一体は解けた!ベルの魂は肉体に帰ってくるはずだ!ベル!起きろ!起きて!起きるんだ!」
>ノスフェラトゥ
>「鎮まれ野獣よ」
>一瞥で圧倒し黒鋭童子をノスフェラトゥは黙らせた。
「グルルルルル・・・」
コクエイは首を傾げた。ノスフェラトゥの凄まじい威圧感に押さえつけられた。
ノスフェラトゥこそ吸血鬼一族の始祖。牙の一族はその分派であるのかもしれない。
そうであるのなら、牙の使徒の末端、コクエイがどうして逆らえようか。
しかも目の前で、牙の主は肺腑を散乱させて倒れている。
群れをつくる動物は実力のあるリーダーに従う。
コクエイは耳を垂れ、目を伏せ、姿勢を低くしノスフェラトゥに服従の意を表した。
>リリ
>「生き返ることが幸せかどうかは分からないけれど・・・このまま死ぬなんて悔しくない?」
>天保から離れ、極力目立たないようにして移動を開始した。
>混沌とした状況が味方してくれる。
野獣の目はリリを捉えていた。
リリとジョジョを見つめる。
「ガウ!」二人に吼える。
水無月がノスフェラトゥに向かって悠然と歩みよってくる。
モートと戦うノスフェラトゥを守るために、コクエイは立ちふさがった。
「ガルルルルルル」
>ノスフェラトゥ
>「死滅した信仰の暗黒神モート。其方の頼ったムアコックは消滅しおった。ここにおるのはわしの忠実な家臣モローよ」
渦巻く砂嵐がノスフェラトゥの言葉に回転を乱した。
渦が拡散と収斂を繰り返す。
「我の皇帝ムアコックを奪ったな!」
砂嵐が白く光る。
炎熱の白光だ。
温度が上昇していく。
熱波の嵐が轟然と吹き荒れる。
「我は照りつける乾季の神!太陽神である!」
数多の宗教の邪神や悪魔が闇に属する魔であるのに対して、ウガリットの乾季の邪神モートは陽に属する。
死神であり魔であるにも関わらず、モートは太陽神である。
残酷な日射であり、砂漠の残虐な太陽の神が激怒し猛炎となった。
「吸血鬼め!日に滅びよ!」
>ノスフェラトゥ
>一振りにて多くを薙ぐ水霊の剣よ。この剣はこう使うのじゃ!」
>水流の竜巻が剣先から発生し砂嵐のモートを襲った。凍える水竜巻がモートの炎熱を殺いでいく。
「勝負だ!ノスフェラトゥ!」
熱と水とが激突。
水蒸気爆発が発生した。
相模国造神殿部にいた全ての者に灼熱の水蒸気が襲う。
神殿が崩れていく。
藤田に宥められ、アリアは泣き止んだ。
「レイジは優しいですぅ」
ぴとっ。
そのまま藤田の首に手を回し、背中におぶさる。
どうやら懐いたようだ。
テレポートアウトしたのは、ベル邸の客室に備え付けられていたバスルームだったようだ。
藤田はベルの肉体を探して屋敷内を移動した。
>「あ!」
藤田が煤けた服を見つけて声をあげた。そのままバスルームにはいっていく。
巨大な浴槽の中にベルが浸かっている。藤田が抱き起こした。
>「三位一体は解けた!ベルの魂は肉体に帰ってくるはずだ!ベル!起きろ!起きて!起きるんだ!」
「藤田君、乱暴に扱ってはダメ!」
アリアが鋭く制止した。
「・・・気になっていることがあるの。
三位一体が完全に解除された場合、ベルの中からアルラウネと霊剣の魂が抜けることになる。
ベルの魂だけで、いびつに拡張された器との圧力バランスを保てるのかしら」
なおも喋ろうとしていたアリアだったが、突然動きが止まった。
「・・・・・・・・・ムシムシするですぅ!」
ウンザリしたように呟き、アリアは藤田から離れた。
ふわふわと宙を移動し、脱衣所に着地する。
「バスルームはジメジメですぅ!皆、早くこっちに来るですぅ!」
脱衣所でバスタオルを片手に、能天気に手招きなどしている。
>レイジさま
>「いて!…うわっ、うっぷ」
>「うう。ラスティーリア……」
>感触が……
「やーん。きゃは。感じちゃった?レイジさま?」
ハッ!殺気!!
>ギコ
>「ふ、ふ、ふ、ふ、ふ、ふ、ふ、ふ、ふ、ふざけるにゃああああああああああああああああああああ!」
「なによ!テレポートで運んであげたのに!このこのこのこのこの!」
反撃!
ギコとの死闘中のあたしにアリアがバスローブをかけた。
「セコンドからタオルが投げられたから中断!」
あたしはバスローブを腰に巻いた。背中にはコウモリの翼をつくったままだったから。
何が起きるか解らないので、翼はつけといたほうがいい。
ベルの家のゴーレム執事がやってきて、なんか言ったけど、レイジさまはどんどん屋敷の中を進む。
あたしはレイジさまについていった。
レイジさまは難しいことを言う。
けれどもレイジさまの言葉に、あたしはジーンと来た。
>レイジさま
>「三途の川で、僕、リリさん、アッシュは死後の世界の超越者ゼフィールに会った。
>ラスティーリアの首だって霊魂だった」
そっか。あたしの首はレイジさまを治療して死んで冥府に逝ったんだ。
逝ったってわかっていたけど。
がんばったね、あたし・・・と、レイジさまの命を助けて死んだあたしの一部を、あたしは心の中で褒めた。
>レイジさま
>脱衣室に黒く煤けた女物の服が脱ぎ捨てられている。
>「ベル!」
おおー。いたいた。ベルだ。
レイジさまがベルに駆け寄る。
>アリア
>「藤田君、乱暴に扱ってはダメ!」
>「バスルームはジメジメですぅ!皆、早くこっちに来るですぅ!」
「じゃあ、あたしがベルの体を運ぶね」
あたしは浴槽の中に入った。
「ちょっと、どいてくださいね、レイジさま」
ぶちゅっ。
あたしはベルにキスした。そしてベルの体内に全部入った。
ちゅるちゅるちゅるちゅる。すぽん。
あたしは立った。
「おおー。確かにベルの体はダメージ大きい。
生理痛も人より痛いだろうし、うーん。運動したほうがいいね。女の子でもおっぱいを支える胸の筋肉いるよ。
ちょっと少ないね。慢性肩こりするよ。これは」
レイジさまが顔をそむけている。顔真っ赤。
仁王立ちはよくなかったかしらん。
ギコの目が痛い。ん?そういうことではない?三位一体の後遺症の話ね。アリアが心配してるのは。
「けど、あたしの一部を同化させれば、なんとかなるよ。治療は得意よ」
と言いつつ、アリアが手招きしているのであたしは更衣室に行った。
>ノスフェラトゥ
>「其方の肉体は滅んだのじゃ。だが案ずるには及ばん。其方は新たな強靭な肉体を得たのじゃ。
>其方の寵愛した豚の体じゃよ」
「私の肉体が滅んだですと!・・・お、おお!」
モロー脳は死の瞬間を想起した。
古き血の一族の日中の塒、横浜ランドマークタワーにおいて、上湘南中学の超常の子供らの襲撃を受けた。
豚人間を率いて抗戦したが、反乱にあったのだった。豚人間達に主である自分は喰われた。
天才モローの脳は自分自身の置かれた状況を把握した。
把握して狂喜した。
「素晴らしい!私の研究した豚人間が此れほど優れた魔物になろうとは計算以上だ!
つまり私は生涯賭けて研究した豚人間と一体になったのですな!
研究対象と研究者が同一の存在となれたのですな!願っても無い!嬉しく思いますぞ!
研究に取り組める脳さえあれば、肉体など固執するに値しませんからな!」
モローは屈強な獣魔人ムアコックの体に満足しているようだ。
>ノスフェラトゥ
>「一振りにて多くを薙ぐ水霊の剣よ。この剣はこう使うのじゃ!」
>ノスフェラトゥは霊剣をモートへと振った。
>水流の竜巻が剣先から発生し砂嵐のモートを襲った。凍える水竜巻がモートの炎熱を殺いでいく。
>モート
>「吸血鬼め!日に滅びよ!」
>「勝負だ!ノスフェラトゥ!」
水流の渦と熱砂の渦が激闘した。水蒸気が膨張発生する。水蒸気爆発はキノコ雲となって相模国造屋敷の上半分を吹き飛ばした。
ムアコックの肉体は爆発の圧力にもびくともしなかった。しかし崩れ落ちた屋敷の瓦礫に埋まった。
「ぶふぉ!」
瓦礫を押しのけてモローは立ち上がった。
この場にいた上湘南の子らは吹き飛んだか、たちこめる水蒸気で判別できない。コクエイもどうなったか。
ノスフェラトゥはどこか。モートはどこか。決着はどちらに!?
浴室に入ると、そこは咲き乱れる花に埋め尽くされていた。
浴槽は薄い粘性のある緑色の薬湯で満たされており、そこにベルの肉体は横たわっていた。
藤田たちにはただの浴室装飾として気にも止められなかっただろうが、これは『トリニティ』がベルの肉体から
抜け出る為に使用した妖花アルラウネの術の痕跡。
そして薬湯は魂の抜けた肉体が朽ちないように処置されたものだった。
ラスティーリアがベルの体内に入り、治療をしていると急激な違和感を感じただろう。
抜け殻だった肉体にベルの魂が流れ込んできつつある圧力。
だが、それだけではない。
修復に使っている自分の身体だけでなく、全ての身体がベルの肉体内に閉じ込められるような圧迫感。
それを霊的視覚で見るのならば、全身に植物の根が伝い同化し、急速に力を吸い取られているように見えた
はずだ。
ベルの魂の流入と同時に、肉体もエネルギーを欲して体内に残っていたアルラウネの根がラスティーリアを
吸収し始めたのだ。
脱衣所に寝かされていたベルがうっすらと目を開ける。
だが、焦点は定まらず、うわごとのように何かを呟いている。
途切れ途切れではあるが、それは融合の残滓。
叢雲剣と妖花アルラウネの記憶だった。
ベルの口は語る、2000年の刻の流れを。
そしてそれより更に気の遠くなるような星霜の記憶を。
2000年前に作られた両者の記憶だけではない。
日本創生を成したイザナギとイザナミの第一子として生まれながら、神と認められず葦の船で流された呪われ
し神子の記憶だ。
神子は葦の船で流され時空を彷徨う間に、その後の世界では世界法則が成立されていった。
バルンディノなどと違い聖魔は跳梁跋扈せず、超常のない世界。
だが、それはあくまで基本法則であり、超常の存在する綻びが随所に設けられていた。
それは神の住む場所として。幽谷深山に、海原に、随所に神の為の場所として。
その後人々の世界は繁栄し、畏れ恐れられる事により神は大いなる存在と昇華し神話の彼方へと去った。
神の去った後、残された超常の許されるスペースに聖や魔が発生し住み着いたのだ。
だが、ここに神として大いなるものとなって神話の彼方へと去ることも出来ず、現世に生きる人、聖、魔として
輪廻を繰り返す定命の者ともなれぬものが相模に流れ着く。
その力の大きさ故に存在するだけで世界法則を歪ます者。
そのため相模国造の法則維持システムに絡めとられてしまったのだ。
動くにも死ぬにもその存在は大きすぎたのだ。
身動きの取れなくなった彼は逆に御柱の内部に干渉し、敖遊の祭祀により世界法則を作り直そうとした。
こうして上一中での遊敖の祭祀が始まった。
それは巧妙なる偽装を持って行われた。
アマナたちの所属する英国魔術師境界も掴んでいるように、本来この土地では敖遊の祭祀ができる場所ではなかった。
それを可能にする操作にも膨大な霊力が必要だが、そうしていると悟らせないために更なる霊力を費やした。
その二つの作業に殆どの霊力を費やしたが、それでも定命の者と比べれば圧倒的な霊力は残っている。
彼は牙と爪を剥ぎ取り地の邪霊を付与してノスフェラトゥーと牙の主を作り上げ、戦わせる。
それぞれに霊玉と霊鏡を渡し陣営を分ける。
もはや両者とも覚えてすらいないだろう。なぜ自分が戦うか、という本来の使命など。
それでも構わなかったのだ。戦いさえすれば目的がかなうのだから。
霊剣の陣営を作らなかったのは、元々霊剣は祭祀の参加資格や霊力増幅に使うものではないからだった。
本質は再現劇、すなわち世界法則の再書き込みのみに使われる神器なのだ。
そういった意味では藤田達は初日には祭祀には参加しているとはいえない。
ただ相模国造の世界法則防衛機能の一環として召喚された存在でしかなかった。
故に超常の力を使っても老化することもなかったのだ。
藤田達の陣営が真の意味で祭祀に参加したのはノスフェラトゥーを倒し、霊鏡に所有者と認められた時から
なのだ。
ノスフェラトゥーを倒し、陣営の一角を潰したつもりでもその実、単に入れ替わっただけで状況的には何の変
わりもなかったのだ。
唯一つの誤算は叢雲剣が星霜の中、様々な世界を旅するうちに人を取り込み、自我を持つようになったことだった。
自らの柄にその犠牲者のデスマスクを浮かび上がらせ糧とする。
そして自分が祭祀の最後、新法則を書き込みをするための道具だと自覚するようになる。
つまりは誰が霊鏡と霊玉を集めようが、最後には自分がそれを奪える立場にあると・・・。
そうしてベルに取り付いたのだが、神子は即座にそれを察知し、カウンターとしてアルラウネを使用した。
叢雲剣すら抗えぬ誘引花粉で三位一体を成し遂げ、斬るものと斬られるものが同一というパラドックスを生み出し、叢雲剣を押さえ込んだ。
儀式達成のためには三位一体を解除する必要があるが、解除するということは叢雲に剣が乗っ取ったベルの消失も意味する。
使い手を失った剣はただの棒に等しく、パラドックスに陥った叢雲剣は沈黙をするしかなかった。
そうして三者共に動けぬまま儀式は進み、ムアコックの手によって三位一体は解消されることとなった。
叢雲剣は使い手を失い、祭祀の為の道具という本来の姿に戻り、妖花アルラウネはムアコックの体内で気づかれぬように根を張り巡らせる。
祭司的にはムアコックの肉体はすでに苗床といってよく、再現劇のために斬られるべきそして火をつけられるべき存在となっている。
そして今、ベルはこの肉体に帰り着こうとしている。
結局は全て2000年前から計画され想定されていた事から何一つ予定外がでる事無く祭祀は終わりを告げようとしている。
最後の夜にゼフィールが現れたのは大いなる存在がそのルール破りに漸く気付いたからだ。
ゼフィールが怯えたのは決して叢雲剣に対してではない。
叢雲剣は単なる道具。恐れる理由などない。
彼の主である大いなる存在と同じ存在を叢雲剣の背後に感じ取ったからだ。
敖遊の祭祀は現実世界に生きる定命の者、輪廻の輪の中にいる者によって行われなければならない。
生死を超越した者によって成されてはいけないのだ。
故に相模国造の選んだ藤田に敖遊の祭祀の勝者になるようめいづるのだ。
何を望むかと言うことではなく、誰を勝者とするかが重要となるのだ。
時の流れを語り終えたベルは、静かに藤田の方へ向き頭を下げる。
「霊的に歪んでしまったものの矯正は不可能・・・。いくら治療しようとしてもどこかしらに歪は残るものだ。
それゆえに私はこの肉体に子を残した。
だがまさか君がここへ来るとは思っていなかったぞ。」
そう語るベルの頭頂部には小さな新芽が鮮やかな緑色で存在を主張している。
それと引き換えに浴室内の花がいっせいに枯れ始める。
魂が肉体に帰ってきたのだ。
元々がベルの肉体を維持するために存在した花たち。その存在意義を失った今、静かに枯れ散るのみ。
「う・・・あ・・あ・・・げほっ・・・おえええええ・・・・」
魂が帰ってきた今、ベルはベル・T・カーマンとして目を覚ました。
肺腑を満たしていた緑色の薬湯を吐き、ふらふらと立ち上がる。
まるで寝起きのような眼で辺りを見回すと、アリアをすっと抱き上げて掲げる。
「あら、アルじゃない。また会えるなんて世の中意外と狭いわね。しばらく見ないうちにお互いずいぶんと変わったわね。
でも死にたがりなところは相変わらずで安心したわ。」
それだけ言うと高く掲げたところから手を離し、すでにアリアの存在すら忘れたように振り替える。
魂の融合、解除、移動は様々な前世の記憶混濁をもたらしたようだ。
そうした混乱もそれまで。
藤田の存在を確認した瞬間、ベルの目の焦点と意識が定まった。
「え、あれ?お風呂入って・・・なんで藤田が?あれ?・・・裸?って、何見てんのよ!!!」
反射的に振るわれた手刀は藤田の纏う障壁を軽々と打ち破り、両目と鼻に強い衝撃を与えながら吹き飛ばした。
久しぶりに振るわれた真空おまじないチョップが炸裂しきる前にベルの髪が植物に変化しながら伸び、その肢体にまとわりついて服となした。
それに伴い、ベルの脳にアルラウネからの情報が流れ込んでくる。
あくまで霊的な歪みを補うためにアルラウネの一部が身体の中にいること。
だがもちろん情報は改ざんされて理解される。そう、ただ単純に「超常の力を身につけた」と。
「はっ!こんなことしている場合じゃないわ!藤田!何寝転がってるの?見て、皆既月食が終わりを告げようとしている!
儀式が終わっちゃうわよ。こんな面白いベントに参加しないなんてあるもんですか!」
走り出しながらベルは藤田に尋ねる。
ノスフェラトゥと牙の主には神子の葛藤がそれぞれ与えられている。
ノスフェラトゥにはバルディノンのように聖魔の跳梁跋扈する世界を望み、神子が自由に動き『大いなるもの』に昇華できる世界法則を。
牙の主には聖魔超常の一切の法則を禁じた世界を望み、神子の存在自体許されぬことにより、死の安息を与えてくれる世界法則を。
それぞれが望むようにプログラムされているのだ。
だが、儀式をこの状態で差し止め、荒魂化した相模国造を鎮める方法もある。
菅畳八重、皮畳八重、絹畳八重を敷き人身御供を遣わす・・・
「今はノスフェラトゥが剣と玉を持ってるけど、鏡と火はこっちにあるわ。
願うこと一緒でもどうせなら自分で叶えたいもんね!いくわよー。おひょひょひょひょひょ!」
>>165 >「あの上着、高かったのに……悲しいけど、諦めるしかないわね」
「呪練制服のことですか?それなら、こっち用に頼んでいたのに一着ストックがあるので---
なんなら、差し上げましょうか?」
そういいながら、壁に向かって歩こうとしたとき
>「ところでアマナさん、ここはあまり背を向けるのは得策じゃないと思うの。
例えて言うなら、そう、熊に遭遇したら、慌てて逃げるのがいちばん良くないって言われてるのと同じことね。
それに―――これははっきりしてることだけど、今逃げたら死ぬことになるわ。それも無様に」
その言葉を聞き、足が止まる。
何をふざけたことを言っているんですか的な目で水無月を睨むも、逆に睨み返されて背ける。
>「ま、そういうわけだから、わたしはあっちへ行くわ。貴女はどうするの?」
>アマナの腕を振り解くつかさの力は、まるで万力か何かのようで、明らかに化物じみていた。
何かが軋むおとを立たせながら自分の腕を外した水無月に驚きを隠せないアマナがそこにいた。
>「ああ、わたしのことは、心配要らないわ。だって、わたしは不死身だから」
「---ふぅー---そうですか---まぁそれならそれでいいんですよ。
しかし、その考えは好きになれませんね---無は有に有は無に
これが世界の秩序とバランスですから、こんなところでお互いの魔術論を交し合ってもしかたありませんが」
そういって左手にもっているアガルタを魔術陣へ戻し、そして、鎧も解除してから
水無月について行くように戦場へ向かう。
>モートと戦うノスフェラトゥを守るために、コクエイは立ちふさがった。
またあの悪鬼が目の前に立塞がった。
さっきの様子から見て、この鬼が魔術を使える訳がない。
「暴力には暴力を---ここは私がどうにかしますので、水無月さんはお先にいってください
---ヘイトレット」
そういってコクエイの目の前にヘイトレットを召還する。
お互いがお互い、獣じみた感覚と反射能力ですぐさま殴り合いが始まる。
予想どうり、ただの殴り合い、しかし、一撃の重さが段違いなのを抜かして
「私に気にせずあっちへ行ってください。私もすぐに追いつくので」
>180
>「呪練制服のことですか?それなら、こっち用に頼んでいたのに一着ストックがあるので---
> なんなら、差し上げましょうか?」
その言葉に、つかさはビクッと震えて反応し、硬直する。
呪練制服の高級さは、単なる防具としては想像を絶するものだ。
某TRPGのルールブックでは、値段の欄に100000000とか書いてあるほどだ。
それを、さらっと「頼んでいた」と言い張り、あまつさえ、差し上げましょうと言うこの少女―――只者ではない!
つかさは心の底からそう思い、呆気にとられて、しばらくブツブツと何かを呟いていた。
「どうしよう、英国魔術協会に入ろうか、あっちの方がお給金も良さそうだし、でもでも……」
先に行くよう促すアマナの言葉にも無反応であった。
しかし、何だかんだでアマナが黒鋭と壮絶な死闘を繰り広げている隙に、
もう一つの戦いの中心、モート神とノスフェラトゥが睨みあっている場へ、フラフラと歩いていった。
>172
そこに、水蒸気爆発の熱と衝撃が襲い掛かった。
心の中の何かが激しく揺らぎ、放心状態にあったつかさは、この脅威への対処が致命的なほど遅れることになる。
「あっ」
高熱によって焼き尽くされ、爆風の衝撃で砕け、跡形も無くなった。
しかし。
「死ぬのは―――今日で2回目かしら?」
黒く焼け焦げたつかさの破片の一つ一つが、緑色の光を放って宙を舞って集まり、人の形を形成する。
そしてなんと、再び水無月つかさとしての姿を取り戻した。
再生した水無月つかさの身体には、傷一つ無い。
服に関しても、上着の呪練制服と違い、魔術的な力が秘められている訳ではないためか、これも難無く再構成された。
「びっくりしたー。やっぱり、間近での爆発って、何度経験しても慣れないわね」
何らかの仕掛けはあるにせよ、彼女は自分で言ったとおり、文字通りの不死身であった。
水蒸気に包まれており、また瓦礫によって非常に足場が悪い状態にある。
それでも、つかさは手探りで、転ばないように慎重に進んだ。
「ところで、鼠男さんは何処かしら?」
ノスフェラトゥを探す途中、何か人を踏んだような気がするが、つかさはあまり気にした様子は無かった。
>戸田君
「牙の主の次はノスフェラトゥって訳?ぶざまね。
何も考えず、何も決めず、何の責任も取らない。だから選択に苦しまなくてもいい。
戸田君、結局あなたは誰かの道具になりたかったのね」
理利の目には哀れみと、かすかな侮蔑が浮かんでいた。
>ジョジョさん
>「ベータスティック。これが私のでした。
> よかったらあげますよ。」
「ええ?!良いんですか!!ジョジョさん、ありがとうございます!!」
理利は狂喜し、ベータスティックを抱きしめた。
「嬉しい!憧れのウルトラマンからベータスティックをもらえる日が来るなんて。 生きてると良いこともあるのね」
>ジョジョの姿は本来のウルトラマンの姿に戻った。
「凄い!ジョジョさん凄い!かっこいいー!!」
理利は手を叩いて喜んだ。もしこの場にギルバが居たら、正気に戻れと頭の一つも叩かれているに違いない。
>「私がこの星に来た理由は、他の異星人からこの未開の惑星を警備することです。
理利はジョジョの返答を聞き、ハッと我に帰った。
わざとらしく咳払いなどしているが、今更取り繕っても無駄だろう。
「・・・異性人以外の脅威には、ウルトラマンは干渉できないの? 」
理利は顔を紅潮させながらもジョジョに質問した。もしそうだとしたら、助けて貰う事は無理かもしれない。
「あんなネズミ男やモート神より、ウルトラマンの方が絶対強いのに・・・」
理利は残念そうに呟いた。
> 何故、あなたはこんな場所にいるんですかぁ?
> あなたも霊宝とやらを奪いに?」
「霊宝を奪いにきたのかと問われれば、はいそうですと答えるしかないわね。
私の望みは儀式の犠牲になった皆を元に戻し、人を害する超越者も魔物もいない上湘南を取り戻すことだもの。
でもまずは、あの黒い稲妻を止めることかな。どこまでやれるか分からないけれど、馬鹿者達が浮かれ騒いでいる間に鎮めてみる」
不完全な霊具で本来の儀式に持っていくのは無理でも、稲妻だけは何とかできるかもしれない。
「トリニティーは日本武尊の再現劇をもって儀式を成就させようとしていた。
でもね、彼らは昼休みの教室でヒントをくれたの。相模国造を鎮める儀式は一つじゃないと。
霊剣が欲しければノスフェラトゥにくれてやるわ。必要ないもの。
だって、おかしいでしょ?牙の主やノスフェラトゥともあろう者が、霊剣の存在を知りながら常に傍に置かなかったなんて。
結果を恐れなければ、霊剣は必ずしも儀式に必要な訳じゃないのよ」
理利はじっとジョジョを見つめた。
「ほんの5分でいいの。御柱を鎮める間私を守ってくれない?・・・それもウルトラマンの規則に違反する?
・・・相模はね、もう何千年も世界法則を支えてきた。だけど、信仰を寄せられぬ神に力は無いわ。
今は神代でもない。神々も去った今、そろそろ楽にしてあげてもいい頃だと思うの」
滅びた国の神モートが未だ力を保っているのは、そうと知らずに旱魃に苦しむ民が祈りをささげていたから。
そのモートとノスフェラトゥは、おりしも今決着をつけようと大技を繰り出そうとしていた。
理利は素早く空に手を動かした。ノスフェラトゥの剣から迸った水を掴み浄化する。
霊鏡の力で、一握りの水は、葦を押し流すほどの大河となった。
「この私が神の威を借りることになるなんて・・・なんとも皮肉なめぐり合わせね」
理利は手にした宝鈴を打ち鳴らした。
前世で神の娘として生まれそこなった魂と、二つの霊具。神との対話に足りないというなら、これで補えばいい。
理利は懐から古びた2枚の鏡を取り出した。古びた鏡の正体は、石凝姥命が霊鏡に先立っておつくりになられた2枚の鏡。
銘は日像鏡・日矛鏡という。
そして手には天鈿女命(アメノウズメノミコト)の招霊(オガタマ)の神楽鈴。
――――鈴に霊力を付与したふかわ当主には、おそらく理利の行動などお見通しだったのだろう。
「遠つ神えみたまえ。今一度我が声を聞き、我を助けよ!「大橘比売命、おりましませ!」
神を降臨させるのに必要なのは言葉ではなく、心と器だ。
ただ一番の問題は、この場の『遠つ神』が誰かということだった。
リリの目的は、このマイナーな儀式により被害にあった人達を元の状態に戻し、地球人だけの為の中学校を手に入れることだった。
その為にも、この学校から発生している黒い稲妻を止めたいらしい。
リリは五分間だけでもいいから、御柱を鎮める自分の護衛をしてくれと、ジョジョに頼んだ。
「まぁ、いいでしょ。
私が直接戦うという訳ではありませんし、この儀式で犠牲にあったという人達を助けたいという願いも叶えてあげたい。
この私、ウルトラマンジョジョは、あなたの為に力を貸すことにしましょう」
リリは禿げの剣から発射された水を掴むと、水はリリの力によって水量を増す。
その次の瞬間、禿げと低級神が戦いを始め、余波として水蒸気爆発が起こる。
爆発は屋敷の上半分を吹き飛ばす程の威力だが、リリは無傷。
「あの人達は夢中になると、遠慮というのを忘れるのですかぁ?」
ジョジョの張ったバリアによって、リリとジョジョは無傷なのだ。
こちらの影響はというと、辺りに立ち込める水蒸気で、視界が利きにくくなった程度。
気配を探ると、ごく少数の強力な生命反応しかない。
豚の連れてきた獣人達は全滅したようだ。
「後、四分位ですかねぇ〜」
川はかなり深いところまできたようで、半身を埋めながらも終着駅を求めてひたすら歩き続けている。
だいぶ歩いたところでようやく気が付いた。もう鼻までどっぷり浸かっていることに…。
死んだ人間の魂が本来の原初へ戻るためにまず行くべき場所。目にみえる範囲ではおばあちゃんが手を振るどころか陸地すら見えない。
先は真っ暗で何も映らず、行くことを拒むかのように川の水が足を重くする。
死んでまでこんな苦労をしなけりゃならんなんて、もっと楽なもんだと思ってたけどそれは検討違いだったらしい。
>160
『生き返ることが幸せかどうかは分からないけれど・・・このまま死ぬなんて悔しくない?』
聞こえたのは地獄からの呼び声ではなく、おだやかなどこか聞き覚えのある女性の声が木霊した。
声に呼応するかのように川底から暗闇を照らす光が辺りを包み込む。視界のすべてがまばゆい光に変わったとき、意識は暗転する。
>181
「むぎゅう」
目を覚ますと瓦礫の中でうつぶせになりながらぶっ倒れていた。こんなガタガタな中で寝ていたとはどこでも寝れるのびた属性は伊達じゃねぇ。
「皮膚が焼けたようにヒリヒリするし、まるで誰かに背中を踏まれたように痛い…。なぜだ?」
首をこきこき鳴らしながら欠伸をひとつ。立ち上がって視界に入ってきたものは鬼と華山理利と例の変態。
鼠も復活しやがってピンピンしている。霊玉もなくなって牙の主の支配から逃れることもできたしここから逃げたいな。
武器ももってないし、足手まといになっちゃうから一般人は退避しましょう。そうしましょう。
抜き足差し足忍び足で出口までそろりそろりと誰にも気付かれずに移動して行く。はやくこい礼司!そして助けろぉ!
終わりだ! 世界の終わりが来たんだぁ! ハッ、ハハッ、ハハハハハハハハーッ!!
ノスフェラトスとモートは己の内包する全霊能力を込めた攻撃を繰り出した。
至近距離で冷水の嵐と熱砂の嵐が相食んだ。
闇に属する暗黒の魔ノスフェラトゥと、陽に属する日天の魔モートが激突した。
「おお・・・」
幾つもの水蒸気の柱が激闘の場に立ち上っていた。
林立する湯気の柱の中に一本、灰茶の柱があった。舞う砂の集まり。その哀れなかたまりがモートであった。
轟々と回転していた竜巻は今は威勢は枯れてしまった。そよ風に吹かれあちらこちらに漂う埃の群れに過ぎない。
肉体を持たず、渦巻き飛ぶ砂粒一つ一つがモートの体であり、砂の集合体がモートであった。モートを形作る竜巻が
消え去ろうとしていた。
「ノスフェラトゥ・・・霊剣と霊玉を有した分、御前が勝っていた様だ・・・」
砂粒を宙に舞わしていた風がぴたりと止んだ。
瓦礫に埋まる祭壇の床に砂が一斉に落ちた。
ウガリットの乾季の邪神モートは敗北し消滅した。
しかし、ノスフェラトゥの手に輝いていた霊剣叢雲剣は刀身の根元から折れていた。
零れ落ちた刃は熱波に溶け蒸発していた。
両雄の死闘の末、三つの霊具の一極、叢雲剣が失われた。
ラスティーリアが治療を行っている最中、ベルの魂が戻ってきた。
だが、それに伴いベルの体内では異変が起こっていた。
「ラスティーリア、ベルから離れて!!」
アリアはベルの口の中に問答無用で手を突っ込んだ。
思い切り引っ張ると、ベルの中からピンクのロープのような物体が大量に出てきた。
「大丈夫?」
アリアはピンクのロープを指でつんつんつついた。
>「あら、アルじゃない。また会えるなんて世の中意外と狭いわね。しばらく見ないうちにお互いずいぶんと変わったわね。
>でも死にたがりなところは相変わらずで安心したわ。」
「あなたも相変わらずね。それから、いくら寝起きだからってがっつかないでよ」
床に下りたアリアも、それきりベルには興味を失ったようだった。
意識を回復したベルの暴走を程よく聞き流しながら、ラスティーリアの前にかがみこむ。
「・・・・・・また縮んじゃった?」
ラスティーリアの体をすっぽりとバスタオルで覆うと、自分の魔力を送り込みはじめる。
モートと戦うノスフェラトゥを邪魔者どもから守る為に、コクエイは臨戦態勢になった。
>アマナ
>「---ヘイトレット」
「ガアアアウ!」
アマナが召還した霊将に牙を剥くコクエイ。
「りーん、りーん・・・」
霊将に飛び掛ったコクエイの耳に忌ま忌ましい力を減少させる、あの鈴の音が聞こえた。
>リリ
>理利は手にした宝鈴を打ち鳴らした。
しかしそう認識した瞬間、衝撃がコクエイを、ヘイトレットを飲み込んだ。相模国造神殿が鳴動した。大量の水蒸気が
一気に発生し、大爆発を起こした。リーダー・ノスフェラトゥを背に守っていたコクエイは水蒸気爆発の衝撃波の直撃を受けた。
コクエイは吹き飛んだ。崩れ落ちる屋敷の瓦礫の下敷きにコクエイはなった。
>水無月
>「ところで、鼠男さんは何処かしら?」
>ノスフェラトゥを探す途中、何か人を踏んだような気がするが、つかさはあまり気にした様子は無かった。
「グアウ!」
コクエイは積もった瓦礫を押し上げて立ち上がった。コクエイの背中を踏んでいた水無月つかさが宙に飛ばされる。
コクエイは見た。
何層にも階のある巨大な相模国造神殿の天井が全て吹き飛んで大穴が開いている。星空が見えた。
崩れた瓦礫からは水蒸気の噴煙がまだ立ち昇っている。その湯気の霞にノスフェラトゥが立っていた。
闇と光、水と熱が激突し、太陽の邪神モートは滅んだ。ノスフェラトゥが勝利したが、吸血鬼の弱点である日輪の光に
焼かれていた。手にした霊剣も折れて柄しかない。
満身創痍のノスフェラトゥを見たコクエイの心に、変化が起きた。コクエイは首をかしげた。ノスフェラトゥを不思議そうに見る。
ノスフェラトゥが変わった、とでも思っているのだ。どう変わったと感じているのか?それは、衰えた、と感じているのだった。
群れがつくる動物は、強いリーダーに従う。リーダーの条件は群れの中で最強であることだ。
猿山のボスが怪我をしたり、老いたりしたら、リーダーの座を狙う若手に襲われるのはよく知られている。狼やライオンの群れ
でも同様である。弱ったリーダーは反乱に遇うのだ。
人としての精神を消失し、牙の主より与えられた野獣の鬼の属性に、完璧に堕ちていた鋭太郎は文字通り獣であった。
ノスフェラトゥに威圧され、服従していたが、その呪縛は解けたのか。
「ギャアアアアアアアアアアアウウウ!」
モートとの激戦直後の傷ついたノスフェラトゥに、勝機とばかりにコクエイは野獣そのものの本能で襲いかかった。
コクエイはただのケダモノであった。
お湯を沸かしすぎなんじゃないかしら。
湯気がひどすぎてなんにも見えないじゃない。
あれ?
ん?
冷たい。
このお風呂、水じゃない!冷たい!
あれ?
広い。広すぎ。このお風呂、広すぎる。ベルの家がセレブでお風呂もゴージャスだったけど、この広さは。
あ!
違う。ここはベルの家じゃない。ベルのお風呂じゃない!
ここは川だ!川じゃない!いつのまに、あたしは川に来たの?
「レイジさまー!ギコー!アリアー!おまけにベルー!」
返事がない。
「ラスティーリア、ベルから離れて!!」
はい?
「大丈夫?」
なにが?
「・・・・・・また縮んじゃった?」
なんのこと?
アリアの声がどこから聞こえてくるのかわかんない。まわりには霧が立ち込めている。
あたしはベルの体の中に入ったはずなのに、知らない川の中に足を浸して立っている。
「知らない川じゃない。ここ。ここ、知ってる。ここは」
三途の川!
来たことある。あたしは来たことないけど、あたしの一部たちが来ている。そう感じる。
だって川にあたしの一部たちの残したオーラが残っている。残留しているあたしの一部たちの念がある。その念を
あたしは感じとった。
「あれは」
あたしは遠くに影を見つけた。大きな影。象?象が歩いている。川の水の上を象が歩いている。象の上には人がいるみたい。
あたしは追いかけてみた。
コウモリの翼をはばたかせて、あたしは飛んだ。
近寄ってみるとそれは象ではなかった。大きな白い猪だった。猪の背には驚くほど綺麗な少女が乗っている。
なんて綺麗。
違う。少女かと思ったら少年だった。美少女に見えるような完璧な美少年。レイジさまといい勝負。
「あなたは」
あたし、知っている。
あたしの一部が会っているよね?銃撃されたレイジさまを助けて消滅した、首のあたしが会っている!
あたしは大猪の頭に降りた。この人と話すのに調度いいから。
「あなたは誰?
ノスフェラトゥとかブフドとか悪者にはたくさんあたしは会ってきたけど、なんか一番邪悪な妖気を感じるんですけど」
>モート
>「ノスフェラトゥ・・・霊剣と霊玉を有した分、御前が勝っていた様だ・・・」
「正に貴殿の申す通りじゃ。辛勝じゃて」
ノスフェラトゥはよろめいた。
砂漠の熱風モートは照りつける無慈悲な灼熱の太陽神である。吸血鬼は太陽光が弱点であるが、それは太陽が聖なる光で
あればこそである。太陽神であるが魔であるモートの日輪光にノスフェラトゥは耐えた。
耐えはしたが、ノスフェラトゥの体からは白い煙が幾筋も上がっていた。
邪とはいえ日輪の光を浴びせられたのだ。ノスフェラトゥの細胞は焼け焦げ、煙を発していた。
黒い鎧の中でノスフェラトゥの体は燻り、灰となって崩れつつあった。
「危ない所じゃったわい。モートがこれほどの攻めを見せるとはのう」
肉体は崩壊し始めていたがノスフェラトゥは慌てなかった。
霊剣と霊玉を有しているのだから。これしきの傷など・・・
「なに!」
ノスフェラトゥは右手を見て絶句した。
叢雲剣が刃の根元から折れて無くなっている。
「わしの剣が!」
ノスフェラトゥは呆然とした。
次に憤激が湧き起こった。
「ええい!モートめが道連れにしおったか!」
ノスフェラトゥはふらつく足でモートの砂の残骸を踏みにじった。
「おのれモート!おのれ!」
霊玉は無事だが霊剣が失われた。三つで一つの霊具であるのに霊剣が砕け失せた。
「わしの剣!わしの剣が!」
ノスフェラトゥは這いつくばった。
「モ、モロー!折れた霊剣の刃を捜せ!捜すのじゃ!」
吐血しながらノスフェラトゥは絶叫した。
瓦礫に四つん這いになって刀身を捜すが、鎧の袖口や襟首からさらさらと灰がこぼれ落ちた。
ノスフェラトゥの肉体が灰になりつつあるのだ。だが肉体の蘇生よりも刃を捜すのを優先させた。
ノスフェラトゥは必死であった。目は血走り息は喘いでいた。
しかし折れた剣刃は見つからない。刀身はモートの炎熱で蒸発していたのだ。捜してもある筈が無い。
「霊宝の招来ができぬではないか!嗚呼!なんたることじゃ!」
ノスフェラトゥは天を仰いだ。
水蒸気爆発で天井の全てが噴壊した相模国造屋敷は青天井だった。覗き見える夜空にノスフェラトゥは血を吐きながら叫んだ。
「ゼフィール!敖遊の儀は終焉を迎えたぞ!これでよいのか!これでよ・・・」
>コクエイ
>「ギャアアアアアアアアアアアウウウ!」
「げっ・・・・・・ぐ・・・!」
モートとの激闘で激しく肉体を損傷し、霊剣喪失で動揺していたノスフェラトゥは虚を突かれた。
背後から巨体のコクエイに襲われた。
ノスフェラトゥは脳天からコクエイに噛み砕かれた。
コクエイは一気にノスフェラトゥを喰い、霊玉もろとも胃に納めてしまった。
コクエイは霊玉を飲み込んだことにより
(人∀・)に変身した
>ベル
>「願うこと一緒でもどうせなら自分で叶えたいもんね!いくわよー。おひょひょひょひょひょ!」
「待てこら!ベル!」
ボクは走り出したベルに叫んだにゃ。
「いろいろ取り憑いたもんが喋っていたけど気がつかにゃいのか?霊感はボクのほうが上か?落ち着くにゃ。戻れ!」
そう言い終わるとボクは風呂場に戻ったにゃ。明り取りの窓にトン!トン!と壁のでっぱりとか利用して、
さっさっと昇ったにゃ。
「霊視のできるボクには見えるにゃ。礼司にも見えるだろう。見てみるにゃほれ!」
窓から見える上湘南第一中学校に巨大なキノコ雲がむくむく夜空に湧き上がっていたにゃ。まるで核爆発の後みたい。
「相模の屋敷の上半分がふっとんでるにゃん。
うにゃにゃ!なんにゃ!?この気は!?
にゃにゃ!そうか・・・!」
ボク並みに優れた霊感の持ち主の礼司も気がついたか!
「学校には今、三つの霊具が揃っているはずにゃ。さっき礼司を連れて校庭に入った時に霊具の気をビンビン感じたにゃ。
それが・・・今、一つが消滅したような気がするにゃん。
霊鏡か霊玉か霊剣かどれかが破壊されたにゃ。おそらく剣にゃ。霊剣の気が散ったにゃん。
敖遊の儀が再現劇であるのなら、霊剣が壊れる演目は存在しないにゃん。ベルもそうだけど、霊具争奪の戦いに参戦した者は
皆、霊宝を手に入れて自分の願いをかなえようとしてきたにゃ。
でも敖遊の儀そのものがたったいま壊れたのかもしれないにゃん!」
ボクは窓から降りて、アリアのところに行ったにゃ。
アリアに救出されたラスチーリアは正体を礼司の前に晒していたにゃん。かわいそうすぎて、からかう気にもならないにゃん。
アリアが死にかけたラスチーに霊力を注いでいるにゃ。
これで大丈夫だろう。気がついたら、思いっきりからかってやるにゃん。
「む!」
にゃんだ!?
「むむむむ!こ、これは!」
ボクは飛び上がってびっくりしたにゃん。
「礼司!礼司!ラスチーに心を重ねてシンクロしてみるにゃ!
死後の世界に通じているにゃ!臨死体験しているラスチーを通して死後の世界が、見、見、見えるにゃん!
うわわ!ラスチーが見ている死後の世界、ラスチーの聞こえている声が聞こえるにゃ!
死後の世界にチャンネルが繋がっているにゃ!
あの川・・・三途の川?三途の川にいるのは!?誰だ!??」
「リリさん。もう、五分間は経過したことでしょう。
後は自分で何とかして下さい。
薄情かもしれませんが、これも私の生体維持の為なのです。
では、お休みなさい」
ジョジョは部屋の隅っこの方に行くと、その場で寝てしまった。
ウルトラマンとしてエネルギーを大量に使ってしまったのが原因なのだ。
起きる頃はジョジョの体力は全回復していることだろう。
「!!!」
爆音と共にアマナに水蒸気が襲い掛かる。
火傷では済まされない温度にまで達して蒸気に対して今のアマナは耐性がまったく状態だ。
もしこのまま蒸気に包まれたなら、アマナは蒸し焼きどころか蒸し焦げになって人炭に成り果てるのが落ちだろう。
「アマナの---クソッ!!!間に合わない。」
防衛魔術の詠唱を唱えようとするが、間に合わないことは理解出来ていた。
アマナは死を覚悟し、心の平静を保とうとする。
「ボァァァァ!!!」
霧に焼かれる直前でヘイトレットがアマナに被さり、庇った。
霧の熱が逃げ、人体に影響が無いくらいまで下がったときにアマナを開放する。
アマナはヘイトレットのお陰で無傷だったが、ヘイトレットはかなりの重症を負ったようだ。
「ありがとうございます。ヘイトレット」
ヘイトレットに礼をするが、彼は怒っていた。
自慢の怪力を抑え、アマナの頬を叩いた。
「---何するんですか!!!」
何の脈略も無しに殴られたアマナはヘイトレットを怒鳴りつける。
しかし、ヘイトレットはそれに物怖じもせず、アマナに念で話しかける。
『お嬢!お嬢の命はあっしらの命と同じ、それをお嬢は先ほど捨てようとした。
わかりやすか?あっしの言いたいが!!!
あっしらはお嬢のために命を張っているですぜ、そこまでして守っているものをお嬢は捨てようとする。
これはあっしらに対する侮辱、いや、それ以上の行為でさぁ!!!
いいですかいお嬢!二度と命を捨ててもいいと考えないでください。』
ドスの聞いた念と喋り方で只でさえ怖い顔がもっと怖く見えた。
「---すいませんでした。約束します。二度と生きることを諦めません。」
『わかればいいんでさぁ。---ところでお嬢---あの鬼---いや、小僧か
あっしに全て任してくりゃ―せんかね?』
そう言い、コクエイを指差す。
しかし、アマナの表情は曇った、だが、すぐに拒んだような顔は消した。
「---わかりました。ご自由にしてください。
---アマナとの契約に告ぐ、彼者に偽りの肉体を与えん。---ファウストラトス」
黒い霧がヘイトレットを包み、怪物としての肉体から人間の肉体へと転化させる。
刹那、黒い霧がコクエイにボディーブローを叩き込む
「---どうやら---この魔術は術者の性別がかなり影響されるようでござんすね」
コクエイにボディーブローを叩き込んだ霧は消え、人間となったヘイトレットの姿を現す。
レギオンのイメージとは違い、ヘイトレットは美女の姿をしていた。
「まぁついているついていないの問題はさておき、小僧---お前さんの相手はあっしです。」
腹にめり込んだ拳を外す。
「親子の任侠仁義を守らねぇ奴はあっしは性分的に大嫌いでね、正直殺そうかと思っていたが---
さっきやりあったお前さんの拳は悲しい感じがしてな---お前さん苦しいんだろ?
なら心置きなく暴れろ!あっしが止めてやるから」
ヘイトレットはコクエイの攻撃にそなえ身を固めた。
「どうやら、成功したようですね---ヘイトレットは仁義を重んじているようですから
別に心配しなくてもよかったのですね。」
術の成功を確認し、ヘイトレットのキーホルダーをしまう。
この術が発動している間はキーホルダーを持って指示を出してもすべて無効になっているからだ。
しかし、この術の存在はアマナの中で革命を起していた。
この術はレギオンを開放したことにより、レギオンに使う魔力すべてがレギオンが自分で補給し
その空いたスペースでまたレギオンを召還することが可能になったからだ。
簡単に説明すると一組のみの召還が二組に増えたってこと。
>「死ぬのは―――今日で2回目かしら?」
水無月が炭に成り果てた状態から再生したのが見え、アマナは何か理不尽なものを感じ変な顔で水無月を見る。
「---本当に不死身なんですね。
まぁ魔術協会に入っている状態でそんなもん使ったら私の出番になりますが
というか---私---助け損ですか?救助活動で救助したのがマネキンだったぐらい損してましたか?」
そう言い残し顔を背ける。
「しかし---たった今、三位一体の霊宝が壊れてしまった。
普通なら、この地の霊的災害も防いだことになり、明日から学校となるのですけど---」
そういってあたりを見回す。
「---まだ---この地には何か秘密が---いや---もしかしたら、別の霊宝があるのかもしれない。」
「ベル!よかった!……ベル?」
ベルの意識が戻ったのはいいけれど、まだ憑依されているような。
「ベル?」
僕は頬を引きつらせていただろう。ベルに訊いた。
「ラスティーリアは……?ラスティーリアを飲み込んだままは困るよ!ラスティーリア!!!!!!!!」
>アリア
>アリアはベルの口の中に問答無用で手を突っ込んだ。
>思い切り引っ張ると、ベルの中からピンクのロープのような物体が大量に出てきた。
「よかった。ラスティーリア!」
バルンディノの地下神殿でアッシュの体内に侵入したラスティーリアを僕が引っ張り出したときと同じだ。
南の海のサンゴ礁に住んでいそうな美しいピンク色のアメフラシみたいな姿。
無事だった。でも意識がない。
アリアが優しくバスタオルをラスティーリアにかえて、自分の魔力をそそぐ。
>ギコ
>「礼司!礼司!ラスチーに心を重ねてシンクロしてみるにゃ!」
ギコが叫ぶ。
僕はあわててラスティーリアの心のオーラを読んでみた。
バスタオル越しにラスティーリアのスライムの体に手をあて、そして僕は目を閉じた。
霧だ。一面の霧のビジョンが見えた。足を冷たい水が濡らしている。
三途の川だ!
>「あの川・・・三途の川?三途の川にいるのは!?誰だ!??」
「ゼフィール。
三途の川の渡し守で、……敖遊の儀の番人、レフェリーだよ」
死後の世界とラスティーリアを通じて繋がっている!
僕はラスティーリアの魂に語りかけてみた。
「あの世に行ってはいけないよ。ラスティーリア。ベルもサルベージできたよ」
僕はさらに賭けにでた。
「ラスティーリア。僕の代わりにゼフィールと話せる?
ゼフィール。霊剣は砕け散ったみたいです。あなたのことです。それはお分かりですよね。
霊宝争奪の呪われた祭礼は、いまこのときに終結したのではありませんか?」
現世と三途の川の交信器となったラスティーリアを通じて、乙事主は礼司の思念を受け取った。
「小さき者の言う通りだ。
叢雲剣が霊具でありながら祭祀に介入するのは赦さない、などと言い憤慨していたがゼフィール。
この事態はその比ではないぞ。
悠久の古より続いた霊宝の儀が破壊されたのだ。おまえさんが欲情していたがための失態だ。
どうするつもりだ。ゼフィール」
>189
天保、黒鋭の2名を足蹴にした報いか、単に日頃の行いが悪かったのか。
いずれにせよ、水無月つかさは天へと吹き飛ばされ、暫くして落ちてきた。
そして床に激突すると、人型の穴が開く。漫画みたいな光景である。
>195
>というか---私---助け損ですか?救助活動で救助したのがマネキンだったぐらい損してましたか?」
「残念だけど、そういうことになるわね。ええ、貴女の喩えはまさに的を射ているわ」
穴の中から、つかさの声がした。
「仕掛けとしては、簡単なことよ。死者は生き返りでもしない限り、二度死ぬことは無いの。
死体を殺しても死体のまま。壊すことはできても、殺す事はできないのが死体。当たり前のことでしょう?
貴女が助けていたのは、そう、もう手遅れの死体とか、あるいは貴女の言う人形ね」
穴から出てきた水無月つかさは口を開き、何と言う事もなく喋っている。
『壊れたモノなんて、復元するなり、また同じ形のモノを作るなりすれば、元に戻るものなのよ。
モノはモノでも、命ばかりはそうはいかないけど―――
単なる死体を元の形に戻すことくらいは、わたしにとっては造作もないことよ』
つかさの口が動くことなく、再び彼女と同じ声がした。
声そのものは同じだが、後で聞いた方は耳に直接響くような、いわゆるテレパシー的な聞こえ方をするものだった。
「最近は、手品に凝っているのよ。タネがないから魔術かしら?どっちにしてもマジックよね」
『ホント、我ながら安っぽい手品だこと。
不死身の肉体のタネが、安易なネクロマンシーに過ぎないなんてね』
そう、悪魔を召喚して操るデビルサマナーは、実はいつの間にか、悪魔の力によって動く人形になっていたのである。
粉々になったつかさの肉体が元に戻ったのも、頭に直接響く声が語ったとおり、
ただ死体を復元したり、同じ形のものを新しくこしらえたりしただけだ。
>ジョジョさん
>「まぁ、いいでしょ。
> 私が直接戦うという訳ではありませんし、この儀式で犠牲にあったという人達を助けたいという願いも叶えてあげたい。
> この私、ウルトラマンジョジョは、あなたの為に力を貸すことにしましょう」
「ありがとうウルトラマンジョジョ!!大好きよ!」
理利はジョジョを見上げて、子供のように屈託なく笑った。
>186 >188 >190
モートとノスフェラトゥの激突により発生した水蒸気爆発は、あたり一面を破壊しつくした。
だが、ジョジョに守られた理利には何の影響も無かった。
>「あの人達は夢中になると、遠慮というのを忘れるのですかぁ?」
ジョジョの口調は鷹揚だったが、漂う気配はまさに王者の風格だ。敵でなくて本当に良かったと、理利は心底安堵した。
そして今。
モートもノスフェラトゥも消滅した。
激突を制したたのはノスフェラトゥだったが、弱っているところを霊玉ごと戸田に食べられてしまった。
だがそんな事は今どうでもいい。頼もしい守護者を味方につけた今、理利は自分に課せられた役割を果たすだけの話だ。
理利の声に答え、大橘比売命は降臨した。
神の依り代になることで、理利の印象ががらりと変わったのがジョジョにも分かっただろう。
ノスフェラトゥもモートが消えたのは好都合だが、叢雲剣まで消えた今となっては、本来の敖遊の儀は再現不可能だ。
だが、理利が行おうとしている鎮めの儀式には最初から叢雲剣を必要としない。
出現させた大量の水は、走水の海に見立てたものだ。
理利は日本武尊ではなく、海神に身をささげた大橘比売命の再現劇で相模国造を鎮めようとしていた。
『菅畳八重、皮畳八重、絹畳八重・・・』
唱えながら残り少ない魔法石を荒れた水面に投げこみ、宝鈴を振り鳴らす。
魔法石はマーブル模様を描きながら水面の上に浮き、淡く輝いていた。
これで『場』は完成した。
後は理利が身を捧げれば、相模国造の荒魂は静まり黒い稲妻は止まるはずだった。
そして人身御供となった者は、相模国造の元に運ばれるだろう。
―――― だが、そこで終わっては一連の儀式で犠牲になった者は帰ってこない。
神との交渉に持ち込むためには、不完全な霊具での一連の儀式で、自らの格を神の領域まで高める必要があった。
藤田を待つだけの猶予は残念ながら残されていない。皆既月食が終われば全てが手遅れだ。
『我、御子に代りて海の中に入らむ。御子は、遣はさえし政遂げ、返り言申したまふべし』
理利は、魔法石を溶かし込んだ水面に足をのせた。
薄い絹布のように引き伸ばされた魔法石は、理利を乗せてもすぐには沈まなかった。
『さねとし 相模の小野に燃ゆる火の火中に立ちて 問ひし君はも』
>「リリさん。もう、五分間は経過したことでしょう。
> 後は自分で何とかして下さい。
> 薄情かもしれませんが、これも私の生体維持の為なのです。
理利は振り向き、こくりと頷いた。
「ジョジョさん、私の頼みを聞いてくれてありがとう。心から感謝します」
その言葉を最後に、理利は水の中に姿を消した。
>コクエイ
>「ギャアアアアアアアアアアアウウウ!」
>ノスフェラトゥ
>「げっ・・・・・・ぐ・・・!」
「ノスフェラトゥ様!」
主君ノスフェラトゥがコクエイに頭から喰われた。コクエイの牙にノスフェラトゥは噛み砕かれ、
一息に飲み込まれてしまった。
「ノスフェラトゥ様!ノスフェラぶひ。ぶひ?」
「復ー活!
危ねえ危ねえ。喰ったモローの脳に体を強奪されちまうところだったぜ!
ノスフェラトゥが死んでくれて助かった」
ムアコックの意志が覚醒した。
「余の守護神モートまで滅んだか。霊剣も折れた。敖遊の儀はお終いだな」
ムアコックは座り込んだ。
コクエイとヘイトレットの戦いを一瞥すると鼻で笑った。
「今までの激闘はなんだったんだ。願い事を叶える霊宝は誰の手にも入れないとはな。これが行き着く先か」
コクエイの腹の中に霊玉があるが、もはや価値も威力も激減した。まさに単なる霊具に落ちた。
霊宝召還として三体で一つの神器だが、霊剣が喪失した今、コクエイの体内の霊玉の神気も失せつつある。
「終わりだ」
リリが人身御供となって相模国造を鎮めようとしている。
空ろな目でムアコックは見送った。
水蒸気爆発で湧き上がった蒸気は天に昇り、夜の気に冷やされて雨となった。
吹き抜けとなった相模国造魔神殿に一時の雨が降った。
「僕の許しなく僕に話しかけてはならない」
乙事主の頭に立ち、声をかけてきたラスティーリアにゼフィールは冷たく言い放った。
「だがラスティーリア、汝の主に捧げる忠誠心に免じて応えよう。
僕も礼司は好きだからね。どのくらい僕が礼司を好きかというと、このぐらいさ。見ていなさい」
ゼフィールの双眸が赤く光った。
ラスティーリアはその光を受けて仰け反った。
ラスティーリアに心を重ねていた現世の礼司とギコも目が眩んで仰け反った。
風呂場の脱衣室で正体のまま横たわるスライム体のラスティーリアが、鎌首をもたげて打ち震えた。
「ラスティーリア。汝はよき時に現世と冥府の架け橋になってくれたよ。
全知全能ではない僕には、好機を自分では創れないからね。」
ゼフィールは笑った。
「僕は鞭の扱いは得意でね。利用させてもらうよ。ラスティーリア」
ゼフィールに操られ現世のラスティーリアの体は龍のように暴れた。
脱衣室にいた者たちがなぎ倒される。
ゼフィールの声がラスティーリアから発せられた。
「霊剣が折れるなんてありえない。神器はそんなに脆いものではない。
叢雲剣が己の意志を持ち、聖なる敖遊の儀を汚したので神器としての力を減じてしまったのさ。
だが霊具は不滅だ。不滅であればこそ霊具だ。
汝らは霊具の不可思議なる神力を知らぬ!敖遊の儀の酷なるを知らぬ!霊宝のもたらす野心と狂気の烈なるを知らぬ!
結局は僕なんだ。僕こそが霊宝を得るにふさわしいんだ。僕のために全てはあるんだ!
屑船の洞察力は大したものだったよ!
リリも素晴らしい。相模国造を鎮めてくれるなんて有り難い!
モートもノスフェラトゥも、ベル・トリニティもよく踊ってくれた!
ふふふふ。礼司、礼司、礼司!
君は最高だよ。礼司。さあ、おいで」
スライム体のラスティーリアが礼司の心臓を貫いた。
三途の川面に礼司の魂が出現した。俄かの死に礼司は茫然自失している。
ゼフィールは乙事主から飛び降りると、礼司へと走った。
礼司を抱きしめ、三途の川から水の上へと上げた。
死の水上に上がった礼司は衣服が霧となって消えた。
「僕が先代のゼフィールにされたことをしてあげるね」
ゼフィールは礼司に熱い接吻をした。
ゼフィールが口を離した。
礼司の霊体の体に変異が起きていく。
「その性では継承はできないんだ。きみは女の子みたいな顔に男の体でちぎはぐだった。
これでぴったりだね。心配はいらない。ゼフィールになれば性は自由だ」
ゼフィールは拍手をひとつ打った。
霧が呼応して濃度を増す。
「ゼフィールを受け継げ、礼司!僕の精を受けろ」
「ど、どうしたにゃ!ラスチー!」
突然にスライム形態のラスチーリアが暴れだしたにゃ!
>「結局は僕なんだ。僕こそが霊宝を得るにふさわしいんだ。僕のために全てはあるんだ!」
ラスチーリアがラスチーでない言葉を喋りだしたにゃ!
そして!
>「君は最高だよ。礼司。さあ、おいで」
>スライム体のラスティーリアが礼司の心臓を貫いた。
「礼司ーー!」
礼司の右胸をラスチーが突き刺したにゃ!
礼司が倒れる!
ボクは礼司に駆け寄ったにゃ。
「礼司!礼司が死んでしまう!アリア!あ、アリアでは無理か!?
リリ!リリ!リリでないと無理か!?
礼司、しっかりするにゃー!こんなのいやにゃー!」
>ヘイトレット
>「心置きなく暴れろ!あっしが止めてやるから」
「ガルルルル!」
ヘイトレットの第一撃をくらったコクエイは空足を踏んだ。
「グアアアアアアア!」
コクエイは大音響で吠えた。
威力の減退した霊玉とはいえ、霊具を身中に宿したコクエイは並の魔物ではなかった。
強引な変身で破けていた体組織は霊玉の霊力で復元し、屑船に憑依されていた時と同様の力を有していた。
熊と虎を掛け合わせた巨躯のコクエイは、ヘイトレットに強烈な右腕の打撃を放った。
ヘイトレットが吹っ飛ぶ。 倒れたヘイトレットの腹にコクエイは牙を立てた。
はらわたを食い破るつもりだ。
浮き足立って学校に向かおうとするが、ギコに制止される。
学校で爆発が起き、霊剣が破壊されたというのだ。
しぶしぶ脱衣所に戻るがベルの勢いはとまらない。
魔物であるラスティーリアの養分を吸収したことにより、エネルギー過多状態でとまってられないのだ。
「爆破ー?やーねーそんなくらいわかるわよー。学校に広がっている葦は私の眷属だもん。学校で起きてることはぐ
るっとお見通しよ!
だからこそ早く行きたいんじゃないのー。」
うずうずしていることを隠そうともせずに身体を動かしながら文句をつける。
だがそれに取り合うことなくギコはラスティーリアを介して三途の川へとコンタクトを取る。
そうしている間にも黒い稲妻が直撃し、ジョドーたちの張る結界を消失させ、ベルの家の半分を消し去った。
あと数メートルずれていたら脱衣所ごと消え去っていただろう。
外の風景とともに風が流れ込んできて、ベルの髪を乱した。
その様子に動じることもなく藤田もそれに習うので仕方がなくその姿を見ているが、聞き捨てならない言葉が聞こえて
くる。
>ゼフィール。霊剣は砕け散ったみたいです。あなたのことです。それはお分かりですよね。
>霊宝争奪の呪われた祭礼は、いまこのときに終結したのではありませんか?」
藤田がシンクロに集中しているのをいいことに、後ろから近づき強引に首を曲げ外を見せる。
外の風景は戦場、パニック、未曾有の巨大災害、終末、そんな単語が並ぶような状態だった。
>「終わりだ! 世界の終わりが来たんだぁ! ハッ、ハハッ、ハハハハハハハハーッ!!」
パニックに陥った人の叫びや、錯乱のあまりなぜかモロコシ体操をする集団がみえる。
「ちょっと、終結させてどうするのよ。この騒動で一体どれだけ死んだと思ってるの?私のヌーの世界・・・ゲフゲフ・・・
じゃなくて、後始末つけなきゃ収まらないでしょ。
便利に後始末つけられる儀式達成目の前にしてこのまま放り投げで終わる気?
叢雲剣が砕けたって刀身だけじゃない。アレの刀身は元々ないのよ?ただ三途の川の水引っ張って高圧かけて刀身
にしているだけなんだから。」
叢雲剣の所有権はいまだベルにある。
所有権がなくともあれほど使いこなしせたのはノスフェラトゥーの力の賜物だろう。
「リリはリリで苦労して起きかけた子をまた寝かしつけようとしているし、こんな面白い事を私抜きで終わらせようなんて
ありえなーい!」
藤田の頭を抱えてぐりぐりとまわしながら叫ぶベルであった。
だがその叫びはすぐに悲鳴へと変化した。
ゼフィールが三途の川からラスティーリアに干渉し、脱衣場の者たちがなぎ倒される。
ベルが起き上がったときには藤田の心臓がラスティーリアの身体が貫いていたあとだった。
いざなうゼフィールの声と絶叫するギコの声がこだまする中、ベルの髪が緑色に変化して逆立つ。
「ずるい!藤田だけ招待なんて!!思い通りにはさせないわよ!
藤田は引き摺ってでも取り返すし、来るなといわれても私はそっちにいっちゃうんだから!」
思い込みの力は恐ろしい。プラシーボ効果でベルは実力以上の力は発揮できるようになっていた。
藤田の心臓を貫いたのはラスティーリアの身体。
藤田とラスティーリアは何度も融合再生をなしてきたとオーラの混じり具合でわかる。
そしてベルの属性植物はあらゆる生命の中で最も生命力に富む。
ベルが手をかざすと、指先から植物の根状の触手が出てきて藤田の傷口と融合しはじめた。
藤田を貫いているラスティーリアの身体をそのまま融合させ、心臓や肺などを再生させようとしているのだ。
その際ラスティーリアの身体的、霊的負担までは埒外なのがベルたる所以ではあるが気にしない。
その間にも脱衣所はベルからはいでた色とりどりの花で埋め尽くされ、甘い香りに満たされつつあった。
右手をかざしつつ、左手を差し伸べ「帰り来たれ叢雲!」そう声を上げると相模国造の館に転がった叢雲剣の柄が飛来し、
その手に納まった。
「ほら、見たとおりじゃない。
所有権がないのに強引に自分の魔力で叢雲剣の刀身を作っていたのね。
刀身が折れたということは霊具としての叢雲剣が破壊されたのではなく、霊具を使役していたノスフェラトゥの魔力が破壊さ
れたということよ。」
軽く振ると根元に残っていた刃が落ち、音を立てる。
その直後、薄く、透明な水の刀身が鍔から溢れ出し形作る。
「リリ、藤田、私を置いてきぼりで面白イベント楽しもうったってそうは問屋が卸さないわよ!
直接交渉に行ったリリも捨てがたいけど、どうせこっちを経由しても行き着けるだろうから!ギコ、泣いてないで行くわよー!」
叢雲剣を手に立ち上がったベルはすでに幽体となっている。
先程から脱衣所を満たしている花の効果だ。
肉体は藤田の傍に屈み込み、手をかざしているままになっている。
そして自分の持つ叢雲剣の刀身に飛び込んでいった。三途の川へ乱入するために。
ベルの翠色の目は頭のアルラウネの新芽と同じように萌えていた。
「きゃー!」
アリアはゼフィールに操られたラスティーリアの触手に捕まった。
そのまま壁に叩きつけれそうになる寸前、口から冷気を吐き出す。
触手が途中から折れた。アリアが口早に何かを唱える。
ゼフィールからの制御を失った触手は力を失った。
>「礼司!礼司が死んでしまう!アリア!あ、アリアでは無理か!?
>礼司、しっかりするにゃー!こんなのいやにゃー!」
ベルが藤田を回復し始めた。藤田の傷を確認していたアリアが血相を変えた。
なんとベルは、ラスティーリアの体を材料にして藤田を回復させている!
「ベル、あなた何を手抜きしてるの!そんな事したらラスティーリアが消滅しちゃうわ!!」
慌ててラスティーリアの身体に手を伸ばした。
だが時既に遅く、ラスティーリアの身体はほんの一部しか回収できなかった。
おまけに弱っている。魔力の注入ではもう追いつかない。
「・・・もう!仕方ないわね!!」
アリアはラスティーリアの身体を丸呑みにした。
「ベルはラスティーリアの事、ホンットにどうでもいいみたいね。まあ・・・この分なら藤田君の器は大丈夫そうだけど」
心臓だけ綺麗にひと突きしたところをみると、後でゼフィールが利用する気なのかもしれない。
「それより今一番危ないのがラスティーリアね。すごく消耗しているわ」
もしかしたら、藤田君を殺すのに自分の身体が使われたことに、気づいたのかもしれない。
>ギコ、泣いてないで行くわよー!」
ベルは霊体になって三途の川に向かうようだ。
「ギコ、私は残る。でも・・・ベル一人に任せておいたら、とんでもないことになるわ。
だから、あなたが同行して藤田君とラスティーリアを連れ戻してきて。
三途の川にはまだアッシュとスパー・・・ギルバ先生そっくりの魔剣士が残っている筈よ。
合流できたら助力を仰いで。―――― 何とか行けそう?」
>>204 「ぐむ!!!」
右腕の攻撃を受け、思いっきり吹っ飛ぶ。
変身前の体躯ならここまで飛ぶことはなかっただろう。
しかし、吹っ飛んだとはいえヘイトレットもといラミーのダメージは少なかった。
「流石に女の体じゃ熊の攻撃には耐えられんか---」
>倒れたヘイトレットの腹にコクエイは牙を立てた。
「ぐぉ!!!---はぁはぁ---惜しかったな---あと三秒動くのが早かったら
腸に届いてたがな---」
ラミーは腹に突き刺さるコクエイの牙を内臓に届く前に止めていた。
「別に腹食われて殺されても、あっしを完全に殺したことにゃならないが
それじゃあっしの気が許せんのでな」
コクエイが牙に力を入れる前に顎から逃れそういう。
「しかし---修羅道に落ちたか---ハァ---
だが---あっしはただ殴るだけだ。それだけで」
思い切り踏み込み、また腹に一撃
「お前さんを救ってやる」
バスタオルの下でじっとしていたラスティーリアの本体がものすごい力で暴れだした。
ゼフィールの声で告げる。霊剣の不滅さを。
僕は覚えている。ゼフィールはムチ使いなんだ。ラスティーリアをムチ代わりにして……
目の前が急に真っ白になった。
なに?どうしたの?
>ゼフィール
>三途の川面に礼司の魂が出現した。俄かの死に礼司は茫然自失している。
ここは三途の川!?
ゼフィールに連れてこられた!?
ハッと我に返ったときには、僕はゼフィールに抱きかかえられていた。
ぞくり。
ゼフィールに触れられると、僕の背中がぞくりと震える。
だめだ。ゼフィールの妖艶さに僕は、僕は、……僕は勝てない。
ゼフィールに抱かれて僕は肌をさらした。
エクトプラズム体になった僕はゼフィールの意のまま。あらがうこともできない!
んぐ!
ゼフィールがくちびるを重ねてくる。
力がへなへなと奪い取られるような感覚。
僕が溶ける。とろけてしまう。
やわらかい唇が僕に重なったそのとき、僕の体が!そんな!
>「その性では継承はできないんだ。きみは女の子みたいな顔に男の体でちぎはぐだった。
これでぴったりだね」
うそ。
僕は……
僕はゼフィールから逃れるために、あばれた。
あばれて自分のいまの体に手が触れた。
胸。
やわらかい弾力のある胸。ふくらみ。
そして、下にはあるはずのものがなくなっている。
>「ゼフィールを受け継げ、礼司!僕の精を受けろ」
ゼフィールが僕におおいかぶさってくる!
僕はゼフィールを押しのけようと手をつっぱねる。
ゼフィールはいつのまにか服を脱ぎ、僕の手はゼフィールのひきしまった胸に触れた。
僕の手の平にゼフィールの心臓の鼓動が伝わる。
肉体なんてないのに!この三途の川で!
たすけて!
あぁ。僕をたすけて。
ゼフィールの快楽から僕をたすけて。
アッシュ!
ゼフィールの指が僕に入る。
う。
あう。
ゼフィールがぼ、ぼくに入ってくる。うく。痛っ。
ひあ。
あっ。
あ―――――――――――――――――― 。
水無月の話を聞き、ジュリは呆然としていた。
それは水無月が当然のように話した自分の身の上話が
実は魔術協会の禁忌を通り越して、魔法の域に達していたからだ。
魔術師からの魔法とつまりは奇跡なのだ。
それを知ったジュリは始めは沈黙していたが、徐々に肩を揺らし始め
ついに
「アッハハハハハハハハハ!!!
クゥククククククククク!!!
ハハハハハハハハハハ!!!」
館狭しと笑い声が響き渡る。
「クゥククク---あっすいませんいきなり笑っちゃって
---いえ、別にそんなつもりで笑ったんじゃないんですよ
---ハァ---えーっと---今水無月さんがやっていることは奇跡なんです。
もっと詳しく言えば---そう!イエス・キリスト
彼は裏切りによって磔にされましたが---何年かしたのちに復活したんです。
まぁそれが真実なのかどうなのかは、まだはっきり決まっていないんですけど
真実だとしたら---水無月さん、あなたがやった方法で復活した可能性が高いんです。
もちろん、彼が魔術師だとはいう文献は残ってませんから、大体この説自体妖しいんですけどね」
と笑いながらジュリは語った。
「肉体から離れた魂をその肉体と一定距離を保ちながら繋げ、持続させることは今の魔術でも出来ていないことなんですよ
しかし、驚きですよ。本当に、水無月さんがそんなことまで出来るなんて」
まだ笑いが止まらないのか、少しだけ肩がゆれている。
>「復ー活!
しかし、ムアコックの声を聞いたトタン、一気に冷たい顔へと変化した。
水無月から顔を背け、ムアコックを睨みつける。
「---そういえば---すっかり忘れていましたよ。アナタのことをね。
魔術協会に歯向かう者は全て葬る。それが私たちのやり方でしてね。
それに、アナタはゴドーを殺した。
確かに彼は殺されるはずの人間だが、しかし、彼は私がちゃんと殺すまでは同僚と変わりない---
---この下賎な豚め、天啓を与えてやる。」
211 :
天の声:2006/10/31(火) 17:04:10
ええい、ここには貞操を大切にするお嬢様とかシスターとか居ないのか!
「僕は自由だ!」
礼司を打ちのめしたゼフィールは叫んだ。
濃密な霧がゼフィールの声に震える。
ゼフィールは余韻に倒れる礼司の耳元に囁いた。
「敖遊の儀が無くなれば、番人もその任が停止する。敖遊の儀が円滑に執行される為だけに存在するのが敖遊の番人だ。
敖遊の儀に番人は付随し隷属する。惨めな下位の者だ。
番人なのに僕が霊剣叢雲の横暴に座視するしかなかったようにね。
僕に出来た事は敖遊の儀が滞りなく進行する様に、でしゃばりな陰陽師を引っ込まさせたり、日本政府が騒がない様に
圧力をかけたり、相模国造屋敷が凡人どもに見えない様に不可視にするぐらいさ。
霊具どもの奴隷が僕、ゼフィールだ。
その霊具が損なわれて敖遊の儀が止まった。敖遊の儀が止まれば番人も活動停止、待機さ。
試合でいえばインターバル。
でも霊具は不滅だから復元し、敖遊の儀は必ず試合再開になる。
だけども霊具どもに縛られない時間が、僕は遂に今、得られたんだ!
礼司!きみを番人にしてやるよ!きみに番人を押し付けてやる!今がチャンスなんだから!
“大いなる存在”は承知しないだろうけど、奴らは大きすぎて矮小な地球の出来事に気がつくのには時間がかかる。
だから代理人である番人を置く。“大いなる存在”どもが番人の勝手な代替わりに気がつく前に、僕が霊宝を得ればいいんだ!
霊宝の力は“大いなる存在”も軽視できない!
ずっと死者だったけど、礼司!僕は生者になるぞ!
この日の為に力ある霊魂たちの精を受胎してきたんだ!
あははははははは!」
ゼフィールは狂った様に笑った。
「でも番人の使役獣、乙事主は礼司にはやらないよ。乙事主は番人を監視する番人だからね!
消滅してしまえ!乙事主!」
ゼフィールは金色の蛇の鞭を振るった。
乙事主の首を鞭が切断する。
>ベル
>自分の持つ叢雲剣の刀身に飛び込んでいった。三途の川へ乱入するために。
「よく来た!ベル・カーマン!礼司の仲間が助けにきても無理さ。礼司、汝は既に僕の精を受けた。手遅れだ。
なれどもベル・カーマン!汝が此処に来たったは僕に腹を捧げる為だ!
汝以上に僕の受け皿になれる者は存在しないさ!」
「天孫降臨!万事は僕の為に動いているんだ!あははははははははは!処女受胎!」
ゼフィールの体が光輝いた。
視界を遮る霧を貫いて三途の川を照らした。
脱衣所に幽体離脱して放心状態のベルの腹が膨らみはじめたのは、それと同時だった。
>ムアコック
>コクエイの腹の中に霊玉があるが、もはや価値も威力も激減した。まさに単なる霊具に落ちた。
>ベル・T・カーマン
>「帰り来たれ叢雲!」
ベルによって叢雲の剣が再生された事などは獣鬼のコクエイが知る筈も無い。だがコクエイの腹の中の霊玉八尺瓊勾玉
(やさかにのまがたま)は激しく反応した。霊玉は無尽蔵の神力をコクエイに与えた。いまや知性の無い獣が霊具・霊
玉を所有したのである。
コクエイの牙は霊玉の力を受け、赤く光った。
次にこの牙を受ければ、ヘイトレット・ラミーですら噛み砕かれるだろう。
金護の腕に一層筋骨が脹れあがる。爪が一段と伸び始めた。
「グアアアアアアアアアア・・・・ア」
咆哮したコクエイだったが、雄叫びを途中でやめた。
首をある方向に向ける。そして唸る。
それはベルの家の方位だった。
野獣は目の前の敵と比較にならない敵が現れつつあるのを、野生の勘で察知した。
すでに大地は変色し、原初である混沌の一歩手前まで戻ろうかという中でグラウンドの片隅で空を見上げる。
こんがらがった頭がやっと覚醒してきて記憶が蘇ってくる。妖花と剣が入り混じった人格に支配されたベルは豚に食われて死んだ。
牙の主に支配されていたときの記憶はまるで夢でも見たかのようだった。しかし、事実ベルは……先生は死んだ。
霞む視界にノスフェラトゥが死ぬ姿が映る。鬼に食べられてあっという間に食い散らかして殺された。
力をつけた鬼と誰かが戦っている。あいつさえ倒せばすべてが終わるのかもしれないけど、立ち向かう気力も残ってない。
「悲しいけど、涙もでねぇ」
これからどうしようか…藤田の性格からして、吸血鬼も鬼もいない平和な世界を創造するだろうけど
待てども待てども、いっこうに姿を現さない。もしかしたらどこか他にも敵がいてそいつに殺されたのかも。
そうなると、もう他の奴がどう世界を創るかわかったもんじゃない。結局のところ、自分でやるしかないということか。
そういえば忘れてたけど、自分はいまだに吸血鬼。藤田の望みが吸血鬼のいない世界ならば自分も消されることになる。
「あーあ。見る奴みんな敵に思えてきたな」
来た道を歩いて戻っていく。気力も体力も精神も蘇生したてで弱ってきている。いま眼前に映るのは希望もなにもない虚無だけしかない。
>213
>「グアアアアアアアアアア・・・・ア」
あらぬ方向を見てから猛々しい咆哮をした。時が戻って周りの建物が白く崩れて砂に戻っていく中で唯一の建物であろうベルの家の方角。
その咆哮の意を解さないまま、鬼に近寄っていき告げた。
「てめぇのもってる霊玉渡せよ。もとを正せば俺の中に入ってたもんだろうが」
もはや鬼とすら表現してよいかわからぬ巨獣の威圧が初めてこちらに向けられた。
暗い水の中を、どこまでも沈んでいく。
だが水底――――相模国造の下へ到着する前に、理利は霊鏡の変化に気づいた。
「これは・・・・・・・?藤田君の霊鏡所有権が、消える?」
藤田は死ぬのだろうか?
理利は、霊鏡の力で繋がっている藤田との『接続』を繋いだ。
藤田の快楽と混乱ぶりが伝わってくる。終わりを迎えた暴力も。
理利は慎重に視覚と聴覚以外の感覚を遮断した。
ゼフィールは役目から解放され、興奮のきわみにいる。
そして、打ちひしがれて放心状態の藤田を使うのは簡単だった。
>ゼフィールさん
「ベルの身体にはアルラウネがいる。それも計算済みか? だが物事にはイレギュラーが付きまとうものだよ。
――――ほら、こんな風に」
藤田の手には銀色のナイフが握られていた。ナイフはゼフィールの胸を無造作に貫いた。
胸に生えたナイフは眩い光を放った。ゼフィールの内側から直に焼き払う気だ。
ナイフは、理利の破邪のイメージが具現化したものだった。
そもそも、現世で理利が使っている破邪のナイフ自体、聖別されたただのナイフに過ぎない。
魔力を通す事によって、初めて一撃必殺の威力を誇る。
さらに理利は藤田の手を借りたことで、『ゼフィール』の力をも上乗せした。
「ゼフィール、あなたはもうゼフィールではない。ただの名も無い死霊だ。
レテ川の水に濡れる足元がそれを証明している。
魂達の精も使い切った今、新たなゼフィールの手による破邪の光はさぞこたえるだろう?
―――― いい加減俗世にしがみついてないで、彼岸の住人になったらどうだ?」
>乙事主さん ラスティーリアさん
「レテ川はもうあなたの力が及ぶ場ではない。起きろ乙事主!」
乙事主の切断された首がみるみる繋がっていく。
目を開けた乙事主に向かって、藤田が冷たく言い放った。
「死霊ごときに遅れを取るとはとんだ失態だな。―― 何をしているラスティーリア!早く来い!」
>藤田君
『藤田君、しゃきっとしなさい!手助けできるのはここまでよ。
ゼフィールを継いだあなたは、ゼフィールであるための膨大な魔力も継承したはずよ。
死霊を儀式に介入させてはならないわ。この場で殲滅しなさい!肉の器を得る前に!―― 聞いてるの藤田君!』
理利の声が次第に小さくなる。
『私は同情なんかしないわよ。自分の不始末くらい自分でケリをつけなさい!』
アリアがレテ川に赴くことは出来ない。
そしてゼフィールを継承したことにより、藤田の霊鏡所有権は消え理利に譲渡された。
藤田の手からナイフのビジョンが消える。
接続を保てない理利が干渉できるのはここまでだった。
「レイジさま!レイジさまあ!」
気がついたとき、あたしは大きな猪の近くに倒れていた。
なにここ?どこ?
そっか!ここはまだ三途の川!深い霧でなんにも見えないけど間違いない。
あたしは・・・そうだ!邪悪な美少年の目が光って・・・
邪悪少年の叫びを思い出した。
「礼司!きみを番人にしてやるよ!きみに番人を押し付けてやる!今がチャンスなんだから!」
そう言った。
そして・・・
「!!!!」
あたしは固まった。
そうだ。現世に置いてきた体が操られて・・・レイジさまを・・・!!!!!そしてレイジさまが犯さ・・・
「レイジさまあああああああああ!」
猪はどんと倒れていて首と胴体が別れていた。殺されている。って死人の来る川ですがここ。
>ゼフィール
>「天孫降臨!万事は僕の為に動いているんだ!あははははははははは!処女受胎!」
あたしの後で勝ち誇った声がして、霧を透かして強い光が起きた。
あの邪悪少年だ!
>藤田が冷たく言い放った。
>「死霊ごときに遅れを取るとはとんだ失態だな。―― 何をしているラスティーリア!早く来い!」
誰の声?レイジさま?なんか違う。
あたしは霧をかきわけて声の方にいった。
「レイジさま!ご無事でしたか!」
って死人の来る川、三途の川ですがここ。でもレイジさまは無事だった。レイジさまが立ってい・・・
あ、あり?え?待った。
「そんな・・・レイジさま・・・私より胸が豊k(ry」
>ベル
>「ギコ、泣いてないで行くわよー!」
ベルが霊剣の刀身に手を入れたにゃ!マジックみたいにゃ!
ボクの前には二人のベルがいたにゃ。肉体のベルと霊魂のベル。霊魂のベルが叢雲の中に消える。
「ど、どうやって幽体離脱の裏技をボクにしろと?待てベル!おーい!ベル!」
フランス暴走女め!アホー!
>アリア
>「ギコ、私は残る。でも・・・ベル一人に任せておいたら、とんでもないことになるわ。
>三途の川にはまだアッシュとスパー・・・ギルバ先生そっくりの魔剣士が残っている筈よ。
>合流できたら助力を仰いで。―――― 何とか行けそう?」
「どうやって?」
ボクは悲しい顔でアリアを見たにゃん。
「うにゃにゃ!もう迷っている場合でにゃいか!ラスチーのことは頼んだにゃ!礼司の肉体も頼んだ!」
霊体のベルは剣を脱衣所の床に突き刺して中に入っていったにゃ。
ボクは助走をつけて刀身の平の部分に頭から体当たりしたにゃ!なるようになる!
剣に激突した瞬間、ボクの頭からボクの霊魂が出た・・・。
幽体離脱できたにゃ!!!にゃにゃにゃ!!
ラスチーリアにシンクロして見た光景の川にボクは出現したにゃ。
「ぎにゃー!」
川の中にボクは沈んだにゃ。
「ベル!ベル!助けてベル!溺れ死ぬにゃ!」
三途の川で溺れ死んだらどうなるにゃ!?笑えない悪夢にゃ!
ところが落ち着いたらボクはすいすい泳げるにゃ?足は川底につかないのに歩く様に泳げる。首が水面の下に来そうな感じは
全く無い安定した泳ぎが出来るにゃ。
「三途の川だから、死者が溺れずに誰でも彼岸に渡れるんだにゃ」
ベルを探したけどベルがいない。ラスチーはどこだ?ゼフィールとかいう魔人はどこにゃ?礼司は?
>リリ
>『私は同情なんかしないわよ。自分の不始末くらい自分でケリをつけなさい!』
「リリ?」
リリの声がレテの川に響いたにゃ。さすがリリ。ボクはリリの声のした方へ泳いだにゃ。
「礼司!」
礼司を見つけた!
「ラスチー!ベル!礼司を見つけたにゃ!こっちにゃ!
うおぉぅ!礼司、その姿は!
似合っているけど。礼司、大丈夫か?
あ!」
女性化した礼司が三途の川の水の上に立っているにゃ!そして足元には川底に沈み横たわるゼフィール!
>ラスチーリア
>「そんな・・・レイジさま・・・私より胸が豊k(ry」
「いや問題はそこじゃないだろ」
ラスチーがもういたにゃ。蝙蝠翼で飛んでいるから気がつかなかったにゃん。
>アマナ
>「それに、アナタはゴドーを殺した。
>---この下賎な豚め、天啓を与えてやる。」
相模国造魔神社の崩落した甍に降る雨は立ち処に已んだ。
濡れそぼったムアコックはアマナの言葉に反応が鈍い。
最早コクエイの演じている死闘にも興味は無い。
「余の夢は砕け散った。抜け殻となった余を殺すだと?殺すがいい。この世に未練は無い」
ムアコックはアルマに両手を広げて歩き出した。
〜〜えんやーとっと〜、えんや〜とっと〜、前はうぅ〜み、後ろ〜はは〜と〜や〜〜
三途の川に間の抜けた歌が響き渡り、上流から何かがやってくる。
それは葦でできた一艘のボート。
選手に片足をかけ、ベルが身を乗り出して叫んでいる。
「ギコーでかした!ふ〜〜じ〜〜た〜〜あ〜〜!!!」
その速度はかなりのもので、川面を引き裂きながら直進、そして立っていた藤田とギコを跳ね飛ばした。
跳ね飛ばされた藤田の首をキャッチし、ビンタを放つ。
後ろでギコが船の上に落ちる音がしたが気にしない。
「藤田!自分のアイデンティティーってものはないの?
何よ、言われるままに女になっちゃって!耽美な801があんたの存在意義なのよ?
男女の絡みなんて他の奴に任せておけばいいのにぃ!さっさと戻りなさいよ!」
ここは霊魂だけの世界。
想いが直接作用する世界だ。だからこそ自我を強く保たなければいけない。
藤田を船の上に放り投げると、胸を内部から破邪の光で焼かれたゼフィールに向きかえ、指を刺す。
「あんたが藤田と入れ替わって現世に出現したがってた事位ぐるっとまるっとお見通しだ!
まず藤田は肉体的には死んでいないのよ!
異物が心臓を貫いているのではなく、異物をそのまま心臓にしちゃったからね。つまりこの藤田は生霊!
それからあんたが私の身体を使って産まれる事もね!
今頃肉を持ったあなたにアルラウネの根が張り付いて吸収し尽くしちゃっているわよ!
なっはっはっは!霊体焼かれてせっかく発生した肉体も私の養分となっちゃうチェックメイトよ!」
#############################################
現世、ベルの家
ベルが幽体離脱し、数分後。
三途の川でゼフィールが処女受胎を宣言し、ベルの肉体に変化が現れた。
腹が膨らみ始め、ベルの子宮でゼフィールが育ち始めたのだ。
だが、既に罠は張られていたのだ。
ベルの体内の妖花アルラウネが根を伸ばし、ラスティーリアを吸収したように赤子であるゼフィールを吸収して
いく。
吸収する力はラスティーリアの比ではなく、ベルの肉体では吸収しきれなくなる。
有り余る力を受け止めるため、ベルの肉体は変化していく。
根を張り枝を伸ばし、大木へと変わっていく。
ゼフィールを吸収しきるために、それだけの「器」が必要だったのだ。
屋敷を突き破り聳え立つ大樹アルラウネ。その枝には大きな実がたわわになりはじめている。
次いでその脇に刺さっていた叢雲剣が好けるようにその存在を現世から消していった。
##############################################
どこまで思惑通りなのかもわからぬが、三途の川でベルは高らかに勝利宣言し、現世に残してきた叢雲剣を呼
び寄せる。
「抜け殻のようなものでもこうなっては焼かれているのが失敗だったわね。
ほっほっほっほ!
敖遊の祭祀さえ成就するならあんたの反則くらい別にどーでもいいってあの人は言うけど、私をのけ者にして面
白イベントやったことを後悔しなさ−い!」
かなり支離滅裂なことを口走っているが、とりあえずは勝ち誇りたいようだった。
ひとしきり笑うと、不敵に顔を歪ませながらラスティーリアに呼びかける。
「ささ、藤田奪還作戦成功したんだから、次ぎ行くわよー!早く乗って乗って!
もう一人、いえ、こっちの方が性質悪いわ!一人でお楽しみなんて許さないわよー!りりーーーぃい!」
リリを呼ぶその形相はまさに般若と呼ぶにふさわしかった。
ギコが死にそうになっている
>リリ
>「レテ川はもうあなたの力が及ぶ場ではない。起きろ乙事主!」
ゼフィールに首を切断された乙事主だったが、リリの霊力で胴体に戻った。
「ゼフィールの力を甘く見てはならぬ。
死亡して三途の川にやってきた数多の超常能力者を数千年も犯し、その力を蓄えてきた妖魔だ。
しかしゼフィールは処女受胎に浮かれて失態をした。
藤田礼司の肉体が蘇生可能だ。すぐに蘇生させるがいい。さすれば藤田礼司は生者となる。
霊祭の番人の資格を失う。
うまくいくかどうかはわからぬが。それしかない。それしか……」
乙事主の首から白い霧が一本、二本、三本と発生しだす。リリによって繋げられたが、ゼフィールの鞭の一撃は
それで治るほど甘くはなかった。
乙事主の首から一気に霧が噴きだし始める。
三途の川に垂れ込める霧は、死後、冥府にも行けず現世にも行けない救済されぬ魂達で出来ていた。
乙事主の魂は溶けて三途の川の霧になった。三途の川は死者を受け止める。霧は死者を包む。
やってきた死者達の死の瞬間を、死者が来るたびに同調し霧は味わうのだ。
死者は絶える事無く続々と三途の川にやってくる。
何度も何度も永遠に繰り返される死の瞬間を無限に味わう霧の一部に乙事主はなった。
>ギコさん
「うん、あのね、今から私が・・・え?」
>「うにゃにゃ!もう迷っている場合でにゃいか!ラスチーのことは頼んだにゃ!礼司の肉体も頼んだ!」
ギコは意を決したように走り出した。
「ちょ・・・ギコ待っ・・・!」
ゴン♪
痛そうな音が響き、思わずアリアは目を閉じた。
恐る恐る目を開ける頃には、ギコは無事レテ川に旅立ったようだ。
「・・・ま、結果オーライよね」
アリアはタンコブが出来たギコの頭を撫でた。
ゼフィールを吸収したベルの身からアルラウネの大木が出現した。
「もー。留守を預かる者の身にもなって欲しいわ!」
アリアはぼやきながら、アルラウネの枝に絡まれ危うく首吊り猫となるところだったギコのを救出した。
「レテ川に赴いて、本当に死んだら洒落にならないっての」
背中にはぐったりした藤田を背負っている。
瓦礫をよけながら飛んでいたアリアは、ようやく着地した。
天井は既に消失していた。アルラウネの成長も収まったようだ。
降りしきる雨を、アリアは見えない半円形のシールドで防いでいた。
じいっと藤田とギコの寝顔を眺めていたアリアは、ふと思いついたようにポケットを探った。
「そだ、ギコに渡すものがあったんだっけ」
取り出したのは黒い魔法石だった。
正確には、書庫で理利が使った石だ。工藤美津子の灰を封印してある。
以前は濁ったどす黒い色だったが、浄化が終わった今は澄んだ黒に変化していた。
「ギコが持っていたほうが喜ぶと思って。『みっちゃん』のご加護がありますように」
アリアは腰のリボンを解いて魔法石を通すと、首輪のようにギコの首に巻いた。
>藤田君
>「グアアアアアアアアアア・・・・ア」
不気味な雄叫びが聞こえてきた。
アリアは心配そうに外を眺めた。
黒い稲妻は止まったようだが、敵は稲妻だけとは限らない。
レイジを救出に行ったのだから、レイジが目を覚ませば、他の皆も戻ってくるに違いない。
アリアは必死にレイジを揺さぶった。
「レイジ早く起きるですー!起きてですぅー!起きなさいですぅー!」
起きない。
「・・・・んーしぶといですぅ!
ならこうです!―― 起きるですぅ!起きろですぅ!さっさと起きやがれですぅ!」
ぺちーん ぺちーん ぺちーん
アリアの呼びかけにビンタ音が加わり始めた。
乙事主が霧となり、姿を消した。発生した霧が一瞬、藤田の身体に纏わりつく。
「そうか、この霧は――――そういうことか」
藤田を通して、理利は霧の正体を知った。
>「ささ、藤田奪還作戦成功したんだから、次ぎ行くわよー!早く乗って乗って!
>もう一人、いえ、こっちの方が性質悪いわ!一人でお楽しみなんて許さないわよー!りりーーーぃい!」
ベルの殺気を孕んだ声に、接続が切れかけた理利のか細い声が応える。
「皆も乙事主の言葉は聞いたでしょ?まだ油断しないで。
ベル、そんな顔しないの。大丈夫、面白イベントはまだ終わっていないわ。
私が成就したのは保険。あくまで裏儀式。
―――― ねえベル、表も裏も成就させた場合、一体どうなると思う?」
理利の声が意味ありげに笑った。
「いったん現世に戻った方が良いかもね。藤田君の顔が変わらないうちに」
上湘南第一中学校に隆起した相模国造古代神殿が、吐き出す雷光で半壊したベル邸を見上げる一人の男がいた。
辺りは落雷によって家々が壊され一大パニックとなっていた。
しかしその騒ぎを意に介する風もなく、男は街路樹の銀杏に背を預けベル邸を睨みほくそ笑んでいた。
男は上質の背広を着こなし髪はオールバックに撫で付け気品を漂わせていたが、どこか野性味を隠し切れない凄みのある顔をしていた。
「この世の帝の誕生だ。
世蛭様(ぜひる)の御降臨を誰にも止められはしない。
淫魔は木の股から生まれるのだよ。ベル・カーマン。おまえのしている事は予定調和の内だ。
この道尊、世蛭様との盟約によって援護せん!」
道尊は九字を切った。
「亮明!虐げられてきた真田流陰陽師衆の恨み、いま此処に晴らしてやる!」
―名前・ 道尊(どうそん)
―性別・ 男
―年齢・ 38才
―髪色・ 黒
―瞳色・ 黒
―容姿・ 黒尽くめの背広、オールバック、
―出典・ 映画「陰陽師」に登場した悪の陰陽師・道尊。演者真田広之。
【補足】
亮明とは、ふかわりょうの陰陽師としての原名とする。
淫魔は木の股から生まれるとは、中世の悪魔学において淫魔インクブスやスクブスは木の股から生まれる、とされた説に由来する。
ゼフィール女史の設定にぴったりでしょう。驚いたかベル・カーマン!
三途の川で般若の形相のベルの動きがぴたりと止まった。
「・・・・タ・・・・」
ぶつぶつと何かを呟いているようだが、その呟きは徐々に大きくなってくる。
そしてついにはじけるように叫び声となって響き渡った。
「キタ━━━━━(゚∀゚)(゚∀゚)(。A。)(。A。)(゚∀゚≡゚∀゚)(゚∀゚≡゚∀゚)━━━━━!!!!!」
両手両足を広げ大の字の状態で天を仰いで叫んだ。
肉体の変化は魂に影響を与える。
転生したゼフィールの強力なエネルギーを吸収して巨木化した肉体に同調して、幽体にも強力なエネルギーが注
ぎ込まれているのだ。
かつてない程の絶大な力にベルは狂喜する。
その喜びがどれ程かと言うと・・・
頭に出ていた新芽が一気に成長し、小林幸子の紅白衣装張りに巨大で絢爛な花を咲かせていることでわかるだろう。
延びた蔓や花は船いっぱいに広がり、藤田やギコも絡みとり飲み込んでいく。
「手に入れたわよぉ!豚さん教えてくれてアリガト。でもその前にぃいい・・・」
命を賭した乙事主の忠告も、本来の目的である藤田救出も暴走したベルを止めることはできなかった。
瞳を赤く禍々しく光らせながら言葉を続ける。
「リリィイイ!今すぐ行くから私も面白イベントに混ぜなさぁい!!怒ったりしないからぁ〜。」
その言葉が二秒で嘘とばれるような修羅の形相で川面を見つめると、リリの声がか細く応えてくる。
>「皆も乙事主の言葉は聞いたでしょ?まだ油断しないで。
「わかっているわよ。吸収されても私と同じ方法で必要分は維持・再構築して出てくることくらい!
いーのよ、そこに玉と草を持ってくる候補としてエントリーさせとけば。
そんな事より、今の私はこぉんなこともできるのよぉ!!藤田との回線切るのが遅かったわねえええ!」
ベルを覆う蔦の間から藤田がせり出てきて、左腕でヘッドロック、もとい、その頭を固定する。
そして右手で持つ叢雲剣を三途の川に叩きつけた。
「全ての水性は三途に至る。三途はやがて結晶と化してアカシックレコードと成る。
ならば逆も可也!ゼフィールの三途の川と叢雲剣の三途の川が交わる時、あらゆる水性への道を開けるって寸法よ!」
ベルにゼフィールの肉体の精気が流れ込んでいたから、そして藤田がゼフィールの精を受け入れ、リリと接続がされ
ている状態だからこそ起こしえた現象。
叢雲剣と三途の川が触れた部分が歪み、大きな穴が開いた。
数メートルのトンネルを経て見えるのはリリの姿だった。
「ふふふふ!さぁ、行くわよぉおお!」
> ベル、そんな顔しないの。大丈夫、面白イベントはまだ終わっていないわ。
> 私が成就したのは保険。あくまで裏儀式。
> ―――― ねえベル、表も裏も成就させた場合、一体どうなると思う?」
トンネルに身を翻そうとしたベルの動きを意味ありげなリリの笑い声が止めた。
「・・・えっ?保険?裏?表は残ってる、って事?」
鬼の形相が和らぎ、広がった蔦もベルの内部へと圧縮収納されていく。
怒りと嫉妬を発散していた感情が、疑問を考える、という内部方向へ行くベクトルに変わった為だ。
「裏は終わっちゃってるし、表も成就したらどうなるんだろ?ヌーの世界になるのかな・・・うーーーん・・・・どしよか?」
頭から煙を出しながら振り向いてギコとラスティーリアに尋ねるその顔は歳相応なあどけない表情だった。
未だ起きぬ藤田の顔が微妙に腫れてきている事は勿論、現世でアリアに藤田の顔の形が替えられようとしている事な
ど知る由もなかった。
>210
「あら、意外と寛容なのね。
てっきり、敵に回るものとばかり思ってたけれど……」
つかさは邪悪な秘術を用いて仮初の生を受けていると言ったのに、それを許容されるとは。
いや、後でこっ酷く怒られるかもしれないが。
『あの詐欺師の逸話のパロディが、こんなにウケが良いなんて思わなかったわ』
影の中の悪魔もまた呑気で、つかさはそれに軽い口調で返事を返した。
それはそれは、身も蓋も無い内容であった。
「でもこれって、奇跡って言うよりはアレよね。ほらあの、河豚毒とか朝鮮朝顔とかであれこれやるやつ」
つかさが言っているのは、ヴードゥー教で言うところのゾンビだ。
今のつかさは魔術によって動く死体。まさしく、一般的なイメージのゾンビである。
>213
ムアコックと対峙するアマナを尻目に、つかさは黒鋭に目をつけた。
ベルの家の方を向く黒鋭が居る方へと歩きながら、つかさは影の中の悪魔に指示を出す。
「ところでネビロス。久しぶりにアレをやってくれる?」
ネビロス。それが、影の中に身を潜めていた悪魔にして、つかさの切り札の名だった。
彼は地獄の魔神たちを監視する検察官である。
未来を見通す力を持ち、財宝を見つけるアイテムを与え、強力な降霊術の使い手だとされる。
つかさを不死身たらしめているのは、地獄で有数のネクロマンサーである彼の術だ。
また、ネビロスは獣を操り、他人に好きな傷を負わせることができると言われている。
ネビロスは強大な悪魔だ。
いかに霊玉の力を得ているとはいえ、獣である以上、黒鋭はネビロスの術に抵抗することはできないだろう。
そう、彼が本当に獣であるならば。
>213続き
『あの獣が、霊宝を得るに相応しいかどうかを試すのね?』
つかさの呼びかけに応じて、影の中から浅黒い手が現われ、人型のモノが這い出てくる。
それは、銀の髪と浅黒い肌を持つ水無月つかさだった。
悪魔は人間に比べて、きわめて柔軟性に富んだ霊を持ち、自在にその姿を変えることができる。
ネビロスはつかさの影の中に潜みやすいように、つかさと同じ姿になって、シルエットを重ねていたのだ。
『知性を持たず、ただ本能のまま行動する獣に、霊玉は相応しくないと考えるのだろう?
そして、ヤツが本当にただの獣ならば、自らが霊玉を握ってやろうと考えている』
ネビロスは赤い布を被った長身の男へと姿を変え、口調や声もそれに伴うものとなった。
つかさと同じ口調だったのは、精神は少なからず肉体に引っ張られる部分があるためであって、決して彼の素ではない。
「ええ、そうよ。せっかくだから、霊玉を持ってみようかと思って」
獣でなく人、つまり理性と知性を持つ者ならば、少なくとも獣使いの術によって操られることはない。
だが、もし黒鋭が操られてしまったら、その身体に宿る霊玉は抜き出され、つかさの手に渡ってしまうだろう。
ネビロスが黒鋭の居る方向に左手をかざし、獣を支配するあの術を発動させると、邪悪な力が黒鋭を包みこむ。
>214
「あら、貴方も霊玉が目当てなの?」
ネビロスが遠方から黒鋭に向けて術をかけている間、つかさはその近くに居た天保に声をかけ、歩み寄った。
「でも、貴方には生きてる人特有の―――何て言うか、ギラギラしたものが無いわね。
命を失ったわたしでさえ、茶目っ気と野望くらいは残ってるのに、貴方からは何も感じられないわ」
かく言う水無月つかさの瞳は、生者の持つ輝きが失われてもなお、当人の言う「ギラギラしたもの」が宿っているように感じられる。
更に、つかさは天保の身体に絡み付き、耳元で問いかけた。
「貴方は霊宝を得て、一体何を望むのかしら?」
ムアコックが無抵抗に両手を広げてアルマに近づく。
予想外の行動にムアコックの真意を掴めずアルマは戸惑った。
しかしそれは罠だった。
横浜ランドマークタワーでは自らの創造主モローを食い殺し、仲間の豚人間も次々殺し、ゴドーも喰った。
モートへの忠誠心も偽りで、ムアコックが裏切る前にノスフェラトゥに乾季の邪神が倒されたに過ぎない。
ムアコックはアルマを一撃で撲殺する間合いに入る為、無抵抗を演じているだけだ。
所詮は小娘だ。
そうムアコックは腹の中で笑っていた。
「ぶ。ぶひ?」
腹に突然に違和感が沸いた。異物感だ。
体にも異変が起きた。
見れば右肩からひょろひょろと木の枝が生え出してくるではないか!
鼻のあたまからも!指からも!葉が生えてくる。
ムアコックは体内にアルラウネの芽が仕掛けられていたが、それがベルの肉体変化に軌を一にして樹木化し始めたのだった。
「ぶひぃ!」
ムアコックは体から生えてくる枝や葉を必死に毟り取った。だが追いつかない!
「ぐえ!」
ムアコックは胃を押さえた。
なんだ?この痛みは?
どこからか男の朗々と唱える呪文が聞こえた。だが耳から聞こえてくるのではない。自分の頭に響く。
真田広之のような声だ!
>道尊
>淫魔は木の股から生まれるのだよ。ベル・カーマン。おまえのしている事は予定調和の内だ。
>この道尊、世蛭様との盟約によって援護せん!」
>道尊は九字を切った。
陰陽師の呪文がムアコックの脳を揺るがす。
「ぶぎゃあー!」
ムアコックは絶叫した。
ムアコックの胃を突き破り、鮮血に染まる胎児が飛び出た。
ムアコックが両手を広げ歩み寄ってくる。
しかし、彼女はそのことには驚きも、うろたえもしない。
---彼の言動は嘘だ。
今までの経験上、命乞いと潔い覚悟をする奴ほズル賢く生き残ろうとする。
---きっと何か狙っている。
そのワードが頭の中でグルグル回る。
だが、何をやろうと自分のやることは忘れない。
ムアコックを睨みながら高速で呪文を詠唱する。
相手には聞こえさせないぐらいに小声で、そして、ワザと詠唱が長く、そして、一番残酷な殺し方が出来る魔術を選ぶ。
しかし、ムアコックの歩調は少しばかり速く、詠唱が四分の三までしか済んでいない状態で相手の射程圏内に入りかけている。
>ムアコックの胃を突き破り、鮮血に染まる胎児が飛び出た。
「ッ!!!」
突然ムアコックの体から枝が生え、そして、ムアコックの体から胎児が飛び出る。
彼女は瞬時に胎児が地面に落ちる前に拾い上げる。
それと同時にムアコックの拳が降ってくるのを感じる。
「---所詮下衆の死に様は酷いモノと相場は決まっているんですけどね---
さようならムアコック、さようならさようなら---*********---戒蟲蝕(カイチュウショク)」
振り下ろされた拳から得体の知れない蟲が湧き出し、恐ろしい速度でムアコックを喰らい蝕む。
>>213 「---しまった---勝てねぇなこりゃあ---」
間合いを取り、コクエイの変化を眺めていたラミーの表情が変わり、冷や汗が流れる。
先ほどまでの状態であれば、何とかできたが、異常な魔力の上昇により
全力のラミーですら止められないほどにまで強化された。
しかし、幸いにもコクエイの標的が変わったことがわかり胸をなでおろす。
>>228 その瞬間だった。
おぞましい気配が背後から近づき、コクエイを包む。
「おい!やめ----」
ネビロスの邪悪な魔力に当てられ、ラミーはその場で跪かされた。
脂汗が滝のように溢れ、吐き気もする。
ラミーは久しぶりに恐怖した。その恐怖はラミーの体を形成している魔力を奪い取り
ネビロスへ捧げる。
「---こいつぁ----やっかいな---ことに--------」
そう呟いた瞬間、ジュリの魔術は解除され、ラミーはヘイトレットの姿へと戻りキーホルダーへ戻らされた。
「ウルトラマンジョジョ!復活!
今の私ならサイヤ人でも魔族の王様でも倒せるぜーい!」
ジョジョの体力は完全に回復。
戦いで負った傷も全部完治。
ジョジョの体調は非常に良好。
故にテンションが高い。
「おっと!あれはテンポー!セクハラしに行きましょうかねぇ」
ジョジョはテンポーの方に向かおうとしたが、途中で豚さんが出産しているのを発見した。
血に包まれた赤ん坊だ。
アマナは地面に落ちそうになった胎児を拾い、出産した豚さんは蟲を出している。
「排球拳!いくわよーう!」
「はーーい!!!!」
ジョジョは赤ん坊がボールの代わりになると思い、赤ん坊を拾ったアマナに近寄って無理矢理渡してもらい、上に投げる。
「1!」
落ちてきた赤ん坊を滑り込むようなレシーブで高く打ち上げる。
「2!」
見事なトスで落ちてきた赤ん坊を更に打ち上げる。
「アタァァァッッックッ!!!」
打ち上げた赤ん坊を追うようにジョジョも跳躍。
赤ん坊と同じ高さになったら、ウルトラマンの剛腕で赤ん坊を地面目掛けて叩き付けた。
ベチャリと潰れたような音がした。
「ゴミはゴミ箱に…糞蟲は地面の染みに…
って、空気を読まなすぎでしたねぇ…
つい、糞蟲の子供を見てしまったので叩き潰したくなったのですよぉ」
呆れた顔でジョジョの方を見ているアマナ。
だが、ジョジョはそんなことはお構いなしに爽やかなウルトラマンスマイルをアマナに見せた。
>>232 「天下無双の雷獣シュート!!!」
いきなりの理不尽な行動にアマナはブチ切れ、フィールドのかわりにジョジョの腹を使い
足を撓らせ、蹴りの威力を殺人並みに高めたあと、ジョジョの頭を思いっきり蹴った。
「私にはあなたという人が信じられません。
あの赤子には何の罪もないというのに---あの豚はどう見てもオスでしょうに!!!
もしかしたら別人の子の可能性もあったはずです。まったく---聞いてますか!?」
大の字で横たわるジョジョに怒鳴りつける。
「それとも---蹴りの瞬間にパンチラでもしましたか?
じゃあ、これから---『忘れるまで殴り続け』ますが、問題はないですね!!!」
そこらへんに落ちてあったガントレットを拾い、ジョジョのマウントをとる。
>「天下無双の雷獣シュート!!!」
「ヘブシっ!」
何故かは知らないがアマナがジョジョを蹴った。
アマナは実は乱暴者だったのだ。
>「私にはあなたという人が信じられません。
> あの赤子には何の罪もないというのに---あの豚はどう見てもオスでしょうに!!!
> もしかしたら別人の子の可能性もあったはずです。まったく---聞いてますか!?」
ジョジョは聞いていたが、アマナが糞蟲愛護派だと思い動くことができなかった。
それ程にショックだったのだ。
>「それとも---蹴りの瞬間にパンチラでもしましたか?
> じゃあ、これから---『忘れるまで殴り続け』ますが、問題はないですね!!!」
アマナは倒れているジョジョのマウントポジションにとり、落ちてあったガントレットを使い、一心不乱に殴り続ける。
「ちょっと痛いですよぉ!アマナ小次郎さん!
こうなったら!変わり身の術!」
スタンドと本体を分離させ、スタンドの方をアマナの下に残し、本体はマウントポジションから待避。
「テンポー君!助けてくださーい!」
ジョジョはスタンドを消してテンポーの方に駆け寄った。
戦闘中だというのに視線をあらぬ方向−それはベル邸だが−にコクエイは向けていた。
ケモノと化したコクエイにそれを思考する事はできない。
>天保
>「てめぇのもってる霊玉渡せよ。もとを正せば俺の中に入ってたもんだろうが」
>もはや鬼とすら表現してよいかわからぬ巨獣の威圧が初めてこちらに向けられた。
「グググル!」
コクエイが不快な獲物に向き直る。
しかしまたベル邸の方を見る。“なにか”の気がコクエイの野性のカンを刺激する。
ところが“なにか”の気が一瞬消えた。
別の場所に移ったのを感じて、コクエイはその移動を目で追った。
コクエイはムアコックを見た。ムアコックに“なにか”は移った。
>ネビロス
>ネビロスが黒鋭の居る方向に左手をかざし、獣を支配するあの術を発動させると、邪悪な力が黒鋭を包みこむ。
「グアアアアアアアアア!」
コクエイの体内の霊玉をネビロス、正しくは水無月が強奪しようとしている。
コクエイは抵抗した。
苦しむコクエイだが、野獣の彼に霊玉の貴重さなど理解しようもない。苦しめるのが飲み込んだ霊玉にあると感じたコクエイは
あっさりと霊玉を吐き出した。固執などしていない。
身の軽さを得たコクエイは、気になる“ないか”の顛末を見た。豚(オーク)と木の合成物とでもいうべき異様な植物にムアコ
ックは変化していた。その妖木が血まみれの赤子を産んだ。
コクエイは、ジョジョに弄ばれる赤子に走りよった。アマナを情け容赦なく金護の腕で張り倒す。
コクエイは地に落ちた赤子を見下ろした。巨大な妖気をこの赤子は持っている。コクエイの野性が感じ取らせる。
この赤子を食い殺すか、それとも・・・服従するべきか。
「ベル!このまま三途の川から現世に出ちゃうつもりか!?」
ボクはベルの強引さに驚いたにゃ。
けれどもベルの操る船に乗っているボクらはどうしようもにゃい!
強姦された礼司はまだ放心状態で口もきけにゃい。
船は三途の川の割れ目から現世へと落ちていく!
「ラスチー!振り落とされるにゃよ!つかま」
つかまれと言おうとボクはしたにゃ。でも言葉が切れた。突然ボクの目の前が真っ暗になったにゃ!
「にゃにゃ!?」
ぐるぐると目が回る!ボクの意識は飛んだにゃ。
「イタ!痛い!イタタタタタタタ!」
頭痛が!頭痛がする!
目を開けたらアリアがいたにゃん。
「ボクは生き返ったのか!?」
肉体にボクは戻ったにゃ。頭が痛いのが証拠にゃ!良かった!三途の川から生還したにゃ!
風呂場は大変な変化にゃ。ぶっこわれているし邪魔な大木が生えている。めちゃくちゃにゃ。
「ベルのやつが三途の川から現世に乗り入れたにゃ。肉体のあるボクは魂が体に弾き飛ばされたのか?にゃ?
ということはアリア、ラスチーも船から弾き飛ばされてくるにゃ。
ということはいうことは!礼司も!
礼司の肉体の治療はどうなってるにゃ!?」
アリアのそばに眠るように横たわる礼司の体に傷跡は見えないにゃ。
「やっぱり礼司は少年でないとおかしな感じがするにゃ。こっちのほうがいい。
ん?にゃんにゃ?これ」
ボクは首についているリボンと石に気がついたにゃ。石は涙が出そうな愛しい感じを放っているにゃ。
バイク転倒事故で重傷を負ったふかわりょうの手術は無事成功した。
事故の急報を受けて事務所スタッフの一人がなんとか病院に駆けつけていた。マネージャーはふかわの両親を迎えに行っていて
同行してからここに来る事になっている。
スタッフはふかわには会えなかったが、手術の成功を医師から知らされ安堵していた。
執刀医は「今はよく眠られていますよ」と笑顔で伝えた。
集中治療室に運ばれたふかわりょうは明日の朝まで麻酔が効いて目覚めない。
筈であった。
しかしふかわはベッドから起き上がっていた。
ふらふらしていたが、強い決意の秘めた目をしていた。
集中治療室は患者の容態を24時間観察しているが、ふかわが起き上がっている事に誰も気がつかない。
陰陽師の目くらましの術をふかわは使っていた。
ベッドの横のサイドデスクの上にあるボールペンを手に取ると、ふかわは枕に呪符文字を書いた。
布団をめくり枕をいれる。布団をかぶせると、ふかわは呪文を唱えた。
「えい!」
式神の術であった。枕はふかわりょうになった。ベッドに眠る身代わりができた。
ふかわりょうは窓を開けると飛び降りた。集中治療室は三階にあったが難なく着地した。
「ふかわりょうは一時休業です。私は本来の私、布川流陰陽師当主、布川亮明に戻る!」
亮明は夜の闇にそう宣言した。向う先は上湘南第一中学校。
>235
>「グググル!」
獣は一つ唸ると再び視線を元に戻す。すると豹変したかのように苦しみだし、なにかに抵抗しているように思えた。
苦しみの末に口からいまだ光を放つ霊玉を吐き、なにを思ったのか豚に駆け寄っていった。
あっさりと霊玉が手に入ることにかなりの拍子抜けだが、ともあれ目的のひとつは手に入る。
手を霊玉に伸ばそうとしたときに、耳に入った艶のある女の声がそれを阻んだ。
>228
>「あら、貴方も霊玉が目当てなの?」
ゆっくりとした足取りでやってくる貴方『も』ということはこいつも狙いは霊宝。得られるものは一つで得る者もまた一つ。
互いに望むものが違えば、そこに戦いが生まれるのは必須。この女も敵か?
>「でも、貴方には生きてる人特有の―――何て言うか、ギラギラしたものが無いわね。
> 命を失ったわたしでさえ、茶目っ気と野望くらいは残ってるのに、貴方からは何も感じられないわ」
生きることへのその証、眼の輝きやら感情といった外見でわかるものではない。
命の輝きのことをいっているとしたら、そういう大事なものをひっくるめて三途の川に置いてきてしまったのかもしれない。
女は背中に肌を密着させて耳元で甘いその言葉を連ねる。
>「貴方は霊宝を得て、一体何を望むのかしら?」
「藤田の考る世界には吸血鬼はいない。そうなるとさっきまで牙の主だった俺も当然排除対象だ。
できることなら俺も含めた元の世界ってのを具現してみたい」
>232
向こうのほうで雑音が聞こえる。その音はまるでマウントポジションから鈍器のようなもので何者かを殴っているようなそんな音。
>「テンポー君!助けてくださーい!」
アザだらけの変態がこちらに向けて突進し助けを求めているのがみえた。
はははっ。あの野郎絶対助けねぇ!
その後ろにいる追跡者。まさに修羅羅刹の悪鬼が如く、悪漢共に御仏の慈悲は無用か。
「あー、こりゃ……あいつここに突っ込んでくる気だな」
事実こちらにどんどん近づいてくるごとに速さが増してきていて、あきらかに受身バッチリな態勢をとっている。
リリに操られた礼司によって胸を一突きにされたゼフィールは、其の時消滅の危機にあった。
敖遊の儀の番人の座と力を礼司に委譲し、三途の川において一死者に過ぎなかったのだから。
リリの攻撃は痛烈な攻め手であった。
濡れた事の無い三途の水に沈み行くゼフィールは、リリの破邪の光に内部から焼かれていく。
ゼフィールを構成する濃密なエクトプラズムは霧散していった。
だがゼフィールは生者復活に向けて周到な策を巡らせていたのだ。
>道尊
>「この道尊、世蛭様との盟約によって援護せん!」
転生の秘術を道尊が現世からも放った。
「善き哉!道尊!」
アルラウネの樹に変異したベルの体内にゼフィールは降臨し、滋養を奪い取った。
ベルもまたゼフィールの霊力を吸収したが、絶大な霊力を持つゼフィールである。
ベルの得たそれは総量に比べれば微々たるものだった。
ベルの子宮内に形成された胎児ゼフィールを、道尊はムアコックの胃の中に転移させた。
淫魔は木の股から産まれる。
豚は悪霊の宿となる。
これは儀式として予め予定されていた流れにすぎない。
>ムアコック
>「ぶぎゃあー!」
>ムアコックの胃を突き破り、鮮血に染まる胎児が飛び出た。
生者ゼフィールはこの世に誕生した。
>コクエイ
>コクエイは、ジョジョに弄ばれる赤子に走りよった。アマナを情け容赦なく金護の腕で張り倒す。
>コクエイは地に落ちた赤子を見下ろした。
>この赤子を食い殺すか、それとも・・・服従するべきか。
血に濡れる胎児はジョジョの辛辣な悪戯にも関わらず、何の痛みも感じていない様子だった。
胎児は泣きもせず笑いもせず無表情だった。
指を握りしめたり放したりを三度繰り返した。
そしてぽつりと呟いた。
「心臓の鼓動。胸の呼吸。これが命か。なつかしい」
胎児は立ち上がった。
「僕は誕生した。霊宝が僕の手に入ったも同然だ!金蛇棍!」
胎児が右手を上に突き立てた。
小さな手に大きな長い金色の鞭が光となって現れる。金に輝く鞭は蛇のようにとぐろを巻き胎児を包む。
一段と強烈な光が輝いた。
光が止んだとき、全裸の少年が立っていた。
少年は鞭を落とした。
両手をじっと見る。
「僕の肉の手……」
眉が喜びにしかめられる。
両手で少年は胸を腹を背中をなでまわした。
「ああ!僕の肉の体……」
ゼフィールは狂笑した。
「僕は暖かい命を得た!羨ましいか死せる水無月よ!あはは、僕は生きている!」
もう一度ゼフィールは光った。光が消えると、夜を溶かしたあの黒い服の姿になった。
この間、コクエイは圧倒され凝視するだけであった。
「汝の野性の勘は真に正しい。もし無礼にも僕を襲ったら殺してやるところだった。
こんなふうにね」
ゼフィールは鞭をつかむと振るった。
鞭がジョジョ本体の頭を薙いだ。
ひるがえる鞭は宙に踊り、アマナも天保も水無月も打ちのめした。
ゼフィールに胃を破られたムアコックは血反吐を吐きもがいていた。
樹木となったムアコックは足から根が張り出し、倒れる事もできずに揺れ動く無様な木となっていた。
「大儀であった。ムアコック。汝の役目はこの時の為にあった。
君は知らないだろうけど、僕は三途の川でノスフェラトゥにも礼司にも、豚には気をつけろって教えていたんだよ。
豚は悪霊を宿す依り代になる。悪霊が豚を好むのは聖書にもあるとおりだ。ゴドーも言っていたんだ。
でも僕は優しいんだ。君を見捨てたりはしない。コクエイ、君もだ。
汝等は造られた魔物である為に帰るべき所がない。汝等の憂いは尤もだ。
ならば僕が汝らの寄る辺となってあげよう。
霊宝を得て目指す僕の望みは単純さ。
僕は農夫になりたい。
僕は農夫になるんだ。
たわわに実った作物を農夫は収穫するものさ。
この地球に人間どもは多い。
人間個々の魂はどうってことはないけれど、人間は神々が自分達に似せて創造した神の愛児だ。
人間の魂は集めれば膨大な霊力となる。
人類は地球にたわわに実った。
もう収穫の時、狩り入れの秋だよ。
霊宝によって全人類を瞬時に抹殺し、その膨大な魂を全て収穫する。これで集めた霊力は凄いぞ。凄いなんてものじゃない!
ムアコックよコクエイよ、僕に従う数多の者よ、僕の神将として登用してやろう。一緒に来るんだ。
ちっぽけな地球を踏み台に傲岸不遜な“大いなる存在”どもに戦を仕掛けよう。
神々を討伐するんだ!
これこそイザナギ、イザナミに葦の舟にて捨てらし神子、水蛭子の悲願だ。
それを僕は果たそうというんだ。
どうだ、ベル・カーマン。僕に従うかい?小癪なリリはどうしても殺さないとダメだけどね。ベルなら登用してもいい。
さあ、僕の靴を舐めるんだ」
美しい残忍な笑みを少年は浮かべた。
おさまった、と思うとまた余韻が僕をつらぬく。
あのおそろしい快感は、ゼフィールだからなんだろうか。
それとも女性とはこういうものなんだろうか。
僕にはギコやラスティーリアやベル、リリさんの声だって聞こえていたけど、意識が蘇る快感に
途切れ途切れになっていた。
なにかラスティーリアに僕は言ったような気もするけど、よくわからない。
体がほってたままだ。エクトプラズムの偽りの体なのに。
自分がいまどこにいるのかもわからない。
深い霧が目をふさぐ。
ラスティーリア。そばにいる?ギコは?ベルの声がすぐそばに、いや遠く?聞こえる。
船かなにかに僕は乗せられいる?それもわからない。
揺れる船の動き。
それがゼフィールの腰の動きを思い出させる。
僕はもう溶けてだめになるんだ。
僕は……
僕はまたゼフィールを欲しがっている……
淫らな僕の気持ちを、高い処から突き落とされるような落下の感覚が醒ました。
>ギコ
>「ベル!このまま三途の川から現世に出ちゃうつもりか!?」
船が滝に落ちるように傾く。
目の前が突然真っ暗になった。
「いたい……」
>アリア
>!―― 起きるですぅ!起きろですぅ!さっさと起きやがれですぅ!」
>ぺちーん ぺちーん ぺちーん
は!
アリア?
僕は目を覚ました。ここは……ベルの家!お風呂場!
「どうしたのこれ……爆弾でも落ちたみたいにめちゃくちゃ…て、痛い、痛いよアリア。起きたからやめて。
な。なんだこの木は?
……ああ!ない!」
僕は半裸だった。僕は自分の胸を見たら、たいらな男の胸。下にもおもわず手をやると、こっちは、ある。
男に戻ってしまった。
いや、戻れた。
いや、肉体は男のままだ。
アリアとギコが僕の顔を覗きこむ。
ひー!このふたりはなにがあったのか、知っているんだ。知っているよね。
僕は赤面した。
犯されながら、それに喜びを感じていた僕は自分がものすごく惨めに、汚く思えた。
僕は自分を恥じた。
僕はみにくい……
「う…」
くらっとまた意識がとびかけた。でもこれは快楽のではない。強烈な魔のオーラに目がくらんだんだ。
僕は壁がふっとんだバスルームから外を見た。
上湘南にそびえる相模国造屋敷の偉容が見えた。もともと暗黒のオーラを発していた神殿に、今までと桁違いの
邪悪の気がほとばしっていた。
くやしくもそれは、僕に甘美に。
「ゼフィール!」
ゼフィールへの心を断ち切らないと。断ち切れない僕は僕が憎かった。
僕を汚したあいつを赦すな。
赦してはいけない。
僕はよろよろと立ち上がった。でも立てなくて転ぶ。腰が立たない。なぜ腰が立てない?情けない。
僕は転がる師子王ノ鞭を手にとった。
「が、学校に行こう」
僕は戦わないといけない。
「リリさんにも伝えないといけないことがある。僕が番人になって知ったことを」
僕は一時でも番人になった。僕はゼフィールの嘘がわかったんだ。
番人の力の絶大さと限界を僕は知ったんだよ。ゼフィール。
ゼフィールがリリさんを脅した嘘を伝えないと。
僕は苦労して立ち上がった。
「アリア。僕の大切なラスティーリアはどこ?」
大怪我をした身体が悲鳴をあげている。必要なのは休息だけど、そんな場合ではない。
「行こうギコ。ベルだけが先行してしまった」
僕はよたついたけれど歩き始めた。けどなんか変。
「歩きにくい。……あー。余計なものがついてるから……いや。なんでもない…よ」
女性に慣れすぎだ僕……
コクエイは呆けて胎児から少年へと瞬間に成長したゼフィールを見ていた。
獣性に落ちたコクエイにゼフィールの言葉は判らない。しかしゼフィールが自分を包み込もうとしているのは理解できた。
>ゼフィール
>「さあ、僕の靴を舐めるんだ」
それはコクエイに言った言葉ではない。だが間近で右足をぐいと半歩突き出すゼフィールにコクエイは服従の仕草を取った。
ノスフェラトゥを遥かに越えるリーダーの出現に、逆らう獣がいるだろうか。
「グルルルルル・・・」
喉を鳴らしコクエイは這い蹲り、舌でゼフィールの靴を舐めた。
「偉大なるかな、我が主君ゼフィール様」
野獣鬼コクエイはゼフィールの靴を舐め、知性を取り戻した。しかし鋭太郎の人格ではない。ゼフェールの臣下、神将黒鋭
として、新たな人格で再生された。
「自分はなんと今まで盲目であったのだろうか。野獣に落ちていた己が恥ずかしい。
人間戸田鋭太郎であった時分も情けない。哀れな人間の狭き考えに縛られておりました。
人間を越え、鬼を越え、野獣を越えて、ここに神将黒鋭、転生す!
壮大気宇なゼフィール様の御為に、黒鋭は力の限り尽くしますぞ」
虎と熊の合成鬼であり、恐るべき金護の左腕を持つ将、黒鋭が誕生した。
「偉大なるかな!我等の主君ゼフィール様!」
黒鋭の崇拝の言葉に呼応して、声が続いた。
声は相模国造屋敷の吹き抜けとなった天井から降り注ぐ。
見上げれば龍が降下してくる。
>>18アッシュ
>ラストバタリオンのヘルゴラント級は、ドラゴン・レイディが放つ鞭で半分に千切られてしまった。
ゼフィールの支配する魔は、アッシュが看破したようにドラゴンであった。
ゼフィールはドラゴンの主でもあったのだ。
ドラゴンの中でも水のドラゴンが配下であった。
三途の川の支配者ゼフィールに従うのは水竜であった。
水竜達は巨体で来襲したが、相模国造神殿は狭すぎた。龍達は人間体に変化した。
白銀の鱗鎧を着た龍の翼を持つ魔人達。顔はドラゴンであった。龍人の兵が続々と降臨した。
その総数は50を越えた。
■龍人の兵
身長どれも6メートル強の巨人。怪力。ザコ敵投下。
>ん?にゃんにゃ?これ」
「その石は『みっちゃん』だそうですぅ。浄化が終わったからと預かって来たですぅ。」
アリアはそう言いながら、優しくギコの頭を撫でた。
ギコの傷から、みるみる痛みが引いていく。
「・・・アリアがギコたんを助けられるのは、これで最後になるかもですぅ」
治療を終えたアリアは、再びレイジの頬を叩き始めた。
>「どうしたのこれ……爆弾でも落ちたみたいにめちゃくちゃ…て、痛い、痛いよアリア。起きたからやめて。
>な。なんだこの木は?
押しのけられたアリアは、ようやく頬を叩くのを止めた。
「アルラウネですぅ。ゼフィールの魔力を喰ったですぅ。でも吸収し切れなかったですぅ。
悪い陰陽師と豚の助けを借りて、ゼフィールは復活してしまったですぅ。
レテ川でマスターがギリギリまで追い詰めたのに。命を削ってまで作った千載一遇のチャンスを、レイジ達は棒に振ったですぅ」
>「アリア。僕の大切なラスティーリアはどこ?」
アリアは、すぐには答えなかった。
「・・・レイジのいう大切、とはどういう意味ですか?
気に入った玩具程度には、という意味ですか?
―――― それとも、ゼフィールの次にという意味ですか?」
アリアはじっとレイジの顔を見上げた。好意のかけらも無い、冷たく底光りする瞳だった。
「もうラスティーリアは、レイジと主従じゃないです。
マスターが契約を破棄して、自分とラスティーリアの間に新たな主従契約を結んだです。
『主の心が弱くて、みずから魔性の快楽に引きずられるようでは契約させた意味が無い』だそうですぅ」
アリアはくるりと振り向き、もいで床に転がっていたアルラウネの実に手を掛けた。
巨大な実だ。人間が中にすっぽり入り込める位の大きさはあるだろう。
アリアはゴロゴロ転がしてレイジの目の前まで運んだ。そして、小さな手でポンポンと実を叩く。
ギコやレイジなら、実の中で何かが蠢く気配を感じ取っただろう。
「でもラスティーリアは、それでもレイジがいいらしいですぅ。だから、ここに置いていくですぅ。
アリアは、ふかわ当主をお助けに行くですぅ。だから、ここでサヨナラですぅ」
既にラスティーリアの身体は、滋養と魔力に満ちた実の中に移していた。回復すれば自分で実を割って出て来るだろう。
「それから、ただ学校に行ってもマスターには逢えないと思うですぅ。
マスターは交渉のため、裏儀式を通じて近くて遠い場所に移動したですぅ。
霊具と、レイジの中に残ったゼフィールの霊力でも使わない限りたどり着けない場所ですぅ」
そういい残すと、アリアは破壊されたバスルームから外に飛び出していった。
是非も無い!
今、ムアコックは死に瀕していた。胃は裂けて重傷を負い、体はアルラウネの妖木に蝕まれていた。
しかも容赦の無いアマナが投じた蟲が我が身を喰らっていく。
このままでは死ぬ。
ゼフィールは己を利用した敵といえる。だがここで従わずにどうして生きながらえるだろうか。
それにゼフィールの誘う戦いのなんと心躍る事か。
“大いなる存在”とは宇宙神を指すのだろうか。全人類を犠牲にし反乱を画策するとはなんたる野心。
「寄る辺のゼフィール・・・様」
アマナの戒蟲蝕にずたずたにされる前に、ゼフィールの助けを乞わなければ。
しかし大木化したムアコックの足は地に根で縫い付けられて身動きもままならない。
白銀の龍人兵達に傅かれるゼフィールへとムアコックは指を伸ばした。指からはアルラウネの枝が伸びていた。
「靴への接吻は今の私には為しえません。これでお許しいただきたく御慈悲を賜りとう御座いま・・・」
指の枝をゼフィールの靴にムアコックは触れさせた。
ベルの船が三途の川に穴を開けて雪崩れ込む。
>ベル
>「裏は終わっちゃってるし、表も成就したらどうなるんだろ?ヌーの世界になるのかな・・・うーーーん・・・・どしよか?」
「そんなこと楽しそうに言ってる場合かー!きゃー!落ちる!レイジさま!」
あたしは意識の無いレイジさまに覆いかぶさってお守りした。
「きゃは。うあーい。レイジさまの胸、ふっくらやわらか」
それどころではない!
「いいのベル?霊体のまま現世に行って!死者は霊具の所有者になれないのよ!きゃー」
船は直角に近い角度になって現世に落ちてい・・・・う!
あたしは突然なにも見えなくなった。闇だ。視界が真っ黒になって・・・
ごろごろごろごろごろ
ぐるぐるぐるぐるぐる
なぜかあたし回転してる。
なにここ?あたしはなにか窮屈な入れ物に入っちゃっている?
>アリア
>「でもラスティーリアは、それでもレイジがいいらしいですぅ。だから、ここに置いていくですぅ」
アリアの声が入れ物の外から聞こえてくる。この入れ物は植物の実みたい。クルミのような。
めんどいわ。あたしは左の人差し指を口に当て、フっと息をふいた。小さな火球が現れてボンと硬い皮に穴を開けた。
「復活!」
冥土の川からあたしは帰ってこれたわ。
おお、ギコもいる。レイジもいる。
「よかったレイジ、無事ね!いくら軟弱そうな顔してても女のレイジより男のレイジのほうがいいわね。
女の快楽に狂ってるレイジを見てみたかったけどね。きゃはははははははは。は。は?」
んん?
なにか変な感じ。自分の言葉が変。なんだろ?
「レイジ!学校に行こう!はやく!置いていくわよ!」
あれ?やっぱりあたし、変だな。レイジにこんな口の利き方してたっけ?でも別にこれで普通のような。
よくわからーん。けど、まあいいか!
「ミヨミヨミヨミヨ、ブオッフブオッフ(訳・偉大なるかな!我が主君ゼフィール様!)」
龍の頭首ゼフィールに宇宙恐竜セットンもやってきた。
―名前・ゼットン
―性別・不明
―年齢・不明
―身長・4メートルにしておこう
―髪色・折れ曲がった角あり
―瞳色・電飾
―武装・一兆度火炎球、電磁バリヤー、テレポート瞬間回避、スペシウム光線吸収皮膚、格闘技
―備考・ゼットンのキャッチコピーは「宇宙恐竜」恐竜に見えないが。一応は龍だ!
三途の川に穴が開き、船はそこに吸い込まれるように進んでいった。
舳先が穴に差し掛かってもベルは迷っていた。
ラスティーリアの忠告で更に迷いが増す。
「うーん、うーん・・・どっちも行きたい・・・ううううぅぅぅ〜〜〜。むがぁあああああ!」
穴に船が中程まで入り傾いた時、とうとうベルに限界がやってきた。
リリが儀式で行おうとしていることに自分も混ざりたい。だが、上一中で行われている祭祀にも参加したい。
この均等に引き合う気持ちが魂に変化をもたらした。
船はベルごと真っ二つに割れ、片方は穴に落ちていき、片方は現世へとはじかれたのだ。
二つに割れたといっても左右に割れたわけでなく、魂が分離しベルが二人になったといった方が正確か。
ギコ達がはじかれたのはこの為だった。
一歩間違えば次元の狭間に囚われ永久に彷徨う事態もありえただけに、運は良かったといえる。
ベルの半身は時間潮流の異なるトンネル内へと落ち、リリの元へと向かっていく。
そしてもう半身は・・・
【現世、ベル宅】
巨木と貸したアルラウネになった実の一つからメリメリという音が鳴り出した。
内部から何かが蠢き、出ようとしている。
「ふ、ふ、ふっかああああつ!!滋養強壮万事OK!ベル・T・カーマンここに復活!」
実を内部から叢雲剣で皮を斬り破り現れたのはベル。
「ん〜再構成っていいわね。身体は軽くなったし胸も大きくなったしぃ〜。」
木の上で伸びをしながら身体の感触を確かめている。
次いで触れる枝を通して状況を見ていた。
ベルの体を飲み込み巨木と化したアルラウネは根を這わせ、上一中の敷地内へとそれを広げていた。
元々はアルラウネの眷属の葦で締められた祭壇。すんなりと遊敖ができたというわけだ。
根を、幹を、枝を介して感じる。ゼフィールの降臨を。
龍人兵の出現を。
祭壇最深部で起こっていることを。
「みんなー!私はちゃんとここにいるわよー!祭りは最高潮!ここで引いたら女が廃る。先に行っているから早くきなさいよ。」
走り出す藤田達に声をかけると、そのまま木の幹へと埋まって姿を消した。
この巨木はアルラウネであると同時にベルでもある。
巨木と再構成されたベル。どちらが末端でどちらが本体ということではない。どちらもベルなのだ。
【相模国造屋敷最深部】
ゼフィールの慈悲に縋ろうと枝を伸ばし、その靴に触れたムアコックの身体に変化が起きた。
内部から破られた腹に再度隆起が起こり、肩を突き破って枝が伸び出た。
その枝先に立つのは片手に叢雲剣を携えたベル・T・カーマン。
「ん?あれ、間違えた。ごみんねー。」
辺りを見回したあと、瀕死のムアコックにすまなそうに手を合わせると、ベルは枝の中へと消えていった。
ん〜〜今度は間違いないわね。
地中からベルの声が響くと、すさまじいスピードで木が生える。
ちょうどゼフィールに打ちのめされた天保が倒れている真下から生えた木は、その身体を絡めながら見る見る間に高く広く
成長していく。
数秒で成長が終わったとき、天保は安定した枝の上に座っていた。
「やほっ、なんか久しぶりな感じね。ヤス、ちゃんと霊玉持っているなんてやっぱりあんたははずさないわよね!」
幹からせり出たベルが嬉しそうに抱きついた。
ジョジョに!
アマナから逃れ、天保に助けを求め駆け寄っていたジョジョも一緒に絡めとってしまっていたのだった。
「あ、あれ?・・・だれ?また間違えちゃった。ま、いいか。両手に花ね!」
並んで座る天保とジョジョの間に座り、ゼフィールを見下ろして切っ先を突きつける。
全て用意していたのだろう。
水蛭子は矛盾する願いを様々な選択肢としてそれぞれに託していた気持ちはよくわかる。
牙の主には死の平穏を、ノスフェラトゥには大いなるものへの昇華、そしてゼフィールには復讐を託していたというわけだ。
どの願いも水蛭子の偽らざる願いなのだろう。
トリニティとなっていたとき、水蛭子の魂を感じているので、その願いをかなえてやりたいという心理ブロックが出来上がって
いる。
それに何より、大いなるものとの戦争、なんて完全にベルの願いである「ヌーな世界」を超えているのだ。
「・・・それって・・・面白いの?」
まるで遊園地の話をはじめて聞いた子供のように目をキラキラさせながらゼフィールに尋ねた。
安倍総理は執務室のソファーに倒れこんだ。
横浜ランドマークタワーの崩落事件があった今日は多忙を極めた。
補佐官が気遣い熱いお茶を炒れてきた。
総理は礼を短く言って受け取るとすすった。
バン!
執務室のドアが乱暴に開けられた。細木数子が入ってきた。
安倍総理
「細木先生!?」
細木は言った。
「三途の川の番人が空位となりました。上湘南の怪異の目眩ましは消えました。
相模国造の呪いの神殿は、衆目に晒されるんだよ。大騒ぎになる!
でもそんなことは瑣末な事。飛び切り邪悪な悪魔の子が誕生してしまったんだ!あんたもよく知っているゼフィールだよ!
いますぐ自衛隊を派兵するんだ!相模神殿を破壊するんだ。そうじゃないと地球が滅びます。
そしてこれだけは言えます。
安倍晋三総理大臣、墓参りをしてください。約束するね。これで支持率アップです」
細木数子の専属運転手
「非常事態でも墓参りは大切ですよね」
突如、ジョジョの後頭部に走る衝撃。
その衝撃の威力はかなりのもので、ジョジョはヘッドスライディングをするように吹き飛んでしまった。
「ったく…ろくなことが起こりませんねぇ…最近は…」
後方を見ると、豚から産まれた豚太郎が驚くべき速度で成長し、少年の姿へと変わっている。
豚太郎は地球人類を皆殺しにし、その膨大な数の魂を霊力として使い、宇宙神達に戦いを挑むという。
流石にここまでのことを実行されては宇宙の危機だ。
ウルトラマンも動くしかないだろう。
呑気に遊んでいる状況ではない。
豚太郎の目覚めに応じてなのか、屋敷の上空に巨大な竜の大群と、見慣れた宇宙恐竜のアイツがいる。
竜達はこの屋敷の中に入れるように、大きさを変えて竜人の形態を取る。
その数は50。ゼットンを入れれば51。
「もう、滅茶苦茶ですね。テンポー君」
隣に座っていたテンポーにジョジョは話しかけた。
その滅茶苦茶に応えるように、テンポーの足下から植物が生えてくる。
異常な木の成長速度。
数秒もしない内に木は大木となった。
>「やほっ、なんか久しぶりな感じね。ヤス、ちゃんと霊玉持っているなんてやっぱりあんたははずさないわよね!」
ジョジョはテンポーと一緒に木の枝に座っていると、木の幹から現れたベルに抱きつかれる。
テンポーと間違えられたようだ。
ベルはジョジョとテンポーの間に割って入り、豚太郎に『面白いの?』と、妙なことを聞いた。
「豚太郎さん。あなたの考えていることは、この宇宙に混乱を巻き散らすことになります。
あなたの言う神々は、この宇宙の力の根源であり、宇宙を支えるもの。
それを討伐するということは、この宇宙を崩壊させることになります。
あなたは助かるのかも知れませんが、その他の生命は消滅してしまうでしょう。
私はウルトラマンとして、豚太郎さん。あなたの企みを止めさせてもらいますよ」
ジョジョもスタンドを隣に出現させ、ゼフィールという名の豚太郎に言った。
>235
つかさは黒鋭が吐き出した霊玉を拾ってハンカチで拭き、手に持った。
それと同時に、ネビロスに合図を送り、術をかけさせるのをやめさせた。
>238
>できることなら俺も含めた元の世界ってのを具現してみたい」
「何もかも元通り。悲劇もまだ起こらなかった、あの楽しかった時に戻りたいのね!」
つかさは天保の言葉を聞くや否や、目を輝かせて、口調が強くなる。
「それは素晴しい事だわ!人間、健やかなのが一番だものね!
良いわ。霊玉は貴方にあげる。貴方が望む世界を作ってみせなさい」
しかし、天保に霊玉を手渡すつかさは、どこか悪戯っぽい含み笑いをしている。
その表情は、誰が見ても十分理解できる。ささやかな悪巧みをしている顔だ。
>240
天保の手を強引に引いて踊り狂っていると、突然、つかさ達を鞭で打ち据える者が居た。
つかさが天保の手を離したが、もちろん事態はあまり好転しない。天保は鞭による打撃で吹っ飛ばされた。
だが、不死身の怪人である水無月つかさは既に痛覚を遮断しており、痛みを感じることがない。
鞭による攻撃というものは、相手に苦痛を与えることに主眼を置いたものであるため、今のつかさにはほとんど効果は無いのだ。
まして、アンデッドの怪物と化したつかさは、きわめてタフだ。鞭による衝撃では怯みもしない。
だが首筋に直撃すると、頭が宙を待った。すると、つかさはその場に立ち尽くしたまま動かなくなった。
>「僕は暖かい命を得た!羨ましいか死せる水無月よ!あはは、僕は生きている!」
地面に転がるつかさの生首は、その問いに答える事はない。
その間、ゼフィールが圧倒的なカリスマによって獣人たちを従え、その真意を明らかにした。
農夫になるとか言った辺りで、つかさの首から下が、首が転がっている方向へ歩き、自らの首を拾い上げていた。
ただ、くっつけるのに暫く時間がかかった。
>アリア
>『主の心が弱くて、みずから魔性の快楽に引きずられるようでは契約させた意味が無い』だそうですぅ」
「そ。そんな……アリア……」
僕は言葉が返せなかった。恥ずかしくってみっともない。
アリアは冷たく言うと去ってしまって、残されたのはアルラウネの木の実だった。
木の実が内部から焼け焦げだして……
>ラスティーリア
>「復活!」
>「よかったレイジ、無事ね!いくら軟弱そうな顔してても女のレイジより男のレイジのほうがいいわね。
>女の快楽に狂ってるレイジを見てみたかったけどね。きゃはははははははは。は。は?」
ラスティーリアまできついことを…… けど僕はうれしかった。
「何度も僕を助けてくれてありがとう。ラスティーリア」
ラスティーリアも三途の川から生還できたことがうれしかった。
それに僕をレイジと呼びつけにしている。リリさんの契約呪文がキャンセルされたんだ。
僕はほっとして笑った。
そう。これでいいんだ。僕とラスティーリアは御主人様とメイドではない。対等な友達だ。
「もうすぐ12時になる。祭祀は終盤になって霊宝を手にする者が決まる。
邪悪な者には誰にも渡してはならないけれど、ゼフィールにだけは渡してはならない。
最後の戦いだね」
霊宝は誰の物になるのがいいのだろうか。
少なくても僕じゃない。僕はもう資格は無い。僕は汚れた。
するどいリリさんに言わせれば、とっくに汚れていたんだ。やっと気がついたの?とリリさんならいいそうだ。
「リリさんが霊宝の所有者になるのがいいかもしれない」
僕は師子王ノ鞭を握りしめ、学校へと向うためにバスルームのドアに手をかけた。
>ベル
>「みんなー!私はちゃんとここにいるわよー!祭りは最高潮!ここで引いたら女が廃る。先に行っているから早くきなさいよ。」
>走り出す藤田達に声をかけると、そのまま木の幹へと埋まって姿を消した。
「ベ、ベル!………………妖怪みたいだよ」
本人は喜んでそうだけど…… いいのかこれで?いいのかな?
バスルームのドアを開けて廊下に出ると執事のジョドーさんがいた。ジョドーさんは黙々と壊れて散らかった館を掃除していた。
執事の鑑だ。
僕らはベルの家を出て通り一つ挟んだ学校へと走った。通りには近所の人々が溢れ出ている。
「あ!変わったよ。ギコ。さっきまでと変わった!」
今までも人々は騒いでいた。それはカウボーイの魔術師のいたマンションを見て。マンションの屋上から煙が出ていたからだ。
学校に相模国造屋敷が出現しても結界されていて、人々は異変に気がつかなかった。
それが今みんな学校を見ている。校庭に現れた巨大で異様な神社もどきの魔の神殿を指さし驚いている。
道路には見物の車が渋滞を作っている。
ゼフィールは生者となり、番人を継いだ筈の僕は生き返ってしまった。敖遊の儀をコントロールする番人がいなくなったから?
上から振ってくる重い音に僕は天を見上げた。
ヘリコプターだ。なんて数!10機以上はいる。
「自衛隊のヘリ?」
>254
彼女が霊玉を拾って丁寧に汚れをふき取ったかと思うと俺に手渡しした。
>「何もかも元通り。悲劇もまだ起こらなかった、あの楽しかった時に戻りたいのね!」
言葉の口調もはずんでおり彼女は喜びをあらわにしている。同じ目標をもった者に会えて共感するものでもあったのか。
とにかく彼女は敵対する者ではないらしい。ここはありがたく争いごともなく平和的に霊玉をもらっておくことにする。
彼女は俺の手をひいて戦場のど真ん中で狂ったように踊る。踊りなんてロクにできやしないので、かなり振り回されている。
いい加減目が回ってきたところで後頭部に痛みが走る。体も大きく飛ばされて地面に叩きつけられる。
地面に座り込んでいると屋敷の天井に開いたでっかい穴からでてくるそらとぶ恐竜。
物語にでてくるような竜が大量発生したり、ウルトラマン生誕40周年忘れられない怪獣・宇宙人アンケートで一位だった宇宙怪獣もいる。
早々たる面々がひれ伏すゼフィールとは一体何者なんだろうか?
>253
>「もう、滅茶苦茶ですね。テンポー君」
「まったくだ。あの怪獣と群れを見てどうだい、勝てる自信あるかい?」
地面がひときわ盛り上がった。土に埋もれていた植物が顔を出してこんにちわ。
全身をがちがちに絡めながらどんどん成長していく。隣にいた変態も一緒に絡まとられて同じ枝に降ろされた。
成長を終えた植物は館を埋め尽くすほどの大木となり、十分な大きさを得た樹木はそこで成長の過程を終えた。
>「やほっ、なんか久しぶりな感じね。ヤス、ちゃんと霊玉持っているなんてやっぱりあんたははずさないわよね!」
聞こえてくるのはなつかしいあのお気楽な声。突然、木の中から出現したのは…。
「げぇっ!?オバケェェェェ!!!」
死んだはずのベルがジョジョに抱きついていた。足はついてるのでオバケではない。
生きてる、いまの状態をハーレムかなにかと勘違いしている彼女。やめとけ、俺はともかく抱きついてたのは『変態』だよ!
>「・・・それって・・・面白いの?」
ゼフィールの言葉に目を輝かせて興味津々のベル。よくぞ、よくぞ生きておられた!
「やめとけって。靴を舐めろとかいう奴がつくる世界なんてへのつっぱりはいらんのと一緒ですよ。
あんなのについてくぐらいなら、うちの家来たほうがお宝もあって楽しいよ」
彼女が一度興味をもったことにぐいぐい食いついていくのはわかっている。それを止めるには更に食いつく餌を用意するしかない。
うちの宝を紹介してお持ち帰りされないか心配だが、とりあえずはこれで興味はこっちに移ったみたい。
>253
変態はゼフィールとかいうガキの敵につくことを表明した。豚太郎……むう。
「お前はあの豚太郎を正面から向かい撃つ。俺はこのグラウンドから一目散で逃げる。つまり…捨て駒の形になるな」
道尊はゼフィール降誕を千里眼によって確認すると、縮地(高速移動走法)の呪文を唱えた。
ベル邸から相模国造屋敷へ猿の如く街路樹、塀、燃え尽きた校舎、相模国造神殿の壁を飛び跳ねて移動し、
穴の開いた大天井からゼフィールの御前に降下した。
「先ずは世蛭様の足下を拝せ、女郎!」
ゼフィールの靴に平伏しないベルを道尊は一喝した。
道尊は多くの魔物達を従えるゼフィールの足に土下座して礼拝した。
「偉大なる哉!我等の導き手、世蛭様」
道尊は背広の懐から巻物を取り出すと、恭しくゼフィールに献上した。
「霊剣、霊玉、霊鏡の現所有者どもは欲深く執着し、世蛭様に無礼至極にも奉献はせぬでしょう。
これなるはこの道尊がシーラ・ドドに伝授しました偽霊具創生の秘術を示した書にございます。
謹んでお捧げ致します。
世蛭様の極大な霊力の万分の一をこの道尊に下賜分けたまえ。瞬く間に三つの霊具を現出させて見せましょう。
真田流陰陽道の研鑽の成果を御照覧あれ。霊宝召還は成就したも同じでございます」
>237
「布川亮明様」
アリアは布川の前に現れると、深く頭を垂れた。
「許可も無くお声を掛ける無礼をお許しください、ですう。
我が主、華山理利の命によりはせ参じましたですぅ」
アリアは遠慮がちに布川に向けて手をかざす。
「さし出た真似をお許しくださいですぅ」
癒しの光が布川の身体にむけられた。
>礼司
>「自衛隊のヘリ?」
「だにゃ」
バタバタと飛ぶヘリコプターは報道機関のヘリではにゃい。軍隊のにゃ。
「礼司。これから先はだれにもわからにゃい世界に突入していくんだにゃ」
ボクは礼司の顔を見上げたにゃ。
礼司は自分を責めている。強姦されたのに。礼司の純情さには、なんだか泣けてくるにゃ。
淫魔に襲われたんにゃ。アリア、リリ、礼司を責めるのは酷にゃ。
ボクは大きな不安を感じていたにゃ。
リリの潔癖というか純粋さがしたことにボクは胸騒ぎがしていたにゃ。
礼司とラスチーの契約を切ってしまってよかったのか?
ラスチーは魔道の気に影響される脆い魔道生物にゃ。
「ぎゃああ!」
悲鳴がボクの考えを止めさせたにゃ。
学校の敷地に入り込んだ者達がいたにゃ。マンションに駆けつけた警官達も校庭に入った。
立ち入り禁止にする前に好奇心から入った近隣の住人もいたにゃ。
その人達の死の叫びが聞こえた。
「礼司!にゃんだあれ!トカゲ男にゃ!」
龍人兵をボクらは見たにゃ!龍人達が人間を襲っている!
ゼフィールからの返答の前に左右のジョジョと天保がそれぞれ言葉を発する。
ジョジョは宇宙の存続の為にゼフィールとの戦いを。
天保は驚きの声を。
「やあねえ、この私が食べられたくらいで死ぬわけないじゃない。
そんなこと言ったら、アレって水無月よね。あっちの方がびっくりよ。」
屈託のない笑顔で応えながら、水無月を指差す。
だが次の天保の言葉で、ゼフィールの存在も?げた首をくっつけようとしている水無月の惨状も吹き飛んでし
まう。
>あんなのについてくぐらいなら、うちの家来たほうがお宝もあって楽しいよ」
>あんなのについてくぐらいなら、うちの家来たほうがお宝もあって楽しいよ」
>あんなのについてくぐらいなら、うちの家来たほうがお宝もあって楽しいよ」
>あんなのについてくぐらいなら、うちの家来たほうがお宝もあって楽しいよ」
ベルの頭の中に谺する天保の言葉。
みるみるうちに耳まで赤くなり、大量の鼻血が噴出した。
「や・や・やぁねえ。こんな時に何言い出すのよっ!私達まだ十四歳なのにっ!!んっもうっ!」
顔を激しく振りながら天保の背中をバンバン叩き続ける。
天保の言葉はベルの中で変換され、プロポーズの言葉として受け取られていた。
ゼフィールへの誘いに対し迷う自分に
「あんな奴より俺と一緒に来い。(家の宝→家宝→代々伝わる姑から渡される婚約指輪→)プロポーずっすよ
これ。」となっているのだ。
結婚というファンタジーの上に二人の男が自分を奪い合って戦うというシュチュエーションにすっかり酔いあ
がってしまっているのだ。
直後に道尊が現れ、一喝するが殆ど耳に入っていない。
僅かに「女郎」と耳に引っかかったのだが、ベルは女郎という言葉の意味を知らないので注意を引くことすらで
きなかった。
道尊の一喝ですらそのような状態なので、自衛隊から派遣されたヘリが上空を舞う音など欠片すらも耳に入っ
てはいない。
>「お前はあの豚太郎を正面から向かい撃つ。俺はこのグラウンドから一目散で逃げる。つまり…捨て駒の形
になるな」
天保がジョジョを戦わせてグラウンドから逃げると言い出したとき、ベルの熱に浮かされたような目が光を取り戻
した。
「ちょっとヤス!何言っているのよ。こんな面白いこと見ていきもしないの?
それに・・・男なら戦って私を奪ってみなさいよ!!!」
目に光が戻ったような気がしたのはやっぱり気のせいだった。
満面の笑みで天保の背中を押して枝から叩き落したのだ。
「ああ、二人の男が私をめぐって戦いに・・・。私って罪な女・・・。」
すっかり状況に酔って隣のジョジョにしだれかかるが、ベルの意識の中ではジョジョは寄りかかる幹と変わらぬ存
在だった。
再び乱入者がやってきた。
謎の男に自衛隊のヘリ。
謎の男は豚太郎に霊具を作り出すと言っており、自衛隊のヘリの方は竜人達に攻撃して、逆に返り討ちにされたり…
>「お前はあの豚太郎を正面から向かい撃つ。俺はこのグラウンドから一目散で逃げる。つまり…捨て駒の形になるな」
「確かにそれが良いかも知れませんね。
見たところ、テンポー君は普通の人並の力になっています。
無力な一般人はここに居ても無駄に死ぬだけです。
それならば、私達で足止めをしますから、テンポー君は私達の味方になりそうな人を呼んできてもらいたい」
ジョジョはテンポーの方を見て言った。
視線の先には、ベルがテンポーを木の枝から突き落とすシーンだった。
そして、ベルはジョジョに寄りかかる。
「はぁ…チームワークは期待できそうにないですね…」
ジョジョは寄りかかるベルの頭をスタンドの腕で掴み、ウルトラマンの必殺技の形を取る。
「ウルトラ式!!人間大砲!!」
何やら妄想に夢中なベルを持ち上げて、野球のボールのように振り被り、勢いよく投げた。
大砲の弾のような速度で、ベルは頭から豚太郎の方に突っ込む。
「これが…テンポーの敵だぁあ!!!」
水無月つかさが首をくっつけ終わった頃には、地面から巨木が生えていた。
彼女は首の調子を確かめながら、周りを見回し、彼女にとって「面白そう」な人物を探し始めた。
「あら、こんばんは!良い夜ね!」
上を見上げて、木の上に居る人たちに挨拶をする。
その柔和な笑みからは、あらゆる意思や感情の類を読み取ることはできない。
「そういえば、お百姓さんになりたいって言ってた人が居たような気がするけど……貴方かしら?」
首を異常な速度で回し、髪を振り乱しながら、ゼフィールの方へと振り向く。
「お百姓さんは辛い事ばかりだけど、頑張ってね。
働けど働けど、貴方の暮らしは決して楽にならないけれど、希望を捨ててはいけないわ」
話を聞いているのかいないのか、そもそも状況がわかっているのかさえ、不透明な態度である。
だが、つかさの言葉の奥に含まれる何かは、これから途方もない敵へ挑もうという軍団の士気を下げるものだ。
もしかしたら、全人類の魂を全て集めたところで、徒労に終わるのではないかという不安感が、ゼフィール達に芽生える。
更に、つかさは右手の指をパチンと鳴らして、ネビロスを呼び出した。
ネビロスは大木の枝の上に立って、マリオネットのようなものを右手からぶら下げている。
『人間を滅ぼすとは、いやはや、勿体無いことを考えるものだ。
あんな遊び甲斐のある玩具は、他には無いというのに。
昔から人間を愛してきた私に言わせれば、勿体無いことこの上ないよ、うん。
霊宝の無駄遣いは良くないな。そう、もっと有意義に使うべきだ』
優しい口調のネビロスの言葉もまた、不安感と不快感を煽るものだった。
無論、この二人の言葉がハッタリであり、惑わしであると、理性ではわかるだろう。
しかしながら、ネビロスの有名な性質として、未来予知の力がある。
その瞳は、ゼフィールが率いる軍団の行く末さえも見通しているのではないかと不安にさせる。
そして何より―――水無月つかさは、未だに正体不明のデビルサマナーである。
使い魔達を通して、外の様子が伝わってくる。
外は酷い有様だ。
おまけにゼフィールの元には続々と異形の兵たちが集いはじめている。
だが、外のことは外の者たちに任せるしかないだろう。
藤田の霊体を使ったのは、思いのほか負担が大きかった。
当分出向いて干渉など出来そうに無い。
やがて、沈みつづけていた理利の靴底に何か硬いものが当たった。
降下が止まるが、真っ暗で何も見えない。
底に着いたのだろうか。――― いや、そもそも底という認識があるのかどうかさえわからない「場」なのだが。
理利が到着したと考えた途端、世界が一変した。
理利の足元から一気に漆黒の世界が塗り替えられていく。
あっけに取られる理利の目の前に、相模国造の屋敷の最深部がそっくり再現された。
だが、何かが変だ。
理利は厳しい目で周囲を見渡した。そして、視線がある一点で止まる。
「あなた誰?」
相模国造ではない。だが、圧倒的な力を感じる。
暗闇に目を凝らし歩み寄ろうとしたところで ―――― いきなり背後の空間が歪んだ。
>ベルさん
振り向いた理利の目の前に、ベル達が姿を現した。
「相変わらずすごいわねぇ・・・」
トンネルをはさんでほんの4,5メートルしか離れてないように見えるが、実際には違う。
二つの霊的次元の違う空間を無理やり繋げたのだ。
相変わらずやることが滅茶苦茶だと思うが、理利も似たようなものだ。
結果的に、理利は霊具をそろえずこの場に存在しているのだから。
思い込みや信念は、時に不可能を可能にする。
そのベルは今迷っていた。迷った挙句、魂を二つに分けて次元の間を移動し始めた。
もうじきここに到着するだろう。
リリは魔女だ。
ベルさえ揃えば、儀式はこの場でも可能なのだ。
『第二の霊玉よ・・・本当にこれでよかったのか?』
リリは心の中で、自ら取り込んだ第二の霊玉に呼びかけた。
だが――――今のベルは本当にわかっているのだろうか?
敖遊の儀が何を持って成就とされるのかを。
ジョジョのスタンドを身代わりにし、アマナはコクエイの攻撃からなんとか逃れた。
>「僕は暖かい命を得た!羨ましいか死せる水無月よ!あはは、僕は生きている!」
聞き覚えの無い声が聞こえた。アマナはすぐに声のするほうを見、その身を震わせた。
赤子がいつの間にか少年になっている。いや、それだけじゃない。
恐ろしい程の魔力と霊力が少年を中心に渦巻いている。
>「汝の野性の勘は真に正しい。もし無礼にも僕を襲ったら殺してやるところだった。こんなふうにね」
>アマナも天保も水無月も打ちのめした。
「!!!」
少年が振るう鞭はアマナの腕に巻きつく、刹那
勢い良く離れた瞬間、アマナの腕は捩れ飛んだ。
「ぐ---あぁぁぁぁぁ!!!」
脳内麻薬が痛みを消しているのだが、相当ショックが強かったらしく、
純粋な『痛み』によるものではなく意識からの『痛み』で声が上がった。
「あぁ----!」
必死で千切れた部分を押さえ、ゼフィールを睨む。
「ハァ---グ---ハァハァ---」
>霊宝によって全人類を瞬時に抹殺し、その膨大な魂を全て収穫する。これで集めた霊力は凄いぞ。凄いなんてものじゃない!
「せ---世界均衡を---崩すつもりですか---
---くだらない----くだらなくて----腕が千切れ飛んじゃいましたね---」
激しく肩を上下させゼフィールに反論する。
「我々は---世界の中で生かせてもらっている----何故---何故それを理解できない
世界は----あなたが---思うほどに----」
そう言って血塗れの左腕で今あるキーホルダー(クレスト)を取り出し
「簡単な作りじゃないんだよ!!!」
クレストを天に掲げそう叫び巨大な魔術陣を描く
「我が腕を喰らいて我と契約せよ!我が名---アマナ・ジュリ----混沌の軍勢を率いる者なりィィィィィィ!!!」
そう魔術陣に向かって詠唱をすると、魔術陣から巨大な棺アマナの目の前落ちる。
アマナはその棺を見るなり、古代語らしき言葉でまだ詠唱をする。
それと同時に千切れ飛んだ腕は青白い光と共にその存在を空ろにする。
腕の姿が無くなるころには棺は完全に開かれていた。
「********---我が眼中にその姿を見せよ----サナトス」
欲死の名がつけられたそれは、棺の中から轟音と共に姿を見せる。
それは龍の姿をしていた。蒼き翼龍だった。
しかし、その姿まだ空ろだった。
そうサナトスは完全に召還されていない。
本来は今使った三つのほかに、ブラスフェミー(冒涜)、アロガンス(傲慢)、マリス(悪徳)のクレストも使わねばならなかった。
他の条件はクリアしていたので召還契約を結べたのは幸運だったといえる。
しかし、完全な召還ではないために、本来の能力は十分に発揮できない可能性があることがつらい。
そのことを理解していたアマナはサナトスに命令を下す。
「サナトス----今のアナタは不完全体で存在すら保てない。
私の体を使い---戦ってください---」
命令を聞いたサナトスは吸収されるかのごとくアマナに入っていった。
戦闘ヘリから発射されたイルミネーション・フレアの熱に、
ゼフィールとの交合で消耗していたボクの意識の一片が飛びついた。
関数表示の世界から唐突に引き戻された肉体は
脇腹の鈍痛と、力の入らない下半身をぶら下げて、装備なし、夜空のスカイダイビングへと突入する。
アンジェリーナを頼る暇はない。
眼下には幻視に登場したあの巨木と祭殿が迫っていて、巻く夜風に淀んだ魔の気が敵の存在を報せている。
今のこの体たらくで、落ちて無事でいられる自信はない。
泥舟で乗り入れた三途の川の記憶、ヤツと寝た覚えは
行為の最初あたりからぷっつりと途切れてしまっていて、猥想の足しにもならない。
しかしお陰で、「真実の瞬間」に遅れを取らずに済んだ。
ボクは炸裂した照明弾の残滓から手元に「メギド」を喚ぶと、
巨木の周囲でホバリング中だった陸自のAH-64Dアパッチ・ロングボウへ触手をブチ込んだ。
剣先がスタブウィングを突き破って機体に喰らいつく手ごたえを感じると、すかさず鎖を巻き取り、「ワルキューレの行進」の一騎に特攻する。
位置エネルギーを利用しての攻撃にヘリは大きく揺らいだが、
ボクがミサイルランチャーに蹴りこんで、鎖を戻し続けて翼へしがみ付くまでの30秒ばかりで姿勢を立て直した。
もし「メギド」で火器やエンジン類を破壊してしまっていたら、命はなかった。
ダイ・ハードなアクションに疲労と貧血も相まって、強い眩暈が襲う。
ワイシャツは広げた襟から空気を吸ってバタバタとはためき、半身をひどく冷やす。
血の気がなかなか戻らないが、狂気のスタントによる緊張で、思考力だけは尋常な働きを得た。
身体にしたって、具合は悪いものの目立った外傷がない。終幕まではまだまだ動ける。
辺りを飛び回ってる対戦車攻撃ヘリは陸上自衛隊、即ち第三勢力の介入。
折角のヤマも潰れた、とぼやきたいところだけど、もう祭儀はそれどころじゃない。
空対地ミサイルが、祭殿の吹き抜けの天井に巡らされた巨大な梁を吹き飛ばし、地上の魔族どもも対空砲火で応戦する。
天蓋のように張りだした大樹の枝々にもまた、何者かの人影が在った。
レイジやリリ、フランス女、テンポー、或いはゼフィールの姿を探してみるが
夜空を彩る無数の魔法が、照明弾の焼き付きみたいに勘にこびりついて「見」えない。
元々繊細でない魔力感知を諦め、今度は飛び降りられそうな場所を探していく。
飛び交う火の玉を避けながら降下していくヘリ。
機体が大樹のそばを掠めた瞬間に、枝の一端へと飛び移った。
着地の衝撃にぐらつく足をどうにか樹上で保ち、その場から網目上に広がった地面代わりの細い枝へ踏み出す。
枝は屋根から十メートルばかり上にあって、無理をすれば降りられそうだけど――
>更に、つかさは右手の指をパチンと鳴らして、ネビロスを呼び出した。
>ネビロスは大木の枝の上に立って、マリオネットのようなものを右手からぶら下げている。
「おたく、新規参入?」
目前に佇む長身痩躯の男へ、背後から慎重に歩み寄った。
どうにも新しい登場人物が多すぎて、毎度ながら自己紹介が欲しい。
敵か、味方かくらいは判別できなければ下手に身動きの取れない舞台になってる。
昨日の友は今日の敵、今日の敵は今日の敵、「友は風の彼方に」だ。
右手の指を弾く。召喚され、掌に沈む魔剣の柄がずしりと重い。
残り少ない体内の魔力を引き出したせいで、再び強烈な眩暈に襲われる。出血大サービスはこれが限界。
「こっち向きな」
>道尊
>「これなるはこの道尊がシーラ・ドドに伝授しました偽霊具創生の秘術を示した書にございます。
>謹んでお捧げ致します」
「道尊、汝は僕の大切な参謀だ。僕が儚い死霊だった頃からの忠節、僕は嬉しく思う。
布川流とは大違いだ」
ゼフィールは道尊の掲げた巻物を受け取り広げた。一瞥しただけで長い難解な経文を読み取った。
「望み通り僕の霊力を分けてあげよう」
巻物に軽くゼフィールは唇をつけた。巻物は黄金色に輝き始めた。
「ムアコック!黒鋭!ゼットン!道尊の呪式を守れ!汝等は僕の神将だ」
ゼフィールは巻物を道尊に返した。
「僕の霊力込めた経文で直ちに三種の霊具を新造せよ。出来上がり次第、相模国造の処へ行く。急げ。
リリは邪魔でしょうがないからね」
>ジョジョ
>ベル
>大砲の弾のような速度で、ベルは頭から豚太郎の方に突っ込む。
「天保と恋の妄想を膨らませたり忙しい女だな」
ゼフィールは片手で打ち出されたベルを容赦無く殴り落とした。
倒れ伏すベルの頬をゼフィールは右足で踏みつけた。
「僕の命令に従わない奴を僕はゆるさないんだ。女でも容赦しないよ。僕も元は女だからね。
女は同性には残酷なものだよね。ふふふ」
ゼフィールはベルの頬顎を砕くつもりだ。踏む足に力を込めた。
>水無月
>しかしながら、ネビロスの有名な性質として、未来予知の力がある。
>水無月つかさは、未だに正体不明のデビルサマナーである。
「鎮まれ!」
水無月の脅しにざわめく竜人兵達をゼフィールは叱責した。
「ネビロス!僕と悟り(=未来予知と過去視)の力量を競るつもりか。無謀だね。
水無月、汝は所詮の処は空ろな死霊だ。死霊を僕は恐れないよ」
ベルの頬を踏む圧力が増していく。
完全にサナトスを吸収したアマナの体には蒼い魔術陣が浮かび上がる。
そして、千切れた腕も徐々に再生される。いや、肌色が違った。
どちらかといえば、義手を移植した様に見える。
己の身をサナトスとかしたアマナはゼフィールを睨みつける。
「---」
おもむろに義手の掌を向ける。
「---喰らえ」
邪悪な笑みを浮かべ、魔弾を乱射する。
あっという間に部屋中に土煙が舞い上がる。
「私の前でその汚らわしい面を見せるなよ!ガキが!!!」
土煙の中で何かを弾きながらゼフィールに吐き捨てる。
「おぃ---くだらねぇ芝居なんかいらねぇんだよ---」
土煙が収まったとき、サナトスはギルトの鎧を着込んでいた。
いや、ギルトの他にヘイトレットの籠手、フロウドの足籠手も装備してある。
「驚いたか?んなわけないな---」
砲弾のように豚太郎に向かっていったベルは、豚太郎に片腕で撃墜される。
豚太郎は撃墜されて地に伏したベルの頭を容赦なく踏みつけた。
水無月が指をパチリと鳴らす。
ジョジョの隣には、何時の間にか、操り人形をぶら下げた男が立っていた。
男の喋る内容から察すると、豚太郎とは良好な関係ではないと言える。
水無月が呼び出したと考えられるし、こちらの味方となってくれる可能性がある。
豚太郎の方はというと、隣の男の揺さぶりに心を乱すこともなく、ベルを踏む足に更に力を込める。
あのままでは、ベルの頭はトマトをベシャッと潰したような感じになるだろう。
ベルが現在陥ってしまった状況はジョジョに責任がある。
救出に行こうとした瞬間、ちょっと雰囲気の変わったアマナが豚太郎に向けて魔力弾を乱射。
豚太郎の周辺を中心に、部屋中に土煙が巻き起こる。
これではベルの状況が分からない。
とりあえず、ベルの無事を祈っておこう。
>「おたく、新規参入?」
また、乱入者が現れたようだ。
しかも、新規参入って言うからには、この戦いに途中まで参加していたのだろう。
>「こっち向きな」
私と隣の男に、乱入者の方を向けと指示を出してくる。
私は乱入者の方を向いた。
乱入者は手にしていた剣を構え、こちらを警戒している。
妙なことをしたら、すぐにこちらの首を跳ばすだろう。
「私の名はウルトラマンジョジョですよ。
で、こちらのお方は、水無月さんという、職業不明の方が召喚されたと思われる、人外のお方」
ジョジョは隣にいる男の紹介も乱入者にする。
紹介した男の素性が全く違ってもジョジョは気にしない。
「それで、あなたのお名前は何ですかぁ?
できれば、この場に来た目的もお話をしてくれると、私も嬉しいんですけどねぇ」
ジョジョもスタンドを隣に構え、乱入者に話を聞く。
>265>268
『遅かったじゃないか』
未来と過去を知るネビロスは、まるでアッシュが来ることを予め知っていたかのような素振りを見せる。
ネビロスは、ジョジョが自己紹介するのに続く形で、ゼフィールの言葉に耳を貸すこともせず、自己紹介を始めた。
『私はネビロス。見てのとおり、悪魔だよ。いわゆる、人類のトモダチさ。昔からのね』
ネビロスの白人の顔立ちに黒い肌は、人間に化けた悪魔に見られる特徴でもあるとされる。
もちろん、ネビロスはそんなわかりやすい変装しかできない訳ではない。
悪魔と人間の境界が曖昧になる昨今、ちょっと変わった特徴を付加して分別を図るため、わざとこの姿になっているのだと、本人は語る。
>266
>水無月、汝は所詮の処は空ろな死霊だ。死霊を僕は恐れないよ」
「あら、わたしはただの霊じゃないわ。ちょっと変わった霊よ。見てのとおり」
確かに、つかさの中には、ちょっと変わった霊が詰まっているのがわかるだろう。
長らく三途の川の番人を務めてきたゼフィールさえ、見たことの無い性質を持った霊である。
まあ、ゼフィールの言よりも更に様々な意味で、コイツが虚ろな霊には違いないのだが。
「でも、気をつけて。早く霊宝を手にしないと、敵に察知されて、いろいろ不利になるわ。
丁度―――こんな風にね」
今度は、ゼフィールを焦らす作戦に出たようだ。
だが、次の瞬間、
>267
アマナの放った無数の魔弾が、ゼフィールとその配下を薙ぎ払ってゆく。
しかも、喰らった者は尽く打ち所がかなり悪く、
霊具と数多の霊の力を得たゼフィールにとってもなお、かなりの痛手になる可能性がある。
竜人達の中には、原型を留めない肉片になった者も居るほどであった。
実は先ほどの魔弾には、何者かの力が加わっており、本来よりも更に高い威力を発揮したのだ。
その力は、もちろん、目の前に居る水無月つかさのものなどではない。
「さっきも言ったけど、お百姓さんは辛い仕事よ」
ほどなくして、土煙が立ちこめる。
ジョジョに縋りながら自分に酔うベルには周りのことなど見えていない。
無論自分のことも見えていないので、ジョジョのスタンドに頭を掴まれても気づきもしなかった。
ようやく気付いたのは大きく振りかぶられたとき。
そして反応できたときには既に勢い翼投げられた後だった。
「ちょっとなにすんのぃよおぉおおーーーー!」
ドップラー効果を聞かせた叫び声を流しながらゼフィールに突っ込む。
すさまじい勢いだったが、片手で容赦なく殴り落とされてしまう。
「ぶべ!ちょっと、ひたたたた!ひょんにゃのひゃほをはひへにふゅるにゃんだだだ・・・!」
(直訳)ぶべ!ちょっと、いたたたた!女の顔を足蹴にするなんたたた・・・!
顎骨を踏み砕くつもりで踏みつけるその力に声もうまく出せずにただバタバタと手足をはねるが、びくともしない。
水無月と話しながら踏みつける圧力は更に増していく。
そうするとばたついていたベルの手足が急に動かなくなり、叫び声もとまり静かになった。
「ああ・・・にゃふひゃはへてくりゅひょははらひいはいはんはも。」
(直訳)ああ・・・なんか慣れてくると新しい快感かも。
相変わらずあごを踏みつけられているので発音は聞き取りにくいが、暴れることもなく静かに踏みつけられるに任せている。
その変化はなぜ起こったのか?
踏みつけられているせいか、葦の根に程よくほぐされたグラウンドに身体半分が埋まってしまっている。
そして何より、ヘルの顎や頬から生えた根がゼフィールの足に絡みつき養分を吸いだしているからなのだ。
ベルの感じた気持ちよさはエネルギー吸収によるものであり、踏みにじられる事による快感ではない、と思う。
その直後、アマナの魔弾がゼフィールとその配下を薙ぎ払う様に着弾し、土煙が立ち込める。
その土煙の中、衝撃で手から外れたのか、ベルの持っていた叢雲剣が宙を舞った。
>260
「な〜んちゃって、この世界で逃げる先なんてあるわけねぇもん……」
>「ちょっとヤス!何言っているのよ。こんな面白いこと見ていきもしないの?
>それに・・・男なら戦って私を奪ってみなさいよ!!!」
――な。
後ろから押された。足は枝から離れて宙へ。
地に足がついていない、おおぞらをとぶ、束縛からの解放、重力の緩和。
飛べっっ!天保光ィ!!
「はい、無理」
枝にいる二人がどんどん小さくなっていく。
いちおう吸血鬼になっているのだから、このまま地面に落ちたとてかすり傷ひとつできはしない。
問題はその後、あのゼフィールには霊玉を所持し牙の主モードだとしても敵わないと直感的に悟った。
あいつのように俺様最高、独裁者タイプは反逆者に対してはひとつも慈悲は持ち合わせていないのがセオリー。
このまま落下していったらいの一番に標的にされてコロシアム状態じゃないの。
下を見てみるとちょうどいい太い枝が近くにあった。タイミングよく手を伸ばしてその枝に掴まり、三回ほど回転して枝に着地。
>「僕の命令に従わない奴を僕はゆるさないんだ。女でも容赦しないよ。僕も元は女だからね。
>女は同性には残酷なものだよね。ふふふ」
誰かの頭を踏んで微笑みを漏らしているゼフィール。踏まれているのはベルの頭で必死に抵抗しているように見えた。
直後に視界が塞がるほどの土煙が舞い、救出するなら今しかない!
枝を蹴って加速し、着地後に瞬時に勢いを殺して更に木の幹を蹴る。低い姿勢のままゼフィールの側まで移動する。
限りある視界の中でベルの姿を探し、ついにとらえるとゼフィールを蹴り上げて不意をつく。
怯んだ隙をみて土に埋まったベルを救出し、宙に舞った叢雲剣が落ちた。
それを掴むとゼフィールと後方に飛んで距離を置いて煙の中へ消える。
「相変わらず無茶すんなぁ。ヘタすりゃ死んでたぜ?」
>アマナの魔弾
「プルルルルルルルルル(訳・電磁バリアー!)」
ゼットンはゼフィールを襲う魔弾の前に瞬時に立ちはだかると、電磁バリヤーを張った。
魔弾が跳ね返される。跳弾に近くの竜人がずたずたにされるが気にしない。
>アッシュ
>「おたく、新規参入?」
>目前に佇む長身痩躯の男へ、背後から慎重に歩み寄った。
道尊のガードを命令されたゼットンは不埒なアッシュに猛然と襲いかかった。
「ウォン!
(訳・オレは神将ゼットン!偉大なるゼフィール様の命により参謀道尊を警護する!
なんぴとも道尊の偽霊具創造を邪魔させはしない!小僧!下がれ!下がらないのならくらえ!
神将ゼットンの吐く劫火に灰となれ!いや!蒸発して灰すら消え失せるがいい!
一兆度火炎玉ぁぁぁぁ!ごおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!)」
万能属性の技を使え!
ゼットンが放った一兆度の火の玉により、宇宙は蒸発した。
生き残った者は、誰一人としていない。
>ギコ
>「礼司!にゃんだあれ!トカゲ男にゃ!」
ギコが叫んだ。わかっている。わかっているけど僕は上空のヘリの一機から目を逸らせなかった。
「アッシュ?」
アッシュが見えたような。
相模国造神殿の中からヘリを攻撃する魔物達の魔法が放たれた。
それは青い花火みたいに美しいのに、恐ろしい破壊を引き起こす光線だ。
光線に当たったヘリは包丁に切られた豆腐のようにスッパリと切断されて墜落する。
中には空で爆発するヘリもある。
アッシュを見失った。
ギコがたまらず僕の足を引っ掻く。
地上に目をやれば、相模国造神殿から湧き出たリザードマン達が、校庭に入り込んでしまった人々を惨殺している。
武器は口から吐く青い光線。人々が輪切りにされていく!
「水?」
歯と歯の間から竜人達は水を吐いてたんだ。水は細く細く糸のように、それでいて凄まじい圧力がかけられているらしく
人や校庭の金網や庭木を切断していく。
ウォーターカッターだ。
僕は師子王ノ鞭にオーラを込めて伸ばした。師子王はオーラを乗せれば10メートル以上も伸びた。
それを僕は大きく一回転させた。
竜人達の首がボン!ボン!と斬れ飛ぶ。首無しとなった竜人達五体がドドドッと倒れた。
ふかわさんによって霊力を高められたムチの威力の凄まじさに僕自身が恐怖を覚えた。
これは凄い。
「行くよ!ギコ!ラスティーリア!」
恐怖は魔物たちに!
僕は竜人達の群れに突っ込んだ。
道尊を守り黒鋭は襲撃者に備えた。
「自分の相手はどの御仁かな?貴様か?貴様か!?ほう、貴様かな?」
アマナの悲壮な変身を黒鋭は虎顔を崩して嘲笑した。
「霊具創生が果たせる今、ベル・T・カーマンは捨て置いてもなにほどのものがあろう!
牙の主の座から転落した天保光にいたっては考慮の範囲外!自分の主だったとは片腹痛い。
御前はもはや雑魚であるが故にベルを連れどこなりと消えよ!
ゼフィール様が全人類殺戮を為される時、その他大勢となって死ぬ!
来い!アマナとやら!」
黒鋭は剛毛に包まれた手を差し出し、人差し指をくいくいと曲げて挑発した。
「ぶひほ!ぶほほほほ!」
ゼフィールの靴に身体の一部である枝が触れた刹那、ムアコックの胃の穴が塞がった。
全身を突き破り生えていたアルラウネの枝が枯れ腐り落ちた。
うっとおしいベルの干渉をこれで遮断が為った。
「しぶとい女怪め!」
>ベル
>「ん?あれ、間違えた。ごみんねー。」
排除した筈のベルに愚弄されムアコックは深い憎悪を彼女にむけた。
だがゼフィールの生誕にムアコックは利用されたのである。ゼフィールとその協力者道尊にこそ憎悪をむけるべきだった。
しかしそれは出来ない。
ムアコックはゼフィールによって殺されかけ、ゼフィールによって救われた。
ムアコックへの生殺与奪権をゼフィールは握っているのだ。
>ゼフィール
>「ムアコック!黒鋭!ゼットン!道尊の呪式を守れ!汝等は僕の神将だ」
「御意!
さりながら畏れ多くも申し上げ奉ります。我ムアコックを守護していたモート亡き今、私の体は与えられていた
力は失せ、ただの豚の身と成り下がりました」
ただの豚といっても、巨体で直立する豚だが。
モートが滅びオークと称えてもよかった悪魔的容貌も強力も消えてしまっていた。
アマナ・サナトス、ゾンビ水無月、ウルトラジョジョ、盗人テンポーを控え、対峙するのにいささか心細い。
「私には今まで己の得物を持ちえませんでした。私には魔法能力も生来なく、はた迷惑な火の玉を吐く芸当もありません。
偉大なるゼフィール様、どうか私に何か武器をお与えくださ・・・おお!」
>アッシュ
「おいおい!ロゼではないか!(ランドマークタワー以来、ムアコックはアッシュの本名は知らない。偽名ロゼのみ)
お前も神将になりにきたのか?歓迎するがな!」
>礼司
>「行くよ!ギコ!ラスティーリア!」
>僕は竜人達の群れに突っ込んだ。
「す、すごいにゃん!」
礼司は剣でもあり鞭でもある師子王をふるった。竜人達がどさどさと倒れる。
礼司は強くなった。ヘルメットヘアーがくれた武器の強さもあるけど、礼司になにか決意があるにゃ。
ゼフィールへの怒りが強さになっているのか、それともベルの家を出るときに言った言葉のせいか。
礼司は「リリさんが霊宝の所有者になるのがいいかもしれない」と言ったにゃ。
魔の霊祭の支配を狙うモンスターどもと戦って、霊宝を取られるのを阻止する、その為に戦ってきたみたいなもんにゃ。
モンスターと戦う礼司やリリや水無月たちの側は誰が霊宝を持つべきかはっきりしなかったにゃ。
それがリリへと、統一の目標がやっとできたかもしれにゃい。
リリは困るかにゃ?
「礼司!まだ次の敵がいるにゃ!」
竜人を倒した礼司がまた夜空にアッシュを探している。
「相模国造神殿に入ろう!なんか異様な気がする!ずっとしているけどにゃ。
シーラに似た異様な気を感じるにゃ」
シーラと似た気とはなにかボクにもわからにゃい。そう感じるのだから仕方が無い。
その気は、どことなく陰陽師のふかわに似ていた。どす黒い感じだけどにゃ。
「ここでねずみ叩きしていても無駄にゃ!」
竜人を何匹か礼司は倒したけれど、神殿から増援が出てくるだけにゃ。
「人々はもう逃げるにゃ。ほっとこう!親玉を倒すのが効果的にゃ!」
どこから神殿内に入ろうか。中からの通り道は竜達は出てくる。
「礼司!またスパイダーマン作戦をするか?」
侵入路は相模国造屋敷に開いた大天井の大穴がいい。
僅か数メートルに見えるトンネルだが、その実次元連結をした『穴』である。
時間潮流も物理法則も出鱈目な中、ベルは三途の川からリリのいる空間に辿りついた。
「にょほほほ!流石はあらゆる時空を行き来するという天の鳥船!無事とうちゃーーーーく!」
足の船の船首に足をかけ、手に持つは叢雲剣。
地上のベルが持っている叢雲剣に比べ、ずいぶんとシンプルな印象を受けだろう。
「リリー!面白いベントのためなら宇宙の果てまで追いかけるわよー?
って、ところでここどこ?」
不思議そうに辺りを見回しながら尋ねる。
##########################################
土煙の中、誰かにぐいっと引っ張られる。
「ひたたた・・・!」
ゼフィールの足に絡み付いていた根が引きちぎられ、悲鳴を上げながら引っ張り出された。
ようやく土煙の範囲から脱すると、ベルの腕を引っ張っている天保の姿が確認できた。
>「相変わらず無茶すんなぁ。ヘタすりゃ死んでたぜ?」
「ヤスだったの?えーちょっともう!なに?なんかヤスじゃないー!」
戸惑い。
自分でもどう変化したのか、どう対処していいのかわからない気持ちの変化に混乱する。だが、混乱するままに
していてくれるほど状況は穏やかではない。
そこかしこで爆発、散らばる龍人兵。けたたましく鳴り響くヘリの音。
「ムー。こんなときにムードないわねー。」
口を尖らせていると、二人に巨大な影が落ちた。
見上げる先には神将黒鋭が、虎の顔で嘲笑していた。
その顔にベルの柳眉が釣りあがるが、すぐに笑顔に戻った。いたずらを思いついた子供のような笑顔に。
「ヤス、見逃してくれるって言うんだから行きましょ。
ヌーな世界の喧嘩に私達の出る幕ないから、静かに二人で、ね。」
言っていることと裏腹にベルの頭についたアルラウネは艶やかな花を咲かせている。
五行思想によれば木行は水行によって生まれる。
あたりに散らばる龍人兵は下は水龍。その残骸に根を伸ばすアルラウネはよりいっそうに強化される、というものだ。
更に僅かとはいえゼフィールから吸い取った養分はそれ以上にベルとアルラウネに力を与えていた。
天保の腕を引くその力は恐るべきものになっているのだ。
もはや天保の意思を関係なく手提げ鞄を持つようにベルは進む。
『ヤス、あいつら私たちのこと眼中にないようよ。そんな奴らにはどうすればいいと思う?
それはね・・・最高のタイミングで横合いから思い切り殴りつけるのよ!』
掴んだ腕を解して直接念話で天保に語りながら踏み出したところは、もはや限界まで捩れた御柱の周囲を囲む池。
音もなく二人はその中へと沈んでいった。
>「私の名はウルトラマンジョジョですよ。
長身の男の傍には彼と別に、金髪の少年が佇んでいて
ボクに呼ばれるとふざけた名前で自己紹介した。一見だけでは、敵か味方か判断できない。
だが、思い出したのは、リリとの会話に登場した「金髪の生徒」。たぶんコイツのことだ。
「牙」の使徒には見えないけれど、油断は禁物。
いつでも斬り伏せられるよう、それとなく間合いを取っておく。
>で、こちらのお方は、水無月さんという、職業不明の方が召喚されたと思われる、人外のお方」
>『私はネビロス。見てのとおり、悪魔だよ。いわゆる、人類のトモダチさ。昔からのね』
最初に出会ったマント姿の男は、水無月の「お仲魔」だと言う。
人外の気配は当然だった。磨きあげたように黒い肌から、自ずと魔力が立ちのぼる。
今夜の決戦へ備えての仕込みは、どうやら間に合ったらしい。
「今後ともヨロシクってか? 手前のご主人サマは重役出勤で、一体全体何をやってやがる?」
体力温存のため剣の構えを甘くはしたが、依然として二人の素性は知れないまま。
水無月は元より怪しい立ち振る舞いで、リリにも監視を怠らないよう忠告してきたつもりだ。
「ボクはアッシュ。レイジとリリの……オトモダチ?
今夜はお祭りを畳みにね。神さんにこのまま好き勝手されちゃ、人間サマの立場ないっしょ? だからさ」
>「おいおい!ロゼではないか!
>お前も神将になりにきたのか?歓迎するがな!」
「ムアコック!?」
祭殿からの声に、ボクはネビロスとジョジョを押し退け前へ出た。
枝の端から見下ろすと――祭殿にヤツらが居た。
ドラゴン・レイディとムアコック、遠く離れてはいるが、連中に間違いない。
バルンディノとは別タイプの恐竜人間どもと、幹部格らしい幾人かの妖魔、魔人がゼフィールの周りを囲む。
連中と対峙する、水無月と見知らぬ少女。ゼフィールに踏みしだかれているのは、あのフランス女か?
ゼフィールは祭事に直接干渉はできない約束だったのでは?
ムアコックに関してはまた寝返ったか、ボクが蒸発したので契約破棄されたか。
どちらにしても、問題になるのはドラゴンのほうだ。
三途の川でナニした時に、仕込まれているかも分からない。
「ゼフィールか! さっきはトンじまって悪かったな、でもちゃんと勃ってたろ!?
切り取って海に捨てりゃ、魚も孕ませられるぜ。もういっぺん試してみっか?」
>道尊のガードを命令されたゼットンは不埒なアッシュに猛然と襲いかかった。
ゼフィールの脇に控えていた、ゴキブリみたいな黒塗りの怪獣が空を飛ぶ。
怪獣がボクらを目掛けて放つ光球は、周囲の空気を焦がし大樹の枝葉を焼いた。
避けるつもりはない。掴まえる。
「ジョジョだっけ。あの怪獣は背中が弱点と違う? そりゃパワードのほうだっけ」
宙へ手を伸ばし、火球を掌で受けとめた。
膨大な熱量にさしものボクも苦痛を感じたが、それも僅かな間のこと。
炎はボクの血となり肉となり、消えた。
手を開いたり閉じたりして痺れを取ると、その手で金髪の生徒の肩を叩いて
「今夜は無重力弾の援護もない。ダンナ、アレを見せておくれよ」
腕を十字に組む、あのポーズでジェスチャーした。そして、枝から飛び降りる。
供給された魔力が大きすぎて、ボクの身体に長時間留めておくことができない。
ヤツ――ゼフィールを殺るなら今だ。
自分でもすっかり忘れていたのだけれど、リリから預かった念話用の指輪をボクはちゃんと嵌めていたのだ。
滞空時間で指輪の存在を確認すると、
『リリ、聞こえたら返事を。
どうにか現世へ戻れたはいいんだが、周囲の状況がいまいち呑み込めない。
ゼフィールが目の前に居る。ヤツは祭に介入できるのか?』
地響きをたてて着地。ボクが着地する寸前に、テンポーがフランス女を攫って消えた。
あの女も祭事に深く関わっている一人だったハズだ。
『レイジは無事? 誰が敵で誰が味方か、おおよそは見当が付くが知らない顔も多い。
祭事を潰すにはどうすればいい? ゼフィールを殺っていいのか?
それともベルか、テンポーか。教えてくれよ。ハッピーエンドにしたいだろ?』
ムアコックへの目配せの後、乱入したボクへ襲い掛かる恐竜人間どもを、片っ端から「メギド」で串刺しにした。
敵が反撃に用いたウォーターカッターも、ボクの身体に触れる直前で蒸発していく。
魔法の眼を持つ者なら誰にでも観える、火竜の精霊のご加護が守ってくれている。
ボクの心臓の半分に巣食うサラマンダーも、どうやらハッピーエンドを求めているらしい。
隣に立つ悪魔、ネビロスも自己紹介をし、今度は剣を構えた乱入者の番。
>「ボクはアッシュ。レイジとリリの……オトモダチ?
>今夜はお祭りを畳みにね。神さんにこのまま好き勝手されちゃ、人間サマの立場ないっしょ? だからさ」
レイジという者は知らないが、ウルトラマンのファンである、リリの友達と言う。
アッシュが友達と言った時に、語尾が疑問系のように聞こえたのが少しだけ、ジョジョは気になった。
アッシュは豚さんの声を聞くと、
>「ムアコック!?」
と、豚さんの名前らしき言葉を言い、ジョジョとネビロスを押し退けて、下の豚さん達を見る。
何らかの形であの豚さんと知り合ったのだろう。
リリの友達と言い、そのリリと敵対していた豚さんと仲良しそうでもある。
どちらの陣営に付くか判別しにくい。
アッシュがどう動いてもいいように、警戒をした方が良いかも知れない。
>「ゼフィールか! さっきはトンじまって悪かったな、でもちゃんと勃ってたろ!?
>切り取って海に捨てりゃ、魚も孕ませられるぜ。もういっぺん試してみっか?」
下を見ていたアッシュが謎めいたことを言う。
ゼフィールとは、豚から産まれた豚太郎のことだ。
その豚太郎と先程、何かをしていたらしいが、豚太郎は産まれてから間もない筈。
ジョジョは何をしていたか気になったが、そのことを即座に頭の中から捨てる。
ゼットンが襲ってきた。
先程、バルタンと戦っていた時のような失態は、もう、ジョジョはするつもりは無い。
残りの命は二つしかないのだから。
ゼットンは前に出ていたアッシュを狙い、奇声を出しながら、火の玉を吐き出す。
宇宙恐竜ゼットン曰く、一兆度の火の玉らしい。
アッシュは火の玉を片手で掴み取り、自身のエネルギーとして吸収する。
>「ジョジョだっけ。あの怪獣は背中が弱点と違う? そりゃパワードのほうだっけ」
「ゼットンには弱点などありませんよ。
急降下キックはテレポートで避けますし、頑張って体力を減らしてスペシウム光線を当てても反射をしてきます。
強いて言えば、一発しかない筈なのに、自身の機だけある、ペンシル爆弾位でしょうね」
アッシュは親しげにジョジョの肩を叩くと、
>「今夜は無重力弾の援護もない。ダンナ、アレを見せておくれよ」
と言い、腕を十字に交差させ、木の枝から飛び下りる。
「フライングクロスチョップですかぁ〜?」
と、ジョジョはにやけながら言った。
ゼットンはアッシュが下に降りていったのを見逃し、ジョジョ達に戦意を向ける。
相性が悪いから見逃したのか、ジョジョ達二人をまとめて倒した方が効率が良いと判断したのか知らないが、ゼットンはジョジョ達と戦う気だ。
「じゃ、私達とやりますか?」
その言葉と同時に、ゼットンの前にウルトラマンのスタンドが現れ、ゼットンの顔に当たる部分を殴った。
>アッシュさん
> 『レイジは無事?
>祭事を潰すにはどうすればいい? ゼフィールを殺っていいのか?
>それともベルか、テンポーか。教えてくれよ。ハッピーエンドにしたいだろ?』
『遠慮する事は無いわ。ゼフィールは倒して。あと、そいつはもう番人役じゃないわ。
ゼフィールはレイジを殺して、ゼフィールというお役目を押しつけようと謀ったの。
でもゼフィール役は死霊が条件でしょう?レイジが現世に蘇ってしまったから番人の座が空席になってしまった』
自衛隊などの第三勢力の介入は、ゼフィール役が消えて儀式が露呈してしまった結果でもある。
『レイジは・・・まあ生きてはいるわ。でも無事といえるかどうか。
彼はもうずっと前から、ゼフィールに見えない首輪で繋がれてる。
もしアッシュさんがゼフィールを狙うのなら、レイジにも気を許さないで』
ことの初めは、今思えばアッシュ達とレテ川で話を聞いた時かもしれない。
だけど影響が顕著になったのは、番人役を押し付けられたあたりからだろう。
理利がラスティーリアとの主従契約をいじった最大の原因でもある。
ちなみに、アリアは主従契約を切ったと話しただろうが、実際には二重契約になっている。
今は理利が主だが、影響力の強い理利が死んだり消えれば、元の鞘に戻るだけの話だ。
『それから被害が甚大で、今更祭事を潰すのは無理。
だから私は諸悪の根源に、全ての後始末をさせるつもり。
ゼフィールに奪われるくらいなら、最短距離にいる私が霊宝を手に入れるわ。
踊らされるのは業腹だけど、『すべて無かったこと』にするにはこれしか考えられないの』
理利は一旦言葉を切った。アッシュに名案があるなら乗るつもりだった。
『ちなみに私は今、御柱を沈めるために霊鏡と第二の霊玉を持って相模国造の元に嫁いだわ。
後はベルがアルラウネと霊剣を持って到着すればチェックメイトよ』
>「にょほほほ!流石はあらゆる時空を行き来するという天の鳥船!無事とうちゃーーーーく!」
天の鳥船と聞いて、理利の眉がぴくりと動いた。ベルの言葉の真意を測りかねているようだ。
『・・・後の話はアリア――ジョリアルのフランス人形から話を聞いて。近くにいるはずだから』
>ベルさん 天保さん
>「リリー!面白いベントのためなら宇宙の果てまで追いかけるわよー?
>って、ところでここどこ?」
理利は肩をすくめた。
「・・・まあいいわ。
さっきの質問だけど、ここは多分黒い御柱の中。相模国造の内部・・・だと思うわ。そういうベルはどう感じる?」
理利は腕組みをしてベルに向き直った。
「それから・・・この場に相模国造よりはるかに高位の存在を感じるんだけれど。
これは誰なの? ただの神って訳じゃ無さそうね。
元トリニティだったベルなら何か情報を持っているんでしょう?詳しく聞かせて欲しいわね」
>天保君、現世のベルさん
ドオン!と音を立てて新たな乱入者が現れた。理利は思わず額を手で押さえた。
「天保君も随分無茶をするわね。相模国造に嫁ぐつもりだったの?なんてね。
冗談はさておき霊具を持っていなかったら、今頃永久に次元の間を漂う事になっていたかもよ?
ベルもこっちから来るのなら、わざわざ霊体で来なくても良かったのに」
理利は上を見上げて手を一閃させた。現世に残っていた池の水が跡形も無く蒸発した。
後始末を終えた理利は、天保と新たに登場したベルに向き直り、にっこりと微笑んだ。
「ゼフィールに先を越されないうちに、私はさっさと霊宝を手に入れたいの。
霊宝の力で、祀りで犠牲になった人たちを元の生活に戻すわ。
天保君、その中にはもちろん牙の使徒だったあなたや戸田君も入っているわ。
霊宝さえ手に入れれば、今までの惨事は全て『悪い夢』に変わるの。
ベル、今の力を残したいならそれでも構わないわ。特別な人のまま居てもいいのよ?
私は、人と共生できる存在まで排除する気は無いから」
理利は一旦言葉を切り、二人の表情を伺った。
「霊宝を手に入れるために力を貸してくれない?」
ベルの半身たる霊体にリリが返事を返す。相模国造の内部、そしてそれより遥かに行為の存在の示唆。
「私はよくわからないけど、高位の存在ならやっぱり水蛭子なんじゃないの?
世界法則に介入して敖遊の祭祀を開いている本人だし。」
リリの言葉を受けて腕組をしながら首を捻るが、ベル自身もよくわかっていないようだった。
その時、ドオンという音を立てて上のほうから降りてくる天保と自分の肉体。
> ベルもこっちから来るのなら、わざわざ霊体で来なくても良かったのに」
ほとほと呆れたのだろうが、霊体のベルは手に持った叢雲剣を振り回して抗議する。
「そんなことないのよー。私がここに真・叢雲剣を持っていてポインターになっているからあの二人はすんなり
ここにこれたんだからー。」
霊体のベルの持つ叢雲剣は天保の持つ叢雲剣と鍔が異なる。
それは鍔。霊体ベルの持つ叢雲剣には飾りもデスマスクもついていない。
ベルの魂が二分したとき、叢雲剣も悠久の時のなかで付着した不純物も分離したというわけである。
肉体のベルと天保が相模国造の中へ到着したとき、天保の握る叢雲剣が砕け散る。
長い間叢雲剣と一体化していたので、その代用として使えてはいたが、所詮は代用。長く持つものではなかった
のだ。
こうして相模国造の内部に立つリリと天保と肉体のベルと霊体のベル。
リリは状況を纏める為に協力を要請する。
「リリが霊鏡、ヤスが霊玉、霊体の私が叢雲剣、肉体の私がアルラウネ。確かにあとは火さえ何とかできれば世界
法則書き込み可能ね。」
霊体のベルがうんうんと頷く。
「でもリリには協力できないわね。」
肉体のベルがぷいと横を向く。
「大体人と共存できるかって言う基準も傲慢じゃない?」
「流石私、なんか良い事言うわ!でも実際はヌーな世界にしちゃいたいだけでしょ!」
「流石私!良くぞ見破ったり!」
肉体のベルと霊体のベルがベル同士で笑いあうが、二人揃って笑いを止め一緒にリリの方へと向く。
同一人物なので息はぴったりだ。
「「まあそれはおいといても、リリは霊宝を持つ資格ないんだもん。
ゼフィールが言った死霊は儀式に参加できないって鵜呑みにしているの?
だったらヤスの前任者だった舌噛みそうな名前の人も、鼠のノスフェラトゥー一党だって「生きている」とは言えないじゃ
ない。
生きていようが死んでいようが別に構わないのよ。輪廻の環の中にいるのであれば、ね。
水蛭子はその中に入っていないから祭祀を開催できても自分は参加できないのよ。
ゼフィールは三途の川の番人として括られていたから転生できなかった。だから括りをといて転生を果たして参加資格
を得たわけ。
トリニティーだった私は霊具そのものだったわ。
霊具は祭祀の為だけに作られた存在。転生も何もあったもんじゃないわよね。だから×だった、と。
そしてリリ、今のあなたは霊鏡と融合しているいわば霊具そのもの。輪廻の環から外れた存在。気付いていなかったの?
ついでにいうと私の体はアルラウネと融合していて、この叢雲剣で斬られるためにあるから霊宝は得られない。
つまり、この場にいる中で霊宝を得る資格を持っているのはこのヤスただ一人!
ヤスは嫁ぎに着たのではなく、リリ、あなたを奪いに来たのよ。って何よ浮気者!」」
一部の乱れもなく声を合わせて説明する霊体ベルと肉体ベルが突然天保を殴り飛ばした。
「「は、いけないいけない。つい我を忘れちゃった。ごめんー」」
天保からのプロポーズ(された勘違い)と黒鋭に受けた屈辱とゼフィールへの意趣返しがベルの中で渾然一体となって
いる。元々まとまりのないベルの頭の中は更に脈絡がなくなっていた。
霊体のベルがリリの後ろに回り、その両肩にそっと手を乗せる。
「って訳だから、力を貸すのはリリの方なんじゃない?」
肉体のベルが天保の背を押し、リリの前に進ませる。
「さあ、このリリはリリであって霊鏡なのよ。手に入れて叢雲剣で私の首チョッパすればOK!」
にょほほほと能天気に笑いながら二人を近づける二人のベル。
だが、その笑いもぴたりと止まる。
「「あ、そういえば火を置いてきちゃった・・・どうしよう?」」
>279>276
>「ムー。こんなときにムードないわねー。」
んなこと言ってる場合かと突っ込むべきところだが、見下ろして威圧している巨人の出現に緊張が一気に高まっていく。
こちらを小馬鹿にし笑う。眼中になしとアマナへと向き直る。
「とだっち……もうもどれねぇんだな」
牙の使徒になった後に俺の配下について、次はゼフィール信じきって使役されて化け物と化している。
流れ流れついた先になにを求めたかわからない。けど…自分でもわかってなさそうだけど、なんか苦しそうだよ?
>「ヤス、見逃してくれるって言うんだから行きましょ。
>ヌーな世界の喧嘩に私達の出る幕ないから、静かに二人で、ね。」
腕を引いてどこかへ連れて行こうとするベル。じたばたと抵抗する気はないけど、引っ張る力がありえない。
>『ヤス、あいつら私たちのこと眼中にないようよ。そんな奴らにはどうすればいいと思う?
>それはね・・・最高のタイミングで横合いから思い切り殴りつけるのよ!』
気の向くままにベルの好きにさせていた途中、頭の中に響いた念話。
作戦名は皆々が必死こいて戦っている中で身を潜め、一番いいとこでポイントを奪え!
「それ魅力。かなり魅力!」
いまだ闘志覚めやらぬベルに引かれて池の中に沈む。
沈んでから一分かそれとも五分ほどたっているのか、ゆらゆらと変な空間を漂っている中でやっと出口が見えた。
池はどこか異世界への入り口で通ったさきには華山理利が静かにたたずんでいた。
>284
>「天保君も随分無茶をするわね。相模国造に嫁ぐつもりだったの?なんてね。
> 冗談はさておき霊具を持っていなかったら、今頃永久に次元の間を漂う事になっていたかもよ?
> ベルもこっちから来るのなら、わざわざ霊体で来なくても良かったのに」
「そ、そんなに危険な状況だったの?」
死ぬことも許されずただなにもない異次元にただよう魂。やがて狂っていく自分を想像してみたら体がガクガク震えてきた。
ベルが二人いることに今更ながらに気付いた。
「ドッペルゲンガーですと?」
分身の術でもいいが、あのベルならやりかねん。前にも似たようなことされたから、全然驚かないぞ。
>285
もっていた霊剣である叢雲剣が砕け散り、二つある霊剣という矛盾がなくなった。
華山さんの言った通りここに霊具は三つ揃っていて、この時点で霊宝は得られる。
彼女は悪い奴じゃないことはわかっているし、望んだ世界はいままで通りの日常と俺と一致している。
ならばこの場で俺の意志を彼女に託してもいいのだが、ベルが反論を示した。
>「大体人と共存できるかって言う基準も傲慢じゃない?」
>「流石私、なんか良い事言うわ!でも実際はヌーな世界にしちゃいたいだけでしょ!」
>「流石私!良くぞ見破ったり!」
二人は双子のように息ピッタリで それはテメェだろとツッコまれてもおかしくない台詞を吐きやがる。
冗談を前座に霊宝を持つ資格、この場にいる者の中で真に霊宝を得られる存在は俺以外にいないという考察。
そして、俺は華山さんを奪いに来たという……はっ?
「おい、なに言っ」
浮気者!と殴られる自分。そりゃねぇぜ先生よぉ。
殴られて赤くなった頬を撫でていると背を押される。対面にいるのは華山理利。
>「さあ、このリリはリリであって霊鏡なのよ。手に入れて叢雲剣で私の首チョッパすればOK!」
手にもっている霊玉が対面にいる霊鏡に反応したかのように光を増していく。
「首チョンパって表現も古いな。新しい世界にベルがいるとはいえ……非常に耐えがたいな」
後は火が必要らしいが、いまこの場にある火となると……なんだろう?
その時、天保の背後で大爆発が起こり、火の手が上がった
その時、天保の背後で大爆発が起こり、火の手が上がった
「ククク---ハハハハハハハ!!!」
黒鋭の安い挑発を見て、サナトスは声を高らかにあげ笑う。
「やはりだ!!!---やはりそうだったか!!!
神殺しの異名はたった2100年も眠れば忘れ去られるのか!!!
---すばらしい!実にすばらしい---何も知らない狗が私を挑発してくるではないか!!!
邪神を狩り、何千万もの魔物の軍勢を薙ぎ払ってきたこの私にだ!!!
クハハハハハハハハアハハハハハハハ!!!」
己の存在が完全に過去のものになり、忘れ去られたことを確認し狂喜乱舞するサナトス。
しかし、それの様子とは反対に、氷のような冷たい殺気が徐々に増す。
「クゥ---ククククク----さぁ走狗!殺し合いを始めようじゃないか!!!
豚のごとく地を這いずり、私を殺して見せろ!」
そう黒鋭に言った瞬間、腰につけてあるギルドの剣を黒鍵のごとく投げつける。
いや---黒鋭には剣が勝手に飛んできたように見えただろう。
何故なら剣を投げた動作は0秒で終らせていたからだ。
サナトスは時と空間を操るレギオン、いくら不完全な召還とはいえ
数秒間(サナトスが感じる時間の意味で)だけ時を止められることは容易いことだった。
「---」
何故かサナトスはジョジョの目の前にいた。
時間操作の能力とフロウドの脚でなら黒鋭の後ろに回りこめたはずなのに
サナトスはジョジョを物珍しそうな顔で見つめる。
「---なるほど---面白い存在だ---」
ジョジョの顔を乱暴に掴み、至近距離で観察する。
「まだ起きていないのか---まぁそれも一興か---」
そう吐き捨て、また乱暴につかんだ手を離す。
「時の世界へようこそ---大馬鹿野郎」
振り向きざまにそう言って黒鋭のほうへ振り返る。
「こう見えて好奇心には従う主義なんでね
あぁ---多分これっきりだ---ここから殺し合いを始めるよ」
サナトスと触れたことにより、ゼットンに新たな能力が目覚めた。
それは、ゴミを木に変える能力だ。
どうやらこの場にいる高位の存在については、ベルもよくわかっていないようだ。
「水蛭子?あの不具の神が敖遊の祭祀を開いているの?」
だが、世界法則に書き込むための霊剣とアルラウネを保有しているベルが、「よくわからない」と発言するのはおかしい。
水蛭子ではないのだろうか。
理利はベルの言葉にしばし考え込んだ。そして、ぽつりと呟く。
「 ・・・ふうん。そういうこと。
そういえば、彼らも葦の舟で流されたのよね」
>ベルさん
>「でもリリには協力できないわね。」
そう言って二人のベルは口々にその理由を述べた。
理利は最後まで黙って耳を傾けた。口を挟む隙が無かったからだ。
>「って訳だから、力を貸すのはリリの方なんじゃない?」
殴られた天保を気の毒そうに眺めていた理利は、肩に手を置かれて苦笑する。
「やあねベル。精霊を使役し自然の理を都合よくねじ曲げる。そんな魔法使いが傲慢でない筈ないじゃない。
ま、傲慢な私としては、霊宝所持の資格が『輪廻の環の中にいること』という説には頷けないわね。
邪悪とはいえ、ノスフェラトゥのような地の精霊まで輪廻の因果に含むつもり?」
実際に魔法を行使する身としては、今の説明ではいささか弱い。
「まあ時間も惜しいし、今は資格についてあれこれ議論する気は無いわ。
私の目的は霊宝を得ることではなく、霊宝を使って事態を収拾することだし。
これさえ外さなければ、誰が霊宝を得るかということなど大した問題ではないわ」
そう、本当に大した問題ではない。本来理利は、表の儀式に関わる気が無かったのだから。
霊宝を得る資格が無いというのにも心当たりがあった。
もっともそれは、ベルのような理由ではない。一般人だったベルと理利とでは条件が異なる。
考えられるのは、もっと別の理由だ。
(ま、二兎追うものは・・・って言うしね)
>天保君
「で。天保君はどうやって私を手に入れるの?」
いい終わるや否や、天保の背後で突然爆発が起こった。
とっさにシールドで防いだものの、爆発の不自然さに眉を顰める。
炎は爆発が収まっても消えること無く、なおも激しく燃え上がっていた。
あっけに取られていた理利が、我に返った途端クスクスと笑いはじめる。
「炎はこれで足りそうだけど・・・どうやら我が君は、なかなかに嫉妬深いようね」
どうするの?と悪戯っぽい目で天保とベルを見上げる。
すっかり事態を傍観する気のようだ。
>「首チョンパって表現も古いな。新しい世界にベルがいるとはいえ……非常に耐えがたいな」
火をどうしようかと霊体のベルと肉体のベルが頭を捻らしていると、背後で天保がポツリと呟く。
それに反応して二人はまったく同じタイミングで振り返り指を突きつける。
肉「やーねー。さくっと斬っちゃって斬っちゃって!」
霊「片方斬ってももう片方残っているからいいじゃない」
肉「ちなみに斬るのは私のほうよ。」
そういいながらしゃがんで頭頂部から生えるアルラウネを指差している。
霊「そうそう、何の為に私が二人に分かれたと思っているのよ。この為じゃない。」
肉「今頃現世では巨木アルラウネがヌーな世界で大活躍できるウルトラスーパーグレートな私のナイスバデーを
作っている最中よ!」
霊「斬られた瞬間、全てのアルラウネは枯れるけど、その時に切り離して私はその肉体に滑り込みセーフよ!」
肉・霊「「孔明先生もびっくりの神算鬼謀を思い知りなさい!にゃはははは!」」
胸を張って大笑いするベルだが、どこまで考えていたことなのかは定かではない。
>邪悪とはいえ、ノスフェラトゥのような地の精霊まで輪廻の因果に含むつもり?」
リリの言葉にもすばやく反応する。
肉「アレは地の精霊って言うか邪念じゃない。言ってみれば想念の塊ね。
想念の原理から言えば善悪の基準なんてないし、元は人からはせられて輪廻のぉ〜・・・おろ?」
霊「がんばれ私!なんだか難しいこと言っていてかっこいいんだから!」
流れるように話していたが所詮はベル。途中でこんがらかり、霊体ベルの声援もむなしく頭から煙を吐くばかりだった。
そんな二人に助け舟を出してくれたのはリリだった。
時間も惜しいということで話を流して進めてくれる。
話をしていると突然巻き起こる爆発。そして渦巻く炎。
霊「うそん!これって三昧真火?」
祭祀に使われる火は、単に火なら何でもいいわけではない。
不純物のない真火と呼ばれる火を生命体の中で育てた三昧真火でなくてはならない。
それが何の脈絡もなく突然出現したのだ。ベルが思わず声を上げてしまうのも無理はない。
肉「・・・なんでだろ?アワジかなんかいるのかな・・・?」
霊・肉「「む〜〜〜・・・」」
二人のベルが首を傾げるが、長くは続かなかった。
霊「まあいいわ、火があるのなら願ったり叶ったりだもんね。それより・・・」
肉「そうね、リリをどうするかよ。」
>「で。天保君はどうやって私を手に入れるの?」 リリのこと一言で事態はまた急転してしまったのだ。
殺して奪うのが常の霊具。
だが、リリであって霊鏡である状態では殺すこともままならない。
肉「男が女を奪うって言ったら・・・そりゃあキッ・・ブベ!」
霊「何言っているのよ!そんなの駄目よ!」
鉄拳で肉体ベルの言葉を遮ったのは霊体ベルだった。
口から血を流しながら訳がわからないような目を向ける肉体ベルに向け言い放つ。
霊「リリがどんな気持ちか忘れたの?今日の夕方ギル・・・ゲハッ!」
肉「アリガト、思い出したわ。でもそれは口に出してはいけない乙女の秘密!」
今度は肉体のベルが鉄拳を持って霊体のベルの台詞を遮った。
ともち口から血を流しながら、頭を寄せ合ってごにょごにょと相談。
しばらくして話がまとまったのか、揃って振り向きリリの両側に回る。
肉「日本の故事曰く!一人の子供に名乗り出た二人の母!」
霊「時の名奉行大岡一膳の守は!二人の母に子供の左右の手をそれぞれ握らせ引っ張らせた!」
肉「そして見事子供は真っ二つ!」
霊「二人の母はそれぞれ半分ずつ子供を得て一件落着!」
肉・霊「「というわけだから、それに習ってリリをリリと鏡&所有権に分離するのよー!」」
間違った日本文化を元に肉体ベルがリリの右腕を、霊体ベルがリリの左腕を掴んでギリギリと引っ張り始めた。
ベル達は、理利が打ち明けた失恋話を覚えていてくれたようだ。
霊体でも血が出るのね、と変なところで感心する。
理利は三昧眞火の様子を伺いつつも、隣にいる天保に小声で話しかける。
「あなたも苦労するわね。ベルに付き合っていたら、命が幾つあっても足りないかも。
・・・ところで前々から気になっていたんだけど、どうして天保君はベルを『先生』って呼ぶの?」
ベル達の話が纏まったようだ。くるりと振り向いた彼女たちの目はキラキラしていた。
あまりの不吉さに思わず後ずさりするが、回り込まれて両腕をとられてしまった。
書庫で
ベルは嬉々として「大岡裁き」を語る。
どこからどう突っ込めばいいのだろう。
大岡越前守忠相の名前はおろか、話の内容も完全に間違っている。
―――― いや、それ以前にこの体勢でそんな逸話を出すということは・・・。
「ベル、あなたまさか・・・」
>「「というわけだから、それに習ってリリをリリと鏡&所有権に分離するのよー!」」
「ええ?ちょ・・・ちょっと待・・・痛っ!」
言うなり、ベルは理利の両腕を思い切り引っ張り始めた。
「ベルやめて、や・・・そんなの無理・・・痛っ!!」
外見からは想像もつかないほどの強い力で、思い切り両腕を引っ張られる。
ベル達は矛盾している。
彼女の説なら、理利は『霊鏡と同化しているから霊宝所有者の資格がない』ことになっている。
逆にいえば、もし今の方法で霊鏡と分離できるのなら、理利の霊宝所有者としての資格も復活するのだ。
となれば、既に二つ霊具を揃えている理利が、一つしか持たない天保に霊宝を譲る理由がどこにも無い。
みしみしと骨が軋む音がする。本気で二つに裂くつもりなのだろうか。
確かに今の理利ならそうなっても死ねない。だが、痛みを感じない訳ではないのだ。
腕がもがれそうな激痛に声にならない悲鳴をあげた途端、ベル達の足元から炎が吹き上がった。
ベル達の手が外れた途端、理利はその場にへたり込んだ。
荒く肩で息をつきながら、涙で霞む目でベルを見上げる。すぐ傍で燃え上がる火が理利の肌を焼くことは無い。
「どうしてこんな荒っぽい事を?さっきの警告を見て何も感じなかったの?」
天保君来て!早くしないとベルが燃え尽きちゃうわ!」
痛みは遮断してあるのだろうか?
だが、それでも人が生きながら焼かれる姿を見るのは耐えがたい苦痛だ。
一刻も早く終わらせたい理利は天保を手招きする。
三昧眞火は水で消せない炎だが、陰陽五行説では木と火は五行相生。
ベルの霊体まで焼かれているが・・・まあ十分想定内の事態だろう。
歩み寄ってきた天保の背後に理利は回りこむ。
霊鏡を渡すことは無理だが、体内に理利が使用可能な『触媒』を持つ天保になら力を貸せる。
ランドマークタワーで天保を蘇生させた血は、理利のものなのだから。
「ほんの短い間なら、私はあなたとひとつになれるの」
理利は天保の背中に自らの左手を押し当てた。軽く押しただけで、理利の手は天保の身体に入り込んでいく。
痛みはないが、ちょっと不愉快な感触が伴う。だがそれはお互い様だ。
叢雲剣の刀身が光を増した。
――――『同化』を終えても、神ならざる者の炎は天保を焼かなかった。ホッと安堵の息をついた。
天保は、自分の身に霊鏡の力が流れ込んでいることを感じているだろうか?
これで敖遊の儀の霊具は、全て天保の手に揃ったことになる。
「天保君、貧乏くじを引く覚悟はいい?」
>ギコ
>「礼司!またスパイダーマン作戦をするか?」
「スパイダーマン作戦?なにそれ?」
と、あたしはギコに聞いた。
するとギコと、それにレイジもあたしを見て、跳び上がって驚いた。レイジなんか鞭の剣であたしを斬ろうとする。
「あたしよあたし。リザードマンに取り憑いたのよ。
だって、あたしってさ、実は戦闘能力はそんなに無いのよね。
テレポートと火吹きと肉体憑依支配の三つぐらいしか戦いの役に立つのないからねー。
とにかくこの神殿の中に入れればいいんでしょ。まかせなさい」
あたしは鱗に覆われた太い腕でレイジとギコをがっしりと持った。
「飛ぶわよー」
この龍は水魔系であるらしく翼は無い。無いけど背中から翼みたいなヒレが生えている。
あたしはヒレをはばたかせた。あたしたちは飛んだ。
龍の体は逞しくひとっ飛びで巨大な相模国造神殿の屋上にまで着いた。
自衛隊のヘリが銃撃するのをひらりと避け、あたしは大穴吹き抜けの天井から内部へ降りた。
神殿の中からは龍人兵達がヘリを攻撃する水流を吐いている。それにも当たらないようにあたしはひらりひらりと避ける。
ドン!
神殿内に着地!
「あ!」
ゼフィール!あの邪悪少年がいる!
>ゼフィールは巻物を道尊に返した。
>「僕の霊力込めた経文で直ちに三種の霊具を新造せよ。出来上がり次第、相模国造の処へ行く。急げ」
「ははっ!直ちに!万事は全て世蛭様の御為に集束しております。
森羅万象の主が傲慢怠惰な大いなる存在から世蛭様へと移りつつある証にございます」
道尊は返された輝く巻物を捧げ持ち頭を垂れて、ゼフィールを礼賛した。
「そう思うだろう。豚殿」
道尊はムアコックに残忍に微笑んだ。
>ムアコック
>「偉大なるゼフィール様、どうか私に何か武器をお与えくださ・・・・おお!
>「おいおい!ロゼではないか!(アッシュ)
>お前も神将になりにきたのか?歓迎するがな!」
「豚殿、世蛭様に代りこの道尊が豚殿に最勝なる武器を与えよう。
これは豚殿ならではのものぞ。天与である!喜んで受けるがいい」
道尊は経文を勢いよく広げた。巻物がほどけて流れ落ちる。
「時間が無い。陰陽師気取りの小娘華山が愚行をせぬうちにな」
ゼットン、黒鋭、竜兵どもに守られて、邪魔される事なく道尊は高らかに呪を唱えた。
「豚よりも苗床に優れたるものは他に無い。
豚よ、偽霊具の依り代となれ!ここで霊具に転生するのが御前の定めだ!
豚の心臓よ、霊玉となれ!豚の両の目玉よ、合わさりて霊鏡となれ!豚の脊髄よ、霊剣となれ!
命を世蛭様の御為に差し出せるとは、はははははは羨ましいぞ!豚殿!これ以上の忠義は無い!」
道尊はムアコックの身体を犠牲に偽霊具形成の呪式を行った。
ムアコックの体内から皮膚を突き破り悪臭を放つ黒い炎が出始めた。
>アッシュ
「ミミヨヨヨヨン(訳・オレの一兆度火炎球を受け止めるとは小僧!オマエはバニラかザンボラーか!?)
<訳者注・ウルトラマン第19話登場、赤色火焔怪獣バニラ。第32話登場、灼熱怪獣ザンボラーのこと>
ウォンヌ!(訳・ならば吸収できない量の火炎をご馳走してやろう!どこまで耐えられかな?だが!
オレの敵は子供では役不足!」
>ジョジョ
>ゼットンはジョジョ達と戦う気だ。
>「じゃ、私達とやりますか?」
>その言葉と同時に、ゼットンの前にウルトラマンのスタンドが現れ、ゼットンの顔に当たる部分を殴った。
「ブォン!(訳・倍返し!)」
ゼットンは両手を挙げた。
次の瞬間ウルトラマンスタンドの背後にテレポーテーションした。
ウルトラマンを張り倒すゼットン。マウントポジションをあっさり取りウルトラマンに馬乗りになった。
<訳者注・ウルトラマン最終回でゼットンは同様の攻撃をする。格闘技能力は高い>
<訳者注・円谷プロにテレビ東京から“うえきの法則” のアイデア使用不許可の電話が入る。円谷は他局だからだ>
「ブォン!ブォン!ブォン!(訳・無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄!)」
ゼットンが殴る!殴る!殴る!
「ジュワジュワジュワジュワーっ!!」
不意打ち気味に放ったスタンドの拳がゼットンの顔に当たる。
もし、スタンドが見えなかったのだとしたら、突然の衝撃にゼットンは酷く驚くことだろう。
だが、ジョジョはゼットンの表情等を見ることなく、スタンドの拳によるラッシュ攻撃をゼットンの顔、腹部、両腕等、ゼットンの上半身を中心に叩き込む。
「ジュワッチャーっ!」
スタンドラッシュの終りを飾る一撃は、ゼットンの脳天に振り下ろしたハンマーパンチ。
ゼットンは両腕でハンマーパンチを受け止めようとするが、それよりも早くにジョジョのスタンドは、ゼットンの脳天に叩き込め。
ハンマーパンチを喰らったゼットンは地面の方に吹き飛んでいった。
>「---なるほど---面白い存在だ---」
何時の間にかアマナがジョジョの目の前に立っていた。
気付いたらアマナが目の前に居たのだ。
>「まだ起きていないのか---まぁそれも一興か---」
アマナはジョジョの顔を乱暴に掴むと、ジョジョの内部を確かめるように観察する。
人からじろじろと見られるのは、ジョジョにとっても良い気分ではない。
アマナはジョジョの顔をこれまた乱暴に放すと、意味深なことを言った。
>「時の世界へようこそ---大馬鹿野郎」
アマナは何がしたかったのか、ジョジョには分からない。
だが、ジョジョの奥底に眠っている何かを感じとったのは確かだろう。
>「こう見えて好奇心には従う主義なんでね
> あぁ---多分これっきりだ---ここから殺し合いを始めるよ」
「そうですよぉ、アマナさ〜ん。
好奇心は猫をも殺すって言いますし、やるべきことがある内は程々にしといた方が良いと思いますよぉ」
上から相手を見下ろしているアマナに、ジョジョは忠告のような感じで言った。
下の方に吹き飛んでいったゼットンと戦う為、ジョジョはスタンドにおんぶをして貰おうとする。
だが、ゼットンはスタンドの後ろに空間転移をし、スタンドを張り倒すと、スタンドのマウントポジションを取る。
ゼットンはスタンドが見えていたのだ。
>「ブォン!ブォン!ブォン!(訳・無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄!)」
ゼットンは先程のお返しと言わんばかりに、スタンドに向かって殴り続ける。
これはかなりの衝撃だ。
だが、ゼットンはスタンドを殴ることに夢中で、本体のことは気にも止めていないだろう。
ジョジョは襲い掛る痛みに耐えながら、ズボンのポケットに入れてあった怪獣退治用の拳銃を取り出す。
スタンドを殴り続けるゼットンの後方に回り、ゼットンの背中に銃口を突き付けて、発砲した。
300 :
名無しになりきれ:2006/11/16(木) 13:13:09
吸血鬼関係ねえぞウルトラマン
>>300 過去ログ三回音読してから出なおしてこいカス
>292>293
>「で。天保君はどうやって私を手に入れるの?」
どーやってと言われましても……困っちゃうね。そんな結婚するみたいに言われたらどっかのお嬢様がまた勘違いしてしまう。
殺して奪うわけにもいかないし、まして本当に肉体的にも精神的にもつながりを持ってしまったらもう切腹するしかねぇ。
火がないかと考えていたときに、なんの前触れもなく背後で爆発が起こった。仕組まれているとしか思えないほどにタイミングがいい。
ベルによるとこの火は普通のものではなく特殊な火でとても神秘的で尊いもののように思えた。
二人に分離したベルがそれぞれどつき合っているのは見ていて面白い。口から血が出ていようがそれを微笑ましく見守ってやる。
>294
>「あなたも苦労するわね。ベルに付き合っていたら、命が幾つあっても足りないかも。
「命の危険以上になにかと面白いからね。自分でもかなりのギャンブラーだとは思っているよ」
本当は側にいたいからなんて恥かしくて言えやしないよ!
> ・・・ところで前々から気になっていたんだけど、どうして天保君はベルを『先生』って呼ぶの?」
「…なんといいますか、俺の勘違いと不幸が重なったと答えておくよ。詳細知りたいなら長くなるから後でね」
>「ベルやめて、や・・・そんなの無理・・・痛っ!!」
それぞれ左右の腕を力の限り引っ張り始める。霊鏡と分離できるわけがなく、痛さで顔をしかめるのもおかまいなし。
こりゃさすがに止めないと、華山さんまで二人に分離してしまう。
進んでいた足が途中で止まる。二人のベルから炎が発生し、激しく燃え上がる。
>「どうしてこんな荒っぽい事を?さっきの警告を見て何も感じなかったの?」
> 天保君来て!早くしないとベルが燃え尽きちゃうわ!」
「あ…あわわわわわ。誰か消火器もってこい!」
ブレザーを脱いで何度も火の部分にバタつかせて消火を試みる。
>「ほんの短い間なら、私はあなたとひとつになれるの」
いつの間にか背後に立たれて囁かれる。全身が焼けるような熱さと自分ではない何かに侵入される違和感を感じた。
>「天保君、貧乏くじを引く覚悟はいい?」
「貧乏くじなら生まれたときから引いてるぜ。いつでもどーぞ」
三つの霊具が揃いアホみたいな力の流動を感じ、光が全身を包んでゆく。
ベルから拝借している叢雲剣は手に、霊玉と霊鏡は体内と同化した。
剣を振りかざすと辺りにある炎は蒼くなり龍のように動いて剣を覆った。
「よっしゃ、とりあえず言われた通り斬るから首出せや」
肉体のほうのベルへと向き合い、首めがけて剣を大きく振りかぶる。剣は縦に蒼い軌跡を描き、首を切断した。
>「どうしてこんな荒っぽい事を?さっきの警告を見て何も感じなかったの?」
炎に包まれた二人のベルにリリが叫ぶ。
だがベルに「どうして?」という問いは愚問といえるだろう。
理由などないのだから。
肉「なははは!元々焼かれるために存在しているのだから火達磨になっても無問題!」
霊「むしろ炎の女、ベル・T・カーマンにはお似合いよ!」
ベルは炎に包まれながらも平然と言ってのけた。
何の苦痛も感じていないようだ。
霊「木は火を生み、火は土を生む。木行属性の私には願ったりかなたったりよ!ウルトラスーパーグレートな肉体に戻るのに都合がいいわ!」
肉「ちょっと!何であんたまで燃えているのよ!木行属性は私で燃えるのは私だけでしょ!」
霊「あああ!!!そうだった!」
自分に突っ込まれて事態の重大さに気付いて心底驚いた表情をするベル。
アルラウネと融合してこの場まで来た肉体ベルは木行属性であるが、叢雲剣の導きに依ってこの場に来た霊体ベルは水行属性。
それ以前に三昧真火によって焼かれたのであれば、土を生むどころか灰すら残さず燃え尽きるのみ。
霊「だーーー!どうしよ!どうしよ!」
肉「慌てないで私!燃え尽きる前に何とかするのよ!」
天保がブレザーをばたつかせて消化を試みるが一向に消える気配はない。
霊「はっ!ナイスよヤス!ここには極上の消火器があったんだっけ!神よ!我に血の洗礼をうけさせよ!」
霊体のベルが舞うような動作をすると、その周囲に八本の水柱が立つ。
八本の水柱は回転しながらその半径を縮め、やがては霊体ベルを包みその内部へと消えていった。
水柱が消えた後、霊体ベルを焼いていた三昧真火も消えていた。
霊「ふう、危なかった〜。さすがは相模国造。上等な御神酒だわ。」
肉「なるほど、水角を歪めた狂水式八卦炉で三昧進化を封じたのね。だてに水行属性じゃないわねえ!」
霊「消せたわけではないけどね、とりあえずこっちは準備OKよ!」
>「よっしゃ、とりあえず言われた通り斬るから首出せや」
ようやく事態が収集したのを機に、天保が叢雲剣を手に声をかける。
肉「ええ!横合いから叩きつけるのは今よ!」
霊「よーし、私も行くわ!ヤス!ヌーな世界で大暴れよ!さようなら日常!こんにちわヌーな世界!」
燃え盛る肉体のベルは首を差し出し、霊体のベルはこの場から消えていった。
そして青い煌きの軌跡を残し叢雲剣は振るわれ、ベルの首が宙を飛ぶ。
分離した首と胴体はそれぞれ眩い光を放ち燃え上がる。
その瞬間、上一中を埋め尽くす葦とベルの家に聳える巨樹アルラウネが枯れ落ち、眩い光を放ち燃え上がる。
熱も、他のものを焼く事もない炎を立ち上げて。
相模国造の館に立つ御柱が砕け、御柱に刻まれていた(人∀・)は全ての魔力を解き放った。
現行の世界法則の消滅、そして新たなる世界の創造。
祭壇である上一中とそれに根を這わせ融合したベル宅以外が消滅していく。
その様を見ていたものにはまるで(人∀・)が降ってきたように見えただろう。
>アッシュ
>ムアコックへの目配せの後、乱入したボクへ襲い掛かる恐竜人間どもを、片っ端から「メギド」で串刺しにした。
邪悪な陰陽師道尊の擬似霊具創造の儀式を守る為、ゼットンがジョジョと死闘を展開し、黒鋭がアマナと激突するのを、
ムアコックはゼフィールに服従の拝跪を取りながら見た。
アッシュの視線の意味も理解した。理解したが口から出た言葉は別であった。
「ゼフィール様!臣ムアコックに武器をお与えくだされ!五月蝿い餓鬼(龍人兵と戦うアッシュを指さし)の首を
御前にお捧げいたします!」
口から出た言葉と内心は別であった。
ムアコックは拝跪しながら膝を擦りゼフィールに近寄った。だが武器など求めるつもりはない。
見たところゼフィールは華奢な人間体である。強力な魔力を内包しているが脆弱な肉の体である。
なぜこれほどゼフィールが肉の体に固執するのか腑に落ちない。奴は肉欲の虜なのかもしれない。
ムアコックのモローの脳は冷静にゼフィールを分析していた。
モート神から授与された悪魔の体は失われたが、ペットショップで店員を殺すのをネコ缶の投擲でした程である。
そもそもムアコックは怪力なのだ。
ゼフィールを首絞め殺す。
それが叶わなくても、あのロゼ(アッシュ)ならば助太刀するだろう。勝機はこちらにある。
モロー脳はそう算段していた。
『俺は誰かの下に使われるのは嫌だぶひ!モローにもノスフェラトゥにもモートにも、ゼフィールにも従わぬ!
ぶひひひひ!』
>龍人ラスティーリア、ギコ、礼司
>神殿内に着地!
『リア(アッシュのつけた礼司の偽名)まで来たか』
ムアコックはゼフィールに襲いかかるべく両足に力を込めた。
ゼフィールにおどりかかろうとしたその時!
>道尊
>「豚よ、偽霊具の依り代となれ!ここで霊具に転生するのが御前の定めだ!」
「ぐあ!」
ムアコックの目が突如として燃え上がった。
「ぴぎー!」
胸筋を引き裂き、体内から黒色の火炎が爆発し炎上した。両耳からも炎が轟々と飛び散る。
「脳が!ひいいい!道尊!貴様!ひいいいいいいいいいいいいい!」
ムアコックは火達磨になった。 暗黒の炎がムアコックを舐め尽す。
「ゼ、ゼフィール様!お、お助けくださいぃぃ!」
心の底からムアコックはゼフィールに縋った。
ムアコックの目玉が溶けて床に落ち、合わさって赤く光る球体になった。
胸が裂け、中から同じく赤色に輝く円盤が迫り出し、床に落ちた。
炎に焼かれ崩れていくムアコックの背中を突き破り、真っ赤に発光する剣が屹立して残った。
霊玉、霊鏡、霊剣。三種の霊具が生成された。
道尊はゼフィールに捧げた。
>ウルトラマンジョジョ
>スタンドを殴り続けるゼットンの後方に回り、ゼットンの背中に銃口を突き付けて、発砲した。
「ミヨヨ!?(訳・ペ、ペンシル無重力弾!?)」
ゼットンの重い体が浮き上がった。ぐんぐん上昇していく。
「グミョ!(訳・ぐみょ!)
相模国造神殿を飛び越えてゼットンは宙に浮き、爆発四散した。
えー?これで倒されるのかよ!と視聴者の子供達全員がフリーズするくらい呆気ない最期であった。
だがゼットンは道尊に擬似霊具創造をやり遂げさせたのである。猛攻を凌いだ。
ゼフィールは三つの霊具を得た。
ベルの発動は干渉され、そんなに上手くいかないのであった。
まだ霊宝の勝者は確定してない!
そう星になったゼットンは思った。
やはり、ゼットンはジョジョに気付いていなかったようだ。
ゼットンはテレポートで回避することもなく、背中にジョジョの弾丸を受ける。
ゼットンの体は宙に浮き、どんどん上昇する。
屋敷よりも少しぐらい上の方まで浮き上がると、ゼットンの体は爆発し、粉々に砕け散った。
「ふぅ…流石は我が科特隊の科学班。
毎度のことながら良い仕事をしてますねぇ〜
こんな時はどうやってこの喜びを表すんでしたっけ…」
ジョジョは腕を組んで考え込む。
「あっ、思い出しました。
我が科特隊の兵器は宇宙一ィィィ!倒せぬ奴など存在しないイイィ!!」
ジョジョは体全体と言葉を使い、勝利の喜びを表現したのだった。
ジョジョの次の目標は、宇宙の神を抹殺しようとするゼフィール。
ジョジョはスタンドにおんぶをしてもらうと、木の上から降りていった。
「祝着至極!」
ゼフィールは道尊の進貢する三つの偽霊具を見て声をあげた。
まず右手で霊剣を受け取ると、左に手にしていた金の鞭を剣身に巻きつかせた。剣と鞭が一体化する。
その偉容はヘルメス神の神杖カードゥーケウスの様だ。
ゼフィールは剣を道尊の捧げる霊玉に向けた。鞭先端の蛇頭が口を開き、くわえこんだ。
上下の牙に挟まれた霊玉は、蛇の口の中で緋色に輝く。
ゼフィールは左手で霊鏡を持った。鏡に映る自分をゼフィールは見つめ笑った。
「道尊!でかした!
汝の陰陽術は完璧だよ。これは寸分たがわぬ霊具だ!
ムアコックよ、汝の忠義、偽りを含むけど僕は褒めてとらすとも。豚ほど役に立つ魔性生物はいないもの!
ゼットン!守護大儀!ジョジョよ、無駄な戦い、御苦労様!
霊具三種はここに相成った。黒鋭!アマナもなど捨て置け!水無月にも無用!
アッシュ、龍兵を如何ほど斬り捨てようと無駄な事だ!
これより……」
>ベル
>その瞬間、上一中を埋め尽くす葦とベルの家に聳える巨樹アルラウネが枯れ落ち、眩い光を放ち燃え上がる。
>熱も、他のものを焼く事もない炎を立ち上げて。
「せっかちな娘だ」
ゼフィールは微笑んだ。
「目障りなアルラウネの消失まででストップだ!止まれ!さがむのくにのみやつこよ!
真実の霊具所有者は我である!鎮まれ!」
ゼフィールの霊玉と霊鏡が閃光を放つ。
「ふふ。ベル・カーマンよ天保よ、霊宝争奪戦はこれからだ。同種の霊具を僕も手にいれたのだからね!
きみたちは急ぎ過ぎだよ。僕にだって都合があるんだから。
これより地下で惰眠を貪る相模国造を叩き起こしに行く!進軍!皆の者、僕に続け!すぐ行くぞリリ!」
ゼフィールの声に龍人兵達が応じて咆哮する。
「ああ、そうだ。礼司。君も来るかい?
神将ラスティーリア、おまえの元御主人様は僕に従ってくれるかな?どう思う?
また抱いてあげるよ礼司。アッシュも混じるかい?」
【ドラきち】追記
8でも、チームモンスターとしてスカウトできる。
あれほど多芸だった5の頃と違い、通常攻撃しかできなくなっている。
能力があまりパッとしないところだけ、5のドラきちっぽさを受け継いでいる。
だが、他のドラキー達と一緒にチームに入れることにより、コイツは真価を発揮する。
ドラキー三匹が合体してグレートドラキーことグレドラになり、多分ドラキー三匹分以上の活躍をするだろう。
スライムに続き、とうとうドラキーまで合体する時代が来たのだ。
混戦の中はぐれてしまったのだろう、アリアは半べそをかきながらふかわを探し回っていた。
「ふかわ当主ー!どこにいるですかー!」
いつの間に仲間にしたのか、ちゃっかりドラキーの背に乗っている。
もしかしたら先に行ったのかもしれない。
そう考えたアリアはドラキーをせっつき、相模国造屋敷上部の大穴までたどり着く。
ここから内部に入り込もうと、屋敷内にそびえる大木の上に飛び降りようとした時だった。
突然青白い炎を上げて、巨大な木が燃え始める。
「きゃあ――――!火が?!アリア達まで燃えちゃうです燃えちゃうです燃えちゃうですぅぅぅぅぅぅ!!!・・・?」
火なのに、なんだかあんまり熱くない気が???
アリアは首を傾げながらも、これ幸いとばかりにドラキーごと内部に入り込んでいった。
屋敷内部は混戦状態だった。
そんな中、一人霊鏡を見つめてにんまりと笑う美少年。
(こ、こいつナルシストですぅ!!)
アリアは勝手に決めつけた。そして気づく。
「わかった!こいつがマスターの話していたえろまじんなのですぅ!――――はっ!」
>神将ラスティーリア、おまえの元御主人様は僕に従ってくれるかな?どう思う?
>また抱いてあげるよ礼司。アッシュも混じるかい?」
「ラスティーリア!!レイジ!惑わされてはだめなのですぅ!」
ど―――――――――――――――――んっっっ!
アリアはラスティーリアが操る竜人兵の頭部にドラキーごと突っ込んでいった。
とはいえ、アリア達と竜人兵である今のラスティーリアとではウェイトが全く違う。
あっけなく跳ね返ってしまった。
床に落ちたアリアはむくりと起き上がると、無言のままドレスの埃を払った。
そして何事も無かったかのように移動すると、ゼフィールに向かって指を突きつける。
「マ・・・マスターがこの場にいないからって、えろまじんふぜいがいい気になるなですぅ!
アリアがこの場にいる限り、マスターとラスティーリアとの契約は有効なのですぅ!
ラスティーリアを神将にしたかったら、まずはこのアリアを倒してみせろですぅ!」
アリアは大見得をきった。
だが、ジョジョの背後に隠れているのでは、いささか迫力に欠けるというものだ。
「こらドラきち!どこ行くですか!!」
アリアは逃げ出そうとするドラキーの尻尾をつかんだ。
―名前・ アリア
―性別・ 少女型
―年齢・ アンティークドール
―髪型・ 床に届く程のロングへアに頭巾
―瞳色・ 青
―容姿・ 緑のロングスカートドレス
―学年・ なし
―部活・ なし
―備考・もともとは理利が使役していた初期型実装石。紆余曲折の末、ジョリアルが遺したフランス人形と融合。
既に実装石とは呼べない存在に。
時折理利の触媒としても使われている模様。
ちなみに瞳が青色なのは、理利と契約したため。
(余談。だいぶ迷ったけど、チャッチャ4 >66のネタを拾うことにしました。ま、似てるといっても服装だけかもね)
地面に着地すると同時に、今まで乗っていた木全体が異様な形で燃え上がる。
ジョジョは木の近くに着地したというのに、熱さが伝わってこない。
それに、炎の色がガスバーナーのように青白い。
ジョジョは、次に何が起こるか分からない木の近くから離れ、目的のゼフィールの近くに行く。
>「ああ、そうだ。礼司。君も来るかい?
>神将ラスティーリア、おまえの元御主人様は僕に従ってくれるかな?どう思う?
>また抱いてあげるよ礼司。アッシュも混じるかい?」
「うほ!いい男。やらないか?」
ジョジョは恥ずかしげもなく、ゼフィールに言った。
「今言ったのは冗談ですからね。気にしないでくださいよ」
ジョジョは顔を赤くしながら、ゼフィールに言う。
ジョジョの心の中では、ゼフィールにハッテン場に連れてかれると思い、心臓の鼓動がいつもより速くなっていた。
>「マ・・・マスターがこの場にいないからって、えろまじんふぜいがいい気になるなですぅ!
> アリアがこの場にいる限り、マスターとラスティーリアとの契約は有効なのですぅ!
> ラスティーリアを神将にしたかったら、まずはこのアリアを倒してみせろですぅ!」
後ろから女性の声が聞こえてきた。
ジョジョが後ろを振り向くと、小さな人形のような女の子が。
ジョジョはその女の子の姿を見てびっくりする。
女の子の姿は、まさに翠星石。
長い特徴的な髪の毛に、緑色の姿。
おそらく、実装石が進化して完全体となり、翠星石の形になったのだろう。
翠星石に似た女の子は、ドラゴンクエストのモンスター、ドラキーの尻尾を可愛らしく掴んでいる。
ジョジョの精神は崩壊した。
「うほっ!いい翠星石!
や ら な い か !」
今度は本気で、ジョジョは言った。
アリアの危機に連動するように、アリアの前に銃型の召還器が落ちてきた。
アリアの頭の中に声が響く。
「アリア! それを頭に突きつけて引き金を引け! 『ペルソナ』を使うんだ!」
>>237 病院の窓から飛び降りた亮明は、駐車場に向った。
駐車場には走り屋風の男たちが不安気に五人ほど立っていた。察するに仲間が事故に遇い、ここに運ばれたのだろう。
「あ、あれ?ふかわじゃん!」
目付きの悪い青年が声をかけてきた。
「病院ですからお静かに」
亮明は微笑んだ。微笑みながら小さな声で呪を唱えた。青年達の目が空ろになる。
「バイク、貸してください。非常事態ですのですみません」
見るからに癖のあるチューニングのされたバイクに亮明は跨った。亮明は病院の駐車場から走り去った。
>>258アリア
>「さし出た真似をお許しくださいですぅ」
>癒しの光が布川の身体にむけられた。
駐車場の出口で亮明はブレーキをかけた。ライトに美しい少女が浮かぶ。
亮明にはこれが華山理利の式神であると直ちに解った。
癒しの術をかけてくれるというのだ。アリアを通して亮明はリリの優しさに心打たれたが、姿を消した。
>「ふかわ当主ー!どこにいるですかー!」
アリアの目の前には横倒しになったバイクがあるだけだった。
亮明を捜し廻るアリアを亮明は、病院向かいの四階建てビルの屋上から見下ろしていた。
亮明は屋上に兎舞の術で跳躍し瞬時に移動したのだった。
「巻き添えにしたくはありませんからね。私に強烈な殺意を向ける貴殿は何者ですか?」
アリアが去るのを見届けると亮明は振り向いた。
「道尊の式神か!」
屋上には真っ黒い怪人がいた。
人間の体に鴉の頭。翼は無い。道尊は好んで鳥類の式神を使う。道尊の手の者だ。間違い無い。
「馬鹿な!流派が異なるとはいえ陰陽師衆が上湘南の怪異に関わっているのか!?」
恐るべき推理が働いた。
「まさか、道尊は、敖遊の儀に関与しているのか?」
信じられないがこれが現実だ。
道尊は敖遊の儀に参戦している。しかも敵として。
動揺を堪え亮明は静かに問うた。
「ゼフィールと以前から関係があったのか?」
鴉の怪魔が答える筈も無い。
「しかし妙ですね。貴方程度の出来の式神では、私を倒せはしません。・・・ふむ。任務は足止めですね」
時間稼ぎだ。戦う事自体が道尊の策に嵌る。
「素通りは出来そうもありませんか」
道尊は敖遊の儀で何をするつもりなのか。
亮明は病室からくすねたメモを取り出した。同じく頂戴したボールペンをポケットから出した。
即席の護符として陰陽の秘術で戦うしかない。
この戦いは亮明の勝利に終わった。
だがこの為に道尊の霊具創生を阻止する事が亮明には出来なかった。
>肉「ちょっと!何であんたまで燃えているのよ!木行属性は私で燃えるのは私だけでしょ!」
>霊「あああ!!!そうだった!」
理利は苦虫をかみ殺したような顔になった。
・・・やはりというべきか、ベルは後先考えていなかったらしい。
多少のアクシデントはあったものの、霊体を焼いていた火は何とか押さえ込んだようだ。
ようやく事態が収集したのを機に、天保が叢雲剣を振り上げる。
>「よっしゃ、とりあえず言われた通り斬るから首出せや」
>霊「よーし、私も行くわ!ヤス!ヌーな世界で大暴れよ!さようなら日常!こんにちわヌーな世界!」
ヌーな世界、ねえ。それ以前に首を切られるというのに随分明るくない?
理利はそう思ったが、もちろんそんなことはおくびにも出さない。
天保は一刀の元にベルを切り捨てた。
ベルが姿を消した途端、理利は天保との同化を解いた。
そのまま足元に座り込む。予想以上に消耗しているようだ。
「これで儀式は一通り終わったわね。後は儀式が成就しているかどうかなんだけど・・・」
理利は外の様子を見るために、床に残っている水たまり――――ベル曰く、御神酒――――の水面に手をかざした。
水鏡の映像を一瞥した理利が舌打ちした。
「やはり邪魔が入ったわね。そうそう簡単にコトが運ぶはずがないとは思っていたけれど。
天保君は感じる?ゼフィールは時の観念を捻じ曲げたみたい。・・・ああっ!あれを見て!」
理利は青ざめた顔で悲鳴を上げた。天保の腕を掴んで水鏡の一点を指差す。
「ゼフィール達は偽の霊具を作り出したわ!自分の部下と今日犠牲になった沢山の魂達を使って!
なんて惨いことを。元レテ川の番人の所業とは思えない。
―――― ゼフィールにとって自分以外の存在は、全て踏み台でしかないんだわ。
あんな・・・あんな奴に霊宝を絶対に渡せるものですか!!」
理利は指先が白くなるほど手を握り締めた。振り上げた拳で思い切り水鏡を叩く。
ぐちゃぐちゃに乱れた水面を凝視しながら、なおも話を続ける。
「天保君、これからする話を良く聞いて。
いい?多分ゼフィールは、相模国造の時間を止めてる間にあなたを消す気だわ。
だって今頃霊具を揃えたって無駄なのよ。儀式は既に天保君の手で成就されているんだから。
出遅れたゼフィールは、だからlこんな強引な手に出たの。
あなたを殺し、霊具保有者を自分ひとりにした上で相模国造の時を動かす気だわ。
儀式を成就させたのは天保君ではなく自分だと相模国造に思い込ませることで、成果だけ掠め取る気なんだわ!
でもね。逆にいえば、あなたを殺さない限りゼフィールは霊宝に手が届かないってことなの。
ついでに言うと時空魔法は膨大な魔力を必要とするわ。
相模国造ほどの存在の時間を止め続けるという事は、ゼフィールの力の半分以上を封じたも同然よ。
この状況をどう利用しどう戦うかは、天保君次第よ」
事はそう簡単ではないのは百も承知で、理利はそう言い切った。
だが、波紋が消えた水鏡で更に様子を探ろうとした理利の身に異変が起きた。
床から吹き上がった炎が、まるで生き物のように腕に絡み付いてきたのだ。
理利は僅かに狼狽の色を見せる。
天保を困ったように見上げると、理利は弱弱しい笑みを浮かべた。
「ごめんね。手を貸してあげたかったけど・・・時間切れみたい。
手順を踏んでこの場に存在する以上、私は逆らうことが出来ないの」
線のように細い炎が見る間に床の上を焼いていく。一瞬で理利の足元に魔法陣が浮かび上がった。
見たこともない紋様だが、魔法に精通しているものが見れば召喚用だとわかる筈だ。
魔法陣は発動し、炎が吹き上がった。
「もうじきここも戦場になるわ。でもそれは今じゃない。
ゼフィールが来るまで英気を養うもよし、水鏡を使って皆と連絡を取ったりするのも良し。
ベルを迎えに行くのもアリかもね。天保君なら、水鏡に映った場所へテレポートすることだって可能だろうから」
理利は無理に笑顔を作ると、悪戯っぽくウインクした。
「ベルなら自力で何とかするだろうけど、天保君はあのコにいいトコ見せなきゃね。・・・幸運を祈ってるわ」
最後の言葉をかき消すかのように、理利を包んでいた炎が一際激しく燃え上がった。
そして、それを最後に炎の柱が消滅する。
ベル同様、理利もその場から姿を消した。後に残されたのは、淡く輝く水鏡だけだった。
>304
ムアコックの残骸を眺めるつかさは、特に気にした様子も無い。
彼の肉体から擬似霊具が作り出されたことを知ってか知らずか、冥福を祈るような仕草を見せた。
もちろん、真剣に冥福を祈っていた訳ではないことは明らかである。
生者に敵対する呪わしき不死者にとって、つい先ほどまで生きていた者の冥福を心から祈るなんて、馬鹿げた行為だ。
「呂布の末路を思い出すわ。裏切りを重ね、最後には裏切られて死ぬ辺りが―――ああ、そういえば、これは予定調和だったわね」
『裏切りを重ねる者の末路などは、所詮はその程度なのだろう。
これも運命だが、運命と言うには、こう、浪漫に欠けるな』
悪魔には享楽的な者が多いが、つかさもそんな彼等のように、この状況を楽しんでいる。
ムアコックの残骸を踏みつけて歩を進め、早足で進んでいくゼフィールの足取りを辿り始めた。
>296>307
「テレビ、洗濯機、冷蔵庫。三種の神器は三つ揃ってこそ華よね」
館への進軍を早めるゼフィール達の背を、つかさは冷静に見送っていた。
やれやれ、せっかちはどちらの方だか、とばかりに呆れた素振りを見せている。
「ところで、肉屋さんで売ってる豚肉からでも、霊具って作れるのかしら?
でも、豚肉は美味しいけど、霊具は硬くて食べられそうに無いから、わたしはお肉の方が好きだわ」
とうとうナンセンスな台詞を垂れ流すに至った。
肉体の腐敗は止まっている筈なのに、それ以前に霊体が脳を通さずに直に肉体を操っているにも関わらず、
脳が腐って正常に機能していないかの如く、とりとめもない発言を繰り返している。
表情にも締まりがあるとは言えなかったが、ふっと笑みを浮かべたその表情を見るに、やはり瞳の奥にギラギラしたものを宿している。
「さ、もう少しだけ遊びましょ。今度のアレは、どれだけ長持ちするかしら?」
やはり思考の読めない笑みを浮かべ、またしても魔の軍勢を悪戯にかき乱さんと目論み、ゼフィール達の後を追って駆けていった。
>309>310>312
つかさが進んだ先で、まず目に入ったのは、ゼフィールと彼が率いる怪獣軍団であった。
その後、見覚えのあるアンティークドールと、ドラキー、あと今にも服を脱がんとしている男を見つける。
冷静なつかさでさえ、少々混乱し、危うくジョジョのノリに続いて、余計な事を言うところだった。
だが、ジョジョの欲望の対象がゼフィールではない事を知ると、すぐに落ち着きを取り戻し、いつもどおりの態度に戻った。
深呼吸をして、コホンと咳払いをした。
「CHAOSねえ。どうしてゼフィールは現状で満足できないのかしら?」
ドラキーを捕まえようと躍起になっていたアリアは、盾にしていた金髪人間とふと目が合った。
>「うほっ!いい翠星石!
> や ら な い か !」
アリアはうっすらと顔を赤くしたが、自分が赤面したことに気づいた途端ジョジョのむこうずねを思い切り蹴飛ばした。
「こんなときに金髪人間が何を言ってやがるですかアリアがいい翠星石なのはととととと当然なのですぅ!
ええ、やるともですぅ!そうともですぅ、世界の命運はアリアたちに掛かっているのですぅ!
金髪人間、アッシュ、ギコ、ドラきちも!共にあのえろまじんを倒すですぅ!!」
アリアはビシィ!とゼフィールを指さした。
どうもアリアは、ジョジョの発言の意味を今ひとつ理解できなかったようだ。
当然といえば当然である。
アリアはちらっとジョジョに視線を戻したが、目があった酷くうろたえた。
「べ、別にアリアは誉められたくらいでちっとも喜んでなんかいないです何じっと見てやがるですかえろまじんから注意を逸らすなですぅ!!!」
動揺を隠すように、なおもぺらぺらと喋り始める。
「でも・・・もしお前がどうしてもと望むなら、見事えろまじんを倒した暁には、このアリアの家来にしてやることも?
考えたり考えなかったりしたりするかもなのですぅ♪だからお前もキリキリ闘うですぅ!
・・・・・・金髪人間?アリアの話ちゃんと聞いてやがるですか?」
アリアはジョジョの顔を覗き込み、鼻先で手を左右に振ってみせた。
>深呼吸をして、コホンと咳払いをした。
水無月の姿を見た途端、アリアは何かを期待するように背後の方に目を凝らした。
だが、水無月の背後に実装石の姿がない事に気づき肩を落とした。
そんなアリアの脳裏に突如声が聞こえてきた。
>「アリア! それを頭に突きつけて引き金を引け! 『ペルソナ』を使うんだ!」
「ぺるそなって何なのですぅ?頭に突きつけるって・・・こうなのですか?」
アリアは自分の頭に銃口を押し付けた。
だが引き金というものがどこかよくわからない。アリアは重い銃を抱えて首を傾げるばかりだった。
>「CHAOSねえ。どうしてゼフィールは現状で満足できないのかしら?」
「それは奴が欲深いえろまじんだからなのですぅ!」
反射的に水無月に返答したアリアは、はっと振り向いた。
さっきアリアに念話で語りかけてきた声と水無月の声がよく似ていたからだ。
「これを送ってきたのは水無月ですね?ぺるそなとは何なにですぅ?
も、もし水無月がどーしてもアリアに使い方を説明したいっていうのなら、その・・・聞いてやらなくもないですぅ・・・」
口調はどうあれ、アリアの「教えて欲しいのですぅ」オーラはミエミエだった。
>ゼフィール
>「祝着至極!道尊!でかした!」
「この道尊、お褒めに欣喜に打ち震えます」
道尊は満願の笑みで応えた。
「大願成就の前に小物に煩われるのは無用の事。愚物どもの相手はこの道尊の式神に当たらせましょう」
道尊は懐から千切りになった紙片を一摘まみ取り出すと、息を吹きかけて散らした。
地に落ちると式札は半人半鳥の魔物に変化した。
「鴉鬼神!愚物を足止めするのだ!」
出現した鴉鬼神(低級霊)は、その場にいたゼフィールに敵対する全ての者達の前に立ちはだかった。
ここでジョジョやらゾンビ女やら英国狂女などの珍妙な連中の相手を、大将である主君ゼフィールが務める意味は無い。
霊宝をゼフィールが得れば、ここにいる者全員が死ぬのだから。
鴉鬼神はゼフィールが戯言で調落を仕掛けているラスティーリア、礼司にも容赦無く飛びかかった。
「今のうちですぞ。世蛭様」
百体以上いる鴉鬼神が攻撃を開始した。式神に殿を任せて道尊は先頭に出た。
「相模国造屋敷の間取りはこの道尊の先祖の遺した文献より感得しております。こちらでございます」
「これより地下で惰眠を貪る相模国造を叩き起こしに行く!進軍!(
>>307)」
そうゼフィールは言った。
道尊はその言葉に忠実に従い成就させるのみだ。
相模屋敷の地下へと続く坂を下りながら、道尊は嬉々としていた。
千里眼によって何が深部で起きたのかは感知していた。
華山、ベル・カーマン、天保、悲しいかな子供の浅知恵。霊宝の儀が為し終えたと思っているだろう。
御前等の得たものは霊宝の余光に過ぎない。
例えるならば霊験あらたかな泉の水を汲んだようなもの。なるほど妙なる神水、神秘な力に驚いたであろう。
だが霊宝を得るとは、神水沸く泉そのものを手にすることだ。
ベル・カーマン!霊宝を誠に得たのならば、如何に世蛭様とはいえ発動を巻き戻せはしない。
死して眠る相模国造その者に謁見しなければ霊宝は得られぬぞ。
謁見し相模国造の首を斬る!霊鏡、霊玉が一つとなった霊剣で首を斬り落として始めて敖遊の儀は完了する。
過去に何人か敖遊の儀を経て霊宝の力を得た者がいる。その者達は霊具を揃え願い事を叶えたが、矮小な願望の具現に
終わった。それはどれも今の天保の様に、霊宝本体ではなく霊宝の余光を手にして満足した誤解によるものだ。
相模国造の首を得た者こそが霊宝の所有者である。
首を斬り落とされた相模国造は散華し、当然二度と敖遊の儀は行われはしない。
相模国造の首を得た者はいなかった為に、敖遊の儀は何度も繰り返されてきた。
敖遊の儀は過去に一度も完璧に成就された事は無く、本当の霊宝を得た者も過去に一人もいない。
余光で満足した阿呆ばかりだったのだ。
それ故に敖遊の儀は真価を発揮する事が過去に一度もないまま、不完全に繰り返され現在に至るのだ。
天保がベルの首を斬るのは正しい修法だった。だが斬るべきは相模国造の首なのだ。
これこそが真田流陰陽道のみに伝わる敖遊の儀の真実の秘法。
「亮明ですら知らぬ。くくく。真田流こそ本物の陰陽師だ」
軍勢は坂を降りきった。
天保の姿を見つけた道尊は空中を走った。消滅するリリを見送る天保の背中に蹴りを喰らわせた。天保がふっとぶ。
「不完全な様式しか知らぬ不幸だな!下郎!」
着地した道尊の足元から黒い炎が吹き出す。炎が消えた時、道尊の形相が変わっていた。額からは二本の角が生えていた。
服装も真田流陰陽師の黒い装束に代っていた。
>307
>「ふふ。ベル・カーマンよ天保よ、霊宝争奪戦はこれからだ。同種の霊具を僕も手にいれたのだからね!
>きみたちは急ぎ過ぎだよ。僕にだって都合があるんだから。
>これより地下で惰眠を貪る相模国造を叩き起こしに行く!進軍!皆の者、僕に続け!すぐ行くぞリリ!」
儀式は終わりすべては終わったと思っていた。しかし相模国造の時を強引に止めて邪魔してる奴がいる。
だからまだ霊宝が自分の前に現れず、世界はまだそのままの状態を維持している。
「あの野郎。やりやがったな……?」
>313
>「やはり邪魔が入ったわね。そうそう簡単にコトが運ぶはずがないとは思っていたけれど。
> 天保君は感じる?ゼフィールは時の観念を捻じ曲げたみたい。・・・ああっ!あれを見て!」
水鏡にゼフィールの姿が映る。その身に宿しているのはたくさんの魂が篭った霊具があった。
数多の魂によって構成されたそれにはたくさんの悲しみと苦しみが伝わってくる。
>「ゼフィール達は偽の霊具を作り出したわ!自分の部下と今日犠牲になった沢山の魂達を使って!
> なんて惨いことを。元レテ川の番人の所業とは思えない。
> ―――― ゼフィールにとって自分以外の存在は、全て踏み台でしかないんだわ。
> あんな・・・あんな奴に霊宝を絶対に渡せるものですか!!」
その情景を目にして怒りをあらわにする。拳を作り力の任せに水鏡を殴りつける。
この人がこんなに怒る姿は初めて見る、それだけゼフィールの行なったことは許されざる行動なのだ。
話を続ける華山さん。ゼフィールが霊宝を得るにはまず俺を殺さないければならない。そのために奴はすべてを奪うためにやってくる。
幸いにも相模国造の時間を止めるために膨大な力を削っているので弱体化している。
すべてを説明し儀式で疲れきった華山さんはできる限りの笑みを浮かべてすべてを俺に託すと炎とともに消えていった。
「あんたの怒り、犠牲者の無念。俺が背負って全力であいつを止めてやる。だからいまはゆっくり休みな」
>310
さてと、ゼフィールが来る前にとりあえず保険でもかけとくかね。ゲートを作り、その中に手を伸ばす。
先にいるのは萌え狂っているあの変態の背後。首を鷲掴みすると強引にこちらの空間に
引っ張りだす。
「お楽しみのところ悪いが、力貸してくれや。あの豚太郎をひき肉にすっぞ」
放置していたブレザーを拾い上げて肩に引っ掛ける。
>316
かっこよく決めてこれから敵が来るのを待とうというときに、背中から来る衝撃によってふっ飛ばされる。
>「不完全な様式しか知らぬ不幸だな!下郎!」
不意な攻撃で剣をあやうく離しそうになる。剣をぐっと握りなおし、攻撃してきた者を睨む。
「遅かったじゃねぇかゼフィ……じゃない!誰だてめぇ?!」
>「大願成就の前に小物に煩われるのは無用の事。愚物どもの相手はこの道尊の式神に当たらせましょう」
>出現した鴉鬼神(低級霊)は、その場にいたゼフィールに敵対する全ての者達の前に立ちはだかった。
ゼフィールの取りまきが放ったハルピュイアどもは、羽音もけたたましく屋内を飛び回る。
連中は既に地下へと潜った。相模国造とやらに接触して祭事の最終工程を片づけるつもりだ。
「さて、どうしたもんかな」
三種の霊宝は、ムアコックの肉体を依代にして完成されてしまった。
勝ちを得るには儀式を乗っ取り、自らの手で成就させてしまうことだったけれど――
儀式の内容は、リリを伝ってのおよそさわり程度にしか聞き及んでいない。
先の「潜水」でゼフィールたちのやり取りの断片に触れてはいたが、如何せん情報としては散漫すぎる。
ヤツの口振りでは、リリの思う通りには事が運ばなかった。
詰まる所事態は切迫していて、遅かれ早かれゼフィールは始末しなければならなくて、ところで駒は揃っているのか。
振り返る。レイジ、ラス、水無月、その他見知らぬ顔。
どうやら役者は足りているし、ケリをつけるにはいい加減悪くない頃合だろうに
個人的な事情でボクは攻撃開始をためらった。
結局ノーチラスに連絡を入れ損ねたし、姉貴もアレから姿を消したままだ。
リリはレイジを信用するなと言う。レイジは屋敷へ重役出勤したばかりで様子が分からない。
>『・・・後の話はアリア――ジョリアルのフランス人形から話を聞いて。近くにいるはずだから』
リリの言葉を思い出した。
ボクは辺りを見回して、水無月の足下にまとわりつくフランス二号を発見する。
事前説明を求めようと、
「アリ――」
呼びかけて、止めた。
リリとレイジに認識の相違が生じている以上、リリの側ばかりに意見を求めるのは不公平だと思った。
「ま、いっか、もう。しゃらくせえな」
公平を期すためにも、メキシコ国境の方角はレイジに訊こう。それよりまずは戦争だ。
奈落に続く坂道は、ハルピュイアの群によって塞がれている。
坂道の先、闇の奥は相模国造の眠る霊場らしいが、ここからではゼフィールたちの気配を読み取れない。
まずは連中に追い付かなければ、斬るものも斬れない。
準備運動にハエ叩きをさせるつもりか知らんが、幸いにも殿はカラスの繁殖期ばかりだ。
まだ近くに居たハズの、レイジを呼ぶ。
「レイジ、来いよ! コレもオレらの仕事だ」
大仰なほどの上段構えで坂道に向かって駆け出し、渾身の一撃で斬り込む。
剣を振り切る寸前で、鈍い刃が敵を捉えた。
一打目は叩きつけられた地面から跳ねて、ピッチャーゴロ。
返す刀で振りかぶってニ打目、高めに手を出した。
背骨を折られてくの字に曲がった鳥人間はボクの後ろ、レイジたちのところまで転がる。
先鋒を斬り伏せて、なお敵は怯まない。次々と襲い来る妖魔どもを片っ端からミートした。
肉は裂け、骨はへしゃげ、返り血に染まった視界が晴れる一瞬には、何時しかボクの見慣れた景色が戻っていた。
フライドチキンの材料をまたいで走るうち、踏み出す足が斜度を感じはじめ、とうとう坂に入ったことを知る。
宇宙恐竜のお陰で、しばらくは底なしの体力で勝負できる。雑魚相手に問題など何もない。この分じゃ終いには琵琶湖越えも狙えそうだ。
切り込み隊長のバックアップは、続く「お仲間」が自然と弾幕で埋めてくれる。ボクは躊躇なしに敵中へ突撃する。
>リザードマンラスティーリア
>「あたしよあたし。リザードマンに取り憑いたのよ」
「ラ。ラスティーリア!???」
おどろいた……
横浜ランドマークタワーでやったみたいに、ギコの提案のスパイダーマン作戦をしようと上を見上げていたら、
後からズシンズシンと足音が近づいてくる。ふりむくと大きな龍人兵が立っていた。
師子王ノ鞭剣を打ち込もうとしたが、なんとそれはラスティーリアだったなんて!
「いつもながら……す。すごいね。その憑依技……」
>あたしは鱗に覆われた太い腕でレイジとギコをがっしりと持った。
>「飛ぶわよー」
「わっわ!」
ひんやりしたドラゴン人間の腕でつかまれた。
心の準備もできないまま、ラスティーリアは飛んだ。
高くそびえる相模国造神殿の頂にあっという間に跳んだ。
爆撃でも受けて吹き飛んだみたいな大穴が神殿の天井には開いていて、そこから僕らは中に入った。
高速で飛び降りる。
眼下にはおびただしい魔物の群れ。その中心にいた!
「ゼフィール!」
そして!
「アッシュ!」
アッシュだ!アッシュがいる!
僕をつらぬく再会できたよろこびと、ゼフィールにすでに汚された僕のみじめさとが、僕の中でぶつかる。
僕はうれしいのに、おもわずアッシュから目をそらした。
>ムアコック
>「脳が!ひいいい!道尊!貴様!ひいいいいいいいいいいいいい!」
ランドマークタワーでアッシュと同盟を結んだあの豚人間が、暗黒の炎に焼かれて溶けていく。
焼死体の中に残ったのは、三つの妖しげな物体。
「霊鏡!」
形がちょっと違う。けれどもノスフェラトゥから僕が奪ったのとほとんど同じオーラを放射する鏡が死体の中に光る。
>ゼフィール
>「ああ、そうだ。礼司。君も来るかい?
>神将ラスティーリア、おまえの元御主人様は僕に従ってくれるかな?どう思う?」
ゼフィールが凍るような、それでいて美しい残酷な笑みで僕を見る。
また僕をもてあそぶ。
僕はラスティーリアの前に両手を広げて立った。背中のラスティーリアはいまは巨体で勇壮だけど、彼女は魔道生物だ。
強力な魔の波動に影響されやすい弱点をもっている。
「ラスティーリアの精神を操るつもり?そんなことはさせない!ラスティーリアは僕の大切な…」
大切な、なんだ?
恋人…なんていったら軽すぎる。命の恩人では…他人すぎる。友達では…弱すぎる。妹?それは失礼。
「僕の大切な…一部だ」
僕のほうこそ何度もラスティーリアに同化の治療をされていて、ラスティーリアの一部といえるのだけど。
「ラスティーリアは僕の命の一部だ。離れない。僕の大事な大切なラスティーリアを連れていかせない!
ラスティーリア!気をしっかり!僕から離れてはだめだ。僕が君を守る」
ゼフィールとの決別を!
邪悪な敵とわかっているのに惹かれる僕の心との決別を。
ここにはアッシュもいる。
水無月先輩をはじめ邪悪と戦う仲間がいる。
>水無月さん
>「CHAOSねえ。どうしてゼフィールは現状で満足できないのかしら?」
>アリア
>「それは奴が欲深いえろまじんだからなのですぅ!」
「そうだね。生きている証が際限なく欲しいんだ。
野心と肉欲に囚われるのは、それが生命そのものだから」
と、あやしいモーションをかけるウルトラマンさんからアリアを守りながら僕は言った。
>道尊
>「愚物どもの相手はこの道尊の式神に当たらせましょう」
>アッシュ
>「レイジ、来いよ! コレもオレらの仕事だ」
「うん!」
僕は師子王ノ鞭剣にオーラをこめた。青く鞭が光る。
するどいくちばしを突き攻撃してきた鴉人を切断する。
戦闘が始まったのは救いだった。余計なことを考えている暇は無いから。
鴉人を斬りふせながらゼフィールを追って、僕らは相模国造神殿の黄泉へと続くような坂を下った。
翠星石はジョジョの声に振り向き、その可愛らしい顔を赤らめる。
翠星石は顔を赤らめているところを見られた為か、ジョジョの脛に蹴りを入れた。
>「こんなときに金髪人間が何を言ってやがるですかアリアがいい翠星石なのはととととと当然なのですぅ!
> ええ、やるともですぅ!そうともですぅ、世界の命運はアリアたちに掛かっているのですぅ!
> 金髪人間、アッシュ、ギコ、ドラきちも!共にあのえろまじんを倒すですぅ!!」
ジョジョは翠星石をまじまじと見つめ、にやけている。
「うはwwwツンデレwww」
ツンデレ人形はジョジョと視線を合わせると、恥ずかしさを誤魔化すように喋り始める。
その可愛らしさ故にずっと、ジョジョは翠星石を見つめていたかった。
> ・・・・・・金髪人間?アリアの話ちゃんと聞いてやがるですか?」
「えぇ、ちゃんと聞いてますよ。
俺はドールでも構わず食っちゃうようなウルトラマンなんだぜ」
ジョジョは翠星石の話を聞いていなかった。
そしてこれは余談だが、ジョジョと一緒に住んでいる薔薇実装は、とっくにジョジョに食われていたりする。
「では、ちょっと人目の付かない場所に行きましょうかぁ?」
ジョジョは翠星石を連れて逝こうとした時、何者かに首ねっこを掴まれる。
気が付いたら、知らない場所にいた。
翠星石もいない。
「す、翠星石イイィィィ!ウオォォォッ!」
ジョジョは泣いた。
本気で泣いた。
>「お楽しみのところ悪いが、力貸してくれや。あの豚太郎をひき肉にすっぞ」
ジョジョの後ろから声が聞こえる。
ジョジョの泣き声が混じった為か、内容をよく聞き取れなかった上に、誰の声かも分からない。
ジョジョはゆっくりと涙を流しながら振り返る。
二本の角を生やした黒装束の男がいた。
>「不完全な様式しか知らぬ不幸だな!下郎!」
ジョジョの心に怒りが溢れそうになる。
男の身勝手でジョジョをこの場まで連れてこさせ、突然の不条理な別れに泣くジョジョを嘲笑う。
ジョジョは泣くのを止め、立ち上がった。
「怒りを感じるよ。
ここまで私を怒らせた悪党は、一種類しかいなかった。
私がクリスタル、私と暮らしている薔薇実装のことだが、彼女と運命の出会いをした時だ。
私の自宅の庭に瀕死の状態で倒れていた幼い彼女に、集団で暴力を振るう糞蟲達。
私はそれまで実装石には興味がなくてね。
暇潰し程度の感覚で実装石達の思考を読んだのだ。
その時は、情けないことに吐気を催してしまってね。
すぐにトイレに吐きに行ったよ。
実装石達の思考は余りにも黒く汚れていた。
大量の悪意が私の中に流れ込んだのだよ。
私は庭に出ると、一片の慈悲も与えずに奴らを殺した」
ジョジョの隣にスタンド、立ち向かう者が現れる。
「今の私の精神状態はその時に似ている。
美しき心を持つ人形達と、その心を引き裂こうとする外道!
このジョジョはそんな外道に対して容赦せん!
ウルトラマンとしての慈悲を持った戦いなど、糞蟲に食わせて捨ててやろうっ!
冷徹、冷酷、残忍、非道、そんなジョジョが貴様らの相手をしてくれるわっ!」
ジョジョはスタンドに刀を持たせて前面に出し、刀を黒装束の男の眉間に投げつけた。
その刀に続くようにスタンドも男の下に行く。
「ジュワジュワジュワジュワァーっ!!」
ジョジョのスタンドは拳の弾幕を刀に続くように張ったのだ。
>レイジ
>「ラスティーリア!気をしっかり!僕から離れてはだめだ。僕が君を守る」
「レ、レイジ〜!」
あたしは憑依していたリザードマンの口から出た。
ピンク色の正体を晒して。
でもけどだってでも!レイジは何回かあたしの正体を見ているし、それでもそう言ってくれた。
「レイジ!大好き!
汚れたなんて気にしないで。アッシュなんてもっと汚れじゃない!」
あたしは少女の姿に戻ると抱きついた。
>アッシュ
>「レイジ、来いよ! コレもオレらの仕事だ」
レイジがアッシュに続く。
あたしも続いた。そのまえに憑依していたリザードマンに火炎を吹いて燃やしておいた。
意識を取り戻したやつは、牙をむいて起き上がろうとしたから。
「どこまでもお供します!レイジさま!」
あれ?レイジさま?ってあたしはなにを言って・・・まー。いいかー。
>アマナ・サナトス憑依体
>振り向きざまにそう言って黒鋭のほうへ振り返る。
>「こう見えて好奇心には従う主義なんでね 」
「他者の力を己に宿して戦うとは自分と同じだな」
金護の腕を舌で舐めると、黒鋭は虎顔を歪め苦笑した。
「虎吼拳!」
金護の腕をアマナに振るった。だが間合いがまったく遠い。届かない。
だが手の平から波動の固まりが閃光となって飛び出した。
>ゼフィール
>「霊具三種はここに相成った。黒鋭!アマナもなど捨て置け!」
「御意!」
衝撃に弾けとんだアマナを軽蔑をこめて見下ろすと黒鋭は踵を返した。ゼフィールに続く。
相模神殿最深部
>ジョジョ
>「ジュワジュワジュワジュワァーっ!!」
道尊を殴打するジョジョ本体に黒鋭は雷の如く肉薄すると、無防備な背中に金護の腕の握り拳を叩きつけた。
「ゼフィール様の参謀閣下に無礼であろう!」
>315
>「それは奴が欲深いえろまじんだからなのですぅ!」
「なーんだ、アレもCHAOSなのね。そういえば、彼は自分の欲望に忠実ね」
なるほど、とつかさは納得したようだった。
CHAOS勢力の者は法などによって自らの自由を縛られる事を激しく嫌う。
また、CHAOSの代表とも言うべき大魔王ルシファーは、唯一神に反抗して堕天使となった存在だとされる。
番人としての地位を捨て、大いなる存在に挑もうという考えを持つに至ったゼフィールは、そんなルシファーと境遇が似ている。
もっとも、真なるCHAOSの者ならば、現状の秩序を破壊して新たな秩序を作ることなどせず、ただ秩序そのものを破壊しようと考えるものだが。
果たしてゼフィールはどちらだろうと、つかさは少し考えていた。
>も、もし水無月がどーしてもアリアに使い方を説明したいっていうのなら、その・・・聞いてやらなくもないですぅ・・・」
「素直な子ね」
考え事をしていたつかさは、数瞬ほど遅れて返事を返した。
だが、表情や態度に出てしまっては、教えて欲しいと言っているようなもの。
つかさは素直な人物が大好きである。時折、好きな人ほど意地悪したくなるときもあるが。
「わたしもよく知らないんだけど、この銃みたいなのは、そのペルソナ能力を使うのを補助するアイテムらしいわ。
確か、召喚器―――この銃みたいなのをこめかみに当てて、こうやって引き金を引くんだったかしら?」
眼を閉じ、こめかみに銃身を当てて、引き金を引いてみせた。
パリン、とガラスが割れるような音と共に、ジョジョの操る『スタンド』の能力で出てくるものに似た、透き通った人型のものが現われた。
その人型は真っ黒な身体に無数の赤い線が走っており、顔はのっぺらぼう、手足は長く、だらしなく垂れ下がっており、きわめて不気味である。
「そうそう、思い出したわ。ペルソナの力は心の力。自分の隠された一面、もう一人の自分を形にして操るの―――こんな風に!」
この不気味な黒い人こそが、つかさの知られざる一面にして、もう一人のつかさ。彼女のペルソナである。
つかさのペルソナは、不気味きわまる容姿もさることながら、その力もまた禍々しいものであった。
黒い人型がその辺に居た龍人の首を両手で掴むと、急激に生命力を吸い取り、哀れ犠牲者は瞬く間にミイラとなり、風化して塵になってしまった。
龍人から生命力を吸い取ったつかさの肌が、少しつやつやになったような気がするが、彼女は死人なので気のせいだろう。
「その力は、敵を打ち砕く為のものかもしれないし、仲間を守る為のものかもしれない。
ペルソナの姿と力は、自分の心をそのまま表すものなのよ。
貴女のペルソナは、一体、どんなのかしら?」
ペルソナは往々にして人々が知る神や悪魔などの姿をとり、その姿に応じた力を振るう。
ある少年のペルソナは、ギリシャ神話の太陽神の姿をとり、熱を操ったという。
彼女の言うとおり、アリアのペルソナは、また違った姿と力を持っているだろう。
つかさは召喚器をアリアに返すや否や、またしても傍観の態勢に入った。
>320 >321 >290 >325
>「えぇ、ちゃんと聞いてますよ。
>「そうだね。生きている証が際限なく欲しいんだ。
>野心と肉欲に囚われるのは、それが生命そのものだから」
レイジが、アリアのためにやんわりとジョジョとの間に割り込んできた。アリアはジョジョの問題発言を耳にすることは無かった。
アリアはじいっとレイジの顔を凝視した。そしてふわりと浮き上がると、レイジの肩にちょこんと腰掛ける。
「『生命そのもの』その通りなのですぅ。
だからレイジ。いつの日かまたお前が同じ衝動に苦しむことがあっても、そのこと自体が『汚れている』証しにはならないのですぅ。
自分さえ迷子にならなければ大丈夫なのですぅ。
――――レイジ、よくやったです。人間にしては上出来ですぅ!ラスティーリアは幸せ者なのですぅ!」
これでも最大級の誉め言葉だ。だがそれもつかの間、きらーん、とアリアの目が妖しく光った。
「全くレイジときたら散々アリア達をやきもきさせやがって!本当の本当に困った奴なのですぅぅぅぅ!!!」
状況などお構いなしに、ぎゅうううう!とアリアはレイジの耳を引っ張った。
(ま、これでマスターも一安心なのですぅ)
二重契約に隠された祈りのような願い。
魔法など使えない筈の藤田が、想いの力だけで理利の契約を覆したのだ。
ここまで強い絆があるのなら、もう心配することは無い。
嬉しくてしょうがないという顔をしたまま、アリアはレイジの肩からポン!と飛び降りた。
だが、アマナの姿を見た途端アリアの顔から満面の笑みが消えた。
「サナトス!あの、時と空間を支配するレギオンか!」
しかも召喚者は年端も行かない少女のようだ。気づいたアリアは思わず舌打ちした。
「道理で不完全な訳だ。だがサナトスよ、お前なら今の状態でもゼフィールの時空魔法を打ち破るなど造作も無いだろう?
それとも何か?長き眠りで神殺しの異名と共に、かつての栄光も失われたか?」
違うだろう?と暗に込めた笑みを浮かべ、アリアは可愛らしく小首を傾げる。
だが次の瞬間には、まるで夢から覚めたかのようにアリアは元に戻った。
「・・・??」
アリアは腑に落ちない顔をしたままきょろきょろしていたが、サナトスと目が合ったとたん飛び上がった。
「べ、別にアリアはお前なんかちちちちっとも怖くなんかないのですぅ!ホホホ!―――だからこっち来んなですぅ!!」
あたふたするアリアに、再びジョジョが近づいてきた。
>「では、ちょっと人目の付かない場所に行きましょうかぁ?」
「どこ行くです?えろまじんは確かあっちに行った・・・って、あら?
金髪人間ー??どこ行ったですか?ねえドラきち、お前は知ってるですか?・・・ドラきち?!ドラきち?!!!」
いつの間にか、金髪人間もドラきちも姿を消していた。
ひゅるるるるーと一陣の風が吹き抜けた。
「べ、別にこのくらい・・・・何でもないのですぅ・・・!」
うるる、と涙ぐみかけたアリアに、水無月が絶妙のタイミングで説明し始めた。
水無月が銃のようなものの使い方を説明し、アリアのために実践してみせた。
バリン!とガラスが割れるような音の後、、なんともうす気味悪い透けた人型の何かが現れる。
銃は水を出すものだとばかり思っていたアリアは震え上がった。
「お!おっ!!お化けが出たですぅ!!!!!」
>「そうそう、思い出したわ。ペルソナの力は心の力。自分の隠された一面、もう一人の自分を形にして操るの―――こんな風に!」
アリアははっとした。
という事はすなわち、コレは『もう一人の水無月』ということになる。
「よ、よくみたらなんだか愛嬌があるような気がしないでも・・・きゃゃあああああ?!」
水無月のペルソナが襲い掛かってきた竜人を締め上げるや否や、竜人はミイラとなりバラバラと塵になってしまった。
アリアはカチコチに固まった。
(ペルソナ・・・・・恐るべしなのですぅぅぅ!!!)
いやこの場合、真に恐るべしなのは水無月なのだが。
> 貴女のペルソナは、一体、どんなのかしら?」
アリアは水無月と召喚器を交互に眺めた。
水無月は別に強制もしないし、止めたりもしない。
だが周りでは皆が、コンビニそっくりの名前の陰陽師が放った大量の式神達と闘っている。
「ええい!ドールは度胸ですぅ!当たって砕けろなのですぅぅぅぅぅぅ!!!」
アリアはこめかみに召喚器を押し当てると、震える手で引き金を引いた。
神将黒鋭に背後から殴打され血反吐を吐いて転がるジョジョに、ゼフィールは軽蔑の笑みを投げかけた。
「君はかなり独創的な人物だよね。ゴドーの魔法陣を台無しにしたのも伏兵の君だし、
僕の神将ゼットンを倒しもした。
黒鋭!油断するなよ。惨殺せよ!」
ゼフィールは天保光を睨みつけた。そして笑う。
「それとも元の主殺しをしてもいいけど、黒鋭。任せるよ」
ゼフィールは肩をすくめた。
「ベルやリリにずいぶん頼られたものだね。なあ天保。
リリは礼司には冷たく潔癖なのに、天保に寛容とは解せないな。
天保、御前は前代の牙の主の使徒から牙を受けると、躊躇なくそれを受け入れたじゃないか。
“別にこいつでもいいか。死にかけだし”
この言葉覚えているだろう。
ランドマークタワーロイヤルホテルの宿泊客で、瀕死の女性を汝は介抱せずに襲い惨たらしく血を吸ったよね?
>チャッチャ4
>221
>舌打ちすると隣の半焼けになっていまにも死にそうな一般人の女が目に止まる。
>「別にこいつでもいいか。死にかけだし」
>火傷で皮膚がただれている首筋に牙を突き立てると血を吸い始める。体中に力が戻ってくるのが実感できた。
>血を吸い終えて女の体には興味が失せたので放置。
あの女性の名はマーガレット・キブソン。
ビジネスで来日し故郷のカルフォルニアには三歳と五歳の娘がいる。
ママの帰りを待っているよ。
CNNで横浜ランドマークタワー崩落のニュースを見て、娘達は祖父母と涙を流している。
どうかママ、生きていて、と。
天保、御前が殺した。
汝は使徒の襲撃に遇い吸血鬼になったけど、自らその運命を享受し喜んで受け入れた。
そうとも。御前は使徒になったのを喜んだのだ。違うとは言わせない。
汝は人間を殺め血を吸うのにためらいもなかった。
一度たりと後悔に駆られもしなかった。自責の念の欠片もない。
牙の使徒になって良心の呵責に苦しんだ上湘南中学校の生徒らと汝は異質だよ。
汝の心根が元より悪性を帯びていたのだ。
その御前が救世主気取りで僕の邪魔をするだと?リリやベルに期待されて?なんてあの二人の滑稽な事か!
は!
笑わせるな!天保!御前も悪魔だ。汝は心が悪魔であり、最大の罪は己の犯した罪を忘却する点にある」
ゼフィールは鞭のからむ霊剣を素振りした。刀身から雷電が迸り、天保を感電させた。
「汝の所有する霊具は最早、必要無い。龍人兵達よ!天保を食い殺せ!
僕の雷撃は力を奪うぞ!立てるか天保!」
ゼフィールは嘲笑った。
しかしこの時ゼフィールもまたベルの発動を妨害して体力を失っていたのだ。
……肉体には疲労がつきもので、こればかりは面倒臭いな。
その思いをおくびにも出さずに、ゼフィールは悠然と歩を奥へと進めた。
相模国造魔道神殿の最深部に到達した。
そこには高さ二十メートルはあろうかという一枚岩の大扉があった。
扉の岩は円盤状で、転がり閉じている造りだった。
「道尊、遂に来たね。ここがそうだろう?」
この扉を越えた処が相模国造の墓所の筈だ。
アリアは【死神】アリスを召喚した。
「わたしアリス…
ずっと一緒に、遊んでくれる?」
相模国造内部で天保が肉体のベル、すなわちアルラウネを斬った瞬間、地上のアルラウネは全て枯れ燃え落ちた。
上一中を覆っていた葦の群れも、ベルの家に聳え立っていた巨木アルラウネも。
勿論、巨木アルラウネにたわわに実っていた実も全て、だ。
だが、その瞬間、巨木アルラウネの根についていた実が外れ、地下深くへと沈んでいく。
アルラウネの根は人型となっており、引き抜くと聞いたものを絶命させる叫び声をあげる。
巨木となってもアルラウネはアルラウネ。
無数に枝分かれし、あらゆる霊脈、地脈に根を葉儂養分を吸収したものは根につく実に凝縮される。
まるで何かに引き寄せられるかのように、深く、深く沈んでいった。
>「他者の力を己に宿して戦うとは自分と同じだな」
「私をお前を同じモノとするんじゃない---それだけで虫唾が走る。」
すかさず否定する。そう思いたいのかそれともプライドか
とにかく、否定しなければ勘違いされることだと認識に反応する。
>「虎吼拳!」
>波動の固まりが閃光となって飛び出した。
「何かと思えばそれか?---こんなもの!!!」
時を止め、最小限の動きで波動をよけようとしたとき
>「目障りなアルラウネの消失まででストップだ!止まれ!さがむのくにのみやつこよ!
一瞬、サナトスの動きが停止した。いや、サナトスの時が止まったと言えばいいだろうか
強制的に時を止め返されたためにその反動がサナトスにあたってしまったのだろう。
是非も無く、顔面に黒鋭の波動が直撃しサナトスは弾け飛び壁に叩きつけられた。
弾け飛ぶ一瞬、黒鋭が己を軽蔑した目で見るのが確認できた。
「---油断か---二度の油断がこうしたのか---」
そう呟き瞳を閉じようとした瞬間、声が聞こえた。
>「サナトス!あの、時と空間を支配するレギオンか!」
>「道理で不完全な訳だ。だがサナトスよ、お前なら今の状態でもゼフィールの時空魔法を打ち破るなど造作も無いだろう?
それとも何か?長き眠りで神殺しの異名と共に、かつての栄光も失われたか?」
その声を聞いた瞬間、サナトスの中で何かが音を立てて千切れとんだ。
ありったけの殺意を込めてアリアを睨む。
「---殺すぞ」
>「・・・??」
>「べ、別にアリアはお前なんかちちちちっとも怖くなんかないのですぅ!ホホホ!―――だからこっち来んなですぅ!!」
「---いや、この殺意はゼフィールに向けるべきだろうな」
そう言って立ち上がり瞳を閉じる。
そして、念話?でこの体にいるものたちに声をかける。
『ギルト!ヘイトレット!フロウド!鎧化を解除しろ』
『しかし姫は!』
『そうだぜ旦那!今あっしらが守らなきゃ誰が守る』
『----得策ではないでござろうに一時の感情に流されては勝てる戦も負け戦でござる』
『私が鎧となれば問題はないだろう。それにそっちのほうが今よりも力を出せる。
文句は言わせん。』
『---御意』
『従いましょう』
『---頼みますぜ旦那』
話をつけまずは鎧化を解除させる。
『---さてマスター---養殖霊具について何か意見はないのか?
私としてはあの厄介なものから片付けたいのだが---』
『----私の意見としては---戒蟲蝕が発動した肉体で作られた物質には蟲の卵が産み付けられているはずです。
しかし、その蟲はもう一度戒蟲蝕を発動させねばなりません。ここは術者の私が詠唱しなければならないところですが---』
『体の所有権は私が持っているから不可能---』
『そう---だから---あの---』
『デビルサマナーに任せろ---と』
『---そういうことです。』
『---了解した』
サナトスが瞳を開けた瞬間、空間が歪みサナトスを飲み込んだ。
いや、そこにいた者がそう思った瞬間に黒紫の鎧を身に着けたサナトスが漆黒の翼を翻し次元を切り裂いて現れた。
その姿を見たアリアは「水銀燈」といいかけたが先ほどの睨みで引っ込んでしまった。
サナトスは水無月の目の前で着地し、とある本を渡す。
「マスターからの言伝だ。この本の56ページにある呪文をゼフィールの近くで詠唱して欲しそうだ。
ただし、これはすべて古代語で構成されいるから無理なら他の奴に託しても構わない---ようだ。
雑魚の処理は任せろ。こんなもの一瞬で片すことが出来るからな---では、伝えたぞ」
そして、サナトスは翼を広げ飛び上がった。
「まずは雑魚の掃除と---時空魔法の侵食もしくは破壊か---容易いな---ハァ!!!」
サナトスを中心にモノクロの世界がゼフィールの支配下の空間を飲み込み時を止める。
「さぁダンスの時間だ」
手を前に掲げると一瞬でおぞましい量の魔術陣が姿を現した瞬間、時は動き出した。
「チャオ」
指をパチンと鳴らした瞬間、魔弾の一斉射撃が始まる。
数秒もせず肉塊となる鴉鬼神の姿を眺めおろすサナトスの顔は
人間ではないものの不気味さを感じさせるものだった。
スタンドに意識を向け過ぎていた為か、ジョジョの無防備な背中に衝撃が走る。
ジョジョは前のめりに吹き飛ばされる。
ジョジョはすぐに倒れた状態から立ち上がると、衝撃が襲ってきた方を睨んだ。
>「ゼフィール様の参謀閣下に無礼であろう!」
ジョジョは黒装束の男の方を睨み、次にゼフィールの方を睨む。
>「君はかなり独創的な人物だよね。ゴドーの魔法陣を台無しにしたのも伏兵の君だし、
>僕の神将ゼットンを倒しもした。
>黒鋭!油断するなよ。惨殺せよ!」
ジョジョの隣に、先の衝撃を与えられたと同時に消えた、ウルトラマンの虚像が現れる。
「そうか…私と翠星石を引き離したのは貴様達全員か……
許さんぞ…皆殺しにしてやる!」
虚像であるウルトラマンのエネルギーが上がる。
ジョジョの闘志に呼応して、どんどん高まっていく!
「うおぉぉぉぉ!」
ジョジョの本体はスタンドを伴い、衝撃を与えたと思われる相手に向かう。
相手もジョジョを迎撃しようと拳を放つが、ジョジョはそれを避けて相手の懐に入り込む。
そして、ジョジョのスタンドは拳の弾幕を相手の体に叩き込んだ。
>327
そいつは他を圧倒する雰囲気を持ち、その外見に相応しいような力を秘めてまるで進軍するかのように手下を率いてやってきた。
目が合うと睨みつけて呪いをかけるように笑った。
口にするひとつひとつが毒々しく、陰の部分を刃物のように刺して人を翻弄する。
ホテルでのそのときの心情をすべて見透かしているかのように俺に罪の意識を植えさせようとしている。
「その手には乗らないよ」
いかに罪が深かろうと、非人道的だろうとこれからゼフィールがやろうとしていることを見逃すことはできない。
救う対象はなにも吸血鬼になった生徒たちの無念だけではない。ホテルで被害にあった人たち。
二千年の間で巻き込まれた者たち、前牙の主のハットゥシリと鬼、さらにノスフェラトゥのじじいと堕落した地の精霊たち。
みんなそれぞれの無念、後悔、怒りを背負っている。
>「汝の所有する霊具は最早、必要無い。龍人兵達よ!天保を食い殺せ!
>僕の雷撃は力を奪うぞ!立てるか天保!」
霊剣もどきから出る雷撃を直撃する。たしかに痛くて全身がピリピリする。
ありのように群がる龍人兵が号令とともに襲い掛かってくる。龍人の爪による初撃は叢雲剣で防ぐが、二匹目に背中に乗られる。
それを好機とみるや一斉に飛び掛り、視界は龍人兵たちで塞がってしまった。
「邪魔だよ、どけや」
剣が纏う蒼い炎が激しく燃え上がる。それに触れた龍人兵たちに引火し、地獄の業火に祓われてのたうちまわった。
剣を一回振るうと、まるで強風に煽られたように吹き飛ばされて、あれだけいた数が半分以上が息絶えた。
ゼフィールを探すが姿が見えない。さらに奥、神殿の最深部へと向かったようだ。
行く先々で敵に狙われるが霊具二つ所持している俺の敵ではなく、すべて一太刀で片付けていった。
岩でできた大扉の前にいる奴を見つけた。そこがギリギリ、奴をその先へ入れてはならない。
>「道尊、遂に来たね。ここがそうだろう?」
後ろを振り返りもせず、後ろに立つ俺を誰かと勘違いしているらしい。
「うしろの正面だぁ〜れ?」
目を丸くしているであろうゼフィールの人体の最大の急所である心臓目掛けて、叢雲剣を突き刺す。
>天保光
>「うしろの正面だぁ〜れ?」
>目を丸くしているであろうゼフィールの人体の最大の急所である心臓目掛けて、叢雲剣を突き刺す。
「悟りの御技をお持ちの世蛭様の不意を打つだと?愚かな!」
ジョジョの攻撃
>>322(ジョジョはスタンドに刀を持たせて前面に出し、刀を黒装束の男の眉間に投げつけた)を
寸での所で肝を冷やしながら避けた。
次の攻撃に備えたが、黒鋭が援護に来ると(
>>324「ゼフィール様の参謀閣下に無礼であろう!」)この場は任せ、
道尊は縮地の術を再び駆使し、ゼフィールを追った。
追いついてみれば、今しも天保が霊剣でゼフィールを突き刺そうとしていた。
予知に近い認識力を持つゼフィールがその突きをくらう筈がない。だからそう言ったものの、明らかにゼフィールの
動きは鈍かった。
疲労召されておいでか!?
「オオオン!」
道尊は天保に金縛りの術をかけた。
「世蛭様の雷撃に耐えるお前には雷系の金縛りは効かないだろう。
毒縛りだ。河豚毒の八万倍の猛毒をおまえの体内に生じさせた。
動けまい。
これは頂こう」
痺れて銅像の様に立ち尽くす天保の手から道尊は叢雲剣を剥ぎ取った。
そばに控える鴉鬼神に剣を手渡す。
「これもいらぬな」
天保の所有する霊玉、霊鏡を抜き取った。
「先行しすぎたな。腐り死ぬがよい」
鬼の形相で高らかに笑うと道尊はゼフィールに言上した。
「アルラウネが枯れきらずに妖しげな動きをしております!お急ぎください。
相模国造の墓所の扉を今この道尊が開けましょうぞ!」
奪い取った三つの霊具をそれぞれ傍に控える鴉鬼神三体に預けると、道尊は指を組み九字を切り印を結んだ。
念を込める。
円盤岩の墓所の大扉が転がり始め開いていく。
>ジョジョ
>ジョジョのスタンドは拳の弾幕を相手の体に叩き込んだ。
「グルアアアアアアアアアアアアアア!」
ジョジョの放つ拳の弾幕一撃一撃に黒鋭は拳を合わせて迎撃した。拳と拳が激突する。その最中に黒鋭は
ジョジョに感嘆をこめて言った。
「グルルル。やるではないか。ゼフィール様が一目置くだけの事はある。しかし武器は自分の方が一つ多いぞ」
二本の腕で殴りあう中、黒鋭はジョジョに噛みついた。自分に多い武器とは牙の事だった。
ジョジョの右首に深々と牙が刺さる。拳のラッシュが止まる。
「忘れたかもしれないが、自分はこれでも吸血鬼だ」
>サナトス
>「チャオ」
道尊の式神カラスがサナトスの爆撃に次々と壊滅していく。
ジョジョの血を吸いながら、宙に立つサナトスを黒鋭は睨んだ。
こんな雑兵どもは早く片付けてゼフィール様の元に馳せ参じなければな。グルルル。
もう書き込めないのかな?
道尊が念動で相模国造を封印する墓所の扉が地響きと共に開いていく。
するとそこに一陣の風が道尊の背後から巻き起こった。
風が白い紙切れを飛ばして運ぶ。紙切れは大岩扉に接着剤ででもつけたかの様に貼り付いた。
紙切れはメモ用紙で、ボールペンで只一文字【封】と書かれていた。
その封の文字が青白く神々しく光るではないか!
すると扉岩の転がりが殆ど開かないまま停止した。
道尊が憎悪を込めて振り返った。
亮明がいた。
「鬼を鎮める陰陽師が鬼に堕ちたのか。道尊」
亮明は陰陽師の服装をしていた。しかも揺らぐ半透明だ。生霊の布川亮明である。
「陰陽師の術を破る最もいい方法は、陰陽師を殺す事だ。
私は霊体だが、私に呪詛をかけて呪い殺すか?道尊」
道尊にとっては道理の陰陽術破りだったが、布川自らがあえて言わなくてもいい弱点を言った。
「私を倒せばあの封印の護符は破れる。
同じく道尊を倒せば、道尊が造った偽霊具もまた消え失せる!
陰陽道とはそういうものなのです。
聞こえましたか?上湘南の超常の子供たち!」