>514-515>517
ハインドが急激に旋回を始める。
巻き込まれる可能性も考えて数歩下がった。振り回された巨人は盛大に壁に叩きつけられる。
触手が離れると、ハインドが後退をはじめる。間合いを切ったところでスピーカーから声がした。
>「・・・さて、そろそろ止めとするか?勇士諸君」
(終われると良いんだがな!!)
鈴木がこちらの顔を見ている。視線があうと震えの来た腕を上げながら口を開いた。
>「シノザキさん、止めをお願いします。この腕ではとてもじゃないが命中させる自信はありません。」
>「時間稼ぎぐらいならしますよ。お願いします。」
それで合点がいった。いくら実際に扱ったことがなくても、肉体的に問題がない者が使う方が
命中精度は高いだろう。いまの鈴木では、構えることすら可能かどうか。
「わかった、任せろ」
言い捨てて走り出す。先ほど投げ捨てた無反動砲へ向かって。背後では銃声がしている。
物陰からランチャーを引きずり出し、構えた。安全カバーを跳ね上げ、照準を覗く。
しっかりと巨人の姿をその中に納めた。
「撃つぞ、下がれ!!」
この距離からなら爆風に巻き込まれる恐れはないだろう。鈴木も物陰に走りこんだ。
「have a nice day(ごきげんよう)…ってな」
引き金を引く。思いのほかゆっくりと発射筒から弾体が滑り出していく。
ほんの少しそのスピードで進み、その後ブースターに点火。暴力的な加速を見せ、巨人に襲い掛かった。
所持品:グロック19(残弾11)
現在地:等訓市 デパート屋上
>518
(A`)ウボァ…
シノザキが放った無反動砲の一撃は追跡者を木っ端微塵に撃ち砕いていた。
>518−519
バックブラストを避ける為に物陰へと飛び込む。
>「have a nice day(ごきげんよう)…ってな」
シノザキの声が妙にクリアに聞える。
追跡者はサイドステップで回避しようとするが間に合わず、追跡者に命中する。
着弾地点の周囲に煙が立ち込める。
「くそ・・・よりによって不発と来た・・・か。」
弾頭で巻き上げられた煙が消えた後も追跡者はまだ立っていた。
追跡者が吠える。
「カワサキィイィィィ!」
追跡者は横っ腹に刺さった弾頭に手をかけ、引き抜こうとした。
それよりも早くシグを構え、弾頭に撃ちこもうとするが、腕が上がらない。
(・・・くそ・・・四十肩って歳でもないのに・・・)
「カワサァキィィィィイー!」
追跡者の肉が爆ぜる。連続して銃弾が撃ち込まれているのだ。
シノザキのグロックだけではない。
自衛隊仕様のブラックホークが頭上に急降下し、ボルトアクションと思しき不規則な間隔の銃声が響く。
「シノザキさん!これを!」
シグを地面に落とし、そして勢い良く蹴り飛ばす。
全段撃ち尽したグロックを捨て、シノザキがシグに飛びつき射撃を再開した。
拳銃とライフルの音が響き、最後には無反動砲の爆音が全ての音を掻き消した。
爆発地点にあるのは小さなクレーターと追跡者の焦げた肉片だけ、だった。
正しく追跡者は木っ端微塵だ。
シノザキに向ってニヤリと笑い掛ける。
「良い腕じゃないですか?カメラだったら、ピュリツァー賞物だ。」
コンクリートを切り出して記念品にしたい願望を堪え、着地したブラックホークに近づく。
目についたのはM24ライフルを構える覆面の男とブレイザーのライフルを構えた眼鏡の青年だ。
動作が独特なブレイザー社製のライフル珍しさに眼鏡をかけた青年の方をジロジロ見てしまう。
それにしても若い。どこで拾ったのか知らないがUSPなんぞを吊るしている。
以前読んだミリタリー雑誌で青年の持つ銃は両方ともエアガンとして販売されているのを思い出した。
「お礼は後にします。ワクチンが必要な方は?」
覆面の自衛官に向き直って言った。
おそらく少し前に新設された狙撃部隊だろうとM24狙撃銃から判断する。
ワクチンの提供。
地獄の片隅で行なう最後の仕事だ。
現在地:デパート屋上 着地したブラックホークの前
>519-520
弾は吸い込まれるように巨人の体へ突き刺さった。しかし、当然起きるはずの爆音はない。
(不発!?クソ、ここに来て…!)
即座にグロックを抜き、撃った。狙いは弾頭。当たれば恐らく爆発が起きるはずだ。
他にも銃声がする。頭上のヘリからだろう。あっという間にグロックに残った弾を全て吐き出した。
しかし弾頭に命中した弾はほとんどない。忌々しげにスライドがオープンしたままの銃を睨み付けたところで、
鈴木が持っていたシグを蹴ってよこす。グロックを投げ捨て、文字通りそれに飛びついた。
頭上からの銃声もまだ続いている。うつ伏せのまま慎重にシグを撃った。
5発目でスライドがホールドオープンする。その瞬間、巨人の体が爆ぜた。
息を長く吐き出し、両腕をゆっくりと床へ下ろした。鈴木が声をかけてくる。
>「良い腕じゃないですか?カメラだったら、ピュリツァー賞物だ。」
「フィルムに収められれば本当に取れたかもなぁ。惜しいことをしたよ」
言いながら起き上がる。上空で待機していたヘリが降下してきている。自衛隊のブラックホークも高度を下げている。
ブラックホークの方へ歩み寄る。
「よぉ、生きてたか」
川崎へ笑いかけた。
現在地:等訓市 デパート屋上
(重田)
>512
>「重田さん、まだ…聞こえてる?私は大丈夫だから……貴方もあと少しだけ頑張って。」
>宥めるようにぽんぽんと、回された腕を軽く叩く。
桜子の血を啜った御蔭で幾分落ち着きを取り戻したとはいえ、依然として途方も無い飢餓感に残った理性が痛めつけられている。
しかし、それでも桜子を抱き竦めていた腕の力を緩めるだけの余裕はあった。
先程までは拘束する様に後から抱き締めていたが、今では優しく包み込む様に彼女の華奢な身体を抱き締めていた。
>「…………お互い無事に帰れそうにも無いけど、例の件はそれでも有効なのかしらね?」
例の件と言われて暫し飢餓感と戦っている脳から記憶を手繰り寄せてみるが、思い当る事柄が無い。
>「ビルの屋上ではいささかムードに欠けるけれど……楽しいデートになるといいわね。」
何の事だっただろうかと真剣に考え出そうとしたところで、桜子から言われてようやく思い出す事が出来た。
嗚呼…そういえば、そんな馬鹿らしい約束をしたっけな……少なくとも、まだあの時の自分達はこの地獄から無事に脱出出来ると信じて疑わなかった。
「…………」
OKの返事の代わりに、抱き締める腕に少しだけ力を籠める。今の自分にはそうやって答えるしか術が無い。
声など出そうものならば、忽ちに恐怖で押し潰れそうな自分を露呈してしまうからだ。きっと嗚咽を漏らして泣いてしまうだろう。
桜子には何度も醜態を晒している手前、これ以上は駄目だ。此処まで来て、これ以上自分の弱さを彼女に見せる訳にはいかない。
桜子とて不安なのだ。化物に変化しつつある人間の恐怖と言うものは、今の自分にしか分かり得ない。
生きたい。人として生きたい。だが、目に見えない存在がそれを許さず、人間とはかけ離れた者に仕立て上げようとしている。
自分達はそれに抗う事はできない。変貌の恐怖を噛み締め、残り少ない人としての生を全うしなければならない。
(雑賀)
>「本当に、もう、時間が無いのよ………。」
桜子に急かされ、黒服の巨人を始末し終わった屋上にUH-60JAを着陸させるとドアを勢い良くスライドさせて開け放った。
重田に無言で頷くと、彼は桜子を伴って死闘の残骸が累々と横たわる屋上に降り立った。
>「お礼は後にします。ワクチンが必要な方は?」
「ワクチンだって?」
ドアを開けると、先程まで巨人と死闘を繰り広げていた男性にそう声を掛けられ、思わずその言葉の意味を確かめるように聞き返していた。
「…感染者は全部で五名。機内に三人、そして其処の二人」
機内の感染者と屋上に降り立った重田と桜子を顎でしゃくる。
ワクチンの真偽の程は不明だが、上空でホバリングを続けているCh-47を見れば、彼も此方側の人間として考えるべきだろう。
しかし、油断はならない。まだ確証は無いのだ。雑賀はさり気無く何時でも9mm拳銃を抜ける様にしておいた。
名前: 雑賀誠一 /重田勝則
年齢: 23 /21
性別: 男
装備品:(共通)CQB装備、無線、救急品袋、水筒、背嚢(予備弾薬他食料)
武装:(雑賀)…M24(5発)、7.62mm×51NATO弾×35、89式小銃(12発)(市街地狙撃戦仕様&40mm擲弾発射筒付き(0発)+40mm擲弾×2)
9mm拳銃(8+1発)+9連装マガジン×2、銃剣 、小銃用30連装マガジン×4、
(重田)…9mm拳銃(9+1)、9mm拳銃用弾倉×2、銃剣
現在地:屋上
状況:オホートニクに感染者を教える/桜子と共に屋上に降り立つ
状態:右脚負傷@治療済み / 良好(傷は完治し、右眼が新たに生まれる)、感染、飢餓感
>521−522
>「よぉ、生きてたか」
シノザキが笑顔を浮かべながら笑う。
眼鏡の青年とはどうやら知り合いらしい。
青年が背負っている無線機と暗視ゴーグルは小人達の標準装備だ。
もしや、と話し掛けようとするが、自衛官の声がそれを遮る。
>「…感染者は全部で五名。機内に三人、そして其処の二人」
「ツイてますね。なんとか人数分はありますよ。」
目の前の男がさり気無くホルスターの止め金を外したのが見えた。
抜いたらどうですか、と銃を顎で指す。
「拳銃は手に収まっている時こそ最大限の効果を発揮する道具ですよ?ここじゃ規則なんぞ役に立ちません。」
はき捨てる様に言う。それは目の前の男に対する感情でなく意思決定と責任が不明確な官僚組織に対する悪態でもあった。
巨漢の自衛官と和服姿の妙齢の女性は共に顔色が悪く、血に塗れている。
自分のためにも健康そうな自衛官に銃を握っていてもらいたかった。
「失礼。貴方に当るつもりはありません。私は、あー、そうですね、鈴木で結構です。所属は聞かないで頂きたい。」
条件反射の営業スマイルを浮かべると、上空で待機する反乱軍のヘリに脱力しきった腕を振る。
ゆっくりと慎重にヘリが着陸する。
(・・・ここまで症状が悪化・・・していても・・・効く・・・のか?)
目の前の二人はもう限界ギリギリだろう。
ヘリから降りてきた反乱自衛官がシノザキのバックからワクチンを取り出す。後でシノザキに謝っておこう、と考えた。
本数は4本だった。
「・・・なんだって?もう一度探して下さい。中身を全部出してもいいから!」
しかし幾ら探しても4本以上見つからない。
「クソ、すみません。4本しかない。こうなったら・・・若い順にワクチンを打っていく他ありません。」
首を振り、ボソリと小さい声で自衛官に告げた。
装備:ワクチン4本
場所:デパート屋上
>517>518>520>521>523
>「have a nice day(ごきげんよう)…ってな」
>「カワサァキィィィィイー!」
「・・・現実離れした現実だな、これは」
追跡者が倒されるのを見て、思わず呟いた。
ただ傍観していただけだったが、目の前の光景を見る限りは自分が戦う必要も無かったらしい。
そう思い、そのままヘリの方へと歩き出した。
>「・・・なんだって?もう一度探して下さい。中身を全部出してもいいから!」
「・・・ん?」
声のした方を見ると、先程追跡者を倒した男がヘリから降りてきた自衛官に何か言っている。
>「クソ、すみません。4本しかない。こうなったら・・・若い順にワクチンを打っていく他ありません。」
「・・・・・賢明な判断だな、この状況下で冷静に判断できるとは大したもんだ」
鈴木にゆっくりと話しかける。
こういう時は、即座に判断を下す事が重要になってくる。ましてや、ワクチンが足りないという緊急事態なら尚更だ。
が、一つ引っ掛かる部分があった。
「・・・あの二人にもワクチンを打つのか?」
重田と桜子を見ながら、鈴木だけに聞こえる様に小声で話す。
「もし打っても、あいつらが助かるという確証はあるのか?」
名前:ロバート・ファリントン
年齢:37
性別:男
所持品:ベレッタM92F(8発)+8連マガジン×2、コンバットナイフ
煙幕手榴弾×2、手榴弾×3、携帯無線機、水筒、携帯食糧4パック
バックパック(暗視鏡、発煙筒2本、30連マガジン×2、烏龍茶500ml×6、
爽健美茶500ml×4、コカコーラ500ml×4)
服装:米海兵隊ウッドランド迷彩服
現在地:等訓市デパート屋上
状況:追跡者戦を傍観、鈴木に自己紹介すっ飛ばして話しかける
(重田)
>523
>「クソ、すみません。4本しかない。こうなったら・・・若い順にワクチンを打っていく他ありません。」
正直、鈴木とか言う男が持ってきたワクチンには端から欠片ほど期待してはいなかったが、いざ人数分無いと
なると、かえって生に対する諦めがついた。
「それについてですが、俺は遠慮しておきますよ。俺は自衛官。優先するのは自身よりも民間人ですし…それに」
突如重田の右腕から、骨が砕けるような鈍い音が鳴り響いた。
「…俺はもう手遅れですから」
右腕が焼ける様に熱い。見れば、皮膚の下で何か蠢いている…嗚呼、畜生。もう手遅れだ。
直ぐに焼けるような感覚を通り越し、右腕から完全に感覚がなくなった。それと同時に音を立てて皮膚を切り裂く音が聞こえた。
皮膚の裂け目から覗くのは、灰色の強固な外骨格に覆われた“新たな腕”。今はまだ右腕から変異が始まったに過ぎないが、これは何れ全身に至ることだろう。
まだ、理性が残っていることは奇跡かもしれない。不思議と飢餓感が今は無かった。
「まだ理性が残っている内に俺は此の場を立ち去りますよ。其処の大尉とかに殺されたくはありませんからね」
そう言って苦笑を浮かべてみせる。恐らく、これが最後の人間らしい感情を表す機会かもしれない。
骨が砕けるような音が周囲に響くと、今度は僅かに残っていた皮膚と衣服を弾き飛ばして右腕が一回りほど膨張していた。
今では右腕は、肩から指先にかけて灰色の蛇腹状の外骨格に完全に覆われていた。
「……それじゃ、俺はこれで失礼しますよ」
決して振り返ることなく重田はその場の全員に背を向け、瓦礫で半ば塞がっている屋上スロープへと歩き出す。
最後に一目だけ雑賀や伊達、その他の生存者、そして桜子を見たかったが、これから人間でなくなる自分に最後の思い出など必要ない。
(…結局、俺は此の街で“死ぬ”のか。嫌だな……)
思えば、21歳という生涯は短い。本音を言わせて貰えば、このままヘリに乗って帰りたいのだ。
帰ったら沢山遣り残してきたことを遣り遂げたい。若者らしく、青春を謳歌したい。もっと親友達と楽しい時を過ごしたい。まだ、体験したことの無い事を遣りたい。
「ちっ…格好つけた割には潔くないな、俺」
88式鉄帽を被り直し、誰にも聞こえない様に呟いた。胸中に次から次へと湧き起こる思いは、人間の生への執着。
仕方がないとは言え、流石にこれには往生際が悪いと思わざるを得ない。決めた事なのだし、覆す事の出来ない事なのだから諦めるしか無いと言うのに。
「まぁ、諦めるしかないな…」
(雑賀&伊達)
「…機内と、其処の女性にワクチンを打って遣ってくれ」
雑賀は鈴木に機内の感染者と桜子にワクチンを打つよう促すと、屋上駐車場の向こうに広がる闇に向って歩き出す重田の後ろ姿を伊達と共に見送っていた。
(糞…結局、俺は嘘しかつけないのか!?)
出撃前に重田と伊達に掛けた、“必ず生きて連れ帰してやる”という言葉を果たす事は出来なかった。
握り締めた拳に自然と力が篭り、爪が皮膚に食い込んで血が滴り落ちる。
伊達も苦い表情を浮かべていた。若くして“人として死ぬ”相棒に何もして遣れず、ただ見送るしかできない自分の無力感を噛み締めるしかない。
「班長…」
伊達が目配せをすると、雑賀は無言で頷いていた。
「重田勝則一等陸曹に敬礼」
かっと踵を合わせ、直立不動の姿勢を取ると重田の後ろ姿に敬礼を送った。雑賀や伊達に続き、機内に残る隊員達も同様に敬礼を送っている。
名前: 雑賀誠一/伊達雅宗/重田勝則
年齢: 23 /21/21
性別: 男
現在地:屋上
状況:立ち去る重田に敬礼を送る/〃/生存者達に背を向け、此の場から立ち去ろうとする。
状態:右脚負傷@治療済み / 良好/感染、右腕が生まれ変る
>522-525
鈴木がブラックホークに搭乗していた自衛官と話をしている。その間に反乱部隊のヘリもだいぶ高度を下げた。
いったん川崎に軽く手を振ると、そちらへ向かって歩き出す。着陸したヘリからはドラムバッグを持った自衛官が飛びおりてきた。
受け取ろうと手を伸ばしたが素通りされる。そのまま鈴木のもとへバッグが運ばれた。
「…俺の」
切迫した状況だから仕方が無いのだがやはり釈然としないものはある。
おまけにバッグを逆さに振って中身を全て出しているのだからたまらない。
「おーい、あんまり手荒に扱っ…4本?」
5本あったはずのワクチンが4本しかないらしい。5本あって1本割れている、などというのではなく。
研究所できっちりケースに戻しておいたはずだ。それが無いとなると、誰かが持ち去ったとしか考えられない。
(あのアロハの男か…)
荷物を探ることが出来たのはあの場にいたほぼ全員。そして、行方が知れないのはあの男一人。
そう考えるのが自然だろう。困ったことをしてくれたものだ。
いつの間にか鈴木に米軍兵士風の男が歩み寄り、声を潜めて話しかけている。
その声を掻き消すようにごきりと鈍い音がした。見ると、一際巨体の自衛官の腕が変異を始めている。
>「…俺はもう手遅れですから」
話し振りは明瞭だ。理性もあるらしい。ヘリを降り、しっかりとした足取りでスロープへ向けて歩き出す。
>「…機内と、其処の女性にワクチンを打って遣ってくれ」
その後姿を見送りながら、鈴木と話していた自衛官が言った。ひょいと機内を覗き込む。和服姿の女性が横たわっている。
こちらも腕から変異が始まっているようだ。後ろからは靴の踵同士が触れ合う音が響いた。
残った自衛官達が敬礼をしている。その前を無遠慮に横切って、散乱した荷物からアンプルを拾い上げた。
「そちらのお嬢さんにはこの方が口に合うんじゃないかな」
研究所で化け物から抽出した薬液入りのあのアンプルだ。鈴木が酷く苦々しい顔をする。それを無視して、和服の女性の傍に屈みこんだ。
「よぉ、姐さん。あんた、今自分が人間だって胸張って言えるか?」
注射器をかねたアンプルをしっかりと握らせた。
「だったら打て」
鈴木に向かって一つ肩をすくめて見せる。ヘリを降りながら言った。
「ま、ほら。安っぽい正義感振りかざすの好きなタチだから」
それが身を滅ぼしかねないと分かっていても、やらずにはいられないのだから手に負えない。
もっとも勝算が無いわけではない。完全に変異が進行し、怪物と融合したユダにさえ効果があったのだから。
あの時ユダは自らの身を切り刻み、薬液を強制的に排出することで『治癒』を食い止めたが、
ヘリの中の女性がそんな真似をするようには見えない。とはいえ体力的な問題は残るし、
遺伝子的にも正常な人間に戻れたとして、何かしら後遺症が残らないとも言い切れない。
だが…人として生まれてきたのだ。生きてゆくのも人として、死ぬときも人としてあるべきだ。それはあの自衛官にも言える。
アンプルをプラプラさせながら、スロープをゆっくりと下りて行く自衛官に声をかけた。
「おう、ちっと待てや公務員!」
足を止めた自衛官に大股に歩み寄り、アンプルを投げ渡す。
「悪ぃけど悲劇のヒーロー気取ってもらうわけにゃいかんのよ。これから街出るまでだって何があるかわかんねぇんだから。
ま、効果は折り紙付だよ。…もっとも、あんたがそう望まないなら打った所で何の効果も無いだろうがね」
どんな状況であれ、最後は執着が明暗を分けるものだ。そして、生を望まない人間など、今この場にいるはずがない。
さて、『希望は嘘つきだ』といったのはロシュフーコーだったか。だが今度ばかりは嘘をついてもらっては困る。
目の前の自衛官が握るアンプルをじっと見つめた。
所持品:なし
現在地:等訓市 デパート屋上
>524−526
>「・・・・・賢明な判断だな、この状況下で冷静に判断できるとは大したもんだ」
「そりゃどうも。最低な判断ですがね。」
黒人と一緒にいた男だ。見覚えのある人物でもある。
>「・・・あの二人にもワクチンを打つのか?」
小声で話し掛ける男に大袈裟に肩を竦めてみせる。
どちらかには打てるだろう。しかし女性の年齢は解からないし、聞く趣味も持ち合わせていない。
>「もし打っても、あいつらが助かるという確証はあるのか?」
巨体の自衛官の右腕が巨大な芋虫の様に変異している。
アンプルを使えば回復するだろうが、反乱自衛隊のメンバーが報告したらどうなるか。
一生を研究所の檻の中で過すか、下手をすれば切り刻まれるかもしれない。
「難しい質問だ。自衛官の方は・・・症状の進行が早すぎる。」
>「…俺はもう手遅れですから」
巨漢自衛官のタイミングがぴったりな発言に思わず振り返る。
それだけ言うと巨体の自衛官は背を向け、スロープを下りていった。
自衛官達が敬礼で死地へと向う男を見送っている。
右腕の変化以外は問題は無さそうだが、ワクチン無しでは長くはもたないだろう。
>「そちらのお嬢さんにはこの方が口に合うんじゃないかな」
シノザキが持っているのはアンプルだった。
先ほどの考えが甦り、苦々しい表情が浮かぶ。
>「ま、ほら。安っぽい正義感振りかざすの好きなタチだから」
ヘリから降りたシノザキが言った。
「そういう人間は嫌いじゃないって前にも言ったはずですよ。私の方でも善処してみましょう。」
溜め息混じりに今後のプランを考える。
一番良いのはどちらか片方だけでも連れて行く事だ。簡単に殺せなくなる。
アンプルは培養できないから、貴重な被験者として手厚く保護されるだろう。
少なくとも逃げ出すチャンスは出来る訳だ。上手くすれば反傘社の連中に救助される事もあるだろう。
どちらを回収するかは判断に悩む所だが、国家がバックアップしている自衛官の方が手出しをされる可能性は低いだろうか。
>「おう、ちっと待てや公務員!」
後はシノザキに任せる事にした。
「ところで・・・以前、お会いした事がありました?」
金髪碧眼の男に話し掛ける。
くそ、思い出した。1年前のニューズウィークの表紙だ。
どうしてベレッタを使う奴は殺し屋ばっかりなんだ?
「思い出しましたよ。ロバート・ファーリントン。死刑になったとばっかり思っていたんですがね。」
所持品:ワクチン4本
健康状態:両腕麻痺
現在地:デパート屋上
>519−>523
トレンチコートの怪人が跡形も無く吹き飛び、再びヘリはデパートに着陸した。
だが、残るために降り立った私達の前で、鈴木という男性は全員にワクチンがあると話した。だが……。
>「クソ、すみません。4本しかない。こうなったら・・・若い順にワクチンを打っていく他ありません。」
小さな声だったが、はっきりと耳に届いた。
正しい判断だと思う。なのに鈴木という男性は、なんとも言いがたい表情をしていた。
気にする事は無いのに、と思う。最年長は私で、とうの昔に覚悟は出来ているのだから。
でも―ちらりと重田さんを見上げる――感染に個人差があるなら、彼にはまだ望みはあるかもしれない。
「やっぱりデートは、またの機会にしましょう。…お願いだから『此処に残る』なんて仰って困らせないでね?」
その場を離れようとして、腕を取られた。思いつめた様子の彼をいぶかしげに見上げる。
すみませんと聞こえたような気がしたが、よく分からない。そこで私の意識が途切れた。
>525
>「…機内と、其処の女性にワクチンを打って遣ってくれ」
雑賀さんの声にうっすらと目を開けた。また自分がヘリの中にいる事に驚く。
だが、そんな動揺も、雑賀さんの言葉の意味を正しく理解した時のそれとは比べ物にならなかった。
開け放したままのドアからは、敬礼して見送る自衛官たちの姿が見える。
「………酷イわ」
万に一つの可能性に賭けるべきだったのは彼であって、私では無い。私の身体はもうワクチンを受け付けない。
このままでは重田さんは無駄死にだった。だが止めようにも、もう満足に動く事すら出来ない。侵食はもう肩まで進んでいた。
>526
滲む視界が不意に翳った。誰かが私の傍に屈みこんでいるようだ。
>「よぉ、姐さん。あんた、今自分が人間だって胸張って言えるか?」
呼びかけに頷く。この変化した腕を見て、化け物、ではなく人間かと問われた事が驚きだった。
目を眇めてみるが、逆光で表情は全く伺えない。 だが軽い口調なのに、真摯な思いが伝わってきた。
>「だったら打て」
そういい残して男性は去っていった。私の手には、薬液が入った注射器のようなものが握らされていた。
アンプルを朝日に翳してみる。彼は「打て」といったものの、効能については全く説明していかなかった。
中身は正体不明だが、まあ打ったとしてもこれ以上自体が悪化する事は無いだろう。
毒ならばそれもいい。これ以上苦しまずに済む。
生に未練は無いわけではないが、化け物としてならご免だ。死ぬにしても、せめて心だけは人のまま逝きたい。
――――肉が裂ける音がして、左腕から何本もの触手が這い出してきた。
ヘリ内の自衛官に狙いを定める前に、アンプルを突き刺し薬液を投与する。
ワクチンを打ったときよりも激しい痛みが全身を襲った。触手が暴れて床を叩く音が、やけに遠くから聞こえていた。
現在地:デパート屋上、自衛隊ヘリ内。 アンプル投与。
状態:感染、左腕変化。首に噛傷(回復中)
529 :
名無しになりきれ:2005/07/30(土) 17:04:32
すみません、このスレ全部漏れの自演でした・・・いい加減疲れたぜ・・・
∧_∧
( ´_ゝ`)
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/ ̄ ̄ ̄ ̄// ̄ ̄ ̄ ̄// ̄ ̄ ̄ ̄// ̄ ̄ ̄ ̄// ̄ ̄ ̄ ̄/
__ _/ Prius // FMV // VAIO // Mevius // LaVie /____
\/_/ ̄ ̄ ̄ ̄// ̄ ̄ ̄ ̄// ̄ ̄ ̄ ̄// ̄ ̄ ̄ ̄// ̄ ̄ ̄ ̄/
_ /ThinkPad //WinBook//DynaBook//Libretto // Presario/
\/_/ ̄ ̄ ̄ ̄// ̄ ̄ ̄ ̄// ̄ ̄ ̄ ̄// ̄ ̄ ̄ ̄// ̄ ̄ ̄ ̄/
_ / Inspiron //Endeavor//InterLink // Evo //Let'sNote/
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530 :
名無しになりきれ:2005/07/31(日) 22:41:50
すみません、このスレ全部漏れの自演でした・・・いい加減疲れたぜ・・・
∧_∧
( ´_ゝ`)
/ \
/ ̄ ̄ ̄ ̄// ̄ ̄ ̄ ̄// ̄ ̄ ̄ ̄// ̄ ̄ ̄ ̄// ̄ ̄ ̄ ̄/
__ _/ Prius // FMV // VAIO // Mevius // LaVie /____
\/_/ ̄ ̄ ̄ ̄// ̄ ̄ ̄ ̄// ̄ ̄ ̄ ̄// ̄ ̄ ̄ ̄// ̄ ̄ ̄ ̄/
_ /ThinkPad //WinBook//DynaBook//Libretto // Presario/
\/_/ ̄ ̄ ̄ ̄// ̄ ̄ ̄ ̄// ̄ ̄ ̄ ̄// ̄ ̄ ̄ ̄// ̄ ̄ ̄ ̄/
_ / Inspiron //Endeavor//InterLink // Evo //Let'sNote/
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ごめん誤爆った
>528
和服姿の女性の腕を突き破り触手が姿を現すと、UH-60JA内は騒然となった。
さっき彼女は何かを投与していたようだが、それで元の姿に戻れるとは到底思えない。
死地に向かった重田一等陸曹が気にかけていた女性だが、今はここに居る全員の命のほうが大切だ。
「せめて、安らかに…」
その場に居た自衛官の一人が、苦悶する>528に銃口を向ける。
>車椅子の老人
自衛官と傘社医療スタッフが慌ただしく作業をする県境の検問所に一機の輸送ヘリが舞い降りる。
上空には2機、鈍い光を放つコンテナを吊るしたヘリがホバリングしていた。
複数の自衛官が見慣れない自動小銃を片手に下りてくると有無を言わせぬ口調で警備に当っていた自衛官に指示を出す。
「我々は特殊作戦群だ。総理直属の命令で行動している。」
特殊作戦群を名乗る男がiポッドによく似た小型の端末を操すると一人の老人の画像が表示された。
「車椅子に乗っているのが特徴だ。すぐに見つかるだろう。」
「その前に確認をしたいのですが。」
警備に就いていた自衛官が困惑した態度で言った。
「いい心掛けだ。だが、それは出来ない。」
男は食い下がろうとする警備兵の迷彩服に縫い付けられたネームプレートをじっと見ると再び端末を操作した。
「・・・了解しました。すぐに探させます。」
警備兵はローンの残った一戸建て、そして私立大学への進学が決まった息子の事が急に心配になり指示に応じる事にした。
「貴官の配慮に感謝する。急いでくれ。」
警備兵は観念したように目標の位置を部下に急がせる。
さっさと出て行って欲しい、それが警備兵の本音だった。
医療チームでごった返す仮設テントの中に自衛官達がずかずかと入って行く。
早口の英語で捲くし立てる医療スタッフの一人の鼻を銃口で殴りつけて黙らせると老人に笑いかけた。
「花井博士、ですね。北米エリア統括部長チャールズ・ブコウスキー氏がご面会を望んでおられます。」
周囲に聞えない声で老人の耳元で呟く。
「我々は貴方の保護を目的に来たのですよ。この状況をぜひ打破したいとブコウスキー氏は考えておりましてね。
あー、私は鈴木で結構です。」
自衛官はそう言うと車椅子を強引に押し始めた。
「さて、我々が乗るヘリには二人、いや、一人と一匹ばかり先客がおりますが刺激しないで頂きたい。」
自衛官は避難住民の恨めしそうな視線などお構い無しにぐいぐい車椅子を押していき、ヘリへと一気に載せる。
「今後、あるホテルでこの女性と共にブコウスキー氏に会っていただく。宜しいですね。」
ヘリに備え付けられたイスで眠る看護婦を指しながら鈴木と名乗る自衛官が言った。
「それと・・・注意事項ですが、部長の前で同姓同名の小説家の話は絶対にされないように。私自身、どんな作家で
どんな作品を書いているかは知りません。ただブコウスキー部長は、非常にお嫌いらしい。」
端末に表示された情報を読み上げると自衛官がパイロットに指示を出す。
ヘリは力強く上昇し、朝の陽射しを浴びながら踊るように方向転換した。
「S、か。初めて見たよ。」
飛び立つ3機のヘリを見上げながら警備兵の一人が呟く。
「ところで見たか?連中全員が鈴木らしいぜ?」
「SはSFG(特殊作戦群)のSでなく、鈴木のSってか」
「俺達は仕事のSか?さっさと持ち場に戻ろう。早いとこ仮眠を取りたいもんだな。」
(重田)
>526
充填されている液体の正体が分からない、投げ渡されたアンプルを握り締め、じっと見つめている。
これを投げ渡した男は「効果は折り紙付き」だというが、確実に自分に効くとは限らない。
ひょっとしたら効くかもしれないし、やはり効かないかもしれない。まぁ、使用してみないことに効果の程は分からないのだが…
「あんまり期待させないで下さいよ?」
男を疑いつつ、一縷の望みを掛けてアンプルを左太股に打ち込んだ。
それから数秒後。全身を侵食とは比べ物にならない激痛が襲った。思わず地面に倒れこみ、のた打ち回ってしまった。
「あ、ああ、あああ嗚呼嗚呼アアアアアアーーーー!!!」
余りの激痛に視界が霞み、脳の奥で幾つもの火花が飛び散った。駄目だ。このままでは余りの激痛で精神が崩壊してしまう。
そうしてワクチンの副作用で苦しんでいると、浸蝕されていた右腕が独自の意思をもっているかのように、のたうち苦しんでいるのが見えた。
「へ、へへ…苦しいか?……だろうな。お、俺も死にそうななんだからよ」
化物と化した右腕に勝ち誇った笑みを向ける。しかし、ここで右腕のワクチンに対する反抗が始まっていた。
「!?」
のたうち苦しんでいた右腕は、アンプルを注射した左太股を無造作に掴み、恐るべき握力でその半分を握り潰し、抉り取っていた。
「っ…!?!?!?」
更なる激痛により、既に重田は気絶寸前であった。
一時は減退した浸蝕であったが、ワクチンが完全に全身に回る前にそれを駐車した箇所を右腕に抉り取られたことによって、浸蝕を阻む者はなかった。
「…お、オれは……もウ…ダメだ。に、に、逃げ、ろ、ロ…うぐぅ!?」
倒れたままワクチンを投げ渡した男に逃げるよう警告するが、既に理性は欠片ほどしか残されていなかった。
無理矢理骨格が新たに形成される鈍い音が重田の中から鳴り響き、身体の所々の皮膚を破って、右腕と同じような灰色の外骨格が露出していた。
左腕も右腕と同様に新たなものに生まれ変わり、それは既に上半身に留まらず、下半身にまで及んでいた。
タクティカルブーツが弾け飛び、戦闘服のズボンが音を立てて裂ける。それらの下から現れたのは、昆虫の様な蛇腹状の外骨格に覆われた半身であった。
「うぐぅ…ち、畜生おおおぉぉぉぉオオオオoooooooooooooooooooooooo!!!!!!」
遂に浸蝕は顔をも変貌させていた。
顔の皮膚がずるりと剥がれ落ちると、下から現れたのは複眼と顎、長い触覚をもつ、外骨格に覆われた昆虫の貌であった。
「Ooooooooooooooooooooooooooooooooooooo!!!!!!」
それは飛蝗の貌に良く似ており、つい数分前まで重田勝則という一人の男だった其れは、上下左右に開く強固な顎を限界まで広げ、獣の咆哮を上げていた。
「Aaaa……Aaaaaaa」
完全に生まれ変わった重田、否、灰色の昆虫の化物は、完全なる変貌で疲れたのだろうか、顎をしきりに動かし、盛んに空気を取り入れていた。
暫くは疲弊した体力を回復する為にその場から動く事は出来なさそうだが、それが済めば、変貌で失った栄養を取り戻さねばならないだろう。
彼もまた新たなる生命体として、人間という柵から逃れたのだ。今度は人間を捕食する側に回ったのだ。
「………」
それが証拠に、二対の複眼が目の前の男を凝視している。昆虫の瞳に感情の色は現れはしないが、はっきりと強い飢餓感を浮かべていた。
名前:???
現在地:屋上スロープ
状態:変態完了。極度の飢餓状態にあるが、変態の疲労で動けない。
>412
仕留めた!――と、思う間もなく、私の視界はぐるんと大きく回転する。
何かが折れる音がした。
どこかが砕ける音が響いた。
もう・・・・・駄目・・・・・せん・・・・・・・さ・・・・くん・・・・
私は夢を見ていた。
目を開けても、何も、ここがどこかもわからない暗闇の中だから、どんなに必死になっても指一本すら動いて
くれないから、私にはただ眠ることしかできない。
だから、微かな望みをもって、狂おしいくらいの願いを込めて、私は夢を見続ける。
助けてほしいなんて言わない。
誰かが、優しさからでも憎しみからでもいいから、誰かが私を殺してくれることを、
私は夢に見る。
願わくば――いいえ、何もいらない。私は私の終わりだけを望む。
それが、恐らくは人の世の存続に繋がるのだろうから・・・・・・
現在地・状況:デュランに捕まり、何処かに連れ去られる。シナリオクリアです。
状態:意識不明?
>486
>「カワサキィィィィィィィィイィィィィィィッィ!!!!!」
>485に狙撃された追跡者は腰に下げてあったスコーピオンを抜き、俺に向って弾丸をフルオートで滅茶苦茶にばら撒き1発が頬を掠める・・・・
追跡者はスコーピオンを撃ち尽くすと、其れを腰のホルスターに 戻してグルガナイフを構えて俺目掛けて突進してくる。
ヤバイと思った瞬間、>497が放った銃声と「ガァァァ!?」と言う追跡者の声(悲鳴?)が聞こえた・・・・・
そして銃声のほうを見るとその先には無反動砲を構えた見覚えのある男性の姿があった。
>「グルアアアアアアアア!!!!」
咄嗟に腰のスコーピオンを抜き、マガジンを再装填してから男に向って弾丸をばら撒きつつ横っ飛びをし、大破した車の陰に転がり込んでいった。
>499
もう一人の男性が追跡者の隠れた車に向かって銃撃を加えていた・・・・・
>500>504
>「グアアアアアアアアアアアア!!!!」
叫びながら火だるまになって地面に転がっていく追跡者・・・
火を消すと車を投げつけ、ヘリに乗り込んでいったが・・・蹴り出された・・・無様だな・・・・
追跡者は触手を伸ばしてヘリに攻撃してる、近くで 「壁に叩きつけてやれ!!」 と声が聞こえる
>518
>「撃つぞ、下がれ!!」
>「have a nice day(ごきげんよう)…ってな」
その声が聞こえた瞬間、一応伏せた・・・伏せたときにライフルケースのロックが外れた・・・
追跡者はサイドステップで回避しようとするが間に合わず、追跡者に命中する。
着弾地点の周囲に煙が立ち込めるが爆発しない。
「ふ、不発!?」
弾頭で巻き上げられた煙が消えた後も追跡者はまだ立っていた。
追跡者が吠える。
>「カワサキィイィィィ!」
追跡者は横っ腹に刺さった弾頭に手をかけ、引き抜こうとした。
車に銃撃を加えていた男性が銃を構え、弾頭に撃ちこもうとするが、腕が上がらない。
>「カワサァキィィィィイー!」
追跡者の肉が爆ぜる。連続して銃弾が撃ち込まれているのだ。
あの人のグロックだけではない。
自衛隊仕様のブラックホークが頭上に急降下し、ボルトアクションと思しき不規則な間隔の銃声が響く。
>「シノザキさん!これを!」
(やっぱりシノザキさんか・・・・生きてたんだな・・・・)
男性がシグを地面に落とし、そして勢い良く蹴り飛ばす。
全段撃ち尽したグロックを捨て、シノザキがシグに飛びつき射撃を再開するのを確認すると
ライフルケースから取り出したブレイザーで数発、弾頭に撃ち込んだ・・・
拳銃とライフルの音が響き、最後には無反動砲の爆音が全ての音を掻き消した。
爆発地点にあるのは小さなクレーターと追跡者の焦げた肉片だけ、だった。
正しく追跡者は木っ端微塵だ。
>521
> 「よぉ、生きてたか」
俺へ笑いかけたシノザキさんを見た瞬間・・・泣きそうになった。
「ええ、お久しぶりです。シノザキさん。」
>526
その後座り込み、ボーっとしていると、シノザキさんは手を振りヘリのほうへ向かっていった・・・・
> 「おう、ちっと待てや公務員!」
(兄貴はやくざモンでっか?)ついつい心の中で突っ込みを入れてしまった・・・・・
>534
>「あんまり期待させないで下さいよ?」
> 「あ、ああ、あああ嗚呼嗚呼アアアアアアーーーー!!!」
> 「へ、へへ…苦しいか?……だろうな。お、俺も死にそうななんだからよ」
> 「…お、オれは……もウ…ダメだ。に、に、逃げ、ろ、ロ…うぐぅ!?」
> 「うぐぅ…ち、畜生おおおぉぉぉぉオオオオoooooooooooooooooooooooo!!!!!!」
> 「Aaaa……Aaaaaaa」
そのやり取りを見て思ったこと・・・・シノザキさんが危ないという事だけだった・・・・
「シノザキさん、危ないっ!!」
そういった瞬間、スコープのクロスヘアーの中心に>534を捕らえていた・・・・
名前:川崎 裕次郎
持ち物:USP(45口径)8発(12発弾倉残り3個(※装填分は除く))、S&W M649 (5発)
(M649用予備弾薬20発)、SIG-BLASER-R93-LRS2 4発(5発弾倉4個)、
リュックサック(コンバットナイフ2本、グルガナイフ、煙草、ライター 、各種医薬品、
傘社への被験者送致FILE十字架のネックレス(妹の形見)、発炎筒2本、謎のIDカード+黒猫)、
状態:眼鏡装着 、タクティカルベスト着用
無線機、暗視装置、発炎筒×2は装着済み
怪我の状況、治療済み
現在地:屋上
行動、スコープのクロスヘアーの中心に>534を捕らえる。
>537
弾が詰まった!!
>538
そして暴発した。
>538
そして暴発した弾は>534を貫き絶命させた。
ざんねん!しげたのぼうけんは これでおわってしまった!
>534>537
>「うぐぅ…ち、畜生おおおぉぉぉぉオオオオoooooooooooooooooooooooo!!!!!!」
視線だけを叫び声の方向に合わせた。
アンプルの刺さった自衛官の左足がコンクリートに転がり、代わりに昆虫を連想させる何かが伸びていた。
瞬時に理解した。変異した個所がそれ以外に打ち勝ったのだ。
「もう一人の方の腕を抑えろ!最悪、切り落と・・・!」
叫び声を途中で止めさせたのはファリントンだった。ほんの微妙な表情の変化、微かに動いた顔の筋肉に気が付き
本能的にバックステップを踏んだ。
緊張もぎこちなさも感じさせない動きで伸びてきた両腕が空を切ると同時に爪先を腹部に叩き込む。
分厚い腹筋に阻まれてダメージは与えられなかったが、逃げる為の時間稼ぎぐらいにはなる。
「腕を叩き落しても構わん!それとこの男を抑えてくれ!拳銃に注意しろ!」
数名の自衛官がファリントンに飛びつくが、殆んど効果が無い。
目的意識が違いすぎる。
「間接を完全に極めておいてくれ!もう一人の女性は?!どこに注射した!」
チラリと見た自衛官は完全に変異していた。
(・・・昆虫の遺伝子が発現・・・いや・・・それよりも感染者達が不要な警戒を・・・抱きかねんな・・・)
突然現れた二人組のせいで変異したと思われたら殺されかねないのが現状だ。
「女性の方はどうなっている!」
一瞬にして滝のような冷たい汗が流れ出す。
それは誤解から生じかねないトラブルでも無ければ、変異した自衛官への危機意識でも無かった。
もう一人が生き延びれば誤解は解けるし、変異した自衛官は30口径クラスのライフルで始末すれば良い。
原因はファリントンだ。
ファリントンの中に見た殺人鬼としてのユダの幻影だった。
ユダ、追跡者と続いてアドレナリンを消費しきった上に両腕が使えない今の自分は
只の肉で出来た殺人練習人形に過ぎないのだ。
「女はどうなっている!早く報告しろ!」
恐怖を打ち払うように叫ぶと、大急ぎでヘリに向う。
所持品:ワクチン4本
健康状態:両腕麻痺
現在地:デパート屋上
(???)
ある程度の体力回復が済み、ゆっくりとした動作で立ち上がる。その身長は人間だった時よりも遥かに高く、3m以上に達しているだろう。
遥か高みから見下ろす、有機ながらも無機を思わせる二対の複眼に殆どの生物は畏敬の念を抱くと思うが、目の前の男はそうはいかないだろう。
この化物が知る由もないのだが、彼は幾重の死線を潜り抜けてきた生存者だ。今更化物の一体や二体を前にして驚く事は無い。
「Aaaaaa…」
恐らく、しぶとさも普通の人間以上に違いない。仕留めるならば確実に遣らねばならない。
両腕部を覆う外骨格が音を立て、血を飛び散らせながら変形し、鋭利な刃物へと形を変え、より確実に獲物を仕留めようと体勢を整える。
>537
目の前の男に、側腕部を覆う外骨格から形成した刃を降り下ろそうとしたが、自分を狙う殺気に振り返る。
見れば、眼鏡を掛けた男が此方に向けて照準器付きライフルを構えていた。
「GYaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaa!!!!!」
顎を最大限に開き、威嚇の咆哮を上げると同時に背中に発現していた数枚の虫羽が小刻みに震え、不快な音が周囲に鳴り響く。
そして、一瞬身体が沈んだかと思うと、次の瞬間には爆発的な脚力で跳躍し、上空からライフルを構える男に踊りかかっていた。
「Aaaaaaaaaaaaaa!!!!!」
腕に生えた鋭利な刃を、男目掛けて一閃する。
>534>537>543
自衛官は疑わしげな様子ながら、アンプルを打った。数秒後には研究所での鈴木のように、いやそれよりも激しく転げまわる。
変異が著しい右腕も、独立した一個の生命体のようにのたうっていた。その右腕が、アンプルを注射した箇所である左の腿をちぎり取る。
(…!クソ、そう来るかよ!!)
最期は執着が明暗を分ける。そして生を望まぬものはない。
…そう、たとえそれが怪物であれ。
むしろ人間のような理性や知識を持たない分、生存への欲求はよりストレートなのかも知れない。
自衛官は見る間に変貌していった。もともとの巨躯がさらに一回り大きくなり、全身が灰色の外骨格に覆われている。
咆哮を上げるその顔はイナゴやバッタとまったく同様だ。黒々とした複眼がこちらを捉えた。
じりじりと下がる。急に動いて刺激するのは避けたいが、このペースで下がリ続けるのも厳しい。
まだ2mも離れていない所で、バッタが立ち上がる。やはり身長は大幅に伸びていた。この距離は十分すぎるほど間合いの内だろう。
「…で、技の一号と力の二号のどっちだ、お前は?」
軽口を叩きながらなお下がった。目の前でバッタの腕が更なる変貌を遂げていく。前腕部の外骨格が軋むような音を立て、伸びる。
ちょうどジャマダハルという武器のような形だ。無造作に振り上げられたそれは、しかし振り下ろされることはなかった。
バッタが首をめぐらせ、別の方向を見る。つられて見たその先には、ライフルを構える川崎がいた。
ギチギチと嫌な音を立ててバッタの顎が開き、咆哮が轟く。背中に生えた羽が不愉快な唸りを上げる。
次の瞬間には目の前からその姿は消えていた。恐らく川崎へ襲い掛かったのだろう。
(クソ、何が出来る…考えろ…)
手元には何もない。置いてきた荷物の中にも使えそうなものはない。ならば、せめて邪魔にだけはならないように離れているべきだろうか?
それとも…。
所持品:なし
現在地:等訓市 デパート屋上
>543
>「Aaaaaaaaaaaaaa!!!!!」
「何っ!」
腕に生えた鋭利な刃を、俺目掛けて一閃させようとしたのを転がって避けシノザキの元に駆け寄る。
「シノザキさんこれを使ってください。」
そういって、SIG-BLASER-R93-LRS2と予備マガジンを手渡した。
USPを抜くと>543に向けて発砲した。
名前:川崎 裕次郎
持ち物:USP(45口径)8発(12発弾倉残り3個(※装填分は除く))、S&W M649 (5発)
(M649用予備弾薬20発)、
リュックサック(コンバットナイフ2本、グルガナイフ、煙草、ライター 、各種医薬品、
傘社への被験者送致FILE十字架のネックレス(妹の形見)、発炎筒2本、謎のIDカード+黒猫)、
状態:眼鏡装着 、タクティカルベスト着用
無線機、暗視装置、発炎筒×2は装着済み
怪我の状況、治療済み
現在地:屋上
行動、シノザキにSIG-BLASER-R93-LRS2 4発(5発弾倉4個)を手渡し攻撃を開始する。
>545
弾が詰まった!!
(???)
>545
銃弾が命中するが、ぱちぱちと音を立てて容易く弾く。この程度の攻撃では彼の天然の装甲を破る事は出来ない。
精々蚊に刺された程度だろう。ダメージを与えられずとも、不快にさせるぐらいだ。
「Aaaaaaaaa……」
川崎が放つ銃弾を鬱陶しそうに手で遮り、再度跳躍をしようと羽を広げるが…
「!?」
(雑賀)
変貌した重田の背中の虫羽に照準を合わせ、その根元を撃ち抜く。他の箇所は強固な外骨格に覆われているようだが、其処はそうでもないようだ。
虫羽の根元からどす黒い血が噴出し、よろりと膝を付く。
「早くヘリに乗り込め!奴に構っている暇は無い!」
まだ機外にいる生存者達に向ってそう叫ぶと、今度は頭部に狙いを定めて引き金を引いた。
強力な7.62mm×51NATO弾が重田の頭部に向って突き進むが、金属同士がぶつかり合うような音を立てて弾いていた。
(糞…ウィルスは其処までお前を変貌させたのか!?)
ならばと素早く再装填すると、今度は肩の関節に撃ち込む。
今度は弾かれることなく、関節から僅かに覗く肉に鋭い音を立てて銃弾が突き刺さった。
(効果あり、か……)
肩がだらんとだらしなく垂れ下がった重田は、不気味な悲鳴を上げながらのた打ち回っている。
「早くしろ!奴が回復する前にヘリに乗り込むんだ!」
どの程度の脅威か分からずに戦闘を行う訳には行かない。即時撤退する方が賢明だ。
名前: 雑賀誠一
年齢: 23
性別: 男
装備品:(共通)CQB装備、無線、救急品袋、水筒、背嚢(予備弾薬他食料)
武装:(雑賀)…M24(2発)、7.62mm×51NATO弾×30、89式小銃(12発)(市街地狙撃戦仕様&40mm擲弾発射筒付き(0発)+40mm擲弾×2)
9mm拳銃(8+1発)+9連装マガジン×2、銃剣 、小銃用30連装マガジン×4、
現在地:屋上ヘリ内
状況:???を狙撃。???を怯ませる。
状態:右脚負傷@治療済み
>534>542>547
>「もう一人の方の腕を抑えろ!最悪、切り落と・・・!」
「おっと、残念。殺り損ねたかな?」
さも残念そうに呟く。隙だらけだと教えてやるには、襲い掛かるのが一番手っ取り早い。
>「腕を叩き落しても構わん!それとこの男を抑えてくれ!拳銃に注意しろ!」
>「間接を完全に極めておいてくれ!もう一人の女性は?!どこに注射した!」
数名の自衛官が俺に飛びついてくる。
その手には小銃が握られており、いつでも発砲可能な状態になっているようだ。
「・・・お手並み拝見と行こう」
そう言って、自衛官達の方へ視線を向けた。
最初に近付いてきた自衛官二人の内、一人の腹に蹴りを放ち、小銃と拳銃を奪う。
もう一人が驚愕した表情で小銃を向けるが、間を空けずに接近し、首と腕を掴んで床に叩き付ける。
そして、一人目と同じ様に小銃と拳銃を奪う。
さらに三人が近付いてくる。今度は先頭の奴の顔面に拳を叩き込み、小銃と拳銃を引っ手繰り、足元へ投げ捨てる。
二人目は頭突きを食らわせ、鳩尾に肘を叩き込んで気絶させる。
三人目もまた同じ様に気絶させ、二人から小銃と拳銃を取り上げる。
「・・・これならまだLAPDの奴等の方が強かったな。失望したぜ」
言い終わると、気絶した自衛官二人を背負い、殴り倒した自衛官達と共にヘリの方へ向かう。
>「早くしろ!奴が回復する前にヘリに乗り込むんだ!」
そう叫ぶ雑賀の横に乗り込み、担いでいた自衛官を降ろす。
その時、ヘリの側に置いておいたあの弾薬箱が目に入ってきた。
確か、あれには機関銃が入っていた筈だ。
記憶を頼りに機外へ飛び出し、放置されていた弾薬箱の蓋を外す。
その中には、無骨なデザインをしたM60E4の改良型「Mk46 Mod0」が弾薬と共に入っていた。
「これさえあれば、百人力だな。さて・・・」
完全にクリーチャー化した重田の方を向き、匍匐姿勢でMk46の照準を重田に合わせた。
「Good bye my friend」
小さく呟くと、引き金を絞る。
銃口から吐き出された数十発の7.62mm弾は、一直線に重田へと向かっていく。
名前:ロバート・ファリントン
年齢:37
性別:男
所持品:Mk46 Mod0(47発)+100連マガジン×1
ベレッタM92F(8発)+8連マガジン×2、コンバットナイフ
煙幕手榴弾×2、手榴弾×3、携帯無線機、水筒、携帯食糧4パック
バックパック(暗視鏡、発煙筒2本、30連マガジン×2、烏龍茶500ml×6、
爽健美茶500ml×4、コカコーラ500ml×4)
服装:米海兵隊ウッドランド迷彩服
現在地:等訓市デパート屋上
状況:???を射撃、足止め
(???)
>548
強力な7.62mm弾が降り注ぐが、その殆どは外骨格に弾かれダメージを与えるには至っていない。
しかし、数発程外骨格の隙間に飛び込んでおり、少なからずのダメージを負わせていた。
「Gya…ga,aaaaa……」
だらしなく開かれた顎からはどす黒い血が次から次へと吐き出される。
だが、少し時間が経過すると同時に傷が脅威的速度で塞がり、より強固なものとなる。
「Aaaaaa…」
弾雨の中、ゆっくりとその場から立ち上がり、迫り来る弾丸を欠片ほどの脅威も感じずに、歩み寄る。
弾丸は次から次へと降り注ぐが、天然の装甲に容易く弾き返され、あらぬ方向へと逸れていく。
「………」
右腕に生えている湾曲した刀身を左手で掴み、圧し折ると、大きく振り被って伏せ撃ち姿勢で機関銃を操る大尉目掛けて投げつけていた。
しかし…
(雑賀)
ヘリから躍り出た伊達は素早く日本刀を鞘から抜き放ち、気合と共に唸りを上げて襲いかかってきた刀身を討ち落としていた。
「大尉!さっさとヘリに乗ってください!」
有無を言わさず機関銃を構えていた大尉の襟首を掴み、乱暴に機内へと放り込む。
其れが済むと伊達は、改めて変わり果てた姿となった相棒を正面に見据えた。
「……重田ァァァァァァァァ!!!!」
刀を放り出し、肩に掛けていた89式を構え、ダットサイトに彼の頭部を補足し、5.56mm弾をバラ撒く。
7.62mm弾を弾く外骨格に、其れよりも威力で劣る5.56mm弾が通用するとは思えないが、頭部に集中して命中させれば充分怯ます事は出来る。
流石に耐え切れなかったのか、重田は顔を両手で覆ってその場で多々良を踏んで後退していた。
今が好機とばかりに、伊達は弾帯に括り付けてあった手榴弾ニ個を取り外し、怯む重田目掛けて投げつけていた。
鋭い炸裂音が二度響き、周囲に爆炎と熱波が拡散する。伊達はそれを追い風にし、ヘリに滑りこんでいた。
「今の内にヘリを!」
M24で支援射撃を行っていた雑賀が直ぐに主操縦士に命令を下すと、ヘリが離陸を開始する。
炎と煙が渦巻く、完全に破壊され尽くした屋上がどんどん遠ざかっていく…
雑賀や伊達、その他の自衛官達は、彼等の戦友の数多くが尽く生ける屍の仲間や異形の者共に捕食され、屠られていった死都をヘリの窓から見下ろしていた。
高度約800mから見下ろす光景は、朝日に照らし出される地獄が地上に溢れ返ったようなものであった。
ローターの爆音以外に何も聞こえはしないが、耳を澄ませば眼下に広がる死都から不死者や異形の声ならぬ声が聞こえてきそうである。
思えば、この生存率の低い作戦で生きて帰れたと我ながら感心していた。其れは他の者も同じだろう。
「避難所に到着次第、現在の任務を小隊指揮官の権限を以って解除する。皆、ご苦労だった」
今の自分に言える言葉はこれ以外にない。憔悴し、疲れきった若い部下達の貌は目を背けたくなる程痛々しかった。
特に、長年連れ添った相棒の禍々しい変貌を見てしまった伊達の憔悴振りは、21歳の若者であるという事実を疑わせるものがあった。
自分と比べて人生経験に乏しい彼に掛けてやる言葉が見つからない。
生還する喜びよりも、数多くの大切な者を失ったという喪失感が胸中を占める中、生存者達を乗せたヘリは朝日の中を飛び続けていた。
現在地:等訓市上空、高度約800m
状況:シナリオクリア。避難所に向う。
傘日本支社本部ビル。
その地下、わざと照明を落としているのか、部屋の中央で怪しく光る唯一の光源をの周りで、彼らは思い思いの
姿勢で佇んでいた。
「さて――随分と派手にやられちゃったのね。デュラン坊やは。この様だと計画の実行は先送りかしら?」
光源――内側から淡い光を放つ培養カプセルを軽く叩きながら、金髪の大佐は誰にともなく口を開く。
「大佐、私が言えることではありませんが、準備は抜かりなく、寸前にまで進めておくのが良いかと」
狂熱を帯びた瞳で、カプセルの中で眠るデュランの姿を見つめながら、銀色の巨人がそれに答える。
「準備って言ってもなぁ旦那、後はコクーンとやらを奪いに行くだけなんだろ?」
皮肉げな口元の東洋人が、横柄な口調で言う。
「傘の反対派は言うに及ばず、始祖によって利益得る全ての愚物を始末せねばならん。新世界には不要な人間どもだ」
「俺らだって似たようなもんだろ。それに世界がガラっと変わっちまうんなら、必要ないと思うがね。除草剤を撒く前に
雑草を間引く奴はいないだろうが」
黄金の龍が刺繍された拳法着姿の青年は、あくまでも面倒そうであった。
「それでどうするの? コクーンのある場所はもうわかっているんでしょう? 襲撃は早いほうがよろしいのではなくって?」
緑の髪と瞳を持つ、美貌の大尉が話しを進める。
「ああ、すでに一人送り込んである。外界から隔離された山間の村だ。奪取は殲滅をもって行うとしよう」
「ってことは、旦那率いるアタックチームが向こう。大佐と残りの奴らは――」
「ええ、お客人を晩餐に招待させていただくわ」
「最後の、ね」
大尉と大佐が、二人して華やいだ声をあげる。その笑みには濃縮された女の迫力が漂っていた。
「・・・・なんだか俺、すんげえ場違いな所に来ちゃったよママ」
誰にも聞こえないように呟き、アランはカプセルの中の主に、途方にくれた視線を送る。
彼の傷が癒えた時、世界は新たな産声をあげるのか・・・・・
それとも・・・・・
今はただ、神のみぞ知る。
>547−549
連続して発射される銃声と銃弾を弾く甲高い音が響く屋上は市街戦の真っ只中のようだ。
(・・・装甲の強度だけじゃ・・・ない・・・形状が上手く・・・弾くようになっている・・・)
連続して叩き込まれる7.62ミリにひるむ事も無く、変異体が腕に生えた何かを投擲する。
自衛官が気合一閃、それを日本刀で叩き落すと89式小銃で変異体の頭部目掛けてフルオートで銃弾を叩き込む。
(・・・上手いな・・・反動が少ない89式だからこそ出来る・・・芸当だ・・・)
頭部を両腕で保護するように変異体が後退していく今がチャンスだ。
「おい!彼女の右腕を絶対に動かせないように固定しろ!」
ファリントンが引きずり込まれたブラックホークに向けて叫ぶが、銃声の中でどれだけ聞えただろうか?
屋上にいる理由は完全に無くなったようだ。感染者ごとヘリが脱出した今では。
あの変異体を倒すには象撃ち銃か火炎放射器が必要だろう。今の装備で確実に殺せる相手ではない。
「シノザキさん!それと君!急いでヘリに搭乗して!」
反乱自衛軍が用意したヘリに飛び乗る。
「無線連絡が入ってます。小人の装備を身に着けた人間を回収しろって話ですが。」
「自殺志望者でなければこのヘリに乗りますよ。残った兵士で二人の援護を。時間を稼ぐだけで結構ですから
お願いします。それと避難所に潜り込んでいる人間にブラックホークに乗せられたこちら側の兵士を回収するように
連絡しておいて下さい。」
ブラックホークに連れて行かれた反乱自衛隊の兵士を尋問しても大した情報は引きずり出せないだろうが
K機構に対して良い印象を抱かせる事が出来るだろう。
ヘリに座り込むと64式の銃声が響く中、二人を待った。
所持品:ワクチン4本
健康状態:両腕麻痺
現在地:反乱軍ヘリ内
気が狂いそうな程の痛みは唐突に消えた。
目を開けたものの、長い髪が遮って何も見えなかった。どうやら髪留めを無くしてしまったようだ。
着崩れてしまった着物の胸元を押さえながら、のろのろと身を起こす。周りに見覚えの無い自衛官が何人も倒れていた。
最悪の事態が頭をよぎり、咄嗟に左手に視線を走らせる。
だが、袖があちこち破れているものの、そこには見慣れた腕がついていた。吸血衝動もすっかり消えている。
「信じられない……」
手首周りに僅かな変色の痕が無ければ、全て夢で片付けられそうなくらいだ。
だが、現実だった。――――たとえこれから起こる出来事が、今まで以上に悪夢のようだったとしても。
もしかしたら重田さんも元に戻れるのかもしれない。だがそんな淡い希望は、次の瞬間粉々に砕かれた。
>「……重田ァァァァァァァァ!!!!」
伊達さんは、巨大な飛蝗に向かって、確かにそう叫んだ。
認めたくなかった。
だが化け物だったときの感覚は、幾分薄らいだものの未だ燻っている。感染体なら見分けがついた。
随分と変化したようだが、確かに重田さんの気配だった。
なのに――――真っ直ぐで優しかった彼は、もう何処にも居ない。
ヘリから降りる事は叶わなかった。伊達さんがドアの前に立ち、左右に首を振る。
「重田の遺言です」
何も言えなかった。それほど、この言葉と憔悴しきった伊達さんの姿は堪えた。
ヘリは滑らかに離陸し、炎に包まれたデパートはあっという間に視界から消えた。
恐怖からは逃れることが出来たのに、とても喜ぶ気にはなれなかった。
問題も山積みだ。これだけ多くの人の前で化け物になりかけたのだ、見逃してもらえるとも思えない。
今のところ忌諱の視線を感じる程度だが、傘社に捕まれば実害が及ぶのは想像に難くない。
だが、今はまるで他人事だった。決して投げやりな気持ちではないのだが、今はどんな感情も湧いてこなかった。
だがこんな状態でも、機関銃を手にしたロバートさんに気づくことは出来た。
「……ご無事でなによりですわ」
声を掛けてから、ふと、屋上で誰かが私の腕を固定するよう叫んでいたことを思い出していた。
現在地:等訓市上空、高度約800m
健康状態:虹彩変色(紫) 良好?
雑賀はヘリに備え付けられている無線機を取り、避難所に設置されている中隊本部と連絡を取った。
「第三捜索小隊第一班班長の雑賀です」
「第三中隊長だ。状況を送れ」
「先程、空中待機中だったUH-60JAに連絡し、生存者四名を確保の後に駅前デパート屋上から脱出しました」
「損害状況は?今の所、戻ってきた軽装甲機動車やトラックには運転手しかいなかったが?」
「…私の班からは重田勝則一等陸曹が戦死。第二班、第三班、第四班は不明ですが、第二班の大宮圭吾一等陸曹の
遺体を私の班員が発見。交戦の末に撃破。認識票を回収しただけです」
「今の所、他のUH-60JAも君の小隊の班から救援要請が無いとの報告が来ている。ということは、第三捜索小隊は
君の第一班を除き、全滅とみなすべきだろう」
中隊長から告げられた言葉の中から、自分の班を除いた全ての班が全滅したと聞き取れた。
信じたくは無いが、話を聞く限りでは全滅と見て間違いないだろう。流石に其処まで疲労で判断能力が鈍っている訳ではない。
「それで生存者の様子はどうだ?感染しているのか?」
「二人には感染の症状が見られますが、もう二人は不明です」
「不明?」
「ええ。一人は既存のウィルスに感染している可能性がありますが、もう一人はそれ以外のものに感染しているかもしれません」
一旦話を区切り、ちらりと桜子を見る。今の彼女は、先程使用したアンプルの御蔭だろうか、非常に安定しているようだ。
よく見れば、彼女の片腕から延びていた触手が跡形も無く消え去り、変異の証として残った痕を除けば、元の白い華奢な腕であった。
「身体の一部が著しく変異するといったものでしたが、突如として現れたCH-47から齎されたアンプルの御蔭で変異は止まり、すっかり元通りとなっています。
しかし、まだ注意は必要かと思われます…彼女は厳重に隔離した方が良いかと」
最後の方は桜子に聞かれない様に声を潜めて言った。
「分かった。その生存者の処遇については避難所に到着し次第、追って通達する」
「了解しました…中隊長、一つだけ訊ねても宜しいでしょうか?」
「何だ?」
「突如として現れたCH-47。あれは一体何なのでしょうか?」
無線機の向こうにいる中隊長が一瞬沈黙する。
「……それについては詳しい事は分かっていないが、幾つかの部隊で謀反があったそうだ。これはまだ公にはなっていないことだが、そのCH-47は
もしかしらそれらの部隊と関係があるかもしれない。それとその隊員達の処遇も追って通達する」
そうとだけ言われると、中隊長から一方的に無線を切られてしまった。
「…何があると言うんだ?」
やれやれと肩を竦め、無線機を元に戻す。
大尉に担ぎ込まれた気絶中の隊員達の正体は怪しいが、今は人間同士で争い合っている場合ではない筈だ。
避難所に到着するまで暫く時間がある。雑賀は生存者と隊員でぎゅうぎゅうとなっているキャビンで、静かに瞼を閉じ、一眠りすることにした。
現在地:等訓市上空、高度約800m
状況:中隊本部に報告し、避難所に向っている。
>545>547-549>551
襲撃をしのいだ川崎が走りより、銃を差し出す。それをしっかりと掴み、弾倉をポケットに捻じ込んだ。
(んな大層な玩具、使えるかね…)
頬当て、ストック共に調整が可能だが、今はそんなことをしてはいられないだろう。
川崎は拳銃を抜きバッタに向けて引き金を引く。銃撃を嫌がる様に手を上げたバッタに、今度はブラックホークから銃弾が撃ち込まれる。
ほとんどは丸みを帯びた外皮に弾かれているが、いくらかはダメージを与えているようだ。しかしその傷も瞬時に癒え、
バッタはゆっくりとヘリに向かって歩み寄る。腕から生えた刃をへし折り、銃を構える人物へ投げつけた。
その刃を抜きざまに刀で打ち落とした自衛官が、頭部へ集中して銃弾を浴びせかける。怯んだバッタに対し手榴弾で追い討ちをかけ、
その隙にブラックホークは地を蹴った。長居は無用ということか。
>「シノザキさん!それと君!急いでヘリに搭乗して!」
鈴木が叫ぶ。炎の中の影に銃撃を加えながら散乱した荷物まで走った。やはりサイズが微妙に合わないせいか、
走りながら撃っているせいか命中弾はないようだ。ディスクとアンプルだけを拾い上げヘリのハッチまで下がる。
「行くぞ!!」
川崎に向かって叫び、キャビンの中へ滑り込んだ。
所持品:フィルム、ディスク、高分子抽出物(3本)、BLASER-R93-LRS2(残弾0)、マガジン(5発×4)
現在地:等訓市 デパート屋上
>551
>「シノザキさん!それと君!急いでヘリに搭乗して!」
>「無線連絡が入ってます。小人の装備を身に着けた人間を回収しろって話ですが。」
「解りました」
無線機に手を伸ばした・・・・
「回収班と合流完了しました。」
>554
>「行くぞ!!」
「はいっ!!」
ヘリのキャビンの中へ滑り込むとUSPをデコックし、リュックから傘社への被験者送致FILEを取り出しシノザキに手渡した
そして、ポケットから錠剤を取り出すともう一人の男性に手渡した。
「この錠剤なんだか解りませんか?」
自衛隊に錠剤を全て渡したわけではなかったのだ・・・・
名前:川崎 裕次郎
持ち物:USP(45口径)8発(12発弾倉残り3個(※装填分は除く))、S&W M649 (5発)
(M649用予備弾薬20発)、
リュックサック(コンバットナイフ2本、グルガナイフ、煙草、ライター 、各種医薬品、
傘社への被験者送致FILE十字架のネックレス(妹の形見)、発炎筒2本、謎のIDカード+黒猫)、
状態:眼鏡装着 、タクティカルベスト着用
無線機、暗視装置、発炎筒×2は装着済み
怪我の状況、治療済み
現在地:屋上
>555
川崎が滑り込むと同時にアクチュエーターが唸りを上げ、ハッチが閉じられてゆく。ローターの唸りが高まった。
(…ハッピーエンドってわけにゃいかんよな、そりゃ)
ふぅ、と息を一つついた。物語の中なら悲劇もいいだろう。しかし現実に起きる悲劇などに価値があるだろうか?
せいぜい茶の間の主婦の涙腺を緩ませる程度のもの。演じる羽目になった本人達はそんなことなどより、
良い終わりを望んでいたはずだ。もっとも、常に良く終わらせてくれるほど、神様は空気を読む存在でもない。
では、振りかざした正義感に振り回されて、何でも出来ると思っていた滑稽な道化芝居の価値は、さてどうだろうか。
川崎が背負っていたリュックを下ろし、中からクリップでまとめられた書類を取り出した。受け取る。
(被験者送致リスト…囚人にゃ人権はねぇてか)
「やる」
ざっと目を通したファイルを鈴木に投げ渡す。最後の数枚に紛れていたある人物のファイルには気が付かないままに。
丸窓から空を見た。灰色がかった青い空。いかにも都会の空といった風情だ。
この空の下何人が死に、何人が生き残り、何人が『生き返って』いるのだろう。
考えても詮無い事だが、思考に没頭するというのは現実から目を逸らすには悪くない方法だ。
所持品:フィルム、ディスク、高分子抽出物(3本)、BLASER-R93-LRS2(残弾0)、マガジン(5発×4)
現在地:等訓市 ヘリ内
状況:シナリオクリア
>554−556
二人が乗り込んだ事を確認し、操縦士に離陸するように告げる。
水平飛行に入った頃、シノザキが川崎から受け取った書類の束を投げて寄越した。
>「やる」
麻酔が切れ始め、辛うじて動くようになった両腕で抱き締めるようにキャッチする。
被験者送致リストと記されたそれはちょっとしたボーナスを約束してくれるだろう。
だが、今となっては何の魅力も感じられない。
「どうも。ああ、さっきはバッグを勝手に漁ってすみませんでした。」
謝りながら尻ポケットに丸めた書類を押し込んだ所で、眼鏡を書けた青年が話し掛けてきた。
>「この錠剤なんだか解りませんか?」
「ほう、この錠剤ですか。私は研究者ではありませんので答えられるかどうかは解かりませんな。」
渡してきた錠剤を震える掌で受け取る。
星輝丸で会ったあの少女の持っていた錠剤そっくりだった。
「宜しければサンプルとしてお預かりしましょう。FT−IRの一台でもあれば簡単に分析できるでしょうな。
パッキー・エルロイ社のFT−IRは感度抜群ですよ。最近はサービスも向上しておりますから安心してお勧めできます。
サービスの方とは個人的にも仲が良いんです、私。」
営業スマイルと共に言ったその言葉は、機内放送によって遮られる。
『川崎裕次郎ってのは眼鏡のお兄さんかい?反傘社勢力が用意したヘリポートに降ろすよう指示があった。
一般人の方は避難所で降ろす。鈴木さん、あんたも避難所で降りるようにって話だ。』
なぜ目の前の青年だけが特別に用意されたヘリポートで下りるのだろう。
微かに浮かんだ疑問と手渡された謎の錠剤。
「宜しければ分析終了後にデータをお渡ししましょう。
名刺は上着ごと無くしましてね。多分、クビになる前に一度ぐらい装置を使えるでしょう。」
クビになる前に、いや殺される前に逃げ出すつもりではあるが、個人的に分析に出すのもある種の保険になるかもしれない。
だが、この街での出来事を見た先にどんな保険が利くというのだろうか。
目を閉じるとその姿が見えた。
家族を守るべくゾンビと戦う父の姿が、蛇頭相手に拳銃を発射する警官の姿が、恐怖に立ち向かい避難所に走る子供達の姿が
苦渋の決断を下し、感染した仲間を射殺する自衛官達の姿が――――
全てはただ、生きる為に。
所持品:ワクチン4本、錠剤
現在地:等訓市 ヘリ内
状況:シナリオクリア
>461
先生は、天城さんを探しに行くつもりだ。
彼女が死んだとは思えない。先生は絶対に諦めないだろう。
でも、それも怪我が治ったらの先の話しだ。
今はただ、生きて帰れたことを喜んでもいいだろう。
これから向かう避難所に、僕の両親は無事でいるのだろうか?
・・・・いいさ。覚悟はできている。
それに僕は、重態の薫先生の傍を離れるつもりなんてなかった。
天城さん。先生が探し続けるなら、僕は君の無事を祈り続けるよ。
それくらいしか、足手まといの僕にできることはないんだから。
>535
不思議だ。今、天城さんの声が聞こえたような気がする。
ヘリの窓から外を眺め、僕はジロの頭を撫でた。
彼女も、この空を見ているのだろうか?
夜明けに輝く、明日へと続く、この変わらないことが素晴らしいと思える空を。
彼女の名前でもある、この・・・・・・・。
現在地・状況:シナリオクリア
>552
>「……ご無事でなによりですわ」
不意に掛けられた声に振り返ると、桂木の姿が目に入った。
よく見ると、虹彩の色が変化している。これもウイルスの影響なのだろうか?
「・・・ああ」
力の無い返事を返し、外の景色を眺めた。
地獄の様な街も、上空から見れば綺麗なものだ。
「・・・・・俺の部下も、重田と同じ運命を辿るだろうな」
あんな所に置き去りにされて、生きていられる筈が無い。
(それでも、戦友達の死を認めたくない自分が居る。何故だ?何故昔の様に諦められないんだ?)
暫く考え込むと、一つの結論が出た。
「・・・今までの俺は、しばらく必要ないということか」
神など信じていないが、今回ばかりはその存在を認めざるを得ない。
──主よ、感謝します。
考えてみれば、大分前から俺は俺ではなくなったような気がしていた。
戦友の死を悲しみ、無謀な作戦を立てた上官に激怒し、仲間達と共に街へ出て遊び歩き、最近は恋人まで作った。
「まぁいいさ、俺は俺だ。世界で「ロバート・ファリントン」という存在は只一つしか無いんだ」
自分に言い聞かせる様に言うと、大きく溜息を吐き、壁に体重を預けた。
現在地:等訓市上空、高度約800m
状況:シナリオクリア
>559
>「・・・・・俺の部下も、重田と同じ運命を辿るだろうな」
呟きに、思わず目を閉じる。この街では生き残るための代償は重く、命の価値はあまりにも軽すぎた。
あの人は、最後の最後まで私が生きることを望んでいた。本当は、自分が一番救われたかった筈なのに。
どこで違ってしまったのだろうか。私は人の形を取り戻し、あの人はいってしまった。
外の景色を眺めると、ところどころ煙が上がっているが、朝日に照らされた街は綺麗なものだった。
だが今の私には、街一面に蠢く感染体がまるで夜景のように感じられた。
衝動のままに飢えを満たすための存在。そんな彼らの中には、私が愛した人達も加わっているのだろう。
だが、もしかしたら。
あのデパートで。共にあちら側に踏み越えてしまった方が
「幸せだったかもしれませんわね……」
生きるということは、苦しみに耐える事だと言ったのは誰だっただろうか。
今、こんなにも世界の終わりを感じているのに、それでも空は変わらず美しい。
ヘリが避難所へ到着すると、予想通り私にはご大層なお迎えが来ていた。
せっかちな彼らは、別れの挨拶も満足にさせなかった。
だが、生きてさえいれば、彼らとはいずれまた出会うこともあるだろう。
そして――内心でひっそりと呟く――今は駄目でも、まだ何か手立てが残っているかもしれない。
生憎と、私は諦めが悪いのだ。
……そう、生きてさえいれば。
現在地、状況:避難所。シナリオクリア
>535
・・・・・なんやろ? なんか息苦しいで・・・・?
誰かが、どこかで、ウチを呼ぶ声が聞こえてくる。
空子? 空子なんか!? どないしたんや目ぇ開けろ! もしもしもしもし!?
どこにおるんや。
ああ・・・・なんや夢かいな。
まだ避難所に向かうヘリの中、ウチは相も変わらずグルグルになって寝かされとった。
それにしても、生々しくて嫌な夢やったなぁ・・・・まるでどっかで空子が捕まえられて苦しんどるみたいやないか。
・・・・もしかして、ホンマのことやったり・・・・て、てれぱしー?
えいくそ、動かん体がもどかしいわ!
どこのどいつか知らへんが、ウチの生徒を苦しめなんぞしたら絶対に許さへんど。
ドタマかち割ったる。
動け、直れ、根性みせんかウチの体。
どうせ人間いつかは死ぬんや。ただ肝心な時に間に合わへんのだけはやめてくれ。
回復、回復、超回復・・・・・んぎぎぎぎぎ・・・・・・!!!
・・・・・・・くそー・・・・寝るしかないんか・・・・・
シナリオクリア
>556
>「やる」
ボーっとしてるとシノザキさんがファイルを隣の男性に渡してるのが見えた。
>557
>「ほう、この錠剤ですか。私は研究者ではありませんので答えられるかどうかは解かりませんな。」
>「宜しければサンプルとしてお預かりしましょう。FT−IRの一台でもあれば簡単に分析できるでしょうな。
パッキー・エルロイ社のFT−IRは感度抜群ですよ。最近はサービスも向上しておりますから安心してお勧めできます。
サービスの方とは個人的にも仲が良いんです、私。」
男性の言った、その言葉は、機内放送によって遮られる。
『川崎裕次郎ってのは眼鏡のお兄さんかい?反傘社勢力が用意したヘリポートに降ろすよう指示があった。
一般人の方は避難所で降ろす。鈴木さん、あんたも避難所で降りるようにって話だ。』
なぜ俺だけが特別に用意されたヘリポートで下りるのだろう。
微かに浮かんだ疑問と協力すると言ったあの時の約束。
>「宜しければ分析終了後にデータをお渡ししましょう。
名刺は上着ごと無くしましてね。多分、クビになる前に一度ぐらい装置を使えるでしょう。」
「ありがとうございます。二人に私の携帯電話の番号教えておきますね。」
そして、番号の書いた紙を渡した。
「ああ、シノザキさん、彼女の妹が自衛隊のヘリに乗ってますから後でワクチンを接種して下さい。詳しい資料は今、鈴木さんのポケットの中です。」
「それと、ブレイザー預けときますから、今度返してくださいね? では、お二人とも死なないように、お元気で。」
そういうと、いつの間にか専用ヘリホートに着陸していたヘリから降りた・・・・・
すぐにヘリは離陸し遠ざかっていく、黒髪を靡かせながら、ヘリを見送り、無線を入れた。
名前:川崎 裕次郎
持ち物:USP(45口径)8発(12発弾倉残り3個(※装填分は除く))、S&W M649 (5発)
(M649用予備弾薬20発)、
リュックサック(コンバットナイフ2本、グルガナイフ、煙草、ライター 、各種医薬品、
十字架のネックレス(妹の形見)、発炎筒2本、謎のIDカード+黒猫)、
状態:眼鏡装着 、タクティカルベスト着用
無線機、暗視装置、発炎筒×2は装着済み
現在地:専用ヘリホート
状況、シナリオクリア
ヘリが避難所に設けられたヘリポートに着陸する衝撃で、はっと目が覚める。
少し目を瞑る程度のつもりだったのだが、以外と眠りが深くなっていたようだ。
>560
ヘリのドアを開けようと取っ手に手を伸ばした瞬間、外から勢い良く開けられていた。
ドアを開けたのは、見慣れぬ隊員達。格好は他の者と同じだが、雑賀には一目で中隊の
関係者ではないと分かった。
彼等は此方に欠片ほどの関心を寄せず、デパートで相乗りになった三名の隊員と桜子を
さっさと機外の外に連れ出し、その場を後にしていた。
残されたのは、雑賀と伊達と三名の隊員、そして大尉であった。
「…一体何なんだ?」
突然現れたかと思えば、直ぐに桜子を連れて立ち去ってしまった謎の一団。
だが、考えても答えは見えてこない。
「我々が及び知らぬところで何か動いているな…」
そう判断するべきだろう。これ以上この件に首を突っ込んだとしても、一介の自衛官の力が及ぶ事ではない筈だ。
雑賀は立ち去った一団の後ろ姿をただ黙って見送っている、伊達を含めた隊員達に向き直った。
「現場指揮官の権限を以ってして、この瞬間から生存者捜索の任務を解除する。皆、ご苦労だった。
テントでウィルスチェックを行った後、装具一式を中隊の備品課に返却してこい」
隊員達にそう告げると、彼等はのろのろとヘリから降り、ウィルスチェックが行われているテントに向って歩き出していた。
「さて。我々は我々のことをやろうか…」
雑賀はヘリから降りると、徐に装具の全てを脱ぎ捨て、大尉を手招きした。
「忘れたとは言わないで貰いたいものですね。言ったでしょう。生きて帰ったら手合わせをしようと」
戦闘服に鉄帽、ニー・エルボパッドを身に着けたまま、雑賀は徒手空拳の構えを取る。
「まさか化物を喜んで殺す貴方が、今更人間の一人や二人を恐れることなどありませんよね?…しかし、私を舐めて貰っては困る」
空気が変った。
疲労で消耗し切っている筈なのに、今の雑賀からは熊をも殺さんとする殺気が迸っている。
それらの全ては、目の前の大尉に向けられている。別に彼が憎い訳ではないが、ただ、殺り合うという約束を果たすだけだ。
「今の私は無性に殴り合いたい。今までの糞面白くも無い出来事を忘れるぐらい、殴り合いたい…貴方もそうでしょう?」
あの死都で見てきた数々の光景。感情を表に出すことが無い雑賀ではあるが、それらは確実に彼を苦しめていた。
ただ忘れたい。生死を掛けた死闘の末に、全てを忘れたい。今の雑賀の想いはそれだけであった。
現在地:避難所
状況:シナリオクリア
それは最も良い時代であるとともに最も悪い時代でもあり
英知の年代でもあるとともに愚かさの年代でもあり、信仰の時期であるとともに
不信の時期であり、それは光の季節であるとともに闇の季節でもあり
希望の春であるとともに絶望の冬でもあった。
私達は全てを持っているとともに何一つ持っておらず、私達は天国を目指しながら
地獄にも向っていた。
〜チャールズ・ディケンズ〜
バ イ オ ハ ザ ー ド 第 3 部
・・・3週間前
「これを読んで頂きたい。我々が回収したある変異体の記録だ。ある村で治療と研究にあたって欲しい。」
「君が免疫のあるという女性だね?良かろう、治療法確立の為にも研究させて頂く。すでにスタッフを乗せたヘリは用意した。」
「あの事件からよくも生還したものだ。約束通り、君には一働きしてもらおう。」
「残念だったね、君の妹さんは。復讐?良かろう、それもまた正義だ。」
・・・2週間前
「デュラン・スペンサーが開催する懇談会に攻撃部隊を派遣する。編成と作戦立案をするように。」
「回収したハンターの亜種に洗脳を施し、スペンサービルに送り込め。あの・・・醜い感染体と共にな。」
・・・1週間前
「地下鉄を使用し、あの化け物どもを運ぶプランが決まったか。順調なようだな。」
「あの工作員には偽の指令を出しておけ。そうだな、適当な口実を作ってヨーロッパで死んでもらおう。」
・・・第3次及び第4次生物災害当日
「諸君。行くとしようか。」
これから始まる無慈悲な権力闘争を前にして反デュラン派頭目、ブコウスキー部長はそれだけ呟くと車に乗った。
「本日正午より開始された特殊災害共同救助会議は終了し、政財界の面々と傘社重役による懇談会が開始されます。
ここ、スペンサービルではそれに合わせ、テナント各店によるチャリティバーゲンが開始され多くの人手で賑わっております。」
プロフェッショナルな無表情を維持したまま、アナウンサーがマイクに向ってさえずる。
テレビカメラに向ってピースサインを送る若者、買い物袋を手に微笑む親子連れ、周囲構わず抱き合う若いカップル。
無論、そのような世界は彼らにとって下界に過ぎない。
スペンサービル50階で享楽と悪徳に耽る者達には何の関係も無い。
〜屋上、ヘリポート〜
報道用ヘリに偽装したヘリが着陸し、ガスマスクで顔を隠した突入チームが飛び出してくる。
「ブルーチームは、直通エレベーターで警備室を占拠、我々レッドチームは50階のパーティー会場に突入する!」
難燃性素材のツナギにボディアーマー、MP5/10サブマシンガンとシグ229で武装した一団は事前演習どおりに突入を開始する。
「小僧!お前とマクナブはここで連絡を待て。俺はお前を信用して無いんだ。」
レッドチームのリーダーが告げると、装備を無理矢理奪い取り、離陸しようとしていたヘリに投げ込む。
「後ろから撃たれちゃ堪らんからな!川崎!」
チームの面々の後姿を見送り、マクナブと小僧と呼ばれた男がヘリポートに残された。
「You use this,Boy.」
マクナブと呼ばれた男が溜め息混じりにブローニングHPを川崎に差し出した。
〜スペンサービル地下鉄構内〜
乗客たちは長い事足止めを喰らっていた。
事故の為に地下鉄が動かなくなり30分が過ぎる。暴動寸前だった。
「ようやく来たぜ!」
男が指差したそれは通常車両でなく、貨物列車に良く似ていた。
厳重にロックされた扉は動かず、代わりにガスマスクに短機関銃の男達が下りてきた。
「おい、なんだよこりゃ!説明しろよ!」
返事の代わりに機関銃から放たれる10mm弾を喰らい、男はズタズタになった。
逃げ回る乗客は、お互いを押し合い、怪我人と罵声を出しながら逃げ出していく。
「こちら、イエローリーダー。地下鉄構内に到着。ロックが解除され次第、ハンターの亜種を放つ。」
無線機に向かい報告をするガスマスク越しのこもった声が、物音一つしない構内に響いた。
「全く・・・人間止めた化け物はまだ寝てるのか?」
強化ガラスの覗き窓の向こう側で坂口が赤ん坊のように目を瞑り座り込んでいた。
〜九武村、研究所〜
>花井博士
「そろそろ僕、帰りますね。」
汚れた白衣に身を包んだ太めの研究員が言った。
傘社が日本に進出した時に初めて立てられた研究所は、薄汚れ、設備も古く
左遷同然の人事対象の行き着く先と言われていた。
まさに寂れた村に相応しい研究所だ。
ところが花井戸博士の着任と共に最新鋭の研究機器が次々と到着していた。
他にも不可解なまでに強度のあるニオブチタン製の空の檻まで届けられた。
その檻は駐車場の一角に鎮座し、邪魔な事この上ない。
「博士?また地下か。机の上にメモだけ置いておこう。」
若い研究員のメモは書類(>567)の上に置かれた。
A.被検体の特徴
Tウィルス(以下T)及び、Gウィルス(以下G)に対し、完璧な免疫構造を持つ。
白血球のみならず、細胞全体がT及びGに対して攻撃を行なうのである。
また、被検体の体液は感染体に対しても攻撃を行なう。
感染体が被検体の体液を摂取した場合、極めて短時間で感染体を死滅させる。
また、再生能力も強化されており、緩やかに変化を続けている事が確認されている。
B.被検体の変化条件
不明だが、一時的に仮死状態になった後、Gを投与されたのではないか。
Gの特徴である、光彩の金色への変化、死亡後(通常医学の範疇)の
蘇生効果と死亡原因への適応から推測した。
C.結論
実用性に関しては低いと思われる。
G自体、どこまでコントロール出来るか不明であり、ワクチンの早期投与の必要性がある。
推測に過ぎないが、多くの人間は感染を防ぐために被験体と同様の外観と症状を得たいとは思えない。
この件に関しては、治療法の確立が望まれる。
D.今後の展望
この被検体の研究は第2班へと引き継ぐ。
第2班の今後の活躍に期待したい。
備考・・・賠尾市で工作員XXXXXXが提出した抗ウィルス剤と同一のサンプルであり
同工作員は被検体を監視対象へと指定していた。
この工作員には事情聴取と処分が必要だと思われる。
※1.Gの蘇生効果と蘇生後の身体変化は、死亡(瀕死状態)時に受けたダメージに比例する。
(この件の詳細に関しては添付ファイルAを参照の事。)
※2.第2班のリーダーは花井博士である。
(氏の経歴に関しては添付ファイルBを参照の事。)
※3.工作員に関しての処分は保安部に確認の事。
工作員のデータに関しては保安部長に申請の上、閲覧する事。
・・・添付ファイルは発見できない。