バイオハザード:LEVEL7

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393桂木 桜子 ◆jFC.LOgoJM
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ワクチンがあると聞いて、正直期待した。だが、直ぐにそれは糠喜びだという事に気づいた。
さっきヘリ付近にいた若い女性も、多分感染者だろう。彼女と行動を共にしていた雑賀さんが、ワクチンを使っていない筈が無い。
彼女の様子と、デパートに現れた自衛官ゾンビの群れ……伊達さんには悪いが、ワクチンは気休め程度の代物なのだろう。
一瞬期待しただけに落胆も大きい。私は絶望的な気分で遠くの肉塊を眺めた。
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座り込んでいた膝の上に誰かの影が落ちた。顔を上げた途端、眉間に冷たい銃口が押し付けられる。
ロバートさんだった。置かれた状況も忘れて目を瞬かせる。信じられない。どうしてここに居るのだろう。
さっきのヘリで安全に脱出できた筈なのに。まさか、殆ど初対面である私との口約束を守るために残ってくれたのだろうか。
>「・・・さて、大分顔色が悪くなってきたな。何なら、今すぐ此処で始末してやろうか?」
>「ちょ、ちょっと待って下さい!」
伊達さんが止めてくれているようだが、そんな必要は無かった。彼の言葉は、今の私には随分と魅力的な誘いに思えたからだ。
「生憎とまだ正気よ。残念な事にね。でも…………」
私は困ったように微笑んだ。あの場に居合わせたロバートさんなら、症状がかなりの速さで進行しているのかひと目で判った筈だ。
認めたくないが、このままではヘリの出発前に約束は果たされそうだ。ならばそれが『今すぐ』になっても大差無いのではないか。
どのみち私の希望は叶いそうに無いのだから。
>「後々面倒に巻き込まれるのは御免だ。今ここで死ぬか、それともまだ死にたくないか、どっちだ」
ロバートさんの顔を少しの間見つめると、私は目を閉じた。既に面倒に巻き込まれた彼にこそ、選択の余地があっていいと思ったからだ。
小さく舌打ちの音が聞こえた。
だが、もっと予想外だったのは――――。
>「答えは『俺が死なせたくない』だ」
これでもう二度と聞く事は無いと思っていた声が、いきなり頭上から降ってきた事だった。