『騎士団駐屯地』
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>「そういや、君の名前を聞いてなかったな。なんて名前なんだい?」
「私は支援型鬼械人形(マシーネン・マトン)LZW-9999。開発時の呼称名はR・ワルキューレ。最新モデルの支援型鬼戒人形です。
模擬人格OSが起動を開始してから1年10ヶ月が経過していますが、実際に機体に搭載され現在のように稼動を開始したのは2ヶ月前です。
機体は生体機械、半生体機械、軽量型強化外骨格、魔道回路と電子回路で構成された複合型であり、稼動に要する動力源の供給方法は
有機生物と同じように口腔を通して外部から有機物の摂取を行うか、他者からの魔力の供給、太陽光発電や外部からの電力供給等が挙げられます。
私に実装されている模擬人格OSは、ヒトが私を扱いやすいように模擬人格のインターフェース機能が与えられており、ヒトが扱いやすいように
設計されております。また、ヒトに準ずる有機的な思考をする事がある程度可能であり、従来の鬼戒人形よりも柔軟な運用が可能です」
淡々と自分についてのデータを列挙していく。一旦ここで説明を区切りはしたが、彼女の機能と開発経緯を全て話せば一日で語りきれる量ではない。
>「へえ、君は機械の事にも詳しいんだな。・・・しかし、でっかい機兵だよな。」
ようやく電子回路に掛かっていた負荷が取り除かれたので、ヴァリアスタヴルの思考モードは通常モードに切り替わっていた。
『本機の頭頂高は288cm、重量は323kg。通常の機械兵士よりも幾分大型機であります』
別に訊かれたわけではないが、ヴァリアスタヴルはフォルッシャードの言葉に反応して自らの頭頂高を重量を明らかにした。
ワルキューレを先頭に一行はガストラ城の城塞守備の任務に就いている騎士団駐屯地に到着した。
未だに悪魔の襲撃による対応は遅れているようで、武装した兵士や士官がその処理に追われて奔走している。
「では、騎士団の兵舎に御案内します。表で御主人様≠御持て成しするわけにもいきませんから」
さっさと兵士や一時的にガストラ城に避難してきた市民の間を通り抜け、ワルキューレは騎士団の兵舎へと進む。
そんなワルキューレの後姿をヴァリアスタヴルは見送っていた。どうやら、ようやく制御が返還されたらしい。だが問題も少しあるようだ。
『…火器管制システムの一部に凍結を確認。全搭載火器の使用を制限。両腕、両肩、両足、背部の兵装のコントロールの剥奪を確認。
以後、装備されている火器を用いての戦闘行動を行う場合は、LZW-99…ガガガガガガガ……』
ワルキューレを型式番号で呼ぼうとしたら、不意に思考回路に強力な負荷が掛かった。どうやら、ウィルスの類を彼女に仕掛けられたようだ。
『呼称名を変更。R・ワル…ガガガガガッガガ……ワルキューレの許可無しに兵装の起動を行えないようプログラムを変更を確認』
どういうつもりなのだろうか?とは声に出さない。が、彼女が自分の搭載火器の凍結を行ったのには不可解である。
何故、態々自分を弱体化させる必要があるのだろうか?自分の任務はガストラ皇帝家に敵対するあらゆる勢力の殲滅であるというのに。
(…?)
ふと、思考回路の一端にメールが書置きされていた。それを開き、内容を確認してみると…
(…………“任務の変更により、現在実装している火器の使用は不必要。緊急時のみその使用を許可する”)
メールの内容はそのようなものであった。気がつけば、任務内容まで変更されている。どうやら、単機による戦闘を行う必要が無い任務を与えられたようだ。
『…現在実装していOSに電子戦に対する耐性が低いと判断。早急に最新型に換装することを要請』
中央制御OSにまで侵入された形跡が残されている。そして見事にガストラ皇帝家家臣にしか命令の書き換えが行えない筈なのに、命令が書き換えられていた。
書き換えられた命令の内容。それは神器捜索隊に加わり、機体のスペックを全て活用し、神器捜索隊の面々を支援することであった。
『フォルッシャードを兵舎内に案内』