●真帆良学園高等部●

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『職員寮・シュタインバクスの部屋』
20:30

シュタインバクスは廊下で擦れ違った同僚である教職員に対しての挨拶もそこそこに、そそくさと自室に戻るや否や、鞄をベッドの
上に放り投げてデスクの引き出しを開けた。デスクの引き出しの中には、分厚い鉄製の表紙をもった大判サイズの本が数冊程。
どれもが鉄製の表紙を黒錆で塗装されている。其の中の一冊を手に取り、『装備ファイルbP』と紅い文字で刻み込まれている表紙を
捲り、ぱらぱらと透明なフィルムの項を捲った。フィルムの項には、幾何学的な紋様が綴られた長方形の札が何枚も収められている。
札に綴られている紋様は、全てシュタインバクスの装備を魔術文字式に変換したものであり、彼が言霊を唱えさえすれば瞬時に装備を
物象として顕現可能なのである。シュタインバクスは幾つもある札の内の数枚をフィルムから抜き取って懐に収めると、本をデスクに戻して引き出しを閉めた。
「…何時に無い重装備。これで私達が本気だという事を彼女たちに教えなければなりませんね」
何時に無い暗い表情で小さく呟くと、自室を後にして、同じく装備を整え終えていたマリネッタと合流した。
合流した二人は連れ立って職員寮を後にし、一路女子生徒寮へと向った。

『女子寮への道』
20:34

「対人外装備S4…最高火力を有する武装を選択なさるとは、シュピール、いざ戦闘となったら危険すぎるのではないのかしら?」
「ええ。ですが、これでなければ此方の力を分かって貰えないでしょう…」
対人外装備S4とは、文字通り人外を相手にする為の装備選択である。何れも携行する火器は強力なものばかりであり、最高火力を発揮することが可能である。
個人によって選択した重火器は異なるが、そのどれもが強力なものばかりであり、常人には扱うことが出来ないような大重量のものである。
「28mm漸減口径(ゲルリッヒ)砲であるsPZb41重対戦車銃にAMRのNTW−20mm、97式自動砲、ラティm/39、それとBarrett Model M95のロングバレルタイプ、
そして極め付けに最近支給されたばかりのSteyer IWS 2000…ちょっと大袈裟じゃないのかしら?私は戦車を相手にするつもりはないんだけど?」
「あくまでも威嚇ですよ。貴女は決して察知されることの無い遠距離から、威嚇としての狙撃を行ってください。28mmの初撃で充分ですから…」
第二次世界大戦中にドイツ軍が採用したsPZb41重対戦車銃を、マリネッタは扱いやすいように改良して使用している。
本来ならば、sPZb41重対戦車銃は防盾と移動用の車輪が装着されており、外見的には小型の対戦車砲だ。
マリネッタは防盾と車輪を外し、更に機関部とグリップ、給弾システムに改良を加えてsPZb41重対戦車銃を巨大な対戦車ライフルに仕立て上げ、愛用している。
他にも、97式自動砲、ラティm/39なども大戦中の対戦車ライフルであり威力は申し分ない。これを対人戦闘に用いるのを想像すると、恐ろしい事である。
NTW-20やBarrett Model M95、Steyer IWS 2000といったAMR(アンチマテリアルライフル)も彼女が狙撃に用いる重火器であり、人間ならば一撃で肉塊とする。
「そういう私も、やたらめったらな重装備なんですけどね…初撃は実弾で、それ以降は衝撃弾で事足りるでしょう」
シュタインバクスは苦笑を浮かべると、マリネッタの先に立って女子寮へと続く道を歩いた。

『女子寮へ移動中』