【TRPS】能力覚醒都市SINONOME【GIFT】
1 :
◆ZpT5810vjc :
『ギフト』と呼ばれる能力を持つ者達が現れ出してから久しい現在。
此処、東京都東雲市では能力者犯罪の全国1位を記録し続けている。
能力者の存在そのものは白日の下となろうとも、その偏見や迫害は未だ絶える事が無い現状。
迫害や差別から逃れる為に自らの力を隠し社会に潜伏する能力者。
今更言うまでも無いが、それらがこの都市の闇の暗さに拍車を掛ける。
ある者は自分達の存在を守る為に同胞を狩る。
ある者は自分達の価値を探す為にこの街を駆る。
今宵も、異端者達の戦いが始まる。
2 :
◆ZpT5810vjc :2006/05/13(土) 03:52:35
【スレッド概要】
ジャンル:能力系TRPS
世界観:パラレル日本
方向性:シリアス
バトル:奨励
対立:奨励
決定リール:非奨励
参加者は『ギフト』と呼ばれる異能力を持つPCを操り様々な陰謀が渦巻く中戦い、生き残る事が目的です。
能力者以外にも非能力者PCも歓迎します。
能力は無限、エンディングも無限。
物語を綴るのは、参加者であるあなた自身。
3 :
◆ZpT5810vjc :2006/05/13(土) 03:59:13
【用語解説】
『ギフト』:
ごく稀に、死に直面した人間が物理法則を無視した不可思議な能力に目覚める場合がある。
人々はそれを「与えられた力」という意味を込めて『ギフト』と呼んだ。
『ギフト』を持つ者の中にはそれを悪用する犯罪者が多く、ギフト能力者全体の社会的な評価は極めて低い。
その為、殆どの『覚醒者』は自分が『ギフト』を持っている事を隠して生活している。
原理や法則等、未だ解明されていない部分も多いが、現在判明している事項は以下の数点。
・素質が有る者は死に直面した際『ギフト』に覚醒する。
例え『ギフト』に目覚める素質が有ったとしても、死に直面する事無しには『ギフト』を覚醒させる事は出来ない。
また、素質が無い者が『ギフト』に目覚める事も無い。
・全ての『ギフト』にはそれを使用する為の条件が存在する。
例えば水、鏡、十字架。例えば接触、詠唱、指を鳴らす事。例えば密室、雨天、空中。
『ギフト』を使用するのに必要な物、行動、或いは環境が揃っていなければ『ギフト』は使えず、
使用条件の厳しい『ギフト』ほど強力な作用を引き起こす。
・原則として『ギフト』は一人の人間に一つ。複数の能力を持つ事は有り得ない。
・能力者は『ギフト』を持っている事を除けば普通の人間である。
『ギフト』を得たからと言って、追加効果として身体能力が向上したり、または外見が変化したりする事は無い。
4 :
◆ZpT5810vjc :2006/05/13(土) 04:05:17
【用語解説】
・『LM(リキッド・メソッド)』:
能力者犯罪を防ぐには同じ能力者の力が必要だという主張の下活動する、対ギフト治安維持組織。
現在は東雲市警と表面上の協力関係を築き、水面下でギフト犯罪者の捕縛、捜索を行っている。
能力犯罪が発生するとその周辺に居る組織員の携帯(本部より支給)にリアルタイムで事件発生の位置、詳細、ターゲットに関する情報等が送信される。
本部からの指令を受け取るか本部への応援要請以外では組織間での接触は無く、組織内での横の繋がりは組織員が積極的に動かない限り構築される事は無い。
その為、同じ組織員でも面識が無いなどという事は多々ある。
勿論、LMに所属しているという事は『ギフト』を持っていると言う事になる為、自分がLMの組織員である事を明かす者は少ない。
組織、と言うよりは能力者によるコミュニティーシステム、と言った方がいいかも知れない。
5 :
◆ZpT5810vjc :2006/05/13(土) 04:08:01
【テンプレ】
名前:
所属:
性別:
年齢:
職業:
容姿:
GIFT:
補足:
6 :
名無しになりきれ:2006/05/13(土) 04:21:07
名前:臥待静司(ふせまち せいじ)
所属:LM
性別:男
年齢:26
職業:事務職
容姿:後ろ髪に比べると前髪の長い黒髪。丸みを帯びた黒い瞳に半月型の眼鏡。姿勢の良い細身な体にスーツを着ている事が多い。
GIFT:無し
補足:
LMの創始者にして総括者であると同時にLM唯一の非ギフト能力者。
丁寧な物腰と柔和な表情からはその内心を読み取る事は難しいが、ギフト犯罪における情報整理、組織員の管理等を一手に引き受ける処理能力は確かなもの。
唯一とか書いちゃうと…
8 :
名無しになりきれ:2006/05/13(土) 07:26:31
名前:遠藤陣耶(えんどう じんや)
所属:無し
性別:男
年齢:35
職業:工場勤務
容姿:癖のある黒髪。無精髭。色素の薄い茶の瞳。
GIFT:『ブラッディ・メアリー』
使用条件は自分の血液が自分の体から離れた場所に付着、或いは飛散している事、その血液が乾燥していない事、の二点。
以上の条件を満たした上で『crack』と宣言した瞬間、血液が小規模に『炸裂』する。
補足:
5年前に起きた殺人事件の犯人。
現在は身分を隠しながら社会に溶け込んでいる。
名前:尾幌零次(おぼろ れいじ)
所属:元LM(現在LMの超特殊独房にいる)
性別:男
年齢:??(外見は二十歳前後)
職業:なし。
容姿:切り揃えてある青髪。光が沈殿したようなドス黒く淀んだ瞳。
つねに嘲笑するような笑みを浮かべている、
GIFT:『God to choose(選択する神)』
1・使用条件は対象相手と握手形式で手を握る。
握手するさい手と手の間に障害物があると発動できない。
例・グローブをはめている、手袋をしている、など。
2・対象相手と会話を5分間持続する。
この方法を使った場合24時間経たないと二回目が発動できない。
上記のいずれかを満たすのが発動条件、対象相手を2分間思い通りにする。
幻惑を見せたり精神的に破壊したり肉体を自発的に損傷させるよう仕向けたり(例・自殺など)
一時的に味方につけたりなど様々。
さらに対象相手が違う相手に上記の行動をした場合でもその人物を制御下に置ける。
例・零次はAさんと握手する→Aさんを洗脳→洗脳されたAさんがBさんと握手する。
Bさん洗脳→・・・・という風に感染していく。
条件を満たしていれば何人だろうと制御下における。
補足:
LM創立時から居たGIFT使い。的確で冷静な対処力、
周囲への気配りなどによって皆から信頼されていた。
尾幌がまだLMの一員として働いていたころにはLM本部には非能力者が多くいた、
だが尾幌零次は非能力者に対する能力者の差別は変わらないことを悟り
LMに所属する全ての非能力者を殺害、
そしてその場で取り押さえられ現在は対超能力者用特別独房にて監禁。
10 :
LM通信記録 ◆ZpT5810vjc :2006/05/13(土) 12:55:54
・新着メッセージ:一件
「おはよう、諸君。
いや、この指令を見る頃には夜かもしれないな、こんにちはとこんばんはという言葉も付足しておこう
先日のニュースは見てくれただろうか。
諸君らの中には現場付近に居て指令をそれよりも早く受け取った者も居るかもしれない。
今回の指令は銀行強盗の捕獲、及びそれに関する情報の収集だ。
ターゲットは霧生真(きりゅう まこと)、年齢19。今更言う迄の事も無いと思うがギフト犯罪者だ。
事件の発生は今から三日前の午前3時。ターゲットは東雲市第一銀行を単独で強襲。
驚くべき事に彼はその身一つで銀行の鍵はおろか金庫の扉そのものを突き破って犯行を行ったらしい。
逃走現場に居合わせた組織員の情報によれば、黒い手袋をし、黒いバンダナを目深に被っていた、との事だ。
……まぁ、銀行強盗をするのに手袋や顔を隠す道具など別段珍しいものではないが。
こちらの情報の方が相手のギフトや居場所を探るのに役に立つだろう。
彼は逃走時に『空を飛んで逃げた』。それと、足音が嫌に響く靴を履いていたらしい。
金庫を突き破る程だ。相手のギフトは高い攻撃力を持つと予想される。くれぐれも気を付けてくれたまえ。
それでは、諸君の健闘を祈る。」
11 :
東雲TV放送記録(抜粋) ◆ZpT5810vjc :2006/05/14(日) 06:24:23
「では、次のニュースをお伝え致します。また、ギフト能力者による犯罪です」
「はい、こちら事件の起きた東雲第一銀行前です。
犯人は今日の午前3時頃、この扉を突き破って、銀行内に進入しました。
警察の調べによると、犯人は金庫の扉を突き破り、金品凡そ50万程を奪って逃走。監視カメラの映像から若い男だという事が判っています。
道具等を使った形跡が無い事から犯人はギフト能力者であると考えられ、現在現場に残された指紋等から犯人の特定を急いでいる、との事です」
画面は切り替わり、監視カメラの映像が流される。
犯人と思しき黒ずくめの男が、金庫の前で立ち止まり、片手の手袋を外す。男が金庫の扉に触れると、扉が金庫の内側に向けて吹き飛んだ。
明滅する赤いライトに照らされた中、男が金庫の中に緩慢な足取りで入っていく。
「多発するギフト犯罪。近年になって増加の一途を辿る犯行に、警察も対応しきれない状況です。
このまま彼ら能力者を野放しにしていても、いいのでしょうか?
CMの後は、話題のあの人の婚約会見です」
数秒程の番組テーマソングが流れながら、CMへフェードアウト。
名前:笹沼藤男(ささぬま ふじお)
所属:無し
性別:男
年齢:42
職業:陸上自衛隊一等陸佐
容姿:多少背が低く、猫背。近視であるので、古臭い丸眼鏡を掛けている。
GIFT:「死者の復員」
古今の戦場で戦死した兵士達をその場に召還し、自らの部下として操る能力。
その際に呼び出された兵士は、死亡直後の姿をしており、生前の記憶を元に銃や刀剣を使用する。
いわゆるゾンビで、身体能力も低いが、僅かながら知能が残っており、階級意識も残っている。
発動条件は、武器となるような物を一切手に持たず、両手を挙げた状態で「帰還せよ」と口にする事。
また、召還場所にはある程度の広さが必要で、召還出来る人数は自身の精神状況に影響される。
補足:現役の陸上自衛官。自身もギフト能力者でありながら、熱狂的なギフト排除論者。
指揮下部隊に所属する隊員の一部を密かに私兵化し、悪人と判断された能力者の排除を行っている。
彼らの行動は政府や上層部の判断などではなく、全てが笹沼の独断によるものである。
「笹沼一佐、少々よろしいでしょうか?」
東雲市北部に位置する、陸上自衛隊東雲駐屯地内にて。
執務室に置かれた、革張りの高級そうな椅子に座っている将校に、一人の隊員が話しかけた。
「何だね?頼んでおいた報告書の件ならば、机の上にでも置いておいてくれたまえ」
「了解しました!」
敬礼と共に隊員が去った後、椅子に腰掛けた将校は、先程の隊員が提出した報告書に目を通し始めた。
内容はギフト犯罪の増加傾向や、これまでに判明しているギフト犯罪者に関しての、詳細な情報の数々だ。
「まったく……こんな能力者などいらんのだ…全て駆逐せねばならん……祖国の為に……」
誰に言う訳でもなく、彼は一人で呟いていた。
「一番最近なのは……霧生真、銀行強盗、か。次の標的はこいつだな……」
陸上自衛隊第9普通科連隊連隊長、笹沼藤男一等陸佐。それが彼の肩書きと名前である。
何の因果か、能力者を執拗に嫌う彼もまた、ギフト能力者の一人であった。
14 :
名無しになりきれ:2006/05/15(月) 01:43:57
「送信完了」。その文字が画面に映し出されたのを確認すると、臥待清司は小さく息を吐いた。
この部屋は形式的には「LM本部」という事になっている。
「本部」と言っても、臥待が個人的に間借したこの場所は、東雲市郊内のオフィスビルの一室に過ぎない。
LMには組織間に軍隊や法治機関程の強固な繋がりは無い。
公な組織でもない為に、この本部の場所を知る者もLMのギフト能力者の中でも数人しか居ない。
LMは組織員のギフト能力者に指令を送り、各能力者から集まった情報、或いは人員を、それを必要としているギフト能力者に提供する。
政府との交渉、という一点を除けば、LM本部はそれ以外の活動を行ってはいない。
情報を集めるのも、ギフト犯罪者を捕縛するのも、また、ギフト能力者を留置、或いは保護するのも、全てLMの組織員が行っている。LMのギフト能力者は指令を元に、自分の思考で自分に出来る事を自分の出来る範囲で行う。
本部との繋がりは支給される携帯端末一つ。それが、幾重にも伸びる細い縦の繋がり。
必要な時以外は組織員の個人情報は開示されず、殆どの組織員がLMの総人数すら把握して居ない。横の繋がりは、本部によっては構成されない。
LMは全構成員が細胞であり、同時に脳でもあった。また、LM本部は脳ではなく反射神経のみを持った脊椎だった。
詰まる所、LM本部には定められた住所など必要無く、伏待清司と携帯端末と通信に足る電波さえあれば、そこがLM本部なのだ。
「さて」
携帯を開きながら立ち上がる。ぐ、と一度背筋を伸ばせば、その姿勢は保たれたままになる。
臥待は携帯を持って居ない右手で黒い鞄を手に持つとオフィスビルの一室、LM本部を後にした。
いや、臥待清司の足を借りて、LM本部が動き出した。
「……臥待です。今からそちらに向かいます。『尾幌零次』への面会許可を。……ええ、20分程で」
名前:斉藤克也(仮名)他にも加藤隆司や桐山太郎など名前が百種類ある
所属:無し
性別: 男性(男性によく変装するため)
年齢:不明
職業:殺し屋
容姿:不明・・・変装している為
GIFT:『デス・タッチ』
発動すれば人を確実に殺せる能力で発動条件は
1・目標の名前と歳を知る
2・目標と最低でも5分会話する
3・目標の私物を貰う
4・1〜3をこなした後目標に別れの挨拶をして握手した後斉藤の意志でいつでも殺せるようになる
補足:政府から多額上の懸賞金もでている殺し屋で
成功率は100%という殺し屋さらに常に変装してるため彼の正体を知る者はいない・・・
俺は今、レストランで大物政治家と握手を交わし別れた。
(今から2時間後に"死"をセットした・・・・・・これで目標はあの世行き・・・だな)
俺は政治家の持っていた煙草を吸いながらそのレストランを後にした。
2時間30分後、ニュースで目標が突然死したと発表された。
俺はクライアントに依頼成功のメールを送った後
また姿を変えた。
新しい依頼が来たからだ。
(表向きは「能力者」を嫌ってる連中が・・・「能力者」で有名な俺に何通も依頼を送ってきやがる・・・
ま・・・人間は自身の障害をどんな手を使ってでも処分したいからな・・・仕方ないか)
俺は次の依頼へと向かった
期待age
始まって早々に過疎かよ!
「ちっ、シケてるわねー、この辺りでまだ捕まってないのコイツだけじゃない。」
PCのモニターには、絞り込み検索で抽出されたターゲット情報、霧生真に関してについての情報が映っている。
LM所属員専用のwebサイトによれば、そいつはどうやらガチンコ戦闘系のGIFT持ちらしい。
名前を割り出されるようなヌケサクだ、私のGIFTなら居場所の特定は可能だろう。
問題は、だ。こいつを確保するのにかなりの危険が予想される事。
いやいや、危険は別に問題じゃない、そんなのしょっちゅうだし、
戦闘に長けたGIFT持ちじゃなきゃスタンガンでの不意討ちで今まで何人か捕まえてきた。
が、コイツを捕まえるとなると、こちらも相応の戦闘GIFT持ちで対抗するのが賢い。
そして本当の問題は、こいつを確保するのに仲間の協力が必要であり、その為”報酬が減る”事。
このクラスの仕事は危険の割にそれほど旨みは無い、出来ればスルーしたいが…、
私の現在の経済状態がそれを許さなかった。
「ちっ、引き受けりゃいーんでしょ、引き受けりゃ」
誰にとも無くブツブツ文句を言い、PCのキーボードを叩くとモニターにこのような文が成立する。
「霧生真についての情報ありマス。情報料、報酬額の70%」
そしてモニター内のポインタが書き込みボタンへと向かい、私の意思は他のLMの人間に発信された。
名前: 佐々木奈々子
所属: LM
性別: 女
年齢: 3年前から29歳
職業: 元フリーライター、現情報屋兼賞金稼ぎ
容姿: ショートで茶髪、スリムだがメリハリ無し、美人か非美人かと言うと、ギリギリ美人の部類
GIFT: Ghost memory いわゆるサイコメトリー能力。目を閉じて10秒ほどの意識集中をすることにより
その場に残る残留思念を読み取ることが可能。
補足: 元は非能力者だったが、GIFT保有犯罪者に襲われて、一度死にかけ、
それを契機に能力に目覚めた稀なケース。
(次の目標は銀行強盗・・・しかも能力者か・・・)
俺は着替えながら次の依頼を確認していた
(条件1はクリア・・・後は奴と接触しなければ駄目か・・・・・)
俺は交渉人の格好に着替えた後
急いで現場に向かった・・・
22 :
LM通信:2006/05/19(金) 15:44:03
>>19 『霧生を捕まえに行くのなら気をつけてください・・・例の殺し屋も現場にいるそうです・・・
尚、付近には非能力者の警官隊もいるので
周りを壊す能力者は連れて来ないで下さい』
「……アホかーーーっ!!」
思わずPCのモニターに罵声をぶちまける。
まぁ破壊系能力者を連れていったところで、全て犯人の能力によるものだったと言う事にすれば、
丸く収まる、別にシカトしても問題は無い。全然無い。
だけど殺し屋まで相手にする可能性が出てくるとなると…、
「こんなはした金で冒せるリスクかってーの、くそ。賃上げ交渉しちゃる、3倍はもらわないと…。」
とりあえず、賃上げ交渉の結果は回答待ちと言う事にして、携帯端末へ返信をもらう様連絡し、
どの道情報集めはせにゃならんだろうと、事件現場へと向かう事にした。
いま俺は"交渉"として目標と話していた
もう後は握手をして別れの挨拶をすれば何時でも「死」をセットできる
(もうすぐしたら君はこの世とお別れだね・・・霧生)
そして俺は握手をして別れて奴に死をセットした
(霧生・・・君は後一時間後に死ぬようにセットした・・・最後の一時間・・・存分に楽しむがいい)
俺はそう呟くと
「交渉は無理だった・・・」
と警官隊に言い
自分の車に乗り現場を後にした
お前島スレは放置かよ
同一人物だってバレバレだよ
文才の欠片もない文章とか
おい
>>25よ、そんなコト言ってやんなよ
そういうコト言っちゃうと書かなくなっちゃうだろ?
こんな書こうと思っても書けないくらいヒドい文章は他にないんだから好きに書かせてやんなよ。
せっかくの爆笑(嘲笑)ネタが無くなっちゃうじゃないか。
つっても飛ばし読みが関の山には違いないけど。
>>27 同感。このまま他の人が動くのは色々キッツイ。
>>24にいたる過程とかを活用するのがベターか。
最悪スルーもあるだろうが、あんまりしたくないだろうし。
29 :
名無しになりきれ:2006/05/20(土) 00:55:04
そもそも三日前の事件現場で一人で何やってんだコイツ
30 :
遠藤陣耶:2006/05/20(土) 01:47:26
東雲市内の工場に勤めて、暫くになる。
工場の中で、遠藤陣耶の評判は悪くない。
時間に遅れて来るような事も無ければ、仕事には真面目に取り掛かる。強いて彼の問題点を挙げるとするならば、寡黙で愛想が悪い、と言った事ぐらいだった。
遠藤陣耶は自分の事を話さない。
だから、彼が今、何故東雲第一銀行の前に立って居るのかを知る者は居ない。
野次馬も疎らになり、入り口に立つ警備員にも見慣れてきたこの事件現場を、遠藤陣耶は半眼で見上げる。
遠藤陣耶は犯罪者だ。
故に、彼はこの街を監視する無数の目を知っている。
遠藤陣耶は能力者だ。
故に、彼はこの場に居る人間が野次馬や銀行の利用客だけではない事を知っている。
そうして、遠藤陣耶はこの銀行を眺める。一時の憂慮と、一握りの好奇心を抱えたまま。
一頻り人並みの中で立ち止まると、また彼は溜息を吐いて歩き出すのだ。
だが彼はまだ知らない。
その足の向かう先、或いはその背中が向いた先で、争いが起ころうとしている事を。
31 :
霧生真:2006/05/20(土) 02:15:54
「ちょろいもんだぜ」
それが、銀行の扉を突き破った最初の感想だった。
霧生真は瓦礫に腰掛けたまま、三日前と同じ台詞を繰り返す。
金庫にあった札束を掴み取って、サイレンが鳴り響く銀行を後にする。警察が彼を取り囲む隙どころか、到着する暇すらも与えない。
逃げる途中で何人か能力者らしき人物に遭遇したが、迅速さと無遠慮さにかけては彼の右に出る者は居なかった。
今日だってそうだ。スーツ姿の男が、彼の顔を見るなり話しかけてきた。
わけの解らない事を言っていたので殴り飛ばしたら、軽く5メートルは吹き飛んでいった。今頃は気絶した頭で夢でも見てるに違いない。
俺を捕まえる事など、誰が出来るだろうか。
彼は潜伏している廃ビルに響き渡る程の声で笑った。
警察は無能だし、ギフトを持たない人間は無力だ。
威嚇と正当防衛以外では発砲する事すら許されない日本警察では、俺を捕まえる事など出来るものか。
殴り飛ばすだけで死んでしまいかねないような人間に、俺の動きを妨げる事など出来るものか。
ああ、そうだ。あの夜、LMの連中から逃げ回ってた時が、一番楽しかった。
まさか空を飛ぶとは思っても居なかったのだろう。能力者の一人の呆けた顔を思い出しながら、彼は満足げに立ち上がる。
娯楽に湯水のように使い、半分程の厚さになった札束で掌を叩きながら、彼は今日もこの街の暗い所へと降りて行く。
事件の発生から数日経ったとはいえ、現場となった銀行には未だ幾らかの野次馬がたむろしている。
その中に笹沼は居た。普段の立派な軍服ではなく、個性の無い黒いコートを身に着けて。
「何か手がかりが残っていればいいが……警察が全部拾ってしまったかね」
以前は指揮下にある隊員が情報収集を行っていたが、最近はこのように笹沼自身が活動する事が多い。
それは、彼の上官達が部隊の不自然な動きに疑いを持ち始めているのに気付いたからだ。
だから彼は部下達を集めて「一時解散」だと言い渡し、自らの私兵として操っていた部隊を解散させた。
それ以来、まったく部下を連れず、それまでよりも酷く地味な単独行動を始めたのだった。
「……他所で聞き込みをしたほうが良さそうだな…」
諦めるように小声で呟くと、軽くため息をつきながら、東雲第一銀行を後にした。
捕縛を成功させた者のメリットはやはり褒賞金などだろうけど、どこから渡されるのだろうか?
アメリカのバウンティハンターの如くギフト能力犯罪者には賞金がかかって、捕まえたらLMが仲介役として警察に引き渡す方法か?
パラレル日本だし。
過疎age
36 :
名無しになりきれ:2006/05/28(日) 19:17:25
シェアワールド?
懐かしい単語が出てきたなぁ。
昔立て逃げしまくる奴がいたのさ
ろくに練っていない企画でスレをたてる
当然人は集まらない
次のスレをたてる
やっぱり脳内満足な企画だから第三者はポカンとしかできない
またスレをたてる
を繰り返して二桁のスレをたてたんだ
その中の一つがシェアワールドスレ
それ以降立て逃げスレに侮蔑の意味を以て言うんだ
また、シェアワールドの1か!と
立て逃げがたい量発生してTRPG系スレ全体の風当たりが強くなり、立てにげを抑制するためにスレを立てる
前に企画を練ったり募集するスレ立て相談所なんてスレがたったくらいなのさ
とりあえずこのスレどうするよ?
心機一転してなな板初のオールギャグTRPSにシフト!
確実に糞スレになるから却下
43 :
名無しになりきれ:2006/05/30(火) 23:10:01
とりあえずageるか
再利用案募集ってやつだな。
とりあえず新たなGMが出てくればこのままいけるかもしれんけど……
GMてどんな事するの?
大まかなストーリーの提供が主な役目か?
世界設定
条件提示
ストーリー提供
障害投下
時間進行
随時修正
問題裁定
あとこのスレの場合はギフト犯罪者(全部とは言わないが)を演じたりもする役目があるんだろうな。
>>47-
>>48 ようはPCに今何をするか設定したり
敵を演じたり
今の状況を設定するのがGMか?
50 :
名無しになりきれ:2006/05/31(水) 21:47:44
それで大体おkじゃん?
LM所属者達に一通のメールが届く。
『諸君、遂に霧生の居場所を突き止めた。
現在、奴は「旧東雲鉄道の廃ビル」に隠れている。
至急その廃ビルに向かって欲しい。
尚、霧生は出来る限り傷をつけずに捕獲してくれ。
頼んだぞ。』
52 :
GM ◆ZpT5810vjc :2006/06/01(木) 20:10:37
出来る限りGMとしての意見は書き込むべきではない、
と考えていましたが、そうも言っていられない状況ですのでお目汚しを失礼します。
言い訳から申し上げれば、まだこのスレのGMは立て逃げをしているとは思っていません。
PCからの書き込みが一通り済み次第次の書き込みをしようと思っていましたが、些かその保留期間が長すぎた事。
また、世界観やルールを出来る限り簡略にしようとした結果、却って説明不足になりそれが掴み難くなってしまった事。
物語の導入部分の不手際に関しましては全面的にお詫びさせて頂きます。
53 :
GM ◆ZpT5810vjc :2006/06/01(木) 20:27:36
この機会に幾つか上がった質問、意見に関してお答えさせて頂きます。
・ギフト能力に関して
具体的な制限が無い方がPC設定において自由度が上がる。
その発想を元に敢えて「能力には必ず使用条件がある」といった一文のみをルールとしました。
どんなに強力な能力を設定として備えていても、あらゆる能力には弱点がある。
そうする事で強力すぎる能力への対応策、抑止力とし、PC全体の動きによってはバランスを崩したPCを戦闘で倒す事を可能にしよう、というのがこの設定の目的です。
・決定リールに関して
また、ルールを最初に書き並べ過ぎると参加者からは取り付き難い、と考え、必要最小限の記述のみに留めました。
非奨励、とは不可避の状況以外では使用をしないで欲しい、というGM側の希望が元になっています。
そう記述しなかった理由の一つは、やはり参加者の自由をルールで縛る事によって妨げたくなかった事。
また、もう一つの理由は「非奨励」と記述する事によってGMの決定リールの容認をさせる為です。
仮に決定リールを過度に連用するPCが居たとしても、それをGM或いは他PCの更なる決定リール、或いは後手キャンセルによって防ぐ事が出来る。
それは「決定リールをしたら後手キャンセルをされるかもしれない」という抑止力にも繋がります。
極論を言えば、「自分が決定リールをされたり、後手キャンセルをされる覚悟があるなら決定リールをしてもいい」というスタンスです。
また、前述の項目と重なりますが、「運命的としか言えないくらい不利な状況や勢力関係に立たされても構わないのであれば強すぎるキャラを作ってもいい」とGM自身は考えています。
詰まりは、ゲームバランスは参加者の良心に一存しよう、と考えていました。
ぶっちゃけPCへのネタフリが悪かったね
とりあえずキャラが残ってるか点呼をとるといいかもしれない。
56 :
GM ◆ZpT5810vjc :2006/06/01(木) 21:05:46
勿論、そういった極論を元にゲームバランスを崩すPCが乱立するのは好ましくありません。
相手が殺す気でくるなら、当然襲われる側も殺す気できます。「殺される覚悟があるなら」当スレッドはPCの殺害すらも黙認します。
ただ、TRPS(PB3)を楽しむには、必ず他参加者の強力が必要な事。決定リールの掛け合い程不毛な事は無い事を念頭に置いて頂きたいと思います。
もっと乱暴な言い方をすれば、「お前ら全員空気読め」。尤も、このような事態になってしまった原因はGMが空気読めなかったからなのですが。
・LMに参加するメリットに関して
LMは組織と呼ぶには組織員間の繋がりが希薄です。
LM本部は組織員に情報を提供します。その情報も、LMの組織員が集めたものを整理して提供しているのみです。
しかし、その情報こそが、LMに参加する最大のメリット。
LMが持つ能力者同士のネットワークは、能力者にとって必要な情報を最も早く、信憑性を持って伝えます。
例えば東雲市警によって懸賞金が掛けられた犯罪者の情報。例えば目的を達成するのに必要な能力を持つ人物の情報。
例えば差別や迫害から逃れる為の隠れ蓑。例えば幼いながらに迫害を受けた能力者の保護。
LM組織員は目的を達成する為にLMの情報網とコミュニティーを必要とします。
また、LMでは任務に必要な情報が優先的に与えられるので、任務に当たる事が間接的に目的の情報への手掛かりとなります。
逆に言えば、差し迫った目的の無い能力者や、非能力者はLMを必要としません。
珍しい例として、目的も無く任務にも参加せず、「なんとなく」能力者であるからLMに参加している組織員や、犯罪者である事を隠してLMに参加し、情報を得ようとする組織員も居ます。(後者の正体がばれ、LMに補足されるのは時間の問題ですが)
57 :
霧生真 ◆ZpT5810vjc :2006/06/01(木) 21:54:53
時刻はPM6:12。
東雲第一銀行で事件が発生してから、3日と15時間。
以前として犯人の指名手配は解けていないというのに、霧生真は人混みを噴水の縁に腰掛けて眺めていた。
東雲市中心街、帯刀(たちはき)ビル前。
歓楽街に程近く、交通の便も良いこの場は、夕方頃には見事に人の波が出来上がる。
人と人の隙間から見え隠れする灰色のサマーコート。ポケットの中に入れた両手。赤いバンダナから零れる、色素の薄い茶髪。
時折り地面で踵を叩けば、カツ、と小さな音が響き、それが無数の足音の中に消える。
LMの能力者によって塒(ねぐら)としていた廃ビルが特定された事を、彼は知っている訳ではない。
今日に限って街中まで遊びに出た事は、彼にとって幸運だったかもしれない。
残った7万程の金で何をしようか。
通り掛る女性の姿を不躾に物色しながら、彼はそう考えていた。
霧生真は完全に油断していた。否、彼は最初から毛程の危機感も抱いては居なかった。
「ねぇねぇ、待ち合わせ? 今暇?」
だから、彼は普段と同じように生活を送る。
日常に「逃走」というエッセンスが加わっただけだ。愉快犯めいた思考で、彼はこうやって近くに居た女性に声を掛ける。
58 :
佐々木奈々子:2006/06/01(木) 22:15:35
そんでー、霧生クンは斉藤克也(
>>24)に死のタイマーをセッとされて事実上死亡状態なのは
どう整合性をつけたもんだか、、すっと迷っていたんだけど。
ここら辺すっきりしないと、どうにも話進めづらいのよねー。
59 :
GM ◆ZpT5810vjc :2006/06/01(木) 22:18:43
>>58 >>31参照。「いきなり話しかけてきたスーツ姿の男の夢」。
後手キャンセルを行使します。
そうでもしないと話が噛み合いません。
GM権限使用の>24破棄でいいんじゃないかな。
あの当時>57のような説明ももなく霧生の扱いが判らなかった以上、斉藤の行動を一方的に攻められるわけではないけどな。
61 :
暁月夜 鈴:2006/06/01(木) 22:37:44
【テンプレ】
名前:暁月夜 鈴(あかづくよ れい)
所属:LM
性別:女性
年齢:23
職業:小さなカフェの店員
容姿:
漆黒髪のボブカット。ノースリーブかTシャツに上着を一枚羽織り、Gパンとスニーカーというラフな服装が多い。
引き締まった体つきをしているが、どこぞの発育は微妙。身長165cm/体重53kg。
GIFT:未完鏡-STAINED GLASS-
対象者の身体に直接触れる事によって能力をコピーするが、威力はオリジナルよりも劣る。
対象者に触れたまま能力を発動させた場合に限り、オリジナルと同等の威力を発揮できる。
使用時間は対象に連続して触れていた時間の10倍。
時間切れや強制終了した場合はリセットされ、再び能力をコピーしなければならない。ただし、複数の能力はコピーできない。
補足:
普段はノホホンとした能天気な性格だが、戦闘態勢に入ると好戦的で口調も悪くなる。
喧嘩は滅多に売らないが、売られた喧嘩は衝動買いに走る傾向あり。
学生時代の部活動では陸上や柔道を掛け持ち、卒業した今では週3回くらいジムに通っている。
自動車免許を持ってはいるけれど、交通の利便性をとって自転車が主。
過去に喧嘩した時、運悪く能力者と交戦。その時に能力に目覚めた。
能力に対する恐れと扱いに戸惑っていたところ、LMの一人に援助を受け自分も所属する。
LMのメールにて公開された場所「旧東雲鉄道の廃ビル」へと足を向けてみた。
生活の跡はあるものの、肝心の霧生はそこにはいなかった。
「逃げちゃった?それともまた稼ぎに…?」
右手を腰に当て、左手で後頭部を掻きながら盛大に溜息を吐く。
たまたま近くを通り掛った時に受け取ったメール。
もし可能なら話あってこれ以上の犯罪を止めさせたかったが、無駄足に終わってしまった。
「…っと、もう仕事の時間か。また時間を置いて来てみるかな」
時計を見れば、訪れてから結構時間は経っていた。
踵を返して廃ビルを後にする。
【テンプレ】
名前: 秘守 紀子(ヒモリノリコ)
所属: LM
性別: 女
年齢: 24
職業: 美大予備校講師。だが、滅多に仕事はしない。
容姿: 黒く長い髪。やや白髪混じり。白髪染め愛用。
見るからに虚弱体質。155cm/45kg。
年上に見られがち。
GIFT: 泡 「bubble」
己を中心に、半径約2mの無色透明の球体を発現する。
範囲内の物(人物含む)を、ギフト能力の対象に出来なくする。
また、既にギフトの影響を受けていた場合、
その効果を軽減、或いは遅延する。(打ち消す事は不可。)
一見、敵がないように思えるが、能力発動中、
紀子ないし範囲内の物は暴力的行動ができない。
紀子自身がそうしようとした場合、泡は弾けてしまい、
他者がそうしようとした場合、泡の能力外となる。
一度抜けてしまった場合、再度泡を発現させる必要がある。
発現条件は特にないが、代償として紀子は記憶が欠落していく。
また、紀子に強い情動があった場合は、その意志に関係なく発動してしまう。
補足: 非常に臆病者。疑心暗鬼に捕らわれやすく、被害妄想も多々ある。
と言うのも、全ては発動の代償として記憶が欠落してしまうからである。
対策として紀子は事ある毎にメモを執っている。
が、メモを執る姿が人に見られるのが非常にストレスとなる。
人混みが嫌いで、街中ではしばしば酔ってしまって倒れそうになる。
消極的、非協力的で自分にまったく自信が持てない自分を変えたくて、
そして同じような苦しみを持った人に逢いたくてLMに所属するも、
悠長な出逢いを求めるものではない現実を知り、落胆する。
能力に目覚めたきっかけは、
自殺に失敗した際に輸血された血液にあるのだと推測している。
出来るものならば、この能力を失いたいと願っている。
久しぶりにパソコンのメールボックスを覗く。
古い方からゆっくり目を通していく。
妙な高揚感を覚えたが、すぐに馬鹿馬鹿しくなった。
「期待…?」
メールボックスに親しい誰かからのメールなんてあるワケがない。
私に友達なんて…いない。
予備校からの催促、親兄弟からの叱責、
以前通っていた病院からの予約の件、そして山のようなスパムメール。
ああ、見るんじゃなかった。
そう思った。
それでもゆっくり画面をスクロールしていく。
また馬鹿馬鹿しい気分になる。
ふと、目が止まった。
一番最新のメールがLMからのメールだった。
「廃ビル…」
紀子はポケットからメモを取り出して廃ビルの住所をメモした。
「なに、メモ執ってんの?自分…」
そしてゆっくり立ち上がると、
お気に入りの白いワンピースに着替え、玄関に向かう。
外に出るのは四日ぶりだ。
廃ビルについたときには人の気配はまったく感じなかった。
一人廃ビルの前に立ち尽くし、
気付けばメモを片手にこの目の前の建物を写生していた。
絵を描きながら考えていた。
そしてわかった。
私は、外に行く口実が欲しかっただけなんだ…と。
紀子は人がいないとばかり思っている。
今は、何だか絵がきれいに描ける気がする。
メモ用紙の落書きに対し、いつの間にか紀子は夢中になっていた。
名前:村田日向
所属:LM
性別:男
年齢:24(自称)
職業:ニート
容姿:
髪は肩のあたりで切りそろえられ、そばかす一つもない色白の顔には申し訳程度に化粧がされている。
ロングスカートをはき、ひらひらした薄いシャツをトリコロールカラーで重ね着している。外見はまごうことなき女性。
背は159センチ、声変わりは不完全。少なくとも初見で男と見破られることはまずない。
GIFT:丸散覚死角
対象となる人間の半径約10メートル内に存在する「死角」に瞬間移動する。
条件は「非密室」において「対象が村田との高低差0.5メートル以内」にいて「村田が対象を視認している状態」で「指を鳴らす」こと。
「死角」がない場合かつ対象の真後ろに瞬間移動できるだけのスペースがある場合、対象の真後ろに死角を「作り出して」から瞬間移動する。
補足:
本来「村田日向」なる人物は女性であり、ギフト能力者ではあるものの「丸散覚死角」の能力者とはまったくの別人である。
本物の「村田日向」の愛人が「丸散覚死角」を持つ彼であり、多忙な本物の変わりに「村田日向」を名乗ってLMとして活動している。
彼が女性を演じているのはそのためで、実際の彼の年齢はもう少し下だと考えられる。
多少の武術を心得ており、常に「死角」を作り出す能力と相まって仕事は今のところ順調。
俺は携帯電話を開けた。開けたところで気分は内側へ閉じてしまった。
メールの内容は例の『目標』が近くの廃ビルで発見されたというものだった。
いちいち間抜けな奴である。そもそもの銀行強盗でさえ、防犯カメラに映るのはおろか、それが朝のワイドショーで連日垂れ流されているのだ。
そして今回の『目撃情報』がLMに行き渡っているのなら皆、廃ビルに向かっているはず。
目標は既に廃ビルを離れたと考えるのが妥当だが、誰かが『捜索』に成功して捕獲するのは時間の問題だろう。
だが俺のギフトは『尾行』と『タイマン』には長けるが、『捜索』と『多対一』には向いていない。
だから『私』が恩賞を得るのは不可能なんだ――。
そう思っていたとき、握っていた携帯が急に震えだした。ディスプレイに『村田日向』の字が点滅している。俺は通話ボタンを押す。
「もしもし」
「言っておくけど、仕事サボろうとか考えてるようだったらタダじゃおかないから」
「……」
「誰が援助してあげてるかわかってる? 誰のお陰で無職の君が――」
「……サー、イエッサー。日向さんのお陰です」
「よろしい。じゃあ頑張ってね、『田村日向』さん?」
「わかった『わ』、了解『よ』」
……。
俺は身支度を済ませた。と同時に私は『俺』を捨てる。
私の名前は村田日向。LM所属の24歳。賞金と名声の獲得のため、私は廃ビルへ向かう。
>>64 廃ビルの前に一人の女性が立っている。
距離があるためよくは見えないが、熱心に何かをかいているらしく(ジャーナリストかしら?)こちらには気づいていないようだ。
(報道関係者なら情報を聞き出してみるのもいいかもしれない)
ダメ元で話しかけてみよう。どうせ情報はないのだ。
「あの……すみません。記者の方ですか?」
>66
「あの……すみません。記者の方ですか?」
「ひぅ!」
ビクリとした。
私だけしかいないはず…そう思っていたのに。
動悸が急に激しくなってしゃがみ込んでしまう。
何とかそれをごまかそうとして落としてしまったペンを探す。
(紀子にとって)あろうことかペンは声の主の方に転がっていた。
拾い上げるついでに、声の主を盗み見た。
女の人だ。
私はすっかり動揺してしまった。
人と文字以外で喋るのは一週間ぶりだろうか。いや、十日──。
とっさにいけないと思って小さく深呼吸をする。
思考が脱線している。
目を合わせて話さなくては。
ああ、でも。どうしても相手の顔を見れない。
見られるだけでも抵抗があるのに、目を見るだなんて。
冷や汗は…大丈夫。髪が隠してくれてる。
でも、変な声を聞かれてしまったし、メモを執っているところも見られた。
きっともう、私を──。
怖い。逃げ出してしまいたい。
けれど、このまま逃げることは出来ない。
これ以上、変な人だと思われたくない!
言葉、言葉を。
「ぇ…ぁ…」
どもってしまった。紀子は頭を横に振る。
こうすると少し頭が痛くなるが、
代わりに冷静になれる気がするのだ。
「わ、私は記者ではありません。…美術を…教えています。」
何かぎこちない。
しかし相手の問いに答えられた。
そう思った途端、相手の顔を見ることが出来た。
見ることは出来たが、やはり他人と接する勇気が無い。
(帰ろう…これ以上質問されても…)
(それに私はこの人のコト何も知らないんだから、義理もない…はず。)
(そうよ。私には関係ないわ。)
(この人がどんな思いでこんな所に来て、私に話しかけたかなんて…)
(…こんな所…?私、何で此処に…?)
(い、いいのよ。私はもう、関係…ナインダ…カラ。)
御辞儀を一つ済ませると、蚊の鳴くような声で「では」と告げると、
足早にその横を通り過ぎようとした。
紀子は気付いていなかった。
──彼女の能力‘泡’が発動していた。
名前:滝山誠
所属:LM
性別:男
年齢:22歳
職業:情報会社の社長
容姿:スーツ姿に眼鏡、髪形はオールバックで肌は青白い
GIFT:インターウォッチ
ネットに繋がってる全てのパソコンに忍び込める能力。(防御機能があっても忍び込める。)
発動条件は両手の指から自身の血を流してないといけない(乾いた血や痂も駄目)
補足:LM内での地位は副司令、真面目で優しい人。
司令がメールを送れない時、彼がメールをLM所属者に送る。
能力発動時に血を流すのでよく貧血になる。
ちなみに能力は、生れつきあったもので自覚しだしたのは中学の時から。
ひ弱だが武術に心得がある。
名前:黒部朋(くろべ とも)
所属:無し
性別:男
年齢:19
職業:フリーター
容姿:癖の無いショートの黒髪、細めの体、暗めの色の服を好んで着る。
GIFT:『Johnny's collar(ジョニーの首輪)』
(能力概要)
・頭を撫でることで小動物に自分の精神を乗り移らせることができる。
(制限)
・対象:猫くらいまでの小動物であること。
・精神転移中は本体は睡眠状態。完全に無防備で、周囲の状況もわからない。
・本体に触れるか、転移先の動物が死ななければ精神転移は戻らない。
・本体として食事等をしないまま、転移し続けていると衰弱死なども有り得る。
・睡眠中の本体を移動させられた場合は探す必要がある。
(以下、経験が無い為、黒部本人としては確信が持てていない制限)
・精神の転移である為、動物状態でも精神的な死(崩壊)は有り得る?
・転移中に本体が殺された場合、動物に転移したまま戻れなくなる?
補足:他人の弱味を握っては脅迫して小金を稼ぎ、生活している小悪党。
握っている主な弱味は金持ちの不貞や、芸能人のスキャンダルなど。
被害者はそれなりに多いが、それぞれから小額を頂くだけの為、目立たない。
情報屋の真似事もしている。
LMには所属していないが事件に首を突っ込むことも。
お天道様が少しずつ低くなっていく中、俺は人気の無い通りを歩いていた。
汚れた白猫の姿で、ダラダラと。
軽く眠気に襲われて、フラフラと。
暇潰しの目的で選んだ、「猫の姿で散歩」という選択肢。
人間の姿の時は楽しめない猫の身軽さ。
塀に飛び乗ったり、回転しながら飛び降りてみたり、風呂を覗いてみたり――。
しばらくはそんな感じで楽しんでいたのだが、流石にソレにも飽きが来た。
選択を間違えたと後悔するのに必要な時間は、一時間もあれば充分だった。
暇を潰すのは難しいもんだと改めて感じる。
ふぁー、と大きな欠伸一つ。
睡魔様は襲いかかってくるのに遠慮が無い。
このままでは、俺は歩きながら寝るという前人未到の快挙を成し遂げるに違いない。
(寝ちまう前に、さっさと帰って酒でも飲もっかなー)
そう考えはじめた頃…俺はとあるビルの近くで足を止めた。
>62
視線の先にあるビルは、いかにもと言った感じに古そうだった。
正常には機能していないのが見て取れる。
「あの葉っぱが落ちると僕は死ぬんだ」と言わんばかりの物悲しい雰囲気。
そんな風情の建築物から出てきたのは、一人の女。
引き締まった体だが、出るべきとこは控えめなご様子。実に惜しい。
が、それはどうでもいい。今、注目すべき点は胸じゃない。
(何してたんだ、この女?)
再度、廃ビルを見上げてみる。そびえたつのは薄汚さ満点の建築物。
どう贔屓目に見てもエステやカラオケや東雲百貨店には見えない。
紳士淑女が出てくるにはどうにも不似合いな場所だ。
ビルを見上げる俺の近くを、女が通り過ぎていく。
この女、何か非日常に首を突っ込んでるんじゃないだろうか。
何となくが八割、確信一割、残りは毒電波と言った割合でそんな考えが頭をよぎる。
退屈の飽和状態から抜け出せるという、かすかな予感。
俺が女の尻を追うのに、それ以外の理由なんて必要なかった。
>>67 「ひぅ!?」
第一声がそれである。随分と素っ頓狂な声をあげられてしまった。
その拍子に落としてしまった彼女のペンは私の方に転がってきていた。
拾おうとしたがそれよりも早く彼女がしゃがみ込んだので私は折りかけた膝を垂直に直した。
と同時に彼女のとっていた用紙がちらりと覗くことができた。
どうやら彼女は絵を描いていたらしい。少なくとも私には文字の羅列には見えない。つまり記者ではなかったということだ。やる気が少し離散した。
なに、よくあることじゃないの、と自分に言い聞かせる。メンタルケアはそれで十分。
私は女性に適当に謝罪をしてから立ち去ろうと思ったが、女性が何か言いたそうにしていたため機会を失った。
「わ、私は記者ではありません。…美術を…教えています。」
「え? あ……そうでいらっしゃったのね。ごめんなさい、私、勘違いしてしまったみたいですわ……」
どうにも会話のテンポが悪い。
「……本当にごめんなさいね。ええ、ホントに……」
ああ――そうか。
つまり私は罪悪感を感じている。私は彼女に対して何か悪いことをしてしまったと感じているのだ。
しかし何をしでかしてしまったのか思案する時間もなく、彼女は私の元から立ち去った。何も残らない。
「結局……自分の足を使うしかないのね。はあ……」
私はとりあえず廃ビルに入ってみることにした。
不意によぎった「何も得られないんだろうな」なんて不安は見なかったことにした。
>71
いつの間にか紀子は走っていた。
走らずにいられなかったと言うべきか。
あの時から動悸が激しい。
走っているからではない。精神的な由来だ。
関係ないと思い、逃げ出すようにしてあの女の人の横をすり抜けた。
紀子は後味の悪さを覚えていた。
(ああ、まただ。また人を遠ざけてしまった。)
(彼女は何も悪くなかったのに、私は…)
そう、私は自分を変えたい。こんな自分を捨て去りたいのだ。
外に出たのだって、変化を無意識に求めていたからに違いない。
あの女性は自分を変える機会に充分成り得た筈。
なのに、私はまた逃げ出した。
自分からまた逃げたんだ。
こんなんじゃ…
一旦立ち止まり紀子は大きく溜め息をついた。
そしてまた歩き出す。
彼女はまだ能力が発動していることに気付いていない。
声を掛けられ驚いた拍子に、
廃ビルにやってきた経緯や目的の記憶を代償に発動したままなのである。
無色透明であるが故、こうした現象は度々ある。自他問わず、気付きにくい。
万人が気付く時は「泡」が弾けた時である。
ラップ音と軽い衝撃波──とは言え微風には違いないが──が発生するのだ。
(そう言えば、あの人はなぜ、あのビルに訪れたのかしら…?)
(私をジャーナリストとも言っていたわね…)
急いでメモを見返す。
廃ビルの落書きの後ろ──そこに何か書いてあるかも知れない。
私があそこに行った理由が。
恐る恐るページをめくる。
殴り書きで以下の単語が並んでいた。
LM メール 廃ビル 住所………
ハッとした。
そうだ。私はLMのメールで廃ビルの住所を知って…それで…
なら、あの人は…私と同じ…能力者だったのかも…。
紀子はメモを眺めながら、また少し歩く速さが上がっていた。
興奮したのだ。
自分意外の能力者と言葉を交わしたことに。
しかし引き返そうとはしなかった。
否、他のことを考えられなくなっていたのだ。
なぜ、自分がこのことを忘れていたのか、ということも…
>62
紀子はまだ何かメモに書き残していないか、
熱心にメモを見返していた。
もともと外が苦手で歩くのが速い紀子は、
いつにも増して速くなっていた。
そして、紀子はその早足の加速を得たまま、
目の前にいた誰かを背中から突き飛ばすような形で衝突してしまった。
その時、暴力行為と見なした泡が音を立てて弾けた。
紀子はのめり込むような状態で前倒しになっていた。
その拍子でメモが前方へ飛び出していった。
少し離れたところから一匹の猫が、一部始終を見ていた。
廃墟と化したビルから一歩外に出れば、心地よい風が髪を揺らす。
埃っぽかった中では出来なかった深呼吸を、背伸びとともに行った。
「夜勤は辛いけど、賄いが出るのが美味しいよね〜」
今夜の夕飯はそれで済む。空腹にも財布にも美味しい。
鼻歌でも歌いだしそうな表情で街の中心に向かって歩き出す。
途中、一匹の猫とすれ違うが野良猫だろうと思ったのか、特に気にも留めることはなかった。
少し離れた先に停めておいたマウンテンバイクが見えてきた。
壁にもたれかけさせてあるソレに歩み寄りつつ、腰のベルトに提げてある鍵を手にした時、背後からの衝突。
倒れる背後の人物に押され、自分の体も地面に倒れた。
とっさの事だったが、なんとか受身を取れたのでたいしたダメージにはならなかったが…
「ちょっと何なの!?」
ハラハラと舞い散る紙の中、圧し掛かる人物に文句を言った。
「ねぇ、ホントにこれ貰っちゃっていいの?7万もしたじゃん」
「あー、いいよいいよ。さ、次何買う?」
「まだお金遣うの?超ウケるんだけど」
金払いの良い男は嫌いじゃない。そう声を掛けた女が言ったので、霧生真はバッグの一つでも買ってやる事にした。
相手が金を持っていると知ってからは女も現金なもので、今もこうして霧生と肩を並べて歩いている。
「あー、たださ、もう金が無いからちょっと金取ってくるよ」
「分かった、じゃあここで待ってるねー」
談笑を数度交わし、霧生真はコンビニの中へと入っていく。
コンビニの前で待たされた女はと言えば、霧生にもらったブランド物のバッグを見てはニヤニヤとしている。
だが、その時間も束の間。
ガァン、という金属音。次いで、硝子の砕ける音が周囲に響く。
「……え?」
非常ベルの音と共に、ATMが、自動ドアを突き破って飛んできた。
砕け散る硝子、思わず足を止めた通行人。ごおんと音を発てて、地面に落ちるATM。
転がったATMの揺れが収まってから初めて、悲鳴が上がった。
「いいねぇ、何が起こったかまるで理解出来てないって顔だ」
口元に、噛み殺したような笑い。
鳴り響く警報の中、霧生真は悠々とした足取りで割れた自動ドアを潜る。
「嫌いじゃないぜ?お前みたいな頭の悪い女」
時刻は、午後7時56分。
霧生真の二度目の犯行だった。
76 :
臥待清司 ◆ZpT5810vjc :2006/06/08(木) 00:40:46
「……それでは、尾幌零次はLM関係者が留置するのが妥当であると?」
「ええ、彼を拘束しておくのに力は必要ありません。係員全員に時計と手袋を着用させ、『五分以上の会話』をさせなければいい」
東雲市警、第一会議室。
臥待静司はギフト犯罪の担当刑事と共に会議に出席していた。
「……ふむ……」
「逆に言えば、今の日本の制度では彼を捕らえて置く事は出来ない、という事です。また……」
―――ジリリリリリリリリリ!!
会話は、そこで中断された。
ギフト能力者による事件発生を知らせる、携帯端末のアラーム。
臥待の目付きが変わる。
携帯端末を開くと同時に鞄を開き、ノートPCを机の上に滑り込ませるように設置する。
PCの電源を入れたのは一瞬。端末とPCを接続するのに数秒、一呼吸を置いてから、その指がキーボードを叩いていたのがまた数秒。
臥待の一連の動作は、まるで機械か何かのように迅速だった。
「……失礼しました」
「また、ギフト犯罪かね。これだからギフト能力者は社会に……」
「件(くだん)の銀行強盗が、見つかったようです」
「何?」
「今回はATMです。現場は帯刀ビル周辺のコンビニエンスストア」
「馬鹿な!何故我々よりも早く事件を察知出来る!?」
「……能力犯罪を起こすのがギフト能力者なら、それを捕らえるのもギフト能力者、という事です」
時刻は午後7時58分。
会議室に事件の知らせを持って刑事が駆け込んできたのは、そこから3分後の事だった、
77 :
LM通信/PM7:58 ◆ZpT5810vjc :2006/06/08(木) 00:41:43
事件現場:東雲市帯刀ビル周辺 コンビニエンスストア
任務内容:ギフト犯罪者 霧生真の捕縛 及び 同項に関する情報の収集
報告送信 及び 応援要請は同端末を使用の事
情報は追って送信する..._
>>77 「こちら滝山・・・現在、霧生は、破壊したATMから現金を回収しています・・・」
とパソコンを操作しながら現状を報告した。
(・・・流石に血をだしすぎたか・・・クラクラしてきたな・・・
しかし、この霧生という男・・・白昼に堂々と犯行にでるとは・・・よほど自身の能力に自信があるのか・・・あるいはただの馬鹿なのか・・・)
一佐、帰還せよ!
>73
女の尻を追っかけるとは言うが、ここまで堂々と女の尻を眺める奴も少ない。
猫の姿の利点を生かして、俺は胸の無い女の尾行を続け、尻を眺め続ける。
そうしてしばらく歩いていると、とたとたとたとた、と。
小さい足音が後ろから聞こえた。
振り向いて見てみれば、白いワンピースの女がこちらへと向かってくる。
視線は自分の手の中の何かに向けたまま。
まるで競歩でもしてんのか、と疑うほどに早足で。
このままでは蹴られてしまいかねない。
そう考え、すっと横へと動いた俺の横を女が通り過ぎた時。
不意に、金縛りにあったような痺れが俺の体を襲った。
それはまるで体の主導権が俺から離れたかのような感覚だった。
白猫、ユーゴーの本体に主導権が握られたかのような感覚。
だけど、それも一瞬。
すぐにいつもの感覚を体は取り戻す。
(…何だ今の?)
今まで味わったことのない感覚に、困惑する。
得体の知れないものほど怖いものはない。
幽霊の正体見たり枯れ尾花。正体を知るヒントを求めて、俺は思考を巡らせる。
答えは簡単だった。そもそも考える必要すら無かった。
あの瞬間、俺はワンピースの女の近くにいた。恐らくはそれが理由。
白いワンピースを追おうと、進行方向へと顔を向ける。
そうして戻した視線の先で、女二人は音を鳴らして衝突した。
>74
どすんという衝突音に少し遅れて、風船が弾けたような音が耳に届いた。
それと共に小さな風が俺の毛を撫でる。
(風船?)
きょろきょろと瞳を動かして辺りを見渡してみる。
風船のような音を鳴らすものは辺りには無い。
マウンテンバイク、くんずほぐれつ状態の女二人、そして舞い散る紙。
さっきワンピースの女が見ていたのは紙だったらしい。
――何か書いてあるだろうか。
幽霊の正体を示すようなものが。もしくは、俺の退屈を癒すものが。
「ちょっと何なの!?」
胸の無い女の怒声が響く中、俺はその横をすり抜けて散った紙へと歩み寄った。
四階から五階の階段を登りきったとき、携帯が鳴った。
(あら……)
私は二つ折りにされている携帯を開いた。薄暗いビルの中ではディスプレイの光は強すぎる。
新着メールの差出人はもちろんLMである。目標がコンビニエンスストアに現れたらしい。
私は急いで階段を駆け下り、廃ビルから抜け出した。
私は廃ビルで何の情報も得られていない。予想通りの無駄足になってしまったがさて、これからどうするか。
少なくとも私の独力では一番に目標を発見することはできない。常に捜査が後手後手に回ってしまうのを考えると応援を要請した方がいいだろう。
一人より二人、二人より三人、だけどあまり多人数にならないパーティを組むのが理想だ。
捜査系の能力者と組めればモア・ベターなんだけれど、生憎私自身も贅沢をいえるようなレアな能力は持ち合わせてはいない。
とにかく、連絡を取らなければ。私は必要最低限に要件をまとめた。
===
応援求む。
場所、廃ビル前。
配当はイーブン。
===
少し考えて私は『イーブン』の後ろに『(交渉可)』と付け足した。匿名、能力非公開でイーブン(山分け)ではいささか食いつきが悪い。
(とはいえ、それすらも気休め程度と考えるのが最近の主流のようだ)
私はLMネットワーク宛てにメールを送信した。
名前:月山太郎(つきやま たろう)
所属:無し
性別:男
年齢:22
職業:殺し屋(犯罪者の依頼のみ請ける)
容姿:着物に腰に刀顔はなかなかの美形
GIFT:スラッシュブレードなんでも斬れる(ただしなんでも通さない盾などの能力は相殺される)刀
発動条件は月山が鞘を手に持っていること、
鞘を離した途端に刀は消える。
補足:性格はくせ者で、犯罪者の依頼を請ける殺し屋だが、殺しが大好きで依頼がなくても人を殺す。
現在LMが多額の懸賞をかけている犯罪者の一人である。
因みに剣の達人で関西弁を話す。
能力はたまたま階段から滑り落ちたら目覚めたらしい。
「なんや・・・おもしろそうな事になっとるやないか・・・」
突然コンビニの中から声が響き、着物姿の男が出て来て、
「おぅおぅ派手に壊れとるのー・・・おい。そこのATM壊してる奴、自分・・・なにもんや?
周りがさわいどるっちゅーことは・・・自分、犯罪者か?」
と聞いてきた。
名前:宮元 正(ミヤモト タダシ)
所属:無し
性別:男
年齢:42歳
職業:東雲市長
容姿:白髪頭、紺色のスーツ、赤ネクタイ、背は低め
GIFT:「同居人の移住」
・対象に何らかの負の感情(敵対意識など)を感じる
・対象の好物を把握する
・上記二つを達成した後に、対象に触れながら、何らかの挨拶を行う
以上の条件を満たせば、対象の体内に数種の寄生虫を送り込むことが出来る。
その寄生虫は何れも1時間以内に絶命するが、それまでは多少の腹痛等を覚えさせることが可能。
また、これらの寄生虫は能力の産物なので、1時間以内の寿命を終えるまでは除去等は出来ず、
寿命を終えた寄生虫は内臓等に一切の痕跡を残さずに消滅する。
補足:東雲市の市長だが、支持率が極めて低く、次回市長選では落選確実と言われている。
就任時、ギフト犯罪の増加を受けて「ギフトの無い平和な街」というスローガンを掲げたところ、
過激派ギフト擁護団体による、ギフト能力を用いたテロを受ける。(その際に能力が芽生えた)
その後はギフト犯罪者に対して極めて臆病になり、犯罪も減らず、支持者は徐々に離れていった。
また、元来の優柔不断さ、政治的手腕の悪さ等により、最近は部下にも見放されてしまった。
今は「市長」という肩書きだけが残り、孤独な日々を送っている。
「市長!またギフト能力による犯罪が起きましたが、どう対処するつもりですか!」
申し訳程度の仕事を終えて市庁舎を出たところで、いつも通り馬鹿なマスコミ連中に囲まれた。
「えー…………後日、何らかの会見を行います」
黙れ、腐ったマスコミ連中が。どうせ私を市長だとは思っていないくせに。
マイクを突き出す連中を無視して、停めてあった車に乗り込む。最近は車を運転することが多くなった。
市民も部下も、運転手すらも私を嫌ったからだ。誰もが何も出来ない臆病者と私を罵る。
一握りにも満たないであろう僅かな支持者によって、どうにか肩書きだけは保てているが。
車は走り出し、市長市長と喧しいマスコミ達をどんどん引き離していった。
「…ん?」
突然、車が止まった。まさか車すらも私を嫌ったのか。私を嫌う車など要らない、ここに捨ててしまえ。
明日になればマスコミ連中がこれを理由に私を叩く。犯罪を減らせない理由を話すよりは楽になる。
車から降りて、少し離れて見える建物は旧東雲鉄道ビルだ。私はこの街の建物の名前は全て覚えている。
「………ちょうど良い高さだなぁ…」
どうせ市民は誰も私を必要としていないんだ。もう疲れた。そろそろ長い休みを取っても罰は当たらない。
あのビルの屋上から一歩踏み出すだけで、長期休暇が手に入るんだ。簡単な手続きじゃないか。
自分でも意識しない内に何かを呟きつつ、一歩一歩と廃ビルへと歩み寄った。
名前:綺堂 司(きどう つかさ)
所属:警察
性別:男
年齢:27
職業:捜査第一課警部補
容姿:精悍さのある顔立ち。しかしけしてゴツくはなく、むしろ優男の印象が強い。私服捜査の時は革ジャンとジーンズが多い。
GIFT:『ソロゥ・パワー』(悲しみの力)
能力は物理的作用のある『パワー』(緑色の輝くオーラor光に見える)を発現させる。自身の表面に這わせ肉体を守ることも、目標に向かって撃ち出すことも出来る。
使用条件は司にとって重要なもの、大切なものを失うほどに力を発揮する。その程度は司が重要視(無意識含む)しているものに順ずる。生命力も消耗するが、使う力の量・質によって消耗度合いも変わる。
はっきりと使用したのは過去に一度きりである。
補足:15の時に自分と弟を除き、ギフト犯罪者による一家惨殺の憂き目に会う。その際瀕死におちいり、ギフト能力が覚醒した。
大学卒業後、ギフト犯罪に立ち向かうという信念を持って警官という道を歩む。ギフト犯罪者を可能な限り生きたまま確保し、更生させたいと願っている。ただし、救いようのない犯罪者に対しては心を鬼にするつもりである。
最近秘密裏に新たな治安警察機構(極秘)へのスカウトをされている。
街の雑踏の中、司は東雲第一銀行強盗の容疑者A……霧生真に関する聞き込みを続けていた。
普通の捜査ならつけられるはずの同僚の姿もなく、頭の中でこれまで入手した情報を整理しながら歩いていた。
先ほど容疑者の通いのバーで得られた情報は容疑者は『週に何度か通っていたがこのところ姿を見ていない』というものだった。だがその情報にたどり着くまでにはかなりの時間が消費されてしまってた。
有益な情報が少なすぎるのだ。聞き込みを行っても顔を覚えているのがせいぜいナンパされたという若い女性を見つけても、その日限りの薄い関係で、容疑者の名前が『マコト』ということぐらいしかなかった。
中にはまったく名前を知らないという女性もいた。
そして、警察組織も今回の件……いや、全てのギフト犯罪に対して積極的ではなかった。全体の犯罪率を見ればギフト犯罪は至極少数であるが、そのほとんどが凶悪・悪質なものであり、担当する警官の負傷率・殉職率が他の犯罪と比べて異常に高い。
それゆえ警察内部ではギフトをまるで怪物のごとく捕らえ、腫れ物を触るような対処が圧倒的であり、その状況に拍車をかけているのがリキッド・メソッドという非公然の組織だった。
おかげで警察のギフト犯罪に対しての活動は実質初動捜査とLMに対する情報提供のみとなっており、対策班が建てられてもほとんど捜査が出来ていない状態だった。
司は内心その現状に憤っていた。
犯罪者を捕らえ、その処遇を決めるのは警察と裁判所であり、決して民間人が行ってはならなかった。そうでなければ警察の存在自体が否定されてしまう。
それが司の考えだった。
だが極秘裏に警察内部で新たな治安警察機構の設立案があがっていることを知った。
正確には司自身に引き抜きの打診があった。
今までの警察機構とは一線を書く、いわば軍警察の色が強い、対ギフト犯罪専門の組織だという。
しかし上層部の一部が強硬に反対が強いため、実現は難航しているのも現実であった。
当たり前だろう。
ギフトに対抗するため武器、防具は戦闘色の強いものが用意されるだろうし、その組織が万が一矛先を別のものへ向けた場合の危険性は十分危惧されるべきものだから。
そして司が一番苦悩しているのは、一般社会や警察よりもギフトに対して排他的な面があるかもしれないという不安だ。
LMといういわばライバルとの差別化を図るために、極力ギフト能力者は入れないという話だ。
そして新たに志願するものは強い意思がある者たちだろう。
例えばギフト犯罪者に対する復讐、それも公然と行える復讐だ。
その中に自分が混じり、秘密がばれた時にはもう所属し続けることはできないだろう。
だが、ギフト犯罪を止める力が手に入るのなら喜んで自分は所属するだろうと司は考えていた。
要は殺さないよう努力すればいいだけのことだ。
もし新たな機構ができなくとも、司は今のやり方を続けるだけのことだった。
携帯がコール音を発し、司に電話に出るよう促す。
司は考えを打ち切りながら携帯を手に取った。
「こちら綺堂です。――容疑者が動いた!?」
時計を見ながら詳細を聞く。遅い。情報が回ってくるまで致命的なほど時間がたっていた。
「わかりました。今すぐ現場に向かいます」
ここからだと現場まではかなり遠い。脇のホルダーに収まっているSIG P230を確認すると、眉間にしわを寄せながらも綺堂司警部補は走り出した。
>74
──っパン!
泡が弾けた。
つまり私はまた知らない間に泡を使っていたんだ。
ああ、だから忘れていたんだ。
また、私の知らない内に…
「ちょっと何なの!?」
この怒声で紀子の陥りがちな自己嫌悪のループは断ち切られ、
メモの確認に夢中になりすぎ、
目の前にいた人に気付かず突進してしまっていたことを気付かされた。
「は…っ!えと…その…申し訳ありませんでした!」
這いつくばったまま、極力相手に失礼がないよう、
出来るだけ自然に身なりを整えてみた。
紀子は無意識に、土下座をしていた。
怒られるのが怖くて怖くて、兎に角謝ろうと、つい体中力んでしまう。
歯を食いしばり、強く目を閉じる。
恐さがそうさせてしまっている。
(どこをどう考えても非は自分にある。よほど相手は怒るであろう。)
そう自分で自分を追い込んでしまう。
余裕が無くなりすぎて相手が何を言っているのか分からない。
不意にバッグの中で携帯電話が振動し始めた。
紀子の中の緊急の糸が途切れた。
こんな時に──そう思いつつも、 一度切れた集中はなかなかどうして元には戻らない。
いきなり顔を上げ、相手の目を見る。
真剣さを伝える為に、目に力が入る。
「あの、携帯電話を確認してよろしいでしょうか!?すぐ終わりますので!」
相手が何か言いかけた時には体を伏せたまま携帯を見ていた。
内容はLMからのものであった。
つい、声に出してしまう。
「LM…コンビニ…」
(そんなことを気にしている場合ではない!)
確認すると素早くバッグに携帯を入れ、また先程の体制に戻した。
顔を伏せた状態で、ちらりと目の前の女性の向こう側を見る。
猫が何かをのぞき込んでいる──そんなふうに見えた。
猫しか見てなくて、本当に良かった…。
私は地面を見つめながらそう思った。
>81
自ら招いた結果のこの醜態を、
目の前の女性以外に誰も見ていないことに少しほっとした。
何、傍観者と言っても白猫一匹。人間じゃない。
大丈夫、大丈夫…
もう一度、ちらりと猫の居た方を見る。
猫が前足を起用に動かし、のぞき込んでいた何かを捲るようにしている。
まるで読んでいるかのようだ。
そしてどことなく神妙な面持ちをしているようにも見える。
猫に表情が無いなんて、嘘かも知れない。
少なくてもあの猫は何かを考えている目をしている。
賢い猫だな…そう思って感心する。
だが、その猫が読んでいるものを凝視した時、
感心も何も吹っ飛んで、ぎょっとする。
内心動揺して、目が泳ぐ。
定まらぬ視線の先々──主に女性の足元とその向こう側に、
ソレが散らばっていた。
私のメモだ!
92 :
暁月夜 鈴 ◆MkjhrXA/Ko :2006/06/10(土) 12:45:19
>>81 「は…っ!えと…その…申し訳ありませんでした!」
地面に頭をぶつけそうな勢いで土下座をしてしまった相手。
体を強張らせているそんな状態を見せられては、もう少し言いたかった文句も喉につかえてしまう。
自分のそばをすり抜けて散らばった紙に鼻を近づける野良猫。
他人事の状況に、全く気にしていない所がとても憎い。
>>90 「え…えっと…。たいした事ないから…大丈夫よ…?」
めちゃくちゃ怯えてる相手に戸惑い、何とか宥めようと言葉を捜しつつ優しく声をかける。
這いつくばっている彼女の携帯とほぼ同時に、自らの携帯ポーチに収めていた端末が鳴った。
「あの、携帯電話を確認してよろしいでしょうか!?すぐ終わりますので!」
腰の端末を手にしながら彼女の言葉を耳にするが、返事はしなかった。
それよりも彼女が取り出した端末は自分が所持しているLMの支給品のもの。
メールを開き、横目で内容を目にする。
「LM…コンビニ…」
彼女が呟く内容は、自分の受け取ったものと一致する。この女性は仲間だ。
GIFT保持者ならば過剰な反応をしてしまう人だっているだろう。
彼女の極端な怯えようはそこからだと推測する。
「ねえ?相手のGIFTは攻撃的。独りじゃ心細いし、組まない?」
彼女が猫に気を取られている事を知ってか知らずか、そう持ちかけてみる。その表情は微笑み。
そして、新規に届いた"応援求む"と題されたメールを開いた。
>91
LM、メール、廃ビルというメモ書きが俺の瞳に映った。
LM。まさか、ロンリーマダムの略じゃあるまい。
恐らくはリキッド・メソッド。それはギフト保有者の組織。
なるほどと思った。
さっきの力が弱くなるような感覚も、ワンピースの女のギフトか何か。
そう考えれば、納得がいく。幽霊の正体見たり、だ。
もう一人のほうもLM関係者か何かだろうか。
頭の中に浮かんだ問い、その答えを探すように俺は女二人へと視線を戻す。
――ワンピースの女がこちらを見ていた。
まずいな。今の俺は、少し猫らしくなかっただろうか。
俺と同じようなギフト保有者と知り合いだとすれば、疑う可能性もある。
こちらを見るワンピースの女の考えは読めない。
>92
そんな懸念に、俺が思考を巡らせている中、
「ねえ?相手のGIFTは攻撃的。独りじゃ心細いし、組まない?」
胸の無い女はワンピースの女に問いかけた。
どうやら俺の勘は間違っていなかったらしい。
女二人はどちらもLM関係者。そして、相手という単語。
誰かを追っていると予測するだけの材料は全て揃っていた。
LMの行動目的からすれば、その誰かは犯罪者だろうと予想できる。
(面白くなってきたな…)
人間の姿だったらほくそ笑んでいたかもしれない。
退屈から抜け出す為の道は、既に俺の前に用意されていた。
後は、そこを歩めばいいだけ。
そして、コイツらにくっついていくことが、まず間違い無く最短距離。
俺は女二人にゆっくりと歩み寄ると、にゃー。と鳴いた。
くっついても不審に思われないよう、お前らに懐いたよとポーズを示す為に。
ただ単に少し賢い、それでいて人懐っこい野良猫。それが今の俺の姿だった。
>>84 彼は自身の能力で監視カメラ(CPで制御できる物)を使って現場を見ていたが、一人の着物姿の男が現れた途端血相を変えながら
「司令!奴です!月山がいます!!霧生と接触しています!!!」
と携帯でメールを送った。
たとえば 君が居るだけでレベルが低くなれること
(TRPGスレに)何より大切なものを気づかせてくれたね
96 :
霧生真 ◆ZpT5810vjc :2006/06/11(日) 01:19:00
一分も立たない内に、周囲は恐慌の渦に巻き込まれた。
コンビニからは客はおろか店員すら逃げ出し、遠巻きに霧生真を眺める人間も、決して声の届く範囲には近づいてこようとはしない。
当然だ。武器も持たない人間がギフト能力者に太刀打ち出来る筈も無い。ただ、この場において、例外は二つ。
一つは彼の最も近くに居た若い女。
無遠慮にATMの前に屈み込み、コートのポケットに小銭や札束を詰め込んでいる霧生を前に、逃げ出すどころか、目を離すことすら出来ないでいる。
「……え?……ちょ……何やってんの?……え?」
「見りゃ分かんだろうが。金取ってんだよ。これが味噌汁作ってるようにみえるか?」
「……や……、ヤバいって……流石に……」
「うるせぇなぁ、ガタガタ騒ぐんじゃねぇよ。どうせ警察なんて事件が起こってからしか動けないんだ、まだ5分は余裕がある」
金が取り難かったのか、内側に向けて外れかけていたATMの金属板を引き剥がし、無造作に放り投げる。
騒然さを通り過ぎて静かになった周囲に、ぐわんとした音が響く。
>>84 「おぅおぅ派手に壊れとるのー…おい。そこのATM壊してる奴、自分…なにもんや?周りがさわいどるっちゅーことは…自分、犯罪者か?」
例外の内もう一つは、女と対照的。つまり、彼と同じ能力者である者。
誰も居なくなったコンビニの中から緩い足取りで現れた、着物姿。
「見りゃ分かんだろうがボケが。善良な一般市民がATM吹っ飛ばして中身漁るかよ。何だお前、LMか?」
小銭と札束で膨れたポケット。挑発的な態度。ゆるりと立ち上がりながら振り返る。
黒い手袋を嵌め直せば、カチャリと音が鳴った。
時刻は午後8時1分。
漸く、東雲市警が動き出した。
>91-93
ビルに向かう途中、二人分の人影が見えた。とっさに電柱の影に身を隠す。
もしも彼らに会った直後に自殺したと知られると、彼らのトラウマになるかも知れない。
そこで何の気なしに、彼らの会話に耳を澄ましたのが不味かった。
「……LMだって…?」
聞いた事のある単語だ。私の記憶によれば、ギフト能力者ばかりを集めた組織の名だ。
これは不味い。実に不味い事になった。
私はギフト犯罪を減らす政策を打ち出す際、犯罪よりもギフトそのものを弾圧してしまった。
それでも部下や市民は、そもそもギフトを嫌っていたから、最初は何の問題が無かったんだ。
だが、能力者達は私を酷く嫌い、犯罪は増え、市民や部下は何も出来ない私を見限っていった。
彼らがLMの構成員であるならば、絶対にギフト能力者だ。ならば、私を嫌っているかもしれない。
私を嫌っているならば、私に攻撃を加えるかもしれない。それで殺されるなら、まだいい方だ。
敢えて殺さず、生き地獄を見せられるかもしれない。ああ、どんどん気分が悪くなってきた。
このままここに隠れて、しばらく様子を伺う事にしよう。
>>96 「うちは(自分自身が)結構有名やと思とったけど知られてへんとは・・・ショックやな〜
うちは、月山太郎
・・・まあ・・・あんたと一緒でお尋ね者ですわ・・・」
と言い終わると男は、霧生に近づいて行った。
>92
予想外というか、青天の霹靂と言うべきであろうか。
まさか、共闘依頼をされるなんて。
そして何よりもこの女性も自分と同じギフト能力者だなんて。
とりあえず立ち上がり、ワンピースについた土埃を叩き落とす。
きっと、この女性は勘違いをしているんだ。
私は別に…犯罪者を追っているのではなく、ただ──。
「あの…私…」
言いかけた時、またバッグから振動が伝わる。
目の前の女性もメールを確認する。
自分が持つそれと同じだ。
メールは廃ビルで協力者を求めるといった内容であった。
そういえば──。
廃ビルで誰かに話しかけられた。
そう、私は逃げるようにして廃ビルを後にした。
もし、あの人がこのメールの主なら…
私は困っていた人を見捨てて逃げたことになる。
何か罪悪感を感じる。
それでも、さっき私は関係無いと、そう思っていた。
これは事実だ。
目の前の女性からの依頼だって、請け負う義理は無いのだ。
そう、私は何も──。
迷うことなんか──。
「にゃー。」
猫が足元に歩みより、にゃーと一つ鳴いた。
私に決断を促しているのだろうか。
私は、手を前にさし出していた。
俯き加減に震える手。それでも精一杯。
自分から、他人へのアプローチなんて、前回はいつの頃だったか。
しかし私は何をしているのだろうか。
私には関係──…
「私は…秘守紀子と…言います…よ、よろ、」
‘よろしく’
と、はっきり言った。
「あの、それで…私と一緒に、
近くの廃墟のビルに来てもらえませんか…?
一度確かめたいことがあるんです…」
100 :
暁月夜 鈴 ◆MkjhrXA/Ko :2006/06/13(火) 06:44:58
>>93 足元に寄ってきた白猫。
目前の女性に少し遅れて、自分も視線を移した。
―にゃー。
―甘えた声を出しても、お前の腹を満たせるものは持ってないぞー。
猫と目が合った時に心の中で呟いた。
中身は人間で今回の事件に興味があるという事実には気づかずに。
>>99 差し出された手は震えて。
それに応えて、私も握手の手を伸べる。
恐れか緊張か。いずれにせよ、震える必要は無いと伝える様に少しだけ強く握った。
「OK。決まりね。私は鈴よ」
本名とも偽名とも取れる名前のみの自己紹介。
一時的に共同戦線を張るなら、それだけで十分だろう。
もう片方の手にしていた携帯端末の蓋は、手首を振るう事で器用に閉じてそのまま携帯ポーチに収めた。
「あの、それで…私と一緒に、近くの廃墟のビルに来てもらえませんか…?一度確かめたいことがあるんです…」
「構わないよ。もう一人、そこに居るみたいだし。手短に済ませましょ」
言い終わる前にはもう、数分前に出てきた廃ビルの方へと向かう。
その先にある電柱の陰に、人が隠れて居るとも知らずに。
>98-100
「私は…秘守紀子と…言います…よ、よろ、よろしく」
「OK。決まりね。私は鈴よ」
秘守と鈴、そう名乗った二人は握手を交わした。
気の弱そうな秘守、はっきりと意志を示す鈴。
対照的な二人が共闘する様は、どこか変な感じがしないでもない。
だからこそ、楽しいのかもしれない。
妙な組み合わせが生み出すのは、どんな結果なのか。
心の中に湧いてくる楽しさを押し殺して、つぶらな瞳で女たちを見上げる。
二人とも、別段、こちらを警戒しているようには見えなかった。
「あの、それで…私と一緒に、近くの廃墟のビルに来てもらえませんか…?
一度確かめたいことがあるんです…」
「構わないよ。もう一人、そこに居るみたいだし。手短に済ませましょ」
鈴が自分の言葉を言い切る前に歩き出した。
やはり行動力がウリの人間らしい。
嫌いじゃない。胸が薄っぺらい分、フットワークが軽いのかもしれない。
(さっさと行くか。楽しみが逃げたらつまんねーしな…)
秘守は小さい声で「近くの廃墟のビルに」と言っていた。
目的地はさっきの廃ビルとわかっている。
俺は、身軽な体を動かして、鈴を追い越すように駆け出し…間もなく足を止めた。
――猫特有の第六感。
聴覚でも嗅覚でも触覚でも視覚でも…ましてや、味覚などでは絶対ない直感。
その感覚が俺に人の気配を知らせている。
見えない。誰かはわからない。
が、確かに、電柱の後ろに誰かがいるのを感じた。
>99-101
彼らはどんどん私の隠れている電柱に近づいてくる。気付かれては無いようだが…………
ああ、胃が痛くなってきた。どうやってこの場から逃れよう。
武器を持って戦うか?先手必勝で、もしかすると二人とも撃退できるかもしれない。
だが、私の持ち物で唯一武器になるのは、ポケットに挿した万年筆だけだろう。
もちろん格闘の心得など、私にあるわけが無い。
却下。
変装するのもいいかもしれない。市長だとばれなければ、私を無視するかもしれない。
だが、混乱している私の頭では、「万年筆で顔面に落書き」しか思いつかない。
それで騙される物がいるとすれば、それはただの馬鹿に違いない。
却下。
……そんな馬鹿な事を考えている内に、彼らは既に顔を確認出来るほど近づいていた。
こうなれば、走って逃げるしかないだろう。走るのは嫌いだが、止むを得ない。
一応、中学生時代には陸上部にも所属していて……
「……うぉっ!?」
突然、視界が上に向いて、アスファルトで舗装された道路に、身体が叩きつけられた。
どうやら、勢いよく走り出した途端に、何かを踏みつけて転倒したようだ。背中が痛い。
これで気付かれてしまったに違いない。早く立ち上がって、走って逃げなければ。
その際、一体何を踏んだのだろうと思い、ふと足元を確認して私は言葉を失った。
何故、こんな所にバナナの皮が。
>100
鈴と彼女は名乗って、足早に廃ビルへ向かっていった。
辺りに散っていたメモを速やかに集め、
彼女の背中について行く。
彼女もなかなか歩くのが早い。
自分と違って、健康的なのが羨ましい。
(忘れても大丈夫なように)
いつものようにメモを執っていく。
彼女の名前と、特徴。
そして、簡単な似顔絵。
絵には、多少腕に覚えがある。
フッと、猫が通り過ぎた。
この猫は、彼女の飼い猫なのかしら。
描きながらそう思う。
>101
一通り鈴の似顔絵が描けた頃。
先程、軽い足取りで通り過ぎた筈の猫が立ち止まって、
電柱の方をじっと見つめていた。
人間には感じ取れない何かを、猫は鋭敏に感じ取っているのだろう。
それを人は野生の勘とでも言うものだろうか。
急にだった。
電柱の陰から人が飛び出して──。
>102
(今なら猫くんに触れるかも…)
と、動かない猫の後ろ足を触ろうとしていた。
特別猫が好きなのではなく、あまり外に出ない私にとって猫は、
猫でありながらも新鮮な存在なのだ。
そろそろと指先を猫に近付ける。
(もう少し、もう少し…)
カツカツカツ…ドシン!
驚いた。
乾いた革靴の音が猫くんが見ていた電柱の方から響く。
反射的にそちらを振り向けばスーツのおじさんが出てきて、
しかも転けていた。
落ち着こう。
冷静にならなくては。
私は少し近付いて、大丈夫ですか?と訊いてみた。
何か放ってはおけなかった。とは言え、普段の私らしくない行動だ。
どこか、私は今日、興奮冷めやらぬ状態なのだ。
こちらを見たおじさんの目は、曇っているように見えた。
この男性自体、私はどこかで見た気がする。が、はっきりしない。
それよりも、この人の目は──。
私と同じ目をしている。そう感じる。
104 :
暁月夜 鈴 ◆MkjhrXA/Ko :2006/06/17(土) 06:47:07
>101-103
足元を通り過ぎ、先頭に立った猫が立ち止まる。
視線は一番手前の電信柱に注がれている。
頭上に疑問符を浮かべて猫の隣で立ち止まると、自分も電信柱を見つめてみた。
「……うぉっ!?」
姿を見せた途端に隠れていた人物は転倒した。
その人の足元には、黒く変色して足跡の付いたバナナの皮。
古典的すぎる衝撃の出来事に目が点になり、数秒の後にハッと我に返る。
「大丈夫です…?」
秘守と重なって言葉をかける。彼女よりも先に駆け寄って、起き上がろうとする男性に右手を出した。
近づいてよく見ればその人は市長だった。けれど、テレビで見た時とは違って老けている様に思える。
―こんな場所で何をしているのだろう?
疑問には思うけれど、時間的にはそんな事を聞いている場合ではない。
日が沈んだ廃ビルのそばで女性が二人でいるなんて、下手をすれば共犯と思われる恐れもある。
さっさとこの場を去った方が、後々面倒な事にもならない様な気がする。
>102
19年生きてきた。
中3の時、交通事故に遭って死に掛け、ギフトに目覚めた。
能力を使って事件にも首を突っ込んできたし、決して平々凡々とした人生じゃない。
だから、有る程度の事は素直に受け入れることができると思っていた。
だのに、信じられない。まさか、こんなことが現実に起こりうるだなんて。
――バナナの皮で滑る人間がいるだなんて。
(すげぇ…お見事)
としか思えなかった。芸術、職人芸、まさにミラクルとしか言い様がない。
感動を覚えるなというほうが無理な話だ。
俺は瞳を見開いたまま、心の中で拍手を惜しまない。見覚えあるオッサンに向けて。
宮元正。確かそんな名前だったはずだ。
「ギフトの無い平和な街」というスローガンを掲げた東雲市の市長。
そして、ギフト犯罪者のテロに襲われ、連日ニュースを騒がせた男。
当然だ。考え浅く敵を作るだなんて愚鈍でしかない。
白髪頭の中には、脳みその代わりに蒟蒻ゼリーが詰まっているとしか思えない。
ギフトを持っているだけでの悪者扱い。能力者に対してのギフト廃止。
そんなもの、デブに対してデブ禁止と言っているようなもんだ。
内心穏やかでなかった奴は、軽く見積もってもテロに参加した何十倍といただろう。
能力者だと誰も知らず、性質的に知られ難い俺は気にしなかったが――。
>103-104
こいつらも特に気にしてないのだろうか。
宮元に歩み寄る秘守と鈴。二つの尻を見ながら、俺は思う。
「大丈夫ですか?」
「大丈夫です…?」
二人の声がハモり、鈴が男に手を差し伸べた。
犯罪者を追っている最中に呑気なもんだ。
放っておけばいいのに、LMという奴はどうも善人が揃っているらしい。
何度か関わった事があるが、いつも似たような光景を見ることになる。
(…お優しい事で)
お二人とも、ハートフルドラマの役者にでも転職したほうがいいんじゃないですか。
俺は失笑もののお優しさに呆れながら、細めた瞳で三人を眺めていた。
>103-105
打ち付けた膝やわき腹が痛い。何故、何故あんなところにバナナの皮が落ちていたのだろう?
いや、それは後回しだ。今は高速で近寄りつつある危機を回避する方法を考えねば。
「大丈夫ですか?」
「大丈夫です…?」
その言葉に顔を上げれば、二人の女性が私を心配そうに見ていた。特に殺意などは伺えない。
二人の少し向こうには生意気そうな顔をした猫が見える。
「あ…ああ、大丈夫だ…有難う」
落ち着け、冷静になれ、まだ敵意は持たれていない、対処は可能だ、よく考えろ。
まず把握するべきは、彼らが敵意を抱いているか。それに続いて彼らの好物。
「……ええと………君らは私が誰だか知っているかね?」
本当は冷や汗が噴出しそうだったが、それを隠し、涼しい顔で二人の女性に尋ねた。
二人が攻撃的な正確でなければいいのだが。
名前: 御鑑明飛(みかがみ みょうび)
所属: LM
性別: 男
年齢: 33
職業: 代行車運転手
容姿: 生まれついての赤毛で長髪。
177cm、引き締まった筋肉質。服は動きやすい物を好む。
GIFT: 「BLOOD HAND」
条件は手が第三者の血で血塗れていること。
その手で誰かの傷口に触れた場合、その傷を塞がなくする。
但し、手を塗らしている血液の持ち主に限り、この効果は発動しない。
補足: 普段はへらへらして冗談ばかり言っているのでどこか信用できない。
しかし、目的に対しては大胆不敵で手段を選ばない。必要ならば時に冷酷な行動もとる。
昔、鞘をもった関西弁の男に突然斬られた。
斬られた腹には深い傷が残っている。
が、それ以上に心の傷の方が色濃く残っている。
突然斬り捨てられた物の中には取り返しのつかない物が多かった。
能力はそれから身に付いていた。
因みに初めて能力の対象になった人間は既に死亡している。
LMからのメール、ことに強力依頼には必ず目を通し、ほぼ全てに手を貸している。
今ではそれで得る賞金が主だった収入になっている。
「お、ここが廃ビルか。寒々しいなァ〜この風景」
俄然、気合いは…ないない。
空回りすんのはゴメンだからな。
最近は冷やかしみたいな協力依頼だったり、
明らかに条件が一方的なものだったりして、
実際話しを聞くまではやる気が出ない。
無駄骨は折りたくないしね。
ホントに骨を折りかねない世界だけにさ。そこは慎重に、だ。
それに、他人のやる気って見せられるとなんか白けちゃうじゃん?
先方が白けちゃわないようにする、大人の気遣いだよ。これも。
最も、お陰様でオレが冷やかしだと思われてモメることの方が多いんだけど。
「んん〜マジにココに人居んのか?それともどっか他の階に居んのか?」
捜すのダルいなーもー。ま、いいさ。暇だしな。
とりあえず階段まで歩いてみた。
改めてボロボロになってる階段を近くで確認して思った。
(なぁ、階段が急に壊れてオレがTHE ENDとか…ヤメテよね)
とりあえず、ここは安全策だな。
「おーーーぅい、お手伝いに来ましたよー」
上を向いて大声を出した。
ダレも居なさそうだから出来るんだよな、コレって。
じゃなきゃ、オレって恥知らず。
>104-107
駆け寄った鈴の後ろからゆっくり近付いた。
転けた男性は遠目で見たときよりも老けて見える。
鈴の背中に隠れるようにして、ジッと彼の目を見る。
ただの勘だが、彼は私たちを拒絶しているようにも、
何か企みがあるようにも思える。
猫くんも、物申した気な目をしている。
身を立て直した男性は、いきなり質問をしてきた。
私が誰か知っているかと。
なぜ、そんな事を聞くのだろう。
ますます不安になってくる。
怪しさに耐えきれず鈴の服の裾を引っ張る。
振り返った鈴にそっと耳打ちをする。
「あの…先を急ぎませんか…?工場も目の前…ですし。」
一拍置いて、男性を盗み見る。
「それに…何か…あの人…危ない気がします…」
>>105-107 >>110 「知ってるも何も、アレだけテレビでバッシングされてたら嫌でも覚えてると思うけど?」
何故そのような質問をされるのか解らず眉を寄せて答えた。
手を出してはいたが警戒されているのか、市長はそれを取ろうとしない。
言動が妙に怪しいのも、世間に色々言われて卑屈にでもなっているのだろうか。
そう考えて、手は引っ込める事にした。
―ツンツン
服を引っ張られて振り返れば、秘守が不安そうな表情で耳打ちをしてきた。
「あの…先を急ぎませんか…?工場も目の前…ですし。それに…何か…あの人…危ない気がします…」
チラチラと市長を隠れ見るその言葉には、自分も同意だった。
小さく頷いてから市長の方に顔を向ける。
「たいした怪我もなさそうで良かったですね。それじゃ、私達はこれで」
そして秘守の手首を掴んで走り出す。
華奢な女性一人くらい引っ張っていても、オジサンの足には負ける気はなかった。
>107
「……ええと………君らは私が誰だか知っているかね?」
宮元が秘守と鈴に向かってそんな問いを投げかけた。
このまま、会話が続くのだろうか。事件の現場には行かずに。
だとしたら、俺にとっては退屈な話になりそうだった。
帰って、CDでも借りに行ったほうが有意義だったかもしれない。
続く退屈を想像してみれば、さっきまでの眠気がまた俺を襲いはじめた。
おかえりなさい、睡魔さん。
そして、速やかにお帰り下さい、睡魔さん。
眠気を追い払うために酸素を吸い込もうと、ふぁー、と大きな欠伸を一つ。
靴の音が鳴りはじめたのはその時だった。
>110-111
逸らした瞳を向け戻せば、秘守の手を引きながら鈴が駆け出していた。
(うぉ、速ぇ…!)
活動的なイメージの女だったが、予想以上に身体能力が高いらしい。
体の使い方が上手い、というのもあるのだろう。
素人が見ても走り方が綺麗で、無駄が無いように見える。
俺が欠伸をしている間に三人がどういう会話をしていたのか。
どんな流れで鈴が駆け出したのか、わからなかったが考えている余裕はない。
すぐさま俺も四足でコンクリートを蹴って走り出した。
そして、横をすり抜けざまに気まぐれに宮元の顔を覗き見る。
――男の瞳は暗く濁っているように見えた。
まるで天然のサングラスでもかけて、世界を暗く見ているような淀んだ目。
笑顔でさえ、嘲笑に見間違いそうな暗い色眼鏡。
俺は、どんな目をしているんだろうか。
もしかしたら、市長様と同じような瞳をしているのかもしれない。そう思った。
>>110-112 片方の女性は私を知っていたようだが、特に何もせず、二人揃って走っていってしまった。
「……」
黙って見送っていると、それに続いて走っていく猫と目が合う。どこか可愛げの無い猫だった。
一見、気ままに生きているように見える猫も、私の様に嫌われ、死にたいと思うことはあるのだろうか?
そんな馬鹿な事を考えた自分に対して、ふっと自嘲を含んだ笑みがこぼれた。
私は、私が生まれ育ったこの街が好きだ。この街の空気も、この街の全てが好きだった。
だからこそ市長になった。市長になって、子供の頃から大好きだったこの街を自分の物にしたかった。
能力者を排除するつもりは無かった。この街で暴れる犯罪者を、全て追い出したかっただけなのに。
あの日、市のスローガンを決めたあの日、私は言葉の選択を間違えてしまったのか。
「…………そういえば、最近はずっと庁舎に閉じ込められていたな…」
廃ビルの方に向かって、一言だけ呟く。そういえば、あのビルは結構な高さのあるビルだ。
東雲市を見渡すのにもちょうど高さの良い様な気がする。命を絶つのにも、街を眺めるのにもちょうど良い。
>109
恐らく気の所為だろうが、不思議と廃ビルから「お手伝いする」と返事が帰ってきたような気がした。
ああ、すぐに屋上に行かなければ。そして私の街を、東雲市を最期にもう一度だけ見よう。
足元に落ちているバナナの皮をゴミ箱に捨ててから、一歩一歩とビルへ向かって歩き始めた。
胃の痛みは、いつの間にか治まっていた。
「だぁ〜からさぁ…誰か居ないのかって」
ボロボロの階段の前でしゃがんで上を見上げる。
「あ〜…やっぱさぁ、この階段登らなきゃダメなの?勘弁して」
何だか肩すかしの気配だ。居ないなら居ないで返事が欲しいよ。マジで。
灰色の無機質な空間。階段に話し掛けるヤンキー座りのオレ33才。
「ちぇ。ビデオ持ってくりゃぁ良かった。
今の状態撮影して世界に発表したら前衛アートで通用しただろうに。」
じゃなきゃピューリッツァー賞…
なんて下らない事を言いながら煙草を取り出そうとした。
その時。
>>111ー112
バタバタと駆け寄る足音が入り口の方から聞こえてきた。
煙草を取ろうとした腕を、リュックと背中の間へ。
隠しているサバイバルナイフの柄を掴む。
「へへ…お帰りなさいませご主人様ってかぁ?」
此処は獲物の巣らしいじゃねーか。なら此処に獲物が帰ってきてもおかしくはねぇよな。
気の抜けた表情のまま振り返る。
マジで気が抜けた。
肩で息をしてる女が二人、しかも手ぇ繋いでやがるぜ。オイ。
ナイフを話して煙草を手に取る。
さぁて、彼女らは何モンよ。大方、同じ穴の狢か?
ふぅ。見た感じ狢っつーか子猫ちゃんだな。
…あ。マジで足元に猫まで居やがらぁ。
チッ。何か睨みつけてきやがる。あの猫。
「おたく等…同じ穴のこね…じゃなくて狢ってヤツか?
…言葉の意味、分かってるよな?」
くわえ煙草で立ち上がりながら訊いた。
115 :
名無しになりきれ:2006/06/28(水) 22:33:30
客観的に判断するに、一回仕切りなおした方がいいと思うよ。
流れ的に敵役は霧生一人しか有り得ないけど、その霧生はもう来てないみたいだし。
そもそも霧生のアジトに乗り込もうって話なのに、アジトに集まっても当の霧生は外でコンビニ強盗してるし。
敵役は不在の上これ以上増えようもなく、味方は集まっても結局だらだら喋るしかすることがない。
いわゆるハマりって状況だから、一旦リセットした方がいいんじゃない?
霧生はGMでしょ?
タイミング見計らってんじゃ……ないかな?
なぁ…一応相談所の方に行かね?
間違えた。避難所でした。
良スレ期待age
120 :
名無しになりきれ:2006/07/06(木) 11:03:37
霧生真の事件から数ヵ月後…
LM所属者達に、連絡メールが届いた。
送信者:亜古木 阿月 件名:救助要請
親愛なるリキッド・メソッドの同胞達へ。
ある特殊なGIFT能力を持つ人物が、犯罪者ギルド【パンドラ】に狙われているという情報を入手、
仲間数人と共に保護に向かったが、現在は私を残してほぼ壊滅状態。篭城戦を強いられている。
大至急救援求む。
場所は東雲山奥地の人里離れた屋敷。地図を添付しておく。
詳細は別途メールする。
送信者:亜古木 阿月 件名:続き
【パンドラ】は、国内最凶のGIFT能力犯罪者ギルド。
犯罪者ギルドとは、能力犯罪者が身を守るために連合したものが大きくなり、
やがて犯罪もグループで行うようになったもの。
【パンドラ】は500人前後の犯罪者を擁し、罪歴や性格、能力、戦闘力で
一人ひとりにギルド内で序列を付けられている。なお、構成員及び序列リストは警察で入手済み。
序列17位以上(現在)は世界的にも有名な危険な犯罪者が名を連ねており、
我々は警戒の意を込めて『悪夢の順位(レジデントオブナイトメア)』と称している。
敵のチーム編成は8名で、現在は残り5名。
うち『悪夢の順位(レジデントオブナイトメア)』は序列8位の武吹成澄(ぶすい なりずむ)と、序列13位の蘭々ららら(らら ららら)の2名。
何度か襲撃を退けてはきたが、この二人が本格的に動き出してからは殆ど一方的にやられている。
今のままでは、次回の襲撃には耐えられないだろう。
保護対象の名前と能力は、メールに記すには危険すぎるので、到着次第説明する。
121 :
名無しになりきれ:2006/07/13(木) 12:49:34
参加募集age
東雲市の山奥にある大きな西洋風の屋敷の荒れ果てている庭に5人の男女がいた。
「さぁ、そろそろこの仕事終わらせましょう?
はっきり言って時間かかりすぎだわ。」
その中で唯一の女性が先頭に立って他のメンバーを促した。
金色のドレスと銀色のハイヒール、
腰まで垂れたよく手入れされた長い黒髪、
東洋系の顔ではとびきり美人の部類に入るであろうその姿は
こんな山奥の屋敷にはまさに場違いだ。
それでも本人は気にせずにまるで誰かに
自分の美しさを誇示するように堂々としていた。
「あぁ〜?ちょっと待てや蘭々。」
蘭々と呼ばれた女性はゆっくり後ろを振り返る。
そこにはやけにポケットの多い黒を基調にした長ズボンと
紺色のパーカーのフードで目を半分ほど隠すように被った男がいた。
パーカーの下にはこれまた暗い青色を基調にしたTシャツを着ていた。
全体的に暗い印象を受けるのはそのためだろう。
「俺は序列8位でお前は序列13位だ。命令すんのは俺だ。」
「そして時間がかかりすぎたのはお前がいちいち
髪の手入れのために山下って
街に何回も戻ってたせいだろうが!」
男は自分の溜め込んでいた怒りを爆発させる。
それに対して蘭々は怯む様子もなかった。
「髪のお手入れはレディーの嗜みよ?」
「それに私に命令できるのはあの方だけ。
序列だって今ここで逆転させてもいいわよ武吹さん?」
「あぁ〜?」
「…」
二人は互いに睨み合う。
他のメンバーである男三人は場の空気に恐怖していた。
「…まぁいい。とりあえずさっさとこの仕事終わらすぞ。散れ。」
武吹に命令された蘭々はしぶしぶ、他の三人は素直に屋敷の玄関から入り、
それぞれバラバラに探索に行ったようだ。
「さて、俺はどうするかな?」
武吹は一人その場で思案した。
山道は非常に悪く、揺れる車は中々速度を上げられない。
「全く、もう」
アコギの奴。
だから最初っから私に声をかけていれば良かったのに。
ニッチもサッチもいかなくなってからようやく人を頼ってどーすんのよ。
…それにしても、
「序列上位が二人…かぁ」
パンドラの恐ろしさはよく知ってる。つい最近、序列34位に相棒が殺されたばかりだし。
勿論、そいつはきっちり制裁しておいたけど。
能力者のチーム行動は、単純に人数が増える以上の意味がある。いわゆる能力のコンボって奴。
相棒がいない今、私の能力でコンボで攻めてくる上位序列と勝負になる保障はない。
というより、多分ならない。全然ならない。
でも。
「…ま、どーせ誰かがやらなきゃいけないことだしね」
理屈はいいや。
愛と平和の法則に則って、悪い奴はグッチャグッチャにブチ殺した上で死体を市中引き摺り回しの刑。
それ以上でも、それ以下でもない。正義のヒーローは逃げないし、逆境でも絶対勝つものだものね。
「さて、と」
屋敷まで数百メートルと近づいてきたところで、車を停め、降りる。
これ以上近づくとエンジンの音で気付かれかねない。
私はこっそりと忍んで屋敷に近づき、裏口から潜入した。
名前:天ヶ峰 遥(あまがみね はるか)
所属: LM
性別: 女
年齢: 22
職業: 名探偵
容姿: ポニーテールがチャームポイント。いつも生地の少なく動きやすい格好をしている。
GIFT: 「制裁鉄拳(フォースフォースフォース)」
体内の栄養分を一定量消耗して放つ。
単なるフルスイングパンチだが、鉄球を時速300キロの速さで叩きつけるに近い破壊力を持つ。
打つ前の体を捻るタメと、技名を叫ぶ必要があること、腕の長さ分しか届かないリーチの短さは実戦では致命的な欠点だが、
破壊力は凄まじく、当たれば鉄板の防御の上からでも人間を殺せる。
元気かつ健康状態で、一戦闘で3発が限度。だが、手製のサプリメントの詰め合わせ袋を飲めば1発分余分に打てる。
詰め合わせ袋はいつも2つポケットに入れているが、戦闘をしながら飲むのは状況が許さない限りは不可。
forceは武力、暴力、強制力などの意。
補足: 性格は単純でアバウトで乱暴だが、正義の味方を気取るだけあり、素直ではないが根は優しい。
性格も能力もあらゆる意味で破壊力のみに特化しているため、サポート型の相棒がついて初めて実力を発揮できるタイプ。
探偵を名乗っているだけに馬鹿ではないが、決して賢くはない。
正義の味方を自称し、正義の為という単純な信念のために悪を討つ。
125 :
名無しになりきれ:2006/07/13(木) 21:01:11
>>123裏口から中に入ると正面には大きなドアがあった。
ドアの距離まではおよそ2メートル、扉は一つでこちら側に開くようだ。
右に行くとはすぐに色あせた壁にぶつかる。
左に行くと8〜10メートル先に曲がり角がある。
その曲がり角は右にしか行けない。
通路の幅は人三人が横一列に並んだぐらいの広さだ。
※尚記述し忘れたが現在は夜で雲は少し出ている程度である。
>>122 「…武ぅ吹さぁん」
後ろから囁く。
(どんな顔してくれるかなぁ。)
一回目の襲撃。あの時のメンバーに居た。
それなりに優勢だった。そのまま勢いでいけたかもしれなかった。
ボクも最初はヨカッタ。だからかな。
勝てるって分かったら、急に退屈になった。
目の前で高笑いしてた仲間が急に憎らしくなって敵と一緒に散ってもらった。
ボクも一緒に散った。勿論フリだけ。
いつもそうだ。いきなりツマンナくなる。
死んだフリして、隠れて、様子を見てる。ボクは忍者気取り。
こんなコトばかりしてるからギルドじゃいっつも最下位争い。
あの日からずっと見てたけど本当に退屈でまたムカついてきてた。
けど途中から、らららオネエサンと武吹さん達が来て、
空気がピリピリした。
興奮した。
ボクの感じるピリピリは、武吹さん一人になってもまだ続いてた。
耳元までスルリと来て、イタズラに呼んだ。
怒るかな、驚くかな、殴られるかな。
何でもいいよ、武吹さん。ボクはただ…
ただボクはピリピリがゾクゾクに変われば、それでいいんだ。
>>126武吹はレイの不意をついたイタズラにも
まったく顔色を変えない。
目と首を少しレイ側に向けるだけで後は何ら変化はない。
ただ、武吹を知っている者にしかわからない
静かなる『怒り』の空気がこの場に漂う。
「レイ、毎回お前に言ってるが任務は遊びじゃねぇ…
それがわかっててここにいるんだろうなぁ?」
しゃべる声には明らかに怒気が混じっている。
名前: レイ=ライオ=ラトニー
所属: パンドラ
性別: 男
年齢: 17
職業: パンドラ(最下位)
容姿: しなやかな金髪やや癖毛、青い瞳、一昔前のロックンローラーのようなファッションで赤を好む。
GIFT: SHOCK!!!
他人が能力を発動すること。
己の気分が高揚していること。
水中でないこと。
以上で使用可能。
最大出力は二、三発で殺人可能レベルの電気の塊を放つことが出来る。
ストックは五つまで。それ以上溜まると暴発。
どんなに出力を抑えても、一発としてカウントされる。
補足: 生粋のフランス人だが、
両親が日本に帰化してから生まれた子なので英語すら喋れない。
落雷による事故で死にかけ、能力に目覚める。
人種的な差別と見た目と違い英語が喋れないコンプレックスから非行に走る。
喧嘩で高校中退。
同時期にパンドラに参加。日々スリルを楽しむため生きる。
階級に興味はなく、むしろ注目されない分、下にランクインすることを望む。
悪知恵で様々な策を弄して事態をこじらせて楽しむ愉快犯。
子供のような振る舞いでありながらズル賢く、にやけた表情が基本。
パンク、ロック、ラップを愛する。本当は子どもも好き。
>>127 武吹さんの耳たぶを軽く触る。
「あれれぇ。驚かないね。」
しかし直感は働く。ピリピリがパチパチに変わった。
きっとこの人、大人なんだ。ボクには分かる。
ダテに殺し合ってないし、雷で死にかけてないよ。
満面の笑みを浮かべる。演技じゃなく笑顔でなくてはいられない。
ユラユラしながら踊るように前に回り込む。
「もぅ、わかってるよぉだ。目的と目標が大切なんでしょ?だからボクは楽しみたいんだ。」
笑顔に汚さが浮かぶ。
「でもボク、退屈しちゃったんだ。これじゃミンナみぃんな死んぢゃう。イイコト無いよ。
あそこのアイツ等(LMのこと)も全然ダメ。ツマンナイ。弱っちぃ。話にならないよ。
…ねぇ、なんか楽しいコトなぁい?」
言うだけ言って、ボクはまたステップを踏んだ。
武吹さんはイイ。大好きだ。キレイなビート刻んでる。
益々ヒートアップしてよ。
心からそう思う。
名前:月山太郎(つきやま たろう)
所属:無し
性別:男
年齢:22
職業:殺し屋(犯罪者の依頼のみ請ける)
容姿:着物姿で腰に刀をさす顔はなかなかの美形
GIFT:スラッシュブレードなんでも斬れる(ただしなんでも通さない盾などの能力相殺される)刀
発動条件は月山が鞘を手に持っていること
鞘を離した途端に刀は消える。
補足:性格はくせ者で、犯罪者からの依頼を請ける殺し屋だが、殺しが大好きで依頼がなくても人を殺す。
現在LMが多額の懸賞をかけている犯罪者の一人である。
因みに剣の達人で関西弁を話す。
能力はたまたま階段から滑り落ちて目覚めたらしい。
>>129 > 武吹さんの耳たぶを軽く触る。
>
> 「あれれぇ。驚かないね。」
耳たぶを触られたが武吹はまったく動じなかった。
相変わらずポケットに手を突っ込んだままジロリとレイを睨む。
> 「もぅ、わかってるよぉだ。目的と目標が大切なんでしょ?だからボクは楽しみたいんだ。」
>
> 笑顔に汚さが浮かぶ。
>
> 「でもボク、退屈しちゃったんだ。これじゃミンナみぃんな死んぢゃう。イイコト無いよ。
> あそこのアイツ等(LMのこと)も全然ダメ。ツマンナイ。弱っちぃ。話にならないよ。
> …ねぇ、なんか楽しいコトなぁい?」
武吹は一度目を閉じ溜め息をつく。
「お前が退屈か退屈じゃねぇかはどうでもいい。
さっさと目標を探して来い…」
フードを深く被った顔からレイの瞳を冷徹なまなざしが見つめる。
「これは『パンドラ』序列8位からの最終通告だ。
それでも退屈で行きたくないならいいだろう、
序列8位としてお前に『楽しい』ことを教えてやる…」
武吹の目は今のセリフが本気だとレイに物語っている。
ポケットに入っている手が何かを掴むように動いている。
「死にたくなけりゃ任務を遂行するんだな。」
「騒がしいな〜あんたら」
突然声がしたと思ったら一人の見知らぬ男がいた。
「うちは騒がしいのは好きやで・・・」
と言うと男は刀の手入れを始めた。
>>131 し…痺れる!高い位置でバック宙を決めた。
この弾けるカンジ、どう表現しよう?最高だよ!!
「充・電・完・りょ♪」
年齢よりずっと幼く見えるボクは今、いつも以上に子どもになってる。
退屈がぶっ飛んだ。ニッコニコだよ。
やっぱりボクは正しかったよ。武吹さんはいつもいじる程オモシロイんだ。
「今日はヤメとくよ。武吹さんとのヴァージン、大切にしたいもん。」
つい笑い声が出た。久しぶりに笑えてる自分が嬉しい。
「じゃ、また来るネ!行ってきまーす。」
投げキッスをして玄関まで駆け出した。
でも、これは言わなきゃ。
立ち止まって振り返る。
黒さ汚さ狡さ…全部が一瞬全身を染めた。眼がすわり、笑顔も無い。
「階級=(イコール)強さ…?正気かよ?」
そして直ぐにいつもの雰囲気に戻って、ステップ刻み玄関へ吸い込まれる。
>>132 武吹さんの後方に、オジサンがいたのには気付いていた。
でも、ボクはボクに正直。
リズムに乗ってるうちに動かなきゃ。
でないと…………ブチブチ潰しちゃいそぉだ。
武吹さんの眼に託した。
>>132 門から現れたとある裏業界では名が知られている男が
レイと武吹のやりとりに割って入る。
「月山太郎…わざわざここに来たってことは
『パンドラ』への宣戦布告と受け取っていいんだな?」
武吹は予想もしなかった珍入者に滅多に見せない笑みを零しながら言う。
>>133-134 突然レイは異常な喜びを表現した
と思ったらあっさり屋敷に向かう。
相変わらずわけのわからない野郎だと武吹は思う。
不意にレイが立ち止まりこちらを向いた。
> 黒さ汚さ狡さ…全部が一瞬全身を染めた。眼がすわり、笑顔も無い。
>
> 「階級=(イコール)強さ…?正気かよ?」
なかなか毒のある言葉を残して屋敷へと入って行った。
普段の彼からは想像できない言動だ。
「さっさと行け糞餓鬼!」
聞こえたかはわからないが急かすように言う。
しかしレイのその姿を見て半ばにやけている。
「いいねぇ…やはりこの組織はいい…」
ボソリと呟いた。
>>133レイが玄関のドアを開くとそこは大きなロビーだった。
左右の壁に二つずつ扉がある。
真ん中にはでかい階段があり、二階に行けるようだ。
その階段の後ろにも扉がある。
広さも申し分ない。
100人以上は一度に入れる余裕がある。
>>135 月山はそう言われると顔に笑みを浮かべ
「生憎・・・うちはあんたらと喧嘩するほど馬鹿やないで・・・」
と言うと、月山は刀を鞘になおして笑みを浮かべ続けながらつづけて
「ただあんたの所のボスにあんたらの護衛をするように言われたんや・・・」
と言いその場に座った。
>>137 > 「ただあんたの所のボスにあんたらの護衛をするように言われたんや・・・」
「何!?『あの方』がか!?」
武吹は自分達のボスが
1枚噛んでいることを聞き大声をあげる。
「……ならその証拠を見せてもらおうか。」
月山に依頼された証拠を問う。
>>138 それを聞くと月山は相変わらず笑みを浮かべながら
「ええで・・・あんたら殺されるかもしれへんけどな・・・」
と言うと懐から白い紙を出した。
名前: 御鑑明飛(みかがみ みょうび)
所属: LM
性別: 男
年齢: 33
職業: 代行車運転手
容姿: 生まれついての赤毛で長髪。
177cm、引き締まった筋肉質。服は動きやすい物を好む。
GIFT: 「BLOOD HAND」
条件は手が第三者の血で血塗れていること。
その手で誰かの傷口に触れた場合、その傷が塞ぐ事は無い。
但し、その手を塗らしている血液の主に限り、この効果は発動しない。
補足: 普段はへらへらして冗談ばかり言っているの
でどこか信用できない。
しかし、目的に対しては大胆不敵で手段を選ばない。必要ならば時に冷酷な行動もとる。
昔、刀をもった関西弁の男に突然斬られた。
斬られた腹には深い傷が残っている。
が、それ以上に心の傷の方が色濃く残っている 。
突然斬り捨てられた物の中には取り返しのつかない物が多かった。
能力はそれから身に付いていた。
因みに初めて能力の対象になった人間は既に死亡している。
LMからのメール、ことに協力依頼には必ず目を通し、ほぼ全てに手を貸している。
今は専ら賞金稼ぎが本業となっている。
「んーだよんーだよんーだよ?
この館ぁ迷路かってんだ!ドア多いよ・マ・ジ・で!」
オレってば、方向音痴なのか?マヌケだよ。
とりあえず、依頼者が見つからねーし、腹減った。
奥にゃ何かの死体もほったらかしだぜ?パンチ効いてるぜ。
もっかいあのだだっ広い玄関に行くけどどーしようか…
玄関から見て右側のドアから出ようとしたその時、
先に玄関のドアが開き、ステップで誰かが入ってきた。
「ぅゎ!」
とっさにドアを閉める。
お仲間?…いやぁ…違うっぽいな。
敵だらけなら、あんな堂々と玄関のドア開くか?
つうか、ステップ…
うん、敵だ!
神様ぁお願い!コッチに来させないでくれ!
>>141 武吹さん、ちゃんと理解しなかなぁ?フフ。
なにか言ってたみたいだけど、気にしないモン。お仕事中♪
お気にのロック鼻歌に、いざ突入!
何度見ても本当に広いなぁココ。バンドのライヴできそう。
沢山の人が、体が、脳が、心が!激しい旋律に一斉に痺れるんだ!
うぅん、想像するだけで快感だよ。お客さんもたっくさん集めるんだ。
「あっは♪」
華麗なステップも、音楽の一部、ダンスは体の歌。
さてボクはどのドアにしよっか?
左?右?それとも登ろっか?
「なんてねなんてね。最初から決まってるよ。
ボクはこんな幼稚な遊びではもう楽しめないんだ。」
ダッシュしてドアを蹴破る。
「もぉいぃかい?」
左側の部屋の奥にロン毛ストな男がいた。
心臓のビートが聴こえるよ。うぅん、分かるんだ。
なかなか早いリズムだよ。リズム感もいいよ。うん、センスあるね。
「ねぇねぇ、早く言ってよ、じゃないと始まらないよぉ。もぅい〜よって。」
名前:嵩郷導宏
所属:黎明の海神(レイメイノワダツミ)
性別:男
年齢:17
職業:学生
容姿:あまり長くは無いぼさぼさの茶髪。切れ目。
派手めな私服を常に着ている。
GIFT:『水蛇の相剥ぎ』
導宏を中心に半径20メートルの円周内にある水(水滴)を操り、
同範囲内にある任意の物(人)へと弾丸程の勢いでぶつける。衝撃の強さは水の量に比例。
発動条件には…
1.半径20メートル円周内に水がある事。(空き缶内などの残りは使えるが、
蛇口のしまった水道などは水が取り出せず不可能)
2.片目を閉じなければならない。(左右どちらでも良い)
3.両足で立っていなければならない。(立っている場所に制限は無い、座りなど不可)
条件が崩れた瞬間に水弾を作っていた場合はただの水へと戻ってしまう。
性格:温厚、柔和。
嘘が嫌いで嘘つきには容赦無く喧嘩をしかける。
備考:16歳の誕生日に家にGIFT使いの強盗が押し入り家族を殺される。
その時、導宏は腹部をさされ重傷を負うが自分のGIFTに目覚め強盗を殺害。
その後LMへと所属、偶然見つけた資料内に家族を殺した強盗がLM所属のGIFT使いだと知りLM脱退。
自分以外にもLMを憎むGIFT能力者が多数いることを知り、『黎明の海神』結成。
組織の表向きの顔は、PCなどから殺しの依頼を請け負い、報酬をもらう殺し屋集団である。
そして、殺しの依頼を遂行する際にLMが来た場合の排除が成功した場合特別報酬を上積みする仕組みになっている。
ここには導宏の個人的復讐の念が含まれている。
殺しの依頼自体は何人で請けても良いが報酬は均等に分けられ、LM殺害報酬は殺した本人のみとしている。
「あれが…パンドラか。LMでは無い様だが、さて如何なものか」
山奥の屋敷、それを見下ろせる高い木の上に…一人の少年がいた。
月明りに照らされた顔には笑顔が浮かんでいる。何か面白い物を見つけた子供の様な無邪気さが漂う。
「LMじゃ無いのなら、殺す必要は無いだろうけど…どう見ても怪しいな。
とりあえず…見つかると面倒だし、あいつら全員行くまでここで待っていようかな…」
のんびりと伸びをしていた。
>>142 来んなよ…来んなよ…来んなよ…来んなよ!?
おお?退いた?
…んあ………キテルーーーーーっ!
ドアから離れ、部屋の奥に移動したが隠れそうもねぇ。
ドアが勢いよく開かれた。少し壊れるくらいに。
「もぅい〜よって」
ちっ、カクレンボのつもりかよ。
見た感じ…予測不可だ。何なんだこいつ。
外国人ロッカー来日か?なんだあの恰好は。
ヘラヘラしてるクセに眼が笑ってねぇぜ。気に入らねぇな。
「遊びじゃねぇよ。悪ぃな。
だけど、今のところ派手にやり合うつもりも無いんだよね。
つまり、オレはお前には付き合えないってコトよ。
一緒にいるとオイタしちゃうかもよ?
分かる?どぅゆーあんだすたん?高見沢さん。」
挑発に乗ってこい。冷静さを欠け。
相手が相手だけに、逃げた方が賢明だ。
いや、相手の組織がってよりも、目の前のコイツがヤバい。
見た目の話じゃない。
あの眼…魔物だぜ。
>>139 「あぁ!?殺されるだぁ?
お前にか?」
わけがわからないといった顔で月山を見る。
月山が懐から白い紙を出した。
「その紙切れがどうした?」
月山に問う。
>>146 くくっと笑うと月山は
「いくらうちが殺し屋でも護衛するもんをなんで殺すねん・・・阿呆か?」
と鋭く言い放った。
そして、月山は急に真顔になり
「この紙はあんたのとこのボスから届いた依頼書でな〜
筆跡からしてボス本人が書いた物らしいねんや・・・」
と言った。
>>147 月山はくぐもった声で笑いながら無罪を主張する。
「快楽殺人者の言うことなんざ信用できねぇ。」
武吹は月山の言ってることなど
信用できないといった様子だ。
急に真顔になった月山から
ボスの手紙だと言われた武吹は神妙な面持ちになる。
「……さっさと読み上げろ。」
月山に白い紙に書いてある文章を読み上げるように促す。
>>148 読めと言われ月山はまた笑いを浮かべ
「ええよ・・・」
と言い紙を広げて
「『拝啓月山殿・・・
貴方の噂はかねがねお聞きしております・・・
ところで近々我が組織の有力者達が今度大規模な任務を行いますがそこに私が後継人として認めている者が行くのです・・・
そこで貴方にはその者のを中心に有力者の護衛を任せたいのです・・・
依頼金は充分に払うのでお願いいたします。』」
と読み上げた。
>>149 武吹はポケットに両手を入れたまま
黙って聞いていたがある単語に眉をピクリと動かす。
「後継ぎだと?そんな話は聞いてないぞ?」
いつものしかめっ面をより一層強くして言う。
「…まぁいい。お前が俺達の邪魔さえしなければな。」
そう言いながら武吹は3歩月山に近付く。
月山の刀の間合いには3歩ぶん入っていない。
「ところで俺達が殺されるかもしれない理由は何だ?
LMが来ているからか?
それとも…」
>>144の方に首を向ける。
「あそこに居る奴か?」
>>150 「ああ・・・それはな〜
依頼書を渡した奴があんたらに言うたら喧嘩になるから気をつけやって言ってたから言っただけやで」
と言うと刀の手入れをまた始めた。
――ギラッ
殺気にも似た視線を感じる。木の上で気配を消した俺を見つける程の力の持ち主。
この街で有名な月山太郎と…あれは『パンドラ』だろうか?こっちを見ていた。
「ちっ…バレたか?まぁいい。こっちに攻撃をしかけてこなければ…今は手を出さないさ」
木の上からそっと降りる。ゆっくり…ゆっくり。
不思議な建物に一番近い木まで近付きまた木登りを始める。
「地道に登ってるのに見つかるなら近くても関係ないか…」
>>145 「ひっど〜〜〜ぉい!ボクはレイって言うんだ!高見沢さんなんかじゃないよ!
オジサンの方が歳も近いし髪の毛の色も長さも似てるじゃないかー!」
ボクの一番イヤなコト。英語でバカにされるコト。
みんないつも英語でからかってきた。
高校でもそうだった。先生がムリヤリ教科書読ませたんだ。ボクが外国人だからって。
でも、全然読めなくて、みんなに笑われた。
だから、みんなを笑えなくしたんだ。それだけだよ。
なのに一発退学。
でも、そんなコトをこんな初めて見たオジサンに、
「高見沢さん」に気付かれたくない!ボクのプライドだ。
それに、ボクのドコが高見沢さんなんだ!
ミュージシャン、ギタリストとしては好きだよ!?でも似てないよ!!
「高見沢高見沢高見沢!オジサンは高見沢だっ!THE ALFEE世代はオジサンの方だ!」
変な雑音がボクの頭に入ってきた気分。
オジサンがイケないんだ。オジサンは廃れたノイズィーミュージックだ。
ボクは宙返りの要領で踵落としを繰り出した。あたれば脳みそがぐちゃぐちゃ。
だってボクのブーツは鉄板入りだからネ。
汚い音のレコードなんか、叩き割っちゃえ!
…けど、ボクは期待するよ、オジサン。
避・け・て・ね♪
>>151 「喧嘩だと?くだらねぇ…」
首は
>>144に向けたままで目だけを月山に向ける。
「今は任務遂行中だ。
蘭々やレイじゃあるまいし遊んでいる暇はない。」
そう言ってまた目線を
>>144に向ける。
そこで導宏が移動したことに気付く。
「お前は『あの方』直々の雇われの身だ。
俺としては不本意だが今はこちらに協力しろ。
LMの奴等は片っ端から殺してもらう。」
武吹は右手のポケットから手を出す。
その手には小型のナイフが握られていた。
「じきにLMどもが集結してくるだろうからなっ!」
右手を軽く上に振り上げるモーションで
導宏の登っている木にナイフを飛ばそうとする。
>>153 オレの挑発にいとも簡単に乗ってきた。
そう、オレの作戦は成功したんだ。成功、成功…
「誰が高見沢だ!オレの髪の色は地毛なんだよ!
あーウッセ!何度も言うんじゃねぇっ!オレはギリギリTHE ALFEE世代じゃねぇよ!
お前な、その恰好でタカミー意識してねっての!?ウソツケ!
このベストヒットタカミーが!…あ?」
いきなり踵が脳天に迫ってくる。
前に転がるようにして何とか避ける。
踵が落ちた床の状態からして、ガードしなくて正解だったと思う。
「テメ…」
華奢な体と服装に似合わない運動神経抜群さ。
オレも少し覚悟決めとかねーとな。
多分、このガキ…能力は使ってねぇ。
それも能力は身体強化って感じじゃない、もっと別な何かだ。
あの、余裕がある顔が続いてる限り、野郎は能力を使わない。
ますます気に入らないな。
まるで、いつものオレのイメージと対峙してるみてぇだ。
「一発は一発…だよな?」
そう言うと何故か野郎は笑顔を見せた。
一気に踏み込む。
背中に隠していたサバイバルナイフを左手で掴み、真一文に振り抜く。
だが、それよりも数瞬早く、ヤツは特有のリズミカルな動きで何かしようとした。
分かってたぜ。どうせ避けられるさ。だから…
「もう一本!」
更に背中に隠していたアーミーナイフ右手で抜き、前方へ突く。
全体で数秒の争い。集中していたからか、オレには長く感じた。
ナイフを振りつつ相手を凝視している間、
久しぶりに強いヤツとぶつかってしまったんだなと、
オレは考えていた。
>>154 喧嘩に対しての発言に月山は目の前の光景を眺めながら
(ふ〜ん・・・なるほど・・・
『あの人』が気に入るのもわかるわ・・・)
と頭ではこう考え、口では
「はいはい・・・まかしときーな」
と言った。
>>152 武吹の視線を感じた嵩郷は今いる位置は危険だと判断し別の木に気づかれないように移動することにした。
ゆっくり木から下り、屋敷に一番近い木に登ろうとしている間に会話が聞こえてくる。
>「喧嘩だと?くだらねぇ…」
>「今は任務遂行中だ。
蘭々やレイじゃあるまいし遊んでいる暇はない。」
>「お前は『あの方』直々の雇われの身だ。
俺としては不本意だが今はこちらに協力しろ。
LMの奴等は片っ端から殺してもらう。」
>「はいはい・・・まかしときーな」
嵩郷はどうやら自分のことを話しているわけではないと理解した。
>「じきにLMどもが集結してくるだろうからなっ!」
その後木登りを再開し登っている途中で、武吹の声とともに嵩郷の登っている木に小型のナイフが刺さった。
>>153 レイは自分のトラウマに触れた御鑑に、昔、自分を馬鹿にした同級生達の姿を重ねる。
御鑑が他にも何かしゃべってるようだが気にしない。
レイは宙返りをしながら鉄板を仕込んだブーツで御鑑に頭狙いの踵落としを試みる。
しかし、御鑑がとっさに前転したことによってその攻撃は期待どおりはずれた。
レイの強烈な踵落としをくらった床はその部分だけ明らかに陥没している。
>「一発は一発…だよな?」
その後攻撃を避けた御鏡が背中に隠していたアーミーナイフを左手に持ち真一文に横になぎ払う。
>「もう一本!」
それを難なく後退する形で避けたレイに今度はもう一本のアーミーナイフを背中に隠していた
御鑑が右手にそのナイフを持ちレイを突く。
その攻撃をレイはまたもや後ろに回避し軽々と避ける。
>>155 >「高見沢高見沢高見沢!オジサンは高見沢だっ!THE ALFEE世代はオジサンの方だ!」
作戦が成功したのだろうか?レイは御鑑に大声で文句を言ってきた。
一通り文句を言ったレイが宙返りをしながら御鑑に強烈な踵落としをくらわせようとする。
それをとっさに前転で避けた御鏡。御鑑の代わりにレイの踵落としを受けた床は明らかに陥没している。
御鑑は避けた後すぐに背中に隠していたナイフを左手に持って真一文字に横になぎ払うが
レイに軽く後ろに避けられてしまう。
その後間髪いれずに背中に隠していたナイフを右手に持ちレイを突くが、
距離が足りなかったためかまたもや後ろに避けられてしまう。
>>156 月山は武吹の発言を聞き武吹が気に入られている理由をなんとなく理解する。
>「じきにLMどもが集結してくるだろうからなっ!」
その後武吹が先ほど首を向けていた場所とは少し離れた場所にある木にナイフを投げたが
月山はさほど気にせずに刀の手入れをし続ける。
ザクッ!!!
導宏のすぐ上の枝にナイフが刺さる。否、正確には登りかけた頭を下げたのだが。
「あぶないなぁ…LMじゃ無いなら手だしするつもり…なかったのに。」
少し眉間にしわを寄せる。先に手を出されれば誰でもイラっと来るものだ。
急いで太い木の枝まで登りそこに立つ。ここなら屋敷も月山達も見渡せる。
「次に何かしてきたら…今度は容赦なく力を使うから」
LMが集まると踏んで来た為に無駄に体力を使いたくは無いが…仕方ないと考えていた。
「まっ…僕が手を出さなくても誰かがやってくれたらラッキーだけど…」
子供の様なあどけない顔でクスクスと笑っていた。
裏口から潜入。
敵が入り込んでる可能性もあるから、十分注意しないと。
敵に先手を取られないよう、足音を忍ばせて気配を殺して廊下を歩く。
なんたって私は名探偵だから、こういうのは割と得意な方だ。
名探偵だから、探偵さんって呼ばれても絶対に返事はしないことにしてる。
まずは、アコギや他の仲間に合流することが先決。
状況の把握の意味もあるけど、それ以上に私の能力【制裁鉄拳(フォースフォースフォース)】は、一人で戦うのにとことん向いてないから。
引き絞って放つフルスイング・パンチ。鉄板もブチ抜けるし、当たれば相手がアフリカゾウでもハンマユージローでも
一撃で倒す自信があるけど、普通にやってもまず当たってくれない。技名を言う必要があるから不意打ちでも当たらない。
だから、相手の能力を掻い潜って当てるには、仲間のサポートが不可欠になる。
しかも、弾数は3発、補充しても5発だから、敵にも増援が来る可能性を考えたら、全員と戦うとしたら一人に1発も撃てない。
撃てば撃つほどエネルギー(栄養)を消耗しちゃうから、なるべくなら雑魚には撃たずに済ませたいし。
制約とリスクで雁字搦めの力。でも、だからこそ、この能力は最強の攻撃力を持っていられる。
ナイフを刺した方が早いと言われたら、困るけど。っていうか、怒るけど。言った奴をブン殴っちゃうけど。
この能力はこれで、けっこう応用性もある。
それに、私の売りはもともと身体能力と格闘術と反射神経と勘だから、制裁鉄拳を使わなくても、
並の能力者には全然引けは取らないつもり。……今回は、相手が並じゃないから困ってるんだけど。
まあ、悩んでもしょうがない。
フォース(正義)・フォース(強制)・フォース(執行)。
愛と平和の法則に従って、悪い奴は部屋中に中身をブチ撒けて死なせるのみ、だね。
曲がり角を左に、そして道なりに歩く。
敵に先に発見されないよう、足音を殺して気配を忍ばせながら。
「おーい!アコギー!ハルカさんが助けに来たよー!」
敵に先に発見されないよう、足音を殺して気配を忍ばせながら、私は声を張り上げてアコギを呼んだ。
アコギがもし今動けない状態にあったとしても、こう言えば私がLM側ということはわかるから、
聞きつけた屋敷内の仲間が来てくれるかもしれない。
うん、流石は名探偵。自画自賛。
敵に気付かれないように足音を忍ばせて、さらに進む。
「おーい!アコギ、生きてるー?」
大声でアコギを呼びながら。
>>159 天ヶ峰は大声でメールを送ってきた亜古木を探しながら通路を曲がり道なりに進む。
その先には通路の突き当たりにドアがあった。
だが、そのドアの前には既に先客がいた。
「あなた頭おかしいの?」
ドアの前にはニヤニヤ意地の悪い笑みを浮かべ、腕を組みながら天ヶ崎を見つめる蘭々がいた。
場違いな金色のドレスがやけに目立つ。
「自分がどこにいるのかわざわざ敵に教えるなんて馬鹿ねぇ〜。
それに大声で叫びながら歩き回るなんてレディーとしてはしたないわよ?お嬢さん?」
蘭々は明らかに天ヶ崎を馬鹿にした態度をとっている。
天ヶ峰から蘭々までの距離:約六〜七メートル
蘭々からドアまでの距離:約一メートル
通路の横幅:人三人分ほど
>>155 床、砕いちゃった。
でもこれでいいんだ。オジサンは簡単に避けてくれた。
>「一発は一発…だよな?」
オジサンがマジになった。これだよ!この人はボクを殺すコトに集中してる。
余計なコト考えず、殺し合う為に戦場にきたヒト。
こんなに気分のイイコトないよ。
オジサンの踏み込む靴の打音、振り切ったナイフの音、胸もとをかすった摩擦音…
早い早い!そのリズムでボクと躍ろうよ!
じゃあボクも一発いっくよぉ!
その顔、蹴り飛ばしてあげる!
「そォれっ!」
>「もう一本!」
「え!?」
ガチンと鉄がぶつかる、かたい音がした。
蹴りだそうとしたボクの靴底に、オジサンのナイフが刺さってる。
楽しい。楽しいよオジサン!
「モー!一発は一発って言ったじゃないかぁ!ウソツキ!」
ナイフが刺さった足を伸ばしながら外旋させて、ナイフを振り払う。
オジサンは左手のナイフを右手に持ち替えた。
「オジサン殺しを知ってるね♪ボク、ワクワクして来ちゃった」
オジサンとはもっともっと楽しめる。
なら、もっと楽しめるライヴにしなきゃ勿体無いよ。
オジサンは構えたままジリジリと後ろに進んでる。
ボクもオジサンを笑顔で見ながら床に転がったナイフを拾う。
そしてオジサンと同じ構えを真似する。
「オジサン、ピリピリしてこない?この部屋の中。
まるで聖地で不謹慎なパンクロック叫び歌ってる気分。
ロッカーの周りの敬虔な僧侶たちがぶっちキレてファックファックわめいてるみたい!
アハッ!神様の目の前で僧侶とロッカーのギャングバ〜ン♪超ウケル!」
ボクのテンションは高く昇りつめてきた。
名前:コー・イ・ヌール
所属:LM
性別: 男
年齢: 26
職業: LM職員
容姿: 東南アジア系の顔。170センチ・痩身・短髪・Tシャツ・腹巻・ニッカポッカ・ロープ・フック・レンチ
GIFT: 「クチ・トンネル」
地中を自由に動ける能力。屋内においては床・壁などもすり抜けられる。
すり抜けられるのは固定物のみ。
柱や岩はすり抜けられるが、振るわれた棒や飛んでくる石などはすり抜けられない
コーが触れているものは同じように地中を自由に動ける。そのため服装、装備も一緒に地中行動が出来る。
同じように、直接、間接的に掴まれた人間も恩恵を受ける事が出来る。
能力使用時、地中を見渡す視力を得る事が出来る。視界は10m程。つまり、地中にいても地上の様子が窺える。
制約:能力発動前に自分の血の染み込んだ地面である事。染み込んだ血の半径20mが能力使用可能範囲。
能力発動中は呼吸を止めている事。コー以外は呼吸を止めたコーに触れていること。
制約を破れば埋まった状態になってしまう。
一度制約を破ぶれば、また最初(血を染み込ませるところ)からはじめる必要がある。
補足:ベトナムからの出稼ぎ者。(不法入国)
配管工事中に事故で生き埋めになり能力に目覚める。
書類上は既に死亡しており、身分を証明するものは一切ない。故に帰国も職につくことも出来ない。
それでも故郷の家族に仕送りをするため、LMの専属職員となる。表の仕事は日雇い土工程度。
性格は素朴。正義漢。
よろしくお願いします。
要請のあった洋館についたのは少し前のこと。
薄い月明かりだけを頼りに、注意深く近寄っていく。
密かに潜入し、仲間と合流。亜古木達を救助し、そのまま密かに脱出さえ出来ればいい。
だが、そううまく事が運ぶはずもなく、洋館横で一人の男と出くわしてしまった。
まったくの出会い頭。
コーが敵味方を判別しなければいけないのに対し、相手の男にはその必要がない。
その差が先手を所有する権利獲得のキーとなった。
男は手に握っていたライターから火を迸らせ振るう。
火炎系能力者。ライターの火を鞭の様に扱っている。
通常の鞭とは違い、紐部分自体に攻撃力が備わっているので遠近両用の便利な武器だ。
コーが咄嗟に転がって炎の鞭を躱すと、相手の男は左手からも炎を迸らせる。
闇夜を切り裂く二本の炎の鞭。
コーは溜まらず息を止め、地中に潜った。
(転がった際に鼻血垂らしてよかった・・・。大地は無敵の盾!)
呼吸を止めたまま地下一メートルのところで上を見上げれば、炎の鞭を持ったまま辺りを見回す男が見える。
突然消えたため、驚いているのだろう。
アハムービーのような、思考の死角を付かれている状態なのだろう。
そんな様子を見ながら、腰に付けたロープ付フックを勢いよく投げ出した。
フックは地上に飛び出て、男の肩を捕らえる。
だが、大柄なその男は膝をつきはしても倒れるまでは至らない。
そしてこの攻撃で男はコーの能力を理解したようだ。
「ふざけやがって!引きずり出してやる!」
炎の鞭を消し、ロープを掴み引っ張る男をみながら、コーは唇を歪ませる。
(力比べをしていると思ったら大間違いですぞ。)
コーの能力はコーが触れているものにも付与される。それは直接、間接構わずだ。だからこそ服を着たまま地中
に潜れる。
つまり、このようにフックもロープについていることにより地中を進めるのだ。
そしてそれは、フックに引っかかっている男の身体にも言えた。
コーを引き釣り出そうとロープを引っ張り、踏ん張る男の足元が突然なくなった。
地面が消えたわけではない。男の足が地面をすり抜けてしまったのだ。
殆ど抵抗なく地面に埋まっていく。いや、男の感覚で言えば『落ちていく』のだ。
そして男は地中の世界を見ることになる。
地中を自由に動けると同じように地中を見渡せる能力もコーに間接的に触れることによって得ているのだ。
だが、そう認識する前に全ては闇に包まれてしまう。
コーがロープから手を放したことにより、男から地中行動能力が失われたからだ。
だが、能力が継続発動しているコーには妙な格好で固まったままの男の姿が良く見える。
息継ぎに一度地上に顔を出した後、鼻血をもう一度勢いよく噴出し地中に潜る。
男に止めを刺す為だ。
相手は動けないし、こちらも見えない。このまま放っておいても圧死か窒息死するだろう。
だが、コーは能力者同士の戦いにおいては詰めを怠る事が自分の死に直結する事を知っている。
動けない相手の頭にレンチを振り下ろし、死亡を確認してフックを回収。そして地上に出た。
倒した相手は完全に地中に埋まっている。見つかる事もないだろう。
密やかに合流脱出をするのだ。
「敵は最強、悪夢の順位二人!だが、我々LMが死力を尽くせば死中に活あり!今こそ欲する我が正義!悪漢ど
もに御仏の慈悲は無!!」
小さく呟き唇を噛み切ると洋館の壁に吐きかける。
そしてそのままあたりを確認し、壁をすり抜け洋館内へと潜入した。
>>163 コーが壁をすり抜け出た場所はどこかの部屋のようだ。
真ん中にはテーブルがあり、
それを挟むようにソファが左右に一つずつ置いてある。
向かい側には暖炉があり、
その右どなりに扉がある。
テーブルまでの距離:2メートル
暖炉までの距離:9メートル
扉までの距離:10メートル
>>160 道なりに進んで、扉に行き着いた。
扉の前には、人影。ビンゴブックで厭きるほど見た顔が、そこにあった。
思わずため息が出る。
……もう、準備もしてない内からいきなり厄介なのがきたよ。
>「あなた頭おかしいの?」
>「自分がどこにいるのかわざわざ敵に教えるなんて馬鹿ねぇ〜。
>それに大声で叫びながら歩き回るなんてレディーとしてはしたないわよ?お嬢さん?」
かちーん。
「ば、馬鹿ですってぇ!?」
声が少し裏返った。
この女、名探偵に向かって絶対に言っちゃいけない台詞を。名探偵はこの世で一番賢い職業だっていうのに。
『バーロー』は名探偵の口癖だし。
私は腕を組み、顔を背けてみせる。
「ふ、ふーんだ。居場所を教えたのはアレよ、わざとよ。
それに、普段はおしとやかにしてるもん。大体、おしとやかなんてアンタみたいな悪趣味金ピカオバンに言われたくないよーだ」
……でも、確かに声を出しながら気配を消しても意味がないかもしれない。
後で失敗メモブックに書いておこう。名探偵は同じ過ちは繰り返さない。
メモブックの違うページにたまに同じ内容のメモが書いてあるのはまあ、ご愛嬌として。
「ところでアンタ、アコギはまだ無事なんでしょうね?
このくらいの背で、無精ヒゲで、目つきの鋭い30代前半くらいのがっちりした中年」
暫く刀の手入れをしていたがあまりにも暇なので
「な〜少し遊んで来ていい?」
と聞いてみた。
洋館内部に入るとそこは暖炉のある大きな部屋だった。
明りはついていないが、窓からの薄い月明かりで行動には不便がない。
ここで取るべき道は、一階から順番に探索していくか、暖炉を伝って二階に上がるか、だ。
亜古木は二階にいるだろうと予想はついていた。
隙を付いて脱出する為なら一階にいるだろうが、メールの内容からは独自の脱出は諦めているように考えられる
からだ。
考えた挙句、コーは暖炉脇に積んであった薪を手に廊下に出た。
最低でも一人、仲間と合流してから救出に向かいたいからだ。
廊下には人の気配はないものの、明りがついている。
>159
すっと目を閉じ耳を澄ますと・・・声が聞こえる。
コーは、こんな潜入任務で大声を上げて探索するような人間は一人しか知らない。
ご丁寧に名前まで名乗っているので確信するまでもなく事実に行き着いた。
「自ら撒き餌となる計算された自己犠牲!な訳ないよな・・・。」
苦笑を浮かべながら裏口方面へと進んでいった。
>>158 > 「あぶないなぁ…LMじゃ無いなら手だしするつもり…なかったのに。」
「何?お前はLMじゃないのか?」
武吹は不機嫌な顔をしている嵩郷の方に体を向けた。
今度は左手にナイフを持っている。
> 「次に何かしてきたら…今度は容赦なく力を使うから」
> 「まっ…僕が手を出さなくても誰かがやってくれたらラッキーだけど…」
> 子供の様なあどけない顔でクスクスと笑っていた。
嵩郷のクスクス笑っている顔を見て今度は武吹が不機嫌になる。
「誰だか知らんが、俺はお前みたいな糞餓鬼は嫌いなんだよ・・・」
わざとらしく右手で頭を抱えたポーズを取りながら嵩郷の立っている木を見ている。
> 「な〜少し遊んで来ていい?」
「好きにしろ。俺たちの邪魔はするなよ?」
嵩郷は月山が武吹に質問をして、その質問に武吹が応じたところを見た。
「おい糞餓鬼、死にたくなかったらここから消えな。」
そう言って武吹はナイフを嵩郷の顔面を狙って投げてきた。
木の高さ:7メートル
木の上の嵩郷から武吹までの距離:7〜8メートル
木から武吹までの距離:3〜4メートル
>>166 > 「あぶないなぁ…LMじゃ無いなら手だしするつもり…なかったのに。」
「何?お前はLMじゃないのか?」
> 「次に何かしてきたら…今度は容赦なく力を使うから」
> 「まっ…僕が手を出さなくても誰かがやってくれたらラッキーだけど…」
「誰だか知らんが、俺はお前みたいな糞餓鬼は嫌いなんだよ・・・」
月山は刀の手入れをしながら二人のやりとりを聞いていた。
それによって木の上にいる人物がLMでないことを理解した。
> 「な〜少し遊んで来ていい?」
「好きにしろ。俺たちの邪魔はするなよ?」
月山の質問に武吹はお前もかといった顔つきで返してきた。
「おい糞餓鬼、死にたくなかったらここから消えな。」
そう言って武吹はナイフを木の上の人物に投げた。
>>165 > 「ば、馬鹿ですってぇ!?」
「えぇ馬鹿ね。そして美しくないわ。」
天ヶ峰の問いに蘭々は余裕の笑みで答える。
「少しは私の美貌を見習ったりしてみたらいかが?」
そう言って蘭々は自分の髪をかきあげた。
> 「ふ、ふーんだ。居場所を教えたのはアレよ、わざとよ。
それに、普段はおしとやかにしてるもん。大体、おしとやかなんてアンタみたいな悪趣味金ピカオバンに言われたくないよーだ」
>「ところでアンタ、アコギはまだ無事なんでしょうね?
このくらいの背で、無精ヒゲで、目つきの鋭い30代前半くらいのがっちりした中年」
「アハハ!見栄を張らなくてもいいのよ!あなたと私でレディーとしての差が出るのは
当然のことなんだから!」
天ヶ峰の見え透いた嘘に蘭々は口を片手で押さえながら高笑いした。
「それとそのアコギさん、逃げるのはうまいようねぇ。なかなか捕まらないわ。
おかげでアコギさんの部下の方達で遊んじゃった・・・」
蘭々は妖しく笑う。
「・・・あなたも、遊んでくれるかしら?」
蘭々の右手にはドレスの下に隠していた鞭が握られていた。
その時、天ヶ峰のLM専用携帯端末が受信メールが届いたことを知らせた。
>>167 コーは聞いたことのある声と名前を頼りに裏口方面に向かった。
その結果裏口らしき位置まではたどり着いた。
すると右手の通路の先から声が聞こえた。
> 「ば、馬鹿ですってぇ!?」
> 「アハハ!見栄を張らなくてもいいのよ!あなたと私でレディーとしての差が出るのは
当然のことなんだから!」
片方は聞いたことのある声、もう片方は聞き覚えのない声だった。
少し距離が離れているためか、全部聞こえるわけではないが自分が知っている者と知らない者が
会話をしていることはなんとなくつかめた。
その時、コーのLM専用携帯端末が受信メールが届いたことを知らせた。
送信者:亜古木 阿月 件名:救助要請
親愛なるリキッド・メソッドの同胞達へ
君達が私たちを救助するためにこの屋敷へ来てくれたことは、
既に私の能力で確認済みだ。感謝する。
さて私の現在地だが、ロビーの階段を二階に上がり、
そこから正面にある部屋の真上に梯子を登ったところにいる。
いわゆる『屋根裏部屋』だ。
屋根裏部屋へは特別な能力がない限り、
私のいる部屋から隠されている梯子を垂らし、
それを登るしかないようだ。
急いで欲しい。
あまり時間がない。
>>168 それを聞くと月山は屋敷に向かおうとするが武吹が木の上の少年にナイフを投げたので
(中よりこっちの方が楽しそうやな〜)
と思い、立ち止まった。
>>161 オレの突きは、鉄のぶつかる音とともにヤツの靴底にせき止められてしまった。
便利な靴もあるもんだと思った。
この状況で、また無邪気に白い歯をのぞかせる表情を見せるヤツにオレは…
底知れない何かを覚えた。
だが、その「何か」が何なのかは後で考えればいい。
今は退くわけにゃいかねぇんだ。
ヤツはガキのような能書きを垂れてオレのナイフを振り払った。
「ウソツキだぁ?お前も一発出そうとしたんだろ?おあいこさ」
反射的にオレの突きを受け止めた…
とは思いたくなかったオレの強がりと思い込みだ。
俺は右手にナイフを持ち替え、距離をとった。
相手の動きがまるで分からねぇ。近くにいたら何をされるやら…
ヤツもオレの気持ちを察したか、悠々と向こうに転がったナイフを拾い、
オレと同じ型をとった。
挑発………なんだろうか。
「殺しを知ってるかって?ワケ分かんねーなぁ。どーゆー意味かな?」
つい鼻で笑ってしまった。
こんなに余裕がなくて、それでもいつもの余裕を演じる台詞を吐く自分に。
哀れ。
そう思った。
このガキ、オレの心に土足で上がり込んで、
あの奇妙奇天烈なステップと独特なリズム感を秘めた口調で、
何もかも(特に自尊心を)滅茶苦茶に汚しまくってくれてる。
「ピリピリだって?同感だな。」
構えを解いて、靴ひもを締める。
「だけどな、お前の後半の言葉のセンスにオリャついていけないんだわ。
オレさ…」
素早くしゃがんだまま相手に背を向ける。
「ロックはビートルズとクイーンって決めてんだよね!」
オレが後退していた本当の理由、それはドアだ。
目の前のコイツとどう向き合うか、初めから方針は変わってねぇ。
逃げることだ!
オレはクラウチングスタートからダッシュをした。
>>169 >「えぇ馬鹿ね。そして美しくないわ。」
>天ヶ峰の問いに蘭々は余裕の笑みで答える。
>「少しは私の美貌を見習ったりしてみたらいかが?」
>そう言って蘭々は自分の髪をかきあげた。
むかー。
こ、この女、一度ならず二度までも。それに、
「私が美しくないですって?聞き捨てならないね。
自慢じゃないけど私、中学の卒業文集の『可愛いけど彼女にしたくない女・学年ランキング』」でダントツの一位だったんだからね!」
それは自慢する事じゃない、とよく言われるけれど。
ちなみに付き合いたくない理由ベスト3は、『危ない』『怖い』『疲れる』だったらしい。まったく、みんな甲斐性ないよね。
「アンタみたいなオバンの小皺なんて見習いたくもないよーだ!べー」
まったく、台詞も一挙手一投足も、いちいち腹が立つオバンだこと!
>「それとそのアコギさん、逃げるのはうまいようねぇ。なかなか捕まらないわ。
>おかげでアコギさんの部下の方達で遊んじゃった・・・」
>蘭々は妖しく笑う。
「ふんだ、仲間がやられてることは知ってるよ。…でもまだアコギは無事、ね」
内心ほっとしてしまった自分に気付いた。
違う違う、心配してなんかいないってば。あんなヤツ、殺されるならさっさと殺されちゃえばいいのよ。
私を最初っから呼ばないんだもの。最初っから私がいれば、こんなピンチにならなかったに違いないのにさ。
こうなったら、ぜーったい私の力を認めさせてやるんだから。それまでは、絶対パンドラなんかに殺させてやんない。
意地でも助けてやる。
「それなら、こんなところでこんな相手にのんびりはしてられないね」
口の端が、自然とにぃっと吊り上がる。
フォース・フォース・フォース(障害強制排除)。
さーて、ちょこっと燃えてきた。
>「・・・あなたも、遊んでくれるかしら?」
「遊ばないよ。序列14位、蘭々ららら」
答えつつ、体を横に開いて構えを取った。
「私の戦いは、正義の戦い。愛と平和の法則に則って、罪人を裁く。これから始めるのは、ただの断罪だよ。
天ヶ峰ハルカ、二つ名は【有無を言わせない正義】(フォース・フォース・フォース)。
……アンタはここで死になさい。 」
>その時、天ヶ峰のLM専用携帯端末が受信メールが届いたことを知らせた。
ポケットで携帯のバイブレータが震えた。後で確認しよう。
さて。
相手の顔は売れていても、能力は不明。
敵は、私の居場所を確認していたにも関わらず、敢えて不意を打たずに決闘の形に持ち込んだ。
本来の目的が別にあるのに、私との戦いに手間を掛ける理由はない。つまり、能力の発動に、今のこの場所・状況が絡んでる。
私の行動が発動のトリガーになるのか、そうでなければ、この場所に私が来るまでに準備をしてあるのか。
この場合、最良の選択肢は「一旦逃げる」。でも今は、こいつを相手に時間を掛ける気も、勝負を先送りにする気もない。
フォース(突撃)、フォース(暴力)、フォース(破壊)のみ。
『お前は馬鹿でさえなければクレバーなのに』。相棒が、生前に口癖みたいに言ってた。
私は決して馬鹿じゃないけど、何が言いたかったのかは、まぁ分からなくもない。
距離は6メートル強。
4歩走ってジャンプ、跳び蹴りで背後の壁に叩き付けて、着地、制裁鉄拳。理想的な展開なら、4秒で勝負はつく。
そんな理想が上手くいくはずはないけど。まあ、いいか。取り敢えず突っ込みながら考えよう。
「いくよ!」
気合入れの掛け声と共に、私は駆け出した。出たとこ勝負。
廊下の曲がり角まで来て、声が大きくなってきた。
そっと覗いてみると二人の女が対峙している。
手前の女は天ヶ峰。LMのエージェントだ。
そして奥、廊下突き当り。扉の前に佇むのは序列13位の蘭々。手配書でよく見た顔だ。
>「・・・あなたも、遊んでくれるかしら?」
>「遊ばないよ。序列14位、蘭々ららら」
(・・・天ヶ峰サン!13位ヨ、13位!)
挑発なのか、遊んでいるのか、素で言っているのか判らないが、心の中でツッコミを入れる。
階級社会のパンドラの上位序列者に対し、微妙な心理戦として言っているのなら大した物だが、そういうわけで
もないだろう。
携帯に届いた亜古木からのメールを見ながら、慌ただしくコーは準備をし始めた。
戦闘は始まる寸前、亜古木の現在地を確認。
これからの行動を考え、準備も大急ぎだ。
まず腹巻の中に忍ばせておいたカッターで腕を傷つけ、床に垂らす。
これで半径20m内は床も壁も天井すらもコーの【トンネル】だ。
退路は確保した。あとは・・・
>「いくよ!」
呼吸を整えていたところで天ヶ峰の掛け声が響く。
その声から一瞬遅れて角の陰から身を出した。
「天ヶ峰サン、しゃがんで!」
手に持っていた薪を天ヶ峰の後頭部めがけて力いっぱい投げつけた。
天ヶ峰は単独ではなく、長い間パートナーと仕事をしていたと記憶している。
そういう人間は緻密な計算立てて動くタイプと、直感で呼吸を合わせるタイプとに分けられる。
どう考えても天ヶ峰は後者のタイプだ。
咄嗟のこの声にも反応してくれるだろう。
どんな能力者にも言える事だが、肉体的には『訓練された人間』以上の力はない。
勿論能力を使用すれば別だが・・・。
突然の出現、不意に天ヶ峰により死角だった場所から薪の飛来。
これを躱すにしろ、能力を使うにしろ反応対処にワンテンポ以上費やす事になるはずだ。
後は天ヶ峰の仕事だ。
相手を倒せればよし、防がれれば即座に二階へ行けばいい。勿論、天ヶ峰が反応できずに後頭部で薪を受けて
気絶した場合もだ。
コーは薪を投げつけてから天ヶ峰を追うように駆け出した。
>>168 顔に飛んで来たナイフを顔を傾け避ける。
「糞餓鬼ね…。理解力が少ないおじさんはこれだから困るね、全く。
貴方達と戦っても僕に得は無いんだから」
言いながら月山と武吹の二人を嘲笑う様な目で見た後さっさと木を降り裏口の方へ走っていく。
そして二人が追いつく前に裏口から入りドアの鍵をかけた。
>>173-175 天ヶ峰の子供のような見栄を張った言動に蘭々はクスクス笑う。
「あなた中々からかいがいがあるわ!
そういうところは可愛くて好きよ、私。
あなたのことお人形さんにしたいくらい。」
> 「遊ばないよ。序列14位、蘭々ららら」
> 「私の戦いは、正義の戦い。愛と平和の法則に則って、罪人を裁く。これから始めるのは、ただの断罪だよ。
>
>
> 天ヶ峰ハルカ、二つ名は【有無を言わせない正義】(フォース・フォース・フォース)。
>
> ……アンタはここで死になさい。 」
「あら?遊んでくれないのかしら?残念ねぇ…
それに死になさいなんて言われたらあなたのこと、
殺したくなっちゃうじゃない…」
蘭々の声からはもうからかうだとか
冗談を言うといったような雰囲気は感じられなかった。
蘭々は鞭を持っている右手を胸の前に持ってくる。
> 「いくよ!」
「えぇ、どうぞ。」
蘭々はその場から動かない。
余裕の表情で天ヶ峰を見ている。
天ヶ峰が足に力をいれ駆け出そうとしたその時、
> 「天ヶ峰サン、しゃがんで!」
不意に聞こえたコーの声に天ヶ峰は反応し、
後頭部に飛んできた薪をしゃがんで回避した。
コーの投げた薪は狙い通り蘭々まで飛んでいく。
「伏兵!?」
目前まで飛んできた薪を蘭々は左手で触る。
すると薪はその場からまったく動かなくなった。
「伏兵だなんて見掛けによらず頭使ってるじゃない。」
蘭々はゆっくり薪を天ヶ峰達から見て左に避ける。
「でも、まだまだね。」
そう言って蘭々は止まっている薪を指ではじく。
すると今まで空中で静止していた薪がまた動きだし、そのままドアに飛んでいった。
ガン!
カラカラカラ…
ドアにぶつかった薪が音を立てながら地面に落ちる。
天ヶ峰から蘭々までの距離:約6〜7メートル
蘭々からドアまでの距離:約1メートル
コーから天ヶ峰までの距離:約3メートル
>>177 訂正
コーは天ヶ峰に走りよったのでコーと天ヶ峰のいる位置は大体同じ。
よって
コーから天ヶ峰の距離:50センチメートル
に訂正
>>171 屋敷の中に行くのをやめて立ち止まった月山には
木の上にいる人物の喋っている内容が聞こえた。
> 「糞餓鬼ね…。理解力が少ないおじさんはこれだから困るね、全く。
> 貴方達と戦っても僕に得は無いんだから」
そう言って木から飛び降り裏口方面へ逃げた人物を武吹は黙って見送った。
そこで武吹は屋敷に向かわずに立ち止まっている月山に気付く。
「おい、仕事だ。
あの糞餓鬼どうやら俺達パンドラとは殺りあいたくないらしい。
しかしそんなことは知ったこっちゃねぇ。
俺達の邪魔になるようなら尚更な。
お前『あの方』にいろいろ頼まれてるらしいがそれはいい。
あの糞餓鬼を追跡し始末しろ。できるな?『快楽殺人者』。」
>>176 裏口へ逃げた嵩郷は追っ手が来る前に裏口の鍵をしめた。
回りを確認すると目の前にはドア、右には色褪せた壁、左には通路がある。
左の通路の先からは人の声がかすかに聞こえる。
> 「いくよ!」
> 「天ヶ峰サン、しゃがんで!」
はっきりとは聞こえないが、
少しして投げたものがどこかに当たったような衝撃音を嵩郷は聞こえた気がした。
>>179 あの餓鬼を殺して来いと言われ月山は
「うちはあんまり子供には手をかけたくないんやけどな〜
でも武吹様が言うんやったら仕方ないな〜」
と言い渋々追って行ったがその顔は嬉しそうに笑っていた。
(さ〜て『黎明の海神』の首領の力を見せて貰うで)
>>172 おじさんから急に緊張感が無くなっちゃった。
いきなり靴ひもなんか結びだして…まさか諦めたの?がっかりだな。
ツマンナイ。
なら、もうイラナイや。さようなら。サヨナラ、おじさん。
真っ黒焦げに…
>「ロックはビートルズとクイーンって決めてんだよね!」
おじさんは急に走り出した。
ボクは少し呆気にとられた。
でも気付いた。ボクがドアを蹴り開けた時から、
おじさんはボクから逃げる気だったんだ。
ボクから逃げるために、ボクを殺そうとまでして…
このおじさん、よく分からないけど…やっぱりボクの期待通りだ!
「レトロないい趣味だねおじさん!」
追いかけないでナイフを思いっ切り投げつけてみた。
ナイフはおじさんの横を大きく反れて床に刺さった。
イメージじゃもっと足下に…やっぱり電気とは違うなぁ〜。
「忘れ物だよ!借りたら返すのが常識だもん。
おじさん、ボクと遊んでくれたからイイコト教たげる!
早く二階に行って正面の部屋の天井を気にするとイイヨ!
じゃーね!まったねぇ〜♪」
おじさんはちゃんと最後まで聞いてたのかな?まぁいいや。
おじさんは一応ボクを警戒しながらナイフを引き抜いて階段を駆け上っていった。
「フフフ。早く早く…。」
そう、おじさんには頑張ってもらわなきゃ。
いち早くアコギのおじさんに合流してもらわなきゃ。
このライヴ(戦い)をもっと盛り上げなくっちゃ!
せっかくいいミュージシャンが居るんだ。
舞台がちゃっちぃんじゃサマにならないよ。
100%、ううん、120でも150でも!
楽しまないと損だよ!
もっともっと熱く!激しく!燃えてしまえ!黒焦げになるまで!
結局、ボクはおじさんに電気を喰らわせなかった。
そして、チャージもさせてもらえなかった。
感覚を集中する。肌がまだピリピリしてる。
この館のどっかにまだ力の持ち主がいるんだ。
そしてきっとそこで………
「まだまだ遊び足りないよ…」
ゆっくりと、音を立てず…
ボクは一回の廊下を歩んでいった。
(現在電撃チャージストック:3)
>>172 明飛はレイが強いと判断。まともに戦闘を行うのは得策ではないと考え、
レイに背を向け走りだした。
それに対してレイはナイフを投げるが明飛には当たらずに横に大きく逸れる。
> 「忘れ物だよ!借りたら返すのが常識だもん。
> おじさん、ボクと遊んでくれたからイイコト教たげる!
> 早く二階に行って正面の部屋の天井を気にするとイイヨ!
> じゃーね!まったねぇ〜♪」
罠かもしれないが明飛は慎重にナイフを拾い、
ロビーの階段を登って二階に行くことにした。
尚メールは既に届いており、
明飛はそのことに気付いているがまだ見ていない。
>>181 とっさの明飛の判断に感動したレイは、
明飛にナイフを返し情報まで与えた。
レイの情報を聞いた明飛は逃げながらもロビーの二階に向かった。
レイはさらなる遊び相手を探して迷路のような廊下に出る。
すると廊下の先にあるドアの向こう側から、
ドアに何かがぶつかったような音がした。
ガン!
カラカラカラ…
>>180 武吹に命令され見た目はしぶしぶ、内心はワクワクしながら嵩郷を追跡した。
ほどなくして裏口についたが鍵を閉められたようで開かない。
鍵穴などはないようだ。
>>175 >>177 >「天ヶ峰サン、しゃがんで!」
反射的にしゃがんでから、
「!」
それから自分が声を聞いてしゃがんだ事に気付いた。この、聞き覚えのある声…
「…モグさん!」
東南アジアのイスラエルだかソビエトだかから出稼ぎに来ている、モグさん。
LMメイトの一人で、住所がそれなりに近いこともあって仕事範囲がかぶり、仕事ではよく顔を合わせる仲良しさんだ。
木の棒が回転しながら頭上を過ぎる。私は考える前に再び駆け出していた。
これから出来るはずの一瞬の隙を前に、余計な事を考えてる暇はない。
蘭々は木の棒に触れる。木の棒は空中にぴたりと停止する。
そして身をずらし指で弾くと、木の棒は再び慣性を取り戻し、蘭々がさっきまでいた空間を飛び抜けていった。
なるほど。後の先を取るタイプね。不意を打たなかったわけだ。
『お人形さんにしたいくらい』って言うからには生物にも効くかもしれないな、あれ。効いたら嫌だな。
まあいいや。
「モグさん!」
何かあったら何とかしてね、という意味を込めて叫び、私は蘭々の正面で思い切り足を踏み込んだ。
木の棒は避けられたものの、回避にあれだけの時間を消費したのだから、距離を詰めてタメを作るには時間は十分。
踏ん張った足、捻った腰、振りかぶった腕。
全身のバネで生み出された暴力が、右拳に集積されていく感覚。
さらに、ギフト能力で体内の栄養分が消耗されて、右拳に計り知れない莫大なエネルギーを上乗せする。
フォース・フォース・フォース(抗い得ない絶対暴力)。
今にも暴発しないばかりの暴力エネルギーを込めた右腕を、ギリギリのタイミングで解き放つ。
「いくよ…! 制裁鉄拳!!」
私は蘭々に向け、右拳の暴力を放った。
左の通路から色々な人の叫び声が聞こえる。
「クスクス…喧嘩っ早い人もいるんだね。LMであれパンドラであれ…潰しあって満身創痍になるまでやってくれよ。
後は僕が全てを貰ってあげるからさ…」
無邪気な…いや、『邪気だらけ』で子供の様な笑顔を浮かべる。
「じゃっ、戦いに水を差しちゃ悪いし…真っ直ぐ行かせてもらおうっと」
後ろのドアの鍵をしっかり確認して、正面のドアのノブをゆっくりひねった。
>>183 鍵がかかってるのを確認すると月山は溜息をつきながら
「しゃあないな…弁償代は払わんで…」
と言うと、ドアを刀で斬り裂き中に入って行った。
>>184 コーの不意打ちにより隙ができた蘭々を天ヶ峰は見逃さなかった。
> 「いくよ…! 制裁鉄拳!!」
「っ!?」
予想外の天ヶ峰のスピードに蘭々は 驚きを隠せない。
ドゴォッ!!
天ヶ峰の右拳から放たれた『制裁鉄拳』は豪快な音を出した。
その拳の先には蘭々が右手に持っていた鞭が
空中に浮いている形で天ヶ峰の渾身の右拳を防いでいた。
『制裁鉄拳』は蘭々にはあと一歩で届かなかった。
「接近戦には自信があるみたいだけど、
私の能力を見て接近して来るなんてお馬鹿さんね!」
蘭々は左手で『制裁鉄拳』を放った後の天ヶ峰の右手に触れようとする。
天ヶ峰の右拳から蘭々までの距離:30センチメートル
コーから天ヶ峰までの距離:6〜7メートル
>>185 裏口のドアの鍵が閉まっていることを確認、
正面にあるドアのノブをゆっくりひねった時だった。
> 「しゃあないな…弁償代は払わんで…」
裏口からぼそぼそ独り言が聞こえた後、
裏口の扉が細かく切り刻まれた。
切り刻まれた扉の先には月山がいた。
>>186 鍵が閉まっている扉に溜め息をつきながら刀で切り刻む。
切り刻んだ扉の先には、
正面の扉のノブに手を掛け扉を開けようとしている嵩郷がいた。
嵩郷と月山の距離:2メートル
>177>184
薪は狙った通りに蘭々に向かっていったが、その対処を見てコーの全身が粟立った。
蘭々の能力が慣性制御に類するものだという事に気付いたからだ。
>「モグさん!」
天ヶ峰の声の意図を汲み、コーは腰に付けたロープ付フックを取り外して投げつける。。
能力的な相性は最悪。どうなるかは判っている。
慣性制御をされれば、天ヶ峰の制裁鉄拳がいくら威力があっても防がれてしまうだろう。
かといって今更止まる事も、止める事もできない。
それほど天ヶ峰のスピードは速い。
いつでもフォローできるようにすぐ後ろにいたつもりが、あっと今に距離を開けられ蘭々と接近状態になって
いる。
>187
*ドゴォッ!!*
大きな音がしたが、天ヶ峰の拳は鞭に止められていた。
そして蘭々がその右手に手を伸ばしている。
この一連の状態をみてコーは助かったと思った。
おそらくではあるが蘭々の能力は慣性制御。それは直接触る事によって 発動する。
そして鞭に当たっておきた大きな音。これは鞭に力が加わり発散したエネルギーが音に変化したもの。
つまりは拳は止められたものの、天ヶ峰自体にはなんら影響を受けていない、と言うことだ。
天ヶ峰が蘭々に触れられるまでは自然のまま。そう、鞭に拳を止められた反動すらも、だ。
「ちょっと痛かったらごめんネ。フォーメーションAF2ヨ!」
この刹那の瞬間を逃してはいけない。
A=亜古木はF2=2階にいる。と言うだけだが、蘭々の注意が多少でも空回りしてくれればいい。
投げつけたロープつきフックを微妙に手繰り、天ヶ峰に撒きつけ引っ張る。
呼吸を止め思いっきり引っ張ると、反動と相乗したように天ヶ峰の体が浮き上がった。
正に一本釣り状態といおうか。
高く吊り上げられた天ヶ峰の体は天井をすり抜け二階の床へと投げ出される事になるだろう。
それが終わるとコーは唇を歪ませ、無言で自身すぐ隣の壁に足をかけた。
呼吸を止めて能力を継続したままなので捨て台詞の一つもいえないのだ。
コーはまるでそこに登る為の窪みがあるかのように手足を壁にめり込ませ、急いで這い上がっていった。
>>189 蘭々の左手が天ヶ峰の右拳に触れようとしたその刹那、
> 「ちょっと痛かったらごめんネ。フォーメーションAF2ヨ!」
援護を頼まれていたコーが間一髪で
天ヶ峰をフック付きのロープで掬い、救い出した。
天井に吸い込まれるように消えていく天ヶ峰を蘭々は黙って見つめる。
「あなた良い能力持ってるじゃない。」
蘭々はフォーメションAF2とやらを警戒してか、
その場から身構えて動かない。
その間にコーは壁を登って二階に逃げることに成功した。
天ヶ峰とコーは先ほどの場所から真上の二階の廊下にたどり着いた。
今のところ亜古木の言う屋根裏部屋の真下の部屋の正確な位置はわからない。
>>187 >>189 「おおぉっとぉ!?」
制裁鉄拳は蘭々の鞭に当たり、止まった。
制裁鉄拳が振り抜けなかったのは中々レアでアレな体験だけど、問題はそんな事じゃなく、その止め方。
蘭々が直接触れている訳でもないのに、鞭で制裁鉄拳の破壊力自体が完全に殺されてる。
どうやら、停止した物体は外部からの干渉に関わらず完全に停止するみたい。
私自身の体は、差し当たり動く。ということは、能力は蘭々の体に触れないと効果を受けないらしい。
うーん、何にしろ、これは能力の分が悪い。今思い出したけど、そういえばこいつ上位序列だったしね。強いんだよね。
>「接近戦には自信があるみたいだけど、
>私の能力を見て接近して来るなんてお馬鹿さんね!」
蘭々が私に触ろうと手を伸ばしてくる。
制裁鉄拳の弱点の一つ、技後の隙の大きさ。相手が頑張って避けたのならともかく、
体勢も崩さずにいなしたのなら、次の攻撃を硬直中の私は回避できない。
でも、問題なし。
私は不敵な笑みを作ってみせる。
「ふふ、私は馬鹿じゃないって何度も言ったでしょ?
私の辞書には、フォース・フォース・フォース…『正義』と『突撃』と『破壊』しか載ってない。
でもね、こんな私でも、人の辞書を借りれば色んな言葉を引けるんだよ」
蘭々の手が触れる前に、私の体にロープが巻きつき、天井に向けて勢い良く持ち上がった。
予定通り。
「 『戦略的一時撤退』。
じゃーね、オバサン!アコギを保護した後でまたじっくり相手したげるよ。
手品の種は割れてるんだから逃げない方がいいよー、この件が片付くまでに私を殺しそびれたら、
アンタの能力をLMのメーリングリストで大々的にバラしちゃうからね!」
釣り上がり上昇しながら、私はそこまで早口に言って、
「ばいばいきー」
『ん』まで言えずに天井にめり込んだ。
欲張って『きー』を伸ばさずに『ばいばいきん!』と短く言い切るべきだったかもしれない。残念。
あとで失敗メモブックに書いておこう。
「へぶっ!」
天井をすり抜けて、華麗に頭から着地。首がちょっと変な方に曲がった。
1階から上の階に着いたんだからきっと2階だと思うけど、位置的にはどこだろう。
いや、モグさんのことだから、めちゃめちゃ張り切って3階まで投げ飛ばしたかもしれない。
さておき。
制裁鉄拳が止められたのは割かしクツジョクだけど、あの手の手品は種が分かれば脅威はだいぶ少なくなる。
仕切り直して、準備と警戒をしておけば、対処はできなくもない。そのための戦略的一時撤退。
…次こそ、絶対に裁く。
なんて考えてるうちに、モグさんが壁をよじ登ってきた。
私が到着してからモグさんが登って来たタイムラグ的にここは2階で間違いないと思うけど、
モグさんがめちゃめちゃ張り切って猛スピードで登ってきたのなら3階の可能性もある。4階かもしれない。
外から見た目に2階建てでも、そんな既成概念に囚われないのは名探偵の基本。
「ありがとねー、モグさん。助かったよ。
あ、でも、友達だから助け合うのは当たり前だから、敢えてありがとうは言わないよ。
その代わり、何かあったら私もいつでも助けてあげるからね」
そう言ってウインクしてから、私はポケットから錠剤詰め合わせ袋を取り出した。
制裁鉄拳で消費した分の栄養を補充するためのもので、いつも両ポケットに1つずつ持ち歩いてる。
制裁鉄拳1発分の栄養を補充できる分の錠剤がじゃらじゃら入っていて、これで弾数が3発の制裁鉄拳が5発撃てることになる。
ちなみに、栄養は完全に吸収されていなくても、取り合えず飲み込んでさえあれば弾数として有効にしてくれるみたい。
水なしで飲むカプセルをに苦戦しつつ、私はモグさんに尋ねる。
「さて。これからどうしようね?
あんな強いのが蘭々だけじゃなく武吹までいることだし、取り合えずさっさとアコギを保護しておきたい気がするよ。
でも、どうやって探そっか。あ、モグさんのことだから、ひょっとしてもう見つけてたりなんかして?」
――ガッシャァァァン!!!!
自分の後ろの扉が何らかの形で破壊された音が聞こえた。
振り返った刹那握っていたドアノブを捻りその奥の廊下をダッシュする。
導宏の本能が危険を感じ水を求めて戦える場所を探して走る…走る。
「ちっ…どんな形相してるんだよ、あのおっさんは…」
走りながらジグザグに廊下を進む。そして台所と思われる部屋にたどり着いた。
「水道は…あった♪」
水道の蛇口を捻り、水を少しずつ手にすくっては辺りに撒く。
そしてしばらくして廊下の扉を締め、扉の一番奥にあたる角に立つ。
「通り過ぎたらラッキー…来たら…相手してやるよ…」
そして自分のGIFT発動条件の為に片目を閉じ扉を見つめる。
>>193 「逃がさんで…坊主」
そう呟くと月山は追い掛けて行った。
(隠れたつもりか…馬鹿やな〜……
さ〜てどんな能力か試さしてもらおか…)
>191>192
二階まで這い上がり、爪先が完全に床から出た時、コーは大きく息を吐く。
体内の酸素濃度を高めるかのごとく大きく息を吸う。
>「ありがとねー、モグさん。助かったよ。
> あ、でも、友達だから助け合うのは当たり前だから、敢えてありがとうは言わないよ。
> その代わり、何かあったら私もいつでも助けてあげるからね」
「うん、たすかるね。天ヶ峰さん強いからワタシ安心。
それにしても制裁鉄拳は凄いね。
方向誘導しただけで二階まで飛んだのは殆ど制裁鉄拳の反動の力だモノ。
でも面白捨て台詞は困るヨー。ワタシ噴出しそうになっちゃって。息止めてなきゃ能力解除になっちゃうんだか
ら。
あと、毎回言うけど天ヶ峰サン、相変わらずネーミングセンス悪いヨー。」
(一番最初に『ありがとう』言ってる!)
突っ込みは心の中で。口に出してしまう程、知らぬ仲ではない。
天ヶ峰はコーの能力からか、モグさんと呼ぶ。そしてコーは毎回ネーミングセンス悪いと文句をつけるのだ。
文句をつけるといっても呼び名を改めさせる為ではない。
天ヶ峰が改めないのは判っているし、一種の社交辞令的挨拶のようなものだ。
「携帯に亜古木サンからメール入っているよ。
あの人とは二、三回しか顔合わせてないから知らなかったけど、能力は探査系なのネ。
時間もないようだし、天ヶ峰さんの言うと通り、保護しておくと言う方向で。
それからきっと御鑑サンも来ているね。あの人LMのお仕事皆勤賞だもの。皆と合流すると心強いね。」
栄養剤を飲み込みながら尋ねる天ヶ峰に応え、玄関方面に歩き出す。
コーの能力を使えば壁など関係なく一直線にいけるのだが、気付いたら吹き抜けだったり外壁まですり抜けてい
て転落負傷。などと言うことにならない為にも通路を歩いていく。
「しかし蘭々は恐ろしい能力だったね。知らずにやりあえば必ず負けるヨ。
慣性制御か空間固定か、物体時間軸操作か。なんにしても触れないといけないところが救いよ。
破瓶拳なんかが有効かもしれないからやってみる?天ヶ峰さんならできると思うよ。」
廊下を歩きながら蘭々への対策を破瓶拳の解説と共に話した。
#########破瓶拳##################
清代末期。
拳法の達人であり、陶芸家であったショー・斗元が編み出した拳法。
ある日大きな瓶を窯だししていた斗元は長年のライバルであった鎮・守守に襲われた。
鎮は防御の天才であり、突・薙・払など全ての攻撃を完全に封じる事のできる男だった。
斗元の攻撃は全て躱わされ徐々に劣勢になっていく。
あらゆる攻撃が効かない事を悟った斗元は敗北を予感し、悔しさの余り窯だししたばかりの瓶を叩き割った。
叩き割られた瓶の破片は鎮に降り注ぐ。
細かく鋭い無数の破片が全面に渡って飛来しては流石の鎮も防ぎきれなかったのだ。
これ以降、斗元は瓶を武器にした拳法を研究し、ついに破瓶拳を完成させた。
後年、完成された破瓶拳をみた西洋人がそれをヒントに一つの銃を発明した。
その銃『ショットガン』の名の由来が破瓶拳の創始者ショー・斗元であるということは余りに有名な話である。
『民明書房・奇拳と銃の危険な関係』より抜粋
>>193-194 嵩郷は台所にたどり着き発動条件を満たし、月山の襲撃を警戒する。
一方、月山は嵩郷の居場所は既にわかっているのか、
閉められた台所の扉の目の前に立つ。
辺りは静かで他に人はいないようだ。
嵩郷から扉までの距離:5m
月山から扉までの距離:50cm
>>191-192>>195 天ヶ峰は最後にセリフを全部言い切れなかったことをくやしがり、
後でいつもの失敗メモブックにこのことを記そうと心に誓った。
天ヶ峰がそんなことを考えている間にコーが壁から登ってきた。
そこでまたもや天ヶ峰の天然ボケが炸裂。
コーは心の中でつっこんだ。
その後天ヶ峰とコーはおそらくいるであろう明飛と合流し、
亜古木の保護をすることに決め玄関方面へ向かう。
その間に天ヶ峰は栄養カプセルで栄養を補充し、
コーは天ヶ峰に破瓶拳の話と蘭々への対策を教える。
ロビーの二階にたどり着くと
亜古木がメールで言っていた部屋の前に立つ明飛を見つけた。
>>197 六日ルールを適用する。
最後の文を訂正
天ヶ峰とコーは亜古木がメールで言っていた部屋にたどり着く。
いるであろうと思われていた明飛とは合流できなかった。
>>198 部屋の中はだだっ広く、本棚や接客用のテーブルとソファ、
観葉植物などが置いてある。
向かい側には窓があり、そこから中庭が見える。
天ヶ峰とコーが部屋に入ると部屋の入口から見て
右奥の隅の天井が一部開き、そこから梯子が降りてきた。
>199
二階、ロビー階段上がった正面の部屋の屋根裏部屋。
的確なヒントではあるが、広い洋館の中、天井をすり抜けて二階に上がった為位置が掴めない。
色々迷った挙句『それっぽい』部屋に辿り着いた。
来ていると思っていた御鑑とは合流できなかったが、部屋の選択は正解したようで天井から梯子が下りてきた。
それを見て出迎えは天ヶ峰に任せるとばかりに窓に近付く。
合流できたからには後は脱出手段を考えなくてはいけない。
発見される恐れがあるので窓からは覗かず、壁に血をふりかけ頭を突っ込んだ。
薄暗い月明かりに照らされたっているのは、パンドラ序列8位の武吹だろう。
振り返ると丁度亜古木が降りてきているところだった。
「亜古木サン、会えて嬉しいヨ。
でもゆっくりもしていられないね。ワタシ、来る時敵を一人倒したから後4人。
前門の武吹、後門の蘭々。脱出するのも並大抵じゃないよ。できれば・・・。」
亜古木に挨拶をし、言葉を途中でとぎって目配せをする。
それに続く言葉を【その人物】に聞かせないために、だ。
コーの能力を以ってすれば、壁や天井などの制限を受けずに行動する事が出来る。
だが、それでも脱出は難しいだろう。
そこでコーが当てにしたのは亜古木が保護したギフト能力者の能力だ。
序列上位者が二名も揃って行動することなどめったに起こる事はない。
その力ゆえに二人も必要とする事がないからだ。
だが、今回一人の能力者を奪う為に8位と13位が揃ってきている。
単に力の強い能力者ならわざわざ奪いに来る事はない。
よほど特殊な能力者だとコーは踏んでいた。
他能力者の力を増幅したり、逆にまったく無力化したり。
あるいはテレポート、時間の操作など余程特殊な能力か個人で組織レベルの力を出せる能力者か。
いずれにしても尋常で無い能力者が保護対象のはず。
ならばこの危機にそれを使わぬ手はないと考えているのだ。
勿論今まで亜古木がそれをしなかったのは何らかの理由があり、利用できない割合の方が高いと思った上での
目配せだが・・・。