>374
破壊されたヘリコプターの中で、俺はゆっくりと目を覚ました。
あれだけの傷を負っていたというのにひどく体が軽い。脇腹に目を遣り驚愕する。
左半身骨の鎧……右半身、こぶだらけ。俺はいつ鬼にこぶを付けられたんだ?
こりゃ、意地悪じいさんにするお仕置きにしてもヒドすぎる。レザーコートもただの布切れだ。
ゆっくりと割れた窓ガラスから……コクピットの窓にはまっているのは窓ガラスでいいのか?そもそも窓?
などとバカなことを考えつつ外を見る。
━━━━━━背筋が凍った。あの化け物生きていたのか。そして……子供が落ちそうだ。落ちる。墜ちる!堕ちる!?
その場所へと走っているトラックも目に入らない。兵隊たちも、全て。蜂の巣にされる可能性すら彼方へと追いやられた。
反射的に左の貫手でひびが入っていた窓をぶち破り、ヘリコプターから飛び出す。だが、絶望的だ。
もう落ち始めている。間に合わない?
右手を伸ばしながら、限界の速度で走る。そして……ギリギリ間に合わないと思った時、右半身の無数の腫瘍から蚯蚓が、いや触手がほとばしった。
それは、さながらあの女王の触手の様で。それが落下する子供の体に絡みつき、速度を殺す。
とはいえ何本かがその勢いに耐えきれず千切れ飛び、地面でのたうつが……気にもとめない。
スピードを数瞬殺す。それによって作られた間は、俺が子供の下へと滑り込むには十分だった。