…あの街での出来事から、もうどれくらいの月日が経ったのだろうか。
数日であるのかもしれないし、もう数十年も前のような気もする。
まぁ、どちらにせよ、それはもう過去の出来事だ。
過去の出来事にばかり目を向けていても意味がない。
あの街での出来事に興味があるのなら、これをやってみるといい。
ttp://www.freem.ne.jp/game/win/g00779.html …さて、暫くはこの街でゆっくりしようと思う。
この街のあらゆる場所を散策してみるのもいいだろう。
最近発展してきた、駅前の大きなショッピングモールへ向かうのもいい。
古風な神社の屋根の上で、翼を休め、風と戯れるのもいい。
何をしても、誰からも束縛されることはない。
さぁ、相棒よ。君の行きたい場所を示せ。
何をすべきなのか、何処に向かうべきなのか、好きなように選べ。
…ヤタは自由だ。この世の誰よりも自由だ。
だから、彼の中にあるあなたにも全ての選択肢を与えることが出来る。
…さぁ、どこへ向かおうか。
2 :
名無しになりきれ:2006/06/13(火) 13:25:40
やあ、君か!待ってたよ。
>>2 誰かを呼ぶ声が聞こえた。
しかし、その言葉には名前が存在していなかった。
だから、その呼び声が誰に対して投げかけられたのかは判らない。
ヤタは、それでも一応、声のした方へ振り向く。
だが、その時には既に、声の主はそこにはいなかった。
…人間とは忙しい生き物だ。
ヤタはそんなことを思いつつ、また街並みを見下ろしている。
4様にはカラス色のコートが似合うんですよ ´ー`
>>4 人間が色々な服を着飾るように、ヤタにもそれなりの美意識というものがある。
だが、ヤタは服を着ることはない。
服を着てしまえば、空を飛ぶときに翼の邪魔になるし、なにより蒸し暑くなる。
元々ヤタには黒々とした美しい翼を持っているのだから、それ以上着飾る必要はないのだ。
そのかわりヤタは首に二つのアクセサリーをしている。
一つは、銀色に光るプレート。いわゆるドックタグというものだ。
これは、まだヤタが研究所で飼育されていたときにつけられた物で、表面に『810』と刻まれている。
ヤタの昔の『呼び名』であり、そして現在の『本名』である。
そのプレートに隠れるように存在する、もう一つのアクセサリー。
シルバーのチェーンに淡い青の石が加工されただけのシンプルな物だが、
その色合いの美しさには誰しもが目を奪われる程の魅力を持っている。
その石は『フローライト』。
語源は、『流れる』そして、『自由』という、まさに空を気ままに流れ飛ぶヤタを象徴しているかのようだった。
ヤタ、バナナ食うか?
こんなスレがw
ヤタはハシブト鴉なの?
種別教えてよ
>6
鴉であるヤタが人間に興味をもつ様に、人間の中にも、鴉に対して興味を持つ者もいる。
別段珍しい事ではないのだが、ただ一つ注意しなければいけないことがある。
それは、『興味』の種類である。
単に鳥好きの人間の『興味』なら警戒する必要はあまりないのだが…。
人間の中には、鳥を『空飛ぶ的』と考え、エアガン等で撃ち落とそうとする不埒な輩もいる。
いつだったか、ヤタがとあるアパートに『捜査』に出掛けた時、
近所に住む男にエアガンで危うく撃ち殺されそうになった事があった。
その時は何とか難を逃れたが、ヤタは改めて、『一部の人間』の恐ろしさと愚かさを感じずにはいられなかった。
…ヤタは自由だ。誰よりも自由だ。
だから、ヤタは自分の行きたい場所へと直ぐに行くこと出来るし、何をしても、誰に気にされる事もない。
ヤタは自由であり、常に危険と隣り合わせなのだ。
だからヤタは、自分にバナナを差し出す貴方に気付かぬ振りを続けた。
貴方がバナナをその場に置き、去るのをただじっと待っているのだ。
貴方が去った後、バナナをじっくり頂こうとヤタは考えている…。
>7
ヤタは普段はあまり口を開くことはない。
鴉の言葉でも、人間の言葉でもだ。
だがヤタは無口なのではない。自分に話しかけられれば大体はちゃんと返事をする。
…だからヤタは、貴方の問掛けにこう答えた。
『私は…どうなのだろうか。
種別的にはハシブトなのかもしれないが…。
それ以前に、私は人工的に産み出されたキメラだからな。ひょっとしたら鴉でもないのかもしれないな…。
まぁ、今は便宜上、人間のような鴉。と自分で思っている』
ヤタの好きな食べ物なんだ?
放り投げたら空中キャッチしてくれるか?
サインください
保守
早苗たんハァハァ
>10
人間一人一人に食べ物の好みがあるように、ヤタにもそれは勿論ある。
ただし彼の場合、どの食べ物が旨いかではなく、どの食べ物も口の中に入れば旨く感じてしまうのだ。
例えば、大通りにある高級レストランの冷蔵庫の中にある牛肉も然り。
例えば、民家のタンスの上にある白い団子のような塊も然り。
ただし、ヤタの場合はどんな食べ物も警戒せずに食べてしまうことがあるので、
彼は食後に、自らの行動の愚かさを身をもって知ることもあるのだが。
>ヤタの好きな食べ物なんだ?
>放り投げたら空中キャッチしてくれるか?
前記したように、ヤタは食べ物とあれば何でも食らいつくだろう。
彼のいる所へ、うまく食べ物を投げつけることが出来れば、空中キャッチもお手の物だ。
…ひょっとしたら、彼は投げつけられたそれを銜えてから、食べ物と判断するのかもしれないが。
>11
>サイン下さい
昼下がりの公園のベンチに座り、翼を休めていたヤタは突然の声に振り返る。
そこに、色紙とペンを持った持った小学生くらいの子供がいた。
ヤタは辺りを見渡し、自分とその子供以外に人がいないことを確認する。
どうやら、子供はヤタ以外の誰かに『サイン下さい』と言ったのではなく、紛れもないヤタ自身にサインを願ったのだ。
…ヤタは考える。何故、この子供は自分などのサインをほしがるのか。
ひょっと何かの間違いではないのか。…まさか、『人間の言葉を喋る鴉』で或る自分の存在が、あまりにも広まりすぎたのであろうか。
そこまで考えてヤタは子供に聞こえないほど小さく舌打ちをする。
自分はこの国の施設から抜け出してきた、いわば脱走者なのだ。
ひょっとしたら施設の連中が自分のことを未だに捜し回っているのかもしれないし、何より、自分の存在はあまり知られるべきではないのだ。
だから、ヤタは子供の言った言葉は聞こえない振りをした。あくまでも、自分は只の鴉だと言うことにしておきたかったのだ。
ヤタは子供の見つめる視線から逃れるようにその場を飛び立つ。
子供にサインをあげることは出来ないが、その代わり、ヤタは一本の黒く美しい羽根をベンチに残していった。
子供はそれに気がついたかどうかは、もはや誰にも判らないが。
>12
不思議と護られている感じがした。
ヤタは街上を飛びながら、辺りを見渡した。
だが当然、自分を護ってくれるような生き物は見あたらない。
では、今の感覚はいったい何だったのだろう。
『自分』と言う存在が消え去ることがないように、誰かがそっと自分の名を呼んでくれたかのような感覚。
それはまるで、人々が神に祈りを捧げているかのような尊韻とした感覚であった。
>13
『……誰だか知らんが、彼女に手を出したら俺が容赦しない…』
ヤタは今、貴方のその首筋を、電線の上から、貴方は気がつかないように、鋭い目つきで、獲物をとらえるように、見つめている。
ヤタおかえりいいいいいいいいいい!!!待ってたよ!
>16
…寝苦しい。
ヤタはこの夜何度目かの寝返りを打ちながらそう思う。
季節は夏、夜と言えども暑いのは当たり前ではあるが…、
それにしても、今宵は暑すぎる。
こんな夜は無理をして寝続けるよりも、巣穴の外で夜風に当たっている方がいいかもしれない。
この時間では、こんな山の中を彷徨く人間もいない。
ヤタはそう考え、辺りをさほど警戒せず巣の外へと飛び出した。
案の定辺りは『静寂』と言う名の音に包まれている。聞こえてくるのは虫の鳴き声、遠くから風に乗って聞こえるフクロウの声、それに、
>ヤタおかえりいいいいいいいいいい!!!待ってたよ!
ヤタはずっこけた。
その間の抜けた歓喜の声には、今の今までキメていた(彼はそんなつもりだった)自分のクールさが台無しにされてしまう感じがした。
…気を取り直して、声の正体を探る。しかしヤタは警戒はしていない。…と言うか、警戒する必要がないのだ。
もし、声の正体がヤタにとって害ある者なのなら、何よりそんな大きな声などたてずに静かに自分に近寄るだろうから。
ヤタが辺りに目をやると、声の主は直ぐに見つかった。
若い雄の鴉であった。だがしかし、ヤタはこの鴉に見覚えがない。
ヤタにもそれなりに仲の良い『ソラ』という名の、雄だが中世的な顔立ちの鴉を知っているが、どうやら彼とも違うようだ。
ヤタは、今目の前にいる鴉のことは知らないが、目の前の『彼』は自分のことを知っているようだ。
単にヤタが、『彼』のことを忘れているだけという可能性は高い。
だが…、ヤタは何か心の内に言いしれぬ不安を感じる。ただ漠然とした、何かの不安を。
その後ヤタは、自分の帰りを喜ぶ『彼』と二三会話を交わした後、夜の街へと飛び立っていった。
ヤタは自分が夜風を浴びにそこから飛び去ったのか、それとも『彼』から逃げようと飛び去ったのか、
そのどちらかが自分でも解らなくなっていた。
…だが、飛び立つ自分の背を『彼』が射抜くような視線で見つめていたと言うことだけは、ヤタ自身しっかりと解っていた。
ヤタ×ソラとか考えちゃう私末期orz
ソラ抱きしめたいな
ヤタの中の人は学生さん?それとも社会人?
駅から大型ショッピングモールに続く橋の上を、人々はせわしなく行き交っている。
ヤタは橋の手摺りに留まり、人間観察を続けていた。
ttp://www.imgup.org/iup233277.jpg ttp://www.imgup.org/iup233279.jpg 別に観察自体には大した意味はない。この暑い中、こんな事をしていても何か実りがあるというわけでも無いだろう。
では何故、彼はこんな事を続けているのだろう。
…そう、彼は時間を持て余していた。
『あの街』では沢山の出来事があった。それはヤタにとって、自分の生き方すら変えてしまう程の。
…しかしこの街はどうだろう。道行く人達は皆、自分自身のことで精一杯な感じがするし。
何より、こんな近い距離に鴉が留まっているというのに、誰もヤタに気が付く様子もない。
(誰か自分に気が付く者はいないものか…)
ヤタはそんなことを考えながら、人々を見つめていた。
>18
>ヤタ×ソラとか考えちゃう私末期orz
ふと、中学生くらいの少女が、自分の名とソラの名を呟いた。
それは単なる独り言だったのかもしれないが、それでも、ヤタは敏感にその言葉に反応する。
少女は何故自分と、そして彼の名を知っているのだろうか。
>ソラ抱きしめたいな
少女はその両腕で、この大いなる空を抱きしめたいと願ったのか。
それとも、本当に、あのソラを抱きしめたいと願ったのだろうか…。
ヤタは少女の元へと近づき、『ソラとはいったい何のことだ?そして何故君は俺の名を知っている?』と聞こうとしたのだが。
しかし、その時には少女は人混みの中に消えてしまっていた…。
>19
>ヤタの中の人は学生さん?それとも社会人?
ヤタは考え、そして自分なりに答えを出す。
(自分の中の人、それはきっと自分の心の中のもう一人の相棒のことを指しているのだろう。
そういえば、俺は相棒がどんな姿なのか見たことがない。いやそもそも、それは目で見えるような代物ではないのだろうが。
…俺の相棒が、学生であろうが社会人であろうが。人間であろうが鴉であろうが、そんなことはさほど問題ではない。
相棒は、紛れもなく相棒なのだから)
ヤタはそんな、自己満足に他ならないような結論を出し、クククと、自嘲に似た笑みを漏らす。
(…そういえば、今さっき、この疑問を俺に投げかけたのは誰だったのだろう?
そもそも、そんな意味不明な問いを、鴉である俺に投げ掛ける酔狂な人間などいたのだろうか…)
そこまで考え…ヤタはにやりと笑った。
…そしてヤタは、人々の横行する橋から飛び去っていった。
さぁ、相棒よ。君の行きたい場所を示せ。
何をすべきなのか、何処に向かうべきなのか、好きなように選べ。
…さぁ、どこへ向かおうか。
一緒にお散歩しようぜ!